衆議院

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第15号 平成16年4月22日(木曜日)

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平成十六年四月二十二日(木曜日)

    午前九時二十三分開議

 出席委員

   委員長 衛藤 晟一君

   理事 鴨下 一郎君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 城島 正光君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      井上 信治君    石崎  岳君

      今村 雅弘君    江渡 聡徳君

      加藤 勝信君    木村  勉君

      木村 義雄君    左藤  章君

      菅原 一秀君    竹本 直一君

      中西 一善君    中山 泰秀君

      西川 京子君    能勢 和子君

      原田 令嗣君    平田 耕一君

      福井  照君    松野 博一君

      三ッ林隆志君    三原 朝彦君

      吉野 正芳君    青木  愛君

      泉  健太君    泉  房穂君

      内山  晃君    大島  敦君

      城井  崇君    菊田まきこ君

      小泉 俊明君    小林千代美君

      小宮山泰子君    五島 正規君

      園田 康博君    高井 美穂君

      中根 康浩君    樋高  剛君

      藤田 一枝君    古川 元久君

      増子 輝彦君    松木 謙公君

      水島 広子君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   参考人

   (神奈川県立保健福祉大学教授)          山崎 泰彦君

   参考人

   (横浜国立大学経営学部教授)           米澤 康博君

   参考人

   (一橋大学経済研究所教授)            高山 憲之君

   参考人

   (年金実務センター代表) 公文 昭夫君

   参考人

   (日本経済団体連合会専務理事)          矢野 弘典君

   参考人

   (上智大学法学部教授)  堀  勝洋君

   参考人

   (日本労働組合総連合会会長)           笹森  清君

   参考人

   (全国コミュニティー・ユニオン連合会会長)    鴨  桃代君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  棚橋 泰文君     江渡 聡徳君

  吉野 正芳君     西川 京子君

  大島  敦君     小泉 俊明君

  小宮山泰子君     菊田まきこ君

  橋本 清仁君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     今村 雅弘君

  西川 京子君     松野 博一君

  菊田まきこ君     松木 謙公君

  小泉 俊明君     大島  敦君

  高井 美穂君     城井  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     棚橋 泰文君

  松野 博一君     吉野 正芳君

  城井  崇君     泉  健太君

  松木 謙公君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  泉  健太君     小林千代美君

同日

 辞任         補欠選任

  小林千代美君     橋本 清仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)

 年金積立金管理運用独立行政法人法案(内閣提出第三一号)

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)

 高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案(古川元久君外五名提出、衆法第二七号)


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     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国民年金法等の一部を改正する法律案、年金積立金管理運用独立行政法人法案、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び古川元久君外五名提出、高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人の方々から御意見を聴取いたします。

 本日、午前、御出席の参考人は、神奈川県立保健福祉大学教授山崎泰彦君、横浜国立大学経営学部教授米澤康博君、一橋大学経済研究所教授高山憲之君、年金実務センター代表公文昭夫君、以上四名の方々であります。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず山崎参考人にお願いいたします。

山崎参考人 本日は、お招きいただきましてどうもありがとうございました。

 私は、年金改正の政府案を支持する立場から意見陳述をさせていただきます。

 なお、高年齢者雇用安定法の改正法案もかかっておりますが、年金の六十五歳支給をスムーズに実現する上で不可欠の法案でございます。今国会での成立を願っております。

 まず最初に、改革の方向について収れんする傾向が見られるということについてお話しします。

 年金改革につきましては、これまで随分議論がありました。例えば、基礎年金を全額税方式に切りかえるべきという提案、あるいは二階部分を民営化すべきという提案がありました。さらに、財政方式を積み立て方式に切りかえてはどうかという提案もありました。給付水準につきましては、ミニマムの保障にとどめてはどうかという提案もありました。また、第三号被保険者問題につきましては、パートへの適用拡大のほか、負担を調整する、あるいは給付を調整する、そして、年金分割という提案もありました。

 今でも、専門家、関係団体の間でも意見に大きな違いがあります。しかし、今国会に提案されている政府案と民主党案を比べますと、研究者の目で見ると、少なくとも政治レベルでは改革の方向性について収れんする傾向を見てとることができます。党派を超えた対話と協調が可能な状況が形成されつつあるように思います。

 ただし、民主党案は十分な財政的な裏づけを欠くものでありまして、政府案と同じレベルでは比較できないわけですが、改革の基本的方向性、枠組みに関しましては、多くの共通点があるというふうに思っております。その意味で、私は与野党対決法案だとは考えておりません。

 第一点でございますが、いずれも社会保険方式を基本にしているということで、税方式に決別しているということであります。

 民主党案の税負担による最低保障年金は、国庫負担の配分を一律配分から低所得者重視に切りかえたものであって、従来提案されています基礎年金の全額税方式論とは異なるものだというふうに見ております。また、社会保険方式を基本に置くことは、介護保険を推進した民主党の政策とも一致しているというふうに思います。

 第二点として、厚生年金の民営化という話は消えているということでございます。

 第三点として、賦課方式をいずれも基本としているということで、積み立て方式への切りかえを退けているということでございます。

 第四点ですが、一定程度の給付の抑制は必要だけれども、モデル年金でいえば所得代替率五〇%を確保するという点でも共通しておりまして、ミニマムの保障に限定すべきだということにはなっていないわけでございます。

 それから、第三号被保険者問題につきましては、年金分割を採用することとしております。これも一致しております。ただ、離婚時に限定するかどうかという違いはありますが、思想的には大きな隔たりはないというふうに見ております。

 次に、制度体系の一元化をめぐってであります。

 今回の二つの改革法案を導いたのはスウェーデンの改革であります。両案ともこれを手がかりにしているわけでございます。スウェーデンの改革に見られる二つの新機軸、イノベーション、いわば抜本改革の二つの要素のいずれを重視するかという軸足の置き方の違いだと思います。

 民主党案は、所得比例年金への一本化と低年金者に対する保障年金という要素を取り入れた、これを重視したものであるというふうに思っております。一方、政府案は、財政を重視し、保険料を最終的には固定し、そして給付と負担の自動調整を取り入れた。こちらに軸足を置いているものであります。

 ところで、私も審議会の委員で審議に参加しましたが、審議会の中でも、このスウェーデンの制度体系の一本化という方向を支持する意見は少なくなかったわけであります。私も、長期的には十分に検討に値する案だと思っております。ただ、今回の改正で一気にということになると、時期尚早だというふうに考えております。

 一元化ということが言われるわけでございますが、これは全国民レベルでの給付と負担の公平化であります。民主党案での統合一本化に限定されるものではなくて、制度の分立を前提にした制度間調整をも含む概念であります。医療保険制度改革でもそのように理解されてきました。

 年金について見ますと、五十九年の閣議決定以来、一元化への取り組みが行われてきました。しかし、中身はまちまちでございます。基礎年金は財政調整です。船員保険と厚生年金は、これは統合しました。続いて、それ以来、旧三公社あるいは農林年金をそれぞれ厚生年金に統合しました。今国会に国共済と地共済の改正法案がかかっておりますが、これは財政単位の一元化でありまして、財政調整であります。

 今後の展望を考えてみますと、被用者年金については統合一本化は可能であります。しかし、自営業者の国民年金と被用者年金制度の間での統合一本化の展望は、当面見えないというふうに見ております。

 なぜ統合一本化が難しいのかということでありますが、自営業者と被用者の間では、越えがたい相当高い壁があるというふうに見ております。就業形態、所得、報酬、そういう概念の違いがあり、制度設計は非常に難しい。また、連帯意識も共有しがたいということであります。

 この壁というのは、医療保険制度改革で我々は経験済みであります。仮に、民主党案のように、年金制度において完全な、全面的な統合一本化が可能であるとすれば、それは国保や地方団体が提唱している医療保険制度の統合一本化も可能にするということであります。しかし、現実には、被用者グループを代表する健保連や労働団体、経営者団体の間からは、自営業者と被用者を別制度とし、財政的にも生涯にわたって完全に縁を切る突き抜け方式が提案されているわけでございます。

 昨年三月に策定されました医療制度改革に関する基本方針を見ますと、実現可能性を重視し、高齢者医療に限定して独立方式とリスク構造調整を折衷するという案になっておりますが、これさえも現実には展望は開けていないわけであります。意外に老人保健制度はよくできているというのが専門家の間での陰の声であります。

 次に、世代間の給付と負担の公平について申し述べさせていただきます。

 政府案では世代間の不均衡は変わらないという厳しい批判があります。しかし、税制や社会保障全体の改革の方向を見てみますと、大きく是正される方向で施策が展開されています。

 まず、年金課税が強化されました。これは、税制面での世代間の公平化にとどまらず、国保や介護保険の負担の適正化にも大きく寄与するものであります。

 また、医療保険制度改正では、十四年改正で高齢者の定率一割負担が入り、さらに、一定以上の所得者につきましては二割負担が入っております。

 介護保険制度改革では、施設入所者には在宅とのバランスやあるいはホテルコストに着目した応分の負担を新たに求めるという方向で改革が進んでおります。

 その一方で、若い世代に対する相当な施策の充実が図られようとしております。次世代育成支援という観点から、次世代育成支援対策推進法を柱として本格的な支援策が講じられる方向であります。

 今国会には育児・介護休業法の改正案が出ております。育児休業期間を一年半まで延長するということであります。また、年金改正では、子供が三歳に達するまで、この間の保険料を免除するということになっております。また、短時間労働により報酬が低下した場合も、年金制度上で配慮するということになっております。さらに、児童手当も就学前から小学校三年の終了時まで延長するという本格的な次世代育成支援の対策が講じられようとしているわけであります。

 最後に、改革は先送りできないということをお話しさせていただきます。

 厚生年金、国民年金ともに、既に実質収支は赤字であります。つまり、将来に向けて相当残しておかなければいけない積立金を取り崩しつつあるということであります。現在の保険料は平成六年以来十年間にもわたって据え置かれたままであります。後世代への負担をこれ以上転嫁できないというふうに考えております。保険料の引き上げと、そして給付の適正化を急ぎつつ、何とか安定軌道に乗せていただきたいというふうに思っております。

 以上をもちまして、私の意見陳述を終えます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

衛藤委員長 どうもありがとうございました。

 次に、米澤参考人にお願いいたします。

米澤参考人 横浜国立大学の米澤です。

 本日は、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、社会保障審議会年金資金運用分科会の委員としまして、年金積立金の運用のあり方に関してこれまでいろいろ議論に参加させていただきました。本日は、この積立金の運用に関しまして、政府案の大きく二つの点、予定利率の水準、それから、これまでの年金資金運用基金から新しく独立行政法人に移る、組織が変更される、この二つの点に関しまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。

 結論を先にまとめてお話しさせていただきますと、予定利率は、私たちも十分に部分的に議論をさせていただきましたが、今後のマクロ経済から見て、大変ではあるが十分妥当な水準にあるというような認識におります。それから、もう一つの方の独立行政法人に移行するという点も、いろいろ運用の仕方において工夫が必要かと思いますが、これから述べる点において、私は、今以上にいろいろ効率的な運用ができるのではないかと期待しているということ、この二点を最初にはっきりさせておきたいと思います。

 それでは、本日与えられた時間の中で、一枚のメモを皆様の方にお配りしておりますので、これに従いまして、今述べました話の周辺の考え方等をお話しさせていただきたいと思います。

 これは、右肩の上に平成十五年三月十三日と書かれておりますが、これは直近の三月ではなくて、ほぼ一年前の三月十三日でございます。このメモは、さかのぼってその前の秋ごろから、分科会におきまして、年金積立金の運用のあり方、特に株式を含める運用がいかがなものかというような認識に立ちまして議論をして、半年間の議論を経ました意見書の要約でございます。

 この時期を思い起こしていただきますと、皆さん臨場感あるかと思いますが、日本の株価におきましても、底であってほしいと思いますが、非常に最悪な経済環境だったわけです。ですので、そこでの議論、どういう議論がされたかということは、かなり今後の資産運用に関していろいろポイントになる点があるかと思いましたので、配らせていただいたわけです。

 このメモに従いまして簡単にお話しさせていただきますと、その非常に経済環境が悪かったときも、大きな点は、一番に書かれていますように、二つでございます。年金の給付額は名目賃金上昇率に追随して払うというこの制度がございましたので、これが大前提で、運用の際もこの制約に従って運用していかなくちゃいけないというのが一つの点でございます。

 もう一つは、これは特に一般的な話でございますが、資金を運用する場合には、十分に分散化された、ポートフォリオという言葉をよく使いますが、それによって運用する。例えば、債券だけではないし、もちろん株式だけではなくて、それらをうまくミックスして、しかも、日本の年金ではありますが海外の資産をも視野に入れて、意図は、十二分に分散されたというのがポイントでございます、そういうようなもので運用していく。これが、現代の知恵というんでしょうか、金融工学の教えるところでございます。

 この二つをやはり基本的に維持していくことが大事ですねというのを、非常に不況なときに再確認をしたわけでございます。

 もう少し各論をお話しさせていただきますが、二にございますように、いろいろ過去の人の知恵におきまして、非常に経済が悪くなったときにポートフォリオの中身を変えたいという誘惑に駆られるわけですが、それは非常に慎重でなければならない、一たん決めた基本ポートフォリオというのはよほどのことがない限り変えてはいけないというようなことを教えられて、このときも、その指示に従うのがやはり過去の知恵から得られるべきものじゃないだろうかということで、大半の方の意見が一致しました。

 下手にそこのところを変えますと、株式を組み入れているようなポートフォリオですと、株が高いときに組み入れ比率を高くして、低いときにもう我慢できなくて低くするということは何を言っているかというと、一番高いときに株を買って一番安いときに売っているという、非常にあってはならないような運用になるかということでございます。

 それから、次にもう一点。必ずこういうときにお話が出てくるのは、でも、株式というのは本当に危険だよねと。片っ方で、国債ないしは財投債があるので、それで全部運用していったらいいんじゃないだろうかという議論は盛んに聞きます。これは、賃金は非常に物価とも関連していますが、年金がそういうものに追随しなければ、これは聞く耳を十分に持つ話でございます。もちろん、御存じのように、今でも大半は国債でございます。七〇%程度国債でございますので、これは誤解のないように。

 でも、それを一〇〇%にしなかったということは、アメリカの結果でも、国債の収益率、利回りと思ってください、ここから物価上昇率を引いたもの、実質の利回りないしは実質の収益率で議論しますと、実は、これはリスクに関して株式と逆転するんですよね。名目は、御存じのように、国債を買っていて満期まで持っていれば安定しますが、そこから物価上昇率を引いた実質でありますとひっくり返るというのがアメリカの結果でもありますし、日本でも、期間は、サンプルはアメリカと比べると非常に少ないんですが、ほぼ同様な結果が得られています。ということで、アメリカのアカデミックなペーパーでも、だれが長期の国債を持つかというようなタイトルで議論をされています。

 御存じのように、そこから出てきたのがインフレ連動債だと思います。昨年度、我が国でも初めて発行されましたが、インフレ連動債は年金などから見て非常に魅力的な資産ですが、まだそれが十分に得られないような場合ですと、リスクの点から見て、やはり一定の株式をも含むというのは必然的に出てくる道でございます。

 それからもう一点。私個人が特に大事にしたいのは、やはりこれだけ多額のお金を、大事なお金を運用するわけですので、これは、運用の目的としては安全に、かつ効率的に収益を上げるというのはもちろんですが、同時に、マクロ的にこの資金をうまく国民経済的に使いたいというのは、私個人はかなり意図を持っております。

 そのときに、全額国債ないしは財投債でいくというのが、果たして資金の配分から見て、マクロ的に見て、いいんだろうかと。そもそも、こういう問題というのは財投改革から出てきた問題でもありますので、私は、なるべくそんな余計なリスクは負いたくはないんですが、やはり民間の資金、資本に入れたい。それは、大事な資金を預かって運用するという点からは、決して見逃してはならない点だと思います。この点からも、なぜ一〇〇%国債ないしはそれに準ずるものではないのかという点に関して、おのずと答えが出てくるんではないかと思っております。

 以上が、運用のあり方に関する基本的な考え方でございます。

 次に、今いろいろ御議論されています財政再計算に伴います次回の予定利率ですが、今度は、前回の四・〇%から三・二%に下がったわけです。その基礎的な議論の際にはいろいろ参加させていただきましたが、私どもは、年金部会に提案させていただいたケースでは、この値がほぼ真ん中になるように、前後もう少し経済がよくなった場合のシナリオ、それから、もっとそれよりか下になるような最悪のシナリオという三つの案を持ちまして、ほぼ真ん中の数字が採用されたというふうに理解しております。

 この三つというのはどういうことかといいますと、足元は内閣府の「改革と展望」でフォローして、ただ、それは残念ながら二〇〇七年ぐらいまでですので、今、その後二十年、トータル二十年、三十年で予測するためには、かなり大胆な仮定のもとに計算せざるを得ません。

 その場合に、何がいいケースか悪いケースかというとき、やはり技術進歩率、TFP、トータル・ファクター・プロダクティビティーといって、要は、人口の成長からいくと低成長を余儀なくされるわけですけれども、その上にどのぐらいオンするかというのは技術進歩の率なんですね。これはなかなか推測するのは難しいんですが、難しいがそういう三つのケースをとらせていただきまして、それに従って各予定利率がはじかれてきているわけです。その中で、今回採用されました数字というのはほぼ真ん中に相当しているというので、非常に妥当な水準ではないかというふうに思っております。

 かつ、これは余談かもしれませんが、この計算等をやっていたときは一番日本の経済が底、底であってほしいと思いますが、そういうときに行ったもので、決して楽観的な状況を絵にかいてやっていたわけではない。そういうような環境ではなかったもとで計算されたというふうに理解しております。

 それから最後に、最初の話で、運用のところはこれまで年金資金運用基金の方で行われておりました。実は、これもいろいろ問題が多々あることは私もマスコミ等から存じ上げておりますが、事運用に関しましては、これほど透明性のもとで運用されているところはないぐらい、ここまで出すかというぐらいのところの透明性を持って運用されているということは、御確認いただきたいと思います。

 ただ、やはり、いろいろな計算にもよりますけれども、株が下がっているときはそれなりの損失が出ているのは事実でございまして、これをどう責任という問題に必ず皆さん方はなるかと思います。

 ただ、基本的なところは、株式を含めた資産運用に関して結果で責任をとらされたら、これはみんな首が毎日毎日飛んでいくというのが実際でございますので、この工夫も、やはり結果ではなくて、そこで当然負うプロセスをちゃんと踏んで運用したかどうかというところで責任を問うというのが常識になってきております。とはいえ、もし仮に大きくずっと損を出しているというようなところは、私、個人的にはやはり問題なしとはしないと思っております。

 今度、独立行政法人になりますと、まず一つは、運用に関するところが、今までは審議会と基金とに幾分分かれている感じがありますが、それが一体化されます。行政法人の方に一体となりまして、今と同じように専門家が一体となって運用するということで、そこで専門性が効率的に発揮されるんじゃないだろうかというのは一つ期待しております。

 プラス一番の大きなところは、独立行政法人の器がそうでありますように、監督官庁の方でそれを評価することになっています。評価しなくちゃいけないことになっています。ここはやはり、今まで考えてみると必ずしも十分な評価が行われてこなかった点は、若干私もそうかなと思います。

 この評価というのは、今後、独立行政法人へ移りまして、その評価をするときに入ります。これからの運用次第ですけれども、評価をきちっとしてやれば、それなりの責任というんでしょうか、いろいろの問題点があればその改善というものが出てきて、それがよりスピード化されるのではないかというふうに思っております。

 以上のような視点からまとめますと、予定利率に関しましては十分可能な水準だと思いますし、それから、基金の制度変更に関しても期待が持てるんじゃないかというふうに私は思っております。

 以上でございます。(拍手)

衛藤委員長 どうもありがとうございました。

 次に、高山参考人にお願いいたします。

高山参考人 高山でございます。

 本日は、衆議院厚生労働委員会にお招きくださいまして、まことにありがとうございます。参考人として年金関連法案に意見を申し述べ得る機会をちょうだいいたしましたこと、大変光栄に存じます。

 以下、十一点にわたり意見を申し述べます。

 一。日本の公的年金は、二〇〇〇年三月末の段階で約六百兆円の債務超過となっておりました。この債務超過は、既に政府が支払い約束をした年金給付のうち、財源が手当てされない金額でございます。この債務超過の圧縮問題、すなわち、六百兆円の追加資金をだれが、いつ、どのように負担するかという問題こそが、今回の年金改革における主要テーマにほかなりません。この問題を、以下、問題一と呼びます。求められているのは負担の構造改革でございます。

 二。他方、公的年金制度への信頼は、今、かつてないほど揺らいでおります。年金制度に対する信頼をどのように取り戻すかという問題について的確に回答を与えることも、今回における年金改革の重要なテーマでございます。以下、この問題を問題二と呼びます。

 三。政府提出の改正法案は、問題一について、1年金保険料の引き上げ、2国庫負担の引き上げ、3給付水準の実質的引き下げの三つによって債務超過を圧縮、解消しようとしております。これからの十五年間、毎年一兆五千億前後の定期的な年金負担増計画となっております。

 政府案が実現いたしますと、企業は従来よりも一段と厳しいリストラを強行せざるを得なくなります。また、その結果、厚生年金の空洞化が一層進み、多数の若者が労働力市場から締め出されてしまいます。現役労働者の手取り所得は伸び悩み、消費支出も低迷してしまいます。失業率は上昇し、結果として経済成長が阻害されてしまいます。さらに、若者にとっては年金負担の方が年金給付よりも大きくなるおそれが強く、若者の年金不信を取り除くことはできません。

 四。既に年金を受給しているお年寄りの年金給付も、これから二十年近くにわたって実質目減りが続きます。政府シナリオの基準ケースを想定しますと、モデル年金受給世帯の年金水準は五〇%台から四〇%強まで低下いたします。給付水準の五〇%保証は既裁定年金にはございません。詳細はお手元の図の一と二をごらんになっていただきたいと思います。

 五。政府案は保険料水準固定方式と呼ばれておりますけれども、同時に給付水準固定方式という性格を兼ね備えております。この二つの約束を同時に守ることは容易ではありません。将来シナリオが狂うということはよくあることでございますが、仮にそうなった場合、受給開始年齢のさらなる引き上げに追い込まれるおそれが強うございます。

 六。政府案による国庫負担の引き上げが実現いたしますと、税金のむだ遣いがふえてしまいます。なぜ年金に税金を投入するのかという点について、原点に立ち返った議論が必要でございます。

 七。問題一と問題二の解決に当たって、政府割り当てを間違ってはいけません。問題二を解決するためには、スウェーデン流のみなし掛金建てへ切りかえるのが最善でございます。拠出した保険料は年をとったら必ず年金給付の形で返ってくる、そのような安心のできる仕組みをだれにもわかるような形でつくること、そういうことによって、制度への加入意欲を高めるのでございます。なお、その際、過去拠出分との区分経理が求められます。

 八。問題一は、年金保険料を引き上げることの是非をどう判断するかによって解決の方法が違ってきます。他の代替的な手段との比較検討を十分になさった上で、解決方法を決めなくてはなりません。

 九。また、給付の実質的な引き下げも、年金額の多寡にかかわらず一律に行うのか、あるいは高額の年金給付を受給している人に率先して譲ってもらうのかのいずれかによって、改正案の具体的な内容が異なってきます。

 十。年金数理部局を厚生労働省から分離して、公正取引委員会や会計検査院のような中立かつ独立の機関とする必要がございます。タックスペイヤーの立場からしますと、与党の政府案づくりだけに協力する現行の仕組みは改めなければなりません。

 ちなみに、アメリカ合衆国の年金数理部局は、与党ばかりでなく、野党や民間のシンクタンク、さらには大学の研究者に対しても公平かつ中立的に情報を提供しております。そのような仕組みが政策論議を中身の濃いものにしているのです。

 十一。最後に、政治への期待を申し上げます。

 信頼と安心の年金制度、それは、国民が究極的に政治家と政府をどこまで信頼することができるかにかかっております。政治家が第一に追求すべきものは国民の間にわき上がる信頼であり、名声である、これは故石橋湛山首相がおっしゃったお言葉でございます。

 白虎のように天下をへいげいし、将来を冷徹な目でお見据えになってください。そして、知恵を広くお求めになり、あらゆる政策手段について想をお練りになってください。新しい政策展開によってどのような帰結がもたらされるのか、そのことについて想像力をたくましくなさってください。その上で、重い決断をなさっていただきたく存じます。

 どうか審議を十分尽くしていただきたい。数の論理だけを優先し、強行採決を繰り返すというようなことはぜひとも避けていただきたく存じます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

衛藤委員長 どうもありがとうございました。

 次に、公文参考人にお願いいたします。

公文参考人 公文でございます。

 私は、主として、政府が提案をしております国民年金法等の一部改正案について意見を申し上げてみたいと思います。

 今回の一部改正案は、結論から申し上げますと、今現在の国民生活を悪化させると同時に、将来の年金不安をますます拡大する結果を招くものであって、到底容認できるものではありません。

 四月十九日に公表された朝日新聞の全国世論調査でも、年金改革を支持しないとした人が六七%に達しており、評価するとした人は二二%にすぎないと報道されています。これが、今次一部改正案に対する率直な国民世論ではないかと思います。

 したがって、今次一部改正案は直ちに取り下げていただき、民主党案を初め、日本共産党、社民党その他から出されている年金改革政策、あるいは労働組合や各種関係団体の政策提言を含めて国民的議論を起こし、改めて多くの国民に納得の得られる改正法案として出し直すべきだと考えます。

 今次一部改正案が多くの国民の不信を招いている問題点について、私なりに次の諸点を指摘してみたいと思います。

 第一点は、既に限界に達している保険料を、国民年金では三〇%、厚生年金では三五%も引き上げるという負担増は、年金制度の空洞化を一層加速させ、制度崩壊を促進する結果を招くものでしかないと思います。

 皆さん方も御承知のとおり、農漁民、自営業者の国民年金一号被保険者は、周知のように一人月一万三千三百円の保険料を払うことになっています。夫婦だったら二万六千六百円、二十歳以上の子供がいて三人で家業をやっている場合は、月四万円近いお金をとにかく二十五年間以上払わないと年金、老齢年金の受給資格がないという現行法のもとでは、大変大きな負担になっていることは今さら言うまでもありません。

 そうした加入者、一号被保険者二千二百三十七万人のうち、国、自治体の基準に基づいて保険料を免除されている人が、御承知のとおり四百三十五万人に達しています。この四百三十五万人の免除者は、ぜひ今国会でも追及をして明らかにしていただきたいのですけれども、前年度は五百二十四万人だったものが、約百万人ぐらい減っています。お話によりますと、免除基準を厳しくして、申請免除者の申請を却下するという動きがあるように聞いておりますけれども、極めて重大な問題だと思っております。

 このほか、やむなく滞納している人が政府の発表で三百二十七万人というふうに言われておりますけれども、これも極めて控え目な数字であって、単年度で見ると、実際の滞納者数は、保険料納入率六二・八%で推計すれば、六百六十万人になると思います。このほか、若い人たちを中心にした未加入者が六十三万人、合計すると約千百六十万人という人たちが国民年金の保険料を払えない、払わないという事態になっています。

 政府自身が認めているように、滞納の理由の七一・四%は保険料が高くて支払うのが困難という経済的理由であり、生活苦の反映だと思います。残りの三割及び六十三万人の未加入者の理由は、公的年金への不信感からとしか考えられません。

 空洞化は国民年金に限りません。厚生年金でも、決して許されないことではありますけれども、やはり四月十九日、朝日新聞の報道によりますと、新規法人の二割が未加入という実態が漏れてきています。倒産または倒産を偽装して、厚生年金から国民年金、国保へ移転するという動きが出てきているという空洞化の現実もあります。

 このまま推移すれば、近代国家では考えられない大量の無年金者、生活できない多くの低年金者が間違いなく発生するという予感があります。こうした深刻な空洞化問題の解消なくして日本の年金制度の未来はあり得ないというふうに考えております。

 このため、野党の皆さんや労働組合関係団体などから、基礎的部分を、保険方式ではなくて、全額国庫負担、税方式の最低保障年金制度に切りかえるべきだという政策提言がなされています。私は、全く正当な改革提言だと思うのですが、このこととあわせて、現在の百万人に達しようとしている無年金者、無年金障害者の救済も同時並行的に行うべきだと思います。

 いずれにしても、この重要かつ多数派の意見となっている選択肢が、今次改正案では全く無視されているとしか考えようがありません。それどころか、差し押さえなどの強硬手段で空洞化解消の行政指導が昨年から実施され、それを合法化する改定が盛り込まれています。生活困難と根強い年金不信を問答無用の強権発動でねじ伏せるなど、到底許されることではないと思います。

 第二の問題点は、現実を無視した年金額の一五%切り下げが法定されるということです。

 約一千六百万人の国民年金老齢年金受給者の月当たり平均年金額は、御承知のとおり約五万一千円。このうち、国民年金、老齢基礎年金だけの受給者は約九百万人。この人たちの平均は四万六千円にすぎません。問題は、この月五万円以下の年金しか支給されていない人が約半数、八百万人もいるということです。

 この水準は、憲法二十五条の基本理念に基づいてつくられている生活保護基準の半分以下です。この違憲レベルの水準を、マクロ経済スライドの採用などで二〇二二年までに一五%、最悪の場合は二五%削減するというのが今次改正案の趣旨だと思います。言語道断としか言いようがありません。

 第三の問題点は、国会での審議無視、軽視の法改定を行おうとしていることであり、これはまさに民主主義の形骸化となるだろうと思います。

 今次改定案では、従来の五年目ごとの財政再計算期という考え方をなくして、百年間とする財政均衡期間における見通しを作成し、これを公表すると変更することになっています。公表するだけで、五年目ごとに法案を提出し、国会で審議する必要がなくなるわけです。今次改定法が成立すれば、保険料値上げ、年金額切り下げが国会審議抜きで自動的に進行する。まさに民主主義の形骸化と言わざるを得ません。

 第四の問題点が、十年前の一九九四年の国会で全与野党一致で決めた附帯決議、基礎年金の国庫負担割合二分の一への増額が、事実上今回も先送りされることになりました。しかも、五年後の二分の一への増額達成には、消費税増税を軸とした税制改革を条件としています。

 逆進性そのものの消費税増税はもちろんのこと、これを人質、口実として年金改革に結びつけることなど、国民の意思に全く反するものであり、賛成できません。何よりも、年金など社会保障制度の基礎的な財源を消費税に求めること自体が間違っていると思います。国際的に見ても、最も逆進性の強い日本の消費税は、社会保障の大原則である応能負担の原則に反するものであります。大企業の優遇税制の是正、歳出配分の抜本的見直しで措置するのがまともな対応の仕方だと思います。

 第五の問題点は、百年の財政均衡方式という考え方を採用しようとしていることです。

 これは、事実上、土建国家型、金権腐敗の温床となっている積立金の非民主的運用を温存、継続するものであり、年金改革の理念に反するものであります。私は、こうした考え方を直ちに改め、高齢化社会のピークとなる四〇年から五〇年をめどに、段階的、計画的に取り崩し、民主的な運用機関のもとで活用するのが至当だと考えております。

 百年の財政均衡方式では、厚生年金、国民年金の合計で、二〇五〇年には積立金が三百三十七兆円、現在の二・四倍です、そこまでふやす計画となっています。二一〇〇年になっても、現在の積立金総額に匹敵する百三十六・七兆円が残る計画です。ごまかし以外の何物でもないと思います。

 以上、大きな問題点だけでも、今次改正法が、国民生活や高齢期保障にとって決定的なマイナスを押しつけるものであることは明白であるということを申し上げまして、私の意見を終わります。ありがとうございました。(拍手)

衛藤委員長 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ林隆志君。

三ッ林委員 自由民主党の三ッ林隆志でございます。

 本日は、参考人の皆様には貴重なる御意見を御開陳いただきまして、まことにありがとうございます。

 では、各先生方に質問させていただきますけれども、まず、山崎先生にお聞きしたいんですが、年金改革についての基本的な視点に関しまして、私は、制度の根幹をなすものは、負担と給付、また、それについての将来像というものを明確に示して、持続可能性を高めることが最も重要なことであると思っております。しかしながら、これまで年金制度に関しましては、五年ごとの負担と給付の見直しというものを繰り返してきたために、国民の皆様の間には将来の年金制度への不安感が生まれてきているということも事実であります。

 こうした点から、今回政府案において、百年間を見通して負担と給付についての改革に踏み込んだことについて、どのように評価をされますか。また、年金改革において最も配慮されるべき基本的な事柄は、世代間、また世代内の公平に配慮しつつ、負担と給付のバランスをいかにとるかという点に尽きると思いますが、先生の御意見をお伺いしたいと思います。

山崎参考人 いろいろな世論調査を見まして、特に若い世代は、際限なく負担が上がることについて非常な不安を持っているわけでございます。審議会レベルでいいますと、何とか二〇%ぐらいまで負担していただけないだろうかという意見が多かったんですが、今回の法案では一八・三%にとどめるということですが、いずれにしましても、将来の負担についてはっきり歯どめをかけた、しかし、そこまでは負担していただきたいというメッセージを発したわけでございまして、それは非常に今回の改正で注目される点だと思います。

 それから、特に世代間の給付と負担のバランスということも非常に大事なんですが、これは年金制度の中だけでは十分な解決はできないと思っております。むしろ、年金制度の給付水準をある程度維持するというのであれば、それを前提にして、医療や介護の財源負担なり、あるいは利用者としての負担をきちっとお願いするという形で一つはバランスをとる。もう一つは、若い世代に対して子育て支援等の施策を思い切って拡充するという形で、全体的な、社会保障全体での税制も含めたバランスをとるということでないと、年金制度の中だけではうまくいかないのではないかというふうに思っております。

 以上です。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 確かに、社会保障、年金だけではなくて医療制度というふうな大きなものを含めた形で見ていくことも、これからの少子高齢化社会の中ではますます重要なことだと思っております。

 そして、年金改革、これの現在の難しさというものは、三千万人の年金受給者がもう既におり、四十二兆円の給付があるという現状をしっかり見据えていかなければならないということがあると思います。

 欧米諸国における年金改革におきましても、それぞれの国民性や経済状況を背景にして、大きな歴史観に立ってこれまでいろいろな選択というものがされてきておりますけれども、日本においても、現状において白地に絵をかくようなことはできないわけでありまして、これからどのような体系をとっていくにせよ、まずは負担と給付というものを安定化させることがぜひとも必要であると思っております。

 先ほどお話も少しありましたけれども、山崎先生が委員として参加されている社会保障審議会の年金部会においては、公的年金制度の体系論についても議論が行われたとお聞きしております。その際の議論と、今回の政府案のように現行体制を維持しつつ改革を進める必要があるとされた理由をお聞かせください。

山崎参考人 先ほども申し述べましたように、スウェーデンの所得比例年金への一本化、そして税負担による補足年金を設ける、これは非常に魅力的な案なのでございます。ですから、将来に向かっては十分検討に値する案だと思いますけれども、一気にそこまで行く情勢にはないというふうに考えておりまして、大方の委員の方もそのような御意見であったのではないかというふうに考えております。

 当面は、やはり財政的な安定を図るということは、厳しいけれども、何とかやらなければいけないというふうに考えております。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 次に、年金積立金の運用についてですが、米澤先生には、先ほど昨年三月の資料等も見せていただきました。現在までに六兆円もの評価損が生じる一方で、昨年の夏からの株式市場の上昇機運で約三兆円以上も運用益を出すなど、今後の運用をどのように考えたらよいのか、またそのあり方が問われているところであります。

 年金資金運用は長期的であって、短期的な視点での運用はなじまないというふうなお話も先ほどありましたけれども、長期運用であればどのような方針に立った運用が望ましいのか、基礎的なお話を先ほどいただきましたけれども、このような点から質問をしたいと思います。

 まず、年金積立金の運用につきましては、特殊法人の年金資金運用基金を廃止し、新たに年金積立金管理運用独立行政法人を創設して、投資割合等の運用方針の決定というものが厚生労働大臣から法人に移るということになりますが、こうした点に関し、どのように先生としては評価されておりますか。米澤先生、お願いいたします。

米澤参考人 その運用のあり方、それから、それをどのような組織においてされたらよいのかという点に関しまして、今の御質問に対して、私の考え方を簡単にお話ししたいと思います。

 運用のあり方、我々でいいますと、基本ポートフォリオというものを作成します。それでもって、そのつくったポートフォリオが、決まっている負債、ライアビリティーをどのぐらいちゃんとつつがなくできるかを最後に計算していきます。ALMということで行っていきます。その方式自体は、これが独立行政法人に移ってもそう大差はないというふうに考えております。そこで数字を当てて、株式だと平均このぐらいのリターンがあるでしょう、債券だとこのぐらいのリターンがあるでしょうというもとで作成していきます。

 問題は、それがずれていった場合、それを確保できていない場合。一番悩ましいのは、経済が順調にいったとしても、実際に実現するのは、その予定した数字の上下を実現するわけですね、何しろ不確実な経済ですから。上下を行っている限りは、平均値としては正しく当てているなということで、最初につくったポートフォリオが問題なしというふうにするわけです。ところが、一年たっても二年たってもそれを下回っているといった場合、これはたまたま一年、二年も下回っているのか、さもなくば最初に予定した平均値が高過ぎているのかどうかという、非常に悩ましい問題に突き当たることがございます。

 それは、なかなかどっちだということの判断をするのは難しいんですが、一つ、それを第三者が評価したときに、運用が下手だったのか、さもなくば、そもそも最初に決めたポートフォリオが適当ではなかったんじゃないだろうかという、そこの視点から、高い視点から議論、評価していく可能性が独立行政法人に変わった場合あるのではないかということ、そこのところを期待したいと思います。

 ただし、最初の発言で述べましたように、そこでがたがた基本ポートフォリオを早目に変えてしまうのも非常に問題なんですが、ただ、そこのところでもう一度それを再検討する、外部評価するという点に関しては、私は、うまくそれが働けば、よりよいものができるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 続きまして、今回の年金制度改革についての審議の中で、政府案の前提条件であります経済指標が、現実的でないというふうな指摘がなされてきております。

 つまり、二〇〇九年以降の実質GDP上昇率が〇・七%、実質賃金上昇率一・一%、物価上昇率一%、実質的な運用利回り一・一%の見込み等についてのお話でありますけれども、しかしながら、昨年の十月から十二月の実質成長率を見ても、一・六%という実績でありまして、実際に上向いてきているというふうな感じがありますので、余り悲観的になる必要はないのではないかと思っておりますけれども、専門家の立場から、米澤先生に、今回年金財政の前提となっております先ほど申し上げました経済の諸前提について、どのように先生としては評価されますか、お話しください。

米澤参考人 来年を予測するのも難しいところで、二十年、三十年先まで見越して予測するというのは、非常にナンセンスというか、ばかげていると思われるかもしれませんが、逆に十年とか二十年先の方がそう狂わないということもありますので、そういうことを信じて予測させていただきました。

 今の御案内にもありましたように、先ほど私は三・二%と言いましたが、これはいわゆる名目でございまして、そこは、賃金上昇率二・一%、物価上昇率一%というもとで三・二%というふうに出てきております。

 我々がその前段階でいろいろお手伝いさせていただいたときは、経済を名目で予測するというのは非常に難しい話でございます。実質なら簡単なのかというと、そうでもないのですが、まだ実質の方がやりやすいという面もありまして、全部実質ベースで案をつくりました。それが、先ほど言ったケース一、ケース二、ケース三ということでございます。

 具体に言いますと、実質でいいますと、皆さん方、物価上昇率を引いた方がイメージが高いかと思いますが、物価上昇率をもし引きますと、三・二から一を引きますので、二・二%ということでございます。もう一つ、一番年金に関係があります賃金上昇率を引きますと、賃金上昇率は二・一%ですから、今御案内のありましたように、賃金上昇率を基準にして実質化しますと、一・一%の利回り、収益率を見込んでいるということでございます。

 これは、妥当かどうかと言われますと、足元は政府の内閣府が出しました数字を追って、その後は、かなり合理的な方法で、サプライサイドからどのぐらいの経済の成長ができるのか、そのもとでどのぐらいの利潤率が上がるのかというサイドから計算しました。

 繰り返しますが、やはりそのときにどのぐらい技術進歩率を乗せるかということがキーになりますが、それも三通りやって、そのうちの真ん中の数字が採択されたわけでございますので、今お話ありましたように、もうリアルの経済ではそれを上回ることも出てきていますが、それはどこまで続くかわかりませんが、トータルで見て、かなり妥当な、むしろ若干低目にはじかれている数字じゃないかなと個人的には思っております。

 以上です。

三ッ林委員 ただいまの先生の、かなり妥当的、またはやや低いくらいの数字で出しているというふうなお話、政府案というものの基礎がかなりしっかりしているのではないかというふうな印象をさらに抱いたわけであります。

 次に、政府案におきまして、保険料の上限を固定し、給付を、労働力人口の実態や平均余命の伸び等の変動による影響を自動的に調整するマクロ経済スライドの導入というのが提案されておりますけれども、このシステムについてどのようにお考えになるか、山崎先生、それから高山先生、お聞かせください。

山崎参考人 一つは寿命の延び、それからもう一つは支える世代の減少、この二つの要素に着目して、それに伴う負担増を給付の調整という形で受給世代の方に引き受けていただくということで、厳しいわけですけれども、支える側と受け取る側とのバランスをとるという意味で、一つの画期的な抜本の要素を含む提案だというふうに考えております。ただ、これによりますと、場合によって際限なく給付水準が低下するという問題があるわけで、それについては、五〇%というもう一つの歯どめをかけているわけでございます。

 二つの、一八・三という保険料率と、五〇%という新規裁定の年金者の所得代替率、これが整合性がとれるかということになると、非常に困難な要素はあります。ですから、将来的には、その整合性をとるためにどのような調整を新たに入れるかというのは一つの課題だというふうに思います。場合によれば、国庫負担を別途考えるだとか、いろいろなことがあると思いますが、今後に残された課題だというふうに考えております。

高山参考人 お答えいたします。

 政府提案の人口要因スライドは、中身を詳細に検討しますと、マクロ経済とは余り直接関係ありません。実態は人口要因に着目したものであります。

 人口要因に着目したスライド調整は、実はドイツでも提案され、一部実施に向けて動き出していると思います。その際、ドイツでは、人口要因の年々の変化率を毎年すべて給付に反映させるのではなくて、部分的に反映させながら、期限つきではなく、将来、無期限に人口要因で給付を動かしていくということを考えているようでございまして、これは、スウェーデンでも問題になりましたけれども、年金財政を自動的に安定させるという観点なんですね。ドイツでも、将来に向けて年金財政を自動的に安定させるために人口要因をとっていくのです。

 それで、それは期限つきではないんです。将来、無制限に、人口要因に着目しながら給付を調整し続けるんだという形になっているんです。日本の政府案はどういうわけか期限つきという形になっておりまして、これは給付水準五〇%を維持したいということなんですが、これは新規裁定の年金だけでございまして、実際、六十五歳を過ぎてきますと、五〇%割れはどこでも起こってしまうという形になっているわけです。

 あるいは、先ほど指摘をいたしましたけれども、国庫負担の問題がありますけれども、一番有力な手段は恐らく支給開始年齢の再調整という話ではないかというふうに思いますけれども、そんな話になると思います。

 それから、今回のマクロ経済スライドは、一階と二階も含めて同じように給付に適用されることになっているんですけれども、一階の年金は非常に大事だと私は個人的に考えております。なぜ一階の年金も実質的に下げてしまうのか。これは、前回の改正までは非常に慎重なスタンスでそこは手をつけなかったことなんですが、今回の改正はそこにまで踏み込んで、一階の年金給付を実質的に切り下げる形に踏み込んだ、それが実質マクロ経済スライドによっているというふうに思います。この問題のさらに検討を皆さんになさっていただきたいというふうに思います。

 以上です。

三ッ林委員 ありがとうございました。

 幾つかの質問をさせていただきましたが、先ほどの山崎先生のお話の中に、このマクロ経済スライド、抜本改革というふうな印象を持たれているというふうなお話がありました。現状の年金のシステムというものを基礎としながら、これからどのように変えていくかというふうな形の進め方のものでも、しっかりと大きな改革が進んでいくんだということの一つのあらわれだと思っておりまして、すべてまるっきり新しい形をつくるだけが抜本改革ではないということも言えるのではないかと思っております。

 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

衛藤委員長 古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、参考人の皆様、大変お忙しい中、国会までお越しいただき、大変貴重な御意見をお伺いできますこと、深く感謝申し上げたいというふうに思います。

 今回の年金改革では、少子高齢化の進展で崩れつつある給付と負担のバランスを立て直すことが最も重要であると考えます。政府案こそがこの待ったなしの課題にこたえることのできる法案であり、公的年金制度を持続可能な、また安定的なものにする、私たち国民の安心につながる改正であるというふうに考えます。

 一方、給付と負担という最も大事な肝心の数字が欠落している民主党案に対して、マスコミからさまざまな意見がございます。これは四月七日付日経でございますが、「選挙を意識するあまり、保険料の負担は増やさないと強調する一方で、給付は政府案と同水準を約束するなど、数字のつじつまを無理やり合わせた」、また、四月八日付読売には、「「絵に描いた餅」となりかねない。」また、四月九日付日経には、「単に国民に幻想を与えるだけに終わってしまう恐れがある。」など、厳しい指摘がございます。

 実は私、最初に山崎先生に質問をさせていただきますけれども、現在横須賀市に住んでおります。神奈川県立保健福祉大学が横須賀市に開学したことを、市民の一人として大変喜んでおります。両者の法案についてですけれども、初めに率直な御感想を山崎先生にお伺いいたします。

山崎参考人 今回の政府提案の法案、あるいは民主党の提案の印象ということでございますが、最初に申し述べましたように、いろいろな議論が分散しておりまして、どうまとめていいのかというくらい多様でございましたが、かなりはっきりと政治レベルでは方向性が見えてきた、あと一歩かなというふうな感じがいたします。

 あと一歩を今ということになると、やはり対立するのかなというふうに思いますが、かつて昭和六十年に大改正がありました。あの改正は、ほぼ十年議論をしているわけでございまして、その程度の時間があれば最終的に収れんする可能性があるのではないかというふうに思っております。

 ですから、印象としては、私は、一見対立していますが、大きな流れとしては収れん傾向にあるというふうに見ております。

古屋(範)委員 冒頭の意見陳述にもございましたように、政府案また民主党案、双方に利があり、収れん方向にあるというお話でございます。しかしながら、民主党案に財政的裏づけが明示されていないため、対案として同レベルで論ずることはできないという最初の意見陳述であったというふうに思います。

 次に、女性と年金問題について質問をしてまいります。

 今回の法案の中で女性と年金の問題について特に注目すべきことは、専業主婦の年金受給権が明記されたことによって、現在世帯単位となっている厚生年金も個人単位の方向に大きな一歩を踏み出したというふうに思います。そして、離婚時に厚生年金を分割できる新たな制度の導入が盛り込まれたことは、山崎参考人も大変に評価されていると指摘されておりましたが、私も全く同じ思いでございます。

 女性は男性に比べ平均寿命が長く、また、さらに平均寿命が延びていくという予測がございます。また、女性の社会進出、核家族化の影響、中高年夫婦の離婚の増加とライフスタイルがさまざまに変化している現在、女性が人生の最後を単身で過ごすというケースが非常に多くなっております。離婚時に厚生年金を分割できるということは、女性の老後に新たなセーフティーネットが張られ、生活保障が前進するという大きな意義があるというふうに考えております。

 この点における山崎先生の評価、また、女性と年金についての先生の将来に向けてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山崎参考人 財政問題にかなり偏った議論が行われているんですが、実は、今回の改正法案には、離婚時の年金分割だとか、あるいは育児支援の観点からの保険料免除期間の延長だとか、その他いろいろ提案があるわけでございまして、非常に重要な要素だというふうに思っております。

 私、女性と年金の問題で何とか合意が得られないだろうか、もし合意が得られれば、今回の改正を導く一つの原動力になるのかなというふうに思っておりました。ただ、専門家の間でも本当にまとまらなかったわけでありますが、これも政治的には一つの方向がはっきり見えてきたというわけでございます。

 今回の政府提案の法案では離婚時に限定しているわけでございますが、むしろこの点に関しては、将来的には民主党案の方向に行くべきだというふうに私は考えておりますが、しかし、専門家の間でもこれだけ意見の違いがある中で、一気にそこまでいくのはやはり難しいのかな、しかし、大きな手がかりにはなっているというふうに思っております。

 私自身は、離婚時に合意を得るというのは非常に難しいと思っております。ですから、むしろ婚姻時であれば一〇〇%合意が得られると思っております。

 以上です。

古屋(範)委員 確かに、離婚時に年金の分割の合意を得るというのは現実的には大変かもしれませんが、先生の御評価のように、女性と年金の問題が一つ大きな一歩を踏み出すことができた、このような御評価であろうかというふうに思っております。

 その女性と年金の問題に関しまして、女性はやはりパート労働者が大変多いわけでございます。このパート労働者への厚生年金の適用拡大について、私ども公明党としては、パート労働者などの老後の年金を充実する、また、正社員が多い企業と非正社員の多い企業間で保険料の事業主負担の公平性を確保するとの観点から、将来的には適用拡大の方向で見直すべきと考えております。

 今回の政府案では、現下の雇用また景気情勢で適用を拡大すれば、パート労働者の占める割合が多い企業の負担が多くなって倒産やパートの解雇が進みかねないことが懸念されるため、さらに議論を重ね、五年以内に具体的な結論を出すことになったわけでありますけれども、パート労働者への厚生年金の適用拡大について、引き続き山崎先生のお考えをお伺いいたします。

山崎参考人 女性と年金の問題で、離婚時の年金分割を提案しながらもその割に大きな支持が得られないのは、セットになっていた短時間労働者への適用拡大を今回見送ったということにあるというふうに思っております。恐らく研究者レベルでは皆さん一致していることだと思うのですが、経済状況等の中で非常に業界の間で批判、反対が強いということで五年間の検討ということにしたことだというふうに思います。

 一番のポイントは事業主負担の問題だと思います。適用外であれば事業主負担を免れる、適用すると事業主負担がかかってくるということでございまして、ここのところを何とか中立化できないかということで私は審議会でも提案させていただいたんですが、事業主負担については、被保険者として適用した場合にその半分を事業主が負担するということではなくて、人件費の総額、つまり、学生であろうと、うんと短時間の労働者であろうと、その者に支払った賃金の総額に対して一定率をお願いするという形に切りかえてはどうだろうかと。これは賃金を課税ベースにする外形標準課税になりますが、社会保険料というのは実質的に人頭税でございますから、これをいっそのこと徹底させた方がいいのではないかというふうに思っております。

古屋(範)委員 やはり引き続き検討すべき課題であろうかというふうに思います。

 次に、先ほどもお話に出ました次世代育成支援策の強化についてお伺いしてまいります。

 年金問題を考えるとき、やはりその根底にあります少子化対策をどう考えていくかが大変重要なポイントであるというふうに思っております。

 私ども公明党は、坂口厚生労働大臣並びに厚生労働省の皆様の献身的な御努力により、これまでさまざまな子育て支援を次々に推進、また実現をしてまいりました。その結果、来年度予算では、不妊治療費の助成や児童虐待対策、また待機児童の解消など、支援策が大きく拡充することとなりました。また、公明党の努力により、児童手当も小学校三年まで拡充をされます。

 この子育て対策を年金制度の中でやることはさまざまな御意見があることは存じておりますが、私は、社会全体として、将来を支えてくれる子供たちに対していろいろな方面からさまざまな支援があってもいいのではないかというふうに考えております。

 やはり、働く女性にとって、子供を産み育てる、さまざまな苦労がございます。また、一部には、子供を育てるということが重荷というような空気も一部にあろうかというふうに思います。国全体として、そのような苦労があっても、やはり子供とともに生きていくこと、その方が楽しいというような大きな空気を醸成していくことが肝要かというふうに思われますけれども、今回の政府案では、子育て世帯について、現在の一歳までの育児休業中の保険料免除制度の取り扱いを三歳まで拡充する、また、勤務時間を短くするなどして働いている場合、子供が生まれる前の賃金に基づき給付額を算定するなど、子育て世帯に対する配慮が拡充されることになっております。

 山崎先生がおっしゃられていましたように、私も、次世代育成支援の施策を本格的に強化していかなければいけない、このように考えております。子育ては社会全体で支えるべきとの考えから幅広い支援策をとるべきというふうに思いますけれども、この次世代育成支援につきまして、高山先生、また山崎先生、お二人にお考えをお伺いしたいと思います。

高山参考人 お答えいたします。

 現在提出されている政府法案における次世代育成支援は、次のステップに向けたものだと私も理解をしておりまして、高く評価しているところでございます。これ以外にさらに強力に推進すべきもの、あるいは年金制度の枠外で子育て支援をもっと充実することを真剣にお考えになっていただきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

山崎参考人 恐らく、この点に対しては、高山先生と私、全く一致できることでございます。

 やはり、年金制度にとっての最大のリスクは少子化でございます。だから産みなさいと言ってはいけないと思うんですが、子供を産み育てることについて、老後の保障と同じように社会全体で支え合うという、いわば育児の社会化というのを推進する必要があるというふうに思っております。そういう意味で、今回の改正法案にこういった要素も含まれているわけで、これを廃案にするのは非常に残念だというふうに思っております。

 ただ、今後、本格的にといった場合に、年金制度の枠内で全面的に引き受けるのかどうかということについてはいろいろの議論があると思いますが、私自身は、介護保険と同じように市町村をベースに、現役世代の負担、企業あるいは国、自治体の負担をお願いしながら、子育てに関連する現金やサービスを一元的に提供できる体制をつくれないかというふうに思っております。

古屋(範)委員 両先生から、さらなる強力な少子化対策の推進が必要という御意見をちょうだいできたというふうに思います。また、年金制度の中でのこういった育児支援、こういうものも必要であるというような御意見であったかというふうに思います。

 最後の質問になります。米澤先生にお伺いをいたします。年金積立金の運用のあり方についてお伺いをいたします。

 年金積立金は平成十四年末で約百四十七兆円がございます。この積立金は、現在、厚生労働大臣が定めた運用資金の構成割合に基づいて年金資金運用基金が行っていますが、今後、新しく設立されます独立行政法人が運用を行うことになっております。

 この巨額の積立金の安全かつ効率的な運用のあり方について、先生の御意見をお伺いいたします。

米澤参考人 今後、独立行政法人の方で運用をすることは決まっておりますが、今回の財政再計算のもとで、新しい予定利率で、まだ基本的なポートフォリオの作成はこれからになっておりますので、詳細なところは組織も含めてこれから決めることになるかと思います。

 ただ、一般的な話としまして、何だかんだ言ってもやはり国債を中心としながら、先ほど言いました、国債のみではいろいろ問題がございますので、株式等も含めたポートフォリオ、十分に分散させたポートフォリオで運用していくというしか今方法はないと思っています。

 かつ、もう超大規模な資金でございますので、かつ公的な資金でございますので、その運用の仕方は、例えば民間にいろいろ発注するときも工夫しながら、マーケットインパクトを避けながらうまくやっていく必要があるかと思います。その点では、大規模がゆえにいろいろ工夫しなくちゃいけない点も多々あるかと思います。

 それから、これまでも、そうであってはならないために、わざわざ毎月の運用枠の細かなところまで決めておりました。というのは、何かPKOか何かでやっているんじゃないだろうかという疑惑もあったことは事実でしたので、そういうことは絶対にないというように、ある意味では自分で首を絞めるようなことまでもしてきました。

 これは、言ってみれば、ある人に言わせればコスト、それはコストじゃないかと言われればそうかもしれませんが、コストと言われようとそういう点の疑惑は全くないように、かつ、やはり多額ですので、マーケットインパクトを避けながら徹底的な分散投資をしていきたい。

 繰り返しますけれども、やはり何だかんだ言っても国債が中心となるということは変わりないと思います。

 以上でございます。

古屋(範)委員 大変示唆に富んだ先生方の御意見、ありがとうございました。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

衛藤委員長 古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 きょうは、参考人の皆様方におかれましては、大変に御多用のところ貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。

 いろいろきょうは、私どもの政治家でやっている議論と比べますと、大変に落ちついた、そうして本質的な議論が行われているということで、大変に好ましいな、ぜひこういう議論をしっかりこの委員会でも十分に尽くしていきたいというふうに思っているわけでございます。

 年金に対する国民的な関心がこれほど高まったことというのは、私は前回の年金改正のときも国会におりましたけれども、なかったんじゃないのかなという気がいたします。そういう意味では、非常に好ましいことだと思うんです。

 ただ、惜しむらくは、どうしても、自分はこの今の年金制度で得するのか損するのかという損得の議論が中心になってしまって、その損得に対して国民の関心も非常に高まってしまっている。

 本来は、先ほどは高山先生からもお話がありましたように、実は今の年金制度が抱えている問題、そして将来に向けて持続可能な年金制度を構築していこうという考え方からすると、そういう損得議論をしていてはいけないと思うんですね。そしてまた、公的年金でありながら、政府が運営をする、そして税金も入っている制度でありながら、現行制度で人によって損する人と得する人が生まれるという、そこに実は国民の皆さん方が制度に対する不信感を感じる、その不公平やあるいは納得がいかない、そういう根本があるんじゃないかと思っています。

 ですから、そういう意味では、我々がやっていかないといけないことは、年金制度をめぐって、ある人は損をする、あなたは得をする、損をするというような、そういう損得議論が行われないようなことをやっていかなきゃいけない。私たち民主党が提案をした年金改革案というのは、そういう意味では、そういう損得議論を行わないような制度をつくりましょう、不公平な制度を公平な制度にする、損得ではなくて納得のいく制度にする、そういう提案をさせていただいたわけなんですけれども、残念ながら、そういうことをわかっているはずの与党の皆さんからも、民主党案は損するんじゃないか、そういう非常に損得議論で、ためにするような議論が行われている。

 そこは、ぜひやはり我々がやらなきゃいけないことは、そういう損得の議論じゃなくて、どうしたら不公平感やあるいは不信感というものが払拭できるか、そういうことを考えなきゃいけないんじゃないか。きょうは先生方の御意見を伺いまして、改めてそういうことを思った次第であります。

 それでは、御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、高山先生にまず御質問をさせていただきたいんです。

 高山先生は、負担を、これは現在の政府から出ております案は基本的に現行制度の枠内で解消しようとするわけでありますね。先ほど高山先生の言われた負担の構造改革、これを現行制度の枠内でやろうとしているのが、私は基本的に今の政府案だと思います。

 しかし、先ほど高山先生が言われたように、今度の年金改革で焦点になっているのは、その負担の構造改革とともに、どうしたら年金制度に対する信頼を回復できるか、その二つの視点だと。全く私たちもそのとおりだと思っています。

 そして、その信頼を回復するというためには、もはや、現行制度の枠内で負担を基本的に解消していこう、そういうことでは信頼は回復されないんではないか。むしろ、ますます年金制度に対する不信感は高まることにつながっていくんではないかというふうに考えますけれども、高山先生の御意見はいかがでしょうか。

高山参考人 私、先ほど、今日本の公的年金が直面している問題が二つあるという御指摘をさせていただきました。同時に、政府割り当てという、皆さんにもしかしたら耳なれない言葉を使わせていただきましたけれども、二つの目的があるときにそれを達成するためには二つ以上の手段が必要である、一つの手段で二つの目的を同時に達成することはできないということなんです。

 今、失われている信頼、年金制度に対する信頼を高める方法、これは世界でも苦しんでいる国が実は多いわけでありまして、その中で絞り出した知恵は、実はスウェーデンの、みなし掛金建てということなんですね。これは賦課方式のままなんですが、納めた保険料は年をとったら必ず返ってきますよというのがだれの目にもわかるような仕組みなんです。それだったら保険料を払ってもいいよという、若い人たちがその気になるということなんですね。そういう仕組みをつくる、これが少なくとも将来世代に向けた新しいメッセージなんですね。これはもう世界の年金のプロの共通認識になっております。

 今回の政府提案は、残念ながら、みなし掛金建てへの移行は将来の検討課題ということになっておりまして、当分の間は保険料を上げていきましょうということになっているんですね。これは専ら過去の、ある意味では不始末といいますか、六百兆円の財源手当てをこれからどうするかというところに向けた対応策なんですが、それで年金制度に対する信頼回復を同時に図ろうとしている。そこが無理を生じさせている原因だというふうに私は思っているんです。

 そこをやはり分けるということだと思うんですね。若い人たちに対する信頼というのは、あなたたちの払った保険料は必ず年をとったら返ってきます、だれでもわかる仕組みをつくってやるということなんです。今、保険料を上げていきますね。上げていくとしたら将来あなたたちのもらう年金はこうなりますという姿を見ているんですが、どうやって計算しても、もらいの方が少なくなってしまうおそれが高いわけです。よっぽど非現実的な仮定を置かない限り、若い人にとっては納めた保険料はそのまま将来返ってこないということになる。これが信頼回復できないもとなんです。そこのところをぜひお考えいただきたいというふうに改めてお願い申し上げます。

 以上です。

古川(元)委員 ありがとうございました。

 私どもは、残念ながらこの政府案、非現実的な、希望的な観測で将来水準のところを数字を示しているんじゃないかというふうに見ざるを得ないというふうに思っているわけなのでございますけれども、だからこそ、今高山先生も言われたように、私どもは、これまでの年金制度の中で生じた年金債務と、そしてこれから保険料を掛ける人の年金給付とは、別の形でやはり分けて考えていくべきじゃないかという形で基本的な枠組みを提案させていただいているわけであります。

 今の高山先生のお話に関係しまして、山崎先生に御質問させていただきたいと思うんですが、保険料を引き上げていく、負担の構造改革の負担の仕方としては、今までの制度はそれをそもそも予想していたわけであります。これはもともと、釈迦に説法ではありますけれども、年金制度ができたときは高度成長時代でしたから、後の世代になればなるほど所得は上がるし生活水準はよくなっていく。だから、少々保険料が上がって、そしてそれに見合った給付というものが、前の世代に比べれば下がっても、それはそういう経済成長や生活水準の上昇というので後の世代も納得するだろうという状況だったから認められたものじゃないかと思うんですけれども、それが今全く状況が変わっている、経済状況、社会情勢が変わっている中で、それでも制度に従えば今回のような案になってくるんじゃないかと思うんです。

 先ほど、山崎先生の方から、年金制度だけじゃなくていろいろなほかの制度も考えなきゃいけないとありました。確かに、年金制度を考える際には、社会全体いろいろな要素を考えていかなきゃいけないんです。そのときに、保険料引き上げが経済に与える影響や、とりわけ雇用に与える影響というのは、高山先生が御指摘になったように、これは考えている以上に極めて深刻な影響があるんじゃないかというふうに思っています。経済産業省が出している試算でも、もし厚生労働省が最初に出した二〇%まで保険料を上げるとすれば、これは雇用が百万人失われるというような、そういう試算を経済産業省が出しているんですね、同じ役所の中で、霞が関の中で。

 そういうことを考えますと、この辺の保険料負担増が経済や雇用にどういうふうな影響を与えるというふうに山崎先生はお考えになっておられるか、教えていただけますでしょうか。

山崎参考人 この分野は私の専門ではないわけでございますが、前回の改正で、経済状況等にかんがみ保険料の引き上げを凍結するという決断をされたわけでありますが、結果的に後代に負担を転嫁したことになっているわけでございます。ですから、経済やあるいは雇用の動向に十分配慮するということも必要なんですが、厳しいけれどもこの山は登らなければいけない、そして、そのことによって一定の将来不安を解消することも、国民に対する信頼を確保する道かなというふうに考えております。

 ただ、負担は上がるといいましても、今、厚生年金の未適用の問題だとか、あるいはパートに雇用をシフトして負担を逃れる、むしろこういった負担の不公平も同時に是正していくことをしないといけないというふうには思っております。

古川(元)委員 山崎先生のおっしゃるようになればいいんですが、現実は、ここのところの経済状況の中で、実際に厚生年金の加入者というのはどんどん減っているわけですね。そういう中でまた保険料が上がるということは、当然企業負担も上がるわけでありますから、雇用に対しては、先ほど高山先生が言われたように、相当大きな影響があるというふうに考えざるを得ないと思うんですね。

 前に経済状況をかんがみ保険料を凍結したときと比べて、今の状況がそれほど改善をしているのか。そして、今回の法案はこれから十四年間ずっと上げ続けるということを決めてしまうわけですから、果たしてそれに本当に耐えられる状況にあるというふうに思われるのか。御専門ではないというふうに言われましたけれども、年金のこの問題について、今回の政府案を決めるに当たって、保険料を十四年も引き上げるということであれば、そういうことがちゃんと政府案を固める間でもう議論されて、それで大丈夫だという判断のもとにこういう結果になったんでしょうか。いかがでしょうか。

山崎参考人 随分厳しい御質問をいただいているのでございますが。

 いずれにしましても、一定の給付を賄うために財源は必要でございます。ですから、保険料を引き続き凍結するという判断をするのであれば、別途財源を確保しなければいけない。それが消費税なりということになるとすれば、これも国民の負担でございます。その辺の選択の問題というふうに私は考えておりますが、現実には、国庫負担の二分の一への引き上げの財源の確保も十分に検討課題にはなっております。

 一応の道筋は書かれておりますが、十分な財源確保は現実にはなされていないわけで、私は、税を引き上げるというのも非常に困難であるというふうに思っております。それはまた、別の形で経済や雇用に対する影響があるんだろうというふうに思っております。

古川(元)委員 ちょっとまた別の観点から御質問させていただきたいと思います。

 高山先生に御質問させていただきたいと思いますけれども、先ほど山崎先生の最初のお話の中で、今回は政府案もスウェーデンの方式の考え方の一部をとったんだ、保険料固定という方式をとったんだというお話がありました。

 これは、高山先生、スウェーデンの場合は、保険料固定というのは、保険料を固定すれば、当然その固定された保険料によって入ってくる保険料収入の枠内で給付をしていく。その場合、そうなりますと、当然やはり給付額というものが上下する。ですから、これは特に低年金者の人を中心に非常に年金額が少なくなる、そういうリスクがある。

 ですから、スウェーデンというのは、保険料を固定するのと同時に、最低保障年金、補足年金でもいいですけれども、それを組み合わせることによって初めて保険料固定、そして給付額がそれによって変動し得るというもの、それを正当化できる。ですから、実は、この保険料固定と最低保障年金というものはセットであって、この一方だけとって、いや、スウェーデンのまねをしたと言うのは、これはスウェーデンの考え方の手前勝手なところだけとっているというふうに私は認識をしておりますけれども、スウェーデンの考え方というのは、本来はこれはセットじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

高山参考人 スウェーデンの考え方は、私の理解では古川先生と全く同じでございます。

 私が先ほど山崎先生のお話を伺っている中で、山崎先生が主張なさりたかったこと、スウェーデンには、実は二つの柱があったんですね。一つは、みなし掛金建てへの切りかえという話なんですが、もう一つは、自動安定装置の導入なんですね。山崎先生は、今回の政府案はむしろその自動安定装置の方に着目した改革を日本流にアレンジして組み入れたのではないか、それが言われるところのマクロ経済スライドだというふうにおっしゃったのではないかと私は理解しました。

 ただ、スウェーデンのマクロ経済スライドは期限つきでないんですね。バランスシートを毎年計算しまして、資産と負債の間で食い違いができちゃったときには給付のスライドを変えましょうと言っている。それを毎年続けていくんですよ。ある期限、二〇二三年で終わりです、その後はやりませんという話じゃないんですね。二〇二三年以降もバランスシートが崩れたらまた給付調整をやりますよといって、それが自動安定装置という形で言われているところなんですよ。

 日本の場合、なぜ二〇二三年、これは基準シナリオのケースですけれども、要するに、給付水準五〇%固定というのを、後から決めたということなんですけれども、それがゆえに、自動安定装置というものがやや異質なものに変わったというふうに私は思っています。自動安定装置というよりは、五〇%給付を維持するために別の意味で違うコストが発生してしまうおそれが強い。私は、恐らく、支給開始年齢を六十七歳に上げるとか、場合によっては七十歳に引き上げざるを得ないところに追い込まれるというふうに考えております。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 また今度は山崎先生にお伺いさせていただきたいと思いますけれども、大変率直な、素直な御意見をいただいて、今回の政府案というのは、とにかく保険料凍結によって実質的に年金財政は赤字が積み重なっている、ですから、当面はとにかく財政の安定を図ることがまず第一なんだというお話があったわけでありますね。

 我々民主党案と政府・与党案の違いというのは、やはり政府・与党案は、まずは当面の財政を何とかしなきゃいけないというところが第一課題に来ているんじゃないかと思うんですね。そこのところをはっきり言ってくれればいいんですけれども、これが百年もつ、このままでいいんです、これで決めれば百年もつんです、抜本改革ですというお話をされるものですから、私どもも、それはちょっと違うんじゃないですかと。まずは、先ほど山崎先生が言われたような保険料凍結によって生じた穴を埋める、当面とにかくそこの部分をやっていかなきゃいけない。

 そこで、先ほどもお話があったように、いろいろな、まだまだ今回変えても課題が残る、自営業者やあるいはサラリーマンの壁は乗り越えるのは大変だという話がありました。しかし、それを、では未来永劫そのままにしておけるかといったら、やはりそれは、どこかで乗り越えるという覚悟を決めて、そのためにはどうしたらいいかということに踏み出していかなきゃいけないんだと思っているんです。

 私たち民主党が、そういう意味であえていろいろな難しい壁、今与党の皆さんからいろいろと御批判をいただいたりしておりますけれども、しかし、その壁はいつか、この年金制度、この政府案を通したって与党の皆さんもその後で考えなきゃいけない。そういう意味では、こうした問題については、これは与党とか野党じゃなくて、こういう壁を乗り越えようとするか、では乗り越えるためにはどうしたらいいか、そういう知恵をやはりちゃんと出し合わなきゃいけないことじゃないかと思うんです。

 そういう意味では、私は、今回の案というのは、抜本改革、百年安心というのはちょっとやはり誇大広告であって、基本的には当面の財政を安定させる、そういうものだというふうに思っておりますけれども、山崎先生の御見識はいかがでしょうか。

山崎参考人 恐らく、政権与党と野党の違いじゃないかなというふうに思っておりますが。政権をおとりになれば、恐らく財政というのはまず当面最優先の課題にせざるを得なくなるんじゃないかなというふうに思います。

衛藤委員長 何か質問にみんな答えていなかったみたいだけれども、お答えはもうよろしいですか。

山崎参考人 結論を申し上げました。(古川(元)委員「抜本なんですか、これは。当面なのか」と呼ぶ)

 抜本という要素がスウェーデンに二つあって、その一方に軸足を置いた、そういう意味で一つの抜本だというふうに思っています。全面的な、未来永劫、恒久的に安定的な年金制度になったとは思いません。しかし、それは恐らくどの世界でもないことではないかなというふうに思っております。

古川(元)委員 与党の皆さんもそういうふうに素直に言っていただくと、まだもう少し議論がかみ合うと思うんですけれども。

 もう時間がなくなりましたから、米澤先生の方に、運用の問題についてお伺いをいたしたいと思います。

 積立金の株式運用について、これは基本的にやっていくべきだという御意見のようだったわけでありますけれども、あの市場万能主義のアメリカにおいても公的年金については株式運用していないんですね。これはもう御存じのことだと思いますけれども。

 そういう中で、日本において、年金資金、必ず将来返さなきゃいけない、年金の給付に充てなきゃいけない、そういう意味では、積み立て不足がなくてむしろ超過しているのであれば、リスクがとれるような資金であれば株式に投資してもいいのかもしれませんが、先ほど来からお話があるように、膨大な積み立て不足がある状況の中で、その資金をそういうリスクにさらしていいのかという問題もあると思いますし、また、年金の積立金の運用というのは、郵貯、簡保の資金の市場運用と同じように、金融市場に対してどういう影響を与えるか、そういう視点も大きな視点として考えていかなきゃいけないんだと思います。

 先ほど米澤先生のお話の中では、日本の社会の中にはなかなか民間の資金が株式市場に入らないから、公的資金がそのかわりの役割を果たす面というのは大きいんだというような御主張をされておられたと思うんですけれども、公的な主体が、政府が、金融市場でそういうある意味でアクティブに行動すれば、それは金融市場をゆがめることにもつながるわけですね。

 この年金資金というのは今でも三十五兆、今もっとふえていますけれども、これが、積立金の全額百四十七兆を超えるものが金融市場に入っていきましたら、市場の中では物すごく大きなプレーヤーなんですね。年金資金が動けばそれだけで相場がつくれてしまう。果たしてそういうことをしていいのか。逆に、相場はつくりません、今やっているように常にパッシブに運用しますという形になれば、今度はその相場にいる人から見ると、まさに一番、年金資金はアクティブには運用されなくてパッシブだけに運用されるとなると、これは市場のカモにされてしまう。

 いわば、今ここまで含み損が生まれた背景には、公的資金であるがために市場の中でアクティブに運用ができなくて、アクティブに運用ができないがためにそれがいわば結果的にPKOのように見られるような、そういう形でしか運用ができない、そういうことにつながっているんじゃないか。

 そういう意味では、公的資金という性格上、この年金の積立金というものは、やはり額としても、そして運用のあり方としても、かなり自制的に、そして規模的にも小さくならざるを得ないんじゃないかというふうに思いますが、その点についての御意見、いかがでしょうか。

米澤参考人 お答えいたします。

 まず、ちょっと整理しておきたいのは、アメリカの公的年金、州とかではなくて大もとの連邦の方のは確かに株式運用しておりませんが、これは御存じのように、株式だと運用してリスクが多いという点でなくて、国がいろいろそこに介入、株式を買うことによって余計なPKO等に使われるリスクを防ぐという工夫だと思っております。そういうことでしていないということでございます。

 この点は、先ほど申しましたように、我が国においては、多少自分で自分の首を絞めるような格好ですが、全くそういう余地がないような格好で運用しております。ということで、まず最初のPKO等に関する心配は、これもインプリシットなコストといえば、多少そのコストを負担しながら運用しております。

 もう一点、これだけ巨額な資金が金融市場に入ってという点は、これはごもっともなんですが、少し広く見て、郵貯、簡保も見て、どうでしょうか、日本の金融市場は、家計が出し手のところにおいてはかなりリスクレスアセットに偏重しているんです。そういうところで少しゆがみを是正するという点は、私は期待しております。

 過分に本当の最終的な出し手がリスクをとらないといったところは、マクロ的に見て、もう少々リスクがとれるようなところで、途中で、中間的なところで変えられれば、最終的に非常にうまい絵がかける、その一つの工夫かなと思っております。そういう位置づけで考えております。

古川(元)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

衛藤委員長 山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、御意見ありがとうございました。これから、皆さんの表明された意見の陳述の流れに即して何点かお尋ねしたいと思うんですが、いずれにしましても、皆さんから出されました意見を踏まえて、この問題での徹底的な審議を今後とも進めてまいりたいということをまず初めに申し上げたいと思うんです。

 それで、今度の政府の年金法案なんですけれども、これは、給付の水準を引き下げる問題でも、それから年金の保険料を引き上げていく問題でも、今後、かなり長期間にわたって国会の審議を経ないでそれをやっていくということになりますと、これはやはり国民全体にとっての、公的年金制度の本質にかかわる、これを変えるような、大改悪だと私は思っております。

 この問題を考えるときに大事なのは、一体、今、公的年金制度がどういう実態にあるのかという、実態をきちんと見定めることがやはり必要だと思うんです。特に、指摘されておりますように、今、公的年金制度をめぐりましては、一つは、無年金者の問題や、厚生年金、国民年金を含めまして、低額年金者が非常に多く存在しているという問題、それからもう一つは、年金の空洞化と言われている、未納率や年金自身から離れていってしまっている方の問題、こういう問題があります。

 それでは、初めに、公文参考人にお尋ねいたしますが、年金の空洞化の問題なんですけれども、先ほどのお話では、国民年金で三〇%増、厚生年金で三五%増、こういう方向は、空洞化を一層加速化させて、制度そのものを崩壊に導くという指摘がなされたわけですけれども、このあたり、もう少し具体的に示していただきたいと思います。

公文参考人 ただいまの御指摘なんですけれども、十分御承知だと思いますが、今の空洞化の一番大きなポイントになってくるのは、一つは、先ほどもちょっと意見の中で申し上げましたけれども、特に低所得階層の加入の多い国民年金の一号被保険者層で生活苦が拡大をしてきている。したがって、今現在の月一万三千三百円の負担でさえ、極めて生活上の理由として払うことができなくなっているというのが一つ大きなポイントだろうと思います。

 それからもう一つは、先生も御承知のとおり、若い人たちを中心にして、年金に対する不信感がますます拡大をしてきている。したがって、これはもう旧厚生省社会保険庁の実態調査でも明らかになっていることなんですけれども、今の年金に対して、全く信頼できないという声が非常に高まってきていまして、したがって、大体全体の七〇%、これは複数回答ですが、七〇%が経済的な理由、そして残り三〇%が年金に対する不信感、当てにならない、信用できないという率直な意見から、実はこの空洞化が進んでいるということだと思います。

 したがって、この空洞化の中で、私、ぜひ今国会の中でも明らかにしていただければと思っておりますけれども、厚生労働省の場合は、一つは、先ほども言いましたが、国と地方自治体の基準に基づいて、免除者の数が、一番新しい数字として、四百三十五万人というふうに言われておりますけれども、これは前年度は五百二十四万人いたわけであって、ほぼ百万人近い免除者の減が数字上あらわれているんですけれども、本当にそうなのかと。その内容については、新聞、テレビ等の報道でも余り詳細は報告されておりませんのでわかりませんけれども、厚生労働省の御説明等によりますと、いわゆる、免除の基準を厳しくしたという言い方をしています。

 したがって、免除の基準を厳しくして、今まで申請免除として免除を受け入れた部分を、ほぼ百万人近く減らしている。その方々は、免除を受けられなくなるわけですから、当然のことながら、国民年金の一号被保険者の中で保険料を払わざるを得ない立場に追い込まれるわけなんですが、免除を受けなければいけないような状況ですから、国民年金の一号被保険者の保険料を払う立場になっても、結局は、滞納者、未加入者ということで移動していっているんじゃないかというふうに思わざるを得ません。この点をひとつ、やっぱりしっかり行政の面としても見詰めておく必要があるだろう。

 それからもう一つは、先ほども申し上げましたが、前回の山口富男先生の御質問に厚生労働省の方がお答えになっているのをちらっと新聞で見たんですが、依然として滞納者は三百二十七万人ということを言っています。

 本当にこれは、二カ年間という期間全く保険料を払わなかった人が三百二十七万人ということですから、したがって、これは、本当の意味での滞納者の数を把握しようと思ったら、やっぱり単年度で見るべきだろう。単年度で見るとなると、納入率六二・八%というのが一番新しい数字として発表されていますので、この六二・八%の納入率で推計をしますと、恐らく、単年度で見た免除者の数というのは、六百数十万人、明らかに六百万人を超えるという、政府が言っている以上に深刻な実態があるというふうに受けとめる必要があるんじゃないかなというふうに思っております。

 大変大ざっぱですけれども、とりあえずお答え申し上げておきます。

山口(富)委員 今指摘のありました、幾つかの、実態を反映するかどうかという数字の問題は、私も、引き続きこの審議の場で明らかにしてまいりたいと思います。

 それで、もう一点、公文参考人にお尋ねします。

 低額年金をめぐる問題にかかわるんですけれども、今度の給付水準、一律に一五%、実質で切り下げていきますから、当然これは暮らしへのかなりの重荷になるというのは明らかだと思うんですが、一つは、その重荷というのはどういうものなのかというのをお話しいただきたいのと、もう一点、今度の場合、既に年金をもらっている方も切り下げますけれども、新規にもらう方も切り下げていく。その際の手法なのですが、最初に年金の水準が下がるわけですけれども、そのときに、マクロ経済スライドというのが導入されますから、いわば二重の形で年金が下がっていく、そういう仕組みになってくる。

 このあたりの、年金の額、年金の水準をめぐって、二つの面で御意見をいただきたいと思います。

公文参考人 低年金の水準というのは、先ほど、民主党の古川さんですか、御指摘がありましたけれども、現実に、先ほど申し上げましたが、千六百万人の年金受給者の実態、平均年金額五万一千円、国民年金の老齢基礎年金だけしか年金をもらっていない方々の年金額が平均四万六千円。結局、それ以下の方々が月五万円以下ということになっておるわけですから、そこからさらに二十二年度まで、一五%まで年金額を切り下げていくということですから、これは、極めて深刻な事態が生まれてくることは、もう紛れもない事実だろうというふうに思います。

 したがって、五万一千円が一五%切り下げられるということになりましたら、当然四万円台になりますし、それから、四万六千円ですと四万円を切るという実態が浮かび上がってくる。この数字で生活していけるかどうかという、そこのところをやっぱりもっと真剣に年金改革の面では考えていただかないと、本当に、算術上の勘定は合っても人間らしい感情がない、そういう結果にならざるを得ないだろうというふうに思います。

 それから、二点目の問題点なんですけれども、これも非常に不明確で、私も法案を読んでいてさっぱりわからないんですけれども、あと、はっきりしているのは、これから年金をもらい始める方々、特に厚生年金、公務員の共済年金も同じだと思いますけれども、厚生年金などの年金の新規裁定の部分、つまり年金額を裁定するときは、当然のことながら、いわゆる賃金を中心にして、賃金が下がったか上がったか、つまり、今はもう賃金が上がるなんということは余りないので、大変意識的、そして政策的に賃金と雇用の悪化が進んでいますけれども、結局、下がった賃金で年金額の裁定が行われるわけですね。特に、報酬比例部分というのは、御承知のとおり、いわゆる賃金と加入期間によって年金額が決定されますから、まずその段階で切り下げられた年金額が裁定される。そして、年金をもらうようになりましたら、それからあとは、今度はマクロ経済スライドで、先ほど来お話があるように、主として少子化と高齢化を重点に置いて、年金額が自動的に切り下げられていく。つまり、特に大多数の民間産業労働者、厚生年金に加入している方々のこれからの年金額の切り下げが、第一段階の裁定時点と、さらに年金をもらい始めた時点と、もうダブルヘッダーで、とにかくダウンが押しつけられるということですから、これはもう相当重大な問題じゃないかなというふうに感じております。

    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕

山口(富)委員 続きまして、高山参考人にお尋ねします。

 今公文参考人からダブルヘッダー並みの給付水準の引き下げだという話があったんですが、先ほどのお話で、いただきましたこの要旨で拝見しますと、今度の政府案が実現すると、企業は従来よりも一段と厳しいリストラを強行せざるを得なくなる、その結果、厚生年金の空洞化が一層進み、多数の若者が労働力市場から締め出されるという事態が起こるということを指摘されているんですけれども、政府案の方向でいくと、高山参考人は、一体どういうことが日本経済や、若者を含めまして、暮らしの中で起こる危険があるのか、どういう認識をお持ちなのか、もう少し詳しくお話しいただきたいと思います。

高山参考人 政府案は、保険料を、これから向こう十四年間にわたって、少しずつですが、ピーク時には一八・三%まで上げることを計画なさっております。

 一八・三とか二〇%というのは、ヨーロッパを見ればむしろ当たり前だ、それより低い国はむしろ少ないわけでして、当たり前じゃないか、日本もそのぐらいやってどうしていけないんだという意見をしばしば耳にします。ただし、ヨーロッパの諸国が二〇%に保険料を上げたのはずっと前のことなんですよ。高度成長期、まだ賃金がずっと上がっている時期でありまして、保険料を上げても現役で働く人たちの手取り収入は着実に、実質的に上がっていた時期なんですね。企業もそれにおつき合いできるほどの余裕がありましたから、年金保険料の引き上げには、労使そんなに強く反対しなかったんですよ。だから二〇%まで上がっていったんですね。

 ところが、日本の場合、今回一三・五八ですけれども、これをこれから上げるというときに、日本の労使は強い抗議の声を既に表明しております。私が説明するまでもないと思うんですね。しかも、これから、保険料でいえば毎年一兆円単位です。一回限りではありません、毎年上げていくというんですよ。人件費そのものですから、企業はやはり身構えせざるを得ないんですね。企業は生き物です。生き残りのために何をするかということなんですよ。今でも非常に苦しい思いをして何とかやっている。そこで、今度はもう企業のそういう状況にお構いなしに、保険料を毎年一兆円単位で上げていきます、向こう十四年間ですよと言っているわけです。

 企業はやはり残るためにできることは限られているわけです。政府はそれをやるんですか、いや、だったら仕方がありません、人件費を節約するためにいろいろなことをやらざるを得ません、新規採用は当面見送ります。これは若い人をバッシングしちゃうんですよ。年金財政を支える人は若い人なんですから、若い人はお年寄りの生活を支えようとしても、その前に自分の職を失っちゃうわけですよ。だから、ベースアップもほとんど期待できなくなるということなんですね。

 企業はそれで生き延びるかもしれない。企業は生き延びるかもしれないけれども、従業員はなかなか生活水準が上がらない。しかも、雇用労働市場からはじき出されてくる人たちがこれから大量に発生する。その問題を、現在の自由民主党の先生方は、多分支持者の団体の方からいろいろ声が届いていると思いますけれども、どうお考えになっているかということを私はむしろお尋ねしたいんですけれども、質問してはいけないということになっておりますので、ぜひお考えをいただきたいということにとどめさせていただきます。

山口(富)委員 ありがとうございました。

 私は共産党ですから、それはまた別の方が答えると思うんですが。

 いずれにしましても、高山参考人も公文参考人も、この政府案の方向でいくと、今年金制度で大きな問題になっている低額者、無年金者、それから空洞化の問題、これを解決するどころか、悪い方向に一層加速すると。若者の問題でいいましても、リストラされてしまいますと、年金の支え手が失われると同時に、将来の無年金者、低額年金者を生む、そういうことになるわけですから、私は大変なものだと改めて思いました。

 そこで、日本共産党は、現状を打開するために最低保障年金制度を直ちに創設すべきだという考えを持っているわけですけれども、この点については、先ほどそれぞれの参考人からもいろいろな角度からの指摘がありました。公文参考人にこの点にかかわって一点お尋ねいたしますが、先ほど財源の問題で、年金財源に消費税を入れるのは間違っているという指摘があったんですが、この点を、最低保障年金制度の意義との関係でも少し示していただきたいというふうに思います。

公文参考人 いろいろな意見があると思いますけれども、私は、消費税を、年金だけではなくて社会保障という制度自体の基礎的な財源として使うということはやめるべきだと思っています。

 それは、皆さん方も十分御承知のことなんですが、冒頭の意見の中でも言いましたけれども、やはり消費税というものの逆進性という性格を考えれば当然のことですけれども、社会保障制度の基本的な理念である、原則の中の一つなんですが、応能負担の原則に反するものであって、最も社会保障制度に使う税制としては不的確な制度というふうに考えております。

 そのほかの制度には使っていいのかということになりますけれども、これはもう国民生活から考えて、消費税の増税そのものは否定されなければいけないと思っていますので、特に社会保障制度の問題についてだけは明確にしておく必要があるだろう。これは私個人の意見だけではなくて、税理士関係の税制研究会の皆さん方の中でも一致した意見だということを申し添えておきます。

山口(富)委員 私は、財源の問題でいきますと、歳出歳入の改革、これはもうずっと指摘されてきていますが、日本の場合は公共事業のむだ遣いが大変多いですから、この部分の改革や、それから軍事費の削減の問題、それから、企業の問題でいいますと、企業一般ではなくて、特に欧米に比べて大企業の社会保障分野の負担が低いですから、この分野の適切な負担の問題、こういう形で財源をきちんと確保することが可能だというふうに考えております。

 さて、高山参考人にもう一点お尋ねいたしますが、先ほど、年金数理部局の問題で、これを厚生労働省から分離して公取や会計検査院のような独立機関にしたいという提起がありました。会計検査院の場合は、日本の国家財政との関係で憲法上の機関になるわけですけれども、年金数理部局を独立の機関とするという場合の中身は、大体どういうことを想定されているんですか。

高山参考人 参考にしたのはアメリカのソーシャル・セキュリティー・エージェンシーでございます。

 同じ国家公務員で、タックスペイヤーの負担によって支えられている機関が、なぜ一つの特別な組織だけに情報を積極的に提供し、他のところに提供しないのか、これはアメリカでは厳しく指弾されることなんですよ。我々は税金を払っているのに、税金で払って雇い上げた人たちが、なぜ国民に公平に情報を提供しないのか、なぜ同じサービスをしないのかということです。

 たまたま今政府の中の一部局に入っていて、与党と政府の間での政府案をつくるときには、いろいろな工夫をする、あるいは積極的に案をつくって与党の先生方に示して、それで最終的には決断を仰ぐというのが今のスタイルなんですけれども、野党の先生はその情報部局を実質的に使えないんですね。

 例えば、今回の改正でバランスシートがどうなるという数字は多分質問が行っていると思うんですが、まだ依然として回答が出てこないんですよ。これは意図的にサボタージュしているとしか思えないんですよ。意図的にサボタージュしているとしか思えません。これは、数字は、つくろうと思えばそんなに難しい作業ではありません。できるんですけれども、数字が出てこないんです。出すと困ることがあるんでしょう、きっと。

 民主党案のベースの、仮に数理部局が政府から独立していたら、簡単に基礎データを提供して、もっと充実した中身のあるものをつくり上げることができるんですよ。あるいは、民間のシンクタンクもそうですし、大学の先生たちも、具体的な年金改革案をつくろうとする場合、そういうデータが利用できれば、我々も充実した中身のあるものをつくることができるんです。そして、国民的な議論の質を高めることができるんですよ。

 ところが、政府は、与党にだけその情報を提供している、ほかの人たちにはその情報提供をサボっている。これで実のある審議が本当にできるのかということなんですよ。国民的に非常に高い関心を呼ぶテーマであるのに、情報がある一部分にしか届いていない。それで、時間の中で議論して、何か決めましょうという話になっている。これは後でやはり禍根を残すことになるんではないかということを私は強く恐れております。

 以上です。

山口(富)委員 時間が限られてきましたので、公文参考人と高山参考人に、まとめて同じ問題でお尋ねしたいんです。

 今、年金制度というのは国民的な問題ですから、審議をするための前提条件が欠かせないんだという話が強調されました。その中で、政府側の提案というのは、今度の法案というのは百年もつという、百年の制度設計だということを繰り返し言っています。しかし、きょうのそれぞれの参考人のお話ですと、とてもそんな話じゃないよ、もたないという話があったわけですけれども、この百年安心論について、公文参考人それから高山参考人、それぞれの見解を述べていただきたいと思います。

公文参考人 結論から申し上げましたら、意見の中でも言いましたとおり、到底科学的根拠に基づいた推計とは考えられない。

 先ほども申し上げましたけれども、少なくとも、今の年金の財政運営の中で、いわゆる積立金を使って大型ゼネコン型の投資を一貫してやってきて、そのあげくが、年金福祉事業団やあるいは年金資金運用基金の、株を買って赤字を出すという、そういう乱脈な状況を生み出してきたということは紛れもない事実なんです。したがって、これは与党の側も反省をして、自主運用に切りかえるということをやっているわけです。

 したがって、そういう積立金の運用の仕方が、政府が出しているこの百年の均衡方式の試算を見ても、とにかく二〇五〇年までずうっと一貫して保険料がふえ続けていって、先ほども言いましたけれども、三百三十五兆円という、厚生年金だけで今現在の倍以上の積立金が保有される。しかも、最終段階の二一〇〇年でも百十五兆円という積立金が残るというとんでもない計画である。したがって、こういう計画は直ちに取りやめて、もう一度案を練り直す必要があるということだけ申し上げておきます。

高山参考人 私は、人間の将来予知能力は極めて限られているということを初めに申し上げたいと思います。

 今から三十年前、ちょうど高度成長期です。例えば一九七三年の時点に、今日の姿をだれが正しく予想できたかということです。我々の予想を超えて、いろいろな事態が幾つか毎年起こってくるんですよ。三十年先でさえ、あるいは二十年先でさえ、正確に予想できるなんということはありません。それを百年安心プランにするなんということは、これは政治的なうたい文句としては、私は、それはそれとして評価しますけれども、事実としては、我々の予想外、五年後だってもう起こっちゃうかもしれない。現に、出生率はもう中位推計を下回っていますね。昨年におけるトータル・ファーティリティー・レート、合計特殊出生率は、多分一・三を切るんでしょう。それは六月に発表されますけれども、要するに、数年前に予想したことでさえも下方修正を余儀なくされているんですよ。それはもういっぱいあるわけですね。

 我々にできることは何か。将来予知能力は限られているわけですから、変わった、我々の予想が狂ったということがわかった段階で、その変化に機敏に柔軟に対応するということなんですよ。変化に対応するというプロセスが大事なんですね。しかも、それを国民に開かれたところで議論を十分に尽くしていただいて、中身を変えていくということが大事じゃないかというふうに私は考える次第です。

 以上でございます。

山口(富)委員 時間が参りました。事実と実態に基づいてきちんとした徹底的な審議をやるということをお約束しまして、質問を終わります。ありがとうございました。

    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕

衛藤委員長 阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 まず冒頭、四人の参考人の、本当に今回の年金審議の中で骨格のあるお話をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、冒頭、山崎参考人にお尋ねを申し上げたいと思います。

 まず、イエスかノーかのすごく簡単な質問なんですが、山崎参考人は、社会保障審議会の委員であるということで、一九七七年に社会保障制度審議会がお出しになった建議、こればかり問題にしているんですが、建議というのを御存じでありましょうか。

山崎参考人 当時の社会保障制度審議会の基本年金構想という建議であります。よく知っております。すべて財源を所得型付加価値税で賄うというものでした。

阿部委員 そのときの基本認識が、無年金者が膨大に多くなり、そしてまた高齢社会も差し迫ってくるだろうという認識の中で、非常に骨格のある建議という形で出ております。付加価値税、今で言う消費税もその当時から論議されておりましたが、その具体的な解決策以前に、山崎参考人は先ほど、年金改革がそろそろ収れんしてきた、要するに、ある程度先が見えてきたというお話だったと思うんです。私は、冒頭、その話を聞いたときに、うんとちょっと思ったんですけれども、でも、逆に言うと、ある意味で、年金問題についての国民的な関心や問題の所在のありかや、そしてこの間、民主党も対案を出す、我が党も小さいながら対案的なものを出す、そして政府・与党案もこれありということで、逆に言うと、一九七七年に建議が出たような段階と同じ、そして、社会保障審議会としては、骨太な建議に当たるものを、問題点を整理して、これからはこの点をこういうふうに論ずべきではないかというようなものをお出しになる時期に当たっておる。

 昨日、実は厚生労働大臣に、大臣のリーダーシップでそのような建議をつくり、あるいは超党派の年金のプロジェクトをつくっていただきたいというお願いをしたのですが、長年、年金の論議に携わってこられた山崎参考人としてはどのようにお考えでしょうか。

山崎参考人 かつての社会保障制度審議会は、内閣総理大臣の直属の諮問機関でございました。それが省庁再編等に伴う法律改正に伴って廃止されて、現在、その機能を引き継いでいるのは厚生労働省所管の社会保障審議会でありまして、年金については年金部会があるということでございます。

 それで、私自身、審議に参加しておりまして、これは宮島部会長が再三おっしゃったことですが、かつての諮問答申型の審議会ではない、できるだけオープンに議論をして、無理な調整はしない、各委員の意見を整理し、国民にわかりやすい形で提供し、最終的な判断は政府の方に求める、こういう性格だということでございますから、既に、議論をオープンにして、論点を整理するということは、今回の意見書でかなり行われているはずでございます。

阿部委員 私は、今の参考人のお話にもあったように、かつて内閣総理大臣の直属のものであったものが、今、厚生労働大臣のもとに移り、しかしそのことによって、政府全体としての、政治全体としての年金問題にかかわるリーダーシップということがあいまい化されてきているように思います。

 そこで、高山参考人に御質疑いたします。

 参考人は、最後にまとめられて、今こそ政治の見識、先ほど来のお話のように、たくさんの若年の、本当に働きたくても職がない、あるいは五年先も設計できない若者がたくさん生まれてきた時代に、私は、小さな渦の中の論議でこれを終わらせないで、本当に国民的論議にしていくための政治のリーダーシップが必要だと強く思う次第ですが、この審議のあり方ということについて高山参考人のお考えをお聞かせください。

高山参考人 政府にはいろいろな審議会がございますけれども、大体、私の理解によりますと、利害関係代表者がほとんど入っておりまして、学識経験者と称する人たちも参加しておりますが、最近のいろいろな議論というのは対立含みのものが圧倒的に多いんですね。利害代表者が全部入っちゃいますと、結果的にうまくまとめられない。各論併記だとか両論併記だとか、そういう形で答申が終わってしまうケースが多いわけです。

 むしろそれだけではどうにもならなくて、結果的に政府の責任において、年金の場合であれば、厚生労働省がそれを引き取った上で厚生労働省がよいと思う法案を提示し、与党の先生方と相談して政府提案の法案になったという経緯だと思うんです。そこで重要な役割を果たしているのは厚生労働省、政府の一部機関なんですが、一部局なんですね。政治家が本来期待されているような結論がそういうところへ出てくるかどうかということだと思うんです。

 私は、もう少し天下国家を広くとらえ、個別の利害から超越した形で将来に対して責任を持つような、そういう物事の決め方をするのは、行政の一部局ではなくて、やはり政治家ではないかというふうに思っております。我々はそのために政治家を選んでいるんだというふうに私自身は理解しております。

 そういう意味で、政治家の皆さん方が、そういう自覚のもとに将来の長期的な方向、グランドデザインを徹底的に議論なさった上で、いろいろ利害が錯綜していますから難しい問題は幾つかあります。ただし、最後はお互いに譲り合っていただいて、できるだけ超党派の形で将来の方向を示していただく、これがプロセスとしては大事じゃないか。そういうプロセスを国民は見ていると、ああ、これが我々の将来なんだということがもう少しわかりやすくなってくると思うんです。

 厚生労働省が何だかよくわからない形で法案の骨格を決めました。与党との調整も何だかよくわからない、数字の調整だけやっているような感じで、結果論として出てきました。中身を読んでみると、素人にはほとんどわかりませんね、私が理解するのも結構な期間がかかりましたから。

 要するに、説明が足りないんですよ。今回の法案が通った場合に一体どういうことになるのか、これは実際はわからないんですよ、ほとんどの人が。それで物事を決めちゃっていいんですかということなんですね。もう少しみんながわかっていて、実はこれをやるとこうなるんだよとみんながわかった段階で、それで、じゃ、これしかないですねといって決める方がいいんじゃないかというふうに私は、これはスウェーデンでやったことですけれども。

 以上でございます。

阿部委員 スウェーデンの年金論議をコンセンサスポリティックスという言い方をしたり、あるいは、イギリスではブレア首相みずからグリーンレターを各関連の労働団体や企業者に出し、そしてわかりやすい形で論議を進めていった。

 私は、今回の日本の年金論議の一番の不幸は、あるとき小泉首相が一元化と言った、その言葉の一元化ということで、いや、一元化か、今のが抜本改悪案かという、全くすれ違いの論議を重ねながら、本来政治が、あるいは各政党が、国民に説明責任を持って示して成り立つべきだれにもかかわる年金問題が、もしかして近く強行採決とやらも聞こえてくる中で、そんなことで決めたらだれも納得できない、まただまされた、嫌だ、もう納めないという逆の影響がこの年金論議のさなかでも起きると私は思っております。

 そこで、きょう参考人にお越しいただいて初めて、ある意味では、私はきょうは山崎参考人のお話もすごくおもしろいと思って聞きましたし、参考にさせていただきたいことがございます。

 話を移して恐縮ですが、私は、今回のこれが抜本か百年かと言われれば、さっき山崎参考人もおっしゃったように、与党だからと。与党だからということは、与党が百年続くということは通常はないと思いますと、とりあえず政権政党としての責任で今をしのぐものだというふうに考えてお話しになったんだろうなと。これは私の言い切りですから、違ったらごめんなさいですが。

 そうした観点に立ったとしても、きょう山崎参考人のお話にあった中で、私は、今一番深刻なのは年金の保険料率のアップがどんどん非正規雇用をふやし続けていく危険、これは昨日も数値をもってお示ししましたが、そこを一番危機的に感じておるのであります。山崎参考人がお話しになった、例えば女性の年金分割、離婚時じゃ事がぐちゃぐちゃになるから、入り口から、出口じゃなくて入り口から二分二乗、私もこれは大賛成。それから、例えば子育て中の女性への年金の納付を減免したりするのも当たり前、社会的に子供を育てているのですから。もう一つ、あ、いいなと思って、聞きたいなと思ったのが、やはりパートであれ正規であれ、総人件費に企業が保険料を掛けていくというたがを今はめていただかないと、私はもう五年たったら非正規雇用がごろごろの時代が来ると本当に深刻に思っております。

 そこで、山崎参考人に二つの御質疑ですが、先ほど古屋委員の御質疑の中でほんの一瞬述べていただきました、総人件費に保険料率を掛けてはどうかということと、もう一つ、やはり企業の資本規模に応じて保険料率だって変えていいと私は思うんです。

 現実に今、中小企業者は本当に保険料の重みに泣いております。なぜなら、景気が悪い、全体の利潤も少ない。だけれども人を雇い続けたいというときに、非情な、情けのない中小企業者は、じゃ、あなたは国民保険ねとやって、あなたが入ろうが入るまいがいいよと言えるけれども、普通はやはり情の厚いものです。それから、みんな一生懸命やりくりしている。

 日本は中小企業が多く支えてくれている。であるならば、大企業で特に輸出中心、景気のいいところと、それから苦しい中小企業者は、もし総人件費に何%か掛けていくというのであれば、比率配分も変えていけると思うのです。そのあたり、御専門ではないとさっきちょっと言われましたが、もし参考人の御見識を御紹介いただければお願いいたします。

山崎参考人 総人件費を課税ベースにして事業主負担を求めるというのは、今の社会保険の考え方をかなり超えるものでございまして、大変なことだと思うのですが、その場合には、企業の社会的責任、そして今の御意見を踏まえますと、かつ企業の体力に応じてということだと思うんですが、雇用の空洞化を防ぐ上でもぜひやっていただきたいと思います。

 実は、労災保険は、学生アルバイトも含めて、不法就労者も含めて完全に適用でございます。ですから、厚生労働省になったわけですが、労働サイドでいえば既に労災保険を通して賃金の支払い総額はつかんでいるわけでございます。ですから、実現可能だというふうに思っております。

阿部委員 大変力強く、高山参考人もお話しになりましたように、私は団塊で、もうすぐ、逃げ切り世代と言われていますが、年金制度は、実は、私たちの世代じゃなくて、今二十代、三十代、これから私たちを支えてくれる世代のために信頼性と、そしてその人たちの現実に見合ったものでないと、砂上の楼閣となると思いますので、今の山崎参考人のような御発言を、例えば超党派のプロジェクトチームに来ていただいて、私たちが意見を受けて、政党はどう考えるかということでやれば、もっともっと国民の年金への信頼、若者へ、本当に、正直あなたが掛けて損はないよ、無年金にならないよと言えるような制度ができるように私は思います。なお山崎参考人には御活躍いただきたいと思います。

 それでは、積立金運用に関しまして米澤参考人にお伺いいたします。

 実は今度積立金運用が独法化されまして、果たしてどのようなチェックが働くか。何せお金の規模も兆の単位で、現在で百四十七兆、そしてすぐ三百三十兆とか、非常に大きなお金が、もしかしたらブラックボックスになるかもしれない。ブラックボックスとは言わなくても、先ほど古川委員の御質疑にありましたように、株式の運用というのは、これは受動的であれ能動的であれ、いろいろな株価の操作に使っちゃうかもしれないし、逆に魅力のない株式になるかもしれないという、非常に微妙なところです。私は、そうした運用に、果たして国会への報告や国会のチェックがどう働くかというところが欠落しているように思うのです。

 情報公開のこの折から、例えば、運用の報告書を出しましょうとか、あるいはチェック機関を設けましょうとありますが、あくまでも独立行政法人で、これまでのような国会の機能の中で、逐次、これはおかしいんじゃないか、あるいはどうであるかというフィードバックができないのが今度の独法化の一番の問題かと思いますが、そのあたりについての御意見をお願いいたします。

米澤参考人 私も、冒頭、独立行政法人になって大分期待が持てるんじゃないだろうかとお話ししたのは、確かに今までチェックもしておりましたが、ただし、その場合にはポートフォリオを作成する人たちが同時にチェックもするという、本来はおかしな話なのかもしれませんが、そういう意味ではチェックも一応していましたが、そういう仕組みになっていました。

 これが独立行政法人化になりますと、つくる主体、それは独立行政法人の方になりますが、監督官庁の中に評価委員会ができます。そこで、これは少なくとも完全に作成する人とチェックする人は独立になりますので、本来あり得べきチェックができるんじゃないかと思っております。

 それからもう一つは、チェックといいますが、実は、運用の評価に関してはこれほどはっきりあらわれるものはないわけです。その意味もありまして、皆さん方、いろいろな数字を持ってこられて、これだけ損しているとか、いや、直近はこれだけ得しているとかという話ができているんだろうと思いますが、このぐらい透明性があって評価が明らかなものはないと思いますので、そもそもチェックになじみやすい体質にあると思います。ただ、今は必ずしも問題なしとしませんでしたので、次回からはそのチェックのところが独立したところになりますので、私は随分期待が持てるんじゃないかと思います。

 ただ、それが詳細に関しては、まだ私も聞いておりませんし、まだ煮詰まっていないんじゃないかと思いますが、それをどううまく利用していくかが一つのポイントになるんじゃないかなと思っております。

阿部委員 この問題、積立金に関しましては、恐らく一九九八年ごろ、我が党の保坂展人が積立金のグリーンピアへの巨額の投入問題を、もう彼はそういうことを細かにやる人でしたから、追いかけて追いかけて、やり出して初めて明らかになってきた。私は、質問の趣旨は、国会への報告、やはり国民はこういうことを知る、もちろん情報公開でアクセスすればいいんだという考え方もありますが、やはり国会という場に明らかにされないとなかなかビジュアルにわからないということもあります。国会への報告をどうするかということは、この法案には触れられておりません。これは独立行政法人ですから仕組みの中にはないわけですが、私は課題と思っておりますので、今参考人にお聞きいたしました。

 今度、公文参考人に同じ積立金問題でお伺いいたします。

 積立金は、かつては財政投融資の中にぼこんと投げられて、焦げついちゃってもわからないかもしれない、あるいは、今後どんどんどんどん積んでいって、果たしてどんな運用をされるのか。今、米澤参考人は、オープンに報告もされるからというお話でございましたが、逆に、今度の年金改革の中で百年の計と言っているのは、この積立金を百年かけて取り崩すことを言って政府案は百年の計と言っているだけかなと思うくらい、この積立金問題というのは、本当にそんなに積み立ててやっていく必要があるのか、ブラックボックスになりはしないか、その懸念も含めて、運用も、国債と株式と証券と組み合わせてと言いますが、さまざまに、こんな巨額な積立金を持っている国はない、これから持ち続けようとする国もないわけです。

 もちろん参考人の御専門の分野ではないと思いますが、逆に、私も素人で、こんなお金、どうしてそこで勝手に運用されちゃうのと思うところの、その疑問も含めての御見解をちょっとお願いいたします。

公文参考人 一つは、おっしゃるとおり、年金積立金、郵便貯金、それから簡保を含めて、それこそ五十年間、一九五三年以来ですから、一貫して相当むちゃくちゃなお金の使い方をしてきたということは、もう今さら言うまでもないと思うんです。

 したがって、今御指摘になったように、私自身も、そういうことに対する全く反省もなしに、これから百年間も継続していくということですから、安心どころか、百年間、お金が、今までどおりあるいは今まで以上の巨額な積立金を使ったさまざまな運用が行われていくということで、やはり、これはもうできるだけ早い機会に、少なくともヨーロッパ並みに切りかえるべきだ。

 御承知のとおり、厚生年金と国民年金だけの積立金でも、先ほどお話がありました三千万人の年金総支給額、大体五年分から六年分とずうっと言われ続けてきていますけれども、御指摘になられましたように、そういう莫大な積立金を保有している国というのはほとんどないわけであって、例えば日本よりもはるかに進んだ年金制度を保有しているドイツ、フランスの場合で積立金はわずかに一カ月分、それからイギリスの場合で二カ月分しかないわけですから、その程度の積立金あるいは危険準備金があれば、公的な年金経営に全く支障がないということが国際的な常識として立証されていると思うんです。したがって、そういうやり方しさえしなければ、つまらないことに金を使わなくて済むし、当然、年金財政を基本に置いた年金の財政運営ができる、これがまず一つ大きなポイントだろうと思います。

 それからもう一点。これはぜひ議論していただく必要があるんじゃないかなと思うのは、法案に絡んでのことなんですが、これからの年金積立金の運営について、新しい基金が、つまり独立行政法人ができますが、その中で、その金の使い方、公明正大さを確保するための運用委員会の中身が僕は問題だと思っています。

 つまり、国民の代表をきちっと入れた民主的な運営とチェックができるような機関にするんだということをやはり法律上明記していただかないと、今までと同じように、何をやったって、どうも国会の場にも明らかにされないという形でうやむやにされるという心配があります。その点だけはひとつ強調しておきたいと思います。

阿部委員 あと、一、二分で恐縮ですが、高山参考人にお願いいたします。

 今回の保険料率のアップは二〇一七年度までノーチェックで上がり続ける、こんな空手形というのは、国民は、私は少なくとも嫌だと思っているのですが、二〇一七年度まで組み込まれた保険料率アップと、それから給付の、大体、料率と給付を両方約束するなんて普通できないんじゃないかと思いますが、このノーチェック、二〇一七年までの問題について最後に締めで一言お願いします。

高山参考人 政府の与党の先生方も、改革疲れだったということだと思う。こういう話は二度と繰り返したくない、少し休ませてくれという思いだと思います。

 ただ、そういう皆さんの思いとは別に、国民はそれでいいのかということを考えているわけです。これは、当然厳しい目で政治家を国民が見ているということになることを、私はぜひ胸の奥にしまっておいていただきたいというふうに思います。

 以上でございます。

阿部委員 ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後二時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後二時十分開議

衛藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、各案審査のため、参考人の方々から御意見を聴取いたします。

 午後、御出席の参考人は、日本経済団体連合会専務理事矢野弘典君、上智大学法学部教授堀勝洋君、日本労働組合総連合会会長笹森清君、全国コミュニティー・ユニオン連合会会長鴨桃代君、以上四名の方々であります。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は、委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず矢野参考人にお願いいたします。

矢野参考人 ただいま御紹介いただきました日本経済団体連合会の専務理事を務めております矢野でございます。

 厚生労働委員会の諸先生方の皆様には、常日ごろから日本経団連の活動に御理解と御支援を賜っておりますことを、この場をおかりしまして厚く御礼申し上げたいと存じます。また、本日は参考人として発言の機会を設けていただきましたことにつきましても、重ねて御礼申し上げます。

 本日は年金制度と高年齢者雇用の関係の法案に関しまして、企業、事業主の立場から発言をさせていただきたい、このように思っております。

 まず初めに申し上げたいことは、高齢化の進行によりまして、年金給付を初めとする社会保障費が毎年増大していることでございます。現役世代や企業の社会保障負担は限界に近づきつつあると思いますし、このままでは国や地方の財政そのものが破綻しかねない、このように考えます。したがって、経済活力を維持するために、負担に軸足を置いた改革を進めることが重要である、このように思っております。

 私どもは、年金制度だけではなく、医療制度や介護制度も含めた社会保障制度の一体的、抜本的な改革を実現いたしまして、潜在的国民負担率を将来にわたって五〇%以下に抑制できる、そうした持続可能な社会保障制度を目指すべきであると考えております。

 今回の年金制度改正におきましては、経済の活力を維持し、高齢社会でも持続可能な年金制度を構築して、国民の不信感、不安感を払拭することが最も重要であると思います。改革のあり方として、一つには、保険料率の増加をできる限り抑制して、現役世代の過重な負担を回避すること、二つには、既に年金を受給している人も含めまして給付の抑制を行って、世代間の給付と負担の格差を是正すること、三つには、基礎年金を消費税などの活用により税方式化する、この私どもの表現でございますが、三位一体の年金改革の実現を提言してまいった次第でございます。

 とりわけ保険料率につきましては、給付の抑制と基礎年金の税方式への移行を前提として、現行の年収の一三・五八%を極力上回らない水準で長期間固定すべきであり、その観点から、日本経団連といたしましては、一五%が限界であることを主張してまいりました。安易な年金保険料の引き上げは、大企業のみならず、とりわけ中小企業の収益を圧迫し、厳しい国際競争の中で我が国企業の競争力の低下を招くとともに、企業の雇用維持努力に悪影響を生じさせるものとなります。昨年十月に私どもが行いました厚生年金保険料の引き上げに対する企業の対応という調査によりますと、労働形態の転換や人件費調整を検討すると答えた企業が多数に上っております。

 また、給付につきましては、公的年金の役割から見まして、生活費のすべてをカバーする必要はなく、低所得者層には配慮しつつ、現行制度の給付水準から少なくとも二割程度抑制すべきであると考えております。

 現在のモデル年金水準は月二十三万三千円でございまして、これを二割抑制いたしますと、月十八万六千円となります。一方、厚生労働省の資料によりますと、高齢者世帯の平均消費支出は月二十四万四千円でございます。この中には交際費その他の支出といったものも含まれておりまして、これらを除いた消費支出を計算いたしますと、月十八万六千円というふうになることからいたしまして、高齢者の基本的な生活は賄えるものというふうに考えております。

 本来、社会保障制度は、自助努力では支えられないリスクを社会全体で支え合うためのものであると思います。自助努力でカバーできない部分をどう分かち合うかを議論し、必要最低限のセーフティーネットに抑制するべきであると考えます。

 私どもの主な主張は以上でございますが、現在当委員会にかかっております年金法案に関連いたしまして、大きく三点ほど考えを述べさせていただきたいと思います。

 大きな一点目は、政府案に対する私どもの評価と要請ないしは検討課題と考えているものでございます。三つあります。

 一つは、基礎年金の国庫負担割合の引き上げについてでございます。

 今回、二分の一へ引き上げる道筋がつけられましたことは大きな前進であると認識しておりますが、引き上げ完了の時期を平成二十一年よりも極力早くするべきであると考えます。基礎年金につきましては、消費税を活用して税方式化することを長期的な検討課題としていくべきであります。今回の二分の一化はそのステップと考えております。これによりまして、いわゆる空洞化の問題や第三号被保険者の問題も解決することができると思っております。

 小さな二つ目は、保険料固定方式の採用についてでございます。

 際限なく保険料が引き上がることに歯どめをかけたことは評価できると考えております。しかし、法案では平成二十九年まで保険料率を毎年引き上げていくということになっておりますが、経済社会状況等が悪化した場合には機械的に引き上がることのないように、少なくとも保険料の引き上げの実施を一時停止できる措置を講じておく必要がある、このように思います。

 小さな三つ目といたしましては、企業年金制度の改正についてでございます。

 法案に確定拠出年金制度の拠出限度額の引き上げや、ポータビリティーの拡充など改善策が盛り込まれたことは、公的年金を補完する私的年金の充実につながるものであります。今後も、特別法人税の撤廃などさらなる私的年金の支援措置をお願いいたしたいと存じます。

 民主党案につきましては、自営業者の所得捕捉についてインフラ整備が必要となることや、あるいは給付水準などに関する数字について不明な点がありまして、今の段階で的確な評価を行うことは難しいと考えております。さらに十分な検討、時間をかけてやることが必要なのではないか、このように思っております。

 次に、大きな二点目でございますが、社会保障制度の一体的改革の実行並びにこれらを検討する協議の場の設置でございます。税制の抜本改革の時期である平成十九年度までに、年金制度だけでなく、医療制度、介護保険制度等を含め、社会保障制度全体を一体的に改革すべきである、このように考えておりまして、これらの課題を協議するための国民に広く開かれた場を設けるべきであります。社会保障制度の一体的改革及び年金制度に対する私どもの要請を含めまして、広く協議することがぜひ必要だと考えております。

 大きな三点目でございますが、与野党で十分協議していただきまして、ただいま申し上げました事柄が、法律の附則や附帯決議などに盛り込まれるよう御検討いただきたいと存じます。これらの条件が整えば、政府案に共通認識を持つことができますので、その法案の処理に全力を挙げていただきたいと思う次第でございます。

 このような社会保障制度の一体的な改革が実現できれば、制度に対する国民の信頼を確保できるのではないかと考えます。

 次に、高年齢者雇用安定法の改正案について述べておきたいと思います。

 今国会で、六十五歳までの雇用延長の義務化等の改正法案が上程されております。もちろん、私どもも、高齢者雇用の重要性は十分に理解しております。現実に、全体の七割を超える企業が既に再雇用制度を持っておりまして、しかも、近い将来には、我が国の労働力人口が減少に転じ、企業としても高齢者の活用を拡大する必要に迫られる可能性が高いことから、法律によらずとも、おのずから雇用延長が進むと考えられるので、当初は、議論の段階では反対した次第であります。

 しかし、労働政策審議会におきまして、労使が真剣な議論をいたしまして、その結論を尊重して作成された今般の法案は、労使自治の原則に立って六十五歳までの継続雇用制度の導入を図るものであるというふうに理解しておりまして、かつ、中小企業等の実情を踏まえたものと考えますので、政府案を支持したいと考えております。

 なお、持続的な経営のためには、今後、経済情勢や企業の実情を十分考慮した法律等の運用をお願いいたします。

 以上をもちまして、意見の陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

衛藤委員長 どうもありがとうございました。

 次に、堀参考人にお願いいたします。

堀参考人 上智大学の堀でございます。よろしくお願いします。

 私の方からは、政府提出と、それから民主党提出の年金制度改正法案について意見を述べさせていただきます。お手元に私の発表内容が配付してありますので、参照していただきたいというふうに思います。

 最初は、政府提出の年金制度改正案についての意見であります。

 結論としては、この法案に賛成でありまして、早期に成立していただきたいというふうに思っております。

 賛成する理由でございますが、第一点は、超高齢社会への軟着陸ということで、従来五年ごとに年金制度の危機を訴えて改正を促す、そういう手法をとっておりましたけれども、これが国民の年金不安を駆り立てる、そういうことがありました。今回の改正案は、そういったことをなくして、年金制度を超高齢社会に軟着陸させる、そういうものであると評価をしております。

 第二点は、給付と負担の適正化による制度の維持でございます。今回の改正案は、自動的に保険料の引き上げと給付水準の引き下げを行うということによって、年金制度を将来とも維持可能にすると評価できます。

 それから第三点目ですが、年金不安の解消あるいは緩和ということであります。年金水準、将来の年金水準の下限と、それから保険料水準、保険料負担の上限を明示したということは、今後どれだけ年金水準が引き下げられるか、あるいは保険料水準が引き上げられるか、そういった国民の不安を緩和する、そういった意味で評価できると思います。

 なお、給付水準の下限はおおむね妥当であるというふうに考えておりますけれども、保険料水準の上限については、これから超高齢化社会に向かって果たして大丈夫か、そういう心配をしております。

 その他、さまざまな改善が行われまして、基礎年金国庫負担率の引き上げの道筋をつけたといったこと、それから離婚時の年金分割を認めたと、そういったこと、さまざまありますけれども、そういった点も評価できると思います。

 ただし、これから述べます二点については、今後ぜひとも実現をしていただきたいと思います。

 第一点は、国庫負担率の確実な引き上げでありまして、国庫負担率を引き上げなければ、将来の保険料負担は負担できなくなるほど高くなる、そういうことで制度維持が不可能になる、そういうことからお願いしたいと思います。

 第二点は、短時間労働者への厚生年金の適用拡大であります。これは、短時間労働者の年金を改善するというだけではなくて、雇用の多様化が進んでおりまして、パートということで厚生年金から除外されるとなると、厚生年金を支える被保険者が減る、そうすると厚生年金制度が維持できなくなる、そういった観点からぜひとも実現していただきたいというふうに思います。

 次に、民主党提出の年金制度改正案についての意見を述べます。

 結論としては、民主党提案の年金制度改正案には多くの問題点がありまして、今後時間をかけて慎重に検討する必要があるんではないかというふうに思います。

 これから八点にわたって、民主党提案の改正案の問題点を指摘したいと思います。

 第一点は、大枠だけの改正案であります。

 年金制度というのは、給付水準、負担水準、年金財政、あるいは具体的な制度内容とか、あるいは移行措置の具体的なあり方を検討しなければ、それが公平で効果的な制度であるか、あるいは実現可能な制度であるかということがわからないわけです。制度全体を検討することなく、基本理念、基本方針だけを決めるのでは、その実現可能性等が判断できないということであります。むしろ、大枠を先決めするというのは、その後の抜本改革の議論の制約となるというふうに考えております。

 二点目が、一元化の問題であります。

 被用者年金制度の一元化には賛成でありますが、自営業者を被用者と同じ制度にするには多くの問題があります。その一つは、例えばの話ですが、所得を過少に申告した自営業者は、保険料負担が少なくなるというだけではなくて、最低保障年金が支給されることによって、被用者と比べて非常に不公平になります。

 三点目が、モデル年金と最低保障年金の関係であります。

 最低保障年金がどの年金額階層に支給されるかはわかりません。そこで、その仮定として二つを置く。一つは、モデル年金受給者に満額の最低保障年金を支給する、そういった案を仮定してみます。そうすると、そういう制度は現在の基礎年金とほぼ同じになる。もちろん、財源が変わるとかあるいは高年金額階層に支給されぬ、そういった違いはありますけれども、現在の基礎年金と余り変わらなくなる。それから、最低保障という意味がなくなると思います。それから、この場合は、財源とされる年金目的消費税というものが非常に負担が大きくなるであろうというふうに思います。

 次に、二つ目の仮定として、モデル年金受給者に全く最低保障年金が支給されない、そういった場合であります。その場合には、モデル年金受給者には国庫負担が全く行かなくなりますので、保険料率一三・五八%、給付水準五〇%の維持というのは、これは不可能になります。それだけではなくて、モデル年金の代替率が五〇%であるとすると、高額の年金受給者の代替率も五〇%となって、これは高額年金受給者に非常に有利になる、そういうことであります。

 四点目が、最低保障年金の問題であります。

 生活保護の場合は収入とか資産を使い切らなければ受けられないわけですが、最低保障年金は、高齢者等というだけで、収入、資産が幾らあっても支給される、そういうことであれば、非常に不公平な制度となります。それだけではなくて、保険料未納者等にも最低保障年金が支給されるということであれば、これまた不公平な制度となります。

 五番目としては、夫婦間の年金分割の問題であります。

 夫婦の同意も得ず国が一律に年金を分割するのは、民法の夫婦財産制や憲法の……(発言する者あり)財産制の中に別産制があります。夫婦財産制や憲法の財産権の問題が出てくるのではないかというふうに思います。

 それから六番目が、年金目的消費税であります。

 消費税を年金費用だけに充てるのは、私は問題ではないかと思っております。消費税は医療とか介護とか福祉等にも充てられるべきでありますし、現在の財政の状況を見ると、財政再建の主要な財源にすべきではないかというふうに思っています。それから、企業負担の保険料が政府案よりも減って、その分消費者の負担がふえる、そういった問題もあります。

 それから、企業負担の保険料が雇用とか景気に悪影響を与える、そういう問題が指摘されておりますけれども、この問題についてはいろいろな疑問があるということであります。

 七番目が、過去期間分の年金の財源ということでありますが、民主党の解説を見ますと、年金目的消費税の使途としてこういうふうに書いてあります。これまで保険料を支払ってきた部分に対応する年金支給の不足分に充てる、これはどういう意味か私はわかりません。わからないというのは、一つは、年金目的消費税をどのような考えあるいは原則で年金財源とするのかが明確でないということ、それから、不足分について無原則的に投入するのか、そういった問題があるのではないかと思います。

 それから二つ目ですけれども、これが仮に過去期間分の年金費用に充てるということを意味するなら、これまた意味がよくわかりません。この問題については、後で御質問があったらまた詳しく答えたいと思います。

 最後の八番目ですが、五年間の検討期間を置くということがあります。厚生年金の財政、年金財政は既に赤字基調となっておりまして、給付水準の引き下げ、あるいは保険料負担を引き上げないと、さらに年金財政を悪化するということになります。年金目的消費税の導入によって財源手当てをする、そういうことにしても、どういう原則で手当てをするのか、あるいは年金目的消費税と、それから積立金の取り崩しと、どういう形でやるのかわからない、こういった問題があるのではないかというふうに思います。

 以上が私の意見であります。(拍手)

衛藤委員長 どうもありがとうございました。

 次に、笹森参考人にお願いいたします。

笹森参考人 連合会長の笹森です。

 私ども連合の年金制度の抜本改革案につきましては、委員の皆さん方のお手元にお配りをさせていただいていると思いますが、この冊子に書いてあります。これは連合の考え方と政府法案の問題点という二つに絞ってありますが、これを作成した時点で、大変残念だったんですが、まだ民主党案ができておりませんでしたので、比較の中に入っておりません。考え方としては後ほどまたいろいろ申し述べたいと思います。

 私は、今、日本の社会の中で二極分化が大変進んでいる中で、そういった場合に、底辺の人たちがどういう状況に置かれているか、それを今どのように安定的な生活を保障してあげられるのかという観点の中から、一番待ち望んでいるのが、年金制度、これが生活に与える影響、このことを早く解消してほしい、安心して暮らせる日本の社会をつくってほしいということだと思うんですが、その年金制度、今国会の最大の焦点だったと思いますけれども、ようやく政府案と民主党案が示されまして、本格論議のスタートが切られたのかな、こういうふうに思っておりましたけれども、国会論議が大変混乱をしておったということについては、まことに残念なことだというふうに思っております。

 今、私どもの立場から見れば、政府、民主党、いずれの案にも課題があります。そして、制度体系についての考え方も大きく違っているのではないかというふうに受けとめておりまして、そうなると、両法案の調整というのは、これは可能かなというのは、なかなかそうは思えないというふうに思っております。したがって、私どもは、働く者の側の立場、そして圧倒的多数の国民の立場、こういった立場から、抜本改革に向けての連合案を提起させていただいたということについてぜひ御理解をいただいておきたいと思います。

 その上で、この国会を通じて、国民にはやっと年金制度の問題点が見え始めてきたのではないかという段階だというふうに思いますが、今のまま推移をすると、年金財政の破綻がさらに進むことになります。年金に対する国民の不安、不信がさらにまた強まるということになりかねないというふうに思っておりまして、冒頭申し上げたように、国民が今待ち望んでいるということをぜひ御理解をいただいたならば、政府も与野党もともにこの事態を深刻に受けとめていただいて、いろいろ難しい問題はあるのだというふうには思いますけれども、それぞれの都合もあるんだろうというふうには思いますが、国民のための真の抜本改革、これをぜひなし遂げていただきたいというふうに思います。

 なぜならば、今一番大切なのは、年金不信と空洞化の悪循環を解消することではないかというふうに思っております。今の政府案、これを見ますと、それが広がってしまうということばかりをやり、またこのことをこの先もやろうとしているというふうにしかうかがえない部分があります。言ってみれば、国民のための年金が国民を苦しめるための年金になってしまったら、何のための社会保障制度かというふうに私は思っております。

 中身を言いますと、政府は負担率を一八・三%にし、給付率を五〇%にすると言っておられますけれども、連合は、基礎年金を税方式にすることによって、一五%の負担率で現行の六〇%給付を保障できるというふうに考えております。

 政府は、今回の案、何も国民を困らせようと思い政府案を考えたわけではないと思うんですが、特に低所得者にとってみると、こういう内容でいったならば年金加入をやめざるを得ないと思わせるような政府案になっておりますので、いま一度ぜひ考え直していただければというふうに思っております。

 その理由について申し上げます。

 一つは、年金不信と空洞化の悪循環の問題です。

 今直面をしておりますのは、単なる財政危機だけではありません。保険料の納付率の急速な悪化、いわゆる空洞化問題です。若者の未加入だとか、いろいろなことが言われていますけれども、このまま推移をしていきますと、給付減、負担増が進んでいけば、ますます不信感が募り、空洞化も進むという、先ほどの悪循環ということになりますので、そのことがどういうことにつながるかというと、雇用の不安定化につながるということになります。それこそが最大の課題だと、働く側の立場からは申し上げておきます。

 そして、そのことが、不安定雇用の急増と年金制度に、どういう関係になるかといえば、今、不安定雇用者の増加という、いわゆる正社員の減少は、ここから先そのことがふえればふえるだけ、雇用労働者でありながら国民年金だけという人がふえて、しかも国民年金からも落ちこぼれてしまうという人がふえていく。これこそ年金制度そのものがもう成り立たないということを実証しているのではないかと思います。そして、その空洞化のしわ寄せは我々サラリーマンにばかり与えられてしまうということであります。

 中身を一々申し上げなくても、先生方は既に御承知かと思いますけれども、国民年金の空洞化は、サラリーマンが積み立てている厚生年金の中からそちらの方に充当されるという内容になっておりまして、ツケ回しが構造的に組み込まれた制度ではないかというふうに思います。言ってみれば、対症療法的な見直しがされてきた結果、民間労働者や公務員にその部分がのしかかっているというのが現状だろうと思います。

 そういう意味で、年金制度の抜本改革の必要性でありますが、一番の核心は、国民年金、基礎年金の問題の土台をどう立て直さなければならないか、そのことをしないと問題は一切解決をしません。今回の年金改革でいろいろな数字が飛び交っておりますけれども、その多くは厚生年金のことで、その中で政府は一番肝心な基礎年金のことについて触れようとしておられません。

 今やらなければならないのは、何よりもまず年金不信の大もととなっている空洞化を解消するための土台の立て直し、すなわち抜本的な改革が必要だということです。そのこと自体は十年前からも五年前からも言われてきております。ところが、実際にやったことといえば負担と給付の当面の数字合わせで終わり、改革はされてこなかったというのが現実ではないでしょうか。

 そして今回、今度こそと期待をかけられておりましたのに、国民年金の国庫負担二分の一という約束もほごにされ、さらに年金部会の報告で入っておりましたパート労働者への適用拡大も見送られたということであります。これで果たして年金改革という名に値をするのかどうか。

 その上で、自動調整という部分が今回組み込まれました。これで年金の負担と給付の見直し、これまでは五年ごとに国会審議などを通じて行われてきたわけですが、今回の法案は、これが政府案の最大の特徴だと私は思っておりますけれども、一たんこの法案が通れば、この先何の審議もなしに自動的に保険料は上がり続けて給付は下がり続けるという、とんでもない改悪が織り込まれている内容なのではないかというふうに思っております。

 そういう上で、今やっていただかなければならないこと、幾つか問題指摘ができますが、モデル年金をまず明確にこうだということをごまかさないで言っていただきたい。そして、上限固定、五〇%を保証しておりますが、今の内容でいけば、これはとてもそのことが保証できないという内容になっていること、これを明確にこういう内容だというふうに言っていただきたいということ。最終的に抜本改革をやる場合に、私は、連合の方針の中で書いてあります基礎年金を税方式にするということが、今の最終的な一元化の問題、空洞化の解消、そして三号被扶養者問題、これを自然自動的に解消でき得る最良の方策ではないかというふうに思っております。

 その上で、最後に一言付言をいたしますと、今の社会保障制度、そして税制も含めて、私は一体的な抜本改革が急務の内容だというふうに思っております。なぜならば、この国会が終わり、来年、再来年に向けまして、引き続き介護、医療の改革が予定をされているというふうに聞いておりますが、早急に年金、医療、介護等、社会保障制度全体について、税、保険料などの負担と給付のあり方を含めた一体的な見直しをやっていただきたい。この実現こそが、将来に向けての個人、企業の安心、安定、そして国民が安心して暮らせる社会の基盤となり得るというふうに私は思っております。

 政府は、即時に社会保障全体の見直しに着手をし、その中で早急に年金制度の抜本改革の実現を図っていただければというふうに冒頭申し上げておきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

衛藤委員長 どうもありがとうございました。

 次に、鴨参考人にお願いいたします。

鴨参考人 こういう場は初めてですので、とても緊張しております。

 私は、全国コミュニティー・ユニオン連合会といいまして、雇用形態にかかわらず、パート、それから派遣の方たち、契約社員で働いている方、そういった方たちが一緒に組合活動をしているところです。日々、多くはそういったいわゆる非正社員と言われる方の相談を受けております。

 そういった中で、きょう、年金のことについてということで私の方から言いたいのはかなり狭い範囲になると思いますけれども、今回、いわゆるパートの年金の適用拡大ということが出されましたが、それが見送りになったということで、このことについて、私はかなり大きな問題ではないかというふうに考えております。

 パート労働者は今、全雇用者の中でも三〇%を超えました。そして、女性労働者でいえば、もう二人に一人以上がそういった働き方の労働者になってきております。そういった中で、この問題は、これからの労働者の働き方という意味でもとても大きな位置を占めているんではないかというふうに思っているわけです。

 私自身は、今回政府が出しましたパート労働者への適用拡大という方向については、ぜひこれを進めてほしいというふうに思いました。しかし、今の現実のパート労働者の方たち、その方たちの働いている実態からいったら、これでいいのかという問題も大きくあるわけです。例えば、この見送りの中で企業側の反対がありましたということと同じように、いわゆるパート労働者の方の反対もあったという声があります。確かにあったというふうに私も思います。私の周りのパートで働いている方たちも、この年金の適用拡大について皆さん、本当によかった、私たちの年金ができるわというふうに言った方はいないです。なぜそうなのでしょうか。それはやはり今のパート労働者の賃金が余りにも低いんですよ。平均時給八百九十円というふうに言われておりますけれども、この八百九十円ではフルタイムで年間二千時間働いたとしても年収二百万に届かないんです。

 そういった中で、私がきょう出しました資料に、いわゆる「ダブルジョブという働き方」という資料を出しました。この資料は、私も事務局として入っております均等待遇アクション二〇〇三が昨年の十月から十二月にかけてアンケートをとった資料です。このダブルジョブの働き方というのは、皆さんそれこそ週に四十時間以上も働いている、それこそ長い方は五十時間も働いている方もいるわけです。しかし、この表を見てもらえばわかりますとおり、週に五十時間も働いたとしても年収の上限が二百五十万になるかならないかという状況があるわけです。そういった意味で、憲法二十五条では、国民は健康で文化的な生活を営む権利があるというふうに規定しておりますけれども、今のパート労働者の賃金というのは、憲法二十五条にも抵触するような、生存権をも脅かすような、そういった賃金というふうに言わざるを得ないのではないかというふうに思うのです。こういった中で、パート労働者の方たちが、この適用拡大について、やはり自分の今の賃金から、この低い賃金の中から取られてしまうという感覚からどうしても抜け出ることができないということなのです。

 しかも、本当に、企業側は人件費コストが安いためにパートを使うというふうに言っております。パートの側は損得勘定で反対をしたというふうな言い方になっておりますけれども、同じレベルの反対では決してないというふうに言いたいんです。損得勘定で反対せざるを得ないほどの低賃金に置かれている、そして、低賃金の中で教育費を払ったりとか家のローンを払ったりとか、そういった家計を担っているということなんです。しかも、その低賃金の中で払った年金が、将来的に自分が老後を安心して暮らせるだけの年金なのかというところでいうと、そのことがすごく定かではない、見えない。そういったところで損得勘定にならざるを得ないというふうに言わざるを得ません。

 ただし、このことについて、現状の中で、そのようにパート労働者の方たちはなかなか心から喜びはしませんけれども、だからといって、ではパート労働者は年金がなくていいのかということについては、私どもの調査の中でも、皆さん、年金制度についてはこれからもあってほしいというふうに考えております。自分で厚生年金に入りたい、自立したいという思いも、年収が百三十万未満の方たちの中でも過半数という形であらわれてきているわけです。制度としては、やはり自分の将来の安定という意味で、年金の制度を望んでいるわけです。しかし、現状のこの低賃金の中でなかなか前に進めないというのが、損得勘定で考えざるを得ないというところの実態だというふうに思います。

 そういった意味では、この年金の制度をパートに適用拡大ということでいうならば、均等待遇とセットで、賃金を上げるということとセットでぜひ進めていってほしいというふうに考えているところです。

 それともう一つ、今回の提案の中で、適用条件が週二十時間以上という基準が出されました。今の四分の三に比べて、週二十時間以上ということで適用が拡大されるわけです。しかし今、企業の側が、この間の反対の理由の中でも、パートに人件費はかけられないという中で、この週二十時間というところがこのまま適用されたときに、現実的には、パートで働く方の労働時間は今かなりフルタイムパートと短時間パートに二極化されておりますけれども、ますますこの短時間パート、いわゆる細切れパートの方たちがふえていかざるを得ないのではないかというふうに思います。

 この人たちは、結局、ではこれからどうやって生活をしていくのかということになれば、また先ほどの話になりますけれども、ダブルジョブとして幾つも幾つも仕事を抱えて、過労死するくらいの時間を働いていかざるを得ないというのが現状です。私は、こういった方たちのことを考えたときに、週二十時間以上というだけではなくて、一つのところでは確かに週二十時間いかなくても、かけ持ちでダブルジョブで働いていったときに、その時間が合算して二十時間以上になる、そういった労働者に対してどういう手だてをするのかというところも、この年金の、パートに対する年金の適用ということではぜひ考えていただきたいというふうに思っております。

 最後に、今パートで働いている労働者、非正社員はますますふえております。そして、その年齢層も、いわゆる中高年ではなくて、いわゆる若年層の方たち、若い方たちが、高校を出ました大学を出ましたといったときに、正社員としての職がない中で、卒業後すぐにパートなり派遣社員なりといった形で働かざるを得ないのが現状です。こういった方たちが今急激にふえております。こういった方がこれから一生こういった働き方をせざるを得ないというのが今の現実として出てきているのではないかというふうに私は思います。

 ぜひ、そういった意味で、若い方たちがこれから働くに当たって、自分たちが安定して働く、そして仕事にも夢を持って働く、そして将来のことも考えられるような働き方、そういったところで年金制度をぜひ考えていただきたいというふうに切に思います。ただ単なる制度の支え手をふやさなければいけないということではなくて、制度の支え手をふやすものが、実際働いている生身の人間なのです。その生身の人間が本当に職場の中で生き生きとして働ける、そういった年金制度にぜひしていただきたいというふうに思います。

 そして、見直しの、これ以降五年間ということが言われておりますけれども、五年もたってしまいましたら、もうどうなってしまうのか、本当に今のこの急速の流れの中ではとても見えません。ぜひ、せめて三年で見直しをする、三年でということでお願いしたいというふうに思います。

 まとまりませんが、以上です。(拍手)

衛藤委員長 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北川知克君。

北川委員 私は、自由民主党の北川知克でございます。

 参考人の方々には、きょうはお忙しい中、御出席を賜り、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。重ねて、連合の笹森会長には、先日の火曜日の集中審議の参考人に引き続きの御出席であります。本当にありがとうございます。

 それでは、私の方からは、先ほど来から各参考人の方々からちょうだいをいたしました意見に基づきまして、そして、今回の年金改革法案等々につきましての基本的な問題と、本委員会に提出をされております政府案並びに民主党案に沿いまして、参考人の方々に御意見をちょうだいできればと思っております。

 私は、二月二十七日の当委員会、坂口厚生労働大臣の所信に関しまして質問をさせていただきました。冒頭の質問でありましたので、年金法案も提出をされておりませんけれども、今後の年金や介護、医療等々に対する全般的な質問の中で、今回の政府案は、一つの数値を示しながら、国民の皆様方に安心感を与え、将来のよりよき年金の制度へ向けての第一歩であるという認識を持っているという質問をさせていただきました。

 この二カ月の間、政府の年金制度改革法案が提出をされ、さらに民主党案も提出をされてきたわけであります。当委員会におきましては、この両案のどちらがよりよき法案であるか等々をしっかり審議することが委員会の重要な使命であると私は思っております。その中で、厚生労働行政に関するさまざまな事件等々が起きております。速やかにこのような問題を改めながら、いま一度厚生労働行政に関する信頼を取り戻すことが不可欠である。そして、年金の問題に関しては、一部の中でむだ遣いがあった、こういうことも改めなければならないと思っております。

 こういう点を踏まえながら、今、急激な少子高齢化のこの人口形態の中での年金制度があります。そしてもう一点は、給付や負担の中で、国民の皆様方にやはり不公平感があるのではないかなと思っております。こういう不公平感がある中、そして今、年金制度に関する論議が深まる中において、一元化の論議というものが出てきております。

 私は、一元化という言葉を聞いたときに、なるほど、公平だな、わかりやすいなという思いを持ちました。しかし、よりよく考えてみると、今の我が国の年金制度、これは、一つは、賦課方式をとりながら、サラリーマンの方々にはやはり引退年齢があり、引退すると全く給料がなくなる方もたくさんおられるわけであります。そして、一階、二階の給付で老後生活を支えられるようにしているという制度であろうと思っております。

 片や、一号被保険者と言われる自営業者の方々は、高齢になった後も働き続けることによって収入が得やすいという状況があるわけでありまして、片方ではまた公務員の方々の共済年金等々もあるわけであります。

 日本の社会の中で、こういう社会状況の中で、所得の捕捉をできる分野、そして定額の保険料という、さまざまな職業の状況に応じて制度が組み立てられているということであります。こういうものを捨てた中で一元化というものをしていったときに、また新たな不公平感が出るのではないかなという思いをいたしております。

 今回ではどうかわかりませんけれども、今後、この一元化に対する論議が出てくる中において、果たしてこの一元化すべてが公平化につながっていくのかどうかという点について論議もしていかなければならないと思っております。

 この点につきまして、まず堀参考人に、年金制度の一元化につきまして、先ほど民主党案に対する先生の意見の中にもありましたけれども、この一元化に対する問題点、課題もあろうと思います。この点につきまして、御意見をいま一度賜れればありがたいと思います。

    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕

堀参考人 一元化の問題に関しましては、先ほども言いましたように、サラリーマンの制度の一元化には賛成いたします。しかしながら、自営業者とサラリーマンの統合には、一元化には、問題がたくさんあるというふうに思っておるわけです。

 その問題の一部は先ほど申し上げました。最大の課題は所得把握の問題でございまして、その問題が解決できないと、さまざまな問題が出るのではないか。

 従来から、我が国の社会保障制度は、自営業者とサラリーマンは制度が分かれております。それは、所得把握の問題で、サラリーマンの側から、自営業者とは連帯、一緒にできない、そういう意味があったのではないかと思います。

 そのほかに、一元化した場合には、自営業者の保険料負担が高くなる。サラリーマンの場合には企業が半分負担しているわけですが、その負担が多くなるというような問題。それから、高所得の自営業者の負担というものは、保険料率が一三・五八ということで高くなりますので、そういった問題もあるわけです。

 そういうことで、自営業者とサラリーマンの制度の一元化は難しいと思いますが、私は、日本の社会保障制度の最大の問題というのは、その二つの制度に分かれていることにあると思います。自営業者の所得把握ができれば、日本の社会保障制度の問題の多くが解決できるというふうに考えております。したがって、その所得把握の問題をぜひとも今後解決していっていただきたいというふうに思っております。

北川委員 ありがとうございます。

 引き続きまして、次に、堀参考人にお伺いをいたします。

 現行の公的年金の財政方式については、積立金を保有しておりますけれども、世代間扶養という賦課方式をこれまた基本としております。諸外国の公的年金制度も賦課方式を基本としておると思いますけれども、これは、世代と世代の助け合い、年金制度を通じた若い世代からの仕送り、こういう点も言えるのではないかなと思っております。

 こういう点から見れば、高齢者を大切にし、助け合いをとうとぶ日本の風土にも合ったものと思われますけれども、この点を踏まえながら、賦課方式をとる以上、年金の支払いはすべて積立金で賄うのではなく、現役世代の保険料により賄われていくとしているはずであろうと思います。

 賦課方式をとりながら、一方では過去の債務について問題視をする議論もありますけれども、このような点につきまして、どのようにお考えでありましょうか、お教えをいただければと思います。

堀参考人 過去期間分の年金について、税で賄うべきである、こういう議論がございます。これはバランスシート論という議論で、厚生年金の過去期間分の給付債務四百五十兆円を債務超過であるとして、税でそれを償却すべきである、そういう議論に影響されたのではないかというふうに思いますが、これは積み立て方式の考えでありまして、我が国の年金制度は賦課方式を基本としておりまして、この考えは私は間違いであるというふうに思っております。

 賦課方式というのは、毎年の年金給付費を毎年の保険料あるいは税で賄う方式でありまして、現実に支払う年金の費用はすべて過去期間分であります。二〇〇一年度の年金費用というのは三十八兆円でありますが、この三十八兆円はすべて過去期間分であります。三十八兆円を仮に年金目的消費税で賄うとすれば、消費税率をかなり大きく上げる必要があるのではないか。

 したがって、この考え方としては私は間違っている、積み立て方式の考えであるというふうに思っております。

北川委員 今、賦課方式、積み立て方式のお話もお伺いをいたしました。

 公的年金制度につきましては、現役時代にこつこつと保険料を納めまして、これを財源として老後世代を支え、老後になってから保険料の納付実績に応じて年金を受給するという社会保険方式をとっておりますけれども、今回提出をされております民主党案におきましては、最低保障年金を税財源によるとしておられます。

 同じく税財源で賄われる生活保護の部分とどう区分をしていくのか、そして、保険料を払わなくても年金がもらえるとなると、これは若い世代の方々が社会的責任を果たしていくというような意識が希薄になっていくのではないかなという思いもいたすのでありますけれども、この点について、堀参考人の御意見をちょうだいできればと思います。

堀参考人 先ほど言いましたように、生活保護というのは、収入、資産をすべて使い尽くさなければ受給できません。これが、最低保障年金が仮にたくさんの収入、資産がある人たちに対して支給されるものとすれば、これは非常に大きな問題であろうというふうに考えております。

 それから、社会保険方式と税方式の違いでありますが、私は、社会保険方式がさまざまなメリットを持つと思っております。したがって、我が国の年金制度は社会保険方式を維持すべきではないかと思っています。

 税方式というのは、これは老後に向けて、老後に備えて保険料を納めることなく、六十五歳なら六十五歳で国から年金を支給する、こういう制度だ、こういうふうに思います。果たして、こういう制度が自助努力を柱とする我が国の制度に合っているのかどうか、そういう点が一つ問題ではないかというふうに考えております。

 それから、我が国では社会保険方式を中心としておりまして、税方式はそれを補完する立場であります。税というのは、自分が拠出した保険料の見返りではないために、必ずその水準は低くなりますし、所得制限がつけられます。

 例えば、拠出制の基礎年金の額は月六万六千円、所得制限はありませんけれども、老齢福祉年金、これは全額国庫負担の年金でありますが、約三万三千円か四千円ぐらい、しかも所得制限がある、こういう制度であります。もう一つ例を挙げますと、母子家庭に対する年金でありますが、遺族基礎年金の額は八万四、五千円だと思います。所得制限はありません。母子家庭に対する全額公費負担による児童扶養手当は、月額四万円です、四万数千円。それから、所得制限がある。

 こういうふうに、社会保険方式は、その保険料を払った見返りにもらう、権利としてもらうという制度であるために、給付水準が高くされ、かつ所得制限がない、そういうメリットがありますので、私は、税方式ではなく社会保険方式を維持すべきだというふうに考えております。

北川委員 ありがとうございます。

 それでは次に、笹森参考人にお伺いをいたしたいと存じます。

 笹森会長には、一月十六日の我が党の第七十回定期大会に御出席をいただき、その折に、政労使が一体となって、一致協力して安心と信頼の年金制度を確立していこうという趣旨のごあいさつをちょうだいいたしたと存じます。この点について敬意を表するものであります。

 先ほど御意見の中で、このパンフレット、我が党というか政府案に対しての連合とのお話を載せていただいているということでありまして、民主党案がまだ出ていない段階ということでありましたけれども、この点につきまして、今回民主党案が出てまいりました。その民主党案の中における給付と負担の将来像について、きちんとした数字で示されておらない、しかも、その中におきましても、移行措置もはっきりしていないということであります。これで国民に安心を与える年金制度の改革案になるのかどうか、どのようにお考えであるか、お聞かせをいただければと思います。

笹森参考人 初めに、自民党大会出席の件、恐縮でございますが、連合の政治方針は、ナショナルセンターの役割として、働く者、国民の政策を実現すること、これが最大の役割になっておりまして、その中でいかなる政権とも政策を通じて是々非々で対応するという方針になっております。政権側であろうがなかろうが、我々の政策を要請をし、その実現を求める、そのための大会出席、いろいろな意義があったと思いますが、そういう意味で受けとめていただければと思います。

 その上で、今の北川議員の御質問でありますが、どちらに近いかということについては、これはなかなか申し上げづらいものがあります。言ってみれば、似て非なるもの、似てはいるけれども似ても似つかぬもの、そして、似てはいるけれども内容から見れば同床異夢なもの、いろいろなものがありますね。

 私は、この問題について、政府案と民主党案の評価については同一平面上で扱うものではないというふうに思っております。

 政権を持っている側、いない側、これは国民に対する提示の仕方がそれぞれ違います。どちらかというと、数字が入っていないということについて言及をされましたけれども、政権側であれば、明確な数字を示し、そしてそのことが法案上どういうふうに実行されていくのかということを出すわけでありますが、政権を持っていない側からすれば、基本的な理念の骨格をまず示す、その上で、行き先についての道筋をどうつけるかということを示す、そういう形になっているんじゃないかというふうに思いますので、私は、形的なものと内容的なもの、それぞれ、政府案と民主党案、近いところもあれば遠いところもあるというふうに感じております。

北川委員 ありがとうございます。

 もう一点。連合が出されております案と民主党案の違いの中で、所得比例年金の支給額等に応じて減額するという点、最低保障年金でありますけれども、この点で連合案と違いがあるということが書かれておりますけれども、この点について御説明をいただければありがたいのでございますが。

笹森参考人 この部分につきましては、それぞれの政党と今すり合わせをさせていただいております。民主党とも今現在調整中でありますが、違いがあるものの、税を財源とする一階と報酬比例による二階という二階建てとしている点で、連合と考えは基本的には同じだというのが連合の認識であります。

北川委員 税のところで基本的に一致だということであります。ありがとうございました。

 次に、矢野参考人にお伺いをいたしたいと存じます。

 今回、日本経団連から経済界を代表して当委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございます。経団連におきましても、年金制度改革について真摯に議論され、これまでもいろいろ御提案をいただいてきた点に、まずもって敬意を表したいと存じます。

 今回の年金制度改革法案におきましては、政府・与党で十分調整を行いまして、厚生年金の保険料引き上げについては、年金受給者にとっての給付水準、そしてその一定水準を確保しなければならないという中におきまして、先ほど矢野参考人の方から、一五%が労使のぎりぎりの線だというお話もありました。

 今回、将来に一八・三%という数値を政府は一応示しておりますけれども、この点につきまして、将来三分の一から二分の一への国庫負担の引き上げという道筋は今回政府案の方でつけておりますけれども、このような点につきまして、いま一度矢野参考人の方から御意見を賜れればと思います。

矢野参考人 二分の一化の道筋が今度の案の中に具体化されたというのは、大きな進歩であると思っております。

 ただ、法案の中にも書かれておりましたとおり、五年でというのではなくて、五年よりもっと短い期間でやることも可能でありますので、ぜひそういう方向で具体的な検討を進めていただくのがよいのではないかと思います。

 税方式化が進むことによって保険料率にも影響してまいりますので、二分の一でずっとストップであれば保険料の方に頼らなきゃならないとは思いますが、私どもの考えでは、もっと国庫負担の分を消費税を活用してふやすことを考えておりますので、それによって保険料率というのは変わってくる可能性がある。また、給付の方につきましても同じでございまして、状況の変化、これからがどうなっていくのかということも踏まえて、少し時間をかけて現実を見ていくことによって、またそれが保険料に影響してくるということもあると思います。

 いずれにいたしましても、将来の経済、社会状況というのは変わっていくわけでございまして、これは、例えば経済状況一つ取り上げてみましても、ことしは何とか頑張るだろうけれども、来年本当に大丈夫だと言える人はそんなにたくさんいないと思うんですね。日本ほどの大きな経済は世界と一緒に動いておりますし、社会状況を見ましても、人口の問題とかいろいろな問題、変わることがたくさんあるわけでありますから、そういう状況の変化に対応できるような柔軟性を法律の中に持たせるということも大事なのではないか。そういう点についての御検討を賜れば大変ありがたい、このように思っております。

北川委員 ありがとうございます。

 先ほど矢野参考人の方からもお話がありました、このような点を踏まえながら、年金だけではなく、医療保険そして介護等々含めた社会保障全般の負担のあり方について議論が必要であるというお話がありましたけれども、将来の、具体的にどのような期間等々をイメージされておられるのか、この点も一点お聞かせを願えればと思います。

矢野参考人 税制改革が平成十九年度というふうにうたわれておりますので、その時期が一つのめどになるというふうに思っております。

 今からすぐ検討を始めて、そういう場をつくりまして、社会保障制度全体についての一体的な改革を考えていく。税、財政、それから負担、給付のあり方も含めまして、一体として考えていく。三年間というのが一つのめどではないか。やはり社会保障制度の改革というのは税制とか財政と一緒にやっていかなくちゃいけない面もございますので、そういう意味では、私の考えでは三年以内にというふうに心づもりをしている次第でございます。

北川委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたので、最後に、先日の本委員会で坂口厚生労働大臣が、今回の年金制度の改正に当たりまして、多くの人が、保険料が上がることは受け入れられない。それはやはり、負担をする方は一円でも少ない方がいいでしょうし、受給をされる方は一円でも多い方がいいわけでありますけれども、しかし、この年金、保険料が上がること、そして年金額が下がることに対して受け入れられない方がおられるかもしれない、多少つらいことがあっても将来を見据えてやっていくというのが政治家の使命であると坂口厚生労働大臣がおっしゃられました。

 我々も、政治家の一員として、この点を肝に銘じながら、政治に対する信頼を取り戻し、そして将来に向けての制度を確立していく必要性というものを申し述べさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長代理 次に、福島豊君。

福島委員 公明党の福島豊でございます。

 本日は、参考人の皆様方には、貴重な御意見をお聞かせいただきまして御礼を申し上げる次第でございます。

 幾つかの項目についてお聞きをしたいと思っております。年金制度の改革ということを考えたときに、少子高齢化が進んでいきますので、まずは、給付を支える負担というものをどういうふうに確保するのか、これが一つの論点でありますし、そして、またもう一つは、給付のあり方というものをどう見直していくのか、さらに、一元化ということも今回の年金制度改革の議論の中では大変大きな問題としてクローズアップされてまいりましたので、そうした制度体系の問題、こういう点を順序よくお聞きをしたいというふうに思っております。

 まず初めに、負担のあり方なんですけれども、きょうお話をお聞きしておりまして、政府の案と、そしてまた民主党の案とありまして、ちょうど真ん中辺に連合の案があるんだな、こういうことを感じた次第であります。

 民主党の案は、保険料は一三・五八%で据え置いて、残りは専ら消費税、年金目的消費税三%であります。そして、連合の案は、保険料は一五%程度で、年金目的消費税、これは間接税という言葉になっておりますけれども、こちらの資料では、二〇〇九年から二・五%、二〇二五年から三%、ちょっと民主党の案よりは少ない、こういう話であります。そして、政府の提案は、基礎年金の国庫負担は二分の一に引き上げる、これは消費税と限定をしておるわけでありませんが、その上で、保険料については一八・三%まで段階的に引き上げさせていく。こういうことを考えますと、要するに、議論は、負担を、消費税で賄うのか、そしてまた保険料で賄うのか、どちらに重きを置くのかということが一つの論点であるということがわかるわけであります。

 その点について、保険料の特性ということもありますし、そしてまた消費税の特性ということもありますが、この両者をいずれにしてもうまくミックスさせて安定した財源をつくり出していくという考え方が一番大切なんだろうというふうに思っておりますけれども、この点につきまして、総括的に堀参考人に御意見をお聞きしたいと思います。

堀参考人 社会保障の財源には、保険料と税、それから積立金を運用した資金、そういうものがある。我が国は、社会保険方式を中核的な制度としてとっておりますので、保険料が中核的な財源になるというふうに思います。

 ただし、保険料だけでは財源が賄えない、あるいは保険料が高くなり過ぎるといった場合には、やはり財源として税も不可欠であります。それから、社会保険ではない施策について税が不可欠であります。したがって、申し上げるように、両方の財源が必要であるというふうに思います。

 しかしながら、あくまで税だけのシステムというのは、これは、私は社会扶助方式と言っています。一般的には税方式と言っております。税方式にはさまざまな問題があることは、先ほど述べました。保険料にもさまざまな問題があって、本来、保険料と税とで、公平性とか、あるいは効率性とか、あるいは経済に与える影響というものを種々考察して、採用していくべきではないかというふうには思っておりますけれども、基本的には、やはり保険料を中心に、社会保険方式を中心にというふうに考えております。

福島委員 続きまして、保険料の水準、上限固定方式ということで、新しい方式を政府案としては提案しているわけでございますが、一八・三%という保険料は高過ぎるんではないか、こういう指摘がございます。昨年の協議の中でも、何%にするのかということは最後まで議論が続いたわけであります。

 先ほど矢野参考人から、企業の社会保障の負担はもはや限界に来ておる、こういう御指摘がありました。国際的な競争が激化する中で、企業としては日夜、経営体質の改善、効率化、こういうことに取り組んでおられる中での率直な御意見だというふうに受けとめさせていただきましたが、その中で、私はちょっとお聞きをしたいことは、例えばヨーロッパの企業であれば、この一八・三%と比較して決して遜色のない保険料負担というものをいただいておるんではないか、そして、そうした企業におきまして、競争力の低下というものがそれによってもたらされているのかどうか。ここのところは今後、先ほど、途中で見直しをした方がいい、こういう話があったわけでございますけれども、今後の対応ということを考える場合にでも大変大切な論点であると思いますが、その点についての認識をお伺いしたいと思います。

矢野参考人 御指摘のとおり、欧州の場合は日本よりも高い保険料ということになっておりますが、この問題を考える場合に二つの点が非常に重要であるというふうに思っております。

 一つは、賦課ベースになる賃金水準でございますが、日本の賃金水準はもう既に非常に高いところに来ておりまして、為替レートにもよりますので、一概にトップとは申しませんが、例えば百五、六円ぐらいの水準でいえば、はるかに高い水準に来ているということを考えますと、そのこと自体が大きく競争力を阻害する要因になっているというふうに考えるわけでございまして、そのパーセントだけを単純に比較して見るということは、その実態を見誤る場合もあるということを念頭に置いておく必要があるのではないかというふうに思っております。

 それから、私どもの調査によりまして、ここ十数年の企業の当期利益、ずっと調べてみまして、社会保険料が上がった場合、どれぐらい影響が出るかというのを調べてみますと、中小企業ほど絶大な影響が出てまいりまして、一五%になったところで、資本金一千万円の企業はみんな赤字になっちゃうという数字があるのでございます。大きい企業であっても、これはあくまでも平均値でございますから、ここには差がございますけれども、甚大な影響を受ける。一八・三%になったらもうそれは大変大きな影響でございまして、これはまさに企業の存立そのものに響いてくるということになるのでございますね。

 でございますから、現在の状況の中で戦っている、そこからどれほど大変なことなのかということを認識した上で、やはり保険料率を考えるべきだと思います。

 日本の給与体系は、御承知のとおりで、毎月の給与のほかにいろいろな付加給付があるわけでございます。その中での、公的保険に係るいわゆる法定内福利費というものの比率は大変高くなっておるということは事実でございます。

 それからもう一つ、それに関連して大事なことは、やはり雇用との関係でございますね。日本の場合は、この非常に苦しい時期の中に、やむを得ず人減らしをやった企業もございますけれども、多くの企業は、私が思いますに、一生懸命雇用を維持していると思うんですね。その雇用形態、雇用の慣行が欧米とは違う。つまり、長期雇用を前提とする雇用というのがあって、その上での諸負担であるということもまた念頭に置く必要があるだろう、このように思っております。

福島委員 法定負担、これが非常に大きくなってきている。ただ一方で、法定外負担も、特に大企業の場合にはかなり大きなものがあるんだろうと思います。むしろ、そうしたものを整理していくということも一つの考え方ではないかというような思いもいたします。

 この点はさておきまして、ただ問題は、過去の過ちを繰り返してはいけない。というのは、今、年金財政というものが大変厳しくなっている一つの理由は、保険料を上げるべきタイミングで上げてこれなかった、それは非常に景気が悪かったということであります。景気が悪いということで保険料を据え置いてきたことによって、将来世代に対して負担を先送りしているということが起こっているわけであります。ですから、こうした矢野参考人の御指摘ございますけれども、それは決して先送りになるような形で行ってはいけないんだろう。

 では、その場合にどうなるかといえば、これは消費税ということになるしかないと私は思いますけれども、ただ、その場合に、果たしてそれも認めていただけるんだろうかというような思いもあるわけであります。経済に対して与える影響、マイナスの影響が出てくる、こういう声はそうした場合に必ず大きくなるわけでありまして、政策として整合性がとれなくなってしまう。この点についてはどのようにお考えでしょうか。

矢野参考人 保険料を上げるにいたしましても税制を変えるにしましても、いずれにしましても、支払う側からしますと同じポケットでございますので、やはり国民的なコンセンサスを得るということが必要であると思っております。

 そういう意味で、企業としても応分の負担をしていくという基本姿勢は変わらないわけでございますが、その前提に立って考えますと、基礎年金の空洞化あるいは三号被保険者問題、専業主婦ですね、あるいはパートの問題など、いろいろと考えてみますと、やはり薄く幅広く国民が負担して、基礎年金の部分は税でやるんだというコンセンサスの方が、私は、保険料をどんどん上げていくよりも得やすいんじゃないだろうか、このように考えて、私どもの提案をいたしておるわけでございます。

 私どもは、一階は税方式、二階は保険方式ということを申し上げているわけでございますが、最近、世の中に随分いろいろな案も出てまいりましたので、長期的なといいますか、一体改革の全体像の中でいろいろな議論が出てくることをまた期待しておきたいと思います。

福島委員 御意見に対して反論もあるんですが、きょうは御意見をお聞きする場でございますので何も申し上げませんが、そこで、税方式でやった方がいいという、こういう意見であります。

 先ほど、連合の笹森会長からも基礎年金の税方式化という話がありましたが、ここのところは少し民主党の提案と違うわけでありますね。そして、私がどうしても民主党の提案で釈然としないところは、いわゆる過去債務、これはバーチャルなものであるといえばバーチャルなものであります、先ほど堀参考人からの御説明もありましたけれども。その過去債務について、これは消費税をもって充てていくんだ、こういう主張をなさっておられるわけであります。サラリーマンのOBの方の年金の給付を国民一般のあらゆる方からちょうだいする消費税で給付を続けていくということが果たして妥当なんだろうか。

 それは、厚生年金であれば厚生年金の世界の中できちっと整理をしてもらう方が、話としてはわかりやすいし、国民としても理解しやすいんじゃないか。この点については、連合の御主張は若干違うわけでございますけれども、笹森参考人はどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

笹森参考人 税方式の問題については、連合は踏み切ったわけです。これについては、労働団体の立場から、消費税に踏み込むというのは極めてリスクが多いし、組織的な論議も、これは大変な論議をいたしました。しかし、昨年、これを方針として決めましてから、我々の運動としても、世の中に対して周知徹底を図りながら、そしてマスメディアを通じていろいろな考え方についても発表しながらきたんですが、今私どものところに寄せられている内容は、OB、現役、若い人たちを含めて、これに対する拒否反応というのはほとんどないという状況なんですね。三、四年前だったらば、めちゃめちゃ袋だたきだと思うんですが、やはり今の年金制度の破綻状況、そしてこれから先のいろいろな負担の状況を考えた場合に、もうこれを使っていくしかないというような考え方がかなり浸透してきたんではないかというふうに思っております。

 したがって、私どもは、過去債務の問題についてどうするか、そして現役世代とOB世代のいろいろな格差問題をどうするか、こういうことについては調整余地はたくさんありますけれども、消費税導入、これはもちろん明確な目的をし、その使途が厳然と限定をされるという前提条件の中で、踏み込んでよろしいのではないかというふうに考えております。

    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕

福島委員 そこで、年金目的間接税、または消費税という話になるわけであります。

 先ほどから、社会保障の一体的な改革、できれば三年でという話であります。私もこの点については全く賛成であります。介護の問題についても医療の問題についても包括的な検討をする場というものをしっかりと設けていかなければいかぬのだろう、そのように思っております。その場合に消費税を、民主党の御提案のように年金目的消費税でやろう、そしてまた、連合の御主張もそうでございますけれども、医療の問題、介護の問題、これは企業にとりましても、保険料負担ということは、同じくそこに重なってまいるわけでありますので、これはどうしても一体として考えないといかぬのではないか、年金だけ取り出して、これを消費税で賄いますという議論にはなかなかなりにくいんではないかというふうに思います。この点について、笹森参考人また矢野参考人からお聞きをしたいと思います。

笹森参考人 社会保障全体を一体のものとして扱ってと、これは冒頭、私の方からも意見の中で申し上げたとおり、連合はその考え方でおります。

 その場合に、今の社会保険制度、保険料方式、そこに消費税を転用する、いろいろな目的税的なものをどう扱うか、まず、一つを給付から負担まで全部固定をさせてしまうというわけにはこれはいかないと思うのですね。

 したがって、今回政府が出している案の中では、給付率の問題と負担率の問題を、向こう十四年間、目標を定めながら上げていって、それでそこで固定をするという考え方、これを医療や介護の方にどう扱うのかといった場合に、それを総体的に見直しをするときにどういう水準にするのか。これは、いやが応でも一緒に見直さなきゃいけないということになるわけですから、私は、一体的に扱っていく中で、その中で、国民の全体的な負担率と給付率の問題を、それぞれの分を合わせていったときにどういう水準になるのかということをやるべきだ。

 これについては、日本経団連と意見は全く変わりません。その見直しの時期についても、私どもは、今、きょう言ってあしたというのは、これは至難のわざでありますから、少なくとも悠長な論議というのは今やっている状況じゃありませんので、三年ぐらいを一つのめどにしながら、全体的、総合的、一体的な社会保障制度、それに税制を絡めたという見直しを国会は踏み切るべきではないかというふうに思っております。

矢野参考人 年金だけを取り出して、それに対する答えを見出すというのは、部分最適ではあっても、全体最適にはならないと思っておりますので、ほかの制度と一緒に考えるということが、真の解決に近づく一番の道だと思っております。

 とりわけ、年金を受ける世代、それから高齢者、特に高齢者の医療、それから介護、共通性があるわけですね。それに対して一体どういう優先順位を考えるのか、これは今まで論議されてこなかったことだと思います。例えば消費税を上げるにいたしましても、それを果たして全部年金に使うのがいいのか、ほかにも用いた方がいいのか、これはやはりちゃんと議論しないと答えの出ないことだと思います。

 そのようにたくさん課題がありますので、そういう課題を、大事なものを並べまして、衆知を集めるということが大事なのではないだろうかと思っております。

福島委員 時間が余りありません。給付の問題を少しお聞きをしたいんです。

 政府提案では、マクロ経済スライドということでこれを調整していくという考え方になっているわけであります。連合の場合には、これは改革前の水準を将来も維持をしていくという御提案であるわけでございますけれども、私は、率直に申しまして、やはりこれは給付の全体が過大になり過ぎるんじゃないか、ここのところは将来世代の負担のことを考えれば何らかの仕組みを考えざるを得ないというふうに思うわけでありますけれども、笹森参考人の御意見をお聞きしたいと思います。

笹森参考人 御指摘の点についても理解はできます。

 ただ、今、モデル年金で言われている給付率の問題からいいますと、五〇%保証される、こういうふうになっていますよね。しかし、これは片働きの夫婦世帯の場合であって、では共働きの場合はどうなのか。これは、三九・三というのが私どもの水準になっていますし、男性世帯ですと三六%に低下する。言ってみれば、五〇というのが保証されているように見えて、現実は底がないということです。

 しからば、では、標準的なものをどこに置くか。私どもは、今の、消費税を導入した場合の基礎年金が全額国庫負担、税方式というふうに移行すれば、上の保険方式の中で給付の部分については現行水準が維持できる、これは二〇二五年の数値まででありますが、そういう算定をしているわけでありまして、これは、生活のレベル、そして現在支給されている額、これから支給をされるであろう額を考えた場合に、先ほど論議になっていた生活保護あるいは最低生活保障、このレベルをどこに置くかということを考えた場合、五〇%という数字は見せかけの数字にしかすぎない。したがって、六〇を目標にしながら、これも、労働組合といろいろな交渉ということになると当然掛け値的なものが入るかと思いますが、ぎりぎりやはりこれは維持をしていくべきじゃないかというふうに考えています。

福島委員 時間があと残すところ数分でございますが、働き方をやはり変えなきゃいかぬのだというふうに私は思うんですね。少子高齢化の歯どめがなかなかかかりません。今回の年金改革でもさまざまな取り組みが盛り込まれておるわけでございますけれども、やはり根っこの部分には、現代人の働き方というものをどう見直していくのかということがあるんだろうというふうに思うんです。

 働き方というのはさまざまな意味があります。今回の法案と一緒に提出されておりますのは、六十五歳まで働き続けられる、もっと言えば、生涯現役社会を目指しての第一歩というふうに言えると思うんですけれども、そういうものをどう変えていくのか。そしてまた、少子化に対応するには、やはり若い人の働き方を本当に変えていく必要がある。今の大変厳しい経済状況をくぐり抜けてくる中で、若い方の仕事の仕方というのはやはり大変ハードになっているんだろうというふうに私は思います。周りの同世代、まだ若い世代の人から聞いても、実感としてそういうことがあるわけであります。そういう中で、子育ての負担というものがまたより大きなものとして感じられている。

 これは、経済界も真剣に取り組んでいただく必要があるんだろうというふうに私は思うんですけれども、矢野参考人にお考えをお聞きしたいと思います。

矢野参考人 高齢者ほど個人差の多い世代はないと思います。老後の人生設計、それからいろいろな意欲、体力、財産の状況、興味、そういったものが最も幅広い年代だと思います。

 その中で、引き続いて働きたいという人がいた場合にこれをどうするかという問題をとらえた場合に、これは企業としても、これからだんだん人が減ってまいりますので、長期的に見たら、高齢者、女性の活用ということを進めなくちゃいけない。一歩進んで、外国人の問題も私ども考えておりますが、きょうはその場ではございませんので触れませんけれども。

 ですから、企業としてもこれから必要としてくるだろうというふうに思うわけでございます。現実に、そういう状況の中で、労使の話し合いによって六十歳定年後再雇用というのが進んでいるわけでございます。でありますから、今後ともそれが順調に伸びていくだろうというふうに私は予想しておるものでございます。

 高齢化社会といいますと、高齢者がふえて年金の負担が大変だという話じゃなくて、高齢者がふえて、そういう人たちに社会的にいろいろな意味でお手伝いしてもらうという時期が来ると思うんです。仕事のお手伝いだけじゃなしに、地域社会をよくしたり、子供たちの教育のために働いてもらうとか。人によっては、お金はそんなに要らないから、ボランティアでもいいからやらせてくれという人もたくさんいるわけでございまして、そういう人たちが働きやすい社会全体としての環境づくり、これは政府も、私ども企業もお手伝いいたしますけれども、ぜひ先生方にお考えいただけたらありがたいというふうに思います。そうしますと、日本の国はもっといい国になるだろうと思っております。

福島委員 時間が終了しましたので質問を終わりにしますが、本日御指摘いただきました諸点につきまして、しっかりと受けとめさせていただいて、今後も努力をいたしたいと思います。ありがとうございました。

衛藤委員長 山井和則君。

山井委員 まず最初に、参考人の方々、きょうはお忙しい中、急なお願いにもかかわりませずお越しくださいまして、本当にありがとうございます。さらに、お一人お一人、十分間という限られた時間で、冒頭、非常に有意義な御示唆、御指導をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私も二十四分間質問をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いを申し上げます。

 まず、自民党さん、公明党さんの質問の中で論点もかなり出尽くしていると思うんですが、最初、大変失礼とは承知しながらも、ちょっと三つだけ質問を全員の方々にさせていただきたいと思っております。

 それで、まことに失礼とは思うんですが、可能な範囲で挙手をしていただいて、答えにくかったら挙手してもらわなくて結構ですので、全員の方々に共通のことをお伺いさせていただきたいと思います。

 まず一番目は、四人の方全員、挙手か挙手をされないかでお答えいただきたいと思いますが、今回の政府案、抜本改革というふうに思われるでしょうか。はいの方は手を挙げていただきたいと思います。ノーの方は手を挙げていただかなくて結構です。

 そうしたら、抜本改革ではないと思われる方、挙手をいただければありがたいと思います。いかがですか。そうしたら、お二人ですね、笹森会長と。

 本当に、非常に失礼かと思いますので、答えにくかったら答えていただかなくて結構ですので。

 二番目に行きます。

 大きな議論、これは小泉首相もおっしゃっておられますが、一元化についてであります。国民年金、自営業者の方々を含む含まないは置いておいて、とにかく、両方を含めて一元化の改革というのを今後せねばならないと思われるか否か、一元化がこの政府案の先に必要か否かということ。また非常に恐縮ですが、挙手をいただければと思います。一元化がやはり今後改革で必要だと思われる方、いかがでしょうか。堀先生ですか。今ちょっと挙手をお願いしているんですが。個々のことは後で質問をさせていただきます。

衛藤委員長 もう一回質問をはっきり言ってください。

山井委員 済みません。一元化の抜本改革が今後必要か否かということ。必要と思われる方は挙手をいただければ。お三方。それで、矢野さんは。一元化の抜本改革が今後必要か否かということ。まあ答えづらかったら答えてもらわなくて結構であります。わかりました。

 そうしたら、質問に入らせていただきたいと思います。

 今までからお話をお聞きいたしまして、私たち民主党の思いというのは三つであります。やはり公平な制度、損得ではなくて。不公平感というのが一番大きな問題だと思っております。そんな中で、やはり働き方によって、あるいは職業によって余りにも不公平がある。やはり、だれが得をする、損をするではなくて、たくさん払えばたくさんもらえるのは当たり前なわけですから、そういう公平な制度をつくっていかねばならないというのが民主党案の一つのポイント。

 それで、二つ目のポイントは、やはり持続可能性。これはこの後質問で聞かせていただきますが、保険料をどんどん上げていくというやり方、これはある意味で非現実的なのではないかと私は思っております。正規雇用に対する罰則であるかのような保険料のアップをどんどん今後十四年間していく。そういう意味で、この政府案というのは、リストラ推進法案、雇用破壊法案、正規雇用削減法案、日本の社会を壊していくという危機感を私は持っております。

 三つ目は、今も質問をさせていただきましたが、私たち民主党の案は抜本改革の案であるということであります。しかし、政府案は、まさに小手先の数字合わせであります。先ほど笹森会長が、政府案と民主党案はある意味で同列では議論できないとおっしゃっていたのは、まさにその点ではないかと思っております。

 私は、政治家の仕事というのは改革と決断だと思います。そういう意味では、この先送りの政府案というものは問題点が余りにも多いと思っております。

 そこで、まず笹森会長にお伺いしたいと思います。

 政府案では、保険料のアップのみならず、今後、政府は、定率減税の廃止ということを考えております。これは保険料アップと相まって、サラリーマンの方々を直撃するんではないかと思いますが、このことに関して連合のお考えをお聞きしたいと思います。

笹森参考人 定率減税の廃止については、私どもの立場からすると、これは認めるわけにはいかないというふうに思っています。

 これは亡くなられた小渕総理が恒久的減税という言葉を使ってつくられた制度だったと思うんですが、その受益にあずかっていたサラリーマンの立場からすると、これは未来永劫続いていくだろう、こういうふうに思っていたんですね、恒久的減税ですから。しかし、この恒久減税と恒久的減税というのは違うという解釈がどうなってきちゃったのか。適当にやっていていいから恒久的というのはなくしてもいいんだということであるとすれば、これは大変大きな影響があるというふうに思います。

 その上で、なぜ大きな影響がある、サラリーマンを直撃するかというと、最後に税額の金額が固まった段階で最高二十五万円まで控除されるという制度、これは物すごくきくんですよ。これが全くなくなってしまうということになるとどういうような状況になるか。これはもう、すべからく、増税に入ってしまうという状況になります。

 したがって、今のままで政府が、私は抜本改革ではないというような表現の仕方で手を挙げたんですが、抜本改革をしないで負担増をし、さらに給付減をし、その上で税額控除項目も外しながら、さらにまた定率減税もやめてしまうというこの影響は、もう国民生活にとっては耐えられないという状況をつくり出すのではないかというふうに思っております。

山井委員 まさに雇用を破壊する、日本の社会を破壊するだけの危険な政府案だと私は思っております。

 続けて笹森会長にお伺いしたいんですが、先ほどと多少重なるかもしれませんが、まさに、保険料を年々、十四年間連続で上げていくということが雇用の増減にどのような影響を与えるか。また、パートなどの非正規雇用、こういう雇用形態の変化の観点からどのような影響を及ぼすか。ある意味で、保険料をどんどん上げていくということは正規雇用をすることに対する罰則であると私は思っております。

 先ほど鴨さんからも、やはりこのパートの方々の置かれている現状に関して、本当に厳しい御指摘がございました。例えば、スウェーデンではパートタイム失業者という言葉がありまして、パートでは働いているけれども、正規雇用になりたくてもなれない。かつ、ヨーロッパの現状を見ますと、二十代で正規雇用になれなかったら、人生ずっと正規雇用になれないというような、そういう深刻な問題も出てきております。

 このあたりの、保険料アップの政府案、これの正規雇用、雇用形態に対する影響について、笹森会長、改めてお願いいたします。

笹森参考人 先月でしたか、あるテレビの番組で、「フリーター四百十七万人の衝撃」というスペシャル番組がありました。経営団体の代表と私と二人が出演をさせていただいたんですが、あそこの、NHK独自調査でありますけれども、将来、非正規雇用と正規雇用の比率が五〇対五〇になるという衝撃的な数字を出しているんですね。これは当然、雇用形態が違うことによって処遇条件が全く変わります。これが今企業の中でどういう状況になってきているかというと、そちらにやはり転換をするという動きが非常に強い。

 もう一つ言うと、今回の保険料の増額が政府案どおりでいった場合に、一八・三%までの負担率、これは先ほど日本経団連の矢野専務も触れられておりましたけれども、これが一五%を超えたところで、企業はもうもたないという状況になる。当然ここは労使折半ですから、労使ともにもたないという。だから、私どもが提起をしている案、先ほど公明党の福島議員の方からは、政府案と民主党案の中間に位置するという評価をいただきましたけれども、この案は、労使に過大な負担がかからないということ。これは日本経済そして雇用問題についての最大の防波堤になっていくんじゃないか、こういうふうに考えております。

 それで、その上で、このことを進めていった場合に、雇用転換をしなくても、今、非典型雇用労働者が非常にふえてくる現状の中で、先ほどの論議にもありましたように、働き方をどうするか、暮らし方をどうするか、生き方をどうするかということになる。

 その上では、そこは、一番のベースにならなければならないのは、雇用との接続をどうするかというのがまず一つあります。これは、高齢者の部分と、若年者がこれから門戸が閉ざされていくか開けるか。その上で、非正規雇用が広がっていくことに対する、税、社会保険料体系が全く崩壊をしてしまうことにつながるかどうか。これは、国のありようも含めて大きな影響を受けるということですから、今のようなことを続けていった場合に、私は、これは日本の労使はもう負担し切れない、限界を超えるというふうに思って、これはもう社会構造が成り立たないということにつながるんじゃないか。

 それから、もう一つつけ加えておくと、そういった生き方、働き方をする場合に、労使間で、あるいは政治の場でも決めておいていただきたいのは、やはり不利益をこうむらないという、均等待遇がそこのベースにつけられるかどうか、このことがなし遂げられれば、雇用の形態がかなり変わっていっても、私は耐えられる部分が残るのではないかというふうに思っています。

山井委員 今の点とも関連するんですが、矢野専務理事さんにお伺いしたいと思います。

 まさに、経団連さんの御主張を聞きますと、保険料率引き上げをできるだけ抑制してほしい、極力今の現状を上回らないように、そして、現状に固定してほしいというような話がございました。安易な保険料引き上げは大企業、中小企業を直撃するということでありました。

 そこで、聞きづらいことをお聞きいたしますが、経団連さんとしては、政府案に賛成なんでしょうか。

矢野参考人 基本的には賛成しております。ただし、申し上げましたように、一体的な全体の見直しということがなければならないということが一つあります。それには、当然協議の場が設けられて、多くの人たちの意見がそこに入ってくる。そういう状況を考えますと、経済社会状況の変化によっては、保険料率の毎年の引き上げというものが一時停止する場合もあるんだということを認識して、先を考えていくということだと思っております。

 先ほど、抜本改革かどうか、抜本改革でないかどうかというときに、両方とも私は手を挙げなかったんですけれども、今回の政府案を見ますと、抜本改革というのは、今までなかったアイデア、考え方があるというのであれば抜本改革なんですね。例えば、上限を設けるという考え方です。しかし、本当に一八・三%に何のブレーキもかからずに上がっていっていいのかという率直な疑問を私は申し上げたつもりでございます。

 それから、マクロスライドについては申し上げませんでしたけれども、これも今までなかった新しい考えですね。しかし、この中身を見ますと、名目の下限は下らないというわけでありますから、これは本当にそれで制度がもつのか、保険料にやはり負担が偏り過ぎてはいないだろうか、給付の方もやはり考える必要があるんじゃないか。若い世代、働く世代の人口が減るというだけじゃなくて、働く世代が苦労しているわけですから、それをいただく世代もやはり一緒に苦労してほしいという思いがあるわけですね。そうしたことをやはりしっかり考える場というのがこれから設けられるべきだと思うんですね。

 そういうような全体の取り組みというものが明らかになってくれば、そうした、条件と言うとちょっときつ過ぎるかもしれませんが、そういったものがこれから行われるというのであれば、今の政府案は、私どもは共通認識を持ち得ると、冒頭もちょっと申し上げたんですが、思っております。

山井委員 いや、率直に言って、非常に驚きました。ということは、一八・三%まで十四年間連続で自動的に引き上がっていって、企業は持ちこたえられる、中小企業も含めて持ちこたえられる、そういう宣言になるかと思うんですが、そのことについてと、これはどのようにして持ちこたえていかれるのか、そのことを改めて矢野理事にお伺いしたいと思います。

矢野参考人 それを判断するのがこの三年間だと思います。これはもう本当に、雇用の問題を考えましても、経済が成長し、企業が存続してこそ成り立つわけでありまして、これは保険料の負担だって同じです。そういう状況もすべて見きわめる期間が三年間ではないでしょうか。

 ですから、仕組みとして新しいものをつくったとしても、やはり、それに私が申し上げたようなことをビルトインするといいますか織り込んでやっていくならば、そこにコンセンサスが得られるのではないか、こう思うわけでございます。

山井委員 笹森会長に改めてお伺いしたいと思いますが、冒頭笹森会長もおっしゃいましたように、空洞化の悪循環、空洞化スパイラルに私はこの政府案は陥っていくと思っております。

 厚生年金を逃れる企業はどんどんふえておりますし、それが国民年金に行って、また国民年金の未加入者をふやしていく。そして、それがまた厚生年金にしわ寄せをして、厚生年金の保険料を政府が言っているよりさらに引き上げスピードを加速するんではないか。そういうことで、私は非常に非現実的な政府案ではないかと思いますが、今、経団連の矢野参考人から持ちこたえられるという話がありましたが、笹森会長、いかがでしょうか。

笹森参考人 先ほどの矢野さんの話を伺っていると、一八・三までノンストップでいっちゃったらこれは耐えられないという言い方ですから、そこまでいくことを全部容認しちゃったのかなというふうには受けとめてはいないんですが。

 先ほど私の方から申し上げたように、労使に過大な負担がかかってくるかどうかというのは、もう限界に来ているという状況なんですね。公的な部分がおぼつかなくなり、私的なものについては、自助努力の部分はもう完全に限界を超えている。では共助でどう補うか。そこも、一番問題なのは、働いて得る収入がそういうことに対して負担に耐えられるかどうか。そして、そのことに対して、企業側が経営のコストとして負担に耐えられるかどうか。

 私は、ここの部分からいうと、上限固定をしているといっても、今出ているあの数字は、これは国民的、それから個人的、企業的に見ても、納得性が非常に薄いんじゃないかというふうに考えています。

 その上で、一番心配なのは、そうなりますと、企業コストをどう削減するかというのが全部働き方の方に押しつけられるわけですよ。正規社員から非正規社員への転用というのは物すごくふえました。それから、正規社員でありながら、悪いけれども、厚生年金もうやめるから、おまえら、国保の方に入ってくれというような企業が物すごくふえてきているという部分が出ていますね。

 ということを含めると、厚生年金加入者が減少していって国民年金への移動を招き、さらにまたそのことが、負担に耐えられないから国民年金の空洞化につながっていくという、おっしゃったように、全くの悪循環がここに生じている。これをどうとめるかというのは、今回我々が求めている抜本改革以外にないんじゃないか。

 私は、政府案、民主党案、いろいろな商品が並んできましたけれども、連合案のは無印良品だというふうに思っております。

山井委員 このふえ行く負担を保険料のアップで支えるのか、あるいは年金目的消費税を入れるのか。これは政府案と民主党案との大きな違いでもあるんですが、矢野参考人に改めてお伺いしたいんですが、民主党としては、雇用や日本の経営というものを維持していくためには、両方とも負担増でありますが、保険料よりも年金目的消費税の方がやはり企業に与えるダメージは少ないんではないかと思いますが、その点について、矢野参考人、いかがでしょうか。

矢野参考人 私、何度か立って申し上げたことの繰り返しになるんですが、基礎年金が税方式になっていけば、保険料を上げなくても済むんですね。そういうふうにいろいろな変数があるということでございまして、例えば給付の問題についても、厳しく考えていけば、その分の保険料値上げは必要がないわけであります。

 御指摘のとおり、私は、幅広く薄く負担するという消費税というのをこの仕組みの中に積極的に取り入れていくということが大事だと思います。そういうものを一切やらずにいけば、それは自動的に一八・三までいっちゃうと思うんですね。

 これはやはり、私は、冒頭申し上げましたが、個人と企業と、そして国や地方の財政ですよね。財政が破綻するような状況になったら、これはやはりもう制度自体が成り立たないわけでありますから、それがどうすればうまくいくかということを、これを、年金だけではなくてほかの制度も含めて考えようと申し上げているわけでございます。

 ですから、御指摘のような点がより具体化していけば、また保険料のありようも変わってくるだろう、こう思っております。

山井委員 先ほども与党の議員の方から、参考人の皆さんのこの貴重な意見を踏まえてさらに議論をしていきたいということがありましたが、一つ、非常に残念なことなんですが、与党から、もうあした採決をしたいというような提案が、きょうの朝一番から出ております。それで、参考人の方々の意見を聞く前から、あした採決をしたいというような、そういう議論をするというのは、私は、参考人の方にも失礼でもありますし、まさに国民不在ではないかと思っております。

 まさにこういう貴重な意見をいただいて、これから論議を深めていかなければいけないときにこのような議論が行われている、こういうことについて参考人の方の御意見もお伺いしたいと思いますが、笹森会長、いかがでしょうか。

笹森参考人 国会の審議日程の関係ですから、私どもがその日程についてとやかく言うようなものは持ち合わせておりませんが、この種の問題、特に社会保障制度の問題は、やはり、それぞれの案が出てきたならば、そして、私どものもありますし、経営側の案もあります、これについて十分な論議をするということが一番必要じゃないかと思うんですね。その上で、国民にとって一〇〇%満足のいくというのは、それぞれに置きかえればまずあり得ない内容だとは思うんですが、しかし、そこのところに納得性が伴わなければ制度が生きないということになるわけですので、できれば十分なる審議をとった上で、内容的に充実したものをおつくりいただきたい。

 五年前のお話が出ましたけれども、私もその部分については非常に大きなかかわり方をしていた経過もございますが、やはり、論議をしていくというのがいかに大切かというのは、その後の中でも大きく、私どもも理解をしていますので、言ってみれば、それぞれの立場、それぞれの考え方はありますが、どこが目的なのか、最終的に何をやるのか、国民のために何をやるのか、その制度をどうつくるのかという本来のこの目的をぜひお忘れにならないような議会運営がしていただければというふうに思っております。

山井委員 堀参考人さん、鴨参考人さん、本当に時間が足りなくて申しわけないんですが、お二人にお伺いしたいと思いますが、今回、この政府案に対して、これはさらに抜本改革が何年後かに必要なのか、それとも、これでもうオーケーということなのか。ちょっと、質問以外の答弁でももちろん構いませんが、鴨参考人さん、堀参考人さんにこのことを、これで抜本改革と考えるのか、今後また抜本改革が必要と考えるのか、お二人にお伺いしたいと思います。

堀参考人 先ほど、抜本改革案であると思うかどうか、こういう御質問に、私は賛成も反対もしなかったんですが、それは、抜本改革という定義にもよる、先ほど矢野さんから話があったように。それだけではなくて、抜本改革が改革たり得るかどうか。ちょっと言い方をあれしますと、抜本改革案にも改悪案はあるわけですね。だから、内容によって違うんではないか。そういう意味で手を挙げなかったわけです。

 今後抜本改革が必要かどうか、こういう御質問なんですが、基本的には、今回の改正案は、冒頭に最初の十分間で言いましたように、今後の超高齢社会に向けて軟着陸を図る、そういう案である。そういう意味では、今後維持可能な案である、そういうことを認めるならば、抜本改革案だというふうに評価をしたい。

 ただ、日本の社会経済とかあるいは国民の意識が変わっていけば、今の制度にかわる案というのはあり得るし、国民がそれを望むのなら、そういう案にかえることもあり得る、そういうふうに思っております。

鴨参考人 先ほど、抜本的なものかどうかということに対して、私は、そうではないということで手を挙げました。

 それは、一つは、先ほど私が話しましたパートの問題が今回一切見直されていないということ、それからもう一つは、パートの問題というのはいわゆる女性労働の問題と言っても過言ではないというふうに思うんです。そういった意味からいっても、もう一つ、いわゆる女性の第三号被保険者の問題が今回のこの年金問題の中で一切論議されていないんではないかという印象を受けているということで、そういった意味で、私は、今回これは抜本的改革ではないというふうに思いました。

 以上です。

山井委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

衛藤委員長 山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、意見の陳述をありがとうございました。

 私は、まず初めに笹森参考人にお尋ねしたいと思っているんです。

 先ほどのお話の中で、今度の政府の年金案について、特に雇用の不安定化を呼び込むという指摘をなさいました。これは非常に大事な指摘だと私も思いまして、実は、昨日の当委員会の質疑でこの問題を取り上げたんです。

 私たち日本共産党は、今の年金問題の解決の上で、無年金者問題や低額年金の問題、これは厚生年金、国民年金含めてですけれども、そういう問題を解決していく上でも、空洞化の問題に対応していく上でも、全額国庫負担による最低保障年金制度をつくる必要がある。ただ、その場合、消費税をそれには入れないという立場をとっております。歳出歳入の改革などで対応しようというわけですが、その際に、年金の支え手の問題として、やはり雇用政策、労働政策をどうするのかということの視野をきちんと持とうという提案をしているんです。今度の政府の提案には、残念ながらその視点がないというのが私は特徴だと思うんです。

 それで、今の雇用の不安定化を見ますと、自然の成り行きの中で起こっていることではなくて、大企業や財界の一つの方針として雇用の流動化が起こっている。その直接のきっかけは、笹森会長も御存じのように、一九九五年の、当時の日経連の「新時代の「日本的経営」」の中で、働き方を三つのグループに分けていくというあの方針が出てから非常に激しくなったように思います。

 例えば、これは九五年に出た報告でしたけれども、昨日の質疑でも使ったんですが、一九九七年の正規労働者は三千八百五十四万人なんです。これが、一番新しい資料で、二〇〇二年になりますと三千四百五十五万人と、大体マイナスで約四百万人減っているんですね。そして、ほぼそれに匹敵する方々はどうなったのかというと、パート、アルバイト、派遣労働者、契約社員、嘱託、そういういわゆる不安定雇用の方に入っていってしまっている。

 しかも、厚生労働省の資料で、先ほど笹森参考人が指摘されました、今、正規雇用の労働者が不安定雇用に入っていくと、厚生年金から国民年金の方に移る流れが一つあります。今、国民年金の納付率というのは全体は六割台なんですけれども、厚生年金から国民年金に移った方というのは、実は五割なんですね。そういう意味でも、やはり非常に大きな問題が現に起こっているということだと思うんです。

 それで、この点では、私は、労働組合としても、活動のあり方や組織のあり方にもかかわるような問題もはらんでくるわけですが、当然、今の大企業や財界などの労働政策に対して、これを変えなさいと。きちんと正規の雇用を持つ方向にしていかないと、年金制度そのものの支え手を失うことになっていくんではないか。そういう面での笹森参考人の、皆さんたちの考え方、どういう認識を持ってこの問題に対応しようとしているのか、そこを少しお話しいただきたいと思うんです。

笹森参考人 雇用の不安定化、そして雇用労働政策が極めて重要だという御指摘、私もその点については全く同感であります。

 今の状況から申し上げると、雇用労働者は五千三百万人と言われています。そのうちのフリーター、これは定義が十六歳から三十五歳までの学生と主婦を除くパート、アルバイト、派遣の方々ということですね。では、それ以外の年齢の方々と、今言ったジャンル以外の人たちというのは、すべて非典型雇用、非正規雇用ということになり、これが大体トータルでいうと千七百万人ぐらいという状況にふえてきている。

 これが今、日本の社会の中で非常に大きな不安定雇用を生み出す要因になっているんですが、その上で、もう一つこれに拍車がかかりそうだという部分があるわけで、これが、現行の社会保険制度にもその一因があるというふうに思っています。これは、特に、今のような負担で企業がもたないということになってくれば、そういう負担を少なくする雇用転換をするというのは、これは経営者の考え方としては当たり前だと思うんですね、働く側からしたらたまらないと思うんだけれども。

 しかし、このことをやっていった場合に、どんどんどんどんそのことがふえていくと、先ほど言ったように、NHK予測では五〇対五〇というような雇用形態になってしまったときに、これは国家は税で成り立つわけですから、そこを補足するのが社会保険、こういうことになるんです。しかし、税も社会保険も全く歳入が上がらずに減り続けていったときに、日本社会はどうなるか。

 これを全部支えるのは仕事、雇用なんですね。これには、正規雇用にどういうふうに移管させるか、非正規の場合にはその条件をどういうふうにカバーさせるか。すべて今の日本にとっては、雇用労働政策というのは何物にも増して最大に優先をさせなければならない課題だというふうに私ども思っています。

 企業の中でもいろいろな問題について相談をしておりますが、一つだけ救いがありますのは、どちらも、経営側の立場にとっても、資源のない日本にとって最大の武器は何だったのか、世界で一番誇れる勤勉な労働力、このことをどう大切にするかというのをベースに持とう、ここは一致をしている。

 しかし、今の段階では、国際競争力に勝てないから背に腹はかえられない、したがって、総コストの中から人件費を一番のターゲットにしてくるということ。ここを労使がどう乗り切れるかどうかというところに、私は、先ほど矢野専務もちょっと触れていた、働き方の問題というのをどう変えていくかという、言うなれば、今までの日本の社会システムそのものを取りかえられるか取りかえられないかというところにつながってくるんだと思うんです。

 私は、これは政治の中でも大きくリードしていただきたいのは、その大きな切り口になるのがワークシェアリングではないか。そのワークシェアリングを実行していくに当たっては、絶対的にその基本を動かしてはならないのは、均等待遇という部分について、これは必ず確立をさせておく、そういう労働政策が日本の中で具体的に実現がされればというふうに思っております。

山口(富)委員 私も、労働時間の短縮の問題等、雇用の流動化にかかわる問題への対応として、広がりを持った対策が必要だと思うんです。そして、今の政府案でいきますと、結局、フリーターですとか不安定雇用がふえていきますから、年金の支え手を失うだけでなくて、将来的にその方々が無年金層になったり、あるいは低額年金層になる。そういう現状に拍車をかけるという意味での深刻な事態を生むというのが、先ほどの笹森参考人の指摘だったというふうに思います。

 もう一点続けてお尋ねしたいんですけれども、サービス残業の問題なんですが、年金でも、結局、総所得にかかってきますから、労働者の所得がどうなっているのかというのが非常に重要になってくるんですね。

 それで、この間、厚労省がまとめた資料を見ますと、労基法三十七条違反、いわゆるサービス残業です、これで是正をされている事業所が二〇〇一年で一万八千八百四十五、二〇〇二年で一万七千七十七、大体総額で二百億円を超える規模の未払いの残業代が払われたわけですけれども、この点では、年金問題を考える上でも、サービス残業そのものはもう法律違反ですから、掛け値なしに是正する必要があるわけですが、そういう視点からのサービス残業是正の問題の提起といいますか、そういうアプローチというのも連合の方ではやられているんですか。

笹森参考人 私どもは今、サービス残業という言葉を使わずに、不払い残業と。これは払ってもらっていないわけで、私どもの方からはサービスをするという気持ちで残業しているということではありませんので。

 この不払い残業の撲滅について、連合は三年前から全組織を挙げて撲滅をしようという運動を展開いたしました。このことを出したときにかなりメディアを通じて社会的反響が出まして、それが大きな摘発の方にもつながっていったということであります。

 これは、毎年十二月に行われます日本経団連との政策協議の中でも、私どもの方から日本経団連側にも提起をいたしておりまして、経営サイドとしても、このことについてはやはり法を遵守するという観点からいっても野方図にしておいてはいけないということでの、両者での不払い残業撲滅の方向性については意見一致をしておりますが、それぞれの企業の中にどこまでそのことが浸透しているかということについては、まだ残念ながら全社に及んでいないという実態があります。

 ただ、非常に残念なことは、歴史があり、ビッグネームで収益も上がっている企業まで、そういう告発の対象になり違約金を払っているという部分について、これは経営姿勢としても当然そのことを大きな反省点として持ってもらわなきゃいけないし、私どもの運動としても、そういうことをチェックしなければならない役割の中で、そのことが本当に機能していたかどうかということの自省も含めて、運動的には全職場を徹してというふうに思っております。

 三年目の中で、相当大きな職場でも緊張感が生まれてまいりましたので、ことし一年、継続的な運動の中で、来年の春はほとんどそういう姿が消すというような世の中をつくっていきたいというふうに思っております。

山口(富)委員 実は、私、昨年は随分全国の労働基準監督署を訪ねたんです。それで驚きましたのは、労基署に家族の方を含めてさまざまな相談がいわゆる申告という形で寄せられるんですけれども、この件数がべらぼうにふえているんですね。一九九二年では大体一万件台だったんですが、今は大体三万件から四万件なんです。ですから、やはりこの間の雇用の実態がどうだったのかという検証は、年金問題を考える上でも避けられないと思います。

 さて、最後に笹森参考人に、時間があればもう一回お尋ねしますが、とりあえず最後にお尋ねしたいのは、先ほど今度の政府案に対して、これが一たん通ると、一種の自動調整なんだ、給付水準は下がり、保険料は上がっていきますから、そういうことになるのはとんでもない改悪だという特徴づけをなさったんですが、もう少し詳しく、これは一体、国民にとってとんでもない改悪と言い得る、こういうことが起こるということを幾つか明示していただけないでしょうか。

笹森参考人 今のような非常に変化の多い時代の中で、十年先、二十年先を明確に想定ができるかというと、これはどんなジャンルの人でも難しいんじゃないかと思うんですが、今回の指標は、政府側の案としては国家百年の計だというふうにおっしゃっています。

 その中で、今の、上限を固定しながら十四年間連続して同じ率で負担率を上げていき、そして給付については、マクロ経済をいろいろ見ながらというような前提もついておりますが、平均的に言えば〇・九ぐらい下げていく、そういう数字になっていきますね。これはもう限界点を超えていったときにもつかもたないか。

 本来ですと、今までは五年ごとの再計算という中でいろいろな調整ができたはずです。しかし、今度の場合に、再検証という言葉をたしか使っていると思うんですが、これが、そういういろいろな変動があった場合に、そして、もう経済を支えている雇用側も経営側もどうにもならないという状況に追い込まれても、この制度が確定をされればこれは自動的に進んでいっちゃうということになるわけで、とめようがない。

 だから、再検証というのはとめることができるのかどうか。今までの五年ごとの見直しの場合には、いろいろな変動要素を入れて、そこは変化を持たせることができたけれども、これができないとなりますと、まことに奈落の底へ一気におっこちていくというような形になってしまうわけですので、一つ一つの現象というのは、こうやってこれがこうだというのは申し上げませんが、私は、こういうノンストップの制度というのは、これはやはり今の制度をつくるに当たっては再考する必要があるというふうに思っております。

山口(富)委員 私も、そういう奈落の底を見ないように、徹底的な審議を求めてまいりたいと思います。

 さて、次に矢野参考人にお尋ねいたしますが、日本経済団体連合会がつくっております企業の行動憲章、これを見ますと、こういうふうに書かれております。企業は、「国の内外を問わず、全ての法律、国際ルールおよびその精神を遵守するとともに社会的良識をもって行動する。」そして、少し略しますが、企業は、「公正な競争を通じて利潤を追求するという経済的主体ではなく、広く社会にとって有用な存在でなければならない。」というふうに冒頭で述べております。

 そうしますと、二十一世紀を大きく見たときに、日本経団連として、企業の社会的責任として、公的年金制度におけるどういう役割を果たしていくおつもりなのか、この点ちょっと述べていただきたいと思います。

矢野参考人 企業の社会的責任を考える場合には、私どもは、企業は数多くの利害関係者のために存在する社会の公器であるという認識がベースにございます。お客様がそうでありますし、従業員、株主あるいは地域社会、幅広いステークホルダーのためにどういう存在であるべきかということを考えるのが企業の社会的責任の根本であるというふうに思っております。

 そういう点から考えまして、従業員の福祉といいますか、これは企業にとっても重要な経営課題の一つだと考えておりまして、それをどうすれば一番長もちし、しかも従業員にとって、あるいは企業にとってもプラスになるのかということだと思うんですね。つまり、そこで生まれてくる判断基準というのは、やはり一種の経済合理性ということが必ずあると思うんですね。もちろんそれだけではない部分がございますけれども、例えば雇用をずっと続ける、会社が左前になっても歯を食いしばって雇用を続けるというのは、ある意味では経済合理性というのを超えたものだと思いますが、そういったものについても企業は努力すべきだと思っております。

 そういう意味での企業の一種の社会的責任の中に従業員福祉というのがあって、その中の大きな柱が社会保障、あるいは企業のそういった従業員の自助努力を促すためのいろいろな仕組みづくりということだと思うんですね。公的年金、公的保険については、企業の応分の負担をこれからもやっていくという考えは少しも変わっておりません。しかしながら、一方で、個人の自助努力というのがやはりこれからの世の中にはより必要になってくると思いますので、そういう面での援助も必要になってくるだろうと思っております。

山口(富)委員 私は、国際社会に乗り出す大企業なんですから、国際的なルールからいきまして、今、世界の社会保障は、別に自助努力を求めているわけじゃありません。公的な補助をきちんとやりながら、企業にも応分の社会的責任を果たしていただくということで動いておりますから、ぜひ、国際社会に出ていくんでしたら、そういう国際ルールのもとで活動を一緒に進めてまいりたいと思います。

 さて、経済の方でちょっとお尋ねしたいんですけれども、例えば政府案ですと、百年の単位の問題で、幾つか経済的な指標が挙げられています。それで、その一つに、長期的な経済前提として、賃金上昇率は二・一%、百年間確保されることになっているんですけれども、こういうことは考えられるんですか。矢野参考人に、日本経団連から見て、今後百年間、日本の勤労者の賃金上昇率は二・一%確保できるというふうに言えるかどうか、お尋ねします。

矢野参考人 それはだれも約束できないことだと思います。そういう社会になったらいいなとは私も思います。

 冒頭も申し上げましたとおり、社会経済情勢というのは本当に刻々と変わっていくものでございますので、余り短期的な見方はよくないとは思います。長期的にこういう世の中にしたい、経済成長率はこれぐらいで、物価上昇率はこれぐらいで、そして賃金上昇率はこうだ、あるいは人口はこうなるんだ、だからその範囲の中でやっていこうというような考え方は、これは議論のベースとして大事だと思うんですね。

 ですから、数字がなくちゃいけないんですけれども、その数字は変わっていくものだというふうに考えて、むしろ我々が大事なことは、そういう変化に対して柔軟に対応できる仕組みを持つ、考え方を持つということではないでしょうか。

山口(富)委員 今のお話を聞きながら、先ほど矢野参考人が、経済的な動きによっては引き上げの実施をやめることも考えるべきだということを提案した意味がよくわかりました。現実問題として、百年、二・一%を確保できるなんてだれも思っていないわけですね。ところが、その数字が実際には固定的な、確定的なモデルになってしまっているんです。これが今度の年金法案をめぐるこの審議の一つの重大問題なんですね。

 それで、もう一つお尋ねしたいんですが、先ほどの提案で、経済的な動きを見て保険料の引き上げなどを一時的にやめた方がいいという判断があり得るんだ、また、それを考えた方がいいという提案だったんですけれども、その場合の条件といいますか、どういうことを想定して、保険料の引き上げについてはこういう場合はやめた方がいいというふうにお考えなんでしょうか。引き続き、矢野参考人にお願いします。

矢野参考人 あらかじめ数字的にそれを示すということではなくて、その状況状況の判断によって決めていくということになるだろうと思います。

 その場合に、やはり考慮すべき事項は、経済成長、それから人口の動向、あるいは失業率とかいろいろな問題も出てくると思いますが、そういう主要な経済社会指標について、これはどうも様子がおかしいぞというふうに感ずる屈折点みたいなものが必ずあると思うんですね。そういうものをみんなで見ながら、ちょっと待てよ、こういう状況ならば保険料の問題についてもちょっと一時停止をした方がいいんじゃないかというふうなこともあり得るんじゃないかということは申し上げているわけでございます。

山口(富)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、堀参考人にお尋ねしますが、今の矢野参考人のお話ですと、今度の政府の年金案に対して、非常に中心部分でこれは変えた方がいいという御意見になり得る意見です。といいますのも、保険料は長期間にわたって上げ続け、年金の給付水準は下げ続けるわけですから、少なくとも上げ続けるところについては、ある程度の条件を設けてストップをかけた方がいいという御意見ですから、そういうふうにお考えになりませんか。

堀参考人 経済成長率とか物価上昇率というのは、これは予測できないですね。予測できない中で年金制度を長期的に展望する、そういう非常にジレンマを持った制度が年金制度ではないかというふうに思います。ある程度一定の仮定を設けて予測をせざるを得ない、そういう宿命を持っております。したがって、従来五年ごとに財政再計算をしてきたというのはその意味があったと思います。今後も五年ごとに財政の見直しをするということも、そのあらわれだというふうに思っております。

 従来は、必要な保険料を上げてこない、それから必要な給付水準の引き下げをしない、こういうことを繰り返してきたことも一因であって年金財政が苦しくなった、そういうこともあると思います。基本的には、私は、そういうリスクを避けるために、年金財政の安定化を図るために、保険料率を定期的、自動的に上げていく、給付水準を自動的に引き下げていくということは必要であるというふうに思っております。

山口(富)委員 今度の政府案の五年ごとの見直しというのは、これは国会審議にかけませんから、全く性格が違います。事実上、内部での調整だけでやって国民的な信を問うことは全くないんです、年金については。この点は、法案の理解としてそういうものだということをお伝えしたいと思うんです。

 最後に、鴨参考人にお尋ねしたいんですが、女性と年金の問題で非常に痛切な告発があったと思います。

 私は、これを受けとめて、今度の年金審議でも、女性と年金にかかわる問題はきちんと審議しなきゃいけないというふうに思うんですが、日本の公的年金制度の場合に、女性の置かれた社会的諸条件が非常にはっきり姿をあらわすんですね。それは、例えば働いている女性の場合でも、出産や育児に伴って退職を余儀なくされた時期があって、それで年金が将来的に少なくなるという問題が現実に生まれてきておりますし、それから御夫妻の場合も、女性と男性の年金でいきますと、女性が極端に少ないというのはもうだれが見てもはっきりしている点なんですね。

 これをどうやって改善するのかという問題で、私は、一つは男女の賃金の格差の問題、この是正が欠かせないと思うんですけれども、幾つかのかぎになる事項があると思うんですが、鴨参考人が今女性と年金の問題を考える上で、こういうところはきちんと押さえて議論をやってほしいという注文がありましたら、最後に聞かせてください。

鴨参考人 女性と年金の問題ということでいえば、やはり、女性のそもそも賃金格差の問題をどうしても問題にせざるを得ないと思うんですね。そのことが結局、最終的に年金にもはね返ってきているわけですから。

 今、現実の男性対女性の賃金格差は約一〇〇対六〇くらいというふうに言われておりますので、そこのところをきちっと同一価値労働同一賃金というふうにしていく。そして、さらにパートの問題がそこに重なってきていて、パートの労働者の賃金格差というのは、今、男性の正社員と比べたとき、約一〇〇対四〇というふうにも言われているわけです。

 そういった意味で、パートのいわゆる間接差別の問題と、パート労働者の賃金の均等待遇、同一価値労働同一賃金の問題、そういったことを、今のこの女性と年金の問題だけではなくて、パート労働法なりそれから雇用均等法の中できちんと是正していくというか、そういったことをぜひ進めていってほしいと思います。

山口(富)委員 ありがとうございました。

衛藤委員長 阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 参考人の皆様初め各委員の皆様、大変に遅い時間まで御苦労さまです。やや座席に空席が目立つということで、参考人の皆様にはかえって申しわけございませんが、なるべくもうしばらくのおつき合いをよろしくお願い申し上げます。

 冒頭、矢野参考人にお伺いいたします。

 本日の午後の論議を聞いておりまして、今回の政府の改正案に賛成か反対かを問われれば、とりあえずは賛成であるという御意見をちょうだいしたのですが、よくよく聞いていると、二〇一七年度までとにかくずっとこのまま保険料を上げていく、そしてその間国会審議はないという法案でありまして、先ほどの矢野参考人のお話だと、保険料一五%くらいがやはり何だかんだでも実際、上限じゃないか、私は非常にリアルな、リアリティーのある声だと思うんですね。

 そのほかの社会保険全般で、介護保険とか医療保険とかのネットで社会保険料総体を見ていくということで、何とかこのたび納得をされたのかもしれませんが、しかし、今回の法案は、何度も申しますが、二〇一七年度までノンストップ列車ということになっております。そのあたり、逆に、いわゆる雇用側として不安はないのか。私は、先ほど来矢野参考人の御発言を聞いておりますと、やはり古きよき日本の雇用慣行といいますか、つらいときでも何とか企業にいる人間を支えて人を育てて企業を育てていこうという向きも強く感じますし、そうなりますと、やはりノンストップバスには乗れないと。

 一八%までいってしまうこと、五年ごとの年金国会というのがあったわけですが、今度はないことになるのが今回のお約束事のように私どもは受け取っておりまして、現在、ただでも企業が法人税負担よりも社会保険料負担の方が重いんだという事実も前にしたところで、今回あえてこの法案に賛成なさるメリットとは何であるのか、お聞かせいただきたいと思います。

矢野参考人 今、社会保障制度全体が大変危機的状況にあるということが、私どもの物を考える原点でございます。何にも決めないでおくわけにはいかないだろう、そして、その時期というのはいつまでも延ばすわけにはいかないというのが二番目の前提でございます。

 そうだとするならば、ある一定の、この時点での判断をして、しかし当然そこに付随する諸問題というのがありますから、それを解決するための仕組みをつくっておくということになるのではないだろうかと思っているわけでございます。

 検討の期間、三年以内というふうに申し上げましたけれども、その中でいろいろなことが可能になってくるんじゃないか。法律については、先生方が御専門でございますので、私がいろいろ実務の世界におる者として申し上げたものを具体化するにはどうしたらいいのか、その点についてはお知恵をおかりしなくちゃならぬと思いますし、お決めいただきたいと切に願うものでございます。法律にはよく附則がついておりますし、あるいは附帯決議がなされることもありますし、いろいろな形での応用動作が可能な仕組みづくりというのはあるんじゃないかと思うんですね。そういうことをお考えいただいて答えを出していただくということが大事なんじゃないだろうかと思います。

 社会保障制度全体として考えるという視点は、ある意味では近来、今までなかったことでございますので、大きなインパクトになると思いますので、その中に多くの人の意見が入ってくれば、それが、これからちょっとの間続くかもしれない仕組みを変えるもとにもなるんじゃないだろうかということでございます。

阿部委員 極めて良識ある御発言だと敬服いたします。

 と申しますのは、例えば、何度も申しますが、今回の政府案が百年の計のものであるというふうな提案のされ方をいたしますと、やはり幾つもの不安があり、特に私を含めて野党側の不安は、この雇用情勢、特にパート、非正規、アルバイト、きょう鴨さんにもおいでいただきましたが、膨大な数、著しいスピードでふえ続けておる。そして、これが例えば二〇一七年度までノンストップでいった場合に、日本の社会は非常にもう崩壊に近くなるだろうという危機感を抱いておりますし、だがしかし、今矢野参考人の御指摘の、年金制度改革の次には介護保険、そして医療保険の改正が控えておりますから、そのあたりまでを展望してという形の提案であれば、私もある程度また論議の仕方も違うのだと思うのです。

 何だか、国会議員外の方に附帯決議の提案までいただきまして、大変に恐縮いたしますが、現実的に、現在審議していることのいろいろな現実性を持った可能性というものを強く国会議員が認識しないと、私は社会的に無責任になるのではないかと思います。

 そういう観点で、今度は、堀参考人のきょうの陳述について幾つか伺いたいのですが、堀参考人が賛成なさる最初の部分では、五年ごとに年金制度の危機と改正の必要を訴えたのでは年金の不安はとれないから、これが、五年ごとの見直しが必要がなくなるからよいのだという形での評価も、この文面から読み取れてしまうようにも思うのです。

 私は、そういう見方もあるのやもしれませんが、やはり不安定要因が余りにも強くて、特に、例えばこの間の財政再計算で、いつも御紹介しますが、平成十一年度の財政再計算と平成十六年度の再計算で、国民年金の加入者数と厚生年金の加入者数がおのおのプラスマイナス四百万ずれてしまいました。厚生年金は四百万減り、国民年金は四百万ふえと、そういうことから見ると、やはり見直しは五年だって遅かった、今大きな変動期にあると思うわけです。

 先生が幾つか指摘されている前向きな点も私もあるとは思いますが、やはりこのノンストップバスには乗れないなと思うところの一番大きな理由は、雇用労働情勢の変化でございます。先生がこの中で、しかし以下の点は今後ぜひとも実現する必要があるという御提言のある中で、短時間労働者への厚生年金の適用拡大ということをお書きいただいていますので、これは私の問題意識ともぴったりする部分ですので、では、具体的に、どのようにしていくか。

 私は、このとまらないバスに乗るなら、今からやっておかなくちゃ間に合わないと思っているのですが、このあたりの先生のお考えをお聞かせください。

堀参考人 社会経済の変化がある中で、年金制度をある程度の期間固定をするということで大丈夫か、こういうお伺いだったと思うんですが、基本的にこの法案というのは、保険料については一八・三%まで上げる、それから給付水準は五〇%程度に下がるまで引き下げていく、こういう案だと思うんですが、これは、長期的にはこれが維持できなくともそういう状態にまで持っていくということですから、これが国会で合意が得られればそこまで進む、それは少子高齢化とか経済の全体が変わってもそういった形で進む、こういう法案ではないかと思います。

 ただ、これは、一度法案を通しても、また必要があれば改正するということは国会の任務であるということで、また、私どもとしては、従来から必要な保険料の引き上げを怠ってきた、あるいは必要な給付水準の引き下げを怠ってきた、そういう事態を避けるために、自動的に引き上げていく、こういう案に賛成しているわけです。

 それから、御質問の、短期労働者への厚生年金の適用拡大ですが、これは先ほど陳述のときに申し上げましたように、世界的に非正規労働者化というのは進んでいるわけですね。諸外国でもその問題は大変悩んでおりまして、基本的には非正規労働者に対しても年金制度を適用していく、それで支え手になってもらい、かつ短時間労働者に対してもある程度年金を支給する、そういう方向に向かっております。これは、今回、政府案には盛り込まれておりませんけれども、厚生労働省案には盛り込まれておりました。

 私としては、厚生労働省案の作成に年金部会の委員として議論に加わった、そういう立場からして、厚生労働省案に賛成したい。厚生労働省案では、これは従来の短時間労働者適用基準である四分の三時間要件というのがありますね、それを二分の一に下げる、そういった形で適用拡大をしていく。それよりも短時間の人は、なかなかその把握が難しいとか、あるいは所得が低い、そういった問題もありますので、とりあえずはそういった形で適用拡大を図っていく必要があるというふうに考えております。

阿部委員 今先生に御指摘をいただいたとおりなのですが、それが理想であるのですが、現実には、人件費比率の高い分野、特にスーパーのパック詰めとか、とにかく人手をたくさん使う分野で、短時間にお人をたくさん使っているところではどうしても負担が重くなるのでという形で、半分は見送られ、あと半分は働く側の、先ほど鴨さんのおっしゃった、そもそも賃金が低いところに保険料負担は重過ぎるということがあったと思うのです。

 逆に言えば、私は、双方に解決策というのはあると思うのですが、例えば、矢野参考人がお話しになった企業の社会的責任ということにおいては、例えば労災保険などは、パートの人でも、学生でも、常用雇用でも、みんな保険料を払うという形で、とにかくお人を使っていたらその分の、いわゆる労働に対しての安全弁を企業に負担していただくというのが一つの考え方です。

 あとは、やはり女性の賃金ないしはパート、あるいはこれから働く御高齢者もそうだと思うんですが、賃金格差がどんどん同一労働について開いておりますから、そのあたりを縮小していく努力というのが非常に重要になってくると思いますが、この辺で、また堀参考人が何か御助言がございましたらお教えいただきたい。特に日本は、正規の女性の賃金の六割がパートの女性の賃金で、男性の四割という、すごい格差を持っていると思うんです。このあたりで、何とか同一価値労働同一賃金にしていく何らかのよい御助言があったら、ひとつお願いします。

堀参考人 私は社会保障が専門で、労働問題については余り詳しくないんですが、現在の労働の現状を見ると、やはり、特に男性の労働時間が多いために、女性、妻が家庭で育児、家事、介護をやらざるを得ない。要するに、男性労働者が基幹労働者で、ちょっと失礼な言葉ですけれども、女性が縁辺労働者というんですか、そういう補助的な労働をせざるを得ない。そういう構造があると、なかなか女性の労働も評価されないんではないか。

 やはり、男性の労働時間を短縮して、先ほどワークシェアリングという言葉がありましたけれども、男性も女性もそうなんですが、労働時間を減らして、ワークシェアリングをして失業率を低めるとか、あるいは女性も正規労働につく、そういったことが考えられるんではないか、そういうふうに私は思っております。

阿部委員 女性たちも、もちろん正規労働につきたいと思ってもつけない現状もありますし、ワークシェアも、理念としては提案されながら、なかなか日本の中で進んでいないわけです。

 きょうは、鴨参考人にお聞きしたい点ですが、冒頭お話しになりました、現状で、パートで働いていらっしゃる、「認めて!私の働き方」というタイトルになっていますが、その方たちにもよくよくお聞きすると、厚生年金の加入ということは、もしもこれが年収六十五万円以上、あるいは二十時間適用だったら、入りたいという方が集計上は非常に多いということでもありました。

 今の堀参考人のお話、女性も正規の職員になる道を探るのも一つと思いますし、また逆に、オランダモデルのようないろいろな働き方があるということで、女性たちも男性たちも選べる時代をつくるというのも一つと思いますが、現実にパートの労働にかかわるたくさんの方たち、実は女性だけじゃなくて御高齢者も、それから女性の中でも、昔、失礼な言い方でパートのおばちゃんと言ったけれども、今はパートのお姉ちゃんもパートのおばあちゃんもいる時代、パートのおじいちゃんもお兄ちゃんもみんないる時代になって、逆に言うと、このパートという働き方を社会的により快適なものにしていくための御提言、御提案、年金問題も含めてあれば、繰り返しかもしれませんが、お願いいたします。

鴨参考人 今、パートの働き方をより快適なものにということがありましたけれども、私も、今、いわゆるパート労働者がこれからどういうふうにしていきたいのかということをいろいろな方とお話をする機会があるわけなんですけれども、そういった中で、パートの方たちは、今の正規労働者の働き方を見ているわけです。正規労働者の方たちが、例えば週六十時間以上、もう過労死寸前のような働き方を、特に三十代、四十代の若い方たちがしているわけですね。そういった現状を見ている中で、ああいった働き方はしたくないよというのがある意味ではパート労働者の気持ちです。

 では、パート労働者はどういう働き方をしたいのですかといったら、賃金、それから、今の例えばパートだからということで労働条件が正社員の半分でもいい、そういったことに対しては不満はあります。だけれども、パート労働者は、自分たちの今の働き方、例えば正社員と比べて多少でも、自分が子供を抱えている方でいえば、子供と仕事を両立させる働き方、そして自分が人間らしい、趣味とか余暇とかを生かせる働き方、そういった働き方としてパートという働き方自体が悪い働き方ではないということも、彼女たちはしっかりと言うわけです。

 そういった中で、私は、これからそういったパート労働者が本当にきちんと自信を持って、パートだからというだけで半人前扱いされるのではなくて、仕事も一人前としてやっているわけですから、気持ちの上でも自信を持ってやっていくということでいえば、今の賃金体系のあり方というのは、今の賃金がいわゆる仕事を基準とした賃金ではないという中で、やはりきちんと職務給という概念を入れて、同一価値労働同一賃金、そして先ほども言っていましたように均等待遇ということを実現していくことも、これからのパート労働者、女性労働者、そして正社員の男性も一緒に家庭も仕事もやろうよというような働き方に変えていくキーワードではないかというふうに思っています。

阿部委員 時代は確かに大きく変わりつつあるんだと思います、女性の働き方も男性の働き方も。

 そこで、最後に笹森会長にお伺いいたしますが、働く者の仲間の代表としてずっと労働運動の現場でやってこられて、今、会長というお立場で、私もせんだって会長が出られたNHKの、たまたまぱちっとつけたら出ていらしたので、その中で、非正規雇用がフィフティー・フィフティーになっちゃうかもしれないというところも拝聴していました。

 私は、みずからが選んで、その働き方の中で、それがパートであれアルバイトであれいいのですが、今のようにそうせざるを得ない状況に雇用労働情勢から追い込まれたりすること、あるいは何の社会保障もない、病気になっても業を失っても、あるいは将来は無年金というのでは、これはやはり違おうかと思うのです。

 今、連合としてお取り組みの、特に同一労働同一賃金、あるいは均等待遇についてのお取り組みと、それからもう一つ最後に、やはり私は笹森会長も今回この案に反対のお立場だと思いますから、まとめて最後の締めの反対論をお願いします。

笹森参考人 働き方の問題としては、今御指摘のとおりなんですが、今、いろいろな年齢の層、それから男性、女性あります。日本の社会にとっては、何としても、働き方をどう変えるか、暮らし方をどう変えるかというルールとシステムのつくりかえをしなきゃいかぬ、これはもう最大の問題ですね。

 これについては、日本経団連と連合は共同歩調で総理に直接御要請したときがあります。ここは、それをお互いに目指そうよという一つの確認になっているんですが、そこの具体的な論議に入っていったときに、いつも入り口でだめになるのが、均等待遇をここで取り上げるか取り上げないか、そのことを実現するかしないか。私は、何としても日本社会にそのことをつくり上げなきゃいけない、それが最大のベースになってくるだろうというふうに思っていますので、これは連合の使命として実現に向けてというふうに思っています。

 それから、やや誘導的な御質問もあるんですが、私は、今の連合の立場からいうと、冒頭も申し上げたように、税制と社会保障すべてを一体的に見て抜本改革をどうするかというのを今やらないと、日本社会が本当におかしくなってしまうということなんです。今までやってこられたのは、パッチワーク的に、これが財源足りない、これもどうしようかというところの中で、負担と給付はそれぞれが受給する側にとって不利益になるような、そういう制度だったんですね。

 今度、そこの中で出されているものは、私は、ちょうど連合の案が中央に位置するねという御評価もいただいているようでありますので、願わくば、抜本改革のない負担増と給付の削減については、これは反対だ。だから、この国会の中で何としても抜本改革をなし遂げて、税と社会保障をトータルの問題としてやれよと。その場合に、では、その負担の問題と給付の問題を暫定的にどう取り扱うのかというのが当然出てきます。だから、それをぜひ国会の中で皆さん方で結論を早く出していただければというふうに思っております。

阿部委員 押しつけがましい質問をしましたことをおわびして、しかし、いい御答弁をいただきましたことに、御意見をいただきましたことに感謝して、終わらせていただきます。

衛藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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