衆議院

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第20号 平成14年6月12日(水曜日)

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平成十四年六月十二日(水曜日)
    午前九時三分開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岡下 信子君    金子 恭之君
      上川 陽子君    木村 義雄君
      北村 誠吾君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      棚橋 泰文君    中本 太衛君
      西川 京子君    林 省之介君
      松島みどり君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    吉野 正芳君
      大島  敦君    加藤 公一君
      鍵田 節哉君    金田 誠一君
      五島 正規君    土肥 隆一君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      樋高  剛君    小沢 和秋君
      大森  猛君    春名 直章君
      矢島 恒夫君    阿部 知子君
      中川 智子君    野田  毅君
      川田 悦子君
    …………………………………
   議員           五島 正規君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   田中 慶司君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           上原  哲君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         石川  明君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            澤田陽太郎君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 石本 宏昭君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十二日
 辞任         補欠選任
  自見庄三郎君     金子 恭之君
  棚橋 泰文君     中本 太衛君
  小沢 和秋君     塩川 鉄也君
  瀬古由起子君     矢島 恒夫君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     自見庄三郎君
  中本 太衛君     棚橋 泰文君
  矢島 恒夫君     春名 直章君
同日
 辞任         補欠選任
  春名 直章君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  大森  猛君     瀬古由起子君
    ―――――――――――――
 患者負担引き上げ中止に関する請願(木島日出夫君紹介)(第五一七四号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第五一七五号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第五三三八号)
 同(小沢和秋君紹介)(第五三三九号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五三四〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第五三四一号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第五三四二号)
 同(吉井英勝君紹介)(第五三四三号)
 同(古川元久君紹介)(第五五一〇号)
 同(小沢和秋君紹介)(第五七二二号)
 同(大森猛君紹介)(第五七二三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五七二四号)
 同(古賀一成君紹介)(第五七二五号)
 同(児玉健次君紹介)(第五七二六号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第五七二七号)
 同(中林よし子君紹介)(第五七二八号)
 同(春名直章君紹介)(第五七二九号)
 同(松本善明君紹介)(第五七三〇号)
 同(水島広子君紹介)(第五七三一号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第五七三二号)
 同(山口富男君紹介)(第五七三三号)
 同(吉井英勝君紹介)(第五七三四号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(岩國哲人君紹介)(第五一七六号)
 同(東門美津子君紹介)(第五一七七号)
 同(阿久津幸彦君紹介)(第五三四四号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五三四五号)
 同(高木義明君紹介)(第五五一一号)
 同(山口富男君紹介)(第五七三五号)
 医療費負担引き上げの中止に関する請願(木島日出夫君紹介)(第五一七八号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(今川正美君紹介)(第五一七九号)
 同(植田至紀君紹介)(第五一八〇号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五一八一号)
 同(羽田孜君紹介)(第五一八二号)
 同(細野豪志君紹介)(第五一八三号)
 同(水島広子君紹介)(第五一八四号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第五一八五号)
 同(横光克彦君紹介)(第五一八六号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第五三五一号)
 同(金子哲夫君紹介)(第五三五二号)
 同(近藤昭一君紹介)(第五三五三号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五三五四号)
 同(筒井信隆君紹介)(第五三五五号)
 同(中川智子君紹介)(第五三五六号)
 同(羽田孜君紹介)(第五三五七号)
 同(荒井聰君紹介)(第五五一二号)
 同(川田悦子君紹介)(第五五一三号)
 同(小泉俊明君紹介)(第五五一四号)
 同(重野安正君紹介)(第五五一五号)
 同(葉山峻君紹介)(第五五一六号)
 同(日森文尋君紹介)(第五五一七号)
 同(山口わか子君紹介)(第五五一八号)
 同(小沢和秋君紹介)(第五七四五号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五七四六号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第五七四七号)
 同(田中慶秋君紹介)(第五七四八号)
 同(松本龍君紹介)(第五七四九号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げなどの中止に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第五一八七号)
 同(中林よし子君紹介)(第五一八八号)
 同(春名直章君紹介)(第五一八九号)
 同(川田悦子君紹介)(第五五一九号)
 同(高木義明君紹介)(第五五二〇号)
 同(古川元久君紹介)(第五五二一号)
 同(松野頼久君紹介)(第五五二二号)
 同(山谷えり子君紹介)(第五五二三号)
 同(石井一君紹介)(第五七五一号)
 同(川端達夫君紹介)(第五七五二号)
 同(河村たかし君紹介)(第五七五三号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七五四号)
 同(武正公一君紹介)(第五七五五号)
 同(武山百合子君紹介)(第五七五六号)
 国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願(植田至紀君紹介)(第五一九〇号)
 同(重野安正君紹介)(第五一九一号)
 同(東門美津子君紹介)(第五一九二号)
 同(日森文尋君紹介)(第五五二五号)
 同(北川れん子君紹介)(第五七五七号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(児玉健次君紹介)(第五一九三号)
 同(山井和則君紹介)(第五一九四号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五三五八号)
 同(鳩山由紀夫君紹介)(第五三五九号)
 同(池坊保子君紹介)(第五五二六号)
 同(高木義明君紹介)(第五五二七号)
 同(鳩山由紀夫君紹介)(第五五二八号)
 同(石井一君紹介)(第五七五八号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七五九号)
 健保本人三割負担、高齢者窓口負担などの患者負担引き上げ中止に関する請願(春名直章君紹介)(第五一九五号)
 安全で行き届いた医療・看護実現のための国立病院・療養所の看護師増員に関する請願(今川正美君紹介)(第五一九六号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第五一九七号)
 同(羽田孜君紹介)(第五一九八号)
 同(三井辨雄君紹介)(第五一九九号)
 同(渡辺周君紹介)(第五二〇〇号)
 同(石井郁子君紹介)(第五三六〇号)
 同(今川正美君紹介)(第五三六一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第五三六二号)
 同(大幡基夫君紹介)(第五三六三号)
 同(大森猛君紹介)(第五三六四号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五三六五号)
 同(児玉健次君紹介)(第五三六六号)
 同(穀田恵二君紹介)(第五三六七号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第五三六八号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五三六九号)
 同(志位和夫君紹介)(第五三七〇号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第五三七一号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第五三七二号)
 同(羽田孜君紹介)(第五三七三号)
 同(春名直章君紹介)(第五三七四号)
 同(不破哲三君紹介)(第五三七五号)
 同(藤木洋子君紹介)(第五三七六号)
 同(松本善明君紹介)(第五三七七号)
 同(三井辨雄君紹介)(第五三七八号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第五三七九号)
 同(山口富男君紹介)(第五三八〇号)
 同(後藤茂之君紹介)(第五五三〇号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五五三一号)
 同(古川元久君紹介)(第五五三二号)
 同(山口わか子君紹介)(第五五三三号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七六四号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五七六五号)
 同(徳田虎雄君紹介)(第五七六六号)
 同(日森文尋君紹介)(第五七六七号)
 中国帰国者の老後生活保障に関する請願(青山二三君紹介)(第五二〇一号)
 同(青山二三君紹介)(第五三八一号)
 同(家西悟君紹介)(第五三八二号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五八〇四号)
 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(阿部知子君紹介)(第五二〇二号)
 同(青山二三君紹介)(第五二〇三号)
 同(赤城徳彦君紹介)(第五二〇四号)
 同(荒井聰君紹介)(第五二〇五号)
 同(石井郁子君紹介)(第五二〇六号)
 同(市川雄一君紹介)(第五二〇七号)
 同(上田勇君紹介)(第五二〇八号)
 同(枝野幸男君紹介)(第五二〇九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第五二一〇号)
 同(大畠章宏君紹介)(第五二一一号)
 同(菅直人君紹介)(第五二一二号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五二一三号)
 同(北川れん子君紹介)(第五二一四号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第五二一五号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第五二一六号)
 同(首藤信彦君紹介)(第五二一七号)
 同(中川昭一君紹介)(第五二一八号)
 同(羽田孜君紹介)(第五二一九号)
 同(藤木洋子君紹介)(第五二二〇号)
 同(細野豪志君紹介)(第五二二一号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第五二二二号)
 同(山口富男君紹介)(第五二二三号)
 同(横光克彦君紹介)(第五二二四号)
 同(渡辺周君紹介)(第五二二五号)
 同(青山二三君紹介)(第五三八三号)
 同(甘利明君紹介)(第五三八四号)
 同(伊藤達也君紹介)(第五三八五号)
 同(岩永峯一君紹介)(第五三八六号)
 同(菅直人君紹介)(第五三八七号)
 同(木村隆秀君紹介)(第五三八八号)
 同(左藤章君紹介)(第五三八九号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五三九〇号)
 同(永田寿康君紹介)(第五三九一号)
 同(羽田孜君紹介)(第五三九二号)
 同(原田昇左右君紹介)(第五三九三号)
 同(東順治君紹介)(第五三九四号)
 同(細野豪志君紹介)(第五三九五号)
 同(青山二三君紹介)(第五五八二号)
 同(伊藤信太郎君紹介)(第五五八三号)
 同(池坊保子君紹介)(第五五八四号)
 同(江崎洋一郎君紹介)(第五五八五号)
 同(川崎二郎君紹介)(第五五八六号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五五八七号)
 同(坂井隆憲君紹介)(第五五八八号)
 同(重野安正君紹介)(第五五八九号)
 同(高木義明君紹介)(第五五九〇号)
 同(武山百合子君紹介)(第五五九一号)
 同(玉置一弥君紹介)(第五五九二号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五九三号)
 同(古川元久君紹介)(第五五九四号)
 同(山口わか子君紹介)(第五五九五号)
 同(青山丘君紹介)(第五八〇五号)
 同(石井一君紹介)(第五八〇六号)
 同(稲葉大和君紹介)(第五八〇七号)
 同(岩屋毅君紹介)(第五八〇八号)
 同(大石正光君紹介)(第五八〇九号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五八一〇号)
 同(後藤田正純君紹介)(第五八一一号)
 同(武山百合子君紹介)(第五八一二号)
 同(徳田虎雄君紹介)(第五八一三号)
 同(長勢甚遠君紹介)(第五八一四号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第五八一五号)
 同(原口一博君紹介)(第五八一六号)
 同(冬柴鐵三君紹介)(第五八一七号)
 同(三塚博君紹介)(第五八一八号)
 同(宮澤喜一君紹介)(第五八一九号)
 同(山口壯君紹介)(第五八二〇号)
 ウイルス肝炎総合対策の充実に関する請願(木島日出夫君紹介)(第五二二六号)
 同(野田毅君紹介)(第五二二七号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五三九六号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五八二二号)
 同(後藤田正純君紹介)(第五八二三号)
 同(長勢甚遠君紹介)(第五八二四号)
 総合的難病対策の早期確立に関する請願(大幡基夫君紹介)(第五二二八号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五二二九号)
 同(北側一雄君紹介)(第五二三〇号)
 同(児玉健次君紹介)(第五二三一号)
 同(穀田恵二君紹介)(第五二三二号)
 同(佐藤剛男君紹介)(第五二三三号)
 同(志位和夫君紹介)(第五二三四号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第五二三五号)
 同(中川昭一君紹介)(第五二三六号)
 同(中林よし子君紹介)(第五二三七号)
 同(野田聖子君紹介)(第五二三八号)
 同(野田毅君紹介)(第五二三九号)
 同(春名直章君紹介)(第五二四〇号)
 同(細野豪志君紹介)(第五二四一号)
 同(松島みどり君紹介)(第五二四二号)
 同(水島広子君紹介)(第五二四三号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第五二四四号)
 同(山口富男君紹介)(第五二四五号)
 同(横光克彦君紹介)(第五二四六号)
 同(渡辺周君紹介)(第五二四七号)
 同(岩倉博文君紹介)(第五三九七号)
 同(岩崎忠夫君紹介)(第五三九八号)
 同(岩永峯一君紹介)(第五三九九号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第五四〇〇号)
 同(左藤章君紹介)(第五四〇一号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第五四〇二号)
 同(佐藤静雄君紹介)(第五四〇三号)
 同(中川智子君紹介)(第五四〇四号)
 同(鳩山由紀夫君紹介)(第五四〇五号)
 同(原田昇左右君紹介)(第五四〇六号)
 同(細野豪志君紹介)(第五四〇七号)
 同(町村信孝君紹介)(第五四〇八号)
 同(丸谷佳織君紹介)(第五四〇九号)
 同(川田悦子君紹介)(第五五九九号)
 同(谷垣禎一君紹介)(第五六〇〇号)
 同(中川智子君紹介)(第五六〇一号)
 同(古川元久君紹介)(第五六〇二号)
 同(松崎公昭君紹介)(第五六〇三号)
 同(山口わか子君紹介)(第五六〇四号)
 同(石田真敏君紹介)(第五八二六号)
 同(大石正光君紹介)(第五八二七号)
 同(大島敦君紹介)(第五八二八号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五八二九号)
 同(後藤田正純君紹介)(第五八三〇号)
 同(坂井隆憲君紹介)(第五八三一号)
 同(土肥隆一君紹介)(第五八三二号)
 同(中川智子君紹介)(第五八三三号)
 同(長勢甚遠君紹介)(第五八三四号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第五八三五号)
 同(松沢成文君紹介)(第五八三六号)
 安定した社会保障理念に基づいた医療保険制度に関する請願(土井たか子君紹介)(第五三二〇号)
 同(土肥隆一君紹介)(第五三二一号)
 同(中西績介君紹介)(第五三二二号)
 同(葉山峻君紹介)(第五三二三号)
 同(山元勉君紹介)(第五三二四号)
 同(横路孝弘君紹介)(第五三二五号)
 同(横光克彦君紹介)(第五三二六号)
 原爆被害への国家補償制度化に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五三二七号)
 同(大森猛君紹介)(第五三二八号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五三二九号)
 同(児玉健次君紹介)(第五三三〇号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第五三三一号)
 骨髄バンク事業の充実に関する請願(岡下信子君紹介)(第五三三二号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第五三三三号)
 同(上川陽子君紹介)(第五三三四号)
 同(三ッ林隆志君紹介)(第五三三五号)
 同(三井辨雄君紹介)(第五三三六号)
 同(谷津義男君紹介)(第五三三七号)
 同(水島広子君紹介)(第五六〇五号)
 同(松島みどり君紹介)(第五八三七号)
 医療改悪反対、国民健康保険・介護保険制度の拡充に関する請願(小沢和秋君紹介)(第五三四六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第五三四七号)
 同(筒井信隆君紹介)(第五三四八号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(阿久津幸彦君紹介)(第五三四九号)
 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(佐藤公治君紹介)(第五三五〇号)
 被爆者援護法の改正に関する請願(金子哲夫君紹介)(第五五〇八号)
 同(高木義明君紹介)(第五五〇九号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(高木義明君紹介)(第五五二四号)
 患者負担引き上げの中止に関する請願(山元勉君紹介)(第五五二九号)
 介護保険制度の改善に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五三四号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五三五号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五三六号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五三七号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七六八号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七六九号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七七〇号)
 重度障害者のケアハウス設置に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五三八号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五三九号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五四〇号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五四一号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七七一号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七七二号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七七三号)
 重度障害者の障害基礎年金増額に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五四二号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五四三号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五四四号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五四五号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七七四号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七七五号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七七六号)
 障害者雇用率引き上げ及び職域開発に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五四六号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五四七号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五四八号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五四九号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七七七号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七七八号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七七九号)
 障害者の医療制度改善に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五五〇号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五五一号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五五二号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五五三号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七八〇号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七八一号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七八二号)
 人工呼吸器を必要とする脊髄損傷者に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五五四号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五五五号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五五六号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五五七号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七八三号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七八四号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七八五号)
 脊髄神経治療の研究開発促進に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五五八号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五五九号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五六〇号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五六一号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七八六号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七八七号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七八八号)
 日常生活用具の意志伝達装置の支給対象者拡大に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五六二号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五六三号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五六四号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五六五号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七八九号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七九〇号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七九一号)
 ベンチレーターを必要とする脊髄損傷者が社会参加するための環境整備に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五六六号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五六七号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五六八号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五六九号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七九二号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七九三号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七九四号)
 無年金障害者の解消に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五七〇号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五七一号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五七二号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五七三号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七九五号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七九六号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五七九七号)
 労災遺族年金支給制度及び要件の改善に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五七四号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五七五号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五七六号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五七七号)
 同(亀井静香君紹介)(第五七九八号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五七九九号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五八〇〇号)
 労働者災害補償保険法の改善に関する請願(小渕優子君紹介)(第五五七八号)
 同(平井卓也君紹介)(第五五七九号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第五五八〇号)
 同(二田孝治君紹介)(第五五八一号)
 同(亀井静香君紹介)(第五八〇一号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五八〇二号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五八〇三号)
 てんかんを持つ人の医療と福祉の向上に関する請願(松島みどり君紹介)(第五五九六号)
 同(釘宮磐君紹介)(第五八二一号)
 医療費負担増法案の廃案に関する請願(藤村修君紹介)(第五五九七号)
 同(河村たかし君紹介)(第五八二五号)
 介護と医療の改悪反対に関する請願(川田悦子君紹介)(第五五九八号)
 高齢者のホームづくりに関する請願(釘宮磐君紹介)(第五七一一号)
 雇用対策と失業者支援の強化に関する請願(石毛えい子君紹介)(第五七一二号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第五七一三号)
 同(北川れん子君紹介)(第五七一四号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第五七一五号)
 同(日森文尋君紹介)(第五七一六号)
 同(細川律夫君紹介)(第五七一七号)
 不妊治療の保険適用に関する請願(釘宮磐君紹介)(第五七一八号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五七一九号)
 同(土肥隆一君紹介)(第五七二〇号)
 医療費負担引き上げ中止と介護保険の緊急改善に関する請願(志位和夫君紹介)(第五七二一号)
 児童扶養手当の抑制案撤回に関する請願(石毛えい子君紹介)(第五七三六号)
 同(徳田虎雄君紹介)(第五七三七号)
 児童扶養手当抑制案の撤回に関する請願(水島広子君紹介)(第五七三八号)
 介護、医療、年金制度の拡充に関する請願(不破哲三君紹介)(第五七三九号)
 安全で行き届いた看護の実現に関する請願(古賀一成君紹介)(第五七四〇号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第五七四一号)
 移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(佐藤敬夫君紹介)(第五七四二号)
 同(松本龍君紹介)(第五七四三号)
 安全で行き届いた看護実現に関する請願(松本龍君紹介)(第五七四四号)
 国民の医療と国立病院・療養所の充実・強化に関する請願(徳田虎雄君紹介)(第五七五〇号)
 安心の医療制度への抜本改革、負担増反対に関する請願(枝野幸男君紹介)(第五七六〇号)
 同(河村たかし君紹介)(第五七六一号)
 同(島聡君紹介)(第五七六二号)
 同(原口一博君紹介)(第五七六三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)
 健康増進法案(内閣提出第四七号)
 医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出、衆法第一一号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(五島正規君外三名提出、衆法第一三号)


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、健康増進法案、山井和則君外三名提出、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案及び五島正規君外三名提出、健康保険法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長黒澤正和君、防衛庁防衛参事官田中慶司君、文部科学省大臣官房審議官上原哲君、高等教育局私学部長石川明君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、健康局長下田智久君、職業安定局長澤田陽太郎君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、社会・援護局長真野章君、社会・援護局障害保健福祉部長高原亮治君、保険局長大塚義治君及び政策統括官石本宏昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。
山井委員 民主党の山井和則です。
 これから一時間、質疑をさせていただきます。これからの一時間の中で、質問の順番は多少変わっているところもありますので、よろしくお願いいたします。
 昨日、参考人質疑を行ったわけですが、その中でも、この健保法改正に関していかに反対論が強いかということ、そして、まさにプラスとなる面が少ないということを私も痛感しましたし、委員の皆さんも御一緒の意見だと思っております。
 それで、きょうは手元に六ページの資料をお配りさせていただきました。これは、先日サンデープロジェクトで行われた電話調査の結果であります。この資料を見ていただきましても、四つの重要法案の中で最も健保法に関して賛成が低くて、そして反対が一番高い。この国会で議論になっております四つの中で、一番国民に対して不安を与えて、そして審議がまだまだ不十分であると考えられているのがこの健保法の改正である。
 このようなデータもあるわけですが、冒頭、坂口大臣、このようなデータを見て、いかが思われますでしょうか。御感想をお聞かせください。
坂口国務大臣 おはようございます。
 アンケート調査というのは聞き方でありまして、三割負担に賛成か反対かといえば、反対だという人が多いのは当然であります。ですから、そういう聞き方ではなくて、医療費がこれから増大するわけでありますから、保険料負担にするか、それとも自己負担にするか、あるいはその両方にするか、こういう聞き方をしてもらえば、私は最も的確な答えが出てくるというふうに思っております。
山井委員 そもそもの聞き方、四つの法案を比較して聞いてあるわけですね。今の答弁を聞いていても、やはり国民の痛みなり不安がわかっていないということを私は感じざるを得ません。
 そして、まだこの金曜日にも審議を行う行わないということで今も理事会で議論をしていたわけですけれども、与党の方は、十四日に総理を呼んで質疑をやりたいというようなことも提案されているそうであります。今回のこの審議も今大詰めにかかっておりますけれども、抜本改革の道筋も見えてこない。そして、この法案に対する不安はどんどん高まってきてこの世論調査の結果である。
 そんな中で、報道によりますと、坂口大臣も聞いておられると思いますが、十四日の日、このまさに健保法改正の三割負担を言い出した小泉首相本人が、ワールドカップのチュニジア・日本戦を見に行きたいということをおっしゃった。そして、その日は政治休戦にしたらどうかと。この厚生労働委員会で十四日の日に総理を呼んでこの最も切実な問題に対して審議をしようとしているときに、まさに最高の責任者である首相が、その日は休んでサッカーを見に行きたい、自分が行ったら日本は勝つんだと。一体これはどういう認識ですか。
 私たちも、大臣も一緒だと思いますが、本当に命をかけてこの審議をやっているわけです。高齢者の自己負担もアップする。サラリーマンの方の自己負担もアップする。これによって受診抑制がかかって手おくれになる人も出てくる。それによって命を落とす人もやはり出てくるでしょう。また、こういう自己負担を、今の最も不況が深刻な時期にやって、一九九七年の例を見ても、これによって景気の、まさにさらに低迷を招くかもしれない。御存じのように三万人以上が自殺をして、この非常に深刻な中で、これがまた景気回復をおくらせて、そしてそれによってまた崩壊する家庭や自殺者がふえたらどうしよう。与党も野党も含めて、私たちは、この法案を通すことによってそういう命を落とす方や家庭崩壊する人が出たらどうしよう、こういう法案を通していいのか。反対するのは当然としても、それでも、厚生労働委員会の一員として、こういう審議をやっていてそのまま通っていいのか、そんな意味で私も非常に心痛む思いで審議をしております。
 ある意味で最も悩んでおられるのは、私、坂口大臣だと思うんです。まさかこんなことを強行採決で、与党単独で採決されることはないと思いますが、そういう坂口大臣も必死に悩んでおられるときに、党の最高の責任者である小泉首相が金曜日の日にサッカーを見に行きたいと言った。このような姿勢に対して、坂口大臣の御感想をお聞かせください。
坂口国務大臣 この委員会の審議を熱心に皆さん方に行っていただいておりますことに、私は感謝を申し上げております。
 ワールドカップの話はワールドカップの話でありまして、それはそういうまあ冗談をおっしゃったんだろうというふうに思っておりまして、この審議は審議、ぜひ粛々とお願いを申し上げたいと思っているところでございます。
山井委員 冗談で済まないですよ。先日の福田官房長官の核武装発言にしても、有事関連法案の議論が一番深刻なときにああいう発言が出てくる。そして、この健保法案の審議が大詰めにかかっているときに、冗談ででも、政治休戦をしてサッカーを見に行こうと。これによって苦しんでいる患者さんやお年寄り、そういう人の気持ちをわかったら、そんな冗談なんか言っている場合じゃないでしょう。
 坂口大臣、本当にあれは冗談だと思っておられるんですか。改めて小泉首相の政治姿勢を象徴する出来事ですよ。言った当の本人がサッカーを見に行きたいと言っている、そんな中で私たちはこうやって議論している、そして世論調査では一番不安が多いわけですよ。今回の健保法の審議を象徴するのが、今回の小泉首相の、ワールドカップをその日見に行きたいという発言だと思います。こういう無責任な状態で私は審議をできません。坂口大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 亡くなる人がないように、そういう医療制度をつくるために今御審議をいただいているわけであります。現在だけではなくて、将来にわたりましても安定した医療制度をどうつくり上げていくかということが我々に課せられた課題でありますから、そのことを熱心に御議論をいただいているところでありますので、この委員会で、ひとつさらに御議論をいただければというふうに思っております。
山井委員 そういうこと一つ一つが健保法に対する不信を助長させているんです。坂口大臣からも、小泉首相にきっちりと言ってください。
 大体、小泉首相も、三方一両損といいながら、結局は健保法の公費負担についても、一九九二年の附則によって当面の間一三%ということで引き下げられたわけですが、これはやはり一六・四%に今こそ戻すべきではないでしょうか。三方一両損といいますが、今回は、自己負担と保険料のアップ、これは国民の損、すなわち負担増です。診療報酬の引き下げは医療機関の損。しかし、政府だけは損をしていないではないですか。この政管健保の公費負担の一三%に据え置かれている問題、一六・四%に戻すべきだと思います。いかがですか。
坂口国務大臣 国庫補助率につきましては、昭和四十八年だったというふうに思いますが、一〇%の定率補助が導入をされまして、それ以後、保険料率の引き上げが行われました。それは、五十三年には一六・四%に引き上げられたところでございます。しかし、その後、平成四年に、積立金を用いた中期的な財政運営を導入いたしまして、そして、当時の厳しい国家財政も踏まえて、一三%に引き下げられたというふうに聞いております。
 国庫補助といいましても、国民の負担であることには変わりがないわけでありまして、今回の改革は、患者の皆さんあるいは加入者及び医療機関がそれぞれ痛みを分かち合っていただくようにお願いを申し上げているところでございます。
 今回、一三%はそのままでございますけれども、しかし、高齢者の皆さん方に、これから七十五歳に引き上げますが、五割負担というふうにだんだんと国庫負担をふやしていくわけでありますから、国庫負担をふやすことには変わりがございません。
山井委員 このような自己負担、保険料をアップさせながらも、また医療機関に痛みを強いながらも、自分たちは負担増を行わない。そういうことが、一番、国民にとって三方一両損という言葉がまやかしに映っているわけです。
 そして、そのような事態の中で、やはり、もっと医療費のむだを省いていく、またコスト感覚を持っていくことが必要だと思います。
 政管健保の医療費通知について、昨日私、厚生労働省にお伺いをしました。そうしますと、政管健保における医療費通知の実施状況は、総レセプトが三万一千二百七十二のうち、通知レセプト件数が三千二百四十三ということで、非常に少ないわけですね。
 これは質問ではなくて要望にさせていただきますが、せめて国保並みに、年に何回か、全員にやはり通知をして、自分のかかった医療に幾らお金がかかっているのか、やはりそれは通知すべきであると思いますので、これはぜひともやっていただきたいと思います。
 次に、今坂口大臣が答弁の中でもおっしゃいました高齢者医療制度です。
 医療制度改革の最大のポイントであるわけですが、これについては、今回の法案の中で、老人保健制度の対象年齢を七十歳以上から年に一歳ずつ、七十五歳まで引き上げるということになっています。つまり、七十五歳まで引き上げるのに五年かかるわけですね。しかし、今回の法案の附則では、新しい高齢者医療制度の基本方針を今年度中に決定し、二年以内に新しい高齢者医療制度を実施するとなっております。この二つの記述は矛盾していると思います。整合性はどうなっているんでしょうか。
坂口国務大臣 その五年、二年の話は今御指摘をいただいたとおりでございますが、今回の、五年間の間にだんだんと七十五歳に引き上げていくというこの方針につきましては、これは今後も継続をしていく、この線に沿って次の改革は考えていく、そういうふうに今思っておるところでございます。だから、七十五歳まで五年かかって引き上げていくという線は崩さないというつもりでおります。
山井委員 そのことと、二年後からの実施ということ、本当に整合性がないと思います。そういうこと一つ一つが、まさに、まだ高齢者医療制度の姿形が私たちに見えてこない大きな理由だと思います。
 また、そういうものを議論するために、厚生労働省の中では医療制度改革推進本部というのをつくって議論をされているというふうに聞いております。しかし、これは省内で課長さんとかが集まって議論をされているそうですが、省内で行うだけではなく、もっとオープンに議論すべきだと思います。省内だけで議論をして、最後の案ができてからぽっと国会に出してくるんではなくて、その議論の途中段階でも、しっかりとオープンな形で国会にも提示して議論をすべきであると思いますが、そのような議論の仕方について、いかがでしょうか。
田村大臣政務官 先生おっしゃられましたとおり、先般、厚生労働大臣を本部長といたします医療制度改革推進本部を省内で立ち上げました。今もお話ございました、高齢者医療をどうするかという問題でありますとか、医療保険制度体系自体をどうするか、こういう議論をこれからさせていただくわけでありますけれども、法案成立後は、速やかにそのような厚生労働省としての考え方をまとめまして、それを社会保障審議会の方に御検討いただきまして、その後、年度内に基本方針をつくってまいりたい。
 もちろん、幅広く国民の皆様方、いろいろな御意見をいただきながら、新しい制度というものを考えていかなきゃ、抜本改革をやっていかなきゃならぬわけでありまして、そういう意味では、有識者の方々からもいろいろな御意見をいただきながら、これから医療制度改革を進めてまいりたい、このように思っております。
山井委員 これは早急に、急いでやってもらいながら、しかし、かつオープンに、しっかり、私たちは国民の代表でもあるわけですから、国会議員の声も聞いて、国会の場でも議論をぜひやっていただきたいというふうに思います。
 そして、次の質問に移ります。手術に関する施設基準の導入について。
 これは先日阿部知子議員からも指摘があったことですけれども、私も最近、四つの病院を訪問しました。その四つの病院すべてから、今回の診療報酬の改定に対して何とかしてほしいと言われましたのが、この手術に関する施設基準の導入についてであります。これは、百十項目について、年間手術件数が一定に達しないと診療報酬を三〇%減額するもので、事実上、その手術をしない方がよいですよ、しても余りもうかりませんよというような政策誘導であります。
 確かに私も病院の機能分化というものの必要性を否定するものではありませんが、現実には、このような減額をされない病院が非常に少ないのが現状です。
 近畿医師会連合の調査では、近畿二府四県、千三百三十五施設のうち、約三分の一の三十一項目では、基準を満たす病院は十未満で、六項目では、基準を満たす病院が近畿全体でゼロなわけなんですね。そして、北海道では、例えば開心術を例にとると、基準を満たす病院は八施設あるが、そのうち五施設は札幌市に集中、人工関節手術では、二十一の二次医療圏のうち十二圏で、基準を満たす病院は皆無です。つまり、これは二次医療圏を基本とした地域医療計画の崩壊につながりかねません。急にこのような改定を行うことは、地域医療の格差を広げ、全国どこの地域でも平等な医療を受けるという権利を侵害するものであります。
 この点について、厚生労働省に聞いてみました。このような手術件数の基準を持ち込むと、各都道府県でその基準を満たす病院があるのかないのか、そういうことを事前に調べてみたんですかと聞いたら、事前にそのような調査はしていないということであります。そんなこともせずにこのような乱暴なことをやって、本当に地域医療圏が崩壊しかねない。
 これに関しては、七月一日現在の病院の状況を厚生労働省に届けることになっているので、八月末ぐらいまでに情報が上がってきて集約するということでありますけれども、このようなことを行った根拠、なぜこういうことを行ったのか。そして、各都道府県に一つも基準を満たすような病院がなければ、やはりこのような乱暴な方針というのは撤回すべきだと思います。そのことについて答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 日本の医療を見てみますと、例えばペースメーカーなんかを入れる例を見てみましても、年間一つとか二つとか、そういうところもたくさんあるわけですね。一つ二つが悪いということを言っているわけじゃございませんが、やはり質の高い医療を形成していこうということになれば、集中して多くの例をこなしていただくようにしていく方がいいだろう、成功率は高いだろうというふうに私は思っています。いわゆる機能分化をしていかなきゃならない。そうした意味で、方向性としてはそんなに間違っていないというふうに私は思っています。
 ただ、何例以上という、その例数がそれでよかったかどうかという問題につきましては、これは地域の格差もございますし、若干その点は考えなきゃならない点もあるのかなというふうに思っております。
 四、五、六と三カ月ほど、その他の分野もございますけれども、診療報酬につきましては、いろいろの観点から結果を拝見させていただきまして、その後、そうした問題を中医協で御議論いただくものというふうに思っている次第でございます。
山井委員 大臣おっしゃるように機能分化という方向性、それは、先ほど申し上げましたように、私も否定するものではありません。しかし、まさにおっしゃったように、件数がこれで妥当なのかということ。まさに八月までの調査の結果を見て、そこは柔軟に見直していただきたいというふうに思っております。これは本当に現場の病院から一番切実な要望ですので、そこは柔軟にお願いしたいと思います。
 次の質問に移りますが、今回の医療制度改革の中で、私がかねてから取り上げております救急医療の問題、余り取り上げられませんでしたので、私、取り上げたいと思うんです。
 御存じのように、欧米に比べて心肺停止患者の救命率というのは日本は半分以下であるということで、大きな問題になっております。これに関しては、坂口大臣のリーダーシップのもと、救急救命士の業務のあり方等に関する検討会が今立ち上がって、検討が行われているわけであります。
 そこで、この資料、二ページ目を見ていただきたいんですが、ここで見ると、心原性疾患において、ドクターカーと救急救命士隊の救命率の差が、六・三%と二・六%、二倍以上の大きな差があるわけです。これに関しては、平成十三年の救命効果検証委員会でも、この理由は「ドクターカーにおいては早期に気管内挿管ができること、及びエピネフリン等の薬剤投与ができること」が大きな差であるということが、これは報告書で答申をされております。そして、まさにその下の「考察」のところでも、早期除細動、気管内挿管及び薬剤投与により、発症後早期に心拍の再開を図ることが非常に重要であるということが書かれております。
 これについて、これからは指示なしの除細動、気管内挿管、薬剤投与、この三点セットの業務拡大が必要だと思います。この気管内挿管や薬剤投与ということに関して、今回の検討会で御議論いただいていると思いますが、これは、気管内挿管や薬剤投与をやっていくという方向で議論になっていると思います。その件について、気管内挿管と薬剤投与、今後どのようにしていくのか、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
坂口国務大臣 今専門家の先生方にお集まりをいただきまして、熱心に御議論をいただいているところでございます。委員も傍聴等をしていただいているようでございますが、かなり熱心に御議論を進めていただいているというふうに思っておりますし、七月の初旬には中間報告を出していただけるというふうに聞いておりますので、楽しみにしているところでございます。
 方向性といたしましては、私も、できるだけ患者の皆さん方のことを中心にして考えていくべきだというふうに思っております。したがって、そうした方向でお話は進めていただいているものというふうに思っている次第でございます。
 除細動の問題につきましては、機械器具も発達をしてまいりまして、最近また非常にいい器械が出たようでございますから、かなり問題は排除されたというふうに思っている次第でございます。
 薬の問題でありますとか、それから気管内挿入の問題でございますとか、こうした問題も、いろいろ、どういうときはするかしないかということもある程度は明確にしておかないといけない話だというふうに思いますし、そうしたことも御議論をいただけるものというふうに思っている次第でございますので、そこは、ここまで来たわけでございますから、結論を少し待ちたいというふうに思っているところでございます。
山井委員 まさにこれは坂口大臣のリーダーシップのもとで早急に検討をしていただいて、ありがたいと思っておりますが、やはり人の命がかかっていることでありますし、例えば医師の指示なしの除細動の問題に関しても、一分間その処置がおくれると救命率は一〇%低下するというふうに、本当に切実な、一刻を争う問題であります。
 次の三ページを見ていただきたいんですけれども、各国の救急救命士、パラメディックの業務範囲の比較という、この三ページ、坂口大臣、見ていただきたいと思います。
 ここで明らかなように、まず除細動に関しては、アメリカ、イギリス、オーストラリア、すべて具体的な医師の指示は必要ありません。しかし、日本だけ医師の具体的な指示が必要、つまり、事前に電話して聞かないとだめなわけですね。その電話して聞いている間に手おくれになるケースがたくさんあるということが問題になっているわけです。
 それともう一つ、気管内挿管も、アメリカ、イギリス、オーストラリアはできます。ところが日本のところには、それはできませんと。
 そして、今私が質問しました薬剤投与に関しても、何も百種類も二百種類も使えるようにというのではなくて、私もこの間、この土日も三カ所の救急病院と二カ所の消防署に行って、現場の救急救命士さんと救急医の方の話を聞いてまいりましたけれども、ここの下線で引いてある、エピネフリンとリドカインとアトロピン、この三つさえ使えればかなり救命率は上がるということを、救急医の方も、救急救命士の方も口をそろえておっしゃっておられます。
 そして、見てもらったらわかりますように、研修時間というのは、アメリカ、イギリス、オーストラリアに比べても、日本の八百から千時間というのは特に遜色のないものなんですね。
 大臣、この表を見ていただいて、同じような研修期間で熱心に日本の救急救命士さんも研修を組まれておられて、ところが、表で比較してみると、除細動は日本だけ具体的指示がないとできない、気管内挿管もできない、薬剤投与のエピネフリン、リドカイン、アトロピンというものも認められていない。こういう一覧表を見て、かつ、十一年前に救急救命士法ができたときから、実は、この三点セットは一日も早く実現してくださいということが十一年前から懸案になっていながら、十一年間放置された状態が続いている。大臣、この表を見ていかが思われますか。
坂口国務大臣 ですから、今、検討会をつくっていただいて、議論をしていただいているわけであります。それもできるだけ早く結論を出していただくということで今おやりをいただいているわけでありますから、そんなに急がないで、もうしばらくお待ちをいただきたいと思います。今進行しているわけでありますから。
 これを背景にしまして、エピネフリンだとかリドカインだとかアトロピンだとかという薬剤もございますが、しかし、時代も変化をしておりますけれども、これらを見まして、なかなか使い方も難しい薬だなという気も率直に言ってするわけです。使い方一つ間違えますと大変なことになるなという気もいたしまして、そうしたこともどうするかというようなことを具体的に決めていただかないと次へ話が進みませんので、そうした問題も御議論をいただきたいというふうに思っている次第でございます。
山井委員 先ほどの平成十三年の報告書で、既に一年以上も前に、そういう薬剤投与や気管内挿管があれば救命率が上がるという報告が出ていながら、今日まで放置されているんですね。だから、急いでいただきたいと思います。
 私が心配しておりますのは、正直言いまして、来年度の概算要求のことも絡んでくると思います。ですから、七月上旬の段階で、指示なし除細動だけではなく、今まさに大臣がおっしゃいましたように薬剤投与にしても気管内挿管にしても研修のプラスアルファが当然必要なわけでして、メディカルコントロール体制の充実も必要なわけですから、今回の中間まとめで気管内挿管や薬剤投与に関してもやっていくという方向を出さないと、来年度予算に間に合わない、また一年先送りということになってしまうわけです。
 現場の救急救命士さんや救急医の方の話を聞くと、この三点セットができれば、救命率も、心肺停止患者の方に関してはドクターカーにかなり近づくんではないかというのが現場の一致した意見なんですね。
 改めて大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の中間まとめで、薬剤投与や気管内挿管に関しても、来年度予算にも関係することですから、研修のことにも関して、やっていくという方向でまとめていただきたい。これは私の要望なんですが、大臣いかがでしょうか。
坂口国務大臣 あくまでも中間報告でありますから、結論ではないというふうに思いますけれども、しかし、全体としての方向性はお示しをいただけるものと思っております。
山井委員 研修を来年からするんでしたら予算も発生することですので、そこはぜひとも、これは年末までになってしまったらまた一年おくれるわけですので、よろしくお願いしたいと思います。
 そして、まさに大臣がおっしゃいました、薬剤投与や気管内挿管に関しては研修が当然必要であります。そこで、今これも検討会で御議論されていることですので余り口を挟むのもよくないわけですけれども、やはりこの医療制度改革の中で一つ私聞いておきたいのは、気管内挿管を救急救命士の方にやっていただく、そして三つの薬剤投与もやっていただく、もしそういうことを前提とするならば、研修期間は大体どれぐらい必要だというふうにお考えになられますか。そのことについて御答弁お願いします。
宮路副大臣 この点、私の方から答弁させていただきます。
 今、基本的な方向は大臣の方から御答弁のあったとおりでありますけれども、御指摘の、実習も含めて研修、教育の問題も重要な検討課題として位置づけられております。その点も専門的な見地から今後御議論をいただく必要があるということでありまして、目下のところ、それを具体的にどういう期間のものにするか、まだ今後の検討課題ということで、御指摘の点も十分念頭に置いてこの検討に臨んでいただくよう我々としても努力してまいりたい、このように思っております。
山井委員 この表には出ておりませんけれども、今、ワールドカップを共催しております韓国でも救急救命士の方々が活躍しておられまして、韓国でも気管内挿管と薬剤投与はオーケーなわけです。聞くところによりますと、今回のワールドカップのサッカーで、何か暴動が起こったときのために多くの救急救命士さんが待機をしておられるということなんですね、この表には韓国のことは出ておりませんけれども。そう考えてみたら、日本、韓国で同じように暴動が起こって、そこで出動した救急救命士さん、韓国の場合は気管内挿管や薬剤投与というものができる、ところが日本はできない、それで救命率に差が出てくるというふうなことにもなりかねないんです。
 そういうことで、一日も早くこういう検討を急いでほしいと思うんですが、そのあたりの日本と韓国の格差。ヨーロッパと日本ではなくて、日本と韓国でも、救急救命士法ができたのは韓国の方が後で、日本は抜かれているわけなんですね。そのあたり、坂口大臣いかがでしょうか、お隣の国ですが。
坂口国務大臣 韓国は韓国の基準でおやりになっておるんだというふうに思いますし、後からやられたところが先進国になることもあるわけでありますから、ひとつよく勉強させていただいて、参考にするところは参考にしたい、そういうふうに思っております。
山井委員 本当に、これはまさに人の命がかかっている問題でありまして、医療制度改革の究極の目標はいかに人の命を救うかでありまして、残念ながら、最初に言いましたように、心肺停止患者の方の救命率が欧米に比べて半分以下だ、それを、十年前から懸案になっていて、まだ改善できていない。やはりこういうことも私は医療改革の重要な一つのポイントだと思いますので、坂口大臣、どうかよろしくお願い申し上げます。
 では次に、高齢者の医療と表裏の関係にあります介護保険のことについてもお伺いしたいと思います。
 今までからこの問題取り上げておりますが、高齢者医療の改善には介護基盤の整備や介護保険の見直しが不可欠だと私は思います。四月の診療報酬の改定の中でも、半年以上の長期入院の社会的入院の方は特定療養費化してできるだけ退院をしてもらうという方向性を出されているわけでありまして、社会的入院を減らしていくということは、まさに高齢者医療をよりよいものにするために重要なことだと思います。しかし、問題は、その受け皿があるか。
 前回は老人ホームの数が足りるかということを質問させてもらいましたが、きょうはその質についてお伺いしたいと思います。
 前回、介護職員の方々の労働条件はどう変わったかということを質問させてもらいましたら、介護保険の前後で、この四ページのようなデータを厚生労働省さんからいただきました。つまり、非常勤がふえてということですけれども、これだけではわかりませんので、このことに関して私が聞いておりますのは、介護保険によって非常勤がふえて、そしてまた中堅の方が人件費が高いからといってどんどん首を切られていっている、それで現場のケアの質も下がっている施設がふえている、そういう現場の嘆きを聞いております。介護報酬、これから特別養護老人ホームについて議論する中で、やはりこのような介護職員の労働条件がどう変わったかということもきっちりと介護保険の中でチェックしていくべきだと思いますが、そのことについていかがでしょうか。
田村大臣政務官 先般の先生からの御質問で、たしか私がお答えさせていただいたと思うわけでありますけれども、前回の調査で、常勤と非常勤の割合、やや非常勤の方がふえてきておるというお話をさせていただきました。常勤の給与に関してはそれほど変わっていないという話でございましたけれども、非常勤の給与は把握をしていないということでございまして、これは大変申しわけない話でございます。
 そこで、この秋にまとまる介護事業経営実態調査、こちらの方、実はサンプル数が以前よりもかなり多うございまして、前回、全事業所の二十分の一でサンプルをとっておったんですが、今回三分の一ということで、かなり詳しい内容をお聞きいたしております。これで非常勤の職員の皆様方の給与等々も把握させていただいて、どのような状況になっておるか、我々、今後議論の検討の素材にさせていただきたい、このように思っております。
山井委員 そこは非常に重要な問題でありまして、当然、処遇や労働条件が悪くなるとケアの質も低下していくということは明らかであります。
 そこで、坂口大臣、この五ページ目の概況調査を見ていただきたいと思います。
 この表で本当に一目瞭然なんですね。平成十一年の調査ではマイナス五・六%、特別養護老人ホームは赤字であった。ところが、介護保険に入ってからの調査では一三・一%と、大幅に黒字に転換をしているんです。なぜ黒字に転換したのかというと、この矢印を見てもらったらわかりますように、給与費、人件費を下げている。つまり、非常勤をふやして、給料を減らして黒字に転換をさせていっているわけです。そんな中で、中堅の職員さんが首になり、あるいは給料の安い未経験な人の数をふやすという中で、質の低下を懸念しております。
 ここでお伺いしたいんですが、このような状況になってくると、当然、人件費を減らして質を低下させた方が利益は上がるという傾向になってきてしまうわけですね。それに歯どめをかけるのは厚生労働省さんの仕事であると思います。
 本来なら介護保険で悪い施設は選ばれないという状況だったらよかったんですけれども、実際、御存じのように待機者が多くて、利用者は選べない。ということは、選べないということは、やはり公が質のチェックなり質の担保をすべきだと思うんですけれども、厚生労働省さんは、このあたり、人件費の切り下げや常勤を非常勤にするというふうなことを通じて質が悪化していないか、そういう質のチェック、質の担保はどのようにされていますか。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
田村大臣政務官 これはもう先生大変お詳しい話だと思うわけでありますけれども、介護保険法に基づきまして、それぞれの人員の配置でありますとかまた運営に関する基準というものは、運営基準によって決めております。ですから、そういう意味では、質の担保という意味では、最低限の部分は担保をさせていただく。それから、それぞれ都道府県が定期的に指導監査に入っておりますので、その点で不備等々がございますれば、実質的にはわかってくる。もちろん、都道府県の指導監査には我が省といたしましても助言等々をさせていただいておりまして、質が落ちないようにというふうには思っております。
 ただ、先生がおっしゃられましたとおり、言われた数字というものが、多分人件費が減ってその分が利益に上がっているんじゃないかというようなお話であったと思うわけでありますけれども、それぞれの施設の努力もあるんだと思います。ある意味では、そういう意味では、人件費切り下げというのが、まあむだな部分というのがあればその部分は切り下げた部分もあろうと思いますが、実質的にサービスが低下をする形で人件費が切られておるということになりますとこれは大変な問題になってまいりますので、今回、今お話ししました調査等々で、どういうような常勤、非常勤の割合になっておるのか、また人件費がどのような形で下がっておるのか、こういうことも把握をさせていただきまして検討をさせていただきたい、このように思っております。
山井委員 ほっておけば、施設にとって、黒字を出そうとすれば、ある意味で、人件費を削れば簡単なことになってしまうわけですね。幾ら質が悪くても、門前市をなすで待機者の方はいっぱいいらっしゃるわけですから。そういう意味では質のチェックをきっちりやらないとだめなわけですし、そもそもこれは、質がアップするインセンティブというのはあるんでしょうか。人手をふやして人件費を高くすれば、利益率は減ります、しかし質はアップするわけですけれども、今回の介護保険制度の中で、特別養護老人ホームのケアの質をアップさせるインセンティブというのが私はないように思っております。
 そんな中で、この介護報酬について、マスコミでは、ケアマネやホームヘルプの在宅サービスを上げる、その財源を捻出するために特別養護老人ホームの介護報酬を下げる、そういう方向で厚生労働省は検討しているという記事がすべての新聞に出ております。坂口大臣、この特別養護老人ホームの介護報酬、下げる方向で検討されているんですか。
坂口国務大臣 まだその段階には至っていないというふうに思っておりますが、今御議論ありましたように、私も、特別養護老人ホームの収益が上がっているという場合に、それは質を落とさずに上がっているのか、質を落として上がっているのかというところが大変大事なところだというふうに思います。質を落として上げているんだったら、それは質を上げてもらうように指導するのがやはり厚生労働省の役割だというふうに思っています。
 ですから、何も収益があるからそれを減らそうということではなくて、その質を維持する、質を上げることを行いながらどうなるかというところを見ないといけない、それによって最終判断をしないといけないというふうに思っておりますし、事務局の方にもその点をひとつ十分にチェックするように言っているところでございます。
山井委員 まさに大臣おっしゃるとおりなんですね、これ。利益は上がっていていいなではなくて、それで質が落ちていたら、結局は意味がない。
 そして、まさに今回の医療制度改革の中でも、社会的入院を減らしていく。しかし、そういう方が退院したら、やはり特別養護老人ホームにとっては非常に重度な入居者になるわけです。その重度な入居者が、これからどんどん特別養護老人ホームに、医療改革の流れの中でふえてくる。しかし、受け皿である特別養護老人ホームは、非常勤をふやして、人件費を減らして、質が低下しているかもしれない。そういうことでは、まさにお年寄りにとって不幸な改革になってしまうわけです。
 そこで坂口大臣、今おっしゃったように、利益が上がっている特別養護老人ホームがどういうケアをしているのか、そこを一回調べないと、利益が上がっているから介護報酬を下げるべきだというふうにならないと思うんですね。そのような分析、検討は出されているんですか。そのような分析、検討なく、利益率が上がっているから報酬下げようでは、今まさに大臣がおっしゃったように、人件費を下げてケアの質を悪化させているということも考えられるわけですが、そういう検討、分析をなさっているんでしょうか、厚生労働省では。
坂口国務大臣 やってもおりますし、しかし、これからもやらなければならない。その点は、現場の状況というものをよく把握をしてやらないといけないというふうに思っております。
山井委員 まさにそこなんですが、まあ水面下でというか調査はやっていられると思うんですが、いつの時点かで、利益を出している特別養護老人ホーム、そして赤字の特別養護老人ホームの、その理由、ケアの質、そういうものを含めた検討結果というものをオープンにしていただきたい。そうしないと、この特別養護老人ホームが、人件費を下げるほど、ケアの質を下げるほどもうかるというような構図に今なりかかっているんですね。
 坂口大臣、これは非常に重要な点だと思うんですけれども、そのような特別養護老人ホームの、利益率はもう今回概況調査でわかりました、ケアの質に対する調査結果というのは、それこそ介護報酬の議論の前に調査していただいて公表していただくということ、お願いできますでしょうか。
坂口国務大臣 それを発表するとかどうかということよりも、よい介護とはどういう介護をいうかという、そのやはり基準と申しますか、よい介護の定義と申しますか、そこをはっきりさせないといけないというふうに思っております。
 これは、何がいいかということは、言いますけれどもなかなか私は具体的には難しいことだというふうに思いますけれども、しかし、そこをはっきりさせて、そして現場がどうかということを見ないと見方を誤ってしまう。そういうふうに思います。
山井委員 ぜひとも、ケアの質の検討を行って、やはりそれは私は公表していただきたいと思います。そうしないと、万一介護報酬が下げられたときに現場の方々も納得されません。
 そこで、宮路副大臣にお伺いしたいんですが、先日の桝屋議員の質問によって、ユニット型の新型特別養護老人ホームを視察されたというふうにお聞きしたんですけれども、どこの施設に行かれて、感想は。そして、そこは人手は何対何。つまり入居者と介護職員の割合、何対何ぐらいでやっていられて、利益は出ていたのか。そのようなことについてお聞かせ願いたいんですが、いかがですか。
宮路副大臣 私は、千葉県にあります風の村という特別養護老人ホームへお邪魔をしてきたんですが、感じましたことは、一つは、人の配置がかなり一般よりは手厚いということを聞きました。ただし、具体的な数字は今のところ私ちょっと手元に持っておりませんが、一般よりもやや高目であるということです。
 その背景としてありますことは、これは生協がやっておるホームでありまして、したがって、最近NPOの活躍ということがこうした分野でも非常に高く評価され、また、その動きが非常に活発化しつつあるわけでありますけれども、生協が支えておりますがゆえに、ボラバイト、アルバイトとボランティアの折衷のタイプといった方がいいかと思いますが、そういう方々が非常にこの施設の運営にタッチしていただいているということで、そういった面から、いわゆる人件費がそれほど高くならないことに貢献しつつ、人は手厚い配置が可能になっているというようなことが一つの特徴であるなということを見てまいりました。
 それからもう一つは、大変広いオープンスペースでありますので、自然を非常に生かして、緑がふんだんに園内に整備をされておる。かつまた、内装が、木材をフルに活用してありまして、例えば壁なども、普通はかたいコンクリート等で壁ができ上がっておるものが、おがくずを用いて、あるいは板を、木を用いて、内装にふんだんにそういう木材が使われておって、そのことが非常に雰囲気を和らげ、お年寄りの気持ちを和らげるといいましょうか、そういう環境をつくっているといったようなこと。
 それから、ユニットケアでありましたから、これまで私が見たことのない、見てまいりましたものからすると非常に行き届いておるなと。そして、入っておられる方でピアノを弾いておられる方があったり、あるいは、昔とったきねづかでありますが、壁に張りつけたりするものなどをミシンを踏んで自分でつくっておられる。そういったようなことで、大変びっくりいたし、感銘を覚えてまいりました。
山井委員 本当にあそこはすばらしい施設だと思います。私も先日、訪問で勉強に行かせていただきました。
 そこで、私が現場の方から聞いたのは、二対一の職員配置をしている。今の介護保険では三対一が標準になっているわけですが、二対一と上乗せしているというわけですね。要望で聞いたのは、ユニットケアをしていくには三対一では無理だ、やはり二対一ぐらいが必要だということで、あそこは経営はとんとんです、だから、もうからないわけですよね、それだけ人手を厚くして。これで介護報酬を下げたら、まさに厚生労働省さんが今推奨されているユニットケアを人手を厚くして頑張ろうとしているそういうところが、経営が苦しくなる。それで、手を抜いているところは介護報酬を下げてもそれほど痛くないかもしれない。
 そこで、坂口大臣にお伺いしたいんですが、私は、人手を厚くして例えばユニットケアをやっているところも、人手を四対一ぐらいで少なくしてケアの質の向上に努めていないところも、一律介護報酬を下げるというのでは、これだったら悪貨が良貨を駆逐することになるんではないかと思うんです。そこで提案なんですけれども、例えば二対一の基準の人手を満たしたらこれだけの介護報酬、二・五対一だったらこれだけと。つまり、人手を厚くしてケアの質をよくしようと思ったところには、やはりプラスアルファする。ケアの質を評価するインセンティブをこの特別養護老人ホームの介護報酬の改定に入れるべきだと思うんです。そうしなければ、人手を減らした施設の方がもうかるということでは悪貨が良貨を駆逐することになると思います。
 坂口大臣、このような新型特養を要はこれからふやしていこうとおっしゃっておるわけですね、ユニットケアの。ところが、そういうところは人手が十分配置できなくてもうかりにくくしますよというのでは、やっていることに矛盾があると思うんですが、このような人員配置基準によって介護報酬を変えていくべきではないか、この考え方に対して、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 いい介護をしていただくところにインセンティブを働くようにどうしていくかというのは、いろいろの方法もあるんだろうというふうに思います。委員が今御指摘になったようなことも一つのあるいは方法なのかもしれませんが、他の方法もあるというふうに思いますが、その辺、やはりいい介護をしていただくようにしなければいけないわけでありますから、そのための制度というものをどうつくり上げていくか、ひとつ真剣に検討させていただきたいと思います。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
山井委員 まさにそこなんですね。今の制度のままでは、繰り返しになりますけれども、人手を少なくして人件費を安くした方が利益率が上がるんですよ。やはり、そうじゃなくて、頑張ったところにも、少なくとも損はしない形にするよという制度改正にしていただきたいと思います。
 そのケアの質をはかる一つのポイントが、私、この六ページ目の身体拘束だと思います。
 これは、二年前、介護保険が導入されるときに、まさに厚生労働省さんの英断で、身体拘束ゼロ作戦というのを打ち出されました。
 つまり、ベッドにひもで縛ったり、自分で脱げないようなつなぎ寝巻きを着せたり、部屋に閉じ込めたり、さくをつけたり、あるいは車いすにベルトやひもでむやみに固定したり、そういうことというのは、お年寄りの痴呆を悪化させ、身体能力を低下させ、生きる意欲を減退させ、寝たきりで死期を早める最もよくないことだ、そういうことを多用している施設は介護保険の認定を取り消しますよということで、身体拘束ゼロ作戦を始められたわけです。
 しかし、特養ホームを良くする市民の会の本間郁子さんが中心になってやられたこの調査によりますと、ゼロ作戦が始まっているにもかかわらず、八二%の施設が、身体拘束をしていると答えているわけですね。
 私も現場を回ってまいりましたが、例えば、先日行った老人ホームでは、夜間百回もナースコールが鳴っている。三人からナースコールが鳴ったらもうてんてこ舞いになってしまう、二人で走り回っているわけですから。
 あるいは、先日、私は鳩山代表とある特別養護老人ホームへ行きました。厚生労働省の方も一緒に来られました。廊下を歩いていると部屋の中が丸見え、カーテンもありません。そして、その四人部屋のカーテンもないところのベッドサイドで、ポータブルトイレにおばあさんが座って用を足しておられるわけですね。人前でですよ。廊下から見えるところで。
 あるいは、漏れてしまった。それで、昼御飯どきなのでおむつを早くかえてください、ちょっと漏らしてしまったんですけれどもと言ったら、いや、今は昼食どきで忙しいから御飯終わるまでおむつ交換待っといてと。そしたら、おばあさんは、こんなぐちゃぐちゃのおむつで昼御飯食べたくないと泣きそうな顔をされている。
 もちろんこれは個々の施設の問題かもしれませんが、この例に象徴されるように、現場というのは職員さんの数が少なくて大変なんですね。そういう現状で、身体拘束ゼロ作戦も、二年前にスタートしながらほとんど進んでいない中で、介護報酬を一律に下げていくというのでは、私はだめだと思うんです。
 そのあたり、身体拘束ゼロ作戦とかこういうものに対する決意を、一言、やはりこれからも進めていくんだということ、坂口大臣のお言葉をお聞かせ願いたいと思います。
坂口国務大臣 決意は変わっておりませんし、これからもできる限り拘束がないようにしていかなければならないというふうに思っております。
 しかし、これは、言うのは簡単ですけれども、それなりのやはり人の配置も必要でありますし、それから、中の施設そのものも、それにたえ得る施設に少ししないといけないと思うんですね。拘束しなかったけれどもベッドの上から転がり落ちて大腿骨骨折をしたとか、そうしたことは間々あることでありますので、そうしたことがあってはさらにまた寝たきりにしてしまう可能性もあるわけであります。
 したがいまして、ただ拘束をしないというだけではなくて、拘束をしないようにできる、それにたえ得る体制、環境というものをつくり上げていかないといけない。そこをどうしていくかということを、いろいろ現場の知恵もあって、現場も大変御苦労をいただいているというふうに思いますが、しかし、それだけではなかなか追いつかない面もあることも私は事実だと思っております。その点もよく考えていかないといけないと思います。
山井委員 老人介護や医療の現場で、痴呆症のお年寄りがベッドにひもで縛られている姿を私も十年以上前に見まして、それが私の政治を志す原点にもなっています。やはり、このあたりのところ、昨年の予算でも三千万円という広報費ぐらいしか身体拘束ゼロ作戦についていませんので、まさに今大臣おっしゃってくださったように、人員配置もやはり考えねばならない。ということは、そういう拘束をしないために人手を厚くしている施設には報酬はちょっと多くしますよとかというインセンティブが必要だと思います。
 そこで、次の質問に入りますが、問題はこの介護報酬ですね。
 私も介護報酬分科会の傍聴に行かせてもらっていますが、先日、この介護報酬に関して、トータルはどうするんだという議論が出ました。その中で、分科会の会長さんは、まあ、下げるものもあれば上げるものもあるので、そのような気持ちでやってほしいということを発言されたんですけれども、この介護報酬総枠。診療報酬の話にも近いんですけれども、これはトータル、プラス・マイナス・ゼロとか、そういうことは厚生労働省さんとしては決めておられるんですか。いかがですか、坂口大臣。
坂口国務大臣 まだ、介護報酬の問題は議論を始めたところでございますから、これからでございます。
 介護報酬をどうするかというのは、これまたこれで社会に与える影響も非常に大きいわけでありますから、むだなところは倹約をしていただかなければなりませんし、そしてまた必要なところはつけなければなりませんし、その辺を、それが総トータルとしてどうなるかということだろうというふうに思っております。
 今、議論を始めたばかりでございますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
山井委員 まだ報酬は決まっていないと理解しましたが、私が申し上げたいのは、最初に総枠ありきの議論をしてしまいますと、九月から十二月に個々のケアマネジャーさんやホームヘルプや特別養護老人ホームの介護報酬の議論をするときに、ケアマネジャーとホームヘルプを上げる、その財源を出すためには特別養護老人ホームの介護報酬を八%下げないとだめだとか、在宅サービスの介護報酬を上げる財源を捻出するためには同じぐらいの介護保険施設の財源を削らねばならないとか、そんなばかな議論になったらだめだと思うんです。
 まさに今大臣おっしゃったように、個々のサービスに対して、もうかり過ぎている部分があったら減らす、でも必要な部分は厚くする。頑張っている特別養護老人ホームには厚くする、ケアの質に関心がなくて人手を減らしてもうけているところには減らす、やはりそういうことをきっちりやっていかないと。秋の介護報酬の個々の議論のときに、少なくとも、在宅サービスの介護報酬を上げるから、その分は無理やり介護保険施設の介護報酬を下げる、そういう考え方をしてほしくないと思うんですね。
 そのことについて、坂口大臣、改めて答弁をお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 ですから、トータルで今議論をしなければならないというふうに思っておりますが、まあ、上げなきゃならないところは上げるといいますか、見直さなければならないところはこれは見直していかないといけませんので、そうしたところも考えていく。例えば、委員がよく言われておりますように、ケアハウスのあれは夜勤でしたか……(山井委員「グループホームの夜勤ですね」と呼ぶ)そうした問題もございますし、見直すべきところは見直さないといけないというふうに思っておりますが、しかし、節減をしていただかなければならないところは節減もお願いをしなきゃならないというふうに思っております。
 だから、先ほど申しましたように、それがトータルとしてどうなるかということ、これはまだ結論を出しておりませんし、まだ明確でありませんので、若干全体としての額はふえるのかどうかというようなこともこれからでございますので、もう少しお待ちいただきたいと思います。
山井委員 この二年を振り返ってみますと、老人ホームの現場の方は、介護保険が入って経営が大変になったということで、経営コンサルタントの人に頼んだりして、必死に、黒を出すために、人件費を削減してきたのですね。それで、概況調査を見たら、一三%も全国平均でもうけられていた。しまった、ケアの質を切り下げてもうけ過ぎちゃった、やはりこのもうかった部分はケアの質に転換しないとだめだと、特別養護老人ホームの経営者の方々が今思い始めたところなんです。そこを切ってしまうと、本当にケアの質に対するインセンティブがわかないと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 最後になりますが、小泉首相の発言に見られるように、この健保法の審議、本当に人の命がかかっている問題ですので、やはりしっかりと、慎重に、時間をかけて審議をしていただきたいと思います。どうも本日はありがとうございました。
森委員長 次に、金田誠一君。
金田(誠)委員 おはようございます。民主党の金田誠一でございます。医療保険制度の構造改革について、引き続き質問をさせていただきます。
 きょうの第一点目は、社会保険の中の税の役割についてということでございます。
 前回の質問では、時間切れで中途半端になってしまいました。また、必ずしも質問の趣旨に沿った答弁をいただけなかったな、こう思っております。前回に引き続き質問をいたしますが、私の考え方を否定するにしても肯定するにしても、厚生労働省の考え方をぜひ明確にお答えいただきたい、このことをまず御要望申し上げたいと思います。
 世界的に見ても、高齢者医療を独立方式で行っている例はアメリカのメディケアのみであり、その財源は社会保障税でございます。日医がメディケアをモデルにしているとは考えにくいわけでございますが、税による独立方式は、結果としてメディケア並みになる危険性が高いと思います。
 その理由は、第一に、これがエージズムであること、第二に、我が国財政が破綻状態にあること、以上二点でございます。
 財源は消費税の引き上げをもって充てるということを主張されている政党もあるようでございます。しかし、高齢者医療のために消費税の引き上げが本当に可能なのか、仮に引き上げたとしてもどの水準になるのか、財政再建の方が優先されるのではないか。現実的に考えれば、このように、税による独立方式はメディケア並みの貧弱なものになる可能性が高い、こう思いますが、これについて政府参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
大塚政府参考人 税を中心とした財源を中心としたいわゆる独立方式という方式が提案されている一つのパターンでございますけれども、恐らく、具体的にどのように仕組むかというのは、まだいろいろあるのだろうと思います。したがいまして、その仕組み方にもよるとは思いますけれども、基本的には、給付とその財源が見合いませんと医療の確保というのができないわけでございまして、その財源が、必要な給付に見合う財源をどう確保するかということに尽きるのだろうと思います。
 それで、税という場合には、一般的に申しますと、税と給付というのは直接的な関係が保険料に比べると少し遠くなるわけでございますから、一方では、給付の引き上げの圧力の方が強まるという議論がございます。裏を返しますと、もし必要な給付というのが特定できる、あるいは判断できるとすれば、それに見合う財源が確実にあるいは弾力的に確保できなければならないということになるわけでございますから、税を中心とする医療保障制度ということを考える場合には、その財源の確保を確実にかつ弾力的に行えるかということがポイントになろうかと思います。あるいは、それを含めて国民的な合意を得られませんと逆に給付面での制約ということが起こり得るという意味では、その辺を含めた議論が必要だというのが私どもの考え方でございます。
金田(誠)委員 かなり間接的な言い回しでございますけれども、基本的には私の主張を理解いただいているのかなというふうに受けとめさせていただきました。
 前回の質問と今回の質問を通して、社会保険の中における税の役割をどう考えるかについての結論は、以下に述べる三項目が明らかになったと思うわけでございます。
 第一は、高齢者医療制度を税を中心とした独立方式で設計することはエージズムそのものであり、アメリカのメディケア並みになる危険性をはらんでおり、採用すべきではないということが第一点でございます。
 まずこの点、大臣、いかがでしょう。
坂口国務大臣 委員から、きょうで三回でございましょうか、エージズムを中心といたしましたお考えを聞かせていただきました。大変建設的な御意見だというふうに拝聴しているところでございます。確かに、社会保険というものを中心にした制度をつくっていくということでは私も賛成でございまして、御主張をよく理解することができ得ます。
 ただ、若干私が委員と異なっているのかなというふうに思いますのは、私は税の部分も排除していないわけでありまして、そこは、人口構成というものがつり鐘型になっているときならば委員の御指摘でいいのではないかというふうに思いますが、現在のようにすり鉢型になってきている、だんだん高齢者の方が多くなってきているという人口構成の中で、委員の御指摘だけでうまくいくかな、その上の方で大変広がった高齢者の部分については若干税を導入していかなければならないのではないかというのが、その辺が少し違うかなというふうに思っております。
 委員の方からは前回も、その部分のところは、年金との絡みで、年金のあり方を考えて、そして高齢者にも応分の保険料としての負担をしてもらうようにするのが筋だという御意見がございまして、これも私は一つの考え方だというふうに思っているわけでございます。
 ただ、そういうふうに年金でするといたしますと、そうすると今度は年金に対する国庫負担というのをどうするかというまた話になってくるわけでございますので、その辺が順送りになってくるものですから、その辺のところのけじめをつけて、社会保障全体で考えていくという考え方も大変大事で賛成でございますが、その辺も考えながら、トータルで考えていかないといけない。だから、そういう面からいきますと、医療保険は医療保険として、若干の税の支援というのも許されるのではないかと私は思っております。
 そこが委員と私は少し違うのかなというふうに思いながら、しかし、貴重な御意見だと思って聞かせていただいているところでございます。
金田(誠)委員 私が今主張しましたことは、高齢者医療制度を税を中心とした独立方式で設計することは採用すべきでないという点でございます。税を全く入れるなということは申し上げておらないわけでございまして、我が国社会保険制度が、税を一定程度組み入れた非常に特異な形であるということはよく認識をいたしております。しかし、その税にこれからは頼れる時代ではなくなったという前提で、進むべき方向を申し上げているということで御理解いただければと思います。
 この独立方式についての明確なお答えはいただけなかったと思いますけれども、次の質問に入ります。
 結論の第二でございますが、我が国の財政状況を考えれば、今後は、好むと好まざるとにかかわらず、従来のように安易に税に頼ることは不可能ということでございます。もちろん、前回指摘したように、自己負担も引き上げるべきではないというのが私の立場でございます。
 したがって、医療保険財政の三要素である、保険料、税、自己負担の負担割合については、これから新しい制度に移行するに際して、私どもは突き抜け方式、これ以外にないと主張しているわけでございますが、新しい制度への移行に際しては現状の負担割合で移行する、将来的には保険料のウエートが高まらざるを得ない、こう考えております。
 この点、大臣、共通認識になりませんでしょうか。
坂口国務大臣 これから将来の制度を考えていきますときに、前回も申し上げましたが、突き抜け方式にしますとか独立方式にしますとかその他の方式にしますとかそうしたことよりも、まず財源的にどうなのかということを決めることが大事だと私申し上げたと思うんですが、税と保険料と自己負担ということになりました場合に、保険料というのはやはり使用目的がはっきりしていますから、その面では皆さん方も御負担をしていただきやすいと私も思っております。
 ただ、そこには、それはそれでまたいろいろ反対もあったりすることもございますけれども、そういう意味では、やはり保険料というものが中心で行くべきだということでは、私も賛成でございます。
金田(誠)委員 おおむね共通認識に立てたなと思うわけでございます。
 ところが、大臣、今回の提案されている法案は、大臣のおっしゃるようにはなっておらないということでございます。
 保険局からいただいた資料でございますけれども、平成十四年、現行の保険料による負担分、五六・三%でございます。新制度になって、平成十九年度、推計でございますが、保険料は五三・〇%。保険料は五六・三から五三・〇に減るというのが今回の法改正でございます。そして、公費負担。現行二七・〇から、十九年度二九・四。二七・〇%から二九・四%に国費負担がふえる。患者負担も一六・七から一七・七にふえるというのが今回の法改正です。
 言っていることとやっていることと違うから、答弁整理せよとは申しません。これが今の法改正による負担の変化です。私は不可能だと思います、公費の負担割合がふえてくるというのは。恐らくこれから予算査定、シーリングが決まる、そこで圧縮される。最終、年末の査定で決まる、また圧縮されるのではないでしょうか。必要な公費負担がそこで確保されるということは担保できますか。できなければ、また帳じり合わせをせざるを得ない、今回のように。そうなる仕組みです。
 あえて答弁は求めませんが、矛盾に満ちた提案を今されているということを強く指摘して、次の質問に入ります。
 結論の第三でございますが、私は、税の役割が、税の割合が相対的に低下せざるを得ないというのが客観的な状況だと思います。しかし推計では、税が高まるという推計、これは間違っていると思いますけれども。状況としては、税の割合が相対的に低下せざるを得ない状況下で、税を投入する根拠を明確にする必要がある、こう考えております。
 例えば、突き抜け方式とリスク構造調整、私どもが主張している新しい形に踏み切った場合に、税の果たす役割としては、一つは高齢者、失業者の事業主負担分、二つは自営業者の保険となる国保の事業主負担分、三つ目は特定の低所得者に対する保険料あるいは自己負担の軽減分などが考えられる、こう思っておりますが、いずれにせよ、税を投入する根拠は、これとこれに着目して、こういう根拠でこの分は税だということを、私は今すぐやれとは言いませんが、今後の流れの中で絞り込んでいって明確にしていく。そういう形をとるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど少し議論をさせていただきました中で、私の方から、若干委員との意見が違うのかなというのは、税の部分を導入することを私は許容しているということを申しました。委員の方もそこは排除はしていない、こういうお話でございましたが、そこが若干、税に頼る度合いというもの、考え方というのが委員と私とは少し違うのかなという気がいたします。
 そこは、これだけ急速に高齢化が進みますと、保険を中心にしながらも、しかし、高齢者の部分についてはある程度税でお願いをする以外にないというふうに思っております。
 保険は、一番中心は、何と申しましても、リスクをどう分散していくか。それには年齢的なリスクの分散もあると思いますし、同世代の分散もあるというふうに思いますが、しかし、人口構成が非常に極端になりましたときにはそのリスクの分散の範囲を若干超えてくる、そこにつきましてはやはり税の導入というのはやむを得ないと私は考えております。その辺のところが少し委員とのお話の違いかというふうに思います。
 税を導入するときにはそれなりの理由が要る、それは御指摘のとおりだと思いますし、そこは私たちも、こういう理由で税を導入するということは明確にしていかなければならないというふうに思っております。
金田(誠)委員 どうもうまく私の主張が受けとめられていないのかなと、ちょっと歯がゆさ、もどかしさを感じながらおります。
 私は、新しい制度には、現状の税、保険料、自己負担を、現状の負担割合で移行せざるを得ないということを申し上げております。税を否定しているなんということは全くございません。しかし、今後の財政事情等を考えれば保険料にウエートを置いた形で制度設計をせざるを得ないということを申し上げているわけでして、その辺ちょっともどかしさを感じながら、しかし、税投入の根拠は明確にするべきである、この点については合意をいただいた、こう受けとめさせていただきました。
 この項目、前回からの引き続き分はこれで終了させていただきまして、今まで、実はきょうで四回目になるわけなんでございますけれども、それらを全部まとめてもう一回、私、レビューしてみたい。おさらいをしながら、大臣に、端的にどうなんだということでお尋ねをしたい、こう思っております。ちょっと長い総括といいますか、今まで言ったことをなるべく短くまとめてダイジェストにいたしますので、ちょっと聞いていただければと思います。
 これまでの質問を通して、七つの柱を立てて具体的な提案をしながら質問を展開してまいりました。それは、第一は、いわゆる突き抜け方式、継続加入方式の採用でございます。第二は、保険者間のリスク構造調整の導入。第三は、マネージドコンペティションの導入。第四は、保険者の再編成と民営化。第五は、患者の自己負担のあり方。第六は、その中でもとりわけ高齢者の患者自己負担のあり方。そして第七は、今質問が終わりました社会保険の中の税の役割ということで、七項目の柱を立てて質問してまいりました。
 そして、これらの項目を貫く制度設計は社会保険方式を中心とすること、理念としてはエージズムの排除を貫くことを主張してまいりました。しかし、まともにかみ合う答弁が必ずしもされなかったなという思いで、その点は残念でございます。
 多少角度を変えながらもう一回おさらいをしますと、今日、医療保険制度の抜本改革が叫ばれているのは、今日の制度はサステーナブルではない、持続可能な制度ではないということでございます。
 それでは、なぜ持続可能でないのか。その最大の理由は、高騰を続ける老人医療費とそれを賄うための老人保健拠出金にあります。老人医療費の高騰と老人保健拠出金、この二つの原因により、現行制度は持続可能性を失い、破綻の危機に瀕しております。
 そこで、まず一つ目の問題、なぜ老人医療費は高騰を続けるのか。
 高齢者の増加ということを別にして考えれば、最大の理由は、高齢者の医療費を適正にコントロールしようとする主体が存在しない。具体的には、老人保健制度には保険者が不在であるということでございます。
 したがって、老人医療費の高騰に対処するためには、保険者を明確にして、保険者機能を発揮させなければならない。このことは、老人医療費のみならず、医療費全般についても同じことが言えるわけでございます。
 次に、二つ目の問題、なぜ老人保健拠出金制度が設けられたのか。
 この原因は、被用者保険をリタイアした高齢者は原則として国保の被保険者とされるという現行制度の欠陥にあります。
 高齢者が国保に集中するという制度のもとでは、国保は必然的に破綻することになります。そこで、それを回避するための財政調整の制度として、拠出金方式による老人保健制度が創設をされたわけでございます。しかし、高齢者が国保に集中する仕組みそれ自体を放置した老人保健制度は、びほう策にすぎません。高齢化の進展とともに持続可能性を喪失したのは、当然のことでございます。
 そもそも、高齢者を国保という特定の保険集団に集中させること自体が、再三指摘しているエージズムでございます。そして、そのびほう策として導入された老人保健制度もまた、エージズムの中の発想にすぎません。本来の解決策は、高齢者を国保に集中させるというエージズムを脱することを抜きにしてはあり得ないと私は考えます。
 さて、以上のように現状を分析すれば、解決策はおのずから明らかになります。
 それは、第一に、高齢者が国保に集中する現行制度の構造改革でございます。それは、いわゆる突き抜け方式、継続加入方式の採用以外にはあり得ません。高齢者のみを対象とした、税を中心に賄ういわゆる独立方式は、国保の欠陥を新たな制度の欠陥に移しかえるものにすぎません。
 第二に、分立した保険者間において、被保険者の負担の公平と、保険者間の競争条件の公正を期するために、リスク構造調整が必要となります。これは、社会保険方式を採用する場合の常識であって、社会保険方式をとるすべての国において何らかの形で導入されております。
 第三に、老人医療費のみならず、医療費全般の高騰に対し、その適正化を期するためには、社会保険という管理された枠内における競争原理の導入、すなわちマネージドコンペティションの仕組みが必要となります。
 第四としては、以上一から三までを担う保険者機能を確立するには、保険者の数を十分の一程度に再編成し、さらに、すべての保険者の組合健保化を中心とした民営化が不可欠となります。
 第五としては、患者自己負担のあり方については、患者と医療提供側の双方にとってモラルハザードを防止するレベルで十分であると考えます。具体的には、ドイツ並みの、総医療費の六%程度のレベルが考えられます。
 第六に、とりわけ高齢者の自己負担のあり方については、エージズムを排除するという観点から、現役世代も同一の負担割合とし、それはドイツ並みのレベルが限界だと私は考えます。そして、その負担を求める条件としては、最低保障年金の制度化がセットされるべきだと考えます。
 最後の第七は、社会保険の中の税の役割について、高齢者医療を税を中心とした独立方式で設計することは、エージズムそのものであり、採用すべきではありません。また、新制度への移行に当たっては、保険料、税、自己負担の負担割合は、現状の負担割合で移行し、将来的には保険料の割合が高まらざるを得ないと考えます。
 以上が、過去三回と今回、計四回の質問によって私が主張してきた医療保険制度の構造改革の内容でございます。私ども民主党、党としてもほぼ同様の内容を提案しているところでございます。
 これに対して、大臣、どうお考えになりますでしょうか。これが私の考え方ですが、否定されても肯定されても構いませんが、ここはどうだ、この部分は問題だ、この部分はそのとおりだということで、ぜひ端的にお答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 大演説をしていただきましたので、すべてが私の頭の中に入っているわけではございません。
 しかし、過去三回、四回でございましたでしょうか、エージズムを中心といたしました議論を展開していただいて、最初にも申しましたとおり、大変建設的な御意見であったというふうに拝聴いたしております。その具体的な内容の中身につきましては、御指摘のとおりだというふうに思う点と、そして、いやしかし、そうは言うけれどもそううまくいくかなというふうに思う点と、率直に言って双方入り乱れていると申しますか、そこはひとつお許しをいただきたいというふうに思っております。
 しかし、その中で、保険料を中心にしていくというお考えは、私もそうせざるを得ないのではないかというふうに思っております。ただ、若干、高齢者医療の、非常にいびつになりました人口構成のところを、委員が考えておみえになりますよりも私の方が税に依存をするという度合いが大きいのかなというふうに思いながら、聞かせていただいたところでございます。
 いずれにいたしましても、これから先の新しい方針を決定してそちらに移行をいたしますときに、現在の税、保険料、そして自己負担というものをそのままにして移行をスタートするというお考えは大変貴重な御意見で、私もそうなるだろうというふうに思っております。
 委員は、その後、保険料がさらにふえていくべきだというふうにお考えのようでございます。そこは、お若い皆さん方と高齢者の皆さん方との問題を考えましたときに、保険料をふやしていくということになりますと、委員のお考えは高齢者にも保険料を負担してもらうということですから高齢者も出していただくわけですが、しかし、それにいたしましても、お若い皆さん方に負担をしていただかなければならない保険料がふえることも事実でございます。
 そこをどんどんふやしていくということになりますと、例えば西ドイツ並みの一五%とか一六%というふうに日本の保険料をふやしていくということになりますと、全体の国民負担率がかなり上がっていくことになりますが、そのことに合意が果たして得られるかどうかという心配も率直に言って私はございます。そういう意味で、委員がおっしゃるほど私の頭の中は割り切れておりません。割り切れておりませんが、おっしゃる趣旨は十分にわかっておりますし、それも一つの選択肢かなというふうには、率直に言ってそう思っております。
 それから、いろいろなことを御指摘いただきましたので全部はわかりませんが、例えばマネージドコンペティションを導入するというお話でございますとか、あるいはまた保険者数を十分の一ぐらいに再編していくべきだというような御意見につきましては、一つの目標値として、競争はもちろんできる体制にし、そして保険者のあり方というものも、今までのような形ではなくて、これからもっと保険者の機能というものを高めていかなければならないのもそのとおりというふうに思いますし、それから、十分の一ぐらいに再編をするというお考えも大変貴重な御意見だというふうに私は思っている次第でございます。
 そのほか、モラルハザードのお話もございましたし、これも大変参考になるというふうに思っておりますが、最後に委員もまとめて言っていただきましたので私もまとめて申し上げなければならないというふうに思うんですが、全体として委員のお考えになっていることと私が考えておりますことは、若干、委員のお考えになっていることを少し修正をした形ぐらいなところを私は考えているという気がいたします。
 そのぐらいでお許しいただけますか。
金田(誠)委員 結構です。
 最後のまとめで納得すべきなのかなと思ってお聞きをしておりましたが、ところで大臣、今回のこの国会は、健保法の改正は、そういう議論をする場であったわけでございます。差し当たって二、三年どうするかという議論をする場ではなかったはずだ。それが、大臣のそのお考えというものが法案という形では出てきておらない。すべて附則で先送りということは、甚だ遺憾でございます。
 今は、大臣のおっしゃるところと私の申し上げたところと一〇〇%同じにしろとは申し上げませんけれども、そういう構造改革、抜本改革の議論をするべき場であったはずだ。そうでないこの法案については、この際撤回をしていただくか、あるいは廃案という処理をした上で、新たにお考えをいただきたいということを強く申し上げるところでございます。
 次に、健康増進法の方に入らせていただきます。
 まず、本法案を提出するこの体制についてでございます。
 今日、我が国における国民の健康状態は極めて深刻な状態にあると考えます。周囲を見渡しただけでも、大半の人は、日常的に疲れている、生活は不規則なものとなっている、適度な運動が必要とわかっていてもなかなか実行に踏み切れない、日常的に何らかの薬を常用している、病気という状況ではなくても体力の衰えは著しい、心の病も増加している、こういう状況にあります。こうした状況は決して私の周囲だけに限られたものではないと思います。WTOの推定による健康寿命は我が国は世界一とされておりますが、こうした状況が続けば急激に悪化するのではないかと憂慮されます。現状をこのように認識すれば、国民の健康増進は緊急かつ重大な課題であります。
 にもかかわらず、今回提出されている法案は、事の重大性を全く理解していない小手先の法案であり、あってもなくてもいいような法案であると言わざるを得ません。事の重大性を理解すれば、健康増進法を所管する省庁の体制は、旧厚生省とともに文部科学省の役割は重大であり、加えて旧労働省、環境省、農林水産省など、各省庁が連携して総力を挙げなければなりません。
 ここで政府参考人に質問することになっておりましたが、時間の関係で割愛をさせていただいて、大臣、本来、こういう省庁横断的な体制を整備すべきと私は考えますが、いかがでしょうか。例えば第七条「基本方針」という条項がありますが、ここでは基本方針は厚生労働大臣が定めるとなっておりますけれども、そうではなくて内閣が定めるべきものではないか、そのぐらいのものではないかと思いますが、いかがでしょう。
坂口国務大臣 この健康増進という問題が、厚生労働省の中だけに限るものではなくて各省にまたがる問題であるということは、もうこれは御指摘のとおりというふうに私も思っております。しかし、どこがそれを束ねるかという話になるんだろうというふうに思っておりまして、厚生労働省でそれを束ねるということにしているわけでございますが、本来なら総理のところで束ねてもらうというのも一つの方法は方法だと思うんです。しかし、そうなりますと、そこにさまざまな問題がまた各省庁から出てくるということもありまして、これはクリアカットになりにくいという側面も率直に言ってあるわけでございます。
 さまざまな問題に今直面をいたしておりますが、総理のところでまとめてもらうということになりますと、各省庁からのいろいろの意見があるものですから、クリアカットになりにくいなということも、率直にそう思っておりまして、そうした意味では、厚生労働省がまとめるというふうにいたしましても、それは厚生労働省の中で自分たちの考え方だけでまとめるのではなくて、省庁横断的にさまざまな意見を十分に取り入れた形でまとめ得るかどうかという、この厚生労働省の能力にかかわる問題ではないかというふうに私は思っております。
金田(誠)委員 どこが取りまとめるかということで、大臣のおっしゃるようなまとめ役を厚生労働省がやるというのであれば、私はそれなりに理解をいたします。しかし、今回の法案を見てみますと、そういう仕組みにさえなっておらない。厚生労働省の中の一局だけの仕事に健康増進というものを矮小化しよう、こういう法律ではないでしょうか。そこを指摘しているところでございます。
 基本計画、基本方針にしても、そういう観点からすれば、どこが束ねるかは別にして、厚生労働大臣が決めるというようなレベルの話ではなくて、まず大気汚染から何からの環境問題、あるいは学校教育、社会教育を通しての教育問題、そういうものが力をそれぞれ寄せ合ってやるべきものだということを指摘しておきたいと思います。
 次に、栄養改善法との関連についてでございます。
 本法案は、健康増進法とはいうものの、その大半は栄養改善法の引き写しでございます。第一章から第八章まであるうち、全く新しいものは第二章「基本方針等」のみだと思います。
 しかし、今日、健康増進の第一の課題は、栄養改善もさることながら、生活習慣病対策ではないでしょうか。また、栄養改善法の引き写しの部分についても、戦後間もなくは有効であったとしても、今日では時代おくれになっている部分までそのまま引き継がれております。健康増進法というならば、発想の転換が必要でございます。あわせて、栄養改善法の引き継ぎ部分も全面的な見直しが求められております。
 こうした観点から、しっかりした法律をつくるために、本法案は一たん取り下げをして再提出すべきと思いますが、大臣、いかがでしょう。
坂口国務大臣 生活習慣病が中心だというお考えも、そのとおりというふうに思っております。
 これからの健康問題を考えましたときに、今までの旧世紀の病気というのはだんだん少なくなってまいりまして、日々の生活の積み重ねによって起こりますところの病気が主体を占めていることも事実でございます。したがって、これからの健康増進というものを考えましたときには、生活習慣病なるものを中心にして考えていかなければならないというふうに思いますし、そういう意味で、今回も生活習慣病というものを中心に取り上げているということでございます。
 ただ、私もこの法律ができます途中でいろいろ意見を聞いたわけでございますし、私も意見を言ったわけでございますが、生活習慣病を取り除いていくというのは、確かに厚生労働省の中だけの話ではございません。ございませんが、法律としてこれをつくり上げるというのはなかなか難しい面があって、生活習慣病を取り除くのには、それぞれの人の個々の努力というものを、どうこれを醸成していくと申しますか、引き上げていくと申しますか、そうしたことをどのようにするかということにかかってくるものでございますから、一つの法律としてつくり上げるというのにはなかなか難しい、なかなかなじみにくい材料であるということも私は率直に感じたところでございます。
 しかし、健康増進のためにはこれから生活習慣病なるものを主体にして考えていかなければならないということは、御指摘のとおりと思っております。
金田(誠)委員 そうであれば、法律の中身はもう栄養改善法なわけですね。それも、戦後の栄養不足の時代につくられた法律そのままの部分が大半です。これはぜひひとつ撤回していただいて、確かに大臣おっしゃるように簡単ではありません、文部科学省から、環境省から、農水省から、あるいは国土交通省、シックハウスとかいろいろなことがあると思いますが、そういう総力を結集して、我が国の生活の構造改革、生活の姿を構造改革していく、こういう姿勢で取り組んでいただきたい。小手先の、どこかの業界団体とか、何かの資格者団体の背景みたいなことのレベルで考えてほしくないな、こう思います。
 次に、健康増進に係る基本理念ということで質問をする前に、時間がちょっと押してきましたので二つ三つ飛ばします。恐縮です。飛ばしまして、せっかく警察庁からおいでをいただいていますから、そちらの方の受動喫煙の防止についてを先にやらせていただいて、残った時間があればほかの部分に入らせていただきます。
 第二十五条には受動喫煙の防止に関する努力規定がございます。努力規定では不十分だと思いますが、ないよりはましだ、こう受けとめます。
 しかし、そのほかにも、未成年者の喫煙禁止、あるいは成年者の喫煙の抑制という課題も同時にあるわけでございます。これに対する対策も必要だと思いますが、このことについていかが考えますでしょうか、大臣。
宮路副大臣 たばこ対策につきましては、委員御案内のように、平成十二年から、厚生労働省として、健康日本21の中でいろいろな項目を取り上げて推進をいたしておるわけであります。
 特に、喫煙が健康に及ぼす影響についての知識の普及、そこが大切でありますので、それを柱としながら、未成年者の喫煙の根絶、あるいは分煙の徹底等々であるわけでありまして、今回の健康増進法は、基本的には、今申し上げた健康日本21のこうした運動をいわば法制化するということであります。
 そこで、未成年者の喫煙防止については、もう既に禁止規定が委員御案内のように未成年者喫煙禁止法で定められているところでありまして、健康増進法におきましても、正しい知識の普及等の規定に基づいて、その防止にさらに取り組んでいきたい、このように考えております。
 また、成人の喫煙抑制につきましては、さまざまな規制のあり方についての御意見が御案内のようにあるわけでありまして……(発言する者あり)今、規制緩和という御意見が突然出てまいりましたけれども、そういったようにさまざまな意見があるわけでありますので、そういう中で、直ちにこれを喫煙抑制という形でこの法案で示していくということはなかなか容易じゃないなと。今申し上げた知識の普及をまずは徹底して図って、そういう環境が醸成されていく中で、将来的にこれは考えていくべきテーマじゃないかなというふうに考えておるところでありますので、御理解をいただきたいと思います。
金田(誠)委員 いかにも歯切れの悪い御答弁をお聞きいたしましたが、今の答弁にありましたように、未成年者喫煙禁止法という法律があります。明治三十三年の片仮名の法律でございます。未成年者飲酒禁止法というのがあります。大正十一年、これも片仮名法律でございます。
 昨年、両法律の罰則が強化されて、罰金二万円から五十万円になったというのがありますが、本質的にはもう時代おくれの法律であると考えます。この法律は十分機能していない、こう考えますが、大臣、警察庁、それぞれお答えをいただきたいと思います。
宮路副大臣 これは、所管としては、この法律は委員御承知のように警察庁の所管しておる法律なんでありますが、先ほど御指摘があったように、平成十二年には罰則が強化をされまして、未成年者の喫煙あるいは飲酒についてさらに本腰を入れて取り組んでいくということになりましたし、また十三年には、販売者が年齢の確認等の必要な措置を講ずるものとする旨の条文が追加されるという形での法改正、これはいずれも議員立法でありますが、そうした措置がとられているところであります。
 関係業界に対しましても、先般はたばこの問題でこの場で議論がありましたが、お酒についても、たばこと同様の関係業界に対する年齢確認等の徹底の要請を関係省庁一体として行わせていただいているところでありまして、そういうぐあいに、徐々に効果的なものとなるように法制の充実も期されているわけであります。
 そういう意味で、こうした法の精神をさらにしっかりと酌んで、私ども、一層の努力を傾けてまいりたい、このように思っております。
黒澤政府参考人 未成年者の飲酒、喫煙でございますけれども、重大な非行の前兆となり得る不良行為でありますとともに、未成年者にたばこや酒類を販売等する行為は、その健全育成を阻害する悪質な行為であると私ども認識しておりまして、平成十三年中の数字でございますが、未成年者喫煙禁止法違反及び未成年者飲酒禁止法違反によりまして百六十五人を検挙いたしております。また、平成十三年中でございますが、不良行為少年の補導人員でございますが、喫煙によるものが四十三万七千九百八十八人、飲酒によるものが三万五百七十七人となっております。
 警察におきましては、このように、検挙、補導に力を入れておりますほか、二年連続して行われました法改正の趣旨等を踏まえまして、総合的な未成年者飲酒・喫煙防止対策を、関係省庁とも連携いたしまして、鋭意推進をいたしているところでございます。
金田(誠)委員 この法律は十分機能していないと考えるがどうかという質問をしたわけですよね。今の答弁では、これこれこうなっていますとは言ったけれども、十分機能しているか否かということについては答弁がされていなかったなと。とても答えられる状態ではないんだな、こう受けとめさせていただきました。
 警察庁の答弁でも、非行、不良行為、健全育成、こういう観点からやっていますよという答弁でした。厚生労働省は、別に、非行、不良、健全育成ではなくて、健康増進、健康被害の防止という観点からこれはやるべきものであって、本来、立法趣旨が、明治、大正の話ですから、違うわけですよ。当時、がんがたばこから起こるなんてだれもわかっていない。がんという病気自体も明治にわかっていたかどうかわからない程度の話でしょう。したがって、これは時代おくれで十分に機能していないと考えるがどうかと言ったら、そのとおりですと厚生省からは答弁欲しかったなというふうに思います。
 次の質問に入りますが、この両法律ともに、「年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス」という規定が、これは新たに入ったんですね。年齢の確認その他必要なる措置を講ずる、たばこの方もお酒の方もこういう規定がある。
 しかし、自販機の場合、たばこにしても酒にしても、年齢の確認は一般には困難ではないか。たまたまそこで買っているのを見かければ確認できるかもしれませんが、本来、店の外にあって、人がついていなくてもいいために自販機というのはあるということからしますと、年齢の確認その他必要なる措置を講ずるものとするという規定に対して、自販機というのは本来認められるべきではないんではないかな、こう思いますが、警察庁、いかがでしょう。
黒澤政府参考人 御指摘の自動販売機でございますけれども、例えば、未成年者喫煙防止の観点から十分な管理監督が期しがたいと認められるような場合には、関係省庁とも連携をいたしまして、たばこ自動販売機の撤去または設置場所の変更等につきまして関係業界への指導、要請等を行っておるところでございます。
 なお、取り締まりに関しましては、この法律の構成要件である、未成年者の用に供することを知りて販売等をしたかどうかによるものでありまして、年齢確認その他の必要な措置を講じているかどうかは違反の成立とは無関係であると考えておるところでございます。
金田(誠)委員 何か難しい答弁だったんで、ちょっと再確認しますが、「年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス」こうなっているわけですが、自販機の場合は年齢の確認はできますか、一般に。たまたまできることはあるかもしれませんが、一般には自販機というものは年齢の確認はできないのではないかと思いますが、端的にお答えを。
黒澤政府参考人 今、例えばということで申し上げましたが、十分な管理監督が期しがたいと認められる自動販売機、自動販売機の設置場所が店舗に併設されていない場所、全く監視ができないようなそういう場所など、製造たばこの販売について、そういう場合には、管理監督が期しがたいと認められるそういう自動販売機については、撤去でありますとか移設であるとかそういうような、移設をして、今度は管理できる、見られる、監視できる、そういったところであれば、自動販売機の利用者を直接あるいは容易に視認できるような場所に設置をする。
 そういうようなことで、なかなか自動販売機は一般的には年齢確認というのが難しいという御指摘はございますけれども、今申し上げましたような対応をすれば年齢の確認もできるというようなことで、関係省庁が連携をいたしまして、自動販売機の撤去または設置場所の変更というようなことを関係業界に指導、要請をいたしておるところでございます。
金田(誠)委員 これまた歯切れの悪い御答弁だったなと思うわけでございますが、本来、大臣、たばこの規制に関する法律のあり方、これは、非行防止とかなんとかということもさることながら、第一義的には、やはり健康被害の防止という観点からなされるべきではないでしょうか。そういう観点から、今、健康増進法には受動喫煙の防止が規定をされたわけですね。
 しかし、喫煙習慣というのは、子供のときに非常に大事な要素になるわけです。成長にも非常に悪い影響を及ぼす。青少年の喫煙禁止法、これも、健康被害の防止という観点から厚生労働省がきちんと所管をする。あるいは成人についても、これはもう、諸外国では非常に強力にその啓発活動等をやっているわけですよ。そういうことからして、本来、たばこの規制に関する法律のあり方としては、健康被害の防止という観点から、この健康増進法も、青少年喫煙禁止法も、これらを一本化して一つの法律にして、未成年者の喫煙禁止、成年者の喫煙の抑制、そして受動喫煙の防止、こういうものを一緒にして、この三点を盛り込んだ法律にするべきである、これが筋ではないか、こう考えます。
 同じく飲酒についても、健康被害の防止という観点から新法を制定すべきである、こう考えるわけでございますが、大臣、警察庁、それぞれお答えをいただきたいと思います。
黒澤政府参考人 ただいま委員が御指摘になられました考え方も含めまして、いろいろな考え方があろうかと存じますが、警察といたしましては、先ほど委員も御指摘されておられましたけれども、未成年者喫煙禁止法、それから酒の方もそうでございますけれども、少年の健全育成を図り、その福祉を守ることを目的としたものと認識しておりまして、この法律の積極的かつ効果的な運用を行いますとともに、今後とも関係省庁と連携をいたしまして、広報啓発等総合的な諸対策に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
坂口国務大臣 たばこその他につきまして、何が一番大事かということでいえば、委員が指摘されましたように、健康被害というものが一番中心であって、そこを中心に考えなければならないということは御指摘のとおりと私は思います。
金田(誠)委員 これは、厚生労働大臣、今警察庁が所管している法律がある、健康増進法に受動喫煙だけを盛り込んだ、こういうばらばらな、片や健康被害の防止という観点はないという法律なわけですけれども、これはやはり、国民の健康を所管するんだ、束ね役になるんだと冒頭おっしゃった大臣として、あるいは健康保険法についても、今、医療費の抑制ということが大課題になっている、それを所管する大臣として、もう一歩踏み込めませんか。閣議等で提起をして、これについては、一本化した法律をそれこそ厚生労働省主体になってつくるという決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 何もかも厚生労働省がしょい込んではいけないという話を先ほど聞いたところでございますので、私も慎重に言わざるを得ませんけれども、警察庁ともよく相談をさせていただいて、新しい時代の新しい角度から、子供たちをどう守っていくかという立場で、健康を中心にしながら新しい方法を探っていく。早速いろいろと議論をさせていただきたいと思います。
金田(誠)委員 明治と大正の法律で、「朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル未成年者」云々なんていう法律がまだ残っていること自体がもう恥ずかしい話ですから、早急にひとつ取り組んでいただきたいと思います。
 時間が多少まだあるようですから、最後の質問、一点だけさせていただきます。
 独立行政法人国立健康・栄養研究所の扱いについてでございます。
 法案には、国民健康・栄養調査の実施について、独立行政法人国立健康・栄養研究所にその事務を行わせることができる、これは第十条にあります。また、第二十六条には、特別用途表示の許可を行うについて必要な試験を、同じくこの独立行政法人に行わせるものとする、こっちは「ものとする。」とあります。
 法律でこのように特定する理由は何なのか、政府参考人に伺いますし、この規定は削除して、他の民間調査機関等にも門戸を開放して、その中で自由に参入して競争していただく。これは今までの大きな流れとしてそういう方向に行っていたと思うんですが、ここにまた新たに法律にうたわれるというのは本当に不本意でございますので、その点、この部分の削除ということを要求いたします。御答弁をいただきます。
下田政府参考人 御指摘の国民健康・栄養調査につきましては、国民の健康の増進の総合的な推進を図るという観点から極めて重要な基礎資料となるわけでありまして、また、食品の特別用途表示の許可に関する必要な試験は、当該許可の判断根拠となるものでございます。いずれも、国民の健康を守る観点から、高い信頼性が求められるものというふうに考えております。
 この業務は、御指摘の独立行政法人が、その前身の国立試験研究機関の時代から一貫して実施するとともに、必要な技術的な検討を重ね、科学的な知見の蓄積を行ってきているわけでございます。
 この研究所にこれらの業務を行わせることは、医学、栄養学等の専門的な知見に基づく高い信頼性を確保するという観点からも非常に意義が大きいものでございまして、健康増進法案におきましてもその規定を引き継いでいるということにさせていただいておるところでございます。
金田(誠)委員 この研究所、そういう能力を備えているという説明はわかりました。しかし、その他の研究所等はその能力がないんだ、ここしかないんだという理由はありますか。
下田政府参考人 繰り重ねてお答えして大変申しわけございませんが、やはりこうした国の健康・栄養調査あるいは特別用途表示の許可に関するものについては、極めて国民の健康上に与える影響が大きいということから、専門的知見に基づく高い信頼性が確保される必要がある。しかも、途中でやめたりするわけにはまいりませんので、確実に実施される必要がある。また、一つの主体で行われた方が効率的である。そういった観点から、独立行政法人国立健康・栄養研究所で引き続き行われることになったわけであります。
 しかしながら、委員御指摘のそこでだけかというお話につきましては、国民の健康や栄養といった分野ではさまざまな研究があり得るというふうに考えておりまして、そういった研究あるいは調査等々につきましては積極的にやっていただく。また、厚生労働省としても、研究費等を通じまして支援をしてまいりたい、このように考えているところでございます。
金田(誠)委員 納得できませんので、この独立行政法人のみがこの業務にたえ得るということを示す客観的な資料を提出していただきたい。委員長にお願いいたします。
森委員長 政府においてお取り計らいください。
下田政府参考人 資料を提出させていただきます。
金田(誠)委員 時間が参りましたので、あとの質問は次回に回して、今回は終わります。
森委員長 次に、三井辨雄君。
三井委員 民主党・無所属クラブの三井辨雄でございます。
 これまで健保法についてはいろいろ毎回議論されてきましたが、きのうの六人の参考人が、それぞれ御意見をいただいております。
 その際、自由党の佐藤公治議員から、今回の健保法改正について、四つの選択肢の中で、参考人六人の方にそれぞれお聞きしました。一番目として、絶対賛成か。二番目として、いろいろな問題点があるが今回は認める、条件つき賛成でございますね。それから、問題あり、反対だが議論は続けるべきだ。そして四番目に、絶対反対。
 参考人六人のうち、三人の方が二番目の条件つき賛成である、あとお三方は絶対反対だ。きのう、そういう中で意見が分かれたわけでございますが、しかし、医師会の、私は地元で聞きますと、八割の方は、皆さん反対なんですね。
 そして、先ほど山井議員からもサンデープロジェクトの電話調査がありましたように、重要法案四つのうちの健保法は、賛成というのは全く少ないんですね。一番少ないんですね、四法案のうち。それからまた反対が、これは圧倒的に多い、五七・八%というんですね。
 どうしてもこの法案について、先般もいろいろな議員からお話がございましたが、私も地元へ帰っていろいろ言われるんですが、大変な経済悪化の中で、全く先が見えない、きのうのNHKのアンケートにもございました。この先平成十六年以降景気がよくなるのかというアンケートの中で、よくならないという、八割の方がそうお答えになっているんですね。
 その中で、なぜ今三割なのか、どうして今この健保法を改正しなきゃならないのか、抜本的な改革をしてからやるべきではないだろうかということをぜひもう一度、私は、これは坂口大臣に質問通告しておりませんが、この法案をどうしてもお通しになりたい、通すべきなのかということをお答え願いたいと思います。
坂口国務大臣 もう既に何度かここでも御答弁を申し上げておりますが、現在のこの状況を追ってみますと、人口動態一つを見ましても、高齢化というのはどんどんと進んでまいりました。高齢化、一時待ってくれといったって、これは待ってくれません。もう、経済動向がどうであろうとこうであろうと高齢化は進んでいくわけであります。
 高齢化が進んでいきましたときに、それじゃ、それを一体どうしていくか。そうすると、医療費は、今までの経過から見ましてもわかっておりますとおり、高齢化が進むほど医療費は拡大をしてきている。大体年間七、八%、高齢者の医療費の増加は拡大をしている。その中で、少なくとも半分は高齢化の人口、高齢化によって高齢者がふえた分によるものが約四%、そしてその他が四%、大体このぐらいな比率でございます。高齢化が進みますものだけを見ましても四%進んでいくわけでありますから、これはどうしても、これから先の医療費を考えましたときに、それは、それこそ自己負担をふやしていただくか、あるいは保険料をふやしていただくか、あるいは税で投入をするかという話になってくる。
 一方におきましては、医師会等を初めといたしまして医療機関の皆さん方にも、できる限り節減をしていただくところはお願いをするという以外にないわけでございます。今回、医師会に対しましても節減をお願い申し上げました。特に、今回は、医薬品その他だけではなくて、技術料におきましても引き下げのお願いを申し上げた、初めてのことでございます。
 一方におきまして、保険料、それから自己負担につきましてもお願いをしている。ただし、低所得の皆さん方に対しましては十分な配慮をその中で行いながらやっているということでございまして。このままでいきますと、政管健保はもとよりでございますが、千七百幾つかあります組合健保の中におりましても、七、八割は赤字になってしまうという状況でございます。これをもうこのままで放置できない状況にあるということを御理解いただきたい。
三井委員 大臣、高齢化社会、あるいは政管保を維持していくということをたびたび御答弁なさっていますが、確かに、私は、この健康保険制度というのはいい制度だというぐあいに認識しているわけでございますが、しかし、今御答弁いただきましたようにいろいろな事情はあるけれども、しかし私が疑問に思うのは、やはり、釘宮議員が前回質問なさったときに、なぜ今三割だ、三割をやめる気はありませんかという御質問をしたと思うんです。しかし、私は、きょうはこれ以上申し上げません。(発言する者あり)
 大臣、これは三割をおやめになる気はございませんでしょうか。御答弁お願いします。
坂口国務大臣 先ほど申し上げました理由によりまして我々は法案を提出させていただいております。
三井委員 心の中はお違いだと思いますが、しかし、これ以上攻めますとまた大臣を苦しめることになると思いますので、これ以上質問いたしません。
 それで、先ほど大臣がおっしゃいましたように、いろいろ問題になっております平成十四年度の診療報酬そして薬価改定が行われましたが、厚生労働省、先ほど申し上げましたように、最近やはり経済環境が大変厳しい中で、さらに改革の痛み、公平に分かち合うという観点から申し上げますと、診療報酬の改定というのは、引き下げというのは、今回、過去にあれしましても初めてだと思うんですね。
 いつも議論されていますように、全体の改定率は二・七%、過去においては最大の引き下げであります。しかし、医療現場においては、二・七%どころか、この薬価改定も含めまして約一〇%の報酬のダウンということなんですね。そうしますと、こういう状況下の中で、確かに痛みを分かち合うということはよくわかります。しかし、医療を提供する側、受ける側にとって、よりよい医療を求める上からおいても、私は、診療報酬の改定というのはもう一度再改定をしてほしい、私のところにたくさんこれが来ておりますが、これは見直す気はございませんでしょうか。
    〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
坂口国務大臣 診療報酬の改定につきましてもいろいろの御意見があることを承知いたしております。
 先ほど発言されましたように、二・七%の削減をお願いしたわけでございますが、現状はこの四月からスタートをいたしておりまして、四月から六月まで三カ月間の状況というものを一度拝見させていただきたいというふうに思っております。その状況を踏まえた上で、今後のことにつきまして中医協で御検討をいただきたいというふうに思っているところでございます。
三井委員 また、今日まで約四十七時間ですか、健保法の審議をしてまいりました。診療報酬に特にかかわる問題で、我が党の五島議員からも質問のありましたALSの患者さんの人工呼吸器の例がありますが、難病やあるいは重症患者への配慮がないのではないか、また、これも議論されてきておりますが、長期入院患者の取り扱いに大変問題があるのではなかろうかといったような質問がこの委員会でも随分なされてまいりました。
 この点について再度お伺いしたいと思います。
大塚政府参考人 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、今回の診療報酬改定、医療機関を経営するお立場からすれば、従来にない厳しいものでございましょう。それは私どももよく認識しておりますが、全体としての、医療保険全般の運営という観点から、御理解を賜りたいというふうに考えておるわけでございます。
 その中でも、難病患者あるいは長期入院の方々についての診療報酬上の改定も種々行っておるわけでございますけれども、難病患者の方々につきましては、例えば、その入院割合が一定割合の病棟につきましては加算というような形で措置をしておりましたが、これには入院日数による逓減制がございました。これは今回整理をし、逓減部分を廃止するということで、逓減制をなくする。あるいは、これも御要望が強かったわけですけれども、二カ所の訪問看護ステーションから訪問看護を受けることが従来できなかった、これを拡大するといったような、ぎりぎりの御要望にこたえる工夫はさせていただいておるつもりでございます。
 また、繰り返し御議論ございましたけれども、長期の入院患者の方々、特に長期に入院されておられて医療面からの給付の必要性の低い方々につきまして、いわゆる特定療養費制度を活用した給付の見直しというのを行いました。これも、私ども、医療機関の機能分担、特に介護との機能分担と連携という観点から、従来から議論がありました社会的入院という課題にどう対応するかということに対する一つの答えだと思っておりますが、その一方では、かつては、いわゆる療養病床と言われる病床におきましては、一定期間、これも百八十日でございます、六カ月でございますが、たちますと、自動的にこれまた診療報酬が逓減をするという仕組みがございました、これは一般的にございました。それにつきましては基本的に廃止をいたしまして、いわばフラットな形で診療報酬が支払われるというような見直しを他方では行っているわけでございます。
 全体状況の中で大変厳しい改定であるということは御指摘のとおりでございますが、その範囲の中で、私どもといたしましては、個々の、ただいま申し上げましたような工夫と申しましょうか、配慮と申しましょうか、という点はさせていただいているというつもりでございます。
三井委員 ぜひこれは、今まで何度も議論されておりますし、局長からも御答弁いただいていると思うんですが、本当に、難病の皆さんとかあるいは長期入院の方にもっとやはり配慮をする必要があるのではないか、こういうぐあいに思うところでございます。
 また、今回の健康保険法の附則に診療報酬の体系の見直しを挙げております。今年度中の基本方針策定と言っておられますが、先ほども申し上げましたが、今回のこの改定の反省点あるいは再改定の声を踏まえるならば、基本方針の策定にどのようなお考えがあるのか、またどのようなスケジュールで作業を進めているのか、お聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 診療報酬の改定につきましては、抜本改革の中の大きな一つの柱に考えているわけでございます。
 これからどうしていくかということの詳細につきましては、議論を詰めていくところでございますが、今考えておりますのは、この診療報酬というのは、専門家だけではなくて、多くの皆さん方がごらんになってある程度納得をしていただけるものでなければなりません。非常に複雑になっておりますので、その基準というもの、基準を明確にしていかなければならないというふうに思っております。それが二つなのか三つなのか、そうした基準を明確にいたしまして、御理解を得られやすいものにしていく必要があるというふうに思っている次第でございます。
三井委員 それでは、今回の診療報酬の改定の中で、先ほど山井議員からも御質問ありましたが、重複するかもしれませんが、手術の施設基準の設定についてということでお尋ねしたいと思います。
 まず、この改定の意図するところ、あるいはその目的を再度御説明いただきたいと思います。
大塚政府参考人 御指摘がございましたように、今回の診療報酬改定で約千四百ほどあるというふうに言われております手術項目、手術の種類のうち、百十項目につきまして、具体的には年間症例数あるいは経験のある医師の常勤配置ということを要件とするというような施設基準というものを設けたわけでございます。
 これは、これまでも、かなり高度な手術につきましては、二十程度でございますけれども、いわゆる施設基準というものがございましたが、これをさらに見直すという形で今回の診療報酬改定で取り入れたものでございます。従来の施設基準と基本的には同様でございますけれども、やはり症例数あるいは経験、広く言えば経験と言うんでございましょう、経験とその成果、つまり医療成績というものは、非常に高い関係がある。
 特に、我が国の場合には、施設によりまして今かなり多様な手術を行うという面も他方ではございますけれども、一施設当たりの手術例数は、もちろん手術の内容にも種類にもよりますけれども、非常にばらつきが大きいというのは指摘のあるところでございまして、一言で取りまとめて申し上げれば、技術の集積を図る、それを通じまして医療の質の向上を図るという観点から、今回の手術に関する施設基準というものを設定したということでございます。
三井委員 確かに、今お聞きしていまして、手術件数と。しかし、今患者さんが一番望むのは、やはり腕のいい病院、そういうところを選びたい、あるいは症例数ですとか経験の多い施設で質の高い手術を受けたいと望むのは、当然、当たり前だと思うわけでございます。先ほど大臣もおっしゃいましたように、病院の機能分化ということでいえば、さらにこの連携は求められていくんではないかと思うわけでございます。特に、扱った症例あるいは手術件数が多ければ確実な医療情報のソースとなり、患者さん自身の判断材料になるということは間違いないと思うんです。
 しかし、今御答弁ございましたように、症例数だけを基準として手術の質が担保されるかのような評価をするというのは、私は疑問があると思うわけでございます。特に、この手術に係る施設基準は何を根拠にして導入されたものか、その導入根拠をお示しいただきたいと思います。
大塚政府参考人 確かに、どういう基準で医療の質なり技術というのを判断する、これは率直に申しますとなかなか難しゅうございます。
 ただ、症例数というのは、やはり諸外国におきましても一つの目安ということになっているわけでございまして、諸外国の研究データなども勘案しながら、現実の判断できる材料といたしましては症例数と医師の経験年数、この二つを導入したわけでございます。
 もとより、これから知見を蓄積するあるいは研究が進むという形で、この二つだけでいいものかどうか、これは今後の課題としてはあり得ると思っておりますけれども、当面する具体的な判断基準としてはこの二つがやはり主要な要素だろうということで、二つの根拠ということで症例数と医師の経験年数、この二つを導入したということでございます。
三井委員 今御答弁いただきましたように、外国の、医療制度が全く違う、そういうデータや論文を根拠としているということには私は無理があるんではないかなと思うんです。
 今、まず、日本には、それぞれ日本の独特な技術あるいはデータ集積というのをやはり客観的に分析する必要があるんじゃないだろうか。今後どのような取り組みをお考えいただくか、ちょっと時間がございませんので、簡潔にお答えください。
大塚政府参考人 今回の診療報酬改定の過程で、さまざまな御議論、専門家の御議論もちょうだいし、あるいは中央社会保険医療協議会での御議論も経て決定したという経過がございますけれども、いずれにいたしましても、さまざまな知見を集積していくということが必要で、それに応じて見直しが必要である、また、その根拠が積み重なってくれば検討すべき課題であるということにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
三井委員 手術に係ることについては御説明いただきました。
 そこで、今回診療報酬の引き下げでございますが、これは医療費の抑制のために、小泉総理が言うところの三方一両損、医療機関にも痛みを分かち合ってもらうということがねらいだったと思うんですね。ですけれども、実際には患者さんへのツケ回しになってしまうんじゃないかといった問題が指摘されております。
 手術を特定の病院だけに集めてしまうと、患者さんへの医療のアクセスが全くなくなってしまうということも、これはもう間違いないと思うんですね。特に、身近な病院で緊急の手術が受けられなくなってしまうということを私は大変心配しているんです。多くの医療機関がある中で、やはり全国一律で基準を適用するには、患者さんの多い都市部以外、地方の病院では満額の報酬を受け取れない病院が出てくると思うんですね。
 そういう中で、やはり経営面を考えれば、手術をしない、もしくは逆に、手術件数をふやすために経験の少ない医師が手術を行う、あるいは医療ミスや医療過誤の多い病院がこの百を達成するためにやってしまうというようなことは、今医療過誤とか医療ミス、これが言われる中で、私は大変心配しているわけでございます。
 特に、外科医は都市部に偏っておりますし、地方に住む患者さんにとっては、むしろ手術移民というか、手術難民となることが強いられてしまうということを大変心配しているところでございます。
 先ほど山井議員も北海道の事例を申し上げておりましたが、例えば心筋梗塞、これは専門医に聞きますと二十分以内が勝負だと言われます、生死を分けると言われておりますけれども、この際の人工心肺を使った手術は年間百例をこなしていないと減額になります。北海道にはこの手術が可能な病院は三十六あるわけでございますけれども、この基準を満たすのは八病院だけで、うち五つの病院は札幌市に集中しているというのが実態なんですね。
 また、全国的に見ても七割も二次医療圏に難しい状況があると言われております。地域によっては、施設基準を満たす病院が一つもない二次医療圏が出てくる可能性もあるわけでございます。
 地域上、どれだけ把握して改定を行ったのか。関係者の意見集約はどのように行われ、また、どこでどう決まったのか。現場の医療従事者の声を聞いたのか。また、これは地方切り捨て、あるいは地方でも助かる患者さんが助からないという、むしろ二次医療の切り捨てになってしまうんではないか。これは厚生労働省の言う方針と全く違う方向に向かっているんではないかと思うわけでございます。むしろ地方軽視という厳しい指摘もございますので、厚生労働省としてお答えいただきたいと思います。
    〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
大塚政府参考人 今回の対象としておる手術は、先ほども申し上げましたけれども、基本的には技術的に難易度が高いもの、全体の約一割弱でございます、それを設定しておりますが、逆に申しますと、骨折に関連する手術でありますとか胃がんの手術でありますとか、比較的一般的に行われているというような手術は除外をしておるわけでございます。もちろんその手術が特殊であれば対象になり得るわけでございますが、やはりもともと手術によっては基本的に症例数がそう多くないものがございます。したがいまして、すべて二次医療圏でぴしゃっと当てはまるかというと、それはもともと対象の手術の性格からいたしまして、そうはまいらないものがございます。
 ただ、もちろん、地域で極端に不適切な事例が出てくる、不適当なケースが出てくるということになりますとよくよく考えなければなりませんけれども、今後、その実態なども、もちろん私どもも把握してまいりますし、実態に応じて、先ほど申しましたように、実態と同時に知見の蓄積もしていきたいと考えております。ただ、今回の技術的難度の高いものを選んだという観点からいたしますと、すべてきれいに二次医療圏に配置される、その医療機関がある、こういう性格ではないという点につきましては御理解を賜りたいと思います。
 また、議論の過程に関する御質問もございました。
 先ほどもちょっと触れましたけれども、施設基準という言葉を使っておりませんけれども、かねて医療技術の集積というのが一つの課題だと言われておりまして、今回に限らず議論は繰り返されてきたわけでございますし、十九種類のものにつきましては、既に今年度以前にそういう整理をされたものもございます。それを踏まえての議論でございました。関係審議会で議論をいただくと同時に、私どもとしては、専門的なお立場からの御意見も御参考にさせていただいた。そういう過程を通じまして今回の整理に至っているわけでございます。
 長くなりまして恐縮でございます。
三井委員 それじゃ、この百の基準を満たす場合に、例えば、あと一件、九十九件しかやっていない。まじめなお医者さんがあと一件どうしてもしなきゃならぬ、しかし、どうしても九十九件しかできなかったといった場合に、これはやはり三〇%削減されるんでしょうか。
大塚政府参考人 一定の症例数という形で水準を決める、基準を決めるということになりますと、その前後といいましょうか、境界線、限界線ではお話しのようなケースが出てまいります。したがいまして、例数に達しない場合には、たとえそれが少数の場合であっても、支払いといたしましては減額と申しますか、所定の金額に七〇%を掛けたものが支払われる、こういうことになるわけでございます。
三井委員 百例のうちの百例を消化しなければならぬというのですね。しかし、ここに何らかの救済措置があっていいのではないかなという気がするんですね。ぜひそれをお考えいただきたいと思います。
 それで、時間がございませんので、地域医療について御質問したかったんですが時間の関係でございますので、せっかくきょうは防衛庁からおいでいただいておりますので、防衛医科大学について御質問したいと思います。大変申しわけございません、医政局長もお見えでございますが、次回に質問させていただきたいと思います。
 防衛庁にお尋ねいたします。
 今、防衛医科大学、防衛医大の存在は、私たちも防衛医大のお医者さんというのは全くわからない、接することがないんですね。そういう中で、毎年約六十名程度の卒業生がおられるわけでございますが、卒業後の研修を積んだ上に、具体的にどのように配属されておるのか。あるいは、ガイダンスによれば、将来の進路として、各自衛隊の病院、その他の診療施設とありますが、この診療施設というのは具体的にどこを指すのか、お答えください。
田中政府参考人 御説明申し上げます。
 防衛医科大学の学生は、卒後、幹部自衛官たる医官として第一線に立って活躍することが求められております。このため、卒業直後には、総合臨床医としての基本的な知識及び技能を研修するため、防衛医科大学それから自衛隊中央病院において二年間の初期研修を実施し、その後、自衛隊中央病院、さらには全国十五カ所の自衛隊の地区病院、あるいは全国各地の陸海空各部隊の医務室等に自衛隊の医官として配置されることになります。
 また、病院や医務室での二年間の勤務を経験した医官には、その後、二年間の専門研修を実施しておりまして、その後、一部の選抜者につきましては、防衛医科大学校医学研究科において研修を経た後、再び全国各地の自衛隊病院あるいは部隊の医務室等に配置されるところでございます。
三井委員 そうしますと、ここにあります診療施設というのは、部隊の医務室ということでございますね。わかりました。
 それで、本来ですと地域医療についてもっと御質問したかったんですが、今過疎地の町で慢性的な医師不足が続いているわけでございます。特に北海道は、年俸七千六百万出しても来てもらえないという町が今あるんです。医師がふえていると言われながらも、過疎地、無医村地区には行ってもらえない、もう大変な状況の中でございますが、そういう中で、この防衛医大の出身者に来てもらえないかという実は話もあるわけでございます。
 今調べてみますと、過去三年間に防衛医大を卒業し、任官を辞退した人はたった一名。しかし、首都圏の民間病院には就職されておるわけでございますね、先ほど十五地区病院とおっしゃっていましたが。そういう中で、防衛医大を卒業後九年間は自衛隊に勤務する義務がある、そして、中途で離職すると最高額五千九十三万の償還金を返済しなきゃならないとされていると実はこの資料を読ませていただきました。
 しかし、現在、有事法制が議論されている中で、この際に、防衛医大の卒業生に医師である幹部自衛官としていろいろな観点から国内の医療に接していただくような意味も含めまして、私は、研修先の一つとして過疎地医療に携わっていただきたい、あるいは無医村地区に研修をしていただければということを御提案申し上げたいと思うんですが、一言、答弁をお願いします。
森委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡単に御答弁ください。
田中政府参考人 御説明申し上げます。
 総合臨床医として研修を終了した後に部隊に配置されることになっておりますけれども、その職務を全うするためには、日進月歩の医学知識の習得に不断の努力が必要でございます。
 このような観点に立って、部隊ニーズを踏まえた上ではございますけれども、技能等を習得し向上させる制度として、全国各地の公的医療機関において、通修と申します独自の生涯研修教育のような制度を私ども実施しておりまして、既に離島あるいは僻地に位置します自衛隊部隊の所属の一部の医官につきましては、部隊周辺の僻地の病院あるいは診療所において僻地医療の研修を実施しているところでございます。
三井委員 どうもありがとうございました。
森委員長 次に、水島広子君。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 本日もまた質問をさせていただきます。
 私は、この審議を通しまして、ずっと、医療の信頼性についてさまざまな点から大臣の御意見を伺ってまいりました。そして、医療、医学の信頼性というのは、何も生きている間の医療についてのみ問われるものではございません。本日は、そのような観点から、まず冒頭にSIDS、乳幼児突然死症候群についてお伺いいたします。
 昨年十月三十一日の本委員会でも私は指摘をいたしましたが、SIDSは、保育施設や医療施設における外因死の隠れみのとして利用されていることが少なくありません。これは親にとっては、やっと恵まれて大切に慈しみ育ててきた子供を奪われた上に、死因を隠ぺいしようとする相手によってさらに傷つけられていくことになるという構造です。これは、医療事故によって家族を奪われた上に隠ぺいをされる構造と全く同じであると私は思っております。
 そんな状況の中、厚生労働省ではこのたび、SIDSの診断基準の見直しのための研究班をつくろうとしていると聞いております。
 そもそも、どのような問題意識に基づいてこのような研究班を立ち上げようとされているのでしょうか。日本独自の診断基準をつくる必要があるのかどうか、そして、そこでつくられた基準はどういう意味を持つのか、そのような観点からお答えいただきたいと思います。
岩田政府参考人 人口動態統計によりますと、平成十二年にはSIDSで乳幼児の死亡が三百六十三件報告されております。これらの中で、SIDSという診断に遺族が納得できないということで裁判になるなどのケースも一部見られております。また、現在、我が国では既にSIDSに関する診断基準がございますが、小児科医や法医学者、病理学者などが複数の診断基準を持っておりまして、研究班や学会などがそれぞれの立場から独自に作成をされている、そういう状況でございます。
 そういうことで、もう既に我が国には診断基準はあるんですけれども、それを統一化したい、そういったような観点から、本年度の厚生労働科学研究におきまして研究班を立ち上げたいというふうに考えております。
水島委員 今おっしゃったように、今複数の基準があって、それぞれが勝手なことを言っているというような御指摘であるわけですけれども、ここで診断基準がつくられましたときには、それは全国あまねく拘束するようなものになるんでしょうか。
岩田政府参考人 三つの診断基準は、ばらばらということではございませんで、基本的には同じ考え方に立つ基準になっておりますが、例えば子供の年齢をどこまで見るかとか、それからSIDSと診断する場合には必ず解剖が前提になっておりますが、SIDSの疑いありという診断を書く場合に、それでも解剖を前提とするかそうじゃないかといったようなところに今現在三つございます診断基準の中で若干差があります。それらを科学的に統合しようということでございます。
 これができ上がった暁には、基本的には各医療機関、医師によって誠実に遵守されるということが期待されるものでございます。
水島委員 この研究班の人選はどのような基準で行われるのでしょうか。
岩田政府参考人 厚生労働科学研究で行っておりますので、これは公募によって募集をいたしまして、幾つかのグループが応募なさっておられますけれども、そういうことでございますので、その中から最も適当なものを委員会で審査をして採択するということでございます。
 したがいまして、厚生労働省の方がだれを任命するといったようなものではございませんで、採択されたチームについて、主任研究員という位置づけの方がおられますので、その方が協力研究員の方を募って、研究したい、そういう提案をなさっておられるわけでございます。したがいまして、厚生労働省の方で任命するわけではございませんけれども、小児科や法医学、病理学、こういう特に三学会の関係者から幅広い参加を求めた、そういう研究班が立ち上がり、そこで厳格な医学的な判断がなされることが大事であるというふうに思っております。
水島委員 済みません。ちょっとよく理解できなかったんですが、公募に応募してきた人たちを審査するのはだれなんでしょうか。
岩田政府参考人 厚生労働科学研究はこれだけではございませんで、その他のテーマについてもそうなんですが、公募であるということと、多くの応募の中からどれが適当であるかということについての審査の委員会がございまして、その審査委員会には、私ども内部の者も何人か入っておりますが、外部の方にもたくさん入っていただいた、そういった審査の委員会で提案が採択されるということでございます。
水島委員 つまり、これは研究班をつくってそこで議論をするということではなくて、厚生労働科学研究として委託をする研究になるということなんでしょうか。
 それは通常の厚生労働科学研究への応募の、それぞれの研究を審査するように審査をして、そこで診断基準をそれぞれの研究の中でつくってくるという形になるということは、例えば、ここにございますのが、これは平成八年度から十年度、文部省科学研究費補助金研究成果報告書、乳幼児突然死症候群の法医病理学的診断基準の作成というような、こういったものもあるわけですけれども、つまり、これと同じようなことをもう一度していく。ただ、そのときに、今ばらばらになっている人たちにちゃんと入ってもらって、単に、意見の統一を図るための、何やら政治的な研究という感じもするんですけれども、そのようなことなんでしょうか。
岩田政府参考人 政治的な研究ではございませんで、医学的な、専門的な研究をしていただきたいというふうに思っておりますが、先ほども申し上げましたように、これまでの診断基準は、小児科の先生が中心になっておつくりになった診断基準ですとか、法医学、病理学の御専門の方が中心になってつくっておられる診断基準などがございますので、そういう関係者がすべて入ったところで、まさに科学的に議論していただいて、統一的な基準をつくっていただきたいというふうに思っております。
水島委員 ぜひ公正な人選、そして科学的にも間違いのない研究をしていただきたいと思っておりますけれども、この一連の問題の解決に向けて、まずここで基本的な知識を確認させていただきたいと思います。
 先ほども局長の御答弁の中に、疑い病名の場合に、剖検を必要とするかしないかというような、そういった基準の違いがあるということをおっしゃっておりましたが、死亡が予測されていなかった突然死に遭遇した場合、医師法二十一条の規定によって、異状死体として届け出、検死を行い、外因死の可能性を除外した上で初めて、SIDSという診断が可能になると私は理解しているんですけれども、SIDSが除外診断である以上、つまり、この道筋をとらずにSIDSと診断をすることはあり得ないということは正しいんでしょうか。
篠崎政府参考人 先生の御質問を正確に把握しているかどうか、あれでございますが、ただいま申されましたように、医師法二十一条の関係で申し上げますと、乳幼児の突然死であるか否かを問わず、当該死亡が外因死またはその疑いのある死亡であると認められた場合には、警察に届けることが必要というふうに考えております。
水島委員 疑いがあるないというよりも、持っている疾患によって死亡が予測されていたというようなケースを除いては、結局、全くその死亡が予測されていなかったものはやはり突然死であって、この突然死に遭遇した場合には、医師法二十一条の規定によって、異状死体として届け出る、そして、何か先ほどと全く同じことをもう一度申し上げるのもあれなんですけれども、今警察に届け出る義務があるというところまでの御答弁をいただいたわけですけれども、私の質問は、SIDSという診断に至る経路というのは、その届け出、検死を経て、外因死の可能性が除外された上で初めて、SIDSというふうに診断されるという経路以外にあるのかどうかということをお伺いしているんですけれども。
 ちょっと、これは事前通告してある質問なので、時間をとめていただきたいんですけれども、この間。
篠崎政府参考人 その突然死が起こった状況等にもよると思いますが、例えば主治医がずうっとおられたという場合と、それから、主治医等がおられないで、病院とかそういうところでないところで突然死があるということで、急にお医者さんが呼ばれるというような場合、いろいろな状況で違うかと思いますが、医師法二十一条によります警察への届け出というのは、病理学的な異状死という意味ではなくて、法医学的な異状死というふうにとらえるべきであるということを言っておるわけであります。
水島委員 篠崎局長は私の大学の大先輩でございまして、大変優秀な方であるのに、なぜいつまでたっても私の質問にストレートに答えてくださらないんだろう、何か隠したいことがあるのかな、だんだんそんな気になってまいりました。
 もう一度伺いたいんですけれども、ちょっと、本当にこんなことで時間を食うつもりはないんですけれども、突然死に遭遇する状況がいろいろあるということなんですけれども、私は最初から丁寧に、その死亡が予測されていなかった突然死というふうに条件をつけています。医師がずっと傍らに寄り添っていて、医師に状況がとてもよくわかる中で突然心臓がとまったというのであれば、それは何らかの医学的な診断が可能かもしれませんけれども、そんなことを言っているのではなくて、SIDSという診断をするときに、SIDSというのはあくまでも除外診断であると私は理解しています。
 医学的に何か、きのう、きょう、違うことがわかったんだったら教えていただきたいですけれども、除外診断である以上、つまり、すべての外因死、あるいはほかの原因による病死の可能性をすべて除外しなければSIDSということは診断できないんじゃないんでしょうか。ここは医学部ではなくて国会なんですけれども、ちょっとそこをきちんと確認したいと思います。
岩田政府参考人 そのとおりでございまして、SIDSという診断をする場合には必ずその前に解剖を行うということが、三つの今国内にございます診断基準いずれについてもそうでございます。
 差があるのは、SIDSの疑いありという診断書を書く場合に、その前に必ず解剖があるかどうかというのが基準によって、今は日本の三つの基準によって違うという、疑いがあるという診断をする場合に違いがあるわけでございまして、SIDSの診断書を書くときには必ず解剖があるということでございます。
水島委員 ようやく、随分時間がかかって、伺いたかった答弁を得ることができました。つまり、まずきちんとした検死そして剖検も行わないでSIDSなどという診断をするのは間違っているということが確認されたわけです。
 もう一つ、今出てきました疑い病名という、これがまた非常に怪しいものでございます。
 香川県の小鳩幼児園で、ことし二月に、一歳二カ月の藤島飛士己ちゃんが暴行され、殺された事件がございました。この事件におきましても、死体検案書ではSIDSの疑いと書かれていたために、警察の捜査すら阻まれたわけです。これは御両親の必死の努力によって、やっと、この幼児園の元園長が逮捕されたということでございますけれども、鑑定医は、死因が特定できなかったから疑いと書いたんだと記者会見で釈明しているわけです。この場合は、死因不詳、あるいは検査中ですとか、そのように書くべきものであって、特定できないときにSIDSの疑いという病名がこんなに安易に使われているわけです。
 この医師は、一年目の研修医でも何でもなく、香川医大のれっきとした教授です。そんな人がこんなに気軽にSIDSの疑いという病名を使っているということが現実であるわけです。これはもう、親の立場からしますと、保育所で子供が虐待して殺されたというだけでも許せないことですのに、さらに、大学の教授が死因が特定できなかったからSIDSの疑いと書いた、そのために、明らかに外傷があったにもかかわらず警察が動けなかった。こんなばかげたことがことし日本で起こっているわけです。
 この疑い病名についてここできちんと、こんなふうに疑い病名が使われることが正しいのかどうかということをちょっとここで御見解を伺いたいと思います。
岩田政府参考人 何度も同じ答弁で恐縮なんですが、ただいまあります診断基準によりますと、その診断基準にもよるんですけれども、疑い病名をまたさらに二つに分けて、解剖に基づくものと解剖をやっていないケースというふうに分けて整理したりしている学会の診断基準もございます。
 いずれにしろ、先生今おっしゃっておられますようなそういう問題が、そういう御意見がありますからこそ、今回、研究班でそういったことも含めて科学的に検討していただきたいということで、研究班を開始させていただきたいと思っております。
水島委員 そもそも、SIDSというのが、それを積極的に診断する根拠のあるものではなくて、ほかのあらゆる可能性を除外した上で初めて成り立つ診断名である以上、SIDSの疑いというのは、そもそも私は、非常におかしいんじゃないかなと、これは医学的に思います。
 常にSIDSというのは一〇〇%確定できるものではなくて、ほかの可能性がないからSIDSになっていくものなわけですから、では、SIDSとSIDSの疑いというのはどう違うのかということは、もはや理屈が成立しなくなってくるのではないかと思います。こんなひどい状況がずっと放置されてきたということに、私も今回また改めて調べまして、小さな子供を持つ親といたしましても、本当にこれは許されないことだと改めて思っているところでございます。
 そして、今まで外因死の隠れみのとして使われてきた、そして、乳幼児の急死をめぐって五十件を超える裁判が提起されておりまして、病院または保育所側は必ずと言ってよいほどSIDSであると主張し、裁判所はほとんどについてこれを認め、被害者側の敗訴で終わってまいりました。昨年からことしにかけては、東京高裁並びに大阪高裁において、SIDSという主張が退けられ、病院等の過失責任を認める判決が下されているわけですけれども、このような事例をずっと検討してまいりますと、そもそも、このSIDSという病名が余りにも安易に使われている。中には、全く剖検も経ないで、あるいは異状死体として届け出ることもしないで、医者が積極的にSIDSというふうに診断するようなものすらあると言われているわけです。
 先ほど確認させていただいた基本的な知識によりますと、SIDSというのは、ちゃんと医師法二十一条の規定によっての届け出を経て、検死、剖検を経て初めて診断されるということであるわけです。つまり、この問題の中にあるのは、例えば、それは医師法二十一条の規定に基づく異状死体の届け出の義務違反が含まれていたり、あるいは積極的な誤診というようなものも含まれているわけですけれども、このような深刻な問題が今まで放置されてきたということを、それがなぜなのか、今までの反省も含めまして、またかと思うこの構造を根本的に解決していくためにどうしたらいいと思うか、これは最後に大臣の御答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 乳幼児突然死症候群と言われておりますこの問題につきましては、先ほどからいろいろの答弁があるとおりでございますが、やはり、先ほどから御議論ありますように、これは症候群であって、一つの原因によって起こるというわけではないんだろうというふうに思います。したがいまして、除外すべきものを除外して、残りは、残ったと申しますか、この疾病が出てくるのであって、先ほどおっしゃいましたように、この疑いというのは、私も、それはちょっとどうかなというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、このSIDSの原因というものももう少し明確にしていかないといけないと思いますから、症候群ではございますけれども、そうした原因究明のための研究というのも一方で進めなければなりませんし、そして、不幸にして起こりましたときに対する問題というのも、これは整理をしなければならないわけでございますから、もう少し周辺が明確になるように努力をしなければならないというふうに思っております。
 医師の側の方も、最近、小児科の先生がなかなか生まれないということの理由の一つに、やはりこうした難しさというものがあって、それが原因になっているということを言う人もあるぐらいでございますから、そうしたことも含めて、原因究明と、そして起こりましたときの処置そして対応といったものにつきまして明らかにしていく必要があるというふうに思っている次第でございます。
水島委員 大枠の御意見をいただきまして、とにかく、前向きにこの問題にしっかりと取り組んでいただけるということではあると思います。
 私が昨年この委員会で指摘をさせていただいたのが十月の末でございますので、それから半年以上もたっていますけれども、その後、またこんな大きな事件が起こって、そして同じような構造がまた繰り返されているということに、本当に驚きました。これを今まで、これは本来学会がやるべきことだというようにおっしゃるかもしれないけれども、こんな状態がずっと放置されてきたということについて、私は、大臣としても責任の一端をしっかりと感じていただきたいと僣越ながら申し上げさせていただきたいと思います。
 さて、次に移りますが、医療や健康の問題を考える上で、また医療財政というものを考える上で、医療現場以外での健康への取り組みが重要であるということは、皆様も共通した御理解だと思います。
 そして、自分の健康だけではなく、他人の健康を守る取り組みとしまして、心肺停止時の心肺蘇生処置というものがございます。現在、我が党の山井和則議員が中心となりまして、救急救命士の問題に積極的に取り組んでいるところでございまして、これについてはぜひ積極的に御検討していただきたいと思いますけれども、私は、本日は、その前の段階について質問させていただきたいと思います。
 ドリンカーの救命曲線という有名な曲線がございまして、それによりますと、呼吸停止二分後に心肺蘇生を始めると九〇%くらいの確率で生命が救えるけれども、三分後になりますと七五%、四分後は五〇%、そして五分後になりますと二五%となって、十分後には救命率はほとんどゼロになってしまうということが、そのドリンカーの救命曲線によって示されているわけです。救急車が現場に到着する時間を考えますと、救急車が到着する前に、周りにいる市民がどれだけ心肺蘇生ができるかということが、実際には救命の成否に大きくかかわってくる問題であると思います。
 そもそも、この救急について、心臓マッサージですとかそういった心肺蘇生についての基礎知識というものは、学校教育の中で教育をされているんでしょうか。そして、そもそも、学校の先生、養護の先生ではない普通の学校の先生というのは心肺蘇生ができるんでしょうか。これは文部科学省にお伺いします。
上原政府参考人 お答え申し上げます。
 心肺蘇生に関します教育の現状でございますが、基本的には、学校では、小学校であれば体育科、それから中学、高校であれば保健体育の中で、応急手当ての一環としての教育がなされてございます。
 ただ、御案内のとおり、小学校の段階でありますれば、簡単な切り傷、すり傷に対する教育ということで、中学校の段階でありますれば、一応、人工呼吸法、止血法それから包帯の仕方というふうな形で教えてございまして、高校の段階になりますと、今御指摘ありました心肺蘇生法ということで、気道の確保それから人工呼吸それから心臓マッサージという形ではなされてございます。
 それから第二点の、教員それから養護教諭の関係でございますが、学校の教員につきましても、昭和六十一年以降、二つの研修が行われております。一つは、指導者のための学校安全教育指導者研修会という形で、毎年二百人程度の人間を集めまして、先生御指摘の心肺蘇生の研修会を実施するとともに、大体、毎年三千人を対象といたしました心肺蘇生実技講習会というのを学校の先生方を中心として実施してございまして、今後とも、こういう努力を継続したいと思ってございます。
 以上でございます。
水島委員 私がふまじめな学生だったからかもしれませんが、少なくとも私は、学校教育の中では、心臓マッサージなどは全くできるようにはなりませんで、医者になって初めて、自分の技術としてできるようになったようなところがございました。
 ですから、私は、そもそも、教えているとはいっても、その教え方が、一部の優秀な生徒さん、学生さんに対してはそれで十分かもしれないけれども、やはりあまねくすべての人たちが自分の当たり前の技術としてできるようになるためには、学校教育の中での重きというものもまだ十分ではないのではないかと思っております。そして、医療費を抑えるという意味でも、そもそも国民の健康を増進させるという本来の目的のためにも、一般人への初期救急知識を普及させる必要があると私は思っております。
 今回、このことについて質問しようと思いましたら、それは担当は総務省ですと言われました。確かに、救急車、消防庁でいろいろ研修をやっておりますので、担当は総務省なんでしょうけれども、これが一たび医療現場になりますと、突如として、その担当は厚生労働省になるわけです。また、子供がのどにあめを詰まらせたですとか、そういう子供の救急事態に関しては、これは恐らく子育て支援という中に位置づけられて厚生労働省が担当されているのではないかなと想像しておりますけれども、私は、こんなふうにあちこちに行っている仕組みがやはりおかしいと、改めて縦割り行政の問題を感じさせられました。
 初期救急を重要な予防医学として位置づけて、例えば地域の保健所が中心となって、これは厚生労働省がしっかりとその中心に座って推進していくべきではないかと思いますけれども、医療の問題を論じるときに、必ず、この予防医学という問題はセットとして、重要なものとして論じていかなければならないと思いますので、この救急の問題についても例外ではないと思いますけれども、大臣はどうお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 これはいわゆる国だけがやるだけではなくて、都道府県、市町村も含めて、連携の中で、さまざまな場所で行わなければならないことだというふうに思っております。
 一つ保健所というふうに限定をしてしまいますと、限られた人間の中でなかなか十分なことができ得ませんから、やはりもう少し広い範囲で、市町村なりそうしたところも含めて、あるいはまた学校も含めて、全体として、この救急のときの対応のあり方というのは教えていかないといけないというふうに思っています。その連携をどういうふうにとることを企画するかということが大事ではないかというふうに思っておりますので、そこは十分考えたいと思います。
水島委員 健康増進法案の枠組みを考えましても、また、たばこの問題でも先日指摘をさせていただきましたけれども、連携でいい、連携をどうとるかの方が重要であるというのが、ここのところの大臣の御答弁の一般的な傾向であると思います。その場合、連携というのは、だれかがとるだろうと思っているととれないところがございますので、やはり厚生労働省がしっかりと責任を持って、連携をとることについても、その体制づくりについても責任を持って、この初期救急を予防医学の重要な柱として位置づけていっていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 最後にまたお伺いしたいのですが、医療のむだを省いて医療の質を上げる、その双方の目的にかなうものとして、代替医療は重要な位置を占めていると私は思っております。
 私もかつて漢方外来で診療をしておりましたけれども、高齢者の患者さんで、複数の科から大量の薬をもらっている方に対して、きちんとした東洋医学的診断に基づいて処方をした漢方薬を与えますと、スーパーの袋のような薬が不要となって、自覚症状もよくなる。つまり、漢方薬一剤で、このくらいのスーパーの袋のような薬が要らなくなる、そして患者さんの自覚症状もよくなる、そのような経験を少なからずしてまいったわけでございます。
 これは高齢者の問題だけではございませんけれども、このようなみずからの経験を踏まえまして、代替医療については二〇〇〇年の十月にも質問させていただいておりますけれども、まず、現状の検討状況はいかがでございましょうか。
篠崎政府参考人 代替医療についての取り組み状況についての御質問でございますが、漢方などのいわゆる代替医療につきましては、科学的に未解明な部分もございますけれども、漢方薬のうち、有用性の認められるものにつきましては、薬事法上の承認を行い、保険給付の対象としているところでございます。
 また、はりとかきゅうにつきましては、法律により資格制度を設けまして、医師が必要と認めた場合には、医療保険制度の中で療養費の支給対象としているところでございます。
 さらに、その有用性について科学的な解明を待たなければならないものにつきましては、厚生科学研究費補助金などを活用しながら研究支援を行ってきたところでございまして、今後とも必要な支援に努めてまいりたいと考えております。
水島委員 それは今までの姿勢であって、かなり消極的な前進状況ではないかなと思います。
 これほど医療の問題が、今回もこれだけ長時間をかけて審議をされているところでありますし、そんな中でもこの老人医療というものがかなり大きなテーマになっているわけでもございます。そんなときに、今私も個人的な経験をお話しいたしましたけれども、これは、私個人だけではなく、一般に専門家の間では言われていることですけれども、なぜこんなにいい手段があるのにそれをもっと積極的に推進していこうとしないんだろうかという疑問を現場で多くの人たちが持っているわけでございます。
 最後に、そのような今の私の意見を踏まえた上で、大臣がこの問題について今までよりもきちんとスピードを上げて取り組んでいかれるおつもりがあるか、代替医療をもっと医療の中核の方に持ってこられるおつもりがあるかどうか、その点についての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 代替医療というのももう内容はさまざまでございますから、なかなか一つにまとめて申し上げることはでき得ませんが、先日もマスコミに報道されましたように、この代替医療についてひとつ厚生労働科学研究でやろうということになったことは間違いがないわけでありまして、これは一つの進歩だと思っております。
 今までこうした問題は取り上げなかったわけでございますが、ただいまはがんにつきましての代替医療について研究を行っているところでございますが、これから、がんだけではなくて、あらゆる分野における代替医療につきましての検討を行っていきたいというふうに思っているところでございます。
水島委員 与党席からも重要なことだという声も上がっておりました。
 アメリカでも、既にNIHでかなりしっかりとした分野として位置づけていると聞いておりますけれども、本来、例えばこの漢方医学というものは、中国から来ましたけれども、日本で江戸時代に非常に発展をした、本当に精緻な理論を持った、非常に多くの臨床経験を持った医学で、日本が世界に誇るものであると私は思っております。くれぐれも、今だんだんとそんな様子になってきていますけれども、これを日本が西洋からまた逆輸入するような形に研究の世界ではなってきてしまっておりますので、私たちが、私たちの先輩がしっかりと培ってきたこの大切な漢方医療につきましても、もっと世界に発信できるような、日本を世界の中心地にしていかなければいけないと思っておりますので、改めてお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
森委員長 次に、加藤公一君。
加藤委員 民主党の加藤公一でございます。
 先週、もう二回質疑をさせていただきましたが、引き続いて、何ですか、どうしても田村政務官がたくさん答弁をしたいというような御要望をいただいているようでありますので、田村さんとじっくりと御議論をさせていただきたいと思うんですが、途中で大臣にも御意見、御見解を承りたいというふうに思いますので、ぜひこの議論を聞いていただきたいと思います。
 先週も申し上げましたが、今の医療の中で、明細のわかる領収書の発行問題、大変大きな問題であります。なかなか先週は私自身納得のいくお答えをちょうだいできておりませんので、きょうもこの続きから始めさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、問題点を少し整理しておきたいと思いますが、現状では、各保険医療機関等において体制を整えて、医療費の内容のわかる領収書の発行に努める、こういうことになっているようでありますが、実態はこれが全く徹底をされていないのではないか、そこが大きな問題ではないかというふうに思います。そのために、患者さんが、どんな検査や治療を受けて、何に一体幾ら支払っているのかということすら知らされないし、あるいはその診療や検査が適切かどうかも判断がつかない。仮にそこで不当な検査や治療が行われたとしても、患者さんが負担した費用というのはなかなか現実問題として返還をされていないのではないか、こういう問題もあります。
 そこで伺いますが、医療費の明細のわかる領収書、これは今努力をするようにということにはなっていますが、これを発行している保険医療機関の数はどれほどか、そしてそれは一体どれぐらいの割合であるのか、そしてもう一つ、その数で十分だとお考えかどうか、伺いたいと思います。
田村大臣政務官 どうしてもお答えしたいというわけではございません、先生からの御命令でございますので、この場に立たせていただきます。
 先生からの御質問でございますけれども、基本的に、おっしゃられますとおり、明細がわかる領収書といいますか、そういうものは我々も大変重要であろうと思っております。やはり、患者の方々がどのような治療を受けたか、またどのような治療を受けた上で請求をされるのかということを認識いただくということは、これは大変重要な問題であろう、そういう認識は持っております。
 ただ、以前から申し上げますとおり、まずは、それが徹底されていない、お願いはいたしておるんですけれども徹底されていないという認識のもとででありますが、現在わかっておるといいますか、領収書を発行しておる、明細のわかる領収書というものを出しておる医療機関というのは、国立病院、社会保険病院それから労災病院では一〇〇%これが出ております。
 ただ、先生がおっしゃられました、じゃ、保険医療機関すべてにおいて、どんな割合でどれだけの数それが出されておるかという問題は、実質上、把握をいたしておりません。かなりといいますか、あまたある保険医療機関でございますので、これを把握するというのは、まだ大変困難な部分がございまして、現状では把握いたしていないということでございます。
加藤委員 最後にもう一つ聞いた件、お答えください。その把握されていない状態で、いいと思っているのか、それともそうでないのか。
田村大臣政務官 把握をしていないというのはどうかという話なんですけれども、これは、できれば把握をすればいいわけでありますが、なかなか、どういう方法で把握をするべきなのか、どういう関係機関に話を聞けばいいのか、全保険医療機関調査をするといいますと、これはなかなか大変な問題、手間がかかる話でございまして、ちょっとそこは検討させてください。どういう方法でやるべきなのかも含めて検討させていただいて、また後日お答えさせていただきたいと思うんですけれども、今検討中でございます、そういうことでございます。
加藤委員 検討していただくということになりますと、やはり責任者に締め切りを設定していただかなきゃいけませんので、大臣、いつまでに御検討いただいてお返事いただけますでしょうか。
坂口国務大臣 田村政務官とよく相談をさせていただきたいと思います。
加藤委員 さっき申し上げたように、問題点があることは、これはもうお互い共有をしている話でありますし、ほったらかしにしておいて決して改善される話ではありませんので、武士の情けできょうだけは締め切りを設定しませんが、ぜひ、ぜひ把握をしていただきたい。これがわからない以上、次の議論になかなか進みませんので。
 そこで申し上げますけれども、じゃ、果たしてこの明細のわかる領収書を発行する以外に、先ほど申し上げたような問題、課題を解決する方法があるのかどうか、もしあるのであれば御説明をいただきたいと思います。
田村大臣政務官 先生の御認識をすべて満たすかどうかはわかりませんけれども、明細のわかる領収書以外には、一般的にでありますけれども、レセプトを開示いただくレセプト請求、もしくは医療費通知、以前にも先生の御質問でお答えさせていただきました、定期的に保険者から送られてくる被保険者に対する医療費通知というものがございます。
加藤委員 これは先週も御議論させていただきましたけれども、結局それでは不十分だからこそ問題がいまだに残っているわけでありまして、今わずかこれだけ議論をさせていただいても、最初に御説明をしたというか共有をさせていただいた問題点というのは、患者さんがその医療機関で一日診療が終わった段階で明細のわかる領収書を渡されるという状態にならない限り、結局解決しないわけですよね。
 でも、それが問題だともうわかっていて、何年も前から指摘をされていて、かつ今回、その状態をほったらかしでまた負担を強いようという話なんですから、これはいつになったらこの明細のわかる領収書を発行できるのか、これをお約束いただきたいと思います。いつできますでしょうか。
田村大臣政務官 前回もこの議論を、先生からおしかりをかなりいただいたところでありますけれども、医療の負担という部分、保険料それから被用者保険三割負担、こういうものに関しては、一つには、今非常に厳しい医療保険の財政等々の話がある中においてお願いもさせていただいているわけでありますが、先生おっしゃられた問題に対しても認識がないわけではございませんでして、こういう問題には、我々も、厚生労働省としても、大変な重要性を置いておりますが、一方で、当然のごとく明細のわかる領収書をすべての保険医療機関が発行をいただくという話になりますと、それなりのやはり手間がかかりますし、それに裏づける費用というものもかかってまいります。
 例えば電算化がすべての診療所まで含めて進んでいけば、こういうものは人手をそれほどかけずにも出せるんでありましょうし、もしくは人を余分にお一人お雇いになられて、こういうものを専門でやられる方々を置けば、それはそれでできるのかもわかりませんが、なかなか、今、現状で動いております医療保険の制度の中において、そこまで負担を国が強制的にすぐに強いるというのは難しい部分もある。
 そこで、とはいいながら、大変重要な話でございますので、今、そこら辺のところをどう進めていくべきか、また、医療機関がそれに対して体制をやはり進めていただかなきゃいけない、整えていただかなきゃいけない。この部分も含めて、今、実は、どうすべきかということを議論させていただいておるわけでありまして、いい例えかどうかわかりませんけれども、仏つくっても魂入れなければ御利益ないわけでありますから、うまくそれができて、そして魂が入って動けるような状況はいつなのかということはなかなかお答えできないわけでありますけれども、なるべく早くそういう状況がつくれるように努力をいたします。
加藤委員 今のお話の中にもありましたけれども、手間と費用がかかるからなかなかできないという話でしたが、そもそも、これは先週も申し上げましたけれども、世の中に存在をする商品やサービスで、明細のついた領収書を渡すのはちょっとうちのビジネスとしては手間ですから出せませんよなんというものは存在しないわけですよ。
 医療はもちろんビジネスじゃありません、それは先週も申し上げました。しかし、患者さんがその一日どういう診察を受けて、どういう検査を受けて、幾らですということすらわからないというのは問題だ。それから引き続いてさらに拡大した問題もあると共有されていて、それで、それができない理由が医療機関の手間や費用だというのは、これはやはりちょっと筋が違うんじゃないですか。その手間と費用をかけてでもやるべきことはやる、これがやはり筋じゃないですか。いかがですか、田村さん。
田村大臣政務官 先生のおっしゃられる意味もよくわかるんです。私もよくわかるんです。
 ただ、今までの医療というものの経緯といいますか、ずっと続いてきた流れもございまして、そういうものがなされてこなかった。しかし、そこには医者と患者の信頼関係もあったんでありましょう。いや、もしくは、医者に情報が独占をされておりまして、なかなか患者がその部分に口出しができなかったという部分もあったのかもわかりません。まあ、あったんでありましょう。そういういろいろな経緯があって今の制度が成り立っているわけなんです。
 これに強制的に義務で、すぐにあしたから、例えば明細のわかる領収書を発行してくださいということを義務化して、やらなければ法令違反ですよなんということにいたしまして、罰金やいろいろな刑罰を科す、刑罰といいますか法令違反の罰を科されまして、できないのにやれ、やろうと思ったらなかなかその費用というものが捻出できない。では、そのお金をどうするんだ、そのお金はまた国が面倒を見ればいいじゃないかと言いますけれども、一方で、医療費は大変厳しい中でこういうお願いを国民の皆様方にもさせていただいておる現状であります。
 でありますから、そこはなるべく早く、早くは進めさせていただきますけれども、すぐにと言われましても、制度が今まで動いてきたそういう制度の流れの中で、これはなかなか難しいという部分がございまして、どうかそこは先生の御理解をいただきますようにお願い申し上げます。
加藤委員 先週も同じことを言ったんですけれども、御理解いただきたいと言われても、私、御理解できなくて、だめなものはやはりだめなんですよ。必要なものは必要なんですよ。それができない理由が、医療機関の手間と費用がかかるから出せませんというのは、これはやはりどう考えたって納得いく話じゃなくて、これは何も私だけじゃないと思いますよ。この議論を聞いていただいている国民の皆さん、とりわけ病院に今かかっている方なんか特にそう思っていらっしゃると思う、本当に。
 それを、例えばあしたからやれと言っているわけじゃないんです。一カ月後から罰則つけろと言っている話でもないんですよ。厚生労働省として、では、いつを目途にこの制度を変えよう、猶予期間を持たせようとか、あるいはそのために医療機関をこれだけバックアップしようとか、もう長年議論されてきているんだからそれぐらいの答えは持っていてもおかしくないと思うんですよ。
 大臣、いかがでしょう、いつまでだったらこの問題、解決していただけますか。
坂口国務大臣 田村政務官は非常に率直に、正直に話をしているというふうに僕は思いますが、まず、領収明細書は出すという原則は明らかにする。出すという原則は明らかにして、そうして、それが全医療機関ができるようにしていく手順をどう決めていくかということだろうというふうに思いますから、その手順を、田村政務官は、これからひとつやりますということを言っておるわけですので、その手順をひとつできるだけ明らかにして、早くできるようにしたい、そういうことでございます。
加藤委員 水かけ論をしていると後の時間がなくなっちゃうと困るので、では、せめて、手順はいつ発表していただけるんですか。
坂口国務大臣 これもよく相談いたしますけれども、できるだけ早くいたします。手順はそんなに時間がかかるわけではありませんから、そういうふうにやっていきます手順をこれからよく話をしたいというふうに思っております。秋風の吹きますまでには何とかやりたいというふうに思っております。
加藤委員 先週の医局の問題は、大臣が言っていただいた締め切りに私は一つもけちをつけずにそのとおり納得をさせていただきましたが、この件、秋風が吹くまでというのは、到底、結構ですとは言えません。
 今、健康保険法の審議をしていて、大問題だとこの間からずっと議論になっていて、もう何年も前から指摘されているテーマです。答えを出せと言っているんじゃない、その手順ぐらいはすぐ出してください、こういう話でありますから、本来であれば、この健康保険法の議論をしている間にその手順ぐらい公表されなかったら筋が通らない。副大臣までうなずいていただいている。
 大臣、もう一回伺います。秋風なんというのは全然話になりませんから、いつまでに手順を公表していただけますか。
坂口国務大臣 秋風の吹くまでにというのは、その前というのは全部入っているわけでありますから、秋風が吹かなきゃやらないと私は申し上げているわけではありませんので、急ぎたいと思いっております。
加藤委員 もちろん、一日も早くやっていただかなきゃいけませんから、別に私が秋風吹くまで待とうという話じゃないんです。ただ、締め切りというのは、一たん設定をしたら、そこまでにやればいいというルールでありますから、秋風吹くまでといったら、結局、後ろ倒しすれば秋でいいという話でありますから、そうはいかない。
 あくまでも、この健康保険法の議論の、これは最重要課題と言ってもいいと僕は思いますよ、この議論のさなかに出してもらわなきゃ筋が通らない。(発言する者あり)国民がそう思っている。どうも国民の感覚とずれている議員がいるようだけれども、そんな筋の通らない話はない。この健康保険法の議論をしている間に手順ぐらいは出していただきたい。
 大臣、もう一回伺います。いかがですか。
坂口国務大臣 ですから、手順というのも、そう簡単に決まるわけではなくて、これはさまざまなことを考えてやっていかないといけない。先ほど田村政務官が申しましたように、全医療機関にこれをやっていただこうということになれば、それなりの対応を、財政的な対応をどうするのかというようなことも考えなきゃなりませんし、なかなかそう、手間のかかる話でございますから、きょう言ってあすできるというわけには当然のことながらいかない。
 ですから、漠とした文学的な表現で恐縮ですけれども、秋風の吹くまでに、こう言っているわけでありまして、それはしかし、秋風の吹くまでにというのは、あすもその中には入っている、こういうことでございますから。少し時間を、ちょっと幅をいただいてやらせていただかないとこれはなかなかできませんので、御趣旨を十分に尊重してお答えをしているわけでございます。
加藤委員 今回の議論は、これはもうぜひ国民の皆様にも見ていただいて、ことしは、何ですか、夏はエルニーニョがあって異常気象も起こるようでありますから、秋風が早く吹くかもしれませんので。大臣、秋風吹くとおっしゃったのは大臣ですから、これが七月に吹こうが八月に吹こうが文句を言わないでいただいて、それまでには必ず出していただきたいと思います。よろしいですね。(発言する者あり)来年までとか、とんでもないやじが飛んでいますけれども、そんなことを言っているから国民から不信を買うんですよ、この間から不信の話をずっとしてきたのに、冗談じゃありません。
 次の議論に行きます。
 これまでの議論でもわかるように、結局、この医療費の明細がわかる領収書が発行されないからという問題によって、この前から言っています不当な診療あるいはその請求という問題が後を絶たない、その疑念が払拭をされないということであります。
 結局、今のままでありますと、医療機関でむだな検査や治療を受けたとしても、患者さんはそれをチェックできない、あるいは、窓口で示された額が、その医療費の額というものが適切かどうかもわからないけれども、それを支払わなきゃいけない、こういうことになっているわけです。
 ここで、各保険医療機関の治療や検査の正当性というものについて伺いますが、これは一体だれが、いつ、どこで、どのようにチェックをしているのか。これは保険請求の手続のことじゃありません、事務手続の正確性のことではなくて、治療や検査の妥当性、これを一体だれがチェックをしているのか、お答えいただきたいと思います。
田村大臣政務官 治療や検査の妥当性という話ですが、保険医療という分野での妥当性を判断しておるのは、基本的には、審査支払い機構がその時点でそれぞれ審査委員会をつくりまして、その審査委員会で評価をしておられる。もちろんその中で、前回も言いましたけれども、検査回数でありますとか投薬量がおかしければ減額をするという話でありますし、その後は、各保険者がさらにそれぞれのものをもう一度チェックして、不服があるものに対してはもう一度戻しておるという話であろうと思います。
 それからもう一点は、行政が検査に入って、おかしなことをしておるような医療機関等々がございますれば、これに対してチェックをしておる。
 基本的にはこういうことでございます。
加藤委員 本来であれば、先ほどの明細のわかる領収書が発行されれば、第一段階としては患者さんがそこで自分で見るというのが当然の筋でありますし、その審査機関というのは本来は二次的なチェックになるべき話だろうと思うのです。
 仮に、今不当な請求というものが発覚をしたとします。今は患者さんはチェックできませんから、その審査機関がチェックをしたとする。そのときに減額査定がなされても、この前のお話ですと、一万円以下の場合には通知が行かないということになる。これはどう考えても筋が通らないじゃないですかということを前回申し上げたばかりであります。
 全部、一万円以下であっても、これがおかしいということが発覚をしたらすべて通知をするべきだと私は思いますが、仮にその通知をしたとしたらどれぐらいの費用がかかるとお考えですか。
田村大臣政務官 どれぐらいかかるか、これはちょっと一概には、なかなか数字が出ておりません。やはりそれぞれ保険者の規模等々によっても違うわけでありますし、体制によっても違うと思いますので、なかなか一概には言えないわけでありますが、一般のものよりかは、一般の医療費通知よりかはかなり費用がかかる。
 それはなぜかといいますと、やはり、抽出をいたしまして、そしてそれに対してそれぞれの自己負担の割合を掛けた上で出さなきゃいけないわけでありますから、一般の、ふだんやっております定期的な医療費通知よりかは、かなり費用はかかるであろうというふうに思います。
加藤委員 先週、その一万円以下のところ、なぜ通知ができないかというお話を聞いたときに、政務官御自身が、保険者の事務費が随分かかるからできないんだというお話でしたけれども、その額がわかっていなくて、かかりそうだからできないというのは、これは話がおかしくないですか。御自身でおっしゃったんですよ、費用がかかるからできないんだと。では、費用は幾らですかと言ったら、いや、よくわからないけれども何となくかかりそうだと。
 かかるかどうか、わからないんじゃないですか。これは調べて、かからなかったらすぐやれる話ですよ。すぐ調べてもらえませんか。
田村大臣政務官 いや、かかると言いましたのは、件数と、それからそれぞれかかる費用が、一般の医療費通知よりかはかなり煩雑な作業の中で、かかるであろう。ですから当然、それが幾らかという査定といいますか試算は出しておりませんけれども、一般の医療費通知よりも多分一件につき数倍ぐらいかかるのでありましょう。それ掛ける、不当請求といいますかレセプトの件数でありますから、かなりかかるから、これは非常に煩雑になるというか、事務費がかかるというふうにお答えをさせていただきました。
加藤委員 その不当請求が、じゃ、そんなに比率が高いのかという話になっちゃうわけですよ。それは、一件一件はもしかしたら手間は一般の通知よりも多少かかるのかもしれないけれども、不当に請求されている比率がそんなに高いものでないと仮定をすれば、全体の費用、コストというのはとりわけ大きくなるものじゃないんじゃないかと思うわけです。
 それともう一点は、さっきと同じ理屈ですよ。これはその費用をかけてでも通知するべき話なんじゃないですか、筋からいって。
 そもそも、一万円までだったら患者さんが払い過ぎたのが返ってこないという話ですから、こんなばかな話はなくて、それは費用をかけたって返すべき話ですよ。もっといえば、これは保険者が負担するんじゃなくて、その医療機関が負担したっていい話でしょう。どう考えたって、これは筋が通らない。
 だとするならば、全部通知したときに一体どれほどの費用がかかって、できるのかできないのか、これもすぐ調べてもらえませんか。
田村大臣政務官 医療機関が面倒を見るかどうかという議論は、これはまた別の話になりますので、前回の話に戻ると思うのですけれども、医療機関は適当だと思って出されたレセプトが、ペーパーを見て判断する中で、これは保険の給付に適当ではないという判断をされた。そこには考え方の違いがあるんだと思います。ですから、全くの例えば不正な場合に関してはおっしゃられる意味はわかりますけれども、不当な部分は一概に医療機関にすべてというのは、なかなか難しい部分があろうと思います。
 それから、先ほどの議論と同じだというお話でしたけれども、私もそういう認識を実は持っております。本来ならば、おっしゃられますとおり、一万円未満のものに対しても渡せるようになれば一番いいんであろう。
 先ほど来先生がおっしゃられておりますとおり、例えば自分の受けた診療が果たしてどういうものであって、本当にそれが保険というものにおいて妥当であるのか、不当もしくは不正やいろいろなものが入っていないのかということを見きわめるためには、一方で明細のわかる領収書が手に入れられて、そしてもう一方で不当等の請求がありますそういう通知、こういうものがすべて来れば、見合わせればこれはおかしいじゃないかというのは一目瞭然でわかるわけでありますけれども、そこまでいけないというのは、やはり一つには、今の医療機関の話と同じでありますけれども、費用の問題がある。
 これも、電算化が進んでいけば比較的出しやすくなるんじゃないか。もちろん、その通知をどうするか、郵送にするのか、それともほかの方法で渡すのか、いろいろな議論はありますけれども、基本的には電算化が進めばかなりそこら辺のところは整理できるのかなと私自身は思っております。ただ、その電算化の進みぐあいが、医療機関から審査機構までもまだ〇・七%、これは十五年、十八年とこれから七割に向かって進めてまいりますが、今度、審査機構から保険者まではまださらに電算化が進んでおりませんでして、ここまで含めてやはり早急にそういうものを整えていかないと、なかなかこの議論というものが理想形には近づかないんであろうな、このように思っております。
 ですから、その点に関しては、これからも、一番いい方法はどういう方法であるのか、先生からもいろいろな御意見を賜りまして、模索をしてまいりたいと思っております。
加藤委員 本当は、きょうは幾つも締め切りを設定しなきゃいけないのが私の役割なんですけれども、後ろに大きな話が控えているのでちょっとこれは流しますけれども、一万円未満の話は非常に重要なことであって、患者さんが、要するに医療機関のミス、もしくは、心ない人はもしかしたらミスじゃないかもしれない、意図的にやっているかもしれないけれども、払い過ぎて返ってこないなんて、こんなばかな話、本当に通らないですから、すぐ調べて対策を打っていただきたい。お願いをしておきたいと思います。
 それでは、最後の時間を次の議論に移りたいと思いますが、今のような場合、例えば医療機関が保険請求をしてチェックをしたら保険の対象外となったということがあり得ると思うのですが、これは先週もちょっと伺ったところ、政務官から、この全額を返還しろということになると、これを厚生労働省がシステムの中で決めるのは難しい、何で難しいかというと、これは最後は民事の話だから、こういう話でありました。
 つまり、保険請求されて、その保険の適用になりませんよと言われた部分はあくまでも民事の扱いだということでよろしいですか。ちょっと確認をさせてください。
田村大臣政務官 はい、たしか、不当利得返還請求というようなお話をさせていただいたと思います。
加藤委員 そうすると、民事の問題ということになると、医療の世界でそれは自由診療ということになりますよね。一言、確認をさせてください。
田村大臣政務官 自由診療という言い方がいいのかどうかわかりませんけれども、保険の範囲といいますか、保険からは払われていない。保険からは払われていないという話でございます。
加藤委員 保険から払われない診療を自由診療と言うんじゃないですか。確認させてください。一言だけ。
田村大臣政務官 そういう意味では自由診療という話だと思います。
加藤委員 今の話ですと、保険請求をして、一部ここは保険にふさわしくないと除外された。そうすると、ある部分、一連の診療行為の中で、ある部分は保険適用で保険診療、でもここは違うよと言われたところは自由診療、こういうことになるんですが、これはいわゆる混合診療に当たるんじゃないかと思うんですけれども、田村さん、どうお考えですか。
田村大臣政務官 私も当初、そんな疑いがあるんじゃないかと思ったこともあるんですが、多分これは混合診療の定義の問題だと思うんです。
 基本的に、この場合、保険の適用はされているんです。ただ、それが保険から給付を受けなかっただけでありまして、一応保険で認められている医療行為であることは事実であります。ですから、そういうものが保険の給付を受けた診療行為と一緒になっておるものは、我が省といたしましては、混合診療という認識は持っておりません。
加藤委員 いや、保険の範囲内だと言うけれども、保険がきかないわけじゃないですか。請求したのに、そこは保険適用外ですよと言われたわけですよね。違うんですか。
田村大臣政務官 我が省の混合診療の認識なんですけれども、定義といたしまして、保険で認められていない医療を保険で認められている医療とドッキングさせて診療した場合には、これは混合診療というふうに、混合医療と我々は思っておりますけれども、保険で認められておる医療内容と、たまたまそれが審査機構の方で認められている診療内容なんだけれども給付はしないという場合とが一緒になった場合は、これは我が省といたしましては混合診療というふうには概念的には思っておりません。
加藤委員 だとするならば、その保険申請をして、請求をして、ここは全く保険は適用されませんから、あなた方勝手にどうぞ、医療機関と患者さんで勝手に話をつけてください、こういう話ですよね。そういうことになりますね。
 保険請求された分は保険者から医療機関に払われる。患者さんが払った分もある一定の割合で払っている。そこはいい。しかし、ある一定の部分、ここは保険適用されませんよということで除外された分については、医療機関と患者さんとの、さっきの話に戻れば民事の話ということになりますから、結局それが今、例の一万円未満は通知されないということになりますけれども、民事の話だとするんだったら、保険者じゃなくて医療機関にそれを返還する義務というのが発生しないんですか。
田村大臣政務官 先生がおっしゃられました部分は確かに、では、お互いに認め合う中で、保険外、つまり保険で認められている医療行為でありますけれども給付を受けないであろう、そういう部分を医者と患者が合意の上で施した場合の費用はどうなるか。
 これは、保険医療機関及び保険医療養担当規則という中で、基本的には医療機関が十割見なきゃいけない、ですから患者の負担部分はもらえないという話なんですが、それならば返せというお話があるのだろうと思うのです、全額。
 ただ、基本的な認識として違いますのは、医療機関は当初そういう意識がなかったわけでありまして、保険の中で給付されるであろうというふうに思ってこれは請求しているのです。それを審査機構の方で外された。それは、医療機関もいろいろな思いがある中で、なかなか意見が合致しなかった。ですから、そういう意味では、これはもとから認識をともにして患者の方々と合意の上でやった行為ではございませんので、そこら辺のところは、医療機関も前回申し上げましたとおり残りの七割は負担をしなきゃならないのです。例えば、薬を出せば三割は患者からいただいています。ところが、保険から給付を受けなければ、七割は、これは医療機関も、そのまま自分から持ち出しをしなきゃいけないということでございますので、その点は御理解をいただきたいなと私はお願いいたしたいと思います。
加藤委員 それは患者さんは理解できませんよ。要するに、本来だったら十割医療機関が持たなきゃいけないけれども、七割は医療機関が持つんだから、三割は患者さんが持ってくれという話で――時間になっちゃったから、本当はもうちょっとお話をしたいのですけれども、余り場外ではお話ししたくないので、こういう公の場で議論させていただきたいと思いますけれども、どう考えても筋が通っていない、この件は。
 幾らでも議論させていただきたいと思いますので、大変残念ですが、きょうのところはこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
森委員長 午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十分開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。本日も、四十五分間の議論をよろしくお願いいたしたいかと思います。
 さて、きのう、健康保険法の関係で参考人を六名お招きし、意見を拝聴させていただきました。ちょっと事前通告とは、その前にということでお聞きをさせていただければありがたいと思いますけれども、本日の議論もまた聞いていまして、また、きのうの参考人の方々からの意見を聞いておりましたけれども、まず最初に、きのうの参考人の意見や議論というのは、坂口大臣、大体お聞きになられていますでしょうか。
坂口国務大臣 概略お聞きをいたしております。
佐藤(公)委員 宮路副大臣、お聞きになられていますでしょうか。
宮路副大臣 同様でございます。
佐藤(公)委員 では、そういう前提でちょっと何点かお聞きをさせていただければありがたいと思います。
 今までのいろいろな議論がございましたけれども、まさに、きのう参考人の方々がおっしゃられたことというのは、それを集約させたものというのが何点かあったかと思います。
 そのうちの一つ、村上副事務局長がおっしゃられている前文の部分、九七年九月の大幅負担増は、二〇〇〇年度に医療・医療保険制度の抜本改革を行うことを前提に先行実施されたものでした。当時の与党三党は、抜本改革の実施は平成十二年度を目途とするが、可能なものからできる限り速やかに実施することを国民に公約しました。この部分で、公約をしたということが一点。
 そして、医療制度の抜本改革に向けた審議会等へ積極的に参加し、保険料を支払う側、医療を受ける患者の立場から、その実現を強く求めてきた。しかし、九七年から今日まで行われてきたことは、改革先送り、国民への負担増です。国民医療費が膨張し、財政赤字が拡大した責任は、抜本改革を先送りし、小手先の財政つじつま合わせに終始してきた政府・与党にあります。今回の改正は、このツケを国民に転嫁するものでしかなく、到底容認できませんという前文がございました。
 まさに、ここに書いてある非常に重要なことは、政府・与党が、枠組みはいろいろとあるかもしれませんが、公約をしたということ。そして、この公約を破ったこと。だから、信頼関係ができない、つくれない。そしてまた、第二段目にお話ししました財政赤字が拡大した責任、この責任というのが、まさに、先送りをしてきた、つじつま合わせでやってきた政府・与党の無責任さが今回の議論の根本的な問題になっているのではないか、こういうふうに私はきのう改めて思いましたが、この点について大臣はいかがお思いになられますでしょうか。
坂口国務大臣 村上さんはもう二十年来の私も友人でございまして、この人が何を考えているかは大体わかっております。九七年当時、村上さんはそのときの案に賛成だったのではないかというふうに私は思っております。しかし、いろいろ話をふだんから伺っておりますけれども、医療問題について一つの意見をお持ちであることも事実でございます。
 抜本改革につきましては、先日来何度もお話を申し上げているとおりでございまして、一九九七年以来、改革をされた面も確かにございます。しかし、いわゆる省としての、官僚の皆さん方の改革案というのは、今までの、過去との連続性の中での改革というのがどうしてもやはり中心になる。しかし、政治家が言いますところの改革というのは、過去との不連続の改革というのがどうもやはり主張されがちになる。そうした違いがあるというふうに思っておりますが、かなりいろいろの面で改革されてきたということは事実でございます。
 しかし、我々が言うところの抜本改革というのは、もう少し、過去との不連続の中の改革ですよということを言っているわけで、そのことにつきまして、それが十分にできてこなかったということは私も率直に認めているところでございます。
 したがいまして、今回、この財政問題を中心とした今回の改正案と、そして将来にわたりますところの抜本改革を同時にスタートをさせた。そして、来年の四月からの三割自己負担あるいはまた保険料の引き上げといったようなこととあわせて抜本改革もスタートをさせるということにしたい、こういうことを申し上げてきたところでございます。
佐藤(公)委員 当時、大臣が野党にいらっしゃったということで、立場が変わった、おれが今回やるんだから信じろと言われる部分はわからないでもございませんが、やはり、村上さんが最後の方にお述べになられました、附則について述べられた部分。政府は、抜本改革の内容は法の附則に盛り込んだと説明しています。しかし、実効性の担保が大臣の決意だけで実現できるとは思えません。附則の実効性が担保されないことは、九八年の国保法等の改正時の附則を政府みずから裏切ったことになるというようなことを言われているんですけれども、大臣に聞いたのがもしかしたら間違いだったかもしれません。
 当時の政府・与党であります自由民主党さん、宮路副大臣、いかがでしょうか。公約違反ということ、そして無責任ということ、ここに尽きる部分がありますけれども。そして、まさに附則の部分で書かれていたことが、担保といっても実行されなかった、これはまさに公約違反じゃないかということを言っている。ここが不信感を生んでいる大もとにもなっていると思いますけれども、自由民主党さんの所属であります宮路副大臣、いかがお考えになりますでしょうか。
宮路副大臣 佐藤委員御指摘のその問題、もうことしの予算委員会の段階から本当に大きな議論を呼んで今日に至っておるわけであります。予算委員会の席で、私も陪席をしておったわけでありますが、どうして過去の改革がずっと先送りになって今日に至ったのかということについて、いろいろと今、鈴木先生からもちょっとお教えいただきましたが、薬価の問題とか一割負担の問題とか、あるいは病院の機能分担の問題、こういったことをいろいろやっておるわけでありますが、にもかかわらず、当初予定したものからすると、必ずしもそれが十分達成できなかった。
 その理由は那辺にありやということで、小泉総理が、政権の枠組みがその都度その都度いろいろと変わってきたということが一つの大きな背景としてそこに横たわっている、そのことも無視できない大きな事実であるという答弁がたしかあったわけであります。私どもも、一時は野党になったり、その後また与党になったりということで、また与党の枠組みもいろいろと変わってきているということでありまして、その辺が確かに私も一つの大きな要因じゃないかなということを思いますときに、やはりこれは、政治家の責任、大きなものがあるな、こう思うわけであります。
 今回は、おかげさまで、附則の中にしっかりと、単に改革要綱だとかなんとかいうレベルではなくて、法律の中にきちっと書いていただいておるわけでありまして、そのことが議論されてそして国会で成立するならば、これは国会がそのことについて責任を負うということになってくるわけでありますので、従来のものよりもさらに重みのあるそういう附則である、改革に向けての考え方であると申しましょうか、方針であるというふうに、私ども重くこれを受けとめていかなきゃならない、政府としてだけでなくて、政治家として重く受けとめて、この問題に前進をすべく努力していかなきゃならない、そういうことに今回はなっていくのではないかな、かように思っておるところであります。
佐藤(公)委員 では、宮路副大臣、お尋ねします。前回の抜本改革の公約は、約束を破りましたということでございますね。
宮路副大臣 今申し上げたように、中には幾つか大いなる前進を見たものもあるわけでありまして、したがって、一〇〇%やったかと言われると、確かにそうじゃないことがあるかもしれない。だけれども、一歩一歩着実な前進を見せているということは、私はこれは紛れもない事実だろうというふうに思います。
 しかし、今度はそこは、さらに法の附則にきちっと書きとめていただいて、そして国会でこれを成立させていただくということになるならば、もっともっと我々のそうした改革に向けての責任は一層大きなものになっていくに違いない、このように思っておるところであります。
佐藤(公)委員 なかなか、公約違反をいたしましたと自分で言うことは、勇気の要ることだと思います。なかなか言えないのだと思いますけれども。
 きのう、日本医師会の青柳副会長がいらっしゃいまして、いろいろなことをおっしゃられておりました。そういう中で、幾つか、今の話にも関連をするんですけれども、「十二月の予算編成を前にして、制度改革の提案が明らかになってまいりました。しかし、本来的な制度改革の視点がどこか隅に追いやられた内容でございます。特に、平成十四年度あるいは十五年度の財源収支をどうするかという、そこに焦点が当てられた提案内容だった、私はそのように考えております。」医療構造改革の提案においての、こういうコメントがございました。
 私が思うことは、やはり今回の法律改正というのは、まさに財源ということで、大臣もおっしゃられておりましたけれども、帳じり合わせのことばかりが先行された、まさに裏づけとしてこういうふうにおっしゃられているんじゃないかというふうに思います。抜本改革なんというよりも、とりあえず財政、財源議論ということで、そこを何とかしなきゃ、これは大臣も今までおっしゃられていることですけれども。抜本改革なんか隅に追いやられちゃった状態で一年が過ぎ去ってしまった、こんな感じを受けるんですけれども、大臣、いかがでしょうか、これに関しては。
坂口国務大臣 抜本改革が大事なことは、先ほども述べたとおりでございます。しかし、財政問題も大変大事な問題であることは間違いございません。
 そして、抜本改革をやるということは、ややもいたしますと、抜本改革をやりますと財源的にはそれで何かが生まれてくる錯覚を受けるわけであります。しかし、抜本改革というのは、それによってむだを省いていくということもそれは当然ありますし、そこから、むだを省いた、財源をそこから生み出すということもあり得るというふうに思いますが、一方におきまして、足らざるところは補っていかなければならないわけでありますから、抜本改革をすることによって財政的にゆとりが出るという保証は私はないというふうに思っております。
 したがいまして、抜本改革は抜本改革として、むだを省き、公正を図り、そして現代だけではなくて次代のことも考えていく、そうした抜本改革を実現していかなければならないというふうに思いますけれども、財政問題は財政問題として、やはり議論を重ねていかなければならないし、考えていかなければならない。
 いつも申し上げておりますように、それは税でお願いをするか、あるいは保険料でお願いをするか、それとも自己負担でお願いをするか、さもなくば、医療機関に対しまして節減をお願いするか、これ以外に道はないわけでありますから、そうした中で考えていく以外にございません。
 とりわけ、これだけの高齢者医療が、だんだんと、年々歳々これはかさんでくるわけでありますから、そのことを考えますと、早い時期にやはり財政問題も考えておく必要があると考えております。
佐藤(公)委員 これはもう今までも何回も議論してきて、平行線のままであり、その順番、手順、そして、やはりすりかえられちゃっているような感じがいつもいたします。
 そういう、まさに自由民主党をバックアップしている日本医師会の副会長が、最後のところにもこんなこともおっしゃられていますよね。「今回の法案の附則の中で取り上げられました幾つかの抜本改革に向けた取り組み、これについては、私どもも全く共通認識を持っております。しかし、過去、私どもは非常に苦い経験を持っております。つまり、文章化されたものがいつ実現されるのか、どういう道筋で具体化されるのか、これは、過去数年間、私どもとしては非常に期待した部分でございますけれども、」こんな文言が、文章があります。
 大変な、自由民主党さんをバックアップしている医師会さんすら、今の政府、そして自民党さんに不信感を抱いている一文ではあるようにも思えます。
 そして、そこを、最後に、ここにおられる国民の代表である議員さんが、やはり方向性を間違わないで今後の医療制度改革を進めていただきたい、これを最後に申し述べまして、私の意見陳述を終わります、こういうことでございました。方向性を間違わないで今後の医療制度改革を進めていただきたいと。
 私は、まさに、この議会のあり方とか公約違反とか無責任さ、今の現状というのは全く間違った方向に行っている、もしくは危険性が高い、こういう意味で、抜本改革の議論をきちんとして、また提示をして、その上で今回の改正案というものを議論していくべきだというふうに思います。これは私の前の委員各位、皆さん方がもう御発言されたことですけれども、つくづくそういうことを思うわけでございます。
 そういう中で、日本医師会の副会長の青柳さんが、私の質問に対してこうも答えていらっしゃるんです。青柳副会長に、では、改革というものをやる、抜本改革をやる、その将来、目的、ビジョン、きちんとした明確なものがあってやはり改革をしていくのであれば、まさに坂口大臣が九七年のときの委員会でおっしゃった、東に進むか西に進むかわからない、これじゃ困るということの、東か西かということでもはっきりしてくることだと思います。では、今、現状、この改革をするに際して、日本医師会さんは、今、政府・与党、そして政府である小泉さんたちがどんな青写真とビジョンを描いた国家のあるべき姿、国家像、そして社会保障制度、そして医療というものを、どんな目的とビジョンを持って進められているのかというお話を聞かせていただきたいというお話をいたしましたら、青柳副会長は何とおっしゃられたかといいましたらば、時間があったらその辺を小泉総理とひざを突き合わせて確認してみたい、自分のビジョンを話してみたい、聞いてみたい、こういうことをおっしゃいました。
 日本医師会、これだけの団体の幹部という方が、今、政府・与党の、そして小泉総理の、将来における日本の青写真もビジョンもわからないのに、賛成だの反対だの言っていること自体、私は間違いなんではないかと。
 私も、今の財政破綻の状況はわかっているつもりです。ですから、何とかしなきゃいけない。だけれども、そこら辺をきちんと明確にして、だれが、どういう形で、意識改革をし、負担をしていくのか、きちんと議論していけばいいと私は思っております。しかし、そういうことを飛ばして、ただこれを、金がないから頼むという、抜本改革もきちんとこれからやるから、もう二回目だけれども、ちゃんとこの次はやるからというのは、もう何回も言いますが、虫がいい話ではないかと思いますが。
 青柳副会長が、早い話が、小泉総理、今の内閣の将来のビジョンは、日本の青写真がわからない、知らないということをおっしゃられました。これについて、坂口厚生労働大臣、いかが思われますか。
坂口国務大臣 昨日の佐藤議員の質問に対しまして青柳参考人は、全体としましては、修正してもらいたい点もあるが、基本的なスタンスとしては成立させるべきだ、こういうことをまず述べておみえになる。先生言われませんでしたけれども、述べておみえになる。そして、今後のビジョンにつきましては、医師会としては医療に関してのビジョンを提案しているので委員会などで取り上げてもらいたい、こういうふうに述べておみえになる。
 医師会は医師会としての御意見をお持ちだろうというふうに思います。医師会は、医療ということだけを中心にして考え、そして医療を行う側としての御意見をお持ちであることも十分に存じ上げております。しかし、政府は、医療のことも考えなければならないけれども、そのほかの経済全体のこともやはり考えていかなければならない、トータルで物を考えていかなければならない。
 もちろん、医療を行っている皆さん方でありますから、その御意見は十分に聞かなければならないというふうに思っておりますけれども、しかし、それぞれの立場の皆さん、例えば医師会の皆さんあるいはまた健保連の皆さん、それぞれお立場はあると思います。また、連合の皆さん方の御意見もある。その御意見は聞かせてはいただきますけれども、それを聞いた上でトータルでどう考えていくかということは政府が考えていかなければならないことでありますから、そこは私たちも十分にわきまえてやっていかなければならないというふうに思っております。
 今後の抜本改革のことにつきましても、もちろん、これは関係者の皆さん方の御意見をお聞きすることになるだろうというふうに思います。医師会の皆さん方の御意見、健保連の御意見あるいは連合の御意見等々につきましてもお伺いをすることになるというふうに思っております。
佐藤(公)委員 私が言っていることは、大臣、随分前、委員会でも聞きました、小泉総理の国家像、国家がどうあるべき姿というのをお持ちなんでしょうか、御存じなんですかと言ったらば、大臣も副大臣も、あります、わかっていますということをおっしゃいました。しかし、副会長青柳参考人は、あるのかないのか、極端なことを言ったらわからない、どんなものを持っているのかもよくわからないというふうにおっしゃられた。それでどうやってこれからのまさに医療、社会保障制度、こういったものが、日本医師会という大きな団体で、社会的にも影響を及ぼす団体の幹部がわからないで、ただ修正だのあれだのと言ったら、まさに帳じり合わせということを認めているようなものじゃないですか。抜本改革をするということであれば、本来そういったことから議論をして積み重ねていくべきこと。では、この五年間何をやっていたのかということにもなると思います。
 宮路副大臣、今話をじっと聞いていただいておりますけれども、こういった青柳参考人の話に対してどう思われますか。
宮路副大臣 今、私、きのうの佐藤議員の青柳参考人に対する御質問をなさったやりとりの、言ってみれば議事録と申しますか、それをちょっと拝見をいたしておるわけでありますが、その中で佐藤議員が青柳参考人に、青写真、ビジョンがわからないけれどもそれはどうなんだということに対して青柳参考人が、御自分としては答える立場にない、こういうことを言っておられるようであります。
 しかしながら、我々は、小泉政権のもとでこうして政府として今回の改正法案を提出させていただいておるわけでありまして、その中にあって、御指摘のように、今まで改革として見送られてきたあるいは実現しなかったと言ってもいいそういう項目も含めて、従来にない、思い切った、本当に抜本改革の名にふさわしい、そういう項目をしっかりと提示して、そしてしかも期限を切って、計画をつくってちゃんとやっていくんだ、こういうことを言わせていただいておるわけでありまして、これは従来にない改革に向けての意欲を小泉政権として、また厚生労働省として示させていただいているというふうに御理解をいただきたいと思うわけであります。
 そして、今回の改正法案が、長きにわたる御審議をいただいてそして成立した暁には、現在既に準備のための作業をやっておるわけでありますが、ますますその改革に向けて邁進のピッチを高めていきたい、こういうふうに思っているところでありますので、よろしく御指導と御鞭撻を賜りたい、このように思う次第であります。
佐藤(公)委員 大変失礼な言い方をすれば、ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うなんという形の議論になってきちゃいますけれども、僕は、やはりきのうの参考人に関して、お二人とも、十分とまではいかなくても、見ているという、聞いているということをおっしゃられたので、私はこういうことを少し聞かせていただいているんです。
 こういう部分が報告が漏れていたのかもしれませんが、私は、きのうの参考人の、あれだけの方々がいらっしゃっておっしゃられていることを本当に一つ一つもう一回見直してください。そして、いい意見もあり、今までと同じ意見もあるかもしれませんけれども、やはりそれほど真剣に議論をしていただきたい。私たちの思いをわかっていただきたいと思います。
 本当に青柳参考人のことに関しては、まさに最後に、そういったビジョンに関して、日本のあるべき姿に関して、それを確認するために小泉総理と数時間ひざを交えてお話をしたい、そのようにお答えをさせていただきますと。もう全然わかっていないということになるんじゃないかというふうに私は思います。
 そういう中で、きのう、村上副事務局長のお話の中で、私も前回の委員会で指摘をさせていただいております、ほかの委員からもさせていただいておりますけれども、やはり経済や景気における影響というものが同じような状況、まさに九七年そして九八年に影響を受けた、大変な大打撃を受けた、そういうようなことをもう一度やるんですかということを聞かせていただきましたが、経済に対する影響ということもいろいろと指摘している部分がございます。
 そして、こういう中で、これはまさに今までの議論が余りなかったのかなと思うんですが、局長、ちょっと聞いておいてください。これは高齢者医療についてです。
 老人医療費のみの抑制策ではなく、医療費の総額抑制策を導入すべきであると主張してきました。ところが、昨年九月の厚生労働省の試案で、老人医療費の伸び率管理制度の導入が盛り込まれました。その後、具体的な内容が示されるものと思っておりましたが、伸び率管理制度は政府・与党の医療制度改革大綱において後退し、今改正案では単なる指針での助言と全く骨抜きとなってしまいました。政府提案の老人医療費の抑制策は一体どうなったのでしょうか。
 というような疑問が、ここで、きのうの参考人で投げかけられております。
 大臣、お答えになられるのであれば答えてください。副大臣でも結構です。どうしても答えられないというのでしたら、局長でも結構です。この答えはどのようなものをお考えになられているのか。きのうの参考人の方々のおっしゃられた内容です。一つ一つ真剣に受けとめてください。いかがでしょうか。
大塚政府参考人 今回の医療制度改革に至る過程の一つの特徴は、昨年の秋に厚生労働省試案という形で、秋の段階で厚生労働省としての一つの考え方をお示しいたしまして、与党はもちろんのこと、幅広く御議論をいただいたという手順をとったことが一つの特徴だと私ども思っております。
 この厚生労働省試案の中でさまざまなことを盛り込んだわけでございますが、その一つに、今御指摘の伸び率管理制度というのを案として、たたき台として盛り込みました。実は、これは、さまざまな議論の中で最大の論点の一つになったわけでございます。もちろん、賛否両論という意味での議論の対象になりました。
 私どもの基本的な考え方は、今日の医療の伸びの、少なくともここ近年の過半といいましょうか大宗は高齢者医療費です。しかしながら、一方で人口の高齢化が進むわけですから、老人医療費の伸びはどうしても避けられない。しかしながら、経済の今日の基調から考えますと、老人人口の増による医療費の増は避けられないけれども、老人医療費の全体としての総量はもう少し伸びを適正化しなければいけない。それが医療保険財政の安定化ひいては制度の安定化につながる、こういう案を考えまして、その具体的な手法として伸び率管理制度というのをお示ししたわけでございます。
 中身は御案内と思いますので詳細は省きますけれども、これにつきましては、もちろん、やるべしという御意見も、今お話にございましたように、さらにもっと強い形でやれという御意見もないではありませんでしたが、むしろ大宗は、高齢者の医療費の伸びを適正なものにするという考え方は必要だけれども、その手法として非常に強圧的というような御批判もいただきましたが、機械的、一律に、医療の質というようなこともなかなか考慮できないような仕組みではないかというあたりを中心に厳しい御意見が強かったわけでございます。
 私どもとしては、一つの考え方としてお示しをしましたが、与党あるいはその他関係審議会も含めた幅広い御議論の中で、基本的には、高齢者医療費の問題が課題だということが一つ。その手法としてはさまざまな手法がある中で、伸び率管理制度というものにつきましては、少なくとも公の場での議論では賛同を得られなかったということが一つ。
 したがいまして、両方の状況の中から、それでは都道府県、市町村の御協力も得て、むしろ医療の質も確保しながら少し長い目で取り組むというような意味合いも含めて、老人医療費の伸び率の指針というものを厚生大臣が策定をして、それに従いまして、都道府県、市町村のみならず保険者あるいはその他幅広く国民一般も御協力を得て、この高齢者の医療費問題に取り組んでいこう。形としてはソフトでございますけれども、基本的な趣旨は同様ということでこういう形に今切りかえたわけでございます。
 昨日の参考人の御意見の中で、引き続きましてこの問題に対する賛否のお立場からの御意見があったことは私どもも承知をしておりますが、一連の経過を申し上げれば、少々長くなりまして恐縮でございましたが、そういった経過で、今回御提案の中に伸び率管理の指針という形で盛り込んでいるということでございます。
佐藤(公)委員 私は、本当に今のお答え、大変御丁寧に、それも事前通告もせずしてお答えいただいたことを本当にありがたく思いますけれども、今のお話を聞いている限り、本当に先送りの状態、本当にまじめに抜本改革の議論をしていこうというふうには余り思えない部分があるようにも思えます。果たして今のお答えで村上参考人が御納得するのかどうか、私はするとは思えませんが、とりあえずお答えを聞かせていただきました。
 私が言いたかったことは、今回の参考人にしてもこの委員会のあり方についても、非常に形骸化をしている部分があるのではないかということ。やはり、参考人の皆さん方にここに来ていただいて、それだけのもので質疑をしたのであれば、この次はやはり大臣や副大臣を交えてそれに関しての議論をもう一度していく、こういうことがとても大事なことだと思います。そういうことを今後やはり当委員会でも各自がみんなが考えていかなきゃいけないことだと思います。
 済みません、とか言っている間に事前通告に入らせていただきます。骨太の方針をいろいろと聞きたいんですけれども、いつまでたっても終わらない部分があるので、ちょっと具体的なところから少し入らせていただきます。
 先ほどのお話の中にもあったこと、そこまで行けるかどうかわかりませんけれども、今リバースモーゲージ制度、この前は、地方における医療改革のいろいろな知恵を絞りながらで、ICカード、こういったものを使っての医療費の抑制、こういったものを考えてやっていった事例を幾つか挙げさせていただきましたが、この次はやはり、地方自治体が今一生懸命頑張っている制度の一つでリバースモーゲージ制度というのがございます。ちょっと聞きなれない方、傍聴の方もいらっしゃいますので、担当局長、簡単でいいですけれども、どんなものかちょっとだけ御説明願えればありがたいと思います。
石本政府参考人 今御指摘のリバースモーゲージと申しますのは、住宅とか土地を担保に継続して資金の融資を受け、死亡時に土地、住宅の売却によって一括返済を行うという仕組みでございまして、通常、私ども住宅、土地を購入する場合に、最初に一括して融資を受けまして、その後返済を継続して債務を減少させていく、いわゆる、モーゲージというのは抵当でございますが、このモーゲージローンの逆の仕組みだというふうに考えております。
佐藤(公)委員 今の御説明でもわかりにくい方もいらっしゃるかと思いますけれども、要は、お年寄りの方々、資産のある方とない方がいらっしゃいます。資産のある方で家や土地を持たれている方々、資産があってもお金がない方々。お金がない方々にそれを担保にお金をお貸しする、払っていく。そして、お年寄りの方々が亡くなられたという言い方がいいのかどうかわかりませんが、途中でもいろいろな方法論がありますが、亡くなった時点で全部清算する。その土地や家を売却する、またそれを買い取る、またお金を返す、こういった方式をとる制度だというふうに私は思っております。
 そのリバースモーゲージに関して、各地方自治体で全部で何カ所ですか、十数カ所おやりになられているということで今動いておりますけれども、この現状に関して、担当局長はどのように報告もしくは現状分析されていますでしょうか。
石本政府参考人 お答えいたします。
 このリバースモーゲージ、政府全体の中で主に担っておられますのは内閣府でございますが、特に厚生労働省の立場から申し上げますと、高齢者の老後において高資産低所得という概念があるとすれば、資産はある、だけれども日ごろの生活費が足りないんだとおっしゃるお年寄りが結構ございます。こういった方々が高齢期においても安心して生活し、また、ある意味では、特に相続においてそう残すこともないというふうなケースも結構あるようでございまして、そういう場合に、私どもとしても、高齢者の生活を年金中心に賄っていただいているわけでございますけれども、そうはいえ、さまざまなその他の生活費もございます。
 そういう意味では、特に地方におきまして、地方も公的プランと私的プランというのがあるのですが、公的プランでいえば、先ほど先生、御案内かと思いますが、例えば武蔵野市の福祉公社、融資件数、二〇〇〇年二月でございますが、八十四件ございますし、また、世田谷区のふれあい公社、これが二十一件、新宿区の社会福祉協議会十三件、それから民間でございますが、これは地域は特定できませんが、ほとんどの信託銀行で民間プランを発行されているというふうに承知しております。
佐藤(公)委員 もう時間が余りないので、こちらの方が先にどんどん話をさせていただきますけれども、実際問題、このリバースモーゲージ制度において、ホームページ、新聞等でも、厚生労働省はこの制度を都道府県の社会福祉協議会を通じて全国に普及を図ることとし、二〇〇二年度予算に補助金を盛り込む、現行の生活福祉資金貸付制度の一部門として行う、非常に積極的に取り組んでいくと。内閣府ということも先ほどおっしゃられましたけれども、私は、こういう制度は非常にいい制度だというふうに思っております。
 ただし、御存じのように、お年寄りでも、資産もなく所得もなく、やはり預金もなく、こういう方々、資産がまだあるだけ本当にありがたいという部分があるかもしれませんけれども、資産があってもこの次に生活をしていくその所得、低所得ということを先ほどおっしゃられましたけれども、そういう方々にある程度限定しますけれども、本当に、私は歩いていてこういうお年寄りが割と多いことを改めて感じました。
 家は持っている、土地は持っている、でも今さらこれを売ってどうのこうのということもできない、それでお金が、年金生活者だけれども年金も余りない。そういうところで、本当に今回のような健康保険法の改正をして、国民に痛みを強いる、負担を強いるようなこと。やはり、こういった一つ一つの制度をきちんと確立させてからやっていく。また、こういうものを、きちんとまさに抜本改革、まさに社会のあるべき姿ということの一つとして、こういったものを充実させていくことが先ではないかと私は思います。
 現段階、地方自治体においてやっているところは幾つかございますが、どれもこれもこれまた先細りです。当然のようなことですけれども、不動産価値の変動とか下落リスク、また金利変動のリスク、また、大変これは失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、長生き、お年寄りの方がどれぐらい寿命があられるかということがわからない。この三つが大きな理由で先細りの状態だということでございます。
 やはり、こういった制度をやっていくためには、国の大胆な介入もしくは後ろ盾がないことには、なかなか進まない制度だと思いますが、地方自治体はそういうことを一生懸命頑張ってやろうとしている、でも先細り。当然のように、今言ったように、不動産の価値の変動とか金利リスク、こういったものが絡んできたらば、もう地方ではどうにもできない状況。
 でも、私は電話をしたりいろいろな方々にも意見を聞きましたけれども、だれもがやはり、こういったものを気軽に、また手続上の複雑さもありますけれども、手軽に安心して使えるような制度があったらいいということをみんな言っております。こういう制度の確立、より一層の推進、こういったものが、私たちがいつも言っている日本のあるべきいろいろな姿を語ることになってくるかと思いますが、この制度に関して、大臣、いかがお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 リバースモーゲージにつきましては、一昨年ぐらいでしたか、かなり真剣にいろいろと勉強をした経緯がございます。これは、なかなか魅力的な制度ではありますけれども、しかし、行いますためには、乗り越えなければならない幾つかの点があることも事実でございまして、それらのことを総合的に考えないとなかなか実現は難しい。地方自治体でおやりになるという場合に、これも一つ、その地方自治体以外にもしも将来移られたときに一体どうなるかというような問題もあったりいたしまして、これも検討しなければならない課題が多いということも聞いているわけでございます。
 しかし今後、落ちついた経済状況になってくれば、将来の一つの社会保障を考えていきます上でも、リバースモーゲージというのは十分な検討に値する内容であるというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。
 もう時間がございませんが、最後に、先ほど大臣が、きのうの参考人の村上副事務局長の内容の中で、九七年当時は賛成をされていたんじゃないかということもおっしゃられましたけれども、私はその辺わかりません。わかりませんが、そういうことを、賛成、反対よりも、まずきちんと抜本改革をやるということが前提での話、これがない限りはすべて話がなかったことになると思います。その辺をよく考えて、大臣、副大臣、考え直してください。お願いいたします。
 以上でございます。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 昨日、健康保険法等改正案に対する六名の参考人の意見を聞きました。一番印象に残ったのは、与党推薦の三名の方からも今回の改正案に対する批判が相次いだことであります。中でも、最も自民党寄りと見られている日本医師会代表が厳しかった。
 私はここに、四月二十三日、日本医師会が「健康保険法等の一部改正法案の上程に際して」という表題で発表した声明を持っております。この声明は、冒頭に、今国会において、健康保険法等の一部を改正する法律案が上程され審議に入ったが、日本医師会としては、以下の理由で同法案の成立に断固反対する意思を改めて表明すると述べ、反対する理由として、第一に、高齢者の患者負担定率化及び自己負担限度の引き上げを挙げ、高齢者は既に応分以上の負担をしており、現行以上の自己負担増を行う客観的理由はないと説明を加えております。
 第二に、被用者保険の三割負担導入を挙げ、医療保険財源における家計負担の占める割合は年々増加傾向にあり、既に四五%に達している、本法案が通過、施行されれば、家計負担割合は五〇%に達することが予想され、長引く経済不況で逼迫している家計の悪化は火を見るよりも明らかであると説明を加えております。きのうも、この二点の反対理由の趣旨をほぼこのとおり述べられております。
 大臣に、まず伺いたい。日医のような有力団体が、今の時点でも法案上程当時とほぼ同じ見解をここで表明したということは、本委員会である程度審議が行われたといっても、問題点がほとんど解明されていないということのあらわれではないかと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 医師会は医師会としての御意見をお持ちでございますが、自民党の皆さん方も、その医師会のおっしゃることはおっしゃることとして、そして、今後やらなければならない道をやはりお考えになったわけでありますし、私たちもまたそうであります。
 医師会の皆さん方がおっしゃるのは、やはり医療機関としての立場からおっしゃっているわけでありますから、十分耳を傾けるところは耳を傾けなければなりませんし、しかし、全部それを採用するということになれば、また一方から大きな反撃を受けることにもなり得る。やはり聞くべきことと、そして今後慎重に行かなければならないところと、十分そこはわきまえていかなければならないところでございます。
小沢(和)委員 いや、私は、この日医の問題にしている点がまだ十分解明されていないんじゃないかということを指摘したんです。どうも今の言葉では、ちょっと答弁になっていないというふうに思います。
 野党推薦の三名の方の意見は、さらに手厳しかったわけであります。特に労働組合連合の代表は、彼らの試算によると、今回の改正による国民の負担増は、私たちが政府の説明に基づいて言っている一兆五千億円をはるかに超え、今後の五年を平均すると二兆円以上に達するとし、国民へのこれ以上の負担増は、社会保障に対する信頼を根本から揺るがすと述べられました。さらに、小泉首相が言う三方一両損は言い方が間違っている、肝心の国が三方の中に入っていない、国の政管健保の負担率を一三%から一六・四%に戻すべきだと主張されました。
 前回の当委員会で政府は、窓口負担や保険料が上がっても、診療報酬の引き下げは国民にプラスになるので、差し引きすれば実質的な国民の負担増は大したことはないように説明をいたしました。連合が試算したように、負担増が二兆円以上にもなるのなら、政府のこういう説明は全く成り立たないのではないでしょうか。こういう重大な問題もまだ解明されていないと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 村上さんが昨日答えました二兆円というのは、どういう試算根拠に基づいているのかちょっとよくわかりません。しかし、我々が主張いたしておりますのは、平成十五年度から平成十六年度の単年度平均で五千七百億円の引き上げになる、これは保険料の話でございます。
 それから、患者負担といたしましては、平成十五年度から平成十九年度の単年度平均で四千八百億円の引き上げになる。これは我々が主張しているところでございますが、村上さんがどういう根拠で言っているのかということがちょっとよくわかりませんから、答弁のしようがございません。
小沢(和)委員 だから、私は、まだ解明すべき問題がこのようにたくさん残っているではないかというふうに言っているわけです。
 今、私は、きのうの日医と連合の意見の一部を紹介いたしましたが、そのほかにも多くの新しい主張や論点が出されており、引き続き当委員会で慎重に審議を続けなければならないということの必要性が明らかになったと思います。
 今回の健保法等改正案に対する世論の反対はますます強まっております。既に国会には反対の請願署名が二千五百万以上届けられている。これは、有権者四人に一人が署名したことを示しております。地方議会の患者負担増反対の意見書は、今月七日現在五百七十七議会に達している。これは、地方自治体全体の二割に近い数であります。中でも福島県では、県下市町村の三分の二近い五十七議会で既に反対意見書を決議している。先日のテレビ番組「サンデープロジェクト」で世論調査結果が報じられておりますが、賛成二三・四%に対し反対五七・八%と、二・五倍の圧倒的大差で反対が多かった。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、これが今の世論の大勢ではないのか、賛成の方が多いという調査結果が一つでもあるのか、これを無視して審議を打ち切るということは許されるのか。本委員会ではあすも地方公聴会が予定されております。ここでも新しい意見がいろいろ出てくるでしょう。それも含めて引き続き審議を行うのが当然ではないでしょうか。
坂口国務大臣 いろいろの御意見があることは十分に存じております。特に、現状だけを見ましたときには、やはり皆さんそれは反対だというふうにおっしゃるでしょう。
 けさもその「サンデープロジェクト」のお話、申し上げましたとおり、現状の中で個人負担を上げることが賛成か反対かといえば、それはやはり反対の人が多いのは私は当然だと思う。しかし、そこは聞き方の問題であって、今後、医療費がたくさん要りますが、保険料の引き上げでいきますか、それとも自己負担でいきますか、それとも両方を見ていきますかという聞き方をしていただければ、私は違う結果が出てくるというふうに思う。現実は、私は、そういう問題ではないかというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 大臣がそう言われるならもう一遍お尋ねしますが、政府に好意的なマスコミだってあるわけですよ。だから、そういうところで、今大臣が言われたように設問をちょっと変えたら結果が違ったようなものが出るのか、実際そういうような、今私が指摘したようなのとちょっとでも違うような傾向の数字があったらお示しいただきたい。
坂口国務大臣 残念ながら、今私の手元にはございません。
小沢(和)委員 要するに、改悪をしてよろしいというような世論調査の結果はないということです。
 会期末の六月十九日はもう目前に迫っております。いまだに重要法案が一つも衆議院さえ通過せず、成立のめども立たないという状況に焦った与党は、会期を大幅に延長しようとしております。同時に、一つでもまずめどをつけようと、マスコミの報道などでは、十四日には本委員会で健保法等改正案の採決を強行する動きがあると伝えられております。
 しかし、ワールドカップサッカーなどでの日本の決勝進出をかけた一戦に国民の目が奪われている、そのどさくさにこのような重要法案の採決を強行するようなことは、私は、断じて許されないと思います。私たち野党は、会期制度の趣旨を踏みにじるような会期延長そのものに反対し、十九日に閉会し、本法案をきっぱり廃案にすることを強く要求いたします。少なくとも、まだろくに問題点が解明されていないのに、採決などは決して強行してはなりません。
 大臣は、このような与党三党の伝えられる動きについてどうお思いですか。
坂口国務大臣 いろいろと委員会は委員会で御議論をいただいておりますから、御議論の結果を尊重したいと思います。
小沢(和)委員 以上のことを申し上げた上で、本日は、健康増進法案を中心にお尋ねをいたします。
 まず問題なのは、その健康増進の主な責任を国民に押しつけていることであります。
 本法案は、第二条で、国民に対し、「健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。」と努力を求めております。その一方、国や地方自治体には、その次の第三条に、健康の増進に関する知識の普及や情報の提供などの努力義務を課しているだけであります。
 この法案は、医療費の大きな部分を占めております高血圧、脳卒中、がん、糖尿病などは、国民の中に悪い生活習慣が広がった結果ふえている、それを改めさせることで病気を減らし、医療費を引き下げようという発想でつくられているのではありませんか。そういう考え方だから、今回の健保法改正案と一緒に、それと一体のものとして提案されているのではないか、お尋ねをします。
宮路副大臣 委員御案内のように、健康問題といいますのは、これはもうそれぞれの個人個人が一番自分の体のことや健康のことは知っておられるし、また、関心を持っておるわけでありますから、まずは国民一人一人がみずからの問題として主体的に健康問題では取り組んでいただく、これが私は原則である、私はといいましょうか、国としても、厚生労働省としてもそのように思っておるわけであります。
 したがって、国としては、そうした個人個人の、国民お一人お一人の健康づくりに向けての自主的な努力をどうやってお支えするか、そのための環境づくりをどうやってやっていくかということが国あるいは地方公共団体に課せられた責任である、このように思っておるわけでありまして、そういう意味で、情報提供を行ったりあるいは基盤整備を進めたりしていくのが国の務めであるわけであります。
 こういった考え方に基づきまして、今御指摘の健康増進法第二条においても「国民の責務」というような言葉を使わせていただいているわけでありますが、国民一人一人の自覚を促すと言ってはなんでありますが、自覚をしていただいて、そして努力を払っていただきたい。こういう願いを込めてこうした規定を設けさせていただいておるところでありまして、似たような規定は、例えば介護保険法でもそういう規定を設けておりますし、また、母子保健法の世界においてもそういった規定を設けさせていただいておるところでありまして、これは決して、そうした健康づくりについての責任を国民に押しつける、そういうたぐいのものではないということで御理解を賜りたいと思います。
小沢(和)委員 数年前から、厚生労働省が音頭をとって、成人病を生活習慣病というふうに言い方を変えるようにしました。そのこと自体が私は世論誘導だったと思うんです。これだと、病気になるのは悪い生活習慣に染まった国民自身だということになります。
 しかし、私は、今日国民の健康状態が悪化しているのは、一人一人の努力だけではどうにもならない労働条件や生活環境の悪化などの要因が余りに大きいと考えます。この長期不況の中で、多くの労働者や中小業者は、常に失業、倒産などの不安につきまとわれ、リストラを免れるために長時間残業や休日出勤もしなければならない。過労死という日本語が残念ながら国際的に通用する状況であります。こういう状況では、高血圧や脳卒中もふえるはずです。また、労働の形態が変わり、体を余り動かさず神経だけを張り詰めさせるIT化の進展などが、肥満、糖尿病の多発にも結びついている。こういう状況の変化を無視して、本人だけに責任を押しつけることは許されないのではないでしょうか。
宮路副大臣 今の御指摘は、不況の中で労働条件もいろいろ悪化している、そういう中で国民の運動不足の問題も起こっている、そのことが生活習慣病がふえている原因ではないか、こういう御指摘であるわけであります。
 私ども、調査した結果では、運動の関係でありますが、運動習慣者の推移というのを統計をとっておるわけでありますけれども、この十年間の推移を私どもの国民栄養調査から出してみますと、この十年間で運動習慣者の割合というものは着実に年々上がってきている、そういう結果が出ておるわけであります。運動習慣者といいますのは、運動の実施頻度として週二回以上あるいは三十分以上とか、そういうのを定義してそういう統計をとっておるわけでありますが、そういう結果が出ております。
 したがって、近年運動習慣のある人の割合が低下傾向という指摘は、私どものそうした調査結果からは読み取れないということであります。
 健康増進法の中におきましても、健康づくりのために運動をする、あるいは休暇をとる、こういうことは大切なことであるわけでありますので、健康増進法に基づく基本方針、これは厚生労働大臣が定めることになっておるわけでありますが、その中におきましても、休日、休暇を活用した健康増進のための活動の促進や、あるいは休養の重要性等といったものについてはしっかりとそれを盛り込んだ上で、関係団体等の幅広い協力をいただきながら、総合的な生活習慣病対策を進めていきたい、このように考えております。
小沢(和)委員 今、運動を習慣にしているような人が着実にふえているというお話がありました。しかし、私が指摘したのは、労働条件が悪化して、机にくぎづけになって、ずうっと一日仕事をしている、労働時間が終わってからもなお長時間残業で、そこにくぎづけになっている、もう日曜日はぐったりしてひっくり返って寝ておく以外ない、こういうような人たちが運動不足になっている。しかも、日本人の男性は今ほとんど、ずっと太りつつあるでしょう。結局、そういうようなことがこの生活習慣病の背景にあっているんじゃないかということを言っているわけであります。
 それで、次に行きますけれども、そういう健康増進のために必要な経費の問題についても、厚生労働省は本人がもっと負担すべきだという発言をしておるんです。週刊保健衛生ニュースの新年合併号の対談で、下田健康局長がこう述べている。今までのやり方は、比較的、すべて国が用意をして、あるいは市町村が用意をし、どうぞどうぞとやった、今後は、本当に各種のサービスを必要とする人は自分である程度の費用負担もしていただく、そういうことは必要だろうと思っています、これは今仕組んでいる最中ですので、これ以上はちょっと控えさせていただきますが云々と、こういう発言をしている。
 当時は法案作成中なので余りあからさまに言うのは控えたのかもしれませんが、この法案の中に本人に負担をさせる仕掛けをどう仕組んでいるのか、お教えいただきたい。
    〔委員長退席、福島委員長代理着席〕
下田政府参考人 健康を実現するということは、もともと個人の健康観に基づきまして一人一人が主体的に取り組む課題でありまして、国や地方公共団体はそのための支援を行うことが基本であるということだと考えております。
 この費用負担の問題につきましては、昔からいろいろなやり方がやられておりまして、例えば、私がその座談会で申し上げたかったのは、減塩教室のやり方というものでございます。減塩教室、塩を減らすという……(発言する者あり)はい。済みません、発音が悪くて恐縮でございます。
 それで、これは例えばどういうふうにやっておったかといいますと、キッチンカーを地方に回しまして、それで、公民館等を借りまして、あるいは、キッチンカーの中に調理施設がございますけれども、その中に材料等をすべて行政が用意をして持っていき、調理を実際目の前でしてやって、この料理であれば塩分はこれくらいですよというようなことを教えていったわけでございます。これはこれでかなりの成果を上げまして、脳卒中半減対策等々で成果を上げたことは事実でございます。
 ただ、今後、そのようにすべて行政が丸抱えでやっていくことが本当に成果が上がるのであろうかといった点で、問題意識を持ったということでございます。つまり、健康づくりをやる場合では、やはり本人が参加意識を持ってみずから取り組んでいただかなければその効果は長続きをしないであろうと。そういった観点から、例えば、そのようなケースの場合は、実費を御負担いただき御参加をいただくという方法もあるのではないか、そういう観点から申し上げたところでございます。
小沢(和)委員 国が、かけ声だけでなく、実際にどれだけ国民の健康保持や増進のために真剣に努力をしているのか。
 政府は、健康日本21の推進だと盛んに言うんですが、私がいただいた資料では、この関係の今年度予算は総額わずか五億七千五百万円、しかも昨年度より減っております。他局計上分を合わせれば九百六十億円もあると言うかもしれませんが、これもここ数年減り続けている。健康日本21がスタートした年からの年度ごとの予算額の推移を示していただきたい。
下田政府参考人 健康づくり関連の予算というものにつきましては、実は明確な区別があるというわけではないわけでございまして、これは、大臣がお話しになられましたように、健康づくりそのものは省を挙げて取り組むべきということでございますので、それぞれ関係するところが予算要求をしているということになってございます。
 ただし、委員御指摘のように、全体の予算としては減少していることは事実でございまして、平成十四年が九百六十億、平成十三年が一千六十九億、平成十二年は一千百十五億という状況でございました。
小沢(和)委員 だから、今言われた順序を逆にすれば、もう減ったということはよくわかるわけであります。
 わざわざ法律までつくり、国民の健康づくりとこれだけ大騒ぎをしながら、そのための予算は減らし続けている、これでどうして健康づくりが進むというのか。特に、職域における健康管理費を含む予算が大きく減っております。一昨年度の予算で七百六十四億円あったものが今年度では六百十三億円、二年間に百五十一億円も減らされている。これでリストラの悪影響から労働者の健康をどうして守れるんでしょうか。
下田政府参考人 今御指摘のように、予算が減ってきました大きな原因は、政管健保の支出の部分が減ったといったところが主たる要因でございます。
 なぜその辺が減ったかと申しますと、政管健保で行っております健康診査費用が、一般健診に重点化をし、単価の引き下げを行いつつ実施者を拡大する、あるいは四十歳、五十歳の被保険者等に対しての人間ドック形式での付加健診を実施というような内容の見直しを行ったために減ってきた、こういうことでございます。
小沢(和)委員 だから、人をふやすために単価を引き下げたりしてやりくりをしているという今苦労も伺いましたけれども、そういうようにやりくりしなければならないように予算はしながら、健康づくりといって旗を振ってもなかなか説得力がないんじゃないかと思うのですね。
 ほかの項目も同じように減らされているのです。生活習慣病対策費も一昨年度四十六億円が、今年度四十五億円になっている。だから私は、これでは仏つくって魂入れず、法律をつくっても国の取り組みが後退するのではないかと心配をしておるわけであります。私は、本当に健康増進しながら医療費を減らしたいと考えるのであれば、長野県の経験をぜひ研究すべきだと思います。
 長野県は、平均寿命は男性が全国一、女性が全国四位の長寿県でありながら、一人当たりの老人医療費は全国最低であります。これにはいろいろ理由があると思いますが、その一つが国保の三割自己負担を一割、二割などに軽減している町村が十九もあることです。全国に三千以上の市町村がありますが、このように軽減措置をとっているのは、全部で二十二しかありません。その大部分、十九町村が長野県に集中している。こうした窓口負担軽減の努力などが、安心して病院に行け、早期発見、早期治療を可能にし、結果として医療費の節減につながっているのではないかと思いますが、いかがでしょう。
大塚政府参考人 長野県が平均寿命が高く、医療費、特に老人医療費が一番低いというのはお示しのとおりでございまして、さまざまな要因はありますけれども、長野の状況をよく分析し、参考にするということは、貴重な、重要なことだろうと考えております。
 例えば、医療提供体制の面でいいますと、医療機関数、病床数、医師数は比較的少ないわけでございます。また、その反面、一人当たりの入院の場合の入院日数は少ない。あるいは保健婦活動がかねてから極めて活発である、あるいは歴史を持っている。さらには社会環境といった面からいいますと、一人暮らしのお年寄りの比率が少のうございますし、逆に就業率は高い。社会環境も恐らく大きな要因になっている。
 ただ、お示しの医療費の負担割合を下げている場合の市町村でございますが、これは逆に、そうした市町村の平均をとってみますと、お示しのと申しますのは、一部負担金を法定よりも軽減している市町村が確かにございます。しかし、そういった市町村の、長野県内の市町村の医療費の平均をとりますと、これは長野県全市町村の平均よりもやはり高うございまして、一部負担を軽減することが、数字だけで見ますと医療費を上に押し上げる要因にはなっておりますが、逆の要因には少なくとも計数上はなっていない。
 したがいまして、私どもといたしましては、医療提供体制、保健活動、社会経済環境、こういったような背景がやはり基本的な要因であり、その中から、私どもは学ぶべきものを探してまいる、こういう姿勢でいるところでございます。
小沢(和)委員 国保中央会が九七年三月に発表した、市町村における医療費の背景要因に関する報告書の中で、長野のぴんぴんころり、健康で長生きしてころりと死ぬという考え方を普及すれば、全国で二兆円削減できると注目されていると評価しております。
 いずれにしろ、だから長野の経験というのをぜひ研究していただきたいと思うのですが、この報告書では、長野県の老人医療費が低い要因として、在宅ケアの重視、高齢者就業率の高さとともに、特に自主的な保健活動が強調されております。私も、長野県の保健師の活発な活動に注目しております。長野県では、保健師の数は、人口十万人対比で全国四位、住民のほぼ二千七百人に一人が配置されている。この保健師たちが、先進的な健康指導、健康相談、健康診査など総合的な保健事業を推進している。
 国も、健康増進法制定を機に保健師の増員を計画していると聞いておりますが、どの程度のことを考えているんでしょうか。
下田政府参考人 長野県では、御指摘のように、保健婦の配置の状況が全国的に見ましても非常に高いレベルになっておるということは事実でございます。その保健婦の配置と平均寿命、どの程度の関連があると言うことはなかなか難しい。あるいは、健康に直接どうやって影響があるかという実際の相関関係はなかなか出てこないわけでございます。(小沢(和)委員「いや、もうそこはいいから、どれだけ増員を考えているかと聞いているのです」と呼ぶ)前段でその辺を述べさせていただきたかったものですから……。わかりました。
 増員につきましては、現在、全国で保健婦全体が二万八千二百七十六人おりまして、平成二年、十年前でございますが、二万四百二十二名ということでございました。したがいまして、この十年間で保健師は約八千人ふえてきております。
 今後とも、保健需要の増にかんがみまして、所要の保健師の増の要求をしていくというふうに考えております。
    〔福島委員長代理退席、委員長着席〕
小沢(和)委員 今後も増員を考えているということですから、今後に期待をしておきたいと思うのですが、全国的には、むしろ逆に、保健師の地域における活動の拠点となる保健所の統廃合などが進められている。この十年ぐらいの間に全国で保健所が何カ所統廃合されたか、政府としてこれにどう対処してこられたかをお伺いします。
下田政府参考人 保健所につきましては、基本的には二次医療圏に一カ所という目標を立てまして整理統合を進めてきておるわけでありますが、平成二年の段階では八百五十、これは都道府県あるいは特別区等々全部ひっくるめて八百五十ございましたが、現在、平成十三年現在で五百九十二カ所の保健所となっているところでございます。(小沢(和)委員「だから、政府がどう対処してきたのか」と呼ぶ)このことにつきましては、先ほど言いましたように、基本的には二次医療圏に一カ所という考え方で整備を進めていきたい、そのように考えておるところでございます。
小沢(和)委員 私がいただいた資料では、東京都や十二の政令市、地方の中核都市など大都市が特に保健所をどんどんつぶしておる。大抵のところが、市や区に一つしか残しておりません。その中でも一番極端な例の一つが、私の地元、北九州市であります。
 北九州市では、一九九六年、それまで各区ごとに置かれてきた保健所を一カ所にまとめ、各区には福祉事務所と統合した保健福祉センターを設置いたしました。それを機に、レントゲンや検査など衛生部門の大幅なリストラ、縮小が行われた。さらに、九九年には、健診業務や健康教育を医師会に委託し、ついに、ことしの四月に、保健福祉センターは各区のまちづくり推進課に吸収され消滅をいたしました。保健師たちも、まちづくり推進部生活支援課所属となり、業務の大半は公衆衛生と関係のない自治会など地域組織との調整などに当てられる状況になっております。
 このように、組織として保健所が廃止されただけでなく、公衆衛生行政そのものが大幅縮小されるような事態を厚生労働省としてはどう考えるのか。これでよいと思うのか、お尋ねをします。
下田政府参考人 ただいま北九州市を例に挙げられまして、組織改革のことをおっしゃられました。
 北九州市は組織改革を行いまして、まちづくり推進部というものをつくって、そこに地域保健業務を統括するというような改革を確かに行っております。そのまちづくり推進部の中に、地域住民との連携協力を求めるためのいろいろなセクション、あるいは保健師を置いておく、そして、地域のボランティアまたは住民グループとの連携協力をする組織に変えたというふうに伺っております。その際、私ども調べましたら、保健師の数は、機構改革前が百十八でございまして、改革後は百十九ということになっておりまして、むしろその面での後退はなかったというふうに見ておるところでございます。
 問題は、こういう組織改革をして、福祉の部分と保健の部分との統合が進んでいることをどうお考えかということにも尽きるかと存じますが、結果として、地域の組織と一体となった形での保健行政が図られるということはむしろ望ましいことということで、通知等も出しているところでございます。そういった観点から照らせば、今回の事例が直ちにおかしいということは言えないのではないか、このように考えておるところでございます。
小沢(和)委員 こういう機構改革が地域と一体になって公衆衛生そのものを推進するような役割を果たしていくということだったら、私はよくわかるんですよ。ところが、調べてみると、この人たちの業務の大半は、公衆衛生と関係のない、自治会など地域組織との調整などに充てられるという状況になっているという。こういう状況に保健婦さんが置かれていることが、本来業務に携わっているというふうに言えるんでしょうかね。
宮路副大臣 実は、地域保健対策でありますけれども、最近、特にそういう傾向が強くなっているかというふうに承知をいたしているんです。
 保健所は、県あるいは政令都市や中核都市が設置しておるわけでありますが、保健所につきましては、地域保健の専門的あるいは広域的、技術的な拠点、そういう位置づけといいましょうか、役割を担うということで、そういう色彩を、専門性あるいは広域性、高度の技術的な拠点、そういう性格を強めておるといいましょうか、そういう一方で、今度は逆に、市町村は、住民のより身近な場所で保健サービスを実施する主体として市町村が乗り出していく、そういうような色分けと申しましょうか、機能分担が最近非常に進んでいるという傾向を示しておるところであります。
 その結果、この十年間を見てみますと、確かに保健所の数は減っておるんですが、一方、保健師の数はそれほど減っていない、ほんのわずかな減少であります。ところが一方、市町村における保健師の数につきましては、これは格段にふえておるわけでありまして……(小沢(和)委員「私が聞いていることと余り関係ないんじゃないですか」と呼ぶ)いや、そういうぐあいに地域保健対策を、保健所と市町村が役割分担しながら、そして相互に連携をとってきちっとやる体制を今確立しつつあるということを申し上げたいわけでありまして、このことによって決して地域保健対策が後退しているということはないのであって、むしろ両方が連携し、機能分担しながら、ますます地域保健対策を強化するという方向へ向かって歩んでいるということが実態じゃないかなということを申し上げているところであります。
小沢(和)委員 北九州市でさらに問題なのは、来年度の機構改革で保健師を生活保護課に編入させて、生活保護費、特に医療扶助費の削減に使おうとしていることであります。
 北九州市は、保健所統廃合の後、九八年度に、生活保護実施研究体制研究会報告書を発表しております。これには、長期入院患者の三割は病状的には退院可能にもかかわらず、適当な受け入れ施設等の整備が不十分であるため、入院を継続している、このため、生活保護費全体の中で医療費の占める割合は六割を超えていると医療扶助費を削減する必要性を掲げ、保健婦もケースワーカーという位置づけをし、生活保護業務を行うと明記しております。
 そして、具体的な業務としては、今回の医療制度改悪、診療報酬引き下げに伴う六カ月以上の入院患者の追い出しと並行して、医療専門職である保健師を使って、高齢者や生活保護受給者などの六カ月以上長期入院者を病院から無理やり退院させることまで考えている。さらに、保健師をケースワーカーにすることで、その分、従来の一般職のリストラも進めようというねらいもあると言われております。
 こんなばかげた話はないと思うんです。住民の健康をサポートすることが本来の職務の保健師に生活保護世帯の医療費を削る仕事を担当させることが、まともな保健師の公衆衛生活動、保健活動なのか、お尋ねします。
下田政府参考人 保健師は、家庭訪問といった手段を使いまして、地区に入り込み、住民の健康状態やあるいは生活環境の実態を把握して、地域において取り組まれるべき健康問題を明らかにし、取り組んでいくというのがその重要な役目だ、職務だと考えております。
 ただいまの御指摘の部分につきましては、保健師がそういった本来の役割以外の部分に使われているのではないか、使おうとしているのではないかというお尋ねだと思います。
 北九州市におけるケースワーカーと保健婦との関係でございますけれども、私どもが承知しているのは、ケースワーカーの仕事を肩がわりさせている、保健婦をケースワーカーがわりに使っているということは決してない、むしろ、ケースワーカーが必要なケースを選びまして、その療養上の指導助言を得るために保健婦の同道をお願いする、そういった観点で一緒に行っておるというふうなことを私どもは聞いておるところでございます。そういった観点であるとすれば、保健と福祉の連携という観点から決しておかしいことではないのではないか、このように考えておるところでございます。
小沢(和)委員 残念ながら時間が来ました。
 それで、せっかく民主党にも質問をしますというふうにお願いをしておりますので、それだけ、一言だけ言わせていただきたい。
 民主党提出の患者の権利法案についてなんですが、病院などが患者の情報公開の要求にこたえるためには、体制を整える必要があります。そのために要するコストをどうするのか。提案者が診療機関に、そのための経済的、人的保障と医師の裁量権の保障をどう考えているか、この点だけお尋ねをいたします。
五島議員 共産党の方から民主党の法案に対して質問、ありがとうございます。
 御質問の内容でございますが、我々が出しました法案によりますと、患者または遺族が医療機関の管理者に情報開示を請求する権利が明示されてございます。この情報開示というのは二つあると思います。一つはカルテの閲覧ということであり、もう一つは、我々の法案の中においても、カルテ、レセプト等については、患者側の要求によって、コピーによっての提供ということも認めてございます。
 もし、患者が閲覧するという範囲の問題について言うならば、診療録管理士によって管理がされているということ、そして院内において、特定の場所において閲覧できる場所が整備されておればいいというふうに考えています。
 診療録管理士というのは、現在、急性期の病院については義務化されておりますが、患者さんは入院時に一回だけ三十点、すなわち三百円の診療報酬上の措置がございます。したがいまして、百床の病院でございまして、一月に二回改定して、丸々としても二百人、これは三十点でございますから診療報酬上では六万円の報酬が支払われることになりますから、到底、医療機関の側としてはその差額は持ち出しということで、診療報酬上措置されない。この点は問題になりますし、診療報酬の改定というものも当然視野に入れなければならないと思っております。
 また、レセプトその他の問題につきましてのコピーにつきましては、実費は患者さんに請求できるというふうにしております。患者さんの請求できるコピーにつきましては、どの程度の資料を患者さんがお求めになるかによって違ってくると思います。実費でございますから、フィルム、画像、そうしたものもすべて当然患者さんに請求する権利がございますが、そうしたものを全部実費でお分けするとしますと、例えば、半切のフィルム一枚がたしか今三百五十六円ぐらいということでございますので、そうした資料をすべてコピーしてお渡しするということについては、かなりのお金が自費としてかかるであろう。これは、したがって、患者さんの方は必要な部分のコピーをお求めになるということになるのかというふうに思っています。
 ただ、できるだけ早くカルテの電子化ができ、そしてそうしたものがどこのところでも、例えばCDその他に焼いてお渡しできれば、自由に患者さんの方で見られる体制というものができ上がれば、このコストは随分安くなるものと考えております。
 以上です。
小沢(和)委員 終わります。ありがとうございました。
森委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後二時四十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十二分開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 党首討論に行ってきまして、何か疲れが出てきましたが、気を取り直して頑張りたいと思いますので、御答弁の方もよろしくお願いいたします。
 まず最初に、小学校じゃないんですが、先日の委員会のときに私の質問の宿題をお出ししていた分から伺いたいと思います。レセプトの請求の問題とカルテ開示の問題、ちょっと順番が逆になりましたが、この問題で質問をさせていただきたいと思います。
 前向きの御答弁をまずいただきまして、レセプトの問題、検討会を立ち上げてくださるかどうかということに関して、それは宿題として検討いたしますというふうにお答えをいただきましたが、前回、宿題となっておりますこのことに対して、いつごろ発足の予定となっておりますでしょうか。
坂口国務大臣 七月の初めには開始をしたいということでございます。
中川(智)委員 ありがとうございます。
 そして、カルテ開示の検討会も今月中には立ち上げるよう努力するということを篠崎局長からいただきました。そしてまた、医療事故問題の作業部会も七月には第一回目を立ち上げたいということで、情報開示、そして医療事故を減らしていく努力というのが一層進むことを願っております。
 私は、厚生労働省、ほかの省庁でもそうですが、そういうさまざまな検討会とか作業部会の中に、本人、当事者というか、例えば医療事故の問題だったら医療事故被害に遭われた方、そしてまた情報公開の問題でしたら、昨日も勝村参考人のお話にございましたけれども、さまざまなNGO、NPOが立ち上がって地域でたくさん活動をしていらっしゃいます。このような検討会の中にきっちりとそのような市民運動の方々をメンバーとして入れていただきたい、これを要望としてお願いして、御答弁をちょうだいしたいと思います。いかがでしょうか。
坂口国務大臣 まだちょっとメンバーのところまで相談をいたしておりませんが、さまざまな立場の皆さん方にお入りをいただきたいというふうに思っております。
中川(智)委員 今の大臣の御答弁で、さまざまの方というのが、ともすればそのような当事者の方たちは結構うるさいからなとか、今回の防衛庁のリストの問題に関しましても、色分けをして、なるべく波静かに結論が得られるとなりましたら求めていたような形にならないということを私自身も実感しておりますので、ぜひともメンバーとして、いろいろ困難なこともおありでしょうけれども、当事者、被害者、たくさんの活動をしていらっしゃる方、市民から、やはりメンバーに入れていただきたいということを特にお願いしておきます。
 続きまして、私も、昨日参考人のお話をいろいろ伺いまして、健康増進法に対しましてさまざまな懸念というものがわき起こってまいりました。一番最初に、昨日の篠崎参考人や青山参考人に私質問いたしましたが、これがどう考えても差別につながるというふうに思いまして、健康増進法のことで御質問をしたいと思います。
 就学前健診とか乳幼児の健診とかいろいろございまして、健診の数というのは後で少し伺いたいと思うんですけれども、何のために、メリットというものはあるのでこれだけ長くお金もかけてやっていると思うんですが、やはり発生するデメリットというものに対してどう目を向けているのかなとつくづく思います。
 一つ心配なのは、健康増進法の中で、栄養調査が実施される、その場合の結果は目的外使用を第十四条で禁止して、かつ、御丁寧に第三十六条でも罰則規定を設けられているんですが、健康診断の方はそれらの規定が当てはまりません。個人情報としては、むしろ健康診断の結果の方が大事だと思います。目的外使用禁止や罰則が必要だと考えますが、これに対してはどのようにお考えでしょうか。
坂口国務大臣 健康診断につきましては、個々の健康診断に対するデータと、それから、ある一つの集団をトータルで見ましたときにどうかということと、双方、両方あるというふうに思います。
 個々のデータについては、これは私は目的外に使用されることがあってはならないというふうに思っています。しかし、トータルとしてのデータは、これはどこかが調査になって公表されることもございますし、公表されたもの等は、他のところがそれを引用するということはあり得るのではないかというふうに思っております。
 ただし、個々のデータについて、医療の世界ですから、守秘義務というものは当然のことながらあるわけですが、守秘義務があるということと、そしてデータを目的外に使用するということとは若干違うのかなという気も率直に言っていたします。守秘義務は守らなきゃならないということになっておりますが、そこにもしも若干の違いがあるということになれば、そのところは、今度の法律で健康診断等に関する共通の指針をつくるということになっておりますので、その中でできないようにしたいというふうに思っている次第でございます。
中川(智)委員 ぜひとも今の大臣の御答弁のように、個々のデータに関しては、やはりこの栄養調査と同様に、目的外使用をきっちりと縛っていくということをしっかり中で考えていただきたいし、その歯どめを私たちに見える形で御提示いただきたいと思っております。
 健康診断のことで二、三質問をしたいんですが、私の長男がちょうど乳幼児健診、六カ月健診が二十数年前はありました。たまたま前の健診された子供さんは割と小ちゃく生まれて、お父さんも何か石頭、よく石頭と言いますが、本当にたたいてもかたいような体型の方がいらっしゃいます。うちは、何か全体にのほほんとした、非常に締まりのないあれなんですね。
 そうしたら、大泉門というのがありまして、そこに、六カ月健診は、大泉門に指を置いて、大泉門の締まりがちょっと遅いと水頭症とかいろいろな障害の心配があるということで、前のお子さんをやって、そして私のところに先生が手を置いたら、これは大泉門がほとんどあけっ広げの状態で、もう本当にこれは重度な障害を持っているおそれがあると。――ごめんなさい、済みません。
 あのときのショックを今思い出して、済みません、ちょっと混乱いたしましたが、帰り、私はどんなふうに子供を抱いて帰ったか覚えていない。そして、その夜は、やはりこういう事態というのを受け入れて、一生懸命生きていかなきゃいけないとか思いまして、一晩、やはり涙が出てきました、子供を抱きながら。明らかに何か宣告されたような形でした。
 翌日、大きな病院に連れていきなさいと言われましたので、連れていきましたら、普通の状態ですよ、もう全然、大泉門の締まりなんというのは個人差が非常にあるというふうに言われて、安心して帰ってきましたが、そのような話というのはもうあちこちで転がっていまして、健康診断がむしろ親の育児ノイローゼの引き金になる。言葉がちょっとおくれている、歩くのがちょっと遅い、何か健診をやればやっただけの成果というのを出さなきゃいけないような方々も多くいらっしゃいまして、それで、健診を受けることによって、むしろ、伸び伸びと親が子供を育てていく、その意気をそがれていくようなことも発生しております。
 健診にすごくお金をかけるんなら、もっと薬害を減らすのですとか情報公開ですとか、いろいろなところにお金をかけてもらいたいと思うんですが、現在、健診というのがどの程度あって、そして、健診にかかっている経費、税金、どれぐらい使われているかということを、わかっている範囲でお答え願いたいと思います。
下田政府参考人 一口に健康診断と申し上げましても、非常にさまざまな種類があるわけでございます。
 委員の御指摘の母子保健法に基づきます一歳六カ月児健康診査あるいは三歳児健康診査というのがございますけれども、この部分につきましては年間約十六億。老人保健法に基づきます基本健康診査につきましては約百六十億円。政府管掌健康保険の生活習慣病予防健診事業の検査費につきましては約四百六十七億円という予算が計上をされておるところでございます。
 そのほか、地方公共団体がやりましたり、あるいは労働安全衛生法に基づく労働者の健康診断、この部分については事業者が負担をすることになっておりますので、その金額の実態はわかりません。その他、自主的に受けております人間ドック等、こういったものもございますが、そういった部分についての全体の費用については把握をしていないところでございます。
中川(智)委員 大臣、私、先ほど私自身の例で健診という問題を話しました。
 今、就学前健診というのも行われていて、きのうの参考人のお話の中でも、積み木を三つ積めなければ、その子の家には二つしか積み木がなかったのに、三つ積みなさいと言われて、三つ目が積めなくて、それで、やはりこれは障害があるんじゃないかというふうに振り分けられた。
 私の東京の方の事務所はみんな女性で、それぞれ子どもを育ててきたわけですが、私の部屋の中でも、私の健診のときもこんなことがあった、言葉がちょっとおくれているようだ。緊張する子もいます。いろいろなタイプがいて、人前ではなかなか話せないという子がいますが、そういう健診で言葉のおくれがあるようだと。そして、何十人も健診で集まってきて、名前を呼ばれて、今名前を呼ばれた人は帰っていいです、呼ばれなかった人は別室に来てください。そこで、あなたの子供さんはちょっと言葉のおくれがあるとか言われる。
 そういうふうな形で、健診が本当にニーズにかなっているか。増進法でより健診に対して力を入れていくというときに、今の乳幼児健診、そして就学前健診というのを、一歩立ちどまって、しっかりとそれを受けていらっしゃる方たちの声を聞いての今回の増進法であるかどうかということを伺いたいと思います。大臣、いかがでしょう。
坂口国務大臣 皆さんの声をどこまで聞いているか、私、ちょっとそこまで詳しく調べておりませんが、健診の場合には、平均値で物を言うものですから、平均から少し外れておりますと、早いです、遅いですという話になってしまうわけです。しかし、平均というのはやはり幅のあるものですから、やはりその辺のところは幅を持って話をしていただかないといけないというふうに率直に私も思っております。
 その辺のところは、よくなれた方は、例えば、歯が生えるのは、早い子もあれば遅い子もあります、前歯は何カ月ぐらいで生え始めますけれども、しかし、少々遅い子だってありますからというふうに言ってくれれば安心なんですけれども、何カ月という平均で物を言われますと、早かったり遅かったりするといったようなことがある。
 しかし、そういうことはありますが、それでは、やらなくてもいいかといえば、例えば股関節脱臼なんかがあるかないかというような検査というのは、やはりやっておいた方が私は安心だろう。何もせずに、大きくなって歩き始めて初めて脱臼があることがわかるというようなことになると、これはやはりぐあいが悪いわけですから、やはり必要性というものはあるというふうに思います。
 ただ、お母さんやお父さんに、あるいは付き添いに来てもらった方々にどのようにお話をするかということの問題点というのは多分あるんだろうというふうに私は思っております。
中川(智)委員 股関節脱臼とかは、予防の話がありますが、おむつとかいろいろなものが変わってきて、以前より本当に少なくなってきていると思いますし、自分が出産した病院に任意で行くということはかなり、皆さん、本当に一生懸命子育てしていらっしゃいますので、そういうことが徹底されれば、むしろ地域の健診というのは見直していくところもあるんではないかということを思うのです。児童虐待、育児ノイローゼ、後を絶ちません。このような形でレッテルをある意味では張られるような健診の見直し作業というものも、やはりあってしかるべきだと思います。
 大臣はやはりトップにおられて、このあたりのところを現場の局長に伺うのがいいと思いますが、そのような形でいわゆる健診が今行われているところのデメリットというか、そういう声をしっかり把握はしているんでしょうか。すごい税金を使うわけですよね。一歳半で、三歳児で、これで十六億、百六十億とか、もう億単位のお金を、言ってみれば湯水のようにずっと使い続けている。立ちどまって、健診を受ける人たちの意見というのを聞いてもらいたいんですね、一度。
下田政府参考人 今回、健康増進法案の中に、健診に係る指針をつくるということで規定を設けさせていただいておるところでございますが、この規定を設けるに当たりましては、それぞれ健康診断をやっております各省、文部科学省もひっくるめまして、いろいろな所管の省庁がございますが、そういったところと十分協議をしたところでございます。
 現在の健康診断の問題は何かということでございますが、非常に多くの経費が使われておること、また、今回予算を申し上げませんでしたが、労働安全衛生法によりましてやっております健康診断は、数千万、何千万人という方々が健康診断をやっておられます。その費用は事業者が負担をされております。こうした非常に多くのお金をかけながらやられておる健康診断が、一つ一つが比較ができない。それはなぜかといいますと、健康診査をやっておる方法が違うとか、そういった問題で、データの比較ができないといった問題が一つございます。
 したがいまして、今回、健康増進法の中で考えましたのは、それぞれのやられておる健康診断の有効化を図っていきたい。したがいまして、健康診断の実施方法、それからデータの精度管理、事後指導のやり方、こういったものを統一する。そしてさらに、そのデータを生涯を通じて自己が保持をできるようなシステムをつくっていきたい、そして一人一人の健康づくりに役立てていただきたい。これがねらいでございます。
 逆に、先生おっしゃいましたデメリットという部分についてのお話でございますが、これは恐らく健康診断をやった後の結果をどう扱うか、そういったところにかかってくるわけでありまして、この辺の部分につきましては、厚生労働大臣が定める指針におきまして、十分にそういった誤った指導による不安をなくすような形の、そういったものにさせていただきたい、このように考えておるところでございます。
中川(智)委員 ぜひとも、特に私が今健診のことで問題にしたのは、一歳半健診、三歳児、そして就学前健診のところで、やはりその親御さんたちの意見を聞いてもらいたい。その健診がどれほど子育てに役立っているのか。そういうふうにレッテルを張られた後、受け皿がないという自治体も非常に多いわけですね。勝手にあとは考えなさいと。そういうんじゃたまらないと思います。ぜひとも、むだなお金の使い方がなされないように、生きたお金を使われるように、そしてまた、各省の方々の意見でなくて、その当事者の方たちのアンケート調査なりを実施していただきたいと考えております。
 続きまして、私立大学の雇用保険未加入の問題について質問をさせていただきます。
 雇用保険というのは、失業保険からずっとございまして、昭和五十五年に雇用保険ということで制度改正がなされて、この時点からやはり事業者への加入というのが義務づけられました。
 ところが、私もびっくりしたんですが、私立大学のいわゆる教員ですね、事務職の方は入っていらっしゃるんですが、教授、助教授、講師の方々が、ほとんどというか非常に大きい確率で雇用保険に入っていらっしゃらないということがわかりました。雇用保険財政というのは破綻状況にある、千四百億の財源で、ことしじゅうぐらいに枯渇するということが言われておりますが、まず最初にこの担当部局の方から、雇用保険の財政が破綻状況にあるという私の認識はそれで間違いがないかどうか、イエスかノーかでちょっと答えていただきたいんですが。
澤田政府参考人 雇用保険の平成十四年度予算におきます積立金残高が一千四百三十七億円ということで、単年度の収支で言えば、十三年度、十四年度も赤であるということであります。
中川(智)委員 そこで、全国で八万六千人ほどいらっしゃいます大学の先生なんですが、雇用保険に入っていらっしゃらない方が多いということなんですが、そのことの認識は、私の間違いではないでしょうか。お願いします。
澤田政府参考人 私立大学の教員の雇用保険加入状況でございますが、ベースといいますか分母となる数が、雇用保険に加入する必要があるかないかは個々にチェックしますので、マクロ統計からはなかなか難しいのですが、私どもの推計によれば、平成十四年四月現在で、私立大学の短大を含めました教員で雇用保険に加入されている方の割合は二〇%弱というふうに推計をいたしております。
中川(智)委員 これは違法ですよね。事業者は雇用保険に昭和五十五年から入るということが義務づけられていると思いますが、違法状態を厚生労働省はそのまま放置しているということでよろしいんですか。
澤田政府参考人 現在、雇用保険法上、私立大学の教員の方々も当然に雇用保険の被保険者になることが法律上要請されております。私どもも、これまでの経緯はございますが、法律に従って、加入、雇用保険の適用事業場になってもらうように、手続がとられるように、いろいろ、地方労働局等々を通じまして、大学あるいは大学の関係団体等に要請、指導等々は行っております。
中川(智)委員 でも、二十五年近くですよね。二十五年近くが、五十五年に雇用保険になる前は公立の先生たちと同じようにいわゆる任意ということで加入義務ということの除外規定に入っていたんですが、昭和五十五年からは入ることをずっと指導していて、そしてこの状態ということなのですが、指導していてなぜ今のような状態が野放しになっているんでしょうか。全然進んでいないということに対しての厚生労働省の認識はいかがでしょう。
澤田政府参考人 法律上、適用事業場になりますので、私どもも実際に、適用の手続がなされるよう指導等々努力してまいりました。確かに、おっしゃるように、その実績が急速に上がっていないということは事実でありますが、私学側にもいろいろ言い分といいますか主張というものがございまして、私どもも、私どもの主張というのを申し上げ、意見のいわば乖離を埋めるように話し合いをしながら努力をしておるという状況でございます。
中川(智)委員 厚生労働省というか政府は、平成十三年の十二月、規制改革推進三カ年計画を閣議決定なさいまして、「雇用保険法は原則としてすべての民間被用者を対象とした制度であり、現在、低い加入水準にとどまっている私立学校教員等については、雇用保険への加入を速やかに促進する。」という閣議決定がありました。
 しかし、私立大学連盟の方は、もうこれは厚生労働省に認めてもらっているというような言い分をされておりまして、私立大学の教員というのはリストラされたり首になったりすることはないし、雇用保険のお世話になることはないんだと。そして、雇用保険のお世話になることはないのに雇用保険に入るというのは、経済的な、財政からいっても、明らかに損とは言わないんですが、年間二百億ぐらい本当は納めなきゃいけない、ところが、こちらでもらうのは五億ぐらいだから、首にもしないし、そして雇用保険を受け取る人がいないんだから、だから、私立大学は大目に見てくれていいじゃないかという論調ですね。
 そうなりますと、大企業だけ、今大企業も倒産する時代ですけれども、うちは雇用保険を受け取るような企業経営をしていないから、定年まで大丈夫だから、入りませんというのを認めるようなものですよね。
 私立大学の言い分と厚生労働省の言い分、向こうの言い分に対しては納得していらっしゃるんでしょうか。
澤田政府参考人 今中川委員が御指摘されました私立大学側の言い分二つ、一つは失業の頻度が低いという点、それから負担とそれに対応した給付が非常にかけ離れている、この二点は、いずれも私どもは容認しておりません。
 まさにこの二点とも、保険制度としてはそういうことがあることを前提に保険制度をつくっておりますので、そうした主張については、私どもとしてはそれは認められないということで、ずっと話し合いを必要な場合にはしているということであります。
中川(智)委員 この私立大学連盟は、厚生労働省と覚書を交わしているのだというふうにおっしゃっているんですが、そのような覚書というものはございますか。
澤田政府参考人 覚書というような行政文書の存在はないものと認識しております。
 ただ、私立大学側の御主張として、私立大学の方で個々の学校が雇用保険の適用事業場になるかどうかは学校の判断だということはおっしゃっております。
 ただ、これは、その意味は、私立大学の団体として、個々の学校が適用事業場になることは反対しない、こういう意思の表明であるというふうに私どもは理解をしております。
中川(智)委員 私立大学連盟の方の主張の文書では、問題や矛盾の多い雇用保険法を強制適用するとの考え方は、むしろ定着した制度、これは私立大学に退職金制度というのがあって、そちらの制度のことなんですが、その安定性を損ない、無用な混乱を引き起こすものとして、到底認めるわけにはいかないというふうな御主張です。
 今、厚生労働省としては、話し合いをしているんだと。それが何十年も続いているわけですが、具体的にどのようなところでの話し合いの場で、どれほど積極的に雇用保険への加入というのを勧められているのか、もう少し具体的にお答え願えますか。
坂口国務大臣 先日来、私学連盟の方からもお話を実はちょうだいしているところでございます。
 これには長い歴史がございまして、政令がございまして、政令の読み方等によっては除外されるのではないかというようなことも言われた時代もあるようでございます。
 現在、私立大学退職金財団、いわゆる財団法人でございますが、ここで退職資金交付事業というのをおやりになっていますが、これを公的で法的なものにするというお話が過去に一遍あって、そうしたことがあったために、それじゃそれをやっていただきましょうということになったという経緯があるようでございますけれども、結局は、これが法律上のものにはならなかったということでございまして、現在、財団法人として存在しているということでございます。
 先ほど局長からも答弁しましたとおり、私学連盟の皆さん方の方からは、大学の教授や助教授がもしもそこをやめたとしても雇用保険に厄介になることはない、だからこれは、我々は我々としてこういうふうにやっているんだから、これを認めてほしい、こういうお申し出が先日もあったわけでございます。
 しかし、これは法律事項でございまして、すべての人にお入りをいただくことになっている。先日も文部大臣とお話をさせていただきまして、退職金財団、この財団法人の行っておみえになります退職資金交付事業、このところが、法律としてこれが決定されるということであれば、それは一つのこれで、言ってみれば、私立大学の皆さん方が全部ここにお入りいただくということになれるわけでありますから、もしもできるのならば、それも一つの方法です、しかし、それができないのであれば、雇用保険にお入りをいただく以外にありませんということを先日も申し上げたところでございます。
 私立連盟の皆さん方に対しましても、ひとつそういうふうに文部大臣とお話をいたします、しかし、それがだめなときには、これは雇用保険ということにお入りいただく以外にありませんということを申し上げさせていただいたところでございまして、そうした話し合いを現在進行させていただいているところでございます。近いうちに結論が得られるものというふうに思っております。
中川(智)委員 最近、私立大学でもリストラが始まってきているということを聞いておりますし、やはりそれは以前の、時代が変わってきたということもあるし、保険というのはみんなでやはり支え合っていく、そのような心配がないところでも保険料を払って、互いに、共助というか、ともに支え合っていく保険方式であるならば、五十五年にそのような法的な適用除外という条項がなくなって違法状態で放置されているわけですから、やはり私は、これは法にのっとってやっていくべきですし、今回告発をした関西大学は法学部が優秀なところで、法律の先生が違法状態で法律を教えているなんというのは、これはやはり、先生にとってもよくないし、学生にとってもよくないことだと思います。やはり本来あるべき姿で解決していくべきだと考えますので、その成り行き、推移を見守っていきたいと思います。
 文部科学省、池坊政務官にもおいでいただきましたので、文部科学にも関連することですので、幾つか質問をしたいと思います。
 これまで私立大学退職金財団に対してどれぐらいの補助金を出してきたのか、単年度と、できればトータルでもお願いしたいと思います。
石川政府参考人 私立大学退職金財団に対する助成というお尋ねでございますけれども、文部科学省といたしまして、私立大学退職金財団そのものに対しての助成は行っておらないところでございまして、ただ、少しつけ加えさせていただきますと、各私立大学がこの財団に拠出をいたします掛金を対象といたしまして、私立大学経常費補助金で一部措置をしておるということでございます。
 なお、その措置額につきましては、平成十四年度で約百四億円ということとなってございます。
中川(智)委員 これは何年前から出していらっしゃいますか。そして、ほぼ百億円前後でしょうか。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま申し上げました助成につきましては、昭和五十七年度から開始をいたしておりまして、五十七年度当時は、この補助額は十五億円でございました。
中川(智)委員 やはりかなりふえてきているということですね。そして、言ってみれば、そこが聖域みたいな形になっていて、独自の雇用保険、雇用保険というか独自の退職金制度をつくっていて、それに百四億円運用という形で使っていらっしゃるわけなんですが、このような財団に補助金を、それにも使うということで、一方では雇用保険に入らないという状態を置いておいて補助金を出すというのは、何か対応が矛盾しているんじゃないかと思うのですが、矛盾していないとおっしゃるならば、その根拠をお示しいただきたいと思います。
石川政府参考人 ただいま申し上げております私立大学等経常費補助金におきますこの財団への掛金の補助でございますけれども、これにつきましては、この掛金といいますか、退職金というものが教職員の給与費の一部である、給与の一部であるということを基本的な考え方といたしまして、退職金を重視するということがやはり私立学校における教職員の待遇の安定と向上につながり、それがまた私立学校の発展につながるということで、そういった観点から助成をしておるものでございます。
中川(智)委員 それでは、文部科学にもう一点。
 この財団、私立学校の先ほど申しました財団に、文部科学省からの天下りは何名いらっしゃいますか。
池坊大臣政務官 平成十四年度四月一日現在、財団法人私立大学退職金財団の理事数は十九名でございます。理事の内訳は、現役の私立大学関係者が十六名、私立大学職員OBが一名でございます。文部科学省出身者は、常勤理事一名、非常勤理事一名でございます。監事の内訳は、現役の私立大学関係者が三名でございます。
中川(智)委員 私は、このような財団への天下りだけではなくて、やはり長年このような違法状態を放置してきたというのは、退官したら大学の先生にしてもらうのにはいいかなと思ったりしますが、それの実態などは今のところはわからないと思いますが、優秀な方がいろいろ大学で学生に教えるのはいいことかもわかりませんが、このような不法な状況を置いておくというのはあってはならないと思いますので、早く決着をつけていただくように要望します。
 と申しますのは、雇用保険、いわゆる外国人の先生、外国語を主に教えていらっしゃる在日の外国人の先生に関しては、期限つきで雇用するという形態がすごく多いんですね。三年期限で外国人の先生は雇われている。その間は、雇用保険にも入れない、ほとんど自分で社会保険は入られていて、身分保障がほとんどない状態に置かれています。しっかりとした制度を活用して、外国人の先生方に対しても労働条件をきっちりしていくというのが厚生労働省の指導のあるべき姿ではないかと思います。これに関しては、また後日質問したいと考えます。
 最後に、私立大学の教員以外で、この制度で、雇用保険に加入義務がありながら加入していない、いわゆる組織的に加入していない業種、職種というのがあるかどうかをちょっと伺います。
澤田政府参考人 雇用保険の未適用事業場につきましては、中小零細事業場では少なからぬ数があるかと考えられますが、私立大学のように、いわば業種的にと委員おっしゃいましたが、業種的にまとまって加入していないというような実態につきましては、私どもは承知しておりません。
中川(智)委員 そうしたら、最後に、では大臣に一言伺いたいんですが、クエスチョンタイムでつくづく思ったんですが、防衛庁もひどいし外務省もひどいと思いました。厚生労働省のトップとして、やはりハンセンやヤコブ、いろいろ薬害が繰り返されてきましたが、いわゆる隠ぺい体質みたいなものを温存するようなものはないと思いますが、今回の防衛庁の問題に端を発して、厚生労働省としての教訓など、大臣が思うことがありましたら最後に一言いただいて、質問を終わります。
坂口国務大臣 厚生労働省の中はかなり改善が進んできておりますし、過去の問題につきましても、さまざまな問題、決着をつけつつあるというふうに思っている次第でございます。
 いずれにいたしましても、こうした健康保険法等を御審議をいただいているということでございますので、それに恥じないような内容にしていかなければならないと決意をしているところでございます。
中川(智)委員 終わります。ありがとうございました。
森委員長 次に、川田悦子君。
川田委員 きょうはちょっと時間も短いので、医療について大臣がどう考えていらっしゃるのか、その精神というか哲学を伺いたいと思います。
 まず初めに、なぜ薬害エイズが引き起こされたのか、大臣はどのように認識されているか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 突然難しいお話をいただいたわけでございますが、薬害エイズの問題は、エイズというのは、新しく発生したと申しますか、生まれてきた病気でございました。この新しい病気を、いつそれを旧厚生省として認識をしたかという問題であった、そういうことをどう思うかということをお聞きになっているのではないんですか。(川田委員「いいえ、違います」と呼ぶ)ちょっと、ではこれはこれで言わせてください。(川田委員「いや、なぜ起きたかという」と呼ぶ)なぜ起きたか。(川田委員「なぜ薬害エイズが引き起こされたのか」と呼ぶ)だから、なぜ引き起こされたかというのは、その新しく生まれてきた病気に対する認識が遅かったということがこの薬害エイズを引き起こすことになったというふうに思います。
川田委員 これはもう皆さん周知のことだと思いますけれども、なぜこの日本で悲惨な薬害エイズが引き起こされたかといえば、それはまさに政官業の癒着の構造にあったわけです。
 一九八二年ごろから厚生省は危機感を持っていまして、さまざまな情報をアメリカから入手していたんです。そして、八三年、エイズ研究班を発足させたわけですけれども、結局何もしませんでした。その後、この何もしなかったということで不作為責任が問われたわけですけれども、しかし、何もしなかったのではなく、あのとき厚生省の生物製剤課の課長は在庫計算をしていました。そして、四十数億というお金、大変な財産であると考えて、患者の命よりも企業の利益を優先したんです。これが薬害エイズを引き起こしたんです。
 そして、私は今回、この薬害エイズの被害を受けて、一九九四年、アメリカに行きましたけれども、アメリカでも同じように血友病患者がこの血液製剤でHIVに感染させられていました。そのことを大臣は御存じでしょうか。
坂口国務大臣 アメリカにおける具体的なことは、私は存じません。
川田委員 アメリカでは、一九八三年一月にアメリカのCDCが血液製剤が危険であるという指摘をしまして、八三年三月にアメリカのFDAは血液製剤加熱の勧告をしたんです。日本は、このようなことを無視してきまして、八五年七月まで血液製剤加熱の認可がおくらされたわけですけれども、アメリカにおくれること二年四カ月でした。
 私は、九四年にアメリカに行ったときに驚いたんですけれども、FDAが加熱の勧告をした後でもアメリカでは非加熱と加熱の製剤が両方出回っていました。そして、アメリカの血友病患者はこの非加熱の製剤を使ったことによって感染をさせられた人たちがいたということを知ったんです。そのことを厚生省の方々は御存じだと思います。大臣は今ちょっとそのことを質問通告していませんでしたので知らないということでしたけれども、なぜこのようなことが起きたか。
 なぜ私がきょうこの薬害エイズの問題を取り上げたかといいますと、アメリカでは、なぜ血友病患者、加熱の製剤が勧告がされた後にも、認可された後にも非加熱の製剤を使わざるを得なかったかといいますと、これは、日本とアメリカでは医療保険の制度が違っています、仕組みが。ほとんどの人たちは民間の保険に入っているんです。
 つまり、今、自由診療という名のもとに、がん保険などでも同じなんですけれども、医療機関と保険会社で、この患者にどのような治療をするか、どのような製剤を使うかということが決められていって、つまり保険の種類によって、お金のある人は加熱の製剤が使えたけれども、お金のない、安い保険に入っていた人は非加熱の製剤を使わざるを得なくて感染をしたという事実があったんです。
 今、アメリカはこのような民間の保険が大部分なわけですけれども、そして、アメリカの乳児の死亡率ですけれども、先進国の中でトップです。まだ開発が進んでいない国において乳児の死亡率というのが高いということは、いろいろな状況の中でやむを得ない場合もあるわけですけれども、先進国アメリカで乳児の死亡率がトップということ、このことは厚生大臣御存じだと思いますけれども、この点について、この乳児の死亡率がトップであるというアメリカの医療についてどうお考えなのか、お聞かせください。
坂口国務大臣 アメリカはさまざまな人種の皆さん方がアメリカ人になっておみえになりますし、そうしたことも影響しているのではないかという気がいたします。
 アメリカの医療制度は、もちろん日本の医療制度と違いますし、日本のように皆保険制度ができ上がっているわけではありません。したがいまして、そうした医療制度上の問題もあるいはあるかもしれない、今、私の思いつきでございますけれども、そういうふうに思います。
川田委員 アメリカでは、お金があれば心臓移植でも何でも受けられるわけですけれども、お金がなければきちんとした治療が受けられない。そして、救急で運ぶそのときでも、以前は、保険の種類によってはうちでは診れないということで追い返されるという状況があって、余りにも人道上問題があるのではないかということで、緊急で入った場合には診るけれども、しかし、すぐにほかの病院に回すということが行われています。これが今のアメリカの医療の実態です。
 私は、今この日本で医療制度の改革を行う、行わなければならない、そういう中で、どのようにしていくかということが今求められているわけですけれども、このようなアメリカの医療制度に日本が近づいていくというのはとても危険だというふうに思っていますけれども、今小泉内閣が進めようとしている医療制度改革は、まさにこのアメリカに見習っていこうというものにしか思えません。
 そして、私たちが今必要なのは、本当にむだなものをなくしていく、むだというのは何かといいますと、薬害エイズが引き起こされた原因、まさに癒着の構造、そこにむだがあったわけです。私たちは、今本当に求めているのは、癒着の構造を変えていくという構造改革でありまして、規制緩和がいい、いいというふうに多くの人たちが言います。しかし、本当に必要な規制緩和というのはそういうことではないと思います。
 今、薬害エイズも本来は、日本がアメリカにおくれること二年四カ月、加熱の認可がおくれたということで被害が拡大されたわけですけれども、実際は、本来日本でこのように血友病患者がHIVに感染させられなくても済んだ事情がありました。その事情というのは、実は一九七五年、私は前回の質問のときにも話をしましたけれども、そのときにWHOが、国内で血液は自給すべきである、献血で自給すべきだという勧告をしました。そして、同じその年に、日本の厚生省の審議会であります血液問題研究会が、そこで日本で国内自給を図るべきだというすばらしい内容の答申を出したわけです。ところが、一九七八年になると、国産のものをやめてアメリカのものへと切りかえていこうというふうに切りかわりまして、七九年、一気にアメリカのものへと切りかわっていったんです。
 つまり、日本の血液事業はそこですっかりアメリカの言いなりになってしまったわけですけれども、このことについて、アメリカの言いなりになって被害が起きたというふうに私は思っていますが、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 そういう御質問があるということを知らなかったものですから、過去のことを私は勉強してまいりませんでしたけれども、一九七五年といいますと、昭和四十年ですね、二十五引くんですから……(発言する者あり)五十年。五十年ですから、大体三十九年から献血が始まりまして、それが軌道に乗って、五十年といいますと、国内におきます血清肝炎の発生率、大体一〇%前後ぐらいになった時期だったというふうに思っておりますが、その時期は、かなり献血が進んでまいりました。昭和四十八年ぐらいから国内で大体保存血液は全部賄えるようになったというふうに思っておりますから、五十年初めぐらいということになりますと、もうこれはかなり国内で血液が供給される時代になっておりましたから、その時代にアメリカにすべて切りかえたということは僕はちょっと考えにくいのですけれども、ただし、僕はちょっと調べてきたわけじゃありませんけれども、私の知り得る範囲におきましては、全部それをアメリカに切りかえたというのは、それはそうではなかったような気がいたしますが。
川田委員 七五年にベトナム戦争が終結しまして、そしてアメリカでは、だぶついた血液製剤を日本に輸出をし始めて、七九年には、ほとんど日本の血友病患者は、アメリカの原料血漿を輸入して製品化を国内でするとか製品そのものを輸入するという形で、アメリカからの血液製剤を使うようになっていって、そして今回、この未曾有の被害が引き起こされたわけです。
 実は、きょう、まだ大臣の手元には渡っていないと思いますけれども、この前、参議院で血液事業法、かなり修正があって採択されましたけれども、そのときに、アメリカなんでしょうか、PPTAといって、血液凝固治療学の小冊子が出回りまして、これは民主党の医療問題ワーキングチーム薬事法作業部会あてにロビー活動をされた資料なんですけれども、ここに大変重要なことが書いてありまして、今日本がこの血液事業法をつくるに当たって、国内自給、はっきり国内自給というふうに言っていませんけれども、「この法律の制定は製剤の供給業者の減少を引き起こし、その結果として予期せぬ事態が発生した場合に供給がおびやかされるという脆弱性を高める。」とか、「この法律の制定の結果として競争が減り、革新的治療や安全性対策の進歩が阻害されることになる。」とか、「過去十年以上にわたり、輸入製剤によるウイルス伝播の報告は一例もない。残念ながら、国内における最近の感染は、日本国内の献血により製造された輸血用製剤により引き起こされた。」とか、非常に攻撃的な、日本で国内自給を進めることになってはいけないというようなことでロビー活動が行われているということを私は知りまして唖然としたわけです。
 今回の医療制度改革、その中でも、私たちは薬害エイズというのはこの日本の医療行政、血液行政の中で大変な失敗であると思っていますし、そして、とりわけ今、日本の医療制度そのものを根本的に変えようとしている中で、本当にこのままの、今回の健康保険法の一部改正というのは医療制度改革の第一歩、一里塚とも言われていますけれども、この改正で本当にいいのかどうなのか。本当にいいと思って進めようとしているのかどうなのか。いろいろな外圧があるのではないかということも私は危惧するわけですけれども、本当に、心からこれでいいというふうにお思いになって大臣は進めようとしているのでしょうか。御意見をお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 血液事業法につきましては、参議院の方で御審議をいただきまして、そして本会議も全会一致で通過をさせていただきました。
 これをつくりますのにはいろいろの御議論がありましたが、その御議論も参考にさせていただいてつくったところでございますし、そして、この血液事業法の中におきましては、いわゆる国内自給というものを基本に据えてつくってございます。保存血液はもちろんでございますけれども、血液製剤につきましても一日も早く国内自給ができる体制を確立するということでつくっているところでございます。
 さて、それはそれといたしまして、今回の医療制度改革におきましても、日本の中における皆保険制度がなくなってはいけません。アメリカのような状況にしてはいけません。これからも将来も、この皆保険制度を維持していくためにどうしていったらいいかということを中心に考えているわけでありまして、今回提出をさせていただいておりますこの内容におきまして、私たちは、将来ともに皆保険が維持できると思いますし、また、どの病院で診ていただきたいかといったフリーアクセスもこれは維持できる、こういうふうに思っている次第でございます。
川田委員 ありがとうございます。
 皆保険を維持するという言葉だけじゃなくて、公的保険をきちんと維持するというふうにもう一度、公的保険ということでよろしいですか。
 私は、もう終わりますけれども、医療というのはそもそも営利追求になじまないものだと思っています。そこを今巨大な営利市場にしているのがアメリカでありまして、やはり医療機関と保険機関が結託している結果、アメリカでも血友病患者が被害に遭ったわけですから、そのことをぜひ踏まえて、本当に患者の立場に立った医療の改革が行われなければならないと思っています。
 最後に、一つだけ簡単に御質問したいんですけれども、先ほど加藤議員が……
森委員長 申し合わせの時間が既に経過しておりますので、速やかに質問を終えてください。
川田委員 ちょっと一つだけ、ごめんなさい。領収証、明細書についてちょっと一言だけ。
 なぜできないのかという理由が再三言われていましたけれども、では、どうしたらできるのかという点で、かなり経費が大変じゃないかとか、煩わしいのではないかという御意見がありましたけれども、ならば、どうしたらできるのかという点で、医療機関に対してこれが点数加算になるとか、いろいろな方法があるんでしょうけれども……
森委員長 申し合わせの時間が既に経過しておりますので、新たな質問に入るのはお控えください。
川田委員 わかりました。
 そのことについて、ぜひ善処していただきたいというふうに思っています。
 ありがとうございました。
森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十五分散会


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