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第8号 平成14年11月20日(水曜日)

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平成十四年十一月二十日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 坂井 隆憲君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岡下 信子君    奥谷  通君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    山本 幸三君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    石毛えい子君
      大島  敦君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      土肥 隆一君    三井 辨雄君
      水島 広子君    江田 康幸君
      桝屋 敬悟君    佐藤 公治君
      小沢 和秋君    山口 富男君
      阿部 知子君    中川 智子君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   総務副大臣        若松 謙維君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           清水  潔君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         鈴木 直和君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         冨岡  悟君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局労
   災補償部長)       高橋  満君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 水田 邦雄君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  磯部 文雄君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
十一月十八日
 年金・医療・福祉等の制度改革に関する請願(園田博之君紹介)(第二〇一号)
 同(中山太郎君紹介)(第二〇二号)
 同(前原誠司君紹介)(第二四三号)
 同(松岡利勝君紹介)(第二四四号)
 同(達増拓也君紹介)(第二六〇号)
 同(佐藤剛男君紹介)(第二八一号)
 同(野田毅君紹介)(第二八二号)
 十五歳未満の臓器提供を可能にするための臓器移植法改正に関する請願(家西悟君紹介)(第二〇九号)
 同(小野晋也君紹介)(第二一〇号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第二一一号)
 同(上川陽子君紹介)(第二一二号)
 同(川内博史君紹介)(第二一三号)
 同(熊代昭彦君紹介)(第二一四号)
 同(小坂憲次君紹介)(第二一五号)
 同(下地幹郎君紹介)(第二一六号)
 同(中村正三郎君紹介)(第二一七号)
 同(野田聖子君紹介)(第二一八号)
 同(伴野豊君紹介)(第二一九号)
 同(平井卓也君紹介)(第二二〇号)
 同(福島豊君紹介)(第二二一号)
 同(保利耕輔君紹介)(第二二二号)
 同(松本龍君紹介)(第二二三号)
 同(三ッ林隆志君紹介)(第二二四号)
 同(三井辨雄君紹介)(第二二五号)
 同(持永和見君紹介)(第二二六号)
 同(森田一君紹介)(第二二七号)
 同(保岡興治君紹介)(第二二八号)
 同(山口俊一君紹介)(第二二九号)
 同(遠藤武彦君紹介)(第二四五号)
 同(岡下信子君紹介)(第二四六号)
 同(加藤公一君紹介)(第二四七号)
 同(竹本直一君紹介)(第二四八号)
 同(樋高剛君紹介)(第二四九号)
 同(谷津義男君紹介)(第二五〇号)
 同(臼井日出男君紹介)(第二六一号)
 同(奥谷通君紹介)(第二六二号)
 同(佐藤敬夫君紹介)(第二六三号)
 同(津島雄二君紹介)(第二六四号)
 同(根本匠君紹介)(第二六五号)
 同(桝屋敬悟君紹介)(第二六六号)
 同(横光克彦君紹介)(第二六七号)
 同(自見庄三郎君紹介)(第二七四号)
 同(木下厚君紹介)(第二八三号)
 同(五島正規君紹介)(第二八四号)
 同(棚橋泰文君紹介)(第二八五号)
 同(中村哲治君紹介)(第二八六号)
 同(野田毅君紹介)(第二八七号)
 同(松岡利勝君紹介)(第二八八号)
 同(吉田六左エ門君紹介)(第二八九号)
 同(土肥隆一君紹介)(第二九五号)
 同(水島広子君紹介)(第二九六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第三〇四号)
 同(小池百合子君紹介)(第三〇五号)
 同(阪上善秀君紹介)(第三〇六号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第三〇七号)
 同(鳩山由紀夫君紹介)(第三〇八号)
 物価スライドによる年金引き下げ反対、最低保障年金制度の創設に関する請願(小沢和秋君紹介)(第三〇一号)
 同(山口富男君紹介)(第三〇二号)
 医療改悪実施と社会保障の改悪反対、充実に関する請願(小沢和秋君紹介)(第三〇三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 独立行政法人国立病院機構法案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第八三号)


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     ――――◇―――――
坂井委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、独立行政法人国立病院機構法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官清水潔君、厚生労働省大臣官房総括審議官鈴木直和君、医政局長篠崎英夫君、健康局国立病院部長冨岡悟君、労働基準局労災補償部長高橋満君、保険局長真野章君、政策統括官水田邦雄君及び社会保険庁運営部長磯部文雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮澤洋一君。
宮澤(洋)委員 自由民主党の宮澤洋一でございます。
 きょうは、独立行政法人国立病院機構法案について少し質問させていただきます。副大臣、よろしくお願いいたします。
 国立病院については、五十八年三月ですか、第二次臨調の五次答申にいろいろ書かれておりまして、それ以来いろいろ議論が行われております。第二次臨調、もう二十年近く前になりますけれども、そこには、「昭和二十年代は、国民医療の確保に、また、昭和三十年代以降は、政策医療の確保や医療の向上に大きな役割を果たしてきた。」一方、二十年前の「現状をみるとなお多くの課題を抱えており、このような状況の中で国立病院・療養所は適切な機能を果たすことを求められている。」こういうふうに書かれておりまして、その機能の明確化及び合理化を推進しよう、こう書かれているわけでございます。
 機能の明確化という意味では、国公私立医療機関のあり方の明確化を図れということで、その中で国立医療機関の機能の明確化を図るようにという指摘を受けている。一方で、整理合理化をなお図れということが指摘されておりまして、それ以来、国立病院についていろいろ議論が行われ、平成九年の行政改革会議の最終報告では、高度かつ専門的な医療センターとハンセン病の療養所を除き、独立行政法人化を図るというような指摘を受け、まあ十一年、十二年と、十六年度に独立行政法人化を図る、またその場合、単一の独立行政法人化に移行するというようなことが決められてきたわけですけれども、副大臣はいろいろな職務でこの問題、深くかかわられてこられました。
 私も議員になってまだ二年ちょっとでございますけれども、本当に豊富な知識と鋭い洞察力で鋭い指摘をいつもされているのを聞いておりまして、副大臣、ここまで来たというのか、これからというのか、ここまで来た感想、またこれからの期待といったものをちょっと総論的にお話しいただければありがたいなと思っております。
木村副大臣 おはようございます。
 むしろ、洞察力とかその点に関しては、宮澤議員の方がはるかに私よりもまさっているんではないか、私の方から宮澤議員の御活躍を御期待申し上げる次第でございます。
 国立病院は、御指摘ありましたように、戦後のスタートでありますけれども、大体戦後は三百近くあったそうであります。そして、臨調とかそういうようなものを経由しまして、昭和六十一年以降の再編成計画のときに二百三十九を八十七減らしていこう、こういうことで進めてまいりまして、既に五十六の実施が終わりました。残っている三十一を独法化までに二十一減らしていこう、それから、独法化後も十減らそう、今は一月に一個ずつどんどんどんどん処理をしている。こういうような経緯があるわけでございまして、私は、この点は確かに着実にやってきたんじゃないかな、よく言っている社会保険病院なんかに比べればはるかにこちらの方が一生懸命やっているんじゃないかな、個人的にはそういうふうに思っているわけであります。
 それから、まさに独立行政法人化するということが、今までの親方日の丸の意識、これの意識を改革しなきゃいけない。そして、国立病院・療養所が生まれ変わる第一歩にしていかなきゃいけない、このように思っているような次第でございます。
宮澤(洋)委員 独立法人化をするということは、民の補完と言っていいと思うんですけれども、政策医療をやりつつ、一方で効率化、効率性というものを徹底的に追求していくという意味で、大変難しい操縦といいますか業務運営が必要になってくるんだろうと思います。
 法律、通則法を読みますと、いずれにしても機構を設立する際に、厚生労働大臣が中期目標を設定する。それで、中期目標にはその業務の効率化、また業務の質の向上といった事項が当然含まれるということが書いてあります。業務の効率化というのは効率化でございますし、業務の質の向上というのは、この場合、政策医療をどういうふうにレベルを上げていくかということだろうと思うんですけれども、政策医療、業務の質の向上について、具体的には今の段階なかなかお話しできないかもしれませんけれども、どういうことを考えているのか、病院部長にひとつ伺いたいと思います。
冨岡政府参考人 先ほど副大臣が申し上げましたように、私ども、国立病院・療養所は、再編成を進めながら政策医療の効果的な実施に努めてまいりました。
 具体的には、国民の健康に重大な影響のある疾病につきまして、全国的な見地から、臨床研究の推進や、全国どの地域においても最新の診断や治療が受けられるような方向で医療の向上を図るなど、先導的な役割を果たす、それから、これとともに、医療提供体制のセーフティーネットといたしまして、難病、重症心身障害、結核、精神科救急、薬物依存、身体合併症を伴う精神疾患、エイズ等、他の医療機関では十分な対応が困難な医療を担うなど、ある意味では民間等の補完的な役割を果たしているところでございます。また、一方では、災害や国際的な感染症の蔓延など緊急の事態に対処する必要があるときには、積極的に対応してきたところでございます。
 御指摘のありました今後の質の向上という点につきましては、今後、厚生労働大臣が示すことになります中期目標、これに従いまして独立行政法人国立病院機構として中期計画を法人として策定し、政策医療の推進及びサービスの質の評価等に関する具体的な事項を定めることにしております。こうした具体的な目標といったものを決めまして、この中で国立病院・療養所の役割、使命を十分に組織全体として認識しながら、厚生労働大臣によって示されました担うべき医療、政策医療を確実に実施するという、こういった中で質の向上を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。
宮澤(洋)委員 今の御答弁は資料を読めばわかるような御答弁なわけですけれども、具体的に、質の向上、政策医療というのはこれから考えるということなんですか。
冨岡政府参考人 ただいま、これまでの取り組みといったものを中心に御説明申し上げた嫌いがありますが、今度の独立行政法人の趣旨に沿いまして、これからは大臣から目標を示されまして、そして法人としてそれに沿って具体的な計画をつくりまして、それを外部の方も含めた方から、いろいろな観点から評価いただきまして、それを踏まえた上でまた新たな内容にチャレンジして、反省するものは反省する、こういった繰り返しの中で、それぞれの具体的な内容の向上、それから世間のニーズに十分こたえられるような内容に持っていきたいと思っております。
宮澤(洋)委員 なかなか具体的なお話は出てこないんですけれども、いずれにしても、外部の意見を聞くにしても、また、厚生労働大臣自身がおかきになるわけじゃなくて、恐らく青写真みたいなものは国立病院部でおつくりになるわけで、これからまさに質の向上といったことをよく検討していただきたいと思うわけです。
 質の向上をしつつ本当に効率的な医療を行う、民でできないものをやりながら効率性を求めるということは、言うは易しいけれども、具体的に本当にどの程度できるのかなというのを大変私は心配しております。それについて、政治家として副大臣からひとつ御答弁をお願いします。
木村副大臣 おっしゃるとおり、確かに矛盾しているところがあるのは事実でありますが、やはりこれは、今後の取り組み、意欲、ここを私どもは見ていかなきゃいけないんじゃないかなと。それぞれやはりしっかりとした目標を設定しながら、この相矛盾しているものに取り組んでいく、先ほど言った意識改革というのは、ここにつながってくるのではないかな、私はこう思っておるんです。
 それから、具体的な中期目標で、これは確かに独法をつくったときに検討していくんですが、例えば、効率化の指標として経費の抑制とか医業の収支率とか、サービスの指標としては患者の紹介率なんか、この辺を具体的にやはり盛り込んでいく必要はあるのではないかな、このように思っています。
宮澤(洋)委員 国立病院については、いろいろな方向からいろいろな批判が出てきていたわけですけれども、今回、独立行政法人として独立するということは、まさに効率的な運営が期待できる、また、財務諸表等々を公表するということで、透明性といった観点からもいいし、また自主性も生まれるということで、私は一歩前進の法案だと評価をしております。
 ただ、法律を見ておりまして若干不満が残る点というのは、行政改革の趣旨からいえば、透明性という観点でいえば、一病院ごとに独立法人として自主的な運営をするという方が、やはり行政改革の趣旨に合っているし、また、これは特定独立行政法人ということで公務員型になっておりますけれども、非公務員型の方がある意味では効率性の追求もし得るのかなというふうな気がしております。
 そういう点で、なぜ非公務員型にできなかったのか、また、なぜ病院ごとの法人化ができなかったのか、その点についてお伺いしたいと思います。
冨岡政府参考人 国立病院機構の使命は政策医療の効果的な遂行でございますが、これを行うためには、全国のネットワークを活用しまして、政策医療の高度化、標準化を図ることによりましてより推進されるものと考えております。それから、国の機関でありますナショナルセンターといったものと連携を保ち、人事交流を含む各種の交流を維持して、レベルを高める必要があるものと思っております。
 それから、実際、事業として行ったことでございますが、海外でのペルー大使公邸占拠事件やキルギス誘拐事件への対応、国内での阪神大震災への対応などを行ってまいりましたが、こういった事案におきましては、必ずしも予定が立たない、相当のスタッフを長期に派遣するというようなことが必要でございました。このような国際協力医療、災害医療を行うためには、ネットワークとして対応するのが効果的であるものと考えております。また、大変重大な職務を帯びて海外に行ったりといったこともございます。
 こういうことから、私どもは、特定独立行政法人、すなわち公務員型として単一法人といたしたところでございます。
 以上でございます。
宮澤(洋)委員 今のお話ですと、公務員型にしたのは、緊急のときとか国際協力というお話だったんですが、必ずしも、私はそれは、非公務員型でもできるのかなという気がするんですけれども、法律的に公務員型でなければできないんでしょうか。
冨岡政府参考人 先ほど全体としての判断の考え方を申し上げましたが、具体的なことを一つ申し上げますと、例えば、先ほど申し上げました事案の場合に派遣するといった場合に、国家公務員法上の業務命令をかけるといった場合には国家公務員型である必要がございます。
宮澤(洋)委員 国家公務員型の業務命令であれば当然そうでしょうけれども、私契約の世界でも恐らくできるような気がいたします。
 そういう点では、国立病院とくるとやはり国立大学でございますけれども、国立大学についても法人化が今検討され、十六年からでございますか、そういう方向で今検討されているという話です。その中で、非公務員型にするとか、各大学ごとに法人化するとか、そういうことになっていると聞いておりますけれども、その状況について、文科省の清水審議官、教えていただきたいと思います。
清水政府参考人 お答えを申し上げます。
 国立大学の法人化についてでございますが、御案内のように、去る平成十一年の閣議決定、あるいは本年六月二十五日の閣議決定におきまして、平成十六年度を目途として法人化するというふうな決定をされているところでございます。
 今御指摘がございましたように、法人化の具体的な制度のあり方につきましては、調査検討会議において、法人のあり方、望ましい制度設計について検討が行われているわけでございます。そこの中におきましても、各国立大学に、法人化すること、あるいは非公務員型を採用するというふうな基本的な方向性でもって報告が取りまとめられておりまして、私どもとしては、それに基づき、来る通常国会に関係法案を提出させていただくということで、準備を進めているところでございます。
宮澤(洋)委員 では、その中で、大学ごとに法人化する、全体としてではなく大学ごとにした理由、また、非公務員型をとるに至った理由といったものを教えていただきたいと思います。
清水政府参考人 国立大学の法人化に当たって、調査検討会議もそうでございますし、私もそうでございますけれども、基本的には、各国立大学、より大きな自律性のもとでこれまで以上に創意工夫を重ねながら、教育研究の高度化あるいは個性豊かな大学づくりに取り組んでいただく、そういう意味では、法人化のメリットを最大限生かせる制度設計ということがポイントでございます。
 御指摘の法人の単位でございますが、まさに、大学運営の自主性、自律性を高める、そして自己責任を高めるという意味で自然な形であると思いますし、また、各法人がそれぞれの組織戦略のもとに、それぞれ、各大学が相互に競争的な環境で、あるいは、大学の個性化を図っていくという意味では、そういうことが期待できるのではないかということで、各大学ごとに独立した法人格を与えるというふうなことを原則として考えているわけでございます。
 また、職員の身分についてでございますけれども、一つは、国家公務員法にとらわれない、柔軟で弾力的な、雇用形態でありますとか給与体系、勤務時間の体系が期待できること、あるいは、外国人の学長、学部長等への登用が可能になること、兼職、兼業の弾力的な展開、あるいは、試験採用原則によらない、専門的知識や技能を重視した職員の採用が可能になる等々を勘案いたしまして、非公務員型とするとされているところでございます。
宮澤(洋)委員 今の御説明を聞いていますと、国立病院にも当てはまる点が結構あるなと思って承っておりましたけれども、いずれにしても、独立行政法人になるということで一歩前進ということだろうと思います。その中で、効率性、また透明性といったものの確保に、ぜひとも厚生労働省として全力を尽くしていただきたいなと思っております。
 先週でございますか、今週の月曜まで特殊法人改革特別委員会に私も委員としてずっと参加しておりましたけれども、既に独立行政法人化した組織について、焼け太りじゃないかといったような話がいろいろ野党の方を中心に出ておりまして、なるほどなと思って聞いておりましたんですけれども。
 こういう点につきまして、国立病院機構ではそういうことがぜひないようにお願いしたいというお願いと、その中で、例えば、効率性ということであれば、業務委託とかそういうアウトソーシングといったものも徹底的にやっていただきたいなと思っております。その点についても、御決意を副大臣からお願いしたいと思います。
木村副大臣 御指摘の点はまことにごもっともでございまして、小泉総理もその点を非常に強調されておりますけれども、やはり基本的な流れというのは、もちろん民でできるところは民でやるわけであります。
 ただ、先ほどから御説明しているように、国立病院というのは、いざ国家の危急のときに、ある意味で命を張ってという場面があるわけでございまして、そのために公務員型にしている。
 しかし、今度は逆にアウトソーシングできるようなところは当然どんどんとしていかなきゃいけないわけでございまして、これは今後そういうのがなければそれが業績として反映してくるわけです。だから、その施設の運用とか、それから最後には職員の皆さん方の給与にもそれが反映されていくわけでございますので、そういうことも含めまして、アウトソーシング等も含めての取り組みというのは最重要課題の一つである、私はそのように思っています。
宮澤(洋)委員 期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
 この機構の役員報酬とか職員の給与についてちょっと御質問したいんですけれども、通則法を読んでいますと、法人がその基準を定めて主務大臣に届け出るというふうに書かれておりまして、それぞれの役員報酬をどうやって決める基準、また職員給与の基準といいますか、そういうものが通則法に書かれているわけでございます。
 いずれにしても、例えば職員の給与であれば、今後の労使交渉といったようなことになるわけですが、厚生労働省としても、主務大臣として届け出を受けるということですから、受理をしないというのは無理にしても、いろいろ相談にあずかることなんだろうと思います。
 通則法自体、読んでいまして、今後どういうことになるかなと思って考えておりましたんですけれども、例えば、その新たな機構の理事長の報酬ということになりますと、それは、責任といったことは当然重くなるんだろうと思いますが、業務範囲ということになれば、現在の国立病院部長よりは、高度医療の部分、またハンセン病の部分といったところは完全に抜けるわけですから、業務範囲は狭くなってくる。そうであれば、私は部長の給料が幾らか知りませんけれども、理事長の給料は当然国立病院部長よりも低くてもいいじゃないかという議論も起こってくる可能性はあるんだろうな、こう思います。
 また一方で、これは恐らく反対される方ですけれども、通則法を読んでいますと、職員の給与は国家公務員の給与、また民間企業の従業員の給与、またその機構の実績等を考慮して定める、こう書いてあるわけです。
 民間給与との比較というのをいただいて、見ていますと、医療職というのは民間に比べるとかなり低い。ただ、これは、民間の方がオーナー系の病院といいますか、そういうところが入ったりして、本当にこうなのかなという気はいたします。一方で、医療職(二)というのは薬剤師等でございますけれども、それについても、また医療職(三)の看護師等につきましても、民間よりかなり割高といった部分が目立つ。
 そうすると、例えば、今後民間給与も考慮するということであれば、すぐにということは無理でも、民間企業並みに近づくということは、医療職の(二)とか(三)というのは下がっていくという意見も当然出てくる。なかなか難しいことだろうと思いますけれども、この辺について国立病院部としてはどういうふうに考えられているのか。
冨岡政府参考人 現在の国立病院・療養所職員の給与は、御案内のように、一般職の職員の給与に関する法律等の規定に基づき支給されているところでございまして、毎年の人事院勧告を踏まえた給与水準として、国家公務員共通の基準に基づくものとなっております。
 独立行政法人化後の職員の給与につきましては、御指摘のように、通則法等でそのあり方を規定しておりますが、そこにありますように、国家公務員及び民間企業の従業員の給与、法人の経営状況等を勘案して、職員が意欲を持って働くことができるような給与の仕組みとすることが望ましいと考えております。
宮澤(洋)委員 よくわからない答弁だったわけですが、ともかく、法律に民間給与の実態も勘案するとかいろいろ書かれているわけでございますので、この部分で焼け太りということはないんでしょうけれども、きっちりとした基準で届け出を受理していただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 最後になるか、ちょっと質問がかわるんですけれども、十一月九日の朝日新聞の夕刊でございますけれども、小児救急輪番制について、国立病院の参加がわずか二五%、東高西低という記事が載っておりました。私の地元、広島県の福山でございますけれども、福山も国立病院がございまして、やっているかなと思ったら、ちゃんとやっている方の二五%に入っておりまして安心したんですけれども、なかなかこれは評判のいい病院でございまして、医師会からも評判がいいという珍しい国立病院ですけれども。
 こういう記事が載っていたわけですけれども、恐らく、この記事を見てみますと、朝日新聞が独自で調べたような感じの記事ですけれども、事実関係についてちょっと事務局から教えていただきたいと思います。
冨岡政府参考人 御指摘の報道につきましては、先生お話しのように、独自の調査結果であるものと思われまして、調査時点などそのとらえ方は明らかではございませんが、私どもの持っているデータで御説明申し上げますと、本年十月一日現在、国立病院・療養所におきまして、小児科の医師が複数いる病院、療養所は百八でございます。このうち、小児科の医師が輪番体制等へ参加している施設を見ますと、まず、小児救急支援事業参加施設が十六、小児科の医師が常時当直している施設が七、それから小児科対応の病院群輪番体制参加施設等が三十一、合計五十四となっておりまして、こういったことで小児救急に対応している病院、療養所の割合は五〇%となっております。
 このほかに、小児科の医師が輪番体制等へ形として参加はしておりませんが、小児科医師がそういった患者さんがお見えになった場合に連絡すれば駆けつけるオンコール体制をとっている施設がこのほか二十六ございまして、これを合わせますと、かなりの数が地域の小児の救急に寄与しているという実態でございます。
宮澤(洋)委員 朝日新聞の記事は二五%、厚労省の調べでは五〇%ということですが、厚労省の数字でも、いずれにしても半分の国立病院は輪番制に参加していないということですし、一方で、各地で小児救急についてはいろいろな問題点が指摘されているときでございます。
 国立病院というのは、まさに先ほどからのお話で、公務員型特定独立法人にするといった国家の政策としての意味の強い独立法人になるわけでございますし、そういった点も考えて、やはり国立病院のうちにある程度指導するし、また、独立行政法人になった後でもそういう体制がとれるように、少し前向きに対応していただかなきゃいけないんだろうなと思っております。部長として御決意をお聞きしたいと思います。
冨岡政府参考人 小児救急医療につきましては、少子化が進展する中で、国民が安心して子育てができる環境を整備する観点から極めて重要な課題だと私ども国立病院・療養所も認識いたしております。
 そのために、私どもとしても、小児科の先生の確保といった点やいろいろな施設の整備といった点を進めまして、可能な限り小児救急医療に取り組んでまいりたいと考えております。
宮澤(洋)委員 時間も参りましたようでございます。
 いずれにしましても、独立法人になるということで、今後、政策医療を追求しながら効率性を求める、効率性、透明性、自主性といった独立法人のメリットが最大限発揮できるような指導をぜひとも大臣、副大臣にお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、福島豊君。
福島委員 おはようございます。木村副大臣を初めといたしまして、連日大変御多忙の中、法案の審議に臨んでおられますことを心より敬意を表する次第でございます。
 まず初めに、この法案の審議に当たりまして、政策医療とは一体何なんだろうかということをお尋ねいたしたいと思います。
 「国民の健康に重大な影響のある疾病に関する医療その他の医療であって、国の政策医療として機構が担うべきものの向上を図り、」このように述べられているわけでございますが、政策医療というものをどう考えるのか、まず木村副大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
木村副大臣 福島先生が大変御活躍をしておるわけでありますけれども、私も先生の日ごろの御尽力に敬意と感謝を申し上げる次第でございます。
 機構が担うべき役割といたしましては、国民の健康に重大な影響のある疾病に関しまして先導的な役割を果たす、それで、ほかの医療機関、特に民間等のほかの医療機関では十分に対応することが困難な難病等、こういう医療を担うことが大変必要であろうかと考えているんですが、具体的には、例えば、福島先生が副大臣として取り組まれました、平成十三年度からスタートしたメディカル・フロンティア戦略がターゲットにしておりますがんや心筋梗塞といった重大な疾病の克服において、推進体制の中心に国立病院がなっていく、このようなことが大変重要である、このように考えているような次第でございます。
福島委員 ありがとうございます。
 二つ側面があるんだと思うんですね。一つは、ただいま副大臣おっしゃられましたような、メディカル・フロンティア戦略の推進といったような先導的な医療というものをきちっとしていくという側面と、そしてまた、重心ですとか筋ジスですとか、なかなか民間の医療機関で担っていただけないような分野についてこれをきちっと担っていく補完的な役割ということがあるのではないかというふうに思います。
 そして、先ほど宮澤委員から国立病院における小児医療の取り組みはどうなんだろうかという御指摘がございましたけれども、小児医療というのは、この数年間、マスコミ等でも指摘されておりますように、なかなか実際の医療提供体制というものが不備な点がさまざまな地域に存在しておる。二十一世紀に入りました今日においても、乳幼児の救急、たらい回しによって死亡に至るというような事例があるわけでございまして、そういう意味では、こうした小児医療の分野というのは、現状の日本においてはある意味で政策医療の一部に位置づけられるのではないかというような思いが私はいたしております。(発言する者あり)いろいろと御声援をいただきまして、ありがとうございます。
 そういう意味で、国立病院においての小児医療に対しての取り組みというものを充実させていく必要がある。先ほど部長から、政府参考人から御答弁がございましたけれども、このことはぜひお願いをいたしたいというふうに思っております。
 それに関連しまして、まず、小児救急医療の充実に向けて、今、厚生労働省としてどのように取り組みを進めておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
篠崎政府参考人 私ども、小児救急医療体制の整備につきましては、安心して子供を産み、そして健やかに育てる基礎になるものであり、大変重要な施策であるというふうに考えております。
 先生も御案内のように、このために、まずは二次医療圏単位で当番制によりまして小児救急対応が可能な病院を確保する事業を整備いたしております。それから、二次医療圏単位でこの確保が困難な地域におきましては、複数の二次医療圏を対象として小児救急患者を受け入れてもらえる小児救急医療拠点病院という事業の整備も進めております。さらには、平成十四年度の診療報酬の改定におきまして、小児救急医療に関する評価を充実させたところでございます。
 このたび、御指摘もいろいろございましたので、来週の月曜日、十一月の二十五日でございますけれども、各都道府県の小児救急の担当課長会議を招集することといたしておりまして、その中で、うまくいっている例、好事例の紹介、あるいはその他のことでいろいろ幅広く意見交換をして、その施策の実効が上がるように、運用改善に向けての取り組みをその会議を通じて行いたいというふうに考えております。
 引き続き小児救急医療体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
福島委員 ありがとうございます。
 先ほど参考人から御説明がありました小児救急医療支援事業、これが平成十二年からスタートいたしております。二次医療圏ごとにということでございますが、このような指摘もございました。二次医療圏で実際に達成できているところというのは非常に限られていると。先ほどの御説明で複数の二次医療圏を集めた拠点病院という話もありましたけれども、この支援事業も、地域によっては複数の二次医療圏を集めてブロックとしてやっているというところもあるようでございます。ですから、あらゆる地域でという話があるわけでございますので、そこのところは地域において弾力的な取り組みをすることによって穴のない体制というものをぜひつくっていただきたい、そのように要望いたしたいと思います。
 次に、宮澤委員から御指摘ございました、国立病院また療養所で小児の救急医療に携わっているところが非常に少ないと。朝日新聞の報道では二五%。その具体的な数字については先ほど政府参考人から御説明がございました。細かい資料を私ちょうだいしたんですけれども、これは国立病院・療養所によって違いがあるというふうに思うんですが、具体的な名前は申しませんが、複数の小児科医、特に二人ですとなかなか大変ですけれども、四人とか五人とか、そういうような医療施設であっても参加していないところがやはりあるのですね。これは補完的な役割ですから、地域で必要がないということなのかもしれませんし、そのあたりの事情まではいただいた資料には細かく書いてありません。
 ただ、充実をするというのであれば、余り少ない人数で無理やりやりなさいというと、また過労という話になって、過労死というようなこともあるわけですから、それは押しつけるということはできないというふうに私は思うんですけれども、ある程度の人数のあるところで参加をしていないのはどういう事情なのかということは一応きちっと確認しておいた方がいいんじゃないかというふうに私は思うんですが、政府参考人の御見解をお聞きしたいと思います。
冨岡政府参考人 御指摘の点につきましては、それぞれの療養所なりで担当する政策医療の中身が、余り一般小児医療を担当しない政策医療であるといった場合については、なかなか地域の救急医療に参加しにくいような事情があるのではないかというふうに言われておりますけれども、先生御指摘の点につきましては、私どもとしてしっかり確認いたしまして、どのような対応ができるか検討いたしたいと思います。
福島委員 例えば重心とか筋ジスとかそういう療養所には、小児科の先生は大体おられるわけですね。ですから、そういう意味では、政策医療といいましても一般の小児救急と重ならないわけでは恐らくないのだろうと思います。
 それからまた、比較的大規模な病院で、複数の、それも五人を超えるような小児科医がおられるところもあります。そういうところは、特段政策医療ということではなくて一般の医療をやっておるわけですが、そういうところでも救急に参加していないというところがあるわけでございますね。ですから、そういう意味では、きめ細かく点検していただいて、国立病院が持っているそういう医療資源というものが活用されるように、ぜひ御指導いただきたいというふうに思います。
 それから、続きまして小児医療の充実、先ほど政府参考人からお話ございましたが、いろいろと取り組んでいただいております。そしてまた、本年四月の診療報酬の改定で見直しがなされました。しかしながら、これについては半年たちましてから、先般、日本医事新報で、全国公的病院小児科勤務医の会の方のアンケートの結果が報告をされておりました。
 どのような指摘があったかといいますと、具体的に若干御紹介しますと、地域連携小児夜間・休日診療料というのが創設されたわけでございますが、回答いただいた百三十四施設中、適用はゼロである、なかなかこういう制度というのは日本になじまないんではないかというような御指摘もありました。
 また、小児入院医療管理料一、これはある意味で、一つの目玉のような存在でございますけれども、医療機関の中で一病棟しかこれは適用にならない。ですから、同じ病院で複数病棟がありますと、こっちの病棟とこっちの病棟と評価が違いますから、同じような治療を受けていても、患者さんの負担というのは違うというような事態が起こっているわけでございます。
 また、小児入院医療管理料の二というのがありますけれども、これについては、その点数の設定から、出来高払いよりも点数が低くなる逆転現象が起こる。ですから、心臓カテーテル検査など高度な検査を行うには、なかなかこれは不都合があるというような御指摘もあります。
 また、手術に関しての施設基準の問題もありますけれども、心臓血管外科手術の施設基準について、全国の小児総合医療施設で今回の基準に達しているのは何と半数にとどまる、半分でしかないというような事態があるわけでございます。ですから、残りの半分は、経過措置もありますけれども、三〇%の減額ということになってしまうわけでございまして、こうした点については、ぜひ見直しをしていただきたいという要望がございます。
 この点について、政府参考人の御見解をお聞きしたいと思います。
真野政府参考人 診療報酬上の小児医療の評価は、これまでも充実に努めてきたところでございますが、今回の診療報酬改定におきまして、先生御指摘のような点につきましていろいろ改正を行いました。
 繰り返しては申し上げませんが、いろいろな新しい取り組みも行いましたので、これまでの状況からしましてなかなか難しい面があるかと思いますが、私ども、今、今回の改定に係ります施設の届け出状況等の把握に努めておりまして、御指摘の点も踏まえまして、さらにまた医療現場の実態の把握に努めまして、小児医療に対する診療報酬の評価のあり方につきまして検討していきたいというふうに思っております。
福島委員 よろしくお願いいたします。
 次に、最近メディアでもよく紹介をされております女性専用外来でございます。
 性の違いで病気に差がある、それを理解して、じっくりと話せる医師はどこにいるんだろう、こんな記事が先般載っておりました。現にそういう外来を設けておられますところは、大変人気があるといいますか、そういう需要というものが確かにあるんだろうというふうに思います。
 国立病院におきますこの女性専用外来、取り組みの現状、そしてまた今後の取り組みの方向性について御説明をいただきたいと思います。
冨岡政府参考人 近年の外国におきます対応等を見てみますと、御指摘の女性専用外来といったものは大変重要な課題であると認識いたしております。
 そのようなことから、本年三月に開院しました、我が国の成育医療におきます中核的な医療施設である国立成育医療センターにおきまして、女性のためのトータルな医療を提供する女性専門外来を平成十五年度から設置することを予定しております。それから、その後の展開につきましては、成育医療センターにおきます実施状況を踏まえまして、さらに検討してまいりたいと思っております。
 なお、現時点で、国立病院・療養所におきまして二カ所、女性専門外来が開設されております。それは国立横浜病院と国立下関病院でございます。
福島委員 よろしくお願いいたします。
 冒頭に、政策医療とは何だろうかという御質問をいたしました。国立病院また療養所が担う役割として政策医療というものがあるという位置づけでございますが、もう一つ、私は、宮澤委員の御指摘にもありましたけれども、今まで、医療の提供のあり方そのものについて、一つのモデルといいますか先導的な役割というものはあるんだろう。それは、例えばサービスでありますとか、そしてまた情報の開示でありますとか、安全の体制でありますとか、そういった質の部分、さらには医療の標準化、治療の標準化といったような事柄において、国立病院・療養所が先導的な役割をぜひ果たすべきである。そして、そのことによって日本の医療のあり方そのものを変えていく、非常にソフトな方向性でございますけれども、そういう役割をぜひ担っていただくべきではないかというふうに私は思っております。
 そういった点に関連して、幾つかお尋ねをしたいと思います。
 まず、情報開示の件でございますけれども、カルテの情報開示、これは先週の土曜日でございますけれども、東京都が、都立病院で亡くなった患者の遺族から要請があった場合に、十二月一日からカルテを全面的に開示をするという発表がございました。
 現在、カルテの情報開示、国立病院・療養所におきましてもいろいろと取り組んでいただいておりますけれども、この遺族へのカルテの開示ということについて、どのような状況なのかお聞きをしたいと思います。
冨岡政府参考人 平成十二年六月に策定いたしました国立病院等における診療情報の提供に関する指針、これを踏まえまして、院内体制の整備された施設からカルテの開示を進めてまいりまして、平成十三年四月からは、すべての国立病院等におきましてカルテ開示を実施しております。
 お話のございました遺族からの請求につきましては、各施設内に診療情報等開示委員会を設置し検討しておりますが、この委員会での審議を経まして開示いたしているところでございます。
福島委員 その指針を私はちょうだいいたしました。こんなふうに書かれております。「患者本人が死亡した場合の特例」ということで、遺族からの請求に対して開示をする。「主治医が必要と認める場合には、施設長は、診療録等開示委員会に諮り、診療録等の開示の対象者、開示の範囲及び内容、開示方法等を審議した上、診療録等の開示を行うことができる。」また、この場合には、開示申請は「死亡日の翌日から起算して六十日以内の期間とする。」というふうな話に実はなっているんですね。
 私は、亡くなられた直後というのは、お葬式もありますし、いろいろと患者の御遺族の方は、多分、冷静に考える時間というのは恐らくないんじゃないかなと。なぜ、この六十日という期限を設定したのか、一つちょっとクエスチョンに思いましたね。
 そしてまた、東京都の対応というのは全面開示なんですね。全面開示なんですね。ここのところは大きな質的な違いがあるんです。どこまで見せるかということを病院のサイドが決めて示すという話になっているわけですね。
 ですから、そういうことを考えますと、この施行状況ということもありますし、いきなり全面開示というようなことも、現場の対応もあろうかというふうに私は思いますけれども、この指針についても、これでよしとするということではなくて、今後どうしていくのかということはぜひよく御検討いただきたい、そのように要望いたしたいと思っております。
 それから次に、この間、アメリカ医学の日本への紹介ということでは大変有名な李啓充先生が新聞に投稿いたしておりまして、「患者の権利守る制度を」と。これはいろいろと今まで言われておりますけれども、「日本の医療制度の中にはひどい目にあった患者に対する救済制度がまったく用意されていない」、これは、李先生そのものが、自分のお母さんを東京の大学病院に入れてひどい目に遭ったという話らしいんですけれども、いろいろと入院中の苦情を担当の教授に言ったけれども、全然受け付けてもらえない。
 そこで、李先生はどういうことを指摘しているかといいますと、「アメリカの病院でこのような事態に遭遇した場合には、院内に設置されている苦情受け付け部門に相談に行けばすぐにしかるべき対応がなされたに違いない。」そうなっているということでございますね。これは、私は日本の医療機関においても大切だと思いますし、先ほど申しましたように、国立病院・療養所が担う役割というのは、日本の医療のあり方についても先導的な役割を担うべきであると私は思っております。
 では、こうした苦情相談窓口というのは国立病院・療養所でどれだけ設置されているのか。この点について御説明いただきたいと思います。
冨岡政府参考人 国立病院等での患者さんの相談窓口の設置状況は、平成十四年三月末現在で約七〇%となっております。その時点の調査で、一年以内に設置予定としております病院、療養所が一〇%少しありまして、今年度じゅうには八〇%を超える設置率となる見込みでございます。
 今後とも、御指摘のような点は大変重要なことかと思いますので、各病院、療養所におきます患者さんの相談体制の確立のために努力してまいりたいと考えております。
福島委員 これも若干御指摘をしておきたいんですが、国立病院等における医療サービスの質の向上に関する指針。具体的にどう書かれているかといいますと、「患者相談室の設置」「目的・効果」「患者及び患者家族に対する十分な医療情報及び相談機会の提供。」「詳細かつ確実な薬剤情報の提供。」というふうなことが書かれております。
 これはまことにごもっともで、こういうことはきちっとやっていただければと思いますけれども、ぜひ、さまざまな苦情の処理ということも明示をすべきなんじゃないかというふうに思うんですね。なかなかこれは言いにくいものなんです、病院に入っております患者さんの立場からいいますと。私の事務所も、直接主治医に言えないからこちらに言ってくるという話も時々あります。
 そういう意味では、苦情についてもきちっと受け付けますよということも明示をされた方がいいのではないかというふうに感じました。ぜひまた御検討いただければと要望させていただきます。
 それから、次に、時間も限られてまいりましたので、治療の標準化、そしてまた、最近はエビデンス・ベースド・メディシンということが言われているわけでございます。国立病院・療養所におきます医療におきましてもこうした取り組みが必要だと思っておりますけれども、どのような取り組みをなされているのか、御説明をいただきたいと思います。
冨岡政府参考人 御指摘の医療の標準化によりますサービスの質の確保の観点から、国立病院等におきましては、クリティカルパス等の手法の活用や、政策医療のネットワーク機能を活用した診療ガイドラインの作成、こういったことによりまして、質のよい医療が幅広く提供できるよう標準化を進めてきているところでございます。具体的に申し上げますと、現在、クリティカルパスを導入し医療の標準化に努めております国立病院・療養所は、全体の六〇%を超えております。
 今後とも、クリティカルパスの普及や政策医療ネットワークの推進によりまして、一層の医療の質の向上に努めてまいりたいと考えております。
福島委員 また、先般の通常国会で、国立病院・療養所において後発品の使用をもっと積極的に取り組むべきだという指摘がなされました。それを受けて、厚生労働省からは通知を発出されたわけでございますけれども、このことによって、どのように利用状況が変わったのか。そしてまた、これは単に一年だけの話ではございませんので、今後どのように取り組んでいくのか。その点についてお聞きをいたしたいと思います。
冨岡政府参考人 御指摘の後発医薬品の採用状況、国立病院・療養所の現状は、確かに低調でありました。そこで、御指摘を踏まえまして通知を発しまして現場に督励したわけでございますが、それによりまして、十二年度には〇・七%であったものが、今年の五月には四・二%、九月には五・三%に向上いたしております。
 私どもとしては、かなり進捗してきているものと思っておりますが、なお今後とも一層努力してまいりたい、目を凝らしてまいりたいと思っております。
福島委員 よろしくお願いをいたします。
 先ほど宮澤委員からも御指摘がございましたけれども、中期目標にどういうふうなものを盛り込んでいくのか、どういうものを盛り込んで今後の経営の効率化を図っていくのかという御指摘がございました。この点についてと、そしてまた、事業評価というものもその後きちっとする必要がある。ですから、計画を立てるということと事業評価をするということは、効率化を進めていくための両輪であるというふうに思っております。この点についてお尋ねをしたいと思います。
 私が思いますのは、先ほども言いましたように、国立病院・療養所は、政策医療を担う、そしてまた医療サービスのあり方ということについても先導的な役割をやはり担っていくべきだと私は思っております。そのためには、はっきり申し上げますと、もっと医療資源を配分した方がいいというふうにも思います。しかしながら、それも限りがありますから、その中でどういうふうにして質を高めていくかということを考えれば、おのずと効率化も同時にやっていかなきゃいけない。これは効率化のための効率化だけではない、質を高めるための効率化でもあるというふうに思っておるところでございまして、今御質問に対してのお考えをお聞きしたいと思います。
冨岡政府参考人 ただいま御指摘の基準といったものにつきましては、今後、具体的に検討してまいる事柄でございますが、効率化の観点、それからまた効果的に実施するという観点、ある意味ではサービスの向上の観点から、両面から基準を定め評価する必要があるものと思っております。
 サービスの質といった点につきましては、紹介率の目標といったもの、それから政策医療のネットワークの機能状況、こういったことなどが考えられるわけでございますが、効率性という観点では、医業関係の収支の目標、それから外部委託の進捗の目標とか、こういったものが考えられるものと思っております。
水田政府参考人 独立行政法人の評価につきましてお尋ねでございます。
 厚生労働省の独立行政法人の評価委員会におきましては、まず、評価に当たっての客観的な視点等につきまして、あらかじめ独立行政法人の業務実績に関する評価の基準を定めておりまして、これらに基づきまして、第三者機関として客観的かつ厳正に評価を実施しているところでございます。具体的には、各法人から前年度の業務実績の報告を受けまして、法人の設置目的等に照らした総合的な評価と、ただいまお話のありました中期目標に掲げられました個別項目ごとの五段階方式による評価をあわせて行うこととしております。
 また、評価の結果につきましては、ホームページ等におきまして公表することとしておりまして、透明性の確保を図ることとしております。
 以上であります。
福島委員 ぜひ、適切な事業評価を行っていただきたいというふうに思います。
 最後に一点お尋ねをしたいのはペインクリニックのことでございますが、国立病院等におきましても、ペインクリニックを開いておられるところがたくさんあるだろうというふうに思います。ペインクリニックをめぐる状況というのは、現在、麻酔科医の中で千名ほど認定を受けた方がいる、そんな状況のようでございます。実際に開業しておられる方も三百名ほどおられる。
 しかしながら、ペインクリニックというのは標榜科でありませんので、これは看板にかけられないわけですね。麻酔科というふうにかけると、麻酔をかけられるために来るのか、こういう話になってしまうわけでして、なかなか一般の患者の方からわかりにくいという指摘もあります。
 今、麻酔科医は、病院の、医療機関においての麻酔を担っておりますけれども、ただ、しかしながら、だんだん人が集まらなくなってきている。これは小児医療と似たようなところがあるわけですけれども。というのは、ポストは限られておりますし、どうしたら若手の麻酔科医を集めることができるか。そうなると、将来的に、ペインクリニックというような形で開業する、そういう流れをつくっておいてあげないと、実際に手術するに当たって麻酔科医の確保ができないというような事態が将来において起こってはいけないと私は思っているわけでございます。
 そういう意味では、ペインクリニックを標榜科にしてほしいという学会の要望も強いものでございますし、また広く理解もできると私は思っておりますが、この点について厚生労働省の御見解をお聞きしたいと思います。
篠崎政府参考人 先生御指摘の診療標榜科名のことにつきましては、従来から、国民が適切にその標榜科を見て受診できるかどうか、また、それが一つの独立した診療分野を形成しているかどうかなどについて検討してきておるわけでございます。
 御指摘のペインクリニックにつきましては、平成八年の審議会の専門委員会におきまして、麻酔分野の一分野であり、基本的には医師の判断により受診する診療分野ではないかというような理由で、御要望がございましたけれども、標榜診療科名とすることはこの時点では保留とされた経緯がございます。
 しかしながら、本年四月から医療に関する広告規制が大幅に緩和をされまして、専門医の広告が可能となりました。つきましては、御指摘のペインクリニックにつきましても、関係学会などでペインクリニックの専門医制度というようなものがあれば、所定の手続を経て、従来からの麻酔科の標榜科に加えまして、ペインクリニック専門医というような形で広告することができるということになったわけでございます。
福島委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
坂井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
坂井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。五島正規君。
五島委員 民主党の五島でございます。
 大変大きな問題、従来からの問題でございますので、きょう一日では私の質問は終わらないと思います。じっくりとお伺いしたいというふうに考えています。
 まず最初に、国立病院の統合、移管、廃院の計画は随分と時間をかけてやってきたわけでございますが、今回独立行政法人に移管する病院が百四十四施設ということでございまして、まだ三十前後の病院が統合、移管等の計画が実施されていないと思うわけでございます。
 これはいつまでに、どのようにするようになっているのか、そのことについてはもう既に解決がついているのかどうか、まずそのことをお伺いしたいと思います。
冨岡政府参考人 国立病院・療養所の再編成の進捗状況について御説明申し上げます。
 国立病院・療養所につきましては、行政改革の一環といたしまして、国立医療機関にふさわしい広域を対象とした高度または専門医療を担えるよう、機能の質的強化を図るため、昭和六十一年に国立病院・療養所の再編成計画を策定し、さらに十一年三月にはこの再編成計画の見直しを行いまして新たに施設を追加し、再編成を一層促進することとしたものでございます。
 計画の内容を申し上げますと、六十一年当初二百三十九施設を、統廃合、経営移譲によりまして結果として八十七削減するという計画でございました。
 進捗状況を申し上げますと、この計画発表の当初は所在する地元の理解がなかなか得がたいといったようなことから進展が見られなかったわけでございますが、最近に至りましてかなりのスピードで進捗しております。現在までに五十六施設が減少しまして、未実施施設は三十一となっております。
 この三十一につきましては既に今後の対処方策について決定し公表しておりますが、経営移譲計画の場合につきましては独立行政法人移行前にすべて完了する、それから統廃合計画の場合は独立行政法人移行前におおむね完了することといたしておりますが、そういったことで、今後、十五年度末までには二十一施設が減る見通しでございます。
 こういうことで、全体計画の九割を終了することとしておりますが、残りの十ケースにつきましては、統合に必要な建物整備の工期の関係から、独立行政法人に移行するまでには完了しない見通しでございます。
五島委員 十施設ぐらいが独立行政法人に移行するまでには完了しないだろうというお話でございますが、そうしますと、統合、移管をすることが既に決まっているこの十施設も、独立行政法人に移管させた後にそういうふうな措置をとるということになるのか。
 それからまた、百四十四の特定独立行政法人に移管するわけですが、この百四十四の独立行政法人の中からさらに新たに移管あるいは統合等々の計画を組んでいかすことになるのかどうか。その辺についてお伺いしたいと思います。
冨岡政府参考人 独立行政法人には百四十四として移行するという本来の姿でありますが、先ほど申し上げましたように、十のケースについてはそれまでに完了しないということでございまして、このケースにつきましては、完了前のものが独立行政法人に移行し、独立行政法人において再編成業務を引き継ぎ、移譲、統合または廃止に係る業務を行うこととされているところでございます。そういうことで、独立行政法人に移行後も、既に決められました計画に従いまして再編成を確実に進めていくこととしております。
 なお、後段のお尋ねでございますが、独立行政法人制度におきましては、中期計画の終了後におきまして、外部の有識者による業績評価を経まして、担当大臣でございます厚生労働大臣が法人の組織及び業務の見直しを検討することとなっております。さらなる再編成といったものについては、必要に応じ、その時点で検討されるべき課題と考えているところでございます。
 以上でございます。
五島委員 きょう、時間がございませんので、この問題はまたの機会に少し丁寧にお聞きしないといけないわけですが、現在、厚生省の国立病院部において移管の計画は進めておられる。そして、その中で、独立行政法人移管までに十の病院が残る。
 この十の病院が一たん独立行政法人になった後において統合、移管されるということは、それに伴うところの契約の責任あるいは資産の売買等は独立行政法人との間の問題になってくるということでございますから、当然、独立行政法人はそういう形で一方の契約の当事者となって移管ないしは統廃合されていくということになるのだと、今のお話を聞いて考えるわけでございます。
 また、さらなる統廃合の計画あるいは移管の計画については、経営の実績を見た上で厚生労働大臣と協議の上で新たに計画を決めるかもしれないというお話でございますが、経営の実績ということも一つの重要な要素ではありますが、経営の実績ということだけで見ていくといった場合には、当然、独法法人が今後運営する病院の経営というものを一定の基準に照らして、本当にこれまでのようなやり方ではなく正しく経営評価がされていないと、結論は出せないだろうというふうに思います。
 その点について、後段の問題は次回また詳しくお伺いしますが、契約の当事者が独法法人になるということの理解でいいかどうか、そこだけちょっとお答えください。
冨岡政府参考人 国立病院・療養所、移管するものにつきましては、独立行政法人に資産も移るものでございます。そういうことでございまして、国の業務を独立行政法人が引き継ぐわけでございまして、契約の当事者となるものでございます。
五島委員 念のために申し上げておきますが、独法法人に移管する段階においては、従来の負債と資産とを引き継いで、そして、赤字ではないという状況でもって独法法人に移管するわけですね。そして、それをディスカウントして移管していくということになりますと、そこで資産の変更というものが、かなり大きな問題が起こってきますし、それらの病院が抱えている負債、従来の積み立ての負債というものを本当に個別に洗い出せるのかどうか。
 特に、今のお話ですと、現在建築中である、建て直し中であるということで移管がおくれるというお話でございますから、それらの負債というものは当然独法へ残っていくのか、あるいは統合先の方に負債も一緒に持っていくのか。これは非常に重要な問題だと思っておりますが、その辺はいかがでしょうか。
冨岡政府参考人 資産も負債も、独立行政法人に引き継がれるものでございます。
五島委員 ですから、十の病院について移管するときのそれは、どういうふうになりますか。
冨岡政府参考人 その点につきましては、現在の特別会計の資産はナショナルセンターにかかるものと独立行政法人に移るものから成っておりますが、ナショナルセンターにかかるものは移りません。そのほかのものは、独立行政法人に資産も負債も引き継がれるものでございます。
 そういうことで、再編成によりましてなくなった資産といったものの全体は、独立行政法人に引き継がれるものでございます。
五島委員 どうも私の質問が悪いのかどうか、きちっと伝わっていないように思いますが、この統合予定の十の病院に限ってお伺いします。
 これらは、一たん独立行政法人に移管されます。そして、それが移管するときに、今現在トンカチの最中だということですよね、建て直しの最中だ。そうしますと、そこの病院の持っている資産と負債というものがそれぞれ生まれてまいります。これを移管するときには、現在の国立病院の統合なり移管の条件で当然されるということになりますと、独法法人には新たに負債が大きく残っていくということになるかと思うわけですが、その辺はどうなんですか。
冨岡政府参考人 説明が不明確でございましたが、ただいまのようなケースにつきましては、資産から減資されるものでございます。その額の分、相応分が減資されます。
五島委員 そうであれば、その独法がどうなるかわかりませんが、独法法人に移管させて、そして、移管したときには収支幾らかの黒字の形をとって資産を持たすわけでしょうが、この十の病院の建築費、この間釘宮さんが談合問題でさんざんほえておりましたけれども、そういうふうなものの建築費がそのまま独法の方に残ったままで移管するというふうなことで果たして独法の経営というのが成り立っていくのか。残された独法の職員にとってはとんでもない話じゃないかと思うわけですが、時間がありませんので、指摘いたしまして、改めてまたお伺いすることとして、次に行きたいと思います。
 ナショナルセンターとして、国の医療機関として残る、すなわち国立病院部に残る病院と、それから独立行政法人に移管する病院と、この二つが生まれるわけですが、この二つの区分は何によって行っているんでしょうか。その区分の理由は何でございましょうか。
坂口国務大臣 午前中、参議院の本会議がございましたために、大変失礼をさせていただきました。
 ただいまの御質問でございますが、いわゆるナショナルセンターとして残りますものと、いわゆるハンセン療養所が残りますのと、この二つが残るわけでございますが、これを、区分は何かということでございます。
 一つは、研究機能が特に高い。研究機能も、特に臨床研究だけではなくて基礎的な研究も行っている、例えばがんセンターのように基礎的な研究も行っているというようなところ。そして、高度先進医療を行っている。そういう研究によりまして、それをもとにいたしました高度先進医療というのを行っている。そうしたところにつきましては、一応ナショナルセンターとして国の方に残させていただきます。
 ハンセン療養所の方は、これは特殊な歴史的背景がございますから、それはそれとして残させていただく、こういうことでございます。
五島委員 現実においては、そういう今の大臣の御説明で何となく理解できる話であるわけですね。ただ、その話というのは、少しは詰めて整理をしておかないといけない部分があります。
 従来、なぜ国が直営の医療機関を持たなければならなかったか。これは、言うまでもなく、一つは国民病と言われた結核対策、これが非常に終戦直後においても大きな問題であって、これの整備が国民の健康にとって重大な課題であったということで、大規模に方々に国立療養所がつくられたという歴史的経過があったと思います。もう一つは、皆保険制度ができた。そして、健康保険制度ができたけれども医療供給というものが極めて偏っていた、皆保険制度に対応できるような医療の提供の体制が整っていなかった。
 これは、決して国だけの仕事ではなかったと思います。地方自治体もその問題に努力をしましたし、社会保険庁等もそういう問題に取り組んで、それぞれの医療機関をつくってきたと思います。
 すなわち、まさに国民の健康という観点からの政策的対応としてこれらの国立病院がつくられてきて、そして、そうしたものの一定の医学上の高度の水準を持っているものを、総合病院として国立病院をつくってきたという歴史的経過があったと思うんですね。これは、坂口大臣もお認めいただけるだろうと思うんです。
 今回、国がなぜ直営の医療機関を持たなければならないのか、その根拠は何かというふうに言った場合に、過去において国が直営の医療機関を持ってきたような、国民の健康上に直ちにかかわるそういう政策的課題ではなくて、今大臣おっしゃったように、医療の高度化であったり高度の医療であったり、あるいは研究であったり、その話になるなら、本来なら、文科省との間に、一体その辺は大学でやるのか、それとも国立病院でやるのがいいのかという議論もやってもいいような課題ですが、そういうお話が一般的になっています。しかし、私は、国が直営の医療機関を持つといった場合に、今日的な政策医療は何なのか、本当に政策の立場からの医療は何なのかということをやはりきちっとしていく必要があるだろうと思います。
 私は、医療の高度化を否定するものでもありませんし、そして、医学の研究について実施する病院ができることも否定しません。そして、それを国立病院でやられることも一定合意します。しかし、それを、やはり政策という一つの明確な枠の中でつくられないとだめなんだろうと思っています。
 そういう意味でいいますと、私は、今回残される国立の病院の中で、一つ根本的に欠けているのは、やはり危機管理に対してどのように体制を持つのか。
 危機管理といった場合は、今はすぐに有事法制との関連でお考えになられるわけですが、必ずしもそうでもない。さまざまな災害のときに起こってくるであろう感染症に対する問題、あるいは、今日のように非常に人の移動が盛んになってくる中において、極めて迅速な感染源の特定、あるいは外国から入ってくる感染症、もちろん今、国立感染症センターがあるわけですが、そういうものを超えて、アメリカのCDC的な機能を持つような医療機関というものが一つは要るんではないか。
 それからもう一つは、そういうものと関連いたしまして、今日の政策医療というのは、その病院の中で自己完結をするのではなくて、全国的なネットワークの中で政策医療というものに対応していかざるを得ない。そういうふうなダイナミックな国立病院と、それから今回提案されております独法法人の医療機関、あるいはその他の自治体病院や民間の病院とのネットワークのシステム、そういうふうなものがこれからの政策医療だろう。
 それの基幹になれるような形でこの国立病院というものをきちっと位置づけて提案していただかないと、たまたま、がんセンターというのは、日本におけるがん医療において極めて先駆的であると私も認めます。大阪の循環器センターも、循環器医療に関しては極めて先駆的な役割を果たしておられる。だけれども、それがそこにとどまっている限りは、東京や大阪にはいい病院があっていいわねということに終わってしまうんじゃないでしょうか。
 その辺の政策医療についてはどのようにお考えなのか、私は、大臣の率直な御意見をお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 ナショナルセンターと、それから、これから独立行政法人になります現在の国立病院との間では、政策医療というものでは、それぞれがやはり分担をして、そして担っていただかなければならない関係になるというふうに思っております。
 ナショナルセンターだけでこの政策医療が担えるかといえば、それは、そんなことはないと思います。今御指摘いただきましたとおり、より基本的なことのいろいろの研究や、あるいはまた診療に対する対策というものはそこで講じられるといたしましても、そこで政策医療が十分に果たされるということではないと思います。したがいまして、政策医療というものを、量的にいえば、やはり独立行政法人のところが一番担っていただかなければならない分野であるというふうに思っております。
 また、個人の病院との関係もございましょう。個人の病院の中にも、そうした政策医療を担っていただかなければならない分野もございますが、しかし、ここに多くのことをお願いすることはできない状況でございますから、独立行政法人としての現在の国立の病院のところが、政策医療ということにつきましては、中核的な役割を果たしていただかざるを得ない、お願いをしたいというふうに思っているところでございます。
五島委員 これはもう強く要望しておきますが、申し上げましたように、今大臣もおっしゃいましたように、これからの政策医療というのは、やはり医療のネットワークというものが極めて大事である。ところが、今回出されてきた法案を見ますと、そのネットワークというのがどういうふうな形でつくられようとしているのかが明確でございません。
 厚生省の方は、政策医療だと。どうするんだというふうに申し上げると、結果としては、何か、腎臓病の専門病院や、やれ肝臓病の専門病院やということで、適当な病院名を下へ並べてくるというようなばかげたやり方をしている。それでは困る。やはり、こうした全国に網羅する政策医療のネットワークというものをどのように構築するかという、このことが、国民の健康にとって非常に重要な課題であるというふうに思います。
 そういうふうな課題を一つの政策医療として位置づけていただかないと、先ほどもお話ございましたが、もちろん、医療経営の中において収支を考えるのは当たり前です、医療経営を考えるのは当たり前です。しかし、医療経営を考えて、そして各地に、感染症、災害医療、それについて対策をとりなさいといった場合に、これは間違いなく、そういうことをまじめにやった医療機関は、経営は赤字になります。
 だから、政策医療というものについては、そのネットワークを通じて、やはり国の責任においてきちっと整備していくということがない限りは、もしそういうことをしないのであれば、私は、この独立行政法人、さっさと民営化した方がましだろうというふうに思います。しかし、今の日本において、すべてを民営化しろと私自身はよう主張しないところは、まさに、そうした政策医療のネットワークというものがつくられる必要があるだろう、それをきちっとつくることが国民の健康にとっても必要だという観点から、やはり今回のこういう大改定の中においては、その辺を視点に置いた計画というものをぜひ立てるべきであるというふうに強く主張しておきます。
 ちなみに、もうわかり切ったことですが、かつて医療の供給が不足してでき上がった病院、これは、現在の時点においては、既に政策的課題は解消している。現在、国立病院のあるところの中で、地域医療計画の中で過少ベッドである地域というのはまずないはずです。ということは、これらの病院が、医療を提供するために必要な、皆保険制度との関連において担っていた役割は終わった。そうすると、今日の課題に向けた政策医療を担うように再編成をぜひお願いしたい、そうするべきだというふうに考えておりますので、その点については、後ほどまた改めて、大臣にまとめてお答えいただきたいと思います。
 それから、三番目の問題として、極めて大事な問題で、ここで議論をしておかなければいけない問題は、この国立病院が公務員型の独立行政法人に移行します。そうしますと、ここに働く医療従事者の労働条件や賃金、そういうふうなものはどのようにして決定されるのかという問題でございます。
 当然、独法でございますから、人勧とか、従来の方法から離れてくるのはよくわかっておりますし、そして、一定の条件のもとで、非特定でなくて特定の場合は、たしか通則法で、本人の目的遂行に対する能力ということで賃金を決めるとかいうふうなことがあると思います。
 ところで、そうした法律上の議論をここでするつもりはありませんが、まず、それぞれの医療機関で働いておられる人々が独法に移管する段階で、これまでの賃金や労働条件は包括継承されるのか、それとも、新たにすべてを決定していくのか。新たにすべて決めていくとした場合は、独法全体の賃金として決めていくのか、各病院の賃金として決めていくのか。各病院の賃金として決めていくとした場合には、それは、この国立病院部という国の医療機関の責任においてやられてきた、そのときの実績をもって評価をするのか、そうではないのか。
 まず、この身分の継承のところにおける労働条件についてお伺いしたいと思います。
冨岡政府参考人 先生お尋ねの独立行政法人になった場合の給与等につきましては、独立行政法人通則法に規定がございます。
 それをまず最初に御紹介させていただきますと、まず、通則法の五十七条におきましては、「独立行政法人の職員の給与は、その職務の内容と責任に応ずるものであり、かつ、職員が発揮した能率が考慮されるものでなければならない。」第二項「特定独立行政法人は、その職員の給与の支給の基準を定め、これを主務大臣に届け出るとともに、公表しなければならない。」そしてまた三項におきましては、給与の基準は、国家公務員の給与、民間企業の従業員の給与、当該特定独立行政法人の業務の実績及び中期計画の人件費の見積もりその他の事情を考慮して定めなければならないと規定されているところでございます。
 こういうことでありまして、現在と異なりまして、国立病院機構の職員の給与は人事院勧告の対象とはならず、法人がみずからの機構職員の給与を定めることとなります。
 機構におきましては、法人全体及び各施設ごとの業績が明らかになり、外部によりまして評価を受けることになるわけでございますが、そこで、ただいま読み上げました通則法の規定にあるように、その経営状況等を勘案しまして、職員が意欲を持って働くことができるような給与の仕組み、こういったものを検討し、そういうものがつくられることが法律の趣旨であると考えております。
 また、労働条件につきましては、勤務時間につきましては、給与同様、法人みずから定めることになっておりますが、ほかの任用、定年、懲戒、公務災害等の労働条件につきましては、国家公務員法が適用されることになっております。
 ちなみに、もう一つ申し上げますと、公務員型の独立行政法人であることから、労働三権につきましては、団結権、団体交渉権は付与されるものでございますが、争議権は付与されないこととなっております。
 以上が、給与等の仕組みの概要でございます。
五島委員 そこは聞いていないんですよね。
 最初に独法に移管しますね。そのときのそれぞれの職員の給与や労働条件、これは身分継承なんですか。独法である以上は身分継承ということにはならないでしょう。そうだとすると、独法そのものが決めていく、全部決められるわけですね。
 それは、労使の交渉は当然あるわけでしょうが、例えば賃金について言うならば、非常に抽象的に、特定独立行政法人の場合は、職員が発揮した能率が給与になるというふうなことが言われているわけですが、ところが、今回移行するについて、そうした本人の評価というのは、厚生労働省の国立病院部における、それぞれの病院の費用実績をもって決めていくのか、それとも、そこは包括的に、労働条件を含めた身分も継承した中において、今後そうしたものについて変えていこうというのか、そこをお伺いしているんです。
冨岡政府参考人 身分は独立行政法人に承継されるわけでございますが、給与、勤務条件等につきましては、その法人がみずからのものとして決める、そういう整理になっております。
五島委員 もちろんその法人がみずから決めるんですが、決める段階においてどうなるかということを聞いているわけです、最初の段階で。
 現状においては国家公務員で、この独法法の制約を受けていない公務員が、そこに移管されるということについて、命令を受けて移管されるわけですが、移管される場合に、本人の就労条件、労働条件、賃金、それが不明確のままで移管されるということはあり得ない。それはどうするんですかと聞いている。
冨岡政府参考人 基本的には、先ほど申しましたように、法人自身が決めるということでございますが、この法律の予定しております施行は来年十月ということでございます。それ以降は、理事長就任予定者を厚生労働大臣が指名するということもできるようになります。そういった状況のもとで、あらかじめいろいろな準備を進めるわけでございますが、そういった中で実質的な、懇談と申しましょうか協議と申しましょうか、そういうことが事実上行われながら円滑的に移行していくということになろうかと思っております。
五島委員 その辺も、そういう言い方であいまいなままですと、私は大変心配するわけですね。基本的に争議権を与えていないこの公務員に対して、労使の協議の中で決めることになっています。そのときに、労使の協議の基準が明確でないままにやられた場合は、当然それは、法律に基づいて中労委の裁定ということですべて処理をしていくことになるんでしょうが、労使の対立というものが非常に噴出するんではないかというふうな心配をします。
 また、この独立行政法人の場合には、先ほどからもありましたように、法律上、職員が発揮した能率というものが本人の賃金の基準になってくるということでございます。しかし一体、本人の賃金というのは独立行政法人本部が決めるのだろう。一つ一つの病院が独法になるわけではありませんから、各病院がそれぞれそういうふうなことをやっていく。評価はそれぞれの上司の評価を受けるにしても、独法でやっていくんだろうと思うわけですが、しかし、基本的な評価というのはその現場がすることになっている。そうするとこれは、労使紛争、紛糾しませんか。
 あわせてお伺いしますが、例えば管理運営事項について。管理運営事項というのは労使の交渉の対象にはしないというふうに、これまでは国は、国鉄のときもしてきました。管理運営事項を外すといっても、労働三権を与えられておらずに管理運営事項だということで突っぱねていくということになりますと、私は、百四十四もある病院がかつての国労と同じような状態になった場合にどうなるんだろうか。
 その辺の、労使の賃金の、あるいは労働条件の決定の仕方というのは、今の冨岡部長の話を聞いていると、理事会が責任を持つということと理事会が独裁的に決めて職員に文句を言わさないということは別なんですね。職員は、団結権ありますし交渉権ありますから、当然労働組合をつくっていろいろと話をしてくるに決まっている。そうした場合の、最低限のそうした問題を処理するルールはどうなのか、そのルールなしに本当にスムーズに移行できるかということについてお伺いしているので、その辺は、もう一度改めてお伺いしますが、どのように整理をされておられますか。
冨岡政府参考人 給与の基本的な事項につきましては、法人がつくりまして届けることになっております。また、ただいまお話ございました管理運営事項といったものについてどのようなルール化を図るかということでございますが、これにつきましては、行革の基本法におきまして健全な労使関係を念頭に置くといった規定がございまして、そういった趣旨に沿いましてルール化を図っていくということになろうかと思っております。
五島委員 部長の願望としてお伺いしておきますが、これは現実に動き出したら願望では済まない話ですね。そこのところをどうするかというのを、ぜひまた金曜日にでも質問しますので、整理しておいてください。
 次に、今回独法に移行するわけですが、そこでも当然、病院の施設の改築や改善やあるいは医療機器の整備等々のお金が必要になります。それで、独立採算的にそれぞれの償却の概念を取り入れてやっていくんだというふうにお伺いしています。しかし、現実問題として、これが償却できないということが起こってくるだろう。そうした場合は、独法全体で解決つけ得る間はいいんですが、それが困難な事態になったとすれば、当然それは公費を投入して処理をするのか。こうした施設の償却というものについてはどういうふうにされる予定ですか。
 また、施設の更新に対する費用というのは、これは財投資金の借り入れでやっていくのか、市中銀行からの借り入れでやっていくのか。市中銀行の借り入れということになれば、そこには利息という問題も、もちろん財投の場合もあるわけですが、の概念もある。そういうものをひっくるめた経費というのはどのようにお考えなんでしょうか。
冨岡政府参考人 現在の病院の施設整備につきましては財政投融資資金をもって整備しているところでございますが、独立行政法人移行後は、加えまして、市中からの借り入れ、それから債券の発行、こういった道が開かれることになります。
 なお、返済と申しましょうか、そういったものをどうして返していくかということでございますが、今後、国立病院機構が病院等の施設整備に充てるため長期借り入れ、債券発行を行う場合は、財務の健全性が損なわれることのないよう、償還確実性を十分勘案して行う必要がございます。
 その上で、毎年度償還計画を立てまして大臣認可を受けること、それから、毎年度財務諸表を作成し、計画どおり債務が償還できているか等について大臣の承認を受けること、それから、中期計画におきまして債務の償還額を含めた予算、収支計画等の策定が法律上定められております。こういったことから、厚生労働大臣が、債務の確実な償還を事前事後にチェックして健全性を保つということになっております。
五島委員 国立病院の場合は、病院債を発行し、あるいは市中からの借入金によってやっていく、そして債務計画をきちっと立てていくということでございますが、そうだとしますとこれはちょっと、きょうおいでいただいておりますが、同じく公的な医療機関との間のバランスの問題が非常にあるだろうと思うわけです。
 一つは社会保険病院、あるいは厚生年金病院。これらの病院は、保険者が、国立病院がつくられたときと同じような理屈でもって、すなわち、加入者に対する医療の供給が非常に不足しているということを理由としてつくられた病院でございます。これらの病院はいずれも、病院の施設の整備というのはすべて公費で賄っている、あるいは保険からの給付でやっている。もちろんこれは国有財産でございますから、すべての施設を国が賄い、そして利用料も取らず、償却もさせずに運営を委託しているという内容でございます。これも実は、今回の中で、独法法人の中で国立病院をそういうふうに整備するんなら、なぜ一緒に整備しないんだと思うわけでございます。
 しかも、それぞれの病院が、もちろん国立病院も、今回の独法法人も、厚生年金事業振興団のやっている厚生年金病院も、社会保険病院も、いずれもすべて税金を払っていない。法人税も払っていなければ、あるいは事業税も払っていないし、それから不動産の取得税も固定資産税も払っていない。一切の税金を払わずに、そして、建物の、あるいは医療機器の償却もさせないで、これらの病院を運営させている。
 そして、社会保険病院で年間二十四億の黒字。厚生年金病院で年間十五億の黒字。まあ出しも出したものだと思いますが、数字のつじつま合わせをしている。平成十四年度でも百十六億円、この厚生年金病院で公費を投入し、そして、社会保険病院では二百三十四億円。四百億円近くの金を出して、両方足して利益がたかだか四十億、そういうふうな状態。
 個々の病院を見てみると、年間の収支が百万円の黒字という病院が幾つかあります。これはもう、百万円の収支の黒字なんというのは、つくったものとしか思いようがない。そういうふうな病院を、一方において、いわゆる国のお金ですべて抱え込んでやっておきながら、やっている。これは一体どうするのか。しかも、本来の目的は、国立療養所やなんかと同じような趣旨でもってつくられたわけです。そういう意味でいえば、この際これらの病院も一緒にして、一つの機能としての検討を加えるべきでなかったかと思います。
 同じような問題が労災病院にも言えます。労災病院は、かつて労働災害が多発している、職業病が多発している、そういう状況の中で、労働災害という、それをどうするかという政策医療の中でつくられました。現在でもまだ、一部のじん肺労災や脊損労災はその役割を果たしていると思います。しかし、多くの労災病院は完全に地域の中核病院としての機能を果たしている。労災病院としての機能ではない。非常にいい病院ではありますが。例えば横浜労災病院、地域医療の病院としてはまさにナショナルセンターと言ってもいい、いい病院です。だけれども、なぜあれが労災保険で運営される労災病院なのと言われた場合は、何の理屈もありません。
 こうした、公的病院が四つにも分かれている、運営主体で分ければ三つにも分かれている、これをやはりきちっと統合して、そして、財団を統合せいと言っているわけではありませんが、統合した政策医療というものを打ち立てていかないと、そして共通したルールというものが打ち立てられないと、これは非常に今後の運営の中において問題が大きくなるのではなかろうかというふうに思います。そのあたりについて厚生労働大臣のお考えはどうなのか、特に政策医療との関連の問題の中において、そのあたりについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今御指摘になりましたように、社会保険病院あるいはまた労災病院というのは、先ほどから論議をしていただいております政策医療の一翼を担ってきたことは間違いないというふうに思います。そして、それらの病院がそれぞれ建設をされましたときには、そうした大きな要求があって設立されたというふうに思っておりますが、時代の経過とともに、その内容が変わってきていることもまた事実でございます。
 そうしたことを踏まえて、今後、これらの問題を考えていかなければなりませんが、今回のこの国立病院の独法化の問題と同じにこれを処理することができたかといえば、それは、一方は国立病院であり、そして社会保険病院はいわゆる社会保険という一つの団体と申しますかそうしたところからでき上がっており、労災病院は労災というところからでき上がっている、こういうことでございまして、同じにはできませんでしたけれども、方向性としてはやはり同じだというふうに思っております。
 したがいまして、社会保険病院、労災病院につきましても、そのあり方が今問われているわけでございまして、現在の国立病院と同じように、統廃合すべきものはすべきもの、そして残すとすれば、今後の社会保険あるいはまた労災にとりまして何が必要なのかということを中心にして検討し、残していかなければならないというふうに思っております。
 そして、それらの問題につきましても、今までのように、すべてが社会保険の保険料から、あるいはまた労災の保険料からそれらを賄っていくというのではなくて、もっと独立的な立場でおやりをいただかなければなりませんし、そして、政策医療というものをお願いするとすれば、その部分についてはどうするかといったことを明確にしていかなければならないときを迎えておりまして、これは並行的に実現をしたいと考えているところでございます。
五島委員 そこのところが実は本当は一番大事なんだと思います。
 社会保険病院の中でも経営を考えて、税金も払わない、建物の償却もしないといいながらやはり経営が非常に厳しい、人件費が高い病院はたくさんあります、そういうところはどうしているか。決して政策医療ではなくて、そこにいる医師の専門性、専門性といいますか趣味といってもいいんですが、それからその地域の医療の要求に応じて、もうころころ診療の中心科目を変えている。これは民間病院とどこがどう違うんだというところもある。一方、きょうは余り細かくは申しませんが、国立病院の中にも、なぜわずかなベッドの中で、重心を抱え込んでやらないといけないんだというふうなところもあります。
 そういうふうなものをもう少し一つ一つの病院が、地域の中で、何十年間も経過しているわけですから、それらをどういうふうにネットワークを組み、機能を分けていき、やっていくのかという整備と、そしてやはり政策医療というところに軸足を置いた医療をやってもらう、それにふさわしい予算の措置というのはやはり必要だろうというふうに思うわけです。その辺について、ぜひ大臣に努力をしていただきたいと思います。
 最後に、大臣にもう一つお答えいただきたいと思うんですが、残るナショナルセンターを含めまして、独法法人なんかの人事権、これは一体だれが持つんだという問題がございます。
 建前上からいうと、独法本部が持つんだと思います。しかし、医療の中における現場は、往々にして医師がその病院における医療の方向性を決定することが多い。それらの病院が一定の大きな政策的課題を持ち、医学的水準が高い場合は、そうした政策医療にふさわしい医師を全国から集めることができます。しかし、そうした機能を持っていない、言いかえれば、厚生省の中でこそ政策医療だと言われているけれども、地元では近くの病院なのでと言われて利用されている病院では、そうはなっていません。ほとんどは大学の医局人事の中で医者がころころかわっているという実態です。
 すべての病院においてというのは願望としてありますが、少なくてもナショナルセンターやあるいは拠点的な旧国立病院、そういうところにおける働く医療従事者については、やはり全国公募の中で医師や何かを集めてくる、このシステム。しかもその場合、その病院がどういう政策医療を担っているかということを明確にして、それにふさわしい医療スタッフを全国から集める、その仕組みを考えるべきだと思います。不可能ではないと思います。
 例えば秋田の脳研は、県立病院で、まあ秋田の人に悪いんですが、高知の人間からいえば秋田というあんな寒いところに、全国から脳研には行きたがる。これはやはり、あそこの研究とそれから医療の水準、それにあこがれてだと思います。がんセンターにしてもしかり、国立循環器センターにしてもしかりです。
 やはりこういうふうなことをきちっとやっていかないと、実は、政策医療というのは厚生省の帳簿の中にはあるけれども、そこで本当に政策医療をやられているかどうか。地域の人たちは全然そう思っていない。リハビリテーション病院だと書いてあるけれども、あそこの病院は腎透析の病院でねというふうな話が至るところにある。そういうことになりかねないと思います。
 その辺について、大臣、どのようにお考えなのか、最後にお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 政策医療につきましての御質問というふうに思いますが、政策医療を進めていきます場合に、今までの国立病院が独法化をされまして、そして全国にできるわけでございます。その中で政策医療を進めていきますのには、先ほどネットワークというふうに言っていただきましたが、まさしくネットワークが必要でございまして、重心なら重心のお話をいただきましたけれども、その重心をやっていく場所がやはりその中にはあってしかるべきだ、またなければならないと思うわけですが、それぞれ地域的にそれが余り偏っていてもいけませんし、どういう地域に、全国で幾つの、重心なら重心の専門的なことをやっていただく病院をつくっていくかという、トータルとしての計画というものがやはり必要だろうと思います。
 そして、その中で、そのかわりに、そこでやる以上は、やはり全国的なレベルで見ても最も優秀な医療レベルでなければならないというふうに思いますから、今御指摘いただきましたように、全国に公募をしてもというふうに言っていただきましたが、大変貴重な御指摘だというふうに私も思います。そうしたことをして、そして全体としてやはり高めていく。
 そして、大学病院のただ研究のその人事だけで、研究をしていくための人事の一つの歯車として国立病院が動いているようなことであっては私もならないというふうに思います。そこはやはり、国立病院としてそこに独立をして、そこに与えられた政策医療が全国的なレベルで高くそこが評価をされるようにこれからお願いをしていかなければならないんだろうというふうに思いますし、独立行政法人の本部ができましたならば、そうしたことを念頭に置いてぜひやってもらいたいということを期待しているところでございます。
五島委員 質問を終わります。
坂井委員長 次に、山井和則君。
山井委員 民主党の山井和則でございます。これから一時間にわたって質問をさせていただきます。
 まず、坂口大臣に現場の声をお伝えしたいと思います。
 ちょうど私の地元に国立療養所南京都病院というのがあります。私の知り合いの岡本義孝さんという方は、三十三年以上この南京都病院で医療ケースワーカーとして相談員を務められておられまして、今は引退して私の後援会長をやっていただいているわけなんですが、その岡本さんが独立行政法人化に対してこうおっしゃっておられるんですね。
 うちの病院には百十八人もの重度の脳性麻痺の患者さんがいる。そもそも、昭和四十四年に、民間病院では採算がとれないということで面倒を見てもらえないからという理由で、この重度の身障の病棟ができた。それを今になって、独立法人にして、採算をとれるようにしなさい、おまけに一病院当たり約六十億円もの負債を負わせてというのは、余りにも国の身勝手ではないか。これで、もう独立行政法人にしたら、人手が削られて、そういう脳性麻痺の患者さんへの医療の質が低下するに決まっている、わしはこんなことは許さぬぞというふうに、国立療養所で人生をかけて働いてこられた岡本さんは怒っておられるわけです。
 そこで、まず最初に基本的なことから大臣にお伺いします。なぜ独立行政法人化をするんでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど五島議員にもお答えを申し上げましたとおり、国が果たすべき役割といたしまして、国民の健康に重大な影響を与える疾病に関しましてやはり先導的な役割を果たしていただかなければならないところが必要でございますし、そして、他の医療機関では十分に対応することができない困難な難病、今も重度な障害者の皆さんのお話をされましたけれども、そうした医療を遂行していただくというようなことが大事な部門がございます。
 そうしたことを含めて今まで国立病院でやってまいったわけでございますけれども、このすべてを国がやるというのではなくて、そうした重要な政策医療というものを、一つの独立行政法人という、国、国立という形から少し離れて、そしてしっかりとやっていただこう、こういうことになっているわけでございます。
 ただ、今例を挙げて地元のお話をされましたけれども、そうした政策医療をお願いをいたします限りは、それはもう不採算性であることは間違いがないわけでございますから、その不採算な部分について、それも全部、そこは自分の病院で見ていけといえば、その病院は倒産する以外にありません。したがって、そこに対しましては、これは国の方も適切な支援というものを今後もしていかなければならないのだというふうに私は思っております。
山井委員 その不採算の部分については適切に支援ということなんですが、具体的に言いますと、これは運営交付金というのがそういう部分については出されるということなんですけれども、坂口大臣、運営交付金の基準というのはどういうふうにして出されるんでしょうか。
坂口国務大臣 今そこの部分につきまして検討会をやっていただいておりまして、間もなく結論が出るだろうというふうに思っておりますが、そうした政策医療、さまざまな政策医療がございますから、そのときに、お願いをしたときにどれだけの交付金を出すのかといったことについて、いわゆる、より具体的な問題は別にしまして、その基準となります尺度と申しますか、そうしたものをやはり明確にしておかないと、やはり独立行政法人の中で経営をしていただくときにも、大変それは不安になるだろうというふうに思います。
 したがいまして、その基準につきましては明確にしなければならないというふうに思っておりますし、今そこを検討を重ねていただいているところでございますので、できるだけ早くそこはお示しを申し上げたい、そういうふうに思っております。
山井委員 この不採算ということについてなんですけれども、一つの言い方をするならば、ある意味で診療報酬が低いということになるわけですよね。そうしましたら、診療報酬を高く設定したら民間病院でもできるんではないかという気もするわけですけれども、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 診療報酬体系をその不採算部門につきましてもそういうふうに大きく上げるということになれば、それは当然のことながら、公的な機関あるいは独立行政法人という半ば公的な機関ではなくて民間病院でありましてもそれは可能になるだろうというふうに思いますが、しかし、それでもなおかつ、全体としての診療報酬体系を変えたといたしましても、なかなかやはり不採算部門のところというのは、ただ金銭面だけではなくて、非常に人も多く必要でございますし、そしてまた、いわゆる手間暇と申しますか、その一人一人に対するケアというのは非常に難しい、あるいはまた非常にケアが多くかかるということだろうと思うんです。ただお金の面だけではなくて、そうした面を考えますと、やはりどうしても民間からは敬遠をされる。
 そして、民間の方はより手間のかからない、採算性のいいところにやはり傾いていく可能性があるわけでございますから、診療報酬体系のこともさることながら、やはり恵まれないそういう疾病を持った皆さん方に、言ってみれば、終生これはお世話をしなければならない人たちもあるわけでございまして、その人たちに対応をしていただきますのには、やはりそれなりの能力を持った人、そしてそれなりのお気持ちを持った人におやりをいただく以外にないというふうに思います。
 そういうふうな意味からいたしますと、財政的な面も含めてではございますけれども、やはり公的な機関の果たすべき役割というのは私は大きいと考えております。
山井委員 今大臣が、やはり非常にある意味で手間暇のかかるということをおっしゃいましたけれども、私も最近、難病患者の方々から話を聞いてみました。そうしたら、やはり大臣がおっしゃるように、民間病院と国立療養所と両方かかっているけれども、やはり国立療養所の方が専門の先生がそろっている、かつ懇切丁寧に難病についてレクチャーをしてくださる、そういう意味で非常にやはりありがたいということをおっしゃっておられるわけです。そのよさが独立行政法人化でなくならないようにしてほしいというふうに思うわけです。
 そこでお伺いしたいんですが、合理化を独立行政法人化によって進めるということなんですけれども、医療内容は低下しないのか。そもそも、医療の質はこの行政法人化でアップするのか。一病院当たり平均六十億円の負債を負ってスタートするわけですけれども、結局、人件費や人手を削って医療の質が低下するんじゃないか、そんな不安を持っているんですが、その点について、医療の質、アップ、どうやってさせるのかということ、大臣、いかがでしょうか。
木村副大臣 けさほどもそのような御指摘をいただいたわけでございますけれども、質の点とそれから今言った効率化の点と、これが必ずしも、相矛盾しているように見えますけれども、私は矛盾していない部分もあるんではないか、このように思えてならないわけでございまして、先ほども申し上げたんですが、今度は親方日の丸でない、意識改革をしてもらうんだ、私はそこは非常に重要なことではないかと思うんです。
 それともう一つは、やはり国立病院が持っております高コスト構造、これをやはり効率化の点から直していっていただく、このような両方の、新しい意欲に燃えた、まさに意欲の転換点、そのように今度の独立行政法人化というのを位置づけていただいて、それこそまさに意識改革によって、多少B29に竹やりで向かうような面もあるかもしれませんけれども、ぜひこの点、職員の皆さん方にこの新しく変わったんだという意識改革の点を強調していただけたらな、このように思えてならないわけでございます。
山井委員 これは割と根本的な議論だと思います、効率と質。私が思いますのは、私も過去十五年来、医療そして介護の問題、現場を回って研究をしておったわけですけれども、やはりこういうのは労働集約型の仕事なわけですから、コストを削るということは、往々にして人手を削ったり人件費を削って、やはり質の低下につながりやすいわけですね。ですから、そこを私は非常に難問だと思っております。
 具体的なケースについてまた坂口大臣にお伺いしたいんですが、例えば私の同僚議員であります谷参議院議員は、難病問題に命をかけて国会議員になられたわけなんですけれども、谷参議院議員がおっしゃっておられますには、国立療養所山形病院にはALSの専門病棟があり、全国的に評価が高く、県外からも多くの患者さんが治療を受けている。このようなケースは独立行政法人化でどうなるのかと。
 このALSの専門病棟の場合も、ALS治療に熱心な院長先生の裁量で、限られた予算の中でやりくりして、特色ある専門性を発揮して、あいていた病棟を、ALS病棟をつくったわけですね。こういうふうな場合、独立行政法人化によってどうなるんでしょうか。坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 山形病院のお話は、私も具体的にはちょっと存じ上げませんけれども、今お話しいただきましたように、そうした難病の病棟をお持ちいただいているんだということでございますから、独立行政法人になりました後も引き続きまして、そうした今までの難病対策をおやりいただけるようにしていくということだろうというふうに思っております。
山井委員 ぜひとも独立行政法人の役割というものをしっかりと堅持していっていただきたいと思います。
 では、木村副大臣にお伺いしますが、今回独立行政法人化になっても職員の方の身分は国家公務員を付与するということになっておりますが、なぜでしょうか。お答えください。
木村副大臣 今度の国立病院機構、この大きな目的が、今までお話ありましたように災害などに対する対応、それから今お話ありました難病、こういうような二つの大きな意識が重要じゃないかと思うのでございますけれども、その中でやはり特に大事な危機管理の医療、私はここが相当これからも重要な点ではないかと。
 この危機管理の医療について言わせていただきますと、国の医師として、危険な場所、例えば地震のときとか、また大使館の占拠事件とかがありましたが、そういう危険な場所であっても、相当な数の医師や看護師の方々の医療スタッフを長期間にわたり派遣することが当然出てくるわけであります。これはとても民間の医療機関では担えないわけでございまして、現にペルーの大使館事件やキルギスの事件等、また阪神大震災で多くの医療スタッフを派遣した実績があるわけでございます。
 ですから、こういうことを含めまして、やはりこの国立病院機構の独立行政法人としての公務員型を採用した最大の理由は、私はその点にあるんではないかな、このように思っております。
山井委員 同じ公務員のままということなんですけれども、では独立行政法人化によって、待遇、給与はどのように変わるんでしょうか。このことを現場の人々の職員さんは非常に不安に思っているわけですが、副大臣、いかがでしょうか。
木村副大臣 先ほども御質問ありましたけれども、一方でそういう崇高な任務とともどもに、一方でやはり高コスト構造を是正し、効率化を図っていかなきゃいけない面も当然あると思うわけでございますけれども、今御指摘のありました国立病院機構の職員の待遇、すなわち勤務条件、給与とか勤務時間につきましては法人みずから決定をする、こういうことになっているわけでございます。その一方で、任用、定年、懲戒、公務災害等の勤務条件につきましては国家公務員法が適用されることになっています。
 なお、労働三権につきましては、団結権、団体交渉権が付与されますが、争議権、つまりストライキは、争議権は付与されていないということになっているわけでございます。
 以上でございます。
山井委員 その中で、現場の方々の一番大きな不安が、全体の二、三〇%を占める賃金職員、非常勤職員の方々のことなんです。これは非常に重要なことなので、坂口大臣にぜひとも御答弁いただきたいんですが、この賃金職員、非常勤職員の方々に国家公務員としての身分が付与されるかどうか。
 今回対象となる、独立行政法人化される病院、療養所、全体で約七千人おられます。総定員法が外れるので、正規の職員に雇ってもらうチャンスであり、逆に考えれば、首切りをされる危険性もはらんでいるわけであります。この賃金職員、非常勤職員の方々の継続雇用を約束してほしいと思いますが、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 賃金職員の中身もいろいろだろうというふうに思います。中には、半年とか一年というような期限を区切って雇用する、あるいは雇われているという場合もございましょうし、もう少し長期なものも中にはあるかと思います。
 したがいまして、そうした皆さん方も全体として含めてどうしていくかということは、先ほど部長が答弁をしましたように、いわゆる平成十六年四月に独法化をしましたときに、新しい理事長を初め、その幹部の皆さん方によって、その後の人事につきましては決定をされるわけでございますから、今おみえになります方をどうする、こうするということを私の方から申し上げることは、これは適当でないというふうに思っております。
 しかし、必要があってと申しますか、現在の病院を運用していくためにどうしても必要だということで現在はそれは雇用をされている人たちでございましょうから、そのことを新しい理事長がどういうふうに判断をされるかということになってくるというふうに思います。
 したがって、今私の方から、その皆さん方をどうするということは申し上げることはできませんけれども、やはり過去の経緯も当然のことながら配慮に入れて、そして判断をされるのではないかと私は思っております。
山井委員 新しい理事長が判断されるということですけれども、その理事長を任命されるのは大臣であられるわけであります。そういう意味では大臣の意向が一番反映されるわけでありまして、正直言いまして、私たち民主党もまだこの法案の賛否も決めておりませんが、ここの問題、最大のポイントの一つだと思います。
 言うまでもなく、医療現場においては人員配置というのが生命線でありまして、人を減らして、そしていい医療をするというのは本当に難しいわけであります。そういう意味では、理事長さんを任命するときに坂口大臣から、こういう方針でというのを言っていただければいい話であろうと思いますので、坂口大臣、今までから働いてこられた方はできる限り当然継続して雇っていくというような御趣旨で、大臣、改めてもう一言、もう一息お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。一番重要なところでありますので。
坂口国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、現在の段階で私からそれ以上のことは申し上げることができません。
 必要な人がおみえになることは当然でございますけれども、しかし、先ほど副大臣からも答弁がありましたように、効率的にやっていかなければならないことも事実でございますから、それらのことを、状況を十分に判断できる人を理事長に選ばせていただく、こういうことだろうと思っております。
山井委員 ちょっとよくわかりませんが、ここが現場の一番の不安であります。やはりこれによって独法法人化がいい方向に向かうのか、それとも悪い方向に向かうのかという分かれ目でありますから、その法案審議をしているときに、それは新しい理事長にお任せしますからというのは、ちょっとこれは無責任ではないかと思います。
 このことについてこれからも各議員からまた問いたださせていただくと思いますけれども、大臣ぜひとも、これが今回の法案審議の一番重要な点でありますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それで、この資料の一ページ目、まさに今のこととも重なるんですが、見ていただきたいと思います。
 要は、これは国立病院、国立療養所の、例えば看護師さんの数を見てもらいますと、国立療養所が患者さん百人に対して五十二人、国立病院が五十九・七人ということで、一般の病院よりもこれはかなり低くなってしまっているわけですね。それで、現場の職員さんは、本当に少ない職員で、医療事故の不安も非常に抱えながら働いておられるわけです。例えば、三人夜勤体制にしていくためには全国で七千二百人看護師が新たに必要という政府の見解も出ているわけですが、過去五年で千人しかふえていないわけですから、あとこのペースでいけば三十六年かかる計算になります。
 こういうふうに、今までから大臣も看護師の増員に努めるということは答弁なされているわけでありますけれども、独法法人化によって、こういうほかの病院との格差の是正、早くなるのか遅くなるのか、当然早くしてもらわないとだめなんですけれども、大臣の決意をお聞きしたいと思います。
木村副大臣 このいただきました表でございますけれども、残念ながら民間の病院の方が出ていないのでございます。これはやはりぜひ民間の病院との比較においても検討していただきたい。
 そして、ではその民間の病院で、中にはいろいろおありになると思いますけれども、やはりまことに一生懸命やって患者サービスに努めていただいているところもあるわけでございますから、どうぞその点も御考慮いただきまして御判断をいただければな、このように思っております。
山井委員 ちょっとこのデータには出ておりませんけれども、百床当たりの看護師数は医療法人は四十・四人でありまして、それよりも少ないわけです、国立療養所は。だから、これは厚生省さんの資料なわけですから、そういう意味では医療法人の一般よりも少ないわけですから、そこの増員はよろしくお願いしたいと思います。
 改めて坂口大臣からも一言言っていただきたいと思いますが。
木村副大臣 今言った民間の病院は、幾つと言っておられましたですか。(山井委員「四十・四です、医療法人は」と呼ぶ)国立病院、国立療養所ともに五十……
山井委員 三十七・五人、看護師数はそうなっています。
木村副大臣 いただいた資料では五十九・七人になっています。
山井委員 またその資料は後で突き合わせましょう、二つの資料をまぜて言っていますので。
木村副大臣 資料が違うわけですか。
山井委員 はい。
 坂口大臣も、看護師さんを増員するということは今までから答弁でもおっしゃっていますので、改めてそのことは確認したいと思います。
坂口国務大臣 看護師さんは、必要なところには必要な人が要求されるのは当然だというふうに思っております。
 それは、やはり、どういう患者さんを取り扱われるかということによっても違ってくるわけでございますし、今最低限これだけが必要だということが決まっておりますけれども、それが最低限で済むのか、それ以上の人が必要なのかということは、どういう人たちを中心にして治療を行う、あるいはまたその人たちのリハビリを行うか、そうしたことにかかわってくるというふうに思いますので、一律してどうするということはなかなか言いにくい問題でございます。
山井委員 この独立行政法人化に伴って総定員法を外れるわけですが、ぜひともそれによって正規雇用職員をふやしてほしいというふうに要望いたします。
 そこで重要になってくるのが、中期目標を立てて、中期計画を立てて、そして業績評価をやっていくということであります。この業績評価とは何かというのが最大のポイントだと思います。要は、収支ばかりを重視して合理化を進める一方だと政策医療から外れるわけですし、また、収支が悪化し過ぎても当然問題なわけですね。
 そこで坂口大臣にお伺いしたいのが、この質ですね。正直言って、医療の質、病院の質をはかるというのは非常に難しいと思います。そのことをどうやって評価していくのか。そこのところをきっちり入れないと、ただ単に収入がふえたからよかった、合理化が進んだからよかった、でも一方では評価できない、患者さんが泣いていた、差額ベッド料がふえて患者さんが泣いていたとか、今までよりも早く退院させられてしまったとか、そういうことでは本当のための業績がアップしたということにならないと思うんですね。
 例えば患者さんのアンケートを入れるとか外部評価をするとか、その辺、質の評価ということを業績評価の中にどのように入れていくか、この業績評価をどのような観点で行うのか、坂口大臣、御答弁ください。
坂口国務大臣 この評価のいわゆる基準というものにつきましても現在進めているところでございまして、これはやはりかなり明確に示さないといけないんだろうというふうに思っております。この基準として何を挙げるかということは、今お話ありましたように、これはなかなか難しい問題であることは、私もそのとおりというふうに思います。
 どこに焦点を合わせて考えるかということなんだろうと思うんですが、これはやはり患者さんから見て質のよい医療とは何かというところに焦点を合わさないといけないんだろう。医療従事者の側あるいは病院経営の側に焦点を合わせるというのではなくて、患者さんにとってよい医療とは何かというところにやはり焦点を合わせながら質は考えていかざるを得ないというふうに思っております。今、鋭意その基準づくりというものをやっているところでございます。
山井委員 抽象的な答弁でありますけれども、具体的に改めてお伺いしますと、患者さんのアンケートや外部評価というものを導入するということに関しては、坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 それは、患者さんの御意見や外部評価というのも大事でございます。その外部評価というのは、その基準をつくるときに外部の皆さん方の御意見を聞くということならば、私は、それはそういうふうにしなければいけない、多くの立場の皆さん方の御意見を聞いて、そして基準をつくっていかなければならない、そういうふうに思います。
 ただしかし、そうはいいますものの、独立して病院をやっていただくわけでございますから、質は上がったけれども全く採算がとれないというようなことであってもこれはいけないわけでございますから、採算ということも当然のことながら考えていただく。そしてその中で、しかし質をいかにすれば落とさないようにしていくかということについて知恵を絞っていただくということになるんだろうというふうに思います。
 ただし、どこに焦点を当てるか、何を見ていったらばいいのか、幾つかの指標があるんだろうというふうに私は思います。それらの点を明らかにしていかなければならないというふうに思っております。
山井委員 先ほども言いましたように、医療の質あるいは介護の質をはかるというのは非常に難しくて、多くの場合、民間委託や合理化によって安くはなったけれども質も下がったというケースが多いんですね。正直言いまして、私もスウェーデンに留学していたときに、どうやって介護の質をはかるか、定量的にはかるかということを研究しておったわけなんですけれども、そういう意味では、ぜひとも財政面だけに、お金の面の合理化だけに業績評価がならないようにお願いしたいと思います。
 それで、具体的に、次は精神疾患病棟についてお伺いしたいと思います。
 不採算な部分、難病あるいは精神疾患のことというのがこの資料の中に入っておりますが、その精神疾患の中でも、政策医療としては、厚生労働省さんのこの説明の中には、困難なケース、こういう言葉が入っております。精神疾患で困難なケースというのは、坂口大臣、大体どのようなケースでしょうか。
坂口国務大臣 今ちょっと最後のところ、聞こえにくかったんですが、精神疾患のうち対応困難な領域というのはどういうことか、こういう御質問でございましたか。(山井委員「そうです、ここに書いてございます」と呼ぶ)
 従来から、国立病院ですとかあるいは療養所におきましては、いわゆる政策医療分野の一つとしまして精神疾患を位置づけておりますし、今までの国立病院・療養所におきましてこの治療を行っていただいてまいりましたし、そしてまた、各病院の間のネットワークというものも構築をしてきていただいたところでございます。これは、現在でも全国三十四カ所の国立病院・療養所におきまして精神疾患の医療に取り組んでいただいているところでございます。
 御指摘の、精神疾患のうちで対応困難な領域としてどういうものがあるかということでございますが、特に難治性の精神疾患でありますとか、重症の情動行動障害、いわゆるADHDと言われておりますもの、そうしたものを初めといたしまして、精神科救急あるいは薬物依存でありますとか身体合併症を伴う精神障害、こうしたものが難治性のものとして当てはまるのではないかというふうに思っております。
山井委員 今、そういう難しい重度の治療を必要とするものということなんですけれども、最初の議論とも少し重なるんですが、そのような困難なケースでも、要は診療報酬を上げて採算がとれるようにすれば、人員配置を多くすることができて民間病院でも対応できるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。
坂口国務大臣 先ほども御答弁を申し上げたとおりでございますが、精神科の問題につきましては、他の分野に比較をいたしまして、現在、検討をしなければならない分野が多いというふうに思っております。
 したがいまして、今後、精神疾患の分野におきましては、いろいろと人の配置等につきましても考えていかなければならない点は多いというふうには思っております。しかし、今回のこの独法化の中におきましては、そうしたことをここで位置づけるというわけにはまいりません。今後の課題として、これは取り組んでいくつもりでおります。
山井委員 今後の課題ということですけれども、私の資料の二ページ目を見ていただきたいと思います。
 国立病院・療養所の中で精神病床を百床以上保有している施設のデータをまとめてみました。
 例えば、善通寺病院は精神疾患の入院患者さん九十一人に対して精神科のお医者さんが二人、十勝療養所は百三人の患者さんに対して六人というふうに並んでいるわけなんですけれども、善通寺病院は患者さんと精神科医の割合は四十五対一、それで平均も二十六対一、あるいはこれは榊原病院も二百四十六人の患者さんに対して六人、四十一人と。
 最初、要は、困難なケースで、非常にいわゆる重度な、高度な医療が必要なケースを政策医療としてここで診ていると言う割には、四十人に一人しか精神科医の方がいないとか、平均しても二十六人に一人しかいない、これで高度な医療が必要だと言うのは、ちょっと私は話がかみ合わないのじゃないかなというふうに思います。
 これは、要は精神科特例で患者さん四十八人に一人でお医者さんはいいというそもそもの大問題があるわけなんですけれども、大臣に改めてお伺いしたいと思いますが、この人手で、高度な難しい医療を行っているにしては、平均二十六・二五人の患者さんにお医者さん一人というのは余りにも少な過ぎるんじゃないですか、大臣いかがですか。
坂口国務大臣 これは、一つは精神科の先生が非常に少ないということも影響しているのだろうというふうに思っております。そうしたこともございますが、やはり国立病院あるいは療養所であります以上、高度な医療を心がけていただかなければならないわけでございます。
 ここに挙げられましたところについて、大体、どういう患者さんと言うと、まことに患者さんに失礼でございますが、病気の程度がどういう方がここに療養をしておみえになるのかということによりましても実情はかなり違ってくるというふうに思いますが、これから独立行政法人化をされるされない、それはもう別にいたしまして、この精神科領域におきます対応というのは十分検討に値していくというふうに思っております。
 そうした意味からも、平成十六年から起こりますところの医師の研修におきましても、精神科は三カ月、やはりどうしても研修をみんながやっていただく、そして精神科に対応していただく、そういう時間をつくることによって、この分野に対する必要性、あるいは学問的な必要性、あるいは興味と言うと大変言葉は悪いですけれども、必要性というものをやはり感じていただけるようにしなければいけない、そんなふうに思っている次第でございます。
山井委員 改めてこの資料を見ていただきたいのですけれども、平均在院日数ですね。上から、二百六十三日、二百十九日、長いところでは五百七十八日、五百二十日というふうに、一年、二年という平均になっております。常識的に考えたら、大臣、これ、もっとお医者さんがいて、看護師さんもいて、それこそ手厚い医療をしたら、もっと早く退院できるんじゃないかというふうに思うわけです。
 ついては、業績評価の中に在院日数の長さとかそういうことというのは、やはり評価基準の一つに入るんでしょうか。この非常に長い平均在院日数に対して、坂口大臣、いかが思われますでしょうか。
坂口国務大臣 業績評価の中では、それらのことも検討したいというふうに思いますが、年度別の精神病床の平均在院日数がございまして、これは少し粗っぽい数字でございます。
 全国の数字と国立療養所のものとの比較でございますが、全体で見ますと、全国の場合には三百七十六・五日というのがございまして、国立療養所では二百八十二・一日ということでございまして、全国レベルで見ると療養所の方が百日ばかり短いということは言えるわけでございますが、しかし、この二百八十二日が果たして適切な日数かどうかということがまた問われるわけだろうと思います。
 今後、やはり精神科で治療をお受けになります患者さんも、できる限り地域に帰し、あるいはまた家庭に帰って治療をしていただく、そういう時代になってまいりましたから、病院の中の体制だけではなくて、地域におきます体制もつくっていかないといけないわけでございまして、それらのことを総合的に考えていく時期に来ているというふうに思っております。
山井委員 ありがとうございます。
 ですから、これからはもっと手厚い、お医者さん、看護師さんやコメディカルの方々とともに集中的に治療をして、できるだけ早く在宅に戻ってもらう。そうしないと、長期入院するとますます社会と隔絶してしまうわけです。そのためには、大臣もおっしゃったように、受け皿として、新障害者プランの中でいろいろなデイサービスや援護寮やグループホームやホームヘルプや、いろいろなサービスをセットで整備していく必要があると思います。
 それで、もう一つ、不採算部門についてお伺いしたいと思います。
 これは午前中に宮澤議員、福島議員からも御指摘があり、まさに阿部知子議員の専門分野であります小児救急の分野であります。これは三ページ目、3の資料、大臣がいらっしゃらない午前中にもここは議論になっておったのですが、「小児救急輪番制 国立の参加わずか二五%」。三百六十の二次医療圏のうち、二十四時間体制の小児救急が整っているのは百十五、三二%にすぎないということですね。これから独立行政法人化するこのような国立病院・療養所の役割は何かと考えたときに、やはり社会的ニーズが高くて、かつ不採算と言われているこういう小児救急の部分、先頭を切って取り組んでいくべきだと思いますが、坂口大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 午前中にも議論をしていただいたようでございますから、多くを申し上げる必要はないかというふうに思いますが、いずれにいたしましても、小児科関係の先生方が最近減りつつある、これは大変大きな問題だというふうに思っております。
 したがいまして、多くの皆さん方が、小児科あるいはまた産科といったようなところは非常に厳しいところではあるけれども、しかし、本当に医療現場としてやりがいのあるところ、場所だということをおわかりいただけないといけないわけでありまして、やはりそうした医学教育とあわせて、これも研修等におきましても小児科を三カ月つくらせていただいて、多くの、医師になろうとする皆さん方、あるいは医師の免許を取られた直後の皆さんにぜひ理解を深めていただきたいというふうに思っております。
 もう一つは、現在の医療現場におきまして、小児科の免許をお持ちになっていると申しますか、小児科を標榜しておみえになります医師の先生方がどのようにタイアップをしてやっていただくかという問題もあるわけでございますので、そうしたことを地域の医療に対しましてもお願いをしていきたいというふうに思います。
 しかし、前回も阿部議員から御質問ございましたように、御意見がございましたように、そうはいっても地域で、ないところすらある。一人とか二人しかもともとおみえにならないといったような医療圏も存在する。そうしたところで一体どうしていくかといった問題もあるわけでございますので、それらのことも考慮に入れながら、我々としては、日本各地域、やはり二次医療圏に何とか救急医療が確立ができるような対策を考えていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
山井委員 まさに坂口大臣は少子化対策に今全力で取り組んでおられますし、やはり、国民皆保険制の、世界一アクセスがしやすいと言われるこの日本の中で、幼い子供さんたちがたらい回しに遭って命を落とすということは決して繰り返してはならない問題ですので、ぜひとも小児救急の問題、早急に取り組んでいただきたいと思います。
 それで、救急医療について少し、救急救命士のことについても坂口大臣にお伺いしたいと思います。
 といいますのは、三月十四日、今は亡き今井澄参議院議員の質問に対して、救急救命士の業務拡大ということをやってほしいという質問に対して、坂口大臣のリーダーシップのもと、救急救命士の業務拡大の検討委員会がスタートをされたわけでありまして、そのことには本当に感謝をしております。
 実は、先日も私の知り合いのおばあさんが亡くなられまして、その方はトイレで倒れて心肺停止状態になったんですが、嘔吐しておられて気道確保ができず、食道閉鎖式エアウエーやラリンゲアル・マスクという今認められている方法では気道確保ができず、もう病院に運ばれたときには手おくれであった。御家族の方が、救急救命士さんが来たときに気道確保さえしてくれていたら助かっていたかもしれない、六十歳で亡くなられたわけですから、非常に悲しんでおられました。
 そこでお伺いしますが、七月に中間報告がこの問題について出たわけでありますが、簡単に御報告を坂口大臣からお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 七月に、救急救命士の業務のあり方等に関する検討会、ここで中間報告をしていただきました。
 この中間報告によりますと、一つは、除細動について、包括的な指示による実施を認めること、二番目として、気管挿管につきまして、救急救命士に認める場合の諸条件について早急に具体化を図ること、三番目に、薬剤投与については、高度の医学的判断を要するため、慎重な議論をさらに継続すること、この三つのことが中間報告として発表になったところでございます。
 さらにもう少しつけ加えさせていただきますと、さらにこの一番の、除細動につきましては、いわゆる事後検証の仕組みというものをどうつくり上げていくかということが問題でございますし、気管挿管につきましては、どういう症例のときにこれを行うかというその判断基準みたいなもの、いわゆるプロトコールの策定、こう書いてありますが、そういうことだと思います。それから養成カリキュラムの見直し、研修、実習のガイドラインの策定、実施に当たっての必要なメディカルコントロール体制のあり方、こうしたことを整えていかなければならないということだと思います。
 薬剤投与が一番難航しておることは御承知のとおりでございまして、この容認の適否や認める場合の条件について関係学会による検討、検証を行う、こういったことが三つのことに対する取り組み方として行われているところでございまして、そして研究班ができまして、その検討をしていただいてまいりました。あと二、三日しますとその研究班の結論が出るようでございますけれども、それをもう一度もとの検討会に戻していただいて、そこでどのように結論をしていただくかということになるだろうというふうに思っております。
山井委員 私も実は秘書と一緒にその検討会を傍聴させていただいておりますが、非常に熱心に検討してくださっていて、私も感謝しているところでありますけれども、これは本当に一刻の猶予もございません。
 例えば、私、先日、山形県の酒田市まで行ってまいりまして、何と気管内挿管のおかげで命が助かったという富樫さん本人にお目にかかって話も聞いてまいりました。この方の場合は、交通事故に遭われて、それで心肺停止状態になられた。それで、救急車に運ぼうとしたところ、嘔吐して、嘔吐物を取り出すことができなかった。それで、今認められている食道閉鎖式エアウエーやラリンゲアル・マスクでは気道確保ができなかった。そこでやむを得ず救急救命士が気管内挿管を行ったところ、心拍再開し、その後三週間入院されて、無事退院することができました。私も一緒に記念写真を撮ってきたぐらいですから、非常にお元気になっておられました。
 また、除細動でありますけれども、この三月、国会で議論が始まってから、もういろいろな問題が起こっておりまして、例えば先日も、トンネル内の交通事故で心肺停止状態になられた患者さんが、トンネル内では医師と連絡がとれず、トンネルを抜け出すのに十分かかって、ようやく連絡がとれたのはいいが、そのときにはもう除細動不適応の状態になってしまっていて、亡くなってしまわれたということなんですね。
 ですから、これは一刻も早く結論を急いでもらいたいと思いますし、医師の指示なし除細動、そして気管内挿管、薬剤投与、一刻もこの業務拡大を急いでもらいたいと思います。
 大臣、もう一度改めて決意をお願いいたします。
坂口国務大臣 先ほど申し上げましたような経緯で、今進行いたしております。できるだけ早く結論を出していただき、そして実現できるものはできるだけ早くしたいと考えております。
山井委員 ぜひともよろしくお願いいたします。
 そこで次に、重度の心身障害者患者の方の政策医療についてお伺いしたいと思います。
 社会福祉法人でも、ある意味で、かなりやられている部分はあるわけでありまして、独法法人化して行う重度の心身障害者の患者のための政策医療とはどのようなものか、この点について、坂口大臣、お答えください。
坂口国務大臣 重度の心身障害児あるいは障害者も含むのかもしれませんが、につきましては、個々の患者の重症度等で程度差がありますものの、常時、医療的なケアと福祉的なケアを必要とすることから、病院機能を有する施設への入所措置というものが行われているところでございます。
 国立病院ですとか療養所におきましては、従来から、重症心身障害児あるいは障害者の入所施設としてこれらの方に対する医療を提供してきたところでございます。国が担うべき政策医療におきましても、重症心身障害につきましては、国が中心的役割を果たすことが歴史的、社会的にも要請されていると考えております。
 こうした考え方を踏まえまして、今後は、社会福祉法人等との役割分担も図りながら、いわゆる超重症児というものを積極的に受け入れていく等の対応が必要であるというふうに思っている次第でございます。
山井委員 この重症心身障害患者に関して一番気がかりなことが、退院促進をすることがあるのかということであります。ある意味で、冒頭に述べましたように、採算がとれないから国立病院や国立療養所で診ていたわけであって、これから独立行政法人になって採算がとれないからという理由で退院を迫れば、それこそ行き場がなくなってしまうわけであります。
 そこで、先ほどの話とも関連しますが、業績評価の中で、やはりこういうのは、重症心身障害の患者さんに対しても退院促進をした方が、いい病院なんだというような業績評価になる可能性というのはあるのでしょうか。坂口大臣、お願いします。
坂口国務大臣 そこまで具体的なことがその評価の中に入ってくるのかどうか、私はまだそこまでは考えておりませんが、どういう人たちは家庭に帰った方がよりよいのか、しかし、そうはいうものの、超重度の方々で、家庭に帰すということはあらゆる面から見て不可能だと言われる人たちもおみえだというふうに思いますので、その辺のところは一律的になかなか言えない問題だと思っております。
 したがいまして、こうした重度の方々をお預かりする、そのことが採算性を問わずにお預かりをしなければならないということであるならば、これは非常に優先順位の高い政策医療であるというふうに思っております。
山井委員 一つのジレンマであると思います。政策医療を進めると採算がとれにくい。それで、採算を考えると、ある意味で採算がとれやすい一般医療に広げていったらいいわけですね。
 私も、正直言って、南京都病院に知り合いのおじいさんやおばあさんが脳梗塞で倒れられて入院されて、よくお見舞いに行ったりもするんですけれども、ところが、そうやって採算をとろうとすると、逆に地域のお医者さんからしたら、もうやめてくれ、お客さんをとるのはやめてくれということにもなりかねないわけであります。
 そこで、私たちのように療養所の周りで療養所の恩恵をこうむっている人間にとりましては、独法法人化によって、一般の患者さん、一般の地域住民にとってどう変わるのかということが一番大きな関心なんですけれども、医療の中身というのは何か変わるんでしょうか、一般の地域住民にとって。副大臣、お願いします。
木村副大臣 先ほどからもお話をしておりますように、今までやはり親方日の丸だ、残念ながらそういう意識があったのではないかな。私は、独立行政法人へ変わるときにぜひ意識改革をしていただきたいというのは、こういうことなんです。
 そして、もちろん効率化とか医療の問題もありますが、やはり患者サービスにおいてもぜひ意識改革をしていただいて、国鉄がJRになったときのような感覚をある程度持っていただくということは、大丈夫だ、期待していいのではないかなと。
 ぜひその辺のことを今の職員の方々は考えていただいて、まさに意識改革の第一歩、これが独立行政法人化だ、こう位置づけていただきたいな、私はこのように思っているような次第であります。
山井委員 まさにそこのところで、多くの現場の方も患者さんも不安に思っておられるわけなんですけれども、坂口大臣、例えば差額ベッド代がどんどん上がってくるんじゃないか、そんな心配も患者さんとかがされているんですね。そのあたり、一定の歯どめが必要だと思うんですけれども、坂口大臣、この件についていかがでしょうか。
 独立行政法人化によって、同じような医療を受けられるけれども、自己負担がどんどん上がっていった、昔の方がよかったなということになったら、やはり本末転倒であると思います。坂口大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 そこは、それぞれの病院の経営方針と申しますか経営努力といいますか、それにかかってくるわけでございますので、それはそれぞれお任せする以外にない。
 地域の方々に対してよりよい医療をどうしてやっていくかということをやはり中心にしてお考えをいただく。しかし、そこは、今もお話ございましたように、経営努力をしていただいて、採算ベースに合うということはどういうことかということも考えていただかなければならない。意識改革を、それこそやってもらわなければならない。
 こういうこともあるわけでございますから、一概にいいとか悪いとかということはなかなか言いにくいわけでございますが、一番大事なことは、やはり患者さんを中心に考えて、どう考えていくかということだろうというふうに思います。
山井委員 改めて坂口大臣にお伺いしますが、聞きたいことは本当に一点なんですね。独立行政法人化によって国立療養所や国立病院の医療はよくなるのかということに尽きるわけなんです。改めて、よくなるということを、よくしますということを、坂口大臣、この場で宣言をしていただきたいと思います。
 というのが、地域住民の方も現場の方も、言ってはなんですけれども、先ほども私、南京都病院の地域の方やまた患者さんとかと電話で三、四人話を聞いていたら、独法法人化によって医療が悪くなる、もうあきらめているという声が強いんですね。そうじゃないと言うのだったら、坂口大臣、よくなりますということをこの場でぜひとも宣言していただきたいと思います。坂口大臣、よろしくお願いします。
坂口国務大臣 よくなりますというのは私が言う話ではなくて、新しくできる独法の方がよくしますということを言うてほしい、そう思っております。
山井委員 それはちょっと、余りにも無責任だ。
 というのが、理事長を指名するのは坂口大臣というか所管大臣なわけですから、それは責任は所管大臣にあるわけですよ。当然、悪くするような人を理事長にしてもらったら困るわけであります。
 それで、その理事長さんについてお伺いしますが、独立行政法人の基本に、事前関与、統制を極力排し、事後チェックへの移行を図り、弾力的、効率的で透明性の高い運営を確保するとあるわけですけれども、その理事長を、どういう人を、坂口大臣、選ばれるんですか。
坂口国務大臣 その地域に最も適切な人を選ぶ、こういうことでございます。
山井委員 私も一時間質問をさせてもらいましたけれども、私の心の中で、独法法人になって悪くなるんじゃないかという不安を払拭したいというつもりで一時間議論をさせてもらいました。
 ところが、答弁を聞けば聞くほど、坂口大臣自身が、わからない、理事長が決めることだと。ところが、まだ理事長というのは当然決まっていないわけですね。ということは、独法法人化してこれがよくなるか悪くなるかは現時点ではわからないということになってしまうんじゃないですか。
 大臣、もうちょっと前向きな、よくするんだという姿勢はやはり示していただきたいと思います。
木村副大臣 御質問の点は、やはり大臣もさることながら、何といっても一番大事なのは現場を担っている方々ですよ。この意識改革をぜひ先生も進めていただいて、やっていただきたいなと思えてならないわけであります。
山井委員 何かちょっと議論が、確かに現場も大切ですけれども、それ以前に、首を切るとか給料をばんばん下げるとかいったら、幾ら現場が頑張っても限界があるわけですね。
 そういう意味で、基本的にはやはり現場で働く方がハッピーになれないと患者さんもハッピーになれないというのは、これは医療、介護の原則であるわけです。副大臣。
木村副大臣 少なくとも、正規の職員の方は、これは公務員型でありますから首になりません。
 そして給料の点だって、もちろん、一生懸命やっていただいている方が下がるということは、これはやはりなかなか考えにくいわけであります。まさに業績が反映するような仕組みをつくっていく。そこに、この独立行政法人の質と効率化と両方を相備えたいい点が出てくるのではないか、それを期待しているんです。
山井委員 時間になりましたが、やはり大臣、一言。何かもう、この委員会室にいるみんな、暗く落ち込んでしまいましたよ、聞いていて。よくならないみたいなという感じで。
 やはり法案を出していられる以上は、よくするんだ、これはよくする法案なんだということをぜひとも、私、正直言って、厚生労働省の方々と議論していたら、厚生労働省の方々は、これはよくする法案ですからといって、ぜひとも賛成、こうおっしゃっていられるわけですから、その総元締めである大臣が、理事長によってどうなるかわかりませんでは余りにも無責任だと思いますので、大臣、最後に一言だけお願いします。
坂口国務大臣 それは、よくするために出すんですよ、この法律は。それは間違いがないけれども、具体的な問題まで厚生労働大臣が指揮命令をするような、そういう体制ではなくなるということでありますから、私はそのことを言っているわけであります。
 したがいまして、それじゃ、現在の国立病院ないし療養所がすべていいかといえば、今そういいとも言い切れないところもたくさんあるわけですよ。だから、そうしたことを地域の皆さん、国民の皆さん方から見ていただいて、やはりこれはよくなったと言っていただけるようにしないといけない。旧国鉄が民営化をされてJRになって、皆さん方がさすがによくなったと言っていただけた、そういうふうにやはりしなければいけない。それはやはり、我々厚生労働省あるいは厚生労働大臣としても責任のある話でございますから、それはそういうふうにしていきたいというふうに思っております。
山井委員 もう時間が来ましたので、一言だけ意見を言わせてもらいますが、要は、幾ら独立行政法人化しても、評価委員会があったり理事長があったりしても、こういう重度な方々の幸せ、治療、医療の責任はあくまでもやはり国にあるんだ、国がやはり責任をとらないとだれがとるんだということを最後に訴えて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
坂井委員長 次に、土肥隆一君。
土肥委員 我が党の論客が二人、既に質問を終えまして、それを聞きながら、私も同じような質問を用意しておりましたので、違った角度からいろいろとお尋ねしてみたいと思います。したがって、答弁が少し狂いますけれども、その辺はよろしくお願い申し上げたいと思います。
 やはり、きょうの委員会で、一番正直なことを言っているのは木村副大臣かなと思います。その辺はやはりしっかり確認しておかなければならない。
 この独立行政法人の趣旨は、国の医療政策として機構が担うべき医療の向上を図り、公衆衛生云々、こうあるわけですね。ここには、親方日の丸とか、あるいは意識がないからだとか、意識が低いからだとか、効率的でないからとか、経営がなっていないからというのは一行も書いていないんですが、木村副大臣、これは裏から見ればそのとおりでいいんですか、おっしゃるとおりでいいんですか。
木村副大臣 ぜひ、新しい機構におきましては、今言った親方日の丸的な意識を捨てていただいて、もちろん、これは今まで非常に、だんだん再編成とか効率化に協力をしてきていただいたわけでありますけれども、今後も、御指摘の点が進みますように大きく期待をしているような次第であります。
土肥委員 いや、そんな答弁じゃだめですよ。先ほど、医療とJRの比較がありましたけれども、全然違う種類のものですね。
 じゃ、お尋ねしますけれども、国立病院の職員、医者を含め、親方日の丸的勤務というのは何なんですか。
木村副大臣 やはり民間の医療等は、今の診療報酬体系の中で設備投資もし、その償還もしながら経営を継続していっているわけでございます。その中で、先ほど話題になりました国立病院、また社会保険病院、それから労災病院等もしかりでありますけれども、まず設備投資というもの、これはもう別なお金でやっているわけでございます。
 それから、民間病院の場合には、もしその経営の中で赤字を続けていくということであれば、金融機関も融資をしていただけませんし、いずれはその病院経営というのが非常に行き詰まってくるわけでありますけれども、少なくとも、今までの公的病院においてはそういう心配をしなくてよかった。もちろん、医療の最前線を担っていただいているという点では、皆さん同じ任務を背負っていただいているわけでありますけれども、事財政的な面においては、私は、相当に民間病院と違った面があったのではないかな、こう思うわけであります。
 それで、サービスの点に関しても私は似たようなところがあった。ぜひ、そのサービス精神は、JRのところの、そういう、ああ変わったなという感覚を国立病院の方々にも持っていただきたいなと。おっしゃるように、持っていただいている方もたくさんおられると思いますけれども、より一層持っていただきたい、こういうことでございます。
土肥委員 それじゃ、国立病院・療養所というのは、サービス精神もなく、患者中心でもなく、効率も悪く、経営努力もしなかった、これを新しくつくり変えるといいましょうか、後でまた申し上げますけれども、要するに、言葉は悪いでしょうけれども、民間的手法で、何といいましょうか、締め上げるというか、そして国立病院を変革しよう、こういうことですか。
木村副大臣 土肥先生も恐らく、先生が今おっしゃったことを全部、国立病院は自信を持って言えるという面が、一〇〇%言えるとは言えないんじゃないか、こう思えてならないんではございます。いかがでございましょうか。
土肥委員 いや、国立病院の運営形態、システムはそうなっていたわけであって、例えば設備についても国が見るということであったわけですからね。これは、そういうシステムと法的な約束の中でやっているわけでありまして、経営についても、なるほど、国立病院・療養所的経営というのがあったわけですね。今回、これを独立行政法人にしようというわけです。
 私は、もうほぼ十二年から十三年にかけて厚生労働省とおつき合いをしておりますけれども、役所的丸投げ、こういう手法を必ずとってくるわけです。今回の独立行政法人になれば、厚生労働省本体は、余りもう面倒くさい仕事はせぬでいいわけです。そして、全部独立行政法人にやらせて、国の政策として指導するわけですから、言ってみれば、厚生省本体は、特に国立病院部はほっとしているんじゃないかと思うのでありますけれども。
 こういう手法というのは、今までの国立病院がだめだ、なっとらんというふうに聞こえてまいりますが、しかしながら、同時に、ナショナルセンターは別にいたしまして、国立病院を百四十四施設残すというのは、まだ非常に評価が高いんじゃないか。この百四十四は立派な国立病院で、閉めた三十一施設はまあ親方日の丸だったということでありましょうか。
木村副大臣 先ほどからお話ししておりますけれども、国立病院でこのたび公務員型に残しているという最大の点は、難病とともにやはり危機管理、あの地震災害ですとか、そういうときに、採算性を度外視してでもやらなければならない場面が出てくるわけでございまして、私は、そういう点を考えると、やはり国立病院に大きく期待をする面、本当の危機管理のときに頼れる病院だなと、こういう点は大事にしていかなきゃいけない、このように思っております。
 ただ、日ごろの中においては、やはりある程度効率的なものも考えていただかないと、ではそれだからといって、いつもいざというときのために、あとは何かのんびりしているということではないんではないかな、こう思えてならないからでございます。
土肥委員 厚生労働省にお尋ねしますけれども、一々検討して、そして百四十四施設、これはナショナルセンターは別ですよ、ナショナルセンターは別にして百四十四の施設を選択してきた、まだあと十施設ぐらい統合や整理が残っているという話ですが。これは、いろいろ基準があると思うんですね。私どもは、どうして百四十四が残ってきたのかという、その資料がないわけです。どういうふうにして残し、何で残すようにしたのかとか、それを幾つか、数点挙げていただけませんか。
冨岡政府参考人 国立病院・療養所の再編成につきましては、昭和六十年に基本方針をお示しいたしまして、六十一年に再編成計画を発表いたしまして、さらに十一年に見直しを行って現在のものとなっております。
 その基本的な考え方といたしましては、国立病院・療養所につきまして政策医療を担っていくという方針のもとに、それぞれの病院、療養所がどのような政策医療を担うべきか、置かれている状況、実施状況等を勘案しまして、そういうことを考えまして、その病院が専ら地域医療を担当しているといったものにつきましてはその地域に任せる、そしてまた、統合することによって機能を図れるような病院につきましては統合と、そういうふうな方針のもとにそれぞれ機能づけして計画、個別の施設につきまして当てはめていって、そして、先ほど申し上げましたように、見直しを行い、またその実現を図ってきているものでございます。
土肥委員 それは表向きの話だろうと思うんですね。要するに、最初二百三十九あったのを減らしていく。二回の法改正で、私も特措法で国立病院投げ売り法案、こう言ったんですけれども、やってもなかなか減らなくて、やっと三十一施設まで来て、もうこれ以上は無理です、今の段階でこれを統合再編というのは無理ですと。無理というのは、いろいろな地域との関係もあるし、中の問題もあるでしょうし、それから医療圏などの考慮をしてずっと絞ってきたけれども、しかしあとは物理的に無理だねということで、百四十四残ったんじゃないですかと。
 ついでに申し上げますと、百四十四というのはこれからも、先ほどどなたかの質問の中にありましたけれども、これから独法に移っても、その必要があれば再編、廃止、合併などを行うのか。大体、百四十四で固まった理由を教えてください。
冨岡政府参考人 先ほど申し上げましたような経緯で再編成を進める中で、先生お話しのように当初はなかなか進まなかったわけでございますが、ようやく軌道に乗り始めまして、再編成が実現することによりまして、また、人的な資源を再配置するといったことによって機能強化が図られてきたものと思っております。
 そういうことで、現在の八十七、結果的にふえるというこの結果につきましては、ある意味におきましては、当初の目的のように進んできたものと思っておりまして、私どもとしては残されております三十一の実現に全力を尽くしておりますし、また、残念ながら、現在の見通しでは独立行政法人に移行するまでの間に間に合わないのが十カ所ある見通しでございます。そういったものも鋭意実現しながら機能強化を図ってまいりたい、本当に政策医療を実施できるように名実ともにしてまいりたいということをしてまいりました。
 今後のことにつきましては、制度的に、独立行政法人は、大臣の示した目標に従いまして法人が計画をつくり、それを外部の方も含めて評価していただく、そういったことで、ある意味では自己規律を保っていくという面があると思っております。そして、担当の厚生労働大臣が、そういった評価結果を踏まえまして、今後の組織のあり方なり施設のあり方を検討して、また目標として指示なさる、そういうふうな仕組みでございまして、そういった中で今後の対応を検討していくものと考えております。
 以上でございます。
土肥委員 ですから、その百四十四というのは、まだフレキシビリティーがあって、これからも検討して減らすこともあると。ふえることはないと思いますけれどもね。
 そういう暫定的な数字を担って独立行政法人がスタートするわけでありますけれども、高度専門医療センター、ナショナルセンターでありますけれども、これは五つあるんですね、ジャンルとして五つあるわけでございまして、その中で、山井さんも質問しましたけれども、いわゆる精神・神経疾患関係ですね。
 私は、いつも、ナショナルセンターのことを思うときにいらいらするんですね。なぜいらいらするかというと、精神疾患の世界が一つも改良されない。一つもと言ったら語弊があるかもしれませんけれども、例えば、精神・神経関係で二つの病院がございます。国立精神・神経センターというんですけれども、一つは武蔵病院、これは神経科というふうになっていますから、精神科だけでならば、国府台病院というのが七百八十床を持っていらっしゃる。だから、国立の高度専門医療センターとして、この国立精神・神経センターが本当に高度な専門的な医療をしていらっしゃるのかどうか、それは一体業績はどんなものが上がっているのかと言いたくなるくらいのいら立ちがあります。
 と申しますのは、後で申し上げますが、山井さんも言いましたけれども、圧倒的に民間病院が精神科を担っているという中で、もっと公的な病院、これは都道府県も含めて、政令指定都市も含めて、もっと地域の精神医療に力をつけて担ってもらう、これを願っているわけでございまして、これは高度専門医療センターなんですか。どうぞ。
冨岡政府参考人 国立精神・神経センターの機能に対する期待とお励ましの点もあるなと思って実は本当に聞いておりましたけれども、先生御案内のように、精神・神経センターは、武蔵と国府台、二つの病院と研究所を統合しまして、我が国の精神・神経の本当に研究と病院の中枢機能にしていこうということから始まっておるわけでございますが、いかんせん国府台の方の後医療をどうするかとか、いろいろな点がありまして、現時点におきましては、研究所も、また病院につきましても、二つのキャンパスに分かれているといった、ある意味ではもどかしさもある関係者もあるのではないかと思っておりまして、非常に大きな課題だと思っております。
 その中で、先生、研究所につきましては、かなり国際的に評価される研究も非常に出てきておるようでございまして、研究の皆様方も本当に頑張っておるものと思っております。国際的な論文とか専門誌の評価でも非常に高いものがあるというふうに聞いております。
 一方、病院につきましては、この御審議の中でありましたような非常に処遇の難しい精神疾患なり、そういったことに対応することを目的としておりまして、また、在宅の社会福祉諸施策、精神関係のサービスとの連携、こういったものについても新たな方向性を見出したいというふうな方向で職員、関係者、努力しているもの、そのように私どもは考えております。
 そういった点、ある意味では、いろいろな点で確かにいろいろな課題はあろうかと思っておりますが、そういうことで、御質問がありました精神・神経センターにつきましては、ナショナルセンターとしてこれからも本当に機能を果たして、充実してまいりたい、そのように考えております。
土肥委員 今局長おっしゃったように、私、やや言い過ぎたなと思って反省をしながら、しかし、今精神疾患を抱えていらっしゃる患者さんの皆さん、ベッド数でいえば、山井さんがつくってくれた病床数三十五万七千と。いわゆるナショナルセンターとしては七百八十ベッドですね。ここで研究された、精神疾患の患者さんの方々への応援になっていなきゃいけない。応援というのは、国の政策に反映するような応援でなきゃいけないというふうに思うんですよ。
 したがって、もっとこの研究センターというのは、何か脳を見ているだけではなくて、社会的な視野で見てもらって、そしてあらゆる手だてを、こういうことをやったらいいのではないかとか、こうやるべきだというような国に対する提案、提言がどうも見えてこないというふうに思うんであります。
 したがって、私は、各地に、今度百四十四施設の中に精神病院専門の病院もございますし、あるいは大病院で精神科を持っていらっしゃるところもいろいろございます。私は、すべての病院にやはり三十ベッドか四十ベッドぐらいの、任意入院の患者さんが出入り自由で使えるような、つまり自分のコンディションに応じて診療機関を使えるような、そういうものを公的に保障する、公的な保障のもとにそういうベッドを設ける。小さな病院ではなさっているようでございますけれども、この全体で五百人規模の病院、精神病院でも任意入院に対する配慮というものをもっとしっかりやらなきゃいけないなというふうに思っているんですが、何か間違ったことを言っているでしょうか。
冨岡政府参考人 実際は、特に国立病院、割と規模の大きな病院等で必ずしも精神科の入院がすべて整っているというわけではないわけでございますが、そういったところが五十床なりで入院施設があるといった病院につきましては、先生御指摘のような運用と申しましょうか、そういったことについては関係の方面からも、有意義であり、促進すべきという意見も私ども専門的な観点も聞いておりますし、実際問題として、例えば東京医療センターの精神のケアとか、そういったところにおきましては、任意入院で全体としてのケアの中で精神面もフォローする、そういったような運営がなされているものと承知いたしております。
土肥委員 極端な話ですけれども、私は、やはりもう、今の国立病院が持っている精神疾患病棟というのを任意入院を含めてもっとフレキシブルにすることと、それからやはり、民間に依存してきた長い歴史、それからいかに脱却するか。日精協の皆さんにしかられそうですけれども、民間病院を半分にしても、国公立でしっかり支えることによって、日本の精神を病む人たちの差別だとか偏見だとか、あるいは患者が持っている苦労、そのダメージ、それを幾らかでも回復していく。それは民間病院がやっていないというのかという話になりますけれども、しかしやはり、精神病の患者さんと接していると、公的なケアがどうしても必要だなと思うのが私の感想でございます。
 最後に、やはり、今回の独法に移りますと、労務問題が必ず起きると思うんですね。これは労務問題は絶対に起こります。労務問題をどう処理するかということは、処理というか扱うかということは大変貴重なことでありまして、それをやり損じますと何かもう国立病院は自壊していく、自分で崩壊していくんじゃないかと思うくらい心配しております。
 最終的には四万四千人の職員を抱える、これをこの独法法人が一律的に、一義的に全部引き受ける、そして賃金から雇用問題、あるいは労働条件、勤務形態、就業規則も含めて一元的にやるというんですね。これは物すごい機構でありまして、こんなことをやれるのかなと。
 従来は厚生省の国立病院部がやっていたと思うんですね。それぞれの施設が、それぞれの病院が、それぞれ団体交渉をやったり、あるいは労働条件の話し合いをしていたと思うんですね。恐らくその団交の病院側の当事者は院長だと思うんですね。これは理事長がやらなきゃいけませんから。その下にやらせているかもしれませんけれども、最終的には理事長が責任、院長が責任を持つ。それで今までやってきた。それはやはり失敗だったんですかね。今度独立行政法人でがんと上から押さえ込まないと病院の現場は成り立たないとでも考えていらっしゃるんでしょうか。
冨岡政府参考人 現在、国家公務員としての、そのものの制度のもとでございますが、労使間のそういった話し合いといったものにつきましては、国レベルで対応すべき事柄については国レベルが行っておりますし、また、個々の病院ごとの課題、例えば休憩室の設備をどうするかとか、そういった個別の施設的なものは個別でと、そのような対応を行っているところでございます。物事の性質によって違いますということでございます。
 先生御指摘のように、これからは制度も変わるということでありますので、これをどのようにルール化していいものにしていくかということは、この法人の運営にとって極めて重要な課題であると思っております。
 そういうことでございまして、これからの団体交渉の手続につきましては、基本的には法人の責任におきまして労使間の問題として適切に対応されるべき事柄ということになっておりますが、やはり物事の本質上、関係者がそれぞれ、いい政策医療を実施するという観点から、独立行政法人の趣旨に沿いまして誠実に対応していくことが、そういったルールをつくるということが大事であると思っております。
土肥委員 そうしますと、独法になって各施設、各病院は、先ほどおっしゃったように、休憩室をどうするとかいうような話は、各施設で対応するんですね。そのときにだれが当事者になるんですか。病院側のだれが当事者になるんですか。
冨岡政府参考人 御指摘のようなこれからの団体交渉の手続につきましては、これからの労使間の話し合いで適切に決められていくものでございます。
土肥委員 では、一般の職員の労働契約はだれと結ぶんですか。そこから生まれる労使協定があり、かつ就業規則等も決められていくと思うんですが、労働契約の相手方はだれですか。
冨岡政府参考人 労働協約は、法人と労働組合でございます。
 それから、法人職員の勤務時間等の規程、給与の支給の基準につきましては、独立行政法人通則法に基づきまして法人が定めることとされておりまして、就業規則は、これら法人の定める規程に基づき検討されるものでございます。
土肥委員 もう時間がなくなりましたけれども、四万四千人分の労働協約を結んで、それぞれ病院、特色がありますね。精神病院もあれば高度医療をやっているところもありますね。いろいろ違うのを一元的にだあっとやるとおっしゃるわけでございまして、結果が楽しみでございます。
 終わります。
坂井委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 あと一、二時間、時間がありますので、みんな最後まで頑張りましょう。
 いろいろ話を聞いておりましたけれども、根本的な議論が一つ皆さんの中で欠けているなと思いまして、この国立病院・療養所、すなわちこれはだれのために独立行政法人化するのでしょうか。まず、だれのためにするのかという議論が欠けていると思うんですよね。だれのためにするのか、ちょっとやはり大臣に聞きたいと思います。厚生労働大臣に聞きたいと思います。
木村副大臣 国民と患者さんのために当然やるべきものだと思っております。
武山委員 本当に大臣をサポートするすばらしい副大臣ですけれども、私が質問したのは大臣なんですよね。
 そうしましたら、ここは、国民の代表なものですから、私はぜひ厚生大臣に、この独立行政法人化の目的は、だれのためにするのかということをやはり一言聞きたいと思います。今までの議論の中で一番欠けているのがその点なんですね。ぜひお願いいたします。
坂口国務大臣 これは先ほどの議論にも出ておりましたとおり、そこはやはり国民の皆さん方から見て一番いいという形にするということでございます。
武山委員 国民のみんなから見ましたら、それはだれのためにするかということは、やはり患者のためだと思うんですよね。そこに行く、いわゆる英語で言うペーシェントですね。いわゆるそこのお客さんですよね。すなわち、患者であり、そこに通院する人であり、そこに行く人ですよね。その人の視点が入っていると私は全然思えないんですよね。ですから、その視点でぜひ質問したいと思います。
 まず、公的病院の議論もありましたけれども、この公的病院、すなわち、国立大学病院も入りますし、それから保険事業者がつくるいわゆる労災関係だとか社会保険病院だとか、そういう病院も公的病院と言われますよね。自治体の病院もあるわけです。それから、もちろん今回の国立病院・療養所。そういう中で、一般診療というのはどこでもやっているわけですよね。このたびの独法化する国立病院・療養所、この中でも相当数、一般診療が行われていると思うんですよね。
 いわゆる政策医療ということで議論はされてきましたけれども、国立病院の中でも療養所の中でも、一般診療をその地域に根差した医療としてやっていると思うんですよね。ですから、この一般診療の部分の位置づけはこれからなくなるんでしょうか。政策医療に特化していった中で一般診療はなくなるのかどうか、お聞きしたいと思います。
木村副大臣 基本的には、政策医療に重心を移していただくのは当然のことでありますが、先生の御指摘の一般診療に関しましては、やはり地域のいろいろな特性があると思うんです。例えば離島だとか僻地だとか、周辺に医療施設がないというようなところも多分ある。私は、そういうところは、その点は十分に考慮しなければいけないな、このように思っているような次第でございます。
武山委員 そうしますと、政策医療に特化して、軸足はそちらに置いていくけれども、離島や地域に根差した今までの、その病院のある地域の人たちが望んでいる一般診療のあるところは残しておくという意味ですね。継続して残しておくというふうに判断してよろしいんでしょうか。
木村副大臣 例えば、その地域にほかの民間病院とかそういうのがある場合にはともかく、ない場合には、先生のおっしゃるとおりであります。
武山委員 そうしますと、地方の場合はそういう形で残していっていただきたいということで、議論の中で、国がすべきこと、民間ができるもの、国と民間との中間でやるべきこと、その議論がきちっとしていないで、もう一方的に百四十四施設を独法化するというふうにこちら側には受け取れるんですよね。ですから、その辺もはっきり詰まっていない。はっきり詰まっていないと、国民の方は、一番どっちにしたらいいかということを常に不安なわけですよね。ですから、陳情だとかいろいろな形で不安材料が多く来るわけですよね、国会議員のところに。
 それでは、今のお話で、いわゆる地域に根差したものはそのまま残しておく、そういうふうに判断いたします。
木村副大臣 それともう一つは、担い手の問題で、もしそこに、例えば公共事業体とかあるいは民間病院でも、かわりにやってやろうと、こういう方々が手を挙げてくれば、それはまたそこで、当然そういう意欲のある方々にやっていただくべきだな、私はこのように思っているようなところがございます。
武山委員 地域の医療の中で、今副大臣がお話ししました国立病院・療養所、その中で一般診療の部がありますね。その中に、地域の人でやりたいという人があればそれは譲渡していきますという意味なんですか。そういうふうにとってよろしい、そこに入っていって、私がやりますと言っても譲渡できるという状態の意味なんでしょうか。
木村副大臣 先ほどからお話にありましたように、百四十四という数字があります。中期計画が終了しました段階でもう一度、業績評価等を経まして再検討のときが来るわけでございまして、その段階で、その辺は十分に考えてもいい場面が、ケース・バイ・ケースでございますけれども、あってしかるべきかな、私はこのように思っているような次第でございます。
武山委員 そうしましたら、そこに政策医療があっても、そこの一般医療は譲渡していくというふうに考えていいんですか。
冨岡政府参考人 これまでの政策医療再編成の経緯とそれから機構法の目的に沿って説明させていただきます。
 国立病院・療養所の再編成は、政策医療を担うところを残して充実していく、そして、それを担っていない、または担うことがなかなか難しいといったところについては、ほかの主体に移譲するなりして再編成を進め、そういった中で政策医療を担うところの充実を図っていく、そのようなことで整理してまいりました。その結果、これが終了しますと、百四十四の政策医療を担う病院、療養所の体系になるというのが計画でございます。
 そうはいいながら、病院、療養所を運営しておりますと、その地域の中で求められている一般医療をする、実は能力と申しましょうか、そういう力があるわけでございます。そういった力の範囲の中で一般医療も実施しているというのが実情でございます。
 なお、ちなみに、今回の法律の「機構の目的」におきましては、こういった点につきまして、「機構は、医療の提供、医療に関する調査及び研究並びに技術者の研修等の業務を行うことにより、国民の健康に重大な影響のある疾病に関する医療その他の医療であって、国の医療政策として機構が担うべきものの向上を図り、もって公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。」ということで、法制的にも、ただいまのような考え方を規定しておるものでございます。
 以上でございます。
武山委員 副大臣とお話しした方が話が進むんですけれども、官僚の皆さんに話を聞くと、何だか紛らわしくて、何を言いたいのか、長ったらしくて、全部言いたいことを言って、それで、手かせ足かせというふうに国民には見えるんですよね。ですから私は、大臣、副大臣と議論をしたいと思います。
 それでは、今の件、副大臣、もう一度答えていただきたいと思います。
木村副大臣 当然、中期計画終了後に、見直しというのはあるべきであると私は思っております。
武山委員 そうしますと、やはり国民は、地域に根差した医療に対しては、首都圏とはまた違うと思うんですよ。首都圏の場合は、民間の病院もあり、また国立の病院もあり、本当に多種多様な医療の環境がそろっているわけですけれども、地方では、この国立療養所、国立病院、これらは、地域に根差した、やはりステータスが高いわけですね。それで、できてきた経緯もありますので、我が党でも、この経緯を踏んだ上で、やはり残すべきものは残し、民間でできるものは民間ですべきだという議論なんですよ。
 皆さんの話を聞いていると、もう政策医療ということに特化して、それで、何しろ効率。もちろん、親方日の丸の話が先ほどありましたけれども、やはりおんぶにだっこではだめだと思うんですね。国民の税金を有効に使うということで、やはりよい意味で有効に使うという意味で、大事な政策転換というのは大切だと思いますが、そこがあいまいなんですよ。それで先ほど何回も何回も聞いているわけなんですね。
 やはり、国が方向を出すときは、あいまいじゃだめなんですよ、国民全体があいまいな社会にそれでなっちゃうわけですから。今、まさにあいまいなんですね。ですから、そこをはっきりと、国が残すべきことは政策医療だ、軸足は政策医療に転換していく、しかし、地域に根差した、その地域にそれしかないものはそこに残しておくというふうに先ほど聞いたんですよね。
 それで、地域に根差した国立病院に対するステータスというのはやはり高いわけですから、そこはずっと残しておくというふうに解釈してよろしいという意味なんでしょうか。
木村副大臣 政策医療である観点におきましては、残しておくべきだと思います。ただ、先生がおっしゃいましたように、民間でやれるというようなところがありましたら、それは民間にもお手伝いいただくというのはあってしかるべきかな、このように思っているような次第でございます。
武山委員 それでは、何回もになりますけれども、国立病院・療養所は、政策医療に転換していく中で、一般診療部分が民間でやれるようになれば参入していってできる、そういうふうに特化していくという意味ですね。
木村副大臣 そのとおりでございます。
武山委員 それでは、今まで、企画は国でつくっておりまして、実施は国立病院という枠組みだったわけですけれども、今度、独立行政法人になりましたら、企画から立案から、実施も含めて、独立行政法人でやるということになりますよね。
 先ほど土肥先生も、また朝から質問していらっしゃいました議員の先生方からも、本当に巨大な、百四十四の巨大な独立行政法人、四万四千人の大きな、巨大なものになると。そして、一つの本部が、国立病院という機構が一つありまして、そこに、百四十四のそれぞれの病院が下に入るということですね。そうしますと、先ほど議論にもなりましたように、人事権、いろいろな問題、国家公務員としての身分の付与だとかそういうものが、今度は今までからどんなふうにして変わるんでしょうか。大きく、今までがこうで、今度はどういうふうに変わるか、わかりやすく国民に説明していただきたいと思います。
木村副大臣 まさに、今度は、独立行政法人の機構が、機構の責任でもって判断をしていただくという場面が出てくるわけでありますが、それは外部からの業績評価等も踏まえて、ふさわしいものにしていくべきだ、このように思っている次第であります。
武山委員 ふさわしいなんという言葉は、最もわかりにくくて、もう言葉だけ走っているんですよね。まさにそれは劇場の言葉です。実際に国民には、ふさわしいなんという言葉は当たりません。ぜひ、きちっと青写真を示していただきたいと思います。
木村副大臣 きちっと青写真を示すように頑張らせたいと思っております。
武山委員 そうしますと、まだ青写真もできてないということなんでしょうか。
木村副大臣 独法ができる半年前に新しい法人の理事長が任命をされるわけでありますから、恐らく、そこから本格的な検討が始まっていくんではないかな、こう思っております。
 もちろん、その以前に十分に取り扱いが、もちろん計画等、それを踏まえて、そういうことになるように頑張っていきたい、このように思っています。
武山委員 政府・与党が責任を持ってこの法案を出したのに、なぜ丸投げするんですか。責任転嫁だと思いますよ。細かい、針の穴みたいなことを聞いているんじゃないんです。少なくとも骨格だけでも示せないような政府・与党なんて、では、なぜそういう法律を出してくるんですか。
木村副大臣 骨格はまさしく、まず効率的な運営を担っていく、先ほどから申し上げておりますように親方日の丸をこの際意識改革していただくんだ。私は、ここが非常に一番大事なところであろう、こういうふうに思っております。
 そして、その上に立って、もちろん政策医療を担っていただくわけでございますけれども、効率性も入れていただかなきゃいけない。そういう中で、けさもお話にありましたアウトソーシング等のことも踏まえまして、高コスト構造を是正していただくいろいろな方法等を取り入れていただかなければいけませんから、私は、そういうことで、やるべきことはたくさんあるな、このように思っている次第でございます。
 問題は、先生がどのようなことを期待しておられるのか、もしお差し支えなければお話しいただければ、私はそれをとってまたお答えをさせていただきたいな、このように思っています。
武山委員 親方日の丸ということで、先ほど、効率の問題が何回も何回も議論されてまいりました。効率性ということで、何の効率性か。いわゆるお金の効率性、それから人材の効率性、設備の効率性、いろいろな効率性があると思うんですよ。それぞれのポイントでの青写真というのは必要だと思うんですよ。それについて、ぜひ見解を述べていただきたいと思います。
木村副大臣 先ほども申し上げましたように、私は、まず民間病院との比較があると思うんですね、特に財政の面とかそういう経営の面におきましては。民間病院は、今の診療報酬の範囲内において、設備投資の償還から含めて、すべてを担っていただいている。しかも、銀行借り入れ等をしてもちゃんと借金を返していっているわけであります。そういう中で、赤字になりますと銀行取引を停止されたり、病院経営が行き詰まってしまうようなことがあるわけでありますが、今まで、公的病院は、そういうことを全然検討せずに漫然と来た点が確かにあったのであろう、こう思うわけであります。ですから、まず、そういうところから是正をしていただかなきゃいけません。
 それには、先ほど言ったアウトソーシングとかを含めて、高コスト構造を是正していただく。それから、賃金の面も、給料の面も話がありましたけれども、これからは業績を評価された、その人に見合った給料が出てくるのではないか、私はこう思うわけであります。サービスの面においても、ちょっとJRの例を出しましたけれども、やはり、ああ変わったな、そういう面が、国立病院も今度独法化して、ああこんなに患者サービスが変わってきたと。私は、そういう点もぜひ出していかなければいけないな、こう思っております。
武山委員 木村副大臣が理事長のように、なったつもりでお話をしていただきましたけれども、まさにいろいろな角度から検討して、やはりするべきだと思います。
 それで、財務諸表ですけれども、今までほとんどなかった、その反省に立っていますでしょうか。
木村副大臣 独法化後は毎年財務諸表を公表する予定でございます。
武山委員 やはり反省の意味も込めて、なぜ今までなかったんですか。
木村副大臣 毎年財務諸表を施設ごとに公表させていただく。
 それで、なぜなかったかという質問でございますが、私も、なぜなかったんだろうな、このように思っております。(発言する者あり)
武山委員 それは、私の方がちょっと優先権があります、今私の方が指名されましたから。
 財務諸表がなかった理由。やはり政権与党が四十年以上政権を持ってきたわけですから、そこに大きな責任があると思います。なぜ、なかったんでしょうか。
木村副大臣 基本的には、やはり経理の仕方というのが、企業会計というのといわゆる官庁の予算制度というのと大きな違いがあったわけですね。特に、国立病院は特別会計でやってきたわけであります。
 今回は、先ほど言った中で、民間との比較という観点から、民間と同じような、比較できるものにしていくには、ある程度同じ基準に立った経理の公開が必要でありますから、結局そこで、いわゆる財務諸表というか複式簿記の感覚を取り入れた会計制度を取り入れていこう、こういう観点から、このたび財務諸表を施設ごとに毎年公開をしていくというシステムが入ったわけでありまして、これは今度の国立病院のみならず、独立行政法人にとりましても同じような仕組みが取り入れられているわけであります。
武山委員 国民の税金をやはり使うわけですから、民間よりももっとそういう財務諸表というものは出すべきだったんだと思います、過去の時点で。それを、血と汗の国民の税金を、本当に国民の税金をないがしろにしてきたという大きな反省がなければ、次のこれからのステップも、中身のあやふやな、本当に柱のぐらぐらした、そういう独立行政法人になると思うんですよね。
 そこの意気込みをもう一度聞かせていただきたいと思います。
木村副大臣 武山先生の御指示に沿って、私も一生懸命頑張ってまいります。
武山委員 いえ、国としての責任を私は聞いておるわけなんです。
木村副大臣 当然、その制度を取り入れた以上、そのとおりにやっていくべき任務が生じたわけであります。
武山委員 きょうは文部科学省の方からも、国立大学病院も同じような形でやはり一般診療をしておるわけでして、縦割りの弊害といいますか、一般診療自体はやはり厚生労働省の管轄にもかかわらず、実際は国立大学病院というのは文科省の所管になっているわけですね。それで、各自治体にある、県や市町村にあるものは総務省で管轄しているということ。
 きょう副大臣においでいただきましたので、今、独立行政法人、独法化のいわゆる国立病院ですね、この議論と、それから文科省の国立大学病院、その大きな流れが、やはり同じ方向に厚生省が管轄しておれば行きますけれども、その部分で、文科省と独立したその弊害があるものですから、調整がうまくいっていないと思うんですよね。それで、文部科学省としては、この国立大学病院をどのような方向に持っていくのか、青写真を示していただきたいと思います。
河村副大臣 お答えいたします。
 御指摘のように、同じ病院でありますけれども、国立大学病院は文部科学省の所管になっております。
 ただ、これは、大学の医学部あるいは歯学部はそれぞれ、医師それから歯科医師を養成する機関でございまして、そこには、臨床実習等々を必要としてまさに教育現場。その中で、診療の場で、病院と一体不可分でなきゃなりませんから、医学部、歯学部は、いわゆる附属病院、附属施設としての附属病院を置くことは大学設置基準に定められておるわけでございます。附属病院を設置して臨床教育研究を行っているという、その特異性がございますので、設置者であります文部科学省がその所管をいたしておるわけでございます。
 ただ、医療の提供に当たっては、医療法の適用を受けておるものでございますから、医療機関として厚生労働省の定める基準に従って実施をしている、これは当然のことでございます。今後とも、国立大学病院における医療提供活動に万全を期すためにも、厚生労働省ともしっかり連携をとって適切に対応していきたい、こう思っております。
 なお、御案内のように、平成十六年を期して、今これから検討するわけでありますが、国立大学病院も、国立大学の独法化に伴いまして、その方向でこれから、同じような形で、軌を同じゅうするような形で独立行政法人の中に入っていく、企業会計等々の考え方も当然入っていく、基調を合わせていくような方向になっていくわけでございます。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
武山委員 そうしますと、また副大臣にもう一つお聞きしたいんですけれども、財務諸表というのは以前はあったんでしょうか。
河村副大臣 先ほど木村副大臣もお答えになっておりましたが、いわゆる企業会計的なそうした財務諸表は、私はなかったというふうに思います。
武山委員 それでは、同じ質問を総務副大臣の若松さんに、自治体関係の総務省管轄の病院の内容に対しての独法化の青写真を聞きたいと思います。
若松副大臣 済みません、率直に申し上げまして、質問通告がございませんで。
 いずれにしても、旧自治省、現在総務省でございますが、自治大学があるわけでありますが、何といっても、この独立行政法人化というのは、いわゆる民間経営手法、そしてしっかりと財務会計システムを構築する、そういった観点からの経営の効率化、これをしっかり図っていこうという趣旨でございますので、総務省としてもしっかりやっていきたいと考えております。
武山委員 若松副大臣は公認会計士の肩書も持っておるわけですけれども、なぜ今まで、そういうお金の部分があやふやで、いいかげんだったんでしょうか。
若松副大臣 これは、私個人の私見になりますが、結局、日本の経済が右肩成長で税収はふえてきた、ですから、ある意味でずさんな帳簿体系でも何とか国がもち得たというのが大きな原因だと思います。
 ところが、御存じのように、成熟社会になりましたし、ましてや、今は十五年不況とも言われる大変厳しい状況であるからこそ、やはり従来のやり方はもう許されない。そういうことで、まさに厳しい民間経営手法を行政にもしっかりと導入をして、可能な限り効率的な運営形態に変えなければいけない。そういう観点から、私は、これから、財務会計システムもある意味では企業以上の精緻度の高いものを構築していかなければいけない。
 そういう意味で、現在、総務省と財務省が共管で、私が主管させていただいております独立行政法人の会計基準をつくっておりまして、委員の御指摘のような趣旨もしっかり踏まえた、しっかりとした会計基準をつくっていきたいと考えております。
武山委員 今まで、きょう議論されるまでもなく、以前に長いこと国会議員の皆さんは何回も何回も、この国立病院の赤字体質に対するよい批判というのはずっとやってきたと思うんですよね。それを、今まで財務諸表を出さなかった。それは、政権与党の責任というのは物すごい大きいと思うんですよね。
 それに対して、やはり、きょうも文科省から、また総務省から、そして厚生労働大臣と御出席いただいているわけですけれども、医療の現場ですら、このように省庁に分かれているわけですよね。こういうばらばらな体制の医療の現場というものを、これからやはり整理していかなきゃいけないと思うんですよね。それで、この調整に対して、やはり一般診療はすべて厚生労働省でやっているということですけれども、でも、所管はみんなそれぞれの背景があるわけです。
 このことに対して、厚生労働大臣に最後にお聞きしたいんですけれども、どのようにこの縦割りの行政の医療の現場を調整していかれる見通しなのか。ぜひ前向きな方向性を聞いて、私の質問を終わりにしたいと思います。
坂口国務大臣 各省所管の病院というのは本当にたくさんあるわけですね。ここにお見えになります文部科学省あるいは総務省だけではなくて、他の省庁の所管のものもございます。いずれにいたしましても、それぞれの所管はございますけれども、医療という面になりますと、これは厚生労働省が今までから責任を持ってきたわけでございますし、これからも持っていかなければならない。どこどこの省に所属する病院ということではなくて、医療全体としては、やはり厚生労働省が責任を持っていかなければならないというふうに自覚をいたしております。
 したがいまして、その自覚のもとに、各省庁と連絡をしなければならないことは密にしなければなりませんし、とりわけ、文部科学省におきましては大学病院をお持ちでございますので、大学病院等との医療のあり方につきましては、より積極的にこれは進めていかなければならないというふうに思っております。
 先日来も大学附属病院の院長先生方との懇談も実は続けておりまして、医療というものを預かる立場から、やはり我々はこういうふうなことをお願いしたいといったようなことも今申し上げているところでございます。今まで以上に、ここは積極的に医療全体を担当する省庁としてやっていきたいと思っております。
武山委員 この議論は金曜日にまた続けたいと思います。
 終わります。
宮腰委員長代理 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 国立病院や療養所にかかわる問題というのは国民の医療に直結する非常に重大な問題ですけれども、今度のこの機構法案というのは、そのあり方にかかわる本当に真剣な議論が求められるものだと思います。
 私、法案に即してこれからただしてまいりたいと思うんですが、機構法案を読みますと、第三条で「機構の目的」があって、そして第十三条で業務の内容が述べられておりますが、実際の具体的な中身というのは、中期目標とその達成にかかるという仕組みになっていると思うんです。
 それで、通則法二十九条で、主務大臣が、達成すべき業務運営に関する目標、中期目標を定めて、これを独立行政法人に指示するということになっているわけですけれども、坂口大臣にまずお尋ねしたいんですが、通則法では五点にわたって中期目標の事項が示されておりますが、具体的に国立病院や療養所の場合はどういう視点に立ってこの中期目標を立てるおつもりなのか、まずお尋ねしたいと思います。
坂口国務大臣 国立病院機構につきましては、良質な政策医療を効率的に提供することをその旨としております。中期目標におきましては、こうした観点から、国立病院機構が担うべき政策医療を明らかにいたしまして、そして業務運営の効率化、政策医療その他のサービスの質の向上などにつきまして目標を示してまいりたいと考えておりまして、今後具体的に検討を進めていく、今その段階にあることを申し上げたいと思います。
山口(富)委員 今のお話は、通則法の二十九条の大体の項目をなぞったお話だったと思うんですが、私は、国立病院・療養所のあり方が今後どういう方向に向かうかという点はおくとしても、やはり国民医療の全体の中で、この施設、制度の果たす役割というものを常に重視して、それらが現実に地域の医療とも結んで国民の皆さんに高度な医療を提供できる、その点を常に念頭に置いて考えていく必要があるというふうに思うんです。
 それで、その中期目標を達成するための中期計画の問題なんですけれども、きょう皆さんに、委員会に配付資料としてお配りいたしましたこの資料をちょっとごらんいただきたいんです。これは、国立病院・療養所の独立行政法人における財政運営と効率化方策に関する懇談会というところの、第七回、ことしの七月ですけれども、ここに事務局が示した中期計画のイメージの表なんですね。
 これを見ますと、一から六まで、これは通則法の三十条の中身に大体即しているんですが、一で、業務運営の効率化、それで具体的に中身が書いてあります。アウトソーシングの推進、それから経費総額の抑制ということも出ている。二は、質の向上ですけれども、三、四、五、六と行って、またアウトソーシングの推進、外部委託ですね、これによる職員数等の抑制という方向が出ております。私は、これを見る限り、先ほど中期目標の話が出ましたけれども、それに基づく計画の重点的な中身が、現実には業務運営の効率化に置かれているということはここから見てとれるというふうに思うんです。
 そこで尋ねたいんですが、業務運営の効率化の例一に挙がっております運営費交付金、これは一体どういう性格の交付金なのか、示していただきたいと思います。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
冨岡政府参考人 国立病院機構におきましては、政策医療を実施するわけでございます。それを実施する上で、診療収入といったもので賄えない経費といったものはどうしても出てまいります。そういった事柄につきまして、政策医療の実施という観点を踏まえまして一般財源の方から交付する交付金でございます。
山口(富)委員 そうしますと、診療報酬で賄えない部分について繰り入れていくというお話だったんですが、現行の国立病院特別会計、これで見ますと、それはほぼ一般会計よりの受け入れというふうに見ていいと思うんですが、今年度の予算で一般会計からの受入額、これはどうなっていますか。
冨岡政府参考人 平成十四年度の国立病院特別会計の一般会計より受入金額は、千二百二十二億円となっております。
山口(富)委員 今数字を少し丸めておっしゃいましたけれども、約千二百二十二億円です。これは、診療収入を除きますと、歳入に占める一般会計からの受け入れというのは五二%と、ほぼ半分を超えるほどの規模になっているんですね。
 それで、配付資料の2を見ていただきたいんですけれども、これは国立病院・療養所の経営改善懇談会の報告に掲載されている一般会計の繰り入れの基準項目なんです。それで、これを見ますと、一、二、六まで大きな番号がついていますが、二以降は大体「所要額」、かかる額に応じてということなんですね。これは明瞭だと思うんです。ところが、一の「国立病院・療養所が担う政策医療」については軒並み、「収支差」「割高額」、これが問題になるというのが、全部そういう指摘です。
 では、一体これは何なのかということなんですけれども、次のページの注2にそのことが書かれております。こういう意味だというんですね。「「割高額」とは、収入が同一とした場合の政策医療の支出といわゆる一般医療の支出とを比べ、前者と後者の差に対して一般会計から繰り入れられる額をいう。これにより政策医療にも一般医療と同程度の経営努力が必要となる。」と。だから、先ほど国立病院部長がおっしゃった、採算がとれないという話がありましたけれども、割高額というのは政策医療にどうしても生まれてくる。これは、一般医療と比べた場合に、圧縮する経営努力が必要なんだ、そういう考え方なんです。
 私はここで尋ねたいんですけれども、この考え方は、今予定されている運営費交付金、これに当たってもやはりその土台になるものなんですか。
冨岡政府参考人 ただいま先生お示しの基準につきましては、実は、国立病院・療養所の経営が、平成四、五年のころ、経営状況が大変悪化いたしました。そして繰入額も、当時は余り基準もなく繰り入れていたわけでございまして、繰入額が非常に膨大なものとなって、二千六百億円近くに上りました。そこで、こういったものに対してルール、考え方をまとめる必要があるということで、専門家から成る検討会を設けまして、繰り入れの考え方を取りまとめたものでございます。
 独立行政法人に移行いたしますと、これが変わりまして、交付金ということになりますが、そのあり方につきましては、幅広い分野の専門家から成る検討する委員会を設けまして、現在、鋭意検討中でございます。そういうことで、必ずしも今の考え方が踏襲されるというものではないわけでございますが。
 お尋ねの、政策医療と一般医療の割高額に対して経営努力分というものがあるではないか、そういった御指摘がございましたけれども、運営の効率化、こういったものはやはり税金を投入しているという点からどうしても求められるわけでございまして、そういった分、やはり努力を求めた上でという考え方になっておるわけでございます。
山口(富)委員 あなたるる述べましたけれども、この懇談会の議事録というのは公表されているんですよ。その中で、これはどうするのかというのが大問題になっているでしょう。単なる検討中じゃなくて、これをどうするかが問題になっているわけですよ。そのことをきちんと答えていただきたい。
 それで、今度の問題でいいますと、歳入のかなりを占めるであろう運営費交付金が、結局これまでの経過からいっても、常に経営努力を求めるということが基本に据えられてきたようですから、やはりこれでは、私は、政策医療の分野を含めて、その部分の事業の抑制が進む仕掛けが財政的にあるというふうに言わざるを得ないと思うんです。
 きょう、政策医療の重視ということが盛んに強調されましたけれども、企業会計原則のもとでは、結核、それから難病、重症の心身障害、その他の救急医療なども含めまして、不採算医療と言われる分野は、新しい独法化のもとでは経営努力で効率化ということが強調されておりますから、一層の後退という危険性を常にはらんでいる。そのところをよく見ながら対応しなきゃいけないというふうに思うんですが、この点の認識はいかがですか。
冨岡政府参考人 企業会計原則による財務諸表の導入という点につきましては、現在と違いまして、例えば、整備に要した費用の減価償却に要する費用……(山口(富)委員「後退が生まれるかどうかに答えてください」と呼ぶ)そういったものが明らかになるということで、そして、ほかの設置主体の運営とも比較しやすくなるという、経理が非常に透明になるという点がございます。そういった点と、繰り入れる場合のそういった基準といったものは、直接的には、企業会計を導入したからそれは減らす結果に必ずつながるんだ、そういったことにはならないものと思います。
山口(富)委員 私は驚きましたね。そういう立場でこの機構法案をごらんになっているようだったら、とても独立行政法人なんかできないですよ。そんな牧歌的に、いやそんなことはないでしょう程度で。これだけの国民の共通の財産になっているものをどうするかが問われているわけですからね。私は、余りにひどい、認められない答弁だと思います。
 それで、これにかかわって、移行に伴う措置の問題で、この附則の五条なんですが、負債承継問題があるんですね。
 お尋ねしますけれども、独立行政法人への移行時の承継負債見込み額、これがどの程度になるのか示していただきたいと思います。
冨岡政府参考人 国立病院機構が設立時に、十六年四月に承継する債務額につきましては、現時点においてあえて試算として申し上げますと、約八千四百億円程度になるものと推計しております。
山口(富)委員 今、八千四百億という具体的な話がありましたけれども、今年度の国立病院特別会計を見ますと、診療収入というのは七千九百十五億なんですね。ですから、今度、独法化したときに引き継ぐ負債額というのはそれを上回る規模になるんです。しかも、今あなたがおっしゃいました八千四百億円のこの見込み額の中には、既に移譲されたり廃止された施設の分四百億円が含まれているんですね。
 私は、これだけの過剰な負債の返済というものをこの法人に負わせることは、出発時において業務の足かせになるような、医療行為の障害になるような大きな問題だと思いますけれども、そういうしわ寄せが業務に来るというその懸念をあなたはお持ちなんですか。私は高いと思いますが。
冨岡政府参考人 国立病院機構は、現在の国立病院特別会計のうち、ナショナルセンターに係るものを除きまして引き継ぐことになっております。
 そういうことで、先生御指摘のように、施設の統廃合を通じまして、残っている施設に資源を集中して機能強化を図ってまいりましたので、そういったものにつきましても機構が承継する、そういうことにしております。
山口(富)委員 今の話ですと、負債を承継するのが財産を承継するような感じであなたは受けとめているんじゃないですか。ちょっと驚きましたね。
 これは基本問題なので坂口大臣にお尋ねしたいんですけれども、私は、今度の独立行政法人化というのが、政策医療の点でも、それからいろいろな負債を抱えていくという面でも、公的医療の後退が起きる懸念を抱えたままの出発になるというふうに見るんですが、この点の基本認識はいかがですか。
坂口国務大臣 先ほどのお配りいただきましたペーパーにありますように、政策医療と一般医療との差というのが出ておりましたけれども、政策医療というものが一般医療よりも高額にかかるということをこれは示しているわけですね。そこを認めながらも、しかし、そこはできるだけ効率的にやらなければいけないということを言っているわけでありまして、前提としては、政策医療というものが非効率な面もあるということを認めた上での言葉だと私は理解をいたしております。
 今御指摘になりましたように、引き継ぐべきさまざまな問題はございますけれども、しかし、これからその効率化をすることによって、そしてよりよい医療をしていくということは、これは可能なことだと私は思っております。
 今までの国公立の中にも非常に効率的におやりをいただいているところも当然あるというふうに思っております。既に効率的なところもある。しかし、中にはそうでないところもある。さまざまな種類の国公立が含まれている。国公立じゃなしに、国立の病院が含まれている。そうしたことがありますから、そこはやはり全体として見れば効率化をしていただかなければならないということなんだろうというふうに思います。それによって、国民に、あるいは患者さんに対するサービスの低下というのは、私は懸念されるものではないというふうに思います。
山口(富)委員 どうもお話をお聞きしても、私が提起した懸念を払拭するような具体的材料をお持ちでないようなので、この点は、私は、独法化での抱える問題は非常に大きいということを改めて指摘しておきたいと思うんです。
 それで、評価委員会と審議会の関係について、これは一点だけお尋ねしておきたいんですが、厚生労働省評価委員会が事業年度と中期目標の期間の終了時にそれぞれ評価を行って、総務省にある審議会から、その評価の通知を受けて、意見を述べることができるというふうになっているんですが、一つは、この意見とは一体どの程度の力を持つ意見なのか、これをお尋ねしたいんです。
水田政府参考人 お答え申し上げます。
 厚生労働省所管の独立行政法人の評価につきましては、委員御指摘のありましたとおり、当省の独立行政法人評価委員会が第三者機関として客観的かつ厳正に実施することとなっております。
 これに対しまして、総務省の、今審議会と申されましたけれども、政策評価・独立行政法人評価委員会に当たろうかと思いますが、ここにおきましては、府省横断的な立場で評価の実効性を図る観点から、必要と認めるときに各省の評価委員会に対して意見を述べることができる、このようにされております。
 こうした趣旨を踏まえまして、当省の評価委員会といたしましては、総務省の評価委員会からの意見につきましては、これを十分に尊重しつつ必要な検討を行い、評価の信頼性、実効性の向上を図っていくこととしております。
山口(富)委員 そうすると、重ねてお尋ねしますが、これは統括官にお聞きするのかどうかわかりませんが、三十五条を見ると「審議会」と規定されていますから、審議会と言いますけれども、これは、「法人の主要な事務及び事業の改廃に関し、主務大臣に勧告することができる。」というふうになっているわけですね。
 それで、国立病院関係の問題というのは本来厚生労働省の評価委員会が一番詳しいわけですけれども、ここの評価と違って、この審議会が、主務大臣の評価を超えて、施設の事業の改廃、具体的に言うと廃止ですね、こういうものを勧告した場合に、これは主務大臣は拒否できるんですか。
水田政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘の三十五条の審議会の勧告についての取り扱いにつきましては、いまだ基準が発せられていないものと承知をしておりまして、御答弁としては、まさに勧告は勧告として出されるものであるというふうに御答弁せざるを得ないということでございます。
山口(富)委員 今答弁あったように、いまだにその中身が、基準がはっきりしていないと。ところが、これは非常に重大な問題なんですね。先ほど、今度の計画の場合に三年ないし五年後にその問題を考えるというふうになっているわけですけれども、それが、法律が、通則法ができてからしばらくたっているのにいまだにその問題でもきちんとしていないというのが、この独立行政法人をめぐる実態だと思うんです。
 私、続いて、先ほど坂口大臣が、この方向に進んだ場合に懸念されること、大臣の認識としてはないんじゃないかというお話があったんですが、具体的な問題として指摘しておきたいんですが、一つは結核対策の問題なんです。
 それで、この間の大臣答弁なんかででも、結核対策の重要性を認識しているという答弁が繰り返し出されております。
 三年前の七月に、厚生大臣の名前で例の結核緊急事態宣言というものが出たわけですね、きょうは中身は申し上げませんけれども。いずれにしろ、結論としては、「国立療養所を拠点とする多剤耐性結核等への対応を含む専門医療体制を充実してまいります。」という宣言でした。
 ことしの三月に、厚生科学審議会感染症分科会結核部会というところが「結核対策の包括的見直しに関する提言」というものを発表しております。これを読んでも、結核が我が国最大の感染症であって、その制圧に関する公的責任は今後も大きいというふうに位置づけて、「二十一世紀中盤には結核を公衆衛生上の課題から解消できるような状況に至ることを目標とすべきである。」というふうに提言しております。この提言の中には、国際的に日本の対策の見直しが必要じゃないかという指摘が出ているということも紹介されておりました。
 現実に、毎年三千人近い方々が、患者さんがこの結核で亡くなっている。そして、緊急宣言、また今の提言でも触れられているような多剤耐性の結核の問題が起こっていますし、学校、医療機関それから高齢者の施設などでの集団感染、それから、在日の外国人の方々の中での患者の拡大、こういういろいろな問題が起きていて、国としての感染対策が求められているわけですけれども、そういう点で、国立病院や療養所の役割、これは非常に大きくなっているわけですが、この点では、坂口大臣はそういう認識を持ってこの結核対策に当たろうとしているわけですね。
坂口国務大臣 結核が感染症の中で最大の感染症になっているということは、もう御指摘のとおりでございます。また、この感染者数あるいは死亡者数も最近大きくなってきている。先ほど三千人とおっしゃいましたけれども、約二千五百人ぐらい死亡しておみえになるということでございまして、しかも、今まではいわゆる青少年のところにこの罹患のピークがございましたけれども、最近は中高年のところにそのピークが移ってきている。
 それからもう一つは、いわゆる薬に対しまして多剤耐性結核菌というのがふえてきているといったようなことがございまして、一時、もう結核はこれでなくなるんではないかというふうに言われた時期もあったわけでございますけれども、最近は、どっこいそうはいかないと。やはり、高齢化に伴いまして、高齢者に免疫性が低下をしてまいりまして、高齢者で発生するケースがふえてきているということでございましょう。
 したがいまして、この結核に対する対策というのは大変大事な対策だというふうに思っております。
 しかし、大事な対策ではございますけれども、これは特別に、特定の病院だけで行わなければ治療ができないようなことはございませんで、一般病院におきましてもその治療は十分可能なものでもございます。今回、独法の方にこの結核の方も入れさせていただいて、今後、独法化の中でこの結核対策も行っていきたい、そういうふうに思っております。
山口(富)委員 大臣、やはりそこが大事なところですよね。国としての対策が大事だということは答弁のとおり、おっしゃいました。それをどう進めるのかというときに、独立行政法人化の方向という合理的理由はないんですよ。
 例えば、ことしの七月なんですけれども、先ほどの結核部会の提言に基づいて、厚生科学審議会感染症分科会、ここが「結核対策の包括的見直しについて」という意見を七月二十六日に発表しております。これを読んでも、医療システムの最大限の活用、国としての、という意見はありますが、どこにも独法化しなさいという意見はないんですね。私はそれは当然だと思うんです。
 その結核対策について言いますと、今国立病院や療養所が占める結核病床なんですが、厚生労働省に病床数を尋ねたんですけれども、二〇〇一年で国としては一万一千十四抱えていると。これは国全体をとりますと、国の施設で五三%を占めるんです。実は、十五年前の八六年の数値を見ますと、国全体にある結核病床のうち、国の施設というのは三九%なんですね。ですから、この点でも、国自身の国立病院・療養所が占めている位置というのは大変高いと思うんです。その上、大臣がおっしゃったように、治療の実績や経験というのもそこに蓄積されているわけですね。だったら、なぜそうした事業というものを国が直接の責任を負わないのかということになると思うんです。
 それで、通則法の二条にも、国がみずから主体となって直接に実施する必要のある対策については国がやる、それ以外のところを独法化するというふうになっているんですが、だったら、結核対策というのは、国がみずから主体となって直接に実施する必要のある対策ではないんですか。
坂口国務大臣 確かに、利用率からいきますと、平均で平成十二年度で四三・八%になりますか、それだけの利用率になっているわけであります。
 先ほども申しましたとおり、重要な疾病であるという位置づけはいたしておりますけれども、しかし、ここはいわゆるナショナルセンターでやらなければならないという位置づけではございません。独法化をするという中でこれを行うということは、これは国としての責任を放棄しているわけではありませんで、国として責任をやはり持ってそこでお願いをしていくということでございまして、大事な仕事だというふうに認識はいたしております。
山口(富)委員 これは本当に繰り返しになりますが、大事な仕事として認識しているという立場を確固としてお持ちなら、やはりこれは、効率性、採算性第一に入っていく独法化の方向はとるべきじゃないというふうに思うんです。しかも、各議会の動きを見ましても、それから地域や患者さん、関係者の声を聞きましても、この方向に本当に危惧の声を上げている声が大きいんですね。私は、ここに大きな矛盾が存在する。
 そして、きょう時間がありませんので、大事な雇用の問題は、次回に私はもう一回質問に立ちますからそのときにじっくり聞きたいと思いますが、効率性追求の点でも雇用の問題でもこの法案は重大な問題を抱えているということを指摘して、質問を終わります。
坂井委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 本日、この国立病院の独立行政法人化の質疑も私で最終でございますが、午後からずっと拝聴いたしておりまして、この法案を提出するに足る客観的な根拠、数値、さまざまな部分で大きな欠陥があるように思います。
 そこで、冒頭、質問予告してございませんが、先ほど武山委員と木村副大臣の往復ラリーを伺いながら、私として数点確認させていただきたいと思います。
 一点目は、まず、国立病院のこれまでの運営、経営については財務諸表なるものは作成されておらない、すなわち、運営主体別に財務諸表を用いて他と比較するに足るデータは今のところないということでしょうか。一点目、お願いします。
木村副大臣 個々の病院で今度は財務諸表をつくって、それを毎年一度公表するということになったわけでございますけれども、今までは特会で一本でやっておりました。
阿部委員 となりますと、例えば何が高コスト体質なのかということを分析するに当たって、その素データがないということだと思います。先ほど木村副大臣の御答弁では、親方日の丸であると。これは人の心の問題。確かに高度経済成長で何となくどんぶりでいくところもあったけれども、それがいけないんだと、そこに原因を帰することの下準備というか、それに足るデータが私はないと思います。
 どこの病院でも経常収支、経常利益の中でのいろいろな分析をいたしまして、何が一番問題で、なぜ高コストになっておるか、だからここを改善するんだという、原因があってその対処策があって結果が出てくるわけでございますが、この独立行政法人化の法案に当たっては、その原因が極めて心情的な親方日の丸という言葉でしか表現されておらないと思いますが、それ以上のデータをお持ちでしょうか。
 先ほど坂口大臣の御答弁の中にありました、病院の中には効率のよいところもあるし、非効率なところもある。となれば、例えばそれらをお示しいただいて、ここの部分で収支が悪くなっておるとか高コストになっておるとか、こういう領分をやっておるところは高コストであるとか、分析すれば一目瞭然に出る部分もございますが、何かそれに足る客観的なデータをお持ちでしょうか。
木村副大臣 今まで、例えば収支差ですとか人件費率ですとか、そういうランニングコストに関する数字は出ておったということでございます。
阿部委員 それでは、その部分だけでも明確にお示しいただきまして、例えばランニングコスト並びに人件費の部分でかなり高コストであれば、逆にお考えは人件費の部分を削ろうかというお話になるわけです。しかしながら、政策医療を担うに必要な人件であるかもしれないわけです。そこで初めて論議がかみ合うわけで、今のように親方日の丸か否かという情緒的な論議をしている限り、本当に国民にとって必要な姿が浮かび上がりませんので、これは次回、今週もう一度金曜日、御質疑をいただくことと思いますから、具体的な数値を持って、背景、説明責任でございますから、そこをよろしくお願い申し上げます。
 そして、私の質問に入らせていただきますが、これは、まず私の宿題といたしております小児医療の救急医療にちょっと目を転じさせていただき、やがて国立病院の小児救急医療問題へと循環して帰っていこうかと思います。
 まず、十一月十六日の朝日新聞の夕刊で報道されました、大阪市内における、小児の救急受診時における受け入れ病院が市内に見つからず隣の市へと搬送されたという事例でございます。
 私は、こういう質問の都度、新聞記事を例に引きたくはないと思いますが、しかしながら、新聞紙上でも大きく問題になるほどに小児救急医療の実態、実際が問題でございますので、この大阪市、二百三十七万でしたか、膨大な人間を抱えた大阪市で、夜間、子供が運ばれて、受け入れ先の病院がイエスと言えるところがなかったという事例について、担当の部局から、どのように把握しておられるか、御答弁をお願いいたします。
篠崎政府参考人 現在、大阪府の方に問い合わせをいたしておりまして、大阪府の方につきましても、その実情について調査中というふうに聞いております。近日中に報告があるものと思っております。
阿部委員 時刻は刻一刻と過ぎ、毎日のように同じことが繰り返されております。大阪府には、大阪府ではなくて大阪市でございます、大阪市には、いわゆる二次医療を担う病院として七つ、二次病院がございますし、また輪番制を三つ受けております。その中で、なおかつ子供が入院できないという状況が生じております。
 私は、このことに関して先回も坂口厚生労働大臣に御答弁をお願いいたしましたが、今の件については篠崎局長の方から、次回私の質疑までに早急に、実は私も大阪市に問い合わせましたし、お答えをいただければと思いますので、ちょっと申し添えまして、次の質問をもう一度坂口厚生労働大臣にお願いいたします。
 いわゆる小児科医療につきましては、果たして小児科として入院できるベッドの確保が日本全国どのようになっておるのか。大人の病床数については、例えば百万であるとか今後何十万人減らすとかいう集計、大人というか、込みでは出てまいりますが、小児のいわゆる、私ども小児科医は後方ベッドと呼んでおりますが、その日に受診して入院ができるような体制、これが入院ができないと回っていくわけです、三次救急までいく場合もございますし。そうした小児科のベッドの実情について、これまで厚生省として何かお調べになったことがあるかどうか、これを一点お願いいたします。
坂口国務大臣 今御指摘になりましたように、病院の経営指標の分析でありますとか経営収支の調査を行っておりますが、いわゆる小児病院だけのというのを抽出いたしまして調べるということはなかなかうまくできないんですね。それで、診療報酬に関する基礎資料を整えるための医療経済実態調査を実施して、そこから把握をしようとしている、こういうことでございます。
 全国公私病院連盟、ここあたりがお出しをいただいているデータはございますけれども、厚生労働省としてまとめたものというのは正直言ってございません。ここはやはり少しやらなければいけません。
 それで、総合病院のようなところからとるということはなかなか難しい面がございますから、いわゆる小児科の診療所、それから小児科のみの病院等をピックアップいたしまして、そこの状態というのを把握することは十分可能だというふうに思っておりますので、そのようにしたいと考えております。
阿部委員 いずれにしろ、全くデータがないところから調査していただけることは一点前向きと思いますが、しかし、今坂口厚生労働大臣の御答弁の中にありました診療所か小児の専門病院かというと、ここに、地域中核病院で、実は日々の小児の診療を担い、場合によっては入院をさせておる病院が一番抜け落ちます。
 私はこの国立病院の独法化に伴って一番案じておりますのもその点で、国立病院が地域中核病院として機能し、実は多くの病院、八十数カ所でございましたか、もう少しございましたか、小児科を併設してございます。そうなると、今どこにも浮かび上がってこない国立病院が担っている後方ベッドの事情も全く捨象されていくのではないか、切り捨てられていくのではないかという不安を私は感じざるを得ないきょう一日の論議でございました。
 なぜならば、小児科医療というのは、申しわけございませんが高コスト体質でございます。この高コスト体質ゆえ、効率化を図れと言われれば、子供たちはもう救われないです。どうやって効率を上げようとも手間暇はかかり、投薬量も少なく、検査少なく子供を治すのがよいことですから、ひっくり返っても効率の論理には合わない。
 その辺で私は一点確認をしたいのですが、きょう実は山口委員が資料として出してくださいました中に、政策医療ということを国立病院でどのように規定しておるかという一群の表がございました。果たして小児救急医療と申しますのはこの中の政策医療に入りますでしょうか、否でしょうか。
 いただきました「一般会計繰入基準項目」、山口委員の参考資料ですが、これの一を見ますと、「国立病院・療養所が担う政策医療」という中には、ずっと見ても小児救急医療はございません。辛うじてこれかなと思うのは、四番目の「国が進める保健医療施策への対応」というところで「救急医療」と書かれておりますが、私はこの間ずっと小児救急ばかりを取り上げてきたのは、少子高齢化と言われながら、本当に少子、子供たちにどんな対策が打たれているのか、その姿が全く見えてこない。そして、ここにいただきました資料を穴のあくほど眺めても、ここの「救急医療」の中に小児が入っているのかなと希望を持って観測いたしますが、だがしかし、実態、お考えはいかなものなのか。これは大臣にぜひとも御答弁をお願いいたします。
木村副大臣 実は、政策医療の中、十九項目の中に、残念ながら小児がランクされていないという現実がございます。
阿部委員 木村副大臣はとても正直でいらっしゃいますので。
 本当に残念です。そして、残念を通り越して、国は滅亡します、本当に。こんなに小児医療があちらこちらで問題にされるのは、これが現状、現実だからでございます。
 そこで、坂口厚生労働大臣にお願いがございます。政策医療の中に明確に小児救急医療、そして救急医療そのものを位置づけていただけますまいか。前向きで、そして真摯な御答弁を心よりお願いいたします。坂口厚生労働大臣です。
坂口国務大臣 検討いたしますから。
阿部委員 本当にありがとうございます。
 人の資料ばかり利用して申しわけありませんが、きょう山井委員のお出しになりました「医師いても輪番不参加」という四ページ目の資料がございます。実は、小児の医療の体制の整備には、本当にありとあらゆる知力と、それから省庁が一体になり、医師の教育から配置に至るまできちんと国家的に施策されなければ絶対にもう解決されないところまで来ています。
 私は、この新聞記事、朝日新聞が書いたものですが、よく分析してあると思います。だがしかし、これでも抜けたる部分も、私が実際にやってきた立場からはあると思います。せめて新聞記事じゃなく厚生労働省の手で小児医療の白書をつくっていただくこと、そして、小児救急医療への取り組みを一歩も二歩も三歩も前進していただきたいと思いますが、重ねて、大臣、恐縮ですが、この点はいかがでございましょうか。
坂口国務大臣 この新聞記事を私も先日拝見したところでございまして、こうしたことがやはり存在するということを大変残念に思った次第でございます。
 全体的に第二次医療圏の整備を今進めておりますし、そしてその中のまた具体的に調査等をやっておりますので、全国的に、なぜそこができ得ないのか、そうした具体的な検討もしてもらっているところでございますので、そうしたことをまとめて整理をしましたら、また先生方にもひとつごらんをいただきたいと思います。
阿部委員 本当にしつこくて申しわけありませんが、その際に、地域中核病院というものの担っている小児医療の実態もぜひとも把握していただきたいと思います。先ほどの大臣の御答弁が、診療所と小児の専門病院となると、実は大多数を担っている中核病院が抜けます。その中核病院の一つに国立病院がございます。この点を重ねてお願い申し上げます。
 そして、同じく新聞記事で本当に恥ずかしい限りですが、午前中から各委員、山井委員も福島委員も宮澤委員もお取り上げになりました、国立病院が果たしてどれくらい小児の輪番制に参加しておるかということで、わずか二五%という十一月九日の記事をめぐっての質疑を、少し私なりに問題点を、考えるところを申し述べながら続けさせていただきたいと思います。
 まず、この国立病院の参加わずか二五%ということに対して、担当部局から、どのような御認識がおありであるのか、あるいは参加できない困難な状況が何かおありであればその点について。私は、ただバッシングしても物は前に進まない、参加できるようにする方向で何を一歩なりとも解決していけばいいか、その点で、そういう趣旨と御理解の上、部局からの御答弁をお願いいたします。
冨岡政府参考人 小児救急医療事業への国立病院・療養所の参加につきましては、ことしの十月現在、小児科の医師が複数名いる国立病院・療養所が百八ございますが、このうち、輪番体制及び類似の体制に参加している施設数は、小児救急支援事業参加施設が十六、小児科医師常時当直体制の施設が七、それから小児科対応病院群輪番体制参加施設といったものが三十一、合計五十四でございまして、率にしますと、これらを合わせると、ちょうど半分になるわけでございます。この数字のほかに、小児科の医師がオンコールによりまして駆けつけるということになっておる施設が二十六ございます。
 現状はこうでございますが、この少子時代におきまして、小児救急医療を充実し、また国立病院・療養所としてもできる限りの参加努力をするということにつきましては、私どもも同感でございます。
 これまでも再編成を進めまして、それでの人的な資源を新たに求められている機能の充実に充てるといったことをしてまいりましたが、私どもとしても、これからもやはり、基本は小児科の先生の確保といったことが非常に大事でありますが、それから実際受け入れるための施設的な整備も、それほど多くございませんが、必要でございます。そういった面について努力することによって、この対応をふやしてまいりたい、その努力をしてまいりたいと思っております。
阿部委員 控え目な御答弁ですので、よく内容が皆さんに伝わらなかったかなと私は思います。
 もっと端的に言いますと、いわゆる小児の二次輪番に十六、それから毎日小児科の当直がいるところが七ですが、そのほかは、例えば全般の輪番制には加入しても、小児科が毎晩いるわけではないわけです。この意味では、小児科医師の確保というのは重要になってまいりますが、また一方、これはちょっと中長期的に時間がかかります。すぐあす、ほいほいともいきませんでしょう。
 私が今質問をいたしましたのは、今の時点でもできることがあるんじゃないかと。私はやはり、日々これ子供たちの命でございますから、ぜひとももっと踏み込んで検討していただきたい。
 例えば、国立病院の中で、小児の輪番に参加しておられないところで小児科医が五名とかおられるところがありますが、これを詳細に見ていきますと、筋ジスの患者さんたちのケアをしていたり、あるいは非常に多い呼吸器の台数を病棟内に抱えながら勤務しておられます。
 実は、国立病院が抱える呼吸器、レスピレーターの台数は、一般病院の比ではなく、例えば五台を抱えている病棟が五十病棟、二〇%。十台が九%。多いところでは一病棟三十台の呼吸器を抱えたりしております。
 分析は緻密に、そして具体的な解決策を持つようにやっていただきたくて、呼吸器の多いところでの小児科医が二次救に参加できない要因は、むしろ、呼吸器管理にかかわる看護婦さんの数の不足の問題とも深くリンクしております。そして、国立病院の看護婦さんの夜勤体制は、二人夜勤が圧倒的に多うございます。これは、国立病院や療養所は、二人夜勤体制が約七、八割でございます。一方の、例えば済生会とか厚生連とかになりますと、これが三〇%から四〇%。残りは三人夜勤体制でございます。
 やはり、二人夜勤では、例えば救急の外来を受けることはできません。そして、実は救急の外来用に看護婦を配置しても、外来の看護婦配置には、療養所では人件費、定数がつきません。
 私は今、幾つものことを重ねて申し上げましたが、少なくとも呼吸器管理の実情、それに足る十分な看護婦配置体制があるか。二人夜勤の体制の余りの多さ。小児科でやっていただくためには、せめて病院全体に三人夜勤体制がないと、なかなか看護婦さんも受けられません、責任がそこに生じますから。そしてもう一つ、療養所において外来看護婦配置しても、定員としてきちんとついていかないという体制がございます。
 これら三つについて具体的に検討していただきたいですが、担当部局の御答弁を賜りたいと思います。
冨岡政府参考人 看護師さんの勤務体制につきましては、当該病棟の仕事の中身といったものに応じまして決められ、配置されておるわけでございます。
 先生御指摘の、人工呼吸器を使っている患者さんが非常に多いような病棟についてという御指摘がございましたが、現在、筋ジストロフィー患者さん等を受け入れている病棟数は約三百病棟でございます。そのうち、人工呼吸器を一カ月以上、二十四時間使っている人が十人以上いるような病棟は四十幾つありますが、そういったところにつきましては、ほとんどが三人夜勤体制というふうに配慮いたしております。
 これまで、再編成を通じまして、必要な看護職員の確保、こういったものに努めてまいりました。
 また、御指摘ありました、小児救急が、医師がいるのになぜ協力できないかということについてよく調査すべしというふうなお話ございましたが、そういった点につきましても、私どもの小児救急をどういうふうになっているかを調べる中で、調べて検討したいと思っております。
阿部委員 私の指摘が全部の問題点を一挙に言ったために、具体的に理解いただけなかった節もあるかと思います。物事を解決するための切り口というのは、私はあろうかと思います。
 おっしゃったように、呼吸器が多い病棟で三人体制の夜勤が充足されているところと、しかし、されていないところもございます。それから、例えば小児病棟三十九床のうち、看護婦さんが十七人で、準夜、深夜を二人、二人でやり、呼吸器は三台というようなところもございます。ここが果たして輪番に参加できるかというと、これは、三台の呼吸器を抱えて、二人、二人の夜勤では絶対に、小児病棟でその日の夜、患者さんが来たら、受け入れられません。
 本当に具体的に一つ一つの病棟をつぶすようにやってみていただきたい。そして、その際に、そこにいる職員の怠慢だけに帰さないで、どのような人員配置をしていったら現実に可能になるのか、本当の努力をしないと物は一歩も進みません。
 そのことを深く自覚していただいて、次回もう少し具体的な御答弁をいただきたいと思いますが、少なくとも一点だけ。
 国立病院においては、二人夜勤体制が、他の運営主体の病院よりも極めて多いという事実については、どう思われますか。
冨岡政府参考人 先ほど申し上げましたように、再編成を通じまして看護体制の充実に努めてきております。
 御指摘の、他の設置主体との比較でございますが、病院看護基礎調査といったものによりますと、国立病院・療養所はほかの設置主体に比べましても二人夜勤が多いという傾向が読み取れております。
 ただ、これにつきましては、それぞれの病棟の性格とか機能とか、そういったことがありますので、簡単には申し上げられないことだと思います。
阿部委員 傾向が読み取れておられますなんという簡単なものじゃなくて、現実に多いのです。現実に二人夜勤しているのです。七割から八割です。そして、実はこれは看護協会からいただいたデータで、厚生省が直に調べてはおられないのです。ここにも丸投げの、本当に政策的に責任を持つ姿勢がないと私は思うのです。
 これは極めて重要で、かつ日々の命の安全の問題でございます。印象的なもので述べていただくことはくれぐれも遠慮していただきたいし、特にこのことで、私は先ほどから厚生労働省に白書白書と要求しておりますが、看護実態というのは極めて医療の中で重要な部分を占めております。
 もう一点、療養所で外来に看護婦の定員を置くことについてどのようにお考えですか。
冨岡政府参考人 大変おくれましたけれども、もともと療養所につきましては、外来の患者さんがかつて非常に少なかったということもありまして、定員化されていなかったということが長く続いております。入院患者さんだけという状態が長く続いていたわけでございますが、その後、外来の需要に応じられるようになったといったときには非常に定員がきつい事情になっていたという点もあったわけでございますが、再編成を通じまして看護力を再配置、充実するといった中で、療養所の外来についても配慮してきております。
阿部委員 小児科の外来が療養所に併設されたところが八十六カ所、今でもございます。ここにはきちんとした定員配置がありません。御自分の部局のことですから、きちんと調べて。入院の方からやりくりして出しているのです。これで小児の救急をやれといっても、あるいは夜間を受けてくれといっても受けられないじゃないですか。あなたたちがきちんとデータを出さなければ、いつまでも放置されたままです。
 本当に責任のある答弁を次回もまた求めますので、きょうはとりあえずここで終わらせていただきます。
坂井委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三分散会


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