衆議院

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第13号 平成14年5月17日(金曜日)

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平成十四年五月十七日(金曜日)
    午前九時十一分開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岡下 信子君    上川 陽子君
      木村 義雄君    北村 誠吾君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      自見庄三郎君    田村 憲久君
      高木  毅君    竹下  亘君
      竹本 直一君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    林 省之介君
      松島みどり君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    谷津 義男君
      吉野 正芳君    家西  悟君
      大島  敦君    加藤 公一君
      鍵田 節哉君    金田 誠一君
      五島 正規君    土肥 隆一君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      樋高  剛君    小沢 和秋君
      瀬古由起子君    阿部 知子君
      中川 智子君    井上 喜一君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  小川登美夫君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局参事官
   )            田口 義明君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            日比  徹君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (社会保険庁次長)    小島比登志君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  冨岡  悟君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
 辞任         補欠選任
  西川 京子君     高木  毅君
  野田  毅君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     西川 京子君
  井上 喜一君     野田  毅君
    ―――――――――――――
五月十七日
 母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)
同月十三日
 助産師の養成に関する請願(土肥隆一君紹介)(第二五六五号)
 患者負担引き上げ中止に関する請願(藤木洋子君紹介)(第二五六六号)
 同(前原誠司君紹介)(第二五六七号)
 同(山井和則君紹介)(第二五六八号)
 同(大島令子君紹介)(第二六九七号)
 同(工藤堅太郎君紹介)(第二六九八号)
 同(長浜博行君紹介)(第二六九九号)
 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(藤木洋子君紹介)(第二五六九号)
 介護保険制度の緊急改善に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二五七〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二五七一号)
 医療費負担引き上げの中止に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二五七二号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二五七三号)
 児童扶養手当の抑制案撤回に関する請願(山花郁夫君紹介)(第二五七四号)
 同(川田悦子君紹介)(第二六四四号)
 同(水島広子君紹介)(第二七〇一号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(藤木洋子君紹介)(第二五七五号)
 同(松本善明君紹介)(第二五七六号)
 同(山井和則君紹介)(第二五七七号)
 障害者の介護・福祉制度の利用における親・家族負担の撤廃に関する請願(土肥隆一君紹介)(第二五七八号)
 安心の医療制度への抜本改革、負担増反対に関する請願(一川保夫君紹介)(第二五七九号)
 同(佐藤公治君紹介)(第二五八〇号)
 同(重野安正君紹介)(第二五八一号)
 同(都築譲君紹介)(第二五八二号)
 同(東門美津子君紹介)(第二五八三号)
 同(保坂展人君紹介)(第二五八四号)
 同(一川保夫君紹介)(第二六四九号)
 同(大島令子君紹介)(第二六五〇号)
 同(佐藤公治君紹介)(第二六五一号)
 同(重野安正君紹介)(第二六五二号)
 同(日森文尋君紹介)(第二六五三号)
 同(山内惠子君紹介)(第二六五四号)
 同(横光克彦君紹介)(第二六五五号)
 同(阿部知子君紹介)(第二七一二号)
 同(赤松広隆君紹介)(第二七一三号)
 同(五十嵐文彦君紹介)(第二七一四号)
 同(伊藤英成君紹介)(第二七一五号)
 同(伊藤忠治君紹介)(第二七一六号)
 同(石井紘基君紹介)(第二七一七号)
 同(岩國哲人君紹介)(第二七一八号)
 同(上田清司君紹介)(第二七一九号)
 同(江崎洋一郎君紹介)(第二七二〇号)
 同(大出彰君紹介)(第二七二一号)
 同(大島令子君紹介)(第二七二二号)
 同(大谷信盛君紹介)(第二七二三号)
 同(大畠章宏君紹介)(第二七二四号)
 同(海江田万里君紹介)(第二七二五号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第二七二六号)
 同(釘宮磐君紹介)(第二七二七号)
 同(桑原豊君紹介)(第二七二八号)
 同(小泉俊明君紹介)(第二七二九号)
 同(古賀一成君紹介)(第二七三〇号)
 同(五島正規君紹介)(第二七三一号)
 同(後藤斎君紹介)(第二七三二号)
 同(今野東君紹介)(第二七三三号)
 同(近藤昭一君紹介)(第二七三四号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第二七三五号)
 同(佐藤公治君紹介)(第二七三六号)
 同(城島正光君紹介)(第二七三七号)
 同(首藤信彦君紹介)(第二七三八号)
 同(田中慶秋君紹介)(第二七三九号)
 同(武正公一君紹介)(第二七四〇号)
 同(土井たか子君紹介)(第二七四一号)
 同(中沢健次君紹介)(第二七四二号)
 同(中村哲治君紹介)(第二七四三号)
 同(中山義活君紹介)(第二七四四号)
 同(永田寿康君紹介)(第二七四五号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第二七四六号)
 同(野田佳彦君紹介)(第二七四七号)
 同(伴野豊君紹介)(第二七四八号)
 同(日森文尋君紹介)(第二七四九号)
 同(肥田美代子君紹介)(第二七五〇号)
 同(平野博文君紹介)(第二七五一号)
 同(藤村修君紹介)(第二七五二号)
 同(細川律夫君紹介)(第二七五三号)
 同(牧野聖修君紹介)(第二七五四号)
 同(松崎公昭君紹介)(第二七五五号)
 同(松原仁君紹介)(第二七五六号)
 同(松本龍君紹介)(第二七五七号)
 同(三井辨雄君紹介)(第二七五八号)
 同(水島広子君紹介)(第二七五九号)
 同(山内惠子君紹介)(第二七六〇号)
 同(山口わか子君紹介)(第二七六一号)
 同(山谷えり子君紹介)(第二七六二号)
 同(山井和則君紹介)(第二七六三号)
 同(山村健君紹介)(第二七六四号)
 同(横光克彦君紹介)(第二七六五号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(斉藤鉄夫君紹介)(第二六四三号)
 同(中山義活君紹介)(第二七〇〇号)
 移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(大島令子君紹介)(第二六四五号)
 同(工藤堅太郎君紹介)(第二七〇三号)
 同(長浜博行君紹介)(第二七〇四号)
 安全で行き届いた看護実現に関する請願(大島令子君紹介)(第二六四六号)
 同(工藤堅太郎君紹介)(第二七〇五号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(久保哲司君紹介)(第二六四七号)
 同(原口一博君紹介)(第二七〇九号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(後藤茂之君紹介)(第二六四八号)
 同(松野頼久君紹介)(第二七一〇号)
 同(山口わか子君紹介)(第二七一一号)
 安全で行き届いた看護の実現に関する請願(長浜博行君紹介)(第二七〇二号)
 国民の医療と国立病院・療養所の充実・強化に関する請願(大島令子君紹介)(第二七〇六号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げなどの中止に関する請願(大島令子君紹介)(第二七〇七号)
 同(永田寿康君紹介)(第二七〇八号)
 医療制度改革反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第二七六六号)
同月十七日
 患者負担引き上げ中止に関する請願(中川智子君紹介)(第二八一二号)
 同(重野安正君紹介)(第二八九三号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第二八九四号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(中川智子君紹介)(第二八一三号)
 同(山口わか子君紹介)(第二八一四号)
 同(大島敦君紹介)(第二八九八号)
 同(後藤茂之君紹介)(第二八九九号)
 同(中川智子君紹介)(第二九五〇号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げなどの中止に関する請願(大島令子君紹介)(第二八一五号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(山口わか子君紹介)(第二八一六号)
 安心の医療制度への抜本改革、負担増反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第二八一七号)
 同(五十嵐文彦君紹介)(第二八一八号)
 同(池田元久君紹介)(第二八一九号)
 同(上田清司君紹介)(第二八二〇号)
 同(江崎洋一郎君紹介)(第二八二一号)
 同(大石尚子君紹介)(第二八二二号)
 同(大島令子君紹介)(第二八二三号)
 同(金子善次郎君紹介)(第二八二四号)
 同(菅直人君紹介)(第二八二五号)
 同(釘宮磐君紹介)(第二八二六号)
 同(桑原豊君紹介)(第二八二七号)
 同(小泉俊明君紹介)(第二八二八号)
 同(古賀一成君紹介)(第二八二九号)
 同(今田保典君紹介)(第二八三〇号)
 同(今野東君紹介)(第二八三一号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第二八三二号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第二八三三号)
 同(末松義規君紹介)(第二八三四号)
 同(玉置一弥君紹介)(第二八三五号)
 同(樽床伸二君紹介)(第二八三六号)
 同(手塚仁雄君紹介)(第二八三七号)
 同(土井たか子君紹介)(第二八三八号)
 同(中沢健次君紹介)(第二八三九号)
 同(中村哲治君紹介)(第二八四〇号)
 同(中山義活君紹介)(第二八四一号)
 同(長浜博行君紹介)(第二八四二号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第二八四三号)
 同(野田佳彦君紹介)(第二八四四号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第二八四五号)
 同(伴野豊君紹介)(第二八四六号)
 同(日森文尋君紹介)(第二八四七号)
 同(肥田美代子君紹介)(第二八四八号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第二八四九号)
 同(細川律夫君紹介)(第二八五〇号)
 同(細野豪志君紹介)(第二八五一号)
 同(牧野聖修君紹介)(第二八五二号)
 同(松崎公昭君紹介)(第二八五三号)
 同(松原仁君紹介)(第二八五四号)
 同(松本龍君紹介)(第二八五五号)
 同(三井辨雄君紹介)(第二八五六号)
 同(山口わか子君紹介)(第二八五七号)
 同(山田敏雅君紹介)(第二八五八号)
 同(山井和則君紹介)(第二八五九号)
 同(山元勉君紹介)(第二八六〇号)
 同(横光克彦君紹介)(第二八六一号)
 同(赤松広隆君紹介)(第二九〇一号)
 同(荒井聰君紹介)(第二九〇二号)
 同(伊藤英成君紹介)(第二九〇三号)
 同(伊藤忠治君紹介)(第二九〇四号)
 同(石井紘基君紹介)(第二九〇五号)
 同(岩國哲人君紹介)(第二九〇六号)
 同(大出彰君紹介)(第二九〇七号)
 同(大谷信盛君紹介)(第二九〇八号)
 同(大畠章宏君紹介)(第二九〇九号)
 同(奥田建君紹介)(第二九一〇号)
 同(加藤公一君紹介)(第二九一一号)
 同(海江田万里君紹介)(第二九一二号)
 同(川端達夫君紹介)(第二九一三号)
 同(小林守君紹介)(第二九一四号)
 同(五島正規君紹介)(第二九一五号)
 同(後藤茂之君紹介)(第二九一六号)
 同(後藤斎君紹介)(第二九一七号)
 同(近藤昭一君紹介)(第二九一八号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第二九一九号)
 同(城島正光君紹介)(第二九二〇号)
 同(首藤信彦君紹介)(第二九二一号)
 同(田中慶秋君紹介)(第二九二二号)
 同(筒井信隆君紹介)(第二九二三号)
 同(土肥隆一君紹介)(第二九二四号)
 同(中野寛成君紹介)(第二九二五号)
 同(永田寿康君紹介)(第二九二六号)
 同(葉山峻君紹介)(第二九二七号)
 同(鳩山由紀夫君紹介)(第二九二八号)
 同(原陽子君紹介)(第二九二九号)
 同(平野博文君紹介)(第二九三〇号)
 同(藤村修君紹介)(第二九三一号)
 同(堀込征雄君紹介)(第二九三二号)
 同(松沢成文君紹介)(第二九三三号)
 同(松本剛明君紹介)(第二九三四号)
 同(山谷えり子君紹介)(第二九三五号)
 同(山村健君紹介)(第二九三六号)
 同(荒井聰君紹介)(第二九五一号)
 同(池田元久君紹介)(第二九五二号)
 同(大石尚子君紹介)(第二九五三号)
 同(奥田建君紹介)(第二九五四号)
 同(加藤公一君紹介)(第二九五五号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第二九五六号)
 同(金子善次郎君紹介)(第二九五七号)
 同(菅直人君紹介)(第二九五八号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第二九五九号)
 同(小林守君紹介)(第二九六〇号)
 同(後藤茂之君紹介)(第二九六一号)
 同(今田保典君紹介)(第二九六二号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第二九六三号)
 同(末松義規君紹介)(第二九六四号)
 同(武正公一君紹介)(第二九六五号)
 同(玉置一弥君紹介)(第二九六六号)
 同(樽床伸二君紹介)(第二九六七号)
 同(筒井信隆君紹介)(第二九六八号)
 同(手塚仁雄君紹介)(第二九六九号)
 同(中川正春君紹介)(第二九七〇号)
 同(中野寛成君紹介)(第二九七一号)
 同(長浜博行君紹介)(第二九七二号)
 同(葉山峻君紹介)(第二九七三号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第二九七四号)
 同(原陽子君紹介)(第二九七五号)
 同(細野豪志君紹介)(第二九七六号)
 同(堀込征雄君紹介)(第二九七七号)
 同(松沢成文君紹介)(第二九七八号)
 同(松本剛明君紹介)(第二九七九号)
 同(山田敏雅君紹介)(第二九八〇号)
 同(山元勉君紹介)(第二九八一号)
 助産師の養成に関する請願(中川智子君紹介)(第二八六二号)
 同(土肥隆一君紹介)(第二九三七号)
 同(中川智子君紹介)(第二九八二号)
 准看護師の養成停止と移行教育の早期実現に関する請願(川田悦子君紹介)(第二八九二号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(塩崎恭久君紹介)(第二八九五号)
 安全で行き届いた看護の実現に関する請願(楢崎欣弥君紹介)(第二八九六号)
 移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(楢崎欣弥君紹介)(第二八九七号)
 国民の医療と国立病院・療養所の充実・強化に関する請願(大島敦君紹介)(第二九〇〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)
 健康増進法案(内閣提出第四七号)
 医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出、衆法第一一号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(五島正規君外三名提出、衆法第一三号)


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、健康増進法案、山井和則君外三名提出、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案及び五島正規君外三名提出、健康保険法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官小川登美夫君、金融庁総務企画局参事官田口義明君、文部科学省高等教育局長工藤智規君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、健康局長下田智久君、健康局国立病院部長河村博江君、医薬局長宮島彰君、労働基準局長日比徹君、保険局長大塚義治君、社会保険庁次長小島比登志君及び社会保険庁運営部長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。
鴨下委員 おはようございます。トップバッターをさせていただきます。
 大臣、いろいろとお疲れさまでございますが、きょうは、今回の改正につきまして全般的な話を多少伺わせていただいて、その後に高齢者医療につきましてお伺いをしたい、こんなふうに思っております。
 大臣がよく御存じのことだと思いますが、日本は、ある意味で世界の中でも、健康寿命世界一を達成したすばらしい医療制度を持っているわけでありますが、その中でも特筆すべきことは、国民皆保険とある意味でのフリーアクセスであります。また、私は、さらにもう一つのところで、出来高払いというのもある意味で効果を上げてきたのかなというふうにも思っておりますが、きょうはそのことについては触れません。
 そして、そういう意味で、医療保険制度の大前提として、皆保険とそれからフリーアクセス、この二つについては堅持するんだ、こういうようなことの前提でこれからの改革についての議論をしていきたいと思いますが、大臣、そのことについてまずお伺いをしたいというふうに思います。
坂口国務大臣 おはようございます。
 今、鴨下委員からお話ございましたように、日本の医療制度を外から見ていただきますと、WHO等におきましても高い評価を得ているわけでございまして、今御指摘いただいたとおり、フリーアクセスができ上がっている、そしてまた、皆保険制度が維持されている、そうしたことが私も大きいのではないかというふうに思っている次第でございます。
 今までの日本の医療制度は非常に高く評価をされてまいりましたけれども、しかし、最近特にこの医療保険制度を取り巻きます環境というのは変わってきています。最も大きな要因は、いわゆる超少子高齢化、この進展であります。また、経済の状況が変化をしてきたということもあろうかと思いますし、また、医療が非常に高度化をしてきたということも変化の一つだと思っています。
 こうした要因の中で、とりわけ、少子高齢化のために財政的に非常に厳しくなってきているということがございます。しかし、初めにも御指摘をいただきましたとおり、皆保険制度とフリーアクセスというものは守った上でこの制度改革をどう進めるかということが今後の大きな課題だと思っておりまして、委員の御認識のとおりというふうに思っている次第でございます。
鴨下委員 皆保険とフリーアクセスを守るために私たちは今から改正についての議論をするんだということなんだろうと思っております。
 今回の医療制度の改正につきましては、例えば、診療報酬の見直し、そして患者の一部負担の見直し、さらに保険料の見直し、また公費負担等の見直しと、さまざまな問題がありますけれども、いずれにしましても、国そして保険者、患者それから加入者、医療機関がある意味でひとしく痛みを分かち合いながらこの皆保険とフリーアクセスを含めた日本のすばらしい医療制度を守っていこう、こういうことなんだろうというふうに思いますが、このいずれも負担を強いることにもなりかねないことでありますので、患者負担、それから保険料、さらに公費の負担は一体どういうふうになっていくのかというのを簡単に、これは局長の方から御答弁いただければ結構ですから。
大塚政府参考人 今回の医療制度改革によります財政影響でございますけれども、例えば高齢者に関する改革は、おおむね五年をかけまして例えば対象年齢の引き上げとか公費負担割合の引き上げとかをいたしますので、五年後、年齢引き上げが完了する平成十九年度の状況ということで、なおかつ全体としては医療費は高齢化に伴ってふえてまいりますので、現在の制度がそのまま推移した場合と今回の改革による形になった場合と十九年度の段階で比較するという形で簡単に御説明をさせていただきます。
 十九年度の段階で、患者負担は現行制度と比べまして約五千億円の増になるわけでございます。それに対しまして、保険料につきましては約一兆一千億円の減、公費負担につきましては現行の水準とほぼ変わらない、こういう状況が平成十九年度の段階でございます。
 それから先になりますと、制度がそのまま継続される、こういう仮定を置きまして、おおむね高齢化のピーク時でございます二〇二五年のころの姿を考えますと、高齢化が進み、高齢者の公費負担割合を引き上げるという仕組みになりますので、公費負担割合がふえてまいりまして、二〇二五年度段階になりますと、現行制度のままで推移した場合、医療給付に占めます公費負担の割合が四〇%程度でございますけれども、制度改正後には四二%、二ポイント上昇する。
 こんな大ざっぱな財政影響でございます。
鴨下委員 そういう中でも一番の問題は、政府管掌健康保険の財政状況、これが非常に危機的であるというようなことでありますけれども、今回の改正でも保険料を実質的に約一割もアップするというようなことで、総報酬制でいえば七・五%から八・二%、こういうふうなことで、極めて大幅なアップになるわけでありますね。
 そういうような意味で、これは社会保険庁がある意味で運営しているわけでありますけれども、こういう状況に陥ったさまざまな要因があると思いますが、いろいろと厳しい意見もございます。そういう中で、このような状況になった要因について簡単に答弁をいただきたいと思います。
冨岡政府参考人 御説明申し上げます。
 政管健保は、平成五年度から平成十二年度まで、実質、八年連続赤字決算となっております。このような厳しい財政状況は、主として、被保険者等に対する保険給付費は落ちついた伸びにとどまっておりますが、高齢化の進展などに伴いまして、老人保健拠出金それから退職者給付拠出金がこの十年間で二倍に増大したということが最大の要因となっております。
 これに加えまして、近年、厳しい財政状況を背景に、平成十年度から平成十二年度まで、三年連続で被保険者数が減少いたしております。また、平成十一年度から十二年度まで、二年連続、平均標準報酬月額が減少しております。こういったことも保険料収入が減少して財政状況を悪化させる要因となっております。
 その結果、平成四年度末に一兆四千九百三十五億円に達していました事業運営安定資金残高は、十四年度中におおむねこれが枯渇する見込みとなっております。
鴨下委員 今の、全体的なファンダメンタルが厳しくなっているというようなことは理解するわけでありますけれども、さらにそれ以外の、運営の点でいろいろな矛盾があるということも、まあ私たち党内でのいろいろな議論の中でもいろいろと指摘がございますので、またそれにつきましてはこれからいろいろと伺っていきたい、このように思っております。
 それで、とかく厚生労働省は今までも、年金のこともそうですし介護のこともそうですし、もちろん医療のこともそうでしたけれども、将来が大変だから大変だからといって、さあ患者負担をふやしてください、保険料を上げてください、そしていろいろと節約をお願いいたしますと、こういうようなことばかり言うと、今までは国民はそれでもさあ大変だといって一生懸命支えてくれたかもわかりませんけれども、今はもうそんな時代じゃありません。むしろクールになって、そんな医療保険だったら、そんな年金だったら、おれたちは民間の方に、いろいろと工夫した方がいいよ、こういうような話で、むしろ求心力が落ちかねない。
 こういうようなことも懸念されるわけでありますから、私は、医療改革が進んで、高齢化がピークになったときに、一体どういう姿で、このくらい負担していただければ大丈夫なんだ、こういうようなことをはっきり言う必要があるんだろうと思いますが、政管健保の保険料率等につきましてどういうような見通しになるかということを、大臣、お答えいただければと思います。
坂口国務大臣 将来のこの見通しというのはなかなか立ちにくいわけでございますが、一番はっきりしておりますのは人口動態がどう変化するか、これだけは大体予測がつくわけでございますから、そこを中心にして考える以外にない。
 ことし一月に推計をいたしました人口動態を中心にして考えますと、これも前提条件にどんな数字を置くかによって随分変わってくるわけですが、しかしこれでいきますと、二〇二五年には七十兆円に医療費がなるということを、推測でございます。
 先ほど申しましたように、前提条件によりましていろいろ違いますが、したがいまして、政管健保の保険料につきましては、名目賃金の上昇率を二〇〇七年までを一・〇%、それ以後は二・五%という前提を置いた上で、ボーナスを含む総報酬ベースで見てみますと、二〇〇七年ぐらいで一〇・三%程度見込まれるわけでございます。
 この一〇%前後の水準というのは、とりわけヨーロッパ等のドイツやフランスあたりと比較しますと、まだドイツやフランスの方が高い、一四%ぐらいに行っているわけでございますから、まだ低いのは低いわけでございますけれども、この保険料を余り上に上げていくということも私はなかなか難しいと思うんですね、日本の場合に。したがいまして、まあ一〇%、若干一〇%を超えるぐらいな程度がもう許容範囲ではないかと。それ以上ここを上げていくということはなかなか難しい。
 したがいまして、一方におきまして、現在までの医療の制度の中で、これは厚生労働省が担当しておる部分も含めてでございますが、その中でどう減少させていくか、どうむだを省いていくかということをやはりやっていかないといけない。
 先ほど一〇・三%は二〇〇七年と言いましたけれども、失礼しました、二〇二五年の話でございまして、ですから、済みません、二〇二五年でございますので。
 まあ一〇%というのは大体一つの限界、そういうふうに思っている次第でございます。
鴨下委員 保険料はそのくらいが限界、そして患者の負担は三割が限界、こういうようなことでいろいろと制約要因がある中で、この皆保険、フリーアクセスを維持して、ある意味での国民の医療水準を維持していくというのは、もうこれは大変なことでありますし、片や、今回の政管健保の保険料率を上げるというようなことにつられて組合健保も上がるというようなこともいろいろと伺っておりますけれども、これについては、組合健保そのものの動向について、これは大塚局長に、答弁してください。簡単にね。
大塚政府参考人 先ほど政府管掌健康保険の状況を御報告いたしましたが、基本的な、ベーシックな状況は組合健保も同じでございまして、赤字組合がふえ、経常収支の赤字がふえるという状況が続いておるわけでございます。一方、保険料率も、平均的に見ますと政管健保並みに既になっておりまして、いわば同様に厳しい状況にある。
 ただ、健保組合の場合は千七百弱ございます。したがって、それぞれの健保組合で財政事情その他、条件は異なりますけれども、全体をひっくるめて平均的な姿で申しますと、ただいま申し上げたような状況にあるということでございます。
鴨下委員 きょうは質問が盛りだくさんで間に合いそうもないので少しずつはしょってやりますけれども、高齢者医療における公費負担割合を引き上げる、こういうような話も承っていますけれども、国庫負担は政府が責任を持ってある程度保障していく、こういうようなことの理解でよろしいんでしょうか。大臣、御答弁いただきたいと思います。
坂口国務大臣 高齢者医療につきましては、後期高齢者医療につきましては二分の一に引き上げるということを我々も言っているわけでございまして、そういうふうにしたいというふうに思っているわけでございますが、この後期高齢者医療を中心にして、これからどういう保険制度をつくり上げていくかということに非常に大きな影響を与えるだろうというふうに思っております。
 後期高齢者医療だけではなくて、介護の問題もあり年金の問題もありでございますから、それらを総合して考えていかなければならないというふうに思いますが、後期高齢者医療は、少なくとも二分の一、そこは確保をしなければこれは維持できないだろうというふうに思っています。
鴨下委員 今の大臣の答弁は非常に重要なことでありまして、介護と後期高齢者と、それから場合によると年金の基礎年金部分について、国庫が相当な意味で保障をしていくというようなことなんだろうというふうに思います。
 今回の高齢者医療を含めて全体的に国民は非常に負担がふえるんじゃないか、こういうようなことを考えているわけでありますけれども、特に、高齢者の完全定率一割負担というのは、これは私はいろいろな意味で相当重くのしかかるんだろうというふうに思います。
 そういう意味で、高齢者医療に係る実効負担率がどうなるのかということについて、客観的なデータをお示しいただきたいと思います。
大塚政府参考人 高齢者医療の負担に関します今回の改正内容を大別しますと二つございまして、ただいまお話のございました一割定率の徹底、もう一つは若い世代と同程度の収入のある方につきましては二割負担をお願いする、この二つが大別しますと主要な内容ということになるわけでございますけれども、そのほか若干、いわゆる負担限度額の見直しということが加わるわけでございます。
 これらをトータルいたしまして、すべてでございますけれども、いわゆる実効給付率といいましょうか負担率、裏腹のあれでございますけれども、負担率で申し上げますと、これも十九年度の段階での試算ということでございますが、現在の制度ですと八・一%、これが九・五%になる。これは、ただいま申し上げましたような幾つかのすべてを総合しての率ということでございます。
鴨下委員 きょうは、せっかく副大臣お出ましでありますので、副大臣にも伺いますが、今の局長の話を受けてですけれども、今度、全体的な高齢者医療について、患者の一部負担をどうしていくかという話が私は今回の改正の中で一番の重要なところで、これがある意味で今回の改正の肝だろうというふうに思っておるんですけれども、副大臣、全体的なこの見直しに関して、内容について御説明をいただければと思います。
宮路副大臣 鴨下委員先ほど来御指摘のように、急速な少子高齢化の進展、それによって老人医療費が大変増大している、その一方では若年世代の負担が著しく増加をしておるわけでありまして、一方また、年金制度の成熟化等によって高齢者の経済的地位も向上している。
 そういったもろもろの要素を踏まえながら、今回の改正に当たりましては、高齢者の方々についても患者負担を従来に増して増加して負担をしていただく、そういう方途をとらざるを得なかったわけでありまして、その結果、一割負担を原則としながら、現役世代の平均的収入以上の所得を有していらっしゃる高齢者の方については、その負担を二割とさせていただく、そして、一般の医療保険制度の場合と同様に、受けたサービスにおいて御負担をいただく定率負担を徹底させていただく、そして同時に、高齢者の自己負担限度額につきましても、一般の医療制度における自己負担限度額の見直しを踏まえながら所要の見直しをさせていただく、こういうことになっているところでございます。
鴨下委員 老人が医療について非常に負担がふえるんじゃないかということを心配しているわけでありますけれども、例えば、よくかかる病気として風邪、それから高血圧、さらに一つの大変な病気としての胃がん、こういうようなものの高齢者の一部負担がどういうふうに、現行とそれから今後、改正後の負担が変わるのかということを説明していただきたいんです。
 在宅総合診療料算定対象患者、いわゆる在総診の患者さんにとってみれば、現行三千四百円が一万二千円になるというようなことになりやしないかということを非常に心配している向きもあるわけでありまして、いろいろなこと、疾患によってそれぞれ個別な事情があるだろうというふうに思いますけれども、今申し上げた風邪、高血圧、胃がんについてどんな変化があるか、御説明ください。
大塚政府参考人 高齢者のケースで、それぞれの負担能力に応じて幾つか分かれるわけでございますが、普通の一般の方というふうに前提を置きまして、三つの例で申し上げます。
 例えば、風邪で診療所に初診をいたしました。処置を受ける、この場合、一定のもちろん前提を置いてでございますが、医療費としては三千四百六十円程度、モデルでございますけれども、こうなりますと、一割でございますから三百五十円の御負担。現行でも一割の定率をとっておられる病院ではそうでございますし、一方定額を採用されている診療所もございます。その場合には、一回当たり八百五十円でございますので、そういうケースよりは負担が軽減されるケースもあるわけでございます。
 同様の前提を置きながらということでございますが、高血圧症で再診に医療機関を訪れた、この場合、五千百四十円というモデルでございます、五千円程度。これは、その一割でございますから五百十円の負担。従来ですと、これも定率の場合は同様でございますし、定額の場合をとっておられれば八百五十円、これは同様でございます。
 胃がんのケースでございますが、これも一定のモデルをつくりますと、胃がんで三十日入院をされた、もちろん手術をされたということでございますと、医療費が百六十八万余り、百六十八万二千七百三十円、これもモデルでございます。こうなりますと、現行の制度の方の御負担は、高齢者一般でございますと、限度額にぶつかりますので三万七千二百円、今回限度額の見直しがございますので、これが四万二百円になる。
 ただいま申し上げましたことは一般の方でございますから、二割負担の対象になる方はもちろん負担がふえますし、あるいは低所得者の拡大をいたす考えでございますので、そういう低所得者の対象が広がるということによって軽減される方もある、こういった例でございます。
鴨下委員 あともう一方の話として、七十歳から七十四歳の高齢者の患者負担についてがはっきりしないところでありますけれども、この七十歳から七十四歳の高齢者が七十五歳以上の高齢者と扱いが変わるのか、大体同じようなことなのかということについて、一番心配しているのは、七十歳からの方々なんですけれども、どういうふうに変わるのか、変わらないのか、このことについて副大臣、説明をお願いします。
宮路副大臣 今回の改革におきましては、老人保健制度につきまして、特に後期高齢者に施策を重点化するといった観点から、拠出金の負担の対象となります高齢者の年齢を七十歳から七十五歳に引き上げさせていただく、そして同時に、その老人保健制度に対する公費負担の割合を三割から五割に段階的に引き上げるといったことにいたしておるわけであります。
 しかしながら、患者負担につきましては、委員御案内のように、昨年十一月の政府・与党社会保障改革協議会において取りまとめられました医療制度改革大綱を踏まえまして、七十歳から七十四歳の高齢者につきましても、七十五歳以上の高齢者と同様の取り扱いをするというふうに、患者負担についてはそういう負担にさせていただいているところでありまして、したがって、今度の制度改革の実施、施行に当たりましては、御指摘のようなそういう混乱が起こらないように、しっかりと御理解がいただけるように、誤解を生じないように、わかりやすい形で周知徹底に努めてまいりたい、こんなふうに思っております。
鴨下委員 あともう一点ですが、今回の診療報酬改定で医療保険と介護保険の機能分担の明確化、こういうような意味合いから、長期入院患者に対しての特定療養費化を行ったというようなことでありますけれども、この措置の意義と、それから前回の当委員会の中でも五島委員等からいろいろと指摘がありましたように、例えば、一部難病だけでなくて、経管栄養を受けている人だとか、それからかなり重い褥瘡を持っているような人たちが百八十日過ぎたらもう特定療養費化されて、外へ出なきゃいけない。こういうようなことになると、これはまた問題なことが起こるんだろうと思いますが、そのことについてお答えをいただきたいというふうに思います。
大塚政府参考人 今回の診療報酬改定における長期入院の方に対する特定療養費化の導入、特定療養費制度を活用した見直しについてのお話でございましたが、かつて、あるいは今日に至るまで、いわゆる社会的入院につきまして、こうした状況を改善するための措置を強く求められてまいりました。かつては、一般病床における社会的入院と言われたような状態がございまして、これにつきましては、療養病床の整備あるいは介護保険制度の創設といった形で大きく改善が図られてきていると思っております。
 今日におきましては、いわゆる療養病床の中で、福祉施設やあるいは在宅で対応できる、御生活いただけるという方が相当な割合に上るという御指摘がございまして、これに対する対策という観点から、今回の特定療養費を活用した制度の見直しを行ったわけでございます。
 基本的な考え方といたしましては、そういう背景でございますので、医療と介護の機能分担を明確にして、それぞれの体制整備を図りながら、適切なサービスが適切に行われるようにというのが、基本的な我々のねらいとして導入したものでございます。
 それから、それに関連いたしまして、その対象となる方の問題でございますが、既に告示によりまして、一定の状況にある方につきまして、例えば難病の患者さんでありますとかいう方につきましてはこの特定療養費の対象としないということを明らかにしておりますが、これに準ずる人たちもあるわけでございまして、これは具体的には、今後、現場の意見、あるいは有識者の意見も含めましてよくお聞きをいたしまして、おおむね夏ごろまでには、これに準ずるものという形の範囲を明らかにしてまいりたい、その際によくよく現場の御意見も承りたい、こんなふうに考えているところでございます。
鴨下委員 時間が来ましたので終わりますけれども、今、最後に大塚局長がお話しになりましたように、例えば、百八十日過ぎてもどうしても入院していなきゃいけないようなケースについて、詳細にいろいろと適用拡大について御検討いただきたい、このように思います。
 またさらに、たらい回し等についての話も本当は聞きたかったんだけれども、時間がないものですから、きょうはこれにて終わらせていただきます。ありがとうございました。
森委員長 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 社会保障制度を安定させていく、あるいは充実させていくということは、老後の生活設計で欠くことのできないものでありますし、最近のように、少子化が進行する、あるいは高齢化が一段と進行するような状況の中におきましては、国民生活にとって大変重要なものとなってきていると思います。私は、そのような観点から、きょう御質問をさせていただきたいと思うんです。
 今回、これは三回目の審議だそうでありまして、あるいは多少ダブるようなことがあるかもわかりませんけれども、お答えをいただきたいと思うんです。
 まず最初に、今回のこの改正案、まとまるまでに紆余曲折がありましたこと、私どもも報道等で承知をしております。私がお伺いしたいのは、坂口大臣、今日の案のように、国民にかなりの負担を求めていくものになっておりますけれども、こういうものを実施する前に国としてやるべきことがたくさんあるんじゃないか、まずそれをやってからこういう改革をやるべきだ、こういうような御主張をされていたように伺うのでありますが、最終的には、国務大臣として内閣の方針に従って今日のような改正案をまとめられたと思うのでありますが、今の心境を率直に、どのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思うんです。
坂口国務大臣 今回のこの医療制度改革の決定をいたしますまでには、いろいろの皆さん方の御意見もございましたし、私自身も、自分の考えておりますことを主張させていただいたところでございます。
 最終的に、一番論点になりましたのは、抜本改革案と現在のこの改革案をどう順序立てて行うかということでございました。私は、過去にもそういう経緯があったわけでございますので、抜本改革をまずやって、しかる後に三割負担、あるいは保険料の引き上げといったことをやった方がいいのではないか、そのかわりに、来年の四月一日までに抜本改革の方向性、そして概要、そうしたものを急いで決定させていただきますと。決定いたしますから、結果としては同じになりますから、それを先にやって、そして万が一そこでできなければ、この三割負担というのも、これは先送りをしてはどうでしょうか、こういうことを私は申し上げたわけでございます。
 しかし、今までも、そういうふうにしておるとなかなか抜本改革というのが決まらなかった。したがって、四月一日というこの三割負担の日を切ることによって、抜本改革がそれまでに行われる、そういうこともあり得る、こういう御主張が一方であったわけでございまして、私は、いずれにいたしましても、四月一日にこの保険料、あるいはまた自己負担というものが上がること、しかしその前に、それじゃ抜本改革を断行させていただきます、少々荒っぽいですけれどもやらせていただきますということを申し上げて、話し合いがついたわけでございます。
 したがいまして、現在の保険制度が実施される時期と、それから抜本改革の骨格ができ上がりますときとが同時決着ということにしたいというふうに思っているわけでございます。
井上(喜)委員 そういたしますと、この法律原案の検討過程におきまして大臣御自身がお考えになっておりましたことは、基本的には今も同じ考えでありますということだと思うんです。だから、法律案は出したけれども、並行してこの改革案につきまして検討して方針を出すということで、当初お考えのその線に沿ってこれからこの法律改正を含めて改革を進めていく、このように理解をいたしたのであります。
 そこで、せんだって厚生労働省の方から将来の人口推計が発表されました。それを拝見いたしますと、やはり少子化、子供の出生数がだんだん減ってくるという傾向は一段と顕著になってきていると思いますし、また、長生きをする、この傾向も非常に明確になってきたと思うのであります。いうところの少子高齢社会の到来であります。
 私は、こういう社会を前提にいたしますと、どうも従来の考え方で、あるいはその延長で社会保障制度を仕組んでいくというのはなかなか難しくなってきているんじゃないかと思うんですよね。いつかは大きな改革が必要だと思うんです。
 その一つとして、非常にお金がかかる社会になってきているのでありますが、改めて国民負担率というのが問題になってくると思うんですね。かつては、国民負担率というのは五〇%ぐらいがいい線だ、こんなことが言われたのでありますが、今、最近時点の人口推計を見まして、大臣自身、国民負担率というのはどの程度が適当とお考えなのか、お伺いをしたいと思うんです。
坂口国務大臣 今後の少子高齢化の進展によりまして、いわゆる二〇二五年時点における社会保障に必要な負担というのを計算しているわけでございますが、それは百八十二兆円になりまして、そのうち保険料負担が百二十四兆円というふうに計算が出ております。こういう計算は、その前提条件としてどういうことを置くかということによってかなり変わってくることはお許しをいただきたいというふうに思いますけれども、現在のところの延長線上で計算をするとそういうことになるということでございます。かなりな額になります。
 そして、社会保障負担といたしましては、二〇〇二年におきましては八十二兆円で二二・五%でございます。これはいわゆるNI比でございますが、これが二〇二五年になりますと三二・五%になるわけでございます。それで、そのうちで保険料だけで見ますと、保険料は現在五十八兆円で一六%、それが二〇二五年には百二十四兆円で二二%になる、こういう数字になってまいりまして、かなりこれは厳しい数字になってくるなというふうに率直に私もそう思っております。
 これに、ほかに税もあるわけでございますしいたしますから、この保険料の負担、このままで、今のままでいきますと、負担し得る限界を少し超えることになる可能性があるというふうに思っておりまして、これから、制度改革、そしてどんな形にしていくかということ、このことをよく念頭に置いて議論を進めていかなければならないというふうに思っております。
井上(喜)委員 国民負担といいますのは、租税の負担と社会保険料の負担、これを合わせたものでありますが、そのうち、社会保険料の負担につきましても、今現在、社会保険料は、医療にしても年金にしても介護でもそうでありますけれども、現役世代にかなり負担がかかっているわけですね。そういうような仕組みになっているわけでありまして、少子高齢化社会になってまいりますと、そういうような制度がいつまで続くのか、大変問題になってくる。しかも、国民負担という大きな制限もあるわけですね。ですから、何でもかんでも税でやれと、税に置きかえていけばいいじゃないかということにもならないと私は思うのですよ。
 そういうことで、社会保険料自身のありようにつきましても検討していかないといけないんじゃないか。つまり、だから本人負担とか自己負担というんですか、こういう考え方をかなり取り入れていかないと社会保障制度自身が成り立たないと思うんですね。この社会保険方式による保障方式だって成り立たなくなってくるんじゃないかと私は思うんですね。その点について、大臣、どういうぐあいにお考えですか。
坂口国務大臣 これは先ほど鴨下委員の御質問にもお答えをさせていただいたわけでございますが、現状のままでこう進んでいきますと、保険料につきましても一〇%、一〇%というのは千分の十ですね、ですから二〇%というのでしょうかね、ということに近づいていくといいますか、そうならざるを得ない。これも保険の額として、医療保険の額としては一つの私は限界ではないかというふうに思います。
 それから一方、自己負担としては、三割が一つの、いわゆる保険としてですよ、保険として、公的保険としてやります以上、自己負担三割、そして保険料一〇%というのはこれは一つの限界ではないかという私は気がいたしております。これをどんどんどんどん超えていくということになりますと、いわゆる保険としての意味合いというものが一体何か、保険の趣旨というのが何かということが問われてくることになりはしないかというふうに私は心配をしているわけでございまして、その辺のところを一つの目安としながら今後のことを考えていく必要があると思っております。
井上(喜)委員 したがいまして、社会保険制度としてはある種の限界みたいなものがある、こういうお話だと思うのでありますけれども。しかし、そうはいいましても、国民負担というようなことからいいますと、これまた限度があることでありまして、そこの調整をどうしていくのかということで、したがいまして、社会保険料の方でうまくなかなか負担を願えないから、それでは税でいこうじゃないかというわけにもまいらぬわけですね。
 とすれば、当然のこととして、自己負担といいますか、そういう考え方が出てくると思うのでありますが、あるいはみんなで助け合うような、そういう制度といいますか、そこはやはりどうしても検討せざるを得ないと思うのですね。大変難しい問題でありますから、今すぐ結論はこうだというぐあいにはまいらぬと思うのでありますけれども、そういうことを検討しないといけないような状況になっているのじゃないか、こんなふうに思いますし、今の大臣の御答弁はそういう趣旨を含めてお答えいただいたものと考えます。
 それからその次に、今度は法律になりまして、法律本文の方はいろいろと御質問があると思いますので、私は、この附則の関係で主要な点を幾つか御質問いたしたいと思うんです。
 附則の第二条第二項というのですね、ここで、手順とか具体的な内容について年次計画をつくって、それを基本方針としてまとめる、これを平成十四年度中にやるというようなことになっておりますが、その第一、保険者の統合再編を含む医療保険制度の体系のあり方について、これをもう少しわかりやすく我々に説明していただきたいのです。具体的にどういう事項について、あるいはそういう事項についてどういう方向で基本的な方針をまとめていくのか、現時点で明らかにできることをひとつ御説明をいただきたいと思います。
大塚政府参考人 今後基本方向を定めていくべき事項として、最初に医療保険制度の体系、これには保険者の統合再編を含んで、体系のあり方に関して基本方向を定めていくということが定められているわけでございますけれども、今回の御提案を申し上げております制度改正によりましても、ある意味で長年の課題でございました給付の面で制度を超えまして一種の統一を図る、七割給付でございますし、例えば乳幼児については八割、これは制度横断的に統一の給付にするというのが今回の本体の方の改正に含まれておりますけれども、そういう意味では、給付率の統一が随分と進んでまいってきておるわけでございます。
 一方で、今度は負担の面にも着目いたしまして、さらに制度間の負担の格差を調整していくということが必要になってくる。特に、今後高齢者がふえる中で、そうした観点が必要になってくる。これが制度体系を考える際の基本的なバックグラウンドだろうと思っております。
 将来の姿といたしまして大別いたしますと、制度あるいは保険者も含めてということになりますが、制度を一本化していく。現在、国保、健保というふうに大きく分かれておりますけれども、これを一本化していく方向が一つございますし、あるいは、制度間あるいは保険者の分立は基本としては認めながら、例えば財政調整という形で負担の調整をしていく。大別すると、この二つぐらいの方向があり得るのだろうと考えております。
 ただ、そのどちらを選ぶかというときの議論としてどうしても出てまいりますのが、制度間で雇用形態とか所得の捕捉の問題がかなり違うといった社会実態の問題がございますし、あるいは、事業主負担をどう考えるのか、公費負担をどう考えるのかといった問題とも当然絡んでまいります。これらの論議を整理しながら考えていかなきゃならない。
 そのほかに、当然、保険制度でございますから、効率的な保険運営ができるのか、自主的な運営が確保できるか、あるいは最近の就業構造の変化、雇用の流動化といったような社会変化の実態に対応できるかといったような観点も加えなければならないと思っております。
 いずれにいたしましても、そうした将来の方向を議論しながら、当面は、五千というような大変多い数でございます保険者の統合再編を進めて財政基盤を強化していくという方向がステップとしてはその間に考えられる。これも、その具体的な方法でありますとか手順でありますとか、これはもう少し検討しなければなりませんけれども、そうしたステップもとりながら、将来の方向、先ほど申しました、大別してどちらの方に向かうのかというあたりを今後議論しながら、時間は限られておりますけれども、十四年度中にということでございますから、その期間内に大きな方向を基本方向として検討し、作業を進めてまいるということにいたしたいと考えておるところでございます。
井上(喜)委員 医療保険の制度というのはそれぞれ経緯がありまして、やりやすいものから手をつけてきた、それが今日、このようないろんな制度があり、制度間の矛盾もある程度出てきているというような状況じゃないかと思うんですね。
 しかし、ここまで各医療の制度が整ってきますと、これはやはり国民の側から見ますと、制度によっていろんなことが違うというのはおかしいと思うんですね。保険料が違うとか受けるサービスが違うというのはおかしいと思うので、やはり究極的には制度を一本化していくということじゃないかと思うのです。
 今の局長の御答弁を聞きますと、そういうようなことも見据えながら、検討の一つの大きな項目として検討していくんだというようなお話だと伺ったんでありますが、ぜひともこれは、そう急激にすべてを一新するという改革はできないにいたしましても、ある種の段階を踏んでこの改革が進められるんだろうと思いますけれども、ぜひとも、できるだけ制度を一本化していくような努力が必要じゃないか、私はそんなふうに思います。
 その次に、高齢者医療の創設をしていくということであります。
 私は、これは本会議で大臣に御質問いたしましたら、大臣は、答えはもう大体でき上がっているんだ、何案かはでき上がっているんで、あとはどれをとるかということだ、こういうような御答弁だったと思いますが、二つぐらい、選択する案としてどんなものがあるのか、大臣自身の頭の中にあるものをひとつお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 これは今までからいろいろ言われておりますように、一番大きいものは、高齢者医療というものを独立させてやっていくという方針でございます。独立をさせますときには、それに対してその財源をどういうふうにしていくかという問題はついて回ってくるわけですが、とにかく独立をさせて別枠のものをつくるというのが一つの方針。
 それからもう一つは、いわゆる突き抜け方式でありまして、今までの組合健保なら組合健保の中にお入りになっている皆さん方は、高齢者になられましてもその組合健保の中で最後まで面倒を見てもらう、そして国保にお入りの方は国保でいく、こういうことがあるわけでありまして、一番大きく分けますとこの二つ。そのほかに、またそれぞれに対する、多少変化をさせたような考え方もございますけれども、私は大きく分けるとこの二つだというふうに思うのです。
 それぞれ一長一短あることも事実でございます。やはりこれから先、雇用の流動化というのが起こってまいりましたときに、一体それがどういう影響を与えるか。特に突き抜け方式のときには、あちらの保険、こちらの保険、例えば、組合健保から政管健保、政管健保から国保というふうに渡り歩く人たちがありましたときに、その人たちを最終的にどこで見るかというような問題もあるというふうに思いますし、そうした問題も突き抜け方式のときには出てくるわけでございます。
 今度は独立方式でやりますときには何が問題かといえば、一部やはり高齢者の皆さん方からも保険料を出していただかなければならないことになりはしないか。そうなりましたときに、それが可能かどうかという問題が今度は出てくる。
 私は、そうしたさまざまな問題点を含みながら、大きく分けてその二つ、そうした中で決めていかざるを得ないんだろうというふうに思っています。
井上(喜)委員 独立型かあるいは現行制度を前提にしたある種の調整型か、その二つのうちの一つだろうということですが、大臣自身としては、それぞれ長短はありますよ、心情的にはどっちの方に傾いておられるのですか。
坂口国務大臣 それを私が今言うてしまいますと、これから御審議をいただく先生方に大変失礼なことになるわけでございまして、そこをお決めいただくためにお願いをしているわけでございますから、私が先に私の心の中を申し上げることは失礼でございますので少しお許しをいただきたいというふうに思いますが、その二つのうちのどちらか、こう思っているわけでございます。
井上(喜)委員 今、高齢者医療制度とよく似た制度で介護の制度があるんですね。介護は、一応今は別の制度になっていますが、実は医療と介護の境界線というのは、あるようでないわけでありまして、私自身は、これはやはり一本化した方がいいんじゃないかというような感じがするんです。そして、やはり財源としては主として消費税を充てていく、そういうことがよろしいんじゃないかと私は思うんですけれども、これについて大臣、どういうお考えですか。
坂口国務大臣 ここもかなり複雑になっておりますしいたしますから、将来、もう少しすっきりとした形にした方がいいのではないか、これは私個人はそう思っております。とりわけ介護保険と医療保険というのは、保険の中身、いわゆる保険としての性格もかなり今違っておりますので、そうしたこともこれからどうするかということになるだろうというふうに思います。
 一番問題になりますのは、現在、医療の範囲の中のベッドをどうするかということが、これを今までどおり、現在のように一部介護保険にしていくのか、それとも、医療の中でおやりいただくことはこれはもう医療保険にお任せをするのかといったことが、これは初めから問題になったことでございますけれども、そういったことも今後もう一度考えていく必要があるのであろうというふうに思っています。そういたしませんと、だんだんだんだん介護保険も保険料が大きくなっていくということにならざるを得ませんから、やはり医療の世界で持っていただくことは持っていただくということで、医療保険制度をどうするかということを考えていった方がいいのではないかというふうに私個人は思っております。
井上(喜)委員 次に、二条二項です。この三番目に、「診療報酬の体系の見直し」ということも挙げられているんです。これは一般論としてよく言われているんですね、いろいろな問題があると。これは特に医師、診療側からもそういう話が出てきているんでありますけれども、もう少し具体的に、見直しの対象となるような項目といいますか事項を挙げていただきたい。そして、その見直しの方向性、どういう方向で見直すのか、お答えをいただきたいんです。
大塚政府参考人 診療報酬体系の見直しも重要な課題でございますけれども、今の時点で詳細にというのはなかなか難しゅうございます。
 いずれにいたしましても、現在の診療報酬体系はさまざまな経過を通っておりますけれども、基本的には、昭和三十年代にその基本的な枠組みができたわけでございまして、当時の背景からいたしますと、まだまだ医療提供体制が今日のような状況とは全く異なる時代でございましたし、疾病構造につきましても、急性疾患が中心あるいは伝染病のような感染症などもまだまだ多かったという時代でございます。さらには、医療の提供の主体につきましても、診療所が圧倒的にその役割を担っておった時代というような、社会的あるいは医療を取り巻く環境が大きく違う時代にその骨格がつくられてまいりました。
 もちろん、その後累次の改正を経ておりますけれども、やはりこうした現在の体系ができた背景を考えますと、今日の急速な医療技術の進歩あるいは医療提供体制の変化に適応しているのかどうか、あるいは非常に繰り返しての見直しが行われてまいりましたので非常に複雑になってわかりにくい、その過程で、医療技術とか医療機関の運営コストというのがどこにどう反映されているとかいうのがなかなかわかりにくい。こういった点が指摘をされている主要な論点でございます。
 したがいまして、こうしたことを御指摘を受けながら、今後の診療報酬を定めていく基準でありますとか尺度、そういったものをきちんともう一回組み立ててみるというあたりから作業を始める必要があるのかなと考えておるわけでございます。
 具体的にということになりますと、その結果によるわけでございますが、内容的に申し上げれば、ただいま申し上げましたような問題意識に立った上で、医療機関の機能あるいは規模などに応じてどういうふうな診療報酬を支払うのがよろしいのか。さらには技術、医療技術でございますが、医療技術の難易度とか診療実績というものをどうやって評価していくのか。あるいは、急性期、慢性期といった患者の状態に応じた評価をどうするのか。その基本には、望ましい医療といいましょうか、あるべき医療の姿を考えながら整理をしていかなければならない、こういったような課題であろうと思います。私どももさらに検討を進めますけれども、随時有識者あるいは関係者の意見も聞いて、整理をして検討していくということが必要であろうと考えております。
井上(喜)委員 診療報酬の中身というのは本当によくわからないもののようでありますので、十分なる検討をお願いいたしたい、こんなふうに思います。
 あと、もう時間がありませんので、一つだけお伺いしたいんです。
 これは附則第二条第六項であります。ここには苦情の処理体制の整備だとか、あるいは情報の収集、分析等の体制の整備だとか、これはいずれも大事でありまして、いずれこういう案ができますと、それ自身について検討されると思います。
 そこで、私はここでお伺いいたしたいのは、三番目、医療保険各法及び老人保健法の規定による保険給付の内容及び範囲のあり方について見直しをする、こう書いてあるんですね。これは私、大変重要なことだと思うのでありますが、一見何気ないようでありますが、医療給付の中身等について、主としてどういうところを見直しをされようとしているんですか。それをお伺いしたいと思います。
大塚政府参考人 保険給付の内容及び範囲というテーマでございますから非常に広うございまして、どういう視点で検討していくかということ自体が当然一つの課題になるわけでございますが、その辺の整理が要るという前提で、これまでどんなような議論あるいは御指摘があるかというところから例示を申し上げます。
 例えば食事あるいは室料といったような医療の、周辺とは申しませんが、医療と密接に関連をいたしますが、医療の中、外、また微妙なあたり、その辺のサービスというものをどう考えていくか。あるいは逆に、非常に高度な医療、先進医療、これも現在の制度の中でも一定の整理はしておりますけれども、基本に立ち返ってどんなふうに考えたらいいのか。
 それからさらに、非常に難しゅうございまして、そう簡単に結論が出るものではないかもしれませんけれども、御指摘がよくございますのは、終末期の医療についてどんなふうに考えていくのか。それは保険給付の考え方でアプローチするのか、また別途の議論があるかということも含めてでございます。
 さらには、少し性格が変わりますけれども、医療保険の中には、一種現金の給付がございます。例えば傷病手当金でありますとかその他の現金給付でございます。こうした水準やら範囲をどう考えるか。
 非常に広範囲な御指摘がございますから、どういった観点で取り上げていくかということも含めまして、よくよく議論をしていかなければならないと考えております。
井上(喜)委員 どうもありがとうございました。終わります。
森委員長 次に、水島広子君。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 四月十九日にも私は衆議院本会議で申し上げましたけれども、このたびの政府の健康保険法改正案には大変な憤りを感じております。政府・与党は、医療の抜本的な制度改革を先送りにし、必要な改革を全くしないままに、今回の健保法改正案のように患者負担増だけを求めたり、良心的な医療者を追い詰めるような小手先の財政対策ばかりを行ってきたというのは、既に周知の事実でございます。
 何といっても、私が最も強い憤りを感じるのは、小泉首相の公約違反でございます。
 被用者の自己負担が一割から二割に引き上げられた当時の厚生大臣であった小泉首相は、一九九八年六月の委員会で次のように答弁しておられます。「そこで問題は、どのように総合的に抜本的に制度改革をしていくか、また医療皆保険制度をどのように安定的に今後とも維持、発展させていくか、そして良質な医療を提供していくか、このような問題につきましてはほぼ議論が出尽くしていると思います。 できるだけ早く結論をまとめまして、平成十二年度実施に向けて全力を投球していきたいと思います。」このように、堂々と、きっぱりと明言されているのです。
 もちろんそれが全く実現していないどころか、予定を二年も過ぎた今なお抜本的な改革が先送りにされたまま、今度は二割を三割負担に引き上げるというのですから、本当にあきれてしまうわけでございます。
 政治家、それも大臣の公約というのはこんなにも軽いものなのでしょうか。政治家は口だけだから信用できないと言われてしまっても、何も言い返せないのではないでしょうか。政治不信の根がこのようなところにあると私は切実に思っております。これは野党の一員として言うのではなく、本当に一人の有権者として私ははっきり申し上げたいと思いますけれども、こんな問題は本当に私は重大であると思っております。
 今回の健保法改正案の附則には、医療保険制度の給付率については将来にわたり七割を維持するものとすると書かれています。この附則の重みについて、坂口大臣は先日の委員会でも、重いものだと答弁されております。坂口大臣のお人柄を考えますと、もちろん本気でおっしゃっているのだと思います。でも、当時の小泉厚生大臣の公約がいとも軽々と破られた後、その小泉内閣の大臣から大臣の言葉は重いと言われても、信用できないのが当たり前の心理ではないでしょうか。大臣が何か言うたびに、どうせそんなことは守られるわけがないと思わなければならないとしたら、そんな不幸な国民はないと思います。
 日本を危機的な状態から救うためにも、政治への信頼を育て、政治への関心を高めることは最優先の課題です。政治不信を払拭するためにも、小泉首相の身内である坂口大臣が、まずは小泉首相の公約違反をきちんと批判して総括することが必要だと思います。この健康保険法改正案の議論を始めるに当たりまして、今ここで坂口大臣にやっていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
坂口国務大臣 水島議員のいつも歯切れのいいお言葉を聞かせていただきまして、大変光栄でございます。
 さて、小泉首相も、自分が厚生大臣のときに公約した抜本改革というものが、なるほど、その後、薬事の問題でございますとか、部分的には確かに行われてきておりますけれども、しかし本格的な抜本改革ができ得なかった、これは大変残念だということを言っておみえになるわけでございます。
 というのは、首相御自身がおやりになって、それでずっとそれが続いてきたわけではなくて、その御主張をなすってすぐその後おかわりになったものですから、なかなか思うように自分の主張したことがそこで実ってこなかったという思いを私はお持ちだというふうに思っております。したがいまして、総理が、どうしてもやはり今回は抜本改革を坂口さんやってくれと、これはやり抜かなきゃならない、もうどうしてもやらなきゃならないからそれを頼むということを、前々から実は言っておみえになったわけでございます。
 ちょうど、もう一年前になりますけれども、五月の二十三日、忘れもいたしませんが、ハンセン病の訴訟の控訴断念を決定されましたときに、その直後に、控訴断念をすると言われたその直後に、小泉総理は、坂口さん、次は医療制度改革だ、医療制度改革の中でも抜本改革だということをそのときにおっしゃいまして、ぜひ坂口さん、そのことを忘れずにやってくれということを言われたわけでございます。
 私も、以来、この抜本改革につきましてのことをいろいろやってきたんですが、正直申しまして、小泉総理がそういうふうにおっしゃったんですけれども、後を引き受けました私も、今回の医療制度改革のときに同時にその案を提出することができなかった。大変私も残念だというふうに思っておりますが、しかし、それにはその理由がございまして、抜本改革が抜本的になればなるほど、他の分野との関連が大きくなってくるんですね。例えば税制改革をどうするかとか、そうした他の分野との関連が非常に大きくなってくるといったようなことで、ずるずると延びてしまうということがございます。
 そこで、今回の医療制度改革を行うにつきましても、平成十五年の四月一日から実際には三割負担なり保険料の上昇というものが起こる、それまでにこの抜本改革の決着というものをつけるという強い姿勢で今臨んでいるわけでございます。その中には、今まで言われてこなかった保険の一元化の問題も非常に大きな問題でございますし、もちろんその中には高齢者保険のあり方というものも含めてその決着をつける。
 そして、もう一つは診療報酬体系。先ほどもございましたけれども、診療報酬体系のあり方、今非常に複雑怪奇でわかりにくい。これには明確な尺度、物差しをつくって、どなたがごらんになりましてもここはなぜ高いか低いかということが明確にわかるようなことを、明確にしていく。
 それにもう一つは、厚生労働省自身が絡みますところの問題、例えば年金、医療、介護等の徴収の一元化の問題でございますとか、あるいは社会保険病院等の整理合理化といったような、自身が痛みを分かたなければならないような問題の決着をこの八月までにつける。
 そうしたことを明確にしながら、今回のこの医療保険制度のお願いを申し上げる、そういうことにした次第でございます。
水島委員 政治不信といえば、私はこの国会の出席率というのも政治不信につながるかなと思っておりますけれども、現状の、特に与党の皆様の委員の、御出席の方に申し上げても仕方がないのかもしれませんが、この空席の多さをぜひ御注目いただければと思っているところでございます。
 さて、今の御説明、実情はそのとおりなんだろうと思います。実情はそのとおりなんだと思いますし、本日、この後にも何度かこの日本の縦割り行政の弊害ということについては触れさせていただきたいと思っておりますけれども、真剣に進めようとすればするほど他省庁との兼ね合いの問題にぶつかっていくということは、全くそのとおりなんだと思います。だからこそ、官僚にはできない、そのトップに立つ政治家が解決していかなければいけないことであって、だからこそ、国会議員である坂口大臣が大臣として省庁のトップにいらっしゃるのであると思います。
 その大臣のリーダーシップに本当に心から期待を申し上げたいと思いますけれども、私がここでもっと問題にしたいのは政治家の言葉の軽さということであるわけです。小泉首相の当時の答弁、読めば読むほど本当にはっきりと、いかにこの問題が簡単であるかのように語られております。
 私は、現実には大変難しい問題だということを承知しているわけでございますけれども、できないことであればできないと言うべきであって、ほかの省庁とのぶつかり合いがあってできないのであればそれをそのまま表現するべきであって、自分の力がどこが足りないのかということがわかっていればそれをそのまま表現するべきであって、そのように本当に心からの正しい誠実な一言一言があれば国民は今の政治でどこが問題なのかを理解することができますし、どのような人が大臣に座っていけばこういったことが可能になるかということも理解できるのではないかと思っているわけです。
 できもしないことを、あたかも今すぐにもできるかのように発言をしているこの当時の小泉厚生大臣の答弁というものの問題の大きさということを私は改めて感じているところでございますけれども、もう一度確認させていただきますが、少なくとも、この委員会で坂口厚生労働大臣が御発言される内容につきましては、そのように軽々しく言うのではなくて、本当に、現状を誠実に坂口大臣らしく一言一言語っていただけるということを、ちょっとここで改めて確認させていただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 先ほど申しましたように、経緯はそういう経緯で来たわけでございますが、抜本改革はもう避けて通れない、どうしてもやり抜かなければならない問題であります。縦割り行政の話も先ほど少し触れたわけでございますけれども、やはり考えてみれば、昨年の段階で私もそこまで思わなかったわけでありますが、しかし、今にして考えてみれば、どこかがやはり決定をして、そして先鞭をつけなければ全体が動かない、全体が同じに動くのを待っていたのではなかなか動かないということを私も学習したわけであります。
 今度は、他の分野がたとえ動かなくても、厚生労働分野の医療保険制度につきましてはそれを動かす、先鞭をつけて動かす、他の分野に議論を巻き起こすということがやはり大事ではないかというふうに思っておりまして、そこは責任を持ってやらせていただきたいと思っているところでございます。(発言する者あり)
水島委員 だまされるなという声が聞こえてはきておりますけれども、私は、本当に、坂口大臣を信用できなくなったら日本の厚生行政は終わりではないか、そのくらいの気持ちを持ってここからの質問をさせていただきたいと思います。党利党略の野党の意見というふうにはくれぐれも受け取らないでいただきたいと思いますし、本当に一人の有権者として、そして小さな子供を持ってこれからの日本の将来を真剣に憂えている一人の人間の声として、ぜひ真剣に受けとめていただければと思います。
 それでは質問に入らせていただきます。
 私たちは、医療保険制度改革の議論を進めるためには、まず医療そのものが国民に信頼され、かつ医療を取り巻く環境の変化に十分対応し得るものとならなければならないと思っております。その基盤をつくる一つが、私たちが、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案、いわゆる患者の権利法を通して提案をしております医療情報の提供の問題でございます。
 四月十九日の衆議院本会議で、患者の権利法についての大臣の考えを我が党の釘宮議員が質問されました。それに対して大臣は、何でも法律で決めるというのもというような趣旨の答弁をされました。でも、現在の余裕のない医療現場を考えますと、制度としてきちんとつくらなければなかなか前進しないと私は思っておりますけれども、もう一度この点について御答弁いただけますでしょうか。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
坂口国務大臣 ちょっと最初のところを聞き漏らしましたが、医療情報開示のお話でございましたでしょうか。
 医療情報開示につきましては、いわゆる医療の質を高めるという意味で避けて通れない問題だと私も思っております。ここをどう進めていくかということでございますが、一方におきましては、今現在電子カルテの問題等が進められておりますし、この電子カルテの問題がかなり進んでまいりましたら、ここは飛躍的に進むんだろうというふうに私は思っています。
 現在、医療機関等に調査等をいたしますと、もし御本人の申し出があれば開示をいたしますというのは大体九割近くになっているんですね。そのデータが正しければの話でございますけれども、そういうふうになっております。ですから、以前に比較をいたしまして、情報開示というものがかなり進んできていることは間違いがございません。ただし、まだその一割ぐらいなところはしていないというふうにお答えになっている、そういうところもあるわけでございますから、さらに一層、我々としましては、情報開示を進めるようにどうするかということをやっていかなければなりません。
 釘宮先生からも御質問を先日本会議でちょうだいしたわけでございますが、それは法的に縛るべきだというのも一つの御意見でございましょう。しかし、すべてのことを法律で縛るというのではなくて、できることならば医療機関が、医療機関の一つの意思としてそういうふうになっていくことが望ましいというふうに私は思っているわけでございます。
 しかし、これがどうしても意思として進まないということであるならば、それはそのときに考えなければならない問題だというふうに思っておりまして、できる限り医療機関の意思によってそういうふうにしていただけるようにしていきたいというふうに思っている次第でございます。
水島委員 今までの時点で既に遅々として進まなかったという評価をされている方もいるんじゃないかと思いますけれども、少なくとも、今の大臣の御発言に基づきまして、では、どのように自発的に行えるような仕組みをつくっていかれるおつもりなのか、もう少し具体的にお聞かせいただけますでしょうか。
坂口国務大臣 一つは、病院の方の広告規制等の緩和の問題がございまして、これは四月にも第一弾を行ったところでございますが、いわゆる病院の中の専門性、治療方法あるいは手術件数等々を明確にしていく。このことがいわゆるカルテの開示の問題とは直接にはかかわりませんけれども、そうした規制緩和を行うことによりまして、患者の皆さん方に、病院の選択の幅を明確にすると申しますか、選択してもらいやすくするといったようなことをしていかなければなりません。
 それから今度は、一つは、IT化との関連におきまして、カルテの記載の仕方、いわゆる用語の標準化といったものも現在進めております。そして、電子カルテを導入しやすくするということを現在行っておりまして、それによって相互にカルテが、内容が病院から病院へ示されるということにもなりますし、そのことは、ひいては患者の皆さん方にもそれを開示していただきやすい、わかりやすい形にしていきたいというふうに思っております。
 ただ、今までのようなカルテの書き方でたとえ見せてもらっても、何が何やらわからないというのでは、これはならないわけでございますから、患者の皆さん方がごらんをいただいてもそれがわかるような内容のカルテにしていくということも大事なことでございますので、そうしたことをこれから進めていきたい、そういう環境を整備していきたいというふうに思っております。
 公的機関によりますインターネットを通じましたこの問題等につきましてもやっておりますが、これは、一々個々の問題ではございませんで、トータルでどうかということを示す話でございますから、個々の内容の開示ではございません。トータルとしてはこういうことだということの開示、そうしたことも進めていきたいというふうに思っている次第でございます。
水島委員 もちろん、そういったことを進めていくことは必要なわけですし、今御指摘のあったように、確かに、今のカルテというのは患者さんに見せることを前提に書かれているカルテではございませんので、今それを全部開示しろと言われても、それ自身が意味がなかったり、あるいは有害ですらあるような現状もあるとは思っております。ですから、書き方から何から含めた、これはかなり抜本的な改革になるんだと思います。
 また、電子カルテも大変結構だとは思いますけれども、ただ単に電子カルテを導入するといった場合に、当然、年輩のお医者さんにはかなりお気の毒なことにもなってまいりますし、また、これだけ抜本的な改革をしていく、きちんとしたスタンダードな用語でカルテを記載し、患者側に十分な情報を含んでいるようなものをきちんと書いていくこと、それが電子的に処理をされたり、またきちんと敏速に開示できるような状態にしていくこと、また、カルテを見せればいいだけの話ではなくて、当然、それについて誠意のある説明をしていかなければいけないわけでございますので、これは、医療現場で働く立場の人間にとっては、率直に申し上げると、負担がかなりふえる作業にはなります。だからこそ、制度としてきちんと確立をして、その負担を十分に補っていけるようないろいろな仕組みを仕掛けていかなければいけないと思っておりますので、だからこそ、私たちは、これだけ大きな一つの法案として提案をさせていただいているわけでございます。
 なかなか、そのような努力を医療現場から自発的にというようなことを待っていても、やる気があっても日々の診療に追われてとてもできないというのが、良心的な医療者であってもそれが現実だと思っておりますので、これは、私は行政としての責任は大きいのではないかと思います。
 今のような観点をもう一度きちんと取り入れていただいた上で、きちんと期限を切って、どのような仕組みをつくっていかれるかというようなことを御検討いただきたいと思いますけれども、今十分なお答えをいただけないのであれば、また後日委員会で、この診療情報の問題についてはいろいろな角度から質問させていただきたいと思っておりますが、今もう一言、じゃ、お願いいたします。
坂口国務大臣 厚生労働省の中でございますけれども、保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザインの公表というのを十二月の二十六日から始めておる。これは、医療制度改革の試案をつくるという作業の中の一つでございまして、患者さんの視点、医療提供者の視点、基盤整備、この三つを中心にしまして、昨年の十二月の二十六日にスタートいたしております。
 かなり回数を重ねておりまして、この七月には、医療供給体制の改革に関する考え方、中間取りまとめを発表することになっております。そうした中で今まで議論をしてまいりましたことも明確にしたいというふうに思っておりますし、その中に一部含まれていることも事実でございます。
水島委員 今決められていることはもちろんぜひきちんとやっていただきまして、ただ、今申し上げました内容、坂口大臣も医師御出身ということでございますので、かなりのことをしなければうまく進んでいかないということは恐らく実感されているのではないかと思いますので、いま一度抜本的な問題として考えていただきたいと思いますし、ぜひ私たちが提出をしております法案にも御理解をいただき応援をしていただければと、改めてお願いを申し上げます。
 そして、さらに基本的な問題が教育であると私は思います。どんなすばらしい制度をつくろうとも、そこで医療を施す医師の質が低ければ、行われる医療の質も低くなってしまうのは当然のことです。
 現在、二〇〇四年度からの臨床研修の必修化に向けて医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会で議論が行われておりまして、四月二十二日に出された中間取りまとめ案を私も拝見いたしました。この時点で何を伺っても、それはこれからの議論を待ってということになるでしょうから、本日は大臣の基本的な考え方ということでお伺いしたいと思います。
 臨床研修の中で、例えば三カ月で一つの科を回るというような方式にいたしますと、体験ゼロの研修医がやってきて、三カ月かけて教えたところでほかの科へ動いていきます。そしてまた体験ゼロがやってきて、というようなことが際限なく続いていくことになるわけです。こんな体制ではとても臨床研修がまともな成果を生むとは思えないという声が現場からは既に上がっております。
 そもそも、一人の指導医が何名くらいの研修医を指導するのが望ましいかというようなことも含めまして、臨床研修制度をきちんと機能させるためには最低限どのような条件が満たされている必要があると大臣はお考えになりますでしょうか。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 この臨床研修につきましては、いろいろの角度からのお話が出ておりますが、まず最初に大事なことは、この臨床研修医の皆さん方がアルバイトをすることなしにちゃんとやっていける体制をまずつくらないといけない。これはもう一番の根っこの、根っこの話だと思うんですね。ですから、そこを、その財源を確保して、そして、そんなにたくさんの、あり余るほどの給料は難しいと思いますけれども、少なくとも外にアルバイトに行かなくてもいいような所得というものが得られるようにしてあげないといけない。そして、労働時間というものにつきましても、ちゃんとそれが守られるような形にしてあげないといけない。これが一つだというふうに思っています。
 その上で、どういう病院をこの研修病院にするかということにこれはかかわってくる話でございますが、確かに、この研修病院に、今までは大きい病院が研修病院になっていたわけでありまして、大学病院でありますとかあるいは国立病院あたりのところが多かったわけです。しかし、考えてみれば、そういう大きい病院だけを研修にしていていいんだろうかという気も率直に言って私はいたしております。たとえ小さな病院であったとしても、それが地域にありまして、いわゆる地域医療というものがどういうものであるかということをやはり勉強していただく、そのためにはかえって地方の病院であった方が、そのことがよい勉強になることもあると思います。
 いわゆるプライマリーケアと申しますか、一番最初にどういうふうに対応するかということがわかれば、あとはまた勉強で進んでいくわけでございますから、一番最初のそのプライマリーのところをどう扱うかということが多くの医師はわかりにくくなっている。だから、そこを行いますためには地方の病院で、そのかわりに、地方の病院であれば全部の科がそろっていないかもしれません。そうした場合にはその病院と連携をして、近くにあります病院とをセットで考えてもいいし、あるいは中には開業医の先生の御協力をいただくということでも私はいいと思うんです。実質的にその皆さん方が本当に身になるような研修が行われることが大事ではないだろうか、必ずしも大きい病院に限る必要はないというのが私の考え方でございます。
 そうしたことで、さらにそれをどう進めていくかはまたこれから細かく詰めなければなりませんけれども、そうした基本的な考え方のもとでやっていく。
 ただ、先ほど御指摘になりましたように、三カ月ごとというのが短過ぎるというお話は、それは場合によってはそうかもしれませんが、しかし、過去のいわゆる研修医制度のときにはなかなか三カ月もございませんで、一カ月交代ぐらいなところでぐるぐる回ったという経緯もございまして、確かに短かったなという気は私も率直に言ってしておりますが、しかし、限られた期間の中で一巡してそれぞれの大事なところを勉強するということでございますから、期限というものはある程度お許しをいただかざるを得ないのではないか、私は率直にそう思っております。
水島委員 今大臣がおっしゃったこと、アルバイトをしないで済むようにとか、あと大きな病院に限る必要がないとか、その点については全く同感でございます。
 ただ、これは、今期限のことをおっしゃいましたけれども、私も三カ月が長い短いということを言っているわけではなく、つまりそのように三カ月単位で回していかなければいけないのだとすると、問題は、どのような状態の人をどのような体制で受け入れるのかという、そこが問題になるというふうに考えております。全くの白紙の状態の人が来るのか、そして受け入れる側が極めて貧弱な体制で受け入れることになるのか、そこのところはきちんと手当てをしておかなければいけないと思います。
 今、日本はOECD諸国の中でも医療密度が低いと言われているわけでございますけれども、これは何も患者さんにとっての医師の密度が低いということだけを意味するのではなくて、この臨床研修ということを考えますと、研修医にとっても指導医の密度が低いということにもなるわけでございまして、私はこの今の日本の医療全体が抱えている問題がそのままこの研修医問題にも引き継がれてくると思っております。
 だからこそ、この人手の問題、一名の指導医が何名の研修医を、責任を持って、できれば専従で指導していくような体制がつくれるかというところが、この研修医制度がきちんと機能していくかどうかの重要な分かれ目になるのではないかと思っておりますので、ぜひ、今後の議論を取りまとめていらっしゃるときには、本当に人手がどれだけかけられているかということに十分な御注目をいただきたいと思っております。
 形だけアメリカ式の臨床研修をまねても、アメリカでは御存じのように十分な数のスタッフが研修医に張りついて指導をしているわけでございますので、きちんとそのような中身にまで注目をして見ていかないと、形式だけまねをして結局機能しなかった、医者の側から見ればモラトリアムの時代が二年延びただけだった、そんな結末にならないように、きちんと機能する体制をつくっていただきたいと思っております。
 そして、アルバイトをしないで済ませるというのはもちろん最低限の条件であると思います。私自身も研修医の時代、月に二万五千円しかいただいておりませんでしたので、アルバイトをしながらどうにかやっておりましたけれども、そうはいっても、アルバイトをしないでちゃんと自分が研修を受けている病院にいた日というのも当然、週に六日程度ですか、ございまして、その中で自分が果たして十分な臨床研修を受けたかというと、必ずしもそうは言えないというのが現状ですので、アルバイトをしないで済むというのは本当に最低限の条件であって、その上に、今申しましたように、少なくとも、人手という観点からどれだけ臨床研修に割けるかということが一番大きなポイントになってくるのではないかと思っております。
 そして、もう一つの方の、どのような状態の人をそこで受け入れるかということなんですが、これについては、ちょっと、卒前教育にも関係してまいりますので、この後にお伺いしたいと思いますけれども、ここで臨床研修のプログラムについて一つ御質問をさせていただきたいと思います。
 私が拝見しました限りでは、中間取りまとめ案には精神科のセの字も入っていないわけでございますが、臨床研修のプログラムには精神科は入ることになるのでしょうか。
 精神科を研修内容に入れる必要性については、二〇〇〇年十月に厚生委員会で質問しましたときに、当時の福島豊政務次官が、「患者さんと医師の間の関係をどうつくっていくのかということが極めて大切だというふうにさまざまな方から指摘をされているわけでございます。そういう視点からいいましても、どのような臨床研修の形になるかはともかくとしまして、そうした要素が二年間の臨床研修の中に盛り込まれることは必要だというふうに思います。」と答弁されています。
 患者面接がうまくできなかったり心を診ることのできない医者への反省が言われている今の時代においては、当然、精神科でのトレーニングが必要だと思います。
 また、内科受診患者の二割がうつ病と言われております。また、身体的な異常がないのに繰り返し検査を要求する身体表現性障害の患者さんも相当いますので、精神科を研修の中核に入れるべきだと私は思っておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
宮路副大臣 研修内容につきまして、研修プログラムでありますが、どうするか。これは、先ほど委員の御指摘のあった中間取りまとめ案をごらんいただきますと、そこで、「幅広い基本的な診療能力が身につけられるよう、基本となる診療科のローテーションとともに、具体的な研修内容を明示する。」というふうに中間取りまとめの中でもなっておるところであります。
 申し上げるまでもなく、今度の必修化いたします、義務化いたします臨床研修は、プライマリーケアの基本的な診療能力を身につけることを目的としているところでありますが、御指摘のように、患者と医師との良好な関係を築くための研修のあり方という観点、そういう観点も踏まえながら、今後、研修プログラムの具体的な内容につきましては検討をさらに進めてまいりたい、このように思っておるところでございます。
水島委員 今私が質問させていただきました第一部は、今御答弁のあった患者さんとの関係のつくり方という方でございますけれども、第二部の方は、内科受診患者の二割がうつ病であったり、身体表現性障害の患者さんが繰り返し検査を要求することによって医療費をさらに膨れ上がらせているというようなそういう現状を踏まえまして、これは、ただ単に良好な関係が築ける一般の医師としての素養に加えて、やはり精神科というところで研修を受ける必要があるのだということを申し上げたんですけれども、いかがでしょうか。
宮路副大臣 今の御指摘は、最近、身体表現性障害、そういった病気と申しましょうか、そういう疾病も多く見られるといったようなことも踏まえながら、精神科を研修科目として取り入れるべきである、こういう御指摘だというふうに理解をいたすわけでありますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、そういった具体的な診療科目をどういうぐあいに今後研修プログラムの中に取り入れていくかということにつきましては、精神科領域の専門家の方々も含めてさまざまな関係者から現在いろいろな御意見を賜っているという過程にあるわけでありまして、今後、御指摘の患者と医師との良好な関係を構築するための研修のあり方といった観点も踏まえながら、どういう研修科目にするか、どういう診療科を研修の対象とするかといったことについて具体的な検討を進めていきたい、こう思っておるところであります。
水島委員 今、精神科医も含めて話を聞いているというふうにおっしゃいましたけれども、私が先日伺いました限りでは、確かに精神科医がヒアリングの講師として来てはいるようでございますけれども、そのときの発言は、精神科医としての発言ではなくて、あれは四病院団体協議会でしたか、後できちんと訂正していただきたいと思いますけれども、その立場としての発言だったというふうに伺っております。
 あくまでも、例えば今申しました、本当に、うつ病で見られる身体症状の問題、また身体表現性障害の問題、こうしたところは、最近、前よりもぐっとわかってきたことが多くある領域でございますので、ぜひそこはきちんと押さえていただいて、精神科を入れることの必要性を認識していただきたい、それは特にお願いを申し上げたいと思います。
 後になって苦労するのは医者本人でございますので、きちんとそこで患者さんまた医療者双方にとってスムーズな医療が行われていくように、プライマリーケアの一つとしてそのような視点を入れることが必要だと思っております。
 次に、卒前教育と卒後教育の役割について伺います。
 例えば、コモンディジーズを一通り診断したり対応したりできるようになるのであれば、卒前でも十分なはずだと言う人もいます。文部科学省の方でも、知識詰め込み型で十分な臨床能力を身につけることが困難であったなどの反省のもとに、医学・歯学教育改革に取り組んでおり、モデル・コア・カリキュラムを作成しています。
 先ほど私は、臨床研修のときにどのような状態の人を受け入れるかというのが一つの重要な要素だと申しましたけれども、どのような状態の人をつくるかというのが卒前教育の役割であるわけです。
 そもそも大臣は、卒前教育と卒後教育の役割をそれぞれどのようにお考えになっておられるでしょうか。
宮路副大臣 私の方からお答えさせていただきますが、卒前教育につきましては、これは委員御案内のとおりだと思いますけれども、医師としてまず基本的に備えるべき知識そして技能の修得、これを行うことが卒前教育の目的であるというふうに承知をいたしております。そして一方、卒後研修でありますが、これは侵襲性の高い行為など医師免許取得後でないと実施できないそういった研修も含めまして、診療に必要なプライマリーケアの基本的な診療能力、そして、医師としての人格の涵養、これは先ほどの中間報告にもそのようなことがうたわれているわけでありますが、そういうことを行うことが卒後研修の目的であるというふうに私ども整理をさせていただいておるところであります。
水島委員 今の御答弁は、書類上そうなっているというか、そういうことなんでしょうけれども、ちょっと次の質問はぜひ大臣にお答えいただきたいと思うんですけれども、現在、学校教育は一律文部科学省の担当、そして卒業すると厚生労働省の担当ということになっているわけでございます。
 今の御答弁の中でも、医師としての基本的な素養は学校教育で文部科学省が担当して、そして、それだけれども、何か、医師としての人格を養うということは卒後でというように、何だかよくわからないところが一部にあるわけでございますけれども、担当省庁が違うということについて、これは実は、今、司法制度改革の法科大学院の議論の中でも、法曹について同じような議論が出ているわけでございますけれども、質のよい医師を育てるという一つの目標の中で、単に卒前であるか卒後であるかという区別だけで担当省庁が変わるという今の仕組みについて、私はこれは典型的な縦割り行政だと思うんですけれども、これについて率直に大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
坂口国務大臣 医学教育及び卒後教育の問題、いつも問題になるわけでございますが、確かに、大学時代の管轄は文部省で、卒業されますとそれが厚生労働省になるということは、現実の問題としてそのとおりでございますけれども、たとえ同じ省庁にしたところで、その中で局ごとに分かれておりましたりとか、いわゆる縦割りがあります現状におきましては、同じことになってしまう。むしろ、省庁は違いますけれども、医学教育、それが卒前、卒後、その時期的な違いはありますけれども、一貫性のものにしていきますためには、文部科学省とそして厚生労働省がいかに連携をしていくかということにかかっているんだろう。そこがスムーズにいっておりましたら、それは省庁が違ってもいいんだろうというふうに思っています。
 ただ、今までの場合に、いわゆる卒前教育の問題につきましては文部科学省にすべてお任せ、そして卒業してしまったらこれは厚生労働省にすべてお任せというふうに、完全では、話し合いもされてはおりますけれども、ややそういう嫌いがある。そこにやはり一番問題があるんだろうというふうに思っております。
 最近、大学におきます教育もかなり多様化をしてきておりまして、国立大学等におきましても、一年入りますと二年生から臨床のことを教えるようなところが出てまいりましたり、さまざまなことが行われております。それはなぜかと言いますと、余りにも医学教育の中で教えなければならない分野がふえてきたということだろうというふうに思いますが、部分的な技術でありますとか、あるいはそれに対する知識というものに多くの時間が費やされて、そして、卒前教育の中で、いわゆる、人間という、一人の人間をトータルで見て、それを一体どういうふうに判断をするのかというところが十分に私は教えられていないのではないかという危惧を持っております。
 そうしたことも含めまして、卒前教育の中で最も基本的なこと、ここまではひとつ卒前教育でお願いをしたい、そして、卒後においてこういうことに力点を置いて医師というものを育てていくという、やはりそこに役割分担というものも私はあるというふうに思いますから、その辺のあり方というものを考えていかなきゃならないというふうに思います。
 幸いにいたしまして、今月からでございますけれども、文部科学省と厚生労働省との間で、いわゆる大学病院のあり方について話し合う場をつくりまして、この二十七日というふうに記憶をいたしておりますが、私も出席をいたしまして、そこでいろいろお話し合いをすることにいたしております。そうした中で、卒前教育、卒後教育の問題につきましてもできれば触れさせていただいて、どういうふうに協調をしていくかといったことも話し合いたいと思っているところでございます。
水島委員 今の教育の問題については、非常に重要なテーマですので、今後も取り上げさせていただきたいと思います。
 また、健康保険法関連でお伺いしたいことがほかにもたくさんございますけれども、時間の関係で次に回させていただくことにいたしまして、最後に、健康増進法案に関連いたしまして、一つ質問をさせていただきたいと思います。
 健康増進法案そのものについては、その成り立ちや思想、効果等について私自身多々の疑問を持っておりますけれども、その中でも唯一評価できる点は、たばこの問題でございます。今回、健康増進法案で受動喫煙の防止が初めて法律上位置づけられたのは、遅きに失したとはいえ、大変意義深いことであると思っております。
 ところが、その内容を見ますと、多数の者が利用する施設を管理する者の受動喫煙防止が努力義務にとどまっているわけでございます。諸外国の法制度を見ましても、公共の場での分煙は努力義務ではなくて義務とすることが必要なのではないかと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
坂口国務大臣 喫煙の問題につきまして、初めてそこで法律上取り上げさせていただいたわけでございますが、この喫煙の問題というのは、人によりましてさまざまな意見が実はございまして、だからこの委員会の中でお決めいただきましてもいろいろ御意見が出るんだろうというふうに思いますけれども、各立場立場によりまして本当にたくさんの意見が出て、我々が思っておりますように一律にこれをやっていくということがなかなか難しいというのが率直なところでございます。
 しかし、そういうことを言っておりましては進んでいきませんから、ここで努力義務ではございますけれどもまず取り上げさせていただきました。そして、ここをもう少し私たちも積極的に進めていきたいというふうに思っています。我々がいろいろ調査をいたしました喫煙に関しますことにつきましても、できるだけ情報公開をしていきたいというふうに思っておるところです。
 先日も、日本の中で、非常にタールが少ないとかいろいろの数値が出ておりましたけれども、いろいろの検査方法によってはそれが二倍にも五倍にもなっているというような数字を先日出させていただきましたけれども、これすらなかなか発表することに対する抵抗というのがございまして、厚生労働省もかなり苦労をしながら、しかし決断をしたということでございます。
 こうしたことは、これからも勇気を持って取り組んでいきたいと思いますし、喫煙問題につきましては、私たちもさらに進めていきたいと思っているところでございます。
水島委員 大臣の御苦労もとてもよく理解できるところがございますけれども、やはりこれだけ喫煙あるいは受動喫煙による害についてのデータがたくさん出てきているわけでございますので、これは勇気を持って進めていくのが厚生労働大臣としての本当に大きなお仕事になるのではないかと思っておりますので、ぜひ、五年後の見直しというものがこの健康増進法案の中に入っておりますけれども、そのときには当然義務化することも視野に入れていらっしゃると思いますけれども、この点について一言だけ御答弁いただけますでしょうか。
坂口国務大臣 努力をいたします。
水島委員 また、この法案の規定について少しお伺いしたいと思いますけれども、受動喫煙の防止対象となる施設は、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設」となっておりまして、ここに交通機関というものが書かれていないんですけれども、交通機関も含まれますでしょうか。
下田政府参考人 健康増進法案の二十五条に規定しております受動喫煙防止に関する努力義務規定の中に、「多数の者が利用する施設」というのがございますけれども、その範囲のお尋ねだと考えております。
 この範囲につきましては、受動喫煙の防止を通じた健康の増進という本規定の趣旨を考えてまいりますと、社会通念上「多数の者が利用する施設」に該当するものであれば、広くこれに含まれると考えております。
 したがいまして、タクシーを含む公共交通機関も、本規定に基づいて受動喫煙を防止するために必要な措置に取り組むよう努めなければならないというふうに解しておるところでございます。
水島委員 今のタクシーなんですけれども、含まれるのは当然だと思いますが、具体的にはどのような対応になるんでしょうか。
下田政府参考人 タクシーにつきましては、現行におきましても道路運送法におきまして、乗客がいる場合の乗務員による車内での喫煙禁止が規定されておる、また、事業者が禁煙車両とした車内におきましては乗客に対して禁煙の要請ができるというふうな定めがあるところでございます。
 こういった現状もございますけれども、さらに適切な受動喫煙対策がとられますよう、関係省庁と連携しながら、関係業界と相談をし、協力を得ながら実施をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
水島委員 ちなみに、この「多数の者が利用する施設」には国会も含まれるんでしょうか。
下田政府参考人 含まれるものと考えております。
水島委員 そうしますと、私も入っております禁煙議連では、国会内の禁煙、分煙を目標の一つに掲げているわけでございますけれども、今回のこの法案が成立いたしますと、この禁煙議連の目標は一つ達成されたというふうに考えてよろしいんでしょうか。
下田政府参考人 受動喫煙につきましてはあくまでも努力義務規定ということでございますけれども、たばこを吸わない方、吸う方、それぞれおられるわけでございますが、お互いに迷惑のかからないような形での分煙対策をそれぞれの施設ごとに実情に応じて実施していくべきものというふうに考えております。
水島委員 ぜひこれは、私は立法府が率先して範を示すべきものではないかと思っておりますので、国会内での議論も議員の皆様に率先してやっていただければとお願いを申し上げたいと思います。
 また、ここで書かれております「学校」なんですけれども、これは学校という建物だけを意味するのでしょうか、それとも機能を意味するのでしょうか。修学旅行や移動教室など、学校に関連する活動についても含まれるものなのでしょうか。
下田政府参考人 厳密に考えておりますのは、学校の施設の中ということで考えておりますが、学校教育の一環として当然その活動をおやりになるわけでありますから、そういった教育上の観点から種々の御配慮がなされるべきもの、このように考えておるところでございます。
水島委員 健康増進法案は、受動喫煙の防止義務が、努力義務とはいえ初めて法律上位置づけられるものでございまして、受動喫煙の害を初めて政府が公的に認めたものであるとも言えると思います。そして、これを機に、さまざまな環境について見直す必要があると思います。
 本日は時間がありませんので、一つだけお伺いして終わりにしたいと思いますけれども、例えば労働安全衛生法に基づいて出されている指針では、必要に応じ作業場内における喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずることとなっておりますが、必要性の判断をだれがするかということを考えましても、この規定は実際には何も定めていないとも言えるものだと思います。労働者は一日の大半を職場で過ごしているわけですから、職場における分煙は本当に重要なものだと思います。
 健康増進法の制定を機に、改めて労働環境について取り組まれる予定はございますでしょうか。受動喫煙に特定した通知を出したり、特別な義務を事業主に課したりするような予定があるかどうか、具体的にお答えいただきたいと思います。
日比政府参考人 職場における受動喫煙の問題でございますが、かねて、職場における健康問題ということもございまして、一定のガイドライン等は今委員御指摘のように出しておるところでございます。今般、健康増進法案ということ、こういう機会でございますので、この成立を見ましたら、私ども、さらに対策を強化しなければならぬと思っております。
 今、具体的にということでございますが、これは精神論だけというわけにまいりませんで、現実に、分煙の手法につきましてどういうことが効果的なのかなどについても、実は今検討会ということで一部やっておりまして、そういうことの成果も見つつ、具体的な内容については今後考えさせていただきたい。いずれにいたしましても、これを機会にやはりやっていくべきものであろうと思っております。
水島委員 たばこについてはまた今後の委員会でさらに質問させていただきたいことがございますけれども、最後に大臣にお伺いしたいと思います。
 冒頭に大臣は、このたばこの問題は本当に難しいとおっしゃいました。ただ、今回この健康増進法案の目的を達成するためには、厚生労働省が各省庁を束ねられるようでなければ、内容が骨抜きになってしまうと思っております。今までのたばこの議論を見てまいりますと、今回一歩踏み出そうとされているのは大いに評価できるんですけれども、どうも、そんなことが本当に厚生労働省にできるのかということには大いに疑問を持っているところでございます。縦割り行政の中で他の省庁を束ねられないのであれば、例えば内閣府に健康増進本部を置いて、環境政策も含めて根本から健康問題を考えるなど、法律の組み立てを変えなければならないのではないかと思っております。
 たばこ対策において大臣がリーダーシップを発揮できるかどうかが健康増進法案の成否を占うことにもつながると思いますけれども、最後に大臣の決意表明をお聞かせいただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 たばこに関します問題といたしましては、喫煙に対します問題のほかに、たばこを生産する生産者の問題でありますとか、税制の問題でありますとか、さまざまな問題がございまして、そうした問題も込みになっていろいろ意見というものが複雑になっているというふうに思います。
 しかし、単に健康上の問題ということだけに絞り込んでいえば、これは厚生労働省が積極的に働きかけをしなければならないわけでございますので。そして、これはもう科学的なデータとしましても、たばこの与える害というものは明確になっているわけでありますから、明確になっております以上、ここは厚生労働省が中心になりましてしっかりと対応しなければならないというふうに決意をしているところでございます。
水島委員 ありがとうございました。
森委員長 次に、山井和則君。
山井委員 よろしくお願いいたします。民主党の山井和則です。
 もう時計も十一時十八分になりまして、昼、御飯どきになってまいります。坂口大臣を初めとする御答弁の方々、委員の方々、傍聴の方々、一時間という長い質問でありますが、とにかく二十一世紀の私たちの健康、そして命にかかわる重要な法案の審議ですので、どうかよろしくお願いいたします。
 まず、きょうは資料をたくさん配らせていただきました。こういう資料を見ながらじっくり質問させていただきたいと思います。そして、きょうは三割負担の問題、情報開示の問題、そして老人医療費や社会的入院、介護基盤整備の問題、このようなこれからの医療制度改革に関する重要なことについてお伺いしたいと思います。
 まず、私、この連休にスウェーデンにちょっと行きまして、医療と福祉の調査をしてまいりました。スウェーデンでは病院と地区診療所に分かれております。すぐに大きな病院に行くのではなくて、まず基本的には地区診療所に行くというシステムです。
 まずそこで聞いて、私が日本と違うなと思いましたのは、一日に診る患者さんの数が、お医者さん一人当たり十五人から二十人、一人当たり二、三十分診るということです。また、私最近、知り合いの地元の病院や開業医の方のところもお伺いして、この法案についてのお話をお伺いさせてもらいましたら、日本の開業医の方の場合は、一日八十人から百人、一人当たり平均すると五、六分ということなんですね。これは一長一短、どっちがいいとも言い切れないことですけれども、大きな違いがある。また、そういうことを通じてスウェーデンでは機能分化がされているなということを感じました。
 スウェーデンのいい点、さらには日本のよい点ということを簡単にまとめますと、一つは、やはりそういう一人一人、患者さんに十分な時間をかけて、医療情報を開示して、相談しながら、インフォームド・コンセントを徹底しながらやっているスウェーデン、そういう点がいいということ。それともう一つは、後にも述べますが、スウェーデンには社会的入院というのがほとんどいない。そういう医療と介護というものの仕切りも日本よりうまくいっていると思います。
 その反面、やはりお医者さんにかかれるケースが少ないわけですから、日本ほどフリーアクセスでないとか手術待ちの列が長いとか、向こうは県の税金でやっているわけですから、要は予算なわけですよね、ですからそういう限界もある。そういう意味では、スウェーデンの方がいい点、また日本の方がいい点というものを両方感じさせていただきました。
 そこで、まず第一点目、今回の自己負担の三割負担についてお伺いしたいと思います。
 これについては、水島議員から既に小泉元厚生大臣の公約違反という話は出ましたので、このことは削りまして、まず根本的な認識として、今の日本に最も必要なのは景気回復であり、景気対策であり、そのためには消費の拡大が必要であると思います。そのために、ある意味で、小泉首相も今デフレ対策を指示していられるのだと思いますが、いかに消費を拡大させるか、自殺者が三万人を超え、戦後最悪の五・三%の失業率をどうするかというときに、そういう消費を回復させるという方向性と、医療の自己負担をアップさせる、そしてその象徴でありますサラリーマンの自己負担三割にアップというのは、明らかに逆行しているのではないかと思います。
 この点について、坂口大臣、答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 景気というのは、今さら私が申し上げるまでもなく、これはかなり心理的な要素が影響するものであることは間違いないというふうに思います。
 医療の場合に、将来ともに安心できる医療制度をつくるということが安心を生むのか、それとも、現在の自己負担がふえるということが不安を助長するのか、そこは私は一概に言えないというふうに思っています。多くの皆さん方は、現在もさることながら、将来においていかに安定できる、いかに安心できる制度がつくられるかということにより多くのウエートをお持ちになっているのではないかというふうに思っております。
 ですから、確かに二割から三割になることは厳しいけれども、しかしそれは、二割から三割になるといいましても、どんな病気でもそれが三割になるというわけではなくて、例えば風邪を引きまして病院へ行きますと、これは確かに三割を払っていただかなければならない。しかし、例えば盲腸で、虫垂炎で入院をして手術をされるということになりますと、大体二・五割ぐらいになってくる。あるいはクモ膜下出血等がありまして入院される人の平均的な治療費は大体七十数万円でございますから、そうすると、この人たちにとりましては、大体一割払えばできる。胃がんで入院される方で見ますと、百数十万円から百七、八十万円になりますから、大体〇・五割、必要な額の五%ぐらいお支払いになれば済むということになりますから、大きな病因になればなるほどその対応というものは楽になるわけでございますので、私は、そうした制度をつくり上げていくということが多くの皆さん方の安心を生む。
 そのことによって、私は景気にもそれは影響すると思っております。ただ単に、二割から三割になるという、単純にそれだけで私は景気に影響するとは考えておりません。
山井委員 そこは見解の相違でありますが、心理的な面が大きいとおっしゃいましたけれども、まさにその負担増の象徴が今この三割の自己負担になっていると思います。
 でも、抽象的な議論をするよりは具体的にお聞きしたいと思いますが、では、患者さん一人当たりにとって負担増は幾らぐらいになるのか。これは、サラリーマンの方や高齢者の方によって、今まさに大臣がおっしゃったように、違うと思います。患者さん、医療にかからない人はちょっと置いておいて、かかる方の一人当たりの負担増は幾らか、そのことを御答弁お願いします。
宮路副大臣 御指摘は、三割負担の導入による患者負担の増がどうなるかという御指摘だろうというふうに思っておりますが、三割負担の導入による患者負担の増加を、私どもは、それがスタートいたします平成十五年度から十九年度までの五年間の単年度平均では四千億円程度というふうに見込んでおるわけでありますけれども、一方、薬剤費の一部負担の廃止がありますので、それによって一千九百億円程度逆に負担が減少するということでありますので、それをトータルいたしますと二千二百億円程度の増というふうに見込んでおるところでございます。
 今回の制度改正によって、それでは患者一人当たりの一部負担がどういうぐあいになるかということでありますが、私ども、患者それぞれにかかる医療費につきましては、そういう統計を持ち合わせていない、そういうデータを持ち合わせていないということでございますので、患者一人当たりということでは、残念ながら、今具体的なその影響度を申し上げることができないということでございます。
山井委員 先日は押しなべた数字を小沢議員に出していただいて、大体何人ぐらいの患者さんがかかるかというのはわかるわけですから、その患者さん一人当たり平均幾ら負担増になるか三割負担でわからないというのは、それはちょっと答弁にならないんじゃないですか。事前通告もしているわけですから。
宮路副大臣 この間小沢委員の御質問の際に申し上げた数字は、今の総額二千二百億円の増を国民一人当たりということで計算をいたしますと年四千円の増、こう申し上げたわけでありまして、一方、七十歳以上の方については、一人当たり八千円の増、トータルでは一千四百億円の増と申し上げたわけでありますが、これは一人当たりということでは申し上げていない、これは患者一人当たりということではないということでございます。
山井委員 いや、ですから、患者さん一人当たりで押しなべて割って答えてくださいと、きのうお願いしたわけです。お答えください。
 それは、赤ちゃんとか全然かかっていない人を入れても、数字がまたあれしてくるわけですから。
宮路副大臣 ですから、今、先ほど申し上げたように、私どもはレセプトをもとにして、そして医療費がどうなっているかということをつかんでおるわけでありまして、レセプトですね。したがって、患者一人一人がどうかということに基づいて、そういうレセプトに基づく資料を患者一人一人についてさらに整理し直すということをやっておりませんので、今申し上げたように、トータルの患者が幾らおられて、そしてその患者お一人当たり増が幾らであるというような数字を示すことができないということを申し上げているところであります。
山井委員 それはまた今後もお聞きしたいと思いますが、やはり全く医院、お医者さんにかからない方も国民の中でかなり多いわけですから、その方々との平均ではなくて、やはり、医療にかかる人にとって一人当たり幾らぐらい増かというのは、これだけ重要な法案なんですから出すのが当然で、それはわからないけれども、この法案通してくださいというのは、私は非常に、余りにも不誠実なんじゃないかなというふうに思います。
 それで、こういう負担増の受診抑制のことを一九九七年の部分も調べてみましたら、とにかく低所得者への影響が大きい、受診抑制も低所得者が大きいということでありました。
 そこで、先ほど坂口大臣、とにかくこの財政をもたせることの方が安心感につながるということなんですけれども、この三割負担をとにかくおくらせても、聞いたところでは、政管健保の保険料が八二パーミルから八三パーミルに上がるということをおっしゃったんですけれども、私は、この三割負担というものを取り下げてでも、最悪の場合、保険料の方に回してでもやる方が、やはり苦しまれる患者さんの負担をふやすというのは一番不安を高めることになると思うんですね。その意味で、やはりこの三割負担をずらしていく、それで何とかその間に、後でも触れますが、医療制度の抜本改革をやって、削れる部分を削っていくという方向に転換すべきではないでしょうか。
坂口国務大臣 トータルとしての御趣旨は私も十分に理解できます。削るべきところは削っていかなければならないというふうに思っています。
 削らなければならない部分には幾つか種類があるというふうに思いますが、いわゆる現在とられております制度の中から生じておりますむだと申しますか余分なもの、例えば、年金や医療や介護や雇用だというような保険を集めておりますのに、個々ばらばらにみんな集めている。個々ばらばらに集めましたらそれだけ人件費もたくさん要るわけでございますししますから、同じ厚生労働省が管轄をいたしております分野でございますから、そうしたものは一元化をして、一緒にみんな出していただくということにして財源を削減していくといったようなことをやらなきゃいけないというふうに思っています。
 それからもう一つは、現在のこの診療報酬体系の中でむだがあるのかないのかということは、なかなか難しい話なんです。見方によってこれは違う話なんですよね。ただし、ここにつきましても、先ほども出ましたが、診療報酬体系の基準というものを明らかにして、これこれの基準でこの診療報酬体系は点数を決定しますという基準を明らかにして、皆さん方に御理解をいただけるようにする。
 率直に言って、今、この診療報酬の決め方につきまして、そんな言い方をしますと後ろに並んでいる諸君は怒りますけれども、厚生労働省は鉛筆なめて決めているのと違うかという不満がかなりあちこちからあるわけです。そんなことはないと私は言い切っておりますけれども、しかし、そこは、基準が明確になっていないがゆえにそういう疑問も生じるということでございますから、そこは基準を明確にして、そして、その基準の中で見たら、これはもっと削れるのではないか、もっと少なくてもいいのではないかという部分も私はあると思う。そうした面は明確に私はしていかなければならないというふうに思っています。
 そうしたことを、これは必ず行うということをお約束して、今それを鋭意進めさせていただいているところでございますから、そこは御理解をいただきたいというふうに思います。
山井委員 まさに今の、どこがむだな部分かということなんですが、情報開示についてお伺いしたいと思います。
 まさに過剰診療、そういうむだな部分、良心的な医療の部分はもちろんきっちり守っていかないとだめなわけです、しかし、そのむだな部分がやはりあるのではないか。そのことは、情報の開示なくしては判定できないと思います。
 今回の健保法案の附則の中にも、まさに「医療及び医療に要する費用に関する情報の収集、分析、評価及び提供に係る体制の整備」ということがこの二百四十六ページに出ておりますけれども、やはり先ほど大臣の答弁にもありましたように、医療情報を開示していくということとよい医療をやっていくということはセットであるわけです。それについては、私たち民主党も、患者の権利法を、先日の衆議院本会議でも私が提案理由説明させていただいたところであります。
 そして、今回、国民に負担のアップを迫る以上は、中身のことは置いておいてとにかく負担を上げてくださいというのはやはりおかしいわけで、負担アップを迫る以上は、中身のことをもっときっちりわかりやすくしますよという必要があると思います。
 そこで、レセプトの本人への開示についてお伺いしたいと思います。こちらに資料が出ておりますけれども、その現状についてお答えください。
田村大臣政務官 レセプトの開示に関しましてですけれども、平成九年に「診療報酬明細書等の被保険者への開示について」という通知を出させていただきました。
 もう御承知のとおりだと思うわけでありますけれども、当該レセプトを開示することによって本人がみずからの傷病名を知ったといたしましても治療上差しさわりはないというような旨を保険医療機関等々に確認した上で開示をするというような形になっておるわけであります。現状でありますが、平成九年から平成十二年までの間でありますけれども、開示請求に係るレセプト、これが存在する場合でありますが、これに関しましては、請求件数の九九・二%、部分開示も含めてでありますけれども、これだけが今開示をされてきております。
 以上です。
山井委員 今、本人が病気のことを知ってもいいという状況であるならば開示するということなんですけれども、そうしたら、繰り返しになりますけれども、本人が自分の病気のことを何でも、自分に都合の悪いこともわかっていいということを言った上ならば、一〇〇%開示してもらえるんですか。
田村大臣政務官 そこは、当該医療機関の主治医の方々がどう判断されるかという部分になるんだと思うのですけれども、要は、がんであるとか重大な病気等々知ったことによって、やはり診療上いろいろな問題といいますか不備が生じてくる、本人の精神的な面もあろうと思います。そういうものも含めてどう判断するか、医療機関がどう判断するかということになろうと思います。
山井委員 そこは非常に重要なことなので坂口大臣にお伺いしたいんですが、今まさにがんとかそういう場合、本人がもう何を言ってもらっても結構ですということを言いさえすれば、繰り返しになりますけれども、お医者さんも一〇〇%このレセプトを開示してくださるわけですか。
坂口国務大臣 そこは、本人が言えばそれに対しておこたえをするというのが、原則は私はそうだろうというふうに思いますが、ここは御家族の意見というものも私はあると思います。
 昔、ある陸軍の将軍が、結果はどんなことであってもいいから、日本軍人だから私はびくともしないと言われて、あなたはがんですと言ったらばったりその場で倒れられたという話がまことしやかに我々の世界では伝わっておりまして、そういうことも現実問題としてないとは言えないわけでありまして、できる限りその患者さんに長生きをしていただこう、少しでも気持ちの上でも張りを持って治療に励んでもらおうといいますときに、本当に真実を知った方がいいのかどうかというのは、正直なところは際どいところだ。いろいろ、私はその人によって違うという気もいたします。
 御本人は、それは知りたいという気持ちに駆られるだろうというふうに思いますから、原則そうするということでいいんだろうというふうに私は思いますが、しかし、家族の立場からすれば、患者になっているこの人はどうしてもやはりそうすれば絶対に落ち込んでしまう、だから、これは本人がどう言おうと言わないでほしいという御家族からの言い分等も私はある場合があるんではないかというふうに思いますから、そうしたときにどうするかということは、その主治医が総合的に判断をしなければならない問題ではないかというふうに思います。
山井委員 でも、本人がどうしても知りたいと言って、家族も知らせてもらってもいいと言ったときに、それでもなおさら教えない、あるいはレセプトを開示しないというのでは、それこそ患者とお医者さんとの信頼関係がそもそも成り立たないと私は思います。ですから、そういう意味では、そういうことは本人が告知していいというときには、私は一〇〇%レセプトの開示はなされるべきであると思います。
 そのことに関して幾つか私も声を聞いてみたんですけれども、例えば、明細のわかる領収書をもらう運動をされている団体の方々に聞きますと、そういう領収書を欲しいと言ったら、先生に書いてもらうのには千五百円必要と言われたと。領収書をもらうのにお金がかかるというケースや、領収書と組合保険からもらった証明書の金額が全く違うので治療をしたお医者さんに問い合わせたところ、差額の領収書を発行するからなかったことにしてほしいと言われたとか、こういうケース。
 あるいは、ある大学では、大学の授業の一環で、学生にレセプト開示をお医者さんに行って言ってみなさい、そういうものがありました。例えば、一つは、ある医院に学生さんが行ったわけですね。毎回、今までかかっていた医院よりも新しい医院は、四倍以上の金額を請求され、納得がいかないので、その医院に対してレセプト開示請求をしてみると、まず、レセプトは開示しません、領収書は書きますということを言われましたと。そこで、その領収書に書いてくださる料金の内訳に関して説明はいただけないのですかとお聞きしたところ、なぜしないといけないのですか、何か不都合でもあるのですかと、かなり語調を強めた様子でおっしゃいました。そのため、料金をお支払いするときに、ただおっしゃられた金額をお支払いするのではなく、その内容を知って納得した上でお支払いしたいのですと申し上げたところ、現在そのようなことはしていないし、今も考えていませんという答えであったと。先生はただいま治療中でこの件に関してお話しできませんと、その事務所の方は随分怒っておられました、私もかなり怖かったですと。そして、今後も医療の透明化に向かって、もっと簡単にこういう明細書がもらえるようにしてほしいですということをこの学生さんはおっしゃっておられます。
 あるいは、もう一件の方は、健康保険組合に電話でレセプト開示を請求、医師の承諾がなければ開示できないと言われた。それで組合事務所に出向いた。そうしたら、その後、開示を請求したお医者さんから、これはどういうことですかと怒って電話があった。自分が疑われていると思い込んでいるお医者さんの様子がうかがえた。とりあえずよろしくお願いしますと私は言ったが、いつもはおとなしい感じの人なのに、この日はあいさつもなく、がちゃんと電話を切られた。そのお医者さんにはあの電話以来会っていないが、次に会ったときにはどういう反応をするか、できればもう会いたくない気もしている。そのうち、病院の窓口で気軽にカルテやレセプトの請求ができるようになってほしいと思う、こういうふうな学生さんの声があります。
 つまり、ここの資料に三万件開示依頼の受け付けがあったと出ておりますけれども、それ以前に、お医者さんの承諾が必要ですよとか、窓口でいろいろ言われる中で、本当は、この数倍以上の人たちが開示請求をしようとして、やはりそのことを聞かれて断念していられるというのがあるわけですね。だから、そういう意味では、まだまだレセプトをすぐにもらえるという状況にはなっていないと思います。
 そこで、お聞きしたいんですが、レセプト開示というのはそんなにおかしいことなのか、海外の事例はどうなっていますか。お答えください。――これも事前通告、アメリカやイギリスはどうなっていますかというのをお聞きしておきました。
田村大臣政務官 申しわけございませんでした。
 レセプトの開示でありますけれども、制度によって、日本のようなレセプトというものがあるところとないところがございます。例えば、現物給付であるとか、出来高制であるとか、また保険制、多分償還払いですと、日本のようなレセプトじゃなくて支払いの明細書みたいなものをもらって、そして償還払いで請求というか、後からもらえるという話になると思いますから、そういうことをやっている国はそういう方式でもちろんそういう明細をもらっておられるんだと思います。
 日本のようなレセプトでどういうふうな開示になっておるかというのは、なかなか我が省といたしましても調査をまだいたしておりませんでして、周知徹底を図って、どういう方式でレセプト、レセプトに限らないんだとは思うんですけれども、そういう自分の支払いの内容というものがわかるかということに関しては早急にちょっと調査をさせていただきたいと思います。
山井委員 ありがとうございます。ぜひとも調べていただきたいと思います。
 そこで、今回個人情報保護法案が出ているわけですけれども、本日は内閣官房からも来ていただいておりますが、このように、本人が希望してもどういう理由かも明示されずにそのレセプトの開示を拒否されるというのは、本人の情報の適切な開示と、ここに個人情報保護法案のその部分の文案が書いてございますけれども、それに反するのではないかと私は感じておりますが、小川参事官、いかがでしょうか。
小川政府参考人 レセプトの開示と個人情報保護法案の関係についてお尋ねがございましたけれども、まずもって、個人情報保護法案の中身を少し御説明を申し上げますと、法案におきましては、個人情報というのは識別可能なものすべてということで、個人情報の性質による区分というのはございませんし、また、大量にデータベースで保有して事業の用に供している方が法の規律の対象になる、そういう方を取扱事業者と呼んでいるわけでございますが、これについても、事業内容だとか個人情報の利用の方法による区分というのはございません。したがいまして、まさにお尋ねのレセプト、診療報酬明細書というんでしょうか、これにつきましても、本法案の取扱事業者及び保有個人データに該当するものでございましたら、開示の対象になります。
 ただ、本法案では、開示をすることによって取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、こういった場合には不開示とすることも認めているところでございます。これは、開示、不開示、それぞれ両者に、本人と事業者それぞれの利益を比較して判断をしようというのが、すべての分野を通ずる一般法として最小限の規律を定めた法案でございますので、そういう保護と利用のバランスを図るという観点からそのような規定を置いているところでございます。
 したがいまして、重要なことは、この保護法案によりまして法律上そういう開示が請求できるということが原則になるという点が非常に大事でございまして、具体のケースに応じた判断というのは、当然ながら、それぞれの分野の特性に応じたしっかりした判断基準みたいなのを事業者側なりあるいは主務大臣の方でお考えをいただくことが大切ではないかというふうに考えております。
山井委員 今の答弁の中に、当該事業者と本人の利益、あるいはそういうものの侵害ということがありましたけれども、まさに医療というのは患者の方にとってどうかということが最大のポイントでありますから、今回のこのレセプト開示に関しても、病院が損するとか、医療機関が損するというのはある意味で関係ないわけで、まさに事前に承認を得るというのは、告知とかで患者さん本人に不利益を与えないかということであるということを確認しておきたいと思います。
 そこで次に、遺族への開示についてなんですが、この遺族への開示は事前に医療機関にお伺いすることなく開示されることになっているわけなんですけれども、ここの資料にもありますように、四の資料ですけれども、遺族に対して開示したときには、その連絡を行うことが適当であるということになっております。なぜ遺族が、レセプト開示を請求したことを医療機関に知らせねばならないのか。これは、ある意味で守秘義務違反になるのではないか、あるいは、そういう問い合わせたという個人情報を勝手に第三者に漏らすということは問題があるのではないかと思いますが、坂口大臣、いかがでしょうか。この部分は必要ないんじゃないでしょうか。
田村大臣政務官 先生おっしゃられますとおり、義務化をしておるわけではありませんけれども、通知のような形で、ここに先生御資料をいただきましたように、「適当であると考えております。」というような、そんな書き方で文書を出させていただいております。
 スタートしたばかりといいますか、要は、レセプトを開示していこうという方向の中で、やはり医療機関にそういう照会が急激にふえる可能性もある、そういうこともございまして、そういう準備もしていただく意味も含めて、当初このような、義務ではないんですけれども、通知を出させていただいておるということであります。
山井委員 改めて小川参事官にお伺いしますが、やはり請求をしたということは、事実は個人情報であると思いますし、恐らく多くの御遺族が、自分たちが請求したということを医療機関にやはり知ってほしくないと思っていると思うんですよね。にもかかわらずそれを知らせるということは、これは問題があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
小川政府参考人 制度の仕組みが詳細どのようになっているか、私、承知を必ずしもしていないわけでございますが、請求をされた方の名前、これは法案上、当然個人情報そのものでございます。
 この法案では、別途の規定で本人の同意がない場合の第三者提供というのを基本的に制限しております。そのケースが事業者に当たるかどうかとか第三者提供の制限がかかる個人データであるかどうかとか、詳細そういう問題はございますけれども、基本的には本人の同意を得て第三者に提供していただくということが前提となるんではないかというふうに考えております。
山井委員 まさに、今、小川参事官からもお話がありましたが、本人の同意を得てということなんですね。ですから、本人の同意が得られないんだったらそういう報告は医療機関にする必要はないし、まさに田村政務官の話でも当初はという、そういう発言がありましたから、もうこれが行われて数年たっているわけですから、坂口大臣、もうこのことは、個人情報保護のまさにこういう法案を政府が出されているときでもありますから、ここは除くべきではないでしょうか。坂口大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 このカルテにいたしましても、あるいはレセプトの話にいたしましても、ようやく今進み始めたところでございます。そして、その両方とも開示の方向に向けて進み出したところでございますから、それらの問題、しかし、今までそういうことになれていなかったことも、率直に言って事実でございます。医療機関がなれていなかった。そういう、もっと言えば、意識がなかったというふうに言ってもいいと思うんですが、しかし、その辺は、カルテにしろあるいはレセプトにしろ、明確にやはり要求があればお示しをしなければならないという方向に向かっているわけでございますから、整理をきちんとしまして、そしてこれがさらに進んでいくようにしなければならないというふうに思っております。
山井委員 ですから、もう助走期間はそろそろ終わりなわけですから、そこのところは切っていいと私は思っております。
 そして、次にカルテ開示についてなんですが、カルテの本人への開示の現状、これは三年たったわけですね。この資料の六の中に、平成十一年七月一日の医療審議会の中間報告、その中で、「医療従事者の側の自主的な取組みが不可欠」ということで、「三年を目途に環境整備を推進」となっておりまして、その三年がこの六月でたつわけですけれども、その現状と、現状をどう認識しているかということをお答えください。
田村大臣政務官 先生おっしゃられましたとおり、医療審議会の中間報告を踏まえまして、平成十二年度から三年を目途に、カルテ等の記載の適正化や用語の標準化、また医療機関における診療記録管理体制の充実等々を図っていくということで、それに向けた環境整備に取り組んできたわけでありますけれども、平成十三年の二月に日本診療録管理学会というところが行ったアンケートがあるんですが、これによりますと、カルテにかわる文書も含めて、約九割の病院において、カルテの開示といいますか診療情報の提供を、病院でありますけれども、行っておるという現状でございます。
山井委員 この七ページを見ていただいてもわかるんですけれども、例えば、「原則的に開示・提供」というのは三五・七%でありますし、あるいは訴訟を前提としたときにはもう原則的には二〇%が非開示というふうなことで、まだまだ徹底はされていないと思います。
 そして、三年をめどにやるということで、その三年がたったわけですけれども、やはりここで、自主的な取り組みできっちりできているのか、そうでないのか。実際私のもとにも、そういう開示を請求してもしてもらえなかったという苦情がたくさん寄せられておりますが、三年をめどに推進ということで、今後その総括をどうやっていかれるのか。それで、自主的のままでいいのか、やはり法制化しないと進まないんじゃないかということをきっちり精査する必要があると思います。その検討についての意思をお聞かせください。
田村大臣政務官 先ほどの先生おっしゃられました件といいますか、医療審議会の中間報告の中におきましても、自主的な取り組みがいいのか法整備をあれした方がいいのかという議論は、両論併記のように出ております。
 先ほど大臣、この件に関しましては水島先生の質問に対してお答えになられたと思うんですけれども、これは本当に非常に大きな問題でございます。それぞれの、各方面の関係機関の意見等々を踏まえながら議論を進めてまいりたい。確かに患者とそれから医療機関等との信頼の問題もございますし、しかしながら患者という立場からすれば、みずからの情報といいますか、病状等々はどういう状況であるか、カルテの開示を求めるという意見もございますので、この件に関しましては、法整備をするべきなのか自主的に進めていくべきなのかというのはいろいろな方々の議論を見守りながら早急に結論を出してまいりたい。先ほど大臣がおっしゃられましたとおりでございます。
山井委員 具体的にどのようにこれから検討をしていくのか、検討会をどうつくっていくのか、そのことをお答え願いたいと思います、昨日もそれを事前に言っておきましたので。
 三年をめどに推進となっているわけですから、その三年がたったわけですから、見直しの時期ですよね。
坂口国務大臣 カルテの開示につきましては、現在最終的な検討の段階に参っておりまして、今年度末に最終結論を出すということになっております。今後の方策につきましては、医療現場等の専門家の意見も率直に聞きたいというふうに思っています。
 先ほども水島議員との質疑の中でも申しましたとおり、ただカルテを見せてもらうというだけでは、僕は何にもならないというふうに思います。カルテそのものが、見て、そして患者さんに十分理解のできるものであればいいわけですけれども、そうでない場合には、ただ単にカルテを見せてもらうというだけではなくて、やはりそれに対して正確にこういうことだという説明をちゃんとしてもらわなければならないわけでありまして、したがって、カルテも当然ですけれども、いわゆる現在までの経過を十分に説明してもらうということが私は大事だろうというふうに思っています。そこをあわせて、そういう申し出があればできるようにしなければならない。
 先ほど最初にも委員が言われましたように、日本の病院は非常に忙しいんですよね、諸外国の病院や診療所に比べますと。これはやはり制度上忙しくなるようにしていると私は思うんですね。ですから、今回、例えばお薬を渡すにしましても、二週間と言っておりましたのを二十八日間というふうに延ばしたり、制限つけなくいたしましたりしましたけれども、そうしたことによって、何度か病院へ訪れなくてもいい人まで病院を訪れなければならないように今までなっていたということですよ。慢性の人でそんなに変化がない人は来なくてもいい。それを来なきゃならないようにしていたといったようなこともございまして、そうしたことも変えていくということをやらないと、一日に八十人も百人も来る中できちんとしたカルテをちゃんと一々書けといったって、これはなかなかできることではありません。
 ですから、落ちついて診療がしていただけるような環境をどうつくっていくかということも、これはセットになってくる話だと思うんですね。ただそれを、書いてあるものを見せる見せないだけの話ではないというふうに思っている次第でございます。そうしたこともこれから十分に検討しながら、患者の皆さん方の御期待にもこたえられていくようにしなければならないと思っています。
山井委員 まさにこれは医療の信頼を向上するためだと思います。別に患者さんと医療機関が敵対するんではなくて、それでお互いが納得して情報開示していくことによっていい医療ができ上がる。
 ところが、この資料の八にもありますように、カルテなど診療記録を知りたい人が八六・七%もいるにもかかわらず、実際カルテを求めていない。その理由は「頼みにくい」というのが三六・九%であって、先ほども言いましたように、附則の中にも、こういう情報提供をきっちりやっていくということが抜本改革の柱になっていくわけです。
 それでまさに三年間の自主的な取り組みが一応行われて、それで、大臣改めてお伺いしたいんですが、やはりここまで抜本改革の中で医療開示ということも柱に入れていくということになっている以上は、今年度末までに一つの結論を総括するということですけれども、やはりこの場で、もう検討会をつくってそれはやっていくということを、せめてそれぐらいの意欲を示してもらわないと、年末ぐらいまでに何か答えを出しますだけでは、余りにも私は意欲がないと思います。
 検討会をきっちりつくってください。こういうこと、いかがですか。これは重要な問題ですから。
坂口国務大臣 医療の質をどう上げるかというトータルな話があるわけですね。その中には、患者さんがいろいろの治療方法を示されましたときに、例えば、例えばですよ、年齢なら年齢の関係からこういう治療方法でしてほしいというような御要望があれば、そうしたことが選択できるとか、そうした問題も私はあると思うんです。
 質をどう上げていくかという中には、したがいまして、今御指摘になりました情報の開示というものも当然あるわけでありますから、情報をできるだけ病院から開示がしていただけるように、それはトータルでうちの病院はこういうことをしていますということもまずもって開示がされるように、そして、ここへ行けばなるほどカルテの開示もレセプトの開示もなるんだなといったことがわかるようになっていけば、これはおのずから私は進んでいくものだというふうに思っておりますから、そうした方向性を目指して、そして、それを進めていく段階としてどういう手順を踏んだらいいかということは当然のことながら出てくるわけでありますから、それは、検討会なら検討会をつくって、そしてそこでやっていった方がいいということならば、私はそういうふうにするのも一つの方法だというふうに思っています。
 いずれにしましても、そういう医療の質を上げるという中の一つの分野の話だというふうに理解をいたしております。
山井委員 お医者さん側にはお医者さん側の考えがあるでしょうし、立場があるでしょうし、また患者さんの側としては、このデータにもあるように、まだまだ情報開示は十分になされていないという現状もあるわけですね。ですから、これは医療制度、医療の質を高める根本的なポイントですので、今大臣がおっしゃったように、ぜひとも検討会をつくって、オープンな形で、情報開示これでいいのかということを、三年のこの総括をやっていただきたいと思います。
 次に、大臣の決意をお伺いしたいんです。
 先ほど、ハンセン病のあの控訴断念の後に、抜本改革をやってくれと小泉首相から言われたと。それで、責任を持ってやらせていただきますと答えられたということなんですけれども、私一つちょっと気になっていることがありまして、先日のこの委員会での答弁で、坂口大臣の口から、私の命もそう長くないかもしれないという発言が飛び出したんですが、これは非常に重要なことなので確認しておきたいんですけれども、坂口大臣、何としても自分の手で抜本改革をやっていくと。大臣をまさかその抜本改革の途中でかわるなんということはなくて、続投はされる気はあるんですね。
坂口国務大臣 生あるものはいつかは限りがあるわけでございまして、あすの日も予測はできないわけでございます。ましてや役職というのは、これはもう一つ不安定なものでございまして、いつどうなるかわかりません。
 しかし、厚生労働省は恐らく未来永劫続いていくわけでございますから、私がいるいないということではなくて、私の意思を、もしも私がいなくなれば、それを完全に次につないでいくということが大事だというふうに思っています。
 ですから、役所の皆さん方にも、私の身分は、これは不安定だ、いついかなることがあるかもそれはしれないけれども、私の今思っているこの医療の抜本改革のこの意思はいかなることがあってもなし遂げてほしい、期限も切られている、ひとつそういうことでやり通してほしいということを言っているわけでありまして、私の存在は別にいたしまして、必ずこの問題は今回はなし遂げられる、そういうふうに思っております。
山井委員 私は、非常に無責任な発言だと思います。抜本改革をやり抜くという答弁をやっておきながら、自分はまあ途中でいなくなるかもしれませんよというので、この委員会で議論する、おまけに負担増を求めるというのは、抜本改革というのはだれのリーダーシップでやるのかというと、厚生労働大臣のリーダーシップに決まっているじゃないですか。厚生労働省のお役人さんはそのリーダーシップに沿っていくわけですから、せめて、私が責任を持ってやるから一緒にやりましょうというぐらいのことを言っていただかないと、それは、私たちも今質問した大臣が気がついたらいなくなっているということではやっていられないという気がするんです。
 そのことについて二つお伺いしたいんですけれども、小泉さんに、何としても大臣を続けさせてくれ、厚生労働大臣を続けさせてくれということをおっしゃっていられるのか、既に。それと、逆に言えば、小泉首相から、三割負担の食い逃げでなくて、抜本改革を何としてもやりたいから、坂口大臣、続投してくれよ、責任を持ってあなたがやってくれよという話、既に小泉さんから来ていますか。そのことをちょっとお聞かせください。坂口大臣、お願いします。
坂口国務大臣 ですから、先ほども申しましたとおり、行政は、厚生労働省は継続しておるわけでありますから、私は厚生労働省の大臣として今お答えをしておるわけでありますから、これが継続することは間違いがありません。
 私自身のことは、これは私が決められる話じゃありませんで、これは総理がお決めになることでありますから、それは総理にお任せをする以外にございません。私がここにおります以上は、私はしっかりと皆さんと一緒にこの改革のために取り組んでいくことは、それは当然でございまして、その命の果てます寸前まで、それは皆さんと一緒にやっていくということをお誓いを申し上げたいと思います。
山井委員 私は、残念ながら、今の答弁というのは、今回のこの健保法の審議を象徴する答弁ではないかと思います。抜本改革をリードするはずの人が途中で自分はいなくなるかもしれませんよ、やはりそこに、私はある意味で、坂口大臣を責めるのではなくて、小泉首相が本気で抜本改革をやる気がない。もし私が小泉首相で、本当に責任を持って抜本改革をやるんだったら、まず厚生大臣だけは少なくとも留任だということを私なら言いますし、それぐらいのことをしないと国民は納得しない。抜本改革なんというのは、そんな途中で大臣がかわって、この健保法の審議で答弁をした人が途中でかわってできるような、僕はそんなものではないと思っております。
 では続いて、時間の関係もありますので、社会的入院の問題、先ほど鴨下議員からも質問がありましたが、そのことについてお伺いします。
 社会的入院、半年以上で特定療養費化するということですけれども、ここに一つの京都府医師会の調査がありまして、二百七十六の医療施設について調査した、二〇%以上が六カ月以上入院している、医学的治療が必要なケースが四九%で、それで在宅への移行が可能な症例だが環境が整っていないケースが一九%、介護保険施設の入所待ちが一五%ということなわけですね。要は、社会的入院だけれども、まだ介護保険施設のあきがないから出ようにも出られないというケースが一五%あるわけです。
 それで、特定療養費化された場合の入院基本料の月額徴収予定額は四万五千円ということなんですけれども、このように、確かに社会的入院だ、本人はもう退院したいと思っているけれども、まだ介護保険施設、特養などがあかない、このようなケースもやはり特定療養費の部分、自己負担アップでとるんですか。お答えください。
田村大臣政務官 先生おっしゃられましたとおり、今回の特定療養費制度への移行といいますか、長期的な入院に関して、そっちの方に移っていくと。推計で五万人ぐらい、介護の分野に行かれる方々、つまり、ちょうど間に、はざまにといいますか、はざまという言い方をすると非常に変な話なんですけれども、行きたくても行かれない方々が出るんじゃないか、こういう御指摘をいただいておりますし、我が省といたしましても、推計をいたしております。
 もちろん、各自治体には早く、早急にといいますか、計画にのっとって第二次介護保険事業計画というものを立てて整備を進めてください、それの総括がゴールドプラン21という話になるわけでありますが、自治体を中心に据えながら、こういう問題が起こらないように、なるべく起こらないように整備を促進していく状況でありまして、我が省もそのお手伝いをしっかりとしてまいりたいなとは思っているわけであります。
 一方で、それでも、言われますとおり、どうしても移れなくて待機せざるを得ない、そういう方々は、特定療養費化する中において自己負担というものを強いられるのはおかしいじゃないかというお話であろうと思うわけでありますけれども、今のお話のとおり、大体、部屋料ぐらい、月平均ですけれども四、五万円ぐらいを、最終的には一五%という話でありますから、御負担をいただく話になるわけでありますが、一方で、本来入りたくても、在宅、自宅におられて入れない方々というのはおられまして、こういう方々は、では、何らかの優遇措置があるのかといいますと、やはり御自身で生活をされる形以外ないわけでありまして、こことの平等化というものも図っていかなければいけない、公正化といいますか、図っていかなきゃいけないというところもあります。
 さはさりとて、今入院しておられる方々が直接行けないためにという話になったときにどうするんだという話でありますけれども、そのために、移行期間という形で、すぐに、スタートをしたからといって、一五%ぐらい、これは特定療養費でありますから、こちらとしてはお願いを医療機関にしておるわけでありまして、医療機関が独自に取るわけでありますけれども、こういうものに関しては、すぐに全額という話ではなくて、段階的にという形で、現物給付の方を低減していくという話になろうかと思います。
 ですから、大体、最終的には十六年の四月一日にほぼ完全に制度実施という話でありますから、その間になるべく、なるべくといいますか、我が省といたしましても、そのような社会的入院で、本来は介護の世界に行かなきゃならないんですけれども、それが行くところがなくて医療の方で滞留をされておられる方々というものを、なるべく早く介護の方に移っていただくように、施設整備等々、自治体を中心にしっかりと進めてまいりたいというふうに思っておるような次第であります。
山井委員 私は、納得できませんのは、本人はもう退院したいと思っているわけですね。治療は一段落したわけですから。ところが、介護保険施設がとまっていて、行くに行けない。これは本人の責任や本人の問題ではなくて、受け入れ側の保険者なり、介護保険施設なり、公の責任ですよね、それは。本人はそう希望されているわけですから。
 ですから、坂口大臣にお伺いしたいんですけれども、この責任はだれにあると思われますか。社会的入院したくないんですよ、本人は。もう介護保険施設に行きたいと思っているわけですよ。行くに行けない。行くに行けない人に対して、さらにお金を払えというのは筋が通らないんじゃないんですか。坂口大臣、お答えください。
坂口国務大臣 病院というところは、病気がどういう状況にあるか、治療の必要性があるかどうかによって判断をするわけでありますから、これは病気としてはもうこれでいい、そして、あとはどこかで療養をしてくださいというようなことになれば、それは病院としてはそこまでということに私はならざるを得ないというふうに思います。
 では、そのときに皆さん方が行かれる先はどこかといえば、家庭にお帰りになるか、それとも中間施設のようなところでもう少し家庭に帰るまでの訓練をされるか、あるいは終生の住まいとしてそのほかのケアハウスのようなところを選ばれるか、あるいは特別養護老人ホームのようなところを選ばれるか、こういうことになるんだろう。私は、それは幾つもの道筋があるというふうに思います。
 確かに、田舎の方はかなり整ってまいりましたが、都市部の方は施設がまだ足りないことも事実だと思うんです。前回の、第一次の、どれだけ必要かという調査をしましたときに、市町村長さんもしっかりした数字を出していなかったわけです。ある特定の機関に頼んで、大体うちだったらどのぐらいな数字になりますかと頼んで出してもらって、その数字を書いたというようなところがたくさんあるわけです。それで、今になりまして、それはえらいことだった、今はもっとたくさん必要なんです、前にああいう数字を出したので困ったというふうに言っておみえになるところもたくさんあるわけでございますので、今、第二回目の、第二次の調査をやらせていただいておりますから、明確な、今後、我が村、我が町はこれだけの施設が要りますということが出てまいりますから、それに合わせまして、足らないところから早急に対応をするということにしていかざるを得ないというふうに思っています。
山井委員 まさにこれからその計画の整備がされるということなんですけれども、そのときに、本当に市町村がきっちりと十分な整備をするかということが問題だと思います。
 冒頭で、私、スウェーデンには高齢者の社会的入院が少ないということを言いましたが、一九九二年にスウェーデンはエーデル改革というのをやりまして、それまで非常に社会的入院が多かった、だからどうしたかといったら、社会的入院と判定されて、向こうの病院は県立なんですが、一週間までは県が面倒を見る、でも、八日目以降、長居をしたら、その入院費、平均一日二万円は全額市町村が払え、そういう制度にしたのですね。そうしたら、社会的入院を放置したら市町村にとっては高くつくから、老人ホームやグループホームをつくろうというふうになって、社会的入院は激減をしたわけです。
 そういうふうに、財政的に、社会的入院を放置したら市町村が損をするという仕組みを組み込まないと、このままほうっておいたら、保険料がアップするから、介護基盤整備は進まないと思うのです。
 つきましては、この介護保険施設のあきを待っていながら特定療養費化される方に関しては、除外をすべきではないかと私は思うのです。本人責任ではないわけですから。公の整備がおくれているわけですから。
 この特定療養費化、半年以上の長期入院の、この部分について、介護保険施設を待っている方はやはり猶予すべきではないか。その点について、坂口大臣、いかがでしょうか。
田村大臣政務官 先ほど、スウェーデンに先生行かれたというお話をお聞きいたしました。また機会があれば、ぜひともそのときの向こうの現状をお教えいただきたいと思うわけでありますけれども、今の現状では我が国の保険制度はそのような形になっていないのは、もう御承知のとおりであろうと思います。
 スウェーデンの方を少し調べさせていただきました。エーデル改革の内容を調べさせていただいたのですけれども、確かに、おっしゃられますとおり、県とそれから市町村で、医療と福祉というものをそれぞれ分担して担われている。ただ、高齢者に対するいろいろな対応というものが宙に浮いていたという部分があって、そこでこの改革につなげられたというふうに聞かせていただいております。
 そのときに、市の方が面倒を見るといいますか、高齢者の方は、本来、市の方の仕事であろうということで、本来は高齢者としての対応をしなきゃいけないのに、医療の分野におられるのであるならば、市の方から県の方にその負担部分を払われるというような制度になっておるというふうにお聞きしておるわけであります。
 問題は、その話でいきますと、介護保険から多分医療保険の方にその費用を出すというような制度が、日本ではほぼ同じ制度として考えられるわけでありますけれども、基本的に、地方財政といいますか、税制上が違うということがまずあると思います。向こうは基本的に、非常に県、市がそれぞれの独自財源というものをとっておるという現状があるようでありまして、なかなか今の日本の状況においては、県と市がそれほどまで、特に市になるわけでありましょうけれども、財源的に十分じゃない。もちろん、介護保険という制度も今の状況ではそういう問題を見ていないという部分があろうと思います。
 それからもう一点は、全体といたしましての国民負担率といいますか、その違いも多分スウェーデンと我が国ではあるんであろうなと。七〇%以上を超えるというような負担率というものを見ますと、やはり、国民の理解を得て、医療でありますとか介護でありますとか福祉でありますとか、そういうものに関して、日本よりもかなり実質的に手厚い部分もあるんであろうなというふうに思うわけでありまして、全体を見ながらどう考えていくか、そういう組み合わせといいますか、全体のパフォーマンスというものは考えていかなきゃならぬと思うわけでありますが、制度といたしまして、先生がおっしゃられますようなことは現状といたしましてはないということでございますので、御理解いただきますようお願いいたします。
山井委員 とにかく私が申し上げたいのは、このままでは市町村が介護基盤整備をするインセンティブが働かないですよ、行き場所がなくて、受け皿がなくて、たらい回しになって亡くなるお年寄りがふえるんじゃないですかということを言っているわけでありまして、そのことをきっちりと、そういうことにならないようにしていただきたいと思います。
 もう時間ですので、最後短く、一点だけ改めてお伺いして終わりたいと思いますが、坂口大臣、先ほどの話ですが、小泉首相にぜひとも、抜本改革をするために続投させてくれということを、ぜひとも言っていただきたいと思います。そして、その答えを、また次に私は質問させていただきますので、そのとき聞かせていただきたい。そういうことを小泉首相に言っていただけますか。もしそれも言ってもらえないということになったら、やはりそういう大臣のもとでこういう真剣な審議をやって本当に意味があるのかということにすら私はなりかねないと思います。
 坂口大臣、よろしくお願いいたします。
森委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時二十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十分開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。三井辨雄君。
三井委員 午前中も水島議員あるいは山井議員からいろいろ質問があったと思いますが、厚生大臣には、山井議員から、ぜひ続投をお願いしたいということの強い御要請がございましたので、私もつけ加えさせていただきたいと思います。
 政府は、今日まで、医療制度の抜本改革を行うことを繰り返し約束しておりますが、そのたびに約束をほごにされてきたというのが実情ではないでしょうか。前回の一九九七年の改革でも、小泉総理が厚生大臣として二割負担を先行させましたが、抜本改革は全く行われませんでした。
 今回の法案は、提出までの経過を見ても、審議会段階での関係団体からの意見聴取が十分でないという意見や、あるいは、審議会での議論が改正案に生かされていないといった意見が多々ございます。そして、本来先行して提案されるべき医療制度の抜本改革が、法案の附則に盛り込まれただけの改革の先送りとなっております。附則の実効性を担保するものは何もなく、改革先送り、負担先行の法案である以上、この厚生労働委員会では、中央や地方での公聴会、あるいは参考人の意見聴取、そして十分な法案審議の時間を保証していただく必要があると思います。委員長初め理事の皆様に御協議のほどをよろしくお願い申し上げたいと思います。また、大臣や政府関係者の皆さんには、見直すべきは見直すという姿勢を持って対応していただきたい。国民のための真摯な法案審議にしてまいりたいと思います。
 質問に入らせていただきます。
 今回の法改正は、多くの国民の皆さんに患者の負担を強いることになるわけですが、中でも一番影響を受けるのがサラリーマンの皆さんでございます。改正内容では、給付の見直しとして、自営業者あるいは無職の人と同様に、サラリーマンも三割負担となります。わかりやすく公平な給付を実現するとしていますが、そもそも、健康保険と国民健康保険では制度の成り立ちが違います。健保や共済に加入しているサラリーマンは、所得を完全に把握され、保険料負担も事業主と明確に分け合っています。どこがわかりやすく、何が公平な給付なのでしょうか。そして、今なぜ三割負担なのか、その意味するところが十分に理解できないのであります。
 先日の委員会で、坂口大臣は、将来の保険者の統合化に向けた見直しで保険として機能しなければならないと答弁されております。では、将来の保険者の統合化とは一体いつになるんでしょうか。今年度中に基本方針を策定するといっても、いつの段階で保険者の統合は具体化するのか、明確にお答えいただきたいと思います。
 また、三割負担の導入は新たな保険者が出てきてからでもよいのではないかと私は思っております。給付率を将来にわたり七割を維持すると言っていますが、七割を維持できる根拠をお示しいただきたいと思います。大臣に御答弁をお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 七割をどう堅持するかという話でございますけれども、これは、医療保険制度であります以上、そして公的な保険であります以上、やはり余り自己負担が多くなってはいけない、やはり限界というものがあるだろうというふうに思っておりまして、私個人は、三割自己負担、七割給付というのが一つの限界ではないかというふうに思っております。
 午前中にも述べましたように、その中でも、軽い病気については三割の御負担をいただく、しかし、重い病気になればなるほどその負担割合も減っていく、そういう成り立ちがやはりセーフティーネットとして機能していくものでなければならない、そういうふうになるというふうに思っている次第でございまして、そうしたことをきょう午前中にも主張をさせていただいたところでございます。
 医療制度というものを考えてみましたときに、それでは、この医療制度は財政的に何によって成り立っているかといえば、それはもう私が今さら申し上げるまでもなく、これは保険とそして国庫負担と自己負担、この三者によって成り立っているわけでありますから、どこを中心にしてやっていくかというのが一つの行き方だというふうに思います。
 ドイツやフランスにおきましては、どちらかといえば、保険料の負担をかなり高目にとっております。一四、五%ぐらいになっていると思います。一四%ぐらいですかね、になっているというふうに思いますが、かなり高い値をとる、そのかわりに、自己負担は少なくなるように設定をいたしております。
 日本の場合に、それをどういうふうに設定をしていくかというのは、これは確かに選択の問題だというふうに思っております。しかし、これから日本の国がどういうことに直面するかは別にいたしまして、グローバル化の中で、日本の経済の置かれております立場等を考えてまいりましたときに、やはり、保険料を余り高くし過ぎるということは私は問題があるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 そうした意味で、保険料もお願いを申し上げなければなりませんけれども、極力ここは抑えさせていただいて、そして国庫負担と自己負担というものにある程度お願いをしなければならないだろうというふうに思っています。国庫負担の方は、後期高齢者医療の問題につきましては、五割負担というところまでだんだんと引き上げていく、そうしたことをここに掲げておるわけでございます。自己負担につきましては、三割、本当に皆さん方にお願いを申し上げなければならないわけでございますけれども、お願いをしたいというふうに思っています。
 それから、いわゆる保険者の統合の問題、最初にお話しになりました問題でございますが、五千に分かれておりますようなこの保険者の数というのは、これはやはり一元化の方向を目指していかなければならないというふうに思いますが、それでは、本当に一本になるかといえば、これは、一本になるまでは大変だろうというふうに思いますし、なかなかそこまで一遍にいくわけではありません。
 そうした意味で、国保ならば現在の国保の中をできるだけ一元化をしていく。例えばの話でございますが、例えば都道府県単位にしていきますとか、あるいは、大きい県でありますればもう少し分割をしたような形にしていく。そうしていきませんと、本当に、千人以下の村もかなりあるわけでありまして、そうしたところは、これからの、もう国保としてやっていけないというふうに思っています。
 また、組合健保等におきましても、非常に小さいのがたくさんあるわけですね。そうしたところは、親企業と申しますか、関連の企業と合併をしていただくといったようなことをやはりしていかないと、これまたやっていけないだろうというふうに思っておりまして、そうしたスケジュールを明確にする。大体何年でそれを達成する、五年ならば五年の間に統合をどれだけ進めるということを明確に示さなければならないだろうというふうに思っています。余り何年か先でもあれでございますから、一応、五年ぐらいでどこまでできるかということを明確にすべきだというふうに私は思っている次第でございます。
三井委員 私も、この三割負担について後援会の皆さんといろいろお聞きするんですが、先ほど御質問申し上げましたように、今なぜかということと、医療現場では、患者さんが、病気がもっと進行したときに、重い病気にかかったときに、三割負担によって病院にかからなくなる、重くなったときにむしろ医療費がかかるんじゃなかろうかという心配もあるわけでございます。今大臣から御答弁いただきましたので、統合化という問題は非常にこれから難しい問題があると思いますが、一本化の問題についてもぜひ御検討をお願い申し上げたいと思います。
 今回の改正で、保険料の見直しとして、賞与についても月収と同様に保険料を負担していただく総報酬制を導入するとしておりますが、サラリーマンの年間収入は、中小企業と大企業では報酬月額だけでははかれない部分があるわけでございます。年俸制も導入されているところがありますし、まさにその実態変化があるのは確かでございます。しかし、実態変化への対応というよりも、保険料の引き上げのために取りやすいところから取るというような厳しい指摘があることも申し上げておきたいと思います。
 昨今の景気低迷により企業収益は落ち込み、サラリーマンの給与は、ベアゼロどころか、むしろ給与は減額になっているという大変な状況にあるわけでございます。そういう中で、さきの七割給付導入とあわせれば大変大きな痛手であると思いますし、総報酬制の導入によって健保組合の退職者給付拠出金が増加することも懸念されておりますし、総報酬制の導入により健保組合そして政管保にどのような影響が出るのか、保険局長にお尋ねしたいと思います。
 あわせまして、現在、通勤手当、これは私たちは必要経費と当然見るべきなんですが、これも報酬に算定されているわけでございますけれども、今度は、総報酬制導入によってこの際にこれを見直すことはできないのか、保険局長にお聞きしたいと思います。
大塚政府参考人 第一点の総報酬制の導入に伴う影響でございますけれども、御指摘ございましたように、今回の総報酬制の導入は、賃金体系が多様化している点、あるいはボーナスの多寡による不公平、不公平と申しましょうか、保険料負担の不公平を解消する、こういった観点で導入するわけでございます。
 それに関連をいたしまして、退職者医療制度の拠出金についての負担の変化がおっしゃるようにございます。退職者医療拠出金は、被用者保険のOBを被用者保険全体でカバーをする、こういう仕組みでございますけれども、その算定基礎がそれぞれの報酬の量によっているわけでございまして、今度総報酬制を導入いたしますと、ボーナスのいわば比率の相対的に高いところが負担を少ししていただく、逆に相対的にボーナスの低いところはその分負担を軽減される、こんな仕組みになるわけでございまして、全体としては被用者保険の中でのやりとり、こういうことになるわけでございます。
 具体的に申しますと、総報酬制を導入する十五年度で、健保組合全体で約三百億円の負担増でございます。あるいは、国家公務員共済組合初め各種の共済組合全体で二百億円の負担増になるわけでございます。その分、合計五百億円でございますが、中小企業を中心といたしました政管健保の方は五百億円の負担減、こういう影響がございます。
 それから、二点目の通勤手当の問題でございますけれども、これは、社会保険、医療に限りませんで、年金もそうでございますし、さらには労働保険なども共通でございますけれども、労働基準法を持ち出す必要があるかどうかわかりませんが、労働基準法上も賃金というものは、労働の対価すべて、形態、名称を問わず賃金ということで扱われておりまして、通勤手当も賃金に当たる。これは、名称その他あるいはその給与の仕方、さまざまでございますので、そうした名称や形態によって算定をいたしますとまたかえって不公平が生じるということで、それらはすべて必要経費ということではなくて、標準報酬、あるいは今回であれば総報酬の算定の基礎といたしておるところでございます。
 さらには、例えば通勤手当の御指摘でございましたから通勤手当で申しますと、やはり支給している企業もございますし、支給していない企業も十数%ございます。また、一部支給というような、これはまたさまざまでございますから、いわば労働に対する対価ということでこれを標準報酬ないしは総報酬の基礎にさせていただいているところでございまして、これは社会保険全体の問題でもございますし、当面、なかなかこれを見直すということは基本論の問題でもございますので、私どもとしては非常に困難だというふうに考えておるところでございます。
三井委員 通勤費というのは、今御答弁いただきましたけれども、やはりいろいろさまざまだということはわかりますが、しかし、その総報酬制の中に入れるというのは、実は私も自分で事業をやりながら通勤費を出したりしておりますけれども、どうも納得いかないわけでございます。いずれにしましても、いずれかはこれをぜひ見直していただきたいことを申し添えておきたいと思います。
 本来、この医療制度改革に向けたあらゆる改革の道筋を国民の前にわかりやすく示すことが政府の責任であると思いますし、そしてまた、財政負担を国民にお願いするには、やはり負担に応じた医療サービスのメニューが提供されなければ国民は納得して負担はしてくれないと思うのでございます。
 こうした観点からすると、今国民が一番望んでいるのは、医療の安全性を確立することだと思います。私は、健康保険法改正案の前提となるべき医療の安全対策についてというテーマで、本日の質問を進めさせていただきたいと思います。
 医療機関における医療事故が毎日のように相次いで発生しているわけでございますが、先般、四月二十三日に、厚生労働省では、大学病院など高度な医療を担うと認定された全国の八十二の特定機能病院の医療事故発生状況をまとめられております。平成十二年四月からことし二月までの二年間に、病院内の安全管理委員会に報告された医療事故が約一万五千件発生していると言われております。
 そのうち、特に重篤な事例は三百八十七件あったとの調査報告でありますが、平成十一年度、厚生科学研究補助金医療技術評価総合研究事業、大変長い名前なんですが、医療のリスクマネジメントシステム構築に関する研究の総括報告書によると、看護の冷やり、はっと事例では、与薬、つまり、これは経口薬、注射、点滴、輸血等を指しますが、医薬品に関連する事故が約半分の四六・七%を占めているわけでございます。まさに、薬のウエートというのは事故に対して非常に多いわけでございます。
 これらの医療事故や冷やり、はっとの事例の多くは、薬にもちろん大きく起因するものも多く、薬剤師による適切な関与が十分なされてなかったということも聞いておりますし、医療機関においてこうした医薬品による医療事故を未然に防止し、安心かつ安全な医療を患者に提供していくためには、薬剤師と薬剤師を統括する薬局、つまり、薬剤部の活用が不可欠であると思うわけでございます。
 昨年、厚生労働省において、病院における薬剤師の人員配置基準に関する検討会が開催されておりますが、昨年十月には同検討会における報告書がまとめられております。その時点においては薬剤師の人員の増員が行われなかったために、非常に残念なことでありますが、同報告書には、病院における薬剤師の役割の重要性が高まっていることについては、認識の一致は見られたとされており、また、「三年後を目途に人員配置基準の検討を開始すべきと考える。」とあります。
 この時点から三年後ということは、本年から考えますと見直しは二年後ということになりますが、この見直しの際には、医療機関において薬剤師が十分役割を果たせるよう、必要な人員が配置されるような基準とするべきと考えますが、いかがでしょうか。さらに、二年後の検討についてどのような視点から、またどのようなスケジュールで検討を行っていくおつもりか、お答えを願いたいと思います。
篠崎政府参考人 先生御指摘のように、昨年の十月でございますが、六回ほどの有識者及び関係団体にもお入りをいただきました検討会の報告におきまして、薬剤師の需給、薬剤師の業務内容や配置の実態、薬剤師の養成過程における臨床教育の充実などの進展を踏まえて、三年後を目途に人員配置基準の検討を開始すべきというような御報告をいただいております。
 私ども、その趣旨を十分尊重して、今後そのスケジュールを進めていきたいと思っておりますが、そのときにまた話題になったもの、今先生御質問の観点と申しますか、どういう観点かといいますと、病院における薬剤師の業務につきましては、服薬指導などに加えまして、従来の服薬指導などに比べまして、医薬品関連の事故防止など、大変多様化、複雑化してきております。その役割もますます重要になってきているというふうに認識をいたしております。
 一方で、個々の病院におけるこれらの業務の普及や定着の状況が今のところまださまざまであるというようなこともありますし、薬剤師の養成において病棟における臨床教育がまだ十分ではないのではないかというようなこともございます。また、地域におきましては薬剤師の採用が困難であるというようなことも指摘されておりまして、これらの観点も踏まえて今後検討を進めてまいりたいと考えております。
三井委員 ぜひ検討を進めていただきたいと思うところでございます。医療事故はやはりこの薬にかかわるという非常に大きな問題でございますので、ぜひともよろしくお願い申し上げたいと思います。
 昨年六月に、国立大学医学部附属病院長会議は、「医療事故防止のための安全管理体制の確立に向けて」という提言をまとめられております。その中に、「医薬品・医療材料・医療機器の管理、取扱い」という項目が大きく取り上げられておりますが、特に薬剤師による専門的視点からの処方監査の充実が処方関連の事故防止に重要と記載されております。そのため、必要な人員の確保はもとより、業務の標準化や必ず確認すべき医薬品の明確化等を通じて薬剤師による処方監査を充実させるとしております。
 また、四月十七日に厚生労働省の医療安全対策検討会議がまとめた医療安全推進総合対策という中でも、同じように、医療事故を防止するためには薬剤師による処方監査は極めて重要であるということが再三指摘されております。
 医療事故を未然に防止するためには、医師の処方と薬剤師による調剤、これには処方監査あるいは服薬指導、薬の情報提供等が含まれますが、それぞれ病院の中においても独立したものとして、この処方監査や病棟における薬剤師による服薬指導、情報提供を独立した部門において徹底していく必要があると考えますが、厚生労働省として、特に地域の模範となるべき国立病院の薬剤部においてどのような体制をとっておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
河村政府参考人 国立病院・療養所におきましては、各施設ごとに薬剤部または薬剤科を置きまして、その病院の規模、機能、使用薬剤の状況等に応じまして、適切な人員の薬剤師を配置いたしておるところでございます。平成十三年四月現在、その合計人数は、国立病院において五百八十六名、国立療養所におきまして四百十八名となっておるところでございます。
 国立病院・療養所の薬剤部または薬剤科に配置されておる薬剤師さんは、処方された薬剤の調剤あるいは入院患者に対する服薬指導、無菌製剤の調製、医薬品情報の収集、管理、伝達、医薬品在庫管理などの専門的業務に従事しておるところでございます。
 さらに、治験に関しまして、治験薬管理を行うほか、治験コーディネーターとしても、被験者への薬剤の説明あるいは服薬指導等の業務も行っているところでございます。
三井委員 やはり国立病院が各医療機関の模範となる病院であるべきだと思いますし、今五百八十六名の薬剤師さんが活躍しているそうでございますけれども、いろいろな業務が多様にわたると思います。
 私も実は五百ベッドぐらいの病院に勤務したことがございますが、まさに毎日が、冷やり、はっとの連続でございまして、医師が四、五十名おりました。その中でやはり、処方せんに字の間違い、あるいはそれぞれお医者さんの個性がございますから読めない字があったりとか、ミリ数が間違ったりとか、あるいは量が間違ったりとか、そういう事例がたくさんございました。私も常に緊張感を持ちながら勤務した記憶がございますが、しかし、薬剤師の仕事というのは、病院薬剤師というのは大変な、私は、私の経験からいいますと、非常に体力勝負だなということも実は体験したわけでございます。
 医師との関係あるいは看護師さんとの関係、医療従事者との関係、もちろん患者さんに対する服薬指導等のことを考えますときに、まさに医療事故を未然に防止していくという上においては、医師の処方と薬剤師による調剤について、病院の中においても独立したものとして考えなければならない。医師の処方せんに対する監査や病棟における患者の、先ほども申し上げましたように服薬指導、患者や他の医療関係者への情報提供については、薬剤師が他の診療科や医師から独立した部門において徹底し、医療現場におけるリスクマネジャーとなることが私は必要と考えております。それは、ひいては患者さんに対する安心と安全な医療の提供へとつながるものであると思っております。
 次に、文部科学省にお伺いいたします。
 本日は健康保険を審議する厚生労働委員会の場でありますが、国立病院と同様に、地域の模範となるべき国立大学附属病院における医と薬の独立、薬剤師や薬剤に関する部門について、文部科学省にお尋ねを幾つかいたしたいと思います。
 本題に入る前に、私も実はこの医薬分業にかかわる歴史をひもといてみたわけでございますが、明治七年に、時の明治政府において医療行政を所管していたのは文部省だったわけでございます、我が国最初の医事法規である医政を公布したのが、医師が薬を調合して患者さんに与えることはすこぶる危険で、いろいろな弊害を起こすこともある、しかるに薬は薬局や薬剤師に任せなさい、医師が薬で利益を上げるような行為をしてはいけません等、規定しております。まさに、この医薬分業の原則が、今日の医療保険制度における分業規制の原則として今日まで脈々と引き継がれているのでないかと。当時の文部省が発しておりますということを御紹介しておきたいと思います。
 それでは、文部科学省にお尋ねします。
 このたびの国立学校設置法施行規則の省令改正が四月一日より施行されておりますが、この省令改正の趣旨はどのようなものなのか。また、薬剤部に関する条文、これは第十八条として「薬剤部及び薬剤部長」と規定されておりましたが、今回この条文が削除をされ廃止になっていますが、なぜこれが廃止になっているのか、御説明をいただけますでしょうか。
工藤政府参考人 国立学校設置法施行規則は、国立学校設置法を受けましての省令でございますが、国立大学を初めといたします国立学校の組織及び運営に関する細目を定めているものでございます。
 今回の四月での改正、いろいろ多岐にわたりますけれども、予算で措置された事項の措置のほかに、実は昨年の国会で国立学校設置法の改正をいたしまして、大学の基本的な教育研究組織でございます講座または学科目について、これまでは省令で定めるべしということが国立学校設置法の上で規定されてございましたが、昨年の法改正でそれを削除する改正をいたしました。
 その背景としましては、国でどこまで大学の教育研究組織の細目まで規定するのか、どこから大学にお任せした方がいいのかというのは、いろいろ御議論のあるところでございますけれども、これまでの大学審議会等での御議論を踏まえまして、少なくとも講座、学科目等の名称あるいは組織編制のあり方についてはそろそろ大学にお任せしてよろしいんではないかというような方向の結論を得ましたので、法改正したわけでございます。
 それに伴いまして、この四月からの改正では、講座、学科目のほかに病院におきます診療科、例えば内科とか外科とか、いろいろな診療科が組織してございますが、それもこれまで文部科学省で定めてございましたけれども、その実際の名称、組織編制も大学にお任せする。
 さらには、今御指摘のございました薬剤部も含めた部等の編制についても、これまでの規定ぶりは、御指摘のありました省令の十八条では文部科学大臣が指定する病院に薬剤部を置くというような規定ぶりでございましたけれども、現実にすべての病院に置かれている実態もございますので、わざわざ、文部科学大臣が指定するという条項を省きながら、大学にお任せしようというのが趣旨の第一点でございます。
 それからもう一つは、現実にこれまでの薬剤部に置かれる薬剤部長さんというのは、従前の規定ですと、薬剤部長さんは技術職員をもって充てるというのが本則でございまして、必要がある場合に教授または助教授をもって充てることができるという規定ぶりでございました。
 ただ、現実には関係者の御要望等もあり、大学の取り組みもございまして、すべての国立大学の薬剤部は教授をもって充てるというような実態がございますそうですから、本則それから特例というのをわざわざ書き分けることもいかがかということもございまして、その条文の整理をする都合上、他の部の編制とあわせてこの規定の整理をしたものでございまして、薬剤部をなくするとかしないとかではございませんで、基本的にどういう名称、組織等で行うかについて大学にお任せする中で、事務的な規定の改正をしたものでございます。
三井委員 今御説明いただきましたが、メンバーについてもう一度、どのようなメンバーでどのように検討されたのか、再度御答弁願います。
工藤政府参考人 私ども、省令の改正につきましては、それぞれの局内で検討いたしまして、これは大学関係、大学課というほかに医学教育課というのも私ども関係しておるのでございますけれども、そういう担当課で相互に相談いたしまして、省内にございます、法令全体の審査を行う窓口が官房の総務課の方にございますけれども、そちらと協議し、さらに各局の筆頭課長で構成いたします筆頭課長会議におかけして、そこで御了解が得られたものを決裁で了解いただくというのが通常の手続でございます。
 今回のこの内容につきましても、先ほど申したような趣旨でございまして、そもそもは、大学審議会等で大学関係者にいろいろな御意見を承りながら、大学の組織編制のあり方についてできるだけ大学の自主性を増していくような方向での示唆をかねてからいただいているところでございますものですから、それを受けて、その延長線上のお話として事務的に省内で検討し、この改正に至ったものでございます。
三井委員 順立ててまたお聞きしておきますけれども、後ほど御質問しますが、改正部分に関係する医療従事者、薬剤師を初め臨床検査あるいは放射線、輸血にかかわる関係者に対しては、どのような了解を得ているのか。また、了解を得ていないのであれば、そのような改正は全く現場を無視して不適切であると考えるわけでございますけれども、文部科学省の見解を政務官にお聞きしたいと思います。
池坊大臣政務官 今回の改正は、今工藤高等局長が説明いたしましたように、平成十二年度の大学審議会の答申に基づきまして、学部の講座や学科目の弾力化という流れの中で、学部の講座に密接に関係する附属病院の診療組織等についても弾力化を図ったものでございます。
 各大学の自主的な判断でさまざまな組織編制を柔軟にかつ機動的に行えるようにしたものでございまして、特定の関係者に不利益を生じるようなものではございませんので、改めて大学関係者の意見を聴取したということはございません。
 具体的な改正内容につきましては、各病院が診療科や診療施設等の組織編制を柔軟に行えるよう、これまで病院ごとに定めることとしていた規定を削除いたしました十八条、並びに、医学部附属病院の薬剤部長がすべて教授となっているため規定ぶりを実際に合わせるという関係条文を修正したものでございまして、特定の関係者の了解が必要なものとは思っておりませんし、決して現場を無視したわけでもございませんし、不適当だというふうには考えられないと思っております。
三井委員 いろいろ御説明いただいたわけですけれども、しかし、この省令改正については事前に何にも説明もなかった、寝耳に水の改正だったという意見が、各国立大学の現場の薬剤部長さんあるいは薬剤師さんから私のところにたくさん意見が寄せられているわけでございます。(発言する者あり)
 ですから、私は、今釘宮先生からも現場に行って意見を聞いたのかという御意見ございますけれども、本当に、まさしく、先ほど厚労省にもお聞きしましたけれども、やはり現場をもっと知っていただくことが必要だということを、先ほど政務官がおっしゃったように、特定の者ということじゃなくて、やはり医療の現場を知っていただいて、その上でお決めいただくことが、この省令改正に納得していただけることではなかろうか、こういうぐあいに思うわけでございます。
 いずれにしましても、国立大学の独立行政法人に伴う組織の充実のための改正であって薬剤部ということだけとらえれば機能は従来と何ら変わりないと何度繰り返されても、現実に削除になっている十八条をどのように理解せよというのか、私には理解できないわけでございます。
 先ほどいろいろおっしゃっていましたが、もう一度これについて高等局長から御説明、御答弁をお願い申し上げます。
工藤政府参考人 これまでの従前の、改正前の施行規則の十八条では、「病院で文部科学大臣が指定するものに薬剤部を置く。」それから、その部長さんは「技術職員をもつて充てる。ただし、必要がある場合には、」「教授又は助教授をもつて充てることができる。」という規定ぶりでございました。先ほど申しましたように、少なくともどういう病院に置くかというのは、実態としてすべての病院に薬剤部が置かれておる現状もございますしする中で、わざわざ大臣が指定するというのはやめようじゃないかというのが一つでございます。
 それから、薬剤部という名称でございますけれども、実態として薬剤部として置かれているようなところが多いんでございますが、現場では患者さんの目線などを考えますと、平仮名の、おくすり治療部という言い方を望む声があるとかいうことも含めまして、実際にどういう名称で薬の関係を束ねていくかというのは大学にお任せしてよろしいんではないかということも含めまして、わざわざ薬剤部と言わなくてもいいのではないかということが、もう一点ございます。
 それと、さらに、先ほど申しましたように、部長さんに技術職員が本則ということではなくて、実態としてすべて教官職で置かれてございますので、本則と特例をわざわざ書き分けることもないということもございまして、条文を整理いたしますと、新たに、他の臨床検査等の部と同様の規定ぶりで足りるものでございますから、新しい十七条で薬剤等の業務を行うための部を置くということで整理し、二項でその部長には「教授、助教授、講師又は技術職員をもつて充てる。」ということで一体として整理させていただいたものでございまして、十八条という、旧来の十八条がなくなったのではございませんで、旧来の十七条の二と十八条が新たな十七条になったというふうに御理解を賜りたいと思っているところでございます。
三井委員 しかし、改めましてここで条文の、今おっしゃいました十七条の項目でございますが、「薬剤等に関する部及びその部長」としていますが、条文は、大学附属病院に、「薬剤、臨床検査、手術又は放射線診療等に関する業務を集中して行うため、部を置く。」となっているわけでございますが、これでは薬剤に関する部門と臨床検査あるいは放射線診療科に関する部を統合することを目的としているようにしか解釈されないわけでございますけれども、そのような解釈が成り立つと思うのか、お答え願いたいと思います。
工藤政府参考人 先ほど最初に申しました大学の教育研究の基本組織であります講座、学科目についてもそうでございますが、基本的には国立大学でございますので予算の裏づけが必要でございます。どういう講座、学科目あるいはそれにかわる組織を置くかにしましても、教授に相当する人数が何人あるいは助教授に相当する人数が何人とかいう予算の裏打ちがあって、初めてその組織編制がなされるものでございます。
 今御指摘の、その十七条にかかわる薬剤、臨床検査等の部でございますけれども、これも私どもこの法令の措置とは別に、別途予算措置で薬剤に関する部長さんの職、四十二大学病院すべてに措置しているわけでございまして、その予算の裏づけをもって薬剤に関する部がそれぞれ別々に置かれるものと、私どもは、前提として各大学で取り組んでいただいているところでございまして、薬剤とか臨床検査とか、ここに掲げてある業務すべてを一括まとめて一つの部にということでは決してございませんので、予算の裏づけともあわせて御理解を賜りたいところでございます。
三井委員 それじゃ、今回の改正においては薬剤師は独立した部門として残す、廃止することを目的にしていないということを再度確認したいと思いますが、そのような御理解でよろしいでしょうか。
池坊大臣政務官 薬剤に関する組織を廃止するというようなことは考えておりません。それをしっかりと申し上げておきます。
三井委員 今後誤解が生じないように、やはり、今回の改正が薬剤部を廃止、統合するものでないということを各国立大学附属病院に周知徹底することをお約束いただきたいと思うんですが、政務官、よろしくお願いいたします。御答弁願います。
池坊大臣政務官 今まで……(発言する者あり)優しく答えろということでございますから、ちょっと口調を優しくいたしますけれども、今までも薬剤に関する部門を廃止、統合することではないというような説明をいたしておりましたが、なお現場においてそのような理解がまだなされていないということでございましたら、今後とも周知徹底いたしますように指示し、すべての方々が御理解いただけるような努力をしていくつもりでございます。これで優しいでしょうか。
三井委員 大変優しく、鋭い御答弁、ありがとうございます。
 本当にこれは大変な、大きな、全国の医療機関にかかわることでございますし、薬剤師の立場ということも考えた場合に、それぞれの薬剤部というのは大変な、大きな役割を担っているわけでございますね。ぜひともここは周知徹底させていただくことをお願い申し上げます。
 きょうは、厚生労働委員会でこの問題を取り上げた目的は、私は、先ほど冒頭に申し上げましたように、やくざ医師ではございませんが薬剤師出身の議員でございまして、薬剤部を独立した部門として明確に位置づけていただいて、病院における医薬品の安全な管理と医薬品情報等の一貫した管理体制をしっかりと確立する、そうすることがやはり患者さんの安全や安心が確保できる、そうした実は強い思いで質問をさせていただきました。
 また、国立病院、そして国立大学附属病院は日本の先端医療の担い手でありますから、特に国立大学附属病院は、特定機能病院として地域においても中核の医療機関としてリーダーシップをとる立場にございます。極めて重要な医療機関であればこそ、この病院内の薬剤部の機能をさらに高める努力が必要とされていると思います。そのような状況にありながら、薬剤部を廃止するがごとき文部科学省の省令改正ということで私は理解しておりました。一つ省庁の問題ではなくて、日本のやはり医療全体に大きく影響するんだということを御認識いただいて、そして、やはり現場をよく認識していただくということをきょうの質問に取り上げさせていただいたわけでございます。
 ここで、再度、先ほどの厚生労働省の病院における薬剤師の人員配置基準に関する検討会の報告書に戻りますが、報告書の中に、病院における薬剤師の業務については、多様化、複雑化してきている一方、薬剤師の養成において病棟における臨床教育が十分でないこと、薬剤師養成における臨床教育の充実等の進展を踏まえ、人員配置基準の検討を開始すべきと考えるとございます。
 すなわち、臨床教育が充実されていないために病院薬剤師の人員が増員されないとも解釈できるわけでございますが、ここで、現在の大学の薬学部やあるいは単科薬科大学でどのような臨床教育をなされているのか、お答えいただきたいと思います。
工藤政府参考人 現在、大学の薬学部におきまして、国公私、いろいろカリキュラム、独自に取り組んでいらっしゃるわけでございますけれども、医薬品の適正使用等に係る医薬品情報学ですとか、あるいは臨床薬剤学というような形での授業でございますとか、あるいは医療チームの一員として患者さんや家族の方々への接遇に必要なコミュニケーション論などの臨床的な教育が進められていると承知してございます。
 ただ、先生御指摘の点は、多分もう少し薬学実習的な部分での御質問じゃないかと思うのでございますけれども、病院等における実務実習については、できるだけしっかりとやるべしというのがかねてからの課題でございました。平成十三年度で、私ども把握しておりますところでは、国公私全四十六大学のうち、国公立大学につきましては十三大学で、それから私立大学につきましては十八大学において一カ月ほどの実習が行われていると承知してございます。ただ、ということは、逆に言えばすべてで必ずしも十分行われていないというのが現実でございます。
 さらに、大学院の修士課程におきましては、医療薬学専攻の整備が進められておりまして、国公私それぞれ合わせますと三十一大学ほどになりましょうか、医療薬学系の専攻を設置しまして臨床教育の充実を図っているところでございます。
三井委員 先ほど私も申し上げましたが、私も製薬会社からいきなり病院勤務ということになりまして、全く調剤実習の経験がなかったものですから大変戸惑いを感じました。今のその教育制度の中で、やはりこれから、先ほど申し上げました、冷やり、はっと、医療事故というのは薬に起因することが多い。
 そういう中で、ぜひとも服薬指導あるいは薬の相互作用とか、そういう問題に関しても、やはり薬剤師の実習というのは、今御答弁いただいたような一カ月程度の実習では到底、医師においては今六プラス二という、六年の後は二年の研修期間、歯科医師さんにおいても六年の後一年。今、ちなみに弁護士さんの、司法修習生の経過も聞いたことがございます。一年六カ月の実習をした後にさらに試験があって、その試験に通らなければ裁判官あるいは弁護士、検事になれないという、この一年六カ月は大変長いと思うんですね。そういう研修期間を経て、やはり薬剤師の今の薬学教育において四年制というのは、私は端的に申し上げて非常に短いような気がするんです。
 これから医薬分業が進む中で、もっと実習するのはやはりこの教育期間の間にやるべきと。それには、やはりこれから文部科学省では、この四年制でなくて、もっと十分な教育ができるような期間をできるようにお考えいただきたいと思います。やはり、卒後でなくて、在学中にしっかりとした、即実践できるような薬剤師を育てていただくようなカリキュラムを組んでいただきたい、こういうぐあいに思う次第でございます。
 また、今この六年間の教育の問題についてお話し申し上げましたが、これについては、政務官、今申し上げました中で、六年制、六年間ということについてはどうお考えでしょうか。
池坊大臣政務官 三井委員が御指摘になりましたように、近年、医薬分業とか医療の発展とか、著しく変化してまいりましたので、薬剤師や薬学研究者の果たすべき役割は大変重要と考えております。ですから、六年制にしたらいいのではないかという意見があることも私は承知いたしておりますが、海外を見ますと、例えばイギリスとかドイツですと、四年間薬学研究をいたしまして、プラス一年の実習でございます。アメリカですと、学部をいたしまして、プラス四年間または三年間の薬学専門教育ということでございまして、日本が海外と比較して著しく劣っているというふうには私は考えられないと思います。
 六年制にいずれいたしますにしても、まずその前にしなければならないということは、薬剤師養成の充実を図ることではないかと思っております。そのためには、薬学教育カリキュラムのあり方とか、あるいは実務実習環境の整備。現実には、一万人近くおります在校生が、二千人ほど受け入れ体制がない、だから受け入れ体制の環境整備なども必要だと思っておりますし、学生の免許取得前における実習の薬剤師法上の許容範囲の明確化などが必要であると考えております。これは、本年一月の薬剤師養成問題懇談会で確認されたことではないかと思っております。
 また、考えてみますと、薬学部の卒業生は、病院や薬局において薬剤師としてすぐ活躍するだけでなくて、創薬研究者として製薬企業に就職いたしましたり、あるいは大学院に進学したりする者も半分ぐらいいるのではないかと思っております。その進路は大変多様でございますので、これから薬学教育の年限の検討をいたしますときには、ぜひ学部の大学院修士の活用や、プロフェッショナルスクールとして専門職大学院制度を活用するなどというような、さまざまな選択肢を一緒に検討しなければならないというふうに考えております。
 文部科学省といたしましては、どちらにいたしましても、大切な学生をお預かりしているわけでございますから、これから実務実習の受け入れ体制、あるいはさまざまな条件整備など、薬学研究の充実を図っていきたいというふうには考えております。
三井委員 まさしく政務官がおっしゃるとおりでございますが、しかし、外国の事例とは、日本の医療制度とも違いますし、私の知っている限りでは、州によっては薬剤師の免許というのも、自動車の運転免許と同じように、やはり三年間なり四年間の、実務についていなければその実習を受けるとか、そういう事例もあるわけでございますね。ですから、やはり私は、今申し上げましたように、実習というのは、今医師は六年間、卒業された後二年の実習ということになりますけれども、これは大学院に行く場合もやはり実習を終えなければ大学院に行けないというような、やはり僕は薬剤師においても、六年制の中で、それから修士課程なりあるいは博士課程なりに行くというような、実習をひとつ義務化することも必要でなかろうかなと思うんですね。
 ですから、ここでぜひともやはりこれからの質の向上、先ほど申し上げましたように、特に薬剤師の任務というのは非常に重要だと思いますし、ますます複雑化、多様化してくる、薬はどんどん新薬が出てまいります。そういう中で、もっと高度な、そして現実に指導できるような薬剤師が育つような教育をするためにも、私は六年制というのは必要である、こういうぐあいに考えておりますので、ぜひ前向きに御検討をお願いしたいと思います。また、近いうちに私もこの進捗状況については国会の場で確認してまいりたいと思います。
 きょうは健保法改正の関連とは違う質問になりましたが、しかしこれがすべてのスタートでなかろうか、国民にやはり安心と安全を与える、そこがスタートだと思っておりますので、ぜひともこの問題については御検討、御審議をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 以上をもって私の質問を終わらせていただきます。きょうはありがとうございました。
森委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。
 私の後に自由党といたしましては樋高委員が後半質問をさせていただきますから、前半をやらせていただきます。
 この前の委員会におきましては、私の本会議場での代表質疑、そして予算委員会集中審議、そして骨太の方針、まさに基本的なことの話し合いをさせていただきました。その中でも、国家像というものが小泉総理に果たしてあるのか、どんなものがあるのか、こんな質問をさせていただいたかと思います。
 その大きな話の中で、私も午前中からのこの委員会を聞かせていただきながら、どなたも触れられなかったので私があえて触れさせていただければ、まさに瀋陽総領事館の事件のことを挙げさせていただきたいと思います。
 この事件において、まず基礎的な、基本的な事実関係だけを確認させていただければ、厚生労働省から総領事館に査証担当副領事として出向しているのは社会・援護局の方ということで聞いております。既に二、三年、当地におり、間もなく交代する予定だった。厚生労働省は残留孤児問題のため継続的に人材を送っている。
 坂口大臣は閣議後の記者会見で、外務省の調査報告について、全員から聞き取りをした詳細なものと評価されたと聞いております。しかし、その報告書によれば、その方は、亡命希望の五人の査証申請をめぐるトラブルと思い込み、武装警察官が敷地内に入り、不可侵権を侵されたことにも気づかなかったと記述されていると聞いております。こういう事実があった。
 こういう中で、まず第一問目は、厚生労働省から出向しているのはどなたで、いつからどんな仕事をされているのか、お答え願えればありがたいと思います。
宮路副大臣 御指摘の中国の瀋陽総領事館に当省から出向いたしておる副領事でありますが、宮下謙副領事でありまして、平成十一年の四月から出向いたしておりまして、当総領事館におきまして中国残留孤児関係、そして査証関係等の仕事に従事していると承知をいたしております。
佐藤(公)委員 私どももこの委員会の前に幾つかの、厚生労働省の方にこの内容に関していろいろと聞かせていただきました。
 御本人のことで今どうのこうの、言いたいことはありますが今は言うつもりはございませんが、これに関して厚生労働省側は、出向していることは事実だが、この件に関しては調査等はすべて外務省が行っているということで、私どもはコメントできる立場にないと思っている、こんな話もございました。結局、縦割り行政ということで、都合が悪くなると何か縦割り行政、またふたをしている、そんなふうにも思える部分が感じられるところがあります。
 果たして厚生労働省は、事件後、宮下氏と連絡をとったのか、宮下氏が厚生労働省の人間であると大臣が確認したのはいつか、その後どういう対応また指示をされたのか、どんな報告を受けられたのか、お答え願えればありがたいと思います。
坂口国務大臣 事件が八日にあったというふうに記憶をいたしておりますが、十日の夕方でございますか、私が聞きましたのはそういうことでございます。
 もともとは厚生労働省の職員でございますけれども、外務省に出向いたしましたら外務省の人間でございますから、外務省でちゃんとやってもらうべきだと思っております。
佐藤(公)委員 確かに外務省ということではありますけれども、そこら辺のあたりというのは特に報告をどの程度受けられているのか、また、それに対する対応、指示というものがあったのかないのか、そこら辺は具体的に大臣の方でお答え願えればありがたいかと思います。
坂口国務大臣 こちらの方にはそれはないと思います。
 どの省庁も同じでございますけれども、厚生労働省からよその省庁に出向して、出向と申しますか、よその省庁に行っている人間もおりますし、よその省庁から厚生労働省に来ている人たちもおります。厚生労働省に来ている人たちに対しましては、厚生労働省が厚生労働省のイロハからそれはやはり解説をしなければならないし、教えなければならない。そして、厚生労働省としてはこういうことをやっているということをやはり理解してもらうようにするのが、それは当然でございますから、厚生労働省から外務省に行きました人間は外務省において訓練をしていただくというのが筋であって、そして、そのことが、向こうで起こりましたことについて一々厚生労働省にその報告があるというわけではございません。
 私が知りましたのは、夜と言いましたけれども、十日の朝でございます。訂正させていただきます。
佐藤(公)委員 確かに、出向してもう外務省の人間となっているということなんですけれども、これは各省庁の行政的な問題だけじゃなくて、それを行っていく上で、やはり基本的なことになるのではないかなという気がいたします。厚生労働省としましても、まさに人道的支援とか赤十字との関係、人権、いろいろなことがかかわってくる。また、その最たる中での事件なように思えます。こういうことに関して、ちょっと今の大臣の御答弁に関しては、縦割り行政のあり方で、私たちは知らないよというように、冷たいような、また無責任なような発言にもとられる部分があるように思えます。
 こういう部分に関して、せっかくですから、副大臣、政務官もいらっしゃっております、報告を受けられたことがどれくらいあるのか、記憶の、覚えている範囲で結構です、そういうのがありましたら、またどんなふうにお思いになられるのか。一言一言、簡単にお答え願えればありがたいと思います。
宮路副大臣 宮下副領事のことを私も厚生省から連絡をいただいたのは、大臣がさっき十日の朝と言われましたが、私もその後ぐらいだったんじゃないか、外務省からその旨連絡があったということで、そのことを厚生省の私の秘書官の方から連絡をもらいました。
 ただ、この件は事柄の内容がまさに外務省の専管にかかわることでありまして、例えば中国野菜の農薬問題を、外務省の方で、向こうの大使館の方で情報収集してキャッチして、そして日本への輸出の問題、これがかかわるということであれば、そういったことは当然これは厚生省にもしっかりと外務省の方から連絡をいただいて、我々もそれに対応したきちっとした体制をとってその問題に臨んでいかなきゃならないということでありますから、そういった問題であれば、外務省の方から私どもの方へ連絡をしてくることは当然だと思います。
 ただ出向者がこちらから外務省の方へ行っておったということのゆえをもって、私どもの方に具体的なことを、事柄の内容についてるる、るると申しましょうか、いろいろな情報を伝達してこなきゃならないという、そういう立場に外務省もありませんし、私どもの方でも、厚生労働省としても、そのことをとやかく外務省の方に対して情報提供方を特別その問題について求めていくという立場にもないんではないかな、かように思っておるところであります。
 したがって、厚生労働省におきましては、その宮下副領事に連絡はとらせていただいていると承知しておりますが、それはあくまで、出向者でありますけれども、もともとこちらから出ていった人間でありますので、その本人の状況確認といいましょうか状態確認といいましょうか、それと、若いこともこれあり、ショックを受けているんじゃないかということも考えた上での激励の連絡をとらせていただいた、その程度であるというふうに承知をいたしております。
佐藤(公)委員 政務官、いかがでしょうか。
田村大臣政務官 今、副大臣がおっしゃられたとおりであろうと思います。御本人が今どういう状況であられるのかということに関しては、我が省としては、心配といいますか、そういう部分はあろうと思いますけれども、事態がどういう事態であったかということに関しましては、やはりこれは今出向されておる先の外務省の話でございますので、そこでのお調べというものが一番確かなものになると思いますので、我が省がとりたてて調査をするというようなことはないと思います。
佐藤(公)委員 私は、一つの組織という中では皆さん方の答えられたことも一つの答えとしてあるかもしれませんが、まさに今の日本の危機管理体制を含めた、人ごと主義というよりも、政治家が、やはり無責任さというのはそういうところから生まれている部分があるんじゃないかなという気がします。
 そういう意識というのは、僕はちょっと違うように思います。やはりそれなりに、出しているから知らないよとまではいかなくても、そこを、事実関係をきちんと把握し、大臣、副大臣、政務官がそれを政治的な判断で、外務省にもっと抗議をするなり話をするなり後押しをするなり、いろいろなことの指示、応援があってもいいようにも思えます。
 私、そういう部分で考えるに際して、この次は、外務省の報告書によれば、宮下氏は不可侵権が侵害されたことさえ気づかなかったことになっている。外務省の役人ではないにしろ、武装警察官が勝手に敷地内に入れないことぐらいは知っているはずだったのではないかなと。外務省は、報告書の発表の際に、宮下氏は事態に茫然とする余りこうした基本事項すら忘れてしまったと説明、宮下氏が武装警察官と何の会話も交わしていなかったというふうに聞いております。
 宮下氏は、当地に三年近くも勤務している。慌てていても、このくらいの基礎的対応はできなければ不自然なようにも思えるんです。阿南大使の言動などから見れば、宮下氏の行動は、総領事館の上司から、まさに、北朝鮮の亡命希望者は中に入れるなというのは言い過ぎなのかもしれませんが、指示を受けてのものだったとも考えられる節があり得ると思います。
 外務省が報告書を発表した後に、報告書に記載されていない新たな事実が次々に報道されている。御存じのように、電話をしたとか、大使の発言、英文文書、また一九九五年の事件、警察官と館員とのなれ合い、事実が次々に報道されている。外務省のこうした体質を考えれば、宮下氏が慌てて何もできなかったということは、外務省が宮下氏に失態の責任をかぶせてスケープゴートにしているのではないかとも疑いたくなるんですよ。
 こういう部分でいうと、私は、ある意味で大変なこと。大変なことだけれども、どこかにちょっと、これは今までそういうふうにしてきた政治、行政のあり方、危機管理体制、意識、こういった問題があるのは事実。と同時に、少し同情するところもあるのも事実だと思います。こういうところを、大臣、この点をどう考えられているのか、また、内閣でどんな話があるのか、お答え願えればありがたいと思います。
坂口国務大臣 私も、対応がよかったと思っているわけでは決してありません。もっと対応ができなかったのかなというふうに思っております。
 その対応の仕方の問題と人の派遣の問題とは、これはもう別の問題だということを私は申し上げているわけで、それは、外務省に出向いたしましたら、外務省の方でそこはきちんと把握をし、指導すべきことは指導をし、そして日々の任務に当たらせていただかなければならない。そのことについて、いろいろなことがあったから一々厚生労働省からそれはおかしいじゃないかということを外務省に言うのではなくて、外務省が、つかさつかさ、それはちゃんとやはりやらなければならないことだというふうに思っております。
 ただ、あの場面でああいう姿勢でよかったかというふうに言われたら、それはもっとやるべきことがあったのではないか。よく言われるように、帽子を拾っているようなことではだめだ、なぜあの子を抱き上げなかったかと言われましたけれども、私もそう思う。もっとやるべきことはあったし、そして、あそこで手を広げてでも阻止をすべきだったと私も思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 これに関しては、本当に大事な問題だと思い、またこれは、組織、いろいろな問題、意識の問題もあると思います。これは本当に、ここにいらっしゃる皆さん方、人ごとじゃないと思います。私も含めて、私たちももう一回襟を正し、意識をきちんとしていかなきゃいけない部分だと思います。
 これに関して余り話し過ぎると私の質問がほかはできなくなっちゃいますのでこれで終わらせていただきますが、十分今後、これに関しては僕は、政治家として、厚生労働大臣、長たる立場としてのやるべきこと、主張することは必ずあると思います。副大臣、政務官、よろしくお願いします。日本国のためです、お願いいたします。
 続きまして、健康保険法の方に入らせていただきます。きょうも午前中に井上委員等からもお話がございました診療報酬のことについてでございます。
 私も、代表質疑において、診療報酬のあり方、いろいろな話が今出ております。そういう中で、もう既に診療報酬改定について、一部では再改定を求める声が出ているというふうにも聞いております。これに関して、大臣、一部で再改定を求める声が出ているのか出ていないのか。また、そこら辺を、大臣はこの再改定をという部分をどういう形でとらえられているのか。上げるとか下げるとか、体系的な話とか、いろいろとあると思いますけれども、大臣の御認識をお聞かせ願えればありがたいかと思います。
坂口国務大臣 診療報酬の問題につきましては、これは、今後の大きい問題としてどういうふうに形づくっていくかという問題があるわけでありまして、そのことを今我々はやろうというふうにしているわけです。
 今回の診療報酬の改定におきまして、上がった、下がった、大変になったという話は、それはもう別途の話でございまして、大枠としての診療報酬体系の基本をどう見直していくかということでございます。もう少し基本を明確にして、何を物差しとしてこの高い低いを決めていくのかということをはっきりさせなければ、多くの人が見て、なぜこれにこんなに多額の保険点数がついているのか、これにはなぜついていないかということがわからない。どの人にも説明のできるような、そういう基本を明確にすべきだということを申し上げているわけでございます。
 今般のこの診療報酬につきましては、全部で二・七%下げたわけでございますから、技術につきましても一・三%下げたわけでございますから、全体に厳しい状況になっておりますことは想像にかたくありません。多分そうなっているだろうというふうに思いますが、そのことが多くの皆さん方から、多くの皆さん方からといいますよりも、いわゆる医療側から見てその中に不公平があり過ぎる、ある部分では非常に引き下げの少ないところもあるし、あるところだけ特段に引き下げが強かったという御意見が出ていることも承知をいたしております。
 しかし、では今までの状況が満遍であったかといえば、今までの状況の中にもいわゆるいいところ、悪いところがあったわけでありますから、そうしたことも勘案をして、今回のこの改定がどういう結論であったかということは理解をしていただきたいというふうに思っておりますし、そして、三カ月ぐらいすれば、その結果がどういう影響を与えたかということは出てくるわけでありますから、三カ月ぐらいいたしまして、もう一度その辺も拝見をしながら、今後のことも考えたいというふうに思っている次第でございます。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
佐藤(公)委員 代表質疑において、私は総理に、「一部では再改定を求める声が出ています。これについてどのように考えておられるのか、総理の意思をお伺いいたします。」という質問をさせていただきましたら、結論的には、「再改定を行うことは考えておりません。」こういう話が一応お答えとして返ってきたわけでございます。その前提には、「特に厳しい影響が生じないようにさまざまな配慮が行われており、厳しい改定ではあるものの、医療機関の経営に想定を超えるような深刻な影響が生じるとは考えられず、再改定を行うことは考えておりません。」と断言されております。
 しかし、どうもこの辺が不一致にも見える部分があるんです。坂口厚生労働大臣は、四月十二日の記者会見等においても、診療報酬の再改定を求めていることについて、諮問機関である中央社会保険医療協議会で診療報酬の見直しの議論が始まるとの見通しをした上で、今後のことの再改定に関してはちゃんと状況を見ながら考えていきたいというようなお話をされていたかと思うんですけれども、この辺の、どうも、どこをどうとらえて、何か話が食い違っているように思える部分があるんですけれども、大臣、いかが御説明されますでしょうか。
坂口国務大臣 今御指摘になりましたようなことが新聞に書かれているといたしましたら、それは新聞の誤りでございます。
 総理がおっしゃいましたように、診療報酬をトータルで再改定することは、それは私もないというふうに思っています。しかし、部分的な面で余りにもでこぼこがあり過ぎるといったような結果が、この三カ月なり四カ月の結果で、三カ月と申しますと四月から六月までといいましても結果の出ますのは九月か十月でございます、そうした問題が出ましたならば、それは多分中医協においてそうしたことは恐らく検討されるでしょうということを私は申し上げたわけでありまして、私がするという意味ではございませんで、それは中医協が多分そうしたことを中心にして議論をされるでしょうと。そのことが、次の再改定のときにそれが反映をさせられるのか、それともその前に何らかの措置が要求されるのか、それは中医協でお話しになる問題でございまして、そこを私がとやかく申し上げたわけではございません。
 しかし、先日の改定がトータルとして再改定されるということはないというこの総理の御答弁は、私もそのままだと思います。
佐藤(公)委員 この話はちょっともう少し突っ込んで話をしたいところがありますが、もう時間なので、これはまた次回に回させていただきます。
 ところで、きょうは政務官もいらっしゃっておりますので、一つだけ最後にお聞きしたいと思いますけれども、政務官、抜本改革を先にせずしてこんな国民負担、私たちの将来で、こういう改革でよろしいんでしょうか。
田村大臣政務官 先生の御経歴といいますか、生年月日を見ますと昭和三十四年生まれ、恐縮でありますけれども、私は三十九年でありますから五つお兄さんなんですが、我々の世代から見ると、本当に医療のみならず、年金、介護も含めてでありますけれども、保険制度というのは大変不安があるという声が国民の皆さんにあるのも、これは私も実感をいたしております。
 今おっしゃられた抜本改革なくしてという議論からいたしますと、抜本改革が、今回も、以前から持ち越されておる中でやれなかった。ただ、抜本に向かっての段階には入ってきておるんだろうと私は思うんです。すべてが一遍にはできないんでしょうけれども、その一歩一歩を踏み出していく中においては、今回、以前から抜本改革をしようという中で言われている幾つかが実行をされてきておるのも事実であります。
 その中において、今三割負担という話でありますが、これはまたいろいろな御意見がそれぞれあられると思うんですけれども、一方でその三割というものに対して御理解をされるような御意見があるというのも事実でございまして、どこかの時点でその三割というものに集約していくのであろうというそんなお声があるのも事実であろうと思うんです。もちろん、そうじゃないという御意見もあられますけれども。
 そんな中において、今回は、いろいろな抜本改革がこれからなされていく中のまず第一弾としてこのような改革案を出させていただいた。ただ、おっしゃられますとおり、我々の世代から見ますとこれでもまだまだ不安でございますから、これからも、先生方、同世代の先生方だけではございませんけれども、いろいろな先生方の御意見をいただきながら、抜本改革を早急に実現させていただくことをお誓い申し上げたいと思います。
佐藤(公)委員 もう時間ですので、これから議論を深めてまいりますのでよろしくお願いいたします。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございます。
鴨下委員長代理 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうも時間をいただきまして、ありがとうございました。
 私も同世代の議員でございまして、やはり、将来の医療を安心して受けられる制度にするということが、政務官、必要ではないでしょうか。
 私も当選をいたしました二年前に、当時厚生委員会であります、当時の厚生大臣が今の予算委員長津島先生でありました。そのときに私、議論をさんざんいたしまして、しつこいものですから当時厚生大臣津島先生が御立腹なさいまして。頭にちょっと血が上りまして、本当に抜本改革をやるのかということを声を荒げて言いましたら、男に二言はありませんと。男に二言はありませんと当時の厚生大臣が堂々とおっしゃった。しかし、今このありさまですね。どうでしょう。
 どうか、あれだけ男に二言はありませんと堂々と言ったんですから、やはりしっかりとやっていただかなくちゃいけない。当時、坂口大臣はお立場が違いましたけれども、こういう流れで来ておりますので、ひとつしっかりと抜本改革をやっていただきたい。
 そして、今何が心配かといいますと、不安なんですよ。将来にわたってちゃんと良質な医療が受けられるのか、そして安心して老後も生活できるのか。そこのいわゆる将来に対してのビジョンを示すのが、生活に最も密着したこの厚生労働行政であり、この衆議院の厚生委員会ではないかと思っておりますので、ひとつしっかりとお願いをいたしたいと思います。
 きょうは、健康増進法の関係で、食品の安全という、私のライフワークでやっておりますが、毎回食品の安全でやっておりますけれども、樋高の場合は、おまえは食品の安全よりも酒の安全の方がいいんじゃないか、そんなことも言われたりもするのでありますけれども。今回、中国での冷凍野菜から猛毒が検出された、これが日本国内に堂々と入ってきているということにつきまして議論をしたいと思います。
 その前にもう一つ、先般、厚生労働省さんは医薬品産業ビジョンというのを発表なさいました。このことについて、大臣の所見を伺いたいと思います。
 内容を私もるる精査をさせていただきましたけれども、そもそも、役所が、その場しのぎであったり、何かトラブルが起きてから対処をする、そういう行政がだめだというふうにさんざん私は申し上げておりますけれども、今回そういうビジョンを、特にあれは、二〇一〇年を一つターゲットにした中で、役所がビジョンを出したということにつきましては評価をさせていただきたいと思います。しかしながら、その内容で最も重要な部分が抜け落ちているのではないかというふうに私は思うのであります。
 いわゆる日本の医薬品の市場そして産業はどうあるべきか、世界的な流れの中で今考えていかなくてはいけない状況でありますけれども、その中で、その再編はある意味で避けられない、そして生き残りのためにどうしていったらいいか、真剣に議論しなくちゃいけないのでありますが、あのビジョンの中に、やはり、そこで今現在、もしくはこれから将来働くであろう方々、いわゆる労働者の視点が抜け落ちているのではないか。
 別にこれは組合から言われたからこういう話をしているのではなくて、そもそも、厚生省と労働省がなぜ一緒になったかということを考えていただきたいのであります。つまり、今回は、医薬品産業について、旧厚生省の管轄で、いわゆる厚生行政の中で医薬品産業はどうあるべきかというビジョンを出されたのでありますけれども、やはり労働省が一緒になったわけですから、そこで働く方々、もしくはそれに従事なさる方々、周辺の方々の視点もきちっとそのビジョンには盛り込まれていないと、じゃ、結局、旧厚生省だけで出したことと何にも変わらないんじゃないかというふうに思うのであります。
 そのビジョンを実行するに当たって、関係皆様方の意見をこれから幅広く、絶対にしっかりと吸収した形で実現に向けて努力していただきたいのでありますが、その点につきまして、大臣、御所見を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 幾つかの論点がございましたけれども、それじゃ、医薬品産業ビジョンの方から申し上げたいというふうに思います。
 医薬品産業のことを考えますと、これから先どういうふうな方向が大事かといえば、私は、一つは、人間にとってと申しますか、患者にとりまして優しい薬づくりというのが大事。副作用がない、あるいはまた、それによりまして、副作用と申しますか、他のことがいろいろ出てくるようなことがあってはいけませんので、やはりそうしたことのない薬づくりだというふうに思っています。その中には、ほかの薬と間違いやすいような色だとか形だとかいうのをたくさんつくるとかつくらないというようなことも私は含まれてくるというふうに思いますが、優しさ、薬の優しさ。
 それからもう一つは、これからの薬というのは、大量生産でどの人にも通用するということではなくて、オーダーメードと申しますか、テーラーメードと申しますか、一人一人に合った薬をつくっていく、そういう方向性が求められているというふうに思っています。そういう方向性の薬をつくっていかなければならないわけですが、世界を見渡してみましたときに、その分野で日本が果たして優位に立っているかといえば、そうではなくて、少しおくれがちになっているということもまた事実でございます。
 もう一方の大きな柱は、それじゃそうした薬を研究し開発をし、そしてそれを産業化していくのにどうしていくかという面が大事でございまして、その研究開発、産業化といったような点につきましてのシステム、そうしたことにつきましても日本は決して進んでいない、かなりおくれております。そこをどうするかというのが今回のこの医薬品産業ビジョンの大きなテーマになっているというふうに思っています。
 この医薬品産業というのは、これからの日本にとりまして、日本もいろいろの産業が発展するというふうに思いますが、その中で最も信頼される、最も将来性のある産業だと思うんですね、医薬品産業というのは。ですから、ここをどうするかということは、ただ日本の国の中における医薬品産業だけの話ではなくて、日本経済をリードする医薬品産業だというふうに思っております。そうした意味で、ここをどうしていくかということは大変大事なことでございます。
 諸外国におきましては大変な勢いでこの医薬品産業の合併が起こっているわけでございますが、日本におきます医薬品産業はほとんど合併も起こらない。それはなぜなのかということも、一つ今大変大きな問題になっております。それは、余りにも国の方がいろいろのことに手を差し伸べるからではないか、もっと自由競争で、この人たちに競争をしてもらうということを、やはりそういう形にしないといけないのではないかという意見もあるわけでございますが、そうしたことも踏まえながら、これからのこの医薬品産業が日本の国の中で大きく育つということを目指していかなければならない。そのことは当然のことながら日本の中の雇用を非常に大きく生むということでございますから、将来における雇用者、雇用創出という面からいきましても、この医薬品産業というのは大変大きな役割を果たすものだというふうに思っている次第でございます。
 それから、最初の方の御質問がございました中国からの輸入野菜の問題でございますが、残留農薬につきましては、先般もお答えをいたしましたとおり、ことしになりましてから、状況を見まして、そして中国からのものにつきましては検査を続けていることを申し上げたわけでございますが、いわゆる中国産の野菜検査強化月間というのを一月にやりまして、二月にもそれを引き続いてやっているということを申しました。
 ただ、三月になりましても、これはいわゆる下ゆで冷凍野菜というんですか、一度ゆでて、酵素の働きをとめて、そして冷凍をした野菜というのがかなり入ってきているわけでございますが、その冷凍野菜の中にもモニタリング検査で違反がかなり見られるということがございまして、生鮮物も含めまして全届け出に対しまして検査を今現在実施しているところでございます。
 もう一言つけ加えておきますが、食品衛生法の改正をこれからやらなきゃならないわけでございますが、このときには、一部そうした輸入に適切を欠いているものが非常に多いといったときには、一々その検査をするというのではなくて、ある程度のそうしたことが続けばもうその国からの輸出は一時ストップするということを盛り込まなければならないだろうというふうに思っておりまして、そういう考え方で今準備を進めているところでございます。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
樋高委員 御丁重な御答弁、ありがとうございました。
 この医薬品産業ビジョンにつきましては、日本人の健康を守るということのみならず、やはり日本の医薬品産業が全世界の健康を守るんだというぐらいにまでしっかりとした、中身のある、そして旧厚生省であれば医療、旧労働省であれば雇用の問題、こういう両方納得できるような形で、ビジョンをしっかりと策定をしていただきたいというふうに思います。
 きょうは農水省から宮腰政務官にお忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございました。
 食品の安全に関しましては、偽装表示、今回、JAS法改正を農水委員会の方でもなさるということでありますし、さまざまな新しい食の安全をめぐっての組織もつくっていくということでありまして、まことに結構なことであると思いますが、今、議員の先生方もそうだと思うんですけれども、地元を回ったときに、やはり一番食品の安全について聞かれることは、安全な食品を見分けるにはどうしたらいいですかと、素朴な純粋な疑問なんですけれども、それを聞かれるんですよね。いわゆる国民というか消費者が安全な食品を見分ける方法、御教授いただけますか。
宮腰大臣政務官 大変難しい御質問でございますが、例えば、国内産の農産物等につきましては、消費者がみずから食品の生産方法等に関する情報を引き出すことにより安心して購入していただくトレーサビリティーシステムの導入を図るために、牛肉につきましては二月二十一日から実証試験を開始いたしました。十五年度の実施、導入に向けて努力をしております。このシステムが完備をいたしますと、携帯電話を使って、店先のパックに書かれている十けたの数字、これを使って生産履歴の確認ができる。いわば消費者が店先から生産者の確認ができるということになります。
 野菜あるいは米、それから一部の加工食品につきましても、同様のシステムの開発あるいは実証試験に取り組んでいるところでありまして、これにつきましては、一部、十五年度から実施、導入をしていくということになります。
 なお、原産地を見分けるということにつきまして、特に輸入食品についてでありますけれども、例えば中国産の野菜につきましては、これは日本から種を、種子を中国に持ち込んで、そこで栽培をしているということでありますから、DNA鑑定を行っても、輸入物であるかそうでないかということにつきましては、もし偽装がしてあれば、これは確認が極めて困難であるということであります。
 農林水産省におきましては、最近偽装表示が多発していることを踏まえまして、一つには、表示の監視体制を強化するということで、食品表示一一〇番の開設、それから二つ目には、偽装表示を事前に抑止をするという意味を含めて、罰則の大幅な強化等を内容とするJAS法の改正案を今国会に提出をさせていただきました。トレーサビリティーシステムの構築とあわせて、しっかりと今後適正な表示の確保に努めていきたいというふうに思っております。
樋高委員 安全な野菜を見分ける方法ということでお聞きしたのでありますが、お答えになっておりませんが、いずれにしろ、この食品の安全の関係、しっかりと今後も引き続き取り組んでまいりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 前回は七十歳未満の負担増についてお尋ねをしましたが、今回は七十歳以上の高齢者の負担増を中心にお尋ねをいたします。
 昨年一月から高齢者医療の窓口負担が一割に引き上げられ、総額千四百六十億円の負担増となりました。その直後から、私たちのところには、金のことが心配で病院に行けない、年寄りは早く死ねというのかという悲痛な訴えが集中いたしました。この負担増で、高齢者の受診率が大幅に減ったことは間違いありません。
 今回は、その一割負担をさらに徹底するということであります。これによる負担増は総額千四百億円、一人当たり八千円に達することが前回の答弁で既に明らかになっております。昨年の負担増に続き、さらにこの追い打ちをかけられては高齢者は到底耐えられないと思いますが、いかがですか。
宮路副大臣 今回、委員御指摘のように、高齢者の方につきましての一割負担の徹底ということをさせていただくことになっておるわけであります。それは、先ほど来議論されておりますように、最近における急速な少子高齢化の進展によって老人医療費が増大している、そして、それに伴って若年世代の負担が著しくこれまたふえている。一方で、年金制度の成熟化等が進む中で、高齢者の方々の経済的地位も向上している。そういった要素を勘案して、定率の一割負担を徹底してお願いする、こういうことにさせていただいた次第であります。
 しかしながら、その一方で、負担能力の低い高齢者の方につきましては各般の配慮を行うということにいたしておりまして、例えば、低所得者に係る自己負担限度額、二万四千六百円または一万五千円でありますが、それを据え置くということ。あるいは、現在、老齢福祉年金受給者のみが対象となっております負担軽減措置、全体の〇・七%にこの老齢福祉年金受給者は該当するわけでありますが、その範囲を大幅に拡大いたしまして、高齢者の一五%の方が該当するようにということで、その負担軽減措置の対象範囲を広げる。それからまた、外来につきまして、一月当たりの自己負担限度額を八千円、一般の方は一万二千円でありますが、それを八千円にとどめるといったような各般の配慮措置を講じておるところでございまして、高齢者の方々にも御理解を得られる範囲ではないかな、かように私ども理解をいたしておる次第であります。
小沢(和)委員 ここに旧厚生省がつくった二つのグラフをパネルにして持ってまいりました。上が高齢者の世帯別の収入階層分布です。下が年金受給者の収入別の分布であります。
 それで、今、年金も成熟化してきたというようなお話がありますけれども、これをごらんになればわかるとおり、高齢者ひとり暮らしでいえば約九万円のところに生活保護基準がありますけれども、この九万円以下のところに年金受給者数でいえば六割ぐらいの人が集中している、それが生活保護以下だということがこれでおわかりいただけると思うのです。
 それから、上のグラフは今度は、年金だけでなく、ほかの収入も含めて、収入全部で世帯別にどうなっているかということの分類です。これをごらんになればわかりますように、百万円以下の人が一二・九%、それから二百万円以下の人が三〇・三%。大体、調べてみますと、世帯別でいえば二百万円以下というのが生活保護ラインなんですよ。そうすると、これは両方合わせると四三・二%の世帯は、つまり半分近くは生活保護水準以下の暮らしをしている。
 これが高齢者金持ち論の実態なんですね。結局、高齢者は金持ちだというのは、ごく一部の大企業の社長さんも確かに高齢者はいると思うのですが、そういうような人たちに引っ張られて、見かけ上高くなっているというだけのことじゃないでしょうか。
 その上、介護保険の保険料や利用料も重くのしかかっている。不況で子や孫の収入も減って、その支援も当てにできない。こういう中で、この負担増を払えるのですか。
宮路副大臣 先ほど、私の方から、年金制度の成熟等が進む中で高齢者の経済的地位も向上しているということを申し上げましたが、例えば、私どもが手にいたしております資料によりますと、可処分所得の比較でありますが、これは世帯主の年齢別一人当たり平均というものを出しておるわけでありますけれども、平成三年度と平成九年度の比較をいたしておりますが、七十歳以上者につきましては可処分所得の伸びが、平成三年度百四十四万円でありましたものが、平成九年度では百七十一万六千円でございまして、一九%の伸びを示しております。それに比較いたしまして、例えば働き盛りの四十歳から四十九歳の方などは、平成三年度百五十五万六千円が、百七十四万円でございまして、一一・九%の伸びであります。
 先ほど申し上げた七十歳以上者における可処分所得の伸び一九%は、各世代を通じて、年齢別に見ました場合、七十歳以上者の伸びが最も大きい。額面の上におきましても、これは年齢層別に見た場合、決して低くはない。百七十一万六千円でありますが、中ぐらいの水準にあるというような数字を私どもは持ち合わせておるところでございまして、こういったところから、先ほど申し上げたようなことを答弁させていただいておるところでございます。
小沢(和)委員 私が取り出したのは伸び率じゃないのですよ。これはさっきも言いましたように、厚生省が出した国民生活基礎調査とか、あるいは平成十一年度年金白書とか、それをそのままグラフにしただけのものなんですよ。
 それで、さっきも言いましたように、年金だけでいったら六割ぐらいの人は生活保護基準以下、ほかの収入を足しても四割以上の人が生活保護基準以下の収入しか得ていないじゃないか。伸び率をそっちは問題にするけれども、今現に食べられない、生活保護を受けなきゃならないというような状態にある人がこれだけいるんじゃないかと言っているんです。これでどうやって払えるのかと言っているんですよ。
坂口国務大臣 ここは、統計のとり方でございます。
 我々が持っております統計は、六十五歳以上の人が属します世帯構造別に見た高齢者一人が得ている所得、これを見ております。だから、高齢者一人ではなくて、高齢者が所属をしております世帯で見ると、決してそんな低い額にはなっていない。
 もちろんこれは、高齢者だけが所得があるというのではなくて、高齢者以外の人の所得も含まれておりますよ。含まれておりますが、高齢者が所属をしております世帯で見ると、例えば夫婦のみの世帯というのもありますし、それから、夫婦と未婚の子供の世帯、一人親と未婚の子供の世帯とか、三世代の世帯とか、いろいろ分けまして、そして、いわゆる高齢者が含まれております世帯をずっと見ますと、そんなに低くはない。これで一番低いので見ましても、三世代世帯というのが一番一人当たりにすると少ないんです、それは子供も入ってきますから。一人当たりにすると少ないんですが、それでも一人当たりで百四十一万円、これが年間の所得でございますから。
 確かに、一人一人でごらんいただけば、小沢さんお出しいただいたのを決して間違いだと私言っているわけじゃないんですけれども、しかし、現実問題は、それぞれの人が一人住んでおるわけではなくて、それぞれ、ある世帯に属して住んでいるわけでありますから、その世帯は世帯で生計を立てているわけで、そこはその世帯の中でお互いに頑張りながら一つの小さな単位を形成しておるわけでありまして、それで見ますとそういうふうに、一人割りにしましても百四十一万円ぐらいになる、こういうことでございます。
小沢(和)委員 だから、現役世代も今の不況の中で皆さんそれは御苦労なさっているけれども、しかし、高齢者世帯について言えば、こういう数字だ。こういうような状態なのに、高齢者は金持ちだから頑張って払ってもらえる条件があるというふうに言うのは、余りに一方的な話だということを私はもう一度申し上げておきたいと思うんです。
 それで、高齢者の医療費は、七三年には一たん窓口負担が無料になったわけです。しかし、この三十年の経過を見ますと、わずか十年で再び有料化され、外来でいえば、月四百円、八百円、九百円、二千円、三千円と、五回にわたり連続的に引き上げられております。今では、本当に重い負担になっている。
 前回、大臣は、七十歳以下の三割負担を今後絶対引き上げないかといって私が食い下がったら、引き上げる可能性を事実上否定されなかったと思うんですが、高齢者の負担はそれ以上に今後も引き上げられる可能性があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 前回申し上げましたのは、若い人たちに対しましては、現在の皆保険制度が存在します以上、皆保険制度でいくならば三割が一つの限界だということを申し上げたわけでありまして、それ以上にならないようにどう工夫をしていくかということになるだろうというふうに思います。
 高齢者の場合に、それじゃ、一割で、これが一割以上にならないかということでございますが、高齢者もさまざまで、高齢者でも高額所得者の皆さん方は、一割ではなくて、やはり二割出していただかなきゃならないところもあるというので今回お願いをしているわけでございますが、そうしたことはこれからもあるだろうというふうに私は思っています。しかし、所得の少ない低所得の皆さん方に対して、それ以上になるということは避けなければならないということでございます。
小沢(和)委員 政府は一昨年、一割負担を持ち込むときに、一割にしても負担が急増しないよう配慮していると強調されました。今回は、そのときに設けた八百円の定額診療所とか三千円の上限などをすべて取り払いました。結局、あのときの配慮というのは定率制を導入するための単なるオブラートだったのではないかと、今にしていえば思わざるを得ないわけであります。
 今回もまた、低所得者の人たちについては配慮した、一般の上限を一万二千円にしたのに対して低所得者は八千円に抑えたというような話でありますけれども、一円でも安く買おうとスーパーをあちこち見て回るような生活をしている低所得者に、上限三千円を八千円と二倍以上に引き上げることが、配慮の名に値するんでしょうか。
 今回、とりわけ許せないのは、償還払いの導入であります。窓口では、上限を超える分も含め、一たん全額支払わなければならなくなります。窓口で幾ら支払うのかわからない、これほど強力な受診抑制の圧力はありません。これが本当の政府のねらいではないんでしょうか。しかも、その後役所に行って償還の手続をして、ようやく二、三カ月後にお金が返ってくる。病気の高齢者になぜこんな手続をわざわざ新たに設けるのか、せめてこの償還払いをやめさせたらどうかと思いますが、いかがでしょう。
宮路副大臣 委員御指摘の、一昨年の改正の際に月額上限制を設けた、それは、今までの定額負担を定率一割負担に変更するに当たって、言ってみれば激変緩和措置と申しますか、その定率一割負担制の円滑な導入ということを図るために、高齢者の方々の負担がその改正の前後でほぼ同水準になるようにというような配慮に基づいて、月額上限制をそのときは実施させていただいたわけであります。
 ところが、今回は、先ほどから御議論ありますように、最近の医療保険制度をめぐる、特に高齢者医療をめぐる状況、そしてまた、そのもとにおける若年層の負担の増大等々勘案させていただいて、今後とも我が国の医療保険制度を持続的なものとして維持していく、運営していく、そのために、若年層の方々のバランスにも考慮させていただきながら、一割の負担を徹底してやっていただく、徹底する、そういう制度を導入したわけでありまして、これに伴い、上限額制度を廃止することといたしたわけであります。
 しかし、今回の改正におきましても、外来負担についても配慮いたしまして、一月当たりの自己負担限度額一万二千円、特に低所得者につきましては八千円にとどめさせていただいているということでありますので、御理解をいただきたい、このように思う次第でございます。(小沢(和)委員「償還払いは」と呼ぶ)
 償還払いの件は、先ほど申し上げた一割負担を徹底していくということからいたしますと、償還払いというのはやはりなじまないのではないか――失礼しました。償還払い制に切りかえる。従来の現物給付はなじまないのではないか、償還払い制にさせていただくことが一割の徹底負担ということになじむのではないかということで、確かに、従来からすると、その点やや手続的に煩瑣である、そういうそしりはあるいはないこともないかもしれませんけれども、あえてそうした一割負担の徹底という見地からこれを導入させていただいた次第であります。
小沢(和)委員 私がお尋ねしたのは、上限の三千円を八千円に、二倍以上に引き上げるということは、どうして低所得者に対する大変な配慮だと言えるんですか。一万二千円に比べれば確かに安いとは言えるかもしれないけれども、三千円が八千円に上がる。先ほど言ったような、高齢者の多くの人たちは大変な暮らしをしているわけですよ。そういう中で、倍以上に上がるというのは、どういう配慮なのかと私は伺っているわけです。まして、一割負担を徹底するというと償還払いにつながる、これはどういう理屈になるんですか。論理的には、私、そのつながりがわかりませんね。
大塚政府参考人 ただいま、今回の考え方につきましては副大臣から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、月額上限制と償還払い、今回の高齢者も応分の負担をお願いするという点については基本的な考え方でございますけれども、仕組みが一つ異なる点を御承知願いたいと思うわけでございます。
 従来の月額上限制という仕組みは、各医療機関ごとに三千円もしくは五千円を限度としてお支払いいただく。今回の償還払い制は、例えば複数の医療機関に行った場合は、それらを合算して一定額を超えますと、その超えた額をお返しする、こういう仕組みで、その点、仕組み自体が変わります。
 償還払いにつきましては、これは御案内のとおりでございますけれども、若人の世代におきましてはそれがむしろ原則でございまして、従来、高齢者医療につきましては、経緯がございまして、長い間定額払い方式がとられてまいったということもございまして、前回の改正のときに定率を原則としましたけれども、いわゆる月額上限ということで、いわば定額から定率への橋渡しのときの工夫ということでそういう方式をとったわけでございますが、今回、一割徹底、これは、高齢者、現役世代との負担のバランスも考慮しながら、全体として原則的には共通のルール、仕組みにするという考え方でこういう整理をしたわけでございます。
 くどいようでございますが、冒頭申しましたように、償還払いと従来の月額上限制では、単なる金額の差ではございませんで、仕組み自体が違う点があるということを御承知おきいただきたいと存じます。
小沢(和)委員 私もその仕組みが変わったことはわかります。
 それで、今のIT技術を活用すれば、医療費の通知を受けた市町村の責任で、それぞれの医療費を合算して上限額を超える分の償還払いを行うこと、病気の高齢者に一々手続をさせずに済ませるということが十分に可能だと思うんですが、どうしても償還払いをするというのなら、せめてこのくらいの配慮をしたらどうでしょうか。
大塚政府参考人 償還をしていただく場合に、これはやはり償還を受ける御本人が御申請をいただく、ここの前提はもう変えられないと存じますけれども、高齢者ということも考えますと、極力その事務負担を軽減するということは大事な点だろうと私どもも思っておりまして、具体的にはまだまだ詰めなければなりませんけれども、市町村の御協力を得ながら、できるだけ手続上の負担が軽減されるように、そうした工夫については引き続き実務的に検討してまいるつもりでございます。
小沢(和)委員 多くの高齢者の方は、医療費がどれだけかかったかということ、あるいは償還を請求できるだけの額に達したかというようなことはわからないんじゃないかと思うんですよね。だから、最小限、月々の金額がこれだけかかりました、だからあなたはぜひ償還の手続をしてください、これぐらいの連絡などを高齢者みんなに対してするというぐらいのサービスを市町村にするように指導したらどうでしょう。
大塚政府参考人 IT技術が普及をしてきている時代ではございますけれども、やはり市町村の実務面からしますと相当な事務量がございます。したがいまして、市町村の御協力も得なければなりませんし、具体的な方法はやはり市町村とよく御相談をさせていただいて、実現可能な方法を考えなければならないと思いますので、御指摘、御提案でございますけれども、引き続き研究をさせていただくということにさせていただきたいと存じます。
小沢(和)委員 あなたは先ほど、高齢者については手続の軽減をできるだけ努力したいというふうに言われたんですよ。だから、具体的に、ではどういうふうに軽減をするかということについて今後研究してくださるというお話ですね。
大塚政府参考人 一方では、高齢者の負担をできるだけ軽減したいということがございます。一方では、市町村の事務ということも現実問題としてございますから、その両者をよくにらみまして、現場の市町村とも相談をさせていただきながら詰めていくことにさせていただきたいと存じます。
小沢(和)委員 この機会に、高齢者のための医療拠出金についても一言お尋ねしておきたいと思うんです。
 本来、国が負担すべき高齢者の医療費を、一九八三年に老人保健拠出金制度をつくり、労働者の健康保険にその分押しつけるようになったわけであります。その結果、同年の老人医療費の中で国庫支出の占める比率は四四・九%でありましたのに、二〇〇〇年には三一・九%まで下がってしまいました。これと逆に拠出金は年々急膨張して、組合健保や政管健保を今日のような危機に陥れております。今年度の組合健保の予算全体では、老人保健拠出金と退職者拠出金は合計二兆四千四百四十億円、保険料の四四%に達しております。今では九割以上の組合が赤字に苦しんでいる。
 今回、その拠出金の算定方式を若干変更いたしました。対象年齢を段階的に七十五歳に引き上げる一方で、国庫負担を五割に引き上げていくというのですが、私の推測では、国の負担は余り増額されず、組合健保の財政もほとんど改善されないのではないかと思います。
 我が党は、高齢者医療費負担の保険間調整の意義を否定するものではありませんが、それを利用して本来の国の責任を逃れるような負担の押しつけをこの際改めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
大塚政府参考人 老人保健制度あるいは老人保健拠出金の趣旨、背景はもう改めて御説明する必要はないわけでございますが、お尋ねの算定方法の見直し、その部分をとりますと、おっしゃいますように、主として被用者保険の方がその部分だけをとりますと負担増になるという性格を持っておることはおっしゃるとおりでございますが、これは、かねて、公平な拠出金の負担という点から、関係者の間で非常に議論のあったところでございまして、今回、全体の見直しの中で整理をするという考え方でございます。
 その部分につきましては、被用者保険側にとって、被用者保険側と言うのは適当ではございませんが、被用者保険の保険者は負担増の要素がございますけれども、これも今お話ございましたように、算定方法の見直しのほかに、対象年齢の引き上げ、あるいは公費負担の引き上げということで拠出金自体が大きく縮減をいたしますので、全体の今回の改正においては、被用者保険も含めまして、国民健保も含めましてでございますが、財政の健全化に資する、そういう内容になっていると考えております。
小沢(和)委員 特に、業種ごとに中小企業でつくっている総合組合の経営が今大変であります。総合組合は全国で三十あり、組合総数の二割近くにもなりますが、この総合組合の中には、保険を維持するために、政管の限度九・五%をはるかに超える約一三%という保険料の組合もあると聞いております。
 私が、それくらいなら解散して政管に入った方がいいのではないかと聞いたら、組合を解散するためにはこれまでの赤字を清算しなければ加入の許可を受けられない、その資金を工面することができないので、やむなく保険料を上げて自転車操業を続けていると言うんです。
 こういうひどい状態を政府は御存じだと思いますが、いかがですか。
大塚政府参考人 総合健康保険組合の保険料率などについてのお尋ねでございます。
 保険料率というお話でございましたが、これは法律で、現在の仕組みの中では九・五%が上限と決められておりますので、保険料率そのものは九・五を上回るところはございません。
 細かいことになりますけれども、そのほかに健康保険組合連合会が健保組合全体の調整事業として若干の一種の財政調整のようなものをしておりますが、その調整保険料というのが少しございます。それを含めましても九・六二%ということでございます。これが限度でございます。
 今おっしゃいました十数%というのは、推測で恐縮でございますが、もしあるといたしますと、法定給付費に対する本来必要な料率、財源率、赤字を出さないための保険料を計算するとという意味での数字ではなかろうかと推測をいたします。
 そういう保険組合では、一方、九・五%が上限でございますから赤字になる。これは準備金があれば準備金を取り崩し、準備金を持つように指導をしておりますから、それで対応し、もし料率を上げる、法定上限の範囲の中で引き上げる可能性がある健保組合であれば、これを引き上げて財政改善をしていただく。
 どうしても運営が立ち行かなくなるということであれば、これは解散して政府管掌健康保険に加入していただく、政管健保に加入をしていただくことになるわけでございますが、その際赤字を持っておりますと、累積債務を持っておりますと、今度は中小企業の方々が加入しております政管健保の負担になります。
 したがいまして、簡単に俗な言葉で言いますと、身ぎれいにして政管健保に入っていただく、これがやはり公平の観点からは重要でございますし、これを、ルールがないということになりますと、一種のモラルハザードも起きかねないということでございますから、そこは重要な基本的な考え方の一つと我々は考えているところでございます。
小沢(和)委員 今、法律で九・五%以上取れないというふうに言われましたが、そんなことはないはずです。確かに労働者の方には四・五%以上取ってはならないという歯どめがありますけれども、九・五%を超える分はちゃんと法律で事業主が負担するようになっているんじゃないですか。現に総合組合の約三割は九・五%を超える保険料になっている。私さっきも念を押して聞いてみましたけれども、そういう答えです。組合の会議に社会保険事務所などから出てきて、この程度の保険料引き上げでは組合財政が改善できない、さらに上げるようにハッパをかけるというようなこともあって、これでは保険料倒産になるという怒りの声も聞いている。
 これが総合組合の実情だと思うんですが、いかがですか。
大塚政府参考人 重ねての御指摘でございますから調べますけれども、医療保険につきましては、九・五%が現実の最高値というふうに見ております。しかし、重ねての御指摘でございますから、調べておきたいと存じます。
 料率の計数については、ただいま申し上げたとおりでございます。
小沢(和)委員 では、それは調べて、今回は大分何回も機会があると思いますから、またお尋ねをします。
 それで、総合組合をつくっていると聞けば政管健保に入っている企業よりは大きいところと思いがちですけれども、全くそのようなことはなくて、零細中小企業がたまたま業種別の組合をつくろうということで集まっているにすぎない。だから、長期不況と受注減などでもう体力が弱り切っておって赤字の中で、保険料や拠出金を手形を割ったりしながら必死で払っている、これが現状なんです。
 ところが、それでも払い切れなくなって滞納すると、何と延滞利子が年利一四・五%かけられるというんですね。それでますます払えなくなって、雪だるまのように滞納が膨れ上がる。驚いたことに、この年利一四・五%は老人保健法第六十一条一項に法定されている。全くサラ金並みです。今は国税の延滞利子でさえ、私調べてみたんだけれども、年利四・一%に下がっている。なぜ今回の法改正で今の金利の実態に合わせるような引き下げをしなかったんですか。
大塚政府参考人 延滞金の金利でございますけれども、おっしゃいますように一四・五%が原則でございますが、ただいま国税の場合とおっしゃいましたけれども、国税あるいは郵便、道路交通関係、保険業、すなわち公的な強制力を持って徴収する仕組みのものにつきましては延滞金につきましてはみんな共通でございまして、ただいま四・一とおっしゃいましたでしょうか、それは、当初の二カ月、法定の期限から二カ月間は四・一でございますから、その計数ではないかと思いますが、基本的には、公的な強制徴収の対象となる経費につきましては、医療保険に限らず、また社会保険に限らず、共通の延滞利率を適用しているところでございます。
小沢(和)委員 私もそれは調べて、租税特別措置法第九十四条によってそういう措置をするということになっているというふうに聞いているんですが、あなたの方も調べると言うから、では、これもこの次もう一遍聞きましょう。
 さらに大変なのは、概算拠出金方式という支払い方法が定められておって、あらかじめ概算で老人保健拠出金の見込み額が決定され、その額でその年度の間支払わなければならない。そうすると、年度途中で加入企業が倒産、廃業しても、その企業の分の見込み額を残りの企業の責任で払い続けなければならない。二年後にようやく精算されるが、せめて倒産した企業の分を残りの企業が一時的にせよかぶらされるような仕組みは改めてもらいたいという声がありますが、いかがですか。
大塚政府参考人 老健拠出金の仕組みは、確かに変動要因はございます。おっしゃるような、加入している会社が倒産あるいはそれに準ずるようなケースになるというケースも確かにございます。
 しかし、大変大きな金額の医療費、十兆円というような規模の老人医療費でございますから、そのほかにも実はさまざまな変動要因がございます。医療費自体もそのときの状況で変わりますし、そのほかにも、お示しのようなケース以外に変動要素は大変多くございます。
 したがいまして、そうした変動があった都度と申しますか、その賦課額を変えるというのは、これは実務的にも、また全体の制度の安定という点からも難しゅうございますし、二年後に精算をするというのは今現在できるぎりぎりの短い期間の仕組みでございます。精算段階ではきちんと実績に基づいて処理をするわけでございますので、公平でもございます。
 一方では、そうした変動要素が多い医療保険の仕組みでございますから、先ほども申し上げましたように、一種の予備費あるいは準備金のようなものを、特に自主的に結成をします健保組合などにつきましてはきちんと持っていただくように。それを安易にと言ったらしかられるかもしれませんけれども、使い切ってしまってどうにもならぬ、これは、やはり自立的な運用をお願いしていることからいいますと、そうならないように。どうしても先行き難しいならば、やむを得ず解散ということにつきましては私どもも当然御相談に応じるわけでございますから、そうしたいわば深刻などうにもならない状態になる前に御相談をいただいたり、私どもも、極力そういう状況を把握いたしまして、いわゆる指導を申し上げたいと思っておりますが、そういう全体としての制度の仕組みの中でのことでございますから、この概算拠出金制度、その精算という仕組みは、これは手直しはなかなか難しいというふうに考えております。
小沢(和)委員 時間がぼつぼつ来たようですからこれで終わりますけれども、二年後に精算されるから損はさせないというようなことでは、今のようにほとんどの中小企業が必死の経営を続けているという状況のときに、実態に合わないと思うんです。本当は組合を解散したい、しかし解散する体力がない、そのために政管よりはるかに高い一三%近い保険料を取らざるを得ない、こういう状況の中小総合組合に対して、せめて政管並みの保険料で運営できるように、老人保健拠出金の減額なども含めて、実態に即した対策を講じていただきたい。
 何か具体的に考えておられるかということをもう一度お尋ねして、終わります。
大塚政府参考人 総合健保の中で大変厳しい運営をしておるところがあることは承知をしておりますけれども、おっしゃいますように、全体的な経済的な深刻な状況の中で、それぞれの組合が厳しい運営をしておると思います。逆に申しますと、したがって、特定のところに特別のいわば援助をするということは、これは逆に公平を大きく損なうというふうに考えておりまして、今具体的な方法を考えている段階ではございません。
小沢(和)委員 終わります。
森委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。本日最後の質問者でございますので、どうぞ元気でよろしくお願いいたします。
 まず、質問第一問目でございますけれども、大臣にぜひともお伺いしたいと思います。
 五月十四日から三日間、昨日まで、韓国から二十二名の被爆者の方々が日本にお見えになりまして、各党の党首クラスの方々、そして参議院議長、衆議院の副議長初めたくさんの方々に、健康状態も余りよくない状況の中で必死でお訴えをしていらっしゃいました。そして坂口大臣にも、きのうの夕刻、お忙しい中時間をとっていただいて、会っていただいたわけです。
 やはり在外の被爆者の方々の一つ目の大きな望みは、世界じゅうどこにいても被爆者は被爆者だと。そして、二回の裁判の判決、両方とも全面勝訴いたしました。被爆者援護法の適用をということは当たり前のことであるという判決をいただき、でも、国の方は控訴をいたしました。
 いま一つは、特に韓国にいらっしゃる被爆者の方々は、一九九二年に外務省の方から人道的な支援として四十億の基金を運用して、そして医療費、薬代に充てたりしてまいりました。ところが、その支援金も、基金も来年には枯渇するという状況がございます。
 一つには、やはり援護法の適用をしていただきたい。でも、検討委員会の報告は、単年度で五億円。約半分、二億五千万は事務費になってしまうでしょうし、あとの二億五千万で、日本にいらっしゃればちゃんと医療をいたしましょう、治療をいたしましょうということです。でも、大臣も昨年韓国に行っていただきましたが、私も参りまして二百人ほどの被爆者の方々にお会いしましたが、韓国の中で、その集まる場所にいらっしゃるにも大変な思いでいらっしゃる。そして、日本に来いというのは余りに残酷でございますし、平均年齢七十六歳を超えていらっしゃいまして、どんどん亡くなってまいります。この被爆者援護法を適用してほしいという声を重く受けとめていただきたい。
 そしてもう一つは、外務省がやはり追加の援助をすべきではないかというふうな形での働きかけを、厚生労働省の方からも、在韓被爆者に関してやっていただきたいと思うのです。神崎代表がお会いくださいまして、追加支援に関しては党の方でもしっかり取り組んでいくという御発言をいただきました。私も先ほど神崎代表と廊下でお会いしましたら、とても前向きな形で御発言をいただきました。
 大臣、ぜひとも、在外被爆者の方々に対してのいま一歩の御支援をお願いしたい。その決意に関して御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 昨日もお会いをいたしまして申し上げましたけれども、一つは、ことし五億円をつけまして、そして健康診断等をやるようになりましたが、これですべて終わりというふうに考えているわけではございません。そこは明確に申しました。
 しかし、その後、韓国の皆さん方の問題もございますが、アメリカにおみえになる方もございますし、ブラジルにおみえになる方もあるし、北朝鮮におみえになる方もある。したがいまして、日本が事を決定いたしますときに、韓国の皆さん方にはこういう方法で、そして北朝鮮の方は違う方法で、アメリカの方はまた違う方法でというわけにはまいりません。それはやはり一律にどうするかということを決めてかからなければならないというふうに思いますから、いましばらくお時間をいただきまして、そして全体を見ながらこの決断をさせていただきたいというふうに思います、そう申し上げたわけでございまして、現在もそのように思っておりますので、ひとついましばらくお許しをいただきたいと思います。
中川(智)委員 いましばらくの間に、ぜひとももっと前に進んだ救済策を講じていただきたいと思います。
 私はとても大臣を尊敬しておりますし、大好きな大臣でございまして、実はハンセンでもヤコブの問題でも、大臣が辞表を胸に戦っていただいたことに対しまして私は本当に感謝しております。私もハンセン病の問題やヤコブの問題、しょっちゅう大臣を廊下でつかまえたり、まあ寝込んだところを襲うことはしませんでしたが、一生懸命大臣にお願いして、大臣はしっかりとおこたえくださいました。身体障害者補助犬の問題も、来週参議院で成立いたします。私は、この在外被爆者の問題が解決すればもう思い残すことはないというぐらいの必死の、健保法はもちろん体を張って反対いたしますが、個人的に一生懸命取り組んでまいりましたこと、超党派で頑張ってきたこと、そのようなことは在外被爆者一つ残っておりますので、ぜひとも大臣のお力を一生懸命おかしいただきたいと思います。
 二点目なんですが、急にここで健康保険法のこの問題で、実はこれは一九九七年、今から五年前、一割負担が二割になって、とてもつらい思いをした、見たくもない議事録でございましたが、目を通しました。私は与党で、そちらの方に座っておりました。大臣は野党で、ここで私に質問をいたしました。でも、やはり坂口大臣は当初からお優しくて、ほかの野党の先生方は、本当に私は涙がちょっとあふれるぐらいつらいような答弁をいたしましたが。
 まず第一点目。大臣、この議事録で、私は、このときの御発言と今の大臣の決意というところの心変わりはないでしょうねというようなことで質問をさせていただきたいと思います。この法案を出される前に、大臣は、必死の思いで最初は阻止しよう、これに対してはやはり負担が大き過ぎる、抜本改革が先だという思いで抵抗されましたが、途中で抵抗がついえたかどうかというところを質問したいんです。
 大臣の御質問はこうあります。九七年、五年前です。「社民党の方は今まで構造改革を前提としたお話であったのに急に妥協をされた、この責任は非常に重いという発言がございました。」「中川さんはまだ国会にお見えになりまして間もないわけでございますし、お聞きするのはいささかつらい思いもいたしますけれども、」ということで質問がございまして、私は、「社民党の心変わりのようなことをおっしゃられましたが、そのようなことは一切ございません。」と答弁したんですが、後に続く言葉は弱いものでありました。
 そこで、大臣、なぜ今回の法案を出すということを大臣自身決心されたのか。そのときに胸に辞表は入っていたのか、その辞表はどこに行ってしまったんでしょうか。ここは、心変わりがあったかどうか、いつの時点でどのような納得があってこの法案を提案されたか、御答弁をお願いします。
坂口国務大臣 月日はかなり変わっておるわけでございまして、やはり歴史の舞台はかなり回っているなと思いながら聞かせていただいたわけでございます。
 今回の医療保険制度、医療制度と申しますか、改革につきましては、これは現状を考え、そして将来の人口構成を考えましたら、今のままで行き詰まることだけは間違いがない、もう大変な状況になってまいりました。その五年前に予想をしておりましたのをさらにはるかに超えて少子化が進んでまいりまして、五年前でございますと、まだ合計特殊出生率の一番下の低位のところでも一・三九ぐらいだったと思いますけれども、今や一・一まで参りまして、このままでいきますと現在の医療保険制度がもたないことだけは間違いがない。そういたしますと、保険料をふやしていただくか、さもなくば自己負担をふやしていただくか、さもなくば医療機関に対しまして医療費の値下げをしていただくか、何かをやらないことにはこれはやっていけないわけでございます。
 今回、そうした中で個人負担三割、これはなかなか心の痛む話でございましたけれども、しかし、お願いをすべきである。それは、国民健康保険の皆さん方もあるいは健保の御家族の皆さん方も既に三割をお願いしているわけでございますから、この健保の御本人におきましても三割をお願いする以外にないだろうということになったわけでございます。ただ、そのことにつきまして、私は全く異存がございませんで、それ以外に方法はないと今も信じておりますし、これから先、もっともっと厳しい状況、人口構造がまだ来るだろうというふうに思っております。
 そうした中で、現在は本当に高齢者の問題が大きな問題になっておりますが、今から十五年ないし二十年先になりますと、今度は少子化の影響が激しく出てくるわけでありまして、もう一つこれが厳しくなることだけは想像にかたくありません。そのことを考えますと、現在からむだのないところを省くような制度改革を一方で行い、そして、御負担をいただくところはお願いをするという体制にしていく以外にないというふうに思っている次第であります。
 ただ、一つ私も気残りと申しますか、これはもう少しうまくできなかったかなというふうに思っておりますのは、それは抜本改革のスピードであります。去年の今ごろは、もう少しスピードを上げて、抜本的改革の改正の問題も同じに出したいというふうに思っていたわけでございますけれども、やはり、当面の制度改革のことは、これは財政、予算と結びついていますから、例えば八月までに概算要求をしなきゃならない、年末までにどう決めなきゃならないということがあるものですから、どうしても予算に結びつきますところは先へ先へと行ってしまう。
 抜本改革のところは、かけ声は勇ましいんですけれども、なかなかやはり、抜本改革であればあるほど税制とも絡んでくる、ほかのことも絡んでくるというようなことで、どうしてもなかなか進みにくいということがあって、同じにスタートというわけにいきませんでした。
 しかし、決着のところは、来年の四月一日、この三割自己負担あるいは保険料の引き上げといったそうしたことに対します決着をつけるというそのときには抜本改革も同じに決着をつけるというスタートで、今若干おくれましたけれども、急ピッチでこの抜本改革に取り組んでいるところでございまして、この御審議がいつまで続くかわかりませんけれども、できるだけ早く終わっていただきたいというふうに思いますし、これが終わりましたら私の思い残すことはないわけでございますけれども、しかし、その途中でも、この抜本改革の進みぐあい、ここまで今やっておりますということを皆さん方に情報開示を進めながら、進めていきたいというふうに思っているところでございます。
中川(智)委員 大臣、この質問のその次に、このように御発言されています。「医療制度の改革というのには、本当にさまざまな面で改革をしていかなければならない点がある。」ここからなんですが、「ですから、もういよいよお金が足らないという事態になって、慌てて患者の皆さんに、あるいは国民の皆さんに負担をしてくださいというような、こういう制度のあり方ではいけない。もっと本格的な制度改革というものをしていかなければならないのでありまして、思いついたように、火がついたように改革をするというようなことはできないわけであります。」
 ということで、大臣に御就任になってから一年余りがたちました。大臣の気持ちの中はきっと、改革、抜本改革、早く仕上げていかなければいけないという決意で満ちあふれていると思います。この感想を伺いたかったんですが、今のお言葉の中に種々盛り込まれていましたし、議論はこれからでございますので、また後日させていただきます。
 続きまして、保険者機能の強化について伺います。
 今回の健保法改正の附則の中には、社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会による診療報酬の審査及び支払いに関する事務処理の体制の見直しについて、おおむね三年を目途にその具体的な内容、手順及び年次計画を明らかにして、所要の措置を講ずるというふうにされています。
 しかし、仄聞いたしますところによりますと、法案作成前につくられた政府と自民党との合意の中では、支払基金と国保連と二分化している現行の審査支払い体制を三年以内に一本化することというような議論があったやに聞いております。これがその方向で検討がされるとしたら、大変なことだと考えております。
 例えば、三月二十九日に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画では、保険者の本来的機能の発揮として、レセプトの審査支払いに多様な選択を認めるというふうにしておりまして、一本化とは非常に対極をなすというふうに考えざるを得ません。このような政府と与党内での不一致というのは、国民に負担を与えこそすれ、明るい医療の将来像というのがなかなか見えてまいりません。
 そこで、一点目と二点目、あわせて御答弁をお願いしたいのですが、保険者機能の強化は、既に五年前に、これも自社さの連立のときに、医療保険制度改革協議会、そこにおきまして、「保険者は、被保険者の立場に立ってその機能を強化し、制度運営の安定化のため、レセプト審査などの充実を図る。」ということが合意されております。保険者機能は強化されていて当然ですが、それは現在どうなっているでしょうか、これが一点。
 二点目は、国民健康保険と被用者保険とでは、加入者の類型も、また徴収方法も違っていまして、一本化という議論には無理があると考えます。そしてまた、両組織が並立していて競い合うことの方が、一つには、あるべき保険者機能の強化ということにはつながっていくのではないかと我が党は考えておりますが、所見をお願いいたします。
田村大臣政務官 先生今おっしゃられましたとおり、平成九年、先生が与党におられたときでありますけれども、与党医療保険制度改革協議会の「二十一世紀の国民医療」という中におきまして、今おっしゃられましたとおり、レセプト審査の充実でありますとか、また相談窓口の設置、健康相談等々を強化していこうというような提言をお出しいただいた。
 その中において、提言に沿いまして、例えばレセプトの審査の充実という意味では、点検事務センターというものを、より集約的に機能を強化した、専門性を持ったところでしっかり審査していこうということでつくらせていただいて、設置をいたしております。
 これに関しましては、その効果といたしましてですけれども、平成十年度にできてから平成十二年度まででありますが、レセプト、保険給付費の返還でありますとかまた診療報酬請求額の調整等々を含めた金額、件数でありますけれども、順調に伸びてきておりまして、件数、十一年度では七・二%、十二年度では二・三%伸びております。金額でも、十一年度七・八、十二年度一・〇ということでありまして、十二年度一千七十三億円ということで、これは機能強化といいますか、効果が上がってきておるということであります。
 同時に、健保組合員に関しましても、この保険者機能の強化ということで、今いろいろと企業等々が多様化といいますか多角化をしていく中において、こういうようなそれぞれの保険集団のあり方がどうであるかということも考えながら規制緩和をしていこうということで、そこら辺は、実際問題、融通のきくような形で、保険者集団が再編できるような形で、いろいろな規制緩和をさせていただいておるということもございます。
 さらには健保組合等々の予算、これに関しては、今まで認可制度であったのを届け出制度に変えさせていただいたりいたしまして、さらに強化をいただく、規制緩和の中で強化をいただいて、それぞれの団体が自主努力をしていただくという方向でいろいろと御努力をいただいております。
 いずれにいたしましても、基本はそれぞれの保険者が努力をいただくということでありますが、努力いただきやすいような環境をつくるために頑張ってまいりたい、このように思っております。それが一点。
 それからもう一点が、今言われました支払基金と国保連、統合をするんじゃないかというようなお話がありましたけれども、これも御承知のとおり、今も先生おっしゃられましたけれども、昨年の十二月、いつも言うんですけれども、例の特殊法人整理合理化計画の中におきまして、この支払基金に関しましても、レセプトの審査支払いを主たる業務としつつも、老人保健関係業務等をあわせて実施する組織として民営化法人としていくことというようなことを言われておるわけであります。一方、国保連に関しましては、もちろん支払いまた審査業務のみではありませんでして、保険者事務の共同事業等に関するような業務もあわせて持っております。
 それぞれ、その支払いとかまた審査という意味では共通しておりますところもありますので、これはIT化等々ございますから、そういうところも含めて、より効率的な分野では協力して融通がきくような形にしていこうという方向ではありますけれども、それぞれの業務もあるということでありますので、今すぐに一本化というような話ではございませんでして、一方で、今回の法律の附則に載っておりますように、保険制度自体をどうするか、保険というものが、高齢者、老人保健等々も含めてどういうような体制に変えていくかという議論も実はやっていかなきゃならない。
 一元化という話もありますけれども、それはこれからの議論であろうと思いますが、そことやはり密接に絡んでくる部分でもあろうと思いますので、これからの議論をさせていただく中において、最もよい方向性というものをしっかりと模索をしていきたい、このように思っております。
中川(智)委員 それでは、次に移りたいと思います。医療事故の問題。
 先日、我が党の阿部知子議員が質問主意書を出しまして、八十二の特定機能病院、出てきたわけですが、やはりこれも、いろいろ、出し方、そして把握の仕方、安全管理委員会のあり方等々、見直すべき点たくさんございますが、今回は私は、医療事故一つとりましても、表現も、報道の方でも医療事故、医療ミス、医療過誤、医療被害、そういうふうにたくさん分かれていて、そして医療事故そのものの定義さえあいまいである。私は、やはり医療被害。患者にとって本当に医療の質が、負担が一方ではありながら、医療の質がどう高められていくのか。医療が患者にとって信頼を取り戻していくことの第一歩というのはここが原点だと考えております。
 医療事故が起きた場合に、医師免許の取り消し等の行政処分ができるのは現在は医道審だけですけれども、医道審でも随分処分漏れがあるということを聞いております。私どもの目から見ましたらば、処分漏れさえも放置しているという現実があるんですが、それはなぜなのでしょうか。その理由について端的に、たくさんこれに関して質問をさせていただきたいので、端的にお答えください。
田村大臣政務官 医療事故に関しては、医道審といいますか、そうでございますね、医師法において、免許等々に関してのいろいろな欠格事項等々の部分に関しまして、当然刑事処分されたものに関しては対象になってくるわけでありますけれども、先生が漏れておると言われたのが、どういう部分が漏れておるかというふうなことがちょっと私もしっかりと把握しておりませんでして……。
 質問でいただいた部分では、例えば民事訴訟等々が起こったものに関しては、要は、これが対象になっていないんじゃないか、非常に甘いんじゃないかというようなお話というふうに承っておりますが、これに関しましては、例えば、刑事処分をされたものに関しては、ある意味では厳格な事実認定の手続というものをしてきておるんであろうというふうに思うわけでありまして、重大な不利益を非常に与えるといいますか、実際問題、医師免許等々を剥奪という話になりますとこれは大変な重い話にもなってこようかと思いますので、そういう意味からしますと、民事訴訟だけ起こった状況で果たしてそれが的確であるのかというのは、なかなか判断するのがこれは非常に難しいなというふうに思います。
 いずれにいたしましても、今後とも引き続き、処分の事由に該当するものを的確にやはり把握するということは大変重要であろうというふうに思いますので、その点は各方面からいろいろな御議論をいただきたいとは思うわけでありますけれども、ただ、現状で、今も言いましたとおり、民事訴訟が起こった、いろいろな民事訴訟が起こっておる経緯があろうと思いますけれども、それだけで処分をするというのはなかなか厳しいものがあるんじゃないかなというふうに思っております。
中川(智)委員 医療事故の問題に関してはたくさんの報道があるわけですが、例えば、これは二〇〇一年十一月の毎日新聞の記事ですが、刑事罰の医師、刑事罰ですね、だからこれは医道審にかかるはずの刑事罰の医師、もう十三人が時効になっていると。そして、いわゆる情報をどのようにとっているかということなんですね、その医道審で情報を。
 先日の質問主意書の中でもありましたが、情報というのが、一年間に医療事故がどれぐらい起きているかという、その数はどのような方法で把握しているのか。それだけをもう端的に教えてください。
田村大臣政務官 どのように把握しておるのかという話でございますが、いろいろな把握の仕方はあろうと思うんですけれども、実は都道府県に報告をお願いしておるというのが現状でございまして、医療法で、都道府県等々が立入検査等々をする、そういう規定がありまして、年に一回、定期的にやられておると思います。もちろん、何か問題が起こったときには随時やっておると思うんですが。
 そのときに、何かの事故があったことに関しては、管理上重大な事故であった場合には御報告をお願いしたい、それからまた、軽微な事故でありましても、再発の防止等々も含めて、これは参考になるなというような軽微な事故に関しても御報告をいただくようにお願いしますということで、現状は、義務というよりかは、都道府県にお願いをさせていただきまして、そこから上がってきた情報で医療事故等々を把握しておるというような形であります。
中川(智)委員 今、都道府県とおっしゃいましたが、いわゆる公立、公の病院だけの把握だと思います。それも、どのようなものはどのように報告するかというシステム化はされていないというふうに承知しておりますし、先日の質問主意書は、すべて報道ということで、報道での把握ということが明記されておりました。政務官、もうちょっとそのあたり調べていただいて、後日、御答弁をお願いしたいと思います。
 刑事罰だけで、その理由は先ほどお述べになりましたが、民事事件に関してはその中に入れていないということは伺いましたが、実は、刑事事件というのは医療事故のほんの一部分、一握りなわけで、特にやはり、被害者が訴える場合は民事が大変多うございます。なぜそれを対象としていないのかということに対しては常に疑問に思っておりますし、ちゃんとした正確な医療事故を把握する気が厚生労働省にあるのかどうかということすらも本当に疑問に思いますし、驚きでございます。医道審だけが唯一の行政処分機関であることの重要性というのをしっかり考えていただきたいと思います。
 次に、医療事故に関連いたしまして、病院の数をちょっと教えていただきたいんです。これは質問通告してありますので、国公立病院、今政務官がおっしゃいましたように現在の公立病院での報告、それもシステムとしてはなっていないんですが、国立病院そして民間病院の数を端的にお答えください。
宮島政府参考人 医療施設調査によりますと、平成十二年十月一日現在の数字でございますけれども、国、公的医療機関等は千八百六十三、それ以外のいわゆる民間病院の数は七千四百三、合わせまして九千二百六十六というふうになっております。
中川(智)委員 ただいまお答えの中の民間病院というのは、二十床以上の医療機関ということですね。クリニックなどは把握していらっしゃいますか。私たち、地域の中で生きていますと、やはりごくごくそばのクリニックにかかることが多いわけですが、その数は。
宮島政府参考人 いわゆる一般診療所で見ますと、これは九万二千八百二十四ございまして、そのうち、国のものが五百八十一、公的医療機関が四千二百三十七、いわゆる社会保険関係団体のものが八百四十、医療法人が二万四千三十一、それからいわゆる個人立のものが五万三千六百四十六、その他が九千四百八十九というふうになっています。
中川(智)委員 今お伺いしまして、やはり圧倒的に民間病院が多いし、私ども患者というか国民が利用するのは、地域の民間病院にかかるということが多いわけなんですね。民間病院が身近で、その民間病院で起きている医療事故というのは厚労省は把握していらっしゃいますでしょうか。
宮島政府参考人 先ほど政務官からも御答弁申し上げましたけれども、厚生労働省といたしましては、現在のところ、各都道府県に対しまして、医療機関における管理上重大な事故があった場合、それから軽微な事故であっても参考となるような事案があった場合については、その概要の情報提供を依頼しているところでございます。
 これによりますと、平成十一年一月から平成十四年三月までの間に報告を受けた医療事故件数は二百五十八件になっておりまして、そのうち、いわゆる民間病院に係るものは七十六件というふうになっております。
中川(智)委員 今の都道府県が把握しているというのは、どのような場所で、どのようなシステムで把握しているんでしょうか。それを端的にお願いします。
宮島政府参考人 主として、いわゆる報道機関等で報道されたものとかあるいは先ほどの立入調査で把握されたもの、こういったものをもとに報告されているというふうに承知しております。
中川(智)委員 そうしたら、主にやはり報道機関が察知して新聞に載って、かなりもう大きな記事になりますね、大抵重大な、重篤な事故なので。その周辺で、どれほど多くの人が泣き寝入りをしていたり、そしてどこに相談をしたらいいかわからないということがございます。民間病院からのきっちりした把握というのが主に報道ということで、現状を把握していないという事実を今知りました。やはり厚生労働省は、監督義務というのが法律で明記されていまして、民間病院に対してもきっちり把握をしなければいけない、その義務があるわけです。
 そこで、この現状にかんがみて、民事事件を含めて、そして民間病院の事故の現状をすべて把握しているところ――ここは大臣にぜひとも聞いていただいて、ちょっと金融庁に先にお答えいただきたいんですが、すべて把握しているところは、医賠責の保険会社、いわゆる民間の保険会社です。保険金が支払われる、この事実によって、医療事故の民間病院などでの発生というのを一番民間でつかんでいるのがいわゆる損保の会社です。ほとんどのお医者様はこの医賠責保険に入っているんですが、この情報を保険会社から出していただけば、新たな人手をかけなくても、医療事故が一年間でどれだけ起きているかということがわかります。総額でどれぐらい保険金が支払われているかということが正確にわかるわけです。
 金融庁、この医賠責の保険金の情報というのを私いただきたいと思うのですが、そのつかんでいる実績、資料としてお出しいただけますでしょうか。
田口政府参考人 お答えいたします。
 保険会社につきましては、保険業法上、保険契約者等の保護の観点から、保険会社の業務の状況を示す指標などにつきまして公表を義務づけております。これによりまして、各保険会社は主要な保険種目ごとの保険金支払い額などにつきまして開示を行っているわけでございますが、個々の保険商品ごとの数値までは開示対象とはいたしておりません。保険業法におきます保険契約者等の保護の観点からは、個々の保険商品ごとの指標まで公表を求めるのは、大変恐縮ですが難しいというふうに考えております。
中川(智)委員 どのような形でなら出していただけるんですか。個々はもう無理と。じゃ、どこの病院で、どれだけのという、その保険金が、個々には出ないということですが、トータルで出せるということですか。
田口政府参考人 現在、保険業法上の開示の形といたしましては、主要な保険種目ごとの開示ということで、これは具体的には、例えば火災保険でありますとか傷害保険というような種目ごとのトータルの数値ということでございます。したがいまして、医師賠償責任保険というような形でトータルの支払い総額等につきまして開示をするということは困難であるというふうに考えております。
中川(智)委員 大臣、やはり医療事故をなくしていくには、監督義務がある民間の病院に現在どれぐらいの医療事故が発生しているか、どこの病院という個別のはいいですが、実態把握、監督責任がある厚生労働省がその実態把握をしていく。今刑事罰でしか医道審もない、都道府県も報道などでそれを知って実態を把握する。実態把握しなければ前に進みません。
 医療事故をなくしていこう、そのためのシステムづくりに着手しようとするならば、個別の病院名はよしとしても、今どれぐらいの医療事故が起きていて、それに保険金がどれだけ支払われているかということは、大臣、やはりつかむということでの検討をお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 医療事故もピンからキリまでと思うのですね。ピンからキリまでという言い方は失礼ですけれども、本格的な医療事故もあれば、そこまでも至らないものもある。
 その辺のところを一体どう把握するのかということでございますが、これはある程度の基準をつくって、少なくともこれこれ以上の医療事故、それについては把握をするのにどうしたらええかといったようなことにしないと、統計として、全体として、全部小さなものまで含めたらどれだけ起こっているのかという年間の数字を見るだけの話ならば、それは私はできると思うのですよ。今おっしゃったような民間の方からも、トータルとしての数字だったら私は出していただけるのではないかというふうに思っておりますが、個々のケースについてそれを出してほしいというのはなかなか難しいのだろうと思いますね。
 そういたしますと、その場合に、国の方がどうしても知っていなければならないケース、そうしたものはどこ以上かということを明確にして、そしてそれを把握する方法をもう少し検討しなきゃいかぬと今思って聞いていたのです。
中川(智)委員 委員長、ごめんなさい。最後に一言、局長に。
 損保会社に、個別のケースはいいんです、医療事故数、年間支払い保険金、そしてその総額を医療事故だけに限って出していただきたい、それを頼んでいるのです。それぐらいのこと出せなきゃ。プライバシーは守るということで。今大臣おっしゃったのは、滑って転んで患者がということを言っているんじゃないのです。本来の治療の形ではない治療を行ってしまった結果保険金が支払われるというのは、それはもう重篤な医療事故なんですよ。やたらと言っていませんよ。本来あるべき治療がされていない、それで保険金までも支払われた、そのケースに対して、持っているのは損保会社だけなんです。
森委員長 中川君、申し合わせの時間から既に経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。
中川(智)委員 ですから、出してください、出すべきですよ。一言、ちゃんと。でないと、とことんやりますから。
森委員長 宮島医薬局長。簡潔にお願いします。
宮島政府参考人 御指摘の、医療事故の事例をどう把握するかという問題につきましては、去る四月十七日に医療安全対策検討会議が出されました報告の中でも、その問題が指摘されております。
 この中では、事故事例につきまして収集分析して事故予防に活用するというために、いわゆる強制的な調査とかあるいは報告を制度化すべき、そういう意見がございますけれども……(中川(智)委員「今の金融庁の話だけでいいんですよ。出せるか、とる気があるかどうか」と呼ぶ)
 それで、金融庁の方はまた別の方で後ほど御答弁あるかと思いますけれども、いずれにしても、そうしますと、逆に当事者の免責を行うことなく報告を求めると、かえって事故の隠ぺいにつながりかねないという別の意見もありまして、そういったさまざまな意見も踏まえまして、事故の収集どうあるべきかということにつきましては、今後そういった法律の専門家等も含めましてワーキンググループをつくって検討していきたいというふうに思っております。
森委員長 申し合わせの時間が既に大分経過しておりますので、これにて打ち切らせていただきます。
中川(智)委員 金融庁、ちょっと、要るんですって。ほら、一生懸命手を挙げていますから。これだけ聞かせてくださいよ。
森委員長 もう既に過ぎております。
中川(智)委員 過去十年ぐらいの、今私が申し上げたその資料は出してください。でないと、一切この医療事故に対して手がつけられないんです。
 金融庁、先ほどの、まとめた医療事故数、年間支払い金と総額、それに限って、プライバシーは守るということで、出してください。
森委員長 次回は、来る二十二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十七分散会


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