衆議院

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第16号 平成15年5月21日(水曜日)

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平成十五年五月二十一日(水曜日)
    午前九時三分開議
 出席委員
   委員長 中山 成彬君
   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君
   理事 野田 聖子君 理事 宮腰 光寛君
   理事 鍵田 節哉君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 武山百合子君
      岡下 信子君    北村 誠吾君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      棚橋 泰文君    谷本 龍哉君
      西川 京子君    西野あきら君
      原田 義昭君    平井 卓也君
      増原 義剛君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      森  英介君    谷津 義男君
      山本 明彦君    山本 幸三君
      吉田 幸弘君    吉野 正芳君
      渡辺 具能君    家西  悟君
      石毛えい子君    大石 正光君
      大島  敦君    加藤 公一君
      小林  守君    城島 正光君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    西  博義君
      桝屋 敬悟君    佐藤 公治君
      小沢 和秋君    山口 富男君
      阿部 知子君    金子 哲夫君
      江崎洋一郎君    川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   厚生労働大臣政務官    森田 次夫君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  小島比登志君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            松崎  朗君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  真野  章君
   政府参考人
   (社会保険庁次長)    伍藤 忠春君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十一日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     原田 義昭君
  佐藤  勉君     西野あきら君
  竹下  亘君     増原 義剛君
  三ッ林隆志君     谷本 龍哉君
  山本 幸三君     北村 誠吾君
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  五島 正規君     小林  守君
  桝屋 敬悟君     西  博義君
  山谷えり子君     江崎洋一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     山本 幸三君
  谷本 龍哉君     三ッ林隆志君
  西野あきら君     佐藤  勉君
  原田 義昭君     奥谷  通君
  増原 義剛君     竹下  亘君
  山本 明彦君     吉野 正芳君
  小林  守君     五島 正規君
  西  博義君     桝屋 敬悟君
  江崎洋一郎君     山谷えり子君
    ―――――――――――――
五月十九日
 社会保障の拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(五島正規君紹介)(第二〇四〇号)
 同(川田悦子君紹介)(第二〇四七号)
 同(山口富男君紹介)(第二〇九二号)
 同(桜田義孝君紹介)(第二一一五号)
 同(中山義活君紹介)(第二一一六号)
 同(松崎公昭君紹介)(第二一一七号)
 同(川崎二郎君紹介)(第二一五三号)
 同(宮澤洋一君紹介)(第二一五四号)
 同(西村眞悟君紹介)(第二一八九号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(津川祥吾君紹介)(第二〇四一号)
 同(水島広子君紹介)(第二〇四二号)
 同(大畠章宏君紹介)(第二〇四八号)
 同(奥田建君紹介)(第二〇四九号)
 同(鎌田さゆり君紹介)(第二一一八号)
 同(後藤茂之君紹介)(第二一一九号)
 同(細野豪志君紹介)(第二一二〇号)
 同(渡辺周君紹介)(第二一二一号)
 同(赤松広隆君紹介)(第二一三九号)
 同(松本龍君紹介)(第二一四〇号)
 同(達増拓也君紹介)(第二一五五号)
 同(羽田孜君紹介)(第二一五六号)
 同(牧義夫君紹介)(第二一五七号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(二田孝治君紹介)(第二〇五〇号)
 同(野田聖子君紹介)(第二一二二号)
 同(中野寛成君紹介)(第二一九〇号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(伊吹文明君紹介)(第二〇五一号)
 同(鈴木康友君紹介)(第二一二三号)
 同(長勢甚遠君紹介)(第二一二四号)
 同(野田聖子君紹介)(第二一二五号)
 同(久保哲司君紹介)(第二一三五号)
 同(嘉数知賢君紹介)(第二一五八号)
 医療・社会保障の改悪をもとに戻すことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇七〇号)
 同(石井郁子君紹介)(第二〇七一号)
 同(大幡基夫君紹介)(第二〇七二号)
 同(大森猛君紹介)(第二〇七三号)
 同(児玉健次君紹介)(第二〇七四号)
 同(穀田恵二君紹介)(第二〇七五号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第二〇七六号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二〇七七号)
 同(中林よし子君紹介)(第二〇七八号)
 同(春名直章君紹介)(第二〇七九号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二〇八〇号)
 同(松本善明君紹介)(第二〇八一号)
 同(山口富男君紹介)(第二〇八二号)
 同(吉井英勝君紹介)(第二〇八三号)
 医療改悪をもとに戻すことに関する請願(小沢和秋君紹介)(第二〇八四号)
 同(木島日出夫君紹介)(第二〇八五号)
 同(児玉健次君紹介)(第二〇八六号)
 同(穀田恵二君紹介)(第二〇八七号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第二〇八八号)
 同(中林よし子君紹介)(第二〇八九号)
 最低賃金の引き上げ、全国一律最低賃金の法制化に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二〇九〇号)
 労働法制の改悪・規制緩和反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第二〇九一号)
 最低保障年金制度の創設等に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二〇九三号)
 障害者の介護・福祉制度の利用における親・家族負担の撤廃に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二〇九四号)
 同(山口富男君紹介)(第二〇九五号)
 被用者保険の負担引き下げに関する請願(石井郁子君紹介)(第二〇九六号)
 同(穀田恵二君紹介)(第二〇九七号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二〇九八号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二〇九九号)
 同(松本善明君紹介)(第二一〇〇号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の改正に関する請願(石毛えい子君紹介)(第二一八八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)
 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)


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     ――――◇―――――
中山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房審議官青木豊君、医政局長篠崎英夫君、健康局長高原亮治君、医薬局長小島比登志君、労働基準局長松崎朗君、職業安定局長戸苅利和君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、保険局長真野章君及び社会保険庁次長伍藤忠春君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長増田峯明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。
山井委員 本日は職安法と派遣法の審議の時間でありますが、先々週来質疑を行っております木村副大臣の問題、これはまだまだ疑惑が深まるばかりで、また新たな疑惑も出ておりますので、きょうは九時から十一時の間、四野党、二時間集中してこの問題を取り上げさせていただきたいと思います。
 まず最初に、資料請求したことでお伺いしたいんですが、先日理事会に提出されました整骨の保険の適正化の資料ですね。あの中で、平成九年九月十七日の保険局医療課の資料、「負傷原因の記載例」というのが、六ページというのが唐突に出てきているんですが、この一ページ目から五ページ目を出していただきたいというふうにお願いしているんですが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 資料を提出しますときに、実は私も同じことを申しました。これはなぜ六ページだけあるのと。これは、六ページだけ出すと、恐らく一ページから五ページまでどうしたんだと多分言われるだろう、これは余計に言われる原因をつくるみたいなものだ、だから、これはないのと言って僕も問いただしたんですが、いや、実はこの六ページだけ残っている、そのほかはないという話でありまして、それでは六ページもやめておくかと僕は思ったんですけれども、やめますと、また余計に皆さん方の疑惑を招くということで、ありますものを全部お示しするというのが順当だろうというので、全部お出しをした。
 現実問題として、一ページから五ページまではないというのが現実でございますので、お許しをいただきたいと思います。
山井委員 今のことは一例でありますが、理事会に提出された資料、不思議なのは、分析してみると、十月十一日に社団法人と医療課で一たん三部位以上を適正化するということで合意に達した段階までの文書と、その後は十二月一日に通達が出たときのものだけであって、この三部位問題が、一番もめにもめて、国会議員の方々も登場された、その三部位案が葬り去られたプロセスの文書というのが一切ないわけですね。この過程が非常におかしいということをまず指摘しておきたいと思います。
 その次に、木村副大臣にお伺いしますが、この内部文書の中で、九七年十月二十四日に当時の室長と会って話をしたということに対して、私が聞きましたところ、全く身に覚えがないという答弁でした。それに対して、私は、全く会っていないと断言できるんですか、会って働きかけしていないと断言をできるんですかという質問に対して、合計三十一回、全く身に覚えがないという答弁を繰り返されました。
 ここで、再度お伺いしたいと思います。身に覚えがないということは記憶がないということで、会ったことはない、働きかけをしたことがないと否定したことにはなっていないわけですから、新聞報道に、木村副大臣、疑惑を否定ということが書いてありますが、否定にもなっていないわけですね、記憶がないというわけですから。そこで、もう一度木村副大臣に身の潔白を、正すなら正すチャンスをお与えいたしますので、会った事実がない、働きかけをした事実がないと断言できるんだったら、今御答弁ください。
木村副大臣 平成九年の十月二十四日の資料のお話でございます。
 この柔道整復師会の療養費の支払いに関しましては、当時、担当の方と会ったかどうかとか、どのようなことを話したかというようなお尋ねでございますけれども、私といたしましては、次のような状況のもとで、私の気持ちに最も適切な言葉でお答えをさせていただくという趣旨から、身に覚えがない、こういう表現をさせていただいているところでございます。
 まず、御承知のように、議員活動というのは大変大勢の方々と毎日毎日お目にかからせていただいているわけでございまして、面会も、日によっては二十も三十も、超えることもたくさんあるわけでございます。きのうやおとといのことも、先般もある議員から質問がございましたように、なかなか思い出すのが大変な中で、六年前の特定の日時にだれと会ったかということを思い出すということは大変難しいことでございまして、恐らくどなたも、例えば五年も六年も前の何月何日にだれと会ったかといったら、一から十まで正確なことを言える方というのは非常にまれなのではないかと、そのように思っているわけでございます。
 そして、私は、先般もどなたかの委員の御質問にもお答えをさせていただきましたように、日記はつけておりませんし、手帳も持っていないのでございまして、それからまた、当時の……(山井委員「もう結構です、結構です」と呼ぶ)
山井委員 つまり、否定ではなくて、記憶にない、覚えていない。否定も肯定もできないということで、疑惑は全く晴れていないわけですね。
 となると、献金を贈られた香川県の接骨師会の山田会長が、働きかけの謝礼で贈った、会員にも相談して贈ったと、そう証言されているわけです。また、本当のことをしゃべって何が悪いんだろうということもその後おっしゃっていられるわけですね。そういう意味では、やはり、働きかけをされたということの方が事実であるということをこの場で確認しておきたいと思います。
 次に、日本精神病院協会からの献金の問題についてお伺いしたいと思います。
 先週水曜日の私の質問に対して、昨年十一月、十二月、十一月に三十万円、そして十二月には五十万円、日本精神科病院協会の政治団体から献金を受けられたということを御答弁されました。そのころは、まさにこの委員会室で心神喪失者医療観察法案が非常にもめて、審議が紛糾していたころであります。そして、ちょうどその当時、十一月六日の日本精神病院協会の集会で木村副大臣があいさつに登場されまして、そこで、法案成立に全力を挙げるというふうなあいさつをされたわけです。
 そこでお伺いしたいんですが、この十一月六日の集会に参加されたというのは、公務で行かれたわけですね。
木村副大臣 この会合に関しましては、御案内状を私の事務所にいただいたような次第でございます。それで、これは政務で行かせていただきました。
山井委員 副大臣という肩書で紹介されて、副大臣という肩書であいさつをされているわけですから、副大臣として行かれたということであります。
 そこで、これも質問通告してございますが、日本精神科病院協会から昨年もらわれた献金の額と日付、パーティー券や陣中見舞いを含む、その額について改めて御答弁ください。
木村副大臣 何回も御答弁させていただいているんですが、政治献金は政治家の活動として法律上認められているものでございますので……(山井委員「そんなことは聞いていません。額と日付です」と呼ぶ)日精協政治連盟からの政治献金の額と日付、平成十四年の七月に三十万、十一月に三十万、十二月に五十万円、日精協政治連盟から私どもの政治資金管理団体に政治献金をいただいております。
山井委員 平成十一年から十三年まで、つまりその以前三年間についてもお答えください。これも質問通告してあります。
木村副大臣 日精協政治連盟から、平成十一年は見当たりません。二〇〇〇年は六月に百万円、十二月に三十万円の献金を受けております。二〇〇一年には三十万円と三十万円、それは八月と十二月でございます。
山井委員 ということは、十一月に献金を受けられたということは過去なかったわけですね。ということは、十一月、十二月の献金の趣旨というのは、木村副大臣、どう理解されていますか。
木村副大臣 分けられているのかどうか、相手の都合と思いますのでよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、私の政治活動への政治献金、一般的な政治献金、このように理解をしております。
山井委員 このことに対して、その献金をした側の日本精神病院協会の政治連盟の会長は、十一月の集会、心神喪失者医療観察法案の成立を期す、それを最大の目的とした集会にあいさつに来てもらった謝礼として渡したというふうにマスコミに対しても話しております。そう考えると、こういうことをして謝礼をもらっていいのかという問題も出てくると思います。
 そこで、参議院の法務委員会でもこの問題が大問題になって審議がストップしたんですが、その際に、日本精神科病院協会の政治連盟の昨年の献金のリストを出すようにということが、委員会から要望があって、副大臣は努力しますと答弁されました。そのリストは出ますでしょうか。
木村副大臣 先生がおっしゃっているのは、リストというのは……(山井委員「精神科病院協会が献金をしたリストです、昨年、木村副大臣だけじゃなくて」と呼ぶ)それは……(山井委員「参議院でも言っていることですから、繰り返しなんです、参議院でもそう言っているでしょう」と呼ぶ)
中山委員長 立って質問をしてください。
木村副大臣 私の献金の話は先生の問いに正直に答えさせていただいたわけでございますけれども、ほかの方々のリストまでと言われても、これは私の及ぶ範囲のことではないと思うのでございますが。
山井委員 今の答弁、参議院の法務委員会での答弁と違いますよ。それで一たん、そういう答弁だから審議がストップして、出すべく努力をしますということで審議が終わっているわけですからね。その問題はこれまた参議院でもっと大きな議論になると思いますので、これはここにしておきます。
 それでは、疑惑が続くんですが、次に、社会保険病院のことに移らせていただきたいと思います。
 昨年の十二月二十七日に、東京都北区で建設中であった社会保険病院が突然白紙になって、それで、採用予定の二百十人が急に解雇、内定が取り消された。それで、土地を含めて三百億かけてつくったこういう大きな病院が突然計画中止になったということで、損害賠償も起こっている大問題になっているわけですね。
 そこでお伺いをしたいと思います。この問題についてですが、いつ中止が決まったんでしょうか。
坂口国務大臣 東京北社会保険病院の問題でございますが、これは、社会保険病院のあり方が検討されておりまして、一つは、社会保険病院としての位置づけ、社会保険病院が本当に公的な病院としての位置づけが果たされているかどうかという問題。それからもう一つは、その社会保険病院全部、五十四ですか、その全部が全社連というところに全部任されて、全社連が運営をしている。その運営のあり方が正しいかどうか。こういうことを、両方がございまして、いろいろと議論になってきたところでございます。
 昨年の十二月の二十五日に取りまとめました基本方針の中で、現行のこの社団法人全国社会保険協会連合会、全社連と言っておりますが、ここへの一括委託方式が、平成十五年から十七年までの経過措置期間を経て終了すること、もう少し見直して多様化をしていくということがここで決められているわけでありまして、新たに設置されます東京北社会保険病院につきましては、全社連にかえて新たな委託先を見つけよう、こういうことになったわけであります。(山井委員「いつ中止になったんですか」と呼ぶ)中止になりましたのは、二十七日に一応決定をしたということでございまして、現在、その新しい先を選考中でございまして、六月の半ばには決定できると思っております。
山井委員 この突然の中止に対して、木村副大臣は賛成をされましたか、反対をされましたか。
木村副大臣 社会保険病院につきましては、政府管掌健康保険の厳しい財政状況を踏まえまして、昨年の健康保険法の改正の検討過程におきましても、そのあり方の抜本的な見直しが求められ、同法附則にもその旨明記されたところでございます。
 これを受け、厚生労働省といたしましては、昨年三月に医療制度改革推進本部を設置いたしまして、この中で社会保険病院のあり方についての基本的な検討を行うとともに、新規に開院する東京北社会保険病院につきましても全体の見直し方針に即して、どのように対応すべきか、検討を進めてきたところでございます。
 このような経緯を踏まえまして、昨年末に厚生労働省といたしまして、社会保険病院のあり方の見直しの方針を決定したものでございまして、今回の東京北社会保険病院の件につきましても、社会保険庁がその方針に基づいて対処したものでございます。
山井委員 今の突然の中止のなぞを解くかぎが私は昨年十月三十一日の宮崎議員の参議院での厚生労働委員会での質問にあると思います。
 その際に宮崎議員はどう質問されているかというと、その前の質問は坂口大臣がされていたんですが、この部分だけ「そして、木村副大臣には、社会保険庁病院の整理等についてどういうふうにお考えになるか、そして来年度の予算にもうこれを組み入れているみたいな話がございますが、そんなものはもう必要ないということで私は対応してもらいたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。」という質問が宮崎議員からありました。それに対して、木村副大臣はこう答えております。「まだまだ新しい病院の建設が続いておりまして、同じ四月一日に何かホテルのような社会保険病院がまた一つオープンしてテープカットをしたと、このようなばかなことがないように努めてまいりたいと、かように思っているような次第でございまして、」ということがあります。
 このホテルのような社会保険病院が四月一日オープンというのは、これはどこの病院のことですか。
木村副大臣 先般の健康保険法の改正におきましては、政府管掌健康保険の厳しい財政状況を踏まえまして……(山井委員「そんなことは聞いていない。どこの病院のことか聞いているんです」と呼ぶ)保険料率の引き上げや患者の一部負担割合の三割への引き上げ等国民に大きな負担の割合を求めることとなっています。(山井委員「聞いたことを答えてくださいよ。どこの病院ですかと聞いているんですから」と呼ぶ)いや、だから、このような状況を背景にいたしまして……
中山委員長 静粛に、静粛にしてください。
木村副大臣 医療保険に関するさまざまな議論を踏まえて、貴重な保険料財源の使途として今後社会保険病院に多額の整備費の支出をすることは許されないのではないかと、そういう趣旨で答弁をさせていただいたものでございます。
山井委員 質問に答えていないじゃないですか。どこの病院のことかと聞いているんですよ。
木村副大臣 社会保険病院のことでございます。
山井委員 どこの社会保険病院ですか。
木村副大臣 社会保険病院全般について答えさせていただいているわけでございますけれども、当時、保険病院が、しかかっているのは六つぐらいあったと思います、ちょっと正確な数は私は覚えていませんけれども。そういう中でのこれからオープンする病院のことを申し上げさせていただいたようなわけでございまして、社会保険病院全体としてどんどんどんどん巨額な予算を使うということには問題がある。といいますのは、十年間で……(山井委員「いいです、もういいです」と呼ぶ)はい。
山井委員 これは答弁違いますよ。月曜日の決算行政委員会では、社会保険庁の方が、計画中だったのはこの北病院しかなかったというふうに答弁をしていますよ。ここしかなかったじゃないですか。はっきりしてください。
木村副大臣 計画中あるいは実施中の病院はたしか五つか六つあると思います。
山井委員 でも、計画中なのはここ一つじゃないですか。そのことはきっちりと認めてくださいよ。
 大臣は聞いておられますよ、月曜日の審議。あのときは東京北病院しかないということを答弁されました、はっきりと。
坂口国務大臣 建てかえの準備は数カ所進んでいたようでございますけれども、四月一日にオープンするのは、それは北病院である、そういうことでございます。
山井委員 木村副大臣、四月一日にオープンするのは北病院ということでいいですね。今の大臣の答弁にありました。
木村副大臣 四月一日にオープンする予定でございます。
山井委員 そこで、この北病院のことはそんなばかなことがないように努めてまいりたいと思いますという答弁をされたわけですね。この質問された議員の肩書を見ますと、日本医師会代議員ということであります。
 それで、日本医師会の意見の代弁ともとれるわけですが、副大臣にお伺いします。なぜ、この社会保険庁病院の部分だけ副大臣が答弁されたんですか。何らかの、宮崎議員との打ち合わせがあったんですか。
木村副大臣 大臣と副大臣の答弁は数とかに応じて割り振らさせていただいておりまして、私のところに来る場合もあれば大臣がお答えする場合もあるし、これは千差万別でございまして、そういうことでございます。
山井委員 この十二月二十六日の現地視察、唯一、一回、木村副大臣、現地に行かれましたね。そのときに社会保険庁や厚生労働省の関係者以外に業者を同行されたというふうに聞いているんですが、このことは事実でしょうか。
木村副大臣 私が業者を同行しろと言ったことはありませんけれども、説明の中で、たしかあれは、この病院の建物の説明の中で、設計の担当者はいたように思っておりますが。
山井委員 この突然の中止決定の中で、木村副大臣はどのようにかかわられましたか。
木村副大臣 先ほどから申し上げているとおりでございまして、別段私がどうだこうだという話ではないんです、これは。
 ずうっと前から、この話はおととしから続いているんですよ。おととしに、自己負担の割合を三割に上げる、三割に上げるときに、実はこの社会保険病院に何と約十年間で六千億円ぐらいのお金をずうっとつぎ込んできたんです。それをただで出していたんです、ただで。(山井委員「反対か賛成かを聞いているんです」と呼ぶ)ただでさしているわけでございます。それからずうっと議論が続いている問題でございます。
山井委員 ということは、今の話からすると反対をされたということですね。
 それでは、昨年一年間に日本医師会政治連盟から献金を受けておられると思いますが、日付と額、パーティー券、陣中見舞いも含めて御答弁をお願いします。
木村副大臣 日本医師連盟から私の資金管理団体に対しましては、一年間ですか。(山井委員「まず昨年一年間を答えてください」と呼ぶ)一年間ですね。合計で……(山井委員「合計じゃなくて、日付と額です」と呼ぶ)五月に百万、七月に二百万、十二月に五百万。政治献金は以上でございます。(山井委員「パーティーは」と呼ぶ)パーティーは、三月に百万、十月に百万でございます。(山井委員「それで、十二月の日付と言っておりますので」と呼ぶ)
中山委員長 山井君、立って発言してください。
山井委員 はい。
 十二月の日付を教えてください。献金のあった日付。
木村副大臣 十二月二十五日でございます。
山井委員 平成十一年から十三年、前三年間さかのぼりたいと思います、日付と、また献金額と、パーティー券も含めて。三年間、去年より前の三年間ですね、日本医師会政治連盟からの献金額と日付をお願いします。
木村副大臣 日本医師連盟から私の資金管理団体に対しましては、一九九九年十一月に二百万、二〇〇〇年五月に五百万、十二月に二百万、二〇〇一年が、四月に百万、八月に二百万、十二月に二百万でございます。
 このほか――でいいんですか。
山井委員 今、二〇〇〇年と一九九九年。三年間ですから。
木村副大臣 今答弁いたしましたけれども、一九九九年には、十一月二百万、二〇〇〇年には、五月に五百万、十二月に二百万、四月に百万、八月二百万、十二月二百万を受けております。最後は二〇〇一年。二〇〇一年には、四月に百万、八月二百万、十二月二百万でございます。
山井委員 ということは、それまで、昨年までの三年間は、十二月の献金は二百万ずつだったわけですよね。ところが、昨年は五百万を受け取っている。それで、その受け取った日付、十二月二十五日というのは、先ほどおっしゃった突然の中止決定をされた十二月二十七日の直前なわけなんですね。このことと、日本医師会はこの社会保険病院の見直しに関してはどのような考えでしたか、木村副大臣。
木村副大臣 日本の医師会長は、この件に関しましては、私とはちょっと意見が違ったような、そんなような感じがいたしたと覚えていますが。
 いずれにしても、これは個人的な話なのでよくわかりませんけれども、医師会としてこのことに関しては一切何のお話もいただいたことはありません。
山井委員 日本医師会はこの社会保険病院の見直しに非常に熱心であったわけで、それで、かつ宮崎議員が十月三十一日に質問をされているわけなんですね。この二百万、二百万、二百万が急に昨年の年末、この中止決定の直前に五百万、二・五倍にはね上がった、この理由はどう思われますか。
木村副大臣 これは、いつも相手の御心任せなんでございます。
山井委員 その時期に、そういう社会保険病院のことももめている、また、これから医療制度改革も本番を迎えるという時期に、副大臣という立場でその時期にもらうということに対して、まずいんじゃないか、そういう意識はありませんでしたか。
木村副大臣 政治献金は政治家の活動として法律上認められているものでございますし、政治資金規正法に基づきまして適正に処理をしているところでございます。
 私は、副大臣として公共の利益のために職務を遂行してございますし、心神喪失者等医療観察法案につきましても、とか、こういうような東京北病院の問題とか、それから医療関係全般の政策のことにつきまして献金を受けることはないわけでございますし、そして、いただいた資金の有無によって政策を曲げるようなことは決してございません。
 それから、今、日本医師会から東京北病院のことについて陳情を受けたかと言いますけれども、日本医師会としては、この件に関しては全く、私に関しまして、私のところへ、東京北病院をどうしろああしろとか、そういう話は一切ございませんから、その点はどうぞお間違いのないようにお願いをしたいと思います。
山井委員 そもそもこれは、坂口大臣、お答えいただきたいんですが、十月三十一日の時点では、この四月一日に東京北病院は社会保険病院としてオープンするという方針でしたね。(発言する者あり)
中山委員長 静粛に。
山井委員 いかがですか。十月三十一日の時点で、答弁お願いします。
坂口国務大臣 具体的な日程、今急にお話があって、そうだったかどうかということを今つぶさにわかりませんけれども、今までのスケジュールは、北病院、これは社会保険病院としてスタートする予定で進んできていたわけであります。
 しかし、一方におきまして、先ほどからお話ありますように、これは三割負担の問題、いわゆる医療改革の問題とあわせましていろいろの御批判が起こっていたことは事実でありまして、見直すべきだという意見がだんだんと高まってきているときであったことも間違いがございません。
 それは、先ほどから、例えば職員の給与等についても国家公務員よりも高いとか、いろいろな問題が出されておりまして、そうした問題で、いわゆる保険料をそのまま入れるということは、それは問題があるという御指摘があったわけでありまして、そういう問題もあわせて進行していた時期であったというふうに記憶いたしております。
山井委員 私が聞いているのは、十月三十一日の時点ではまだ中止決定は出ていなかったわけですから、省としては、この計画は推進という方向だったわけですね。そのことを確認したいんです。
坂口国務大臣 ですから、まだそのときには進行していたわけでありますけれども、進行しつつ、そうした見直しの話も一方においては出ていたということでございます。
山井委員 十二月二十七日に中止決定するまでは、当然これは社会保険庁と厚生労働省が進めていられた話なわけですね。ということは、もう一度これは議事録に戻らせていただきますと、まだ中止も決まっていない、そういう推進中の事業に対して、「何かホテルのような社会保険病院がまた一つオープンしてテープカットをしたと、このようなばかなことがないように努めてまいりたい」と既に答弁をしているわけなんですね。これは、副大臣、当時の政府の見解ですか、個人的な見解ですか。
木村副大臣 何回も申しておりますように、これはずうっと長い間続いているんです。この議論が続いているんですよ。だから、その議論の中でいろいろな議論が出てくるのは、それは当然の話だと思いますよ。(山井委員「質問に答えてくださいよ」と呼ぶ)いや、質問に答えているじゃないですか。(山井委員「どっちの立場で答えたんですか」と呼ぶ)だから、質問に答えているわけですよ。
 これは、ずうっと長い間議論が行われてきたんです。ですから、恐らく省内においてもいろいろな議論があるのは当然の話でございますけれども、やはりしっかりとした見直しを行って、何といっても、先ほどから申しているように、十年間で六千億円以上の金を、この社会保険病院を建てて、ただで、ただでですよ、貸していたわけですよ。
 国立病院ですら、これはただじゃありません。国立病院は、ちゃんと借金をしてつくっているんですよ。自分のところの国立病院ですら借金をしてつくっているのに、何で社会保険病院だけは、国民の皆さんの保険料をいただいて、その保険料という、これはソフトのマネーですよ。本来であれば、保険料は皆さん方の医療費に使うべき話でしょう。それが何でああいうハードに使われて、ハードに使われて、しかも、特定の団体にただで貸しているんですか。
 このことをおかしいと先生はお思いにならないんでしょうか。国立病院の方は、わざわざ財投等から借金をしてつくっているんですよ。そこの違いが一番の肝心のポイントなんです。だから、それはずうっと議論をしてきたことでございまして、当然そういう議論があっておかしくない話ですし、どうしてそういうところは問題にされないんでしょうか。
山井委員 いい答弁を聞かせていただきました。そうやってこれを副大臣は大反対をされたわけですね。
 ところが、聞いているのは、ばかなことはないように努めていきたい、そのばかなことというのを当時厚生労働省と社会保険庁は進めていたわけですよね。これでも、政府の答弁者、責任者である副大臣が、自分たちのやっていることをばかなことというのはやはりおかしくないですか。坂口大臣、この答弁を横で聞かれてどう思われましたか。
坂口国務大臣 先ほども意見が出ておりましたように、これはそうした医療改革と並行して進めていた話であります。
 国民の皆さん方に三割の自己負担をお願い申し上げる、そのお願いを申し上げます以上、やはりその保険料を使用する使用の仕方というものを、それは医療だけではなくて、ほかのことにそれが出ているということが問題視されているので、それは私は当然のことだというふうに思っておりまして、そこも、したがいまして、医療制度改革を、これは変えなければならないということになっていった、この社会保険病院の問題は変えなければならないというふうになっていたことは事実でございまして、それをどういうふうに、決着をするかというところまでは至っておりませんでしたけれども、その大きな流れの中で進んでいたというふうに申し上げたいと思います。
山井委員 この議事録を見ると、木村副大臣がそんな「ばかなことがないように努めてまいりたい」という答弁の後で、宮崎議員は、「全く私と同じ考え方でございますので、せっかく木村副大臣、政府にお入りになりましたので、是非これは早急に改革をしていただきたいと思います。」要は、やはり副大臣になったからこのことを木村副大臣に要望しているわけですよね、医師会の代議員である宮崎参議院議員が。
 それで、そういう意味では、わざとこれは木村副大臣に質問されたんじゃないですか。坂口厚生大臣だったらこういう答弁をしない、だから、わざと木村副大臣に答弁を求められたんじゃないですか。そういうできレースだったんじゃないですか。それでまた、五百万円の献金を十二月二十五日に受け取っている。
 これは、二百十人が突然解雇された、そして、維持費が今、月に千二百万円もかかっているわけです。それで、この病院の院長は、十二月に入ってからも、再三再四、この病院は四月一日オープンで問題ないんですねと言ったら、十二月二十七日の直前まで、どうもありません、そのまま粛々と進めてくださいということを言われているわけですね。
 そういう意味では、この社会保険病院の問題だけではありません、先ほど申し上げました柔道整復師からの働きかけに対して、献金、五十万円、謝礼を払ったというこの事実、それと、心神法案の審議中にもそういう集会に出て、そしてあいさつの謝礼を三十万もらったということ。こういう、副大臣の立場でもあろう人が政治で、あるいは副大臣という地位を利用して、結局はお金をもうけていくということになるんじゃないですか。こういう疑惑まみれ、お金まみれということでは、この厚生労働行政、やはり信頼を得ることができないでしょう。一億三千万人の命を守るという上では余りにも不適格だと私は思います。
 坂口大臣、日本精神病院協会からの、十一月の集会のあいさつの謝礼ということで三十万円を十一月に受け取られた。それに対して坂口大臣は、やはり今後そういうことはないように慎みたい、木村副大臣に言いたいということをおっしゃいましたが、坂口大臣、月曜日の答弁、いかがですか。
坂口国務大臣 それは政治献金として向こうはお出しになったんでしょうから、木村大臣がそれだけの御関係があって、これは政治連盟からおもらいになったんですから、私がとやかく言うべき話ではないというふうに思っております。
 私は、それは、あいさつをしたからどうのこうのということでは多分ないんだろう、ふだんからの御関係でそれは献金をされたんだろうというふうに思います。
山井委員 木村副大臣にお伺いしたいんですが、この社会保険病院の問題、大体これは今、損害賠償も受けていると思うんですね。その損害賠償は幾ら請求されていますか。
木村副大臣 私自身は存じ上げませんので、事務方から答弁させます。
山井委員 では、それは後でいいです。
 二百十人が解雇されているわけですね。こういう突然の解雇の決定、そのことにおいてこういう献金が動いている、また国会での答弁も関係しているというのは大きな疑惑だと私は思います。
 この心神喪失者法案について、もう一つ疑惑があります。
 ことし一月、四月のパーティー、これは同僚議員であります阿部議員も聞かれているわけですけれども、一月、四月に大きなパーティーを香川県と東京でされました。その際に、この日本精神病院協会、そして日本医師会からパーティー券も購入してもらいましたでしょうか。
木村副大臣 本年のパーティーの収入に関しましては、これは、政治資金規正法の処理といたしましては、来年に届け出をすることになっておるわけでございまして、ちょっと詳しい資料を私は今持ち合わせておりませんし、これは来年の収支報告書に、もしいただいているとしたら適正に処理をさせていただきたい、このように思っているような次第でございます。
山井委員 そのことは先々週からお願いしているわけですけれども、どうしてそれを調べて公表してもらえないんですか。副大臣としてしっかり、そういう責任ある立場なわけですから、一月、四月のことというのはもう結果はわかっていると思います。身の潔白を証明しようとするならば、そのことをきっちりと話されたらいいんじゃないですか。
木村副大臣 いつも申し上げておりますように、政治献金というのは、政治家の活動に対して御支援をいただいているわけでございます。それで、その処理につきましては、政治資金規正法にのっとりまして、適正にいつも処理をしているところでございますし、平成十五年分につきましては収支報告書にしっかりと記載をし、報告をさせていただきたい、このように思っているような次第でございます。
山井委員 先ほど、日本精神科病院協会の政治連盟からの献金について、それは自分の管轄じゃないということをおっしゃいましたが、この協会は社団法人で厚生労働省の管轄なわけですね。
 そこに関しては、こういう法案に関係するお金の疑惑が出ているわけですから、きっちりと、身の潔白を証明するために、そういう献金のリストを出すようにということを指導するのも厚生労働省そして副大臣の責任ではないかと思います。副大臣、いかがですか。
木村副大臣 先ほどもちょっと質問がありましたけれども、リストというのは、私のことに関しましては法務委員会等でもお話しさせていただきましたけれども、ほかの方々のリストまで出せと言われたって、これは常識的に考えましても、そのようなことをお約束できるわけがありません。このことは、法務委員会でもちゃんと御答弁させていただいております。
 このリストに関しましては、私は権限もございませんし、そしてそのような、ほかの方々のことまで言う筋合いのことでは到底ないわけでございまして、これは、いかな先生からの御質問であろうとも御期待のできるような答えにはならないなと、私はそのように思えてならない次第でございます。
山井委員 これは別に私からの質問じゃないんですよ。法務委員会としてそれを要求されたわけでしょう、先週の木曜日に。それに対して木村副大臣は、努力しますということを答弁されたわけですね。どういう努力をされましたか。それで、その返答はどう来たんですか。
木村副大臣 これは参議院の法務委員会の話でございますからね。(山井委員「同じ国会でしょう」と呼ぶ)参議院の法務委員会の話でございますし……(山井委員「そんなこと聞いていませんよ」と呼ぶ)いや、これは参議院の法務委員会の話でございますよ。
山井委員 ですから、そこで努力をしますと答弁されたわけですから、どのような努力をして、どういう答えがあったのかということを聞いているわけですよ。同じ国会の話じゃないですか。
木村副大臣 参議院の法務委員会で先生と御同様の質問を、あれは江田五月先生から、もし御質問があればそれはお答えをさせていただきますけれども、そもそもその質問は私あての質問じゃないんです。あれは、あのときの質問は……(山井委員「木村副大臣あての質問でした。議事録持っています」と呼ぶ)あのときにリストを要求しているのは、私に対するリストの要求じゃないんですよ。(山井委員「議事録にはそうなっていますよ。私も現場で見ていましたよ」と呼ぶ)いえ、私に対するリストの要求――私には、江田五月議員から私個人への質問じゃないと、私はそのように思っておりますが。
山井委員 木村副大臣への質問だったから、出せないと答弁して審議が五十分とまったんじゃないですか。それで、努力をしますと答弁して動き出したんじゃないですか。それが明らかな証拠じゃないですか。自分が一番わかっているわけじゃないですか。どういう努力をされたんですか、答えてください。
木村副大臣 これは参議院法務委員会の話でございますから、参議院法務委員会の話の中で、リストの件は、私はこれは、江田先生が委員長に対してリストを出してくださいというたしかお話をされていました、そういうことじゃないかと、こういうふうに思っておりますので、それを、江田先生から直接私にリストを出せと迫られたことは、私も昨日帰ってきたばかりで、今向こうは真夜中の状況でございますので、頭の中は真夜中の状況でございますから、一〇〇%正しいかと言われれば、またそれはちょっとあれでございますけれども、これは、江田先生が委員長にお話しされた件だと思います。
山井委員 委員長から木村副大臣に言ったんでしょう。
木村副大臣 ですから、それだったとしたら、江田先生から直接の質問ではない。江田先生から委員長への質問でございます。
山井委員 時間が来ましたが、とにかくこの問題も、参議院の法務委員会で努力をしますと約束したのに、全く今の答弁は違うじゃないですか。ますますこの問題は深まってきます。まだこれからも、きっちりとこの問題をやっていきたいと思います。ありがとうございました。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 早速、質問に入りたいと思います。
 一連のこの木村副大臣の件に対して、きょうで三回目の質疑になるわけですけれども、ずっとお話を聞いておりますと、核心に触れると身に覚えがない、それで、大臣もやはり疑惑はないと。でも、何もないところにはこういう問題は出てこないわけですよね。それで、大臣が部下の副大臣を守るのは当たり前のことだと思うんですよね。それで、まず身内をかばう。相変わらず隠ぺい体質。国民から見ると、相変わらず隠ぺい体質。
 率直に何でも語れる、堂々と話せる、それが国民の代表じゃないですか。それはもう子供から大人まで全部見ているわけですから、そういう国民の代表が、核心に触れたら常に、もう身に覚えがない、そういう言葉でごまかす。どういうふうにでもとれる言葉をあの手この手で考えて、それは省庁と一体になって、もう一点張りで、身に覚えがない、疑惑はない。それで、そういう話で一貫していくと、途中でちょろちょろと、うそばかりも言えないなと思って、ちょろっと事実を話す。そういうふうな体質そのものに問題があるわけですよね。私はそう思っております。
 参議院での集中審議の中で、いろいろとメモが出てきたことに対して、マスコミに流れ、野党議員に流れ、片やこういう状況がある。そして、片や一方では、身に覚えがない、疑惑がない。こういう二重構造というか二つの、両面の分に対して、大変問題があるというふうに言っておりますよね。大問題だと思うんですよね。表と裏があるということだと思うんですよね。
 そして、厚生労働省の役人の中には良心をきちっと持っている人がいまして、国民のために我々は奉仕しているんだから、これではだめだということで、余りにもおかしいということで、こういうふうなものが、内部告発か、あるいはどういう形で出るかわかりません。でも、大臣が一々その該当する人に聞いたら、話はしておりません、覚えておりません、そういうふうに言うに決まっているわけですよね。今までそういう体質でずうっと来たんです。そのために情報が開示されない。
 情報というのは国民のための情報なものですから、ほとんど開示できると思うんですよ。国防や外交の機密文書以外はほとんど開示できると思うんですよね。そういう基本的な認識をやはり持っていないという印象を大変思いました。それをちょっと冒頭に一言言っておきたいと思います。
 きょうは会計検査院からおいでいただいておるものですから、素朴な質問をしたいと思います。
 まず、会計検査院の院長から、平成五年十二月三日に、いわゆる柔道整復師の療養費の支給に対して、これは保険請求なものですから、国民の保険料が柔道整復師の方に支払われるわけですよね。これは三千億円とも言われておるわけですよね。ですから、この申請書について、具体的に記載されていなかったり、全く記載されていなかったりしているという、もう私これを見て驚きました。医療保険で実際に治療したお医者さんに払うのに、その内容が具体的に記載されていない、全く記載されていない、それで、療養費の支給が本当に適正かどうかを確認することができない、それが全体の九五・七%。ほとんどがそういう状態だというんですよね。
 これに対して、不適正な請求を防止するために算定基準について改正を行うことと、是正改善の処置ということで来ておるわけですね。これは実際に本当に出したんでしょうか。
増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 ただいま先生御指摘の柔道整復師の施術に係る療養費についての私どもの指摘につきまして、最初に若干その概要を申し述べさせていただきたいと思います。
 当時、その金額が非常に高い伸び率を示していたことなどから、療養費の支給が適正に行われているかといったようなことなどについて、平成五年に検査を実施いたしました。
 検査いたしましたところ、まず柔道整復師の施術につきまして、医療機関の治療を受けております負傷部位など、本来支給対象とならないものなどに施術を行っているもの、あるいは、通常一部位もしくは二部位である請求負傷部位数が三部位以上になっていたり、また、ほとんど毎日施術を行っていたり、それから、三カ月を超える長期間の施術を行っていたり、必要な範囲及び限度を超えて施術を行っているのではないかというような事態が見受けられました。
 それからまた、療養費の請求につきましては、患者自身による確認がないままに受領委任状が作成されていたり、あるいはまた柔道整復師の方が御自身で受領委任状に署名あるいは押印を行っていたりしているものが見受けられました。また申請書に、ただいま先生がおっしゃいました、負傷原因が具体的に記載されていないなどしているために、療養費の支給の適否を確認できないといったような事態が見受けられました。
 そういったことから、私どもといたしましては、療養費の適正な支給を期するために、まず第一番目として、柔道整復師、保険者等に対して、療養費制度及び受領委任制度の趣旨を周知徹底させること、それから二つ目として、算定基準等を適正なものに改めること、それから三番目として、審査基準を明確にするなど審査体制の整備を図ること、そして四番目といたしまして、柔道整復師に対する指導、監査の体制の整備を図ること、以上につきまして、当時厚生大臣に是正改善の処置を要求したものでございます。
武山委員 それでは、増田局長さんにもう一度お聞きしたいと思いますけれども、その勧告に対して厚生労働省はどんな対応をとったんでしょうか。
増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 私どもの処置要求に対しまして、大きく四つの点、四つの内容にわたる処置の要求をしたわけですけれども、これらの処置要求に対しましての厚生省のその後の処置状況ということですが、六年かかりまして、いろいろな事情からすぐには対応できないものもあったということで、六年間かけて私どもの要求した処置がすべてとられたということでございます。
武山委員 そうしますと、また増田局長にお伺いしたいんですけれども、六年たって、それは今きちっと是正の勧告を受けたんでしょうか。
増田会計検査院当局者 お答えいたします。
 最終的に処置がとられたのが十一年の十月でございました。したがいまして、そのときから今現在、三年半程度経過しているわけですが、私どもといたしましては、さまざまな体制の整備を図られたということですので、その体制が定着するといいますか、それに十分な時間が現在のところ果たして経過しているかどうかというようなこと、それからまた、柔道整復師の療養費の問題以外にも、私ども、さまざま検査すべき課題を抱えておりますので、そういったことをあわせて考えまして、まだ、とられた処置の状況、その後どういうふうになっているか、調べる段階には至っていないという判断を現在のところはしております。
武山委員 増田局長さんにまたお伺いしたいと思います。
 平成五年から六年かかって平成十一年までは、先ほどの是正改善の処置のどのくらいを改めたんでしょうか。
増田会計検査院当局者 私どもといたしましては、大きく分けて四つの内容の処置要求事項があるわけでございますけれども、そのうち、問題点が非常に広範囲にわたっていたものですから、算定基準等につきましては、どのような具体的な、あるいは実効性のある処置を要求したらいいのか、これは、むしろ厚生省の方にゆだねるのがベストであろうと考えまして、そういった表現で、算定基準等を適正なものに改める、そういう処置の要求をしたわけでございまして、それに対して、六年間かけて、一応、大筋、私どもが求めていた処置につきましては是正の処置がとられたというふうに考えております。
武山委員 そうしますと、平成十一年には、これは全体的に、厚生労働省の方では周知徹底も含めて会計検査院の是正勧告に対してほぼ一〇〇%近く行われたというふうに解釈してもよろしいんですか。それとも、五〇%改善されたんでしょうか。割合でいいますとどのくらい改善されたんでしょうか。
増田会計検査院当局者 私どもといたしましては、数字でどの程度かということはちょっと申し上げにくいわけですけれども、一応、私どもが求めた処置については十分処置がとられたということで、例えば算定基準等について申し上げますと、たくさんの部位数について請求が行われていたわけですけれども、その部位数については制限を設けるとか、あるいは長期間施術を行っているもの、それに対する療養の請求については適正化が図られるといったような、そういう改善の処置がとられたということでございますので、大筋、私どもが求めている処置については処置がとられたというふうに考えているところでございます。
武山委員 それでは、もう一つ局長さんにお伺いしたいと思います。
 その中身の中で、負傷の状況の記載ということで、階段を踏み外したとか鉄棒から落ちたとか、いろいろございますけれども、これは、やはり時代の流れで、以前と比べましたら、多種多様な状況から多種多様な事故が起こっておると思うんですよね。
 ですから、改定する場合は、時代の流れとともに改定していくべきだと思うんですよね。法案というものは、見直し、見直しをしていかないと、何十年も見直ししないで突然というのは、もう意識が硬直状態になって、なれてしまっておるものですから、そこに必ず既得権益で反対する者がいるわけです。その反対する者が少数であればあるほどそこに時間をかけるというのが、今までの日本のいわゆる行政そのものだと思うんですよね。
 それで、この辺は国民が望んでいるような方向に改善されたんでしょうか。
増田会計検査院当局者 お答えいたします。
 負傷の原因について具体的に記載されていない、あるいは全く書かれていないといったようなことについては、適正な請求を行うということを考えた場合には好ましくないのではないかということで、そういう事態があったということは書かせていただいたわけですけれども、それでは最終的に適正な請求にするにはどうしたらいいかということにつきましては、これは、実態をよく御存じの厚生労働省さんの方にお任せをするのが、もちろんその結果については私どもも確認をし検討させていただきますけれども、そういう形で要求をさせていただいたわけで、そういう意味からは一定の処置がとられたというふうに私どもは認識しているところでございます。
武山委員 それでは、会計検査院の方は、どうもありがとうございました。これで結構ですので。
 それでは、参議院の集中審議、そして衆議院の方の集中審議の中身の中で、坂口厚生大臣にお伺いしたいと思います。
 まず、参議院の集中の方で、坂口厚生大臣は、「私は疑惑があったとは思っておりません。」と答えております。「そういう経緯があったということが、だれの手からかは分かりませんけれども、マスコミに流れる、あるいはまた野党の皆さん方の方に流れる。そして、どれほど調べましても、私を始めとして厚生労働省の関係者にはそうしたものは一切出てこない。この体質を一体どうするのかということが私にとりましては大きな問題」だとお話しされております。
 それで、その後で、「中で真剣に議論もなかなかできない。議論をしたことしなかったことが、あたかもしたかのごとくマスコミや外に流されるというような事態になってくれば、やはり私は一つの省としての体を成さないと思っているわけでございます。その点私は、省に対しまして厳しく私は今言っているところでございまして、こうしたことが一体どういうことで起こるのかということを詰めているところでございます。」ということが述べられておるわけですね。
 これは、情報が漏れたということに対して問題だと思っておるわけですよね。でも、情報というのはやはり国民に、柔道整復師の、どういう経緯でどうしてこうなったかというのは、当然オープンにすべきだと思うんですよ。その中身が常に隠ぺいされるために、みんなの憶測を呼んでいるわけですよね。
 ですから、こういうふうにして出てくると、「負傷原因に関する覚えのメモ」、これは物すごい詳しく出ているんですよね。これは中から出てきていると思うんですよ。本当に、こういう事実があるということを知らせたいという、行政の中にいるわけですよ。
 片や、大臣は、疑惑がない、副大臣も身に覚えはない、こういう状態を大臣はどう思っておりますでしょうか。
坂口国務大臣 柔道整復師の問題につきましては、今、会計検査院からも御答弁ありましたように、これはもう明らかにされている話でありまして、全然隠された話でも何でもない。それから後、厚生労働省が平成六年からずっと続けて、何回かにわたりまして改正を行ってきた、これもオープンにされた話で、何ら問題はないわけでございます。
 これらの問題が現在どうなっているかといえば、これは全県、全県といいますのは全都道府県に、全都道府県に審議会をつくりまして、そして、そこで出てまいります全件数、それをチェックする体制ができ上がっているということでございますから、私は前進しているというふうに思っている次第でございます。
 それは前進している。ただ、現在問題になっておりますのは、全件チェックはされる体制ができたんですけれども、都道府県におけるばらつきがあるのではないかというような御批判もあったりいたしまして、そこはちゃんと調整をしなければならないというふうに思っているわけでございます。
 ですから、そうした一連の柔道整復師の診療にかかわります問題につきましては、すべてこれはオープンになっている話でございまして、何らこれは私は隠すべき問題ではないというふうに思っているところでございます。
 ただ、先般、特別な人に対しまして特別な議員との間の発言メモというような形で、それが流れる、そしてそれに対するものはいわゆる厚生労働省の持っております正式な資料の中には存在をしない。だれがどういう形で流したかもわからない。名前を書いてあります、氏名の書いてあります本人に問いましたところ、本人もこうしたものを書いた記憶がない、私が書いたんだったら、相手の人のおっしゃることはメモするかもしれないけれども、自分の言ったことまではメモはしない、自分の言ったこと、相手から言われたことをメモをするというような形のこういうペーパーは、私が書いたとは思えないというふうに御本人も言っているわけでございまして、それは、私もそれはそうではないかというふうに思っている次第でございます。
 何も、中からいろいろのことが外へ出ることを私は問題にしているわけではございません。ただ、外へ出す以上は、内部の改革もしなければならないわけでありますから、いや、実はこういうものもありますということを内部でもやはり出してもらわないと内部の改革にならないわけで、外へは出すけれども内部では言わないというのでは、これは私は話にならないと思っております。
 出したその人を処罰するとかなんとかというような気持ちはさらさらございません。しかし、あればやはりきちっと出してもらいたい。それで、改革すべきことは改革をしていくという手段をとらないといけない。しかし、それができないところにジレンマがあり、私はそこに悩んでいるということを申し上げているわけであります。
 その当時、平成九年の話でございますから、だれが言ったとか言わないとかといいましたって、木村副大臣も答弁しましたけれども、それはいつ幾日、どんなことで会ったかというようなことを一々覚えているということではないと、私も率直に言ってそう思っております。私自身も、平成九年に、九月なら九月の幾日に何をしていたかと言われましても、それは私もなかなか思い出すことはできませんし、それは不可能なことだというふうに思っているわけでございます。
 ただ、問題は、あそこに書いてありますペーパーを見ましても、木村大臣がおっしゃったようにすべて変えているというんだったらこれは問題でございますけれども、木村大臣が言われたとおりには全然なっていないんですね、あのペーパーの。あのペーパーの言われたとおりになっているのなら、それは私は、たとえそれがどんな問題、どういうふうにして出された問題であるかは別にいたしまして、それは今後の検討の課題にしなきゃならないというふうに思いますけれども、副大臣の言われた、その当時は木村議員でございました、木村議員の言われたとおりには全然なっていないんですね。
 だから、その種のものが出てきたからといって、それを一々皆さん方から御指摘を受ける、それを皆さん方が、こういうものがあったというふうに言われるのならば、それはどこにあったかということを私たちにも言ってもらわないことには、私たちもそれを改善することができ得ないということを私は申し上げているわけでございます。
武山委員 それでは、こういうものが内部から内部に出ないというところに問題がある。それから、だれがいつどう言ったかという、そういうメモもなかった。なぜ内部からそういうものが、よい批判が出ないのか、よい提言が出ないのか。それは問題だと思うんですよね。それはもう体質的な大きな問題だと思うんですよね。
 それから、メモの問題なんですけれども、大体私のところに厚生労働省の役人が来ましたら、必ずメモとります。必ずこれはメモとっております。これはもう、メモとらないなんということは、この十年間、私国会活動しておりますけれども、全然ありませんでした。必ず私のところに来た場合はメモとっております。
 ですから、それは、一々残っていないとか、規範にないとか、当然都合が悪いことはそうおっしゃると思いますよ。当然そういう立場ですからそうおっしゃると思います。でも、現実には、そういうメモというのは必ずとってあります。
 それから、スケジュールで、覚えていないと。確かに、ぱっと聞かれたら、それは何年も前のことはだれだって細かく覚えていないと思います。しかし、必ず、どの国会議員のお部屋にもスケジュール表というものがあって、先ほどお話のように一日三十人も会う木村副大臣であれば、三十人も覚えていられないと思うんですよ。ですから、スケジュール表あるいは自分の一日のスケジュールというものを必ず持っているはずですよ。そういうものを、身に覚えがないとか、ないとか、そういうことをおっしゃるから、おかしいんじゃないかということを必ず言いたくなるわけですよ。
 そういうふうなことを、持っていないし、わからないし、知らないと。何年も前のことはわかりますけれども、その当時のスケジュール表というのは必ずあるわけですよ。ですから、そういうことに対して、ない、身に覚えがないと言うから、おかしいんじゃないですかと言うわけですよ。
 それは、どこの国会議員の部屋にも、スケジュールで動かざるを得ないスケジュールなわけですから、もう過密スケジュールで、それは当然あるわけなんですよ。ですから、それに対して、身に覚えがない、知らない、そんなものはないとおっしゃることに対して、それじゃおかしいんじゃないのということを当然言うに決まっているんですよ。それは私、言っておきたいと思います。
 それから、最後に、なぜ身内からよい批判が出ないのか、よい提言が出ないのか、それはぜひ木村副大臣にお尋ねして、終わりたいと思います。
木村副大臣 先生のおっしゃるよい提言が出るようにこれから努めてまいりたいと、このように思っております。
武山委員 はい、終わります。
中山委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 木村副大臣は、先日の私の質問に対し、柔道整復師に対し適正な保険請求の指導をしようとした当時の厚生省に対し、圧力をかけたことはない、その問題で、厚生省に指導をやめさせるよう社団法人日本柔道整復師会からの陳情を受けたこともない、一切身に覚えがないと答弁をし続けておられます。
 また、副大臣は、柔道整復師の政治団体である日本柔道整復師連盟の顧問に就任していることは認められましたが、顧問といっても、ほかに大物がいて、自分は下の方で、大したことはないとも答えられました。
 私が、柔道整復師の会報、日整広報をもとに顧問議員を調べましたところ、元議員を含めて、これまで顧問に就任したことがある議員が五十六人おられます。確かに、橋本龍太郎議員や野中広務議員、山崎拓議員、古賀誠議員などを初め、自民党の大物議員がずらりと顔を並べております。
 これらの顧問議員のうち、現職を含め、閣僚経験者や厚生族と言われる主な議員だけを対象に、柔道整復師連盟からの献金の状況を調べてみました。
 大体選挙のあったときに多額の献金が行われ、それ以外の年には大した献金が行われておりません。私の調査では、総選挙のあった二〇〇〇年だけで、十七人の議員に対し合計約二千五百万円もの献金額になっております。その中で、中央の日本柔道整復師連盟から三百万円全額をもらっているのは、橋本龍太郎元首相と木村副大臣だけであります。
 顧問議員団の座長である持永和見議員・元社会保険庁長官も三百万円ですが、これは地元からの分を含めての三百万円であります。これに次いで、伊吹文明元労相二百三十万円、谷垣禎一国家公安委員長・産業再生機構担当大臣二百十万円、山崎拓自民党幹事長二百万円などと続いております。
 こういう献金の状況について、公明党出身の坂口大臣はどう思われるか。こういう自民党の大物顧問議員たちの圧力があるために、柔道整復の療養費問題がなかなか是正されなかったということがこの献金にもあらわれているというふうにお感じになりませんか。
坂口国務大臣 何度もここで出ておりますように、政治献金、いわゆる適正に処理をされます、法律に定められた内容におきます政治献金というのは許されているわけでありまして、それは、それぞれの政治家が信念に基づいてそれは受けているわけでありますから、そのことに対して私はとやかく言う資格はございません。私は私の生き方を考えていくというだけでございます。
 ただ、そうはいいますものの、いかなる献金をもらったといたしましても、そのことによっていわゆる政治に公平を欠いてはならない、そのことだけは事実でございますから、お互いにそれは心がけていかなければならないことだというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 木村副大臣は、十四日の本委員会での私の質問に答えて、顧問が二十数名おり、自分が有力議員とはとてもとてもみなしてもらえなかったのではないかなどと言っておられますが、二〇〇〇年総選挙では、今も言いましたように、橋本元首相や持永和見顧問議員団座長などと同じ三百万円、トップの金額を受け取っておられる。その前の総選挙のときには三十万円の献金だったんですから、このわずか三年余りの間に、政務次官、厚生委員長などを歴任される中でめきめきと政治的な力をつけてきたということがよくわかります。大物議員でも、古賀誠議員や野中広務議員などには一円の献金も出ておりません。この献金額は、木村議員が今や厚生族の中でもこれら大物議員以上の影響力を持っており、実際にも中心になって柔道整復師会の要請にこたえたりしてきたということを示しているのではないか、改めてお尋ねします。
木村副大臣 先生からそのような大変持ち上げていただけるようなお話をいただいて光栄に思っておりますけれども、先ほどからお話しさせていただいているように、これはもうすべて相手任せでございまして、ここは何回も申し上げておるんですが、政治献金というのは、ちゃんと適切に報告をさせていただきまして、処理をさせていただいているところでございます。
小沢(和)委員 相手任せとあなたは言われた。だから、相手があなたをどう評価しているかということがこの金額になってあらわれるということを私は言っているんですよ。だから、橋本龍太郎さんなどと並ぶ、あなたは大変な人なんだというふうに相手が見ているということなんですよ。
 四月三十日の日経新聞夕刊に、香川県接骨師会会長が、木村議員が指導の見送りで働いてくれたお礼として献金したと発言したことが報じられ、既に当委員会でも何回も取り上げられております。その後、この人があの発言を取り消したという話は聞いたことがありません。香川県といえば副大臣の地元であります。この人がこういう発言を取り消さない限り、世間は木村副大臣がやはり柔道整復師会のために圧力をかけたと思い続けるのは当然だと思うんですが、副大臣は、その後、この問題について何か御承知でしょうか。
木村副大臣 いや、十分に存じ上げておりません。
小沢(和)委員 私は福岡に住んでいるんですが、その私のところにも届いた風の便りでは、その後、香川県接骨師会でこの会長の発言が問題になって解任決議が出されたが、会長が、これは事実だし、あなたたちに諮って献金しているじゃないか、どうして私が責任をとらなければならないかと言って開き直ったためにそのままになっているという。だから、会長にこれを取り消させようにも、会長はそういう状態だから手がつかないということでそのままになっているんじゃないかというふうに私はこの話を聞いて思ったんですが、いかがですか。
木村副大臣 いや、今その話は初めて聞きました。
小沢(和)委員 では、あなたはこの香川県の会長に、あなたがそういうことを発言してくれたから私は全く迷惑しているとか、そういうような種類の接触はこの間一切ないということですね。
木村副大臣 いや、もう一回、今の話は、ちょっともう一回言ってもらえますか。
小沢(和)委員 いや、だから、あなたが、こういう発言で大変迷惑していると言って、相手と接触したようなことも何もない、とにかくそのままほってあるんですね、こういうことです。
木村副大臣 会の方から、御迷惑かけて申しわけありませんというようなお話は伝わってまいりました。
小沢(和)委員 会の方から御迷惑をかけたという話があるんだったら、まず会長がこういう発言を社会的に取り消さないとあなたの迷惑はなくならないと思うんですが、何でこの取り消しはやられていないんでしょうかね。
木村副大臣 いや、それは、会長の方の話は、私、取り消したとか取り消さないとか、そういう話、一切伺っておりませんし、御迷惑をおかけしましたのでという話は私の方に伝わってまいりました。
小沢(和)委員 だから、それは会長ではないわけですね。会長がそう言うんだったら、あなたに対して、そのとき、あの発言は実は違いましたとか何か言ったでしょうから。
木村副大臣 いや、会長さんの方から、御迷惑をおかけしましたという話でございました。
小沢(和)委員 いや、そうしたら、普通、常識のある人間なら、御迷惑をかけたというのはあの発言の内容を指すわけですから、そうしたら、社会的にそれが報じられているんですから、取り消す手を打つのが当たり前だと思うんですが、そっちは取り消さない、あなたにだけ御迷惑をかけたと、こういうようなことをやったということでしょうか。
木村副大臣 何か弁護士さんと相談をするとかいうようなことを言っておられましたので、何らかの形で、例えばマスコミに抗議をするとかそういうようなことをお考えになっておられるのかなというのは感じはいたしました。
小沢(和)委員 あなたも毎日新聞を相手取って裁判をやられるそうですから、その人も裁判をやるのかもしれぬが、裁判をやる前に、日経に、あれは事実と違うと言ったらよっぽど手っ取り早いんじゃないかと私は忠告しておきます。いや、あなたにはもう聞きません、そのことは。
 次に、お尋ねをしますけれども、私は、実際、厚生労働省がこういうような圧力の中で是正のための適切な手を打たないために、今でも柔道整復師が水増し請求を簡単にできる仕組みが残っていると思います。柔道整復では、捻挫と打撲は保険適用になりますが、肩凝りや腰痛は保険の適用になりません。しかし、肩凝りや腰痛で治療を受けた人についても、適当な病名をつければ捻挫や打撲の保険請求ができます。厚生労働省の調査によると、捻挫や打撲の保険請求者数は、実際にその手当てを受けた人数の約十倍にも達するというふうに報じられておりますけれども、これは間違いないんでしょうか。それだけ水増しが行われているということなんでしょうか。
真野政府参考人 先生がおっしゃっておられる十倍というのは、はっきりいたしませんが、推測いたしますところ、平成十三年十月に請求されました療養費の支給申請書は九十六万四千枚というふうになっております。また、平成十三年の国民生活基礎調査によりますと、骨折以外のけが、やけどの損傷であんま、はり、きゅう、柔道整復師の治療を受けた方は十万八千人と推計されておりまして、それを指しておっしゃっているんではないかと思いますが、ただ、国民生活基礎調査は、最も気になる傷病というものにつきまして記載を求めておりまして、いわば複数の傷病を持っておられる方々がどれを最も気になる傷病というふうにお考えになるかというようなこともございまして、単純な比較というのは必ずしも適当ではないんではないかというふうに思っております。
小沢(和)委員 柔道整復師が医療保険に出した支給申請書のうち、患者一人が三カ所以上の手当てを受けたとする請求が四割もあるといいます。三カ所以上の請求は年ごとにふえております。九八年度には二八・四%だったものが、〇一年度には三九・五%に一一・一%もふえております。うち、四カ所の請求が四・〇%から八・七%と倍増しております。都道府県の審査委員会の中には、両肩と両ひざを捻挫という医学上考えられない請求がある、医師の診療報酬だったら認められないというような疑問の声もあるというんです。幾ら高齢化が進んでいるといっても、わずか三年で一人の人が受ける打撲や捻挫の箇所がこれほど激増するというのは余りにも不自然な話、これも、何カ所治療したかは一方的につけ出すことができるという仕組みになっているために水増し請求になっているのではないかというふうに私は理解しましたが、そうでしょうか。
真野政府参考人 部位数、多部位の部分が近年増加傾向にあるというのは御指摘のとおりでございまして、原因は必ずしも明らかではございません。ただ、療養費でございますので、保険者が支給決定を行うということでございますので、支給申請に疑いがあれば各保険者が必要な調査を行う、また、今お話がございましたように、審査委員会も設けておりまして、そこにおいて全件のチェックを行い、必要があれば申請書と施術録との照合等の調査なども実施を行います。そういう意味では、各保険者における必要な調査と審査委員会での適正な審査というものを指導していきたいというふうに思っております。
小沢(和)委員 だから、私が今二つお尋ねした中ではっきりしたと思うのですが、肩凝りや腰痛ということで柔整のところに行っても、そこで打撲とかあるいは捻挫だというような診断を下して治療して、それでつけ出すというようなことは、実際にどこでもチェックがかからない仕組みになっている。あるいは、何カ所痛めたということで、三部位か四部位かというようなことも、これも柔整の人が自分で診断をして、別にチェックがかからないでつけ出す、こういう仕組みになっている。ここら辺に一番の問題があるというふうに私は感じました。こういうような状況を是正するために、九七年に当時の厚生省が通知を出そうとしたけれども、これが骨抜きにされ、今もその状況が続いているわけであります。
 それで、厚生労働省が見つからなかったと言っている内部文書どおりの事態になっていると思うのです。先ほど、事態はその内部文書と違っていると言うけれども、私は、内部文書、今ちょっとそこに持っているから見直してみたけれども、あのとおり。だから、ますますあれは本物だと思わざるを得ませんでした。
 もちろん、厚生労働省も何もしなかったとは申しません。先ほども、大臣は全国の都道府県に柔道整復の療養費の審査委員会を設置したということも言われました。しかし、これも実際の活動状況を見ると、東京、兵庫、和歌山などは年間に数千件の減額査定を行ったりしておりますが、大部分の県では減額件数は極めてわずか、一年間に一件も減額していないというような県もある。この審査委員会までが政治的な圧力で骨抜きになっているということじゃないんですか。
真野政府参考人 平成十年に全都道府県に審査委員会を設置をしたわけでございまして、その審査につきまして適正化を期するように指導いたしておりますが、御指摘のように、都道府県の審査会によります査定件数に大きく幅があるということは私どもも承知をいたしておりまして、それのいわば理由というものを調べ、そして審査の全国的な適正化、統一を図りたいというふうに思っております。
 調べましたところ、県によりましては、疑義のある申請書については一律に返戻してしまうので査定がないというようなことを言っておる都道府県もございますけれども、今申し上げましたように、統一的な取り扱いということを指導していきたいというふうに思っております。
小沢(和)委員 一方、これと対照的な状況にあるのがはりきゅう師の人々であります。この人々も、医師が有効と認めれば保険で治療することができます。しかし、この人々は、柔道整復師のように自分で診断してみずから保険請求する部分を持ちません。業界には視力障害者が多いこともあって、今、非常に厳しい経営状況にある人が多いわけであります。
 この人々も業界の政治組織をつくっておりますが、献金で政治を動かすということもしておりません。だから、柔道整復師とはりきゅう師の保険適用にこういう大きな違いが出てきているという結果になっているのではないでしょうか。
 お手元に資料を配付しております。これを見ていただきたいのですが、柔道整復師の療養費は、国民医療費の伸びを大きく上回り、今も伸び続けております。八五年には千百八十八億円だった療養費が、二〇〇〇年には二千七百四十八億円、率にすると、ここにありますように、二三一%に伸びております。国民医療費全体が一九〇%ですから、相当にそれを上回っている。これに対して、はりきゅうの療養費は八五年九十億円から、八六年にかけて大きく下がり、そのまま横ばいで、二〇〇〇年には六十六億円、いまだに十六年前の率の七三%という状況にとどまっております。
 医療費全体が大変ふえているとこれだけ問題になっている中で、なぜ柔道整復のこれだけの大きな伸びを是正する手を確実に打たなかったのか。木村副大臣を初めとする自民党の有力議員たち、顧問たちの政治的圧力以外に、是正されなかった理由は説明できないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 今この数字を拝見をいたしましたけれども、一つには、柔道整復師の人数というのがどんどんとふえてきているわけですね。これは、最高裁の判決で、今までは学校を余りたくさんつくってはいけないということに抑えてまいりましたけれども、それは抑えることが妥当ではない、抑えてはいけないということになりまして、そしてどんどんとこの柔道整復師の学校がふえてきている、もちろん、卒業される人の数がふえてきているというようなことがございまして、そうしたことも私は影響しているというふうに思っております。
 それから、先ほど言われましたように、都道府県に対しましてそれぞれの審議会をつくった。そこまではでき上がっているわけであります。それが本来の機能を発揮をしないといけないわけでございますので、各都道府県の格差がないように、各都道府県のその審査委員会が正式に動くように、そしてその機能を十分に果たすように、これはきちっとしていきたいというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 こういう業界と癒着した口きき政治が日本の政治全体をゆがめているということが、昨日も村上元参議院議員のKSD事件で厳しく断罪されたばかりであります。私たちは、木村副大臣の疑惑、顧問に名を連ねる自民党有力議員たちが厚生労働省にどう圧力をかけてきたかなどについても引き続き追及をいたします。
 この機会に、柔道整復の療養費請求の適正化について、世間のだれもが納得できるものに直ちに改めることを大臣に強く要求いたします。大臣の決意を改めて伺います。
坂口国務大臣 先ほどお話を申し上げましたとおり、平成六年から段階的にではございますけれども、平成十一年にかけまして改善を加えてきております。あとは、各都道府県に置きました審議会で全件チェックをするという建前になっているわけでございますから、それがチェックができましたら、私は御批判はなくなるのではないかというふうに思っている次第でございまして、定めましたとおりにこれから運用されるように指導していきたいと思っております。
小沢(和)委員 木村副大臣にもう一つお尋ねしたい。
 それは、木村副大臣の地元企業との関係についてであります。
 四国フェリー株式会社からの献金があります。副大臣の資金管理団体である国際政治協会などへの同社からの献金が、一九九五年から二〇〇〇年までの六年間に合計二百七十四万円あったと報告されております。同社は明石海峡大橋の開通に伴って、高松―神戸間の航路を廃止した影響に見合うものとして国から本四特措法に基づく交付金を約十二億三千万円交付されております。これは、国や地方公共団体からの補助金などを受けている会社に寄附を行うことを禁じ、こういう会社からの寄附を受け取ることを禁じている政治資金規正法二十二条の三に違反していると思います。即刻返金すべきではないでしょうか。
木村副大臣 四国フェリーの件は、今初めて聞きましたので……(小沢(和)委員「だから、どうするんですか」と呼ぶ)もちろん適切に処理させていただくわけでございます。
小沢(和)委員 今まで適切に処理をするというのは、大体、受け取って帳簿に書いておくという範囲の話ですから、私は、これは違法じゃないかと言って指摘しているんですから、返すようにしていただきたい。
 以上で質問を終わります。
中山委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 本日はいただきました二十五分を活用させていただきまして、政治と厚生労働行政が、より透明性が高く、かつ信頼性のあるものになるように、基本的な御質疑をさせていただきたいと思います。
 まず一点目は、公益法人からの寄附にかかわる事項でございます。
 木村副大臣は、随所で各団体から寄附を受けておられるということが指摘されておりますが、まず、答弁のことについての確認です。さきの参議院の五月十三日厚生労働委員会、共産党の小池参議院議員への御質疑の中で、木村副大臣が小池参議院議員から聞かれて、公益法人そのものからの寄附に関して聞かれておりますが、質問を繰り返させていただきますが、このとおりの認識でよろしいかお答えください。公益法人も一つの社会的存在であります以上、その政治活動につきましては政治献金も含めて一切禁止されるものではないと一般的に解されていると承知しているところでございます、確かにこのとおりにお考えでしょうか。
木村副大臣 そのとおりでございます。
阿部委員 木村副大臣は、政治資金規正法第二十二条の三を御存じでしょうか。政治資金規正法第二十二条の三を御存じでしょうか。
木村副大臣 恐らく、助成をされているところの企業は、企業側が寄附をしてはいけないというような、そういう中身だと思いますが。
阿部委員 それであると同時に、もちろん木村副大臣の御認識が根本的に欠落しているものがあるとすると、実は、公益法人そのものからの寄附という形は基本的には、公益法人の性格上、民法上からも望ましくないという指摘が随所でなされております。例えば、公益法人と申しますものは、民法の規定でございますところの、民法四十三条、法人の目的とされるところ以外の、献金というのは以外のことであり、民法九十条、公序良俗違反ということになってくるということで、実は、現在、ほとんどの、というかすべてのと言っていいと思いますが、献金は公益法人そのものから来る献金ではなくて、別途に政治連盟なるものをつくって、そこから献金がなされております。
 私は、この公益法人そのものからの献金は一切禁止されておらないという認識がおありな限り、随所で実は問題が起きてくるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
木村副大臣 その点に関しましては、多分そのときもお答えさせていただいているんでございますけれども、公益法人の政治活動につきましては、もうこれは種々議論のあるということは承知をしているところでございますけれども、いずれにいたしましても、公益法人の業務の運営に当たりましては、設立目的に沿った適正な運営がなされるべきものと考えているということをそのときも恐らく一緒に答弁させていただいたと思うんでございますが。
阿部委員 そういう抽象的な答弁だから問題が起こるのです。
 では伺いますが、公益法人から政治団体への寄附はよろしゅうございますか。公益法人から政治団体への寄附です。
木村副大臣 一般的には禁止されてないんではないかと思われますが。
阿部委員 これは、平成十二年度に政治資金法の改正がございましてから、公益法人から、そういう法人というものから政治団体への寄附は禁止されております。
 私は、もしそこの御認識が副大臣として甘いのであれば、やはりもう一度この政治資金管理問題総体を見直していただきたいと思いますが、ちょっと今、副大臣、必要な書類に当たられても結構ですから、もう一度確たる御答弁をお願いします。
木村副大臣 どういう前提条件がついているのか、それは知りませんけれども、一切禁止されているということはないように私は記憶していたんですが、先生から私の記憶力に関しては厳しい御指摘を受けておりますので、一〇〇%確かかと言われれば、それはまだ一〇〇%確かかどうかわかりませんけれども、一切禁止されているということはないんじゃないんでしょうか。何か、どういう条文になっているんでしょうか、むしろ逆に教えていただきたいと思うんでございますが。
阿部委員 今私が申しましたのは、平成十二年度の政治資金法の改正で、例えば医師会を例にとらせていただいて恐縮ですが、医師会から医師政治連盟への寄附というものは禁止されております。そこで、どういうふうにある種の抜け穴ができたかといいますと、医師政治連盟への献金は、個人の医師が医師政治連盟に別途に献金する。医師会というもので集めたお金から医師政治連盟に、団体から連盟に寄附してはいけないという条項でございます。そのような論議があったことは御承知でしょうか。
木村副大臣 それは、特に一番関連の深い団体は禁止されているんでございますか、それとも、ほかの全く関係ない団体への寄附は有効になっているんでしょうか。その辺はどうなんでございますか。
阿部委員 普通、全く関係のない団体には、つくった業界団体から自分のところの政治連盟以外のところに寄附をすることはございませんから、ここでとりわけて挙げられていることは、業界団体をおつくりになって、その団体から政治連盟への、団体から政治連盟への寄附がよろしくないということでございます。
木村副大臣 それは明確に法律で決められたんですか。どういう条文になっているんですか。
阿部委員 今盛んに、私も今関連のところを探しておりますが、先ほど私の読みました二十二条の三のところは、例えば医師会の場合は、医師会は県から補助金をいただいておりますので、これは先ほど申しました二十二条の三違反になりますが、この件の認識はよろしゅうございますか。
 私が伺っているのは、公益法人からの政治資金の寄附、政治家への寄附は一切禁じられるものではないという御答弁でしたので、一つ、私が申し上げましたのは、それが補助金を受けている団体である場合は、二十二条三に規定されておりますが、それはよろしゅうございますか。
木村副大臣 補助金を受けている団体が、国の直接補助を受けている団体が、その団体がほかの議員、いろいろな議員に献金をすることは、それは禁止されているわけでございます、二十二条三で。ただ、全部、全くすべていけないのかというような条文では、それは、その二十二条の三はそうじゃないんじゃないでしょうか。例えば、補助金を受けていないところは、恐らくそれまで禁止していないんじゃないんですか、その条文では。
阿部委員 もちろん二十二条の三は禁止しておりません。
 私もちょっと探すのに時間がかかりますので、私が申し上げたある業界団体からその所属の政治連盟への献金の件については、もう一条探し出しますので、ちょっとお時間をちょうだいいたしますが、ここの参議院での副大臣の御答弁、公益法人からの政治活動につきまして、政治献金も含めまして一切禁止されるものではないと一般的に解されているということは誤りですね。公益法人が補助金を受けているという場合には、これは禁止されておりますよね。そこの御答弁をお願いします。
木村副大臣 先生が何回も繰り返していただいてありがたいんですが、私の答弁は、公益法人も一つの社会的存在である以上、その政治活動につきましては、政治献金も含め「一切禁止されるものではないと一般的に解されていると承知をしているところでございます。」と、こう答えているんです。一切禁止されるものではないと。先生の場合には、条件をつけられて、条件をつけられたものの中には、それは禁止されているものもあるかもしれませんけれども、一切、すべてだめだとは書いてないんじゃないか、そういうふうに解されているんではないんでしょうか。
阿部委員 では、わかりました。この「一切」のかかる場所については別途に伺いますので、次の質問に移らせていただこうかと思います。
 木村副大臣には、柔道整復師会の皆さんとはいつごろからおつき合いがございますでしょうか。
木村副大臣 これは、議員になる以前の、私は県会議員もしておりましたし、秘書もしておりましたものですから、秘書をしているときから含めますと、もう相当な年限がたつんだと、このように思っております。
阿部委員 相当な年限とはファジーですので、何年くらいかというところと、それから、その中に政治連盟というものがおありなのも御承知おきだと思いますが、ここでの、かなり以前からのおつき合いとお聞きいたしましたから、政治連盟への会費の納入の仕方と、柔道整復師会への会費の納入の仕方についてはどのように扱われているか、御存じですか。
木村副大臣 会費の納入の仕方については存じ上げません。
阿部委員 では、柔道整復師会というのは何らかの補助金をお受けになっていますか。
木村副大臣 存じ上げておりません。
阿部委員 これは献金をお受けになる副大臣御自身で確認していただきたいと思うのです。もしも、残念ながら私は真偽のほどは存じませんが、献金をお受けである場合は、当然、先ほど申しました二十二条の三にひっかかってまいるかと思います。
 副大臣は今、二つのことを御存じなく献金を受けておられます。一つは補助金を受けておられるかどうか。これはもう、調べれば、後ろ方からお話が来ているので明らかかもしれません。それから、その政治連盟の資金の集められ方、これも私は非常に重要だと思います。
 実は牛島訴訟という、一九九六年に最高裁の判決が出た、税理士さんの政治連盟加入にかかわる訴訟を、木村副大臣は御存じでしょうか。
木村副大臣 存じ上げておりません。
阿部委員 これもぜひ、副大臣になられた以上、というか、やはりこれだけの献金をお受けになる以上、受ける立場として、例えば、相手の下さるお金が何らかに法的に問題があれば、受け取った副大臣も問題になるわけです。木村副大臣の受けておられる献金は破格、番付に出るくらい、各種団体からいただかれています。そして、その一つ一つの団体が政治連盟をお持ちです。その政治連盟の資金の集め方が、もしも個人の意思に基づくものでないならば、一九九六年の最高裁判決に違反してまいります。
 これは簡単に申しますと、南九州税理士会に所属する牛島さんという税理士の方が、政治連盟への加入費も同時に徴収されることに対して、個人の思想信条の自由ということを表に立てて争いまして、業界団体、歯科医、医師会も一緒です、税理士会も一緒です、会、会、会と名がつくものと、そこのつくる政治連盟への加入は別途になさねばならぬという判決でございます。逐一、副大臣は本当に御自身の献金全部調べられて、そしてその相手方がどのような形で、その政治連盟への個々人の加入ということをきちんとやっていられるのか。献金を受けた限りにおいては責任がございます。例えば、松浪議員が何らかの形でやくざと呼ばれる方からいろいろな資金援助を受けた。それは、相手がどんな人か知らなかったとは言えないのが、これは政治家の常でございます。政治と金にかかわることは、献金をいただいたときに、相手の状況をよく知らねばならない。そして、特に私がここで力説いたしますのは、実はほとんどの政治連盟というものは会費を一括納入させるわけでございます。私の所属する医師会ですら同じでございます。医師政治連盟への会費の納入は、実は、表向き、違う書き方がしてあっても、原則的には同時徴収される。そして、そのことが富山県でも岡山県でも問題になりまして、医師の個人の意思によって政治連盟への加入をさせるという方向に転換されてきております。
 そして木村副大臣には同じことで、本当に私は同じ論議をずっとしているのだと思いまして、平成十二年二月十八日の予算委員会の議事録、これは実は亡くなられた石井紘基さん、政官業の癒着を一生懸命追及されてこられた石井紘基さんの質疑の中に、木村義雄先生のお名前が出てまいります。御記憶がおありでしょうか。
木村副大臣 石井紘基先生とは決算行政監視委員会におきまして、私は与党の筆頭理事、石井先生が野党の筆頭理事をさせていただいておりました。委員会の旅行にも一緒に行かせていただきました。お嬢様もそのときに御一緒でございました。石井紘基先生とは与野党の垣根を越えて大変仲よくさせていただいたような次第でございまして、石井先生があのときに、大変な事件に遭われたときに、私は直ちにあそこの、世田谷の国立病院に訪ねたのを記憶しているわけでございまして、石井先生を心から大変御尊敬申し上げているところでございます。
阿部委員 個人的にはそのようだと思います。そして、恐らくここで審議している議員の中にも、個人的にはあの先生は信頼しているという人間関係はあると思います。
 ただし、やはり政治家が一番正さなければならないお金の問題で、石井紘基先生のこの二月十八日の質疑の中で、事は参照価格制度、薬価の参照価格制度のことについて、木村議員のお働きに対して疑義が呈されております。これはそれまで、この審議会を含めまして、参照価格制度の導入をすべしという方向で宮下厚生大臣に答申が提出されておりました、さかのぼること一月までは。二月の四日になると、木村義雄副大臣がこの参照価格制度には反対だという御意見を述べられて、結果、反対というふうになっております。私は、よく読めば、ああ、こんなところにもあったんだと。
 先ほどの社会保険病院それから柔道整復師問題、さまざまに、木村副大臣は厚生労働行政で非常に重要な役割を占めておられる。それであるからこそ、さまざまなお金の動きについてはみずからその相手の資金のありよう、個々人が本当に自由意思で政治連盟に加入しているのか、あるいは補助金を受けている団体なのか否か、お受け取りになる前にチェックすべきであると思います。柔道整復師会が補助金を受けているか否かは、さっき申しましたように、私は知りません。でも、副大臣もおっしゃいました、知りませんと。その段階でお受けになったら、実は自分が二十二条の三項違反を犯したかどうかがわからないのです。そういう形で次々に献金を受けたら、いつか木村先生は知らずして法を犯す、必ずその落とし穴に私ははまり込むと思います。
 きょうの私の提案は、木村副大臣は随所で、いわゆる政治団体から政治献金を受けておられます。その一々に関して、政治連盟にどのような形でその業界団体の個々人が加入しておられるのか、強制ではないのか。これは、助成金を受けようと受けまいと、強制的な加入は思想信条の問題でよろしくないとされたのが平成十二年度の改正でございます。現に、そう言われても、医師会でも六割から八割、強制でございます。
 私は、厚生労働行政が非常にやはり政官業の癒着が強い場になりやすいということは、業界団体が持つ個々人の意思を無視した政治連盟なり、そうしたものと、一方で、厚生労働行政の大半が業界団体に丸投げされるという構造の二つにかかっていると思います。きょう、木村副大臣にお約束いただきたいのは、随所でいただかれた政治連盟からの、その政治連盟のあり方について御検討いただきまして、次回また御返答いただきたいですが、いかがでしょうか。
木村副大臣 私が日ごろから御尊敬を申し上げております阿部先生のさまざまなアドバイスを賜りまして、まことにありがとうございました。先生からいただいた言葉を大切にしてまいりたい、このように思っておるような次第でございます。
阿部委員 言葉を大切にする以上に、今のを出していただきたいので、検討して、よろしくお願いします。また次回、引き続いてお願いします。ありがとうございました。
中山委員長 次に、城島正光君。
城島委員 おはようございます。民主党の城島でございます。
 私の方は、前回に引き続きまして、派遣法の問題について、時間がきょうはかなり短いものですから、何項目かに絞って質問をさせていただきたいと思います。
 まず一点目ですけれども、今回の派遣法改正の中で、一つ新たに派遣の解禁が、いわゆる月末月初、土日派遣、この派遣の解禁というんですか、期間制限が課せられない派遣の解禁が行われるということであります。したがって、ここについて何点か御質問をしたいわけでありますが。
 業務が一カ月間に行われる日数が、当該派遣就業に係る派遣先に雇用される通常の労働者の一カ月間の所定労働日数に比し相当程度少なく、かつ、厚生労働大臣の定める日数以下である業務、これを派遣期間制限の対象外、こうなっておりますが、こうした業務を対象外とする理由、背景、まずここから質問をさせていただきます。
戸苅政府参考人 今御質問の件につきましては、例えば、月初めあるいは月末だけに出てまいります本屋さんの棚卸しの業務ですとか、あるいは土日に必要になります住宅展示場のコンパニオンの業務ですとか、そういったかなり限られた時期あるいは限られた日数で行われる業務について、これにつきましては、常用労働者との代替ということは余り心配する必要がないんじゃないか、こういうことで認めることにしたわけでありまして。行われるとすれば、現在例えばアルバイトの方が行っているような業務について、アルバイトをそのたびごとに募集、採用するというよりは、派遣という形で着実にというか、確実に必要な労働者を確保したい、こういったニーズもあるということで、今回導入することにしたものであります。
城島委員 具体的に何点かこういう業務とおっしゃいましたけれども、そうしますと、具体的にどういった業務で、日数的にはどれぐらいのことが、相当程度少ないというのはどの程度のことを具体的に指しているのか。
戸苅政府参考人 先ほど申し上げました具体例、これは実は、派遣法の見直しに当たりましての労働政策審議会での御議論の中で出た事案であります。今申し上げたとおり、書店の棚卸しの業務、あるいは住宅展示場のコンパニオンの業務、こういったものがあるということであります。あとどういったものが個々具体的に出てくるのかということについては、その都度判断するということになろうかと思います。
 それからもう一点、相当程度少ないというのはどういうことかということでございますが、これにつきましては、通常の労働者の方々、これは正規の従業員がおられるということを前提に考えますと、十日程度以内、こういうことではないかと思っています。土日を一カ月積み上げると、五回の土日で十日ということですから、それが限度かな、こう思います。
城島委員 そうしますと、これはどういうことで規制をし、あるいは認可する、許可するようなことは、どこでどういうふうに判断するんですか。
戸苅政府参考人 これは、派遣契約を結ぶ際に、その派遣元と派遣先で派遣期間のほかに派遣就業する日というのを定めますので、そこで今申し上げた要件に該当しているかどうかということを派遣元が確認して、今の要件に合致していれば期間制限なしで派遣を行う、今の要件に合致していなければ、これは業務によっては三年以内の事業主の、派遣先の定める期間制限の中での契約になる、こういうことだろうと思っています。
城島委員 そうすると、それはあくまでも派遣元が自主的にチェックするということですね。
戸苅政府参考人 おっしゃるとおりであります。それで、もし違反があれば指導監督をする、こういうことだと思います。
城島委員 背景のところでおっしゃいましたけれども、限られた日数というのが十日以内と。そうしますと、これは明示されるんだと思いますけれども。しかし、その背景が、今どちらかというと、アルバイトがやっているようなものについて、採用を確実にしていきたいという要望がある。また今回も前回と同じように、やはり要望は使用側なんですよね、使用者側。しかも、それはほとんどはアルバイトだろう、こうおっしゃいますけれども、必ずしもそうじゃない業務というのは結構あるんじゃないですか。日数が少ない、十日ぐらい。一カ月にまとめてみると十日程度の勤務ということでいけば、かなり広く常用雇用の人たちが働いているところというのは私はいろいろな場面で想定できると思うんですよ。
 したがって、そういうところは、今回のこの期間撤廃も含めてですけれども、常用代替が進んでいく可能性というのは、これはかなり私は可能性として大きいと。今局長が、代替雇用になる心配はほとんど要らないというふうにおっしゃいましたけれども、先ほどおっしゃったようなところだけじゃなくて、どうですか、本当に、月の中でいうと、日数が例えば十日程度ということでいけば、いろいろなところが考えられるんじゃないですか。例えば、いわゆる競輪、競馬場とかいうことを含めても、女性のパートの皆さん、常用ですよ。皆さん、結構いるんじゃないかと思いますけれども、どうですか。
戸苅政府参考人 これは確かに、今委員おっしゃった問題について、そういった御心配をされている、競輪場で働いている女性従業員の方々がおられるというのは承知しています。
 それで、私ども考えておりますのは、個々の業務ごとに、通常の労働者の所定労働日数に比べて相当程度少ない、こういうことで考えておりまして、そういった意味では、今御質問の競輪場で働いている女性の労働者の方は、確かに競輪場の開く日だけ働くということであります。この場合には、競輪場の女性労働者のやっておられる業務、その業務についての通常労働者というのは、競輪場の開く日に働かれる女性労働者、これが通常の労働者に当たるというふうになるだろう、こう考えていまして、そういった意味で、競輪場で働いている方が、例えば十日とか十四日とか、そういうことであれば、それよりも相当程度少ないということになりますので、その場合は、十日ということではないということになりますので、我々としては、競輪場で働いている女性労働者の方が派遣労働に切りかわるということはない、こう思っています。
城島委員 その点は、今非常に大事な点なんですけれども、そのところで通常働いている労働者に比べて相当程度少ない。そうしますと、一カ月全体で働く人がいるとすれば、それは十日ぐらい、こういう意味ですか。十日の基準と、今おっしゃった、そこの常用の人たちに比べて相当程度少ない、ある面で二つの基準がある、こういうことでしょうか。
戸苅政府参考人 おっしゃるとおりであります。
 派遣をしようとする業務に従事している通常の労働者と比較してということでありまして、冒頭私が申し上げましたのは、通常の労働者が、完全週休二日制等、要するに週四十時間労働で働いているような方々が通常の労働者であれば、十日ぐらいということで、今おっしゃられた競輪場等の場合は、その競輪場で働いている女性労働者の方の業務に関しては、その女性労働者の方の日数が通常の業務になりますから、それよりも相当程度少ないということになりますと、恐らくその三分の一とか四分の一とか、そういうことになるんだろうと思います。
城島委員 そこはまた、三分の一とか四分の一とかと抽象的なことじゃなくて、やはり明確にきちっとした基準を、しかもはっきりと出していただきたいなというふうに思います。
 それからもう一つ。働く日数が少ないということになれば、前々から問題になっております社会保険とか雇用保険とか、特に今回、物の製造への、一年でありますけれども、派遣が認められるということからすると、それもあわせて考えると、労災問題、これは前回、五島先生がかなり質問されておりましたけれども、こうした点が非常に問題として、またこの分野においても出てくるんじゃないかと思うんですね。
 ですから、ちょっとケースとして二つほどの場合に、特に労災補償、そして労災保険、保険料と補償についてお伺いしたいんですけれども、短時間の、今回の派遣をさらに期限を広げるということになりますと、例えば三カ所に十日ということでいくと、三カ所に同一人物が派遣労働で働くということは理論的には可能になるわけですね。ですから、その場合に、同じ派遣元の会社から同じ人物が、同じ、同一の派遣元の会社から三カ所に、一カ月にわたってですよ、派遣で働くというケースと、派遣元を、同一人物が、三つなら三つの会社に登録をして、それぞれから全く違う業態の中に派遣労働で働く。あるときはサービス業へ行く、あるときは物の製造部門に行くということは考えられるわけでありますが、それぞれのケースで、特に労災補償、かなり業態によって違うことになるわけでありますし、賃金も違うことになるわけでありますが、これはどういうふうになっていくんでしょうか。
松崎政府参考人 まず一点目でございますけれども、その前に、基本原則を申し上げますと、労災保険と申しますのは、御案内のとおり、労働基準法に基づきます事業主の災害補償責任、これを担保するものでございますので、派遣労働者につきましては、責任者といいますか、労災保険の適用というのは派遣元にございます。
 したがいまして、まず第一例でございますけれども、同じ派遣元から違う事業場に、それぞれ順次派遣されたという場合でございますけれども、その場合、まず保険料でございますけれども、これは、事業主は派遣元でございますので、どこへ派遣されようと、賃金総額、これはその方を含めてその事業場全体の賃金総額に、その派遣元に適用される保険料率、これは先日も御説明させていただいたと思いますけれども、その派遣元が主としてどういったところに派遣しているかといったことで業種が決まり、それにより保険料率が決まるわけでございますけれども、その決まっております保険料率を掛けまして保険料を算定し、納めていただくということになっております。
 また、補償の方でございますけれども、これも、補償の考え方といいますのは、御案内のように、当該労働者の通常の生活賃金といったものをベースに算定するということでございます。したがいまして、法律の規定によりますと、労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額、これを算定しまして、これが労災保険の給付基礎日額になりまして、これに基づきまして保険給付の額が算定されるということになるわけでございます。
 そこで、さらにこの平均賃金でございますけれども、これも法律に規定がございまして、労災事故が起こった場合でございますけれども、これは、被災した日以前三カ月間に支払われました賃金の総額、これを期間の総日数で割った額ということになるわけでございます。ただし、その期間が三カ月に満たない場合には、原則として、雇い入れ後、当該、雇い入れられておりました期間に支払われた賃金の総額をその期間の総日数で割るというふうになっております。
 したがいまして、まず第一例でございますけれども、同じ派遣元からA、B、Cといったように複数の事業場へ順次派遣されたといった場合でございますけれども、まず、常用型の場合でございますと、これは、事業主は派遣元で一本でございます。したがいまして、どこへ派遣されようと、賃金はすべて派遣元が払うわけでございますので、平均賃金の額、そういったものも、過去、それは三カ月間あれば三カ月の賃金総額をその三カ月間の総日数で割ったものが平均賃金ということになりまして、それをベースに給付が算定されるということになります。
 また、登録型の場合でございますけれども、登録型といいますのは、もう御案内のように、これも、登録しておりまして、派遣ごとに雇用されるということになりまして、いわば雇用期間がぶつ切りになります。したがいまして、労災事故といいますか、その事故が起こった派遣先に係ります労働契約、就業期間といいますか、そこがベースになります。それが三カ月以上あれば、当然原則どおりいきますし、それが三カ月なければ、その期間の賃金総額をその総日数で割ったものが平均賃金となりまして、それ以前に、別の契約で派遣されておりました、別の会社で働いておりました実績というものは一応算定されないということになります。
 それから、二番目の例でございます。これは派遣元が違う場合でございます。
 派遣元が違う場合、これも先ほども申し上げましたように、原則どおり、労災保険は派遣元の責任でございますので、同じ方が三社に登録しておりまして、それぞれ三社から、それぞれ順次派遣されておったといった場合、それぞれにつきまして、それぞれの派遣元が、先ほど申し上げましたように、賃金の額に保険料率を掛けまして、それをそれぞれの派遣元がそれぞれ納めていただく、保険料は納めていただくということになっております。
 また、保険給付でございますけれども、これも給付に、平均賃金の計算は同じでございますけれども、これも先ほどと同じように、事故が起こりましたところの、労働といいますか就労といいますか、その時点における労働契約、これがベースになりますので、その事故が起こりました就労に係ります派遣元が支払った賃金、そういったものがベースになって、その期間中の賃金総額をその期間の総日数で割ったものというものが平均賃金となり、これをベースに労災保険の給付がなされるということになります。
城島委員 前回の五島議員の、労災全体についての、特に物の製造が解禁になってくるということに伴う問題点というのは依然として残っているというふうに思いますし、こうした今回の短い日数の派遣も期限が緩和されるというようなことを含めて、この部分についてのもう少し全体的な見直しというんでしょうか、そのことは私は必要だということを指摘しておきたいと思います。
 次に、専門二十六業務、これのいわゆる三年ルールの撤廃、期間制限の指導を廃止するということについて、その理由をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 二十六業務のうち専門的業務についての三年間の期間制限の指導を廃止することについてのお尋ねかというふうに思います。
 現在、二十六業種の専門的な業務につきまして、一般の派遣元事業主に対しまして、合理的な理由なく、同一の派遣労働者について就業の場合及び従事する業務が同一の労働者派遣を継続して三年を超えて行うことのないよう指導を行うということになっているわけでありまして、今回の改正案におきましては、この二十六業務につきまして、三年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている派遣先が、派遣労働者に対する雇用契約の申し込みを義務づけまして、現在の取り扱いを強化すること等から三年間の期間制限の指導を廃止する、こういうことにしたわけでございます。すなわち、雇用契約の申し込みを義務づけて、現行の取り扱いを強化するということを一方においては行った、こういうことでございます。
 派遣先で新たな雇い入れがない場合にはこの契約期間の申し込み義務は働きませんが、三年を超えて派遣就労を希望する派遣労働者もいるわけでございますから、三年の期限制限の指導を廃止することによって、その派遣先での就労が確保されて雇用の安定が図られるケースもあるということだろうと思います。
 ですから、これも雇用者によりけりでございますが、中にはそうしたことを希望する派遣労働者もおみえになるということでございますので、今御指摘になりました点につきましては、御存じのとおり、改正をさせていただくということでございます。
 そのことについての具体的なことにつきましては、またお答えさせていただきたいと思います。
城島委員 今、三年を超えて、いわゆる常用雇用というんでしょうか、それを雇おうとするときは雇用契約の申し込みをしなければならないという義務づけを強化したというふうに大臣はおっしゃいました。
 それでは、具体的にその点についてお聞きしたいんですけれども、この専門業務と言われる二十六業務であれば、いわゆる三年の期間制限を超えて、雇用契約の申し込みをしないで、ほかの労働者を雇って、そのまま同一の派遣労働者を受け入れているという場合は、これはそうしますと労働者派遣としては違法ということになるわけですね。
戸苅政府参考人 その場合には、指導をし、指導に従わない場合は勧告をし、さらに悪質な場合は公表する、こういうことになります。
城島委員 いわゆる違法だということですよね。しかし、これも前回の別な論議と同じように、違法なんだけれども、今既に局長が答弁されましたけれども、指導とか最後は従わなければ公表だと。いわゆる違法なんだけれども、罰則といっても、大臣、そういうことなんですよ。
 したがって、これが強化したということなんですけれども、違法だけれども、そういうことはあるんだけれども、いわゆる派遣元から派遣先への派遣契約、これは無効になるんですか。これは相変わらず有効なんですか。
戸苅政府参考人 まあケース・バイ・ケースだと思いますが、一般的には無効にはならない、民事上は有効だろうと思います。
城島委員 結局、そういうことなんですよね。
 ですから、今回のこの部分も、いわゆる専門を中心とした二十六業務の期間制限撤廃、しかし、そのことを、この三年ルールを廃止するけれども、大臣が、こういうものを強化して、これはセットなんだ、義務づけをしたんだということですけれども、この義務づけの部分の本当の意味の効力というのは基本的にはほとんどない。しかし一方で、期間の撤廃ということだけは、これは明確に効力があるわけでありまして、そういう点からしても、一体、義務づけあるいは違法といっても、では何が効力があるのか、どういった部分でそれが本当に例えば働くサイドからの保護規定になるのかということにおいていうと、具体的にそういうふうに義務づけと書いても、現実的な効力というものはほとんど変わらないというところに、ここにおいても、私はこの部分の問題があるというふうに思っております。
 そういう点で、前回も申し上げましたけれども、この派遣法の改正というものは、本当に働くサイドから見ても選択肢の拡大というふうに言えるのかどうかというのは、この部分についても私は甚だ疑問だと言わざるを得ないというふうに思います。
 もう一点、そうすると、今回の改正で派遣労働者の方々が一体どれぐらいふえるというふうに政府としては見込まれているのかお尋ねしたいと思います。
戸苅政府参考人 働き方が非常に多様化している、それから企業の側の多様な雇用形態による雇用ということも増大しているということで、趨勢的な増加に今回の改正が与える間接的な影響というのを考えると、これは正直言って、どのくらいというのは我々予測不能なんでありますが、単純に、今回の、一つは製造業、物の製造の業務への対象業務の拡大、それから派遣期間につきまして二十六業務以外のものを一年から最大三年まで延長する、これによる直接的な効果を試算いたしますと、常用換算で大体二十万人ぐらい、こういうふうに思っています。
城島委員 今二十万人ぐらいの増というんでしょうか、常用代替に置きかえるとそれぐらいを見込んでいるということであります。
 先ほど指摘をさせていただいた雇用契約の申し込み義務ということについても、実効性ある措置というものをぜひ考えていただきたい。今までと同じような指導監督、公表ということではなくて、さらに一歩突っ込んだ実効性あるものをしていただかないかぬなというふうに思います。
 それから、現行の二十六業務について見ますと、特に専門業務というところをずっとひもといてみますと、大体、この表現が極めてあいまい。あるいは、雇用管理は、常用代替というんでしょうか、一般的な雇用管理とは違う部分というのも入っておりますが、専門性ということについて見ても、この基準というんでしょうか、非常に範囲が不明確であるし、人によっていかようにでも判断できるということで、この部分についても、指導する上においてもう少し明確な、だれが見てもはっきりとわかるような内容に、やはり明確にしていく必要があわせてあるんじゃないかというふうに思いますが、この点、いかがでしょうか。
戸苅政府参考人 二十六業務につきましては、専門的な知識、技術、経験を要する業務、それから特別の雇用管理を要する業務ということになっておりまして、具体的には、これは労働政策審議会でいろいろヒアリングをしたり、あるいは新たに追加するような場合には実地調査をしたりということの上で政令に列挙している、こういうことであります。
 我々としては、なるべく政令を読めばその範囲が明確になるようにということで、審議会とも御相談しあるいは内閣法制局とも相談した上で政令を定めているわけでありますが、やはりそれだけでは、委員おっしゃるように、どのあたりが境界線かわからぬということでありまして、そういった意味で、我々としては、かなり詳細に通達で定めているつもりでございます。
 委員おっしゃるように、それでも不明確な部分があるんだということであれば、そのあたりは我々もきちんと調べて、さらに通達等でより詳細、明確な定義をするように努めないかぬと思いますが、今のところは、かなり詳細な規定を通達でしているというふうに考えております。ただ、これが徹底していないということであれば、これの周知は努めぬといかぬ、こう思っておるところであります。
城島委員 時間が来ましたけれども、大臣、前回も申し上げましたけれども、きょうは、この二十六業務と、業務が一カ月間に行われる日数が短いというところの期間制限撤廃というところ、二つに絞って質疑をさせていただきましたけれども、前回からの引き続きの中で申し上げますと、先ほども言いましたように、やはり今回のこの派遣法改正というのは、どうしても、使い勝手のよさというのは確実に広がるということですけれども、そこで働く派遣労働者の人たちの、ある面でいうと、主体的にこの派遣労働を選んでいこうというような観点に立てる派遣労働者の人たちに対する保護規定ということは、極めて実効性に乏しいものが多い。そういう面でいうと、かなりアンバランスだというふうに思うわけであります。
 まして、前回も指摘させていただきましたけれども、今回のこうした一連の法改正というもののもともとの源である総合規制改革会議からの答申を受けて審議会にかけてという一連の流れの中の原点になっているところのメンバーは、どう見ても本当に現場で働く状況をしっかりと認識をしている人たちがいるとは思えないようなメンバーで総合規制改革会議のメンバーが構成をされている。
 ましてや、もう繰り返しませんが、そのうちの特にこの雇用部門に対するメンバーには、メンバーの構成として極めて疑問多しと言わざるを得ない流れの中にこの法案があるということは、国の政策を決めるあり方としても、そしてまた日本のこれからの雇用の実態をどういう雇用のあり方に持っていくかという面においても、大変な危惧感を私は持っているわけであります。
 そうしたことも含めて、今回のこの派遣法については、最初から労使双方、働く側から見ても選択の幅を広げるということには沿っていないんじゃないかということを強く問題指摘をして、質問を終わらせていただきます。
中山委員長 次に、加藤公一君。
加藤委員 加藤公一でございます。
 先週に引き続いて、派遣法を中心にお伺いをしたいんですが、その前に、一点、大臣にお伺いをしたいことがございます。
 SARSの問題でありますが、台湾から日本にお見えになられました医師の方が発症されたという問題がございまして、今まで以上に国民の間にSARSに対する不安が広がっているのではないかと思っております。
 こうした状況のもとで、きょうは一々対策は伺うつもりはありませんけれども、国として、国民に適切な情報をできるだけわかりやすく伝えていく、開示をしていくという必要があるのではないかと思っておりまして、厚生労働省として、このSARSに関連する情報をどのように発信をしていらっしゃるのか、この点を伺いたいと思います。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
坂口国務大臣 先生にお答えします前に、城島先生、最後もうしまいだったものですから、僕がお答えする暇がなかったものですから。先ほどの実効性につきましては、担保できるように、できるだけやりたいと思っております。
 それから、SARSの問題でございますが、台湾の医師等の問題がございまして、大変皆さん方にも御心配をおかけしたというふうに思っております。
 それで、今後こうしたことが起こる可能性というのは多分にあるわけでございます。したがいまして、中国でありますとか香港、シンガポール、あるいは台湾等、いわゆる流行している地域からの旅行者の移動につきましては、厳重にチェックをしたいというふうに思っております。
 今までもある程度やってきたわけでございますが、もう少し強化をし、そして、その疑いあると申しますか、例えば、十日以内にその病院に見舞いに行ったとか、あるいはまたその家族の中に疑わしい人がいたとか、あるいはまた病院の関係者であるとかといったような方の場合には、そのときに症状が出ていないということでありましても、空港においてさらに詳しくひとつお聞きをして、その後の連絡先等もしっかりさせていただいて、いろいろの情報を提供していただくようにお願いをするといったようなことをしっかりやっていきたいというふうに思っております。情報もできる限り国民の皆さん方に開示をしなければいけないというふうに思っております。
 ただ、国内で発生しましたときには、その方の人権との絡みでどこまで皆さん方にお答えをするかという問題は確かにございますので、国内で発生いたしました場合には、年齢、年代ですね、何十歳代の方だとか、性別、それからどの地域を旅行しておみえになったとか、あるいはまたどこの都道府県に所属をする方だとかといったようなことぐらいは明らかにいたしまして、そして、その方がもし国内のどこかを回られるということになれば、それに対応いたしまして、その周辺の皆さん方にも注意喚起を呼びかけるといったようなことをぜひやりたいと思います。
 国内におきます体制の強化というのを今行っておりますが、陰圧ベッドも七百三十三ほど整備をされたところでございますので、これからも医療関係者の研修等も行いまして、万全を期していきたいと考えております。
加藤委員 何できょうこの情報開示の件を伺ったかといいますと、国民の間で、不安というのは、正確な情報がなくて、何が危険で何が安全かとか、あるいは万が一自分が危険な状態になったときにどうすればいいのかということがわかっていないことが一番大きな不安要因ではないかというふうに思っております。
 実は、ある方がこのSARSの件を不安に思って、どこに問い合わせをしたらいいんだろうかともうその段階で迷われた。例えば、何かホットラインでもあって、そこに電話をすれば何でも教えてもらえるという仕組みであればよかったのかもしれませんが、どこでどう聞いたらいいのかがわからないので、とりあえず近所の保健所に連絡をしてみた。ところが、保健所に連絡をしたら、あ、あのSARSの件は全部ホームページに情報を載せてありますから、それを見てくださいと言われて、電話を切られてしまった。たまたま電話に出た方がそうだったのかもしれませんが、確かにインターネットが普及したとはいえ、その方はインターネットを見られる環境にいらっしゃらない方でございまして、どうもそれは不親切じゃないか。自分が不安に思って、それを解消したいと思っているのに、何とかならないものか、こんな御意見もありました。
 あくまでも都道府県でやっていただいていることかもしれませんが、対策自体あるいは病気自体への対応というのももちろん大事ですけれども、国内の不安を消していくということもこうした問題は非常に重要かと思いますので、ぜひそんな点もお取り組みをいただきたいというお願いでございます。よろしくお願いします。
 では、本題の方に入らせていただきたいと思います。
 先ほど、私の前に城島議員からも御質問のあったところに関連をいたしますが、同じ問題をまた別の視点から少し伺わせていただきたいというふうに思っております。
 いわゆる専門的二十六業務の問題でございまして、実質的に派遣期間の制限というものが今回なくなるということになりますが、その場合に、三年を超えて同一の派遣労働者が受け入れられている場合は、その当該業務に新たに労働者を雇用しようとする場合にはその派遣の方に雇用の申し入れをしなきゃいけない、こういうルールができるということでありますが、まず、そもそも、なぜこのルール、規定が必要になったのか、ここからお伺いをしたいと思います。
戸苅政府参考人 実は、二十六業務につきましては、従来から、三年を超えて引き続き同一の業務に継続して派遣労働者を従事させる場合は、本来、直接雇用にすることが望ましいというふうな周知を行っておりました。そういったことで、ハローワークの現場でも今申し上げたような状況で、三年を超えて派遣を行うことがないようにという指導を派遣元の事業主に行っていたところであります。
 ところが、今回の見直しに当たりまして、派遣労働者の方の意見あるいは派遣先の意見、いろいろ聞きますと、こういった専門的な業務につきましては、やはり、雇用の安定という観点から、労働者としても、同じ派遣先で培ってきたノウハウが生かせる、あるいは周囲の人間関係もそれなりにできてきた、あるいは満足して働いているということであればもっと働きたい、こういうふうなニーズもあり、派遣先の方も、せっかく三年も続けて働いていただいているので、そのまま派遣を続けるということはお願いできないかという、労働者側、派遣先、双方のニーズがかなりあったということであります。
 そういった中で、そのままずうっと派遣を続けるという制度にしちゃおうということで、ビルメンのように特別の雇用管理を必要とする業務について派遣期間の制限を設けておりませんが、これも、派遣期間の制限を設けないというままにする手もあったんですけれども、三年間も同じ会社で同じ業務を続けているということであれば、やはり、派遣契約をやめてしまって新たに労働者を雇い入れるということよりは、新たな労働者を雇い入れようとするんであれば、まず派遣労働者に雇用契約の申し入れをしてもらうということが、派遣労働者の雇用の安定という観点からも適当なんではないか。
 それから、最後は派遣労働者の意思で雇い入れの申し込みを受けるか受けないかということを決められるというふうなこと、派遣労働者の意思の自由も確保する、そういう観点から、申し入れという形が適当なんではないかということで、今回はこういう提案をさせていただいたわけであります。
加藤委員 議論は最後にまたまとめさせていただきたいと思います。
 では、次に、今の御説明の中で出てきた、当該業務に新たに雇い入れる場合ということなんですが、その当該業務、すなわち派遣労働者の方がしていた業務と同じ業務をほかのだれかを雇い入れてしてもらうという場合には、その派遣労働者の方に雇用の申し入れをしなきゃいけないということなんですが、何をもって当該業務とするのか、同じ業務と認定をするのはどういう定義なのか、ここを御説明いただきたいと思います。
戸苅政府参考人 基本的には、今先生がおっしゃったとおり、当該派遣労働者の方が行っていたのと全く同じ業務を行ってもらうために新たに労働者を雇い入れるというのが典型的な例であるわけですけれども、場合によると、それよりももっと狭い範囲、あるいはそれよりももっと広い範囲と、こういうふうなことも起こり得るわけでありまして、我々としては、これは最後は審議会にお諮りした上で労使の意見を聞いて決めようと思っていますけれども、現段階で考えていますのは、現在、一年の派遣期間の制限について同一の業務というふうにやっていますが、これと同じ定義で考えてみようかというふうに思っています。
 これはどういうことかというと、組織の最小単位であります係単位ということが、同一業務の判断の最小のエレメントというか要素かな、こう思っています。
加藤委員 ちょっと、私の議論のシナリオからいくと、その係の議論に入っちゃうとややこしくなるんですが、今、世の中の民間企業で係という組織をつくっているところは余りないんじゃないかというふうに思っておりまして、それはまた後々の議論にしたいと思います。
 では、そこで伺いますが、一つちょっとモデルケースを挙げて、じゃ、こういう場合はどうなのかということを伺いたいんですけれども。例えば、係なら係、課なら課でもいいんですが、派遣労働者の方がいらっしゃるところで、ある仕事をされていた。お隣には常用雇用の方、余り好きな表現じゃありませんが、いわゆる正社員の方がお隣で同じ仕事をされていた。お互い複数。派遣の方も、正社員の方も、複数いらっしゃる、こういう職場というのは多いんだろうと思います。
 そこで、企業としては、経営的に見れば、例えば正社員の方には、もちろんその業務はしてもらうんだけれども、後輩が入ってくれば少し面倒を見てほしいなとか、あるいは業務改善の提案なんかもしてほしいなという期待がかかっている、派遣労働者の方にはその業務をきっちりこなしてもらえればもう十分ありがたいと思っている、こういうケースは往々にしてあるんじゃないかと思います。
 この場合に、そこの、係だか課だかわかりませんが、その組織の仕事がふえてきたから新たに人を雇い入れたい、しかし、将来的にもっと人数をふやすから、近々、人がふえたときに指導もしてもらえるような、そんな人が欲しいな、じゃ、派遣の方じゃなくて、正社員の人を雇いたい、企業がこう思うことというのは十分に考えられると思うんですが、これは認められるんでしょうか。
戸苅政府参考人 これは、正直申し上げて、先生の質問が大変本質を突いた質問だと思われますのは、派遣労働者のやっている業務と、正規社員の、正規の労働者のやっている業務の中には、確かに、後輩に社の社風とか取引先のいろいろな情報とかそういったものをオン・ザ・ジョブの社員教育、後輩教育のためにやるとか、あるいは派遣労働者に比べて正規の従業員の方が責任の度合いが重いとか、そういうことを言い始めちゃうと、多分、もう同じ業務ではないということになると思います。
 ただ、派遣法はどういうことで構成しているかといいますと、これはあくまで処理している業務に着目して二十六業務を指定しているわけでありますから、我々としては現に処理している業務を中心にして考えるということで、ほかにいろいろな業務をやっているとしても、そういった業務が大多数を占めているということであれば、今先生お話しのような後輩の指導とかいうことがあったとしても、それはまず、三年間ずうっと続けて派遣労働者として働いていた派遣労働者に雇用の申し入れをする、こういうことだろうと思います。
 その際、必要があれば、今までやってもらっていた業務以外に後輩の指導もしてくださいねと、こういうふうなことで雇用の申し入れをする、こういうことになるんではないかと思います。
加藤委員 そうすると、派遣労働者の方が三年を超えてずっと同じ業務についていらっしゃって、その全く同じ業務に、期待度も同じ、作業も同じという業務に、新たにいわゆる正社員の方を雇って、その派遣の方にやめていただこうということは、実は可能性からいうと余り高くなくて、つまり、それはどういうことかというと、その派遣労働者の方が安定した雇用、常用雇用に変わるというきっかけが、本来的には、今の局長の御答弁だと実は余りないんじゃないかと思えてならぬわけであります。
 ここを議論しますと、この場合どうなる、どうなるという極めて細かな話になりますから、少しちょっとわきに置いて、次に進めたいと思います。
 今度は若干うがった方向から幾つかの論点で確認をさせていただきたいんですが、まず、この規定ができたとして、この規定が存在をしたとして、さっきから大臣や局長もおっしゃっていましたが、派遣労働者の方にとっても企業にとっても友好な関係で、三年を超えてその雇用状態がずっと続いているという場合であっても、仮に何かの理由でそこに正規社員を企業が雇い入れたいと思ったときには、まずその方に雇用の申し入れをしなければならない、こういうルールができますから、仮に企業が、いや、将来の経営上の制約を受ける、人事上の制約を受けるのは困る、こう考えたといたしますと、たとえどんなに友好な関係で派遣労働者の方に来ていただいていたとしても、三年を超えない範囲でその派遣契約を打ち切ってしまう、こういうことが十分にあり得るのではないかと思うんですね。
 そういたしますと、さっきから局長や大臣がおっしゃっていたように、本当はその派遣労働の方は三年を超えても今のまま働き続けたいと思っていたにもかかわらず、この規定をつくることによって、あえて逆に切ってしまうということになりかねないんじゃないかと思うんですが、この点、いかがお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 確かに、今おっしゃるようなケースが完全に否定されるわけではないというふうに私も思います。ただ、二年ないし三年という長い間ずっとお勤めになっているというのは、やはりそれなりに、いわゆる派遣先の経営者も、その人の能力、人柄といったものに対して評価をしているということではないかというふうに思います。
 したがいまして、この二十六業種というのは、賃金的に見ましてもそんなに違わない、いわゆる派遣先の負担というのはそんなに違わないのではないかというふうに私は思いますし、自分の企業にとってやはりこの人は必要だ、この人はやはりよそへ行ってもらっては困るという気持ちが強ければ、私はその人を雇うということになるだろうというふうに思います。
 先ほどおっしゃいましたように、本当はもっといろいろのことを、後輩の指導から育成からさまざまなことをやってもらいたいんだけれども、派遣の人であるがゆえに余り無理は言えないというようなこともあって、この人にやってもらったらなという気持ちがあれば、私は逆に、どうしてもあなたにひとつうちの企業で常用雇用として働いてほしいということになるのではないかというふうに思っております。
 むしろ私が心配をいたしますのは、そういう優秀な人でありますから、優秀な人は皆雇用先と契約を結んで、そして行ってしまう、言葉は悪いですけれども、後へ残った人はどうもそうも思ってもらえない人だというようなことになると、かえって派遣元の方がそんなことで優秀な人を残そうとするような嫌いはないかといったような気持ちもするわけでございまして、私は、二年ないし三年、そして人間関係も生まれ、そして企業の内容についても熟知をしていただくというようなことになれば、私はその人に対する思いというのは強くなるのではないかというふうに思っております。
 しかし、先ほどもお話がございましたように、その人を優先的に採るという義務を課するということであったとしても、その人が嫌だったらもうそれはしないことだってあり得るではないかという、先ほどから城島先生にも御指摘をされましたし、今先生からも御指摘を受けたわけでございますが、私はそうはなりにくいというふうに思っておりますし、そういう義務を課します以上、それが効果的に働きますようにしなければいけないというふうにも思っているところでございます。
加藤委員 今の大臣のお話は、実は賃金制度にまで踏み込んで議論しなきゃいけない話でありまして、例えば、いわゆる正社員の方が年功序列賃金ではなくなっていて、派遣労働であろうがいわゆる正規の社員であろうが同一価値労働同一賃金という形が整っていればおっしゃるとおりなんだろうと思いますが、残念ながら、これは理想とか法律の話じゃなくて、現実の世界でいいますと、今まだそうなっていない。
 正規社員として採用するということになると、将来にわたって人件費を固定化することになりますから、企業は、将来への投資をするという考え方に立ちます。そうしますと、なかなか実は今おっしゃったようなことが容易にならないのではないかと思っています。
 私がさっき申し上げたのは、なぜ企業が、この派遣の方よく頑張ってくれていていいな、働いている方も、企業側も、もっといてほしいなと思っても、会社側が三年を超えないところで契約を切ってしまうのではないかというふうに申し上げたのは、三年を超えた後に仮に雇用の申し入れをしたときに、その派遣で来ていらっしゃる労働者の方がイエスと言うかノーと言うかわからないからなんですね。
 つまり、企業からすれば、このAさんならAさんがずうっとこれまでどおり派遣で来てもらえるんだったら本当にずうっと来てほしいと思っていても、企業として別の人を採用したくなったときにまずこの方に声をかけなきゃいけないというのは、そのリスクを今ここで保障するわけにはいかない、このリスクを今とってしまうわけにはいかないと考えると、つまり、その派遣労働の方が正社員になりたいのか派遣のままでいいのかという意思がわからないから、だったらそのリスクを最初からヘッジするために三年で契約を切っちゃいましょう、こういう考え方に企業が立ちかねない。これを何とかしなきゃいけないんじゃないか。
 さっき局長も大臣もおっしゃっていたように、働いていらっしゃる方が望んでいるのであれば、その形でもっと雇用が続いた方がより安定をしているわけですから。だといたしますと、この四十条の五の規定に対して、派遣労働者の方の方が、三年を超える前から、いや、自分は正規社員への希望はないんだ、派遣労働のままでずっと働きたいんだという意思表示を仮に先にした場合には、この雇用の申し入れの義務というのはなくてもいいのではないかと思うんですが、いかがお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 そこは非常に微妙なところでございますが、本人が私はもう三年ですということを初めから明確にしているということになれば、これはその派遣先の方も対処しやすいわけですね。もうこの人はこれだから、次のを用意しなきゃならぬのだなということを思うわけです。また逆に、本人が、この派遣先が雇用してくれるのならばいつまででもおりたいという気持ちなら、それはそれでまた話し合いになるだろうというふうに思うんですが。いずれでもわからないというのが一番始末に困るだろうというふうに、率直にそう思います。
 そのことは日々の勤めの中の話でございますから、いろいろのお話し合いもできるんだろうというふうに思いますけれども、確かに、派遣労働者の皆さん方にしてみれば、いわゆる手取りとしては、常用雇用よりもあるいは若干少な目になるのかもしれない。しかし、派遣先が支払いをする額としては変わらないんだろうと私は思うんです。そうしたことを考えますと、その人を、どうせ払うのならばやはり払っていった方が我が社のためにプラスになるというふうに理解をされるのではないか。まあ私はいいように解釈し過ぎかもしれませんけれども、そう思うわけでございます。
 ただし、そうはいいますものの、派遣労働者の方がもう三年近く勤めていて、できればこの際にここでおりたいという願望が強いのに、派遣先の方が、いや、しかし、そうはいってもあなたはもういいですよ、ほかの人を雇いますよということになれば、その人にとっては大変、三年近い間お勤めになって、そして精いっぱいおやりになったその人にお気の毒でありますしいたしますから、そこはやはり次の人を雇うのであればその人を優先的に雇うべきだという義務を課す必要があるのではないか。その義務の程度が弱いではないかというお話も先ほどからございましたが、そこは実効性のあるように、できるだけ我々も考えたいということを申し上げているわけでございます。
加藤委員 大分大臣のお人柄のよさが出ている御答弁かと思いますが、そういうふうに善良な経営がすべてされていればいいと思うんですが、なかなか現実はそうじゃないかもしれません。
 ちょっと時間の関係がありますので、少しはしょって次に進みたいと思うんですが、幾つか飛ばして伺いたいと思います。
 今の問題で、企業側がまさしく少しあくどい、ずるっこいことを考えたといたしますと、同じ派遣労働の方が来ていらっしゃる、三年過ぎました。だれか正規社員を採用したくなった、最初にその派遣労働の方に雇用の申し入れをします。これはルールどおりにやります。そのときに、仮に、では派遣労働の方が今受け取っていらっしゃるお給料よりも安い金額で、これで社員になってくださいという条件提示をされたら、これは認められるんでしょうか。実質的にはやめろと言っているのと一緒じゃないかと思うんですが、これはどうお考えになりますか。
戸苅政府参考人 これもまたいろいろなケースがあると思いますので、一概にお答えするのは難しいんですが、一般論として申し上げれば、一つは、やはり正規の従業員ですと、ボーナスとか退職金とか、福利厚生とか、いろいろなものがありますから、そういった意味で、月々の定例賃金ということになると、派遣労働者よりも下がるということはあるんだろうと思います。
 そういう意味では、今までの労働条件、要するに派遣のときの賃金と正規の労働者になったときの賃金との比較というのは、なかなか総額で比べないと難しいんだろうと思いますが、ただ、我々としては、そこはバランスのとれたものが望ましいんだろうということは言えると思います。
 ただ、場合によって、うちは人は雇うけれども新入社員を雇いたいんだというふうな場合ですと、恐らく新入社員の労働条件を提示するということもあり得るのかもしれません。そういった場合に、先生おっしゃるように、脱法的にそれが行われると、例えば、派遣労働者に対して新入社員の賃金を提示しておいて、断られたら中途採用者には中途採用者のもっと高い賃金を提示する、こういった脱法的な行為はやはり防いでいく必要があるんじゃないか、こう思っています。
 そういった意味で、そのあたりは派遣労働者の方からの申し出があれば必要な指導等はする必要があると思っています。
加藤委員 この点はここまでにしますけれども、趣旨で雇用の安定を図るとか、それから派遣労働の方も含めて働く方の意思で自由に選択できるというその裁量の範囲を確保するというのは私は大賛成でありますが、どうもこの規定自体がまだ余りにもあいまいといいますか、本当に機能するんだろうかという点が多いものですから、今そうした点を伺わせていただきました。
 全員が、すべての経営者とすべての企業が性善的に判断をしてくれればいいのかもしれませんが、どうもそうとは限りませんから、今言ったようなお話を伺ったところでありまして、今後、この点も詰めていただきたいというふうに思います。
 次に進めたいと思います。
 前回の質問のときに、出向の問題について局長にお尋ねをいたしました。一々ここでまた振り返りませんが、今日常茶飯事行われている出向という雇用形態が、職安法で禁じている労働者供給事業に当たらないのはなぜでしょうか、これは本当に素直な気持ちで私はお尋ねをしたところでありまして、いま一度ぜひわかりやすくお答えをいただきたいと思います。
戸苅政府参考人 前回そういった御質問をいただいたものですから、戻りまして、いろいろ文献等に当たってみました。当たってみましたところ、昭和四十六年に内閣法制局に職業安定局から意見照会を行っていました。それに対する答えというのがございまして、これを読んでもなかなか簡潔明瞭にはなっておりません。
 これは要するに、職業安定法上は、労働者供給事業は禁止する、こう書いてある。労働者供給の定義はあるけれども労働者供給事業の定義は法律にないということで、事業性があるかどうかということの判断というのをどう考えるかということを一つは言っております。
 それで、事業というのは何かというふうなことになったときに、一般的には、先生が前回おっしゃいましたように、反復継続の意思を持って所定の行為を行うということが一般に事業と言われている。職業安定法上、労働者供給の定義はあって労働者供給事業の定義はないが、そのあたりを考えると、労働者供給事業というのも一般的に事業と言われているものが該当するんじゃないかということで、労働者供給という行為を反復継続の意思を持って行われているというものについては、これはやはり法律上禁止、事業として禁止になると解するのが妥当である、こういうことであります。
 ただ、そういった前提の中で、技術的な指導等のための出向については、あくまでその下請会社等との関係においての技術指導のために行われるというものであって、仮にそれが形式上反復性がある、例えば人がどんどんかわっていくというようなことがあったとしても、それをこの前私は社会通念上と申し上げたんですが、法制局の見解では、社会共同生活上と言っておりますけれども、社会共同生活上事業と評価するのは困難であり、それが労働者供給事業に当たるとするのはいささか行き過ぎである、こういう見解であります。
 そういった意味で、前回私が申し上げましたように、出向というのは労働者供給には当たるが、事業として反復継続は、形式的に確かに反復継続は行われているけれども、それを社会共同生活上といいますか社会的に事業と評価して、それを職安法違反と言うのは行き過ぎである、こういうふうな見解でありまして、これは前回私が申し上げたのとほぼ同じような趣旨で、これ以上やるとなると、相当研究しても、これ以上のものは出てこないんじゃないか、こう思っています。
加藤委員 この問題を伺ったのは、何も委員会の場で神学論争をしようという話ではなくて、何度も申し上げますが、派遣を語るためには労基を語らにゃいけぬ、労基を語るときにはどうしてもこの出向の問題をクリアしないとはっきりしないということから、基本的な考え方の部分でお尋ねをしているわけでありまして、今の御答弁を聞いても、私もさっぱりわからない。雇用問題には随分長いこと携わってきたつもりですが、さっぱりわからぬという状況ですから、引き続いてこれはいろいろ教えていただきたい、御議論させていただきたいと思います。
 それでは、少しだけ戻りまして、大臣に確認をさせていただきたい点がございます。ちょっと時間が迫ってございますので、質問があべこべになって失礼ですが、大臣にお伺いをします。
 せんだっての委員会の中で、城島議員からの質問に、大臣がこういうふうにお答えになりました。労働組合もしくは従業員の過半数代表の意見を聞くというその手続に対して、聞いてノーだったら、それはやはり聞かないといけない、あるいは聞く以上は意見を尊重するということではないかと思います、こういうふうに大臣がお答えになっていらっしゃいますが、これは意見を聞くだけではなくて、その意見に従わなきゃいけない、こういうふうに解釈できるんですが、これはどういう方法で担保をされるんでしょうか。お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 先日、お聞きをする以上、その意見をやはり尊重するというのは当然ではないかというふうに思いましたので、率直に、そうお答えをしたところでございます。
 よくよく考えてみますと、労働組合との話といいますのは、いわゆる労働条件についての話し合いというのが、これは労働組合と経営者との間の話し合いでございます。この問題は、労働条件の問題というだけではなくて、いわゆる経営条件と申しますか、どういうふうに今後企業を経営していくかということについての分野というのもかなり含まれていると私は思うんですね、このことは。
 しかし、労働組合にそのことを相談しなければならないということに今なっている。これは今までの、いわゆる経営者と労働組合との関係の話から一歩踏み出している話だというふうに私は思います。そういう意味では、私はこのことは評価すべきだというふうに思っておりますが、しかし、それだけになかなか、労働組合が言いましたから絶対そういうふうに何が何でもしなきゃならないというふうになってしまうと、経営の条件の問題に労働組合のことをすべて聞かなきゃならないという、そのはしりにもなる可能性がある。そこのところをどこで、話をどこまで聞くかということになるんではないかというふうに私は思います。
 しかし、初めにも申しましたとおり、過半数を超える職員あるいはまた労働組合の御意見を聞くということを義務づけております以上、できる限り皆さん方の御意見を聞かないとやはりいけないんだろう。そのことをどんな形に表現するのかということにつきましては、現在、率直に言って、まだどうしたらいいかということが固まっておりません。固まっておりませんが、私が言いましたその趣旨、できるだけ尊重したいという、そのことをどういう形で担保するかということについて、少しこれから検討させていただきたいというふうに思いますし、検討いたしましたら、またその旨をお伝えしたいというふうに思う次第でございます。
加藤委員 大臣のお気持ち自体は、せんだっての城島議員の質問に対する答弁のときからよく私も理解をしておるつもりでございますし、ぜひそうあってほしいと思うんですが、法律をどう読んでも、この法律上は何の担保もないわけでございます。
 では、それを今大臣、検討していただけるということでしたが、どういう方法で、どこまでその意見を尊重しなければいけないのかということはある程度はっきりさせておいていただかないと、はい、形式上、意見を聞きました、だけれども、それは全く無視しましたなんということになったら、このルールを決めた意味がないわけですから、このルールを決める以上は、それが実効性を伴うような方法をぜひお考えいただきたいというふうに思います。
 いろいろ私も考えたんですが、実は簡単な話じゃないんじゃないかと思っていまして、実は結構難しい宿題になるのかなという気はしているんですが、大臣みずから御発言のことでございますので、ぜひ御検討をいただいて、御報告を賜りたい。お願いをいたします。
 時間が迫っていますので、では最後に一問だけ伺いたいと思います。
 派遣から離れて、職業紹介の件なんですが、今回、地方公共団体が無料職業紹介を行えるということになりますけれども、それを認める条件として、「住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策に関する業務に附帯する」と、よくわからない条件がまたついてございまして、これは非常にあいまいといいますか、どこからどう読んだらいいのかわからないような表現でありまして、ある見方をすると、いや、これは別に、何でもできますよというふうにも読めるし、逆に読むと、何か相当厳密な施策を打ち出さないとやっちゃいけないようにも読めますし、これは一体どういう趣旨なのか、わかりやすく、聞いた人がわかるように御説明をいただきたいと思います。
戸苅政府参考人 職業紹介については、憲法上の勤労権の保障を国が担保するとか、あるいはセーフティーネットの一要素であるということで、国が全国的なネットワークのもとに職業紹介を国民の税金を財源に行っているわけであります。
 そういった中で、自治体が全く同じ仕事をするということになると、やはり二重行政になってしまうという議論がかねてからあって、地方分権の整理の中で、職業紹介については国が行うということになっていたんでありますが、最近、雇用情勢が非常に厳しいという中で、自治体も、いろいろな雇用対策の一環あるいは住民福祉対策の一環として、無料の職業紹介を行えるようにすべし、こういうふうなことで、これにつきましては、さらにそういったことを受けて、地方分権の意見書、去年の十月に出ていますが、地方分権推進会議の中でも、「国と地方の二重行政となることのないよう配慮をしながら、」こう書いています。
 法律はどう書いてあるかといいますと、実は地方公共団体は、今先生がおっしゃったように、「住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策に関する業務に附帯する業務として無料の職業紹介事業を行う必要があると認めるときは、」こう書いていまして、要するに、地方公共団体が、うちが住民対策というか自治体の施策に付随するものとして必要だと自治体が認めれば、それで行うことができる、こういうふうになっています。そういう意味で、自治体の判断、こういうのが基本であります。
加藤委員 まだ幾つか伺いたかったんですが、時間ですので終わりたいと思います。ありがとうございました。
宮腰委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十分開議
中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。鍵田節哉君。
鍵田委員 民主党・無所属クラブの鍵田でございます。
 本法案につきましては、本会議での質疑、さらには参考人質疑に引き続いて三回目の質問をさせていただくことになるわけでございますが、法案の中身の審議に入る前に、まず大臣のお考えを若干聞かせていただきたいというふうに思っておるところでございます。
 従来、こういう法案が出てくる際には、必ず事前に審議会などで公労使、十分な議論をされまして、その上で一定の合意を得る。なかなか合意が得られない場合には公益委員の案などで出てくるというケースもありまして、そして委員会で審議をすることになるわけでございますが、今回は、参考人質疑の中でも出ておりましたけれども、総合規制改革会議の答申に基づいて、そして、もちろん審議会でもそのことを受けて審議をされたわけではございますけれども、どうも最近は、そういう規制改革のケースが非常に多くなってきておるように思うわけなんです。
 私自身も、今世の中を大きく転換していかなくてはならない、そういうことを考えますと、規制改革ということは大変重要だというふうに思っておりますし、決して、規制改革に何でも反対をするという守旧派の態度はとりません。しかし、経済的な規制改革というのは大胆にやらなくてはならないわけでありますけれども、その反面、社会的な規制につきましては、経済的な規制を緩和すると同時に、やはり社会不安が起こらないような規制の強化というか整備というものがあってもしかるべきではないか、そうではないと言う人も中にはいらっしゃるんではないかと思いますが、私はそういうふうに思っております。
 この総合規制改革会議委員の方、メンバーを見ておりますと、委員十五名中、民間企業の代表者が十名おられるんですね。それも、例えばオリックスの会長であるとか、旭リサーチセンターの社長さんであるとか、ザ・アール代表取締役社長であるとか、リクルートの取締役社長、イー・ウーマン代表取締役社長、ユニ・チャーム株式会社、さらには古河電工、ゴールドマン・サックス証券、森ビル、帝人、こういう方々でございます。
 そのほかに五名の学者の方もいらっしゃるんですが、大体、この学者の選び方にもいろいろあるんではないか。やはり規制改革に非常に熱心に取り組んでおられる方を選んでおられるのではないかというふうに思うわけです。
 こういう人々から見ますと、経済的な規制改革には大変熱心でありますが、社会的な規制改革というふうな面には、余り熱心ではないか、全く関心を持っておられない人が多いと私は見ておるわけでございます。
 こういう人たちが出してきた内容を受けて、そしていろいろな法案が出てくる。そのために、最近、厚生労働委員会にかかる法案には大変、我々、これが厚生労働委員会かと思うような、局長もおられて大変失礼ですが、こんなのだったら労働基準局なんか要らないんじゃないか、職安局は全く役に立っていないではないかというふうに言わざるを得ない、そういう内容になってきておるように私は見受けられるわけでございます。
 そういうことを考えますと、やはり社会的な規制というのは、社会の安心、安全、そういうものを守っていく上からしましても必要な規制でございまして、そういう意味では、大臣としまして、そういう今日の厚生労働省のあり方、また審議会のあり方、それから規制緩和の問題、これらにつきましてどのようにお考えになっておるのか。この派遣法もさることながら、この次に出てくる労働基準法の改正案なんというのは、もうとんでもない、これでも厚生労働省は本当に労働者のためなり国民のためを考えているのかと言いたくなるような内容を持っておるわけでありまして、そういうことで、法案の審議に入る前に、まず大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 規制改革会議から出てまいります内容につきましては、私、必ずしも全部が全部賛成ではございませんで、規制改革会議の皆さん方からは守旧派の一人として私は見られているわけでございます。しかし、それは実は誇りに思っている次第でございまして、厚生労働省としてやらなければならないことは必ずしも規制改革だけではない、こう思っております。
 規制改革会議からお示しをいたしますとおりに法案をつくっておりましたら、皆さん方の腰が抜けるほどのものができるわけでございまして、そこをできる限り労働審議会等におきましても御審議いただき、労働側代表の皆さん方の御発言もいただき、そうした御発言も十分聞きながら、そして、できるだけ我々の考え方をその中にとどめて、規制改革会議から示されましたものを新しく我々でつくり上げているというのが実情ではないかというふうに思っております。
 そうした意味で、一定の歯どめを行いながらやっているつもりでございますし、私は、規制改革というのは、経済上の規制改革というのがもっと積極的に行われるべきであって、社会保障にかかわりますようなものにつきましてはやはり一定の歯どめが必要だ、基本的にそう考えているわけでございます。
 したがいまして、そうした考え方も考慮に入れながらやっているつもりでございますが、鍵田議員の方から見ますと、いや、まだ手ぬるいとおしかりを受けることを重々存じております。しかし、そうした思いも持ちながらやっておりますことも御理解をいただきたいと存じます。
鍵田委員 私は、大臣が御就任以来、ほとんどこの厚生労働委員会に所属をさせていただいておりまして、過去の委員会の審議などを通じまして、真摯にそういう課題に取り組んでいただいておるということはよく承知をしておるわけでございますが、その割には、最近ちょっとおかしいんではないかという思いを強くしておりましたので、大臣の参議院からのお帰りを心待ちにしておりましたけれども、できるだけ大臣の手からこぼれ落ちないように、しっかり支えていただくようにこれからもお願いを申し上げます。
 次に、法案の具体的な審議につきまして、これからきょう採決されることになるわけでありますけれども、できるだけ、附帯決議でありますとか答弁をいただきまして、この法案が本当に派遣労働者のためになる、そしてそれが日本の経済の発展にもつながっていくというふうな立派な法案にするために、今後の審議会などの討論に資するための質疑をさせていただきたいというふうに思っておる次第でございます。
 まず最初に、労災問題につきまして、先日来同僚議員からも出ておりましたし、きょうも出ておりましたけれども、それらにつきまして若干お聞きをしたいというふうに思います。
 おさらいもありますので、制度の趣旨などにつきましても若干お聞きをしながら進めてまいりたいと思うんですけれども、労災保険にメリット制というのがございます。先日もこれも取り上げられたわけでございますが、現行の仕組みについての説明がこの間局長の方からございましたが、私はいま一つ納得がいかない内容がございます。
 保険料を負担しているのは派遣元である、こういうことで、派遣元に労災保険の責任を持たせておるということで局長の方から御答弁がございました。もちろん、賃金を払っているのが派遣元であるから、保険料も派遣元で負担するんだということのようでございますけれども、労災保険制度にはメリット制などの趣旨があるわけですけれども、派遣先が保険料を支払うということも一つの方策としてあるのではないかというふうにも考えますので、このメリット制の趣旨なり内容などにつきまして若干説明をいただいて、そして厚労省としての考え方をお聞きしたいと思います。
松崎政府参考人 まず、労災保険の保険料率でございますけれども、これは御案内のように、業種間の負担の公平性という観点から、労災事故の多いところは高く、また少ないところは低くということが一応決められております。
 またさらに、個々の事業主の負担の公平性また個々の事業主の労災防止努力を促すといったことを目的としまして、おっしゃったメリット制という制度がございます。
 これは、一定の要件を満たす事業につきまして、労災保険の収支率、要するに、事故が少なければ保険料は安くなる、事故が多ければ高くなるという制度でございますけれども、労災保険の収支率に応じまして労災保険料率を増減させるという制度でございます。
 具体的には、過去三年間の業務災害に係ります保険料それから保険給付、そういうものの実績から、個々の事業につきまして先ほど申し上げた収支率を計算いたしまして、その値に応じまして、一定の幅、一般の事業でありますとプラスマイナス四〇%の範囲内で労災保険料率を高くしたり低くしたりするという制度でございます。
 なお、派遣事業につきましては、このメリット制の適用につきましても、当然、労災保険の適用があります派遣元事業主に適用があるということになるわけでございます。
鍵田委員 事実関係はそういうことだというふうに思いますけれども、このメリット制の趣旨の中には、目的といいますか趣旨といいますか、そういう中には安全衛生の確保というのがあると思うんですね。安全衛生の確保をすることによってのメリットということが出てくると思うんですが、事故というのは派遣先で起こるわけでございまして、事故の責任がある事業主が負担するのは当然だということで言われておるんですが、派遣先で労働災害が発生するケースが多い。特に、製造業などに派遣先が解禁されるということになりますと、そういうケースが多いわけでございますが、安全衛生法上の、いわゆる安衛法上の責任というのは、これは派遣先なのか派遣元なのか、どちらなんでしょうか。
松崎政府参考人 労働者派遣というシステムは、まさに労働契約の当事者であります派遣元とそれから実際に就労する派遣先が違う、事業主が違うというところで、従来の一般的な就労関係とは異なっているわけでございます。そういったことで、派遣労働者につきまして、労働安全衛生法でありますとか労働基準法、そういった労働者保護法を適用するに当たりまして、どういうふうにしていったらいいのかということを検討する際に、大きな視点が二点ございました。
 第一の視点は、派遣労働者の実質的な保護に欠けることがないようにという点でございます。それともう一点は、派遣労働者の保護につきまして、事業主としての責任、いわゆる使用者責任というものがあいまいにならないようにという点。派遣先と派遣元という関係の事業主が二つあるわけでございますけれども、その間で使用者の責任を譲り合いといいますかおっつけ合いといいますか、そういうことにならないようにという使用者責任の明確化という点、この二点の視点ということによりまして、派遣労働者についての労働基準法でありますとか安全衛生法の責任の所在というものを派遣法上明確にしたところでございます。
 したがいまして、原則としては、やはり基本的に、労働契約の当事者であります派遣元が基本的な事業主として使用者責任を負う。また、それとともに、実質的に派遣労働者の保護に欠けないように、派遣先でなければできないようなこと、そういったものにつきましては派遣先に責任を負わせるというふうに仕分けしたわけでございます。
 したがいまして、労働基準法の方にもございますように、例えば均等待遇でありますとか強制労働、そういったところについてはダブルで使用者の責任を課しております。また、賃金の支払いなどについては派遣元、それから労働時間管理については派遣先といったふうに、必要な場合に応じて片っ方の責任だけというふうにもしておるわけでございます。
 したがいまして、同じような考え方で、労働安全法につきましても、これは、実際に働く現場が派遣先であること、また実際の安全衛生の管理というもの、それから指揮命令というものも派遣先で行われる、また設備であるとか施設、そういったものも派遣先が管理しているということから、基本的には派遣先の責任としておりますけれども、例えば労働安全衛生法上の一般健康診断のようなものは基本的な使用者の責任として派遣元の責任というふうに、先ほど申しました二つの観点から、派遣先と派遣元の責任というものを振り分けなりダブルでかけるということにしておるわけでございまして、今御質問の安全衛生法でいいますと、基本的に多くの部分はやはり派遣先が多くの責任を負っているという状況になるわけでございます。
 したがいまして、派遣先におきまして労働安全衛生法上の違反というものがあった場合には、事故があったなしにはかかわりなく、労働安全衛生法の責任は派遣先が問われるということになります。
鍵田委員 今局長の方からお答えがあったんですけれども、どうも安衛法上の責任につきましても、派遣元もあるし派遣先もあるというふうなこともあるようでございます。
 そのほか、今まで審議会なんかでもいろいろ審議の過程で意見があったやに聞いておりまして、私は、この労災保険の適用をめぐる問題につきましても、先日来の同僚議員の質問を聞いておりましても、派遣先であるのか派遣元であるのかということは今後の結論にまつとしましても、やはりもっときちっと議論をして、そして、メリット制を生かすためにはどうしたらいいのかとか、また派遣労働者と正規労働者との労災の場合の均等待遇であるとか、労災の上乗せ部分が民間企業の場合などでは協約上決められておるわけでありますけれども、それらの人たちに対しては、恐らく派遣労働者には現状では適用にならないというふうにも思います。そういうふうな課題も含めまして、今後、この労災の適用につきまして、さらにそれぞれの関係者で議論をするなり、また専門家の手によってもう少し議論を深めて、そして適正な労災の適用を行うようにしていただくことが大切なのではなかろうかというふうに思います。
 したがって、私は、今ここで直ちに議論を終えるということではなしに、今後そういう問題についてさらに議論を深めていただくという場があってしかるべきではなかろうかというふうに思いますので、それらにつきまして、大臣の方からの見解をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 先ほど局長から答弁ありましたとおり、二つの大原則、一つは派遣労働者の保護という立場、もう一つは派遣先の責任というもの、この二つのことをやはり踏まえていかなければならないというのは、私も全くそのとおりだというふうに思います。
 それで、これらの基本的な観点に立って、これからどのようにしていけばこの派遣労働者の皆さんが常用雇用の皆さん方と大体対等に、同じような状況に置かれるようになるか、そのことを考えていかなければならないというふうに思います。
 安全衛生につきましては派遣先ということになっておりますし、労災の保険料を払ってもらうのは派遣元ということになっておりますし、そこが非常に複雑でございますが、今までと違いまして、これからこの派遣業なるものの期間あるいはまた範囲というものが拡大をしてまいりますと、いわゆる危険職場と言われるような職場も中には出てくるのではないかというふうに思います。そうしたときに、そうした人たちが二年、三年というふうに同じ職場で働くというようなことになりましたときに、一体保険料は、派遣元の全体、トータルで見た保険料でいいのかあるいは違うのかといったようなことも議論になると思います。
 また、安全衛生の面で見ましても、先ほどの答弁にありましたように、純然たる基礎的な健康診断というのは派遣元が行わなければならないということであったとしましても、そこが例えば有機溶剤を使う職場であるとか、そういう特殊な職場でありましたときの、その特殊性の場合には、一体それはどちらがちゃんとしなければならないのかといったようなこと、そうしたことをきめ細かくやはり決めていかなければならないというふうに思っているところでございまして、そうしたことをこれから鋭意決めていきたいというふうに思いますし、その基本となりますところは、派遣労働者の保護、そして派遣先の責任ということを明確にすることであるというふうに思っている次第でございます。
鍵田委員 検討課題ということにしていただくということでよろしゅうございますか。ありがとうございます。では、そのようにひとつよろしくお願いいたします。
 次に、一年を超える派遣の乱用防止の措置でございますけれども、今回の改正では、一年を超える臨時的、一時的な判断を、個別業務ごとの判断ということで、業務の性格を熟知する派遣先に任せておるわけでございます。この乱用防止策として、派遣先過半数代表の意見聴取義務が課せられておるところでございます。
 しかし、実際問題としましては、この職場代表からの意見聴取に法的な拘束力というものはないわけでございます。使用者が一方的に臨時的、一時的と主張した場合には、年限の延長を行うことが可能になってくるのではないかというふうに思います。すべての一年を超える業務に三年までの派遣を認めることと実質的には異ならないことになってしまうのではないか、この乱用防止の効果がほとんど期待できないのではないかと懸念をいたします。
 このことにつきましては、金曜日に行われました参考人質疑の際にも、労働者代表の方からそういうお答えがございました。この一年を超える派遣の乱用防止として重要な意味合いを持つ労働者の過半数代表からの意見聴取につきまして、単に形式的な手続として行うのではなくて、派遣先が現場の実情等を的確に把握し、臨時的、一時的な業務の処理に要する期間を的確に判断するものとして適切に行えるように、厚生労働省としても十分な指導をするべきではないかというふうに思いますが、大臣の御見解をお願いしたいと思います。
坂口国務大臣 これは今、適切に行われるよう指導すべきではないかというお話でございますが、それはそのとおりというふうに思います。
 指導いたしますときに、どういうルールに従って指導をするかということを少しやはり決めておかないと、ただ単に、指導しますというだけではいけないんだろうというふうに思っております。したがいまして、御指摘をいただきましたことを十分踏まえましてやりたいというふうに思っております。
 派遣先とそれから派遣元との関係もございますし、あるいはまた派遣労働者と派遣元、それから派遣労働者と派遣先といった関係もあるわけでございますから、三者をよく見て、そして納得のいけるようなシステムというものを確立するということであろうというふうに思っております。そういう立場からぜひこれから進めていくことをお約束したいと思います。
鍵田委員 それでは、リストラをした後のそのポストへの派遣の受け入れにつきましてお伺いをしたいというふうに思います。
 労働者側の多様な選択肢の確保、こういう観点からの、使用者の労働コストの削減というふうなことの便法なのではないかというような指摘もあるわけでございまして、こうした懸念を払拭していくということが厚生労働省に課せられた責務であるというふうに思っておる次第でございます。
 そういうことから、派遣労働者の直接雇用の促進ということで、実効性は別にしましても、二つの新たな規定が創設されておりますが、一方で、例えば、使用者が常用労働者の人員整理を行っておいて、あいたポストを派遣労働者で穴埋めするというようなことを禁止する手だてということは、きちっとできておらないというふうに思われるわけでございます。
 この派遣の受け入れにつきましては、常用労働者をリストラする手段としては認められるべきではないと考えますし、また、仮にリストラなどの雇用調整の実施中に、リストラ後のポストに労働者派遣を受け入れる必要が生じたような場合には、労働者の理解が得られるよう、派遣先は使用者としての最大限の努力を行うべきだと考えますけれども、これにつきましてはいかがでしょうか。
鴨下副大臣 先生の御指摘は非常に重要だろうというふうに思います。
 常用労働者を整理して、派遣労働者にその当該常用労働者の行っていた業務をそのまま行わせてコスト削減を図ろうというような場合は、当該整理解雇は人員削減の必要性がなく、そもそも、解雇権の濫用法理によりまして、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と是認することができない、こういうようなことで無効となる可能性があるわけでありまして、ある意味で、これによりまして不当なリストラは防止をされるというふうに解釈をしているところであります。
 ただ、この解雇権の濫用法理上は認められた解雇でありましても、事業主の経営判断等のミスと、それからさまざまな経済の不透明な現状におきまして、常用雇用労働者を整理した後に、経営を取り巻く環境がたまたま好転したり、臨時的、一時的な労働力需要が発生した、こういうようなことにつきましては、労働者派遣を導入する、こういうようなケースもあり得ないということではないだろう、こういうような認識であります。
 ただ、これにつきましては、解雇の必要性について十分な検討もなく安易なリストラが行われているようなことは、言うまでもなく望ましいことではないわけでありますから、いわゆるリストラ等の雇用調整を実施中に、当該雇用調整で解雇した労働者がついていたポストに労働者派遣を受け入れる場合には、派遣先は適切な措置を講じ、労働者の理解を得られるよう努めるべきであるというようなことにつきまして、行政としてもその旨を周知していきたい、かように考えております。
鍵田委員 ぜひとも十分な周知を行うようにお願いをしたいと思っております。
 次に、契約期間の上限が三年というふうなことになってくるわけでありますけれども、しかし、現実には三カ月更新というような契約を繰り返しておるというふうな実態も数多く見られるわけでございますから、やはり実際は、派遣労働者と派遣元との契約と、それから派遣先と派遣元との契約と、この契約の期間が一致しないと、何のメリットも派遣労働者にはないことになってしまうわけでございます。
 そういう意味で、この期間の短期化、更新の繰り返しという実態への対処というものが十分担保されないという中で今日の法改正があるわけでございますけれども、坂口大臣は、本会議の私の質問のときに、以下のように述べておられるわけでございます。「派遣期間の延長に伴いまして、派遣労働者と派遣元事業主との間で短期間の雇用契約の反復更新がなされる場合には、派遣労働者の雇用が不安定になる側面もありますことから、派遣元事業主は、雇用契約の締結に当たりまして、派遣労働者の雇用の安定が確保されるよう配慮することが望ましいと考えております。」このようにお答えになっております。
 問題意識といたしましては、我々もそのように受け取っておるわけでございまして、この短期の雇用契約の反復により登録型派遣労働者の雇用が不安定なものとならないように、具体的な措置として、派遣元事業主は、合理的な理由がない限りは、労働者派遣契約の期間と雇用契約の期間とを一致させるべきだというふうに考えますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
鴨下副大臣 大臣の答弁の前に、確認的に私の方から申し上げさせていただきますが、雇用契約期間は、派遣元事業主とそれから派遣労働者が、ある意味でそれぞれ希望に応じまして合意した期間を設定すべきであるというようなことが原則でありますけれども、法により一律に労働者派遣契約と雇用契約の期間を一致させるというようなことをある意味で強制するということは、なかなかこれは難しい部分もあるんだろうと思います。
 ただ、意図的に短期間の労働者派遣契約を反復更新したり、それから、それに基づき短期間の雇用契約を反復更新することは、派遣労働者の雇用が不安定になる、こういうような意味で、先生御指摘のようなことは極めて留意すべきことだろうというふうに思っております。
 このため派遣元事業主は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、その雇用期間に関しまして、当該労働者の希望及び当該労働者に係る労働者派遣契約の労働者派遣の期間を勘案して、当該労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めなければならない、こういうようなことを周知してまいりたい、こういうようなことでございます。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
鍵田委員 ただいまの質問につきましては、派遣元にまずその責務というのですか、そういうものを負ってもらうということの周知徹底ということでございますが、さらには派遣先にも同様の、やはりちゃんと派遣元との契約もあるわけでしょうから、その契約に基づいてこれを実行するという、派遣先にも責任を負ってもらうようなことが必要なのではないかというふうに思うわけでございますけれども、その辺につきましてはいかがでしょうか。
坂口国務大臣 先ほどから、派遣先の問題それから派遣労働者の問題が出ておりますけれども、やはり一番しっかりしなきゃならないのは派遣元だと思うのですね。だから、この一番しっかりしてもらう派遣元のことについて、行政的にもしっかり見ていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
 したがいまして、優先順位といたしましては、派遣元がきちんとやるべきことをやって、そして派遣労働者というものに対する保護、信頼というものをちゃんとかち得るようにしていかなければいけない、そこを一番私はしっかりやらなきゃいけないと思っておりますが、あわせまして、派遣先の方につきましても、これは御指摘のとおり、派遣先にもそれなりの、日々の仕事をやっていくわけでありますから、応分の責任があることは当然でございます。派遣先につきましても、よく指導が行き届くようにしなければならないというふうに思います。
 ただ、今現在のところ、いろいろのお話を聞いておりますと、派遣先の事情よりも派遣元の事情で期限が非常に短くなっているケースが多いやに私も聞いているわけでございまして、しっかりその点のところを見ていかなければいけないというふうに思っております。
鍵田委員 ありがとうございます。ぜひとも両方からこの契約期間の問題につきましては処理ができますように、御指導をお願いしたいと思っております。
 次に、製造業への派遣の解禁の問題でございます。
 従来から、労働災害の多発化でありますとか、さらには高度な熟練技能の継承にいろいろな影響が出てくるのではなかろうかというふうなこともありますし、また、偽装の請負が蔓延しておるというようなこともありまして、我々としては、物の製造の現場への派遣というものはやはり禁止するべきではないか、また、派遣の解禁は許すべきではないということでやってきたわけでありますが、今回はそれを製造業にも解禁しようということになってきたわけでございますけれども、先ほどから言っておりますように、労働災害、特に物の製造のところでは、大変重大な災害が発生する危険性とか、そういうものも多いわけでございます。
 さらには、今、日本の経済の空洞化ということが言われておりますし、そういう中で製造業というのは大変苦しんでおるわけでありますから、人件費の削減というふうなことから、つい派遣労働者に頼るというふうなことになってまいりますと、いろいろな問題が発生してくると思います。
 特に、私は常々言っておるんですけれども、日本の物づくりの基盤技術というものが一たんなくなってしまいますと、次にその基盤技術を育てるためには十年も十五年もかかってしまう、壊滅的な打撃を受けてしまうというふうなことにもなりかねないわけでございます。
 内閣府のコマーシャルか何かでは、物づくりから何か、生物科学ですか、そういうふうなものに重点を置くべきだみたいなコマーシャルをやっておるように聞いておるんですが、やはり物づくりもこれからも引き続いて大変重要な産業ではないかというふうに思います。そういう中での基盤技術を守っていくというふうなことからしましても、人件費のことだけ考えてすべて派遣に頼る、正規の従業員よりも派遣の方が圧倒的に多くなるというようなことになりますと、これはこれで大変なことになるわけでございます。
 そういう意味で、やはりこの製造業への派遣の解禁につきましては慎重にやっていただきたいということを私は考えておるわけでございまして、これらに対する対策が何も見えないままで、ただ派遣を解禁しようということにつきましては、かなり大きな懸念材料があるんではないかというふうに私は思いますので、これについて、まず、どのようなお考えをされておるのかということが一点。
 さらには、請負などを偽装した労働者派遣事業の解消に向けまして、派遣事業と請負とに分かれる事業のそれぞれが適正に実施されるように、両者の区分基準の周知を深め、そういうものも含めて、厳正に指導監督を行うことが不可欠であると思います。また、請負にかかわる労働者の保護に欠けることのないよう、請負により行われる事業に対し、労働基準法やまた労働関係諸法令が遵守されるように、強力に取り組まれることも大切であるというふうに思っております。
 これらにつきまして、どのような対策を持っておられるのか、大臣にお聞きをしたいと思います。
坂口国務大臣 物づくりというものが、これからも日本にとりまして最も重要な分野でありますことは、もう御指摘のとおりというふうに私も思っております。そうしたことを念頭に置きながら、これからどうしていくかということだろうというふうに思います。
 日本の経済がこれだけ国際化の中で生きていかなければならないという問題が一面でございますけれども、そうした問題と、そしてこの物づくりに対して国民全体がどのように取り組んでいけるかということと、やはり両立をして考えていかなければならないものというふうに思っております。
 今お話がございましたように、今までこの物づくりの中で一番問題になってきましたのは何かといえば、これはいわゆる請負業の問題でございました。大きい企業に参りましても、労働組合にお入りになっている皆さん方の方が少なくて、そうではない、請負業でお入りになっている皆さん方の方がかえって多いというような職場もあったわけでございます。
 いわゆる偽装請負という言葉もございますとおり、本来ならば、請負をしておみえになります場合には、その中小企業なりなんなりの経営者の命に従ってやらなきゃいけないわけでございますけれども、そうではなくて、その工場長さんの、あるいはまた職場の担当者の意見に従ってすべてが動いていくというようなことが言われたりいたしておりまして、そうしたことで、非常にこれは大きな課題になっていたわけでございます。
 今回、この製造業に対しまして、当面一年でございますけれども、派遣業を認めていくということにつきましても、やはりそうした今までの請負業との関係、ここで起こってまいりましたことをどう払拭していけるかというところに、私はその意義があるんだろうというふうに思っている次第でございまして、そうしたことを十分に考えてやっていかないといけないというふうに思っております。
 規制改革会議のお話も最初に出ましたけれども、この規制改革会議のお話では、もうそんな期限はつけずに、製造業もいいようにしようというようなお話でございましたけれども、そうはいかない。それはやはり、順次そうした今までの職場の状況というものを見直しながら、徐々に、進めていっても大丈夫かどうかを確認しながらやっていかなければならないことだということで、一年という期限をつけさせていただいたところでございます。
鍵田委員 ありがとうございます。
 それでは、次の課題に移りますが、製造業への派遣の中で、偽装請負につきましては、適用除外業務への派遣ということで、一年以下の懲役または百万円以下の罰金ということで、罰則規定があるわけでございますけれども、今回の法改正では、この罰則につきましては何らの強化も全く行われておらないわけであります。
 先日の日本経団連の参考人も、企業の行動憲章に照らして適正にやっていきます、こうおっしゃっておられたんですが、現実には違反が絶えないわけでございまして、こういう緩和をするときには必ず、それとあわせて罰則を強化するぐらいのことがあってもいいのではないかというふうに私は思うんです。
 企業の行動憲章に基づいて適正に企業が今後運営していくということであれば、罰則を幾ら強化しても、これは別に何の痛いところもかゆいところもないはずなんです。したがって、そういうことにつきましても、検討するぐらいのことはあってもよかったのではないかというふうに一つは思いますし、そして、現実に、今まであった罰則につきましても、違反は百十一件あったということでありますが、単に文書で勧告をしたということだけで、実際にこの罰則を適用したケースは一件もなかったということでございまして、そんなことではこの罰則が全く生きておらないんじゃないか、やり放題ではなかったのかという気がいたします。
 今まで、この偽装請負などの指導監督につきましては、公共職業安定所が担当しておったようでありますが、これが、都道府県の労働局に移管をして指導監督を強化するんだというふうに言っておられるわけでございますけれども、それじゃ、それに対して予算の手当てをされておるのかというと、全くないわけでございまして、現在の労働局のスタッフのメンバーで十分そういうことがやっていけるのか、ただ所管が変わったというだけで、全く中身は変わらないということにならないのかどうか、それらのことにつきまして、二つの面から御答弁をお願いしたいと思います。
戸苅政府参考人 まず罰則でありますが、罰則につきましては、他の罰則との均衡ということが基本的な罰則を決める場合の考え方だろうと思います。
 今委員おっしゃったとおり、適用除外業務に派遣を行った場合、あるいは派遣の許可を得ずに偽装請負という形で実質上派遣を行ったような場合については、一年以下の懲役または百万円以下の罰金、こうなっています。
 これは、例えば違法行為があったときの事業停止命令を発したときに、なおそれを無視して派遣を続けた場合も百万円でありまして、そういった意味では、これとのバランスは十分とれているのではないか、こういうふうに思いまして、今回は、法務省等との協議に至る前に、バランスとしてはこういったバランスかなということで、これを維持しているということであります。
 それから、製造業への派遣を受け入れるということになりますと、問題点が二点あるんだろうと思います。
 一つは、従来は、偽装請負があった場合に、それをやめさせるというと、適正な請負でいくという選択肢しかなかったわけですが、今回の場合は適正な派遣に是正するという選択肢もできたわけで、そういった意味で、派遣なり請負なりがきちんと適正に行われているということをいかに担保していくかということも非常に重要ですし、それから、先ほど来いろいろ御議論いただいていますけれども、やはり製造業への派遣を導入するということになりますと、安全衛生の問題が出てくる。請負の場合は請負元に安全衛生法等の規定の適用があるんですが、派遣になればきちんと派遣先に必要な規定の適用になるということでありまして、このあたりをきちんとやるということによって、偽装請負の適正化、それから労働者の安全衛生の確保ができるというのが今回の法改正のねらいの大きなものの一つであります。
 これをいかに担保するかということでありまして、そういった意味で、今御指摘のとおり、監督指導体制をいかに充実するかということであります。
 今考えておりますのは、都道府県の労働局、ここに指導監督をハローワークから引き上げて一本化して、より専門的かつ効率的、集中的にやろうということを考えています。さらに、違法事案があった場合に基準行政との相互通報をやるとか、あるいは悪質な事案については基準行政と安定行政で一体的にその指導監督をするとか、そういうようなことで重点的、効率的な運営を図るということが今のところ基本ということになっております。
 ただ、施行がいつになるかということはありますが、施行の状況を見て、体制の充実ということも当然必要になると思いますので、そういった場合に、職員の増員、あるいは職員の増員が無理であれば、何らかの形での体制の増強、そういったものにも取り組んでいくことは当然必要だろう、こう思っています。
鍵田委員 時間が参りましたので終わりますけれども、まだ紹介予定派遣などにつきましてもお聞きをしたかったわけでございますけれども、ぜひともこの紹介予定派遣に名をかりた違法行為などが横行しないように、適正な指導をお願いしたいと思っております。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
宮腰委員長代理 次に、大島敦君。
大島(敦)委員 民主党の大島敦です。
 それでは、何点かの点について確認をさせてください。
 派遣期間を三年まで延長するのであれば、常用労働者の代替をもたらさないよう、臨時的、一時的な労働力の需給調整に関する対策として設けられた期間制限が遵守されるようにすべきではないかと考えます。
 また、いわゆる二十六業務について、専門性等を十分に確保した業務に限定するよう厳格な運用が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 確認の質問でございますから、余り私がいいかげんなことを言うといけませんので、私の方も読ませていただきますが、お許しをいただきたいと思います。
 派遣期間の制限を受ける業務につきましては、労働者派遣事業制度の臨時的、一時的な労働力の需給調整に関する対策としての位置づけを踏まえまして、期間制限が遵守されますように適切に運用してまいります。
 また、派遣期間の制限を受けない業務として政令で定めるものにつきましては、専門性等を確保した業務内容となりますよう、労働政策審議会の意見を尊重して、厳格に運用してまいりたいと思います。
大島(敦)委員 続きまして、派遣先で、派遣労働者と派遣先において直接雇用されている労働者が差別的な待遇を受けることは望ましいものではなく、何らかの措置を講ずべきではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 派遣労働者の福利厚生等の措置につきましては、派遣先において直接雇用をされている労働者との均衡に配慮した取り扱いが行われるよう、派遣元事業主に対しまして、指針等に基づき適切な指導を図ってまいりたいと思います。
大島(敦)委員 派遣可能期間経過後の派遣先の雇用契約申し込み義務については、絵にかいたもちに終わらせないよう、実効を上げるようにすべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 派遣可能期間経過後になお派遣労働者を使用しようとする場合におきます派遣先の雇用申し込み義務につきましては、今回改正の施行状況を精査しつつ、実効あるものとするように努めてまいりたいと思います。
大島(敦)委員 派遣労働者の社会・労働保険の適用促進について、実効性を確保するための措置を検討すべきではないか。いかがでしょうか。
坂口国務大臣 派遣労働者について、社会・労働保険の適用促進のための仕組みをより実効あらしめるための措置を検討してまいりたいと思います。これは、適用条件を明確にすることだというふうに思っておりますので、明確にするように努めてまいります。
大島(敦)委員 派遣労働者に対する最低賃金の取り扱いについて、早急に検討すべきではないか。いかがでしょうか。
坂口国務大臣 派遣労働者に対する最低賃金の取り扱いにつきましては、今後、別の場で中長期的な視点から検討することが適当であるとの労働政策審議会の建議を踏まえまして、関係者からの意見等を聞きつつ、適切に対処してまいりたいというふうに思っております。現状等もよく調査をし、そして均衡を欠かないようにひとつ努力をしたいと思っております。
大島(敦)委員 それでは、前回に続きまして、紹介予定派遣について何点かお伺いしたいと思います。
 前回の御答弁の中で、紹介予定派遣、そして派遣終了後雇用された場合の有期か無期かについては、これについてどちらでも考えられるというお答えがございました。もう一つの点につきまして、通算の問題なんですけれども、派遣就業、その期間、そして正規に雇用された場合、派遣就業期間について通算するかどうかという問題については、通算しないという答弁がございました。
 そしてまた、そのような事例については、紹介予定派遣を開始するその前の事前面接の段階で、しっかりと派遣先の会社から派遣労働者に通知すべきとのお話がございましたけれども、その点につきまして、書面あるいはそれに類するもので明確に正しく派遣労働者にその通算の問題、あるいは有期か無期かのことについて通知すべきと考えますが、いかがでしょうか。
戸苅政府参考人 紹介予定派遣の場合は、当座は派遣という形で行われているわけでありますけれども、労働条件を明示し、そこで採用するか就職するかということの当事者間での話し合いが行われるということになると、そこで職業紹介ということになるわけであります。
 職業安定法の第五条の三がありまして、職業紹介事業者は、職業紹介に当たり、求職者に賃金、労働時間その他の労働条件を明示せねばいかぬ、こうなっていまして、しかも、これは省令で、書面で明示する、文書で明示する、こういうことになっています。したがって、今お話しの期間の定めのない雇用かどうかということについては、労働契約期間の書面による明示ということになりますので、これは御質問のとおり、書面で明示するということになるんだろうと思います。
 それから、有給休暇等の通算の問題でありますが、これについては、前回もお話し申し上げましたけれども、法律的には、これは派遣元事業主に雇用されているという身分から派遣先に今度は雇用されるということで、身分が変わる、雇用関係が変わるということでありますので、この手のものを通算するというようなことは、法的にはこれは不可能、こういうことになっています。
 ただ、派遣元と派遣先の話し合いあるいは派遣労働者を交えた三者の話し合い等々で、通算しようということで派遣先が了解し、あるいは派遣元も必要な協力ができるというふうなことになりますと、これは実現可能、実現されるということになるわけでありまして、そうなると、派遣労働者にとっても大変重要な労働条件の要素ということにもなるんだろうと思います。
 ただ、法的には、これを文書で明示するというふうには今なっておりません。ただ、そういった意味で、やはり労働者が就職する、派遣から就職に切りかわるという場面で、労働者にとっては非常に重要な問題でありますので、派遣元から求職者であります派遣労働者に確実に示されるようになるということが重要だろうと思いますので、このあたりは、どういったやり方が適当なのかどうかということも含めて、何らかの形で指導できるような、あるいは指導するような方向で検討していきたいと思っています。
大島(敦)委員 紹介予定派遣の場合なんですけれども、派遣前に派遣期間終了後の労働条件、例えば就業規則とか賃金体系などについて労働者に知らせる必要があると思いますけれども、この点についてはどう考えればよろしいでしょうか。
戸苅政府参考人 これは、先ほど申し上げましたように、派遣から紹介に切りかわる局面において、これは職業安定法の規定を受けるわけであります。そうなると、労働条件等あるいは雇用契約期間等、求人条件でありますが、求人条件については当然紹介事業者たる派遣元事業主から求職者たる派遣労働者に明示する、これは当然のことだと思います。
大島(敦)委員 個人情報の保護の点なんですけれども、個人情報、履歴書等を派遣先に提示するかと思います。その場合の個人情報の保護についてはどう考えればよろしいでしょうか。
戸苅政府参考人 職業紹介事業者につきましては、職業安定法の五条の四ということで、これは前回の職業安定法の改正の際に追加した条文でありますが、個人情報の収集、保管それから使用、個人情報の適正管理、それから秘密を守る義務について、一定のルールを適用することといたしております。
 紹介予定派遣の場合も、先ほど来申し上げていますように、紹介という場面になったときに、派遣元は職業紹介事業者になりますので、個人情報の保護についての職業安定法の規定が適用されますので、十分な保護がなされるということになると思います。
大島(敦)委員 今回、紹介予定派遣の場合に、派遣会社、これは派遣元が派遣先に労働者あるいはその候補者の人たちを紹介していくわけなんですけれども、派遣期間終了後の雇用されたかされないかについて、その割合というのが、私は、公表することは、それぞれの企業の業績あるいはそれぞれの企業の社内秘密に近いと考えますから、それはなかなかできないとしても、これは国としては、派遣会社ごとに、紹介したあるいは紹介予定派遣をした労働者がどのくらいの割合で雇用されたかされなかったかというその割合を把握すべきと考えますけれども、いかがでしょうか。
戸苅政府参考人 現在でも、職業紹介事業者に対しましては、毎年度事業報告の提出をいただいております。これには、求人件数がどのくらいあった、就職件数がどのくらいあったというものの報告をいただいております。
 そういった意味で、今委員御質問の件についても、それを求職件数として計上し、さらに就職件数として計上するということになると思いますが、紹介予定派遣という形で法律上きちんと位置づけるということでありますので、紹介予定派遣に係る求人件数、求職件数あるいは紹介件数それから就職件数、こういったものは当然その事業報告で把握するということにしたいと思います。
大島(敦)委員 続きまして、要は、紹介予定派遣、紹介予定期間が終了した後に常用雇用に至らないケースもこれはもちろんあるかと思うんですけれども、その理由を当該労働者あるいは派遣元に伝える必要があると思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。
戸苅政府参考人 当然、もともと派遣をする際に紹介されるということを予定して行っているわけでありますから、これについては、これを脱法的にやられるということは大変問題なわけで、本来採用する気もないが、面接をしたいがために紹介予定派遣を活用して、結果として、必要な派遣期間が終わったら、いや、就職というか採用は無理ですといった脱法的な行為をやはり防止するということは、これは必要なことだろうというふうに思います。
 そういった意味で、事前面接の後紹介予定派遣を受けて、結果として採用しなかった場合、やはりその理由を求人者たる派遣先が派遣元事業主なりあるいは派遣労働者に示すということは、これも重要なことだろうというふうに思いますので、どういったやり方でやるかということについてはこれから検討いたしますが、そういった方向で検討したい、こう思っています。
大島(敦)委員 これも確認なんですけれども、派遣就業及び採用決定時での差別の禁止に、年齢とか性別とか障害の有無、家族的責任、こういう理由を明確化して、差別の禁止をしっかりとした方がいいかと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。
戸苅政府参考人 職業紹介に当たって、性ですとか人種ですとかあるいは信条ですとか、そういったことによって差別するということは禁止されているわけでありまして、そういった意味で、職業紹介事業者たる派遣元事業主が、今おっしゃったような事由で、能力、適性によるものでない形での差別を行うということになりましたら、それは職業安定法に抵触するということで、必要な指導を行う、こういうことになるだろうというふうに思います。
 それからもう一つ、派遣先に関して申し上げますと、職業紹介という中で、あらかじめ、こういう人はだめですよということで差別をするというふうなことになりますと、これは現在禁止しております派遣の特定行為ということにもなりますので、そのあたりも問題が出てくるだろうというふうに思います。
 ただ、いずれにしても、今の職業安定法上の規定に照らして、それから派遣法の現在の規定、運用、それに照らして最終的な判断はいたしたい、こう思っています。
大島(敦)委員 紹介予定を行う場合に、派遣元の会社、派遣会社が、自分の会社の労働者の中でだれを紹介するかというのは、派遣元の会社が決めるかと思うんですけれども、その際に、当該派遣労働者の同意が必要かと思うんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
戸苅政府参考人 これは、今回の紹介予定派遣を導入するに当たって、紹介予定派遣であるということをはっきりした上で派遣をする、こういうことになっていますので、結果的には、本人が了解しないような形での紹介予定派遣というのは行われないということになると思います。
大島(敦)委員 続きまして、職業安定法の改正案について何点か質問をさせてください。
 一点目として、地方公共団体における無料職業紹介なんですけれども、今回、地方公共団体ができないとされていた無料職業紹介が解禁されることになりました。かつて都道府県には職業紹介の権限がありましたけれども、今回の改正はその復活ととらえてよいのか、また全然違うものと考えるのか、その点についてお聞かせください。
戸苅政府参考人 実は、地方自治法の規定の中で、職業紹介を自治体が行えるかどうかというのは、なかなかこれまで微妙な問題だったんだろうというふうに思います。実際に、今先生御指摘のように、自治体が職業紹介を行うといった場合に、これまで行っておりましたのは、自治体の例えば第三セクターとかあるいは関係の公益法人等が、無料職業紹介の労働大臣の許可を得て行っていたというのが基本であったろうと思います。
 その後、実は地方分権の議論の中で、従来、地方事務官ということで、国家公務員たる職業安定行政の職員が県の労働関係部局の中に入って、身分は国家公務員なんですけれども、指揮命令は都道府県知事の指揮命令を受けて、職業紹介に関する、職業安定所に対する指導等の業務を行っていたということでありますが、これは地方分権の流れの中で、国による一元化ということで整理されました。
 その際、国と地方の事務を整理するということで、職業紹介については、憲法の生存権の保障あるいは全国的なネットワークで行う必要性の高さ、そういったことから、国が一元的に行う、地方は行わない、こういう整理になったわけでありますが、今回は、その後の労働市場の変化、雇用情勢の悪化、そういった中で、地方でもやりたい、あるいは地方に我々もやっていただくということも意義があるんじゃないかということで、二重行政にならないということに留意しながら、今回の職安法の改正案の中に規定したような形で行おうということで、考えようによってはというか、どちらかということでお答えするとすれば、全く新しい形で行うという形になったのではないかと思います。
大島(敦)委員 今の答弁の中で、国と地方の二重行政になることのないよう、これは建議の中に書いてあったと思います。要綱には、「区域内の住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策に関する業務に附帯する業務」とありますけれども、それぞれ何を意味しているんでしょうか。
坂口国務大臣 局長が答弁しますと難しくなりますから、私が申し上げますけれども、平たく言えば、どちらでもいい、どちらがやってもいいということにするわけであります。
 これは、現在の雇用状況を見ておりますと、中央だけではなかなかいかない、地域には地域の雇用問題があり、そしてその地域の状況というものをよく見て雇用対策というのを考えていかなければならないということでございますので、非常に難しいことを書いてございますけれども、地域の特殊性というものをよく見て、そしてその地域に見合った雇用というものを育ててもらう、中央もそれに対してバックアップをする、こうしたことでいくということに御理解いただいて、大筋、間違いがないのではないかと私は思っております。
大島(敦)委員 ありがとうございます。
 そうしますと、今回、地方公共団体が無料職業紹介を行った場合、三事業の各種助成金というのがあるかと思うんです。この三事業の各種助成金の対象になるかならないかについてお聞かせいただければ幸いです。
戸苅政府参考人 現在、三事業の助成金の中で、民間の職業紹介機関によりまして紹介され、就職した人について助成金が出ているもの、特定求職者雇用開発助成金等ありますが、これについては、地方公共団体が届け出て無料職業紹介を行った場合であれば、これは当然対象になる、こういうことであります。
大島(敦)委員 市区町村で職業紹介業務ができないというのではなく、みずからの判断に任せるべきだと思います。住民の利便性という観点に立てば、基本的には地方公共団体の主体性に任せるべきだと考えておりますけれども、具体的にはこれは地方公共団体がどんなサービスを想定しているのか、地方公共団体からはどのような要請があったのか、お聞かせください。
戸苅政府参考人 基本的には、先ほど大臣が答弁されましたように、職業安定法の三十三条の四で、地方公共団体は、その区域内における福祉サービスの利用者の支援に関する施策、あるいは企業の立地の促進を図るための施策その他住民の福祉の増進、産業経済の発展に資する施策に関する業務に附帯する業務として無料職業紹介事業を行う必要があると認めるときはできる、こう書いてありまして、要するに、地方公共団体の判断で、これは今申し上げましたような住民の福祉なり産業経済の発展に資する施策の一環として職業紹介をやる必要があるんだ、こう考えれば当然できるということで、そういった意味では、自治体の主体性により相当弾力的に行うことができるということだろうと思います。
 これまで私どもの方に寄せられているものとしては、一つは、例えば母子家庭の母の方々の自立のために、母子家庭の母の方々の支援をしている施策の一環として職業紹介をするとか、あるいは、企業誘致をする際に、誘致企業が求めている人材を確保するという観点から職業紹介を行いたいといったり、こういったところが代表的なところだろうと思います。
大島(敦)委員 地方公共団体が行う無料職業紹介の場合に、その具体的イメージなんですけれども、都内に地方公共団体の出先の機関があるわけですよ。それは、観光をメーンにしたものであったり、あるいは企業立地の勧誘というんですか、それの紹介であったり、そのような事業を各地方公共団体が都市部でやられている。そのときに、そこの機関が地元の企業立地とかあるいは企業誘致とかに付随して職業紹介を行う、そういうイメージでよろしいんでしょうか。
戸苅政府参考人 そういうことが典型的な例ではないかと思います。
大島(敦)委員 そうすると、要は、地方公共団体がハローワークと全く同じような仕事を行うということは、これは当然のごとく禁止されているということでよろしいですよね。
戸苅政府参考人 これは、ぎりぎりのところを言うと、法律の解釈をどうするかということになるわけでありますけれども、全く同じ業務をやるというふうなことを、市町村がやるメリットがあると考えるかどうかということだろうと思います。今、ある意味では、市町村なりあるいは都道府県にとっては、国が全部国の経費でやっているということでありますから、それと同じ経費を使ってやるメリットがどうあるかということを考えると、やはり何らかの自治体の施策のためにやるということなのではないかと思います。
 実は、職業紹介というのは、正直言って非常に労働集約的な業務ですから人手がかかる、それから手間もかかる、こういうことで、それから、求人求職を確保するために、求職者が来たけれども就職させられないということになったら、求人開拓をせぬといかぬということがありまして、そのあたりを考えると、正直言ってハローワークと同じようなことを自治体がやるというふうなケースというのは考えられないんじゃないかなと今思っていまして、もし仮に全く同じことをやるということになった場合どうするかというのは、その段階で、どういう理由でやっているのかということを見て判断させていただくしかないんじゃないかと思います。
 我々としては、自治体がやることについてとかくのことを言うよりは、むしろ連携をする、都道府県に協力を求められたら協力をしていくというふうな姿勢でやっていきたいというふうに思っています。
大島(敦)委員 明確な御答弁、ありがとうございました。
 今、実態を見ると、ハローワークがありまして、そこで国が無料職業紹介をしていて、それに対して県が補助的にやっている事業がございまして、例えば面接の仕方とか履歴書の書き方とか、そういうようなところをサポート的にやっているような事業がございます。そういう事業では、もちろん厚生労働省所管のインターネットでの職業紹介のシステムとか、幾つかのシステムが見られるようになっています。そのような地方公共団体がハローワークの仕事を補うための事業で、その事業をしているところが無料職業紹介を付随的にやることについては、違和感を感じないという理解でよろしいでしょうか。
戸苅政府参考人 正直申し上げて、大量に来所いただいている求職者の方々への対応ということになりますと、我々としては、自治体で自治体の立場からやっていただける部分があればやっていただくことについて、それはそれで正直言って助かるといえば助かる面もありますので、そこはできるだけ協力を申し上げたいということで、先生おっしゃるようなことだと思っています。
大島(敦)委員 続きまして、求職者の手数料徴収の年収要件を一千二百万から引き下げております。省令における経営管理者と科学技術者の定義を緩和して、告示の一千二百万円を引き下げるというんですけれども、どのように緩和するのでしょうか。それを半分の六百万円と聞いていますけれども、役職でいうとどこまでを射程にしているのか、具体的にお聞かせいただければ幸いです。
戸苅政府参考人 求職者からの手数料の徴収につきましては、やはり求人者あるいは職業紹介事業者に比べて弱い立場にあるというのが一般的な求職者でありますので、手数料を取ることによって求職者の利益になるというふうな求職者に限って手数料を取るようにしようということで運用しているわけでありますし、ILO条約もそういった趣旨になっております。
 今はどうなっていますかといいますと、科学技術者、経営管理者につきまして千二百万円ということでありますが、これは実は、学校を卒業してずっと会社にいて経営管理者になった人、あるいは能力を見込まれて中途採用して経営管理者になった人たちということで、今現に経営管理者なり科学技術者として働いている方の給与であります。
 経営管理者として申し上げると、これは部長以上ということで調査をいたしました。これで大体千二百万円ということなので千二百万円にしておりますが、その後の賃金等の状況を見ますと、失業して再就職するというときに、部長級の再就職賃金というのを調べましたら、大体今七百万円をちょっと超えたり、こういうふうな感じになっております。ですから、具体的には千二百万円の半分ぐらいかな、こう思っていますけれども、調査結果を踏まえて、審議会の意見も聞いた上で決めたいというふうに思っていますが、考え方としては、部長として再就職したときの初任給賃金、これを要件にしようか、こういうふうに思っています。
大島(敦)委員 今のところなんですけれども、一千二百万円から六百万とか七百万という金額まで下げるというのは、今の雇用環境を見ると、確かに再就職の場合に六百万から七百万ぐらいかと思います。ただ、経営管理者とか科学技術者を考えた場合に、経営管理者といった場合には、部長クラスといっても、役員に近い部長クラスをイメージするんです。そうすると、一千二百万から半分にするというのは極端過ぎるのかなとは思うんですけれども、その点についてもう一度御答弁をお願いいたします。
戸苅政府参考人 これは、毎年私どもの統計情報部が行っています賃金構造基本調査というのがあるんですが、これで勤続年数別に賃金を調査し、集計しています。
 千二百万というのは、先ほど申し上げていましたように、部長級以上の平均賃金で千二百万だったんですけれども、勤務年数というか勤続年数ゼロ年の方の賃金というと七百万ちょっとということなものですから、実態に合わせて、正直申し上げて、千二百万円にしたところ、各方面から、千二百万なんというのは実は何か中小企業だと役員だ、こういうふうな話もありまして、もう少し現実的かつ有効な水準にした方がいいんじゃないかというようなお話もあり、それから、今回、職業安定法の見直しに当たりまして、求職者の方のアンケート調査をやってみたわけでありますけれども、やはり就職が決まったんだったら一定の手数料を払ってもいいというふうな方が三割ぐらいはいるというようなこと、それから、サービスを受けたのなら手数料を払うのは当然だという方も二割弱いるというふうなこともありますので、このあたりも踏まえて今回こういう判断をした、こういうことであります。
大島(敦)委員 次に、兼業禁止なんですけれども、兼業禁止で、料理店業、飲食店業、旅館業、古物商、質屋業、貸金業、両替業その他これに類する営業を行う者が職業紹介事業を行うことを禁止しておりました。今回はここの兼業禁止規制を削除することにしておりますけれども、日本の社会の中で、あるいはこの対象となっている業界から、削除してほしいという要望があったんでしょうか。
戸苅政府参考人 兼業禁止規定につきましては、戦前に、今兼業禁止をしております料理店業ですとか飲食店業ですとか旅館業ですとか質屋ですとか貸金業ですとか、こういったところでは、とかく強制労働あるいは中間搾取、人身売買等の弊害があったということ、それからILOの勧告がありまして、ここでも同じような兼業禁止の勧告がなされていたということを踏まえまして、昭和二十二年に職業安定法を制定したときに兼業禁止規定を設けたわけであります。
 今回廃止いたしましたのは、先ほど申し上げましたILOの勧告が昨年のILO総会で撤回されたということ、これを踏まえて、どうしようかということで審議会で御検討いただいたわけであります。
 そういった中で、関係省庁、それぞれの所管の省庁ございますので、所管の省庁等の意見も聞きました。所管の省庁からは、これは当然、業者を許可したりあるいは登録ということで適正な業務運営を確保しているので、この時代に兼業禁止というのはいささかやり過ぎではないか、こういった御意見もあり、そういったことも踏まえて、今回御提案しているような形で兼業禁止規定を解除した、こういうことであります。
大島(敦)委員 そうしますと、ILOの規定の中で、ILOの勧告で撤回されたから、今回、日本でもそれに準じて兼業禁止規定を削除したということで、今言われていた兼業を禁止しているこの業界からの要望ではなくて、国として考えた施策であって、一応、各関係省庁の方に聞いてみると、大丈夫だよという答えがあったということだと思うんですけれども、そうしますと、若干時代おくれかもしれないですけれども、人にかかわる分野は自己規制が難しいという側面があると思いますので、要は、各業界からの要望がないとすれば、削除する必要はなかったのかなとも思えるんです。
 今、特に問題となっているやみ金融の問題がございまして、悪事を働く人はいろいろなことを考えるものですから、かえって、兼業禁止規定を削除することによるこれから出てくる不利益あるいは事件、犯罪というのが想定されるかとは思うんです。その点について、どうやって防止するのか、どういうような規定、どのように政府としては考えているのか、最後に御答弁いただければ幸いでございます。
戸苅政府参考人 実は、今回の見直しの審議会の中では、今申し上げたようなことなんですが、古物商の中にリサイクルというのが入っていまして、リサイクルをやっている公益法人等の中で、無料職業紹介もやりたい、こういった声があって、それに対しては、いや、リサイクルは古物商に当たる可能性があるんじゃないかということで、かねてからちょっと課題になってはいたという事案はあります。ちょっとそこら辺もあったということは申し上げておきたいと思います。
 それから、確かに貸金業については、先般来いろいろ御指摘もいただいていまして、我々としては、これは許可基準で考える。それから、許可の際に附帯条件をつけることが可能だという制度になっていますので、許可基準の中で、貸金業については、所管の省庁の大臣、それから場合によっては都道府県知事に登録するということになっていますので、登録していない業者には許可しない。それから、許可に当たっては、貸金業の債務者を職業紹介の対象にしないように、求職者にしないようにというふうなことを許可の際の附帯条件につけるというふうなことを検討してみたいと思っています。
大島(敦)委員 ありがとうございました。
宮腰委員長代理 次に、家西悟君。
 御発言は御着席のままで結構です。
家西委員 それでは、民主党・無所属クラブの家西悟でございますけれども、貴重な時間をいただきまして質問をさせていただきます。
 私は、SARSの問題で、大阪で台湾の医師が観光に来られたということで、今緊急の課題だというふうにとらえて、SARSに関連し、るる御質問をしたいと思います。
 まず冒頭、どうしても聞きたいのは、SARS感染者、患者の第一号を政府は選んでおいでになっていませんか。ないというふうに言われていますけれども、絶対にないということをこの場で言い切れることは間違いございませんでしょうか。
高原政府参考人 SARSの感染者の認定につきましては、SARS対策専門委員会におきます症例検討の結果を踏まえ、行うこととしております。
 五月十四日までに報告された疑い例四十六件、可能性例十六件につきましては、SARS対策専門委員会における症例検討の結果、全例否定されております。その後に報告された疑い例三件、このうちの一件はその一行のバスを数日にわたって運転されたドライバーさんでございますが、症状が軽快しており、SARS患者である可能性は低いということでございます。
家西委員 ないことを私は祈っているわけですけれども、時として政府は患者を選んだりする場合があるように私は思えてなりません。今までもそういうことがあったから、そういうふうに言わざるを得ないということを御理解いただきたい。
 それと、今回、台湾の台湾人医師の事件以来、入国時、帰国時の検疫体制を今後は強化するというふうに言われていますけれども、どのような対策をとられるんでしょうか。
 今月十八日、厚生省と関係二十の自治体とのSARS対策緊急合同会議で、近畿厚生局長は、想定されるあらゆる事態に敏速かつ適正に対応できる体制を整備していきたい、このような発言をされていますけれども、このことはどういうことを言われているんでしょうか。
高原政府参考人 SARSに感染していることが台湾人医師について確認されました事例を踏まえまして、検疫体制でございますが、これは入国検疫でございます。新たに、来日前にSARSの疑いのある人と濃厚な接触があった方を把握するための質問項目を追加いたしました。また、該当する者が確認された場合には、健康相談室におきまして、さらにどういうふうな形で接触されたのかといった詳細な問診を実施いたしまして、国内における連絡先の申告をお願いすることとしたところであります。また、健康管理と万一の場合の感染拡大防止の観点から、該当者につきましては、毎日体温測定を行い、その結果を検疫所にお知らせ願うよう要請したところでございます。
 また、自治体と厚生労働省との協議会といいますか合同会議におきまして、近畿地方厚生局長があらゆる事態に敏速に対応できる体制の整備ということを発言したその中身でございますが、これは、一つには、国と自治体との緊密な連携、調整を図るため、厚生労働省内にオペレーションセンターを設置いたしました。また、近畿厚生局には連絡室を設置いたしました。さらに、疫学調査に関しまして迅速な助言が行えますよう、国立感染症研究所の専門家を現地に派遣いたしました。また、関係府県市間での情報の共有化、対応の統一性の確保を目的に、会議を開催いたしました。
 そういうことでございまして、あくまでもSARSに対して自治体がとる必要となる事態ということでございます。
家西委員 私は、今回、体制を整えるというふうにおっしゃっていますけれども、五月七日の時点で、国として予防指針等々を出さないのかというふうにも触れて質問をしました。そういったこともあって、その後に、八日の日に観光で来られた台湾人医師であったように、その後の行動発表された内容がそうだったというふうに思います。
 そして、その後、検疫所からの検疫官の連絡ミスというか、放置されていた問題についても触れさせていただきたいと思います。なぜ一日近くも放置されてきたんですか。この点について御説明いただきたい。
高原政府参考人 十五日十九時ごろ、帰国客の検疫業務を担当しているブースの職員が、大阪市の開業医の方からの通報を電話で受けましたが、帰国客の対応に追われていた最中であったこともありまして、結果としてその情報が放置されたものでありまして、これは非常に恥ずかしいことだと思っております。
 SARS対策におきましては、迅速かつ的確な情報の収集、連絡が重要であると考えており、本日、緊急検疫所長会議を開催いたしまして、迅速な情報収集、連絡について再度徹底を図るとともに、このような事態が二度と起こらないよう体制整備に努めるということで、点検を行ったところでございます。
家西委員 具体的に申し上げると、今回、関空で四人の検疫官がおられて、香港からの到着便の中に熱を発せられている人がおられて、その対応に二人が行った。そして、その後二人で検疫をやられていて、二人がやっているために連絡がおくれたというふうにもマスコミ報道でお聞きしています。
 これは明らかにマンパワー不足。関空ほどのところが、たった四人で検疫体制をやっている。しかも、夜七時半ぐらいで一般職員の方々がもう既に退社された後でありということが言われているわけですよね。これは明らかにマンパワー不足じゃないんでしょうか。
高原政府参考人 検疫所につきましては、質、量ともに検疫官の充実を図ることが必要であると認識しております。
家西委員 ぜひともそういうふうにしていただきたい。
 成田か関空かと言われるほど日本の大きな空港でありながら、そういったところでたった四人で対応しているということ自体がもう既におかしな話であって、しかも、SARSというような疾病、感染症が、三十一カ国で報告され、しかも七千九百十九人が感染者であり、死亡者は六百六十二人、三十一カ国でもう既に発生している。そういった発生地域から帰ってくる便だけではなく、すべての人たちに検疫体制を充実させるということが前提であると私は考えます。なぜならば、こういったことをしっかりとやらない限り、日本に入ったときには大きな経済的損失もいずれは発生するでしょう。これは後でもう一度具体的にお聞きしたい点もあります。
 それから同時に、新型のコロナウイルスというものが人体から、生物から出た場合、生存できる時間は一体どれぐらいなんでしょう。
高原政府参考人 これはWHOの研究施設ネットワークが集積したSARSコロナウイルスの安定性と抵抗性に関するデータというふうなものでデータベース化されております。
 委員に御理解いただきたいわけでございますが、このSARSという病気が、奥地で一部流行していたという情報がございますが、いわゆる近代的な医学の対象になってからわずか三カ月でございます。したがいまして、暫定的な結果と言う以外はないわけでございますが、例えば、体外に出た場合、一時間とか三時間程度しか生存しないというデータもございますし、例えば、物体表面で塗り壁では三十六時間、プラスチック表面では七十二時間というふうなデータもございます。
 したがいまして、今の存在するデータで一番長いものは、プラスチック表面の七十二時間、ステンレススチールの七十二時間というふうなものが一般的なものかな……(家西委員「最大でいいんですよ、最大で。七十二時間ということで」と呼ぶ)
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
家西委員 最大で七十二時間程度。ということは、大阪でこの事態が発生してから慌てて消毒をされています。これはほとんど、どうなんでしょう、意味があったんでしょうか。ましてや、消毒作業を防護服を着てされている方の姿をマスコミ等々は報道しています。しかし、その後ろを、マスクもせず、何もしない人たちがうろうろ通る。本来、消毒をしなければならないというのならば、その施設は閉鎖をしてやらなければならないというぐらいの態勢で臨まなければならないのにかかわらず、そういうような状況である。
 これはパフォーマンスともとれますけれども、いかがなんでしょうか。科学的にどうなんでしょう。
高原政府参考人 必要性から申しますと、患者が帰国されてから数日経過してから改めて消毒する必要性は低かったのではないかという指摘も考えられます。しかしながら、十分な知見が蓄積されていない感染症に対して不安を解消する上で、一概に不要だと言ってしまうということは、ないしは不適切だと言ってしまうことは難しいのかなというふうに考えております。
 今後も、その時々の最新の知見に基づき、国民の皆さん方に安心していただけるような情報提供に努め、感染症に対する差別、偏見が生じないよう十分に配慮してまいりたいと考えております。
家西委員 いや、それはよくわかります。不安材料を取り除くという行為でやっているということは私も理解をしています。当然していただくべきですし、しないよりやった方がいい。ただ、科学的にどうなのかという思いで質問させていただいた。そして、本来なら、やるのならば、検疫官にこの連絡が行った時点、一番最初に連絡が行った時点ですぐにやらないといけないと私は思うから、あえて言わせていただいたということを御理解いただきたい。
 そしてもう一点、アメリカの当局者は、血液、血液製剤について、SARSウイルスが血液に混入するかどうかまだ確定はできていないが、回避するための必要措置を各国にとるよう要請をしたというようなことを言われていますけれども、日本政府としてどのような対応をとられているのか、教えていただきたい。
小島政府参考人 輸血用血液製剤のSARSウイルスの混入回避措置ということでございますが、我が国におきましては、まず水際対策といたしまして、本年三月二十八日から、海外のすべての国からの帰国者について、帰国後三週間は献血を禁止するよう日本赤十字社に指示をしておりまして、今回のSARS問題を契機に、さらにその徹底を図るよう重ねて指示をいたしているところでございます。
 また、国内へのSARSウイルスの伝搬防止措置といたしまして、まず日本赤十字社に対しましては、採血希望者に対しまして、採血後三週間以内にSARSに罹患あるいは罹患の疑いが出た場合には、直ちに赤十字血液センターまたは治療を受けている医療従事者に献血の事実を伝えるよう周知を図ること、それから、採血した血液がウイルスに汚染される可能性があると判明した場合には、当該血液を原料といたしました製剤の回収等の措置をとることをお願いしております。
 また、医療関係団体に対しましては、SARSが疑われる患者の治療等に携わった医療従事者については、症状がなくても一定期間献血を行わないこと、SARSが疑われる患者が発症日からさかのぼって三週間以内に献血を行っていたことが判明した場合には、遅滞なく最寄りの赤十字センターに連絡することなどを今般お願いしているところでございます。
 さらに……(家西委員「具体的にはいいです。後でまた教えていただければ」と呼ぶ)そういうことでございます。
家西委員 それと、もう既にN95というマスクが医療機関でも不足を始めているというふうにもお聞きします。SARS対策を考えるならば、こういうことをしっかりとやっていただきたい。体制づくりというのと同時に、そういうような医療材料を確保、防護服、そういったものもちゃんと提供する。でなければ、台湾のように、医療機関で集団で退職者が出てくるというようなことも発生しかねない。こういうような状況もぜひとも対応していただきたいし、その辺も後で具体的にお聞かせいただければと思います。
 それと同時に、先ほど述べました、きょうの日銀の月例報告会でも、SARSまたイラク戦争等々の影響によって、経済は下方修正するというようなことをきょうの午後に発表されたそうです。こういうことをやっていって、この後に、コロナウイルスから、新たな問題として西ナイルウイルスが日本にこの夏にも発生するであろうというような警告を受けているはずです。もうダブルパンチどころかトリプルパンチになっていって、多くの方々に影響を及ぼす。ひいては経済成長が伸びない。ということは失業者も出てくる。こういうようなときの対策として、厚労として何かを考えておいでなのかどうか、失業対策やそういうような問題について、あわせてお伺いしたいと思います。
鴨下副大臣 おっしゃるように、SARSのような、ある意味で我々が予測もしなかったような事態が経済をさらに下押しするというようなことは、先生がおっしゃるようにあるんだろうというふうに思います。その中で、厚生労働省として対処できることと国を挙げてやらなければいけないこと、さまざまあるだろうと思いますが、今内閣府等が言っている中で特に際立って影響の多いのは、旅行だとか航空業だとかそういうようなところの利用者が非常に減って、結果的にビジネス活動全体が支障を来して、さらに、それを受けて日本の経済、特に消費活動、生産活動全般への影響があるというようなことでありますけれども、ただ、今の段階ではまだ限定的であろう、こういうようなことであります。
 ただ、今申し上げましたように、個別の業種によりましては極めて影響が大きいわけでありますから、そういうようなことについては、特に、急激に事業活動の縮小を余儀なくされたような事業所に対しましては、厚生労働省としても十分に対応しなければいけない、こういうようなことと、さらには、それぞれの都道府県の労働局等がきめ細かくヒアリング等を行いまして、影響の有無について詳細に今調査している、こういうようなところであります。
家西委員 時間がもう一分程度しかありませんけれども、最後に大臣にお伺いしたい。
 台湾のWHOへのオブザーバー参加について、大臣と外相では意見が違うように思います。私は、SARS、またこういった感染症については、やはり漏れなく多くの国々に参加をしていただいて情報を共有すること、そして感染者を海外へ出さない、また入れないというような体制をお互いに協力し合わない限り、経済的にもまた大きなダメージをお互いにこうむってしまうということを考えたときには、患者にとっても不幸です。ぜひとも各国にオブザーバー参加を呼びかけるべきではないでしょうか。中国は非常に今WHO総会では反対をしていますけれども、やはりここは日本がリーダーシップをとって各国に要請をすべきということを申し上げます。
 その件について大臣に最後お答えいただいて、私の質問を終わります。
坂口国務大臣 台湾におきますSARSの状況をずっと経過を見ておりますと、だんだん深刻な事態になってきている。この台湾の問題は、これは対岸の火事ではございませんで、とりわけ日本の沖縄とは非常に近いわけで、しかも沖縄に対しましては多くの船やあるいはまた飛行機の出入りがあるといったことでございまして、沖縄は非常に心配をしておみえになるわけでございます。
 したがいまして、政治的な問題はいろいろあると思いますし、内政に干渉するつもりはさらさらございませんが、しかし、台湾を我々のいわゆる健康問題を考える範囲の中から除去しておいていいのかということになれば、それはやはり除去すべきではない。やはり同じに台湾のことを考えていかなければならないし、世界の新しい知見というものは台湾にも提供をしなければならないのだろうというふうに思っております。
 そういう意味で、私は、WHOの総会が行われます前でもございましたしいたしますので、限定つきで、少なくともこのSARSについては、台湾につきましても一緒にその話を聞いてもろうてはどうだろうかという意見を言ったわけでございます。これからもこうした問題は続きますので、少なくとも台湾を、WHOのさまざまな知見を発表する、あるいはまた調査をする、そういう中から空白にすることはできない、私は空白にしてはいけないというふうに思っている次第でございます。
家西委員 ありがとうございました。
 質問を終わりますけれども、ウイルスというものは、やはり人種、思想、信条、国境を越えていきます。どうぞそのことを各国にも共有していただけるよう、大臣の方からも訴えていただきますよう心よりお願い申し上げます。ありがとうございました。
中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 この派遣法もいよいよ大詰めに入りまして、あと数時間で法案が採決になるというところまで来ておりますが、これまでの審議を通じて、労働者派遣制度については、九九年の前回改正時から問題となってきたことがまだ未解決のまま放置されている部分があると思います。未解決になっておるその視点を踏まえて質問をしたいと思います。
 まず、派遣先による労働者の特定行為ということでお聞きしたいと思います。
 労働者派遣制度は、臨時的、一時的な業務に対する労働力の需給調整システムという一つの位置づけになっておりますけれども、そのため、派遣労働を受け入れる派遣先企業は、労働者の性別を指定するということは禁じられておるわけです。
 しかし現実には、例えば二十五歳未満の女性と、労働者のこれは性別ですか、二十五歳までで、それで女性と例えば指定したり、事前に面接して労働者を特定する行為が実際は当たり前のようになっておると聞いております。
 ただ、これは、厳密に言えば制度に違反しているということなわけですよね。それで、こういう場合、労働者からの申告があれば派遣元を指導するという姿勢では、事態というのは何ら改善しないのではないか。ここの部分、ルール違反をしている派遣先、これは違反をした、いわゆるルール違反しているということを指摘し、今後は行ってはならないという指導をやらなければ、このルール違反というものは結局なくならないと思うんですよね。
 ですから、この辺が、厚生労働省がこの点、性別に対するルール違反、まずこれはどのように考えておりますでしょうか。
鴨下副大臣 先生がおっしゃっているのは、特に派遣先が気に入る、気に入らないということで事前に面接をしているというようなことで、これは基本的にそういう事前面接の禁止違反に対してどういうふうに指導監督をしているのか、それからそれを言ってみれば徹底してやるべきだ、こういうようなお話だろうと思います。
 労働者派遣契約を締結する前に、派遣労働者の事前面接を行って、派遣先が派遣される労働者を選考するというような、言ってみれば先生御指摘の事前面接ですけれども、これは派遣労働者の特定を目的とする行為というようなことに該当しまして、労働者派遣法の第二十六条第七項に違反する、こういうようなことから、指導や助言を実施しているところであります。
 またさらに、派遣元事業所に対しましても、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針の第二の十一におきまして、特に派遣労働者を特定することを目的とする行為に対する協力を禁止する旨を定めておりまして、これに基づいて、事前面接等への協力は行わないように、これは派遣元への指導や助言を行っているわけであります。
 今回、紹介予定派遣も導入されるわけでありますけれども、事前面接がこの場合には可能になる、こういうようなことから、先生御懸念のような、他の派遣においても事前面接が可能になる、こういうようなことの言ってみれば誤解が生じないように、今後とも労働者派遣事業の適正な運営の確保に向けて、派遣先だけではなくて派遣元、そして派遣労働者の皆様にもその趣旨について周知徹底をしていくために、一層の努力を厚生労働省としてもしてまいりたい、かように思っております。
武山委員 私が経営者だったら、本当に面接をしたいと思うんですよね、こちらが希望している人をやはり欲しいわけですから。
 ですから、臨時的、一時的な業務に対する労働力の需給調整システムの一つとして位置づけられて、もう箱に入っちゃっているわけですよね。できたときの法律のまま、できたときはみんな常用雇用で、ほとんどの人が職があって、今のような、何しろどんどん派遣がふえていっているような時代じゃなかったと思うんですよね。
 それで、なおかつこの位置づけだけは今もずっと残しておいて、それでいて、こういうふうにして差別をしてはいけない、すなわち臨時的、一時的業務だから、何しろそれは差別をしてはいけない、面接もしてもいけない、性別を記入してくれと言ってもいけないということで今までは調整をしてきたわけですけれども、このように今、本当に百四十万から、派遣の人がどんどんふえていっているわけですよね。こういう中で、この基本的なものを変えないでここに入れていくということはもう不可能だと思うんですよね。
 それで、実際はルール違反しているんですよ。うまくやっているんですよ、現実は。そうして、表に出てこない。それから、現実に労働者からの申告なんというのは少ないと思うんですよね。もちろん、あればその派遣元を指導するという姿勢なわけですけれども、事態は何ら、何しろうまくやっている、よい意味でも悪い意味でもうまくやっているという状態ですよね。
 ですから、ここが本当に政府がどういう位置づけで今後していくのか、やはり基本的な骨格をもっとはっきり示した方がいいと思うんですよ。私が経営者だったら、やはりどんな人を雇いたいか、女性か男性か、年齢も、いろいろ希望があるわけですよ。この当時できた、臨時的、一時的な業務に対する労働力であれば、その当時はそれでよかったと思うんですよね。でも、今はもうこれだけ変わってまいりまして、大もとがもう全然古くなってしまって、そこにそぐわない。何をここでしたいのかということが、確かに、厚生労働大臣、多種多様な働き方がある、多種多様な希望がある、だからそれに対するニーズだと。でも、これでしたら、原理原則も何なのかということになるわけですよね。ですから、これに対する、私の質問に対する見解を聞きたいと思います。
鴨下副大臣 先生おっしゃるような気持ちもわからないでもないわけでありますけれども、かねてから、それぞれの委員の方々からお話しいただいているのは、むしろ、派遣労働者の就業機会等が不当に狭められる、こういうようなことから、事前面接はどちらかというと制限的に考えるべきだ、こういうようなことがもともとの考えだろうと思います。
 ただ、先生おっしゃるように、逆の立場で考えますと、企業側から見ますと、どなたがいらっしゃるかわからない。特に、例えば能力については、例えばコンピューターのプログラマー、そしてシステムエンジニア、こういうようなことで派遣をお願いしたいというようなことで派遣元に依頼をした結果、どんな方がいらっしゃるんだろうかというのがなかなかわからないとなると、それなりの悩みもあるんだろうというふうに思います。
 ただ、その中で、やはり性別だとか年齢等において差別が行われるというようなことは、これは慎まなければいけないわけでありまして、そういう両者の悩みの上に立って、今回の改正も含めて、今、厚生労働省が指導監督をしている、こういう立場であります。
 ただ、先ほどもお答え申し上げましたけれども、今、例えば紹介予定派遣につきましては、これは要するに、開始の前に面接、履歴書の送付等を認めて、そしてそれぞれ派遣先そして派遣労働者の意思をできるだけ尊重した形での派遣というようなことが行われるように、こういうようなことも盛り込んでいるところであります。
武山委員 それでは、今副大臣の方から紹介予定のお話が出ましたので、それもちょっと聞いておきたいと思います。
 それでは、一般の派遣、すなわち派遣制度と紹介予定派遣の区別というのは、どこで明確に区別できるんですか。
鴨下副大臣 基本的には、紹介予定派遣というのは、その後に紹介を前提としている派遣でありまして、一般的に派遣というのは、これは派遣のみの契約というようなことでありますから、その辺は明確に区別ができるんだろうというふうに思います。
武山委員 いや、今の説明ですと明確に区別できないと思いますね。
 紹介予定派遣だったら、事前面接を全面的に解禁するというような方向になりますよね。そうなれば、それと一般の派遣とは全く区別ができると思うんですよね。そこはやはり明確じゃないと思うんですよ。もう少し明確に説明していただきたい。
鴨下副大臣 今行われている紹介予定派遣について少し説明をさせていただきます。
 紹介予定派遣につきましては、労働者派遣事業が社会的に定着してきたこの状況のもとに、これが就職環境が厳しい若年者などについて円滑かつ的確な労働力の需給の結合に資する、こういうようなことと、それから、派遣労働者の希望を踏まえた派遣先への直接雇用を推進する、こういうようなことで、平成十二年の十二月以降、認めよう、こういうようなことになったわけでありますけれども、その際に、紹介予定派遣が派遣労働者の不当な選別に利用されるおそれもある、こういうようなことで、派遣が終わった後に職業紹介が行われる制度として位置づけて、派遣就業開始前の面接や採用内定等をできないとする一定のルールのもとで運営してきたところであるわけであります。
 ただ、こうした中で、紹介予定派遣につきましては、アメリカにおいては広く一般的に普及しておりまして、派遣労働者の約三割は労働者派遣を経由して派遣先に採用される、こういうようなことから、派遣先による直接雇用を促進している、こういうような解釈でありまして、我が国においてもできるだけ、この厳しい就職環境のもとで、特に若い方々の雇用に有効に機能する、こういうようなことから始まったわけでありまして、昨年実施した調査においても、希望する派遣労働者の多くが、最終的には紹介予定派遣で就職先の仕事が自分に合うかどうかを見きわめることができる、こういうようなことで、ある意味で積極的な評価をいただいているというようなところであります。
武山委員 先ほどの話にまた戻りますけれども、そうしますと、先ほど質問いたしましたいわゆる派遣先による労働者の特定行為、これに対して、今のままで派遣先による労働者の特定行為をなくせると思いますか。
鴨下副大臣 それは先生が先ほどおっしゃっているように、中には、派遣先がそういうような形で特定行為をしたい、もしくはしているところもあるのかもわかりませんけれども、今般の改正案においては、特に若年者の就職状況、言ってみれば非常に厳しいわけでありますので、こういう手段としての紹介予定派遣をやっていこう、こういうようなことでありまして、具体的に言いますと、派遣就業開始前の面接、履歴書等の送付、それから派遣就業開始前及び就業期間中の求人条件の明示、それから派遣就業期間中の求人、求職の意思等の確認及び採用内定、こういうようなことができるというようなことにしたわけであります。そういうようなことを前提として、言ってみれば紹介予定派遣を法律上位置づけて明確に区別していこう、こういうようなことでございます。
武山委員 現実問題はいろいろ耳にも入ってきますし、じかにお聞きしますけれども、ルールというのは、本当に最低限、お互いにきちっと守られていればいいことですけれども、悪用するというのがもう本当に日常茶飯事、よく聞いておるんですよね。でも、うまくやっていればいいんじゃないかというふうな状態なわけですよ。
 ですから、国は本当にこの辺、ルール違反に対して、ルール違反をなくしていきたいのか、あるいはうまくやっていればいいのか、あるいはやはりきちっと特定行為をなくしていったらいいのか、この辺が何かどれもこれもオーケーという感じなんですよね。どれもこれも受け入れますよというふうに一般の国民は受け取って、本当に派遣される方がそういう制度をよく知った上で自分が職を探しているかというと、それもまた疑問なんですよね。ですから、その辺はどういうふうにして国は青写真を描いて示していくのかなと思います。その辺、御説明いただきたいと思います。
鴨下副大臣 先ほどからお話をさせていただいているんですけれども、基本的には、先生も何度かお触れになっていますけれども、派遣労働者の特定に当たって、差別禁止等については、これはきちんとした形でやっていかなければいけないわけでありますから、そういう意味での基本的な国の姿勢というのは明確であります。
 ただ、そういうようなこととは別に、紹介予定派遣等をまた新たに導入して、特に若年者の方々が職場の実際の雰囲気を十分に理解していただいて、その後に就職、常用雇用につながるように、それから、逆に派遣先の企業にとってみると、派遣で働いていただいた方々の中に、その後に常用雇用を前提として働ける方がいらっしゃるのかどうか、こういうようなことの双方の利益に従って、紹介予定派遣というのが、今回、より明確に導入されたわけであります。
 ただ、先ほどから申し上げているように、性別だとか年齢によってそもそも差別を受けたらいけないということが事前面接の禁止に対しての大前提でありますので、これについてはまた別個指導監督をきちんとやらなければいけない、こういうふうなことであります。
武山委員 別途指導監督というだけでは、それが本当に実行できて周知徹底されるのかという担保が何にもないわけですよね。いつも指導監督、指導監督、それだけで終わっているんですよね。ですから、お化けのようにいろいろな多種多様な考え方でそれぞれが理解してやっているというのが現状じゃないですか。ですから、それは本当に実行するという担保がやはり必要だということをつけ加えさせていただきます。
 それから、次に移ります。
 募集、採用時における年齢差別の禁止ということで、派遣先による特定は、性別だけでなく年齢についても行われておるわけです。特に登録型の一般業務の場合ですね。キャリアも積み、高いスキルがあっても、三十五歳になるとぴたっと仕事を紹介されなくなるということもよく聞いております。
 これに対して厚生労働省では、年齢にかかわりなく働ける環境整備のために、いわゆる雇用対策法に基づいて平成十三年の九月に、募集、採用時における年齢差別を禁止する指針を出しております。業務の遂行とはかかわりなく、派遣先が派遣労働者の年齢を特定したり、派遣元が、一定年齢を超えると登録を拒否する、派遣先を紹介しなくなるということは、この指針を出しているすなわち趣旨、業務遂行や事業活動の展開などに支障がない場合は、募集、採用の際に年齢制限をしてはならないというのとは合わないんじゃないかということなんですよね。
 業務を行う、事業活動の展開などに支障がないという場合、募集、採用の際に年齢制限をしてはならないということで、これは趣旨に合わないんじゃないか、これについては、派遣労働について年齢にかかわりなく働けるようにする必要はないということになっちゃうのかなということ、ここ、際どいんですけれども、ここの厚生労働省の考えを聞かせていただきたいと思います。
鴨下副大臣 募集、採用において、先生は、年齢差別があってはいけないということを指導しろ、こういうようなことでありますか。
武山委員 はい、まずそうですね。
鴨下副大臣 そのことにつきましては、先生今おっしゃっていたように、例えば平成十三年の十月から、これは雇用対策法におきまして、労働者の募集、採用に当たって特に年齢制限緩和の努力義務が設けられたところでありますけれども、官民の職業紹介機関や経済団体、そして地方自治体への働きかけを通じまして、事業主への周知徹底と理解を図ってきたところであります。その結果、ハローワークにおける全求人については、これは年齢不問求人の割合が改正法施行前の一・六%から最近では一三%程度と、それなりに一定の効果を上げてきたところであります。
 そういうようなことで、全体的には募集、採用における年齢制限の緩和はこれからさらに進んでいって、一応、平成十七年ごろには三〇%ぐらいにはなるんではなかろうか、こういうようなことを一つの目標にしまして、さまざまな施策を打っているわけであります。
 ただ、例えば法的に年齢差別を禁止しろ、こういうような御意見もあるようでありますけれども、今までの我が国の雇用慣行等を見ますと、この問題につきましては、労使を含めて国民的なコンセンサスを得るために、今後ともいろいろな意味で議論をしていかなければいけないところなんだろうなというふうに思っております。
武山委員 今のお話は、まず年齢にかかわりなく働ける、そういう環境整備のために年齢差別を禁止する指針というものを出したけれども、実際は派遣先による特定は年齢についても行われているということですよね。
 ですから、今コンセンサスということですけれども、実際は派遣労働については年齢にかかわりなく働けるようにする必要はない、どっちにでもとれる。実際は、今繰り返しましたけれども、派遣先には年齢をきちっと何歳というふうに言われているわけですよね。それで、例えば三十五歳になるとぴったりと仕事を紹介されなくなる。実際はもう行われている。でも、厚生労働省では、年齢にかかわりなく働けるんだ、募集、採用時における年齢差別を禁止する。でも、実際は使われている。それはコンセンサスを得ないとだめだというふうに今お答えいただいたわけですよね。
 ですから、この辺非常にわかりにくいわけですよ。どっちがどっちなのかということをやはりもう少しきちっと説明していただきたいと思います。
鴨下副大臣 先ほどから申し上げているところでありますけれども、例えば派遣労働者の特定に当たっての差別禁止、こういうようなところの中で、最もある意味でその対象となりやすいのが年齢そして性別でございますので、こういうようなことを懸念するということで、事前面接等を禁止する、こういうようなことでありますので、厚生労働省としては、これは派遣労働者に限ったことではなく、多くの働く方々、どんな働き方にしても、年齢そして性別によって差別を受けるようなことはあってはならない、こういうような方針ですべての施策を展開しているというところであります。
武山委員 それでは次の質問で、専門二十六業務について。
 まず、期間の制限のない専門二十六業務については、上限を三年としてきたルールを廃止することが今回の審議会の方で示されております。三年を超える場合は雇用申し込みが義務化されるということですけれども、社員として採用する予定がなければ、派遣先は雇用を申し込まなくてもよいということになります。実際にその人を社員として雇用する予定がない場合、もう予定がそれで切れるという場合、そういう場合、派遣先は雇用を申し込まなくてもよいということになりますよね。
 そうしますと、十年も二十年も派遣が続くということもあるわけですよね。ですから、これに対しては何らかの歯どめが必要じゃないかと思いますけれども、厚生労働省の考えをお聞かせいただきたいと思います。
鴨下副大臣 これは、派遣労働者、特に二十六業務については、ある意味で極めて専門的な業務または特別の雇用管理を要する、こういうような業務であるわけでありまして、派遣労働者の方々にもそれなりのお考えがあって派遣で働きたいというような方もいらっしゃるわけでありますから、そういうような方々と派遣先のニーズが一致すれば、これは長期にわたって派遣で働く、こういうようなことも成り立つわけであります。
武山委員 では、それは反復ということですね。反復していくということですね。
 そうしますと、これはどっちにでもとれるわけですよね。三年を超えて雇用申し込みが義務化されるとはいっても、社員として雇用する予定がなければ、それはまた反復で派遣、派遣、派遣、そういう選択肢がふえたという理解でいいわけですね。
 はい。それでは、その次に行きます。
 通訳など高度な専門性のある業務については、長期の派遣労働という形態が考えられるわけですけれども、例えば、情報化の進展など、時代の変化に照らして、まずファイリング業務、事務用機器の操作というのは、専門業務ということはもう言いがたいんじゃないかと今言われているわけですね。職場にも家庭にもパソコンが普及して、一般の主婦がパソコンで家計簿をつけて、小学生もインターネットを使って学習する時代になっているわけですけれども、どのような事務用機器操作ならば専門性があるということが言えるんでしょうか。
鴨下副大臣 確かに、先生おっしゃるように、職能というようなものも日進月歩でありますから、その当時に専門と言われたようなことでも、例えば和文タイプのようなものも、ワープロにかわり、次にコンピューターにかわっていく、こういうようなことで、それこそその都度いろいろと考えていかなければいけないんだろうというふうに思います。
 ただ、どの分野が専門的で、そしてどの機器の操作が専門的かというようなことについては、なかなかこれは判断が難しいわけでありまして、ある意味で極めて汎用性のある進歩的な機器もあるわけでありますけれども、それとは別に、特殊な専門性を要する、でも仕様としては新しいとは必ずしも言えない、こういうようなものを操作できるというのもある意味で専門的だというふうにも言えるんだろうと思いますので、御指摘のようなことは、なかなか一概に言うのは難しいのかなというふうに今考えます。
武山委員 指摘しておきたいことは、このファイリング業務ですね。今、何しろ写真で撮って、こんな小さなマイクロフィルムにもできるような時代なわけですから、高度な専門性があると当時決めたときとは、大変今、副大臣もお話ししましたように、情報化がどんどん進展しているわけですね。ですから、これはやはり検討し直す視点じゃないかと思います。その当時から実際は非常に進化しているということで、これはやはり専門性ということに対して検討する必要があるんじゃないかということを指摘しておきたいと思います。
 それから、一般業務ですけれども、これは三年まで可能にするというこのたびの制度改正なんですけれども、これはファイリングや事務用機器操作は二十六業務から外すということで、今までの二十六業務を専門性、特殊性という視点で見直す必要はないかどうか、これに対してお聞きしたいと思います。
鴨下副大臣 現行の二十六業務について、その時代の要請に従って見直すべき、もしくは大幅に見直せ、こういうようなお話だろうというふうに思います。
 現行の二十六業務につきましては、例えば専門的な業務または特別な雇用管理を要する業務でありまして、当該業務に係る労働者派遣が常用雇用の代替のおそれが少ないと考えられる業務について、これは、労働政策審議会で当該業務の実態を踏まえた検討を行った上で、政令により定めているものでありまして、実際にはまだまだ、そういう意味では専門的な業務という理解でいいんだろうというようなことで、今現在は、直ちに大幅な見直しを行う、こういうようなことについては必要性はないだろう、こういうような判断であります。
 ただ、先生御指摘のように、それぞれの時代時代の業務の実施の様態や労働市場の状況等によっては、二十六業務にさらに別個の業務を追加するようなこともあり得るというようなことから、これは、労働政策審議会の建議で、二十六業務に追加するかどうかを検討するに当たっては、専門性などについて具体的に検討することが適当であろう、こういうようなことがありますので、それを踏まえて、先生御指摘のようなことも考慮していく必要もあるんだろうなというふうに考えています。
武山委員 今回の改正は、いわゆる期間ですよね。雇用の期間だけ三年までにするという制度改正なわけですけれども、中身は何も手をつけていないわけですね。
 ですから、ぜひ期間だけの検討ではなく、改正ではなく、中身も伴って見直すということが、やはりそれこそ時代の流れ、情報化の進展という意味で、これがまた今までの法案のように、長きにわたって改正されないで化石のようになってしまうということも可能性としてあるわけですから、必ず期間だけではなく中身も伴っていかないと、期間だけ規制緩和していくというと、もう半歩か、それこそちょろちょろの改正でしかないわけですよね。ですから、その根本の柱というのは中身なわけですから、中身もそれに伴ってぜひ見ていただきたいと思います。
 それから、派遣業界の件で質問したいと思います。
 この派遣業界というのは急激な市場で、何しろ二兆円産業となっていると聞いているわけなんですね。それで、先日、衆議院議員の坂井隆憲元厚生労働委員長の多額の裏献金を機にクローズアップされましたけれども、これは日本マンパワーによる裏献金でしたけれども、大幅な規制緩和が実現した結果、新たな企業の参入が相次いで、今競争が大変激化している。何しろ、新たなニュービジネスですね。
 それで、ここで一番問題なのは、不良派遣業者、これが大変たくさんあって、このことによって痛手を受けているというのは、そこの不良業者に雇用されている労働者ということになりますね。
 この辺はどのように政府は見解を持っておりますでしょうか。これに対して、鴨下副大臣に見解を聞きたいと思います。
鴨下副大臣 先生おっしゃるように、ある意味で、派遣という仕事を使ってさまざまな、中間搾取だとか不法なところに派遣をするというようなことも含めて、時代の中でさまざまな不法なことを行うということもあり得るわけでありますので、これに関しましては、先生御指摘のように、特にこういう急成長な分野においては、そういう意味で極めて注意深く見ていかなければいけないんだろうというふうに思っておりますし、そういうような事態になることにつきましては、それなりに厳しく対処をしてまいりたい、こういうふうに考えます。
武山委員 一説によりますと、新宿のあるビルのフロアが、百四十七社とか、同じ住所になっている。これが何しろ派遣業者の、一つのフロアの一部屋が百数十社の住所の登録になっている。ですから、これはすなわち派遣をふやす法改正ですけれども、この不良業者の取り締まりという点では、やはり対策を考えなきゃいけないと思うんですよね。
 この対策についてお聞きしたいと思います。
鴨下副大臣 例えば請負や委託、こういうふうに称して違法な労働者派遣事業を行っている、こういうようなこともこれから特に想定されるわけでありますので、今後は、例えば注文主の事業所の従業員と混在して、直接その指揮命令を受けて業務に従事していることなど、実態として労働者派遣となっている疑いのあるそういう請負や委託、こういうようなことについても厳しく取り締まりをしなければいけないんだろうというふうに思っております。
 労働者派遣、請負のそれぞれがともに適正に行われて、ある意味で、特に派遣労働者の皆さんにそういう意味での被害が及ばないように十全に指導していきたい、こういうふうなことで、現在は公共職業安定所に分掌されています指導監督業務を都道府県の労働局に集中して、指導監督体制を強化する、こういうようなことも含めて、実際には目を光らせてまいりたいというふうに思っております。
武山委員 摘発だとかきちっとした担保がないと、それはやはり、今までのいわゆる政府の考え方で、余り進展がないと思います、今のお話ですと。ただ勧告するだけでしたら、言うだけですから。言われても、そのうち厚顔無恥になっていまして、何回言われても抜け穴を通って本当に堂々とやっているというのが現状なものですから、ぜひそれは実効性のある取り締まりを考えていただきたいと思います。
 パート労働者、派遣労働者と今の日本の雇用環境はどんどん変わっていっておるわけですけれども、普通に常用雇用されている方々と派遣やパートの方々が、きちっとした環境で年金やらまた身分保障やらというものをやはりつくっていかなければいけないんじゃないかと思います。
 質問をこれで終わります。
中山委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。
 派遣労働者の問題で私が一番重視しなければならないと思うのは、常用化を促進することであります。
 派遣労働者が働いてきた職場で派遣の期限が来た場合、新たに労働者を雇用しようとする場合は、その労働者を採用するように努力しなければならないことになっておりましたが、厚生労働省が実施した事業者に対するアンケート調査では、実際に採用されたのは登録型で二九・八%にとどまっております。そして、同一の業務に同じ労働者がそのまま派遣され続けたというケースが五二・二%もあります。驚くべきことに、一年間同一の業務で働き続けたら採用になることを知らない派遣労働者が七一・七%もいる。だから、常用化を申し出もせず、そのまま働き続けたということではないのでしょうか。
 このことについてもっと踏み込んだ調査と指導をしていたら、相当数の常用化が行われていたのではないのか。今まで、法第四十条の三の努力義務規定に基づいてどれくらいの指導を行い、常用化させたのか、それぞれの件数を明らかにしていただきたい。
戸苅政府参考人 一年の期間制限についての指導でありますけれども、これにつきましては、雇用の努力義務ということについて、ハローワークなり労働局なりが派遣先に指導監督する際には、必ずその周知を行っているということであります。
 ただ、今御質問の具体的な指導ということになりますと、派遣先に対する指導監督を九百五十三件行い、そのうち文書による指導は五件ということになっています。その中に今御質問のものは恐らくないというふうに思います。
小沢(和)委員 最後、ほとんどないようなお話で、だから、実際には指導がほとんど行われていない、行き渡っていないという状態ではないでしょうか。
 これまでは、同一の業務について派遣を受けることができる期間は一年と定められていたのですから、このように五二・二%の人が一年を超えて同一業務に派遣されているという状態自体が違法だったのではないのでしょうか。この四十条の二には罰則がないので、派遣先も派遣元も放置し、行政もその違法状態を見逃してきた、こういうことじゃないんですか。
戸苅政府参考人 私どもの調査で、一年間継続した派遣の有無について、あると答えたのが二三・三%で、そのうち派遣労働のまま継続したというのが五二・二%でありますから、そういう意味では、全体の調査のうち、今御指摘の、派遣をやめない、あるいは派遣先が雇わない、結果として派遣が続いたというのは一二%ということだろうと思います。ただ、まだ一二%あるということは確かに問題であります。
 ただ、派遣期間制限に抵触する日以降も派遣が行われているという場合には、派遣元に対しては、大臣による指導助言あるいは改善命令、事業停止命令、さらには許可の取り消し、罰金までということもございますし、派遣先についても、指導助言、是正勧告等々行うことになっております。このあたりをきちんとやるということによって、適切な派遣が行われるように担保したい、こう思っています。
小沢(和)委員 答弁になっていないんですよね。一年を超えて同一業務に同じ労働者が派遣されていること自体が違法状態なんでしょう。
戸苅政府参考人 それはおっしゃるとおりです。
 ですから、そういった違法状態を是正させるというために、今、指導監督の中で是正されないのであれば、今申し上げたように、指導助言あるいは改善命令、場合によったら事業停止ということでそういったことが行われないようにしていきたい、こういうことであります。
小沢(和)委員 くどいようですけれども、そういう状態にあるその業務に別の労働者が派遣されても、同一業務への派遣である以上、違法状態を解消することにはならないというふうに私は思うが、どうか。この違法状態を解消するためには、この業務への派遣そのものを打ち切るか、あるいはその労働者を常用として採用するか、これ以外にないんじゃないですか。
戸苅政府参考人 おっしゃるとおりであります。
 二十六業務以外の業務については、派遣労働者を入れかえたとしても、当該業務に一年間継続して派遣を行っていた場合はもうそれ以上派遣できないということでありますから、派遣を打ち切るか、あるいは当該派遣労働者を雇い入れるか、どちらかということになります。
小沢(和)委員 今回の法改正でも第四十条の三の仕組みはほぼそのままですが、四十条の四、五が新たに設けられ、努力義務から踏み込んで義務化の道が開かれております。
 しかし、新設された四十条の四の場合、これには、派遣先企業が約束の期限を超えて引き続き派遣労働者を働かせようとしたのに対し、派遣元が派遣の停止を通知したこととか、派遣労働者本人が常用化を希望していること等の条件がいろいろつけられております。
 これでは、せっかくの義務化の規定を生かすことが非常に難しい。特に、お客さんである派遣先に派遣停止を通知するなどということはほとんど期待できないんじゃないですか。これでは、一年の派遣期間を三年に延長した代償としては中身がなさ過ぎると思うんです。この義務化の規定をもっと生かすような運用面での工夫を強く要求しますが、いかがですか。
戸苅政府参考人 一つは、派遣期間の制限の到来する日を通知するというのは、これは派遣期間の制限を超えて派遣を行うことのないように、そこで混乱が起きないように、派遣先、派遣元でそういうことが起きないようにということで今回規定したところであります。
 それから、派遣労働者の希望がある場合ということでありますが、これは、やはり派遣労働者は、派遣のままがいい、あるいは就職するのならその派遣先ではなくて別の会社がいいということもあるということで、こういった規定を置いたものであります。
 今のお話でありますけれども、派遣先が四十条の四の雇用契約の申し込み義務違反があった場合には、指導助言、さらに是正勧告、勧告に従わなかった場合の公表という規定を置いておりますし、さらに、派遣元が派遣期間を超えて派遣を続けているという場合につきましては、これは完全に派遣法違反でありますので、直ちに労働者派遣が中止されねばいかぬということで、中止しない場合は、これも指導助言、改善命令、事業停止命令、許可取り消し、事業廃止命令、ここまでいく。場合によったら罰則まであるということでありますので、現行の規定を厳格に適用するということによってそういった事態を防止するということにいたしたいと思っています。
小沢(和)委員 先日の参考人の意見の中には、同一の業務に長期間派遣されている労働者が多数いるということがしばしば指摘されました。
 私のところにも、ある大手の銀行の同じ窓口業務に多数の派遣労働者が長期間派遣されているとの訴えが寄せられております。今回延長される三年という期限を、今の時点で大部分の労働者が上回っているという実態のようです。もともと、仕事が一時的、臨時的ではない銀行の窓口業務を派遣労働者にやらせていること自体が間違いだし、法違反だと思います。どこの大手銀行も、特定の派遣会社から長い人は十数年にわたって同じ窓口業務に派遣されているのが当たり前のようになっていると聞いております。
 この違法状態を解消するように指導すべきではありませんか。
戸苅政府参考人 御質問の、銀行で働いておられる派遣労働者の方の業務でありますけれども、実際に行っている業務が、預金の入金あるいは支払い取引業務、振り込み業務、こういった事務を行っておられる場合、この事務を、銀行の場合ですから大量の処理を迅速にやるということであります。かつ、間違ってはいかぬということで適切にやるということでありまして、迅速かつ適切にこういった業務をこなすには業務の習熟が必要であるということから、実は厚生労働省といたしましては、労働者派遣法の施行令の第四条の第十号にあります財務処理の業務に当たるということで考えておりまして、これは二十六業務に全体としては当たっているということではないかと思います。
 ただ、中にはそういった習熟を要さないというふうな業務をやっている場合、この場合は、おっしゃるとおり、一年の派遣期間の制限が適用されますし、今後は最大三年の派遣期間の制限が適用されるということでありますので、その期間に抵触する日以後も行われている場合には、その指導助言あるいは改善命令、事業停止命令等を派遣元に行い、派遣先についても、先ほど申し上げたような指導助言、是正勧告等を行っていくということになろうかと思います。
小沢(和)委員 そうすると、今の答弁でいけば、もし登録型で五年も十年も同じところに特定の派遣会社からずっと派遣されている、そういう状態がある場合は、これは間違いだということで直ちに是正させますね。
戸苅政府参考人 先ほど申し上げましたように、二十六業務のうちに入っております財務処理に当たるかどうかということを判断して、これに当たらないということであれば指導する、こういうことであります。
小沢(和)委員 今回、一カ月の就労日数が通常の労働者より相当程度少ない業務について、期間制限のない派遣が認められることになります。
 私の地元にも、競輪あるいは競馬など、一カ月十数日の開催日だけ就業する人々や、週末だけ就労する人々もおります。今、こういう人々は正規の雇用契約がなされておりますが、こういう規定を設けることが、この人々を派遣に置きかえる契機になるおそれはないのか。
 先ほどの局長の答弁では、一カ月に十数日しか就労しないのが普通の職場では、そこで派遣の対象になり得るのはその十数日より相当短い日数ということになり、現実にはそういう業務は余りないだろうというお答えでした。それだったら、なぜこういう余り考えられないようなケースをわざわざ法改正とかいってうたい込む必要があるのかということを念のためお尋ねしておきます。
戸苅政府参考人 今回、期間制限なしの業務として、一カ月間に行われる日数が通常の労働者の所定労働日数に比し相当程度少ない業務を追加したということの理由といたしましては、例えば、月初めだけに必要になります書店の棚卸しの業務ですとか、土日のみに必要となる住宅展示場のコンパニオンの業務ですとか、こういったことについてアルバイトを雇うのか派遣を雇うのかという選択肢を広げよう、こういうことでありまして、今委員御指摘のように、通常の労働者の方の労働日数が月十日前後という競輪場等の女性労働者の方、これが通常の労働者であるということであれば、この労働者よりも相当少ない場合でない限り今回の適用にならないということでありますので、恐らく、競輪場等では今回の措置が適用になるということはほとんどないのではないか、こう思っています。
小沢(和)委員 いや、だから私は、それだったら、そういうほとんど考えられないような実益のない法改正を何で我々にもっともらしく頼み込むんだと聞いているんですよ。
戸苅政府参考人 そこは、今申し上げましたように、通常の労働者、これは通常の労働者がどのくらいかということの、あとは運用の問題になっちゃうのでありますが、基本的には、通常の労働者が週四十時間で月いっぱい働いているという場合の、十日ぐらい働く、土日のみに必要となる住宅展示場のコンパニオンの業務ですとか、月初あるいは月末に必要となる書店の棚卸しの業務とか、こういったところに派遣という需給調整システムが活用できるようにしよう、こういうことであります。
小沢(和)委員 全然答えにならぬですけれども、時間がもったいないから先に行きます。
 今回の改正で、附則を削除して、物の製造業務にも派遣労働者の受け入れを認めようとしております。八百万の労働者が働いている製造業務に派遣を受け入れることになれば、その影響は極めて大きい。日本の物づくりの技術的基盤を揺るがすことにもなりかねません。
 戦前の我が国では、広範に労働者供給業、人入れ稼業が行われてきましたが、それは主に製造業でありました。既に実質的には、労働者の派遣が請負を偽装して広範に行われております。今回の法改正は、それを追認することになるのではありませんか。
 先ほど、今回の改正で偽装請負を適正な派遣に変えることができる、こういう趣旨の答弁をされたようですが、これはまさに追認するということ、そういう形で言ったというふうにしか聞こえないのですが、いかがでしょうか。
戸苅政府参考人 現在、物の製造で行われております偽装請負の問題点として我々が認識しておりますのは、一つは、これは正直言って労働者供給事業に当たるということだろうと現在思います。そういった意味で、雇用主責任が請負先にあるのかというか発注元にあるのか、それとも請負業者にあるのか、そのあたりがはっきりしない。それから、労働災害あるいは労働条件の適正化ということについて、就労先たる発注元にあるのか請負元にあるのか、そのあたりもはっきりしない。もっと言うと、何か起きたときに雇用主責任がどちらにあるのかはっきりしないということがやはり最大の問題ではないか、こういうふうに思っています。
 中間搾取であるということであれば、これはまた基準法等で対応するということだろうと思います。そういった意味で、我々としては、偽装請負という形を適正な請負にして、請負事業者の全責任で対応するのか、それとも派遣という形を導入して、それぞれの派遣元、派遣先にそれぞれの責任を明確にして労働者の労働条件等をきちんと確保するのか、どちらかが行われるようにしよう、こういう趣旨でありまして、我々としては、そういった意味で、偽装請負をとにかく解消して、労働者の適正な就業のために、適正な請負か適正な派遣になるような指導をしていきたい、こういうふうに思っています。
小沢(和)委員 偽装請負というのは何なのかといったら、実質的には派遣なのに請負であるかのような看板をかけているということなんでしょう。だから、今度こういう法改正をしたら、もうどんぴしゃり派遣に当てはまるから、偽装請負とかいう問題そのものがなくなっちゃう、こういうことでしょう。
戸苅政府参考人 私どもの認識からいたしますと、今禁止されている派遣にきちんと当てはまる形での偽装請負が行われているケースというのは、そうはないんじゃないか。かなり請負に近い形で行われている偽装請負、それから労供に近い偽装請負ということだろうと思いまして、そういった意味では、派遣を導入するということによって、そのあたりのグレーゾーンにあるものが派遣の枠内にきちんとおさまる、あるいは請負の枠内にきちんとおさまる、こういうことになるというふうに思っています。
小沢(和)委員 一つの製造ラインで正社員と派遣労働者が混在して働くことは、労働安全の面からも極めて問題が多い。だから、我が党は引き続いて、製造ラインに派遣労働者を受け入れることには反対をいたします。
 今回の法改正でも安全問題を無視できず、派遣先と派遣元の両方に担当者を置き、その職務として安全衛生に関する連絡調整を行わせることにしておりますが、これで本当に安全衛生を確保できるようになるのか。
 現行法では、責任者の選任、配置は、派遣元はもちろんのことですが、法第四十一条では、派遣先企業は派遣先責任者を、受け入れた派遣労働者が百人までは一人以上、百人を超え二百人までは二人以上などと、具体的に責任者の選任、配置の基準などを定めております。これに違反すれば、法第六十一条で罰金まで科せられる。
 そこで伺いたいんですが、厚生労働省は、この派遣労働者を受け入れている派遣先企業の責任者の選任、配置の実態を調査したことがあるのか、その結果どうだったのか、違反状態に対してどれぐらいの指導を行ったのか、その件数も含めてお答えいただきたい。
戸苅政府参考人 昨年の六月に私どもで行いました派遣先責任者の選任、配置の実態についての調査でありますが、これは派遣の見直しのための調査の一環として行ったものであります。
 これによりますと、派遣先責任者の選任数については、一人の事業所が六四・九%、二人の事業所が一一・七%、三人の事業所が五・四%、それから四人ないし九人の事業所が八・九%、不明が四・七%ということでありまして、そういった意味で、不明の四・七%を除きました九五%以上の事業所で選任されているということだろうというふうに思っています。
 それから、派遣先責任者の所属部署といたしましては、派遣を直接受け入れる部署が五九・二%、総務、労務、人事担当部署が三四・一%ということになっています。
 それから、派遣先の指導監督の状況でありますが、指導監督を行いましたのが、派遣先については、先ほど申しましたが九百五十三件、このうち派遣先に対する文書による指導が五件でございまして、この五件の中には派遣先責任者の選任の違反というのは入っていないというふうに思っています。
小沢(和)委員 先日から本委員会で、安全衛生だけでなく残業、有給休暇など、派遣労働者の基本的な労働条件がどう保障されるか、質疑が繰り返し行われました。当局側は先ほどの答弁でも、派遣元と派遣先で法律上その責任分担は細かく決められていると説明いたしました。
 しかし、実態は、派遣労働者は労働基準法などとは関係がない、とにかく使いたいように使われているという状況であります。特に、労働災害が起きたときにその責任があいまいになる。
 私は、直接作業に必要な事前教育や労働安全については派遣先が全責任を持つべきだ、労災保険の保険料も派遣先が負担するのが当然だ、こう考えますが、いかがですか。
松崎政府参考人 派遣労働者に対します労働基準法また労働安全衛生法等のいわゆる労働保護法の適用に関してでございますけれども、これの趣旨は、先ほど申し上げましたように、派遣労働者の保護に欠けることがないようにという点が一点と、もう一つは責任があいまいにならないように、特に労働基準法、安全衛生法等につきましては、労働条件の最低基準を罰則でもって担保するということで、罰則がきいているわけでございますので、そこで、きちんと責任があり権限のある者が使用者として責任を負うということが必要でございますので、そういったことから、派遣先、派遣元について使用者としての責任を分けてございます。
 その際、具体的には、労働といいますものは労働契約が基本でございますので、労働契約の当事者であります派遣元事業主が基本的な事業主として責任を負うわけでございますけれども、ただいま申し上げましたように、派遣労働者の保護に必要な部分につきましては派遣先に責任を負わせるということで、派遣法に特例を設けてございます。
 具体的に安全衛生について申し上げますと、これは、就労の現場におきまして業務遂行上の具体的な指揮命令、こういったものは派遣先が行う、また就労現場における施設の設置、管理は派遣先が行うということがございます。そういったことから、基本的には安全衛生については派遣先の責務というふうに規定してございまして、特に労働安全衛生法の特例につきましては、いろいろございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、派遣先に責任があるというのは、一般健康診断の実施、その結果の通知、それによります医師等による保健指導を除いて、原則としてすべて派遣先の責任ということになっておりまして、派遣労働者に関しまして、派遣先において労働安全衛生法上の問題があったときには、ストレートに派遣先が責任を問われるということになっております。
 また、労災保険でございますけれども、労災保険の補償につきましては、これは労働基準法上の災害補償責任を担保するものでございまして、これはやはり賃金を支払う基本的な事業主であります派遣元の責任ということで構成してございます。こういったことで、したがいまして労災保険につきましても派遣元が負担をするという仕組みになっております。
小沢(和)委員 いずれにしろ、製造ラインにまで派遣労働者が入ってくるのであれば、派遣元と派遣先が連帯してあらゆる事態に責任を負うことを明確にすべきであります。
 特に、製造ラインでの作業に関連して起こる諸問題については、派遣先が労働組合との交渉に直接応ずる義務があると思いますが、そういう考え方で間違いありませんか。
戸苅政府参考人 労働者派遣法制定時の考え方ということを申し上げますと、雇用主責任は派遣元に全面的にある、それから労働条件に関しましては、安全衛生とかあるいは労働時間とか、それぞれの事項ごとに派遣元と派遣先に責任を明確に区分けした上で派遣制度を認め、それによって派遣労働者の就業条件を整備し、労働者の保護を図ろう、こういう考え方できているところであります。
 そういった意味で申し上げますと、今委員御質問のように連帯して責任を負うということは、昔の労供の時代のように、どちらに責任があるのかというあたりがあいまいになり、かえって責任の所在を労働者が追及しにくくなることになるのではないかというふうに思っています。
 それから団交応諾義務、交渉への応諾義務ということを考えますと、労働組合との団体交渉に応諾する義務を負う使用者ということになりますと、これは労働契約の当事者たる派遣元ということになるんだろう、こういうふうに思います。そういった意味で、派遣が適正に行われているということであれば、一般的には、派遣労働者による労働組合との団体交渉の応諾義務は派遣元事業主が負うことになるというふうに思います。
小沢(和)委員 労働組合との交渉は派遣元に責任があるといっても、派遣先で実際に指揮命令を受けて仕事をやっているわけですよ。そのことについていろいろ苦情を言いたいと思ったときに、派遣元に行って話をしたって、問題は解決しないじゃないですか。
戸苅政府参考人 そこは派遣先の指針等で、苦情の処理に派遣先は派遣元と協力して適切に対応すること、それから派遣元も、派遣労働者なり派遣先から苦情についての申し出があり、あるいは相談があった場合には、派遣先と協力して対応すること、こういうことになっています。そういう意味では、いろいろ就業上の問題があって、それを解消してほしいということであれば、それは、派遣先、派遣元、どちらに言っていただいても対応できる体制という意味ではおっしゃるとおりであります。
 ただ、私が申し上げたのは、労働条件に関して労働組合として団体交渉を行うということであれば、これは労働組合法上も使用者たる派遣元になるであろう、こういうことを申し上げたわけであります。
小沢(和)委員 だから、そういうことでは現実には問題を解決できない。だから私は、今の点については再度考え直しなさいということを強く申し上げておきます。
 派遣労働者の労働条件を本当に改善するためには、職安行政からの取り組みだけでは決定的に不十分。どうしても、強力な警察権限を持っている基準行政と一体となって指導し監督する必要があると思います。どういう体制をつくるか。これはこれまでにない行政分野であって、必要な人員増も含めて措置しなければ実効を上げられないと思いますが、いかがですか。
戸苅政府参考人 今回、製造業についての派遣を行えるようにするというふうなことになりますと、やはり派遣と請負の区分を的確に行うということとあわせ、安全衛生の確保をきちんと図るということも重要でありまして、そういった意味で、派遣についての指導監督の体制をより強化し、より高度化していく、より専門化していくということが求められていると思います。
 そういった意味で、現在ハローワークで行っております派遣に対する指導監督を労働局に一元化する、さらに、労働基準行政との連携も十分図り、違法事案があった場合には相互に情報提供を行うというふうなこと等で、両者の連携をより一層強化したいというふうに思っています。
 それから、確かにおっしゃるとおり人手が要るわけでありまして、厳しい行財政事情ではありますけれども、我々としては、派遣の指導監督を適正に行えるように、増員等についても努力をしてまいりたいと考えています。
小沢(和)委員 登録型に多い若い女性については、年齢、容姿による差別、妊娠、出産などが中途解約にもつながっているなどの問題が先日の参考人の陳述の中にもありました。今、これだけ男女の均等待遇が叫ばれ、妊娠、出産などの保障が少子化対策としても重視されているときに、これは重大な問題だと思います。雇用均等・児童家庭局としてもこれについて特別に取り組むべきではないか、お尋ねします。
岩田政府参考人 厚生労働省は、男女雇用機会均等法に基づきまして、派遣労働者も含めて、働く女性が性による差別を受けずにその職業能力を十分発揮して働いていけるような環境整備をするというのは、大変重要な課題であるというふうに思っております。
 男女雇用機会均等法に照らして考えますと、男性には求めないのに、女性についてだけ採用のときに年齢や容姿について条件を設けるとか、あるいは妊娠や出産を理由として解雇をするということは、性に基づく差別に当たるというふうに考えます。派遣労働者については、この男女雇用機会均等法の適用は派遣元事業主にございますので、今申し上げましたような事例がございましたら、派遣元事業主に対して指導することになります。
 いずれにいたしましても、都道府県労働局で均等法の施行をいたしておりますので、問題の事案がございましたら、ぜひ労働局の方に御相談においでいただきますと、事業主に対する指導ですとか、個別の労使紛争を解決するための援助などを行ってまいりたいというふうに考えております。
小沢(和)委員 紹介予定派遣についてもお尋ねをしたいと思います。
 今回の改正で、今後は、正社員として採用することを前提として派遣される労働者については、事前に履歴書を提出させ、面接することが公式に認められます。こうなると、この派遣は試用期間としての性格を持つようになる。そうだとすれば、この場合、派遣期間は、試用期間として本人の能力、技術などを知るのに必要な期間に限られるべきではないのか。例えば三カ月とか六カ月とかの期限を施行規則や指針で定めるべきではないか。
 また、念のためお尋ねしますが、従来の正社員募集で入社した者の試用期間と、紹介予定派遣の労働者の派遣期間とはどう違うのか。これまでの判例では、試用期間中の者は特別の理由がない限り正社員になれるよう保護されていましたが、派遣の場合は、気に入らなければ契約打ち切り自由というような差別的扱いは私は許されないというように思いますが、いかがでしょうか。
戸苅政府参考人 紹介予定派遣につきましては、一つは、なかなか就職することが困難な労働者、それから一方で、労働者を雇うには、自分の会社で採用したいと思っている技術、技能を持っているのか、知識を持っているのか、あるいは社風になじむのか、どういった特性なのか、こういったあたりを見きわめたいという双方のニーズにこたえ、それによって就職の促進に役立つだろう、こういうことであろうということであります。
 したがって、今申し上げたような趣旨からいいますと、派遣先が派遣労働者の能力なり特性なりを十分把握できる期間、あるいは派遣労働者が派遣先の職場の状況等を十分把握できる期間、これを超えてまで行うということは問題だろう、こういうふうに思っています。そういった意味で、我々としては六カ月ということを基本に、審議会の意見も聞きながら、期間については明確にルールをつくっていきたいというふうに考えております。
 それから、試用期間の場合は、試用している事業主が雇用主であります。紹介予定派遣の場合は、まだ派遣が行われている限りは派遣元が雇用主であるという違いがありますので、職業紹介の局面で、求人、求職の条件が折り合わずに、結果として雇用関係が成立しないということもあり得るわけで、これは直ちに問題があるということはなかなか言いがたいのではないかというふうに思います。
 ただ、派遣先が、派遣労働者を採用する意思がないにもかかわらず、紹介予定派遣であるということで事前面接をしてみたり、あるいは安易に紹介予定派遣を駆使することによって、いろいろな労働法制の規制を逃れようとしたりといったような脱法的行為を行うということは、これは許されないものだろうというふうに思います。
 そういった意味で、例えば採用に至らなかったような場合に、合理的な理由があるのかどうかというあたりについてお互いに確認できるような仕組みを考えるとか、何らかの乱用防止の措置を考えていく必要はあるのではないかと思っています。
小沢(和)委員 私は、衆議院の調査室からいただいた資料で、諸外国の派遣制度も勉強してみました。ドイツ、フランス、イタリアなどヨーロッパの主要国では、派遣労働者の受け入れについて労使の協議を義務づけており、中には労使の合意を求めている国もあります。労働条件については、ほとんどの国で派遣先の労働者との均等待遇を保障しております。
 EUは、昨年十一月、派遣労働者の保護、非差別原則の適用を盛り込んだ指令案を発表いたしました。
 注目されるのは、ドイツの昨年の派遣法改正の内容であります。各公共職業安定所に労働者派遣事業を行う人材サービス機関を付設し、ここが失業者を雇用して企業に派遣することにしております。失業者はこの派遣を受け入れる義務があり、初めの六週間は失業手当と同額の賃金で働き、派遣先との直接雇用に移行することができれば、その派遣先の賃金を受けることになります。
 アメリカは派遣労働についての特別の法律はありませんが、人種、性、年齢、障害等の差別禁止法に関しては、派遣先は派遣元とともに共同使用者として責任を負っております。
 このように諸外国の派遣制度の状況を見ると、日本のように派遣労働者を保護する仕組みがほとんどない国はほかに例がないと言ってもよい状況であります。日本の現状を改善するためには、派遣労働者に派遣先労働者と同じ均等な待遇を保障する派遣法の抜本的改正を緊急にする以外にないと思いますが、大臣は、日本の派遣労働者の労働条件を根本的に改善するためにどうしたらいいか、この際、見解を伺いたい。
坂口国務大臣 小沢委員のおっしゃる御趣旨は私もわかるつもりでおります。ただ、今お挙げになりました欧米の場合と日本の場合とは、かなりな面で違う面もございます。
 例えば欧米諸国でございますと、社会的に職種概念が明確に区分されておりまして、それぞれの職種ごとに統一した賃金が設定されるシステムになっているというようなことがございますし、あるいはまた、労働者の賃金などの基本的な労働条件というのは一般的に企業内における労使交渉で決定されるものでありまして、しかも、その決定に当たりましては、年齢ですとかあるいは学歴、勤続年数等も加味して決定される、こうした日本の場合とかなり違う場合もございますから、同じにはなかなか論じることは難しいというふうに思っております。
 しかし、おっしゃいますように、一般労働者と派遣労働者との間の均衡待遇というのは目指すべき目的でございまして、このために、どういうふうにしていけばそうなり得るかということを常に追求していかなければならないものと考えている次第でございます。今後、派遣労働者というものが期間あるいはまた職種等において拡大をされていこうとする現状におきまして、そうしたことをさらに検討していきたいというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 時間が来ましたが、あと一点質問させていただきたいのです。職業紹介事業者の兼業禁止規定を廃止する問題です。
 特に私が関心を持つのは貸金業などのことですが、職安局長は先日の委員会で、法改正後、許可基準で何らかの規制をしたい旨の答弁をされましたが、規制緩和の流れは許可から届け出に向かっております。そうすると、許可基準で厳しい規制を設けても、次の規制緩和で届け出になれば、何の規制にもならなくなるんじゃないか。
 それからもう一点は、貸金業者が兼業でなくみずから出資して別の職業紹介業を経営しても、同じ問題が起きる。貸金業者の出資比率での規制なども含めて、規制を厳しく実施すべきだと思いますが、どうお考えか、二点お尋ねします。
戸苅政府参考人 今の御質問で、流れは届け出ではないかという御質問でありますが、職業紹介は人を相手にする事業でありまして、そこで中間搾取が行われ、あるいは強制労働が行われ、あるいは本人の希望、適性、能力、そういったものに適合しない職業紹介が誇張して行われ、あるいは相手をだます形で行われということで労働者が被害を受けますと、これはもう取り返しのつかない、人間でありますから、金で解決できない被害を受けるわけで、そういった意味で、我々としては、やはり職業紹介事業の基本は許可でいくべきだ、こう思っていまして、我々の中に基本的に届け出制に移行するという選択肢は今のところ全くありません。
 それから、もう一点の出資比率でございます。これは、正直申し上げてなかなか難しいのじゃないかというふうに思います。ただ、先日来、貸金業についていろいろな懸念が各党の委員の先生方から指摘されているところでありまして、我々も、何らかの対応ができるかどうかというあたりは、もう少し検討する余地はあるのかなと思います。先日来申し上げていますのは、許可基準あるいは許可の際の附帯条件ということでありますが、さらに何ができるのかというあたりについてはさらに検討をした上で施行に向かいたい、こういうふうに思っています。
小沢(和)委員 終わります。
中山委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。先週に引き続きまして、労働者派遣法の問題について質問したいと思います。
 今回の改正の中で、常用雇用への道を広げたということが言われておりますけれども、我々が条文を読むときに、きょうも先ほども質問が出ましたけれども、法の第四十条の四及び五が追加をされましたが、先ほどちょっと論議を聞いていて、鴨下副大臣の答弁をちょっとお聞きしていて、確認をしておきたいことが一つあります。
 四十条の五のことなんですけれども、反復更新のことをおっしゃいました。これは、会社側が正規雇用の意思がないときに、反復更新すればできるよというような答弁であったように聞こえてならなかったんですけれども、それはそういう内容ではないわけですよね。
 期限の定めがない場合には、三年たてばさらに引き続いて雇用するのであれば、本人の意思がなければ別ですよ、そういうことは雇用の申し込みをしなければならないと思いますけれども、その点、まず確認しておきたいと思います。
鴨下副大臣 私の名前が出ましたので、答弁させていただきます。
 今回の改正法案におきましては、論点を整理してみますと、一つは、派遣期間の制限のある業務につきましては、派遣先が派遣期間の制限を超えて派遣労働者を使用しようとする場合、それからもう一つは先生今御指摘の、派遣期間の制限のない業務に三年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている派遣先が新たに労働者を雇い入れようとする場合というようなことでありまして、派遣先は当該派遣労働者に対して雇用契約を申し込まなければいけない、こういうようなことで、二種類の雇用契約申し込み義務規定を設けているわけであります。
 これで、前者の申し込み義務は、派遣先に派遣労働者に対する雇用契約の申し込みをさせることにより、一つは期間制限に違反する労働者派遣を未然に防ぐ、こういうようなことと、もう一つは、派遣労働者との雇用関係を明確に整理することによって当該派遣労働者の雇用の安定を図ろう、こういうようなことであります。
 後者の申し込み義務は、現実に同一業務に長期間継続就業している、こういうような派遣労働者は当該派遣先において必要な業務遂行能力を有している、こういうようなことですから、派遣先が新たに労働者を雇い入れようとするときには、当該派遣労働者に対して雇用契約の申し込みをさせる、こういうようなことでありまして、派遣労働者が派遣先に直接雇用される機会を言ってみれば多く確保していこう、こういうようなことであります。
金子(哲)委員 その今の後者の場合は、では余り実効性はないということですか。正規の労働者を雇用しようという意思がなければ、派遣労働者でどんどんいくということになっていくので、そこのところが、できるだけ正規雇用にどうしていくかということになると、実態上はそうならないということですか。
鴨下副大臣 そういうような懸念をある意味で配慮しながら、一つはといいますか、この両者とも派遣先に法律上の義務を課す、こういうようなことでありますので、いろいろな懸念を先生おっしゃいますけれども、相当の効果を上げられるのではなかろうか、こういうふうに現在考えております。
金子(哲)委員 四十条の四についてですけれども、これは確認したいのですけれども、この文章を読むと、例えば「当該派遣労働者」という言葉が使われているわけですよね。先ほどお話があったように、「同一の派遣労働者」という表現とやや違うんですけれども、これは、例えば三年に期限のあるところの場合は、あるその事業所、事業に対して繰り返しでもいいから三年間派遣労働をもし仮に雇えば、そこには三年後からは常用雇用の雇い入れをしなければならないという義務が発生するというふうに考えていいのですか。
戸苅政府参考人 おっしゃるとおりでありまして、四十条の四は、派遣労働者を入れかえたとしても、その同一の業務に派遣という行為を、あるいは派遣労働者を、固有名詞のついていない派遣労働者という勤務形態というか就業形態で、一年を超え三年以内の期間であらかじめ定めた派遣の制限期間内いっぱい雇い入れたというか派遣労働者を使っていたというと、その期間を過ぎた後は何が行われるかというと、もう派遣を一切やらない、派遣を一切受け入れないか、当該派遣労働者を雇って業務をやるか、あるいは派遣労働者が嫌だというのであれば、新たに新規の労働者を雇ってその業務を続けるか、こういうことになるということです。
金子(哲)委員 ぜひこの点はしっかりと指導してほしいと思うんですよ。
 やはり一般的に考えるのは、四十条の四がけじめなく、つまり同一の労働者を引き続き派遣労働で雇用していたという解釈を、どうしても派遣先はそういう解釈をやってくるということですから、それは、だれであろうと、三年間そこの同一の職場における派遣労働を受け入れした場合にはそういう義務が発生するんだということを指導の中でもまず明確にしておいていただきたいということで、今答弁あったとおりですので、その点を申し上げておきたいと思います。
 いずれにしても、今やはり例えば四十条の四、例えば第一の条件では、法の三十五条の二の第二項、いわゆる一月前から期限が切れるという通知を受けるというような条件をいろいろ言っているわけですよね。ところが、では実際にこの条件をクリアしなければだめなのか。これは労働者の側の責任がない事案なんですよね、こういうケースは。本来派遣元がやるべきことをやらなかったというようなことが条件として多数書かれていることに対して、やはりその点、もっと弾力的に運用しないと、むしろ今答弁があったように、三年間派遣労働者を受け入れればもうその時点で義務が発生するんだというようなことを、もうちょっと簡素化して、だれにでもわかりやすいように、条件をたくさんつけずにやるという明確なやり方をしないと、しかもこの条件では、例えば法の三十五条の二の第二項も別に罰則規定もないわけですから、仮に派遣元がやらなかったといっても、問われるわけでも何でもない。しかし、それも条件の中に入っているわけですよね。そういうちょっとあいまいさがこの中にある。
 だから、大体、私は三年も働くということ自身がもう常用の状況だと思いますけれども、そういうところにそんな幾つもの条件をつけずに、やはりそういう派遣労働を受け入れたときには、もうそこで最後の派遣労働者に引き続きやりたい場合にはそういうことが発生するというふうに簡素化をしてほしいと思うんですよね。そして、そういう指導をちゃんとしてほしいということを再度お願いしたいと思います。
戸苅政府参考人 今回、派遣の期間制限の通知につきましては、スムーズに派遣を停止するか、あるいは当該派遣労働者、その期間制限のときに受け入れていたその派遣労働者を雇用するか、どっちかになるわけで、そこがスムーズにいくようにということで設けたものでありまして、今委員おっしゃったとおり、派遣元が派遣先に期間の通知をしないとしても、最大三年の派遣期間の制限に抵触いたしますと、派遣元としては三十五条の二第一項違反になりますので、指導助言、改善命令、事業停止命令あるいは罰金三十万円以下、こういうふうになりますし、派遣先についても四十条の二第一項違反になりまして、これも指導助言、是正勧告それから雇い入れ勧告、それから公表と、一連の対応措置はとられているわけであります。
 ただ、先生のおっしゃるように、そのあたりがどうも派遣先に十分周知されていないということは、そういうことはまだ十分あり得ると思いますので、派遣元を通じて派遣先にそのあたりをきちっと徹底するとか、我々もあらゆる機会をとらえて、そういった通知がなくても最大三年以上派遣を受け入れちゃいかぬのだというあたりの徹底に努めたいと思います。
金子(哲)委員 ぜひその点お願いをしたいと思います。
 時間のこともあるので、先に確認できることだけをしたいと思います。
 三十二条の十四に職業紹介責任者というのがありますけれども、この点については、今現在、事業所ごとに選任が義務づけられておりますけれども、今回、届け出が事業主ごとに届け出るように変更になっておりますけれども、この点の配置については、事業所ごとの配置ということでいいわけですね。
戸苅政府参考人 今回、職業紹介責任者の選任要件について、現在は求職者五百人に一人、改めまして、職業紹介業務従事者五十人に一人程度、こういうことで考えておりますけれども、それぞれの紹介事業所には必ず一人置くというのは、先生のおっしゃるとおりだと思いますので、そういう方向で進めたいと思っています。
金子(哲)委員 次に、もう一つ確認しておきたいんですけれども、これも既に質問が他の委員から出たことですけれども、林業労働における派遣の関係であります。
 前回のときも、この林業現場における派遣問題についてはいろいろ論議があったようであります。そして、一定の指針の中で、いろいろこじつけというとあれですけれども、いろいろ理由があって派遣対象から外されたということになっておりますけれども、先日も聞いておりますと、製造業が今回解禁になって、前回は製造業の理由もつけながらあったんですけれども、実は、やはり労働現場の実態ですよね。
 やはり労働現場の実態と、それから特に林業、これは今、林業労働者が非常に高齢化をして、そしてまた減少している。しかし、一方では、地球温暖化の対策とかを含めて、林業の再生なども言われているわけですね。
 そういう全体の政策の中でもやはり派遣労働というものを位置づけるような形、禁止を位置づけるような形でやっていかないと、何かいろいろやってみる、そして現場は、林業における労働災害の発生頻度というのは、全産業の平均から比べても十倍ぐらい高いということが林業の職場の人たちから言われているわけですよね。そうすると、全産業でも最も高いと言われておりますし、それから、この前ここまでが規制があったかどうかわからないですけれども、例えば死亡事故がほとんど減らずに来ているわけですけれども、そういう死亡事故というのは伐採作業中に非常に多く発生しているわけですね。
 そうしてみますと、そういう観点からも、今後の派遣労働の禁止、非常に拡大をされましたけれども、やはりそういう安全労働とか全体の政策とかいうことも含めて林業問題というのを考えるべきだというふうに思っておりますけれども、林業現場への派遣の問題について、改めてお伺いしたいと思います。
戸苅政府参考人 林業、現在これはネガティブリストの方に入っておりませんので、林業の業務を単体で取り上げますと、これは労働者派遣の適用対象になっているということであります。
 ただし、現在の運用をどうしているかといいますと、これはかなり、先日五島先生からもいろいろおっしゃられましたけれども、わかりづらい運用と言われると返す言葉がないのでありますが、今の運用を申し上げますと、造林作業のうちの地ごしらえの業務、これは建設現場の整地業務と同じだということで建設業務扱い、それから植栽の業務についても、土地の改変が行われるということで、これも建設業務扱いということで適用除外といたしております。
 そのほか、素材生産の作業で伐採ですとか枝払いですとか集材ですとか造材ですとか、これについては、木の加工ということなので、現在は製造業に当たるということで派遣の適用除外になっているわけですが、今度、物の製造も対象になるといったときに、この部分をどうするかということであります。
 これは個々のケースで判断させていただくということでありますが、今申し上げた素材生産の作業に当たって、作業道をつくったり、あるいは土場の整備を行ったりということで、建設業務に該当するものがその当該派遣労働者の方の業務の一部にあれば、これは一部でもあれば建設業と林業との併用ということになりますので、これは派遣法の派遣の適用除外になるということで、そういった運用になるというふうに考えています。
金子(哲)委員 先ほど私が申し上げましたように、今、林業それ自体が新しい林業労働力の育成なども図らなければならない状況の中であるわけですから、やはりそういう政策的な問題も全体として考えていく必要があるんじゃないかということだけ御指摘しておきたいと思います。
 さて、私は前回も言いましたように、今回の派遣労働全体が、期間の延長、それから製造業にまで拡大をして、非常に派遣労働市場が広がっていく、そうしてまた問題も多くなってくるというふうに思うんですよね。
 その中で、今回、本来ならもっと大きな、もう一つの大きな柱として、先般も言いましたけれども、派遣労働者のいわゆる均等待遇というか、そういった労働条件を含めた問題がもっと手を加えられるべきだった、もっと政策的に前へ出てくるべきだったというふうに思うんです。
 その中で幾つか御質問したいと思いますけれども、この間も質問しましたけれども、時間外労働のことなんです。
 これだけ職域が広がりますと、時間外労働の現場が非常にふえてくる。時間外が非常にふえている。そしてまた、作業実態、仕事の実態の中にも、例えばノルマ制とかいろいろなことがあって、時間外労働をやらなきゃいけない状況があるわけです。
 私は、この前も言いましたけれども、これだけ派遣労働の場所が広がっていったら、やはり、先ほど来ずっと論議の中で、派遣元と派遣先の、雇用関係とかいろいろな労働基準法上のことを言われておりますけれども、基本的に大事なところは押さえながらも、少し実態に合った見直しをしなければならないと思うんですよ。
 例えば、三六協定のことをこの間もお話ししましたけれども、派遣元と雇用関係にあるから三六協定をやるというわけですけれども、派遣元はどんな職種にもこれから派遣は可能なわけです。にもかかわらず、三六協定は派遣元がやる。実際の労働実態とは関係なく、三六協定を最大限結んでおく、そして派遣先の要請にこたえられるようにするというようなことが今できるわけですね。
 そして、実際上、派遣先へ行ってみると、私が知っている職場でも、私がかつて働いていた職場でも、例えば、三六協定があっても、労使間の中で一週間に一回は時間外をしない日にしようとかいうことを決めて、時間外拒否の日とかいうのを決めてやるわけです、週に一回ぐらいは。ところが、派遣労働者はこれが適用されないから、常用の人たちは休んで、時間外をきょうはやらないという日も無条件でやらされる。こういうことが、実際の労働、同じように働いている人たちの中に大きな差が出ている。だけれども、雇用関係は、三六協定といったって、実質上、命令権者が派遣先にあるというような、明らかに矛盾なわけですよ。
 だから、労働基準法が、派遣労働法をつくられたときに一定に整理はされたかもわかりませんけれども、さらにそれが広がっていくという状況の中で、従来と同じような考え方だけでいいのかということを思うわけですよね。そして、現実的に正職員との格差が拡大をしていく。こういう点は、時間外労働のあり方、協定のあり方も含めてやはり見直し、検討しなければ、この問題は解決しない。
 さらに、これだけ広がれば、最大限三年間も働くようになれば、それだけ常用雇用と同じような状況になって働きながら、しかしそうした問題は、そこの現場の正職員とは違う対応でやらなきゃいけない。それが下がっておればいいですよ、守られていけば。逆ですから。派遣労働者の方が正規雇用の職員よりも労働時間なんかも長期になる。しかも、拒否できない。拒否すれば直ちに中途解約になる。
 こういうことに対して、問題ありとは考えられないでしょうか。その点、どうでしょうか。
松崎政府参考人 労働者派遣という就業形態に対しまして、労働基準法等の適用については従来から申し上げておるとおりでございますけれども、基本的には、結論を申し上げますと、就業の基礎でございます労働契約の当事者であります派遣元が基本的な使用者としての責任を負うということを原則として考えております。そういうふうに派遣元に責任を負わせたのでは実質的に派遣労働者の保護に欠ける面、そういった面については派遣先に使用者としての責任を負わせるというふうに整理してございます。
 三六協定についてでございますけれども、これは賃金支払いと同様に、特に超勤の場合は、三六協定を結び、なおかつ残業手当を払うということが労働基準法の条件でございます。まさにワンセットになっているわけでございまして、特に、具体的な超勤の命令とは違いまして、労働条件の枠組みということで基本でございますので、これは原則どおり派遣元の責任というふうに考えております。
 また、実際を考えた場合におきましても、派遣先に行ってみないと超勤とかまた時間外労働、休日労働の限度がわからないというのではなくて、やはり常用型はもちろん登録型についても、登録しているわけでございますので、自分の労働条件の枠組みというもの、こういうものをあらかじめ知っておけるといったメリットもあろうかと思っております。
金子(哲)委員 時間のこともありますから。
 今の答弁は実態を全く無視されていると思うんですよ。時間外をやってプラスアルファの時間を払うとかいうのは当たり前のことで、しかし実態が、命令権者自身が派遣先にあるわけでしょう。本人同意も何も、本人との関係は、では、そこで命令を受けたとき、きょうはできませんということを言うのは、派遣先に対して言うわけでしょう。派遣元に対して言うわけじゃないでしょう。そういう具体的な、実態的な問題があって、それを命じた上には、最後には時間外の、今では百分の百二十五の割り増し賃金を払うということはありますけれども、しかし、そういう事実上の長時間労働を命令する権者のところには何の制約もないというのがおかしいというわけです。
 さらに、同じ職場で働いていて、組合によれば、百分の百二十五を超えて時間外手当を支給できる条件を持っているところもあるわけですよ。同じような条件を持ちながら、派遣元との雇用関係だけでそういうことをやっていいのか。
 私は、今はそういうことだろうと思うけれども、今これだけ、これから広がったところの状況の中で、今言われるようなことだけで律していいのかということですよ。それで現場にいる派遣労働者の権利というようなものが保護されていくんですか。
松崎政府参考人 確かに実態から見ればそういう点があろうかと思いますけれども、ただ、これは法律的に言えば、事業主が違いますので、事業主との相互の間で決められております労働条件が違うのはやむを得ないというふうに考えております。
金子(哲)委員 これ以上この論議をしても、非常に冷たいということを私は感じるしかないわけですけれども、私が言うのは、今までと違って、これからさらに拡大するときに、全く検討の余地もないという問題とは違ってくるでしょうと。しかも、期間も長くして働かせながら、そういう通り一遍の答弁だけであれば、派遣労働者の労働条件というのは上がってこないと思いますよ、大臣。
坂口国務大臣 今お話を聞いておりまして、この問題は派遣元とそれから派遣先の問題でもあると思うんですね。AさんならAさんという派遣者を派遣いたしますときに、この人を派遣しますけれども、この人の労働条件については、例えば時間いっぱいなら時間いっぱいにしますよとか、あるいはまた時間外の必要なときには週何時間まではいいということでしてくださいとか、派遣労働者も含めたいわゆる働く労働条件というものを先に話し合うかどうかということに私はかかってくるというふうに思って聞いておりました。
 したがいまして、派遣元が派遣労働者を派遣いたします派遣先に対しまして、一番最初のときにどういう契約を結ぶか、どういう条件で派遣をするかということにかかってくると思いますから、そこのところを明確にすればよろしいのではないかというふうに思う次第でございます。
金子(哲)委員 時間がないので、この問題はあれですけれども、ただ、今言われたようなことだけでは、現実の問題としては、実態上そぐわなくなる状況がもう目に見えている。現実が今そうなっています。
 例えば、就業条件の事前明示の徹底と言われても、これすら守られていない。東京都の調査でも、事前文書通知を受けた、三割から四割、派遣日以降を合わせても六割から八割、二割から三割は違反をしている。それから、業務内容が実態と違ったと感じている人は四人に一人もいる現実の姿も見てみますと、そうなってまいりますと、派遣先というものが、働いていただく労働者に対しての労働条件とかそういったことに対してもっと責任を持つ体制というものをつくるようにしなければ、派遣先の方がやりたい放題ですよ。そして、気に入らなかったら切ればいいんですから。これだけ強い通常の正規雇用と違う立場に置かれて派遣労働者というのは労働現場にあるということを、もっとやはり厚生労働省の中でも実態として認識していただかなければならないと思います。
 そこで、きょう先ほどの質問に出ましたけれども、こういうだけのいろいろな問題がある中で、例えばそういった問題に対して、派遣先に対して労働者というのはさまざまな申し入れをするということを行いたい、そしてまた組合の話が出ました。労働組合、それは雇用主との関係だというお話がありましたけれども、例えば、派遣現場でさまざまな派遣元から来られた派遣労働者が集まって労働組合を結成して、派遣先に交渉を求めたときは、これは交渉に応じることはできないんですか。
青木政府参考人 団体交渉は、労働契約の当事者である使用者と、もう一方の当事者である労働者の団体であります労働組合が労働条件について行うというものであります。したがって、労働契約上の当事者でなく、労働条件も決定できない派遣先事業主に団体交渉応諾義務を負わせることは適当ではないというふうに考えております。
金子(哲)委員 団体交渉というのをどういうふうに位置づけるかということがありますけれども、ただ、先ほど来話があるように、安全上の管理の問題、時間外労働も命ずる権利を持っている。労働者を監督し、時間外労働まで命ずるここまでの権利を持っている人たちに対して、その問題が起こって、話し合いもできないということなんですか。その点はどうですか。そういう問題が惹起したとき、それは雇用者の問題だけだということにならないでしょう。派遣先にも一定の責任を負わせている限りは、それらに関して派遣先だって話し合いに応じるべきじゃないですか。
青木政府参考人 労働組合法上の団体交渉に応ずる義務という法律上の義務につきましては、今申し上げましたように、そういうことを一方当事者として決めることができるところが負わなければならないというふうに思いますけれども、労働組合法の規定を離れて、そういったことを事実上お話をするということを労働組合法が規制しているわけではございません。
金子(哲)委員 おっしゃるとおりで、労働組合法上のことはなかなか難しい問題があると思います。
 ただ、先ほど私が申し上げておりますように、こういう問題がこれからさまざま惹起をしてくるという事態が想定されるわけですね。そういう場合に対して派遣先も誠意を持って対応する。派遣労働者にかかわる例えば幾つかの限定されたもの、安全の問題とか、さらには、福利厚生の問題は派遣元が考えなきゃいけないことだそうですけれども、時間外労働の問題だとか、不当に中途解約をされたとか、こういった問題は派遣先との関係であるわけですよね。やはりこういう問題について一定の何らかの話し合いができるようなルールというものをつくっていかなければ、派遣先がやりたい放題ということを見逃していくことになるんじゃないでしょうか。
 そこらについて、私は、労働組合法の問題は別にして、これから将来この派遣法の改正によって起こるだろう問題に対して、派遣先もそれぐらいの責任を持っていくということは、負わせていかなければ、先ほど来言っているように、やりたい放題になるんじゃないですか。その点についてはどうでしょうか。
戸苅政府参考人 組合法上の規定は先ほどの説明のとおりだろうと思いますが、派遣法の四十条で、派遣先は、そこで働いている派遣労働者から派遣就業に関して苦情の申し出を受けたときは、派遣元事業主との緊密な連携のもとに、誠意を持って遅滞なく、苦情の適切、迅速な処理を図らぬといかぬ、こういう規定になっているわけであります。これを受けまして、派遣先の講ずべき措置に関する指針におきまして、派遣先は、派遣労働者の苦情の申し出を受ける者、受ける者というのはだれが受けるかということでありますが、それから苦情の処理をする方法、それから派遣元事業主との連携を図るための体制、こういったものを労働者派遣契約において定めること、こういうふうになっています。このあたりをやはりきちんと担保していくということが、先生の御指摘にこたえる一つの方法かなというふうに思います。
 それからさらに、指針においては、こうした申し出を受けたことを理由として派遣労働者に対して不利益な取り扱いをしてはならぬ、こういうふうになっています。このあたりについて、確かに製造業派遣が行われるようになり、あるいは派遣期間も二十六業務以外については最長三年まで認めるようになるということで、さまざまな派遣が行われ、派遣労働者もふえるということでありますから、このあたりがきっちり行われるように我々も努力していかぬといかぬ、こういうことだろうと思います。
金子(哲)委員 先ほど言った就業条件の事前明示のことですけれども、本来、よほどの理由がない限り、就業条件の書面明示をうたっているわけですけれども、その点について、例外規定を外して、きっちりと事前文書の通知の完全実施ということを指導していただきたいと思うんですけれども、その点についてはどうでしょうか。
戸苅政府参考人 派遣就業にかかわる基本的な事項というのは、これはある意味では、労働者にとっての労働条件、雇用主と労働者との関係の労働条件の明示と同じように重要な事項であります。そういった意味で、文書で明示というふうなことになっているわけであります。
 ただ、今お話しのように、緊急に派遣を受け入れぬといかぬ、例えば、あしたどうしても仕事があるけれども、その仕事をやる労働者が急に病気になっちゃったというふうな場合に、やはり派遣を受け入れないといかぬ。そのときに、もうとにかく細かいことを文書で明示している暇がない、あるいは詳細を決めている暇がない、こういった事態もないわけじゃないわけで、これも一律に法律で禁止してしまうということはちょっと無理ではないかということで、これについては書面以外の方法で明示するということでやることになっています。
 ただ、その場合でも、派遣労働者から個々に請求があった場合には、その派遣の期間が一週間を超えるときは、派遣開始後遅滞なく就業条件を文書で明示せねばいかぬ、こうなっていますので、これが適切に行われさえすれば、労働者の保護上、そう大きな支障は生じないんじゃないかというふうに思います。
 ただ、この明示が適切に行われないという場合には、派遣法三十四条違反ということで、これも大臣による指導助言、改善命令、事業停止命令あるいは三十万円以下の罰金ということがありますので、ここら辺を使って、先ほど何か事前明示は四割しかないじゃないかというようなお話もありましたが、きちんと行われるようにしていきたい。それで、まだ弊害があるといったときに、先生がおっしゃるようなことを検討するということだろうと思います。
金子(哲)委員 ぜひ実態をしっかりまた調査していただいて、その点は最低の条件だと思いますので、やはりきっちりとした指導をしていただきたいと思います。
 これはなかなか改善ができないことですけれども、最近は派遣労働者の賃金がどんどん下がっているという問題があるわけですよね。これは、通常の雇用契約と関係なく、派遣元と派遣先の契約によってやられていく。しかも、今日の厳しい状況の中では、これから派遣会社がふえればふえるだけ、競争制、入札制のような形でその金額が決められていく。結局、そのしわ寄せは全部派遣労働者が負うことになるわけですね。
 その点についてはやはり、もちろん今各都道府県で決めている最低賃金よりも高いかもわかりませんけれども、このような、事実上ほぼ正規雇用の労働者と変わらない労働実態にありながら、賃金格差が非常に広がっていくという問題については、今後もっとしっかりした対応を、対処というか、調査も含めて対処すべきだというふうに考えますけれども、いかがですか。
戸苅政府参考人 私どもで調査している、把握している範囲では、派遣料金は下がっておりますけれども、派遣労働者の賃金は、いろいろな統計調査を見る限り、低下ということにはまだ至っていないんじゃないかというふうにも思っています。ただ、先生おっしゃるように、これから先何が起きるかわからぬということは否定できないわけであります。
 ただ、その場合に、派遣の料金とそれから賃金、これはそれぞれ違うメカニズムで決まっているということだろうと思います。そういった意味で、適正な賃金水準がどうなのかというあたりについて、派遣労働者が個々に知る、あるいは派遣元事業主がきちんと知るということは、そういう意味では、メカニズムがうまく動くというためにも重要なのかなというふうにも思いますので、派遣労働者の賃金がどういった水準にあるのかというふうなことについて、既存の調査もありますししますので、何かそういったものを派遣元事業主なり派遣労働者なりの参考になるように、要するに賃金決定の参考資料になるようにというふうなやり方等あるのかなと思いますが、おっしゃる趣旨を踏まえて、どういったことができるのか、ちょっと検討してみたいと思います。
金子(哲)委員 紹介予定派遣について幾つか質問しようと思っておりましたけれども、小沢委員からもほぼ同じような質問が出ましたので、一つだけ申し上げておきたいと思います。
 もし紹介予定派遣によって受け入れた人を実際に雇用しない場合、先ほど局長は、それは派遣労働者側にもいろいろ事情があるでしょうというお話がありました。もちろんそうでしょう。しかし実際上は、派遣先の方、いわば雇用主になるべき事業者の方が力を持っているわけでして、私は、少なくとも、そういうことができない場合は、その理由をしっかり文書にして明示するということが最低の条件、必要なことだと思うんですけれども、その点についてどうですか。
戸苅政府参考人 確かに、紹介予定派遣をする際に、これは紹介予定派遣であるということを派遣元が派遣労働者に明示した上で開始されているわけであります。そういった意味では、派遣労働者も、両者の話し合いがつけば就職に至るという期待のもとに働いているということは否定できないというか事実だろうと思います。
 ただ、いろいろな局面局面がありますので、我々としては、紹介予定派遣を悪用して、本来雇うつもりもないのに紹介予定派遣を使ってしまうとか、そういったケースも考えられますので、そういったケースの防止策として、今委員おっしゃったように、何で採用しないのか、不採用の理由を説明するというふうなのも一つの方向かなと思います。
 ただ、文書でというところまで強要できるかどうかというあたりになりますと、このあたりはちょっと審議会の意見も聞いてみぬといかぬということでありますけれども、やはりその悪用についての何らかの歯どめ措置というのは必要だろうと思いますので、これは施行に向けて検討させていただきたいと思います。
金子(哲)委員 その点は、この紹介予定派遣が悪用されないということの中には、出口をしっかりとある程度決めていくということが非常に重要だと思いますので、私は、そういう中で、やはり責任を持つという意味で、文書によって明示するというのは最低の条件だというふうに思いますので、ぜひその方向も含めて検討していただきたいと思います。
 最後になりますけれども、派遣労働者の受け入れの、事前に職場での意見を聞くという問題でありますけれども、職場の過半数の意見を聞くということになって、これは今までも論議になっているように、意見を聞くということだけでありますけれども、私はちょっと一つだけ違う角度で質問したいんです。
 これは三六協定なんかもそうで、労働基準法なんかにもありますけれども、労働組合がない場合は職場の過半数を代表する者と、労働組合があれば労働組合と第一義的にはこの話し合いをするということになると思います。そうでない場合は職場の過半数を代表する者ということですけれども、そもそもこの過半数の代表とは一体何なのかということです。
 少なくとも、どのような民主的な手続によって選ばれたかということは極めて重要だと思うんです。表現上は、職場の過半数を代表する、民主的という言葉で選ばれたということになると思いますけれども、少なくとも、民主的とは一体何なのか。しかも、会社の経営の側とどこまで線引きするのかというようなことがあるわけですよね。その点について明確に、職場の過半数というものの定義をお聞かせいただきたいと思います。
戸苅政府参考人 これについては、今お話しの三六協定の締結当事者たる過半数代表につきまして、労働基準法施行規則の第六条の二で、「法」、これは基準法ですが、基準法「四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。」それから「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。」こういう規定がありますので、このあたりを基本に方針を決めていきたいと思っています。
金子(哲)委員 時間になりましたので、終わります。
中山委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。
山井委員 山井和則です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、内閣提出、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案に反対する立場から討論を行います。
 今回の改正は、厳しい雇用失業情勢、働き方の多様化等に対応するため、雇用の安定や常用雇用との調和等にも配慮しつつ、職業紹介事業や労働者派遣事業に係る規制の見直しをすることとしておりますが、その内容は、派遣先、派遣元の都合だけを優先し、これ以上できないというところまで規制緩和を行うだけの内容となっております。
 景気と雇用情勢は悪くなるばかり、リストラ、人員削減が驚きもなく日常的に行われ、残った社員は残業続きで過労死寸前、職を探そうにも正社員の働き口はほとんどなく、不本意ながらパートや労働者派遣で働かなくてはならない人たちの声が届いているでしょうか。賃金も労働条件も悪い、不安定雇用がますますふえ続けるのであれば、国民の将来不安は決して消えることなく、家計の消費も萎縮したままであります。日本の未来は全く見えません。
 本来ならば、今回の改正に当たっての論点は二つ、派遣労働者が本当に安心して働き続けられる状況をつくり、対等に交渉ができる雇用環境を保障していくこと、そして、リストラの波の中で、正規従業員の派遣社員化を安易に促進しないための実効性を確保することでありますが、景気も雇用も最悪の状況において、派遣先にとっての安い労働力の調達、使い勝手のよさだけが強調されていることは審議の経過からも明白であります。
 特に、我が党議員が質疑において明らかにしたとおり、労働者派遣の臨時的、一時的という枠は名ばかりであり、派遣期間等についての職場への通知と意見聴取についての実効性のなさ、三年を超えたときの雇用契約の申し込み要件の不明瞭さ、物の製造業務への派遣労働の解禁に当たっての不十分な労働者保護措置、派遣労働者の特定を可能とする紹介予定派遣の位置づけのあいまいさなど、すべて運用任せの不安定な中身であることが露呈しております。
 本改正案により、小泉政権の言う改革が極めて小手先にすぎず、二十一世紀の雇用を見据えた法整備として極めて不十分であり、後退であることを指摘し、私の反対討論を終わりにいたします。(拍手)
中山委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党を代表して、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。
 今回の改正案は、労働者派遣事業における対象業務や派遣期間の制限という、これまで常用代替への歯どめとされた措置を大きく崩すことによって、財界、大企業などの求める一層の規制緩和の要求にこたえるものであり、到底認められません。
 反対する第一の理由は、派遣期間の延長や制限外しが、派遣労働は臨時的、一時的な労働力という現行派遣法の考え方そのものを変質させ、常用労働者を減らし、雇用も収入も不安定な派遣労働への置きかえをさらに進めることになるからです。
 第二に、物の製造への派遣労働の解禁は、偽装請負など、横行する違法派遣の実態を事実上容認するだけでなく、製造現場での正社員、派遣労働、請負などさまざまな労働者の混在を広げることで、安全面を含め、労働条件の悪化を生みます。これは、物づくりの技能の継承、発展にも重大な困難を持ち込むものです。
 第三に、事前面接、履歴書送付を認める紹介予定派遣は、派遣先企業は派遣労働者を選別できないという現行派遣法の原則を崩し、労働者に選別と採用差別をもたらします。また、派遣期間が試用期間としての性格を持ち、正社員への採用を口実に、過酷な労働の押しつけや、使い捨ての事態すら生みかねません。
 さらに、雇用契約の申し込みの義務化では、派遣先の雇用意思が前提とされ、違反した場合の是正措置も現行の規定と変わらず、その実効性は期待できません。安全衛生に関する措置の改定なども、労働条件の改善としては余りに貧しいものです。
 労働者派遣事業をめぐっては、派遣元、派遣先での違法状態が広く見られ、その上、指導監督行政に改善すべき数多くの問題があります。こうした現状のもとでは、派遣事業を拡大する法改正ではなく、違法状態をなくし、現行派遣法と関係法令の遵守、周知徹底、指導監督の強化こそ求められます。
 また、職業安定法の貸金業等の職業紹介事業の兼業禁止規定の削除も、サラ金など無法な取り立ての横行と一体の強制的な労働に道を開く危険を持っており、容認できません。
 最後に、労働者派遣法、職安法の一部改正案の廃案を重ねて求め、反対の討論といたします。(拍手)
中山委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、職業安定法及び労働者派遣法に関する法律の一部を改正する法律案に反対する立場から討論を行います。
 小泉政権が誕生して二年がたちました。小泉政権が自信満々に打ち上げた骨太の改革は、日本国自体を漂流させかねない本性が一層明らかになっています。
 小泉改革の矛盾は雇用面において際立っています。昨年度の完全失業率は過去最悪を記録するなど、小泉路線の失敗は、ごまかしようのない数字によって立証されました。
 今や、国民生活の疲弊と同義である骨太改革の破綻は、だれの目にも明らかです。その転換なくして、経済活性化も雇用失業情勢の好転も望むべくもありません。
 今必要なことは、このような雇用不安を解消することであります。にもかかわらず、今改正は、派遣期間の延長、物の製造業への派遣の解禁など、さらに将来不安を惹起せずにおかないものであります。このような労働者派遣法改悪を強行しようとすることは、まさに国民生活に背を向ける現政権の性格をあらわに示したものであります。
 改正の目的には、多様な就業形態を持った柔軟な労働をつくり出すことで、雇用の安定を目指すという相も変わらぬお題目が掲げられております。政府の言う労働の柔軟化は、我が国の現状からすれば不安定雇用を指すにもかかわらずであります。
 既に九九年の改正で、派遣労働市場は大きく変化しています。低賃金で短期契約を繰り返すなど、極めて不安定な働き方が広がっていることは、各種の調査でも明らかであります。今回の改正は、経営側の論理のみが尊重され、労働者の抱えている本質的な問題に何らこたえるものとなっていません。
 改正を行いたいならば、まず今起きている派遣労働現場における問題を解決するために、派遣労働者の保護、派遣元、派遣先の連帯責任の強化、さらに均等待遇原則の確立こそが優先されるべきでした。
 この基本を踏まえない見直しは、改悪以外の何物でもないということを断言して、社民党の反対討論といたします。(拍手)
中山委員長 以上で討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
中山委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
中山委員長 この際、本案に対し、長勢甚遠君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山井和則君。
山井委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について適切な措置を講ずるよう努めるべきである。
 一 一年を超え三年以内の期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けようとする場合には、派遣先において労働者の過半数で組織する労働組合等からの意見聴取が確実に行われ、意見が尊重されるよう派遣先に対する指導に努めること。
 二 いわゆる「リストラ」等の雇用調整を実施中及び実施直後に、当該雇用調整で解雇した労働者が就いていたポストに労働者派遣を受け入れる場合には、派遣先は受入れ期間の設定など適切な措置を講じ、労働者の理解を得られるよう努めなければならない旨指針で明記し、その周知に努めること。
 三 派遣元事業主は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、その雇用期間に関し、当該労働者の希望及び当該労働者に係る労働者派遣契約の労働者派遣の期間を勘案して、当該労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めなければならない旨指針で明記し、その周知に努めること。
 四 派遣先は、三年までの間で派遣可能期間を定めることが可能となったことを勘案し、労働者派遣契約の労働者派遣の期間に関し、派遣元事業主と協力しつつ、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めなければならない旨指針で明記し、その周知に努めること。
 五 物の製造の業務等への労働者派遣事業の拡大に当たっては、請負等を偽装した労働者派遣事業に対し、その解消に向け労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準等の周知徹底、厳正な指導監督等により、適切に対処するとともに、請負に係る労働者の保護のため、請負により行われる事業に対し、労働基準法等労働諸法令が遵守される取組を強力に進めること。
 六 紹介予定派遣について事前面接等労働者を特定することを目的とする行為に係る規定を適用しないこととするに当たっては、濫用防止を図るための措置を指針で定め、適正な運用の確保に努めること。
 七 貸金業者の職業紹介事業との兼業は、債務者に事実上の強制労働や中間搾取等が発生することが懸念されることから、許可基準において必要な対応を図ること。
以上。
中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
中山委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
中山委員長 次に、内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
    ―――――――――――――
 労働基準法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
坂口国務大臣 ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 我が国の経済社会を取り巻く状況が大きく変化し、産業・雇用構造の変化が進んでいる中で、我が国の経済社会の活力を維持向上させていくためには、労働者一人一人が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大するとともに、働き方に応じた適正な労働条件を確保し、紛争の解決にも資するよう、労働契約や労働時間など働き方に係るルールを整備することが重要な課題となっております。
 このため、労働契約や労働時間に係る制度について、多様な働き方に応じた実効あるものとするための見直しを行うこととし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
 第一に、有期労働契約に関する見直しであります。
 雇用形態の多様化が進展する中で、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにしていくため、有期労働契約の契約期間の上限を一年から三年に延長するとともに、高度の専門的な知識等を有する者や満六十歳以上の者については、その期間の上限を五年とすることとしております。
 また、有期労働契約の締結時及び期間の満了時における労働者と使用者との間の紛争を未然に防止するため、厚生労働大臣が、使用者の講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項等についての基準を定めるとともに、使用者に対して必要な助言及び指導を行うことができることとしております。
 第二に、解雇に係る規定の整備であります。
 解雇をめぐる紛争が労働条件をめぐる紛争において大きな割合を占め、また増加している現状にかんがみ、このような紛争を防止し、その解決に資するため、使用者がその有する解雇権を濫用した場合には無効となることを内容とする規定の整備を行うこととしております。
 また、解雇を予告された労働者は、解雇前においても当該解雇の理由について証明書を請求できることとするほか、就業規則の必要記載事項に解雇の事由を含めることとしております。
 第三に、裁量労働制の見直しであります。
 裁量労働制が多様な働き方の選択肢の一つとして有効に機能するようにするため、企画業務型裁量労働制について、その導入の際の要件、手続を緩和するとともに、裁量労働制が働き過ぎにつながることのないよう、専門業務型裁量労働制においても、健康・福祉確保措置等の導入を必要とすることとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る二十三日金曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四十三分散会


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