衆議院

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第10号 平成14年11月27日(水曜日)

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平成十四年十一月二十七日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 坂井 隆憲君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岡下 信子君    奥谷  通君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      馳   浩君    平井 卓也君
      松島みどり君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    森  英介君
      谷津 義男君    山本 幸三君
      吉田 幸弘君    吉野 正芳君
      渡辺 具能君    石毛えい子君
      大出  彰君    大島  敦君
      鍵田 節哉君    金田 誠一君
      菅  直人君    五島 正規君
      土肥 隆一君    平野 博文君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      山内  功君    江田 康幸君
      桝屋 敬悟君    佐藤 公治君
      小沢 和秋君    山口 富男君
      阿部 知子君    金子 哲夫君
      中川 智子君    野田  毅君
      松浪健四郎君    川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  佐々木真郎君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  小熊  博君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    上田  茂君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十七日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     馳   浩君
  家西  悟君     大出  彰君
  鍵田 節哉君     平野 博文君
  水島 広子君     山内  功君
  阿部 知子君     金子 哲夫君
  野田  毅君     松浪健四郎君
同日
 辞任         補欠選任
  馳   浩君     後藤田正純君
  大出  彰君     菅  直人君
  平野 博文君     鍵田 節哉君
  山内  功君     水島 広子君
  金子 哲夫君     阿部 知子君
  松浪健四郎君     野田  毅君
同日
 辞任         補欠選任
  菅  直人君     家西  悟君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会申入れに関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 独立行政法人国立病院機構法案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第八三号)
 北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律案起草の件
 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
坂井委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、独立行政法人国立病院機構法案を議題といたします。
 本案に対する質疑は、去る二十二日に終了いたしております。
 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党を代表して、独立行政法人国立病院機構法案に対し、反対の討論を行います。
 反対する第一の理由は、国立病院の独立行政法人への移行が、政策医療の継続や地域医療で果たしている国立病院・療養所の役割を一層後退させることになるからであります。
 独立行政法人化されれば、機構はもとより、各病院ごとに企業会計原則が適用され、単年度ごとの収支、損益を計算し、これを外部の委員で構成する評価委員会が吟味することになります。
 もともと、政策医療は採算がとれない分野です。この不採算医療に加えて、これまでに地方へ移譲された病院の整備費も含んだ八千四百億円もの巨額の借入金の返済が重なります。その結果、中期計画終了時点で、評価委員会から事業継続の見直しや組織のあり方の検討などが独立行政法人通則法の規定によって迫られることになります。
 このように、本法案は、政策医療自体の継続を困難にし、さらに地域医療からの撤退を余儀なくされる危険を内包しているものです。
 第二に、この法案は、現在の国立病院の廃止、統廃合、移譲や民営化を促進することになっています。
 法案は、新たにつくられる独立行政法人に、今ある病院の廃止、統合、地方への移譲の業務を行わせます。これは、国が果たすべき国民への医療責任を一層後退させるものです。
 第三の反対理由は、約七千六百人の賃金職員の雇用の継続が保証されていないことです。
 これらの定員外職員は、国立病院の運営にとって不可欠の存在です。しかし、法案の附則第二条では、雇用の継続を明確に規定してはいません。
 これらの賃金職員の継続した正式雇用を改めて強く求め、反対の討論を終わります。(拍手)
坂井委員長 以上で討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 これより採決に入ります。
 第百五十四回国会、内閣提出、独立行政法人国立病院機構法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 この際、本案に対し、熊代昭彦君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山井和則君。
山井委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    独立行政法人国立病院機構法案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
 一 国立病院の営繕部門に関して、次の措置を講ずること。
  1 営繕関係職員の利害関係企業への再就職の斡旋を行わないとともに、利害関係企業に再就職している元の営繕関係職員の営業活動への対応を行わないこと。
  2 談合通報の受付窓口の設置、利害関係企業職員等の利害関係者との接触の限定、入札前の事業者との接触に関するルール化(事前届出、オープンな場所での実施、応接記録作成)、工事予定情報の閲覧窓口の設置(営繕関係以外の部署、及びウェブサイトでの公開)、営繕関係職員の幅広い人事交流の検討。
 二 各独立行政法人病院の中に拠点的な政策医療を付加し、それを中心とする政策医療ネットワークを整備すること。
 三 小児救急など必要な医療を政策医療に位置づけることを検討すること。
 四 運営費交付金の基準設定に当たっては、政策医療が円滑に実施できるよう配慮すること。また、国の期間に係る退職手当の財源については、運営費交付金の中で措置されるよう検討すること。
 五 職務の困難性に鑑み、新たに設立される独立行政法人の役員は適材適所で起用し、既得権化しないようにすること。
 六 医師採用の全国公募等も考慮し、独立行政法人の医師の人事については、独立行政法人本部が責任を持って行うこと。
 七 独立行政法人への移行に当たっては、健全な労使関係の確立に努めること。
 八 独立行政法人移行後においても、政策医療を的確に行うとともに、地域と協調し、地域の実情に応じた医療を提供してゆくこと。
 九 独立行政法人が担う政策医療並びに独立行政法人の経営状況について、年次毎に速やかに公表すること。
 十 中期計画終了後に、業績評価を踏まえ、個別施設のあり方についても必要な検討を行なうこと。
 十一 地域医療のあり方を考える中で、公的病院のあり方について検討すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
坂井委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂井委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
坂井委員長 次に、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。
 法務委員会において審査中の第百五十四回国会、内閣提出、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、第百五十四回国会、平岡秀夫君外五名提出、裁判所法の一部を改正する法律案、第百五十四回国会、平岡秀夫君外五名提出、検察庁法の一部を改正する法律案及び第百五十四回国会、水島広子君外五名提出、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案について、法務委員会に連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会日時は、法務委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせいたしますので、御了承願います。
     ――――◇―――――
坂井委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 本日は、理事会での協議に基づき、特に、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律案を起草することを念頭に調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官佐々木真郎君、内閣官房内閣参事官小熊博君、外務省大臣官房参事官齋木昭隆君、厚生労働省社会・援護局長河村博江君、社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君及び年金局長吉武民樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊代昭彦君。
熊代委員 本日は、厚生労働関係の基本施策に関する一般質疑ではございますが、拉致被害者対策に関しましてお伺いをいたしたいと思います。
 今回の拉致被害者問題は、我が国がまだ承認していない国とはいえ、一つの国家による他国の個人に対する非道きわまりない犯罪であります。前代未聞の犯罪であると思います。この上なく大きな憤りを感ずると思います。被害者になられた方々に衷心より御同情申し上げる次第でございます。
 いまだ安否が確認されていない方々も多い。安否が確認されていない方々、そしてその御家族の方々に対しまして、本当にどういうお慰めの言葉を申し上げていいか、わかりません。
 また、帰国された被害者の方々も、家族がいまだ北朝鮮に残されている人も多く、これらの方々に万全の対策をしてさしあげるべきだというふうに考えるところでございます。
 それとともに、我が国の歴史的反省もございます。反省すべきは反省する。そしてまた、核開発のおそれのある国でもございます、これを断固としてやめさせなければならない。北朝鮮もしっかりと反省すべきことを反省し、そして国際社会に名誉ある一員として迎え入れることのできる、そういう日が来ることも視野に入れて交渉していただく必要もあると思います。
 いずれにいたしましても、テポドン、ノドン、これが核兵器を搭載して発射されれば我が国は射程距離内であります。断固としてそのようなものはやめさせなければならないし、排除しなければならないと思います。ならず者国家、あるいは悪の枢軸というアメリカの北朝鮮に対する評価がございました。これが一つの雪解けを生んだということもあると思います。そういうことでございますので、断固たる態度をとるべきときは断固たる態度をとる、そして、国際社会の仲間に入れることのできる状況になったならば国際社会に引き入れていくということも必要だと思います。
 この件に関しまして、拉致被害者、これまで二十四年とか非常に長期にわたって拉致されていたわけでございますので、この拉致被害者に対する日本国及び地方公共団体の果たすべき責務は何か。その前提といたしまして、二十四年という長きにわたりまして、いろいろな事情がございましたでしょうけれども、我が国としても、その二十四年という長い期間に責任もあったと思います。それも含めまして、今後の日本国そして地方公共団体の果たすべき責務としては、安倍官房副長官、いかがお考えか、お伺いしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 委員には、拉致被害者への支援のための立法作業について大変な御尽力をいただいております。心から御礼を申し上げたい、このように思う次第でございます。
 国としては、まず第一に、五人の被害者の方々の御家族の一日も早い帰国のため、引き続き強く働きかけを行っていく決意でございます。また、安否が確認されていない方々の安否確認や帰国のための最大限の努力を同じく進めていきたい、このように考えております。
 このほか、国としては、帰国された被害者の方々及びその御家族が我が国の社会に溶け込み、安心して生活できるよう、関係地方公共団体とも密接に連携しつつ、一体となって支援を行っていくことといたしております。また、国及び地方公共団体は、被害者及び被害者の配偶者等の安否等に関する情報を把握し、速やかにその家族に伝えたり、これらの家族からの相談に応じることなど、きめ細かな対応に努めていきたい。この帰国されました五名の方々以外、北朝鮮側から死亡されたと伝えられた八名の方々の御家族の皆様方への対応も十分に配慮していきたい、このように考えている次第でございます。
 これらが国等の果たすべき責務である、このように考えております。
熊代委員 安倍官房副長官には、本当に早い時期からこの拉致問題に積極的に取り組んでいただきました。大変な成果を上げていただいたというふうに思います。心から感謝を申し上げる次第でございます。そして、この一連の対策についても大いなるリーダーシップを発揮していただいたということでございまして、高く評価を申し上げるところでございます。
 今お話もございましたし、いろいろとお考えをいただいていると思いますけれども、二十四年耐えてきた人たち、これはしかしすばらしい意志の力があると思いますね。かの地で、厳しい中にも誇り高く生きてこられたのではないかというふうに思います。そして、日本に帰ってやはり本当に誇り高い生活をしていただく必要がある。単に生活ができるということじゃなくて、人間として誇りにあふれたすばらしい生活をしていただく必要があると思います。
 被害者等の、御本人、そして御家族が誇り高い生活を日本でするためには例えばどういうことが考えられるか、官房副長官、恐縮でございますが、もう一度、誇りの面についてぜひお願いを申し上げます。
安倍内閣官房副長官 被害者の方々は、突然この国から強制的に拉致をされたわけでございます。そして二十数年間のそれによって生じた空白、つまり、それによって生活の基盤を失ったということになるわけでございます。少なくとも、私どもは支援をするに際しまして、この空白をどのように考えるかということも十分に考慮したわけでございます。
 こうした認識から、二十六日、拉致問題に関する専門幹事会におきまして、経済的支援、また身体の安全及び心身の健康、居住、雇用、教育等の幅広い分野を網羅した総合的な支援策を決定したところでございます。つまり、御本人のこれから生活をしていく上での基盤、そしてまたお子様たちがしっかりとした教育を受けられるような支援、そしてまた、当然身の安全等も含めて国がちゃんと責任を持っていくということも重要である、こうした総合的な対策をとっていかなければならない、そう判断したところでございます。
熊代委員 ありがとうございました。
 ぜひ本当に誇り高い生活のできる環境を、あらゆる意味で整えていただきたいと思います。
 そういう意味で、帰国された被害者に対するいろいろな対策としましては、厚生労働省関係の施策が多いと思います。年金保険、これは長い間おられなかったわけであります、加入しようと思っても国民年金に加入できなかった。医療保険、これはどうなるのか。また、雇用保険でございますけれども、雇用保険のいろいろな対策。誇り高い対策といえば、まず就職をする、誇りの高い仕事をする、そして世の中に貢献できるということでありますが、雇用保険というのは、基本的には雇用保険料を払った人に対してされるのではないか。雇用保険を払っていなければできないのかどうか。教育、そして職業教育、子供たちの教育、いろいろとあると思います。
 厚生労働省関係の施策では、この方々に誇り高い生活をしていただく、そして将来に向けて、本当に希望にあふれて未来を切り開く力をつけていただくというために、厚生労働大臣、どのような施策をお考えでございますか、お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 まず、この法案を作成するに当たりまして、委員が大変御努力をいただきましたことに感謝を申し上げたいと存じます。
 今お話がございましたこの被害者に対しまして、どう我々がおこたえをするかということが今緊急の課題でございます。特にその中で、御指摘をいただきましたように、年金、医療、雇用等、セーフティーネットにかかわりますところに対する、私たちが取り上げなければならない問題が山積をいたしております。
 その中で、基本的には、一般的に我が国に居住する方々と同様に各制度の適用を行っていくということでございますけれども、年金につきましては、過去の納付歴がないといいますか、その間空白になっているわけでございます。納付歴が給付に反映する長期保険であります年金につきましては、この法律に定めていただいておりますように、その間の事情を考慮いたしまして、帰国した被害者が拉致されている期間を国民年金の被保険者期間とみなしまして、そしてその期間に係ります保険料に相当する費用を国が負担するということになっているわけでございます。老後の生活の基盤であります年金の改善を図ることを必要とするものであります。
 さらに、どこかの事業所あるいはまた公務員としてお勤めになりますときには、当然のことながら厚生年金あるいはまた共済年金等にお入りをいただくことになるわけでございますが、それ以外の場合には、日本国内に住居を持たれましたその時点から、国民年金のいわゆる第一号被保険者になられるというふうに我々は考えております。この場合、前年の所得に応じまして保険料の免除制度、この適用を受けるわけでございますので、お帰りになりました皆さん方は前年の所得というものが存在しないわけでございますから、その点を十分に配慮していかなければならないというふうに思っているところでございます。
 医療保険につきましては、これまた、事業所あるいはまた公務員等にお勤めになりましたときにはいわゆる職域保険が適用されるわけでございますが、いわゆる日本の国の中において住所を得られましたその時点から、これは国民健康保険の被保険者になっていただくということでございます。国保の場合には、世帯の前年の所得に応じて保険料を軽減する制度がございますが、これはいわゆる応益割の三、四割、若干地方自治体によって異なりますけれども、そうした額をお納めいただくことになるのではないかというふうに思っております。
 雇用保険につきましては、これは雇用保険の性質から、お勤めをいただきましたときにそれは適用になる、適用になると申しますか、そこに発生をするというふうに考えている次第でございます。
熊代委員 ありがとうございます。法文の解釈も大切でありますけれども、それに温かい気持ちを盛り込んでいただきまして、ぜひ温かい対策をやっていただきたいと思います。
 最後に、安否不明の拉致被害者がまだ多数いらっしゃるということでございます。私どもの準備した法案では、内閣総理大臣が認定した者が拉致被害者だということでございますが、それも含めて、認定、そして安否の確認等々いろいろあると思いますが、今後、これらの一番気の毒な、一番大変な拉致被害者及びその家族等に対しまして、国及び地方公共団体はどのような対策を講じていかれるお考えか、安倍官房副長官の所見をお伺いしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 北朝鮮側から、五名の方々が生存をしている、そして八名の方々は既に死亡をしている、そしてさらに二名の方については不明である、そういう安否の情報の伝達があったわけでございまして、五名の方々は今、日本に帰国をされたわけでございます。
 しかし、私どもは、この八名の方々についても、私どもの立場としては、まだ日本の政府の責任として安否は確認をいたしておりません。二名の方々についてもそうでございます。さらには、現在、多くの方々が、もしかしたら私の子供は拉致されたかもしれないということで、安否についての問い合わせを警察に行っているところでございます。そうしたものを我々精査しながら、また捜査当局の捜査の結果を吟味しながら、問い合わせを必要とするものは問い合わせを行っていきたい、こう考えている次第でございます。
 いずれにいたしましても、こうした安否情報につきましては、私どもが知っている範囲すべて、しっかりと迅速に家族の皆様に伝達をするように、また、そういう御家族の皆様のいろいろな御心配も相談にあずかるようにしていかなければいけない、こう考えているところでございます。
熊代委員 ありがとうございました。
 いずれにしましても、全力を挙げて、最大限の努力を日本政府としてしていただきたいとお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
坂井委員長 次に、福島豊君。
福島委員 公明党の福島豊でございます。
 まず初めに、拉致被害者の方々、そしてまた御家族の皆様方、大変苦しい経験をされてきたわけでございまして、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 私どもは、拉致被害者の方々の帰国後の日本の生活の再構築、そしてまた残された家族の方々の早期帰還、さらに、いまだほかにも多数おられるのではないかという被害者の方々の全容の解明、こうした一つ一つの課題について全力で取り組まなければいけないと思っております。全面解決を図るために最大限の努力をしなければなりません。
 本日は安倍官房副長官が御出席でございますけれども、安倍副長官はこの拉致問題について今まで一貫して取り組みをしてこられました。心より敬意を表する次第でございます。
 現在、北朝鮮との交渉は大変厳しい局面に入っている、そのように承知をいたしておりますけれども、今後政府として、そしてまた官房副長官の個人的な思いも含め、どのような決意で取り組んでいかれるのか、お聞かせいただきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 九月の十七日に総理が訪朝されまして、金正日委員長と首脳会談を行いました。そしてその結果、平壌宣言に両首脳が調印をしたわけでございます。この平壌宣言の精神にのっとって、私どもは国交正常化を行っていきたい、こう考えているところでございます。
 先般、田中局長が北朝鮮側と交渉を行った結果、北朝鮮としても平壌宣言についてはしっかりと守っていきたい、この精神を大切にしていきたいというふうに発言をしたということでございます。平壌宣言の精神を守るのであれば、金正日総書記によってもう既に認めるという発言のあった拉致事件については、ちゃんとすべて解決をしていただきたい。その解決とは、この五名の方々の子供たち、家族の全員の日本への帰国、そしてさらには、残りの方々、安否不明の方々のすべての安否を私どもに確認をさせていただきたい、こういうことでございます。私どもはこの原則を今後ともあくまでも貫いていきたい、こう考えております。
 残念ながら、交渉自体は今進んでいないわけでございますが、私どもは、本交渉、正常化交渉をするためには、やはりまず引き離されている家族を日本に連れてきてもらわなければならない、こう考えているところでございます。
福島委員 この拉致の問題は、国家犯罪であるということは明白であると思っております。一部に、日本のかつての戦争責任または植民地支配の責任と重ねる向きがありますけれども、これは明確に区別をする必要があると私は思っております。そういう意味で、国家犯罪であるところの拉致、そしてその被害、これは北朝鮮の責任を明確にしなければならないと思いますし、そしてまた同時に、その損害賠償というものを国として求めていかなければいけない、私はそう思います。
 この賠償の請求の問題、この点についてどのようにお考えになり、また取り組まれるつもりか、安倍副長官にお聞きをしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 現在政府としてまとめております総合対策、また先生方に、委員の皆様方に御提案をいただいております法案については、これは帰国された方々また不明な方々への生活支援、自立支援を中心としたものでございます。今委員が御指摘されました犯罪に対しての補償、二十四年間の空白に対しての補償、これはまた別な問題である、こう私ども考えているところでございます。
 当然、私どもは、まず今引き離されている家族の帰国を強く求めてまいるわけでございますし、また、安否の確認をさせてもらいたいということも強く求めてまいります。そしてそれと同時に、この補償の問題、国際法的にどうなのかということも総合的に勘案しながら、当然求めるべきものは求めていかなければならない、こう考えているところでございます。
福島委員 一方で、帰国された被害者の方々の日本における生活、安心できる生活の再構築というものに、政府は全力で取り組まなければならないというふうに思っております。さまざまな困難があろうかと思います。物質的な困難、また精神的な困難。多面的な取り組み、そしてまた、国及び地方それぞれが協力した取り組みが必要であろうというふうに思っております。
 こうした支援の取り組みは厚生労働省が中心になって現在も進められていると思いますが、厚生労働大臣に、現在までの取り組み、そしてまた今後の取り組み、どのようにしていくのかお聞きをしたい。とりわけ、個別の細かな相談にやはり乗ってあげていただく体制が必要であろうと思いますし、そしてまた、当面の生活を支えていく経済的基盤の確立ということが必要であろうと思っております。お考えをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 今お話がございましたように、帰国されました皆さん方が大変不安な日々をお送りいただいている。その中で、やはり生活をどう支えていくか、また、心安らかに生活をしていただくためにどうしていくかといったことが非常に大事でございます。内閣官房と綿密な連絡をとりながら今日までもやってきたところでございます。とりわけ、帰国されました五名の皆さん方の健康管理の問題につきまして、これは、前面に出ることはなく、私たちは、もし御本人あるいはまた御家族の皆さん方からお申し出がありましたときには、それに対して即応できるような体制をとりながら、今日を迎えたところでございます。
 今後も、そうした対応を進めていきまして、そして、もしそういう御相談がありましたら、即刻対応できるようにしていきたいというふうに思っている次第でございます。御相談の窓口は、福祉事務所に窓口をつくらせていただきまして、そこを窓口にして、すぐすべての問題に対応できるようにしたいというふうに思っております。
 年金、医療の問題につきましては、先ほど御答弁を申し上げたとおりでございまして、そうした問題につきましても即応できるようにしていきますし、それから、雇用の問題につきましても、こういう時期でございますので、できる限り御相談に我々も乗らせていただいて、そして皆さん方の御要望をお聞きをしていきたい、そのように考えているところでございます。
福島委員 ぜひ心の通った支援というものを行っていただきたい、そのようにお願いをいたしたいと思います。
 そしてまた、厚生労働行政の所管分野にとどまるだけではないと思います。とりわけ、御家族の皆様の帰国が実現しました場合には、教育を一体どのように進めていくのかといったようなこともございます。政府が全力を挙げて取り組まなければいけない、そう思います。
 政府を統轄する立場として、内閣官房のお考えをお聞きしたいと思います。
佐々木政府参考人 政府におきましては、昨日、拉致問題に関する専門幹事会を開催いたしまして、拉致被害者、家族に対する総合的な支援策を決定したところでございます。この総合的な支援策は、委員御指摘のとおり、健康や雇用といった厚生労働分野のみならず、身辺の安全、住居、教育、戸籍の手続等、幅広い分野における施策を盛り込んだ総合的なものとなっております。
 政府としましては、今回決定されました総合的な支援策に基づきまして、関係地方公共団体とも密接に連携をとりつつ、一体となって支援を行っていきたいと考えております。
 内閣官房におきましては、引き続き、専門幹事会の場を通じまして、関係各省庁の施策を実効あらしめるために、必要な調整を行っていきたいと考えております。
福島委員 万全を期していただきたいというふうに思います。
 そしてまた、こうした支援の対象となる方々の事柄でございますけれども、拉致被害者の方は、現在把握されている方々にとどまらない、安否が確認されていない方もおります。そしてまた、この十三人以外にも多数おられるのではないか、このような指摘があるわけでございます。こうした現在明らかでない事態に対して、その全面的な解明ということを進めていかなければならないと思いますし、新たにこうした同じく被害に遭われた方が明らかになった場合、政府としてどのように取り組まれるのか、そしてまた、その支援のあり方をどう考えるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
佐々木政府参考人 お答えします。
 政府としましては、現在、拉致被害者と判断されている方々のみならず、今後新たに拉致被害者としての認定が行われる方々が帰国が実現しました場合には、その方々も支援の対象とすることによりまして、安心して生活できる環境を整備することが必要である、このように考えております。
福島委員 二十四年間というのは、大変長い時間でございます。拉致被害に遭われた方がもし日本で生活をしていれば、仕事につき、そしてまたさまざまな形で生活の基盤というものを構築されてきただろう。家も取得されたでありましょう。さまざまな資産というものも蓄積されたでありましょう。しかしながら、この二十四年間は、そうしたことをすべて奪ってしまっている。現在、さまざまな形で支援はなされておりますけれども、こうした二十四年間の重さというものにどうこたえるのか、このことも鋭く問われているというふうに私は思います。
 一時金というような議論もあったわけでございますが、私は、この点について、現在の取り組みを超えてさらに引き続き検討していただきたい、そのように思うわけでございますが、安倍官房副長官のお考えをお聞きしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 今、政府として、総合的な対策を検討しているところでございます。その中で、法律が必要なものについては、この法案について御議論をいただくということになっているわけでございます。
 その中で、私の方から法律について本来言及するべきではないわけでございますが、しかし、この方々の二十四年間の空白を考えれば、当然、どういう形でこの方々の生活を支援していくかということが大変重要なポイントになるところでございますが、まず、最初の一月目については特に厚く支給を行い、そしてその後は、基本的には年金のモデルケースのレベルでの支援を行っていく。さらには、老齢年金につきましては、空白部分は国が責任を持って埋めていくという形になっているわけでございます。
 これが十分か不十分かという議論は当然あるんだろう、こう思うわけでございますが、しかしながら、他のそうした政府の給付事業との比較を考えてみますと、やはりその中では精いっぱいの範囲での給付ではないだろうか、こう考えているところでございます。
 中国残留孤児の例をとりますと、十六万程度の一時金であるわけでございます。しかし、今回のこの拉致は、これは未曾有の出来事であり犯罪であるという認識のもとに、政府ができる限りのことをやらなければならない、このように考えたところでございます。
福島委員 今回、安倍官房副長官を先頭に、さまざまにきめの細かい支援策を取りまとめられたことを、高く評価をいたしたいと思います。そして、何よりも、御家族の方の早期の帰国、そしてまた、安否の確認されていない方々の状況の早期の把握、そして、その他の拉致被害が疑われる方々についての状況の解明、こうしたことを含めた全面解決に向けて、政府として全力で取り組んでいただきますことを心よりお願いをいたしまして、質疑を終わります。ありがとうございました。
坂井委員長 次に、菅直人君。
菅(直)委員 きょうは、北朝鮮によって拉致された皆さんの帰国支援というものを念頭に置いての一般質疑ということで、私も久しぶりにこの委員会で質疑に立たせていただきました。
 まず、この問題、長年被害者の家族の皆さんを中心にして訴えがあったにもかかわらず、私自身を含めて必ずしも十分な取り組みができてこなかったことについて反省をいたしたいと思いますし、歴代政府においても必ずしも十分な対応がとられていなかったのではないか。そういった意味も含めて、きょうも家族の方が傍聴においでになっていると聞いておりますけれども、ある意味での政治家の一人としておわびを申し上げたい、このように思っております。
 そこで、帰られた皆さんの問題に関連して、家族の皆さんの帰国を一番今政府としても強く望まれておりますけれども、報道によりますと、きょうは曽我ひとみさんが安倍副長官にお会いになって、御主人のことについていろいろとお話をされると聞いております。御主人のチャールズ・ジェンキンス元アメリカ兵について、その訴追免除をアメリカに求めてほしいというのが御本人からの要望ではないかと言われております。
 安倍副長官にちょっとお尋ねしたいんですが、十一月九日にケリー・アメリカ国務副長官に会われたときにこの話題が出たと言われておりますが、副長官の方から向こうの副長官に、訴追免除をぜひしてほしいというふうにきちんと求められたのかどうか、その点だけまず確認しておきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 曽我ひとみさんの御主人は米国籍のジェンキンス氏でございまして、特殊な状況があるわけでございます。その状況等につきまして、米国側にも、今委員から御指摘がございましたケリー氏にも説明をいたしたわけでございまして、お互いに意見の交換を行ったということでございます。私どもは私どもの考え、立場について御説明をさせていただきました。また、アメリカ側の情勢についても御意見を伺ったということでございます。
 中身につきましては、今まさにこれは進行中のことでございまして、極めて微妙な問題でございますので、ここでの中身についての御説明は控えさせていただきたいと思います。
菅(直)委員 ケリー副長官は日本の報道機関に対して、この話題は出たけれども訴追の免除について要請は受けていない、こういうふうに言われたと報道されているわけです。向こうの当事者はそういうふうにちゃんと話をしているわけですが、この問題では安倍副長官、大変頑張っておられることは敬意を表しておりますが、言えないというよりも、アメリカに対してそういう要請をすべきではないか、私はこう思いますが、これまで、あるいはこれからそういう要請をされるおつもりはあるんでしょうか。つまり、訴追免除の要請をされるおつもりはあるんでしょうか。
安倍内閣官房副長官 この問題につきましては、極めて微妙な問題であり、曽我ひとみさんにとっても最大の関心事であるわけでございます。私は、どういう話をしているかということにつきましては、もちろん曽我ひとみさんには御説明を申し上げているわけでございます。
 ただ、この問題について、今内容についてどうこう言うことが果たしていい結果に結びつくかということでございまして、そこが大変大切なことである、私はこう考えるわけでございます。そういう観点から、今ここでの御説明は控えさせていただきたい、こういうことでございます。
菅(直)委員 これ以上水かけ論をしても仕方がありませんので。
 今申し上げましたように、この問題、確かに難しい問題だと思います。例えば、では家族に日本に来ていただこうということになっても、この問題が解決されていなければ、北朝鮮を出国したときにある意味ではアメリカの捜査当局に捕まる可能性もあるわけですから。そういう意味では、大変難しい問題だということを承知の上で見解をお聞きしたわけですが、私どものといいましょうか私の考え方は、今申し上げたように、そういう要請はされるべきではないかということを重ねて申し上げておきたいと思います。
 そこで、今回、この後委員長提案で出される北朝鮮による拉致被害者支援法については、我が党民主党も賛同するということで、全党派一致で提案がされるというふうに理解をいたしております。特に、その内容において、国の責務あるいは五年間における給付、さらには年金の特例など、かなり手厚い内容になっている。また、就職支援や住宅支援、さらには教育の問題など、相当いろいろな面で配慮をされた内容になっておりまして、法案の作成にかかわられた皆さんに敬意をあらわしたいと思います。
 そこで、きょうは、これに若干関連いたしまして、先ほど安倍副長官の口からも出ましたけれども、中国残留邦人について九四年に同様な支援法ができているわけですけれども、ある意味で、事情はいろいろ違います、しかし、本人の意思に反して長年日本に帰ることができなかったという意味では、今回の被害者の皆さんと、いろいろ事情は違いますけれども中国残留邦人の皆さんの、そういう意味での共通性はある、私はこのように思っております。
 そして、現在、この中国残留邦人で日本に帰られた方が約六千名おられるわけですけれども、厚生労働省の調査によれば、回答されたといいましょうか、十年以下の皆さんで現実の生活がどうなっているか。これは、厚生労働大臣坂口さんも御存じだと思いますが、六割以上の皆さんが生活保護を受けているということであります。
 生活保護世帯の場合は、例えば、養父母が病気になったから中国にちょっとお見舞いに帰りたいといっても、いろいろ制約があります。あるいは、少しは努力してパートで仕事をしても、生活保護の内側であればその分だけ生活保護費がカットされる。あるいは、年金も、若干の部分が出ておりますが、それも生活保護の内側であればカットされる。そういう意味では、自立という形には残念ながらなっていない。ある方の言葉をかりれば、監視をされている生活なんだということを言われております。
 そういった意味で、こういう中国残留邦人で日本に帰られた方に対する支援が不十分だったことが一つの大きな背景となっておると私は思いますが、国家賠償を求める訴訟が起こされていることは厚生労働大臣も御存じのとおりだと思います。
 そこで、厚生労働大臣に、この中国残留邦人についても、今回の手厚い拉致被害者の皆さんに対する支援と同様な支援が必要ではないか、これは国会の責任とも言えますけれども、そういうふうに考えますが、見解をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 拉致被害者の方々も、それから中国残留邦人の方々も、どちらも長期間にわたりまして海外での居住を余儀なくされたという点では私は一致をいたしていると思っております。
 中国残留邦人の方々は、戦争に起因をして生じた混乱の中で、本邦に引き揚げることができずに、本邦以外の地域において、特に中国において居住することを余儀なくされた方々でございます。これは、戦争という非常に悲しむべき事態の中で起こったことでございます。
 一方、拉致被害者の方々は、北朝鮮の未曾有の国家的犯罪行為によりまして、戦争ではなくて平時において突然拉致された、そして長期間北朝鮮に居住することを余儀なくされたという方々でございまして、本邦における生活の基盤を失うなど極めて特殊な事情があったというふうに思っている次第でございます。
 したがいまして、共通点もございますけれども、そうした違いもまた存在するわけでございまして、今回我々がこの年金制度等につきまして考えましたことも、そうした事情を考慮しての上のことでございます。
 中国残留邦人に対します施策が不十分であるという御指摘がございまして、これは、十分かどうかということはなかなか、さまざまな角度から見ないとわかりませんが、十分ではない点も率直に言って私はあるというふうに思っております。しかし、現在訴訟が起きたりもしていることも承知をいたしておりますし、今後もまたさらに大規模な訴訟が起こるといったようなこともお聞きをしているところでございますが、今日までのこの状況が続いてきたことも事実でございますし、そして、その戦時中に起こりました人々に対する問題は他にも類似のさまざまな諸条件もあるわけでございまして、諸条件と申しますか、他にも類似の件が多くあるわけでございまして、こうしたことも十分に考慮しながら考えていかなければならないというふうに思っております。
菅(直)委員 坂口大臣らしくない答弁ですね。
 私は本当に、拉致された皆さんに対してこういう法案を出すことは、我が党も一緒に賛成をして委員長提案ということですから、そのことは、まさに国家犯罪であって許しがたいことでもあるし、それをきちっと政府として国としてフォローすることは必要だと思います。
 しかし同時に、中国残留邦人の皆さんについては、確かに最初の原因は戦争です。戦争そのものもいろいろ、もちろん戦前の政府の間違いがあったわけですが、その後の帰還、帰国作業がどれだけおくれたのか、坂口さん御存じないわけじゃないでしょう。いろいろな段階がありますが、本格的な第一回調査が始まったのがいつですか、一九八一年、戦後三十六年たっているんですよ。そして、これの担当に当たったのは旧厚生省、現在の厚生労働省でありまして、その間の経緯も少し調べてみましたけれども、私は、戦後の政府の不十分な対応、不作為があった。
 ある意味では、拉致問題に対して、先ほど冒頭に申し上げましたように、私自身の反省も含めて不十分だったという反省を申し上げましたが、私は、この中国残留邦人についても不十分さがあった。だから、戦争においてはいろいろな問題があるから、だからそれは違うんだというよりも、共通というふうに考えた方がいいんじゃないでしょうか。
 そこで、ちょっと具体的なことを申し上げます。
 今回の拉致被害者に対する支援の中で、年金について、中国残留邦人の場合と違った扱いがされております。つまり、中国残留邦人については、いわゆる空白の期間を、空期間といいますか、その部分について、国が支出する三分の一の支給は認めるけれども、あと全額もらいたい場合はお金を借りて全額払ってください、最高三百七十四万貸しますから、三%とか、こう書いてあります。今回の法案では、その部分について、その部分を国が負担する、こういうふうになされている。私は、大変な大きな支援だと思います。
 この点について、厚生労働大臣、中国残留邦人についてもこういう形をとるべきだと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 この法律は厚生労働省もよく検討に参加をさせていただいてつくったものでございますが、議員立法として皆さん方が合意をしてつくっていただいたものであることに間違いはございません。
 それで、その中で我々として考えていかなければならないことは何か。その中の一つとして年金があったわけでございまして、この年金の問題につきましても、もちろん中国残留孤児の皆さん方の問題もございます、あるいはまた沖縄の復帰後の問題等もございます。そうしたさまざまな問題がございますが、しかし、その中でまず、拉致の皆さん方の問題は、これは平時に起こった特別な事情によるものである。
 そうした立場に立って我々はこの法律をつくらせていただいたところでございまして、まずこの法律を一日も早く成立をして皆さん方におこたえをするということが最も大事なことだというふうに思っている次第でございます。
菅(直)委員 平時平時、戦時戦時と言われます。
 まさに戦時に戦争で亡くなった方で、軍人の皆さんについては軍人恩給が支給されております。私のデータが正しいかどうかわかりませんが、少ない人で年間百八十万、多い方で八百三十万、あるいはもっとの方があるかもしれません。約百六十万人の方に支給されております。その総額は一兆円を超えているのではないかと、毎年ですが、思います。私は、そのことについて、まさに戦争で亡くなった方の、軍人の皆さんに特に手厚いということについては、他の皆さんとの比較考量がありますけれども、そのこと自体は私は悪いことだとは思いません。
 逆に言えば、今回のこの中国残留邦人の問題も、戦争のときだから仕方がないんだという論理がどこに成り立つんですか。まさに、まず今回の拉致被害者についてきちんとした対応をするから次はこの問題に対してもやっていきたいというふうに答えられるのが本来じゃないですか。どうでしょうか、大臣。
坂口国務大臣 今回ここに提案されておりますこの問題は、拉致事件に関する問題であって、まず、とにかくこの問題について一日も早い決着をお願いしたい。私も、私の立場から申し上げているとおりであります。
 そして、それに加えまして、今御指摘をいただきましたように、これは中国残留孤児の皆さん方の問題もございましょう。あるいはまた、かつてはシベリア抑留の皆さん方の問題もございました。現在もあると言った方がいいのかもしれません。そして、沖縄から復帰をされました皆さん方の年金等の問題もあることも事実でございます。
 戦時に関しまして起こりましたさまざまな問題がございますが、こうしたことを考えていきますときには、戦時の問題は、それらを総合的に判断して、その立場というものを考えながら、そして結論を出さなければならないことは、これはもう菅議員もよく御存じのとおりでございます。
 そうした問題を整理していくということであれば、それは一つの方向でありますし、そして、そうした方向が今後なされる可能性を私は否定をしているわけではありません。しかしながら、現在この時点では、私は、この拉致の問題を早急に解決をしていく。この問題は、これは、今までの戦争にかかわります部分とは違うということを申し上げているわけでございます。
菅(直)委員 冒頭から申し上げておりますように、拉致被害者のこの支援法については我が党も賛成ですし、全党派が賛成の中で委員長提案になるわけであります。ですから、これをまずやるべきだというのは、まさにきょうの委員会でも採決が行われるわけですから、そのとおりだと思っています。
 そこで、同じ繰り返しになりますので、もう一点だけあれしておきますが、現在、この残留邦人で帰られた方の平均年齢はもう六十歳前後に当然なっているわけです。一番若い方で五十七歳です。
 今、裁判が起きているからと。よく、裁判が起きているからそちらの決着がつくまでというような言い方をします。これは薬害エイズの場合もある時期そういう言い方がされました。しかし私は、裁判で解決できる部分と、逆に言えば、裁判ではなかなか解決できないけれども、まさに国民を代表する国会が、あるいは内閣が責任を持って解決しなければいけない問題と、並行して存在すると思っております。だから、裁判があるからそれに任せるということではない。
 そういった意味で、もう六十代前後になられている方が大半でありますから、そういう点では、まずという言葉を私はあえて言えば信じたい。まず、この拉致被害者支援法ができた、そしてそれに続いて、この中国残留邦人についてもきちっとした支援をしていくと。
 この法律の表現は、帰国促進及び自立支援と書いてあるんですが、先ほど申し上げたように必ずしも自立できていない状況があります。安倍副長官も、この問題にはどの程度の関心をこれまで持ってこられたか私はよく知りませんけれども、ぜひ今の厚生労働大臣の、ある意味での、まずこの法案を通してからというお話を含めて、官房副長官にもぜひこの問題に、中国残留邦人についても力を注いでいただきたい。いかがでしょうか。
安倍内閣官房副長官 当然、政府としても、もう既にこの中国残留邦人に対しての対応ということについては決定をしていたわけでございますが、その中でいろいろな問題の指摘もあるということは十分承知をしております。
 認識におきましては坂口大臣が答弁されたとおりでございまして、しかし、私どもとしては、もちろん政府全体としてどうあるべきかということは常に考えていくということは当然なんだろう、こう思うわけでございますが、本日のこの委員会におきましては、拉致の問題、家族支援の法案についての成立に向けて、よろしくお願いをしたいと思う次第でございます。
菅(直)委員 そこで、日朝問題についてもう一度話を戻しますが、いわゆる平壌宣言の中で、核問題について、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」とあります。十月のクアラルンプールで行われた日朝の会談の中で、果たしてこの宣言どおりのことが北朝鮮から言われたのか。
 少なくとも、アメリカのスポークスマンや北朝鮮のスポークスマンの発言を聞く限りは、核開発について、それを認めた、あるいは少なくとも否定しなかった、こういうことが言われております。また、私が聞いたところでは、鈴木大使がクアラルンプールで話をしたときにも、核に対して、核開発をしていないという言い方はしなかった。しているという言い方もはっきりはしなかったけれども、アメリカに対抗して核は持てるといったようなことを言ったというふうにも聞いております。
 そうすると、この国際的合意というのは当然、九四年でしたか、米朝間で取り交わされた国際的合意、それに基づいてその後KEDOの枠組みが、我が国も協力することになってきているわけですが、その前提となる米朝間の合意も当然これは国際合意に含まれているわけですけれども、その合意自体が、遵守することを確認したということになっていないんじゃないですか。副長官、どうですか。
安倍内閣官房副長官 国際的な合意を遵守するということが平壌宣言に書かれているわけでございます。この合意の中には、当然、合意された枠組み、その上でのKEDOのプロセスがあるわけでございまして、このKEDOのプロセスにおきましては、まず、そもそも、朝鮮半島の非核化ということがうたわれているわけでございます。その点から、私どもも、それでは平壌宣言に反するではないかということを北朝鮮側に指摘をしているわけでございます。
 しかし、私どもが強く北朝鮮側にこうした問題の指摘をするということができるのも、平壌宣言において、彼らがこの平壌宣言に署名して、その中で国際的な合意を遵守するということをうたっているからでございまして、我々の彼らに対しての指摘の論拠にもなるわけでございますし、我々としては、正常化交渉を進めるためにはこうした約束はしっかりと守っていただきたいということを今後とも強く求めてまいる所存でございます。
菅(直)委員 答えになっていないんじゃないですか。
 私が言ったのは、クアラルンプールでの日朝間の交渉の中で、北朝鮮側が、この「双方」というのは双方の確認ですからね、日本だけが確認したんじゃない。金正日総書記も確認したんでしょう、小泉総理と二人がサインされたんでしょう。それに基づいての交渉の中で、これと矛盾したことを結果的に北朝鮮が言ったんじゃないですかと、その認識を聞いているんです。
 希望を聞いているんじゃないんです、期待を聞いているんじゃないんです。はっきり答えを下さい。
安倍内閣官房副長官 私どもは、この平壌宣言がしっかりと実行されなければ正常化は行わないというはっきりした立場をとっているわけでございまして、そのことは北朝鮮側にも申し上げているわけでございます。今、菅委員がおっしゃったことは、そのまま私どもは北朝鮮に言っているわけでございまして、そして、その中で大変交渉が難しい段階に至っているということでございます。
 しかし、私どもは、この平壌宣言に反しているのであれば当然正常化交渉は進まないし、よって正常化されないという認識でございます。
菅(直)委員 ことしの十月十五日のバウチャー米国務省報道官の談話によれば、北朝鮮が合意された枠組み及びその他の合意に違反して核兵器用のウラン濃縮プログラムを有していることを示唆する情報を入手した旨を北朝鮮に伝えたと。そうしたら、北朝鮮当局関係者はそのようなプログラムがあることを認めた、これはアメリカのスポークスマンが言っていることです。北朝鮮の方もいろいろ言っています。
 ですから、交渉の過程で、まだ平壌宣言が完全にだめになったというふうな扱いをしたくないということを言われるのは、それは交渉のプロセスですからわかります。ただ、現実に、クアラルンプールでの議論の中で、これと矛盾した発言なりそういうことが北朝鮮の代表者から言われているんじゃないですかと、その事実関係あるいは認識を聞いているんでありまして、そういうことであればそれをもう一回撤回してもらわなきゃいけなくなるわけでありますから、その認識を聞いているんですね。
 これは副長官に聞きたい点ですね、平壌宣言のとき同席されたのはあなたですから。
安倍内閣官房副長官 先ほどから申し上げておりますように、この平壌宣言を彼らがしっかりと守っていけば正常化交渉は進んでいき、そして正常化になるわけでございます。
 私どもの認識としては、この平壌宣言の中の、今菅委員がおっしゃったこの核の開発について、彼らがこの疑惑を払拭していない。このウランの濃縮計画を、検証可能な形でこれを廃棄する、やめてもらわなければ、これは枠組み合意にも反するし、よって平壌宣言にも反するわけでありますから、我々はそういう認識を先方に伝えている。当然、先方もその認識は持っている、私どもはこういうふうに思います。
菅(直)委員 同じ繰り返しは避けますが、KEDOに対して、外務省にお聞きしましたら、平成十四年度で十億三千九百万、平成十五年度の概算要求が十七億八千百万。このKEDOは、先ほど申し上げたように、米朝合意を前提として日本も協力するという枠組みの中で概算要求が出されているんだと思うのです。ということは、まだ壊れていない、まだ守られているという前提ですが、必ずしもアメリカがそういうふうに思っているかどうか。最近の報道では、アメリカ国内の議会でもこれについてはかなり疑問が出ているわけですが。
 副長官にお聞きした方がいいのかどうかわかりませんが、このKEDOの概算要求については、そういう前提でこれまでどおり続けられるわけですね。
齋木政府参考人 KEDOの枠組みでございますけれども、このKEDOにつきましては、私どもとしては、今国際社会が北朝鮮が行うであろう核開発を阻止する上での現実的な手段であるという認識、こういうふうに思っておりますので、今後ともアメリカ、韓国等KEDOのメンバーとよく緊密に連携をとってこのKEDOを進めていくということにおいては、方針は変わっておりません。
 委員がお尋ねの予算要求につきましても、確かに来年度要求につきましては十七億円強の予算を今概算ベースでお願いしているわけでございますけれども、KEDOの枠組みを維持するという方針のもとで今これをお願いしているところでございます。
菅(直)委員 もう時間ですのでこれで質問は終わりにしますけれども、冒頭申し上げましたように、拉致被害者の皆さんに対する手厚い支援については我が党も全面的に賛成をいたしております。そういう意味では、一日も早い法案成立を願いたい。また、家族の皆さんが日本にぜひ帰っていただけるように、これも、我が党を含め、政府含めて、全力を、これまで同様、これまで以上にお願いをいたしておきます。
 ただ、先ほど申し上げた中国残留邦人の問題も決して忘れていただきたくないということと同時に、日朝交渉、大変難しいわけです。そして、そういう中で、私も二度北朝鮮に行ったことがありまして、あるときは自社さ政権の与党の一員として行きましたので、外務省の担当局長も一緒でした。なかなか大変タフな交渉でありまして、朝の五時ごろもう一回たたき起こされて、交渉のやり直しみたいな場面にも遭遇いたしました。
 そういうことを経験しているだけに、この平壌宣言というものが一つの基準になっている、基本になっている、そのことを、総理も、あるいは我が国のみんなが、ある意味でそれを信じて政府の対応を見ているわけですから、余りそれと矛盾したことについて何か希望的な観測で言われるのではなくて、あるときにはちゃんとアメリカと話をして、どうするんだという形の中で、対応を、日本としての判断をしてもらいたい。
 だから、判断において、まだ可能性があるからいろいろ問題はあっても続けたいということが私はあってもいいと思いますが、判断の手前で、いや、向こうはまだ壊そうとは言っていないんだなどと言ってみても、少なくともアメリカと北朝鮮のスポークスマンが言っていることを見れば、明らかに矛盾したことを言っているわけですから、そういう点については、国内でいろいろやられることも重要ですが、アメリカとの関係においてもしっかりと議論を詰めて交渉に臨んでいただきたいということを最後に申し上げて、私の質問を終わりにさせていただきます。
坂井委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 きょうは、与党の議員立法というのに大変委員会の出席率が悪くて、非常に残念です。それから、きのう夕刻五時半からの理事懇で、急遽きょう与党側が委員会をやりたいということで、みんなもう大変な思いをして質問をつくってきたわけです。それなのにこのような出席ということは、これだけ重要な問題なのにひどい状態だと思います。それを指摘しておきたいと思います。(発言する者あり)
坂井委員長 今、委員の確保で電話しておりますので、そのまま続行してください。
 そのまま続行してください。武山君。
武山委員 きのう、本当に私たち、もうきょうは国立病院独法化の採決だけということで話が進んでおったわけです。急遽これをやりたいということで、皆さん協力して、もう本当に、国対の方で決まったということで、決まったことに対してはやはり約束は破ることはできないということでみんな準備してきたにもかかわらず、このような状態というのは、非常に国民をばかにしていると思います。私は、ぜひとめていただきたいと思います。(発言する者あり)
坂井委員長 今委員の確保をしておりますし、それぞれ出席、中に入ってきていますので、そのまま続行してもらえませんか。
武山委員 続行はできません。全員そろえてください。(発言する者あり)
坂井委員長 大体、通常からすると出席、また引き続き来ていますから、そのままちょっと、貴重な時間ですから。
 いいですか。そのまま続行してください。(発言する者あり)
 委員会は一人の欠席もあったらやらないというものではありません。それなりに今与党は来ているし、それは、だから、今委員会の招集を呼びかけているところですから、このまま続行してください。(発言する者あり)
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
坂井委員長 それでは、速記を起こしてください。
 武山君。
武山委員 それでは質問いたします。自由党を代表しまして、質問いたします。
 一九九七年の国会、もう五年も前になりますけれども、第百四十国会、二月三日に予算委員会において我が党の西村眞悟委員が拉致問題を指摘したにもかかわらず、それをずっと放置してきたという経緯があります。この国や政府の責任に対して、私は、なぜ放置してきたかということをやはり聞きただしておかなければいけないと思いますので、厚生大臣それから官房副長官にお聞きしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 この問題、極めて困難な問題であったわけでございます。その時々の政権においてそれなりの努力をされたんだろう、こう思うわけでございますが、今から考えれば、それぞれ反省すべき点もあったということは認識しております。
 そして、今般、九月の十七日に総理がピョンヤンに参りまして、金正日総書記との首脳会談を行った。その結果、現在五名の方々は日本に帰ってくることができたということではないだろうかと思うわけでございます。
 今までの反省すべき点は反省しながら、今後さらに結果を出していきたい、こう考えているところでございます。
武山委員 やはりもう少し突っ込んで、どう反省するんでしょうか。
安倍内閣官房副長官 これはそれぞれ、その時々のいろいろな困難な状況がやはりあったんだろう、こう思うわけでございます。ですから、これは、政府に反省しろというよりも、政府だけではなくて、それぞれ議員個人個人も含めて、何をやってきたかということもやはり反省していただきたい、こう思うわけでございます。(発言する者あり)
武山委員 議員個人として予算委員会でただしたんですよ。それを、政府や国の責任を横に置いて、議員個人個人だと投げるのは、本末転倒だと思います。国としての責任、それをぜひ言っていただきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 武山委員もかつては与党であったこともあったわけでございます。そういう中でいろいろな困難があったのも事実でございます。私自身もできる限りのことをやってきたつもりでございます。今いろいろとやじを飛ばされた委員もおられますが、そういう方々がどれぐらいの努力をされてきたのかと私は申し上げたい、こういうふうに思います。
武山委員 本当に恥ずかしい国会だと思いますよ、そういう議論をしているということが。政府としての責任を聞いているのに個人個人だと言うのは、それはもう副長官として恥ずかしい答弁だと思います。政府としての責任を聞いているのに、何で逃げるんですか。
安倍内閣官房副長官 今、小泉政権としては、私どもは、十七日に総理が決断をされてピョンヤンに行って、金正日総書記に責任を迫り、そして金正日総書記から、この拉致問題についても国家の関与を認めさせて、そして謝罪の意を表明させたわけでございます。さらには、工作船の問題についても国の関与を認めさせて、そして遺憾の意を表明させた、こういうことでございます。その経緯の結果、一カ月以内に五名の方々が帰ってきた、こういうことでございます。そして、私どもは、さらにその後、家族の方々の帰国を今求めて鋭意交渉をしている、そういうことでございます。
 今、それ以前の状況についての御質問であったわけでございますが、それはその時々の政府のいろいろな情勢が、状況があったと思うわけでございまして、しかし、そのときのことについては、それぞれ反省すべき点は反省する点も私はある、こういうふうに思うわけでございます。
 しかし、今大切なことは、これから五名の方々の子供たち、家族を日本に連れてこなければならないということで、私は全力を尽くしているところでございますし、政府また与党も一丸となって頑張っているところでございます。
武山委員 政府の最も悪いところは、責任をきちっと表明しないからなんですね。過去は過去としてきちっと反省をした上に立って出発しないから、いつになっても骨格がぐらぐらするという状態が常に起こるわけです。西村議員の話によりますと、拉致は福田内閣時代に知っていながら黙殺されたのが事実だというふうに言われております。
 それでは、国家賠償的なもの、これは今回の北朝鮮への国家賠償的な損害賠償を請求するのかどうか、お聞きしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 先ほどもお答えいたしましたように、国家によって、国家の機関によって多くの日本人が拉致されたわけでございます。そのことを、国際法的にどうなのか、総合的に判断をしながら、求めるべきものはしっかりと求めていきたい、こういうふうに考えております。
武山委員 当然、国家的犯罪なわけですから、国としてどうするのか。常に待ちの姿勢で、他のものはどうかとか、そういう答えが出てくるということ自体が主体性がないと思いますよ。国としてどうするのかということを最も一番最初に表明するべきだと思います。それを指摘しておきたいと思います。
 それでは、この責任をきちっと法律の中に組み込んでいる部分があるのかどうか、官房副長官に聞きたいと思います。
安倍内閣官房副長官 この法律は政府提出の法律ではないわけでございまして、これは議員立法ということでございますから、私がそれに対してお答えをするのは適切ではない、こう考えております。
武山委員 それも逃げだと思いますね。議員立法であっても、結局は政府の意向がその中に入っておるわけですから、国としてもこうやりたいという意向があってつくるんじゃないですか。そういうふうな責任のとり方はしないでください。
 ですから、そういう考え方をしていること自体が、国家としての、政府としての、国としての主体的な発想がそこから出てこないということになるんですよ。常にあっちに、これは議員立法だからと。逃げの姿勢がまさに一番問題だと思います。そこを国としてしっかりと答えていただきたいと思います。
坂口国務大臣 この今回つくられました法律の「目的」のところには、その趣旨が書かれてございます。「北朝鮮当局による未曾有の国家的犯罪行為によって拉致された被害者が、本邦に帰国することができずに北朝鮮に居住することを余儀なくされ」、そうしたことを初めといたしまして、「本邦における生活基盤を失ったこと等その置かれている特殊な諸事情にかんがみ、被害者及び被害者の家族の支援に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにする」ということが書かれているわけでありまして、そういう趣旨でこの法律はつくられているわけでございます。
 先ほど西村議員のお話、出ましたが、確かに西村議員が御質問になりましたのは、私も聞いた記憶がございます。それから、安倍副長官が外務委員会において質問されましたのも、私はその場で聞いた経緯がございます。多くの皆さん方が取り上げていることも事実でございます。
 また、過去の内閣が何もしなかったかといえば、それはそのときそのときでいろいろの御努力をされた経緯もあるわけでございますが、相手が相手でございますから、なかなか認めなかったという経緯がございます。しかし、今回そのことを率直に認めたということでございまして、ここに前進を見たわけでございます。
 過去の問題につきましては、率直に我々も反省をしなければならないというふうに思っておりますけれども、しかし、今日まで十分に対応できなかった、そういう国際環境のありましたことも事実でございます。
武山委員 そこの、国としてできなかったというところを、きちっとやはり言っておくべきだと思うんですよね。相手の悪いことばかりでなく、それに対して国がどう積極的な姿勢をとるか、どう対応したか、そこが一番大事なところなんですよね、責任の部分で。それで、国民が最も聞きたいところを、言葉少なに、そしてはっきりとした責任をあらわさずにやるやり方は、今までの体制とちっとも変わっておりません。構造的な意識の変革だ、構造的な日本人としての意識を変えていこうとする、今まさに国家的なそういう方向に向かっているのに、現に発言する内容がそういうふうにして消極的であるということを指摘しておきたいと思います。
 それでは、我が党では、これを法律にしなくても処遇や待遇が対応できるんじゃないかという議論も実は出たんですね。これは行政措置、予算措置でできるんじゃないかという議論も出ましたけれども、その点について、坂口大臣、いかがでしょうか。
安倍内閣官房副長官 立案をされました法案につきましては、給付金の支給や年金の特例を実施するためには法律上の手当てが必要でございます。またしかし、他の施策については必ずしも法律の手当てが必要でない部分もあるわけでございますが、先ほど委員がおっしゃっていた国会としての意思、そして国としての意思をあらわすためにも、法律の中に盛り込んで、そして総合的な支援を行っていくということをはっきりさせるべきであろう、我々はそう考えたわけであります。
武山委員 そうしましたら、先ほど、まだ既に北朝鮮に拉致されているという可能性のある方々も、帰ってきたらこの法律の適用の中の範囲ですというお答えをいただいたんですけれども、それでは、一点は、例えば死んでしまった人、あるいは殺されてしまった人、生死のはっきりしていない人、こういう方々はどうなるのか、この法律の中で。
 それから、我が党で議論をしたときに出てきた議論の中で、いわゆるよど号の奥さんたち、これも拉致といえばこの対象に入ってくるんじゃないか、この辺のいわゆる区別分け、これをどうするのかという議論が出ました。それに対してお答えいただきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 私どもといたしましては、現在、残りのこの五名以外の方々については死亡したというふうには考えていない、あくまでも生存を前提に北朝鮮側に今求めているところでございますから、死亡ということを前提にしたお答えはできない、こう考えております。
 また、拉致被害者の認定につきましては、総理大臣が行うということでございます。現在のところ、十件十五名ということでございます。
武山委員 それでは、もう一つ私の質問に答えていただきたいと思いますけれども、よど号で帰ってきた奥様方はどうなるんですか。
安倍内閣官房副長官 私どもは今、対象として想定しておりません。
武山委員 それは、想定していないということを議論されたことだと思うんですけれども、でも、拉致といえば拉致じゃないかという議論もあったわけなんですね、我が党では。一切想定していないというふうに判断してよろしいんでしょうか。
安倍内閣官房副長官 これは政府提出の法案でございませんから、本来私がそれについてどうであるかという解釈を述べるのは必ずしも適切ではないわけでございますが、政府としての解釈としては、支援法の対象となる拉致被害者としては、拉致という北朝鮮による国家的犯罪行為によって、本人の意思に反し、本邦に帰国することができずに北朝鮮に居住することを余儀なくされてきた者を想定しているわけでございます。
 具体的には、国内においては、刑法第二百二十六条の国外移送目的拐取罪に当たる行為等、略取及び誘拐の罪、国外においてはこれに相当する行為が中心になるものと考えております。
武山委員 それでは、議員立法の提出者の方はそこにいらっしゃいますか。(安部内閣官房副長官「いや、それは委員長提案ですから」と呼ぶ)
 委員長提案ですと、委員長、答えられるんですか、これに対して。
坂井委員長 今委員長は委員長席にいますので。
武山委員 そうしますと、これは議論が終わってから提案ということに結果的になるということ、それでは議員立法だと逃げるのはおかしいと思います。議員立法だから自分たちは政府の側としては答えられないということはおかしいと思うんですね、質問に対して答えられないということは。よど号事件のものに対しては、政府としては答えられないということでしたよね。これはあくまでも議員立法だからというふうに答弁されました。
安倍内閣官房副長官 いや、既に私はお答えいたしました。
 まず、議員立法であるから答えないということではなくて、これは、政府が出した法案を今この場に出しているわけではなくて、与党というか、与野党全党が一致して、委員長提案ということで出されるということでございます。ですから、そういう意味で、むしろ政府の立場として抑制的に申し上げたわけでございまして、責任があるとかないとかという話は別でございます。
 よど号の妻については対象にしていないということを既に私は申し上げております。
武山委員 それでは、シベリア抑留や、先ほどずっとお話が出ておりましたけれども中国の残留邦人、これらの方々への今までの国家としてのいわゆる支援ですね、これらやってきたこととの整合性、これに対して、厚生労働大臣から、どのように今回の法律と整合性を持たせるのか、お聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 先ほど菅議員からも御質問がございましたとおり、中国残留孤児あるいはまたシベリア抑留等の問題もあり、きょうは出ませんでしたけれども沖縄の問題もこれあり、さまざまな問題があるわけでございます。これは戦争という事態によって起こったものでございます。
 しかし、今回の拉致事件の問題は、これは平時において起こったものだということを先ほども申し上げたとおりでございますが、この平時に起こりました拉致事件はほかに類を見ないものでございまして、今日ここに皆さん方の御同意を得て、そして法律がつくられたものというふうに思っております。
 しかし、戦時中の問題につきましては、さまざまな立場の人たち、戦争中の各種団体、あるいはまた戦争中に外国におみえになった方、あるいはまたそのまま残留された方々の問題等々、さまざまな問題がございますから、その人たちの問題を考えますときには、そういう横並びの人たちの問題をすべて考えながらこれは決着を図らなければならない問題、考えなければならない問題であるということを私は申し上げているわけでありまして、その点で、この拉致された皆さん方の問題は、これは単純明快、比較をすることのない問題であって、そして皆さん方の合意を得ることができたというふうに私は理解をしているわけでございます。
武山委員 やはり法のもとの平等という視点からすれば、今お話しのようなものは当然出てくるわけですね。
 それで、私は、今回の拉致被害者についての特例措置、これは国民年金ですね、この特例措置を措置するということですので、それでは中国残留邦人等についても年金の特例措置を同じように拡大してもいいんじゃないかと思いますけれども、その点は厚生労働大臣、どう思いますでしょうか。
坂口国務大臣 先ほども御答弁を申し上げたとおりでございますが、そういういわゆる大前提としての違いがある。いわゆる中国の残留孤児の皆さん方も本当に御苦労されたことも事実でございますし、長い間外国において生活をされたことも共通をいたしております。しかし、そうした共通面もございますけれども、先ほどから申し上げましたような相違点も存在をするということでございます。
 私も、中国残留孤児の皆さん方が引き揚げられまして、そして、十分な生活をしておみえになると思っているわけではありませんで、大変御苦労をしていただいているということも十分存じ上げているわけでございます。中国残留孤児の問題等につきましては、先ほど申しましたように、いわゆる戦時中の問題として、さまざまなほかにも比較すべき問題がこれあり、これらのことを考えるときには総合的に考えなければならないということを申し上げているわけでございます。
武山委員 それではもう一つ。区別、差別、まあ区別化、差別化、これはしていかないといけないと思うんですけれども、それをどのようにしていくのか、もう一度厚生大臣にお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 区別とか差別とかをしているわけでは決してございません。考え方といたしまして、時代的背景、歴史的背景を考えながら、そうした戦時中の問題と、そしてそうでない平時に起こった問題とは、別個に切り離しながら我々は考えているわけでございますが、今後、また北朝鮮との関係がこれで国交が回復されるというようなことに事態が進んでいくということになれば、同じく北朝鮮に日本から戦前に行かれた方々の問題、あるいはまた、戦争が終わりましたときには中国におみえになった、その当時でいえば満州におみえになった皆さん方が北朝鮮に通過された、あるいはまた北朝鮮にそのまま滞在をされたというような問題もお聞きをしているわけでございまして、さまざまな問題が出てくるものというふうに思います。そうしたことをどう整理し、考えていくかということは、当然のことながら私は起こってくるだろうというふうに思っている次第でございます。
 しかし、現時点におきまして、そうした国交も回復をされていない段階のところで、それ以上のことを申し上げることはできないというふうに思います。(発言する者あり)
武山委員 そこを、今やじでも出ておりますけれども、整合性という意味で、一番大事だと思うんですよね。そこをしっかりと、法のもとの平等という点できちっとしていただきたいと思います。
 それから、拉致被害者の御家族が帰国することも含めて、歓迎しますけれども、その後の事情聴取などをきちっと行う必要があるのではないか、我が党の議論の中で出ておりました。事情聴取についてお聞きしたいと思います。
安倍内閣官房副長官 今の被害者の方々にとりましては、大変微妙な時期でございまして、まだお子様たちが向こうに残っておられるという状況の中で、果たして、御本人の方々も、自由な御意見を、また事情についての説明ができるかどうかということも勘案をしなければならないと我々は考えているところでございます。
武山委員 ぜひ、この法案を成立させる以上は、しかるべきときにきちっと事情聴取についてはしていただきたいと思います。それに対して、もう一度答えていただきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 その事情聴取というのは、どういう事情聴取、警察の事情聴取ということですか。
武山委員 すべてのことです。
安倍内閣官房副長官 現在の生活の状況等、また御要望等については、私はそれぞれ御本人から伺ったわけでございます。また、いろいろなことについてもお伺いをいたしております。
武山委員 官房副長官ともあろう方が事情聴取の中身が何かなんということを逆に質問すること自体がおかしいと思うんですよね。常識で聞く事情聴取というふうにお答えしたいと思います。
 それでは次に、今後、拉致被害者というのが実際に多かったとすれば、この法案の対象となり得るかどうか、そのときはどのように対応するのか聞きたいと思います。
安倍内閣官房副長官 この法案について、私どもの理解としては、総理が認定をするこの被害者がふえれば、当然この対象に入ってくるというふうに考えておりますし、また八名の方々についても、またさらに行方不明になった二名の方を追加して十名と言ってもいいのだと思いますが、御帰国をされましたら、当然このプログラムの中には入っていくということだろうと思います。
武山委員 一説によりますと、五十人とも九十人とも、百人以上いるのじゃないかとも言われておりますけれども、実際にそうであれば、この方々も入るんでしょうか。
安倍内閣官房副長官 現在におきましては十件十五名ということで警察は認定をしているということでございます。さらには、多くの方々が、もしかしたら私たちの子供は拉致をされたかもしれないということで、問い合わせは来ているわけでございます。そういう方々については警察において捜査をしていきたい、こういうことでございます。
武山委員 曽我さんの場合は最初の数には入っていなかったということで、これはもう断定できない、実際にどんな数かということは断定できないわけですから、この中にそういう方々も入るというふうに私は解釈したいと思います。
 それでは、最後になりますけれども、まず、この法律の中身の中で、特に自立支援を促すということで、整合性に対して最後に一言。他の、いわゆるいろいろな問題があると思うんですよね。新潟の少女監禁とか、シベリアの抑留だとか、先ほども出ておりました沖縄の問題だとか、国内だけではなく、今度、外国からも日本に対してそういう請求も起こってくると思うんですよね。すべての整合性に対して、最後に大臣から一言所見をお願いいたします。
坂口国務大臣 十分に御質問の趣旨をわきまえているわけではございませんが、日本の国内における問題、そして日本に対して外国が絡んだ問題、あるいはまた日本が外国に対して行った問題、それぞれあるだろうというふうに思っております。それぞれの事案によりましてその対応も異なってくるというふうに思いますが、これはトータルで誤りなきを期していかなければならない、そう思っております。
武山委員 終わります。
坂井委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 北朝鮮による多数の日本人の拉致という言語道断な国家犯罪により、二十数年の長期にわたって帰国が妨げられた被害者の方々の苦難は想像するに余りあります。私は、この被害者の御苦労に対し、この機会に心からお見舞いを申し上げ、そういう方々が一日も早く家族を日本に呼び寄せ、一家水入らずの生活を再建できるように、我が党としても最善の努力を尽くす決意であることをまず申し上げておきます。
 早速、昨日政府が決定した支援策についてお伺いをいたします。
 まず、拉致被害者等給付金についてでありますが、その支給額は厚生年金の標準年金額を参考にしていると聞いております。しかし、いただいたペーパーを見ますと、単身世帯で十七万円、夫婦二人の世帯で二十四万円しかありません。今後、家族が帰国したとして、一人加わるごとに一カ月三万円ずつ加算するといいますが、これでは食費がやっとという程度ではないでしょうか。私は、この給付額は生活保護基準を少し上回るだけで、余りにも低過ぎると思います。昨年、ハンセン病元患者が療養所を退所して以降の生活費をどうするかが問題になりましたときにも、政府は同じような低い水準を出し、厳しく批判をされました。
 今回、そういう国家補償という問題でないとか、早速働けるように援助すれば収入も得られるようになるとか、これは当座の生活費だとか、いろいろ言われるかもしれませんが、当座であっても生活保護水準と余り違わないというのは低過ぎると思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど副長官からもお話ございましたとおり、この法律そのものは議員立法としてお出しをいただくわけでございますから、それのよしあしにつきまして我々が申し上げるのはいかがなものかというふうに思いますが、ハンセン病の皆さん方の問題も例に出されたところでございます。このときの問題は、生活費とそれから福祉に、もう高齢でありまして、福祉に対する問題も含まれているというふうに承知をいたしているところでございます。
 あのときにもさまざまな問題がございましたが、既に退所をしておみえになります方は十七万六千円でございましたし、そして世帯のときには十九万二千円でございました。新規退所をされます方につきましては、単身の場合には、福祉の意味も含めまして二十六万というふうにお出しをした、それから、世帯のときには二十八万ということをお出しした、そういう経緯がございます。
小沢(和)委員 いや、私が特に言いたかったのは、生活保護費すれすれというこの水準は低過ぎるというふうに思わないかということをお尋ねしたわけであります。
 この給付金について、最初の月は月額の四倍を支給さるとされております。これは新しい生活の支度金とでもいうべきものだろうと思いますが、現在いただいておりますペーパーの額面では、夫婦世帯を考えた場合、最初の支給額は九十六万円にしかなりません。これでは、若い新婚世帯がアパートを借りるなどして生活をスタートさせるとしても、全く足りない額ではないかと思います。
 昨日説明を受けましたとき、最初の支給額を四倍にしたことについて特に根拠はないと言われておりました。私は、給付月額自体をもっとふやすとともに、スタート時には、月ごとの支給とは別枠で少なくとも百万円以上が支給されるように考えたらどうかと思いますが、いかがですか。
佐々木政府参考人 最初の支給月に月額の四倍としていることの是非ということを御質問でございますが、こうした趣旨は、永住を開始した直後には、呼び寄せた御家族との生活が新しく始まるということに伴う世帯としての出費、一時的に増加いたしますので、それを考慮したものでございます。
 現在帰国しておられる五人の方について申しますと、今後、御家族が皆さん帰国いたしまして永住を開始すれば、四人世帯あるいは五人世帯となるわけでございまして、最初の月の支給額は百二十万円または百三十二万円となるわけでございます。
 それから、拉致被害者等給付金の水準についてお尋ねございましたが、この金額の高いか低いかにつきましては、異なる立場からのさまざまな御議論があることを御理解いただきたいと思います。まずは制度を運用させていただきまして、その中でもし問題点があるとすれば、今回立案されております法案の中には三年後の見直し規定も置かれているものと承知しております。今後見直しの際に、被害者の置かれた状況などを勘案しまして検討していきたいと考えております。
小沢(和)委員 停止、減額要件も見直す必要があるのではないかと思うんです。私は減額開始の線を二百万円からもっと引き上げることが必要じゃないかと思いますが、特に、減額幅が月三万円というのが一つあるだけで、次は停止という二段階では実情に合わないのではないか、もっと何段階かを設けて減額し、所得の向上に応じて軟着陸していくように考えるべきではないかと思いますが、いかがですか。
佐々木政府参考人 停止、減額要件のお尋ねでございますが、減額幅が月三万円だけで、次は停止という点でございますが、私どもが案として考えているものでは、お子様が何人かいらっしゃいまして、その方が一人ずつ独立されていく。その中で、二百万円ずつの所得があるといった場合には、そのお子様一人が二百万円あれば三万、また別のお子様が二百万円ずつあれば三万、そういう意味では段階的なものかと思っております。
 またそれから、こういう要件をさらに細分化して、所得の向上に応じて軟着陸していくようにというお尋ねの件につきましては、これは私ども、いろいろなやり方というのを検討したんですが、精緻なやり方というのもあると思いますが、所得を正確に捕捉する困難性とか事務の煩雑、あるいは御本人、御家族の方に与える負担とかいったものを勘案いたしますと、なるべくシンプルな制度にした方がいいのではないか、こういう判断もありまして考えたものでございます。
小沢(和)委員 今帰国している五名の被害者は、差し当たり、親のところにおられますけれども、本格的に生活を再建するためには、まず独立して、別の住居を持たなければなりません。支援策にも、公営住宅への優先入居の取り扱いを行う、家賃についても減免等を行うことが可能とありますが、どの程度の優先入居を考えているのか。被害者たちの苦労を全国民がこれだけ理解しているのですから、あいているところがあれば、希望に応じて無条件に入居させても、どこからも不公平というような批判は出ないと私は思いますが、いかがですか。
佐々木政府参考人 公営住宅への入居についてのお尋ねでございますが、まず、優先入居につきましては、これは事業主体である地方公共団体の判断によって行われますので、いろいろな諸種の要素を勘案しまして、地方公共団体が適切に判断していただくものと考えております。また、家賃につきましても、実情に応じまして、地方公共団体の判断で減免等を行うことが可能となっております。
 さらに申し上げますと、地方におきまして適当な住居がないという場合には、民間住宅の借り上げによる公営住宅を供給するといった制度も可能でございます。
小沢(和)委員 いや、だから、私が聞いているのは、たまたま公営住宅に空き家があるような場合、無条件でそこに入れるというようなことも、もう当然あっていいんでしょうということなんですが、どうですか。
佐々木政府参考人 その点につきましては、あくまでも地方公共団体の判断ではないかと思います。
小沢(和)委員 次に参りますが、拉致被害者や家族にとって最も重要な問題は、雇用機会の確保だと思います。青年のころに拉致された被害者の方々も今や中年、壮年時代を迎えておられ、この年代は、普通の場合であっても再就職が難しい状況であります。子女の方々には、差し当たり、言葉の問題もあります。
 これについて支援策では、公共職業安定所の所長を長とした支援チームによる就職あっせんや職業訓練の実施という言葉がありますが、長く我が国での社会生活を途絶させられたというハンディを負った方々を支援する施策としては、どう考えても不十分だと思いますが、いかがでしょうか。ぜひ被害者の方々の要望を個別具体的によく把握し、相談して、必ず希望が実現できる方向で努力をしていただきたい。本当にここに書かれている程度のことしか考えていないんでしょうか。
坂口国務大臣 今お話がございましたように、雇用の問題はこれからの生活にとりまして一番大事な問題でもございますから、個別具体的にお聞きをしていきたいというふうに思っております。
 各ハローワークにおきましても、所長を長としてチームをつくり、取り組んでまいりますけれども、できるだけ人を決めて、そしてそれぞれにやはりきめ細かくお聞きをする。どういうお仕事が一番適当だというふうに思っておみえになるかということを御相談申し上げながら、そして、職業によりましてはいろいろの教育訓練もお受けをいただかなければならないというふうに思いますから、そうした訓練もお受けをいただくという一つの期間が必要であろうというふうに思います。その期間を十分にとりながら、そして雇用の問題をともに考えさせていただきたい、そういうふうに思っております。
小沢(和)委員 次の問題は通告していないんですが、当然わかる程度の質問ですからお尋ねさせていただくんですが、中国残留孤児だった帰還者等が一番苦労したのが日本語の習得でありました。ほとんどの帰還者が五十代後半以降の高齢者だったから、なかなか言葉が身につかず、どうしても片言まじりのため、東アジア系の外国人と間違えられがちで、就職の際に大きな壁となり、すぐに首になったりする原因となりました。だから、生活もなかなか再建できず、困窮に陥るケースが多かったわけであります。
 今回の場合、もともと拉致被害者本人は日本語には何の不自由もありませんが、これから呼び寄せる家族は大変だと思うのです。完全に朝鮮人として育てられ、日本語を全く知らないと聞いております。幾ら若い人が多く適応力、吸収力があるといっても、やはり大変だと思います。
 日本語が完全に使えるようになるまで、政府は責任を持って個別の援助を行うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
小熊政府参考人 御家族が御帰国になったときに、やはり日本の社会に適応するということが非常に重要だと私ども考えておりまして、帰国後でございますけれども、派遣形式による研修を一定期間行いまして、基本的な生活習慣ないしは日本語の指導等を集中に受けるようなことを、御家族の御要望、御本人の御要望を聞きつつやりたいということで検討しているところでございます。
小沢(和)委員 次に、老後保障の問題として、国民年金の特例措置についてお尋ねをいたします。
 私がこれを見て不思議に思いましたのは、例えば現在帰国されている被害者の方でも、看護師だったとか郵便局に勤めていたという方もあります。この場合、こうした職業の年金制度に当時は当然加入していたはずであります。こういう方々には厚生年金であるとか共済年金などの適用を検討すべきではないか。国民年金の額を保障すればいいというのでは不十分じゃないでしょうか。
吉武政府参考人 拉致被害者の方々の中に、拉致をされました当時被用者年金の加入者であった方がおられますし、あるいは国民年金の被保険者だった方がおられます。ただ、拉致ということによりまして、現実には厚生年金の適用事業所あるいは被用者年金の適用のあります事業所との関係がなくなっております。それから、当時学生の方もおられますし、五十三年からこの二十四年間に、もし拉致されなければ被用者年金の適用の事業所にお勤めになった方もおられるかもしれません。
 被用者年金という関係でこの問題を考えますと、現実にこの二十四年間、すべての方が適用がなかったという状態がございますので、なかなか被用者年金の枠組みの中でこの問題を解決するのは困難ではないかというふうに考えております。
 私どもは、今のようなこともございまして、今回の非常に特別な事情といいますか特殊な事情にかんがみまして、拉致された、そのことによりまして本邦における生活基盤を失われたことに対しまして、全国民が必ず加入する国民年金におきまして、拉致された期間を被保険者の期間とみなしその保険料に相当する費用を国が負担する、こういう特例措置が講じられるのではないかというふうに理解をいたしております。
小沢(和)委員 だから、私が言いたいのは、そういう特例措置を講じてもなお、実際にその人たちは厚生年金や共済年金の加入者としてその後ずっと勤務したであろうということが想定されるわけなんですから、それに見合ったような手を、保障というか、行っていくべきだということ、これはぜひ検討していただきたいということを指摘しておきます。
 帰国等に伴う費用の負担についても、一言お尋ねしておきたいと思います。
 中国帰還者の場合、我が国での永住定着後も、中国に在住する家族との往来等のため、年一回分の往復旅費が支給されると聞いております。
 拉致被害者の場合、今後の交渉の道筋が不透明、複雑な事情もありますが、北朝鮮に家族が残ったりするという場合もあり得ると思うのです。そういう場合の往来のための旅費についてはどうお考えになりますか。
佐々木政府参考人 政府としましては、被害者及びその家族のまず安全の確保、そして早期帰国等のため最大限の努力をすることが責務であると考えております。
 その際、被害者とその御家族の方々には、そろって我が国に帰国していただきまして、我が国の社会でともに安心して生活していただくというのが一番望ましいとは考えているところでございますが、被害者の配偶者、お子様等で事情により一時帰国を望むという場合には、一時帰国に要する費用につきまして、一定のルールのもとで負担することとしたいというふうに考えております。
小沢(和)委員 だから、一定のルールというのは、これは中国の帰還者の人たちの前例があるから、それを念頭に置いて対処する、こういうことでしょう。
佐々木政府参考人 これにつきましては、法律ができました後、また内閣府令で定めることになろうかと思いますけれども、そうしたものなども参考にしながら今後検討していくことになると思います。
小沢(和)委員 また、支援の年限が永住帰国を決意してから五年とされておりますが、これも私は余りに機械的ではないかと思うのです。
 今後の実施状況、被害者たちの生活再建の進行状況などを見て延長等もできるようにしておくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
佐々木政府参考人 拉致被害者等給付金の支給の上限を五年としている理由をまず申し上げますと、まず、この給付金の趣旨といたしましては、帰国被害者の方の自立を促進しまして、生活基盤の再建または構築に資するということでございます。
 こうした趣旨にかんがみまして、一方では、そういう失われた生活基盤の再建にはある程度の年数がかかると思われるということ、他方で、被害者の方々が少しでも早く我が国の社会で自立して生活できるよう国もその支援に取り組むことが責務でございますので、適度な年数を設定して被害者等の自立実現の一つの目途にするということが望ましいのではないか。こうしたことを総合的に考慮いたしまして、給付の年限を五年と定めたものでございます。
 また、先ほども御説明いたしましたが、このたび立案されました法案の中では、施行後三年を目途として見直すという規定も入っているようでございます。この法律の実施状況等を勘案して検討を加えた結果として、支援期間の延長ということも可能性としてはあるのかなと考えております。
小沢(和)委員 次の質問も事前の通告をしておりませんが、被害者が帰還したふるさとの町では、その受け入れのためにかなりの経費を負担しております。
 私が聞いているところでは、曽我さんの地元である真野町からは、町が要した経費の補てんについては、特別交付税ではなく国庫支出金として、目に見える形で国からの支援をお願いしたいというふうに訴えていると聞いております。
 私は、自治体の要望としてもっともな話ではないかと思いますが、政府はこれにどうこたえられますか。
小熊政府参考人 私ども、今回の総合的な支援策を実施していくためには、国と地方公共団体が緊密な連携をとっていかなければならないと考えております。
 そのため、地方自治体と私ども、連携を強める意味で、お互いの連絡網をつくったり、ないしは私どもの職員を長期出張という形でその自治体に派遣したりしております。また、先般は、自治体の関係者と私どもが会議を開きまして、意見交換を行ったところでございます。
 そういう中で、自治体の要望を聞きながら検討してまいりたいと思っております。
小沢(和)委員 ここで、中国帰還者の支援制度の問題でお尋ねをいたします。
 現在、六百人以上に上る中国から帰還されたいわゆる中国残留孤児だった方々などが、国家賠償請求訴訟を準備していると報道されております。これらの帰還者の方々は、国の施策はまさに棄民、国民を捨てる政策だと憤っておる。
 今、北朝鮮の拉致被害者に日本じゅうの視線が集まっている中で、中国からの帰還者が、同じ温かい目がなぜ私たちには向けられないのか、私たちを忘れないでほしいと悲痛な声を上げているとマスコミにも大きく報じられております。
 中国帰還者は、帰国直後四カ月だけ定住促進センターに入り、初歩的な日本語を習い、基本的な生活習慣を身につけるように研修を受けます。しかし、その後は、若干の日本語指導や就職援助こそあるが、ほとんどいきなり自立を求められる。その結果、帰国して十年、二十年たっても多くの方が就職できず、生活保護に頼るしかなく、高齢や持病に苦しんでいるということになります。先ほども触れたとおりであります。これではうまくいくはずがありません。
 だから、北朝鮮の拉致被害者と家族への支援を手厚くするとともに、中国帰還者への生活支援等も、これまでの反省の上に立ち、今日の深刻な不況に対応できるよう充実させていくことが必要だと思いますが、これは大臣に、今私が指摘した問題についてどうお考えになるか、見解を伺いたい。
坂口国務大臣 先ほどからこの前提になります考え方等につきましては何度か申し上げたところでございますので、繰り返して申し上げることは控えさせていただきたいというふうに思います。
 中国残留孤児の皆さん方も大変高年齢でございますし、語学研修等も何度かお受けをいただいておりますが、しかし、年齢の壁というものもございまして、率直に言って進んでいないという状況がございます。中には、言葉もさることながら、その前に、例えば中国なら中国における文字そのものにつきましても、理解を十分にされます方とされない方とがおみえになるといったようなこともございまして、いわゆる漢字を書いて、あるいは文字を書いてというようなところもなかなか不十分だということもお聞きをいたしているところでございます。
 いろいろと我々も考えられることをしてさしあげているつもりでございますが、結果としては十分になっていないことは御指摘のとおり、私たちもそこはそうだというふうに思っている次第でございます。今までからもさまざまな手を差し伸べてまいったつもりでございますが、今後も一層努力をしたいと考えております。
小沢(和)委員 シベリア抑留者への措置の問題についてもお尋ねをしておきたいと思います。
 昨年来、私は何度か大臣にお尋ねをしましたが、二十二日には、南方からの帰還捕虜に支払われた労働証明書に基づく賃金支払いを我々にも行ってもらいたいと、八十歳以上の方の多いシベリア抑留者多数が国会前で座り込みを行いました。
 私は、念のため、二十日にロシア大使館の一等書記官に来てもらいまして、シベリア抑留者に九二年以来発行されております労働証明書はロシア政府の公式の文書かどうか説明を求めましたところ、公式の文書であり、日本の外務省にも大使館から口頭と文書で労働証明書発行について公式に通知をしたと伺いました。
 抑留者の方々も、我々は戦後いわば大量に拉致された被害者だとの訴えもありましたし、不公平な措置の是正を強く求めております。
 大臣は、前回の答弁の中では、外務大臣等とも直接話し合ってみたいというふうにもおっしゃっていただいたわけでありますが、その後どうなっているか。ぜひ早急に是正していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 前回にそういう御質問を受けたことも事実でございまして、たまたまでございますけれども、きょうお昼から外務省の方とお会いをいたしまして、お話をすることになっております。またその中でお聞きをしたことをお伝えしたいというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 我が党は、昨日政府が決定した今回の支援策は、全体として見れば大きな前進を示しており、評価できると考えております。本日の委員会では、質問終了後、この支援策に法的裏づけを行うため、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律案を委員会として起草する予定になっておりますが、我が党は、これにも積極的に賛成いたします。
 最後に、政府に対し、拉致被害の今後の真相解明と、五名の拉致被害者の家族を一日も早く日本に呼び寄せるための最善の努力を重ねて要請し、質問を終わります。ありがとうございました。
坂井委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 私は、拉致被害者の皆様そして御家族のこの二十数年間を思いますと、本当に心が張り裂ける思いがいたします。この許しがたい国家犯罪に対して、これまでの政府の対応はもちろんのこと、我が党の取り組みの足りなさに対して衷心よりおわびを申し上げ、今後徹底した真相究明とできる限りの正常化に向けて努力することを党としてしっかりこの場で誓いたいと存じます。
 あわせて、現在帰国された五人の方々が日本で安心して暮らせるよう、その一助となるように、この拉致被害者等の支援法に賛成し、一日も早く充実した支援策が講じられるように一生懸命頑張っていきたいと思っております。
 先ほど安倍副長官が、政府の取り組みの問題、その御答弁の中で、一人一人、一個人として政治家がどのように向き合ってきたかということをそちらから投げかけられました。私は、私自身の取り組みの中で痛感した問題をまず最初にお話をし、質問をしたいと思います。
 私は、被爆者の方々の問題を私自身の一つの仕事として取り組んでまいりました。特に、在外の被爆者問題をやってまいりました。韓国そしてブラジル、アメリカ、現在世界で三十三カ国に被爆者の方々が暮らしていらっしゃいます。しかし、国交のない北朝鮮に対しましては、その人数が何人いるかもわからない、そして、そこでどのような医療を受けていらっしゃるか、どのような暮らしをしているかわからないという現実がありました。
 一九四五年のあの敗戦までは日本人として日本で強制的に働かされていた人々が被爆をし、八月十五日からはもう日本人じゃないというふうに宣告をされ、多くの方々が被爆という重い障害を持って祖国に帰られました。考えてみますと、平均年齢が七十五歳を超えて、年々亡くなっているという状態が在日の被爆者の方々から寄せられました。
 私は、いても立ってもいられない思いと、いま一つには、解明されていないさまざまな問題に対して、アリの一穴でもいいので頑張りたいと思って北朝鮮に参りました。九九年八月、初めてピョンヤンで原爆展が開かれました。それに参加をいたしました。
 そして、一昨年、二〇〇〇年の七月に再び、この被爆者問題で何とか信頼関係を持ちつつ、私にできることは何なのか、そう思いながらピョンヤンに参りました。私は、横田めぐみさんの写真の姿を脳裏に刻みながらピョンヤンの町を歩いて、横田さんの姿も捜しました。でも、結局は、被爆者の問題やこの拉致の問題は政府間交渉でしかなし得ないということを痛感いたしました。
 交渉をしようとするたびに窓口が変わってしまう、責任者の姿が見えない。それでもあきらめないことが大事だ、そんな思いで、北朝鮮に対して、被爆者問題の解決と、そして日本で言われているさまざまな問題に対して話し合いを持ちたいと思って参ってまいりました。しかし、本当に野党の一議員のそのようなある意味では行動は、全く話し合いのテーブルにさえ着けない。
 それで、私は思い余って、これは政府間交渉に持っていっていただく以外にないと思いまして、外務省、日本赤十字に調査を依頼しました。初めて被爆者の調査団が北朝鮮を訪れました。そして、帰ってきてから日朝国交正常化交渉のテーブルの中でこの被爆者問題をしっかりと議論していくと言われておりました。
 私がここでやはり言いたいのは、政府間交渉でなければしっかりとした情報も得られない、信頼関係を結ぼうと思っても、一個人の言動は非常に軽いということを痛感いたしました。
 そこで、坂口大臣に伺います。北朝鮮に対して、この被爆者問題は一円の援助もされていません。年々亡くなってまいります。国交がないこの国に対しての被爆者問題、今回の正常化交渉のテーブルの中で一言でも議論になったでしょうか、坂口大臣はそれを要求されたでしょうか。
坂口国務大臣 北朝鮮との国交交渉はこれからでございます。これからの中でさまざまな問題が検討されるというふうに思いますけれども、しかし、その入り口にありますのは、何と申しましてもこの拉致問題でございます。これに対する決着なくしてそこから先に進むことはできないというふうに認識をいたしております。
中川(智)委員 在外被爆者問題、これは、国交のある国々との問題では今たくさんの裁判が起きております。十二月五日、郭貴勲さんの高裁判決が行われます。これに国が再び負けたとき、私は絶対控訴をすべきではない。命がけで裁判を闘っている被爆者に対して控訴をすべきでないと私は思いますし、これ以上被告席に大臣が、国が座るべきではないと思いますが、大臣のお考えを聞かせてください。
坂口国務大臣 裁判でございますから、勝つことも負けることもあるだろうというふうに思いますが、それは裁判の結果を見せていただきまして、そのときに判断をしたいと思います。
中川(智)委員 ハンセンの問題では、一審で控訴断念を決断いたしました。やはり戦争中のさまざまなたくさんのことを引きずっている人が高齢になって、自分たちも一緒に救ってくれという叫びが裁判となり、そして一審で勝ち、もしも高裁で勝って再び控訴をすると、そのような国の姿勢が国際的にもどのように見られるかということをしっかり考えて対処をしていただきたいと思います。
 また、五億円の在外被爆者に対する施策も講じられましたが、これは、この国に来たら、日本に来たら医療を受けさせてやる、ほかの国ではそれはできないということで、来てからの医療費また渡航費の費用に充てられています。
 私は、ソウル、大邱に参りまして、被爆者の方々数百人とお会いしました。施設の外に出ることさえままならない、それほどの健康状態の中で、皆さんの希望は、今被爆者援護法が適用できないのならば、医療費にその五億円を使ってほしいという声がたくさん寄せられていて、その五億円は今宙に浮いた形になっております。お金は、生きて使ってこそお金になります。
 やはり大臣、この五億円の使い方に対してもっと柔軟な対応をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 在外被爆者の問題につきましては、韓国、北朝鮮のみならず、ブラジル、アメリカを初め多くの諸国があるわけでございますから、この在外被爆者の問題はトータルでと申しますか、各国平等に眺めながらこれは議論をすべき問題であるというふうに考えている次第でございます。
中川(智)委員 私は、今のお答えでは承服しかねますが、またこの問題はしっかりとさせていただきたいと思います。
 続きまして、福田官房長官も話されている問題ですが、いわゆる脱北日本人妻のことで安倍副長官に伺います。
 福田官房長官は、脱北日本人妻の今の経済的に非常に困難な状況にかんがみまして、こういう方々を保護したり安全を図ったりするということは政府の義務だということを話されています。帰国後の非常に困窮した生活を余儀なくされている脱北日本人妻の処遇について、自己責任で突き放すことは過酷だと思いますが、いかがお考えでしょうか。
安倍内閣官房副長官 今の御質問にお答えをする前に、先ほどの在朝被爆者問題について、クアラルンプールの正常化交渉の場において我が国が意見を言ったかどうかということでございますが、クアラルンプールにおきましては、私どもは、私どもの立場、在朝被爆者についての立場を申し上げたということでございます。私どもの立場というのは、被爆者の方々がおられれば、日本に来ていただいて、日本で治療をするということでございます。
 私どもが先方に、治療費を北朝鮮側に渡すというような、そういうような御指摘もされたんですが、そうすれば果たして本当にその被爆者の方々の治療をするかどうかということに私どもは確信を持てないわけでございますから、当然私どもは、日本に来ていただいて、治療を私どもの責任で行うという私どもの立場を述べたということでございます。
 また、当然、クアラルンプールでの会談におきましては、私どもの最優先の課題である拉致問題について中心に、入り口において議論をするというのは、これは至極当たり前のことであろう、こう考えております。
 続きまして、日本人妻の脱北者についての支援ということでございます。
 これは、拉致被害者と同様に扱うべきかどうかということについてはいろいろと議論がある、このように思います。一般論として申し上げますと、御指摘のような支援の問題については、関係者の身の安全、人道上の観点等の種々の観点を総合的に勘案しながら真剣に検討を重ねていくべきもの、このように考えているところでございます。
 ただし、北朝鮮からの脱出者に関する問題については、関係者の安全とプライバシーの観点から、事実関係を含め、コメントはできないということでございます。
中川(智)委員 今の副長官の被爆者の方のことでもう一点伺いたいんですが、国交が正常化されていない状況の中で、それがスムーズに行われる、向こうから被爆者の方々がいらっしゃるというルートに対しては、どのように考えればよろしいんでしょうか。
安倍内閣官房副長官 これは、基本的には北朝鮮側が我が国に要求をするという立場にあるというふうに考えているわけでございますが、私どもの立場としては、お越しをいただきたい、お越しをいただいた上で治療をしていきたい、こう考えているところでございます。
 また、数等の把握についても、これは極めて難しいわけでございます。先ほど委員が、横田めぐみさんのお顔を頭に刻み込みながら町を歩いたということでございますが、しかしながら、朝鮮労働党と友党の社民党といえども、自由にピョンヤンの町をだれかを捜して歩くということはできないんだろう、こういうふうに考えるわけでございます。そういう意味からも、把握というのは大変困難であるということでございます。
中川(智)委員 今の、本当にそれはおかしいと思います。私はいろいろな施設に行きました、幼稚園とか病院とか。そんなときに、車で動くこともあります。ホテルに入った後、自分自身で道を歩くということはあるわけです。それに、今、友党というふうにおっしゃいましたが、はっきりと今回の拉致に対してはないと明言していた北朝鮮の労働党に対して抗議文を送り、その返事も一切もらえないというのは、友党関係を凍結したというのが事実です。その認識に対して、いまだにそのような形で公党に対して話されるのは、それは認識が全く間違っているということを申し上げます。
 最後に、年金関連で私は伺いたいんですけれども、今回のこの措置法に対しては、本当に一生懸命私たちも賛成をし、そして、より充実した施策を今後も求めてまいります。
 しかし、在日の無年金問題、坂口大臣にお答えいただきたいんですが、坂口私案が出ました。歴代の厚生大臣の中では初めて、ここまで踏み込んで在日の無年金問題を言われました。実態調査をされるということですが、この実態調査のタイムスケジュールを的確にお答えください。
坂口国務大臣 無年金障害者と申しましても、なかなか内容は一律でございません。さまざまな方がおみえでございます。また、実態も十分に把握されていないということでございますので、そうした人たちトータルで、現状どうなっているのかということを、まず来年からスタートしてこの実態調査をしたい、そういうふうに思っております。
中川(智)委員 今、これもまた時間が余り残されていません。日々、生活の困窮に向き合って、必死で生きている。一日も早い救済が大事です。来年からというのですが、結論はいつごろ出せるというふうにお考えでしょうか。もう少し親切な答弁をお願いします。
坂口国務大臣 これは始めてみないと、どれだけかかるかもちょっと不明でございますが、そんなに長くかからずに実態は調査できるのではないかというふうに思っておりますので、少なくとも来年の間には結論が出るものというふうに思っております。
中川(智)委員 この在日の無年金問題というのは、年金制度に入れなくて排除された人々の問題です。学生無年金、主婦無年金、たくさんの種類で困っていらっしゃる方がおられますが、この在日の無年金というのは、一九八二年まで在日外国人は加入できなかった、そのような問題です。加入したくても加入できなかった、制度から除外された方々なんですね。
 大臣は私案の中で、「年金制度を中心に考えれば、保険料を負担した者にのみ給付は存在し、それに従わなかった者は排除される。」とされています。これはあってはならないと思うのですね。国家から制度上排除されていました。当事者の責任は一切ありません。政策的移行期であったがゆえにこの無年金状態が発生されるという、学生や主婦の無年金とは違うんです、ここの御認識は在日の無年金者に対しておありでしょうか。では、部長に。
吉武政府参考人 先生今お尋ねの件でございますが、昭和五十七年に、難民条約への加入を契機といたしまして、人権規約の点も視野に入れながら、社会保障制度全般について外国人の方の適用を行ったわけでございます。
 それ以前の状態を申し上げますと、外国人の方に社会保障を適用するかどうかということにつきましては、政策的な判断の問題だったということでございます。厚生年金とか健康保険というような被用者年金、被用者保険につきましては従前から適用をやっておりましたけれども、国民年金、国民健康保険等については適用を行っておりませんでした。
 それで、この五十七年の社会保障の適用の当時、将来に向けて外国人の方に適用しよう、こういう方針で適用いたしておりますので、今おっしゃったような、もちろん拠出を当時できなかった方の年金の給付の問題が出ておりますけれども、これは、拠出を基本とする年金制度の中で手当てするのはなかなか困難な問題だろうというふうに私どもは認識をいたしております。
中川(智)委員 時間がございませんので、続いてまた質問したいと思います。
 最後に、安倍副長官、一言伺います。
 もうすぐお正月がやってまいります。お正月というのは、私の家も、今あちこち、ばらばらで暮らしておりますが、家族が集う。本当にお正月にこの五人の帰られた方々が家族と会えるように、一カ月と少しの時間の中でどのように努力されるか、最後に伺いまして、質問を終わります。
安倍内閣官房副長官 私どもといたしましては、被害者の方々の御家族の日本への帰国、一日も早く実現すべく努力をしていきたい、こう考えておりますが、しかし、現状においては、情勢としては大変厳しいという認識を持っております。
中川(智)委員 終わります。
坂井委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 残り十分のお時間をちょうだいいたしまして、私、社会民主党の阿部知子ですが、質問を続けさせていただきます。
 きょう、半日の論議で、ここに参加するだれもがこの法案の一日も早い成立を願うものであるということも、皆思いを一にしております。我が党も、基本的にそのような立場に立つものであります。
 そして、そうした前提の上で、以下、時間が許せば、三点にわたりお尋ねを申し上げます。
 一点目は、国交回復、国交正常化の問題であります。
 先ほど来、北朝鮮による拉致問題の真の原因が何であるかということについて、各、国政に身を置く者の個々人の責任、あるいは政党の問題、あるいは政府の問題等々指摘されておりますが、私は、この間ずっとこの問題を考えてまいりましたときに、やはり、一九六五年、韓国とは国交正常化が行われましたのに、北朝鮮とはそのような向きに強力に推し進めることができなかった、いわばこの政策的な大きなおくれが今回の拉致を招き、また、それゆえに、今日、小泉首相が平壌宣言を出されたことを本当に歴史の英断と思い、強く支持するものでございます。
 その立場に立ち、かつ平壌宣言を見直してみますと、この一番目に、国交正常化に向けて「あらゆる努力を傾注すること」、わけても両国間に存在する「諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。」とございます。先ほどの福島委員に対する安倍官房副長官のお答えでもこのことは繰り返されたと思いますので言をまちませんが、私は、一つだけ確認させていただきたいと思います。
 実は、今回帰国されておられる五人の方の帰国時、北朝鮮とはいわば期限を限っての帰国のお約束であったか否かということでございます。
 私は、その後、当然、我が国としてあるいは御家族と話されて方針の転換があってもそれはあり得ること、重要なこととも思います。だがしかし、もしも、この帰国時に北朝鮮とどのような取り交わしをなさったのであるか、ここについて国民の間に事実が伝えられておらないとやはり大きな問題と思いますので、この一点につきお願いいたします。
安倍内閣官房副長官 我が国が一、二週間で北朝鮮に帰すと約束をしたではないかというふうに北朝鮮側は、先般の正常化交渉の場においてそういう話をしたわけでございます。しかし、我が国としては、そういう約束ということを言うのであれば、そもそもなぜこの方々を拉致したのか、そういう約束ということを言うのであれば、十三歳の少女を学校の帰りにさらっていかないでもらいたい、こういうことを申し上げているわけでございます。
 そして、北朝鮮側も、この五名の方々の希望で一、二週間ということを私どもに言ってきたわけでございます。であるならば、その中でスケジュールをとりあえず組みましょうということであったわけでございますが、この五名の方々は既に、日本にとどまって子供たちが日本に来るのを待ちたいということを表明しておられるわけでございますから、既に事情は変わった。この約束ということもそもそもないわけでございますが、彼らが言っている主張の前提も存在しないというふうに考えております。
阿部委員 外交は交渉でございますから、確認事は言葉の一つ一つに至るまで、お互いに確認という作業を繰り返すものだと思います。そして、ここは本当に困難で粘り強い交渉ということを政府もお挙げでございますから、今の官房副長官のお答えですと、こちらはこう思っていた、あちらはこう思っていたという、そのずれを埋める手段がないように思います。これは今後、ありとあらゆる場面で出てまいりますことと思いますので、その点にぜひ留意されて交渉を進めていただきたい。
 そして二点目は、私が一番気になっております、北朝鮮に残されております御家族の、お子さんたちの問題です。特に思春期、十代の後半の子供たちでございます。ある日突然に御両親がいなくなられたという状態に対して、せんだって田中アジア大洋州局長が北朝鮮に行かれたときに、この残されたお子さん方の情報については何か得ておられるでしょうか。どのようにお思いか、どのように今お考えか、この点をお願いいたします。
安倍内閣官房副長官 質問にお答えする前に、日本側の主張と北朝鮮側の主張を並べられまして、両方とも一理あるような御意見でございましたが、私は全くそう思っておりません。
 そもそも、五人の方々を二週間出したから後で帰してくれというのは、五人の方々を物のように扱っているわけでございます。ゴルフのクラブを二週間貸したから後で返してくれというわけにはいかないわけでございまして、五名の方々には意思があるわけでありまして、五人の方々は日本にとどまるということをはっきりおっしゃっているわけでございますから、ここはもう交渉の余地はないんです。そのことははっきり申し上げておきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
 また、田中局長が先般北朝鮮側との話の中身につきましては、これは大変今微妙な状況でございます。既に外務大臣が中身についての概略についてお話をさせていただいているわけでございますが、詳細については控えさせていただきたい、こう思うわけでございますが、お子さんたちの現状等々についての言及はなかったと思います。
阿部委員 前段については論議が長くなりますので、私も安倍官房副長官の御意見と一緒で、御家族に意思があるものと踏まえております。その上でなおかつ質疑いたしましたが。
 二点目の、子供たちが今どのように思っておられるかという情報を、責任を持って、政府の責任で早急に集めていただきたいと思います。本当に、ある日突然親がいなくなったと子供は思うわけです。そのときに生ずる不安と動揺というものは、時間が長引けば長引くほど傷が深くなります。先ほど中川智子も申しました、年末を控えて、例えば、本当に家族も心の中から安らげるということは、この支援法ができ上がり、なおかつ子供たちの心のありさまが家族に伝わったときかと思います。この点についてきちんとしていただくことをお願い申し上げます。
 三点目は、国際機関の活用でございます。平壌宣言の三点目は、「双方は、国際法を遵守し、」とございます。増元るみ子さんの弟さんも昨年の一月に国連人権委員会にこのお姉さまの件を含めての調査を依頼され、ことし、再度、十一月、政府からも国連人権委員会に申し入れをされておると思います。今後の国際機関の活用について、特に国際刑事法廷等も七月から発効しておりますし、こうしたことを踏まえて、政府としてどのようになさるお考えかについて御答弁をお願いいたします。
安倍内閣官房副長官 子供たちの考えを何とか知るべきではないかという最初のお話があったわけでございますが、北朝鮮側からこういうふうに子供たちが考えているというふうなことを伺ったとしても、それは北朝鮮側がそう言っているというにすぎないわけでございます。ですから、その点につきましては極めて困難な状況があるということは申し上げておきたい、こういうふうに思います。
 国際機関を使ってはということでございますが、政府は先般、ジュネーブにおいて、拉致被害者の御家族等の代理人として、国連人権委員会の強制的失踪作業部会に対し、被害者の所在確認依頼の再申し立てを行ったところでございます。作業部会においては、今回の再申し立てを踏まえ、対応ぶりにつき検討が行われていることと承知をしております。また、人権問題等を扱うニューヨークの国連総会第三委員会において、国連代表部大使よりステートメントを行い、拉致問題に言及したほか、日本は同委員会で採択された強制的または非自発的失踪の問題と題する決議の共同提案国となり、国際世論を喚起し、北朝鮮を含む関係国の問題解決に向けた行動を促したところでございます。
 このように、我が国は、従来より国際社会に対しても我が国の拉致問題に対する立場について説明するとともに、この問題解決の重要性について訴えてきておりますが、今後、国際場裏において本件にどのように取り組んでいくかについては、事実関係を究明していく中で、いかなる対応が可能であり、また、最も効果的かという観点から検討していく考えでございます。
阿部委員 この被害に遭われました方々の本当のお気持ちに沿って、これからも政府が責任持って今後の粘り強い交渉を続けてくださることをお願い申し上げて、質問を終わります。
     ――――◇―――――
坂井委員長 次に、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律案起草の件について議事を進めます。
 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。
 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。
 本案は、北朝鮮当局による未曾有の国家的犯罪行為によって拉致された被害者が、本邦に帰国することができずに北朝鮮に居住することを余儀なくされるとともに、本邦における生活基盤を失ったこと等その置かれている特殊な諸事情にかんがみ、被害者及び被害者の家族の支援に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、帰国した被害者及び帰国し、または入国した被害者の配偶者等の自立を促進し、被害者の拉致によって失われた生活基盤の再建等に資するため、拉致被害者等給付金の支給その他の必要な施策を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、この法律において「被害者」とは、北朝鮮当局によって拉致された日本国民として内閣総理大臣が認定した者をいい、認定に当たっては内閣総理大臣は、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するものとしております。また、「被害者の配偶者等」のほか、「被害者の家族」についても定義を置いております。
 第二に、国は、安否が確認されていない被害者等の安否確認及び帰国等のため最大限の努力をするものとすること、また、国及び地方公共団体は、有機的連携のもと、帰国した被害者等の支援のために必要な施策を講ずること等としております。あわせて、国及び地方公共団体は、被害者の家族に対しても安否情報の提供や相談に応じること等きめ細かな対応に努めることとしております。
 第三に、国は、被害者または被害者の配偶者等の帰国等に伴い必要となる費用を負担することとしております。
 第四に、国は、帰国被害者等が本邦に永住する場合には、帰国被害者等に対し、これらの者の自立を促進し、生活基盤の再建等に資するため、拉致被害者等給付金を五年を限度として毎月支給することとし、また、被害者が永住の意思を決定することにつき困難な事情があると認められる間は、当該被害者に対し、本邦に滞在している間の生活を援助するため、滞在援助金を毎月支給することとしております。また、これらの給付金等については、譲渡等を禁止し、かつ非課税としております。
 第五に、国及び地方公共団体は、帰国被害者等が日常生活または社会生活を円滑に営むことができるようにするため、相談に応じることや日本語習得を援助すること等必要な施策を講ずるものとしております。
 第六に、国及び地方公共団体は、公営住宅等の供給の促進、職業訓練の実施及び就職のあっせん並びに就学の円滑化及び教育の充実等の必要な施策を講ずることとしております。
 第七に、国民年金の特例として、拉致された日以降の期間であって政令で定めるものを国民年金の被保険者期間とみなし、国がその期間に係る保険料に相当する費用を負担すること等により年金額を改善することとしております。
 なお、この法律の施行期日は平成十五年一月一日とし、この法律の規定について施行後三年を目途として検討し、必要な措置を講ずることとしております。
 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
    ―――――――――――――
 北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
坂井委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 本件法律案につきまして、政府としては異議はありません。
 ありがとうございました。
坂井委員長 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております草案を北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂井委員長 起立総員。よって、そのように決しました。
 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時五十二分散会


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