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第7号 平成15年4月2日(水曜日)

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平成十五年四月二日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 中山 成彬君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 鍵田 節哉君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      石田 真敏君    岩倉 博文君
      岡下 信子君    金子 恭之君
      上川 陽子君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      高木  毅君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    原田 義昭君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 幸三君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 具能君
      家西  悟君    大石 正光君
      大島  敦君    加藤 公一君
      五島 正規君    城島 正光君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      佐藤 公治君    小沢 和秋君
      山口 富男君    阿部 知子君
      金子 哲夫君    山谷えり子君
      川田 悦子君
    …………………………………
   議員           大島  敦君
   議員           城島 正光君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         鈴木 直和君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            松崎  朗君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          坂本由紀子君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 青木  功君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     原田 義昭君
  西川 京子君     岩倉 博文君
  吉野 正芳君     高木  毅君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     上川 陽子君
  高木  毅君     吉野 正芳君
  原田 義昭君     金子 恭之君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     奥谷  通君
  上川 陽子君     石田 真敏君
同日
 辞任         補欠選任
  石田 真敏君     西川 京子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会申入れに関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)
 雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――
中山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及び城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房総括審議官鈴木直和君、労働基準局長松崎朗君、職業安定局長戸苅利和君、職業能力開発局長坂本由紀子君、社会・援護局長河村博江君及び政策統括官青木功君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤田正純君。
後藤田委員 自民党の後藤田でございます。
 今回の法改正につきましては、現行の雇用保険制度の安定的運用確保のためのものであるということであります。これにつきましては私もおおむね賛成でございまして、本日は、二十分の時間の中で、現行の雇用行政全般につきまして、またこの法改正につきましても、その根拠となる一部分につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、今現在、失業者の方、そしてまた失業の不安を抱える方々が昨今の経済情勢の中で大変多いという認識を私はしておりまして、その中で、その方々が再就職をするときに、私がよく耳にするのは、年齢制限の問題を言われるということですね。
 男女の雇用均等法につきましては、十年かかってようやく努力義務から義務化に変わったということでありまして、これも、何でこれが十年もかかるのかなということで、非常に私は不思議に思うわけです。しかし、今現在、年齢制限につきましては、平成十三年の十月からですか、雇用対策として、これも努力義務だというような状況だと聞き及んでおります。
 大体、四十以下だとか三十歳以下だとか、そういう雇用条件があると、みんな行けないわけですね。もう入り口のところで就職できない。でも、今大変なのは、子供の教育を抱え、また、お父様、お母様のいわゆる老後の、もし病気でもしたらお父さん、お母さんの世話をしないといけないということになると、四十代、五十代ぐらいの方々が、職を失った後に一番の不安を感じるわけであります。
 今現在の年齢制限について、私が聞く範囲においていうと、その努力義務ということについてすら、各地方の現状として、それが徹底されていないというようなことを聞きます。具体的に、厚生労働省として、努力義務ということが決まった以降、どういう徹底をして、今現在どういう検証をされているのか。
 そしてもう一つ。三つ目は、やはりこれは努力義務じゃなくて、義務に早急にするべきだと思うんですね。男女雇用均等ですら十年かかっているわけですよ。もうこれは一回学習しているんですから。あと、何か三年後、平成十七年ぐらいに義務化を三〇%とか、そういう計画をしているようですけれども、これについてはもう来年にでも何でしないのか、私には全く理解できないわけですよ。
 それについて、大臣に、現状の経済認識、失業状況の認識に基づいてお答えいただきたいと思います。
鴨下副大臣 おはようございます。よろしくお願いいたします。
 先生おっしゃるように、平成十三年の十月から、雇用対策法におきまして、労働者の募集、採用に当たっては年齢制限緩和の努力義務が設けられた、こういうようなところでありまして、特に、官民の職業紹介機関や経済団体、そして地方自治体等への働きかけを通じまして、事業主に周知徹底を図ってきたところであります。
 その結果、ハローワークにおける全求人に占める年齢不問求人の割合は、改正法施行前が、これは平成十三年の九月でありますけれども一・六%、これが最近では一三%程度と、一定の効果を上げてきていることは事実でございますけれども、ここ最近は横ばい状態にあるというのが現状でございます。
 こういうことで、ことしの一月から、募集、採用においては、求人年齢制限の緩和の徹底に向けまして、一三%程度である年齢不問求人の割合を平成十七年度に三〇%にしよう、こういうような目標をつくりまして、例えばシンポジウム等を含めてさまざまな施策に取り組んでいるというのが現在であります。
 ただ、先生がおっしゃるように、これを義務にしろというようなことについては、募集、採用の際の年齢制限を法的に禁止するということが今までの雇用慣行のいわば全般の見直しに極めて基本的にかかわるというようなことでありますので、労使を初めとする国民全体のコンセンサスを得ながら進めていくべき問題である、こういうふうに今考えておりまして、これから努力義務規定の実効性の向上を図っていく、こういうことに今の段階では全力を尽くしてまいりたい、こういうことでございます。
後藤田委員 そういうお答えが返ってくると思っておりましたけれども、しかし、男女雇用均等を義務化したことと同様に重要な問題だと思うんですね、年齢制限の問題というのは。だから、コンセンサスを得ながらといって、数年、十七年、あと三年後、これは行政の不作為じゃないですかね。
 私は、これにつきましては、立法府もそうかもしれないけれども、早急にやっていただかなくてはいけないし、じゃ、そのコンセンサスはどういうふうに得る御努力を皆様方は行政としてされているか。今、せっかく地方に労働基準局だとか労働局だとか、いろいろなところに出先があるわけですから、そこでやはりもっと早急に現状をヒアリングして、認識してやっていただきたい。
 これは本当に社会問題だと思うんですね。四十、五十代の方々がそういうことで就職の門を狭められて、そういう方々が、じゃ、どうなるのか。その子供さんに対しても影響があるし、将来的に社会福祉全般、社会保障全般にもかかわってくる問題なので、これをまた三年後なんというのはとんでもない話だと思っておりますので、これは与野党一致してそうお考えだと思いますよ。だから、全会一致でぜひ早急に、年齢制限の義務化、これについては強く要望したいと思います。
 もう一つは、週四十時間という話ですね。私、地元で中小企業の方々とお話をすると、経営者側も、何でそもそも四十時間なのという話だとか、働いている方々も、今やはりお給料が下がったりして、もっと働きたいというようなニーズがあったりして、これについても、私も、最近の経済状況とか日本独自の商慣行とか労使慣行を考えたときに、ちょっと最近は根拠不明になってきたんではないかなと思っています。
 これは、皆さん、行政にお伺いすると、閣議決定をしたということですよね。昭和六十三年の閣議決定後に、だんだん四十八時間から段階的に減らしてきた。これは昭和六十三年の話ですね。その状況の頭にもう凝り固まってしまって、それをただ単に続けているようにしか私には見えないわけですよ。
 だから、閣議決定というのはそれはそれなりに重い決定だとは思いますけれども、君子豹変するじゃないですけれども、朝令暮改じゃないですけれども、これについて、国際的にどうだとかじゃなくて、今の日本の状況がこうだから、そしてまた今までの、またこれからの日本の労使慣行がこうだから四十時間なんだということを、今改めてその根拠を示していただきたい。よろしくお願いします。
松崎政府参考人 週四十時間労働制でございますけれども、これは先生御指摘のように、従来、戦後四十年間にわたりまして四十八時間制でございました。これは御質問のように、昭和六十三年から平成九年まで十年かけまして、中小企業の実態等に配慮しつつ、段階的に短縮してきたということでございまして、その経緯におきましては、いろいろ審議会等で労使それぞれ納得して進めてきたという実態がございます。
 また、残業でございますけれども、これは労働基準法三十六条に基づきまして、あらかじめその事業場の労使が時間外労働協定を結びまして、いわゆる三六協定と言っておりますけれども、これに基づいて、ただいまの四十時間といったような法定労働時間を超えて残業させることができるというふうに、日本の企業の実態とか雇用慣行、そういったものに適合した格好にというふうにしておるところでございます。
後藤田委員 いや、だから、もう一回聞きますけれども、四十時間という、現下の経済状況と日本の歴史的商習慣、労使慣行の中においての四十という根拠、これを教えてください。ないならないでいいです。
 今のお話の関連で、では、例えば四十三時間にしましょうというのは、労使が納得すればいいんですね。どうぞ。
松崎政府参考人 この四十時間の根拠でございますけれども、これは、先生先ほど諸外国の例は除くと言われましたけれども、四十時間制というものが定着しているところから、やはりG7、先進国の一員として、法定労働時間は四十時間ということを目標にして労使、政府一体として進めてきたということが根拠になろうかと思っております。(後藤田委員「今は四十三の話。四十三はいいんですね」と呼ぶ)済みません。したがいまして、四十三ということについて……(後藤田委員「労使が納得すれば」と呼ぶ)いや、それはやはり、先ほど申し上げましたように、国際貿易をして生きていく日本といたしましても、その国際標準、基準でございます四十時間というものは守っていくべきものだというふうに私は考えております。
後藤田委員 ごめんなさい、今のをもうちょっと詳しくですけれども。労使が話し合いをすれば四十時間じゃなくてもいいんですよ、それは弾力的なことになっていると今おっしゃったけれども、では、労使が四十三時間にしましょうねと言ったら、それは問題ないんですね。
松崎政府参考人 冒頭御説明いたしましたように、所定労働時間を四十時間とし、そしてさらに具体的な労働時間を三六協定で四十三時間にしましょうということは結構でございます。
後藤田委員 それもよくわかるんですが、これは、残業ということになりますと、経営者側もいわゆる給料の一・二だとか一・三とか、やはり割り増しを出すわけですよ、今、世界経済と闘って、なおかつ経済がこういう状況の中で。会社がつぶれたらそもそも従業員が雇用されないわけですよ。また、やはりそういう経営者側のニーズも、また、残業をしなければやっていけない、そして残業した場合には給料がふだんより二割増しとかになるというような声もやはり当然あるわけですよ。これについてきちっと対応しているのかどうか。
 それと、三六協定にしても、これは、各地方の御省の出先機関が、中小企業を初め多くの方々にきちっと今のような話が伝わっているかどうか、それはどういう認識があるか、どういうことをやられているか、またもう一回検証していただきたいと思うんですけれども、ちょっと御意見をお伺いします。
松崎政府参考人 この労働時間といいますか、法定労働時間の規制でございますとか、さらに三六協定の結び方、その遵守の仕方、そういったものにつきましては、従来から現場におきまして、個別指導はもちろんでございますけれども、中小企業の事業主の方を中心として集まっていただきます集団指導、そういった場を通じまして、随時念入りにPRなり周知、広報というものを行っております。
後藤田委員 これは我が県がそうかもしれませんが、まだなかなか徹底されていませんので、これにつきましては改めて徹底、趣旨をきちんと伝えていただきたいと思います。また私、確認しますから、地元の企業さんに、どこまで徹底しているか。もう小企業、零細企業まで全部、それまでちゃんと徹底しているかもう一回確認しますから、それをもう一回やっていただきたいと思います。
 それと、三番目は、これは組織の運用とか運営の問題であります。
 省庁再編でせっかく厚生省と労働省が一緒になったわけですよ。いわゆる地方組織においてきちっとそれが合理的に機能しているか、これについてちょっとお伺いしたいんですね。
 一つには、労働基準監督署、そしてまたハローワーク、そしてまた同時に都道府県の労働局というのが組織としてありますわね。一方で、食品の関係だとかを扱う保健所がありますね。これも御省の関係の深いところですよ。だけれども、まだそれがばらばらになっているような気がするんですね、地方では。だから、これは使う側にとって、国民、納税者ですよね、いわゆるタックスペイヤーがどう考えるか。私も含めて、皆さんもタックスイーターなんですね、はっきり言って。タックスイーター側は、ペイヤーに対してやはりサービスを提供しなきゃいけないわけですから。
 それについて、例えばハローワークが、私のところなんか、ぽんとでっかい建物が建っていて、一方で労働基準監督署はまた違うところにあったりして。私この前聞いたら、監督署は監督監理するところで、ハローワークは求人の相談に乗るところだから違うんですなんて言っているけれども、しかし、会社の事情とか情報を共有するのは当たり前の話であって、そんなに離れていていいのか。あと、聞いたら、離れているのを総合的に調整するのが労働局の総務課であるなんておっしゃっているけれども、それもまた別のところにあるわけですよ。本当に、そんなことで連携ができているんでしょうか、合理化になっているんでしょうか。そしてまた、タックスペイヤーに対してちゃんとサービスが提供されているんでしょうか。それについて聞かせてください。
鈴木政府参考人 今、行政の連携というお話がございましたが、平成十二年四月に労働局が発足いたしました。労働基準行政、職業安定行政、それから雇用均等行政、この三行政が一体となって行政が展開できるように、局の中で連携をとりながら努力をしております。また、具体的に、出先機関の問題につきましても、監督署の署長、ハローワークの所長、それを一緒にした会議とか、あるいは倒産の場合に、労働基準監督署、ハローワークが一体となって総合的なサービスが提供できるような、そういった連携体制、そういったものに現在努力をしているところでございます。
 これにつきましては、労働局発足の大きな目的が三行政が一体となって展開できるということでありますので、これからも努力していきたいと考えておりますし、また、都道府県との連携につきましても、連絡会議等を含めて一層の連携を図っていきたいと考えております。
後藤田委員 場所が散らばっているというのは僕はその地域地域でいいと思うんですけれども、何か西の町にはハローワークで、東の町には労働監督局というのは、これはまずいと思うんですよ。だから、西は西で労働基準、監督基準もやるし、ハローワークもやるしというのをぼんと置いて、そこら辺、もっと徹底していただきたいというのと、あと、都道府県の商工労働部というのがあるんですよ。これも結局余り機能しない。
 はっきり言って、僕は、地方自治の県庁というのは、単なるメッセンジャーボーイみたいな部分もやはりあると思うんですよ。きちっとしているところも、やっている人もいるんだけれども、そこら辺の商工労働部とか保健福祉部とかとどういうふうに連携しているか。今細かく聞きませんが、これにつきまして、これは大臣、早急に総務省とかそういったところとも連携してやらなきゃいけないと思うんですよ。これは遅過ぎるんですよ、すごく。だから、それについて、ちょっと大臣、これからの意気込みについて教えてください。
坂口国務大臣 今お話しありましたように、旧労働省の中でも今御指摘のように分かれているわけでありまして、これは役所の中の話でありますから、連携が密でなければならないことは当然であります。
 それから、労働局が、今までは都道府県の中に入っていたわけですが、これが外へ出たわけですね。外へ出たのはいいんですけれども、都道府県との間の連携がうまくいかないということもこれは起こり得るあるいは起こっていることもあるわけでございますので、そうした都道府県との連携というものを密にしていくということが何よりも大事ですから、これはもう徹底したいというふうに思っております。
 それから、雇用の問題等は、厚生労働省だけではなくて、経済産業省の出先とも連携を密にしなきゃいけませんので、一昨年の八月からですか、両方寄りまして、そしてそれぞれの地域の都道府県にも入っていただいて、一緒に会議を持つように始めております。もっと積極的にやるようにしていきたいと思います。
後藤田委員 ありがとうございました。
 もう時間ということでありますが、最後に一点、今回の法律に関してなんですけれども、いわゆる支給額の基準でございます。
 これは、八〇%から六〇%、いわゆる低賃金者に関しては八〇%、失業したら今までの給料の八〇%、高賃金の方は六〇%だったのを、六〇を今度は五〇に引き下げましょうというようなお話ですね。
 私は、低賃金者の方々は八〇%なんだけれども、この八〇%というのはそもそもどういう根拠なのかなと。少ないのか多いのか、私もちょっとはかりかねるんですよ。だから、税込みなのかどうかとか、そこら辺も含めて、ちょっと教えていただきたいと思います。
戸苅政府参考人 まず、税込みかどうかということで申し上げますと、これは雇用保険法で雇用保険の給付は非課税ということになっています。そういう意味で、所得税の課税最低限がどのぐらいかということにもなりますが、例えば税金のかかる、所得税のかかる、丸々一年間失業して給付をもらっていたということになりますと、九割とか九五%とかの給付をすると、かえって失業前の賃金よりも手取りが多くなってしまうということがあるんじゃないかというふうに思っていまして、そのあたりも勘案し、それから、最低賃金の状況とかそのあたりも見て八割ということでやっているということでございます。
後藤田委員 以上、ありがとうございました。時間が来ました。
中山委員長 次に、福島豊君。
福島委員 大臣、副大臣、御苦労さまでございます。本日は雇用保険法の改正案についての質疑でございますので、まず初めに、現在の雇用失業情勢についてどのような御認識をお持ちかということをお伺いいたしたいと思います。
 先般、雇用失業情勢について二月のデータが公表されましたけれども、依然厳しい状況である、そのように思っておりますが、まず御見解をお聞きしたいと思います。
戸苅政府参考人 雇用失業情勢でございますが、先日発表いたしました二月の完全失業率が五・二%ということで、一月が五・五%でございましたので〇・三ポイント改善された、こういう状況でございます。完全失業者数も、前年の二月に比べますと七万人減ということで、これも二カ月ぶりの減少ということになってございます。
 ただ、中身を見ますと、自発的な理由による離職者の方が減少に転じたということで、これは考え方によると、なかなか再就職が難しいので離職を思いとどまっているということもあろうかというふうに思います。それから一方で、解雇などの非自発的理由による離職者の方は前年同月差で四万人ふえているということで、これは十九カ月連続の増加ということになってございます。
 それから、雇用需要を見るという意味で雇用者数でございますが、これも十八カ月連続減ということで、失業率はよくなったんですが、決して労働市場の状況は楽観視できる状況ではないのではないかというふうに思います。ただ、求人はなおふえておりまして、有効求人倍率は〇・六一倍ということで、前月よりも〇・〇一ポイント上昇ということでございます。
 ただ、最近の失業率の状況を見ていますと、やはり一進一退ということだろうと思います。そういったことで、今後、イラク情勢ですとかあるいはアメリカの経済ですとか消費の動きですとか、そのあたりを注視しながら、機動的な対応をとっていく必要があるだろう、こう思っています。
福島委員 失業率の数字は瞬間風速のようなものですから、それで一喜一憂するというのは余り賢明ではないのではないかというような気がいたしております。
 先ほど答弁もありましたけれども、雇用者に関しては十八カ月連続で減少している、また就業者に関しても二十三カ月連続で減少している、この数字の方が、私は日本経済ということを考えるときには大変大きいんじゃないかというふうに思うわけです。どんどん日本経済が縮小を続けている、ですから失業率が高どまりをしている、その背景にある事柄というのは一体どういうことなのか、ここのところの認識が私は大切ではないかというふうに思っております。
 よく知られておりますように、バブルが崩壊した後、不良債権の問題がある、債務過剰企業が整理淘汰される、整理淘汰されないまでもさまざまな形でリストラを続けているということが一つはあるんだろうと思います。そしてまた、中国の経済成長、そういったことを背景といたして、日本の企業が国際競争力を高めるために製造拠点というものを大きく海外に移転した、そしてまた、国内的には人件費のコストを削減する流れがある、そういうようなこともあると思います。
 そしてまた、規制緩和。今いろいろな形で規制緩和を政府がしていますけれども、例えば小売酒販の免許の規制緩和のようなものは、どんどん酒屋さんが町からなくなるというようなことも生じておりますし、そしてまた、大店法の見直しで町の商店街も次々と歯抜けになっている、こういったことも影響しているんだろう。
 そしてさらに、今デフレがさらに深刻化しておりますから、当然企業というものは、利益を確保しようと思えば人件費を一層抑制しなきゃいかぬ。かつて複合不況という言葉がありましたけれども、現在の失業率の高どまりということはさまざまな要素が複合的に働いているんだろうというふうに思います。
 雇用対策、私は専門家ではありませんのでよくわかりませんが、循環型の景気変動に対しての雇用対策と、そして、日本が今置かれているような大きな産業構造転換期における雇用対策というのは、おのずと違うんだろう。循環型のものは、さまざまな補助金とかで一時的に企業に頑張ってもらえばまた回復しますから、おのずと回復する。しかしながら、大きな産業構造の転換を起こしているようなときには、そういうことだけでは到底かなわない。雇用保険法の改正も引き続き行われておりますけれども、次から次へと改正をしなければやっていけないような状況に立ち至っているわけですね。ここのところをどう考えるのかということじゃないかと私は思っています。
 次にお聞きしたいのは、今までいろいろな雇用対策ということをやってきているわけでございますけれども、その政策効果といったものが一体どうだったのか。先ほども二つの雇用対策があるのではないかというお話をしましたけれども、これは前回の雇用保険法の改正のときにも、特に雇用保険三事業については実効性を検証しなさいというような附帯決議もありました。こうしたことも今この法案の審議をするに当たって明確にしておく必要があると思います。この点についての御答弁を求めます。
戸苅政府参考人 これまでの雇用対策の評価でございますが、例えば、地域の創意工夫で一時的な雇用機会を創出しようということで緊急地域雇用創出特別交付金というのをやっておりますが、これにつきましては、平成十三年度は三カ月間でございましたが約二万三千人の新規雇用、それから十四年度は十四万人の新規雇用創出が見込まれている、こういう状況でございます。
 それから、中長期的に成長する分野あるいは新規な分野、そういった分野での雇用創出に対しまして新規・成長分野雇用創出特別奨励金というのを設けておりますが、これにつきましては、平成十三年の十二月からことしの二月の末までに約六万八千人の新規雇用が創出されるということで、これらについては制度の趣旨に沿った一定の雇用の創出なり下支え効果はあったものというふうに考えております。
 ただ、雇用対策、いろいろな観点からさまざまな助成措置あるいは支援事業を行っているところでございまして、それについては、十分な利用がなされていない、あるいは思ったほどの効果を上げるに至っていないというものも多いわけでありまして、そういった意味で、今回の雇用保険法の見直しにあわせまして、雇用保険の三事業のさまざまな事業を整理合理化、重点化を図ろうということで取り組んでおるところでございます。
 なお、この平成十四年度の補正予算、それから十五年度予算で、また新たな早期再就職支援策等を盛り込んだところでございますが、今後、これらについても政策評価をきちんとやって、雇用のセーフティーネットに効果のあるように取り組んでいく必要があるというふうに考えておるところでございます。
福島委員 セーフティーネットという言葉をおっしゃられましたけれども、どちらかというと後ろ向きな話なんですね。ですから、政策効果といいましても、緊急雇用創出特例交付金のようなものは非常に目に見えてわかりやすい施策でございますけれども、それ以外のものというのはなかなか、どこまでどう効果があったのかと。
 早期再就職の支援ということも、今回の雇用保険法の改正の中の一つのポイントでもありますけれども、そういうことをするから早期再就職になるのかと言われると、また議論があるんだろうというふうに私は思いますが、改めて、今般の雇用保険法の改正はどういう意義があるのか。一面では、要するに、雇用保険の財政が厳しくなったので給付をカットするんだ、そういうことを単に目的としているんじゃないかというような批判もあるわけでございまして、ここのところは明確にお答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 いろいろの御指摘がございました。循環的なもの、構造的なもの、やはりそうしたことも見きわめてやっていかなきゃいけない。現在の状況というのは、循環的なものよりも、より構造的な原因によっているところが非常に大きいわけでありますから、これは短期になかなか決着のつかない状況もある。労働生産性等を上げなければいけないような構造的なものもあるわけでございますので、そこはしっかりと見据えた対策というものをやはり立てていかないといけないというふうに思っております。
 今回の、この雇用保険法の改正につきましてのめり張りについてのお話がございました。
 確かに、財政的な問題、否定できないというふうに、これは率直にそう言わざるを得ないというふうに思いますが、決してそれだけであっていいわけはございません。
 現在、好むと好まざるとにかかわらず、パートタイムの皆さん方が非常にふえてきている。その状況を踏まえまして、それじゃ、パートタイムの皆さん方は雇用保険において常勤の皆さん方と大きな違いがあっていいのかといえば、それはやはり、同じように扱い、同じようにこの人たちにも対応していかなければいけない。どうしてもそういうことをやらないといけないというふうに思っておりまして、その辺につきましても、今回ははっきりとそこに登場させたというふうに思っております。
 それからまた、失業をしましたときに、とりわけ、企業のリストラ等でやめなければならないという、しかも、それが三十歳代から四十歳代にかけてという非常に働き盛りの、あるいはまた家庭的にも、お子さんの育児でありますとか、あるいは教育でありますとか、あるいはまたお父さん、お母さんのお世話だとかといったようなことを担っておみえになる重要な時期、そういう時期の皆さん方には今までよりもより手厚くしていくといったことが必要ではないかというふうに思っておりまして、それらを強調したところでございます。
 もう一点の、最初にお挙げになりました、早く雇用の場についていただくようにどうするかというところは、それは強調をいたしておりますけれども、具体的にそれじゃそれをどうするかという明確な考え方がそこに存在するわけではございません。ここは総合的に、早く皆さん方が職についていただけるような対策というものを、これは総力を挙げてやっていく以外にないだろうというふうに思っております。
福島委員 今回の雇用保険法の改正は、そういう意味でぜひとも必要なものでありますし、早期に成立を図らなきゃいかぬというふうに私どもも思っております。
 問題は、引き続いて雇用政策はどうしていくのかということだろうというふうに思います。
 先ほども申しましたように、後ろ向きな話といいますか、セーフティーネットとしての話と、やはり大切なことは、前向きの施策をどうするか。就業者数、雇用者数、どんどん減っている。この事態を転換しない限りにおいては、多少数字が変わっても意味がない。
 ですから、大切なことは、働く場をつくるということなんですね。これは、雇用創出交付金のような政府主導の方法もありますけれども、そうではなくて、民間主導で、どうやったら雇用の場ができるか。起業、業を起こしていただく、これが一番私は大事だと思います。
 政府は雇用保険をつくりましたね。この雇用保険をつくったということは、大変大きな意味がありました。そこには雇用の市場というものができたわけでございまして、たくさんの方がそこに参入していただいた。こういう大仕掛けのことをやる必要がまずあるんだろうと私は思います。そしてまた、同じく申し上げれば、税制の問題も、どうしたら企業を立ち上げやすくなるのか、こういったことも必要でしょう。またこれは、税制についてはNPOも関連しますけれども、コミュニティーサービスのような分野では、NPOにもっと活躍していただく場がある。
 五百三十万人雇用創出計画という、みんな忘れてしまったかもしれないわけでございますが、それがいいかどうかは別としまして、どうも本気に取り組んでいる風も余りない、こういうような印象も実はあるわけでございまして、これは政府一体となってやはり明確な方向というものを打ち出さなきゃいけないというふうに私は思います。それは、前回の五百三十万人がいいか悪いかというような話もありますが、もうちょっと足が地についた、そしてまた、大胆な税制の見直しとか、そういうことも含めた方針を私は打ち出すべきだというふうに思っておりますけれども、お考えをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 一つは、サービス業をどう伸ばしていくかということ。それから、製造業につきましては、今製造業の中で伸びておりますのは組み立て型の製造業のところだけでございます。特に、製造業につきましては、労働生産性を上げなければいけないわけでございますから、研究開発というところが、目に見えませんけれども、中期的には非常に大事なことだと思っております。そういう意味で、この研究開発により積極的に日本が取り組んでいくということが大事。
 それから、サービス業につきましても、これはさまざまなことを考えていかないといけないわけでありまして、社会保障の方は、金だけ食って、雇用にも何も役に立たないというようなことをよく言われたりいたしますけれども、最近の動向を見ますと、やはり社会保障のところで非常に雇用が伸びているわけで、全体の雇用はもう全然伸びていないわけでありますけれども、社会保障のところで伸びている。
 ですから、ここは、確かに社会保障で財政的なものは要りますけれども、産業に対する波及効果もかなり大きゅうございます。運輸あたりのところの波及効果と大体よく似たところの波及効果がございます。一・七ぐらいございます。
 あわせて、雇用の問題は最も大きいといったようなことでございますので、やはり、この際に、思い切ったサービス業の発展にどう本格的に取り組むかということが大事でありまして、五百三十万、やったらできるという話ではなくて、こうしてここをやろうという、サービス業に対する積極的な政策が必要だというふうに思っている次第でございます。
福島委員 例えば、育児サービスですと、東京都の認証保育園というのは爆発的な増加を見ておりますね。昨日スタートしましたさいたま市も、子育て都市とかというんですか、認証保育園をやろうというようなことを言っておりますですね。ですから、そういう意味での規制緩和というのはやはり私はあるんだろうなと。
 そしてまた、どちらにしても、パイをつくらないといけませんから、育児保険のような大きなパイをまずつくる、つくった上で、そこに参入してきてもらう、そういう大仕掛けなことをやはりやるべきなんだろう。ただ、医療における株式会社の参入は私は全然賛成をいたしません。あれはまた別の話だというふうに思っておりますけれども、そういうようなことをぜひ考えていただきたいと思います。
 もう一つは、やはりワークシェアリングということになると思うんですね。これは、パイは同じだけれども、もうちょっとみんなで分け合いましょうという話で、前向きかというと、とことん前向きではなくて、どちらかというと後ろ向きのような気もするわけでございますけれども。昨年、政労使の合意がなされました、そしてまた、これに対して、それを進めるための助成というようなこともスタートいたしましたけれども、現状がどうなっていて、ことし、十五年度に入りましたから十五年度、どういう展望が見込めるのか、この点についての御見解をお聞きしたいと思います。
青木政府参考人 ワークシェアリングの取り組みの状況についてのお尋ねでございます。
 ただいま先生からお話がございましたように、昨年暮れに政労使のワークシェアリングの検討会議、大臣を先頭に出させていただきまして、多様就業型のワークシェアリングを進めていこうではないか、これからの労働力の供給の多様化、それから、需要の方も、長期的に見ると若年労働力が減っていきます、高年齢者の方や女性の方々が進出しやすいようなことを進めていこうということで、今年度におきましては、実際にモデルとなるような企業レベルで実践をしていただいて、その経験を周りの労使、地域や全国に伝えていこうということで計画をスタートすることにいたしておりまして、現在、関係の労使と御相談をさせていただいているところでございます。
福島委員 ぜひ積極的な取り組みをお願いいたしたいと思います。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
中山委員長 次に、山谷えり子君。
山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。
 現在、多様な働き方への対応、失業した方の生活の安定と再就職の促進を図ること、また中高年、若者、そして女性、それぞれの悩み、苦しみにきめ細かく対応できる応援策が求められているわけでございます。
 昭和六十二年、財団法人産業雇用安定センターというのができました。失業なき労働移動のサポーター、人と企業を結ぶ、出向、移籍、転職のお手伝いをいたしますというような、仲介業務をするわけでございますが、昭和六十二年、五百三十四件成立したものが、平成十四年で九千件強というふうにふえてはいるわけでございますが、この実績をどのように評価なさっていらっしゃいますでしょうか。
戸苅政府参考人 産業雇用安定センター、今委員お話しのように、経済界それから産業団体と連携いたしまして、人材の送り出しを希望する企業と人材の受け入れを希望する企業の橋渡しを図ろうということで、産業間、企業間の円滑な労働移動の実現ということで取り組んできておるところでございます。
 今お話しのように、設立当初、昭和六十二年、まだ制度も定着していなかったということで、成立件数は五百三十四件でございました。これが、平成十一年ごろから一万件あるいは七千件前後、こういうふうなことになってきておるところでございます。
 昨年度、実は、BSEの影響とかあるいは九・一一のテロの影響で、一昨年の秋から昨年の初めにかけてかなり大幅なリストラが大企業を中心に行われたということも反映しているんだろうと思いますが、平成十二年、十三年に比べますと、七千件前後から九千件を超えるところまで昨年度来ている、こういうことでございまして、我々としては、産業界の協力も得ながら、会員の方の範囲の限界というのもありますけれども、着実に成果、実績は上がりつつあるのではないか、こう思っています。
山谷委員 知り合いのある新規の企業を立ち上げた社長さんに聞きましたら、友人の上場企業の社長、四社に聞いたらば、実は千四百人ぐらい送り出したい人間がいるんだ、そして中小企業五十社に聞いたら、二千人ぐらい受け入れたいところがあるんだ、しかし、お見合い市場的なものがない、人間リサイクル協議会というか、人間チャレンジング協議会というか、そこでインターンシップも含めた、ある種の訓練も含めての何か血の通ったようなマッチング協議会がないのではないかというような指摘があったんですが、その辺はいかがお考えでしょうか。
戸苅政府参考人 確かに、おっしゃるとおり、産業雇用安定センターは、設立の経緯が、鉄鋼業ですとか造船業ですとか、構造不況型の業種の大手の企業を中心に立ち上げたということがありまして、底辺の広がりに限界があるというのが偽らざるところでございます。
 今お話しのように、不良債権処理で、これからいろいろな形で各産業分野から労働者の方が離職を余儀なくされるということも考えられるわけで、そういった意味で、この補正予算で行うことにしております雇用再生の事業、これにつきましては、今お話しのように、産業雇用安定センターを中核にしまして、地域の商工会議所ですとかあるいは経営者協会ですとか、それから教育訓練の機関ですとか、そういったところとの連携を密にするような体制づくりに取り組もうということで、取り組み始めているという状況でございます。
山谷委員 この産業雇用安定センターは、四十七都道府県に事務所がありまして、経営者協会、ハローワーク、商工会議所、中小企業団体中央会、人材銀行などと密接な連携のもとに業務を進めているということでございますけれども、さらに不良債権処理等改革加速に伴う雇用対策会議というのがまたできているわけで、中央で開かれ、またこの三月には地方八ブロックで開かれている。
 先日、三月二十七日、金融審議会では「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」ということで、取引先企業に対する経営相談、支援、より高付加価値をつくる再建計画の手伝い、これは恐らくリストラとかいろいろな情報が上がってくるんだろうというふうに思います。コミュニティービジネスの育成やNPOとの関係づくりを重視した取り組み等々、地域のさまざまなそういったような組織、団体がさらに連携をしなければいけないわけでございますが、定期会合とか、あるいは、何か成功モデルを集めて、こうやったら成功したという事例をもっともっと広げていかなければならないんじゃないでしょうか。いかがお考えですか。
戸苅政府参考人 おっしゃるとおりだろうというふうに思います。
 不良債権処理の加速に伴いまして、先ほど申し上げましたように、地域あるいは業種ごとに、影響の度合いですとかあるいは広がりですとか、そういったものが異なるんじゃないか。それから、関係する省庁あるいは地方自治体等も多いわけでございまして、そういった意味で、今お話のありました関係省庁の雇用対策会議というものを設けたところであります。
 中央レベルでは、一月に開催いたしまして、金融庁、経済産業省、国土交通省、それから厚生労働省の担当局長をメンバーにいたしまして開催し、それから、三月にはブロックで、それぞれの出先の局長級と自治体の担当の、知事さんの出られたところもありますが、知事さんなり、副知事さんなり、部長さんなりという会合を開きました。
 今後につきましては、今お話しのリレーションシップバンキングのプログラムが明らかになりましたので、これを受けて、どういった対応をするのか、あるいはどんな情勢なのかということについての意見交換、情報交換、それから取り組みの協力、そういったことが求められているというか必要なわけでございまして、そういった意味で、これについて、またリレーションシップバンキングのプログラムを受けて、今月なりあるいは来月なりに中央、地方で開こう、こう思っています。
 お話しのように、定期的にということでございますが、我々としては、状況が変わったり、あるいは開催が必要になったりしたら、そのとき随時に、何度でも開くということで当面は対応してまいりたい、こういうふうに考えております。
山谷委員 今は非常事態と言ってもいいんじゃないかというふうに思います。そしてまたアーリーウオーニング、あらかじめいろいろな変化を察知するためにも、やはり定期的に情報収集というような形をおとりになられた方がいいのではないかと私は考えております。
 次に、教育訓練給付制度の変更でございますが、今、パソコンや英会話教室、五月から給付率が下がりますよ、早く申し込みをというような広告が町で目につくわけでございますけれども、果たして、これまでの教育訓練というのが、国が給付しているだけの効果があったのかどうかというような、点検、評価というのはなかなか難しいというふうに思いますが、横断的評価制度がないということが非常に大きな原因ではないかと思っております。
 産業再編と安定した労働移動確保のためにも、きちんとした能力開発、評価、教育というものが重要なわけでございますが、英国ではNVQ、ナショナル・ボケーショナル・クオリフィケーションというのが八六年に誕生いたしまして、全職種の九割をカバーして、資格数が八百。これは、乱立しておりました資格制度を一つにまとめて、きちんと横断的な評価ができるようにすること、そして、それがあることによって働く人々が労働市場を動きやすくなるということでつくったわけでございます。
 日本でも職業能力評価制度の整備に向けた取り組みが始まっておりますが、これは、どのようなスピードで、どういう形、どういう範囲を考えておられますでしょうか。
坂本政府参考人 産業構造の変化でありますとか労働者の就業意識の変化に伴って労働移動が増加をいたしております。職業能力のミスマッチを防ぎ、労働者の職業能力を適切に評価して、スムーズな労働移動が実現するということが大事であろうというふうに考えます。
 現在の我が国における職業能力の評価というのは特定の技能でありますとか知識に関しての評価が中心でありましたが、これからは、実践的な職業能力についての評価基準を設定する、あるいは職業経験等を基礎にした評価手法を開発することが重要であると考えまして、平成十四年度から、イギリスのNVQの制度等を参考にいたしまして、職業能力評価制度の整備に着手をいたしました。
 これにつきましては、各業界団体等に御協力をいただくということで進め始めたところであります。具体的には、ホテル業界、それから電気機械器具製造業等やっておりますが、ここにおきましては、評価制度の果たす役割ですとか機能についてまず御認識をいただくということで、さらに、一定の職種についての職務分析を行い、評価基準の策定でありますとか評価手法の開発に向けた検討をこれから進めることにいたしております。
 できるだけ多くの業界にこの評価制度の構築について御理解をいただくことが大事だと思っておりますので、積極的に各業界への働きかけを行うということ、それから、検討を始めたそれぞれ個別の業界単位の評価制度については、できるだけこれが早く構築できるように努力をしてまいりたいと思います。
 また、制度が実際に労働者にも事業主にも使われることが大事でありますので、この点についても、きちっとした施策を今後進めてまいりたいというふうに考えております。
山谷委員 厚労省が英国にはこういうNVQというようなシステムがあると説明すると、関係団体によっては、非常によくわかる部分と、きょとんとする部分と、いろいろあると思うんですが、今の温度、トーンというのはどのような感触を持っておられますか。
坂本政府参考人 総論の部分では各業界とも大変よく御理解をいただくのでございますが、具体的に構築をしていくということになりますとなかなか、正直申し上げまして、まだ日本にモデルがないものですから、実態を十分検討しましょうというような対応が多いというのが正直なところでございます。
 ただ、働いている方にとっての能力評価の目標にもなりますし、職業の安定を進める上でも大変大事だということで、労使ともに御認識はかなりいただけておりますので、私どもとしては、具体的な評価の基準等についてサポートできるようなノウハウをしっかりと確立して作業を進めていきたいというふうに思っております。
山谷委員 イギリスでは五百万人の職業訓練を担う機関の運営に約九千五百億円の予算をつけているというような、本当に大規模なものでございます。ホテル業界なんかですと、もう既にマニュアルもあるわけですし、海外視察に行って肌で体験してわかっていただくとか、そのような取り組みで、雇用の流動化と生活の安定のために御尽力いただきたいと思います。
 何より大事なのは新しい雇用の創出策でございますが、地域の特性を生かしたプロジェクトの支援というのが大事なわけで、ブレアは、今イギリスで大事な政策は三つある、教育、教育、そして教育と言いましたが、私は、日本では、観光、観光、そして観光ではないかというふうに考えております。
 二月二十五日の当委員会で、日本の観光関連従事者は三百九十万人で、新規雇用は、私が計算しまして二百五十万人以上。アメリカでは観光関連の従事者は千八百万人いますから、日本でも九百万人いてもおかしくないのかもしれません。そのような計算でいきますと、観光分野で非常に新規雇用が望めるわけでございます。そのとき坂口大臣は、他の省庁と連携を密にして、自治体、商工会議所、労働組合、経営者、トータルで地域ごとのネットワークをつくることが大事だというふうにおっしゃいましたけれども、その後、何か具体的な取り組み策あるいは具体的な構想がありましたらお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 先日も観光につきましての御質問をいただきました。
 NVQという制度、私は今まで余り存じませんで、今回初めて勉強させていただいたわけでございますが、やはり一つの考え方だというふうに思いますね。そういう制度をつくって、そして、役所の方がそれを権威主義で押しつけるようなことはいけないと思うんですが、そういう制度をつくることによって、そこにサービス業を育成する、皆さん方が喜んでそこに参加をしていただけるという制度であれば進めていくべきだというふうに私は思っております。
 先日も、ネットワークが大事、それも、役所の中のネットワークといいますよりも地域とのネットワーク、そして民間との間のネットワークをどうつくるかということに尽きるということを申し上げたわけでございますが、今もそういう気持ちでおりまして、観光業を初めとして、それぞれの地域によりますそれぞれの地域の雇用というものがやはりつくられていかないといけない、中央から一括してこういう行き方というのではもはや新しい雇用は生まれてこない、率直にそう思っております。
 したがいまして、地域とのそうした連携、もちろん役所の方も、厚生労働省の出先だけではなくて、経済産業省の出先も一緒になっていただいて進めているわけでございますが、率直に言って、役所だけでやっておりますとなかなかいいアイデアは出てこないんですね。それは、やはり役所というところは運動神経みたいなもので、向こうへ通達することは得ておるんですけれども、知覚神経みたいに向こうから吸収してくることは余り得意としていないものですから、やはり民間の皆さん方のお力をここはおかりする以外にないな、そこをどうネットワークを組むかということが一番大事と思っておりまして、そうしたことを今やろうとしているところでございます。
山谷委員 期待しておりますので、ぜひスピードを上げてお取り組みをいただきたいというふうに思います。
 最後に、キャリアカウンセラーの制度についてお伺いいたします。
 二〇〇一年の十一月九日の本会議で、坂口大臣は、キャリアカウンセラーの養成が雇用のミスマッチ解消のために必要だとおっしゃられまして、五年間で五万人を養成したいというふうにおっしゃられました。これが、私、アメリカでキャリアカウンセリングのいろいろな聴講をいたしますと、実習があったり、大学院レベルで、カリキュラムが非常に充実しております。ところが、日本でやられておりますのは、実態は三週間の研修ぐらいで、実際やっているのはカウンセリングスキル、それからキャリアプラン作成スキル、あるいは公的機関の活用方法を学ぶとかですね。実は、そんなものはすべてのハローワークの職員、それから職業訓練関係の施設の指導員、すべての方が研修しなければいけないメニューでございまして、こんなものでキャリアカウンセラーだとかガイダンスだとかコンサルタントと言うのはおこがましいものでございますけれども。
 平成十四年二月二十七日、酒井政府参考人、職業能力開発局長は、ハローワークの相談員、職業訓練関係の施設の指導員、すべてに研修させたいとお答えになられましたが、その後どういうふうに進んでいますでしょうか。
坂本政府参考人 昨年度から、雇用・能力開発機構におきまして、年間千百人を対象にキャリアコンサルタントの養成の訓練を開始いたしました。このような機会を使ってもらうものと、あと、雇用・能力開発機構の職員につきましては、総合大学校等で職員研修をやっておりますので、そのような場にキャリアコンサルタントとして必要なカリキュラムを加えてやっております。そのほか、ハローワークの職員につきましても、職員研修の中にこのキャリアコンサルタントとして必要なものを含めて研修をすることについて検討し、実施をするということにいたしております。
山谷委員 本当につけ焼き刃で、走りながらやっているという印象を免れないんですけれども、私、文部科学大臣にも申し上げているんですが、本格的な教育がことしやっと筑波で三十人枠で始まったという、そのような状況でございますので、ぜひ文科省と連携しながら、充実した、質のいい人々を養成していただきたいというふうに思います。
 以上です。ありがとうございました。
中山委員長 次に、城島正光君。
城島委員 民主党の城島でございます。
 雇用保険法の改正について、今の失業雇用情勢からしても極めて多くの皆さん方の関心と生活にかかわる重要なテーマでありますので、内容について真剣な討議をしたいと思います。
 委員長、ぜひ委員の出席をきちっと確保しながら進めていただきたいと思います。お願いしますよ。
 まず、そもそも論でありますけれども、大臣、この雇用保険については、現在の労働市場、さまざまな変化が起こっているわけでありますし、今日までのいわゆる二十世紀型の雇用というものがどういうふうに変わっていくのか、そうした大きな雇用の流れの変化というんでしょうか、そうした中での雇用のセーフティーネットとしての雇用保険制度というものを今考えていかなければならないときにまずあるんだろうというふうに思います。したがって、新しい、いわゆる二十一世紀型の、あるいは今後十年、二十年の労働市場というものを一体どういうふうに描いていくのか。従来型の長期雇用システム、これが中心でありますけれども、そうした内部労働市場というものと、昨今よく言われますけれども、いわゆる企業外の、外部労働市場、この両方にしっかりと対応した制度でなければならないというふうに私は思うわけであります。
 しかも、いずれの制度においても、好むと好まざるとにかかわらず労働、雇用部門においては個別化あるいは多様化というのが進んでいくわけであります。特に顕著なのが、よく言われますように、女性労働が大きく飛躍的に進展をしていく。特にその中でも、よく言われます非典型労働というものが広がっていく。さらには、昨今の大きなもう一つの問題としての若年労働者の失業率の高さという問題、あるいは産業政策、雇用政策におけるいわゆる市場中心主義みたいな動き、あるいは民間中心主義というんですか、重視といった流れとか、あるいは地方分権化、そうした流れが一気に今、好むと好まざるとにかかわらず進んでいるということはある面でしっかり踏まえていかなきゃならないことだろうというふうに思います。
 そうした点からいって、雇用保険制度の持つべき機能ということからいいますと、やはり何といっても、こうした状況の中でもセーフティーネットとしては十分なのかどうか、財政的に安定をしていて持続可能かどうか、三点目が労働市場の今申し上げたような変化に対応できているのかどうか、大きく言うとこの三点が、私は今の時代の雇用保険を考える上で大事な雇用保険が持つ機能ではないかというふうに思っております。
 こうした観点から、今回の改正案、すなわち雇用保険制度の持つべき機能というものは本当に網羅されているのかどうか、あるいはしっかりとそういう観点が入っているのかどうかということを私なりに見たわけでありますが、どうも、結論的に言うと極めて不十分であり、かつ、今回の改正案の趣旨というものが一体どこを視点に、あるいはどこに向いているのか、中心的にあるのかということでいうと、結論的に私の感じを申し上げますと、今回の改正の趣旨が、雇用保険の一番大事な、現実に失業されている人、その失業している人に本当に向いているのかどうかということからすると、なかなかそういうふうには受け取れない。どちらかというと、財政的な観点、全体の観点よりは、この雇用保険財政をどう維持するのかあるいはどうするのかという視点が余りにも強い改正になっているんではないかというふうに思うわけであります。
 したがって、そういう点を、私なりに問題意識を持っている点を中心に検証させていただきたいというふうに思うわけでありますが、まず大臣、もう一度、今回のこの雇用保険法改正の趣旨、ねらい、そういったことについて御見解を承りたいと思います。
坂口国務大臣 今、さまざまな角度から現状につきましてのお話をいただきましたし、今御指摘をいただきました経済状況に対する考え方、そして現在変わろうとしておりますことにつきましては、委員の御指摘いただいたことと私も大体同感だというふうに思いながら、聞かせていただいたところでございます。
 さて、雇用保険でございますが、一番大事なことは、失業された皆さん方に長く雇用保険を受けてもらっていることではなくて、一日も早く再就職をしていただくことが大事というふうに思っている次第でございます。そういう意味からいたしますと、雇用保険だけでそれを達成することはなかなか難しい、雇用保険と、そして周辺のすべての雇用政策を動員いたしまして、そしてそれらを成就しなければならないというふうに考えているところでございます。そうした意味から、現在持っております雇用保険のあり方というものにつきまして、アクセントをつけながら、そして対応をしていくということにしたところでございます。
 委員が御指摘になりますように、経済的な問題、これも確かに私は、ないとは言えません。率直に申し上げて、あるというふうに思っております。思っておりますが、こういう厳しい状況のときでございますから、これは、現在働いている皆さん方、あるいは企業の皆さん方と、そして失業された皆さん方との間の連携、助け合いというものが大事であることは言うまでもありません。そして、それだけではなくて、職を失った皆さん方の間におきましてもさらにまたお互いに連携をしていただくということも大事でございまして、そうした中でこの雇用保険を成り立たせていかなければならないというふうに思っております。
 それで、失業された皆さん方にどうすれば早く次の職についていただけるようにできるのかということでございます。
 これは、いわゆるミスマッチの問題がございますが、ミスマッチの問題の一番根っこのところにありますのは、一つは年齢の問題、それから一つは賃金の問題、この二つが最大のミスマッチになっているというふうに私は思っております。それらのところを、確かに賃金なら賃金は非常に低いということがあったといたしましても、一年間なら一年間御辛抱をいただくことによってそれが改善をされていくようなことを企業が思っているのかどうかといったようなことについては、企業との間でそうした話を、ハローワークの職員あるいはまたコンサルタントを担当している人たちがよく聞いて、そしてそのことをやはり失業者の皆さん方にもよく伝える。一年間こういう御辛抱をしていただければこういうふうになるとここは言っておりますから、ここはあなたのお仕事に適しておりますからいかがでしょうかといったようなことが言えるようにしなければいけないというふうに思っているところでございまして、そうした意味で、この仲介役と申しますか、失業者とそしていわゆる企業との間をどうセットするかということが非常に大事になってきた。
 それから、先ほども申し上げましたが、地域における特殊性というものをどう把握をしていくかということが、これからの雇用を拡大していくために非常に大事になってきたというふうに今思っておりまして、それらのことを中心に、この雇用政策というものを立案をしていかなければいけないと思っているところでございます。
城島委員 全体的にはそういうことだと思うのですけれども、特に雇用保険ということについて言いますと、大臣がお触れになりましたけれども、実は早く再就職してもらいたいという点が一つある、そのとおりだと思うのです。
 早く再就職、いわゆる職につくためにも、その間、教育あるいは訓練を受けるということも含めて、しっかりとした生活の安定というのが大事なわけでありますから、早くしかもきちっとした職につけるためにも、この雇用保険というのが、その面において有効に機能しているわけなんですね。
 ですから、そういう観点からいっても、個別の論議になりますが、給付削減とかいろいろありますけれども、今回の改正案について、やはり先ほど申し上げましたように、私はどう見ても、失業している人、そして今大臣がおっしゃいましたけれども、失業している人が早く再就職につながるような、そういう観点での雇用保険の改正にはどうもなっていないんじゃないかということを強く思っているわけでありますが、総合的には、今大臣がおっしゃったようなこと、本当に各方面で総合的な雇用政策としてはやってもらいたい。その中での一つ重要な機能としてのこの雇用保険というものを、もう一度、今申し上げたような失業している人という視点から見直しをしてもらいたいものだということをあえてつけ加えさせていただきたいと思います。
 その中で、次の質問でありますけれども、今回の改正案の中のポイントが、一つは、保険料の一・六%への引き上げということだと思うのですね。ただし、これは附則で一・四%にこの二年間据え置くということであって、改正案では保険料を引き上げるということであるわけでありますが、いずれにしても、過去この二年間、弾力条項の適用を含めて、保険料率を上げざるを得なかったわけですね、この十三年度、十四年度と。
 我々、特に私も何度となく、雇用保険財政、本当に厳しくなってくるんじゃないか、財政面から含めた手だてが必要じゃないかということで、一昨年の秋の臨時国会でも提起をさせていただきましたけれども、現時点におけるこうした財政状況に陥ってしまった原因、私はやはり、雇用保険財政についても政策判断の誤りがあったのではないか、見通しを含めて大変甘さがあったのではないかというふうに思うわけでありますが、この件についての御見解はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 私、前に、もうこれで七、八年になりますか、労働大臣をやらせていただきましたときには預金が四兆円を超えていたわけでございまして、こんなにたくさんあるんですかというふうに申し上げたことを覚えておりますが、それからこちらにずっと景気の低迷が続いてまいりましたために、だんだんと、年々歳々取り崩しを行いまして、今や取り崩すことのできない状況になってしまったわけでございます。
 これは見込みの間違いではなかったかというお話でございますが、ある意味では、経済の動向に対しまして、循環的な景気の低迷だけではなくて、やはり産業構造的な低迷がかなり大きい、しかも、先ほども申しましたように、いわゆる一九九〇年代、労働生産性が低下してくる中で起こっている停滞であるということに、まあ早くから気のついていた人もあるのでしょうけれども、なかなかそこへの政策転換がいかなかったということも私はあり得るというふうに思っております。
 その都度いろいろの対策を立てて今日を迎えたことは御承知のとおりでございますが、今までのいわゆる景気対策では立ち行かない事態になってきている、その状況の把握というものがやはりこれからも大事である。今までのように、減税を行い、あるいは公共事業を行い、金利を下げるといったようなことで回復する状況にはなかなかない。もっと根っこのところの構造改革をやらないとできない。生産性を上げないと日本の企業は立ち直れない。
 そういうことでございますから、これらを改善をしていきますためには、私はまだこれからもかなり日時を要するというふうに思わざるを得ません。それらを乗り越えていきますためにこれから総力を挙げなければなりませんが、長期的な構えでこの雇用政策というのは今後ともとっていかざるを得ないというふうに思っております。
城島委員 先ほど申し上げましたように、もう既に約二年前から我々は、この雇用保険財政、このままいくと破綻するというふうに申し上げてきたということでありまして、やはりしっかりした今までの総括の中で新しい制度なら制度、改正案をつくらないと、今回の改正案にしても、単にまた負担はふえる、給付は減る、しかしそのセーフティーネットとしての機能は不十分だということになりかねないわけなので、一体どこに今までの政策あるいは見通しとしての誤りがあったかというようなことは逆にしっかりとした総括をしていただかないと、一方でこの改正案についての信頼というものも出てこないというふうに思うのでお尋ねをしたわけでありますが、見通しについては、残念ながら大臣の話を聞いていても、やはり非常に甘かったのではないかと言わざるを得ないというふうに思います。
 それで、幾つか確認をさせていただきたいんですけれども、今回の改正案の中で、我々は問題だと思うんですけれども、給付の削減というのがもう一つ大きなテーマというのでしょうか、現実論としてはそうなっているんですけれども、給付削減効果というのは、改正案の中ではどれぐらいが年度で見込まれているんでしょうか。
戸苅政府参考人 まず、基本手当の給付率、それから上限額の見直し、それから通常労働者と短時間労働者の所定給付日数の一本化等の制度改正によりまして、これによる再就職促進効果も合わせまして、平成十五年度、これは初年度でございますが、については三千百億円の給付減ということを見込んでございます。それから、早期再就職者支援基金、これを設けたわけでございますが、これによります雇用保険受給者の早期再就職の促進、それからこの基金による支援金を受ける場合に雇用保険の就職促進給付を受けなくなるということの効果、両方合わせまして約一千億円の給付減ということで、平成十五年度につきましては約四千百億円の給付の削減というふうに考えております。
城島委員 あわせて、受給資格決定件数について、年五%程度の割合で今後も伸びていくということ等の前提に立って、この雇用保険財政は一応今後五年間もつという説明を受けているわけでありますが、失業率に換算すると一体何%ぐらいまでこれはもつんでしょうか。
戸苅政府参考人 失業率につきましては、雇用保険の受給者になりません新規学卒の失業者、雇用保険をもらい終わってしまってなお失職している長期失業者、それから自営業者、そういった方の失業の動向ということに左右されますので、雇用保険の五年間もたそうということと失業率との関係を、精密にといいますか、的確にお示しするというのは非常に難しいわけでありまして、前回の改正におきましては、政府の経済の見通しをもとに、四%台の半ばの失業率でももつようにと、こういう改正をしたわけでありますが、今回は、先ほど委員からもいろいろなお話がございました、我々としては、むしろ雇用保険の受給者に直接影響を及ぼしています雇用保険受給資格決定件数の動き、過去の十年間の年平均の増加率が五%でありましたが、これは実はバブル崩壊後の雇用情勢の悪化の時期を含む十年間でございますので、これをもとに計算するということで、これにより、五年間もつかなりかた目の数字ということで見込んできたということでございます。
城島委員 いや、それは前もそういう御説明でありますけれども、我々としては、非常に関心が高いのは、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、雇用全体ということでいくとやはり失業率というのは極めて重要な要素なので、そういう点に立って、失業率に換算すると一体どういうものなのかということを聞いているわけなんです。もう一度聞かせていただきます。
戸苅政府参考人 これは大胆な推計ということになってしまうんだろうと思いますが、先ほど申し上げたような事情でというか、状況なものですから厳密にお示しするということはできないわけでありますけれども、あえて計算するとすれば、過去の受給資格決定件数の伸び率と完全失業率の上昇率との関係を単純に当てはめて粗い試算をいたしますと、大体六%の前半ないし六%の中盤というか半ば、こういったことになると思います。
 ただ、先ほど来申し上げていますように、これから、自営業者の方の動きとか、若年者で雇用保険に入っていない、あるいは入る前に学卒ですぐ失業してしまった方とか、そこら辺の動きがありますので、それによって左右されるということでありますが、過去のトレンドでといいますか、過去の傾向がそのまま将来にも当てはまるとして粗い計算をすると、今申し上げたような六%台前半ないし半ば、こういうことだろうと思います。
城島委員 わかりました。六%台前半から半ばぐらいまではもつということをある程度前提ということだというふうに承りました。
 では、次に移らせていただきますが、先ほど申し上げたように、今回の改正の趣旨がどう見ても、今の削減効果ということもその質問でありましたけれども、財政的観点からのつじつま合わせが強いんじゃないかというふうに思っているということの一点目の質問をさせていただきたいんです。
 今回、法案の第十条の二、こういう法案になっているんですね。「求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない。」今論議をさせていただきましたけれども、大体過去二年間も毎年のように保険料率を上げざるを得ないような見通しの甘さということが一方である中で、わざわざ今回、ある面での正しい失業者像みたいなものでしょうか、あるべき失業者像かもしれないけれども、そういうことを書き込むということは一体どういうことなんだと。
 失業者は急増しているわけですよね。何度も、ここでも私からも指摘をさせていただいたように、地方に行けば、特に窓口において、本当に長時間待って、窓口の指導が五分や十分で終わってしまうというようなことも含めて、ハローワークの再就職支援機能というものが極めて不十分だという現状、しかも政策的に不良債権の抜本処理を加速するという状況に入っている中で、こういう条文をあえて入れるということは、今言ったように、ハローワークの機能もかなり限定されている中ということが前提ですけれども、単なる給付の厳格化ということだけに帰着するというか、そういうことになっていくおそれがあるんじゃないでしょうか。
 昨年九月には、既にその失業認定の厳格化ということについて通達が出されているわけですよね。それでは、その九月、通達が出る前と出た後では失業認定において一体どういうふうに変わったのか。不正受給として罰せられた人数はどう変化したのか。あるいは公共職業安定所の職業紹介、訓練受講指示、職業指導を拒んだとして給付制限を行った人数にどういう変化があるのか。受給資格者の早期再就職促進のため、早期受講指示を行った件数は一体どういうふうに変化したのか。まず、具体的な数字を挙げて御説明いただきたい。
戸苅政府参考人 今回の雇用保険法の改正におきまして、十条の二で、求職者給付を受ける人たちの就職への努力規定を規定したところでありますが、これは、本来、求職者給付につきましては、失業者の方が労働の意思、能力を有するにもかかわらず職業につくことができない状態、これが給付の要件でございまして、当然に求職活動を積極的に行わなければならないということが前提にされているところでございます。
 ただ、今回の改正によりまして、給付あるいは負担の両面にわたる見直しを行うに当たりまして、給付を受けます失業者の方が、制度の趣旨にかなう方に的確に給付が行われるということが強く求められているということで、求職者給付の受給者の方は、職業能力の開発向上を含めて、誠実かつ熱心に求職活動を行い、職業につくよう努めなければならない、これは法律上確認的に示したということでございまして、この規定によって直ちに給付が厳格化されるとかそういうことにはならないというふうに我々は考えてございます。
 それから、もう一点。昨年の九月の失業認定の見直しの前後の状況でございますが、基本手当の不正受給の件数でございますけれども、去年の七月から九月は二千八百十八件、十月から十二月が二千八百九十五件でございます。
 それから、紹介拒否などによります給付制限の件数でございますが、これは、七月から九月が百四十五件、十月から十二月が二百二十件と、これはふえてございます。ただ、ふえていますので、ちょっと中身を調べましたが、このほとんどが職業訓練の受講を拒否しているという方による増というふうに我々は思っております。
 それから、受講指示件数でございますが、これは申しわけないんですけれども、九月分までのデータしかないということで、比較はできないわけですが、雇用保険の受講手当の初回受給者数でかわりに申し上げますと、七月から九月が四万五百四十一人、十月から十二月が五万九百二十七人ということでございます。
 なお、ハローワークの窓口での状況でございますが、失業認定の見直しの効果として、求職者の方の求職活動の活発化が見られるということがあるというふうなことの報告は受けております。
城島委員 今聞いても、そういう実態からしても、しかも今回の法改正で失業認定が一体どう変わるのかという質問に対して、本会議で坂口労働大臣からは、「この規定により失業認定のあり方が変更されるものではありません。」というお答えになっている。これは変わらないんですね、大臣。この認識には。
 とすると、ますます、この条文が一体どういう意味を持つのか。今までの認定のあり方に変化はない、しかも今聞きましたけれども、昨年同じように厳格化の通達が出ているということの中で、基本的には余り変わっていないということですよね。そうすると、この条文の意味というのが一体どこにあるのか。極めて象徴的なことでありますけれども、この改正の趣旨というのが、やはりどう見ても財政的な観点からということにしか私には見えないわけであります。
 やはり、こういった条文を入れるよりは、雇用政策としてもっと抜本的に、先ほど大臣もいろいろ触れられましたから、そういったことをやることが先決じゃないですか。こういう条文を入れる趣旨が一体何なのか全くわからないわけですね。失業者に対して、こういうふうに努めなければならないというようなことをあえてやらなきゃいけない、条文を入れなきゃいけない趣旨だとか理由は私には全く理解できない。
 まして、昨今の失業情勢というのは、もう御案内のとおり、非自発的失業者がふえて、しかも二年以上にわたる長期失業者も、昨年の十月でいけば五十五万人ですよね。一年以上は百五万人。その約半数ぐらいが二年以上。そして、非自発的失業者が、一年単位で言うと、これも昨年七月のデータは、その前に比べて、約十カ月前に比べて一・五倍にふえているというような状況の中で、あえてこういう条文を入れる理由は全くないと私は思いますよ。大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 本会議でも御答弁を申し上げたとおり、それによって認定が変わるというようなことはございません。
 今お挙げになりましたような厳しい状況であればこそ、やはりさまざまなことを考えていかなければならない。
 失業された皆さん方、失業といいますか、職を離れられた皆さん方の中にも、さまざまおみえになるわけでございます。例えば、もう定年退職のつもりでおやめになる方も中にはおみえでございましょうし、あるいは、最近は減りましたけれども、女性で、おやめになって結婚をされる御予定、そしてその後はもう就職をしない、そういう皆さんもおみえでございましょう。
 では、過去の時代におきましては、そういう皆さん方も、これは雇用保険を納めていただいていたわけでありますから、一つの権利としてお受けをいただいていたことも事実でございます。しかし、先ほどからお述べいただきますように、全体として厳しい状況になってきているわけでございますので、できる限り、本当に職を求めて次のステップに進みたいという人々のために、できるだけ御協力をしてくださいよということを込めたものであろうと私は思っておるわけでありまして、しかし、決してそれによって認定を左右するものではない、そういうことでございます。
城島委員 これは平行線になるかもしれませんが、とにかく論議しないかぬテーマがいっぱいありますので次に移らざるを得ないんですけれども、これはやはり、そういうことでもあり、というのは、要するに認定が変わるものではないということであれば、大臣おっしゃるような人もそれは一部いるかもしれないけれども、今の状況からすると、どう見ても真剣に職探しをせざるを得ない状況になっているんじゃないですか。雇用政策に万全を期す方が大事であって、こういうことを条文に入れる必然性は全くないと私は思いますが、これはぜひ削除する方向で御検討いただきたいということを強く申し上げて、次に移らせていただきます。
 もう一つの重要な、財政のつじつま合わせじゃないかと思われるポイントの一つに、給付の削減問題があると私は思っているんです。
 政府案では、現役世代の失業手当の上限額を二四%カットするということがあります。例えば四十五歳以上六十歳未満で、二十年以上被保険者だった人が、倒産、解雇により離職した場合、給付額は最大八十四万円減ることになるというふうに思います。
 今、私が触れましたように、極めて厳しい失業状況にある。長期失業者が昨年十月現在百五万人。失業者の三割が一年以上の長期失業者になっている。そのうち二年以上の失業者が五十五万人に上っている。まして、非自発的失業者が一昨年九月は百九万人だった。それが昨年七月には百五十二万人、一・五倍にもふえているという極めて厳しい雇用情勢の中で、この給付削減というのは、幾つかのポイントで今回示されているわけですね。セーフティーネットの機能としては、全く大幅に後退する内容になってしまっている。まして景気が非常に悪い、将来不安が強い、それが景気回復の足を引っ張っているというような状況から見ても、タイミングも最悪であり、また個人個人の失業者の皆さんからしても最悪のタイミングであり、最悪の状況というふうに私は思うんですね。
 この給付削減問題、これは完全な誤りだ、もとに戻すべきだというふうに私は思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 セーフティーネットの考え方にもさまざまあるというふうに私は思っております。
 こういう厳しいときでありますから、お互いに辛抱しながらみんなのセーフティーネットを考えていかなければならない。一人一人を見ましたときに、若干それは厳しいこともあるかもしれない、しかし、みんながそういう立場の人たちみんなを救っていこう、お互いに救われるようにしていこう、そういう考え方にやはり立たなければならないときではないかというふうに思っております。
 働いている皆さん方が職を失った人たちの支援をする、そうしていただいていることを私は大変感謝を申し上げております。しかし、そういう時代であればこそ、そして失業者がふえてくるときであればこそ、失業された個々の皆さん方も、自分がその中でセーフティーネットの恩恵をこうむるだけではなくて、すべての人がそこで受けていかなければならない、お互いにそこは辛抱し合っていこうという、やはりそういうことが今必要なときではないかというふうに思います。
 財源をふやすということは、一言で言えばそれは大変言いやすい話でございますが、それは個々の皆さん方にまた御負担をお願い申し上げるか、あるいはまた後世に負担を残すか、その二つに一つしかないわけであります。そのことを考えましたときに、若干ずつではございますけれども、皆さん方にもお願いを申し上げて、全体としてこのセーフティーネットを守っていく、そのことが今一番問われているものと私は思っております。
城島委員 だから財政面からの観点が強いなというふうに受け取らざるを得ないですね。
 民主党案、説明をこの前の本会議でもさせていただきましたけれども、今の状況は、政策的にも不良債権の抜本処理ということで、どんどんそういう面での失業者がふえているということからすると、雇用対策に、これはまさに雇用保険という保険制度ではありますが、今の状況からすると、雇用政策の極めて重要な部分として一般会計からここに投入する時期じゃないですか。
 雇用政策への一般会計からの支出の比率というのが、前も私は予算委員会でもやらせていただきましたけれども、欧米に比べて余りにも少ない、GNP比で。そういう状況だからこそ、時限的にでもいいのですけれども、そういうものをどんどん投入して、安心した雇用状況、早く再就職できる、安心して教育訓練を受けられるようにするというようなことが一番大事なときであり、今こそ最重点で一般会計で投入すべき項目の一つだというふうに私は思うんです。ここは、まさにそういう観点での対応が必要であるというふうに私は思うんです。
 政府案の中で、この給付を削減するに当たって、基本手当日額と再就職時賃金の逆転現象の解消ということを挙げられています。これは一体どういうことなんですか。解消ということが今回の給付の見直しの中に挙げられている。ここを御説明いただきたいと思います。
戸苅政府参考人 雇用保険の受給者のデータを見ますと、基本手当の受給中に再就職する方よりも、所定給付日数分の基本手当の受給終了後一カ月以内に再就職する方が多い、こういう実態がございます。しかも、その実態は基本手当日額が高い方ほどそういう傾向が強い、こういうことでありまして、こういう状況から判断いたしますと、再就職をするよりも基本手当を受給し続ける方が得だということを判断して再就職時期をおくらせている方が高賃金の方の中に相当数いるということではないか、こういうふうに思っていまして、そういった観点から、再就職の促進を図ろうということで、今回給付率の見直しをしよう、こう思っておるところでございます。
城島委員 具体的に、高賃金だった人というか、再就職手当が高い人が再就職されるのがおくれているということですか。
戸苅政府参考人 具体的に申し上げますと、基本手当日額が八千円以上九千円未満の方につきましては、就職時期が支給終了後一月以内の離職者の方が再就職された方の四二%を占めている、それから、一万円以上になりますとこれが四九%になる、こういうことでございます。
城島委員 残りの五一%というのはどういう人ですか。
戸苅政府参考人 ちょっと細かい数字は手元にありませんが、残りの方のかなりの部分といいますか、三割あるいは四割の方は、三割ぐらいだと思いますが、離職後一カ月以内に就職をされている、あとは恐らく数%から一〇%ぐらいで各月就職する、こういった傾向であろうと思います。
城島委員 これは当然のことながら、再就職するに当たって、少なくとも今までの収入の中で生活をしてきているわけなので、高賃金だった人、すなわち支給額が高い人ほど再就職が難しいというのは当たり前のことですよね。当然のことであると思うのです。そのことをもって削減するというのは、僕は本末転倒だと思いますよ。それはもう、本当にこのことも、私はおこがましいことだと思うんですね。そんなことは当然の話であって、おくれるのは当然、しかし一生懸命、だから、探しにくい状況に逆にあるわけですよ、そういう人ほど。
 そうしたら、そういう方々がどれぐらい職につけないでいるんですか、逆に言うと。受給が終わった後、支給が終わった後いわゆる未就業でいる比率というのは、どれぐらいいるんですか。
戸苅政府参考人 ちょっとその数字はデータがありません、申しわけないです。
 ただ、今申し上げましたように、実際に雇用保険を受給し、それは所得税がかからないということですから、手取りの額と、それから長いことかかって再就職するというお話ですが、長いことかかって再就職した後の賃金、税引き後の賃金、これを比べると、税引き後の賃金の方がかなり低いというのが、高賃金層ほどそういう傾向が顕著なわけです。
 それから、さっきも申し上げましたように、雇用保険を丸々もらった後一カ月以内に就職される方の比率というのも高賃金層ほど高くなる、こういうことでありまして、そこらあたりを考えると、労働市場の状況を見つつ、やはり雇用保険をもらった方が得なんだということで、再就職の意欲が低賃金層の方に比べると相対的に低いということは言えるのではないか、こう思っております。
城島委員 それはちょっと違うと思いますよ、こだわりますけれども。得だからということじゃないと思いますよ。得とかなんとかじゃなくて、やはりそれはなかなか就職しにくい、条件として厳しいことの一つだと僕は思いますよ。再就職する条件の厳しさである、損得でやっている話ではないと僕は思いますね、そこは。
 それと、全体の受給資格者の就職状況を見ても、圧倒的に多く、圧倒的というか、半数以上は結局受給資格が終わった後も就業していないわけですね。全体像だけ見ても、全受給資格者の五八%は、これはいただいたデータですけれども、就業していないわけですから、恐らく、高手当の人も、切れた後も就職できないでいる人は非常に高い比率であるということは容易に想定できるわけなので、私は、そこはかなり疑問があるんです。疑問というのは、問題意識が高い。この給付削減については、そういう面からいっても非常に私は問題が多い内容だと。しかも、その根拠は、私は、間違った根拠の中における政策ではないかということを強く思っております。ここもぜひ再検討をお願いしたいところだというふうに思います。よろしいですか。
 では次に、同じような観点から、就業促進手当ということについて質問をさせていただきます。
 現行の再就職手当を若干手直しされて、就業促進手当ということを今度つくった。さらには、補正予算による早期再就職支援基金事業ということを創設するということを含めた早期再就職の促進メニューが出てきましたけれども、失業者は、当然ですけれども、こうした手当があるから再就職するわけではなくて、これは大臣も触れられましたけれども、再就職できる環境があって初めて再就職するわけなので、そういう環境があって初めてこういう施策も機能するということだと思うんです。
 したがって、新たな雇用の創出とか、民間活力を導入した職業訓練制度との連携だとか、正社員とパートの均等待遇原則の確立、こういったいろいろな施策と組み合わせて初めてこのメニューも機能していくということだと思うんです。逆に言うと、こういったものと組み合わせない限り、これは単なるメニューで終わっちゃうということのおそれがあるというふうに思います。
 そこでお伺いしたいわけでありますが、まず、確認です。今回の就業促進手当創設において、現行の再就職手当がこの就業促進手当の常用就職型となり、厚生労働省発行の参考資料によりますと、こういうふうになっています。「支給残日数が所定給付日数の三分の一以上である受給資格者が常用就職した場合に、支給残日数の三〇%に相当する日数分の基本手当の額を一時金として支給する。」というふうになっております。
 つまり、一年以上の雇用が見込まれる人、ここが大事なんです、一年以上雇用が見込まれる人については、現行の再就職手当、これは支給率が三分の一から三〇%と若干下がるわけでありますが、この現行の再就職手当を支給する。法文でいうと第五十六条の二の一号のロですね。「厚生労働省令で定める安定した職業に就いた者であること。」というふうになっておりますが、これは、この理解でよろしいんでしょうか。
戸苅政府参考人 そのとおりでございます。
城島委員 そうすると、次に、非常用就業型というのが、これは新たに今度創設をされるということですよね。この非常用就業型については、「支給残日数が所定給付日数の三分の一以上である受給資格者が常用就職以外の形態で就業した場合に、基本手当日額の三〇%を賃金に上乗せして支給する。」この説明資料にこう書いてありますけれども、法文でいうと、同じくこの五十六条の二の第一号イ「職業に就いた者であつて、ロに該当しないものであること。」すなわち、今言いました「厚生労働省令で定める安定した職業に就いた者であること。」ではない、それに該当しない、「ロに該当しないものであること。」ということになっておりますが、これもこの理解でよろしいでしょうか。
戸苅政府参考人 そのとおりでございます。
城島委員 そうすると、今回再就職手当を変更されて就業促進手当ということになったわけでありますが、この趣旨は一体何でしょうか。
戸苅政府参考人 今委員御指摘のとおり、これまでは早期に常用就職した方について再就職手当を支給していたわけでありますが、労働市場も大きく変わってきて、短時間就業あるいは短期間の就業をするという形態もあるということで、そういった労働市場の変化の中で、早期の就業を促進するための給付として、常用就職だけでは雇用保険の制度として、労働者がいろいろな就業形態を選択するときに労働者にとって中立的な制度でないんじゃないかということで、中立的な制度にしようというのが一つでございます。
 それから、もう一つは、雇用保険の受給中に全く無業の状態でいるよりも、短期間であれ仕事があればそこで働くということは、例えば働くという習慣を失うこともない、それから働くことへの意欲が減退するということも防げるんじゃないかということで、早期再就職という観点からも有用ではないかという考え方に立ちまして、この給付制度を新たに設けたということでございます。
城島委員 法文からすると、非常用就業型は「ロに該当しないものであること。」こうなっているわけですから。常用就職型には「安定した職業に就いた者であること。」こうなっているわけです。すなわち、「安定した職業に就いた者」である常用就職型ではない人が非常用就業型、こうなっているわけです。
 ということは、非常用就業型というのは、「安定した職業に就いた者」ではない人ということの解釈になるんですけれども、理解としてはそういうことでいいんでしょうか。
戸苅政府参考人 安定した職業ということで今扱っておりますのは、一年を超えて引き続き雇用されるということが確実な場合、それから、自分で自営を始めて生計できるという意味で、自立することができると安定所長が認めた場合、この二点でございます。それ以外の場合ということでございますので、具体的に申し上げれば、一年以内の雇用期間の定めに基づいて就業したといった場合が代表的な例だろうと思います。
城島委員 この再就職手当の趣旨を「雇用保険法 労働法コンメンタール」で読みますと、「雇用保険制度は、労働者が失業した場合にその者の生活の安定を図り、もって失業者の求職活動を容易ならしめようとするものであるが、反面、ともすれば再就職の機会があってもすぐに就職しないで給付を受け続ける傾向もないわけではない。このため、早期に再就職した者に対して一時金を支給することにより、再就職意欲を喚起し、受給者ができる限り早く安定した職業に就くことを積極的に奨励することとしているものである。」これは労働省職安局の編による本でありますが、ということになっているんですね。
 もう一度確認をさせていただきたいんですけれども、今回、非常用就業型というのが入ることによって、この今申し上げた再就職手当の趣旨とどこが変わるんでしょうか。変わるところだけで結構ですが、どこが変わるんでしょうか。
戸苅政府参考人 再就職手当の趣旨といいますか目的は、あくまでも受給者の方の早期再就職の促進のために給付をするということで、これは基本的には変わっていないというふうに考えています。
 変わっておりますのは、就業の仕方が、一年を超える継続的な雇用につく場合か、あるいは、そうでなくて、一年以内の短期の雇用につく場合かと、その短期の場合も支給の対象にする、こういう考え方でございます。
城島委員 いや、そうすると、このいわゆる非常用就業型と常用就職型、名前が就業と就職と違うのもあるんですけれども、時々間違えるんですけれども、給付額、支給方法とも、実はかなりこれは違うんですね。したがって、ここまで違える背景というのは、先ほどちょっと私が申し上げたように、やはりここまで違うというのは何か大きく違いがあるんじゃないか。すなわち、安定した雇用というものが望ましいということがきちっとあって、そうしているんじゃないかというふうに読めるんですけれども、この辺どうなんですか。
戸苅政府参考人 先ほど申し上げましたけれども、就業形態が多様化しているということで、臨時的、一時的な就業を基本に働きたいという方も最近はいるようになったということでございます。
 ただ、委員おっしゃるように、常用就職を望んでいるにもかかわらず、なかなか常用就職につけずに、しかし、無業状態でいるよりは短期の就業をしよう、こういう方もおられるわけで、我々としては、そこを強制的に、無業でいるよりは短期の就業をやれ、こういう趣旨で設けたものではございませんで、短期の就業をしようという方について、それがもし常用就職を望んでいるということであれば、常用就職をすることについて、無業状態でいるよりも短期の就業をした方がより常用就職に役に立つだろう、こういう観点から、短期の就業についても就業の促進のための給付を行おう、こういう考え方に立っているわけであります。
城島委員 どうもすっきりしない説明ですよね。もしそういうことであれば、給付方法というのは同じでもいいんじゃないか。でも、ここは、ちょっときょうは時間がもうないので、これから実はこの辺はポイントなので質問しようと思ったんですが、次回に回したいんです。余りにも給付する方法が、そうはいいながらも非常に違いがあるので、この辺も含めて、それでは次回、ぜひ徹底した中身の論議をさせていただきたいというふうに思います。
 きょう予定をしていた内容の半分も行かなくて、これはぜひ……(発言する者あり)いや、本当なんですね。まだ半分も行かないんですね。次回もぜひやらせていただきたい。きょうも、半分も行かないけれども、まだこれでも飛ばしている方でして、質問の時間をぜひ十分確保していただきたいということを強く申し上げて、私の質問を、とりあえずの質問を終わらせていただきます。
中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。鍵田節哉君。
鍵田委員 民主党・無所属クラブの鍵田でございます。
 私は、前回、平成十二年の通常国会での雇用保険法の改正のときに、本会議で質問をさせていただきました。当時は小渕総理と、それから牧野労働大臣であったと記憶をしておるわけでございますが、当時は、保険料率が千分の八から千分の十二へ引き上げるというものでございました。加えて、失業給付の給付日数を基本的に削減する、労働者にとっても大変厳しい内容を含んでおったわけでございますけれども、審議会でいろいろな議論がなされて、その中で最終的に、国庫負担を一四%から本則の二五%へと国も負担をふやすのだから、公労使のこの審議会で全会一致でひとつ答申をしてほしい、こういうことでの結論を得た内容でございましたから、大変労働者にとりまして厳しい内容ではございましたけれども、一応全会一致での答申でもありましたので、我々としても賛成をするという立場でこの審議をさせていただきました。
 それから三年を経たわけでございますけれども、政府の雇用対策の不備によりまして、十三年、十四年と保険料を二年続けて引き上げたにもかかわらず、再び雇用保険財政が破綻の危機に瀕しまして、法改正が提案されることになったわけでございます。今回は、労働者代表は、審議会において答申に対しまして明確に反対の意思を表明したところでございます。
 雇用保険が雇用労働者にとって失業時の最大のセーフティーネットである、そして、雇用保険の果たすべき役割の重要性からしても、当事者である労働者代表の合意を得て審議会の答申が行われ、雇用保険法につきましては制度変更が行われなければならないものと私は考えておるわけでございますけれども、今回は、労働者側の理解を得られぬままに審議会の取りまとめを行われたと聞いております。
 こういう経緯になりましたことを、私はやはり、先ほども申し上げましたけれども、お互いに痛みを分かち合わなくてはならない、こういう制度のときには、できるだけ合意形成を図って、そして全会一致で、全会一致まで行かなくても、かなりの合意形成をしながらこれらの答申が出されることが望ましいと思うわけでございますけれども、片方の労働者側の反対があったにもかかわらず、答申がまとめられて法改正に至ったということにつきまして、大臣のこれに対する所見をお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 労働側の皆さん方の御意見というのも、これは大変大事でございますし、できる限り皆さんの御意見を拝聴して、そして合意を得た中で事が進むということが大変重要だというふうに平素から思っている次第でございます。
 厚生労働省の、とりわけ労働関連の法律につきましては、常に皆さんの御意見をお伺いして、できる限り合意をということで来ているわけでございますが、今回は、大変残念でございますけれども合意を得るところまでは至らなかった。いろいろの御理解はしていただいているんだろうというふうには思いますけれども、合意を得るというところまでは至らなかった。大変残念だというふうに思っている次第でございます。
 現状につきましては、午前中にも議論をしたところでございますが、現在の国際情勢、そして日本の企業が抱えます問題点、そうしたことをよくわかりながらも、それに対する対応策というものがなかなかとりにくい、今までのような調子にいかない、そういうジレンマを抱えながら、政府もこの二、三年経過をしてきたというふうに思っております。今までのように、原因がわかればすぐにそれに手を打って、そして回復できる、そういう原因ではなかった。なかなか難しい状況に日本の経済が置かれている、そういう中でありますために、再びこうして皆さん方にお願いを申し上げる結果になったということではないかというふうに思っている次第でございます。
鍵田委員 大臣がおっしゃるように、大変厳しい環境である、そういう中でなかなか合意が得られなかったというふうなことでもございますけれども、しかし、環境が厳しければ厳しいほど、お互いに理解し合って、そしてこれを乗り越えていくということが大切なわけでございますから、今後の審議会の運営のあり方につきまして、十分そういう配慮をしながら今後も進めていただきたいと思っております。
 午前中の同僚議員の質問の中にもいろいろございましたけれども、今回の保険給付の削減などにつきましては、大変厳しい雇用状況の中で行われるわけでございます。
 そこで、現在の失業の大きな特徴というものが、倒産とか解雇などの非自発的失業者が非常に多くなってきておる、また、再就職の非常に厳しい中高年者の失業者が大きな割合を占めるようになってきているということにつきまして、政府としてはどのような認識をお持ちでしょうか。それから、基本給付率の削減及び上限の引き下げは、失業直後からの生活の安定を直撃することになるわけでございますけれども、それらにつきましてもどのようにお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
鴨下副大臣 今先生がおっしゃるように、今、倒産やリストラを含めた非自発的な職を失う方々が多い、こういうようなことはそのとおりでありますが、そういう中で、今回の基本手当の給付の水準の見直しが、ある意味では現行の賃金、雇用慣行のもとでは結果として中高年労働者に相対的に影響が及ぶということは、先生の御指摘のとおりだろうというふうに思います。
 ただ、それでも、基本手当は、失業者の生活の安定を図るとともに、求職活動を支援し、再就職を促進していく、こういうことが目的になっているわけでありまして、そういう意味で、基本手当の水準が再就職時の賃金の水準と逆転をしているような層におきましては、基本手当の支給終了を待ってから再就職しよう、こういうような傾向もあるものですから、この逆転現象を放置しておくということはなかなか制度の趣旨に照らして難しい、こういうようなことを認識しているわけであります。
 ただ、基本手当の所定給付日数につきましては、倒産、解雇等により離職する場合には、現在でも中高年齢層には最大三百三十日と手厚い日数としているほか、今回の改正におきましても、三十五歳から四十五歳の層について日数の延長を行うというようなことを含めまして、一定の配慮は行わせていただいているところでございます。
鍵田委員 その問題につきましては、後ほどまたもう少し質問をさせていただきたいというふうに思います。
 こういう、雇用保険制度というふうな、労働者にとりましてのセーフティーネットというもののあり方につきましてお考えをお聞きしたいと思うんですけれども、もちろん雇用保険財政というものがありまして、それの中でセーフティーネットがつくられておる、形成されておるということではありますけれども、しかし、その保険財政だけを考えて雇用のセーフティーネットを考えていきますと、失業者が少ないときは非常に豊富な財源があって、そして手厚い給付が受けられるけれども、雇用状況が厳しくなればなるほど再就職も非常に難しい、そういう厳しい状況になってくるわけです。そのときに給付が引き下げられるというふうな結果になってしまうわけでございまして、そういうことから考えますと、やはりセーフティーネットというのは、失業などの予測を超えたセーフティーネットというものがちゃんとあって、そして柔軟にそういうことが、そういう十分な給付ができるようなセーフティーネットが必要なのではないか。
 その辺が、どうもその都度財政状況だけを見て雇用保険のシステムを考えておられるというような印象を我々は受けます。マスコミの論調などを見ましても、何かその都度財政だけを見て、御都合主義でやっているんじゃないかというような論調が非常に多いように見受けられます。それらにつきまして、どのようにお考えでしょうか。
坂口国務大臣 けさ、城島先生のお話にも御答弁申し上げたところでございますが、七、八年前、私、労働大臣をやらせていただきましたときには四兆円規模の蓄積があったわけでございます。それ以後だんだんと減少してまいりまして、もう預金はほとんどゼロになってしまったわけでございます。
 先生御指摘のように、今までは一定のサイクルを持って景気の変動があったというふうに思います。しかし、バブル崩壊後の今日、その今までの変動のサイクルが変わったと申しますか、今までのようなサイクルではなくなってきた。これは経済の国際化、あるいはまた日本の企業の持つ体質の改善等々、そうしたものが絡んでいるわけでございますが、そうした状況の中でこれからどうしていくかということに多分なるんだろうというふうに思います。
 現在は調子が悪いですけれども、三、四年あるいは四、五年すれば必ずまたいいときがあってという、その繰り返しが起こるという状況の中であれば、それまでの間のつなぎをすればいいということになるわけでございますが、どうも今の状況を見ておりますと、より深刻な事態に日本の経済そのものが立ち至っている。やはり諸外国におくれをとらないように、ここで打ちかっていくためにはもっと根っこのところからの改革が必要であり、そして、とりわけ生産性の向上等を図らなければならない、そういう事態にあるわけでございますから、今までの、過去のサイクルではなくて、新しい事態に対応してこれからどうしていくかということを、それこそ労使の皆さん方に御相談を申し上げながら決定をしていかなければならない、そういう事態だというふうに認識をしている次第でございます。
鍵田委員 最後に大臣のおっしゃったことは、私は大変大事なことだというふうにも思います。
 私もそのような形で、今後のこういうセーフティーネット、これは雇用保険だけじゃないと思うんですね。年金も医療もみんなそうでございますけれども、やはり今後の経済のあり方、社会のあり方として考えていかなくてはならないことだというふうに思うわけでございますけれども、しかし、そういう環境にあるというのは、必ずしもことしになってからそうなってきたわけでもないわけでございまして、バブルがはじけてから以降、大臣は四兆円ぐらいあったときに大臣をされたというふうにおっしゃっておられますが、もっとあったときもあるんじゃないでしょうか。ピーク時には五兆円を超えるような財政のゆとりがあったときもあったはずなんですね。
 そういうときには思い切り政府の公的な負担も減らし、そして保険料も下げたりなんかしながらやってきて、そして、急激に三年前の辺から負担をふやしたり、給付を切り下げたりというようなことをやり出したわけでありますが、それは何か毎年保険料を上げたり給付を下げたりというふうなことでやってきて、本当にその場しのぎでやっているという印象を与えるわけでございまして、大臣のおっしゃったようなスタンスでなぜもっと早くからそれができなかったのかということで、私は政府の姿勢として大変問題があるのではなかろうかというふうに今考えておるところでございます。
 そこで、給付の引き下げによる雇用促進効果というものがあるんだと、先ほど鴨下副大臣の方からもお答えがありましたけれども、そういうことをねらって中高年者の給付の削減をするということでございますが、本当に早期に再就職していただく、そういう促進効果があるのかどうか、そこらは私はちょっと疑問に感じておるわけでございます。給付を削減すると、実際にハローワークに行きまして、そこにある仕事なり賃金とその給付との間の逆転現象が解消されて、そして再就職が促進されるというふうな環境に本当にあるのかどうか。
 大体、中高年者の皆さんの求人倍率を見ておりますと、〇・二とか、三を超えるというふうなことはまずないわけでございまして、私なんかももちろんだめでしょうけれども、四十代、五十代の人でも、ハローワークへ行ってパソコンで検索をしましても、ほとんど該当する仕事がないというのが実態であります。そういう厳しい今の雇用情勢であるということが、まず一点。
 それから、私は、ある人と先ほども話をしておったわけでありますけれども、一たん失業をしてしまいますと、今までの住宅ローンも残っておる、子供さんの教育の費用も多額の費用がかかる、健康保険も、もし病気になっておれば任意継続しなくちゃならない、そのときに任意継続の保険料というのは使用者側の負担までかかるわけです。確かに先ほど職安局長はこれは税金かからないとおっしゃっていたけれども、もっと税金以上の費用が、負担がかかるわけでありまして、本当にもう生活を直撃する、そういう内容になっておる。
 こういう現実を踏まえた場合に、この給付の削減というものが、中高年者の生活を直撃して、そして苦しめただけになってしまう、その人の生活を苦しめただけになってしまうという結果になった場合に、だれが責任とるんですか、これについて。大臣が責任とるんですか、副大臣が責任とるんですか、職安局長が責任とってくれるんですか。本当に生活を直撃することはわかり切っておるんです。そういう切実な声を失業しておる労働者からもたくさん聞かされておるわけでございます。そういう切なる声に対して、どのようにお答えをされるのか、お聞きをいたします。
鴨下副大臣 この給付率及び上限額の見直しによって早期再就職が本当に進むのか、こういうようなことが御趣旨だろうというふうに思いますが、実際の数値を見てみますと、基本手当日額の階層別の支給終了直後の就職者の割合を見ますと、やはりある意味で、基本手当日額の多い方々ほど直後の就職が多いというような、こういう事実もありまして、実際、先生がおっしゃっているように、中高年の就職機会も少ないですし、現実に離職前の給与で待遇してくれるところというのはほとんどないという厳しい現実があるということは、よく承知しているわけでありますけれども、ただ、高賃金層を中心に、基本手当の方が高い、こういうようなことですと、やはり早期の再就職が進まないという、これも現実だろうというふうに思います。
 また一方、先ほど申し上げましたように、雇用保険受給者の再就職時期そのものを詳細に検討しますと、やはり高賃金層の方の方が給付が終わった後に就職をするという傾向が強いというようなことを踏まえますと、できるだけそういう方に早期に就職をしていただく、こういうような趣旨から、この支給中に再就職を促進するというような意味では、今回の改正はそれなりの意味を持っている、こういうふうに考えているわけであります。
鍵田委員 もちろん、その効果があると思わないで給付の削減だけされるというふうなことは、これはとんでもない話でありますから、そう思っておられるんでしょうけれども、そうならなかったときに、ただ削減をされた人たちの生活を直撃しただけになってしまうわけでありまして、実際は効果がなかったとなったときの責任をどうしてくれるんですかと、それも私は聞いておるんです。そのことについてお答えいただきたい。
鴨下副大臣 それは、これから改正をしていただくわけでありますから、その中で精いっぱい、再就職が進み、なおかつ中高年層の方々がいかに多く新たな職を得る、こういうようなことで、我々努力をしていくことが責任だろうというふうに思っております。
鍵田委員 数字にあらわれなかったら何もならないわけですから、ちょっとお答えにはなっておらないように私は思うんですけれども、次の質問に移らせていただきます。
 特に中高年齢者の就職促進につきまして、私もかねてから質問を何回かさせていただいておりまして、募集の際の年齢制限の問題につきましてお聞きをしたいわけでございますが、午前中も後藤田議員が質問をされておりました。
 平成十七年度に三〇%という努力目標を設けられて、そして指針なども出されて今進めていただいておるというふうに承知をしておるわけでありますが、まだ現状においてはその半分ぐらいにしかなっておらないということでございます。中高年者にとって大変厳しい雇用環境にある。そういうことなり、また、この給付の削減というふうなことをやるというのであれば、やはり募集の際の年齢制限というものをもっと厳しく見ていく必要があるのではなかろうか。
 平成十七年度の、十七年度ということは十八年の三月末ということですよね、まだ随分あるわけですから、こういうものを前倒しにしてでも、指針の見直しをするなり、また、今の努力目標を義務規定にしていくとかいうことも一つは必要なのではないかというふうにも思います。
 また、就職支援のナビゲーターによります就職支援、中高年齢者のトライアル雇用、中高年長期失業者への官民一体となった再就職支援などの施策を強化して、中高年齢者の再就職促進に全力を尽くす必要があるのではなかろうかというふうにも考えておるわけでございまして、これらの考え方につきまして、お答えをいただきたいと思います。
鴨下副大臣 午前中の後藤田議員のお話にもありましたことと同趣旨の部分もあると思います。
 経緯につきましては多少省略させていただきますが、本年の一月に、募集、採用における求人年齢制限の緩和の徹底を図る、こういうようなことで、本年、現在のところで一三%程度であるのを、平成十七年度に三〇%にする、こういうようなことでありますけれども、その目標を達成できなかったときにどうするんだと、こういうような話でありますが、一つは、例えば年齢差別禁止を義務規定化するか、または指針を見直せ、こういうような御指摘でありますけれども、年齢差別禁止を義務化するということは、これは例えば雇用慣行全般を見直していかなければいけないことにもかかわる大きな問題でもあるわけでありますから、先生おっしゃる趣旨は、これは確かに中高年の就職を促進するという意味では非常に重要なことでありますけれども、労使を初めとして国民全般の大きな議論の中で合意形成をしていく必要があるんだろうなというふうに今の段階では考えております。
 ただ、施策としましても、十五年度の予算の中にもエージフリー促進事業などを加えまして、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けて、広く国民の一般の方々にこの基本理念を御理解いただくためのさまざまな施策をやっていく、こういうようなことを含めまして、議論がある意味である方向に向いていった段階でまた考えることが必要なんではないか、かように考えております。
鍵田委員 いろいろな制約条件があるということは私もよく承知はしておりますけれども、一方で、こういう給付を切り下げて中高年者の生活を直撃するという、そういう実態があるわけでありますから、それに対して私は別に容認をしたわけではありませんが、やはりそういうことをやるんであれば、やはり中高年者に対して、もっと再就職できやすい、そういう環境を一日も早く樹立するという努力はやはり必要なのではないか。そういうことをぜひとも考えていただきたい。ただ、今の副大臣のお答えは余りにもちょっと消極的だというふうに私は受けとめますので、その辺はこれから審議を通じてさらにまた深めていただいて、ぜひとも努力をしていただきたいというふうに考えます。
 それでは、労災保険料の問題と雇用保険料との関係の問題で、若干いろいろな、労使間といいますか、使用者側と保険財政との関係でいろいろなやりとりがあったというふうに私も聞いております。そういう中で、例えば労災保険が余剰金を非常にたくさん持っておるというふうなことで保険率が改定された、こういうことで、十五年度予算ベースでも二千億円程度が引き下げられておるということを聞いておりますし、十五年度の予算でも、労災保険料率が引き下げられて、事業主の負担が千四百十億円程度も軽減をするということ、それは事実ですよね。後でまたその事実関係をお答えいただきたいんですが。
 それで、こういう環境の中で、一方、雇用保険につきましては、雇用保険の引き上げを若干早めて、そして一・六%までの弾力条項を早めようという話があったけれども、経営側の非常にかたくなな反対があって、それが二年間の猶予期間という形になったというふうなことは聞こえてきておるわけでありますけれども、そういうことであるとするならば、経営側が、労災保険では保険料を引き下げて自分たちの懐ぐあいに余裕が出てきて、雇用保険の方についてはその負担はふやすのは嫌だということで拒否をされておるというのは、やはり経営者の社会的責任というものからしまして、そういうことを許していいのかどうかということにつきまして、これは、事実関係は局長からお答えいただいて、それからお考えにつきましては大臣の方からお答えいただきたいと思います。
戸苅政府参考人 労災保険料につきましては、今御質問のとおり、千分の一引き下げるということになっております。
坂口国務大臣 労災保険につきましては、最近、景気の低迷ということもあるというふうに思いますが、労災事故の人たちというのが今までよりも減ってきていることは事実でございます。減ってきていることは大変好ましいことでございまして、これが本当の意味で減ってきているのか、それとも景気の低迷ということが影響して減ってきているのかということ、ここをもう少し見定めなければならないというふうに思っておりますが、この三、四年、減ってきていることだけは間違いがございませんので、これは引き下げるということにさせていただいたということでございます。
 御承知のように、労災保険の方は、これは経営者側だけが保険料を出していただいているわけでございますし、雇用の方は労使折半の形でお願いをしているわけでございますから、経営者の側の労災分の減額の部分、これは労働者側には影響はしないわけでございまして、雇用保険には影響しないわけでございますから、若干不公平ではないかという御意見ではないかというふうに思いますけれども、そこは、労災は労災、雇用保険は雇用保険というふうに考えざるを得ないということでございます。
 したがいまして、雇用保険の方もこの二年間は保険料を、一・四まで上がりましたことはもう事実でございますが、しかし、この二年間は据え置きにさせていただくというような考え方の出ましたのも、一つは労災保険と雇用保険との間のやはり均衡というようなこともあって、そういう措置がとられたとも言えるわけでございまして、これから先、景気の動向がどうなっていくかということ、はかり知れないものがございます。まだ厳しさを覚悟しなければならないというふうに思っておりますが、そうした中で、今後の動向によって、今後雇用保険の方の労使折半のこの額も決定されていくということではないかというふうに思います。
鍵田委員 労災保険と雇用保険では財政が違うわけですから、それを、こっちからこっちへ持ってくるというわけには、それはなかなかいかないかもわかりませんが、同じ経営者の懐から出るわけでありますから、今は潤って、一千億を超えるお金が国庫に入っておるわけですから、それを雇用保険の方に回して、その負担をふやしましょうということがあってもいいのではないかというのが私の考え方でありまして、その辺はやはり今後の、負担と給付との関係で、そういう見直しを十分やっていただくということが必要なのではないかというふうに考えます。
 次には、国庫負担の問題でございます。後ほど民主党にもその問題についてお聞きをしたいと思っておるんですが。
 特に雇用保険制度というのは、国庫負担もあり、そして労使の折半の保険料で運営をするということは、そのときそのときの経済情勢によりまして雇用が厳しくなってくるときに、国民の皆さんに安心してもらえるような、そういう保険制度として維持をしていくということでこの保険制度はあるわけでございますから、非常にといいましても、労使ともに負担にも限度があるということになってまいりますと、やはりこの際は、経済政策なり、その他、公共事業やそういうものには多額の国庫負担をしたりなんかして経済対策をやってきているわけでありますから、そういう意味では、雇用保険財政にももっと国庫負担をふやしていくということがあってもいいのではなかろうか。
 特に、財政が収支バランスとれたからといって、それで安心できるわけじゃない。やはり、労働者が失業しても安心できる、そして、生活破綻をしない、また、失業が長引いてホームレスになったりなんかするようなことがないような、そういうシステムをちゃんと、安心のシステムをつくっていくということが大事なわけでありまして、もう財政のバランスばかり考えるというやり方はいかがなものかというふうに思うわけでございます。
 そういう意味では、国庫負担をもっとふやしていくという考え方はないのかどうかということでございますが、その中身のことで若干触れますと、昨年度補正後の失業等給付費の国庫負担というのは六千四百十七億円でございましたけれども、今年度、十五年度になりますか、国庫負担額は、今回の法改正によりまして給付を切り下げたということもあって、五千三百億円ということで、一千億円減額になる見込みでございます。また、十六年度以降も一貫して国庫負担はことしよりも下がってくる、こういう見込みで、大体五千億円台になる見込みでございます。
 給付を削減することによって国庫負担が減額になる、その負担が減額になった分はどこへ行くのかということで調べますと、これはまた国庫に返ってしまうということになるわけですよね。そうしますと、これは、給付を切り下げて困るのは労働者側、そして、負担が減った分は国庫のぽっぽへないないしてしまうというのは、いかにもちょっと、総理の三方一両損という発想からしてもおかしいのではないかという思いがするわけです。
 確かに、四分の一、二五%という負担率、これはそのとおりだからいいんですけれども、しかし、給付率を下げることによりまして、その国庫負担の絶対額は下がってくるわけでありますから、私は、百歩譲っても、やはり絶対額ぐらいはせめて国庫負担としてそのまま置いておく、そして、失業等給付のそういう財政の財源に充てていくということがあってもしかるべきではないか。何か、国だけが得するというような、いや、もう一つ、先ほどのついでに言わせていただくと、経営者と国が得をして、労働者は割を食う、こんなふうに見えてしようがないので、そういうことに対して私は納得がいきません。恐らく国民の皆さんも納得いかないと思います。それにつきまして、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 先ほどもお話しございましたように、全体といたしましては、国の方が四分の一、二五%の国庫負担をしているわけでございまして、この二五%の国庫負担というのは、ヨーロッパ諸国、重立ったヨーロッパ諸国を見ましても、その中で日本は一番高いというふうに思っております。
 社会保障費に出しております額、これは、経営者側、それから労働者側、両方の額でございますけれども、国民所得比で比較をいたしますと、日本よりも諸外国、大体倍近く出しているわけでございます。その額、それが何が一番違ってそんなに倍近くになるのかということを中身を見ますと、やはり雇用保険に出している額が一番違うんですね。ヨーロッパ諸国、ドイツだとかフランスあたりと日本と比較をいたしましたときに、非常に多く出しているということ。これは、フランスやドイツが非常に失業率が高いということと関係しているんだろうというふうに思っております。それらの国々の国庫負担を見ましても、日本が一番多いというふうに思います。
 もっと国が出せばいいではないかというお話もあるわけでございますが、確かに、二五%でございますから、全体の額が下がりますと、その国の出し分も下がってくる。そこはそのとおりでございます。
 しかし、今回、基金として、受け皿として二千五百億円、この積み立てを行いまして、そして、失業保険をバックアップする体制がここにでき上がったわけでございまして、早く再就職をする皆さん方に対します三〇%の上乗せといったようなものは、その中から出るわけでございますから、そうした意味で、国の方も応分の負担、一千億ではなくて二千五百億円、そこに積んでいるわけでございますから、少なくともこの二年間はそれは継続をするわけでありまして、その後どうするかの問題はまた残るというふうに思いますけれども、国の方も応分の負担をさせていただいているというふうに思っております。
 国が出すというのは、一見、それは非常に話としては言いやすいですし、そう言いたくなりがちでございます。我々もそういう気持ちになるわけでございますが、しかし、よくよく考えてみると、雇用保険というのは、日本の国の国民全体、働いている人全体がそれに入っているわけではなくて、第一次産業の皆さんでありますとか、あるいは商業等に従事しておみえになる皆さん方等々雇用保険にはお入りになっていない皆さん方もたくさんおみえになるわけであります。
 そうしますと、現在、小規模経営が、いわゆる小売等が非常に少なくなって、そこで倒産をしておみえになる皆さん方もおみえになるし、そして、職を失った皆さん方もおみえになる。そういう皆さん方がおみえになる一方、その皆さん方には影響を与えない雇用保険にだけ国がたくさん出すということもまた、ここは格差が生じることになるわけでございますから、そこにはやはり一定の歯どめがかかってくるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 現在の、この厳しい四十二兆円という税収でございますから、ここへ多くの国庫負担をつぎ込むということになれば、それは後生への負担ということになって残ることになるわけでございます。現在も厳しいわけではございますけれども、しかし、厳しいからといって後生にそう残すわけにもいかない。現在の厳しさは現在の私たちの間でやはりこれは持ちこたえていくというのが、私たちは一つの筋ではないかというふうに考えている次第でございます。
鍵田委員 外国の水準から見ても日本の国庫負担の率は高いんだというお答えをいただきましたが、フランスやドイツ、もう随分長い間、高失業率で推移をしておりまして、国としましてもそれだけの給付になかなか耐えられないというようなこともあったのかもわかりませんが。私は、これから質問をさせていただきますけれども、民主党が言っておりますように、財政が比較的安定するような形でのそういう基金というようなものを置いておいて、そして給付がふえたり減ったりした場合にその調整弁になるようなものが必要だという、そういうものに対してもやはり何らかの措置ができるんじゃないかということも含めて負担のあり方も考えていただきたいし、今日のような、給付を切り下げて、そして切り下げて残った分はぽっぽへないないされるというふうなことにつきましては、やはり納得できないということを申し上げておきたいと思います。
 それで、民主党の提案者の方、大変長い間待っていただきましたけれども、二問ほど質問をさせていただきます。
 民主党につきましては、与党三党が補正予算で手当てをしました早期再就職支援基金というのが政府でつくられておりますが、この制度のうち、一般会計から拠出された二千五百億円、これにもし残額が残れば失業等給付の穴埋めに充当されるという、このシステムというんですか、やり方につきましては、民主党が言ってきたことと同じことではないかなというふうに私は思うんですね。だから、先取りをしたのか、民主党の言ってきたことをまねされたのかわかりませんが、そういう仕組みではないかというふうに思います。
 そういうことからしますと、民主党がずっと主張されてきた仕組み、そういうことにつきましてもう一度ここで皆さんに説明をしていただければというふうに思いますので、民主党が失業等給付資金を設けることにいたしました趣旨なり内容を説明いただきたい。これが一問ですね。
 それから、続けて二問目も質問いたしますが、能力開発支援につきまして、失業状態にある受給資格者が就職または新たな事業の開始の促進を図るために必要な教育訓練を受ける場合に、その受けている期間中、月十万円程度を支給して受給資格者の能力開発を支援するというふうに聞いておりますが、受給資格者の範囲などについてその意図するところを説明いただきたいということと、それから能力開発訓練の設定の際にテレビ電話などを利用するというふうなアイデアもお持ちのようでございますが、これにつきましては、認定とかそういうものが甘々になって問題が出てこないのかどうかというような懸念も持たれる方がいらっしゃると思いますので、それらにつきまして説明をいただきたいと思います。
城島議員 御質問いただきまして、ありがとうございました。
 まず一点目、民主党の今回出しました案について説明を詳しくしてくれということでありました。まず、我々の民主党案は、雇用保険財政の安定化を図るための措置として失業等給付資金を設けることにしたわけでありますが、これはもう御案内のとおり、最近の経済社会の急速な変化に伴って雇用及び失業に関する状況というのが極めて悪化をしているわけでありまして、大変厳しいこの雇用環境の中で、多くの皆さん方がやむを得ず離職をされたり、あるいは最近の特徴でありますけれども、みずからの営む事業の廃止、廃業ということが余儀なくされているということであります。
 したがって、こうした状況の中で、一方ではこの雇用保険財政が破綻をするというような事態は、セーフティーネットとしての一番大事なものでありますから、これは避けなければならない。雇用保険加入者及び受給者の給付が受けられなくなるのではないかという、そうした不安に対してもきちっと払拭する措置が必要ではないか、急務ではないかというふうに思ったところであります。
 しかし一方で、弾力条項とかあるいは一般会計からの借り入れなどの現行制度の枠内の措置では被保険者の負担が増すこと、あるいは効果が小さいといったような問題点があるわけでありまして、ましてや現下の厳しい雇用失業情勢を見ますと、政府案のような、この二年間、ある面では、凍結とは言っておりますが、保険料を上げるということが法案の一つの骨格になっているわけでありますから、保険料率の引き上げあるいは今も論議になっております給付の切り下げということは、我々としては論外であろうというふうに思っております。
 そこで、我々のこの法案は、保険料率を引き上げずに、しかも現行水準をしっかりと維持するために、労働保険特別会計に失業等給付資金というものを設ける、そしてそこに一般会計から二兆円程度の繰入金を投入することとしたわけであります。このことによりまして、雇用保険財政の破綻を防いで、保険加入者らの不安を取り除くことができるんではないかというふうに思っているところであります。
 政府の早期再就職支援基金、これは一見御指摘のようにこの我々の民主党案のスキームと似ているようなところがありますが、その内容は、特別会計の制度とは別物として基金ができているわけでありますので、そしてその基金に余裕金が生じた場合には特別会計にそこで貸し付けることができるとすることになっておりまして、性格的にも不明確ではないかというふうに思っているところであります。
 これに対して、今御説明しましたように、民主党案は、労働保険特別会計の中の雇用勘定に置くというところが決定的に違うわけでありまして、その雇用勘定に置かれるものとして失業等給付資金をきちっと位置づけているというところでございます。そして、同勘定が歳出超過となった場合で積立金によっても不足分が補足されないときにこの失業等給付資金からこれを補足することとしているという点が我が党案の骨子であり、背景であります。
 それから、能力開発支援についてのお尋ねでございますが、能力開発訓練を受ける場合に能力開発手当を受給することができる対象者は、大きく三つに該当しなければならないとしております。一点目は、雇用保険法による求職者給付を受給していた非自発的失業者であって、その受給が終了した人。それから、雇用保険法による求職者給付を受給していた自発的失業者であって、その受給が終了し、かつ離職日から起算して一年を経過した人。それから三点目は、特定廃業者、いわゆる自営業の廃業者。このいずれかに該当しなければならないというふうにしております。
 こうした方々につきましては、この間の有効な政府の経済政策、失業雇用対策ということが打ち出せなかったという意味で、国に大きなその責任があるんではないかというふうに我々としてはとらえておりますし、不良債権の処理を加速するという政策を一方でとりながら、有効なセーフティーネットの整備をいまだ怠っているということからして、国が一般財源を投入してこうした方々の救済に当たるべきではないかということを考えてこの制度をつくったわけであります。特に、雇用保険法の対象とならない自営業をやめた方に対する点は、これまでの雇用政策にはなかった特徴的なことではないかというふうに思っております。
 民主党としては、以上のような、緊急に対策を講じなければならない方々について、今回、臨時の支援措置を提案したところでございます。
 なお、若年者の就職難の問題といったような、これも大変大きな問題でありますが、これにつきましては、雇用政策全体の枠組みの中で、また雇用保険制度の抜本的見直しの中で別途検討し、打ち出していくべきだと考えております。
 さらに、テレビ電話の活用について御質問がございました。
 今回、我々は、失業及び能力開発訓練の認定、月一度行われるわけでありますが、この際、出頭にかえてテレビ電話を利用することができるとしております。認定の申請のためには必ず出頭しなければならないことといたしますと、出頭のために訓練の受講を休まざるを得ないという場合も出てきますし、本制度の趣旨が損なわれる結果となりかねないということもあります。また、ハローワークが込んでいるために待ち時間が非常に長いということもありますし、場合によっては遠くに行かなければいかぬということもあるでしょう。したがいまして、給付を受けようとする人への過大な負担となることを避けたいというのが一方であります。そして、一方、この給付制度の適正な運用のためには、本当に必要としている、また能力開発訓練を受けているかどうかを確認するためには、どうしても面談を通して申請者の状況を把握する必要がある。
 したがって、今回、このために、近年におけるブロードバンドの普及を背景として、出頭することなく、かつ面談を通して公共職業安定所が申請者の状況を把握することができるよう、インターネットを利用したテレビ電話を導入することとしたわけであります。
 認定が甘くなるのではないかという御懸念をいただいたわけでありますが、テレビ電話の規格につきましては、申請者の表情とかあるいは声などから認定の判断材料を得られる程度の滑らかな動画とクリアな音声を送受信することができるのではないかと考えております。したがいまして、テレビ電話を利用した場合でも、出頭した場合と同じ基準で認定を行うことはでき、甘くなることはないというふうに考えております。
鍵田委員 今お聞きしておりまして、政府としても参考にしていただくところがたくさんあるんじゃないかというように思いますので、ぜひともこれらを取り入れてお考えをいただきたいと思います。
 それで、時間がなくなってしまったんですが、あと一、二点、ちょっと簡単にお聞きしたいと思います。
 特に、緊急対応型でワークシェアリングをしておるところは賃金カットなどを随分されておりまして、しかし、努力をしたけれどもやはり失業者を出さざるを得ないというようになった場合には、給付の面で非常に低い給付しか受けられないというようなことがあるわけですけれども、育児休業期間中の算定の特例というようなものもあるわけですから、一つは、そういうものに即してこれらの救済の方法がないのかどうかということ。
 それから、パートタイマー労働者の適用につきまして、給付の部分について一般被保険者と短時間被保険者の統一をすることになっておりますけれども、給付要件などについての両者の統一についてどのように考えておられるのか。また、時間差による区分をなくし、相互の行き来を前提としてセーフティーネットを拡充する考えの延長には、いわゆる均等待遇の徹底ということがあって初めて一貫した政策体系となるのが普通ではないでしょうか。パートタイム労働について、その働きに応じた公正な処遇の実現等に関する法整備が行われなければならないと考えますけれども、大臣のお答えをいただきたいと思います。
戸苅政府参考人 まず、緊急対応型ワークシェアリングの問題であります。
 これは、大変重要な質問だろうというふうに受けとめております。ただ、緊急対応型ワークシェアリングを行っている企業、これはやはりかなり事業運営上厳しい状況に置かれているという企業なんだろうと思います。そういう意味では、緊急対応型ワークシェアリングを行っていないけれども厳しい経営環境に置かれている企業の場合も、やはり賃金とか労働条件の引き下げを伴う場合が少なくないということがありまして、そうすると、その場合に、緊急型ワークシェアリングを実施している場合に限って今御提案の通常勤務時の賃金での基本手当日額の算定の特例を行うということが受給者間の均衡を失しないかどうかという問題があると思いまして、御趣旨は大変よくわかるのでありますが、そのあたりの難しい問題があるということをぜひ御理解いただきたいと思います。
 それから、パートの問題でありますが、パートタイムにつきましては、短時間被保険者ということで、就業日数が十一日以上ある月につきまして、十一日以上ある月を〇・五カ月とカウントしているわけですが、これは実は、パートタイム労働者の方の中に、やはり隔日勤務とかあるいは二日置きの勤務とか、そういう実態があるということを踏まえてやったものでありまして、今回の通常労働者との一元化というのとはちょっと趣旨が違う問題ではないかなというふうに思っていますけれども、これも、パートタイム労働者の今後の勤務というか労働の仕方、そのあたりを見ながら、また必要があれば検討していく、こういう問題ではないか、こういうふうに思っています。
鍵田委員 ありがとうございました。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 早速、雇用問題について質問したいと思います。
 平成十五年、この二月の統計によりますと、完全失業者が三百四十九万人、本当に大変な数字なわけです。これは三百四十九万人ということで認識しておりますけれども、このたびの雇用保険法の一部改正ということで、あの手この手でいろいろ政策を考えておるわけですね。
 それで、資料によりますと、本当にいろいろとメニューをそろえて、効果的、効率的な公共職業訓練の実施ということでいろいろやっております。また、今までもいろいろな、多種多様な、雇用促進のためにやられてきたわけですけれども、なぜ相変わらずこのように失業者が多いのでしょうか。大臣にお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 なぜ失業者が日本もふえてきたかということでございますけれども、これはいろいろあるだろうと思います。
 これはこの前に一度ここで私御答弁申し上げたことがあるんですが、もう七、八年前になりますけれども、デトロイトで初めての雇用サミットがございまして、その雇用サミットのときに欧米諸国が、日本は今失業者が非常に少ないけれども、数年すれば必ず日本も失業者は多くなる、今後どうするつもりかという質問をされたことがございました。
 その質問は、ヨーロッパの方は、失業率が高くても辛抱している、そのかわりに企業の方は自分たちでやっていける範囲の仕事しかやらない、そして失業率の高いのは辛抱している。いわゆる仕事の幅を狭めて高失業率を甘んじて受けている。アメリカは、仕事の幅を広げていろいろの仕事をする、そのかわりに賃金は下げて、低い賃金で、そして失業率は低くしている。日本はそのどちらを選択するのかということを問われたわけであります。
 そのとき、よく考えていなかったものですから、日本は失業率がふえることも選択しませんし、賃金を下げることも選択しません、第三の道を行きます、こう言っていたわけでございますが、そんな手品のようなことはできない、日本もいずれかを選択しなければならないときが来る、そのときに欧米の専門家の皆さん方からこう主張されたわけでございます。
 私はそのときに、正直なところ、余りぴんときていなかったわけでございますが、それから数年を経まして、確かに日本も失業率が上がってきた。そして日本は、仕事の幅を広げるのか狭めるのか、そして、今までの賃金を維持するのか、それとも下がることを覚悟するのか、そうした選択に迫られているという感じが私はいたします。
 一昨年でございましたが、日本は一体、その欧米のどちらの側に着陸をしようというふうにしているのかということを私、問うたことがございます。それは、この大臣に就任をさせていただきました直後でございました。そのときに、厚生労働省の職員もあるいはまた経済産業省の方も、日本はヨーロッパとアメリカの中間に着陸しようとしている、こういう答弁でございました。
 私はそれはわからないわけではございませんで、確かにこの日本は、国際競争力の中で厳しい選択を迫られている。アジア諸国と比較をいたしました場合に、この国際化の中で選択をする選択肢というのはかなり狭められている。そうした構造的なものの中で今、失業者はふえていっている。そこをこれからどう克服していくか。失業者を中心にして克服していくのか、それとも仕事の幅を広げるということによってそれを打開していくのか。しかし、そのときには別の、賃金の低下を伴うというものが待ち受けている。そうしたことをこれから日本はどう克服していくのかということが問われているというふうに思っておりますし、かなり難しい選択ではないかというふうに思っている次第でございます。
 いずれにいたしましても、そうした選択の中で、午前中にも申しましたように、労働生産性をどう上げていくかということに最も大きな力を発揮しなければならない、さもなくば現在のこの失業状況が続くのではないか、そういうふうに思っている次第でございます。
武山委員 そうしますと、ヨーロッパとアメリカの中間を行くのではないかと。しかし、中間を行くにしても、どういうふうな青写真を、どういうふうな中間を行きたいのか、そこを聞きたいと思うんですね。今、現実は大変だ、どっちへ行くのかまだ見えてこないということですけれども、政府がそこでリーダーシップをとって、こういう中間を行くなりこういう青写真なりというものをやはり示していただきたいと思うんですね。それがないものですから、こういうふうにして政策を見ても、場当たり的にお金だけを出せばいい、給付だけをすればいい、そういうふうに見えるんですね、現実は。ですから、その青写真はどういう方向に行くのか。
 以前、雇用を創出するために規制緩和。規制緩和だってやってきたと思うんですね。でも、その規制緩和も、十分な規制緩和が進んでいない。やはり小出しの規制緩和。それからまた、お酒の小売店の話ですけれども、もうべらぼうに、アメリカなんかは大変厳しい規制緩和ですけれども、お酒の小売店は、今もうどこでも売れるように規制緩和をしてしまっているような状態だ。
 ですから、本当に、日本がどっちに行くのか、どういう方向に行くのか、それをやはり政府が示すべきだと思いますけれども、その辺もまだ示せない状態なんでしょうか。もう一回大臣にお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 これは小泉総理がどうお考えになっているかということであって、私が差し出がましいことを言うのは甚だ失礼なことだというふうに思っておりますけれども、私の立場として言わせていただければ、これから先の進み方というのは、好むと好まざるとにかかわらず、役所の皆さん方が言いますように、ヨーロッパとアメリカの中間に立っている。それは、ヨーロッパ的な行き方、ドイツやフランスのような行き方をすれば一〇%前後の失業率になってしまう。現在もフランスやドイツはそういう状況にある。それは確かに、自分たちの国に合う仕事、いわゆる価値の高い仕事、そうしたものを選んでいる、そして賃金は下げないという道を選んでいる、しかしそこからはみ出す人たちの失業者が続いている、こういうことだろうと思います。
 日本はそこまでは至っておりません。もう少し幅広い仕事を選んでいく。しかし、その幅広い仕事を選んでいる中で、日本固有の、日本でなければならない仕事をどうつくり上げていくかということに懸命の努力をしているというふうに私は思いますし、私は、日本の進むべき道というのはやはりそこにしかないのではないかというふうに思っている次第でございます。そして、確かにこの厳しい状況が続いていくわけでございますけれども、それをやはり乗り越えていかなければならない、そういう立場に今立っているし、これからもそういう方向でいくのではないかというふうに思っております。
 規制改革のお話が出ましたけれども、規制改革をするだけで景気が回復するのかといえば、それはそうではないと私は思っております。
 規制改革も確かに大事でございますが、それは、言ってみれば、自転車の輪っぱの抵抗力をとるような話でありまして、回りやすくはなりますけれども、だれかがペダルを踏まないことには前に進まない。規制改革は、輪が回りやすくする話と似ているというふうに私は思っております。したがって、回りやすくするだけではなくて、ペダルを踏まなきゃならない。そのペダルをだれが踏むのか、どのようにして踏むのかということが今問われている。
 経営者の皆さん方にいろいろとお願いをいたしておりますが、新しい価値あるものを日本の中でつくり上げて、そして、その皆さん方が率先して踏んでいただくのを今、日本は待っている。そのために、これはかなりの研究費を投入して、そして皆さんに新しい価値あるものをつくり出していただく、そういう状態を今つくりつつある。つくりつつありますが、それが完全にまだでき上がっていない、その途上にあるというのが現状ではないかと私は認識をいたしております。
武山委員 私は、規制改革だけが今の失業率を低めるというつもりで言ったわけではございません。例えばの話で、そういうこともあり得るというふうに言っただけでございます。
 今のお話からしますと、まだ先がどうなるか全く見えない状態ですね。でもそこは、こういうふうにして政府が政策を一つずつ予算をつけて打っていく中で、結局は、過去を振り返ってみましても、その結果が必ずしもいい方向には出ていない。相変わらず失業率は高まっていくばかりだ。それはやはり、今のような経済をつくってきたのは政府側の責任なわけですね。こういう現状をつくってきたのもやはり政権与党がつくってきたんでありまして、今のお話のままですと、まだ全然見えてこない。
 では、この失業率が今後どういうふうになっていくのか。私は、今の経済情勢ですと、イラクの問題も重なりまして、また、今の日本の経済事情も視野に入れますと、もっともっと高くなるのではないかと思うんですよね。ですから、ここで本当にもうダイナミックなものを打たないといけないと思うんですよね。そうでもなかったら、やはりこれは政策的には今までのやり方の域をほとんど出ていないと思うんですよ。
 ですから、これからもこのまま、今までの政策で、今お話しのようなやり方でやっていくのかどうか、もう一度大臣にお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 現在の状況が、日本の政府がつくり出したものか。それは私は、一概にそうではないと思っております。
 確かに、日本の国内におけるさまざまな選択肢、その選択肢を続けてきた結果が今日であることは論をまちませんけれども、日本が世界の中で置かれた環境が大きく変わった、日本を取り巻く環境が大きく変化してきている、そのために、日本が今までのような状況ではやっていけなくなった、もっと今までよりも違う選択肢を選ばなければならない状況になってきたというのが現実ではないかというふうに私は思っております。国内における選択の誤りというよりも、環境の大きな変化の中でこれからどう対応をしていくかということが迫られている、それが現実ではないかというふうに考えております。
武山委員 では、また大臣にお聞きしますけれども、大臣のおっしゃるように、周りが変わったというんであれば、では日本はどういうふうにして変えていくのか。
 私はそれだけとは思えません。やはり今までの政策の評価、それから、今までの経済政策の失敗だと思います。今のような現実の状況になったということは、今までどれだけの税金を使ってこれだけ経済対策を打ってきても、何兆円というお金を経済対策に打ってきてもほとんど効果がなかったわけですよね、これだけの失業率を抱えているということは。
 ですから、今のお話からしますと、では、今後どういうふうにしていくんですか。周りが変わったということであれば、では、それにどう対応していくんですか。
坂口国務大臣 周辺の変化にどう対応をするかということでありまして、日本の選択は、その周辺の変化に応じてやっていかなければなりません。
 今までのように、景気が低迷をした、戦後、これで七、八回不況時があったというふうに思いますけれども、直近のこの不況以外のときには、公共事業の増大、減税、そして金利の引き下げ、三種の神器と申しましたけれども、大体この三つを行えば景気は回復をしたわけであります。
 しかし、今やその三つを行ってもこの景気は回復をしない、そういう状況でありますから、多くのお金をつぎ込んだことも事実でございますが、それは幾らつぎ込みましても、それによって景気が回復をしないということがその中から浮かび上がってきた。
 そういう構造の変化が起こっているということを初めは十分に日本も認識していなかった。財政をつぎ込めばこれは回復するのではないかというふうに思っておりましたけれども、やはりやってみればそうではなかった。もっと根本から変わったところが存在をするということがわかってきた。税制も改正を行って、減税も行いましたけれども、それでもこれは変化はなかった。あるいは金利も、もうこれ以上下げられないというところまで下げましたけれども、変化はなかったということでございましょう。
 ですから、今問われておりますのは、そうしたことでこの景気はよくならない。何度か申し上げておりますように、日本の産業と申しますか、日本の経済がやはり他の諸国の経済に打ちかっていきますためには、もっとやらなければならないことがある。そういう意味で、ことしも他の分野では非常に財政の抑制を行いましたけれども、研究開発だけは五、六%のアップで成長をさせた。やはりそうした研究開発等を民間の企業もやっていただかなければならないし、国もそこに投入をしなきゃならない。そうした中で初めて、次に何をやるか、どうすればいいかという一手が見えてくるということではないかというふうに思います。
 アメリカに次ぎまして、研究開発に多くの財源が日本は投入されております。確かに、その中で、政府が出します額は、企業が出します額に比べて少ないことは事実でございますが、トータルで見れば、アメリカに次いで多い。それだけの研究が私はなされているというふうに思います。その中で何をつくり出していくかということが今問われている。そう簡単に、いわゆる政府の中の財政構造をただ単に少し変えるぐらいなことでよくなるという状況にはないというのが現実だというふうに思っております。
武山委員 今のお話を聞きますと、それではまた一歩お話を進めますけれども、しかし、国民の税金をやはり予算として組むわけですよね。厚生労働省が、このように雇用保険の改正ということで、予算を組んでやるわけですけれども、では、これはどのような効果が見込まれて、どういうことを予測して組むんでしょうか。
坂口国務大臣 この雇用保険の問題だけで景気をとやかく動かすわけには、先ほどから言いますように、これはいきません。全体の中で最大限、この景気の問題の中でこの雇用の問題を考えていく以外にないわけであります。この現在の経済の状況を打開していかなければ、失業者というものをなくすることはできないわけでありますから、先ほどから申しましたようなそうした努力の中でどうしていくかということが今問われているわけでございます。雇用保険のこの方向性と、そしてそれを取り巻きます雇用対策と、これはあわせて行っていかなければならないというふうに思います。
 雇用対策につきましては、今まで政府が中心になって、あるいは旧労働省が中心になりまして雇用対策というものを全国一律に組んでまいりましたけれども、やはりそれではやっていけない時代になってきた。地域地域、それぞれの状況が違う。失業率も有効求人倍率も、都道府県によって大きな違いがございます。それを乗り越えていこうということになれば、それぞれの地域の特徴というものをよくつかみ、地域の特性を生かしていくということ以外に雇用対策はあり得ないというふうに思っている次第でございます。
 したがいまして、一律の雇用対策だけではなくて、それぞれの地域とタイアップをした、地域によって考えていただく雇用対策というものをやはりこれから目指していかないといけない。そういう意味で、全国的なネットワークが必要になってきている。そうした中で、この雇用保険をどう生かしていくかということではないかというふうに思っております。
武山委員 そうしますと、権限と財源をやはり地方に移管していくということになると思うんですね、地方が中心になってやっていくということであれば。それも一つの選択肢だと思います。私も選択肢の一つだと思いますけれども、そうしますと、権限と財源を、今ハローワークを中心に、きょう質問にも出ておりましたけれども、各地域が中心になって失業対策をしておるわけですけれども、国としては、それに対してやはり連係プレーをとっていかなきゃいけないし、また、地方も主体的にやっていかなきゃいけないと思うんですね。それには地方の方が元気がなさ過ぎると思うんですよ。
 ハローワーク、私も見てきたことがありますけれども、中のメニューもいろいろありますけれども、そういうところで職を探すにしてもなかなか、ハローワーク、すなわち公的な職安を中心に人々が大勢行くかというと、余り行かない。やはり私的な、いわゆる人材派遣の方に流れていく。でも、税金はそこにきちっと投入されて、失業対策として行われている。その辺の連携を、もっとはっきりと集中と選択をしてやっていかなきゃいけないと思うんですよね。その辺はどういうふうにして連係プレーをしていくのか。
 国は一生懸命このように政策をつくっても、都道府県また市町村にそういう決めたことをきちっと連絡、周知徹底しないと、それは相乗効果というものが上がってこないと思うんですよね。その辺はどういうふうに連係プレーをしていきますでしょうか。
坂口国務大臣 国の方が地方のハローワークに対して、こういうふうにしなさい、ああいうふうにしなさいと言うのは、国の政策の範囲の中のことだというふうに私は思います。
 それよりも、それらの都道府県なら都道府県が主体になって、我が地域にはどういう雇用政策があり得るのか、どういう企業、雇用をそこで生み出していくのか、どういう企業をそこから立ち上げていくのかということにやはり知恵を絞っていただかなければならないし、それぞれの地域のそうした皆さん方のお考えに、各都道府県の労働局長を初めとして地域に張りついております国の人たちがどう協力をするかということなんではないかというふうに思っています。
 厚生労働省も出かけておりますし、それから経済産業省も出先がございます。そうした国の出先が寄り集まるだけではなくて、やはり都道府県やあるいはまたその地域の労働組合の皆さんやあるいは商工会も入るのかもしれません、多くの皆さん方が寄り集まって、そこでそれぞれの地域の特性に合った雇用対策というものをお考えいただくということがなければ、国がやっておりますだけではなかなか前進が、ないとは言えませんけれども、私は前進が少ないというふうに思っております。
 だから、そういう意味で、国に要求されておりますのは、そうしたネットワークをどうつくり上げていくか、それに対して国はどういう力を発揮するか。ただ単にこちらから決めたことを伝達するだけではなくて、そこから何を吸い上げてやっていくかといったことを今問われている、そういう能力が問われているというふうに思っている次第でございます。
武山委員 私は埼玉県ですけれども、そういう意味では埼玉県、大変失業率が高く、また、地元のお話も聞きますと、県も市町村も努力不足だと思いますね。国はもっと努力不足だと思います。今お話聞いていたように、今そう思っているというわけですから。今後どういう方向で、本当に実効性あることができるのか、その辺ももう一度お話ししていただきたいと思います。絵にかいたもちではいつになっても進まないと思いますし、失業率も低くならないと思うんですよね。
 埼玉県は大変失業率が高いです。それで、県が努力しているとも思えません。市町村が、そういう意味で窓口が努力しているとも思えないんですよね。今までのやり方で淡々とやっている。ですから、元気もなく衰退しているという現状だと思うんですよね。そういうことに対して、国はどういう方向でこれから絵を描いているのか。今、そういうことを考えているというだけですよね。考えているだけではだめだと思うんですよね。きちっと実効性を持たせないことには、それは選択肢の一つですけれども、この高失業率を何とかする、そのあの手この手の一つだと思いますけれども、県や市町村に対して、今ある職業安定所、労働基準局、いろいろそれぞれありますけれども、それから経済産業省の管轄の部分もありますけれども、そういう意味ではどのような連携をとっていくつもりなんでしょうか。
坂口国務大臣 これから始めるわけではないんですね。もう一昨年の八月からスタートをしているんですね。一昨年の八月から、そういう会議を各ブロックごとに持ちまして、そして皆さん方のお話し合いを始めております。どういうふうにしていったらいいかということをその中でいろいろと議論していただいております。かなりその中から前進をしたいい例も報告をされております。
 しかし、まだそれが本格的になかなか動かない。それぞれの地域の皆さんも御努力をいただいているというふうに思いますけれども、やはり都道府県にいたしましても、あるいはまた市町村にいたしましても、自分たちで今までこの雇用対策というのをやってきた経験はなかった。これからやるわけで、初めて手がけることでありますから、そこはふなれという問題もあるというふうに思います。
 しかし、これは雇用対策だけではなくて、その地域地域の産業対策と結びつかなければいけないわけでありまして、そういう意味で、さまざまな産業対策が地域で生まれていることも事実というふうに私は思っております。
武山委員 働いている人々が払っている雇用保険、それから国からの補助金も出て、結局そういう意味でお金が使われているわけですよね。その割には、今大臣がおっしゃった話は、非常にスローのペースだと思います。やはり危機感をもっと持っていただかないと、現実にはもう失業率はどんどんどんどん進んでいるわけですよね。でも、行政の側で動いているスピードというのは非常にのろいですよね。それで、その間、みんな雇用保険の財政を圧迫して、どんどんどんどんお金は出ていっているわけですよね。それに国のお金も出ているわけですよね、一般財源として。
 そういう意味で、行政がやっている政策というのは非常にのろいと思うんですよね。追いついていかないわけですよ。どんどん現実の失業率は高まっていく。そして、経済はもう疲弊している状態だ。そこに新しいビジネスもなかなか育たない。それで、あの手この手で失業している人を救うために給付している。その給付の財源ももう底をついている状態だ。それはもうイタチごっこだと思うんですよね。
 ですから、国の政策を本当にやるんだったら、スピードを持ってやらなきゃいけないと思うんですよ。去年の八月に始めた。でも、話だけ出ていても、それはきちっと政策として実行を伴わなかったら進んでいかないと思うんですよね。失業率が進んでいく方がもっとスピードを持っているわけですよね。国がみんなと議論をして話をまとめてそれを政策にして実行していくという今のお話を聞いていると、非常に乖離が大きいと思うんですよね、現実の社会の失業の状態と国の政策というのは。その乖離はどう埋めていくんでしょうか。
坂口国務大臣 失業率がそんなにどんどんと進んでいっているということではなくて、最近はずっと横ばいになっている。二月は若干よくなった。よくなった面もあるし、よくなっていない面もある。混在をしているというのが現実でありますし、国が行っております失業対策、雇用対策というのは、かなりの力を発揮してきている。そして、それによって職を得た人もたくさんあるというふうに思っている次第でございます。決して悪くしているわけではない、私はそう自負をいたしております。
 地方のお話をいたしましたのは、それは、今までは国だけが中心になってやってきたけれども、そうではなくて、これからは地方もやっていく、やはりそういう習慣をつけていかなきゃいけない、考え方を身につけていかなければならないというので、今それも並行してやらせている、そして自主的にやれるようにしていきたいということなんだろうと思う。
 私は、それなりにそれぞれの地域も取り組みを始めている、大阪あたりも、大阪は大阪として非常に厳しいですから、雇用状況は悪いですから、やはりいろいろの対策をお考えになっている、そうしたことによって、かなりそれぞれの地域が立ち上がってきたというふうに思っておりますし、現在の状況を乗り越えていくために、みんなが必死になって始めているというふうに思います。先生が御指摘になりますようなロースピードではない、かなりのスピードでやっているというふうに私は思っております。
 ただ、現在のこの不況の原因たるもの、そこに根差しているもの、それはそう簡単に取り除くことのできないものである。だから、それに対してどうしていくか、皆が必死の努力を今始めているというふうに思っているところでございます。
武山委員 しかし、現実に三百四十九万人という、現実のこの完全失業者というのは、もう厳然たる数があるわけですよね。この数というのは決して少なくないと思いますよ。大変な数だと思いますよ。ですから、幾らスピードを、そんなスローではないと言っておりますけれども、これはもう厳然たる、大変な数なわけですよ。これに対するやはり危機感というのは大変なものを持っていただかないと、それだけ国は責任があるし、それから国は責任を持っていただくということなんですよね。
 これだけの数字が出ているというのは、本当に今おっしゃったように、いろいろな根っこの部分があると思います。根っこの部分というのは、大きな大きな転換をしなきゃならない根っこの部分だと思うんですよね。その大きな転換の意識の改革、構造的な改革、そういうものも私はスピードを持って進んでいるとは思いません。ですから、この厳然たる三百四十九万人という数に対しては、大変な数だということに対する危機意識というのはやはり相当持っていただかないと、これは失業対策という意味では進んでいくのは非常に難しいと思います。
 この数字に対して、大臣はどんな危機感を持っていますでしょうか。
坂口国務大臣 何となく先生と私の二人きりの論議になってしまっておりますけれども、三百数十万という数字が決して小さな数字だとは思っておりません。しかし、この一年ぐらいの間、この数字を大きくすることなく、縮小をさせていこうという努力をしていることも事実でございますし、多くの皆さんが再就職をしていただいていることも事実でございます。
 また、その中には、有効求人倍率等を見ましても、二次産業の中でも、昨年に比べて非常によくなってきているところがございます。例えば電気機械の部類等は、有効求人倍率で見ますと、昨年の六〇%ぐらいアップになってきております。今、二次産業の中で、二次産業といいますか製造業の中で昨年よりもマイナスなのは、建設業が若干マイナスなだけでございまして、ほかのところは全部よくなってきております。サービス業もかなり増加をいたしてきております。
 したがって、そうした雇用の方はかなり求人面でよくなってきている。あとは、それをミスマッチをどうなくしていくか。ミスマッチは、ただ単に技術面でのミスマッチというよりも、それは賃金でありましたり年齢でありましたり、あるいは地域でありましたり、そうしたものを含めてやっていかないといけないというふうに思っておりますが、それらのことを乗り越えて、そして今非常にふえてまいりました求人にどう結びつけていくかという作業がこれからの大きな仕事の一つというふうに思っている次第でございます。
武山委員 きょうは、本質的なものをお聞きしました。次はまた個別に対して細かく聞きたいと思いますけれども、要は、厚生労働大臣ですので、やはり危機感を最大限持っていただいて、そして、努力してこうなっているというのは当たり前なことであって、現実にこれだけ失業者がいるということも、もう本当に最大限認識していただきたいと思います。
 終わります。
中山委員長 次に、大島敦君。
大島(敦)委員 民主党の大島敦です。
 雇用保険法の改正案に関連いたしまして質問をさせていただきます。
 まず、中長期の労働力の需給関係について、政府の見通しについて説明してください。
戸苅政府参考人 労働力推計の前提といたしまして人口推計がございます。これは平成十四年一月の人口推計でございますが、これに基づきまして、平成十四年の七月に職業安定局で推計いたしました労働力人口でございますが、二〇〇五年以降、減少に転じます。二〇一〇年には約六千七百二十万人、二〇一五年には六千六百万人、二〇二五年には六千三百万人、おおむねそういう見込みが立っておるところでございます。
 それから、労働力の需要面では、情報化あるいはサービス経済化によります経済産業構造の転換等が見込まれるということで、今後の労働力需要の前提がどのように変化していくかというのが予想しがたい状況にございます。
 そういった意味で、中長期における労働力需給について、供給面は先ほど申し上げたとおりなんですが、需給両面でどうなるかということは、現時点ではっきりしたことは申し上げることがなかなか難しい、こういう状況でございます。
大島(敦)委員 労働力の需給関係について、労働力人口、生産年齢人口等の人口についての推移はわかるのですけれども、労働力の需給関係については、その時々の経済見通し等によって明確には答えられないということなんですけれども、今、生産年齢人口だけとってみますと、もうピークアウトをして減少傾向にあるわけでございまして、中長期的には、私の実感値としては、人口も二〇〇七年から減り始めますから、労働力というのは、人口が支えるということを考えれば、タイトになってくるかと私は考えておるんです。
 その点につきまして、再度政府参考人の御意見があれば伺いたいと思います。
戸苅政府参考人 恐らく人口の減少あるいは労働力人口の減少の経済あるいは社会に与える影響としてはプラスマイナス両面があるのではないか、こう思っていまして、一つは、消費人口が減るということになりますので、消費がどうなるのか。
 それから、一人当たりの生産性が上がらないといたしますと、日本経済あるいは日本産業全体の生産性が上がらない、こうなりまして、人口の減る分あるいは労働力の減る分だけ、一人当たりの生産性をもっと上げていくということが必須なんだろうと思います。もしそれが実現できるのであれば、先生がおっしゃるように、労働力供給が減少しますので、需給は厳し目というか引き締まりぎみになるんじゃないか、こういうふうに思います。
大島(敦)委員 現在の失業率、高い水準で安定しているというのかな、高い水準を維持しているわけなんですけれども、内容的には、やはり今五十代の方の団塊の世代が問題であると私は考えております。
 ちょうど今から十二、三年前、私がある鉄鋼会社の社員をやっていたときに、先輩の団塊の世代の人たちが会社の講堂に集められまして、人事の方から説明を受けたわけです。今から十二、三年、大分前です。もう君たちは全員が管理職、課長になれないんだ、したがいまして、主任部員制度をつくるから、課長になれなくても給与は同じなんだよというようなことを、さすがに人事の方は将来的に、会社の動向というのかな、年齢階層をよく把握しておりますから、そのような説明をした風景を覚えております。
 今問題となっているのは、その説明を受けた方たちが五十代になって、普通であれば、管理職になれなくても主任部員、あるいは大手であれば関連子会社に出向して、六十までの雇用が維持されてきたと思うんですけれども、今の経済状況ですと、その管理職になれなかった人たちを会社は吐き出す、悪い言い方なんですけれども、やめていただく方向になっているのかなと思っているわけなんです。
 そうしますと、今の五十代の、私が今四十六ですから、ちょうど五十五前後、団塊の世代の方たちについて政府はどう認識しているのか、御説明していただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 団塊の世代の皆さん方が退職を、退職もこれはいつ退職するかによりますけれども、あと五年から七、八年ぐらいの間で退職されるのではないかというふうに思います。先ほど、二〇〇七年から減り始めるというお話でございますが、私は、もう少し早まってきているものですから、二〇〇五年ぐらいからぼつぼつ減り始めるんではないかというふうに思っております。
 六十歳未満の労働力人口だけを見ますと、二〇〇〇年に比較して、二〇一五年では三百三十万人ぐらい減るんですね。ですから、現在の失業者ぐらいな数の人たちが労働力人口として減るという事態に二〇一五年にはなる。二〇〇五年から二〇一〇年だけの間を見れば、七十万か八十万の減少が起こるということなんですね。そういう状況の中で見ますと、中期的に見て、そして景気が回復するという前提でいくならば、中期的には労働力人口とそして現場との間がかなりフィットするのではないかというふうに思っております。
 しかし、そこから先に参りますと、二〇二五年になりますと、六十歳未満の労働力人口でありますと、二〇〇〇年に比べまして七百七十万ぐらい減るように記憶をいたしております。ですから、それより先になりますと、日本の国としてもかなり大変なことになってくるなという気はいたしております。
 それまでの間、二〇一〇年ないし二〇一五年までの間、早く景気の回復をせしめて、そして、現在失業しておみえになる皆さん方はもちろんのこと、これからそういうふうになる可能性のある皆さん方も含めて、早くどう職場をつくり上げていくかということが大事であります。
 そこはやはりねらいは二つ。一つは、やはりサービス業を拡大していく以外にない。いつもこの委員会で御議論をいただいておりますけれども、社会保障の分野では大変な勢いで雇用がふえてきております。全産業で見ますとほとんど横ばいでふえておりませんけれども、社会保障の分野で見ますと急激な増大になっておるわけでありますが、これも一つのサービス業の中における拡大だというふうに思います。
 もう一つは、しかし、さはさりながら、二次産業と言ったらいいんでしょうか、製造業と言った方がよろしいんでしょうか、製造業の中におきましても、やはり物づくりの国日本ですから、停滞を続けるというのであってはならない。そこをどう回復せしめていくかということ、この二つを中心にしながら、この二、三年、必死の努力をしないといけないというふうに思っている次第でございます。
大島(敦)委員 ただいまの大臣からの、サービス業の労働力の需要がふえるお話と、あともう一つの、日本のあり方として物づくりはしっかりとどめて発展させなければいけないというお考えは、私も同感でございます。
 やはり、今、景気が非常に悪くなっているという側面と、構造的な変化が起きているのかなという側面を私は考えておりまして、今の五・四%とか五・五%の失業率は、単純に景気が悪いだけの要因ではないなと思っているんです。
 これは当委員会できょうの議論の中でもございましたとおり、私たちの日本という国は、ヨーロッパとかアメリカと違いまして、中国とかあるいは朝鮮半島あるいは東南アジア、非常に近くに労働時間としては二千時間を超えているアグレッシブな国が多いわけなんです。
 ですから、特殊な環境の中に浮いているという認識を持っておりまして、その影響というのが、よく言われている、東西の冷戦が終わった後に大陸中国がWTOに加盟して、資本主義の側に大分近くなってきているという認識を持っておりまして、そうしますと、例えば、きょうの午前中の一番最初に後藤田委員が、労働時間を四十時間、なぜ四十時間だ、四十三時間でもいいんじゃないかなという発言をこの場でしたというのは、非常に興味深く話を聞いていたわけなんです。
 ひょっとすると、私たちの労働の考え方というのが、私たちの国のあり方として、本来であれば、アメリカとかあるいはヨーロッパと同じような、そういう労働環境にしたいとは思うんですけれども、外部的な影響が非常に高くなってきていて、果たしてそこまで追いついていくのかなと、ちょっと今考え中なところがあります。
 ですから、そうすると、今の失業率の中でも、今おっしゃっていた外部環境によって、会社からどうしても離れてほしいと言われている方たちをどうやって救うかの問題と、大臣はここ二年から三年というお話をされましたけれども、本当は、五十代の方たち、自分が言うのもあれなんですけれども、皆さん能力をお持ちですから、まだまだ体力があるものですから、まだまだチャレンジできるわけなんです。皆さん沈んでしまっていて元気をなくしている、それに対して、もっと元気を出すような政策が必要であると思っております。そのために、今回は私どもの方は法案を提出させていただいて、じっくり勉強して、新しい能力をつけて、もう一度頑張ってくれというメッセージを送ったんです。
 そうしますと、例えば、ちょっと質問の内容が前後するんですけれども、今のに関連して、就業人口に占める雇用者の推移、就業人口の中で雇用者というのは、サラリーマンあるいは公務員の方あるいはパートの方、雇われている方なんですけれども、その割合がどうなっているのか、御説明していただければ幸いでございます。政府参考人の方にお願いいたします。
戸苅政府参考人 総務省の労働力調査によりますと、就業者数に占める雇用者数の割合でありますが、一九六〇年は五三・四%、一九七〇年が六四・九%、一九八〇年が七一・七%、一九九〇年が七七・四%というふうになっていまして、直近で申し上げますと、二〇〇二年が八四・二%でありまして、先々月、ことしの二月でございますが、八五・〇%、こういうふうになっております。
大島(敦)委員 先ほどの構造的な問題として、ここ三年間、この場でずっと私は雇用の問題を取り上げてきたわけなんですけれども、雇う人がいないという問題があるんです。私は、ビジネスのチャンスは非常に多い時代だと思っておりまして、それに果敢にチャレンジする方が減っていると思っているんです。
 今、政府参考人から述べていただいた数字というのはサラリーマンの方たちの数字なんです。百人働いているとして、一九七〇年ですか、六四%、百人中六十四人とか七十人がサラリーマンであったものが、直近ですと百人中八十五人が雇用者、雇われている人が私たちの国なんです。
 私もサラリーマンを十九年間やってきました。サラリーマンのメンタリティーというのはリスクヘッジなんです。大島の守備範囲はここまでだから、一歩離れたら上司に相談しろというのがサラリーマンのメンタリティーで、私も会社に入るとこう育てられるわけなんです。自営業のメンタリティーというのは逆でして、リスクをテークする仕事なんです。
 ですから、今私たちの国でさまざまな、経済産業省とかあるいは厚生労働省で起業、業を起こすという施策をとっているんですけれども、なかなかうまく機能しないのは、ここに問題があると思っているんですけれども、坂口厚生労働大臣の何かお考えとかございましたら、お述べいただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 ここが一番難しいところなんでしょう。
 実は厚生労働省の中にも、ただ単に失業した人たちに対する新しい職場を見つけ出す、そして皆さん方にそれを提供するというだけではなくて、雇用そのものを生み出すような人たちをつくろうではないか。これはあるいは経済産業省のお仕事なのかもしれないと思うんですが、中には、自分は何か起業をやりたいというある程度の財力のある方もおみえでございますが、中には、これをやりたいという人もありますし、何をやっていいかわからない、だれか片腕になってやってくれる人はいないだろうかという、同じにやってくれる人を求める人もあるわけであります。
 ですから、御自身でやるやらないは別にして、少なくとも中心的な、新しい業を起こすことを一生懸命にやろうとする人を、それをやはり我が省も少しつくろうではないか、そうすれば、経営者の中に、こういう人材が欲しいと言われたときに、その人材も提供できるのではないかというので、東京に一カ所つくったわけであります。かなり勢い込んでつくったわけでございます。
 しかし、そこまで私が言うといささか言い過ぎになりますけれども、思ったほど進んでいないんですね。そこへやろうとする迫力のある人たちがお見えになれば、その皆さん方に対するこちらの対応、いわゆる工学部の先生でございますとか、いろいろの先生を用意いたしまして、どういう人がお見えになってもそれに対応できるようにしたんですけれども、しかし、そんなに多くの人がお見えをいただいて、そして大変な繁盛だというところまではどうも至っていない。せっかくつくりながら、大変残念だというふうに私今思っているところでございまして、やはりこういう時代に直面をしましただけに、皆さん、何かを始めるのはいいけれども、余りにもリスクが高過ぎるということを余りにも強く認識しておみえになるのではないか。
 ここをどう打開するかということが、そもそも日本の国のこの現状をどう打開するかということに結びついていくのであろうというふうに思っておりまして、経済産業省にもお願いをして、そして、そうしたことを一緒にやりませんかというふうなことをお願いしているところでございますし、経済産業省は産業省で一生懸命おやりをいただいておりますし、文部科学省は文部科学省で大学との連帯の中でやろうというふうにおみえになっている。そうした問題、あちらでもこちらでもあるわけでございますけれども、思ったほどここが前進しないというのが、残念ではございますけれども、現段階ではないかというふうに思っています。
 これを乗り越えるための処方せんは何かということだろうというふうに思いますが、残念ながら、私もそれを持ち合わせているわけではございません。先生が何かお考えになっていることがございましたら、この場でぜひ聞かせていただきたいと思います。
大島(敦)委員 日本の大企業というのは優秀な人間を囲い込む傾向にあるわけです。最初、会社に入ったときは、リスクをテークする、リスクをとっていこうという気概のある方が多いんですけれども、要は、社内での出世の階段を上り始めると、リスクをヘッジする方向に向かっていくわけです。そういうような生活を十年、二十年続けていきますと、出なさいよと言われてもなかなか出ないわけです。
 これは私もそうでしたけれども、日本の大企業のサラリーマンというのは、非常に優秀なんですけれども、羊だと思っているんです。この羊が一歩外に出て、自営業の世界というのは、これはジャングルなんです。ですから、すぐ食い殺されちゃうんです。個々の商店、小さな会社の自営業の人たちは非常にしたたかに生きています。要は、自分で与信管理をしながら、このお客さんに物を売ったらちゃんとお金が回収できるかなとか、そういうところをすべて見ながらやっているのが自営の人たちなんです。
 ですから、今、日本の産業再生ということを考えて、人材の面からいうと、私は中間地帯が必要だと思っているんです。今の国の施策というのは、今までの大企業に囲われていた優秀な人たちが直接自営業を始めろというんですよ。それは難しいんです。この中間地帯、一たん枠から飛び出して中間地帯でやってみて、うまくいきそうだったら本当に自営業になる、いきそうじゃなかったらもう一度サラリーマンに戻る、そういうような仕組みをつくらなければいけないなと思っております。これは私の経験から、鉄鋼会社から生命保険会社に転職したときの考え方がその考え方なんです。
 今から十二、三年前、七、八年前かな、前の会社にいたときに、上司に、一千万出すから十億円出してくれと頼んだことがありまして、それは断られました。ですから、そういう自分でリスクをとってやる人たちをつくるということが本当の産業再生だと思っております。
 もう一つは、私たちのこの国の中で一番欠けているのは、バブルということがあったものですから、銀行のいろいろな施策について考えるわけです。そうすると、銀行の施策を考えた場合に、ついつい私たちは銀行の人たちが悪いと決めつけるわけですよ。銀行だけ悪くしていれば、大体政治というのはエクスキューズ、言いわけが立ってしまう。でも、そのことを言ったら銀行の若手の人から怒られまして、いや、それはもっともだと。
 よくよく考えてみると、今の銀行の私と同期が大体支店長クラスなんです。今の支店長、次長クラスの人たちは事業を見る目がないというんです。バブルのときに入社して、貸す一方で社内生活を送ってきて、そしてはがす一方で今まで来ているから、事業をしっかり見て査定して育てようという能力がなくなっている。
 そして今、今回も信用保証枠をつくっています。信用保証枠というのは、私は銀行の愚民化政策だと思っているんです。信用保証枠があればお金を貸してあげるよと。私が今から五年ぐらい前に、営業をして中小企業の経営者の方とお話ししたときに信用保証枠の話が出て、大島さん、全部これは回収できないですよと。大体借りている会社はわかるものですから、なかなか大変な会社も多くて、政府としては全部回収できないのではないのかなというお話をしておりまして、今の政策というのが、考えることをやめさせるような政策が余りにも多いと思っております。
 ですから、今後の厚生労働省の施策の中で、特に産業人をつくるというところは文部科学省でも限界があるわけです。経済産業省でも、人材の面について焦点を絞って議論し始めたのは、多分つい最近だと思うんです。ですから、これから厚生労働省の方では、今坂口大臣がおっしゃられたとおり、雇う人をつくるという、もう一回日本の社会の中でリスクをとってやり始める人を多くつくるということが本当に大切だと思っておりまして、これ以上やると私の演説になりますから、この辺でまた本論に戻ります。
 そうしますと、戻りまして、先ほどのまた団塊の世代の話に移りたいと思うんですけれども、年金の支給開始年齢について御説明していただければ幸いでございます。
戸苅政府参考人 厚生年金の支給開始年齢でありますが、男性につきまして申し上げますと、定額部分は二〇〇一年度から二〇一三年度にかけて、報酬比例部分については二〇一三年度から二〇二五年度にかけまして、それぞれ六十五歳に引き上げられる、こういう予定になっています。現在の状況を申し上げますと、男性につきまして、定額部分が六十一歳からの支給、こういうふうになっております。
大島(敦)委員 そしてもう一つ、先ほどの団塊の世代の方たちに非常に関係するんですけれども、定年の引き上げという施策について、現状はどうなっているでしょうか。
戸苅政府参考人 定年の関係でございますが、我々としては、今申し上げました年金の支給開始年齢の引き上げに対応いたしまして、六十五歳までの安定的な雇用を確保していくということが必要だろうと思っています。
 ただ、基本は、労使で十分話し合っていただいて、定年の引き上げ、あるいは継続雇用制度の導入を一層進めていただくというのが基本であろう、こういうふうに思っています。
 厚生労働省といたしましては、そういった労使の対応につきまして後押しをするという意味で、定年延長あるいは継続雇用制度、これを導入する事業主への助成、あるいは高年齢者雇用アドバイザーによります専門的、実務的な継続雇用のための相談、援助、こういったことをやってまいっております。
 これに加えまして、本年度からは、地域の経済団体と連携いたしました高年齢者の職域開発の推進、あるいは六十五歳までの継続雇用制度の導入の加速といいますか、そういったことについての指導、援助の強化を図ってまいりたいということでございまして、こういった労使の取り組み、それから政府の施策、こういったものが相まって、六十五歳までの定年の引き上げないし継続雇用制度の普及によりまして、安定的な雇用機会の確保を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
大島(敦)委員 ことしから、今御説明ありましたとおり、厚生年金、年金の支給開始が六十二歳、来年が六十三歳で、一年ごとに繰り下がっていくことになります。これまでは、定年六十でしたから、六十までの雇用を確保して、プラス今回の基本手当、雇用保険の中の基本手当を受給すると、どうにか一年間持ちこたえられたわけですけれども、六十二歳になりますと、六十歳で定年で仕事がなかなか見つかりにくい場合にはうまくソフトランディングしないわけです。これは、来年はもっと大きな問題になってくるかと思います。
 今の経済環境の中で、定年を延長するというのは極めて難しいと思うんです。そして、新しい職場を定年退職を迎えた方が見つけるというのも非常に厳しいと思います。
 今の、まだ現時点では皆さんいろいろなことを考えていまして、例えば基本手当の受給日数が終わった後に職業訓練を受けながら次の職場を見つける時間を、六十を超えてからですけれども、確保していくようなことを、いろいろなことを個々の方たちがやっております。
 特に坂口大臣の方には、今後この問題というのは大きな問題になってくると思います。もちろん、年金というのは繰り上げて受給することは可能ですけれども、その場合には年金の受取金額というのは減ってしまうわけですから、やはり受給される本人としては、決められたときから受給したいというのが本音だと思います。
 ですからそこの、多分、今の施策というのは、まだ景気がいいときに立てた施策だと思うんです。年金は六十五歳まで、定年も六十五歳まで、うまくこれをつじつま合わせるように多分施策を組んだと思うんですけれども、厚生省の年金の方はしっかり今始まったんですけれども、旧労働省の施策の方が実効性が今どうなっているのかなということを私危惧しているものですから、坂口大臣の方からそのお考えをお聞かせいただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 先ほどお話ししましたように、前回労働大臣をやらせていただきましたときに、三年に一歳ずつ年金を延長していくというのが決まったわけでございます。そのときに、そうしますと、三年に一歳で、二〇一三年で六十五歳になるんだと思いますけれども、それからその後、厚生年金の方が三年に一年ずつ上がっていく、こういうことになるんだと思います。
 それが決まりましたときに、働いている期間と年金との間の格差ができてはいけない、一体どうして六十歳から六十五歳にこれを引き上げることができるのかという議論がそのときに随分ございました。それは今も続いているわけでございますが、そのときには、定年を五十五歳からようやく六十歳に引き上げようとしたときでありまして、六十歳にまだ完全になっていない、引き上げ途中であったというふうに記憶いたしております。
 しかし、今ようやく六十歳というのは定着をしてきたというふうに思っておりますが、今お話しになりましたように、これを定年を六十五歳に引き上げるというのは、現在の経済状況から見まして、これは大変難しい事態である。ですから、定年の延長といいますよりも、継続雇用という言葉がそのときにも使われたことがございますけれども、そういう言葉を使った方がこれは現実的ではないかというふうに思っております。
 継続雇用をどう実現するのか、それは、企業の中でできること、それから企業を離れた別のところでできること、私は両方あるだろうというふうに思っておりますけれども、その当時は企業の中でそれは何とか考えてくださいよという雰囲気が非常に強かったわけですけれども、最近はそうではなくて、これは社会全体でそのことを考えていこうということの方が私は強いと思います。
 さまざまな新しい仕事の技術でありますとか、そうしたものを身につけていくということも、企業の中で行うのではなくて、社会全体が責任を持ってそうした新しい技術を身につけていくということをやらないといけないという時代になってきておりますから、全体として継続雇用をどう維持していくかということになる。
 それは賃金の問題等とも絡んできますし、さまざまな複雑な問題が絡みますけれども、まだお元気な六十五歳あるいは七十歳までの方もおみえになるかもしれませんし、その皆さん方、中高年というと何となく、この人たちは中年というよりも高年なのか中年なのかという感じになっておりますが、そこをやはりこれから全体として考えていかなきゃならない。六十歳代現役社会という言葉にしなければならない。言葉だけじゃなくて、現実にそうしなければならないということではないかというふうに思います。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
大島(敦)委員 継続雇用という観点なんですけれども、今回の高年齢雇用継続給付の見直しというのは、今大臣がおっしゃられた雇用と年金の接続というところの高齢者の生活の安定を確保するということに関しては、若干逆行するのではないかと思うんですけれども、その点について政府参考人の方から御意見をいただければと思います。お願いいたします。
戸苅政府参考人 雇用継続給付でありますが、これは六十歳以降賃金が相当程度低下した場合に、高年齢雇用継続給付と、それと下がった後の賃金との合計額が雇用保険の基本手当を受給する場合よりも上回る水準にする、それによって六十歳代前半層の雇用の継続を援助促進しよう、こういうことで設けておるものでございます。
 今委員御質問のとおり、今回給付率の見直し等を行うこととしておりますが、これは最近におきます五十歳代の方と六十歳になって以降の勤務延長あるいは再雇用された方の賃金の実情、それを踏まえまして、賃金の低下率が従来よりも大きくなっている、こういうことがあるものですから、そこを踏まえ、かつ、基本手当の見直しとのバランスを考えて見直したということで、賃金実勢を基本に見直しておりますので、高年齢者の継続雇用についてマイナスの影響にはならないのじゃないか、こういうふうに思っております。
大島(敦)委員 関連なんですけれども、雇用対策基本計画というのを政府は立案して、今後十年を目標とした六十五歳までの継続雇用の実現を掲げております。この二〇〇〇年の高齢者等雇用安定法改正以降の現状認識と今後の取り組みについて、御意見があれば伺いたいと思います。
鴨下副大臣 先生がおっしゃっているのは、平成十一年の八月十六日に閣議決定されました第九次の雇用対策基本計画の中で、向こう十年程度の間において云々、そして意欲と能力のある高齢者が再雇用または他企業への再就職なども含めて何らかの形で六十五歳まで働き続けることができることを確保していく、こういうようなことなんだろうというふうに思います。
 それを受けまして、平成十二年の高年齢者雇用安定法の改正によりまして、一つには、定年の引き上げや継続雇用制度の導入等を事業主に努力義務とするとともに、もう一つは、離職を余儀なくされる高齢者が円滑に再就職できるよう、事業主に離職予定者に対する再就職援助計画の作成、交付を求める、こういうような措置があるわけでありまして、現在の継続雇用制度の導入状況を見ますと、少なくとも六十五歳まで働ける場を確保する企業というのが、平成十四年度において六八・三%、またそのうちに原則として希望者全員を対象とする企業は二七・一%、こういうようなことになっているわけであります。
 政府、厚生労働省の中では、引き続き事業者に対して継続雇用制度の導入について助成だとかそれから相談、援助を行う、それからもう一つは、十五年度において、新たに地域の事業主団体等と連携して、継続雇用制度の具体的な導入に向けた事業を実施していく、こういうようなことになっておりまして、あらゆる施策を講じて、六十五歳までの雇用が確保できるように、こういうようなことを進めてまいりたいというふうに思っております。
大島(敦)委員 ありがとうございます。
 特に、継続雇用については、先ほど大臣の方から、五十五歳の定年というのが六十歳まで延びた。これを六十五歳まで延ばすか、あるいは六十歳でやめなければいけないというような風潮を大分弱めてきてもいいのかなと思っております。これは、個人的な差はありますけれども、六十、七十になっても十分に働ける方は多いものですから。
 特に今回、キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーという制度をつくって、個々の労働者に、要は働いている人に対するカウンセリングというのを国は十分にする施策をとっておりますので、動機づけが非常に大切だと思っております。一人一人に対して、まだ働けるから十分やってくださいという動機づけをすることによって、六十五歳まで働ける社会をぜひつくっていただきたいと考えております。
 そしてもう一つ、先ほどの政府参考人の方から説明されました高年齢雇用継続給付の見直しの件なんですけれども、やはり給付額を下げるというのは、今の時期、皆さん全体的な給与が下がっているから、見合って下げるという考え方もあるのかもしれませんけれども、今まで得ていた給与もありますから、それを大幅に下げてしまうというのは、生活をうまく調整できないというところもありますので、十分な配慮をお願いいたします。
 続きまして、給付の削減について伺います。
 基本手当の削減につきまして、もう一度説明してください。
戸苅政府参考人 現在の基本手当の給付水準を再就職時賃金の手取り額と比較いたしますと、高賃金層を中心に、基本手当の方が高くなるという現象が見られるところであります。
 一方で、雇用保険制度につきましては、基本手当の受給中よりも、所定給付日数分の基本手当、所定給付日数丸々受給され終わった後の一カ月、その一カ月以内に再就職するという方が非常に多く見られる、こういう両面の現象がございまして、しかも、丸々受給した後一カ月以内に再就職する方の比率というのが、これも基本手当の日額、すなわち高賃金層でありますが、こういった方ほど高い、こういう状況が見られるわけであります。
 こういった状況を考え合わせますと、高額の基本手当をもらうということで、再就職するよりも基本手当を受給しよう、そういう判断が強く働いて、その結果として再就職時期がおくれる、こういう方が相当数存在するんじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
 雇用保険は、もともと、失業中の生活の安定とあわせまして、失業者の方の再就職の促進を図っていく、二つの大きな目的がございます。そういった意味で、今申し上げましたような基本手当日額と再就職時賃金とのいわば逆転現象でありますが、これを解消することによって受給者の方の早期再就職の促進を図ろうということで、高賃金層を中心に賃金日額の上限額を引き下げますとともに、給付率につきましても、原則六割から八割でありますが、これを五割から八割ということで見直そう、こういうことであります。
大島(敦)委員 確認なんですけれども、今回の改定で一カ月の雇用保険の支出が四百二十億円抑えられると伺っておるんですけれども、その内容についてお聞かせください。
戸苅政府参考人 これは、今回の法案では五月一日の施行をお願いいたしております。仮にこれが一カ月おくれるといたしますと、今先生御指摘のとおり四百二十億ということで、支出が一カ月当たり改正しないよりもふえていくということでありますが、内訳を申し上げますと、一般求職者給付が約三百二十億円、教育訓練給付が約五十億円、それから、先ほど御質問のありました高年齢雇用継続給付が三十億円、その他が二十億円、おおむねそういった状況になってございます。
大島(敦)委員 四十五歳から五十九歳までの基本手当日額の上限額、これが一番大幅に今回減額されておりますけれども、その改定について御説明ください。
戸苅政府参考人 離職前の賃金日額についてでありますけれども、平均の賃金を大きく上回った高賃金をすべて基本手当日額に反映させるということが、求職活動の保障に必要最低限の給付を行うという制度の趣旨に照らして適正なのかどうかというふうなことで考えまして、今回の改正におきましては、雇用保険法は実は昭和四十九年に制定いたしたわけでありますが、そのときの考え方というのが、日本の労働者の方の賃金分布の第三・四分位以上の中位数と言っておりますけれども、わかりやすく言いますと、賃金水準の高い方から順に順番をつけていきまして、一二・五%の範囲内におる賃金層の方、ちょうどその一二・五%のところを上限額とするということを基本にいたしております。
 直近の賃金構造基本統計調査、平成十三年でありますが、これの今申し上げた上から一二・五%のところの方というのが、六十歳未満については一万四千六百二十円、六十歳から六十四歳の方については一万五千五百八十円ということになってございますが、六十歳未満の方については、現行の給付額の考え方に倣いまして、三十歳未満については賃金水準も低い、年功序列賃金がまだ残っているという中で三十歳未満の方は賃金が低いということで、今申し上げた一万四千六百二十円の一割減の一万三千百六十円、それから、四十五歳から五十九歳の方は、逆に平均的な賃金水準が高いということで、一万四千六百二十円の一割増しの一万六千八十円ということにいたしております。
 この賃金日額の上限額に対応した基本手当日額の上限額につきましては、三十歳未満については六千五百八十円、三十歳から四十四歳については七千三百十円、四十五歳から五十九歳については八千四十円、六十歳から六十四歳については七千十一円、こういうことになってございます。
大島(敦)委員 そうしますと、簡単にお答え願いたいんですけれども、四十五歳から五十九歳までの上限額がございますよね。今回の改定によって、その四十五歳から五十九歳までの層の例えば上限額の方の年間、年間というよりもこれは今三百三十日ですか、分で受け取れる金額が幾らから幾らになって、どのくらい減するのかと、あともう一つ、全体観として、先ほど四百二十億円というお話がございました。もしも今回この改定をしなかった場合に、一年間で減らない分というんですか、受給減にならない分がどれだけあるのか、トータルを教えていただければ幸いでございます。
戸苅政府参考人 まず、上限額でございますが、現行の上限額、先ほど申し上げました一万六百八円でありますけれども、これを四十五歳から五十九歳の方の最長の所定給付日数三百三十日を丸々受給したといたしますと、受給総額は三百五十万円、こういうことになります。それから、改正後の上限額につきましては八千四十円でございますが、これを三百三十日分受給した場合は総額は二百六十五万円ということで、その差額は八十五万円ということになってございます。
 それから、今お話しの、今回給付の見直しをしないということでどういう影響かということでございます。
 これは、平成十五年度、五月一日から施行ということで、初年度の計算でございますが、これにつきましては約三千百億円ということでございます。
大島(敦)委員 この四十五歳から五十九歳の層というのは、やはり御承知のとおり、ローンを抱えて子供がいて、一番生活が厳しい、一番出費の多い階層であると考えております。
 そうしますと、今回の三百三十日の減でも八十五万円の減がございまして、次の職場、今の御説明ですと、再就職の職場の給与よりも今受け取っている基本手当の方が高いからなかなか就職をしないというお話もございましたけれども、先ほどの就業促進手当がございますし、今でも早目に就職した人についてはその手当を支給してきたかと思うんです。
 そうしますと、就業促進手当がございますから、ここの部分については、サラリーマン、特に初めて失業された方だと私は思うんです、この事例に当たるのは。ずっと、二十代で入って二十、三十と一つの会社で来て、四十代、四十五を超えて初めて離職された方がこの一番上限に張りついていらっしゃる方だと思うんです。
 初めて会社をやめたときの不安感というのは非常にあります。これは、何回か離職されている方とは違って、今まで順調に来て一回そこでほうり出されてしまうわけですから、それに対して今回このように厳しい措置をされるというのは、私はバランスを欠いているのかなと思っております。もう少しこの四十五から五十九、先ほどの団塊の世代に対する配慮というのが必要であると思います。
 そうしますと、この階層への対応策というのは政府は考えていらっしゃるのでしょうか。
戸苅政府参考人 雇用保険の基本手当につきましては、今委員からお話がありましたように、年齢によって再就職の困難度が違う、それからもう一つは、離職したときの状況といいますか、自己都合なり定年なりであらかじめいつごろ離職するということがわかっている方と、それから、急に雇用調整に遭ってしまって突然離職を余儀なくされた方と、これもまた離職するときの心構え、それから再就職に向けての在職中からの準備、そういったことで、再就職に要する期間に差があるというのは事実でありまして、そのあたりを十分勘案して、実は前回の法改正で給付の重点化を図り、そのときに、倒産、解雇等で準備もなくあるいは予想もせずに離職を余儀なくされた方については給付日数を相対的に長くする、こういう手だてを講じて、今申し上げましたように、四十五歳以上層については三百三十日という一番長い日数にしているわけであります。
 今回の改正におきましては、最近の雇用調整の実勢を見ていますと、もう少し若い層についても影響が出てきているというふうなことがありまして、三十五歳から四十四歳の層についての倒産、解雇等の離職者についての日数の延長を行うということを行ったわけであります。
 あとは、四十五歳以上の方につきましての就職支援対策でありますけれども、これにつきましては、一つは、雇用情勢が特に厳しいときには、現在がそういう状況でありますが、四十五歳以上の方を採用した事業主に対して賃金助成を行う。それから、先ほど創業のお話が出ていましたけれども、従来は、平均年齢六十歳以上の方が、高齢者三人寄って新たに事業を開始した場合に創業に要する経費を支援する、こういうことを行っておりましたが、今回は、これを四十五歳以上の方が三人寄って創業すれば支援するというふうなことを行っております。
 それから、あわせて、これはミスマッチ解消、それから再就職の支援のためのハローワークでの対応ということでありますけれども、特に中高年の方で、扶養家族を抱えている、あるいは要介護の方を抱えているということで早期再就職の緊要度の高い方につきまして、マンツーマンで計画的に早期の再就職ができるようにということで、早期再就職支援員という制度を導入して、ソフト面、ハード面、いろいろな面で支援をしようというふうに考えておるところでございます。
大島(敦)委員 これはおととしだと思うんですけれども、一定の条件の失業者に対する生活資金貸付制度を政府は設けていると思います。これの現状について御説明ください。
河村政府参考人 離職者支援資金貸付制度というものを平成十三年度の補正で設けました。約一年たったところでございます。この離職者支援資金貸付制度というものは、雇用保険の枠外にあります自営廃業者あるいはパート労働者の失業、あるいは雇用保険の給付期間が切れたことによって生計の維持が困難となった失業者の世帯に対しまして生活資金を貸し付けるということにいたして、先ほど申し上げましたように、平成十三年の補正で設けたものでございます。
 平成十五年二月末現在、約一年たったところで、貸付件数が約四千件、貸付額が約四十八億円ということになっておるところでございます。
大島(敦)委員 ただいまの生活資金貸付制度の評価なんですけれども、政府としては、今回の四十八億円という金額と四千件というこの貸付件数についてどのように評価されているでしょうか。
河村政府参考人 十四年三月から動き出しまして約一年たったところでございますけれども、何分新しい制度でございまして、周知が必ずしも十分行き渡っていなかった部分がございます。それから、貸し付け条件を設定したときに、実際やってみまして、少し要件が厳しいんではないかというお話がございました。昨年十二月に要件を緩和したところでございます。
 具体的に申しますと、貸し付けの際に必要とする連帯保証人を原則二名から一名にいたしまして、それから、貸付金の償還期間を据置期間経過後五年というふうに設定しておりましたものを七年に延長いたしました。そういう貸し付け条件の緩和を図ったわけでございます。
 そういう条件緩和の周知をいたしまして、例えば、この一月から二月にかけて見てみますと、貸付件数あるいは貸付額とも約一・四倍にふえておるわけでございまして、今後の一層の活用なり需要増に期待したいと思いますし、私どももさらに普及に努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
大島(敦)委員 ありがとうございました。
 最後に、坂口厚生大臣の方に伺いたいんですけれども、今まで高齢者の継続給付の問題、継続雇用の問題、そして四十五歳から五十九歳までの基本手当の削減の問題、そして一番最後に、生活資金貸付制度の現状について伺ってきております。その中で、やはり今の四十五歳から五十九歳までの層に対する配慮というものがいま一つあった方がいいと私は思っておりまして、その点について坂口大臣のお考えを聞かせていただければ幸いでございます。
坂口国務大臣 これはやはり四十五歳から五十九歳までの間の人たちの雇用を最優先して、これはお話し合いに乗るということが大事だというふうに思っています。ですから、キャリアコンサルタントの皆さん方もかなり張りついてまいりましたしいたしますので、この層の皆さん方を最優先してハローワークにおきまして取り扱うということが最も大事なことだというふうに思っております。
大島(敦)委員 私の質問を終わります。ありがとうございました。
宮腰委員長代理 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 今回の雇用保険法等改正は、戦後最悪の失業情勢が続く中で、給付額が増大し、積立金が枯渇して、保険財政が破綻寸前に追い込まれたために、給付を引き下げ、保険料を引き上げてこれに対応しようとするものであります。しかし、この対応策は、このような破綻がだれの責任で引き起こされたのか、だれが対応すべきかということを全く抜きにしております。
 バブル崩壊後、十年以上も不況を打開できず、特に小泉内閣になってから、不良債権処理や規制緩和で企業間競争とリストラを一層促進し、失業者をふやしてまいりました。その一番の犠牲者である失業者になぜさらにこういうしわ寄せをするのか。
 また、不況が長期化し、失業者が増大し始めた時期に、一定の積立金があることを過信して、国庫負担率などを連続的に大幅に引き下げました。その結果、保険財政が急速に悪化し、慌てて二〇〇一年に四分の一に戻すなどの措置をとりました。
 今日の破綻寸前の状況は、直接にはこういう見通しの誤りによるものであります。その責任に全くほおかぶりして、失業者に一方的にしわ寄せするようなことがどうして許されるのか、まずお尋ねします。
坂口国務大臣 現在の景気の動向がそう簡単なものでないことは、先ほどからるるお話を申し上げているところでございます。この状況を克服するためには、さまざまなことを日本としてやらなければなりません。とりわけ、日本の生産性を向上するためには、先ほどからお話のありますように、いろいろの規制改革もやらなければなりません。構造改革もやらなければなりません。しかし、それだけではまだ足りない。生産性向上のために新しい研究もやらなければならない。そういう事態の中で、徐々に現在の日本の景気が今動き始めているという事態ではないかというふうに思っております。
 政府の責任だと言うのは、これは簡単な話で、そう言ってしまえばもうそれで終わりというこんな簡単な話はないわけでございますけれども、決してそんな簡単な話ではない。事態はもっと深刻なものである。先ほどから申しましたとおり、これはやはり日本を取り巻きます環境が大きく変わった。それに対する対応は、今までのような景気対策ではいかんともしがたい状況にある。日本自身の体質改善が迫られている、そういうことでございますから、私は、この状況の中で、皆が、本当に苦しみながらではありますけれども、お互いに貧しいながら助け合って生きていくということ以外にないのではないかというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 政府の責任だといって片づけられるほど簡単でないと言うのですけれども、政府が正しいかじをとってきたらこんなことにはならなかったのじゃないか。
 私どもが言っているのは、常に大企業本位に、例えば大型公共事業などに金をどんどんつぎ込んで、国民の方にその金を振り向けようとしない、こういうことが積もり積もって今のような状況をつくり出しているのじゃないか。その根本に手をつけようともせずにまた今度は失業者にしわ寄せをしようという、これは二重三重の誤りだということを私は言っているわけであります。
 次の質問をしたいと思うのですが、今回の法改正は、こういうような政府の責任のほおかむりを正当化するために、あたかも失業者に保険財政危機を引き起こした責任があるかのごとく描き出そうという小細工が見えます。
 その一つは、求職者給付受給者の責務という義務規定を新設したことであります。法案の第十条の二に「求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない。」という文言を入れる。
 私は、ほとんどの失業者は、今の就職難の中で再就職に必死の努力をしていると思うんです。午前中も、こんな条文の新設がどうして必要なのかが問題になりましたが、私も、なぜ今まで当然のこととしてわざわざ規定する必要もなかったこういう条文を今回の改正に織り込んだのか、お伺いをいたしたい。最近の失業者は、こういう規定で締め上げなければ再就職しないほど質が低下したとでも言うのか。
 小細工のもう一つは、第十条の四による返還命令などの金額の引き上げであります。
 私も不正受給は許せないし、全額返還させるのは当然だと思いますが、なぜ今回二倍に相当する額まで納付を命ずることができるようにする必要が起こったのか。返還する給付金とこの納付金額と合わせると、不正受給額の三倍ということになります。最近の失業者は、こういう懲罰的な規定を強化しなければならないほど、折あらば不正受給でもうけようという者が多くなっているのか、お尋ねをいたしたい。
鴨下副大臣 先生がおっしゃるように、ほとんどの受給者は、言ってみればまじめに求職活動をやるわけでありますから、そういう方々に的確に給付が渡るように、こういうようなことでありまして、二問御質問がございました。
 まず初めの十条の二につきましては、雇用保険法において、受給者が失業している、すなわち労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業につくことができない状態にあることが確認できた場合に求職者給付が支給されるものとされておりまして、失業の認定の対象になる受給者が誠実かつ熱心に求職活動を行わなければならないことは、制度上当然の前提であります。
 今回の改正においては、雇用保険制度全般にわたって給付のあり方を見直しているわけでありますけれども、求職者給付については、制度の趣旨にかなう受給者に的確に給付が行われることがある意味で強く求められているわけでありますから、求職者給付の受給者が職業能力の開発及び向上を含め誠実かつ熱心に求職活動を行い、職業につくように努めなければならないという制度上の当然の前提を確認的に法律に明記した、こういうようなことでございます。
 続きまして、十条の四の返還命令についてでありますけれども、雇用保険の失業等給付は、保険事故である失業の認定が受給者からの申告に依存することが大きい、こういうようなことから、例外的ではありますけれども、虚偽の申告による不正受給があるというようなことも事実でございます。
 そのために、そういうような方々に、ある種一罰百戒のようなことも考えて、違法事案に厳正に対処することを通じてこれを未然に防止するため、不正受給額の返還命令とは別に、不正受給額に相当する額以下の金額の納付を命ずることができる、こういうようなことが現行では認められているわけでありますけれども、そのことにつきまして、不正受給金額は受給者数の増加に伴い近年増加の傾向がありまして、今般、給付、負担両面にわたる見直しを行う一方、このような不正受給の実態を放置することは、制度の正当性を著しく損ない、制度自体への信頼を失墜することにもなりかねない、こういうようなことでありまして、納付命令による納付額の上限を引き上げ、不正受給に対してさらに厳正に対処する、こういうようなことでございます。
小沢(和)委員 私の質問に対する答えになっていないんですよ。
 私は、ほとんどの失業者が今必死になって再就職の努力をしている、それをわざわざこうやってまた誠実かつ熱心に求職活動をしなければいけないとかいって、何でこんな規定を今さららしく設けるのか、何か、いかにも最近の求職者、失業者は質が悪くなったように描き出しているじゃないかということを言っているんです。
 次の質問に入りますが、今回の給付削減は総額で三千百億円というふうに聞いておりますが、午前中の答弁で局長は、再就職を早めることによって一千億円さらに削減できる、総額は四千百億円に達するというふうに述べられたと思います。
 これまでの説明より一千億円削減額が上積みをされるのはどういうことかというのをもうちょっと説明しておいていただきたい。
戸苅政府参考人 ちょっと説明が適切でなかったとしたら申しわけなかったのでありますが、給付の見直しによる削減効果は三千百億円でございます。
 一千億円と申しますのは何かと申しますと、補正予算で、一般会計で早期再就職者支援基金を設けました。これによる早期再就職効果が一千億円、こういうことでございます。早期再就職の促進効果と、それから、基金による支援金を受けた方については、雇用保険の失業等給付の中の再就職手当、現行の再就職手当が支給されない、こういうことがありますので、両方合わせて一千億、こういうことであります。
小沢(和)委員 今回の給付削減の中心は、基本手当日額の算定方法の変更だと思います。
 まず、基本手当算定の際の区分を定める賃金日額の基準は、いずれも現行より低く設定されております。まずここから給付引き下げを始めようということだろうと思いますが、お尋ねしたいのは、賃金日額に乗じる率は最も賃金の低いグループを除きすべて引き下げられますが、支給率八〇%で据え置かれるのは下から何%ぐらいの人たちですか。
戸苅政府参考人 ちょっと今資料を探していまして、申しわけありません。
小沢(和)委員 では、資料を探している時間がもったいないから、もう一つ質問します。
 日額四千二百十円、給付の下限額未満の人たちは、これまでと同じ八〇%の支給率ですが、この人たちが今より下がらないのかといえば、そうではないと思うんです。それは、今回、一般受給者とパート受給者の扱いを賃金日額でも一本化した結果、最低の日額が二千百四十円に下がったからであります。今までは、一般の労働者で賃金日額が四千二百十円未満だった者は一律に四千二百十円として算定されてきましたから、その人たちは下がることになるんじゃないでしょうか。
 だから、支給率八〇%で据え置かれるグループの中にも給付額が下がる人が多数出てくるということになりはしませんか。
戸苅政府参考人 失礼いたしました。
 まず、前の質問でございますが、六・五%でございます。
 それから、次の質問でございますが、現在の基本手当日額の下限額が三千三百六十八円でございますが、現行の最低賃金額を前提といたしますと、通常の労働者の中で離職前の賃金に対する基本手当の実質的な給付率が一〇〇%を超えるケースが現行のままでは出ている、こういうことでございます。こういう状態で今日まで至ったわけでございます。こういった状態をやはり是正する必要があるのではないかということで、今回、見直しを行おうということにいたしたものでございます。
 結果として、今委員御質問のとおり、現行よりも賃金日額が下がる方も一部生じるわけでございますが、ただ、最低賃金が守られている限り、失業すると最低賃金額よりも高い給付をもらってしまうというのは、やはり雇用保険制度として問題ではないかということで、最高の給付率であります賃金日額の八〇%を保障するという形で、今回、その部分を是正しよう、こういうふうに考えておるものであります。
小沢(和)委員 だから、事の当否は若干おくとしても、支給率八〇%で据え置かれるグループの中にも給付額が下がる人がかなりいるということは、今確認されたと思います。
 次ですが、賃金日額四千二百十円以上の失業者は、今度、すべて支給率そのものが切り下げられることになります。今回の場合、再就職を促進するために賃金の高い部分を抑える必要があると盛んに言われているんですが、なぜ、それに連動する形で、月額十万円をわずかに上回る程度の低い手当額の失業者から上、これを全部そうやって切り下げるのか。要するに、この際、高い部分だけでなく、手当の水準全体を切り下げるということじゃありませんか。
戸苅政府参考人 今回の給付率の見直しにつきましては、再就職賃金との逆転現象が大きい要するに高賃金層を中心に、給付率の引き下げを六割から五割にということで行うことになっておるところでございます。
 具体的なその計算方式につきましては、確かにおっしゃる点はございまして、雇用保険の今の給付の八割から、それから上限に達するところの分布に一定の計算で計算式を当てはめるという形になっておるものですから、かなり賃金額の低い方でも、若干ではありますが、給付率が下がるというふうなことになっているところではございます。
小沢(和)委員 だから、最低をちょっとでも上回る部分から、ただでも失業して困っている人たち全部に下げていくというようなことは、もう大変過酷じゃないかということを私は言っているわけです。
 次の質問ですが、今度は逆に、賃金日額一万二千二百二十円以上は、最高の賃金グループだということで、給付率が六〇%から一挙に五〇%に切り下げられます。私には、月給三十六万六千六百円のサラリーマンはそんなに賃金が高いという感じがしないんですが、こういう部分は全体の上から何%に当たるかということをひとつお尋ねします。
 それから、時間もありませんから、続いてお尋ねしておきますが、政府は、こういう人たちの手当の額を思い切って下げないと、低賃金のところに再就職する気になかなかならないように言うわけであります。しかし、賃金日額一万二千二百二十円の五〇%だと、毎月の手当額は十八万三千三百円です。これまでの六〇%だと月額二十一万九千九百六十円ですから、三万数千円切り下げることになるわけです。
 今言った月額二十一万九千九百六十円というのが、本当に失業者には分不相応な高い額なのか。幾ら失業したとはいえ、今までの収入の六〇%に生活費を切り詰めるだけでも大変だったのに、さらに五〇%に下げるということがどんなに厳しい措置か、大臣には想像がおつきにならないんでしょうか。その上、これ以上賃金が高い人たちは、賃金日額の上限額の引き下げもかぶさってきますので、これに該当する人は、五〇%よりさらに削られることになります。
 もともと雇用保険は、これまでの賃金水準、そこからくる生活水準をも考慮して保障し、安心して再就職のため活動できるようにする仕組みになっております。それを一挙に半額まで下げたら、毎日の生活が不安で、求職活動にも身が入らないということになるのではないでしょうか。
 今、リストラは、比較的賃金の高い中高年層に集中しております。この切り下げは、とりわけ、そういう中高年失業者に大きな打撃を与えることにならないか、お尋ねをします。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
戸苅政府参考人 まず、最初の御質問ですが、これは、大体二〇%から二五%の間の水準というふうに推計いたしております。
 それから、次の御質問でありますけれども、確かに、今の労働市場あるいは賃金の実態、そういった点から見ますと、中高年齢者の方に与える影響というものが相対的に大きいということは、おっしゃるとおりだろうと思います。
 ただ、今の雇用保険受給者の方々の現状を申し上げますと、再就職賃金とそれから基本手当の受取額との逆転現象というのが高賃金層にはかなり見られるということでございます。それに加えまして、特に高賃金層の方については、雇用保険の所定給付日数を満額もらって、その後就職するという傾向、これもまた顕著なことでございます。
 そういった意味で、雇用保険、先ほど申し上げましたが、失業中の生活の安定と、それから再就職の促進と、両方の目的を持っておるわけでありまして、そういった意味で、そういった逆転現象を解消することにより、早期の再就職を促進しようと。
 あわせて、特に中高年の方の場合は、再就職が非常に困難だという事情もございます。そういったことで、例えば求人年齢につきまして、年齢不問求人について目標数を掲げるとか、あるいは、中高年の方々の再就職のためのきめ細かな支援策を講じるとか、こういったことを行おうというふうに思っているところでございます。
 あわせて、前回の法改正で、四十五歳から五十五歳の方については、倒産、解雇等により離職した場合の再就職の困難度を考慮いたしまして、給付日数最大三百三十日ということにいたしたわけですけれども、今回は、三十五から四十四歳層につきましても日数の延長を行うというふうなことで、極力配慮し、あるいは支援をするということを考えておるところでございます。
小沢(和)委員 今回の改正では、所定給付日数も全体として切り下げられます。
 今回の見直しでは、一般の労働者とパートタイム労働者の区別をなくし、倒産、解雇などによる失業者とそれ以外の理由による失業者の区分だけに改めております。
 私は、一般とパートの区分をなくすことには一般論としては賛成でありますが、今回の場合、これによってパートは現在より若干改善になりますが、一般の労働者は、倒産、解雇の場合、三十五歳以上四十五歳未満の勤続十年以上で新たに三十日給付期間が延長になるだけで、倒産、解雇以外の場合はパート並みに引き下げられる。五年以上勤続している人はすべて三十日間給付が短縮されます。
 既に前回の法改正で、倒産、解雇とそれ以外という区分を導入し、倒産、解雇を優遇するようになりましたが、今回はその方向をさらに強めております。
 倒産、解雇の場合が特に大変だということはわかりますが、肝心の日額が大幅に引き下げられるので、給付期間に受け取る総額で比較すれば、むしろ下がるのではありませんか。そうであれば、この三十日延長という改善も全く見かけだけということになるのではないか。総額で本当に改善される人がいるか、その点、具体的に御説明いただきたい。
戸苅政府参考人 雇用保険は、雇用保険の考え方といたしまして、失業された方が全員その給付日数丸々もらうということを想定した制度ではないというふうに思っております。
 とにかく、一番厳しい場合でも何とかその給付日数の間で就職してもらう、就職の容易な人は一日も早く就職してもらうという考え方でありまして、そういった意味で、所定給付日数満額もらうということを前提に、その満額もらった場合の額がふえるか減るかということが問題ということではないのじゃないかというふうに私ども思っておりまして、それよりはむしろ、早期再就職の意欲をいかに喚起し、それから早期再就職の困難な方について、早期再就職のための支援をどういうふうに講じていくかということが重要なのではないかというふうに考え、今回につきましては、先ほど申し上げましたように、現在、高賃金層については、再就職賃金と雇用保険の額との逆転現象により高賃金層ほど就職がおくれる、しかも雇用保険をもらい終わった後就職する人の比率が高い、こういった現象を改善するということで、今回の改正を行おうというふうに考えたところでございます。
小沢(和)委員 私も、丸々もらうべきだとか、そんなことを言っているんじゃないんですよ。しかし、あなた方が、三十日間さらに求職活動が十分できるように延長するといって改善だと言うから、実際に三十日間延びても、丸々の期間で比較すればふえる人はほとんどいないんじゃないですかと言っているんです。その点、もう一遍重ねてお尋ねしておきます。
戸苅政府参考人 ちょっと厳密な計算をしておりませんので大変恐縮なのでございますが、日額につきましては、高賃金層は給付率がかなり下がるので日額も下がるんですけれども、低賃金層につきましてはほとんど下がらない、下がってもごくわずかであるということでございまして、そういった方については、給付日数が三十日ふえれば、先ほど丸々もらうという趣旨ではないということは申し上げましたが、仮に丸々もらうということを前提にして計算した場合には、ふえる方はかなりおられるのじゃないかと思います。ちょっと具体的に計算しておりませんので、申しわけありませんが。
小沢(和)委員 私は、ちゃんとそのことは質問通告しているんですからね。
 それで、次の質問ですが、倒産、解雇以外は、大部分が給付期間を三十日分短縮されるわけです。既に二年前の改正で、自己都合の場合、三百日分から一挙に百八十日分に短縮され、今回それがさらに三十日分削られるわけであります。これに賃金日額の切り下げを合わせると、総額では大きな減額となります。倒産、解雇以外は自分で勝手に退職したのだから心配してやる必要がないという考え方なのかどうか。
 しかし、実際にはリストラでやめさせられているのに、多くの企業では早期退職援助制度などという名前をくっつけて、自分から退職した形になっているケースが多いわけであります。定年退職した人も、前もっていつやめるのかわかっているにしても、本当はもっと働きたいのにやめさせられている者が大部分であります。
 これらの人々は、職安の窓口では、事実上解雇された者として扱うのが当然ではないでしょうか。自己都合退職という中にこういう人たちがどれぐらいいるか調べたことがあるか。あれば、数字も示して説明をいただきたい。
戸苅政府参考人 そういう資料は多分ないと思います。
小沢(和)委員 答えられないということだと思って先に行きます。
 解雇、倒産の場合とそれ以外では、求職者給付の金額だけでなく、職業訓練や助成金などでも差がつけられております。だから、離職票に会社が自己都合と書いていても、本当にそうだったかどうか、チェックすることがどうしても必要だと思います。しかし、実際には職安の窓口に失業者の増大に対応するだけの職員の配置がなされていないために、忙しくて十分に時間をかけて実情を聞き出せないと聞いております。
 本来、解雇された者として扱われなければならない失業者が自己都合扱いなどにならないように、職安の窓口の職員の増員などを含めて抜本的改善が必要ではありませんか。
戸苅政府参考人 まず、ちょっと前段だけ事実関係を申し上げますと、離職理由の確認の手続につきましては、事業主から提出されます離職証明書に事業主が記載しております離職理由が書かれておるわけですが、これと離職者の方が提出する離職票に書かれております離職理由、この両方を見て判断しているということでございます。
 両者の主張が異なる場合には、それぞれの主張を確認できる客観的な資料、あるいはその労働者の方の同僚の証言、こういったものをとりまして事実関係をきちんと確認して、これらを十分吟味して最終的に判断しているということでございまして、確かにおっしゃるようにハローワークの求職者の方も非常にふえているということで、厳しい定員事情の中にはありますけれども、こういった離職事由につきましては的確に対応するようにということで努めておるところでございます。
小沢(和)委員 だから、さっき、そういう確認をしてもらいたいということを言ったんです。今答えられたから、いいことにします。
 ただ、職安の窓口の増員なども必要じゃないか。そういう改善もしないというと、実際には、そういう確認をすべきだと言ってもらったけれども、なかなかその確認ができないように忙しいんだ、失業した人がずらっと並んでいるときに余り待たせるわけにいかない、こういうような話も聞いているんです。どうですか。
戸苅政府参考人 確かにおっしゃるように、職安、ハローワークの利用者の方は急増いたしておりまして、そういった方への対応をいかに効率的に、かつ親切に行うかというのが我々の大変大きな課題になっています。
 ただ、御案内のように、非常に厳しい行財政事情にあるということで、我々も定員の確保には最大限の努力を払っておるところでありますけれども、そこには一定の限界があるということで、そういった意味で、職安、ハローワークの業務をいかに効率的、効果的にやるかという仕事の改善、それから業務の簡素合理化、そういった努力もあわせて行う。それから、職員でなければできない業務は当然職員でやるわけでありますが、それ以外の業務につきましては、相談員の方等々の活用、あるいは民間への業務の依頼といいますか協力といいますか、そういったことで総合的に対応することによって、ハローワークの業務を的確に行っていくという努力をしてまいりたいというふうに考えております。
小沢(和)委員 今回、早期再就職を促進するという名目で、これまでは安定した常用雇用に早期再就職した場合に支給してきた再就職手当を、臨時雇いなど非常用の不安定就労をした者にも支給できるように、就業促進手当を創設することにしております。これは雇用保険を根本的に変質させることになりかねないのではないでしょうか。
 本来、雇用保険法は、安定した常用雇用に再就職できるよう失業中も一定の生活水準を保障し、失業者本人の持っている労働能力を維持しながら再就職の努力を援助するもののはずであります。それをわざわざ、常用でなくても臨時やパートなどに早期に再就職するよう手当まで出して推進するというのは、これまでの雇用保険の目的や趣旨と全く違うのではないでしょうか。
鴨下副大臣 現行の再就職手当につきましては、支給対象となる就業形態が安定した職業に限られているため、これに該当しない就業につきましては、早期就業に向けて、給付を受ける形でのインセンティブが存在しないというのが今までの現状でありました。
 一方、労働市場の構造変化によりまして、短時間就業や派遣就業等多様な働き方が増大している中で、雇用保険制度についても労働者の就業形態の選択に中立的な制度がいいだろう、こういうようなことでありまして、このために、今般新たに、基本手当の受給資格者が安定した職業以外の職業についた場合にも、その就業した日について基本手当日額の三〇%を支給する制度を創設して、多様な就業形態による早期就業を強力に支援していく、こういうような趣旨でございます。
 小沢委員がおっしゃっているような趣旨につきましては、この就業促進手当の支給を受け就業するか、就業せずに求職活動を行うか、さらにまた、どのような形態の就業を選択するかは本人の自由である、こういうようなことでありまして、本人の意図しない形で殊さら非常用雇用を促進していく、こういうようなことは当たらないというふうに考えております。
小沢(和)委員 この私の危惧をさらに大きくするのが、今回の法改正に失業認定の方法が新たに盛り込まれたことであります。
 法案の第十五条には、失業の認定は、受給資格者が求人者に面接したこと、公共職業安定所等から職業を紹介され、または職業指導を受けたことその他求職活動を行ったことを確認して行うものとするとあります。こうなると、これまでは失業している状態を確認して給付を行っていたのに対し、今後はそれだけではだめで、求職活動を熱心にやっていることを証明し、それが認められなければ給付されないということになるのではないでしょうか。
 今私が挙げた非常用、例えば短期間の臨時雇いのような仕事を紹介された場合、そういうところに行けば安定した常用雇用に再就職する活動が思うようにできなくなると断ったら、まじめに求職する意思がないなどと判断されてしまうことはないのでしょうか。あるいは、常用雇用でも今の求職者給付より低い賃金、まさに政府が逆転現象をなくすと盛んに言っているケースですが、そういう低賃金の職場を紹介されたときに、もっと高い賃金のところを探したいといって断ったら、給付を停止されたり打ち切られることになるのではないか。そんなことがまかり通るなら、雇用保険法は、低賃金、臨時雇用を推進するための労働力移動を促進する法律に変質してしまいます。
 今私が挙げた二つのケースのようなことは絶対にない、本人の意思を尊重するということを大臣にここで明言していただきたいんですが、大臣、もう大分お待たせしたから、今度は大臣、ひとつ答えてください。
戸苅政府参考人 失業の認定を受けるためには求職活動を行っていることが必要でありますが、これには求人への応募のほかに、職業相談、職業指導を受けること等も含まれておりまして、職業紹介に応じなかったことだけで直ちに不認定ということにはならないというふうに考えています。
 それから、非常用求人についての紹介を断った場合というお話でありますが、これは職業紹介に当たりましては、本人の適性、能力に応じてやるということ、それから希望なり労働市場の状況なり、そのあたりを総合的に判断するということでありまして、非常用の求人しかない職種に意図的に就職紹介を固執するといったような場合はともかく、一般的にはそういったケースは考えられないんではないかというふうに考えております。
 それから、紹介先の賃金が一般の賃金水準と比べて不当に低い場合には、職業紹介を拒否する正当理由に該当しますので、給付制限の対象とはならないというふうに考えています。
小沢(和)委員 大臣にそのことについては確認していただきたいんですが、大臣にもう一問いたしたいんです。
 既にこの失業認定の方法は、昨年九月から、大臣告示による運用改善として通達が出され、全国の職業安定所で実施されていると伺っております。この失業の認定で、実際に求職活動を行ったか等を確認しなければならなくなり、物すごい窓口業務の増大を引き起こしていると聞いております。
 こういう重大な認定の方法の変更を法改正を待たずに勝手に実施し、後から既成事実を法改正で追認させるというのは一体何事か。これは立法府を無視した行政の独走ではないか。運用改善というのはあくまで法の枠内でやるべきで、後から法改正をしなければならないような重大な変更を運用改善などの名目で先にやるなどということは絶対に許されないと思うんですが、大臣の明確な見解を、先ほどの問題についての確認とあわせて、もうぜひ大臣にお伺いしたい、最後ですから。
鴨下副大臣 副大臣で恐縮でございます。
 現行の制度上、受給資格者が基本手当の支給を受けるためには、四週間に一回公共職業安定所に出頭して失業の状態にあるか否かの認定を受ける、こういうのが必要であることは言うまでもありませんし、かつ誠実に、熱心に求職活動をなさっているか、こういうことが必要とされるわけでありまして、それを受けまして、昨年の九月より実施している失業認定のあり方の見直しは、このような雇用保険法の趣旨にかなう求職者に求職者給付が支給されるよう、求人への応募状況や職業紹介、職業指導等の具体的な求職活動の実績が確認できない限り失業の認定を行わない、こういうような取り扱いにするものでありまして、現行制度にかなったものであります。
 また、今回新たに規定する失業認定の方法に関する規定は、こうした既に実施している運用を法律上確認的に明記するものでありまして、まさに現行の雇用保険法の趣旨に即したものであり、昨年九月からの運用は決して立法府を無視したような、こういうようなことではないということでございます。
小沢(和)委員 大臣が立ってくれなかったから、その点は遺憾の意を表して、終わります。
中山委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 まず最初に、雇用保険法の改正案の質問に入る前に、大臣にお伺いをしたいんですけれども、二月に予算委員会やこの厚生労働委員会でも、在外被爆者の問題を幾つか質問しまして、二つの案件について、健康管理手当の再申請の問題と葬祭料の問題について検討をいただくということになっておりましたけれども、一カ月半余りたちましたけれども、その検討の状況とか、もう検討結果が出ておればその点について、まずお聞かせをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 予算委員会のときに金子議員からお聞きをいただきました件でございますが、一つは、一度認定を受けた人たちが再び受けるときには日本に来なくてもいいようにすべきだ、こういうお話だったと思います。
 こちらの方は、病気にもよりますけれども、できる限り何回か来てもらわなくてもいいように、慢性の疾患であれば、一度受けていただければ、それでもう最後までいいようにならないかということで、今、検討をかなり進めております。
 中には、例えば貧血のようなもので、二、三年たってどうなるかわからぬというようなものは、これは二、三年で診てもらわなきゃならないかもしれませんけれども、慢性的なものにつきましては、一度認定ができればそれでいいようにできるだけしたいというふうに思っております。
 これは、我々が思うだけではなくて、学者の先生方にも一度検討していただいて、最終的な決定にしたいというふうに思っておりますので、その会をつくりたいというふうに思っておりまして、早く結論を出すようにしたいというふうに思っている次第でございます。できるだけ要望に沿うように、これは努力をする決意でございます。
 これはそれでいいので、次の方の葬祭料の方でございますが、こちらは、いろいろと検討をしてもらっておりますが、今のところは、なかなか難しいという意見の方が多いという状況でございます。
 これは最終結論が出たわけではございませんけれども、これはちょっと難しいかな、日本の国の中で亡くなられる方はともかくとして、外国で亡くなられたときに葬祭料をそこで出すというわけにはなかなかいかないのではないかというのが現状でございまして、これは最終じゃございませんけれども、こちらはちょっとお許しをいただかなければならないかもしれないというのが現状でございます。
金子(哲)委員 この問題だけで質問することが難しいですけれども、基本的には、健康管理手当については、今三年、五年の期間がありますけれども、それをかなり延長するというか、疾患にもよりますけれどもということですけれども、基本的にはそういう方向で、一度申請を出せば、それで認定をされればという方向、私がちょっと考えていたこととは違うんですけれども、それによって再申請しなくても済むというようなことの方向で検討されるということのように受けとめましたけれども、そういうことでいいでしょうか。
坂口国務大臣 決してお若い方ではございませんしいたしますので、大体今おっしゃった方向に努力をいたしたいというふうに思っております。
金子(哲)委員 ぜひ早い結論を出していただきますように、もう三年、五年が次々と来る人たちもいらっしゃるわけですので、その点はできるだけ早く結論を出していただきたい、今大臣が答弁していただいた方向で出していただきたい。
 葬祭料の問題については、今、非常に難しいという話が出ましたけれども、私はやはり、亡くなったということは、国内にいても、国外にあっても、死亡されたという事実は変わりがないわけでして、その点は、今、難しいという答弁ですけれども、ぜひさらに何かの道がないか検討していただきたいということを要望させていただきたいと思います。
 それで、雇用保険法の改正案について幾つか質問させていただきたいと思いますけれども、まず最初に、小泉総理が就任をされたときに、二〇〇一年の五月だったと思いますけれども、衆議院の本会議で所信表明が行われまして、その際に、こういうふうにおっしゃっているんですよね。「構造改革を実施する過程で、非効率な部門の淘汰が生じ、社会の中に痛みを伴う事態が生じることもあります。私は、離職者の再就職を支援するなど、雇用面での不安を解消する施策を」充実しますということを総理になられたときの最初の所信表明で言われているんですね。
 今回、雇用保険法の、改正案か改悪案か、いろいろ見方はあると思いますけれども、今度のこの中身は、この小泉総理の就任時の所信表明の「離職者の再就職を支援するなど、雇用面での不安を解消する施策を」充実するという中身から見ますと、どうもその中身を踏襲しているように思えないんですけれども、情勢が変わったということで済むんでしょうか。その辺はどうでしょうか。
坂口国務大臣 その総理のお気持ち、私たちの考えておりますこと、決して違いはないというふうに思っております。
 雇用対策は、この雇用保険の問題もございますけれども、トータルでやっていかなきゃならない問題でございます。けさからもお答えを申しましたとおり、雇用保険の問題で一番大事なことは、これは失業なすった皆さん方に一日も早く再就職をしていただくことが最大の目的でありますし、一番大事なことだというふうに思っております。したがいまして、この雇用保険を中心にしながら、総力を結集して、失業者の皆さん方に対応をするというふうにしていきたいというふうに思っている次第でございます。
金子(哲)委員 私が言うまでもないんですけれども、完全失業率は、当時、小泉総理が就任されたとき、四・七%から八%ですよね。そして、その後どんどん急上昇しまして、最近、一番新しい数字は五・二%とちょっと低下をしたんですけれども、五・五%という史上最悪の数字をずっと示してきたわけですね。
 結局のところ、小泉内閣の期間中に失業者が増大をした、これはもう紛れもない数字で、事実なわけですね。その結果として、今度の雇用保険の改正では、それを失業者に対する給付額の減額等によって乗り切ろうとすることは、結局、失業者に対して負担を押しつけることになっているんじゃないですか。やはり政府の中に失政というか、その政府の政策によってこれだけ雇用状況が悪化して、小泉総理は、さっきも言いましたように、不安を解消する施策を充実させると言うんですけれども、むしろ不安を増大させる施策に今回の改正案はなっているんじゃないですか。その点について、もう一度お伺いしたい。
坂口国務大臣 現在の雇用情勢というのは、現在の景気の動向に大きく左右されていることは間違いがありませんし、この景気の動向というのは、これは日本を取り巻きます環境が大きく変わったということによって起こってきている問題でございます。
 したがいまして、それに対応をしていくために、小泉政権としては幾つかの課題に取り組んでいる。確かに、構造改革を断行しなきゃならないという意味で、一時的に増加をするということは覚悟の上で行った施策もその中には含まれていることは事実でございます。しかし、そうした中であればこそ、雇用対策というものを重視し、そして雇用保険というものにつきましても、厳しい中でございますけれども、お互いにこれは支え合っていくという精神の中でやっていかなければならない。財政的にもまことに厳しい中ではございますが、しかし、なおかつ、そこで精いっぱいのことをやりながら、皆さん方に御理解を得ていきたい、そんなふうに思っている次第でございます。
金子(哲)委員 もう一つちょっとお伺いしたいんですけれども、同じ二〇〇一年の六月に、当時の竹中経済財政担当大臣はこのようにおっしゃっているんですよ。構造改革、規制緩和で、新規分野を含め、サービス分野において、今後五年間で五百三十万人の雇用機会の創出が期待されるという話をされているんですね。既に二年たっているわけですよ。これは、五百三十万の雇用を創出するというのは、このときは言ったけれども、もうそういう展望は全然なくなったんでしょうか。
坂口国務大臣 五百三十万の話というのは、これは島田さんが中心になりましてやられたことでありまして、サービス業を中心に、いろいろの施策を講ずれば、そのぐらい雇用が生まれる可能性があるということを言われたわけであります。大体、去年もおととしもサービス業で年間五十万ぐらいずつふえていますね。二年間で百万ぐらいふえたのではないかというふうに思っております。
 したがいまして、サービス業におきましては非常な勢いでふえておりますから、二年間で五百万には至っておりませんけれども、サービス業のところで大きく雇用が伸びていることだけは間違いがございません。
金子(哲)委員 いや、私はなぜその質問をしたかといえば、五百三十万人も雇用ができれば、一時的なこの雇用不安の状況ですから、それだけしっかり政策をつくっていただければ、何も雇用保険をこんな無理することはない。短期的な措置をとれば済むわけで、だから、言うことだけ好きに言っただけだという意見もありますけれども、そういうことを片方で言いながら、実際上は結局失業者、労働者の方に負担が行っているということを言いたいわけですよ。そのことを政策を本当に実行されるのであれば、雇用保険の改正は今必要ないんじゃないですか。そのことをまず指摘しておきたいと思います。
 モラルハザードの問題などがいろいろ言われて、先ほども、雇用保険の給付期間が過ぎて一カ月で就職が非常に高い、あたかもこれは雇用保険の給付額が高いからなかなか再就職が難しいんだという話ですけれども、しかし、実際には、今の失業状況というのは、一年以上の失業者の率が毎年毎年増大しているんですよね。一九九七年、四十八万、二〇%だったのが、今や、二〇〇二年の一月から三月は百六万人の二八・三%、つまり失業状況が長期化しているという問題があって、本来は、この失業状況の長期化の問題をどうするかということに雇用保険の考え方というのがなければならないと思うんですよ。
 ヨーロッパなどと比べると、日本の雇用保険というのは非常に短い。例えば、今大体日本だと、四十五歳以上六十歳未満で二十年間被保険者期間があれば、給付期間、最長十一カ月ですよね、三百三十日。ドイツの場合は、被保険者期間、年齢によって六カ月から最長三十二カ月ぐらい支給をされる。しかも、失業保険が切れても失業扶助制度があって、事実上無制限というか、そういう状況ですね。フランスも最長六十カ月、六十カ月といえば五年です。イギリスも原則は六カ月ですけれども、それ以降も失業給付制度によって無制限に支給をされている。こういうところが、実はヨーロッパの方では、こういう長期の雇用保険制度がモラルハザードを起こしているのではないかという論議が起こっているということを聞いております。
 これと比べると、日本のこの短期の雇用保険の給付期間でそういうことは言っておられない状況じゃないでしょうか。これらと比べると、日本の雇用保険の給付は、期間にしても給付額にしても極めて低質なんじゃないでしょうか。それをあたかも、日本の失業率、失業者の増大が、また長期化することが、そういういわば給付額の大きさのような、モラルハザードのようなことを原因にするというのは問題があると思うんですよね。むしろ今考えるべきことは、短期化することよりも雇用保険の受給資格や受給期間を拡大することが必要だと思いますけれども、その点についてどうですか。
戸苅政府参考人 これは恐らく、雇用についてあるいは雇用保険についてのそれぞれの国なり社会の考え方が大きく影響しているんじゃないかというふうな気もいたします。
 確かに、委員おっしゃるように、フランス、ドイツ等は給付日数が長いわけであります。ただ、保険料を申し上げますと、日本の場合は労使とも千分の七でございますが、フランスの場合は使用者の負担が千分の四十でございます。それから、ドイツの場合も保険料の負担が労使とも千分の三十二・五ということでございます。フランスの場合は国庫負担なし、ドイツも国庫負担は日本に比べてはるかに低い額、こういうふうになっていまして、要するに、労使の間で、労使の共同連帯でどこまで保険制度で見ていくのか、それから、あとは国の政策で早期再就職のための雇用対策をどうとっていくのか、そこはそれぞれの国、それぞれの考え方なんだろうというふうに思っています。
 我が国の場合は、かつて失業率が非常に低かったということもまだ反映しているという面も否定はできないわけですけれども、我々としては、なるべく失業期間を短くして早期再就職できるような方向での雇用保険制度、それから雇用対策、こういったことを目指しているということではないかというふうに思っています。
金子(哲)委員 いや、私が言いたかったのは、もちろんそれは制度的にいろいろあるでしょう。ただ、今の失業状況を見ますと、失業期間が長期化をしている。これは認められるわけでしょう、失業期間が長期化しているのは。であれば、長期間の失業者に対してどうするかという問題が出てくるんじゃないでしょうかということを言っているわけですよ。その点はどうですか。
鴨下副大臣 先生おっしゃるように、失業というのは、雇用保険が整備されればそれで解決するという問題ではなく、むしろもっと国内外の複合的なことから起こるわけでありますので、その中で、ある意味で雇用保険というセーフティーネットをどういうふうに万全なものにしていくか、こういうようなことなんだろうと思います。
 今回の改正におきましても、この厳しい雇用失業状況をどういうふうに、雇用保険財政の破綻を回避しつつ、将来にわたって制度の安定的運営を図る、こういうようなことで行わせていただくわけでありまして、具体的な話につきましてはもう先生よく御存じだろうと思いますが、一つは、多様な早期就業を促進するための給付の創設、それから、倒産、解雇等により離職したパートタイム労働者について、その所定給付日数を通常労働者に合わせる方向での拡充、それから、壮年層、特に三十五歳から四十四歳の基本手当の給付日数の延長等を行いつつ改正をさせていただくわけでありますけれども、それに加えて、セーフティーネットという意味においては、雇用保険受給者の早期再就職を推進するため、これは平成十四年度の補正予算及び平成十五年度予算におきまして、早期再就職支援策や雇用機会の創出策などの十分な施策を盛り込んだところであります。
 こういうように、さまざまな政策を複合的、総合的に組み合わせまして雇用のセーフティーネットをつくるというようなことでありまして、失業が長期化しているということのために雇用保険をどうするかというようなことは、ごく一部なんだろうというふうに思います。
金子(哲)委員 時間がないので次の質問に移りたいと思いますけれども、先ほど来、給付期間が過ぎて一カ月以内に二九・四%ぐらいの、これは二〇〇〇年度の受給資格者で、二〇〇一年十二月末の数字で二九・四%というような数字があります。確かにその率が高いことは間違いないわけですね。
 そのことが、基本的に今回、今の給付額が高いということと再就職先の金額が低いということの差によって就職ができないということを言われておりますけれども、私はこれはやむを得ないことだと思うんですよ。やはりそういう給付を受けている人たちはそういう生活状況があるわけですよね、それまでの間。だから、ぎりぎりまで自分と同じような状況のところを何とかして探したいということは当たり前の、当然のことであって、それは差があるからどうこうという考え方とは違うと思うんですよね。
 なぜ一カ月間の間にこれだけ高くなるかといえば、給付額が、もう収入がなくなる、ではもうしようがない、とりあえず少々安くても再就職しなきゃいけないと。何もぎりぎりまで待てばいい、この額を全部受け取ってからでいいんだということではなくて、当然のことに、その間は自分と同じような条件でやりたいと。
 しかし、日本の場合は、労働市場の構造そのものがこういうふうになっていないわけですよね。同一職能の者が、大体同一の職能で同一賃金で、職能別の賃金体系になっていないですから、企業別になっているから、なかなかそういうことができない。だけれども、何とかそれでもいいところがないかということで探すのであって、やはりその労働者の、働く人の気持ちというものはもっと大切にされなきゃいけない。それを、給付期間が終わったら一カ月の間に非常に高くやっているから、そもそもこれが原因なんだ、とにかく満額受け取ればいいんだというような発想で物を考えているということは、私はちょっと違うんじゃないかと思いますよ。
 しかも受給資格決定者、平成十二年度は二百三十三万人ぐらいですよね。そのうち就職ができた人たちは四二%にすぎないんですよね。何もこれは保険の給付額が高いことがすべての原因ではなくて、実際にはそういう状況がつくられていないところに問題があるので、それを、後でもう一度質問しますけれども、そういうことを理由にして給付額を下げていく、これは僕は理由にならないというふうに思うんですけれども、その点についてどうですか。
鴨下副大臣 先生の御指摘も一面はそのとおりだろうというふうに思いますが、ただ、それだけではなく、やはり制度を持続していくというような意味においては、それぞれ、失業している方、それから保険料を納めている方々が、ある意味でそれぞれの痛みを分かち合う、こういうような中でセーフティーネットとして機能するんだろう、こういうふうに思うわけであります。
 基本手当は、労働者の失業中の生活の安定を図りつつ、なおかつ求職活動を支援する、こういうようなことが目的でありまして、それなりに、離職前の賃金に応じてその金額が算出されているわけであります。
 ただ、その一方、基本手当と再就職時の収入との逆転はやはり避けないといけないんだろうというふうに思いますし、これが、一部ではあるかもわかりませんけれども、受給者の再就職を阻害している、こういうような面もデータ的には事実でありますので、こういうようなことから、今回は賃金日額の上限額を引き下げるとともに、最低給付率を六〇%から五〇%に引き下げさせていただく、こういうようなことでございます。
金子(哲)委員 それは逆転しない方がいいですよ。雇用保険の給付額より高い賃金で雇ってもらう方がいいわけで、だれしもそれを希望しているわけで、そういうふうに言われると、では一体なぜこんなに賃金は下がっているんですか、再就職の場合。原因があるわけですよ、それは。何かにいろいろ原因があるからそうなっているわけでしょう。
 大きな原因は、パートなどがふえていることが原因じゃないですか。不安定雇用の低賃金構造をどんどんつくっているわけでしょう。今、大体、パートの率が現実的にはどんどん高まっているじゃないですか。そういうことを放置して、そして、給与が下がっている、だからこれに合わすんだというのは、逆転した発想だと私は思うんですよね。
 そこに今回の、例えば、安定所に受理する求人のうち、五・五%は臨時の職員、そして三三・一%はパートですよ、求人票が来ているのは。約四〇%近くがこういう不安定雇用ですよ。当然、給料が下がるのは当たり前じゃないですか。こんなことを放置して、しかもパートの給与は一体どうなっているかといったら、極めて低いわけでしょう。
 これは厚生労働省の方が出している毎月の勤労統計調査を見ますと、一時間当たりの現金給与総額格差というので、一般の労働者とパート労働者の賃金格差の推移を見ますと、どんどん開いていって、そして大体、一時間当たりの現金給与の総額格差は三六・九%、そして一時間当たりの所定内給与格差は四五・六%、半分以下、三分の一ですよ。そういうところの層がどんどん拡大して、このことには全然手をつけずに、そしてまたパートの給与を上げることもやらずに、そして、再就職の賃金が低いから、だから雇用保険の給付額を下げるんだというのは、これじゃ不安定雇用を促進しておるようなものじゃないですか。その点どうですか。
坂口国務大臣 確かにパートがふえていることも事実でございますが、ここは、需要と供給の関係におきまして賃金も私は決まってきているというふうに思いますね。ですから、現在のこの状況を反映しているといえば反映していると思います。ここは、では将来もこのままでいくかといえば、私は、景気そのものが回復をすればもう少しは回復するだろうというふうに思っております。
 ただ、けさからもいろいろ御意見の出ておりますように、日本が現在世界の中に置かれております立場からするならば、日本が諸外国に負けないだけのものばかりをつくっていられる立場では現在ございません。残念ながら、大変安い人件費と競争をしながらやっていかなきゃならない側面も現在のところあるわけでございますから、景気が回復をすればすべて回復するというふうには私も思っておりませんけれども、現状よりは回復するだろうというふうに思っております。
 確かに、そうしたデフレの中で人件費も下がってきていることも事実でございますから、そうしたことも勘案をしながら失業者の皆さん方にも次の雇用を選んでいただかなければならない、そういう事態に立ち至っているというふうに思います。
 ただ、いろいろ私も聞いておりますけれども、中小企業等で新しい人を求める、しかし、そのときに最初から、その人が前に取っていたのと同じような額は初めからは出せないけれども、しかし、経過を見て、一年なり一年半なりその人の働きぶりその他を見て、自分の企業にマッチする人であるならばもっと上げたいというところはかなりたくさんあるわけでございます。
 ですから、その辺のところもよく勘案をいただいて、次の勤め先というのを選んでいただくようにやはりしなければならない。その点について、ハローワークなりあるいはまたキャリアカウンセラーの人たちがそのことをよくお話をして、そしてお勧めをしないといけないというふうに私は思っている次第でございます。
金子(哲)委員 私は、先ほども質問出ましたけれども、なぜそういうことをしつこく言っているかというと、今度のこの就業促進手当の新設された中に、常用以外でもこれを適用するというわけですよね。つまり、結局政府の側がこういう不安定雇用を、パートも含めて、どんどん認めていく方向に施策として進んでいるから、そのことを指摘しているわけですよ。
 本来ならそこを歯どめをかけなきゃいけない政府の側が、パートなどの不安定雇用を、今回この制度を入れるということは、どうぞそういうところをやってくださいと。それで、先ほど言いましたように、ハローワークに出ている求人を見ても、パートが多いわけですから、どんどんふえているわけですから、そういうところを、結局のところ、歯どめをかけるんではなくて、実はそれをある意味で後押しするようなことに全体がなっているんじゃないですかと、そのことを申し上げているんですよ。
坂口国務大臣 そこは金子先生らしくないお話だと思うんですね、これは。常用雇用の皆さん方のことも考えなきゃならないけれども、一方でパート労働の皆さん方のこともやはり考えてあげなきゃいけない、そういう時代に来ていると思うんですね。
 確かに、パートがふえてきていることも事実ですし、パートを好んでいないけれども、パートでやらざるを得ないという人もおみえでございましょう。私、それは否定をいたしません。しかし、パートで働いておみえになる間は雇用保険もないし、あるいは年金にもそこへは入れないしというのではやはりぐあいが悪い。パートで働いておみえになる皆さん方にも、雇用保険も年金もやはりできるような形にしていくということがこの人たちのためにもなるというふうに私は思っております。
 その人たちが意を決して、いや、それじゃ、これをやめてもう一遍常用雇用のところを探そうというふうに思っていただければ、それはそれで御協力を申し上げなければならない。しかし、中にはパートでいいという方もあるわけでございますから、その皆さん方のこともやはり考えないといけないというふうに思っております。
金子(哲)委員 今大臣、パートのことを盛んにおっしゃいましたので、では、ぜひパートの均等待遇の問題をしっかりやってください。そういうことをしっかりやって、パートの労働条件も、働く条件をしっかりと上げて、確保して、不安定部分をなくして、その上でパートのことをおっしゃるのならいいけれども、そちらの方は全然手をつけぬままにそういうふうにおっしゃるから、私もパートの人たちをほったらかしにしなさいということを言っているわけじゃなくて、ただ、こういうところに、パートにでも、不安定雇用の人たちにでも今度こういう制度を導入しますということは、結果的にそういうことを促進することになるんじゃないですかということを指摘しているわけですよ。だから、今度パートの雇用の均等法を出したときにはぜひ大臣には賛成していただける、こういうふうに思っております。
 それから、私がもう一つ申し上げたいのは、そもそも雇用保険、これは私が申し上げるまでもなく、もう局長も大臣もよく御承知のとおり、雇用保険法第一条で、再就職支援をする、その間「労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、」と、労働者の失業時の生活の安定を図る、これも一つの大きな目標なわけですね。だからこそこれは、離職前の一定期間の一定の収入に対して、これを基準にして計算をしてきているわけですね。
 ところが、先ほど来の論議を聞いていますと、今回、ちょっと違う発想になってきているわけですよ。再就職先の賃金との逆転現象が起きている、だからこれを下げなきゃいけない。これは、生活の安定を図る、こういう基本的な考え方と相矛盾することじゃないですか。だから私は、今回の法案の改正の中でこういう考え方で給付額を決められるということは、基本的にそこに大きな問題があると思うんですよ。この考え方でいけば、雇用保険の基本的な考え、性格をゆがめる。
 失業者の生活安定を図るために雇用保険を給付する考え方から、新たな賃金、再就職先の賃金に見合った雇用保険を給付するというのは、雇用保険法の第一条の趣旨に反することじゃないですか。その点、どうですか。
坂口国務大臣 雇用保険の中でやはり考えなければならないのは、この雇用保険を受けなければならない人たちを一人でも多く救済していくということだろうと思うんですね。確かにそれは、多ければ多い方がいいし、長ければ長い方がいい。それはそうだというふうに思いますけれども、しかし、それはなかなかそうはいかない。
 先ほどヨーロッパの例をお挙げになりましたけれども、確かに長いけれども、しかし、保険料もより多く払っておみえになりますし、そしてまた月々の額も少ないわけですね。だからそれは、いいところ、悪いところ、それぞれあるわけでありまして、日本の場合にも、大変ではありましょうけれども、額の高いところの人たちにはやはり御辛抱をいただいて、全体としてのこの保険を維持していくということのために御協力をしてくださいよということだと私は思うんです。
 そのかわりにといいますか、さまざまな施策も準備をいたしておりますし、やはりハローワークにおきましても、この皆さん方、とりわけ、先ほどからも出ましたけれども、四十五歳から五十九歳、その辺の皆さん方のためには全力を挙げて取り組む、そういう姿勢があって初めて御理解をいただけることだというふうに私たちも理解いたしております。
金子(哲)委員 私が言いたかったのは、雇用保険法の第一条に言われている趣旨からいうと、これを性格を変えることになっている改正だということを重ねて私は指摘しておきたいと思うんですよ。そういうことがまかり通っていけば、そして今の発想でいくと、何度も同じことを言っているようですけれども、結局この考え方も、やはり賃金の低い方に合わせればいいんだということを招来する結果につながっていくと私は思うんですよ。
 そもそも、失業したときに生活の安定を図るというのは、今おっしゃったように、四十五歳から五十九歳というのはいわば世帯の一番大変なところですね。そしてそれは、子供さんの学費がかかり、住宅ローンがかかり、だからこそ、生活の安定ということで、一定の基準というものを設けなければいけなかった。それは、激変させないという条件があったから雇用保険の給付額を決定しているわけですよ。それを再就職の賃金で決めていくというようなことになると、その基本的な考え方がなくなっていくということを、私は、やはり今回の改正というのはそういう側面をすごく強く持っているということを改めて指摘しておきたいと思います。
 もう時間が余りないので最後の質問になりますけれども、先ほども質問にありましたけれども、失業認定の厳格化ということが言われているわけですね。既に去年の九月に通達でそういうことがやられていたんですけれども、私は、今やるべきことは、確かに、適正に支払う、不正受給があってはならない、これはお互いが認めているところだと思います。だけれども、今ハローワークの現状は、こういう作業をどんどんふやすことよりも、今どれだけきめ細かく再就職を希望する人たちに処理できるかということが大事だと思うんですよ。
 かつては自分たちで新しい求職先も開拓できたけれども、その余裕もない。そして、今まではある程度、ハローワークの窓口に来られた方のいろいろなことを大体聞きながら、ああ、この方だったらこういうところがいいんではないかというような余裕があったけれども、今はもう全くそれがない、できないということが言われているので、私は、こんな失業認定の厳格化をするよりも、きめ細かな指導体制、確かに、人員の話をすると、いろいろ難しいことがあるという答弁しか返ってこないんですけれども、やはり再就職の支援というところに重点を置くことが、結局は失業者の数も減らすことになるし、ひいては雇用保険財政にとっても極めて有意義だと思うんですね。
 そこのところが、もうちょっと踏み込んでその再就職支援というものに力を注ぐということがこの際強化されなきゃいけないんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点について最後に質問して、終わりにしたいと思います。
坂口国務大臣 そこはおっしゃるとおりだと私も思っております。
 ただし、我々のハローワークの中でそれをふやすというのはなかなか難しい。それならふえないじゃないかというふうにおっしゃいますけれども、そこはやはり、今までハローワークの仕事は国しかやらないというふうにやっていたのが、そこに無理があった、こう思っております。今度法律をまた出させていただきますけれども、その中で、地方の県なり市町村もこのお手伝いをしていただいてもいいということにしたいと思いますし、民間も含めた総トータルの中でこのハローワークの仕事は進めていく以外にないだろうというふうに思っておりまして、そういう意味で、連携を密にし、そして、その仕事に従事する人の数をふやしていくということにぜひしたいと思っております。
金子(哲)委員 終わりますけれども、さっきの民間の職業紹介の問題についてはいろいろ私もまだ意見があるので、今答弁されてそれで納得ということにはならないことだけ申し上げて、終わります。
    ―――――――――――――
中山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 両案審査のため、来る九日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
中山委員長 次に、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。
 内閣委員会において審査中の内閣提出、食品安全基本法案について、内閣委員会に連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等は、追って公報をもってお知らせいたしますので、御了承願います。
 次回は、来る九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十一分散会


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