衆議院

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第17号 平成14年6月5日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年六月五日(水曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岡下 信子君    上川 陽子君
      木村 義雄君    北村 誠吾君
      後藤田正純君    近藤 基彦君
      左藤  章君    佐藤  勉君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      竹本 直一君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    林 省之介君
      原田 義昭君    福井  照君
      松島みどり君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    宮本 一三君
      谷津 義男君    山口 泰明君
      吉野 正芳君    家西  悟君
      大島  敦君    加藤 公一君
      鍵田 節哉君    金田 誠一君
      五島 正規君    土肥 隆一君
      前田 雄吉君    三井 辨雄君
      水島 広子君    江田 康幸君
      桝屋 敬悟君    樋高  剛君
      小沢 和秋君    瀬古由起子君
      春名 直章君    阿部 知子君
      中川 智子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   総務大臣政務官      滝   実君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           清水  潔君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            澤田陽太郎君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 石本 宏昭君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月五日
 辞任         補欠選任
  自見庄三郎君     原田 義昭君
  竹本 直一君     宮本 一三君
  棚橋 泰文君     山口 泰明君
  松島みどり君     近藤 基彦君
  吉野 正芳君     左藤  章君
  大島  敦君     前田 雄吉君
  瀬古由起子君     春名 直章君
同日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     松島みどり君
  左藤  章君     吉野 正芳君
  原田 義昭君     自見庄三郎君
  宮本 一三君     福井  照君
  山口 泰明君     棚橋 泰文君
  前田 雄吉君     大島  敦君
  春名 直章君     瀬古由起子君
同日
 辞任         補欠選任
  福井  照君     竹本 直一君
    ―――――――――――――
六月四日
 安全で行き届いた医療・看護実現のための国立病院・療養所の看護師増員に関する請願(三村申吾君紹介)(第三六七五号)
 同(阿部知子君紹介)(第三七四五号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第三七四六号)
 同(荒井聰君紹介)(第三七四七号)
 同(一川保夫君紹介)(第三七四八号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第三七四九号)
 同(黄川田徹君紹介)(第三七五〇号)
 同(古賀一成君紹介)(第三七五一号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第三七五二号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第三七五三号)
 同(島聡君紹介)(第三七五四号)
 同(達増拓也君紹介)(第三七五五号)
 同(中川正春君紹介)(第三七五六号)
 同(中林よし子君紹介)(第三七五七号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第三七五八号)
 同(原陽子君紹介)(第三七五九号)
 同(原口一博君紹介)(第三七六〇号)
 同(山内惠子君紹介)(第三七六一号)
 同(山田敏雅君紹介)(第三七六二号)
 同(山井和則君紹介)(第三七六三号)
 同(山元勉君紹介)(第三七六四号)
 同(吉井英勝君紹介)(第三七六五号)
 同(阿部知子君紹介)(第三七九三号)
 同(荒井聰君紹介)(第三七九四号)
 同(粟屋敏信君紹介)(第三七九五号)
 同(今川正美君紹介)(第三七九六号)
 同(奥田建君紹介)(第三七九七号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第三七九八号)
 同(黄川田徹君紹介)(第三七九九号)
 同(今田保典君紹介)(第三八〇〇号)
 同(重野安正君紹介)(第三八〇一号)
 同(東門美津子君紹介)(第三八〇二号)
 同(細野豪志君紹介)(第三八〇三号)
 同(松本龍君紹介)(第三八〇四号)
 同(山内惠子君紹介)(第三八〇五号)
 同(横光克彦君紹介)(第三八〇六号)
 同(粟屋敏信君紹介)(第三八五一号)
 同(今川正美君紹介)(第三八五二号)
 同(大出彰君紹介)(第三八五三号)
 同(川田悦子君紹介)(第三八五四号)
 同(黄川田徹君紹介)(第三八五五号)
 同(北橋健治君紹介)(第三八五六号)
 同(小林憲司君紹介)(第三八五七号)
 同(今田保典君紹介)(第三八五八号)
 同(東門美津子君紹介)(第三八五九号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第三八六〇号)
 介護保険緊急改善に関する請願(藤木洋子君紹介)(第三六七六号)
 健保三割負担、保険料の引き上げ中止に関する請願(金田誠一君紹介)(第三六七七号)
 介護保険の在宅介護利用料の引き下げ等緊急改善に関する請願(中林よし子君紹介)(第三六七八号)
 患者負担引き上げ中止に関する請願(大幡基夫君紹介)(第三六七九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三七二五号)
 同(大島令子君紹介)(第三七二六号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第三八二二号)
 同(川田悦子君紹介)(第三八二三号)
 同(小林憲司君紹介)(第三八二四号)
 同(水島広子君紹介)(第三八二五号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(原口一博君紹介)(第三六八〇号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三七二七号)
 社会保障拡充に関する請願(野田聖子君紹介)(第三六八一号)
 国立病院・療養所の院内保育所の存続・拡充に関する請願(山口わか子君紹介)(第三六八二号)
 同(原陽子君紹介)(第三七二九号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(小沢和秋君紹介)(第三六八三号)
 同(山口わか子君紹介)(第三六八四号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三七三〇号)
 同(不破哲三君紹介)(第三七三一号)
 同(牧野聖修君紹介)(第三七三二号)
 同(山口富男君紹介)(第三七三三号)
 同(吉田公一君紹介)(第三七三四号)
 同(植田至紀君紹介)(第三七八六号)
 同(中津川博郷君紹介)(第三七八七号)
 同(横光克彦君紹介)(第三七八八号)
 同(阿部知子君紹介)(第三八二九号)
 同(今川正美君紹介)(第三八三〇号)
 同(川田悦子君紹介)(第三八三一号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第三八三二号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(金田誠一君紹介)(第三六八五号)
 同(阿部知子君紹介)(第三七三六号)
 同(三井辨雄君紹介)(第三七三七号)
 同(川田悦子君紹介)(第三八四六号)
 同(山井和則君紹介)(第三八四七号)
 安心の医療制度への抜本改革、負担増反対に関する請願(山花郁夫君紹介)(第三六八六号)
 同(大島敦君紹介)(第三七三八号)
 同(小平忠正君紹介)(第三七三九号)
 同(山花郁夫君紹介)(第三七四〇号)
 同(吉田公一君紹介)(第三七四一号)
 同(吉田公一君紹介)(第三七九一号)
 同(北橋健治君紹介)(第三八四八号)
 同(小林憲司君紹介)(第三八四九号)
 非喫煙者健康保護法制定に関する請願(山口わか子君紹介)(第三六八七号)
 同(土井たか子君紹介)(第三七四四号)
 同(重野安正君紹介)(第三七九二号)
 介護保険制度の改善に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七一一号)
 介護保険の緊急改善に関する請願(牧野聖修君紹介)(第三七一二号)
 高齢者医療制度の改悪反対、現行制度堅持に関する請願(土井たか子君紹介)(第三七一三号)
 重度障害者のケアハウス設置に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七一四号)
 重度障害者の障害基礎年金増額に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七一五号)
 障害者雇用率引き上げ及び職域開発に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七一六号)
 障害者の医療制度改善に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七一七号)
 人工呼吸器を必要とする脊髄損傷者に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七一八号)
 脊髄神経治療の研究開発促進に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七一九号)
 日常生活用具の意志伝達装置の支給対象者拡大に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七二〇号)
 ベンチレーターを必要とする脊髄損傷者が社会参加するための環境整備に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七二一号)
 無年金障害者の解消に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七二二号)
 労災遺族年金支給制度及び要件の改善に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七二三号)
 労働者災害補償保険法の改善に関する請願(鈴木康友君紹介)(第三七二四号)
 医療費負担引き上げの中止に関する請願(小沢和秋君紹介)(第三七二八号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げなどの中止に関する請願(土井たか子君紹介)(第三七三五号)
 同(河村たかし君紹介)(第三七八九号)
 同(中川智子君紹介)(第三七九〇号)
 同(金子善次郎君紹介)(第三八三三号)
 同(鎌田さゆり君紹介)(第三八三四号)
 同(川田悦子君紹介)(第三八三五号)
 同(木下厚君紹介)(第三八三六号)
 同(小林憲司君紹介)(第三八三七号)
 同(古賀一成君紹介)(第三八三八号)
 同(島聡君紹介)(第三八三九号)
 同(中川智子君紹介)(第三八四〇号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第三八四一号)
 同(日森文尋君紹介)(第三八四二号)
 同(細川律夫君紹介)(第三八四三号)
 同(牧野聖修君紹介)(第三八四四号)
 同(松本龍君紹介)(第三八四五号)
 医療費値上げ反対、医療費制度の充実に関する請願(不破哲三君紹介)(第三七四二号)
 同(山口富男君紹介)(第三七四三号)
 医療制度改革案反対に関する請願(中川智子君紹介)(第三七八三号)
 安全で行き届いた看護の実現に関する請願(横光克彦君紹介)(第三七八四号)
 同(今川正美君紹介)(第三八二七号)
 移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(横光克彦君紹介)(第三七八五号)
 同(今川正美君紹介)(第三八二八号)
 中国帰国者の老後生活保障に関する請願(阿部知子君紹介)(第三八一七号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第三八一八号)
 同(古賀一成君紹介)(第三八一九号)
 同(水島広子君紹介)(第三八二〇号)
 同(山井和則君紹介)(第三八二一号)
 児童扶養手当の抑制案撤回に関する請願(水島広子君紹介)(第三八二六号)
 助産師の養成に関する請願(水島広子君紹介)(第三八五〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)
 健康増進法案(内閣提出第四七号)
 医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出、衆法第一一号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(五島正規君外三名提出、衆法第一三号)


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、健康増進法案、山井和則君外三名提出、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案及び五島正規君外三名提出、健康保険法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官清水潔君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、健康局長下田智久君、医薬局長宮島彰君、職業安定局長澤田陽太郎君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、老健局長堤修三君、保険局長大塚義治君及び政策統括官石本宏昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡下信子君。
岡下委員 おはようございます。自由民主党の岡下信子でございます。大臣、副大臣以下皆様方、毎日大変御苦労さまでございます。
 私は、この厚生労働委員に加えていただいたのがことしの一月からでございまして、本当に医療、福祉あるいは年金、雇用の問題とか、我々の生活に密着した大変幅広い問題を抱えておりますこの委員会で目下勉強中でございますので、質問も少しおぼつかないところがあるかと思いますけれども、一生懸命取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 きょうは少子化について、これ一つに絞って質問をさせていただきたいと思います。この少子化対策というのは、前回でも、この委員会でも何回も議論として取り上げられていたと思うんですけれども、私は、自分の体験を踏まえまして、少々突っ込んでこの点についてお伺いしたいなと思っております。
 少子高齢化ということは大変な問題でございますけれども、なかなかその歯どめをかけるのは容易なことではないと思っております。医療制度あるいは雇用施策、保育施策あるいは年金制度のさまざまな公的な施策はもとより、子育てに対する意識の問題とか教育費の問題とか、いろいろな社会的な仕組みに深くかかわっておりまして、容易なことではないのは承知なのでございますけれども、ことし一月に発表された将来の推計人口によれば、今の日本の人口は二〇〇六年にピークといいますか、一億二千七百七十四万人に達した後、その後二〇五〇年にはずっと降下いたしまして一億五十九万人になるというデータが出ております。この水準は一九七〇年とほぼ同じだということで、どんどん少子化が進展していっていると思いますね、これから将来。また、女性の合計特殊出産率というんでしょうか、一・三九といいまして、それと、結婚した夫婦が生涯に産む子供の数が一・七二に低下する。
 一層少子化が進んでいくのでありますけれども、この少子化の原因というのは一体どこにあるのか。いろいろな原因があると思うんですけれども、厚生大臣にお伺いしたいと思います。大臣はこの原因は大体どういうところにあるとお考えなんでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 おはようございます。
 少子化の問題、本当に大変な状況になってまいりまして、二十代後半の女性の未婚率というのは、一九八五年から二〇〇〇年、この間に三割から五割に上昇をした。あるいはまた、結婚をされました皆さん方の中からの出生率というものも減ってきている。今までは晩婚化ということで説明をされてきたわけでございますが、晩婚化だけではなくて、結婚をなすった皆さん方からの出生率というものも減ってきたという状況でございます。
 これが何に原因をしているのかということは、非常に難しい、一言で言い切れないものがあるんだろうというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、やはり若い皆さん方の意識がかなり変わってきていることは間違いがありません。したがいまして、高齢化の問題は、これは財政出動をすれば片がついたんですけれども、少子化の問題は、財政出動をさせてもなかなか決着がつかない、大変難しい問題だというふうに思っております。
 もちろん中には産みたい方もおみえでございまして、産みたいけれどもなかなか環境が整わないのでぜひ保育所等を整備してほしいというふうに御指摘をいただく方もあるわけでございますから、そうした問題でありますとか、あるいは女性が職場で働いていただきやすいような環境をどうつくり上げていくかということは、これはもう当然のことながら大切なことでございますけれども、それだけでそれじゃこの少子化が解決でき得るかといえば、私は、多分それだけではできないのであろうというふうに思っております。
 いつかも申し上げたかもしれませんけれども、心理学の本なんかを拝見いたしますと、心理学者の皆さん方が、結婚をなさらない女性に対していろいろの調査と申しますか、対面調査等をやっておみえになるわけでありますが、中には、結婚をしてもプラスになることはない、得なことはない、こうお答えになっているわけであります。ちょっとそのお言葉を聞きますと、損得勘定でいきますとなるほどプラスにはならないのかなと。時間はなくなりますしお金もかかりますしというようなことがあって、行かないというようなことがあるのかなというふうに私も思いますが、もう少し複眼的にと申しますか、将来のこと、子供を持つことの喜び、そうしたことを複眼的にお考えいただけるようになればなというふうに思っているような次第でございます。まとまりませんけれども、そんな思いでおります。
岡下委員 ありがとうございます。
 大臣が今おっしゃられました産むための環境が整わないのも一つの原因じゃないかということは全く、私も、そのことについてきょうは少々質問したいとやってまいりました。
 実は、例えば子供を育てる環境をどうしようかとか、それから子育て支援のための例えば保育児ゼロ施策とか、そういうことをあちらこちらで伺いますけれども、不妊で非常に悩んでいる方に対してのことが一つ置き去りになっているんじゃないかな、生まれてからの対策の方が、産むことの対策よりも今少し重きを置いているんじゃないかなというような感じを受けます。
 そこで、不妊ということについては、女性側に体の欠陥がある場合もありますけれども、男性にも問題、原因がある場合があるんですね。ところが、我が国では昔からその責任を女性の方に、いわば嫁さんの方におっかぶせる、そういう陋習というのか悪い習慣というのか、そういうことがあると私は思うんですね。田舎の方に行けば特にそれが強いんですが、嫁して三年子なきは去れとか、あるいは、今、差別用語で不適切な言葉であれば申しわけないんですけれども、あの人はうまずめであるとか、そういうことを言われながら、我々の世代でもそれが残っております。
 子供を産みたくても産めない、そういう方たちが今日本にもたくさんいると思うんですけれども、私もそういう患者の一人でありまして、嫁に行って子供に恵まれないということの精神的なプレッシャーというのは大変なものでございまして、これは筆舌に尽くせない、そういう目に遭った者でないとわからないというような苦労で悩んでいらっしゃる方が今全国にもたくさんいらっしゃると思いまして、私は、そういう苦労をお持ちの方のその気持ちを痛切に理解することができるんです。
 幸いにも、私の場合は、例えば自分の子宮に欠陥がありまして、矯正手術をするという外科的な手術でもって二人の息子に恵まれましたけれども、子供が欲しいといってできない間は、執念にも似たような、そういう思いで病院を渡り歩き、医者をかえ、手だてをいろいろかえて、その原因はあなたの子宮にあるんだよ、矯正手術をすればすぐにも生まれるよと言った、究明してくださった先生にめぐり会えたのが、相当な年月がかかりまして、十年かかりました。しかし、その先生にめぐり会えたおかげで自分には息子が二人授かったわけなんです。
 そこで、こういう不妊の専門家、不妊のカウンセラーから治療から、そういうことを専門的にやっていただくお医者さんが今の日本にはどれぐらいいらっしゃるのか。あるいは、今不妊で悩んでいる、治療を受けている女性がどれぐらいいるのか。ちょっと数字でお示しいただきたいと思うんですけれども、よろしくお願いいたします。
岩田政府参考人 不妊の専門医の数は、申しわけございません、手元にございませんが、今不妊治療を受けておられる患者さんの数は、厚生科学研究で把握いたしております。平成十年度の研究でございましたが、平成十一年二月現在で、全国で約二十八万五千人の方が何らかの形の不妊治療を受けておられるということが推計されております。
岡下委員 ありがとうございます。
 大変な数だと思うんですけれども、これは表に出てきた数であって、まだ表に出ない方が相当、この倍ぐらいいるんじゃないかと私は思うんです。いろいろ治療を受けてもどうにもならない。最終的には、人工授精をしていただきたい、あるいは体外受精にも頼ろうかという方も出てくると思うんです。
 一九八三年に我が国における体外受精で出生が初めて報告されて以来、生殖補助医療というものが着実に進んできたと思うんですね。しかし、例えば、卵管閉鎖であるとか、黄体ホルモン、卵胞ホルモンのバランスが崩れているから、ホルモン治療であるとか、そういうことについては保険治療を受けることができますけれども、それ以外のことですね。例えば人工授精をしていただきたい、それから体外受精をしてもらいたいということに関しては、私は、もう長男が三十歳ですから、三十年前に比べたら今の医療というか技術は非常に進歩していると思うんですけれども、それにもかかわらず保険医療が受けられないということ、これは非常に問題があると思うんです。
 せんだっての民主党の先生もこういう質問をなさったと思うんですけれども、例えば人工授精が一回一万円以上かかりますね。それから、体外受精に至っては一回三十万から六十万かかると言われます。これは、一回で済めば見事成功なんですけれども、何回もやらなきゃいけない、でも、やっても生まれないという人もかなりの数がいると思うんですけれども、結局、お金がない、経済的な問題でその治療を受けられない方もいっぱいいるんですね。
 今私は思うんですけれども、少子化というのはこれは国家の存亡にかかわる問題で、人口がだんだんだんだん減っていくのに何の手だて、手当てはしているんでしょうけれども、こういうことに関して、どうして、不妊治療をお金がかかることで断念しなければいけないという方を助けるという、国からの補助を出していただけないんでしょうか。どうしてこれがいつまでも、何十年もたっても保険治療が受けられないということのどうしてかという理由をお伺いしたいんですけれども、これはどなたでしょうか、保険局長、よろしくお願いいたします。
大塚政府参考人 御指摘ございましたように、不妊治療と言われるものは、幾つか種類といいましょうか、範囲があるわけでございますが、母胎の異常に起因するような場合につきましては、これは当然保険の対象になっておるわけでございます。
 問題は、これもお話ございましたけれども、人工授精でありますとか、体外受精でありますとかといったような処置、医療、これについての保険適用でございますが、人工授精につきましても、科学的な、医学的な進歩は当然しているわけでございますけれども、現時点でのいわゆる成功率というと約一〇%だと言われておりますし、体外受精になりますともうちょっと上がりますけれども、これはまた別途の、あるいは倫理上のと言ってよろしいんでしょうが、社会実態上どう考えるかといった難しい問題がございます。
 医学的に考えますと、ただいま申し上げましたような、まだ発展途上といいましょうか、進歩はしておりますけれども一般の医療保険として導入するまでにはなかなか至っていない、あるいは、新しい技術であるだけに、母体の安全性ということについてもさまざまな医学的な論議がございます。
 そういったことを勘案いたしますと、現時点で保険に直ちに取り入れるというのがなかなか難しいということで、議論を重ねてはおりますけれども、今日におきましては医療保険の適用をしておらない、こういう状況でございます。
岡下委員 厚生省からそういうお答えをいただくんじゃないかなとは予測をしておりました。
 私のいただいたデータでは、平成元年に、体外受精とか胚移植等を実施して出生した出生児というのが三百九十人だったんですね、全国の統計からいいますと。平成十一年には、体外受精を受けた方が一万一千六百七十二名出産しているんですね。
 今、私のころからいっても、何十年もかかっても議論の最中、議論の最中とおっしゃいますと、リスクはあると思うんですけれども、私は、国全体の、これは本当に、二〇五〇年にずっと人口が減っていく、もっともっと減っていくというと、今三十代、四十代の方は、じゃ、我々が年をとったときの年金はどうなるんだろうか、そういう不安も持っておりますね。
 議論をしている最中、いろいろリスクがあります、今ずっとそういうことを、通り一遍の御返答だと思うのですけれども、ここで少し、大臣は退席なさいましたけれども、ある程度の国庫の補助を出してでも、今ここで国が英断をして、保険医療を人工授精とか体外受精とかに出していただくわけにはいかないんでしょうか。
 これでまた、議論して議論してと、二年三年先延べと、これまたずんずん延びていって、例えば、今英断していただいて、スピーディーに、全額とはいかなくても、ここまではとか、ある程度、段階的にでも、保険医療ができるんだよということを世間に公表するというか英断をしていただければ、私は、今、治療をできない、水面下で隠れた方がわっと出てくると思うんです。たとえ一〇%でも二〇%でも、出生率があるならば、ゼロじゃないじゃないですか。ゼロであるよりも、例えば一〇%であれ、十人に一人ですよね。十人に一人、二十人に一人、でも、子供が生まれれば、それだけ、人口が一人二人ふえていくんじゃないですか。
 ですから、ここで厚生省も、何十年もかかって、議論の最中と言わないで、ある程度の英断をもって、この時点で、保険医療、保険にかかれるよということを決めていただくわけにはいかないんでしょうか。そこのところをちょっとお聞かせいただきたい。
狩野副大臣 今、岡下委員のお話をお聞きいたしておりまして、委員の御体験の話を聞きながら、私も同性の一人として、本当に身につまされるような思いで聞かせていただいております。
 少子化対策というのも、本当にこれに対してはたくさんの課題があると思います。委員御指摘のように、不妊治療の保険適用というのは、保険がきくならば、もっと少子化対策に対しての何かの答えになるんじゃないかな、私自身もそういうふうに考えておりますけれども、私も最近勉強させていただいて、人工授精とか体外受精の保険適用については、安全性の問題とか倫理的な問題とか、そういう問題がたくさんあるということも私もいろいろな形で知らされております。それと同時に、保険財政に与える影響、解決しなければならない問題がたくさんあるというふうに考えて、そういうふうに知らされております。
 でも、これも、これからの少子化の問題にとりましては大変な重大な問題だというふうに考えておりますので、前向きにこれからも検討させて、いつも検討させていただくというのが最終的な答えになってしまいますけれども、みんな、だんだんいろいろな考え方が変わってきておりますので、これは本当に前向きに検討していくような状態になるというふうに私は考えております。(発言する者あり)はい、努力をさせていただくように、努力をいたします。
岡下委員 副大臣は、同じ同性として、少々私どもの気持ちをわかっていただけるということも一つの収穫でございますし、ぜひこれは本当に、ちんたらしていると何ぼでも先に延びていって、それでもうお題目のように、少子高齢化だ、どうしよう、そんなことばかり皆さんおっしゃいますけれども、原因はここにもあるわけですから、これを保険医療できるように、ぜひぜひ英断を下していただきたいと思います。
 それから、不妊治療をめぐる問題は、医療だけではなくて、例えば、私が先ほど申し上げましたように、不妊で悩んでいらっしゃる方は、言えないわけですね、こうでああでということは言えないわけです、一般に。例えば、地域においても、そういうことをカウンセリングしていただけるような施設というものがあるとは聞いておりますけれども、そういう気軽に行って相談できる、そして、これをどうしたらいいか、どういうところに行けば自分は救われるか、どういう医者がいるかとか、そういう指導をしてくださる方がいれば、心の悩みを持っている方はどんなに気分が晴れるか、あるいは精神的な問題が解決できるかわからないのです。
 そういう国の施設ができていること、できつつあるんですよということも聞いておりますが、不妊専門相談センターというものも今できているんだそうですけれども、これが平成十六年に全部の県にできるということで、今は半分しかないんですね。それも、一般の方は知らないですよ、そういうところがあるということも。だから、これについても、どういうふうな対処をしていただけるのか、不妊に悩む方々の精神的な悩みを的確に把握して、そして相談に乗ってくださるというような、そういうことを厚生省もお考えになってこういうものをつくっていらっしゃると思うのですけれども、それについて、少し深く伺いたいと思います。
岩田政府参考人 ある統計では、結婚なさったカップルの十組に一組は不妊に悩んでおられるというふうに聞いております。不妊についての医学的な情報が欲しい、あるいは心理的に心の悩みの相談に乗ってもらいたい、こういう必要性があるということは大変強く認識をいたしております。
 ただいま先生も御指摘なさいましたように、厚生労働省におきましては、新エンゼルプランに基づきまして、すべての都道府県に、新エンゼルプランの最終年であります平成十六年度までに、不妊専門相談センターを整備することを目的に取り組んでおります。これは都道府県の事業でございまして、都道府県がその地域の中核病院に不妊の専門医師等を配置いたしまして、専門的な相談に乗る体制をつくっていただくということでございますので、まず、引き続きまして、都道府県にそういう事業の導入についてよくお願いをしていくということだというふうに思います。
 また、既に半数の県ではそういう専門の体制がございますので、そのことをその地域の住民の皆さんによく周知をするということも大変重要であるというふうに今先生の御発言を伺って思いましたので、各都道府県に対して、そのことについてもお話をしていきたいというふうに思っております。
岡下委員 いつもそうなんですけれども、政府のやっていることというのは、なかなか一般の方に通じない、知らないんですね。非常にPRに欠けているなと。こういういいことをやっていますよ、皆さん、どうぞ相談に来てください、例えば、テレビの一こまでもいいから、スポットでもいいから、そういうコマーシャルのようなものも入れて、だから、これは全国民的な問題ですから、取り組まないと、本当に少子化というのは目の前に来ているんですから、そこのところ、よろしく御配慮願いたい。
 それと、小泉総理も、人口推計が出たことしの一月に、それは大変だ、これから子供を安心して育てられる環境の整備など実効性のある対策についていろいろと御指示をされたそうなんですけれども、産んでからの施策は大分ありますね、産むことについての施策、これをひとつこれから厚生労働省においても重点的に考えてやって、実行していただきたいというのが私の切なる希望でございまして、そのことについて、副大臣にもひとつ御決意をお聞かせいただきたいと思います。
狩野副大臣 本当に岡下委員のおっしゃるとおりでございまして、先月の二十一日にも、小泉総理からも、厚生労働省の枠を超えた本当に実効性のある対策を検討するようにという大変強い指示もなされておりまして、厚生労働省といたしまして、少子化社会を考える懇談会、これは普通のメンバーと違いまして、結婚する前の若い女性、それから結婚して今から子供を産もうとしている女性、それから子供を育てている世代という若い世代の方々を中心とした懇談会を開いておりますので、そういう意味でも、私は、この懇談会の議論などを参考にしながら、いろいろな環境の整備というものがこれから強い力で進んでいくんじゃないかというふうに思います。
 私自身も一生懸命、この少子化というのは本当に社会に与える影響というのは大きいわけですので、私も孫を持つ身といたしましても、一人でも多く、少子化対策ということに関して、たくさんの方たちに子供を産んで、そして、子供を産むことがどんなにすばらしいことかということをわかっていただけるような環境づくりというものに一生懸命努力してまいりたいと思っております。
岡下委員 大変心強いお答えをいただきまして、ありがとうございます。
 ちょっと時間があるそうなので、これは私の提言なんですけれども、私は母親の立場から、女性というものは、将来を担う子供をはぐくみ育てる、そういう大変とうとい使命を持ってこの世に生まれてきていると思うんですね。ですので、これはある部分なんですけれども、女の子を持つ母親、お母さん、この母体がいかに大切かということ、それで、自分たちは次代を担う子供を育てなければいけない体であるよ、そういう貴重な教育、それを子供のころから自然に、母親の立場で、女の子を持つお母さんは教育していっていただきたいなと。これは私の願望でもあり、提言でもありますけれども、そういうことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
 本当にありがとうございました。
森委員長 次に、江田康幸君。
江田委員 公明党の江田康幸でございます。
 前回に引き続きまして、健康増進法案についてお伺いをさせていただきます。
 急速な高齢化が進んでいる現在、単に長生きができるだけでなく、高齢期になっても心身ともに健康で充実した生活を送れることが国民一人一人の願いであり、ひいてはこれが、増大する医療費、介護費を抑制することにもつながるという意味で非常に重要であると思っております。健康増進法案は、このような健康で過ごすことのできる期間、いわゆる健康寿命を延ばすことができるよう、初めて健康づくりのための法的基盤を整備しようとするものであり、その意義は大変に大きいと私は思っております。
 健康づくりを進めるためには、全国一律の画一的な指導によるのではなく、地域に根差した着実な活動の積み重ねが重要であり、この法案でも、例えば都道府県、市町村の健康増進計画など、身近な自治体での取り組みを重視していることがうかがえると思います。健康づくりについて全国的に見てうまくいっている例を見てみますと、やはり地域の資源なり特性が健康づくりにうまく活用されて成果をおさめているようでございます。
 その一つの例としまして、本日は、温泉を活用しているものに注目をしてみたいと思います。
 昨年、国民健康保険中央会では、温泉を積極的に活用している市町村では老人医療費が減少しているとの報告書を取りまとめられました。この報告書の中では、具体的な事例も紹介されており、例えば、長野県の北御牧村では、シルバー温泉プール浴教室など温泉を生かした健康づくりを進めましたが、七十歳以上の方の一人当たり医療費は、九四年から九七年にかけて一七・四%も減少したとのことでございます。
 このように、温泉の活用は、疲弊した温泉地域の地域振興と同時に、国民の健康増進面での効果が大いに期待できます。
 温泉を利用した健康づくりの推進という点では、平成元年度から厚生労働省において、運動型健康増進施設と組み合わせた温泉利用型健康増進施設の大臣認定制度を設けられておられます。しかしながら、認定されている施設は、現在、全国で二十八施設と非常に少ない現状でございまして、その普及は決して十分とは言えないものでございます。
 この原因の一つとして、現在の温泉利用型健康増進施設の認定基準が、施設の要件についても、人的な要件も、かなり厳しい要件となっていることが考えられます。もちろんすぐれた施設の普及も大切ではありますが、一方では、より身近な場所でだれもが気楽に利用できるよう、認定施設の普及を図ることも必要であります。
 このほど、公衆衛生協会が設けた温泉利用型健康増進施設のあり方検討会において、こうした現状を踏まえて、従来の施設類型に加えて、新たにいわば普及型の施設類型を追加してはどうかとの報告書が取りまとめられたと伺っております。
 公明党も以前より、温泉利用型健康増進施設の増設と認定要件の緩和を要望してまいりましたが、私は、このような普及型を設けていくことは適切な方法であると考えます。
 そこで、この報告書の内容及びこれを受けた今後の厚生労働省の対応についてお聞きしたいと思います。
 また、さらに進んで、医師が指示する温泉療法というものに関しては、医療・介護保険の適用対象とならないのか、適用されるための条件は何なのか、あわせてお伺いいたします。
下田政府参考人 現在、温泉利用型の健康増進施設につきましては、一定の要件を満たしたものを厚生労働大臣が認定するという仕組みになっておりますけれども、認定要件が厳しいのでなかなか普及しないというのは委員御指摘のとおりでございます。
 今回の報告書におきましては、より普及しやすい新しい施設類型の追加が検討されておりまして、具体的には、温泉活用を中心といたしました健康増進プログラム、これを提供しているということを必須要件とした上で、施設に関します要件としては、トレーニングジム等の運動施設は併設しなくてもよい、また、浴槽は刺激の強いものと弱いものの二種類でよい。指導者の研修に関する要件につきましても、安全管理等、基本的な事項に焦点を絞った講習とするといった、現行より緩和された内容の新しい類型の追加を提案されております。しかし、そのようなプログラムによってどの程度健康増進の効果が出るのか、まずこれを検証する必要があるということも御提言いただいております。
 厚生労働省といたしましては、関係省庁とも連携をしましてこの検証に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、医療保険等との関係についてのお尋ねでございますが、現行制度でも、医師の温泉療養指示書に基づきまして、大臣認定の施設におきましては、温泉療養を行った場合の利用料金は所得税の医療費控除の対象となっておるわけでございます。医療保険や介護保険に一定の治療法を適用するといった場合には、その技術が確立された治療法であることが必要でございますけれども、現時点では、温泉療法はさまざまな形態で行われておりまして、統一的な療法となっていないといったことから、さらにその研究を進めていく必要があろうかと考えているところでございます。
江田委員 温泉利用型健康増進施設につきましては、政府にも普及型に取り組むと前向きな答弁をいただきました。新たな類型について検証して、また研究をどんどん推進していただいて、普及型の施設類型の創設につなげていただきたい、そのように強く思います。
 ただいま御説明いただきました報告書の中でも触れられていたところでございますが、私は温泉は、それ自体の健康増進効果にとどまらず、そのほか健康づくりプログラムと組み合わせて一層活用していくことが求められていると考えます。
 一つの具体的な実例を御紹介いたしますと、昨年の秋、九州の大分県別府で八カ所の温泉郷を会場に、温泉、健康、食、ウオーキングに関するプログラムを体験しながら温泉を再発見する十日間のイベント、温泉泊覧会が催されました。その中に、例えば糖尿病患者のための滞在プログラムというものがあり、温泉の魅力を活用しながら、ストレッチや水中ウオーク、体操といった軽い運動や、食事のとり方などを学べる講座を組み合わせて提供しておりました。この企画は、これからの温泉活用の方向を示していると思われます。
 このように、疾病の治療、さらには健康増進の実践の場として温泉にもっと注目すべきではないかと考え、公明党は温泉の健康面での活用を強く推進してきたところでございます。
 健康増進法案では第七条で、厚生労働大臣が国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針を定めることとされておりますが、健康づくりにおける温泉の一層の活用という観点から、先ほどの質問でも取り上げた温泉利用型健康増進施設などについて、この基本方針の中に位置づけて一層普及していくことが必要なのではないでしょうか。この点についてどのようにお考えか、最後にお伺いします。
宮路副大臣 江田委員御指摘のように、医療や健康増進の面で温泉が大きな効果、効用を持っているということは、古くからそのように言われておるわけでありまして、先ほど長野県の御牧村のお話をされましたけれども、そうした温泉の効用に関する調査結果も出ておるわけであります。私も、この間、日曜日、久しぶりに地元へ帰って温泉に入りましたけれども、東京における疲れもすっかりその温泉でいやされたわけでありまして、改めて温泉のそういう効用を再認識させていただきました。
 そこでというわけではありませんが、健康増進法における基本方針の中にも温泉利用型健康増進施設についてこれをしっかりと位置づけて、先ほど局長も答弁しましたように、その普及をさらに推進していきたい、このように考えているところでありますので、御理解とまた御支援を賜りたいと思います。
江田委員 時間でございます。
 基本方針の中にこの温泉利用型健康増進施設を位置づけるという前向きな答弁をいただいて、ありがとうございます。十分間の短い質問でございましたが、密度の高い質問ができました。ありがとうございました。
森委員長 次に、桝屋敬悟君。
桝屋委員 それでは、続きまして、同僚江田議員に続いて質疑をさせていただきます。
 この委員会もきょうで四十時間を超える議論を重ねておりまして、同僚委員の皆さんの御苦労に敬意を表しながら……(発言する者あり)いや、きょうでという……(発言する者あり)ああ、そうですか、随分時間がたったような気がするわけでありますが。本当に皆さんの御苦労に敬意を表しながら、大分議論も煮詰まってきたなと感じながら、大臣はきょういらっしゃいませんが、私も質疑をさせていただきます。
 私は、高齢者医療の問題について議論を二十分ほどさせていただきたいと思います。
 この委員会でも議論が出ておりますが、高齢者医療とそれから介護保険の絡みの問題、なかなか国民の皆さんにはわかりにくいところでありますが、特に療養型病床群と言われる形態について議論をさせていただきたいと思います。それからもう一点は、老人性痴呆の疾患療養病棟、この点も議論をさせていただきたい。いずれも、医療保険制度で対応するものと、それから介護保険制度で対応する部分、両方あるわけでありまして、なかなかに議論が難しいところがあります。
 最初に、療養型病床群でありますが、今申し上げましたように両方の制度で運営をされているということでありますが、直近のデータで、両方の、療養型病床群、介護の部分と医療の部分、どの程度の整備状況になっているのか、端的に数字でお示しをいただきたいと思います。
堤政府参考人 平成十四年の四月一日現在の数字でございますけれども、指定介護療養型医療施設における介護保険適用の病床数が約十二万八千床でございます。そのうち、いわゆる療養病床が十一万五千床ということでございます。
 医療保険適用の方、ちょっと数字が直近のがございませんけれども、十三年七月一日現在で十七万五千床。これに診療所の療養病床を加えますと十九万床ということでございますので、療養病床ということでいきますと、十一万五千床と十九万床。医療保険、介護保険の療養病床の割合、大体六対四、こういう感じでございます。
桝屋委員 ありがとうございます。
 介護保険が始まるときからそういう六対四というような話は聞いているわけでありますが、私は、この療養型病床群が、介護保険が始まるときに、必ず将来見直しをするときにあるいは制度を運営する中で大きな問題が出てくるだろうな、後々までこの問題が大きなテーマだろう、こう思っておりました。
 きょうは、副大臣いらっしゃいますので、何か副大臣の引き継ぎみたいなことになって恐縮でありますけれども、この問題はずっと私も関心を持っている部分であります。
 それで、そうは思っていたんですが、ずっと私は現場を回ってみますと、山井先生ほど回れはしませんが、自分なりに回ってみますと、意外とこの療養型病床群というのは機能しているということも感じております。
 これは、医療保険制度、介護保険制度、特にお年寄りの社会的入院というようなことを考えても、やはり特養と老健とそれから療養型病床群、あるいはその療養型病床群でも医療と介護の部分、その辺が、やはり特養や老健と比べますと、私は、療養型病床群に入っておられる介護保険の部分を見ても、相当要介護度というのは高い方が入っておられるのじゃないかな、そういう意味では、全体としてそれぞれの地域においてやはり医療を中心とした療養型病床群というこの存在は一定の役割を果たしているのかなということを改めて実は認識をしているわけでして、将来なくなってもいいんじゃないかという思いもあったのですが、なかなか、現場の状況を見ているとその認識も、私の認識も余り正しくなかったのではないかと思ったり、実は悩んでいるところがあります。
 特養や老健と比べての入所者の動向、それから地域における療養型病床群の役割、その辺について、厚生労働省のお考えをお伺いしたいと思います。
堤政府参考人 介護保険の施設、特養、老健、療養病床と三つございます。
 今先生お話のございましたように、要介護度の重い方、どういうふうな感じで入っているかということで申し上げますと、入所者の平均要介護度は、特養が要介護度三・四六、老健が三・〇六、療養病床、介護療養型医療施設が四・〇一ということでございますので、やはり要介護度別に見ますと重い方が入っている。特に療養病床では、要介護五の方が四三・九%と、四割を超える方が要介護五ということでございますので、ほかの特養、老健と比べて重度の要介護者を受け入れているという実態はございます。
 他方、しかし、医療経済研究機構の調査によりますと、介護療養病床の中にも施設や在宅でも十分対応できるという方がやはり四割はいらっしゃるということで、そういう面もある。ある意味では社会的入院を受け入れているという面もございます。
 いずれにしても、特養、老健、療養病床、それぞれの役割が違うわけでございますので、これを少しずつ明確にしていきたい。今回、入院、入所希望者が多い場合には、施設でいろいろ入所者を決める基準を少し明確化したいと思っておりますけれども、そういうことを通じまして、施設の機能をより明確にしていきたいと思っております。
桝屋委員 いみじくも今局長が、特養や老健それから療養型病床群、その役割を介護保険制度の中でも少しずつ明確にしていきたいと。実は、介護保険も既に始まっているわけで、走りながら考えるという、いみじくもその部分ではないかなと思っておりますが、医療保険対応の部分も含めて、これから、じゃ、どうするのかということになるわけであります。
 特に医療型、医療対応の部分については、長期入院患者の特定療養費化の問題がありますから、これからその処理をしなければならない。暫定的な措置もあるようでありますが、この措置を図りながら、介護保険制度でどうするかということも検討しながら進んでいくのでしょうが、これは局が違うわけでありまして、老健局と保険局、それぞれ療養型病床群を担当されているセクションがあるわけで、私は、この療養型病床群をどうするかという観点でしっかり、少しずつ明確にということを今御答弁でありましたけれども、やはり厚生労働省としても方針は明らかにしていく必要があるのではないか、こう思っております。
 これからこの療養型病床群がふえるのかどうなのか、それから医療と介護の役割というのはどうなっていくのかというようなことを議論しなきゃいかぬと思っておりますが、これは副大臣、本当に引き継ぎになって恐縮なんですが、私も全然、そこが大きな課題だなと思いつつも私も頭の中で十分整理ができないままに厚生労働省を辞したような気がしておるのですが、新しい任務につかれて、副大臣、どのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
宮路副大臣 桝屋委員の方がむしろ私よりもよく事情は御承知じゃないかなというふうにも思いますが。
 御案内のように、今度、長期入院患者について特定療養費制度というものを設けることになりまして、その可能性のある患者の方の受け皿としては、単に介護療養病床の増加ということだけではなく、むしろ特養だとかあるいは老健だとかケアハウス、またグループホーム、そういった施設の整備を図り、さらにまた在宅サービスの充実を図ることによって、その受け入れを行っていくということを考えておるわけであります。
 先日、厚生労働省といたしまして、第二期介護保険事業計画を策定する際の基本指針を各自治体に向けまして示したところでありますが、その中では、ただいま申し上げたような考え方に基づいて、介護保険施設等の参酌標準につきましては、平成十九年度の高齢者人口に対する介護保険施設の利用者数の割合をおおむね三・二ということにさせていただき、その中で介護療養病床につきましてはおおむね〇・六という数字を示させていただいているところであります。
桝屋委員 ぜひ副大臣、医療も含めて療養型病床群、これからどうしていくのかということも引き続き御検討いただきたいと思います。今、介護保険の大きな数字はお示しをいただいたわけでありますが、ぜひ今後も検討をお願いしたいと思います。
 もう一点、現場に行きまして私が感じておりますことは、この部分では、例えば特養、老健、それから療養型病床群、療養型病床群は医療と介護があると。では、その中でやはりどういう方を入れていくのか、どういう方が利用されるのかという場合に、特養については、先ほど堤局長から、特養の施設入所基準についてもこれから見直しを図る、単に申し込み順ではなくて優先順位をつけていく、要介護度や介護の実態というものを勘案して優先順位をつけていくというようなこと。これは、なかなか、中央で言うのはみやすいんですが、現場で実際に利用者を、どうサービスをコーディネートするかというのはまことに難しい話だろうと思うんです。
 やはり、重度の方ほど、あるいは医療を要するような方、あるいは痴呆の方あたりの処遇はまことに難しいわけでありまして、そこの、全体のコーディネートが本当にできるケアマネジャーといいますか、そんな方が必要になってくるんじゃないかな。それぞれの地域の中で利用者をどのようにコーディネートしていくか、サービスをコーディネートしていくかということは、大きな課題になっているんじゃないかなという気がいたしております。その辺のお取り組みも、ぜひお願いをしておきたいと思います。
 それから、きょうもう一点の課題でありますが、老人性痴呆疾患の病棟、特に療養病棟でありますが、この制度も平成十四年度改定で取り扱いが変わっているというふうに理解しておりますが、その部分についてまず御説明をいただきたいと思います。
大塚政府参考人 老人性痴呆疾患療養病棟の取り扱いでございますけれども、十四年度診療報酬に関連いたしまして、この点につきましても一部の見直しを行っております。
 一つには、全般的なことではございますけれども、所定の点数の合理化というのがございます。それは別といたしまして、中身に関連するお話ですと、一つには、従来老人性痴呆疾患療養病棟にも一と二というタイプがございました。これを、片方の廃止という形にはなっておりますが、実質的には一本化をいたしまして、看護配置で申しますと六対一、六対一という形のものにする、それが第一点でございます。
 と同時に、この形の、タイプの病棟につきましては、半年ほどの猶予期間を設けますけれども、今後新たにこの形での評価というのはいたさない、新設を認めないといいましょうか、認めないというのも変ですが、新しい形では評価をいたさないということを整理いたしました。将来的に申しますと、後ほどの議論にも関連するのかもしれませんけれども、医療の密度の濃い老人の方々に対しましては、別途、老人性痴呆疾患治療病棟というのがございますので、医療面からそちらのいわば強化といいましょうか、そういう方向を念頭に置いた改定ということでございます。
桝屋委員 ありがとうございます。
 この老人性痴呆疾患療養病棟ですが、これも実は介護保険と医療保険、両方で対応されているところがあって、今、大塚局長の御答弁では、医療対応の部分については、今までの、従来一、二を一に絞り込む、そして、今まで、ことしの九月ぐらいですか、現に評価されているものを除いては新たな評価はもうしない、これ以上。ということは、医療保険の対応としては、これ以上療養病棟がふえるということはないという理解だろうと思うんです、全国で一万床ぐらいかというふうに理解しておりますが。医療はわかりました。
 そうすると、今度は、介護保険の方でこの老人性痴呆疾患の療養病棟の取り扱いはどうなるのかということをお尋ねしたいと思います。
 お尋ねしたい趣旨は、やはり現場においては、これも療養病棟の必要性ということも、どうも現場を回ってみますと、やはり大きな役割を果たしている。特に、痴呆性の老人の行動障害等が、行動制限等をしなきゃいかぬような患者さんについては、やはり医療の管理のもとに処遇をする必要があるということから、この必要性もあるようにも思いますが、それぞれの地域で全部整備されているかというと必ずしもそうでないわけでありまして、介護の方では四千床ぐらいでしょうか。そうしますと、これから新たに地域の中でいろいろ計画を立てた上で、じゃ、これをぜひ始めたい、療養病棟をやりたい、必要性があるという地域も私は出てくるのではないかと思いますが、新たなこういう療養病棟ができるのかできないのか、介護保険の方から伺いたいと思います。
堤政府参考人 介護保険の方では、今保険局の方から御答弁をしたような見直しというのは特に変更しておりませんので、今後ともそれぞれの介護保険事業計画の枠内で指定をすることは可能でございます。
桝屋委員 可能ということですから、そうすると、老人性痴呆疾患の場合の処遇の中で、療養病棟については、医療はもう今の数がこれから推移するんでしょうが、介護についてはこれからもふえる可能性もあるという理解でいいですね。ありがとうございました。
 私はここは本当に、医療とそれから介護、両方で運営されている部分については、これからも走りながら考えるという観点でしょうが、しっかり議論をしていかなきゃいかぬ部分だろう、こういうふうに思っております。特に、現場の状況をよく見きわめながら、これからも検討を進める必要があるだろうと思っております。
 最後に、副大臣にお伺いしたいんですが、介護報酬の見直しについて随分議論がされております。マスコミにも報道されておりますが、在宅サービスの報酬の引き上げというのは結構かなと思っておりますが、その財源を施設報酬から、施設報酬を下げて財源を捻出するということを考えられているのではないかなというふうに思うわけであります。全体でパイをふやせないということは私も十分認識はしておりますが、ただ、安易に施設報酬を下げていいと、上げる話は当然私はできる状況でもないと思っておりますが、安易に下げるということはいかがなものかな。施設報酬体系の中でどこをどう見直すのか。将来にわたって、しまった、あのときにああいうことをしなきゃよかったなということにならないように、ここは慎重に取り組むべきではないか。
 私は、施設運営についてはもっともっと施設に頑張ってもらわなきゃならぬ、やってもらわなきゃいけない仕事はたくさんあると思っているわけでありまして、そういう観点から副大臣の御意見を伺って、質問を終わりたいと思います。
宮路副大臣 今後の介護報酬につきましては、現在、社会保障審議会におきまして、平成十五年度からの見直しに向けて審議を行っているわけであります。
 先日、介護事業経営概況調査というものの結果が出たわけでありまして、それによりますと、訪問介護等在宅介護支援については平均的に赤字である一方、施設介護については、施設については一定の黒字を確保している、そういう結果が出たわけでありまして、そういったことから御指摘のような報道がなされたんだろう、こう思っております。
 いずれにしましても、介護報酬の見直しに際しましては、事業者が事業経営を行う上で適切な水準となっているかという評価、さらに加えて、サービス内容を適切に評価しているかといったような視点から、また、保険財政への影響も踏まえた効率化、適正化という観点も加えて、そして総合的に勘案して検討していく、結論を出していくということになるわけでありますが、御指摘のように、安易なと申しましょうか、そういう御批判を受けないように、ちゃんとそこはきちっと見定めて、そして対処していきたい、こう思っておるところであります。
桝屋委員 ありがとうございます。
 副大臣におかれては、先般、新型特養、ユニットケアもごらんいただいたというふうに聞いておりますので、いい取り組みだ、こうおっしゃっておられました。そうやって頑張っておられるところに水をぶっかけるようなことにはならないようにぜひお願いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
森委員長 次に、鍵田節哉君。
鍵田委員 民主党・無所属クラブの鍵田でございます。
 大臣には、参議院へも行っておられて、今私の質問のためにまた帰っていただきまして、大変御苦労さまでございます。帰ってきていただいた一番しょっぱなに、質問通告しておらないことで御意見をお聞かせいただきたいということで大変失礼でございますが、質問をさせていただきたいと思っております。
 それは、今マスコミをにぎわしております官房長官の非核三原則につきましての御発言がございました。これはオフレコの発言が取り上げられたということのようでございまして、この委員会の始まる直前の理事会にも官房長官がみずから来ていろいろ説明をされたというやに聞いておりますけれども、やはりオフレコの発言というのが一番御本人の本音のところが出る発言でございます。
 そういうことを考えました場合に、被爆者援護の問題の主管官庁とします厚生労働省の長として、大臣として、これをどのように受けとめられるのか。また、これに対して、官房長官に対して抗議を申し入れるというぐらいの気持ちを持っておられるのかどうか。
 特に最近はいろいろな事件が起こりまして、日本の国の根幹にかかわります基本的な取り組みがどうもおかしいんじゃないかと言われるようなことが続いております。そういうことからいたしましても、この問題につきましてはひとつ明確にしていく必要があるのではないかというふうに思っておりますので、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 非核三原則というのは国是でございまして、現在これがずっと守られてきているわけでございますので、これからも守らなければならないし、将来も変えてはならないものと考えております。
 先般の閣僚懇のときに、若干官房長官からも御発言がございまして、そういう趣旨で発言をしたことではないということでございましたので、私はそのように了解をいたしております。
鍵田委員 今まで、割合気楽にオフレコで発言をされて、それが問題になりましてから、後でいろいろ軌道修正をされるということが続いておるわけでございまして、そういう発言のあり方について、やはり厳重に申し入れをするというぐらいのことは厚生労働省として当然のことではないか。むしろ、事実だとは恐らく官房長官もお認めにはならないんじゃないかと思いますけれども、やはり厳重に抗議をするというぐらいのことは最低限必要なのではないかというふうに思いますが、もう一度お考えをお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 在外被爆者の問題等も抱えておりますし、この問題は厚生労働行政にとりましてもかかわりのあることというふうに思っております。
 したがいまして、今後の全体の動向を見させていただきまして、もし仮に私が発言をしなければならないようなことになっていくようでありましたならば、私も明確に発言をしたいと思っております。
鍵田委員 その辺はやはり、今もおっしゃいましたけれども、国の根幹にかかわる、いわゆる国是としての非核三原則。こういう問題について、本当に気軽に発言するようなことのないように、これからも本当に閣僚の一員として十分留意をされるように、今後とも大臣としても申し入れをいろいろな機会にしていただけるようにお願いを申し上げて、このことで私は質問をきょうずっとするつもりはございませんので、この辺で終わらせていただきたいと思いますけれども、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 それでは、先日質問をさせていただいて、引き続いての質問でございますので、残しております課題につきまして幾つか、限られた時間でございますが御質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に薬剤の一部負担金につきまして、今回の法改正では廃止をされるということになっておるようでございますけれども、これにつきまして、この多剤投与の一部負担金につきまして、効果がなかったというふうに見られているのか、それとも、いや、患者負担を三割に引き上げるので、これと薬剤投与の負担と両方であれば大変だろうからちょっと遠慮しようということでなさるのか。その辺の、実際にどういう効果があったのか、なかったのか。
 また、これをなくすることによって財政的にどのような影響が出るのか。薬剤に対する一部負担金が年間どの程度入ってきておったのか。それについて、今度の三割負担とのいわゆる差額につきまして、どの程度になるというふうにお考えになっておるのか。それらにつきましてお聞きをしたいと思います。
大塚政府参考人 幾つかの内容にわたる御質問でございますので、多少長目の御答弁になることをお許し賜りたいと存じますけれども、まず薬剤一部負担、今回の提案しております改正案でその廃止をするということになっておるわけでございますけれども、薬剤一部負担につきましては、御案内のとおり、平成九年の改正で導入をされたわけでございます。
 当時の問題意識といたしましては、薬剤に対するコスト意識を喚起する、あるいは薬剤使用の適正化を図る、さらには全体としての財政へのプラスの寄与といった判断であったわけでございますが、当時の法案の審議を通じ、また制度の実施状況を通じまして、制度が複雑な仕組み、これは定額の負担、薬剤の使用数によりまして負担が変わるという定額負担でございますが、制度が複雑である、あるいは定率負担との関連で二重の患者負担というふうに受け取られる、あるいはそのものではないかといったような御批判が非常に強かったわけでございます。
 その後、議論を重ねまして、平成十二年の改正におきまして、高齢者につきましては定率の一割負担を導入するのにあわせまして薬剤一部負担を廃止いたしました。
 当時の議論も今日にかかわっておるわけでございますけれども、当時の法律の附則におきまして検討規定が盛り込まれまして、現役世代に属する老人以外の薬剤一部負担につきましてもこれを整理する。しかしその場合には、後ほど申しますが、財源との関連がございますから、財源のことも検討した上で整理をするという、法律の附則でそういう御指示も賜ったということもございまして、あわせまして、今回、全般的な見直しの中で、薬剤一部負担につきましては、全体として高齢者も含めて定率負担の徹底が図られますので、あわせて薬剤負担につきましては整理をする、こういう案でございます。
 二つ目に、この薬剤負担を導入したことによります効果のお尋ねがございました。
 薬剤一部負担を導入したそのものによる効果というのはなかなか算定が難しいわけでございますが、我が国におきましては薬剤の比率が高いといった問題、あるいは多剤の投与が比較的多いといったような問題点もかつて指摘されておりましたから、例えば診療報酬におきましても、薬剤の多剤投与については逓減措置を設ける、あるいはそれを強化するといったような方式も取り組んでまいりましたし、薬価の改定そのものが薬剤の効率化に資するということもございます。
 そうしたことを踏まえて、さまざまな施策の結果ということになると思いますけれども、薬剤比率は、これまでも何度か御説明申しておりますけれども、過去十年間で大きく減少いたしました。当時三〇%程度の薬剤比率が、今日は二〇%程度。これは外来についての比率で見ますと、ほぼ欧米諸国並みという水準になってまいりました。
 それから、多剤投与につきましても、投与種類が順次逓減をしてまいりまして、比較的投与種類の少ない方に全体のウエートがかかってきている。逆に申しますと、多剤投与の減少という傾向が累年見られておりまして、随分改善が図られてきたという意味で、薬剤一部負担そのものの効果ということは非常に難しゅうございますけれども、薬価あるいは薬剤に関する各種の取り組みにおきまして、一定の成果あるいはかなりの成果を上げるに至っているというふうに私どもは考えております。
 もちろん、引き続き検討し、より適正化に努めるということは重要だろうと思っております。
 三点目、費用の問題あるいは財政の問題でございます。
 薬剤一部負担を導入いたしますと、全体といたしまして、例えば国民健康保険にも影響するわけでございますが、全般といたしましてでございますけれども、総額で患者負担分の軽減は、単年度平均、数年間の平均的な数字でございますけれども、約一千九百億円の減少をいたします。これは、逆に申しますと財政面では保険財政の負担増ということになるわけでございますが、一方で三割負担の影響がございますから、三割負担の導入によります患者負担の増加分、これが四千億円ございますから、差し引きいたしますと保険財政にもプラス分が生じる、こういうことでございます。
 一人当たりの患者負担というふうに考えてみますと、三割負担を実施することによりまして、その影響を受ける方々の平均的な一人当たりの負担増は年間約五千円と算定されますけれども、薬剤一部負担を廃止することによる今度は患者負担減の効果が約二千円ございまして、単純に差し引きいたしますと三千円増となるわけでございますが、サラリーマンだけを取り出してみますと、おおよそ差し引き四千円。ちょっと複雑な計算になりますけれども、オーダーといいましょうか、水準としてはそんな影響があるわけでございます。
 長い御答弁で申しわけございません。以上でございます。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
鍵田委員 今説明をいただいたのですが、どうも口頭だけではなかなかわかりづらいところがございますので、できましたらペーパーにして出していただければありがたいなと思っております。
 では、これ以上あれしていますと時間もなくなってきますので、次の課題に移らせていただきます。
 保険者の統合問題につきましては、前回の質疑の中でも特に大臣が何回も御答弁にもなっておるところでございますが、これにつきましても、抜本改革の一つとしてもともと出ていた課題ではないかなというふうに思うんですが、実際にこの五年間ほどでこれがそのまま放置をされてきておる。
 そういう状況の中で、十四年度中に具体的な手順とか計画年次を明らかにして基本方針を策定する、こう言われているんですが、本当にそういうことができるのかどうか、非常に疑問に思うわけでございます。それができるのかどうかということがまず第一点と、それから、今までにもし議論されてきたとしたら、どういう議論があって、どこがネックになって結論が出なかったのかというようなことにつきまして、まとめて御答弁いただければと思います。
坂口国務大臣 医療保険制度の体系化につきましては、今日までさまざまな議論がされてきたことはもう御承知のとおりでございます。
 まず、平成九年の厚生省案、すなわち「二十一世紀の医療保険制度」におきまして、ここでまず述べているわけでございますが、ここでは、地域医療保険制度へ一本化する案と、それから、被用者保険と国保の二本立てにより見直しを行う案、この二つを提案しまして、どちらかでどうでしょうかという提案をしているわけでございます。しかし、このことも大事だけれども、高齢者医療制度の見直しということが非常に大事だという意見がその後出てきたことも事実でございます。
 その後、当時の与党医療保険制度改革協議会におきまして取りまとめられました「二十一世紀の国民医療」におきましては、特に高齢者医療制度の改革が喫緊の課題であるとして、四つの柱の一つとして提案されたところでございます。
 その四つの柱といいますのは、旧厚生省の関係審議会などにおきましてまとめられました高齢者医療制度を中心に、高齢者独立保険方式、それからいわゆる突き抜け方式、リスク構造調整方式、そして一本化方式、大体この四つの仕組みにつきまして議論が行われてまいりました。
 しかし、この四つの案、それぞれ一長一短と申しますか、プラスの面とマイナスの面もそれぞれ若干ずつ持ち合わせているということがございまして、関係者の間でさまざまな意見があり、これらを一つにまとめるということがなかなか難しかったというのが現在までの経過ではないかというふうに思っております。
 しかし、これらの案をずっと続けて議論をしていただきます中で、議論は既に出尽くしたと申しますか、かなりもう議論は尽くされているというふうに思っておりまして、これをどういうふうにまとめるかというところでさまざまな御意見が出ているというふうに思います。これを今後どうまとめていくか、まとめていかなければならないわけでございますが、私は、制度としてどうするかということを決める前に、やはり財源をどうまとめるかということが先決の問題ではないかというふうに思っております。
 今回のこの医療制度改革におきましても、将来、七十五歳に引き上げまして、そして七十五歳からの国庫負担を五〇%にするという案を出しておりますが、今後、この高齢者医療の問題を、いわゆる国庫負担を例えば五割にして、そしてお若い皆さん方の保険料からの支援というものを例えば三五%にするのか四〇%にするのか、そして高齢者自身が負担しますものを一〇%にするのか一五%にするのかといった、そうしたところの最後の詰めをまずする、手順としまして。そして、その手順、大体そこが固まりましたならば、それに最も見合うべき制度というのはどの制度が一番望ましいかという決め方が私はよろしいのではないかというふうに思っております。
 先ほど挙げましたような四つの案を、どれかということを先に決めてやるというよりも、その財源をどうするかということを決めて、そして制度を決めていくという手順の方がよろしいのではないかと私は思っている次第でございます。
鍵田委員 独立方式がいいのか突き抜け方式がいいのかというふうな議論がいろいろあって、今日まだ結論が出ておらない、高齢者医療の問題もありますし。そういうことにつきましてはもちろん私もよく承知をしておるわけでございますが、そういうことがあって結論が出ないで今日まで来ておるということは、それでは、この十四年度中にそれが解決をするという、またそういう方針がきちっと出るという保証はほとんどないんじゃないかというふうに私は思うわけなんです。
 ですから、本当に十四年度中に基本的な方針が立てられるような仕組みをどうするのか。今までのような枠組みで議論していっても同じことが繰り返されるということになりはしないのかなというふうに思うわけです。
 したがって、医療につきましても、昔の臨調のような強力な組織をつくって、そこでこの問題についての解決を目指すという仕組みをつくっていくというふうなことも必要なのではないかなと思うわけですけれども、それらにつきましては大臣はいかがお考えでしょうか。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 確かに、今まで、いろいろの枠組みと申しますか仕組みが、どれがいいのかということにつきましての結論がなかなか出なかったことは事実でございますし、率直に私も認めなければならないというふうに思っております。
 今までの議論は、どちらかといえば、どういう仕組みにするかということが先行いたしておりました。しかし、どういう仕組みにするかということも、とどのつまりは財源をどうするかということになるわけでございますから、私は、まず財源論から、そこを固めていって、そして最後にそれに見合ったシステムをつくり上げていくという手順の方が決まりやすいと思っている次第でございます。
 それにいたしましても、これを決めるときには、いずれにしても、どれを選ぶにしても賛否両論、かなり激しい議論があることを覚悟しなければならないというふうに思いますが、しかし、そうした物の考え方の中で、いろいろの御意見があるからといって、いつまでもこのままにしていくわけにはいかないだろうというふうに思いますので、この際に、一応、来年の三月いっぱい、すなわち本年度中に、その方向性、そしてその具体的な今後の手順等々について決めなければいけないわけでございますから、ここは難しい仕事ではございますけれども、決めさせていただきたいというふうに、かたい決意を持っているところでございます。
鍵田委員 先日も申し上げましたけれども、決意はよくわかりましたし、大臣もそれだけの覚悟をされているというのはよく伝わってまいります。
 しかし、ちょっと私は考え方が違うんです。もちろん、財源ということを中心に考えていくという大臣のお考えですが、どうもそういうことからいきますと、財務省あたりが主導で、財務省なり財政審議会あたりが中心になって、例えば今度の雇用保険の問題なんかでもどんどん発言されて新聞で報道されるという、本来のいわゆる雇用のあり方であるとか雇用保険のあり方よりも先に財政の方が前に出て議論をされるというのはおかしいんではないか。むしろ、この医療の問題にしましても、もちろん経営者側も労働者側も負担がふえるわけでありますから、ただ負担がふえるということだけだったら反対ということになるんでしょうけれども、やはり、ちゃんとした抜本改革をしてくれ、それに基づいて負担のあり方も考えようということではないかというふうに思うんです。だから、負担が多いからどうこうというふうなことが今回の議論の中ではほとんど出ておらないんじゃないかと私は思っております。
 そういうことを考えますと、やはり、医療のあり方というものをまず基本に据えて、そして、何か財務省が主導権を持ってこういう医療の問題でも雇用の問題でも運営されるということにつきまして、我々は、やはりこれを避けていかなくてはならぬのじゃないかというふうに思います。その辺は、ひとつよろしくお願いを申し上げます。
 時間が余りありませんから、一点、民主党提出の健康保険法の一部改正案についてお聞きをしたいと思います。
 失業率が五・二%ということで、非常に高いところに張りついておるわけでございますし、また、世帯主などの失業も非常に多いということを聞いておるわけでございます。こういう失業者というのはもちろん所得がないわけでありますが、雇用保険だけということになりますと六割程度の収入に減るわけでありますし、そして、国保に入りますと使用者側の負担分も本人が負担しなくてはならない。収入は減るわ負担はふえるわということで、大変なことになるわけでございます。
 これらにつきまして、私は、どちらかというと旧の労働省の方の関係の仕事を主にしてまいりましたが、そういうときには、かなりそういう勤労者の立場なり、また失業者の立場に立って物を考え、それらに対していろいろな配慮をするということを考慮しながら施策を進めてきておりますけれども、どうも、旧の厚生省が携わる、こういうところではそういうお考えが余りない。
 それから、総報酬制の問題にしましても、通勤手当やなんかも含んで保険料が決められる。これは可処分所得じゃないわけですよね。ところが、しっかり保険料の方にはカウントされるというふうなことも入っておるわけでございます。
 そういう意味で、もっと、勤労者なり、また勤労者が失業して一番困っておる状況、そういうものを十分配慮をしてこれらの施策をするべきなのに、全くそれがなっておらない。そういうことに対して、我々は、せっかく厚生省と労働省が一本になったんだから、厚生労働省としてのいいところを生かすためにも、そういう調整を十分行って、そして失業者に対する配慮をしながら何らかの救済をしてもらいたいということで、この法案を出させていただいておるわけでございます。
 何とかこれに対して、法案の成立を厚生労働省としてもぜひとも考えていただきたい。野党が出した法案だから、そんなのは考慮する必要はないというようなお考えであるとするなら、これはやはり、厚生労働省として統合された価値も何もないということに評価をせざるを得ないわけでございまして、それらにつきまして御答弁をいただきたいというふうに思います。
坂口国務大臣 この法案をお出しになりました御趣旨というのは、私も十分わかるわけでございます。
 健康保険でございますから、さまざまな人に対しまして公正に対応しなければならないわけでございますが、例えば、解雇によって離職をした方もあれば、また、そうではなくて、いわゆる病気によって職をやめられたような方も中にはお見えになる。そうした場合に、解雇によっておやめになった人にはこういうふうにします、しかし、病気等によっておやめになった人にはこれは除外ですというわけにもいかないだろう。その辺の公平性というものも私はあるというふうに思っております。
 今まで健康保険に入っておみえになった皆さんが、そうすると、おやめになって、今度は国保におかわりになるという場合になったときに一体どうなるのかということも考えなければならないし、国保の方は、今までから、それぞれの地域で条例等もつくっていただいて、そういう非常に厳しい環境に置かれた皆さん方に対するいわゆる徴収猶予であるとか減免というようなことも行ってきたわけでございます。
 そうしたことも考えますと、御趣旨というのは十分私もわかる気がしますが、それを公正にやっていくためにどうするのかな、いろいろな角度から検討をしなきゃならないようにも思うわけであります。これは各党間でいろいろと御議論をいただいて、いい方法がある、そういう結論をお出しいただけるのであれば、私も、最大限尊重しなければならないと思っている次第でございます。
鍵田委員 時間が参りましたのでもう議論をするあれはないんですが、病気でやめられた人には任意継続という手もございますので、それはそれであれですが、解雇をされたりというような場合に特にこれを適用してはということで出させていただいておるところでございまして、ぜひとも、もっと議論を深めていただければというふうに思います。
 また、健康増進法につきましてもお聞きをしたかったのですが、実は、十分な議論をしないままでもし通過をするというふうなことになりますと実効性も上がらないということになりますし、どうも健康保険法の改正のアリバイ工作に出されておるような法案でございますから、ぜひとも別の時期に、この問題についてはもっと議論をしながら成立をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。そういうこともお願いを申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
森委員長 次に、加藤公一君。
加藤委員 民主党の加藤公一でございます。
 本日は、健保法の審議に当たりまして、今回の法案がなぜここまで多くの国民の皆さんから御批判を浴びているのかという点を少し考えてみたいと思います。
 その理由は、私思いますに、信頼という言葉に集約できるんじゃないかと思います。政治に対して、あるいは医療保険に対して、そして医師そのものに対しても、その信頼が欠如してしまっている、そこに最大の問題があるのではないかと思います。その信頼が欠けた中で、サラリーマンの皆さんやあるいは高齢者の皆さんに負担を強いるというのは到底理解が得られない、それも当然ではないかというふうに思います。きょうは、これから、順次この信頼の欠如のことにつきまして伺ってまいりたいと思います。
 まず初めに、医師に対する信頼の欠如ということを少し考えたいのですが、もちろん、ドクターの方、いろいろな方がいらっしゃいますから、個人差が多うございますし、大変一生懸命やっていただいている先生方もいらっしゃいます。私ももちろんお世話になっておりますし、坂口大臣もお医者様でいらっしゃいますから、よもや不信を買うようなことはないというふうに確信をいたしておりますが、残念ながら、そうでない方も中にはいらっしゃる。そしてまた、その医師の世界で共通して、皆さんが、これは問題じゃないか、医療制度改革の中でここは議論をしてもらわなきゃ困ると思っていらっしゃるテーマというのもございまして、きょうは、その中から大きく二つ、医局の問題と税制の問題について伺いたいというふうに思っております。
 まず最初に医局の問題について伺いますが、きょうは文部科学省からもお越しをいただいております。大学の医学部の医局の機能について御説明をいただきたいと思います。
清水政府参考人 お答え申し上げます。
 大学の医学部には、教育研究組織として講座が、医学部の附属病院には、診療組織として診療科が置かれておりますが、両者が一体となって教育研究、診療を遂行するという観点から、多くの場合、附属病院の各診療科長は、医学部講座の教授が兼ねているというふうな状況でございます。医局とは、これら教授を中心とした講座、診療科に所属する医師の集団を指す言葉として用いられており、法令上あるいは予算上位置づけられた組織や仕組みということではございません。
 医局の機能についてのお尋ねでございますが、これら教育研究、診療を円滑に進めるための一つのまとまりとして、地域医療機関への医師の紹介あるいは研究発表会、新しい医療技術の普及などの活動がある、そういう機能を果たしていると承知しております。
加藤委員 せっかくおいでいただいたので、もう少しお待ちいただいて、もう質問はいたしませんが、この後の議論を少し聞いておいていただきたいというふうに思います。
 先日、もう皆さん御案内のとおり、関西医科大学の研修医の過労死の事件というのがありまして、大変残念な事件でございました。大阪高裁でも二審の判決が下されておりますけれども、このときに、研修医といえども労働者に当たる、つまり雇用関係があるということが認定をされました。損害賠償の判決も下っております。
 今文部科学省から御説明をいただきましたように、医局として、医師の紹介をするというのがその機能にあるということでございましたが、これは別に通告の必要のない質問ですので、大臣、一言伺いたいのですが、大臣がドクターをされていたときにも、やはり医局から紹介を受けて病院にお勤めになったことはございますでしょうか。
坂口国務大臣 それは確かにございました。そのころは、なかなか自由のきかない時代でございまして、あすからどこどこの病院に行けと言われましたら、あすからでも行かなきゃならないというのが医局の制度でございまして、最近はそんなことはなくなってきているようでございますけれども、医局の制度というのはそういう制度であったことは事実でございます。
加藤委員 私も、せっかく質問をさせていただきますので、大臣の御出身の大学のホームページなどを拝見いたしましたり、あるいは内閣のメールマガジンも拝見いたしたわけでございますけれども、三重大学の医学部では、三重県内のほとんどすべての病院に医師を派遣している、関連病院に派遣をしているということでございます。
 しかし、これは、大学として医師を病院に紹介をしているということでございますから、職業紹介の一種ではないかというふうに考えられるんですが、きょうは職安局長にもお見えいただいているかと思いますが、大学が職業紹介を行うことができるその要件について伺いたいと思います。
澤田政府参考人 大学が職業紹介を行える要件ということになりますと、職業安定法に規定がございまして、学校教育法第一条に規定する大学等その他の学校は、職業安定法第三十三条の二の規定によりまして、業務運営規程あるいは学則等を添付の上、厚生労働大臣に届け出ることによりまして、当該学校の学生等、この学生等の中には学校を卒業した者も含まれます、そうした学生等について無料の職業紹介を行うことができるということになっております。
加藤委員 では、届け出が必要なわけですね、大学が職業紹介を行うときには。
 別にどこの大学を例に調べてもよかったんですが、せっかくでございますので、敬意を表して先ほどの三重大学の件について調べさせていただきました。その届け出の書類を見せてほしいということを三重の津の職業安定所の方に伺いましたところ、昔のことなので書類がないと。これは大問題じゃないですかね。届け出はしてあるはずですと。
 実際、無料職業紹介事業報告書というのを毎年提出することになっていまして、実はこれはちゃんと大学の方は出されているんですね。毎年出されているから、恐らく届け出はされていたんだと思います。しかし、職安の方で、その最初の届け出の書類はもうありません、こういう話で、こんないいかげんなことじゃ困るでしょうと思います。
 実は、そのいいかげんさを別にここで議論をしていてもしようがなくて、その事業報告書というのを拝見しますと、求人数二万二千百五十六件、求職者数千九人、就職者数八百九十三人という記述がございます。実際にそのうちの既卒者の内訳というのも書く欄があるんですが、そこには記載がありません。つまり、三重大学では、新卒の方の職業紹介しかしていないという報告書を出されています。これは平成十三年度のものです。提出をされたのは先週の金曜日、五月の三十一日のもの、最新のものであります。
 つまり、これを見ますと、届け出は確かにされているんでありましょう、証拠はありませんが。しかし、医局として、既卒の方を病院に紹介する、派遣をした実績はないというふうに報告をしているわけですね。これは本当なんでしょうか。
 職安局長、これは通告はいたしておりませんけれども、この書類、本当に信頼に足りるんですか。それとも、医局というのは無届けで職業紹介をしているんですか。いずれですか。
澤田政府参考人 まず初めの大学としての届け出につきましては、届け出書類の保存期限がどうなっているかがちょっとわかりませんので、それによってない可能性もありますが、一点申し上げます。それから、実際の状況報告につきまして……(発言する者あり)いや、そこはよく調べます。
 それから、直近の届け出につきまして、そうした内容であるということを本日初めて承知いたしましたので、その点については、内容が適正かどうか調べたいと思います。
加藤委員 余り大臣の母校ばかりをいじめてもしようがないので、産業医科大学についても調べさせていただきました。ちゃんと無料職業紹介事業届け出書、提出をされてございます。重要ですね、この書類が残っているということは。
 残っているのはいいんですが、この無料職業紹介事業を届け出る、そのときに紹介業務の担当者というのを指定することになってございまして、教授と兼務をされている学生部長さん、そして事務部長さん、プラス職務の書いていらっしゃらない女性の方、三人の方が紹介業務担当者ということで書いてございます。講座の責任者の教授はここには入っていない。つまり、産業医科大学は、医局として医師の紹介をしてはならないということになるんじゃないですか。
 職安局長、もう一回伺いますが、この書類はうそじゃありませんから、これでもし産業医科大学が医師の紹介、派遣をしていたら違法ということですよ。どうですか、職安局長。
澤田政府参考人 紹介の届け出は、例えば学校の就職課だとか医局だとか別々にするんではなくて、学校施設として一つ学校長がするということであります。したがって、学校として無料職業紹介をする場合の窓口がどこかというのは、医局だとか個々のセクションで別々に設けるということになりませんので、その点は、今、産医大についておかしいではないかという御指摘については、もう少し事情を調べねばわかりませんけれども、おかしいということには一概にはならないと今の段階では思っております。
加藤委員 では、確認をさせていただきますが、大学として一つ無料職業紹介の届け出を出していれば、その大学の職員の人はだれが職業紹介事業をしてもいいということになりますが、それでよろしいんですね。
澤田政府参考人 大学として組織的に無料職業紹介事業を行うということでありますので、だれがするかについては、組織内のいわば自律的な規則として一定のルールは当然あると思います。
 ただ、一つ申し上げますのは、医局の先生が就職のいわばあっせんをするという場合に、それは大学として組織的に無料職業紹介をするのか、たまたま縁故でやっているのかという問題も内包されておりますので、そこはどういう形で峻別できるかわかりませんが、観念的といいますか、法律的にはそういう二つ種類があり得るということであります。
加藤委員 縁故でというのは、単発的に、つまり業務としてではなく行われている場合ではないかと思います。業務としてというのは、法律上は、別にビジネスとしてやっていなくても、同じ行為が反復をされていればそれは業務のはずでありまして、関連病院に毎年紹介をされているんですよね、医局からは。坂口大臣もそれで四方四十キロにお医者様のいらっしゃらないところに行って、お子さんの耳にコガネムシが詰まったのを最初に診察をされたということを書いていらっしゃって、すばらしいなと、タケノコ医師の云々かんぬんというのを読ませていただきまして私も感動をいたしましたが。
 つまり、反復。当たり前ですよ、毎年やっているんですから。毎年同じようにやっていて、それで、それは縁故で紹介をしただけだという理屈は絶対に納得できませんが、局長、もう一回確認させてください。これは業務としてやっているんじゃないですか。
澤田政府参考人 無料職業紹介の事業は、おっしゃるように、反復、継続、業として行うということを前提に届け出をしてもらっております。業としてなのか、たまたま縁故としてなのかについては、個々のケースについてやはり判断をしていかなければならない、こう思っております。
加藤委員 水かけ論になりますからこのぐらいにしますが、ホームページで関連病院まで並べ立てて、産業医科大学のホームページだって関連病院といってずらっと病院名が並んでいるんですよ。どこが縁故なんですか。冗談言っちゃいけませんよ。これは業としてやっているんです、業として。
 では、別の観点から聞きます。
 これが仮に無料職業紹介として成立をしていたとして、つまり合法であったとしても、これは、大臣のさっきのタケノコ医師云々の記述やあるいはホームページなんかも拝見しますと、紹介を受けてどこかの病院に行く、しかし、その病院で自分がずっと勤めたいと思っても、教授に帰ってこいと言われると戻らなきゃいけない。これが医局のシステムとして現実には存在をしていますね。
 つまり、これは、働いている側、派遣をされる、紹介をされる方のお医者さんにはその自由意思がないということになりまして、これは労働者供給事業に当たるんじゃないかと思いますけれども、職安局長の御見解を伺います。
澤田政府参考人 無料職業紹介は職業紹介でございますので、求人者と求職者の間に立って雇用関係の成立をあっせんするということでございます。したがいまして、今先生がお話しになりましたことにつきまして、労働者供給事業に当たるのではないかということでございますが、私はそのようには考えにくいと思っております。
加藤委員 いいですか。では大臣に確認をとりますから、よく聞いてくださいね。
 労働者供給とは、供給契約に基づき労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいう。
 まさに、上司の命令、医局の命令を受けて労働に従事させられているじゃないですか。大臣の実体験も踏まえて、医局からの医師の紹介、派遣というのは労働者供給事業に当たると思われませんでしょうか。
坂口国務大臣 さすがリクルートにお入りになっていた加藤先生の質問でございまして、私は実は今まで、医局のあり方というものについていろいろ私も改めるべきところを考えてまいりましたけれども、そういう角度から考えたことは全くございませんで、なるほどそうかと思って先ほどから聞かせていただいているわけでございます。
 医局というのは、いわゆる教授や助教授がいて、そこで給料をもらっている人もいるし、全く無給でその中で働いている人もいる。その人だけではなくて、関連の病院へ行っている人も含めてそれは、一族一党といいますか、医局員ということに通称なっているんですね。ですから、言ってみれば、企業の社長さんがどこどこに配属を決めるかという、中の配属の決め方をやっているのに似ているような気が私はしまして、企業内における配置転換とよく似ているのであって、よその企業へそれぞれ就職を世話するというのとは、ちょっとここは違うような気がするんですが。
 私の観念的な話でえらい申しわけないんですけれども、法律的に詰められますと私も大変弱いものですから、それじゃ、そこはもう少し勉強させていただきます。
加藤委員 私は、法律論ではなくて、本来は政策論を議論したかったり哲学論を議論したかったりするんですが、冒頭申し上げたように、関西医科大学で研修医の方が過労死をしているんですよ。お一人命を落とされて、裁判になって、大阪高裁で、それは労働者に該当するという判決までもう出ているわけですよ。だから、今大臣がおっしゃったように、医局という大きなくくりの中で、会社でいえば人事異動のようなものですという指摘は絶対に当たらないんですね。これは裁判で労働者に該当するという判断が下っているわけですから。
 つまり、医局というところに、非常にあいまいな任意団体だと思いますけれども、そこに所属をしているお医者さんというのは、ある方は大学病院で雇用されているし、ある方は、大学院に行って授業料を払いながらこき使われている方もいるなんというとんでもない話も聞きますけれども、そういう方があったり、あるいは研修の名目で、奨学金でわずか数万円だけ月に受け取って働かされている、関西医科大の問題なんかはこうなるんでしょうけれども、こういうことがあったり、あるいは紹介を受けて関連の病院に行ったりと、雇用形態はまちまち、別々なわけですから、これは、ある一定の組織の中の人事異動というにはとても当たらないと思います。
 もう一度伺いますが、労働者を他人の指揮命令を受けて働かせる、これは労働者供給事業だというふうに書いてあって、職業安定法で現に禁じられているわけですね。大臣も、もう数年前から医局については変えなきゃいけないと何度も国会で御答弁をされていらっしゃいますから、だからこそあえて伺いますけれども、これは法律的にも今極めて違法性が高いわけでありまして、私の考え方では労働者供給事業に当たるとしか思えないんです。もう一度伺いますが、大臣、そうは思われませんか。
坂口国務大臣 済みません。そこまで詰められますと、私も、この問題どうなのかということを今御答弁するだけの能力がちょっとございませんので、これは至急、一遍整理をさせていただきたいというふうに思いますが、いずれにいたしましても、現在の医局制度というものを改革しなきゃいけないということだけは、私もそう思っております。
 というのは、先ほどから出ておりますように、いわゆる雇用関係にある人とない人と、ないと言うとこれは言い過ぎになるんですが、正式に雇用関係にない、給料をもらっていない、何もないという、正式に雇用関係のない人もそこにはいるわけですね。ましてや、ほかの病院へ行っている人もその医局員の一人だというようなことになってまいりますと、どこまでが医局の人でどこからが医局の人でないのかというのも非常にわかりにくい。
 過労死の問題等が起こってまいりましたり、それから今度は病院内におきます医療ミスの問題等が起こりましたときに、責任は一体どうなるのかというような問題があって、そこは私も非常に不明確だというふうに思っているものですから、特に過労死の問題がありましてから、何とかここはもう少し変えなければならないというので、先日来も文部科学省との間で、大学病院のあり方というものに対する検討会を開始させていただいたところでございます。
 ただし、させていただいたのですが、先生が今御指摘になりましたほど私も意識が十分でなかったことは事実でございますので、至急整理をし、また御報告を申し上げたいと思います。
加藤委員 せっかく厚生省と労働省が一緒になって厚生労働省になったわけですし、坂口さんが大臣をされているというタイミングでもございますので、この問題について政府の統一見解をまとめて、発表していただけませんでしょうか。大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 政府と申しますか、厚生労働省としての統一見解を早速つくりまして、皆さん方にもお示しを申し上げたいと思います。
加藤委員 本来であれば私の好きな締め切りを設定したいところでありますけれども、きょうのきょうの話でありますから、きょうのところは締め切りは設定いたしませんが、大至急お願いをしていきたいと思います。大臣、非常に真摯にこうした問題には取り組んでいただけると確信をいたしておりますので、至急お願いをしたいと思います。
 では、きょうはほかの省庁からもお越しいただいておりますので、次のテーマで議論をさせていただきたいと思います。
 きょうは、この場にいらっしゃる、大臣だけではなく委員の皆さんの中にもお医者様が多うございまして、あちらこちらから厳しい視線を受けながら私が質問しなきゃいけないんじゃないかというふうに思っておりますが、やはり、一市民としてはこれは言わざるを得ないテーマでございますので伺います。
 なぜ医師にだけ優遇税制があるのか。国税も地方税も優遇されている部分がございます。財務省、総務省、順次お答えください。
砂田大臣政務官 お答えいたします。
 いわゆる社会保険診療報酬にかかわる問題でございますけれども、特例制度として昭和二十九年に、社会保険診療報酬の適正化との関係を踏まえ、議員立法により、社会保険診療報酬にかかわる所得の必要経費をその収入金額の七二%相当額とするという特例を創設したものでございます。
 そして、この特例につきまして、昭和六十三年十二月の抜本的な税制改革において、税負担の公平確保の要請にこたえつつ、地域医療の確保等に配慮する観点から、その年の社会保険診療報酬が五千万円を超える者にはこの特例を適用しないこととするという適正化措置が講じられたところでございます。
 以上でございます。
滝大臣政務官 地方税の優遇税制につきましてお答えをいたしたいと思います。
 現在、地方税におきましては、住民税は国税の所得税と同一でございますけれども、そのほかに、事業税につきまして、社会保険診療報酬については非課税扱いといたしているところでございます。
 これは、実は、もう古いのでございますけれども、昭和二十六年の診療報酬の検討会におきまして、もともとその当時は、医師の診療報酬につきましては各項目の積み上げ計算をやっていたんですね。その中に実は公租公課という部門があったのでございますけれども、この公租公課に事業税部分が積み残された。要するに、診療報酬の議論の中で、前々から公租公課という項目があって、固定資産税関係はもちろん入っていたんですけれども、所得課税の中で事業税関係が積み残されていたということもございまして、大変大きな問題になりました。
 それを受けて、その後の地方税法の一部改正の際に、特にあれは参議院の地方行政委員会におきまして、診療報酬の中で、公租公課について、特に事業税部分が積み残されている、この中で事業税を課税するというのはおかしいじゃないかということで、当時の地方行政委員会で各会派合同で議員修正されまして、非課税とする、こういうことに相なっているわけでございます。
 したがって、それ以後、何度か診療報酬の改定もあるのでございますけれども、ベースがその当時のベースをもとにして診療報酬が定められてきたという経緯もございまして、現在に至っているというのが実情でございます。
 したがって、私どもとしては、毎年の実は税制改正のたびにこの問題を取り上げて、当時の厚生省等につきましては何度も見直しの要請をいたしてきた経緯もあるのでございますけれども、もともと診療報酬の大改定と税制改正の時期が一致しませんと、この辺がうまくいかない。そういう意味では、診療報酬の大改正をするときにこの問題を取り上げていただくということは、やはり大きな課題だろうと思いますので、その点も踏まえて私どもとしても対処してまいりたいと存じております。
加藤委員 政府の税調の方でも、この点はもう見直しをという答申が出ているにもかかわらず、なかなか進まない。非常にじくじたる思いがございます。
 改めて、財務、総務、それぞれ一言ずつ伺いますが、撤廃する気はありますか。
砂田大臣政務官 一声でおっしゃれと言われれば、今の段階ですぐに、即座に改正、廃止ということにはならないというふうに考えております。
滝大臣政務官 事業税につきましては、前々からも、この税制改正のたびに政府税調で御答申をいただいている。そして、何度か、細川内閣のとき以来、この問題については集中的に実は議論をしてきた経緯がございます。したがって、診療報酬の抜本改正の際に、この問題についての方向づけをあわせてしていただくという流れの中で、私どもとしてはできるだけ見直しをさせていただきたい、そういう姿勢でございます。
加藤委員 今回の健保法の改正は国民負担を強いるわけでありますから、しかも、これだけ厳しい経済状態の中で、サラリーマンの皆さん、そして高齢者の皆さんに、もっと払ってよ、簡単に言えばこういう話ですから、そのときに、この優遇税制、そのまま手つかずで、とにかく出せるところから出しなさいというのは、やはり筋が通らないわけですね。さっき申し上げましたように、こういうことが不信を生む最大の原因になるわけであります。
 坂口大臣に改めて伺いますが、これはもちろん大臣の所管の問題じゃないのは重々承知の上ではありますけれども、今の総務政務官からのお話の中にもありましたとおり、診療報酬とセットで議論したいということもあるわけですから、坂口さんの私見で結構でございます、医師の優遇税制、撤廃するべきだとお考えですか、どうですか。
坂口国務大臣 私が大蔵委員会に所属をいたしておりましたときには、この問題が何度か実は出たわけでございます。そのときのいろいろな議論のことを今も覚えておりますが、一つは、税制のあり方と診療報酬のあり方というものとがいつも議論になりまして、診療報酬を一時上げることができないかわりに、この税制の優遇措置をするというようなことで決まった経緯があるというふうに聞いております。
 これはかなり前のときでございますが、そういう経緯があったというふうに聞いておりますから、これは診療報酬との私は絡みの問題だというふうに思っておりますから、検討するときにあわせて検討をしなければいけないと思っております。
加藤委員 そもそも、診療報酬の問題と税制を一緒くたにするからこういうことになるわけでありまして、診療報酬は診療報酬でちゃんとフェアなシステムにしたらいいし、税制は税制で簡素、公平にすればいいだけの話なんです。
 それを何か裏取引みたいにぐちゃぐちゃ細かなところで妥協しようと思うから、こういうわけのわからぬことになって、国民負担を強いるときに国民の皆さんがお怒りになる。当たり前の話であります。
 きょうは、本当は予定の半分にも達していないのでありまして、御準備をいただいた皆さんには本当に申しわけないのですが、時計の針が進んでしまいましたので、さっき田村さんからもお手やわらかにと言われたのに、お手やわらかどころか御答弁もいただけなくて大変申しわけございませんが、ぜひ次回、またお時間をいただいて、この続きの議論をさせていただきたいと思います。
 大臣、さっきお願いした件はぜひよろしくお願いします。
 ありがとうございました。
森委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。水島広子君。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 今回の健康保険法改正案は、一言で言えば患者負担をふやすものであると言えると思いますけれども、医療の質がよくなるから患者負担がふえるというのであれば、まだ納得できると思います。また、医療のむだをなくした上でどうしても財政が難しいというのであれば、まだ納得できると思います。でも現状では、医療の質も上がらないのに、また、医療にさまざまなむだがあるのに、患者負担ばかりふやされても困るというのが多くの人の実感だと思います。そもそも、何にどれだけのお金がかかっているのかわからないのに負担できないというのも実感だと思います。
 先日も、私の地元の方からこんな話がございました。親戚ががんで亡くなった、亡くなってから病院からとても高額な医療費の請求があった、突然の請求でとても払えない、何にそんなにお金がかかったのか明細を見せてほしいと言ったけれども見せてくれない。医療機関が発行する領収書について、その内訳を明記することが義務づけられていないというのももちろん一つの問題ですけれども、現状では、まずこの方は何ができるでしょうか。
大塚政府参考人 大変失礼いたしました。
 一つには、医療費に関しまして、医療機関との関係でございますけれども、いわゆる領収書、金額を示す領収書、これは当然当事者の関係ですから、提示をしていただく、発行していただくことになりますが、その内容がわかるような領収書、これもできるだけ患者の求めに応じて発行していただけるとありがたいわけでございます。一方では体制の整備という面もございますから、そうした面も勘案せざるを得ませんが、体制整備ができました医療機関におきましては、その方向で御努力いただくということを私どもからも関係団体にお願いをしてございますし、また、関係団体も、その方向で管下の会員などに御指導、御連絡をお願いしているわけでございます。
 また一方、そうした当事者のやりとりとは別に、一つには、保険者が定期的に医療費通知、これは内容が詳細があるわけではございませんけれども、医療費、まあ数カ月まとめてというケースが多いんですけれども、これだけの医療費が全体としてかかっておりますというようなことを、これは大部分の保険者が実施をいたしております。
 さらには、必要に応じてということになろうかと思いますけれども、レセプトを見たいということを患者さんの方が保険者に御請求いただければ、原則として、これも当委員会で御議論ございましたけれども、特定の、特別の事情がない限りこれをお示しを保険者からしていただくということもお願いしておりますし、今実際にそういう形で動いているというふうに理解をしております。こういった幾つかの方法といいましょうかツールがあり得るのではないかと考えております。
水島委員 今のレセプトの開示請求でございますけれども、確かにレセプトの開示請求をするという手段はございます。ただ、これについては過去にもこの委員会で議論がありましたけれども、現在、例えば私がその方にレセプトの開示請求をしたらどうですかというふうに申し上げるといたしましても、実際には多くの方が二の足を踏まれるわけです。
 レセプトの開示請求をすると、一般には医療機関に連絡が行くようになっております。まだまだ開示請求というのは一般的ではございませんので、開示請求をしたことが知られたために、自分たちを信用していないのかと思われて、医療機関との関係が悪化するというケースもございます。患者さん御本人の場合もそうですし、これはたとえ御遺族ということであっても、小さな地域社会で大きな病院はそこしかないというようなこともあります。その病院との関係を御遺族自身が患者として持ち続けていかなければいけないということも少なくないわけです。あの人は自分の御遺族のことでレセプトの開示請求をした、つまりここの医療機関を信用していないんだというような目で見られることによって医療機関との関係が悪化してしまう。そのことを恐れて、実際にはレセプトの開示請求に踏み切るのにはかなりの勇気が要るというのが現状であるわけです。
 レセプトの開示を受けて、それで実際にここにこれだけお金がかかったのかということで納得されるケースも私は多いと思います。そういう意味では、レセプトの開示請求のハードルは低い方がよいと思います。レセプトの開示を受けて、そこで何かの問題を感じて、そこでさらに次の行動を起こすかどうかということになると、またそれはその中のごく一部の方ということになっていくわけですので、最初の入り口は広ければ広い方がいいと思いますけれども、病院との関係が悪化することを覚悟してからでなければレセプト開示の請求ができないというのでは、本末転倒なのではないか。そのような機能は実際にはうまくいかないのではないかと思います。
 組合から医療機関への連絡について、それをしないようにするなど、見直す必要があると思われませんでしょうか。これは大臣にお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 先日もここでレセプトのお話が出まして、保険者にレセプトの開示を求める、必ずしもそれは義務づけられているわけではありませんけれども、保険者はそれを医療機関に、こういうことがあったということを知らせる、そのことがその患者の皆さんに対して悪い影響を与えると申しますか、人間関係等にうまくいかないというようなことも生まれてくる可能性があるという御指摘があったわけでございます。
 そのときにもお答え申し上げたわけでございますが、必ずしも義務として求めているわけでは決してありませんけれども、しかし、そういうふうに一応保険者に対しまして、そういう開示が、求めがありましたときには医療機関にそういう報告をしてほしいということを言っていることも事実でありますから、だからそこを、まあちょうど五年、これはもう始めましてから五年たつんですね。五年経過もいたしましたし、かなり今までの状況も変わってきておりますので、一応その辺のところ、整理をして見直すときに来ているのではないかというふうに思っている次第でございます。
水島委員 つまり、今の御答弁は、保険者から医療機関への連絡をこれからはやめていくように見直すということを大臣がお考えであるというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 その辺、整理をすべきところは整理をしなきゃならないというふうに思っておりますが、そういうことも念頭に置きながら整理をしたいと思っております。
水島委員 そのレセプトの開示請求をしたということも、広い意味で見ればやはりその方に関する情報ということになると思いますので、これはやはり個人情報保護という観点からもまたぜひ考えていただきたい。
 やはり、医療機関にそれを伝えるときには少なくとも御本人の了解をとって、医療機関に開示請求があったということを伝えてよろしいですかという了解をとった上で伝えるというのが当然のマナーであると思いますので、ぜひこれはきちんと見直していただかないと、レセプトの開示請求というものが常に訴訟を目的としたような、そういった特殊なものになっていってしまいますので、すべての人が自分の受けている治療について当たり前のように知ることができる、そんな当たり前の権利として認めていただきたいと思います。
 そしてもう一方の、領収書の内訳の問題ですけれども、今、これは整備をするように伝えてはいるけれども義務づけられていないという、先ほどの御答弁でもまた確認できましたけれども、こちらについても一つの問題だと私は思っておりますので、少なくとも入院機能を持っているようなところであればもっときちんと整備していく必要があるのではないかと思いますので、そちらもあわせてよろしくお願いいたします。
 さて、今提供されている医療が本当に私たちの望むものになっているかどうかという点もかなり怪しいものであると思っております。この観点から幾つか質問させていただきます。
 摂食障害や精神療法については今までもこの委員会で私は伺ってまいりました。医療鎖国状態のような日本でございますけれども、一日も早く国際水準にという思いで、諸外国の情報をきちんと収集して、行政がリードして日本の精神医療の質を上げてほしいという思いで今まで質問をしてまいりました。それに対しての厚生労働省の姿勢は、日本の学会や専門家からそのような意見が上がってこないとできないというような趣旨に終始してきたと私は受けとめております。
 例えば、昨年五月十八日の厚生労働委員会で私が、
 日本では有効な治療法が確立していない、でも欧米では治療法のスタンダードがほぼでき上がっている、そういう場合に、厚生労働省として、その治療法を日本に取り入れることができるかどうかについて何らかのリーダーシップを発揮すべきだと思いますけれども、それについてはどうお考えになりますでしょうか。
と質問したのに対しまして、大臣は、
  厚生労働省が、医療の中の医療保険、とりわけその中の医療点数等の配慮をいたしますときに、それは、厚生労働省が最初から全部そのことを知っていて、そのことをやるということにはなかなかいかないのだろうと思うのです。
  その場合には、それぞれの学会等でその治療方法が採用されて、やはりその中で確立をされていくといったようなことが先行してあって、そして、精神療法としてこういう治療方法がやはり望ましいといったようなことが一般化されてくる中で、よしそれではこれを取り上げていこうということに、手順としてはなっていくのだろうというふうに思います。専門の先生に入っていただいて、そこから提案をしていただいてということになっていくのだろうというふうに思っています。
これは坂口大臣が答弁されています。
 ところが、先日の衆議院本会議で、心神喪失者医療観察法案の中の再犯のおそれについて質問をされた坂口大臣は、「現代の精神医学、例えば、国際的に標準的と言われておりますオックスフォード精神医学教科書、これは二〇〇〇年版でございますが、これによりますと、」と答弁されていました。日本精神神経学会の声明とは全く異なる内容を答弁されたわけでございます。
 このときの御答弁そのものの内容については今後法案の審議の中できちんと伺ってまいりたいと思いますけれども、ここできょう確認させていただきたいのは、厚生労働省として方針が変わったのかということでございます。
 日本の学会の現実的なレベルよりも国際的な水準に合わせて施策を講じていくことにされたのでしょうか。そうであれば、摂食障害にしても精神療法にしても、もっと国で予算をつけて、治療者の海外研修をしていくようなことが必要になると思いますけれども、そのような方向に施策を変えられたのでしょうか。大臣にお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 医療も質、量ともに非常に大きいわけでございますから、問題によりましては、国内の中で成熟をして、そしてそれを取り上げていかなければならない問題もあると私は思っております。しかし、国際化の中で、日本が非常におくれている分野につきましては諸外国の分野のものを参考にしなければならない分野もある。一律に一つの物差しで国内の成熟度あるいはまた諸外国との差といったものを取り上げるということはできない、それはやはり物によって違ってくると私は思っております。
水島委員 そうしますと、物によるということでございますけれども、先日もお伝えさせていただきましたように、例えば摂食障害の中でも神経性無食欲症によって非常に重篤なやせになってしまいまして、それが命を落とすことにつながったり、あるいは人生の長期にわたって取り返しのつかないような、そんなことになってしまうという、これは非常に重大な病気であるわけでございますけれども、大臣の御認識といたしましては、そのように摂食障害で健康を損ねていく人が多いということについては二の次の問題であって、司法精神医学の方がより上位にある、そのようにお考えだということなんでしょうか。
坂口国務大臣 そういうことを申し上げているわけではありません。
 摂食障害は摂食障害として大変大事な問題でありますから、その治療方法等をどうするかという問題は日本の国内よりも諸外国の方が進んでいる分野も当然あるんでしょう。しかし、それを一つの制度として、あるいはまた診療報酬体系の中で位置づけていくということになれば、それは若干の時間を要するということを私は前に申し上げたのではないかというふうに今思っておりますが、前回申し上げたことを十分に覚えておりませんので、記憶をたどりながら言っているわけでございますけれども、そのように私は思っております。
水島委員 どちらの問題にしても全国のいろいろなところで発生することであって、またどちらの問題にしても諸外国の方が進んでいるというような問題であると思いますが、その違いというのは一体何なんでしょうか。
坂口国務大臣 もうちょっと言っていただけませんか。ちょっと質問の御趣旨が十分理解できませんでした。
水島委員 片方の心神喪失者の問題、この内容にはきょうは踏み込みませんけれども、この問題と、もう一つ、摂食障害という病気の問題。このそれぞれの患者さんというのは全国のどこででも発生し得るものであって、そして、それらに対する取り組みは、少なくとも学問的なレベルということでは諸外国の方が進んでいるというのも共通していると思いますが、それでもあえて前者の方だけオックスフォード精神医学教科書を標準として認めて、それに日本の施策を合わせようとされている。そして摂食障害に関しては、こちらが諸外国の、例えばアメリカ精神医学会の治療ガイドラインのことなどを引き合いに出しましてもなかなか今までつれない御返事しかいただけていない、この違いは一体何なんでしょうか。
坂口国務大臣 オックスフォードのブックのお話は、それはそういう意見もあるということを申し上げたまででありまして、ただ、国内における意見だけではなくてそういう意見もあるということを私は申し上げたわけです。
 前回に御質問をいただきましたときの摂食障害のお話は、それは、先生がいろいろと御指摘になった、そして日本においてそれがまだ諸外国に比べて認められていない、そのことは十分に私も承知をしながら、そのことを制度として位置づけていくためには、やはりもう少し日本の国内で、諸外国で行われていることを一般化させていく努力が必要ではないかということを申し上げたわけでございます。
水島委員 それでは、今いただいた御答弁、諸外国のものを日本に取り入れていくためには時間が必要ではないかという御答弁をきょうのところではいただきまして、ちょっとこれはまた次の法案の審議のときにその続きを伺ってまいりたいと思いますけれども、そうしますと、大臣の御認識としては、施策の転換を行ったわけではない、テーマによるんだというような御認識だというふうに本日のところは承っておこうと思っております。
 さて、そのような流れの中でさらにお伺いしてまいりたいと思いますけれども、二〇〇四年度から臨床研修が義務化されることについては先日もさわりの部分をお尋ねいたしました。本日もさらにお伺いしたいと思います。
 ここに持ってまいりましたが、「裸のお医者さまたち」という本がございます。これに書かれておりますことは、私が留学経験のある先輩から伺ってきました内容と共通することが多々書かれていて、大変おもしろく読んだ本でございます。これは、日本で東大の医学部を卒業して六年間まじめに外科医として働いた著者がアメリカに行ってみて、そこで経験したことが書かれているわけでございますけれども、まず、大臣はこの本を読まれたことはございますでしょうか。
坂口国務大臣 残念ながら、読んでおりません。どなたかに、この本を一遍読んでみたらおもしろいですよというふうに言われた経験はございますけれども、残念ながら読んでおりません。
水島委員 本当に御多忙だと思いますけれども、ぜひ時間を見つけてお読みいただけると本当におもしろいと思いますが、内容を簡単に、いろいろな観点から書かれておりますけれども、本日は、臨床研修という点について、この本の内容を少々御紹介させていただきます。
 今申しましたように、この本の著者、桑間雄一郎さんという方は、東大の医学部を卒業して六年間まじめに日本で外科医として働いていたわけですけれども、アメリカに行ってみますと、卒後二年目の医者にもかなわなかったということが書かれているわけでございます。そして、卒後研修の根本的な違いに直面したということが書かれているわけです。この本は、患者の立場として読んだ場合でも、日本ではこんな貧困な医療しか受けられないのかというふうにぞっとするものであるわけですけれども、逆に、既に臨床研修を終えてしまった立場の私のような者からしましても、大変むなしくなる一冊でもございます。
 この本では、アメリカでは勉強することも大切な仕事として位置づけられる、でも、日本では勉強というのは一日の勤務の外の時間にすべきものとして位置づけられていると書かれております。
 確かに、私たちは自助努力で勉強するように求められてきました。ただ働きをしながら、見よう見まねで医療を身につけさせられました。でも、私が研修医のときに指導を受けた医師の中には、国際的にはおかしいとされている自己流の多剤併用を教えてくる人たちも少なくはありませんでした。自分がなぜそんな処方をするのか説明できない人の方が多かったと思っております。これではだめだと思って、私も、自分で海外の文献を読み、留学経験のある先輩を見つけていろいろ教えていただいたりしてきたわけでございます。
 そんな自分の研修医時代を振り返りますと、臨床研修が義務化されても、果たして日本の医療の質が上がるのか、不安がございます。きちんとした臨床研修を受けていない指導医が後輩を指導するということになるわけですけれども、そんな仕組みが機能するのでしょうか。
 先ほど申しましたように、心神喪失者医療観察法案では、日本で立ちおくれている司法精神医学を学ぶために外国に研修に行かせるための予算をとるというような内容が含まれているわけですけれども、それでは、臨床研修の指導医も、我流ではなく、国際水準の医療を身につけた人をつくるために、同じように予算をとって研修させる必要があるのではないかと思います。医療の本質ということではそちらの方がよほど重要なような気がいたしますけれども、大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 研修医制度をこれからどうしていくかということを詳細に詰めていかなければならない時期を迎えております。研修医制度というものが大事だということは皆さん御理解をいただきましても、それじゃ、その内容をどうするのかといったことについて、そこのところはいろいろの御意見があるというふうに私は思っております。
 それで、今お話しになりましたように、昔、研修医制度というのはありましたけれども、そんなに手をとって教えてくれるわけではなくて、みんなが先輩のやっておることを見ながらこういうふうにするんだなというふうにやってきたり、あるいはまた、今先生が御指摘になりましたように、先輩がやっていたけれども果たしてこれがいいんだろうかという疑問を持って、また、それに対してそれよりも違う方法を勉強したりといったようなことだっただろうというふうに思うんです。
 今回、この研修医制度というのをつくって、できるだけそれを指導してもらう、指導してくれる医師を研修すると申しますか、医師をつくるということをこれからやっていきたいというふうに思っておりますが、さりとて、一〇〇%でき上がった人がそんなにたくさんいるとは、正直言って私は思いません。ある程度のことは教えてもらうでしょうけれども、しかし、結局のところは、その教えてもらったことをもとにして御自身で勉強をしていただかなければならないのではないかというふうに思います。
 現在のやり方というのは、それは医療の世界には大変さまざまなやり方がございます。必ずしも一律いたしておりません。大学は大学によります大学流のやり方も私はあるというふうに思いますし、また、その教授なら教授のやり方というものも私はあるというふうに思います。その辺のところを、いわゆる根拠に基づく医療をどうつくり上げていくかというのが、今、一つの考え方でございまして、そのことにつきましては今進めていただいているところでございますけれども、それを、よしでき上がったといたしましても、現場におきましてはさまざまなやり方をやはり勉強していただかなければならないのではないかと私は思っております。
水島委員 御丁寧に御答弁をいただいたわけでございますけれども、そうしますと、今の御答弁にもございましたように、ある程度それぞれのやり方があるだろうということで、それぞれの現場の自助努力に任されてきたというのが今までの臨床研修のあり方だったと思いますし、大臣がおっしゃったように、少しは教えるけれども最終的には自分で勉強しろというのも今までの臨床研修の場にあった雰囲気であると思いますけれども、そうしますと、今度、臨床研修制度が義務化されるというときに、そのあたりの発想の転換というものは余りないと考えてよろしいんでしょうか。今までのようなものが義務化されるというふうに考えていいわけではないと思うんですけれども。
坂口国務大臣 そう申し上げているわけではありません。研修医に対します指導をする人をちゃんとつくって、そして、そういう人があるところで研修をしていただくようにしなければならない。特に、今、プライマリーケアに重点を置いていこうということになりますと、やはりその指導する人がちゃんとしていなきゃならないということは当然でございます。
 しかし、私が申し上げているのは、一〇〇%指導できる、そういう人ばかりかということになれば、今までの経験からいたしますと、いわゆる治療方法につきましてもさまざまな治療方法が行われてまいっておりますから、指導をする人をつくるといいましても、一〇〇%それでいいかといえば、必ずしもそうはいかない問題がやはりつきまとってくる。そこは御自身で御勉強をしていただくということになるのではないかということを申し上げたわけであります。
水島委員 指導医を今からつくるということになりますと、これはまた大変な作業であるわけですけれども、例えば、お考えの中で、アメリカならアメリカでいいんですが、アメリカ流の臨床研修をきちんと受けてこられた方を特別に今回のその指導医の中で位置づけていくというようなお考えはおありでしょうか。
坂口国務大臣 中にはそうした方もおみえになるというふうに思いますが、そうした人だけに限定をしてしまいますと、そうしますと、やはり研修を受ける場所というのは非常に限定されてくるというふうに思います。今までは大学病院のみにこの研修をされる方が偏ってきたわけでありますが、もう少し幅広く、プライマリーケアというものを勉強していただこうと思えば、やはり大学だけではなくてもう少し広い医療機関で御勉強いただく方がいいのではないかというふうに思っております。
 そういたしますと、今の指導者の質の問題になってまいりまして、アメリカ等で最新の医学を御勉強になった方がおみえになるところだけということになりますと、非常に限定されてくる問題がある。そこをどうするかという問題がそのときに生じてまいりますから、やはりそこは、もう少し指導者の範囲というものは広くとっていかないと私はいけないのではないかというふうに今は考えております。
水島委員 ぜひ、その指導者を育成する効率的な方法を考えていただきたいと思いますけれども、この指導医の問題とも関連してまいりますが、医療の質を決めるのは、何もこれから医者になる人たちだけではなく、既に研修が終わってしまった医者たちでもあるわけですし、当面はそちらの立場の人たちの方が大きな影響を与えるわけでございます。
 現在、医師の生涯学習は医師会ですとか各種の学会で自発的に行われているだけであって、忙しいと参加できないなどということにもなっていますし、また、やる気がないと参加しないということにもなっていくわけでございます。
 この生涯学習という問題はかなり重要なテーマであると思いますけれども、また、指導医の質をずっと維持していくということからいっても、その指導医も生涯学習を受けていかなければいけないということになるわけですけれども、今回、卒後の、これから医者になる人たちに対する制度が義務化されることを機に、それ以外の医者については、この生涯学習ということについてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
坂口国務大臣 それも大事な問題でありまして、この生涯教育を医師がどう受けていくか、これは今までも大事だったんですけれども、今までよりも、医学の進歩がこれだけ速くなってまいりますと、さらに大事になってくるというふうに思っております。
 それも先ほどお話ございましたように、医師会でありますとか、あるいはさまざまな学会を中心にしてお願いをしてきたわけでありまして、それに対しまして、国なり都道府県なりがバックアップをしていくという体制で参りました。
 その生涯学習のあり方というものも、これも今までのままでいいのか、もう少しこれを体系化をして、皆さんが受けていただけるようにするというようなことをしていかねばならないのか、その辺もやはり整理をしなきゃならないと私も思います。
水島委員 ぜひこれを機会に前向きに整理をしていただきまして、またしばらくたったところでその経過をお伺いしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 その中では、先ほど我が党の加藤公一議員からも質問にございました医局講座制の問題というものも、真剣にとらえていかなければいけない問題ではないかと思っております。
 やはり今は患者さんの顔色よりも教授の顔色をうかがうようになってしまう、また、臨床よりも研究に価値を見出してしまうというような弊害が指摘されていることは事実でございますので、この点についても大臣は前向きに取り組まれるということでございますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 そしてまた、患者さんの立場から見ますと、とても熱心にやってくれるよい医者にかかっても、あるいはとてもいいかげんな医者にかかっても、どちらでも医療費が同じだというのが納得できないという声が、この健康保険法改正案の審議が始まりましてから一段と多く聞かれるようになってきております。医師の質をどう評価するかということは、医療の公正さにも大きくかかわる問題であると思いますし、私は医療者のやる気にもつながってくる問題であると思っております。
 この評価の仕組みを考える上で、例えばある患者さんが外科手術を受けるというような場合に、どの医者がその手術を今までに何例経験してきたか、そのうちの成功率は何%だったのか、そのようなことを知るというのは、医療を選択する上で重要な要因だと思っておりますけれども、こういった内容を開示していくという方向性について、大臣はどうお考えになりますでしょうか。
宮路副大臣 私の方から答弁させていただきますが、医療機関に関する情報提供というものを進めて、そして、そのことによって患者の皆さんが医療の選択をできるようになる、そして、そのことによって医療の質の向上と効率化が図られていくということでありますので、医療情報の提供ということは、これは大変大切であるというふうに考えておるわけであります。
 したがって、ことしの四月から、御案内のように、医師の専門性や、それから手術件数等を広告できるように、これまでの広告規制を大幅に緩和させていただきました。そして同時に、私どもとしては、公的機関によりますインターネットを通じた情報提供というものを今後ともさらに充実強化していきたい、このように思っておるわけでございます。
 そこで、そういった情報提供の対象として、手術の成功率というものをどう取り扱うかということでありますが、この問題については、まず一つは、手術の成功という、その成功というものはどういうものとしてとらえていったらいいのかというなかなか困難な問題もありますし、また、患者の症状についての重症度等をどう評価するかといったような難しい問題もあるわけでありまして、こういったことから、仮に手術の成功というものを情報提供の対象とした場合に、提供されたその当該情報の比較の可能性、あるいは客観的な検証可能性といいましょうか、そういった客観的な評価、比較というものがなかなか難しい側面があるということでありますので、今後のこれは検討課題ではないかなというふうに思っております。
 いずれにしても、医療情報の積極的な提供を進めていくということは、先ほど冒頭申し上げましたように大変大切な課題であると思っておりますので、今後とも一層の努力を払ってまいりたい、こういうように思っているところであります。
水島委員 例えば、今おっしゃった成功をどうとらえるかとか、症状の重症度をどういうふうに考えるかといったようなことについては、これは今までの長年の臨床研究ですとか薬の治験などのときに、もう長年、ある程度積み重ねられてきている議論がございますので、症状の重症度をきちんと評価する指標もあれば、また、それらに対してどういう治療を行ったときの転帰が、先ほど私はわかりやすく成功率というふうに言いましたけれども、何も成功失敗だけではなくて、いろいろな転帰がもちろん分類としてあるわけでございますので、これは今から白紙の状態から始めなければいけない議論ではないと理解しております。
 いずれにしましても、そのような点は考えていただくといたしましても、もう一度ちょっと確認をさせていただきたいのですけれども、今、御答弁の最後が、いずれにしても情報公開は推進していくという御答弁でございまして、ちょっと個別のテーマからまた離れて総論で終わってしまったわけでございますけれども、やはりそのような、医療者がある疾患に対して、このような治療法をそれまでにどのくらい経験してきていて、その転帰が重症度別に大体どんなふうになってきたかというような、そういった情報を医療を受ける者として受け取る権利がある。
 そのような環境を整備していくような、そういう姿勢に厚生労働省はあるというふうにこれは理解してよろしいのでしょうか。
宮路副大臣 御指摘のそのものずばりということじゃないかもしれませんが、いずれにしましても、より患者の皆さんの選択の幅を広げていく、選択肢を広げていくというような観点からの医療情報の提供、これに積極的に取り組んでいくべきであるということはもとよりでありますので、そうした努力を行う中で、もろもろのそういった御指摘の問題なども当然考えながらやってまいりたい、こう思っているということでございます。
水島委員 ぜひいろいろと考えていただけますようにお願いいたします。
 そして、さらに伺ってまいりますけれども、医療の効率化という観点から、また情報提供という観点からも、少し画像診断についてお伺いしたいと思います。
 MRI、つまり磁気共鳴映像については、日常診療の中で臨床診断における役割が一層大きなものになってきております。委員の皆様も、MRIという言葉を一回も聞いたことのないという方はそろそろいらっしゃらないのではないかと思いますけれども、MRIの解像度につきましては、磁場強度が大きな影響を与えます。
 例えば脳動脈瘤のスクリーニングにおいて、磁場強度が〇・五テスラよりも一・五テスラの方が検出率が二〇%ほど高いという結果が、これは旧厚生省の研究費による研究によっても明らかになっているわけでございます。ところが、現在のところ、管腔撮影については一・五テスラでという条件こそつけられていますけれども、それ以外の撮影であれば、磁場強度が幾つであっても算定される保険点数は同じでございます。
 これから時代は一・五テスラを超えて三テスラに向かっていこうというようなときに、日本ではまだまだ〇・五テスラのものが広く普及しているわけでございます。これは検査を受ける患者の立場から見ますと、MRIを受けたから大丈夫だ、多くの方がそのように普通に思われるわけですけれども、そう思っていても、それが〇・五テスラであったのか一・五テスラであったのかによって、診断能が変わってくるわけです。でも、保険点数も同じでございますので、また、磁場強度など、現在は伝えられてもわからないわけですので、自分が受けた検査について全くわかっていないというのが現状であるわけです。MRIを受けたからもう大丈夫だと思っていても、もしかしたら、〇・五テスラではなくて一・五テスラで受けていれば、自分の小さな脳梗塞が見つかったかもしれないけれども、そんなことも含めて全くわかっていないというのが現状であるわけです。
 このような問題を大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。専門家の意見の中には、〇・五テスラと一・五テスラで保険点数を変えるべきだというような意見もございますし、あるいは、受けた検査の磁場強度の情報公開をさせるべきだというような意見もございますけれども、これについては、どのようにお考えになって、どのような方向に解決されていくおつもりでしょうか。
大塚政府参考人 現在の診療報酬の点数につきまして、事務的な内容でございますので、御説明申し上げますと……(水島委員「点数そのものの話を聞いているのじゃないので、やはり大臣にお答えいただかないと」と呼ぶ)
 一言だけ申し上げますと、現在の診療報酬上は、MRIにつきましては、単純MRI撮影と特殊MRI撮影、一・五テスラという話もございましたが、現状では一・〇テスラで線を引きまして、それぞれ点数が異なっておりまして、当然特殊MRI撮影の方に高い点数をつける、こういった仕組みを導入しているわけでございます。すべての画像診断というわけではございませんが、MRIにつきましては、ただいま申し上げたような手当てをいたしているところでございます。
宮路副大臣 点数の問題は今保険局長の方からお答えしたのでありますが、どういう高度医療機器を保有しておって、そしてそれによる診療行為を受けたかどうかという、そのことを情報提供の対象とすることについてどうか、そういう御趣旨の御質問でもあったかと思うのでありますが、当該医療機関がそうした高度医療機器を保有しているかどうか、使っているかどうか、それを現在は、情報提供の対象として掲げていないところであるわけであります。
 それといいますのも、それを対象とすることについては、ともすれば、そうした高度医療機器を保有している病院といいましょうか医療機関に、患者の方々が、殺到すると言ってはなんでありますが、そちらにたくさん、そこで診療を受けたがるという方々が多くなってくる可能性というか、そういう問題もあるわけでありまして、中には、MRIについて共同利用をしておりましたり、あるいは、アウトソーシングと申しましょうか、ほかの医療機関にその点は頼んでいるといったような、そういう病院も、医療機関もあるわけでありますし、また他方では、高度医療機器のいわば導入についての医療機関の中における、競争激化と言ってはなんでありますが、お互い過当な競争をして医療機器の導入を図るといったようなことが起こってくる可能性ということも否定できない。
 そうなりますと、医療機関内における機能分担と申しましょうか、そういったことに対する影響で、むしろ好ましからざる影響というのも出てくるのではなかろうかといったような、そういった懸念材料も多々あるわけでありますので、したがって、現在のところ、そうした機器の保有状況、あるいは使用状況についての情報を情報提供の対象とは目下のところしていない、そういうことでありまして、この問題も慎重に検討していくべきテーマであるというふうに思っておる次第であります。
水島委員 大臣にお伺いしたことに対して、御丁寧に局長と副大臣までお答えくださったわけですので、もしかするときょう私が用意してきた質問が最後まで行かないかもしれないので、ぜひもう一度チャンスを与えていただきたいと思いますけれども。
 今の副大臣の前の、局長の御答弁については、私も既に十分理解して、了解している知識、それを教えてくださったということですので、私はそのような御答弁は求めておりませんでしたし、私の質問の中でその点についてはきちんと触れておりましたので、ぜひそれを踏まえた答弁をいただくのであればいただきたかったのですけれども。
 それはそれといたしまして、今の副大臣の御答弁を簡単にまとめさせていただきますと、つまり、患者という生き物は情報を提供すると非常にパニックになって、どこかに殺到したりとかおかしな行動をするかもしれないから、情報はできるだけ慎重に公開していって、コントロールしなければいけないというような姿勢に私は受け取りました。これが今まで日本の行政全般に共通する姿勢だったんじゃないかなと私は思いますけれども、いつも最初からきちんと正しい情報を出せばいいのに、小出しに小出しにしていって、最終的にさらに行政への信頼感を損ねるというような事件が過去に何回もあったと思います。
 最初からきちんと提供をした上で、同じ目線で国民と一緒に話し合っていこうというような、そういう率直な態度が、建設的な態度が必要なのではないかと思いますけれども、だからいつまでたっても医療に対する国民側の意識というものも変わってこないんじゃないかと思います。
 ですから、ちょっとこの点についてさらにお伺いしたいと思うんですけれども、では、情報を公開していない現状、どうなっているかというと、よくわからない、検査の正確性についてもよくわからない、でも大学病院に行けば少なくとも最先端のいい検査をしてくれるだろうから、心配だから大学病院に行ってしまおうというのが、多くの方たちの行動パターンであるわけです。ですから、これは逆に、情報を公開していれば、自分の地元の一見小さく見えるところであっても、そこに非常に最先端の機器が入っていることがわかれば、何も電車を乗り継いで大都市の大病院に行かなくてもいいわけであるわけですから、実際に今情報を公開していないからみんなが落ちついているかというと、必ずしもそういうことにはなっていないと思うわけです。
 また、そのような過当競争が起こってくるということでございますけれども、本来、この問題につきましては、いまだに、だんだんと標準が一・五テスラになっている、少なくとも学問の場では一・五テスラが当然の前提として語られているような時代であっても、なお多くの日本にあるMRIの磁場強度が〇・五テスラにとどまっているということは本当に恥ずかしい現状だというふうに言っている方もいるわけです。
 ただ、これはもちろん〇・五テスラのMRIを禁止するなどという方法をとるべきではないと私は思いますけれども、もちろん整形外科領域などで、非常に粗大な病変であれば〇・五テスラでも十分であるということはあるわけですけれども、だんだんと、この医療機器の進歩という中では、きちんと情報を公開して、自分の受けたい検査がどこに行けば受けられるかということがわかっていく中で、本来望ましい姿に医療というものは収束していくのではないかと思います。
 このような観点も踏まえまして、これは大臣のお考えを伺いたくてもともと質問していることでございますので、もう一度繰り返して質問いたしますと、今自分が受けている検査について、それがどんな磁場強度のものであるのかも全くわからないような現状について、大臣はこのままでよいとお考えになるかならないか、それだけで結構ですので、お願いいたします。
坂口国務大臣 今、MRIを中心にしてお話をいただきましたが、どういう医療機器であったといたしましても、最初それが開発されたときから時を経ますと、だんだんと優秀なものが出てくるだろうというふうに思っております。その質が高くなるということは当然あるわけでありますから、私は、質が高くなれば、やはり診療報酬にもそれは影響が与えられてくる、どこかでやはりそれがわかるようにするというのは当然だろうというふうに思っています。
 だから、これはコストにも当然のことながらはね返ってくる問題だというふうに思いますし、精度の高いものは高いものとしてわかるようにしていくのがやはり制度としては必要だというふうに思っております。
水島委員 ぜひそのような御認識に立たれまして、ではどういう仕組みをつくっていくのがよいのかということを御検討いただければと思います。
 薬については、今までも薬効が違えば扱いも違うというようなことは一般的に受け入れられてきて、制度もそのようになっていますけれども、検査ということに関しては、実はそういう意味では手つかずであったのではないかと思っておりますので、医療財政の問題がこれだけ深刻になっているのであれば、やはりこの点もいつまでも手つかずのままでよいとは思えませんので、お願いいたします。
 そして、これから医療機器というものはどんどん高度化していくわけでございますし、MRIにしましても三テスラの時代になっていくと言われておりますけれども、そうなってまいりますとますますメンテナンス費用もかかってまいります。
 そのようなことを考えましても、高度な機器はなるべく共有できる仕組みをつくった方が、医療費の医業外流出を防ぐためにも、そして全体的な医療財政の健全化を図っていくためにもよいと思いますけれども、この機器の共有化ということについてはどのような施策を講じていかれるおつもりでしょうか。
宮路副大臣 MRIの今お話が出たわけでありますが、そうした高額医療機器の共同利用につきましては、厚生労働省としても、これまで積極的に取り組んでおるわけでありまして、例えば補助事業につきましても、共同利用の高額医療機器の整備に対する補助事業を従来から行っておりますし、また診療報酬につきましても、MRIやあるいはCTの撮影に関し、共同利用率を評価した点数の設定を行っております。
 さらにまた、都道府県でつくります医療計画の段階におきましても、医療機器の共同利用を明確に位置づけてもらうことにいたしておりまして、その上で政策誘導を行って、共同利用を進めるということにもいたしておるわけであります。
 こうした共同利用の推進ということは、医療資源の有効活用あるいは地域医療のレベルアップという面でも、これは効果、効用を大いに有しているわけでありますので、その推進に今後ともさらに力を尽くしていきたい、かように思っております。
水島委員 患者の立場から見ますと、本当に望んでいる医療が行われているかという点から見ますと、薬剤についても実は問題はたくさんございます。具体例を一つ挙げさせていただきます。
 女性のライフスタイルの変化に伴って、子宮内膜症になる方の数がふえているわけですけれども、子宮内膜症に対してマイルドで持続的効果がある低用量経口避妊薬、いわゆる低用量ピルは、日本では子宮内膜症の治療薬として認められていないだけではなく、子宮内膜症と合併していることが少なくない子宮筋腫があると使用禁忌となっているというおかしな状態になっております。
 まず、どのようなデータに基づいて子宮筋腫が使用禁忌になっているのでしょうか。
宮島政府参考人 低用量経口避妊薬につきましては、避妊の適応で承認されているものでございまして、健康な女性が長期間服用するものというふうにされております。したがいまして、低用量経口避妊薬の承認審査におきましても、特に安全性に関して慎重に審査を行ってきたという経過がございます。
 御指摘の子宮筋腫につきましては、子宮頸がん、乳がんと同様にエストロゲン依存性の腫瘍であるという報告がございますことから、子宮頸がん、乳がんと同様に入念的に禁忌としたものでございます。
水島委員 ところが、私が調べました範囲では、いろいろなデータを見ますと低用量ピルというのは子宮筋腫に対して治療的な効果もあるということになっておりまして、これが禁忌であるということはおかしいということが専門家からも指摘をされているわけでございます。また、これは当然適応症の問題があって、避妊目的で使う場合と子宮内膜症の治療薬として使う場合とは当然扱いが変わってくると思いますけれども、これは私はぜひきちんと御検証をいただきたいと思っております。
 また、中用量ピルは子宮内膜症の治療薬として認められているのに低用量ピルは認められていないということは、医学的に整合性がとれないわけです。これは単に企業による承認申請がなかったというような現実的な理由によるものだとは思いますけれども、私はいつも日本の薬事行政を見て思うんですけれども、そもそもすべてを企業から申請があった、なかったということだけで決めているような、そんな企業の申請任せにするような薬事行政でよいのでしょうか。子宮内膜症の患者さんからすれば、低用量ピルの方が自分にとってマイルドでよい治療薬であると思って、国際的にも使われていることを知っているのに、少なくとも保険医療の中ではそれを使えない。また、避妊目的のような形にして自費で使っていこうとすると、今度は子宮筋腫が合併していると使えない。
 そんなおかしな形になっているわけですので、これはきちんと現場の声を吸い上げていただきたいと思うんですけれども、このように薬事行政をすべて企業の申請任せにするようなことでよいのかどうかということについては、大臣はどうお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 その具体的なお話につきましては少しお許しください。私もそこまでちょっと存じませんので、お許しいただきたいというふうに思います。
 薬事全般にわたりますことにつきましては、どういうものを今後認めていくかということは、それは今御指摘になりましたように、企業からそういう承認の申請があったからそれは認める、認めないということではなくて、この範囲のこういう薬については認めるということをやはり明確にしていくということも大事かなというふうに思いながら、私は今聞かせていただいた次第でございます。
水島委員 今、申請があった中でこの範囲でという御答弁でしたけれども、申請がなくても、今申しましたように、医学上の整合性ですとか、それこそ国際水準から見ると、日本にもこれがきちんと使えるようになっていないとというものも多々ございますので、ぜひもう少し広い目で承認ということを考えていっていただきたいと思っております。
 さて、時間がいよいよ残り少なくなってまいりましたが、さらにお伺いいたしますけれども、今度は医療の質という観点から、ジェンダー・スペシフィック・メディスンについてお伺いしたいと思います。これは性差を考慮した医療と訳されておりますけれども、アメリカでは既に一つの確立された領域になっています。
 例えば血中の総脂肪の値一つ考えましても、心血管障害やがんのリスクとの関係は男女で明らかに異なっております。日本の臨床ではまだまだコレステロールは下げないといけないとして、抗コレステロール薬などが使われますけれども、がんのリスクの高い家系の男性にとってはこれは危険なアプローチということになりますし、また女性の場合、心血管障害のことを考えても、適正なコレステロール値の範囲は現在適正と言われているところよりも高いところにあるということがわかってきているわけでございます。
 厚生労働省として、このジェンダー・スペシフィック・メディスンを現在どのように位置づけられていらっしゃるでしょうか。
岩田政府参考人 患者の特性を考慮した医療を提供していくということは、一人一人の国民の健康を増進するために大変大事なことであるというふうに思っております。そして、患者の特性の一つとして、男性と女性の差、性差があるということはそのとおりでございまして、医療の提供の中で性差を科学的に考慮していくということは、生涯を通じた女性の健康支援という観点からも大変大事だというふうに思っております。
 しかしながら、これまで厚生労働省として、この問題についてこういった観点からの本格的な調査研究はなされてまいりませんでした。そこで、初めてでございますが、今年度から三年間の予定で、厚生労働科学研究の中で研究をやってまいりたいというふうに思っております。
 諸外国の成果を学習するということはもちろんでございますが、日本の女性の健康に関するデータの収集ですとか、医療の提供や医薬品の開発あるいは医学、薬学の研究レベル、そういうさまざまなレベルで性差の考慮がどの程度現状なされているかということの現状の把握ですとか、さらには、今後、医療機関などにおいて性差を考慮した医療などをどういうふうに進めていくかというようなことについても研究していただき、提言をいただけるものというふうに思っております。
水島委員 実は、きょう岩田局長がお見えであるのを見ました私の先輩議員が、水島さん、きょうも子育てについて質問するんですかというふうに先ほど声をかけてこられました。私も非常に違和感を感じるんですけれども、なぜこのジェンダー・スペシフィック・メディスンについての御答弁が雇・児局長の岩田局長ということになっているんでしょうか。ちょっとその認識をお伺いしたいと思います。
岩田政府参考人 私は、雇用均等・児童家庭局という局を所掌いたしておりまして、その所掌の範囲の中に、母子保健の分野を持っております。ですから、周産期の問題を担当いたしておりますので、生涯を通じた女性の健康問題ということで大変深くかかわっております。
 しかしながら、このジェンダー・スペシフィック・メディスンは、今研究レベルですから、たまたま私どもの局でイニシアチブをとって調査研究を始めていただきますが、それを受けて、実際どういう形で行政レベルで受けとめられるかということになりますと、各局横断的な問題になりますので、各局とも御相談しながらやっていく課題だというふうに思っております。
水島委員 これは別にいわゆる女子供の問題ではございませんで、男性と女性、それぞれの特性を考慮する医療であって、男性も十分にかかわってくる問題であるわけですので、それを雇・児局に今割り当てているというところに、そもそもこの問題をよく御理解になっていないんじゃないかなとちょっと心配になるわけですけれども、これから研究を始められるということですから、今からでもちょっと変えられるのなら変えていただきたいと思いますが、少なくとも研究を経た後には、ここで最初に雇・児局に割り振ったということはおかしかったというようなことをきちんと公的に表明していただかないと、国民がこの問題に初めて入っていくときに、これはしょせん女性の問題なんだろうとか母子保健なんだろうとか、そういう目で見てしまうのではないかと思いますので、これは正しい理解ということできちんと位置づけていただけますようにお願い申し上げます。
 もう時間が終了しておりますが、実は、本日、事前通告させていただいておりました質問、質問し終わっておりません。非常に重要なテーマも残してしまいましたので、ぜひまた後日質問をさせていただきたいということをお願い申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
森委員長 次に、五島正規君。
五島委員 健康保険法の質疑に入る前に、極めて重大な状況が起こっておりますので、大臣にお伺いしたいと思います。
 先日、福田官房長官が、核兵器保有は可能であるという発言がございました。また、総理の方が、小泉内閣においては核兵器は持たない、こういうお話もマスコミに載っておりました。被爆者援護法を抱える厚生労働省の大臣として、これについて大臣はどういうふうに感想をお持ちになられたか、お伺いしたいと思います。
 とりわけ、この内閣において、自分の内閣においては持たないということは、総理の判断によってはいつでも核兵器を持てると言ったことも一緒であり、この官房長官の御発言と総理の発言というのは同質の内容であると考えておりますが、これについて、まず最初に大臣の御感想をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 きょう午前中にもお答えを申し上げたところでございますが、非核三原則というのは国是でございますし、これまでも守られてまいりましたし、これからも永久に守っていくべきものだというふうに私は思っております。
 官房長官のお話も出たわけでございますが、官房長官御自身は、私はそういう趣旨のことを言ったわけではないということを言っておみえになりますから、私はそれを信用する以外にないわけでありまして、そう私は信頼をいたしております。
 私の考え方は全く変わっておりません。
五島委員 被爆国である日本というだけでなく、核拡散防止に対して非常に熱心に取り組んできた我が国にとって、こうした発言というのは大変問題だと思っています。
 それでは、健康保険法の問題について質問をさせていただきます。
 まず最初に、健康保険法を改正する理由として、医療費が今後どう伸びていくかという話から、将来、非常に問題がある、財政的にも問題になるということをさんざん繰り返されて、そして今回も健康保険法を変えていくというふうなお話になっているわけでございます。
 それについての試算も出るわけですが、私は、厚生省、本当にこの試算というのはどう責任をお持ちになって出している数字なのか。
 例えば、平成九年の健康白書を見てみますと、二〇〇〇年、平成十二年度の国民医療費は三十八兆円である、そして二〇一〇年の医療費は六十八兆円に上る、そして二〇二五年には百四十一兆円に上るという数字をお出しになりました。
 そして、同じく平成九年の九月、いわゆる医療制度の前回の改定後の問題でございますが、そのときには、平成十二年度の医療費は三十一兆円になる、そして二十二年度には五十四兆円になる、そして平成三十七年には百四兆円になるという数字をお出しになりました。
 そして、同じく二〇〇一年、昨年の三月お出しになった数字を見てみますと、平成十二年度、これは実績の数字ですが、現実には二十九兆一千億であった、そして二〇一〇年、平成二十二年には四十五兆円になるだろう、そして平成三十七年には八十一兆円になるだろうと下方修正された。
 そして、今回出された数字では、実質は平成十二年は二十九兆一千億でございますが、二〇一〇年には四十二兆円、平成三十七年には七十兆円になるという将来推計の数字をお出しになっています。
 これ、本当に、二、三年ごとに将来推計の数字というのは何十兆という単位でごろごろ動いているんですよ。一体いかなる根拠でもってこの推計値をお出しになっているのか。この推計値だけから見ますと、この五年間で平成三十七年の推計値はちょうど二分の一になっている。なぜこのような変動が起こってくるのか。しかも、このようないいかげんな数字のもとで、なぜ今ここで慌てて医療費を、大変だから、健康保険の基本を崩してまで保険の給付を見直さなければいけないのか。大変疑問に思うところでございます。
 このようなしょっちゅう変わるような数値、今回の数値の根拠を含めて、なぜこういうふうなことになったのかお伺いしたいと思います。
大塚政府参考人 医療費の推計自体が、率直に申しまして大変難しいという認識は持っておりますけれども、いずれにいたしましても、推計を行います時点での最直近の過去のデータを利用して将来を見通す、一定の前提を置いて見通すという方法しか手法としてはあり得ないわけでございまして、そういう手法を基本的には使わざるを得ないわけでございます。
 具体的に幾つかの例をお示しになりまして、その差を御指摘でございました。おっしゃいますような数字が、過去推計をしたことはございまして、その時点における推計と、その後における推計のギャップがあることも事実でございます。
 ただ、例えば、平成九年度厚生白書でお示しをした場合には、これは平成六年三月の推計を基礎にして厚生白書で取り上げたということでございますけれども、平成六年の時点では、当然のことではございますけれども、介護保険制度というようなものがスタートするということは想定の中に入っておりませんでしたし、その後、平成九年の医療保険制度改正なども当然想定をしておらなかったという事情もございます。そうした、その後の制度改正による影響というのが変化の要素として一つございます。今回で申し上げれば、今回御提案をしております制度改正をベースにもう一度推計をし直したという新しい要素が加わっているわけでございます。その点が一つございます。
 さらに、計数自体の幅といたしましては、より大きく影響が出ますのは、医療費の伸びをどう見込むか、そしてその関連で、経済の伸びをどう見込むか、この二つが非常に、医療費の計数及び特に国民の所得に対する負担、国民負担というようなものを考えますときに、この二つの要素が大きな変動要因となりますが、実は、それぞれの推計時点でどういう前提を置くかというのをその都度議論せざるを得ないわけでございます。
 全般的に申しますと、経済の状況を考えますと、ここ直近十年程度が、御案内のように、過去に比べますと低下傾向あるいは低迷傾向がありますので、その時点時点でそれを修正するということで、経済の伸びをやや下方修正した前提を置かざるを得ないという変化がございます。
 それに関連をいたしまして、医療費の伸びにつきましても、かつて大変大きな伸びがあった時代のデータをもとに推計したものと、その後経済の状況と相連動いたしまして、比較的医療費の伸びが伸びとしては小さくなってきている、相対的には小さくなってきているという実績を使いますと、どうしても医療費の伸びが小さくなる。非常に大きな要因としては、この二つが計数の幅に影響する要因だろうと思っております。
 もちろん、私どもとしては、それぞれ推計時点におきまして、その時点ででき得る限りの正確な見通しを立てるという努力をいたしておりますが、結果においてある程度の差が出てきてしまう、これは一方ではまことに残念なことではありますけれども、やむを得ないことということもございまして、できるだけ一定の期間を置いて見直し作業をするということをこれまでも繰り返してきているわけでございます。
五島委員 大塚局長は正直に、この推計をするのは非常に難しい、したがって、これまでも推計については失敗してきたというお話でございます。
 事実、この五年間において、二十年、二十二年後の推計値が二分の一になってしまったという数字を出しているわけですから、そのとおりだろうと思います。それほどいいかげんな数字でもって、なぜ今慌ててこの健康保険法を改正しなければいけないのか。
 前回も申し上げたわけでございますが、今回の診療報酬の改定についても、一般的な常識として、恐らく与党の議員さんたちも含めて、今回の診療報酬の改定による医療費の影響が五%以下と考えておられる方はおられないはずです。その数値もどうかわからないと先日もおっしゃっていました。少なくとも二・七%よりはるかに大きいということはわかっている。その実績も出ない中において、なぜ急いでこうした形での患者負担増を求めていかなければいけないのか、大変問題だというふうに思うところでございます。
 また、我が国の一人当たりの医療費というのは、対GDP比で見ると世界で十八番目。GDP比で見ることは問題だということで、実際の金額で見ても世界で九番目。医療費としては決して高い数字ではございません。
 大臣は、一体この医療費というものをどれぐらいの金額にしたいのか。現在のように、五年前に想定した平成十二年の数字よりもまだ平成十四年度の数字が低いと予測されている状況の中において、一体どこまでどのように下げれば本当に我が国の医療というものの必要なコストであるというふうにお考えなのか、その点について、大臣、お考えをお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 将来の推計につきましては、これはどういう前提を置いて計算をするかというようなことによって全く違ってくるわけでありますから、私は、厚生労働省が将来の推計を出しますときには、その前提条件にどういう条件を置いたのか、数字を置いたのかということを一緒に発表しないと意味がないということを言っているわけでございます。そうしませんと、どういう経済状況、それから今後の人口動態、賃金等がどうなっていくか、物価がどうなっていくかということを、どういうふうに見てこれはとった数字かということによって全く違ってくるわけでありますから、そこはそのようにこれからしていかなきゃいけないというふうに思っているわけでございます。
 それからもう一つの、対GDP比、あるいはまた、一人当たりの医療費というのがどのぐらいが一番妥当なのかという話でございますが、これはなかなか決められない話で、どういう質の医療を提供することにした場合にどれだけになるかという、私は質、量とセットの話だというふうに思います。押しなべて申し上げれば、現在までの医療費というのは、世界レベルで見れば、一人当たりの医療費というのは日本は非常に抑制された医療費になっているというふうに私は率直にそう思っております。
 ただ、現在のような制度をこのまま維持するというふうにいたしましても、今後かなり高齢化が進んでくれば、将来の伸び率というのは、諸外国よりも日本の方が高齢化の伸び率というのは非常に高いから、先進諸国の中位のところには、中ぐらいのところには行ってしまわざるを得ないんだろうというふうに私は思っております。
 今なぜ急いでというお話がもう一つございましたが、これはもう委員も既に御承知のとおりでございますけれども、何十年先の話は別にいたしまして、現在のこの医療保険、健保なら健保の内容というものの状況をごらんいただければ、このままで推移をすればこの一、二年で破綻が来ることもこれは当然でございまして、そうしたことをにらんで今回の制度改革に踏み切らせていただいたということでございます。
    〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
五島委員 大臣おっしゃったように、将来の見通しでもって話をする内容ではないわけです。将来の見通しという数字そのものは、厚生省は将来推計を出すことに失敗しておられる。そうすると、現状の中においてはどうなのかという話に必然的になってくるわけでございます。
 そうしますと、今回の診療報酬の改定あるいは老人医療費の改定というものによる抑制あるいは医療費の縮減というものが、一体医療費の増加というものを何年ぐらい抑えたことに匹敵するのかということの検討が実は必要なんだ。それもされないままにこの法案が出されて、強引に議論されているというところが問題なんだろうと思います。
 そこで、これは先日、六月四日ですかのメディファクスを見てみますと、医科の高額レセプト件数が六・九%増の九千五十二件になったというニュースが流れています。これは、すべてのレセプトではなくて、国保中央会が発表した二〇〇一年度の高額レセプトの審査状況について書かれているものでございます。その高額レセプトのうち、大学病院が三千五百六十一件、公立病院が三千七十三件、私立医大では前年度比一五%増加というふうに出されています。
 高額医療のレセプトがふえてきているということは、よく医学の水準が上がったから上がってくるという話をされます。もちろんそういう部分もあるわけですが、やはりそこには、より重症患者がふえているということを抜きにしては、それに、必要な患者がないところに高額医療のレセプトが上がってくるわけがない。なぜ重症患者がこのようにふえてきているのか、そこが問題なんだろうと思います。
 これまでもこの委員会におきまして、例えば糖尿病等々の例をとりながら、結果として、医療費抑制と称しての受診抑制が病状の悪化を、特に生活習慣病に関して言えば病状の悪化を来し、そして、慢性的な経過の中で医療の中断の繰り返しという状況に泣いている中で、非常に医療費を押し上げていっているというお話を申し上げました。
 やはりそうした流れの中でこの高額レセプトの増加というものがあると私は考えていますが、この高額医療費の患者さんが増加している原因、厚生労働省としてはどこにあるとお考えなのか、お伺いしたいと思います。
大塚政府参考人 御指摘のございました国保中央会、国民健康保険中央会が四十二万点以上というレセプトを全国的に集約をいたしまして審査している、その仕組みの集計が発表されたわけでございます。お話ございましたように、六・九%の増、件数にいたしますと五百八十六件の増でございます。
 詳細の疾病内容まで踏み込んだ分析にはなっておりませんけれども、外形的にわかるところから申し上げますと、四十二万点以上のレセプトのうち、四十二万点から五十五万点、つまり四十二万点を超えるあたりが過半、六、七割の増加の要因でございます。また、年齢階級別に見ますと、六十五歳以上の件数が約五割でございます。さらに、疾患別で申しますと、心臓、消化器、脳といったところがやはり五割近くを占めている。こういったようなことが見てとれるわけでございます。
 これだけからすべてを推測するわけにいきませんが、もう一つ、医療機関別に見ますと、大学病院がほとんどでございまして、特にその中で、私立医科大学病院の占めるウエートが高いといったような医療機関における特性もございます。
 こうしたことをあわせて考えますと、一つは、もちろん高齢化という、先ほど申し上げましたように、その主たるところが六十五歳以上のところで五割でございますから、高齢化に伴う疾患の複雑さというようなところもございましょうし、大学病院を中心にした件数が圧倒的であるということを考えますと、やはりさまざまな手術、あるいは手術に伴う一連の医療行為といった、医療の高度化といいましょうか、今日の医学水準の適用範囲が広がってきた、一言で言えば医療の高度化ということだと思いますが、私はそんなふうに理解をいたしております。
 ただし、これだけのデータですべてを分析するというのはいささか不可能でございますので、これからもさまざまな知見をつけ加えたいと思っておりますけれども、現時点における見方としてはそんなように考えているところでございます。
五島委員 今局長言われたとおりなんですが、もう少し正確に言いますと、昨年度の場合は一・二%の微増であったのが、今回非常にふえている。しかも、今局長おっしゃったように、六十代から七十代でこれの六割を占めている。さらには、五十代の前半で二一・五%もふえている。六十代、七十代を高齢者のうちに今の時代入れていいかどうか、いろいろあるわけですが、一般論として言えば、五十代から六十代という比較的お元気な世代においてこの高額レセプトの患者がふえている。そして、その疾病としては、特殊なものではなくて、脳血管障害とか、あるいは心臓病とか、そういうふうないわゆる生活習慣病に根差した、あるいは何らかの関連があるであろうと推定される疾患がふえているわけです。言いかえれば、その世代に対するいわゆる医学的なコントロールに失敗した人たち、そういう人たちがふえているわけですよ。
 そのことを考えた場合に、本当に今回の医療法の改正、どうなるんだ。それに対してはプラスの影響を与えるのか、マイナスの影響を与えるのか。前回の健康保険法の改定の場合にも、結果において糖尿病や高血圧の患者に対する継続受診を抑制させている。それが保険のせいとは必ずしも言えないというのは厚生省の言い方ではございますが、その方々が継続的にコントロールしている比率が年々下がってきているというのは、厚生省もお認めになった。
 そういうふうな状況を考えた場合に、結局、こういうふうなところに目をつぶって、目先の医療費を抑制するからといって受診抑制をかけた場合に、結果においては、トータルな医療費の中において自然増というものをふやしてしまう。これは何回も繰り返しました。それに対して、厚生省の方から、いや、そんなことはありませんよという反論は何もない。よく、そんなものの反論もできないまま、健康保険法は出す、おまけに健康増進法を出してくる。一体どうなっているんだと言わざるを得ないと思いますが、まあ、この辺は言っても恐らくお聞きにならないのでしょうから、言うだけ言わせてもらいます。
 そこで、もう一つお伺いしますが、国保中央会がレセプトの審査状況というのをいろいろと報道しておられるわけですが、国保は国保連合会で審査の後、各保険者での再チェックも行っておられるわけでございまして、それなりの保険者機能というものも発揮しておられると思います。十分か不十分かは、また別の問題。
 そこで、政管健保や組合健保、共済は、この支払い基金で審査した後、どのようなチェックをしておられるのか、その結果はどのように公表しておられるのか、お伺いしたいと思います。
大塚政府参考人 保険者が、保険者努力といいましょうか、保険者の自主的な活動の一環として、レセプト点検と言われる診療報酬のチェックをするということは各保険者ともそれぞれ取り組んでいただいておりますが、政府管掌健康保険におきましては、平成十年度から、都道府県単位でレセプト点検事務センター、これは内部のいわば組織でございますけれども、これを設置いたしまして、点検、調査を実施するという取り組みを行っております。
 そうしたことも含めてでございますけれども、平成十二年の実績で申し上げますと、政管健保につきましては、再審査として、一度診療報酬支払基金の審査を経たものをチェックいたしまして再審査を請求し、それが認容されたという金額でございますが、約二十四億円でございます。同様の仕組みで各健康保険組合それぞれ実施をいたしておりますけれども、金額にいたしまして約八十二億円でございます。共済組合全体で約十二億円。この金額は、それぞれの被用者保険の活動ということで、いわゆる老人保健の部分は入っておりません。これはそれぞれ、市町村、あるいはその途中経過で、それぞれの保険者がチェック、それを除いた数字でございます。
五島委員 私はどうも、政管健保なんかのチェックというものが、本当に保険者としてきちっとやっているのかなと。今、二十四億というお話がございましたが、保険のパイの大きさを国保と比較してみた場合でも、えらく少ないねという感じを持たざるを得ない。まさに保険者機能の強化ということを大臣もおっしゃっているわけですが、現行は保険者機能がないでは困るわけですね。政管健保にしても、組合健保にしても、共済にしても、保険者があるわけですよ。
 現行の中において、この保険者機能というものをどう強化していくのか。ただ保険料を集めればいい、政管健保であれば、あるいは組合健保であれば、給与から一緒に集められるから集める苦労はないということで、職員を抱えていても実際上、各保険者の中でチェックをするということは非常に少ないのではないかというふうに思っています。反論があれば、また後ほどお伺いします。
 そして、もう一つ、これとの関係の中で、最近、ふやし屋とよく言われている人たちがばっこしている。基金審査会などの審査経験のある医師を含む業者が、レセプトの作成を請け負い、やっていく。それも、レセプトをいわゆる委託でもって全部やっているというのではなくて、レセプトができ上がった段階で、基金に出す前のチェックを請け負って仕事をしている。レセプトのコンピューターの中身を変えてまで、変更してまで、恐らく業者の言い方としては請求漏れを防ぐという名目なんでしょうが、レセプトのいわゆるチェックをしている。そうしたものが私立医大にも導入されているといううわさがございます。
 先ほどから我が党の議員中心に、レセプトの公開ということを盛んに主張しているわけでございますが、私は、レセプトの公開もそれは当然のことだと思いますが、本当にレセプトの公開をしてみても、こんな基金の審査の経験のある医師たちを雇い込んでレセプトの点検と称してつじつま合わせをやられている、そのレセプトを公開されて、患者さんが、おかしいね、自分はどういう医療を受けたかしらというふうなことがわかるだろうか。恐らく基金にだってわからないんだろうと思う。
 このようになるとすれば、カルテとレセプトの中身を突合していかないと実際上わからない、そういうふうな状態だろうと思います。そうかといって、カルテとレセプトをすべて突合するなんというのは、現実問題としてはできる話ではございません。
 こういうふうな話が一体どこまでどうなのかということについて、厚生省はどのように受け取っておられるのか。ふやし屋とか書き屋とか言われている、表現で使われている集団でございますが、お伺いしたいと思います。
 そしてまた、そのようなことを防ぐためには、これも何度も申し上げておりますが、すべての疾患についてでき上がるまで待つのではなくて、DRGをやはり一日も早く導入していく。そのことによって、レセプトの書き屋さんの存在によって診療点数が変わってくるというふうなことがないようにしていくしかないんじゃないかというふうに思うわけですが、その点についてどう考えられるのか、お伺いします。
    〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
大塚政府参考人 先ほどの保険者のレセプト点検につきまして一言だけ申し上げさせていただきますと、保険者機能はまた多様でございますから、レセプト点検がすべてということではございませんけれども、保険者でなければできないレセプト点検というのもございます。
 それは、審査支払い機関では毎月毎月の処理でございますから、いわば月を重ねてまとめてチェックしてみる、これは保険者でなければできない。したがいまして、その辺は保険者の努力をお願いするわけでございますが、一方では、やはり審査支払い機関における審査の効率化といったことも我々は考えるべきだと思っておりまして、あわせて適正な診療報酬の支払いに努力するということだろうと思っています。その点、一点つけ加えさせていただきます。
 それから、ただいまの御質問の中での、書き屋という言葉は聞いたこともありますけれども、ふやし屋というのは初めてお聞きをいたしました。
 正直申しまして、そういう実態、どのようになっているかというのは、承知をするすべも今のところございませんし、承知しておりませんが、いわば公的な業務の経験を、不正とは申しませんけれども、不適正に活用するというのはまことに残念なことでございますし、それが法令あるいは医療保険法上のルールに違反する、そういうような実態がもしあるのであれば、私ども、残念ながら今その状況をわかるところまで行っておりませんけれども、私どもも、今後の指導あるいは監査などに生かす必要が生じてまいれば、これはきちんと対応しなければならないと考えております。
 さらに、いわゆる支払い方式に及ぶお話がございました。不正あるいは不適正な請求と支払い方式の問題は、やはり本質的には別の問題だと私は考えておりますけれども、どういう診療報酬体系が適当かというのはこれからも論議をしてまいりますが、特にDRGと呼ばれます診断群別の定額支払い方式、これにつきましては、もう先生特に御案内でございますけれども、平成十年から試行を始めておるわけでございます。研究途上でございます。
 ただ、今回の診療報酬改定におきまして、これも御承知でございますけれども、いわゆる特定機能病院につきましては、特定の大学病院等につきましては、来年度からを目指しまして、平成十五年度からを目指しまして、一種の包括的な支払い方式に移行しようということで、その方針は決定をいたしておるわけでございます。その具体的な点数の処理その他につきましては今後関係者の議論もいただいて詰めてまいりますけれども、大学病院等につきましては大きく支払い方式を転換するという方向に踏み出して、現在作業中であるということを申し添えさせていただきたいと存じます。
五島委員 もちろん、支払い方式の問題とDRG方式というものは別物であることはよくわかっている。だけれども、やはりDRGという形での医療の標準化というものを進めることによって、さまざまなそうした医療にまつわるところの不信というものを払拭できるということは事実だろうと思います。
 それから、DRG・PPSといっても、ある疾患に対して定額払いということにならないんだろう。疾病については、それぞれの症状が比較的軽症の段階から極めて重度の段階まである、その組み合わせなんだろう。それをどこでやるかですが、私は、今大塚さん言われたように、あれはたしか国立病院と大学ですか、でやっておられる。きょう午前中にも質問に出てきましたけれども、大学病院の医療というのは、本当に効率よくて質の高い医療を提供しているとは、私は全然思えない。そんなところでDRGをやってみたら、非常に医療費が高いものに数字としては出てくるだろうなと思っています。
 そもそも、本気でDRGを導入するとすれば、そんなところで試行したこと自身がやる気のない証明だと私は思っているわけなのですが、本当にできるのか。やはり、まさにこういうようなものこそ広く全国の中から症例を選んで、そして官民あわせてこのDRGについてはもう一度やり直していく必要があるのだろう。
 それから、もし本当にやる気があるのなら、レセプト病名と国際病名との関係をどうするかというので、いつもお逃げになるのだけれども、こんなものは簡単に変えていくことができる、置きかえることもできる。本気でやる気になれば決して難しいことではないのだけれども、何のかんのと言っておやりになっていない。そこで、医療に対する不信感が非常に広まっている。その責任はやはり厚生省にそれ相当に負うてもらわなければいけないというふうに思います。またこれについても御意見があればお伺いしたいと思います。
 また同時に、今後日本の医療の中において問題になってくるのは、やはり薬剤の問題です。医療費における薬剤比率というのは、年々大変下がってまいりました。以前に比べれば大幅に下がったと言ってもいいと思います。しかし、我が国の薬剤費の依存率が諸外国に比べるとまだ高いということは間違いない。
 そこで、我が国の薬剤状況といいますか、生産からあるいは流通、あるいは薬事行政というものを見ていった場合、我が国の特徴を一言で言えば何か。国際的には全く認められていない新薬の数、国内でしか認められていない新薬の数が非常に多い。もう一方で、ジェネリックとしての、俗に言うゾロ品と言われておりますが、このジェネリックの薬品の普及と生産は非常に少ない。これが我が国の使用されている薬の実態である。
 また、新薬をみずから開発するよりは、外国の開発品を輸入したり、あるいはその特許を得て生産する、そのことの方が利益が上がる製薬会社が圧倒的に多い。我が国の製薬企業の中で新薬を開発しているところも、その多くは海外、主としてアメリカですが、アメリカでの生産がほとんどである。すなわち、日本の国内においては、現状においては画期的新薬というものが国内において生み出されている可能性というのは極めて乏しい。これが日本の医薬品の実態であると思います。
 そうだとすると、薬剤費の比率をもっと低くしていくためには、やはり画期的新薬というものがもっと使われる、開発されていくという体制をどうつくるかということと、あわせて、ジェネリックを軸とする生産とそれから普及ということに薬事行政の中心を置いた薬価の決定システム、薬事行政が必要である。だけれども、依然としてマイナーチェンジか、あるいは日本の国内でしか使われていないような新薬を、どう価格をつけるかということに薬事行政は本当に血道を上げている。これが今の日本の薬事政策だろうと思うのです。
 第一、日本においては、製薬メーカーが薬の情報を直接宣伝としてすることを認めていないですね。先ほどの水島議員の質問とも関連するのですが、今は本当に情報社会、多くの患者さんは簡単にインターネットで、外国の治療方法、外国の薬剤に対しては、それがどういうものかということはアクセスします。医者がおたおたしていると、患者の方がよほど情報が多い。珍しくありません。
 ところが、日本の製薬メーカーがそれをやろうとした場合、これは広告規制でひっかけていますよね。医療機関の広告規制を緩和するのも結構ですが、必要だと思いますが、そういうふうな薬剤に関する情報というふうなものを広く国民に知らせるようなこと、これもまた大事な規制緩和なんです。
 そういうことを含めた薬事行政の転換というものをされることによって、結局はジェネリックを諸外国、ドイツやイギリスやそれらの国と同じように普及させていく、そのことによって、国民に迷惑をかけずに医療費をより安いものにしていくという方法を考えるべきだと思うわけですが、厚生省はどのようにお考えでしょうか。
大塚政府参考人 ただいま御指摘のありましたさまざまな現在の医薬品及び医薬品産業をめぐる御指摘につきましては、私どもに対するむしろ叱咤激励というふうに受けとめさせていただきたいと存じますし、おおむね現状分析において、私どもも心当たりがあると申しましょうか、理解をするところでございます。
 ただ、これも、その上でということでございますけれども、国際的新薬として日本がどれだけ国際的な位置を占めるかという点につきましては、もちろん圧倒的にアメリカの力が強いわけでございますけれども、ドイツと並ぶぐらいのそういう水準には、少なくとも今日一応至っておる。しかし、まだまだこれからの課題は多い。それから、国内におきまして、外国で開発された医薬品あるいは外国のライセンスを活用した医薬品の、国内医薬品の産業化というのが非常にシェアが大きくなってきておるというのも、これも事実でございます。
 そうした現状認識に立ちまして、先般も、医薬品産業につきまして、将来ビジョンというものを厚生労働省として発表いたしましたが、そうした医薬品産業の発展と申しましょうか、将来と、一方で医療保険制度におきます医療の、特に医薬品の適正な使用、この両方を両立させていくということが非常に重要な、かつ難しい課題であると思っております。
 画期的新薬の開発促進という観点からは、薬事行政におきまして、基礎研究基盤の整備、あるいは治験の推進、それから承認審査の迅速化といったようなことを進めるにあわせまして、今般の診療報酬、薬価改定におきまして、画期的新薬につきましては、従来、いわゆる加算率四〇%を一〇〇%にまで引き上げるといったような、そうした評価の充実も図っているところでございます。
 それから、後発品の使用促進、これも長年の課題でございますが、我が国におきます医療あるいは医薬品を取り巻く社会背景もございまして、なかなか進んでおらないのが現実でございますし、今後その拡大を図っていくという方向につきましては私どももそのとおりだと思っておりまして、私の所管する医療保険のサイドだけから一、二申しますと、今回の診療報酬改定におきまして、後発品を含む処方を行った場合に、処方せん料に格差をつける、高く評価するといったような仕組み、あるいは、薬局において後発品の調剤を行った場合、それに関する情報提供を行った場合について、評価を新設するといったような仕組みも取り入れてまいりました。
 今後さらに、どのような方法を、さまざまな方法を講じていく必要があると考えておりますが、方向といたしましてはおっしゃるとおりだろうと考えておりまして、私どももいろいろ検討し、努力をさせていただきたいと考えております。
五島委員 叱咤激励と受け取っていただいてありがたいと思いますが、まさに、残念ながら、我が国の状況の中においては、厚生労働省を叱咤激励してよくなってもらうしか国民は幸せになれないわけですから、叱咤激励と受け取ってもらって結構です。
 ただ、今大塚さんがおっしゃったように、このジェネリックの問題にいたしましても、ただ単に使えということだけではなくて、ジェネリックが普及するためには安定的な供給というものもないとだめなわけですね。そういう意味では、いわゆる大手メーカーと言われるところが、何かわけのわからない、国内しか通用しない新薬をつくってやるのでなくて、やはりジェネリックとして安定的に供給のある薬、そういうゾロ品を大手もつくっていくというようなことが必要なんだろう。そういうふうな思いも含めて、ぜひ薬事産業に対する指導というものをやっていっていただきたいというふうに思います。
 時間も大体そろそろいいころになってきたわけですが、こうしてこれまでもずっと申し上げてまいりましたが、いろいろな議論の中で、医療の抜本改革の中で、患者さんに対して犠牲を押しつけなくても医療費というものが、必要な医療費は必要ですが、不当に医療費が高騰するということがないように、抑制したシステムというのは十分可能なんだろう。それを検討していくために、与党の方は来年の春までとおっしゃっているわけですね。来年の春までかかってその審議をして、その上で、一体医療費は、自己負担は本当に変えなければいけないのかどうか、検討する時間は十分にある。それぐらいの財源は既に出てきているではないかと思います。
 そういう意味で、大臣にぜひお答えいただきたいわけですが、本当に今の状況の中で、健保の本人三割負担、これをとりあえず削減したところで数千億ですよね。それをしてしまうと、今回の診療報酬の改定があっても破綻するとお考えですか。これは、やはり医療制度の抜本改革というものの中において議論するというふうにお考えにはなりませんか。
 また、これまでも大臣は高額療養費の必要性というのは強調しておられます。まさにそうだ。軽症の患者さんに対してはそれなりに二割、あるいはお年寄り一割とかいうふうな負担があったとしても、非常に高額ながんの手術など医療費がたくさん要るときには五%以下ということもあり得るでしょう。そうだと思います。それを非常に強調しておられる。私はそのとおりだと。そうだとすれば、やはり高額療養費の制度、今、老人医療だけは法律の中に組み込まれているわけですが、健康保険法あるいは国民健康保険法の中では、高額療養費は、これは政令事項になっています。これを健康保険法の本法に組み込むようになさるお気持ちはございませんか。
 この二つについて、まず大臣にお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 まず最初の、三割自己負担の問題でございますが、先ほどからるるお話をいただいておりますように、改正をしていかなければならない点はたくさんあるというふうに思っておりますが、現状におきまして、高齢者医療費がだんだんと増加をしてきていることも事実でございます。概算でございますけれども、年間約一兆円ずつ年々歳々ふえてくるという状況にある。
 これらのことを今回改正において抑えましても、年間七千億ぐらいの金がふえてくることも事実でございます。現在の保険財政を見ましたときに、一年間たちますと、非常に厳しい状況で赤字に転落するところもたくさんあるわけでございます。できる限り患者の皆さん方に御負担をいただかないようにすることは大事でございますけれども、そこに御負担をいただかないようにしますと、すべてを保険料で負担していただかなければならなくなる。お若い皆さん方の給与の中から今まで以上にさらに多くの保険料をお払いいただくということは、可処分所得が大変大きく下がることになるわけでございますし、これにも限界があるというふうに言わざるを得ません。
 それこれを考えまして、保険料の御負担もある程度いただきながら、しかし患者の皆さん方にもある程度の御負担をいただく。そして、先ほどからお話をいただいておりますように、元気な人は保険料で御支援をいただきますし、病気になられた皆さん方の中も、軽い病気の皆さん方は三割の負担をいただき、そして重い病気になればなるほどその割合を小さくしていって、お互いに助け合っていくというこの医療制度を維持し、発展をさせる以外に私はないというふうに思っております。
 五島先生ともふだんからいろいろのお話をさせていただいておるわけでありますから、共通点も非常に多いというふうに思っているわけでございますが、私は、そこはそんなに特別な方法があるわけではなくて、そこは、御負担をいただかなければならないところはやむを得ないというふうに思っている次第でございます。
 それからもう一点、何でしたか、高額療養費のお話でしたか。高額療養費の問題を、現在のままいきますと、ほかの問題は、御審議をいただいて、そして皆さん方に御理解をいただけるかどうかはなかなか難しいですけれども、しかし御審議をいただいて決定をしていくということになっておりますが、高額療養費の問題は政令事項になっているといったことから、いろいろ皆さん方の方で、それじゃ厚生労働省が勝手に上げればそれまでじゃないかという御指摘をいただいておりますことも十分承知をいたしております。
 これも、この高額療養費の問題、非常に具体的で細かな話なものでございますから私は政令事項になっているというふうに思っておりますが、何らかの形で少々これに歯どめをかける方法はないのかという御意見も私は貴重な御意見だというふうに思っております。
 この辺のところも、いい方法があって、与野党で合意していただいて、こういうことでどうだというようなことになるのであれば、それは私も謙虚に耳を傾けなければならないというふうに思うわけでございますが、これは大変重要な問題であるという認識を持っておりますことをお答えさせていただきたいと存じます。
五島委員 軽い病気は三割で、重症になれば云々とおっしゃっているわけですが、こういう話が出てきますと、よくインフルエンザと盲腸とそれからがんの話が出るわけですね。だけれども、この委員会における質疑の中でもはっきりしているように、今日、国民的に大きな、国民健康に影響する疾患は生活習慣病である。それは連続的に軽症から重度までつながっている疾患論であり、そこにおけるコントロールがもし不十分になってしまうと非常に医療費の高騰に関係する。こういうやはり疾病構造に今の日本があるということを考えると、私は、そこのところをあえて感染症や盲腸、そしてそれにがんを比較しながらの議論というのは現状の認識としては問題ありというふうに考えます。
 そういう意味で、現実に老人医療の問題についてどうするかというのはこの問題では解決できない。老人医療制度をどうするかというのはまさに抜本改革の中における中核的な問題であるということを考えた場合に、やはりそれを含めて医療費の問題は議論されるべきであるというふうに考えます。その最も重要な点において大臣と大きく意見が食い違うということに対しては極めて残念ではありますが、しかし、我々としてはこのことを断固として最後まで主張していくということでございます。
 それから、最後に、時間もございませんので、午前中も質問があったわけですが、今、私どもは、非自発的退職者が非常に増加している中で、その非自発的退職者が失業により無保険者になるということをどのようにして防いでいくかということで、健康保険法及び地方税法の改正案を提出しています。
 大臣は、疾病による退職者もあるしというお話で、それとの公平性というお話もございました。むしろそういうふうにまで広げられるということであれば結構でございますが、例えば、継続については、高額所得者の場合は、従来の標準月額の五〇%をもって高額所得者に対しては対処する、保険料と決定するということができるわけでございますね。我々はこれを六〇%としている。そういう意味からいえば、決して不公平な問題は起こりようがない。
 それから、国保の問題にいたしましても、前年度の総所得に対してかかってくる報酬を一年間に限って、これはいずれも一年間に限ってでございますから、一年間に限って三〇%にする。そのことによって、失業する前において払っておられた保険料とほぼ同額の保険料を御本人の負担において、保険に加入していただける。そうでないと、倍あるいは三倍の保険料を払わないかぬ。解雇されて、それも非自発的に解雇されて、医療保険料が二倍、三倍になる。これでは、これはやはり無保険者をふやすだけだろう。
 そういうことを考えた場合に、やはり医療保険の継続ということで、我々は、さまざまな問題はありながらも、この非自発的退職者に対する医療保険の保険料の設定についての法案を出しております。坂口大臣、ぜひこれについて協力していただけるようにお願いしたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
坂口国務大臣 きょう午前中に、鍵田先生からの御質問だったと思いますが、そのお話が出ました。五島先生、非常に御熱心にこの問題にお取り組みをいただいていることもお聞きをしているわけでございます。
 御指摘をいただきますそのお気持ちというのは私も十分にわかるわけでございますが、けさ申し上げましたような、いろいろ配慮をしなきゃならないような点もあるのではないかというふうに思っているわけでございます。
 いわゆる国保に転換をしていただくということになれば、国保の中でやるべき手はあるというふうに思っておりますが、健保のままでおみえになる皆さん方に対してうまくいく方法があるのかな、若干私は理由的になかなか難しい点があるんじゃないかという気がいたしておりまして、午前中にもああいう御答弁を申し上げたところでございます。
 皆さん方の方で、こういういい方法あるぞというふうに国保も御指摘をいただくのであれば、私も謙虚に耳を傾けなければならないと思っている次第でございます。
五島委員 ぜひ、与党の皆さん方からのその辺での御質問をいただければ、我々も答えさせていただきますので、よろしくお願い申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。
森委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。きょうも四十分間おつき合い願えればありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まずは、やはり冒頭に大臣にお聞きしたいこと。私も広島県人としまして、福田官房長官の御発言に対しては大変な憤りを感じている部分がございます。今までの各委員の先生方からもいろいろな御質問、お話がありました。私が思うことは、福田官房長官の御発言、あのことに関しては、やはり不適格な方というふうに思い、やはりそれはやめていただくかということを思う部分が強くございます。
 大臣も前、この医療関係のお話をさせていただく中、一回失敗したりまずったりということがあったらば、そういう方、そういう会社には一回はやはりお休み、やめていただかなきゃいけない、こういうことをおっしゃられていたと私は思います、まさに競争原理の中での話ですけれども。そういうことを考えていくと、やはり政治の世界でも、先ほど大臣は、そういった意思の発言ではないと信じたいと思いますみたいなことをおっしゃられましたが、そうはいっても言っちゃったものは言っちゃったもの、これは一回お休みをいただくかやめていただくというのが筋だと思います。
 福田官房長官のあの発言に関しての御意見、いろいろと委員もきょう午前中からございました。私はやはりやめていただくべきだというふうに思いますけれども、大臣いかがお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 けさからも何度か申し上げておりますように、私の考え方は、国是であります非核三原則というのは今後とも堅持をすべき問題であるということを申し上げているわけでございます。
 きょう、官房長官が理事会等で御発言になったそうでございますけれども、非核三原則に関する発言は報道等されているのは真意ではない、三原則堅持については自分としても信念であるという御発言をされたということでありますから、私はそれを信じたいというふうに思っております。
 会社の話を先ほどされましたけれども、私は、会社には一遍失敗をしても再挑戦の機会を与えるようにしなきゃならないということを前に申し上げたわけでございます。
佐藤(公)委員 まさにそれは失敗と認められたことになるのかなと私は思います。再挑戦という部分は、一回やはり官房長官をやめて、衆議院をやめろと言っているわけではないんです。衆議院をやめろと言っているわけではないんですから、一回お休みをいただいて、また次の組閣のときに入られる、こういうのが僕はチャンスだと思います。
 今回の、今の大臣のお話からすれば大臣は官房長官を信じていらっしゃるのかもしれませんが、報道されているのを全部見れば、そういう内容じゃない、そういう気持ちじゃない、意思じゃない、真意じゃないと言っても、そういうふうに出ちゃっているものは、これは失敗だと思います。
 大臣、もう一度お聞きします。やめるべきとお考えになりませんでしょうか。
坂口国務大臣 御本人がそんなことを言っていないというふうにおっしゃっている限り、おやめになる必要はないと思っております。
佐藤(公)委員 わかりました。これに関しては、当厚生労働委員会、これは被爆者援護法を含めて非常に、私も広島でありますけれども、被爆者に対して大変な問題として私ども考えている、取り上げているつもりでございますけれども、他の委員会、もしくはその様子、推移を見て、きちんとけじめというものをつけていただきたいというふうに思います。
 では、健康保険法の改正に関しての質問をさせていただきます。
 私も、ずっと委員会の議論を見させていただいている中、何か歯車が毎回毎回合わないのかなというふうに思っております。そういう中で、本日、鍵田先生の御質問の中から、制度の話をする、制度も変えていくことも必要だが、やはり財政論から大臣は入って物事を考えていく、まずはやっていかなきゃいけないというお話をされておりました。
 では、この財源論、財政論というか財源論はとても大事な話であり、財源のことというのはもっともっと論じていかなきゃいけないと思いますけれども、私はこの財源論のところをずっと見させていただく中、非常に複雑な構造になっていることはもう大臣も御存じだと思います。この複雑な構造に関しては、きょう質問をするつもりはございませんので御安心ください。
 ただし、この複雑な構造の中で私が常日ごろ感じていること。やはり、税というものと保険料というもの、この違いというものが、またもしくはそういう言葉の定義、違いというものがありますけれども、もう当然大臣御存じのように、私たちは消費税の福祉目的税化というものを一つの政策として提案もしている部分がございます。御存じのように、これに関しては、基礎年金や老人医療、介護というものに限定した消費税の使用を考えたという物の考え方、まさに坂口大臣が前の政党においておつくりになった部分だと思いますけれども、そこの部分で、やはり税と保険料というものが、もう何かこう、都合のいいときには税、都合が悪くなると保険料、都合がよくなると保険料、都合が悪くなると税、何かそういう取り方の問題ですりかえが行われているように私自身感じるところがあるんです。
 実際問題、最終的に、この財源論の全体の流れを考えていくと、一体全体、どこが、だれが取っていくのか、そしてどこに使うのかという、特に、どこが取っていくのかによって種別がされていくような気がいたします。でも、結果的に使っているところというのはみんな同じように思えるんですけれども。この税と保険料というものが、今いろいろな、保険料ということで、確かに保険制度というものは抑制的なもの、やはりそこにおける使われ方、意識というものを植えつけるという部分で必要なことというのもわかりますけれども、この税と保険料というものを大臣はどうとらえられているのか、どう考えているのか、その辺のあたりを教えていただけたらありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 やはり、リスクを分散するという意味では、保険の制度というものは非常に大事だというふうに思っております。特に、医療でありますとか介護でありますとか、そうした限定をしたことに使用をするということになってまいりますと、やはり保険料というものなしで済ますということにはいかないだろう。ただ、年齢構成の問題等もございますから、高齢者医療をどうするかといったような問題がございますので、そこには税の問題も私は大事な問題として入ってくるというふうに思っております。
 だから、税とこの社会保険というものとは昔言われておりましたほど鮮明な区別というのはなかなか難しくなってきているというふうに私思いますけれども、しかし、この保険というものの価値をやはり十分に認識しながらやっていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 まさにいろいろと、ばんそうこうで張り合わせたような、パッチワークのような作業におけるこの医療費、まあ社会保障制度全体だと思いますけれども、財源構成というものが今存在をする。そういうものが本当に、今大臣がおっしゃられたように、税と保険料の選別というものがだんだん不明確になってきている部分があると思います。こういったことをやはり考えて抜本的な改革をしていく、こういった議論を先にすべき、もしくはもっと早くすべきだったというふうに思います。今、現段階していると言われる方々もいるかもしれませんが、やはり棚の上に上げた状態になっているように思います。
 もう一度、毎回同じようにお尋ねをする部分があるんですけれども、消費税の目的税化。まさに、老人医療そして介護保険、基礎年金というものを税方式にしていこうということを、前に坂口大臣もお訴えになられていた部分または提案していた部分があると思いますけれども、なぜそのときはそういうふうにお思いになられたのか、またそれが今の現状変わってしまったのか、明確に教えていただけたらありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 私個人は考え方を変えているつもりはないと思っております。
 税の中でも、消費税という間接税の場合には、直接税の場合とは違うわけでありまして、広く国民の皆さん方に御負担をいただかなければならないものでございます。消費税を社会保障に使うということと、社会保障は消費税で賄うということとは、私は別の話だというふうに思っています。消費税を社会保障に使うというふうに言うのであれば、それは私はそのとおりというふうに思っている次第でございます。
 これは、かつて自自連立時代、私は予算委員会で質問をさせていただいたことがございます。消費税を社会保障に。消費税は社会保障に使うということなのか、社会保障はすべて消費税で賄うという意味なのかということを私お聞きしたことがございます。そうしましたら、そのときの御答弁は、社会保障には消費税を使う、こういう意味だ、こういう御答弁であったというふうに記憶をいたしております。
佐藤(公)委員 ということは、大臣は、消費税を一応、目的税化して、社会保障関係に使っていく分には構わないし、それに関しては賛成をするということになるんでしょうか。
坂口国務大臣 現在も消費税をちょうだいいたしております。お金に色がついていないものですから、どこがどうだというふうになかなか言うのは難しいですけれども、現在消費税をちょうだいいたしておりまして、その消費税に匹敵する分はこの高齢化医療等に使われているというふうに理解すれば、それは私はそういうことになるだろうというふうに思っております。
 したがいまして、現在いただいております消費税は、これは高齢化医療、介護あるいは基礎年金といったようなところに使うんだという御趣旨に対しまして、私は決して反対いたしません。そういう考え方は成り立つというふうに思っております。
佐藤(公)委員 ありがとうございます。
 それが変わっていないというのであれば、またいろいろな意見交換をしながらいい方向に、そういうふうに持っていっていただけたらありがたいと思いますけれども、当時もやはり、目的税化をきちんとしないと、当時大蔵省等の一般財源を含めて一緒ごたになっちゃって、ほかにも使われる、どこに使われているかよくわからないまま、まあ大変失礼な言い方をすれば、大蔵省のいいようにお金が分散しちゃう、公共事業等にも行っちゃう。ちゃんと、社会保障制度、これからの日本を考えた場合にやはり負担というものがかなり大きくなる、そこの部分を考えて、きちんと目的税化していこうという話で進んでいたかと思います。
 こういう部分をまた私どもも主張してまいりますので、どうか、本当を言えばこれは今まさにそういうことを議論し、するかしないかということを、財源論、さっき大臣がおっしゃられました、財源論から入って制度の話をするのが筋というような言い方をされたんですけれども、そこの財源論の部分部分を何かこう棚の上に上げて、何となく帳じり合わせだけにしてしまう、ここがやはり私は納得いかないし、この委員会を含めてやはり大臣とも議論をしていきたいと思っております。
 ですので、こういったことをきちんとしてから、将来の方向性、ビジョン、目的、青写真が明確になってから国民に負担をお願いするならまだしも、まだそういう議論もまともにされていないまま、このまま進むというのは、私は納得いかない部分がございます。
 そして、僕はもう毎回毎回、骨太男みたいになってしまいましたけれども、骨太の方針の中で、社会保障番号制というのが出ているわけでございます。
 社会保障番号制。今、年金番号や何かもいろいろなことで進んでいるわけでございますけれども、一体全体、この社会保障番号制というのがどういうビジョンにおいて、どういう計画を持って、どういう進展状況で今進んでいるのか、お答え願えればありがたいかと思います。
石本政府参考人 お答えいたします。
 今先生御指摘の昨年六月のいわゆる経済財政諮問会議、骨太の方針におきまして、社会保障番号制と、それから社会保障個人会計(仮称)という御提案がございました。私ども、これを受けまして、本年の三月までに、アメリカ、シンガポール、OECD等に担当官を派遣しまして、諸外国の現状あるいはさまざまな制度につきまして調査をいたしてまいりました。
 御指摘の社会保障番号制につきましては、ことし一月の中期展望におきましても検討が内容になっておりまして、さまざまな検討を現在いたしているわけでございますが、御案内のとおり、一方で、費用に照らしましてこの番号制に十分なメリットがあるかどうか、プライバシーの保護の観点から問題がないかなどの課題もあるわけでございます。
 保険者がそれぞれ分立している中で、全国斉一の社会保障番号というものの御提案についてはさまざまな議論が必要だと思っておりますが、私どもとしては、この番号制に幅広い観点からの検討を進めている状況でございます。
佐藤(公)委員 今御答弁いただきましたけれども、実際、その社会保障個人会計ということもおっしゃいました。これはちょっと次の段階で聞こうかと思いましたけれども、もう出てきましたので、社会保障番号制と社会保障個人会計というもの、今検討しているということなんですけれども、もう少し具体的に、いつまでにその検討結果をきちんと出して、どういう形のものを今後つくり上げていくのか。全体のスケジュールもある程度出ている部分もありますけれども、もう少し具体的にまずは説明をお願いいたします。
石本政府参考人 ただいま委員御質問いただきました社会保障個人会計と社会保障番号制との関係も含めて答弁させていただきますが、この社会保障個人会計につきまして、アメリカ、シンガポール、OECD等、同じように調査をしてまいりました。
 まず、個人会計につきましては、いわば強制貯蓄制度をとっておりますシンガポールは別にいたしまして、いわゆる社会保障個人会計に相当する制度を有している国はございませんでした。
 ただ、アメリカは、ソーシャルセキュリティーという言葉は年金というふうに私ども理解しておりますが、このアメリカのほかに、ヨーロッパのスウェーデン、ドイツにおきましても、一定年齢以上の人に対しまして年金の受給見込み額の提供が行われております。
 保険料の記録と、それからあわせて、大体どの程度もらえるのかという年金受給額の見込みというのは、大変に年金の被保険者にとりまして参加意識の観点からも大切な点だと思っておりまして、今後、社会保険事務所などにおきます年金相談に際しまして、五十歳以上の方を対象にして年金見込み額の情報提供を行おうというふうなことで検討を行っております。
 社会保障番号制とこの個人会計は、ある意味では、先ほど一つ申し上げましたけれども、保険者が国一本の場合は極めて議論として検討をしやすい面がございますが、保険者が現在のように四千も五千も分立しているという中で、この番号と個人会計を全国一本で合わせるということにつきまして、費用の面あるいは手続の面、さまざまな検討課題がございます。
 そういう意味で、私ども、幅広い観点から検討をしたいと思っておりますが、個人会計の情報提供につきましては、既に、先ほど申しましたように、五十歳以上の方を対象に情報提供を早く行えるような方向で、具体化に向けて鋭意取り組んでいるところでございます。
佐藤(公)委員 この社会保障番号制と社会保険個人会計、自分でもいろいろなイメージがあるんですけれども、もう少し具体的に、一体全体どういう社会になるのか、どういうふうに私たちに身近で、どういう生活、社会保障、医療、年金のことが変わっていくのか、具体的な簡単な像を、簡単にわかりやすく御説明願えませんでしょうか。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
石本政府参考人 答弁が大変に不的確で申しわけございませんが、簡単に申し上げますと、御自分で、あるところにアクセスしていただきますと、これまでの自分の年金保険料の記録、それから、このままでいけば大体どのぐらいの年金がもらえるんだろうという見積もり、見込み額というものが、画面なりあるいは声でもってお聞きになれる、あるいは見られるというふうな、個人の窓があるというふうに御理解いただいたらいいかと思います。
 これはいずれも、アメリカにおいてもスウェーデンにおいても、そのようなシステムがとられているというふうな状況でございます。
佐藤(公)委員 一部だけの話だったと思いますけれども、それが社会全体にどういう影響を及ぼし、どう構造が変わっていくのか、意識が変わっていくのか。いろいろなことがあり得ると思います。
 時間がないのでこれぐらいにさせていただきたいと思いますけれども、そういった個人情報に関する、まさに個人情報保護法、いろいろなことの関係がオーバーラップしていく。ここら辺の話もきょうはいたしません。
 そういう中で、やはりこれは機械化というかIT化ということが非常に大事なことにもなってくる。インターネット、そして電子カルテ等の問題も絡んでくると思います。こういう電子カルテとか電子化、インターネット、情報通信網、いろいろな話があります。
 私が、平成十二年の十月の厚生委員会、旧厚生委員会で質問をさせていただいているのです。津島大臣のときでございました。当時私は総務委員会におりまして、やはりまさにインターネットのことをずっとやらせていただいている中、この医療関係、まさに今いろいろな議論が出ているそのIC化とか電子化とか情報通信網の関係で、一体全体、今、現状、どんな地方自治体でそういうことに医療関係で取り組んでいるところがあるかということを調べたところ、まさに十幾つかのICカード化の地方自治体というのがございました。
 そのうちの一つに、まさに淡路島の五色町というところがICカードのモデルをやっておりまして、一九九一年から九五年まで、厚生労働省さんも協力を多少しながら、ICカードの実用化ということで、この町でやった。カード協議会というのがありまして、常に情報交換等もしているグループもあるのですけれども、この段階で、私が当時調べたところによると、カードを持っている人と持っていない人の間で、医療費の抑制というのが三〇%以上違うのではないかというような調査等も出てきたわけでございます。
 そういうことが出てきたわけでございますけれども、今から三年前に質問させていただいたのですけれども、その後、この五色町のICカード、いい研究だと私は思っておりますけれども、九五年以降からは全部とまっちゃったのですね、やめちゃった。厚生労働省、一体全体何でやめたのか、そして、今この五色町のICカードや何かの、医療抑制や何かに関する研究、その後のことはいかがなっているのか、お答えくださいませ。
篠崎政府参考人 ただいま先生御指摘になりました兵庫県の五色町、大変有名な保健医療活動に取り組んでおるところでございますが、昭和六十三年に、ICカードへ投薬情報ですとかあるいは検査情報などを収載した保健医療カードシステムのモデル事業を始めたわけでございます。モデル事業でございますので、ある程度定着したということならば、今度は町独自で今運営をしていただいているという状況でございます。
 このほかに、現在でありますが、今先生もおっしゃいましたけれども、私どもの調べた範囲では、経済産業省の方でICカードの普及等によるIT装備都市整備事業というのが実施されておりまして、これは全国で二十一の地域においてされております。その中で、保健医療分野への活用についても検討され、実施されているというふうに聞いております。
 また、私ども厚生労働省におきましては、介護保険における被保険者証のICカード化についても、これも非常に活用の価値があるというふうに考えておりまして、平成十三年度に全国二つの地域におけるモデル地域を選定いたしております。そして、平成十五年度からそのモデルシステムの運用開始に向けて、現在取り組んでいるという状況でございます。
佐藤(公)委員 局長、今お答えいただいたんですけれども、一体全体、その後、五色町の方に対してはどういう関係で厚生労働省は接しておられるんでしょうか。予算も含めて、またいろいろな情報提供を含めて、どういう形で関係を持っていられるのか、いかがでしょうか。
篠崎政府参考人 先ほど申し上げましたように、モデル事業でございました。現在では町独自でやっておられるということでございますので、その予算的な意味での補助というようなつながりはございません。
佐藤(公)委員 では、九一年から九五年までの間に、一応五年間、これの統計をとって調べて、厚生労働省さんでもやられたと思いますが、そのときに、ある程度このICカードが医療費の抑制に貢献した、もしくはそういう成果が出たということは、結果としてそちらはどう総括されているんでしょうか。
篠崎政府参考人 今手元に詳しいそのデータがございませんが、残念ながら、一義的に、予防したことによってその治療についているいろいろな費用が下がったということが一概には言えないというデータだそうでございまして、詳しくはまたデータを見て御説明させていただきます。
佐藤(公)委員 全部が全部一概に言えないとはいうものの、ここに資料がございます。平均値でいうと、カードを持っている方と持っていない間で六七・八%、三〇%以上の抑制があるということは一応出ている。ただし、これはあくまでも一つの見方であって、これですべて抑制しているかどうかというのは言いがたい部分があると思います。
 でも、実際こういういいデータなりいい研究があるのに、今地元の五色町やなんかは、自分たちで、地方自治体でこういうことを進めてやろうとして一生懸命やっても、余りにも周りが冷たくて、どんどん先細っているような状況というのは御存じでいらっしゃいますか。局長でも結構です。副大臣でも結構です。
篠崎政府参考人 ちょっとその先細っているというような状況は把握いたしておりませんけれども、今健康づくり等もやっておりまして、結局、いかに予防事業を推進することによって医療についての効果を出すかということは非常に大きな課題でございますし、全国的に見ましても、健康づくりに一生懸命取り組もう、あるいは取り組みたいという市町村は年々ふえてきているというふうに思っておりますので、五色町はそういう意味では非常にそれの先鞭をつけた町だというふうには認識いたしております。
 現在の状況はちょっと把握しておりませんが、近いうちにまた町の方にも聞いてみたいと思っております。
佐藤(公)委員 今、五色町の方では、町全体、町の中では医師会とはうまくいっているんです。でも、町の外の医師会とはうまくいかない。やはり外圧というものがかかって、なかなかうまく町の外とは交流がとれないような状態。そして、先細りというのは、九一年から九五年の間は厚生労働省がそれなりに見てくれたけれども、その後はほうり投げた状態のように話を私は聞いております。
 ですので、私は、こういういいデータが九五年のときもう出ているのであれば、もっとやはり地方自治体の方に応援をしてあげる、もしくは周りとの、医師会との関係、いろいろなことをしていく、それが今日の抜本改革につながってくると思いますけれども、何かやっていることが地方自治体に対して非常に冷たいような感じがする。特に地方自治体において、五色町が、十七でしたか、カード協議会というのがあるんですけれども、そこも今は三つか四つ、また減っていく状態、やめていく状態なんですね。本来ならば、もっともっとインターネット、情報化というものは進んでいかなくちゃいけない、広がらなきゃいけないのに、なぜかどんどん縮小、先細りの傾向にあります。
 こういう実態をすべて正確に私も把握しているわけではございませんが、ぜひ、大臣、副大臣、僕は応援をしてあげて、やはり活力ある、そして自立した地方ということを本当に目指すのであれば、こういったものをもっと見てあげて、研究をする、考えていくということが必要だと思います。詳しいことはまた厚生労働省の幹部の方から聞いていただけたらありがたいかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 私も以前に関心を持ってそのカード化の問題に取り組んだことがございます。たしか、淡路島と、それから委員の地元の広島でも一カ所おやりをいただいていたというふうに記憶をいたしております。
 そうした実験を踏まえて今日を迎えているわけでございますが、最近はそうした、国からのテストケースではなくて、それぞれの地域が自分たちでやろうというので、地域の医師会全体でまとめて立ち上がろうとしておみえになるところがあちこちで出てまいりました。これはやはりIT化時代の一つの特徴だというふうに思っておりますが、私は、かなり近い将来、こうした問題が広く広がることを期待いたしておりますし、多分そうなっていくということは間違いないというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 私も地方におりますが、やはりこういったものを応援していただく。まさに、五色町の内部の方、いろいろなヒアリングをするに際して、五色町の中での医師会はいいんですけれども、その外にある医師会になると壁が厚過ぎて、もうそれ以上いかれないという間にどんどん先細りをしているという傾向もございます。こういったところにやはり力をかしてあげるなり、そこの仲を取り持つなり、考えていただけたらありがたいと思います。
 そして、私もいろいろなものを読ませていただく中、いつもいつもこういった医療分野での改革がなかなか進まない理由は何だということを考え、いろいろなものを見させていただく中、まさに、ここにそのいい答えが出ているのかなという気がいたします。
 厚生労働省と医療機関とが、国民不在のまま、クローズドな話し合いの中で利害を調整し、妥協点を見出しているからです。
 私はこれを読んだときに、確かにそうなんだろうなと思う。
 そして、第三チェック機能も非常に弱い。そのため、患者の立場での公平性をうたいながら、結果として、必ずしも日本の医療サービスは支払いに見合うだけの価値になっていない。
 価値という、いろいろな価値というものは、いろいろと、だれが決めるのかにもよりますけれども、まさにこの最初の部分の、厚生労働省と医療機関とが、国民不在のまま、クローズドな話し合いの中で利害を調整し、妥協点を見出しているからなかなか医療制度改革が進まないというふうに強く感じるんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 すべてがクローズドであったとは決して思いません。オープンな審議会等でいろいろの議論をしているわけでありますし、中医協などの場もその中の一つだというふうに思いますが、かなり最近はオープンに議論が進んできているというふうに思っております。
 私も、そういう各種団体とお話をいたしますのは、オープンにやりたいというふうに思っておりまして、オープンなところでお話し合いをし、そして記者会見もちゃんとする、あるいは一部は公開もするといったようなことで最近取り組んでいるところでございまして、これからだんだんとそういうふうになっていくと思っております。
佐藤(公)委員 クローズドな話し合いというのは、もしかしたら私も、違うのかもしれません。伝わっていないというのは、オープンでは話しているけれどもそれが国民まで伝わっていないというのが正確なところなのかもしれません。
 そういう中で、今大臣がまさにおっしゃられましたそのオープンな形での話し合い、いろいろなところでの話し合いをしていくべきだということですが、私はかなり強く思うことは、やはりその伝わり方、伝わし方にもよると思いますけれども、やはりここだけの議論ではなくて、当然、先々、参考人もきちんとした時期が来たら呼ばなきゃいけない。と同時に、やはり地方に行って現場の方々の話もたくさん聞く時間も、またそういった機会も必要。そういったことが、本当にオープンな形での話し合い、または私たちのやらなきゃいけない責任でもあると思います。
 地方における公聴会、地方においての参考人を呼ぶ、委員派遣や何かもしながらやるべきだと思いますが、やはり大臣も一緒にそう思っていただけるということでよろしいですね。――ありがとうございます。ということで、今大臣から、こういった、うなずきをいただきました。
 大臣も、やはりいろいろな地方にも行って、参考人また地方公聴会を開いて、この健保法に関して国民にわかるように、オープンな形で議論をしていくということに賛同していただいていると私も思います。ぜひそういう方向で委員会の運営もひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 ちょっと二、三分早いですけれども、きょうはこれにて終わらせていただきます。ありがとうございました。
鴨下委員長代理 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 今回の法改正では、国民に一兆数千億円の負担増を押しつけることになりますが、その中でも一番評判の悪いのが、七十歳以下にすべて三割の窓口負担を押しつけることであります。金を持たぬ者は病気になっても病院に来るなということかと多くの人が怒っております。
 私は、第一回の質問で、日本は今でも自己負担割合がサミット諸国の中で断然トップなのになぜさらに引き上げるのかとお尋ねをしました。それに対する大臣の答弁は、病院窓口での負担と保険料負担の割合をどう決めるかはそれぞれの国の選択の問題だという趣旨でございましたが、しかし、こういう答弁では私は納得がいきません。
 小泉首相は、自己負担が低いと患者が病院に殺到するとあけすけに今回の引き上げのねらいを語りましたけれども、まさに今回の三割への引き上げが保険財政の赤字をなくすためにさらに強力な受診抑制を図ったということは明らかではないでしょうか。それ以外に目的があるのか、まずお尋ねします。
坂口国務大臣 小沢議員もよく御存じの上で発言をしておみえになるのだと私は思いますが、この現在の医療の状況を見ましたときに、最も所得のない人たちというのは国保に入っていっているわけです。それで、次に、小さな中小企業等におみえになる方は政管健保にお入りになっている、そういう状況になっているわけでありまして、現在国保にお入りになっている皆さん方は、とうから三割自己負担をしていただいているわけでございます。健保の御家族の皆さん方も三割の負担をしていただいているわけでございます。
 言ってみれば、今までの中で一番中心になっていただいている御本人だけが二割負担で来たということでございまして、これが許される時代はよかったわけでございますけれども、全体として年々歳々医療費が上がってくることも御指摘のとおりでございまして、この上がってまいります医療費というものにたえていきますためには、それなりの制度をつくり上げていかなければなりません。
 そうなりますと、それは保険料を上げていただくか、自己負担をふやしていただくかということになるわけでありまして、すべて保険料でお願いをするということになりますとお若い皆さん方に大変な御負担になってしまいます。ですから、そこはある程度の抑制をしながら、そして御病気になられる皆さん方にも一部負担をしていただくということにならざるを得ません。
 そして、重い病気の人と軽い病気の人との話は、いつも申し上げますように、軽い病気の皆さん方の方はある程度お払いをいただき、重い病気の皆さん方の方の御支援もしていただくという体制が大事ではないかというふうに私は考えております。
小沢(和)委員 今、国保の方はもう既に三割になっている、それに合わせただけだというようなお話がありましたけれども、実際、その国保の人たちがどういう状態なのか。病気になっても生活に追われてぎりぎりまで病院に行かず、とうとう仕事中に倒れて病院に担ぎ込まれてその日のうちに亡くなった、こういうような痛ましい例が続出している。これが国保の実態ではありませんか。三割に全体を統一するということは、そういう国保のひどい状態を職場で働いている労働者全体に広げるということにしかならないと思いますが、重ねてお尋ねします。
坂口国務大臣 これもよくおわかりのとおりと私は思いますけれども、国保の受診をしておみえになる年齢別受診者と、そして健保の年齢別受診者を比較いたしますと、同じカーブであります。決して違っておりません。もちろん、今おっしゃいましたように、国保の中にも大変気の毒な方はおみえになるというふうに思いますし、また政管健保の中にも大変お気の毒な方がおみえになることは、個別の例としては存在するというふうに思いますけれども、全体で見ましたときには同じカーブになっている、決して違いはございません。
小沢(和)委員 それから、さっき大臣は、三割に引き上げるといっても実際三割を払うのは病気の軽い人たちで、重い人や低所得者には軽減の制度があるということを言っておられます。確かに、低所得者は自己負担が三万五千円で据え置かれております。しかし、一応の収入のある人は、今回、上限自体が一三・七%引き上げられ、七万二千三百円プラス一%になっております。この上限にかかる人はどれぐらいおりますか。
大塚政府参考人 高額医療費の該当するケース、これを患者数で出すことは非常に難しいわけでございます。ある方が、一月入院される方、半年入院される方、長期に入院される方、ばらばらでございますから、患者数を出すことは難しいのでございますが、いわば一月当たりの入院レセプト単位、件数でございますが、その件数で該当する率を出しますと、全体を平均いたしまして、入院した場合には約半数の方がこの高額医療費の該当になるというふうに試算をいたしております。
小沢(和)委員 今、入院した場合は半分というふうに言われたということは、外来はまず該当する人がいないというお話だろうとも思うんです。
 それで、率としては確かに高額になるというと三割以下になっていくのでしょうけれども、これだけの金額を支出することが所得の少ない勤労者世帯にとっては大変な負担になるということはいささかも変わりがないと私は申し上げておきたいと思うんです。
 きょうは、主には国保財政の問題について質問をいたしたいと思います。
 私は、この質問を準備するために、先日、我が党の福岡、北九州両市の市会議員団、福岡市当局などから国保の現状を聞き、中小業者や高齢者の大部分が加入している国保は、今の医療制度の矛盾が文字どおり集中しているところだと改めて痛感をいたしました。
 私が政府からいただいている資料では、全国平均の一世帯当たりの課税標準額、つまり所得は、不況が続く中で長期に低下し続けております。九二年度が二百三十七万二千円でピークだったわけですが、その後ずっと下がり続け、九九年には百六十七万七千円、九二年と比べて実に六十九万五千円の減、率にすると約三〇%のマイナスになっております。しかも、そういう中で、全国各地で国保税の値上げが繰り返されております。
 お尋ねしますが、九二年と九九年で、全国平均の国保税額はどう変わったでしょうか。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
大塚政府参考人 国保税額とおっしゃいましたが、いわば保険料に当たる意味での国保税額ということでよろしゅうございましょうか。市町村国保の一世帯当たりの平均でございますけれども、保険料もしくは保険税でございますが、九二年、平成四年で年間十四万九千七十六円でございました。九九年、平成十一年でございますけれども、十五万二千六百九十円、二・四%の増加という状況でございます。
小沢(和)委員 今の答弁で明らかなように、七年間で所得が三〇%下がっている、そういう中で国保税額は逆に二・四%値上がりをしているわけであります。どれほど重い負担になっているかということは、これだけでも明らかだと思うんです。
 別の政府の資料でも、国保加入者の保険税負担がいかに重いかがいろいろわかります。一世帯当たりの保険税調定額は、国保十五万三千円に対し、政管は十五万円、組合は十六万円。ほぼ同じような金額に見えますけれども、年間所得は、今申しましたように、国保が百六十八万円に対して、政管は二百四十四万円、組合は三百八十万円と大変な違いがあります。だから、負担率で比べれば、政管は六・一%、組合は四・二%に対し、国保は何と九・一%にもなる。国保が政管の一・五倍、組合の二・二倍もの重い負担になります。
 もう一つ触れておきたいのは、生活保護との比較であります。国保加入者の中には、生活保護基準以下の所得しかないが保護を受けずに頑張っている世帯がかなりあります。しかし、現実に保護を受けていなければ、そのわずかな所得に重い保険税がかかってまいります。私が福岡市当局からいただいた資料では、三人世帯で年間所得が生活保護費に相当する二百五十六万円あるとすれば、約十四万円の保険税がかかります。収入はほとんどなくても、三人世帯だと約三万五千円かかります。いかに保険税が重いかがよくわかると思います。これでは、払えない世帯が続出するのは当然だと思うんです。
 お尋ねしますが、最近、全国的に国保税の収納率が下がり続けているというんですが、この五年間でどう変化したでしょうか。
大塚政府参考人 五年間ということでございますので、平成八年度から平成十二年度、そのあたりの比較をしてみますと、平成八年度の全国平均の収納率は九三%でございました。平成十二年度、若干下がりまして九一・三五%でございます。平成十二年度、直近の数字でございますけれども、下げどまりといいますか、前年に比べますと大きな下がりではございませんが、五年間ということになりますと、先ほど申し上げましたように、一%強でございますけれども、収納率の低下が見られております。
小沢(和)委員 今お聞きのとおり、下がっているわけです。
 政府は、この納入率を引き上げるために、昨年度から滞納世帯に資格証明書を発行するよう義務づけております。この資格証明書を発行されると病院にかかるときどう扱いが変わるのか、具体的に説明していただきたい。その結果、昨年四月から資格証明書の発行数が急増したと聞いておりますが、全国で、この五年間、とりわけこの一年間にどうふえたのか、数字を示していただきたい。
大塚政府参考人 いわゆる資格証明書でございますけれども、これは御承知のとおりでございますが、いわば特別な事情がないにもかかわらず保険料の滞納が一年以上というような場合に、資格証明書というものを保険証にかえて発行する、こういう仕組みでございまして、介護保険も同様でございますけれども、平成十二年度から、一種の法定上の業務として市町村で実施をしていただいているわけでございます。
 この資格証明書の場合には、医療機関で受診をされた場合には、医療機関の窓口で一たん医療費相当額をお支払いいただいて、その後市町村の窓口で償還を受ける、こういう仕組みをとっているわけでございます。当然のことながら、先ほど申しましたように、この資格証明書の発行に至る一連の手続につきましては、個々の事情を十分勘案しながら実施をすることといたしております。
 それから、交付件数でございますけれども、まず最直近の数字で把握しておりますのが平成十三年でございますけれども、十一万一千百九十一世帯、世帯数で十一万一千百九十一件でございます。平成十二年、制度がスタート、制度と申しましょうか、法律上の業務としてスタートした時期でございますが、九万六千八百四十九世帯でございます。ちなみに、その前年でございますが、平成十一年が八万六百七十六件、こういうような数字でございます。
小沢(和)委員 今、資格証明書を発行されると、病院にかかるときには一たん全額を払って、後で償還を受けるというお話ありましたけれども、実際問題として、お金を払い切らないから資格証明書にされている人に、市町村がお金を払うなんていうことがありますか。まずないですよ、そういうことは。
 質問、先に行きますけれども、今回私が福岡市と北九州市を調査対象に選んだのは、単に地元というだけでなく、滞納世帯に対し資格証明書や短期保険証を全国に先駆けて十数年前から発行してきた、いわば国の指導の先取りをしてきた歴史を持つ自治体だからであります。
 福岡市の例でいえば、国保加入世帯の七割が、年間所得二百万円以下の低所得者であります。その中で滞納は特に年間所得百万円以下の世帯に集中し、滞納率は実に五〇・三七%、半分を超えております。次が二百万円以下で、一九・四四%、約二割であります。それ以上は、所得が上がるのに応じて滞納が下がっております。全世帯の二四%、五万三千世帯が滞納し、そのうち一万二千世帯、約五分の一が資格証明書になっている。
 滞納者の多くは、生活が苦しいために払いたくても払えない人ではないかと思うんですが、こういう人々は悪質な滞納者でしょうか。
大塚政府参考人 こういう人たちと申しましても、具体的な状況がわからないで悪質か悪質でないかということを断定することはとてもできませんけれども、考え方といたしましては、先ほども申しましたように、特別な事情がないにもかかわらず保険料を滞納する。逆に申しますと、特別な事情といいますのは、さまざまな事情があり得るわけでございますけれども、例えば災難、災害に、特に世帯の中心者である世帯主が被害を受けた、あるいは疾病の場合も、大きな疾病に世帯主がかかってしまった、あるいは事業の廃止をして収入が途絶えた等々あるわけでございます。
 そうした事情はそれぞれの市町村が個別に納付相談というような形を通じて状況を把握し、場合によっては延納したり分割納付をお願いしたりという形で処理をしたり、どうしても状況によって減免をする、免除をするというようなケースもあり得るわけでございまして、一概にこういう人たちと言ってこれが悪質というわけではございませんが、逆に申しますと、残念なことながら、そういった特別な事情がないにもかかわらずなかなか保険料をお納めいただけないという方々が現実におることも事実でございまして、それぞれの市町村におきましては大変御苦労されているということは私どもよく承知をしております。
 いずれにいたしましても、それぞれの地域において、いわば居住者、住民が力を合わせて相扶共済の考え方で運営する国保でございますから、そうした特別な事情がないにもかかわらず滞納するという方につきましては、公平の観点からも、ある意味では厳しく対応せざるを得ないというふうに考えているところでございます。
小沢(和)委員 私が言いたいのは、これだけ国保税が重いために、払いたくても払えないという人が大部分なんだということなんです。もちろん、滞納したら機械的に資格証明書ということでないぐらいのことは私も承知をしております。
 健康保険法では、七十歳以上の高齢者や原爆被爆者など、あるいは政令で定める特別の事情がある人、災害、盗難、病気、廃業などの場合は、保険証の取り上げや資格証明書の発行などの制裁措置をしてはならないということが決められております。しかし、この規制が十分に守られておりません。福岡市では、党の市会議員団のたびたびの指摘にもかかわらず、生活困窮者や障害者などがしばしば保険証を取り上げられている。こういうことをなくすように緊急に指導していただきたいが、いかがですか。
大塚政府参考人 個別の福岡市の例を私が申し上げるのが適当かどうかわかりませんけれども、福岡市における資格証明書の交付実務の状況を私どもとして承知しておりますのは、例えば、納期限から二十日をたちまして納付がありませんと督促状を発行いたしまして、さらに納期限二カ月後になりますとまた段階的に催告書を発行いたしまして、その際、その催告書の中で、保険料を支払えない特段の事情がある場合には相談してほしいというような旨を記載いたしまして、それで滞納した場合に資格証明書が交付されるわけでございますけれども、その間、並行いたしまして臨時に、もちろん窓口に来ていただく、あるいはお宅にお訪ねをして、滞納者との接触に努めながら納付相談を指導する。そして、一年経過をしてなおかつ納付が行われないという場合に特別の事情を判断するわけでございますが、その際にも臨戸訪問あるいは電話督促を繰り返して行っている、こういったことも聞いております。
 運用上さまざまなケースがあり得ると思いますけれども、市町村におきまして、これは一つの事例でございますけれども、そうした努力を重ねていただいていると存じております。
小沢(和)委員 じゃ、具体的な事例を挙げてみたいと思うんですが、私が住んでいる北九州市の小倉南区のAさんは三十二歳の女性ですが、長期の病気で働けず、保険証の取り上げで治療もできず、最後は救急車で病院に担ぎ込まれて、結局、二日後に亡くなりました。Aさん夫婦は、夫が失業したため国保に加入したところ、失業前の収入に基づいて年間四十数万円の保険税をかけられた。二人はアルバイトや職探しに追われて、とてもそれだけの額を払うことができなかった。資格証明書にされてから慌てて役所に行き、生活保護の申請の相談をしましたが、相手にされなかった。このことは市議会でも問題になり、テレビでも国保問題特集の中で取り上げられ、全国に報道されました。
 Aさんのケースは、世帯主が失業中ということで、今私が引用した国保の制裁措置の適用除外とする特別の事情に該当していたことは明らかではありませんか。
大塚政府参考人 ただいまのケースにつきまして、私、具体的な実態を持ち合わせているわけではございませんから、そのケースを前提に申し上げることはできませんけれども、例えば、収入が皆無である、しかも長期間の疾病にかかっているというような状況の場合に、保険料を払うというのはなかなか難しいのが実態でございますから、通常のケースであれば、市町村とよく御相談をいたしますれば、全く何らの対応もないというようなケースではないと思います。
 したがいまして、逆に申しますと、個別事情にほかのどういった事情があるか、これは私はわかりませんので何とも申し上げられませんが、一般的なケースでいえば、おっしゃったような範囲でのケースであるならば、何らかの市町村の対応というのは期待されるべきものと私は考える次第でございます。
小沢(和)委員 繰り返しになるかもしれませんけれども、資格証明書発行などの制裁措置を行ってはならない適用除外となる特別な事情として、世帯主の事業の廃止、つまり廃業が明記されているわけですね。そしてさらに、それに類する事由も挙げられている。そうすると、世帯主のAさんが失業しているのに資格証明書を発行したことはこれに反しているということは確認していただけますか。
大塚政府参考人 ただいま申し上げましたように、もちろん、ただいま御指摘の世帯主が、事業を廃止する、あるいは疾病にかかり生計上困難を来しているというようなケースが特別な事情の例として挙げてあることは確かでございますから、これに該当するというお申し出があるならば、市町村といたしましては、その事情をよくお聞きをして、例えば、その他の生計のたつきがあるのかないのか、現状はどうだというようなことを調べるべきものだと思います。
 ただ、それだけがすべての状況なのかどうか、これは私の申し上げられる範囲を超えますので、おっしゃいますような条件の一つに、特別の事情というものに、ただいまおっしゃったようなケースが特別の事情の一つの例であるということは、私も当然のことと考えておるわけでございます。
小沢(和)委員 だから、議論をすれば特別の事情に当たるケースだというようなものが実際には資格証明書になっている、そういうケースがあっちこっちにあるわけです。ぜひ、これについては是正させるような指導をお願いしたい。
 この際、考えていただきたいのは、資格証明書を発行されることが、このAさんの事例でもわかるとおり、事実上、医療から締め出されるということであります。資格証明書を病院の窓口に提出しても医療費全額を自分で支払わなければなりませんから、ほとんど持っている意味がありません。もともと窓口で全額支払うほどの金があれば、滞納するはずもありません。
 だから、福岡市当局の集計では、普通の国保世帯一人当たりの年間受診回数は十・二一回であるのに、資格証明書の世帯はわずか〇・〇九回、実に百分の一以下という結果になっております。福岡県全体では、受診率は百三十七分の一という数字が出ている。私のところには、北海道札幌市の場合はさらに低く、百七十七分の一だという資料も寄せられている。
 一番生活に困っている人たちが、こうして医療からも締め出される。小泉首相は、必要な受診を抑制しておりませんとしばしば言明しておりますけれども、普通の人の百分の一以下しか受診できない状態でも必要な受診は抑制されていないと言えるのか。大臣は、今のこういうやり方でよいとお思いになるかどうか、所見を伺いたい。大臣。
大塚政府参考人 資格証明書の趣旨、性格、これは繰り返し申し上げたわけでございまして、費用負担が本当にできない、保険料を払うことが経済状況その他の特別な事情があってできないという方につきましては、一定の特別の事情という形で対応できる道が開かれておるわけでございます。しかしながら、残念なことに、そういうケースばかりではないということがありますから、こうした仕組みを導入しているわけでございまして、これは事医療保険に限った問題でないわけでございます。
 したがいまして、おっしゃいますようなケースであれば、よくよく市町村に御相談をいただければ、適切なアドバイス、適切な対応というのはあり得ると思うわけでございまして、むしろ、残念ながら、こう言ってしまっては言い過ぎかもしれませんけれども、多くの資格証明書交付の対象になっておられる方は、十分に市町村に接触をしていただけないケース、あるいはこの制度の趣旨を必ずしも十分御承知いただけないケースではないかというふうに考えます。
 もちろん、この適切な運用ということは重要なことでございますから、引き続き市町村を指導してまいりますけれども、基本的には、従来のこの制度を使った国民健康保険の運営の安定化ということは極めて重要なことだと考えております。
小沢(和)委員 大臣に重ねてお尋ねしたいのですが、こういう非常に大変な状態がある。これについては、やはり国としてももっと改善のために取り組んでいただきたいと思うのですが、大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 各市町村のそれぞれの国保におきまして、支払い能力のない人には減免措置というのがあるわけでありまして、それは、よく御相談をしていただければそうなるわけであります。また、支払い能力が非常に低いという人につきましては、七割までの減免措置というのもあるわけでありまして、大体、月額千三百円少々ぐらいの御支払いで国保に入っていただけるようになっているわけでありますから、それぞれ、その御事情によって、よく市町村と相談をしていただければ、私は、そんな今おっしゃったようなことは起こらないのではないかというふうに思っております。
小沢(和)委員 起こらないではないかと言われるけれども、起こっているから私はここで問題にしているわけです。ぜひ改善のための努力をしていただきたい。
 先ほどのAさんの例のように、失業して国保に加入しても、前年の収入で課税額が決まるため、とんでもない高額になり、支払えないというケースが続出しております。そのため、国保に加入する手続をせず、失業中は無保険状態になっている人が多い。こういう形でも国民皆保険が崩れつつあるのではないでしょうか。全国にこういう無保険状態の者はどれぐらいいるか、掌握をしておられますか。
大塚政府参考人 無保険ということは、行政機関なり保険者との接触が残念ながらできていないケースでございますので、そういう意味での状況はなかなか把握しにくうございますし、現状、把握をいたしておりません。
 ただ、被用者保険から国保に移る場合に、さまざまな手続が多少ございます。これが、例えば、お忘れになっている、あるいはおくれてしまう、その間にけがあるいは病気にかかるというケースもございますから、被用者保険の保険者などとの連携をとりながら、そうした手続漏れがないように、こういった努力はいたしておりますが、お尋ねの、全く市町村あるいは保険者と接触のない方々の状況というのは、把握をいたしておりません。
小沢(和)委員 こういう人々にこそ政治の手を差し伸べなければなりません。ですから、直ちに実情を調査し、対策を講じていただきたい。その場合、私どもも、民主党が提案している失業者への国保税の減額措置というのは大変有意義だと思う。ぜひこれも、政府の対応を求めたいと思います。
 時間もぼつぼつ迫ってまいりましたから、もう一つお尋ねしたいのですが、全国の市町村は、少しでも住民の国保税負担を軽減しようとして、多くのところで、一般財源からかなりの額を国保の特別会計につぎ込んでいます。全国で幾つの市町村がどれぐらいの一般財源を支出しておるでしょうか。
大塚政府参考人 市町村において、一般会計から国保特別会計に対しまして繰り入れがございますが、一つには、保険料軽減制度など法律に基づくものもございます。それ以外の、市町村独自の判断でと申しましょうか、市町村が主として事業運営の赤字補てんを目的とした繰り入れを行っているケースでございますが、平成十二年度におきまして、全国で千四百六十六市町村、総額で二千二百五十四億円というのが私どもの承知しておるケースでございます。
小沢(和)委員 これだけ市町村が負担の軽減などに努力をして取り組んでいるのに、国は、収納率が九〇%を割ると、国庫負担金のうち調整交付金の部分を五%削る、もっと下がるとさらに削るというペナルティーをかけております。福岡市では、この五年間で約十八億円のペナルティーをかけられたといいます。こういう制度はやめてもらいたいという強い要望が全国の市町村から政府に寄せられているというけれども、私は、当然だと思うのです。政府は、これにどうこたえるか。
 ついでながら、全国の多くの自治体が実施している乳幼児、高齢者、母子世帯、障害者などへの医療の独自措置についてもペナルティーがあります。乳幼児医療補助制度へのペナルティーについては、先日、我が党の塩川議員も聞きましたが、せっかく住民の声に積極的にこたえようと取り組んでいるのに、その意欲をそぐような措置は、地方自治への圧迫、干渉でもあります。これらのペナルティーは直ちにやめるべきではないか。
 二つ、お尋ねします。
宮路副大臣 まず第一点の、収納状況を考慮して調整措置を交付金について行っている、それがペナルティーではないか、こういう御指摘なのでありますが、保険料の収納が国保の維持にとって不可欠である、極めて大切であるということは、委員も御案内のとおりだろうというふうに思います。
 そうした観点から、各保険者における収納努力といいましょうか、日ごろの収納に向けての取り組みを評価するという観点から、財政力等を勘案いたしまして調整交付金の配分をやらせていただいておるというところでございます。これは、国保制度創設以来、そうした収納率に応じた調整を行って、今日に至っておるわけであります。
 したがって、私どもとしては、制度創設以来、そういうことで、国庫負担の公平な配分を図るという観点から所要のこうした調整を行わせていただいているわけでありまして、決してこれはペナルティーであるというふうには理解をいたしてないわけであります。そのことをひとつ御理解を賜りたいと思います。
 それから次に、乳幼児に対する診療について医療費の助成事業を行っていることについては、先般もこの席でお尋ねがございましたが、乳幼児と同様、高齢者等についても、それぞれ地方独自の立場から地方公共団体が、いろいろな違いがそこにあるわけでありますが、例えば対象者も、乳幼児を対象とする場合あるいは高齢者を対象とする場合、そしてまたそこに年齢制限があったり、あるいは所得制限があったり、また金額のカバー率もいろいろ千差万別でありますが、そういったことで、地方自治体それぞれの独自の事情を加味しながら、考慮しながら、地方単独事業として医療費の助成事業を行っておるわけであります。
 そういったことをされること自体は、これはまことに結構なことであることはもちろんであるわけでありますが、ただ、そのことが、一般的な傾向といたしまして医療費の増大につながっているという側面があることは否めない事実であるわけであります。
 私どもとしましては、国庫負担金の調整措置を講ずることによって、そうした市町村間の負担についての不公平と申しましょうか、を解消する、公平性を担保するということでの調整措置を国庫負担金においてやらせていただいているということでございまして、これもペナルティーというものではないということをひとつ御理解を賜りたいと思います。
小沢(和)委員 国も、これだけ国保財政が危機的な状態になっていることを無視できず、今回の法改正で国保の財政基盤強化対策を打ち出しております。私は、今回のこの措置は、一定の改善であると評価はしますけれども、やはり焼け石に水程度の効果しかないと思うんです。国保財政の抜本的改善のために今国に緊急に求められているのは、国庫負担をもとに戻すことであります。
 かつて、一九八〇年には、国は国保に対し四五%の負担を支出しておりました。しかし、臨調行革以来、政府は国の財政再建を口実に次々に負担率を切り下げ、ついに二〇〇〇年には三八・五%まで低下させております。これをもとに戻せば、今の全国的な国保の財政危機を十分に乗り切っていくことができる。四五%に戻すとどれぐらいかかるかということを私がお尋ねしてみましたら、約三千億円強というお話です。
 もちろん、これだけのお金をひねり出すためには、これまでのようなゼネコンや銀行中心の政治のやり方を続けていたのではできないと思います。国の財政を根本的に社会保障中心に転換することが求められます。大臣が所属する公明党も、野党時代は、むだな大型公共事業の見直しを断行し、医療改悪をストップすべきだと訴えていたことは、先日も我が党の佐々木議員が指摘したとおりであります。
 大臣が本当に国民皆保険制度を守ろうとするのであれば、今こそ国の政治を社会保障中心に転換するよう閣内でも断固主張すべきではありませんか。これ以外に医療財政危機打開の道はないと思いますが、最後に大臣の所見を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 先ほどから御答弁を申し上げておりますように、医療制度の内容とそして今日迎えております人口動態、それらを考えましたときに、今後ますますこの医療保険の状況が非常に厳しい状況になることは御承知のとおりでございます。まだ高齢化はこれからどんどんと進むわけでございますから、さらに高齢化が進みましたときに、非常に将来に対しまして大きな負債を残すことに私はなるというふうに思っています。
 将来の皆さん方に大きな負債を残さないためにも、現在の皆さん方も、厳しい中ではありますけれども、応分の御負担をいただくようにするのが私は筋だというふうに考えている次第でございます。
小沢(和)委員 終わります。
森委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 まず冒頭、けさほどからも大臣に対しての質問が続いておりますが、非核三原則の福田官房長官の発言について伺いたいと思います。
 官房長官の発言、それに続いて小泉総理が、どうってことないというような、本当に信じられないような発言がございました。今国会でも有事法制関連の三法案の質疑が特別委員会で行われておりますし、やはりアジア各国に対して大きな衝撃、また怒り、警戒感を生み出した発言だと考えます。
 まあ同じ御答弁になるかと思いますが、閣僚として、大臣の、まず今回の発言に対しての御見解を伺います。
坂口国務大臣 福田官房長官御自身がけさも御発言になったというふうにお聞きをしておりますが、非核三原則に関する発言、報道等をされているが真意でない、三原則の変更は考えていない、国民的議論あり得るとのことである、三原則堅持については自分としても信念である、核兵器不拡散についても同じである、理解をいただきたい、こういうふうに述べておみえになるわけでありますから、私は、この福田官房長官のお言葉を信じたい、そういうふうに思っております。
中川(智)委員 この委員会でも、私はたびたび被爆者問題を取り上げてまいりました。特に、在外の被爆者の方々がいまだに救済もされないという状況の中で、被爆者問題を議論いたします厚生労働省の、そのトップとして、この被爆者の方々の心中を思い、大臣として、それを取り扱うこの委員会の場で、被爆者の方々に大臣自身の御見解をぜひとも伺いたいと思います。被爆者の方々に対しての大臣自身のメッセージをお願いいたします。
坂口国務大臣 これも何度か申し上げましたが、国是になっております非核三原則、これからも守っていくべきだというふうに思っておりますし、また、この国是は変えるべきではないと考えている次第でございます。
中川(智)委員 けさ、厚生労働委員会の理事会で福田官房長官のお話を一方的に伺いましたが、謝罪というものはなかったように私は思っております。釈明に終始する態度、そして、今のような状況の中で、あの発言が、どれほどの不信感そして憤り、また海外、外交にとってマイナスかということを考えていない。政府首脳のたるみというか甘さというか、許せない事態だと思っておりますし、国会をなめているというふうにも思います。
 私がもしも連立政権の一翼にございましたらば、公明党、平和の党として、そして弱者の立場に立って常に闘われた党として、連立離脱ぐらいの怒りでもってやるべきだと思いますが、その連立離脱などはお考えかどうかというのと、もう一点は、公明党としてしっかり抗議をなさったかどうか、伺いたいと思います。
坂口国務大臣 発言されたといわれる官房長官御自身が、そういうことは言っていないというふうに言っておみえになるんですから、それ以上私は申し上げることはないというふうに言う以外にありません。
中川(智)委員 大臣、真意がどうのこうのというよりも、あの発言自体は、憲法上核を持つこともできるということを発言したわけですね。そして、後から火を消すのに必死になっていて、それはもう釈明釈明。でも、一たん出した言葉というのは消えないわけです。それに対して、やはり公明党として抗議をすべきだと思いますし、連立の離脱のカードぐらいちらつかせるべきだと思いますが、今の御答弁では納得できません。
坂口国務大臣 真意というのは本人に聞かなきゃわかりません。ほかの人に聞いても真意はわかりません。御本人が真意はこうだということをおっしゃる以上、それを信じる以外にありません。
中川(智)委員 非常にすべてを信じやすい体質だということがよくわかりました。(発言する者あり)でも、本当にそうですよ。失礼なではありません。やはり、連立の一翼を担っていて、これほど重大な発言をしたことに対して、しっかりした、党として、公党として態度は明確にすべきだと思います。
 まあ納得はできませんが、大臣のお人柄に免じてということで、次の質問に移ります。
 私はこれまで、医療事故、このように保険料も上がり、窓口負担もふえ、そしてお金だけは取られるのに、医療の質、サービスの向上というのが具体的に改革として示されていない。患者の権利法さえも、五年前には二〇〇〇年につくると約束していながら、その約束というのを全部ほごにして、今回、負担増のみを国民にというのは、余りにも虫のいい話だと思います。そして、その原点として今一番問われているのは、医療の質であり、医療事故をなくしていく。
 本来ならば、ちゃんとした医療を受けていれば、治療を受けていれば、亡くなることもない、また重篤な後遺症などを残すことがない。防ぐことができるならば、きっちりとそれは防ぎ得ることに対しても、歯どめがない。また、実態把握、それさえもしていないということで質問をさせていただいております。
 この医療事故の実態をつかむということは、もうこれはずっとされていて、そして、そのされていた結果としてこのように具体的に少なくなってきたということが情報公開の基本だと思います。先日の私の質問のときに、損保会社、民間の医療機関などの事故の把握というのは、今のところはそこしかしっかりつかんでいないんじゃないかということで、年間何件くらいあって、そして保険金総額で幾らぐらい支払っているかを損保会社から報告を受けるということをお願いいたしました。
 大臣は、あしたまでにというのは無理だけれども、もう少し時間を下さいということでしたが、その後、その情報把握に対しての御努力はいかがなりましたでしょうか。
坂口国務大臣 先に申し上げておきたいと思いますが、全体としての医療事故というものがどれだけあるかということについては、これは何らかの形で私も把握をしないといけないというふうに思っている次第でございます。
 ただ、先日御指摘になりました、医師賠償責任保険、これによる保険会社からのデータの提供というのはできないか、個人個人のができなければトータルでできないかというお話でございまして、個人個人のはプライベートのことでもありますから、それは私もできないというふうに思いましたけれども、トータルでは何とかなるんじゃないかというふうにあのとき思ったわけでございますが、以後、会社に確かめたところ、合計のデータについてもやはり開示することはできない、こういうことだそうでございます。
 トータルでも開示ができないということであれば、その他の方法で、大体どれぐらい起こっているのかということをつかまないといけない。そのときには、やはり基準も決めないといけないと思うんですね。大体これぐらい以上の事故についてはつかめるようにするというふうにしないといけないと思います。個々の病院等の中では、もしも起これば、その病院に、病院自身の中でまずそれを明らかにするようになっているわけでありますから、そこをどのような形でわかるようにしていただくかという次の段階の問題だというふうに思います。
 この事故を少なくしていこうというふうに思いますと、御指摘のとおり、全体としてどれだけ起こっていて、どういうことが多いのかということがわからなければ、それはなかなか減っていきませんし、手の打ちようもありませんから、そこはひとつ知恵を絞って事故数を収集できる方法を検討したいというふうに思っております。
中川(智)委員 民間の損保会社の情報がとれないというのは、信義則があるからということだと思うんです。
 でも、私は、一番大きな契約者というのは日本医師会、契約相手が医師会でございまして、そして損保会社というふうになっております。その信義則そのものに対して法的な裏づけというのはありません。
 今、医療事故というのは交通事故の二倍以上だ、隠れた形のはもっと多いと思うんですが、交通事故でさえ、自賠責保険なんかはきっちりとそれを、自賠責の方は報告をする、公開をするというのが法律的に定められております。
 これはどう考えても、医師会の方を守る、医療機関の方を守るために情報が出せないということで、はいそうですかと厚生労働省がお帰りになってあきらめるのならば、国民の命を守るということに立つのか、それとも、その医師会なりに立つのか、どちらかを選ぶ。
 では、国民の方を守るという側には立たないということなんですね。信義則ですごすごと、出ないそうですという答弁は納得できません。
坂口国務大臣 この保険には、入っているところ、入っていないところ、私はあると思います。したがいまして、保険のデータというのは、たとえそれを出していただいたとしても、一つの目安であって、トータルのものを示すものではないというふうに思います。
 したがって、もう少しトータルで、この事故がどういうふうに起こっているかということが把握できるようにするためにどうしたらいいかということを検討したいと申し上げているわけでありますから、何もつかまないということを言っているわけではなくて、それを明らかにするように努力しますということを申し上げているわけでございます。
中川(智)委員 大臣も、先日の私の質問のところで、今もおっしゃいましたが、一つでも減らしていかなければならないと。大臣も、やはり、事故データなり、どれぐらいの件数が年間起こっているのかということを把握するというのはまず第一歩だということは、よくおわかりになっていらっしゃると思うんですね。
 これは、もう一つの手段としては、医師会が、事故を起こして示談なりなんなりで保険料を払うときに査定をします。九六年まではある程度公表もしていましたけれども、それ以来全然医師会側からの公表もないので、今は全くそのデータをつかむ手段さえないんです。今おっしゃった、トータルはどうの、目安というふうにおっしゃいましたが、目安をつかむ手段さえないんです。何もない。何もないのにどうして医療事故が防げるのか。
 そして大臣は、今、検討しますとおっしゃいましたが、この医療事故の問題はずっと社会問題にもなっていながら、手つかずの、ある意味では聖域になっているところでございます。
 具体的に、いつごろ検討会をつくって、そしてそこにはきっちりと医療事故の被害者の方も、そして法曹関係の人も入れなければいけないでしょうし、また公開にすべきだと思いますが、いつごろをめどにこの検討会を立ち上げるのかおっしゃってください。
篠崎政府参考人 前回の御質問で大臣の方から私どもの方に御指示がありまして、今その準備をしているところでございますが、七月には第一回を立ち上げたいと思っております。また、先駆的に取り組んでおられる諸外国の事情等も、今、準備段階でやっておるところであります。
 医療界、法曹界、あるいは事故というものの安全対策の専門家等集まっていただきまして、公開でそういう会議を持ちたい、そしてまた、年度内ぐらいには結論を出したい、このように考えておるところでございます。
中川(智)委員 局長に再び伺いますけれども、それは作業部会のことでございますよね、一応五月ぐらいに立ち上げるというのが七月に始まるということですが、私が先ほどから質問しております、民間医療機関などの事故実態のデータというものをまずきっちり把握して、そしてそこで俎上に上るし、その辺のところはどういうふうに局長としては努力をし、どのような方法で事故実態を把握しようとしていらっしゃるんですか。
篠崎政府参考人 前回、四月の、医療安全の総合対策を打ち出していただきました。その中で盛られていることを実現いたしますためにいろいろ準備を進めてまいりました。それで、今年の十月一日から、全国のすべての病院、そしてすべての有床診療所に、事故の院内報告制度をつくっていただくことになりました。これは義務づけてあるわけでございます。したがいまして、十月一日以降は、日本じゅうのすべての病院そして有床診療所の中では医療事故の報告が上がってくるということになるわけであります。
 その院内に上がってきているものをどうやって外に出すかということでございまして、それにつきまして、先般来、大臣等もお答え申し上げておりますが、いろいろ法的な問題もあろうか、つまり免責の問題等もあろうかということがございますので、そこを含めてこの作業部会で検討していただこう、こういうふうに考えておるわけでございます。
中川(智)委員 そうしたら、病院の中から報告義務を、きっちり報告を課するということは、保険会社、こだわりますけれども、そこで把握しているものとの差とかそういうふうなことが出ないか、そごがないかどうか、きっちりした報告になっているかどうか。実際保険金が支払われたとか、そのあたりのすり合わせだって必要だと思うんですけれども、その事実の把握ということもその報告義務の中には入っていくようなシステムになるということでよろしいんでしょうか。
篠崎政府参考人 医療事故を、今申し上げましたように、院内の報告制度ですべてそこに集まっているということになるわけでありますが、それを例えば報告するにはどうしたらいいかというときに、医療事故の一番大事なのは定義なんでございまして、どういうものを出すかというのが一番最初の関門で、大事なところであります。
 今まで調べたところによりますと、例えば、アメリカは州によっていろいろと違いますけれども、先駆的にそういうことを出しているところでも、医療事故の定義の中に、院内での例えば病気と無関係のいろいろな事故まで入っているようなところもありますし、そういうものは除くようなところもありますし、どういうものを報告する事故とするのかという、その定義のところが非常に大きな問題でございます。
 まずそういうところからいろいろ議論をしていただかなければなりませんので、ただいま先生の御指摘のことにつきましても、どういうふうになるかは専門家の方々の意見を聞いてからでなければわかりませんが、御指摘の点も参考にしながら、検討会で十分御議論をしていただきたいと考えております。
中川(智)委員 局長にもう一言。
 いわゆる信義則でそれは出せないと言われて、そして、ああそうですかというふうに帰ってきて、それは、国民の命、健康を守るために、医療事故をなくしていくために、やはりきっちりとした情報をとるということを、今後とも引き続いて努力をしていただきたいと思うんです。
 これはやはり大臣に伺いたいと思います。
 医師会と、そして損保会社の契約の中で、信義則という壁に阻まれて、国民はその情報をとることもできない、知ることもできない、厚労省さえつかめないという実態に対して、この検討作業部会とは別に、実態把握に対して努力を続けるということを、もう一度明確にお答えください。
坂口国務大臣 医師会の名前が出てまいりましたが、個々の医師会の場合には、そういうケースは比較的私は少ないんだろうと思うんですね。医療事故は、どちらかといえば病院に多いわけでありまして、病院が中心だろうというふうに思います。
 したがいまして、個々の病院がこの保険を掛けているということだろうというふうに思いますから、そうしたことがございますので、損保会社といたしましては、例えば、どこどこの地域の例えば産科なら産科には多いとか少ないとかというようなことになるので、そうしたことに我々の方も責任があるというようなことを言っているようでございます。それならば、そういうことではなくて、もう少し全体に把握できる方法を考えようということでございます。
 先ほどから申し上げておりますように、この医療事故の問題、昨年から実は取り組んでおりまして、何とかその辺も明らかにしなければならないというので、いろいろな議論もしてきているわけでございますから、先ほどから御指摘いただいたことも十分念頭に置きながら、我々としましても正確な数字を、そして、どういう基準のものについては把握できるということにしないといけないというふうに思っています。
 今まで幾つかの大学病院等からデータも出していただいておりますが、病院によってうんと違うんです。大変な違い。それは非常に細かな問題も出していただいているところもあるし、大きいものだけしか出していないところもあるしというようなことで、非常に大きな格差がありますので、その辺の調整もちゃんとして、そして、少なくともこういうこと以上のところは拾うという体制をつくり上げたいというふうに思っております。
中川(智)委員 私は、やはり医療機関にもペナルティーなどを科して、しっかりと正直なところを出して、そして、何度も医療過誤を行う個人的な医師、そして医療機関も、やはり医師免許の剥奪やさまざまな厳罰を科するというようなこともリピーター医師に対してやっていかないと、それは患者側に立った医療を緊張感を持ってしっかりやっていくということにはならないと思いますので、作業部会の成り行き、そしてその方向性、今後もきっちりと注視をしていきたいと考えております。
 先ほど水島委員が御質問なさった中で、私もこれは医療事故の問題と関連して伺いたいんですが、今やはり厚労省、一歩一歩進んでいくために検討会をつくったり、改革に向けての努力というのを始めていく大事なときだと思います。しっかりと、負担をふやすならばそれに見合うサービスと医療の質を高めるということはもう非常に大きな課題だと思いますが、先ほどのお話の中で、遺族からレセプト請求をされた場合に医療機関にそれを伝えること、それがあることによって、ひるんでしまうし、またそのことがカルテ改ざん、東京女子医大の場合や、ほかのところでもやはりカルテの改ざんというのが多く行われ、被害者が二重三重に被害をこうむっていくというか、つらい思いをしながら裁判などもやっているということがあります。
 資料が全部被害者立証責任のようになっておりますし、加害者立証責任という形で制度を改めていくべきだと思いますが、この入り口のところで、社会保険庁のマニュアルの中に書かれているわけですね。当該診療レセプト等の開示の際に「当該保険医療機関等に対しその旨連絡を行うことが適当であると考えております。」というのが社会保険庁のマニュアルの中にある。
 先ほど大臣が、これをなくすことも念頭に入れて整理をしていきたいというところまでの御答弁はございましたが、これもやはり前向きの御発言があっても、いつなのか、もう数カ月もおくれてしまう、半年先、一年先になって、解決が先送りされるということはあってはならない。今日、ただいまからやるべきものだというふうに思います。これは四年も経過しているわけですから、このような見直しがあってしかるべきなんですが、それがない。いつごろまでにこの検討を開始されるか、伺いたいと思います。
坂口国務大臣 前回でございましたか、内閣府からお見えいただいてお答えがございましたとおり、やはり保険者からそういう問い合わせをするということは個人情報を漏らすということになるからそれは慎むべきだという御意見だったというふうに思っております。
 そうした全体の意向もございますし、この制度、五年を経過しますので、この際にそれを見直していきたい。そして、今までどちらかといえば、義務ではないとはいうふうに言いながら、やはり病院の方にそういう通知をするということを中心にやってまいりましたけれども、そういう全体の情報管理という面からいきましても、その点は、改めるべきところは改めていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
 いつまでにというのは、ちょっと、今それをやりますと答えられるところまで相談いたしておりませんので、早くやるようにしたいと思っています。
中川(智)委員 それでは、有事特の福田官房長官のあれが、罷免要求をしているわけですが、委員会が正常に行われるならば、次の委員会ぐらいまでに宿題ということで、ぜひとも具体的なものをお示しいただきたいと思います。これは党を超えて連携してやっていく問題だと思っておりますので、山井委員の御質問と水島委員の御質問、関連していたしました。ぜひとも宿題をしっかりとお持ちくださるように、次回期待しております。
 関連いたしまして、カルテ開示。これも五年前からしっかりと患者の権利法の中にカルテ開示の法制化ということをうたわれ、それなりの努力があったやにも聞いておりますが、とんざしたままになっております。
 これも山井委員の質問を拝見させていただきましたら、やはり坂口大臣の前向きの答弁で、検討会をつくるということ、そして専門家の御意見も聞きながら早く結論を出すという御答弁と同時に、具体的に、一カ月ぐらいの間に何とか立ち上げるようにしたいと思いますということで、あれから一週間がたち、もう、一カ月だと今月いっぱいに立ち上がるという理解でよろしいんでしょうか。
篠崎政府参考人 鋭意努力をさせていただきたいと思います。
中川(智)委員 今、何とおっしゃったの。ごめんなさいね、もう一回はっきりと。
篠崎政府参考人 鋭意努力をさせていただきたいと思います。
中川(智)委員 私は、この業界というか政界というか、永田町に参りまして何だか頭が悪くなったみたいで、それは全然、答えとしては、承っていないというふうな御答弁に聞けましたので、それ以外の、もうちょっと私にもわかる形でおっしゃってください。
篠崎政府参考人 ただいま大臣からお話がございましたので、今月中には立ち上げるように努力をさせていただきたいと思います。
中川(智)委員 何か、一回目はそういう答弁で、そのままあきらめたらもう二回目の答弁が聞けないなんというのが、何か私も複雑怪奇で本当に疲れておりますが、よろしくお願いいたします。
 それでは続いて、リピーター医師の問題で御質問をしたいと思うんですが、いろいろな報道を読みますと、何度も何度も医療ミスをしている。そのたびに、示談とか裁判とかそんなのを。
 一つのこの事例は、産婦人科のお医者さんなんですけれども、本当に大変な医療事故を何度も何度もやっているんですね。結局、一人の医師が、子供さんが大きいから帝王切開をしますからねと説明したんだけれども、当日はもう何にも言わずに誘発剤を投与して、引っ張って、そして、丈夫な赤ちゃんですと言って、でも、その方の長男の右腕は神経が切れ、障害を持ち、生涯動かない手になってしまった。そして、それから何年後ですか、この同じお医者さんで四件の医療ミスがあって、新生児が、一人が死亡、三人が全く同じ、手の神経が切れた、麻痺を残すという障害を負いました。
 このリピーター医師に対して、リピーター医師をどのように把握していますか。医師会などできっちり把握しているし、厚生労働省としてもこのリピーター医師の把握というのもまた当たり前のことだと思いますが、どのように把握していて、何人ぐらいがいろいろなところで問題にされているか、教えてください。
篠崎政府参考人 数のところはちょっと用意をしておりませんでした。御報告できませんが、おおよそで言うと、審議会にかかる者の数は、年間大体三十人ぐらいのところでございます。ただ、繰り返し云々についての数字は、現在持ち合わせておりません。
中川(智)委員 結局、先ほどおっしゃったのは、医道審にかかるところで、刑事事件になった医者か、それとも報道かということだと思うんです。リピーター医師の把握さえも厚労省はやれていない、やる気もないというふうに思います。
 先ほどの損保の話と関連するんですけれども、結局、幾らミスを重ねても、被害者への医療行為というのは制限されないんですね。それに対しての、医師会から、ちょっとその県の医師会が余りに保険料をいっぱい払うから、もう今度は出さないよとか、注意処分、注意を受けるぐらいで、注意を受けたって皆さんあれですよ、馬耳東風という形で、また同じことを繰り返している。それに対しての実態把握もない。そしてまた、その人たちに対して何らかの処置をとることすらできないわけです。
 でも、結局これも、被害者側への賠償も加入する医賠責で賄われていて、保険料の負担だけで済んでいるので、全く痛くもかゆくもない。本当に泣いているのは被害者だけなんです。リピーター医師の把握に対してもっとしっかり取り組むという御決意はいかがでしょうか。これは副大臣に。
宮路副大臣 私どもといたしましても、今まで、実質的には一番地域の実情に詳しい都道府県を通じて、そうした医師の把握、事故の把握に努めておるわけであります。
 そして、先ほど医道審議会の方にそのことについて審議をお願いしているということを申し上げたところでありますが、医師法上、第七条第二項におきまして、医師が犯罪行為あるいは不正な行為そしてまた医師としての品位を損なうような行為のあったときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、または期間を定めて医業の停止を命ずることができる、こういうぐあいにうたわれている、規定されておるところであります。
 客観的な、あるいは公正な情報、データがないとその処分というのはなかなか簡単にできるわけではないわけでありますけれども、例えば刑事処分を受けたとかいったようなことになりますと、それは客観性がそこに出てまいりますから、我が方としても、先ほど申し上げました医師法の規定によってそうした処分が可能になってくるというふうに思いますが、今後、情報の収集に一生懸命努めると同時に、それに基づいてきちっとした、またそうした医師法による処分につきましても厳正なものができるように、今まで以上に努力をしてまいりたい、こう思っております。
中川(智)委員 今、宮路副大臣おっしゃったのは、都道府県というのは、別に都道府県に届け出をしなければ罰則がつくとかそういうことは一切ありません。ですから、年間百件程度の届け出しかないので、これは全く情報把握の努力をしていないということがあるわけです。二万五千件に及ぶ医療事故があると言いながら、年間の都道府県への報告なんというのは百件なんですよ。ですから、もうこれは、医師に甘い、医療機関に甘い。
 天網恢々疎にして漏らさずなんというのは、医師に対して今の厚生労働省の姿勢がそのままである限り、泣き寝入りしかないという状況をどうにかしていこうということをスタートとしなければ、そういう意思を持たないと全く前に進まないということで、先ほどの作業部会では、このリピーター医師の問題に対してもしっかりと取り組んでいくという理解でよろしいんでしょうか。局長にちょっと答えていただきましょう。
篠崎政府参考人 ただいまの先生の御指摘も含めて、医療事故をどうやって防止するかというような観点から作業部会で検討をしていただこうと思っております。
中川(智)委員 ぜひともよろしくお願いします。私も一生懸命やっていきたいし。もう本当に、ごく一キロ四方の、私が暮らしている団地でも、本当にたくさんの被害に遭われていて、結局、レセプトの請求さえもやはりひるんでできない。もう泣き寝入りなんですね。何か変だ、納得できないと思っても、お医者様に聞いたら、何か言いくるめられて、結局あきらめるということが続いております。こういうことがある限り、いわゆる医療への信頼というのを取り戻せないと思っております。
 最後に、健保の方の質問をいたしますが、一般被保険者制度について、不安がございますのでお伺いいたします。
 日雇い労働の方の保険なんですけれども、今回、継続医療が廃止されるということなんですが、日雇い特例被保険者の取り扱いというのはどうなるんでしょうか。また、保険料納付の方法についてあわせて御答弁をいただきたいと思います。
大塚政府参考人 日雇い特例被保険者につきましても、基本的には健康保険と同じような改正になるわけでございます。
 一般の被保険者につきましては、今回、三割負担をお願いしているわけでございまして、従来、国民健康保険に移る際に給付率の格差があったわけですので、継続療養制度というのがございました。原則的にはこれを廃止いたしますけれども、そういう意味でも共通ではございますが、日雇い特例被保険者の場合には、就労と不就労日があることが常態ということもございまして、一年の継続療養というのは残置をいたしております。
 それから、保険料につきましても、政府管掌健康保険をもとに設定をいたしますので、現在、政府管掌健康保険の保険料率は八・二%を想定しておりますが、これも同じ料率になるというふうに考えているところでございます。
中川(智)委員 最後に一点だけ、緊急で。
 食品大手の、いわゆる食衛法に違反したものが入っておりましたね。それで、これに対しては、厚労省としては、食衛法違反としてこの会社を告発するというような方向で取り組むのでしょうか。これを最後に伺って終わります。大臣、これに対して厚労省としてどのように取り組むかの御決意をお願いします。
宮路副大臣 突然の御質問で、ちょっと用意がないわけでありますが、御指摘のお話は、添加物をめぐっての最近の違反添加物といいますか、食品衛生法上認められていない添加物を使用している食品会社についてのお話だと思います。
 これは御承知のように、その監視と申しましょうか、都道府県の方でその監視、指導というのはやっておるわけでありまして、先般のあの雪印の問題のときも大阪府の方で取り上げて処分もしたわけでありますが、これも、したがって、一義的には県ということになりますので、その辺は県の方と連絡をとって遺憾なきを期してまいりたい、このように思っております。
中川(智)委員 食衛法違反です。食の安全を回復するために、きっちりとした態度で厚労省は臨んでいただきたいということを最後にお願いして、終わります。ありがとうございました。
森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五分散会


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