衆議院

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第3号 平成16年10月29日(金曜日)

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平成十六年十月二十九日(金曜日)

    午前九時六分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      河野 太郎君    菅原 一秀君

      高木  毅君    谷本 龍哉君

      寺田  稔君    中西 一善君

      中山 泰秀君    葉梨 康弘君

      原田 令嗣君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    内山  晃君

      大島  敦君    小林千代美君

      小宮山泰子君    城島 正光君

      園田 康博君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      水島 広子君    横路 孝弘君

      米澤  隆君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   厚生労働大臣政務官    藤井 基之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 太田 俊明君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十九日

 辞任         補欠選任

  石崎  岳君     谷本 龍哉君

  福井  照君     寺田  稔君

  三ッ林隆志君     高木  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     三ッ林隆志君

  谷本 龍哉君     石崎  岳君

  寺田  稔君     葉梨 康弘君

同日

 辞任         補欠選任

  葉梨 康弘君     福井  照君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働組合法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第八八号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 第百五十九回国会、内閣提出、労働組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、尾辻厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 労働組合法の一部を改正する法律案につきましては、さきの通常国会に提出し、現在、継続審査となっているものでございますが、本法案の附則に条文の誤りがあったことについて、深くおわびを申し上げます。もとより、こうした誤りはあってはならないものであり、今後、法律案の作成におきまして、こうした誤りを繰り返さないよう、再発防止策を徹底してまいります。

 重ねて、誤りがありましたことについて陳謝申し上げます。

鴨下委員長 この際、お諮りいたします。

 本案につきましては、第百五十九回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 労働組合法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鴨下委員長 お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房審議官高橋満君、医政局長岩尾總一郎君、政策統括官太田俊明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城島正光君。

城島委員 おはようございます。民主党の城島でございます。

 きょうは労働組合法の改正についての論議なんですけれども、どうしてもこの部屋に入りますと、ちょうど半年前ですね、四月、あの例の年金、我々は改悪と申しておりますが、年金の問題で、この十六委員室で熱い論戦を闘わせたなというのがつい先日のように思い出されますし、当時の委員長も副大臣としてお座りですし、筆頭もいられるわけであります。またちょうど、あの法案にのっとってやると、厚生年金の保険料率が今月から上がる。いよいよ現実的な国民負担がスタートを切った月でもあります。やはり今振り返ってみても、この年金問題というか年金のことを頭に入れると、いまだに血が騒いでくるんです。

 先日も大臣に我が党の横路委員が言っていましたけれども、今、年金問題にしても、あるいはこの間ずっとやってきた雇用部分についても、私自身が一つ強く問題意識を持っているのは、政策の原点になっている、例えば小泉改革の中でいうと、総合規制改革会議だとかいうことを代表例に、いろいろな審議会、いろいろな委員会があります。小泉さんが、痛みを伴う構造改革、こう言って、国民の皆さんに痛みを分かち合おう、こうおっしゃっている。

 しかし、私から見ると、重要な政策の決定に影響を与えるそうした会議、審議会のメンバーの多くは、その痛みのらち外にいる、そうでしょう。らち外にいる。どちらかというと、あえて言えば、そういう政策が進めば、自己利益にはつながるけれども、痛みを負うという立場にはないような人が圧倒的に多く、いろいろなもっともらしいことを言って、そういう政策の実現に影響力を与えている。

 結果として、痛みを負っているのはまじめな国民であり、庶民であり、勤労者であり、こういう構図がずっと続いている中の一つとして、私はこの年金問題もあるというふうに思っているんですよ。(発言する者あり)そこには異論があるかもしれません。しかし、全体的な今の流れはそういうところにある。特に私は、年金問題以外でいえば、この雇用問題を含めて、最大の国民生活の安定、安心、福祉は、仕事を与えるということですからね。

 そういう中で、この労働、厚生部門における政策のあり方というのは本当に、庶民というか、あるいは勤労者というか、そういうまじめに生活している人たちにぜひ光を当てた政策に、あえて言えば軌道修正させるとか、軌道修正するというところをしっかりと大臣にはやっていただきたいという要望をまず申し上げたいと思います。

 もし何か御見解があれば、承りたいと思います。

尾辻国務大臣 御趣旨を踏まえて、しっかりやっていきたいと存じます。

城島委員 ぜひよろしくお願いします。

 それでは、労組法に質問を移ります。

 冒頭、大臣から、この法案の誤りについて謝罪がございました。年金問題のところでも膨大な条文ミスがありました。この労組法以外にも、実はこの臨時国会にかかっている法案で、四本、同じようなミスが見つかっております。こういう審議に入る前の段階ということもありますが、もう二度とこういうことのないように、先ほどそういうふうにおっしゃいましたけれども、ここも強く申し上げておきたいというふうに思います。

 労組法について何点か質問をさせていただきたいと思いますが、これは言うまでもなく、労働委員会というものは、不当労働行為、これを救済して集団的労使紛争の解決を図るために労働組合法に基づいて設置された、いわゆる公労使、この三者構成による行政委員会であるわけであります。不当労働行為というのは、そのものがもう違法である。裁判においても、解雇における損害賠償や、あるいは従業員たる地位の確認といった救済は可能なんですけれども、司法とは別に、こうした行政委員会として労働委員会をつくった、この背景には、公労使三者の専門的な知識経験者が三者構成をして、労働委員会としての特色を発揮しながら、不当労働行為を簡易かつ迅速に、実効的に救済しようという背景があるというふうに理解をしているわけであります。

 しかし、御案内のように、最近では、裁判所における労働関係事件の審理期間というのが、裁判所においては大幅に短縮されてきている、改革が進んでいるわけであります。一方、労働委員会においては、二十年、三十年前から審理の遅延、おくれということが問題視されてきたにもかかわらず、この部分についての改革が行われてこなかったという点は、大変重要な問題だというふうに思っております。

 今申し上げたように、労働委員会の本来の使命というのは、簡易性であり、迅速性であり、実効的救済という点にあるわけであります。今回の改正論議は五十五年ぶりという改正論議でありますけれども、本来の労働委員会の趣旨に照らして、何といっても審理の遅延を解消するというところが喫緊の課題であると私は思っておりますし、恐らく、今回のこの改正の背景にもその点があるというふうに思われます。

 不当労働行為などに象徴される労使紛争の発生、あるいは紛争の長期化というものは、労働者側が苦労するというのは当然でありますが、それだけじゃなくて、経営側もそのことによって経済的あるいは精神的な負担が生ずるわけでありますから、憲法に認められている団結権、団体交渉権及び団体行動権というものを労働者に保障して、無用な労使紛争の発生、そして紛争の長期化を防止するということは、社会全体にかかわる政策としても重要だろうというふうに思っております。その意味でも、この労働委員会の審査の迅速化、充実というものは、昨今再び増加しつつある労使紛争の早期解決という社会的使命にもこたえるものではないかというふうに思っております。

 今回の改正で、不当労働行為審査制度の在り方研究会、ここにおいても指摘をされたいわゆる五審制、地労委、中労委、そしてそれで不満の場合は司法に訴えるということで地裁、高裁、最高裁、事実上そこまで行くとすれば五審制だ、こう言われている問題、あるいは実質的証拠法則というようなテーマについては残念ながら抜本的な改革は行われていないという点は、私は率直に言って、今回の改正は問題だな、不十分だなというふうに思っているわけであります。しかし、今回の改正は、改革の通過点ということでは一定の前進があるというふうに、トータル判断としては思っているところであります。

 そこで、大臣にお尋ねしたいわけでありますが、私が今申し上げたような今回の改正の背景とか、あるいは労働委員会の役割の中で、何といっても審理の迅速化及び充実というのは最大のポイントだというふうにとらえておりますが、この点についての大臣の御見解を承りたいというふうに思います。

尾辻国務大臣 裁判の場合は、どうしても白黒きっちり決着をつけるというところがあります。それに対して、審査の方は、まず主眼とすべきは労使関係が長期にわたって良好な関係を保てるようにという、ややその性格の違いがあるとも思います。その審査に求められることがありますので、どうしても和解が多くなる、和解が多くなるということはやや迅速化に欠ける、そこのところを何とかしようというのが、今度の改正の主眼でございます。

 そういう意味で、迅速化を図るというのはおっしゃるとおりでございますので、とにかくそのことに向けて、法律の改正もいたしましたし、また、運用面でも努力をしなきゃいけない、こういうふうに考えております。

城島委員 そういう点で言うと、後ほど場合によっては触れるかもしれませんが、今申し上げた五審制の問題とか実質的証拠法則といった問題については、やはりちょっと抜けた点は残念だなという感じが率直に言ってしているわけでありまして、これはいずれにしても今後の重要な検討課題だろうなというふうには思っているところであります。

 そこで、今回の改正ポイントである審理の迅速化あるいは充実にあるという観点に即して、改正案の中身について幾つか吟味をさせていただきたい。また同時に、ちょっと懸念される点を含めて御提案を申し上げたいというふうに思います。

 まず一点目は、証人等出頭命令等に対する不服申し立ての件でございます。

 今回の改正案に盛り込まれた証人出頭命令、物件提出命令、いわゆる証人等出頭命令等については、これは一定の評価をするところであります。しかし、この証人等出頭命令等に対する不服申し立て、この制度についてお伺いしたいというふうに思います。

 すなわち、地労委から証人等出頭命令等が出された場合、命令を受けた側は中労委に対して審査請求を出すことができる。これを中労委が審理して、理由があると認められるときは取り消す仕組みができることになっているわけでありますが、中労委が命令を出した場合は、中労委に異議申し立てができて再検討を求めるという手続が今回入れられましたね。

 それで、率直にお尋ねしたいんですけれども、労働委員会内部における不服申し立ての中で、中労委に対して不服を申し立てた場合、一体どれぐらいの期間で審理が行われるんでしょうか。その期間についてお尋ねしたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のございました、証人出頭命令等の不服申し立ての処理期間でございますけれども、まず、都道府県労働委員会の物件提出命令に対しまして不服申し立てが行われた場合には、お話ございましたが、中央労働委員会におきまして、不服審査を迅速に行う観点から、書面により行うこととしております。

 具体的にどのぐらい期間がかかるかという点でございますけれども、これは独立行政委員会たる中央労働委員会が行うものではございますけれども、私どもがこの不服審査制度の創設を検討するに際しまして考えておりましたことは、現在、中央労働委員会の公益委員会議が月二回行われておりますので、こういうことを前提としますと、不服審査の申し立ての後、次々回、次の次の回の公益委員会議において処理されるケースが多くなるのではないかというふうに想定しているところでございます。

城島委員 ということは、現実論で考えると、一番最長で約一カ月程度ということですね。大体二週間から一カ月以内ぐらいというところが想定される。想定されるというより、これは迅速化という点からすると、もうほとんど原則的に次々回までに結論を出すというような姿勢をぜひ持っていただきたいと思いますが、どうでしょうか。

太田政府参考人 今の点、次々回ということで一月程度を想定しておるわけでございます。基本的には独立行政委員会たる中央労働委員会の判断になるわけでございますけれども、私どもといたしましても、できる限りこの不服申し立ての処理の迅速化ができるように努力をしてまいりたいと考えております。

城島委員 これは一つ大きなポイントでありますから、ぜひそこは、迅速化のポイントとして重要な点でありますから、次々回までにはというようなことで、できるだけ短期間のうちに結論を出すということを徹底していただきたいというふうに思います。

 もう一点、これに関してなんですが、証人等出頭命令等に対する不服申し立てについては、労働委員会だけではなくて裁判所にも不服の申し立てができるのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

太田政府参考人 今お話のございました証人出頭命令等でございますけれども、これは基本的には国民に行政上の義務を課す行政処分でございますので、当該命令の名あて人の裁判を受ける権利を保障する、こういう観点から、当該命令に対する行政事件訴訟法による訴えの提起を認める必要があるということから、訴えの提起が認められているところでございます。

城島委員 そうした、裁判所にも不服申し立てができるということになりますと、懸念されるのはやはり審査の遅延ということになるわけですね。

 例えば、昇進に関して組合の活動家だということだから差別されたという事件、これは結構あるわけでありますが、例えば、そういう事件について一定の人事考課資料が物件提出命令の対象になった場合、使用者は、中労委に対しても不服申し立てができるが、今の答弁でいくと、裁判所に対しても不服申し立てができるということになるわけですね。

 裁判所は、現実を考えると、一つ一つ労働委員会の提出命令の適法性というものを審査することになれば、その間、労働委員会の審査は事実上ストップをするということになる。結果として審査が長引いてしまうということになるんじゃないでしょうか。今回の改正案の趣旨である迅速化ということが阻害されるんじゃないかというふうに思うんですね。

 大臣にお尋ねしたいんですけれども、この不服申し立てのため行政訴訟事件が頻発するということになれば、迅速化ということとは相反するんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがですか。

衛藤副大臣 審査全体の迅速化を図るためには、労働委員会が出しました出頭命令、物件提出命令等に対しまして、できる限り取り消しの訴訟が行われないようにすることがやはり重要でございまして、そういう意味では、解釈通達等により、具体的に私どもはちゃんと迅速化のことをやらなきゃいけないというぐあいに思っております。

 しかし、あくまでもこの提出命令等は行政上の義務を課す行政処分でございますから、裁判を受ける権利を保障するためには、やはり当該命令に対する行政事件訴訟法による訴えの提起を認めざるを得ないというように思っていますので、認めるということと、そして同時に、審査の遅延を生じないようにということをやらなければいけないというぐあいに思っております。

 そのためにも、解釈通達等により、具体的にこの命令の要件や手続の内容等を示さなければいけないし、また同時に、提出命令等が認められた事例や認められなかった事例等を整理、集めまして、それを周知するということも重要ではなかろうかというぐあいに思っているところでございます。そういうことを通じて、不服申し立ての処理の迅速化について努めなければいけないというふうに思っておる次第でございます。

城島委員 私は、行政訴訟事件が頻発をしていくということになりますと、やはり迅速化の流れに逆行することになりかねないということを危惧しているわけであります。

 すなわち、労働委員会とすれば、一つ一つ裁判所に不服申し立てが出されるというようなことになればですけれども、そうなれば、煩わしさゆえに証拠提出命令を出さないとか、結果として出せないということにつながりかねなくて、制度はできても、ほとんど活用とか機能しなくなる可能性が出てくるんではないかという危惧をしているわけであります。迅速な事実認定が今回の改正における最大の眼目であるにもかかわらず、こうした訴えの提起を認めることで、事実上、証人等出頭命令等という制度が使えなくなるおそれはないのかどうか。この点は、非常に今後の中で危惧される点だなというふうに思っています。

 また同時に、裁判所側からしても、労働委員会としての結論としての命令についてではなくて、審査の過程、プロセスにおける証人等出頭命令等について一々判断を求められるということになれば、たとえ証人等出頭命令等の違法性についての審査とはいえ、かかる案件に関する資料はすべて取り寄せ、判断せざるを得ないんだろうということになりますから、本来でいうと、労働委員会の中で完結してほしいという声が裁判所の中で出てきても私はおかしくない話ではないかなというふうに思っています。

 繰り返しますけれども、この証人等出頭命令等の導入の目的というのは、あくまでも紛争の早期解決ということであると思います。異議申し立てはきちんとやらなければならないし、それは、今回の改正案において中労委に対する申し立てというのは整備され、担保されているわけでありますから、私は、この異議申し立ては、無理のない、三者構成の利点を生かした制度だというふうに思っております。

 しかし、労働委員会内部における異議申し立て機能がありながら、一方で行政訴訟が乱用されるということになれば、紛争の早期解決という意味においてこれは逆行になる。また逆に、紛争の解決を意図的におくらせるための行為ととらざるを得なくなるケースも出てくるのではないかというふうに思っております。

 早く紛争を解決したいというのは労使とも同じ思いのはずですが、そもそものところで、この証人等出頭命令等を活用できなければ、行政訴訟における証拠提出制限も意味がなくなってしまうどころか、事実上骨抜きの規定になりかねないという点は、この法案の危惧する点としては最大のものだというふうに私は思っております。

 そこで、お尋ねしたいのでありますけれども、この証拠提出命令、これは非常にいい制度に今回はなると思うんですね。このいい制度ができるのに、実際には裁判に訴えを起こすことができるという道があって、これが乱用されれば、この制度は生きてこないというばかりか、かえって審査の迅速化という趣旨から大きく外れる可能性があるんじゃないか。ここは、何度も繰り返しますが、この改正案の危惧する点としては一番大きな問題点だというふうに私は思うんですけれども、この点の問題認識について、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 御指摘いただいておりますように、審査全体の迅速化を図りますためには、労働委員会が発出いたしました物件提出命令等に対し、できる限り取り消し訴訟が行われないようにすることが重要でございます。このため、物件提出命令やこれに対する取り消しの訴えが適切に行われるよう、先ほど来申し上げておりますように、物件提出命令の要件や手続の内容を、解釈通達により、具体的に示すこととしたいと考えております。

 また、同様に、物件提出命令等が認められた事例、認められなかった事例を収集、整理して周知することも有効であると考えておりまして、これらの対応を推進することにより、不服申し立ての処理の迅速化に努めてまいりたいと考えております。

城島委員 また、実は、この法案をつくるに当たっての建議、「労働委員会の審査迅速化等を図るための方策について」の建議を読みますと、この「不服審査手続」の項目の中に、「不服審査については、その手続の迅速化に十分配慮することが必要であること。」こういう一文があるんですね。

 この一文、これについては、それでは、この法案のどこにこの一文の趣旨が生かされているというふうに理解したらいいんですか。もう一度言いますが、「不服審査については、その手続の迅速化に十分配慮することが必要であること。」建議の中で述べられているんですけれども、この一文はこの法案の中のどこに生かされているということでしょうか。

太田政府参考人 今先生から御指摘のございました、処理を迅速にするために法律上どういう手当てをしているかという点でございますけれども、これは改正法の二十七条の十で不服申し立ての処理手続を定めておりまして、これにつきましては、都道府県労働委員会の証人出頭命令等を受けた者は、証人等出頭命令等について不服があるときには、その命令を受けてから一週間以内という期限を切った上で、その理由を記載した書面、書面という形で中央労働委員会に審査を申し立てることができるということでございまして、期限を切った上で、かつ書面でということで、簡易迅速に処理ができるように規定をしているところでございます。

城島委員 究極的には、証人等出頭命令等に対する不服審査は労働委員会内部で完結するということとして、証人等出頭命令等に対して訴えの提起ができないというふうにしなければ、結果的には、やはり裁判所に訴えることはできることに当然なるわけでありますから。この訴えの提起ができないとする類似の規定は、御案内だと思いますけれども、既に昭和四十五年の公害紛争処理法の中に実は盛り込まれている規定なんですね。例がないわけではないんです。

 したがって、例えばこの労組法の改正案に、公害紛争処理法と同じように、証人等出頭命令等については行政事件訴訟法による訴えを提起することができないという趣旨の規定を入れることは考えられないかどうかという点があると思うんですが、この点についてはどうですか。

太田政府参考人 今先生御指摘の、公害紛争処理法に基づく手続でございますけれども、確かに、公害紛争処理法に基づく物件提出命令あるいは証人出頭命令等につきましては、行政事件訴訟法の適用が除外されているわけでございます。

 しかしながら、これは極めて例外的な取り扱いでございまして、他の行政委員会、まだほかに例が十ぐらいございますけれども、他の行政委員会の各種手続における物件提出命令等におきまして適用が除外されている例はございませんで、かつ、公害紛争処理法は昭和四十七年改正でその手続ができているわけでございますけれども、それ以降に物件提出命令等が設けられた手続は多数あるわけでございますけれども、行政事件訴訟法の適用が除外された例はないわけでございます。

 これは、先生御案内のとおり、結局、簡易迅速にやるのか、あるいは国民の権利を保障するか、そういうバランスの上で成り立っているものでございますけれども、基本的にはやはり、国民に義務を課す処分でございますので、裁判を受ける権利を保障するということが非常に大きなポイントになっているのではないかと思います。

 なぜ公害紛争処理法の方が認められているかということでございますけれども、公害紛争処理法の場合には裁決という形で判断が下されますけれども、その裁決の拘束力と、それから今回の不当労働行為審査の命令の拘束力、この拘束力の違いにあるんじゃないかと思っております。公害紛争処理法の方の裁決は、罰則もありませんし、拘束力が余り強くない。一方で、命令につきましては、拘束力がありまして、履行義務があるということでございまして、そういう観点から裁判を受ける権利を保障している、こういうことではないかと考えております。

城島委員 では、流れとしては、ほかのものとの違いというのは、確かに独禁法などは訴えの提起を否定していないということでありますが、今言ったような公害紛争処理法のように比較的新しい法律においては、行政委員会の制度に関して訴えの提起を否定する仕組みをつくっているわけなので、ここには、行政委員会という独自の救済制度をつくるのならば、できるだけそのプロセスを尊重していこうという考え方があるのではないかというふうに思うわけであります。これは私、何度も繰り返すように、非常に危惧するところなので、今後の状況というのをしっかりチェックしていく必要があるというふうに思っています。

 施行後の検証が必要だというふうに思いますが、大臣、この必要性については、必要だというふうにお考えいただけるんでしょうか。

尾辻国務大臣 物件提出命令等の不服審査手続の導入に当たりましては、これも先ほど来申し上げておりますが、解釈通達の発出等により不服申し立ての処理の迅速化に努めることとしておりまして、今、審査の遅延を懸念するには及ばないと私どもは思っております。

 しかしながら、仮に証拠提出命令等に対する不服審査手続が審査の遅延を来すことになりますと、これは今回の法律改正の趣旨を損ねることになりますので、不服審査手続の施行状況につきましては、今、施行後のお話でございますから、これを的確に把握いたしまして、必要があると認められる場合には、当然、検討を行いたいと考えております。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

城島委員 ぜひ、これは施行後、注目しながら運用実態をチェックしていっていただきたいと思います。

 次に、和解についてちょっと御質問をしたいと思います。

 労働委員会の事件の七割は取り下げ、和解で解決しているという報告がありますが、今回の改正で和解を法文に入れて法的に位置づけた理由あるいは根拠、これをまず御説明いただきたいと思います。

太田政府参考人 ただいま先生からお話のございました和解でございますけれども、和解による解決は、当事者の自主的合意に基づくものでございまして、救済命令等による解決に比べまして、労使関係を長期的に安定させる効果が高いというふうに考えられます。また、お話ございましたように、実際にも、不当労働行為事件の大多数が和解によって解決をされているところでございます。

 このため、今回の法改正によりまして、和解による解決の手続及び法的効果を法律上明確に規定することによりまして、和解による解決を一層促進しようというものでございます。

城島委員 今回の改正案を見ると、和解というのも一定の前進があるところだなというふうに思っていますが、第二十七条の十四に規定される和解において債務名義とできるのは、「金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付」というふうになっていますが、この債務名義とできるのは、金銭以外の支払いでは可能なんでしょうか、できないんでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 和解の債務名義効でございますけれども、今回の私どもの法案では、和解の債務名義効を金銭支払い等に限定しているところでございます。

 これは、労働委員会による和解調書の作成手続には、裁判所におきます実体関係の審理を経ていないということでございますので、仮に不当な執行が行われたとしましても、その損害についての原状回復が容易な請求権に限定する必要があるということで、和解の債務名義効を金銭支払い等に限定しているところでございます。

城島委員 しかし、労働委員会における和解には、かなり多面的な側面があるというふうに思っています。労働委員会における和解というのは、民法上の和解とはその性質が異なる側面があるんじゃないでしょうか。

 すなわち、和解の内容には、昇進、昇格の命令とか、あるいは、何月何日をもって会社のどこそこを組合事務所として貸与するとか、あるいは、解雇を撤回し、何月何日から何々職場に復職させるといった復職命令、あるいは、もとの原籍に復帰させるというような、そういう復職命令もあるわけであります。団体交渉などは強制執行になじまないと思われるわけでありますが、金銭以外であっても、使用者の義務として明確に特定された和解内容について、和解の効力の範囲を広げることはできないかなというふうに実は思っているところであります。

 というのは、現在、和解内容の履行についてでありますけれども、これはあくまでも相手方に期待する以外にはないわけですね。実際、私、ヒアリングして、こうした問題に携わっている弁護士からの代表的な事例として申し上げますと、例えば、ある病院における不当労働行為について、労働委員会から、だれだれさんを何月何日付をもって何々の部署に復職させるということについての和解案が出されて合意をした、しかし、その後、その理事長が、それは病院長が勝手に和解したことだということで、これが不履行となってしまった。そこで、裁判所に、こういう和解協定書ができているんだけれどもということで復職命令を求めて、裁判所命令が出されたものの、それでも履行されない。それで、裁判所が過料制裁を科してようやく復職が実現した。

 例えばこういうケースがあるわけでありまして、こうしたことも、具体的な和解内容が債務名義として認められていれば、裁判所に訴えなくても済んだのではないかというふうに思うわけでありますが、和解内容、債務名義の範囲の広がり、これは大臣、だめですか。

尾辻国務大臣 これまで御答弁申し上げましたように、和解調書に債務名義効、強制執行を付与する範囲の拡大や和解条項の不履行に罰則を適用することは、今、私どもは困難であると考えておりますが、和解がその趣旨に沿って活用されるよう、和解条項の履行状況につきましては、これを的確に把握いたしまして、必要があると認められる場合には今後とも検討を行いたいと考えております。

城島委員 具体的な和解内容というのが債務名義として認められないというのが政府の現段階のお考えのようでありますが、和解協定の不履行というのは、救済命令等の不履行と同様に、いわゆる心情的には過料制裁に値するほどの問題があるんじゃないかというふうに私は思っているんです。

 労働委員会の関与について、第二十七条の十四の第二項の条文にも、こういう表現になっているわけですね。「救済命令等が確定するまでの間に当事者間で和解が成立し、当事者双方の申立てがあつた場合において、労働委員会が当該和解の内容が当事者間の労働関係の正常な秩序を維持させ、又は確立させるため適当と認めるときは、審査の手続は終了する。」したがって、私は、和解の不履行というのは、繰り返しますが、救済命令等の不履行とほとんど同様の意味がある、したがって、心情的には過料制裁に値するんじゃないかというふうに思っています。

 先ほど述べたように、そもそも労働委員会において和解は、労働委員会の関与のもとで行われているわけでありますから、これまでも、命令同様、重要な解決策としてこの和解が位置づけられてきたわけであります。また、労働委員会における和解は、まさにそれがちゃんと実行されるということが前提とされているわけでありますから、その履行の見込みがあるからこそ和解が行われるわけでありますから、一部の心ない相手によるまれなケースであるかもしれませんが、不履行によってもたらされる結果とダメージというのは、救済命令違反と何ら変わらないというふうに私は思っております。

 そこで、私は、そういう観点からもう一度、ちょっと本質的な問いをさせていただきますが、今回の改正前後で、政府としては、和解の持つ意味というのはどういうふうに変わっているのか、あるいは変わらないのか、もう一度ここについては御説明いただきたいと思います。

太田政府参考人 今お話のございました和解の意義でございますけれども、先ほどお話ししたとおり、現行の労働組合法では和解について規定は設けられていないわけでございますけれども、これまでも不当労働行為事件の大多数が和解によって解決されているところでございまして、和解による解決が、長期的な労使関係の安定の確保に大きく寄与してきたと言えるのではないかと思っております。

 今般、和解につきまして法律上明記されることによりまして、和解による事件解決が一層促進されることが期待されているところでございまして、今後とも、和解が長期的な労使関係の安定の確保のために大変重要な役割を担うのではないかと考えているところでございます。

城島委員 そういう点からしても、和解条項の不履行というのは、和解により紛争を早期に解決しようとする当事者の努力を、ある面では無意味なものにしようとしていることになるわけでありますから、この和解の不履行については、私は非常に重要な問題を投げかけているのだろうというふうに思います。

 今回の改正案によれば、和解条項の違反に対しては和解条項の履行を求める民事裁判を提起するという方策が対処方法としてあると思いますが、そうしたことでいくと、またこれも先ほどの遅延と同じように、必然的に事件の解決をおくらせることになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点についてはいかがですか。

太田政府参考人 先生お話ございましたように、確かに和解につきましては、当事者で自主的に合意したわけでございますので、その合意に基づいて履行する義務があるわけでございまして、そういう観点から、やはり義務違反については問題が残るところでございます。

 ただ、しかしながら、御案内のとおり、労働委員会の確定命令等に違反した場合は、これは行政処分に対する義務違反として罰則が科せられているわけでございますけれども、一方、和解につきましては、これは当事者間の自主的な合意でございますので、その不履行は相手方に対する民事上の義務違反でございまして、履行義務はあるわけでございますけれども行政上の義務違反ではないところから、罰則を科すことができないというふうにされているところでございます。

 実際、民事訴訟における裁判上の和解につきましても、同様に、不履行につきましては罰則は適用されていないということでございまして、やはり法的には、先生御案内のとおり、行政処分に対する義務違反なのか、あるいは民事上の義務違反なのか、そういうことでこのような体系になっているというふうに考えているところでございます。

城島委員 和解が不履行となった場合に、和解の成立によって中断した救済命令の審理手続を例えば再開して、和解条項の不履行後、迅速に救済命令を出すようにする。その救済命令の審理に際して、和解の内容及び和解条項が遵守されなかった事実を考慮するなどの方策によって、和解を何らかの形で、特にこの和解の不履行についてですけれども、労働者保護に結びつけるというような方策というのは、これは考えられないんでしょうか。

太田政府参考人 今の和解についての考え方でございますけれども、今の改正法案でございますと、二十七条の十四でございますけれども、ここで、和解が成立して当事者間双方の申し立てがあった場合におきまして、その「和解の内容が当事者間の労働関係の正常な秩序を維持させ、又は確立させるため適当と認めるときは、審査の手続は終了する。」というふうにされておりますので、今の法律の基本的な考え方は、和解が成立してこのような手続がとられた場合には審査の手続は終了するという形で、法的には整理されているところでございます。

 ただ、先生御案内のとおり、裁判所に和解の不履行につきまして訴えが提起された場合には、労働委員会が作成しました和解調書がある場合には、やはり当事者の合意の存在を証明するような有力な証拠として取り扱われるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。

城島委員 先ほど一点目で言った証人等出頭命令等についても、迅速化という点から、やはり今後の施行後の運用というものをチェックしていく必要があるというふうに要請を出させていただきましたが、この和解不履行についても、不履行後、迅速に救済命令を出すことができるような体制ということも今後検討していく必要があるんじゃないかというふうに思います。

 特に私の方から、大きく言うとこの二点ですね、証人等出頭命令等についての行政事件訴訟法による訴えの問題、そして和解不履行についての問題、これはぜひ施行後の見直しということをしていただきたいという要望を申し上げて、質問を終わらせていただきます。

鴨下委員長 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 本題の質問に入る前に、大変恐縮でございますが、大臣、副大臣、政務官にそれぞれ二問お尋ねしたいことがございます。

 まず、第一問、皆さんの年金の未加入期間はございますでしょうか。そして、第二問目として、今まで迂回献金や旧橋本派からの献金を受けた事実がありますでしょうか。恐れ入りますけれども、よろしくお願いをいたします。

尾辻国務大臣 まず、年金の問題をお答えいたします。

 さきの通常国会では、与野党ともに、国会議員が強制適用となりました昭和六十一年四月以降で、国会議員になった後の期間について加入状況の公表がなされております。この期間が与野党の共通の土俵で公表したと思いますから、まずそれについて申し上げますと、私は、平成元年に国会議員になりましてから、未納、未加入はございません。しかし、私個人として、去る九月二十七日、大臣就任の際の記者会見におきまして、厚生労働行政をお預かりするに当たり、私のこれまでの、本当に過去の生き方そのものでもあるんですけれども、含めて理解していただくことにかかわることでありますので、年金のことはしっかりその前の期間についてもお答えをするというふうに申し上げておりますので、この機会に申し上げておきたいと存じます。

 その後の調査したことも含めまして改めて申し上げますと、私、県議会に籍を置いたことがございますが、県議会議員時代に、厚生年金の加入事業所間で移ったことに伴い、昭和五十八年三月が未納になっております。

 また、昭和五十九年八月に勤めていた会社をやめ、厚生年金を脱会した後、六十一年八月まで保険料を納めていなかった時期がございます。このうち、六十一年三月までは、国会議員に国民年金の加入義務はなかったものでございます。

 さらに、それ以前がございますが、昭和三十六年十月に、私、実は防衛大学を中退いたしておりまして、三十九年四月に東京大学にまた入学いたしました。その間は加入義務がございますけれども、保険料未納の期間がございました。これは、当時失念したといいますか、正直言いまして知らなかったのではありますけれども、大変申しわけないことだったと存じております。

 それから、迂回献金のことでございますが、これはございません。

 それから、旧橋本派からの献金があるかというお尋ねでございますが、私、まさにその派閥に属しておりましたから、献金があったことは事実でございます。

衛藤副大臣 私の年金加入状況について申し上げますと、基礎年金制度が導入され、国会議員に国民年金の加入義務が生じた昭和六十一年四月以降では、平成二年三月から平成十四年一月までの十一年十一カ月、未納期間がございます。これは、平成二年の二月の衆議院議員初当選時に手続を失念したものでございます。

 さきの通常国会の厚生労働委員会におきましても、おわびを申し上げましたところでございますが、ここで改めておわびを申し上げる次第でございます。

 迂回献金や旧橋本派からの献金があるかということでございますが、一切ございません。

西副大臣 お答え申し上げます。

 衆議院に初当選いたしましたのは十一年三カ月前でございますが、平成五年七月から現在において、年金保険料の未納はございません。

 さらに、迂回献金については、ございません。

 以上でございます。

森岡大臣政務官 お答えさせていただきます。

 私は、当選させていただきましたのが平成十二年の六月でございまして、このときから、満六十歳になりました平成十五年一月までの間、年金保険料の未納期間はございません。

 また、政治と金の問題で、迂回献金があるかどうかというお尋ねでございますが、全くございません。

 そして、私は、尾辻大臣と同じ平成研究会に所属しておりますので、平成研究会からの献金はございます。

藤井大臣政務官 私は、平成十三年夏の第十九回の参議院選挙で議員になりました。それ以降、年金保険料につきましては、未納も未加入期間もありません。

 迂回献金、また、旧橋本派からの献金もございません。

 以上です。

内山委員 ありがとうございました。

 それでは、本題の質問に入らせていただきます。

 私は、長年、現在も社会保険労務士をしているわけでございまして、数多くの中小零細企業は切っても切れないぐらいのつながりがございます。その方たちの現場の実態を、少しお話しさせていただきたいと思います。

 中小零細企業というのは、ほとんど組合がございません。そういった中、最近は、セクハラ、嫌がらせ、新タイプのいろいろ事例がございます。そして、パワーハラスメント、こういったこともございます。

 労働組合がない従業員に対するいわゆる不利益な取り扱いがなされた場合には、政府はどのような対処をするつもりなのか、お伺いしたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 労働組合がない中小零細企業で不利益な取り扱いを受けたときにはどういう対応があるのかということでございますけれども、私ども厚生労働省におきましては、平成十三年の十月より、個別労働関係の紛争解決に向けまして、各都道府県の労働局に窓口を設けまして、相談、情報提供のほか、助言指導、さらには、紛争調整委員会を設けまして、あっせん等を内容とする個別労働紛争解決制度の運用を行っているところでございます。

 御指摘のありました中小零細企業で組合がない場合に、個々の労働者と事業主との間で、例えば、不当解雇とかそういう形で労働関係紛争が発生した場合には、紛争の当事者から申し出があった場合には、同制度の的確な運用を行うことによりまして、迅速かつ適正な解決を図っていくこととしているところでございます。

 実際に、平成十五年度の利用状況を見ますと、助言指導のうち、三百人未満規模の事業場の者の申し出の割合が九〇・七%ということで、九割を超えておりますし、あっせんにつきましても、九一・四%、九割を超えているということでございまして、中小零細企業における利用状況は大変多くなっている、こんな状況でございます。

内山委員 ただいま御説明いただいた以外に、実は合同労組というものもあると思います。私が説明するまでもないと思いますけれども、日本の場合、大部分の企業ないし事業所を単位とする企業別組合があるわけですけれども、合同労組は、これまで日本で比較的少ない企業外組合であります。解雇された従業員がにわかに合同労組に加入し、あるいは、さらに加入月数をさかのぼり、合同労組に交渉してもらうことにより、復職または有利な退職条件を獲得しようとする、言ってみれば、労組版駆け込み寺みたいなものがあります。

 このような合同労組を通じての申し込み、申し立て件数というのをお伺いしたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話がございましたように、合同労組の場合には、企業の枠を超えまして、主に、中小企業の労働者を一定の地域単位で組織して、個人加入できるような組合でございます。

 その平成十五年におきます不当労働行為の申し立て件数でございますけれども、まずは、地方労働委員会に対する初審の申し立て件数が百九十六件、それから、中央労働委員会に対する再審査の申し立て件数が二十四件、こんな状況になっているところでございます。

内山委員 御答弁いただいておりますけれども、この合同労組に対する申し立て件数というのは、年々増加の一途をたどっているというふうに考えてよろしいんでしょうか。その理由、また、その対策というのはどうなっていますでしょうか。例えば、合同労組を隠れみのにして悪質な仲介料を取り立てる、そういった事例等報告がございますでしょうか、お尋ねをしたいと思います。

太田政府参考人 今お話のございました合同労組の申し立ての状況でございますけれども、初審の場合には百九十六件と申し上げましたけれども、平成十五年で五三・九%でございますので、半数を超えるという状況でございます。それから、再審の方は平成十五年で二十四件で、これは三六・九%、三分の一を超えるという状況でございまして、大変多い状況でございます。

 こういう形で大変事件数が、割合が多くなっているというのは、御案内のとおり、バブルの崩壊を境にリストラが進展している、こういった状況に加えまして、企業内労働組合に一般的には加入の少ないパート労働者や派遣労働者が増加しているということも、要因の一つではないかと推測されているところでございます。

 今御指摘がございました隠れみのになっているような事件につきましては、私ども、現時点においては把握をしていないところでございます。

内山委員 実際、私のところには、こういう合同労組に駆け込み寺で行ったところ、法外な解決一時金を取られた、こういった報告も来ておりまして、この辺も一つ御報告をしておきたいと思います。

 続きまして、今回の改正法の最大の目的というのは、地労委の審査の迅速化であると思います。その観点からすると、例えば、中央労働委員会の状況を見ますと、法令上の委員定数は十五名で、うち公益委員は二名以内が常勤可能となっています。しかし、現在は十五名全員が非常勤となっています。これは間違いないでしょうか。

太田政府参考人 現在、十五名公益委員がおりますけれども、全員非常勤ということでございます。

内山委員 どうして中労委は、二名以内であれば公益委員が常勤可能なのに、十五名全員が非常勤なのでしょうか。義務づけられていないからでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 常勤委員につきましての経緯を若干申し上げますと、二人以内を常勤とすることができるという規定になっておりますけれども、この規定につきましては、もともとは、国営企業職員の労働関係の状況を調査させることができるように、国営企業労働委員会につきまして置かれていたものでございますけれども、昭和六十三年に中央労働委員会と統合されたわけでございます。統合の際に、統合後の中労委が国労委の機能を引き続き維持できるようにする必要性があるということ、それからもう一つは、常勤委員の配置は不当労働行為事件に係る審査の迅速化にも役立つということで、統合後の中労委に引き継いだものでございます。

 ただ、しかしながら、常勤を置かなかったということでございますけれども、これは、昭和六十三年以降、審査の迅速化に向けまして、昭和五十七年の労使関係法研究会に基づきまして、運用面を中心としました改善の取り組みが行われていたことから、その推移を見守ることといたしまして、常勤委員の配置を行わなかったということでございます。

 ただ、今般の法改正にあわせまして、平成十七年、来年の一月から、複雑困難事件の集中処理等を行うために、中労委に常勤の公益委員二名を置くこととしているところでございます。

内山委員 地方労働委員会定数についてですが、東京が十三名、大阪が十一名、北海道、福岡が九名、神奈川、愛知、兵庫が七名、その他府県が五名となっており、法律上も全員が非常勤となっています。今回の改正で中労委同様に公益委員は二名以内を常勤とすることが可能となります。

 そこで、お伺いしたいのですが、実際、中労委ではいろいろと事情があると今御説明がありましたけれども、常勤者がいないために、審査のおくれがたびたび指摘されているわけであります。言うまでもなく、他の仕事とかけ持ちでやっているということは、やはり審査がおくれるのは当然だろうと思います。

 地労委にも公益委員二名以内を常勤とする規定を設けましても、中労委同様に常勤者を確保できないということでは、審議がおくれる、妨げになる可能性も十分あるわけで、この点をどのように対処されますか。

太田政府参考人 今お話ございましたように、今般の改正におきまして、各都道府県におきまして、条例によって二人以内の常勤の公益委員を配置できること、こういうふうにしたところでございます。これは、各地域の実情によりまして、充実した審査体制の整備ができるようにしたところでございます。

 御案内のとおり、各都道府県、不当労働行為の審査件数に随分ばらつきがございますので、実際に常勤の公益委員を配置するか否かにつきましては、各都道府県において現状の審査状況等に基づきまして判断されるものではないかと考えております。

 実際に、今の非常勤の体制でも、東京都の場合にはかなり審査件数が多いということで、非常勤ではございますけれども、例えば週三日とか、かなり常勤的な対応もやっているところでございまして、それぞれの各都道府県におかれまして審査状況に基づいて判断がされるのではないか、適切な対応がなされるのではないかというふうに考えているところでございます。

内山委員 不当労働行為の審査において、現在、証拠物件の収集等のための実効性ある手続が整備されていないと思います。現行法に報告、帳簿書類の提出を求めることができるとの規定がありますが、労働委員会の委員全員で行う総会の付議事項となっていることから、使用者委員の反対が予想されて、この規定はほとんど使えない状況であります。

 事実認定に必要な証拠の確保という観点から、今回の法改正に、公益委員が合議により証人の出頭、物件の提出を命じることができるという規定が書かれたことは評価できますけれども、また、物件の提出を求める際、個人の秘密及び事業者の事実上の秘密の保護に配慮しなければならないと、プライバシーの保護に配慮されておりますけれども、証拠物件として具体的に人事考課や賃金台帳が考えられる場合、当該本人と比較対象となる従業員の部分について、プライバシーの侵害の観点から、これをどのような取り扱いにするのか、疑問を感じます。

 この場合、人事考課や賃金台帳が物件提出命令の対象になるかどうか、具体的にお伺いしたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 人事考課文書あるいは賃金台帳が物件提出命令の対象となるかということでございますけれども、これらの人事考課文書あるいは賃金台帳につきましては、これは労働者の格付でございますとか賃金等における格差の有無を認定するためには不可欠な場合があるということでございまして、物件提出命令が事実認定の的確化を目的として設けられたことにかんがみれば、一定の観点でプライバシーの配慮は必要でございますけれども、基本的には物件提出命令の対象になるというふうに考えているところでございます。

内山委員 第二十七条の七の第一項にある事業者の事業上の秘密の保護の配慮の規定についても、物件提出命令を行うかどうかを決定するに当たり、一定の基準を示していただかないと、実効性のない骨抜きの規定になってしまうおそれがあるのではと思っています。

 そこで、個人の秘密及び事業者の事実上の秘密に該当するものとは一体何か、一定基準、目安を示すことが必要と考えられますけれども、この点についても具体的に御説明をお願いします。

太田政府参考人 法律で定められました個人の秘密または事業者の事業上の秘密でございますけれども、これは、一般的には、個人に関する情報または事業者が事業上保有する情報であって、社会通念上、外部に知られたくないものと認められるものでございます。

 具体的に申し上げますと、個人的なメモでございますとか会社の稟議書は、一般的には個人の秘密または事業者の事業上の秘密に該当すると考えられるのではないかと考えております。ただし、既に公知の事実である場合や、外部に知られても問題がないと考えられる場合は、これに該当しないというふうに考えております。

 こういった趣旨につきましては、解釈通達におきまして具体的に明示いたしまして、その周知を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

内山委員 改正案では、労働委員会段階で証拠提出命令を受けたにもかかわらず当該物件を提出しなかった者は、労働委員会に提出しなかったことにつき正当な理由がある場合を除き、労働委員会の命令に対する取り消し訴訟において当該物件について証拠の申し出をすることができないとの規定が設けられています。

 この規定により、労働委員会における審査の的確化が期待されるところでありますが、正当な理由があれば取り消し訴訟への証拠提出は制限されないということになっておりますけれども、この正当な理由というのは、これまた具体的なことでお尋ねをしたいと思います。

太田政府参考人 今、先生から御指摘ございましたように、改正法の二十七条の二十一で証拠の申し出の制限がございまして、「物件を提出しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。」というふうな制限がございます。

 この場合の正当な理由でございますけれども、これは、天災地変や提出を命じられた物件の所在不明などによりまして、所持者に故意過失なく提出が不可能な事情があったことをいうというふうに考えているところでございます。

内山委員 天災地変ということではなく、例えば、そのときには見つからなかった、ただし取り消し訴訟時に見つかった、そういった場合には、この取り扱いはどうされますでしょうか。

太田政府参考人 今お尋ねの、物件提出命令時に提出すべき物件が見つからなかったときにどうなるかということでございますけれども、これはケース分けがされるんじゃないかと思っておりますけれども、例えば、物件の所在不明によりまして所持者の故意過失なく提出が不可能だったという場合には、正当な理由があって、当該物件を取り消し訴訟に提出することができるのではないかと考えております。

 一方で、提出を命ぜられた物件を見つけることができなかったことにつきまして過失があった場合には、正当な理由があるとは言えず、当該物件を取り消し訴訟に提出することができないというふうに考えております。

 私どもは、こういうことにつきまして、証拠の提出制限の適切な運用に資するように、法の具体的な内容の周知に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます

内山委員 ただいまのお答えで、過失のありなしというのは、これはどなたが御判断なさるんですか、どの基準で。

太田政府参考人 取り消し訴訟でございますので、裁判所に行ってからの判断でございますので、裁判所の判断としてそういう判断がなされるということでございます。

内山委員 わかりました。

 今改正案と社会保険労務士法第二十三条の因果関係についてお伺いをしたいと思います。

 そもそも、労働争議不介入を定めた社会保険労務士法第二十三条は、昭和四十三年当時、労働争議が頻発する中で、争議屋なるものが幅をきかし、労使の信頼関係を損なう事態が生じ、国家資格を持つ社会保険労務士が争議に不当介入し、正常な労使関係を損なう危惧があるということで同規定が策定されたとのことですが、しかし、今日の労働情勢を勘案しても、社会保険労務士の業務を制約し、さらに個別労働紛争に関するADRの業務に一層の障害となり、社会保険労務士の業務は言うまでもなく公正であり、公平に行われ、このことこそ、能力とともに社会に広く理解されているところであると思っています。特に、開業の社会保険労務士に限った、このような争議不介入を定めるのは、法制上極めて不自然と言わざるを得ません。

 平成十年四月、労働委員会で、社会保険労務士法改正に当たり、政府委員からこの二十三条について、制定当時は合理性があったが、労使関係が安定している今日、厳格な規定が必要かどうか、議論の余地があろうとの答弁がなされています。

 また、平成十四年七月、参議院厚生労働委員会においても同様に、この二十三条が改正案に盛り込まれなかったことについて、政府参考人は、早期に実現が図られるよう厚生労働省としても適切に対応していきたいと述べておられます。

 この点について、いかがでございましょうか。率直な御意見をお伺いしたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 社労士法第二十三条の規定、今御指摘ございましたように、労働争議に対する不介入という規定でございますが、今委員のお話にもありましたとおり、制定当時のさまざまな状況の中で、特に国家資格を持って仕事をなさっておられます開業社会保険労務士さん、こういう方たちが労働争議という労使の集団的な紛争にかかわりを持っていくということは、職務の公正性、公平性に疑いが持たれるのじゃないかということ、また、本来自主的に解決をすべき労働争議をかえって複雑化するおそれがあるのじゃないか、こういうようなことで設けられた規定だというふうに理解をいたしております。

 ただ、この規定自体、設けられた当時の状況から見れば、もしかすると合理性があったということだと思われますが、しかし、法制定後既に三十五年余が経過をしておる今日の状況を見ますと、社会保険労務士制度そのものは社会の中で定着をしてきておるわけでございますし、社会的評価も高まっておるというふうに考えております。また、社会保険労務士会自体も、信頼の保持を図るための措置というものも講じてきておるわけでございます。

 かてて加えて、労使関係そのものも当時と比べますと大変安定をしておる状況にあるわけでございまして、そうしたことを考えますと、私ども、この二十三条の規定につきましては、見直しが重要な課題であると受けとめておるところでございます。

 また、司法制度改革推進本部のADR会議の場におきましても、全国社会保険労務士会連合会から、この撤廃について要望がなされておるということも承知をいたしているところでございます。

 私どもといたしましても、今御指摘がございましたとおり、これまで国会の場におきまして御答弁させていただいてきたところでございますが、まさに同じような受けとめ方をしておりまして、できるだけ早期にその見直しの実現が図られますよう、関係者の理解を得るべく、引き続き私どもも努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。

内山委員 ありがとうございます。早期によろしくお願いを申し上げたいと思います。

 続きまして、ことし四月に労働審判法が成立し、現在、施行に向けた準備を進めているところと考えます。この法律で、裁判官たる労働審判官一名と、労働関係の専門的な知識経験を有する者である労働審判員二名で組織する労働審判委員会で処理することとしているわけです。

 この労働関係の専門的な知識経験を有する労働審判員とは、具体的にどのような人を想定しておりますでしょうか、お答えをお願いします。

太田政府参考人 今お尋ねがございました労働審判法の労働審判員でございますけれども、私どもで把握している限りでお答え申し上げたいと思います。

 平成十五年の十二月十九日に開催された司法制度改革推進本部の第三十一回労働検討会におきまして、労働者としての知識経験を有する者、あるいは使用者としての知識経験を有する者、こういう形で了承されている、こういうふうに把握しているところでございます。

内山委員 この中のどちらにも該当しませんけれども、社会保険労務士というのはその中に含みますでしょうか、どうでしょうか。

太田政府参考人 直接の担当ではございませんので、私どもの把握している限りでお答えを申し上げますけれども、社会保険労務士の方が、労働者としての知識を有する者、あるいは使用者としての知識経験を有する者、こういう方にそれぞれ当たれば該当してくると思いますけれども、社会保険労務士であるということそのもので直接これらのものに該当するということではないのではないかというふうに考えているところでございます。

内山委員 私が社会保険労務士だからこそ言うわけじゃないんですけれども、実際、中小零細企業の労務管理というのは一番よくわかっているんですね。ですから、労使ともに、やはり紛争に至る前の労務管理がしっかりしていればこういう問題にならない。こういう部門の第一人者だと思います、もちろん年金のことも第一人者だと思っておりますけれども、ぜひこの中に社会保険労務士というのも加えて御検討いただければ、こう思う次第であります。

 大臣、御所見を。

尾辻国務大臣 個別労働関係紛争が多くの職場で発生し、年々増加しております状況にかんがみますと、裁判での解決のみならず、紛争の実情に即した迅速な解決を図ることができる裁判外の紛争処理制度が適切に機能することが必要であると考えております。

 社会保険労務士は、人事、労務管理等の豊富な知識経験及び専門性をお持ちでございますから、例えば、個別労働紛争解決促進法に基づき、都道府県労働局に設けられた紛争調整委員会のあっせんにおいて当事者の代理人となることなど、裁判外の紛争処理を通じた紛争の解決に際しても、一層の活用が図られることが有意義であると考えております。

 先ほど年金について御答弁申し上げたときに、一点訂正させていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 先ほど、このうち六十一年三月までは国会議員には国民年金の加入義務はなかったものであると申し上げましたが、私、当時県議会議員でございまして、県議会議員には国民年金の加入義務はなかったものであると訂正させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

内山委員 大臣今お言葉をいただきましたとおり、労使紛争解決に社会保険労務士をこれからも大いに活用をしていただければと思います。そして、二十三条の撤回にもぜひ大臣御努力をいただいて、問題解決を、非常に大きくしないためにも、ぜひもう一度大臣から、二十三条の撤回に関して御答弁をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 検討をさせていただきます。

内山委員 大臣から力強い検討をしていただくという言葉をいただきましたので、ぜひ高橋審議官の方、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 少し私は時間が早いですけれども、ここで終了させていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、小林千代美君。

小林(千)委員 民主党の小林千代美です。

 今国会から厚生労働委員会のメンバーになりましたので、初質問となります。よろしくお願いをいたします。

 私も、ここの場所に入りますと、どうしても、さきの国会のここの委員会での年金の審議を思い出さざるを得ないわけなんですけれども、そのときは私は一傍聴者でございまして、今度はメンバーとして年金審議に加われるということを大変楽しみにしておりますし、やはり今の国民の一番の国政にやっていただかなければいけない課題というのは、年金の問題であったり、今の雇用の問題であったりということが重要な問題だと思うんですけれども、どうも今回の小泉改造内閣、この国民の思いとは乖離したところに組閣をされているのではないかと思うわけでございます。

 郵政民営化、これを実現する内閣だというふうに小泉総理もおっしゃっていましたし、あの本会議での所信表明演説の中でも、一番冒頭に挙げられてきたのが郵政民営化でした。

 そこで、厚生労働委員会のメンバーの閣僚の皆様方に二つお尋ねをいたします。大臣、そして両副大臣、両政務官それぞれにお尋ねいたします。

 皆様方は、郵政民営化について賛成でしょうか、反対でしょうか、第一問。そして第二問、自民党に郵政懇話会という会があるそうですけれども、皆様方はそこのメンバーなのでしょうか、入っていないのでしょうか。それぞれお答えください。

尾辻国務大臣 まず、郵政民営化に賛成か反対かということでございます。内閣の方針に従いまして、一致して臨んでまいりたいと存じております。

 次に、自民党の郵政懇話会に入っているかいないかということでございますが、加入するか否かについては、まさに個人の問題でございまして、私が閣僚であるということとは直接関係ないと思いますので、ここでお答えすることは控えさせていただきたいと存じます。

衛藤副大臣 郵政の民営化につきましては、利用者であります国民の立場に立ったサービスが確保されるとともに、効果的、効率的な事業運営がなされるものとすることが重要だと考えておりますが、いずれにいたしましても、内閣の方針に従って、一致して臨んでまいりたいと思っております。

 郵政懇話会につきましては、大臣と同じでございまして、懇話会に加入するか否かについては、個人の問題でございますので、副大臣ということとは関係がないというように思っておりますので、お答えする必要はないんではないかというように考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

西副大臣 お答え申し上げます。

 郵政民営化につきましては、利用者、国民の視点に立った上で推進していくべきだというふうに考えております。

 あとの、懇話会のことにつきましては、自民党のことでございますので、私は該当いたしません。

森岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 郵政民営化についてのお尋ねでございますが、私もやはり、厚生労働大臣政務官という職責をいただいているわけでございますから、内閣の方針に従って、一致して進んでいきたいと思っております。

 ただ、個人的に感想を申し上げますと、今小林委員がおっしゃいましたように、郵政民営化が、国民的視点に立って、いい改革なのか、それともサービスが悪くなるのかというようなことは、よく考えていかなければいけない問題であると思います。与党の中でも議論がございますし、野党の皆さん方の中でも議論があると伺っております。また、国民の皆さん方にとって本当に必要な改革であるのかどうかということが、まだ政府からも説明責任が果たされていないというようなことを考えますと、これからも、私も含めて、勉強していきたいな、そんなふうに考えているところでございます。

 また、自民党の郵政懇話会に入っているかどうかということでございますが、大臣や副大臣がお答えになりましたとおり、これは議員個人の問題じゃないかと思いますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 以上です。

藤井大臣政務官 お答えいたします。

 まず、郵政民営化についてでございますけれども、これにつきましては、大臣等の御見解と同様でございますが、各方面からの御意見を伺いながら、内閣の方針に従いまして、一致して取り組んでまいりたいと考えております。

 自民党の郵政懇話会に入っているか否かの御質問につきましては、大臣からの答弁と同様でございますけれども、加入するかしないかの問題は、議員個人の問題でございまして、大臣政務官としての業務とは関係ないと考えておりますので、お答えすることを差し控えます。

小林(千)委員 今回の組閣につきましては、それこそ、この閣僚の人選というのは、まあ一種のサプライズであったというふうに私も思っております。

 国民のニーズというものが今どこにあるのか。先ほど、郵政民営化については、皆様方、多くの方は、内閣の方針に従ってというふうにおっしゃっておりましたけれども、やはり国民のニーズというものを一番に考えて行っていただきたいと強く申し上げたいと思います。

 そして、今回は労働組合法の一部改正でございますけれども、先ほど城島委員が申し上げましたとおりに、この条文に過誤がありました。今回提案されているほかの法案にも過誤が認められております。また、さきの年金、私たちは改悪と言っていますけれども、年金改革法につきましても同じようなミスがございました。これは本当に、今回につきましても、正誤通知で済ませられる話ではないと思っております。

 このところは強く申し上げて、しようがない、今回は見逃しておきますけれども、片目をつぶって。今後こういうことのないように、意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 やっと本題に入れます。

 まず最初にお伺いをいたします。

 この労働組合法、昭和二十四年に一部改正してから、実に五十五年間そのまま、法改正もなく来たわけでございます。その間、労働委員会に一番求められていた簡易性、迅速性というものがどんどんと失われていったこの五十五年間でした。

 その中で、昭和五十七年には、「労働委員会における不当労働行為事件の審査の迅速化等に関する報告」というものがなされております。これについてだって、二十年前なんですけれども。そして、平成十五年には、「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会報告」というものも提出をされました。そして、実は私、法務委員会の方にも所属をしているんですけれども、今まさに司法制度改革真っただ中でございまして、その司法制度改革審議会の意見書、これは平成十三年に出されたものですけれども、その中でも、この労働委員会のあり方というものに意見がされているところでございます。

 これらの意見や報告といったものがどういうふうに踏まえられて、今回の五十五年ぶりの法改正となったのでしょうか、お伺いをいたします。

太田政府参考人 これまでの検討の経緯についてのお尋ねでございますけれども、今お話ございましたように、不当労働行為の審査制度につきましては、近年、審査期間の長期化が著しく、また、労働委員会命令に対する司法審査における取り消し率が大変高い水準になってきております。

 最近の経緯につきまして、かいつまんで申し上げますけれども、平成十三年六月の司法制度改革審議会の意見書におきまして、労働関係事件への総合的な対応の強化の観点から、救済命令に対する司法審査のあり方につきまして、労働委員会のあり方を含め、早急に検討を開始すべきとされたところでございます。

 こうしたものも受けまして、十三年の十月から、学識経験者による研究会において検討が行われまして、十五年七月、昨年の七月に、審査の迅速化、的確化を実現するためには、労働組合法の改正を含む制度の抜本的な見直しが必要、こういう報告が取りまとめられたところでございます。こういう報告を受けて、労働政策審議会の部会で、これは公労使三者構成でございますけれども、検討が行われまして、十二月に厚生労働大臣に建議がなされたところでございます。

 一方で、同じ十二月でございますけれども、お話ございましたとおり、司法制度改革推進本部の労働検討会におきましても、救済命令の取り消し訴訟における新証拠の提出制限の導入が適当である旨の取りまとめがなされたところでございます。

 私ども厚生労働省におきましては、こういった指摘を踏まえまして、審査の迅速化及び的確化を図るために、審査計画の作成でございますとか小委員会制の導入などの労働委員会の審査手続、それから体制整備等を内容とする改正法案を取りまとめまして、さきの通常国会に提出したところでございます。

小林(千)委員 法改正がされた昭和二十四年当時は、初審では平均して九十三日、三カ月ぐらい、再審査でも約五カ月ぐらいで処理ができていた。ところが、もうこの間五十五年たって、初審については二年、再審については四年かかるというような状況になっております。ぜひとも今回のこの法改正で、この期間の短縮というものが本当に現実化される法改正であっていただきたいと思います。

 次の質問に移りますけれども、今回のその目的、迅速化ということと、そしてもう一つは、やはり審査の適正性と申し上げますか、取り消し率が余りにもほかの行政訴訟に比べて高い、不服率も高い。このような、労働委員会の出した結論に対する制度の信頼性をどう高めていくかということが、今回の法改正の大きな観点だと思っております。これを実現させるためには、もちろんさまざまな制度が今回導入をされたわけなんですけれども、公益委員あるいは事務局体制というものもともに充実をされなければ、この的確化や迅速化というものはできないのではないかと思います。

 それで、まずは公益委員についてお伺いをいたします。

 中労委、今十五名の方々で構成をされております。先ほど内山委員が質問をされていらっしゃいましたけれども、そのうちで二名、今までは必置ではなかったのが、今回は二名が常勤化されるということですが、この常勤化される方々、先日の本会議で合意人事案件で可決されましたけれども、この十五名の方々の中から選ぶわけですか。十五名の方々から選ぶわけですよね、二名の常勤委員というのは。それは一体、どこでだれが任命をするのでしょうか。

 といいますのも、この公益委員が本会議で可決されたときは、まだこの法案は通っていないわけでございまして、一体これからどういった機関でこの常勤公益委員という方々は決められるわけでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話のございました常勤委員でございますけれども、これは、今お話のございました、やはり審査の迅速化、的確化の観点から、一つは、みずから複雑困難な事件を担当して、集中的な審査期日の設定等によりましてその迅速な処理を図ること、それからもう一つは、同一企業複数係属事件につきまして、各公益委員が担当する審査案件を調整、統括すること、こういった役割が期待されるところでございます。

 このような趣旨を踏まえまして、内閣総理大臣が、種々の要素を総合的に勘案しまして、常勤委員としての適任者を、国会の同意を得て任命することになるわけでございます。

 現在の中央労働委員会委員の任期が十一月十五日で満了することから、先般、次期公益委員として任命する者につきまして、一月から常勤となる二名を明示した上でお示ししまして、国会の同意をいただいたところでございます。

小林(千)委員 この常勤化される公益委員の方は、給与が月額で百十四万六千円だそうです。びっくりするような金額なんですけれども。この常勤の公益委員の方、今言っていただいたような資質でしっかりと仕事を果たしてもらわないと困るわけなんですけれども、こういった公益委員の人選というものは適切なんでしょうか。

 見てみると、官僚出身の人も含まれているわけなんですけれども、公益委員の人選というものは適切に行われているか、それを伺いたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 公益委員の人選でございますけれども、この中央労働委員会は、公労使三者構成で労使関係の紛争調整を行うという大変重要な機関でございますので、その公益委員につきましては、労働関係につきまして専門的な知識経験を有する者の中から、種々の要素を総合的に勘案しまして、内閣総理大臣が適任者を国会の同意を得て任命するということでございますので、私どもとしては適切な任命がなされているというふうに考えているところでございます。

小林(千)委員 それから、今後の課題にもなると思うんですけれども、今回の法改正の中で、審級省略といったことは入ってきませんでした。やはり、司法から尊重される労働委員会というものをつくっていかなければいけないと思います。そのためには、労働委員会の出す処理あるいは決定について、どう準司法的な手続がある程度組み込まれていくかということが私は必要なんじゃないかなというふうに思うんです。

 例えば、公益委員のメンバーの方に現職の判事の方などを入れて、こういった準司法化手続というものを一歩進め、さらに進めて、その結果、将来的には審級省略、地裁省略といったこともできるようなシステムにしていった方が、迅速化というのはよりよく進められるのではないかと私は思うんですけれども、この公益委員に法曹関係者を入れることについてはどのようにお考えでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 公益委員は十五名いらっしゃいますが、その十五名のうち、判事あるいは弁護士等の経験者も含めまして、法律の専門家は十一人おるところでございます。やはり、こういう準司法手続機関でございますので、法律的な知識あるいは労働関係の知識、そういう方がおられるということが適当であるということで、このような人選がなされているのではないかと考えております。

 ただ、現職の判事を入れるかどうか等につきましては、他の準司法的手続機関におきましても、必ずしも現職の法曹資格者が出向している例は見られないわけでございまして、私どもとしましては、そういう点も勘案しまして、現職を出向させることにつきましては今後の検討課題にさせていただきたいと思っております。

小林(千)委員 ぜひ、これは積極的に取り組んでいただきたい内容だなというふうに私は考えております。

 続いて、事務局体制についてお伺いをいたします。

 この迅速化、適正化を図る上で、争点整理、立証計画、証拠調べみたいなことが重要視されてくるわけでございます。これはやはり、まるで裁判所の書記官のような仕事の面もあると思いますし、かなりの法的知識あるいは専門的知識が要求をされる事務局員でなければいけないと思いますけれども、今現在の事務局員の方々は、どういった形でそこに採用されているのでしょうか。労働委員会として採用されているのか、それとも、厚労省の皆さん、職員の方々が出向みたいな形になっているのか、そして平均どのぐらいそこで勤続して経験を積んでいるのか、教えてください。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 事務局職員につきましてのお尋ねでございますけれども、まず、採用につきましては、厚生労働省で一括して採用いたしまして、その中で適任の者を選びまして、ローテーションで出向させているということでございます。

 それから、在籍年数でございますけれども、一般的なものにつきましては、おおむね二年ないし三年のローテーションでございますけれども、やはりここは準司法的な手続を行う機関でございますので、先生御指摘のとおり、専門的な知識経験が必要だということで、例えば十年以上の在職経験を有する者は九人ぐらいおりますし、最長の者は三十二年というような形でございますので、できる限り、その専門的な知識経験が生かされるような人事なりローテーションを行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

小林(千)委員 適任の者を出向して二、三年のローテーションということをお答えいただきましたけれども、ある仕事を覚える上では、二年、三年たったらようやっと仕事を覚えたかな、ちゃんと仕事を一人前として働くには、やはり五年、七年ぐらいは必要なのじゃないか。さらに後輩の指導ということまで考えると、やはりある程度の経験を踏まないと、争点整理、立証計画、証拠調べといったような事務的な作業というものはなかなかうまく進まないのではないかと思います。ぜひ、この事務局体制につきましても、専門性を今後さらに深めていくという観点からの人事配置というものを強く望みたいと思います。

 次に、地方労働委員会に対して質問をいたします。

 この間、集団的労働紛争というものも、一時期よりはかなり数がふえてまいりました。もちろん、数が減った方がいいとは思うんですけれども、余りにも数が少ないというもの、これはいかがなものかなというふうに思うわけでございます。

 例に出して申し上げますと、平成十五年度、昨年度、不当労働行為の審査事件、新規の申し立てですけれども、四十七の都道府県のうち、昨年一年度一件も新規申し立てがなかったというのが九つの都道府県であります。そして、十五の都道府県では申し立ての件数がわずか一件です。ですから、九足す十五で二十四。四十七の都道府県のうち半数は、年間、申し立てがないか、あっても一件程度、こういう現状になっております。そして、具体的に名前を出して申しわけないんですけれども、島根県では平成十一年度から昨年度まで連続五年間ゼロ件、こういったところもあるわけなんですね。

 では、こういった申し立ての件数がないところは労働紛争が起きていないのか。必ずしもそうではないと思います。先ほど申し上げました島根県では、都道府県の労働局に寄せられている総合労働相談というのは、一年間に千二百七十九件あります。この千二百七十九の中には、もちろん電話相談だけで終わったものもあるでしょう、あるいはあっせん、調停というところまで行ったものもあるかと思います。しかし、これだけの実績があるのに、労働委員会に寄せられているのはゼロないし一。これは、地労委というものがそこでちゃんと正常に活性化しているのかな、私はこういった疑問を抱かざるを得ません。

 もちろん、各地方自治体の裁量ですとか独自性というものは重要視していかなければいけないんですけれども、やはりこの地労委が十分に機能するために、皆様方も積極的に提言ないし助言をしていく必要があるのではないかと思いますけれども、この点、現状をどのようにお考えになっているでしょうか。

太田政府参考人 地方労働委員会についてのお尋ねでございます。

 地方労働委員会におきましては、不当労働行為事件のほかに、その約二倍に上ります労働争議の調整事案を処理しているところでございます。例えば、今お話のございました島根の地労委でございますけれども、この労働争議の調整事案、平成十五年では四件、ここ六年間では二十件程度の調整事案を処理しているところでございまして、調整事案につきましては一定の活用が図られているところでございます。

 ただ、お話ございましたように、不当労働行為案件についてはゼロということでございまして、不当労働行為事件がないのが一番いいわけでございますけれども、やはり不当労働行為事案が発生した場合には地方労働委員会が十分機能を果たすということが大切でございますので、先ほどお話ございました、労働局に寄せられた総合労働相談の場、あるいは今般の法改正の内容につきましても十分周知をいたしまして、必要な場合には地労委の機能が十分活用されるように、私どもも努力してまいりたいと考えているところでございます。

小林(千)委員 ぜひ積極的な取り組みをよろしくお願いします。

 そして、今回の法改正、中労委ももちろんなんですけれども、今度、地労委じゃなくて都道府県労働委ですね、地労委についても、公益委員のあり方、あるいは事務局体制の充実化というものは同様に図られなければいけないと思います。

 もちろん、地労委は国から独立しているものであり、その独自性というものは尊重されなければいけないとは思いますけれども、この法改正による各地労委に対する研修や指導といったものはどのような形でされているか。各地労委ごとでばらつきがあってもこれは困ると思いますし、これはどのように対応されていく予定でしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、新たに、中央労働委員会が都道府県労働委員会に対しまして助言、研修その他の援助を行うことを規定したところでございます。

 その具体的な内容でございますけれども、まず一つは、不当労働行為事件の審査実務に係る具体的なマニュアルの作成あるいは提供を考えております。それからもう一つは、事務局職員に対する審査実務に係ります研修の実施。先ほど来お話ございましたように、やはり実務の研修が大事でございますので、研修を実施していきたいということでございます。それからもう一つは、過去の例、不当労働行為事件に関する命令とか裁判例を整理いたしまして提供していきたい。こういうことを実施することを予定しているところでございます。

小林(千)委員 ぜひ地労委に対しましても積極的に、活性化、適正な意味で活性化していくように、お願いを申し上げておきたいと思います。

 最後になりますけれども、今この労働紛争というものの数がふえてきている、そして、かつてと違いまして、個別労働紛争につきましても、雇用体系の変化ということで、内容も大変複雑化をしてきているところでございます。

 この労働紛争の解決方法といたしましては、今回のこの労働委員会のほかにも例えば法的な措置もあるわけで、民事裁判というのもありますし、労働審判制というものも二年後から始まることになります。また、都道府県の労働局による個別労働紛争解決制度というものもあるでしょうし、ひょっとしたら今後、今法務委員会でADR、裁判外紛争解決、こちらを法案審議しているところですけれども、民間型のADRということも民民の労働紛争解決に一つ役割を果たすのかもしれません。

 こういったさまざまな労働紛争解決の手段があるわけなんですけれども、それはやはりそれぞれの独自性、特性というものを持っていると思います。この中で、これから労働委員会が果たすべき労働紛争解決というものはどういった特性を持っているのか。

 今回、労働委員会の準司法化ということも言われておりますけれども、全くの司法化になってしまっても私はいけないと思うんですよね。司法のように権利義務だけでばっさりと切られるよりも、長期的な、いい労使の関係というものを築き上げる上での労働委員会の果たすべき役割は、私は大変大きいのではないかなというふうに思うわけでございますけれども、これからのこの労働紛争解決のさまざまな手段の中で、労働委員会の果たすべき役割とその特性というものについて、やはり最後、大臣から、どういった方向にしていかなければいけないのか、お話を伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 労働委員会は、労働者の団結権等の保護、集団的労使紛争の解決を図るための行政委員会でございまして、長期的に安定した労使関係を維持確保する上で、重要な役割を担っているものでございます。ここのところが大変大事だと思っております。特に、不当労働行為審査制度におきましては、公労使三者構成という特質を生かしながら、全体の八割近い事件が和解により解決をいたしておりますし、また、命令による解決の場合でありましても、裁判とは異なり、不当労働行為の再発防止措置など、将来の労使関係の基盤を確立する観点から命令が出ております。

 今回の法改正によりまして不当労働行為事件の審査の迅速化、的確化が図られることにより、長期的な労使関係の安定を確保する上で、労働委員会が果たす役割は、一層その重要性を増していくものと考えております。

小林(千)委員 今回、迅速化、適切化という観点から、今までかかっていた初審、再審査の二年、四年というのがどれだけ短縮されるのか、あるいは不服率や取り消し率というものがどれだけ低下するのかというものを、今後注視をしていかなければいけないなというふうに思っております。

 また、今回見送られた課題もございまして、例えば、いわゆる五審制の課題をどういうふうに解消して早期に解決をすることができるのか。そして、実質的証拠法則の導入、それから緊急命令の運用の見直し等が今回見送られた内容にもなっているわけなんですけれども、ぜひとも、これからの労働委員会というものが、民訴化するのではなくて、司法の機関から尊重される労働委員会制度というふうになっていただけますように、また五十五年間ほっておかれることがないように、一言意見を申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。

鴨下委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 私からも、前国会で提案されておりました労働組合法の一部を改正する法律案の質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 ただ、昨日でございますが、基本的な社会保険あるいは社会保障制度にかかわる厚生労働委員会あるいは厚生労働省の基本的な姿勢として、さまざま、今回、大臣の御答弁を私もつぶさに拝見をさせていただきまして、大変誠実な方で、国民の生命と健康を守るという厚生労働の行政に対して、本当に前向きな御答弁をされていらっしゃるということを私も感じまして、ぜひ私も、人間、人と人とのかかわり合いというのはやはり信頼関係が第一番に来るものであるという観点から、少し基本的な姿勢に対して、若干疑問を持たせていただいたことがありましたので、その件からまず御質問をさせていただきたいと思っております。

 一昨日でございますけれども、一般質問の中で、同僚の中根康浩議員からの質問で、地方にございますけれども、社会保険事務局及び事務センターというものが設置をされておりまして、それに関して、賃貸料といいますか家賃を明確にしてほしいという要求を出させていただいたところでございました。

 しかしながら、大臣の御答弁は、私は本当にさすが大臣だなというふうに感じたわけでございますけれども、常識の範囲でいくならば、公開というのもあり得るであろうというお話もいただいたわけでございますけれども、残念ながら事務方の方から、ちょっとそういった趣旨ではない御発言があったわけでございます。すなわち、私が一番気にかかっている、先ほども一番最初に申し上げました基本的な姿勢の観点からいきますと、情報公開法の規定に基づきましてということで、公開しない場合もあり得ますよという趣旨の御答弁があったわけなんですね。

 私の理解から申し上げますと、情報公開法に基づくということであるならば、大臣、釈迦に説法でございますけれども、当然のごとく、国民の請求に基づいて、それに対して行政側が情報を公開するということでありますので、基づきというのはまず前提としておかしいということがあり得るわけです。ただ、情報公開法の趣旨にのっとりという形でお考えをいただきたいということであるならば、私も理解できたところでございます。その点まず、答弁に少し間違いがあったのではないのかなという気がしております。

 それからもう一つ、私がいつも不満に思っている点がありました。

 この情報公開法の法律の趣旨そのものからすれば、御承知のように、そもそも日本にこの理念が入ってきたときには、当然のごとく、生まれたのはアメリカで、ライト・ツー・ノウという国民の知る権利を認めて、一九六六年にできて、当初、できたときは、いわば行政あるいは政府が持っている情報を公開することができるという限定的な列挙、公開できるものの限定的な列挙、これが情報公開ですよということだったんです。

 その後、いや、これではいけない、国民の情報というものはしっかりと政府も公開していくのが国家の姿勢であるという観点から、全面的に改正されまして、いわば国民の知る権利、あるいは国民の情報というものをしっかりと提示していきましょうと。その中には、さまざまな守秘義務であるとか、いわば国家の機密事項、これに関しては公開をしないこともあり得ますよという、適用除外事項を限定的にとったものであるというふうに私も理解をしていたんですね。

 したがって、この法律そのものの趣旨にのっとってということでいくならば、なるべく情報というものは公開をしていくというのが基本姿勢であってしかるべきではないのかなという気がしております。

 そして、もう一つ申し上げておくならば、今回のこういった情報公開に関する法律に基づいて云々かんぬんという話のやりとりの前に、この情報そのものが、いわば今の国民の関心事であります。私たち国会議員も、国民からいわば歳費という形でいただきながら自分たちの活動をさせていただいているわけでございますけれども、それは国民の税金から賄われているものであって、国民のお金であります。したがって、政党交付金でもそうですけれども、政治資金規正法にのっとって、きちっと私たちも一つ一つ公開をしていっているという状況があります。

 であるならば、大臣、私は、大臣の本当に率直な政治姿勢と、それから国民に対するさまざまな信頼回復のために、今回の要求をさせていただきました社会保険事務局及び事務センターに関しての資料、家賃ともども公開をしていただきたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。

尾辻国務大臣 今の情報公開法に関する御指摘はそのとおりだと思っております。ポジティブリストからネガティブリストに変わった、それで、そのネガティブリストの中の一つにどういうところがあるかというと、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」という規定がある、これはもう釈迦に説法でございますが、御承知のとおりであります。

 それに触れるのか触れないのかということで、この前、委員会が終わりました後、すぐ担当者を呼んで私も聞きました。これに何で触れるんだということを聞いたわけであります。そうしましたら、私が一つだけそれもそうかなと思ったことを率直に申し上げますと、賃貸契約を結んでいまして、その賃貸契約の中に家賃を守秘義務の対象としているものがありまして、一方的に開示した場合に損害賠償を求められる可能性がある、こういうことを言いますから、それはそうかもしれぬと実は思いました。

 そこの議論はあると思いますけれども、こういうものは私どもはできるだけ皆さんにお出しするというのは基本でございますから、早速に、とにかく出す準備を、できるだけの準備をしろと。それで、そういうおそれがあるのなら、家主さんたちに出しますよという了解を改めてとれば出せるだろうということを言いまして、今必死でその作業をいたしておるところでございます。

 それで、十一月二日、来週の火曜日には何とか結果を、そういう出せるもの全部をお出しするつもりでおりますので、お待ちいただきますようにお願いを申し上げます。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 大臣の大変積極的な姿勢というものに私も感銘をするわけでございますけれども、二日に今度一般質問が予定をされておりますので、ぜひそれまでにお出しをいただきたいと思うわけでございます。

 可能な限り、そうしますと、一日いっぱいでお出しをいただければ、私どももしっかりと次の二日の質疑の中で、さまざまな疑問点、さらに疑問点がもし生じたならば、その場で質問ができるのではないかなというふうな気がいたしております。したがいまして、私どもからの要求といたしましては、一日中にということを申し上げておきたいと思います。

 さらに、今大臣がおっしゃいました、契約に際して、家賃は守秘義務にしますよという契約を結ばれたということでございますけれども、これももう一つ、どうしてなのかなという疑問がさらに出てくるわけでございます。

 大臣も今うなずいていらっしゃるわけでございますけれども、詳細に関しましては、これもさまざまな議論がこれから出てくるのではないのかなと思うわけでございますが、できましたら、その守秘義務というものを課した契約書がもちろん存在をしているところだと思いますし、大臣もごらんになっている部分はあるかなと推察をいたしますけれども、であるならば、その契約書のコピーでも結構でございますので、ぜひ御提示をしていただけないかと思います。

 すなわち、そこで例えば公開ができない部分がもしあるとするならば、これは部分公開という形で、その契約書の内容に関して、非公開の部分は消して提示するという方法もさまざまな部分でとられているわけでございますので、ぜひそれをお願いしたいと思うわけなんですが、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 家賃を守秘義務にするということを決めたのは、恐らく家主さんの事情やいろいろあるんでしょうが、そこのところがいいのか悪いのかということは、また御議論をいただきたいと思います。

 それはそれといたしまして、今お話しの十一月一日中に、出せるものは全部出します。それから、当該部分のコピーもお渡しをいたします。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 本当に前向きな御答弁をいただきまして、これで信頼関係を結んだ上で、私どももしっかりと御質問をさせていただきたいと思うわけでございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、私も、今回の労働組合法の一部を改正する法律案、大変すばらしい法律をようやく提示をしていただいて、一刻も早くこの内容に取りかかっていかなければいけなかったんではないかなという気がいたしておりまして、それはやはり私も含めて反省をしていなければいけないというふうに考えております。

 そこで、これまで三名ほど私どもの同僚議員から質問をさせていただきましたので、なるべく重複を避けたいというふうに考えておりますけれども、まず、先ほど小林議員からもお話がありましたけれども、今回の労働委員会の役割というものを、もう一度大臣の言葉で明確にしていただきたいと思うわけでございます。

 すなわち、私もさまざまな相談を受けてきた部分の中に、使用者側と労働者の対立軸の中で、さまざまな法律の誤解やら、まだ無知の部分で、いわば紛争にまで至らない部分で解決できるものがあれば、それはそれで解決していく方がやはり妥当な部分ではないのかなという気がしているんです。

 残念ながら、先ほども申し上げましたように、人間対人間といきますと、どうしても、不信感が生まれてしまいますと、そこから一歩も外に出ない、お互いに歩み寄らないという部分が出てきてしまいますよね。そうしますと、残念ながら当事者同士では解決できない部分というものがある。だからといって、これも重複になりますけれども、それを権利義務関係に基づいて法律関係でばしっと切ってしまうということでは、人間対人間ですから、やはり温かみも消されてしまうという部分。だからこそ、同じ職場の中で、しかも健全な労使関係を構築していくという意味では、この労働委員会の果たす役割というのは大変重要な位置を占めるんではないのかなという気がしておりますし、これからの役割としては大変重要なものになってくる。

 しかも、今の社会状況のさまざまな変化の中で、大変残念なことに会社を閉鎖しなければいけなくなってしまったであるとか、リストラをせざるを得なくなってしまったということで、大変疲弊をしてしまっている部分もあるわけなんです。それを救う一つの大きな機関、行政機関として、私は、もっとこの労働委員会というものが、地方あるいは中央に限らず、大きな役割を重要なものとして占めていかなければいけないというふうに考えているんですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほど来お答え申し上げておるところでございますけれども、労働委員会といいますものは、長期に安定した労使関係を維持確保する上で重要な役割を担っている、ここのところが一番大事な部分だと思っております。

 裁判で白黒決着をつけますと、それは理屈では決着がつくかもしれませんが、しかし、人間対人間、ではその後どうなるのということがありますから、労働委員会のように和解で事を解決する、その方がいい面も多々あると思いますし、率直に申し上げますと、日本の文化、我々の文化というのは、大体そういうものの方が何となく合っているというような気もいたします。

 したがって、そういうことでこの労働委員会の役割というのは極めて大きいものがある、こういうふうに認識しておるところでございます。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

園田(康)委員 そうしますと、やはり人間対人間という関係の中においてはこの労働委員会の役割というのが大変大切だ、しかも、社会状況の変化によってはそれをきちっととらえて対応していかなければいけないという御答弁だったと思いますけれども、であるならば、今回の大変重要なポイントの一つに和解というものがあるんだということでございました。

 私も、今回、この組合法の改正の中で、一番のポイントとしては、やはりこの和解という部分だというふうに理解をしていますし、これが明記されたというのは、本当に大きな前進を生んだものではなかったかなという気がしています。

 それでは、個別具体的な質問をさせていただきたいと思っております。時間の関係上、副大臣にもというふうに考えていたんですが、後ほど副大臣にはお考えもお聞かせいただきたい部分をさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、二十八条からの話でございますけれども、二十八条から三十二条の四までの関係で、今回、罰則規定について上限額を引き上げていくという部分がございました。しかも、今回は罰金とともに過料を上げていくという部分があったわけでございます。

 一つ考えられるのは、長年、この労組法の改正案がなかなか出されてこなかったわけでございますので、その分のいわば物価指数的な社会変動になかなか追いついていっていなかった、いわば五十年前の試算でなされていたという形がありますので、これは妥当な、上限額を引き上げるというのは私も当然のことだというふうに考えてはおりますけれども、ただ、救済命令の実効性を確保する措置としては、果たして本当に十分なものであるのかという疑念を、一方で私はまだこれでも抱いているところでございます。

 したがって、労働関係法全体に言えることではないのかなという気がしているんですけれども、こういう指摘も実はあったんですね。つまり、罰金額はそれだけのものか、だったら、別にこれを守る必要もないじゃないかというふうに言われてしまった部分もあったんですね。抑制措置として考えるものではないという御意見もあろうかと思いますけれども、その辺の兼ね合いの中で、この引き上げの根拠と、それから、果たして実効性として足るものであるのかどうかという点を、ぜひ御答弁をいただきたいと思っております。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正におきます罰金あるいは過料の引き上げについてでございますけれども、お話ございましたように、労働組合法におきましては、救済命令違反等に対する罰金あるいは過料の上限額の引き上げが行われてこなかったということでございまして、救済命令等の実効性を確保する観点から十分でなかったということがございます。

 こういう観点から、お話もございました、貨幣価値の変動に対応いたしまして、あるいは他の類似の罰則の引き上げに合わせた形で、罰金と過料の上限額を引き上げることとしたものでございます。

 具体的には、例えば、確定判決により支持された救済命令違反は、従来これは十万円以下の罰金だったものを百万円以下の罰金ということで、十倍に引き上げる。それから、緊急命令違反、確定命令違反につきましては、十万円以下の過料だったものが五十万円以下の過料ということでございまして、これは、五十万というのは過料の中で原則として最高額ということでございます。

 したがいまして、他の類似の罰則の引き上げに合わせて金額を引き上げたものでございまして、ほかの制度と比べましても決して遜色のない、適正な水準になっているものでございまして、これの実効性の確保に努めてまいりたいと考えているところでございます。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 今の御説明で一部納得する部分はありますけれども、当然のごとく、これからもさまざまな観点から見直しが図られるという部分においては、先ほど申し上げましたように、社会変動の変革などもきちっと加味をしながら、ポイントはやはり実効性を担保するということにあろうかなと私は考えておりますので、何も殊さら上げていけばそれでいいという話ではないというふうに考えておりますけれども、その実効性を担保するための措置として、これも一つの手段としてお考えをいただきたいというふうに考えております。

 それからもう一つ、今回、さまざまな検討課題で、残されてしまった課題というものがあるわけでございます。研究会報告の中にも何点か明らかになっておったわけですし、先ほど小林議員、あるいは城島議員、内山議員からも御指摘があったわけでございますけれども、不幸にも中央労働委員会、再審査でも結果が見られなかった、妥結をしなかったという形にいけば、最終的に裁判所に提起をするという形になってくるかなと思うわけでございます。

 法律でいきますと二十七条の二十で、その際に、使用者が裁判所に提訴を行ったときには、労働委員会の申し立てに基づいて、裁判所が、判決が確定するまで使用者に対して救済命令等に従う旨を命じることという形で、いわば緊急命令というものがこの中で規定をされているわけでございます。それはある種の仮処分的な部分でありまして、今回のこの労組法改正の中身で、結論が出るまでに、結審するまでに委員会でも大変時間がかかる。それでもまだ決着がつかなければ、さらに裁判でいく、審級をしていくという形になっていくわけなんですけれども、これに際して、また裁判で三審制を行うという形になれば、結論が出るまでに大変長い期間がかかってしまう。したがって、それを防ぐためにもこの緊急命令という制度をこの中で明記して、そして、いわば結論が出るまでの仮処分的な措置としてこの規定を設けて、権利を守る、人権を守っていこうという形で規定をされているものだというふうに私も理解をしているんです。

 まず、この緊急命令の発出状況でございますが、ちょっとこれは平成十五年度の部分で結構でございますので、御提示をしていただきたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 取り消し訴訟の係属中に判決確定まで救済命令の一部とかあるいは全部を履行させるという、いわゆる緊急命令、この決定件数でございますけれども、今手元にある数字で、平成六年から十五年の十年間で二十九件、それから平成十三年から十五年の三年間で十一件、こんな状況でございます。

園田(康)委員 そうしますと、発出状況はそういう形でございますけれども、訴えを提起してからこの緊急命令が出た日、すなわち、先ほど申し上げましたように、結論が最終的に出るまでに大変時間がかかるから、仮処分ですぐさま緊急に命令をまず最初に出しておきましょうという形でございます。まず保全をしておいて、それからゆっくり内容については審議をしていこうということでございますけれども、この緊急命令が出た日というものが、いわばその最終的な結論、判決が出た日に大変近いのではないかということがあるんですけれども、その点はいかがでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的に緊急命令がいつ出されているかということでございますけれども、特に、御指摘のとおり、判決と近いのではないかという点についてお答え申し上げますと、緊急命令のうち、本案判決と同日に決定された件数が、平成六年から十五年の十年間で二十九件のうち十五件、五二%、約半数ということでございます。それより前に出たものが十四件ということでございます。それから、平成十三年から十五年の三年間では、同日というのが十一件のうちの十件ということでございまして、九一%ということでございます。

 御指摘のとおり、取り消し訴訟の本案判決と緊急命令が出されるのが非常に近くなっている、同日に出されることも多くなってきているということでございます。

園田(康)委員 そうしますと、この緊急命令、こういう規定は確かにあったとしても、今大臣もお聞きになっていらっしゃると思うんですけれども、判決と同じ日に出てしまうということで、この法律の規定の趣旨からすれば、意味のない規定になってしまっているんじゃないかなという気がしているんですね。

 したがいまして、この規定の趣旨というものをもっともっときちっと確保していく、担保していくということをすれば、運用上の見直しという点も考えられるでしょうし、私からすれば、条文上の規定で、何かもっと工夫を今後凝らすこともできないのであろうかということを思っているわけでございます。

 したがって、何らかの形で、緊急命令が発せられる期間というものをこの条文上に規定することはできないのか、あるいは、研究会等の中でそういう議論があったかどうか、今後の議論の参考として御披露いただきたいと思います。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 緊急命令が発せられる場合の期間の限定ということでございますけれども、まず、裁判所が緊急命令を発する場合には、やはり救済命令の適法性につきまして一定の心証を得ることが必要であるということがございます。こうした観点から、緊急命令の発出期間につきましては限定がついていないということでございます。

 もしこれを限定するとどうなるかということでございまして、当該期間の限定がついていますと、期間までに救済命令の適法性につきまして心証を得られなかった場合、裁判所が申し立てを棄却または却下することになりまして、かえって緊急命令の発出そのものを抑制しかねない、そういう観点があるのではないかと思っております。

 研究会における検討状況でございますけれども、その期間の限定そのものにつきましては検討されておりませんけれども、確かに、先生御指摘のとおり、早く出した方がいいんじゃないかというような御議論もございました。具体的に緊急命令の早期発出を促すための要件を法定したらどうかということも検討されたわけでございますけれども、それによってかえって緊急命令の対象が限定されるのではないかという問題もございまして、困難ではないかという指摘もあったところでございまして、具体的な検討には至らなかったというような経過がございます。

園田(康)委員 具体的な検討に至らなかったということでございますけれども、やはりこれも裁判管轄の問題ではあろうかと思いますので、十分今後関係機関との調整を図りながら協議をしていっていただきたいと思いますし、とりもなおさず、この規定そのものの趣旨というものを、もう一度原点に返っていただいて、救済という、保護という観点から議論をしていただきたいと私は思うわけでございます。

 あくまでも、先ほど大臣もおっしゃっていただきましたように、これは労使関係の健全な関係を構築していくための法律でありますし、制度でありますから、裁判所に訴えた場合の話ですから、裁判規定にのっとってしまうというのが当然のことかもしれませんけれども、当然のごとく、その前段の中で、労働委員会の中でもこういう話をやはりきちっとした上で、それが裁判の過程の訴状の中にもきちっと影響を及ぼす形へと発展的に考えていただきたいというふうに、要望だけ私からさせていただきたいと思っております。

 それから、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、最後の質問という形になってしまいますけれども、先ほども少し、審級省略についての御指摘を同僚議員からさせていただいたわけでございます。いわば今回の課題として残されてしまった審級省略でございます。

 今の緊急命令とも関連をいたしますけれども、中労委で再審査になるわけでございますけれども、そこでとまってしまって、なかなか結論まで時間がかかってしまっているというのが現状だと思っているわけでございます。

 平成十五年の新規申し立て、先ほども少し話がありましたけれども、資料でいきますと、六十五件の新規申し立て、係属件数としてあるわけでございまして、最終的な終結状況といたしましては五十七件、いわば同じような、六十五件の新規に対して五十七件の解決、終結という形になっているわけでございますけれども、問題は、前年からの繰り越しが二百六十二件もあるわけなんですね。ずっとさかのぼっていきますと、大体、昭和六十年当初からいえば、平均的に二百件を超えた状態でずっと滞留してきてしまっているわけなんです。

 そうしますと、再審査制度そのものに対する疑念というのも、この研究会報告の中には多少議論として上がったというふうに私も聞いているところなんですけれども、とはいえ、再審査制度そのものをなくしてしまうということに、廃止した場合でいきますと、今度、先ほどもありましたけれども、本当ならば地方労働委員会、地労委での解決によってなされて、それでも解決ができなければ再審査ということで中労委に上がってくるわけです。その中労委に上がってくるものをなくしてしまえば、全部地労委に負担がかかってしまうということと同時に、すぐさまそこから行政訴訟という形になってしまえば、地労委そのものがそれを担当しなければいけないという部分があろうかなと思うわけなんですね。いわば過重の負担をかけてしまうということ。

 したがって、もう時間がなくなりましたから、私からの提案という形になりますけれども、地労委とそれから中労委という今回の規定をもっときちっと、さっき、民訴化になるんではない、あくまでも労働委員会の特性そのものを生かしていくんだという話がありました。であるならば、この特性を生かして、労働委員会そのものを権限としてももっともっと拡充していくべきではないかということ。

 であるならば、もう一つ御提案で、私がこの間、ちょっと質問取りのときにも御提案をさせていただいたんですが、公正取引委員会であります、独禁法の八十五条の規定からいきますと、公正取引委員会の審決にかかわる訴訟については、第一審の裁判権、これは地方裁判所ではなくて高等裁判所、すぐさま高等裁判所に属するんだという形で、いわば三審制のうち一審を飛ばしている、飛ばして、もうすべて二審から行っていいですよという形をとっているわけなんですね。

 憲法の話で恐縮でございますけれども、三十二条の裁判権の規定で誤解をされている方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでも三審制を国民に担保しているというものではないと私も理解をしているんですけれども、あくまでも、これは裁判を受ける権利を保障したものであって、三回やらなければいけませんよということを規定したものではないということが一つあります。

 したがって、この労働委員会の特性をきちっと、その性質そのものを上げていけば、いわばこの審級省略というものも道が開けてくるんではないかという思いをしているわけなんです。

 したがって、先ほど、事務局の体制を強化するという話もありましたけれども、公正取引委員会の中で、審判官として現職の裁判所の判事がこの公正取引委員会の中に入っていらっしゃる。したがって、この公取そのものの審判が大変精度を高めているという点からすれば、裁判所との信頼、これもやはり信頼関係につながってくると思うんですが、裁判所が信頼をし、そして、公正取引委員会が出したものに関しては地方裁判所は省いて、第一審は東京高裁から始めますよという形になっているというふうに私も考えているんですが、どうか、この点を今後の議論の対象として検討していただきたいというふうに思うわけでございます。

 最後になりましたけれども、済みません、終了いたしますが、副大臣にせっかくおいでいただいておりますので、私のこの意見と、それから労働委員会そのものの改正に対する思いをお話しいただいて、終わらせていただきたいと思います。

衛藤副大臣 審級省略の導入につきましては、司法制度改革推進本部の労働検討会におきましても条件がついておりまして、労働委員会の審査手続において、十分に当事者の主張、立証の機会が与えられているか、それから、労働委員会の事実認定が裁判所の審理に代替し得る実質を備えているか等の観点から検討される必要がある旨の指摘がなされております。

 最近の取り消し率の現状を踏まえまして、この中間取りまとめにおいても、「今後の労働委員会における不当労働行為審査制度の改善状況等を踏まえ、さらに検討されるべき重要な課題である。」というぐあいにされているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、まずは今回の改正によって法案を成立させていただき、そして迅速化、的確化を進めながら、これによりまして労働委員会の審査手続及び審査体制を整備しながら、審査の的確化が図られるように努力をしてまいりたいと思っております。

 仰せのとおり、そういう過程の中で、今後の検討すべき課題として位置づけてまいりたいと思っている次第でございます。

園田(康)委員 ありがとうございました。

 ぜひそういう方向で、私どもも協力をさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうは、労働組合法の一部改正案についてただしてまいりますが、この労働組合法というのは、憲法二十八条での労働三権の保障に基づくものです。憲法で保障されました労働組合の団結権、それから交渉権、また、争議権とも団体行動権とも言われますが、この労働三権の保護というのは、やはり職場、雇用にもかかわってまいりますから、国民の人権を守っていく上でも非常に大きな課題になると思うんです。

 今回の法改正につきましては、法律案の提案理由の説明にもありますけれども、一つは、地方労働委員会や中央労働委員会での不当労働行為における審査期間が長期化しているという問題、それから、労働委員会が下した命令に対する裁判所の取り消し率が高い、こういう現状に対して、これを解消するために審査の迅速化と的確化を図るというところに趣旨があると言われています。

 まず、私、現状から見ていきたいと思うんですけれども、先月、九月の下旬に中央労働委員会の事務局が、一番新しい労働委員会年報五十八集というものをつくりました。基本資料はここに入っているんですけれども、これを見ますと、不当労働行為に関する命令・決定事件、これについての平均処理日数が、地労委で、二〇〇二年が千二十七日、二〇〇三年が千百七十九日となっています。中労委は、同じく千二十三日から千百二日へとさらに長期化しています。

 まずお尋ねしたいのは、このように長期化しているその理由、原因について、どのように見ているのか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 労働委員会におきます審査に要する日数が長期化している理由でございますけれども、まず、地労委でございますけれども、一つは、やはり当事者の求めに従って、事件の争点と関係の薄いものも含めまして多数の証人尋問が行われるなど、審問が必ずしも計画的に行われていないということがございます。それからもう一つは、必要な証拠の確保が十分できないために多数の証人尋問とか間接証拠の積み上げによらざるを得なくなるという結果、審査に要する期間が長くなる傾向があるということが挙げられます。

 一方、中労委におきましては、公益委員全員の合議によりまして命令を決定しているために、事件の迅速処理に必要な合議の日程確保が困難となる場合が挙げられているところでございます。

 幾つか、そのほかいろいろな理由がございますけれども、かいつまんで申し上げますと、今申し上げたような理由が長期化の理由ではないかというふうに考えているところでございます。

山口(富)委員 今の答弁でも、いわゆる審査期間と審問期間という問題を分けてお話しになりました。

 審問期間というのは、裁判に置きかえますと、実際に法廷で争う期間に当たるわけですけれども、これをもう少し地労委の資料で具体的に見ますと、命令決定事件の段階別平均処理日数の内訳というのが出ているんですが、これを見ますと、先ほど申し上げましたが、全体で千百七十九日かかっている。その内訳は、労働者からの申し立てがあって審問の開始までが百九十七日、大体六カ月以上かかっています。それから二つ目に、地労委で行う実際の不当労働行為の審問期間、これは結審までで六百六十一日、約一年八カ月。そして三つ目に、結審してから命令書交付までが三百二十一日、約九カ月。

 このように見ますと、裁判に置きかえると、実際に法廷で争う期間である審問期間というのが六百六十一日に対して、その前段階の審問開始までが百九十七、そして結審してから命令書を作成し交付するまでが三百二十一日ですから、この真ん中を除く前と後ろを合わせますと五百十八日になります。ですから、一般に審査の遅延、長期化と言いますけれども、実際には、審問期間そのもので見ますと、そのうち五六%なんですね。

 私がお尋ねしたいのは、では、なぜ地労委で審問の開始までの準備の期間と結審してから命令交付までに五百十八日、一年五カ月かかるのか、これについてお尋ねしたい。

太田政府参考人 今具体的な御指摘をいただきましたとおり、初審、地労委におきましては、審問期間が大変長くなっておりまして、約六割ということで特に長期化が目立ってきているところでございます。

 その要因でございますけれども、やはり、先ほど申し上げたとおり、審問開始前の争点整理が不十分で、証人尋問が当事者主導で、当事者が出してくれば証人を受けるというような形で、非常に当事者主導の形で行われているということが一つ挙げられると思います。それからもう一つは、先ほど来議論がございますけれども、やはりローテーション人事等によりまして、事務局職員に専門的な知識経験が蓄積されがたい、こういうことがあるんじゃないかと思っております。

 今のが初審の状況でございますけれども、一方、再審査の方はちょっと状況が変わっておりまして、むしろ結審後の命令書交付までの期間が七割ということでございまして、この長期化が目立っているわけでございます。

 この要因は、やはり初審と同様に、事務局職員の専門性の問題があるわけでございますけれども、先ほど申し上げました公益委員十五人全員の合議で命令を決定しているために、合議の日程確保が困難となるという場合があるわけでございます。ですから、審問なり審査の長期化の理由につきましては、初審と再審査で若干理由が異なっているのではないかというふうに考えているところでございます。

山口(富)委員 私は、まず初審の方、地労委の方を問題にしたんですね。審問期間の、実際に当たる問題と、私はそれを分けて、前後が長期化しているのはなぜかという話を聞いたんですけれども、今の答弁ですと、この前後の問題で言うと、職員の方の、頑張っていらっしゃると思いますが、専門性にもかかわる問題があるんだというお話だったと思うんです。

 それで、もう一つの再審の方なんですが、私がそこまでいかない間にもう、少しその話に踏み込んでしまったんですけれども、地労委の救済命令に対して、使用者側や労働者側が不服の場合、再審査を申し立てるわけですけれども、中央労働委員会の方の再審の段階別平均処理日数の内訳、これもあるんですが、JRの事件を除いた日数というのがありまして、これを見ますと、不服申し立てから審査開始までが二百七十一日かかっています。それから、審査を開始してから結審までは、わずか三十一日、一カ月で終わっちゃうんです。そして問題は、結審から命令書の交付までが四百八十四日かかっている。一年以上これにかかるわけですね。

 ですから、実際の審問が約一カ月なのに、その他の日数が二年一カ月に及ぶ、そういう事態が起こっている。最近はとにかくこの種の報告書を読ませていただくと驚くことばかりなんですけれども、これも私が最近驚いた一つなんです。

 それで、既に答弁がありましたけれども、問題になってきますのは、一般的に審査期間の長期化とよく言いますけれども、その中身を見ていくと、審問期間が長期化しているわけじゃない。実際の審問をやった後の命令書の交付まで、そこに初審でも再審でもかなりの時間がかかっている。こうなりますと、やはり地労委、中労委の体制が現状では不十分ではないか。

 特に、きょうは問題になっておりますが、教育訓練された専門の職員の体制がやはり弱い。この点では、研修の強化も含めまして体制上の充実が必要じゃないかというふうに考えるんですが、この点はいかがですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 事務局体制の強化でございますけれども、不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会報告、平成十五年七月に出ておりますけれども、ここでは、労働委員会における不当労働行為審査に要する日数が長期化していることの理由の一つとしまして、今お話のございました、公益委員が非常勤であるため、みずから行い得る業務量に限界があることに加えまして、事務局職員の多くはローテーション人事で三年程度で異動すること等から、迅速な事件処理に必要な知識経験が蓄積されがたいこと、こういうことで、事務局体制が不十分であるというようなことが挙げられているところでございます。

 私どもとしましては、この建議の指摘を踏まえまして、職員研修の充実なりあるいはその専門性の向上あるいは事務局体制の整備、こういうことに努めてまいりたいと考えているところでございます。

山口(富)委員 もう一点、研修の方はどうなんですか。そういう専門性を高めるための研修、これは今後どうなるんですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 専門性を高めて審査の迅速化、的確化を図るというのは大変重要な観点でございますので、職員の研修につきましても充実いたしまして、その専門性の向上を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

山口(富)委員 では、少しこの法案の条文のことをお尋ねしたいんですが、今回の改正案を見ますと、二十七条の六に「審査の計画」というものが新たに新設されます。これは、長期化する審査を迅速化するために計画的審査を進めるのだということなんですけれども、きょう私も指摘しましたように、実際の審問以外の日数は、地労委で五百十八日、中労委で、昨年ですけれども七百五十五日かかっているわけですが、この計画的審査という条文を新設しますと、これは相当程度に短縮される、そういう見通しなり保証というのは一体どこに求められるんですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から先ほど御指摘ございましたように、特に初審におきまして、第一回の審問から結審までの期間というのが非常に長くなっている、大体五六%の期間というようなことがございます。なぜこんなに時間がかかっているかということの理由の一つは、やはり地労委におきましては、当事者の求めに従って、事件の争点と関係の薄いものも含めて多数の証人尋問が行われるなど、審問が必ずしも計画的に行われていないということがあるのではないかと考えております。したがいまして、審査計画を作成することによりまして、審問開始前の段階で争点整理が十分に行われまして、必要な証拠が整理されることになりますので、審問も短くなりますし、あるいは命令書の作成も迅速に行われるようになるということでございまして、その結果、審問の期間、あるいは結審から命令書交付までの期間も短縮するものではないかと考えているところでございます。

山口(富)委員 となりますと、結局、問題はその中身になってくると思うんですね。つまり、期間が短くなったからこれでよしとするわけじゃなくて、起こってきている不当労働行為に対して地労委、中労委がきちんとした判断ができるという、中身がいよいよ問われるということになると思うんです。

 それで、二十七条の六の第二項の第二号、少し長いですけれども、ここで、審問を行う期間及び回数並びに尋問する証人の人数というものが定められている。私が危惧しますのは、この条文の実際の運用の場合、審問期間以外の、それこそ日数を大幅に短縮するということでなくて、審査の迅速化という名前のもとで、今不当労働行為はなかなか複雑化しているわけですけれども、それについての労働者側の分析だとか立証する準備の期間、それからまた使用者側のさまざまな主張への反論の期間、こういうものの時間的余裕が失わせられるような、そういう迅速化というのはとても私は問題があるというふうに思うんです。必要な証人の確保の点でも、これは期間を短くしなきゃいけないんだということでその確保がおざなりになるというようなことはあってはいけない。

 この点で、私は大臣に、この法改正によって、その運用上、特に不当労働行為について訴えている労働者側に不利益が起こらないこと、その中身の迅速化じゃなくて、これは解決のための迅速化だということを明確にしていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 これはもう申し上げるまでもなく、審査の過程におきまして、事実認定に必要な主張、立証の機会が当事者に対して十分保障されるということが極めて重要なことでございます。したがいまして、早ければいいということではないということを申し上げたところであります。

 そして、今回、審査計画を作成するということになりましたが、そして今お示しのような規定もございますけれども、まず、その作成に当たりまして当事者双方の意見を聞かなければならない、こういうふうに言っておりますから、今御懸念のようなことはないものと私どもは考えております。

山口(富)委員 この運用に当たって、十分その点は留意していただきたいと思います。

 さて、もう一点、実際に不当労働行為にかかわって仕事をいたします中労委の問題でお尋ねしたいんですが、中央労働委員会は、公益委員、労働者委員、使用者委員の三者で構成します準司法的な機関になるわけですけれども、当然その委員の方々は、その分野の専門的な見識が必要であると同時に、任命に当たっては公平性が保たれることが極めて大事だというふうに思うんです。

 それで、この間、労働者委員については、この七期十四年間、連合が推薦する委員だけが任命されている。これに対して、これは極めて不公平、不公正だということで裁判にもなっているわけですけれども、調べてみますと、労働者委員の任命につきましては、一九四九年七月二十九日、当時は労働省でしたけれども、事務次官通達というのがありまして、地方労働委員会の任命について、いわゆる五四号通牒というものですが、この中で、委員の選考に当たっては、系統別の組合員数に比例させるべきであるという定めになっているんですが、現実にはこれが実行されていない。しかも、これは国内で問題になっているだけでなくて、世界で問題になっているわけですね。

 一昨年ILOが、これは二〇〇二年六月ですけれども、すべての代表的な労働組合に対して公平かつ平等な取り扱いを求めるという勧告をしております。そして、昨年の三月には、それが実施されていないということで、一層踏み込んで、次のような勧告をしております。「中央労働委員会の委員任命については、委員会の勧告を受けた後であり、現に存在する中央労働委員会の構成の不均衡を是正する機会が最近あったにもかかわらず、地方労働委員会と同様のことにはならず、この不均衡が二年間存続することが決定してしまったことに遺憾の念をもって留意する。」これは前回のことです。「委員会は、政府が第二十八期の委員任命の機会か、あるいは現委員の任期中にも労働者委員に欠員が生じた場合には、それよりも早い段階で、この不均衡を是正する措置を執ることを希望する。委員会は、この件の進捗に関し引き続き情報提供されることを要請する。」こういう勧告を出しております。

 この勧告に関連して何点かお尋ねしますけれども、まず確認しておきたいのは、既存の組合の状況に応じて委員を任命すべきだという点なんですが、今、最新の労働組合基礎調査で、連合の組合員数と、全労連プラス純中立労組懇の組合員数、その比率はどうなっているのか、示していただきたい。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省で行っております平成十五年の労働組合基礎調査での数字でございますけれども、平成十五年六月末時点で、連合の組合員数が約六百八十一万人でございます。それから、手元にありますのは全労連と全労協の合計の数字でございますけれども、約百十六万人でございます。(山口(富)委員「その比率は」と呼ぶ)その比率は、五・九対一でございます。

山口(富)委員 五・九対一、わかりやすく六対一と言ってもいいと思いますが、これが労働者委員の任命に当たって反映されていないわけですね。

 それで、このILOの対日勧告の問題なんですけれども、これが厚生労働省によってどのように検討されたのか。それから、ILOは報告を求めているわけですけれども、この報告はどうなっているのか、これも示していただきたい。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生からもお話ございましたとおり、平成十五年の三月に、ILOの結社の自由委員会の報告におきまして、政府が第二十八期の委員任命の機会か、その欠員が生じた場合にはそれよりも早い段階で不均衡を是正する措置をとることを希望する、こういう旨の記述があることは承知しているところでございます。こういうことを受けまして、私どもとしましては、中央労働委員会の労働者委員につきましては、内閣総理大臣が、労働組合の推薦を受けた者の中から労働者一般の利益を代表するにふさわしい適格者を種々の要素を総合的に勘案して任命しているところでございます。私どもとしましては、中央労働委員会の任命はこれまでも公平に行われてきていると考えているところでございまして、今回、二十八期の任命に当たっても適切に対応してまいりたいと思っております。

 ILOに対しましては、前回の指摘につきましても報告しておりますけれども、今回の任命に当たりましても、任命が終わった段階で報告をさせていただきたいというふうに考えております。

山口(富)委員 どうもなかなか矛盾に満ちた答弁だと思いますね。一方では労働組合の比率で五・九対一という答弁をしながら、実際の任命に当たっては、それが反映されていないのに公平であるというわけですから。

 私、大臣に重ねてお尋ねしたいんですけれども、十四年間労働者委員が特定のところに独占されているんですが、連合の皆さんが推薦されている候補者の方が大変すぐれていて、いわば労働者委員としての能力や資質にすぐれているけれども、純中立懇や全労連の推薦されている方々はこの点で劣っている、そういう考え方なんですか。

尾辻国務大臣 決してそういうことではないと思います。

 先ほど来答弁申し上げておりますことの繰り返しになりますけれども、中央労働委員会の労働者委員は、内閣総理大臣が、労働組合の推薦を受けた者の中から、労働者一般の利益を代表するにふさわしい適格者を種々の要素を総合的に勘案して任命しているところでございます。これまでの委員任命におきましても、そのような考え方で任命が行われてきたところでありまして、結果として、連合に加盟する労働組合から推薦のあった者のみが委員に就任をしたということでございます。

山口(富)委員 その結果としてというところで、現実には、厚労省が以前出した通牒にも反する事態が起こっているわけですね。これはやはりおかしいというので、国内でも裁判にも訴えられましたし、それからILOという国際機関からも批判を浴びている。

 特に、ILOの批判というのは非常に国際政治の中で重い意味を持つんですね。それは、あの組織が二十世紀の前半から生まれているということだけにとどまりません。今国際社会というのは、人権問題それから労働者の権利の問題でいいますと、これはやはり一国の中の問題としてだけではなくて国際問題として見るわけです。例えば、日本の働いている方、労働者の皆さんが権利侵害を受けていたら、それは日本の問題としてだけではなくて、世界の労働者の問題として見るわけですね。

 ですから私は、ILOがこれだけ繰り返し危惧を表明して是正を求めているんでしたら、今回の二十八期の任命に当たって、これは当然厚労大臣、尾辻大臣の上を通っていくわけですから、そのときに、その公平さがきちんと貫かれるように、重ねて大臣に、その点は私確認しておきたいと思います。どうぞ。

尾辻国務大臣 この人事権は総理にございます。したがいまして、最後は総理の判断でございますが、総理も、今言われたようなことも含めて、司法の判断など見ながら判断をするんだろう、こういうふうに考えます。

山口(富)委員 重ね重ねになりますが、では公平な任命に徹するというふうに答えをいただいたということでよろしいんですね。

尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、労働者の一般の利益を代表するにふさわしい適格者を種々の要素を総合的に勘案して任命されている、このように考えております。

山口(富)委員 この間、国会では二十八期の公益委員の同意をいたしましたけれども、労働者委員につきましてもきちんとした公平さが保たれるように、重ねて求めておきたいと思います。

 最後になると思うんですが、ちょっと労働組合に関連して、最近話題になりました事例で、プロ野球労組の問題をちょっと取り上げておきたいんです。

 それで、これは国民的な関心を呼んだわけですけれども、その中でも特に、私たちがこれはどうなっているんだと思いましたのは、七月八日なんですけれども、選手会の古田会長がオーナー陣との会談を求めた際に、当時の読売巨人の渡辺オーナーが、無礼なことを言うな、分をわきまえなきゃいかぬ、たかが選手という話をしたわけですね。これは私は本当に驚くべき発言で、続いて、オーナーと対等に話をするなんて協約上根拠は一つもないということまで言ってしまった。

 それで、確認しておきたいんですけれども、プロ野球選手会は労働組合法上どのような組織なのか、この点確認したいと思います。

太田政府参考人 プロ野球選手会でございますけれども、これにつきましては、昭和六十年に東京都の労働委員会から労働組合法の規定に適合する旨の証明を受けた労働組合であるというふうに承知しているところでございます。

山口(富)委員 労働組合なんですね。ということは、プロ野球労組が労働組合法上法人として労働組合ですから、あるオーナーが言った、対等に話をするなんて云々という話は、これは労働組合法の第一条にある、「この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進する」という、この法の趣旨に反する発言になってしまう、そういうことになるんじゃないですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 労働組合法の一条でございますけれども、今先生からお話ございましたとおり、「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、」これを基本目的としているわけでございます。伝えられる発言が仮に事実とするならば、このような労働組合法一条の趣旨にかんがみますと必ずしも適当なものではないのではないかというふうに考えているところでございます。

山口(富)委員 必ずしもどころか、その発言をしたのはみんな知っているんですから。これは労働組合法の一条に反するんです。

 それからもう一つは、損害賠償という発言があったんですね。今度の労組のストライキで選手会がストをするなら損害賠償を請求するという、とんでもない発言があった。一般に、労働組合が憲法で保障されている労働三権を行使した場合に、正当な行動に対しては、損害賠償を求めたり、刑事訴追を求めたり、民事損害賠償を請求することはできないはずなんですけれども、この点はどうですか。

太田政府参考人 今お尋ねの点につきましては、労働組合法八条に規定がございまして、労働組合が労働条件に関する事項につきまして団体交渉を行い、その要求を貫徹する手段として行う正当なストライキについては、民事上の責任が免責されることになっているところでございます。

山口(富)委員 ですから、今回のプロ野球労組をめぐる問題では、私は、いわゆるオーナー側と言われる人たちの発言には労働組合法に反する数々の発言があったということを直視しなきゃいけないというふうに思うんです。答弁のように、労働組合として認められている、そしてストライキにしても、それは正当な要求に基づく行為なんですから、それへの損害賠償を請求するようなことはできないということです。

 今プロ野球をめぐっていろいろなことが起きておりますけれども、少なくとも球団側を担っている方というのは、大体大企業なんですね。その大きな企業というのは、今みずから、企業の社会的責任の問題ですとか、それから法令遵守義務というのを盛んに議論しているところなんです。

 私は、尾辻大臣にお願いしたいんですけれども、こういう国民的な非常に関心のあることです。そして、きょう冒頭に、労働組合、この労働三権を守るというのは国民の人権にとって非常に大事だと言いましたけれども、こういう問題に反するような言動をやっているわけですから、これはやはり厳重注意、きちんと厚生労働大臣として、この分野を扱う方としてきちんと物を言った方がいいんじゃないかと思うんですが、この点、最後にお尋ねしておきます。

尾辻国務大臣 報道以上に発言の詳細を承知はしておりませんし、また、この発言に対して直接私どもが指導する立場にはございません。しかし、労働行政を預かる立場から申し上げますと、労使が対等に話し合うということは一番の基本でございますから、そうした労使関係の基本精神に照らし合わせまして必ずしもふさわしい発言ではなかった、こういうふうには感じております。

山口(富)委員 時間が参りましたので終わりますが、感じていらっしゃるならきちんと物を申すべきだと申し上げて、終わります。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 お昼を回ります時間の中、皆さん大変御苦労さまです。私は、貴重な時間をちょうだいいたしましたので、冒頭、せんだってもお尋ね申し上げましたが、新潟県の中越地震について、引き続き質疑をさせていただきます。

 きょうも大変に寒い朝でございました。冷え込みがきつかろうと思います。実は私は、議員になります前、いわゆる阪神・淡路の大震災を経験いたしましたときに、震災の二日後から現地に入りまして、いろいろな救援活動をしてまいりました。今回、この中越地震に際しましても、やはり一日も早く現地を見てみたい、かつ、せんだっても申しました、不要な死をお一人でもなくすために自分が何をすればよいかということで、現在議員という立場にありますので、この場で質問する機会も得させていただいておりますので、ぜひ尾辻大臣にお願いがございます。

 私がせんだってここで質問して、そしてきょう、またここの質問に至る間にも、またお一人、四十八歳の女性が車の中に寝泊まりしておられて亡くなりました。飛行機でいうところのエコノミークラス症候群のように、足を伸ばせない。それから、実は、今寒うございますから、夜中にお手洗いに立つのを、どうしても車から一回出なきゃいけませんので、それを防ぐために飲料水を制限してしまう。動かない、そして飲み物も飲まない。そして、残念なことに、まだ避難所の食事は乾き物も多うございますし、世で言うところのバランスのいい食事とはとてもいきませんから、結果的にそうしたいわゆる成人病の本当にきわみであるところの心筋梗塞、脳梗塞、脳血管障害、いろんなことが今にも起こるんじゃないかという不安をすごく強めております。

 そして、私がせんだってここでお願いいたしましたのは、今の、体育館に避難する、あるいは、神戸のときはなかったことですが、たくさんの車が校庭にとまって、そこで一夜を明かす、一方で仮設住宅の建設を待つというような方式は、季節柄もありますし、それから神戸の大震災で学んだことから見ても、今回の救援では根本的に発想を転換していただきたい。それが、尾辻大臣のおっしゃる予防、すなわち、そこにそういう状態で置けば起こり得る次の事態を未然に予防するために、私たちは悲しい経験から学んでいるんだと思うのです。

 今、村田防災大臣を筆頭に、与党はこの対策に全力を挙げておられますが、でも、私の見るところ、また相変わらず仮設住宅。あるいは、今の場合本当に一番深刻なのは、神戸の場合は火災が引き続いて起きて、それが非常に深刻でしたが、今のこの地震は、余震とはいえ、また昨日も大変に現地も揺れましたし、一昨日も揺れて、一度は避難してきている方が、家にとりに帰ってまた二次災害になるのではないか、しかし家のそばにいたいという不安な気持ちがあり、非常に複雑な心的状況の中に置かれております。

 私は、こうしたときであるからこそ、例えば自治体が、県内といわず近隣の保養所や施設を協定を結んで借り上げてでも、とにかく希望者があればそこに移していただきたい。そのための、今回はぜひとも取り組んでいただきたいことが、やはり後手に回っていると思うのです。

 例えば、クーポン券をお出しする。宿泊クーポン券でもよろしゅうございますし。その前にまず、例えば東海沖地震を経験しております静岡県ですと、県が保養所と協定をもう既に結んでおります、事前に。そして、私はこの場でこの前お願いしたときに、新潟県の状況はどうであるのか、もちろん県の自治的なかかわりもあることですが、そういうことに積極的に国が支援しますということをお出しいただければ、県ももっと積極的に動くのではないか。

 具体的には、全部の情報を行政が集め切れませんので、先ほど申しましたクーポン券のような、宿泊クーポン券でも構いません、御利用いただければ、とにかく今本当に、普通の四十歳代の女性が車の中で死ぬなんて、ないことが起こりますから、そういう方向にぜひとも具体的に大臣としてお進めいただきたいと思います。

 せんだって前向きな答弁はいただきましたので、その次のステップ、ではなぜそこから進んでいないんだ。もう既に二日たちました。また寒いから、私はきょうも不安です。また同じことが起こるのではないか。大臣のお考えと、具体策についての取り組みを伺わせていただきます。

尾辻国務大臣 まず、現地に足をお運びいただきましたこと、感謝も申し上げ、まことに御苦労さまでございました。そしてまた、今は、そうした現地を見ていただいた貴重なお話をお聞かせいただきました。

 実は私、けさも、今お話しのようなことを私自身思いましたから、何でこんなことが起こるんだと言いました。エコノミー症候群と言われるような、こんなことで亡くなるというのは本当に悲しいことだし、何とかならぬのか、こういうふうに言いました。そうしたら、それはもう本当に、みんなでできるだけのことをしながら、そういうことのないようにしているんだけれども、今回のことで難しいことが幾つもありますという説明もしてくれました。

 その説明を御披露申し上げますと、今お話しのように、非常に揺れがまた来るものですから、余震が来るものですから、みんな怖い。ただ、家はそのまま残っている。そうすると、今どういうふうにしておられるかというと、昼間は家に行って、夜が怖いものだから車の中でお休みになる、こういう、阪神大震災のときとちょっと違う、お話しになりましたけれども、状況もある。それで、そういう、車で寝ておられる皆さんにどうやって配慮をするかというようなことが、率直に難しいところもあるというようなことも言っておりました。

 それから、どうしても御高齢の皆さんが、また阪神のときと違って、被災者に大変数が多くおられる、そんなことがあるというようなこと。しかし、とにかく保健師の皆さんに今巡回してもらっているから、できるだけそういう中でいろんなことを申し上げるという努力をすると言っておりました。

 また一方、車の中で寝ておられることに一番の問題があるわけでありますから、旅館だとかそういったものを、グリーンピアも含めてぜひ開放して、そういうところにお休みいただくというようなことも必要だろうと思いますし、とにかく考えつくことは何でもやってくれいと。

 けさ、そういうことであるならば、昼間、ラジオ体操の音楽でも流して、体を動かしてもらわないのが一番いかぬのだと言いますから、少し動かしてもらう努力ぐらいせいと言いましたら、それは阪神のときもうやりました、そろそろボランティアの皆さんがそういうこともやっていただいておるとか、いろいろ言っておったんですが、申し上げたいことは、もう考えつくことは何でもやって今の事態に対処しなきゃならぬ、こういうふうに思っておりますということを申し上げたつもりでございます。

阿部委員 私は、具体的にはやはりエコノミー症候群の広報活動、きのうはそれを手書きのチラシでボランティアグループがやっておられました。それへの取り組みと同時に、先ほど申しましたクーポン券のようなもの、それは、だれかを強制的に移すことはできないけれども、こういうところでお休みいただくこともできますよ。皆さん、おうちに帰って財布もとってこられませんから、お金もお持ちではありませんし、現地を離れたくないというのはわかりますが、しかし、幾ら日中に体操しても、夜、本当に一歩車の外に出れば極寒ですから、いろんなことが起こります。私は、あれを見ていると、このような受け皿がありますよということの周知をわかりやすい形でなさっていただきたいと思います。またよろしくお願いいたします。

 二点目も同じような質問ですが、実は、私はせんだってこの場での横路議員と尾辻大臣のやりとりをお聞きしながら、医療機関はどうなっておるかということで、これも大変気になりますので行ってまいりました。

 小千谷市は四万人くらいの人口で、基幹となります病院は小千谷総合病院という病院でございますが、老人保健施設も含めて三百六十床、本体の方は二百六十床、地域の本当に最前線の中核的な病院であります。実は、この病院が震災がひどくて、七階部分はもう本当に、中に入ってみてびっくりするように、ぐちゃぐちゃに散乱物で散らかり、壁は倒れ、配管のパイプは曲がり、ベッドはひしゃげ、よくこれで一人も死者が出なかったと私は思いました。

 それで、院長も、やっときのう電気と水が病院にもつくようになり、その中で院長は不眠不休で活動しておられましたが、それこそ、患者さんたちは無事、今は近隣の施設に移しましたが、その当日、地震が起きたまさに当日、看護婦さんたちは、担架で、エレベーターがとまっているから足で、七階から一階まで二百二十人の患者さん全員を、身の危険の中を、本当に自分も、もう二次災害、また揺れる、その中を全員おろして一階に寝かせたということをおっしゃっていました。

 自来、看護婦さんたちは、自分の家も帰ればつぶれているかもしれない、あるいは、あっても、とてもそこまで行けない中で、下着もかえず、四泊あるいは五泊、病院の中に、もうそれこそ寝食を共に、本当に下着もかえていないという状態でやっておられます。

 私は、その一部は被災者ですから、そういう方々を被災者救済法で、例えばそういうクーポン券でということもあるでしょうが、もっと実は大事なことは、病院はライフラインの根幹だということです。そして、日ごろもそこには弱者がいて、そこをしっかりお守りいただいている職員の皆さんに、こういう際にやはりきちんとした住宅を提供していただきたい。

 例えば、個人病院がそれを借り上げて看護婦さんたちに提供するということは、私も民間病院の院長でしたから思いますけれども、非常に負担が重い。今、診療もできない。そして、病院はぐちゃぐちゃ。でも、今も外来患者さんは引きも切らず、入院患者さんは移したけれども、だから帰るに帰れない、そして交代もできない、それこそ不眠不休で、ここでもまた過労死が起こるのではないかと本当に深刻に思いました。

 大臣も、もう本当にお忙しいと思いますが、ぜひ現場の声を婦長さんからも院長さんからも聞いていただきたい。これは本当に頑張られたと思います。二百二十の患者さんを瞬時におろすは、本当に並の根性ではできなかったと思いますから。そうやって頑張ってこられた方たちが今でもどこにも泊まれない状態でおられますので、これは災害救済法の外にある問題ではなくて、ライフラインを支えている職員にきっちりと遇すること、このためには何をすればよいか、どういうお考えであるかを担当部局にお伺いいたします。

岩尾政府参考人 まず、お尋ねの、病院に附属する看護婦宿舎等々の整備でございますが、これは、私ども、医療施設の整備補助金の中でそのようなメニューをもって補助するというシステムがありますので、活用していただければありがたいというふうに思っておりますが。

阿部委員 今震災で、今なんです。そんなことをよくも答弁できましたね。今です。四日も五日も寝ていない人に、看護婦寮の整備が省庁から出ているなんてとぼけた答弁をしないでください。きょう泊まるところです。岩尾さん、行ってください。冗談じゃない。

 大臣、どう思われますか。私はそんな答弁のために、今、労組法の審議もさておいて、この場に立っているわけではありません。

尾辻国務大臣 今、一生懸命被災者の皆さんに当たっておられる医療関係の皆さん初め多くの方々が肉体的、精神的な疲労が極限に達しておるということは、もうそのとおりだと思います。

 したがって、何かをやらなきゃいけないわけでありまして、率直に、今の余りにものんびりした答弁はおわびを申し上げたいと思います。とてもそんな事態ではないことは思っておりますから、早速にでも、今、私どもの専門家を派遣しておりますし、先遣隊とともにいろいろな人間が行ってはおりますけれども、改めてよく聞きますとともに、必要があればすぐ人を派遣して対応したいと思います。

阿部委員 実は、人の派遣は東京都とか他の大学病院からも来ておられます。しかし、現地の人たちは、やはり自分の土地を愛して、そして、自分が日ごろ診ていた患者さんたちだから去るに去れないという思いもあります。今、私が具体的にお願いしたのは、その方たちの宿泊をどうにかしてほしいという、とってもリアルなことです。

 彼女たちは、そういう自分の状況を抱えながら、院の外の巡回にも出ておられます。例えば、人工肛門を使っている方、あるいは褥瘡のある方の巡回にも出て、やはり心配だから地域に出ずにはおられないんです。もちろん、応援の医師や看護師さんも、まだ看護婦さんの方は派遣がないようですが、医師も入っておられます。しかし、そのことと同時に、そこで一生懸命地域に根づいてというか踏ん張って頑張っている人たちに、きっちり手当てをしていただきたいということです。

 それから、大臣にも視察に行っていただきたいですが、写真を持ってきましたので、ちょっとお見せもしたいと思います。

 そこに撮ってございますのは、ぐちゃぐちゃな病室、そして、ちょっと新しい方が右横にありますが、そこも破壊されている。しかし、一つだけ、老人保健施設は耐震整備がしてございました。

 この耐震整備の方は、中も見せていただきましたが、非常に安全、安心できる場でございました。もうこのコントラストたるや、私も本当に長く病院に勤めていましたが、そして、日ごろやはり病院を経営、運営しますには、耐震構造をとるにはかなりのお金が実はかかります。そうなると、初期投資をそんなにできない民間病院にとっては、非常に重い問題であります。

 小千谷市の小千谷総合病院は、財団法人でなされていますが、二百六十床プラス百床で地域基幹病院。私は瞬間思いました、果たして、日本全国のいわゆる地域の最前線の、せめて二百床以上の病院、どんなふうに耐震設備が組み込まれているのか。このことの実態をお知らせくださいときのう厚労省にお願いいたしました。いろいろな調査方法でぜひ調べていただきたい現状、そしてできれば、そういう耐震構造に対して、今も新たな建築についてはそれなりの補助もあるやに伺っていますが、早急に整備していただきいと思いますが、いかがですか。

尾辻国務大臣 病院の耐震化というのは極めて大事なことでございます。

 そこで、今手元にあります数字をまず申し上げますと、内閣府の調査でございますけれども、八千九百六十二施設につきまして調査をいたしました。そして、医療機関耐震化率というのを出しておりますけれども、これは、医療機関の総棟数を分母に置きまして、分子には、まず五十七年以降に建築された医療機関の棟数、これはもう五十七年以降は耐震化がしっかりなされているという前提で、単純に五十七年以降のものは足しています。それから、五十六年以前のものは、調査をして、耐震診断の結果でこれは大丈夫だというものを足して耐震化率というのを出しておりまして、これが五六・一%ということでございます。さらに、新潟県を申し上げますと、五一・六%という数字が出ております。

 ただ、私、きょうこの説明を聞きながら思いましたのですが、単純に五十七年以降は大丈夫だよといって分子に入れて大丈夫かなというのは率直に思いましたし、もう少し私どももさらに調査を進めてみたいと思っております。

阿部委員 いわゆる弱者、寝たきりの方もここに六十床、療養型病床群がございました。その方たちは歩けないから全員で運ぶ、担いで運ぶような状態でおろされたと聞いております。ぜひとも今の大臣の御答弁を受けて、前向きに進めていただきたいと思います。

 残る時間と質問通告の数が随分ずれてしまいましたが、労組法についてのお伺いをいたします。時間の関係で骨太のものしかできないかもしれませんので、お許しください。

 私は、この労組法が昭和二十年の十二月にそもそもでき上がったということを今回改めて勉強いたしまして、憲法に先立つこと、まず職場、労働環境のいわゆる正常な、これは働く側にとっては団結権や団体交渉権が保障され、また使用者側にとっては円滑な運営を心がけるという、社会の根幹に働き方がきっちりと健全であることをまず敗戦後すぐ日本が取り入れ、目指しているんだと思います。

 その中で、実は今、働く者の状況というのは、きょうも私は、国会議員になってもらったこの憲法手帳、実は、私はふまじめで、議員になる前、ほとんど憲法など読むことがなかった、うちの前党首に言うと怒られるので、ここで内緒で言っておきますが、この二十七条に、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」「勤労の権利を有し、義務を負ふ。」二十七条でございますが、しかし、今の若者の現状を見ると、勤労の権利は保障されているか。高校を卒業して就職内定率は極めて低い、あってもパートかアルバイト、そして、就職しても雇用保険も医療保険も失業保険もない、ない、三無状態、こういう若い人たちが大量に出てきている中でのこの労働組合法の改正でございます。私は基本的に賛成ですが、しかし、時代状況を見たときに、幾つか根本のところで意識しなければならないことがあると思います。

 もう先ほど来、例えば小林委員あるいは園田委員がお聞きになっているので、そもそもこれが司法的な解決ではなくて、労働委員会という解決の場を持つということはどういう意味を持つのか。私は、簡単に考えれば、これは労使双方の学校、こういうことをしちゃだめよ、こういうことはこういうふうに解決しようという学校だと今の若者にとっても位置づけられれば、もちろんその前の、職もない、団結しようにも入り口がないという状態はぜひ尾辻大臣に改善していただきたいですが、学校と位置づけた場合に、一つ大変気になる表現がございます。

 それは、二十七条の十四第三項にかかわることですが、専ら今回のこの改正が、和解ということの実践的な、現実的な積み重ねを法文化していこうということにあるのは存じておるのですが、和解にかかわる事件について既に発せられた救済命令等は、その効力を失うとございます。これは、例えば、地労委で出た判断が中労委あるいはそこで和解された場合に、地労委の命令は効力を失うということであろうかとは思いますが、逆に、いろいろな判断の蓄積あるいは労使双方にとっての勉強、事例集というようなものに、これは確実に、例えばさきの地労委の判断は残され、蓄積されていくのか。

 効力を失うというところはよいと思います、そう実際に次の判断が出ているわけですから。しかし、学ぶときに、先例集としてそこに残され、労使双方に活用されていくのかどうか。この一点を、お時間の関係で大臣にお願いいたします。

尾辻国務大臣 違う二つの判断がもし存在すればどっちかの判断にしなきゃなりませんから、一方は無効にするというか新しい判断をとる、そういう仕組みというのは、しようがないというか、当然だろうというふうに思います。ただ、それまでに出されたいろんな考え方というのは、当然これはまたみんなが参考にするわけでありましょうから、決してむだになるものではないというふうに考えます。

阿部委員 私は、確認ですが、事例集とか、そういうきちんとした記録に残され、一度おりた判断は判断として消えないわけです。そのことに基づいて次の和解のプロセスも進むわけですから、原局サイドの方で、事例集等々にきちんとした記録として残るのかどうかの御答弁をお願いします。

太田政府参考人 今の御指摘のお話でございますけれども、和解によって救済命令が効力を失った場合でも、その効力を失った救済命令で示された判断自体は事例の一つとして蓄積されるものでございます。したがいまして、その後の同様の事案に関しまして、労使等が解決を図る上での参考にするなど、円滑な労使関係を構築する上で十分活用され得るものであると考えております。

阿部委員 もう一つ、大臣にお願いいたします。

 こういう労働委員会の場はいわゆる裁判という場ではございませんが、やはりそこに、例えば傍聴に参加する労働者側、ゼッケンや腕章やあるいは仲間であることを意識するようなものをつけて入ることもあろうかと思うのです。現状でそういうものが過剰には禁止されていないとは思いますが、やはり原則的に、委員会の運営を妨げない限りにおいて、労働者側のそうした団結のためのいろいろな行動といいますか、別に示威行動をとろうというのではありません。こんな質問をするのは、過剰にワッペン、ゼッケン、腕章がだめ、だめ、だめと言われかねない状況も一部あるように聞いております。もちろん、委員会のその場を混乱させたり聞き取れないようにやじを飛ばしたりというようなことは私もいけないと思いますが、しかし逆に、そもそもこの委員会が、労働者にとって団結することの意味、そしてむしろその方が職場が円滑であろうということの意味をやはり労働者側に立って促進するためのものですから、過剰な排斥はないというふうに認識してよいのかどうか、大臣にお願いいたします。

尾辻国務大臣 今度の法改正で、証人が、これまでは任意で来てもらっていたものを命令によって来てもらうというようなこともございますので、そういうこともありますから、証人が傍聴人等の威圧や妨害により適正に証言できないことがないよう、労働委員会が審問を妨げる者に対して審問廷の秩序を維持するために必要な措置をとることができることとしたものでございますが、これは当然常識的な範囲で行われるというふうに考えております。

阿部委員 あと三問を残しましたが、時間の関係で終わらせていただきます。ありがとうございます。

鴨下委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時七分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 ただいま議題となっております第百五十九回国会、内閣提出、労働組合法の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 第百五十九回国会、内閣提出、労働組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、大村秀章君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。小宮山泰子君。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。

 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    労働組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 今回の不当労働行為審査制度の見直しの趣旨にかんがみ、計画的な審査及び迅速・的確な事実認定が行なわれるよう、必要な措置を講ずること。

 二 中央労働委員会事務局に法曹資格者を配置する等事務局体制の充実・強化を図るとともに、労働委員会事務局の専門的な知識能力の向上のため、研修その他必要な措置を講ずること。

 三 証人の宣誓、公益委員の除斥、忌避については、労働委員会の裁判所化・民事訴訟化となることのないよう、その運用に十分配慮すること。

 四 公益委員の選出に当たっては専門的な知識能力を持つ適切な人材が選出できるよう努めるとともに、常勤となる公益委員については、労働紛争を解決するにふさわしい知識・経験を有する有為な人材を登用すること。

 五 審級省略及び実質的証拠法則については、引き続き積極的に検討を進めること。

 六 証人等出頭命令等に対する不服申立て及び和解の制度については、新法の施行状況を勘案し、必要があると認めるときは総合的に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、尾辻厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鴨下委員長 次回は、来る十一月二日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十二分散会


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