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第2号 平成14年11月1日(金曜日)

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平成十四年十一月一日(金曜日)
    午前九時三十二分開議
 出席委員
   委員長 坂井 隆憲君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岩崎 忠夫君    岡下 信子君
      奥谷  通君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      高木  毅君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    大島  敦君
      加藤 公一君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      今田 保典君    土肥 隆一君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      山口 富男君    阿部 知子君
      中川 智子君    野田  毅君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   江崎 芳雄君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           金森 越哉君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         冨岡  悟君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  小島比登志君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            松崎  朗君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    上田  茂君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  真野  章君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月一日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     岩崎 忠夫君
  三ッ林隆志君     高木  毅君
  鍵田 節哉君     今田 保典君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     岡下 信子君
  高木  毅君     三ッ林隆志君
  今田 保典君     鍵田 節哉君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第六六号)
 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
坂井委員長 これより会議を開きます。
 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官江崎芳雄君、文部科学省大臣官房審議官金森越哉君、厚生労働省健康局長高原亮治君、健康局国立病院部長冨岡悟君、医薬局長小島比登志君、労働基準局長松崎朗君、職業安定局長戸苅利和君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君、老健局長中村秀一君及び保険局長真野章君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊代昭彦君。
熊代委員 坂口大臣、鴨下副大臣、冒頭から御出席を賜りましてありがとうございます。自由民主党を代表いたしまして、質問をさせていただきたいと思います。
 きょうは、失業率のお話を質問させていただきたい、失業対策でございますけれども、冒頭にちょっと物の考え方を若干述べさせていただきたいと思います。
 トラスト・バット・ベリファイとかいう言葉がございまして、これは当然のことながら、信頼せよ、しかし検証せよという言葉でありまして、当時、レーガン大統領とエリツィン大統領が核軍縮の交渉を始めたときにエリツィンが言ったというふうに伝えられている言葉でございますが、ロシアもアメリカを信頼する、しかし、一つ一つのことはベリファイして、検証していかなければならないということでございまして、私どももアメリカに対して、基本的にトラストしまして、トラスト・バット・ベリファイでございます。小泉政権に対してもトラスト・バット・ベリファイでありまして、完全に白紙委任をするわけではない。立法府でありますから、きっちりと個々のものについては検証していかなければならないというふうに思うところでございます。
 失業の前提といたしまして、長い不況でございまして、一九九二年から不良債権の処理に取り組んだ、現在では既に約九十兆円の不良債権を処理したということでございました。不良債権を処理すれば構造改革ができて、それから産業が活性化するんだというような思いで取り組んできたわけでございますけれども、デフレになりまして、もう既にデフレスパイラルじゃないかというような状況で、失業問題も非常に厳しくなっております。
 ですから、不良債権を処理すれば経済が活性化するんだ、こういう思い込みもベリファイしなければいけない、検証しなければいけない。恐らく、このデフレ下で、そういうことはほとんどの人が信じていない。信じていないけれども、アメリカが言うからそうかなと思っている。しかし、アメリカの言うこともトラスト・バット・ベリファイでなけりゃだめで、今、不良債権を急激に処理しなければいけないというのは、ウォール街の日本企業を買いたいと思っている人以外には腹の底では信じていないんじゃないか。なかなか言えない、言えないけれども。
 アメリカは、しかし悪代官のように悪い国ではありません。言うべきことをきっちりと言えば真剣に考えてくれる、そういう国でございます。私もアメリカに五年住んでおりましたから、アメリカがどういう国かというのはよく知っておりまして、十九世紀のフランス人トクヴィルが「アメリカン・デモクラシー」を書いたときに、「アメリカにアメリカ以上のものを見た。それはアメリカのデモクラシーであり、イガリタリアニズムである。」というようなことでございました。そういう意味で、非常に高い信頼をアメリカは持っておりますが、しかし、一つ一つのことについてはしっかりと検証しなければとんでもないことにもなる。エンロンだってあったし、いろいろあるわけでございまして、そういうことでございまして、そういう思いでこの失業問題というのを見ております。
 五・四%、日本としては非常に高い水準に推移しているわけでございます。さらに、無理な不良債権を、しっかりやっている銀行をわざわざつぶしてまで処理しようというようなことになれば、失業問題はますます厳しくなります。そんなことで果たしていいのかという思いもあります。ベリファイしなければならない。三権分立の一つとしてしっかりベリファイしていかなければならない問題だと思っておりますけれども、当然に予想される、失業率がさらに高くなるということでございまして、今後の見通しも含めて、この厳しい雇用の現状をどのように現在理解しておられるか。
 大臣、せっかくお越しでございますが、私も副大臣制を大いに推進した人間でもございますので、大臣が国際社会で御活躍になるときに、御出張になるときには、副大臣で答弁をいただいて十二分にやれる議会をつくろうではないかということで推進し、認証官にもして、天皇陛下のもとで辞令をいただいたこともございますので、最後に大臣には御総括いただくことにいたしまして、鴨下副大臣にお願い申し上げます。
鴨下副大臣 おはようございます。熊代委員におかれましては、副大臣を利用していただきましてまことにありがとうございます。
 ただいまいろいろと高い見地からのお考えを拝聴しましたけれども、五・四%の高い水準で完全失業率が推移している、この問題につきまして、今の現状、そしてどう認識しているかというようなことについてお答えをさせていただきます。
 特に、今、九月の完全失業率は五・四%でありまして、五カ月連続で同水準となっている。これは極めて厳しい状況だろうと思います。
 特に、男女で考えますと、男性は五・八%、平成十三年の十二月以来九カ月ぶりに過去最高水準の失業率を記録しているということ、女性につきましては、若干低下して四・九%になりまして、本年四月の四・九%以来、五カ月ぶりに四%台となったわけでございます。
 この男性の失業率が上昇した理由は、非自発的理由による離職者が中高年層を中心に増加したこと。これは極めて憂慮すべきことだろうと思います。
 それから、女性の失業率が低下した理由は、若年層を中心に自発的理由による離職者が減少したこと。これは、やはり今の就職状況が非常に厳しいということで、なかなかほかのところに移るという決断ができないということも大きな理由になっているんだろうと思います。
 一方、九月の有効求人倍率につきましては、〇・五五倍と、七月、八月の〇・五四倍から若干上昇しておりまして、これは、有効求人が対前月比で一・九%増加、有効求職者は対前月比で〇・三%の増加ということでこういう結果になっている、こういうふうに解釈をしております。
 主要産業別では、建設業を除き、製造業、サービス業、運輸・通信、卸売・小売、飲食店で若干の増加になっているわけでありまして、こういうようなことを総括いたしますと、有効求人倍率は若干改善しているものの、完全失業率が依然として非常に高い水準で推移している。
 先ほど熊代委員がおっしゃいましたように、これから総合デフレ対策を含めてさまざまな不良債権処理がスピードを加速していこうというようなことでありますから、こういうようなこと、さらにアメリカ経済等の先行き懸念、それから、もちろんそのことを受けての日本の株価の下落等、非常に厳しい状況が続いておりまして、場合によると我が国の最終需要がさらに下押しされる、こういうような懸念もある。
 こういうような状況で、非常に雇用情勢は今後も厳しい状況、さらに厳しくなっていく、こういうようなことを厚生労働省としては考えております。
熊代委員 現状に対する厳しい認識を示していただいて、私も危機意識を共有しております。
 副大臣制につきましては、これはイギリスの制度を極めて大胆に学んでやったわけでございますので、最後の段階ではぜひ副という名前を取って閣外大臣にするということを積極的に推進しまして、それで、閣外大臣で特命事項、閣内大臣は総理の任期中は三年でも四年でもかわらない、しっかり責任を持つ必要がある。閣外大臣は、まあまあ比較的短期間にかわっても、短期間と言ったらまずいですけれども、一、二年でかわってもいい、しかし特命事項をしっかりやっていただくというようなことを推進したこともございますけれども、すばらしい御答弁をいただきまして、ますますその思いを強くしているところでございます。
 次に移りまして、私は福祉の専門家でございますけれども、しかし、仕事があって、自分で働いて、そしてちゃんと稼げる、一家を支えることができる、あるいは自分自身を支えることができる、これほど誇らしい、すばらしいことはないと思います。それがなければ、その根底がなければ福祉などというのは成り立たないわけでございまして、雇用の確保、しかも本当に誇り高い職業を持っていくということが一番大切なことだと思いますが、それとともに、時代が変わるときにはやはり、アンダーエンプロイメントで放置しておくんじゃなくて、失業を顕在化して大胆に方向転換をするということも大切であろうということでございますので、雇用保険制度というのは大変大切なことだというふうに思っております。
 この雇用のセーフティーネットとして安定的に運用されるということが必要でございますけれども、現在どのような状況であって、どのような見直しを行おうとしておられるのか、引き続き副大臣にお願いしたいと思います。
鴨下副大臣 熊代委員がおっしゃりたいことは、多分、雇用保険等を含めて財政状況は一体どうなっているのか、こういうようなことなんだろうと思います。
 おっしゃるように、雇用保険の財政状況は、積立金残高が平成十三年度末には約五千億円となっておりまして、このままで推移いたしますと十五年度中には積立金が底をつく可能性が出てくる、こういうようなことでありまして、この資金不足というようなことが極めて厳しい状況にあるということでございます。
 今、そのため、雇用保険制度のあり方につきましては、関係審議会において、給付の見直しを行った上で負担のあり方についても議論をしていく、こういうようなことでありまして、十月十日に厚生労働省から給付の見直しについて議論のたたき台をお示ししまして、同部会において議論をしているというところであります。
 この具体的な内容につきましては、一つは、早期再就職の促進を図るため、高賃金層に係る基本手当の給付率等の見直し、さらに、多様な早期就業を促進するための給付の創設、二つに、多様な働き方に対応した、通常労働者とパートタイム労働者の給付内容をできるだけ一本化していこう、こういうようなこと、それから三つに、再就職の困難な状況に対応した給付の重点化、こういうようなことでありまして、今後の給付の見直しについては、いろいろな関係方面からの御意見をいただきながら、最終的に十一月中に取りまとめを行いまして、明年の次期通常国会には関係法案として提出したい、こういうような方針でございます。
熊代委員 雇用保険制度のあり方につきましては、やはり働く意欲と再就職ということとも密接に関係いたしますので、ぜひいい改正をしていただきたいというふうに思います。
 それとともに、現在すぐにということですと、雇用のミスマッチが大変言われております。どこでもいいならば幾らでもあるという面もあるわけでございますけれども、自分に合う職業を必要だということで探せば本当に難しいということでございます。
 それで、職業紹介所、職業安定所、ハローワークとか、ハローキティちゃんのようないい名前にしていただきまして、大変親しみ深いものにしていただきましたけれども、それとともに、やはり民間の力をしっかり使うべきではないかというのが私の思いでございます。民間でできることは民間で。役所も、ハローワークもしっかりとやっていただかなければいけないけれども、民間と競争してやるんだ、そういうふうな覚悟が必要ではないかというふうに思います。
 それで、現在、有料職業紹介事業を許可はされておりますが、何とこれは紹介した職業が年収千二百万円を超えないと手数料を取っちゃいかぬということなんですよね。そんなことで有料職業紹介事業がしっかりといくだろうか。
 なぜこういうことになるんだろうか。ちょっと勘ぐれば、ハローキティちゃんじゃなくてハローワークが、これは職員があぶれてしまうんじゃないかというふうに思っているんじゃないかというふうな気もしますが、そういう心配は全くないと思うんですね。ハローワークはしっかりと工夫してしっかりとやっていただければいいわけで、千二百万円なんという法外な話を外して、有料な職業紹介所というのは自由にやっていい、ただしこれは厚生労働大臣の許可制にするというようなことで、おかしなことをやる者は直ちに免許剥奪というようなことで自由にやるということが、非常に民間の創意工夫を生かして職業紹介できるんじゃないのか。
 なぜこういう千二百万円というようなことを限るのか、その辺の事情も含めて、まず副大臣からお願いしたいと思います。どうぞ。
鴨下副大臣 まず、ハローワークのことについてでありますが、ハローワークは、昨年度は七百二十七万人の方がハローワークに仕事を求めて登録しておりまして、その方々のミスマッチを解消するために、さまざまな工夫もなされているわけであります。
 さらに、今度は求人をいかに確保するかということも重要な作業でありまして、このことについても、六百九十八万人分の求人を確保している、こういうようなことが現状でありまして、熊代委員おっしゃるように、官民の長所をうまく使い分けて、ミスマッチ解消を含めて、就職をいかに速やかに行っていくかというのは非常に重要な御指摘であるというふうに思います。
 ただ、民間の有料職業紹介事業につきましては、現状では、平成十四年三月末で五千五百六十二事業所が許可を受けております。その中で、徐々にですが、事業所そのものはふえておりまして、それで、その有料職業紹介事業によって職を得た方々が十九万七千人強となっております。
 ただ、千二百万の所得を超える者以外はだめだというようなことは不合理じゃないか、こういうお話もございました。確かにそういうような観点からも考えていかなければいけないんだろうと思いますが、求職者からの手数料徴収については、我が国はILOの百八十一号条約を踏まえて原則的には禁止をしている、こういうような状況でありまして、従来認めてきた芸能家やモデルなどに加えまして、本年二月からは、年収千二百万以上の収入を得られる経営管理者または科学技術者の求職者についても手数料を徴収することを可能にしようじゃないか、こういうようなことで、規制についてはやや緩和をしております。
 このことにつきまして、有料職業紹介事業の活動を狭めているかどうか、こういうようなことは、今関係審議会において職業紹介事業全体の見直しの中で検討している最中でありますけれども、実際には、いろいろなお立場の方がありまして、意見が拮抗しているというのが現状だろうというふうに思っております。
熊代委員 ILOのお話もございましたけれども、ILOで思い出しますのはチェックオフを禁止してはならないという条約でございまして、これに対してフランスは堂々と破っております、それでチェックオフを禁止しております。それからオーストラリアもチェックオフを禁止する法律を新たに導入しまして、ILOが文句を言ったけれども、やっております。
 国際機関が絶対ではございません。日本の国の事情を考えて、日本の国の事情で物事を考えなければいけない。そういう意味では、国際機関絶対なんというのは逃げ口上にすぎないということでございます。三権分立の国会ですから厳しくいきますので申しわけありませんが、逃げ口上にすぎないということでございまして、日本の実態の中で、千二百万なんということでこれをストップするのがいいことなのかどうか。本当にみんな一生懸命に職を探しているのに。
 それに対して、ハローワークも一生懸命やる、しかし民間の知恵も一生懸命にやる、どうしてそんなことができないんだと総合規制改革会議でやっていましたけれども、私も担当副大臣ではございましたけれども、総合規制改革会議の追及は甘い、どうにもならないという思いがいたします。もっと本当に職を探している人の気持ちにならなければならない。ILOなんか、職を探している人の本当に真摯な気持ちからすれば、くそくらえであります。とんでもない話であります。
 そういうことでございまして、これは大臣、ちょっとここ、千二百万の話について大臣の御所見を、前向きに検討していただけるかどうか、お願いしたいと思います。
坂口国務大臣 雇用情勢が非常に厳しい状況の中にありまして、そして今後もこれがなお継続する可能性があるというような事態でございます。
 多く出されておりますのは、民間の機関をもう少し使わなきゃいけないというお話と、それから、地方に対してもう少し、これは地方にもハローワーク的な仕事をやらすべきだ、今、国だけがやっておるというのはおかしいという、両方、実はあるわけでございます。
 双方につきまして検討いたしておりまして、その両方につきまして拡大をしていくように検討しているところでございます。
熊代委員 大臣、副大臣、ありがとうございました。大臣が言われないと、副大臣は大臣の方針に反してやるわけにはいきませんので、ぜひ将来の方向は、大臣、副大臣、積極的に、今大臣から御答弁いただきましたように、前向きに、しかも早く、スピードを持って対処していただきたいというふうに思います。
 そういうことで、職業紹介ということも本当に大切でございまして、これは恐らく、今、地方も含めて前向きに徹底的にやるんだと大臣から決意表明をいただいたというふうに考えるところでございますけれども、それも含めまして、今後の雇用情勢、厚生労働大臣はどのようにごらんになって、それに対してどのように改善していくあるいは改革していく、そういう決意で今後の厚生労働行政に臨まれるのか、そのお話をぜひお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 非常に格調の高い御質問をいただきまして、大変恐縮をいたしております。
 確かに五・四という非常に高い失業率がございますし、そして過去二十年を振り返ってみましても、経済成長率が一%とか二%のときには雇用は全くふえておりません。対前年GDPで見ますと、本当にふえてないわけであります。これから先、そんなに五%も六%も経済成長があるわけではありませんから、そういたしますと、今後も雇用状態というのは、非常に厳しい状況が今後も続く可能性があるというふうに思っております。
 さて、そうした中で、現在行われております雇用政策を見ますと、旧労働省でずっと続いてやってまいりました対策というのは非常にきめ細かな対策でありまして、もうこれ以上つくることはできないというほどきめ細かな対策だというふうに私は思っておりますが、厚生労働省の管轄の中だけでこれを措置するということは非常に難しい状況になってきた、これは内閣全体で取り組んでもらわなければならない時期に来ているというふうに思っております。
 そうした意味で、先ほど株のお話ございましたけれども、リストラをすると株価が上がる、それは株の話でありまして、そのことをよしとする社会であってはならないと思っているわけでございます。そうした意味で、もう少し雇用重視型社会という社会システムを構築していかないといけない。もう少し大枠のところで、国全体としてどう取り組むかということを提案し、そうしたことでひとつ新しい雇用をつくり上げていくということがなければならないと思っている次第でございます。
熊代委員 高い立場からの御回答をいただきましてありがとうございました。
 あと五分でございますので五分、ちょっとやらせていただきますが、国全体のお立場で考えれば、不良債権処理、それはそれぞれの企業がやらざるを得ないと思いますけれども、しかし、有効需要をふやすということも必要でございまして、国債枠三十兆円、それも守ることも必要でございましょう。そうすれば、例えばでございますけれども、国は特殊会社等の株を十兆円持っております。このうち九兆円は売れないわけです。国が持っていなければいけないわけですね。一兆円は売れるんですけれども、市中に売れば株価を下げるということで、売らないようにしようと言っております。
 日銀が、やや後ろ向きの目的ではありますけれども、株を買うことにした。私は、日銀は株を買うべきだということで、相当長い期間議論していたわけであります。そして買うことになった。大変結構なことであります。今デフレでありますから。日銀とか経済学者はインフレを抑えることばかり考えて、インフレを抑える反対の、デフレを抑えるために必要なことはみんな悪いことだと思ってのけてしまうんですね。悪いことだと思われていたことを全部やらなければいけないのが今の状況であります。
 ですから、政府の持っている特殊会社の株を、法律改正をして日銀に売って、十年間で買い戻す。企業の監督はその法律の中で日銀と国が共同でやるということになれば、それで十兆円のお金が使えるわけです。しかも、新しいお札が日銀から印刷されて、世の中に出る。今、お札は六十七兆円しかないんですね。まあちょっとはふえているんですけれども。マネタリーベースがふえたふえたと言っていますけれども、それは十五兆円、日銀の当座預金で銀行に積みっぱなしですよ。それで不良債権をふやすなというのだから、貸すところがない。ですから、政府のFBが出れば、数千億円の募集をしたら千八百兆円の応募がある。三カ月でちょっとでも利子を生むものは少しでもとろうと思って、ばっと引っかけるわけですね。
 こういう状況でありまして、今まで悪いと思われたことを、すべてもう一度検証し直してやらなければいけない。高橋是清が昭和七年にやりました国債の直受け。これも、ピン札を日銀から持ってきて、世の中に出していく。お金を、日銀券発行残高を豊かにした上で、それから国債を徐々に売っていく。今は、三十兆お金を出したら、六十七兆しかないところから三十兆吸い上げてしまうんですね。それでまた三十兆徐々に徐々に出すんですから、まずお金のコントラクションを激しく起こしている。それから徐々に徐々に回復していくんですね。乗数効果がなければいかぬということで公共事業ばかりになった、こういう話でございます。
 厚生労働大臣は、労働問題、福祉問題、いわば国の根幹を所管していらっしゃる方でございます、閣議のメンバーでございます。ぜひ、今まで禁じ手だと思われたこともしっかりと視野に入れて、これもベリファイして、検討してみるということをお願い申し上げまして、最後に一言御所見をいただきまして、終わりたいと思います。
坂口国務大臣 今御指摘をいただきましたことを肝に銘じて、一生懸命頑張らせていただきます。
熊代委員 ありがとうございました。これで終わります。
坂井委員長 次に、江田康幸君。
江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、大きく二つのことについてまず質問をさせていただきます。
 まず最初に、医療の安全性に関する質問をさせていただきたいと思っております。
 近年、多くの医療事故が報じられておりまして、医療の質や安全性に対する国民の関心が高まっている中で、今般、京都民医連中央病院が検査にかかわる診療報酬を不正請求していたという極めて悪質な事件が起こっております。
 まず、本事件の概要と主な経過について教えてください。
小島政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の京都民医連中央病院の事件でございますが、この概要は、同病院の検査課が平成十年一月から本年九月までの間、同病院医師からの指示及び関連医療機関からの依頼を受けた検査約二千五百件について、検体の必要な培養を行わずに検査結果を報告し、診療報酬の請求を行っていたというものでございます。
 事件は、本年九月十三日に同病院が外部医療機関から検査に関する照会を受けました際に発覚したものでありまして、その後、九月二十七日に京都市の中京保健所、続いて京都市、京都府、十月一日には京都社会保険事務局へ病院の方から届け出が行われております。
 京都府からは、同病院から報告を受けました際に、患者及び家族への説明、実態把握と真相解明、再発防止策の確立等について指導を行いまして、これを受けまして、同病院がこれまでに、患者及び家族を対象とした相談窓口の設置、細菌検査室の閉鎖、検査委託医療機関への謝罪文書の配付等を実施したと、私ども、京都府から報告を受けているところでございます。
江田(康)委員 今お答えいただきましたように、今回の事件は、一九九八年から四年もの長きにわたって、医師の指示による細菌培養検査を実施していないにもかかわらず、検査して細菌は検出されなかったとの虚偽報告を行い、診療報酬を不正に請求しながら患者に医療費を請求していたという、市民の皆さんからすれば極めて信じられない事件でございまして、絶対に許すことのできない言語道断の所業であると考えます。
 今後、京都社会保険事務局においては、医療保険各法に基づき必要な措置を講ずることとしておりますが、このような悪質な不正請求に対しましては、保険医療機関の認定取り消しなど厳しい措置が行われるのか、お聞きしたいと思います。
真野政府参考人 今回の事案につきましては、今後、不正請求の実態を十分に明らかにした上で、その結果を踏まえまして厳正に対処してまいりたいと考えております。
 具体的な措置の内容につきましては、今後、不正請求の内容を踏まえまして判断していくということになろうかと思いますが、一般論として申し上げますと、個々の事案の故意や過失の有無、それから、その程度などに応じまして、保険医療機関の指定の取り消し、戒告あるいは注意の措置を講ずるとともに、不正請求額及び加算金の返還を求めるということになろうかと思います。
江田(康)委員 さらに問題になってまいりますのは、不正請求の問題だけではございませんで、この検査をしなかったことによって患者の健康被害が心配されるわけでございます。
 今回検査が実施されなかった喀たん検査は、肺炎や肺結核などの呼吸器感染症、それから気管支ぜんそく、肺がんを疑ったときに実施されるものでございます。また、尿検査は、糖尿病、腎疾患、肝炎などの感染症、がんなどを疑ったときに実施され、マイコプラズマ検査は、マイコプラズマ肺炎の診断のために実施されるものでございます。これらの病気の中には、重症化すると生命の危険を伴う病気もございます。また、検査結果次第では、抗生物質の投与など、治療方針の変更が伴う検査でもあります。
 今回の虚偽報告にかかわった患者のうち、二百四十三名の患者さんが死亡されております。もし、検査しなかったことにより患者さんに健康被害が生じたとすれば、悪質な医療事故であり、これはゆゆしきことでございます。患者さんや家族への聞き取り調査も行い、特に病状が悪化したとか、感染症を見落としていたかどうかなど、患者の健康状態との因果関係を徹底的に調査すべきであります。
 京都府及び京都市は、医療法に基づく立入検査を実施しておりまして、また、外部委員で構成される原因究明委員会が設置されたと聞きます。手抜き検査と健康被害との関連調査に加えまして、なぜ四年間も不正がわからなかったのか、医師や臨床検査技師レベルの問題なのか、それとも病院ぐるみで手抜き検査を黙認し不正請求をしていたのか、徹底した調査が必要であります。
 今後の対応についてお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
小島政府参考人 本件につきましては、京都府及び京都市は、この報告を受けまして京都民医連中央病院に対し、十月四日以降、随時、合同で医療法に基づく立入検査を実施しております。
 そして、患者及び家族への対応状況の確認、検査業務の体制、外部有識者のみで構成する原因究明委員会の設置等につきまして指導を行っているところでありますが、特に、虚偽報告された検査の総数は約二千五百件に上るということが判明していることから、この一両日中に原因究明委員会を設置いたしまして、今御指摘ありましたような検査の未実施による治療への影響の有無に加えまして、事件自体の背景や原因の究明についても調査が行われるというふうに聞いております。
 厚生労働省といたしましても、京都府及び京都市に随時報告を求め、十分に状況を把握するとともに、適宜適切に助言を行うなど、対応に万全を期してまいりたいと考えております。
江田(康)委員 では、行政としまして、このような事件の再発を防止するためにどのような措置を講じていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
 また、今回の事件は厚生労働省指定の臨床研修指定病院で起きたものでございまして、指定の取り消しにも相当する事件でございます。こうした事件を抑止するためにも臨床研修指定病院の取り消し基準を新たに設けるべきかと考えますが、いかがでしょうか。
木村副大臣 不正請求への対策についてでございますけれども、保険医療機関が指定の取り消しが行われたときには、それから再指定が行われるまで従前は二年だったんですが、これが五年間に延長になりました。それと、不正請求にかかわる返還金への加算金、これは前は一〇%だったのが四〇%に引き上げるということになっております。この措置を講じたところでございまして、今後とも指導の徹底、そして保険診療の適正化にしっかりと取り組んでまいりたいと思っています。
 それから、先生がおっしゃいました臨床研修の取り消し基準についてでございますけれども、臨床研修指定病院の指定基準については、平成十六年に臨床研修必修化に合わせまして、その開設者また管理者の、医事に関し犯罪及び不正行為があったときには指定の取り消しが行われるような基準、これをはっきりさせてもらいたいということで検討を加え、御指摘を踏まえまして、一生懸命取り組んでいく決意でございます。
江田(康)委員 ぜひとも真剣にこの問題をとらえていただきまして、行政として再発防止策を講じていただきたいと思うわけでございます。
 この問題は、医療機関と患者のあり方、また医療の安全性や倫理面、そういうことからも非常に重大な問題をはらんでおります。したがって、今後もこれは取り上げていきたいと思っております。今後、原因究明委員会で調査が行われますが、その調査結果につきましては、きちんと公開していただきますように要望しておきます。
 では、次に、障害者対策についてお伺いをしたいと思います。
 障害者対策に関する新長期計画が平成十四年度で終期を迎えることに伴いまして、本年度をめどに、平成十五年度を初年度とする新たな障害者基本計画と障害者プランが策定されることになっております。まず、従来の計画の評価をしていただいた上で、新たな障害者基本計画における基本的な考え方、方針や方向性が従来とどのように違うのか、お伺いしたいと思います。
江崎政府参考人 我が国の障害者施策でございますが、障害者対策に関する新長期計画に沿いまして、ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念のもと、障害者の社会参加を阻んでおります欠格条項の見直しでございますとか、いわゆるハートビル法、交通バリアフリー法の制定等を着実に推進をされてきているところでございます。
 新しい計画でございますが、現在、内閣官房長官主宰によります新しい障害者基本計画に関する懇談会を開催してございます。障害のある方、それから障害福祉関係事業団体の代表者の方、さらには学識経験者の方等々から御意見を伺いながら作業を進めておるというところでございます。また、内閣府等関係主要省庁によります各分野ごとの検討チームを設けまして、検討を進めておるというところでございます。
 この新しい障害者基本計画、そういうことで現在検討中でございますけれども、障害のある方の人権が尊重され、障害のある方の能力が最大限発揮できる社会を実現するという考え方に立って、社会のバリアフリー化でございますとか利用者本位の支援というものを推進してまいりたいと考えてございます。
江田(康)委員 はい、わかりました。
 この非常に景気が悪い中で、また非常に厳しい雇用情勢の中で、障害者の方々の雇用就労というのが非常に心配されるわけでございます。
 この雇用就労におきましては、本年の障害者雇用促進法の改正で障害者雇用率や除外率の見直しが行われたところでございますが、さらに政府としてどのような障害者に対する雇用就労策が充実されていくのかについて、まずお聞きしたい。
 特に、職場適応援助者制度、すなわちジョブコーチ制度やトライアル雇用事業につきましては、常用雇用への移行など、効果が上がっているとお聞きします。現在の状況と今後の拡充策について教えていただきたい。
戸苅政府参考人 さきの通常国会で、障害者雇用促進法の改正をいただきました。障害者雇用率の算定方法、除外率の見直し、それから職場適応援助者制度の創設を行ったところであります。
 今後につきましては、さらに精神障害者にかかわります障害者雇用率の適用のあり方ですとか、あるいは多様な形態による障害者の雇用就業のあり方等につきまして検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
 職場適応援助者事業、ジョブコーチ制度でございますが、本年度から本格的な実施を行っております。本年度八月までの実績でございますが、七百三十四人の障害者に対しまして支援を行ったところであります。
 また、トライアル雇用でありますけれども、平成十三年度の実績を申し上げますと、トライアル雇用を開始された方が二千百八十一人でございまして、そのうち常用雇用に移行された方が千七百三十人と、常用雇用移行率が八割というふうになっております。
 今後とも積極的にこれらの制度を活用いたしますとともに、公共職業安定所の担当者等によります職場定着指導を行うなど、きめ細かな支援を行いまして、より多くの障害者の雇用の促進に努めてまいりたいというふうに考えております。
江田(康)委員 今申されましたように、ジョブコーチにおきましてもトライアル雇用事業におきましても、トライアル雇用などは八割も常用雇用への移行が達成されている、これは非常に効果的な政策であるかと思います。ぜひともこれを積極的に活用していただきまして、障害者の雇用就労へのきめ細かな支援をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、支援費制度について御質問させていただきます。
 障害者福祉サービスの内容や事業者を障害者自身が選べるように改める支援費制度が来年三月より施行されます。
 そこで、幾つか、これに関する障害者の方々の不安があるかと思いますが、一つは、利用者が自己負担する額は、現行制度と同じく、本人と扶養義務者の支払い能力に応じて決定され、利用回数によって負担が過重にならないように上限額が設定されていることは私も承知しているわけでございますが、従来と比べまして障害者の経済的負担が過重になることはないのか、具体的な答弁をお願いしたいと思います。
 あわせてもう一つ、支援費制度を目的どおりに生かすためには、選択できるだけのサービスの確保やサービスの質のチェック、苦情処理のあり方、契約にかかわる権利の擁護、利用者への情報提供など、多くの不安や課題がございます。これらに具体的にどのように対処していくのか、教えていただきたい。
上田政府参考人 支援費制度における利用者負担につきましては、現行の施設サービスと同様、本人またはその扶養義務者の負担能力に応じた、いわゆる応能負担の考え方をとることとしておりまして、具体的な所得階層区分の設定あるいはそれに応じた負担基準の額につきましても、現行制度と同様にすることといたしております。
 居宅サービスのうちショートステイ及びデイサービスにつきましては、現行制度のもとで設けられております利用者負担のありますホームヘルプサービスとの均衡を図る観点から利用者負担を導入したところでありますが、その額は、低所得者に配慮しまして、所得にかかわらず必要なときに必要なサービスが利用できるよう、負担能力に応じた負担額を設定することとしております。
 さらに、利用者負担総額が利用回数等に応じて著しく増大しないよう、利用者負担総額について、新たに施設サービスと整合性をとった上限額を設定することとしておりまして、これにより、利用者に過重な負担が生じることのないよう配慮しているところでございます。
 次に、支援費制度を目的どおりに生かすための、そういった体制につきましての御質問にお答えいたします。
 支援費制度が有効に機能し、その趣旨を実現していくようにするためには、御指摘のような課題に対応し、利用者が安心してサービスを受けられるような体制を整備していくことが重要というふうに考えております。
 このため、厚生労働省といたしましては、障害者プランに基づき、サービスの基盤整備を推進すること、あるいは利用者に対し適切なサービスが提供されるよう、都道府県等が事業者に対し必要に応じて立入検査をすること、都道府県に運営適正化委員会を設置し、利用者からの苦情を適切に解決すること、また、知的障害者などの本人の力だけでは契約が困難な方につきまして、福祉サービスの利用を援助します地域福祉権利擁護事業ですとか成年後見制度の活用によりまして契約が適切に行われるように支援すること、また、市町村等を支援し、利用者への情報提供や相談支援の体制を整えること、このようなことの施策を実施しているところでございます。
 このような施策を総合的に講ずることによりまして、支援費制度が円滑に施行されるよう、今後とも最大限努力してまいる所存でございます。
江田(康)委員 ありがとうございます。
 この支援費制度の支給申請は、先月、もうこの十月から始まったわけでございますので、ぜひとも、障害者の方々のサービスの向上と障害者の方々の自立につながるように、これらの不安を払拭して、ぜひ積極的に努力していただきたい。よろしくお願い申し上げておきます。
 次に、自閉症対策についてお伺いをさせていただきます。
 自閉症は発達障害の一つでございまして、社会的対人関係の障害をいうものであります。多くは、知的障害と合併していることから、療育手帳が交付されておりますが、知的能力に問題がない高機能自閉症やアスペルガー症候群など、自閉症の周辺領域にある発達障害は療育手帳の対象にならず、施設利用などの福祉サービスが受けられないでおります。
 現在、自閉症の専門施設は全国に七カ所でございまして、私の地元の熊本県では、知的障害者施設、知的障害者更生施設で受け入れておりますが、心理療法などを行うスタッフがおらず、専門的な対応ができないのが現状でございました。
 今般、厚生労働省により、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの自閉症とその周辺領域にある発達障害を対象としまして、心理療法や就労支援の専門家を配置する自閉症・発達障害支援センターが全国十一カ所に創設されまして、熊本県もその一カ所に選ばれたところでございまして、関係者一同、この厚生労働省の新しい施策に感謝しているところでございます。
 そこで、このセンターの概要と全国への拡充計画についてお伺いしたいと思います。また、センターの職員配置は、心理療法や相談、就労支援を行う専門職員四人となっておりますが、療育や就労支援、家族や関係機関への助言指導と情報提供、教職員への研修などが効果的に行われるためにも、次の段階としては専門職員の増員も考えていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
上田政府参考人 自閉症・発達障害支援センターは、自閉症等の発達障害を有する在宅の障害児者を対象といたしておりまして、自閉症児者等あるいはその家族、また関係機関等からの相談への対応、そして助言指導、情報提供、また適切な療育及び就労支援、また自閉症児者等への直接支援を行っております関係施設職員等への情報提供あるいは研修、このようなことを実施することによりまして自閉症児者等の福祉の向上を図ることを目的としまして、本年度に創設したところでございます。
 この実施主体は都道府県及び指定都市でありますが、自閉症児施設等を運営する社会福祉法人に委託することができることとしております。また、原則としまして、自閉症児施設あるいは知的障害児者施設に附置することとしておりまして、職員は、心理療法担当職員など四名を配置することとしております。
 また、予算の補助対象の御指摘でございますが、今後、都道府県等の要望等を踏まえながら、計画的に整備を図っていくこととしております。
 議員御指摘の職員数につきましては、このセンターの事業に照らし、現行の四名体制が適切であると考えておりますが、今後の事業運営の状況あるいは効果等を適切に評価してまいりたいというふうに考えております。
 また、このセンターは、自閉症児者に関する知見を有する施設のその機能の活用を図ることによりまして、適切な事業運営が確保される場合には、自閉症児施設あるいは知的障害児者の施設から独立してその地域の中に設置することも可能であるとしております。
江田(康)委員 ありがとうございます。
 次の質問は、文部科学省にも来ていただいておりますが、時間の都合上、一緒にして質問をさせていただきたいと思いますので、厚生労働省の方にお願いいたします。
 この自閉症・発達障害支援センターの創設に加えまして、新たな朗報といいますか、そういう政策がもう一つ見えてまいりました。それは、注意力が散漫で、じっと座っていられないなどの症状が見られる注意欠陥多動性障害、ADHDや高機能障害についてでございます。これらの障害に対しましては全く判断基準がなくて、障害者福祉施策事業の外に置かれておりました。今般、文部科学省の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議は、米国のマニュアルを参考に作成した初の判断基準を中間報告として示したと聞いております。文部科学省の取り組みを高く評価するわけでございます。
 そこで、厚生労働省にお聞きいたしますが、ADHDや高機能自閉症などを疑われる児童生徒は全体の六・三%にも上ることが今回の文部科学省の調査でわかっております。四十人学級で、一クラス当たり二・五人いる計算でございます。
 このように急増しているADHDや高機能自閉症に対しまして、我が公明党は早くからこの問題に取り組んで、全国的な実態調査の実施、治療・診断ガイドラインの作成、教職員への研修や相談窓口の設置などを主張してまいりました。
 障害者の教育につきましては、新障害者基本計画でも関係省庁の連携を図ることが示されておりますが、今般の中間報告を機に、厚生労働省としても、ADHDや高機能自閉症など、これまで障害者対策の蚊帳の外だった発達障害に対しまして、診断基準のガイドラインづくりを文部科学省と連携して進めて、将来、療育手帳の交付対象としていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
上田政府参考人 HD等につきましては、近年、教育現場などにおいて問題となるなど、関心が高まっているものと承知いたしております。
 現在、厚生労働省におきましては、精神・神経疾患研究委託費によりまして、注意欠陥多動性障害の総合的評価と臨床的実証研究を実施しまして、ADHDに関するガイドラインの作成を行っているところでございます。
 今後、この研究成果を踏まえまして、文部科学省とも連携しつつ、ADHD等の発達障害について、診断基準の確立とその普及を図ってまいりたいというふうに考えております。
江田(康)委員 最後に、大臣にお伺いいたしたいと思います。
 以上のように、ADHDや高機能自閉症など、これまで判断基準があいまいで、障害者福祉施策事業の外にあったこれらの発達障害に対しまして新しい政策を策定し、前に進める必要があると思いますが、大臣の認識はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 今まで、障害者というのを一くくりにして見てきた傾向もあるわけでございますが、だんだんと、しかし、その内容は研究が進むにつれましてさまざまな原因で起こっている、そういうことがわかってまいりまして、自閉症あるいはまた今度はADHDというような、そうしたものは別枠で考えないといけないというふうになってまいりました。将来、さらにまたこれが細分化される可能性もあるだろうというふうに思っておりますが、そうした障害につきましては、やはりその障害の原因というのが、それは一つのもので起こっていろいろの症状が出るのか、それとも違った原因で起こっているのかということの見きわめ、その研究というのが大変大事だというふうに思っております。
 そうした研究を進めます一方で、今度はその障害者に対しましてどういう手当てをするのが一番望ましいかということだろうというふうに思います。小さなお子さんにつきましては文部科学省ともよく相談をさせていただきまして、そして皆さん方が一番、健康な皆さん方とともにどう交わっていけば将来に最も効果的になるのかということを見定めながらやっていきたい、ぜひ前進をさせたいと思っているところでございます。
江田(康)委員 大臣、ありがとうございました。
 以上で質問を終わらせていただきます。
坂井委員長 次に、釘宮磐君。
釘宮委員 民主党の釘宮磐でございます。当面する諸課題についてお伺いをいたしたいと思います。
 まず、介護保険制度について若干お伺いをいたしたいと思います。
 介護保険制度が導入されて二年半がたちました。サービスの供給量や利用量もともに増加をしてまいっておりまして、ほぼ順調に運営されているという厚生労働省の評価は否定できないというふうに思います。現在、平成十五年度の介護報酬改定に向けて検討が進められておるようでありまして、先日、その基礎資料となる介護事業の経営実態調査の結果が発表されたようであります。
 この中で、私は、まず厚生労働省の認識として、施設サービス志向というものが非常に強いようであります。この施設サービス志向というものは、本来、介護保険そのものを導入するときに、在宅サービスを主たるサービスとして考えていこうということであっただけに、その辺はいささか思惑が違ってきているんではないかというふうに思います。
 そこで、在宅サービスへ今後誘導していくということでの誘導策というようなことをお考えになっているのかどうか、まずお聞かせください。
中村政府参考人 介護保険につきまして、在宅重視、そういった理念に基づきまして、どういうふうにそれを進めていくかということについてのお尋ねだと思います。
 先生御指摘のとおり、介護保険制度は高齢者の自立支援と生活の質の向上を図ることを目的といたしておりまして、障害になってもできるだけ自分のおうちで暮らし続けるということが介護保険制度の基本的な考え方だと思っております。先生からもお話がありましたように、現在、来年四月から新たな事業計画期間に向けまして各市町村で介護保険事業計画の見直しが行われておりますけれども、まず、この見直しに当たっても、そういった意味で、在宅重視、自立支援という施策を十分考えていただきたいということを私どもも市区町村の方にお願いを申し上げております。
 それから二つ目は、ただいま申し上げました在宅で暮らし続けられるというようなサービスを組み立てていく上で、ケアプランというのが大事だと思います。高齢者お一人お一人の心身の状況を把握し、介護サービスを利用していただいて、またそのフォローアップをしていただくというような意味で、ケアプランが大事だと思いますので、そういう役割を担うケアマネジャーに対して研修をしていくということを考えております。
 また、介護保険のサービスだけで必ずしも在宅の生活を支えられない部分もございます。もっと幅広く介護予防や生活支援のサービスが必要だと思っておりますので、介護保険と車の両輪として、こういった介護予防などの充実を地域で取り組んでいただくようお願いしているところでございます。
釘宮委員 今のような答弁では在宅サービスへの誘導策には私はならないというふうに思います。
 まず、私は、施設サービスというのはどうしても、すべてを見てくれるわけですから、そこに皆さんのニーズが行くというのは、これは至極当然なことではないかというふうに思うんですね。しかし、例えば、私ももう五十五歳という年齢になってきて、実際に自分が介護を受けるような年代になったときにどうかというふうに問われれば、実は、在宅というよりも、自分の一番身近な人間にやはり見てもらいたいという思いはあるんですね。
 ですから、そういう意味では、これは法案審議の際にも議論になったんですが、家族介護への報酬の支払い、結局見送られたわけですけれども、私は、例えば介護者へ、これは家族ですね、に対して一定の研修をする、また介護実態をチェックするというようなことを認めた上で、これをやはり今後考えてみる時期に来ているんじゃないかというふうに思うんですね。特に雇用情勢が極めて悪いわけで、介護のためにわざわざやめてしまわなきゃならないということを考えたときに、就労対策というような観点からも私は今後考えてみる必要があるというふうに思っております。これについては私の要望として述べておきたいと思います。
 それから、あわせて、施設サービスに対する競争原理、これを一方で働かせようというふうに考えてきたわけですけれども、実際には待機が百人とかそういう単位でいるわけで、これはもうほとんど利用者はそれを選択するなんという余地はないわけですね。そうなると、私は、実は私の家内の親が最近痴呆が出てきて、家内は毎日施設を見て回っているんですけれども、私は施設を格付評価したらどうかというふうに思うんですね。これは第三者機関であれ、格付機関というのはどういうのがいいのかということは改めて議論をしなきゃならぬと思いますが。そして、格付をすることによって、それを公表する。そうすれば必ず、そういうふうなものを見てやはりいいところに行きたいということになるわけで、そこには必ず競争原理が働いてくるというふうに思いますね。
 ですから、その点はもうそういう状況をつくって、一方で在宅の方にも魅力がある、施設にもそうした競争原理が働くというようなことを基本的に考えたらどうかというふうに思いますが、端的で結構ですから。
中村政府参考人 介護保険制度をつくりましたときに、多くの事業者の方も介護保険に参加していただく、また利用者の方もその中で自分が最も好むものを選択していただけるような、そういうふうにしたいということでやってきたところでございます。そういった意味では、もちろん量の不足の問題もあると思いますけれども、情報の公開とか情報の提供は大事だと思います。
 私どもも、社会福祉・医療事業団のWAMNETなどでそういった情報提供に努めておりますけれども、やはり先生御指摘のありました外部評価、そういったものも大事だと思います。
 グループホームにつきましては、今年度から外部評価を実施することといたしておりますけれども、これから外部評価というのをどのように取り組んでいくか、また、その外部評価の結果ということを御家族にお伝えしたり、あるいは公開した情報として提供できるようにするというふうに考えておりますので、そういったことによりまして、利用者の方が施設なり在宅介護のサービスを選ぶ際に参考になるような方向ということは好ましいと思いますので、研究を続けてまいりたいと思います。
釘宮委員 家族介護への報酬支払いについては答弁がありませんでしたが、これは前向きにぜひ検討してみてください。
 次に、不妊治療への保険適用について。これは、大臣にこれまでたびたびお願いをしてまいりました。この件については、大臣が五月三十一日の厚生労働委員会において、私の質問に対して非常に前向きな答弁をしていただきました。実現を望んでいる多くの皆さんから私のところにメールが寄せられまして、その期待の大きさというものを感じたわけであります。
 しかしながら、先般発表された少子化対策プラスワンにおける不妊治療への取り組み事項は、子供を産みたい方々に対する不妊治療対策の充実と支援のあり方の検討ということにとどまっております。また、十五年度の概算要求にも具体的な支援策が盛り込まれておりません。ぜひこの点について、大臣が今どういうふうにお考えになっているのか聞かせてください。
坂口国務大臣 前国会におきまして不妊治療につきましての御質問をいただいて、そして、ぜひその問題に対して取り組むことを表明させていただいたところでございます。その後いろいろ話を詰めているところでございますが、やはり一般財源からそれをするということはなかなか難しい状況だというふうに、決まったわけではございませんけれども、私は認識をいたしております。
 したがいまして、これは保険の中でこの問題をやっていくということにせざるを得ないのではないかというふうに思っておりますが、またそれはそれで、なぜそんなことに保険を使うかという反対意見のあることもまた事実でございます。しかし、そこはよくお話を申し上げて、そして私は、保険財政の中でぜひここは前に進めていくということが一番妥当なのではないかというふうに思っている次第でございます。
 詳細につきましてまだ煮詰め切っておりませんので、今ここで最終的なことを申し上げるところまで至っておりませんが、必ずその方向でひとつおこたえのできるようにしていきたいというふうに思っているところでございます。
釘宮委員 これは、大臣が大変前向きであるということは私自身も承知をいたしております。したがって、坂口厚生労働大臣が今回閣僚を留任されたということは、それだけ期待も大きいということでありまして、その継続の中で、私はこれはぜひ実現を見るようにお願いをしたい。
 あわせて、私は、一般財源は難しいという話がありましたけれども、これはもう国策としてやるべきときに来ている、子供が圧倒的に少ないわけですから。そこは国策でやるということになると、必ずしも、私は保険の方がもっと難しいんじゃないかというふうに思いますし、それはもちろん保険にそれがつながっていけばいいわけで、とにかく糸口をつくっていただきたいということを再度お願いしておきたいと思います。
 時間がありませんので次の問題に移らせていただきますが、児童虐待の問題について。これはもう今まで私もたびたび当委員会で議論をしてまいりましたし、実際に最近の状況は深刻化をきわめているというふうに思います。特に、虐待防止法ができまして通報の義務化等ができましたので、非常に顕在化してきたということでございます。
 そこで、私は常々、子供の今の状況を考えるといても立ってもいられないという話をいつもこの委員会でも述べてまいりましたけれども、実際問題、やはりまだまだそういうケースがありますが、顕在化して実際にケースとして取り扱う児童相談所、さらには一時保護所、そして養護施設、この辺のいわゆる受け皿体制の整備というのはなかなか進んでいっていない。特に、専門職はもうそこにどうしても配置しなきゃならぬという状況にあるにもかかわらず、なかなかパッチワーク的なそういう施策を重ねているというふうに思えてならないんですね。
 そこで、きょうは局長にその辺のところの御答弁をいただきたいんですが、厚生労働省として、今この受け皿である児相や、また児相の中にある一時保護所、さらに養護施設が、もう一万七千ぐらいになっているんですか、件数が、それに対して本当にこたえられるような状況にあるのか。心を病んで来ている子供が、相も変わらず戦後の浮浪児対策というような形で、その受け皿になっていた一時保護所や養護施設と余りまだ変わっていないというような現実の中であるというふうに私は認識をいたしておりますけれども、その辺どういうふうにお考えになっておるのか。時間がありませんので、端的にお願いします。
岩田政府参考人 全国の児童相談所で取り扱っております児童虐待の相談件数は急増いたしておりまして、平成十三年度では二万三千件を超えるという状況でございます。この問題の受け皿となるまず中核的な機関が児童相談所であると思いますが、児童相談所の職員体制、特に専門職である児童福祉司の充実が緊急な課題であるというふうに思っております。
 国といたしましては、地方財政措置における児童福祉司の積算基礎人員を増員するということといたしまして、平成十二年度は一名、十三年度は二名、十四年度もさらに二名ということで増員を図ってまいったところでございまして、標準団体当たり従来十六名であったのが、十四年度には二十一名の体制まで持ってこられたということでございます。
 こういう国の動きを受けて、自治体でも実際に児童福祉司の配置数をふやしておりまして、平成十三年度と比べて、平成十四年度は全国で百四十七名ふえておりまして、千六百二十七名の児童福祉司が問題の対応に当たっているということでございます。
 児童相談所の一時保護所の体制整備についてもおっしゃられたところでございますけれども、平成十三年度には、子供一人当たりの補助基準面積の大幅な改善を図って、生活環境の改善に結びつけたいということですとか、子供の心のケアを専門的にやる体制を整備するということで、心理職員の配置の加算などもいたしたところでございます。また、十四年度については、一定人数以上の保護児童がいる場合には、個別対応ができるような主任児童指導員の配置についても加算をいたしたということでございます。
 児童養護施設についても同様でございますが、施設の中で心理的なケアができるように平成十一年度から心理療法の担当の職員を置いたり、また被虐待児の個別の対応ができるような職員を置いた場合に、補助金で加算を行うといったようなことを通じまして、まさに先生おっしゃいましたような、関係機関、施設の体制整備が大変急務だと思っておりますので、その方向で取り組んでいるところでございます。
釘宮委員 私は、これはスピードが非常に遅いというふうに思っていますよ。
 実際問題、今そこに子供が病んでいるわけでしょう。それについて厚生労働省の対応というか、国の対応というのは非常に緩やかなんですよ。だから、それが結局どこに行政の力点を置くのかという部分が必ずしも明確でない。今の児童虐待の問題、毎日、新聞を見るたびに局長、心痛みませんか。それを思ったら、もっともっとこれはスピードを速める。現場は悲鳴を上げていますよ、本当に。そこをもう少し考えてください。我々はここでただ議論をやりとりしているだけで終わるかもわからないですけれども、しかし、現場はそんな状況じゃないし、当事者の子供はそういう状況にありませんよ。
 時間がありませんから、私は、大臣にはこのやりとりの中でその緊急性をぜひお感じ取っていただいて、来年度予算についてのこれからの取り組みも、ぜひスピードを上げていただきたいというふうなことをお願いしておきたいと思います。
 それから最後に、国立病院の建設の問題について、非常に残念ですけれども、私は、この問題、質問をせざるを得ないということであります。
 きょう、資料を出させていただきました。
 前回は、私はこの問題を取り上げまして、当時、国立病院部として、事前に寄せられた談合情報と実際の入札結果がかなりの程度符合していた、したがって入札の公正に万全を期すという観点から改めて入札を行うこととしたということで、これは再入札ということになった。
 そのとき大臣も答弁の中で、事実は確認できなかったけれども十分疑うに足りる状況にある、十分に疑うだけの証拠があります以上それをもとに戻す、こういうことで戻したというふうに思います、今までのところ、疑いがあるというだけではもとへ戻してはいなかったんですね、他の省庁のこともずっと全部聞いてみたんですけれども、いろいろな情報が出回ったりして、いろいろなことがあっても、確認をしてそこが確認できなかったらそれはそのまま進行するということだったということで、大臣がここで勇断を振るってこれは再入札をしたわけです。
 再入札の結果が、きょう私が資料を配付しています。左側が今回の落札者、右側が前回の落札者、これは物の見事に同じなんですよ。しかも、私が前回こういう指摘をしているんです。厚生労働省としては談合がなかったと言っている、だから前回の落札業者は入札に当然参加するんだと。私は外せと言ったんですね。外せと言ったけれども、外すことは法的に難しい、だったらこの人たちに自主的に辞退してもらったらどうかということを私は言いましたけれども、それについてもできないということで、いろいろな入札制度の改善を行うことによってそれは防げるということだった。
 そこで、今業界ではどういうことが言われているかというと、現に業界では、前回の落札業者は再入札にも当然参加させてもらえるんだから、同じ結果になったって全くおかしいことではないじゃないかというようなことが、その当時、既に七月の段階でそういう話が私のところに聞こえてきている。今回のことはまさに談合ですよ。これが談合じゃなくて何ですか。全く同じじゃないですか。
 私は、そういう意味では、明らかにこれは業界の挑戦だと思いますよ。私に対してだけではなくて、大臣に対しても、政治家に対しての挑戦だというふうに私は思いますよ。この点について、まず大臣の御所見を伺いたい。
坂口国務大臣 前回のときにも釘宮議員から御質問をいただきまして、そして私たちもそれなりの調査をしたわけでございますが、我々が、我々と申しますか、厚生労働省が調査をいたしましても、なかなかそういう事実が出てこない。しかしながら、落札が行われます何カ月も前に予測をするようなペーパーが出回るということは、これはどう考えてもやはり疑いを持たざるを得ないというので、もとに戻させていただいた。これも、業界の今までの経緯からいたしますとなかなかできにくいことでございましたが、それは理解をしてもらってやりました。
 そして、入札方法につきましても、電子入札等を取り入れて、改革を加えるべきところはかなり改革を加えさせていただきました。しかし、結果は、御指摘をいただきましたように、同じような業者が入札をしているということは事実あるわけでございます。
 そこのところは、しかし我々、もう一つ、今回の場合には、なぜそうなったかということについては、それを疑うというような、そういう疑いを持つに値するようなものはなかったわけでありまして、今回の入札はこれに従うということにしたわけでございます。
 しかし、ここはもう専門家にお願いをする以外にないというふうに思っておりまして、公取に対しましては、さらにひとつ今回は引き続き御調査をお願い申し上げたいというふうに思っているところでございます。したがいまして、何か談合に値するような材料がありましたならば、それは御提供をいただきたいというふうに思いますし、そこは専門家にきちっとお調べをいただきたいというふうに思っている次第でございます。
 ただ、今回の内容を見てみますと、前回のときには九九%とか九八%、国の定めた額にほとんど近い額でございましたが、今回の場合にはかなりばらつきもあり、八八%ぐらいで入札をしているところもこれありといったようなことで、前回とはやはり違うところはあるなというふうに思ってはいるわけでございますが、それ以上のことを申し上げるだけの資料は持ち合わせていないというのが現実でございます。
釘宮委員 大臣の大変苦しい胸のうちはわかるんですが、私は絶対にこれは容認できませんね。
 特に、前回と今回の違いの中で、大竹病院と西鳥取病院、この辺については、いわゆる頭、頭というのは要するに鴻池と熊谷ですが、これは変わらないけれども、その下の浅沼と日本国土をたすきがけにするという情報まで私は病院部に知らせているんですよ。そこまでなっていて、それがそのとおりになっていて、今の大臣の話というのは私は納得ができない。
 しかも、こういうふうに疑わしい状況であったから、前回これを白紙撤回してやった。それが今回、しかもその間に、このままいくんだと。要するに、どうせ談合していないんだから、このままいけばいいんじゃないか、そういう業界の声まで私はこの国会で述べたわけですよ。にもかかわらず同じで来たということは、国会に対する挑戦じゃないですか。
 私は、こういうことを許したら、今小泉さんが言っている構造改革なんという、こんなものは国民はだれも信用しませんよ。少なくとも、この問題、大変根が深いと私は思いますよ。
 もう時間がなくなりましたけれども、とにかく、国立病院部営繕班、これは全国で、地方の厚生局も含めて、わずか百人ぐらいしか人員がいない。その人たちがずっとそこにおるわけですから、そこにおる人たちが何百億という事業をいつも発注している、そこは異動は全くないということになれば、それはそうなりますよ。しかも業界に天下っていく、そういう状況の中にこういう根の深い問題が起こってきているんだ。これも少なくとも改善をしていかなければ、今回の問題だけじゃ済まないというふうに私は思います。
 私のところには、本当にびっくりするような情報が今入ってきています。私はこのことはあえてきょうは問いませんけれども、最終的には我々は告発することも考えておりますから、そのことを申し上げて、きょうの質問を終わります。
坂井委員長 次に、鍵田節哉君。
鍵田委員 民主党・無所属クラブの鍵田でございます。
 坂口労働大臣には、また連投で大変御苦労さまでございます。一時の西鉄ライオンズの稲尾投手のように連投に連投を次ぐ大変御苦労なことで、神様、仏様、稲尾様という言葉がはやりましたけれども、小泉内閣にとりましては神様、仏様、坂口様ということになるんじゃないかと思いますが、優秀なリリーフ投手もいらっしゃいますので、ぜひとも頑張っていただきたいというふうに思います。
 きょうは、時間の制約もございますので、幾つか大臣のお考えを聞かせていただきまして、これからの施策をどのように進めていかれるのか、そういう中でまたさらに議論を深めてまいりたいというふうに思っております。
 まず冒頭に、この国会が始まりまして大臣の所信表明を聞かせていただいたわけでございますけれども、大変失業率が高どまりになっております。さらには、これから不良債権の処理をされていくという中で、大変厳しい雇用環境が続く、さらに悪化するのではないかというふうにも見られておるわけでございまして、そういう中では、もう少し総理の方からセーフティーネットについての言及があるのではないかと思っておったわけでありますが、単に、一文「不良債権処理の加速に伴う雇用や中小企業経営者への影響に対しては細心の注意を払い、セーフティーネットには万全を期します。」というふうな言葉で終わっておりまして、まことに具体的な言葉がないという不十分な状況でございました。
 大臣の方からはかなり具体的に、雇用セーフティーネットのあり方、これからの雇用のあり方について言及がございましたが、やはり大臣の所信表明の中にもっと、厚生労働省としてこのセーフティーネットの問題を取り入れる、こういうことにつきまして強い要望をされてもよろしかったのではないかというふうな感じを持っております。
 そのことは私の感想でございますので、申し上げまして、具体的にはワークシェアリングの問題、さらには倒産、リストラの問題、それから雇用保険の問題、さらにはホームレス問題、これらにつきまして大臣のお考えをお聞きしたいと思っております。
 まず、ワークシェアリングの問題でございますけれども、昨年十月に日経連と連合の雇用に関する社会合意というのができました。十二月には政府も加わった検討会議が発足をいたしました。本年三月二十九日にワークシェアリングについての基本的な考え方についての合意もなされたところでございます。
 私は、四月十七日の本委員会で、緊急対応型のワークシェアリングの実現に対して行政が傍観者であってはいけない、しっかりリーダーシップを発揮するべきではないか、そして積極的に支援を行うべきだということをお願い申し上げ、大臣の方からも比較的前向きのお答えをいただいたように受け取っておりました。
 ことしの六月一日から平成十六年度までの措置として、緊急雇用創出特別奨励金事業の一部ということで、緊急対応型のワークシェアリングを導入して雇用創出に取り組む事業主に対する賃金等の支援策が追加されたり、一時休業による雇用維持のための雇用調整助成金の要件緩和が行われたりしております。
 これら施策の現状の活用状況を御報告いただき、さらに今後の緊急対応型のワークシェアリングをどのように具体的に進めていかれるのか。名称は緊急対応型のワークシェアリングでありますが、これはやはり我々の働き方を根本的に見直していくということにもつながる緊急対応型のワークシェアリングではないかというふうに思っておりますので、その辺で、大臣としてしっかりしたお考えをお聞かせいただければというふうに思っております。
坂口国務大臣 まず最初に、現在までのところでございますが、いわゆる緊急雇用創出特別奨励金に対しまして、十月末現在で、ワークシェアリング導入計画届け出数というのは二件しかございません。それから、短時間休業の実施によります雇用維持を図る事業主を支援するいわゆる雇用調整助成金のうち、事業所の部門などの単位で行われます短時間休業につきましては、十月末現在では計画届け出件数は四件でございます。いわゆる地域求職活動援助事業の活用によりますワークシェアリングの導入、普及等に取り組みます事業主団体への支援につきましては、十月末現在で三十四都道府県で実施となっているところでございまして、鳴り物入りでやりました割にはなかなか進んできていない、率直に私もそう思っております。
 現在、労使の間で今後のワークシェアリングのあり方についてお話し合いをしていただいておりますが、双方それぞれのやはり言い分がございまして、何回かおやりをいただいておりますけれども、現実的にはなかなかそこから前進をしないということもございます。双方とも御主張があってなかなか一致しにくいことは、それは当然でございますけれども、やはりここは国が中に入って少しリードをしなければいけない時期に来ているのかなというふうに思っている次第でございまして、できるだけ早くこの問題が実際に軌道に乗っていくためにどうすればいいかということを、もう少し国の方もリード役を行いまして、積極的にいけるようにしたいというふうに思っている次第でございます。
鍵田委員 本来なら議論を深めたいところでございますが、きょうはお考えを聞かせていただいて、政府の方でもう少し主導権をとってというお話もいただきましたので、ぜひともそのような進め方をしていただかないと、利害関係者だけで話をしておりましてもなかなか対立は解けないのではないか。やはり社会的な合意という以上は、もう少し社会全体のことを考え、この雇用問題の解決のための手法として取り入れていくためには、政府が主導権をとっていただきたいと思っておる次第でございます。
 では次に、多様就業型のワークシェアリングにつきましては大臣の所信の中でも触れていただいておりますので、それらにつきまして、短時間勤務のあり方や、正社員とパートの処遇格差の是正の問題、育児、介護の責任を負う労働者の働き方の問題、年金や健康保険、雇用保険の加入要件の見直しの問題、さらには、現行の最低賃金そのものも、もっとやはり正社員とパートとの処遇格差などにも影響を与えられるような実質的な最低賃金に見直していくという問題もあるのではないかというふうに思っております。
 これらにつきましても、各種の審議会で議論をされておるようでございますけれども、議論を早めながら、やはり早急に施策を進めていかないとなかなか施策が前進しないのではないかというふうに思っておりまして、政府の考え方をもっと前面に出していただきたい、その中で労使の協議を進めていくということも大切なのではないかというふうに思っております。それらにつきましてのお考えもさらに具体的に大臣の方からお聞かせをいただければと思っております。
坂口国務大臣 先ほど御答弁申し上げた中に、多様就業型も込みでお話を申し上げたような感じでございますが、大筋は、先ほど申しましたように、労使でお話し合いをいただくのが原則でございますけれども、それだけではいけないので、やはり国の方もより積極に関与をしていくということなんだろうというふうに思います。
 このことは、パート労働の問題等も含めまして、これはいわゆる長期就労だけではなくて、正規の短期就労というのもあるんだろう、そうした制度にもかかわってくる問題でございますし、このワークシェアリングの問題は少子化対策にとりましてもまことに大事な点でございまして、これらの点を整理いたしまして、そして早くこうしたワークシェアリングが本当にできるような体制をやはり国としてもつくらないといけないというふうに思っております。
 それらのことにあわせまして、それぞれの労使の間での問題点、それは国がやりますもののほかにもさまざまな問題点があるんだろうというふうに思います、その調整をおやりいただく。そして、どうしてもなかなか話がそこで一致できないというところにつきましては、こちらから一つの線を出して、双方に御協力をいただくということにせざるを得ないのではないかというふうに思っておりまして、そうしたことを念頭に置きながら、これから懸命に進めさせていただきたいと思っております。
鍵田委員 これらの問題につきましては、一方だけがいい思いをして、一方だけが痛みを背負うということでは、なかなか解決しないと思います。
 ワークシェアリングにつきましては、双方とも痛みを覚悟の上でということでの社会合意ではないかというふうに思いますので、政府としてこうあるべきだというものを打ち出して、その上で労使で議論をしてもらうということでないとなかなか前へ進まないというふうにも思いますので、その辺はひとつよろしくお願い申し上げます。
 それでは次の、倒産、リストラにつきまして、特に立てかえ払い制度の問題につきまして、先日も新聞でも発表ございましたけれども、これらにつきましてどのように認識をされているのかということでございます。
 立てかえ払いでございますから、労働者にかわりまして政府が企業に対して立てかえた分を回収するということになっておるんですが、この回収の状況はどうなっておるのかということが一つでございます。
 それから、立てかえというのはあくまでも六カ月分とかという限定があるんですが、労働債権全体がどの程度の規模に上っているのかということについての把握をされているのかどうかということにつきまして、これもどのような把握の状況になっているのかということでございます。
 それから、倒産時の労働債権確保といいますか、これが実際に、例えば立てかえ払いとは関係のないところでやられているわけです。たくさんの企業が毎年倒産をしておるわけですけれども、そのときに、労働債権がどの程度あって、それがどの程度確保されているのかということを把握されているのかどうか。
 これは、労働債権というのは賃金とかそれから退職金なので、非常に勤労者にとっては重要な資金なんですよ。これらの回収状況がどうなっているのか。
 なぜこういうことを聞くかといいますと、これから倒産法制などがいろいろ議論をされて、法制審議会なりそういうところでも審議をされてくるわけでありまして、そのために、これからそういう問題をどう考えていくのかということで、非常に重要な内容を秘めておりますので、ぜひともそれらについてのお答えをいただきたいと思っております。
松崎政府参考人 まず、未払い賃金の立てかえ払い制度でございますけれども、これは今御質問されましたように、立てかえ払いを行って、賃金債権をこちらで持つわけでございますが、その回収状況につきましては、昭和五十一年に制度が発足いたしまして、それ以来の累計で申し上げますと、立てかえ払い額の約二割弱が回収されたという状況でございます。
 また、未払い労働債権の額でありますとか労働者の回収状況でございますが、これは、負債総額とか倒産件数、こういったものは民間の調査機関がいろいろ発表しておりますけれども、倒産時におきます未払い労働債権の額、またそのうちどのくらい労働者が回収できたかといった点につきましては、厚生労働省では把握しておりません。
鍵田委員 どういう労働債権が発生して、それがどのように回収されたのかということを把握するというのは非常に難しいとは思うんですが、しかし、おおよそでもそういうものを把握しておかないと、これは大きな労働行政の一つではないかというふうに私は思いますので、そのことについてはもっとしっかり把握できるようにしていただきたいというふうに思います。
 その次に、もう一つ関連してあるんですが、今も申し上げましたように、賃金とか退職金というのはもちろん生活を支えていく上で非常に重要な資金でございます。退職金などにつきましては、老後の生活ということも考えました、一つの老後を支える重要な債権である、後払い的な要素も持っておるというふうに思っておるわけでございますけれども、この債権の順位というものが非常に低位にありまして、抵当債権の劣後にあることはもちろんのことでありますが、公租公課よりもさらに劣後にあるという状況にあります。
 勤労者の、一生懸命働いてきたその債権が、税金であるとか社会保険料であるとかいうふうな債権よりも劣後にあるということにつきましては、やはり問題があるのではないか。労働団体あたりからは、やはり公租公課よりももっと上位に持ってくるべきではないかという議論もされておるわけでございます。それらの問題につきましてどのように考えておられるのか、これからのそういう法整備の中で厚生労働省としてどのような対応をされようとしておるのか、これらにつきましては大臣の方からひとつお答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 前国会におきましてもこの問題、お取り上げをいただきました。
 法制審議会におきましてもこの問題が取り上げられているところでございまして、厚生労働省といたしましては、労働債権というものをより重視すべきだということをそこで意見具申しているところでございます。
 法制審議会におきます中間試案が示されたところでございますが、その中におきましても、やはり労働債権をより保護する方向でいくということがその中に書かれておりますので、我々の主張をかなりお取り上げをいただいているのではないかというふうに思っているわけでございます。今後も、声を大きくいたしまして、そして特に失業された皆さん、あるいはまた倒産をされる皆さん方に対して、そこができる限り善処されるように努力したいというふうに思っております。
鍵田委員 この問題につきましては、特に法制審議会の中で広範な法整備についての議論をされておるんですが、今や本当に現実の問題として多くのリストラ、倒産が出ておる中で、私の所属しておりますJAMという機械・金属産業におきましても大変なリストラ、倒産のあらしが吹き荒れておりまして、かなりの倒産がある。
 さらには、今回の不良債権処理の中でも、大臣も、二十万人ぐらいの失業者が出るんじゃないか、こうおっしゃられておるんですが、民間の調査機関なんかでは、百六十万人を超える失業があるんじゃないかという見通しも立てておられるようでございまして、そういう面では、この問題だけでも先に法整備を進めるべきではないかというふうにも思っておるわけでございまして、それらにつきまして、ぜひとも最善の努力をお願いしたいと思っております。
 それでは、次の課題に移りますが、雇用保険の問題について御質問をいたします。
 既に雇用保険部会におきましていろいろな議論の見直しをされておるようでございまして、特に給付の見直しにつきましては議論をされておりますし、次回からは、負担のあり方について検討が行われるというふうにも聞いております。
 とにかく、この雇用保険制度そのものが、比較的雇用の環境がいいときにできまして、そして財政的にも五兆円も六兆円も剰余金があるというふうな状況下で推移をしてきたわけでありますが、この長期の不況の中で財政が破綻寸前にある、こういう結果になっておるわけでございます。さらには、雇用環境が悪化をする。こういう中で、雇用保険制度そのものを、今までやってこられたのは何か継ぎはぎの、その場しのぎの改定をされてきておるのではないかという気がいたします。
 これから、こんなことはいつまでも続いてはいけないわけでありますが、何かそんなに急速に雇用環境が改善されるというふうな状況にはないといたしますと、やはり抜本的な見直しをする必要に迫られておるのではないかというふうにも思います。そういう意味で、今後の雇用保険制度に対して、どのようなお考えで対応されていこうとしておるのか。
 さらには、給付につきましては、特に高齢者なり高賃金の方々につきましては、実際にその方が失業して、就職をされる場合の賃金と、給付との間に逆転現象がある、したがってこれを見直すんだというような議論がされておるようでありますけれども、実際は、そういう高い負担をしておる人は高い給料をもらって生活をしておるわけでありますから、急激にそれを落とさなくてはならないというふうな問題もありますし、それだけの負担をしてきておるんだから、それだけ給付をされて当然だという考え方もあるんではないか。そういう面では、負担だけは強いられるけれども給付だけ切り下げられるというのでは、やはり大変な不公平感も出てくるのではないかというふうにも思うわけでございまして、これらにつきましてのお考えをお聞きしたい。
 それから、抜本的なこの保険制度の見直しの中で、民主党の方で、失業等の給付資金を置いて、雇用保険会計の状況に応じてその資金から引き出して、そしてセーフティーネットの財政を安定さすというような提案をさせていただいたわけでありますが、これは残念ながら通すことができなかったわけでございますけれども、そういうものを参考にしながら、これから抜本的な改革に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。それらにつきまして、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 雇用保険の問題につきましては、まず、給付と負担とあるわけでございますが、まず給付の方をどうするかということを先に決めて、それに見合って、それじゃそれに対してどれだけの負担がかかるのかという順序と申しますか手順で話を進めていこうということにいたしておりまして、十月の十日でございましたか、厚生労働省としての考え方というものを一つ中間的に示したわけでございます。
 その中の一つに、高額の皆さんの場合には、雇用保険をお受けになりますときに、雇用保険の方からは税金の支払いがないものでございますから逆転現象が起こるといったようなこともございまして、その辺のところは少し御辛抱をしていただきたいということを、その中で言っているわけでございます。
 これは、社会保障の考え方はいろいろあるわけでございますけれども、高額所得の皆さん方は保険料が高いんだから、それに見合ってやはり給付の方も高くなければいけないという考え方もあれば、高額所得の皆さんは保険料は高いけれども、負担の方は多いけれども、給付の方についてはやはり上限があって、公平に上下の差がないように負担をするのが、それが社会保障だという考え方もあるわけでございまして、その辺のところも御理解をいただきながらいかなければならないというふうに思っております。
 全体でこれをどういうふうな形で見ていくか、今後大きな課題としてどう見ていくかということは、いわゆる社会保障全体の中でどう見ていくかということとの大きなかかわりがあるだろうというふうに思っております。
 これは、年金、医療、介護、雇用、これらをトータルで見て、皆さん方の負担が一体どれだけになるのか、全体の中でどのぐらいにここを抑えなければならないのかといったような問題とも絡んでおりまして、経済財政諮問会議におきましても、雇用保険の引き上げというのを見送ることはできないかというような御意見も出ているわけでございます。ならばここを、足らなくなる分を一体どこで見るかという議論まではなかなか行っていないわけでありまして、見送ることは簡単でございますけれども、足らなくなったときに一体どうするかというお話はないわけでございますので、そこはやはり我々、責任を持っております省といたしまして、そうしたことにならないように考えておかなければならない、そうしたことも今考えているわけでございます。
 全体といたしましては、これからの雇用情勢が一体どうなるのかということともかかわってくるというふうに思っております。不良債権処理が、最初言われましたのとは少しスピードも遅くなってまいったように思いますし、額も限定されてきたように思いますから、初め言われていたようなことはないというふうには思いますけれども、しかし、その処理がなされれば、それに応じた雇用問題が生じてくることだけは間違いがないわけでございます。その問題は、普通の問題とは違って、国が一つの意思として行う政策でございますから、その問題は別途どうするかということを考えなければいけないというふうに思っている次第でございます。
鍵田委員 大臣にお答えいただいている間に時間が来たようでございますが、もう一問、本来ならホームレス問題についてお聞きをしたかったんですが、お願いだけして、質問を終わりたいと思います。
 何か、厚生労働省にお願いしましたら、全国調査が三月末までに結論を出すというふうに聞いておるんですが、せっかく皆さんの御協力で通常国会で通していただいたわけでありますから、やはり全国調査ももっと早くやって、せめてこの年末、厳冬期が来るまでに路上から救出をするということをまず念頭に置いて、施策を進めていただきたい。そして、厳冬期などにはたくさんの人が路上死をしたりしておりまして、年間三百人ぐらいの方が大阪でも亡くなっておるというふうな実態がございますので、一日も早く、これは予備費を使ってでも、路上から救出をするということをぜひともお願いいたしたいと思います。
 それから、NPOの皆さんとの関係で、全国調査、さらにはいろいろな施策を進める上において、NPOの皆さんの活用ということをしっかりやっていただきたい。私、実は先月からニューヨークでこの実態につきまして調べてまいりましたけれども、ニューヨーク市におきましては、NPOとの関係が非常によくて、ほとんどの施策をNPOに委託をしておるというふうな実態もございました。大変な予算をNPOに提供して施策を進めておられるようでございますので、それらをひとつよろしくお願いを申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、大島敦君。
大島(敦)委員 民主党の大島敦です。
 鍵田委員の質問に引き続き、雇用対策関連について御質問をさせてください。
 十月の末に発表されました改革加速のための総合対策案として、産業再生・雇用対策戦略本部をつくるというお話があるんですけれども、厚生労働省との関係、そして厚生労働省とこの本部に対するかかわりについて御説明していただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 今お話をいただきましたように、若干今までと名前は変わりましたけれども、産業の再生とそして雇用の問題を中心にした本部をつくって、そこで、中心になりますのは経済産業省と厚生労働省、それに国土交通省も加わってくるというふうに思いますけれども、その辺がやはり中心になってこれをやっていく。しかし、ここは内閣府が取り仕切りはやっていただくということになるんだろうというふうに思いますが、その中での主なメンバーというのは、やはり経済産業省と厚生労働省だというふうに思っております。
 ここにおきましては、いわゆる従来からの雇用政策というものではなくて、この不良債権処理を行うことによりましてどういうことが発生をするかといったようなことの予測、それから、起こったときの対策等々をこの中で議論されるというふうに思っておりますし、そういうふうにしたいと思っているところでございます。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
大島(敦)委員 今回の小泉内閣のやり方というのは、先ほど大臣答弁の中でもございました経済諮問会議等、諮問会議あるいは本部を設けまして、各省庁の上部機関をつくって、混乱を招いているのかなという感じがします。
 昨年の臨時国会は、雇用対策国会であったはずでございます。ですから、昨年の臨時国会において、政府としては、雇用対策については対策はもう打ってしまって、すべて完了しているという前提だと思うのですけれども、今回のこの総合対応策と雇用対策、昨年の臨時国会で行われた雇用対策との関係につきまして、お考えをお聞かせいただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 昨年の雇用対策につきましての議論というのは、通常のと申しますか、平時という言葉は当たらないと思いますけれども、通常の雇用対策、景気の変動によります雇用対策、今悪化をしてきておりますこれに対してどうしていくかということが中心のものでございました。これからやるものにつきましては、これは、先ほども少し触れましたけれども、国が行います不良債権処理の加速という、その問題によって起こってまいりますものをどうするかということだろうというふうに思います。
 同じ雇用問題であることには間違いがございませんけれども、一つは、経済の自然な動向に合わせての雇用対策であり、今回の不良債権処理というのは国の意思によって行いますものでございますから、それに対する雇用対策というのは、これは少し質的には違うんだというふうに私は認識をいたしております。
 そうした意味で、それらのことを今回のこの本部におきましては議論をしていきたいというふうに思いますし、そこだけではなくて、我々も考えていきたいと思いますし、また、他の経済諮問会議等につきましても意見を述べたいというふうに思っている次第でございます。
大島(敦)委員 私は、一番の雇用対策は景気対策だと思っております。景気回復なくて雇用対策なしでございまして、景気がよくなることが一番であると考えております。しかしながら、今回の小泉内閣におきましては、構造改革をしないと景気回復なしという立場ですから、それは私の考え方とは違う立場であると思います。
 先ほど坂口大臣が述べられた、今回の産業再生・雇用対策戦略本部の役割について、これから生じるであろう失業というのは、国の意思、構造改革を進めるという国の意思において生じる失業であるから、これについては今までとは異なった考え方で対策をとらなければならないという御答弁がございました。
 そうしますと、予算措置というのが生じるかと思うのですけれども、今臨時国会あるいは来年の通常国会におきまして、抜本的な雇用対策を行うために予算措置、これまで以上の、これまでの雇用対策というのは今まであった雇用対策を継続するという形の雇用対策であったのですけれども、新規の対策について検討されるお考えがあるかについてお聞かせいただければ幸いです。
戸苅政府参考人 今回の不良債権処理の加速化に伴います雇用対策につきましては、一つは不良債権処理に伴って直接離職者が出てくるということと、それから、それによって離職者が出てくることによって失業者全体がふえるということと、二面があるんじゃないかと思っていまして、そういった意味で、今回の対策については、不良債権処理の加速化に伴って直接影響を受ける方に対するプロジェクト的な対策と、それから、失業者の数がふえてくるということに対する従来の対策の拡充というか、そういった二本立てで今回の対策を考えているということでございます。
 財源につきましては、補正予算という議論がどう出てくるのかというのはまだ見えないところでありますけれども、我々としては、大臣がおっしゃったように、国の施策によって出てくる離職者に対する対策というのはやはり一般財源でやるというのが基本的な考え方だろうというふうに思っていまして、そういった意味で、従来一般財源でやっておりましたもろもろの基金を財源にいたします対策。基金の残高が、これは平成十六年度までの基金でございますので、今の使用状況、これからの状況等を見ますと、ある程度の余裕があるということなものですから、現在考えております対策は、その余裕のある部分を活用して対策をとるということで、一般会計中心の対策を当面は考えているということであります。
 今後につきましては、不良債権処理の加速化の実施の時期、影響が出てくる時期、そのあたりもにらみ、さらに補正予算がどうなるのかというあたりをにらんで、適切に対処していくという考え方でおるところであります。
大島(敦)委員 今、私どもの選挙区、皆さんもそうだと思うんですけれども、個別に中小零細、町の商店主の方あるいは工場の経営者の方にお話を伺いますと、一段と冷え込んでおります。経営者の多くは、自分の給与は取らずに従業員の給与をお支払いしているという状態が三カ月、六カ月続いておりまして、不良債権処理という言葉はイコールうちの会社をつぶすのかという言葉の受け取り方をしているのが、多分、皆様あるいは私の地元の小さな商店主あるいは工場の経営者の方の気持ちだと思います。
 したがいまして、今、政治の出すメッセージとして、不良債権処理を加速させるというのはお互いの首をさらに絞め合うということになりますので、今の小泉政権のこの経済改革については、抜本的に変更する必要があると私は考えております。
 それでは、次の質問に移りたいと思います。
 再就職支援給付金なんですけれども、この給付金の要件を見直すお考えがあるかどうかについてお聞かせください。
鴨下副大臣 再就職支援給付金は、雇用対策法に基づきまして、再就職援助計画の認定を受けた事業主を対象としているわけでありますけれども、この再就職援助計画は、事業規模の縮小に伴い離職者を発生させる場合に作成するものでありまして、事業規模の縮小がないのに単に人を減らすような場合は含まれない、こういうようなことでございますし、また、本給付金は、当該計画に労働組合等の合意がある場合に支給すること、こういうふうにしておりまして、事業規模の縮小等に伴うもので労働組合等の同意がある場合について、労働者の再就職に向けた支援として、企業の負担を前提に、その再就職努力を促すもの、こういうふうに考えております。
 本給付金の見直しに当たっては、特定の企業への過大な支給を避ける、こういうような観点から、支給対象人数に上限を設けるといった一定の歯どめを検討しているところでありまして、現在、検討している最中でございます。
大島(敦)委員 その中の要件の一つとして、一週間以内という要件があると思うんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
戸苅政府参考人 今おっしゃいましたように、離職後一週間以内に再就職するというのが要件になっております。
 ただ、この助成金創設以来、実績は出ておりません。出ておりませんというのは、ほとんど出ておらないということでありますが、十件弱にとどまっております。いろいろ調べましたところ、一つはPR不足ということがございますけれども、どうも、再就職支援会社に委託して再就職が実現した場合に助成するというのがメーンの内容でありますけれども、再就職支援会社の再就職支援の実態等々から見ると、一週間以内というのはかなり無理があったということであります。
 そういったことで、我々としては、民間の職業紹介事業者から実情等を聞きまして、それから、私どもの方のさまざまな調査等を参考にいたしまして、これを三カ月以内に緩和しようということで今検討しておるところであります。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
大島(敦)委員 一週間以内だったものを三カ月以内に変えることによりまして、今御説明のございました再就職支援会社なんですけれども、企業が従業員をリストラするときに新しく再就職支援会社に頼むというよりも、今まで頼んでいた、今まで再就職支援会社を起用していたそのリストラする会社が、今回、七日間を三カ月に延ばすことによって、ただ単にそちらの会社に対する助成が行われるだけかなという考えもあるかと思うんですけれども、その点についてどうお考えかということ。
 もう一つ、再就職支援会社を頼む会社というのは、比較的余裕のある会社だと私は考えます。自分の会社の従業員をリストラするのに、聞くところによりますと、百万円前後のお金で再就職支援会社に頼んで、その再就職支援会社がリストラされた従業員を受け入れて次の職場を見つける、カウンセリングをして次の職場を見つけるということ。そのような考え方を持っているのは、規模の大きな会社、あるいはしっかりした会社が主であると考えます。
 今一番、リストラされた方に対するケアも必要なんですけれども、中堅会社あるいは中小の会社というのは、再就職支援会社を起用するまでの考えあるいは余裕がない会社も多いはずです。ですから、今回、この再就職支援給付金の要件を緩和するに当たっては、大きい会社でリストラされる従業員の方もしっかりケアしなくてはいけないんだけれども、まだまだその手が行き届いていない中堅の会社、中小の会社に対してこの再就職支援給付金を、こういう制度があるから、従業員の方、やむを得ない場合には使ってくださいよというような働きかけ、あるいは制度的なインセンティブも必要かと思うんです。
 この二点についてお聞かせいただければ幸いでございます。
戸苅政府参考人 まず、三カ月の件でありますが、私どもの調査、これは一つは人材職業紹介事業者の団体でありますが、ここに伺いますと、大体平均四カ月ぐらいかかるというお話でありました。それから、日本労働研究機構というのがあるんですが、ここでの調査によりますと、三カ月以内で再就職している者、無回答を除きますと大体四割ぐらいのようであります。
 今大島委員おっしゃるように、ほっておいても三カ月で就職するとすればそれに助成金を払うというのは効果がゼロではないか、こういうお話だと思うのでありますが、今申し上げたように、三カ月を超えて就職できずにというか、就職するのに三カ月以上要しているという企業が六割強あるという状況、そのあたりを考えますと、この制度はもともと一日でも早く再就職の実現を図るというねらいでありますので、そういった意味で、大体四割ぐらいのところをねらって制度をつくっているんですけれども、効果としては、残りの六割についても三カ月まで前倒しするという効果があるんだろう、こういうふうに思っている次第であります。
 それから、中小企業の問題であります。これは全く先生のおっしゃるとおりであります。そういったことで、私どもの制度、どうなっているかと申し上げますと、大企業のように民間の再就職支援会社を使えるところについては、民間の再就職支援会社を使っていただいたときの必要な経費の一定割合を助成するということにしておるわけでありますけれども、例えば中小企業などにつきましては、中小企業の団体に助成金を支給いたしまして、民間の中小企業の団体が再就職の相談室を設けるなどして中小企業の労働者、従業員の方の再就職の支援をした場合に助成するということもやっておりますし、それから何よりも、ハローワークの本来業務としてそのあたりもきちんと対応していくということで考えておるところであります。
大島(敦)委員 私の理解がちょっとまだ十分ではないんですけれども、今のお話の中で、中小企業の団体を通して再就職支援給付金を使うやのお話があったんですけれども、そこについて、ちょっと確認の御答弁をお願いします。
戸苅政府参考人 私の説明がちょっと不十分だったのかもしれませんが、この制度はどういう制度かと申しますと、中小企業の団体が中小企業の事業主のために相談室を設けたときの設置、運営の経費の助成、こういうことでありまして、そういう意味では、中小企業の事業主の方はその相談室を無料で活用できる、こういうことだろうというふうに思っております。
大島(敦)委員 まず、今回の再就職支援給付金につきまして、これから要件を緩和することによって実態が明らかになってくると思います、三カ月、半年後に。それを踏まえてもう一度質問をさせていただきます。
 特に大企業、大きな会社ですと、リストラする費用というのが一定でございまして、一定の費用に対してどのくらいの従業員をリストラするかという考え方をしがちでございます。したがいまして、再就職支援給付金を使う企業としては、大きな会社、例えば家電メーカーで海外に行くような会社の従業員のリストラに当たってこの再就職支援給付金を使うおそれもございまして、それについて、会社の予算として、今の考え方としては、会社が利益を出しているうちにできるだけリストラをしようという考え方もございます。そうしますと、この再就職支援給付金の使い方は非常に難しいと思います。
 この給付金というのは、益金、会社の利益に計上するお金でございますから、会社がもうかっていて、さらに従業員をリストラすることによってその会社がもうかる、それに対して支援給付金をお支払いするといいますと、ちょっとリストラをサポートするようにも受け取れるおそれがございますので、そこのところは、扱いとかあるいはどの会社を対象とするかというのは、厳格な規定、あるいはよくその内容を、これは労使間で取り決めに基づいて再就職支援給付金をお支払いするということですので、その内容について吟味していただければ幸いでございます。
 次の問題に移りたいと思います。
 前の通常国会の六月七日の当委員会で、健康保険からも労災保険からも救済されていない、いわゆる谷間問題につきまして、坂口厚生大臣の方から、解決に向けた検討を至急行うという答弁をいただきまして、その後五カ月が経過しておりますので、その点について今、現状がどうなっているのか、お聞かせいただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 確かに前国会で御質問をいただきまして、そのときに御指摘を受けるまで私もそこまで気がついていなかったわけでございますが、御指摘のとおり谷間問題があるというふうに思いまして、以後、内部でいろいろの検討を実は加えているところでございます。しかし、これは制度の根幹にかかわるものでございますから、結論を先に言わせていただきますと、現在のところまだ結論を出すに至っていないというのが現状でございますけれども、御趣旨は十分にわかっているつもりでございます。
 労災保険と健康保険、それぞれ趣旨があるものですから、特に労災保険の方は、これは雇用者を対象にするということになっているものでございますから、経営者の方にどうするというところまでの、この中になっていない。本当に小企業の、二人とか三人とかというときには別でございますけれども。その辺のところをどううまく整合性のあるものにするかということで今やっておるので、もう少し時間をちょうだいしたい。結論を出させていただきたいと思っております。
大島(敦)委員 小泉内閣になってから政治家の言葉が非常に軽くなっていると私は考えています。これまでの総理大臣の答弁あるいは大臣の答弁というのは、官僚答弁というのが非常に多かったんですけれども、回答したことについては守ろうという意思が非常に強かったのがこれまでの私たちの国会であったと思います。小泉内閣になってから非常に、総理大臣の答弁、それに対する約束を果たすというその政治家の言葉が軽くなっている。これは議会制民主主義の根幹にかかわる非常に危機的な状況を今迎えているかと思います。
 したがいまして、坂口厚生労働大臣におかれましては、今までの答弁の中でしっかりと、御答弁した内容については守っていこうという意思がございますので、ぜひ、そこのところを私も尊敬申し上げておりますので、この問題につきましても困っている方は非常に多いものですから、前向きに取り組んでいただければ、そして、最終的には政治の決断もしていただければ幸いと存じます。
 続きまして、この三事業の助成金の問題なんですけれども、昨今、新聞報道でも、会計検査院での指摘で、特定求職者雇用開発助成金と中小企業雇用創出人材確保助成金が二重に支払われて、約四千万円の助成金を支給し過ぎていたこと等が明らかになっております。
 これまでの助成金、補助金行政についてのチェック、しっかりとその問題、その助成金が支払われているのか、あるいは要件を満たさないで支払ってしまっているのか、それに対する還付はどうなっているのか、そのことについて、厚生労働省、政府としても、特にこのお金が企業、これは使用者側が拠出している民間からのお金でもありまして、厳格に、要件を満たさないものについては支給をとめる、あるいは払い過ぎていたものについてはしっかりと回収するというようなことが必要かと思うんですけれども、今後の対策についてお考えをお聞かせください。
鴨下副大臣 ただいまの御指摘は、雇用保険三事業の助成金が非常に複雑で、なおかつ今回のような二重支給等の問題が起こる、こういうようなことについての御質問だと思います。
 今回のように不適正な事態が生じたということはまことに遺憾なことでありまして、今後、各種助成金については、円滑な労働移動の促進等への重点化や、利用実績の上がっていない助成金の整理合理化という観点のもとに、制度の適正な運営が確保されるよう、一つに、支給要件等の判断基準の明確化、不正受給防止のための事前そして事後のチェック体制の強化などの観点から見直していこう、こういうようなことでありまして、関係審議会で今検討しているところであります。
 今後、この審議会による検討結果を踏まえまして、きちんとした見直しを行い、より効果的に、困っている人に助成金が使われる、こういうような方向でやってまいりたい、このように思っております。
大島(敦)委員 最後の質問といたします。
 政府が立てる政策あるいは実施する各政策というのは政治のメッセージであると考えておりまして、先ほどの、景気回復なければ雇用対策なしといったときの景気回復というのは、一般消費をふやすということであると考えます。
 そうしますと、今まで政府が出してきた政治のメッセージというのは、例えば厚生労働省管轄ですと、ことしの夏ごろ児童扶養手当を下げたり、あるいは来年の四月一日から健康保険の自己負担をふやしたり、メッセージとしては、できるだけ金を使うな、できるだけ小さくなって我慢しろというメッセージなんです。やはり、政府の出すメッセージとして非常に不適切であると思います。
 そして今回、雇用保険法の見直しがございまして、先ほど大臣の答弁の中でもございました。雇用保険料を上げるのか、あるいは弾力規定を来年早々にも発動するのか、その辺の基本的なお考え方につきまして、まだ煮詰めている段階だとは思いますけれども、大臣のお考えを最後にお聞かせいただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 現在の経済状態をどのように改善していくか、改善方法にはいろいろあるんだろうというふうに思います。現在たまっております不良債権を処理することによって経済の回復を早める、一時的には苦しいけれども、そのことが早いのだという主張もあれば、しかし、それをすることによってかえって厳しくなるのではないかという主張もあり、これは意見の分かれるところだというふうに思っております。
 ただ、我々がかかわっておりますところの社会保障というのは、景気がいいとき悪いとき、関係なしにやっていかなければならないものでございまして、そうした意味で、例えば保険料の引き上げ等が景気の悪いところに重なってまいりますと、大変これは苦しい思いをするわけでございますが、長期的な展望の中で考えますとやむを得ない、お願いを申し上げざるを得ないということも実はございます。
 しかし、さりとて、それならば、そうしたことを、生活者のことを全然考えなくてもいいかといえば、決してそんなことではないわけでありまして、十分な配慮をしていかなければならないわけでございます。その辺のところをどう決着をつけていくかということを十分に配慮しながらやっていく必要があるというのは、私も同じ認識を持っております。
大島(敦)委員 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、金田誠一君。
金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。
 坂口大臣には再任おめでとうございます。また、木村、鴨下両副大臣には、御就任まことにおめでとうございます。これから医療保険あるいは年金等、正念場を迎えるわけでございます。期待をいたしておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 とりわけ、敵は小泉さん、さらに竹中さんでございます。言いかえれば、財務省でございます。緊縮財政一辺倒、さらに、新保守主義というんでしょうか、こういう考え方に基づいた政策が次から次、打ち出されてきて、その標的にされているのが厚生労働省でございます。今国会でも、仄聞しますと、児童扶養手当の削減あるいは打ち切りなどが提案される、とんでもない話でございまして、こういう財務省ペースの施策に対しては、お三方、力を合わせて、断固とした態度で貫いていただきたい。審議の中でしかるべき決着がつけられますように、これまた御期待を申し上げたいと思うわけでございます。
 前置きはその程度にいたしまして、本題に入らせていただきます。
 一点目は、レジオネラ症発生防止対策の確立についてでございます。
 この件につきましては、数年前から発生防止対策の確立を要請いたしまして、ことしに入ってからは一月と五月の二回にわたって質問主意書を提出してきたところでございます。しかしながら、十分な対策が講じられないままに、本年の七月から八月にかけて、宮崎県日向市において、オープンしたばかりの温泉施設でレジオネラ症が集団発生し、死者七名、患者二百八十八名という過去最悪の事態となったわけでございます。大変遺憾なことであり、二度と繰り返さないための抜本対策が求められている、このように考えるところでございます。
 本来、レジオネラ症の全般的な対策としては、浴場施設のみならず、給水、給湯設備、冷却塔や冷却水系、加湿器その他広範な対策が必要でございますが、今回は、時間の関係もあって、浴場施設に絞って質問させていただきたいと思います。
 そこで、考えられる対策の第一でございますが、法律の整備が必要でございます。現行の法体系では公衆浴場法と旅館業法が関係いたしますが、いずれも昭和二十三年に制定された古めかしい法律であり、素人目にも次のような問題点があると思います。
 まず、法律の対象が限定的で、老人福祉施設や社会教育施設などの浴場は規制の対象外になっていること。講ずべき措置としては「換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置」などとされ、循環型浴槽やレジオネラ症を想定したものとはなっていないこと。したがって、旅館業法の一部を除けば、水質基準、設備基準、管理基準について全般的に国が定める事項とされていないという根本的な問題があること。また、条例で定めるにしても、その法的根拠としては十分と言えないこと。
 このことから、このたび平成十四年十月二十九日付をもって出された指針にしても、条例等にレジオネラ症発生防止対策を追加する際の地方自治法第二百四十五条の四第一項に基づく技術的助言というレベルにとどまらざるを得ないわけでございます。
 本来、水質基準、設備基準、管理基準を徹底するには法的強制力が必要でございますが、公衆浴場法、旅館業法のいずれにもこの件に関する罰則はございません。
 そこで、大臣に伺いますが、こうした問題点を解消するには抜本的な法改正が必要と考えるところでございますが、大臣、いかがでしょう。
坂口国務大臣 レジオネラに限らず、注意をしなければならないもの、それは飲料水も含めまして多々あるわけでございまして、今までそうしたことは本当にまれにしか起こらないことという前提のもとに考えてきた嫌いも率直に言ってあるわけでございまして、しかし、最近はさまざまな施設におきまして多量に発生をしている。先ほど例をお挙げになりましたように、非常に多数の人が亡くなる、そして多数の人がやはり感染をするといったことも起こっていることは事実でございます。
 これは現在のところ、公衆浴場あるいは旅館業を対象にしているわけでございまして、類似をすると申しますか、同じように宿泊をするような場所も最近はふえてきているということもあって、それはしかし、この旅館業や公衆浴場業には該当しないということのあることも率直に言って事実でございますから、これらの点、やはり私たちも、そういうことが起こらないようにするためには、やはり法律改正がまず大事なのか、それとも現状をどうしたら一番いいのか、それは詰めたいというふうに思っております。詰めまして、一番いい方法を選びたいというふうに思います。
金田(誠)委員 法改正について正式の場で申し上げたのは今回が初めてでございますから、にわかに結論めいたことにはなりにくいのかもしれませんが、法律をごらんになっていただくと、いかに古い時代のものかということが一目瞭然でわかると思うわけでございます。その他の方法もあり得るのかもしれませんが、まず根拠となる法律をきちんとする、そのことが欠けてはならない、こう私は思っておりまして、ぜひひとつよろしくお願いしたいと思います。
 次に、対策の第二でございますが、浴槽中の塩素濃度を重視する旧来の方式から、ろ過器や配管内の生物膜の発生を防止し、それを除去することを重点とした対策に転換することが必要でございます。レジオネラ属菌などはこの生物膜の内部で増殖し、しかもこの中で殺菌剤等から保護されていることからすれば当然のことであり、今回の条例等の指針、これに明記されたことは評価をしたいと思います。
 そこで、旧来の水質基準等に関する指針あるいは衛生管理要領、これらについても、法改正を待つまでもなく、新たな観点、つまり生物膜の発生防止と除去という観点から全面的に見直すべきと考えますが、いかがでしょうか。
高原政府参考人 平成十二年十二月に改正いたしました公衆浴場における水質基準等に関する指針、公衆浴場における衛生等管理要領及び旅館業における衛生等管理要領には、レジオネラ症の発生防止対策といたしまして、浴槽水の残留塩素濃度の維持、ろ過装置等の直前に塩素剤の投入口を設け、ろ過装置内に生物膜が発生することを抑制すること、また、一週間に一回以上ろ過装置を洗浄及び消毒することにより生物膜を除去すること等の総合的な対策を行うことを盛り込んでおります。
 また、本年十月に発出しました条例等の指針、いわゆるモデル条例でございますが、委員御指摘のとおり、最近のレジオネラ症集団発生事案にかんがみまして、これまでの指針や管理要領の内容を踏まえるとともに、生物膜の発生防止等の重要性が明確になるようにまとめたところでございます。
 今後とも、御指摘を踏まえまして、衛生等管理要領等についても内容を見直しまして、生物膜の発生を防止し、それを除去することが重要であることがより明確に伝わるよう、その他必要な改正も考えてまいりたい、こう考えております。
金田(誠)委員 今の管理要領等は、よく見ると生物膜のことも書いているんですが、それが中心に据えられたものにはなっておらない。非常に見にくい、理解しにくいものになっておりますから、ぜひ早急な改正をお願いしたいと思います。
 対策の第三でございますが、レジオネラ症の的確な診断と治療が求められるわけでございます。
 新版レジオネラ症防止指針によれば、我が国においてはレジオネラ症が的確に診断されていない状況が示されているところでございます。そこで、まず第一に、診断に必要な試薬キット等に保険適用をすること、これが一つでございます。もう一つは、診断と治療に関する情報提供の強化など医療機関の啓発、これが二つ目でございます。これが必要と考えますが、いかがでしょう。
真野政府参考人 現在、レジオネラ症の診断に係ります試薬キットにつきましては、薬事法に基づく承認の審査中というふうに私ども承知をいたしております。
 したがいまして、薬事法に基づく承認後、製造業者等から保険適用のための申請がありますれば、保険診療上の有用性の観点から審査を行いまして、中医協の議論を踏まえて対応したいというふうに考えております。
高原政府参考人 後半の、診断と治療に関する一般的な情報提供はどうなっておるかということでございますが、平成十一年四月に感染症法施行時に、感染症の診断・治療ガイドラインといたしまして、都道府県、医師会及び各医療機関に周知を図っております。さらに、今回の宮崎県でのレジオネラ症の発生を契機に、九月二十日付で「レジオネラ症患者の発生時等の対応について」と題する通知を都道府県、医師会等に出しまして、周知徹底を図ったところでございます。
金田(誠)委員 ぜひ、さらに強力にお願いをしたいと思います。
 レジオネラ症は、人の命にかかわる重大な感染症であるとともに、温泉地などで一たび発生すれば地域全体の死活問題ともなりかねない、経済的、社会的影響も大きいものでございます。ただいま申し上げましたことを初めとして、抜本的な対策を早急に講じていただくように、重ねて要請をいたしたいと思います。
 次に、二点目でございますが、歯科医療をめぐる諸問題について質問をさせていただきます。
 この件については、去る四月十七日に一般質疑で取り上げまして、とりわけ歯科技工料のいわゆる七、三問題については大臣にも前向きに受けとめていただいたところでございます。歯科医師会の皆様とも忌憚のないお話をしてみたい、こういう答弁もいただいておりますが、その後の進捗状況、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 日本歯科医師会及び日本歯科技工士会、いろいろ意見を聞いているところでございます。両者のお話し合いも、七月の二日、そして七月の十九日と二回やっていただきまして、そして十月になりまして、近々三回目をやりたいという御連絡があったようでございまして、間もなく行われるというふうに思っております。
 双方でその話し合いをしていただくことを優先したいというふうに思っておりますが、前回にもお話し申しましたとおり、やはり日本歯科医師会ともよくこれはお話をしなければいけないと思っておりますので、この三回ぐらいが終わりました時点で、直接にお話をさせていただきたいと思っているところでございます。
金田(誠)委員 なかなか簡単な問題ではないと思いますけれども、大臣、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。
 それはそれとして、話を進めさせていただきたいと思うんですが、この七、三問題が今日表面化している一つの背景としては、医療費全般が厳しい状況にあるという中で、とりわけ歯科に係る医療費、これが、比率の点から見ましても、あるいは個々の、ミクロ的に見ましても、これは医歯格差とでも申しましょうか、かなり厳しい状況に年々なっているということがあろうと思います。その上に、歯科医師の需給ギャップ、こういう問題が加わって経営もかなり圧迫されている、この中からこの七、三問題という現象もあらわれていると私なりに認識をいたしております。これが一つの背景だろう、こう思っております。
 したがって、この七、三問題と同時に、背景となっている諸問題にもぜひ目を向けていただいて御検討をいただきたい、このことをまずは強く御要請申し上げたいと思うわけでございます。
 その上で、平成十三年実施の歯科技工料調査の結果という資料があるわけでございますが、これについて質問をさせていただきます。
 対保険点数、保険点数に対する技工料の平均値、これは七〇%が基本となるべきところでございますが、調査の結果は六一・七%と聞いております。七、三が六、四になっているということは重大な問題ではないか、こう考えるわけでございますが、いかがでしょう。
真野政府参考人 先生御指摘の歯科技工料調査は二年に一度行われるということになっておりまして、御指摘のとおり、直近の平成十三年度の調査におきましては、各点数に対する委託歯科技工料の割合の平均は六一・七%となっております。ただ、この割合はこれまでも、診療報酬改定の影響等によりまして、調査年度により変動が見られるというふうに思っております。
 平成十四年度の診療報酬改定におきましては、義歯等の製作に関する点数の引き上げを行ったところでございまして、告示の趣旨に基づいて歯科技工の委託が円滑に実施されるように、引き続きその推移を注視していきたいというふうに思っております。
金田(誠)委員 単なる循環的な上がり下がりとまた別な要素がこの時点に来て加わっているのではないかな、かなり深刻な事態になっている、私はこう受けとめております。
 さらにお聞きをしますけれども、また、この比率にはかなりの地域差があるというふうに伺っております。平均的には六、四ということでございますが、中には五、五、あるいは逆の四、六などもあるということを聞いているわけでございますが、局長、この地域差についてどのように把握されていますでしょうか。
真野政府参考人 御指摘のとおり、委託の状況につきましては、各地域の実情はあるというふうに考えておりますが、残念ながら、サンプル数その他の関係もございまして、私ども、個々にどの地域においてどれぐらいの差というのを統計的に把握をいたしてはおりません。
 しかしながら、基本的には、先ほど申し上げましたように、各地域におきまして七対三告示の趣旨が徹底されるということが大事であるというふうに考えておりまして、歯科医師会、技工士会、関係団体の御協力を得たいというふうに思っております。
金田(誠)委員 今後、この地域の状況についてもぜひつかんでいただきたいと思うわけでございますが、いずれにしても、診療報酬はこの七、三を基本に算定されていると思うわけでございます。これと大きくかけ離れている実態、これが問題だと思うわけでございます。
 昭和六十三年の厚生省告示は個々の当事者を拘束するものではないということが後には通達で出ているようでございますが、それにしても、この同じ年の昭和六十三年保険局長通知によれば、この七対三の趣旨というのは、良質な歯科医療の確保に資するということがこの趣旨であるということも通知されているわけでございまして、この趣旨からしても問題と言わざるを得ないわけでございます。
 私は、この七対三の本来の趣旨は、本来、歯科技工は値段で競争するのではなくて、七対三を基本として、多少の上下、これはあっても当然だと思うわけでございますが、常識的に許容される多少の上下の範囲の中で、基本的には技工の質で競争をする。値段はほぼどこでも同じ、しかし腕のいいところ、そうでもないところ、それによって歯科技工、歯科医療全体の底上げ、良質な歯科医療の確保に資する、こういう趣旨だと思っているわけでございます。そうであるならば、七、三の基本を担保していく。六、四になったり五、五になったりしないように、七、三の基本を担保していく仕組みが必要だと思うわけでございます。今それがないわけでございます。
 そこで、この基本を担保する仕組みを検討するための何らかの検討会みたいなものを設置して早急にこの結論を出すべきではないか、こう考えるわけでございますが、大臣、いかがでしょう。
坂口国務大臣 先ほどお話を申し上げましたように、かなり双方のお話も続いてきておりますし、年内には私もお話をさせていただきたいというふうに思っております。そうした中で、どういう形で決着するのが一番双方ともに望ましいのかということについて、当事者のお話も聞きながら、そして第三者的立場に立ちまして、我々も国民の側に立って、どういうことが一番望ましいのかといったことをよく考えていきたいというふうに思います。
金田(誠)委員 あくまでも、基本は、良質な歯科医療の確保に資するということが原点になるべきだと思うわけでございます。そういう考えに立てば立つほど、安ければいいという競争が行われているとすれば、これは趣旨に反するのではないか。七対三が積算をしていって必要な本来の姿だとすれば、それはそれとして、あとは腕のよしあしで本当に競い合う、そういう仕組みをぜひつくっていただきたいと思います。
 簡単なことではないと重々わかるわけでございますが、これからの話し合いの推移もぜひ見ていただく中から、私は、例えばこの検討会みたいなもので、オープンの場できちっと議論することが有効ではないのかな、こう思って提案をさせていただきました。大臣の趣旨も、考え方としては同じだと思います。手法の一つとして出させていただいたわけでございますけれども、ぜひひとつ、今後こうしたものも含めて実効性のある対応を御検討いただきたいとお願い申し上げる次第でございます。
 質問の最後でございますが、医療保険制度改革についてお尋ねをいたします。
 これにつきましては、坂口大臣は先般私案を公表されたところでございますが、これは新聞報道等で拝見をする程度でございますから、もしかして私の受けとめ違いがあるかもしれません。しかし、その範囲で拝見をしますと、私どもがかねて主張してきた点、これが大きく取り入れられているのではないかな、こう思って拝見をしているところでございます。
 いわゆる突き抜け方式の採用、老人だけを特定の保険集団にしないという形の中から、継続加入方式、こういうことが念頭に置かれているのかな。あるいは、強く主張してまいりましたリスク構造調整の導入、さらに保険者の再編成、この柱となる部分はかなり御理解をいただいたのかな、こう思っているところでございます。
 この三つの柱がそろえば、本来的な保険方式による老人も含めた社会保障制度ということに大きく前進できるのではないか。これに対する、損か得かでいろいろな立場で意見もあるようでございますが、個別の損得は経過措置等を講ずるにしても、本来、国民の医療を支える持続可能な医療保険制度としてどう設計するかということでは、大臣の私案、私の理解のとおりであれば賛意を表したいし応援をいたしたい、こう思うわけでございます。
 今後、たたき台あるいは基本方針という形で進むようでございますが、断固たる決意でこの筋を貫いていただきたい。ぜひひとつよろしくお願いを申し上げて、御決意のほどをお示しいただければと思います。
坂口国務大臣 現在、厚生労働省案を取りまとめ中でございまして、年末までにまとめたい、でき得るならば十一月末までにまとめたい。そしてごらんをいただきまして、いろいろの御批判をいただき、そして来年の三月までには決定をしたい、かように考えている次第でございます。具体的なことは、後日またお話をさせていただくこともあろうかと思います。
金田(誠)委員 ひとつ最善の努力を、決意を持って御努力をしていただきたいと要請を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
坂井委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時三十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時一分開議
坂井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。家西悟君。
家西委員 座ったままで毎回恐縮いたしますけれども、よろしくお願い申し上げます。民主党の家西悟です。
 それではまず、ウイルス肝炎対策についてお伺いしたいと思います。
 この十月二十一日、十六人の方によって薬害C型肝炎訴訟が、大阪、東京とそれぞれ提起されました。肝炎ウイルスに汚染されていることを全く知らずに投与された患者さんの立場を考えると、私も当事者の一人として、原告の方々のお気持ちというのは本当に痛いほどよくわかります。
 そこで、坂口大臣にお伺い申し上げます。
 二十三日の閣議後の記者会見で、患者の苦しみは私もよく知っている、どんな内容か十分に検討したいとの発言がありました。報道されているわけですけれども、十分に検討したいとは一体どういう意味なのでしょうか。謝罪をされるという意味なのでしょうか。それとも和解なのか救済なのか。一体どういう検討をされようとしているのか、具体的に御説明いただければと思います。
坂口国務大臣 C型肝炎の問題につきましては、非常に歴史の長い問題でございます。保存血液の時代からこれは存在したわけでございまして、大変長い歴史のある問題でございます。C型肝炎であるということがわかりましてからはまだ歴史はそう長くはありませんけれども、輸血後肝炎でありますとか血清肝炎というふうに言われておりました時代にさかのぼりますと、大変歴史のあります問題でございます。
 今回、C型肝炎の患者の皆さん方が訴訟に踏み切られたというお話を先日お伺いいたしましたので、この病気の内容につきましては私も十分に存じておりますので、これは、患者の皆さん方の立場からすればまことに重大な問題であり、お気の毒だというふうに思いますし、それは御同情を申し上げたいというふうに申し上げたわけでございます。
 ただし、この訴訟の内容につきましては、まだ私、伺っておりませんので、十分にそれは精読をさせていただいて、そしてそれに対する対応を考えさせていただきたいというふうに申し上げたわけでございます。現在のところ、そういう心境でございます。
家西委員 では、大臣は訴状はまだお読みになっていないというふうに判断してよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 現在のところ、まだ精読させていただいておりません。
家西委員 それでは、早急に一度お読みいただきたいと思います。フィブリノゲンという問題というものは、ほかの、一般のC型肝炎の患者さんと比べると状況は違うのではないかというふうにも私は思いますので、ぜひとも精読いただいて、どういう御判断をいただけるのか、患者の方々にとって期待をされている内容の見解を述べていただければ幸いだと思います。
 続いて、順次具体的にお尋ねしたいと思います。
 せんだっての大臣の所信演説の中で、C型肝炎についての新薬の研究開発、普及啓発と、感染された方々の健康維持、増進に取り組んでまいりますと述べられておられますけれども、そこでお伺いしますが、四十歳以上の方々には老人健康診断でC型肝炎の検査を導入されていますが、若年層の患者の発見はいまだ不十分だというふうに私は思っています。
 そこで、加熱製剤への切りかえの時期から考えても、フィブリノゲンでいいますと非加熱製剤、また輸血で考えても、NATが導入されたのは九九年というふうに日赤の方ではおっしゃっているわけですけれども、そういうことを考えますと、最低でも三歳の子供さんにも使われた可能性があるとか、またフィブリノゲンでも、そういうふうに非加熱製剤で考えても、八九年ぐらいが使用期限の最終だというふうにも思うわけですけれども、そうすると十三歳。そして、加熱後の界面活性の不活化処理が導入されて以降というふうに考えても八歳ぐらいにはなるんじゃないかというふうにも考えます。
 こういった問題を考えたときに、四十歳以上の人たちだけを対象とした検査というものは不十分ではないかというふうに私は思いますけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。その点について御答弁いただければと思います。
坂口国務大臣 お若い皆さん方でございますと、小さいときに手術をされましたとか、あるいはまた、生まれましたときにどういう状況であったというようなことも比較的はっきりしているのではないかというふうに思いますし、中には母子手帳にちゃんと書き込まれた方もございます。そうした方々について一体今後どうしていくかという問題がございますが、さらにその肝炎が慢性化をし、あるいはまた肝硬変等に進んでいくということは、かなり日時を経てからの話になってまいります。
 いつの時点でこれを検討させていただいたのが一番いいのかというようなことにつきましては、専門家のちょっと御意見を聞いて、一遍検討したいというふうに考えております。例えば、十五歳なら十五歳、中学校を御卒業になるぐらいなときにやった方がいいのか、あるいは二十歳なら二十歳の成人健診としてやった方がいいのか、そうしたこともございまして、毎年やる必要はございませんので、どういう節目でその検討をするか、お若い皆さん方に必要であるならばどうするかといったようなことは、専門家の御意見をお聞きして決定したいと思っております。
家西委員 それでは、もう少し具体的に申し上げると、先ほども言いましたフィブリノゲンの非加熱は、こんなことを釈迦に説法というんでしょうけれども、大臣に申し上げるのはおかしいというふうに思うわけですけれども、非加熱のフィブリノゲン製剤は八七年まで販売され、そして賞味期限というか有効期限を考えると、八九年ぐらいというふうに考えますと十三歳。そして、肝臓の病態が慢性化し、そして肝硬変、肝がんへ移行するのは二十年から三十年というふうに言われているわけですから、その時間を考えますと、例えば新生児に使われたというふうになると二十歳ということは、二十年経過するということになると、もう既に肝硬変、肝がんへの時期に差しかかっているというか、そのような病態が考えられるんじゃないかというふうに私は思えてなりません。そういうふうに考えると、やはりもっと早い段階で処置をしていくのが適正ではないかというふうにも考えます。
 ですから、有識者会議でそのようにいつの時期というふうにおっしゃらずに、具体的にもう早く取り組んでいくんだというふうな方針をお出しになられた方がいいんじゃないでしょうか。例えば、第8、第9因子を含めた、前の問題としてやられたときに、四十歳という形で健康診断でやろうというふうに言われましたけれども、このフィブリノゲンという問題を考えたときには、そういう新生児も含めて幅広く使われたというふうに承知されているわけですから、ぜひとも早い段階から検査をされていくのが筋ではないでしょうか。大臣、いかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 これは、ただ単に何年という時間だけの問題なのか、年齢による差というものはあるのかないのか、そうしたことも絡んでまいりますから、ただ物理的な時間が二十年なら二十年たっているからそのときにやるというだけでは私はないと思っております。
 もう少しこの年齢等との問題等も考慮に入れて、そしてどうした方が一番安全かということを考えるべきだというふうに思っておりますので、そこはこの道の専門家の御意見を十分に拝聴したい、こういうふうに思っております。
家西委員 では、若年者はいいんだ、ある程度の時間を経過しても大丈夫だということ、専門家に聞いてからでも大丈夫じゃないかという御判断なんでしょうか。若年者というものは、早期にやればやるほど回復力も早いし、いいんじゃないんでしょうか。
 私は、今回四十歳という形で区切られていることよりも、もっと全国民、またそういった経験のある方々、母子手帳等々に書かれているというようなことも今発言されましたけれども、そういう人たちには早期に検査を受けてほしい、そして、HCV抗体陽性であるというふうになれば、HCVの定性、定量の検査を行ってほしい、ウイルスの検査を行ってほしい、活動性であるのかそうではないのかということも含めて検査をするということを国として出されるべきじゃないんでしょうか。
坂口国務大臣 ですからそこは、年齢が若いということは進行が早いということなのか、あるいは年齢が若いということは、肝硬変への移行ということは、これはそんなに急がなくてもいい問題なのか、そうした点は、これは専門家の御意見を聞いて決めたいというふうに言っているわけでありまして、私の知識の程度では判断のできにくいことでございます。
 したがいまして、もう少しそれは早い方がいいというふうな判断が出ましたら、それは早くやらなければいけないというふうに思いますし、それから、はっきりわかっている皆さん方につきましては、個々には検査をお受けいただくということは、大変これはいいことだというふうに思っておりますが、私が今申し上げておりますのは、全体について大体何年ぐらいなところでチェックをしたらいいかということを申し上げているわけであります。
家西委員 それではもう一点、何度も言って申しわけございませんけれども、ここに議事録がございます。昨年の二月二十八日の議事録で、私は新生児等も含めての質問をしています。
 フィブリノゲンについてということでその後に出てくるわけですけれども、この時期に出産や新生児出血等の治療において使った、そういった症状を呈した人たちには、ぜひとも検査を受けてほしいと呼びかけをということを申し上げて、当時の政府委員という形で宮島局長の方から、納入の状況でございますけれども、フィブリノゲン製剤の状況につきましては、社団法人日本血液製剤協会を通じまして掌握しております、その内容は、隔年、公表させていただいておりますと。そして、その後にも、約二十年間の長期にわたって、非常に多くに納入し、医療機関に使われたということが掌握されているというようなことも具体的に言われて、調査もしていくというようなことも言われているわけですけれども、一年超えています。
 この間、どういったことについてその有識者会議やらを含めて検討されてきたのか、御答弁いただきたい。
小島政府参考人 私どもといたしましては、有識者会議の結論等を踏まえまして、四十歳以上の方につきましては、老人保健法あるいは政府管掌健康保険における検査、その他の若い方々につきましては、できるだけ広報啓発活動を通じまして検査を受けていただこうということでございまして、そのために政府広報をこの五月十日に行いましたし、あるいはホームページにおきましてQアンドAを掲載しているということで、それは本年の八月に改訂しております。
 そういったことで、できるだけC型肝炎についての理解を国民の方々全体に呼びかけていくという努力をしているわけでございます。
家西委員 今の啓発活動というものは、何か中高年の方々に肝硬変、肝がんというものが起こるんだ、C型肝炎というのは問題なんだというふうにしかとらえられていないような状況が私は裏であるように思えてなりません。新生児にも使ったんだということをはっきりと言われて、そうすると二十やそこいらでもう既にこういう状況になる可能性のある人もいるんだということを明快にPRするなり広報活動されないと、若い人たちは自分たちには関係がない問題だというふうにとらえられないですか。そして、四十歳以上は確かに言われているとおり予算もつけて検査はやられているけれども、それ以前についての問題というものは全然抜けていたんじゃないのかなというふうに思えてなりません。
 再三にわたって私はC型肝炎の問題で言っている中で、議事録等々をずっと見ていくと、こういうことを指摘しているわけですけれども、その都度調査しますとか検討しますというようなお答えもいただいていますし、その後どうなっているのかというのはもう全然公表もないし、何をされているのかなというふうに思えてなりません。ぜひとも大きく広報活動をとっていただきたいなと思います。
 あわせて、本年の七月十日の本委員会で、私がフィブリノゲン製剤について徹底調査をするようにという質問をしたときに、当時の局長、政府参考人は、フィブリノゲン製剤と肝炎との因果関係については不明な点がある、資料を分析し公表したいと回答されています。
 そこでお伺いします。
 現在、フィブリノゲンについてどの程度の因果関係の調査をされているのか、いつごろをめどに結果を発表されるのか、お尋ねします。
 それとあわせて、これは一部という言い方で本委員会でも言いましたけれども、もう具体的に言います。フジテレビの「ニュースJAPAN」というニュース報道番組で、フィブリノゲン製剤にHCVウイルスが混入していたということが、PCR法を含めてウイルスが全部に入っていた、加熱、非加熱を含めてすべてに入っていたという報道がなされているわけですけれども、これについて、当時、ここに議事録があります。
 このような一部マスコミについて肝炎が入っているという報道がなされているが、こういったことについて政府として実態調査をするつもりがあるのかというふうに言ったときに、これは大臣がお答えになっています。「当然のことながら、これは究明をしなければならないというふうに思っております。」というふうに御答弁いただいています。この間、どういう調査をされてきたのか御答弁ください。
坂口国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、保存血液においてすら、これは肝炎が多数発生したわけでございます。私が最初血液に関係をしましたことには、保存血液ですら五〇%、これは肝炎の発生があったわけであります。(家西委員「それは昭和三十年代ですよね」と呼ぶ)一九八〇年ぐらいになりましても一〇%前後の発生があったと記憶をいたしております。
 したがいまして、多くの方の血液を集めてつくります血漿製剤におきましては、十分これは予測のされ得ることでございます。血漿製剤におきまして肝炎の発生は当然予測をされることでございますので、それは血漿製剤だけではなくて、私は、今回のこの問題を全体としてどう解決していくかという視点が大事だというふうに思っている次第でございます。
小島政府参考人 お尋ねの件でございますが、本年七月十日、厚生労働委員会におきまして、当時厚生労働省で実施しておりましたフィブリノゲン製剤に関する調査、それにつきまして、先生の方から御質問をいただきました。当時、私どもはこのフィブリノゲン製剤に関する調査をずっと進めてまいったわけでございますが、その調査の一環として、フィブリノゲン製剤とC型肝炎発生との関係に係る知見の変遷について、関係する学会等に対しまして照会を行いました。その結果を七月九日に公表したところでございます。
 七月十日の委員会におきましては、議員より、日本輸血学会からの回答に示された血液製剤投与と肝炎の関係に関する論文にも言及しつつ御質問をいただきました。当時の政府参考人からお答え申し上げたんですが、その論文によりますと、フィブリノゲン製剤と輸血の併用状況がわからない、あるいはフィブリノゲン製剤と他の凝固因子製剤との併用状況がわからない等々不明な点もございまして、前政府参考人からは、輸血とフィブリノゲン製剤を同時に使った場合の因果関係についてはなかなか難しい問題があると、因果関係につきまして難しい問題があるということの趣旨で御答弁を申し上げたというふうに承知しております。
家西委員 それでは、昨年の五月十八日の委員会で、当時の桝屋副大臣は、フィブリノゲン製剤を投与された方々は肝炎ウイルスに感染する可能性が一般の方々より高いということについて、国民に周知徹底していかなければならないと御答弁いただいております。
 そして、実際にウイルスが混入しているという事実が今マスコミの方で検査をしてわかったわけですね。併用したか云々ではなくて混入していたという事実。しかも、非加熱と加熱も含めてすべてに入っていたということについてどうなのかというふうに私は質問しました。
 そして、当時は、これはまだ報道されたかどうか覚えていませんけれども、当然のことながらそういったものがわかったときには事実関係の調査をするというふうにこの委員会で答弁いただいているわけですけれども、調査をされたのかどうかということを聞いているんですよ。していないでしょう。御答弁ください。
坂口国務大臣 事務局からまた後で答弁をさせますけれども、先ほどから申し上げておりますように、それが保存血液であれ血液製剤であれ、その中にC型肝炎ウイルスが含まれている可能性というのは十分にそれはあったというふうに、十分に予測することが……(家西委員「いや、大臣違います。私の質問は違います。私はフィブリノゲンに入っているということを聞いているんです。入っていたということが確認されて、その後の、国として調査をされるんですかということを聞いているんですよ。保存血の話はしていません」と呼ぶ)だから、私が今申し上げているのは、保存血液等からつくっております血漿製剤の中にも、当然それは入っている可能性というものはあるわけです。
 ありますけれども、しかし、当面の、直面の病気を治しますためにはそれを使わざるを得なかったというところにこの問題の特殊性があるということを私は申し上げたいわけでありまして、だから、フィブリノゲンならフィブリノゲンの中にもし含まれているということが発見されたとすれば、それはあり得る話だというふうに私は思います。だけれども、それがあり得るということがわかりましても、それは今まで、過去の経緯から申しますと、それは当然予測し得る話でありまして、そのことを今どうこう言うわけにはいかないというふうに思っています。
家西委員 違います。それをおっしゃるのなら、必要だったというふうにおっしゃるのなら、こういう事例があります。
 出産時にフィブリノゲンを使われた。三百ccの出血があった。そしてフィブリノゲンで止血を行ったというふうな事例があります。しかし、献血というものは四百ccです。これが大量出血と言えるんでしょうか。本当に必要だったと言える患者さんだったんでしょうか。献血では四百cc抜きながら、出産時で三百cc出たらこれは大量出血と言うのならば、四百ccの献血自体がもう根拠を失う話ですよ。おかしくならないですか。
坂口国務大臣 お子さんの場合と成人の場合とは違いますし……(家西委員「いや、産婦の話です」と呼ぶ)そしてそれは、どれだけ出るかということは予測のできない話でありますから、出血が起こり得るというときには使ったということも当然あり得ると私は思います。しかし、それを使ったがゆえに結果として三百ccで終わったのかもしれないし……(家西委員「いや、三百ccの出血があったから使ったというふうに言われているんですよ」と呼ぶ)そこは今、三百ccだったからということでそれを言うことはできないと私は思いますね。
 ですから、どれだけ出血をするかということを先に予測することは、なかなかそれは難しい。しかし、出血の可能性が十分にあるというのでそれは使われたんだろうというふうに思いますし、使われた結果として少なかったのかもしれないし、そこは一概に私は言うことはできないというふうに思っております。
家西委員 大臣は血液の専門家であり、日赤の所長まで務められた方の御答弁とは私は到底思えません、今の質問に対して。体重に対して何分の一なくなったら生命に危険を及ぼすというふうに、出血量のことです。そのことを考えればわかる話です、こんなことは。
坂口国務大臣 ですから、私はその三百ccというものにこだわっているわけではありません。
 人間の体の中の血液は、大体普通の人で、八百cc出血をいたしましたら、体の中における造血反応が起こってくる、造血に転じるというふうに言われております。したがいまして、三百や四百出血しましてどうこうということはないというふうに私も思いますけれども、しかしそれは……(家西委員「矛盾してないですか、今の答弁、それだったら」と呼ぶ)いや、そうではありません。それは、患者さんがどれだけ出血するかはわからないわけでありまして、出血する可能性があるというときに使われるということはあり得る話でありますから、あるいはまた、そういうものを使ったがゆえに出血量が少なくなったということは当然あり得るわけですから、私は申し上げているわけであります。
家西委員 こればかり言っていると時間がなくなります。
 もう一つ聞かせていただきたいことがあります。
 今、フィブリノゲンを納入した医療機関は、昭和五十五年以降、全国の七千四医療施設があるというふうに掌握されておられますけれども、私は、その七千四医療施設の病院名及び所在地等々を教えてほしいということを言ったときに、再三にわたって資料要求をしたときに、拒否されています。混乱が生じるとかいろいろなことを言われています。その根拠は一体何なんでしょうか、御答弁ください。
小島政府参考人 御指摘のフィブリノゲン製剤の納入先医療機関のリストの問題でございますが、昨年三月に、旧ミドリ十字に対しまして、フィブリノゲン製剤の製造状況それから当該製剤による肝炎の発生状況それから納入医療機関数等を報告するように求めました。それは報告で出てきたわけでございますが、医療機関名までの報告は求めておりませんので、御指摘の七千四の医療機関のリストについては、現在、厚生労働省としては保有していないということでございます。
家西委員 私は、掌握していないということで、だったらメーカーに対して要求してほしいというふうに申し上げたときに、混乱が生じるというふうに言われました。そして、なぜ混乱が生じるんだということを言ったときに、有識者会議でそのような結論も得ていますというふうに言われていますけれども、その混乱する理由というのは何なんですか。第8、第9因子を含めた、PPSBも含めた八百三の医療施設は一たん公表していますね。フィブリノゲンを納入した七千四の医療施設に関してだけはどうして公表できないとおっしゃるのか、そこは理由がわからない。
 そして、薬事法の六十一条だったと思いますけれども、これ、ちょっと後で確認とらせていただきたい。
 薬事法に載っているわけですね、立入調査権も含めて。そういったものを行使されるべきじゃないんでしょうか。国民の多くの方々の生命にかかわる問題について、ただ数だけで掌握しているという形でいいんでしょうか。その辺、いかがお考えですか。
小島政府参考人 先生御指摘のように、薬事法第六十九条におきまして、厚生労働大臣はメーカーに対しまして報告をさせることができるという規定がございますが、あくまでこれは保健衛生上必要な報告ということでございまして、必要な理由というのが要るわけでございます。
 私どもとしては、C型肝炎対策は、フィブリノゲン製剤の投与を受けた者のみならず、輸血を受けた者も広く含め、肝炎発症のリスクの高い者全体を広く対象とすべきであること、それからまた、フィブリノゲン製剤の納入先の医療機関の一部のみが掲載されている、昭和五十四年前は旧ミドリ十字もリストを持っていないわけでございますが、当該リストに掲載されている医療機関で治療を受けた者のみがC型肝炎のリスクを有しているという誤解も与えるおそれがあるということで考えますと、このリストを薬事法六十九条の規定に基づき報告させることは適当ではないんじゃないかというふうな考え方でございます。
家西委員 時間が来ましたので終わりますけれども、最後に一つだけ。
 今、五十四年以前の資料については持ち合わせがない、向こうも持っていないというふうにおっしゃいましたけれども、もし、その資料を、仮に疑わしいもの、またそれに該当するようなものが今後発見された場合、調査されますか、立入調査されますか。その点だけ、一点だけお答えいただいて、私の質問を終わります。
小島政府参考人 どういう事態が想定されるかちょっと想像もつきませんが、その時点で検討させていただきます。
家西委員 いや、調査するかどうかだけ言って。
小島政府参考人 まだどういう事態かわかりませんので、調査方法も含めて検討してみます。
家西委員 いや、じゃ、あるんでしょう。あるということを疑っているからこそ、そんなふうに言っているんでしょう。ないというんならそんなこと言わないでしょう。
小島政府参考人 いや、今のところ相手方はないと言っておりますので。
家西委員 だから、それなりの疑わしきものが出てきたときには調査すると言えばいいじゃないですか。
坂井委員長 時間がもう来ましたので。
家西委員 それだけのことです。言ってください、最後に。
小島政府参考人 調査することを検討いたします。
家西委員 検討じゃなくて、すると言いなさい。疑わしきものが出てきたら調査すると言ったらいいんじゃないですか。ないと言うてるんやから。
小島政府参考人 疑わしいものが出てきた場合には調査いたします。
家西委員 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、山井和則君。
山井委員 どうかよろしくお願いいたします。
 坂口大臣におかれましては留任おめでとうございます。またこれからお世話になります。また、きょうは新しい木村副大臣にも御質問させていただきますが、よろしくお願いいたします。
 資料をお配りをさせていただきました。ちょっと七ページはありませんが、この資料を使いながら、きょうは、介護保険また特別養護老人ホームを中心とする施設について、三十分間、質問をさせていただきたいと思います。
 私たち民主党は去る七月に、介護保険、二年を過ぎて、「介護保険への十の提言」というものを発表いたしました。過去一年間、二十数回会合を重ねて、現場の方々の声を直接聞いたり、また、厚生労働省の担当者の方々とも議論を重ねてまいりました。そんな中で、特にきょうは、星印をつけた「居住環境のすぐれた介護基盤の整備を」、そして「サービスの質の向上へのインセンティブ」、また、「質の向上につながる介護報酬の改定を」、このあたりについて特に質問をさせていただきたいと思います。
 在宅、施設、両面ありますし、きょうの午前中の釘宮先生の話では在宅重視という趣旨の御質問がございました。在宅と施設はまさに車の両輪でありまして、私はこのきょうの質問の中で、施設の方の質を二十一世紀どうしていくのかということを質問させていただきます。
 特に、特別養護老人ホームのあり方というのは老人保健施設や療養型のあり方も決めると思いますし、グループホームや在宅に関してはまた別の機会に質問をさせていただきたいと思います。
 そもそも、なぜ私がこういう施設の質にこだわるのかということを少しお話ししたいのですが、私が政治家を志した一つの原点は、私の祖母が長年寝たきりでありました。そして、二十過ぎのころから私は全国の老人ホームを回って実習をしながら福祉の勉強をしたのですが、忘れもしませんが、ある老人ホームに行ったときに、痴呆症のお年寄りが、私が一カ月の実習を終えて最終日に帰ろうとしたら、連れて帰ってくださいと言って、私の腕にしがみついて泣いておられました。お見舞いに来ておられた御家族の方もその場で泣いておられましたけれども。
 そんな体験を通じて、家にずっとおられるお年寄りはそれはそれでいいわけですけれども、何かの事情で在宅で介護できなくなったお年寄りも、第二の家としてやはり老人ホームでいい暮らしをできる、そんな世の中をつくりたい。そしてそのためには、現場の介護職員の方は頑張っておられるけれども、なかなかこの職員の方の数も少ないのですね。そういう問題をよくするには、やはりこれは現場だけで頑張ってもだめで、現場の声を国会に届けないとだめだということを私は思わせていただきました。そういう意味で、私の思いを込めて質問をさせていただきます。
 まず第一問目ですが、このような特別養護老人ホームのあり方について、去る九月に委員会視察を、北海道の静苑ホームというところにさせていただきました。そこは、個室ケア、ユニットケア、個別ケアということに取り組んでおられました。
 厚生労働省さんにおかれましては、このような個室ケア、ユニットケアというものを推進されて、また、新型特養、別名居住福祉型特養というものも今後推進されていかれるということですが、その推進の意義と理由というものについてお聞かせ願いたいと思います。
坂口国務大臣 どうぞまたひとつ、これからよろしくお願い申し上げたいと思います。
 個室のユニットケアにつきましては、前々から先生御指摘をいただいているところでありまして、そして、個室にすることによって、いわゆる家庭的な雰囲気ということにもなりますし、また、これは個人の秘密といったようなことも守られるというようなこともございますし、六人とか八人部屋といったような、そういう多くの皆さん方が一緒に病院のような形で入っておみえになるのに比較をいたしますと、やはり心の安らぎというものも随分私は違うだろうというふうに思っております。
 また、中にはおむつをしておみえになる皆さんもおみえになりますし、そうした交換等におきましても、個室で行われます場合と、多くの皆さん方が入所しておみえになりますそうした部屋で行われるのとの違いというのは確かにあるというふうに思っております。
 そうした意味で、質の高い療養というものをしていただく、入所をしていただけるようにするためには、やはりこの個室ということは大変大事なことだというふうに理解をいたしております。
山井委員 おっしゃるとおりのことを私も感じております。
 それで、坂口大臣に重ねてお伺いしたいのですが、私も、個室の老人ホーム、四人部屋の老人ホームに行ってまいりました。
 例えば、四人部屋の老人ホームでしたら、訪問をしても、話し声が隣のベッドの人の迷惑になるということで、五分十分ぐらいしか、御家族の方が訪問してもゆっくりできない。個室の場合は、一時間二時間、話もできますし、御家族の中には泊まっていかれる方もおられる。そういう意味で、個室にした老人ホームは家族の訪問が非常にふえたというような効果もあります。
 しかし、現場の方々の話を聞いてみますと、やはり四人部屋よりも個室にした方が、いろいろ職員配置も変わってきたりして、常勤換算で職員対お年寄りが一対二ぐらい。今の特別養護老人ホームの基準の一対三よりも、一対二ぐらいに、ちょっと多く要るというような声をよく聞くわけです。
 そのあたり、一人一人に応じた個別ケアをしていくことは集団ケアよりも人手がかかるのではないか、そういうことと、ちょっと心配しておりますのは、新聞等の報道によると、厚生労働省は施設の介護報酬を下げるんではないかという報道を最近よく見かけます。そんな中で、もしそういうことがあったら、人手のよりかかるユニット、個室ケアを推進するという厚生労働省さんの思いと介護報酬を下げるということは矛盾するように思います。
 そこで、そういう個室、ユニットケアをするような施設や居住福祉型の新型特養については、やはりプラスの配慮をすべきではないかと思いますが、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 個室、ユニットの場合には、実際にこれがどれだけたくさんかかるのかは私もよくわかりませんけれども、常識的に考えましたときに、一個一個の部屋にお入りになっているということになれば、やはり、時々のぞかなければならない、個々にのぞかなければならない回数もふえるのではないかという気もいたします。ここのところは今検討してもらっております。
 六人部屋とかいったような場合とこの個室、ユニットの場合とを同じにするというのはやはり問題がある、個室、ユニットのときにはそれ相応に見ていかなければならないんだろうということを我々も考えておりまして、実際に、それじゃどれだけにするかといったようなことにつきましては、今検討を続けさせていただいているところでございます。
山井委員 ありがとうございます。
 現場では、個室ケア、ユニットケア、今までの集団ケアではなく、一人一人に応じたケアをしようという方向になっております。そのためには、どうしてもやはり人手がかかります。そういうふうな配慮をぜひともしていただきたいと思います。
 ところで、先日、介護実態調査の結果が出ました。これは二ページ目に出ておりますので、まず朝日新聞の十月二十九日の報道を見ていただきたいんですけれども、見出しが、特別養護老人ホーム、月二百八十万円の利益。特別養護老人ホームに関しましては、この棒グラフの一番左の方で利益が出ているということで、ケアマネジャーとかは大幅赤字ですね。
 それで、このことは六月十二日の質問でも言ったんですけれども、改めてもう一度お伺いしたいんですが、要は、介護老人福祉施設、三ページですね、特別養護老人ホームが今回の経営実態調査でも一二・二%利益が出ているということなんですね。ところが、矢印がありますように、介護保険の前はマイナス五・六%だった。ということは、プラスマイナスすると一七・八%も利益が上がっているわけですね。それで、もう一本の矢印を見ますと、じゃ、どうして利益がふえたのかというと、給与費が六九%から五五%に一四%も低下している。つまり給与水準を下げて、次のページ、もう一つお願いします、ほかの言い方をすれば、常勤の職員さんよりも非常勤をふやして経営効率を上げたということがわかってくるわけです。
 この四ページを見ていただきますと、例えば、非常勤の職員を常勤換算したら、特別養護老人ホームでの夜勤手当を含む月給が十四万九千円、常勤職員は二十万七千円、これは平均ですよ。ということは、これはもう、何年も勤め続けたり家族を持ったりすると、本当に働き続けられないぐらいの賃金ではないかと思っております。
 こういう中で、六月に、介護報酬を見直す際には、利益が出ているということだけではなくて、利益が出て、いい介護が十分できているのかということと総合的に判断していただきたいということを言いましたら、坂口大臣は次のように答弁をしてくださいました。私も、老人ホームの収益が上がっているという場合に、それは質を落とさずに上がっているのか、質を落として上がっているのかというところが大変大事なところだと思います、質を落として上げているんだったら、質を上げてもらうように指導するのが厚生労働省の役割だと思っております、事務局の方にもその点を十分にチェックするように言っているところでございます、そういう答弁をいただいたんです。
 今回、経営実態調査が出ましたが、こういう中で、質が上がっているのか下がっているのかということは、厚生労働省さんの方はきっちりチェックをされていますでしょうか。坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 確かに、そのように答弁をしたことを私も覚えております。
 パートになったら必ずそれで絶対質が落ちるというのはパートの人に失礼でありますから、それは少し言い過ぎだというふうには思いますけれども、しかし、できることならば、それはパートではなくて正社員という形で、常勤でお雇いをいただく方が私はいいだろうというふうに思っております。
 ただ、ヘルパーにお越しをいただいている皆さん方の中には、時間的な問題があって、私はこれこれの時間帯で勤めたいという方も中にはおみえでございますから、そういう人たちは、これから短期の正規社員みたいな形にちゃんとしていくことが大事だろうというふうに思います。
 いずれにいたしましても、その中にお入りいただいている高齢者の皆さん方に対するサービスが落ちていないかどうかということなんだろうというふうに思っておりますが、その辺のところ、私もまだつまびらかに知るところまで至っておりません。そこはよく検討をしてやりたいというふうに思います。
 事務局の方がもしもその辺を何か調査しておりましたら、答弁をさせます。
山井委員 事前に厚生労働省の方に聞いたわけですけれども、やはりこのシステムのチェックをきっちりしておられないわけですね。もちろんシステムがチェックしにくいということもあるんですけれども、そういう意味では、ここでお願いしたいのは、利益が上がっているから報酬を下げるんだということではなくて、十分な質ができているのかという検証を、この年末年始、介護報酬の見直し議論の中でぜひともしていただきたい。
 では、問題は質を何ではかるかということなんですが、そこで、木村副大臣にお伺いしたいと思います。
 一つの指標は、身体拘束という度合いではかれるのではないかと思います。この身体拘束について、資料が五ページからございます。身体拘束ゼロ作戦進捗状況というものも厚生省の資料にございましたが、問題は、この身体拘束というのは、車いすにベルトで縛るとか、あるいはおむつを外せないようにつなぎの寝巻きを着せるとか、あるいは個室に閉じ込めてしまうとか、さくをつけてベッドから出られないようにするとか、そういうふうなことを指すわけなんですけれども、厚生労働省は、介護保険ができたときに、緊急やむを得ない場合以外はこれをやったらだめだということで身体拘束ゼロ作戦をされたわけで、これは非常にすばらしい決定だと思っております。
 ところが、それ以降、身体拘束が減っているのかふえているのか。そして、厚生省にデータを調べてくれと言っても、全部のデータがないわけなんですね。まさに、先ほども言いましたように、別に私は、非常勤がふえたら質が減るとは言えないと思います。それは言えないと思います。しかし、利益が上がって人件費が下がっている以上、質が下がっている危険性があると考えるのは非常に普通だと思うんですね。そういう中で、この身体拘束ゼロ作戦も十分に進んでいるのかというと、そのチェックも厚生労働省としてはきっちりできていない。
 そのあたりについて、木村副大臣、このたび介護福祉議員連盟の幹事長に御就任されたと聞いておりますし、坂井委員長も事務局長さんで、長勢筆頭も副幹事長に就任されたと聞いておりますので、ぜひとも、これから介護を担っていかれる木村副大臣からそのあたりの答弁を願いたいと思います。(発言する者あり)
木村副大臣 御声援ありがとうございます。
 御承知のように、介護というものが今までは措置だった。それが、介護保険をつくって、サービスに変わってきたわけですね。その中で、身体拘束は本当にあってはならないというのは、もうそれは議員も皆さんもお感じになることと思うわけであります。
 ところが、先ほどの新聞の中にも書いてありますように、いただいた資料にありますように、どうしても現場における事故というのがあるわけでありまして、実は、私の父も介護を受けている最中トイレで、そのときも付き添いの人がいたんです。いたんですけれども滑り落ちちゃいまして、みんなの見ている前で骨を折って、ずっと片方の手がきかなくなっちゃったという、私自身も目の当たりに見ておるような次第でございます。
 そういう中において、家族の方々の中にも、できたらもう少し拘束していてくれた方がいいんじゃないかなんというような方もおられないわけでもないわけでございます。
 そういうときにゼロ作戦というのは、これは今非常に、御承知のように、資料にありましたように全国的に行われているわけでありますし、特に推進会議はほとんどの県で設置されておりますし、それから、相談窓口、研修会も多くの県で取り組んでいる。それから、さっきの家族の話もありますので、家族向けの講習会も国庫補助の対象としているわけでありますけれども、議員が御指摘の実態調査、これは必要に応じて行っていかなきゃいけない、こういうふうに思っています。
 それから、事故で、まさに統計データはないんです。始まったばかり、こういうふうなこともあって、あえてデータを言わせていただきますと、国保中央会のデータなんですけれども、国保連に対する苦情の申し立て件数、介護関係が三百三十三件あるようでございますが、そのうち、介護老人福祉施設に対してが十二件、介護老人保健施設は四件になっている、こういうような数字も出ておるわけであります。
 そこで、この事故の問題なんですが、これはやはりもちろん予防にも努めていかなきゃいけない。私が一番思うには、病院の方でも、冷やり、はっと事例とか何かありますけれども、やはり事故が寸前だったとか起きたというときに、正直に通報し、それが多くの人たちに、こういう事例があったというのをわかる仕組みが必要なんじゃないかと。ところが、そういうのを発表しちゃうと、損害賠償の話だとか、また刑事責任の話だとか、そういう問題点等もあるわけでありますけれども。
 アメリカなんかの航空機事故は、事故が起こったときにパイロットか何かは免責にして、とにかく正直に全部しゃべれと、それで次の事故に結びつけないのを最優先にする、こういうような仕組みもあるようでございますし、それから、それで実際に起こった損害賠償等は保険のシステムをより一層充実するとかして、これからの事故に対処することが重要かなといって、私は個人的にはそのことを強く思っているわけであります。先生が言った介護議連なんかでこのような問題点を取り上げ、また厚生省の中でも検討をさせてまいりたいと思っております。
 いずれにしても、役所が、あれとこれ、はしの上げ下げまで規制するのはおかしいと思うんです。ですから、現場の方々がこれは一生懸命そういう取り組みをすべきだな、さっきのような話も含めて。私は、こういう観点も大事ではないかと。というのは……(山井委員「もういいです。わかりました」と呼ぶ)いいですか。では、その辺で。
山井委員 ありがとうございます。
 これは六月に質問したときも、もう坂口大臣から、決意は変わっておりませんし、これからもできる限り拘束がないようにしていかねばならないと思っておりますという答弁をいただいております。
 先ほども言いましたように、一二・二%利益が上がっている。片や身体拘束に関しては、この資料の六ページにもありますように、広島では六五%の施設でやっている。山口では六九%、北海道や京都では七八%。要は、お金の面はチェックしているけれども、質がどうなっているかということに関しては、厚生労働省、ちょっとやはりきっちりやっていないんじゃないかというふうに思います。身体拘束に関しても、車いすにベルト等をつける、ベッドをさくで囲む、このようなことに関して、毎日行っているというのが八九%、一日じゅう行っているというのが三九・六%というふうな資料もここに出ているわけですから、やはり質の向上というものに対して、もっときっちりとチェックをしていただきたいと思っております。
 そこで、ではこれをどうすればいいのか。要は、介護保険の一つの問題点は、今回の経営実態調査にもあらわれているように、一歩間違えば、人件費を減らしたら利益率は上がるんです、本当だったら市場原理が働いて、それで質が落ちたら人が来ないということになればいいんですけれども、老人ホームの場合はどこも満員ですから、質がちょっと落ちても利用者は来るんですね。ということは、やはりきっちりどこかで質を担保する必要があると思います。
 そこで、坂口大臣、お伺いしたいと思います。
 スウェーデンやアメリカでも最近こういう施設での虐待や質の低下が問題になってきています。どこでも経費を切り下げたら質のばらつきというのがつきものです。スウェーデンでは監査員という者を市町村が雇ってきっちり厳しく監査をしている、そういうふうなこともありますが、外部評価というのを特別養護老人ホームに入れるべきではないかと思います。
 外部評価の資料が十ページにありますが、この十月一日から、痴呆性高齢者向けのグループホームに対してこういう外部評価というものが義務づけられました。八十項目のチェックをするわけですね。やはりこういうチェックをきっちりと、グループホームで始めたものを特別養護老人ホームにも入れていって、そして、先ほど釘宮先生からの質問にもありましたけれども、こういう内容を公開していく。どこがいい施設だ、どこがちょっと手を抜いている施設かわかるようにしていく、こういうことが早急に必要だと思いますが、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 これは外部評価の先生のお話は、高齢者のグループホームのお話でございましょうか……(山井委員「そこでやっているのを特別養護老人ホームにもという」と呼ぶ)なるほど。
 グループホームにおきましてもこれは現在スタートさせているわけでございますし、やはり個室ということになりますと、密室性ということもございますので、今後これは取り入れていく方向で、取り入れるとするならばどういう評価方法があるのか、どういう人たちにどういう形でしていただくのが一番いいのかということを少し検討して、そして、方向性としては外部評価も取り入れていく方向でやっていきたいというふうに思います。
山井委員 ありがとうございます。
 これは介護報酬に関しては、本当にもし切り下げられたりしたら、それで現場の意欲が非常に落ち込んでしまうということがあります。先ほども言いましたように、ただでさえ介護の職員さんは非常に給料も低いわけであります。
 そこで、坂口大臣に改めてお伺いしたいんですが、介護報酬の見直しのこれからの考え方なんですが、今一つ言われているのは、ケアマネジャーさんやホームヘルプの家事援助やグループホームの夜勤加算をふやしていく、そのためにはどこかから財源をとってこないとだめだ、その財源というのは施設がもうかっているみたいだから施設からとってこようというような、そういううわさがちらほらと出てきているわけです。しかし、今も言いましたように、施設で利益が出ているからといって、十分なケアがまだまだこの身体拘束の事例を見ても行われていないわけですね。
 ですから、そういう意味では、今言いました外部評価のこと、そして、最初に申し上げました個室、ユニットケアのこと、やはり現場で頑張っている職員さんがやる気を失わないような、そういう介護報酬の改定にしていただきたいと思います。
 先日の大臣のごあいさつの中でも、介護報酬の見直し作業に関しては、質の向上につながる形でやっていきたいというような趣旨のことが大臣のあいさつにありました。ということは、ここで介護報酬を下げることによって質が低下したら何のための見直しかわからないわけであります。
 そういう意味では、必ずしも、どこかを上げたらその財源を、介護報酬をどこかを切り下げてプラス・マイナス・ゼロにするというのではなくて、もっとトータルで、介護報酬の中だけでプラス・マイナス・ゼロにするということはこだわらずに、やはり必要なところにはお金をかける。それで、逆にサービスも十分で利益が出ているところは、そこは削らないとだめかもしれませんし、そのあたり、要望と、ひとつお伺いをしたいと思いますが、このような考え方はいかがでしょうか、介護報酬に関して。
坂口国務大臣 先ほども個室、ユニットのところで申しましたとおり、そうした個室、ユニット等が採用されるということになってくれば、それは、それに従いまして質が上がるわけでありますから、上がった分、それはやはりよく見なければならないということも申し上げたわけでありまして、これは質との相談でございますから、質が向上できるようにするためにはどうしたらいいかという観点でやはり決めていかなければならないというふうに思っております。
 ただ、全体として、正直に言いますと、この介護問題に使います予算の枠というものはある程度決められているわけでございますので、その中でどう配分をするかという問題も正直なところあることも事実でございますが、しかし、先生が今御指摘になりましたように、質を下げない、質を上げるということにするにはどうしたらいいかということは最も真剣に考えなきゃならない問題だと思いますから、注意をしてやっていきたいと思います。
山井委員 最後のこの十一ページの資料を見ていただきたいと思いますが、きょうは施設のことを中心に質問をしましたけれども、やはり在宅重視ということで一番重要なのはケアマネジャーさんのことであります。
 坂口大臣、この十一ページを見ていただきますとわかりますように、一人のケアマネジャーさんが担当しているのが、一番最後のページであります十一ページ、何と八十人以上担当していられるケースもこの調査の中で四十八件ある。百人以上を一人が担当しているのも三十八事業所あるわけですね。そうしたら、一人一人丁寧なケアプラン、介護サービス計画なんかやはり立てられないわけです。その結果、重度であるにもかかわらずサービスを一種類しか利用していないというようなことにもなって、結果的には在宅にい続けられないというような問題点が出ております。
 そういう意味では、今回、介護報酬の見直しの中で、ケアマネジャーさんの介護報酬、サービス計画を立てるに当たって上げられるということが議論されているようですけれども、その際に、上げるかわりに、一人が担当できる数を例えば上限五十にするとか、あるいはたくさん数がふえ過ぎたら、ふえ過ぎた部分はちょっと逓減制で安くするようにしないと、これはやはり八十件、百件、常識で考えたら一人一人丁寧に見れるはずがないですよね。実際、訪問も十分にせずにケアプランをつくっているというケースもあるわけですから。
 そういう意味で、そのあたり、ケアマネジャーさんの、数をある程度適正に抑えるということに関して、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 五十人程度を目標にしてお願いをしてきたわけでございますが、今表を見せていただきますと、百人以上というのもあるということでございます。
 これは、どういう介護度の人たちを見ているかということにもよるというふうには思います。非常に軽い人ばかりをたくさん見ているというのであれば、それはある程度人数は見れるんだろうと思いますし、重度の非常に具体的な計画を立てなきゃならない人をそうたくさん見られるというわけでは正直なところないということだろうというふうに思いますが、そうした重症度もよく見ながら、そして一番最も適切なところは大体このぐらいではないかといったことも示し、そしてその中で、ケアマネジャーに対する給料といったようなものにつきましても、どのぐらいにこれはすべきかといったようなことも考えていかなければならない。
 どこへ行きましても最もたくさん出ますのは、ケアマネジャーに対する問題がどこへ行きましても出ることも事実でございますので、その点十分に注意したいと思っております。
山井委員 ありがとうございます。
 先ほど財政的に苦しいという話がございましたが、先ほどの表でも言いましたように、本当に介護現場の給与は低いです。そして、今までから数が足りなくて、お年寄りとゆっくり話す時間もないというふうに本当に苦しんでいられます。やはり、そういう現場の方々に対して、安易に介護報酬を下げるということになると、もう質はいいんだなということになりかねません。特に施設の場合は、御家族とも離れ離れになって、施設の方々との温かい触れ合いという、それを最後の心のよりどころにお年寄りもされているわけですから、施設の質の向上につながる、そして施設で働いている方々が頑張ろうという意欲の起こる介護報酬の改定にしていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
坂井委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 一年半ぶりに厚生労働委員会に戻りました。
 まず最初に、私が今まで推進してまいった臓器移植の問題で、どこまで今進んでおるのか、それから今後の見通しですね。移植の数は出ておりまして、そして実際に移植もされているということを聞いておりますけれども、その中でお聞きしたいポイントは、十五歳未満ですね、子供の移植をどうするかというところに視点を当ててお聞きしたいと思います。
 子供の十五歳未満も含めて今の現状と、将来どういう方向にあるかということと、子供の十五歳未満の臓器移植をどう進めるかという国の方針をお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 武山先生には日ごろからお世話をかけておりますが、またこれからどうぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。
 さて、臓器移植についてでございますが、先生も御案内のように、最初これができますときにさまざまな御意見がございまして、そのときには、どちらかといえば、安易に臓器移植はできないようにするという方向性が非常に強かったというふうに思います。そして、小さいお子さんの問題も随分議論をされましたけれども、まずは大人で始めて、そしてここがスムーズにいくということになったときに子供にしてはどうかと。小さいお子さんの場合にはその意思を確認するということがこれはなかなかできないことだから、本人の意思確認ということができない以上そうすべきだという意見がその当時強かったというふうに思っております。そして今日を迎えているわけでございますが。
 今御指摘をいただきますように、小さなお子さんの心臓移植というのが外国でたくさん行われるといったようなことになって、多額のお金を用意して行かれるという痛ましいお話は次々と出てきていることも事実でございます。そうしたことから、少し見直していこうではないかということが言われるようになってまいりまして、厚生労働省の中におきましてもその議論を今始めているところでございます。
 国会におきましてもかなり議論をしていただいているというふうにお伺いをいたしておりますし、その御意見も十分に拝聴しながら決定をしたいというふうに思っておりますが、現在の段階でどうするということをまだ決定する段階には至っていないというのが現状でございます。
武山委員 私、ちょうど九年前にこの政治の世界に入ったんですけれども、それからやはり日常的に、諸外国、特に先進諸国で行われている臓器移植が日本で行われていない、それで海外に行く。そして、国内では行われないために多額の寄附を集めて海外に行く。実際に国内でも間に合わなくて本当に生命を落としている、そういう現実をずっと、九年もたっているわけなんですよね。それでまだ、そこのところで議論がされておる。方向性もまだ見えない。それじゃ、いつまで議論をするつもりなんでしょうか。やはりそこにはいろいろな議論がありまして、この議論というのは特殊な、死生観とか、そういう心臓移植をしなければいけない、そういうお子さんを持った家族の思いというのは本当に例外だと思うんですよね、だれもがだれもそういう状態じゃないわけですから。ですから、例外の人たちのために何とかしてあげるというのがやはり国の政治でもあると思うんですよね。
 その辺を、いつまで議論するのか。議論がまた集約されなかったらまた待つのか。それはやはり、命は日々、本当に体力尽きて亡くなり、あるいは、海外に行って移植をしなきゃいけない、それなのに日本から飛行機を飛ばせてもらえない、だから飛行機を飛ばしていただきたいといつか申請が来たんですけれども、もう日本でだめだったらアメリカ大使館へ頼んでくれと。アメリカ大使館に頼みましたら、命のことであれば、日本でできないということであれば、アメリカの軍が出しますよというふうに言われるわけですよね。そういう政治の判断の違いに本当に歯がゆい思いでいるわけなんですけれども、いつまで議論するのか、どうするのか。やはり、議論をどこかに預けるんではなくて、大臣としてどういうふうな方向性がいいのか、やはりそこでリーダーシップをとってお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 ここは、私ひとりの独断専行で決めるというわけにはいかない大変大事な問題だというふうに思っております。したがいまして、軽々に私がいつまでにこうするということはなかなか言いにくい問題でございますけれども、同じところでいつまでも議論を繰り返していてはいけないことだけは事実でございまして、やはり議論を進めなければいけないというふうに思っております。
 先ほど議員連盟のお話も申し上げましたけれども、議員連盟は議員連盟の方でお進めをいただくというふうに思っておりますが、我々の方も、やはりこの問題につきましては議論を進歩、進めたいというふうに思っております。
 これはいつごろまでにとなかなか言いにくい話で、また、軽々に言いますと、前にいつまでと言ったじゃないかといってまたおしかりを受けるわけでございますけれども、来年の春までぐらいには一つの方向性というものをやはり求めていかないといけないんだろうというふうに思っておりまして、こちらの方の意見の集約というものも進めていきたいというふうに思っております。
武山委員 相変わらず国内でできないということで、多額の寄附を集めて海外の、移植を受け入れてくれる国あるいは病院に行っているわけですけれども、そのとき、もう億という単位のお金を集めて行っているわけですよね。そこに日本の場合、税制上の優遇措置、本当にそういう方々を助けてあげたい、寄附をした場合に、税制上の優遇措置のいろいろな仕組みが非常に複雑でわかりにくい。本当に単純で、NPO、社会に貢献する非営利団体、そういうものに寄附をした場合、単純に税制上優遇措置ができる、そういうシステムもぜひ考えていただきたいと思いますけれども、そういう税制上の部分に対して、木村副大臣にどんな御見解を持っているかお聞きしたいと思います。
木村副大臣 税制上の、これはよく税の話になると自由民主党の税調の問題がいつも出てくるわけでございますけれども、我々副大臣は税調の場に出られないんです。もしもとの議員の場に戻って税調に出られるようになりましたら、議員の御主張を税調の場でも訴えてまいりたい、このように思っています。
武山委員 反論するようですけれども、副大臣でもあり、国民の代表なんですよね。今の答弁だと、自分は副大臣というところに、まるでいすの上に座っているロボットみたいじゃないですか、失礼ですけれども。やはり自主性を持って、国民の代表であるからこそ今副大臣になっているわけですよね。それが堂々と言えない、自民党には。本当に欠陥があると思いますよ。それを堂々と、やはり国民のための政治を行っていただきたいと思います。もう一回答弁いただきたいと思います。
木村副大臣 光栄でございます、御激励をいただいて。
 やはり税の問題というのは、これは行政の立場と議員の立場、国民の立場、それぞれいろいろあるんですね。ですから、どの部分で税制を優遇するかというのは、必ずそれではね返るところがあるわけでございまして、ここが議会にとっての一番大切なところだと私は思っているんです。
 だから、行政の立場以上に、税の問題というのは、これは議員の生命ですから、私は、そこは行政がどんどん、この場合はまた別ですよ、この場合は別で、一般論として申し上げますけれども、税というのはまさに国会の場で決める話だ、私はこのように思うんです。その中で、今武山先生が言われた臓器移植の税制の問題については、もちろん厚生省内では一生懸命やらせるようにこれからは努力してまいりたい、このように思っています。
武山委員 やはり問題は、前向きにやはり物事を処理していく、物事の基本を前向きな考え方でしていかないと、今この閉塞感というのは、本当にみんな元気が出ないわけですよね。何事も時間がかかる、何事も前に進まない、そういうのは、この厚生労働委員会の中でのいわゆる政府側の答弁もまさにそのとおりだと思うんですよね。ですから、そこは本当に現場というものがそういうものであるということをぜひ認識していただきたいと思います。
 それから、先ほど民主党の磐議員と山井議員が介護の方で質問なさったということですけれども、私も介護を中心に質問をしたいと思います。
 実は私、母を今介護しておりまして、ことしの三月から自宅で介護しております。七十九歳なんですけれども、去年八月の参議院選でちょっと母をこき使いまして、脳梗塞で、最後はついに倒れてしまいまして、いつまでも母は若いと思っておりましたら、もう年をとっていたということを倒れて初めてわかった、本当に不肖の娘なんですけれども。
 去年の八月からはリハビリを兼ねて、元気になるだろうということで、二回目の脳梗塞を起こしたんですけれども、リハビリを兼ねた温泉病院というところで、いわゆる療養型の施設に入っておりました。
 それで、歩けるようになるまで回復したんですけれども、やはり高齢者の健康状態というのは、いついかなるとき、どうにでも変わるということがよくわかりまして、歩けるようになって、元気になったかなと思いましたら、突然転びまして、それきりもう寝たきりになっちゃったんですね。そのときに、転んだときにやはりまた脳梗塞を起こしていたという実態がありました。
 それで、その療養型の施設なんですけれども、驚いたことに、大変いい病院だということで、リハビリだということで入れたんですけれども、そこにMRIがなかったんですね。いわゆる脳神経外科でよく使う、脳の断層写真を撮るものですね、そういうものがないということで、まず設備に本当にばらつきがある。外から言われたら、大変設備がよくて、大変いいという、これは群馬県の上牧温泉病院というところなんですけれども、そこに大変いい病院があるということで、そこへ母を入院させたんですけれども、やはりそういうふうにして、先ほど設備の話、施設の話が出ておりましたけれども、施設によって設備に大変差があるんだということで、そういう現実を知りまして、これも国会でいろいろ議論しようと思って、きょういろいろ考えてまいったわけですけれども。
 それで、そこに長いことおりまして、寝たきりの状態になったものですから、今度、自宅に連れてきまして、自宅で介護の、訪問介護士を頼んで、自宅で見るようになりました。そうしましたら、訪問介護する人にもよるんですけれども、ここで実態がいろいろわかったんですけれども、本当にいろいろな、介護は導入されて二年余りですので、問題が多いということが大変わかりました。
 厚生労働省は、来年、介護保険制度の中身に対して改正をするということですけれども、いろいろな御意見を耳にしていると思いますし、だから改正しようというお話だと思いますけれども、来年、どんなところをどう改正しようかという視野に入れているのか、そこをちょっと御説明いただけたらと思います。副大臣にお願いします。
木村副大臣 特に来年は介護報酬ですね、介護報酬のときの再検討をしておるところでございますが、先生が言われるような、もう少し全般にわたるものは五年以内に見直しをする、こういうことになっているわけでございまして、来年は主に介護報酬を、先ほど質問に出ていましたけれども、その辺が最大の焦点だろう、こう思います。でも、それはことしじゅうに決着をつける、こういうことであります。
武山委員 今のお話ですと、介護報酬を見直す、改定するという意味ですか。介護報酬だけですか。(木村副大臣「そうです。基本的にそこです」と呼ぶ)基本的にそこだけに手をつけるという意味ですか。(木村副大臣「はい」と呼ぶ)それで、その後、全体を見直すのは五年後ということですね。来年、三年ですから、その二年後ということで。はい、わかりました。
 それでは、まず在宅。
 高齢化社会で、国が医療費に負担が非常に多いということで、いろいろ試行錯誤した結果の介護保険制度ということと理解しておりますけれども、この介護保険制度、在宅を主にやりたいという国の制度ですけれども、実際は、これはどなたか家庭に一人いて、それでちゃんと二十四時間、ある程度そこの家庭にいて、それで昼間なり夜なり、ある時間をとって見に来ていただく、そういう訪問介護型の居宅サービスということなんですよね。
 ところが、今実際に、私の町を見ましても、私の町は人口約四万近くの小さな町なんですけれども、埼玉県はちょうど東に位置しておりまして、隣はもう江戸川、野田市、キッコーマンのおしょうゆで有名な野田市というところにおるんですけれども、大体、要支援から要介護五までは六百三十九人いるということなんですね。それで、この中で、大体それぞれの度合いのところに百人前後いるということです。ところが、びっくりしたことに、町で行っている事業所がたったの一つしかないんですね。
 それで、先ほど山井さんのお話にも出ておりましたけれども、ケアマネジャーという方が、最初に私の家に来てくれて、母のケアプランを立てて、いろいろ相談に乗ってくれたんですけれども、そのとき驚いたことに、百人も持っているということなんですよ。それでもう私びっくりしたんですね。なぜ何人持っていますかと聞いたその理由は、余りにも今までの、それは何カ月かたってからの、三月から数カ月たってからの状態を見て、余りにも状態が、こちらからいろいろ聞かねばならないと思いまして、聞いた結果百人だということなんです。
 私が初めてこういう現場に居合わせてわかったことなんですけれども、ケアマネジャーが自分で介護をするヘルパーを持っていない。その方は町に所属していて、それで町から頼まれてケアプランをつくっている。ところが、自分はヘルパーを持っていない。ただプランを立てるだけなんですね。それで、百人も持っていますから、先ほど坂口厚生大臣がお答えになりましたように、いろいろな度合いがあって、それは要介護五ばかりが百人いたら確かに問題かもしれませんけれども、いろいろな人を扱っているというのは事実ですけれども、私は時間がありません、いろいろもう本当に大変ですとその方は言っておりました。
 それで、私は、それを何カ月か経過して、いろいろな問題点があったことから、その問題点の一番は、まず自分が事業所を持っていない、ただケアプランを立てるだけ。そのために、この利用者にはこういう方がいい、この利用者にはこういう方がいいという、ケース・バイ・ケース、細かいところまで配慮が行き届かないということなんですよね。ですから、私の母の場合、午前中と午後と夜と、どの人も違う人が来るんです。毎日違う人が来るんです。もうそれにも驚きました。
 最初、週末しか私が行かないものですから、何だかわからなかったんですね。それで、週末になると疲れる、疲れると。脳梗塞ですから、どこかぷっつんしているものですから、時々つながらない部分があるわけですよね。そういう現実があるということが、私、わかりました。それで、現実にケアプランを立てる人と、事業所を実際に持っている人と、別々にやっているという人もいるということがわかりました。
 それから、町によってばらついていて、私の町には一つしかそういうところがないんですね。そうすると、そういうところでケアプランを立てていただいて、そしてそこに頼もうとすると、もういっぱいで人手がありませんと。そういう状態であるということも、やはりこれは市町村単位で、県がそういう統計をとって、実態調査をして、それで厚生省に上がってくるということなんでしょうけれども、ぜひそういう実態調査をしていただきたいと思います。ケース・バイ・ケース、いろいろあると思うんですよね。
 それで、確かに、どなたか一人いて訪問介護を頼む場合は非常によい制度だと思いますけれども、私の家庭は、残念ながら、私の兄弟、三人おりましても全員外に出ているものですから、だれも見る人がいないんですよね。それで夜も頼まなければいけないんですね。夜はほとんどやっていないんですよ。夜はやりたくないという本音なんですよね。
 そうしますと、実際に今高齢化がどんどん進んでおりまして、聞きましたら、ひとり暮らしの高齢者は物すごく多いんですよね。みんな夜どうしているのかと思って聞きました。そうしましたら、みんな経費が高くて実際は頼めないと言うんですよね。昼間は昼間、夜は夜で頼まなければいけない。
 私、母を三月から八月までその一カ所の事業所でしておりまして、夜の部分だけですごいたくさんお金がかかるということがわかりました。物すごい高いんですよね。一晩見てもらうのに一万六千六百円プラス二〇%の手数料プラス交通費なんですよね。ですから、一カ月ですと物すごい高い費用を払うということに、本当に大変な費用がかかるということなんですね。
 それで、確かにこの介護保険制度は、昼間の在宅を頼むのには一割負担で本当に格安というか、私たちにとっては、母にとっては本当にいい制度なんですけれども、経済的な部分だけ見るとそうなんですけれども、実態は、本当にさまざまな人がさまざまな考え方で来ているということを目の当たりにしました。
 ですから、私、ここで一つお願いがあります。導入されてまだ二年しかこの制度が根づいておりませんけれども、いわゆるホームヘルパー、こういう方々の研修会をぜひしていただきたいと思います。だれのための介護なのか、そういうことをやはり研修の中で、この項目を見ましたら、講習の内容を見ましたら、確かにそういうことをやっておりますけれども、そういうことをわかっていないんじゃないかなということに、私がいるときちょうど出会ったんですね。
 それで、こういう機会がないと思いまして、母のために私はもう本当に、八月いっぱいは毎日毎晩私が自分で見たんです。ところが、昼間は私も仕事があるものですから、昼間は訪問介護の方に来ていただいたんですけれども、午後早く帰れるときは帰ってきていたんですね。そうしましたら、大体、普通の食事、例えば食事時間ですね、朝八時、お昼の十二時、そして夕食は六時ということなんですけれども、夕食が突然七時に変わっているんですよね。
 例えばそれを例にとりますと、その日は三時から五時まで訪問介護の方が来る予定だったんですね。それで、五時に帰るために、次、六時に来る人が、その人が食事をつくって七時に食べさせてください、そういうそこの事業所との話し合いだったようなんですね。私の母は、そういうことに対してうんともすんとも言えないものですから、後から私がわかったんですね。
 そういうことで、都合で夕食の時間を変えるということで、それは時間的な、五時までにつくっておいてください、そうしましたら六時から来る人に食べさせていただきますからということで変更のお願いをしたんですけれども、それはちょうど私がいたからそういうことができるということで、お話をしてそう変更していただきましたけれども。
 ヘルパーさんの質の問題、ヘルパーさんが本当に利用者のためにする仕事が何かということを、確かに、厚生省からも実際にどういうものかということ、いろいろ受講の内容を見せていただきました。でも、実際はまだまだ根づくのに時間がかかると思います。
 それで、学校の先生も、学校の先生になっていろいろ研修があると思うんですね。どこの社会でも企業でも研修というものは常にあると思うんですよね、私たちもそうですけれども。それで、ぜひ、この介護保険制度を根づかせるために定期的な研修をお願いしたいと思いますけれども、その研修はどのように考えておりますでしょうか。
木村副大臣 今御指摘の研修は、これはもうしっかりやっていかなければいけないのは当然の話でございますけれども、その研修する人を研修しなければいけないんですね。そこが今一番、そのマンパワーの養成にこれから一生懸命頑張っていかなければいけないということで、今鋭意取り組んでいる最中でございます。
 それから、議員御指摘の点、一々ごもっともなところがあるんですね。それで、またそこに、今の役所の中には、先ほど私の答弁が役人的だと言ったけれども、私はあなたの言っているようなことをいつも役所の方に言っているんですけれども、まだまだ措置の時代の感覚が残っているんですよ。これはもう、今度はやはりサービスに変わったんだ、保険に変わったんだ、こういう意識の、そこの原点から戻って、介護保険の原点に戻って、介護保険のよさをやはりこれからあらゆる層に知っていただく必要があるんではないかな。こういうことも含めて、これからも一生懸命取り組んでまいりたいと思っています。
武山委員 私、もう少し突っ込んだ答えを欲しいんですね。例えば研修会をもう来年度から導入しようとか、ケアプランを立てるケアマネジャー自身も、今木村副大臣が答弁されましたように、その人をやはり研修させる人も必要だと思いますね。それぞれ、一級、二級、三級ということですけれども、その人たちにきちっと精神を、哲学をやはり根づかせることが非常に大事だと思うんですよね。そこの研修をぜひ早急に行っていただきたいと思います。
 それで私は、何しろ自分がそういう立場に立って、自分が質問することすら実際よくわかっていないわけなんですよ、現場に居合わせて、正直言いまして。そのときに、ケアプランを立てる方が、こういう形でこういう保険の制度でこういう利用ができますということをやはり説明すべきなんですよね。その説明責任というのをきちっと果たしていただきたいと思うんですね。それで、利用者というのは、質問することすらよくわかっていないんですよ。何しろ何を質問したらいいかわからないところに、やはりケアプランを立てるマネジャーに対してそこに切磋琢磨する、よい批判をしたりする環境がないわけなんですね。それで、ケアプランを立てる方もよく自分がわかっていないで言っているわけなんですよね。
 ですから、そこの本当に精神を根づかせ、制度の基本を根づかせ、哲学を根づかせるということが非常に大事だと思うんですよね。それでまた、利用者が何が利用できるかというのは、ともに勉強もしなきゃいけないことでありますし、そういう方々も高齢者ですからほとんどよくわかっていないんですよ。自分がちゃんとしていれば、そういう訪問介護の方は頼まないわけですから。そこにやはり温かい気持ちを持ってそういうことも説明していただきたいということを、私、痛切に感じました。
木村副大臣 ホームヘルパーの研修は、現在は都道府県が担っておりまして、これに対する補助を今行っているところであります。
 それから、先生がおっしゃったケアマネジャーですね、私はケアマネジャーというのは三つの仕事があると思っているんです。まずアセスメントですね、介護を受ける人がどういう状況にあるか。それからプランを立てる。今はプランを立てるところで終わっちゃっているんですよ。最後に、そこはやはり自分の立てたプランがしっかりフォローされているか、こういうことも含めてケアマネジャーがしっかりやっていけば、とても百件なんか簡単に持てない。
 それから、恐らく二カ月目から前と同じペーパーをつくってコピーしてそのまま回しているような面もなきにしもあらずでございますから、アセスメントとプランとそれからその後のフォローアップ、この辺をこれからケアマネジャーがしっかりやれるように徹底させるべきだな、私はこのように思っています。
武山委員 研修の方は県に任せている、その予算はつけてあるということですけれども、やはり、そこでとまっちゃわないで、国会でこういう議論をしているわけですから、県が年何回ぐらい研修するのか、そういうのも義務づけていく必要があると思うんですよね、根づかせるためには。ある程度時間がたってから義務づけなんてしたって、今が、鉄は熱いうちに打てで、やはり最初の段階で精神も哲学もきちっと持った、そういう制度に魂を入れてしていかないとだめなわけですから。
 そこに問題が一番ありまして、国は予算をつけても、それが実際に運用の面できちっと運用されなかったら、それはもう本当に根づかないということでございますので。ぜひそこの、お互いによい意味の監視というのは、どれだけやるか、どういう成果が上がったか、どういう内容でやったかというものをやはりフォローしていただきたいと思います。
 それからまたもう一つ、たまたま髪の毛が伸びまして床屋さんを頼みたいということで、寝たきりなものですから美容師さんを頼みました。それで、たまたま、私、びっくりしたんですけれども、カットするだけで四千円だというわけですね。それで、その費用を四千円ということでもちろんお支払いしました。そうしましたら、それには必ず補助金がついていると言うわけなんです。え、そんなことあるんですかと聞きましたら、美容師さんが、高齢者の居宅サービスの中でそういうことをしておる、それには八百円の交通費が出ます、その八百円は出ますからそれは請求してください。
 それで、そういうのは初めて聞きましたということで、実は一回、つい最近そういうことを請求したわけなんです。こういうことを聞きましたから、こういうことというのはあるんでしょうかと聞いたわけなんですね、それは社会福祉協議会まで。そうしましたら、それは理容・美容業界に加盟しているところの美容師さんとか理容師さんが行かないとその交通費というのは出ませんということなんですね。その美容師さんと理容師さんが業界団体に入っていなかった場合はそういうことはしませんと。たまたまその方が、では入っていましたかと聞きましたら、ことし脱退しましたと言うわけなんですね。
 そうしますと、美容・理容業界に入っているところを頼むというような、そういうふうにとれちゃうわけですよね、利用者は。そうすると、行きつけのそういう理容・美容師さんにカットしていただきたいというのに、結局はそういうところに頼まなきゃいけないんじゃないか、高齢者はこう思ってしまうわけですよ。
 ですから、そういう業界団体に加盟しているから、だから交通費を出すという発想ではなくて、だれにでもチャンスは平等なわけですから、そういうことで、そういういわゆる補助を出すのであれば、だれにでもチャンスは平等で、行きつけの方が来ていただけるような、そういう制度にぜひお願いしたいと思います。
木村副大臣 今の先生の御指摘の訪問理美容サービスは、市町村主体の事業なんです。そこで、恐らく市町村によっておのおの取り組み方が違うんではないか、このように思うわけでございまして、その辺のことを御理解いただかなければいけないな、こう思っております。
武山委員 そうすると、市町村で、そういうことであれば、皆さんがうそつくわけありませんから、皆さんのおっしゃるとおりだと思うんですよね。そうしますと、私の町でそういうふうな既存の物の考え方ということですよね。では、これは私が私の町と闘います。これはそちらの方でいたします。
 ただ、そういう議論が出た場合に、町任せじゃなくて、そういうことも国として、だれでもチャンスは平等じゃないかということはぜひ国としてもやっていただきたいと思います。理美容業界に入っていないとだめだという発想は、やはりそういうハードルはぜひ取り外していただきたいと思います。
 それからもう一つ、介護保険料についてですけれども、地域によって差があるわけですけれども、今全国平均では二千九百円というふうに聞いております。地域によってさまざまな事情がありまして、差額についてはやむを得ないということだと思いますけれども、四月から保険料が上がるということなんですね。
 実は、うちの母を見ましたら、四千五十円払っているわけなんですね、私の町で。人口四万足らずのところに六百三十九人いるわけなんですね。その方々に結局居宅サービスをしているわけなんですけれども、二カ月に一度ということで八千百円を年金から引かれておるわけですけれども。
 保険料やら年金というものは、年金といいましてもいろいろな年金ですね、国民年金、医療保険、年金の掛金、そういうものがどんどんどんどん高くなっていくわけなんですけれども、実際に私たちの負担が減るなんということは今のところ目に見えないわけですね。ですから、その辺の上がらないようにするための努力というもの、その辺の努力についてぜひお聞かせいただきたいと思います。
木村副大臣 上がらないような努力ということでございますけれども、なぜ上がるかというと、例えば施設一個つくるともう全然違ってくるんですね。人口規模一万人の町で五十人定員の特別養護老人ホームをつくったとすると、その町の保険料が千百円上がってしまいます。先生のところは三万人か四万人ですか。(武山委員「四万人です」と呼ぶ)四万人ですと大体、これの三分の一ぐらいですから三百円や四百円、先生のところの町でもそういう施設を一個つくると上がってしまうということなんですね。それとあと、これはもっと人口の小さい町ですと、例えば十人の要介護者が出て、それが隣の町の施設に入ったとします。それだけで五、六百円、もう保険料が上がってしまうんですね。
 ですから、保険料を、今のサービスをもちろん上げれば、つまりサービスを上げれば保険料が上がるということなんですが、もし仮に先生のところの町で上げないような努力、むしろ下げる努力というのは、一つは広域化という手があるんですね。広域化という手がずんとあって、例えば人口三十万人の町ですと、何と二十分の一になっちゃうんです。先ほど言った五十人の特養をつくって千百円上がるところが、人口三十万人の町ですと二十分の一、ですから五十円ぐらいしか上がらない。
 こういうようなこともありますから、もし今のサービスを前提として下げる方法というのは、先生のところの町を例に挙げますと、どこかと広域を組むという手は一つの方法としてあるんではないかな、こう思っております。
武山委員 今施設をつくるという話は、今のところ、この町にはないんですね。特養が一つある。この特養には百五十五人入っておる。それで、実際に、要支援から要介護五までは六百三十九人いる。実際に、いわゆる要支援一とか二とかというところは各百人ぐらいずついるわけですね。平均が二千九百円で、四千五十円というのは非常に高いなと、私、びっくりいたしました。
 ですから、今施設は一つということで、今のお話聞きますと、居宅サービスをよそのところでお世話になっている可能性があるということですよね、ということに理解してよろしいんでしょうか。
木村副大臣 それよりも、先生のようなところの場合は、大きなところと広域を組めば、全体の保険料がそこは下がるわけですから、お隣の市がどのくらいの人口かは私はよくわかりませんけれども、そこの市と比べて、そこが低いようでしたら、そことの広域協定を組むというのも一つの方法かな、こういうことを御提案申し上げたんです。
武山委員 私の質問は、実際に今の実態を話しまして、実態はこうです、しかしこれだけの金額だということで、平均よりも非常に高いですね。実際は特養老人ホーム一つだけで、ではなぜこんなに高いのかという話なわけですよ。それを、ひとつ、前向きな話として広域を組むというのは実際わかりますけれども、何でこんなに高いのかということの理由。
木村副大臣 おっしゃるとおりでございまして、隣の町へ持っていっても、その分は自分のところの町が負担するような今の仕組みになっているんです。(武山委員「そういうことですね」と呼ぶ)はい。大体その町が、かかる費用を一二・五%負担しなきゃいけない、今のそういう介護保険の仕組みになっていますから、需要が出てくれば、それに対して一二・五%は町で持たなきゃいけないんです。
武山委員 ところが、実際に、一つしかない特養老人ホームは百人も待機者がいるんです、入りたい入りたいといって百人も待機者がいるわけなんですね。
 それで、実態は、私の兄弟、弟と妹がいるんですけれども、二人は、そういう施設に入ってもらいたいという発想なんですね。ただ、本人が、私の母が、家で過ごしたいということで、私は、思いを遂げてあげたいということで、今在宅でしておるんですけれども、今、本人はみんな、在宅で生活したいというのが大体本音なんですよ。自分がそんなときになったときに、やはり施設なんか実際入りたくないですよ。今の施設でなんか死にたくないですよ、私、どこ見たって。こんなすてきなところで、入りたいなんというところ、どこもないですからね。そのくらい、施設も、本当に私たちが入りたいというところになっていないわけですよね。
 それで、施設をつくるには大変お金が要る、ではどうするのかという話ですよ。在宅は在宅で、またそういう問題がある。しかし、実際は、現にもう高齢化になっているわけですから、何とかここを打開していかなきゃいけないわけですね。それで、国はどうしたいのか、どうしていったらいいのかということをお聞きしたいと思います。
木村副大臣 今、新しい特別養護老人ホーム等をつくろうとすると、いろいろな制約がありまして、御承知のように、予算の制約とか、あるいは地域福祉計画で、その地域は、広域も含めて、もうできないとか、いろいろな、さまざまな要因があるわけでございます。だから、その中で、しかし、先ほど言いましたように、施設一個つくると介護保険料が上がる、だけれども、どうしても地元の市町村長さんが自分の政治生命をかけてもやりたいというような場合には、これは当然国としてもそれに対して取り組むべきだ、と言うと、大体、ここで言うと問題があるかもしれませんけれども、県か何かが、自分のところの補助枠がない、それで抑え込むケースも多いんです、実態は。
 だから、そういういろいろな問題点を含めながら、どうしてもやりたい町に対しては、私は、国は積極的に手を差し伸ばして、その施設整備を推進していくべきだ。それは、今の、先ほどもお話がずっと出ていましたけれども、例えば、こういう失業状態が非常に深刻化の中で新しい職場をつくるということは雇用にもつながることでありますので、私は、その辺はむしろ積極的に取り組んでまいりたいな、こう思っております。
武山委員 いろいろ議論いたしましたけれども、やはり、ただつくるだけではなく、制度を根づかせていただきたいということと、また、県とのつながり、市町村とのつながりも、必ず、一方通行ではなく、お互いにフォローし合ってよいものをつくっていくということが今最大の努力しなければいけないことだと思いますので、そこは、お互いが議論を尽くして、よい批判をし合ってつくっていかなきゃいけないんじゃないかと思います。
 終わります。
坂井委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 初めに、シベリア抑留帰還者への未払い賃金問題についてお尋ねをいたします。
 三月二十日に、私が、日本政府のGHQあて文書を示して行った質問に対して、大臣が、外務省とも協議して検討すると答弁したことが大きな反響を呼んでおります。この答弁に励まされて、シベリア帰りの八十歳前後の人々が、ロシア政府発行の労働証明書に基づく賃金支払いを要求して、近日中に国会前で座り込みを行うと聞いております。
 シベリア帰還者の努力の結果、ロシア政府は、九二年一月以来、今日までに三万四千人分以上の労働証明書を発行しております。
 私が感動したのは、当時、ロシア側の責任者でありました公文書委員会議長ルドリフ・ピホーヤ氏が発行に際して述べた言葉であります。「ソ連政府は、日本人捕虜の本国帰還の際に労働証明書を交付する義務があったんですよ。新生ロシアは、スターリン体制が犯したこの誤りを正さねばならない。」「我が国が、長い間、人道主義の原則をなおざりにしてきたことをおわびしたい。そして、この措置が、ロシア、日本両国民間の友好の発展に寄与することを信じたい。」
 労働証明書の発行で決定的な力となったルツコイ副大統領は、九三年四月二十日の読売新聞とのインタビューで、日本政府がロシア政府発行の労働証明書の法的地位を認知することを心から期待したいと述べております。ロシア外務省も、労働証明書発行について、在ロ大使館を通じて我が国政府にも覚書を伝達したと聞いております。ロシア政府は、ソ連時代の誤りを正すために歴史的な態度の変更を行ったわけであります。
 一方、私が三月に取り上げたGHQあて文書では、一九四七年の段階で、ソ連政府が労働証明書を発行すれば賃金支払いをするとの日本政府の意思を明確に表明しております。
 こうした経過を見れば、我が国政府が、ロシア政府の措置と抑留帰還者の願いを受け、賃金支払いに応ずべき立場にあることは明らかではないでしょうか。シベリア抑留帰還者に労働証明書が発行されたのは、この歴史的問題をこの機会に解決したいというロシア政府の姿勢のあらわれだと思いますが、大臣は、この労働証明書をどういうものと受けとめておられるか、また、この問題の検討はその後どうなっているか、現在の状況を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 私が答えさせていただくべき問題と、外務省にお願いをしなければならない問題と、これは両方あるように思いますが、ことしの三月でしたか、小沢議員から御質問いただきまして、そのときに、外務省の担当者の話を私もそばで聞いていたんですけれども、私も十分な知識がなかったということもございますが、どういう内容なのかということを、聞いておりましても、私もよく理解できませんでした。したがいまして、何度か委員と外務省の担当者との間のやりとりがずっと続いたわけでございますけれども、思い余って、一遍、私、よく相談をするようにしますということを申し上げた経緯があったというふうに思っております。
 それで、きょう先生からまた御質問いただくということで、うちの事務局にも聞いたわけでございますが、再三外務省の方には、私がああいうふうに申し上げたものですから、このことについてお話をさせていただきたいということを言っているようでございますが、今のところ、前向きな御発言がないということでございまして、正直なところは話が進んでおりません。
 これは、先生、再三の御指摘でございますし、そして、外国とも絡んだ話でございますから私の見解というようなことにもまいりませんけれども、外務省の担当者なり、あるいは大臣なりと一遍直接話をさせていただきますから、少しお時間下さい。そんなに時間をとらずにこれはやりたいと思います。
小沢(和)委員 では、大臣の今後の努力を引き続いて見守りたいと思います。
 次に、雇用失業問題できょうはお尋ねをいたします。
 一昨日、政府が、不良債権処理の加速を中心とする総合デフレ対策を決定いたしました。私は、特にその中の「雇用対策の推進」の部分を丹念に読んでみましたが、結局中身は、企業への新しい名目の奨励金やハローワークの活動強化など、これまで余り効果のなかった政策の焼き直しばかりだったように思います。
 既に我が党の志位委員長は、先日の代表質問で、失業率が三%程度に下がるまでの間の緊急措置として、給付期間をせめて一年間まで延長するなどの提案を行いました。これに対し小泉首相は、給付日数の延長は失業者の滞留を招くというおそれもあると、否定する答弁を行いました。
 実際、政府は雇用保険の給付日数の大幅な削減を行ったのに続いて、今、金額の切り下げを検討しております。これまで、最低でも在職時賃金の六〇%を保障していたのに、これを五〇%に切り下げようとしております。その結果は、失業者を、どんな低賃金で劣悪な労働条件でも、またパートや派遣でも就職しなければならないように追い込むことになるのではないでしょうか。
鴨下副大臣 今議員の御指摘は、失業者に低賃金で就職を押しつけやしないか、こういうようなことの御懸念だろうというふうに思いますが、今、雇用保険制度につきましては、関係審議会を含めまして、見直しの検討が行われている最中でございます。その中で、厚生省が示した給付の見直しのたたき台として、求職者給付の給付率の見直しは、基本手当日額が再就職時賃金を上回る者の多い高賃金層についてだけ、このような逆転現象を解消することにより早期再就職の推進を図ることをねらいとしているものでありまして、むしろ、御高齢になって再就職しようとしても、雇用保険で給付を受けている基本手当日額の方が多いということになると、かえって就職を妨げることになりやしないか、こういうようなことでの改正の趣旨でございます。
小沢(和)委員 政府は、不良債権処理を加速するためなら、銀行が嫌がっても公的資金つまり国民の税金を何兆円という単位でつぎ込もうとしております。しかし、三百六十万人もの失業者が町にあふれても、雇用保険には来年度の予算要求でもこれまでどおりの保険給付費の四分の一に見合う額しか出そうとしておりません。
 来年度予算要求では、求職者給付費つまり失業手当は一・二六倍の額を見込んでおります。政府の見通しでもそれだけ新たな失業者がふえるということであります。単純に今の失業率を一・二六倍すれば、来年度は七%にも達することになる。これは不良債権処理の加速でもっとふえることになるわけであります。そういう非常事態でも、雇用保険に臨時の財源を追加することもせず、逆に手当の方を削って収支バランスを合わせることばかり考える、そんなことでよいのでしょうか。
 今必要なことは、銀行やゼネコンにつぎ込む財源を、国際的に見ても貧弱な我が国の失業手当の充実に振り向けることではないでしょうか。
鴨下副大臣 完全失業率等につきまして予測するというのはなかなか難しい部分もございます。さまざまな経済要因によって上下するものでありますから。
 今議員御指摘のような雇用保険の改正につきまして、特に、先ほど申し上げた点と、さらに、多様な働き方に対応した、通常労働者とパートタイム労働者の給付内容の一本化を行うとか、再就職の困難な状況に対応した給付の重点化等が改正の主なものでありますが、議員が御指摘の、ある意味でこれは国費だとかそういうような意味だろうと思いますけれども、それを投入してまでも求職者給付を充実させるべきじゃないか、こういうような御趣旨だと思います。
 それにつきましては、雇用保険制度そのものは労使の言ってみれば共同連帯を基本とするものであるというのは、これはかねてより厚生労働省が申し上げてきたとおりでありますが、そういう意味で、雇用保険のさらなる財源について、安易にといいますか、そういう意味で国庫負担をふやすという、こういうようなことは適当ではない、こういうふうに今判断をしているところであります。
小沢(和)委員 政府は、雇用確保のためという名目で、これまでもいろいろな助成金を企業に出してまいりました。今回の総合対策にもそれが見られますが、しかし、その多くは、企業に金をくれてやるだけで、実際には雇用確保にほとんど役立っておりません。
 私が前国会で取り上げた佐世保重工、SSKの事件は、自社の従業員を下請業者に出向したように見せかけて助成金を詐取した事件でありました。先ほども私のところに重大な情報が寄せられました。NTT東西の両社が、今年五月、全国に百の子会社を設立し、そこに合計五万二千五百名の労働者を退職させ再雇用させたことはよく知られておりますが、その子会社が、近く一斉に高年齢者等雇用安定助成金を申請すると聞きました。
 NTTは、この退職、再雇用で労働者の賃金を一挙に三〇%も切り下げて、人件費節減で巨額の利益を得ております。こういうえげつないリストラで大もうけをしたNTTが、そのためにつくった子会社に、何で一人当たり十万円、総額にして約五十億円もの助成金を出さなければならないのか。このリストラはいかなる意味でも雇用の確保などに全く貢献していないと思います。こんなところにも助成金を出すのかどうか、お尋ねします。
坂口国務大臣 雇用対策の政策というのはさまざまございまして、もうこれは御承知のとおりでございます。数十種類あるというふうに思っております。中には失業した人に対するものもございますし、それから企業に対する支援もあることはそのとおりでございます。
 私は、企業に対する支援をすることによって、そのことが勤労者に対して役に立っていないとは思っておりません。これは委員と少し意見を異にするところでございます。私は、かなり役立っている面もあるのではないかというふうに思います。しかし、中には佐世保重工のように、これは本来の趣旨をたがえて受けているという者も中にあることは事実でございまして、そういうのは、これは徹底的に私たちも取り締まっていかなければなりませんし、よく注意をしていかなければならないというふうに思っております。
 そのNTTのお話は、今初めて私お聞きするわけでございますので、何とも今申し上げることはでき得ませんけれども、これからも我々、限られた財源の中でやっていくわけでございますから、できる限りよくそうしたことも配慮をしながらこれからやっていきたいというふうに思っております。
小沢(和)委員 私はさっきの発言の中で、全部が役に立っていないと言ったんじゃないんですよ。多くが役に立っていないというふうに言ったんです。
 午前中も、再就職支援給付金が、もうかっている企業に、さらに人減らしをやるときにも出されているということが問題になりました。政府のこれまでの説明では、厳しい経営状況にある企業に何とか雇用を守らせるために助成金とか給付金を出すということだったと思うんですが、NTTのように、もうかっている会社のリストラをさらに促進するためにつくった子会社に助成金を出すというようなことは、もう絶対にやらないように、この際強く求めておきます。
 失業手当が切れ、全く収入がなくなった失業者の生活支援のため、全国で一千億円の離職者支援資金という貸付制度がつくられております。しかし、せっかくのこの制度が、ことし八月末現在で二千三百件、わずか二十六億円しか利用されておりません。一方で、失業者の家庭がやみ金融の取り立てで痛めつけられ、自殺に追い込まれるような悲劇が続いております。こういう制度があることをもっと宣伝すべきではありませんか。
 また、この制度をもっと利用しやすくするため、現在三%の利子を無利子にする、二人必要とされる保証人を一人にする、五年の償還期限をもっと延長するなどの改善ができないのか。小泉首相も、その改善について我が党に検討を約束されましたが、どう検討されているか。
 時間もちょっと迫ってまいりましたので、最後の一問も続けてやらせていただきます。
 失業者が何より求めているのは、やはり仕事であります。ここまで不況が深刻になってくると、民間任せでは就労の機会をつくり出すことは極めて困難です。政府も、昨年度の補正予算に三千五百億円の緊急地域雇用創出特別交付金を計上し、平成十六年度まで三年間で、都道府県を中心に雇用の創出に取り組むことになりました。一昨日聞いたところでは、今年度じゅうに約千五百億円で十六万人の就労が確保されるとのことであります。教育、環境、防災、福祉などの分野で大きな成果を上げており、もっと思い切って予算をふやしてほしいとの要請が各地から寄せられております。
 こういう交付金こそ抜本的に増額すべきではないか。また、前回も要求しましたが、現行の六カ月の就労制限を見直す必要があると思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 離職者の支援資金の貸し付けにつきましては、確かに現在のところ、使用されている率が非常に少ないということはそのとおりでございまして、ここは少し条件の緩和をしたいというふうに考えておりまして、現在検討をいたしております。保証人も二人ではなくて一人でいいようにできないか、そして五年を七年ぐらいにできないかといったようなことで今検討をいたしておりますが、利息までというわけにもなかなかまいりませんけれども、若干ここは検討しているところでございます。
 それから、特別交付金の話でございますが、これはもう既に、平成十五年分、十六年分は都道府県なり市町村にお渡しをしてあるわけでございます。これについて、今後の動向も見ながら使い方をさらに検討したいというふうに思っておりますし、中には条件緩和をというお話も随分ございます。しかし、また余り緩和し過ぎますと不正なこともないとも限りませんしいたしますので、そこはよく注意をしながら、そしてこれはできるだけ使いやすいようにしていきたいというふうに思っております。
小沢(和)委員 きょうはこれで終わります。
坂井委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男でございます。
 私は、障害者福祉の分野で実施される支援費制度をめぐる現状と問題点についてただしていきたいと思います。
 まず、坂口厚生労働大臣にお尋ねしますが、先日の本委員会で坂口大臣は、支援費制度について、「来年四月からの円滑な施行に向けた準備を進めております。」こういうふうにあいさつされました。もうこの十月からは新規の利用者が市町村での申請を始めておりますけれども、来年四月からの実施に向けて、一体、現状がどうなっており、またどのような国としての対応をしようとしているのか、このあたりをお尋ねしたいと思います。
坂口国務大臣 この支援費制度は、どうしましても市町村が中心になっておやりをいただかなければならない問題でございますので、そして、市町村で整備をできるだけ急いでいただくように私の方もお願いをしているわけでございます。
 やはり市町村によるばらつきもあるようでございますので、ここは、どの市町村におきましてもその受け入れが可能になりますように、私たちも早く市町村とお話し合いをしたいというふうに思っております。既にもうやっておりますけれども、今後も続けたいというふうに思っております。
山口(富)委員 今大臣から、すべての希望される方が受け入れられるようにその準備を進めたいという話がありました。それだけに、地方の現状がどうなっているのかということをよく見ることがこの点では大事になると思うんです。
 きょうは資料をお手元に届けましたけれども、これは、十月一日付で、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会が、今の準備状況について全国の調査を集計したものを発表したものです。調べた県が、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、滋賀、京都、大阪など全国十五都府県に及んでいて、七百四市町村の担当課から回答を得て、大体七四%回答を得ているといいますから、全国的な趨勢を反映したものだというふうに思うんです。
 きょう委員会にお配りしましたのはその発表した文書のごく一部なんですけれども、これを見ますと、制度の実施と障害者の皆さんの利用にとって、今基本的なところで手を打たなければいけない問題があるということがよくわかるように思うんです。
 まずその第一なんですけれども、この制度は新しい制度だけに、開始前に制度の中身をきちんと伝えるということが非常に大事なんですけれども、この点が現状ではまだまだ弱いということが言えると思います。
 きょうお配りしたこの資料では全部は載せていないんですけれども、ちょっと御紹介いたしますと、広報などを使っての案内というのは、市で八六%、町村で六五%が計画している。簡便なパンフレットというものを国もつくったわけですけれども、そういうものも含めまして、個人送付されているのは三二%にとどまっている。三割ですね。
 特に問題だと思いますのは、この資料の一枚目にありますように、説明会の開催が大変弱いんです。この制度はなかなか複雑なものですから、物を読んだだけではわからなくて、やはりじかにいろいろな説明を聞く中で今度の制度の特徴がつかめるということになっていると思うんですけれども、説明会の開催が少ないということと、二割近くの自治体が、特に町村の場合などは、実施しないという回答をしているわけですね。
 国としては、こうした現状をつかんで、それに見合う対策をきちんととっているのか、このことをお尋ねしたいと思います。
上田政府参考人 現時点では詳細は把握しておりませんけれども、本年八月時点の調査によりますと、各都道府県等におきまして、利用団体等への説明会が平均約五回、あるいは市町村への説明会が平均約三回開催されておりまして、各自治体が制度施行の準備に取り組んでいるものと考えております。また、十月以降、市町村におきましては、順次利用者からの支給申請を受理しているものと考えております。
 さらに、今後の施行準備の参考とするために、支援費制度の事務処理体制あるいは広報活動の実施状況、申請受理の開始時期等、これらの状況につきまして、各市町村における準備状況につきまして、現在、調査を行っているところでございます。この調査の結果を踏まえまして、支援費制度の円滑な施行に向け、自治体の事務を支援してまいりたいというふうに考えております。
山口(富)委員 今、上田部長は八月の調査のことをお話しになりましたけれども、私は、八月の調査について中身を知りたいという要請を出しましたが、とてもお答えのできる中身じゃないということで、私の手元に参っておりません。ただ、上田部長が、引き続き調査するんだというお話でしたから、それは全国の状況をよくつかんでいただいて、特に、わかりやすいパンフやリーフレットが直接届くように、また、説明会などもきちんと開かれるように指導援助をしていただきたいと思うんです。
 そしてもう一つ、この調査で私、大事だと思っていますのは、この支援費制度の場合に、支援量の決定や障害程度の認定などで障害者へのケアマネジメントが大変大事になるんですけれども、この点での対応が著しくおくれているというのも、もう一つ言えることだと思うんです。
 例えば、担当職員の確保ができていないという都府県が四二%、町村部でも四七%です。その上、配付資料の二枚目なんですけれども、担当職員へのケアマネジメントの研修についても、しない自治体、やらないと言っている自治体が大体一割あるんですね。しかも、三枚目なんですけれども、この担当職員を支援する専門家の配置、これも大変弱くて、一番下の町村部にいきますと、「した」「する予定」を合わせて五%にとどまるという事態が現実に起こっております。
 こうした現状を見ますと、来年四月からのこの支援費制度の実施という問題に当たって適切な判定や対応ができるのか、極めて不安定なままでの出発になる危険がありはしないかというふうに考えるんですが、この点はどういうふうに見ていますか。
上田政府参考人 支援費制度においては、申請の受理、決定などの事務につきまして市町村が行うこととされており、このうち、施設サービスに係る障害程度区分などに関し専門的な判断を要する場合には、必要に応じて、市町村からの依頼により、都道府県等の更生相談所が専門的な観点から意見書の作成などの支援を行うこととしております。また、専門的な指導助言が適切に行われるようにする観点から、都道府県等の更生相談所が市町村の職員を対象に研修等を実施しているところであります。
 さらに、利用者への情報提供や相談等をきめ細かく行うために、市町村等において各種相談支援事業の充実に努めているところでございます。
山口(富)委員 障害者の皆さんの場合は、その判定に当たっても個人差が大変大きいわけですね。それだけに、多様な対応が必要で、人材の配置というのは不可欠だと思うんです。そういう認識をきちんと持って当たっていただきたい、実情に応じた手当てをしていただきたいと思うんです。これは基本問題ですので坂口大臣にお答えいただきたいんですが、やはり、制度を知らなかったり、申請できないような障害者を生み出さない、そのためのきめ細やかな周知や地方自治体への援助を行っていただきたい、これについて坂口大臣の答弁を求めたいと思います。
坂口国務大臣 これは、周知徹底をしなければいけませんから、周知徹底を図ります。
山口(富)委員 では、それはよろしくお願いいたします。
 さて、次に取り上げたいのは、負担にかかわる問題、負担増にかかわる問題なんですが、先日、東京の大田区にあります知的障害者通所授産施設、ここを訪ねまして、支援費制度をめぐってどういう問題を感じているのかという聞き取りを私はやってまいりました。そこでも、従来の措置費との関係で、今度の支援費の支給というものがどういう程度のものになるのか、それから、利用される方々の負担がどう変わるのかという点に特に心配の声が、また戸惑いの声が集中していたと思います。
 そういう心配がありますから、厚生労働省がつくっている各種のパンフレットの中でも、利用者の負担が著しく増加することのないように配慮するということが繰り返し出てきておりますし、それから、最近開きました九月の担当課長の会議でも同様の説明がなされたというふうに聞いております。
 それで、九月の担当課長の会議の資料からちょっとお尋ねしたいんですが、この資料の百八十三ページなんですけれども、「利用者負担額の決定」という部分の中で、こういうくだりがあるんですね。「指定知的障害者更生施設及び指定知的障害者授産施設以外の施設の入所者については、前年度の生活保護法による入院患者日用品費相当額を必要経費として認定する。」と。
 文章が長いんですけれども、ここに「以外」という前提条件がついておりますから、これはどういうことかといいますと、今度の支援費制度のもとでは、知的障害者の更生施設や授産施設の入所者には生活保護法による入院患者日用品費相当額、これが必要経費としては認められないということになります。私、準備室の方に、この相当額とはどのぐらいなんだと尋ねましたら、関東エリアでは二十八万五千九百七十円だという回答を得ました。
 となりますと、そこで聞きたいんですけれども、これだけの必要経費を今後認めないということになりますと、結局のところ、この該当する入所者の方々は負担増が加わってくるということになるんじゃありませんか。
上田政府参考人 御指摘のように、ふえる方がおられます。
山口(富)委員 そうあっさりと、おられますだけでは困るんですよ。
 問題は中身なんですが、まず、数字を出していただきたいんですが、今度の負担増になると考えられる入所更生施設、入所授産施設、そのそれぞれの数ですね、それから、ここに入所されている方々は一体何人いらっしゃるのか、これについて報告願います。
上田政府参考人 失礼しました。
 知的障害者の更生施設に入所されている方が約八万七千人おられます。それから、授産施設へ入所されている方が一万四千人おられます。
山口(富)委員 私の方でちょっと補足しますと、更生施設は全国で一千三百三カ所あります。それから、入所授産施設は二百二十八カ所あります。ですから、施設からいきますと、千五百三十一カ所、大体十万一千人を超える方々が負担増に見舞われるような仕組みになっているというふうに思うんです。
 重ねてお尋ねしますけれども、知的障害者の施設に入所されている方は障害者基礎年金をお受けになっている方が多いわけですけれども、一級年金受給者、また二級年金受給者、これらの方々が現在に比べて一体どういう負担を求められるのか。この負担基準額が出ておりますけれども、大体それを見ながら説明願いたいと思います。
上田政府参考人 お尋ねの件でございますが、入所後三年以上で収入が年金のみの者の場合の利用者負担月額について申し上げます。
 障害基礎年金一級受給者につきましては一万七千七百円負担増でございます。また、障害基礎年金二級受給者につきましては二万二千七百円の負担増でございます。
山口(富)委員 私は、現行に比べてと、現行の額もいただきたかったんですが、これは私が説明しますよ。これは、九月に厚生労働省が出している担当課長会議の資料の中に載っているんです。
 それで、一級年金受給者の方は、現在、月額三万四千百円の方が、今上田さんがおっしゃったように一万七千七百円ふえて、五万一千八百円になるということですね。それから、二級年金受給者の方は、現行一万九千百円が、二万二千七百円ふえて、四万一千八百円になるというのが今のおっしゃった裏づけになると思うんです。実はこれは、現行と比べてみても、一級の年金受給者の方で大体五割以上の負担増、それから二級の方で二・二倍の負担増になるんですね。
 そうしますと、障害者の方の生活実態が非常に厳しいということは改めて今さら説明するまでもないことなんですけれども、こうなると、厚生労働省が言ってきました、著しい負担増にはならないというふうに述べてきた説明とも相入れないことは明らかだと思うんです。私は、この点で、負担増をしない方向での再検討をすべきだと思いますが、いかがですか。
上田政府参考人 支援費制度において、利用者が施設でサービスを受けた場合の利用者本人負担につきましては、利用者本人の前年の収入から必要経費を控除した額に基づき判定することとしております。
 知的障害者福祉法においては、知的障害者入所施設のサービスに要した費用として、日常生活費が支援費に含まれているものとして支給されておりますので、利用者本人は日常生活費を負担していない取り扱いとなっております。こうした点を考慮しますと、利用者本人が負担しない日常生活費を必要経費として収入から控除することは適当でないというふうに考えているところでございます。
 また、生活費をすべて負担しております在宅の知的障害者とのバランスからも、収入から控除することは適当でないのではないかというふうに考えているところでございます。
山口(富)委員 私は、こういう制度をつくった理由を聞いているんじゃないんです。やはり知的障害者の方で入所されている方が経済的にも大変だということは、これは私たちの共通の認識だと思います。そういう方々に対して、五割増し、二・二倍になるような負担増を今やってしまっていいのかということなんですよ。
 あなた方のつくっている担当課長会議の資料、ここには、皆さんにごらんいただきたいんですが、わざわざ一ページ目に大きな強調の括弧がありまして、ここで何を言っているかといいますと、今後変更があり得るものだとちゃんと書いてあるんです。なぜかというと、今度新しい制度ですから、出発しようとしますけれども、自治体や利用者の方からいろいろな意見が来るのは当然予想されます。だから、それに応じて、ここで説明している資料についても変更があり得るというのをわざわざ一ページ目に書いたんじゃありませんか。もう一度答弁を求めます。
上田政府参考人 ただいま私は、知的障害者の利用負担についての考え方を申し上げたところでございます。いずれにしましても、私ども、関係団体等の御意見を今後とも聞いてまいりたいというふうに考えております。
山口(富)委員 聞いてまいりたいという中に、今の現状をよく聞いて再検討を含めていただきたいというふうに思います。
 この点で、今やりとりをお聞きになりまして、坂口厚生労働大臣、これまで著しい負担増になるようなことはないと繰り返し説明なさってきたわけですから、この点についても、実施に当たって、よく関係者から意見を聞きながら実態に応じてきめ細やかに準備していくという点で、御意見をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 具体的な余り細かい数字までちょっと今私は存じませんけれども、今お見せになりましたそのパンフレットに変更もあり得るというふうに書いてあるそうでございますから、変更もあり得るんだろうと思っております。
山口(富)委員 変更があり得るという答弁をいただきましたので、その方向での具体化を図っていただきたいと思います。
 今度の支援費制度の問題では、障害者がサービスを選択できるといううたい文句なんですけれども、現状では基盤整備がおくれていますから、そういうふうにいかないのがもう目に見えているんですね。それで、坂口大臣は先日のあいさつでも新しい障害者計画についてお述べになって、これを準備するというお話がありました。私は、この機会に、やはり全体の基盤整備のおくれを抜本的に解消するような計画、これを立てるべきだということを最後に求めまして、質問を終わりたいと思います。
坂井委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 まず冒頭、坂口厚生労働大臣にあられては、さきの第百五十四国会に引き続いて今回もまた大任をお務めくださる由で、皆さんはおめでとうとおっしゃっていましたが、私はありがとうございますとまず申し述べたいと思います。
 そして、副大臣には実力派、鴨下先生と木村先生ということで、これは本当に今のどうやって社会保障制度を充実させていくかというときにあってまたとない人材と思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。褒め殺しではないので。
 そして、実は坂口厚生労働大臣に質問予告はしてございませんけれども、ハンセン病、クロイツフェルト・ヤコブ病と引き続く大臣の御英断によって時代を切り開いたような幾つかの政策とあわせて、いま一つ、私、阿部知子並びに中川智子、いつもこの場で例示させていただきますが、在外被爆者問題で、今、実は在ブラジルの森田さん、森田隆さんという方が、もう八十もお近い、超えられた年齢かと思いますが、わざわざブラジルから二十四時間をかけて、この日本でのいわば裁判に臨むために来日しておられます。
 彼は、かつての広島、長崎の被爆のときに被爆された被害者、被爆者で、その後日本の国策によってブラジルに移住されて、そして、ブラジルに在住しておると、なぜか、被爆者と認定されておるにもかかわらず、被爆についての治療がこちらに帰ってこないと受けられない。
 この問題は繰り返し私どもが提起しておりまして、やはり戦後五十七年たち、六十九万人近くの方が被爆され、その中には在日朝鮮人の方あるいは中国人の方、いろいろな国籍の方、あるいは日本人であって戦後海外でお暮らしの方、さまざまな運命を背負って生きておられる方がございます。ぜひともこの被爆者援護法の在外被爆者への適用という問題を、もういろいろな問題がございますが、命が有限であり、御高齢でもあり、坂口厚生労働大臣のいわば国際的な視野に立った御英断で、引き続き、現地での適用がなされるようにお願い申し上げたいと思います。
 これは御答弁をいただくものではなくて、現在森田さんが来ておられるということを御報告かたがた、本当にお心におとどめおきいただきたいと思うことで、まず冒頭申し述べさせていただきます。
 そして、私の本日の質問は、きょうは週末の金曜日にもかかわらず、当委員会の委員長初め委員の皆さんの熱心な御討議によって長時間にわたる委員会審議時間が確保されまして、私も実は議員になってから初めての四十分という時間をいただきました。大変うれしくもあり、今までなかなか質疑できなかった、そして本来私が長年自分のライフワークとしておりました小児科医療について、まず冒頭お伺いしたいと思います。
 そして、小児科医療についてお伺い申し上げるときに、このような悲しい事例を取り上げることから始めなければならないということを、私は、やはり来るべきものが来たかなという思いで、小児救急医療ということで取り上げさせていただきます。
 もう皆さんの中でも既にマスメディア報道等で御承知おきと思いますが、先日、岩手県一関市で、生後八カ月の乳児が、子供にはありがちな下痢、嘔吐という症状で、ちなみに私たち小児科医はうんこ、しっこと闘っているような毎日ですから、下痢、嘔吐というのは非常に日常的、そしてその中にいろいろな、重篤なものから軽微なものまである幅広い疾患ですが、第三病日、発病してから三日目と思われる夜間の時間帯に、一関市で救急受診ができる小児科医のいる病院を探し求めたがついに小児科医にはめぐり会えず、おうちで、自宅で死亡されたという事例です。
 坂口厚生労働大臣にあっては、まず、この事例について何が最も問題であると御認識であられるか、冒頭お願いいたします。副大臣。
木村副大臣 まず、阿部先生にお褒めの言葉をいただきまして大変恐縮に思っております。後が怖いかな、こう思っておるような次第であります。
 今先生が御指摘いただきました、岩手県の一関市で、生まれてから八カ月しかたたない赤ちゃんが死亡したという事件はまことに、本当に痛ましい残念な事件であると私自身も考えております。
 私も今子供たちが、ようやく一人は中学校一年、もう一人が小学校六年でございますので、随分小児科医の先生方に大変お世話になりました。先生自身が小児科の医師ということで、こういうのを随分御経験されながら、大変取り組んでおられるその真摯なお姿にまさに敬意と感謝を申し上げる次第でございまして、今後ともますますの活躍をお祈り申し上げる次第でございます。
 岩手県から事情を聞いたところでは、残念ながら、一関市を含む両磐医療圏というのは小児科のお医者さんが四名しかいないんですと。四名しかいないわけでございまして、救急医療体制というのが整備をされておりません。それで、盛岡市は、盛岡医療圏については小児救急医療支援事業が実施されておるんですが、その他の医療圏には残念ながらそういう事業が実施されていない。
 こういうことでございますので、今回の事件を踏まえて、同県におきましては小児科医への緊急連絡体制や医療機関相互の連携協力のあり方について検討を開始したと聞いておりますし、小児救急医療支援事業の普及促進を図る観点から、厚生労働省として運用改善をこれから一生懸命行うなど、今後とも関係都道府県をしっかりと支援してまいりたい、このように思っているような次第でございます。
阿部委員 しっかりと取り組んでいただきたく思います。
 しかしながら、私が指摘したいのは、岩手県ももちろん一生懸命実は取り組んでおられた県なわけです。おっしゃるように、今の御答弁のようにその医療圏に四名しか小児科医がいなければ、どう取り組もうと、逆さにひっくり返ろうと、四人で毎晩当直をすれば約一週間に二日泊まらなくちゃいけないという状態が来るわけです。そして、この一関市で起こったような同じ事態、いわば二次医療圏、国が定めた二次医療圏が実は日本全国三百六十ございますが、その中で、夜間、深夜の小児救急医療が未整備の地区が六〇%でございます。日本全国六割が未整備。無医村でございます、子供にとって夜間は。
 であるならば、私は、これは国の政策医療としてきちんと位置づけなければ大切な子供の命は守れないと思いますが、この点について、担当部署にお伺いいたします、もしくは手短に坂口厚生労働大臣に、果たして対策として抜本的にお考えがおありや否や、恐縮ですが短くお願いいたします。
木村副大臣 御指摘のように、三百六十三医療圏のうち、今、平成十三年度末では七十四医療圏で小児救急医療支援事業は行われており、それを本年は百十六に広げるようになっております。そして、小児救急医療の拠点病院整備を新たに進めるとともに、診療報酬の改定等にも一応評価をしたわけでございますが、これからも実情等、都道府県から報告を求め、しっかりとまたおっしゃるとおりに取り組んでまいりたいと思っております。
阿部委員 今の御答弁で、今年度百十六にふやされるということですが、それでもまだ三分の二近くは未整備な状態に残るわけです。
 そこで、事態はおっしゃるほど容易ではないということをきちんと担当の厚生労働省に認識していただきたく、厚生労働省が研究班を用いまして出された「平成十三年度研究報告書 二次医療圏毎の小児救急医療体制の現状等の評価に関する研究」というこの分厚い一冊ですが、ぜひともお読みいただきたいと思います。お読みいただいたならば、今のような御答弁ではとても済む現状ではない、英断がなければ解決しないということがはっきりしてまいります。
 どういうことかといいますと、今、診療報酬上の多少の加算をいたしますというお答えと、そして、多少は二次医療圏でふやしてまいりましょうということでございましたが、実はその二次医療圏でグループをつくってやりますにも、国の補助三分の一、県の補助三分の一、自治体が三分の一といって割っていった場合に、どうしても自治体で補助が出せないケースもございます。これは国の補助の持ち分を上げるという形でまずお考えをいただかなくてはいけない。そして、そうやってもなお実は、実態の過半の理由は、小児科医がいないのです。いないものは、金をまこうが何をしようができないのです。
 そこで、ここが私のお願い申し上げる御英断ですが、ここはぜひとも坂口厚生労働大臣の御答弁でお願いいたしますが、私は、これをつまびらかに全部読みまして、その結果一つの傾向を見ました。実は、県単位で、例えば十二の医療圏に分けられて、その中で小児の夜間救急がゼロという県が五つございます。青森、新潟、山形、徳島、佐賀です。五つ。そして、全県の中で五つ六つの医療圏に分かれていてもたった一カ所しか整備されていない、九割以上整備されていない県が十五県もございます。
 となると、実は、厚生労働省が各県に医科大学ないしは医学部を設置してきたことの意味は何であったのか。各県の医療を担うべく、次世代を担うべく、やはりそこに大学があるということは、その地域、県で、そこの医療をしっかりその県の大学が担ってくれるように、これは文部省とも知恵を合わせて、なぜ大学がありながらその地域の二次医療圏で小児科医がゼロで子供が死んでいくのかということについて、より踏み込んだ共同の御討論をいただきたいです。
 私自身長く大学におりまして、その実態、大学に、医局には人がたまりながら実は過疎が周りにふえていくということは、本当に自分自身も経験いたしましたし、これは一つの政策の、政治のいわばリーダーシップでなければ解決しないような時期に至っておる。その谷間で子供たちが死んでいくかと思うと、やはり私はいたたまれませんので、ぜひ、一つは大臣もこれをお読みいただきたい。
 それからもう一つ。新潟なら新潟大学があり、実は宮城県も、五つか六つの医療圏でたった一つしか二次医療圏が充足していません。東北大学という大手がございます。そうした実態を見ても、もっと細やかに各大学の現状、どうすればよいか、厚生労働省として、命に責任を持つ省庁として一言覚悟のほどをお願い申し上げます。
坂口国務大臣 これは、今お話を聞きまして、問題点は二つあるというふうに思います。
 一つは、やはり都道府県のリーダーシップがなければならない。きちっとそこはやられていないとうまくいかない。
 もう一つは、それぞれの地域に、数は少ないかもしれませんけれども小児科医というのはおみえになるんだろうというふうに思います。その小児科医の先生方を束ねて、一つの、お互いに開業の先生方が交代ででもそれをやろうよという、そこのリーダーシップがやはりなければならない。私の知っておりますところも、非常に少ないんですけれども、山間僻地で大変なんですけれども、その中を、小児科の先生、そして現在は別の看板を出しておみえになりますが元小児科でおみえになった先生も含めて、ひとつお互いに当直をし合おうということで、中で立ち上がる先生がおりまして、そしてうまくいっているケースを知っております。
 したがいまして、ここのところは、医療従事者の中でだれかがリーダーシップをとらなきゃならないのか、あるいはこれも市町村のところでだれかがリーダーシップをとっていただいて、医師に、あるいは医師のグループにそうしたお話をしていただかなければならないのか、そのへんのところを、いろいろあるというふうに思いますけれども、やはり、県と、それからもう一つは医師会等の中で、リーダーシップをとってもらう人をどう探し出すかということに私はかかっているような気がいたします。
 したがいまして、国といたしましても、上から一通の文書を流すというだけではなくて、その辺のやはり御相談に乗らなきゃいけない。今御指摘をいただきましたように、多いところ少ないところありますから、その進んでいないところに対してやはり十分な御相談に乗って、そこをどういうふうに進めていただくかということを、もう一歩やはり踏み込んでいかないといけない。その辺が、今、当面できることとしては最も大事なことではないかというふうに思います。
阿部委員 今の大臣の御認識は、確かに御指摘の面もあると思いますが、いわゆる小児医療、一次救急、二次救急、三次救急と三段階に分けてございまして、大臣のおっしゃっていただいたようなことは主に一次救急のところで、輪番制、開業のお医者様とあるいは大学の医師が手をとり合いながら、あるいは既にある年齢になられた先生たちも加わってくださって、一次の輪番制を回しているのも事実でございます。
 ところが、二次となりますと、後方ベッドがなければいけませんのと、今一番小児医療で問題になりますのは、入院させられるベッドが非常に少のうございます。ですから、この一関市の乳児も、おうちで死んだわけです。もし、同じ病態でも病院で加療中であれば、まだお母さんたちは納得がいったやもしれません。死にそうな状態でおうちに帰されて、家で冷たくなった子を抱えておろおろした親の気持ちを思えば、小児科の後方ベッドが少ないということも、いま一つ政策的にお考えをいただきたいと思います。
 それと同時に、私はまた、一次救急の輪番制については、他の問題を一つ指摘させていただきたいと思います。
 実は、地域の開業の先生と、そして大学からの、申しわけないけれどもアルバイト医師によって夜間が担われて、それは休日急患センターという形で行われていますが、深夜は行われていないところが大半です。深夜までを含めると、一割から二割しか行われていません。
 そしてもう一つ、大学で勤務する医師たちは、一晩十万円の当直代でそこに行きます。その中には研修医もおります。となると、絶対に、厚生労働省としてその輪番制の中身にまで踏み込んで、どのような医師がそれを担っているのか。そして私は、やはり若い医師を育てる立場にあった者として、大学で勤務したらせいぜい一月に数万円、一晩行けば十万円、これを若いうちから若い医師に当たり前のこととして教えたくないと本当に思います。
 そのためには、以前にも坂口厚生労働大臣にお願いいたしましたが、研修医たちのきちんとした身分、賃金保障の問題が一つと、それから担当部署の厚生労働省には、今輪番制をやっているよとおっしゃいますが、実際に、今国は交付金という形で地方に出した中の財源で手当てしてございますが、実はアルバイト診療になっていはすまいかということを重ねて調査していただきたい。これは御答弁は次回で結構ですから。残念ながらこの分厚い研究報告にはそこまで述べられておりません。しかし私は、何度も申し上げますが、そういう形は、目下やむを得ないとしても、極めてゆがんだものだと思います。
 そして、三Kと言われる小児科をやってきて、きつい、苦しい、もうからないと言われる、三K職場と言われています、小児科は。私自身は好きですし、坂口大臣も子供たちが好きでやっていらしたタケノコ医者ですからよくおわかりだと思いますが、しかしながら、これから育つ若い先生たちに、小児科の一次も二次も三次もやれと言ったら、少ない人数でみんな過労死してしまいますので、せめて研修教育の中に、これは大臣に御答弁いただきましたことでもありますが、小児科の研修を、計画では今実は一カ月だそうですが、より長く、プライマリーですから、夜間救急の半数は子供ですから、きちんと、せめてとりあえず、この患者さんは死にそうか生きそうか、重篤かもちそうか、この峻別をできる程度の一次診療をまず内科の先生にも皆さん身につけていただかないと、小児科医は悪循環していって消滅してしまうと思います。
 この点についても、大臣の御見識をお願いいたします。
坂口国務大臣 先ほど私が申しましたのは、二次医療圏のことを例に挙げて言っておりましたので、一次ではございません。二次のことを申し上げていたわけでございます。
 それから、研修をやっていく、十六年から正式に始まるわけでございますが、その研修医の皆さん方には三カ月はやっていただきたいというふうに思っておりまして、小児科、産科、精神科そして公衆衛生、それぞれ三カ月で約一年というふうに予測をいたしております。一カ月というのは、中でいろいろ若干ありましても最低一カ月以上ということを注釈でつけておるわけでございますが、平均しましては三カ月ずつというふうに思っております。
 この研修医の皆さん方には、研修を、アルバイトをそれこそしながらやっていただいていたのではいけませんので、アルバイトをしていただかなくてもいいようにちゃんと給料を出すようにしたいというふうに思っております。これは十分かどうかはわかりませんけれども、三十万ぐらいぜひ出せるようにしたいと思っている次第でございます。
阿部委員 破格の御答弁をありがとうございます。
 引き続いて、今度は、生まれ出る子供たちのところでお伺いいたします。
 実は、私は、以前に無資格分娩介助について質問主意書を出したことがございますが、日母という団体で産科看護学院というものをつくりまして、いわば助産婦でない方に、産科の介助に入るための、助産婦さんたちを介助するための教育を行っていた経緯があって、ただしかし無資格の、助産婦の資格を持たない、あるいは場合によっては看護婦の資格を持たない方すら助産に関与していた事例の報告を受けました。
 そして、そのような事例は私が質問主意書で出して以降ないのかなと思っておりましたら、ところが残念なことにそうではございませんで、現在もなお、ある県で、毎日、一月に六十件のお産を扱います産婦人科の、十九床の有床クリニックで、外来患者数は約百九名というところで、まったく助産婦がゼロの状態で分娩を取り扱っております。
 たまたま、これは実際にそこで助産婦さんがいないということに気がついたある方から県に通報が上がりまして、どうなっているのか、そして実際に医療被害を受けた方がそこに発生して、裁判に持ち込む形になって、いまだに無資格診療の実態が継続しておるという事例として極めて深刻な事態と私は受けとめております。県の方でも口頭指導などはなさっているようではありますが、やはり、口頭指導が何回かされても、現状で助産婦はゼロでございます。
 県の自治業務とはいいながら、このような実態に対して、やはり厚生労働省としてきちんとした見識を持ってのある意味での御指導を、ある意味です、強制的な意味でもないですが、もちろん自治義務ですから。しかしながら、こうやって放置されて改善されないということが引き続く限り、無資格診療は幾ら騒いでもやれるんだということになってまいりますので、この、十九床、無資格で助産婦ではない人が助産業務を今もって続けている病院が、医院があることについてのお考えを伺いたいと思います。
坂口国務大臣 具体的なケースにつきましては私もまだ存じておりませんけれども、前回にも、無資格の人を養成するというような問題が取り上げられましてまことに憂慮した次第でございまして、その対策にはかなり皆さん方にも積極的に働きかけをした経緯がございます。
 今回は、看護師さんとしての資格はありますけれども助産師としての資格のない人が携わっているということでございまして、これは医師及び助産師しかできないということになっているわけでございますから、ここはやはり責任をたださなければならないというふうに思っております。
 都道府県がこれは指導をすることになっておりますが、都道府県に対しまして必要な助言を我々も行っている。そして、都道府県に対しましても、そこはきちんとした医療が行われるようにしなければならないというふうに思っております。
 小児科にいたしましても産科にいたしましても、非常に難しい分野でございまして、正規の人が一生懸命やっておりましてもいろいろなことが起こりまして、そして訴訟が起こるといったようなことが多いわけでございます。その訴訟の多さが、また小児科や産科を少なくしているというようなことを言う人もいるぐらいでございます。しかし、正規の人がいなければ、それはまたさらにそれに拍車をかけるわけでございますしいたしますので、正規の人はきちんと置いて行われるように、これはやはり県がしっかりと指導しなきゃなりませんし、もしできてないということでありましたら、国の方がやはりそのことに対しましてもっと、出向いてでもちゃんとやらなければいけないというふうに思います。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
阿部委員 具体的なことを申し述べませんでしたので、この診療所は、医師が三名、助産師ゼロ、看護婦二、准看二十二という状態で、先ほど申しました六十人の月のお産を賄っております。
 准看という看護婦さんたちの習熟度、やはり個別に差がございますし、実力的に見ても、助産ということに、もちろん無資格でもありますし、緊急事態の発生にもなかなか正直言って対応し切れないと思います。
 このような状態が現実でありながら放置されているということを私は重ねて申し述べて、そして、いわゆる立入調査等々についても担当部局の方から御指導いただきたいと思いますが、局長、答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 局長はいないようでございますので、必ずそのように申し伝えます。
阿部委員 御苦労さまであります。よろしくお願いします。
 しかし本当に、先般助産師についての法制化がされた際も男性助産師問題が議論になりましたが、私が医療の現場にいて思いますのは、とにかく助産婦さんが足りない状態で、現状で危険な分娩が行われておりまして、男性ということが、逆の意味で、労働力不足から安易に導入されやすいということもございますので、極めて微妙と思いますし、とにかく現状を立入調査し改善をさせていただくことからまず始めていただきたいと思います。
 引き続いて、先ほど武山委員の御質問の臓器移植について、私は武山委員とは仲よしですが、考えが多少違いまして、論議の俎上に上せるために私の質問をさせていただきます。
 まず、坂口厚生労働大臣に伺いますが、今健康保険証と一緒に、このような臓器提供の、する、しない、あるいは脳死後、心臓死後というシールが配付されている実態を御存じでありましょうか。
高原政府参考人 御指摘の件は、いわゆる意思表示シールであると考えております。これは、運転免許証に貼付することができる意思表示シールとかそういうふうなものにつきましては、運転免許場、警察署等に配置もしております。今委員御指摘のものは、医療保険の被保険者証に貼付できる意思表示シールを、医療保険の被保険者証の更新等の機会に、保険者を通じて配付しているものでございます。
 意思表示シールは、臓器を提供するという意思と、提供しないという意思の、いずれをも表示することができるものであり、また、意思表示シールを張るか張らないかということもあくまで個人の意思にゆだねられております。
 ちなみに、最近の調査によりますと、臓器提供意思表示カードの入手方法を御存じの国民の方は、残念なことに三六%でございます。そういうふうなことでございますので、臓器提供というものを、ただいま委員御指摘のように、論議の俎上にのせて一人一人の国民の方に考えていただくよすがになればと思ってやらせていただいております。
阿部委員 よすがが、よすがで済めばよろしゅうございますが、実は、例えば運転免許証の書きかえのときには、自分でこのシールをとるようなシステムでございます。健康保険証の場合は、送付されてまいりますので、受け取った側としては、これを張らないと完了しない、シールを張らないと完了しないというふうに受けとめることもございます。しかしながら、臓器提供の意思を、ノンであれウイであれ、表明せねばならぬ義務はないわけです。ここを担当部署が履き違えないでいただきたいわけです。
 自分でとるのは自由です。しかしながら、送るのであれば、これが必ずしも強制的なものでないという何らかのことを書き加えないと、患者さんは私のところに持ってみえます、これは張らなくちゃいけないものですかと。張らなければ完成しないと思われるわけです。健康保険証は自分で受け取りに行くわけではないケースもございます。もちろん受け取りに行って、箱にあるものをこうやってとるのであれば、それは自由意思でとるわけです。
 その点について、やはりさきの国会で臓器移植法案が審議されましたときに、個人の自発的な意思ということをみんなが前提にして、この場で法案が成立したわけです。説明不足のやり方でこれを郵送ないしは組み込んで渡せば、そのようなものと理解されますので、現場でどのように取り扱われているか、高原局長に御答弁願います。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
高原政府参考人 私は医療保険を担当しているわけではございませんが、そのシールを張らないからといって、被保険者としての受領後の権利が制限されるとか、差別的な取り扱いを受けるとか、そういうことは全くない。もし万一そのような誤解があるような送り方をされていれば、そういう点は、入念的にといいますか、私どもは当たり前のことだと思っておりますが、誤解されないようなことをするというふうなことも検討課題だと考えております。
阿部委員 ぜひとも現場の担当部署の実際をお調べくださいまして、自分たちが思っていないから相手も思わないだろうというのは非常に傲慢な考え方と思いますから、実際に受け取る方がどのように感じておられるか、その点をきちんと担当省庁は認識していただきたいと思います。
 同じような事例がもう一つございます。
 実は、この間、静岡県と、そしてちょうどきょう、本日から京都府において、院内移植コーディネーターというものを発足させて、臓器提供のいわばドナーの数の確保を図ってまいりましょうということで、静岡並びに本日京都府で始まる院内コーディネーター制度というものがございます。
 皆様のお手元にお配りしている資料一枚の中の「臓器提供医療機関」という左下の方を見ていただきますと、ここには、日常業務としてこの院内臓器移植コーディネーターが何をするかということが書いてございます。「院内臓器提供情報の収集」となってございますが、これはどういうことかというと、脳外科などのフロアを日ごろから巡回しまして、臓器移植のカードをお持ちか否か、あるいは提供の意思がおありか否か、日ごろからチェックするということでございます。
 私どもの決めた脳死臓器移植法案は、脳死状態にきちんと診断されて以降、御本人の臓器提供の意思を問うという仕組みです。医療機関の中で、いまだ脳死に至らない段階から、あるいは入院したと同時に、院内移植コーディネーターの方がその方の臓器提供にかかわる意思の収集をなさるのは、個人のプライバシーの侵害であり、なおかつ、患者さんにとっては、そのことを何らか意思表示しなきゃいけないのかというプレッシャーになってまいります。
 このようなことが起こっていることについて、高原局長は御存じや否や、御答弁をお願いいたします。
高原政府参考人 臓器移植法に基づくあっせん機関のコーディネーターと御指摘の院内コーディネーター、同じようにコーディネーターという名前ではありますが、かなり業務として違うということでございまして、この図はどこがつくったのか私も存じませんが、ちょっとそこら辺のところで誤解を招くのかなと思っております。
 院内コーディネーターにつきましては、第一番の仕事といたしましては、院内の医師等医療従事者に対しまして、臓器移植、そういうふうなものの正しい知識、それを持っていただく、これが一番でございまして、院内における臓器提供情報の収集というふうなものは、これは院内のスタッフとして、例えば今先生もおっしゃいましたけれども、十分そういった制度が認知されているかどうか、または理解されているか、そういうふうなことでございます。
 臓器移植法に基づくあっせん機関のコーディネーターは、御指摘のとおり、院内で不幸にして患者が脳死状態になった後、患者の家族に対して、意思表示カードの所持の確認や、あっせん機関コーディネーターの説明を聞くかどうかの意思を聞く、こういう体制を整えるものでございまして、一般の外来患者や入院患者に対してカードの所持の確認を行うというふうなものではございません。
阿部委員 これは既に静岡県でもやっておられることですし、今ございませんと高原局長のおっしゃったようなことが現実にあるので私はお尋ね申し上げているので、現場をよくお調べくださって、特に私が問題にしたいのは、院内臓器提供情報の収集が、対患者さん、脳死にもなっていない、脳外科病棟に入院しただけの患者さんに対して行われている事実を私が聞き知って、こうやって質問しておりますので、きちんと、そのようなことがないよう、そしてこれから、きょう始まります京都府の現状についても、院内臓器移植提供情報の収集はあくまでも対患者に対して向かうものでないということをきちんと確認できるような行政の指導をお願いいたします。
 以上をもって、本日の私の質問を終わらせていただきます。
坂井委員長 次に、川田悦子君。
川田委員 よろしくお願いいたします。
 今回、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案が特別委員会で一括審議されるということを知りまして、大変強い危機感を抱き、一般質問をさせていただくことになりました。
 弾力的な運用ができるということで、国家公務員総定員法の中で大幅な削減がある中で独立行政法人化はとてもいい方法ではないかというふうに評価する向きもありますが、これは大変危険なやり方ではないかというふうに思っております。今回、独立行政法人化の一環としてこの法案が出されているわけですけれども、私はこの独立行政法人としてするべきではないというふうに感じております。
 独立行政法人通則法の第二条に、独立行政法人というのは、国がみずから主体となって直接に実施する必要のないもののうちで民間に任せても構わないという業務のために設立される法人であるという規定があります。私は、医薬品、医療機器の審査や安全対策は、そもそも国がみずから主体となって直接に実施する必要のあるものであり、通則法二条の独立行政法人の定義には当てはまらないものであると考えます。したがって、独立行政法人化そのものに反対するものであります。
 そこで、反対であるという立場を表明した上で、具体的な質問に入らせていただきたいと思います。
 薬害エイズの教訓を踏まえて、一九九七年に旧薬務局の組織再編が行われたことは記憶に新しいところであります。旧薬務局を廃止し、医薬品等の安全対策と振興対策とを組織的に分離させるために、研究開発振興課と経済課が医政局の所管となり、その他の部門が医薬安全局の所管となったのであります。
 このことについては、二〇〇〇年のシンポジウムで、当時の医薬安全局企画課の山本弘史課長補佐も次のように述べています。薬事法の改正に伴いまして、単に名前を変えただけでなく、企業活動の支援、研究開発の振興というようなアクセルの部分と、医薬品の審査、監視といったブレーキの部分を分離し、医薬安全局はそのうちのブレーキの権限に限定してこれを正確に行使する体制としましたと。
 このように、山本氏がアクセルとブレーキにたとえたように、研究開発と審査、安全対策というのは、互いに相反する業務であり、これを組織として分離することは制度としてぜひとも必要です。
 その後、行政改革、財政再建の流れの中で厚生労働省になったわけですけれども、その際に医薬安全局は生活衛生局と統合されて、安全対策の体制は後退しました。
 この件についても、山本氏はシンポジウムで発言しております。今、行政改革ということで、必ずしも安全対策の強化充実ということをすべての部門において実現させていただくような環境が整っているとは言えず、それへの逆風も吹いているわけですと。この山本氏の発言からもわかるように、安全対策の体制については現場からも懸念の声が上がっていたのです。
 さらに今回、この新法人において、研究開発、審査、安全対策、救済、この四業務が一つの組織によって行われるという仕組みになっています。薬害エイズという甚大な被害を、その代償を払ってようやく分離された安全対策と振興対策が、新しい法人において、一つの組織の中にいとも簡単に復活しようとしているのです。
 私は、研究開発を、審査、安全対策、救済と同じ組織で行えば、医薬品の安全性は確保されないと考えます。新法人の四つの業務のうち、少なくとも研究開発だけは独立させて、ほかの法人に行わせるべきであると考えますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 今御指摘になりましたように、平成九年の組織改正のときには、本省の組織にしましても、規制と振興の分離のための所掌業務の変更を行ったところでございます。
 このこと、なかなか難しいところでございまして、今回のBSEのときには、なぜ分けているか、なぜ一緒にやらないかといって今度はおしかりを受けたということでございます。以前のHIVのときには、これは分けなきゃいけないというので分けたわけです。
 確かに、研究開発振興業務を行います医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構につきましては、審査関連業務の一環としての医薬品調査業務の充実を図ったところでございます。
 この新法人に、確かに独法になりますが、医薬品それから医療機器等の審査関連業務、それから安全対策業務につきましては、この業務は御承知のように医薬局が担当することになっております。それから、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の研究開発振興業務は医政局が所管することになっておりまして、これは分離をしたまま別々で所管をして、そして別々で監督をする、こういうことになっているわけでございます。
 ただし、一つの独立行政法人をつくりますその現場のところは、それはいろいろのこともあって一つにしたわけでございますが、これは、やることによりまして、そこはしかし監督の方はちゃんとやるということで分離をしているということでございます。
川田委員 いや、全く違うのでありまして、大変危険な動きになっているんですね。
 特に、新しい独法になった場合に、役員人事については適正かつ公正な人物が採用されるというのは当然であります。過去においても、薬害が繰り返し起きてきた原因は、まさに企業と官僚の癒着にあったわけです。薬害の被害を繰り返さないためには、この企業と官僚の癒着を断ち切ることがぜひとも必要です。
 この点について、法案の十一条一号は、機構と取引上密接な利害関係を有する者などは新法人の役員になれないと規定しています。また、十一条の二号では、製薬会社の役員も新法人の役員にはなれないとされています。しかし、製薬会社などの元役員については何ら規定がなく、例えば、一たんやめてしまえば、直前まで製薬会社にいた役員も自由にこの独法の役員になることができるわけです。
 そして、新法人では、従来の機構よりも人員が百人程度補充される、増員されるということになっており、そしてこれが、審査体制の強化として多数の職員が製薬企業から採用されるということは当然予定されていると思います。
 昨日の新聞では公募するということになっていますが、一定の経験を積んだということになれば、製薬会社から当然入ってくるわけです。そのような、職員に対して支配力、影響力を行使し得る役員が採用されれば、この独法法人全体として、新法人全体として公正さが確保されるとは当然思えません。
 そこで私は、条文上、製薬会社の元役員も一定の期間は新法人の役員となれないことを明記すべきであると考えますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
小島政府参考人 新法人の業務につきましては、製薬企業等からの影響を受けて、医薬品の品質、有効性、安全性の確保に不安や疑惑を招くことがないようにしていくことは大変重要だと考えております。
 今、製薬企業等の役員が新法人の役員に就任することにつきましては、法第十一条におきまして、製薬企業の現職の役員は新法人の役員にならないということの旨を定めているところでありますが、製薬企業の元役員につきましては、実質、製造業者等に対する支配力がなくなるということから、欠格要件を規定することは困難ではなかろうかという整理を行ったところでございます。
 次に、新法人の役職員であった者の取り扱いにつきましては、退職後の職業選択の自由ということがあるわけでございますが、本法人の業務の性格にかんがみて、第十三条におきまして、役職員に対する退職後も含めた秘密保持義務というものを法律上定めているところでございます。
 法律に整備する事項は以上でありますが、新法人におきまして倫理規程の整備等を、さらに整備を検討いたしまして、より適切な形で新法人が発足できるようにしてまいりたいと考えております。
川田委員 いつも、天下りの問題でも職業選択の自由とかと言われてしまうわけですけれども、この非公務員型の法人において過度の就業の制限を設けることは憲法上問題があるではないかとかいろいろ言われるわけです。しかし、行政権の一端を担うことに変わりないわけですから、行政権が適正、公正に行使されるべき要請はこれまでと異なりません。また、会社をやめた後新法人の役員となれない期間を一定の合理的な範囲に限れば、職業選択の自由にも抵触することはないと考えられると思います。
 ちょっと五分しかあと質問時間がないので、さらに先に進みます。
 今回の新しい法人では、審査期間を短縮するために審査手数料を引き上げて、製薬会社などからはその分人材が入ってくるということになるわけです。また、研究開発に補助金が出されますし、今回新しいやり方としてバイ・ドール方式を導入するわけです。これからまさに厚生労働省は製薬企業の育成を一層推進しようとしているわけですけれども、これらの措置によって新法人と企業との関係は密接化し、医薬品行政全体にとって非常に危険な状況になるということは目に見えています。
 最近、アメリカにおいても、製薬業界からの資金依存で、審査を急ぐことが、審査が甘くなり、問題を引き起こしているとFDAの新薬承認システムに対して危惧が出てきています。そのことを最新のイギリスのBMJ誌でも指摘していますし、前のFDAの審議会の委員からも、FDAは製薬会社のしもべとなったと、FDAに対して鋭い批判が出ております。
 日本においても、人的な面、経済的な面において、新しい法人と製薬会社との関係が密接になることは避けられない仕組みになっています。そこで、先ほど申し上げましたように、補助金の支出、企業の育成、優遇が行われるのであれば、企業と新しい法人との癒着を今まで以上に厳しくチェックできるようにすべきであると考えます。
 私は、研究開発に関しては、何をどのように研究開発をし、それに幾ら補助金を出したのか絶えず明確にし、外部から客観的にその適正さを判断し得るような状態で透明性を確保する必要があると思います。そのことについて見解をお伺いしたいんですが、それと同時に、審査についてどのようにきちんとやっていけるのか、審査が甘くならないのか、そのことについてどう保証できるのかということについても見解をお伺いしたいと思います。
木村副大臣 審査の方は局長から答弁をさせます。
 それから、前段の研究開発の件でございますが、新機構が行う新しい研究開発支援事業につきましては、企業のインセンティブにつながるように、おっしゃいましたバイ・ドール方式、委託方式とすることを考えております。
 今後、助成対象の基準や委託費の使途、選定手続等を明確化した上で実施をしてまいりたい、このように思っています。
小島政府参考人 審査業務でございますが、新法人につきましては、厚生労働本省の委任を受けまして、科学的評価と完結した審査を行うという観点から、あくまでその審査、承認の権限というのは厚生労働大臣が保持をして、薬事・食品衛生審議会の諮問を経て、最終判断は大臣が行うという基本的な体制は変更しないというふうに考えております。
 ただ、それに伴います書類の審査でありますとか、治験の状況のチェックでありますとか、関連する審査業務がたくさんあるわけでございますが、そういうところの業務につきましては新法人の方に委任をしていって、全体として効率でかつ透明性ある審査体制というものをつくっていきたいというふうに考えております。
川田委員 もう時間なんですけれども、最後に、今回のこの機構ですけれども、企業にインセンティブを与えて研究開発を促進するものであると言えます。一方で、企業にとって収益の期待できない希少な医薬品については、その研究開発がないがしろにされる可能性が出てくるんです。今回、企業の手の届きにくい希少な医薬品にこそ、研究開発が促進されるよう十分な補助をしていくべきであると考えます。
 また、海外に目を向けると、アフリカ諸国など発展途上国では、薬を買えないばかりに、たくさんの人々が毎日のようにエイズやマラリアで命を奪われていっているんです。日本が医薬品の分野において欧米に追いつくような技術を開発することは、とても重要であると思います。しかし、薬は売るためにあるのではなく、人々の命を救うためにあるのだという原点に立ち返って、本当に薬を必要としている人のために何ができるかを国として考えるべきではないかと思います。
 アジア諸国との連携を図り、薬を必要としているアフリカ諸国の人たちのために薬を供給していく、それこそが本当の意味でのグローバル化であると思います。その役割をこの日本がしていかなければならないのではないかと考えています。
 これで私の発言を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
     ――――◇―――――
坂井委員長 次に、第百五十四回国会、内閣提出、母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
    ―――――――――――――
 母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
坂口国務大臣 母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 近年における離婚の急増など母子家庭等をめぐる諸状況が変化する中で、母子家庭等の自立の促進を図りながら、その児童の健全な成長を確保することが重要な課題となっております。
 今回の改正は、こうした状況を踏まえ、母子家庭等に対する子育て支援の充実、就労支援の強化、扶養義務の履行の確保、児童扶養手当制度の見直し等の措置を講ずることにより、総合的な母子家庭等対策を推進するものであります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、母子家庭、父子家庭に対する子育て支援の充実であります。
 市町村は、保育所への入所に関し、母子家庭等に対する特別の配慮をしなければならないこととしております。
 また、保護者の疾病等の場合に児童の保護を行う子育て短期支援事業を法律に位置づけるとともに、母子家庭等に対する日常生活の支援の充実を図ることとしております。
 第二に、就労支援の強化であります。
 都道府県は、母子家庭の母等の雇用の促進を図るため、母子福祉団体との連携のもとに、就職に関する総合的な支援を行うことができることとし、都道府県等は、母子家庭の母または事業主に対し、母子家庭の職業生活の安定及び技能の習得のための支援を行うことができることとしております。
 第三に、扶養義務の履行の確保であります。
 母子家庭等の児童の親は、児童が心身ともに健やかに育成されるよう、養育に必要な費用の負担等児童に対する扶養義務を履行するよう努めるとともに、国及び地方公共団体は、その履行を確保するための措置を講ずるよう努めることとしております。
 第四に、母子寡婦福祉貸付制度及び児童扶養手当制度の見直しであります。
 母子寡婦福祉貸付金の貸付対象として、母子家庭の児童本人及び母子家庭の自立の促進を図るための事業を行う母子福祉団体を追加するとともに、特定の貸付金の貸し付けを受けた者について、所得の状況等によりその一部の償還を免除できることとしております。
 また、児童扶養手当の受給開始から五年間を経過した場合には、三歳未満の児童を監護する者、障害者等に適切な配慮をしつつ、手当額の一部を支給しないこととするとともに、手当の受給資格の認定の請求期限を五年間とする規定を廃止することとしております。
 第五に、国及び地方公共団体における総合的な施策の推進であります。
 厚生労働大臣は、母子家庭等の生活の安定と向上のための措置に関する基本方針を定めることとし、都道府県等は、母子家庭及び寡婦自立促進計画を策定することができることとしております。
 最後に、この法律の施行期日は、平成十五年四月一日としております。
 以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要について御説明申し上げました。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
坂井委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、来る六日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十六分散会


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