衆議院

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第25号 平成14年7月17日(水曜日)

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平成十四年七月十七日(水曜日)
    午前九時三十七分開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岡下 信子君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    北村 直人君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      自見庄三郎君    田中 和徳君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      竹本 直一君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    堀之内久男君
      松島みどり君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    吉野 正芳君
      家西  悟君    大島  敦君
      加藤 公一君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      土肥 隆一君    三井 辨雄君
      水島 広子君    江田 康幸君
      桝屋 敬悟君    樋高  剛君
      小沢 和秋君    瀬古由起子君
      阿部 知子君    中川 智子君
      野田  毅君    川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           上原  哲君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鈴木 直和君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         尾嵜 新平君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            日比  徹君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            澤田陽太郎君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          酒井 英幸君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房審議
   官)           松本  守君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十七日
 辞任         補欠選任
  木村 義雄君     田中 和徳君
  谷津 義男君     北村 直人君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 直人君     谷津 義男君
  田中 和徳君     木村 義雄君
    ―――――――――――――
七月十七日
 ホームレスの自立の支援等に関する臨時措置法案(鍵田節哉君外九名提出、第百五十一回国会衆法第四九号)
は委員会の許可を得て撤回された。
同月十二日
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(松本龍君紹介)(第六五四六号)
 同(小泉俊明君紹介)(第六六〇八号)
 同(小泉俊明君紹介)(第六六一六号)
 同(山名靖英君紹介)(第六六四八号)
 介護保険制度の改善に関する請願(福井照君紹介)(第六五四七号)
 重度障害者のケアハウス設置に関する請願(福井照君紹介)(第六五四八号)
 重度障害者の障害基礎年金増額に関する請願(福井照君紹介)(第六五四九号)
 障害者雇用率引き上げ及び職域開発に関する請願(福井照君紹介)(第六五五〇号)
 障害者の医療制度改善に関する請願(福井照君紹介)(第六五五一号)
 人工呼吸器を必要とする脊髄損傷者に関する請願(福井照君紹介)(第六五五二号)
 脊髄神経治療の研究開発促進に関する請願(福井照君紹介)(第六五五三号)
 日常生活用具の意志伝達装置の支給対象者拡大に関する請願(福井照君紹介)(第六五五四号)
 ベンチレーターを必要とする脊髄損傷者が社会参加するための環境整備に関する請願(福井照君紹介)(第六五五五号)
 無年金障害者の解消に関する請願(福井照君紹介)(第六五五六号)
 労災遺族年金支給制度及び要件の改善に関する請願(福井照君紹介)(第六五五七号)
 労働者災害補償保険法の改善に関する請願(福井照君紹介)(第六五五八号)
 雇用対策と失業者支援の強化に関する請願(重野安正君紹介)(第六五五九号)
 国保・介護制度の拡充に関する請願(藤木洋子君紹介)(第六五九九号)
 介護保険の在宅介護利用料の引き下げ等緊急改善に関する請願(藤木洋子君紹介)(第六六〇〇号)
 高齢者のホームづくりに関する請願(小沢和秋君紹介)(第六六二一号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(武正公一君紹介)(第六六四七号)
 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第六六四九号)
 同(古賀誠君紹介)(第六六五二号)
 総合的難病対策の早期確立に関する請願(山名靖英君紹介)(第六六五〇号)
 支援費支給制度移行に伴い、障害者施策の緊急改善に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六六七五号)
 抗がん剤治療の問題点改善に関する請願(青山二三君紹介)(第六六七六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 ホームレスの自立の支援等に関する臨時措置法案(鍵田節哉君外九名提出、第百五十一回国会衆法第四九号)の撤回許可に関する件
 厚生労働関係の基本施策に関する件
 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案起草の件
 社会保険労務士法の一部を改正する法律案起草の件
 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の運用に関する件


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 本日は、理事会での協議に基づき、特に、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案及び社会保険労務士法の一部を改正する法律案の両案を起草することを念頭に調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官上原哲君、厚生労働省大臣官房審議官鈴木直和君、医政局長篠崎英夫君、健康局長下田智久君、健康局国立病院部長河村博江君、医薬局食品保健部長尾嵜新平君、労働基準局長日比徹君、職業安定局長澤田陽太郎君、職業能力開発局長酒井英幸君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、社会・援護局長真野章君、老健局長堤修三君、保険局長大塚義治君及び国土交通省大臣官房審議官松本守君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中和徳君。
田中(和)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の田中和徳でございます。
 本日、委員会関係各位の御理解と御支援の中に、厚生労働行政に係る一般的な事項について数点お尋ねをいたします。
 まず最初は、私は川崎市の選出の議員でありますけれども、地元の問題とも言えると思いますが、ホームレスのことについてお尋ねをしてまいりたいと思います。
 今委員長からもお話ございましたように、本日は、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案の起草がされるということで、大変私は、長年にわたりこの問題にかかわってきた者の一人として、感無量のことを今ここに感じて、発言に立たせていただいているところでございます。
 まさしくホームレスは、私たちは長い間取り組んでまいりましたが、この言葉すらも実は行政用語としてはありませんでした。私たちが幾つかのことを行政とのやりとりの中で、小渕総理の時代だったと思いますけれども、ホームレスに関しての、ホームレス問題全国連絡会議というのが発足をいたしまして、そのあたりから正式に行政の中でも議論がされるようになりました。はっきり言うと、役所の所管も明確でなかった時代があったわけでございます。
 今ホームレスは、一番数が多いのは大阪、二番目は東京でございますが、三番目は、多分名古屋か川崎市だろうと思います。三大都市圏だけでもその人数は約二万五千人以上、しかも、その傾向は全国にどんどんと広がっておりまして、まさしく我が国の全体のゆゆしき社会問題とも言えるわけであります。
 以前では非常に珍しい形でありましたし、川崎市などは、二十年前ぐらいからでしょうか、だんだんとホームレスの人たちも散見されるようになりまして、当時、議会などのやりとりもあったわけでございますけれども、無宿労働者、寝泊まりをする場所がない労働者というような言い方をして議論しておったのを今でも思い出すところでございます。
 川崎市の例をまず申し上げますと、最初は、市の行政の担当者の方、そして地域の住民の皆さん、そして警察官などがパトロールをしながら、なるべく公的な機関に寝泊まりをしている人たちが、まず一つは、人権上の何か手助けができないのかという視点。もう一つは、公共の施設だから、市民の皆さんがお使いになる場所だからそこを占拠されると困るんですよということで、どこかに立ち退いていただきたい、このような指導をしておったのでございますが、大変残念なことでありますが、川崎の警察署管内でホームレスの人に対しての警察官の暴行事件がありまして、大変大きな社会問題になったわけでございます。それを契機として、警察の人たちもホームレスの人たちに対して余り、指導するというか対応するということがずっと少なくなってまいりまして、いつの間にかずるずると今日のような状態になってまいりました。
 もちろんホームレスの人たちが公的な施設で寝泊まりをしていいはずはないわけでございます。もちろん法律も条例もありますけれども、はっきり言うと、それが今日機能していない状況にあるということだと思います。
 平成八年の調査では川崎市では四百五十人という数であったものが、何と今日では全市で約千人までふえております。昨日も川崎市は調査をした一番新しい数字を正式に発表しております。私の選挙区でありますけれども、川崎区と幸区という極めて狭い範囲でございますが、その地域だけでも八百三十六名という数字でございました。全市にはどの程度いるのかわかりませんけれども、多分千人はいるのではないかと思っております。
 また、もう一点でありますが、地域住民とのトラブルの経過もございます。
 最初は、やはり生活支援ということで食券を配付して、いろいろな意味での行政が手だてをいたしました。その食券は、そのチケットを持っていけば何でも買い物ができたものですから、地域の流通するお金のようなイメージで、大変ある一面からはその人たちに重宝されたんでございます。
 しかし、それによって多くの問題が生じて、とうとう川崎市は、今、一日六百六十円、二食分ということで、食べ物の現物支給をするようになりました。ホームレスの人たちにとっては、時間がたてば腐るわけですし、食べられなくなるわけですし、それ自体を価値あるものとしてはなかなか認められないという人たちもふえまして、食券を券として配っているときに比べてうんと受ける人たちが少なくなって、結果においては、ホームレスの実態も、よほど市役所が本気で調べないと以前のように実態が把握できないという状況にもなっていることも事実でございます。
 そういう中で、もう一点の問題は、自分の名前、本籍地、住所等、全く名乗らない、名乗れないのかもしれませんけれども、そういう人たちが結構多くなってまいります。当然、その人たちは生活保護の対象にもならないし、働こうとしても使ってくれるところもございません。この人たちも含めてどうするのかということが、実は今後の抜本的な対策として求められておるわけでございます。
 私たちは、そういう中に幾つかの施策を考えて提案をしてまいりましたけれども、何といっても、全国の中でどのような状況にあるのか。大都市は比較的行政が本気になって数の把握や実態調査をしておりますけれども、全国的に、中核都市を含め相当な分散をしている状況をどのように把握しておられるのか。今日の把握の状況について、まずお尋ねをいたしたいと思います。
真野政府参考人 全国のホームレスの概数でございますけれども、各地方公共団体が把握しております直近の状況を取りまとめましたところ、平成十三年九月、これが全国の直近でございますが二万四千九十人となっておりまして、平成十一年十月、これが前回の調査でありますが二万四百五十一人と比べまして、三千六百三十九人の増加ということになっております。
 前回の十一年と比較をいたしますと、先生おっしゃいますとおり、指定都市等の大都市部ではおおむね微増ないし横ばいである一方、その他の市町村を中心に増加をしておりまして、地方都市に拡散している傾向が見られるというふうに考えております。
田中(和)委員 私は、平成十年の十月に立ち上げたわけでございますが、自民党のホームレス問題勉強会の一メンバーでございますけれども、大阪、東京、しかも相当細かく各所を視察させていただいております。しかも、単なる視察ではなくて、ホームレスの方々からの聞き取りもやっております。また、近隣の皆さんがどのような感じを持っておられるのか、あるいは、大阪や東京など、支援センターももうできておりまして、十分ではありませんけれどもスタートしておりまして、こういう現場での御苦労や地方行政の対応等もお聞きをしてまいりました。
 私自身も、実は川崎市のJRの駅前でしょっちゅう演説をするものですから、そこに大勢のホームレスの皆さんがおりまして、一番丁寧に私の話を聞いていただいているお客さんでございまして、いろいろと親しくもお話をいたしております。
 ここで、もう一つ視点を変えた話を申し上げますけれども、生活保護ということが出てまいります。一般的な生活保護はもう説明する必要もないんですが、川崎市なども、東京などは特にそういう傾向があるわけでございますが、第二種福祉事業、宿泊施設というのができ上がってきておりまして、いわば宿を提供する、アパートを提供する業者の方たちが、実は生活保護の手続まで代行しておるわけでございます。個別的に手続をすることに原則なっておりますけれども、代行する人たちがいて、その人たちはホームレスからそこに入ることによって生活保護者になってまいります。
 川崎市では、五十歳代ぐらいの対象者とすれば、生活費が八万二千五百二十円、住宅費が五万三千七百円、合わせて十三万六千二百二十円というような数字になっておるようでございます。これは、高いのか安いのかは別にしましても、制度の中でそのようになっております。
 今、川崎市では定数が五百九十六人ということになっておりまして、その人たちがホームレスから移行して生活をしておるわけでございます。この宿泊施設が、やはり地域で問題を起こし、あるいは建てるということで住民の反対があって、いろいろと社会問題にもなっております。
 しかし私は、このように施設の中に入れる方はまだしも、はっきり言えば、アルコール中毒者だとか、あるいは、先ほど言ったように自分の名前を名乗れない人たち、こういう人たちは野宿生活をするしかないわけでございまして、本当に、動けなくなって病院に担ぎ込まれるまで大変悲惨な生活を送っておりますし、どのようにしようとしてもどうしようもないという現実に突き当たるのが現状でございます。
 そういう中で、私たちは、どんなに検討しても、地方自治体でやれる範囲をもう超えているんじゃないかと。現実に、世界じゅうの国々の中でも、こういう現象は都市部にあるわけでございますけれども、相当積極的な対応をしている国もあるわけでございますし、もちろん地方行政の協力も得なければならないけれども、国がリーダーシップを発揮するときだ、このように私はあえて申し上げたいと思っております。
 景気の低迷による雇用情勢の悪化という社会経済状況の変化、少子高齢化や核家族化の進行などによる家族構造の変化、また、社会生活への不適応、多重債務、アルコール依存症などの個人的な要因などが絡み合ってこれらのことが起きていると思うのであります。福祉、雇用、保健医療などの総合的な支援策が求められておりますけれども、対策を国はどのように考えておられるのか、どのようにしようとしておられるのか、お伺いをしておきたいと思います。
真野政府参考人 ホームレス対策につきましては、平成十一年の五月に、ホームレス問題に対する当面の対応策ということを取りまとめまして、関係省庁及び関係地方公共団体が取り組んでいるところでございまして、総合的な相談、自立支援の確保、雇用の安定、保健医療の充実、要援護者の住まいなどの確保、安心、安全な地域環境の整備というそれぞれの課題について取り組んでいるところでございます。
 厚生労働省といたしましては、当面の対応策の主要な柱といたしまして、平成十二年度より、ホームレスの方々に対しまして生活相談、健康診断、職業相談等を行いまして、就労による自立を支援いたしますホームレス自立支援センター事業、それから平成十三年度よりは、ホームレスの方々に対しまして緊急一時的な居住場所を提供するシェルター事業を実施いたしております。
 今後とも、関係自治体とも連携をいたしまして、施策の充実に努めたいと考えております。
田中(和)委員 はっきり言いまして、先ほどの調査も、全国的な調査ではないという、都市部の、しかも極めて深刻な事態になっている自治体の調査の数字でありまして、これはやはり全国的にチェックをしなきゃいけないだろうと私は思っております。
 そういう事態になれば、どうしても地域社会がすさんでまいりますし、子供たちだって、自分のペットはかわいがっても、ホームレスの人を平気で殺傷してしまうような、人としてあるまじき行為まで社会問題として起こっているわけです。これは本当に重大な問題ですね。
 そういう中で、本当に待望の、各党の御関係者の皆さんの大変な御努力によって、いよいよ議員立法で、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法が提案をされるわけでございます。私は、大変意義深いものだ、このように認識をしておるわけでございますけれども、大臣は、今後この問題についてどう取り組まれるお考えなのか、また、この法律が今日提案される、そのことについてどう考えておられるのか、お考えをお聞きしたいと存じます。
坂口国務大臣 まず、田中先生が今日までこのホームレスの問題に熱心にお取り組みをいただいてまいりましたことに敬意を表したいと存じます。また、今回のこの法律の作成、そしてきょうの提出に至りますまで、当委員会の委員の皆さん方に大変お世話になってまいりましてここに至りましたことを本当にうれしく思いますし、皆さんの今までの御努力に敬意を表したいと存じます。
 さて、今回のこの法律にもございますとおり、まず、自立の意思があるホームレスの人たちに対してどうするか、そして、ホームレスとなるおそれのある人たちに対してまず予防的にどうするかといったような問題、あるいはまた、先ほどからお話ございますように、宿泊施設をどうするかといったような問題、そうした問題が今回の法律の中に取り上げられておりまして、こうしたことが法で定められるということになりますれば、基本的な方向性が示されることになるわけでございますから、今までのように法律なしでいろいろなことをやるというのとは違いまして、法律にのっとって予算措置等もできるというふうに思いますので、大変大きな前進になるものというふうに思っております。
 この法案の趣旨にのっとって、そして関係省庁ともよく連携し、また、先ほど御指摘のように、地方自治体との連携が非常に大事だというふうに思いますから、地方自治体ともよく連携をさせていただきまして、そして解決に当たりたいというふうに思っております。
 しかし、なおかつ、先ほどから御指摘のように、名前を名乗ることのできないような人たちがその中に含まれるということでございますから、いわゆる自立をしたいとか、あるいはまた宿泊施設に入るとかというようなことになりますと、どうしても、どこどこのだれだれということを名乗っていただかなければならないということになりますから、それでもなおかつ、まだ問題はそこに残ってくる、そうしたことに対して、今後またどうしていくかということも、さらなる検討が必要ではないかというふうに思っている次第でございます。
田中(和)委員 大臣の大変前向きな御答弁、ありがとうございました。
 ホームレスゼロ社会、これは政治主導で頑張っていかないとでき得ないと思います。また、国民全体の御理解と御協力がなければできません。支援センターをつくるだけでも、地域では波風が立つわけでございまして、そういう意味での御理解をどうやっていただけるようにするかという、これらの行政の努力、我々政治家も頑張らなきゃいけないと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思っております。
 続いて、同様に議員立法準備をされておられます社会保険労務士の制度についてお尋ねをいたします。
 昨今の社会経済情勢の著しい変化と労働者の働き方や就業意識の多様化に伴って、労働関係、社会保険関係の諸制度は極めて複雑かつ専門的なものになってまいりました。そのため、高度の専門性を有している社会保険労務士に対する期待や要請は大きく高まってまいりました。また、人事管理、労務管理の個別化などに伴って、労働関係に関する事項について、個々の労働者と事業主との間の紛争が増加している傾向にもなってまいりました。こうした状況の中で、今後の社会保険労務士の果たすべき役割についてどのように考えておられるのか、副大臣にお尋ねをいたします。
狩野副大臣 田中委員の仰せのとおりでございまして、最近の社会保険労務士に対する期待というものは大変高いわけでございます。そういう意味でも、社会保険労務士が、質の高い、信頼されるサービスを提供していくことが大変重要であるというふうに考えております。
 特に、個別労働紛争が増加している現況の中で、紛争調整委員会におけるあっせん手続において、社会保険労務士が紛争当事者の代理を行うようになることなどにより、社会保険労務士の有する専門性を活用して、紛争の解決等に大きな役割を果たしていただければと期待しているところであります。
田中(和)委員 私どもと同じ認識を述べていただいたわけでございまして、ぜひひとつ有能な社会保険労務士の皆様方にみずからも研さんしていただくと同時に、優秀な方がそういうお仕事についていただいて、十分に国民の期待にこたえていただきたい、このように私も申し上げながら、担当の省として、ぜひひとつ御指導の方もよろしくお願いしたいと思います。
 続きまして、今大きな社会問題になっております輸入食品のあるいは食品添加物の件についてお尋ねをいたしてまいりたいと思います。
 BSE発生以来、偽装表示事件、指定外添加物や残留農薬の問題等を契機として、食の安全に対する国民の皆さんの不安が高まっていることはまことに残念であると思っております。
 我々が毎日口にしている食品の何割が日本国内で生産されているかを調査いたしましたところ、平成十二年の数字でありますけれども、カロリーベースで、国産が四〇%、六〇%は輸入食品ということになっておるようでございます。
 すなわち、これらのことを考えるときに、輸入食品については、国内で使用が認められていない食品添加物の使用、野菜の農薬の残留、遺伝子組み換え食品などのいろいろな問題が取り上げられておるわけでございまして、このような中で、輸入食品の安全を確保するために、輸入時における現状の検査体制はどのようになっているか、御説明をいただきたいと思います。
 あわせて、現在、全国の検疫所において輸入時の検査を行っているということであろうと思います。多分そのように答弁があろうと思いますけれども、本年一月ごろから、中国野菜について、食品衛生法の残留基準値に違反する農薬が検出されている件数が急増しております。また、食品添加物、これらのことも大きな問題になっておりますが、中国産の野菜などの残留農薬問題などの状況とこれまでどのような対策をとって対応したのか、これもお答えをいただきたいと思います。
尾嵜政府参考人 最初の輸入食品の検査体制の関係でございますが、厚生労働省では、全国三十一カ所の検疫所に二百六十八名の食品衛生監視員を配置いたしまして、食品衛生法に基づく食品の輸入時の審査あるいは検査など、監視指導業務を行っているところでございます。
 平成十二年の輸入届け出件数は百五十五万件程度でございますが、そのうちの十一万件につきまして検査を実施いたしまして、千三十件余につきましての食品衛生法の違反品を見つけておるというところでございまして、そういったものにつきましては、廃棄または積み戻し等の措置を講じているところでございます。
 こういった輸入食品の安全性確保に的確に対応いたしますために、横浜及び神戸の検疫所に輸入食品・検疫検査センターを設置いたしまして、残留農薬等の高度な分析検査業務を集中化しておりますし、また、届け出審査の電算化ということで業務の合理化を図っているというところでございます。
 食品衛生監視員につきましては、過去十年で九十九名の増員を図っておりますが、本年度、四名の増員をさらに図ったところでございます。
 御質問の二点目でございますが、中国産の野菜の残留農薬問題の状況でございますが、本年一月より、中国産野菜の検査強化月間ということで、すべての届け出につきまして検査を実施するという体制で、こういった検査の終了後につきましても検査命令を実施する等、引き続き検査の強化をしておるという状況でございます。
 一月四日から七月十五日までの中国産の生鮮、これは生の方でございますが、生鮮の野菜の輸入時検査の結果といたしましては、検査命令では違反率が一・六%、モニタリング検査では〇・三%という状況でございます。
 一方、最近問題になっております中国産の冷凍野菜、これは加工の方でございますが、三月二十日より検査を開始いたしておりますが、冷凍ホウレンソウから基準値を超える農薬が相次いで検出されておるということで、五月十四日より、輸入届け出のございました全品につきましてクロルピリホス等の検査を輸入者に求め、違反でないことが確認された後でなければ輸入を認めない、そういう対応をしているところでございます。
 しかしながら、残留農薬違反というのはその後も継続的に見られておりまして、輸入時の検査の一ロット当たりの検体数をふやしておるということ、あるいは、在日の中国大使等に対しまして、これまで五月から六月にかけまして、農薬の残留防止対策が適切にとられていない野菜等を我が国に輸出しないよう要請をいたしておりますし、また、六月には担当官を中国に派遣し、調査を行うとともに、中国政府に対しまして、残留農薬違反の輸出業者名のリストを提示して、中国側の輸出前検査のさらなる強化及び農薬使用の適正指導の強化を要請したところでございます。
 こういった三月二十日以降の検査の結果でございますが、中国産の冷凍ホウレンソウの輸入時検査の結果は、六百十五件行いましたうちの四十二件が違反であるということで、違反率六・八%ということで、非常に高い違反率になっているというのが現在の状況でございます。
田中(和)委員 私は、食の安全という極めて重要なことについて、いろいろな対応をされたんだけれども、現実には食の安全が確保されていなかったという事実を重く受けとめなければならない。国民の皆さんも本当に不安に感じておられるわけでございまして、早く何とかしなければならないわけでございます。
 これまで輸入禁止の措置がとれなかったのか、また今後どのように対応するつもりなのか、厚生労働大臣にぜひ御答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 先ほど局長が答弁しましたように、現在までのところは、これは違反が確認されましたら、それはその食品の輸入を個別に禁止をするということになっているわけでございます。
 ところが、個別に禁止をするということでは、正直申しまして対応できなくなってまいりました。中国産の問題等もございまして、ことしになりましてからこの輸入時の検査を強化しておるわけでございますが、それだけでも、強化をするだけではなかなか対応できないというような状況になってきていることはもう既に御承知のとおりでございます。
 そこで、個別の検査結果に基づいて対応する現在の仕組みには限界がありますので、包括的な輸入を禁止するような法改正を速やかに行いたいというふうに思っております。何度も違反を重ねるようなところにつきましては、もうそれを包括的に禁止をするといったような措置をとらない限り、現在の二百六十八名という非常に限られた人数の検査官で対応はできないというふうに考えている次第でございます。
田中(和)委員 時間が来たら終わりますけれども、一、二、要望しておきたいと思います。
 まず、食品衛生法において包括的な輸入禁止規定を設けて、国民の健康を守るという立場からぜひ的確に運用していただく。また、検疫所の検査体制が十分ではない、こういうように私は思っておりまして、食品衛生監視員の増員、検査機器整備などの充実、これらもぜひひとつ努力をして食の安全の確保に特段の御尽力を願いたいと思います。
 終わります。ありがとうございました。
森委員長 次に、釘宮磐君。
釘宮委員 民主党の釘宮磐でございます。
 まず最初に、坂口大臣に私はお礼を申し上げたいと思うんです。
 私がかねがねこの委員会でお願いをしてまいりました不妊治療に対する公的支援について、先週の土曜日ですか、長野県の松本市で行われたタウンミーティングの場で、不妊治療を受ける人がふえているのは事実で、この問題を放置できない、少子化対策の中に位置づけないといけないということで、九月に予定をされております少子化対策の中間報告にこれを盛り込むというような御発言がございました。
 私は先般もこの問題について小泉総理にも申し上げたんですが、少子化対策というのは、子供を産むことにちゅうちょをしている人に対してのそういう環境づくりというものも一つ大切ではあるけれども、要するに、産みたくても産めないという人、その人に直接的に援助をするということは、これが非常に大きな効果をもたらすということを申し上げたわけであります。したがって、この件について大臣が本当に真摯に受けとめていただいたということに感謝をいたしております。
 そこで、二点ほどお伺いしたいと思うんですが、この支援策について、保険適用をする方法と一般財源から何らかの助成を考えるということが考えられると思うんですが、大臣としてどちらをお考えになっているのか。それと、二点目として、来年度予算にこれを計上するための準備を進めていくおつもりがあるのかどうか。この二点についてお伺いします。
坂口国務大臣 不妊治療につきましては、委員初め多くの皆さんからいろいろの御議論をいただいているところでございますし、私も何とかこれを進めなければならないというふうに思ってきた一人でございます。これを進めるに当たりましては、私の方の省内も意見の統一を図らなきゃならないわけでございますが、まだこれからでございます。
 今御指摘のように、もしやるとすれば保険でやるか、あるいは、保険が難しければ一般財源でやるかということにならざるを得ない。現在の保険の決め方からいきますと、どうしてもはみ出してしまう。それは、いわゆる妊娠、出産というのは、これは病気ではない、正常なことであるということから、保険で出産にかかわりますことはなかなか取り上げられにくい。しかも、それにかかわります分野もなかなかここで取り上げられてこなかったという経緯もございます。ほんの一部は、この不妊治療につきまして取り上げてはおりますけれども、しかし、本格的に取り上げていない。ここのところは、基本的な保険の物の考え方を変えないことにはいけないのではないかというふうに思っています。そうしたことができるかどうかという問題が一つございます。できれば私はそれが一番スムーズではないかというふうに思っておりますが、どうしてもそこが不可能であるということになれば、それにかわる一般財源からの確保といったことが大事になってまいりますので、そこは来年度予算に向けまして、何とかそのことが実現できるように努力をしたい、そう思っております。
釘宮委員 この問題については、当委員会の中にも現実に今治療をなさっている方もおられます。大変多額な負担、これは国会議員が多額だといって大変だと言っているのに、一般の二十代、三十代の若い夫婦がこれを負担するというのは、これは容易なことじゃない。ですから、今大臣の前向きな答弁ありましたけれども、大臣、ぜひこれは来年度予算にはのっけていただきたいと思うのですよ。やはり、そういうふうにスピードを持って今政策を進めていくということ。
 私は、大臣のこの発言があって、私のところにも随分とメールが来ました。本当に目の前が明るくなったという話がありました。私は、久々の吉報だ、朗報だというふうに思うわけです。大臣が、ぜひその辺のところを、前向きにもう一度、ぜひ来年度に向けてやるということを明言していただけませんか。
坂口国務大臣 いずれにいたしましても、全体の政策立案をしなければならないわけでありますから、それは来年度に向けてやりたいと思っております。
釘宮委員 ありがとうございました。
 それじゃ、通告に従って質問をさせていただきます。
 この問題も、実は私がこれまでたびたびこの委員会で質問をしてまいったことでありますが、いわゆる国立病院の談合疑惑についてであります。今回、再入札を、八月の十日に公告を行うということで準備が進んでいるようでありますが、私は、この再入札に向けて、きょうはひとつ、確認を一つ一つとっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 まず、国立病院部にお伺いしますが、前回の入札において談合はあったのかなかったのか、どういう認識にあるのか、まず聞かせてください。
河村政府参考人 今回問題になっております十件のうち、事前に談合情報の寄せられた件につきましては、談合情報マニュアルに沿いまして、関係業者から聞き取り調査を行って、その上で公正取引委員会に通報をいたしてきたところでございますけれども、その後、先生の御指摘あるいは入札結果、そういったものを踏まえまして、改めてこの全十件につきまして、これらの入札に参加したジョイントベンチャーの構成員全六十五社及び……(釘宮委員「いや、質問に答えて」と呼ぶ)はい。そういうかなり徹底した調査を発注者側としてやったわけでございますけれども、また、国立病院関係の営繕技官OBに対しても、談合の関与の有無等についての調査も行ったわけでございますけれども、調査の結果、談合の事実は確認できなかったというところでございます。
釘宮委員 ということは、談合はなかったということですか。じゃ、談合はなかったということであれば、なぜ入札を撤回したんですか。お答えください。
河村政府参考人 談合の事実はいろいろ調査をやっても確認はできなかったわけでございますけれども、一方では、三月二十九日に公正取引委員会に独禁法四十五条に基づく正式な申告を行っておるということもございますし、それから、事前に寄せられた談合情報と実際の入札結果がかなりの程度符合していたというようなこともございまして、やはり入札の公正に万全を期すという観点から、既に入札を行っていた七件についても入札結果に従った契約は行わないで保留をし、それから、入札を延期した三件も含めて改めて入札を行うこととしたところでございます。
釘宮委員 今私が聞きたかったのは、あったのかなかったのか、どの認識で次の再入札を行うのか。ここのところがまずきちっとしないと、私は今後の入札というのが非常にあいまいな状況で行われることになるということを指摘したいわけです。
 それで、なぜ私がそのことを申し上げるかというと、要するに、談合があったということでこれを撤回したのなら、前回これに参加した人を排除するというのは当然のことですよね。しかし、今回はすべて同じメンバーでやろうということなんですよ。ということは、結局談合はなかったということになるのも同じ認識と言っても間違いじゃないんじゃないんですか。そこはどうなんですか。
河村政府参考人 今ほど申し上げましたように、入札に関して一層の適正を期す、公正に万全を期すということで、一たん白紙に戻して再入札を行いたいということにしたわけでございます。
 それで、前回の落札業者を外すべきではないかということでございますけれども、予算決算及び会計令の七十一条におきまして「一般競争に参加させないことができる者」というのは法律上定めておるわけでございまして、今回の件につきましては、談合の疑いがあった業者について厚生労働省が調査を行ったけれども談合の事実は確認できなかったというところでございますし、談合の事実が明らかでない以上、やはり法律の七十一条第一項二号の規定には該当しないということでございまして、再入札から排除することは困難であるというふうに考えておるところでございます。
釘宮委員 そこの話になると、どうも私は納得いかないのですね。実際問題、談合がなかったということであれば、そのままいけばいいわけですよ。そこのところの結論を何でそういうふうにきちっと出さないのですか。
 それと、いま一つ、この問題、実は三月の入札の前に、二月の初旬にいろいろなペーパーが出ている。私はこれを示して、その示したペーパーが全く同じだったわけですよ。だから、これは談合の疑いがありということで撤回した、私はそういうふうに認識しているのですね。
 ここにその国立病院部の報告書があるのですが、例えば直接国立病院部に内部告発があったのが五つあるのですね。そのうち、入札が済んでいるのが三件。三件については、対応状況は、事情聴取後、誓約書の提出、公正取引委員会への通報、これだけです。これは三件とも同じ。落札者については情報と同じ業者、これは三つともそうなんです、全部。私が示した資料も全く同じ。それから、内部告発者から出ている、厚生労働省が受けたものについても、これも全く同じ。
 そうしたら、これは談合があったというふうに見るのが至当じゃないですか。これを実は全く無視をするような形で、今部長がおっしゃるように排除できないということであれば、厚生労働省、国立病院部一緒になってこの談合を幇助しているとしか言いようがないじゃないですか。どうですか。
河村政府参考人 先ほども言いかけましたけれども、今回の十件の入札に参加しております業者、全業者七十社に及びましたけれども、それについての詳細な調査を行ったわけでございます。そういう調査を行った上で、それで談合の事実は確認できなかったということなわけでございまして……(発言する者あり)確認できなかったということでございます。
釘宮委員 どうも歯切れが悪いんですよ。要するに談合があったのかなかったのかということについても、明快に答えない。それで、再入札。しかも、再入札をするときは同じメンバーである。そんなばかな話がありますか。私は、この問題については、極めて、厚生労働省、本気でこれを何とかしようという思いがありませんよ。
 例えば、今回、入札制度の改革というのを公表しましたね。ここにあるんです、「今後の入札について」。
 「混合入札の導入」。今まではJVというものを対象にしていた。ジョイントベンチャーですね、共同企業体。それを、今回は単独企業も参加できるように混合入札を導入する。これは、あなた、メンバーをふやすことを想像させますけれども、要するに、カムフラージュにしか見えませんよ。今度新たに単独企業も入れますよ、それによってより競争者がふえましたよ、そういうふうにしか見えませんよ。
 それから、「指名停止期間の延長」。今までは一年だったのを二年にする。今回は、談合はなかったということが前提ですから、こんなものは関係がない。
 それから、「落札結果の公表」についても、予定価格をいまだに出しておりません。「次回の予定価格を類推させるおそれがある」、こういうふうに言っているのです。同じメンバーで、しかも前回落札した業者がこれに参加するということになれば、そこが一番有利になるじゃないですか。また同じことになるじゃないですか。
 ですから、私は、厚生労働省は本気になってやっているように見えない。特に、それなら、なぜ天下りの禁止をこの中に、項目に入れないんですか。大臣は天下り禁止を国会で答弁していますよ。何で入れないんですか。これは役所と大臣との意思の疎通が全然ないじゃないですか。
 大臣、この点はどうなんですか。このいわゆる入札制度改革について、大臣はどういう認識を持っていますか。
坂口国務大臣 先ほどからの議論でございますが、事実は確認できなかったけれども十分疑うに足りる状況にある、こういうことだと私思います。したがいまして、十分に疑うだけの証拠があります以上それはもとに戻す、こういうことで戻したというふうに思います。
 今までのところ、疑いがあるというだけではもとへ戻していなかったんですね。他の省庁のこともずっと全部聞いてみたんですけれども、いろいろの情報が出回ったりして、いろいろのことがあっても、確認をしてそこが確認ができなかったらそれはそのままに進行するというのが今までだったわけです。
 しかし、そこは我々は思い切ってもとへ戻した。国がそういうことをやるのは初めてだというふうに思いますけれども、もとに戻しまして、そして御破算にした。それで、もう一遍やり直しをする。
 やり直しをするに当たりましては、これは先ほど言いましたように、混合入札もありますけれども、電子入札に切りかえる。そして、どなたが入札をしているかということをわからないようにするということでやることにしたい。
 天下りでありますけれども、私は、天下りにつきましては、やはり今まで関係しておった者がすぐそういうことを担当しておった企業の中に天下ることは好ましいことでは決してない、それは省として慎むべきだ、そう思っております。
釘宮委員 せっかく今回、厚生労働省、国立病院部において入札制度改革を公表したわけでしょう。その公表した中に、余り影響がないようなことはどんどん羅列して、影響があることについては触れていない。今大臣も、それはやるべきだという話をしていますね。私は、これはぜひ盛り込むべきだと思いますよ。
 それから、あわせて、私は、今大臣の答弁の中に重大な問題を含んでいると思うのです。
 要するに、今までだったらこれは再入札なんという話にはならないし、撤回なんかしない、それを今回決断したんだと。これは先ほどからも、客観情勢から見て疑わしいということはもう厳然たる事実としてあるわけでしょう。そうすれば、疑わしいということでこれを再入札するということは、次の再入札はやはり必ず条件が変わってきてしかるべきでしょう。なぜこのまま前回と同じメンバーでやるんですか。しかも、前回の落札業者をあえて入れるんですか。
 こういう答弁をしていますと、談合はなかった、要するに厚生労働省は認めていないんだ、だから前回の落札業者は再入札にも当然参加してもらえるんだ、だから同じ結果になったって全くおかしいことはないじゃないか、こういう話になるんですよ。
 現に、業界においてそのような話も漏れ聞くんですよ、同じでいけと。厚生労働省、認めているんだから、これは別に談合だったと言っていないんだから。こういうことまでなっている。
 こういう状況で本当に八月十日やるんですか、もう一遍聞かせてください。
河村政府参考人 談合の事実は確認できなかったということでございます。
 同じような形で同じメンバーでやるのかという御質問でございますけれども、私どもは、今回のを白紙に戻して再入札をいたすに当たりまして入札制度の改善をいたしたい。混合入札の導入につきましては、参加業者の数の拡大を図りたい、より競争性を高めたい。それからあと電子入札でございますけれども、やはり一層の透明性なりあるいは競争性を確保したい。それから、仮に談合を行ったと確認された場合には、入札参加業者のペナルティーというのを重くしたい、そういう形で新しい入札制度のもとで実施をしたいということでございます。
釘宮委員 では、このままやるんですね。このままやるんですね。
河村政府参考人 こういう入札制度の改善を前提にいたしまして、実施をいたしたいというふうに思っております。
釘宮委員 このままやるんですね。
 私は、このままやって同じ結果が出たときは、これはどうするんですか。大臣、私は、どう考えても、今回は、それは法的には難しいかもわからぬ、しかし自主的に辞退してもらうとか、それぐらいのことはやるべきだと思いますよ。今そうでなくたって、税金の使われ方、今委員長特権まで我々は投げ出してでもという議論を始めたところですよ。やはり、国民が見たときに疑惑があるというような状況の中でこれが再入札されるというのは、私は、坂口大臣はやるべきではないというふうに思いますが、どうですか。
坂口国務大臣 先ほどのお話の中で、額は一緒というふうにおっしゃいましたが、額は変えるんです、これは、それぞれの。全部やり直して、額は変える。そして、入札をする人、それは前と同じではない、新しい人も当然その中に入れるわけで、だれが入ってくるかはわからないようにして、それは変える。そこが今までのなにとは全く違った形でやる、そこをやはり言わないと、いけないと思うんですね。
釘宮委員 談合のメカニズムというのがあるんでよ、そのメカニズムを壊さないことには同じ結果にしかならないというんですよ、私は。メカニズムがどういう状況になっているか、ここを全く問題にしないとすれば、私は坂口大臣らしくない。これは結果がどういうふうな形で出るか私は注視していますから、ぜひ今後ともこの問題、追及していきたいというふうに思います。
 それから、あと時間が余りありませんから、一つ問題を変えてまいりたいと思います。
 実は、社会福祉法人健祥会と言われる施設が大変短期間の間に多くの施設をつくったということで、この国会でも随分と問題になっておりますが、この問題についてちょっとお伺いをしたいと思います。
 老健局長見えていますね。この問題について、私は今までとちょっと違った観点でお聞きしたいと思うんですが、私はみずからが社会福祉法人を経営しております。私の法人は五十三年間かかって今五つの施設であります。この五つの施設をつくるためにも、社会福祉法人というのはもともと利益を生み出す団体じゃありませんから、これは借り入れを起こす。当然施設では公的助成はありますよね、公的助成、四分の三あります、国と県。そうすると四分の一は自分で負担しなきゃならないということなんですよ。それは、利益がないのにもってきて、この四分の一を返していかなきゃならない。これは医療事業団等から借りて返していかなきゃならない。
 ここで、この法人がこの二十一年間に百数十億のいわゆる資産にまでなってきた、これは単純に計算して四分の一を自己負担したとすると、三十億を超えて用意しなきゃならないわけですね。これを単純に返済するとすると、年間やはり三億ぐらいを調達してこれを返していかなきゃならない。これはどう考えたって返せるという、この理事長さんは何か特別な事業か何かをやっているんですか。その辺の確認をどういうふうにして、そして、これが妥当であるというふうにして今日まで厚生労働省がこの法人の建設を認めてきたのか、その辺のところをわかるように説明してください。
堤政府参考人 今御指摘の徳島の社会福祉法人健祥会でございますけれども、先生お話しのように、施設を整備するときには四分の一の自己負担がある、そのうちの相当割合について社会福祉・医療事業団からの貸し付けがある、その残りは法人みずから負担をしなければいかぬ、こういう構造になっているわけでございます。
 施設を整備するときの、まず法人みずから負担しなければいけない部分、借金できない部分ですね、これについて最近の資金計画を見てみますと、法人の保有資金、みずからの保有資金で賄っております。その法人保有資金は、実際には本部会計に繰り入れられた健祥会がやっております老人保健施設とか福祉の専門学校等の学校事業の剰余金を充てているように理解をされます。社会福祉・医療事業団から借りている、これはまた返していかなきゃいけない、これもやはり、当該法人の資料を見ますと、そういう老人保健施設とかそういうところの剰余金で返済をしているようでございます。
釘宮委員 これは、私も自分で施設をつくった経験がありますからその実体験から申し上げるんですが、県が当然、認可ですから、県が認可する際には必ず返済計画というのを相当厳しくチェックしますよね。それはそうですよ、その投資から利益を生み出すわけじゃないわけですからね。だから、どうしたって寄附金とかそういうのにしなきゃならない、だから役員が保証人になったりするわけですよ。しかし、どう考えたって、二十年間で三十億、四十億という自己資金を用意して、それをまた返していくことというのは、これはどうも考えにくいし、また、それをなぜ県がこういう形で次々に認可をしていったかというのは不思議でならない。
 これは、仄聞するところによると、県に対してはここの理事長さんが、厚生省がいいと言っているんだ、こういうふうに言っているというふうにも聞いているんですよ。だから、そういう、厚生省がいいと言ったというような事実というのはあるんですか。
堤政府参考人 今先生御指摘のようなお話は、齋藤勁先生の方からも全く同じようなお話がございました。県の方には、具体的に御指摘の事実があったかどうか、今、公文書でもって、調査をして今月中に返事をよこせということで言っております。
 私どもの厚生省の担当者、担当課長あるいは担当の補佐等ずっと歴代調べてみましたけれども、そういうふうに私どもの方がいいと言ったという事実はございませんでした。
釘宮委員 時間が参りましたから、この問題、私はどう考えても不自然だと思うんですね。不自然ですよ。こんなわずかの期間に、しかも、県がその年に計画した整備計画の中の半分以上がその特定の法人に行く。今そうでなくたって、いろいろな人たちがこの施設に参画したい、参入したいという思いを持っていますよ。ですから、逆に言えば、県あたりはその調整に本当に今苦労している。にもかかわらず、なぜこういう事態が起こってきたのか。
 しかも、私はどう考えたって、今どき三億、四億の借金を返すための利益を出せるような、そういう状況というのはなかなかやはり難しいだろうというふうにも思いますし、そういう、ある意味では、公平公正な立場から我々が考えたときに、この問題は非常に問題があるというふうに思いますから、これは厚生労働省としても、きちっとした、しかるべき調査をやはりすべきだ、内部監査等もやるべきだというふうに私は思います。
 そのことを申し上げて私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
森委員長 次に、鍵田節哉君。
鍵田委員 民主党の鍵田でございます。
 本日は、佐世保重工業の助成金詐取事件と、さらに、本日議題になりますホームレス自立支援法につきまして質問をさせていただきたいというふうに思います。
 昨年の今ごろはたしかKSD問題を取り上げて活動をしておりましたが、ことしはSSK問題を取り上げなくてはならないという、非常に残念な、同じような何かローマ字が三つ並ぶんですが、そういう事件を取り上げなくてはならないというのは非常に残念でございます。
 まして、大変厳しい雇用環境の中で、自己の能力を向上させ、そして生涯の職業生活を充実させていく、さらには中高年者の雇用の安定のために助成をされる、そういうふうな制度を、企業ぐるみで悪用するという、大変悲しい、また怒りを覚える、そういう詐取事件でございまして、これらが県当局や厚生労働省の調査によって判明したのではなしに、マスコミの報道から発覚をして、そしてそれが明るみになってきたというところに、非常にこれは問題があるのではないかというふうに思います。
 そこで、これらの問題につきまして、若干、事実関係をお聞きしたいというふうに思います。
 まず、中高年労働移動支援特別助成金制度というものについてお尋ねをいたしますけれども、この助成金制度というのは、どういう目的で、いつできて、そしていつまで続いたのか。また、この制度は、だれが企画をして、そして予算化をし、この施策を進めてきたのかということ。さらには、この企業の従業員は当時何人で、そして何人が出向をしたのか、またその期間はどの程度であったのかということについて、まとめてお答えをいただきたいと思います。
澤田政府参考人 まず、中高年労働移動支援特別助成金の趣旨、目的でございますが、この助成金制度は、平成十年の秋から冬にかけまして、失業率が四%に乗って、有効求人倍率も〇・五倍を切るというような、大変厳しい雇用失業情勢でございました。そういう中で雇用の維持が困難な企業がふえまして、特に中高年労働者につきましては、一たん離職すると再就職が難しいという状況にございましたので、平成十年度の補正予算で、臨時緊急の措置として創設されたものであります。具体的には、四十五歳以上六十歳未満の中高年労働者を失業を経ることなく受け入れた事業主に対しまして、賃金及び教育訓練に係ります費用の助成を行うということでございます。
 この助成金制度は、平成十一年一月から同年の七月まで実施されまして、その後は、四十五歳以上という年齢要件の撤廃等々を加えまして、人材移動特別助成金というものに拡充され、その制度が平成十三年三月末まで実施されたということでございます。
 この制度を創設した経緯でございますが、平成十年の十一月に政府として緊急経済対策を策定いたしまして、その中の雇用部分でございます雇用活性化総合プランという中にこの助成金が盛り込まれた。その後、関係審議会の諮問、答申という手続を経て、関係の省令案が平成十年十二月に公布され、十一年一月一日から施行されたということで、これは当時の厳しい雇用失業情勢に対応するために純粋に政策的必要性に基づいて企画立案されたものでございます。
 この助成金を利用した当時の佐世保重工業の従業員数でございますが、佐世保重工業から出向計画が出てまいりました平成十一年の四月―六月当時、同社から添付されました資料の中で、在籍従業者、平成十一年五月一日現在、千六百五人という資料がございます。千六百五人のうち、同社から出向計画が提出され、審査の結果、具体的に助成金の受給資格決定を受けた者は、八百八十一人ということでございます。
鍵田委員 この助成金を受けられた企業のリストをいただきました。これによりますと、平成十一年度につきましては上位の一、二番目を含めまして二十社中の七社、十二年度については上位十社すべてが、また十三年度につきましては助成金総額の七割を長崎県の事業所が占めておるわけでございますけれども、このほとんどが佐世保重工関係というふうに推測をされるわけでございます。
 ずば抜けて助成金の給付が突出していると常識的にも判断できるわけでございますが、その辺については、そういう認識は当時からあったのかどうか。どうも、そういうことからいたしますと、何か意図的にこの企業に多くの助成金が流れるように設計をされたんではないかというような節があるわけでございますけれども。
 事業総額として、百五十四億三千万ほどでやられておるわけです、三年間で。そのうちの、佐世保重工に十七億二千二百万ということですから、一企業に一〇%を超え、一一%を超えていますか、というぐらいの助成がされておるというのは、これは異常ではないかというふうに認識されるわけでございますが、それらにつきましてはどのようにお考えでしょうか。
澤田政府参考人 お答えする前に、先ほどの答弁で佐世保重工業から出向計画が提出されたのは十一年の四月から六月と申し上げましたが、五月、六月の誤りでございますので、訂正させていただきます。
 五月、六月当時、先ほど申しましたように、雇用情勢が非常に厳しい、また造船業が国内外での競争が非常に厳しかったという背景、事情があります。そうした中で、佐世保重工業から千名を超える出向計画が当時の長崎雇用促進センターに提出されたものでございますが、支給要件にもございますように、同社の出向計画提出時直近三カ月の生産高が対前年比三割減であった、大変な落ち込みであった。そして、当時の造船業をめぐる環境、一般的な雇用情勢を考慮すれば、その後の厳しい状況も佐世保重工業においては見込まれるというようなことを総合判断して、同センターで受理をしたものと考えております。
 そして、受理をした後の審査につきましては、先ほど申しましたように、厳正に審査をいたしまして、千人を超える申請者のうち、要件に合わない者、約四分の一、三百名強、これにつきましては支給対象から厳格に外すということを行った審査経緯を見ましても、同社に対する助成金の支給が特段の意図のもとに行われたということはないものと考えております。
鍵田委員 それでは再度お聞きしますが、他の造船業においてどのような助成の状態であったのかということでございます。そのことについてはいかがでしょうか。
澤田政府参考人 この助成金を使用した事業所を業種で申しますと、鉄鋼業におきまして一億円程度の支給を決定した事業所もございますが、造船業という形で見ますと、佐世保の下請関連企業が突出しておるということは事実でございます。
鍵田委員 金額的に見ましても、規模的に見ましても、非常に突出しているというふうに思いますし、それから、他の造船業ではそういうのは余りなかったということでございますから、やはり異常であったということは認識をされておったんじゃないかというふうに私は考えられると思いますが、若干その辺では認識が違うのかなというふうに思います。
 そこで、きょうはそんなに深く突っ込んで質問をする時間がないんですが、この助成を受ける要件というのが幾つかあるわけですけれども、労働組合があって、その労働組合との書面による協定というものがある。その協定に基づいて出向を行うということでありますけれども、この労働組合のチェックがきいていたのか、きいていなかったのか。
 実は、この企業というのは、再建屋と言われた坪内さんが入って、そして労使関係の民主化闘争ということで大変な争議があったところでございまして、その坪内イズムを受け継いだ社長さんがこの事件を起こしておるわけでございまして、労働組合などにつきましては余り重視をしない、そういう経営者であったために、労働組合のチェックが十分働かなかったんではないかというふうに推察もされるわけでございますが、それらにつきましてはいかがでしょうか。
    〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
澤田政府参考人 この助成金の支給要件の一つに、労働組合等との間で書面による協定を締結することというのがございます。本件につきましても、平成十一年五月、六月に会社側から出向計画が提出されておりますが、そこには、佐世保重工業と同社の労働組合との出向協定が適正に締結され、添付されておりました。
 また、この助成金は事後払いでございますので、計画段階でチェックすると同時に、実際の支給段階で、実際出向が適正に行われたかということもチェックする仕組みでございますが、その場合にも、使用者側からの書類、それから労働組合からもそれについてのいわば適正であるという旨の証明をした書類、いずれも出ておりまして、審査書類上は、使用者と労働者との間で適正に手続がなされ、実行されたものと判断したということは間違いございません。
鍵田委員 書類審査によってということのようでございますが、実際にこれだけの多額の助成金を出しておるのに書類だけで審査というのはいかがなものかというふうに思うわけでございますが、その辺が、公金を扱っておるという厚生労働省としてのこの取り扱いについての認識が非常に甘いんではないかというふうにとらざるを得ないわけでございます。
 そこで、この要件の、もう一つの条件についてお聞きをしたいと思います。
 出向等を行った事業主と密接な関係にある事業主でないことということが支給要件になっておるわけでございます。
 以前にも造船不況がありまして、造船業から自動車産業などに大量の出向をされたり、また鉄鋼産業からも電機産業や自動車産業に出向されたというふうな例がございます。これらは、先ほど申しました、出向などを行った事業主と密接な関係にある事業主でないことという要件に当てはまると思うんですが、今回の場合は、親企業から、本来運命共同体と言っても言い過ぎではない下請企業に大量に出向したことになっておるわけでございます。それも、同じ工場内、同じ敷地内で仕事をしておるということでございまして、資本の関係がないとかというふうなことだけで先ほど言った支給要件はちゃんと満たしておるというふうに受け取られたということなのでしょうか。その辺の経緯についてお答えをいただきたいと思います。
澤田政府参考人 御指摘のように、支給要件の一つでございます、受け入れ事業主が送り出し事業主と組織的に密接な関係にないことという点につきましては、判断基準というものを別途詳細に決めておりまして、そこでは、出向元企業と出向先企業の関係におきまして、資本金五〇%の出資がある場合は要件外、あるいは代表者が同一である場合も要件外、それから、両方の会社の取締役を兼務する者が一方で過半数いる場合、これも要件に外れるというようなことで審査いたしまして、本件につきましては、いわば下請の独立性があるということで対象にしたものであります。
 他方、親会社と関連の下請が取引関係にあるということにつきましては、今申しましたように、代表者が同一だとか、取締役がお互い半数を兼ねているとかいうことがない限りは、まさに当該下請企業が主体的に出向で来た従業員に対して指揮命令を行い、業務を遂行している限り、出向元企業から当該下請企業への労働移動が行われたものとみなすことができるという考え方から、助成金の対象からは排除しないという考え方で整理しているところでございます。
鍵田委員 マスコミの報道などによりましても、下請というのは非常に弱い立場にあるわけでありますから、そこへ出向者を押しつけて、そして架空の仕事の発注などによって、そしてまたその資金を回収するというふうなことがやられたというふうに報道されておるわけでございます。これらにつきましては、今後、もちろん警察当局でも事実関係を調べられるというふうに思っておりますけれども、それらの捜査の状況を踏まえて、適切な対応をされるように要望したいと思います。きょうは、質問はこの程度にしたいと思いますが。
 次に、生涯能力開発給付金につきまして、若干いきさつについてお聞きをしたいと思います。
 七月三日の朝日新聞の報道によりますと、平成十一年ですか、この計画の提出期限というのが六月末だったのが、期限が切れておるということで、七月に提出をしましたときに受け付けなかったということでございますが、その翌十六日に、KSD事件で逮捕されている小山元参議院議員の事務所から、これを受け付けてくださいよという申し入れがあった。しかし、県の方は、それでもなおかつ断られたということでございます。しかし、当時の労働省の方から、SSKは人数も多くて地域に与える影響も大きいから七月二日付で受け付けてくださいという連絡があった、そして県もそれに従ったということが報道されておるわけでございます。
 このような指示をどなたがどのような経緯で長崎県にされたのか、その事実関係についてお聞きをしたいと思います。
酒井政府参考人 私どもの把握しておりますところでは、これは県からの問い合わせがありまして回答したといったことでございまして、国からいわば率先して連絡をしたということではないものであると理解をしております。
 今、先生がおっしゃいましたように、七月十五日に県の方では一たん断って、七月十六日に御指摘のような要望が議員秘書からあったとのことでございまして、十九日に私どもの方に、締め切りとの関係で受け付けていいかどうか、こういう問い合わせがあったということでございます。
 これは当時の担当室でございまして、その際、計画届自体は、訓練が計画的に行われるのかどうかということをまず確認するものでございますので、先生御案内かと思いますが、支給決定は翌年、給付があってから行うものでございますが、それが六月末というふうになっておるという点につきましては、私どもからは、原則として六月末までに仕切りなさい、こういう通達がございますけれども、それは原則としてということで、いろいろ事情を勘案して対応し得るものであるし、実際にも、本ケースの場合には多数の訓練計画を予定しているといったようなこともございましたので、これにつきまして受理して差し支えないではないかというふうなことをお答えしたということでございます。
 七月二日という先生御指摘もございましたけれども、特段そんなことで、私どもとしては、何日にしなさいということは必ずしも要件でございませんので、そのようなことを申し上げたという記憶はないようでございます。
 いずれにいたしましても、これは当時の民間訓練推進室というところからで、そういう回答をさせていただいたというふうな経緯であるというふうに理解しております。
鍵田委員 この事業も、事業総額は百七十六億円というふうに聞いておりますが、約四万社に給付されているということでありますから、一社当たりにしますと四十四万円ぐらいになるんだというふうに思います。これは私が計算をしましたので。
 そうしますと、佐世保重工に給付をされたのは三・八億円、三億八千万でございますから、これも他の給付先から見ますと断トツに大きい。その他のところではせいぜい五千万か、多いところでも、上位二十社出していただいたのですが、五千万とか六千万ぐらいが上位の二位、三位になっておるんですが、そういうことから見ますと、これも大変な金額である。そして、その全額が全く架空の計画に基づいてされておった。
 そのことが、実は県が二度にわたって調査をされたというふうに聞いておるんですが、その調査につきましては、何か、日にちを指定して、いついつ行くからということで調査に入られたということでありますが、それで何もわからなかった。マスコミの報道によりまして事実がだんだん明るみになり、企業の方が記者会見をして初めて事実を認めたということでありまして、これは、マスコミが報道しなかったらそのままうやむやになっておったということではないかというふうに思うわけでございます。
 そういう意味では、厚生労働省としては、先ほども申し上げた、公金を扱っておるということの責任の重大性、そういうものに対しての認識が非常に甘いのではないか。そして、この受給要件、こういうものについても、何か、企業側に、ちょっと何とか余分に引き出してやろうかとかいうようなことの誘惑に駆られるような、そういう条件になっておるんじゃなかろうかというふうにも思うわけでございます。
 これだけの多額の金額を受給するわけでございますから、それであるならもう少し、調査をするときにも、公金を扱っているんだという観点からいくならば、突然行って、それでも調べられないことはないわけでありますから、ある程度の調査をして、そして、そういう事件があったとするなら、みずからそれの調査ができるような状況でないと、マスコミの報道によって初めて事件が発覚するというふうなことでは責任を果たしたことにならないと思います。
 これらにつきまして、ちょっと大臣の方から、どのようなお考えで、これからも捜査が進んでいくと思いますので、それらに従ってどのような対応をされようとするのか、まとめてお答えをいただければありがたいと思います。
坂口国務大臣 佐世保重工業の件につきましては、まことに残念な事件だというふうに思います。
 今まで、大きいところは、どちらかといえば中もきちんとしているから大丈夫で、むしろ、小さいところは人手もないし、なかなか法律も十分に理解されていないから、よく見てやれというようなことであったわけですけれども、最近、大きいところが次から次へといろいろの問題を起こしている。佐世保重工業の件もそうですし、これは内容は違いますけれども、雪印がいろいろなことがありましたりとか、大きいところに問題が出てきている。大変残念なことだというふうに思っております。
 今後のことにつきましては、これは、ただ単に書類だけを出してもらって書類を選考してというだけではいきませんから、書類だけではなくて実態の調査をちゃんとやはり行ってして、そして決めるべきものは決めるということにしていかなければならないというふうに思っております。
 過去の問題につきましては、助成金の返還命令を行いますとか、あるいはまた警察当局への告訴を行うといったようなことは、これは厳正に行わなければならないというふうに思っておりますから、事実が判明すれば直ちにそういうふうにしたいというふうに思っております。
 過去の問題につきましても、チェックが十分でなかったという面もあろうかと思いますから、もう一度チェックし直すべきところはし直していきたいというふうに思っておるところでございます。
鍵田委員 時間がございませんので本日のところはこの程度にさせていただいて、後ほどまた大島議員がもう少し具体的にお聞きをすると思いますのでそちらに譲りまして、私は、ホームレス問題、もう時間が二十分もないぐらいになりましたので、若干お聞きをしたいと思います。
 本日の委員会でこのホームレス問題がようやく成立の運びになったことにつきましては、関係の皆さん、大変御努力をいただきまして、ようやくそこまでこぎつけさせていただきました。そのことについて厚くお礼を申し上げたいというふうに思っております。
 私自身、大阪の出身として、大阪の地域でホームレス問題をずっと見てまいりまして、何とか一日も早い解決をということで、行政の方からも特別立法というふうなことをずっと前から言われておったわけでございますが、なかなか動く気配がなかったのが今日になってようやくこういう運びになったことを、ともに喜び合いたいというふうに思っております。
 ホームレスのあるこういう状態はやはり一日も早く解消しなくてはならないわけでございますが、バブル崩壊後、こういう現象が大変ふえてまいりましたし、また、平成八年ぐらいから急激にブルーテントが公園とか河川敷などでふえ出したというふうに私も認識をしておるわけでございます。
 そして、そういう中において、昨年開かれました国連の社会人権規約委員会におきまして、総括所見の中で、日本がホームレス問題と取り組むための包括的な計画を定めていないというふうな指摘をされているということを聞いております。また、同委員会の提案や勧告としましても、ホームレスの人々に対して十分な生活水準を確保するべきであるというふうに指摘をされております。
 また、ホームレスの自立支援問題は、社会的に排除された人々の市民権を回復し、再び社会に参入することができるようにするという観点から、憲法第十一条及び第二十五条に関係する明白な人権問題でございます。もうずっとマスコミなどで報道されておりますけれども、若者がゲーム感覚でホームレスに危害を加えるというふうな事件もたくさん報道されておる、こういうふうな状況でございます。
 これらにつきまして、人権問題には大変熱心に取り組んでいただいている大臣として、現状についてどのようにお考えになっているか、若干御見解をいただければというふうに思います。
坂口国務大臣 議員が前国会から大変熱心にお取り組みをいただいておりまして、感謝申し上げたいというふうに思います。
 御指摘のように、平成八年ぐらいから非常に急激に伸びてきている。この問題は社会経済的な状況もあるんでしょうし、それに個人的な要因も複雑に絡み合っていることは否めないというふうに思います。
 全体をつまびらかに調査がまだできているわけではございませんけれども、東京都が調査をやっておりますが、それを拝見いたしますと、やはり雇用状況が悪くなって、そして中高年で過去に日雇いをしておみえになった方が非常に多いということが報告されている。大体そういう方が七割くらいお見えになるということでございますので、やはりそういうところをこれからも、予防的措置と申しますか、ふえていかないようにも気をつけていかなければならないのではないか。また、現在ホームレスに既になっておみえになります皆さん方に対します対応も、その辺のところも注意しなきゃいけないのではないかというふうに思っている次第でございます。
 それから国連の方も、いわゆる人権規約委員会におきまして、計画の策定でありますとか、あるいはまた調査の実施ということを言っているわけでございます。今回、この法律を成立させていただければ、その中にも、計画の策定、調査の実施ということを盛り込んでいただいてございますし、早急にここは行いまして、そしてこれに対応をしたいというふうに思う次第でございます。
 それからもう一つは、生活保護の問題にお触れをいただきましたでしょうか。
 生活保護の問題も、これも一般の方の生活保護と同様に厳しくやりますと、なかなかお受けいただく方がないということにもなります。例えばお若い皆さん方で、若いと申しますか六十五歳未満の方で、そして働く能力があるということになると、いや、働いてくださいよというようなことになるんだろうというふうに思いますが、そこは一般の方々と同じようにはなかなかいかないんだろう。そこができなかったという理由があるわけでございますから、そこは十分に検討の項目に入れていかなければならないんだろうというふうに思っております。
 さりとて、ホームレスの人は全部生活保護にというわけにもなかなかいかないというふうに思うんですが、しかし、余りここに一般の方と同じような尺度でいっても、このホームレスの問題が解決できないということは、それは御指摘のとおりだというふうに私も思っております。
    〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
鍵田委員 ありがとうございます。
 法案の中には、ホームレス対策の施策に留意しつつという言葉を入れながら、公共施設の適切な管理が損なわれようとする場合に、適切な措置をとることとされております。これは地方の行政などの強い要請もあって、与野党で現行の法令の範囲内でという条件をつけてこうしておるのですが、万一、これが強制的な排除につながるというふうなことになりましたら、この方々はどこへ行ったらいいんでしょうか。これらについて、ひとつ厚生労働省としての見解をお聞きしたい。
 それから、続いてちょっと幾つか一緒に質問をさせていただきたいんですが、公共用地から立ち退きを実施してもホームレス問題の解決にならないということは明々白々でございます。では、そのイタチごっこを、公共の用地から公共の用地へもし移動したってこれはイタチごっこになるわけでありますが、これらの問題を解決するためにはどういう施策があるかということ。
 既に私も、従来から関心がありましたから、外国のホームレス問題についても、自分でも見学に行ったり、さらにはたくさん文献などでも調べておりましたが、米国や英国、さらにはドイツ、フランスというふうなところでもいろいろな施策が実施されてきて、非常に実績を上げておるというふうに聞いております。そういう中で、日本としてはどういう政策が有効であるというふうにお考えなのか、お聞きをしたいと思います。
真野政府参考人 適切な措置の後どうかということでございますが、厚生労働省といたしましては、ホームレス自立支援センターまたはシェルター、そういうようなところで、いわば一時、ワンクッションそういうところでそういう方々をお受け入れして、そこで自立のための指導なり自己管理というような経験をしていただいた後、適切な場所へ移っていただく。そのためには、なかなか昨今の雇用情勢でございますので難しい面がございますけれども、専門の職業相談員による職業紹介その他によりまして、できるだけ自立が図れるようにしたいというふうに考えております。
 また、実際、高齢または健康上の理由ということで自立といいますか就労が難しいというような方々に関していいますならば、福祉事務所等と連携をいたしまして、施設への入所または生活保護の適用というようなことで、やはり個々のホームレスの方々の状況に対応した処方せんを一人一人書いていくということであろうというふうに思っております。
鍵田委員 今までも、既に関係省庁が省庁横断的に、また地方の行政も一緒になって、ホームレス問題連絡協議会をつくっていろいろな施策を進めていただいておるところでございますけれども、先ほども大臣の方からお答えがございましたけれども、法律に基づいて施策を進めるのと法律がないところで進めるのでは随分違ってくるというふうなお答えをいただいておったところでございますけれども、この法律に基づいて一日も早くこういう問題が解決をする、こういうことが大切なのではないか。したがって、時限立法で、本当はもっと短い時限で解決をするということが、この法案はもうなくしてもいいよという状況を一日も早くつくることが大切なのではないかというふうに思います。
 そういう意味で、ぜひともこの法律に基づいて予算の方もひとつたっぷりとっていただいて、それらの施策を進めていただくということについて、その御覚悟といいますか、決意をお聞きしたいなというふうに思います。
 さらには、生活保護の問題につきまして、大臣の方からも既にお答えをいただきましたけれども、一般の方々の生活保護と違って、こういう方々につきましてはやはり特別の運用が必要なのではないかというふうに思っておりますが、従来から、各地域によりまして、ホームレスの皆さんへの生活保護の給付の仕方が非常に温度差がある。運用の仕方が、やはり地方自治体に任されておるわけですから、そういう面で非常に違いがあって、援護局の方にもっと統一的な給付をしてほしいというふうなことで要望がありました。
 それらにつきましては、何か、ちゃんと指示をしておるというふうにお答えをいただいて、ではどういう指示をしているんだということでお聞きしたら、全国から担当者に集まっていただいて口頭で指示をしましたという話があったり、それで十分徹底していなかったら、その次はもっと徹底してほしいと言ったら、いや、文書でやりましたということなんですが、実はそれが十分実際にはそういうふうになっておらない。
 実態調査をちゃんとして、統一的にそういうことをやってもらいたいということで、強い要望をしたりしてまいっておるわけでございますが、今日現在で、そういうものがちゃんと統一的な運用になっておらないということも聞いておりまして、それらにつきまして、適切な生活保護の運用をするということにつきまして、援護局長の方からもお答えをいただければというふうに思います。
真野政府参考人 ホームレス対策の予算につきましては、大臣の御支援も得て頑張りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 また、生活保護の点につきましては、先ほど大臣からもお答え申し上げましたが、私どもも、従来、口頭であったり、文書も余り細部までないというようなこともございまして、ことしの三月の主管課長会議の資料として「ホームレスに対する基本的な生活保護の適用について」、いわば基本的な考え方並び実際の適用の方法まで説明をいたしております。
 ワーカーも一万人以上いるという大変大きな仕掛けでもございますので、私どもの指導が実際のワーカーまで到達するというときに若干のタイムラグがあるのかもしれませんが、私どもとしてはそういうふうな努力を行っておりまして、基本的な考え方が末端のワーカーまで徹底できるように周知をしたいというふうに思っております。
鍵田委員 ぜひともよろしくお願い申し上げたいと思います。
 あと時間が二分ぐらいでございますので、二問お願いをしたいと思います。
 一つは、諸外国におきましても、ボランティアの方々、NPOの方々が非常にこのホームレス問題にかかわって熱心に運動をされておる実態を見させていただいておるわけでございますが、日本では、特に地方の行政で、ボランティアとかNPOの皆さんとは、どちらかというと対立的になっておるというような状況が多く見られます。いろいろ要請がありますから、強く行政に対して要請をする。それがどうも煩わしいということで、どうもそういう人たちを排除しようというふうな動きもあるように見受けられるわけでございます。
 しかし、やはりこのホームレス問題というのは、本当に熱心なボランティアの方々やNPOの皆さんの活用があってこそ初めて成果が上がるんだというふうに思います。そういう意味で、この皆さんとの連携というものをぜひともしっかり取り組んでいただきたい。それらについての何かコメントがあれば、お願いをしたいと思います。
 それからもう一問は、実は弁護士さんといろいろお話をしておりますと、ホームレスの皆さんというのは最近はいろいろな人が出てきて、多重債務者もたくさんおられる。そのために、居住の場所を明確にしますとすぐ取り立てに来るというようなことで、居住の場所を明らかにできない。そのために、生活保護も受けられないし、就職もできないというような問題がある。したがって、そういう人たちの処理をするためには自己破産などの司法的な解決をしなくてはならないというようなことになるんですが、その裁判をする費用、訴訟の費用が、その人には負担能力がない。といって、弁護士会などでもいろいろな支援の方法を考えているようですが、十分な資金がない。
 したがって、これから取り組まれる施策の中にそのこともぜひとも考えていただきたいという要望を受けましたので、その点についての二点、お答えいただいて、終わりたいと思います。
真野政府参考人 現在におきましても、先生、なかなか地元では協調関係がないケースが多いという御指摘をいただきましたが、私どもの聞いている限りでも、社会福祉法人、NPO、ボランティア等で非常に民間団体の御協力をいただいている、実際に協調してやっておられるケースもある。なかなか一概に全部うまくいっているということではございませんが、そういうケースもあるということも十分承知をいたしておりまして、今後とも、これらの民間団体との連携を強めてまいりたいというふうに考えております。
 それから、先ほどの多重債務者のお話でございますが、これにつきましても、私ども、日本弁護士会等ともお話をいたしまして、例えば自己破産の場合にどういう方法が考えられるか、そういう問題につきましても議論をし、できれば福祉事務所と弁護士会との連携というようなことが効果的にできるというようなこともぜひ模索をしたいというふうに思っておりますので、これにつきましてはぜひ検討したいというふうに思っております。
鍵田委員 では最後に、この問題にかかわっていただきました多くの皆さんに感謝を申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
森委員長 次に、大島敦君。
大島(敦)委員 鍵田委員に引き続き、SSK、佐世保重工の今回の助成金の不正受給の問題について質問させていただきます。
 まず、厚生労働省が今回の佐世保重工の助成金不正受給の問題について知ったのはいつでしょうか。
酒井政府参考人 生涯能力開発給付金についての不正受給があったと三月十日に報道がありまして、それにより知った次第でございます。
大島(敦)委員 次に、当委員会で小沢委員が今回のこの不正受給の問題について質問されていると思いますけれども、いつ質問されたでしょうか。
酒井政府参考人 大変恐縮でございます。能力開発関係の給付金について、小沢先生から御質問を受けてはいなかったんではないかと思いますが。(発言する者あり)
大島(敦)委員 今回のこの事件については厚生労働省としても非常に根深い問題だと考えておりまして、先ほどの鍵田委員の方から指摘ありましたとおり、雇用三事業、この五千億円の予算の使われ方について、千分の三・五、各小さな会社も大きな会社もお支払いしているわけなんです。この五千億円の使い方について、今回のこの助成金の不正受給についてしっかりとした態度を示さなければ、この五千億円は非常にルーズな使い方をしていると思いますし、経営者あるいは会社側から見れば、もうこの千分の三・五は納めるのはよそうという気持ちになって当然だと思います。
 そして今回、小沢委員の国会での質問というのは四月の十七日に当委員会でされております。当時、澤田政府参考人は小沢委員の質問に答えて一つ約束をされているんですけれども、どういう約束をされておりますでしょうか。
澤田政府参考人 私が記憶しておりますのは、SSKの問題での小沢委員の質問ではないように思いますが、雇用保険の問題で御質問いただいた、そこにおきまして、まさに新聞報道で雇用保険の保険料の引き上げ問題がある点についてたしか御質問いただいたような気がしておりまして、そのときには、三事業含めてトータルの雇用保険の支出が適正であり、また、現在、将来の支出として適当であるかというふうなことを十分議論する必要がある、その上で料率問題は考えるということを答弁したように記憶しておりますが、もし違っていれば大変申しわけないと思いますが、以上でございます。
大島(敦)委員 私は、今回のこの質問に関しまして、普通の仕事であれば過去のこの委員会の議事録というのは読まれているのが当然だと思いまして、事前通告はしておりません。
 今、国会のインターネットのホームページで、例えば今回の佐世保重工というキーワードを入れると、それに関する議事録はすべて瞬時に出てくるシステムがありまして、今回の私が四十分間質問するということに対してそこまで事前に準備をされていないというのは、当厚生労働委員会に対する怠慢だと僕は思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。
酒井政府参考人 若干、先ほどの補足も含めて、現在、先ほど先生がおっしゃった生涯能力開発給付金、県当局に実施事務をやっていただいていた、いわゆる機関委任事務という形でやっていた事務でございますけれども、先生がおっしゃるように大変大事な財源をもとにやっておりますので、私ども十分こういう経験を生かして、反省の上に立ってやっていきたいと実は思っているところでございます。
 生涯能力開発給付金、ちょっと長くなると恐縮なんでございますが、現在はこういう給付金はもう改めまして、これに対する指導方を徹底していくというようなことで、先生御指摘の、負担をしていただいている事業主さん、各方面の皆様に対してきちんとそういう姿勢を示していくということで取り組んでいきたいというふうに事務方として思っている次第でございます。
大島(敦)委員 小沢委員の四月十七日の質問に澤田政府参考人はこのように答えております。
  そして現在、本助成金を使っていわば出向した下請関連会社十九社、八百八十一人のうち、二十一人を除いた残りの人全員について、不正受給の有無、その実態についての事実確認を行っております。一月ほどの間に個々の聞き取り調査を終わって結果をまとめたいと思っております。その中で不正が確認された場合には、警察とも連携しながら、厳格に対処してまいる所存であります。
ということで、四月十七日の時点で、一カ月間の期間を区切って調査をし報告するという答弁を澤田政府参考人はしておりまして、現状がどうなっているのか、お答えいただければありがたいと思います。
澤田政府参考人 今、大島委員が私の議事録を引用されているのを聞きまして、大変申しわけなく思います。私も、確かにそういう答弁したことを明確に思い出しました。その点、小沢先生にはいろいろな質問をいただいていますので、ちょっと見当違いなことを申し上げまして、大変申しわけございません。
 それで、本件の調査につきましては、四月の当委員会で御答弁を申し上げたとおり、その後、出向の対象者になった方で現在把握できる方につきまして、個人に対するヒアリング、アンケート調査をやりました。その結果、五月上旬に雇用・能力開発機構センターと私どもの方でまとめまして整理いたしました。
 その結果は、現在、長崎県警の方から捜査協力の要請を受けまして、そちらへ提供いたしておりますので、この場で詳細にわたって申し上げることは難しいと思いますが、概要だけ申し上げますと、労働者の方々にお聞きしたところ、出向の実態がなかったように思うというふうに発言された方もおられます。ただし、そうした方々も、ではいつであったかとかいうことになりますと、かなり記憶があいまいで、資料的に確実に実態がなかったというところまでは解明できなかった部分がございます。ですが、疑わしいというケースが幾つかあったということだけは申し上げることができます。
大島(敦)委員 それでは、先ほどの鍵田委員の質問の確認なんですけれども、今回の中高年労働移動支援特別助成金の申請があったときの従業員数について、もう一度御答弁お願いします。
澤田政府参考人 佐世保重工業から出向計画の申請がありました平成十一年五月の時点の添付資料によりますと、五月一日現在、千六百五名が佐世保重工業にいる従業員ということになっています。
大島(敦)委員 佐世保重工の財務諸表をとりまして、この従業員の数の推移について若干目を通させていただきました。
 当時平成十一年の話でございまして、例えば四年前の平成七年のときの従業員数は一千九百九十八人です、大体二千人ぐらいです。平成十一年の三月のときの従業員数は一千二百四十九ですから、四年間に大体七百五十名ぐらい減っているわけです。よく覚えてください。平成十一年の三月が一千二百四十九名。そして、申請がありましたのが五月、六月という御答弁が先ほどございました。そうすると、一年たってみて、平成十二年の三月末日の従業員数はどのくらいになっているかというと、先ほどの、三月末で一千二百四十九だったのが、五月になると一千六百五名ですか、四百人ぐらいふえているわけですよ。
 これ、どうしてふえたのか。もしも御想像できるようでしたら教えていただけるとありがたいんですけれども。
澤田政府参考人 この特別助成金の支給要件の中で、送出元の事業所で一年以上雇用されていたことというのがございます。佐世保重工業から申請が出た十一年五月の時点、私、先ほど千六百五名と申し上げましたが、今、大島委員御指摘の、平成十二年三月で一年前の十一年三月に比べて四百四十名ふえておるという点につきましては、私どものこの五月の千六百五名との関係で申しますと、申請時点で一年以上佐世保重工業にいた人ということになりますので、この間のふえた方は、逆に言えば十六年五月以降にふえた方ということで整合的に説明がつくんではないか、こう思います。
大島(敦)委員 今の御答弁はちょっと私、よくわかりづらかったんですけれども、平成十一年の三月三十一日で大体一千二百五十名だったものが、二カ月たってしまうと四百人ふえているということ。先ほどおっしゃっていました造船不況だということ、三割受注が減っているというお話がございました。非常に奇異な感じがするんです。これは、同じ敷地内にある下請の会社の従業員の方を四百人、下請の会社から雇い入れた、あるいはSSK、佐世保重工の社員として雇用したということが言えるのかなと、これは推測なんですけれども、推測できるわけです。
 そうしますと、今回のこの中高年労働移動支援特別助成金に関しまして、申請した全員が認められたかどうかというところ、もう一度確認させてください。
澤田政府参考人 平成十一年五月に出てきた申請者のうち、佐世保重工に一年以上それまでに在籍したという要件に外れた方が三百九名おられましたので、その方たちは対象から、審査の上、外しました。
大島(敦)委員 そうしますと、先ほどの一千六百五名というのは、純粋に佐世保重工のもともといた会社の従業員の方ではなくて、二カ月前の三月時点に従業員として財務諸表に残っている一千二百四十九名が、恐らく、もともと佐世保重工にいらっしゃった社員の方。一千二百四十九名中の八百六十一名が出向して助成金の受給、給付を受けるということは常識的におかしいと思うんですけれども、いかが考えればよろしいでしょうか。
澤田政府参考人 今申し上げました三百名の方でございますが、この三百九名は、佐世保重工にいわば来る前に、それ以前の段階で、佐世保重工が一〇〇%株を持っております今回の助成金の対象以外の下請のところへ以前に出向していた人が佐世保重工に戻ったという方々でございます。ですから、そうした方々は、平成十一年三月の財務諸表の数字と私どもに申請してきた五月との数字の間のギャップ、そこでそういう人たちが入っているんではないかと私どもは考えるところであります。
 それで、実際そういうことがあるにしても、千百余名の方が出向の申請リストに載ってきたということは、佐世保重工の七割ぐらいの方々が対象になってリストに載ってきたということで、御指摘のように、異常に数が多いではないかということでございますが、その間の生産量の減少が、鍵田委員にお答えしましたように、三割以上減ったということを私ども把握いたしておりましたので、そうしたことと、今後の造船業あるいは雇用情勢の見通しからして要件をクリアしているということで受理をしたということでございまして、当時それが異常であったかどうかということは担当者としては認識はしていなかったんではないか、こういうふうに、これは推測でございますが、今からすると考えております。
大島(敦)委員 今回の中高年労働移動支援特別助成金、これは雇用・能力開発機構が担当する助成金だと思います。先ほど鍵田委員の御指摘にもありましたとおり、三年間の期間の中で一一%、これは一年間に区切った助成金ですから、百五十億円が全体だとすれば、一年ごとに五十億円ずつというのが比較できる対象になっている。佐世保重工は一年間で十七億円も受け取っているわけですから、国の予算に比較すれば、五十億円中の十七億円が一年間に佐世保重工にお支払いされた、その関連会社あるいはその出向先だと思うんですけれども、助成金として支払われたということ。
 通常の、普通の仕事ですと、大体皆さん、異常値というのは、計画とあるいは実績の間で説明するはずですよね。予算があって、予算に対して非常に突出したものというのは報告の対象になって、この雇用・能力開発機構の中でも、おかしいじゃないかと。どうして、おかしいじゃないかと、普通の会社だったら上司が聞くはずなんです。あるいは、所管する厚生労働省でも、このような異常値を見つけた場合には、どうしてこういうことが行われるんだということが、聞くのが当然だと思うんです。
 前田工業という会社が問題にしなければ、今回のこの事件、私たち知らなかったわけなんです。皆さんがやっている仕事というのは、このような雇用・能力開発機構と関連の諸団体に対するチェックの仕事も、管理監督する仕事も皆さんやっているはずなんです。今の御答弁のように、全く問題がなかったという御答弁ですと、私たち、何を、本当に管理監督をやっていらっしゃるのかなという疑問をまず持ちます。
 その疑問が一つありまして、もう一つそれでは、三割減ったというお話をされました、受注量が三割減りました。同じ関連会社ですよね。親会社が三割減れば、子会社も三割減るわけですよ、受注量は。何で減ったところに――普通、出向というのは、例えば私は鉄鋼業にいました。当時出向ございました、労働組合、従業員の方が。大体、当時もうかっている自動車会社の方に三カ月とか半年とか出向されました。このように同じ企業グループの中で、三割減っておりましてどうして出向するのかなというのも非常に疑問に思うわけなんです。
 この書面主義だけで審査していいのかなと思いまして、それでは、今回のこの要件の中で、出向等が営業譲渡に伴うものではないという記述がございますけれども、これはどういうことでしょうか。
澤田政府参考人 支給要件の中で、御指摘のように、営業譲渡に伴うものではないということが書いてあります。
 一般に、営業譲渡は、当該営業に係りますいわば一切合財の財産、企業から見て、これが包括的に譲渡されるということでありますが、営業譲渡の場合にはそうした形でその営業譲渡先の方へ移るわけですから、いわば別の事業主のところへ移動したとはなかなか認められない。営業そのものが丸ごと移るわけですから。
 それに比べまして、取引関係のある下請につきましては、そこへ移動するということは、先ほど言いました資本関係等を除いておりますので、親企業とは独立した下請の別の事業所へ移動したというふうに考えられるということで、私どもは助成金の対象というふうにしてきたわけであります。
 ただし、委員御指摘のように、受注を、仕事をその下請へ同時に発注するということが伴うことにつきましては、要件上、何らの縛りといいますか、ということがこの助成金制度にはなかったという点につきましては、そこを今回のように使うという余地が生じたものと私どもは考えております。
大島(敦)委員 そうしますと、この中高年労働移動支援特別助成金の支給対象事業主のところで、営業の譲渡に伴うものでないこと、これだけの縛りであると、制度としては非常に不整備であったという御答弁だったと思います。
 今回のこの受給というのは、千二百人の会社の八百六十名が出向するわけですから、その会社がマネジメントあるいは企業体として運営できる規模じゃないわけですよ。会社の一つの工場自身が関連会社になって、そこに工場長も含めて出向して、その指揮命令系統は会社からは離れる。その出向元、ここですとSSKの指揮命令系統とは離れるんですけれども、一言この会社に、しっかりと物をつくってくれよと頼めば、要は今までどおりの管理体制の中でしっかりと仕事をして物ができ上がって戻ってくる。
 外注と出向が一緒である場合というのは、今回のこの営業譲渡の場合と非常に近いと思うんですけれども、それでも、今回はこの規定になかったからそのようなものでも認めざるを得ないという御判断なんでしょうか。
澤田政府参考人 営業譲渡と今回の、今回と申しますか、下請に対する親企業との関係につきましては、先ほど申しましたように、営業譲渡の場合には営業財産が一括して移るということでありますが、下請の場合には指揮命令権は当然下請に移りますし、営業譲渡と比べて申しますと、ノウハウだとかいう点につきましては、それは下請のノウハウが下請の指揮命令のもとに生かされるという面があります。
 そういうことで、営業譲渡とは、全体的な形でのいわば同一性があるかないかという点では決定的に違う、こういうふうに私どもは考えたわけであります。
大島(敦)委員 今の御答弁を聞いていますと、その十七億円はもう仕方がないと聞こえるわけです。十七億円についてはこの規定どおり粛々としてやっておりまして、確かに今までの状況を一つ一つ検証していくと非常に疑わしい。先ほど質問の中で、生涯能力開発給付金についての不正受給に見られたように、非常に悪意を持って、このSSKという会社の当時の姫野さんという社長は助成金を不正に受給していた。
 今回のこの中高年の労働移動の支援助成金について、厚生労働省としては仕方がないという御判断をされているんでしょうか。
澤田政府参考人 そういう判断はしておりません。
 私ども、佐世保重工業が記者会見で、一社、二十一名については出向の実態がなかったということを姫野社長自身が言い、かつ、私どもも実態を調べてそうであるという事実をつかんだ点につきましては、既に長崎県警に対しまして告訴状を出しておりますし、返還請求も手続をとっております。
 その他の分につきましては、先ほど申し上げましたが、疑わしいというところまでは私どもの調査でわかりましたが、それ以上につきましては警察の方の捜査に今ゆだねておりますので、今後とも、実態がなかったということが警察の捜査、あるいは私どもの警察と連携した今後の必要な調査等に明らかになれば、これは当然、法律に従って返還をしていただく、あるいは告訴をするということになる状況はあり得る、こう思っております。
大島(敦)委員 警察の調査の状況を待ってということなんですけれども、警察の状況を待って、本当に明らかにクロ、明らかに犯罪を犯しているという確信がなければ告訴をしないというお話ですと、これからその五千億円の雇用三事業の助成金を申請する人は非常に楽ですよね。どんな助成金やってもおとがめないんですから。どんなに不正やっても、皆さんの方でクロだという確証がない限りにおいては、裁判にも、告訴もしないわけですし、何もおとがめがないということは、やはり、このあり方として正しいでしょうか。
澤田政府参考人 現段階におきまして、明らかに不正であるという客観的証拠等々がない状態で先生御指摘のように法的手段等々をとるとすれば、それはなかなか、起訴、公判等々の面でも困難な問題も伴うものと思いますし、何よりも、私どもは、警察が注目をして、明らかに不正行為があった以外の部分も視野に入れて捜査をしておるということを私どもも注目しておりますし、その過程で、警察から必要な協力を求められ、あるいは私どもから進んですることがあればやるということで、全く現状においておとがめする気がないとかそういうことではない点は十分御理解いただきたい、こう思います。
大島(敦)委員 坂口厚生労働大臣の方に伺いたいんですけれども、助成金のあり方につきまして、今までの政府参考人の答弁ですと、しっかりと立件されなければ告訴もしないし、詐欺罪として訴えることもないということだと思うんですけれども、そのような助成金のあり方でよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 先ほどから、委員の御質問いただきますこと、そしてこちら側が答えますことを聞いておりまして、だんだん私も頭の中でわからなくなってまいりまして、今まで私自身が持っておりました知識だけではなくて、きょう委員が御指摘になりました点は、私の今まで知らなかった新しい点もかなりあるなというふうに率直に思っております。
 問題なのは、やはり、行政府として今まで行ってきたことが間違いなかったのかどうかということの検証を迫られているというふうに思っておりますから、そこはもう一度、行政府は行政府として、何年か前にこれはさかのぼるわけでございますけれども、当時のことを検証し、そして誤りがなかったかどうか。もしもそのときに誤りと申しますか、その対応が十分でなかったことがあれば、それはどういう点であったのかということを明確にすることが、今後の行政にとって、何をするかということを決定するのに最も大事なことであるというふうに思います。
 そうしたことを一方において行いながら、警察の方のお話は、警察の結果としてそれは待つ以外にないわけでございますが、しかし、警察の方で調べてもらっているから我々はそれを待っているというのではいけないので、いわゆる省としてこれにどう対応していくかということをやはり考えなければならない。そのためにはもっとやはり整理をしなければならない点が幾つかあるなというふうに思いながら、今委員のお話を聞いていたところでございます。私自身も、もう少し頭の中を整理したいと思います。
大島(敦)委員 五千億円という、要は千分の三・五を会社は支払っているわけでして、それだけの利益を上げるということは、物すごく努力をしないと上げられないわけなんです。ついつい、税金を集めて配る立場になると、そのお金のボリュームあるいは感覚というのが麻痺してしまうと思うんです。ですから、今回のこの十七億円については、全国の方が見ている十七億円だと思うんです。皆さんから見れば小さなお金かもしれない、しかしながら、一つ一つの会社から見れば非常に大きなお金だと思います。
 それで、当時の政務次官の方はだれだったでしょうか。
澤田政府参考人 当時の政務次官は、小山孝雄政務次官でございました。
大島(敦)委員 小山孝雄当時の政務次官は、今は議員をやめられております。先ほどの鍵田委員の方からも御指摘ありましたとおり、KSDの問題で、昨年はこの場で皆さんに質問させていただきました。
 今回のこの中高年の労働移動支援特別助成金に関して、小山当時の政務次官の方から、当時の職業安定局長の方に、このSSKの問題に関しまして、何らかの指示、あるいはこうしてほしい、あるいは報告しろ等のことというのはあったんでしょうか。
澤田政府参考人 当時の職業安定局長本人に確認いたしましたところ、小山政務次官含めて、政治的な働きかけの事実はなかったということでございました。
大島(敦)委員 質問時間が、持ち時間が終わりましたので、ここで一たんこの問題につきましては終了させていただきます。
 今後とも、お金の使い方に関しては、特に中小零細の方、御苦労して納めているものですから、今後とも質問あるいはこの問題については取り組ませていただきます。どうもありがとうございました。
森委員長 次に、水島広子君。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 まず初めに、児童扶養手当についてお伺いいたします。
 八月一日から児童扶養手当法に基づく政令が改正されまして、それに伴いまして、養育費等に関する申告書などの記載が新たに必要になるということになりまして、自治体では既にそれぞれ書面などをつくっておりますけれども、いろいろな混乱状況や不安の声が寄せられております。
 そこで、そもそも厚生労働省からどのような指導通知を出されているのか見せてほしいと昨日お尋ねをいたしましたところ、いまだに出していないというお答えをいただきました。大変驚きました。来年の八月一日ではなくことしの八月一日から施行されるのに、厚生労働省からはまだ指導通知も出していないということなんですけれども、こんなことがあってよいのでしょうか。わざとおくらせているのでしょうか。
岩田政府参考人 今般、児童扶養手当法施行令を改正いたしまして、八月から実施になるということで、その準備につきましては、私どもも万全を期したいということで、努力してきております。全国会議あるいはブロック会議でいろいろ御説明をいたしましたり、また、具体的な取り扱いについて、正式の通知は残念ながらちょっとおくれておりますけれども、事実上、第一線で混乱することがないように、事実上の考え方を自治体に文書で示したりはいたしております。
水島委員 なぜおくれているのかということにお答えいただけますでしょうか。
岩田政府参考人 一つは、これまでは都道府県が支給の主体であったことが、これが八月から福祉事務所が設置されております市等に事務が移管されるということがございます。また、従来の所得制限のあり方と今回からは変わりまして、所得がふえるに従いまして手当が逓減する方法ですとか、所得をカウントするに当たって父親から支払われる養育費を算入するといったような、そういう形で従来から取り扱いが変わりますので、それに備えて部内の検討にも時間を要しましたし、また自治体とさまざまな場でいろいろ意見交換をしながら準備をしておりますので、先ほど申し上げましたような準備の状況でございます。
 一日も早く正式の通達は出すことにいたしたいと思います。
水島委員 一日も早くといってもあと二週間でございますので、本当にこんなことなのかと改めて驚く思いです。
 そして、万全を期しているとおっしゃったんですけれども、現場はかなり混乱しているようでございます。
 そもそも、養育費の取り決め書を交わしていない人が実際には多いわけですけれども、例えば、自治体によっては、改めて書面を交わせと指導しているようなところもあったりとか、あるいは、通帳を見せろということを一律に要求している自治体もあるというふうに聞いておりますけれども、取り決め書というのは必要条件となっているんでしょうか。あるいは、一律に通帳を見せろと要求するようなことを事前の自治体とのやりとりの中で厚生労働省として指導されてきたんでしょうか。
岩田政府参考人 今般、母子家庭の総合的な対策のあり方を見直しいたしまして、政府といたしまして、大綱を策定いたしましたり、また今国会に福祉法の改正などを提案させていただいておりますけれども、その中でも、父親からの養育費の支払いをいかに確保するかといったようなことについて、また新たにその対策を強化したいというふうに思っているわけでございます。
 先生のお尋ねの点でございますけれども、養育費が支払われているかいないか、具体的に幾ら支払われているかということについては、文書で取り決めをしていただいてその金額がはっきりしている場合は私どもの方も所得の算定のときに判断ができるわけですけれども、残念ながら、多くの場合は、取り決められていないとか、あるいは取り決めがあっても口頭でなされているということがございますので、そういう場合には書面にかわって申告書、一定の様式の申告書を出していただいてそれで判断をすることといたしております。
 自治体の窓口では、冒頭申し上げましたような、これからいかに父親からの養育費の確保を図っていくかということで、自治体もさまざまな広報活動や相談活動をやっていくというふうに思われますので、そういう思いから、そういう対策の一環として、養育費の取り決めを文書でしたらどうですかといったようなことを指導しているところがあるかもしれませんが、それはそれといたしまして、その取り決めの文書がないからということで児童扶養手当の支給の手続に何か支障がある、そういうようなことについては、私どもが地方自治体にそういう指導をしているということは一切ございません。(水島委員「通帳の」と呼ぶ)
 そして、答えが漏れて申しわけございません、通帳についてなんですけれども、養育費を幾らもらっているかということは、基本的には本人に申告していただくという申告主義にいたしておりますので、一律に通帳を拝見するということにはならないというふうに思いますけれども、申告内容に疑義があるとかということで事実関係がなかなかほかの手段では確認できないというような場合については通帳で確認させていただくということもあろうかと思います。
水島委員 今の岩田局長の御答弁ですと道理があるように聞こえますけれども、実際の窓口の対応では、取り決めていないんだったら今から改めて文書にしていらっしゃいとか、あるいは、一律通帳を見せてもらうことにしますよとか、そのように、かなり母子家庭の方たちに対してそのハードルを高くするようなおかしな対応がされているところもあるという情報が入っておりますので、その点につきましては、本来の趣旨、そしてどこまでプライバシーに立ち入って、そのときのルールはどうなのかというようなことを改めて徹底していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 そして、なぜこんなに現場が混乱するのかといいますと、もちろんそれは厚生労働省が指導通知を速やかに出すのを怠っているというのもその一つの理由なのかなとも思いますけれども、やはり、養育費についての法的な環境整備もできていないのに、政令改正などで申告を義務づけたりしたからなのではないかと思います。
 養育費支払い命令制度をつくったり、養育費立てかえ払い制度をつくったり、あるいは養育費についての税制上の優遇措置を設けたりというふうに全面的に考えようとすれば、これは厚生労働省だけが取り組んでできる話ではないと思います。
 また、児童扶養手当の財源が不足してきたから、自分の省庁でできることだけをやろうというような姿勢が、そもそも間違っているのではないかと思います。
 母子寡婦福祉法の精神は、養育費をもらえていない人に無料法律相談を紹介したりとか、あるいは収入の低い人に就労を支援したりという、その支援というのが本来の目的なのではないかと思いますけれども、養育費の申告義務づけをやめて、本来やるべき支援を進めるべきではないかと思いますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。
狩野副大臣 新しい時代の要請に的確に対応した施策を展開するために、母子家庭対策を総合的に見直そうということで、母子家庭等自立支援大綱を本年三月に取りまとめをいたしました。この大綱を策定する際には、法務省や国土交通省など関係省庁とも十分連携を図ったものでありまして、今後、この大綱に沿った施策を実施する際には、関係省庁と十分に連携を図っていきたいと考えております。
 また、この大綱を踏まえて、現在、国会に母子及び寡婦福祉法等の改正案を提出いたしておりますけれども、この法案の附則において、法律の施行の状況を勘案して、扶養義務の履行を確保するための施策のあり方について検討することとしております。
 また、委員御指摘の養育費を払った場合の税制上の取り扱いにいたしましても、これは大事な課題の一つとして、今後関係省庁と相談してまいりたいと考えております。
水島委員 ぜひ全面的な取り組みをしていただきたいですし、その中で一部だけを先行して変な形で無理に進めていくことで、どれだけ現場で苦しい生活をしていらっしゃる母子家庭の方たちが精神的あるいは物理的な被害に遭っていくかということを十分に御認識をいただきたいと思っております。
 また、この母子家庭のお母さんというのは、そもそも就労において不利な条件にあるわけですけれども、現況届や養育費等に関する申告書をわざわざ持っていって、また何かが足りないといってもう一度足を運ばされる、そんなことで仕事を休んだりするとますます就労において不利なことになりますし、また、パート労働をされている方の場合は、半休をとって役所に出向いただけでその分収入が減っていきますので、これは生活に直接かかわってくる問題にもなります。ぜひ、郵送で受け付けるとか、あるいは細かい点は電話でさらに確認するとか、そのような柔軟な対応ができますように、御検討をくれぐれもお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 このように、支援策であるはずのものが、実際には母子家庭の就労の足を引っ張るというようなことがないような、生活にきちんと根づいた配慮をいただきたいと思いますけれども、この点について、今現在このように進んでいる取り組みがあるとか、このような前向きの検討を何かされているというのであれば御答弁いただきたいんですが、これからの御検討であれば結構ですけれども。
岩田政府参考人 確かに、母子家庭のお母さんたちは一生懸命働いておられますので、そのことと、こういった自治体の窓口での届け出の事務的な負担と、よく考えていかないといけないというふうには思っております。
 ただ、毎年一回現況届というのを出していただいておりますけれども、それは、所得の状況ですとか、そして生活の状況を確認させていただくという、児童扶養手当を支給するかどうか、幾ら支給するかという判断をする基礎になるものでございまして、なかなか、これまでの経験でいきますと、書類だけの審査では事実関係が難しいということがございます。
 また、この機会は考えようによっては非常に大事な機会で、一年に一回、自治体の母子、寡婦の担当者が生活相談、そして自立支援の相談、そういうことをさらに強化をしてやっていきたいというふうに思っておりますが、そういった機会としても大変大事でございますので、やはり面談をしてお話を聞くという機会を設けるということは避けられないというふうに思います。簡単なことは電話のやりとりでもちろん十分なことも多いと思います。
 また、窓口の時間帯はそれぞれの自治体が住民サービスとしていろいろ工夫をされていると思いますが、中には、夜間の時間帯で受け取っているとか、休日でも窓口を開いているというような自治体があるというふうにも聞いておりますので、こういう事例は大変よい事例で、こういう形でそれぞれの自治体で配慮がなされることを期待したいというふうに思っております。
水島委員 それでは次に、十代の性の問題についてお伺いしたいと思います。
 近年の十代の人工妊娠中絶の増加は目に余るものがございまして、特に、一九九五年以降は極めて顕著でございます。
 私の選挙区は栃木県でございますけれども、栃木においてもかなり重要な問題でございまして、二〇〇〇年の統計によれば、栃木県における十五歳から十九歳の女子人口千人に対する十代の中絶率は十八・〇となっております。
 これはどういうことかというと、性交経験の有無にかかわらず、約五十六人に一人が一年の間に中絶を経験していることを意味し、さらに、十五歳から十九歳の女子の性交経験率を大体四割とした場合に、性交経験のある二十三人に一人が一年の間に中絶を経験していることになるという、これは極めてゆゆしき事態であると思っております。
 県内の産婦人科医の話によれば、妊娠は決して十五歳以上の出来事ではなく、最近では十四歳、十三歳のデータもふえていると言います。
 また、最近、群馬県の思春期グループが現在二十歳になっている男女を対象に行った大規模調査によりますと、中学三年の時点で男子一七・七%、女子八・八%が既に性交を経験していたという結果が出ております。
 選挙区並びに近隣県でのこのような現実があり、また、現場で子供たちにかかわっている人たちからは、性教育は中学からでも遅過ぎるとも言われているにもかかわらず、国会では、先日、文部科学大臣が、中学生に避妊を教えることはいかがなものかとの答弁をされていることに対しまして、有権者からも、一体何を考えているのかという批判が上げられております。
 文部科学省としましては、このような事態を踏まえても、中学生への積極的な避妊教育は早過ぎるとお考えになっての答弁だったのでしょうか。もしそのような答弁であるとしたら、一体どのようなデータに基づいてそのようなことをおっしゃったのでしょうか。
上原政府参考人 お答え申し上げます。
 学校教育による性教育につきましては、児童生徒の発達段階に応じてしかるべき教育がなされることが重要と考えてございまして、本年度の学習指導要領におきまして、小学校、中学校、高校と、段階に応じて性に関する教育をいたしているところでございます。
 それで、例えば小学校のケースでございますれば、体育科の中で体の発達とかそういう形で扱う。それから、心の問題その他。
 それから、中学校になりますと、異性への尊重とか、性情報に対する適切な対応とか、それから感染症予防の問題。
 高校に入りまして初めて、思春期と健康、それから結婚生活と健康という一環といたしまして、妊娠とか避妊法を含みます家族計画その他についての教育をいたしているところでございまして、御指摘のありました点につきましては、今後とも、学校教育の性教育の一環といたしまして、十分厚生労働省等とも連携しながらやっていきたいと考えてございます。
水島委員 質問にお答えいただけないのですけれども、先日の御答弁は、つまり、中学生への積極的な避妊教育は早過ぎるという何らかのデータに基づいてのものだったのでしょうか。そのような趣旨の御答弁と理解してよろしいのでしょうか。
上原政府参考人 いろいろ御意見があることは承知いたしてございまして、そういう問題につきましては、一義的には、各学校、各地域の実情に応じて適切な対処が必要だと考えてございます。
 しかしながら、中学校における避妊教育というよりは、先ほど来申し上げましたとおり、生殖機能の成熟とか、やはりそういうものに対する正しい理解だとか、異性への尊重という問題の中で指導していくことが必要なのではないかというふうに考えてございます。
水島委員 つまり、中学からの避妊教育は早過ぎるというような、データにも基づかずに答弁されていたということだと思いますが、いつも文部科学省が何かを論じるときに、データにも基づかずに、また現場でどれほど切実な状況に陥っているかも理解せずに、どうも情緒的、あるいは今のように中学生とはこういうものだというような、そういう感覚に基づいていろいろなことを発言し過ぎているのではないかといつも私は思っております。
 例えば、先ほど群馬県のデータをお示ししましたけれども、つまり、男子では中学校三年生、クラスの五分の一弱、女子でもクラスの十分の一弱が性交を経験しているという環境でありまして、これは一部の子供たちの話だからほかの子供たちは関係ないということではなくて、そのような環境では、その子たちが周囲に及ぼす影響、ピアプレッシャーと言われておりますけれども、これは非常に大きいわけでございまして、一部の特殊な子たちが経験しているからほかの子は関係ない、ほかの子というのはこれらのことを学べばいいんだというような姿勢では、とても現実はそのようなものではないということをしっかりと現場主義に徹して、またデータに基づいていろいろな施策を決めていただきたいと、本当にこれは、私はいつも文部科学省に対して思っていることであるわけでございます。
 そして、性と生殖に関する健康問題を主管するのは厚生労働省ということになっておりまして、健やか親子21ですとかいろいろと取り組みをされているのは存じ上げておりますけれども、十代の子供たちというのはやはり学校現場にいることが多いわけでございますし、文部科学省と厚生労働省との有機的な連携を持った性教育の推進が実質的な効果を上げるためには何よりも必要なのではないかと思いますけれども、どうも現在の両省の取り組みからは、私が知っている範囲では、危機感が全く伝わってこないわけでございます。厚生労働大臣としまして、この文部科学省との連携の中で実質的な効果を上げていくという点についてはどのようにされていくおつもりでしょうか。
坂口国務大臣 中学生、あるいは小学生も含めてかもしれませんが、この性の問題につきまして、やはり現実というものをしっかり見ていかなければならないというふうに思っております。
 私たちの世代ですと、自分の過去の時代を振り返ってそれとあわせて考えますと、それは間違ってしまう、現実は非常に変化をしている、大変変わってきているということをよく自覚しなければいけないというふうに思っております。そういう趣旨からいたしまして、厚生労働省として今まで以上に十代の性の問題を積極的に取り組んでいかなければならないわけであります。
 そういたしますと、当然のことながら、これはもう文部科学省と連携を密にしなければならないわけでございますので、今までもやってはまいりましたけれども、しかし、これから先、さらに文部科学省と連携を密にいたしまして、十代の性の問題、真剣に取り組んでいきたいと思っております。
水島委員 ぜひこれは優先的に取り組んでいただきたいと思います。
 また、先ほどの文部科学省のお話でもございますけれども、学習指導要領上で高校生になってから初めて結婚と性というような観点が入ってくるということなんですが、中学生で性感染症のことを教えておきながらそこに性交という概念がないために現場では非常に教えにくいという声も上がっておりまして、その辺もぜひ理屈の通ったあり方を厚生労働省、文部科学省、連携して、本当に実質的な効果が上がるような連携をとっていただけますように強くお願いを申し上げます。
 また、最近、フランスやイギリスなどでは、十代の妊娠中絶対策としまして、緊急避妊薬の積極的な導入を考えた施策を提言していると伺っております。緊急避妊とは、レイプされた、コンドームが破損した、避妊できなかったなど非常事態の七十二時間以内にホルモン剤を服用することによって妊娠を回避するものであって、決して中絶薬ではございませんけれども、心身のトラウマをつくりかねない中絶を回避する最後の避妊手段としては極めて重要な避妊法だと考えております。
 ことしの四月十一日に、日本家族計画協会と当時の日本助産婦会が坂口厚生労働大臣あてに緊急避妊薬を早期に導入するようにという要望書を提出したと聞いておりますけれども、その後その要望書はどのように対応されているでしょうか。
篠崎政府参考人 ただいま御質問ございました緊急避妊薬のことにつきましてでございますが、成分名はレボノルゲストレルのことだと思いますが、現在我が国では承認をされておりません。その早期承認に関しまして、四月の十一日に日本家族計画協会などから御要望があったわけでございます。
 こうした御要望を踏まえまして、私ども関連する製薬企業などに我が国での開発の状況や意向などについて照会をしてまいりましたけれども、現在開発に取り組んでいる企業が一社ございます。
 このようなことで、私どもといたしましては、この企業の開発状況を見ながら適切に対応してまいりたいと考えております。
水島委員 今回はその開発に取り組んでいる企業がどうにか一社あるということでございますけれども、いつも、これでもしも開発をしている企業がなかったとすると、企業からの申請がないからというようなことでまたずっと寝かされるのではないかと思います。やはり、緊急事態においてきちんと対応できるような薬事行政を日本もとっていかなければいけないということを、私も過去にも指摘させていただいておりますけれども、今回もその様子を見守るというようなそういう悠長な構えではなく、今本当に何が必要とされているのかということを考えて、優先的に、とにかくスピードアップすることが必要だと判断して、きちんとそのように取り組んでいただくというようなことが必要なのではないかと思っております。
 性感染症もそうですけれども、十代に中絶をしてしまったことを、それを理由としまして、その後ずっと不妊になってしまうというようなケースもあるわけでございますので、本当に十代の子供たちがきちんとした自尊心を持って自分自身の性をちゃんと自分を守るためにコントロールしていけるようにする、そのための環境整備は私はやはり大人の責任ではないかと思いますし、その一つがこの緊急避妊薬の早期導入なのではないかとも考えておりますので、ぜひこれについてはスピードアップをしていただけますようにお願い申し上げます。
 この十代の中絶防止策は欧米に限らず深刻でございまして、近隣諸国でも積極的に緊急避妊薬の導入を図っております。インド、韓国、スリランカでは二〇〇二年一月に、台湾でも二〇〇二年五月に発売されたと聞いております。しかも、韓国では、非常事態に適切に対処する意味からも薬局で手に入れられるようにという、いわゆるOTC薬として一部指定したというふうにも聞いておりまして、諸外国では、机上の空論というよりも、現実に何が必要とされているのか、どうすれば子供たちを守れるのかというような視点からきちんと考えられているのではないかと思っております。
 本日の御答弁を伺っておりましても、日本の政府としましてこの問題について科学的、具体的、実際的な対応が異常におくれているのではないかと思いますけれども、何といってもこの十代の妊娠、人工妊娠中絶、この危機的な状況を大臣といたしましてどのようにとらえて、これからどれほど力を入れて対応されるつもりか、最後にその決意表明をいただきたいと思います。
 これはだれが聞いても深刻な事態でございますし、子供とはこうあるべきだなどというあるべき論以前に、どうすれば効果が上がるのかというデータは諸外国でいろいろと蓄積されております。今の緊急避妊薬もそうでございますし、また、性教育の有効な手段としての同世代同士の話し合いであるピアカウンセリングが一番有効であるというようなこともいろいろと研究されておりますので、事ここに至っては、有効であったものをきちんとデータを拾いながら日本で早急に導入するということが求められている、一つのこれは危機管理の問題ではないかとも思いますけれども、最後に、大臣がどれほどこの問題について、どのような方向で頑張っていかれるかということを御答弁いただきたいと思います。
坂口国務大臣 諸外国、諸外国と申しますか、欧米諸国におきましては既にこういう事態が早くから起こっていたわけでありますし、日本も遠からずそういう時代が来るんだろうというふうに思っておりましたけれども、思っておりましたよりも早く現実は進んでいるというふうに思わなければならないというふうに思います。
 今御指摘のありましたように、やはり若い、若いと申しますか、中学生時代あるいは高校生時代の男女の体を健康に保っていきますためには、やはり何が今必要で、何を手順よくやるかということだろうというふうに思います。
 その辺の整理を急がなければいけないというふうに思いますし、先ほど文部科学省との連携のお話も申し上げましたけれども、十分なやはり連携が必要でございますので、連携しながら、まず手順を考えて、そして何を優先して行っていくべきかといったことを行い、そしてまた、必要なのは一体何と何なのか、その必要な項目も、やはり列挙をして、そして手落ちのないようにしていかなければならない。そうしたことを双方あわせてこれはやっていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
水島委員 その際の姿勢だけ最後に確認させていただきたいんですが、この問題は、諸外国のデータから、また日本の中のデータを見ましても、寝た子を起こすから余り早く教えてはいけないというような、そんな世界の話ではなく、やはり十代の性というものは、いかにして高い自尊心を育ててあげるか、そして、それと同時に、どのような状況に陥ってもきちんとその状況を自分なりにコントロールできるだけのスキルをいかに与えるかという、自尊心とスキルという二本立ての問題だと思います。さらに、その背景として、先ほど言いました緊急避妊薬の導入のように、何かがあったときにきちんと守られるような体制を社会として提供するというような構造が必要なのではないかと思っております。
 まさか、坂口大臣のことでございますので、これを罰するとかそのような方向でさらに自尊心を低下させるような施策をとられるのではなく、きちんと自尊心を高めながら、自分の権利と健康を守っていくための性教育というような考えに立って進めていただけると信じておりますけれども、その点だけ、最後に一言御確認をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 御趣旨、十分尊重をしたいと思っております。
水島委員 どうもありがとうございました。
 ぜひ全力で進めていただけますようにお願いいたします。
森委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十五分開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうは、午後の質疑のトップバッターということで、よろしくお願いいたします。
 まず、きょうは、社会保険につきましてちょっと議論をさせていただきたいというふうに思います。特に個別労働紛争という切り口から入ってみたいというふうに思っています。
 昨今、日本の長引く不況の影響によりまして企業倒産は相次ぎ、また、近年、雇用形態、労働環境が激変をいたしております。また、企業経営者はますますそういった中で厳しい経営環境に置かれているというふうに認識をしております。とりわけ中小零細企業、小さい会社におきましては、経営基盤を揺るがされており、昼夜生き残りをかけた奮闘をしているというのが現実ではないかと思います。
 ある地域で私も調べましたら、今から十年前にはその地域は町工場、小さい工場が約八百社あったのが、十年経まして三百社つぶれて約五百社になっていたという地域がある。これが現実であります。
 そんな中にありまして、いわゆる労働者の意識も大きく変化をするという流れとともに、それよりもまた大きな流れで少子高齢化という波も押し寄せている。労働社会保険関係諸法令の改正がたびたび行われているということであります。
 よりよい方向に向けて改正をするということはいいことでありますけれども、小さな町工場の経営者にとりましては、そのたびそのたびに変わっていくものですからなかなか対処がすぐできないという問題も一方ではあるんではないか。しかも、その改正の内容はますます複雑になってきておりまして、企業経営者はその対応に苦慮をしているということではないかと思います。具体的には、経営者はいわゆる労働条件などの引き下げまで含めた見直しも迫られているというのが実情であります。
 こうした背景のもとで、いわゆる労働条件に関する個別労働紛争は今後ますます増加すると思われますけれども、まず、現状につきましてお聞かせをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 確かにふえてきておりまして、この個別労働紛争の解決を図る制度を設けました昨年の十月以降、全国の二百五十カ所の相談コーナーに持ち込まれました相談件数は、十月から十二月までの三カ月間で約十二万件、そして本年一月から三月までの三カ月間で十三万件となっているところでございます。
樋高委員 今大臣おっしゃいましたけれども、三カ月間で十二万件。十二件ではなくて十二万件でありまして、大変な数であります。
 一方、社会保険労務士法に規定されておりますいわゆる社会保険労務士さんの業務というのは、法律にこのようにうたわれております。
 労働社会保険諸法令に基づいて行政機関等に提出する申請書、届け出書などの作成、提出代行、事務代理等のほか、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する相談、指導というふうにされておりまして、特に労務管理の業務は、個別労働紛争等の労使紛争の解決促進と深いかかわりを持った業務と考えますけれども、御見解はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 社会保険労務士の業務といたしまして、事業における労務管理等についての相談、指導がございます。賃金でありますとか労働時間、それから人事、雇用等の問題につきまして、事業主に対しまして、情報提供、相談、指導を行うといったことがあるわけでございます。
 社会保険労務士は、こうした相談、指導によりまして、個別労働紛争が発生することを防止するとともに、企業内における自主的な解決に重要な役割を果たしているというふうに思います。これからもまたさらにそうしたことに御努力をいただかなければならないというふうに思っております。
 ただ単に、事業主だけではなくて、これは労働者側の皆さん方の御相談に乗っていただくこともあるだろう、双方ともにこの社会保険労務士の皆さん方にお願いする件数は多分ふえてくるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 この労務管理の業務と個別労働紛争の解決促進とは密接な関係がございますので、今回の御提案いただいております法案が成立をいたしましたならば、さらにこの役割は増大するものと思います。
樋高委員 いわゆる社労士さんが個別労使紛争に係るいわゆるADR、裁判外の紛争処理の業務を推進していくというためには、現行の社会保険労務士法第二十三条、つまり開業社会保険労務士に限って労働紛争介入を禁止しているということや、弁護士法第七十二条による規制が壁になっているというふうに聞いております。
 労務管理のプロたる社会保険労務士がADRを含むいわゆる司法に参入をして、個別労使紛争等労働問題を積極的に解決することが、紛争解決に悩む多くの国民の利便性にかなうことというふうに考えますけれども、厚生労働省の御見解はいかがでしょうか。
 さらには、今後、社会保険労務士の活用のための厚生労働省としての具体的方策につきまして、お聞かせをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、紛争当事者の代理を行えるようにすることなどによりまして、社会保険労務士の有します専門性を活用することが紛争の解決に大いに役立ちますし、国民の利便性にもかなうものというふうに思います。
 また、厚生労働省としましては、社会保険労務士につきまして、紛争調整委員会の紛争調整委員への任用、それから都道府県労働局に設置されております総合労働相談コーナーの相談員への任用等を行ってきたところでございまして、今後、こうしたことに対しましても、一層御努力をいただきたいというふうに思っているところでございます。
 紛争調整委員会の委員に、全部で百七十四名でございますが、その中で社会保険労務士は現在のところ十二名入っていただいております。今後、さらにこうした活躍分野が大きくなるものと思います。
樋高委員 きょうは社労士法の一部改正ということで、委員長提案ということのようでありますけれども、私どもとしては、この法案に関しては賛成ということでありますが、その前に、やはり政府の御認識を若干お伺いしておきたいというふうに思います。
 若干細かいことでありますが、副大臣に伺います。
 利用者に質の高い多様なサービスを安定的に提供するというためには、社会保険労務士が共同して社会保険労務士法人、いわゆる法人化ということでありますけれども、この法人制度、法人を設立することが望まれるというふうに私は考えます。社会保険労務士法人制度の必要性についてはどのように考えますでしょうか。
狩野副大臣 社会保険労務士法人制度の必要性につきましては、委員御認識のとおり、今問題が多様化、高度化していることから、本当に事案によっては、個人の能力と経験だけを頼りに処理することが困難なこともありますし、そうした場合には、共同組織体による業務執行とすることで迅速かつ的確な事務処理が可能となると考えられます。
 また、社会保険労務士が共同で設立した法人が受託者となることにより、例えば一人の社会保険労務士が脱退等により欠けた場合でも、引き続き当該受託事務が処理されるため、依頼者が安心できることなどから、社会保険労務士制度を取り巻く環境の変化に対応した大変望ましいものであると考えております。
樋高委員 同じく、もし社会保険労務士法人が設立された場合でありますけれども、今副大臣の答弁にもありましたけれども、対外的な社員の責任、要するに業務をきちんと引き継いでいくのだということに関しましては、いわゆる連帯無限責任とすることが望ましいと思いますけれども、御見解はいかがでしょうか。
狩野副大臣 社会保険労務士法人の場合は、その業務の性格上、法人資産が乏しいと考えられます。業務上依頼者に与えた損害をてん補するための賠償責任保険が現時点では十分に普及していないことなどから、法人の社員がみずから出資した限度で責任を負い、それ以外の責任を負わないとする有限責任制度を採用することは、顧客保護の観点から見て適切ではないと考えられます。
 したがいまして、御指摘のように、連帯無限責任を負うこととすることが適当であると考えられます。
樋高委員 また、個別労働紛争解決促進法の、いわゆる紛争調整委員会における個別労使紛争のあっせんについて、紛争当事者の代理を行うということを社労士の業務とすることにつきましては、どのように考えておりますでしょうか。
狩野副大臣 最近の個別労働紛争が増加している状況にかんがみますと、そのような紛争処理の法律事務に関して、社会保険労務士の有する専門性の活用を図ることが、紛争の解決の促進のために効果的ではないかと考えられます。
 このため、紛争調整委員会におけるあっせん手続において、社会保険労務士が紛争当事者の代理を行えるようにすることなどにより、紛争の解決等に大きな役割を果たしていただければと期待をいたしているところであります。
樋高委員 また一方で、遂行の一層の適正化を図るという観点からしまして、仮にあっせんの代理業務を行う場合に、相手方の代理人となること、また非社会保険労務士との連携等を行うということを禁止することについて、どのような認識でしょうか。
狩野副大臣 仮に、社会保険労務士が個別労働紛争に係るあっせん代理を行うようなことになった場合には、双方の代理人となって、依頼者や相手方の信頼を裏切ること、それから非社会保険労務士から事件のあっせんを受け、または社会保険労務士の名義を利用させることによって、法律で禁止されている無資格者による業務を助長することなどはあってはならないことであり、禁止することが適切であると考えられます。
樋高委員 また仮定の話ですけれども、この法律案の中には、国民一般からのいわゆる懲戒申し出制度を設けるということにつきまして、どのようにお考えになりますでしょうか。
狩野副大臣 国民一般からの懲戒申し出制度を設けることは、国民に社会保険労務士の職務を直接監視する機会を与えることとなり、より一層信頼される社会保険労務士制度の確立にもつながるものと考えております。
樋高委員 きょう、議員提案、いわゆる閣法ではなくて衆法という形で法案成立をされる予定ということのようでありますけれども、この法案が成立しました後、所管いたしますのはほかでもない厚生労働省、そして運用いたしますのも厚労省でありますから、的確にしっかりと行っていただきますことを強く要望いたします。
 また、それと同時に、士業、いわゆる社労士さんのほかにも、例えば弁護士さんですとか公認会計士さんですとか、さまざまな国家資格に基づく資格がございまして、社会のため、そして国家のために頑張っていらっしゃるわけでありますけれども、今のさまざまな規制緩和の流れの中で、さまざまな、場合によっては衝突をしたりすることによって、それぞれのやるべきことがなかなか、阻害をされているというか、どうしてもブレーキがかかってしまっているという現状をよく検証していただきまして、やはり、今まさしく構造改革というからには、そういった垣根をただ単に取り除けばいいというものでももちろんないのもよくわかっております。
 けれども、やはりそういった資格も何のためにあるかというと、やはり国民、国家のため、そして、自分たちの将来のためにあるという視点をどうかお忘れなきように、今後ともしっかりと取り組んでいただきたいということを強く要望させていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
森委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 続きまして、私は、ホームレスに関して聞かせていただきたいかと思います。
 今のホームレスの現状を見させていただくと、本当に何とかしなきゃいけない、そういう意味で、このたびホームレスの自立支援等に関する特別措置法案がこの後通るであろう、そういうことは一歩大変な前進になるというふうに私は思います。
 しかし、この法案、私は当初仮にということで考えていたんですけれども、大臣も先ほど午前中の田中委員等の質問におきまして、あくまでもこの法律が前提というような御答弁をされておりましたので、もしもそういう形でお答えを願えればありがたいというふうに私は思います。
 ホームレスの自立に関する支援ということ、こういう場合、この法案の中に率直に言いまして書かれていることですが、私は改めて見まして思うことは、そもそもの自立の意思があるホームレスとは、一体全体厚生労働省さんの中で、どういう基準、どういう価値観、どういった者を指しているのか、明確に現段階で答えられるものに関してお願いをいたしたいかと思います。
真野政府参考人 まだ法案という格好になっておりませんので、一般論ということでお答えさせていただきますが、自立の意思があるホームレス、一般論といたしましては、就労等によりましてホームレスの状態を脱却する意欲のある方を指すものというふうに考えるのが普通ではないかと思います。
佐藤(公)委員 今その定義というか、脱却する意欲のある者、では十人集めたとします、ホームレスの方々、どういう基準でその脱却する意思があるかどうかというものを、そこをどうやってはかっていくのでしょうか。
真野政府参考人 もちろんそれぞれいろいろな、自立支援センターでありますとか、シェルターでありますとか、そういうところでホームレスの方々のいろいろなお話を聞くわけでありますので、そういうところで、それからまた過去に就労行動をとったかどうか、そういうようなところを総合的に判断するということになろうかと思います。
佐藤(公)委員 では、もう少し具体的に御説明を願いたいと思うんですけれども、そういうことを、大変失礼な言い方かもしれませんが、分けるというか区別していく、その方法論とかカリキュラムとか、そういうものが現段階あるのか、もしくは今考えているのか、これからそういうものをつくっていくのか、そういうのはどうでしょうか。
真野政府参考人 私ども、これまでもそうでございますが、ホームレスに対する対策といたしまして、自立の意思の有無をメルクマールとして、こういうことはするとかしないということではございませんで、今の状態に着目をして、そして必要であれば支援をするということでございますので、自立の意思がある方については特に就労部分に力を入れるということでございますが、自立の意思の有無によって支援をする、しないを分けるわけではございません。
佐藤(公)委員 ちょっとまだわかりにくいところがあるんですけれども。
 次、この法律の中にも書いてございます「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域」というのは、これは具体的にどういうような地域のこと、もしくはその地域というのをどういうことで判断して決めていくのか、また考えていくのか。法案が出ておりませんけれども、仮という形でも結構でございます。どういうことでこれを考えていくのか、お答え願えればありがたいと思います。
真野政府参考人 これも仮にということでお答えさせていただきたいと思いますが、ホームレスに至る原因は、先ほど来大臣からもお答え申し上げていますように、いろいろな理由が複合的に重なっているということでございまして、「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者」というものを特定するということもなかなか難しい面もございますけれども、一般的には、現に失業状態や不安定な就労関係にありまして、かつまた、定まった住居を喪失し、あるいは一時寄宿といった不安定な居住条件にある者などが想定されるのではないかというふうに考えております。
 これらの者が多数存在する地域としては、例えば、定まった住居を有しない日雇い労働者が多数宿泊している簡易宿泊所の密集地域などが想定されるのではないかというふうに思います。
佐藤(公)委員 では、今のお答えの中で、多数というのはどれぐらいが多数というふうに言われるんでしょうか。
真野政府参考人 何百人というはっきりした基準がございませんが、やはりそこは常識の範囲で多数ということだと思います。
佐藤(公)委員 済みません、常識がこの国会の中でも大変与野党でも違う部分がありますので、むしろ具体的にどれぐらいかという一つの基準を出してもらえればありがたいと思いますが、いかがですか。
真野政府参考人 数ということよりは、私どもが議論をされているという中での仄聞いたしておるところでは、例えば、大阪におきます釜ケ崎地域でありますとか、東京におきます山谷地域、そういうものを念頭に御議論をされているというふうに承知をいたしております。
佐藤(公)委員 よくわからないところがまだございますけれども。
 でしたら、では話をまたもとに戻しますけれども、このたびは自立の意思があるホームレスに対する支援ということなんですけれども、では、自立の意思がない方々に対しての支援というか国の対応というのは、どういう形で既存のもので考えていくのか、また今後考えていくべきなのか、もしくはないのか、いかがでしょうか。
真野政府参考人 先ほども申し上げましたように、私ども、ホームレスへの支援という場合に、自立の意思の有無というところで支援のする、しないを分けているわけではございませんので、いわゆる自立の意思のないホームレスというのは、先ほどの反対といたしますとホームレスの状況を脱却する意欲のない方を指すものというふうに考えられますけれども、こうした方々に対しましても相談援助を通じましてできるだけ、一時的にその意欲をなくしているのであれば、その自立の意欲を促す、また、なかなかそういう状況にならないとしても、緊急援助その他の対象としてできる限りのことを支援するということになろうかと思います。
佐藤(公)委員 そういった中で、このたびの法案ということがまさにホームレスの自立の支援等に関するということで出てきておりますけれども、では、今、失業されていても一生懸命職を探してやられている、これもちょっと言い方があれかもしれませんけれども、まじめにやられている方、ホームレスにならないように自分で頑張っている方、こういう法律ができることによって、何か頑張って一生懸命やっていることに関してもうあきらめちゃって、ホームレスの方に移っちゃった方が自分は楽だな、そっちの方がいいんじゃないかという一つのモラルハザードというか、一つの意識の雪崩現象みたいなものが起こる可能性というのがあり得るようにも思える部分があります。
 人間、やはり楽な方、楽な方、もしくは、一生懸命自分が頑張っているのに、隣の塀の向こうでは、のうのうとしているという言い方は失礼かもしれませんけれども、なっている。そうすると、何となくそっちの楽な方に行っちゃった方がいいんじゃないか、こういうような一つの意識というかモラルというか、そういうものがだんだん崩れていくような気がいたしますけれども、そこら辺をどう考えて、どういう線引きなり考え方を持っていくのか、いかがでしょうか。
真野政府参考人 ホームレスの方々は、住所を失いまして野宿生活を送っておられるわけでございますので、非常に健康状態が悪化されている方も多いという状況からいたしますと、その境遇というのは大変厳しい状況であろうと思います。そういう意味では、なかなか、努力を放棄して、こういう支援があるからといって、そちらの方がいいということには普通はならないんではないかというふうに思います。
佐藤(公)委員 幾つかまだあるんですけれども、私が言いたかったことは、私はこの法案に関しては賛成の方向で聞かせていただいております。賛成の方向で聞かせていただいておりますけれども、やはりホームレスの現状を見れば、何とかしなきゃいけない、その一歩としてこの法案が成立していくということは非常に意味、意義のあることだと思います。ただし、やはりこれに使われるお金というのは税金でございます。
 まじめに働いてまじめに税金を納め、税金が払える状況ではないにもかかわらず税金を払っている方々もいらっしゃる。そういう意味で、一つ一つやはりこの税金の使い方というもの、丁寧にお願いをしたいかなと。やはりまじめに働いている者が報われる、ホームレスの方々も大変な状況、これを変えていく責任というものもあると思いますけれども、今、現状ぎりぎりのところで頑張っている方々、こういう方々をきちんと意識した配慮というものが必要だと思います。
 もう時間も余りないんですけれども、大臣、ホームレスに関して私が今まで聞いたことを含めて、正直言ってちょっとまだまだはっきりしていない部分が多いと思います。本来はもう少しはっきりさせていくべきだというふうに思いますが、ただ、これは非常に、本当にはっきりさせるのが難しいのをわかっていて私も聞かせていただいております。やはり税金ということを使っていくに際して、先ほどの佐世保重工のあんなばかげたことの税金の使い方をするのであれば、これは言語道断だと思います。そういう意味で、全体の総括として、大臣の決意と、また御意見も含めてお話をいただけたらありがたいと思います。
坂口国務大臣 今お話をいただきましたように、ホームレスになられた皆さん方の事情というのもさまざまだというふうに思います。したがいまして、一日も早く自立をしたいというふうにお考えになっている皆さん方に対しましては、これは今度のこの法律をつくっていただいて、そして今までよりももっと手を差し伸べて、皆さんに職についていただく、雇用のお世話をできるようにしていかなければならないというふうに思います。しかし、これも御議論のありますように、名前を明かすことができないとか、やはり住所を明確にすることができないというような御事情の皆さん方には、それ相応の事情があるわけでございますから、そこをどこまで御相談に乗ることができ得るのか、これはなかなか難しい問題だというふうに思います。
 しかし、この法律ができまして、自立をする、それからできるだけホームレスにならないように予防をする、あるいはまた住まい等を提供するといったようなことで、すべてがそれで解決をするわけではない。それ以外のところの問題も確かにあるわけでございまして、この法律を第一歩としてひとつ、おつくりを皆さん方御努力をいただいたわけでございますし、これを成立させていただいて、そしてさらに、その後に残ります問題にどうしていったらいいのかということ、これはまた話を詰めていかないといけないのであろうというふうに思っております。
 かなりその人の個人のプライバシーに入っていかなければならないところもあるだろうというふうに思いますから、そこから後に残られる皆さんというのは大変難しい方が残られるというふうに思いますけれども、それだけに、やはりまた御相談に乗る道というのを考えていかないといけないのではないかというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 もう時間がありませんが、まだちょっと聞きたいことがございましたが、大臣に訴えさせていただければありがたいのは、これだけで解決することじゃなくて、やはり雇用対策とか経済対策、景気対策とかワークシェアリングとかいろいろなことが絡み合いながらこういう問題が発生をしていると思いますので、その抜本的なことをきちんとできるような政府であり内閣であり国でなきゃいけない、ここら辺が基本だと思います。また、佐世保の件でもいろいろと出ましたけれども、助成金等が必要であるならば、その算定とか、これはこれに限ったことじゃございませんが、特定団体の利権が発生しないようにとか、やはりその使い方のチェックの仕組みをきちんととっていくとかいうことも非常に大事な点だと思います。
 個々における細かいことが幾つかございますけれども、本当にこの法案がまじめに頑張られている方々にもきちんと考えたことでの法案であってもらいたいなということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 十一日の日に参議院厚生労働委員会で我が党の小池議員が取り上げた、宮路副大臣による帝京大学医学部の入学口きき問題は、単に副大臣を辞任したということで解決されるような性質のものではありません。
 辞任したとはいえ、宮路議員は、こんなことは往々にしてある、陳情はいっぱい来るなどと、反省の色が全くありません。しかし、今回の問題は、日本における医師養成の入り口で、厚生労働副大臣という要職にある政治家が介在して入学試験の公正をゆがめたという深刻な問題であります。これは国民の医療そのものへの信頼を傷つける重大な問題だと思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。
坂口国務大臣 宮路副大臣の問題につきましては、宮路副大臣が国会で答弁をされましたとおりでございまして、御本人の支援者のお一人からそういう依頼があって、そのことについて、その番号をお伝えした、こういう話でございまして、御本人からは、そういうことはあったけれども、しかしそれは裏口入学といったようなものではなくて、その番号を知らせた、あるいは知らせてほしいといったようなことであったというお話でございましたから、私はそのことを信頼したいというふうに思っている次第でございますが、いずれにいたしましても、李下に冠を正さずという言葉がありますように、やはり議員としてお互いに気をつけなければならないことだというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 この問題については、宮路議員は、受験番号を電話して大学側に教えたと言っております。ところが、大学側は、電話があった事実はないなどと全く食い違った説明をしておる。こうした重大な食い違いをそのままにして幕引きをすることは許されません。
 我が党は、この問題の徹底した解明のため、引き続き参議院厚生労働委員会でこの問題の集中審議と、宮路議員、帝京大前理事長の冲永荘一氏を招致しての参考人質疑を行うことを要求しております。ぜひ各党の御協力をお願いいたしたいと思います。
 次に、原爆被爆者の原爆症認定問題についてお尋ねをいたします。
 去る七月九日、被爆者七十六名が認定を求めて全国各地で一斉に申請を行いました。早速調べてみたところ、原爆症の認定は、平成十一年度三百六十件の申請に対し百八十七件、五二%、十二年度二百二十二件に対し百二十件、五四%だったものが、あの最高裁の松谷英子さんに対する判決の翌十三年度には、逆に六百五十七件中百七十三件、二六%に急落し、今十四年度も、現在までのところ、内定を含め二百六十六件中七十四件、二八%にすぎません。認定は、最高裁判決以後かえって悪くなっております。
 被爆者が怒って集団申請を行い、裁判も辞せずというのは当然ではないでしょうか。大臣はどうお考えですか。
下田政府参考人 平成十二年七月の最高裁及び同年十一月の大阪高裁での原爆症認定申請却下処分取り消し訴訟の判決におきまして、原爆症の認定の要件たる放射線起因性につきまして、高度の蓋然性が必要とされたところでございます。
 これを受けまして、その推定をより科学的で透明性の高いものにすべく、原子爆弾被爆者医療分科会におきまして、原爆症の認定における考え方、判断の目安などを整理しました「原爆症認定に関する審査の方針」、これを昨年五月に定め、公表いたしたところでございます。
 この審査の方針は、放射線起因性の科学的な推定方法といたしまして、原因確率という概念を新たに導入したものでございます。これは、申請者の被曝線量、被曝時の年齢、性別、疾患の状況等から、申請された疾患が原爆放射線にどれだけ起因しているかを推定し、算出するものでございます。
 以前の審査では、被曝線量を推定いたしまして、専門家による経験則に基づき判断される部分が少なからずあったところでございますけれども、この原因確率の導入によりまして、審査がより科学的になり、かつ迅速化が図られてきたというふうに考えておるところでございます。
小沢(和)委員 松谷さんの最高裁判決は、爆心地から二キロ以上離れた被爆者の脱毛について、DS86と閾値理論とを機械的に適用することによっては十分に説明することができないと、これまでの政府の認定のやり方を批判しております。京都の小西建男さんに対する大阪高裁の判決も、政府の却下処分を取り消しております。これらの相次ぐ判決は、政府に対し、従来の機械的な認定のやり方をもっと被爆者の実情に合うよう改善し、認定する範囲を拡大することを求めたものであります。
 これに対し、政府が昨年五月に決定した新しい審査の方針は、従来のDS86、つまり爆心地からの距離による被曝線量に加え、その病気の発症が原爆放射線の影響を受けている蓋然性があると考えられる確率、いわゆる原因確率によって高度の蓋然性が認められた場合にのみ認定することといたしました。
 これでは、実際上、何ら基準の緩和にも、認定範囲の拡大にもならなかったのではありませんか。だから、新しい方針によって審査を再開したら、逆に認定率が下がってしまうという結果になったのではありませんか。
下田政府参考人 ただいま委員御指摘の最高裁並びに大阪高裁の判決でございますけれども、これはいずれも、最高裁の場合は、屋根がわらが飛んできて頭に当たって……(小沢(和)委員「中身は知っている、そんなことは」と呼ぶ)はい、失礼いたしました。
 というようなことでございまして、先ほど御紹介を申し上げました原爆症認定に関する審査の方針におきましては、原因確率を設けた疾病は白血病、主ながん、副甲状腺機能亢進症といったものについて原因確率を定めておりまして、その二例の裁判事例は当該疾病には含まれていないところでございます。
 これはなぜかと申しますと、極めて症例が少ない事例でございまして、放射線影響研究所の疫学データから原因確率を推定しておりますけれども、そうしたことが科学的に出せなかったということによるものでございます。
 したがいまして、この審査の方針の中でこういうところがございます。原因確率等が設けられていない疾病等に関する審査に当たっては、当該疾病等については、原爆放射線起因性に係る肯定的な科学的知見が立証されていないことに留意しつつ、当該申請者に係る被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴を総合的に勘案して、個別にその起因性を判断するものとする。このようにされておるところでございます。
    〔委員長退席、福島委員長代理着席〕
小沢(和)委員 私が言いたいのは、最高裁の判決というのは、あなた方が認定しないといった人に対して、いや、もっと実情に即してみるべきだ、認定をすべきだ、こういう判断を示したんじゃないですか。だから、従来だったら認定されなかった人でも、新しい基準を設けたおかげで認定される人が出てくるというようにならなければおかしいと思うんですね。
 この一年半ばかりの間に、この新しい方針のおかげで認定されるようになったという人がどれぐらいおりますか。
 それから、もう一つ聞きたいんだが、被爆者の団体である日本被団協や弁護団が、この新しい基準を最高裁で勝訴した松谷英子さんや京都の小西さんに当てはめてみたら、何と却下になるのではないかと言っているんですが、そうなるのかどうか。
下田政府参考人 従来却下になった人たちが新しい認定基準で見直せばどうなるのかということでございますが、この部分については、正直なところわからないというのが回答となります。
 それから、最高裁、大阪高裁の場合に新しい基準ではどうなるのか、こういうお尋ねでございますが、これは、先ほどから述べておりますように、新しく設けました原因確率、この部分については含まれておりませんので個別的に判断をする事例ということになりますので、新しい認定基準ではどうかと言われても、この部分についてはお答えしようがないということでございます。
小沢(和)委員 最高裁でさえ認定すべきだというふうに判決を下したケースについても、これでいったら認定されるかどうかわからないというのがあなたの答弁でしょう。そんないいかげんな話はないと思うんですよ。結局、この新しい基準というのは、見直したと言いながら何の改善もないということです。そんなばかな話は私はないと思う。被爆者が怒るのは当たり前だと思うんです。
 ここで大臣にぜひお答え願いたいんですが、こういうような、最高裁が求めているような認定の改善に全くつながらないようなものについては、もう一度見直す必要があるんじゃないですか。
坂口国務大臣 最高裁の判決は、科学的なデータに従ってきちっとやれということだと私は思います。だから、科学的なデータに従って、そしてそこで決めるわけでありますから、より科学的なデータというものを蓄積していきましたならば、そこから、当てはまる人、当てはまらない人、それは出てくるでしょう。しかし、科学的なデータをもとにして判断をするということを、やはり私たちはそのことに専念すべきだというふうに思っております。
小沢(和)委員 だから、科学的なデータを当てはめたら今までよりもはるかに認定率が下がってしまう、こういうようなことは最高裁判所の判決は予定していないと思うんです。現に最高裁では、認定されなかった人を救済する、松谷さんを、そういう判決を出しているんですから、ぜひ、その点については改善することを改めて強く要求しておきます。
 時間もありませんので、もう一つ、雇用保険の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 一昨年、政府は、雇用保険法の改悪を行って、昨年四月から保険料を千分の八から千分の十二へと一・五倍に引き上げました。その一方で、自発的離職者、定年退職者等への失業手当の給付日数を大幅に減らしました。ところが、失業情勢は政府の見通しを大幅に上回って、昨年は年間平均失業率五・二%となり、雇用保険財政が予想以上に悪化しました。
 新聞報道によれば、政府はこれに対応するため、今、労働政策審議会雇用保険部会で、さらに保険料のアップや給付の削減を検討しているということであります。先ほどのニュースでは、自民党の厚生労働部会が一・四%への保険料引き上げを了解したとの報道もありました。しかし、これは余りにも安易な発想ではないでしょうか。
 そもそも、雇用保険財政の悪化を引き起こした重大な責任が国にあります。かつて敗戦直後、失業保険制度がスタートしたとき、国庫負担率は三分の一でした。それが、高度成長時代に入ると四分の一に減らされ、雇用保険に制度が切りかえられてからも四分の一負担が続きましたが、平成四年に至り、それが二二・五%に、つまり一〇%削減され、翌五年には、さらに一〇%減の二〇%になりました。
 しかし、そのころになると、日本経済は長期不況の様相をはっきりとあらわしてきました。失業者が年ごとに急増し始めたのに、四兆数千億円の積立金があることに惑わされ、平成十年には、さらに国庫負担率を三〇%もカットし、一四%まで下げた。ところが、その直後から、毎年一兆円もの積立金を食いつぶすようになり、わずか四年後には積立金の大部分がなくなってしまったので、昨年四月から、慌てて国庫負担率をもとの四分の一、二五%に戻しております。
 この経過を見れば、今日のような雇用保険財政の悪化を引き起こした大きな原因が、長期不況に陥った時期に国庫負担率を次々に削減していった政府の政策上の誤りにあることは明らかではないでしょうか。このことを考えるならば、少なくとも、平成四年以後の国庫負担削減分を急いで補てんし、財政悪化を食いとめる措置こそまず行うべきではないでしょうか。
坂口国務大臣 先ほどお話がございましたように、平成十二年でございましたか、法改正がございまして、そして財政運営上、正常にそれが動いていくと予測をしたわけでございますが、以後の経済状況によりまして、非常に厳しい状況になっているのはもう御存じのとおりでございます。
 これらのことを受けまして、そしてどうしていくかということを、雇用保険制度のあり方につきましての審議会で今議論をしていただいているところでございます。
 給付と負担と両方あるわけでございますが、まずその中で、給付のあり方を、今までのままでいいのか、それとも給付の負担についていろいろ検討が必要なのか、そこをまず議論をしていただいているところでございますが、現在の審議会の様子では、政労使ともに、給付のあり方についてもう一度考え直す必要があるということでは総論として合意ができているというふうに聞いているところでございます。
 それを、具体的に給付をどういうふうにしていくかということを、そこを決めました暁において、それならば、それに対してどれだけ財政的に足りないのか、足りるのかといったところについての議論が進んでいくものと今思っているところでございます。そうしたことを早急に煮詰めて解決をしたいと思っております。
小沢(和)委員 五日付の新聞には、厚生労働省が、失業手当を給付する際の認定を厳しくする方針を決め、雇用保険部会に示したと報じられております。
 これまで失業手当は、ほぼ四週間置きに、その間の失業状態を確認して支払われてきましたが、今後は、毎回の書類に、相談やあっせんを受けた職業紹介機関の名前や日時、実際に応募した企業名等の記入を義務づけ、一定回数以上の実績があった場合のみ手当を支給することにするというのです。そうすると、今後は、親類や友人などの紹介や新聞広告、求人情報誌等で職を探している人は、求職活動をしたと認められなくなるのではないのか。また、中高年者は、ハローワークに来て幾ら求人票を探しても見つからないとか、ようやくこれはと思う企業があっても、電話したら面接さえ断られるというのが実情ですが、今後は、これでは労働の意思や能力がないと判断され、支給を打ち切られることになるのではないか。
 雇用保険財政の悪化を防止すること自体が目的となって、いたずらに窓口での締めつけを強め、従来に比べ、自主的で多様な求職活動を抑制するようなことになってはならないと思いますが、いかがでしょうか。
 これで質問を終わります。
澤田政府参考人 委員御指摘の失業手当、正確には求職者給付と申しておりますが、これは失業の状態、すなわち労働の意思と能力を持って仕事を探している方に対する給付ということでございますので、受給者が失業状態にあるか否かを的確に認定した上で給付すべきことは制度上当然のことというふうに考えております。
 現在、審議会で失業認定等についても議論をなされておりますが、その議論の観点としては、今大臣が申し上げましたように、給付のあり方を議論する上で、制度がその趣旨に沿って適正に運営されていることが前提となるべきという考えに基づいて議論されているものでございます。
 具体的な失業認定の運営等につきましては、審議会における議論も踏まえて適切に対応していきたい、こう思っております。
小沢(和)委員 終わります。
福島委員長代理 次に、瀬古由起子君。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 先日、六号台風の災害で、仙台市の広瀬川の中州に取り残された六十五歳の男性と七十歳の女性がヘリコプターで間一髪救出された映像をテレビでごらんになった方も多いかと思います。この二人は野宿者だったそうです。いつも命と向かい合わせに生きている、こんなニュースに本当に胸が熱くなる思いです。
 私は、野宿生活を送っておられる方々の基本的な支援法は、まず憲法十一条、二十五条であると思います。また、憲法十一条、二十五条を具現化したものが、生活保護法を初めとしたセーフティーネットだと思います。まずそのことを確認したいと思うんです。そして私は、人間の尊厳の確保と生存権の保障という立場から、野宿を余儀なくされている人たちが人間らしい生活を回復できるように、国が、制度、環境を整えるべきだと思います。
 さまざまな要因によって生きる希望を失ったり、無理解、偏見、差別によって傷つけられて行政や社会に不信を持つようになったりする人もいますけれども、そうした人もそれぞれ理由があります。この法律によって、こうしたホームレスと言われている人たちの対策が、自立の意思がないとして支援の対象から排除されたり、また、あるときには生活保護法の適用からさえも排除されるということがあってはならないと思いますけれども、その点、いかがでしょうか。
    〔福島委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 ホームレスになられた皆さん方の中にもいろいろな理由があるということは、先ほどから御議論のあるところでございます。
 その中で、やはり自立をする意思のある方につきましては、それじゃこういうお仕事はどうでしょうかという御相談に乗れるわけですが、働く意思はないという方につきまして一体どうするのか。お体が悪くて、それで働けないという方は、これはやむを得ないでしょう、それは疾病に対します治療を受けていただかなければならないというふうに思います。しかし、そうではない、体は丈夫だけれども働く意思がない、あるいは名前を明らかにすることができないと言われるような方に対してどうするか。
 それはなかなか私は難しい問題だというふうに思いますし、その皆さん方に生活保護をと申しましても、生活保護にすれば名前が明らかになるわけでございますしいたしますから、一概にホームレスの人はすべて生活保護にというわけにはいかない。それはやはり生活保護でお救いをしなければならない人も当然おみえになると思いますから、その人たちには手を差し伸べるとして、しかし、そうでない皆さん方に対して一体どうしていくか。これは今後の課題として考えていかなければならない問題だというふうに思っております。
瀬古委員 私は、自立という問題でいえば、これは自活とは違うと思うんです。生活保護を受けていながら、実際には自分らしく生きたいと、そして自分で自分の生き方を選択していく、そういう自立の道というのもあるはずなんですね。
 すべて仕事をやらなきゃ自立じゃないなんという定義も間違っていると思いますし、実際には野宿している人たちが毎日どういう生活をしているかというと、夜寝ないで大半の方が空き缶拾いだとかそういう仕事そのものをやっていらっしゃるんですね。そういう点では、何とかちゃんとした仕事につきたいという思いの方もいらっしゃる。しかし、なかなか実際に職安に通っても仕事がない、こういう状況があるんですね。
 そういうことを踏まえて、自立という意味をきちっと私はとらえていただく必要があると思いますし、その野宿している人たち、ホームレスの人たちがどういう状況に置かれているかという形で、では生活保護法の適用についても私は考えなきゃならないというふうに思うんです。
 例えば名古屋市では、今まで、住所不定者や稼働力のある人は生活保護が受けられない、市営住宅も申し込みの資格がないということで、野宿者を放置してまいりました。国会でもこれが問題になって、是正の厚生省の指示が出されました。
 そこで名古屋市は何をやったのかといいますと、十五項目ぐらいの条件をつけました。例えば、相談する前の三カ月間は、職安の窓口の閉鎖した期間を除いて五〇%、半分以上の日数はちゃんと通ったかどうか、そういう証明を出しなさい。毎日行ったって仕事がないのに行けというわけですね。そして、毎日のように新聞の求人欄に目を通したか。ホームレスの人たちに毎日、新聞を読め、ちゃんとやったか、こういうことまで要求して、十五項目あって、これはほとんどクリアできないような条件を出してきているわけですね。
 実際には、睡眠不足の中で、本当に食べるものを確保するのが精いっぱい、もう何時間も何時間も歩いて空き缶拾いしている、その寝るところの確保だけでも仕事をいっぱいやっていらっしゃる方もいる。こういう人に、これでもかこれでもかといって生活保護の適用をしない、こういうひどいやり方をやってきたんです。
 それで、ようやく施設に入る、病院に入院する、こういうときだけ生活保護の適用をやるけれども、実際には、再び退院とか退所になりますと、収入がないのに生活保護が廃止されて、再び野宿に追いやられる。こういう状況が頻繁に起きているわけです。
 これは、私は、名古屋市の立場というのは憲法や厚労省の指示にも反すると思うんです。これは名古屋市だけのことではなくて、本当に各地でこのような生活保護のもう違法な運用というか、ホームレスの人たちだけ特別に差別をした、こういう運用の仕方がやられているとしたら、私は本当に大問題だと思うんですが、これはきちっと是正させる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 今まで法律もなかったわけでございますから、各地域で若干のその取り扱いの違いはあったかもしれません。しかし、今回法律をここにつくっていただくわけでございますから、この法律を通していただきますれば、その後は全国一律のと申しますか、一つの具体的な方策というものがそこに出るわけでございますから、そんなに地域の差はなくなっていくだろうというふうに思っております。
 名古屋市の場合がどうなのかということを私は余りよく存じませんが、名古屋市にお聞きをしますと、そんな十五項目というような特別な項目を我々がつくっているわけではないというふうにおっしゃっているようでございますので、そこは私もよくわかりません。特別に名古屋市でつくったというものはないというふうにおっしゃっているんだからそうだと思うんですけれども、どういうものなのかということはよくわかりませんけれども、しかし、この法律ができれば地域の格差はなくなっていくだろう、そう思っております。
瀬古委員 きちんと各区役所に指示した文書がございますので、よく調査をしていただきたいと思うんです。一律になって全体が上がればいいんですが、これが一律に下がるということのないようにぜひ御配慮いただきたいと思います。
 最後ですけれども、野宿者の集中する地域では結核の罹患率が大変高くて、そして結核の治療中断はさらに強い耐性菌を生み出します。結核の感染の早期発見、早期治療、安心して治療継続ができるような利用しやすい地域に無料の診療所の開設。名古屋なんかでもあるんですけれども、実際には遠い病院に行かなきゃならない、こういう本当に必要なところに診療所がないんですね。
 それから、東京都が実施しているように、DOTS事業というのがありますけれども、それが生活保障と一体となったものでないと、治療だけやりますよというけれども、実際には生活保障がなければ途中で中断してしまうわけですね。東京都はそういう生活の保障、生活保護と一体となってDOTS事業をやっていますから、そういう点でも、結核の対策については実態に見合った医療の充実について検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 法律ができましたら、それに従いましてさまざまな活動が行われるようになるというふうに思いますが、確かに結核の方が多いということも事実のようでございます。
 したがいまして、ホームレスの皆さん方の健康を守るということも大事な問題でございますから、それはそのとおり、やはり健康診断等もちゃんと行えるようにしてやっていかなければならないというふうに思いますし、いわゆるDOTS事業、直接薬剤服用確認療法というんですか、ちゃんとお薬を飲んでくれるかどうか、飲んでくれたかどうかということをやはり確認をしていかないといけないということだろうというふうに思いますが、そうしたことも、これはお入りをいただく場所をつくりますとかそうしたことと並行していかないと、なかなか確認というのも難しいと思うんですね、実際の問題として。
 ですから、総体的に、お仕事の問題でありますとか住まいの問題でありますとか、そういうこととあわせてやはり前進をさせないと、一カ所だけ特別にここを前進させようといってもなかなか進まない、現実問題としては進まないのではないかと私は思っております。全体的にさまざまな施策を進めていくということが大事かと思います。
瀬古委員 時間が参りました。
 結核だけではなくて、実際に現場に入ってみますと、精神病それからアルコール中毒、知的障害など、さまざまな病気や障害を持っている野宿者も多いわけでございます。一律に管理的な施設で共同生活をやれといっても、そういう事情で困難な場合もございます。やはり、こういう疾病や障害のある人々に対するきめ細やかな施策もぜひ検討していただきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。
森委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 きょうは一番最初に、先日も質問いたしましたが、薬害ヤコブ病の硬膜移植の情報を被害者、家族、遺族に国として責任を持って伝えるべきということで、再度御答弁をお願いしたいと思います。
 昨日も、この薬害ヤコブ病の原告、弁護団、支援者、そして議員の会で懇親会を開きました。自分たちは今回の和解でしっかりした救済を得られたけれども、まだ新たに発症されている方たち、そして、厚生労働省がその情報をつかんでも本人に直接知らされないということで、その救済の対象にならない方たちに対しての心配の声、そして、やはり国はしっかりと直接伝えるべきだという声を受けてまいりました。
 七月十三日の朝日新聞のこの一面でも、硬膜移植の有無知らせずということで記事が載っておりましたが、国は、和解のときの約束で、被害者への情報提供と救済措置というのを約束しておきながら、これは個人情報の目的外使用に当たるので、情報提供は病院と患者との信頼関係で行うべきという態度を崩しておりません。
 そこで、坂口大臣にお伺いいたしますけれども、私は、これはやはり、被害者を救済するという姿勢を国は明確にお持ちなのかどうか、そこの問題だと思います。伝えないことには、患者、家族、遺族は知り得ることができないわけですから、救済を国の方に申し入れようとしてもそれができないわけです。
 七月五日のその委員会か何かで議論されて、今、医療機関の方に、既に発症されていますその患者の方々に医療機関として報告してくださいよという旨の御連絡をなさって、それをしたかどうかを受け取ると。なぜこのように、硬膜移植歴があって、既に発症して、被害の対象となるべき人たちに、国が直接なさらないのか。伝えないと救済ができないわけです。罪もない被害者を生んだ国の責任、これに対して、明確にその和解のときの約束に反していると思いますが、いかがでしょう。
坂口国務大臣 そこは少し私は見解を異にいたします。
 ヤコブ病、いわゆる脳硬膜の移植によりますヤコブ病が発生をしたということが、医師がわかりましたときには、やはり医師は、それが本人なのか家族なのか、多分そのことについて告知をしているだろうというふうに私は思いますが、もしもそれがないということであるならば、その医師がそれではどういう治療をしていくかということになるわけでありますから、ただ単にその人たちにそうだということを伝えればいいというだけではなくて、伝えると同時に、だから今後こういうふうな治療をいたします、あるいは、将来はこういう予測が立ちますから、ひとつ皆さんも真剣に考えてくださいといったことをあわせて言わないといけないことだと思いますし、それぞれの患者さんによりまして、その立場あるいはその言い方というのもまた違ってくるだろうというふうに思いますから、一律に国の方が通知を申し上げていいものではない。そこはやはり、その主治医の先生から言っていただくことが一番大事だというふうに私は思っております。
 したがって、私は多分、多くの場合に、ほとんどの場合には告知をしていただいているというふうに思っておりますが、万が一していただいていないということがあれば、それはぜひしていただきたいということをこちらから文書でお願いをして、お返事のないようなところに対しましては再度ひとつお返事をくださいといったようなことを申し上げているわけでありまして、そこはやはり現場の関係でお伝えをいただき、そして今後の治療方針等もあわせてお答えをいただくのが一番適当だと私は思っております。
中川(智)委員 大臣、でも、もう既に亡くなった方もいらっしゃるわけなんですね。そして、救済する責任があるのは、医療機関ではなく、国です。明確に国なわけなんですね。ですから、国が責任を持って被害者全員を救済するという約束をしたんですから、医療機関にそれを求めるのではなく、国としてやるのが当たり前だと思います。再度の御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 亡くなりました人に対しましても、研究班の方から、ぜひ主治医の先生にそのことはお伝えをくださいということを言っているそうでございます。
 やはり主治医との関係でそこは決着をつけていただかないと、こちらでは、脳硬膜をその方がお使いになってお亡くなりになったのかどうかということの判断はつきにくいわけでございますしいたしますから、そこは主治医が一番よくわかっているわけでございますので、そこは主治医にぜひお願いをしたい。その後、そのことに対する責任は国がとるということを申し上げているわけでありますから、お伝えをいただくところはその主治医のところでお願いをしたいということを申し上げているわけであります。
 何も、責任をとらないとかなんとかということでは決してないわけでありまして、そこは私たちも責任ある態度をとっていかなければならない、そう思っております。
中川(智)委員 これは、国の責任で、汚染された乾燥硬膜を移植されて亡くなったり発症した方々なんです。それは明確に和解のときに認めて、そして、それに対する被害救済は国が責任を持ってやるという約束をしながら、医療機関にある意味では任せて、医療機関がその患者の方々に知らせるというのは、私は全く理解できません。
 国と医療機関が連携して、国が責任を持って本人に、また患者、遺族に知らせるという形ならわかりますけれども、医療機関の方を仲立ちにしてやるとその医療機関によって対応がまちまちですし、そして、おかしいなと思った人たちが医療機関に聞いても明確な答弁が得られないし、対応が得られない。非常に冷たく、そういうことはこちらではわかりかねますというような返答もあったりして、サポートネットワークシステムが六月に立ち上がり、そこに相談を寄せていたり、インターネット上で弁護団の方々に直接聞いたり。なぜこのようなことが起きるんでしょうか。
 なぜ国は、直接その被害者に対して伝えて、そして今回の和解の内容を言い、国が窓口となってやるべきことを、医療機関に丸投げする。その理由は目的外使用だということの一点張りで。私はどうしても理解できませんし、あの和解の約束に反すると思います。
坂口国務大臣 それは違うと思いますね。我々は責任は明確にすると言っているわけですから。
 ただ、主治医がわからないものを我々がわかるはずないんですから、一番わかっているのは主治医ですから、主治医がそこはかくかくしかじかでございましたということを言っていただかないと我々もそのことはわからないわけでありますので、そこは主治医にお願いをする。そして、御連絡さえいただきましたら、その後は国の責任においてちゃんとしますということを言っているわけですから、そこはやはり、主治医にお任せすべきことではないでしょうか。私はそう思います。
中川(智)委員 割と大臣とは今まで意思の疎通が、私の一方的な思いかもわかりませんが、この問題に関しては平行線のようですので。世論もやはりおかしいと思っていて、私もおかしいと思って……(発言する者あり)負けませんが、ホームレスの問題をやらなければいけませんので、じゃ、引き続いて、大臣が私に近寄ってきてくださることを念じながら今後も議論をしていきたいと思います。
 緊急を要することでありますし、先日も、佐藤先生も、百人を超える患者の発生があるというふうにもおっしゃられていました。どんどんふえていく中で、情報を医療機関に任せるというのは責任回避だということを申し上げまして、次に移りたいと思います。
 今回のこのホームレスの自立支援法、党内でもたくさん議論がありました。
 私も、この問題が、やはり人権がきっちり守られて、ホームレス状態に陥った方々が、この法律ができてよかったと、そして、冬などの凍死の問題、就労支援、また、きっちり人権に配慮した施設の入所、そしてまた、生活保護を適正に受けて自立を促すことにつながるものと信じておりますが、今回の法案の中身を見ますと、少し気になるところがございます。
 二条でも、さまざまな公共施設を「故なく起居の場所とし、」と、私はこれはゆえあって起居の場所とせざるを得ないと思いますし、自立の意思の有無の判断というのは極めてあいまいですし、自立の意思があっても、何年にもわたって路上生活を余儀なくされている人たちがもう人生そのものに対して希望を失うということは当然あると思います。
 先日、私も上野公園に行ってまいりまして、ホームレス状態の方々とお話をしてきましたが、やはりアルコールに逃げてしまう、あしたのことはもう考えたくない、そのような状況に置かれている方々がたくさんいらっしゃいました。
 そして、やはり私が一番気になりますのは十一条、「その適正な利用が妨げられているときは、」とか「当該施設の適正な利用を確保するために」という文言が大変心配でございます。
 私は、阪神・淡路大震災の後、すべての私の住む町の公園は、一カ所残らず仮設住宅が建ちました。長い期間において子供たちは公園で遊ぶこともできませんでした。でも、家を失った人たちが公園で暮らすこと、それは社会が生んだ一つの悲しい状況として受け入れましたし、だれも文句を言いませんでした。
 今のこのホームレス状態に陥る方々というのは、バブル崩壊後、本当にこの日本の経済政策の失策によって余儀なくリストラや多重債務を抱えたり、さまざまな理由で、このような生活をしたくないけれども、せざるを得ない状況に陥っているのだと思います。社会全体で支えていくこと、そして一日も早くその方たちが自立できるように私たちが援助していくことが、今一番大切なことだと思います。
 今回、ちょっと大阪の問題でお伺いしたいこと、何点かにわたって質問いたしますが、大阪の長居公園という大きな公園がございますが、ここでは生活保護の適用ということに対しまして重要な役割を果たしたんですが、テントの生活をやめれば、そのテント住まいの人から生活保護に対しての申請というのがスムーズに図られたんですが、野宿から直接居宅保護を認めていません。
 結局、テントを排除するために、テント生活者の方々からの居宅保護というのが前面にあり、路上からの生活保護、直接ということがなされておりませんが、今回は、施設入居に関しましたり、また生活保護に関しましては、しっかりと、一時そこに強制的に入居させるのではなく柔軟に居宅保護請求ができるようにするということを考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
真野政府参考人 ホームレスに対します生活保護の適用、いろいろ御議論がございましたけれども、私どもは、やはり要保護者の生活の状況を十分把握し、自立に向けての指導援助が必要であるというふうに考えておりまして、したがいまして、まず、自立支援センターでありますとかシェルターでありますとか、場合によっては医療機関でありますとか、そういうところで保護を行いまして、その間、療養指導、それから金銭管理、生活習慣の回復、そういういわば自立した生活が営めるように支援をいたしまして、その後、必要に応じて居宅保護というのが、やはり、今の状況からすると、生活保護を適用し、その方の自立を促すということでは一番流れとして適当ではないかというふうに考えております。
中川(智)委員 それでは、一時避難所というところに暮らすホームレス状態の人たちの人権またプライバシー、どのようになっていると実態を把握してお考えでしょうか。
 まくらもない、そしてシーツなどのかえが頻回に行われないので、シラミなどがわいている状態。そして、西成の場合などは、有刺鉄線さえ張りめぐらされている、施錠がある。そのような収容所のようなところに、どれぐらいかかるかわからない期間強制的に入居させるというような一律的なことをやっているから、やはりそこに入ることを拒否したり、脱走したりということが生まれるんじゃないでしょうか。
 そのような一時避難所の、人権に配慮した施設であるのか、プライバシーやそして衛生面、しっかり確保しているのか、その実態調査というのはしっかりやられているでしょうか。有刺鉄線のことなど御存じでしょうか。
真野政府参考人 シェルターにつきましては、建築基準法に定める諸基準その他の遵守をお願いいたしております。
 ただ、このシェルターそのものが、定住の場所ということではなくて、緊急一時的な宿泊所でございますので、そういう意味では、先生御指摘のとおり、プライバシーの問題その他に若干、普通の居室のような、そういう面での配慮というのが欠けている面がある場合もあるかと思いますけれども、今後私ども、大阪府、大阪市に対しましてそういうような指導をしたいというふうに思っております。
中川(智)委員 それでは、一度本当にどのような状況かというのをしっかり厚生労働省も実態を把握していただいて、そして、人間として、私たちがもしもそこに入るときに、ここだったらしばらくの間そのような形で、手続で、入居していても暮らせるという、収容所のようなものじゃないというものをきっちりつくっていただきたいと思いますが、そこに入っている期間というのが今ばらばらなようなんですが、一時的なというのはどれぐらいの目安でしょうか。
真野政府参考人 一応目安としては、最大限六月以内というふうに指示をいたしております。
中川(智)委員 六カ月ということですね、半年。
 なぜそんなに長い時間かかるのでしょうか。健康診断をやったりそういう手続をするのに、一カ月ぐらいあれば十分だと思うのですが、六カ月もかかるという根拠はございますか。
真野政府参考人 申し上げておりますように最大限でありまして、もちろん、その間に先ほど申し上げたような自立への道ができるということであれば、速やかに退所していただくということでございます。
中川(智)委員 そこの部分に関しましては、できるだけ短い期間で、そして、しっかりと人が住めるような環境を整える。間違っても有刺鉄線や、そして門限や施錠や、そのようなことに対してはなくしていただきたい。それは、今後見直しまでの間に速やかにやはりしっかりとその実態把握をするということの中で、しっかりと見続けていきたいと思います。
 私が先ほど質問いたしました部分に関しましては、社会福祉相談所などでは通所して手続が可能ということを伺っていて、施設への強制入居がなくても手続ができる、そのような柔軟な対応というのはまるで考えられていないわけでしょうか。必ず一時的に入居しなきゃいけないという形で今後も進めていくのでしょうか。
真野政府参考人 今申し上げましたように、ホームレスの方には、いわば生活のリズムといいますか、そういうことで、そのリズムを取り戻していただくということが必要なケースが多いということから、標準的にはああいう形をお示しいたしているわけですけれども、例えば、保護を開始する際に住宅の確保ができる、それから、今申し上げました金銭管理とか生活習慣とか、そういうことがきちんと行える方である場合には、当然、居宅保護も行えるということでございます。
中川(智)委員 続きまして、私自身は、できるだけ居宅保護、そして当然、就労支援というのがまず第一ですが、そういう施設にすごく税金がかかっていて、結局、これは釜ケ崎の施設だと思いますけれども――長居公園ですね。長居公園、三十七人の入居者に対して毎年二億五千万の経費がかかっています。一人に換算しますと、毎月二十二万かかっています。居宅保護の場合ですと毎月十二万ということで、施設入居よりも居宅保護の方がお金としても非常に安く、毎月十万も安くなるわけなんですね。できれば居宅保護をもっとスムーズにしていただいて、こちらの方の柔軟な対応をお願いしたいと思います。
 そして次に、この西成のあいりん地区の職安。
 あいりん職安というのは、三十六年以上続いているわけなんですが、過去一回も仕事の紹介がありません。今まで、割と仕事がいっぱいあるときは手配師さんが一階で仕事の手配をしていて、そして、あいりん職安の仕事は、あぶれ賃というものの配付と、そして失業保険の支給だけでした。あいりん職安に仕事紹介がないということの実態をきっちりわかっていらっしゃるのか。
 今後、この法律ができた後、これはこのまま今までのように職業紹介はない職安として、これは職安と名前がついていること自体が非常に問題だと思いますが、今後の指導はどのようになさるおつもりでしょうか。
澤田政府参考人 あいりん地区におきます日雇い労働者の職業紹介につきましては、先生御指摘のように、昭和三十七年より、財団法人の西成労働福祉センターが無料職業紹介の許可を得て行っておりまして、あいりん労働公共職業安定所におきましては、雇用保険の日雇い給付の支給業務とか、求人者の雇用管理指導業務等を行っているところであります。
 これは、当時、あいりん地区の諸問題に対応するため、国、大阪府、地元の大阪市の三者で、あいりん総合センターを設置いたしまして、職業紹介のみならず、生活上の相談、医療上の相談あるいは住宅相談等を総合的に実施するということを決めた際に、二つほど大きな理由がございまして、一点は、あいりん地区の求職者の方々は、複雑な個人的事情を有する方が多くて、行政機関を忌避する傾向があった。それから、公共職業安定所では、あいりん地区の需給の実態から見ますと、早朝の一定時間に大量の求職者を短時間に職業紹介するということが必要でございますが、公共職業安定所では実質的にその対応が困難と考えられたというような歴史的な事情がございまして、安定所と財団法人の西成労働福祉センターの役割分担が当時定められたということでございます。
 現在もそういう形で来ておりますが、今後とも、あいりん地区におきます日雇い労働者対策につきましては、過去の経緯等も十分踏まえながら、地元自治体とも十分連携をとりながら、職業紹介等々に支障のないように対応していきたい、こう思っております。
中川(智)委員 私のしました質問に対して明確な御答弁じゃないと思いますが、行政などと相談して、今後はどうなるかわからないと。
 職業安定所なわけですから仕事紹介するというのは基本的な仕事であるはずですが、それが機能していないんだったら、なくてもいいわけですよね。だって、あいりん地区には一つしかないんですよね、国の直轄としての職安は。職業紹介をするということで今後進めていかないと、今度の法律ができても、そこで職業紹介をしっかりやるのかどうか、それを明確に、イエスかノーかで答えてください。
澤田政府参考人 あいりん総合センターという施設の中に、職業安定所と、財団法人の西成労働福祉センターが一緒に入っております。そして、先ほど申し上げた役割分担のもとに、財団の西成労働福祉センターの方が無料職業紹介の許可を得て職業紹介をするという役割分担になっておりまして、この分担と連携の関係はきっちりやっておりますので、今後ともこういう形で、地元自治体等ともよく相談しながらやっていくということでございます。
中川(智)委員 でもそれは、もう一つの方は府の外郭団体として、財団法人ですよね。このあいりん職安は、職安ですから、本来業務というのはそちらの財団法人と分担するんじゃなくて、その中で職業紹介をまず第一義的にやって、その他の事業をやっていく。どうも理解不可能なんですけれども。
 その財団法人にこっちはやってもらうから、あいりん職安の方は仕事紹介じゃなくてそういうお金の給付だけという分担というのは理解ができないんですけれども、大臣、どうでしょうね。職安が全く仕事紹介をやっていないという現実があるんです。
澤田政府参考人 ですから、繰り返しになって恐縮ですが、三十七年当時、どういう形で総合的な対応をとるかという相談をした際に、先ほど申しましたように、あいりん地区の求職者の方々が、いろいろな事情があって、行政機関のサービスを忌避する傾向があったというようなことがございましてそういう役割分担になっておりますので、そうした経過を踏まえながら実際に職業紹介に支障がないような形でやってまいりましたので、引き続き適切に対応したい、こう思っております。
中川(智)委員 職業紹介に支障がないというのは、それはそちらの言い分であって、そして、昭和三十七年当時からどれぐらい年数がたっていますか。三十六年たっているわけです。今の状況というのは全く違っているわけで、ずっと三十六年前のその役割分担、そして職業紹介を、もう本当にみんなが求めている――間違えましたか、年数。済みません。求めているニーズに対応していないということはゆゆしき事態だと思います。今後また質問させていただきます。
 これは最後になるかもしれませんが、自立の意思の有無、あるなしというのは支援の判断基準にならないと私は思うんですが、ここで大事なのは、ホームレス状態になって今生活をしていらっしゃる方というのは、やはり非常に強制とか管理とかを嫌う方も中にはいらっしゃると思います。
 今回の法律ができましても、本人の選択権というのはとても大切だと思います。ある意味では、テント生活を続けたいという人には、それはそういう生き方もあるでしょうし、生活保護を選ぶ、または施設に入る、また積極的に就労支援によって仕事につく、やはりその選択権の自由ということを認めるのが最大の人権に配慮した今回の法律だと思いますが、その部分に関して、大臣、ちょっと御答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 きょうは中川議員と意見の違うことが多くて申しわけないんですが、やはり、テント生活をしたい、それはそういう生き方もあるんだろうというふうに思いますが、ただ、公共の場所で、いつまでもそこで住むということは、これは国民全般の権利にもかかわってくるわけでありますから。御自身の土地でテント生活をしようとおっしゃるんだったら、それはそれで、そういう生き方はあるというふうに思いますけれども、そうでないところに問題があるものですから、またもう一つの問題点としてこの問題があるというふうに思っておりますので、いささかきょうは意見を異にいたしますけれども、そこはやはり解決をしていかなきゃならない問題の一つだというふうに思っております。
中川(智)委員 もう時間ですが、最後に、この間上野公園に行ってお話を伺ったときに、やはり病気が一番怖いと。きょうはまだ体が元気だけれども、あしたはどうなるかわからないという不安の中で、救急車を呼んでも、病院に着いたら、そこの公園から、上野公園から来たということがわかったら、はい、もうきょうはベッドもいっぱいだしということで病院から捨てられる、投げ出されるということが一番つらいというふうにもお話をしていらっしゃいました。
 行旅病人法とかありますし、また、厚生労働省としては、このように行き場のない方々の医療に関しては医療機関の協力を求め、本当に悲しい健康の悪化を招かないような方策をぜひともとっていただきたいということを最後に要望いたしまして、質問を終わります。
森委員長 午後三時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後二時四十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十三分開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 第百五十一回国会、鍵田節哉君外九名提出、ホームレスの自立の支援等に関する臨時措置法案につきまして、提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
森委員長 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案起草の件について議事を進めます。
 本件につきましては、長勢甚遠君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び保守党の五派共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおり、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。長勢甚遠君。
長勢委員 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案の起草案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表して、その提案の趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。
 平成十三年九月末の厚生労働省の調査によれば、我が国には約二万四千人のホームレスがおり、このように多数のホームレスが食事の確保もままならないまま長期の路上生活で心身ともに疲弊していく実態は、彼ら自身の福祉の観点から大きな問題であり、看過することはできません。
 また、ホームレスが起居の場所とするのは、都市公園、河川、道路、駅舎等でありますが、ホームレスがこれらの施設で日常生活を送っていることに起因する地域社会とのあつれきが随所で生じております。公共の用に供する施設の適正な管理も、早急に対処すべき課題であります。
 現下の厳しい雇用失業情勢のもと、ホームレスの数は今後も増加傾向が続くと思われ、ホームレスに関する問題がより深刻化する前に法的な裏づけのもとにホームレスの自立の支援等に関する施策を総合的に推進する必要があります。
 以上が、本案を提案した理由であります。
 次に、本案の内容の概要について御説明申し上げます。
 第一に、ホームレスの定義でありますが、この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設をゆえなく起居の場所として、日常生活を営んでいる者をいうものとしております。
 第二に、ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標として、一、就業の機会の確保、安定した居住の場所の確保、保健及び医療の確保に関する施策並びに生活に関する相談及び指導を実施することによるホームレスの自立、二、ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域を中心として行われるこれらの者に対する生活上の支援によるホームレスとなることの防止、三、緊急に行う援助等によるホームレスに関する問題の解決を掲げております。また、ホームレスの自立の支援等に関する施策については、ホームレスの自立のためには就業の機会が確保されることが最も重要であることに留意しつつ、目標に従って総合的に推進されなければならないこととしております。
 第三に、ホームレスの自立への努力義務、国及び地方公共団体のホームレスの自立の支援等に関する施策の策定及び実施の責務について規定しております。
 第四に、厚生労働大臣及び国土交通大臣は、ホームレスの自立の支援等に関する基本方針を策定し、都道府県及び市町村は、必要に応じ、基本方針に即して実施計画を策定しなければならないこととしております。
 第五に、国は、地方公共団体または民間団体を支援するための財政上の措置その他必要な措置を講ずるように努めなければならないこととしたほか、公共の用に供する施設の管理者は、ホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとしております。
 その他、民間団体の能力の活用、国及び地方公共団体の連携並びにホームレスの実態に関する全国調査について規定しております。
 第六に、この法律は、公布の日から施行することとしております。なお、十年間の時限立法とし、施行から五年後を目途としてこの法律の規定について検討を加えることとしております。
 以上が、本案の提案の趣旨及びその内容の概要であります。
 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 本起草案について発言を求められておりますので、これを許します。瀬古由起子君。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 日本共産党は、この法案に対して、ホームレスの人々の直接支援とホームレスに至らないための施策を国の責任としたこと、就業機会の確保を緊急、抜本対策として位置づけたこと、国の基本計画、都道府県の実施計画などの策定を義務づけている点で評価できると考えています。
 しかし、この法案には、不十分な面や、ホームレスの人々に対しての人権上の規定も危惧されている点が幾つかございます。したがって、私たちは、この法案を十分審議しないまま委員長提案とすることは問題があると考えております。
 与えられた時間は五分でございますけれども、どうしても確認したい点があるので、まとめて伺います。
 第一に、第二条のホームレスの定義の問題ですが、支援法にふさわしく国等の果たすべき責務を明らかにすることを前提にすべきであり、やむなく公共の場で野宿しているのに、あえて「故なく起居の場とし、」としたことは、不法に公共施設を占拠した法違反者という認識でこの法が適用されかねません。少なくとも、諸外国でも採用している広義の定まった住居のない人、もしくは民主党案にあった「野宿生活者その他安定した居住の場所を有しない者であってこれに準じるもの」となぜ提案できなかったのでしょうか。
 第二番目には、第十一条、公共の用に供する施設に関して「適正な利用を確保するために必要な措置をとる」としていますが、現行法でも対応が可能であり、むしろ野宿を強いられない制度、環境をつくろうとして今回の法案が提出されたのではないでしょうか。今でも、説得の名のもとに、事実上排除が強まっております。十一条の定義では、違反者を追い出すための条項と受け取られかねず、支援法にはなじまないと思うので削除すべきではないかと思います。
 第三に、財政的な裏づけについて施策実施の財政規模はどのぐらいを考えているのでしょうか。財政上も国の責任を明らかにするべきであるのに、第十条は義務規定ではなく努力規定としたのは一体なぜでしょうか。
 以上、質問いたします。
長勢委員 御答弁申し上げます。
 まず、第一の質問でございますが、第二条におきまして、ホームレスを「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」と規定いたしましたのは、ホームレスについての一般的な実態を過不足なくより適切に表現していると考えた次第であります。
 また、「故なく起居の場所とし、」と規定いたしましたのは、災害等により住居を失い、公園等に設置された仮設住宅に身を寄せておられるような正当な理由により公共的施設を起居の場所として利用している方が含まれないようにするためであります。
 第二の質問でございますが、この法律は、ホームレスの自立の支援等に関し必要な施策を講ずることにより、ホームレスに関する問題の解決に資することを目的としております。ホームレスに関する問題といたしましては、ホームレスにより公共施設の適正な利用が妨げられ、地域社会とのあつれきが生じつつあることもまた事実であります。
 そこで、現行法令の規定に基づき公共施設の適正な利用を確保するために必要な措置を講ずることは可能でありますが、御指摘のとおりホームレスに関しては、単に排除するということだけでは問題の解決につながらないことから、公共施設の適正な利用を確保するために必要な措置はホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ行われるべきことを特に明記したものであり、ホームレスの自立の支援等を柱とするこの法律に規定する意義は十分にあると考えております。
 第三の質問でございますが、財政規模についてのお尋ねでございます。
 ホームレスの自立の支援等に関する施策を推進するためには、財政上の措置が十分に確保されることが必要であると認識しております。
 現段階で財政規模について確たることを申し上げることはできませんが、この法律が施行されることによりこれまで以上に政府において必要な財政上の措置を講じていただけますよう、私どもも取り組んでまいりたいと思います。
 また、基本法以外の法律においては、財政上の措置について努力義務規定として規定することが通例であることも参考にいたしました。
 もとより、このように努力義務として規定したからといって、国の財政上の責任が免除されるわけでないことは明らかでございます。
 以上でございますので、よろしく御理解を賜りたいと思います。(瀬古委員「委員長」と呼ぶ)
森委員長 以上で発言は終わりました。
 この際、お諮りいたします。
瀬古委員 まだ五分たっていないんです。委員長、一言。最後に一言言わせてください。やりとりできるというふうに聞いているんですけれども。一言だけ言わせてください。一言だけでいいですから。
森委員長 特に許します。瀬古君。
瀬古委員 一言だけ言います。
 今の答弁では、本当に不安、野宿者の皆さんの、そして支援者の皆さんの不安にこたえていないというふうに思います。
 それで、きょう私の方は時間の制限がありますので、私の質問全文を皆さんにお配りいたしました。ぜひ提案者の皆さんには、関係者の皆さんが安心できるように、後ほど誠意を持ってお答えいただきますように要望して、私の発言といたします。
 ありがとうございました。
森委員長 以上で発言は終わりました。
 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております草案をホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立多数。よって、そのように決しました。
 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 この際、鴨下一郎君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党の六派共同提案によるホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の運用に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。鍵田節哉君。
鍵田委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表して、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の運用に関する件(案)
  政府及び地方公共団体は、我が国においてホームレスの急増が、看過できない極めて大きな問題となっている現状を踏まえ、ホームレスを含め社会的に排除された人々の市民権を回復し再び社会に参入することができるようにすることは、憲法第十一条及び第二十五条の精神を体現するために必要不可欠な施策であることに深く留意し、本法の施行に当たっては、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
 一 ホームレスの自立の支援に際しては、自立に至る経路や自立のあり方について、可能な限り個々のホームレスに配慮した多様な形が認められるよう努めること。
 二 ホームレスに対する職業能力開発に当たっては、ホームレスの実情に応じた内容となることに深く留意するとともに、ホームレスの自立につながる安定就労の場の確保に努めること。
 三 ホームレスに対する住宅支援策の実施に当たっては、その実効性を高めるため、地域の実情を踏まえつつ、公営住宅・民間住宅を通じた可能な限り多様な施策の展開を図ること。
 四 ホームレスが入居する施設においては、入居者本人の人権尊重と尊厳の確保に万全を尽くすこと。
 五 第十一条規定の通り、法令の規定に基づき、公共の用に供する施設の管理者が当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に充分に配慮すること。
 六 本法による自立支援策と生活保護法の運用との密接な連携に配慮し、不当に生活保護が不適用とされることのないよう、適正な運用に努めること。
 七 第十四条に規定する全国調査を早期に完了し、遅滞無く事業を実施すること。
 八 本法を施行する中で実情との不整合等が生じたとき等においては、速やかに見直すこと。
 九 「実施計画」を策定しない都道府県及び市町村の区域においても、ホームレスの自立支援及び余儀なくホームレスとなることの防止の諸施策の実施に可能な限り努めること。
  右決議する。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
 この際、ただいまの決議につきまして、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、関係省庁との連携を図りつつ努力してまいる所存であります。
森委員長 なお、本決議の議長に対する報告及び関係方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
森委員長 次に、社会保険労務士法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。
 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。
 本案は、近年の社会経済情勢の著しい変化と労働者の働き方や就業意識の多様化の進展等に伴い、社会保険労務士の行う業務の公共性、専門性及び重要性が増大していることにかんがみ、国民の利便性の向上に資するとともに、信頼される社会保険労務士制度を確立するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、社会保険労務士は、共同して社会保険労務士法人を設立することができるものとし、社会保険労務士法人に関する規定を整備すること。
 第二に、個別労働関係紛争に関して、紛争調整委員会におけるあっせんについて、紛争の当事者を代理することを社会保険労務士の業務に加えること。
 第三に、社会保険労務士が業務を行い得ない事件について規定を整備するとともに、非社会保険労務士との提携を行うことを禁止すること。
 第四に、社会保険労務士会及び全国社会保険労務士会連合会の会則の記載事項から、開業社会保険労務士の受ける報酬に関する規定を削除すること。
 なお、この法律は、平成十五年四月一日から施行し、報酬規定の削除に関する部分については、公布の日から施行すること。
 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
    ―――――――――――――
 社会保険労務士法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森委員長 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております草案を社会保険労務士法の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立多数。よって、そのように決しました。
 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十四分散会


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