衆議院

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第8号 平成15年4月9日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年四月九日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 中山 成彬君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君
   理事 武山百合子君
      小渕 優子君    岡下 信子君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      小西  理君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      竹下  亘君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    原田 義昭君
      平井 卓也君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    山本 幸三君
      吉田 幸弘君    吉野 正芳君
      渡辺 具能君    家西  悟君
      石毛えい子君    大石 正光君
      大島  敦君    加藤 公一君
      五島 正規君    城島 正光君
      手塚 仁雄君    中村 哲治君
      水島 広子君    江田 康幸君
      桝屋 敬悟君    佐藤 公治君
      小沢 和秋君    山口 富男君
      阿部 知子君    金子善次郎君
      川田 悦子君
    …………………………………
   議員           大島  敦君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            遠藤純一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            松崎  朗君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          坂本由紀子君
   参考人
   (社団法人日本経済団体連
   合会常務理事)      紀陸  孝君
   参考人
   (日本労働組合総連合会雇
   用労働局長)       中村 善雄君
   参考人
   (中央大学教授)     大須 眞治君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月三日
 辞任         補欠選任
  釘宮  磐君     石毛えい子君
同月九日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     原田 義昭君
  竹下  亘君     小渕 優子君
  西川 京子君     北村 誠吾君
  宮澤 洋一君     小西  理君
  吉野 正芳君     金子 恭之君
  三井 辨雄君     中村 哲治君
  山谷えり子君     金子善次郎君
同日
 辞任         補欠選任
  小渕 優子君     竹下  亘君
  金子 恭之君     吉野 正芳君
  北村 誠吾君     西川 京子君
  小西  理君     宮澤 洋一君
  原田 義昭君     奥谷  通君
  中村 哲治君     手塚 仁雄君
  金子善次郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  手塚 仁雄君     三井 辨雄君
    ―――――――――――――
四月七日
 医療改悪の実施と社会保障の改悪に反対し充実を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第一四〇七号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一四〇八号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一五六四号)
 医療改悪の実施と社会保障の改悪反対に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一四〇九号)
 同(西村眞悟君紹介)(第一四一〇号)
 健保三割負担実施の凍結に関する請願(山田正彦君紹介)(第一四一一号)
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(保坂展人君紹介)(第一四一二号)
 同(中川智子君紹介)(第一四三八号)
 同(保坂展人君紹介)(第一四三九号)
 同(山口壯君紹介)(第一四四〇号)
 同(海江田万里君紹介)(第一五四七号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(林田彪君紹介)(第一四一三号)
 同(土肥隆一君紹介)(第一四四一号)
 同(不破哲三君紹介)(第一五四八号)
 医療改悪の実施凍結、見直しに関する請願(児玉健次君紹介)(第一四一四号)
 同(山元勉君紹介)(第一四六〇号)
 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(中林よし子君紹介)(第一四一五号)
 パートタイム労働法の実効ある改正に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第一四一六号)
 健保三割負担など医療費負担増の凍結・見直しに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四一七号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第一四一八号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一四一九号)
 同(中林よし子君紹介)(第一四二〇号)
 同(春名直章君紹介)(第一四二一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一四四三号)
 同(大畠章宏君紹介)(第一四四四号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第一四四五号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一四四六号)
 同(中川智子君紹介)(第一四四七号)
 同(山口富男君紹介)(第一四四八号)
 同(池田元久君紹介)(第一四六一号)
 同(大島敦君紹介)(第一四六二号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第一四六三号)
 同(木下厚君紹介)(第一四六四号)
 同(北橋健治君紹介)(第一四六五号)
 同(工藤堅太郎君紹介)(第一四六六号)
 同(今田保典君紹介)(第一四六七号)
 同(中川智子君紹介)(第一四六八号)
 同(古川元久君紹介)(第一四六九号)
 同(細川律夫君紹介)(第一四七〇号)
 同(岩國哲人君紹介)(第一五四九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一五五〇号)
 同(奥田建君紹介)(第一五五一号)
 同(黄川田徹君紹介)(第一五五二号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第一五五三号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五五四号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一五五五号)
 同(達増拓也君紹介)(第一五五六号)
 同(土井たか子君紹介)(第一五五七号)
 同(中西績介君紹介)(第一五五八号)
 同(長浜博行君紹介)(第一五五九号)
 同(古川元久君紹介)(第一五六〇号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一五六一号)
 介護保険の緊急改善に関する請願(中林よし子君紹介)(第一四二二号)
 労働法制の改悪反対に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一四二三号)
 医療改悪実施と社会保障改悪反対、充実に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一四二四号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一五六二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一五六三号)
 医療改悪の実施中止、社会保障の充実に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一四三七号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(原陽子君紹介)(第一四四二号)
 医療改悪の実施反対等に関する請願(後藤茂之君紹介)(第一四五九号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(赤羽一嘉君紹介)(第一四八七号)
 同(浅野勝人君紹介)(第一四八八号)
 同(枝野幸男君紹介)(第一四八九号)
 同(岡田克也君紹介)(第一四九〇号)
 同(奥谷通君紹介)(第一四九一号)
 同(奥山茂彦君紹介)(第一四九二号)
 同(鹿野道彦君紹介)(第一四九三号)
 同(梶山弘志君紹介)(第一四九四号)
 同(鎌田さゆり君紹介)(第一四九五号)
 同(亀井久興君紹介)(第一四九六号)
 同(岸田文雄君紹介)(第一四九七号)
 同(北村誠吾君紹介)(第一四九八号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第一四九九号)
 同(小坂憲次君紹介)(第一五〇〇号)
 同(高村正彦君紹介)(第一五〇一号)
 同(近藤基彦君紹介)(第一五〇二号)
 同(佐藤剛男君紹介)(第一五〇三号)
 同(斉藤斗志二君紹介)(第一五〇四号)
 同(杉山憲夫君紹介)(第一五〇五号)
 同(鈴木俊一君紹介)(第一五〇六号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一五〇七号)
 同(橘康太郎君紹介)(第一五〇八号)
 同(谷本龍哉君紹介)(第一五〇九号)
 同(近岡理一郎君紹介)(第一五一〇号)
 同(土井たか子君紹介)(第一五一一号)
 同(虎島和夫君紹介)(第一五一二号)
 同(中西績介君紹介)(第一五一三号)
 同(中村正三郎君紹介)(第一五一四号)
 同(中山太郎君紹介)(第一五一五号)
 同(西田司君紹介)(第一五一六号)
 同(根本匠君紹介)(第一五一七号)
 同(鳩山由紀夫君紹介)(第一五一八号)
 同(浜田靖一君紹介)(第一五一九号)
 同(春名直章君紹介)(第一五二〇号)
 同(平井卓也君紹介)(第一五二一号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第一五二二号)
 同(福島豊君紹介)(第一五二三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一五二四号)
 同(保利耕輔君紹介)(第一五二五号)
 同(牧野隆守君紹介)(第一五二六号)
 同(桝屋敬悟君紹介)(第一五二七号)
 同(松崎公昭君紹介)(第一五二八号)
 同(松島みどり君紹介)(第一五二九号)
 同(松浪健四郎君紹介)(第一五三〇号)
 同(松本剛明君紹介)(第一五三一号)
 同(松本龍君紹介)(第一五三二号)
 同(三ッ林隆志君紹介)(第一五三三号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一五三四号)
 同(三塚博君紹介)(第一五三五号)
 同(宮腰光寛君紹介)(第一五三六号)
 同(武藤嘉文君紹介)(第一五三七号)
 同(持永和見君紹介)(第一五三八号)
 同(森田一君紹介)(第一五三九号)
 同(谷津義男君紹介)(第一五四〇号)
 同(保岡興治君紹介)(第一五四一号)
 同(山元勉君紹介)(第一五四二号)
 同(山本幸三君紹介)(第一五四三号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一五四四号)
 同(吉田六左エ門君紹介)(第一五四五号)
 同(吉野正芳君紹介)(第一五四六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)
 雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――
中山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及び城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君、厚生労働省健康局長高原亮治君、労働基準局長松崎朗君、職業安定局長戸苅利和君及び職業能力開発局長坂本由紀子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城島正光君。
城島委員 おはようございます。民主党の城島でございます。
 前回に引き続きまして、質問に立たせていただきます。
 前回の質疑は途中でありましたけれども、いわゆる就業促進手当について質疑をさせていただいておりまして、その続きということで、きょう、そこから質疑を開始させていただきたいと思います。
 前回、就業促進手当について、その趣旨ということをお尋ねをしたわけでありますけれども、率直に言って、今回のこの就業促進手当についての趣旨がいま一つ明確ではないようなので、きょう、さらにその辺も含めて論議をさせていただきます。
 その趣旨を理解するためにも、まず制度の中身について御質問したいと思うのですが、その具体的制度の中身について質問をする前に、今回、この就業促進手当について、厚労省が配付をしております説明文の中に、賃金に上乗せして支給するという表現がありますので、まずこの辺から質問させていただきたいのですけれども、そもそも賃金とは一体何なのか、特に、労働基準法における定義というのを改めて確認をさせていただきたいと思います。
戸苅政府参考人 労働基準法上は、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」、こういうふうに定義されています。雇用保険法では、ほぼ同じような表現ですが、「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものをいう。」ということでありまして、事業主が労働者に支払うものであること、それから労働の対償として支払うものであること、この二つの要素ということで、そういう意味では、雇用保険法における賃金と基準法での定義、これは同趣旨のものだろう、こういうふうに思っております。
城島委員 そうすると、今私が触れましたように、この就業促進手当についてという、非常用就業型の説明文の中に、基本手当日額の三〇%を賃金に上乗せして支給する、こういう表現になっているわけでありまして、これは、今御説明があったように、賃金というものは、労働の対価というんでしょうか、労働の対償として使用者が労働者に支払うべきものだというふうになっておりますが、この表現、これは一体どういうことになるんでしょうか。
戸苅政府参考人 今委員御指摘の就業手当でございますが、これは、雇用保険の受給者の方が、失業期間中に、期間の限られた労働というか就業をした場合に、賃金に加えて、その日に失業していればもらえる基本手当の三〇%を支給する、こういう制度でございます。我々としては、なるべく簡潔な表現でやろうということで、今御質問がありましたとおり、賃金に上乗せして支給する、こういう表現にしておりますが、これは、賃金ということではなくて、賃金に加えて就業手当を支給する、こういう趣旨で書いたつもりでございます。要は、賃金と就業手当との調整とかそういうことはしません、賃金は賃金で支払われ、そのほかに国の方から就業手当を、賃金に加えてといいますか、別途支給します、こういう趣旨で書いたところでございます。
城島委員 そういう趣旨で書いたということであれば、率直に言って非常に紛らわしいというふうに思うんですね。しかも、前回も論議したし、他の野党の皆さんからも若干この辺については質問があったと思うのですけれども、何か、非常用型就業、あるいは雇用でいうと非常用型の雇用というものを推奨するようなところにつながりかねない、その要素を私はこれは非常に秘めているんだと思うのですね。
 ですから、この表現からすると、政府があたかも賃金の肩がわりをする、しかも労働した日数に着目して、それを根拠に上乗せして支給するんだというような表現は、今戸苅局長もおっしゃいましたけれども、賃金の本来のあるべき姿という本質からは、この表現そのものはずれているんだと思うんですね。しかも非常に紛らわしい。基本的に賃金の肩がわりではないわけなので、いずれにしてもこの文章表現は書きかえる必要があるんだろうというふうに思いますが、いかがでしょうか。
戸苅政府参考人 この問題につきましては、前回も申し上げましたけれども、要するに、雇用保険の受給者の方が、無業状態でいるよりも、むしろ、短期ではあれ働いた方が、働くことのモラールというか意欲を損なわないとか、あるいは職場に適応するのに効果的だろうということで、早期再就職につながるということで設けたものでございます。ただ、委員のおっしゃるような受け取り方をされる方がおられるのだとすると、これも我々としては不本意でございますので、今後、法律を成立させていただいた場合にいろいろ国民の方に周知の資料等をつくりますので、そのときは十分心して対応したいというふうに思います。
城島委員 それでは、その制度の中身について確認をしていきたいわけでありますが、まず、この制度について、現行制度との比較で、何点か確認をさせていただきたいと思います。
 今までの場合ですと、仮にアルバイトをした場合に、職安に報告の義務があって、収入があった場合は、その働いた日数と同じ日数分の基本手当が差し引かれる。ただし、引かれた日数は先延ばしにされるだけで、本来の給付日数が終了する日の後に追加の形で支給されていたということは、そのとおりでよろしいんでしょうか。
戸苅政府参考人 御質問のとおり、雇用保険法上内職とみなされる場合には、その内職に伴う収入を基本手当から控除いたしまして支給するということでございます。
 基本手当の支給日数につきましては、今御質問のとおりでございます。
城島委員 基本的にはそういうことでいいということですね。
 そうすると、これからこの新しい制度になると、原則として、今申し上げた内職というかアルバイトをすれば、今論議をしましたが、三〇%の就業促進手当が賃金に上乗せした形で支給され、第五十六条の二の第二号の五という規定があるわけでありますが、この規定にあるように、就業促進手当をもらった場合は基本手当を支給したものとみなされるということに今回なっているわけであります。
 そうすると、受給する失業者からすると、これからはアルバイトをした場合は就業促進手当が支払われる、そして、給付日数終了後の追加の形の支給が今まであったんだけれども今回からはなくなるのが原則、こういう理解でよろしいんでしょうか。
戸苅政府参考人 就業手当を設けた場合に、これまでのいわゆる内職減額制度との関係をどうするかということでございますが、一定の線引きをして、労働時間数なりあるいは内職に伴う収入が一定水準以下というふうな場合には従来どおり内職の取り扱いをする、それを超える場合には就業手当を支給するということで、就業手当を支給した場合には、所定給付日数はその日の分だけ減じていくというか、その日には基本手当を支給したものとみなす、こういう取り扱いになります。
城島委員 ということは、今の確認でいいということですね。
 そうしますと、この就業促進手当の支給を拒否して、従来どおり基本手当の支給日数を先延ばしするということは可能なんでしょうか、できないんでしょうか。
戸苅政府参考人 これは、今後どのように運用するかということでございます。
 御本人が一生懸命求職活動をしていながら、しかも本人は常用雇用を希望しているということで、常用雇用につくためにいろいろ努力をしているけれども、適当なというか自分の能力なりに見合った職業になかなかつけないといった場合に、そうはいっても、無業状態でいるよりは内職をした方がいいというようなケースはあると思います、個別のケースごとにということになると思いますが。
 そういった場合に、御本人が内職等をして、そのときに就業手当をもらってしまうと基本手当を一日もらったことになってしまうということで、基本手当の受給をしたくないというふうな御質問だろうと思いますが、これについては、今申し上げたように、御本人が一生懸命求職活動をしていながら、なお適当な職につけない、ただ、無業状態でいるよりは内職をしようということでやっているというふうに認められるような合理的な場合には、就業手当を受給するのか、あるいは受給しないのか、そこの選択は御本人に任す、こういうふうな運用を考えざるを得ないかなと、こう思っています。
城島委員 それじゃ、端的に確認しますけれども、それは本人の選択に任せるということですか。
戸苅政府参考人 ここはもう少し詰めぬといかぬと思っています。
 これまでの内職減額の運用の実態を申し上げますと、雇用保険の所定給付日数をなるべく多く確保しようということで、求職活動にそれほど熱心でないという格好で内職減額を利用しているという方が見受けられる、これは現場の声でございます。
 やはり、求職者の方は、一日一日きちんと真摯に求職活動をしていただくということが本旨だろう、こう思っていまして、そういった意味で、今委員御質問のように、どんな求職者でも希望に応じて就業手当を受給するのかしないのか選択できるということではなしに、先ほど申し上げましたように、公共職業安定所長が見て、真剣に求職活動をしているという方については選択を認める、こういう格好になるのではないか、こう思っています。
城島委員 それはもう非常に抽象的というか、職安の所長が見て積極的かどうかなんて、非常に主観的ですよね。余り説得性がないと思うんです。
 それでは、ちょっと具体的にお尋ねしたいと思うんですけれども、例えば、二つの例を挙げさせていただきますが、就職活動という時間帯からずれたという意味で、例えば早朝の新聞配達、三時間アルバイトをやっている、働いているというケースと、それから、就職活動ができるだろうと思われる昼間の、例えば午前十時から午後三時ごろまでスーパー等で五時間働いているようなケース、この二つのケースを典型的な例としたときに、これは非常用就業をしたということになるのか、あるいは現行の内職収入とみなされるのか。すなわち、就業促進手当の支給対象という観点からすると、どういうことになるんでしょうか。
戸苅政府参考人 これもこれから具体的な基準は決めようというふうに思っていますが、内職減額とそれから就業手当との判断基準といいますか区分基準として今考えていますのは、週四十時間労働、完全週休二日制ということを考えますと、一日八時間労働でありますので、その半分の四時間、それを超えている場合は就業手当、それを下回る場合は内職減額、こういうふうにしようと思っています。
 ただ、短時間であっても、極めて高い報酬を受けるという方もおりますし、それから、長時間ではありますが、例えば、知り合いの方の仕事を請け負って、最低賃金以下の報酬というか、賃金じゃなくて請負の報酬でやっているというケースもありますので、報酬をどうやって見るかというのはちょっと別の議論にいたしまして、労働時間だけで申し上げますと今申し上げたようなことで、四時間を判断基準にということで考えておりますので、それで申し上げますと、早朝三時間の新聞配達の場合は内職減額を行って基本手当の支給をする、それから、昼間五時間のスーパーのアルバイトの場合は就業手当が出る、こういうことになると思っています。
城島委員 一つのメルクマールとして、四時間を超えるかどうかというのが就業時間ということからいうと一つの判断ポイントだと。
 さらには、もう一つは、そういう中でも、職業安定所の所長の判断で非常に熱心かどうかというようなことがつけ加わってくるということなんだろうと思うんですが、いずれにしても、この辺は、場合によっては恣意的なことになるかもしれないし、基準というんでしょうか、非常にあいまいだなという感じがするわけでありますが、一応、四時間というところが一つのポイントだというふうに受けとめました。
 しかし、前回の質疑の中で、短時間についても就業促進手当を出すことについて、こういう答弁をされているんですね。もし常用就職を望んでいるんであれば、常用就職をすることについては、無業状態でいるよりも短期の就業をした方がより常用就職に役立つだろうという観点から、短期の就業についても就業促進のための給付を行おうという考え方だということであります。
 しかし、今申し上げたように、一つのメルクマールとして四時間でどうかという判断をするというようなことからすると、前回の答弁との整合性でいうと、四時間以下の仕事というんでしょうか、アルバイトというんでしょうか、そういうものはどちらかというと、前回説明の、やる気を維持するとかあるいは労働力の保全という説明もありましたけれども、そういうことではない、いわゆる失業状態だという、ある面では認定だというふうにとらえていいんでしょうか。
戸苅政府参考人 これは本当は労働の中身によって個々に判断すべきものだろうと思いますけれども、これは全国斉一的に、公平に、公正に運用せぬといかぬ、保険制度なものですから、なるべく客観的な基準が要るだろうということで、四時間をメルクマールに就業手当と内職減額とを分けてみようというふうに考えているわけでありまして、我々としては、雇用保険の適用になるのが現在週二十時間というふうになっていますが、これも週四十時間の半分の二十時間以上働くというふうなことを基準にそうやっているわけでありまして、そういった意味で、法定労働時間の半分というか、そのあたりが一つのメルクマールなのかな、こう思っているわけであります。
 ですから、議論をずっと突き詰めていきますと、我々としては、四時間を超える労働の場合は、先ほど委員御質問のとおり、就業することによる早期再就職への効果がより大きいもの、こういうふうに考えられるのではないか、こう思っています。
城島委員 後ほどちょっと大臣にもこの辺の見解をお尋ねしたいんですが、目的と効果ということについて、今回の非常用就業型というのは、かなりマスコミでも大々的に取り上げられましたので、一見非常に前進のようにとらえられるんですけれども、ある面でいうと、今のお話でもあるように、かなり整合性というんでしょうか、目的と効果の間にずれがあるんじゃないかという感じがしております。特に、この非常用就業型と常用就職型との間で支給の違いということも不鮮明なところだなという感じがしています。
 非常用就業型は、非常用で働いた日について基本手当の三〇%の就業促進手当が支給されるけれども、常用就職型の場合は、支給残日数の基本手当の三〇%が一時金として支給される。常用の場合だけ、将来も働き続けるだろうということを見越して一時金を支給すると。先ほどから、あるいは前回からの論議の中で、その趣旨からすると、なぜ非常用型においても一時金支給ということにはならないんでしょうか。
戸苅政府参考人 これは技術的な問題というのが一つは大きいんだろうと思います。
 常用型の場合には、支給に当たりまして、長期的にといいますか、継続して雇用が維持されるということが見込まれる場合に支給するということになっていまして、そういう意味では、実際に、途中で挫折してしまう、あるいは途中で本人が自発的にやめてしまう、いろいろなケースがあるとすると、これも本当は日割りでやるということもあり得るんだろうと思うんですけれども、そこは事務的な問題、それから、もう一つは、常用で就職していただくということと失業期間中に非常用の形で断続的な就業をするという場合のどちらが雇用の安定ということで効果が大きいか、それから、雇用保険の財政という意味では、常用の場合には基本的にはもうそこで雇用保険は全く受給されないということになりますし、非常用の場合は、非常用で働いて、それが終わるとまた雇用保険を受給し始める、こういう財政上の違いもあるということも総合的に勘案いたしまして、常用型の場合には、より就業を促進する効果を大きくするという意味で、一時金でぽんと支払っている、こういうことであります。
城島委員 なかなか得心がいかないんですけれども。
 一時金で支給するか、いわゆる基本手当日額の三〇%を上乗せした形で支払うかという、そこの違いだけではなくて、さらにおかしい点があるんですね。
 常用就職の場合は、支給残日数の基本手当の三〇%の就業促進手当が支給されると、一〇〇%の基本手当が支給されたら何日分に相当するかを計算して、その残りの部分が支給残日数となる。すなわち、手当の支給日数を圧縮して三分の二強が支払い残日数として残ることになる。これは前回の質問で確認したとおりなんですけれども。
 これに対して、非常用就業型の場合は、非常用の就職をした日について基本手当の三〇%の就業促進手当が支給されるとその日は基本手当が一〇〇%支給されたものというふうにみなされてしまう、で、支給日数の圧縮がされることはない、支給残日数が減らされてしまう、こういうことになるんですね。
 ここまでの違い、この差は一体どこから来るんでしょうか。
戸苅政府参考人 常用型の場合につきましては、先ほど申し上げましたけれども、安定的な雇用についた場合に支給されるということであります。
 やはり、早期に安定雇用というか、常用雇用についていただくということになると、ついた労働者の方が万一、御本人が常用就職の場に期待していたことと現実とが違っている、あるいは、就職してみたが、その後そこの事業所の経営状況が非常に厳しくなったということで、就職後短期間にまた再離職を余儀なくされるというケースも想定されるわけで、そういったケースの場合に、今委員から御質問のあったような形で、雇用保険の残日数をさらに三分の二残しておくというふうなことによって、万一そういった早期の再離職を余儀なくされた場合にも、さらに安心してまた求職活動が行えるようにというふうな趣旨でありまして、常用雇用にとにかく早期に就職していただくということを促進するための安心材料の一つとして三分の二を残す、こういうふうな運用をこれまでもしてきたところであります。
 一方、非常用型の就業手当の場合は、基本手当を受給しながら求職活動を行っているわけでございますが、その中で一時的な就業と失業状態とを行き来する、こういうことでありまして、我々としては、一時的な就業をしているときに支給している就業手当と失業しているときの基本手当、これは代替関係にあるというふうに思っていまして、そういった意味で、基本手当一日分の支給ということでみなそう、こういうふうに考えております。
城島委員 つまり、例えば、一年以上雇用される見込みで常用就職型の就業促進手当をもらったAさん、この人は、再就職後六カ月たって離職すると、支給残日数がある、それで残りの基本手当がもらえる。しかし、同じように六カ月雇用の、例えばパート契約で非常用就業型の就業促進手当をもらって再就職したBさんには支給残日数がない。同じ六カ月働いても、ある面でいうとこういう違いというのか、差別的な取り扱いがあって、前回の質疑の中で、戸苅局長、かなりこの制度についても中立的だというふうにおっしゃったんですが、これはとても中立的だというふうには理解できないわけですね。なぜこうした差を設けるのかということについては、今の御説明があっても、率直に言ってなかなか納得できる話じゃないんですけれども。
 大臣、今回の制度のある面でいうと目玉みたいにマイナスの面の目玉じゃなくてですね、給付の削減ということじゃなくて、これだけ広げていきますという、例えば、これからパートで働いても、こういうことにも対応しますよということを含めて、今回の改正の一つの大きな目玉だったところなんですけれども、こういう今までの論議を聞かれてどういう御感想を持たれるのかということをお尋ねしたいんです。
 すなわち、就業形態が多様化している、あるいは中立的に対応するんだというようなことを言いながらも、やはり私は、どう見ても、失業者に目が向いているのではなくて、いわば財政の安定というんでしょうか、そこが中心になっているんじゃないか。
 すなわち、非常用就業型にしても、今何度も具体論でやりましたけれども、率直に言うと、わずかな手当を支給することによって支給残日数を減らす、これは、結果としては、率直に言って、財政面からいうとプラスになるのではないか。よく考えているものだな、なかなか手が込んで考えているなと思うんですが、それは財政面からいうと、これはどうも財政にはプラスになるけれども、本当に失業されている人たちが安定した雇用を目指して再就職に頑張っていこうというような視点とはやはり違うんじゃないか。かなりこの制度の中には、今の局長の御説明にもありますが、説明的に無理あるいは論理矛盾がやはり随所にあるんじゃないかというふうに私は受けとめるんですけれども、大臣、この辺の大臣としての御見解はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 今議論を聞いておりまして、問題点は二つあるというふうに思いますね。
 一つは、基準をどうするか。それぞれの地域によって違う判断を下すことがあってはならないと思うんですね。先ほどからの議論のように、その所長の考え方によってこれは認める、これは認めないというようなことがあってはならない。そこの基準は明確にしておかないと、これは混乱を来す。だから、そこはひとつ基準をしっかりとして、そしてそういう格差がないようにしなきゃならないというふうに思っています。
 それから、もう一つの問題は、基本にかかわるところの話でございますが、パートの場合に三〇%上乗せをする。上乗せはするが、しかし、働いた分だけ今度は雇用保険をもらう日数が少なくなるというところをどうするかの話なんだろう。ベストの働き口がないけれども、しかし、まあまあ一遍ここで働こうかという方があれば、私は、やはりずっと働き場所を求めていただいているよりも、そういうところで働いていただく。働いていただいているうちに、雇い主の側も、この人だったら欲しいなと思うようになることもあるだろう。本人もまた、まあ、いろいろ思っていたけれども、ここで一遍働くかということになる可能性だってあり得る。
 だから、そういう意味で、ベストではないけれども、ベターな選択として、まず採用されるということがあって、それが就職に結びついていくことだってあり得るわけでありますから、それに対して支援をする。そして、働くことによっていわゆる働く意欲というものを失わずに継続をしていただくといったようなことで、プラス面は確かに存在するというふうに思うんです。
 残された問題は、あと、雇用保険の日数勘定のところをどうするかという話になるんだろうというふうに思いますが、そこのところは、そうして働かれる皆さん方にマイナスにならないような、考え方として今後どうしていくかということは確かに残された問題ではありますけれども、そこはよく整理したい。整理して、皆さん方にわかりやすい、選択していただきやすい形というものを整えるということが大事ではないかというふうに思っております。
 ですから、非常にあいまいで、これはプラスなのかマイナスなのかわからないということではなかなか皆さん方、選択していただきにくいわけでありますから、これを選択することによって確かにプラスだと言っていただけるような形にそこは整理をするということが大事ではないかというふうに思っております。
城島委員 それでは、もう一つ確認というか聞いておきたいんですけれども、この就業促進手当と早期再就職支援事業との関係についてですけれども、附則第七条によると、早期再就職支援基金事業が先行するというふうになっていると思いますが、この政策順位というのはどういう順番になるんでしょうか。
戸苅政府参考人 早期再就職者の支援金でございますが、これは支給残日数を三分の二以上残して、極めて早期に再就職あるいは就業をした方に対して支給するというものでありまして、したがって、その給付の額も、支給残日数あるいは就業日数の四割に相当する額を支給するということになっています。
 そういった意味で、目的もあるいは内容もこちらの方が政策的な重要度は高いということでありまして、給付につきましては、早期再就職者支援金が就業促進手当に優先して支給される、こういうことでございます。
城島委員 ということは、一般会計を先に使うということですね。
戸苅政府参考人 そういうことであります。
城島委員 本来的なことからいうと、やはりそれは逆だと思うんですね。やはり雇用保険の問題ですから、これは雇用保険の特別会計ということから優先的にというか、当然やっていくべきだというふうに思っております。その使い方も、本来からいうと、やはり私は順番が違うというふうに思うんです。
 特に、就業促進手当を中心に今論議をしてきたわけでありますが、本来、再就職支援については、失業者というのは視野をできるだけ広げ、そしてまた自分の適性がどこにあるのかということを見つけることが再就職支援においては極めて重要だというふうに思います。それに対する、いわゆるサポートするもの、あるいは補助するものということが明確な理念としてこの制度の中にはなくてはならないというふうに思うんですけれども、そういう理念と哲学がなければ、どんないい制度でも仕組みがうまく回転しないわけなので、利用されない制度に終わってしまう危険性があるというふうに思います。
 どう見ても、先ほどからの論議の中で、大臣も、まだはっきりせないかぬところがあるなというふうにおっしゃいましたが、今回の就業促進手当というのは鳴り物入りでマスコミ等も報道されたものでありますが、一体どういう趣旨でこの手当を出すのか、あるいは新しく改定をしたのかというような哲学というのがいま一つやはり明確になってこない、見えてこないと言わざるを得ないというふうに思います。
 先ほど触れたように、どう見てもこれも、失業者というところに本当に視点を当ててこの制度をつくったのかどうか、どうもやはり財政のつじつま合わせというところを中心に置いて、その一端としてこの制度に手をつけたんではないかというふうに私は思います。大臣もおっしゃいましたように、これが本当にそういう本来の趣旨に沿った形で使われるのかどうかということについて、我々も今後しっかりと検証させていただきたいというふうに思います。
 それでは、次の質問に移らせていただきますが、もう一つ、本当にこれは哲学があったのかというふうに存在意義そのものを疑わせる制度がこの改正案の中に実は盛り込まれているということであります。すなわち、訓練延長制度における複数回受講制度の問題であります。
 一昨年、政府はこの施策のために六十二億円の予算を組んで、大臣はこういう答弁をされているんです。平成十三年度補正後で約十六万人、複数回の訓練受講対象者は、平成十三年度で五千人、平成十四年度は三万五千人が利用する見込みだという御答弁をされているんです。
 一年半近くたった現在、全国で一体何人がこの複数回受講制度を利用したか、前回の本会議で我が党議員が質問をしたところ、何とこういう答弁でありました。
 この受講指示は、複数回にわたる訓練の受講を指示することによりまして、本人の就職可能性が高まるか否かを勘案して行ってまいりました。ただし、御指摘のとおり、ここは非常に人数が少のうございまして、昨年九月までの実績は百五十六名となっております。今般の雇用保険法改正案におきましては、この特例の対象年齢を、三十五歳から五十九歳までに拡大いたしました。また、平成十六年度末とされておりました終期を延長する等の措置を盛り込んだところでございます。
 本当に大臣、九カ月間で百五十六名という数字を聞いて、率直に言って、驚くというよりはちょっと言葉は正直言ってなかったですね。めちゃくちゃな政策をやっている。本当にスキャンダラスだと思いますよ、この数字は。これは補正予算で組んだわけですよね。だから、これは政府の雇用政策というのがこういう程度のものなのかということを示す代表例になってしまっているんじゃないですか。
 十三年度と十四年度で、合わせて四万人の利用を見込んでいたんです。四万人ですよ。それが九カ月間で、わずかというよりも、たったというんですか、余り大きい声で言えない、百五十六名という実績。これは本当に、ちょっと何を質問していいかわからないぐらいの実態ですね。
 ちょっと事務的なことからお尋ねしたいんですが、この百五十六名という集約はいつ行われたのかというのを聞きたいんですが。
 すなわち、我が党は、予算委員会に先立って二月初旬に政府に予算関連の資料請求を行った中に、これの実績の数が何人かということを要求したんですけれども、これに対して返事がなかったんですが、この集約はそういう面でいうと本会議直前なんでしょうか。法案を提出された一月三十一日以前には調べられていなかったんでしょうか、どうなんでしょうか。
戸苅政府参考人 先生のところからの資料要求にちょっと適切に対応していなかったとすれば、これは大変申しわけないということで、おわびするしかありません。
 調査につきましては、臨時国会に一度質問がありまして、私の方から、十一月末ぐらいには調査結果がわかります、こういうふうに申し上げたところでありまして、昨年の十一月の末には私ども百五十六名という数字は把握していたところでございます。
城島委員 実はこれを資料請求したときに、国会連絡室を通じて、統計はないという返事だったんですよ、統計はありませんと。再度、本当にないのかと問い合わせたところ、ありませんという答えだったんですね。実は、今回これを充実させるということでありますから、確認のためもう一度本会議での質問をさせていただいて、今回初めて百五十六名という数字が出てきたんです。
 これは、大臣、こういう経過なんですね。これは、だとすると非常に重要な問題だと思いますよ。既にあったんだけれども、資料請求を、我々が予算委員会で質問したいために、あるいはしっかり討議したいために教えてくれと言ったときに、統計はないと。ところが今、戸苅局長、十一月ですか、その段階ではあったと。――よろしいんですか。
戸苅政府参考人 ちょっと事務的な話で恐縮なんですが、事務局の方の理解としては、予算委員会の関係資料ということで、訓練延長給付の受給者のうちの複数訓練受講者の状況ということで百二十七名という数字はお出ししているようであります。
 ただ、これについては、言いわけは全くきかないと思いますので、おわびするしかないんですけれども、ちょっと内部で何らかの混乱があったんじゃないかとしか申し上げようがないんですが、これは私も、十一月の下旬には数字が出ますと、こうお答えしていたところでありますので、どうしてそんなことになったのかというのはちょっとよく調べてみますが、まことに申しわけありません。
城島委員 訓練延長給付制度のこれまでの受講者数、このうち複数回受講者数、年代別訓練受講者数、就職率一覧、この四つを資料請求を出したんです。これについて返事がなかった。これについては、きちっと大臣、経過等について調べていただきたいというふうに思います。非常に不愉快ですね。
 ということを申し上げて、質問を続けたいと思うんですが。
 では、その百五十六名。四万人のはずなのが、わずか百五十六名なんですけれども、それぞれについてどのような職業訓練を、それぞれ何カ月、しかもどのような職種に就職されたのか、百五十六名のうちの就職率が一体どれぐらいなのかということをぜひ出してほしいということをこれまた事前のレクの中で申し上げておいたんですが、簡単なデータしか出てきていないんですね。個々のデータはありませんと。
 個々の人についてのデータはないということなんですが、何度も言うんですけれども、これは補正予算で予算を組んだものですよね。これは一つの極めて大きな目玉として政策を出したわけですよ。しかも、後でも触れたいんですけれども、今度拡充すると言っているわけですよ。そうしたら、この実績はどうなのかということを当然精査する必要はあると思うんですね。きのう段階でもまだ簡単な資料しかないし、個々のデータは出ない。委員長、少なくとも次回ぐらいまでにこれについてのきちっとした個々の調査結果を出すように、ぜひしっかり指示していただけませんか。
中山委員長 はい、理事会で検討します。
戸苅政府参考人 これにつきましては、今委員から御質問のような事項について詳細なものを調査していないというのが実情でございます。それから、あとは雇用保険の受給者のデータを、コンピューター回しまして、それと突き合わせて実態を把握した、こういうのが実情でございます。
 確かに、今回の法改正でこの制度の対象の拡大、それから実施時期の延長、これをお願い申し上げているところでございます。そういった意味で、細かいデータがないじゃないかと言われると、それは返す言葉、これもまたないんですけれども、お出ししているところまでの資料しか現在ございませんので、とにかく早急に、ちょっと百五十六名、全国に散らばっておりますので、どこまでフォローできるかわかりませんが、わかる範囲でできるだけ早期に調査をして御報告申し上げたいというふうに思います。
坂口国務大臣 この問題は、もし資料があるのに出さなかったとしたら大変失礼な話でございまして、よく調査をいたしまして、そして、なぜそんなことになったのかということを明確に御答弁申し上げたいというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、四万人受講ができるということを私も本会議で言ったわけでありますから、大臣に本会議で四万人と言わせておいて百五十六人とは何事かと私も怒りたい方の一人でございまして、それはちょっとひど過ぎたというふうに、率直にそう思っております。
 それで、今度、三十五歳からに幅も広げましたし、そして長くもしましたし、かなりそこの条件は緩和をいたしましたけれども、問題はやはり、一番基本になります、どういう人に受講をしてもらうかというところの規制緩和をしないことには、年齢の幅を広げたって、根っこのところの規制がそのままであったら同じことなんですね。百五十六人が二百人になりましたと言ったって、また話にならないわけでありまして、本当に必要な人たちにやっていただけるようにするためにはそこをどうするかということをちゃんとしないと、これは大きな予算を組みながら、何のために組んだかわからないわけでありますから、私自身、そこはきちんと見て、そしてどういう人たちにはやるかということを自分でチェックしますから、今度は皆さん方にお答えのできるようにしたいと思います。
城島委員 まさに今大臣がおっしゃったように、このことは、少なくともハローワークにおいて就職可能性を判断する機能というものはほとんどないんじゃないかということをあらわしているんだろうと思うんですね。複数回にわたる訓練の受講指示については、本人の就職可能性が高まるか否かを勘案して行っている。本人の就職可能性というのは何をもって判断しているのかということになるんだと思うんですよ。この辺についても非常に私は疑問を持っているんですが。
 それじゃ百五十六名について、これ、金額、どれぐらい使われたのか、そしてこれは特別会計なのか一般会計なのか、執行した予算についてどうなっているのか。
戸苅政府参考人 昨年の九月までに複数回受講指示を受けた方が百五十六名であります。そのうち、所定給付日数分の基本手当を受給して訓練延長給付の受給を開始した者が百二十名余ということでありまして、これらの人たちが九月までに受給した訓練延長給付の総額は八千万円でございます。
 それから、会計につきましては、これは雇用保険でございますので、労働保険特別会計。
城島委員 使わなかった予算の、残っているものはどういうふうになっているんですか。
戸苅政府参考人 これは雇用保険の失業等給付の中にございますので、雇用保険の基本手当等々、予算を上回る給付の出ている部分の方に回っている、こういうことであります。
城島委員 ということは、求職者給付の方に回っているということですか。
戸苅政府参考人 求職者給付の方に回っているということでございます。
城島委員 わかりました。とんでもないことだと思います。
 実態は、それでは執行しなかった予算というのは求職者給付の方に回っていると。この予算が、何度も言うように補正予算で組まれて、しかもこれも一つの鳴り物入りで十四年度の補正後の予算として六十二億円、今度の予算も五十八億円、こうなっているわけですね。これが執行されなかった場合は失業者給付の方に回るということになっているということであります。
 これ、政策統括官というのが置かれているんですが、この辺の政策についての厚生労働省としての政策評価というのは一体どういうことになっているんですかね、これ。
戸苅政府参考人 一つは、この制度を新たに設けたということで、なかなか第一線に浸透しなかったということが一つあると思います。
 それからもう一つ、これはハローワークの職員のこれまでの物の考え方といいますか、あるいは求職者への対応の仕方ということから申し上げますと、訓練を二回受けないとなかなか就職できないというふうなことじゃなくて、とにかく最初の訓練でなるべく就職できるようにというふうなことを一生懸命やっている。訓練を受けてまだ就職できないという状況はなるべく来ないように、ならないようにということで職員が一生懸命やってきている。そういうところに、一回目でうまくいかなくても二回目の訓練指示をやるという制度をつくったということで、そのあたりの趣旨が職員の間に十分浸透しなかったということは一つあるんじゃないかというふうに思っています。
 それから、もう一つは、今の複数回受講の運用の基準といいますか、これがやはり、通達を見ますと、確実に再就職に結びつくことが見込まれる、こういうふうに書いているものですから、今の非常に厳しい雇用失業情勢のもとで、確実に再就職に結びつくという要件にしているということもあって、第一線の職員、ハローワークの職員の間にさらに慎重な対応ということが出てしまったという面もあるんではないかというふうに思います。
 ただ、先ほど来御指摘いただいていますとおり、政策評価ということになりますと、もともと四万名の対象に百数十名、こういうことでありますから、政策評価以前の問題ということになってしまうんではないかというふうに思います。そういった意味で、やはり一つは、大臣が申し上げましたように、制度の立て方をもう一度見直してみるということが必要なんではないかということとあわせて、やはり第一線の職員がこの制度をこちらのねらいどおりに実施するように、制度の通達の仕方というかそういったものをちょっともう一度考え直さぬといかぬのではないかというふうにも思っています。
 ただ、これは雇用対策臨時措置法で、先ほど来お話がありますように、補正予算で措置したものでありますが、政策的な必要性は非常に高いものだと思いますし、そのことを野党の先生にも御理解いただいてこの制度が始まったものでありまして、我々もこの制度の必要性、意義というものは十分あるというふうに考えて、今回、さらに実施時期を延長し、対象を拡大するということをやったわけでありますから、今回の御提案申し上げていることがきちんと実施に、実績に反映するようにちょっと中身を抜本的に見直す必要があるんじゃないか、こう思っておるところであります。
城島委員 そういう中身ですから、普通に考えて、今回の改正でいろいろな給付の削減ということが中身になっているわけですけれども、こういうような、全くと言っていいぐらい効果が上がっていない制度をまさしく見直して、給付の削減、それは金額的なバランスはあると思いますけれども、そっちをできるだけ給付に回すようなことに考えるのが普通じゃないかなというふうに私は思うんですね。
 ところが、今回の改正においてはこの特例措置を拡大してそして延長する。その根拠というのは全く見当たらない。普通なら、これはやめますということじゃないでしょうか。とりあえず今回はちゃんとできるようになるまでやめるというのだったら私はまだ納得できるんですよ。ところが、延長、拡大する。それで十歳さらに引き下げて、ある面では幅を広げて、三十五歳からにする。それで、予算は幾らでしたっけ、五十八億でしたっけ。百五十六名しかなかったものに一気に、さっきいろいろおっしゃっていますけれども、そういうことをやったからといって五十八億、これだって恐らく三万人台でしょう、三万五千人ぐらいじゃないですか、そうでしょう。成ると思いますか、大臣、本当に、まじめな話。どうでしょうか、本当に。
坂口国務大臣 これは、先ほども申しましたとおり、私は基準の問題だと思うんですね。私は、必要性は十分あると思うんです。一度訓練をお受けになって、しかしそれではまだ十分でなかった、もう少しやはりやらなきゃならないという方は率直に言ってあると思いますし、現在その必要性は十分にあるというふうに私は思っております。ただ、少なかったのは、規制が強過ぎた、一言で言えばそういうことではないか。だから、現場が十分理解しなかったのか、こちらの通達の出し方が悪かったのか、ちょっとそこはよくわかりません、一遍見直しますけれども、ここは必要性はあるというふうに思いますから、今度はつけられた予算が、十分にそれが活用されるような状況にするということが大事だというふうに私は思っております。
城島委員 だとすると、大臣、また納得できないところがあるんですよ。
 というのは、今回、訓練延長給付の第二十四条第二項、どういう改正になっているかというと、これは長いので全部は読みませんが、改正になっているんですよ。そこだけ読みますが、今までは「政令で定める基準に照らして当該公共職業訓練等を受け終わつてもなお就職が困難な者であると認めたものについて」、これが今度どう変わっているかというと、「政令で定める基準に照らして当該公共職業訓練等を受け終わつてもなお就職が相当程度に困難」になっているんですよ。基準は今回厳しくなっているんですよ、大臣。今までは「就職が困難」、今度「相当程度に困難」。これは逆じゃないですか、どういうことですか。
戸苅政府参考人 これは、今御議論になっています複数回受講を行った場合に、一回目が終わりまして二回目が始まるまでの間に一定の期間、例えば二十日間とかがある、新しい学期が始まるまでに間がちょっとあいてしまうという場合に、二回目の訓練を待っている間の生活の安定のために給付を行う、こういう制度が今は雇用対策法の方に規定があるわけでありますが、今回複数回受講についての実施時期の延長それから対象の拡大ということに伴いまして、この規定を雇用保険法の方に移管したわけであります。
 移管するとどういうことが起こりますかというと、今委員が読まれた条文は、訓練延長給付を受けました職業訓練が終わった後なお就職できない方について、三十日間さらに安心して求職活動ができるようにということで、いわゆる終了後手当と呼んでおりますが、これを支給することになってございます。
 これの条文が、今委員が読まれたとおり、「なお就職が困難な者である」、こういうふうなものになっているわけでありますが、今回、一回目の訓練と二回目の訓練を待っている間の方についても同様の手当を払うということで、附則でその条文を入れたものですから、そうすると、一回目と二回目を待っている方と、それから一回目の訓練が終わってなかなか就職できないのでなお三十日間終了後手当をもらいながら求職活動をする方、この二つの種類が二十四条の中に出てきてしまったということで、二つの条文について何らかの書き分けをしないと法律の条文上非常に無理があるという法技術的な整理から、一回目と二回目を待っている方と対比しまして、訓練が終わってなお就職できない方について「相当程度」という文言を入れたということで、法技術的な整理でありまして、これによって今御質問のように対象者を絞り込むとか、あるいはこれによって財政を少し助けようとか、そういった意図は全くございませんで、従来どおりの運用にするという考え方でございます。
城島委員 法律上のということでありますけれども、法文上見ると、今言いましたように、運用を聞いているのじゃなくて、法文上は単に困難であるだけでなくて相当程度困難でないと、普通の、つまり今回拡大する三十五歳以上六十歳未満以外の失業者については、これは法文上はどう見てもそれ以外の人については運用をさらに厳しくするというふうにしか読めないですね、読めない。
 今、何かるる局長から御説明があって、特例法の問題、それを一つにする。恐らく三十五歳まで拡大した場合の特例法ということではいかないということがあったんだろうと思うんですね。だから、そこに非常に法的な問題というか、そちら側の問題でこういうような表現になったという説明なんだろうと思います、ずっと聞いていても。だから運用は変えませんというようなことをおっしゃりたいんだろうけれども、そんなことってあるんですか、大臣。法文上は現行より厳しくなる。三十五歳から六十歳未満以外については、どう見ても「相当程度」という文言が入って、運用は変えませんと。こんなことってあるんですか、本当に。非常に奇怪な法案じゃないですか、これは。
戸苅政府参考人 現行の条文は、訓練延長給付の訓練が終わった後なお就職できない方だけの条文になっているものですから、「なお就職が困難な者」、こういう書き方になっているわけでありますが、今度その同じ条文の中に二回目の訓練を待つ方の条文が入ってくるものですから、そういう意味で条文が変わったとさっき申し上げたんですけれども、これは本当に法技術的な問題で、法制局の方からも、趣旨は同じ趣旨だがというか、現行と同じ趣旨で、前に二回目の訓練を待つという人の規定を入れたことによって、「相当程度」を入れて初めてバランスがとれる、今の制度と同じだという読み方になるんだ、こういうことであります。
 ただ、委員おっしゃるように、条文だけを見ますと、御疑念のようなことを持たれる、同じような疑念を持たれる方も多いわけでありまして、そのあたりは誤解のないように、きちんと、通達等ではっきりする、あるいはPR、パンフレット等ではっきりするということで、現行と変わらないように、そこは問題の起きないようにきちんと対応してまいりたいというふうに考えております。
城島委員 ここは時間があればもっと論議をしたいところでありますけれども、やはり、法文上から見ると、どう見てもそういう説明では普通に読み取れないし、非常にもう矛盾だらけですよね、これは、率直に言って、この文について。この文というのは、要するに、再就職のフォローをしようという就業促進手当にせよ、訓練延長給付にせよ、どこかというと、今回の法案で、削減するとか、いろいろマイナス面いっぱいあるということに対して、いや、こういうところを強化していきますよというところについては非常に趣旨が不明確だし、しかも、こういう矛盾点がいっぱいあるんですよ。プラス面というふうに政府側が強調されているところについては、どこも納得できるような内容になっていなくて、矛盾だらけ。
 したがって、この点も含めて見ても、私は、どう見ても今回の改正というものは、失業者に目が向いていない、財政再建という、財政再建だ、財政面を何とかやりくりするということの小手先であり、あるいは、ちょっとそこに向けての目くらまし的なものとか、そういうことでしかないというふうに思いますね。特に、こういう、さっきから言っている、百五十六名しかないのに、また同じように五十八億も予算つけるというようなことの中でこの法案が出てきている。到底納得できるような内容になっていない。むだ遣いのあり方含めて、やはりここはもう一度しっかりと見直さなければ、私は多くの人は納得しないものだと思いますよ。
 それで、もっと言いたいんだけれども、まだ実は質問したいのが残ったんですが、ちょっと一点だけ。
 この早期再就職支援基金の額、二千五百億円となっていますが、この二千五百億円の根拠。それから、また何か、何となくうわさで、この補正でこの辺も上積みするとか、一千億どうのこうのというようなことがありますが、根拠がしっかりしていれば、そういう、何か補正でどうのこうのという話ではないと思いますね。百五十六名にこだわるわけじゃありませんが、しっかりしていれば、これでまた積み増すとかいうようなことは必要ないと思いますが、二千五百億円の根拠。それから、どれぐらい実際これを使うということは、確度高く見積もっているのかということをお聞きして終わりたいと思います。
戸苅政府参考人 対象人員は八十五万人でございます。二年間で八十五万人でございます。
 この根拠といたしましては、現に再就職手当を受給している方のうち、三分の二以上、所定給付日数を残されて就職している方、これをベースに、さらに、この給付を設けることによる早期再就職効果、これを見込んで積み上げたものでございます。
城島委員 ちょっと、到底納得できる改正案ではないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
中山委員長 次に、加藤公一君。
加藤委員 おはようございます。加藤公一でございます。
 今の城島議員の質問の中でも、今回の改正案が、どうも筋が通っていないのではないか、中身が支離滅裂ではないかというような指摘がありましたが、それに引き続いて、何点か御質問を申し上げたいと思います。
 今回のこの改正案でありますが、失業給付が削減をされて、逆に保険料は値上げをされる、附則ではごまかしがありますが、本則で書いているわけでありますから、実質的に保険料が上がるということになります。
 そもそも、これを考えますと、今回の求職者給付の減額とか保険料の増額というのは、それをしなければならなくなったのは、ここまで雇用情勢が厳しくなるまで政府の雇用対策が功を奏してこなかったから、雇用対策に失敗し続けて失業率が上がり続けて高どまりしてしまった、ここが最大の問題であるわけでありまして、本来であれば、この大もとのところを改善しない限り、この問題は解決しないはずでございます。
 こういうことで、政府の失政によって、働く皆さん、国民の皆さんにまた痛みを押しつける、それを強いるというのは到底容認できないということを冒頭申し上げておきたいと思います。
 そうした観点を踏まえて、ここ数年間の雇用対策について、これは坂口大臣みずから御判断をされてとられてきた政策が続いているわけでありますから、どのように評価をされていて、今どうお考えか、この点、伺いたいと思います。
坂口国務大臣 この二、三年、私もこの仕事をやらせていただきまして、うまくいった点、それからうまくいっていない点、あるというふうに思っております。
 いわゆる緊急地域雇用創出特別交付金、これなどは、それぞれの地域で知恵を絞っていただいて、これは恒久の雇用ではありませんけれども、つなぎの雇用ではありますけれども、比較的スムーズにいっているというふうに思っております。
 そうした地域の知恵をかりるということが、やはり大事になってきている。それぞれの地方によって失業の性質も違いますし、そしてこれからの、企業を立ち上げていくということにつきましても、それぞれの事情がある。やはりそうしたことを十分に考えてやっていかないと、これからの雇用対策というのはなかなか成り立たないというのが、この二、三年の私の総括でございます。
 具体的なやっております政策について、大体スケジュールどおりいっておるものもございますし、先ほどから御指摘をいただいているように、全くいっていないものも率直に言って存在するということはございます。
 そうした見直しを行いながら、これからもやっていかなければならないというふうに思いますが、一つは、多くの失業者の皆さん方にいろいろの技術を身につけていただく、勉強していただくということにつきましても、勉強をしていただきます前にやはりよく御相談に乗って――それを勉強していただいた後それが必ず雇用に結びつくかどうかということの確認ができずに勉強をしていただくというのはやはり非常にロスが多い。したがって、ようやくキャリアカウンセラーもふえてまいりましたけれども、その資格のあるなしは別にしまして、御相談に乗る人を確保して、そして、次の雇用を目指すという人たちに対して、どういうふうに勉強をしていただくか、技術を身につけていただくかということの御相談に乗って、ここを身につけていただきましたらこういう雇用が存在しますということをやはり先にやることが大事。つきましては、言ってください、予算の範囲の中でどんどん出しますからと、それは一つはいいように見えますけれども、しかし、結果は余りよくないというふうに実は思っておりまして、これから見直していく点、そうしたことを十分に配慮しながらやっていかなければいけないというふうに思っております。
 ですから、地域と連携をしてやっていくということが一つ。それから、もう一つは、今申しましたような、再就職に向けての手順というものを十分に考えていかなければならないという点が、今まで成功した例、成功しなかった例、両方見ましての現在の気持ちでございます。
加藤委員 今の御答弁で、地域の知恵を出して、地域に密着した形で雇用対策を打つとか、それから最終的に就職に結びつくことを前提にした職業能力開発をするということは、もうおっしゃられたとおりで、私もその意味では大賛成なんですが、大臣がそうやってお考えのことが果たして現実に行われているかというと、どうもそうではないんではないかと思いますので、その点をちょっと御議論申し上げたいんですが。
 平成十一年と平成十三年の補正で、それぞれ二千億円と三千五百億円ついています。名前はほんのちょっと違いますけれども、実際には一緒で、緊急地域雇用創出特別交付金であります。これは、私、昨年から何度も議論をさせていただいておりますので御記憶かもしれませんが、半年間つなぎの仕事をして、それだけで終わってしまったのでは何の意味もない、これが職業訓練になって、次に常用雇用につながって初めて効果があるわけで、そこまでいけばいい制度でいいお金の使い方だけれども、これができなくて、半年たったらまた失業者に逆戻りというのでは意味がありませんよねと、こういう指摘はさせていただいてまいりました。御記憶かと思いますが。
 その意味で伺いますが、この平成十三年度の緊急地域雇用創出特別交付金、これを使って果たして何人の方が今現在常用雇用につかれたのか、把握されていますでしょうか。
鴨下副大臣 数字のことでございますので私の方から答弁をさせていただきますが、先生御指摘の緊急地域雇用創出特別交付金は、先ほどのお話の中にもありましたように、本来が、常用雇用を創出する、こういうようなことが目的ではないわけであります。ただ、それが最終的に常用雇用につながっていけば一番いいわけでありまして、そういう意味で、今回、平成十三年度においては、事業実施期間が三カ月というような極めて限定的でありましたけれども、その中で、二万三千人の方に御利用いただきまして、正式に当該事業を引き続いて雇用に至った、こういうような方が三百六十二人でございます。
 繰り返しになりますけれども、この事業が実際には臨時的、短期的なもの、こういうようなことでありますけれども、引き続きそれが全体的に常用雇用につながっていくためにどうしたらいいか、こういうようなことは工夫が必要でありますし、地域によりましては極めて立派な成功事例もございますので、そういうものをさらに発展していく、こういうようなことだろうというふうに思います。
加藤委員 そうなんですね。
 三百六十二人ですよね。平成十三年度の補正の分で平成十三年度に使ったのが約八十九億円というふうに聞いておりますから、雑駁な計算で余り科学的ではないかもしれませんが、一人常用雇用の方が生まれる、つまり、一人の雇用の安定のために二千五百万円近くかかっているんですね。二千四百六十万円ぐらいコストがかかっているんですよ。これは目安ですよ、科学的な計算じゃありません、目安としてそれがかかっているわけです。
 それで、補正予算で組んだ緊急地域雇用創出特別交付金という制度の目的が常用雇用につなげるためじゃないというのは、それは確かにそのとおりかもしれません、お金の出し方としてはですよ。しかし、この現下の厳しい雇用情勢で、失業率を抑えなきゃいけない、失業者の方に常用雇用についていただかなきゃいけないというのは、これはもう当たり前の話であって、たとえどんな制度であっても最終目的はそこにあるはずなんですよ。常用雇用をどんどんふやしていってそこについていただく方がふえれば、さっき申し上げたように雇用保険の財政がこんなに厳しくなることもなかったわけですから。
 平成十一年、十三年と続けてお金を使って、もっと言えば、これは去年も議論しましたけれども、戦後の失対事業から同じ方法をずっととり続けてきて、失敗し続けてきて、今回もまた失敗している、こういう話なんですね。これだけのお金を使って、ふたをあけてみたら、半年間は何とか食いつなげたかもしれない、しかしその後ちゃんと常用雇用につながったのが三百六十二人というのでは、お話にならないんではないかと思うわけです。大臣、いかがお考えになりますか。
坂口国務大臣 ここの三百六十二人というのは、その交付金でお仕事をなすって、その延長線上でつながった人が三百六十二人という話でありまして、そうではなくて、こういうつなぎの仕事をしながらその間に就職活動もしていただいて新しい職につかれたという人は、たくさんおみえになるんだろうと思うんですね。むしろ、今回のこの使い方は、そうした半年間なり中には一年という方もございますけれども、そうした、つなぎの雇用をしていただきながら本格的な雇用に結びつけていただく、御自身でもいろいろとやっていただくということが主目的になっていたというふうに思います。
 しかし、御指摘のように、この交付金を使うことによって、その延長線上で仕事ができるということになれば、これが一番いいわけでございまして、私もそこができればそれにこしたことはないというふうに思うんですが、これは市町村が中心になってやっておりますので、その市町村の中で、さらに引き続いてそれに見合うべきお仕事がずっと続いていくということができているところは、残念ながらまだ少ないわけであります。市町村の方も今までこういうことになれていないということもございまして、ただ半年間のつなぎのことを、無理に探してと言うとしかられますけれども、探して、そうしたことをやっていただいているというケースもある。
 しかし、何度か申し上げますが、ただ三百六十二人だけが就職できてほかの人は全然できなかったというわけではなくて、それは、それぞれその間に就職活動をしていただいて、そしてその後御就職になった方は多くおみえになる、こういうことだと思います。だから、これが失敗であったとは、私は思っておりません。
加藤委員 お言葉なんですが、つなぎの仕事をしながら別の仕事につくのであれば、そのつなぎの仕事をしないで就職活動をした方がいいわけですよ、時間を使えるんですから。つまり、そのつなぎの仕事に出すお金を求職者給付に充てた方が、仕事を探す方からすればそれだけ時間もあるわけだし、よりよいわけじゃないですか。
 つなぎの仕事であっても、仕事をしながら仕事を見つけた方がなぜいいかといったら、その仕事が職業訓練につながっていて、その延長上で新しい仕事につけるからこの予算は意味があるわけですよ。――それだったら、お金をただばらまくというのと余り変わらないんですから。それだったら求職者給付の期間を延長するということの方が効率がいいし、あるいは、昨年の議論に戻りますけれども、例えば、三千五百億円を一人三十五万円使ったって百万人の方が訓練を受けられるわけですよ。能力のミスマッチが多いというときに、それだったら、もう徹底的にミスマッチの解消の方にお金を振り分けた方がいいんではないか。これはもう昨年議論したから、あえてきょうはもうこれ以上言いませんけれども、こう私は判断をしているところであります。
 いずれにしても、この予算はまだ続くわけです。三百六十二人というのは幾ら何でも寂し過ぎると思いますから、いま一度本当にこの補正予算の使い方が効果があったのかどうか、大臣は失敗だとは思わないというふうにおっしゃっていましたが、そう強弁される前に、ぜひいま一度効果を把握していただきたい。見直すべき点があれば見直していただきたい。貴重な税金を使っているんですから、そして三百五十万人からの方が失業中で苦労されているんですから、その方々がきちんと常用雇用につけるように、これは見直しをお願いしたいというふうに思います。
 それを申し上げた上で、今も少し触れましたが、ミスマッチに関連をしてちょっとお話をしたいと思うんです。
 現状の雇用情勢で、当然、失業の原因には、需要不足の部分とそれ以外、つまりミスマッチが原因だということがあるわけですが、私、何度か厚生労働省の方にも問い合わせをしましたが、多少の数字の増減はあるにせよ、現在の失業の原因、最近ですと約七割ぐらいということになるんでしょうか、それがミスマッチによるものだというふうに聞いております。
 そうすると、ごくごく単純に考えれば、そのミスマッチを解消する方法を徹底的にとり続けるというのが合理的ではないか、不自然な追加需要策を出すよりも、そのミスマッチの解消に向けて施策を打つ方が有効ではないかと思えてなりません。どうもその施策が現状では不十分ではないかと思うんですが、大臣、いかが御認識されていますでしょうか。
鴨下副大臣 今先生おっしゃるように、ミスマッチを解消すれば決定的な失業対策になるんではないか、おっしゃるとおりであると思います。
 ただ、現在は、有効求人倍率が〇・六一倍で、そして完全失業率が五・二%ということで、ある意味で、少し改善の兆しはあるものの、いまだに厳しい状況であることは間違いないと思います。こういう中で雇用のミスマッチをいかに解消していくかということなんですが、中身は、いろいろと考えると、なかなか難しい、深い問題があるんだろうというふうに思います。
 一つは、職業に関する情報や能力面というようなことがありますけれども、それと同時に、例えば年齢面でのミスマッチ等がありまして、求める方と職を探す方の間の距離はなかなか遠いものもあるんだろうというふうに思います。そういう中で、現在、我々の、厚生労働省の中では、特にハローワーク等で、一つは、しごと情報ネットなどで情報をできるだけ多くの方々に共有してもらうということと、それからハローワークのインターネットサービスの中でこれはもう求人の企業名を提供していこう、こういうようなことも今始めたわけであります。
 それからもう一つは、先生もごらんになっていただけていると思いますけれども、ハローワークの中でカウンセリング機能をしていくというような意味で、今約千四百人のキャリアコンサルタントを配置しまして、それぞれの方が相当一生懸命キャリアコンサルティングをやっていただいているわけであります。
 もう一つはさらに、早期再就職の専任支援員ということで、それこそマンツーマンで数十人の求職者の方にできるだけ積極的に就職していただく、こういうようなこともきめ細かくやっているわけであります。
 また、もう一つは、中高年のホワイトカラーの離職者等に対しまして、先ほどからいろいろと御批判もありますけれども、職業能力開発を企業や大学、それからNPO等あらゆる教育訓練機関を活用して推進していこう、こういうようなことでありまして、我々としてはやれることはやっているわけでありますけれども、構造的なミスマッチというのもありまして、これを解消するためにもさらに先生御指摘のことを踏まえてやってまいりたい、こういうふうに思います。
加藤委員 今副大臣がおっしゃったように、ミスマッチにもいろいろファクターがありますし、数年前と違って、需要不足自体が非常に深刻ですから、容易じゃないということは認識をした上で伺ってはおりますが、せっかく今副大臣が一つその要素の中で挙げていただいたので、年齢条件の問題について伺いたいんですが、これは先日の委員会の審議の中でも、自民党の後藤田議員もおっしゃっていましたが、一昨年、法改正されて、募集、採用における年齢差別をしないように努力規定が設けられた、それから二年ほどたっておりますが、これをさらに強化する意味で年齢差別の禁止を義務化する意思があるかないか。ここは明確にお答えをいただきたいと思います。
鴨下副大臣 その点につきましては、それこそ野党も与党もいろいろと御指摘を受けているところでありますけれども、先生御指摘のように、これは平成十三年の十月から雇用対策法に、労働者の募集、採用に当たっての年齢制限緩和の努力義務が設けられたわけでありまして、官民の職業紹介機関や経済団体、そして地方自治体等への働きかけを通じまして、事業主への周知と理解の徹底を図ってきたところであります。
 平成十三年の施行前では一・六%でありましたものが最近では一三%程度と、一定の効果を上げているというようなことでありますけれども、そこから先、さらに年齢の差別ができるだけないようにしていくということはなかなか、一つの壁に今当たっているんだろうと思っております。この一月に、募集、採用における求人年齢制限の緩和の徹底に向けまして、年齢不問求人の割合を平成十七年度に三〇%にしよう、こういうような目標を立てまして、それに向けてさまざまな、例えばシンポジウムやらいろいろなことで周知徹底をしていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
 ただ、先生おっしゃる、法的に禁止するべきかというようなことにつきましては、年齢差別禁止を法的に決めるということは、我が国の雇用慣行全体を見直さなければいけないという、いろいろな問題を抱えているわけでありまして、今の段階では、労使を初めとしまして国民全般のコンセンサスを得ながら進めていくというようなことなんだろうなというふうに思っておりまして、厚生労働省の中では、当面三〇%という目標に向けて頑張らせていただきたい、こういうようなことでございます。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
加藤委員 この問題、私、二年前からずっと申し上げているんですが、なぜこだわっているかというと、単に例えば四十五歳以上とか五十歳以上の方の求人、求職が厳しいからということだけではなくて、それは一つの現象としてその方々に対しては大きなメリットはあると思いますけれども、そのためにというよりは、日本の社会が今後完全なエージフリーの方向に向かうのか、それともそうではなくて、今までのように、例えば雇用慣行でいえば年齢を基軸とした雇用管理が続くとか、社会制度も年齢を基軸としてつくり上げていくという、これを変えないのかという大きな分かれ道だと思うのです。つまり、日本の国の将来ビジョンにかかわるからこそあえて御意思を伺っているわけでありまして、意思の話ですから、きょうはこの辺にしますが。
 一つだけちょっと追加で伺いたいのは、平成十七年に年齢不問求人を三〇%まで上げたいということですが、そのお気持ちはもちろん賛成いたしますけれども、では果たしてどうやってそれを実現するのか。つまり、努力規定ができて、二年間で一・六%だったものが一三%にふえましたと。では、これをさらに三〇%に上げようということですから、多分ほっておいて上がる話ではなかなかないんだろうというふうに思いますので、どんなお考え、アイデアがあるのか。今頭の中にあるもので結構ですから、教えていただきたいと思います。
鴨下副大臣 先ほど申し上げましたように、これは労使のある意味でコンセンサスをいただかないといけないということが大前提でありますので、一つは、それぞれ事業主を初めとして多くの方々にシンポジウムとか講習とかそういうようなことで理解を深めていただく、こういうようなことが一義的なことだろうというふうに思っておりまして、さらに、こういう国会の審議を含めてさまざまな方々に関心を持っていただくためにさらにいろいろと周知徹底をしていきたい、こういうようなことが私たちが今できることの最優先事項だろうというふうに思っております。
加藤委員 方法は確かにいろいろあるんだとは思いますが、単に法律に決まっているから皆さん頑張ってねと言っても、それはなかなか無理な話であって、求人をするときに年齢を関係なく募集したらこんなにいい人が来たよという実例がないと、企業はやはり経済合理性で動きますから、そんなこともまたお知らせをいただくといいのかなというふうに思っております。
 さらに、そのミスマッチ関連で少しお話を伺いたいと思いますが、年齢以外に、先ほど副大臣の御答弁の中にもありましたが、職業能力に関するミスマッチというのも大きなテーマでございまして、本来であれば、ハローワークを通して公共職業訓練というのが十分に機能していれば、それで完結できる話なのかもしれませんが、現状では、残念ながら、それが十分だというふうには私は思っておりません。十分でないというよりは、ほとんど機能していないんじゃないかというふうに見ているわけであります。
 そこで、これも従前よりちらちらと議論の中に出させていただいておりましたが、イギリスにおいて、ニューディール政策あるいはエンプロイメントゾーンの政策の中で、求職者の方のカウンセリング、それから能力開発、訓練、教育、そして就職紹介、職業紹介まで含めて一貫してサービスを提供する民間企業に業務を委託して成功しているという事例がございます。これに倣って、日本で今の法律でそのままできるのかどうか詳しくはわかりませんが、日本においても、カウンセリングあるいは職業能力開発、職業紹介まで含めて、民間委託によってサービスを提供するというお考えがありませんでしょうか。
坂口国務大臣 総論としては賛成でございます。
 今回も、不良債権処理によって中小企業から離職をされた皆さんに対しましては、これは民間に依頼をしてやっていただく制度を取り入れました。うまくいけば、さらに拡大をしていきたいというふうに思っております。お一人二十五万ぐらいだったと思いますけれども、そうした制度をつくりまして、民間に委託をするということをスタートさせていただきました。
 確かに、技術訓練も非常に広範囲になってまいりましたし、なかなか公的なものが持っている範囲の中だけでは補うことができ得ませんので、民間の皆さんのお力をおかりするということは大変大事なことだというふうに思っておりまして、スタートをしたところでございます。
加藤委員 民間の教育訓練機関を使うかどうかという問題だけではなくて、私、イギリスの制度で、実際に効果が上がっておりますから、非常にうまくいっているなと思うのは、お一人の求職者の方に対して、カウンセリング、訓練、そして職業紹介まで一貫してサービスを提供していて、なおかつ、それが成功報酬なんですよね、公費の支出の仕方が。
 イギリスの場合ですけれども、求職者の方を民間企業に委託をするときに、イニシアルで少しコストが発生すればそれはお支払いをして、その後も、職業訓練が始まった段階でしょうか、ちょっと細かく今頭に入っておりませんが、お支払いをして、就職が決まったときにお支払いをして、しかし、それだけではその民間企業というのは採算に乗らないようになっていまして、実際、就職に成功して、三カ月間定着して、ここで初めて最後の費用が国から払われる、ここで採算がとれるようになっているわけですね。
 だから、いいかげんに、何でもいいから訓練すればいいとか、何でもかんでもどこかの会社に勤めたことにしちゃえばいいということにはならないわけで、成功報酬ということは、失敗すればもちろん費用は払われないわけですから、税金のむだ遣いにもなりませんし、実際に企業の方も、成果を上げればそれだけ収益が上がるということで、努力をされる。そうした方が就職されることによって、雇用保険からの支出も削減されれば、実は国としての財政上のメリットも大きいわけでありまして、その成功報酬型の支払いというのが果たして日本ですぐできるかどうか、私も詳しくありませんけれども、御検討いただく余地は十分にあるんではないかというふうに思っております。
 イギリスではこれによって長期失業者の方の失業率がぐんと下がったという話も聞いてございますので、ぜひ御検討をいただきたいなと。昨年からちらちら申し上げてきた話ではありますが、先日、予算委員会で、同僚の中村議員の質問に、大臣が、成功報酬型の件も検討したいというふうに御答弁をいただいたということもございますので、改めてお願いを申し上げておきたいと思います。
 続きまして、先ほど、これも副大臣の御答弁の中に絡んできた点だと思うんですが、ついせんだって成立をした平成十四年度の補正予算の中に就職支援ナビゲーターというのがございまして、五百人の方が全国で採用をされて、都道府県の中心的なハローワークにお勤めになって、一対一で求職者の方に対応されている、こういう話を聞きました。
 これ自体、別に私は否定をしているわけじゃないんですが、では、この就職支援ナビゲーターというのは一体どういう方がなられたのか、その採用基準、あるいは、だれがどうやってその五百人の方を採用したのか、この手続について伺いたいと思います。
戸苅政府参考人 就職支援ナビゲーターは、今委員お話しのとおり、とにかく早く就職したい、あるいは早く就職する必要があるという早期就職の緊要度の高い方について、ハローワークの画一的なサービスじゃなくて、一対一で、体系的に、計画的に就職に至る各種のサービスを提供しよう、こういうふうに考えて、今回、新たな企画として設けたものであります。
 そういうことで、採用基準といたしましては、一つは、産業カウンセラー等の資格を持っている方、あるいは企業の人事労務管理に関する知識経験を持っておられる方、あるいは、民間の職業紹介業者あるいはアウトプレースメント業者、そういったところで働いたことがあって、職業紹介あるいは相談に関する知識経験のある方、それから、早期再就職を求めている方に対して、このナビゲーターの仕事を熱意を持ってやっていただける方、こういった基準でありまして、具体的には、民間の有為な人材をとにかく活用していこうというふうに思っております。
 そういうことで、具体的な採用手続といたしましては、ナビゲーターというのはこういう仕事です、こういう採用基準ですということで公募いたしまして、それで公共職業安定所の方で採用したということでございます。さらに具体的に申し上げますと、安定所なりあるいは人材銀行なり、そういったところに応募要領を示したりいたしまして、あるいは、自己検索の機器の中にそういった情報を入れて、求職者の方からの求職を待つ、あるいは、新聞等で大分広報というか、していただきましたので、それを見て応募に来られるという方を中心に採用している、こういうことであります。
加藤委員 補正の議論をしていたのは一月ですから、実際に募集を始めたのは二月以降だろうというふうに思います。既に五百人、採用が済んでいるというふうに聞いておりますので、そうすると、果たして、募集をどれぐらいの期間されたのか。つまり、公募ということですが、一日二日ぽんと出して、たまたま来た人を採用していてもしようがないわけで、つまり、就職に困っていらっしゃる方にアドバイスをしたり、その方のお世話をするお仕事ですから、今御答弁いただいたような資格を持っていたり、経験のある方というのを厳選しないと、ただ五百人雇ったからそれで済みますという話じゃ多分ないはずで、聞くところによると、各都道府県最低一カ所ずつはハローワークに集中的にいらっしゃるということですから、本来であれば、相当厳選をされて採用されていなきゃおかしいわけですよね。
 どれぐらいの期間公募をかけられて、何人ぐらい応募があったんでしょうか、それで最終的に五百人になったのか。おわかりでしたら、ちょっと教えていただけますか。
戸苅政府参考人 ちょっと具体的な応募の人数等は承知しておりませんけれども、補正予算が通った段階で直ちに募集を始めまして、それで順次採用していったということで、三月までかかったわけですから、二カ月ぐらいかけて、順次、適格者の方を採用していったということであります。
 都道府県の労働局の部長なり局長なり、時々私のところへ参りますので、そういった面々に聞いてみますと、相当そういった適格者の方の採用ができた、こう聞いておりますので、とにかく五百人を数合わせで採用するというふうなことにはなってないんじゃないかというふうに思っております。
加藤委員 では、きょうのところは、急な話ですから、これ以上は言いませんが、うまくいけば非常にいい仕組みになるし、そうじゃないとすると、この五百人の方は何だったのよ、税金のむだ遣いじゃないのということにもなりかねないし、さっきの二千億、三千五百億とも全く同じ話で、どっちに振れるかで、同じ制度でも全然意味が違ってきちゃいますので、少しこの後また個別にお話を聞かせていただきたいと思います。
 では、続きまして、同じように、この平成十四年度の補正予算に盛り込まれている件でひとつ伺いたいと思います。
 地域雇用受皿事業特別奨励金という制度をつくられていらっしゃいます。これが、制度を勉強させていただいたら、新しい会社をつくって地域社会に貢献する事業を始めた場合に、そこがある一定の要件で人を採用したらお金が出る、簡単に言えばこういう話なんです。
 出資関係だの取引関係だのには制約がないということですから、極端な話をすると、ある会社が人員をもうこれ以上雇っていられない、つまりリストラしなきゃいけないという圧力がかかったときに、親会社がリストラをした人を子会社が雇ってもそこにお金が出るんですよね、この奨励金、ルール上。こんなことになったら、親会社がていのいいリストラをやって、最終的に公費までもらう、こういう仕組みになってしまって、効果がないだけではなくて、リストラをまさに推奨しているような、そんな仕組みになりはしないかと不安があるわけでありますが、この点、大臣、どのように御認識をされていらっしゃいますでしょうか。
戸苅政府参考人 この制度は、地域に密着した個人、家庭向けのサービスですとか、あるいは子育てサービスですとか環境サービスですとか、そういった法人を新たにつくっていただくということで、企業ですとか企業組合ですとかNPOですとか、そういったことで、その立ち上げの経費と、それによって三人以上の非自発的な離職者を雇用していただく、こういうことになっています。
 ただ、おっしゃるように、リストラの受け皿になってはいかぬということでありますので、そのあたりは、営業譲渡ですとか企業分割ですとかアウトソーシングですとか、既存の法人からそういった格好で分かれたものは、これは認めないということで運用してまいりたいと思っています。
加藤委員 それは聞いたんです。だから、企業分割とか営業譲渡で、要は、親会社が経営が苦しくなったから、別法人をつくってそこに仕事を追いやってしまえというのは、これはだめですよ、それは聞きました。しかし、ある企業が、同業じゃなかったとしても別法人をつくって、一〇〇%出資で子会社をつくって、親会社はリストラをする、そのときに新たにつくった子会社が人を採用する、そうすると、ここには出るんですよ、この奨励金。
 しかも、地域貢献という枠ははめてあるものの、非常にいろいろな分野が書いてありますから、よほどじゃない限りどれかにひっかかるような仕組みになっていますし、これだと、日本じゅうの経営者が性善的に動いてくれれば問題はないんでしょうが、ちょっとずるいことを考えれば、簡単にていのいいリストラで補助金をせしめるということができてしまうんじゃないか。私は、会社を経営したことがありませんから、そんなずるいことは考えるつもりもありませんけれども、中にはそういう人だって当然出てくるはずでありまして、それに歯どめをかける必要があるんじゃないかと思いますけれども、どうお考えですか。
戸苅政府参考人 今の質問は大変重要な質問だろうと思っています。
 ただ、制度の中の考え方といたしまして、一つは、例えば、高齢化が進む中で、今まで雇っていた高齢者の方について、もうこれ以上定年延長は無理だ、あるいは継続雇用制度も無理である、それから、今まで例えば自動車産業をやっていたんですけれども、自動車の組み立てではとてももう高齢者の方が体力的に勤められないというふうな場合に、高齢者向けの、高齢者の方でも十分活躍できる地域貢献のサービスを行う事業を新たにつくって、そこで高齢者の方を新たに雇うというふうなケースもあるわけで、そのようなケースと、それから、今先生がおっしゃいましたリストラの受け皿会社をつくってしまう、そのあたりの区分をどうつけるかというのは非常に難しい問題で、我々もこのあたり非常に悩んでいるところでありまして、個々の事案を見ながら、先生のおっしゃるような制度の趣旨に反するようなものについて何らかのチェックができるようにする必要はあるんじゃないかと思っていまして、そこはさらに検討をしてまいりたいと思っています。
 ただ、制度の趣旨はそういうことですので、制度を余り画一的にしてしまいますと、制度本来の趣旨が生かされないようなケースも出てきかねないので、ここは非常に難しい問題だな、こう思っています。
加藤委員 いや、何も皆さんが最初から腹黒い人たちを対象に制度をつくったなんということを言っているわけじゃないんですが、制度設計上そういう抜け穴が、これは割とだれでも見つけられるような抜け穴、抜け道でありますから、それをふさいでおく必要はあるでしょう、こういうことを申し上げているわけです。
 もう一点、地域貢献の事業ということで項目が上がっていますけれども、その中の一項に地方公共団体からの受注事業というのが入っているんですよ。何でこれが入っているのか。地方公共団体から受注している会社は、では地域貢献しているということなのか、こういう話なわけですよね。
 別に地域貢献していないとは言いませんが、本来であれば、地域経済で民間同士の取引が活性化した方がよりよいわけですから、本当だったら逆のはずですよね。地方公共団体から受注している事業は除くというぐらいの方が本来だったら筋ですよ。ただ、それを外しちゃったら、それこそ介護サービスだとか何とかができなくなるからということなんだとは思いますが、なぜこれをあえて入れたのか、ちょっと教えていただけますか。
戸苅政府参考人 これは、先ほどちょっと議論になっておりました緊急雇用創出特別交付金の議論の中で、緊急雇用創出特別交付金は、本来自治体が、例えば税務の業務について、将来コンピューターシステムを入れようというふうなものを、交付金を国から交付することによって事業を、例えば五年後を考えていたことを今やってもらう、それによって一時的な雇用機会をつくっていただく、こういう発想もあったわけであります。
 交付金自身はそういう発想でスタートしたものですから、せっかく自治体から事業を発注いただいても、あるいはそれが発注したとしても、六カ月あるいは特例的に一年、こういう短期のつなぎの雇用だったということもありまして、今回の常用の継続的な雇用創出の事業についても、緊急雇用創出特別交付金で自治体がいろいろ民間の企業に事業を発注し、あるいは委託するというふうなことをやっていただいているものですから、その成果の上に立ってこういった受け皿事業に発注していただく。
 ただ、それも、正直言って、ずっと自治体の発注した事業で事業経営を行っていくというのが、今の透明性を求められ、それで入札にかけという中で、随意契約をそういつまでもやれるというわけでもございません。そういった意味で、これはあくまで事業が軌道に乗るまでの間の呼び水というか、そういったことでやっていただければ、こういった趣旨で考えてみたものでございます。
加藤委員 どうも今の話はよくわかりませんが、ちょっと時間が迫っているので、また個別に伺うことにします。あえて入れなくてもいいんじゃないかなという気持ちは変わりませんので。
 ちょっと時間との関係なので、少し飛ばしまして、順番を入れかえて、教育訓練給付の件を議論させていただきたいというふうに思っております。
 この制度自体はもともと、個人個人の自発的な職業能力開発を支援しようという目的であったと思いますので、私はそれ自体は決して否定するものではないんですが、果たしてそれが、では、資金を援助するという方法しかないのかというと、別にそうではないだろうと思っております。
 本来は、一番美しい形というのは、健全な外部労働市場が形成をされて、その労働市場に自分が参入をしようと思ったときに、みずからに投資をして、職業訓練を受けることで自分の職がよりよくなるという形になっていれば、自然に能力開発に投資をするというインセンティブが働くわけですから、私は本来はそれがあるべき姿なんではないかというふうに個人的には思ってございます。
 しかし、この教育訓練給付という制度が、現実既に存在をしていて、今回制度を変えるという段階に至って、では、果たしてこれまでの数年間でその最初の目的どおりの効果を上げられたのかどうか、これを皆さんがどの程度検証し、把握をしていらっしゃるのか。おわかりの範囲で結構です、教えていただきたいと思います。
鴨下副大臣 先生おっしゃるように、常に政策は政策評価をしながら前に進んでいけ、こういうようなことだろうと思います。
 平成十三年度には約二十八万五千人がこの職業訓練給付を受給しているところでありますけれども、受給者のうち離職者についての調査全体を見てみますと、基本手当受給者全体よりも就職率が高くなっている、こういうようなことであります。雇用の安定及び就職の促進には、そういう意味では一定の効果を上げているということは事実だろうというふうに思います。
 ただいろいろと、御批判のように、例えば基礎的、趣味的講座というようなものに対しては、これはできるだけ排除していくというようなことだとか、それから公的職業資格が取得できる講座や職業訓練効果が客観的に確認できるような、こういうような講座の指定等を積極的に、重点的に取り組んでいく必要があるだろうというふうに思っておりまして、いずれにしましても、この費用対効果というようなことについてはさらに我々も目を光らせていきたいなというふうに考えております。
加藤委員 総論で言えば、年間たしか六百億以上ここには使っているはずでありますから、それは確かに効果が少しはなければとんでもない話ですから、総論としてはそうなんでしょうが、今副大臣おっしゃったように、個別の講座ごとにあるいは種類ごとに見たら、本当に趣味的なものであるとか、次の就職にほとんど役立っていないものとかというのが相当見受けられると思います。ただ、我々は残念ながらそれを科学的に検証できませんから、皆さんにやっていただくしかないので、コストパフォーマンスはより厳しくチェックをして、これは何とか公開をしていただきたいなというふうに思うわけです。
 今回、本来であればそういう検証があって、この制度は役に立っているからそのまま続けましょうということになるのか、あるいは役立っている講座とそうでないのがあるから、役立っているものは残して、そうでないものは廃止しましょうというのか、それともこの制度自体どうも役に立っていないからなくしてしまいましょうというのか、道はどれかしかないんではないかと思っていたんですが、変更の内容が減額をする、支給額減額をして要件を若干緩和する。要件緩和すること自体、私は反対しないんですが、減額をする、こういうことになっています。なぜ、そのまま存続とか、あるいは全く廃止とかではなくて、減額という道を選ばれたのか、その根拠を伺わせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 確かに、減額をしてそして続行するという形にしたわけでございます。全体として見ておりますと、先ほどから指摘がありますように、やはり趣味的なものがありますとか、そこで学んでいただいたことそのものが直接に職業に結びついていないというものも率直にございます。そうしたものは排除をし、そして八割という今まで支援をしていたわけでございますが、もう少し自己努力もしていただくということで、それを半分にするといったこともその中に入れながら、本当にやる気のある皆さん方、御自身でやる気のある皆さん方にそのお手伝いをするという形が望ましいのではないかというふうに思っております。
 このことも先ほど申し上げたことに関係するわけでございますが、何を学ぶか、そのことを学ぶ前にいろいろ御相談に乗るということもやはりやっていかないと、ただ単にこれは支援をするというだけではいけないというふうに思っておりまして、それらの点を十分に考慮しながらこれから運営をしていきたいというふうに思っている次第でございます。
加藤委員 済みません。まだ大量に残っておるんですが、最後、一問だけ簡潔に伺いたいと思います。
 今の各講座の目標資格の取得状況というのを厚生労働省のホームページで公開をする予定であるということを伺いましたが、これはいつ公開をされるのか、明確に教えていただきたいんですが。
坂本政府参考人 資格取得率等につきましては、指定講座の事業者から報告をいただいておりますので、これをもとにホームページに公開をしたいと考えております。来月には公開できるように準備作業を進めております。
加藤委員 多少延びました。残りの件はまた別の機会に議論をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
宮腰委員長代理 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 今、早速なんですけれども、加藤先生が質問になっていた件で、ちょっと関連して一つ。
 今のお話の中で、教育訓練給付制度の中で、私は、これは教育内容を厳しくチェックすべきじゃないかと思っている一人なんですね。支給を受けている企業といいますか、学校といいますか、これを見ますと、語学の学校が多いわけなんですけれども、先生の資格要件、それからカリキュラムの内容、教育内容ですね、ここに問題があるんじゃないかと思うんですね。厳しくチェックすることによって、そこでどういう受講生がどういう内容のものを身につけていくかということを、やはり政策評価としてすべきじゃないかと思いますけれども、副大臣、いかがでしょうか。
鴨下副大臣 確かに、先生おっしゃるように、教育訓練給付の対象になるものの中には、趣味的や教養的なことになってしまっているようなものという、こういう御批判もあったわけであります。ただ、できるだけそういうものを排除していかなければいけないだろうと思いますが、その中で、その職業訓練を受けた後に就職につながっていくような資格を取れるものだとか、それから、さらに職業のスキルアップができるようなこと、こういうようなことをさらに厳しく評価をしていく必要があるんだろうな、こういうふうに考えています。
武山委員 失業率が高く、失業者が非常に多いのに、ここまでやらなくてもと私自身は内心、個人的には思っておるんですね。
 昔のことを言っても、今は時代が違いますから、今の若い人たちにどれだけ理解してもらえるかということはあるんですけれども、私が学校を卒業したころというのは、例えばお花を習うとか洋裁を習うとか語学を習うとかというときは、自分から授業料を払ったものなんですよね。今、本当におんぶにだっこで、国におんぶして、だっこしてもらえばいいという発想が非常に蔓延していると思うんですよね。
 ですからそこに、やはりきちっとした国としての骨格ですね。ただ財源があったから出すというふうに、もうばらまきというふうに私たちには見えるんですよね。もちろん、保険の財源があればそういうところまで手とり足とりすることもいいかなと思いますけれども、今これだけ財源がないというのに、失業者がこれだけいて困っておるというのに、ここまでやる必要はないんじゃないかという、私は思いをしますけれども、今後も続けていくつもりでしょうか。
鴨下副大臣 先ほど加藤委員に大臣がお話しになりましたけれども、今回、教育訓練給付の給付率を現行の八割から半分の四割にして、そしてこれにあわせて上限額を三十万から二十万にしよう、こういうようなことでございまして、これは特に、財源論だけではなく、むしろ先生がおっしゃるように、ある意味で、職業訓練を受けて、そしてみずからそれぞれ自分の職業に関するスキルをアップしていこう、こういうような動機のはっきりした方々に御支援をしていくべきではなかろうか、こういう議論から今回の改正に至ったわけでありまして、まさしく先生がおっしゃっているような趣旨だろうというふうに思います。
武山委員 一度そのように国が面倒を見るということを始めましたら、やはり、あのときは面倒を見てくれて、今度は面倒を見てくれないじゃないかと、急に廃止したりすることはできないと思うんですよね。それを導入するとききちっと、今後どういう状況でどう雇用の状況が変わっていくかということを、政府のことですからもちろんすべてを念頭に置いて対応したと思いますけれども、でも、結果的には失敗だと思うんですよね、これだけ雇用保険の財政がなくなっているということは。ですから、今後とも、そのあり方について、そして廃止も含めて検討していっていただきたいと思います。
 それでは、きょうは、この雇用保険法改正案に関して、生活不安解消策の実効性にということで。
 二月の完全失業率は、若干下がったものの、依然として五%台であるということは、もう紛れもなく事実であります。そして完全失業者も、みんなが口をそろえて言うように、三百五十万人もいるというわけですね。雇用失業情勢はもう大変厳しい。やはりこれだけの数字が出ているということは、大変厳しいと認識するということが現実問題だと思うんですね。
 それでいて、この状態から新しい雇用というのは、どれだけ今現実に生まれておるんでしょうか、それをぜひ教えていただきたいと思います。
鴨下副大臣 雇用対策をするということは、生活不安の解消策として最も重要なことの一つだろうというふうに思っておりまして、今先生御指摘のように、有効求人倍率、それから完全失業率等も含めて、依然として非常に厳しい状況であることは間違いないだろうというふうに思っております。こういう意味で、国民の雇用面での不安を払拭していく、こういうようなことは、ある意味で国政の最重要課題であるというようなことは我々も認識しているところであります。
 そういうわけで、一昨年、そして昨年と一連の雇用対策を実施してきているわけでありますけれども、一つは、緊急地域雇用創出特別交付金を使いまして、十三年度には、森林作業員、それから教員の補助者、公園等の巡視員など、三カ月間で約二万三千人の新規雇用を創出しておりますし、十四年度は、さらにこれに加えまして、約十四万人の新規雇用創出を見込んでいるというようなところでございます。またさらに、新規・成長分野雇用創出特別奨励金につきましては、これは平成十三年度十二月から本年の二月まででございますけれども、約六万八千人の新規雇用を創出した、こういうようなことでございます。それだけでは十分ではないわけでありますから、あらゆる施策を通じてさらに雇用問題を解決するためにやってまいりたい、こういうふうに考えております。
武山委員 今、合計しますと二十三万一千人の雇用創出ということですけれども、これはもう本当に焼け石に水だと思うんですね。これだけではとてもとても、もう数字を挙げるだけでも本当に恥ずかしいという数字だと思いますけれども、緊急雇用対策なんということは考えておりますでしょうか。
鴨下副大臣 先ほど先生お触れになりましたように、有効求人倍率が〇・六一倍、それから完全失業率が五・二%ということで、ある意味で下げどまっているといいますか、それなりの改善はしているんですけれども、現段階で高水準であるというような意味では、大変厳しい状況が続いているということは間違いないだろうと思います。
 そういう意味で、厚生労働省にできることといたしましては、雇用機会の創出とかミスマッチの解消等が最も重要なことだろうというふうに思っておりまして、一つには、不良債権処理の加速に伴って離職を余儀なくされた三十歳以上六十歳未満の労働者に対しまして、直接またはトライアル雇用を通じた就職、それから起業に対する助成金の支給をする、それからもう一つは、地域に貢献する事業を行う法人を設立し、三十歳以上六十五歳未満の雇用の場を創出した場合に対する支援措置の創設、それから、地方公共団体が地域の事情に応じて臨時的、短期的な雇用機会を創出する緊急地域雇用創出特別交付金等の拡充、こういうようなことをやっていっているわけであります。さらに、これはハローワークを通じてでありますけれども、ハローワークの中では、キャリアコンサルタントが来訪する方にできるだけきめ細かな相談をしていくということと、それから、先ほどから御議論いただいていますけれども、早期再就職専任支援員による、ある意味でマンツーマンの体系的な、計画的な再就職支援、こういうようなことをできるだけ重層的にやってまいりたい、こういうふうに考える次第でございます。
武山委員 それで、今のお話ですと、ことしはどのくらいの雇用を生み出しますか。先ほど、十三年度、十四年度で約二十三万一千人の人が雇用されたということですけれども、今のお話で、どのくらいの需要を見込んでいるんでしょうか。
鴨下副大臣 これは、さまざまな経済の状況、それから内外の状況の中で判断されるべきだろうというふうに思いますが、先ほど申し上げましたような施策を通じては、おおよそ百万人ぐらいの雇用がつくれるのではないかというふうに考えております。
武山委員 今、厚生労働省だけではというお話ですけれども、横断的に他省庁とも連携をとってやっておられると思うんです。先ほどはやはり厚生労働省だけのお話だったと思うんですけれども、他省庁との新しい雇用の創出事業といいますか、そういう意味では連携はされていますか。
鴨下副大臣 もちろん厚生労働省だけではなかなかうまくいかない部分もありまして、特に地域産業・雇用対策プログラム等におきましては、例えば、厚生労働省と経済産業省が連携して雇用のミスマッチの解消や、言ってみれば新たな雇用創出のための施策、こういうようなものを地域の産業・雇用対策というようなことの趣旨で大いに連携をしていこう、こういうようなことはもちろんやっております。
武山委員 そうしますと、副大臣が今百万人雇用創出ということは、連携した結果という意味なんでしょうか、厚生労働省だけの試算という認識なんでしょうか。
鴨下副大臣 もちろんこれは厚生労働省が単独でというようなことでなく、あらゆる政策、そして、言ってみれば政府全体の方向としてそういうような試算をしているわけでありまして、さまざまな関係省庁との連携の上ででございます。
武山委員 解雇などいわゆる事業主の都合により職を離れた人、これは、雇用保険統計で見ますと、二〇〇一年には百十四万人を超えている。ですから、もう百十四万人が二〇〇一年には職を離れている。百万人の雇用を創出しても、二〇〇一年の離職者は百十四万人ということですから、まだ足りないわけですよね。そしてさらに、解雇、希望退職など、企業のリストラの発表が相次いでいるわけですけれども、ますます先行きへの不安はやはり高まっていると言えると思います。
 こうした中で雇用保険の給付率引き下げ、これはやはり国民に対して大変不安感を与えているわけでして、とりわけ住宅ローンや子供の教育費など、一番中高年世代にとっては大きな問題であるわけです。そして、今回の雇用保険の給付率引き下げ。これも大変な打撃を受けて、この給付率の引き下げというのは大変大きい。医療保険の保険料に加えて医療費の自己負担も、本当に四月一日からもう負担増になっていて、なおさら再就職ができないという状態にあるわけです。
 ですから、生活不安解消ということで、実効性について今伺っておるわけですけれども、平成十三年度の補正予算の中で生活資金貸付制度、離職者支援資金というのがあるんですね、これはどの程度利用されていて、どの程度実績があるのか、その数をぜひ教えていただきたいと思います。
鴨下副大臣 今先生がおっしゃっている離職者支援資金貸付制度につきましては、これは、雇用保険の枠外にある自営廃業者及びパート労働者の失業や、雇用保険の給付期限が切れたことによりまして生計の維持が困難になった、こういうような失業した方々の世帯に対して生活資金を貸し付ける制度でありまして、平成十三年度に創設したものでありますが、平成十五年二月末現在で貸付件数が約四千件でありまして、貸付額がおおむね四十八億円程度になっているということが実情でございます。
武山委員 それでは、この制度についてハローワークなどできちっとPRはされておるのでしょうか。
鴨下副大臣 できるだけ多くの方々に知っていただくというようなことで、特にハローワークにおきましてはパンフレット等を用意しまして、御利用いただけるように周知をしているところであります。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
武山委員 ハローワークでは一人一人職を求めて、面談なり相談窓口なり、あるかと思いますけれども、そういう面談、相談口できちっと御説明をされておるんでしょうか、それともパンフレットを置きっ放しなんですか。
鴨下副大臣 もちろん、要件にかなうような方々が相談に訪れた場合には、こういうような制度がございますというようなことは、それぞれ窓口、それから対応に当たった者ができるだけわかりやすく説明をし、そして、もちろんパンフレット等も含めて情報を提供するということは総合的にやっているわけであります。
武山委員 それでは、もう少し中身に。貸し付けの対象ですね。これは、一般求職者給付を受けている、受給中の者は除くとなっておるんですけれども、この求職者給付の支給率を引き下げることとの対応でこの要件を見直すことを考えておるのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
鴨下副大臣 離職者支援資金貸付制度については、先ほど申し上げましたように、昨年の十二月に、失業した方々の世帯の資金需要を踏まえて、貸し付けの際に必要とする連帯保証人を原則二名から一名にしよう、こういうようなことと、貸付金の償還期限を据置期間経過後五年から七年に延長する、こういうようなことで貸し付け条件の緩和を図って、本貸付制度が有効に活用できるようにできるだけ周知徹底していかなければいけないんだろうというふうに考えています。
武山委員 では、要件を見直したということですね。
 それでは、健康不安とストレスについて、まずお聞きしたいと思います。
 大きな団体が失業者に対していろいろと行った聞き取り調査をもとに、ちょっとお話を聞きたいと思います。
 失業中の生活不安、それから生活費、保険料、そういうものがいわゆる生活不安として挙げられるわけですけれども、自分の健康問題、それからストレス、こういうものが、失業期間が長期化するほど大変高まるわけですけれども、こういう生活不安、ストレスの対策について、厚生労働省は失業中の皆さんに対してどのように対処しておりますでしょうか。
鴨下副大臣 先生おっしゃるように、失業、それから、会社が倒産する、こういうようなことは、人生におけるライフイベントの中で最もストレスフルな出来事だということはもう学問的にも裏づけられているわけでありまして、こういうようなことにつきましてできるだけ厚生労働省の方も支援していこう、こういうようなことであります。
 一つは、例えば過労死の防止を初めとして、過重労働による健康障害防止の対策というようなことを始めたところでありまして、平成十四年度の二月に過重労働による健康障害防止のための総合対策、こういうようなことを策定しまして、過重労働を排除するための時間外労働等の削減及び年次有給休暇の取得促進、こういうようなことを進めるということと、もう一つは、長時間の時間外労働を行わせた、こういうような労働者に対しては健康管理の徹底をしていこう、こういうような趣旨であります。
 また、本年度を初年度とします第十次の労働災害防止計画においても、健康障害の減少を重点目標に定めて、厚生労働省としては、総合的に措置が適切に実施されるようあらゆる機会を通じて周知徹底していきたい、こういうふうなことでございます。
武山委員 働いている方々に対しては、今のお話がそうなのかなと思って聞いておりましたけれども、実際に失業してしまった人たち、厚生労働省はそういう人たちに対してどのように対処していますかというのが質問の内容なんです。
鴨下副大臣 これは、職を失った方々というようなことに限定しているわけではありませんけれども、国民の各層に言ってみればストレスが増大している現在の状況の中でどういうような形で対応しているのか、こういうようなことなんだろうというふうに思いまして、お答えをさせていただきますが、心の健康対策というのは国民の健康を保持、増進していく上で極めて大事でありまして、特に、昨今のように疾病構造が変わってきて、例えば生活習慣病等が多くの方々を悩ませる、こういうような状況の中では、このストレス対策というのは非常に重要なことだと思います。
 その中でも、特にうつ。例えば職を失う、それから、借金等によってうつの状態になった方々が最終的に自殺に至る、こういうようなケースもふえているわけでありまして、そういうような方々の抑うつ状態、それからうつ病に対していかに対応していくかということが非常に重要な課題であります。
 厚生労働省の中では、地域や職域におけるメンタルヘルスの相談体制の強化や、今議論になっているような正しい知識の普及啓発、それから地域におけるうつ病対策等についての研究の推進等を行っているわけでありまして、昨年の十二月に、特に自殺防止に関して厚生労働省に設置した有識者懇談会の報告が取りまとめられまして、その中では、人と人とのきずなを重視した温かな社会づくりを理念として、特にうつ病対策を中心としてかかりつけ医や産業医による早期発見の重要性などは指摘されているところでありまして、これらの報告を受けて、今年度においてはこれまでの対策に加えて心の健康問題への対応を示しているところでありまして、保健医療従事者向けのマニュアルをつくりまして配付するとか、さらに新たな施策を実施することにしておりまして、できるだけ多くの方々のストレス、そしてそれから派生するところの自殺防止等につきまして、心の健康づくり対策を積極的に行ってまいりたい、こういうようなことでございます。
武山委員 いや、今お話を聞いておりまして、いわゆる失業中の中高年の方がストレスとか健康問題で生活不安を持っていて、まずどこへ行ったらいいんですか。そういう方々は、どこへ行ってだれに相談したらいいんですか。それをちょっとお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 職を失われました場合には、その皆さん方は、一応それぞれの地域で健康管理というものはやっていただくことになるだろうというふうに思います。例えば、商店街の皆さん方でございますとかあるいは第一次産業の皆さん方はそれぞれの地域で健康管理というものを受け持たれているわけでございますから、その皆さん方も、職場を離れられたということになりますと、例えば医療保険にいたしましても国保にお入りになるといったようなことになるわけでございまして、これはその場合にはそれぞれの地域で健康管理等をお願いするという以外にないだろうというふうに思っております。
武山委員 それでは、ハローワークに相談窓口、こういうものを置くなんという考えはどうでしょうか。保健医療機関との連携を図ってハローワークに相談窓口を置く、こういう考えはいかがでしょうか、厚生労働省として。
 恐らく、もう国民健康保険の保険料も払えない、それからもう本当に生活費もない。そういう次々に襲ってくる不安、いわゆる健康不安それからストレスですね。やはり年間三万人も自殺者がいる。先日、厚生労働省からホームレスの数値が出ました。ああいうのを見ますと、本当に今大臣が、副大臣がおっしゃったような、そこにその方々が行っていれば、今現実にああいう数値というものは出ないと思うんですよね。
 ですから、今現在元気でいる人たちが万が一そう起こった場合は、今のお話で対応はある程度されると思いますけれども、今もう起こっている人たちに、どこへ行ったらいいのかなというときに、一番頼りになるところというのはどこなんだろうかと思うんですよね。ですから、その辺について、やはりしゃくし定規な答えでは対応できないと思うんですよ、今現実に起こっている方々には。自殺もしたくなる、それからホームレスにもなりたい、そういう方々に、しゃくし定規な、通常に、ノーマルな人に話してわかる内容とは全然違うと思うんですね。そういう方々に対する対応は、やはりハローワークが窓口なんかではいかがでしょうかという話です。
鴨下副大臣 いや、先生のおっしゃることは非常に重要なことでして、例えば本人もなかなか御自分が今現在大変なストレスを抱えてうつになっているということがわからない場合もありますので、ハローワークでそれを全部受けろというのはなかなか難しいことでありますけれども、例えばキャリアコンサルティングの中で、明らかにそういう精神的な問題を抱えている方が、ではどこへ相談したらいいかということの、まあ言ってみればサジェスチョンのようなものは可能だろうと思います。そこから先につきましては、例えば、現在会社にいる方は産業医等がその窓口になるべきであると思いますし、失業されている方につきましては、今、労災病院等、特に横浜労災病院にはそういう相談コーナーのようなものがございますし、例えばいのちの電話のようなところにまず相談をするとか、それからあとは、労災病院の勤労者メンタルヘルスセンターというのが先ほど申し上げました労災病院等にございますから、それを利用していただくようなアドバイスはしてさしあげられるのではないかというふうに思います。
武山委員 そういう意味の相談窓口ということでしたら、やはり間口は広くした方がいいと思うんですよね、相談の窓口ですから。それからの対応はまた個別にやれると思うんですよね。ですから、窓口だけは広く、そして一般に行きやすいところ、やはりそういう温かい対応が必要だと思います。
 それでは、日本育英会の奨学金についてお聞きしたいと思いますけれども、保護者が失業した場合、年度途中での利用ができる制度があるということですけれども、何しろ十分な対応をするべきだと思うんですね。
 それで、聞きましたところ、公立の高等学校で授業料が払えないという家庭が一クラスに二人ぐらいいるということも実は聞いたことがあるんですね。ですから、いわゆる保護者が失業した場合の年度途中での利用、この奨学金に対して、実情をお聞きしたいと思います。
河村副大臣 武山委員御指摘のような、親が急にリストラで学校へのお金が払えないというような状況になったときのことでございますが、これに対応すべく緊急採用奨学金制度というのが設けてございまして、これは平成の十一年から既に採用いたしておるわけでございます。年間を通じて随時いつでも受けられるような状況でございまして、希望者は全員に差し上げるということになっております。
 平成十五年度予算におきましても、所要額、一万人、計三十一億円を計上いたしておるところでございまして、これは実績を見ましても、平成十一年度からスタートしておりますが、平成十四年度は合計で六千九百十三人、これはもちろん病気で親が急に亡くなったとか天災というようなこともございますが、経済的理由が四千四百六十四人、所要額が二十九億二千百万円ということでございまして、そういうことで実際にこれで対応しておるわけでございます。
 そういうことで、せっかくの勉強意欲ある生徒、学生がこうした親の失職等によって勉学の機会を逸する、教育の機会均等の精神からいってもそういうことがなきようにということで対応いたしておるところでございます。
武山委員 希望者全員ということですけれども、一万人を超えても対応していただけるわけですね。
河村副大臣 実績がそういうことであったものですから、一万人の予算を組みました。実は、平成十二年度が八千七百三十六人、これまでの最高でございますが、所要額は三十六億という実例もございます。これをオーバーいたしましたときにはそれなりの対応をきちっとする、これは国の予算で対応するということで、財投ではございません。
武山委員 年間一万人を超えても十分対応していただきたいと思います。
 それから、高齢者の雇用と年金について次は伺いたいと思います。
 まず、政府案では、高年齢雇用継続給付の引き下げが示されておるわけです。公的年金の支給開始年齢が、ことし四月に六十歳に達した人は六十二歳からの支給となるわけですけれども、いわゆる六十歳で退職して、そして六十二歳までの二年間、今度公的年金の支給開始年齢が六十二歳になるわけですけれども、この二年間というものはどのようにこの関係を考えているのかなと思います。これをちょっと御説明いただきたいと思います。
鴨下副大臣 今御指摘のように、厚生年金の支給開始年齢が男女ともに引き上げられまして、男性については、定額部分が二〇〇一年から二〇一三年にかけまして、報酬比例部分が二〇一三年度から二五年度にかけて、それぞれ六十五歳に引き上げられる、こういうような予定でありまして、現在、男性については定額部分が六十一歳からの支給になっているわけであります。
 こういうような年金の支給開始年齢の引き上げが行われるということを踏まえまして、六十五歳までの安定的な雇用を確保しなければならない、こういうような意味で、労使で十分に話し合って、特に各企業が定年の引き上げや継続雇用制度の導入等を一層進めていただくというようなことが重要であるというふうに考えているわけであります。
 また、現在の継続雇用制度の導入状況を見ますと、少なくとも六十五歳まで働ける場を確保する企業の割合につきましては、近年の、言ってみれば厳しい経済状況の中であっても約七割になっておりまして、そういうようなことを含めて各種施策を講じることによりまして、引き続き、六十五歳まで何とか安定的な雇用の機会が確保できるように厚生労働省も最善の努力を尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。
武山委員 やはり中高年世代にとっては大変将来の生活設計に係る大きな問題であるわけです。
 それで、この衆議院の事務局でも依然として定年の年齢は六十歳なんですよね。最近定年でやめた方がごあいさつに参りましたから、何歳ですかと聞いたら六十歳なわけですね。ですから、依然として定年の年齢は六十歳がやはり多数であろうと思います。そうしますと、再雇用制度を充実していくということは、現実的な選択肢としてはやはり必要ではないかと思うんですね。ですから、この再雇用制度を充実するために、もちろん高年齢雇用継続給付制度というのを使いながらだと思いますけれども、国として今後どのような戦略、すなわち見通し、これをぜひお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 年金の支給開始年齢の引き上げでございますが、これは、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたとおり、三年に一歳ずつ引き上げていくことが既に決まっておりまして、平成十三年に基礎年金の方は六十五歳、そしてそれが済みますと、今度は厚生年金の方が三年に一歳ずつまた引き上げを行わせていただく、こういうことになっているわけでございます。
 そして、これができましたときにも、やはりこうした年金の引き上げと同時に、これは中高年、六十歳から六十五歳の皆さん方のいわゆる継続雇用というものをどう実現していくかということが非常に大きな問題になって、そして決定されたわけでございますが、現在もそのことに努力をいたしておりますけれども、これから先、六十五歳までのいわゆる継続雇用、すなわち、六十五歳まで定年を延長するということはなかなかこの経済状況等から難しい場合もあるだろう。できればそれが望ましいと思いますけれども、できない場合もあるだろうと思います。その場合には、一度おやめをいただいて、そしてもう一度お勤めをいただくといったような、いわゆる継続雇用という形で六十五歳までの雇用ができるような体制をどうつくり上げていくかというのが現在の課題でございまして、そうしたことに向けまして我々も努力を重ねているところでございます。
武山委員 現実的にもう制度はそのようになっておりまして、六十歳で定年退職していくわけですから、早急にそういうものを、やはり青写真を示していくというのが今緊急の課題だと思います。
 終わります。
中山委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 前回の質問で、私は、今回の法改正が大幅な給付の切り下げになることを中心にお尋ねをしました。そしてさらに、今回の改正案が、雇用保険の給付額の個々の削減にとどまらず、雇用保険そのものの性格を、低賃金労働への移動を促進する法律に変えてしまうということを指摘いたしました。
 私は、本日の質問に先立って前回の会議録を読んでみました。その中で大変気になったのは、坂口大臣が私への答弁で、徐々に現在の日本の、今景気が動き始めているという事態ではないかと述べられていることであります。これは、先日発表された二月の失業率が五・二%と前月より〇・三%改善されたこと、求人倍率もわずかながら上がったことなどを指しているのではないかと思いましたが、私はそれは余りに楽観的だと思うんです。最近、幾ら職を探しても見つからないことに絶望して、仕事につきたいのに職安窓口に来なくなっている人たちが激増しております。こういう求職者の表向きの減少が失業率の改善という数字になっているのではないのでしょうか。また、わずかに求人がふえたとしても、その多くはパートや臨時の雇用であります。
 大臣、本当に我が国の経済、失業情勢によい変化が起こり始めたと考えておられるんでしょうか。
坂口国務大臣 ですから、日本の景気が今動き始めていると申し上げたわけでありまして、よくなったと申し上げているわけではございません。
 企業の収益が改善をされておりますとか、それから設備投資がかなりよくなってきているということがございます。それから、有効求人倍率、我々の方の統計で見ましても、サービス業はもちろんでございますけれども、いわゆる製造業におきましても、建設業以外のところは、前年同月比で比較をいたしますと求人が非常にふえてきているといったことがございまして、これは最近の動向として非常にプラス面だというふうに思っているわけでございます。こうした状況を見ておりますと、経済は少し動き出してきているなという感じを率直に持つわけでございます。
 しかし、言うまでもなく、さまざまな状況によって経済というものは影響を受けるわけでありますから、予断を持つことはできません。引き続きまして努力をしなければならないと思っている次第でございます。
小沢(和)委員 前回に続いて給付の削減でもう一つお伺いをしたいのは、高年齢雇用継続給付の削減であります。
 従来、高齢者の雇用を継続する場合、賃金が一五%以上切り下げられるとその二五%を補てんしておりましたが、今後、二五%以上切り下げられた場合だけ、その一五%を補てんいたします。支給要件と給付率と、両方で一挙に大幅に改悪されることになります。
 今、政府は、高齢化時代にふさわしく、年をとっても元気な間は働こうと呼びかけ、六十五歳までの定年延長を推進しております。その一方で、既に年金の支給開始年齢を六十五歳までおくらせる措置をどんどん進行させております。こういう状況に対応して、労使で六十歳を過ぎても働けるよう取り組む場合に、高年齢雇用継続給付は大変よい制度でありました。経営側にとっては負担が軽くなる、労働者側にとっては賃金の目減りを緩和できる。だからこの関係の受給者がふえてきたわけであります。その結果、財政負担が若干大きくなっているとしても、高齢者の定年延長で失業の発生を抑える重要な役割を果たしております。この制度をどうして後退させなければならないんでしょうか。
鴨下副大臣 お答えいたします。
 高年齢雇用継続給付につきましては、六十歳以降賃金が相当程度低下した場合に、同給付と賃金との合計額が基本手当の額を上回る水準の給付を行うことによりまして、六十歳代前半層の雇用の継続を援助、推進しよう、こういうような趣旨で設けられているわけでありますけれども、今般の賃金低下率要件及び給付率の見直しは、一つには六十歳以降の勤務延長それから再雇用された方の賃金の実情、二つには今般の基本手当の見直し内容等を踏まえますと基本手当の水準との間でバランスがとれたものである、こういうようなことで、高齢者の継続雇用に対してマイナスの影響を与えるものではないというふうに考えております。
 また、六十歳代前半層の雇用を継続するための対策につきましても、定年の引き上げ、それから継続雇用制度の導入等による六十五歳までの雇用の安定の確保、さらには在職求職者である中高年齢者に対しましての再就職援助等さまざまな施策を実施しているところでありまして、また、さらに、平成十五年度予算において、行政それから経済団体さらに労働団体などの関係セクターの連携のもと、継続雇用制度の導入の拡大を図る六十五歳継続雇用達成事業を盛り込んだところでありまして、これらを総合的に動員しまして、高年齢者の雇用促進に全力を挙げてまいりたい、こういうように思います。
小沢(和)委員 次に、今回の法改正によって、二年後から失業給付に係る保険料率が一・六%に引き上げられます。これによって、労働者側に三千億円の新たな負担増が押しつけられます。
 二年前まで保険料率は〇・八%でした。それが前回の改悪で一・二%に引き上げられ、それからわずか一年半後の昨年十月には、弾力条項を発動して一・四%に引き上げられております。その上、また立て続けに今回の引き上げ提案では、到底納得することはできません。
 前回の質問の冒頭に述べましたとおり、今の保険財政悪化の責任は全面的に政府にあります。それなのに、今年度予算では、雇用保険への国庫負担金は、昨年度補正後より千七十八億円も少ない五千三百四十八億円に削減されております。今は、政府が保険財政を安定させるため国庫負担を緊急にふやすことが求められているんではないでしょうか。
鴨下副大臣 国庫負担の投入により対応すべし、こういうようなお話でありますが、雇用保険の財源不足を補うためにさらに、言ってみれば一般会計を投入することにつきましては、一つは、我が国の雇用保険は主要諸外国と比べて既に高い国庫負担割合になっていることが一つでございます。さらに、雇用保険そのものが労使の共同連帯を基本とするというようなことでありますので、労使以外の、雇用保険制度の言ってみれば枠の外にいる方々を含めた国民全体にさらなる負担を求めるというようなことは、なかなか難しい、こういうような考え方でございます。
小沢(和)委員 今回の法改正には、二年後に一・六%に引き上げるだけでなく、〇・二%の弾力条項もついております。深刻な失業情勢が続けば、二年後を待たずに弾力条項を発動して一・六%まで保険料を引き上げることが可能な仕組みになっております。国民には、本則で一・六%に引き上げても附則で今後二年間据え置くといって安心させておきながら、その同じ附則で弾力条項の発動で一・六%に引き上げる道を開いているのでは、国民をだますことになるのではないでしょうか。そういうことは考えていないと、大臣、ここで明言できますか。
坂口国務大臣 たしか前回も同じ質問を受けたと思いますけれども、一・六%まで引き上げるということは、この二年間はございません。現在の状況の中でやり抜いていきたいと決意しているところでございます。
小沢(和)委員 条文上はそういう仕組みになっている、だからこの点について大臣にはっきり言ってほしかったわけであります。
 政府は国庫負担を四分の一に戻したと言うのですが、失業保険制度発足当時は三分の一でした。敗戦直後の一九四七年から一九五九年まで十数年の間、失業情勢が厳しい時代には三分の一の国庫負担でした。高度経済成長期に入り、失業者が急速に減少し、給付総額が減ったので、国庫負担を四分の一に引き下げたわけであります。
 現在の失業情勢は、その当時よりはるかに悪い状態が続いているわけですから、国庫負担を三分の一に戻してもおかしくありません。現に、雇用保険法第六十六条第二項には、いざというときに三分の一まで国庫負担を引き上げる条項があります。まず、この条項を臨時措置として活用できるようにこの機会に改正してはどうか。大臣の見解をお尋ねしたいと思います。
鴨下副大臣 雇用保険制度そのものが、先ほど申し上げましたように、労使の共同連帯を基本とする、こういう制度でありまして、さらなる財源を安易に、国庫負担率の引き上げを求める、こういうようなことや、労使以外の方々を含めた国民全体にさらに負担を求める、こういうようなことにつきましては、なかなか難しいということをお答えせざるを得ません。
 それからもう一つ、我が国の雇用保険そのものがもう既に主要諸外国と比べて高い国庫負担割合になっている、こういうようなことでございますので、重ねて申し上げます。
小沢(和)委員 私は今、いざというときと言ったんですが、まさに今がいざというときではないでしょうか。
 前回の答弁の中で、政府も今回の改正は、今後も五年間失業者がふえ、失業率が六%台半ばまで悪化することを予測し、それに耐え得るものとして制度の見直しを行ったと述べております。
 私は、政府が不良債権処理を一層加速し、医療、年金、介護等での国民負担増などを押しつければ、それ以上の失業率の悪化も十分あり得ると考えております。それだけ政府みずからの政策で失業者を増大させる以上、その結果に政府が責任を負う、国庫負担率を引き上げるのは当然ではないかと思いますが、重ねてお尋ねします。
坂口国務大臣 前回お答えをいたしましたのは、それは六・五%まで上がっても耐え得る制度にするということでありまして、六・五%までになることを想定しているわけでは決してございません。早くこの五%台半ばの失業率を低下させていきたいというふうに思っているわけでございまして、それは、そういう制度の仕組みとして、高くなっても大丈夫なようにしたということでございまして、現実の問題といたしましては、一日も早くこの失業率低下のために努力をしたいと考えております。
小沢(和)委員 いや、私は、国庫負担率を引き上げるのは当然ではないのかということをお尋ねしているんです。今の大臣のお答えでは、私はこれに直接答えていないと思うんですが、重ねてお尋ねします。
坂口国務大臣 国庫負担率につきましては、既に二五%負担をしているわけでございますし、諸外国の例を見ましても、日本は最も高いところにございます。したがいまして、なかなかこれ以上の導入は難しいというふうに言わざるを得ません。
 しかし、ことしのように非常に厳しい状況でございますので、二千五百億円の別な形でのバックアップをしている。これも言ってみれば国庫で支援をしていることになるわけでありますから、そうした方法を組み合わせながらやっていくということではないかというふうに思います。
小沢(和)委員 外国との比較は、私は次回十分にやらせていただきたいと思うんです。
 私がさっきから言っているのは、二五%、四分の一ということでよしとはできない、この失業保険制度というのは、発足した当時は三分の一だったんだ、だから、その当時に比べてもずっと厳しい今の状況の中では三分の一に戻すべきだ、実際、いざというときにはこうしますという中で、三分の一という条文もあるじゃないか、だから、これを今活用できるように、そのことの改正も考えたらどうかということを言っているわけであります。
 政府は、二言目には財政が苦しいと言うわけですが、問題は、我が党がいつも指摘しておりますように、今の政策の基本方向を転換するかどうかだと思うんです。
 今年度も国債を大増発して、利用者がろくにいないむだな高速道路、港湾、空港、ダムなどをつくり続けております。私の地元九州でいえば、住民から猛反対されている諫早干拓や川辺川ダム事業などを強行し続けております。そんな税金のむだ遣いをしておいて、国民の暮らしに回す金はないということでは、だれも承知できません。私は、そちらを削って雇用保険の国庫負担増や健保本人負担を二割に戻すために振り向けることを、重ねてこの機会に主張しておきます。
 特に、失業者への手当は、文字どおり、すぐ生活費として消費されるから、景気を下支えする効果も大きいと思うんです。公明党出身の坂口大臣は、大型公共事業優先を続けるという点では自民党と全く同じ見解なんでしょうか。大臣、重ねてお尋ねします。
坂口国務大臣 公共事業をやめたらいいという単純な発想もいかがなものかと私は思います。やめればそこにまた多数の失業者が発生するわけでありますから、そうしたことも全体に考えていかないといけないわけでありまして、一方のいいことばかり考えていったのでは、これはいけません。そうした全体を考えて、公共事業の中にもやらなければならない、やはり後生に残さなければならないものもあるわけでありますので、そこはしっかりと見定めてやっていかなければいけないというふうに思っております。
 ですから、ただ単に公共事業を切り捨てればいいというわけではなくて、現在のこの厳しい状況でございますから、節減できるものはしていかなければならないというふうに思いますが、それでもなおかつこれだけの赤字国債を出さなければならないような状況でございます。
 ですから、これ以上国からというふうに言いましても、国からの出し分をふやしていくということは、その分また社会保障といえども後生に負担を残すということになるわけでありまして、私は、それは許されない。ことしで見れば、四十二兆円の税収の中で十九兆円が社会保障に回っているわけであります。したがいまして、社会保障といえども、余り増額をするということは、後生に負担を残すことに結びついていく、私たちの世代はやはり私たちの世代で決着をつけていかなければならないと思う次第でございます。
小沢(和)委員 公共事業をやめたらそっちから失業者が出るというようなことも言われました。しかし、我々は、同じお金を使った場合には、大型の公共事業の雇用効果などよりは、私たちが言っているような社会保障とか、あるいは同じ公共事業でも、身近な、もっと中小企業などが受注できるような規模のものをやった方がずっと雇用効果もあるということを言っている。これは実証されているわけです。だから、今のようなことは、私に対する何の反論にもならないということを重ねて指摘をしておきたいと思います。
 これほど失業者に対する手当などを削りながら、同じ特別会計の雇用対策三事業で、勤労者福祉施設などの名目で全国に二千七十カ所もの箱物をつくり大きな損失を生じていることは、私は断じて許せないと思うんです。
 こういう箱物づくりは、高度成長時代、失業者が少なく、雇用保険に巨額の余裕があった当時に始まったと聞いておりますが、ここ数年で情勢が一変しております。それに対応して、施設を処分し、このような事業から手を引くこと自体はよしといたしますが、一施設千五十円とか一万五百円とかは余りにもひど過ぎる。このことは、テレビでも国会でも何回も取り上げられました。
 一体これまでにこれらの福祉施設の建設費は総額で幾らかかったのか、それを全部で幾らで売却をするのか、結局幾らの損失が生じるのか、お尋ねします。
戸苅政府参考人 二千七十カ所の勤労者福祉施設の建設に要した費用でありますが、合計で約四千四百九十八億円でございます。
 それから、全部譲渡したら幾らになるかということですが、まだこれから大型の施設の譲渡を控えているということで、そこは確かなことをちょっと申し上げられなくて恐縮でありますが、平成十五年の二月末までに譲渡を完了したもの、これが千三施設ございます。これは主として中小の施設でございますが、これの譲渡収入の総額は約四億六千万円ということになっております。
小沢(和)委員 今のお話でも、四千何百億かけて、今現在だけれども四億の売却の額しか出てこない、これは本当にひどい話だと思うんですね。
 この二千七十カ所の勤労者福祉施設をつくったのが雇用促進事業団であり、その業務は、雇用能力開発機構に引き継がれております。この引き継ぎのとき、今後は新たな施設の建設はやめる、既存施設は売却するとの方針に転換したということです。
 これまで、雇用促進事業団や雇用・能力開発機構の理事長は歴代労働事務次官の天下り先でした。理事などにも多くの、いわゆる高級官僚と言われる人たちが天下っております。理事長の年報酬は、九八年度は二千六百六十四万円、理事は二千四十三万円だったというんですが、さらにその上、退職金は一億円を超えると聞いております。
 その高額ぶりに唖然とさせられるわけでありますが、これだけの巨額の損失を生じたことについて、政府か、こういう事業団などの関係者の中で、だれか責任をとった人がいるのでしょうか。
戸苅政府参考人 勤労者福祉施設、これまで長年にわたりまして地域の勤労者のための公共施設として利用され、勤労者の福祉の向上に役立ってきたところであります。
 さらに、大部分の施設については、設置しております自治体におきまして、公的な主体ということですが、に譲渡いたしまして、これまでの政策目的をできる限り引き継ぐ形で公共目的の利用に供していただくということになってございまして、そういった意味で、雇用福祉事業としての国の出資がむだになるというものではないんじゃないかというふうに思っています。
 したがって、建設費と譲渡価格との差額、まだ確たることは申し上げられませんと申し上げましたが、それでも建設費の方が上回ると思いますが、これをもって損失だと直ちにいうことにはならないんじゃないか、こう思っております。
小沢(和)委員 勤労者福祉施設の大部分は県や市町村からの要求に応じて建設された体育館などであり、それ自体を無意味とかむだとか言うつもりはありません。しかし、こういうたたき売りみたいなことによって膨大なむだを生じた責任、このことは私は否定できないと思うんです。
 私、最大のむだとして、これだけはどうしてもきょう具体的に言いたいと思うのは、神奈川県小田原市に建設されたスパウザ小田原であります。
 これもテレビで放映されたので、私も驚いて現地に行ってみました。確かに大変な豪華施設でありまして、私が昔外国映画で見た、海を見おろす高台にある億万長者用の白亜の殿堂のようなリゾートホテルであります。これが勤労者用の福祉施設と言えるのかと我が目を疑った次第であります。
 当初建設費四百五十五億円、これに対し年間収入わずか二十四億円程度では、雇用保険から投下した資金を回収できるはずがありません。初めからそういうことを度外視して、とにかく思い切りデラックスなものをつくろうという計画だったんじゃないんでしょうか。
 厚生労働省は、スパウザ小田原はかなり利用者がおり、平成十一年度からは黒字に転換したと私に説明したのですが、それは、小田原市への固定資産税二億四千万円、庭の手入れ代六千万円、運営受託金二億二千万円なども、機構、つまり雇用保険が負担して、見せかけの黒字を出しているにすぎないと思うのです。もし本当に民間並みに建物などの減価償却費、職員の退職金引当金などもきちんと計算したら、年間どのぐらいの赤字になりますか。
戸苅政府参考人 スパウザ小田原については、勤労者の方の福祉の向上ということで、勤労者の方がスパウザ小田原を利用する場合の利用料金を低廉にしようというふうなことで、施設利用補てん金あるいは固定資産税等につきまして当分の間雇用・能力開発機構が負担するということで、これまで運営をしてきているものでございます。
 御質問の件でありますが、平成十三年度の決算につきまして、その収入から施設利用補てん金約二億二千万円を除き、さらに固定資産税等の、等の中には都市計画税が入ってございますが、固定資産税及び都市計画税の約二億六千万円、これをスパウザ小田原の方で負担するというふうに考えますと、収入が約二十四億二千万円、支出が約二十八億九千万円ということで、約四億七千万円の赤字ということになります。
 それから、もう一つちょっと申し上げますが、平成十四年度の上半期について申し上げますと、これはスパウザ小田原の方でもかなり収入の増加、経費の削減に努力しておりまして、同じような計算方法で行いますと、収入が約十三億三千万円、支出が約十三億四千万円ということで、赤字は約一千万円程度というふうなことでございます。
小沢(和)委員 いや、私は、民間並みに建物などの減価償却費とか職員の退職金引当金などもきちんと計算したら年間幾らの赤字になるかとお尋ねしたんですよ。そういう数字があるなら、次の質問にまとめて答えていただきたい。
 スパウザ小田原は、開業してまだ五年ですが、その間にも既に維持修繕費が五億円かかっております。これから毎年かなりの維持修繕費が必要になるでしょう。今後ますます赤字は膨らんでくると思います。
 民間並みの経営で成り立つように、この施設を収益還元法で評価してもらったら、十六億円という数字が出たというんです。四百五十五億円かけた施設が十六億円にしか評価されなかったというので、これも驚いて、その内容を聞きました。それによると、年間売り上げ二十四億円を二十九億円まではふやせるだろう、人件費や維持費などを二十七・五億円に抑えれば償却前収益が一・五億円出ることにして、十六億円という評価額をはじいております。
 減価償却費などを見ないでこの程度ですから、十六億円というのは大甘の数字に違いないと思うのです。とても民間ベースでは経営できないという施設なんじゃないんですか。
戸苅政府参考人 まず、退職給与引当金でございますが、これは先ほど申し上げました支出の部の中に含まれております。それから減価償却費でございますが、これは試算いたしますと約十億八千万円ということでございますから、これをつけ加えますと、先ほど平成十三年度で申し上げますと約四億七千万円に、十億八千万円、合計いたしますので、十五億五千万円の赤字、こういうことになるのではないかと思います。
 それからもう一点でありますが、今回のスパウザ小田原の譲渡に当たりまして二社の方に鑑定をいただいて、ほぼ同じような数字になっているところでありまして、そういった意味で、民間で経営した場合にどのくらい収益が上がり、それから利回り等が年間どのくらいということを計算した上での数字が十六億ということでありますので、我々としては、民間で十分な経営努力をしていただければ収支は均衡するような運営は可能なものではないか、こういうふうに思っています。
小沢(和)委員 平成二年にこの施設を建設することが決定されたというのですが、当時はバブルの絶頂期だったから、そういうことがまかり通ったかもしれません。しかし、平成六年に着工されたときは、既にバブルがはじけ、失業者は平成二年の百四十二万人より五十万人以上も多い百九十四万人に増加しておりました。なぜ、その当時、再検討しようということにならなかったのか。
 その後も、平成十年開業までの四年間の建設期間中にさらに不況が深刻化し、失業者は二百四十六万人に急増しております。雇用保険財政も急速に悪化し始めた。こういう中で、労働省の中でだれ一人この計画を中止あるいは縮小しようということを考えなかったのでしょうか。
戸苅政府参考人 スパウザ小田原は、日本経済も成熟化したという中で、欧米並みに四十時間労働を実現し、あるいは年間千八百時間を目指そうというふうな動きの中で、労働時間短縮あるいは余暇活動の充実というために、心身のリフレッシュを図ろうということでつくったわけであります。
 当時は、今申し上げたような労働時間の短縮の動き、それから、あわせて、プラザ合意の後で、日本の経済運営自体が内需の拡大をしようということで、リゾート法もつくられるという中で、スパウザ小田原構想が推進されたということがスタートであったろうと思います。
 その後は、確かに委員がおっしゃるように、バブルがはじけ、雇用情勢も厳しくなりというような状況があったわけでありますが、設置決定後の経緯を申し上げますと、平成元年度に用地を取得し、二年度に基本設計をし、五年度には土木工事、七年度には本体工事を開始したということでありまして、経済情勢の悪化、雇用情勢の悪化はあったわけですが、一方で週四十時間労働が実現されるということで、施設の設置目的にしておりましたその必要性といいますか、そういったものは依然として認められていた。それから、今申し上げましたように、逐次工事も進捗していた、それから地元への影響も考えざるを得なかったというふうなことで、そのあたりを考えまして、途中中断は適切でないというふうに考えたものであります。
小沢(和)委員 今になって慌てて地元の小田原市にこの施設を八億円で押しつけようとしております。小田原市にとっても本当は迷惑な話だったはずで、一たんは断ったというんですが、当然だと思います。幾ら小田原市が地元といっても、こういうホテルなどのレジャー施設の経営が本来の自治体の仕事であるはずがありません。
 党が市民にアンケート調査を行ったところ、市の財政自体が赤字なのにそんなお金があるのですか、大切な税金をもっと他のことに使ってほしい、スパウザ小田原は市民の私でも行ったことがありません、小田原市が八億円で購入しても何の利益にもならないと思いますなどの声が多数寄せられております。国として、こんな施設を市に引き取らせるどういう大義名分があるのか。
 四百五十五億円のものを八億円で買えば、ぼろもうけのように思われるかもしれませんが、小田原市にしてみれば、これまで毎年入ってきた固定資産税二億四千万円が入ってこなくなるだけでも大きなマイナスです。さすがに同市も、これを直接市の責任で運営すべきでないと考えたとみえて、今委託先を募集しております。四月初めにホテル関係などの九業者が応募して運営のプランを出し、近くこれを審査すると聞いております。
 しかし、私は、小田原市にこれ以上の迷惑をかけることには反対です。厚生労働省がこういう関心のある業者と直接売却交渉なりを行って処理すべきではありませんか。みずからが引き起こした不始末は自分の責任で片づけるのが世間の常識ではないでしょうか。
戸苅政府参考人 スパウザ小田原を初めといたします勤労者福祉施設につきましては、行政改革の中で、特殊法人あるいは独立行政法人がもう運営するのは適切でないということで、譲渡を進めようというのが政府の方針であるわけであります。ただ、これらの福祉施設については、雇用保険三事業の保険料を財源にいたしまして、勤労者の福祉の向上のために設けた施設でありまして、先ほども申し上げましたが、譲渡する場合にも、今後とも広く勤労者、さらには国民の方の利益に供される公共的な施設として用いられるということが我々としては重要ではないかというふうに考えておるわけであります。
 それから、あわせまして、これらの施設、スパウザ小田原もそうなんだろうと思いますが、地方自治体からの要請を受け、あるいはその協力を得ながら整備、運営をしてきたということでございます。
 スパウザ小田原に限って申し上げますと、周辺の取りつけ道路等周辺環境整備は、小田原市あるいは神奈川県がみずから負担をしてやっていただいたというふうな経緯もございます。そういったことをいろいろ考え合わせまして、地元の自治体に譲渡の打診を行ったところでありまして、地元では、今先生がおっしゃいましたように、いろいろな御意見があるのは事実でございます。
 ただ、小田原市として、市民の方、あるいは市議会の方々、あるいは経済界の方々、各方面の意見を踏まえて、今回、スパウザ小田原を引き受けるという方向で今検討が進められているというふうなことでございまして、我々としては、譲り受けていただいた後のことについて我々がとかくのことを申し上げるというよりも、基本的には、譲り受けた自治体がみずからその運営のあり方を考えるということが、あるいは考え、決定するということがやはり基本で、その意向を尊重するということであろうと思います。
 ただ、我々としても、市の方で、厚生労働省として何らかの協力をお願いしたいということであれば、そこは前向きに対応するということでやってまいりたいというふうに考えております。
小沢(和)委員 私は、ホテルの経営などというのは自治体の本来の仕事じゃない、小田原市にこれ以上迷惑をかけなさんなということを言っているんです。
 それで、時間も来たようですから、せっかく民主党に質問をするというふうに言っておりましたので、簡潔に申し上げますから、ひとつお答えいただきたい。
 第一に、失業等給付資金を新たに設け、これに一般会計から二兆円を拠出するという提案には、私どもは全面的に賛成です。これは失業者に手当等を保障する有力な財源になりますし、そうすると、政府案に盛り込まれている手当額の引き下げなどを行わずに現行水準を維持できるようになるはずだと思うんですが、この法案ではその点直接触れていない、その点、どうお考えか。
 第二に、求職者等能力開発支援制度を創設し、一定の要件を満たす失業者だけでなく、さらに自営業等廃業者にも適用するという提案ですが、これにも賛成です。一つだけ疑問は、農林漁業廃業者など、もっと対象にしなければならない人々がほかにもいるのではないか、そういう人々もカバーできるように規定しておいた方がいいのではないか。
 以上、二点です。
大島(敦)議員 小沢委員には、私たちの民主党案に対して御賛同いただきまして、まことにありがとうございます。手短に答えさせていただきます。
 まず一問目なんですけれども、民主党案では、労働保険特別会計に失業等給付資金を設け、一般会計から二兆円程度の繰入金を投入していくこととしております。これにより、保険料率を引き上げることなく現行の給付水準をしっかりと維持することができるものと考えております。したがいまして、今まさに小沢委員がおっしゃったとおり、政府案のように、雇用保険法を改正し、手当額を引き下げる措置は不要ということであります。
 もう一つの御質問でございまして、農林漁業廃業者に対する考えなんですけれども、今回の民主党案というのは、政府の、不良債権処理を加速しておきながら有効なセーフティーネットがないこと、あと、先ほど小沢委員が御質問の中で御指摘されましたとおり、現行の経済の悪さ、あるいはデフレというのは政府の経済の失政と考えておりまして、したがいまして、今回の措置は臨時的な支援措置と考えております。したがいまして、農林漁業廃業者の問題につきましては、産業構造の長期的な問題もございますので、長期にわたり政府が何ら有効な手だてを講じてこなかったのが原因であると考えております。
 したがいまして、農林漁業廃業者の方々につきましては、若年者など、今回の緊急措置の対象となっていない方々とあわせまして、雇用政策全体の枠組みの中で、また雇用保険制度の抜本的見直しの中で有効な支援策のあり方を検討し、別途方策を打ち出すべきであると考えております。
 以上でございます。ありがとうございました。
小沢(和)委員 ありがとうございました。
 終わります。
中山委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 皆さんも、本日の長時間の審議、大変御苦労さまです。そして、法案の審議に入ります前に、二つの事項にわたって、特に坂口厚生労働大臣に厚生行政全般にかかわる視点からの御答弁をお願いしたい点がございます。
 一点は、せんだって三月十三日に大阪地裁で判決が出ました三種混合、MMRワクチンのワクチン禍に関しまして、地裁での判決は、そのうち二名についてはメーカー責任並びに国の責任を認め、一名についてはインフルエンザ脳症との区別がつきがたいという判決を得ておりますが、その後、このインフルエンザ脳症と区別がつきがたいと言われたケースについても、阪大微研の方が和解という形で補償を行うというふうな形に進行しております。
 このMMRワクチンのワクチン禍と申しますのは、実は私は一九七四年に小児科医になりましたが、一九七五年に大きく問題になった百日ぜき、破傷風、ジフテリアの三種混合ワクチン、これも非常に重篤な後遺症を残しまして、三百八名が被害認定されておりますが、この案件を上回る千六十五人の被害認定がございまして、日本のワクチン接種のもたらすさまざまな問題においても、極めて重要な位置を占めている事例であるとは思います。
 そして、八九年の四月に接種が始まってわずか半年、六カ月たちましたところで、福島県から重篤な事例、死亡例、髄膜炎、難聴が報告されておりまして、これも厚生省が既に報告を受けておりながら九三年の四月まで接種が継続されて、千六十五人と非常に多い被害が生まれました。
 また、ワクチンの製造においても、阪大微研が製造方法を変え、そのことがまた髄膜炎等の発生を高めたのではないか。あるいは、八九年の十月にはカナダで既に、同じ使われた株、占部株と申しますが、これの問題が指摘されておった。
 どう見ても、安全性、それから国民へのアナウンスメント、そして製造過程でのさまざまな問題、いずれをとりましても、厚生行政、ワクチン行政、予防接種行政の汚点と思われますが、この事案について、さきに厚生労働省は、私ども四野党の申し入れにもかかわりませず控訴なさいました。私は細かい点については追ってこれから問題にしていこうと思いますが、この控訴を受けて、今、小児を持つお母さんたちの間では、予防接種というのは、何か起こっても国はこういう形で逃げてしまうんだと、非常に不信を強めておる現状がございます。
 坂口大臣に、まずこの控訴問題、そして予防接種への信頼性ということについて、及ぼす影響についてどのようにお考えか、お願いいたします。
坂口国務大臣 MMRのワクチン訴訟につきましては、経過は今御指摘のあったとおりでございます。
 大阪地裁判決が出まして、その中では、国の行政上のいわゆる法的義務違反というのは認められないということになっていたわけでございますが、しかし条理上の監督義務がある、こういうことになっておりまして、私もいろいろと勉強をしたわけでございますが、法律上の義務違反はない、しかし条理上の監督義務があるということになりますと、これは、これからの裁判におきまして、どんな法律をつくりましても、法律上はないけれども条理上の監督義務があるというふうに言われるとこれは一体どうなるのだろうか、これは法律上、全体としての位置づけから見てどう考えるべきかということを私も勉強したわけでございます。
 法務省にもお聞きをしましたところ、今までにも、法律の条文を示しながら、ここについて条理上の監督義務が認められるといったようなことはあったようでございますけれども、いわゆる条文を何ら示さずに、ただ漠然と条理上の義務があるというような判決は今までなかったということだそうでございます。
 そうしたことを受けまして、このワクチンの問題は厚生省にとりましても大変大事な問題であり、そして、国民の皆さん方にとりましても重要な問題でありますだけに、早く決着をつけたいという気持ちも率直にございましたけれども、しかし、こうした判決の内容を見ましたときに、あいまいにしておいてはやはりいけない、高裁におきましてもう一度その内容を精査していただき、そして法律的な解決もつけていただきたい、そんな意味で控訴をさせていただいたところでございます。
 このワクチンにつきましては、これからも続いていくわけでございますし、大変大事な問題であり、そして副作用を起こさないようにしていかなければならないことは当然でございますが、ワクチンというのは、ワクチンに限らずでございますけれども、この副作用を全く皆無にするということができればそれにこしたことはございませんけれども、どうしても、人それぞれの体質が異なります以上、若干つきまとうということもあるわけでございます。
 したがいまして、そうした問題を、これから国として、ワクチンをやっていくのが妥当なのか、それとも、そうしたものがつきまとう以上、これは個々の意思に任せるべきものなのか、そうしたことも含めながら、これからこの問題に取り組んでいかなければならないと思っているところでございます。
阿部委員 今、二点にわたってお答えですが、条理上という表現があいまい性を含むと。
 しかしながら、先ほども申しましたように、より大きな判断に立てば、どうやって本当に幼い子を持つお母さんたちに安心してワクチンの接種を受けていただけるか、この信頼性を失うことの大きさの方が私ははるかに大きいと思います。
 そして、大臣はお気づきでありながらわざと後段の答弁をなさったのかもしれませんが、実は、このワクチン自身は、予防接種にはいろいろな被害があり、予測できないものもあるやもしれません。それは認めますが、ワクチンの製造過程で明らかに違う製造方法をとり、抗体価を高めたいがために製造方法をある種勝手に変更して問題が生じておる、あるいは、既にカナダで報告があるのに打ち続けた、あらゆる面で本当に失態の相次ぐ、そしてワクチンの期限切れまで使っておった、どういう観点から見ても国に勝ち目はない裁判だと思いますから、追ってまたこの場でも問題にさせていただきたいです。
 もう一点だけ。
 この千六十五名について、髄膜炎も含めていろいろなケースがございますが、国としてはどのような、いわゆる後遺症調査ですね。髄膜炎と申しましても、そのとき髄膜炎で、後、治って何ともないと思っても、年月を経て、てんかんが起きたりもいたします。この千六十五名について、大臣は今後、これは事務方ではなくて、政治的なことで伺っておりますので、私は、そうした責任姿勢がないと、さっき申しましたように、親たちは、ワクチン禍が起ころうと何しようと、裁判を起こそうと、国だけはまた控訴し続けるんだと思っておるわけですから、国の政治姿勢として千六十五人に対して、例えば特別なチームを設けてフォローするもあり得ることですし、最大のワクチン禍ですから、どのようにお考えか、お願いいたします。
高原政府参考人 千六十五人というのは、MMRで予防接種法に基づく救済制度の適用となった患者数であると承知しております。
 この救済制度は、不可避的に発生する医学上の副反応被害にとどまらず、予防接種を受けたことによる健康被害を広く対象としておりまして、これにより広範な被害者救済を行っておるわけでございまして、MMRワクチンの訴訟も現在係争中でございますので、これに関する答弁は差し控えさせていただきたいと存じますが、必要に応じ、そのフォローアップというふうなものは考えてまいりたいと思います。
阿部委員 高原さんの今のような答弁で、本当に予防接種行政を国民が安心して受けてくれるかどうか。今、インフルエンザの予防接種禍の問題も随所で起きておりますから、あわせて今後問題にさせていただきますが、千六十五人以外にも認定漏れあるいは可能性のあるというケースもございますし、一つだけ明らかに厚生省として考えていただきたいのは、最大規模の、もちろんその以前に種痘の問題がございますが、以降、最大規模のワクチンの被害であり、本当に行政上はあってはならないことであったという点にかんがみて、きちんとした責任ある行政を心から望むものです。
 いま一点、お願いいたします。
 臓器移植関連ですが、既に先回、先々回お伺いいたしましたが、これまで行われた臓器移植関係で二例の人権侵害勧告が出ておりまして、三月十三日、三例目、古川市立病院の事例で、またもですが、脳死判定の手順の問題、いわゆる政令で定められているものと違って、無呼吸テストも、カロリックテストといって水を耳に入れて見る前庭機能反射のテストも政令に従っていない、著しい人権侵害であるという三例目の人権侵害勧告が出ました。
 この件も、実は坂口厚生大臣には私はこれまで何度かお伺いいたしましたが、やはり脳死臓器移植ということを人権という観点からきちんと見ることは極めて重要であるという御指摘をいただいていますので、きょうは具体的な提案ですが、今、臓器提供施設になっている各施設、もう四百を超すと思いますが、三例の人権侵害勧告が起きたという事実を各施設に周知徹底させていただきたい。
 と申しますのは、つい去年もそうですが、和歌山でもやはり脳死判定手順の間違いがあり、三時間後にまた再検査。しかし、三時間そのまま放置されたら、死にどんどんどんどん近づく一方で、救命措置はなされない。極めて現場は人権侵害の累々たるしかばねとなると思いますから、かかる三件、人権侵害勧告があったということを各臓器提供病院に周知徹底していただきたいですが、大臣の御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 臓器移植につきましては、特に初期の事例につきましては、いろいろの手続上の問題があって、混乱があったようでございます。公衆衛生審議会の臓器移植専門委員会におきまして、御指摘の事例を含めた四例目までの事例の個別検証を行っております。
 その後、その検証の結果を踏まえて、脳死判定基準の確認方法等を明確にするために、平成十一年九月に脳死判定マニュアルの取りまとめを行って、今日に至っております。それは御承知のとおりでございます。
 三例の問題につきまして、この検証会議におきましては、この手順を誤っていることはないということでございました。
 しかし、初期の段階のことでございましたしいたしますので、この検証会議の結論はこういうことでありますけれども、しかし、これからおやりをいただくような病院におきましては、その誤りのないように、初期の段階のときに戸惑ったようなことのないようにといったことは、これはそれぞれの病院に対しましてこれからもよく言っていかなければならないことだというふうに思っている次第でございます。
阿部委員 今、大臣、初期とおっしゃいましたが、先ほど私が挙げた二〇〇二年の十一月、和歌山の事例もございますので、現場では周知徹底されておらぬということを御理解いただきまして、やはり人が本来助けられる場の医療ですから、急がれてドナーとなることのないように、周知徹底をお願いいたします。
 本来の質問に入らせていただきますが、先ほど来、武山委員と小沢委員の質疑を伺いながら、極めて重要な御指摘があったと思いますので、質問予告以外のことですが、冒頭、いわゆる雇用保険三事業の中で、雇用福祉事業関係について、これは大臣に御答弁をお願いいたします。
 武山委員が先ほどお聞きでありましたのは、人間だれでも、失業等々いたしますと、そのときの気持ちの混乱、あるいは新しい職が見つかるまでの不安、さまざまに、家族問題もゆがんでくる。その中で、例えば、ハローワークのようなところにそれなりの相談窓口、それは心理的なカウンセリングも含めた相談窓口を設けたらどうかという御発議で、それに対して鴨下副大臣が、労災病院、例えば横浜労災等ではそういう窓口もあるしという御答弁ではありました。
 ただし、失業されて医療保険を失っている場合もございますし、大臣が日ごろおっしゃいますように、今、雇用労働環境、非常に大きく揺れ動いています。特に、日本は終身雇用という仕組みの中でずうっと、ある種の精神的安定、経済的安定を得てきた国であります。そのことが、今大きく変わらざるを得ない。外圧にもさらされ、また、みずからの内からも新しい働き方を求めていこうという考え方もあり、非常に価値観のはざまにある時期だと思います。
 そして、先ほど戸苅局長お答えでしたが、ちょうど高度経済成長期、勤労者への福祉として、あの巨大な、でっかくてすばらしいスパウザ小田原をつくられたと言いましたが、今、勤労者のための本当の福祉といった場合には、私は、この揺れ動く価値観の中で、やはりハローワーク、そうしたところにきちんとカウンセラーを常備する、このことが、実は、雇用保険三事業の中の雇用福祉事業のいま一本の大きな柱となってもいい。
 大臣もお医者様ですからよくおわかりでしょうが、病院に、例えば精神科に、あるいは心療内科に行くまでもなく、もうほとんどの失業された方たちが心にうつ的なるものを抱えるのは病気以前の段階で、もう当たり前のことになっております。その中で、雇用保険三事業、私は、もう巨大な建物も要らないし、それを押しつけの、ごみくずみたいに売っ払うのも間違っていますが、雇用保険三事業の中の勤労者の福祉事業の中に、ぜひともカウンセリングという側面を入れていただきたい。
 以前に一回質問したことがございましたが、きょう、武山委員が非常にお時間をとって詳しく御質疑でありましたので、その質疑も聞いていただいた上で、これは実は大臣の英断だと思うのです。新たな柱を立てるという意味で、恐縮ですが、再度、今の問題で御答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 失業者の皆さん方、あるいは職を求めておみえになります若い皆さん方の健康問題をどうしていくかということは、これは大事なことだというふうに思いますが、ただ、今御指摘をいただきましたようにハローワークにそのことをやれということになりますと、そういうことの判断のできる者は一人もいないというとおしかりを受けるかもしれませんけれども、ほとんどいないわけでございます。さて、それを、各ハローワークにそうした健康問題まで相談に乗れる者を配置することができ得るであろうかということは、率直に言って、ちょっとそこまではできるかなというのが私の偽らざる気持ちでございます。
 したがいまして、失業をなすった皆さん方の健康問題でありますとか、あるいはこれから職を求めようとする若い皆さん方の、まだ就職をしておみえにならない皆さん方、そうした皆さん方の健康をどこがどのように御相談に乗るのかということは、これはしっかり考えていかなきゃならないというふうに思います。
 先ほど武山委員にもお答えを申し上げましたけれども、割り振りとすれば、それは地域で御相談に乗るということ以外にないわけでございますが、地域と職場という二つの割り切り方だけでいいかどうかといったことにつきましては、これは厚生労働省になったわけでありますから両方を見ているわけでありますので、そのあり方というものにつきましては少し検討させていただくということでどうでしょうか。
阿部委員 鴨下副大臣にも先ほど御答弁いただきましたし、ただ、やはり地域の病院にかかるというのは、会社の方はもうやめちゃっていたりしますから、なかなか企業の産業医のところには行けませんし、地域の病院にかかるまではいかなくても、本当に九割以上がうつだと思います。仕事がなくなってるんるんという場合はないわけですから、ぜひとも大臣、副大臣、知恵を寄せ集めて、柱を立ててくださるようにお願い申し上げて、次の質問に入らせていただきます。
 今回の雇用保険法の改正は、保険料の料率もアップ、給付も下がる、踏んだりけったり改正ではございますが、しかしながら、財政が苦しいんだよと言われれば、失業者もふえておりますので、それもまたさはありなんと。
 そうした場合、何を考えるのが一番普通の考え方かというと、いわゆるセーフティーネットとしては、より多くの方がそのネットにかかわってくださる、みんなで渡れば怖くないと。加入者をどうあっても多くしていく、そして、本来加入の要件を持ちながら加入していない方を積極的に加えてネットの網を安定なものにしていくというのがやはり一番常套的な考え方だと思うのです。
 そこでお伺いいたしますが、まず私立大学の皆さんについては、適用状況を見るとわずか一五・六五%と極めて低い状況にございます。これは五年間でもほとんど、五%から一五に上がったとはいえ、非常にまだ低い状態が続いておる。ここを、九万人相当おられると思いますから、このことについて、どのようにネット拡大の努力をしておられるか、御答弁をお願いします。
戸苅政府参考人 おっしゃられるとおり、とにかく、雇用保険の適用になる方には確実に雇用保険に加入いただいて雇用保険料をきちんと納めていただくというのは、これは欠かせない財政健全化の条件だろうというふうに思っています。
 そういった意味で、今御質問の私立学校の教員の方でありますが、これは法律上、当然に雇用保険の被保険者になるわけであります。そういったことで、従来から私立学校に対する加入勧奨等には取り組んできたわけでありますけれども、学校の教員の方の場合、失業するという切迫感というのがなかなか現実のものとしてないということもあって、余り進んできていなかったというのもまた事実であります。
 そういったことで、平成十三年の十二月に総合規制改革会議の中で、私立学校教員等について雇用保険への加入を速やかに促進すべし、こういうふうな動きがございまして、これを受けまして、同じく平成十三年の十二月に厚生労働省として地方に通達を出しまして、私立学校に対して、雇用保険に加入するようにという文書の送付、それから学校訪問によります加入勧奨を全国一斉に行ってきたということでございます。
 加入の状況は今御質問のとおりでございますが、最新の数字をちょっと申し上げさせていただきますと、平成十四年の十一月には一六・六%というところまで上がってきているということであります。
 ただ、正直言って、これで十分という水準ではございません。そういった意味で、こういった低水準をいかに解消していくかということでございまして、これにつきましては、平成十四年の三月に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画でもうたわれておりますので、それから、この雇用保険の制度の改正を審議いただいた労働政策審議会の職業安定分科会の報告においても、公労使一致して私立大学を初めとする未適用の事業所への適用促進を着実、迅速に進めるようにということでございます。
 これを踏まえまして、私立学校教員への雇用保険の適用について、今後さらに実効がきちんと上がるように、積極的、継続的に取り組んでいきたいというふうに考えています。
阿部委員 ぜひそうしていただきたいと思います。一五%や一六%では、幾ら私立大学の教員だから失業しないといっても、これから子供の数は少なくなり、大学も倒産の危機はいっぱいあるわけですから。
 それといま一つ、いわゆる国立大学、独立行政法人化されました場合に、これまでは公務員に準じていた職員の人たちが、今度は独立行政法人の職員だという形で、この方たちも雇用保険適用になると思いますが、その総数と、その方たちが雇用保険に加わった場合の収入増についてお答えください。
戸苅政府参考人 今回の国立大学の非特定独立行政法人化に伴いまして、国立大学の教職員の方も雇用保険の適用対象になるということでございます。
 保険料率一・四%ということを前提にいたしまして、年収がどのくらいかというのはあるんですけれども、厚生労働省の毎月勤労統計で計算しますと大体年収四百万強かなと、こう思いますので、仮に四百万ということで計算いたしまして、何名の方かというのは、ちょっと私ども、十三万四千人程度と伺っていますので、それで機械的に計算いたしますと、約七十五億円の収入増ということになると思います。
阿部委員 先ほどの私立大学の教員の方とあわせて、繰り返しになりますが、基本的にセーフティーネットを広く張るということに尽力いただきたいです。
 あともう一点、これはいろいろデータを出してくださいと申し上げましたが、なかなか当局から御答弁がいただけませんで、いわゆる事業者数、一人以上の従業員を雇った事業者数を数え上げて、その中の従業員数を数えて、一体どのぐらい雇用保険でカバーされているのか、カバー率というと言えないというお答えではありますが、今後、本来は雇用保険の中に組み入れられるであろう方たちで、まだ現状ではそこに加入しておらない方たちをどのくらいと踏んでおられるのか。
 それで、もう一点伺いたいのは、やはり男性よりも女性の方が加入率が悪い。これはパート等々で二十時間以内の方もおられますから一概には言えませんが、本来、自分が加入要件を持ちながら加入していない方も多いのではないかと思うので、男女共同参画という視点から見ても、女性たちの加入ということはこれからどのように働きかけていかれるのか。その二点、お願いします。
松崎政府参考人 労働保険、特に雇用保険の適用の関係だと思いますけれども、このカバー率といいますか、これは、先生は実際の雇用保険の被保険者の数と、それから例えば総務省でやっております労働力調査によります労働者数、そういったものを比較されてのことかと思いますけれども、これはもともとといいますか、雇用保険の被保険者となる方については要件がございまして、例えば最近ふえておりますパート労働者の方、短時間労働者の方につきましては、労働時間が二十時間以上であり、かつ一年以上の雇用が見込まれるといったような要件がございます。そういったことから、対象が違いますので、一概に比べることはできないんじゃないかというふうに考えております。
 それから、女性についての話でございますけれども、これについても、すべて原票をチェックしておりませんので、そういった数字は手元にはございませんので、御容赦願いたいと思います。
阿部委員 何でもそうですが、セールスとか、物を成り立たせようと思うと、どこに芽があるか、どこに必要性があるか、そしてどういう働きかけをすれば、とにかく、セーフティーネットである限り、社会みんなで支えていかなければ成り立たないというのが原点ですから、何度かこの件は部屋で質問取りをしましたが、わからない、把握できない、複雑だ、いろいろ御託は並ぶんですが、そこからも芽をとっていかなければ物は拡大いたしませんので、行政当局としてきちんとした対応をお願いしたい。
 さらに、そういう加入要件がある方に働きかける部署、労働基準監督署の中で、先ほど私立大学にも働きかけておるとおっしゃいましたが、その労働基準監督署の中にも、必ずしもそういうことに携わる人員、要するに、労働基準監督署の仕事量のことも私は詳細には存じませんので、行政当局としていろいろ仕事量を考えられて、本当にこの加入者をふやすためにどれだけの人的配置をしたらよいか、そのことについてもきちんと御検討いただきたいと思いますが、これは漠然とした問いで恐縮ですが、大臣にお願いいたします。
坂口国務大臣 必ずしも今の御質問の趣旨を十分に把握できなかったところはありますが、この保険に加入をしている、していないということがなかなか十分にわかりにくい面は率直にあるんですね。特に女性の場合、お勤めになっております状況によりまして、パートといいましても一概にはなかなか言えない面があって、ここははっきりしにくいわけでございますが、しかし、雇用保険、それから医療保険、年金等の徴収の一元化をこれから進めていきたいというふうに思っております。
 そうした中で、今まで、こちらは入っているけれどもこちらは入っていないというような人も中にはあったりいたしますので、そこは双方相見ながら、大体全部入っていただけるようにしていきたいというふうに思っておりますし、特に女性と年金の問題等が今大きな課題になっておりますし、ここをやはり整理して、パートの皆さん方もやはり入っていただけるようにしたいというふうに思っております。
 そういうことになってまいりますと、パートの皆さん方も、年金、医療、雇用、それぞれお入りいただける体制が整ってくるのではないかというふうに思っております。その辺の整理が大事でございますし、この一年ぐらいの間でそれはやりたいというふうに思っております。
阿部委員 私も大臣と基本的認識は同じで、女性たちが自分なりの収入に応じて保険料を払いながら、社会保障をしっかりと二十一世紀サイズにしていくということは、非常にこの国の未来にとって大事と思いますので、そのようにお進めいただきたいのと、さらに、先ほど申しましたように、さまざまな業務をどこで行うかということはありますが、やはり人手、加入していただくにも人手が必要ですから、その辺も十分な人員を考慮していただきたい。
 先ほど小沢委員の御質問で、保険料を値上げしたり給付を下げる前に一般会計からの財政出動をしたらどうかという御提示、そして、そのことについて政府・与党と、それから民主党案への御質疑がございましたが、それを繰り返す形になりますが、諸外国における社会保障の仕組みを見ましても、労使折半で保険料を払うということ以外に、国がそれなりの財政出動をして、国々で違いますけれども、より広くセーフティーネットを張ろうという動きが各国あると思うのですが、民主党案の一番の売りは何でございましょうか。お願いします。
大島(敦)議員 私たち民主党案で一番大きなところは、今の失業者の方の気持ちに立っているということなんです。
 日本の失業される方というのは、初めて失業される方が非常に多いんです。今の、多分四十代、五十代の方、今回の政府案にもあったとおり、最高限度額を引き下げるというのは、これは初めて失業されるから、次に移る職場の給与が下がるわけなんです。その不安感というのは物すごくありまして、私の同期とかあるいは先輩もこういう状況に置かれておりますから。
 諸外国、アメリカとか転職することが当たり前の社会では、人間として転職することになれていますから、失業したとしても心の準備ができている。私たちの社会ですと、心の準備ができていない方が多いものですから。
 今、どうして一般会計かという御質問がございましたけれども、そこのところは今の経済政策がうまくいっていないと思いますので、その部分については緊急的に政府が一般会計からお金を繰り入れることによって安定化させるということが必要だと思っています。
 特に、これから失業される方の不安感を取り除くということ、やはりこういう施策というのは、要は供給者側の理屈ではなくて消費者側の理屈で立てるべきだと思っておりまして、ですから私たちは、民主党案としては、これまでの一年間の、三百三十日の基本手当の受給日数プラス大体七百三十日の手当を考えております。このことは、一年間ですとあっという間に、多分四十代、五十代の方は、失業された状態に置かれて、焦りだけで過ぎてしまいます。プラス二年間あるということは、焦りよりも、じっくりと今までの会社生活を振り返って、心の準備をして、新しい能力をつけるということ、まだまだ日本人、私たち、五十代の方、四十代の方、六十代の方、可能性があるものですから、その可能性を精いっぱい出していただく施策が、私たち民主党案のポイントですか、売りであるということでございます。
 以上です。
阿部委員 基本的に今の御答弁に賛意を表しまして、最後に一問だけお願いいたします。
 いわゆる研修医問題でありますが、既に参議院で朝日俊弘委員からも御質疑があったと思いますが、新聞紙上報道によりますと、市中病院の当直業務が現状の研修医抜きには回らないために、研修医に当直をやらせる、アルバイト診療をやらせることもあり得るというふうに厚生労働省がお出しになったという新聞報道がございました。
 このことは朝日委員が既に質疑されて、そうした趣旨ではないということは承りましたが、さらにもう一点だけ確認をとりたいですが、研修医が当直することはあると思いますが、単独で当直する、いわゆる単独当直診療というものは行わせないという方針を基本的に厚生労働省として確認していただきたいですが、大臣にお願いします。
坂口国務大臣 今回の研修医制度をつくるということになりましてから、大学病院を初めとする大きい病院は、地方に派遣をしていた中堅どころの医師を次から次へと引き揚げを始めるといったようなことが起こっておりまして、地方の病院にとりましては大変困った事態が訪れているということを最近とみに聞くわけでございます。研修医制度を実施をして、本当にお若い皆さん方がそれぞれの地方に行っていろいろ研修を受けられるということになれば、ある程度、多少は解消されるのかなというふうに思っておりますが、しかし、それは研修をしていただかなきゃならないわけでありますから、中堅の医師の皆さん方がお見えになったのとは大分違うというふうに思います。
 当直の話でございますが、研修であります以上、やはり当直もされて、そして救急医療なるものがどうしたことかということもやはり研修をしていただかなければならないというふうに思います。そのときにもう一人指導医の人も一緒にはたについていて当直していてくれればそれにこしたことはありませんけれども、現実問題としてはなかなかそうもいかないんだと私は思うんですね。しかし、何かがありますときにそのことを手伝ってくれると申しますか、それはこういうふうにするんだということを助言してくれる体制があれば私はいいんじゃないかというふうに思っております。だから、そうした体制をしいて、いかなる時間であろうとそういうふうにするということが大事じゃないかというふうに思います。
 私なんかもやりましたけれども、正直言って、聞く人がいなくて、どうしたらええかと思って別の部屋へ行って本を見ても、急にはわからないというようなことが再三ございましたけれども、やはりそういう指導医の先生にいざというときに相談できるという体制があれば私はやっていけるというふうに思っています。
阿部委員 電話相談等で、患者さんも診ないで不適切な指示が出ている事例もございます。先ほど問題にした古川市立病院の脳死、ドナーになった方も、研修医がオーベンと言われる当直の先生に連絡されたけれども、来たのが朝の五時で、そこまで放置されて、研修医の単独診療でした。
 非常に医療ミスも多発する中で、今の大臣の御答弁は、私はもう一度改めて伺わせていただきたいと思いますが、やはり基本的にすぐ駆けつけられる距離、そして基本的には院内に当直する体制でなければ、研修医の当直体制を認めれば、結局は労働力としての労働不足を補うため、そして悲しい医療ミスを数多く生むということになると思いますので、さらに検討を重ねて、そういうことのないようにぜひともお願いしたいと思います。
 これで終わります。
中山委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後一時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十一分開議
中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案及び城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として、社団法人日本経済団体連合会常務理事紀陸孝君、日本労働組合総連合会雇用労働局長中村善雄君、中央大学教授大須眞治君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、参考人の皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、発言する際は委員長の許可を受けることとなっております。
 それでは、まず紀陸参考人にお願いいたします。
紀陸参考人 御紹介いただきました日本経団連の紀陸と申します。
 冒頭に、この雇用保険の改正の問題につきまして私どもの考え方を述べさせていただく機会を賜りまして、御礼を申し上げます。
 早速でございますけれども、この時間の中で二点大きく述べたいと存じます。一つは、今回の雇用保険の改正の内容につきまして、私ども産業界としてどういうような評価をしているかという点が一つ、二つ目は、この法案の改正審議、できるだけ早期に御検討賜りまして、早期の成立をお願いいたしたい、その二点でございます。
 まず第一の、今回の法改正の内容について、私どもがどのような評価をしているかという点でございますが、言うまでもなく、雇用保険制度というのは、働く人、雇用者の雇用のセーフティーネットの大きな柱になっております。この雇用保険制度を、非常に財政状況が厳しい中で、安定的に、かつ持続的に運用していくということが非常に大事だというふうに思っておりまして、この運用につきましては、企業経営としても非常に大きな関心を持っているところでございます。
 今回の改正によりまして、五年程度の財政の安定的な運営が確保できるというふうに承知しておりますので、ぜひとも政府案の内容のとおりに、財政収支の悪化のこれ以上の逼迫が起きないように、早急に成立をさせていく必要があるのではないかというふうに思いますが、その場合に、今回の改正の内容につきまして、私どもまず四点ほど申し上げさせていただきたいというふうに存じます。
 その一つは、雇用保険制度というものの本来本当に給付の必要な人に絞っていく、かつ、できるだけ再就職促進の観点から給付の内容を見直していく、この点が第一であろうかと存じますが、今回の改正の内容につきましては、その趣旨が相当に盛り込まれておりますので、その観点からの給付の見直しの促進をお願いしたいというふうに存じます。
 特に、今回の改正案の中で、失業給付の事由によって給付の見直しを図ろうという趣旨が明確にあらわれる点は評価できるかというふうに存じます。倒産ですとか解雇ですとか、そういう事由による離職者の救済を焦点に当てておりまして、それ以外の私的な事由と申しますか、そういう点の給付の見直しを大幅に進めようという点は高く評価できるかと存じます。
 かつ、今般、就業促進手当が創設をされようとしておりますけれども、基本的には、できるだけ長期の失業給付受給という形ではなくて、一刻も早く再就職が促進できるような形での給付見直しが必要であろう。それがこの中に入っておりますので、この点も私どもは高く評価をしていきたいというふうに存じます。
 第二の点は、この給付の内容の見直しにかかわる点でございますけれども、再就職の困難な方々の状況に応じて給付を重点化しよう、そういう施策が入っている点でございます。
 これまで、雇用保険制度の推移を見てみますと、財政的に余裕のありましたかつての時期に、いろいろな雇用給付の、言葉は悪いですけれども、ばらまき的な給付制度がございましたけれども、それを絞って重点的に見直していこうという姿勢がございます。
 特に、例えばでございますけれども、教育訓練給付、これは在職者の方々の教育訓練給付でございますけれども、そういうものを大幅に見直していこう。また、高年齢雇用継続給付というのがございますけれども、これについても見直しが図られようとしております。
 高年齢者の雇用継続給付は、私ども企業経営にとって、この給付の刈り込みという点は非常にデメリットがあるのでございますけれども、先ほどのような全体的な給付の見直しの中で、こういう高年齢者の雇用継続給付の改定というものもやむを得ず評価せざるを得ないなというふうな感じでおります。
 特に、給付の重点化という点におきましては、三十五歳から四十四歳層の方々につきまして、特に解雇、倒産の理由による離職者の方々の給付の日数を厚くするというような措置が盛り込まれております。こういう点は評価できるのではないかというふうに考えております。
 第三でございますけれども、これからは非常に働く人の働き方のニーズが多様化してくる。企業の中においても、雇用の多様化の仕掛けをこれからつくっていかなければいけないと思っておりますけれども、今回の雇用保険の改正におきまして、通常の労働者とパートタイム労働者の方々の給付のあり方を見直そうという姿勢が基本的にございます。
 所定給付日数を、通常労働者、パートタイム労働者の方々のそれぞれの給付日数を一本化する。あるいは、先ほど申し上げました就業促進手当の部分でもそうでございますけれども、パートさんの短時間就労の形での再就職の支援の部分につきましても、一応、就職促進の仕掛けをつくる。さらには、育児とか介護の方々、介護休業をとられている方々、育児休業をとられている方々、また、短時間就労の方々もございますが、そういう方々にも視線を当てて、それ相応の措置をとろうとしている点、こういうのは多様就業型のこれからの社会に適応する改正ではないかというふうな評価をいたしております。
 第四番目でございますけれども、これは保険料の中身の話でございますけれども、平成十三年度、十四年度と雇用保険の引き上げが行われておりまして、今度これがどうなるかというのが私ども非常に関心を持っていたところでございますけれども、昨年、十四年度の補正予算におきまして、先生方の御尽力を賜りまして、早期再就職者支援基金制度が設けられまして、保険料の料率引き上げが一応十五年度、十六年度はないということを賜りました。この点は厚く御礼を申し上げます。
 一応、また十七年度にはその見直し、引き上げというものが予定をされておりますけれども、私どもといたしましては、できるだけ今後二年間におきましていわゆる弾力条項の発動がないような形でもって、早期の改正をお願いいたしたいと存じます。これからまた、いろいろと皆様方に御審議の御負担をおかけするかと存じますが、できるだけ保険料の引き上げの方向に進まないように、でき得れば十七年度も保険料の引き下げの法改正に進むような、積極的な御尽力を賜りたいというふうに存じます。
 大きな柱の二番目でございますが、今の点に関係いたしますけれども、早期の成立の必要性を強調してまいりたいと存じます。
 この改正法の施行がおくれまして一日一日と延びてまいりますと、非常に大きな保険財政の逼迫が進んでまいります。聞いているところによりますと、一日施行がおくれれば一日十四億円ずつ収支の悪化が進むということでございまして、そうなれば、最終的にはまたいずれ給付のカットでありますとか保険料の引き上げとか税金の投入とかということになりますので、できるだけそういうことのないようにしていく必要があるのではないかというふうに存じます。
 衆議院、参議院を通じまして、集中的に御審議を賜りまして、できるだけ早期の成立をお願いいたしたいと存じます。かつ、成立後も施行の準備にやはり時間がかかるでしょうから、そうならないようにできるだけ先生方の御尽力を賜りたいというふうに存じます。
 大ざっぱで、十分な内容ではございませんけれども、先生方の深甚の御尽力、御支援を賜りたいというふうに存じます。どうもありがとうございました。失礼いたしました。(拍手)
中山委員長 どうもありがとうございました。
 次に、中村参考人にお願いいたします。
中村参考人 今御紹介いただきました、日本労働組合総連合会で雇用関係の政策を担当しております中村でございます。
 本日は、このような貴重な機会をお与えいただきまして、本当にありがとうございます。
 現在勤労者が置かれている厳しい雇用状況という立場から、雇用保険法改正案、内閣提出分につきまして、意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、現在の五%半ばに達する厳しい雇用失業状況、それも特に中高年を中心に労働者の責めによらないリストラ等の失業が増大しているという、現在失業構造において進んでいる質的な変化、さらに、現在の状況で申し上げますと、不良債権処理の加速化を含む今後の構造調整策を背景とした雇用失業動向の見通し、さらには厚生年金の支給開始年齢が引き上げられるという勤労者の置かれている状況ということから考えましたとき、改正案につきましては、雇用保険がこのような状況で最もそのセーフティーネットとしての役割が発揮されると期待をされているということのもとで、不幸にして前回の大幅な削減から数年ならずして重ねて大幅削減がなされるというものでございます。この点につきまして、雇用保険制度自身に対する勤労者の信頼や期待を失わせかねないという大きな問題点があるのではないかと思っております。
 特に、基本給付率あるいは日額上限の引き下げ並びに高年齢雇用継続給付の見直しにつきましては、雇用状況の実態というのを十分に見きわめた上で慎重に検討されるべきものと考えておりますけれども、早期再就職の促進でありますとか、再就職時の賃金との逆転現象の解消といったようなことが言われております。このこと自身は、抽象的に取り出すと正しい考え方であるというふうには私どもも思っておりますが、現実の雇用状況ということから見たときに、かなり現実から遊離をした極めて表面的な理屈で、このようなことを前面に立てて、セーフティーネットとしての根幹部分の大幅削減を行うことにつきましては、私どもとしてはこれは極めて問題であることであるというふうに思っております。
 以上が、基本的な私どもの考え方でございます。
 思いますに、今回の改正案につきましてどのように評価、考えるかということのポイントは、やはりひとえに現在それから今後の雇用失業状況の深刻さをどのように認識しておるかということの一点にかかっているのではないか、そこから判断が分かれてくるのではないかと思っております。
 雇用保険制度の維持というものにつきまして、こういう厳しい状況のもとで、受給者の増加ということを前提にして財政的バランスを重視して見ていくのか、それとも、雇用失業構造の変化を前提にした上で、セーフティーネットの機能、役割の維持ということについて重視して見ていくかということなのではないかと思っております。
 焦点の給付率の引き下げの問題について引き直して申し上げますと、いわゆる比較的高い給付をもらっている人々、こういう人たちの増につきまして、相対的に恵まれているのだから全体が厳しい中で我慢してもらうべき者なのだというように考えるか、それとも、現在の失業実態から見て支援の必要性の高い人たちの層であると考えるかということにもなるのではないかと思います。
 もちろん、現実には比較的優雅な方もいらっしゃるだろうと私どもも思っております。また、本当に大変な人もいるだろうというふうに、個別にはそれぞれあると思っておりますが、制度として考えるときに、量的な現実の問題、それから今後の動向を含めて雇用失業状況並びに失業の質というものがどうなっていくかということについての政府あるいは国としての政策判断が、まさしくこの問題では問われているのではないかというふうにポイントとしては考えております。
 連合の見解は、今回の改正案の主要点は、中高年の離職者等に対する給付の大幅な削減ということでございまして、現在の雇用失業状況あるいは将来の動向からして、最も支援の必要な層に対するセーフティーネットとしての機能を著しく損なうのではないかというように懸念をしております。
 お手元に、参考資料ということで、ちょっと大部になりますが、私どもが行った調査も含めまして、現在の雇用失業状況の深刻さを示す資料をお配りしております。時間的な制約もございまして、細かく御説明できませんが、ぜひお読み取りいただければ幸いでございます。
 一言で申し上げますと、現在の雇用失業状況というのは、失業率が高いこと自体問題でありますが、質的にも極めて深刻化の傾向にあるということなのではないかと思います。特に、中高年の方を中心に、倒産、解雇等の理由による失業が急増していること、それから二つ目に、これらの人々は再就職が容易でないことに加えて生計維持面で中心であった人々が多く、まさしく生活問題に直結をしているということであると思います。
 一ページ目のところに労働力調査の資料をお示ししていますけれども、現在の状況は、もう先生方御存じのように、非自発的失業者が百五十三万人、いわゆる自発的失業者の一・五倍の数に達しているわけでございます。下の方に年齢階層ごとの分布が出ておりますけれども、これはやはり中高年層に実態としても集中しているわけでございますし、特に勤め先都合ということの失業者数で見ますると、四十五歳から五十四歳層が二十八万人と一番トップを占めるわけでございまして、定年等が含まれます五十五歳から六十四歳層においても、いわゆる会社都合等が定年等を大幅に上回っているというのが非常に厳しい構造的な実態であると思います。
 二ページ目以降には、私どもの方で傘下の個別組合に実施いたしました雇用動向の調査もあわせておつけをさせていただいておりますが、二ページ、三ページの概要のところで簡単に触れさせていただいておりますけれども、現在の在職者の雇用、職場状況ということにおきましても、いわゆる倒産、解雇等のリストラによる失業がここ数年急速にふえているというのが明らかでございます。
 希望退職を中心に大幅に雇用調整が在職者ベースでも進行しておりまして、ございますように、この一年間でも半数近くの企業で何らかの雇用調整が、とりわけ比較的大企業において、私ども傘下の組合ベースでございますが、進展をしておりますし、特にその中でも、人員削減、失業に結びつく解雇でありますとか希望退職といったものは一割を超える企業で実施をされておる。希望退職をとりましても、規模的に見ましても、従業員数の一割を超える、このような大規模な希望退職が行われておることが報告されておるわけであります。
 また、こちらのお手元の九ページのところに、若干字が細かくて恐縮ですが、表をつけ加えさせていただいておりますけれども、現在の雇用調整の大幅な実施というのが、やはり不良債権処理の問題に絡んで、とりわけ金融機関との関係の動きの中で、解雇、希望退職等が現実に進行しているという傾向が直近特に見てとられるということでありまして、このような動きを見ますると、倒産あるいは解雇、リストラによる中高年の失業ということがこれからの失業問題の中心的な問題ではないかというふうに考えざるを得ないというふうに思っております。
 しかも、中高年を中心に、リストラ等で離職をせざるを得ない人々の再就職というのは、もう先生方御存じのように、非常に厳しいものがございます。
 私ども連合の方では、この二年間で三回にわたりまして、全国の主要ハローワーク前で、失業者、求職者の方々にじかに聞き取りをして声を聞こうという取り組みを行いまして、直近の三度目の結果というのをお手元の資料の十ページ以降につけさせていただいております。
 ここでも出ておるのは、やはり六カ月以上の失業者が四割以上を占めている。連合、三回やったわけですが、短期的にも失業期間の長期化というのが顕著に進行している。特に四十代、五十代の中高年者のところでは、平均で八カ月程度という長期の失業状態の実態にあります。また、失業期間の長い者ほど、解雇や希望退職などいわゆるリストラで失業したケースが多く、これらの人々の再就職は非常に厳しいという実態がこれらの調査で明らかになっているのだろうと私どもは思っております。
 再就職ができない理由につきましては、賃金など労働条件というよりも、むしろいわゆる募集における年齢制限の壁というのが主要要因というふうになっておりまして、そもそも職がないということが実態なのではないかというふうに思います。現在必要なのは、このような雇用失業実態を踏まえた上で、雇用保険というセーフティーネットの機能を強化していくことなのではないかというふうに考えております。
 今回の基本手当の給付削減案につきましては、いわゆる賃金の高い受給者を重点に削減するということで、低所得者への影響は比較的少な目にするという御配慮があったのでしょう。一〇%以上現行給付から削減となる受給資格者の比率というのは二割程度であるというような御説明、試算が出されておりますけれども、今私どもが申し上げた観点で、最も厳しい、支援すべき層になっている人々、再就職が厳しくて、量的にも失業が多く出ている中高年者の部分ということを見てまいりますと、実は四十五―五十九歳層では受給資格者の四分の一、二五%が一〇%以上の給付削減になる。また、二〇%以上の給付の削減になるという人々も一割強存在するということでございまして、これが恐らく、この改正の現実の痛みと申しましょうか、そういうところに当たる姿なのではないかと危惧をいたしております。
 最後に、基本手当の水準自体が決して賃金が高くて楽であるということとはほど遠い実態にあるということにつきまして改めて注意をして、先生方の御配慮をいただきたいと思います。
 さまざまな試算が出されておりますが、一番平均的に、平成十三年のいわゆる全労働者の中心の賃金センサスという賃金統計のデータがございますが、企業規模計で、男女込みで、当然、いわゆる四十歳から五十四歳層の賃金の中位数、要するに一番真ん中、一番スタンダードな方たちと統計的には見てよろしいかと思いますが、水準では大体月額三十五万円程度でございます。日額換算すると大体一万一千八百円とかその程度になると思いますけれども、今回の改正案を当てはめますと、給付率は五二%前後というところになるだろうと思います。そういたしますと、手当額というのは大体日額六千円ぐらい、月額で約十八万ということに改正をされるということでございまして、現行との比較では、手当日額ではおよそ千円、月額では三万、率的には一四%、大部分の人たち、中位のところは一四%の削減ということでございます。
 政府によるさまざまな試算が出されておりますが、当然、受給資格者等の実態データをもとに財政試算したものというふうに思われますが、現在の失業リスクの高まりを考え、いわゆる平均的な部分で考えると、このような水準と姿が現在の雇用保険法改正案の中身ではないのかというふうに思っております。
 失業者の置かれました厳しい実態、また、決して明るくない状況下で不安にさらされておる在職勤労者の立場もあわせまして、先生方の御検討、御配慮を賜りたいということをこの場をかりてお願いいたしたいと思う次第でございます。
 このような場をお与えいただきましてどうもありがとうございました。(拍手)
中山委員長 どうもありがとうございました。
 次に、大須参考人にお願いいたします。
大須参考人 ただいま御紹介いただきました中央大学の大須と申します。
 きょう発言の機会をいただきましてありがとうございました。今回の雇用保険法の改正について私の意見を述べさせてもらいたいと思います。
 今回の雇用保険法の改正は、その提案理由にも述べられていますように、厳しい失業情勢が長期化する中で雇用保険財政が悪化するということで、それが原因であるというふうに言われております。しかし、雇用保険自体は、その法律の第一条の「目的」にありますように、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るという目的になっております。こういう厳しい失業状況の中で、この雇用保険法の目的を十全に果たしていけるかどうか、これが一つの勝負どころになっているのだと思います。
 一方で、失業が長期化するということの中で、確かに雇用保険財政が大変厳しい状況になっていることも事実だと思います。しかし、雇用保険財政がもし破綻するようなことになれば、失業した労働者は雇用保険による手当を受けることができなくなり、生活上非常に困る、こういうことになるわけであります。そういう意味で、雇用保険財政の安定的な運営、これも確保しなければなりません。
 しかし、雇用保険財政の安定的な運営を確保するということによって、失業者に対する第一条の「目的」にある生活の安定や雇用の安定を図るという機能が弱められてしまうとすれば、これは雇用保険財政の安定運営ということと本末転倒の議論になるのではないかと思います。失業状況が悪化する中で、失業者に対する生活の保障、仕事の安定ということは非常に切実な問題になっているわけであります。そうした点で、今回の雇用保険の改正の中身を検討してみるということが必要だと思います。
 まず大きいのは、基本手当の給付率及び上限額の問題であります。
 給付率については、これまで八〇%から六〇%という規定でありましたが、今回、八〇%から五〇%にまで引き下げる、こういうふうになっておりまして、幅が広げられたということになっております。
 この理由としましては、賃金の高い人にのみ影響がある、こういうことになっておりますが、実際にこの八〇%から下がっていく、賃金月額ですが、それは十二万六千三百円を超える人から低下する、こういうふうになっているということであります。
 ということでありますと、十二万六千三百円という賃金額が今日の状況の中で極めて高い賃金であるかといいますと、現在の、例えば二〇〇一年の全国勤労者世帯の一カ月の消費支出額は三十三万五千円であります。そういう点から考えると、十二万六千三百円の賃金月額を持っている人が給付率を下げられるということは、賃金が高過ぎるような人の引き下げ、こういうことでは決してない。むしろこういう多くの、まだまだ生活のために資金が必要な人の引き下げが含まれている、こういうことになると思います。
 もう一つは、上限額を二四%から二七%ぐらい引き下げるということになっております。例えば、四十五歳から五十九歳で見ますと、一万六百八円だったものが八千四十円に引き下げられる、こういうことになります。
 こういう形で基本手当の額が引き下げられる、こういうことになりますと、たとえ失業したとしても、生活の切り詰めをぎりぎりやったとしても、なおかつ切り下げられない生活費というものが現実には存在しています。具体的にはローンとか家賃とか、そういうものは失業したからといって下がるわけではありません。教育費とか税、社会保険料、それらも固定的にかかってくるわけであります。ですから、失業したからといって生活費がすごく減る、こういうものではないわけですから、ほぼ就業しているときと見合うような保障をしていくということが、本来、雇用保険法の目的をかなえていくことになるのではないかと思います。
 そうした点で見ますと、基本手当の今回の引き下げ、率の引き下げそれから上限の引き下げということは、失業者の生活保障という観点から見ますと大変危惧があるということであります。こういう引き下げをできるだけしないように努力するということが必要ではないか、こういうふうに思います。
 次に、所定給付日数の問題でありますが、今回の改正では、短時間労働者と短時間以外の労働者の給付日数を同一のものにするということで、一般離職の場合に短時間以外の労働者の雇用保険加入五年以上は三十日切り下げられる、こういう措置になっております。倒産、解雇では、短時間労働者が、短時間以外の労働者と一致させるためにそれなりにふえている、こういうふうになっているわけであります。
 ただ、問題は、この前の改正のときに給付日数を倒産、解雇と倒産、解雇以外のということで分けたことであります。離職してしまえば、倒産、解雇によろうがそうでなかろうが、失業による生活の困難というものは大きな差はありません。ですから、離職の理由によって給付日数を変更するというのは問題でありまして、本来は、これは今回もう一回もとのようなものに戻すべきだ、こういうふうに考えております。
 それから次に、就職促進給付の問題ですが、今回、今までの再就職手当を就職促進給付、こういうふうに変えまして、今までは安定的な職業への再就職の場合に支給するものを、そうでない仕事についた場合にも支給する、こういうふうにしております。
 しかし、これは、これによって確かに、当面給付を受けている人が雇用保険給付を受けないで済むようになるという意味で、当面の雇用保険財政にとってはプラスの要因になるかもしれませんが、このようにして不安定就業に多くの失業者を就職させていく、こういうことになれば、そこでは所得が今までよりも減るということになりまして、さらに家族の中で多くの人が働きに出る、こういうようなことで、これは労働力の供給過剰という形でもう一回労働市場に問題が起こってきます。ですから、当面の問題だけじゃなくて、もっと長期の問題として失業者の安定的な職業への就業ということを考えなければいけない、こういうふうに思っております。
 それから最後に、保険料の問題でありますが、保険料については、一応今回、千分の十四ということで、現在の保険料負担と変わらないような形にはなっておりますが、しかし、この千分の十四は昨年の十月に弾力条項の適用で千分の二上げたものであります。それを基本にして上がらないとしていますが、実際は千分の十二が規定ですから、千分の十四にしたからといって、上がっていない、こういうわけではない。
 それから、今回の規定で千分の十六にする、平成十七年四月以降のことになると思いますが。しかし、そうなると、千分の十六ということは、これに弾力条項ということを考えると千分の十八まで引き上げられるようになる、こういうことであります。
 こういう形で保険料についての労使の負担はかなり大きく引き上げられることになっておりますが、国庫負担については現行の四分の一のまま、こういうふうになっております。
 私が思いますのは、現今の失業状況は非常に深刻な問題でありまして、非常事態と言っていいような状態だと思います。ですから、政府は、そういうふうな非常事態ということを前提にして、緊急な財政出動を雇用保険にしていくというようなことが必要なのではないかと思います。
 今後もまだこの緊急事態は解消しそうもありませんでして、内閣府の統括官の推測によりましても、金融再生プログラムの実施によって約六十五万三千人の離職者が出るということが予測されています。ですから、こういう緊急事態ということで、確かに国家財政、必ずしもゆとりのある状況ではないと思いますが、しかし、失業という緊急の事態には緊急的な対応をぜひお願いしたい、こういうふうに思います。
 以上、私の意見を終わらせていただきます。(拍手)
中山委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平井卓也君。
平井委員 参考人の皆さん、どうも御苦労さまです。自由民主党の平井です。
 確かに、最近の雇用の環境というのは非常に厳しいものがあると思います。日本は、ずっと失業率というのは右肩上がりに長期的に考えてもなっていますし、私は、根本的な理由は何かなとずっと考えていたんですが、ここしばらくの間はデフレがやはり大きな原因だと思います。経済学で言うところのフィリップスカーブというのですか、要するに、失業率と物価上昇は反比例する、まさにそれにはまっているし、雇用不安が消費者心理をさらに冷え込ますような状況になっていて、すべて悪い方、悪い方に行っているのじゃないかなというふうに思います。
 きょうは、雇用対策というよりは雇用保険法の改正についてですので、まず紀陸参考人にお聞きしたいと思います。それは、モラルハザードについてお聞きしたいと思います。
 雇用保険制度は、不幸にして失業された方々のセーフティーネットとしてその生活を保障するという重要な意義はあるんですが、その保障というものが行き過ぎると、かえって就職しなくなるというようなモラルハザードを生み出す危険性があると私は思っています。本来、不本意な失業を早く終わらせて失業を少なくするための制度が、かえって失業をふやしてしまうんじゃないか、そんなような気もしないでもないわけです。
 諸外国でも、近年失業保険の有するモラルハザードに注目が集まっておりまして、例えばヨーロッパでは、今までの三年にも達する長い支給期間を短縮しようという政策もあると聞いております。
 我が国でも、もし雇用保険の給付が手厚過ぎるためになかなか再就職しないという現状があるのであれば、まじめに働いて雇用保険料を納めている労働者や企業の負担を考えれば、給付をある程度引き下げても再就職の意欲を喚起するような制度にしていくという考え方は、ある意味では当然ではないかと思います。
 そこで、お聞きするんですが、現在の雇用保険制度は在職時の賃金の六〇%から八〇%を支給することになっていますが、この給付水準は、再就職に対するモラルハザードになっていないと言い切れるかどうかということであります。
 特に、年功序列制で、若いころは生産性より低い賃金しか受け取っていなかったかわりに、中高年になって生産性よりもかなり高い賃金を受け取っているような労働者の方々については、いざ再就職しようとしても離職前よりもはるかに低い賃金水準の求人しかないという現実もあります。そうしますと、なまじ再就職をしてしまうとかえって雇用保険給付よりも低い収入しか得られなくなり、再就職の意欲をそいでしまうのではないでしょうか。そうであれば、特に高賃金の労働者については給付水準をある程度切り下げ、再就職しても収入が減少することにならないようにすることが必要だと私は思っています。
 我が国の労働市場について、どの程度こういったモラルハザードが起こっているとお考えか。そのモラルハザードを解消するために、今回の改正がどの程度貢献できるか。このことについて、紀陸参考人に御意見を伺いたいと思います。
紀陸参考人 平井先生から貴重な御指摘をいただきましたけれども、私どもも、全く先生の御指摘のとおりというふうに考えております。
 特に、企業の内部の労働市場は、基本的には、賃金の面でございますけれども、勤続なり年齢が上がるにつれて賃金は上がってまいります。それをベースにして雇用保険の給付の水準を決めていくことが果たしていいのかどうか。先生御指摘のとおり、まさに、現職のときは非常に高い賃金をもらっていて、たまたま失業して、退職時の賃金をベースにした給付額のもとでは、再就職しようとすると余りに格差が大きい、その実態が非常に大きく見てとれます。
 特に、現在の雇用保険の問題で一番大きいのは、雇用保険の受給期間丸々もらって、その後に再就職される方が非常に多い。多少、九十日から三百三十日まで差がございますけれども、押しなべて、受給期間目いっぱい雇用保険を受給した後に、それから再就職をする人のカーブはもう顕著にふえております。
 これは何を意味しているか。まさに先生の御指摘のとおりでございまして、本当を言いますと、雇用保険の負担よりも、もらえる給付の総額の方がはるかに高いという状況がございますので、それを奇貨としてという言い方はおかしいかもしれませんけれども、雇用保険丸々、受給期間目いっぱい、しかも、かなりの額の金額をもらって、それからでないと再就職をしないという、どうしてもそういう行動になってしまう。ここは制度的に変えていかないと、再就職促進がなかなか図れないというふうに思っております。
 今回の改正の中で、給付を下げて、しかも、給付事由の差異に応じて、自発的な失業の場合には下げていく、給付の刈り込みも図っていく、かつ、再就職促進の仕掛けもきちんと中に入れて、早期に就職をした人ほどメリットが多いという仕掛けの方に切りかえていこうというような仕掛けが入れられようとしておりますので、まさに先生の御指摘のとおり、モラルハザードを起こすことのないようなことにしていかないと、雇用保険財政全体がもたないというふうに思っております。
 これは、あくまで労使が共同で運用するという一つの保険の制度でございますので、すべての人にあまねく社会保障の最低限の扶助を行うというものではございません。あくまで臨時のときの保険のための労使共同の保険でございますし、その辺の趣旨を徹底させつつ、給付の刈り込みも行うし、再就職促進の手当もつけるということでございますので、私ども、制度的にはかなり整合のとれた形での見直しを図ろうとしておりますのが今回の改正でございますので、先生の御指摘の御懸念も少しずつ解消の方向に向かうのではないかというふうに期待をいたしております。
平井委員 ありがとうございました。
 それでは、次に、紀陸参考人と中村参考人にお聞きしたい。
 次は、世代間の公平性といいますか公正性についてであります。
 何か、最近の若者たちがフリーター化しているとか、いろいろな話がありますけれども、これは、ある意味では、中高年の既得権が若者の喪失感につながり、いわば若者は中高年の既得権にパラサイトしていると言いかえてもいいのかなというふうに思うわけであります。改めて今回の雇用保険制度を読み直してみて、何と中高年に手厚く、若者に冷たい制度かという印象を強く受けました。
 国会議員にしてみても、投票率は高齢者の方が高いので、若者は無視されるというのがあってはならないと思いますので、あえてこの件について触れさせていただきますが、前回の改正と今回の改正案で、解雇や倒産で失業した方に対する給付が長く、自発的に退職した方々に対する給付は短くなっています。また、パートタイム労働者と通常労働者の差別もなくなっています。しかし、依然として、年齢によって給付期間に大きく差があるということがあります。
 今回、三十五歳から四十五歳という若年層と中高年層の間の年齢層を少しばかり手厚くしたようですが、そもそも、年齢によって給付期間に差を設けることにどれだけの合理性があるのかということを私は疑問を持っています。中高年ということだけで、若者よりもはるかに長い期間にわたって雇用保険を給付することも、これも一種のモラルハザードかなという気さえします。
 逆に、若年層は、年齢が低いことに加えて、勤続期間が短いために極めて短い給付期間となっているので、特に、近年は学校を卒業しても就職できない学卒無業と言われる人が急増しておりますが、この人たちは、もう全く雇用保険の対象にはなっていません。こういう事態というのは、世代間の公平性を確保するという観点から見て好ましい事態ではないのではないかなというふうに思います。
 そこで、紀陸参考人にお伺いしたいのは、現在のように、中高年層ほど給付が長くなるという制度設計にどこか改善点がないかということであります。いただいた資料によれば、年齢や離職理由にかかわらず、給付期間が長いほど、その間の就職率が低くなっているようですが、だとすると、先ほどのお話のように、これはモラルハザードが生じているということだと思います。
 今回の改正案では、倒産や解雇による失業者はパートタイム労働者も含めてより手厚く、自発的な退職者は通常労働者であっても手薄にという改正がなされておりますが、あわせて、自発的と非自発的失業というもの、これは非常にわかりやすく、すっと入ってくる概念でありますが、これが本当に根本的な解決策につながるかどうかということについても、もし御意見があればお聞きをしたいと思っています。
 さらに、もう一歩進んで、中高年に手厚く給付しているという仕組みにもメスを入れることが必要ではないかと思います。少子化対策とか次世代育成とか、かけ声だけは大変盛んでありますが、肝心の給付のところでこういう中高年優遇、若者冷遇をやっていたのでは、なかなか進展しないと私は思っています。
 これは中村参考人にも御意見をお伺いしますが、恐らく、連合の組合費を払っている組合員の方々は中高年の方々が多いと思いますが、これから入ってくる若者たちの利益にも目を配らなければならないのではないか。そういうことをあわせて、お二方にお聞きしたいと思います。
紀陸参考人 平井先生から鋭い御指摘をいただきましたけれども、確かに、給付の面でも若年層の方と中高年層の方々で大きな差異がある、かつ、最後に御指摘になられましたように、離職理由によって大きな差異も出ているという点が、逆にまた中高年層の支援にも結果的になってしまっているのではないかという御指摘は、確かにそのとおりであるというふうに存じます。
 ただ、私どもは、今の日本の企業社会の中において、賃金ですとかあるいは処遇を決める場合に、基本的に、能力とか成果とか、それだけで決めるという動きはございますけれども、一気にそこまでいけなくて、今少しずつそこに向けて企業の中の制度を変えていこうというような過程の時期にあるかと存じます。
 言ってみれば、企業の賃金制度を一つのベースにして雇用保険の給付制度もできておりますものですから、だんだん企業の中における賃金支給の条件が変わってまいりますと、今の御指摘のような雇用の給付の中身も、その年齢とか勤続とか、特に私は勤続の方に今大きなシフトがかかっていると思いますが、そういう仕組みも変わっていくのではないかというふうに思っております。そういう意味で、こういう仕掛けはいずれ、いずれかの段階で見直しを迫られる状況が来るのではないかというふうに考えております。
 それから、給付の要件を分けた点でございますけれども、これはやはり、企業事由によって、解雇とか倒産はいきなり来るものですから、それに対する準備があるかないか、そういうような事由によって二つに分けるのも意味があるのかなというふうに思っております。確かに、失業した後では、どちらの事由はということは余り意味がなくなるかもしれませんけれども、いきなりそういう状況に置かれるか否か、その差異が、やはり失業期間の間に日常の生活にかなり大きな差異となって影響が出てまいりますので、当面は、この二つの事由による支給の差異というものも設けるのもやむを得ない措置かなというふうに考えております。
 十分ではございませんが。
中村参考人 御意見をいただきました。
 年齢による差を設けるということについて、何が差であるかという部分の考え方について、恐らくきちっと議論をする必要があるのではないかというふうに思うんです。
 事実の質問からいただきますと、まず、私どもの加盟している連合が中高年が多いのではないかということでありますが、ちょっとデータとして細かいそういう年齢構成までとったことはないので、確定的なことは言えません。ただ、いわゆる労働組合組織の未組織という分野でありますと、いわゆる第三次産業分野は未組織のところが多く、私どもはかなり既存産業が多いということでありますから、そういう意味では、いわゆる既存産業の部分の年齢構成自身を反映しているものだというふうに思っております。
 私、先ほど御意見の機会をいただいて申し上げさせていただきましたように、いわゆる連合の立っているスタンスでございますが、この件につきまして先ほどお話をしましたとおり、本日の資料でも、全国のハローワークアンケートというのをお配りさせていただきました。そのときの視点は、要するに、現在の雇用状況といったものをとらまえたときに、私どもはセーフティーネットという考えを持っております。それがあまねく行き渡る層という、まさしくそういう部分の人たちのところで焦点を当てるということで、全国の地方連合会、構成組織の力をかりて、こういったようなスタンスで取り組んでおるということでございまして、ぜひ先生にも御理解を賜りたいというふうに思っております。
 当然のことながら、若年層問題について、これは雇用問題について連合としては非常に危機感を持っております。この部分のところでは、今回雇用保険三事業の部分のところでもいわゆるトライアル雇用的な部分、政府の方向でもそういう部分は出てくると思っておりますが、今、現実に就業をしてその中でいかにマッチングができるか、いわゆるマッチング自身の仕組みの根本が大きく産業社会の変化の中で問われてきているんだろうというふうに思っておりまして、そういう部分も含めて、とりわけキャリアの育成とか意識の問題も含めまして、まさしく構造的な問題として取り組むことが必要であろうというふうに思っております。
 最初の冒頭の御質問のところに戻りますが、年齢によって差を設けないということの合理性の考え方であります。
 金額が一人一人同一額でなければならないという考え方を差があるというふうに考えるのであれば、それは確かに、現実の制度はこのようになっているだろうというふうに御判断されていることになると思いますが、御案内のように、まず雇用保険法自身の位置づけ、私は政府の役人ではないんですけれども、挙げますと、まず雇用対策法ということで、完全雇用も含めまして、これは国の責務も含めて規定をされる。その中で、先ほど紀陸常務からもお話がありましたけれども、そういう体系の中で、雇用保険制度というものが雇用保険法の中で位置づけられている。
 具体的な運用の中では、労使の共同、連帯、そういう枠組みの中でつくられているものだというふうに思っておりまして、その目的は、これは法律に書いてある、私どもそのとおりだと思って理解をしておりますけれども、失業という事態に立ち至ったときに、いわゆる当面の生活の安定をまず支えると同時に再就職の支援を促進する、そういう観点で私どもは考えていると見ます。
 先ほど私どもは、現実の失業状況が中高年を中心に非常に厳しい大変な事態ではないかということを訴えさせていただいたわけでございますが、当然ながら年齢の部分というものは、まさしくいわゆる賃金という、現在日本の九割はサラリーマン社会でございますので、賃金というものによって生計を立てているわけでございます。その部分の賃金といったようなものは、まさしく生活の当面の安定を図りつつ就職を促進するという観点に立ったときに当然かかる所要経費というものが反映をされるということは、これは必ずしも年齢によって差別があるというふうにとらえるようなことにはならないのではないかなと私どもは考えております。
 なおかつ、現在の状況で踏まえますと、一番問題になっているのは、やはり連合の調査でも大分出てまいりましたが、本当に長期に失業して生活費を抱えて、家のローンとか子供の部分とか、まさしく生活を支えなきゃいけないような部分で非常に窮地に陥っている人たちがふえている。
 なおかつ、これはさまざまな経営の環境あるいは雇用慣行の変化ということが現実に進んでおることも事実でございまして、そういうことの中で、従来は長期的な雇用ということの中でそういう痛みを少なくしようということは、多分日本全体あるいは労使の中での慣行として持ってこられたものが、不幸にしてこの厳しい競争時代という環境変化もあり、さらされている。その部分のところが、過去との関係も含めて痛みが集中的に出てくる。これは、事実として進展をしている。その部分をどういうふうにとらえるかということなのではないかというふうに思っております。
 当然ながら、能力に見合った賃金を含めたそういう部分をどうつくっていくかというのは長期の課題でありますが、まさしく雇用保険が、現実に失業というまさに突発的に起こっている事態に立ち至った、そういう部分の人に対してどうしていくかという部分の役割だと思いますので、御理解いただきたいと思っております。
平井委員 時間がなくなってしまいましたが、参考人の皆さんには意見をもっとコンパクトにまとめて、これから後の質問者のために一言つけ加えさせていただきます。ありがとうございました。
中山委員長 次に、山井和則君。
山井委員 本日は、本当にお忙しい中、紀陸参考人、中村参考人、大須参考人、お越しくださいまして、本当にありがとうございます。
 今、この社会において最も深刻な問題の一つが雇用不安、そして老後不安、この二つの不安というものが消費を鈍らせ、貯蓄率を増大させ、結果的にはまたそれが失業の増大につながるという非常に深刻な問題となっております。
 そこで、お伺いしていきたいんですが、まず一つ目の質問、これはお三方にお伺いしたいと思います。
 まず、今回の改正案は、再就職を促進するとして、給付水準を市場相場に合わせ削減するとしているが、この方策の効果についてはどのようにお考えになられますでしょうか。これはそもそもの話で、今までからもう議論になっていることでありますが、改めてこの方策の効果についてお聞きしたい。また、そういうことに関して、現在の雇用状況からすると、この方策はセーフティーネットの強化とは逆行するものではないかと私は考えるんですが、いかがでしょうか。
紀陸参考人 山井先生から御指摘の御質問にお答えいたします。
 私どもは、今回の仕掛けによって相当に給付削減の効果が出てくるであろう、それによって、今非常に逼迫しております雇用保険全体の財政にも大きく裨益するのではないかというふうに考えております。
 かつ、保険の中身だけではございませんで、失業認定のきちんとした運用を去年の九月から行うというようなことになっておりますので、そういうこともあわせまして、こういうような仕掛けの見直しによって、相当に給付の削減及びそれに伴って財政の状況も、少しずつでございますけれども、積立金の増という格好で進んでいくのではないか、そういうふうに期待をいたしております。
中村参考人 現在の給付水準ということにつきましてはどう考えるか、市場相場賃金ということですが、私ども基本的には、求職者が生活のことを考えたときにやるのは、いわゆる再就職時の賃金ともらっている給付の関係ではなくて、今まで失業する前に働いていた賃金、当然それをもとに生活が組み立てられている、それと再就職時の賃金ということの関係で重視をして決めるということが基本だろうと思っておりますし、雇用保険法の趣旨も基本的にはそういうことだろうというふうに思っております。
 あえて現在の市場相場ということで考えますれば、労働市場の相場というのはかなりスタンダードというか安定的に決まっているという状況であれば、まさしく給付水準を市場相場以上に引き上げるということはある種非常におかしなことになるということはそのとおりだと思いますが、問題は、今の雇用状況で現在発生している、とりわけ中高年を中心にした非自発的失業者の方々、そういったような方々の現在の相場状況といったようなものがどのようなものなのかということについては、吟味が必要だろう。
 これは、特に近年そういう人たちが急速に労働市場に出されているということの中で、私どもの調査でも全く職がない。当然、需給関係は低いわけでございまして、もともと賃金が低い中で、職がないから賃金も低い、そういうものをもとにして考えることがよろしいのかどうかということがあると思います。
 現実の労働市場、とりわけ連合の調査では、賃金ミスマッチというよりも、むしろ非常に、年齢制限の壁、そもそも職がないということが重点的なような結果と判断しておりますので、この効果がさっと進むというふうにはなかなか、むしろ痛みを伴う人がふえるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
大須参考人 今回の再就職促進が根本的な解決になるのかという御質問だったと思うんですが、具体的には就職促進給付、これが今までの再就職手当から変わって、安定的な職業についた人に支給していたのを今回はそれ以外の人にも支給する、こういうふうになって、安定的な職業だけじゃなくて、不安定的といったらいいのか、非正規雇用、これに対しても再就職した場合には促進手当を出す、こういうふうになっているわけですね。
 私の考えでは、これは、あるいは一時的には雇用保険財政をよくするものになる可能性はあると思います。ただ、根本的な解決にはなっていないというふうに思います。
 これは、つまり、雇用の不安定な部分というのは所得的にもかなり低い部分になっていますので、結局、ここに再就職していくということは、今までの生活水準ということを考えると、今までは例えば一人で何とか生活できたのが、二人とか三人とか、要するに家族総働き化をして何とか合わせなきゃいけない。こういうことになりますと、これが要するに、労働市場という点からいけば、労働力の供給過剰という問題に戻ってくると思います。ですから、そうすると、失業問題はさらに深刻な形で労働市場に戻ってくるんではないかと思います。
 ですから、これは当面の非常に差し当たりの処方せんでありまして、やはり今はそういうもっと長期の失業に対して安定的に雇用保険が運営できるように考えなければいけない、こういうふうに思っています。
山井委員 ありがとうございます。
 次にお伺いしたいんですが、給付日数の高い層で再就職時の賃金と逆転現象が生じているわけでありまして、それによって雇用保険給付支給終了直後の再就職が多いということが今回は改正の理由とされておりますが、ここが一番大きな判断の分かれるところであると思います。このことについてもお三方に、どのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
紀陸参考人 お答えを申し上げます。
 今先生が御指摘の点がまさに一番重要な点でございまして、特に今回の改正は、そこの部分について給付の刈り込みをするというような点が焦点になっております。そこの部分で刈り込みをしたことによって、その方々が失業後非常に生活水準が大きく悪くなるかというと、実はそうでもないだろう、そういうふうに考えております。
 かつ、今度の場合に、給付日数は失業の事由によってちゃんと分けられておりますので、本当の意味で、倒産、解雇による方々が失業に追い込まれた場合にでも、給付は刈り込みもありますけれども、日数自体はきちんと手当てされておりますし、特に新しく三十五から四十四のところは給付日数の手当てもきちっとできておりますので、その辺の配慮も今回の改正については目配りがきているというふうに私ども理解をいたしております。
中村参考人 先ほども冒頭に賃金の逆転現象については基本的な見解を述べさせていただきましたけれども、再度コンパクトに申し上げますれば、支給直後に再就職する人が多いのではないかということが先ほどモラルハザードを含めた論点になっておるわけでございます。
 しかし、私どもの認識は、申し上げましたように、非常に厳しい雇用状況で、極めていびつな市場相場の中のところで出てきている人が非常にふえてきている、そこの層で特に賃金の逆転があるという議論になっておるわけでございます。
 そもそも、こういったような労働市場が非常に厳しい中で、生活の維持を図るために再就職してやらなきゃいけないんだけれども、先のことを考えたときに条件のいい部分がなかなか見つからないということで、片や生活を抱えて頑張っているわけであります。その部分が非常に厳しいという市場状況に直面している中でまさしく雇用保険という制度は機能していて、それのおかげで一生懸命何とか頑張ってやれるようなところにつけるように努力をしていくという、それでも現実は厳しいというのが実態だろうと思います。
 雇用保険等が支給が打ち切られということの中でやむなく出ている、当然自分の今までのベースからするとかなり不本意ながら出ているということが、少なくとも中高年の方の実態から見れば今起こっていることなのではないか。その不本意にやること自身が、これをモラルハザードととらえるかどうかというのは、雇用情勢の見方に対する判断の問題であるというふうに思います。
大須参考人 逆転現象の問題ですけれども、逆転現象といいましても、基本手当は賃金の最高八割しか保障していないわけですから、賃金より高くはありません。ただ、その八割あるいは六割の基本手当以下の再就職の賃金しかないというところに問題があると思います。私は、ここがどういう問題かといいますと、問題は、現実に例えば基本手当よりも低い再就職賃金の仕事しかないというところに一番問題が現在はあるわけです。
 今の失業状況は、長期にわたって全産業的にわたっているという問題だけじゃなくて、失業率が高いというだけじゃなくて、就業者数も減少してきております。九七年から就業者数は減少してきている、こういうことです。ですから、一回失業したら、例えば就業者数が増加しているときはそれなりに乗っかっていくということができますけれども、もともと枠が小さくなって、そこに再就職していかなければいけない。
 それで、確かに雇用保険が切れた一カ月目が非常に再就職の人が高い。これは私は、ともかくぎりぎりそこで生活して、それで、では次はさらに低い賃金で何とか生活するしかないだろう、こういう選択をしているんだと思います。
 ですから、これを逆転現象と言って、さらに引き下げた方が再就職はしやすいんじゃないか、そういうことではないと思います。これは、再就職はするかもしれません。しかし、それは失業者を非常に厳しいところに追い込んで、それで再就職を強制する、そういう政策になっている、こういうふうに思います。
山井委員 先ほど我が党の大島議員からも指摘がありましたが、やはり日本の失業者の方々というのは当然失業になれておられませんし、中高年の失業が多い。そしてまた、その方々というのは一家の大黒柱であられるわけです。また、そういう状況に加えて、ヨーロッパに比べると給付額も、そして給付日数も少ない。そういう意味では、ある意味でもっとセーフティーネットを強化せねばならないというところで、私は本当に今回のこの改正というのは逆行であると思います。
 私も今までからホームレスの自立支援法案も取り組んでおりまして、先日の発表でも、四割の方、一番多い割合が、直接正規雇用からホームレスになられた、そのうち六割ぐらいの方が病気であるにもかかわらず、その過半数がまた病院にもかかれていない、こういうホームレスの方々がふえていっているという現状があるわけですね。かつ、ホームレスの方をどうするのか、それとともに、中高年の経済的な理由による自殺者がふえている、これをどう減らすのかということが政府の最大の目的であるときに、その逆行することをやっているんじゃないかというふうに思います。
 限られた時間ですので、最後に一つだけ短い質問をしたいんですが、そういう意味では、私は、今回のこの改正によって、要はもう自己防衛しかないということでまた貯蓄率を高めて、消費がますます鈍っていく。そういう意味で、また消費が鈍るとますます景気が悪くなって雇用不安が増大していくという悪循環になる。そういう意味では方向性が間違っているというふうに思うんですが、そのように今回の改正で貯蓄率が上がって消費が鈍ってますます不況なりデフレに拍車をかけるんではないか、このようなことに関して、時間に限りがありますので、非常に失礼ながら一分ずつぐらいで各参考人さん、よろしくお願いいたします。
紀陸参考人 お答えいたします。
 私どもは、雇用対策というのは、この雇用保険の仕組みの見直しだけで済まないんではないか、このほかにいろいろな雇用の機会を維持、創出していくという、もっと違ったスキームで考えていかないと、今先生の御指摘のような問題はなかなか解決し切れない。デフレ下で雇用をどういうふうに維持、創出するかというのは非常に難しい問題ではございますけれども、この制度改正にあわせていろいろな雇用対策を総合的な観点から、かつ、離職の理由別に分けて、失業の要因別に分けてきちんと対策を打つ必要があるんではないかというふうに思っております。
中村参考人 紀陸さんも申したとおりだと思います。やはり雇用対策、全体の経済対策を含めてということが貯蓄率等には大きな影響を及ぼすということがあります。
 ただ、一つだけ雇用保険の関係で私どもが考えておりますことは、このたびの累次の大幅な削減ということで、いわゆる勤労者の最後のセーフティーネットとしての雇用保険に対する信頼というものが失われかねない、そのことはそういう停滞の方に導くことになるということだけはあってはならないだろうというふうに考えております。
大須参考人 先ほどちょっと言いましたけれども、失業問題についても、これは、当面の雇用保険ということだけでいくと若干よくできるかもしれませんけれども、もっと長い期間で見たら、失業問題はさらに悪化する、そういうものを促進するものになると思います。
 失業問題が悪化するということは、労働者の生活が不安定化する、こういうことになりますから、そうしますと当然、家計というか、家計の将来に対して、消費を当面しちゃおうなんということよりは、あくまでもできるだけ現在の消費をやめて将来に残す、こういうようなことで貯蓄に回ってしまう、そういうことですから、景気回復という点からいけば全く逆行する効果を生むと思います。
山井委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、繰り返しになりますが、今回のこの改正が、ホームレスの方や、また経済的な理由による自殺者をふやす、そういうふうな方向になっていく懸念を私はやはり持っておりますので、そうならないように、精いっぱい民主党としても頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 きょうはお忙しい中ありがとうございます。
 それでは、早速三人の皆さんに一つずつそれぞれお聞きしたいと思います。
 まず、紀陸参考人、雇用保険が勤労者のセーフティーネットとしてその役割を発揮していくために、幅広く勤労者に適用されることが重要と考えますけれども、現在の制度に問題はないかどうか、それについてお答えいただきたいと思います。ありましたら、ぜひ御説明いただきたいと思います。
紀陸参考人 お答えをいたします。
 この雇用保険の適用という問題で理解をしてよろしいかというふうに存じますが、基本的に、現在、今雇用保険の適用対象になっておりますのは民間の雇用の従業員の方々だけでございまして、私どもとしては、従来からでございますが、まだ未適用の領域になっております例えば私立学校の職員の方々、さらには、これは容易ではないかもしれませんけれども、公務員の方々にもこの雇用保険の適用対象の中に入っていただいたらいいんではないか、そんなことも考えております。
 それをまず冒頭に申し上げさせていただきまして、かつ、今先生の御指摘の点では、この雇用保険の運用の点で何が一番問題かという点が御質問の趣旨かというふうに存じますけれども、基本的にこの制度は、先ほど申し上げましたけれども、労使が共同でこの雇用保険の保険適用の運用を図っていくことが趣旨でございまして、そこに国家財政の御支援をいただいているという形でございますけれども、乏しい財源の中で、どういうところに重点的に、特に私ども、真に必要な人に必要な給付を施す、そういうようなものが雇用保険の運用として一番重要な問題ではないかというふうに思っております。
 その点をねらって、今回、十全だとは私ども思いませんけれども、大分その点に配慮して制度改正をしようという意向がうかがわれますものですから、できるだけ早期の成立をお願いしたいというふうに考えている次第であります。
武山委員 それでは、同じ質問を中村参考人と大須参考人にお答えいただきたいと思います。
中村参考人 雇用保険の適用問題につきましては、みんなで分かち合うという観点から、共通のリスクのある部分で広く拡大をしていくということが社会的にも重要であるというふうに考えております。個別の問題については、そのリスクの分かち合い方ということは、きちっとした制度論でありますので、議論していく必要があると思っています。
 これも運用面になるかもしれませんが、それ以上にひとつ大きな問題だというふうに思っておりますのは、現在、倒産、解雇等、リストラが非常に多く発生をしている中で、実は地域や私どもの現場で起こっている問題は、倒産をしてしまってから、あるいは解雇になってから、実は雇用保険の手続をしていなかった、そういう事例が、かなり切実な例が多く発生をしております。
 これは当然入っていなきゃいけないことでございますしということなんですが、実は、そういう基礎のところで、こういう厳しい状況の中で、とてつもない、足元をすくわれるような問題が起こっているということについて、非常に危機感を持っているわけでございます。まして、使用者がしっかり自覚しているのであれば、当面、そういう形について、二年間の遡及適用ということを法律的には準備をされておるわけでありますけれども、そもそも使用者自身にそういう能力がないということも含めて出てきている。
 そういう意味では、やはり本来適用しているのはきちっと本当は足元をやって、セーフティーネットをするための運用等の改善ということが、直接改正にはありませんが、実は非常に重要なテーマではないかと考えております。
大須参考人 雇用保険の適用の状況ということだと思いますが、まず、現在、完全失業者は三百万を優に超えている、こういう状況でありますが、雇用保険の実受給者は百万をちょっと超えている、こういうような状況ですから、そういう意味で、まず雇用保険がカバーしていないという問題はあります。
 それからもう一つは、当然これは基本的には保険制度になっていますから、失業した人だけが入る、こういうものではなくて、失業しそうもない人とか、できればしない人も入るということが、保険制度を維持するためのものだと思います。その点では、一番保険の本法との関係でいきますと、やはり公務員の加入ということが一つ大きな問題になるというふうに思っています。
 それから、これは私自身にもかかわりますが、私立大学の教員が入っていない、これは法律とは関係なく入っていないという問題でして、ちょっと私は大学の教員組合との関係でどうなるかわかりませんが、問題としてあることは事実だと思います。
 ですから、雇用の安定した人も含めてちゃんと雇用保険に入るということがなければ、失業が深刻なときに雇用保険財政を安定的に運営することはできない、こういうふうに思います。
武山委員 午前中の議論の中で、私立大学の皆さんが雇用保険に入っていないという質問が阿部議員の方からあったんですけれども、実は席で、隣、御近所の他党の先生ですけれども、公務員は雇用保険に入っていないんだよという話を議論しておりまして、やはりこういうときにこそ支え合うという意味で、まだ来週もあるものですから、これは大いにこれから議論したいと思います。
 それから、また紀陸参考人にお尋ねしたいと思います。
 この給付の日数の統一や就職促進給付の創設など、パートタイム労働者などとの境目をなくしていく方向での改正が今提案されているわけですけれども、これはどのように考えますでしょうか。
紀陸参考人 武山先生の御質問にお答えいたします。
 これは、基本的に、これから雇用の多様化が進むというふうに私ども理解しておりまして、特にパートの方々、短時間就労の方々は非常にふえてくるかと存じます。
 とりわけ、その状況を見回して、今回の非自発の失業について給付日数をパートの方々に合わせる、これはひとつ逆に言うと、パートさんと、従来の広い意味での正社員ですね、その壁をなくすという法の仕組みにもなりますので、これからの雇用多様化の時代に向けて、一種、制度面からそういうものの対応を示したというふうなことにもなるんではないかというふうに前向きに理解をいたしております。
武山委員 同じ質問を中村参考人と大須参考人にもお聞きしたいと思います。
中村参考人 働き方、いわゆるパートタイマー等も含めて、多様な就業形態の部分で、労働者、さらには使用者の観点ということも含めつつ、労使双方にとって選択肢としてたえるような枠組みをつくっていくというのが、雇用の多様化という方向である。この流れにつきまして、連合、日経連、政府含めまして、政労使ワークシェアリングということの中で、そういう方向性を目指しつつ、ワークシェアリングの枠組みづくりを含めるということで、双方が選択し得る行き方というのを確立していこう、そういう流れに沿ったものであるというふうに考えておりまして、思想的にはそういう方向が望ましいのではないかというふうに思っています。
 ただ、現実的な今回の雇用保険法の改正の中では、いわゆる給付水準というか日数の統一がありましたけれども、そのほか、適用の要件の問題でありますとか、すべての面において、いわゆる選択肢としてあるものが確保されたということにはなってございませんし、やはりこの思想の延長上としては、パートタイマー等含めて、私どもはいわゆる均等待遇というふうに申しておりますけれども、まさしくそういう働き方、処遇も含めたルールの枠組みづくりというのが、セットにして総がかりで追求されるべきものであろうというふうに思います。雇用保険ではちょっと先鞭ですがということであります。
大須参考人 短時間労働者とそれ以外の労働者を均等に取り扱う、こういうことは趣旨としては大いに賛成でありまして、結構だと思います。
 ただ、危惧として残りますのは、そういうふうに均等にしていく場合に、どちらに均等にしていくのか、その辺のところを今後どういうふうにするのか。今回の場合も、給付日数では、解雇、倒産以外の給付日数は短時間労働者の方に統一した、こういうことになっていますので、そのために雇用保険五年以上の短時間以外の労働者の給付は削減されている、こういうことになっております。
 ですから、少なくとも、対等にしていくということは、よい方向に対等にしていくということでやっていただく、対等を口実に条件を引き下げる、労働者の生活を不安定にするような方向にしないということでやっていただくということだと思います。
武山委員 それでは、紀陸参考人に、今、十五歳から二十四歳の完全失業率が一〇%を超えておりまして、いわゆる若い人たちの雇用問題が大変深刻化しております。そして、厚生労働省は学校教育との連携を打ち出しておりますけれども、若年雇用の中では、いわゆるキャリア教育ですか、知識とか資格とかを身につけると同時に、実務に生かしていく能力が必要であろうかと思います。
 それで、仕事の中身を身につけていくという意味で、日本でもインターンシップ制度が設けられまして、最近、少しずつではあるかと思いますけれども、企業での受け入れをしていただいてインターンシップを行っているかと思います。しかし、受け入れ企業が大変不足していると聞いておりますけれども、その辺、どんな状態か、また、実際に企業が受け入れに積極的に普及や何か行っているのかどうか、その辺の事情をお聞きしたいと思います。
紀陸参考人 お答えをいたします。
 インターンシップ制度につきましては、実は、私ども日本経団連の組織の中に、各都道府県に地方経営者協会というのがございまして、そこの傘下の各企業と、それぞれの地域別に違いますけれども、インターンシップを促進する協議会というものをつくっておりまして、それを各都道府県で、積極的な県とそうでない県がありますが、今ほぼ全県の経営者協会と傘下の企業との間で促進のためにいろいろな取り組みをしております。
 年々年々、このインターンシップを経験した大学生の人もふえておりますし、それに参加する企業の数もふえつつあります。これは、厚生労働省さんもそうでございますが、文部科学省さんも、かつ経済産業省さんもいろいろな形で支援のスキームをつくっておられまして、これはいずれじりじりとまたふえてくるのではないかと思います。
 かつ、もう一つ、トライアル雇用というものも先生方の御支援によりまして予算の措置がされておりまして、このトライアル雇用も若い人たちの現実の就職促進に相当の効果を上げているというふうに思っております。
武山委員 将来の、あしたの日本のために、経団連の方々にはぜひ努力していただいて、大いに門戸を広げていただきたいと思います。
 それから、中村参考人にお聞きしたいと思います。
 午前中、厚生労働大臣と議論したんですけれども、いわゆる失業者に対する健康不安、ストレス対策について、いろいろと失業中の生活不安とか、それから生活費、保険料について、その次に何が問題かといいますと、健康問題、ストレスだということなんですけれども、まだ国の方としては、地域で何らかの形で対策、対応になった方がいいというほんの小さな青写真だけで、どうしたらいいかという対策は何もまだ見えてこないというところですけれども、いわゆる労働組合ではそういう議論はなされておりますでしょうか。どこでどう対応の窓口をつくったらいいと思いますか。
中村参考人 労働組合等では、いわゆる一部の産業別労働組合等で、フリーダイヤル的なものというような部分のところで取り組みを設けておる部分であります。地域のところで、地域の保健センターを含めた部分のところで、実は中小を含めて、とりわけ問題は中小労働者が大きな問題なものですから、中小労働者も含めたそういう相談窓口を広げようというようなところで、これはとりわけ地域の政策要求も含めて取り組みが出ておるところでございます。
武山委員 午前中、厚労相と議論したときに、私は、ハローワークに相談窓口を置いてもいいんじゃないか、連携を図ってはどうかと話をしました。
 今のところ、地域のハローワークの窓口では、本当にそれに対応する人が非常にお粗末で、いないと思うんですね。ですから、窓口としてはそこがいいんじゃないかなと思っておるんですけれども、そこにやはり、むしろ失業した人の中で、いろいろな体験と経験を持っている人たちも新たにそこで採用するなんというのも、私は、大変な経験を持った中高年の方、たくさんいらっしゃると思うんですよね。即採用なんというのも一つの発想じゃないかと思うんです。ですから、そういうこともこれから議論していきたいと思いますし、皆さんにもぜひ議論していただきたいと思います。
 もう一つ、大須参考人にお聞きしたいと思います。
 今の質問、いわゆる健康不安、ストレス対策、これはどのように地域がしたらいいかと思いますか。
大須参考人 私の余り広くない知識でというか経験でいいますと、現実に今、そういう形で失業者の相談に応じている幾つかの試みはされています。
 東京の場合でいきますと、東京の失業者ネットというのがありまして、ここは自分自身もお金がないところなんですが、無料職業相談所というものを開設しています。そこの場合には、もちろん仕事の紹介ということもあるんですが、それだけでなくて、そこに相談に来る人は、いろいろ家族関係の問題とか自分自身のいろいろな悩みとか、そういうものを聞いてくれるということだけでも随分役に立っている、こういうことであります。
 また、そのネットでは、そういう失業者同士を集めて、そしていろいろ話をする、あるいは情報を交換する、そういうようなことをやっています。
 ただ、これは、要するに資金的なものが非常に希薄というか脆弱ですので、これをやはり、今NPOを立ち上げてやっていますけれども、そういうものももっと財政的に公的なところで補助するというような形にして、各地にそういうものを地域に密着した形でつくっていくということが必要なのではないかと思います。
武山委員 どうもありがとうございました。
中山委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 きょうは、参考人の皆さん、貴重な意見をお述べになりまして、どうもありがとうございました。
 まず、大須参考人にお尋ねしたいんですが、きょうの意見の中で、今の失業情勢について、これは大変厳しいものがあると。その中では、非常事態という言葉もお使いになったんですけれども、参考人はどういう中身をもって今の失業情勢を非常に厳しいとか非常事態にあるというふうに認識されているのか、もう少し具体的に示していただきたいと思います。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
大須参考人 現在の失業状況、一般的には、よく言われていますように完全失業者数ということで言われていまして、三百万人を超える、こういう状況でありまして、失業自体が長期化しているとか、それから世帯主失業が多い、こういうような実態があります。しかし、これは失業のごく一部を示しているにすぎないと僕は思います。
 完全失業者という問題は、もう御存じだと思いますけれども、労働力調査の規定によりまして、一週間の間に仕事が何もない、それから仕事があればつける、それから仕事を具体的に探している、そういう三つの条件を備えた人が三百何万人、こういうことでありまして、これは失業者の中でも特に、やや厳しい人というか、典型的な失業者であります。
 しかし、その周囲には、そういう状況にはもう耐えられなくて失業状態をあきらめた人、朝日新聞ではこれは失望者だ、こういうふうに言っていますけれども、そういう人もたくさんいます。それから、もうどうにもしようがなくて何でもいいから仕事をする、こういうことで半失業状態の仕事をしている、こういうような人もいます。そういう形で、三百万人を超える完全失業者の周りに、失業者と言っていいような、そういう失業者が大量に現在存在しているというのが事実です。
 それで、先ほどちょっと言いましたが、これは、失業者の問題については大体みんなそういう形で大なり小なり言われているんですが、もうちょっと見なきゃいけないのは就業者数の問題だ、こういうふうに思います。
 現在の問題は、就業者数が、先ほど言いましたように九七年をピークに徐々に下がりつつある、こういう中で失業問題が起こっている。ですから、失業者が一回失業すると再就職するのは非常に大変、枠自体が狭まっている。だからこれは、たまたまある個人が再就職するというのはできるかもしれないです。だけれども、それは国全体としては問題を解決していないわけで、ある個人が就業することによって、ある一人の人を、ほかの人を排除している。こういう形で、マクロ的に見れば失業問題というのは個人の就業だけではとても解決できないような、そういう就業者数の減少が起こっている、こういうことです。
 ですから、もしこの就業者数が増加する中で起こっている問題とすれば、ある程度失業者をその増加する就業者数の中に組み込んでいくということができますけれども、今は、全体のマクロ的な状況からすれば、そういうことで一たん失業したら再就職は極めて困難という状況にある。そういう意味で現在の失業は大変な状況だ。だから、単に再就職しろとか、まじめに再就職すれば何とか仕事がある、こういうような問題で解決するような問題ではないというふうに思います。
山口(富)委員 引き続いて大須参考人にお聞きしますが、そういう失望者というお話もありましたけれども、今回の給付額の削減や日数の変更ということになりますと、それらの方々に大変厳しい状態が当然生まれるわけですね。そうしますと、もともと雇用保険法が目的に定めている「生活及び雇用の安定」という基本的な考え方のところが著しく損なわれるような改正案になっているという認識をお持ちなんですか。
大須参考人 要するに、全体として就業者数が縮小していく中で、一回失業してそしてもう一回再就職しろ、こういうときに、その再就職までの余裕の期間をできるだけ今短くしていく、こういう方向ですね。それから、余り長くいるとまずいので、できるだけ居心地悪くして手当を低くする、こういうような手当てをしているわけですね。
 しかし、今再就職できないのは、失業した人が再就職を望んでいないからではなくて、望んでいるにもかかわらず再就職の口がないから、あるいは十分な労働条件を保障するような口がないから問題が起こっているわけです。ですから、確かに、雇用保険のある期間はぎりぎりもらって、なくなったときは、それを補い切れないけれども、やむを得ず再就職している、こういう状態だと思います。
 ですから、今のような形で給付額を切り下げ、給付日数を引き下げていくということになれば、一たん失業した人に対しては、仕事がなくてもともかく出ていかざるを得ない、そういう状況をつくっていくということになりますから、失業した人に安定した生活、安定した仕事を保障するというようなものとは違ったものになりつつある、なっているかもしれないと思います。
 それで、この失業した人に安定した生活を保障するということは、そこそこいい仕事に再就職してもらうということが重要なんです。ここで、極端な、ちょっと俗な言い方をすると、余りいい仕事でないのに、労働条件が悪いところに就業してしまいますと、先ほど言いましたように、この悪い部分を補うためにほかの人も就職する。ですから、今家計調査を見てみますと、有業人口、従業者数というのは、世帯数は減っているんですけれども、有業者数はふえる、こういう傾向になっている。だから、総働きで何とか少ないものを補おう、こういうふうに出てきますから、当然労働市場で労働力を供給する人数がふえる。だから、労働市場での供給、需要という関係でいけば、供給過剰状態をつくり出す。ですから、失業問題は解決しないどころか悪化する、当然雇用保険の財政も安定的には維持できない、こういうふうにまた悪循環で戻ってくるという危険があると思います。
山口(富)委員 重ねての質問になりますが、そうしますと、今の失業問題というのは非常に構造的な変化を遂げているというお話になると思うんですが、そういう状態にあるもとで、今日求められる失業対策として、やはりこういう手を、中長期的なことも含まれるでしょうけれども、打つべきだというお考えがありましたら、大須参考人に示していただきたいと思います。
大須参考人 現在の失業対策というか、雇用失業対策と言ったらいいのかもしれませんが、その状況を見ますと、有効に何とか動いているというのは雇用保険法だけではないか、こういうふうに思います。
 それで、失業対策として、本来あるべき失業対策というのは何なのかというと、これもいろいろ人によって違うとは思いますが、少なくとも、こういう大きな枠では、まず失業を未然に防止するということと、それからもう一つは、既に失業した人に対して生活の安定、仕事の保障をしていく、こういうものが必要だと思います。
 この状況からすると、少なくとも失業を未然に防止するという点でいくと、今はほとんどこれは失敗に終わっているというふうに評価していいと思います、これについてはまた議論はあると思いますが。
 問題は、既に失業した人に対する対策でありますが、これも私は、少なくとも大きく分けると二つある、こういうふうに思います。所得を保障して失業した人の生活を保障する、これはいわゆる雇用保険法が今のものです。それからもう一つは、就労を保障して、その就労による収入によって生活を保障する、これがやはり必要だと思います。現在はこれについてはほとんどない、こういうふうに言っていいと思います。
 ほとんどないというのは、あります。一つは、特定地域開発就労事業というのが一応高齢者等雇用安定法に基づいて実施されていますが、これはごく限られた地域でごく人数が少ないということと、政府の方の方針ではこれを廃止するというふうになっていますので、現実にはそんなに効果は持っていない、こういうものであります。
 それからもう一つは、私たちもこれは活用すべきだ、こういうふうに言っていますけれども、緊急地域雇用創出特別交付金という制度が、この前は緊急地域雇用特別交付金で、これは一九九九年の六月から行われて、その後、緊急地域雇用創出特別交付金で引き継がれている、こういうことでありますが、これはやはり仕事を保障して生活の安定を図る、こういう施策になっています。
 この仕事を保障して失業者の生活の安定を図る施策と、それから所得を保障して失業者の生活の安定を図る施策、この二つが両輪で動くような体制にしていかないと、雇用保険だけで失業に対処をしようとしたら、これは、失業状況が厳しくなれば、当然財政破綻というのは起こらざるを得ないことになります。
 ただ、そういう形で今何とか、特別交付金が一応就労を保障するものになっていますけれども、ただこれは非常に財政規模が小さい。大体、三年間で三千五百億で始まったわけですが、一年にすると一千億をちょっと超える程度。だから、これは雇用対策としては余りにも規模が小さ過ぎます。雇用保険の方は二兆円から三兆円の規模でやっているわけですから、少なくともそれに対応するような形でこれも大きなものにして、それと両輪の形で失業に対応する、こういうことが必要だと思います。
 それから、ちょっと先ほど忘れたんですが、雇用保険は雇用していたことを前提にして保障されるわけですね。しかし、雇用されていない人も今は失業しています。先ほど出ました若者ですね。大学もそうですし、高校も就職率というのは非常に低くなってきている、こういうことです。この人に対する保障制度は全くありませんので、これはやはり保険原理ではなかなかできない。だから、やはり手当制度というか、そういうものも含めていかなきゃいけない。
 だから、そういう形で、手当制度もやる、それから雇用保険も充実する、それから就労事業もやっていく、こういうような形で失業対策を全体として大きな体系的なものにして、その中の一つとして雇用保険というのがあれば、雇用保険というのはかなりの厳しい失業にも安定的に対応できるようになる、こういうふうに考えております。
山口(富)委員 どうもありがとうございました。
 次に、中村参考人にお尋ねしますが、政府の出している今度の改正というのは、雇用保険に対する信頼や期待を失わせるものだという話がありまして、そのもとになっているのは、現在の雇用情勢、失業情勢の深刻さに対する認識の度合いじゃないかというふうにおっしゃいました。その際に、今度の対応策が現実の雇用失業情勢から遊離したものだというふうにおっしゃいましたけれども、どうしてこういう遊離が起きてしまうとお考えですか。
中村参考人 申し上げたのは、雇用失業状況の見方ということについて、いわゆる雇用保険のセーフティーネットの部分のところをどう維持していくかという判断のところが大きくかかわっているということだろうというふうに思っております。
山口(富)委員 私は、その問題で中村参考人にもう一度、政府の対応が現状から遊離しているというふうに指摘があったんですが、これは、大きくは、現状に対する認識の点がやはり問われるという理解でよろしいんでしょうか。
中村参考人 はい。雇用保険のセーフティーネットの関係で、現状の認識というのはまさしく政策判断の分かれ目のところであろうということで申し上げたと思います。
山口(富)委員 中村参考人にもう一点お尋ねしますが、失業構造に今質的変化が起きているんだという特徴づけをなされまして、失業期間が長くなっている問題ですとか中高年層がかなり被害に遭われているということを指摘されたんですけれども、この質的変化ということをとらえる重要性というのはどこに見ているんですか。
中村参考人 いわゆる再就職を含め、新たな職につくことが非常に困難であるという部分のところが発生をしている点、それから、緊急になかなか対応ができないという部分のところが発生をしている点ということでございます。
山口(富)委員 紀陸参考人にお尋ねしたいんですが、きょう冒頭に、雇用保険の問題で、生活、雇用の安定の柱にこれはなるものだというお話があったと思うんですが、これはやはり今後とも、失業問題それから雇用の安定を考えたときに、こういう雇用保険の制度というものを安定させることが重要だという認識を持っているということとして理解してよろしいんでしょうか。
紀陸参考人 まさにそうでございまして、何かのときに雇用保険というような制度があれば、一時的な生活の落ち込みということに対して安心感が得られるものですから、そういう意味でセーフティーネットになり得るというふうな理解をいたしております。
山口(富)委員 時間が参りましたので終わりますが、今度の雇用保険制度の問題については現状の認識がやはり厳しく問われているということを感じましたので、以上申し述べて、終わります。
宮腰委員長代理 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 まず最初に、紀陸参考人にお伺い申し上げます。
 極めて抽象的な問い方ですが、日本の企業は、企業にとって人は財産だと思いますが、人をどう遇したいと思っているかということで、これは労働者への企業サイドからのメッセージにもかかわる部分だと思いますが、そのことを少し具体的にお教えいただきたい。
 というのは、午前中も申しましたが、日本はこれまで、長期の雇用慣行、安定的な慣行の中で、ある種、労使協調して支えられてきた部分もありますし、それから今非常に、固定費、すなわち人件費の部分を削減しないと企業も国際競争に勝てない、あるいは銀行の融資もしてくれないという外圧もかかりまして、そうはいっても、人を大事にするということの中身がもしかして変わってきているのかもしれないしというところで、何点かお伺いいたします。
 まず、紀陸さんたちがカバーしておられる実業界の中で、実業界みずからが新規の採用、求人を現在手控えておるというような比率と申しますか、そういうものは全体を見渡したときに一体どのくらい、まあ旧来どおりに新規採用もしているよというところもおありかもしれないし、いや、新規採用も含めて八割方手控えないと今、日本の企業というのはやれないんだよということなのか、そのあたりをまず一点お願いします。
紀陸参考人 阿部先生の今の御質問にお答えしたいと存じます。
 いろいろな企業の中でどのくらいの企業さんが新規採用しているか、かつ、新規採用するにしても、トータルでどのくらいの割合で従来と比べて雇用の数を維持しているかというと、その辺の具体的な実数はちょっと定かにはわかりませんけれども、ただ、少し求人倍率も改善してきておりますし、昨年、一昨年と比べると、これからは、少し企業の採用意欲というものにもだんだん改善の兆しが出てくるのではないかというふうに思っております。大分これまで、やむなく企業再編に伴って雇用人員を減らしてきましたけれども、それもだんだんと、部分的ではございますけれども、一服感が出てまいりまして、これから雇用増の方に少しずつ展望が開けてくるのではないかというような予測を持っております。
阿部委員 ぜひそうあってほしいですが、先ほど来何人かの委員の御指摘で、若年者の失業率が日本でも高まっていますし、全く職歴を持たない若い人たちがどんどんどんどんふえてくるということは、これからの中期的な労働市場を考えた場合でも、だんだん就労人口は減って働き手は減ってくる中ですから、ある時期の採用の中断が企業としての持続力を欠くということも出てくると思いますので、今の見通しどおり、これからは少し前向きになるよということに期待しながら、次の点でございます。
 先ほど来これも問題になっておりますが、中高年のリストラも含めて、若い人は手控えている。そうすると、同じ企業の中でも、真ん中に入る、サンドイッチになるところの三十から四十五歳くらいの層に、例えば労働時間の長期化とかさまざまな職場のストレスとか加わってくるかと思いますが、その中堅層、中間層に関しまして、企業サイドとして今どういう認識をお持ちで、またどういう気配りをなさっておるか、その点をお願いします。
紀陸参考人 今、企業の中で一番大きなうねりとして出てきておりますのは、特に働く人に対してどういうインセンティブを与えるかという問題ではないかと思います。
 企業の人件費が高い、先ほどそういう感じを持っている企業が多いという御指摘がございましたけれども、まさに競争力強化のために人件費をどうしたらば合理化できるかという点が大きな課題なんでございます。
 ただ、そのやり方として、一律に全体を下げるというようなことではなくて、いろいろな賃金制度なり処遇制度を変えて、働く人に、本当に成果を上げた人にはそこの賃金引き上げ増あるいは処遇の改善ということが結びつくように、インセンティブを図る工夫をどうやって組織の中に入れ込むか、そこにいろいろな企業が腐心をしている。それが、特に今御指摘のような中堅層に効果があるような形で制度の見直しをして、かつ、それが実際に運用できるように、どの企業さんも、大企業さんも中小企業さんも同じかというふうに思っておりますけれども、そこに一番意を用いているのではないかというふうに私ども感じております。
阿部委員 私どもも漏れ聞きますし、また多少は経験いたしますけれども、やはりこの中堅層、中間層が、精神的なストレスも含めて、かなり健康を害している場合も多く、そのインセンティブというのはいい方に働けばいいですけれども、悪く働くと落後感を伴ったりさまざまに、うつにもなってまいります。きょう午前中もそういう論議をいたしましたけれども、ますます今の厳しい状況の中で、むしろ矛盾が集約しながら表に出ない層と思いますので、経営団体としてもさまざまな面のサポートを考えていただきたいのと同時に、今度は高年層、六十歳以上。
 例えば六十歳の定年で、六十二歳からの年金支給で、この間を六十二歳まで何とか年金までつなぐような企業側からの努力というのもおありかと思いますが、それについてはいかがでしょうか。
紀陸参考人 お答えをいたします。
 今一番どの企業も腐心をしているところはその部分でございまして、六十歳以降の方々にどういう形で職場を提供するか。基本的には再雇用という形でもってどの企業さんも努力をしておられますけれども、ただ、現実に仕事が減っているというような場合には、それをどういう形で再雇用の機会を提供するか。できるところは、グループ企業の中で他社に出向に行っていただいたりして、何とか雇用の機会をつくろうというように懸命の努力をしているところであります。
 特に、これからあと五年ぐらいで今の団塊の世代の方々が皆さん六十歳を迎えるものですから、その後の十年近い間どうやってしのぐか。今より以上にこれからいろいろな形で高齢者雇用が深刻な問題になってきますので、その対応は、今時点からどの企業さんも非常に真剣に考えておられるところだというふうに思っております。
阿部委員 私もちょうど団塊世代ですが、では、引き続いて中村参考人にお伺いいたします。
 今の企業サイドの、これから五年をかけてむしろエージレスに働くような形に持っていきたいというお話ではありましたが、労働者サイドから見て、そのあたりの企業サイドの取り組みと、また、労働者サイドとしての課題というあたりではいかがでしょうか。
中村参考人 六十歳以降の年金との接続の問題は非常に重要だというふうに私どもも認識をいたしております。
 現在、三年前ぐらいから六十一歳で、今度六十二歳ということでございますが、三年前のときは、これは労使の協力ということでありまして、いわゆる人を特定しない、基本的に希望者全員に対する継続雇用制度というものが、これは労使の努力があってかなり進みました。ところが、御案内のような状況でございまして、この間、それ以降の進展がぴたっととまっておる。その中で六十二までさらに延びていくということで、極めて危機感を抱いておるというふうに考えておるところでございます。
 私どもの調査にもありますが、現在、六十二までいっているのは四割ぐらいという実績でありまして、とりわけ、大企業では何とか頑張っていただいているのですが、それ以下のところで大きな課題を抱えている、全く検討できないというようなところも同数ぐらいあるという実態でございまして、これは仕事をどうつくるかということも含めて、まさしく現場の知恵の部分が非常に大きなウエートを占める部分でございます。
 そういう意味では、まず労使が一生懸命努力をして、適正な処遇も含めてつくっていくということが非常に重要であるというふうに考えております。そのための整備、支援というものを国としてきちっととっていくことが重要ではないかというふうに思っております。
阿部委員 引き続いて、今の中村参考人にお伺いいたしますが、参考人からちょうだいいたしました資料を拝見していまして、ハローワークの前で行った調査の中で、失業を二、三カ月して一番声の高かったのが社会保険負担の減免であるということでありましたが、具体的には、以前に健康保険の問題で民主党が提案をなさったことがあるかと思いますが、現在、労働団体として、この社会保険の減免について具体的にさらに突っ込んだお考えがあれば教えていただきたいと思います。特に、本当に失業されて収入が減った、あるいはないのに保険料を払っていくわけですから、その辺で、こういう形にというような具体的提案がもしあればお教えください。
中村参考人 一連の雇用対策ということの強化で連合としてお願いをしている問題がございまして、まさしく今この社会保険料等の負担の軽減という部分のところがその一つでございます。
 基本的にはまず医療、年金も含めてなのですが、受給権あるいは権利というものをきちっと担保するということが基本的な考え方の論点の一つでございます。問題は、制度に組み込んだときに負担をどうするかという部分の関係がございまして、とりあえず、昨年からこの一年間にやった雇用対策の要求につきましては、考え方として、負担については猶予をする、そのかわり権利はきちっと適用するという措置を講ずるということが、現在の連合としての雇用対策の中で決めていることであります。
 ただ、連合としては、年に二回、政策制度をまとめる議論をしておりまして、その新ラウンドの議論が始まっているところでございます。この問題は当然焦点になって、現在議論中ということで、免除ということも含めて再度検討してはどうかという議論になっておるところでありますが、この部分はまだ確定をしたわけではございませんので、現在のスタンスとしては、今までのこの一年間の雇用対策の部分のスタンスでございます。
阿部委員 ぜひ必要とされる部分と思いますし、私どももまた、御指摘いただければ国会審議の中に取り上げていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最後に、大須参考人にお願いいたしますが、これは諸外国との比較でも構いませんが、私、午前中も伺いましたが、日本が、勤労者の中で雇用保険というものにカバーされておる率が果たして諸外国と比べて低いのか高いのか。先ほど大須参考人は、必ずしも働いていなくて、業も得ずして職のない若い人々の問題を問題にされましたが、一方で、就労はしていながら雇用保険を持たない方たちの存在というのがあると思うのですが、この点について、日本のプロフィールと、それから改善点について御意見があればお願いいたします。
大須参考人 外国の例については、申しわけないのですが、というかわからないのと、勉強していないのがありますし、それと、外国の問題をやるのは、単に一つの制度だけ取り上げてもなかなか比較にならないのじゃないかというのが僕はいつも考えている問題でして、申しわけありません。
 それで、では日本の雇用保険のカバー率というか、ですからそれも、先ほど言いました失業者の保障の範囲の問題と、それから雇用保険に加入している率というか、両方あると思うのですね。それで、失業者のカバーというのは、これは失業者を完全失業者というふうにとらえるのかはいろいろありますけれども、わかるのは完全失業者ですから、先ほども言いましたように、完全失業者数は現在三百万人を優に超えているという状況は変わっていない。それから、失業保険の方の実受給者、これは最新のは何か百十万人ぐらいだと思います。ですから、この比較ということでいけば、失業という事態に対して雇用保険がカバーしているのはその程度でしかない、こういうことであります。
 ただ今度、雇用保険の加入ということですと、先ほど言いましたように、公務員の問題は一応雇用保険法の規定に基づいて入っていないわけですね。ですから、この規定を変えなければいけない。私立大学の教員については、規定にはなくて入っていないというようなことです。それから、恐らく実際にはかなりもっと徹底した調査は必要だと思います。ただ、かなり零細な企業とかそういうところで漏れているのはあると思います。
 ただ、何か非常に実利的な言い方をしてあれですが、例えば公務員とか私立大学の教員も、大体は比較的失業が少ないので、入ると雇用保険はよくなるのですが、ほかのところは、入るとむしろ財政的には厳しくなる可能性もあると思います。だから入らない方がいいというのではなくて、趣旨としては、もちろん雇用の不安定な人も安定した人も入って、そして失業した人を保障していくというのが制度ですから、そうした上で、もう少しできるだけカバー率を上げて、その上で雇用保険のあり方というのはもう一回考えるべきだと思います。
阿部委員 我が国の社会の安定感、安心感のためにも、今いただいた御指摘を踏まえて、さらに論議を深めたいと思います。ありがとうございました。
宮腰委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げたいと存じます。
 次回は、来る十五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十分散会


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