衆議院

メインへスキップ



第2号 平成15年10月3日(金曜日)

会議録本文へ
平成十五年十月三日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 中山 成彬君

   理事 熊代 昭彦君 理事 長勢 甚遠君

   理事 野田 聖子君 理事 山本 幸三君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

   理事 小沢 和秋君

      岡下 信子君    鴨下 一郎君

      木村 義雄君    北川 知克君

      後藤田正純君    佐藤  勉君

      竹下  亘君    竹本 直一君

      平井 卓也君    増原 義剛君

      松島みどり君    三ッ林隆志君

      宮澤 洋一君    谷津 義男君

      山口 泰明君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    渡辺 博道君

      家西  悟君    石毛えい子君

      大石 尚子君    大石 正光君

      大島  敦君    加藤 公一君

      鎌田さゆり君    五島 正規君

      佐藤 公治君    武山百合子君

      水島 広子君    池坊 保子君

      桝屋 敬悟君    丸谷 佳織君

      山口 富男君    阿部 知子君

      金子 哲夫君    江崎洋一郎君

      山谷えり子君    川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      谷畑  孝君

   厚生労働副大臣      森  英介君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   杉本 和行君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        田中壮一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局国立病院部長)         冨岡  悟君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 矢部  哲君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三日

 辞任         補欠選任

  棚橋 泰文君     山口 泰明君

  西川 京子君     増原 義剛君

  城島 正光君     鎌田さゆり君

  三井 辨雄君     大石 尚子君

  桝屋 敬悟君     丸谷 佳織君

  山谷えり子君     江崎洋一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  増原 義剛君     西川 京子君

  山口 泰明君     棚橋 泰文君

  大石 尚子君     三井 辨雄君

  鎌田さゆり君     城島 正光君

  丸谷 佳織君     桝屋 敬悟君

  江崎洋一郎君     山谷えり子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省入国管理局長増田暢也君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、財務省主計局次長杉本和行君、文部科学省初等中等教育局長近藤信司君、スポーツ・青少年局長田中壮一郎君、厚生労働省健康局長田中慶司君、健康局国立病院部長冨岡悟君、保険局長辻哲夫君、年金局長吉武民樹君、社会保険庁運営部長薄井康紀君及び国土交通省政策統括官矢部哲君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。家西悟君。

 御発言は着席のままで結構でございます。

家西委員 ありがとうございます。

 おはようございます。民主党の家西悟でございます。

 感染症予防医療法の改正ということで質問をさせていただくわけですけれども、まず、五年前に感染予防医療法、今回の改正の前のこの法案が提出されたときから、私は、この審議のさなかから、新感染症については国が責任を持ってしていくべきであるということを繰り返し訴えてまいりましたが、そのときは、都道府県知事が第一義に責任を負うものであってということで、そういう答弁を何度か繰り返しいただきました。

 にもかかわらず、今回、SARSの問題を振り返ったときに、私が最も心配していたとおり、国が責任を持ってこういう対応に当たっていこうというふうに法改正を出されるということになったことについて、まず冒頭、いかがお考えになられたのか、また、私が非常に危惧してきた問題について、それを全面的に否定されてきたのにかかわらず、今回なぜこういうふうに改正されるのか、その問題についてお伺いしたいと思います。大臣、よろしくお願い申し上げます。

坂口国務大臣 おはようございます。

 家西先生が五年前に御発言をいただいたということでございますが、先生の方が先見の明があったと申しますか、おっしゃったとおりになったわけでございます。

 御承知のとおり、台湾の医師が日本に参りまして、そして、帰国いたしましてからSARSを発病したという件がございました。そのときに、二府三県でございましたか、五つの府県にまたがって旅行をいたしまして、そのことが明らかになり、そして、その皆さん方にもお集まりをいただいて、いろいろ御審議をいただいた。しかし、その経路の発表の問題でございますとかさまざまな点で、やはり府県によって考え方の違いもあって、なかなか一つに統一できなかったというような経緯がございました。

 そうしたことがございまして、やはりここは国がリーダーシップをとるべきではないかという御意見が知事さん方からも実は寄せられたわけでございまして、そうしたことを踏まえまして、今後もそうしたことがあり得るということで、この点は改正をさせていただくということに踏み切らせていただいたところでございます。

家西委員 大臣、率直に認めていただき、ありがとうございます。

 私は、あのときには、SARSではなくて、O157の問題が中心ということであったように記憶をしております。しかし、私が最も危惧したのは、こういうような都道府県をまたがるような問題、全然今まで経験のないような未知、既知のウイルスが発生した場合に対応する場合は、やはり国が責任を負うべきだということを強く主張していったわけですけれども、残念ながら、当時はそれを受け入れてもらえなかった。しかし、今回そのように認めていただいたということは、非常にありがたく、また感謝を申し上げたい、率直に反省をしていただきたいなというふうに思います。これは当事者という立場からして、こういうものに対し危惧をしていたということを素直に認めていただければ幸いだったと思います。

 では、SARSについて具体的に御質問を申し上げます。なぜ今回一類感染症というふうにされたのか、その問題について御質問をさせていただきます。

 なぜ一類に分類されたのか、そのことについてですけれども、SARSの感染源は、香港のマンションの下水道の問題が指摘されたというふうに最近報道があったように思います。WHOの最終的な見解は、下水管が問題であったというようなことも言われたように思いますけれども、厚生労働省として、感染源はどこにあったと判断して今回このような法案の提出をされているのか、まずもってお伺いをしたいと思います。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 SARSの病原体につきましては、新型のコロナウイルスであるということが確認されております。

 しかし、その発生原因につきましては、患者から検出されたSARSコロナウイルスに遺伝的に極めて近いウイルスがハクビシン等の動物から検出されております。しかし、これらの動物がSARSの流行の発生原因となっているのかどうかという確証はまだ得られておりません。

 また、感染経路につきましても、現在の知見では、飛沫感染及び接触感染が主たる感染経路であると考えられておりまして、SARS患者と接した医療関係者や同居の家族など、患者のせきを浴びたり、たんや体液等に直接触れる等、濃厚な接触をした場合に感染すると考えられております。

 先生の御指摘のそのマンションの件でございますけれども、これは今回の流行の特異な例でございまして、恐らく、下水を介した飛沫感染というのが考えられるのではないかというふうに言われております。これは疫学調査の結果でございます。

 したがって、現時点でSARSに関する発生の原因あるいは発生経路等のすべてが解明されたわけではございませんけれども、今後もさらなる研究が行われる必要があって、我が国におきましても、現在種々の研究事業を行っているところでございます。

家西委員 私が指摘したのはアモイガーデンの話です。集団発生をしたマンション。これは、WHOが二十六日に、下水管に不備があったということがこれだけ多くの集団発生をさせてしまった原因であろうということを断定したわけです。

 そして、今回、この法律では一類に分類をしようと。まだ原因も特定されていない、はっきりしたことはわからない、感染源の宿主はどこにあるのか、それもはっきりしていない段階で一類に分類されるということは、非常に私はどうなのかなというふうに疑問を思いながらも御質問させていただいているわけですけれども。

 では、一類と二類の違いは何なのかというと、これは、建物への立ち入り規制、交通の遮断、そして無症状病原体保持者への適用に差があるというふうに思います。

 そして、現在一類に指定されているエボラやマールブルグやペスト等と同じようにSARSを扱うというその根拠を示していただきたい。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 一類と二類の蔓延防止対策の差というのは、今先生御指摘のとおりでございます。

 なぜSARSがエボラあるいはペスト等と同等になるのかということでございますけれども、SARSは、罹患した場合の致死率は大体一〇%ぐらいというふうに報告されております。また、ほかの一類感染症の致命率、例えばペストを見ますと、大体これも一〇%ぐらいというふうに言われております。重篤度という意味で非常に重篤の部類に分類されるのではないかというふうに考えております。

 また、直接血液や体液などに接触しないと感染しませんエボラ出血熱、こういうものと比較しまして、SARSの場合は飛沫感染により感染するということで、感染力という意味ではSARSの方が比較的強いというようなことも言えるのではないかというふうに思っております。

 それから、海外の症例でも、患者さんに関しては原則入院という扱いになりますし、また、建物への立ち入り制限等の措置もとられたという事例も聞いておりますので、その発生予防、蔓延防止のためには感染症法上最も重篤な一類感染症に位置づけるということが適当であるというふうに判断した次第でございます。

 また、この位置づけに関しましては、感染症の専門家から成ります厚生科学審議会感染症分科会において十分御審議をいただいた結果を踏まえたものでもございます。よろしく御理解のほどお願いいたします。

家西委員 エボラとかとは全然違うわけですよね、基本的に。そして、死亡率、致死率というものははるかに違うということも言えるんじゃないか。そして、建物の規制というものは、先ほど申し上げたアモイガーデンのように、不備があったということが一つ挙げられるのではないかというふうに私は思います。にもかかわらず、一類にあえてするということ、このことについては、ちょっと行き過ぎではないのかなというふうな危惧も私は正直言ってあります。そこまでしないといけないんだろうか。

 確かに、飛沫感染という問題、そこにはせきであったりとか空気に乗っかっちゃうというところの問題もあるんでしょうけれども、一番大きな原因として考えられるのは、やはり便を介してというのが最も高いんではないかというふうに思えてならないわけです。そういうような状況の中で、あえてこれを一類感染症にするということは非常にどうなのかなと。

 また、議論もあったというふうにもお伺いしております。審議会の場において、一類にするのか二類にするのかという相当な議論があったようにも聞き及んでおりますけれども、あえてこれを一類にしていくということは、それだけ慎重に扱わないと大変なパニックを起こすおそれもあるということもあわせて申し上げていきたいと思います。

 そして、具体的に申し上げますけれども、台湾人の医師であった一人の感染者が関西空港から大阪を経て関西を観光に来られたという事例があり、大変なパニックになったように思います。そして、後にその方がSARSであったということになったときに、マスコミ報道なんかでは、ある種犯人捜し的な様相を呈したように私は記憶にあります。

 そこで、何が言いたいかと申しますと、エイズパニックと言われる、一九八五年当時、神戸で女性のエイズ患者が発生したときと非常に似通った状態、そして大変な差別、偏見というものが生じた、あのようなことを二度と私は繰り返してはならないというふうに思うわけです。

 そこで、今回、厚生労働省として、どういうような広報、宣伝、国民一般へ周知をさせていくための手段を用いられようとしているのか、お尋ねしたいと思います。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 SARSに関します誤った情報の流布によりまして、国民が過剰な恐怖感を抱くなどのパニックが起きないよう、正しい知識の普及が非常に大切だというふうに考えております。

 SARSに関する知識の普及に関しましては、これまで、都道府県あてに通知を発出しまして国民、関係機関に周知徹底を図るとともに、厚生労働省のホームページにおきまして情報提供をしております。さらに、記者会見の開催等によりまして、メディアを通じました積極的な情報提供もしておりますし、国及び都道府県によります電話相談というようなものも実施しているところでございます。さらに、SARSに関しますリーフレット等の作成、配布なども行っておりまして、今後とも引き続き国民に十分な情報を提供していきたいというふうに考えているところでございます。

 また、現在、厚生労働科学特別研究事業におきまして、SARSに関するリスクコミュニケーション等について研究を進めているところでございまして、適切な情報収集、あるいは還元する、こういう体制の整備を今後とも図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

家西委員 それでは、もう少し具体的にお尋ねしたい点があります。

 SARSの問題で、リーフレットや、いろいろつくられるというようなお話は今お伺いしたわけで。ホームページ等々で広報していくと。しかし、現実、それを国民、一般市民がやはり見ないといけないわけですね。そのために職場や地域、学校、家庭などでどのような対策を講じ、差別や偏見が起こらないように考えておいでなのか、そのために文部科学省などとはどのような連携をとっていかれるおつもりなのか、その点について、厚生労働省、また文部科学省にもお尋ね申し上げたい。連帯ですね。どういうふうに連携をとっていくのか。

    〔委員長退席、山本(幸)委員長代理着席〕

田中(慶)政府参考人 御説明を申し上げます。

 SARSに関しましては、関係省庁の連絡会議というのを設けておりまして、その中で、蔓延防止対策に関して、議論といいますか、情報交換すると同時に、そのような偏見、差別に関しての対応といいますか、広報活動についても情報交換をしているところでございます。

田中(壮)政府参考人 文部科学省といたしましても、感染症につきましては、学校教育におきまして、正しい知識を身につけさせることによりまして、その予防を図るとともに、差別や偏見を払拭することが大切だと考えておるところでございまして、SARSに関しましても、本年五月に通知を発しまして、児童生徒等に対しまして、現在の知見のもとに、発達段階に応じた指導を行うことなどを通じまして、SARSを理由とした偏見が生じないようにすることなど、児童生徒等の人権に十分配慮する旨指導をしておるところでございます。

 今後とも、厚生労働省を初め関係省庁と十分連携を図りながら、文部科学省といたしましても、SARSに関する正確な知識や情報の収集、提供に努めまして、各学校において適切な指導が行われ、差別や偏見が起こらないように努力してまいりたいと考えております。

家西委員 なぜそのようなことを申し上げるかというと、この春の問題でひとつ考えていただいたらよくわかると思います。

 一つは、海外に留学をされている方、または在外で向こうに勤めておいでの方々が緊急避難的に日本へ帰られたときに、学校へ行けない、幼稚園へ行けないとか、また、職場においても、出てくるなとか、そういうような状況があったように報道がされました。どこから帰ってきている、発生地域から帰ってきたからという理由だけで、変な差別や、いわれのなき偏見、差別によって、来ないでくれとか、または学校で、あいつSARS違うかと子供たちが言われるようなことがあってはならない。

 だからこそ、これはきっちりとやっていただかないといけないということで、通知、通達、パンフレットを配るとか、そういうような問題だけではなくて、具体的に何をしようとしているのか。文部科学省、あわせて厚生労働省、職場においてそういうものを起こしてはならないというようなことをしっかりとやっていくのかどうか、その決意をもう一度お聞かせいただきたい。

田中(壮)政府参考人 委員御指摘のように、ことしの春におきましては、中国の日本人学校等から帰ってまいりました子供たちの受け入れについて、それをすぐ受け入れられないような状況が起こったり、学校の現場で、そういう中国から帰ってきた子供たちが、SARS、SARSといってからかわれるといったような問題が生じたわけでございまして、私どもといたしましても、今後とも、正しい情報を逐次各学校現場に提供いたしまして、各学校現場で正しい知識をもとに、そういう偏見や差別が行われることのないように、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

田中(慶)政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、SARSに関します不当な差別、偏見が起こらないように啓発に努めてまいります。

 また、それと同時に、これも繰り返しになりますけれども、厚生労働科学研究におきまして、リスクコミュニケーションのあり方というような研究もしております。科学的根拠に基づいて、こういう差別、偏見を少しでも少なくするような普及啓発活動、これに今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。

家西委員 ぜひともそのように取り組んでいただきたい。

 これは、幾ら言ってもむだではないと私は思っています。必要以上に言わないと理解を得ていかない問題だろうというふうに思っています。それこそ耳にたこができるというふうに言われるぐらい、やってもやってもまだそこにはあるわけです、差別、偏見というものは。そういうようなことをぜひとも心して今後も取り組んでいただければ幸いかなと思います。

 あわせて、大阪の事件で明らかになったように、今回、風評被害というものが、物すごい問題があったように思います。ホテル、旅館においては、お客さんが入らないとかキャンセルが相次ぐとか、そして、感染した方が観光に行かれた地域においては人が遠ざかるとか、ましてや、飛行機においては乗客が遠のくとかいったような風評被害。このような風評被害対策についていかがお考えなのか、厚生労働省含めて、御答弁いただければと思います。

田中(慶)政府参考人 SARS患者さんが発生した場合の情報の公開、公表につきましては、患者の人権に最大限の配慮をするというのは当然のことでございます。しかし、感染の蔓延防止を図るという立場からいいますと、やはり必要最小限の情報というのは公表せざるを得ないということでございます。

 こういう基本的な立場から情報の公開をしているわけでございますけれども、いわゆる風評被害といった問題が生じた場合には、公費を投入してこれを補償するというのは非常に困難ではないかというふうに考えております。ただ、SARSにより、売り上げの減少等、経営への影響を受けました中小企業の資金調達に支障を来さないよう、国民生活金融公庫のSARS相談窓口を通じました相談、あるいは各種貸し付け制度の弾力的運用、さらに衛生環境激変対策特別貸付制度の発動など、金融面からの支援を引き続き行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、現時点での医学的見地によりますと、SARSコロナウイルスは、患者自身と濃厚な接触をした場合に感染するもので、患者と同時期に施設等を利用していなければ感染の危険性はほとんどない、さらに、物を介した感染の危険性も非常に少ない、消毒が行われれば感染の危険はほとんどないということでございます。

 こういうようなことを、SARSに関する正しい知識をホームページや各種広報を通じて広く国民に啓発普及するというようなことをしまして、風評被害が生じないように適切な情報提供に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

家西委員 ぜひともそのようにお願いをしたいと思います。

 次の問題として、空港の検疫所におけるサーモグラフィーによる入国者の体温測定を義務づけするというふうに今回うたわれているわけですけれども、これを拒否した場合、いかようになるんでしょうか。罰則規定はあるのでしょうか。具体的にお答えいただきたいと思います。

田中(慶)政府参考人 検疫法の第十二条におきまして、検疫所長は、海外からの入国者に対して、必要な質問をすることができることとされておりまして、これに基づきまして、必要に応じて、発熱性の検疫感染症の流行地域からの入国者について体温を測定し、その結果の報告を求めているというところでございます。

 成田空港等の定期便の多い国際空港につきましては、一人ずつ測定する体温計による体温測定では時間を要しますので、そして到着客が停滞してしまうということで、サーモグラフィーによる発熱者の選別をして、体温計による体温測定をしているということでございます。

 こういう根拠に基づきまして、検疫所長は入国者に対して必要な質問をすることができるという条項に基づきまして行っている検査でございますので、これに対してもし拒否をするということであれば、既定の罰則、罰金がかかるというふうになっております。現在は三十万円の罰金ということになっております。上限が三十万円でございます。

家西委員 上限三十万円。きのうお伺いしたときには、勘違いされたのかどうかは知りませんけれども、質問の聞き取りに来られたときにお伺いしたときには、五十万円の罰金、禁錮六カ月というふうに言われましたけれども、これは違うんでしょうか。

田中(慶)政府参考人 今回の改正で、この条項に関します罰則も五十万円に引き上げられるということに……(家西委員「だったら、そう言えよ」と呼ぶ)済みません。

家西委員 今のは非常に問題ある発言だと私は思いますよ。三十万円と言いながら、今回の改正で五十万円になるなら、何で今回の改正で五十万円になるというふうに最初から答弁しないんですか。これはおかしいんじゃないですか、法案提出者のくせして。いいかげんなことを言ったらだめですよ。改正により五十万円になりますよ、体温計の測定を拒否しただけでそれだけの罰金がかかりますよということは、国民は知らないし、入国者は全然知らない。そういうものをちゃんとしておかないとだめじゃないですか。

 そのことについて、もう一度答弁してくださいよ。

山本(幸)委員長代理 田中健康局長、しっかり答弁してください。

田中(慶)政府参考人 説明の言葉が足りなくて、大変申しわけありませんでした。

 今回の改正によって、この検査を拒否した場合には、最大限五十万円の罰金がかかるというふうになる予定でございます。

家西委員 禁錮はないんですか。禁錮はされないんですか。五十万円以下の罰金になるんですか。それとも、禁錮はないということですか。

田中(慶)政府参考人 大変不正確な表現が二回続きまして、大変申しわけありませんでした。

 六カ月以下の懲役または五十万円以下の罰金ということになります。

家西委員 不正確過ぎるんですよ。

 非常に重要な問題です、これは。体温測定ぐらいとみんな思うんですよ。それを拒否しただけで五十万円の罰金か禁錮六カ月。へえっという話ですよ。そこを抜いて答弁して、いかにもこの法律は軽いものですよというふうに国民に虚偽をしているように私には聞こえました。そういうことがあってはならないということを再三にわたって言っているにもかかわらず、厚生省の責任者である局長がそのような御答弁を再三繰り返されるというのは、余りにもばかにした話ではないんでしょうか。(発言する者あり)そうだ。

 今、委員の中から、厚生省の体質だというふうにおっしゃいましたけれども、私もまさしくそのとおりだと思います。まさしくマジックをやろうとしているのか、国民をだまそうとしているのか、一体何なのかというふうに思えてならない。そこはしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 それで、あわせてお伺いします。

 今回、入国者に対して義務づけをするというふうに言われているわけですけれども、この入国者というものは、だれを指すのでしょうか。通常、入国者とは外国人のことを指すのではありませんか。日本国籍を有する者は帰国者と言うはずです。それは外国人に対しての差別じゃないのか。

田中(慶)政府参考人 検疫法上は、入国者というのは日本人を含めて、外国人と一緒に検査を受けるということになっております。

家西委員 法務省にお伺いします。入管法ではどのようにお考えなのでしょうか。

増田政府参考人 出入国管理及び難民認定法におきまして、入国の概念については、通常は外国人が我が国の領海または領空に入る意味で使われております。

 もっとも、この入管法の第一条に目的規定がございまして、そこでは、本邦に入国するすべての人の出入国を公正に管理するという表現になっておりまして、この場合には、「すべての人」とございますから、日本人を含めて、日本の領域内に入ることのほか、それに続く上陸及び在留を意味する言葉として使われているものと解釈しております。

家西委員 では、入国者というものは、すべての、日本国籍を有する者を含めてというふうに理解をしていいということですね。

 ということは、日本国籍を有する者も、拒否をすればすべて同じ扱いになるということですね、先ほどの話に戻しますけれども。というふうにとらえていいということでよろしいのでしょうか、局長。

田中(慶)政府参考人 結構でございます。

家西委員 そうしていただかないと、法のもとの平等性というものは担保できないのではないかというふうに私は危惧をしたわけです。これは、入国者に対して義務づけをするということは、外国人に対してだけなのかというふうに一瞬思いましたので、ここはきっちりと御答弁いただいてありがとうございます。

 すべての人に対してということになりますと、日本国籍を有していようが外国国籍を有する者であろうが、すべてに体温測定をやるということであろうと思います。

 そして次に、今回の問題について、感染症対策として、私は、三つの点が挙げられるのではないかというふうに考えます。まず予防、医療、ケアというこの三つが必要ではないか。

 その一つとして、N95と言われるマスクを初めとした感染症対策の医療器具、そういったものが医療機関に十分確保されているのか、まずはお答えいただきたい。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 SARSの感染を防止する上で、N95マスクの着用は極めて重要でございます。

 SARS患者や疑い患者が発生した際に診療を行うことになります感染症指定医療機関、さらにはSARS外来協力医療機関に対しまして、N95マスク等の感染防御資材、これにはガウンとかシューズカバーとかいうのも含まれますけれども、その備蓄のための国庫補助を行ってきたところでございます。また、都道府県におきましてもN95マスク等の備蓄を進めておりまして、必要時には一般の診療所等に供給できるような体制整備も行っているところでございます。

 それから、N95マスクにつきましては、主要な製造、輸入販売業者からその出荷数等につきまして定期的に報告をいただいているところでございますけれども、従来一カ月当たりの出荷数が二十万枚程度だったものが、最近ではその三倍以上の七十万枚以上が出荷されているというふうに聞いているところでございます。

家西委員 前回台湾や各国で起きたときに、こういったマスクが非常に不足した。そのときに、日本国内でも品薄状態が続くということがあったわけですから、こういうことがあればやはり問題が生ずるのではないかということを危惧してお尋ねしたわけです。ぜひともそういうものはしっかりと担保していただきたいし、確保しておいていただく方が無難ではないかな。転ばぬ先のつえではありませんけれども、そういったものをしっかりと準備していただく方が、いざ発生したときにパニック状態にならなくて済むのではないかということを私は思いながら御質問させていただいています。

 続きまして、予防面においてですけれども、何が最も大切であるかということについて、どこまで研究は進んでいるのでしょうか。お尋ね申し上げます。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 SARSにつきましては、十五年度におきましては、文部科学省科学技術振興調整費、それから厚生労働科学特別研究におきまして緊急的に研究費を確保しまして、各省、関係機関の連携のもと、SARSに関する診断法あるいはワクチン開発等の研究に取り組んでいるところでございます。

 前者、文科省の科学技術振興調整費の方では、主に基礎的な研究分野を担当しまして、SARSの迅速診断法の開発、ワクチン開発等に取り組んでおりまして、成果としましては、迅速診断法につきましては、各国と共同で現在試作品の検証というのが進められているところでございます。

 また、厚生労働科学特別研究の方では、主に診療や行政施策に密着した研究分野を担当しておりまして、SARSに関する情報収集、還元システムの開発、それから疫学調査とか院内感染対策、検疫等におきます各種のガイドラインの作成、それからリスクコミュニケーション、国と自治体との連携強化等に関する研究を行っているところでございます。院内感染対策あるいは疫学調査のガイドライン、これにつきましては、一部の作成が終了しております。SARSの情報システムにつきましては、ことしの冬の稼働に向けて現在設計中でございます。

家西委員 それでは、ここで厚生省の決意というか、お考えをもう少し、強い思いを述べていただければありがたいなと思います。

 私は、SARSを初めとする感染症対策は、一般医療とは異なり、国がコストをかけてでも国民の生命を守るという姿勢が大事ではないかというふうに思います。国民の健康を守るためにということは、国の国防とも相通ずるものがあるのではないか、そのように思います。

 国民の生命財産を守る国の責任について、厚生労働省として、国民の健康を守るという意味からして、どのようにお考えなのか。確固たる姿勢で臨むんだという決意をお述べいただければありがたいなと思います。

坂口国務大臣 先ほどから御質問をずっと聞いておりまして、大変重要な点を御指摘いただいているというふうに思っております。

 マスクの件につきましても、ことしの六月ごろでございましたか、非常に手薄と申しますか、日本の国内で生産されているものも非常に少のうございますし、また、外国にほとんど押さえられているということもあって、なかなか難しいというようなことがございました。一社しかないようでございますけれども、量産態勢に入っていただくようにお願いをいたしまして、大体三倍ぐらいの量産をしていただくように、八月ないし九月からなるというふうに聞いているところでございます。いざというときにそうしたものがないというようなことのないように、全力を挙げて確保していきたいというふうに思っております。

 研究面でございますが、先ほど局長からも答弁ございましたけれども、いわゆる診断キットにつきましてはかなり進んでまいりまして、十五分か三十分あれば大体診断ができるという体制ができ上がってまいりました。今までのように二日も三日もかからなければ診断できないということではなくなってきた。

 そこは随分進んできたなというふうに思っておりますが、問題は治療でございまして、治療薬の開発というのがなかなか思うように進んでいない。日本の国内におきましても、いわゆるウイルス菌というものを持っていない、ウイルス菌と申しますか、ウイルスそのものを持っていないわけでございますので、国内においてなかなか開発を進めることもできにくいというようなことがございます。

 諸外国と連携をいたしまして、香港、シンガポールそれからベトナム、台湾、そうしたところと連係プレーをさせていただきまして研究開発を進めさせていただいております。ぜひ、アメリカも含めてでございますけれども、治療薬について早く、もう少し前進できるようにこれは進めていかなければならないというので、諸般の取り組みに今努力をしているところでございます。

 もう秋でございますから、冬が近づいてまいりましたので、早くその辺の一定の効果が出るように、成果が出るように我々努力をしなければならないというふうに思っております。そのための研究費につきましては、これは特段にひとつ配慮をしてやっていきたいというふうに決意しているところでございます。

家西委員 ありがとうございます。

 非常に決意、コストを含めて、研究費をしっかりととっていこうという姿勢であり、心強く感じております。ぜひともそのようにお願いをしたいと思います。

 そこで、外務省にお尋ねを申し上げたいことがあります。

 二〇〇〇年の七月、沖縄サミットにおいて沖縄感染症対策イニシアチブを発表され、結果として世界エイズ・結核・マラリア対策基金が設立されたようにお伺いしております。G8機関では、ことし六月、エビアン・サミットで、この基金に対して次々に追加拠出の申し出があるにもかかわらず、日本は追加拠出を表明しておらず、世界の中で全く役割を果たしていないという指摘があったように思います。

 外務省はこうしたことに対しどのようにお考えなのか、また、財務省とどのような折衝をされているのか、具体的にお述べいただければと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が国は、感染症が開発と貧困削減への開発途上国の努力を大きく阻害するものである、そういう認識から、開発途上国における感染症の対策を重視しておりまして、この点は八月末に改定されたODA大綱にも記されているとおりでございます。

 このような考えから、世界エイズ・結核・マラリア対策基金にも、我が国は二〇〇二年から三年間で二億ドルの拠出を表明しております。このうち八〇〇〇万ドルにつきましては平成十四年じゅうに拠出しており、引き続きこの誓約を着実に実行していく考えでございます。

 ただいま御指摘をいただきましたように、本年のエビアン・サミット、また七月に開催されましたパリでの世界基金支援国際会議等の機会に我が国の追加拠出に対する強い期待感が表明された経緯がございまして、現在、平成十六年度の予算概算要求をさせていただいている、こういう次第でございます。

家西委員 これは本年の九月八日の朝日新聞の記事でありまして、ザンビア、エイズ費用要請に沈黙というような記事が書かれていて、この中で、外務省幹部が語る、これまで実施してきた援助の予算を二〇%も削られている部門もある、とても新規にこれだけの拠出はできない、ないそでは振れないと言われたというようなこともマスコミに書かれております。

 そして、このグローバル基金に対し、多くの国々が、日本は一体何をしているんだ、日本がこのグローバル基金というものを九州・沖縄サミットで提唱し、旗を振った側であるにもかかわらず、今になって二億ドル以上の拠出は、ないそでは振れない、これは空手形を切っているような話じゃないのかなと私には思えてなりません。国際社会において各国に日本はうそをついているというふうに言われても仕方がないのではないでしょうか。この点について外務省はいかがお考えなのか、御答弁いただければと思います。

石川政府参考人 御指摘いただきました国際社会からの期待の声、私どもも真剣に拝聴しております。他方におきまして、現下の厳しい財政状況等踏まえた考え方もしておるわけでございます。

 来年度の予算概算要求につきまして申し上げさせていただきますと、私どもといたしましては八千三百六十万ドル相当分を要求させていただいておりまして、仮にこのような要求が実現しました場合には、引き続き私どもとしてイニシアチブを発揮していけるなと思っている次第でございますけれども、これはまた査定御当局あるいは政府全体での御判断ということもあろうかと存じている次第でございます。

 そういったことから対外的にはこれまでコミットをしてこなかった、これは御指摘のとおりでございます。

家西委員 私は、感染症というものは、日本国内だけで済む問題ではなくて、当然海を越えていく、そういう問題であり、ここに言われるグローバル基金というものは、エイズ、結核、マラリアという世界の三大キラーと言われる部分の問題だけというふうにとらえていただきたくない。これは、いずれはSARSも入るかもしれない、ひいては。そして、世界全体が取り組まなければならないんではないかというふうにも思います。

 そして今、HIV感染者は、たしか世界で四千二百万人の方が感染をしている。そして日本では年間約九百人の方が増加傾向にある。そして多くの方々が命を落とされる。このグローバル基金によって多くの方々の命が、延命できる治療を行えるわけです。

 そういったことをぜひとも考慮をいただき、御判断をいただかないと、エコノミックアニマルとか昔言われました、そういうことを言われないために、日本はしっかりとこういった意味でのイニシアチブをとっていくんだ、世界の感染症に対して日本は大きな予算を出しているんだというふうに各国の国民から言われ、そして尊敬され、敬意を表していただけるような予算を立てていただきたいというふうに思うわけですけれども、財務省、来られていますか。この点についてどのようにお考えなのか、御答弁いただきたい。

杉本政府参考人 世界エイズ・結核・マラリア対策基金等についての御質問でございますが、エイズを初めとする感染症につきましては、我が国といたしましては、先生の御指摘にございました平成十二年七月の沖縄感染症対策イニシアチブにおきまして、五年間で総額三十億ドルというプレッジを行いまして、これまで実績を積み重ねてきているところでございます。

 また、御指摘の世界エイズ・結核・マラリア対策基金につきましても、先ほど外務省から御答弁がございましたように、同基金の設立の際に、同基金に対しまして三年間で二億ドルの拠出を表明いたしまして、十四年度中に約八千万ドル、本年度末までには一億六千五百万ドルの拠出がされる見込みでございます。

 このように財政事情が厳しい中ではございますが、我が国といたしましては、エイズを初めとする感染症対策の重要性を認識いたしまして、必要な措置を講じてきたものと考えております。

 また、十六年度の予算編成に当たりましては、十六年の予算要求におきまして、外務省それから財務省、合わせまして総額一億ドル相当の予算要求、要望、これは世界エイズ・結核・マラリア対策基金についての要望でございますが、出されておりますので、厳しい財政事情を踏まえながらも、感染症対策の重要性を踏まえながら、予算編成過程の中において適切に対応してまいりたいと考えております。

家西委員 もう一段聞かせてください、財務省。適切とはどういうことをいうんでしょうか。

杉本政府参考人 予算の中で、必要なことを、重点的に措置すべきことについては必要な措置をさせていただくということでございます。

家西委員 よくわかるんですけれども、日本がイニシアチブをとってやったわけです、旗を振ったわけです、そして国際社会に約束したわけです。ぜひとも、そこはしっかりとやっていただきたいと思います。そして、先ほど来厚生労働省の方からも出ましたSARSの研究、またそういったものについても、しっかりとコストをかけてでもやりたいというふうなお話があります。

 一たんこういった感染症の問題が発生した場合に、起こり得る風評被害という問題は余りにも大きい。こういう問題は優先課題として考えていかないと、起こってから慌てて予算をつけようとかいってもだめなんです。起きないうちに予算を立てていかないと、私は、本当の意味での予防にはつながっていかないんだろうというふうに思います。

 そして、一たんそこで患者さんや家族が差別を受けたということは、一生それを背負って生きていかなければならない。それを防ぐには、今やるべきことをしっかりと予算を立てていただくということなんですけれども、そのように財務省は考えていただいているんでしょうか。それとも、ほかとの均衡、バランスを考えながらやっていこうとされているのか、御答弁いただきたい。

杉本政府参考人 感染症対策の予算でございますが、十五年度予算におきましても、感染症患者に対する良質かつ適切な医療の提供のための体制整備の充実などという観点から、感染症予防の総合的な推進を図るため、八十五億四千万円を計上してございます。こうした中で、SARS対策につきましては、SARS患者等の専用の診療ルートを確保するための必要な施設整備、それから消耗品の購入に対する補助、こういうことを講じているところでございます。

 いずれにいたしましても、SARS等感染症対策については、その対策の重要性というものも、私どもも十分認識しておりまして、今後とも、厚生労働省等の関係省庁と相談しながら、先ほども申しましたように、予算というのは、重点的に措置すべきところは重点的に措置すべきということは、考え方としてはしっかり持っておりますので、必要な措置については適切に対応してまいりたいと考えております。

家西委員 ぜひともそのようにお願いを申し上げたい。発生してからではもう手おくれになります。そして、余りにも、国民、また経済にもいろいろな影響が出るということを御認識いただいて、重点的に配分をお願いしたいなというのが私の思いです。それは、自分が当事者であって、非常に苦労をした、嫌な思いをさせられた経験から、そのように申し上げます。

 そして、国土交通省にお尋ね申し上げます。

 SARSというものは、基本的に、私は、航空機を通じての旅行者、また入国者からの国内潜入というルートが最も高いんではないかというふうに思います。そして、航空機内においての殺菌または加湿、湿度が非常に下がるということは、ウイルスにとっては環境がよくなるというふうに思えてならない。生息環境がよくなる、それを予防するための措置として、いかに考えておいでなのか。

 ましてや、客室乗務員に対して、航空機をおりられた後には必ず手を洗ってくださいというようなことを一言おっしゃるだけでも大分違うんではないか。ましてや、発生地域から帰ってくる機内では、マスクを乗客すべてに配布するとか、機内でパンフレットを、SARSに対してのパンフレットを、とってくださいというふうに置いておくのではなくて、一人一人のお客様に手渡すというようなやり方をすれば、多くの方は見るわけです。置いてあって、それをとってください、自由にとってくださいというよりも、機内で手渡してしまって配るようにする方が効果的ではないのかなというふうに思います。

 こういう点についていかにお考えなのか、国土交通省、御答弁いただきたい。

矢部政府参考人 お答えを申し上げます。

 航空におきましては、海外のSARS感染地域と接点を持っておりますので、重点的に対応を行っております。

 SARS感染が疑われる旅客が航空機内で発生した場合等におきます機内及び空港到着後の対応といたしまして、航空会社及び空港管理者等に対し、検疫機関等と連携、協力して、適切な措置を講じるよう指導しております。

 これを受けまして、航空会社におきましては、機内でのSARS患者発生時の対応マニュアルを策定しますとか、あるいは感染地域からの到着便に対する機内消毒の実施、そしてまた必要な数量のマスクの機内搭載等、必要な措置を講じております。

 そして、今先生御指摘のございました予防法等についてアナウンス等もするよう指導すべきではないかとおっしゃいましたけれども、この点につきましても、既に航空会社に対しましては、SARSに関係します情報、すなわち症状とかあるいは予防策、感染したときの連絡先等を記載したパンフレットの配布等を指導してまいりましたけれども、SARSにかかわる状況を踏まえながら、厚生労働省等関係機関と連携をいたしまして、さらに必要であれば、適切な対応措置を講ずることができるように航空会社を指導してまいりたい、このように考えております。

家西委員 ありがとうございます。そのようにしていただきたいし、すべての方々に周知徹底をするということが大事ではないかというふうに思います。

 そして、時間が残り少なくなってまいりましたけれども、罹患した患者、家族に対しては、生活に多大な影響を及ぼすんではないかということを考えまして、これらの人々を国が守るという姿勢が私は必要ではないか。そのために、私から一つ提案が厚生労働省にございます。

 感染症の拡大防止と調査を行う感染症支援調査官を新設、配置するお考えはあるのでしょうか、お伺いをさせていただきたい。

田中(慶)政府参考人 患者さんに対して良質かつ適切な医療を提供し、早期に社会復帰できるような環境整備を図りまして、患者や家族がいわれない差別、偏見に苦しまないように正しい情報提供を行っていくということが、患者や家族に対するケア、サポートにつながっていくというふうに私ども考えております。

 こうした考え方に立ちまして、厚生労働省を挙げて必要な対策に取り組むことが重要であるというふうに考えておりまして、地域の保健師、あるいは病院のメディカルソーシャルワーカーなど、既存の社会資源の効果的活用も含めまして、先生のおっしゃっておられます調整官のあり方についても今後研究してまいりたいというふうに考えております。

家西委員 ぜひともお願いを申し上げたいと思います。

 もうほぼ時間が来ていますけれども、私は最後に申し上げたい。

 私は、薬害エイズという被害をこうむりました。そして多くの仲間たちが亡くなり、そして多くの者が差別で苦しみました。こういったことが二度と起こってはならない、起こしてはならないという思いで今日までやってきたわけです。

 いよいよ解散が間近です。次どうなるかわかりません、私の立場は。

 各委員に申し上げます。

 皆様の誠意ある対応で、二度と我々がこうむったような苦しい思いが起きないようにお願いをしたい。生まれたところ、生まれたハンディによって差別、偏見で苦しむようなことのないような社会をぜひともつくっていただきたい。そして、多くの人々に幸多かれと私は御祈念申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本(幸)委員長代理 次に、五島正規君。

五島委員 民主党の五島でございます。

 今国会、きょう一日の委員会の審議ですが、私は、大臣の所信表明、そして先般の小泉総理の国会における所信表明並びに予算委員会の審議の中でたびたび繰り返されてまいりました年金改革について、まずお伺いしたいと思います。

 きょうの朝日新聞を見ますと、公明党さんのマニフェストの中で、年金問題については、基礎年金の国庫負担割合を段階的に引き上げ、二〇〇八年から二分の一に、主たる財源は所得税の定率減税と年金課税の見直しで確保する、こういうふうに書かれておりました。私どもも、五年間歳出の切り詰め、あるいは税制の改革によってやっていくべきであるというふうに考えておりまして、このあたりについては、政府の前からの公約でございました、基礎年金公費二分の一を実現するためには消費税を使わずにやっていくということについては、我々の立場と一致するわけでございますが、こうした基本的な方向、特に今後、この基礎年金、二分の一に持っていくについて、どのようなスケジュール、どのような期限の中でやっていくのかということについて、政府としての御見解あるいは大臣としての御見解をお伺いしたい。

 と同時に、基礎年金の公費二分の一が実現しても年金問題は解決するわけではありません。そういう意味では、年金制度全般を今後どのようなプログラムでやっていかれる予定なのか、そこのところをまずお伺いしたいと思います。

    〔山本(幸)委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 年金につきましての御質問をいただいたわけでございますが、いずれにいたしましても来年の国会におきまして御審議をちょうだいしたいというふうに思っております。そのためには、ことしの末までに案をまとめて、そして年が明けましたら国会に御提出をさせていただかなければならないという日程がございます。したがいまして、来年提出をさせていただきますその法律につきましては、厚生労働省としての案は十一月末までにまとめまして、そしてそれをたたき台にしていただいて、いろいろな御意見を伺って、そして年末にはそれをまとめたいというふうに思っているところでございます。今申し上げましたのは、これは来年の法案提出に対するスケジュールでございます。

 しかし、今御指摘いただきましたように、年金の制度そのものを今後どうしていくかということ、そして財源をどうするかということにつきましては、これは一体ではございますけれども、別途考えなければならないこともあるわけでございます。

 特に、二分の一の財源につきましては、来年の四月からそれが完璧に行われるということであれば、それは、私はそれが一番ベストだというふうに思っておりますし、今後の税制の改正についての議論、そうしたものを進めていただくようにお願いしたいというふうに思っておりますけれども、しかし、来年の四月から一発にそううまくいかない場合もあり得るだろう。これは、現在の経済状況等も勘案をしながら考えていかざるを得ないこともあるだろうというふうに思っております。しかし、万が一そういうふうなことになったといたしましても、来年の四月からはやはりスタートをする、道筋をつけてもらう、いつまでにこれを達成するということを明らかにすることはしなければならないのではないかというふうに思っている次第でございます。

 また、年金の姿形をどうしていくかという問題でございます。

 これは、私は試案を提出させていただきましたが、この提出をさせていただいたことを一つの契機として年金問題が活発に御議論をいただくようになることを期待して出させていただいたわけでございますし、ここは負担と給付の関係、いかなる年金の制度でありましても結局のところは負担と給付に尽きるわけでございますので、負担と給付の関係を、どこまで負担をすればどこまでの給付ができるか。そして、現在、積立金、百四十七兆とも言われておりますが、あるいはもう少しふえるかもしれないし、減るかもしれませんけれども、大体百四十五兆から七兆ぐらいの額になると思いますが、それらを今後百年なら百年の間、特に大きな二つの山がございます団塊の世代とそのお子さん方の世代、これが通過をしていきますまでの間にそれらを使わせていただいて、そしてなだらかな人口構成の方に移行をしていくということが一つの方法ではないかということを御提示させていただいたところでございます。しかし、姿形のところまで踏み込んでいるわけではございません。

 民主党が一つの姿形をお示しいただきました。まだ具体的な数字等は入っておりませんし、全貌は明らかではございませんけれども、しかし、おまとめいただいたということに対しては私は非常に敬意を表しております。

 と申しますのは、年金というのは、どの党もそうですけれども、いろいろな意見がございまして、なかなか一つにまとめるということは非常に難しい作業であるというふうに思います。私は、恐らく民主党の中もいろいろな御意見があるんだろうというふうに思っておりますが、それをとにもかくにも一つにおまとめになったということに対する敬意、私は、非常にこれは大変な作業ではなかったかというふうに感じているわけでございまして、そのことには敬意を表しております。

 そのいずれの案にいたしましても、その案にはプラスの面、マイナスの面、これはもう当然ありますから、民主党の案におきましてもプラスの面とマイナスの面が当然私は起こってくることはあり得るだろうというふうに思っておりますが、しかし、一歩そういうふうに示されたことに対して私は敬意を表しているという発言にとどめさせていただきたいと思います。

五島委員 来年から公費二分の一に万一できなかったらとおっしゃいますが、万に一つもできることはないだろうと思います。

 そういう意味では、基本的に、これまで単なる先延ばしではなくて、今大臣言われたように、来年から具体的に進んでいく。そして、それがどういう財源を使いながら実施していくのか、でき上がりがいつなのか、そういうクリティカルパスがきちっとできるということでない限り、結果的にはなかなかそうはいかないよということに終わってしまうのではないか。その辺を踏まえて厚生省の案はきちっと出してもらわないと困りますし、そのためには、これについては、厚生大臣と厚生省の中の御意見だけではなくて、財務省等とも十分な打ち合わせの中でやっていただかないといけない。

 また、公明党さんの御意見についても、それはそれなりに評価をさせていただきますが、果たして税制度の見直しだけでこの財源が生まれてくるのかどうか。やはり一定、歳出の切り詰めということも伴ってくるのではないかと思っておりますので、そのあたりも含めた御議論をぜひした上で、厚生省の試案というものを煮詰めていただきたい。我々も意見を出してやっていきたいと思っています。

 そして、その中でもう一つ、これと並びまして大きな問題は、実はその形の問題、今大臣言われた問題です。

 大臣は、医療保険については、今直ちにということではなくても、構想として医療保険の一元化を提唱しておられます。ところが、年金問題について、被用者年金とそれからいわゆる国民年金との統合というのはおっしゃっておられないわけですね、現状において。私は、これがなぜおっしゃられないのかと。現行の困難さに目がくらんでおられるのかもわかりません。しかし、現実問題として、果たして、現在の年金制度の中で、この二本立ての年金制度でうまくいくのだろうか、そう思わざるを得ない。

 特にその二つの点において大きな問題があると思います。二分の一の公費の負担が入るにしろ、現行の基礎年金というのは、被用者年金に加入しておられるサラリーマンが国民年金加入者にその一部をプレゼントするというシステムによってこれは成り立っています。今大臣が言われたように、負担と給付との関係ということの整合性からいっても、この問題をこのまま放置して、果たしてサラリーマン世代が納得するのだろうか。それはどう考えるのかという問題は、一つの大きな問題です。

 もう一つは、国民年金は、従来は自営業者、農漁民、そういう方々の年金として出発いたしました。しかし、現状においては、この国民年金というのは、そうした自営業者プラス、職を失った人や病気で働けなくなった人、あるいは、中小企業に働いて、事業主が倒産寸前、社会保険労務士の指導に基づいて、違法すれすれではあるけれども厚生年金から国民年金に移っている、そうした非常に弱い立場の労働者、そうした今現在の時点において社会的弱者と言われる人たち、その膨大な人たちをこの年金の中に取り込んでいる。すなわち、現在の年金制度の中の一番大きな矛盾が実はこの国民年金の中に存在しているということについては、大臣もお認めになられるだろうと思います。

 そうしますと、このサラリーマンからの拠出なしには基礎年金というものは成り立たないし、そして、国民年金自身もこうした一つの年金の中に自営業者と社会的弱者をひっかぶっている。そして、自営業者についての所得捕捉はほとんど進んでいない。完全に合意が得られるような形での所得捕捉はできていない。こういう状況を放置したままで、いわゆる国民全体が納得できる年金制度ができるんだろうか。そこのところについて、大臣、どうお考えなのか。少し、具体的な問題ではなくて、大きな仕組みの問題としてどう考えるか、お伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 今お話しいただきましたことは、これは医療保険にも当てはまることでございまして、医療保険の一元化を進めたいというので、今やっているわけでございます。この場合にも、いわゆる組合健保と政管健保その他を統合していく、いわゆる職域保険を統合していくということは、そこまではでき得るというふうに私は思っておりますが、しかし、国民健康保険とこれを統合できるかどうかという問題になりますと、大きな問題にぶち当たりまして、そして、そこに立ちどまっていると申しますか、なかなかそこまではいきにくい。したがいまして、職域保険は職域保険、地域保険は地域保険としてひとまず整理をしながら、そこから、その後、それを一元化にどう向けていくかという手順を踏まなければならないというのが、医療保険も直面している現実でございます。

 今お話の出ました年金につきましても、一元化していくことというのは非常に望ましいことだというふうに私も思っております。現在、共済年金でありますとか、あるいは厚生年金でありますとか、過去にはいろいろの年金もあったわけでございますが、現在は、そのほか学校の先生方の年金もございます。そうした年金を一元化していくということは、これは私はでき得ると思いますし、そうした方が私も望ましいというふうに思っております。

 しかし、やはり最後に残ってまいりますのが、この国民年金と職域年金との間をどうするかという問題になってくる。ここは所得把握をどうするかということの大きな山を越えなければならないわけでございまして、これがうまくいくかどうかにかかってくるのではないかというふうに考えております。民主党がお示しになりました案も、そこが越えられるかどうかということによって実現できるかどうかが私は決まってくるのではないかという気もするわけでございます。したがいまして、年金につきましても、職域年金につきましては、統合化の方向に進むこと、私も賛成でございます。

 あと、この一番大きな問題というふうに御指摘になりました地域年金と申しますか、国民年金との間の問題をどうするかということがやはり残ってくる。その辺の整理は、これは年金の中だけで整理をすることはでき得ない。所得保障等の、全体の、税制との問題の絡みの中でこれもいろいろと御議論をいただいて、最終的な結論を出さなければならないというふうに私は思っております。

五島委員 問題意識については共通しているんだろうというふうに思いました。

 ただ、問題は、この年金制度というものを安定して百年残していくということを考えた場合に、これは厚生労働の仕事ではございませんが、しかし、自営業者の所得捕捉をどうきちっとやっていくかということは、これをやらないままでは公平性というのは担保できない、皆年金制度、皆保険制度というのは非常に困難になってくることは明らかでございまして、そこのところはやはり政府として責任を持ってやっていく、そのための努力を直ちに始める必要があるだろう。

 それからもう一つは、地域年金や地域保険に、就労しておられた人々が失業あるいは病気、そういうふうなことによって職場から締め出された途端にその保険に移らざるを得ない。それができない経済状況では、結果としては無年金者がふえる、無保険者がふえる。この構造のままで地域保険、職域保険、地域年金、職域年金というこの二本の制度というのがうまくいくんだろうか。これは非常に問題のあるところだろうと思っています。その点についても、やはりぜひ大臣としてすっきりとした御見解をお述べいただきたい。もし今そこの点について御意見をいただけるのならいただきますし、この十一月の厚生省の試案をお出しになる段階で、厚生省のたたき台をお出しになる段階でこうした問題についてお触れいただけるのかどうか、その点についてひとつお伺いして、次の質問に行きたいと思います。よろしくお願いします。

坂口国務大臣 そこはすっきりしていないわけでございますね、率直に申し上げて。

 これが過去に、年金にしろ、医療にいたしましても、いわゆる保険が歩んでまいりました歴史がございます。それらをしょって今日を迎えているわけでございますので、その一元化というのはなかなか、言うはやすくして難しい点もある。これは職域の方の皆さん方にとりましても今までいろいろの御意見があって、健康保険にしろあるいは年金にしろ、地域との一元化ということに対する反対もあったことも事実でございます。

 これらの問題を一挙に解決するのには、年金だけではなくて、周辺のさまざまな解決をしなければならない、過去の問題を清算しなければならない問題がある。それは一挙には私はできないというふうに思いますから、やるとすれば、それは一定の年限をかけて徐々にやっていく以外にないんだろうというふうに思っております。年金制度の根幹を大きく変えるにいたしましても、来年から一発で変えるというわけにはまいりませんから、何十年かをかけて、そして徐々に変えていくという制度をつくり上げていくということになるんだろうというふうに思っております。そうしたことも含めまして、いろいろと御議論をいただければ幸いでございます。

五島委員 年金問題についてはこのあたりで終わりますが、おっしゃっているように、時間はかかるのはわかっています、年金の問題というのは。

 民主党のマニフェストに載せられた内容につきましても、年金問題については、基礎年金への移行の期間、そしてその後、半額の基礎年金を税制度にしていく期間、そうしたものに加えて、新たな制度に変わっていった後に、新制度に変わっていくまでの期間というのは、やはり現在年金を受給しておられる方々の権利というのは保障しなければなりませんので、やはり四十年はかかるだろうと考えています。そういう意味でいいますと、トータル約五十年間は年金制度の改革はかかる。そうしますと、この年金制度の基本方針が五年や十年でぐらぐらしているのでは年金が確定するわけがございませんし、安心を与えられるわけではない。

 そういう意味では、骨太の構想をお出しになられて、それを十分に議論する中においてつくり上げていかないといけないものだろう。問題点は共有しながらも、そこは難しいからということで避けていきますと本当に安定した年金制度にならないだろうということを申し上げて、この年金問題についての、せっかく局長、何かしゃべりたそうな顔をしていますけれども、今大臣に非常に率直にお話しいただきましたので、年金問題についてはもうこれで終わります。

 次に、今回の感染症法の改正案、それから検疫法の一部改正案についての質問に入っていきたいと思います。

 基本的に、大臣もドクターでございますので、しかも公衆衛生をやっておられたということで、当たり前のことを申し上げますが、感染症の防止というのは、病原体対策、そして経路対策、感受性対策、この三つの流れの中でやっていくというのが常識でございます。そして、どうしてもこの感染経路対策あるいは予防接種なんかの感受性対策なんかがまだ科学的に十分に解明されていない段階では、非常に病原体対策に依存しがちである。そこに、さっき家西議員からも指摘があったように、マスコミ等の書き方によっては社会的防衛論で非常に過剰な反応を起こして、さまざまな人権侵害事件なんかを起こしているということがよくございました。

 そして、この病原体対策としてよく従来の方法でとられてきたのは、患者である人間、人、その人たちを病原の一番の伝播者として、そこに対策を集中していく。例えば選別して隔離するというふうな手技が一つでございますが、そういうふうな方法が従来からとられてきました。従来も伝染病に関してこうした方法が有効であったのは、実はもう七、八十年前から有効性は失われていたと私は思っています。例えばあの有名なスペイン風邪、ああいうふうな感染症に対しては何の効果もとれなかった、ある種の水路感染が中心であったときには効果があったかもしれないけれども。あるいはらい予防法、昭和十三年にできたけれども、もうそのときは既にらいは日本においても発生はずっと減ってきている中において、ああいうふうなことをつくってしまって、後々問題を残した。結局、そういうふうな対応というのは、過去においても私はそう大して効果を上げなかったと思っています。水際作戦というのはまさにそういう発想の一つなんだろうというふうに思います。

 今、人や物の流れというものは地球規模で膨大な量に上っています。そうしますと、患者さんあるいは健康保菌者を含めて、そうした病原体を持っている人間一人一人を病原体伝播者として、病原体対策として対応したのでは間違いを起こす。感染症の一番大きな感染ルートは、何らかの形で人と人との間のつながりによって感染していくことは間違いない。経路対策としてそれを見ていかないと仕方がない状態だということを一つ申し上げたいと思います。

 それからもう一つは、今日の感染症において、ましてウイルス性の感染症において、水際作戦が成功するかどうかといえば、成功するはずがないね。基本的には、我が国の中にそうした新たな感染症が入ってきたときに、それに速やかに対応できるシステムをどうつくるか、この点が実はSARS問題についても一番大事な点だろうと私は思っています。

 ことしの六月の二日に出されましたCDCの緊急情報、これはアメリカの国内で五月七日発表の暫定指針としてCDCが発表したものですが、アメリカの場合は、こうした水際作戦なんというようなことは全く考えていません。

 全部で五つの項目がありますが、まず一番目に、SARSに暴露した可能性のある者は、暴露後十日間、発熱と呼吸器症状に十分な注意を払う必要がある、この期間は、症状がない限りは特に活動の制限を設ける必要はなく、就労、就学、保育、教会その他の公的場への参加から排除されてはならない。まずそこから始まるわけです。

 そして、SARSに暴露した可能性のある者は、発熱あるいは呼吸器症状が出現した場合には直ちにかかりつけの医療機関に届ける。受診をする場合には、あらかじめ必ずSARS感染の可能性について連絡し、必要な院内感染防止対策をするようにする必要がある。

 そして、暴露し、発熱あるいは呼吸器症状を呈した者は、感染防止のために次のようなことをする必要がある。

 四番目に、経過観察中にそうした症例定義に当てはまった者、あるいは、当てはまるまでに至っていなかった者であっても呼吸器症状が合計七十二時間を超えた者については、SARSコロナウイルスの検査をする必要がある。

 そして、暴露した可能性のある者がもし発症した場合、職場や学校や教会その他公共の場にいる場合に発症した場合は、その場にいた人たちへの情報提供と経過観察の対策の必要性から、地域の保健当局へ連絡しなければならない。

 これは全部、患者さん個人とそれを取り巻く医療機関に対しての緊急情報ですね。あくまでも、感染経路が水か飛沫感染かどうかという問題の前に、やはり人の流れというものを経路として見ていきながら、その各段階において安全弁をいかに組み込んでいくかというところでCDCは出しています。

 そういう意味からいいますと、今回の水際作戦という表現、私は余りよくないんだろうと思っています。水際作戦と言って、失敗したらどうなるんですかと、水際作戦の失敗例ということになるんですかと。今の時代に、そんなものが有効であるはずがない。

 また、今回、対象者としては、非常に直接患者との濃厚感染をした可能性のある、患者さんが収容されている医療機関で働いている人たちや、あるいは患者の家族、あるいはそうしたSARSの患者さんを見舞いに行った人たち、そういう人たちだけを対象にして、かなり入国後の措置について報告その他を求めるようになっております。これも、ある意味においては、方法がないから、何かせないかぬからやるんだなということ以外の何物でもない。

 だって、大臣、コロナウイルスですよ。普通の風邪のウイルスと同じですよ。感染経路は動物由来性ですから、その病態は違うかもわかりません、まだわかっていません。あるいは感染経路についても、ある意味においては特別なあれがあるかもしれないけれども、基本的にコロナウイルスの性格は持っているはずですね。といえば、風邪ですよ。

 では、医療従事者が、風邪がはやったときにほかの人たちよりも風邪にかかる確率は高いですか。そんなことはないですよね。満員電車の中で、やはり風邪がはやっているときには、マスクをする、手洗いする、うがいする、そういうことによって防御していくのであって、それの関心の低い人の方が確率が高いのは、これはもうはっきりしている。

 そういう意味からいえば、そうした人たちに重点的に検疫法で報告を毎日求めるということも、何か厚生省がじたばたして、何もせぬわけにいかぬからやりますよというふうに受け取られてしまうと、私は、この法律が余り実効性を持たなくなるのではなかろうかという心配も持っています。

 そうしたことを考えた場合には、やはりこの今回の法律にあわせて、国内にもし仮にSARSが入ってきたとしても、その蔓延を防ぎ、治療の態勢が整備される、防疫の態勢が整備される、そのことが極めて必要であると考えるわけですが、その点について、大臣、どのようにお考えでしょうか。

坂口国務大臣 なかなか難しいお話だというふうに聞いておりましたが、国際会議などがありましたときにも、なぜ日本は発生しなかったのか、中国からも韓国からも東南アジアの国々からも、皆が口をそろえてそう言いました。日本も隠しているんじゃないかと言った国もございました。いや、そんなことはありません、全部我々は明らかにしているということを申し上げたんですが。そこで彼らが最終的に一致して言うのは、日本にはうがい、手洗いという習慣がある、我々のところにはそれがそんなにない、ただそれだけの違いじゃないかというのが最終的に彼らが言った言葉でございます。

 台湾から来ている代表は、私の父親は京都大学の医学部を出ました、それで医者をしておる、日本でもしておりました、それで台湾に参りましたと。その父親がずっと言い続けたことは、日本人はふだんから手洗いをし、うがいをする、外から帰ったらすぐ手洗いをし、うがいをする、それが子供のときから教えられて習慣になっている、大事なことだということをずっと言い続けていた、そうしたことがやはり最も基本なこととして大事なことではないかということを言っておりました。

 我々、そう気づかずにおりますけれども、手洗い、うがい、マスク、そうしたことは非常に大事なこと、第一義的に大事なことではないかというふうに思いますし、そうしたことをこれからみんなで今まで以上に心がけていかなければならないのかもしれません。

 そうした予防措置が大事なことというのは、それは現在、これという確定的な治療方法がまだ見つかっておりません、現在におきましては。予防が第一でございますから、そうしたことを心がけていく。しかし、それにいたしましても、御指摘のように、日本の国の中にSARSウイルスが入ってこないという保証はないわけでありまして、これは入ってくるというふうに思った方がいいんだろうと私も思っております。入ってまいりましたときに、それをどう予防していくかということになるわけであります。

 そのときに、一人の患者さんが発生したとすれば、それはやはりその周辺の皆さん方に、これは一応外出を遠慮してくださいよ、あるいは発熱をしたらひとつ知らせてくださいというふうなことは、それは私はその次の時点としてはお願いをする以外にないんだろうというふうに思っております。

 幸いにいたしまして、診断は非常に早くできるようになってまいりましたので、そこは今までと違って早くその状況がわかるということが出てまいりましたから、それはそれで、その御努力をいただいた研究者に私は評価をし、そしてお礼を申し上げたいというふうに思っております。

 そうした、これは総合的なことでやっていく以外にない。一つこれさえすればそれで済むという話ではないということについては、御指摘のとおりというふうに思っております。

五島委員 基本的に、SARSに限らず、これからも新感染症というのはふえていくんだと思いますね。あらゆるウイルス、バクテリアにとってもそうなんですが、今はやはり、生命体としての種族を残していく上において一番効率のいい宿主というのは人なんだろうと思います。あらゆるところに満ちあふれている。したがって、世代交代が早いウイルスなんかにおいては、いずれにいたしましても、病原体になるかどうかは別として、人を宿主とするような変性をしていく可能性は否定できないと思います。

 そうしたものに対して、それが入ってきたときに的確に治療その他の対応ができることも大事ですが、入ってきたその地域の中において蔓延しないための対策をどうしていくのか。それは、今大臣がおっしゃいましたけれども、意外とそれほど難しい問題ではなくて、僕は、日本と韓国の問題というのはもっと、そうした手洗い、うがいの問題も含めて、なぜ近接国にあれだけ発生しながら、アメリカ大陸まで飛び火したSARSが日本や韓国に入らなかったのか、そこのところにこのSARSの問題のなぞがあると思っています。その辺の研究というのはやはり大事なことだろうというふうに思っています。

 ぜひそうしたことを含めた、もし万一入ったときに地域への蔓延を防止できる態勢は何なのかということについて少しきちっとやっていかなければ、この法案だけではSARSを水際でとめるなんということはできないだろうということを申し上げたいと思います。

 あわせて、今回の法律の中に、SARSとともに天然痘が一類感染症に指定されています。

 御承知のように、天然痘というのはWHOがもう撲滅宣言をした病気でございますから、この天然痘を予想するということは、バイオテロを想定しない限りは対象にはならない。残念ながら、まだ世界の中でこの天然痘の株を持っている国も幾つかあるようでございますし、バイオテロという形でもって、天然痘がまた世界の中に流行する危険性がゼロではないという悲しい現実があるというふうに思います。

 しかし、バイオテロというものの防止あるいはその蔓延を考えた場合には、どうも、一類感染症に指定するとか、そういうことでは済まないのではないか。天然痘みたいなものがバイオテロで使われる場合は、テロというよりも、ある意味においては非常に大規模な施設を要するでしょうから、また、株そのものがそんなに簡単に手に入らないということでいえば、細菌戦を決意した国家間の争いの場面になるのかなと思います。その場合は、日本で使われることはないとしても、その汚染地域からどうするかという問題は、まさに国際的な大変大きな問題になっていくんだと思っていますが、より簡単に生産できる細菌によるバイオテロ、日本においても騒がれました例えば炭疽病のようなもの、そういうふうなものによるバイオテロというのも想定しなければいけない。

 海外で発生したものが日本に患者さんとして入ってくるということであれば、検疫法を強化するとか、国際的な取り組みでやっていけます。しかし、オウムの事件の場合には、日本の国内においてそういうことを何か妄想した集団があった。そうしますと、バイオテロが国内で起こらないとは言えない。起こった場合には、検疫法では対応できません。恐らくその防止というのは、国の安全という面から、厚生労働とは違った、例えば警察とかあるいは自衛隊とか、そういうふうな力によってそれを制圧していく、防止していくということしかないのだろうと思います。

 しかしながら、万一それが起こった場合に、そうしたバイオテロで発生した疾患が、あるいは傷害が、その地域から二次感染として蔓延しないための態勢はあるのか。今、日本にあるのは、そういう防疫活動がやれるのは、あえて言えば地域の保健所しかありません。バイオテロみたいなのを考えた場合に、保健所が有効に機能できるとは到底思えない。

 そうすると、こうした天然痘という一番どぎつく、ぎらぎらするものを一類感染症に指定するというところまでやらざるを得ない今の世界の不安定さの中でこの問題を考えた場合に、やはりバイオテロというものが万一発生したときに厚生労働省としてどのような対策が国内的にとれるのかということがあわせて検討され、国民に、あるいは地方自治体に示される必要があると思うわけですが、その点について、大臣、どのようにお考えでしょうか。

坂口国務大臣 具体的な問題は局長からも答弁があると思いますが、とにかく、痘瘡の場合におきましては、そういうテロが行われれば、局地的にそれが多発するということになってくるんだろうというふうに思います。したがいまして、そのときにはワクチンの用意を完璧にしていくということが大事でございまして、現在、ワクチンの貯蔵量と申しますか、それを今必死にふやしているところでございます。かなりの貯蔵ができてまいりました。

 現在、二十八歳か九歳ぐらい以上の人は、皆この種痘を受けているわけです。それ以下の人が受けていないわけでありますから、全体として、割合とすればどのぐらいになりますか、三割なのか三割五分なのか、そのぐらいな皆さん方が、受けていない人たちがだんだんとふえてきている。それから、高齢者の場合にも、受けはしたけれども抗体が下がってきているという人たちもいる。私なんかはかなり下がってきているんじゃないか、こう思っておりますが、そうした人間に対してどうするかという、特に若い人たちに対してどうするかという問題になるわけで、そうなってまいりますと、緊急に対応をしなきゃならない、緊急に対応できる体制をつくっておくということが大事だというふうに思っております。

 炭疽菌の場合などは、これは治療法がかなり確立いたしておりますし、それに必要な医薬品も全国にかなり、各地域にこれはもう販売されているようでございますから、これはそんな大きな治療上の問題は起こらない。

 一番やはり問題になりますのは痘瘡ではないかというふうに思っておりまして、それに対する対応をやはり私たちとしてはやっておかなければならないというふうに思っている次第でございます。

五島委員 それぞれの発生した地域の中において緊急にどう対応するかという問題についての御答弁をいただいておりませんが、その問題と関連いたしまして、我が国の感染症に対する態勢というのは本当に大丈夫なのか、まずそこのところからやはり私は非常に心配をいたしております。

 例えば、C型肝炎であってみたり、そういう慢性の感染症に対しての専門家は内科でやっているというのはあります。しかし、そうした急性感染症に対する専門家の配置というのは、日本の医学教育の中においては非常に弱体化してきた、何かそういう急性感染症は日本においてはほとんどせん滅されたかのような誤解を持ってしまって。しかし、世界において病気というと、感染症というものの占める割合というのはまだ半分ぐらい占めている。ですから、日本の医学教育というのは、国際的なニーズからいうと半分にしかこたえられていないのかもわかりません。

 あのSARSの騒ぎのときでも、結局、地方自治体に対して防疫を指導したり、あるいはまだ病態ははっきりしないけれどもSARSとして対応せざるを得ないケースを判別していったりする、そういう専門医というのは非常に少なくて、感染症の専門家は大変疲労されたというふうにも聞いております。

 そういう意味では、我が国は、感染症に対する治療態勢も、あるいは疫学調査や防疫を指導する、そういう人材も非常に貧弱であると言っていいんだろうと思う。

 やはり、これは医学教育の中において感染症というのをもう少しきちっと重視して教えてもらわないと。恐らく、日本の医学教育の中において、まず寄生虫という学問が各大学の講座から消えていき、感染症が消えていきというのは、各大学ともそうなんだろうと思います。だけれども、それでいいのか。そこの点は、やはり厚生省としても文科省に対してぜひそのことをお願いすべきではないか、そのように思います。

 また、同時にこうした感染症が、SARSの場合も一類感染症ではあるけれども、治療機関については、例えばエボラや何かを治療するところに限定せずに治療してもらうことにしております。恐らくバイオテロなんかの場合もそういうことになるんだと思います。だから、その地域の中において直ちに対応できるような治療の態勢あるいは病原体の同定の機能、そしてそれに基づく疫学的な調査や地方自治体に対する防疫指導、これは一体だれがするのか。法律の建前からいいますと、保健所なんですね、実は。

 だけれども、今のように、人の流れがグローバル化し、物の流れがグローバル化し、そして新たなそういう病原体というものがどんどん入ってくる、あるいはそれによる病気がふえてくるという状況の中で、いわゆる地域密着型の保健所にその機能をすべて持たすということは限界があることは、もうはっきりしている。ここのところはどうするのかということが、先ほどの家西議員に対する大臣の御答弁でも、O157のときには保健所だと言ったけれどもやはり国が関与せざるを得なかったというお話をされていましたけれども、そうなんだと思うんですね。

 私はやはり、今の日本の中において、独立行政法人に移行した旧国立病院のネットワークあるいは日赤といったようなところが、ブロック単位の中で、感染症の治療あるいはそこの中に疫学や防疫の専門家を、たくさんは要らないと思いますが、そろえていく、そして緊急の場合はそういう独法のネットワークなり日赤のネットワークの中で必要な地域にその人材が投入できる、そういうふうなシステムをつくっておかないと困るのではないかと思うわけですが、そのあたりについては大臣はどうお考えか、お伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 治療に対しましては、それぞれの地域の拠点病院というのがやはり中心になってお願いをする以外にないというふうに思っております。

 もし何かの疾病が多発をいたしましたときに、その地域に対して拡大を防止するどういう手を打つかということについても、役割としては保健所でございますけれども、保健所だけではなくて、そこにやはり国も手を差し伸べなければいけないんだろうというふうに思っております。

 このSARSの問題が非常に大きくなりましたことしの春ごろ、そしてあの台湾の医師が参りまして帰りました後のころ、それぞれの地域に専門家を派遣して、そしていろいろな対策をしてもらうということになったわけでございますが、そのときにも、やはり本当に対応できる専門家というのは一体何人いるのと質問したら、本当に対応できる人は数名なんですね。もう少しこれはちょっと何が何でも、背筋が寒くなる。本当に対応できる人をふだんから養成しておかなきゃいけない。

 それは、養成はしようと思っていろいろ募集するんですけれども、なかなか各県とも送り出してこないということもございます。非常に熱心な、岡山県ですとか、そういったところは大学とも協調しておみえになるようでございますけれども、地域によっては全然そういう人たちを送り出してこないというようなことがあるというふうに聞いておりまして、ここはやはりもう少ししっかりとふだんからやっておかないといけないというふうに思っております。

 治療の方は、それぞれの病院があるわけでありますから、基幹病院をどこにしてどういう体制でいくかということをふだんから体制づけておけばできるというふうに思っている次第でございます。

五島委員 私は、かつて国立公衆衛生院や結核予防研究所に保健所の医者を半年コース、一年コースという形で研修をさせて、それによってあの時期における結核がほぼ根絶に近い状態に到達した実績を持っていると思うんですね。今、感染症センターもございます。もちろん、広く医者からそういう研修研究者を募集することは大事ですが、とりわけ公衆衛生に従事される保健所の医師なんかをそういうシステムの中で研修させて育てていく、これは厚生労働省独自でもやれる努力ですから、ぜひお願いしたいというふうに思います。

 それで、時間も参りましたので、本法案に対して、三点について大臣に確認的な御答弁をいただきたいと思います。

 まずは、SARSについては病原体、感染経路、ウイルスの特性などが明らかになった時点で感染症法の一類感染症から二類感染症への見直しを行うべきではないか。それについてどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 確認質問ということでございますので、こちらの方でまとめたものを読ませていただきます。

 SARSにつきましては、患者は原則入院が必要であることや国内に病原体が侵入していないことなどから、厚生科学審議会での議論も踏まえまして、今回の改正で一類感染症として位置づけることとしておりますが、今後、病態や感染経路等が明らかになり、また治療方法やワクチンの開発といった医療が進歩することに伴いまして、類型の見直しを行われることがあり得る、行わなければならないというふうに思っております。

 厚生労働省としましては、将来、このような医学的知見の集積や医療の状況等を踏まえまして、五年という期間にとらわれず、厚生科学審議会の意見を聞きながら、類型の見直しを行いたいと考えております。

五島委員 次ですが、改正後の検疫法第十八条に規定する検疫所への報告義務は、SARSに関連したもののみに適用されると考えてよいのかどうか、お伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 改正後の検疫法第十八条では、検疫所長が検疫感染症に感染したおそれのある者に対して、居住しているところその他の報告を求めまして、また、一定期間、体温その他の健康状態について報告を求めることができるものとしております。

 現在、この報告義務の適用を考えておりますのは、検疫感染症のうち、SARSに感染したおそれのある者のみでございます。

五島委員 検疫法第十八条に規定する報告義務、罰則の対象となる「感染したおそれのある者」とは、SARSの治療にかかわった医療従事者、SARS患者の家族、入院するSARS患者を見舞った者に限定されるというふうに考えてよろしいか。

坂口国務大臣 今回の法案による改正後の検疫法第十八条に基づく検疫所への報告義務につきましては、入国時にはSARSの症状が出ていないが、一定の感染リスクがある者に対してのみ適用することを考えております。

 現在、この一定の感染リスクがある者といたしましては、SARSの疑いのある患者がいる医療機関で働いている者、同居の家族等でSARSの疑いで入院した人がいる者、三番目としまして、SARSの疑いで入院した患者に見舞いをする等で接触した者等を考えているところでございます。

五島委員 以上の確認答弁をいただきました。もちろん、この確認答弁の内容が、日本におけるSARSの水際作戦にとって、水際阻止ということについて、余り効果もないだろうということを了解しながらも、やはりこれだけ国際的に大きな問題になってきたSARSの問題であります。したがって、この感染経路あるいは感染方法、防疫措置、それが科学的に究明されるならば、できるだけ速やかにその方向に切りかえていくということを求めまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、小沢和秋君。

小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。

 法案への質問の前に、三点ほど簡潔にお尋ねしておきたいと思います。

 まず第一に、シベリア抑留者に対する未払い賃金の問題であります。

 この問題は、既に私が当委員会で何回も取り上げてまいりました。敗戦後、我が国の将兵、軍属約七十万人がシベリアに強制的に連行され、数年間、酷寒の地で、ろくに食物も与えられない状況下で、鉄道建設などの重労働をさせられました。そのため、約一割に当たる七万人が異国の土となりました。しかも、その当時の賃金がいまだに支払われていない。

 私が今まで調査してわかったことは、当時、連合国軍総司令部が、国際慣習法に従い、捕虜には現地で労働証明書を発行し、それを持ち帰った捕虜に日本政府が賃金を支払うこととし、実際、米英中などの占領地域、南方から帰還した捕虜にはそのとおり支払われました。日本政府は、ソ連にも、シベリアから帰国する捕虜に労働証明書を持ち帰らせてほしいと要請しましたが、ソ連は不当にもそれを発行しませんでした。そのため、シベリアから帰国した人々には賃金の支払いが行われず、いまだにそのままになっているという問題であります。

 このことについては、最高裁も判決の中で、南方からの捕虜には支払われたのに、シベリアから帰った人々に賃金が支払われていないのは不公平だと思うのは当然だと認めております。

 大臣も、シベリアから帰国した人々の不公平感と怒りを理解できると思いますが、いかがですか。

坂口国務大臣 小沢議員が御熱心にこの問題をお取り上げになりまして、これでもう三回目か四回目になるだろうというふうに記憶いたしておりますが、御熱心にお取り上げになっておりますことには敬意を表したいと思います。

 私も、最初お聞きをしましたときに関心を持って、そして、外務省を初めとする他の省庁にもいろいろとお聞きをしたところでございます。

 いわゆる人情的に申しますと、確かに、その皆さん方に対して何らかの形をしてあげたいという思いというのは、それはあるわけでございまして、それだけではなくて、この皆さん方に対して何かをやるべきだというような御主張も過去におきましては長い間あったというふうに思っております。

 しかし、法的な、国際法上の中におきましては、確かに、南方の皆さん方との間では、南方の国々との間でのさまざまな意見の締結と申しますか合意というものがあって行われたわけでございますが、シベリアとの間、シベリアと申しますか旧ソ連、現在のロシアとの間ではそういう締結は行われていない。むしろ、もうすべての戦争中のことについては解決済みということになっているというような経緯から、この問題はなかなか、おっしゃる御趣旨について私も共鳴するところもあるわけでございますけれども、しかし、現実問題としては難しいというのが私の結論でございます。

 最高裁のお話も出ましたけれども、最高裁が、確かに、シベリア抑留者に対して労働賃金を支払うためには、総合的政策判断の上に立った立法措置を講ずることを必要とする、こういうふうに言っていることは事実でございますが、これは、労働賃金の支払い等は直接憲法の規定に基づいて請求することはできないとするものでありまして、国に立法措置を求めたものではないという解釈に現在なっているところでございますので、その点につきましても御理解をいただければというふうに思っております。

小沢(和)委員 今、もう状況が根本的に変わっているわけであります。ソ連が崩壊し、その後成立したロシア政府は、当時労働証明書を発行しなかったことを率直にわび、おくればせながらそれを発行し、日本政府にもしかるべく対応するよう要請をいたしました。

 ロシア政府がこういう態度を示した以上、日本政府が、戦後処理はすべて終わったと宣言したことにいつまでも固執して、支払わずに押し通すことはできない状況になっているのではないでしょうか。このままでは、日本政府は、シベリアでこれだけ苦労してきた人々に余りに冷たいという非難を免れないのではありませんか。

坂口国務大臣 心情的に同情すべき問題であるというふうには私も思っておりますが、しかし、これは五十九年の戦後処理問題懇談会報告書で述べられておりますように、この労働賃金の未払い問題を含めたシベリア抑留者の補償問題については、新たな政策的措置を講ずることは他の戦争犠牲者との間の均衡という観点からも問題があると考えられるということになっているわけでございまして、新しく国が変わったとはいいますものの、過去のこの問題をもう一度白紙に戻して、そしてやるということにもなかなかいかない、そういう現状にあるわけでございます。

 本来言うならば、いわゆる労働をさせたのは旧ソ連、現在のロシア国でございますから、本来ならば支払いはロシアがしてくれるのが本当でございます。それを、我々の方はできないから日本にやれというのも、これも本当は問題としてはおかしいというふうに思うわけでございまして、アメリカにおきましても戦時中の日本人に対する差別等があって、それに対する補償をしたというような経緯もございますから、これから先ロシアがそうしたことについて考えてくれるということになれば幸いであるというふうに私は思っております。

小沢(和)委員 今大臣は、この賃金を支払う責任がロシア側にあるというようなお話がありましたけれども、一九四九年のジュネーブ条約でも、この捕虜の賃金というのは労働証明書を持って帰ったらその国の政府が払うということに、日本も批准してそうなっているんですよ。だから、今のような考え方は通用しないということを私はまず一つ申し上げたい。

 それから、一番の障害というのは、結局もう戦後処理がすべて終わったという立場に政府が立っているということだと思うんですけれども、そこをもう一度考え直す必要があるということを私は強調したいと思います。

 私がこの問題を取り上げるきっかけとなった私の職場の先輩である下屋敷之義さんという方から、最近手紙をもらいました。それには、

  命あるうちにシベリア抑留者問題の解決を、これが私たちシベリア抑留老兵のお願いです。

  未払い賃金という名では差し障りがあるのなら、特別給付金であろうと、軍人恩給加算でも、また北朝鮮の拉致被害者に対する補償のような形でも、誠意ある代案ならば、私たちに拒む理由はありません。

  捕虜はよその普通の国では英雄であり、勇者であり功労者であります。私たちはそれほどの望みは毛頭ありませんが、せめて働いた賃金くらいは手にして、奴隷ではない人間として生涯を終わりたいのです。

と訴えられております。

 大臣は、私への前の答弁の中で、あなたのお兄さんがシベリア抑留者で苦労したということにも触れられました。大臣には、平均年齢八十歳になるこの老兵たちの最後の願いを理解していただけると私は確信します。

 この人たちは、本当にもう待てない状況にあります。きょうも代表の方たち十数名が傍聴席に見えております。衆議院解散を目前にして、私自身も次は立候補しないことにしており、これが議員としての私の最後の発言であります。大臣にぜひ一日も早く何らかの形でこの人たちの心情にこたえるように努力していただきたいが、どうか。私というよりは、傍聴席のあの人たちにぜひ答えるという気持ちで発言をお願いしたい。

坂口国務大臣 先ほどジュネーブ条約のことをおっしゃいました。確かに、ジュネーブ条約は遡及適用できないということになっておりまして、また、捕虜所属国による労働賃金の支払いがシベリア抑留当時に国際慣習法として成立したとは認められない、これが最高裁の判決になっているわけでございます。

 ただ、今小沢議員が御指摘になりましたように、そしてまた今日まで熱心にお取り上げになりましたように、この皆さん方に対する心情としては、私も過去に申しましたとおり、私の兄もハバロフスクで大変苦労をして、もう体力のほとんどを使い果たしながら、その中で三年間、二十三年にしか帰らなかったわけでございますから、二十年に終戦になりましてから、非常に長い間苦労をして帰ってまいりましたので、帰りましてからも抑留者の皆さん方の会の代表をいたしましたりいたしまして活躍をいたしておりましたので、その御苦労のほどにつきましては私も痛いほどよくわかっているわけでございます。

 それらの点にどうしたら報いることができるかということは、今お述べになりました問題だけではなくて、やはり総合的に考えていかなければならない問題もあるというふうに思います。労働証明書というものだけにこだわってこの解決を図ろうと思いますと、私は、ほかの問題とも関係をいたしてまいりますので、非常に難しいというふうに思います。

 しかし、御指摘になります心情につきましては十分にわかっているつもりでございますので、できる限りのことを私もまた考えてみたいというふうに思っております。

 本当に、何度かお取り上げをいただいたことに対して、私は敬意を表しております。

小沢(和)委員 では、次の問題です。

 十月一日、独立行政法人国立病院機構法が施行されたことに関連してお尋ねをいたします。

 一日に、理事長予定者として矢崎国立国際医療センター長が指名されました。

 お尋ねしますが、今から来年三月まで半年間の準備期間の病院運営については、だれが責任と権限を持つのか。

 法案審議のとき国立病院部長は、理事長予定者の指示、判断を仰ぎながら現在の国立病院・療養所を担当している職員が進めると答弁いたしましたが、準備期間中も法的には大臣に国立病院運営の権限、責任があるのではないでしょうか。理事長予定者は、大臣の指揮下に移行の準備をするのではないか。これ以外にあり得ないと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 国立病院機構の運営のあり方につきましては、今後、理事長予定者を中心とした独立行政法人化の検討が進められていくというふうに思います。先ほどお話しいただきましたように、矢崎さんをこの理事長にお願いいたしまして、大変な仕事でございますけれども、お引き受けをいただいたところでございます。そうした中で今後決定されていくべきものと考えておりまして、その方向性を踏まえて検討するよう担当部局に指示をいたしております。

 したがいまして、正式には来年の四月一日からではございますけれども、一応理事長として指名をさせていただきました以上、理事長の御意見を十分に拝聴しながら、そしてその下で、国立病院部の担当者もその手足となって動きながらやっていかなければいけないというふうに思っております。

 運営のあり方を全般的に見直していただきたいということも、新理事長にはお願いをいたしております。質の高い医療を効率的に提供できるようにしていただきたいと考えておりまして、そうした観点から検討を進めていただくものと期待をいたしているところでございます。

小沢(和)委員 私がお尋ねしているのは、端的に、この移行というのは大臣の指揮下にその準備が進められるのではないか、こうお尋ねしているんです。

坂口国務大臣 矢崎さんは来年三月三十一日までは理事長予定者でございますから、よく御相談をさせていただきながら私も責任の一端を果たしていかなければならないというふうに思っている次第でございます。

小沢(和)委員 いや、だから、大臣の指揮下でそういう移行の仕事をする、これ以外にあり得ないということを私はもう一遍言っておきたいと思います。

 それで、法案審議当時の私たちの質問に対して、大臣は、労使協議の必要性を認めながらも、法人化後の病院運営に関することはすべて後の人、つまり理事長予定者に任せるという答弁に終始されました。大臣がこういう姿勢だったために、あと半年しかないというのに法人化後の労働条件などは何一つ決まっておりません。労働者の不安は日ごとに大きくなっております。直ちに労使の協議を始める必要があると思いますが、いかがですか。

冨岡政府参考人 ただいま先生のお話にございましたように、国立病院機構法は十月一日に施行されまして、即日理事長予定者が指名されたところでございます。

 私どもは、現在、国立病院・療養所の運営状況等につきましてつぶさに説明し、また、今後の抱えている問題、それから見直しの種々の点につきまして説明し、それに基づきまして、今後の方向につきまして指示を、判断をいただきまして、そういったものが方向がまとまりました段階で、適切な時期に職員団体と話し合いに入ってまいりたいと考えているところでございます。

小沢(和)委員 だから、判断がまとまった後で適切な時期に交渉を始める、こういうことになったら半年しかないんですよ。だから、私たちも前から、早くやらなきゃ結局時間切れみたいなことになりゃせぬか、これがまた労使のトラブルの種になりますよということを言ってきた。だから、まだ今でもそういう漠然としたことを言ってくれちゃ困るんです。そこのところを、いつごろをめどにしてこうするということをここで言ってください。

冨岡政府参考人 先ほど申し上げましたように、国立病院・療養所の移行に関します検討課題は非常に多岐にわたるものでございます。そういうことから、私どもは、順次、スピードを上げまして検討を進めることといたしておりまして、そういったことが整った段階におきまして、協議が可能となった時期、それを急いでおります。(小沢(和)委員「それはいつごろだと聞いているんですよ」と呼ぶ)現在の点で、まだ十月一日に指名されたばかりでございまして、現在この作業を、説明を始めて、その方向を急速にまとめていきたいと考えておるところでございます。

小沢(和)委員 だから、私も、あしたからすぐ交渉を始めなさいとか、そんなことを言っているわけじゃないんですけれども、今のような漠然とした言い方でずるずる行くということは一番よくないことだということを言っているんです。

 私が一番関心を持っているのは、約七千五百名の賃金職員問題であります。法案審議のときは、私だけでなく多くの議員がこのことで質問をいたしました。

 もともと賃金職員は国家公務員の定員枠に縛られ、病院の運営に絶対に必要な職員でありながら定員外とされ、不安定な身分で働かざるを得ませんでした。本来必要な職員だから、実態としては長年勤務し続けているのに、常勤として扱わないこととするため、年度末一日だけ雇用を中断するという不当な処遇を続けてまいりました。だから、定員の枠から解放されるこの機会に全員を正職員化することを改めて私は要求いたします。

 きょうは矢崎理事長予定者に出席してもらってこのことを直接申し上げたいと思っておりましたが、まだ任命直後で無理ということなので、きょう国会で賃金職員の雇用問題について強い要求があったということをぜひお伝えいただきたい。間違いなく伝えていただけるかどうか、確認してください。

冨岡政府参考人 委員会での御審議の中身につきましては、正確にお伝え申し上げます。

小沢(和)委員 もう一つ伺っておきたいのは、最近職場で労働組合活動への不当な介入、圧迫が強まっているという問題であります。

 例えばある病院では、賃金職員の雇用継続を求める労組の署名簿が看護師の休憩室に置かれてあったということを当局側が問題視し、看護師に対し、だれが持ち込んだかなどと厳しく調査をしたと聞いております。

 なぜこんなささいな問題を大騒ぎするのか。もともと休憩室では労働者は休憩時間を自由に過ごす権利が法律上保障されており、施設管理権を振りかざして休憩時間中の署名活動などに介入するようなことは絶対に許されないことであります。

 独立行政法人化すれば、今までより法律的には組合活動の自由の幅が広がります。法律上そうなるのに、実際の運用でこれまで以上に組合活動を抑えつけようなどということは許されないのではありませんか。

冨岡政府参考人 私ども本省の方から、職員団体の活動に対しまして不当な圧力をかけるようにといった指示は一切いたしておりません。

 ただいまお話のありました点につきまして、私ども、全国の病院・療養所から報告がある中で思い当たる事案として考えますと、こういった事案ではなかったのかと思います。

 ある病院におきまして、各職員に対しまして署名を依頼している文書を放置したという事態がありまして、それは、もしそのまま実施されますと職務専念義務違反につながりかねないおそれがあったものでございますから、その点について注意申し上げた、そのような事案があったということでございます。

小沢(和)委員 休憩室にそういう書類が置いてあった、それが何で職務専念義務違反になるおそれがあるんですか。そんないいかげんなことで労働者に対していかにも犯罪人扱いして取り調べをしたりするというようなことは、これはもう絶対許されないということを重ねて申し上げておきます。

 次にお尋ねしたいのは、私がこれもさきの通常国会で取り上げた東京北社会保険病院のその後の経過の問題であります。

 北社会保険病院は、社会保険庁がかねて予定していた全社連への委託を昨年十二月二十七日に突然取りやめたために、そこに移転することになっていた都南病院職員や採用内定者二百数十名が職を奪われました。その後、関係労組や地元住民の運動もあり、ようやく六月、地域医療振興協会が新たに委託先に決まりました。

 最近職員の採用が行われましたが、全社連が社会保険庁を通じて提出した採用希望者名簿のうち、都南病院裁判原告五名を含む十名が不採用になっております。

 これは、地域医療振興協会への委託の前提となっていた、新病院の職員として予定していた者の雇用に配慮することという条件に反しているのではありませんか。これは国会での私たちへの、再就職が決まっていないような方がおりましたら、できるだけ新しい委託先に雇用に配慮していただくようなお願いをしていきたいという社会保険庁の答弁とも全く違う結果になっているのではありませんか。

 もともと、突然の委託取りやめがなければ、都南病院の全職員が採用されていたはずなんです。希望者の全員採用は当然のことだと思います。

 この都南病院裁判原告五名を含む十名の不採用者を採用させるために、社会保険庁はどういう努力をしていただいているんでしょうか。

薄井政府参考人 お答えをいたします。

 本年三月に社会保険都南総合病院は廃止をされたわけでございますけれども、これに伴いまして解雇されました職員の再就職の問題につきましては、基本的には雇用主でございました全国社会保険協会連合会の方で対応されるべき課題であるわけでございますけれども、私ども社会保険庁といたしましても、最大限の努力をこれまで払ってまいったところでございます。

 具体的には、ことしの二月でございますけれども、公的病院等を所管いたしております機関、団体に対しまして、再就職ができるように協力を依頼したところでございまして、これによりまして、都南病院職員の百十六名の方のうち八十七名の方々につきましては、他の社会保険病院なり公的病院等への就職が決定をしたというところでございます。

 そして、先ほど先生の御指摘にもございましたように、ことしの六月に東京北……(小沢(和)委員「いや、だから、十名の不採用者の採用のためにどう努力をしているかと聞いているんです」と呼ぶ)経過をちょっと御説明させていただき……(小沢(和)委員「いや、そんな経過は要らぬ」と呼ぶ)はい。

 東京北社会保険病院の委託先を地域医療振興協会に決定をいたしました後、これは、再就職が決まっていない方々をできるだけ雇用していただくようにということで、同協会に対しまして、文書だけではなくて、何回か向こうの方とお会いしまして、特段の配慮を要請する等の働きかけを行ったところでございます。

 その結果でございますけれども、元都南病院関係者、これは就職内定者若干名も含んでおりますが、就職を希望されている方で就職が決まっていなかった二十一名の方のうち十三名の方につきましては、同協会におきまして北病院への採用の内定に至ったものと聞いているところでございます。

 先ほど十名というふうにおっしゃいましたけれども、これは就職が決まっていた方も含めまして四十名の方が都南病院の関係者ということで採用の応募をされたわけでございまして、その中からは三十名ということでございますけれども、全体につきましては九百名を超える応募があったというふうに聞いておりまして、私どもの働きかけも受けまして、協会におきましては一定の配慮をしていただいたものと認識をしているところでございます。

小沢(和)委員 聞いていないことに長々と答えるようなことはやめていただきたい。私が聞いているのは、十名の不採用者が出たが、その人たちをさらに採用させるためにどう努力をしたかと聞いているんです。

 全社連が作成し、社会保険庁が履歴書をつけて地域医療振興会に提出した採用希望者名簿に登載された二十一名中八名が不採用ですが、うち五名が、北病院の開院延期による採用取り消しを許せないということで裁判に訴えた原告であります。考えてみれば、この人たちこそ、一番病院への採用を願っていたから裁判まで起こしたのであり、職員として採用するなら、こういう熱意のある人々をこそ採用するのが当然ではありませんか。

 採用希望者名簿を提出した当事者である社会保険庁は、委託元として、再度希望者全員の採用のために強く働きかけるべきではありませんか。

薄井政府参考人 北病院の職員の雇用につきましては、どのような方を採用するかというのは、一義的には経営受託者でございます地域医療振興協会がその責任において判断されるべき事柄であると考えております。ただ、私どもといたしましては、先ほども御説明申し上げましたように、地域医療振興協会に委託先が決まった後、個別に、二十一名の方のリストを添えまして、協会に対しての配慮ということで要請をさせていただいたところでございます。

 先ほども申し上げましたように、全体では九百名を超える求人に対する応募があった中で、今回内定になった方は百名ちょっとというふうに承知をいたしておりますけれども、それらの中で、旧都南病院の関係者につきましてはかなり高いパーセンテージでの雇用ということになっておりまして、協会におきまして一定の配慮をしていただいたものと承知をいたしているところでございます。

小沢(和)委員 いや、だから、そういう一定の配慮をしたという話を聞いているんじゃないんですよ。採用されなかった人たちについて、さらに努力をしてほしいということを言っているんです。もう質問はしませんが、私の気持ちを酌んでいただきたい。

 さて、本日の主題である感染症予防法等改正案について質問をいたします。

 いわゆるSARSが、今年春、中国から東南アジア各国、さらにカナダなどにも流行し、これら各国の国民生活を混乱させ、経済に大きな打撃を与えたことは、まだ私たちの記憶に生々しいものがあります。一昨日の報道によれば、アジア各国のSARSによる被害は約六百億ドル、日本円にして六兆七千億円に達したと言われております。幸い、我が国では今春は被害を免れましたが、近隣各国と同じように、この冬に向けて急いで対策に取り組む必要があると思います。

 そこで、まずお尋ねしたいのは、感染症は日本のような先進国には過去の問題だというおごりが、最近の我が国の行政の中に生まれていなかったかということであります。私は、例えば、結核病棟の相次ぐ閉鎖とか、保健所の統廃合による感染症対策の機能の低下などにそういうことを感じます。

 日ごろから、国民の保健を大事にし、感染症に適切に対応できる機構、施設などを確保しておくことが、長期的には極めて重要なことではないか。お尋ねをいたします。

坂口国務大臣 感染症対策といたしましては、全国でもしもそれが発生をいたしましたときには、その検査をする、そしてそれを治療するという体制が大事でございまして、検査をするということにつきましては、現在、全国七十六カ所の地方衛生研究所と国立感染症研究所が感染症に関する調査研究、検体検査を行うという体制をとっております。それから、感染症指定医療機関が患者に対する治療を行うわけでございますが、これは現在、全国で三百十三カ所になっております。それから、五百八十二カ所の保健所が地域における情報収集、住民への情報提供を担っている。

 こういうことでございまして、それぞれの地域で、先ほども御議論ございましたけれども、どこが中心になっていくのか、いわゆる基幹病院としてやっていくのかというようなことも明確にしながら、それぞれの地域におきまして対応していきたいと考えているところでございます。

小沢(和)委員 今の段階では治療法がないので、できるだけ早く発見し、隔離して他に感染させない、そして患者の自力での回復を待つ、これ以外にないということのように、先ほどからの話を聞いていて思いますが、そうなのかどうか。

 しかし、危険だというだけで、いたずらに社会防衛的になれば、ハンセン病やHIV感染症のときのような誤った方向にも行きかねません。やり方によっては、国民の身体的自由を不当に拘束し、人権侵害を引き起こしかねません。正しい情報の的確な伝達や知識の普及が非常に重要だと思いますが、この点いかがでしょうか。

田中(慶)政府参考人 感染症法は、患者等の人権への配慮を基本理念として制定された法律でございます。SARS患者が発生した場合におきましても、法に基づき適正に対処していく必要があると認識しております。

 個人情報の保護につきましては、本年四月から五月にかけての一連の対応の中でも、人権に配慮し、かつ無用な混乱を避け、不要な不信、不安を招かないように、情報の公表に当たっては、個人情報の保護にも配慮しながら、これらの方が特定されないような形で対応してきたところでございます。

 また、仮に、SARS患者が国内で発生し、入院等の措置が必要となった場合には、まず患者に対して入院勧告を行い、入院の延長に関しては、感染症診査協議会の意見を聞いた上で延長を行うなど、法の規定に基づく必要な手続をとった上で対応することとしております。

 患者等に対する人権に最大限配慮しながら、法の適正な運用を図っていきたいというふうに考えております。

小沢(和)委員 私が聞いているところでは、SARSの初期症状はインフルエンザと非常に似ているといいます。普通の人は、インフルエンザにかかったと思って一般の病院に行ってしまうのではないでしょうか。そうすれば、多くの一般病院がSARSのウイルスに汚染されるし、もし医師がSARSと診断できずインフルエンザとして治療を続けたら、病院全体に蔓延させ、最悪の場合、一時閉鎖に追い込まれるというようなこともあり得るのではないかと思います。

 第一線で診断、治療に当たっている医師に必要な知識を徹底して、そういうような事態を引き起こさないためにどのような措置をとっているか、お尋ねします。

田中(慶)政府参考人 御説明申し上げます。

 インフルエンザとSARSは先生御指摘のとおり鑑別が非常に困難であるということでございまして、渡航歴や症状等からSARSを心配している患者さんにつきましては、一般の外来患者さんと区分して初期診療を行うことがパニック対策上非常に重要であるというふうに考えております。

 既に各都道府県では、SARSが疑われる患者さんの初期診療を担当しますSARS外来診療協力医療機関、これを指定しまして所要の設備整備を行うなど、体制の整備を図っているところでありまして、SARSが流行した際には、医療機関を受診する前に最寄りの保健所等に電話で相談の上、その指示に従うよう、広報の強化を行う予定でございます。

 なお、国として、地方自治体や感染症指定医療機関等を対象に、院内感染対策等に関する研修会を開催してきたところでございますけれども、各自治体におきましても、地域の一般医療機関の医療従事者を対象としました研修等を行うよう御指導申し上げているところでございます。

小沢(和)委員 中国では、このような混乱を引き起こさないために、インフルエンザそのものを流行させない、そのためにワクチンの大増産や早期の予防措置に全力を挙げていると聞いております。我が国でも同じような対策を強力に推進することが必要ではないでしょうか。

田中(慶)政府参考人 今冬はSARSの再流行が懸念されていることから、SARSとの鑑別が困難でありますインフルエンザにつきましては、例年以上の取り組みが求められているところでございます。

 インフルエンザワクチンにつきましては、従来より、インフルエンザワクチン需要検討会、ここにおきまして、医療機関等を調査したりあるいは世帯調査を行った結果に基づきまして需要量を推定しているところでございまして、今冬につきましては、SARS対策としての需要増を上乗せした上で、インフルエンザワクチンの増産をメーカーに働きかけた結果、昨シーズンの使用量の一・四倍以上に当たります約一千五百万本が製造される予定でございます。

 六十五歳以上の高齢者や、心臓、腎臓等の基礎疾患を有する六十歳以上の者に対しましては、予防接種法に基づきまして、インフルエンザの定期の接種が従来から実施されてきたところでありまして、今冬に向け、ワクチン接種勧奨のための普及啓発を含むインフルエンザ対策を積極的に行ってまいりたいと考えております。

小沢(和)委員 時間が来たようですから、あと一言だけで終わりたいと思うのですが、私が特に心配しているのは、今我が国で、医療制度の相次ぐ改悪によって、病院での高額の窓口負担を払い切れず、病気になっても病院に行かない患者がふえていることであります。九月二十九日の厚生労働省の発表によると、本年四―五月の労働者の受診数は対前年比で約七%も減っております。

 もっと深刻なのは、国保加入者で、高い保険料を払い切れないため保険証を取り上げられ、資格証明書しか持たない人たちであります。この人たちは、窓口で三割でなく全額払わなければならない。私は、福岡市の例を昨年ここで紹介しましたが、この人たちの受診率は普通の人たちの百分の一、つまり、ほとんど医療から締め出されております。また、失業したため国保に加入すべき人が、高い保険料を心配して未加入のままでいる人も相当数いる。このほかに、ホームレスなど、全く医療から締め出されている人もいる。

 こういう人たちは全国でそれぞれ合計するとどれぐらいいるのか。こういう医療からほとんど、あるいは完全に締め出された人々がSARSにかかったときのことを考えると、本当にそら恐ろしい気がするのですが、こういう人々に対しどういう対策をとるのか、最後にお尋ねします。

辻政府参考人 まず、国保の資格証明書を持つ者、あるいは医療保険未加入者、あるいはホームレスといった方々の数字についてのお尋ねがございました。これについてお答え申し上げます。

 まず、御指摘の国保の資格証明書が交付されている方々でございますが、保険料を滞納されたということからこういうことになっておりますけれども、その医療費につきましては償還払いがなされるということから、必要な受診は私どもは抑制されていないというふうに考えておりますが、交付されております世帯数について申し上げますと、十四年六月一日現在で二十二万五千四百五十四世帯でございます。

 それから、ホームレスの方々の人数につきましては、本年一月における全国調査によりますと二万五千二百九十六人でございます。

 それから、医療保険に加入すべきであって未加入の者という数字につきましては、例えば、国保から被用者保険に移りましたときに国保の資格喪失の届け出がおくれる方がいらっしゃるというようなことがありまして、いわばリアルタイムでの制度間の資格取得状況が把握できませんので、これについては把握できておりません。

 以上でございます。

小沢(和)委員 いや、だからどういうふうにするのか。どうするのかと聞いているのです。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 感染症の患者さんが発生した場合、あるいは発生が疑われる場合には、都道府県等が積極的疫学調査をしまして、接触者調査を行いまして感染経路の究明を行います。この調査によってSARS等の重篤な感染症に感染したおそれがある者が発見された場合には、都道府県等はそれに健康診断を受けさせることができるということが書いてあります。この健康診断は都道府県の費用負担により行われますので、自己負担なく受診することができます。

 また、感染症の蔓延防止には感染者を早期に特定することが非常に重要であると考えておりまして、こうした仕組みを使いながら感染症の蔓延防止に努めてまいりたいというふうに考えております。

小沢(和)委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

中山委員長 小沢委員、長い間御苦労さまでございました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 冒頭、坂口厚生労働大臣の再任を心からうれしく思いますし、坂口大臣がこれまでかじ取りをしてくださった厚生労働行政が、さらにこれで一歩も二歩もまた充実していくというふうに考えております。

 せんだっての代表質問でもございましたが、今、国民の抱えている三大不安は、実は志位委員長の質疑の中だったのですが、老後の不安、健康不安、雇用の不安、これだけ三つも不安、毒まんじゅうかどうかわかりませんが、不安を抱えていると、なかなか国民にとって、社会の未来像とかどのように私たちが暮らしていくかということを打ち出し、考えていきづらい状況にあると思うのですが、私は冒頭、きょう質問予告してございませんが、ぜひとも大臣に検討していただきたい事例があって、いわゆる医療被害、医療ミス、医療事故問題で大臣のお考えを伺いたいと思います。

 九月の二十五日でしたか、各社一斉に報道しておりましたが、慈恵医大の青戸病院というところで、腹腔鏡を用いて前立腺がんの手術をなさった医師三名が逮捕されておる。私ども医療にかかわる者は、いつでもミスや事故と背中合わせですが、それが即刑事事件や逮捕という形になるということは、非常に国民にとっても医療不安と不信をさらに増大させる。モルモットのように患者さんを扱ったんではないかという声も世上大きくなっております。

 そうこうしているうちに、また昨日、横浜市立の市民病院で、気管内挿管されていたはずのチューブが胃に入っておって、患者さんが亡くなった。もう私は毎日日にち新聞を見て、医療ミスとか被害とかいう報道を見るたびに、本当に胸がふさがれる思いがいたしますが、やはりいわゆるミスの事例について、その原因、対策、今後のなすべき処方せんということをきっちり国が指導していくためにも、私は、ミスと思われる事例の報告義務をさらに拡大していただきたいと思うのです。

 実は、特定機能病院と言われる高度な医療を担う病院でどれくらいミスがありますかということを、私は二〇〇二年の四月に質問主意書で出させていただきました。そういたしましたら、いわゆる高度な特定機能病院でも、医療事故報告が二年足らずで一万五千件と、膨大な数でございます。うち重篤なものは三百八十七件と。

 しかし、この中には、あの問題になりました東京女子医大の例は報告すらされておらない。報告されなければ元も子もないわけで、報告して体制を取り組んでいくためにも、今とりあえず国立病院ないしは関連病院の報告義務というところまで何とか、これは大臣の御見識で持ち上げていただきましたが、やはり基本的には全病院、医療事故と思われるものについては報告を義務づけるという方向に早急にしていただかないと、私は、医療者と国民の間で不信と不安がさらに高まって、よいことが何一つないように思います。

 この報告義務ということの拡大というか、基本的にはいずれの病院で起きたものも報告を義務づけるということについて、坂口大臣のお考えを伺いたいと思います。

坂口国務大臣 医療事故につきましては、大変私も心を痛めておりますが、とりわけ先日の慈恵医大におきます件につきましては、これはまだ十分な知識を持っていない人が中心になって行ったということで、ここは、いわゆる医療ミスといいますよりも、その前の段階のことではないかという気がしたわけでございます。

 したがいまして、来年から研修医制度を発足いたしますが、そこでさまざまな問題についてよく研修をしていただくということが一つは大事になってくるというふうに思っております。研修をするということは、そこで教える側の人たちもちゃんとしていないといけないわけでございますから、双方ともにそこに緊張感が生まれるのではないかというふうに考えております。研修医にすべてを任せ切るというようなことがありますと、また二の舞が生じますので、そういうことのないように、十分配慮をしていかなければならないとも思っているところでございます。

 さて、そういうミスが生じたときに、それをどう報告するかというのは、先ほどお挙げになりました統計等は非常に正直に報告をしている病院だというふうに思いますが、正直に報告をすれば数がふえる。しかし、数の少ないところはうまくいっているのかといえば、必ずしもそうとも言い切れないというのが現実ではないかというふうに思っております。

 かつては、医療というのは若干のミスはつきまとうものという考え方というものが、正式にあったというわけではございませんけれども、それとなく存在したことも事実でございます。これから先の医療というのは、そうしたことは許されないということでございますしいたしますから、それぞれの病院がどういうところでミスをしそうになったというようなことの症例をちゃんと提供して、それぞれの病院内において議論をし、そして、そうした問題を今度は地域においてそれらを検討しということがやはりなされていかなければならないと思いますし、そうしたことがちゃんとやられているかどうかということも、これはこれからはインターネットあたりで掲示をされることになると思いますし、そうしたことがされているかどうかということが病院の評価に結びついていくんだろうというふうに私は思っております。

 国としての指導も大事でございますが、そうしたことがやはり大事だということも各病院が認識をする段階に来ているというふうに思っておりますので、そうしたことと相まって、これから医療ミスというものに対して、より厳しく対応をしていくという大方針のもとに、これからさらに進めていきたいというふうに思っております。

阿部委員 私がお願いいたしましたのは、やはりこうやって新聞報道で、その場限りの花火のように悲惨な事例が次々と挙げられていくということがもうずっと続いております。やはり事故、ミス、不測の事態が起こるところには、実は不測ではなくて、それが起こるべくして起こった背景というものも多分に分析されると思いますので、そのためには、ぜひ事例の集積をなるべく多くやっていただく。

 例えば、大臣がおっしゃった指導体制に問題がある事例もあるでしょうし、あるいはまた一般診療の非常にレベルが到達していない病院も現実にあるかもしれない。しかし、それをきちんと国民に、こうしたものはこういうふうに解決していくというふうに明示するのも、私は今の段階ではとても大事な国の役割だと思います。

 医師が逮捕されるという事態は、大臣も医師であればおわかりと思いますが、やはり本当に国民にとって信頼を欠く一番の、医者はまかり間違えばミスで人を殺してしまうかもしれない、その重大な役割を負っているわけで、刑事事件で裁かれなくてはいけないということ自身、私は非常に疑問を感じておりますし、しかし、それを上回る問題がまたあったのやもしれませんし、きちんと報告体制がなされることを重ねてお願い申し上げます。

 引き続いて、本法案に入らせていただきます。

 先ほど来、家西委員あるいは五島委員が大分、大臣並びに厚生省の担当官の皆さんと問題のありかを詰めていただきましたので、私は、いま一度原点に立ち返って、特に今回の法案の改正が、検疫的、防疫的、いわゆる疫病の侵入を防ぐという観点と、いま一つ、痘瘡という生物化学兵器にも転用されかねない細菌についての対応を重点的に決めたものであるというふうに理解しています。

 その重点の置き方がいいかどうかは、また私には別途意見がございますが、もしもそういう法改正をなさるのであれば、我が国として一つ過去をきちんと総括しておかなければならない事例があると思います。

 今、中国で残してきた毒ガス、第二次大戦において我が国が中国で遺棄、残してきてそのままになった毒ガスが現地の方々に大きな被害を生んで、問題になっておりますが、それと同じ時期、日本は中国で細菌戦、この痘瘡を含めたペストやコレラやさまざまな細菌を化学兵器として用いた過去が、この間、さまざまな資料でも明らかになってきております。

 せんだって、川田悦子議員が、これも厚生省に質問主意書でお尋ね申し上げましたが、旧満州において、水の防疫、インフラ整備という給水あるいは排水の整備にかかわって、当時、細菌戦とおぼしき細菌兵器の散布並びに人体実験があったのではないかということで、それにかかわった日本の軍属が三千人以上あるということが報道されておりました。

 私は、毒ガス問題に続いて、やがてこの細菌戦の問題も中国で、我が国との本当の今後の友好関係を結ぶに際して大きな問題としてクローズアップされると思いますが、今国内の方は、痘瘡について、新たなテロ攻撃があるかもしれないから法整備をしましょうと。そうであれば、この日本がかつて行った細菌戦あるいは毒ガスなどについての日本としての世界にきちんとした姿勢を示せるだけの対応が必要と思われますが、坂口大臣には、この日本が行った第二次大戦中の細菌戦についての御認識をまずお尋ね申し上げたいと思います。

坂口国務大臣 突然のお話でございますが、私は、中国でどういうことが行われたということについてつまびらかに知っているわけではございません。よくうわさにそういうことがあったということを聞く程度でございまして、本格的に日本がそうしたことをやってきたのかどうかということの事実というものを私、今のところ存じておりませんので、それに対して十分なお答えをすることはでき得ません。私も、それは厚生労働省も関係することでございますから、よく一遍調べてみたいというふうに思います。

阿部委員 まず大臣が認識してくださることは解決への一歩と思いますので、いわゆる七三一部隊と言いならわされている部隊が細菌戦の実行部隊であったということが、既に欧米のいろいろな追跡調査でも出ておりますので、我が国はイラクの大量破壊兵器問題で人を責めるばかりでなく、みずからを律するという意味でも、ぜひとも大臣に問題の所在を御認識いただきたいと重ねてこれもお願い申し上げます。

 引き続いて、SARS関連ですが、このSARSと痘瘡を一類感染症に位置づけるということでございますが、この件について、なぜ一類であるのかということが、もう既に他の委員からも御質疑がございました。一類であるか否かは、いわゆる検疫感染症に入るかどうかのところで区別が出てまいりますので、そのほかの一類感染症と比べまして、このSARSというものが水際作戦で本当に措置できるものかどうかということについても、もう既に御議論がございました。そして、今後病態が明らかになる中で、見直しということについても大臣が先ほど確認答弁をしてくださいましたので、その件は一応可及的速やかに見直しをしていくということで、まだ私どもの国ではSARSを経験しておりませんので、今回の立法は極めて私はかたい立法といいますか、厳しい立法になっておると思います。

 そこで、見直しの御答弁もいただきましたが、実務サイドにお伺いいたしますが、先ほど家西委員の御質疑にもありましたが、例えば検温の拒否とか報告を怠った場合に最大五十万円の罰金刑ということも科せられておりますが、諸外国の状況やいかん、お答えください。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 今手元に資料を持ち合わせておりませんけれども、たしか台湾とかシンガポールあたりではしかるべき罰則を科しているというふうに記憶しております。

阿部委員 罰則並びに例えば禁錮であるか罰金幾らであるかという詳細なところをお願いしたいとは申し上げましたが、なかなか資料がお集まりでないようで、カナダでは逆に罰則はございません。

 それから、五島委員がおっしゃられましたように、まずどういう病態であるかということを広く国民に知ってもらう。例えば感染の潜伏期、いわゆるSARSの感染の潜伏期には、人にはうつさないものです。発症して初めてうつす。この五十万円の罰金刑にかかる方たちは潜伏期でございますから、人への感染の可能性はない。本来はおのれの健康管理でございます。そこを、発症した場合に症状が、発熱とか鼻水とかせきとか出た場合に感染するという病態も既にわかっております。その段階であえてこの十日間ないしそれに伴う期間を報告義務を課して、罰金刑までつけるということは、私は早急に見直されるべきことと思います。これは人権意識の、非常に日本の外国に示す姿として、私はいかがなものかと思っております。

 大臣には再度恐縮ですが、この罰金刑ということも含めて見直しを検討していただけるかどうか、それをお答えを、病態が明らかになった時点でということでお願いいたします。

坂口国務大臣 先ほどからお話が出ておりますように、この病気の病態というのはなかなかまだわかり切っていない、非常に不明な面が多い病気でございます。したがいまして、これからこの研究は早急に進んでいくものというふうに思っております。

 したがいまして、病態が明らかになり、そして感染経路も明確になって、そして皆さん方にそれほど恐れるに足らない病気になってくる、もちろん治療方法も確立をしてくるということになってくれば、これはそんなに恐れる心配はないのではないかということになってまいります。その場合には、罰則等も含めまして、全体にこれは見直しを行うということは当然行われるものと考えております。

阿部委員 二点目も、既に大臣の確認答弁で御発言のことですが、いわゆる感染のおそれがあるとは、病院で患者さんの処置にかかわった医師あるいは家族、あるいは患者さんを訪問されたお見舞いの方などに限るという御発言でございました。そうしたことであるならば、逆に、本来はこうした法律の提案の折にきちんとした別途政令、省令、通達などでこの対象者を明確に規定しておくということが、人権侵害につながらない一つの担保になると私は考えておりますが、その点について、この法案を提出された原局の方ではどのようにお考えでしょう。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、適用範囲を余り野方図に認めるというのは非常に問題があると思います。科学的根拠に基づいて、感染したおそれがあるというその事実がどの程度の状態なのか。それで、先ほど例として三つほど例示させていただきましたけれども、患者さんを診察した場合、あるいは家族に患者さんがいた場合、あるいはそのような患者さんをお見舞いしたような、非常に濃密な接触をした場合、そういうことを一応考えたわけでございます。

 これに関しましては、当然通知等で明記して、運用について適正を図っていきたいというふうに考えております。

阿部委員 通知等で明記というお話ですが、極めてファジーに受け取れますが、何度も申しますが、このおそれのある方は、実は人にうつすということではないのです。発症したときからうつすと現代の知見でわかっておりますので、やはり何度も言いますが、最低限の、人権侵害を起こさせないために、初めの段階で、すべてこれは予防的である、現在その方がうつすのではない、ただしその後発病した場合に問題があるのだから御協力をお願いしたいというふうなきちんとした指導が徹底いたしませんと、私もちょうど四月の末から五月、中国に行ってまいりましたが、やはり非常に知らないものは恐怖が強く、人権侵害になりかねない排斥が行われやすいということですので、そういう事態をきっちり踏まえて明文化しておかれるということを、それを通知とおっしゃいましたかどうか、明文化しておくということを大臣に御答弁いただきたい。いずれ省令、政令、通達などで明文化するという点で御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 それはそのとおりにしたいと思っております。

阿部委員 三点目です。

 これも小沢委員が先ほど保健所体制のことをお尋ねでございましたが、いわゆる人畜共通感染症と言われるものの対応の中で、獣医師が診察する動物、家畜あるいはペットなどなどでいろいろな人畜共通感染症が生じる可能性があるもの、例えばBSEもそうですし、O157もそうかと思いますけれども、これが家畜間の場合は、家畜伝染病予防法、そして家畜保健所に報告がなされる。人間の場合は、いわゆる人間の保健所に、動物から人間にうつる可能性についても報告がなされますが、やはり保健所の人的あるいは知的、知識的なれというものがなかなかまだない。

 先ほど小沢委員の御質問に、保健所が何カ所そういう体制をとっておるかという保健所の数はございましたが、果たして、そこでお仕事をなさっている担当の方々がどういうふうな研修、指導体制をとっておられるのかということについては、例えば、台湾人医師が入国されて、その事例が保健所に報告が行きましたが、そこからまた検疫まで行くまでの間に非常に時間を手間取ったりした事例も含めて、やはり積極的な人員の補充と教育が必要と思われますが、その点について、担当の方から御答弁をお願いします。

田中(慶)政府参考人 御説明申し上げます。

 動物由来の感染症に関する対応ということでございますけれども、獣医師からの届け出等、動物由来感染症の情報を得た保健所では、感染症の予防または蔓延防止のために必要があると判断した場合には、必要な疫学調査を行った上で、採取した検体について地方衛生研究所で検査を実施し、場合によっては国立感染症研究所に検体を送付して確認検査を受けるというようなシステムになっているところでございます。

 厚生労働省としましては、このような職務を行います保健所職員の資質の向上を図るために、狂犬病、ウエストナイル熱等の動物由来感染症について、保健所職員に対する各種研修の実施等、支援を行ってきているところでございます。

 今後とも、動物由来感染症対策の研修を実施するなどして、保健所職員の資質の向上を一層図り、必要に応じて、都道府県に対して、動物由来感染症対策の充実について指導してまいりたいと考えております。

阿部委員 保健所の充実という問題は、平成十一年の伝染病予防法から感染症法に変わったときにも附帯決議で何度も何度も挙げられておりますが、さはさりながら、実際に職員の充実なり研修の充実ということは、むしろ保健所の統廃合の中で縮小しているというのが現状だと思います。法律はそのとき幾ら審議して附帯決議を上げても、実行されなければ何の意味もないわけですから、今回の事例にかんがみて、ぜひとも実効性のある保健所職員の充実や研修をお願いしたいと思います。

 SARS関連はここで終わらせていただきまして、引き続き、私が本年の二月の十二日、予算委員会で坂口厚生労働大臣にお尋ねいたしました件についてお伺い申し上げます。いわゆる御高齢者の在宅酸素療法でございます。

 これは、私がそのとき伺った理由は、御高齢者が医療費において定額負担から定率負担になったことによって、酸素という生きていく上で非常に極めて大事な治療手段を、お金の額ゆえにあきらめなければならない患者さんが出ているのではないかという懸念を持ったためでございます。

 いろいろな調査方法がございますが、保険医団体連合というところでお調べいただいたデータでは、十九都道府県で一万三百六十七人の方がこの在宅酸素療法を中断されましたが、中には死亡されたり入院されたりして症状が重くなった方もございますが、その反面、経済的理由での中断も千九百十六人に上っておると言われています。二割近くが経済的理由で命綱の酸素も吸えないという状況も一部指摘されるところかと思います。

 この件につきまして、大臣は、これは一遍検討してみなければいかぬという御答弁でありましたので、現在に至るまで半年余を経過いたしましたし、医療費の定率負担からは一年を経過しておりますので、その検討状況、お考えについてお願いいたします。

辻政府参考人 御指摘の在宅酸素療法についてでございます。

 自己負担、モデル的には、今回の一割で一万円程度というふうに考えるわけでございますが、今回の措置で、基本的に、外来の一部負担、上限を一般的には一万二千円、そして負担能力の低い方には八千円という上限をつけたという中でございます。

 そういう中で、在宅酸素療法患者の受診動向につきまして、これまでの御指摘を受けまして私どもなりに調査を行いました。具体的には、厚生労働省の所管医療機関、地域バランス等を考慮して選定した五十三病院におきまして行いましたが、その限りでは、昨年十月の前後三カ月でほとんど変化はなかったという形の状況でございます。

 いずれにいたしましても、個別の患者さんに関する療法の適用、継続につきましては、あくまでも主治医による医学的判断に基づき適切に行われているものと考えておりまして、今回の負担の見直しによりまして、真に必要な医療が受けられないような状況は生じていないと私どもは考えております。

阿部委員 厚生省がそういうふうに認識なさるということが、非常にやはり国民の命についても私は甘い認識だと思います。

 私の時間がもうございませんので、もう一点だけ指摘させていただいて終わりますが、いわゆる高額医療になった場合の償還払い、払い戻しについてすら、きちんと患者さんたちは御存じありません。となると、お金がどれだけ取られるかわからない不安から、受診を手控えたりということも現実にはございます。

 この医療費の、特に御高齢者の問題、あるいはサラリーマン御本人の三割負担に伴う問題は、やはりそれを決められた厚生労働省側がきちんとしたデータを提示なさる。五十三病院というのはいかにも少のうございます。

 それから、償還払い制度の実施されていない未申請率についても、また折を見てデータ提示をお願いいたしたく、私の質問を終わらせていただきます。

中山委員長 次に、金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。

 この委員会でも何度も質問してまいりました在外被爆者問題について、残された十分の間ですけれども、質問させていただきたいと思います。

 坂口厚生労働大臣が八月の六日、八月九日、広島、長崎で被爆者の皆さんとお会いになりまして、そして、これからもさらに在外被爆者の支援事業をやらなきゃいけないというようなことを記者会見でも表明されておりまして、私も非常に関心を持っておりました。今回副大臣になられた谷畑副大臣とも一緒に、この問題は議員懇のメンバーとして取り組んでまいりました。

 そこで、大臣にお伺いをしたいんですけれども、概算要求で厚生労働省が、この在外被爆者の皆さんに在外における医療の支援事業を始めたいということで、二億六千万ですかの概算要求をされたというふうに聞いておりますけれども、非常にこの点については、在外被爆者を支援されている皆さん、それから在外被爆者の団体からも強い期待が寄せられておりますけれども、財政状況が大変厳しい状況の中で、全体の財政状況もありますが、ぜひこの新たに概算要求で盛り込んでいただいた在外の医療支援活動について、予算がついて実施ができるように、ぜひまず大臣の決意をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 担当者の方からも、財務省との話し合いというのは大枠でついているというふうに聞いておりますので、私は、このままそれは認められるものと思っている次第でございます。

金子(哲)委員 そこまで話がついているということであれば、当然、予算化ということで具体的な実施になっていくというふうに思いますので、そこで、実施に当たって今考えておられることについて、二、三お伺いをしたいと思います。

 私もちょっと関心があるものですから、一、二度お問い合わせをしたことがありますけれども、今回、在外の被爆者ということでいえば、基本的には、被爆者といえば被爆者健康手帳を取得されていらっしゃる方。しかし、今回の大臣の強いお気持ちというのは、日本に来られない人をとにかく何とかしなきゃいけないんじゃないかという思いの中からこれがスタートしたというふうに、それだけではありませんけれども、そういう思いも非常に強くこの施策が実施をされたと思いますけれども、今回実施される対象者として今お考えになっておられる範囲をまずお聞きしたいと思います。

田中(慶)政府参考人 健康上の理由等によりまして渡日できない在外被爆者がおられることにかんがみまして、在外被爆者が現地医療機関において適切な医療を受けることができるようにするための在外被爆者保健医療助成事業を、従来からの在外被爆者渡日支援等事業の一環として予算要求したところでございます。この事業の内容につきましては、現在、関係省庁と調整を行っております。

 概算要求におきましては、被爆者健康手帳または被爆確認証の所持者をこの事業の対象とすることと考えております。

金子(哲)委員 今のお話で大事なことは、被爆者健康手帳を保持している人のみならず、確認証を持っている人もその対象に加えるということ、私はその点は、今回、厚生労働省がこの事業を行われるに際してそこまで拡大していただいたということは、非常にこれまでこの問題に取り組んできた者としてはよかったというふうに思っております。ぜひそういう方向で実施していただきたいと思うんです。

 ところで、渡日支援事業が始まって、この確認証の発行は、実は、ほとんどの人が手帳取得を前提として今までこれを申請されてきたわけですね。今度は自分の国におられても医療支援を受けられる対象になるということになってまいりますと、確認証の発行を求められる人たちが非常にふえてくるというふうに思うんですよ。

 それで、従来の渡日支援事業でも、その国に行って確認証の発行作業も一つの方法として、選択肢としてあったように思うわけですけれども、その点で、これだけ確認証の意味が大きくなったということでありますと、在外においての確認証の発行の作業をぜひ推進していただきたい。これまで、実際上はできることになっていたけれども、余りできていなかったことを推進していただきたい。

 例えば、ことしの十月、広島県が中心になってブラジルの医療健診を行いますけれども、そういう機会も含めて、ぜひ積極的にこの確認証の発行の作業をやっていただきたいと要望したいんですけれども、いかがですか。

田中(慶)政府参考人 御説明申し上げます。

 健康上の理由等によりまして渡日できない方々に対しましては、在外被爆者渡日支援等事業におきまして、広島県・市、長崎県・市の職員が現地を訪問するなどして事実関係を確認した上で、被爆者健康手帳の交付要件に該当すると認められる場合には、被爆確認証を交付することとしております。

 この交付事務につきましては、これまで、現地健康診断事業実施の際に、被爆者からの各種相談等に対応してきておりまして、今先生の御指摘の、今月実施する予定のブラジルの現地健康診断事業の際にも、積極的に被爆確認証についての広報周知を行うとともに、各種相談、面談等を行いたいというふうに考えております。

金子(哲)委員 今局長は健康診断の際ということをちょっとおっしゃったんですけれども、例えば韓国などは、これは今医師団の派遣がないわけですから、韓国などの場合は確認証発行作業のためだけの派遣も当然必要になってくると思うんですけれども、その点について、そういう方向をぜひ進めていただきたいと思いますが、その辺どうですか。短くお願いします。

田中(慶)政府参考人 そのことも検討させていただきたいと思います。

金子(哲)委員 そうしますと、今度は大臣にお伺いしたいんですけれども、実は、一つの大きな懸案で、大臣が広島、長崎で被爆者の要望を聞かれる会でも出てきたと思うんですけれども、いわゆる北朝鮮の在住の被爆者の問題です。

 これまでは、渡日を前提としたいろいろな支援事業だったものですから、なかなか難しいという、そもそも来られるかという問題があったと思うんですけれども、今回、その国に住んでいても、手帳もしくは確認証を持っておればこの支援事業を受けることができるというふうになってまいりますと、北朝鮮にも現に手帳を所持されていらっしゃる方がおられるわけでありまして、そういう人たちに対する問題は、もちろん日朝国交正常化交渉の問題とか、さまざまな外交的な問題もこれはあることは承知しておりますけれども、当然、対象としては考え、そして、具体的にどう実施するかというのは今後の検討事項になってまいると思いますけれども、ぜひ積極的な意味でその点を推進していただきたい、このように要望したいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 この被爆者の問題は、国と国との問題ではありません。日本と被爆者との問題でございます。したがいまして、そこに差はないというふうに思っておりますが、しかし、北朝鮮の場合には、その動向、出方というものも注目していきたいというふうに思っております。

金子(哲)委員 ぜひ、四県市の中でも広島市が北朝鮮の担当というような形になって、広島市としても何とかしなきゃいけないんじゃないかという意見が出ているように思いますので、その際、広島からのさまざまな要望が出た際には、ぜひ厚生労働省としても適切に、また積極的な対応をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。

 最後に、この三月から健康管理手当の支給を行うということになって進んできたわけですけれども、ようやく韓国の場合には、その支払い、送金方法が確定をして、先月送金をされたと伺っておりますけれども、その他の国で、遡及分の送金状況、さらには健康管理手当の支給の対象者の送金状況、ここらがわかればぜひ教えていただきたいと思います。

田中(慶)政府参考人 韓国以外に居住している在外被爆者について、過去に手当の支給認定を受けていて、出国したことにより手当が支給されなくなった被爆者は、現在把握しているところでは二百五十七件でございまして、このうち、現在までに未払い手当を支給したものは百四十七件でございます。三月以降に新たに手当受給を開始した者を含めまして、九月分の手当受給権がある韓国以外の在外被爆者の方は二百四十三名であり、このうち百二十四名が手当を受給しております。

 今後、都道府県市が支給手続を円滑に実施できますように、国としても引き続き努力してまいりたいと思います。

金子(哲)委員 時間になりましたので終わりますけれども、坂口厚生労働大臣のいろいろな努力で、在外被爆者問題、在外被爆者の皆さんの要望とは、すべてを入れているわけではありませんけれども、私は大きく前進をしていただいたというふうに思っております。

 その上に立って、今お話がありましたような点、例えば遡及問題も、今の数字を見ますと、約半数しかまだ送金ができていないという状況がありますので、これはもちろん担当する都道府県の事務作業ということになりますけれども、外交とかかわる問題だけに、厚生労働省もより積極的にこの問題をフォローしてほしいということを申し上げさせていただいて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

中山委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 この際、本案に対し、熊代昭彦君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。家西悟君。

家西委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合並びに保守新党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して御説明にかえさせていただきます。

    感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 SARSに係る感染症法上の類型については、ウイルスの解明、SARSの病態・感染経路の解明を急ぎ、治療薬・ワクチンの開発などの医療の状況も含め医学的知見の集積等を踏まえ、二年毎の見直しを行うこと。

 二 検疫法第十八条第二項に規定する入国者に係る入国後の健康状態の報告義務については、SARSの疑いがある患者がいる医療機関で働いていた者や患者の家族等、濃厚接触のあった者等に限定するなど、科学的根拠に基づいた運用を図ること。また、これらの者に係る個人情報の保護については万全を期すこと。

 三 検疫については、国内の対策と密接な連携を取りつつ的確な運用に努めるとともに、感染症の発生状況に応じて機動的な対応が可能となるよう人員の配置等体制の強化に努めること。

 四 保健所については、緊急時において、国、地方公共団体の関係行政機関と緊密な連携を図りつつ、住民に対して必要な情報の提供に努めるとともに、地域における感染症対策の中核機関として、その機能が十分果たせるよう機能強化を図るため必要な措置を講じること。

 五 感染症患者や家族に対する差別や偏見が生じないよう、関係省庁間の連携を取りつつ、職場、地域、学校等への啓発を徹底すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力してまいる所存でございます。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

中山委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十四分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.