衆議院

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第4号 平成16年11月2日(火曜日)

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平成十六年十一月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      河野 太郎君    菅原 一秀君

      田中 英夫君    寺田  稔君

      中西 一善君    中山 泰秀君

      原田 令嗣君    福井  照君

      三ッ林隆志君    三ッ矢憲生君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    内山  晃君

      大島  敦君    小林千代美君

      小宮山泰子君    城島 正光君

      園田 康博君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      水島 広子君    横路 孝弘君

      米澤  隆君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   厚生労働大臣政務官    藤井 基之君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   政府参考人

   (消防庁次長)      東尾  正君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 佐藤  悟君

   政府参考人

   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            青木  功君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 井口 直樹君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           高橋 直人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           伊地知俊一君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     田中 英夫君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英夫君     三ッ矢憲生君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ矢憲生君     寺田  稔君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  稔君     原田 令嗣君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第三四号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官柴田高博君、消防庁次長東尾正君、外務省大臣官房参事官佐藤悟君、経済局長佐々江賢一郎君、厚生労働省医政局長岩尾總一郎君、健康局長田中慶司君、医薬食品局食品安全部長外口崇君、職業安定局長青木功君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長金子順一君、社会・援護局長小島比登志君、社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君、老健局長中村秀一君、年金局長渡辺芳樹君、政策統括官井口直樹君、社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁運営部長青柳親房君、農林水産省大臣官房審議官高橋直人君、大臣官房参事官伊地知俊一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福島豊君。

福島委員 おはようございます。

 両副大臣におかれましては、地震の災害等、さまざまな緊急な対応を要する状況の中で御努力いただいておりますことに、心より敬意を表する次第であります。何とぞよろしくお願いいたしたいと思います。

 本日は、大臣は閣議がございますので、両副大臣を中心に御答弁をいただければというふうに思っております。

 まず初めに、先般のたび重なる台風、そしてまた中越大地震によりまして被災をされました方、そしてまた亡くなられました方に、心よりお見舞いとまた御冥福をお祈り申し上げたいと思っております。一日も早い日常の生活の回復のために、政府を挙げてしっかりと取り組んでいただきたい、そのように要望する次第であります。

 本日は、この中越地震対策について何点かお尋ねをいたしたいというふうに思っております。

 地震発生後一週間がたったわけであります。避難を続けている人は十月三十一日現在で六万八千八百四十七人、いまだに多くの方が余震の関係もあって避難生活を余儀なくされているわけであります。今後、冬季に入り、積雪のことを考えますと、大変な豪雪地帯でありますので、一日も早い住宅の確保が必要であると考えております。

 仮設住宅につきましては、十月二十七日から第一次分が着手をされているわけであります。約三千戸から四千戸の必要があるのではないか、このように推計されているというふうにも伺っております。速やかな整備を進めていただきたいと思います。

 いずれにしましても、こうした仮設住宅に入居される方もおるわけでありますが、多くの方は、みずからの自宅を修繕して、応急修理をしてそこにまた戻っていくということが想定されるわけであります。ライフラインの復旧、これは厚生労働省の所管というわけではありませんが、に全力を挙げると同時に、こうした応急修理についても短期間のうちに一定程度完了することができるような十分な支援が必要である、そのように思っておりますけれども、政府の御見解をお聞きしたいと思います。

小島政府参考人 先生御指摘のように、冬が近づいておりまして、一刻も早く被災者の居住環境の安定を図ることが重要であるというふうに考えております。

 そこで、半壊の被害を受けた住宅のうち応急的な修理を行えば帰宅が可能というケースにつきましては、災害救助法に基づきまして自宅の応急修理を進めることが重要だと考えております。このため、厚生労働省におきましては、応急救助、自治体みずからが実施する現物給付という災害救助法の基本原則の枠内で可能な限り弾力的な対応を図るべく、現在、対象者の要件の明確化や手続の簡素化について鋭意検討し、新潟県の方と相談を申し上げているところでございます。

 また、この具体的な実施に当たりましては、多数の建築関係者が必要になると思われますが、現在内閣府に設置されました新潟県中越地震関連被災者プロジェクトにおきまして、国土交通省を初めとする関係省庁と協議を行っているところでございまして、今後とも、関係省庁、新潟県と連携をしながら、応急修理が円滑に進むよう力を尽くしてまいりたいと考えております。

福島委員 よろしくお願いいたします。

 また、今回の地震では、避難後の死亡を予防するということが大変重要だ。エコノミークラス症候群でありますとか、また心筋梗塞等で亡くなられる方が頻発したわけであります。横になってゆっくりと寝ることができる、こういうことが大切だ。マスコミでも報道されておりましたけれども、ボランティアの手によりまして、全国各地からテントが贈られ、またその設置が進められたわけであります。阪神・淡路大震災のときにも、安心して寝ることのできる場所の確保が必要だと、経験者の方はこのようにおっしゃっておられます。

 このテントなんでありますけれども、これは備蓄ができるものでありますし、備蓄物資として一定程度これを用意しておいて、緊急の場合には速やかに現地に設置できる、こういう体制が必要ではないか、私はそのように感じました。それぞれの自治体がどのような備蓄を行うのかということを定めるという体制になっておるわけでありますけれども、こうした一気に非常に大量のものが必要であるという場合については、それぞれの自治体に任せておくというだけではなかなか十分な対応ができないのではないか、そんな思いもしたわけであります。こうした点について、政府のお考えをお聞きしたいと思います。

柴田政府参考人 災害時の避難場所の確保、避難生活の環境を良好に保つということは非常に重要なことであるというぐあいに考えております。今回の地震では、避難所の外で車の中で避難生活を送られていまして、そのために死亡されるというような事例も見られてございます。公民館や学校等の公共的施設への避難誘導のみならず、いろいろな各般の対応でもって避難者の生活環境の向上に努めることが非常に重要であると考えております。

 政府の非常災害対策本部でも、それぞれのテーマにつきまして現在プロジェクトチームをつくって検討いたしているわけでございまして、避難所の生活、被災者の皆さんの生活向上のためには、例えば高齢者、要援護者等につきましては、ホテルや旅館、温泉地、そういうところを活用していただきまして、一泊二日でもショートステイでも結構ですから、そこで英気を養っていただくというようなこともやってございます。

 また、今御指摘のテントの活用につきましても、非常に大きな重要な課題であると考えておりますし、非常に有効であると考えております。これにつきましては、今自衛隊の方の協力を全面的にいただいておりまして、現在、六人用のテント、いろいろなテントがございますが、六人寝られるようなテントを準備していただいておりまして、四千張り、二万四千人収容できる能力のものを現在用意していただいております。プライバシーも確保できます。一つの家族がそこで暮らすということもできるわけでございます。今これらにつきまして、積極的に被災地の皆さん方に対して御利用をお願いしているところでございます。現在、自衛隊のテントの供給能力はまだ余って、四千張りあるわけでございます。そこまで使われてございませんので、被災地におきます展示、体験宿泊を通じ、積極的な利用を呼びかけてございます。

 今後、避難場所となるテントの活用というのは、非常にスピーディーにできますし、有用であると考えてございます。都道府県全体でもテントを四万三千張り持っておりまして、それらを相互利用できると思いますけれども、これらのテントというものを有効に活用して、被災者の生活向上に努めてまいりたいと考えております。

福島委員 阪神・淡路大震災は大変な教訓を与えたわけでありますが、今回のこの中越地震、現時点における最大限の努力と同時に、今後想定される大地震に向けて、今の体制をどう見直すべきかという点からも十分教訓を得なければいけないのではないか、そのように思っております。そういう意味で、今、内閣府から、テントの問題につきましても避難者の生活空間の環境の確保ということについても御発言いただいたわけでありまして、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 災害弱者、高齢者の方や乳幼児、障害者の健康維持のために、旅館やホテルを避難場所に確保するという指示が出されて、現在、百三十施設、四千七百室を避難施設として確保したと伺っております。総理の指示のもとに適切に対応していただいていることが非常に大切だというふうに思っております。

 今回のこのような取り組みを踏まえて、それぞれの地域で、来るべき大震災が想定されておるわけでありますけれども、こうした連携が速やかにできるような体制づくりを急ぐべきではないか、そのように思っております。本日の日経新聞でも、「高齢者介護 足りぬ施設」というような報道がありました。特別養護老人ホーム等に緊急入所していただいている方もたくさんおるわけでありますが、なかなかマンパワーが十分ではないというような指摘であります。

 こうした経験を踏まえますと、平時からこういう連携体制をどのようにつくっていくのか。体育館、小学校等の避難場所の確保ということだけではなくて、こうした旅館やホテルの利用でありますとか社会福祉施設の利用でありますとか、そういうものについて、広域でどのような体制ができるのかということについて検討を進めることが必要ではないか。施設の登録でありますとか、どの程度の提供ができるのかとか、平時から考えておいていただく、こういったことについて副大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 ただいまの福島委員の御質問、大変重要なことだというふうに受けとめております。大災害が起こったときに応急の救助をいかに的確に行うかということについては、阪神・淡路の大震災の大きな教訓をもとにして、平成九年にガイドラインを策定いたしております。この中で、避難所については、御指摘のように、公民館それから学校等の公共施設に加えて、これらが不足する場合には、公的宿泊施設、それから旅館、ホテル等の借り上げを行うということで、都道府県に既に通知をしているところです。

 今回の新潟県の中越地震には、速やかにこうした取り扱いが行われるように、地震発生の翌日二十四日に、高齢者、障害者等の要援護者については旅館、ホテル等を避難所として活用できるようにということで、新潟県に要請を行っております。二十七日には、業界団体であります全国旅館生活衛生同業組合連合会等についても協力の要請をさせていただきました。新潟県は、早速、翌日二十八日に実施要項をつくりまして、その周知を図っておりまして、グリーンピア津南という施設を初めとして、旅館等の避難所が活用されております。昨日一日現在で二百十四人の皆さんに利用していただいている、こういう実態でございます。

 今回のこの課題を今後の課題として、旅館、ホテル等の施設にいかに協力していただけるかということについて、今回実施しました対応状況を検証しながら、積極的に関係省庁とも連携をとって検討してまいりたい、こういうふうに考えております。

福島委員 ありがとうございます。

 先ほど申し上げましたが、被災後、エコノミークラス症候群や心筋梗塞などで死者が続いております。こうした事態が発生することは予測可能であったというふうに言わなければならないのではないかというふうに思います。

 大規模災害が発生した後の組織的な対応が効率よくなされなければなりません。厚生労働省のまとめております緊急時の防災業務計画、こういうものにも、保健師によるさまざまな保健活動について規定がされております。今回の対応も、保健師の方々の派遣、そしてまた健康管理上のさまざまな指導といったような観点で取り組みがなされておりますけれども、もう一歩踏み込んで言えば、なぜ予防ができなかったのだろうかという感慨を抱く国民も多いのではないかというふうに思っております。

 今回の経験を生かして、より具体的な防災業務計画に見直しを進めていくべきである、こういった点について政府の御見解をお聞きしたいというふうに思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 災害対策を進めていく上に、さまざまな経験それから教訓を十分生かしていくということは大変大事なことでございます。そういう意味では、エコノミークラス症候群を初めとしたこの現象を今後どういうふうにして解消していくかという大きな課題が残されてきたなというふうに私も認識しております。

 今後、防災業務計画につきましては、計画を効果的に推進できるようにするために、必要があれば修正を加えていくということは非常に大事なことでございまして、今回のこの災害の経験を踏まえて適切に見直しを図っていきたいと思います。地震の場合、また洪水の場合、さまざまな災害がございます。そのときそのときに必要な措置も当然できてこようかと思います。そのことをきめ細かく、今回の起こった災害を、原因を究明しながら、御指摘の事項についても検討して適切な見直しを図ってまいりたい、こう思っております。

福島委員 今回の地震では、消防庁長官がみずから先頭に立って体外式除細動器十五器、現地に届けていただいたと伺っております。こうした救急体制につきましても、体外式除細動器の普及を進めなければいけない。厚生労働省においても積極的に取り組んでいただいておるわけでありますが、そうした一定の進歩というものを取り込んだ上で対応していただいている、大変ありがたいことだというふうにも思っております。

 そしてまた一方では、こうした救急の疾患が発生したときにどのように対応できるのかということは、平時からのまた備えが大切であります。体外式除細動器につきましても、現地にあって、それを活用するマンパワーがやはり必要だろう、一定の知識を持っておられる方がやはり必要だろうというふうに思うわけであります。そういう意味では、平時からの救急の知識の普及、こういうことにつきましても、厚生労働省、しっかりと取り組んでいただきたい、そのようにお願いを申し上げるものであります。

 続きまして、高齢者の虐待対策についてお尋ねをいたしたいというふうに思っております。質問の前後が若干入れかわりまして、申しわけなく思っております。

 高齢者の虐待は近年メディアでもさまざまに取り上げられるに至ったわけでありますけれども、先般全国調査を行っていただきました。その全国調査の概要についてお聞きをいたしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問がありました高齢者の虐待についての調査でございますが、平成十五年度の私どもの老人保健健康増進等事業による補助金によりまして、財団法人医療経済研究機構が調査したものでございます。

 調査の内容につきましては、家庭内における高齢者の虐待の現状について調査するということで、家庭内の状況をよく把握しておられます全国の在宅介護支援センター、それからケアマネの事業所、それから訪問介護事業所等の関係機関に調査をお願いするとともに、全国の市区町村にも調査をお願いしたところでございます。

 関係機関一万八千に調査をお願いしましたところ、回答を六千六百九十八カ所、それから市区町村二千五百八十九カ所から回答を得まして、本年四月にその結果を取りまとめました。

 調査結果を見ますと、虐待を受けている高齢者の状況につきましては、個票などを提出していただいておりまして、それを分析したわけでございますけれども、約八割の方が七十五歳以上のいわば後期高齢者で、また、御本人の症状といたしましては何らかの痴呆症状を有する方が約八割に及ぶということがわかりました。

 それから、主な虐待をしている方の状況を見ますと、息子によるものが最も多く、全体の三二・一%、次いで息子の配偶者、お嫁さんになるわけでございますが、二〇・六%、それから虐待を受けている方の配偶者、夫であったり妻であったりするわけでございますが、二〇・三%というような結果になっております。

 虐待をしている人とされている高齢者との関係はどんななのかということを調べてみますと、接触時間が非常に長いケースが多いということで、常に一緒にいるという方が約五割、それから、昼間は一緒でないけれども、そのほかはずっと一緒にいる方が約三割と、約八割のケースが虐待をしている人と高齢者が常時接している状況にあり、また、その虐待をしている人は、主な介護者として介護を行った人が六割であり、ほかの介護者がいないケースが六割であったということで、要は、よく接触していて介護の他の助けがないケースが多いというようなことがわかっております。

 それから、専門機関の方から調査いたしますと、約半数、四九・三%の方が何らか虐待を受けているという意思表示が虐待をされている高齢者からあるという結果になっております。

 以上でございます。

福島委員 こうした実態を踏まえますと、来年の介護保険制度の改革に当たって、こうした高齢者の虐待が予防できるような体制づくりというものが急務の課題であるというふうに思っております。公明党におきましても、古屋範子議員を中心として高齢者虐待対策ワーキングチームをつくりまして、高齢者虐待防止法について検討いただいております。

 ただ、いかなる法律が想定されたとしても、大切なことは、地域においての相談の窓口、そしてまたさまざまな機関、医療機関や福祉機関等と連携をする体制づくりというものがなければ絵にかいたもちでしかないということになるわけであります。介護予防ということが来年の改革の一つの柱でありますけれども、介護予防における取り組みや、そしてまたケアマネジメントにおいても、連絡会議、地域における相互の連絡をとる体制が非常に大切だということが言われているわけであります。そうした地域における連携を図っていく中に、高齢者の虐待の予防、そしてまた早期発見を組み込んでいくということが必要なのではないかというふうに思います。

 今回の改革に当たっては、介護予防において、市町村の関与の強化でありますとか、また在宅介護支援センターの機能の強化、こういったことがうたわれているわけであります。この中で、高齢者の虐待の予防ということについてどのような体制をつくり上げていくのか、その方針について具体的なビジョンをお示しいただきたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 私も親子三代家族でずっとおりましたものですから、おやじが目が悪くて、もう亡くなったんですが、介護、また年配の人のお世話ということの大変さは、家族含めてよく存じているつもりでございます。

 その上で、今御指摘の高齢者の虐待に対する対策、これもまた大変重要なものだと思いますし、先ほど局長から御答弁申し上げましたように、非常に家族にとっては重い負担、その究極の果てにこういう虐待という現象が起こっているということからすると、早急に解消していかなければならない課題だというふうに考えております。

 この高齢者の虐待につきましては、これまで老人福祉法に基づく市町村長の権限、職権における保護等による対応を行ってまいりましたけれども、今後は、地域の高齢者に対する実態の適切な把握、家族等に対する総合的な相談窓口機能、それから介護関係者や行政機関など高齢者虐待に関する関係機関のネットワーク、これは先生御指摘のことでございますが、こういうことを行っていく必要があるというふうに考えております。

 さらに、来年に予定しております介護制度の改革におきましては、市町村を主体として地域包括支援センターを新たに創設いたしまして、これらの課題が地域のコミュニティーの中で解決できていく方向で今検討している最中でございます。

福島委員 ぜひ実りの多い成果を上げていただきたいと思います。

 続きまして、年金の問題についてお聞きをいたしたいと思います。

 年金制度の一元化につきましては、通常国会で民主党の先生方からたび重ねて御意見をいただきまして、大変大切な課題であると思っております。

 今国会におきましても、三党合意に基づいてぜひとも協議会をスタートし、本日の新聞でもいろいろと報道されておりましたけれども、具体的な、そしてまた創造性豊かな議論というものをしていきたいというふうに、お願いをいたしたいと思います。

 ただ、一方で、政府におきましても、この一元化という問題について、年金法案が成立したのでそれでいいということではなくて、引き続き被用者年金の一元化ということについて具体的にどう進めていくのか、積極的な取り組みと、そしてまた国民に対してのアピールが私はぜひとも必要だというふうに思っているわけであります。こうした取り組みについて、政府は引き続き全力で努力している、その姿を示すことが、先般の年金改革、これについての国民の理解を深めるその一助にもなる、私はそのように確信をいたしております。

 政府としてのこの一元化に向けての取り組みへの決意、お聞かせいただきたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 委員既に御存じのように、公的年金の一元化につきましては、昭和六十一年に基礎年金制度導入以来順次、三公社の統合、農林共済、それから国家公務員と地方公務員等の一元化を今まで進めておりまして、現在、被用者年金の統一的な枠組みを形成しようというところでございます。

 厚生労働省は厚生年金を所管しておりまして、また年金制度の調整を所管するという立場からも、積極的にこれらの取り組みを今までも推進してまいりました。今まで長期にわたる経緯を重ねてまいりましたこの一元化に対しましては、今後、そういった各制度の経緯を踏まえて、さまざまな角度から検証をし、関係者間の調整を行って合意を図っていく、こういう必要があると考えております。

 平成十三年三月の閣議決定におきまして、被用者年金の一元化を図るための方策について、「二十一世紀初頭の間に結論が得られるよう検討を急ぐ。」こういうことが明記されております。また、先日の予算委員会で総理からも御答弁がありました。御指摘のように、年金制度の一元化を展望する上で、まず被用者年金の一元化を図ることが必要である。

 今後、こうした政府の方針を踏まえて検討を行って、できるだけ早急に結論が得られるよう、関係各省と協力しながら全力で取り組んでまいりたいと思っております。

福島委員 ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、障害者施策についてお尋ねをいたしたいと思っております。

 先日、グランドデザインというものが公表されたわけであります。来年に向けて障害者施策のあり方を大きく転換する、そういう契機になるのではないかというふうに思います。

 既に、このグランドデザインについてはさまざまな意見が出されております。負担のあり方の見直しというものが果たして適切なんだろうか、こういう御指摘もありますし、そしてまた、個々のニーズを把握するための審査のあり方、こういったことについても御意見があるわけであります。

 今後、来年に向かって具体的な法案の検討に当たって大切なことは、関係団体の意見というものを十分聞いて、そしてそれを適切に反映していくということではないかというふうに私は思っております。

 今後の進め方について、御決意をお聞きしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 グランドデザイン、またそれをどうこれから進めていくかという御質問かと思います。

 障害保健福祉施策につきましては、制度を安定的、効果的にすること、それから就労支援等さまざまな政策課題がございます。これらの課題の解決を図ることを目的として、先ほど御指摘のような改革のためのグランドデザインが十月十二日に公表されました。

 この案では、一つは、障害者の種別、それから年齢等にかかわりなくできるだけ身近なところで必要なサービスを受けながら暮らしていける、それから、市町村を中心として福祉サービスの提供等の仕組みを共通のものとしていく、いわゆる総合化ということが一つの観点でございます。それから二番目に、障害者が地域で自立して暮らせるように、就労支援を含めた自立支援を行っていく、これが二つ目の観点でございます。三つ目に、制度の持続可能性を確保して、国民の信頼を得て安定的に運営できるように、より公平で効率的な制度にしていく。こういう観点から具体的な案をお示しいたしました。

 精神障害を含めまして、知的障害、身体障害等について共通な福祉サービスを一元的に法体系に盛り込んでいこうということで、関連法案を次期通常国会に提出させていただきたい、こう考えております。

 今後、障害者団体、地方自治体、それからサービスを具体的に提供していただいている皆さん、経済界等、幅広く御意見をちょうだいしながら、さらなる検討をしてまいりたい、こう考えております。

福島委員 また、支援費制度の話でありますが、先日のこの委員会におきましても、十六年度の予算、一体幾らぐらい不足するんだ、こういう質問がありました。支援費制度がスタートして、従来、裁量的経費というふうに位置づけられていたこの障害者の在宅サービスの予算、こういったものも、実はやはり義務的経費という位置づけをすべきなんだろうというふうに私はかねてから思ってまいりました。

 そういう観点から考えますと、補正予算が編成されるという見通しになっているわけであります。その中で、こうした支援費の十六年度分の不足についてこの予算の中できちっと対応するように、厚生労働省としてもしっかりと努力していただきたいと思いますし、私ども公明党としてこのことを要望していきたい、そのように思っておりますけれども、政府の御見解をお聞きしたいと思います。

西副大臣 支援費の在宅サービスにつきましては、国それから都道府県の財政責任が明確でないという制度的な課題がこれはある、その解決が急務である、こういうふうに認識しておりまして、国民の信頼を得て安定的に運営できるような、より公平で効率的な制度にする必要がある、こういう問題意識を持っております。

 このために、改革のグランドデザイン案においては、給付の支給決定に関する障害の程度に係る基準を設定すること、それから、利用者負担等の見直しを前提にしまして、国及び都道府県の補助制度を義務として支弁する仕組みに改めることを検討しているところでございます。

 今御指摘のように、今年度は二百数十億円という相当な不足が見込まれているということもございまして、また裁量的経費という性格上大変難しい課題ではございますけれども、私どもといたしましては、補正予算に計上することも含めまして、精いっぱい知恵を絞って、必要な予算の確保に向けて最大限の努力をしてまいりたい、こう考えております。

福島委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 混合診療の話についても取り上げる予定でありましたが、時間が参りましたので、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、石毛えい子君。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。

 本日は、厚生労働行政を新しく所管なされます尾辻厚生労働大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 質問に先立ちまして、一点、このたびの新潟中越の地震による被災の方々に心よりお見舞いを申し上げますと同時に、少し要望をさせていただきたいと思います。

 それは、けさほども震度四の地震というようなことで、今、余震の心配の中で皆さんお過ごしになっていらっしゃるわけですけれども、仮設住宅も含めまして住宅の確保、あるいは、これから先、生業再起をどのようにするかというベーシックな、大きな課題もございます。そしてまた、今回の地震では、新潟在住の障害をお持ちの方が三万一千三百二十八人いらっしゃるというふうに伺っております。そしてまた、御高齢でひとり暮らしをされていらっしゃる方、介護保険を活用しながら在宅サービスを得てお暮らしになっていらっしゃる方、さまざまに地域でケアを必要とされて、それを得ながら暮らしていらっしゃる方がおられるわけですけれども、どうもこのところの報道などによりますと、安否確認の人手の確保というようなところが十分に手だてができていないとか、それから、一時的入所の施設とか旅館とかホテルにつきましては厚生労働省も対応されているというふうにお伺いしておりますけれども、そうしたこと。あるいは、自立生活センター新潟に寄せられましたメールでは、人工呼吸器の電源の問題というようなこと。ですから、医療ニーズのある方の、とりわけ在宅の方への早急な、迅速な手だてというようなこと。それから、避難先がバリアフリー化されているかどうかというような問題。また、視覚障害をお持ちの方には、音声言語を絶えず同時に出していただくということ。それから、聴覚の方には、手話をなされる方が少なくてコミュニケーションに課題があるというようなことですとか、文字情報も出していただきたいというようなこと。現地にお入りの方、ボランティアの方、行政の方、さまざまに努力はされていらっしゃるわけですけれども、なおさまざまな課題があるということも明らかになってきております。その中で、一点、携帯のメールというのは聴覚に障害をお持ちの方には非常に有効だというようなことも表明されております。

 ですから、そうしたことを、よかった点あるいは課題の点、早急にやるべき点等々、危機管理マニュアルを十分に精査されまして、とりわけ在宅でさまざまなサービスを活用されて暮らしていらっしゃる方、健康の維持の問題、薬の問題等もあるかとも思います、ぜひとも、きめ細かな危機管理マニュアルの整備と申しましょうか、そしてまた、現地での対応が迅速に進みますように御努力いただきますよう、これは質問通告しておりませんので、要請をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、きょうは私は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、新しく厚生労働行政を所管されます尾辻大臣に、極めて基本的なことでございますけれども、社会保障の今後の方向性というようなところで概括的な質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初の質問でございますけれども、昨年もそうでしたけれども、ことしに出されました経済財政諮問会議の経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇四、いわゆる骨太の方針二〇〇四でございますけれども、政府の規模を抑制するために、「潜在的国民負担率で見て、その目途を五〇%程度」と表記をしております。「五〇%程度」という表記は、これまでもたび重なって政府はしてきておりますけれども、尾辻大臣といたしまして、この「五〇%程度」という政府の基本方針をどのように受けとめておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

尾辻国務大臣 まず、国民負担率でキャップをはめるのかどうかという大きな議論がございますので、それについての考え方からお答えさせていただきたいと存じます。

 社会保障の給付と負担のバランスを考えますに当たりましては、経済財政のバランスや世代間、それから世代内等の公平性の確保等の観点もあわせて考え、国民に選択を求めていくことが必要であろうかと考えます。

 そこで、財政規律の面から、国民負担水準を何らかの形で示すことは必要なことであるというふうには考えております。ただ、現行骨太の方針で示されておりますような、国民負担率で示すことがどうなのかということにつきましては、専門家の間でも、その国民負担率の数字が大きくなることが経済成長等に与える影響については明らかになっていない、あるいはまた、財政支出が一定であっても間接税の割合が増大するなど、直間比率が変わるだけで国民負担率の数字が変わってしまうというような指摘などもありまして、そのあり方についてはいろいろ御議論がございます。

 いずれにいたしましても、社会保障全体のあり方を議論するに当たりましては、その負担の規模のみを論ずるのではなくて、これと表裏一体の関係にある給付のあり方、これが大事なことでございますから、国民の皆さんの間でいろいろ御議論をさらにいただき、私どもも検討を進めていくことが必要であろうと考えております。

 国民負担率という指標を用いるということについての基本的な考え方をまず申し上げました。

 そこで、あと、今、先生、潜在的国民負担率だとか五〇%とかという、おおよそですか、あれは何という表現になっていますか、というその辺のことについては、それは記述でございますので、まさにそのとおりに読んでおる、こういうことを申し上げたいと存じます。

石毛委員 もう少し御答弁をいただけますと大変ありがたいと思います。

 よく知られている統計ですから大臣もごらんになっていらっしゃると思いますけれども、日本の国民負担率は、対国民所得比で、租税負担、社会保険料負担合わせて三五・五という。潜在的負担率が九・六、財政赤字の分でございますけれども、一〇%に近いという状況。これを合わせますと今四五・一ということで、五〇%という天井を仮に置くとすれば五%ぐらいの幅はあるわけでございますけれども、厚生労働行政にかかわりまして、租税全部社会保障給付に充てられているわけではなくて、約四割ぐらいというふうに聞いておりますけれども、その分と、それから、保険料を合わせましても三五・五%、これは例えばでございますけれども、イギリスの五〇・二%ですとか、ドイツの五五・二%、フランス六三・九%、スウェーデンについてはあえて申し上げませんけれども、よく先進国ですとか、あるいはOECDの関係ですとか、あるいはサミットの関係ですとか、さまざまに、日本も並ぶ国と申しましょうか、そういう国々でも五〇%、六〇%という、これは租税と社会保険料の負担でそのぐらい、日本は三五・五。

 これは、どういう負担の仕方をするかというのはまたいろいろ議論のあるところでございますけれども、大分幅があって、五〇%、そのラインを置くということに全く反対というようなことは私は申し上げるつもりはありませんけれども、今余りにも、社会保障の持続性ですとか、それから、持続性を確実なものにするには、給付の抑制ですとかあるいは自己負担の増大というようなところが今広がってきておりますので、私は、もう少し大胆にと申しましょうか、もう少し日本は負担率を上げていく、五〇%ラインまではまだ大分間がありますので、上げていくことも事によっては必要であるというような決意を大臣がお示しくださればよろしいかと、少し社会保障論議において元気が出るかと思いますけれども、いかがでございましょうか。

尾辻国務大臣 先日も経済財政諮問会議でこの議論をさせていただきました。

 そこで、私は私の意見としてこう申し上げました。先ほどお答えいたしましたように、何らかの財政規律を守るための目標を求めること、これはそれなりに必要なことだということは理解いたします。しかし、私ども、社会保障を担当する立場からいいますと、そのときにも申し上げたんですが、そこに病気の方がおられる、お金がありませんからもうどうしようもないんですなんということはとても言えません。もう金があろうとなかろうと、その方に何とかしてまず元気になっていただく、これが私どもの立場でありますから、私どもとしては、節約はしますけれども必要なお金を積み上げていきたい、そして、積み上げた結果が、またそういう国民負担率の、例えば五〇%なら五〇%という一つの目標を掲げるならば、その枠内におさまるというのが一番いいことではないだろうか、そういうふうに申し上げました。

 そして、さらに申し上げますと、今度の年金の私どもの試算でも、二〇二五年ぐらいのところまではGDPの伸びの枠内におさまっておりますから、結果としてそういうふうに一つの指標を設けたときに枠内におさまるということは、我々も努力しますし、いいことだと思っておりますけれども、もう一度申し上げますと、私どもの立場は、先に枠があるんじゃなくて、必要なお金を積み上げていくという考え方に立ちたいということは先日も申し上げたところでございます。

石毛委員 これから先、いわゆる財政赤字の部分をどのように縮減していくかということも重要な課題になってくると思います。その多くは公共事業の部分だと思います。

 これから公共事業のリニューアルと申しましょうか、耐用年数が過ぎて新しく投資をしていく、新規投資ではなくて更新維持投資の部分も大分出てくるのかと思います。そういう意味では、今の大臣の、必要な部分はきちっと積み上げていくというところ、最終的には、縦割り行政の中で公共事業とシェアをどのように分け合うかということも大きな政策課題、政治課題として出てくるというふうに考えるところでございます。ぜひとも、今のお言葉を続けていただいて、頑張っていただきたいと思います。

 次の質問でございますけれども、これも日本の社会保障制度を世界の中である意味誇ると申しましょうか、特徴づける仕組みとして、皆年金、皆保険体制がとられて、一九六〇年代からとられてきておりますけれども、この皆年金、皆保険体制が現在どのような実情にあるかという、そのことを大臣はどのように御認識していらっしゃいますでしょうかということと、それから、今後、皆年金、皆保険体制をどのような方向性で導いていくと申しましょうか、運営していくというふうにお考えになっていらっしゃるか、その点をお聞かせください。

尾辻国務大臣 我が国の社会保障制度は、皆保険、皆年金を中心に、すべての国民を対象とする普遍的な施策として、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティーネットとして重要な役割を果たしてきたところでございます。一言で言いますと、皆保険、皆年金は、これはもうどうしても守っていかなきゃならないものだというふうに考えておりますということをまず申し上げました。

 そこで、まず年金でございますが、近年、年金の空洞化ということが言われております。現役世代が支えるという世代間扶養が十分に機能しなくなりますとともに、保険料をきちんと納める方との不公平感が広がるなど、制度の根幹への信頼を損ねるということもございますし、また、保険料を納めない者の将来の所得保障が十分に行われなくなるという、年金の空洞化が招くいろいろな問題がございます。

 このため、さきの通常国会で成立をいたしました年金改正法では、保険料の上限を設けました。また、負担の増大が過大とならないようにいたしますとともに、国民年金の保険料につきましては、できるだけ納めやすい仕組みとするため、多段階免除制度や若年者の納付猶予制度等を導入するなどの措置を講じたところでございます。

 今後とも、年金制度への信頼を回復するためにも、その意義を国民の皆様方に意を尽くしながら御説明申し上げ、まずは、国民の皆様が年金制度を支えていくという意識を持って保険料を納付していただく、そんな環境を整えていきたいと考えております。

 また、医療保険制度についてでございますが、急速な高齢化の中で医療費が増大いたします一方、経済成長の低迷や保険料の収納率の低下などにより、医療保険財政も極めて苦しい状況に今ございます。今後とも国民が安心して必要な医療サービスを受けられるようにすることが必要不可欠なことでありますから、医療保険制度改革に向け、国民皆保険を堅持しつつ、安定的で持続可能な医療保険制度が構築できるよう取り組んでまいりたいと考えております。

石毛委員 今大臣が御答弁くださいましたように、確かに、制度とすれば皆年金の制度でしょうし、それから、制度とすれば健康保険、医療保険、皆保険というようには言えるんだと思います。

 ですけれども、さきの通常国会でも年金に関しましては大きな議論になりましたように、一号被保険者の方々の保険料の未納率は大変高い。平均でも四割前後、二十代の方にすれば五割になっているというようなこと。それから、一号保険に加入する方が、従来、自営業者というふうに見られていたのが、そうではなくて、無業になっていらっしゃる方ですとか、あるいはパートの方ですとか、あるいは厚生年金を抜けた事業所で働いていらっしゃるような方ということで、今や、基礎年金を構成する部分の一号被保険者の加入者の方が、本当に保険料負担力からいえば大変課題を抱えていらっしゃる方々。

 確かに多段階の納入制度というような工夫はされましたでしょうけれども、果たして二十五年という保険料の納付、受給の最低の納付期間ですけれども、それを満たすことができるかとか、それから、さきの年金改革は、給付率の削減という大きな課題もありますし、それは高い人の削減だけではなくて、全部に、トータルに及んでいくわけですから、最低の所得保障として意味をなすかどうかというようなことでいえば、制度としては確かに大臣が言われるとおりかもしれませんけれども、実態とすると、既に皆年金・皆保険制度というのは、破綻を来しているとまでは申しませんけれども、しつつあるというような、そういう認識をせざるを得ないのではないか。

 医療保険も、市町村国保で赤字の自治体が八割。それから、年金とほぼ同じような動きだと思いますけれども、国民健康保険は無業者比率の方が五〇・九%、五割ということになりますと、保険料を納めることもなかなか厳しい。保険料を納めなくて無保険になるというような、今の納付率、国保は九〇%ぐらいというふうに伺っておりますけれども、そうしますと、こちらの部分も非常に動揺を来している。

 その一方、生活保護の統計を見ますと、一九九七年とそれから二〇〇二年を比較しますと、生活扶助、これは基本的な生活費の部分ですけれども、一四一・〇ということで、四割ふえております。医療扶助も、一四〇・一ということで、四割ふえております。

 生活保護の見直しというのも今大きな行政課題になっているようでございますけれども、この五年の間に四割も受給人口がふえているということは、まさに社会保険は防貧のための施策である。保険の機能というのは、救貧に対するセーフティーネットではなくて、救貧にならないための防貧のためのセーフティーネットであるというのが社会保険の本来の趣旨であるはずでございます。

 確かに、保険に加入していることによりまして、生活扶助や医療扶助に陥らないで済むということを維持できている層はまだまだかなり多いと思いますけれども、その仕組みの中で絶えず、表現は適切ではないと思いますけれども、ドロップしている層を生み出しているようになってしまっている。右肩上がりの経済成長で、所得もふえ、保険料が高くなるのも容認できて、安心して安全の確保に参入できるという、トータルにそういう状況ではなくなってきているというふうに私は認識しております。社会保険の防貧機能というのは、これは社会保障の最もプリンシプル、基本的な原則として確認すべきところだと思います。

 大臣の前半の御説明は、私はそれはそれで受けとめさせていただきますけれども、大変動揺を来している、そのあらわれが、生活保護の受給者層のもう五割になんなんとするような、こういう状況になっているのではないかということに関しまして、大臣は、もう一度、堅持するという方向性との絡みで、お答えいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 年金、保険、両方に大きな問題を抱えておることは、私どもも認識をいたしております。

 そこで、まず医療保険の方からでございますが、二年後に抜本的な見直しをさせていただこう、こういうふうに思います。その中でやはり一番大きな問題は、老人医療保険をどうするかということだろうと思います。そして、ややそれに絡みますけれども、やはり国民健康保険の問題も出てまいります。今先生お話しのあたりは、国民健康保険あたりにいろいろ集約されている問題があるというふうに私は認識をいたしております。

 そこで、そうした見直しの中で、いろいろな御意見を伺いながら、最初に申し上げましたように、私ども、本当に日本が誇る医療保険の国民皆保険だと思っておりますから、必ずこれを守っていけるように、持続可能なものにできるように組み立て直していきたい、こういうふうに思っております。

 それから、年金の方は、おっしゃるように、空洞化がこれまた国民年金の方にもございますし、また厚生年金の方にもございます。そう御指摘いただくような面があることは事実でございますから、これは双方の問題点を洗いながら持続可能なものにしていきたい、こういうふうに思っております。

 その中で、一点だけ申し上げておきたいと思いますことは、国民年金の収納率を八割という目標を掲げまして、これだけは何としてでも達成をしなきゃいけない、まずそこからこの空洞化の問題に私どもは取り組んでいきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

石毛委員 関連して、基本所得、ベーシックインカムなどにつきましても少し御議論させていただきたいと思いましたけれども、時間の都合がございますので、最後の質問でございます。

 障害者福祉の再編ということで、グランドデザインが今まさに議論に入っているところでございます。私もいろいろな論点、感じるところがございますし、ぜひ議論を進め、私も参加をしていきたいというふうに思っておりますけれども、きょうは一点だけ、ぜひとも早急に申し上げておきたいという意味で、福祉工場に関してお尋ねしたいと思います。

 今度のグランドデザインの中では、福祉工場にほかのさまざまな障害者施策とともに、横並びで、新しく受益者負担が導入されるというふうに、今のところのグランドデザインの説明資料には紹介をされております。

 福祉工場は、御存じのように、そこで働いていらっしゃる方々は労働法規が適用になっておりますし、原則的に最低賃金も確保されているというところでございますし、従前、居住部分についての利用者負担は一部あったにせよ、今回出ているような意味での負担はなかったところに新しく受益者負担を導入するということは、余りにも飛躍のし過ぎではないかということ。

 それからもう一点、障害者雇用施策の方で、雇用促進法の関係でいいますと、特例子会社ですとか障害者多数雇用事業所ですとか、雇用納付金制度を活用して報奨金や調整金や作業所をつくる整備資金を助成するというような仕組みもありまして、この部分は、福祉工場は雇用施策の方とオーバーラップしている部分もかなりあるというふうに理解をしております。

 ですから、雇用施策としてきちっと再編の方向をとるべきだというのが私の見解でございますけれども、そのことと、それから受益者負担の発生ということとあわせて、結論を急がないで、障害者雇用、雇用労働行政の方と兼ね合わせて、もっと丁寧に議論をして結論を導いていただきたい。

 そしてまた、これは福島委員もおっしゃっておられましたけれども、このことと、ほかも含めまして、当事者団体の皆様の御意見をよくお聞きいただきたいという、急ぎましたけれども、お願いいたします。

尾辻国務大臣 障害者の皆さんの就労支援につきましては、一人でも多くの障害者がその意欲や能力に応じて働くことができるようにすることが重要でございます。

 委員御指摘の、福祉と雇用の横断的な障害者の就労施策の見直しにつきましては、障害保健福祉施策の改革のグランドデザイン案においてお示ししたところでございますけれども、その中で、今お触れいただきましたように、福祉工場の見直し等はお示しをしたところでございます。

 今のお話は、利用料を取るのか取らぬのかというようなことに結局なるんだろうと思いますけれども、そうしたことにつきましては、さらに広く関係者の御意見も聞きながら、今から検討を進めてまいりたいと思います。その中には、当然、障害者団体の御意見などもお聞きいたしていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

 今後、このたびお示しをいたしました改革のグランドデザイン案の実現に向けて最大限努力をいたしますとともに、福祉と雇用のより一層の連携のもとに、障害のある方が安心して働き続けることができるような施策の充実を図ってまいりたいと思います。

 委員の御意見も今後ともよく聞かせていただいてまいりたい、こういうふうに存じます。

石毛委員 今回のグランドデザインの中には保護雇用という施策は入っていないというふうに私は認識をしております。そうしたことなども含めまして、ぜひ大きく大きくグランドデザインをかいていただけますように要請をして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、中根康浩君。

中根委員 おはようございます。民主党の中根康浩でございます。質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 いつも私の前の人は格調が高くて、非常にやりにくいんですけれども。

 私も、先日の十月の三十一日に、こちらにもお見えなんですが、福島先生や、あるいは石毛先生も、それから山口先生も参加されたんですけれども、日本障害フォーラム、JDFの発足式、設立式に参加をさせていただきました。

 また、同じ日には、福島先生と一緒に全国遷延性意識障害の家族の会の発足式に立ち会わせていただきました。この方々は、きのう、厚生労働省あるいは大臣のところにも要望に行かれたのではないかと思います。福祉と医療の谷間にいらっしゃるこの遷延性意識障害の方々の御家族の御苦労、こういったことを大臣はどのようにお受けとめになって、そして、今後の施策にどういうふうに反映していきたいか、御決意を承りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 お話しのように、昨日、皆さんお見えになりまして、お会いしました。口々に御苦労のさまをお話しになりまして、お聞きをいたしておりました。本当に、そうなんだろうな、大変でいらっしゃるなという思いを改めて強くいたしました。したがいまして、これはもう当然のことでございますが、私どもにできることは全力を挙げてやっていかなきゃならない、そういう思いをいたしたところでございます。

中根委員 具体的な要望事項につきましては文書でお手元に届いていると思いますので、きょうは、そういった大臣の御決意を承っておくということにいたしたいと思います。

 それからもう一つ、大臣にお伺いしたいんですけれども、坂口前大臣が、小規模通所授産施設の運営に当たる社会福祉法人の設立要件を緩和する、つまりは、今一千万円の資産要件があるんですけれども、これを引き下げるとか、あるいは不要にする、ゼロにする、こういったことを前大臣は御発言されておられたこともあったんですけれども、こういったことにつきまして、引き継がれた尾辻大臣はどのような御見解か、そういった前大臣の方針を受け継いでいかれるかどうか、承りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

塩田政府参考人 障害を持つ方々が地域で暮らしていくためには、できるだけ身近なところで必要なサービスを受けられるようにすることが重要だと考えております。そのためには、例えば、サービスの場として学校の空き教室とか空き店舗とか、いろいろなところを活用して、小規模作業所、そしてまたいろいろなNPO法人が力を生かすということが必要であろうと思っております。

 議員の御指摘のありました、小規模作業所から法定施設へ移行する際、社会福祉法人になる必要があるということで、その際に資産要件があるという問題がありまして、坂口前大臣から緩和をしたいということの御答弁を申し上げておりますが、さまざまな観点から検討した結果、先般お示ししました障害保健福祉施策の改革のグランドデザインにおきましては、通所事業の運営主体につきまして、社会福祉法人のみならず、NPO法人等さまざまな主体が運営できるように規制緩和するということを御提案したところでございます。これによって実質的な資産要件はなくなるということであろうと思っております。

 こうしたことによって、障害者を地域で支える拠点の整備に努めていきたいと思っております。

中根委員 引き続きまして、支援費制度のことについて一言だけ触れていきたいと思います。

 この国会でも私は質問主意書でお聞きをしているんですけれども、従来からこの質問の中でも出てきたかと思いますけれども、裁量的経費から義務化して、何としてでも予算を確実に確保していただきたいというお願いの中で、返ってきました答弁といたしましては、「今年度の居宅生活支援費に係る国庫補助の所要額については、当該サービスの安定的な供給のため、今後、予算の流用等を含め、考えられるあらゆる手段を講じることにより、その確保に最大限の努力をしてまいりたい。」という文言で御答弁をいただいたわけなんです。

 改めて、居宅サービスの方を中心としました財源が不足を懸念されているこの支援費制度、先ほども話が出ておりましたけれども、改めて予算確保の決意を承りたいし、できれば、裁量的とか義務的とかという仕分けはあると思いますけれども、こういう弱い方々といいますか、救済を求めている方々、みずから責任を負わなくてもいいことで非常に社会的に立場の弱くなっている方々、こういった方々に対して国が手を差し伸べていくというのは、まさに国家の存立のといいますか、最も基本的な、根本的なところだというふうに思っておりますものですから、ぜひとも、予算が足りないからとか財源論的なところで話すのではなくて、さっき積み上げていくという話もありましたけれども、そういった観点をまさにこういったところに適用していただきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 お答えで申し上げますと、先ほど読み上げていただいたとおりでございますけれども、その「最大限の努力」の中には、今お話しのように、いろいろなことを言いますと、補正予算になじむのかなじまぬのかとか、いろいろ議論も出てこようかとは思いますが、私どもとしては、そういうことも含めて最大限の努力をしたい、こういうふうに御理解いただければと存じます。

中根委員 ぜひとも、きちんと補正で獲得していただけるように、私どももバックアップしていきたいと思いますので、御努力を御継続いただきたいというふうに思っています。

 かねてから私が、社会保険庁あるいは厚生労働省周りの不祥事、汚職事件、そしてむだ遣い、流用、中抜き、こういったものを取り上げさせていただいておりますのは、まさにそういうささやかな願い、本当に、国家全体からといいますか、いろいろな省庁の、すぐに何兆とか何千億とかという数字が出てくる中でいえば、何とかなるんじゃないかというような額のものを多くの方々が望んでいるにもかかわらず、なかなかその部分については、予算がないとか財源が足りないとかという言葉で、見捨てられていくといいますか、置き去りにされていってしまうという現状がある。その一方で、本当の巨額の税金とか保険料がむだ遣いをされている、そこが許せないという思いで、そういったむだ遣い、流用なんかを取り上げさせていただいているということをぜひとも御理解いただきたいというふうに思っておるんです。

 例えばカワグチ技研の汚職事件でも、組織あるいは社会保険庁の体質として起きた事件であろうというふうに思っておりますので、そういった根本的なところからすべて洗い直して変えていかなければ、とても改革などなし得るものではないということなんです。

 ここに一つの文書があって、この文書によれば、そういったいろいろな事件、カワグチの事件にしてもそうなんですけれども、渡邉俊之さんと川崎義幸さんの個人的なレベルでの犯罪というものに矮小化しようとしているということがこういったところからも明らかになるということを一つ紹介しておきたいんです。

 「社会保険庁への批判について」という、社会保険庁の職員の方々が恐らくつくられたのであろうと思いますけれども、この文書の中では、たくさんあります、何枚にもわたっておりますので、全部読み上げることはできませんけれども。

 例えば、いろいろ書いてありまして、「このことで社会保険庁が非難されることは正当ではない。」「仮に制度運営の中で「社会保険庁」が勝手に何かをやろうとしても、全て法律の範囲内でしか出来ないことを広く理解されるべきである。 もともと社会保険事務費は国庫負担が原則であるが、政府予算において法律に基づき措置されれば否応ないことである。」ということで、むだ遣いや流用をみずから正当化しよう、肯定しよう、そういう意識がありありとあって、とても改革の方向に向かって進んでいるとは思えないという表現があるんですね。

 「保険料を給付以外に使って来た経緯は、与野党の政治家や労働団体(連合)等の強い主張によって施設などを造」ってきたんだ、こういった主張も記されている。

 あるいは、「今になってその意義や経緯を全く無視し、それらが全て「年金官僚が自分たちのため」と批判されるなら、公務員は全てがやる気を失い、不当な批判を恐れ無気力に陥ってしまうことが懸念される 天下り問題については、全ての役所にかかる問題であり、特定の個人を非難することがはたして妥当か?」と。

 天下り問題については、すべての役所にかかわる問題であり、天下りということに付随して、利権構造、癒着の構造というものがついて回るわけですので、こういったものがすべてあるということを社会保険庁の方々は肯定しておる、そして大きな思い違いをしているということを指摘しておきたいと思います。

 特に、「特に民主党は、年金法の審議において〔社会保険庁の年金掛け金のピンハネ、積立金の流用、無駄遣い〕ばかりを取り上げて、具体的な改正内容にふれないまま時間を費やし、あげくが「充分な審議がないまま強行採決した」として与党を攻撃している。さらには民主党案が具体的でない理由を、社会保険庁などの役所がデータを出さないせいだとしている。」ということで、自分たちの怠慢を我が党に責任転嫁をしているということも、ここには記されています。

 それから、「個人の犯罪行為を組織の問題として扱うのは不当である。」まさに、組織の体質として起こっているいろいろな出来事を「組織の問題として扱うのは不当である。」というふうに言っているんですけれども、これもまた思い違いである。「こういった報道のせいで保険料の未納者が増え、国民年金の空洞化がますます拡大してしまうとしたら大きな問題であり、制度の存続すら懸念される。」

 先ほど大臣が収納率八〇%は何としてでも確保したい、達成したいというふうにおっしゃったんですけれども、社会保険庁の現場の方々は、こういう報道のせいで未納者がふえている、こういう、前提が全く違うところに置いておられたら、幾らどんな改革プランを出しても、大臣がどんな決意をなさっても、とてもその空洞化というものは解消されていくわけがないということを感じざるを得ないということも、ここに書いてあるわけなんですね。

 先ほどと同じようなことが書いてあるんですが、ここにも、「社会保険庁どう改革するのか」というテーマを一つ設定して、自分たちが、社会保険庁の方々がつくった文書は、「種々取り沙汰されている問題について、これら全てが「社会保険庁」の責任だとされているが、もともと社会保険庁は、制度を企画したり法案を作成する内局とは別に、事業実施のために設けられた外局であって、制度・政策を決める役所ではないことが一般的に理解されていない。 仮に制度運営の中で「社会保険庁」が勝手に何かをやろうとしても、全て法律の範囲内でしか出来ないことを広く理解されるべきである。」と言って、自分たちの問題を国会の責任である、法律の責任であるというふうに、丸投げといいますか、責任転嫁をしている、こういう実態がある。

 現場の方々は、幾ら村瀬長官やあるいは尾辻大臣が旗を振っても笛を吹いても、こういった意識でおられる限りは、社会保険庁改革はとても、その社会保険庁の存続そのものを前提としていてはなし遂げられない、やはり解体的な出直しといいますか、かねてから申し上げておりますように、国税庁との統合あるいは民間への移譲というようなことを含めた抜本的なものを考えていかなければ、対症療法的なものではだめだということがこういったものからもわかるというふうに思っております。

 社会保険事務局で二十一億円の保険料が家賃として使われているということは、前回指摘をさせていただきました。それに加えて、社会保険事務局事務センター、これの家賃が、厚生保険特別会計と国民年金特別会計から合わせて約十五億円、それから、レセプト点検センターというものが厚生保険特別会計から十五億円、それぞれ二十一億円と十五億円と十五億円、家賃が使われているわけなんですね。保険料を使ってこれだけの家賃を払って、こういったところで一体どんな業務が行われているかということをきちんと検証していかなければいけないというふうに思っています。

 社会保険事務局の方に聞きましたら、共同処理や外注化によって事務処理の効率化、合理化に努めている、こういった説明もある。そのことが、事務センターとかレセプト点検センターを新たに設置する。事務センターというのは、この間も申し上げましたけれども、平成十五年、去年の四月一日に社会保険庁長官の訓令によってできたということなんですけれども。

 それから、ここで一つお尋ねしておきたいんですけれども、共同処理や外注化によって、合理化、効率化を図っていくということなんですけれども、事務センターとかあるいはレセプト点検センターでは、それぞれ常駐職員が何人いらっしゃるか。それから、それぞれのセンターにおいて、業務は委託されているものがあるかどうか。恐らく、かなりの部分が外注化ということによって業者さんに外部委託をされているというふうに思うんですけれども、委託をされているものがあるかどうか。あるとすれば、すべての委託業者、委託業務内容、委託料、委託業者に対する再就職、いわゆる天下り、こういったもののありなしを明らかにしていただきたいというふうに思いますが、この場ですぐに御答弁をいただけるものとは思っておりませんものですから、ぜひとも、きょうが十一月二日の火曜日ですので、一週間の期限の中で、今申し上げました資料を当委員会に御提示をしていただきたいというふうに思います。

 恐らく、これは、後で間違っていたら謝罪をいたしますが、本来ならば、委託をしているとするならば、委託先のそれぞれの事業所でこういった業務が行われればいいはずなんですけれども、委託業者が事務センターとかレセプト点検センターにお越しになって、そこで仕事をしていらっしゃる。委託業者のために十五億円と十五億円が使われているというふうに、私は推測をさせていただいているところでございます。

 これは決して根拠のないことではなくて、東京配送センターと大阪配送センター、社会保険庁がつくっているこの配送センターによって、こん包業務とか配送業務とかいうものが行われている。これは、社会保険健康事業財団というものを介してやっているんですけれども、こういったものが、やはりそういう財団とか社会保険庁が全く空洞化していて、五十年以上にわたって、随意契約によってある特定の業者と委託契約をしている中で、そういった業務が独占的に行われているという一つの事例がある。そういったことと同じような構図が事務センターとかレセプト点検センターにも当てはまるのではないかというふうに、そういう心配をさせていただいておりますものですから、ぜひ、この資料は一週間で御提示をしていただきたい。

 それから、事務局と事務センターについて、契約は随意契約ということであるわけなんですけれども、入札を考えたり、あるいはほかの場所の見積もりをとったり、複数を比較して、その結果、最後にここだというふうに決めたりはしないのかということを改めてお尋ねしておきたいと思います。

 例えば、東京の社会保険事務局、新宿の都庁の隣のNSビルというところに、NSというのは日本生命なんです、やたらと日本生命のビルが多いというのは非常に気になるんですけれども、NSビルというところに入っているわけなんですけれども、お聞きしましたら、NSビルのほかに、ほかの二カ所を比較考量して、最終的にNSビルが最適だということで契約に至ったというふうに聞いております。

 この一連の経緯についてお尋ねをしたいということと、それから、NSビルの事務局は八階にある。事務センターは九階にある。その九階にある事務センターが、お台場のTFTビルというところに今集約をされようとしている。三田にあるNTTビルからも引っ越しをする。引っ越しをすればそのときにまた経費がかかるということになるんですけれども、どんどんどんどんと、いいところいいところへ渡り鳥のように移り住んでいっているようにも見えるんですけれども、TFTビル、お台場へ引っ越す、今話題になっているところ話題になっているところへと行っていらっしゃるんじゃないかというふうな気がしないでもないんですけれども、そのあたりのところもまたあわせてお尋ねをしたいと思います。

青柳政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、幾つもお尋ねがあったんですけれども、東京社会保険事務局の事務室についてでございます。

 これは、NSビルが今選ばれているが、それがどういう経緯であったか、選ぶに当たって複数のものを比較したのか、こういうお尋ねがまずあったかと思います。

 東京の社会保険事務局の選定につきましては、これはほかの社会保険事務局とも共通するところでございますけれども、国の合同庁舎といったようなところにまず入居できないかどうか、それから、社会保険事務所で移転して使わなくなった旧庁舎、あるいは社会保険の関係施設といったようなところが利用できないか、こういったことをあわせて検討して、その結果として、活用できる庁舎がなかった場合には、民間の賃貸ビルを借り上げるというようなやり方で物事を整理しております。

 東京都の場合には、最終的に国の合同庁舎への入居等の条件が満たされなかったものですから、民間の賃貸ビルを借りざるを得なくなったわけでありますが、その場合の要件としては、幾つか要件がありますが、一つは、東京都庁など関係機関との連携を図りやすいような位置、あるいは来訪者等の利便性に配慮した位置であること、それから国の機関としてふさわしいような位置、あるいは環境及び適正な面積が確保されること、そして借料が適正価格であることというようなことを考えたわけでございます。

 その中で、実は、東京の場合には七カ所ぐらい候補を選定いたしまして、その中から三つぐらいを選んで最終的にNSビルにしたわけでありますが、そういった具体的な選定に当たりましては、効率的なレイアウトが可能な事務室の形になっているか、変形の事務室でないかどうかということ、あるいはできるだけ少ないフロアの数、できればワンフロアが一番望ましい、それで事務室の必要面積を確保できないかということ、それから賃貸料の額が近隣のビルと比較して妥当であるかどうかということ、こういったような視点を比較検討した上で現在のNSビルの入居というものを判断したわけでございます。したがいまして、複数の、東京の場合であれば、最初は七つ、それから三つの中からNSビルを選んだという経緯であるということを御了承いただければと思います。

 また、あわせてお尋ねがございましたお台場への移転の件でございます。

 これは、東京都の場合には、特別な経緯があって事務センターの場所が幾つか複数の場所に分かれているという経緯があるわけでありますので、効率化するためには一カ所に集約してできないだろうか。その場合には、スペースの問題と賃料の問題がございます。

 お台場のビル、話題のところというふうに先生おっしゃいましたけれども、結果的には賃料が現在入っておったところよりも安く済むということが判明いたしましたので、むしろ広さを確保する、効率化のために確保する、あわせて、賃料がより安いところという判断基準で、結果的にお台場を選んだということを御了解いただきたいと思います。

 なお、あわせまして、冒頭お尋ねのございましたいわゆる怪文書につきましては、これは社会保険庁としては全く関与するものではございませんので、その点、よろしく御理解を賜りたいと思います。

 また、調査についての御依頼でございますが、どのくらいの分量がかかるかにわかに私も判断できませんけれども、一応、一週間という今お尋ねがありましたので、一週間でできるところまでやった上で、その時点でお出しをするか、あるいは全体のものを少し時間をいただいてお出しをするか、御相談をさせていただければと思います。

 以上でございます。

中根委員 今の御答弁の中で少し気になったことだけ指摘をしておきたいと思いますけれども、都庁の近くということで、都庁や県庁の近く、だから結果的に一等地になってしまうんだよということなんですけれども、社会保険事務局というのは、そんなに都庁や県庁とやりとりを頻繁にするようなところではないというふうに私は認識をさせていただいておりますけれども、それを理由に、一等地に居を構えるということを理由にするというのは少し不合理かなというふうに思いますし、国の機関としてふさわしいということになると、国会議員だったら黒塗りに乗って当たり前だろうとか、国の機関だったら一等地になって当たり前だろう、こういう既成概念みたいなものがある、そういったところに国民は怒りの気持ちを今あらわしているんじゃないかというふうに思っています。

 形、部屋の間取り、レイアウト、こういったことなんですけれども、NSビルというのは、中が吹き抜けになっておりまして、それを口の字型に囲んでいる。あれはまさに変形でありまして、確かにすばらしいんですけれども、効率的なビルと言えるかどうかということは、それぞれ見解があると思います。あれは明らかに変形ですよね。変形していないものを選んだにもかかわらず、最も変形しているものを選んだような気がしてならないんです。

 すべての事務局や事務センターの家賃を明らかにしてほしいというふうに前回もお願いをしたんですけれども、高いか安いか、合理的か不合理かということは、その数字を見てから判断をさせていただきたいと思っていますが、やはり問題なのは、守秘義務を理由に明らかにできないということでございます。そもそも、守秘義務を課せられるようなところとなぜ契約をしなければならないのか。

 先ほど七カ所あると言いましたけれども、その中には、オープンにしてもいいよ、守秘義務なんか要りませんよというようなところがあったんじゃないかなというふうに思いますけれども、保険料や税金を使っていることに対して、必要以上の守秘義務というものが本当に必要なのかどうか、それがふさわしいのかどうかということは、やはり疑問を感じざるを得ません。全部、正々堂々と明らかにできるようなところを相手方として選択すべき、それも一つの基準じゃないかなというふうに思わせていただいております。

 きのうの質問取りのときにもいろいろと説明を受けましたけれども、どうしても納得することができないものですから、同じような答弁が返ってくるとは思いますけれども、後々の議論の材料にしなければいけませんものですから、こういった形で発言をさせていただいて、きちんと議事録に残しておきたいと思います。

 そして、きのうの夕方、調査結果をとりあえず了解を得られた分としてお出しをいただきましたけれども、その調査結果を見ると、事務局の分で公表しているものとセンターやレセプトセンターで公表している分と、ほとんどが都道府県が同一なんですよね。これは一つ一つのオーナーさんに了解を求めたという、そういった作業をしたとはとても考えられない。四十七都道府県の事務局に電話をして、単に明らかにできるかどうかということを調査したにすぎない。そういったなおざりの調査を我々に示しているのではないか。

 もう一度、改めてオーナーさんに確認をとって、まだ不足をしているといいますか、公表されていない分について、公開を引き続き求めていきたいと思っております。

 それから、平成十二年の地方分権一括法の施行に伴い、例えば、愛知県なら愛知県の国民年金課などが愛知社会保険事務局というように名前を変えて、県庁などから外の民間ビルに出たということなんですけれども、その際に、これもきょうすぐ御答弁いただけるとは思っておりませんので、やはり、先ほどのものと同じように、その際に費やされたといいますか、そのときの引っ越し日、県庁などから民間ビルに移った引っ越し日、それから引っ越し業者、引っ越し代、引っ越し代にかかった財源、それから引っ越し業者との契約形態、これらについて、やはり一週間後に明らかにできる部分、わかる部分についてお示しをいただきたいというふうに思います。

 そして、一つここで具体的に質問をしたいことがあるんですけれども、大阪の社会保険事務局というのは、もともと民間のビルにあったわけなんですね。大阪市中央区上町というんですか、A番十二号、建設保証ビルというところで約八千万円の家賃、もともとこの民間のビルにあった。それが、地方分権法によって引っ越した先が、やはり民間の、大阪市備後町というんですか、二の六の八、サンライズビルの十階と十一階に十二年の四月に移転をした。それまでの約八千万円の家賃が、移転をしたことによって一億六千万円に値上がりをしたといいますか、増額をしたわけなんですね。

 地方分権一括法という、そういったことをきっかけといたしまして、さらにランクアップしたよりよいビルに職場を変えたわけなんですけれども、もともと民間にあったんですから、そのまま上町のビルに、建設保証ビルというところにいればよかったのに、どさくさに紛れてもっといいところに移り住んでしまったというような焼け太りの、さっきも焼け太りという話がありましたけれども、まさにそういった典型ではないかというふうに推察をいたしますけれども、この大阪はどんな事情があったんでしょうか。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

青柳政府参考人 お答え申し上げます。

 端的に申し上げまして、地方分権法施行以前の大阪府は、大阪府の保険課は国民年金課でございましたので、実は、契約の当事者は大阪府、府庁がこのビルと賃貸契約を締結しておって、そのビルに入居しておったという実態でございました。

 なぜこの民間ビルに入っていたかということについては、伺いましたところ、大阪府の庁舎が狭隘であるために、庁舎の建てかえ計画が進行している間、新庁舎完成までの間、五十八年十一月から他部局とともに入居しておった、こういう事情があったようでございます。

 したがいまして、地方分権法が施行されましたことに伴いまして、十二年四月から、独自に今度は庁舎を確保しなければならないということになったわけでありまして、その際には、幾つかの選択肢が当然ございました。国の合同庁舎に入居できないか。もうこれは、財務局からあきがないと即座に断られた。それから、社会保険事務所の旧庁舎、事務所の方で昔使っていた庁舎に入居できないかということですが、これは面積が足りない。それから、当面、大阪府の他の庁舎に入れてもらえないかとお願いをしたようでありますが、大阪府の方針として、国の機関の入居は認めない。そして、では、現在入っている、そのとき入っておりました大阪府借り上げのビルに継続入居ができないかというお願いをしたようでありますが、大阪府として賃貸契約を継続するかどうか、その時点では未定であった。

 したがいまして、平成十二年四月の段階で、大阪社会保険事務局として事業を開始するためのスケジュールを考えた場合に、時間的余裕がないことから断念せざるを得なかった。しかも、後に、この部分については大阪府は確かに契約を解除したようであります。

 そういった事情がございまして、他の民間ビルを新規に借り上げて入居せざるを得なくなった。その場合に、面積や賃貸料、あるいはアクセス等の条件を勘案した上、ここも、最終的に三カ所ほどの候補の中から現在の庁舎を選んだというふうに承知をしておりますが、協議検討を重ねた結果、現在のビルに入居を決定したというような経緯であると承知しております。

中根委員 時間が参りましたので、最後、一言二言申し上げて終わりたいと思いますけれども、だからといって、それまで八千万円だったものが急に一億六千万円、全く、そういうコスト意識といいますか、予算感覚といいますか、そういったものがない。それは、すべて、百五十兆円の積立金があるから、これをうまく利用すればいいんだと。先ほどの社会保険庁の、怪文書とありましたけれども、これは怪文書じゃないんですよね、多分。社会保険庁の中では正式な文書。我々から見たら怪文書みたいに見えるんですけれども。

 そういったもので、こういった意識で、使いたい放題使う、青天井でコスト意識がないと、法律改正を理由に、財源は保険料で限りなくあるから、いっそのこと、この際、もっといいビルに、もっと環境のいいところに行ってしまおう、事務局、事務センターも財革法が期限切れになる前につくってしまって既得権を持ってしまおう、こういった発想の中でつくられたともしするならば、それは本当にいかがわしいものであると言わざるを得ません。

 きょうは三十分でしたので、ここまでにしたいと思いますけれども、先ほどの、社会保険事務センターとレセプト点検センターの委託業務関係の資料、それから、今の、平成十二年の引っ越し関係の資料、これを、私だけではなくて、恐らく厚生労働委員会のメンバーの皆さん共通の関心事項であろうと思いますので、この委員会にもぜひ御提出をいただきますように、委員長からもぜひとも御配慮いただきますようにお願いを申し上げます。

北川委員長代理 理事会で検討させていただきます。

中根委員 では、以上で終わります。

北川委員長代理 次に、藤田一枝君。

藤田(一)委員 民主党の藤田一枝でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私も、社会保険庁改革についてはいろいろとお尋ねをしたいことがございますけれども、それはまた別の機会にぜひやらせていただきたい、このように思っております。

 きょうは、三位一体改革に関連をして、大臣の御所見をお伺いしてまいりたいと思います。

 まず、厚労省案というものが先日示されたわけでございますけれども、この厚労省案というものを踏まえて、大臣は、三位一体の改革というものをどのように受けとめていらっしゃるのか、簡単にお聞かせをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 改めて申し上げます。

 現在進められております三位一体改革は、地方にできることは地方に、これは再三、総理も述べておりますけれども、その理念のもとで、国庫補助負担金を削減し、国から地方への税源移譲を進め、同時に、地方交付税を見直すことにより、地方の権限と責任を大幅に拡大し、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主自立の地域社会から成る地方分権型の新しい行政システムを構築していくものである、こういうふうに認識をいたしております。

 厚生労働省といたしましては、これまでも、社会保障においては、国と地方が協力、連携していくことが一番大事なことだと基本的に考えておりまして、地方分権の取り組みを着実に進めてきたところでありますけれども、今回の三位一体改革につきましても、改革の趣旨を十分に踏まえて真摯に取り組んでまいりたいと考えております。

藤田(一)委員 ありがとうございました。

 私も、まさに三位一体改革の中身というのはそういうことであろうというふうに思います。

 そのことを前提にして、十月二十八日に、地方六団体の提案に対する厚労省の、意見というか、対案というものが示されたんであろうというふうに思います。私は、この対案を見まして、妙に感心をいたしまして、はあ、なるほどなと改めて思ってしまったわけでございますけれども、この対案、大臣は、今お話がございましたような三位一体改革の方向性、税源移譲、補助金の削減、そして交付税改革を通して地方の自立性、自主性を高めていくという、この改革の方向性と合致をしているというふうにお考えでございましょうか。お聞かせをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 このことで、地方団体の方々と議論させていただきましたときに私が申し上げたことの一つは、この議論を、負担金のオール・オア・ナッシングみたいな議論をしても、申し上げましたように国と地方の協力のもとに社会保障は進めなきゃならないという私どもの基本的な考え方とは相入れないものである、こういうふうに申し上げました。言いましたことは、この分担金の十分の十のものと十分のゼロのものに分けるというようなことではないのではないでしょうかということを申し上げたところでございます。

 改めて申し上げますと、今回の厚生労働省案は、急速な少子高齢化が進行する中で、国と地方が重層的な形で協力、分担しながら社会保障を支えていくということがより一層重要になってきているという基本的な考え方で整理をして、私どもの案をお示しした。そのことは、三位一体の大きな流れ、その流れに沿ったものであるというふうに認識をいたしておるものでございます。

 その整理の結果、既に地方自治体の事務として同化、定着しており、全国的に一定の水準が保障されると考えられるものにつきましては、御提案のとおりに国庫補助負担金を廃止することといたしております。さらに、国民健康保険等の、一定の水準のサービスが確保されつつある一方、地方ごとの実施状況にアンバランスが生じておる、そういうことで今後さらに地方の役割を期待するものにつきましても、地方自治体の権限、役割等を拡大し、あわせてそれにふさわしい責任を負っていっていただくということなど、地方の自主性や権限の拡大を図る方向での見直しを行おうとするということで私どもの案を提案させていただいたところでございます。

 申し上げましたように、こうした私どもの案は、地方にできることは地方にという三位一体改革の基本的理念に沿ったものであると考えております。

藤田(一)委員 今国と地方が重層的に協力をし合ってその政策を進めていくというお話でございました。それは全くそういうことが必要であろうというふうに思いますけれども、そうなってきますと、今回の案というのは、私はもう少し違うことがその中に出てこなければいけなかったのではないかなというふうに思うんです。

 むしろ、今回の案を見ていますと、やはり補助金の廃止ということにばかり目が行って、国と地方がどのような役割を担っていくのかという、この根本的な議論というものが抜け落ちているのではないかなというふうにやはり感じざるを得ません。特に、今回新たに交付金であるとか統合補助金化というものが提案をされています。これは現行の補助金制度とどう違うのか、新たな補助金制度とかいうものはつくるべきではないというような総理の御発言なんかもあったわけでございますけれども、なぜこのような制度をあえて入れたのか、大臣の御見解、もう一度お尋ねしたいと思います。

尾辻国務大臣 今、私たちは大きく社会保障改革に取り組んでおります。そうした中で、大きな社会保障の改革というその流れの中でまた三位一体の改革をとらえて、私どもの案を出させていただいたということはまず申し上げておきたいと思います。

 そこで、社会保障分野における三位一体改革については、先ほど述べましたように、基本的な考え方に基づいて厚生労働省としての意見を取りまとめたところでございます。特に、まだ地方自治体の事務として定着しているとは言えず、今後国がより積極的に関与して全国的に一定の水準のサービスを急速かつ適切に整備しなければならない事業につきましては引き続き国において実施する、まず、こう整理したところでございます。

 しかし、こうした事業につきましても、地方六団体からの御提案の趣旨にかんがみまして、地方の自主性、裁量性をさらに発揮していただく観点から、できる限り分野ごとの大くくりな統合補助金それから交付金へと再編、統合し、より使い勝手のいいものに改革するとしたものでございます。

 一方、例えばSARS対策を初めとする感染症対策のように広域的な危機管理や予防対策等、地方の自主性、裁量性の拡大になじまない事業につきましては引き続き現行の体系で実施していこう、こういうことにしたところでございます。

藤田(一)委員 地方が求めているのは、補助金の使い勝手の問題ではないと思うんですね。使い勝手が悪いからもう少し使い勝手をよくしてくれということで地方六団体、こういう案が出たわけではありませんし、この間の三位一体改革の補助金削減議論というのはそういうことでやられていたわけではないはずだと私は思うんですね。

 問題は、国が地方に対する権限であるとか影響力であるとか、こういうものを手放したくないということであれば話は全然別ですけれども、そんなことは先ほどの大臣の基本的なお考えでも、ないということでございますから、そうであれば、要するに改革の流れと、そして、いまだ行政水準を確保することが必要だとおっしゃられた、この行政水準をいかに確保していくのかということの整合性の問題だろうというふうに思うんです。

 私も、政策が未成熟なもの、例えば、今児童虐待であるとかDVだとか、いろいろな新しい政策課題というものが出てきております。こういうものについて国が引き続き牽引役を果たすということが必要だということは全く否定するものではありません。しかし、今までこうした問題を補助金と政省令でもって縛ってきた、縛ってきたというと語弊がありますけれども、行政水準を確保しようとしてきたわけですけれども、問題は、今これにかわる仕組み、補助金の廃止というのは一つの流れです、そういう中ではこの仕組みにかわるものをどうつくるのかということがやはり求められているんではないか、地方自治体がきちっとサービスを提供するための仕掛けというものをつくって財源を渡していく、これが分権を推進していく上で求められていることではないかというふうに思います。

 例えば、自治体の責務というものを法律に書き込んでいくとか、男女共同参画社会基本法とか、あるいは次世代育成支援法なんかもそうだと思いますけれども、条例だとか基本計画だとかという形で自治体の責務というものを明確にしていっている。いろいろな方法があるだろうと思います。あるいはミニマムを守るチェックリストみたいなものをきちっとつくって、それを公開して、そして住民が政策評価できるようにしていくとかという、こういう仕掛けをどうつくっていくのか。

 改革の流れと行政水準というものをいかに確保していくのかということの整合性を図るための知恵を出す、それが今国に求められているのであって、交付金であるとか統合補助金であるとかということで済む話ではないというふうに思いますけれども、その点、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 私が、先ほど地方に使い勝手のいいものにしていきたい、こう申し上げたのは、今の御指摘とも合致するものであろう、こういうふうに思っております。

 それをどうして進めていくかということでございますが、私どもが今考えておりますことは、よく言われるように、地方に対してはしの上げおろしまで一々物を言う、こういうことは基本的にもうそんなことを言う時代ではない、こう思っておるわけでございます。

 そうした中で、では、今お話しのように、行政水準についてどう考えるかということでございますから、そこについての考え方をお答え申し上げておきたいと思います。

 国として主体的にかかわっていくべき事業につきましては責任を持って施策を推進していく手段がやはり必要である、こういうふうに考えております。しかし、地方公共団体の事務に対する国の関与は、個別法に基づく助言、勧告などの間接的な対応が原則でございますので、やはりどうしても非常に限定的にならざるを得ません。これに対して補助金は、補助金適正化法の定めによりまして交付決定の内容及びこれに付した条件の遵守、他用途への転用の禁止などを通じて、目的に沿った事業の確実な実施が可能となります。また、その時々の状況に応じた予算措置を通じ、機動的かつ重点的な対応を図ることも可能でございます。

 したがって、もう一度申しますが、国が責任を持って推進していく必要がある施策につきましては、引き続き最も適切な実施手段である補助負担金を維持する必要があると考えておりまして、ただ、その中でできるだけという配慮をいたしましたのが、先ほど来申し上げております統合補助金であり、交付金への移行だ、こういうふうに御理解いただければと存じます。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

藤田(一)委員 施策を推進する手段ということ、まさにそのとおりなんですね。この手段をどういうふうに考えていくのかということが今この三位一体改革の流れの中で一番問われている、この補助金をめぐるやりとりの中の基本的な問題だと私は思うんです。

 そこは簡単には知恵は出てこないのかもしれませんけれども、しかし、だからといって、補助金で残していい、少し形を変えたからそれで済むということではない。今だって、補助金で縛っていたって、ばらつきはいっぱい出ているわけですから。そういう意味では、もう一歩違う形での進んだ考え方というものをしっかりと、これは厚労省だけで済む話ではないのかもしれませんけれども、しかし、国として今やはりそこが一番求められている、そこに対して、もっと積極的な考え方あるいは知恵というものを出していただきたい、私はこのことを強くお願いしておきたいというふうに思います。きょうは時間がありませんので、そのことだけをやりとりしておりますと先に進めませんので、ぜひその点、お願いをしたいというふうに思います。

 ただ、今大臣もおっしゃったように、引き続きその施策を推進する手段ということの中で、従来どおり補助負担金体系でなければ施策が実施できないものもあるんだということで先ほどからお話があって、今回の対案の中でも、そういう形で引き続き補助負担金を継続するというものが挙げられています。SARSの対策であるとか、あるいは民間保育所の運営費というものもそこに入っているわけであります。国の存立にかかわる少子化問題にしっかり対応していくために、民間保育所の運営費については引き続き継続をするんだ、こういうお話でございます。

 しかし、これに関する資料の中で、公立保育所の一般財源化後の保育料の状況という資料が実は出されておりました。配分予算の減少を理由に、五割弱が保育料を値上げしたということでございます。

 一体これはどういうことなんだろうか、私は改めて疑いたくなりました。さきの通常国会で、私は、公立保育所の一般財源化について質問をさせていただきました。その際の御答弁は、税源移譲が行われるから何ら影響は出ないという内容でございました。交付税も削減をされるんだからとても信じられない、何度も念を押しましたけれども、大丈夫だというのがお答えでございました。にもかかわらず、今になってこのような資料が出て、施策が実施できないということの例に使われるということは、公立保育所の一般財源化というのは誤りだったということでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 三位一体の改革は、私どもの立場では、税源移譲がきっちり行われる、したがって、例えば今のお話のように、公立保育所の運営費を一般財源化するということであれば、当然、その財源はしっかり地方に移るということを前提にいたしております。したがいまして、その前提でお答えしたところでございます。

 ただ、実際に行われると、これは手元に細かな数字は持っておりませんけれども、今年度で、この一般財源化を理由に保育料を上げた市町村が全国で約五%、来年度上げますよと言っているところが約五%、一割ぐらい上がってしまう。これは、私どもの立場からいいますと、大変ゆゆしきことだなというふうに思っておるということを今申し上げておるところでございます。

藤田(一)委員 今のお答えですと、要するに、一般財源化をしたことを機に、地方が、ちょうどいいからこの際値上げをしようということで値上げしたということですか。そういうふうに聞こえてしまいました。そういうことなんでしょうか。地方が一般財源化で自由にできるようになった、だから、では、この際値上げをして、もうちょっといろいろしよう、こういうふうに思って、それぞれの独自の判断でそういうことをやったんだ、まさにそういうことなんでしょうか。それが五割弱にも達したということなんでしょうか。もう一度、ちょっとそこをちゃんとお答えいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 重ねて申し上げますが、私どもは、この三位一体の改革というのは、きっちり税源移譲が行われる、何かを移せばそれに見合う税源移譲が行われるということを前提にして考えております。したがって、公立保育所の運営費の一般財源化というのも、そういうことが前提になされたんだというふうに理解をして、そのことを申し上げておるところであります。

 ただ、それを理由にして今申し上げたような現象が起こったということを、今私が、では、何でだというふうにお答えするわけにはいきませんけれども、そういう現象が生じたということは、私たちにとっては、厚生労働省の立場で申し上げますと、大変困ったことだというふうに思いますということだけを申し上げたところでございます。

藤田(一)委員 国の存立にかかわる少子化問題にしっかり対応していくために民間保育所の運営費は残さなきゃいけないんだということであれば、民間であろうと公立であろうと、保育所の運営という問題については、少子化対策という意味からいっても大変重要だということは当然のことではないでしょうか。そこに、なぜそういう違いが出ているんでしょうか。

尾辻国務大臣 かなり率直にお答えさせていただきたいと思います。これは、日ごろの私の持論みたいなものだというふうにしてお聞きいただければと存じます。

 この民間保育所と公立保育所の関係でございますけれども、私は、今日の保育を一番必死になって支えてくれたもの、一番という表現は訂正しておきます、とにかく必死で日本の保育を支えてきたものの一つが民間保育所だというふうに思っております。

 例えて言いますと、では、夜間保育を公立の保育所が一体何カ所でやってくれているだろうか。これは実質は、延長保育のまさに延長上でやっているというところがたしか一カ所あると思いますけれども、きっちり夜間保育としてやっている公立保育所はないというふうに私は思っております。あるいは、今申し上げたような延長保育、休日保育といったようなことを、公立保育所と民間の保育所と並べて、どっちがどのぐらいやっているかということを言えば、そういうことになると思います。それから、あえて申し上げますと、東京都のゼロ歳児の保育単価なんというのは既に三十万ぐらいにもなっております。

 いろいろなことを考えますときに、私はやはり、率直に申し上げて、民間の保育所はきっちり、どういう表現がいいんでしょうか、国の手で守っておかなければならない、少子化対策のためにも大変重要なことであると考えておりますということを極めて率直に申し上げたところでございます。

藤田(一)委員 公立保育所の役割が不十分だから、そちらは一般財源化して値上げになっても何してもいいよという話にはちょっとならないんじゃないかなと思いますよ。その中身に不十分な部分があるならば、公立保育所しかない地域だってやはりあるわけですから、それはきちっと充実をさせていくという方向性を立てなきゃいけないということではないですか。そういうところを切り捨てていってしまうというのは、大変問題な御発言だというふうに私は思います。

 今回、公立保育所の問題が、一般財源化になってこういう値上げやなんかの現象が出たということは、要するに、中途半端な三位一体改革の中で税源移譲もままならず、交付税も大幅にカットされて地方財政というものがもう立ち行かなくなった、その結果として利用者にしわ寄せが行ったということではないでしょうか。そのことはちゃんと理解をしていただかなければいけない。地方財政が今どれだけ危機に瀕しているのかということをしっかりと理解していただかなければ、この三位一体改革の議論ということもできないわけでございます。その点については、大臣、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 たまたま公立保育所と民間保育所のお話が出ましたので、冒頭お断りいたしましたように、かねての私の持論なのですがというふうにお断りを申し上げて、率直な意見だけは言わせていただきました。

 ただ、だからといって、公立保育所がどうでもいいとか、なくなってもいいんだとかというようなことを申し上げたつもりはありませんで、民間保育所が必死になって今日まで日本の保育を支えてきたということだけは理解しておいてあげなきゃいかぬだろうな、そのことを非常に強調して申し上げたために、あるいはちょっと誤解をされる面があったかと思います。そのことだけは改めて申し上げておきたいと思います。

 それからまた、議論がかみ合わないといけないと思いますので、改めてお答え申し上げておきたいと思います。

 保育対策は、国の存立にかかわる少子化対策の中核であり、待機児童の解消を含め、引き続き国が主導的に取り組む必要がございます。公立保育所につきましては、一般財源化を行っても自治体で必要な財源が確保され、むしろ、民営化や運営の効率化など、高コスト構造の改善につながる可能性もあることから、今年度から運営費の一般財源化を行ったところでございます。

 他方、経営基盤が脆弱な民間保育所の運営費まで一般財源化することは、自治体によっては必要な財源が確保されず、公共施設よりも効率的に多様な保育サービスを率先して提供している民間保育所の運営の根幹を揺るがすことになるために、私どもは適切でないと考えておるところでございます。

藤田(一)委員 公立保育所の問題、あるいは、公立保育所がいいのか、民間保育所がどうなのかという議論は、きょうこの場ではとても時間がありませんからこれ以上申し上げませんけれども、今私がお尋ねをしたのは、そういう形で地方財政が大変危機に陥っているんだということに対する認識を大臣はちゃんと持っていていただいているのかということでございます。

 要するに、保育料を値上げしたいとか、どこも自治体はそんなことを思っているわけではないんですね。ただ、現実にそうせざるを得ない、それしか立ち行かないという状況があって、そういう現象が出てきているわけです。それは、先ほど言いましたように、ばらばらな改革の中での地方財政の危機という状況が生み出したことなわけです。そのことをきちっと受けとめていただきたいということでございます。

 そして今回、先ほど冒頭にお話がありましたけれども、そういう地方財政が大変危機に陥っているときに、国民健康保険と生活保護と児童扶養手当の補助率の引き下げということが提案をされてしまっているわけであります。本当に、生活保護というのは法定受託事務の部分も大変大きいわけですし、補助率の引き下げということで打撃を受けるのはやはり地方自治体であり、最終的には生保の受給者ということにもなっていきかねないわけですね。

 確かに、自立支援ということは大変大事なことですし、生活保護制度の改革ということも必要だろうと思います。でも、今日のこの厳しい雇用情勢の中で、そんな簡単にはやはりいかない、非常に厳しい問題であります。あるいは、一方では、緊急地域雇用創出特別交付金というようなものも打ち切られる、こういう現象も出てきているわけです。

 本当にやろうというんであれば、本腰を入れて、横断的な施策の展開ということをやらなきゃいけない。そのためには、十分時間をかけて準備もしていかなければいけないわけであります。にもかかわらず、今回補助率の引き下げが出てきている。国民健康保険にしても、これもいろいろな議論がありますけれども、都道府県の関与の必要性については、介護保険制度やあるいは医療保険制度の改革議論の中で進めていけばいいことだろうというふうに私は思います。

 要するに、地方へのツケ回しということが行われてしまっているんではないか。自治体によっては法定受託事務を返上するというような声も聞こえてきていますけれども、こういうような混乱が起きたらどうされるおつもりなんでしょうか。私は、補助率引き下げについては慎重な対応を求めたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、私は、地方の財政が大変厳しい状況にあるということを承知していないと申し上げるつもりは全くありません。それはよく承知をいたしております。

 ただ、私どもの三位一体に対する考え方は、再三申し上げておりますように、必要な税源移譲は行われるということを前提にして考えておりまして、そのことを改めてまたもう一度申し上げておきたい、こういうふうに思うところでございます。

 そこで、今生活保護についてのお話、特に、地方がもしもう嫌だと言ったらどうするんだというようなお話でございますけれども、今回の見直しにおきましては、被保護者の抱える問題が多様化しておる現状などを踏まえ、経済的給付に加えて、自立・就労支援策を実施する制度に転換することにいたしておるところでございます。

 これに伴いまして、財政的にも地方自治体にそれなりの負担をしていただくということを考えておりますけれども、今申し上げましたように、三位一体改革の一環として、地方が必要とする財源が確保され、地域間格差が生じないことを前提として、国と地方の負担のあり方の見直しを提案したところでございまして、今後引き続き関係の皆さんと議論を重ねてまいりたい、こういうふうに考えております。

 さらに、今のお話の法定受託事務の返上論も出ておるがということでございましたので、さらに申し上げますと、生活保護の対象となる要保護者は、国民であるとともに地域住民であります。生活保護行政は地方の利害に関係をいたしますことから、制度の発足当初より地方自治体にも費用の一部を負担していただいておるところでございます。

 このように、生活保護行政は国と地方が、先ほども申し上げましたように、まさに重層的な形で協力しながら実施しているところでございまして、今後とも地方自治体に必要な役割、責任を担っていただきたいと考えております。

藤田(一)委員 時間がなくなってしまいましたけれども、もう少し今の地方自治体の状況ということは危機意識を持って見ていただきたいというふうに思いますし、やはり税源移譲というものが値切られているというところもあるわけですから、その辺もしっかり踏まえてこの問題については対応をしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 もう一点だけ、これはもうお願いをしておりましたので、時間がありませんから一言だけ触れさせていただきますけれども、二つ目の問題として、私はきょう、女性労働に関するお尋ねをする予定にしておりました。

 その中身は何かといいますと、均等法の議論が始まったわけですけれども、間接差別禁止の立法措置というものが国連の女子差別撤廃委員会から勧告をされております。こうした問題について、これは緊急な課題だと思っておりますけれども、どういうふうに受けとめていらっしゃるのか。

 そしてまた、ILO条約との関係において、同一価値労働同一賃金原則に従った評価制度というものをきちっと研究していく、早急に検討していくということをする必要があるのではないか。

 あるいは、未批准のILO条約、百十一号条約あるいは、民主党も均等待遇法案を提出しておりますけれども、それに関連をする百七十五号条約の批准、こういった問題について、ぜひ決意だけお聞かせをいただきたい。それで質問を終わりたいと思います。

衛藤副大臣 いわゆる間接差別につきまして、学識経験者から成りますところの研究会において議論を行っておりまして、本年六月に報告書を取りまとめたところでございます。さらに九月には、その報告書を受けて、男女雇用機会均等のさらなる推進のために労働政策審議会雇用均等分科会において検討を始めたところでございますので、厚生労働省といたしましても、その結果を踏まえて検討をさせていただきたいというように思っております。

 それから、評価基準につきましては、その判断は各国にゆだねられているところでございます。今までに私ども厚生労働省におきましても平成十三年、十四年と研究会を開催してまいりましたけれども、特に大きく指摘されたところは、運用面においてもっと工夫はないのかということの指摘でございました。昇進や昇格に対する男女差の解消だとか、あるいは仕事と家庭の両立支援等の勤務の継続のための取り組みとか、そういうことをもっと取り組むべきだという意見が非常に強うございます。

 今、厚生労働省としても、遅まきながら、平成十五年四月には、男女間の賃金格差解消のための賃金管理及び雇用管理改善方策に係るガイドラインを作成して、その普及啓発を行っているところでございます。

 なお、ILO百十一号並びに百七十五号条約を批准すべきではないのかということでございますけれども、国内法との整合性をどう確保するのかということを考えているところでございます。さらに国内法との整合性について検討する必要があるというぐあいに思っております。

 百七十五号につきましては、パートタイム労働者が可能な限りフルタイム労働者に与えられる保護を受けることを確保するための措置について想定しているところでございますけれども、まだ同一企業に比較可能なフルタイム労働者がいない場合等がございますので、我が国の実情にかんがみ、なかなか同一企業以外での比較というのは非常に困難でございますので、そのことについては慎重に対応してまいりたいというぐあいに考えている次第でございます。

 以上です。

藤田(一)委員 ありがとうございました。

 また次の機会にいろいろ議論を詰めさせていただきたいと思います。

鴨下委員長 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 質問通告の順番とは異なりますので、よろしくお願いをいたします。

 まず初めに、財団法人社会保険協会の会費についてお尋ねを申し上げたいと思います。

 本年五月二十六日、決算行政監視委員会で、財団法人社会保険協会について私は質問をいたしました。その中で、社会保険が適用されている百六十五万社のうち、協会に加入している事業所数と加入率をお伺いした際、政府参考人からは、加入割合は八五%が加入しているとの答弁でした。

 社会保険協会の会費についてお伺いしたいと思います。

 八月四日の財務金融委員会で我が党の長妻議員が社会保険協会の会費の徴収について質問した際、政府参考人の見解は、当然それは任意加入、社会保険事務所を通じて、社会保険協会への加入があたかも強制的であるかのような誤解を招かないよう指導している旨の答弁がありました。

 その後、社会保険事務局または社会保険事務所に対し、任意であるという改善指導はされているでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

青柳政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお尋ねの都道府県の社会保険協会でございますが、御存じのように、健康保険や厚生年金の被保険者あるいは被扶養者の健康及び福祉の増進を図ることなどを目的として各都道府県に設立をされた公益法人でございます。社会保険の適用事業所の事業主を中心として、社会保険制度の実務に対する周知、協力など、意義のある活動をしていただいているものでございます。

 この協会への加入について、これがあたかも強制的であるかのような誤解を与えかねないとの御指摘をただいまいただきましたわけでございます。従来からこういう指摘がございましたので、実は、平成十年の六月に一回、それから平成十五年の五月に、社会保険事務所等において協会に対し便宜を図っているというような誤解を与えないようにという指導をしてまいったところでございまして、各社会保険協会においてもそのような対応をしているというふうに理解をしているところでございます。

 八月四日に、今お尋ねございましたように、衆議院の財務金融委員会におきまして長妻議員から社会保険協会の会費の納入についての御質問があった以降、私ども承知しておる限りでは、各協会において会費納入に関して特段の問題が起きたという報告は受けておりませんが、御指摘を踏まえまして、あくまでも任意であるという旨を明らかにするよう、再度周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

内山委員 具体的にどんな改善を指示されたんでしょうか。

青柳政府参考人 八月四日以降は、具体的に、地方の社会保険事務局に対して、特段、社会保険協会の監督に関して指導、周知徹底の文書等は発出しておりません。

内山委員 ということは、やっていないということじゃないですか。

 新規適用を受ける際に、協会費の払い込みの用紙をもらって、庶務の方に行ってください、これをいまだにやっているわけじゃないんですか。どうですか。

青柳政府参考人 先ほども申し上げましたように、これまでも平成十年以降二度にわたりまして具体的な指導監督をしておりますので、今後また、例えば、具体的に何か問題となるような事例をお教えいただけましたならば、さらに一層の指導監督を図らなければならないかと思っておりますが、そうでもなければ、当面、これまで行っておりました指導監督を引き続き行ってまいるということで対処してまいりたいと考えております。

内山委員 あなたは現場に出て、その件見てますか。私は社会保険事務所に行って、そういう新適の実態というのを知っているんですよ。新規適用に行った事業主さん、そういう払い込みの用紙をもらって、これは強制加入と思って払っているんですよ。これは、八五%、払っているところと払っていないところがあるというのはおかしいじゃないですか。そこを何も八月四日以降やっていないということ自体が職務怠慢です。非常におかしい。

 今後どうされるか、はっきりここで言ってください。

青柳政府参考人 さまざまな会議等の機会をとらえて徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

内山委員 ですから、文書を出すんですか、出さないんですか。

青柳政府参考人 先ほども申し上げましたように、これまで二度にわたりまして具体の指導監督を行ってまいっておりますので、特段の事情の変更がない限り新たな文書を出す必要はないと考えておりますが、今後、会議等でその周知徹底を図る中で必要があれば判断してまいりたいというふうに考えております。

内山委員 答弁になっていないですよ。いいですか。新規適用はいまだに会費の払い込みの書類を渡されているんです。それから、更新のときも送られてくるんですよ。そこに、任意とかと明確には読み取れない。だからこそ、私は五月の二十六日に、同僚の長妻議員も八月四日に質問しているじゃないですか。それ以来何にも改善していないということは非常におかしいです。

青柳政府参考人 適用等についての状況を若干調べた上で、必要があれば対処してまいりたいと考えております。

内山委員 必要って何ですか。必要って何ですか。実際、やはり誤解をしている人は非常に多いんですよ。八五%がみんな理解をして納めているとは限らない。

青柳政府参考人 誤解が生じないように、どのやり方がよいかも含めて、考えてまいりたいと思っております。

鴨下委員長 青柳運営部長、質疑の趣旨にのっとって御答弁をいただくように、よろしくお願いします。

青柳政府参考人 ただいまの御質問の趣旨に沿って、適切に対処してまいりたいと思います。

 具体的なやり方については、少し考えさせていただければと存じます。

内山委員 時間軸をちゃんと示していただかないとね。金額についてはささやかな金額かもしれないけれども、払わなくていいものと、払うものと、やはり区別しなきゃならないと思うんですよ。

 だから、いつ、どのようなものを各社会保険事務局または事務所に通知するのか、ここではっきりと言ってもらえば、私はこの質問を終わりたいと思うんですけれども。

 では、大臣、ちょっとお願いします。

尾辻国務大臣 私の責任で、改めて調査をいたします。そして、その調査を見て、しかるべく対応をいたします。

内山委員 さすが大臣です。ありがとうございます。早急に結論の方、お願いを申し上げたいと思います。

 それでは、二番目の質問に移りたいと思います。

 これもやはり、私、三月の決算行政監視委員会で質問させていただいたところでございます。社会保険庁から年金加入記録を通知される中に「年金加入記録のお知らせ」というものがございます。このお知らせの中に年金額を計算する根拠となる平均標準報酬月額または平均標準報酬額の記載をしないのかというお尋ねをしました。そのとき、答弁では、これは初めての試みですので、どのような改善が考えられるか検討していきたいという旨の答弁をされていますが、それは今後書くのか書かないのか、検討されたのか、お尋ねをしたいと思います。

青柳政府参考人 ただいまのお尋ね、本年の三月より、間もなく年金を受ける年齢である五十八歳に達した方に対して「年金加入記録のお知らせ」という形でお知らせをお送りいたしまして、事前に年金の加入記録を確認していただいております。それから、その際に、希望する方には「年金見込額のお知らせ」をお送りするという形で情報提供させていただいているところでございます。

 三月に始めましたこのサービスでございますが、発足間もないということで、御指摘のとおり、現段階ではこれらのお知らせには平均標準報酬月額を記載しておりません。しかしながら、年金の見込み額の計算の基礎になりました平均標準報酬月額あるいは年金見込み額の計算式、どうやってそういう額になるんだろうといったようなことについて詳しくお知りになりたいという方がいらっしゃる場合には、専用の照会用電話というものを設けまして、この電話に御照会いただければそういった具体的な計算額について個別にお答えをしますという対応をさせていただいております。

 年金制度に対しまして国民の理解を促進するためには、個人情報の提供の充実というのが重要であるという点は言うまでもございません。したがいまして、御指摘の点については、今後そういった専用電話等へのお問い合わせの状況などもよく見きわめながら、さらに改善できる点があれば改善してまいりたいというふうに考えております。

内山委員 用紙の端に給与の平均、これを書くなんというのは技術的には全然問題ないと思うんですよね。それを書くことによって社会保険事務所に相談に出向く人数を、逆に言うと少なくすることもできるし、やはりそういう利便性も私は十分あると思います。

 今、簡単な年金額を計算するパソコンソフトも数多く出ています。やはり自分の年金額を計算してみたい。実際に、加給年金や振りかえ加算の計算を間違えているじゃないですか、皆さん。自分の年金額をきちっと計算したいというニーズはあるんですよ。ですから、何としても早く、それは余白に打ち出すことは絶対可能だと思うので、早急にやっていただきたいと私は思っているんですけれども、大臣、いかがでしょうか。受給者の利便性を図る一つの情報なんです。これを早急にお知らせの中に記載をしていただきたい、こう思うんですが。

尾辻国務大臣 私どもは、やれることはすべてやる、その覚悟をいたしておりますから、ただいまのこともそういう姿勢で検討をさせていただきたいと存じます。

内山委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 新聞の記事をお配りしております。

 続きまして、九月二日付の朝刊各紙に、神奈川社会保険事務局の平成十五年六月から八月分の氏名や傷病名を含む診療報酬明細、レセプトの情報最大九千人分が外部に流出したという記事が掲載されています。お手元にその九月二日のレセプト流出の記事をお配りしておると思います。

 その中で、財団法人医療保険業務研究協会は入力業務システムの開発業者にテスト用データを不正に提供、こういうふうに書いてありますけれども、この事実は本当でしょうか。

青柳政府参考人 今、不正ということが事実であったかというお尋ねでございましたが、少し、この業務研究協会がどういうような形でこの仕事をしておるかというところを触れさせていただきますと、社会保険診療報酬支払基金から送付されましたレセプトを保険者としてレセプト点検する、あるいは医療費通知を作成するということのために、そのレセプト上の情報のうち、保険証の記号番号でありますとか、あるいは生まれた年、それから診療実日数、こういったものを光学読み取り機、いわゆるOCRで磁気媒体に収録をするという作業をしておりまして、これが医療保険業務研究協会に委託をしている仕事でございます。ただ、これらのレセプトのうちに、OCRで読み取りができない手書きのもの、あるいは記載が不鮮明のようなもの、こういったものがございますので、この部分は、今度はパンチ業者に再委託をして、パンチ入力によって保険証の記号番号等の情報を磁気媒体に収録する、二段階の作業をしておるというのが実態でございます。

 この際、業務の効率的な実施をするために再委託をしたのでありますけれども、このパンチ入力業者が、パンチ用の原稿を守秘義務を規定した委託契約に反して、他のシステム開発業者にテストデータとして不正に提供したというところが外部に流出したことの最大の原因でございまして、医療保険業務研究協会が直接そういったものを外部に出したわけではございませんが、実は、この協会自身も、本来レセプト情報から消し込みをしなければいけない氏名や傷病名を、消去しなければいけない部分を十分に消去せずに、このパンチ業者に渡しておったという、二重のいわばミスが重なってこのような事態に至ったものでございまして、大変申しわけないというふうに思っております。

内山委員 パンチ業者なんてよく、聞きなれない言葉なんですけれども、このパンチ業者というのは一体どんな会社なんでしょうか。

青柳政府参考人 ただいまも申し上げましたが、レセプトを磁気媒体に収録する際に、OCRでの読み取りができない手書きのもの等がございます。こういったものを業者に委託して入力する、この作業をしていただくのがいわばパンチ入力業者というふうに私ども呼んでいるものでございまして、そのための原稿をいわば医療保険業務研究協会から適切な形で、個人情報を消し込みをした形で提供する、こんなような形で作業しているものでございます。

内山委員 新聞によりますと、神奈川県以外の二十八支部でも個人情報の消し忘れが確認されているようですけれども、同様に、同支部からパンチ業者にやはり情報が漏れていたということがありますでしょうか。

青柳政府参考人 神奈川以外の四十六の社会保険事務局に対して同様の氏名の消去漏れがないかどうかの確認をまずいたしました。その結果、財団法人の医療保険業務研究協会の二十八支部において氏名の消し込みが十分に行われていないというものが判明をいたしました。

 これとあわせて、じゃ、パンチ入力業者の方から個人情報が流出していないかどうかについてもあわせて確認を行いましたが、他の都道府県におきましてはパンチ入力業者からの流出はなかったということが確認されております。

内山委員 この事態の監督責任というのはどこにあるんですか、だれが責任をしょっているんでしょうか。

青柳政府参考人 先ほど、私の説明の中で、医療保険業務研究協会から再委託でパンチ業者にパンチ原稿が出るという表現をいたしましたが、パンチ原稿そのものは、一たん都道府県の社会保険事務局の方に医療保険業務研究協会から返されて、都道府県の社会保険事務局が改めてパンチ業者に委託をするという形になっておりました。先ほどの点を修正させていただきます。

 その際に、ただいまも申し上げましたように、都道府県の社会保険事務局で消し込みがきちんと行われているかどうかをきちんとチェックした上でパンチ業者に委託をしなければならない部分が十分にチェックができていなかったという点も、残念ながら確認ができております。

 したがいまして、そもそも、情報が漏えいしたということについての監督責任及びパンチ業者にパンチ用原稿を渡す際にチェックを十分に行わなかったという、チェックが不十分であったということの責任、両方の責任、社会保険事務局、ひいては社会保険庁にあるというふうに考えております。

内山委員 長官におかれましては、このレセプト流出後の御就任ということですので、長官、ちょっとこの辺の御所見をお伺いしたいと思うんですが。

村瀬政府参考人 ただいま御指摘のありました個人情報の流出というのは、絶対あってはならないことというふうに考えております。したがいまして、今回の問題につきましても、二度とないような形でしっかり対処してまいりたいと思います。

 それから、庁全体といたしまして、個人情報の流出を避けるために、顧問弁護士に委嘱いたしまして、抜本的に業務の見直しをやらせていただいております。

 したがいまして、今後は、その部分につきまして、絶対ないと言い切れるかどうかわかりませんけれども、ないように最大限の努力をする、こういうふうにお答え申し上げたいと思います。

内山委員 ちょっと今、聞き漏らしたのかもしれませんが、顧問弁護士の方が業務改善ですか。

村瀬政府参考人 社会保険庁の改革の中で、五点を挙げまして、今現在物事を進めているわけですが、その一点の中に個人情報の保護の徹底という項目がございます。

 その部分につきまして、当初は民間の知恵を活用しようかということで、いろいろ民間と打ち合わせをしたんですが、残念ながら、来年四月本格施行で、各会社とも自社をどうしていったらいいかということを必死になってやっている最中でございまして、適当な人材が見つからなかったということで、個人情報保護に詳しい弁護士にお願いをいたしまして仕組みをしっかりつくっていくということで動いていきたい、こういうふうに考えております。

内山委員 今の個人情報保護ということで、こういった情報が、例えばおれおれ詐欺みたいな、ああいうやからに流れますと、これは大変な被害が出てくるんじゃないかと思うんですね。ぜひこの防止策というのをきちっと処理していただきたいと思うわけであります。

 ちょっと、大臣からもその辺の御所見をいただいておきたいと思います。

尾辻国務大臣 いろいろお答えしてまいりましたけれども、今後、個人情報を取り扱う委託業者への指導の強化等の再発防止策を講じまして、このような事故が発生しないよう万全を期してまいりたいと考えております。

内山委員 ありがとうございます。

 質問を変えさせていただきます。

 老齢基礎年金の受給資格ということでお尋ねを申し上げたいと思います。

 やはりこれも、十月十五日の各新聞に、無年金者の推計が八十万人との記事がありました。六十五歳以上の無年金者は四十万七千人、六十歳未満の四十万と合わせると八十万人が無年金者になるだろうと。そして、国民年金の未納率が四割近くに達しておりますので、この国民年金の受給資格を、無年金者を防ぐためにも、現在の二十五年というハードルをもう少し低くして、要するに掛けたら掛けた分だけ支給するような受給資格にすることはできないんだろうか。

 例えば、外国の例で見ますと、年金受給権を得るのに必要な期間というのは、フランスでは三カ月、スウェーデンでは三年、ドイツでは五年、米国では十年。余りにも日本の部分はハードルが高いような気がします。やはり受給資格を見直すような必要があると思いますけれども、無年金者を防ぐために、大臣、御所見をちょっといただきたいと思うんです。

渡辺政府参考人 恐れ入ります。

 今御質問にございましたように、我が国の公的年金制度の場合、国民年金法でいうと二十六条、厚生年金保険法ですと第四十二条に、支給要件として二十五年以上ということが明記されておるわけでございます。我が国の制度におきましては、今御指摘がございましたように、諸外国とはそこが少し違っておるところでございます。確かに、最低加入期間というものが長いという特徴がございます。

 ただ、先生御承知のとおり、これを実現しやすいような仕組みをさまざまに工夫するということとあわせて年金制度が発達してきたという経緯があるわけでございます。したがいまして、やや長い最低加入期間ではありますが、工夫をするという基本的な考え方で対応しておりますので、単純な比較は難しいとは思いますが、こうした観点から、免除期間という制度を設けて受給資格期間に含めて、二十五年に到達しやすくする、また、六十歳から六十五歳まで、さらに、一定年齢の方々には、七十歳まで、任意加入できる道を開くことによって、二十五年に到達しやすくする、こういうような工夫を重ねてきたわけでございます。

 また、こうした背景には、短い保険料納付期間では年金額が低くなるという問題点をどう考えるか、高齢期の生活の基本的な部分としてお役に立ちたいこの公的年金についてどのような役割を期待するのかという論点もございますし、また、これまで長い経緯の中でこの二十五年ルールが運営されておりますので、今から白地に絵をかくのではなく、これを短くした場合に、保険料の納付意欲というものが失われたり、保険料納付を、後でいいということで先送りするというようなことにつながらないかという、さまざまな影響も考えなければいけません。それらを総合的に勘案して、二十五年以上という要件を緩和するということについては、現時点では採用しがたいというふうに政府として考えておるところでございます。

 さらに、こうした工夫を進めるという観点で、今回の改正におきまして、多段階免除制度でありますとか、三十歳未満の方に関する納付特例制度でありますとか、あるいは七十歳までの任意加入の範囲を大幅にまた拡充する、こういうようなことで、何とか工夫をし、二十五年ルールの中で安心できる年金につなげていただきたいということで対応しているところでございます。

内山委員 制度はよくわかりますけれども、八十万人もいる無年金者、予備軍をどう救済するのか、そこの問題なんですよ。

 これから、例えば年金の一元化を図るにしても、今の制度というのはやはり旧法で残るはずです。ですから、そういうためにも、この八十万人に対して、六十歳未満で免除を受けるのではなく、やはりきちっと六十または六十五から年金をもらえるような人たちをつくるということに努力をしなければならないと思うんです。

 よく引き合いに出ます、低額な年金の額になってしまう、こうおっしゃられますけれども、例えば老齢基礎年金の平均的な支給額というのは月額で幾らぐらいになりますか。お尋ねをします。

渡辺政府参考人 老齢基礎年金は、モデルケースで六万六千円、こう申しておりますが、五万円程度というところではないかと思います。正確な資料が今手元にございませんので、必要があれば後ほど訂正させていただきます。

内山委員 平均すれば三万ぐらいだと私も思うんですね。六万六千円というのは、これはもう四十年間掛けた金額ですから。

 ですから、実際に、十年掛けた、十五年掛けた、その部分で支給すれば、やはりそういう無年金者も防げるし、受給資格が一カ月足らないという方も救済ができるはずだと私は思うんです。

 それに、例えば遺族年金や障害年金の納付要件を見ますと、全加入期間の三分の二以上滞納がなければいいとか、障害の初診日とか死亡日前一年間保険料を納めていれば受給資格は発生するわけですから、老齢だってやはり二十五年にこだわる必要は今は全くないと私は思っています。ぜひそういうところもやはり救済をしていただきたいと思います。

 最後に、大臣、ちょっと御所見をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 私どもは、年金に限らず、社会保障すべてについて不断の見直しが必要であるということを申し上げておりますから、不断の見直しはまさにやらせていただきたいと思います。

内山委員 諸問題を抱えた政府の今の改正年金法は、やはりそういった問題も救済できないというところで、私はきょう、強く確信をいたしました。何としても一元化を進めるために、やはり国民と大いに議論をして進めていきたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 本日は、一日かけての一般質問という形でございます。大臣には、大変お疲れではございますけれども、ぜひとも真摯なる御答弁のほど、またよろしくお願いをしたいと思っております。

 本日で十一日目の朝を迎えたという、先々週に起きましたあの新潟の中越地方を襲った大地震、またさらには、ことしの場合は台風災害が集中豪雨災害という形で、各地で犠牲になられた方々、そして今なお避難生活を送られていらっしゃる方々に対して、私からもお見舞いとお悔やみの方を申し上げておき、そして、今まさに厚生労働省が先頭に立って、そういう避難をされておられる方々の救済へ向けて頑張っていらっしゃるということでございますので、どうか、一日も早く通常の生活に戻れるように、最大限の御努力を引き続きお願いしたいと思っております。

 そこで、大臣も、今回の地震も含めて、災害救助の場面をつぶさに見てこられた、あるいはテレビ等でもその内容をごらんいただいたと思っておるわけでございます。私も今回のこの一連の災害をさまざまな部分から検討させていただきますと、大規模災害が起きた際には、突発的な地震であれば、やはり道路が寸断されてしまう、そしてさまざまな形で交通が困難になってしまうということになれば、地上での救助作戦、救助体制というものがなかなかうまくいかない、速やかな体制がとれない部分があるわけでございます。

 そういった部分からいたしますと、ヘリコプターでの救助体制というものが、今後やはりもう少し拡充といいますか、しっかりとした救助体制というものをこの中からも検討をしていく必要があるんではないかという思いからの観点で、私は今回、緊急消防援助隊ということで、きょうは、総務省の消防庁の方もおいでをいただいておりますけれども、それと関係をさせていただいて、幾つか御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、消防庁からお伺いをさせていただきたいと思っておりますが、現在の消防防災ヘリコプターの保有台数と、それから、全国的な展開でございますけれども、どういう状況になっているか、まずお知らせをいただきたいと思います。

東尾政府参考人 お答え申し上げます。

 消防防災ヘリコプターの配備状況でございますけれども、平成十六年十一月現在、全国で六十八機、内訳は、道府県所有が四十一機、政令市など消防本部が二十七機ということになっております。

 このほか、宮崎県が来年二月から運航を予定いたしますので、これを含みますと六十九機ということになります。

 活動内容といたしましては、例えば、本年七月の新潟県、福井県における集中豪雨、また、十月二十日からの台風二十三号における災害、また、二十三日に発生いたしました新潟県中越地震等の災害対応に見られますように、先生御指摘のとおり、緊急消防援助隊として、迅速な罹災状況の把握、また、がけ崩れ、道路寸断等による陸上からの活動困難な場合の救急救助活動、また、そのほか、これは今回ちょっと直接では関係ございませんが、林野火災における消火など、さらに、離島、山間地域など遠距離からの迅速な救急搬送、このようなことに極めて多岐にわたって活用されているところでございます。

園田(康)委員 そうしますと、今回緊急消防援助隊ということで、東京、埼玉からすぐさま新潟県の方に飛んでいって救助に当たったということでございました。

 しかしながら、まだ残念ながら保有をしていない県というのも、若干、若干といいますか、一県、二県というふうにあるということでございまして、できるだけ全国配備をすぐさまお願いをしたいというふうに考えておりますし、もしそうでなければ、広域的な行政の連携の中で、連絡を密にしながら、ぜひとも救助の際にはすぐ駆けつけられる状態というものを構築していただきたいという思いがしております。

 それで、これは厚生労働省がまとめたものでございますけれども、これはちょっと古い資料で申しわけないんですが、平成十四年の消防防災ヘリコプターの災害出動状況ということで、恐らく消防庁の方でもお持ちでいらっしゃると思うわけでございますが、その中で、火災と救助、それから、救急、その他という形で、災害の区分での出動件数、出動状況というものの取りまとめがあるようでございます。

 それでいきますと、まず、火災においては、平成十四年度全国合計で一千百九十一件、それから、救助に関しましては一千三百五件、そして、救急に関しましては二千六十八件でございます。その他につきましては二百十七件ということでございまして、全部で四千七百八十一件、これは平成十四年度でございますけれども、出動状況というものがあるわけでございます。

 今私からも申し上げたように、割合としましては、救急の出動というものが格段と多い件数で出ているという状況がここからわかるかと思うわけでございます。したがいまして、今後、救急医療の観点からも、救急の体制のあり方というものをもう一度しっかりと見詰め直していただきたいと思うわけでございますが、その際に、消防防災というヘリのあり方の中で、一つ考えられるのは、今消防防災ヘリの中では、救急の場合には救急救命士の方がこれに搭乗をされまして現地へ赴くという形でありまして、いわば空飛ぶ救急車という形の体制も一方ではとられているというふうに私は理解をしております。しかしながら、そこに、今後、これだけ格段と多い救急活動の部分もありますので、できましたら消防庁の方も、これは私の要望という形でございますけれども、救急活動にドクター、すなわち医師の搭乗というものも、この中でぜひとも御検討いただけないかと。

 救急専用ヘリというものの導入ということには、さすがにそこまではまだいかないのではないかなという気がいたしておりますが、全体的な救急医療体制を構築していくという面では、将来的には、この救急専用ヘリというものも構想の中にぜひとも加えていただければなと思うと同時に、この救急活動の医師の搭乗というものも、検討できるだけの範囲というものはお願いをしておきたいと思うわけでございますが、この点については何かございますでしょうか。

東尾政府参考人 消防防災ヘリの出動状況でございますが、先生御指摘の十四年から十五年にかけまして救急件数が二千件を超えるということで、出動の半数近くを占めております。

 このため消防庁といたしましては、消防防災ヘリを救急に活用するということを非常に重要視しておりまして、一定のガイドラインを設けまして、地上系の救急自動車よりも搬送時間が短い場合には、これを積極的に活用することとしております。

 また、これを受けまして、各県で航空による救急出動基準を定めております。離島や山間部においては特に有効ということでございます。

 御指摘の、医師を搭乗させて消防防災ヘリを使うということにつきましては、我が国では、御案内のとおり、消防本部にこのための医師を常駐させておりませんので、当然医療機関に立ち寄って同乗させるという運用が必要でございます。このために、通常考えられますドクターヘリよりも時間を要するという問題がございますけれども、消防本部としては、極力努力をしておりまして、現在一部ではございますけれども、医師を搭乗させて消防防災ヘリの救急運用をしているということでございます。

 この場合、不可欠な要素といたしまして、もちろん医師の確保は必要でございますし、それに伴う医療機関の協力体制、また、病院にすぐ隣接するヘリポートの整備などが必要でございます。

 このように、ドクターヘリと同じような機能を消防防災ヘリで代替することは難しい面もございますけれども、消防防災ヘリへの医師搭乗を含めた救急活動への活用については、これらの点を十分配慮しながら、今後、自治体の実情を踏まえ、救急出動基準等についてより適切に見直していくというふうに考えております。

園田(康)委員 ありがとうございます。前向きに御検討いただけるということでございます。

 さらに申し上げるならば、この救急救命士のみの搭乗ということになれば、当然のごとく、皆さんも御承知だと思いますけれども、アメリカのパラメディックで実践されているような、治療能力が高い、そういう権限を今後認めていこうということも一方では考えられるんではないのかなという気がいたしておりますので、そういった面も充実を図っていきたいというふうに私も考えておりますので、ぜひともその点もあわせてお願いをしておきたいと思うわけでございます。

 そうしますと、今大臣もいろいろと答弁のやりとりの中でお聞きになっていただけたと思っておりますけれども、いわば救急救命の部分で消防防災ヘリというのが、消防庁の方で一生懸命取り組みをやっていただいているということでございます。一方で、厚生労働省の方といたしましては、これは公明党さんも一生懸命やっていらっしゃいますもので、私、実は福島先生からそういった質問等々が、働きかけがあるのかなと思っておりましたけれども、なかなか出てこないので、業を煮やして、私からもぜひともやらせていただきたいと思っているところでございますけれども、要は、消防防災ヘリとドクターヘリというものは、その中身の装備が違うわけです。と同時に、一番の違う点というのは、今消防庁の方からもお話がありましたように、医師が搭乗しているかどうかというところでございまして、やはり医師が搭乗してその現場にすぐさま駆けつけて、その現場に到着と同時にそこにおける治療が開始できるということからすれば、救急車あるいは救急救命士が乗ったものが現場に行って、それである程度のことは、初歩的なことはできますけれども、いわば根本的な治療をその場で医師の判断抜きに行うということはできないという状況になっているわけなんですね。

 したがって、可能である限り、私は、医師が搭乗あるいはドクターヘリという装備を、専門的な治療がその場あるいは移動時間の中でもできるというこのヘリコプターの導入というのは大変必要なものではないかというふうに考えているところでございます。

 そこで、厚生労働省さんにお尋ねをしたいと思うんですが、総務省の消防庁は、もう既に、平成十二年の二月七日でございますけれども、各都道府県にあてまして「ヘリコプターによる救急システムの推進について」ということで一定のガイドラインを作成いたしまして、全国の消防本部に対しまして通達、通達といいますかガイドラインを出動基準という形で策定をしているところでございます。全国各地でこのガイドラインにのっとりまして消防防災ヘリの運用のあり方、あるいはこういう災害が起きたときにはすぐさま出動する、そしてどういう手順で救命活動を行うかというきちっとしたガイドラインができているわけでございますけれども、厚生労働省の中では、今どのように、このドクターヘリを踏まえて、どのようになっているかというのをまずお尋ねをしておきたいと思います。

岩尾政府参考人 ドクターヘリの活用の件でございますが、まだ残念ながら余り多くの県で活用されておりませんが、私ども、ドクターヘリを活用している県におきましては、地域の防災業務の中でこの災害時の活用を図るということで、各県に積極的な利用をお願いするということでございます。

 各県では、地域の防災業務計画というものの中で、救急医療システムの一環でドクターヘリの役割が位置づけられるということになっておりますので、そのような形で、都道府県の指揮のもとで活用いただければというふうに思っております。

園田(康)委員 少しトーンが下がってきたような気はするんですけれども。

 つまり、消防庁といたしましては、すぐさま人命救助というものが一番の大切な観点であるということから、こういった取り組みに積極的に取り組んでいらっしゃるというわけでございます。

 殊さら、この厚生労働の所管の中では、やはり人命救助というものが、医療の体制からは当然のごとく図られていかなければいけないものであるというふうに私は理解をしているところでございます。したがって、地域に任しているから地域でどうぞおやりくださいということでは、残念ながらまだまだ意識的な部分がこの部分に向いていないのかなという気がいたしているんです。

 それでは、ちょっと質問の観点を変えまして、現在の日本における、我が国におけるドクターヘリの導入状況はどのようになっていますでしょうか。

岩尾政府参考人 厚生労働省で行っておりますドクターヘリ導入促進事業の補助を受けているものにつきましては、現在全国で七県八機が運航されております。そのほかに、消防防災ヘリを活用してドクターヘリとしているもの、それから独自に研究会などを立ち上げて現在試行的に行っているところなどがあるというふうに承知しております。

園田(康)委員 平成十二年に試行的事業として厚生労働省さんが取り組まれて、そして十三年からこの本格的な導入という形になってきたものであるというふうに私は理解をしているんですが、それにしても、まだ七県で八カ所ということでありまして、今年度でもう一カ所ふえて九カ所という形になるんだというふうに伺ってはおりますけれども、全国展開というにはまだほど遠い状況にあるわけでございます。

 これは参議院の方でも、もう公明党の浜四津先生が御質問、あるいは森本議員からも御質問の中で触れられておりますけれども、ドイツでのこのドクターヘリ導入の際には少し時間はかかりましたけれども、全国展開にきちっと配備をしたという部分があったわけでございます。ドイツの場合はアウトバーン等々で高速道路の事故が大変多かったという状況の中で、これを何とか救命救急の一環としてドクターヘリという形でできないものであろうかということで検討されて導入されていったという経緯がございました。したがって、ドイツにおいては二十年間で交通事故死が二万人を超えていた部分を七千人まで引き下げたという確たる事例が海外にあるわけでございます。ですから、ヨーロッパ諸国では、フランス、イタリア、イギリス等々でこのドクターヘリを活用した救急活動というものが積極的に行われているという状況があります。

 その内容を見ますと、ちょっと時間がなくなってきましたけれども、これは厚生労働省が補助金で行った「ドクターヘリの実態と評価に関する研究」という部分の中の、これは資料で配っておけばよかったんですけれども、十七ページにございますけれども、事故が起きてから大体三十分までの死亡率、それから三十分を過ぎた場合の死亡率というものが統計的に出てきているわけでございます。

 それでいきますと、三十分で大体死亡率は五〇%まで段階的に上がっていくわけなんですけれども、三十分を過ぎた途端に、四十七分までのたった十七分間の間で、これ、ほぼ一〇〇%に近い、九〇%近くまで上がってしまうんですね。したがって、どれだけ初動的な処置が必要であるかということがここから言えるんではないかということでございます。

 そして、もう一つの観点としてお伝えをしておきたいのが、これもやはり参議院の方ではもう既に取り上げられておりましたけれども、ことしの三月の二十九日に中日新聞に載った記事でございます。

 これは、昨年の六月二十三日に愛知県の新城市というところで東名高速道路の交通事故が起きたわけでございます。その際に、このときは愛知医科大のドクターヘリと、あと、静岡から駆けつけたドクターヘリという、二機がこの上空で、すぐさま救助に当たろうということで、許可を待っていたわけでございます。しかしながら、残念ながら、安全が担保できないということで、道路公団側から許可がおりなかったわけなんですね。七、八分、ずっと上で旋回していたという。一分一秒を争うこの緊急事態の中で、先ほど申し上げた、三十分を超えればそれだけ高い死亡率に上がってきてしまう中で、早く医師としては患者の容体を見て適切な処置をしたいという状況の中、なかなかそれがかなわなかったという状況で、結局のところ、高速道路にはおりられずに、百メートル以上も離れた敷地、別の敷地におりて、そこから担架で上りおりをして、その高速道路の壁面を上りおりして患者を運んだという事例があったわけでございます。

 そういう事例も踏まえて、その後、国土交通省さん、あるいは厚生労働省さん、消防庁さん、警察庁さん、さまざまな機関の中で連携をとって連絡会会議なるものが持たれたというふうに聞いておりますけれども、その状況はどのようになっていますでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

岩尾政府参考人 平成十四年の十二月に、ヘリコプターを活用して高速道路上において救命効果の高い救急活動を安全に行うための条件というのを、警察庁、消防庁及び国土交通省と私どもでまとめたところでございます。

 引き続き、高速道路上で円滑に着陸できるよう、関係省庁と連携して、手順、条件などについて整理検討し、ヘリコプターの高速道路本線上着陸のための具体的な運用について現在できるだけ早期に結論を得るよう努めているところでございます。

園田(康)委員 事故あるいは今回のような災害等は、時と場所を選びません。したがって、早急にこの内容については関係省庁と、大変な時期ではありますけれども、ぜひとも御検討を早急に行っていただきたいというふうに考えております。

 そこで、もう一つ申し上げておきたいんですが、平成十三年度から始まったドクターヘリの導入促進事業でございますけれども、先ほど大臣お聞きいただいたように、遅々としてなかなか進んでいない状況がございます。財政的に厳しいということも一方ではあるというふうには聞いておりますけれども、先ほど大臣も、本当に真摯な御答弁の中から、お金があろうがなかろうが、人を助けたいという気持ちは十分にあるんだという御答弁をいただいたというふうに思っております。

 やはり必要なお金をどんどんどんどん積み上げていくということからすれば、確かに高いものではありますけれども、しかも、購入だけではありませんで、ヘリコプターというのは通常の整備等々にもしっかりとしたお金がかかるわけでございます。したがいまして、今後、厚生労働省の中でこの検討をする際には、人命救助というものを第一に考えた視点に立って予算の確保に向けて頑張っていただきたいわけでございますけれども、最後、この件につきましては、大臣、来年度の予算の取り組みについて、ぜひともちょっと御意見をお聞かせいただきたいと思っております。

尾辻国務大臣 国民の生命の安心を確保するため、ドクターヘリによる迅速な患者の搬送及び搬送時における救急医療を実施することは、まさに医療の原点ともいうべき極めて重要なものであると認識をいたしております。

 国民がどの地域においても安心、安全で一定水準の医療を受けられるよう、医療提供体制の確保につきましては国も一定の責任を果たしていくことが必要と考えておりますので、今後とも万全の策を講じていきたいと存じます。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 国民の生命財産を守るのは、当然のごとく国の責務でありますから、ぜひともこのことをお願いしておきたいというふうに思っております。

 ちょっと細かい部分にまで立ち入ってしまいましたので、時間がなくなってしまいました。

 最後に。今回、先ほど来質問が何度かございますけれども、やはり私からも一言これについて意見を述べさせていただきたいと思っております。すなわち、支援費制度と、先般十月十二日に厚生労働省から提案をされました、障害保健福祉施策にかかわるグランドデザイン、これについての御意見をお伺いしておきたいと思っておるわけでございます。

 私も初当選をさせていただきましてから一番最初に質問をさせていただいたのが、くしくもこの支援費制度でございました。そのときには、前大臣、坂口大臣にも、この予算確保に関してはやはり財政的な基盤が本来的に薄いというか、きちっと計画をされていなかった部分に関して、これはやはり欠陥商品ではなかったのかなということを御指摘させていただいた上で、こういう困っていらっしゃる方々、障害者の方々の安心を少しでも高めるための予算措置というものをしっかりと行っていただきたいですよということで、今年度は大丈夫ですよねと、昨年度は百億円を超える状況が出てしまって、何とか省庁の中で御努力をいただいて、ほかの関係のもの等流用しながら確保できたという部分があったわけでございますけれども、今回は大丈夫ですよねと申し上げたところでございましたけれども、大丈夫ですとおっしゃっていただいたんですが、残念ながらそれもままならなかったということからすれば、大変残念に思っておるところでございます。したがって、多くの皆様方に対して、障害者あるいは関係者の方々にさまざまな大きな不安を抱かせてしまったというのは、これは、私は大変大きな責任があったものであるというふうに考えております。それに対しては、私どももきちっとその中身を精査してこなかったという部分に関しましては、やはり同じく反省をしていかなければいけないという部分がありますので、そういう反省も踏まえて、今後最大限の努力をしていただきたいというのと同時に、今回出された障害者施策にかかわるグランドデザイン、これは大変、今まで多くの皆様方からの要望にこたえるごとく、厚生労働省さんが大きな大きなふろしきを広げていただいたということであるわけでございます。したがいまして、各市町村の一元的な体制を整える、そういう総合的な施策、あるいは自立支援型のシステムへの転換ということでございますけれども、まだまだこの内容については、さまざまな部分で、制度に取り残されるんじゃないかというような不安も一方ではあるわけでございます。そういった部分も踏まえて、ひとつ大臣の今後の意気込み等々も、そういった声があるんだということを一方にしっかりと踏まえながらお答えをいただければなというふうに思っております。

尾辻国務大臣 今回私どもがお示しをいたしましたグランドデザイン案というのは、これまでの障害者福祉を大きく見直してみようということで御提案申し上げたところでございます。

 その中で、現在の障害保健福祉施策は、障害種別や年齢等にかかわりなく、できるだけ身近なところで必要なサービスを受けながら暮らせるよう、市町村を中心として福祉サービスの提供等の仕組みを共通のものとする総合化を図ること。申し上げましたように、障害種別や年齢別にかかわりなくというところが一つの私どもが大きく申し上げておるところでございます。

 それから、障害者が地域で自立して暮らせるよう、就労支援を含む自立支援に力を入れていくこと。いつも申し上げておりますように、今後のキーワードの一つが自立だと思っておりますから、そのことを申し上げたところであります。

 さらに、これは当然のことでありますが、制度の持続可能性を確保し、国民の信頼を得て安定的に運営できるよう、より公平で効率的な制度にすること等の観点からお示しをしたものと御理解いただければと思います。

 そうした中での、では支援費のことをどうするのだということがございますけれども、このグランドデザイン案におきましては、給付の支給決定に関する障害の程度等に係る基準の設定、利用者負担の見直しを行うことを前提にいたしまして、国及び都道府県の補助制度を義務として支弁する仕組みに改めることを検討いたしておるところでございます。

 今後、障害者の方が必要なサービスを受けながら地域で安心して暮らせるよう、グランドデザインの実現に向けて最大限努力をしてまいります。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 来年の通常国会に向けて、障害福祉サービス法という体系を、ぜひともしっかりとしたものをつくっていただきたいというふうに考えております。

 同時に、きょうは触れることができませんでしたけれども、精神保健医療の福祉の面で、これもやはり改革のビジョンというものを今お示しをしていただいているところでございます。数年来から言われております社会的入院という状況を少しでも解決をしていかなければいけないという部分から、この七万二千床の社会的入院の問題、これをぜひとも、前大臣も取り組むとおっしゃっておられたんですが、なかなかこれが進んでいかなかったという部分でありますので、ぜひ大臣、尾辻大臣のもとで旗振りをしていただいて、この問題にも全力を挙げていただきたいということを最後に申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、泉健太君。

泉(健)委員 厚生労働委員会では初の質問になりますが、衆議院の泉健太でございます。

 特に尾辻大臣には、以前、エレベーターの中でごあいさつをさせていただいたことがありまして、というのは、私も、まだ当選する前から、戦没者の遺骨収集事業の方にずっと参加をさせていただいておりました。特に、厚生労働省の中では、こういった社会援護関係のところというのはなかなか日が当たらない部局ではあると思うんですが、ぜひ大臣のもとで、まだまだこれから、取り残されている戦後処理の問題、あるいは平和というものを今後若い世代に引き継いでいかなければならないというところもあると思いますので、どうか御指導のほど、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 一方で、とはいえ、やはり我々、しっかりと物事を追求していかなければなりません。ということで、きょうは本来一般質疑で、私も自分自身が課題としてきた問題を幾つか取り上げようというふうに思っていたんですが、特に今、民主党が、日々変わる状況の中で、BSEのことについては、我々、ぜひ皆さんに対してちゃんと意見を述べたい、そして政府の見解を聞きたいということで、私も今回この質問についてさせていただきたいというふうに思います。

 佐々江参考人はもう着かれていますか、まだですね。ということで、ちょっと順番を変えて質問させていただきたいと思うわけですが、まず、大臣に率直にお伺いをしたいと思います。

 大臣は、いつ生まれたかが不確かで全頭検査をされていないアメリカの輸入牛肉、これが一方にあります。日本で検査をされた国産牛肉がございます。もし御自身が買われるとしたら、どちらをお選びになられますか。

尾辻国務大臣 変なことを言うと怒られるかもしれませんが、私、ベジタリアンを自称しておりまして、余り肉を食べないのでありますが、しかし、お尋ねでありますからお答えをしなきゃなりません。

 食べるとしたら、安全な肉を食べたい、こういうふうに思います。

泉(健)委員 ベジタリアンの方でも、やはり国民の多くが肉というものを食しているわけですから。

 では、御家族がということでもいいかもしれません。どちらが安全だというふうに思われますか。いつ生まれたか不確かで全頭検査をしていないアメリカの輸入牛肉と、全頭検査をした日本の国産牛肉、これはどちらが安全かというふうに思われますか。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

尾辻国務大臣 そこの部分では慎重にお答えしなきゃ、その後に続くだろうと思いますから、慎重にお答えさせていただきたいと思うんですが、いつ生まれたかわからないとおっしゃると、これは安全性に問題があるわけでございますから、そのことだけは申し上げておきたいと思います。

泉(健)委員 やはり、なかなか慎重なようですね。

 では、同じく、国産牛肉なんですが、検査をしたもの、していないもの、これはどちらを選ばれますか。どちらが安全かというふうな御認識をお持ちですか。

尾辻国務大臣 極めて常識的に申し上げると、こっちに検査したのがあって、こっちに検査していないというのが二つ並べられたら、常識でお答えすれば、検査した方のものを安全だなと判断するというのは、そういうことじゃないかなと思います。

泉(健)委員 いや、全くおっしゃるとおりだと思うんですね。

 だからこそ、我々は、この全頭検査というものは、時期を追っていずれは、やはり科学的見地から、あるいは消費者の理解から、次第にこれを解消していく方向に行くという思いはあっても、なぜ今この段階で急に全頭検査というものを、国が関与をする形ではなくして、各自治体にこういった補助金を出すという形で自主的な取り組みにさせたのかというところがわからないわけですね。

 実は、アメリカの牛肉を冒頭に出しましたけれども、朝日新聞の二十七日の世論調査、アメリカ牛肉輸入再開をしても、六割が食べたくないということを国民が出しているわけですね。

 ですから、私は、冒頭に大臣にお伺いしましたが、やはりアメリカの牛肉というのは、残念ながら、現段階では日本に比べると基準が甘いということは、これは共通認識かと思います。例えば、それは、個体の識別が非常に難しい、あるいは飼料の規制というものが本当に徹底をしているのか、ほかにもいろいろありますけれども、そういった問題についてやはり問題があるということで、そういう中でも、やはりお互いの産業の発展のために交渉を続けていって、合意点を探って、お互いの国々が納得する段階で輸入再開というところに入っていこうという話だったと思うんですね。

 大臣は、就任をされたときの記者会見においても、こういうふうに答えております。

 米国産の牛肉輸入の問題で、先日、新農林水産大臣が早期に再開したいという前向きな発言をなさいましたが、その点について大臣はどう思いますかという記者の質問に対して、厚生労働省としては、国民の食品の安全を守る立場である、したがって、国民の食品の安全を守るということにおいては、ダブルスタンダードとまでは言いませんが、内外差があるというのは好ましくない。好ましくないというふうに明確におっしゃられているのですね。

 やはり、こういったことを考えたときに、今回の日米交渉、BSE協議というのが厚生労働省にとってどうだったのかなということは聞かなければならないというふうに思っているわけです。

 ここで、大臣、このアメリカとのBSE協議、そして、来春から輸入を再開するというようなことに向かいそうなわけですが、この協議あるいは輸入再開について、どういうふうな御見解をお持ちですか。

尾辻国務大臣 今、引用していただきましたように、私どもの立場は国民の食品の安全を守る立場でありますから、この点において譲るつもりは全くございません。絶えずそのことを申しておるつもりでありまして、日米交渉の場でも、一切そのことにおいて譲るつもりもございません。

泉(健)委員 譲るつもりがなくて、実際に譲ったところはあるというふうにお考えですか。

尾辻国務大臣 私は、譲った面はない、こういうふうに考えております。

泉(健)委員 そうすると、例えば、平成十六年の六月の後半に、日本とアメリカのBSE協議に係る第二回専門家及び実務担当者会合、ワーキンググループというのがあるわけですが、幾つもこういう会議がずっと開かれているわけなんです。しかし、こういったところでは、常に、日本側からはこういう提案があった、アメリカ側はこういう説明をしたというところで、そこには平行線であるというのが、もうどの項目に当たっても書かれているわけですね。

 では、こういったものについて合意を得たということで、今回の協議についてはそういう認識は持ってよろしいんでしょうか。

尾辻国務大臣 国内の承認手続を条件として、科学に基づいて対応するという基本的な考え方です。基本的な考え方で両国に共通認識ができたことは、今回の協議の結果でございます。

 合意という段階にはとても至っていない、こういうふうに理解をいたしております。

泉(健)委員 そうすると、今こうして、来春から輸入再開だということがもう言われているわけですが、これについては、そういった方向は事実であるということで、もう一回確認をしたいと思うんですが、よろしいですか。

尾辻国務大臣 今後、協議は続くと思います。そして、その結果がどうなるかは予断を許しませんけれども、今日の時点で合意なされたということではございません。

泉(健)委員 参考人はまだですね、佐々江さん。来られていますか。

 まさにここの場所にも、恐らくこのBSE協議の交渉に当たられた皆さんも来られていると思うわけですが、少しその当事者の皆さんにもお伺いをしたいと思います。

 このBSE協議において、日本側が特に重視をした、主張をした点、あるいは、ちょっとこれは厚生労働省の方の交渉当事者にお伺いしたいんですが、厚生労働省としてはどこにポイントを置いて特に主張されたか、これについて説明をいただきたいと思います。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省として特に主張した点でございますけれども、まず、米国産牛肉の輸入再開に当たっては国内と同等の安全性確保が必要である、したがいまして、特定危険部位の除去とかBSE検査が必要な月齢については、米国の基準ではなくて日本の基準と同等にする、これが基本であることは強く主張いたしました。

 また、我が国で確認された二十一カ月齢の若齢牛のBSEがございますけれども、これについても、米国側は、これは国際的に認知されていないのではないか、こういった見解を持っておりました。これについて繰り返し説明を行いました。

 また、輸入再開に当たりましては、国内の承認手続が重要であります。それと関連して、日本の場合、食品安全委員会による審議が承認手続に含まれること、さらには、米国の実施状況を確認するために査察ができるようにすること等について強く主張したところであります。

泉(健)委員 今何点かそういった点を言っていただきましたけれども、例えば、国内と同等の安全性が確保されなければならないということについては、今回の協議で結論を得たというふうにはお考えでしょうか。

外口政府参考人 今回の協議におきまして、両国で認識が共有された点が幾つかございますけれども、その中では、先ほど申し上げましたように、国内の承認手続を条件として科学に基づいて再開するための協議をしていくんだ、こういう認識が共有されました。そして、今後、専門家及び実務担当者による詳細な検討作業を行っていく、こういうことについても認識が共有されました。

 したがいまして、今結論が出たというのではなくて、今後、科学的に両方納得いく形で詰めていくんだということで認識が共有できたものだと理解しております。

泉(健)委員 ということは、今後もさらに協議を続けていって、ここで合意点が見出されなければ、そして、先ほど大臣がおっしゃったように、まさに我々は、譲歩するつもりもないし、譲歩もしてこなかったわけですね。数カ月間頑張ってきたわけです。まさに当事者の皆さん、一生懸命国益のために頑張られてきたと思う。

 そうしますと、我々の到達目標としては、当然、アメリカの方にも全頭検査を促す、あるいは、アメリカの方にも規制の強化、管理の徹底、こういったものをこれからもずっと呼びかけていき、また、それが実現されなければ輸入の再開はないということでよろしいでしょうか。

外口政府参考人 協議の中でいろいろな意見を闘わせましたけれども、米国側は、自分たちが今行っている米国のBSE措置で、米国民にとってはこれでもう安全なのだ、十分なのだという認識を持っておりました。

 しかしながら、それは我々の行っている国内措置とは大分違うわけでございます。私どもとしては、米国の措置を日本と同じようにするということまでは要求しませんけれども、米国から輸入されるものについては国内と同等の対応をしてもらわないと困る。

 例えば、BSE検査におきましても、米国は、サーベイランス目的のために行っているわけでございます。日本は、サーベイランス目的というものも含まれておりますけれども、食品安全のため、いわゆる感染牛で陽性になったものがあればフードチェーンから排除する、そういった役割がBSE検査にはあるのだ、こういう基本認識のもとでやっておりますので、今後、食品安全委員会の中で月齢の見直し等されておりますけれども、日本に入ってくるものについては国内と同等の安全性が確保されているものでなければいけない、こういう認識で協議をしてきた次第でございます。

泉(健)委員 今、例えばということで、これは恐らくワーキンググループの報告書にも書かれていることだと思うんですが、アメリカはサーベイランス目的である、日本は食の安全性というものが大切だ、ここに大きな相違点があるわけですね。

 こういった点をぜひほかにもあれば列挙していただきたいのと、ここについてはやはり我々は絶対妥協できないところだと思うんです。今おっしゃったように、確かに、アメリカの国内で消費されるものすべてについてまで、我々がそのさまざまな規制、基準について申し述べることはできないけれども、少なくとも日本に入ってくる牛肉については安全性というものを必ず問わなければならない、これは当然のことだと思うんですね。厚生労働省としても、必ずこれは言っていかなければならないと思います。

 そういった中で、私は、この日本の、アメリカの牛肉の最大の消費国でもあるわけですが、この日本の姿勢というものが、今の、もっと広く言えば国際農業市場における非常に重要な地位を占めていますし、あるいはそういったものを消費する消費者の立場からしても、世界的にも重要な地位を占めている。ぜひともここは日本がリードをして、ちゃんと訴えて、譲歩をせずに頑張っていくべきところだというふうに思っております。

 その点について、先ほどの列挙の件も含めて、改めて決意を、これは決意の部分はもし大臣、よろしければお願いしたいと思います。

外口政府参考人 先ほどBSE検査についての考え方を申し上げましたけれども、同じように絶対譲れないものとして、SRMの除去というのがあります。アメリカ側は、自分たちの国のBSEの浸潤度が、我々が想像しているより彼らは少ないと考えております。そういったこともありまして、特定危険部位の除去が必要な月齢について、我々は全月齢から除去していますけれども、向こうは基本的に三十カ月以上の除去で十分だ、そういう認識であります。ここのところは日本の全月齢というのに合わせてもらわなきゃ困る、これも強く主張して、日本の主張というものは向こうに受けとめられたものと理解しております。

 それから、決意でございますけれども、私の決意、当然でございますけれども、去年つくりました食品安全基本法の基本理念というのが第三条にございます。「食品の安全性の確保は、このために必要な措置が国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講じられることにより、行われなければならない。」これが政府としての基本認識であります。私どもは、これを守って協議に臨みたいと考えております。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

泉(健)委員 ここはちょっと通告をしていない部分なので、ただ、当事者であってお答えいただければと思うんですが、この共同記者会見の発表内容について、Fの「貿易の攪乱の防止」というところがあると思います。これについてなんですけれども、これは今後、例えば日本がアメリカの牛肉を一度輸入停止にしたときの状況のようなBSEの発生の仕方があった場合には、あのときは食品衛生法の九条二項の方で輸入停止ということをしたわけですね。

 しかし、このFという項目を見ると、「貿易の攪乱の防止」ということで、今後追加的なBSEの事例が報告をされても、科学的な根拠がなければ輸入停止や牛肉貿易パターンの攪乱という結果に陥ることはないということが書いてありますが、例えば、前回のような状況がもう一回起こった場合、これは輸入停止にはならないということでよろしいんでしょうか。

外口政府参考人 日米BSE協議の共同記者発表文の中に、御指摘の「貿易の攪乱の防止」という項目がございます。ここでは、「少数の追加的な発生が確認されても、科学的根拠がなければ、輸入停止にはつながらない。」ということでございます。

 これの意味でございますけれども、アメリカはカナダから輸入された一頭というのが公式見解でありますけれども、私どもは、もっといるだろうというような推測をしているわけでございます。実際にそれが数頭出たとしても、それは我々の予想の範囲内である。それから日本の方も、OIEの基準でいえば、最小リスク国と中リスク国の中間ぐらいのところにあって、日本は全頭検査をやっているから、完全にサーベイランスできているわけでございます。そこでまた数頭出てきたとしても、全体の状況はそれほど変わらぬだろう。

 だから、そういうことであって輸入停止がまたもう一回かかるとかそういうことにはならないという意味でございまして、科学的根拠があるような知見が新たに出てきたときは、それは全く別の話でございます。そういう意味でございます。

泉(健)委員 大変時間もないものですから、また次に移らせていただきたいと思います。

 先ほどから言っていますが、厚生労働省の方としてはそういった姿勢が明確であるというお話はよくわかりました。これからもその姿勢でやっていただきたいと思うわけですが、これは、実際の交渉全体、政府全体となったときに、そこが本当に守られているのかどうかということを、我々はやはり疑問あるいは不安に感じているわけなんです。

 これは外務省、もし佐々江経済局長、お答えいただければと思うわけですが、国内において、厚生労働省の今言ったような見解について、あるいは外務省として、ここはどうも国内の中で微妙にニュアンスが違うんじゃないか、アメリカに伝える前には少し整理をしておかなければならない、そういったふうに感じた項目はございますか。

佐々江政府参考人 お答えいたします。

 ただいま厚生大臣、それから外口部長が今回の協議につきましていろいろな論点、角度からお話をされましたが、私は、すべての見解について同意でございます。

 我々は、この協議に臨むに当たりまして、何よりも消費者の安全、安心が重要であるということでございます。そして、科学的知見に基づかなければいけないということ、そうした一貫した方針でやっておりますし、それから、すべてのこのアメリカとの協議というものは、適切な国内上の手続に沿わなければいけない。他方からいえば、国内の手続で承認されない限りこれは実際の貿易の再開に至らないということにつきましても、アメリカ側にしっかりと説明をして、向こうも納得をしているということでございます。

 そういう意味におきまして、外務省が単にアメリカとの関係において間に入っているというようなことではなくて、この問題は、やはり全省庁一丸となって国民の安全、安心を守る、そういう基本的な方針で臨んでいるということでございます。

泉(健)委員 私が言う前から、まさに今外務省が言われていることを御自身から言われたようでして、恐らく、いろいろな委員会で今同じような話が出ているのではないのかなと思うわけですね。

 今まさにおっしゃったようなところが、どうも外務省に見受けられるのではないか。我々はそれは指摘せざるを得ないわけですね、なぜこの時期に急にと。例えば、町村大臣の会見でいえば、七日の段階では、日本の国内の消費者の理解が必要だということを会見で述べているわけですね。にもかかわらず、この二十三日の合意のときには、一切そういった消費者の立場に立ったことというのが盛り込まれていないわけですね。

 なぜなんだろうか、我々は不思議でしようがない。ここは、やはり指摘されているように、大統領選、まさに本日ですけれども、こういった形でいろいろな日米両政府の、あるいはブッシュさんと小泉さんとの何らか不透明なやり方があるんじゃないのかなと。恐らく、そういうことで厚生労働省や農水省、困っていると思いますよ。食品安全委員会も困っていると思いますよ。答申が出る前にもう交渉で何だか方針がほとんど決まってしまっている、何のための諮問と答申なんだと、もうやる気をなくしてしまっているんです、食品安全委員会は。それが今の状況なんです。

 佐々江さんにもう一度お伺いしたいと思うんですが、ペン次官が発言をされた内容があったかと思います。それについて大使館が抗議をしました。数週間で日本への牛肉の輸入再開はないということを、改めてこちら側が抗議をしたと思うんですが、それに対して、相手さんからは、例えば十月二十九日、米政府関係者は記者団に対して、まだ日米両国が取り組むべき宿題があるというふうに語ったというふうに書いてあります。以前、別な委員会で、答弁の中で佐々江さんは、何とかこの是正を求めていきたいというふうにおっしゃられていたと思うんですが、この是正というのは、この今回のアメリカ政府関係者の発言ということで解釈をしてよろしいんでしょうか。

佐々江政府参考人 実は、このアメリカ政府の当局者がこの協議の後に記者会見でなされた発言、あるいはその他の機会に行っているものの中に不適切なものがある、我々としてはなぜそのようなことを言っているのかわからない面がある。特に、今後数週間に貿易の再開があり得るといったような発言について、これは非常に不適切であるし、実際上そういうことを協議の中で一致したこともありませんし、また、それを了解したこともないし、アメリカ側自身も、この協議の中で日本の国内の手続は相当時間がかかるということについて聞いていたものですから、なぜそのようなことになったのか、率直に言って、よくわからなかったわけでございます。

 そういうことで、これは先週の農水委員会でもこの御議論がありましたので、この点につきまして相手側に真意も確認してみるということで、実は在アメリカの大使館を通じて先方にコンタクトをしておったわけでございます。先方は海外出張中でなかなかワシントンに戻っておらなかったわけでございますが、昨日に至りまして、先方が帰ってきたということで連絡がついたので、この点についての先方、特にペン農務次官の認識を確認したということでございます。

 それによりますと、特に、数週間云々、これは英語で言いますとア・マター・オブ・ウイークスでございますけれども、これについて、ペン次官によりますと、牛肉貿易の早期再開に対する期待を込めて用いた、専門家等の協議を経た上で日米双方で必要な国内手続があって、そのために一定の時間を要することは日米協議において日本側からも説明を受けており、当然理解している、いずれにしても、米側としては、国内手続を進めて、これは日米双方でございますが、早期の貿易再開を強く期待していることを理解してほしいといったような回答があったということでございます。

泉(健)委員 その回答で今回の件は一件落着ということで今考えられていますか。

佐々江政府参考人 私どもとしては、ペン次官としては、ただいまあったような回答で、実際上、これを是正したというふうに受けとめております。

泉(健)委員 そこは、今後もやはり政治絡みでいろいろな発言があると思いますが、必ず注意をして、こういった発言が種々あれば、日本の政府としてしっかりと対応していただきたいというふうに思います。

 ほかにも扱いたい問題がありますので、最後の問題に移りたいと思いますが、国内の全頭検査についてお伺いをしたいと思います。

 政府は、アメリカとの協議においては、二十カ月以下というのはどのみち反応が出ないんだから、これはもう検査しない方向で輸入を認めようと。にもかかわらず、国内においては引き続き検査をするという、全くわけのわからないことをしているわけですね。何なのか、この二重基準は。しかもそれは、どうやら後ろめたさもあるのか、国がやるのではなくて自主検査へ補助金を出すという、まさに二枚舌、二重行政と言わざるを得ないことをやっているわけです。

 厚生労働省からこの検査の補助金が出るという話ですが、これはどんな名目で出されるんでしょうか。

外口政府参考人 現在、食品安全委員会に諮問しております月齢の見直しの件についてですけれども、この件につきましてはいろいろな御意見をいただきました。(泉(健)委員「名目だけでいいです」と呼ぶ)名目ですか。名目は、経過措置でございます。

泉(健)委員 いや、その経過措置なんですね、問題はやはり。何の経過措置で、そしてまた、どれぐらい本当に必要だということでの経過措置なのかということになると思うんです。私も父が牧場関係の仕事をしているものですから、そこら辺は大変よくよく実情を知っているつもりなんですけれども、三年間というのは、こんなに必要な理由というのは全くないのではないのかなというふうに思います。

 ただ、我々としては、何も全頭検査を全部なくしてしまえということじゃないんですね。私たちとしては、国民の安心のために、これが第一点です。そして大事なのは、今後の研究のためにも、やはりこういった検査というものは当面継続をすべきでないかというふうに思うんですね。変に市町村の自主的な、補助金を渡した事業とするのではなくして、ちゃんと国として責任を持って研究のためにこの検査を行う、あるいは国民の安心のためには当面行うということをやはりするべきだというふうに思っているわけなんです。

 そういう中で、それがもしできないということであれば、今のこの、日本の牛肉が安全なのかどうなのか、あるいはアメリカの牛肉が安全なのかどうなのか、はっきりしない状況ですので、例えば大臣には安全宣言というものを、もうどうせ二十カ月以下の牛については現段階では出ないんだから、では安全宣言を出して我々も一緒に食べますという、あるいはまた官邸で牛肉を食べていただかなきゃならないかもしれない。そういうおつもりはございますでしょうか。

尾辻国務大臣 最終的には食品安全委員会がどういう答えを出してくるかでございますが、私どもも諮問をいたしたところでありますから、食品安全委員会が科学的に安全であるというお墨つきを与えてくれたならば、それは当然、私としては、国民の皆さんに責任を持って安全でありますということを申し上げようと思いますし、先ほどつい余計なことを言いましたけれども、それはもう私自身、先頭を切って牛肉をちゃんと食べる用意はございます。

泉(健)委員 もうこれで最後にしたいと思いますが、もし食品安全委員会が安全と明確に言ってしまったら、自主検査なんて要らないわけですよ、食品安全委員会が安全だと言っているわけですから。あるいは反応が出ないと明確に言ったら、こういう検査は要らないわけですから、やはり、この検査が何のためなのかということを、きょうは本当に時間がなくて残念なんですが、これから我々は引き続き追及をしていきたいと思います。

 また、これは非常に消費者に対して混乱を、あるいは生産者に対しても混乱を及ぼすことだということで、我々は非常に怒りを覚えております。

 農水省の方にもきょうお越しいただいておりましたが、残念ながら時間がございません。改めて、また今後この問題についてしっかりと追及をしていくということの決意を述べて、本日の質問は終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

鴨下委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時四十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時九分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山井和則君。

山井委員 山井和則です。

 今までから五年間、私、厚生労働委員会にずっと所属してまいりまして、これからも当然、尾辻大臣のおられる間はずっと厚生労働委員会に所属して、またいろいろ質問させてもらいます。またよろしくお願いいたします。

 きょうは、冒頭まず、先日の新潟地裁の学生無年金障害者訴訟について要望をしたいと思います。

 御存じのように、この問題はずっと放置されてきた問題であります。それで、今回も東京地裁と同様に違憲判決が出まして、一九八五年の国民年金法改正で、二十以上の学生を任意加入のままとし、学生の受ける不利益を放置したことは著しく不合理な差別であると、これは憲法十四条に違反するとまで、そういう違憲判決が出ているわけであります。

 通常国会でもこの議論は大きな議論になりましたが、何としても、もう控訴はこの際しっかりとやめてほしい、そういうことをまず最初に強く要望したいと思います。大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 十月二十八日、新潟地裁におきまして、学生が国民年金制度上任意加入の対象でございました時期、すなわち平成三年四月一日以前におきまして任意加入しなかった方が、当時学生さんでございましたが、障害を負われたことについて障害基礎年金の不支給処分の取り消し及び国家賠償を求めた事件に関し、判決がございました。

 判決では、障害基礎年金を支給しなかった処分の取り消し請求に関しましては請求が棄却されましたが、国家賠償請求に関しては、学生を任意加入とし強制加入としなかったことについての立法作為または立法不作為を理由に、国家賠償法上の責任を認め、国に対し、原告一人につき七百万円の賠償を命じられたところでございます。

 判決の内容につきましてはさらに精査する必要がございますが、今後の対応につきましては、引き続き関係機関と十分協議の上、検討してまいりたいと存じております。

山井委員 長年、本当に苦しみ続けてこられたわけでありまして、この問題、まさに今、この臨時国会でも救済法案を成立させようという時期でありますから、ぜひとも大臣としては、控訴しないという判断をしていただきたいと思います。

 また、この点に関して、きょうも私、無年金障害者の議連で、河野議長に、この臨時国会での救済法案の審議というものの要望もしてまいりました。民主党としても案を出しておりますので、ぜひともその形で法案を成立させて、一日も早くこの問題の救済、けじめをつけていただきたいと思います。

 もっとお願いをしたいんですが、限られた二十五分間ですので、次に移らせていただきます。

 ことし、来年というのは、日本の介護保険そして障害者福祉にとって非常に重要な転換期になると思っております。きょうも午前中から、公明党の議員さん、また我が党の中根議員からも、障害者の支援費について質問と要望がありました。

 私、資料をきょう配らせていただいたんですけれども、ここにもありますように、昨年も百億不足をした。その中で、今年度こそは大丈夫でしょうねといって、今年度は大丈夫だということでやったら、またことしも二百五十億円も不足した。

 先ほど、補正予算も含めて全力でこの予算確保に取り組むという答弁をいただきましたので、改めて質問はいたしませんが、お聞きしたいのは、来年大丈夫なんですか、これ。去年もこんなことになって、ことしもこんなことになって、毎年こんなことになっていたら、制度そのものの問題じゃないかと私は思わざるを得ないんですが、来年に関しては、こういう予算が足りなくなるということは絶対ないのか、そのことを大臣からしっかりと答弁していただきたいと思います。

尾辻国務大臣 平成十七年度概算要求におきましては、居宅サービスの利用の増加に対応すべく、十五年度の支援費居宅サービス利用状況に利用の伸びを反映させた要求をいたしておるところでございます。これによりまして、十六年度予算額を大きく上回る、前年度に比して大幅な増額要求となっておるところでございます。すなわち、今年度予算が六百二億でございますが、来年度の概算要求は二百六十九億円増の八百七十一億円の要求をいたしておるということでございます。今日の状況におきまして、これほど大きく増額要求をしておるということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 まず、私といたしましては、この要求額の確保に努めなければなりません。極めて大きく増額要求しておりますから、まず要求額の確保に努めなければなりませんが、それにとどまらず、現行制度のもとでも、安定化、効率化のために最大限の運営上の工夫や適正化を行うなど、必要なサービスを確保するため、あらゆる手だてを考えてまいりたいと考えておるところでございます。

 さらに、現在の支援費制度等につきましては、今御指摘のようなお話もございますので、私どももさまざまな問題があると考えておりまして、安定的に運営できるよう、より公平で効率的な制度にする必要があると考えております。

 例えて言いますと、ケアマネジメント制度がございません。あるいはまた支給決定の基準がないこととか、もうよく御存じのことでありますが、私どもが考えております問題点を一、二申し上げたところでございます。

 このため、障害保健福祉施策全体について、国や地方の負担のあり方を含め、抜本的に見直すため、先ほど来申し上げておりますけれども、改革のグランドデザイン案として厚生労働省の案を公表したところでございまして、この案の実現に向け最大限努力をしてまいりたい、こう考えております。

 今後、これをもとにいたしまして、障害者団体、地方自治体、サービス提供者、経済界等とさらに議論を深めまして、次期通常国会におきましては、関連法案を提出する方向で検討を進めておるところでございます。支援費制度もしっかり守っていけるように、最大限の努力をしてまいります。

山井委員 今、自民党の委員の方々からも声が出ましたが、そもそも制度に問題があるんじゃないのかと。今の尾辻大臣の答弁を聞いても、来年もできるだけのことはやるけれども、なかなかどうなるかわからないというような、そういう趣旨と受け取りました。

 では、これから本当にどうしていくのか。わかりやすく言えば、支援費という列車は走っているけれども、財源という形での線路が先っぽに見えないわけなんですよね。これをどうしていくのかというのがこれからの大きな問題だと思っております。

 そこで、これは介護保険との関連にもなってくるんですが、ここで次に尾辻大臣にお伺いしたいんですが、介護保険が導入されて四年で、サービスが急速に増加しております。これはちょっと質問通告にもないんですが、素朴な質問なのでお答えいただきたいんですが、介護保険でサービスが急増しているわけですね。ところが、それに比べて支援費制度の場合は、まだまだ障害者のサービス、ない自治体もたくさんあるわけです。お年寄りの介護サービスの場合は、多い自治体、少ない自治体はあるけれども、やっていないというところはないわけですね。ところが、支援費の場合は、まだまだやっていない自治体がたくさんある。

 このような格差というものについて、高齢者福祉の進みぐあいと障害者福祉の進みぐあいを比較して、尾辻大臣、現状をどう思われますか、率直な感想として。高齢者福祉と障害者福祉の進みぐあいの比較です。

尾辻国務大臣 支援費制度にさまざまな問題があると考えておりますとお答えいたしました、その中には、今御指摘の面も含めたつもりでございます。御指摘のような面があることは、私どもも十分認識をいたしております。

山井委員 残念ながら、高齢者福祉に比べて障害者福祉は、十年、二十年おくれている面があるのではないかと思うんですね。やはりそういう意味では、この支援費の財源をどう確保していくのかということが、財源なくしては将来像は語れないわけなんですね。

 御存じのように、支援費で、いい形でどんどんサービスの掘り起こしが行われています。これはすばらしいことだと思います。しかし、それになかなか財源がついていかないという面があるわけです。

 そこで出てきたのが、次のページになりますが、先週金曜日の社会保障審議会の介護保険部会、私も傍聴をさせていただきましたが、そこでの資料にもありますように、ちょっと手書きで加えましたが、要はここのポイントは、手書きの部分で、支援費が今後どれぐらいに膨らんでいくかということです。現状では年間七千億ぐらいなわけですね。手書きで書いてありますけれども、厚生省の試算によると、その支援費サービスの約六割を介護保険に移行させてはどうかというような、そんな一つの提案が選択肢の一つとして出ているわけです。

 この二ページ目の私の手書きのところを見てもらいますと、平成十八年から二十年、〇・四五兆円、四千五百億円、支援費から介護で賄う。これが六割ということですから、十割と見たら七千五百億円なわけですね。平成二十四年から二十六年、つまり十年後を考えると、介護分だけで一兆円。つまり、これはもとの支援費がどれぐらい膨らんでいるかというと、一兆七千億円ぐらいに十年後は膨らむのではないかという、これはいろいろな前提を置いての、非常に粗い試算を厚生労働省はされているわけですね。

 そこで、この前提としては、二十あるいは三十歳ぐらいに被保険者を拡大するという資料も一緒に、この介護保険部会で提案されているわけですが、そこで、次の新聞記事を見てください。こういう議論の中で出てくるのは、こういうふうに被保険者を拡大することが、若い世代の理解、納得、あるいは国民全体の理解を得られるかということでありまして、この見出しにありますように、未納が増加するのではないかという議論も出てきているわけですね。

 このことについて、率直に、大臣、いかが思われますでしょうか。被保険者の年齢の引き下げということに対して理解が得られるかどうか。いかがですか。

尾辻国務大臣 お示しいただきました数字は、確かに、私どもも粗い数字でお出しはしておりますけれども、おっしゃるとおりでございます。今、事業費ベースで七千五百億のものでございますが、これの約六割が四千五百億でございますから、これがそのまま真っすぐ伸びていきますと、平成二十六年度には、今四千五百億あるものが一兆円になります。この一兆円が六割だったら全体は幾らになるのと計算すれば、おっしゃるとおりの数字でありまして、それはもうそのとおりでございます。

 去る二十九日に介護保険部会でお示しした厚生労働省の試算では、障害保健福祉サービスの約六割が介護サービスに該当するなどさまざまな仮定を置き、介護保険制度の受給者の範囲をゼロ歳以上まで拡大したとすると、平成二十六年度における介護保険の給付費が一兆円増加するというのは、今申し上げたとおりでございます。この試算をもとにして委員が推計されたところによりますと、介護サービスを含む障害保健福祉サービス全体については一兆数千億増加するとのことでございます。これも今申し上げたとおりでございます。

 現在の財政事情が続きますと、必要となる予算の確保は今後とも厳しい状況が続くことが考えられまして、いずれにいたしましても、今後私どもは、この問題につきまして、必要となる予算の確保に最大限の努力をしなきゃいけないと考えておりまして、まずそのことを申し上げたところでございます。

 そこで、今度は、介護保険の被保険者の年齢を引き下げた場合にどうなるかということの御質問でございます。

 介護保険制度の被保険者、受給者の対象年齢を引き下げるかについては、制度創設当初からの課題でございまして、この問題につきましては、介護保険の被保険者の範囲を拡大し、制度の支え手を拡大するということ、これはもうそのとおりでございますが、あるいはまた、介護保険者の受給者の範囲を拡大し、高齢者以外についても年齢や要介護となった原因のいかんにかかわらず対象としていくかどうかという問題がございまして、この問題につきましては、御指摘のとおり、若年者に新たに保険料負担をしていただく必要があり、理解を得られるかどうかという議論がございます。そのとおりでございます。

 また一方、若年者も交通事故等で要介護になった場合の給付が受けられること、先ほどの裁判の話もございますが、そうしたこと、あるいは、現在年齢や要介護の原因の制約があるために給付が受けられない方が救済されること、支え手の増加により介護保険制度の持続可能性が高まること、あるいは、障害者施策においても、その一部が介護保険制度の対象となることにより、財政面での安定化や施策の一層の推進を図ることができることなどのいい面もございますので、総合的な判断が必要であると今私どもは考えております。

 そのために、現在、社会保障審議会介護保険部会において精力的な御議論をお願いしているところでございますが、若い世代も含め、国民各層の十分な理解と合意を得ながら議論を進め、年内に結論を得たいと考えております。

山井委員 今の答弁、趣旨はわかりましたが、率直に、改めてお伺いします。

 もしそういう形で被保険者を下げて幅広く負担する、つまり、ほかの言い方をすると、支援費の一部を、介護保険を活用して財源を確保するということをもししなかった場合、ちょっと仮定の質問になって恐縮ですけれども、その場合、一般税源として、国費でこれまた五千億円ぐらい、そして地方自治体負担で、都道府県二千五百億円、市町村二千五百億円ぐらい、今後十年間でどんどんふやしていかないとだめなわけですよね。

 かつ、今でさえ、支援費の支給決定者の数では八倍ぐらい市町村によって格差があるんですよ。これを平均的な形で公平にバランスをとりながら一般財源でやっていくことというのは、予算を確保して、かつ全国的に非常に平準化していくということは可能なんでしょうか。改めてお伺いします。

尾辻国務大臣 このところお答えいたしておりますように、私どもは障害者福祉のグランドデザイン案をお示しいたしました。とにかく障害者福祉全体を見直そう、こういうことであります。

 そして、支援費制度は、よく誤解がありますのは、何か、そうした中で取り込まれてしまうんじゃないかというような言い方をされるのでありますけれども、決して私どもは、そういうふうに埋没させるというつもりはございません。きっちりそれはそれで、障害者福祉の中でやるべきことはやっていかなきゃならない。介護保険の中なんかに埋没するというようなことを考えておるわけではございません。

 私が申し上げているのは、よく介護保険の見直しの中で埋没するんじゃないかという御議論があるものですから、今あえて申し上げているところでありますけれども、決してそういうことを考えておるわけではないということを改めて申し上げて、そこはしっかりやりたいと思うのですが、今御指摘のような財源の話、ではどうするんだというようなこともございます。

 また一方、介護保険の給付をどこまで下げるか、これは、保険者をどこまで下げるかということと同時に、給付をどこまで下げるかという御議論も今いただいておりまして、これはいずれ結論を出さなきゃいけなくなります。

 そうしたこと全体の絡みの中で答えを出さざるを得ないと思いますので、本当に必死になって知恵を絞って、今お話しのような御懸念は私どもも持っておる懸念でございますから、何とか答えを見出していきたいと思っておるところでございます。

山井委員 もっと議論したいことはあるんですが、引き続きまた次の機会にやるとしまして、一つ申し上げておきたいのは、障害者の方々が自己決定によって住みなれた地域で暮らし、働き、また教育を受けていける、そういう社会、ノーマライゼーション社会をつくっていくためには、やはり財源をどう確保するかというのが一番重要な課題で、これがここ一年間ぐらいの最大のテーマであると思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 それでは次に、救急救命士のことに移りたいと思います。

 時間がありませんので急ぎますが、四ページ目の資料です。順番に言いますと、尾辻大臣も御存じのように、これは二年前、救急救命士の業務拡大が大きな問題として国会で上がりました。それで、この資料の四ページにありますように、三点セット、除細動、気管内挿管、薬剤投与、この中で、きょうは気管内挿管について少しだけ取り上げたいと思うんです。

 この資料にもありますように、ドクターカーの救命率が高い理由は早期に気管内挿管ができることということが、消防庁の資料でも平成十四年に出ております。また、消防庁と厚生労働省の合同検討会でも、「気管挿管でなければ気道確保が困難な事例も一部存在する」ということが出ております。

 次の五ページを見ていただきますと、例えば宮城県のホームページを見ましても、「気管挿管でないと気道を確保できず、患者さんの命を救えない場合もあります。」ということで、この問題に対しての気管内挿管の病院実習の協力を呼びかけております。

 にもかかわらず、本当は話したいことはいっぱいあるんですが、はしょって言いますと、ことしの七月から気管内挿管の病院実習が解禁されたにもかかわらず、この資料を見ますと、八月末の段階で、十の都道府県が、まだ研修を実施する予定すらないということを言っているんですね。とんでもないことだと思います。人の命がかかっている問題。

 次のページを見ていただければと思いますが、そこにペケと書いてありますように、名前を読み上げますと、私が聞いた最新の情報でも、岩手、群馬、滋賀、岡山、香川、大分、宮崎、沖縄。こういう、人の命を救うことにつながると言われている気管挿管の講習、研修ということをやる予定すら、七月からやってくださいよとなっているにもかかわらず、予定すらまだ立てていない。これはどういうことなのか。

 このことについて、大臣に答弁をお願いしたいと思います。

尾辻国務大臣 救急救命のためには、病院等への搬送までの間、救急の現場において、救急救命士が気道の確保、心拍の回復その他の処置を行い、病状の悪化または生命の危険を回避することが極めて重要でございます。

 したがいまして、厚生労働省としても、すべての都道府県で早急に病院実習が開始され、救急搬送の現場に勤務する救急救命士が優先して病院実習が受けられることを通して、救急の現場において適切な救急救命措置が実施されるよう、関係省庁と協力して努力してまいりたいと存じております。とにかく急いで、全都道府県でそうしたことが行われるように努力をしてまいる所存でございます。

山井委員 これは私は前々から必死になって取り組んでいるんですけれども、やはり人の命がかかっている問題なんですね。それで、早急にとはおっしゃいますが、これは七月から解禁されている問題なんですよね。これは今すぐしろと言っているんじゃないですよ、予定すら立っていないのは怠慢じゃないかという当たり前の指摘ですよね。これで救えるはずの命が救えなかったらどうするのか。

 実際、全国の救急救命士の方から話を聞いたら、気管内挿管以外では気道確保ができなくて死んでしまったというケースが、それをやったから救えたのかどうかはわかりませんけれども、そういうケースが出てきているわけですよ。早急にとおっしゃいますけれども、あと八つ、これはやはり、七月からやるということは二年前から決まっていたわけで、それがなぜ今になっても予定すら出てこないのか。早急とおっしゃいますが、いつまでに予定を立てさせるのか、それぐらいのことはここで約束をしていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 まず申し上げますけれども、本年九月、気管挿管に係る取り組み状況につきまして、総務省消防庁及び厚生労働省で調査した結果、八県について、今お話しのとおりでございます、病院実習の開始が未定であり、現在、病院実習の実施に向け準備を始めているところと聞いております。また、この調査結果では、病院実習におきまして指導の中心的役割を果たす麻酔科医の確保が困難であることや、病院実習に協力していただく患者さんの理解が得られにくい等の問題も挙げられておるところでございます。

 しかし、議員の御指摘の到達目標について申し上げますと、今後とも、講習及び病院実習につきまして体制整備の促進に努めますとともに、必要に応じて再度実態調査を行うことにより、病院実習に関する都道府県の進捗状況及び問題点等を把握し、救急搬送の現場に勤務するすべての救急救命士が、五ないし六年以内に気管挿管を実施できるよう、関係省庁と対応を検討してまいりたいと考えております。五ないし六年という時間をいただきたいと存じます。

山井委員 すべての救急救命士、一万四千人おられると言われていますが、ぜひとも五、六年以内にすべての方ができるようにしていただきたい、そして、そのためには、第一歩として、この八つのまだやっていない都道府県、早急にやるようにしていただきたいと思います。

 それで、最後に、ちょっと違う質問なんですが、きょう中根議員からも質問がありましたが、私、ここ数日間、社会保険庁のやりとりを聞いていて腑に落ちないのが、例の社会保険事務局と事務センターの家賃の問題です。これは大臣もきょう聞いていられて、不思議に思われたかと思います。

 この問題、守秘義務がかかっているから家賃を公開できないということなんですけれども、なぜ、社会保険事務所や社会保険事務センターの家賃に守秘義務をかけているんですか。これは常識から考えておかしいと思われませんか。きのうの晩もらいましたが、守秘義務がかかっているせいで、家賃を公開していない事務所が多いんですよ。大臣、常識から考えてください。なぜこれは守秘義務をかけているんですか。やはりそこも、国民年金保険料が財源なわけですから、早急にオープンにすべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 事務所として借りるときに、家主さんとの間の契約でございまして、契約のときにどうしてそういう事項を入れたのかどうかというのは、恐らく家主さんの意向があったんだろうとは思いますけれども、しかし、それは、皆さんの保険料としてお納めいただいたものを使う立場からしましていかがかとも思いますから、今申し上げておりますように、家主さんの方とよく相談をして、これはできるだけ早くお出ししたい。ただ、家主さんがどうしてもとおっしゃれば、これまた問題があるかもしれませんが、その辺はよく相談しながらやっていきたい、とにかく出せるものはすべてオープンにしたい、こういうふうに考えております。

山井委員 これは当たり前の話なんですよね。皆さんも考えてみてもらったら、社会保険事務所を借りている、その家賃は守秘義務をかけて家賃が幾らか公開しない、こんなばかなことはないわけですよ。

 先ほど午前中、中根議員からも来週火曜日にという話がありましたが、これも来週火曜日までに、今出ていない分、ぜひとも公開をしてほしいと思います。このことは、委員長、理事会にも提出をしていただきたいと思います。

 来週火曜までで、大臣、お願いします。いかがですか。

尾辻国務大臣 今私が申し上げられますことは、最大限の努力をいたしますということでございます。本当に最大限の努力をいたします。

山井委員 私が聞いているところでは、社会保険事務所の方が守秘義務が入った契約書を持ってきた、貸す方は何にもそんなことは言っていない、そういう声も出ているわけですよね。なぜ隠すんですか、そういうのを。ですから、そういう意味では、公開しないから逆に疑惑が持たれるわけですから、ぜひともすべて公開していただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、小林千代美君。

小林(千)委員 民主党の小林千代美です。

 まず初めに、イラク人質事件につきまして、大臣に御所見をお伺いしたいと思います。

 日曜日に、イラクで人質とされていた香田証生さんが、殺害をされた遺体が香田さんのものだったということが判明をいたしまして、本当に私たちも大変、最悪の結果になってしまったことをとても残念に思いますし、香田さんの御冥福を心からお祈りをしたいと思いますし、御家族の皆さんにはお悔やみを申し上げたいと思います。

 しかしながら、この事件、特に香田さんの安否情報が、一時期とても錯綜いたしました。この件につきまして、特に大臣に御所見を伺いたいと思います。

 情報が錯綜したのは、十月三十日の土曜日でした。あの土曜日の未明から午前中、そして午後にかけて、さまざまな情報が入り乱れたわけでございましたけれども、政府の要人はこのような発言をしております。二、三、御紹介をさせていただきます。

 例えば、細田官房長官、香田さんの遺体発見に近い情報が入っている、これは記者会見で表明をされました。そして、高島外務報道官、この方は、身長、体重、後頭部の特徴が似ており、遺体が香田さんである可能性があると米軍が判断をした、こういうふうにかなり詳しく述べているわけなんですよね。そして、自民党の久間総務会長ですか、外務省と危機管理室から遺体の特徴から本人に間違いないだろうとの連絡があった、このような発言がこの三十日の午前中、言われております。

 この情報を聞くたびに、私たちは一喜一憂をしていたわけなんですよ。結果的にこの午前中の情報というものは間違っていたわけなんですけれども、つまり、政府の皆さんは、この情報を十分に確認することなく、このような発言をされていたわけでございます。

 しかし、こういった情報、聞く方にとってみたら、それこそ御家族の皆さんにとってみたら、息子が殺されたのかなんとか、こういうところですよ。地獄に落ちる思いですよ。また、それが違っていた。こんな中で、こういった報道、政府の要人あるいは与党の幹部の方が、十分な事実確認も情報分析もしないうちにこういった発言をされている。これに対して、私は、この件で政府は、こういった皆さんのお話を聞いている人々の信頼を失墜したのではないかと思うところなんですけれども、大臣、率直に、官僚のメンバーのお一人として、この政府の発言に対しましてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 このたび、香田証生さんがテロの犠牲になられたことにつきましては、私からも衷心より哀悼の意を表しますとともに、御家族に心からお悔やみを申し上げます。

 大変残念な結果になりました。この間、政府といたしましては、本事件発生以来、首相官邸、外務省を中心として、情報収集、事実関係の確認のために、あらゆる努力を尽くしてきたものと考えております。

 いずれにいたしましても、政府の情報収集能力、危機管理能力を高めることは極めて重要な問題だと考えております。

小林(千)委員 結果的に、その情報収集能力は十分果たされていなかったわけでございますし、確かに、これは、どこかのスポーツ紙じゃないんですから、遺体、香田さんかとか、そういうちっちゃな「か」がつくような発言をされては困るわけなんですよ、政府の方が。それを実際に国民は聞くわけですから。

 そういったあいまいな判断をしてもらっては困るというふうに申し上げているんですけれども、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 こういう事態になりましたときに、関係の者が慎重に発言しなきゃならないということはおっしゃるとおりだと思います。そして、まず、その基本になる情報収集能力、危機管理能力、これを高めないとどうしようもないわけでございまして、これが今後の日本のまた大きな課題の一つであろうとは思っております。

小林(千)委員 政府の御発言が、例えば二転三転することによって、そのうちにオオカミ少年のように言われないことを私も願っております。

 次の質問に入りたいと思います。

 新潟中越地震のその後の対策について質問をしたいと思います。

 この間、さまざまな委員のメンバーの皆さん方から、被災者に対しての例えば健康支援ですとかメンタルヘルスケア、こういったことはさまざまされてきたこともありますし、実際にそういったことも現地で取り組んでいらっしゃることと思います。

 それにプラスして、私は、実際にあそこの場所で災害復旧に当たっている職員の皆さん、自治体の職員の方であったり、警察の方であったり、あるいは消防の職員の方であったり、こういった方々は、多分、二十四時間寝ないでの復旧、そんなことに当たっていらっしゃると思うんです。しかも、そういった方々は、多分、地元の方々が、職員にしてみてもほとんどの方がそうだと思いますので、本人が被災者なわけですよね。本人が被災者であったり、あるいは自分の身近な方が災害に遭ったり、あるいは亡くなっているという方もいらっしゃるかもしれない。そういう中で寝ずの復旧作業に当たっていらっしゃるわけでございまして、そういった方々に対するケアというものも、もちろん十分にされなければいけないと思っております。

 本日は、参考人で消防庁からも来ていただいているわけなんですけれども、消防職員の方々に対するケアというものが実は十分ではないのではないかということが言われております。皆川優太君救出のレスキューの方のように、本当に皆さん一生懸命現場で頑張ってくれているんですけれども、消防職員の方々だって、もちろん人間ですから、そういった悲惨な現場に遭遇をしてストレスを受けるといったこともあるでしょう。

 しかし、今消防の現場の方にお話を聞きますと、現場に行ってストレスを受けた、ショックを受けた、どうも精神不安定だ、こういうことを言うと、どうもあんたは訓練が足りない、鍛錬が足りないのではないか、気合いが足りない、根性論、総理の言った精神論になってしまっていて、そういったところへのメンタルヘルスケアというものは、今ほとんどないに等しいというふうに聞いております。

 こういった職員の方々に今十分にその力を発揮してもらう体制をつくることは、私は当然必要じゃないかと思うんですけれども、こういった職員の方々に対するメンタルヘルスケアはどのようにされているのでしょうか、お願いします。

東尾政府参考人 消防職員に対するメンタルヘルスの問題でございますけれども、先生御指摘のように、かつては、そのような雰囲気の職場であったわけでございます。しかし、最近におきましては、この問題について、やはり一般の職員と同様に、災害の現場において惨事ストレスを受けて、その結果、身体や心に不調を来すおそれがあるということは客観的に認証されているところでございます。

 そこで、消防庁といたしましては、平成十五年から、このような事態に対応いたしますために、緊急時メンタルサポートチームの派遣を制度化いたしまして、既に、消防庁への要請に、現在、市町村の消防機関からその制度発足以来六件、具体的に申し上げますと、福岡、神戸、青森、大阪、別府及び郡山においてそういう事案がございましたので、派遣をいたしまして、その場合のケア等に、あるいは相談指導に当たっているところでございます。これについては、専門家の派遣で一定の効果が上がっているところでございます。

 なお、今回の中越地震につきましても、現在のところ、先ほど御指摘の救助隊など四百四十一隊、千八百七十七人の消防職員が現地に派遣されておりまして、これまで幸いながら、現在、この事案につきましては、ストレスによる深刻な心身の不調を訴える職員はいないわけでございますけれども、今後注意深くこの状況については見守ってまいりたい、このように思っております。

小林(千)委員 それは、今、被災者の方がそこにいて、体育館でたくさん寝ている方がいらっしゃって、そういう状況でなかなか職員の人は、やはり自分の仕事に燃えているというところもあるでしょうから、言いづらい環境にあると思います。

 そして、今、緊急時のときのそういったメンタルケアの今までの実績が六件ほどと言われておりました。確かに、例えば阪神・淡路大震災のときですとか、あるいは池田小学校のとき、そして歌舞伎町の災害のときでしょうか、さまざまな、そういうときにケアがされている、支援がされているそうですけれども、やはりいっときだけでなくて、その後の精神的なストレスというのは長く続くこともあります。また、地域的、限定的、スポット的にされるのではなくて、広域から、東京消防庁の人も手伝いに行っているわけですよね。

 ですので、ぜひ、復旧時じゃなくて復興時にかけても、そして広域的にこの問題に取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

東尾政府参考人 現在、平成十五年から発足いたしましたこのメンタルサポートチームでございますけれども、事案によりましては継続的に相談に乗っている事案も実はございます。しかし、先生御指摘のように、全国には多くの消防職員がおりまして、このメンタルサポートチームだけでは不十分でございますので、私どもといたしましては、各消防本部において、このようなことに当たられる専門家の養成、あるいは必要な場合には医師等の嘱託、この辺のことを今後、各消防本部に現在指導しているところでございます。

 なお、東京消防庁におきましては、先駆的な取り組みである程度の体制は整っているということでございますが、全国の消防本部ではまだまだでございますので、ただいまの御指摘の点を踏まえましてさらに指導してまいりたい、このように思います。

小林(千)委員 ぜひ、取り組みをよろしくお願い申し上げます。

 次の質問に移ります。

 障害者施策について質問をいたします。

 おとといの日曜日に、民主党のNPO局では、札幌におきまして、私の地元でもあるんですけれども、「福祉のまちづくりとNPO」という集会を、企画を実施いたしました。そこの場所には、実際に障害を持った当事者の方も来ていただきましたし、また、介護の現場で働いていらっしゃる方も来ていただきました。そして、こういった取り組んでいらっしゃるNPOの方々にも御参加いただきまして、生の声を聞いてきたところでございます。

 こういった当事者の方々が、やはり支援費制度の行方について、今とても大きな不安を抱えていらっしゃいます。今、厚生労働省が脱施設、自立支援という方向に方向転換をしてきている。しかし、先ほど山井委員からもお話ありましたとおりに、財政難、財政赤字、緊縮財政ということで、結局、これは金を使うなという方向に行ってしまっているんじゃないかということを大変心配して、サービスの削減がされるのではないかということを言っていらっしゃるわけですね。

 本当に脱施設ということを提唱するならば、その施設にかわる在宅介護サービス、あるいは在宅に近い介護のサービスというものを充実しなければいけないことは当然のことだと思います。また、自立支援というふうに言うのでしたら、例えば、障害を持った方が施設から出て一人暮らしをする、そのときの生活をサポートするですとか、結婚して家庭を持つということも当然あることです、就職をする、こういったところでは、もちろん支援費制度が要らなくなるわけではありません、自立をしたからといって。

 厚生労働省、この脱施設、自立といった方向転換、どのように考えているのでしょうか。お願いします。

塩田政府参考人 今後の障害保健福祉施策を考えていく上で、障害者の方々が地域の中で自立して生活できるよう支援していくことが、政策上、非常に重要だと考えております。

 自立支援につきましては、障害のある方々が、その人の選択に基づきまして、就労を含めて、地域の中で役割を持ちながら、その人らしく生活ができるよう支援することが重要と考えております。そのための支援の仕組みを強化していくことが重要であると認識をしております。

 こういった観点から、朝から議論していただいております改革のグランドデザインを提案させていただいているところでありまして、その中では、障害者のニーズを踏まえて、市町村、都道府県、国の各段階で必要となるサービスの量を明らかにすることでありますとか、サービス提供体制の計画的な整備を行っていくための計画の策定など、具体的な内容を提案しているところでございます。

 また、障害者の方々の自己決定、自己選択の考え方に基づきまして、そのニーズや適性に応じた支援として、自立支援に関するさまざまなサービスも提案させていただいているところでございます。

 具体的な項目を幾つか申し上げますと、例えば、就労支援につきましては、雇用施策と福祉施策を連携させまして、障害者本人が職業生活を設計、選択できる支援体制を強化することでありますとか、入所施設で暮らしている障害者の方々につきまして、本人の選択により、施設を出て地域で暮らせるような生活訓練などを充実すること、あるいは、障害者の住まいの支援につきまして、共同で生活するグループホームのほか、単身でのアパートなどで暮らせる体制整備、あるいは、重度の障害者が介護を受けながら暮らすケアホームなど、本人の状況を踏まえて多様な支援体制を整えるといった提案をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、障害を持つ方々が地域で普通に暮らせるということがこれからの政策の重点課題であると思っておりますし、そのため、そういった観点から施策の充実を図っていきたいと考えております。

小林(千)委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 次の質問に入ります。

 障害者の方々の就労支援について、お話を伺いたいと思います。

 先ほどの札幌での集会でそれも聞いてきた話なんですけれども、今さまざまな、緊急雇用対策など、障害者の就労支援ということに取り組んでいらっしゃるようなんですけれども、なかなかやはりそれが実際の就労、雇用というところに結びついてきていないという現実があるわけなんですね。

 例えば、小規模作業所にいらっしゃる障害者の皆さんが就労研修を受ける。やっと私企業に、民間企業に就職をすることができた。ところが、その就職をした受け入れ企業の問題でもあると思うんですけれども、障害者に対する理解不足から、障害を持っている方がいじめに遭う、あるいは差別を受ける、孤立してしまうということが現実としてあるわけですね。

 そして、昨今の経済状況、雇用の状況、大変厳しいことから、弱者から順番に切り捨てられてリストラされている現実があるわけで、そういった方々も一番最初にリストラの目に遭ってしまっているわけで、せっかく研修を受けて就職をしながら、また、相談をするところもない、リストラされてしまうということで、離職してまた作業所に戻ってきてしまう、施設に戻ってきてしまうという現実があります。あるNPOの方、小規模作業所を三カ所やっていらっしゃる方、四十五人の障害を持っている方々がそこにいるんですけれども、そのうち十五名がリストラ組だそうです。現実はこうなんですね。

 この問題をどのように考えていらっしゃるでしょうか。こういった民間企業に対する雇用した後のアフターフォローももちろんしていかなきゃいけないでしょうし、実際の雇用の継続、就労支援というものをどのようにやっていらっしゃいますか。

金子政府参考人 障害者の就労支援についてのお尋ねでございますけれども、私ども、障害者の方、一人でも多くの方が意欲と能力に応じて働くことができるようにするということが、障害者の自立、社会参加のために極めて重要な課題だというふうに考えております。

 こうしたことで、御案内のことかと思いますけれども、障害者の雇用率制度、あるいはこれに伴います納付金制度といったものを基本にして障害者の雇用対策を推進しているわけでございますが、これにあわせまして、今御指摘のありました職場定着の問題、いろいろな相談に応ずる機能といったようなものを整備するという観点から、ジョブコーチといった就労支援者を配置する事業、あるいは就業・生活支援センターといったようなものを設置して、雇用就労対策を講じているところでございます。

 また、先ほどの話の中で出てまいりましたけれども、改革のグランドデザイン案でも、企業での就労へ円滑に移行することを目的とした福祉施設の類型を新たに設けるとか、そういったようなことで御提案をさせていただいているわけですが、具体的には、ただいま御指摘ございましたように、やはり、障害者の方が企業で一度就職をして、そこで、いろいろな理由でまたもとへ戻ってしまったというようなときにも再びチャレンジすることができるような、そういう仕組みを構築していくことが必要だろうと考えているところでございます。

 具体的には、個々の障害者の方々ごとに就労支援のための計画をオーダーメードで作成申し上げて、これに基づきまして、ハローワークほか関係機関が連携して、一貫したきめ細かな就労支援を実施していくとか、あるいは、これも御指摘がございましたが、やはり職場への定着というのが非常に大事でございますので、これは、ハローワーク、あるいは先ほど申し上げましたようなジョブコーチといったようなものを活用いたしまして、雇用が継続するように、そういったことで企業にも御支援をしていきたいと思っておりますし、働いている方にも御支援をしていくというようなことで、こうしたことを通じまして、障害者の方が福祉施設に戻りましても再び再挑戦ができるような仕組みを目指して、これから就労支援に取り組んでまいりたい、このように考えております。

小林(千)委員 質問通告していないところで申しわけないんですけれども、実は私、きのう、質問取りをお願いしましたら、これだけの二十五分間の短い時間の質問、わずか三項目ぐらいなんですけれども、厚労省の方が部屋に十二、三名来ていただいたんですよね。それで、例えばこういった障害者の方の就労支援について質問をしたい、こういうふうに申し上げましたら、小規模作業所での就労支援については、いやいや、私の課のところです、就職をしたら、いやいや、私の課のところですというふうになって、担当部局が分かれているというんですか、そういうふうになっているんですよ。

 今の金子高齢・障害者雇用対策部長さんのところもどういうふうになっているのかよくわからないんですけれども、まさか、よく言われる縦割り行政で、ここのところまではうちが面倒を見ますけれども、ここで一たん切れて、ここからはこっちですよ、そこがうまく通じていないということはないですよね。お願いします。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者の雇用、就労という問題につきましては、障害者の福祉面からの対応と、それから雇用対策としての側面もございまして、セクションとしては、障害保健福祉部と私どもの高齢・障害者雇用対策部と二つに割れているわけでございますが、諸施策につきましては、両部のみならず、省一丸となって取り組んでおりますので、そういったことで、そごが生じないようにきちんと対応してまいりたいと思っております。

小林(千)委員 縦割りと言われないように、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 最後の質問になります。

 今言われております支援費制度と介護保険の統合について、これは、当事者の方々は、どう判断していいかわからないというふうに今言っているんですよね。今でさえ自治体間格差がとても大きい。そしてまた新聞にも、先ほどありましたように、去年の倍ぐらいの予算不足ということが言われそうだ。こういった状況で介護保険と統合されたら自分の生活が一体どうなるのか、これが全く想像できない。今、当事者の方々はこういうふうに思っているところが現実だと思います。

 社会保障審議会など、こういったところに当事者の声というのは、当事者の方々がちゃんと参画しているのか、そして、これから先、この問題はどのような方向性を描いていくのか、ぜひ今後の取り組みをお教えいただきたいと思います。

塩田政府参考人 社会保障審議会の障害者部会におきましては、身体、知的、精神のそれぞれの障害分野の団体の方六名、学識経験のある障害者の方二名に委員となっていただいておりまして、そういう方々の御意見も踏まえましてグランドデザイン案をまとめたところでございます。

 今後とも、そういった方々の意見を聞きながら議論をしていきたいと考えておりますが、公式の場であります審議会以外にも、障害者のグループの方の勉強会とかシンポジウムとか、いろいろな非公式の機会を通じて、私ども、これまでもいろいろな意見交換とかはしてまいりましたし、そういったことについては今後とも努力してまいりたいと思っております。

 いずれにしても、今後とも、障害者の生の声をよく聞いた上で、障害者の方が安心できるシステムをつくるべく努力したいと思っております。

小林(千)委員 これから実質的な審議に入っていくと思いますので、私もしっかり頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 私、十月二十七日の質問で、新潟の中越地震について取り上げまして、その中で、避難所への医師や保健師の体制を全国的な支援も要請してとるべきだ、そして、地域の巡回体制も実現するように求めました。

 きょうも、大臣は随分、最大限の努力をするというフレーズを繰り返されましたけれども、私のときも、最大限の努力をするというお話でした。こういう答弁が出たときは、私はやはり、その後やったことをきちんと私たちの側で、それこそ行政監視しなきゃいけないなと思ったんですけれども、厚労省の「中越地震による被害状況及び対応について」、連日更新しているようですが、この発表を見ますと、新たに巡回健康相談という項目が設けられて、各地に保健師の派遣を要請したり、いろいろな手だてが始まったということを私も確認しました。

 それで、私、今改めて当日の議事録を見てみましたら、大臣はきちんと、必要なことがあればその措置をとりたいとも言っていたんですね。ですから、私は、そういう点での仕事を始められたということなので、少し具体的にお尋ねしたいんです。

 各県に保健師の派遣の可否を照会して、既に六十五人の方が三十一日現在現地入りしているということなんですけれども、現状は、保健師の派遣の状況は一体どうなっているのか。それから、この巡回健康相談、これはどういう現状にあるのか、まず報告していただきたいと思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

田中政府参考人 御説明申し上げます。

 新潟県におきましては、保健師による避難所、被災者への巡回健康相談等を通じまして、地域住民の方々の健康管理を積極的に行っているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、新潟県の要請を受けまして、各都道府県等に対しまして、保健師の派遣の可否について照会を行いました。これまでに派遣が可能との連絡があった保健師数は、十一月一日の時点で百三十五人でございます。

 また、本日までに体制の整いました都道府県市から、百五名の保健師が新潟県に派遣されているところでございます。

 今後とも、現地の被災者それから避難所等の状況を踏まえつつ、健康管理に万全を期すことができますように、新潟県への支援に努めてまいりたいと思っております。

山口(富)委員 私が尋ねましたのは、その体制と同時に、中身の問題なんです。巡回健康相談という中身が実際に動き始めているのかということをお尋ねしているので、その点、お願いします。

田中政府参考人 失礼いたしました。

 保健師の主な支援の内容でございますけれども、うがいとかあるいは手洗い等の一般的な衛生的な指導、それから、エコノミークラス症候群等の予防に関する指導、さらには、ストレス、運動不足等によりますさまざまな健康上の問題の相談への対応、さらには、慢性疾患の患者さんとか、高齢者とか、障害者とか、妊産婦、乳児がおられますので、そのような方々への健康相談、あるいは一般的な避難所内の生活環境の改善、このようなことを総合的に対応させていただいているところでございます。

山口(富)委員 人命最優先で、必要な手だてを全部とっていただきたいんですが、今局長が最後に言われた、総合的に対応するという問題なんですけれども、一つの例で、エコノミー症候群の問題を挙げられました。

 私、いろいろ見ている限り、車から外に出て少し運動しなさいとか、そういう助言はあるようですけれども、現実には、足腰を伸ばせるような場所が必要ですし、特に高齢者やいろいろな病気を持っている方は、既に厚労省がやっている部分もあるんですけれども、社会福祉施設も使って、そちらに一時的に移っていただくとか、いろいろな手だてがとれると思うんです。

 今の厚労省の現地との関係で、そういう総合的なことを考えて支援を打てるようなことになっているのか。なっていなければ、そこは至急改善していただきたい。この点、お願いいたします。

小島政府参考人 ただいま先生からエコノミークラス症候群のお話がございました。やはり、トイレが少ない、寒くて行けない、それから足を伸ばせない等々の問題があるわけでございまして、これにつきましては、まずトイレの問題でございますが、水道復旧が進む中で、一部の市町村を除きまして、トイレ不足は解消しつつあると聞いております。

 しかしながら、小千谷市等におきましては、断水等によりいまだトイレが不足していることから、仮設トイレの増設に努めるとともに、必要に応じて使い捨てトイレの配付を行っているところでございます。

 この災害につきましては、各省庁連携して対策をとっておりまして、所管省としまして、経済産業省におきましては、関係業界に協力を要請いたしまして、仮設トイレ六百二棟、携帯トイレ五万セットが調達可能な状態であり、順次発送を行っているというふうに聞いております。

 また、住空間の確保につきましては、新潟県がアンケートをとった結果、避難所に満員で入れない、あるいは他人と一緒にいたくない等々の方々が多数を占められたところでございまして、こうした結果を踏まえ、応急的な対応として、自衛隊により、今、テントを千三十五張り設営を行ったところであり、利用者は増加していると聞いております。

 その他、今おっしゃいましたような、私どもの方で、社会福祉施設あるいは旅館、ホテル等に高齢者、障害者に入っていただく対策を講じているということでございます。

山口(富)委員 この問題では、実情に応じて総合的な対策を引き続き必ずとっていただきたい。

 それで、今答弁に立たれました社会・援護局長が、内閣委員会があるということで早くここを帰してくれと言われるので、私も最大限努力いたしまして、質問の順序を変えますので、御了解いただきたいと思います。

 生活保護の問題を取り上げたいんですけれども、ことしはとにかく災害が相次いでおりまして、地震、台風、昔はそこにもう少し言葉がつきましたけれども、地方は対応がなかなか大変だと思うんですね。それだけに、私は、国の側が長期的な視野に立って必要な支援を全部やっていくということが本当に大事だと思うんです。その一つが、やはり生活保護の問題だと思うんです。

 ことしの三月ですけれども、生活保護というのは暮らしの中の最後の安全網と言われるわけですが、最高裁の判決がありまして、学資保険をめぐる問題で国側が敗訴したわけですね。このときの社会・援護局長の談話を見ますと、生活保護の在り方に関する専門委員会での議論や今回の最高裁判決の趣旨を踏まえ、学資保険の取り扱いについても検討してまいりたいということを発表しているんですが、一体その後これはどういう検討になっているのか、示していただきたい。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

小島政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、本年三月の最高裁判決は、生活保護受給中の者が、生活保護費を原資とした高校修学目的の学資保険を保有し、その満期保険金を収入認定したことの可否等について判断があったものでございます。判決では、高校修学が自立のために有用であり、その費用に充てるため保護費を蓄えることは、法の趣旨、目的に反するものではないとしております。

 これに従いまして、平成十六年度におきましては、暫定的な取り扱いといたしまして、一定の要件を満たすものについては、今後の検討を踏まえた取り扱いを明示するまで、解約等の指導は行わないということにいたしているところでございます。

 また、こうした判決の趣旨を踏まえ、専門委員会におきましても、教育支援のあり方につきましては、生活保護を受給する有子家庭の自立を支援する観点から、高校への修学費用について生活保護制度において対応すべきではないか、それから、保護受給中の学資保険等保護費のやりくりによって生じた金銭の取り扱いについては、社会的公正の確保、一般世帯との均衡、その金額や趣旨、目的等を配慮して特別な配慮をすることが考えられないかといったことについて、現在御議論をいただいているところでございます。

山口(富)委員 今、暫定的な対応をしているということで、委員会の方で審議してもらっているということだったんですが、何らかの通知なり通達を出しているんですか。この判決を受けて、このように当面対応しなさいという。

小島政府参考人 判決を踏まえまして、解約等の指導は行わないようにという通知は出しております。

山口(富)委員 今、通知が出たということなんですが、生活保護をめぐる実態ですと、よく言われますように、申請の窓口の対応がひどいというのは、もうひっきりなしに出てくる問題なんですね。

 きょう、私はここに、これは福岡県なんですけれども、日本共産党の福岡県議団が追及しまして、福岡県の保健福祉部が久留米市の福祉事務所の生活保護申請に係る監査結果というのを発表したんです。この中身がすさまじいのですね。

 どういう点が権利侵害として福岡県の保健福祉部によって指摘されたのかといいますと、こういうことなんです。「稼働年齢層の者に対し診断書の提出を助言したもの、就労不可の診断書でないと申請書を交付していないもの、就労可の診断があった者に対し何か仕事を見つけてから再度相談に来るよう助言したもの、預貯金通帳の写しを提出するよう助言したもの、低家賃住宅への転居を助言したもの」、ずっと続いていくんです。このように「不適正な指示や、不適切な助言指導を行い申請書を交付していない事例が多く認められた。」と。

 これは、私、この文書を取り寄せまして改めて驚いたんですけれども、久留米市が「生活保護申請に必要な書類」という文書までつくっているんですね。いわば、この福岡県がこれはまずいぞと言った事例というのは、偶然に生まれたものじゃなくて、事実上、一定の期間、組織立って行われたような事例だというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 厚生労働省の方は、こういう事例をきちんと掌握して、福岡県と連携して適切な指導をやっているのかどうか、これを確認しておきたいと思います。

小島政府参考人 今先生の御指摘の事例については、私どもまだちょっと把握しておりませんが、一般的に、生活保護の申請の場合には、来所される方の中には、生活保護の仕組みを十分理解していない方、また、他の福祉施策等を活用すること等によりまして最低限度の生活が維持できることとなり保護の適用に至らない方、こうした方もいらっしゃいますので、まず、窓口において来訪者の方々の御相談に応じ、生活保護の仕組みについて御理解をいただき、迅速に利用可能な他福祉施策の紹介をする等の配慮も行っているところでございます。

 このような相談を経ずして、機械的に申請書を受理した上で、要件を満たさないものとしてこれを却下するような運用は、無用の書類作成の手間をかけさせる、他の福祉施策等の活用をおくらせるなど、来所者に不利益をもたらすことも多いと考えております。

 しかしながら、先生がおっしゃいました、生活保護の申請を、必要な書類が整っていない等合理的な理由なく阻害するようなことがあってはならないことはもちろんでございまして、申請する意思のある方に対しましては手続についての援助指導を適切に行うよう、従来から指導しているところでございまして、引き続きこの点について周知徹底してまいりたいというふうに考えております。

山口(富)委員 今の答弁は全くなっていませんよ。生活保護の制度を知らない、理解していない人もいるから、それで申請書をつくっちゃったらそれこそいろいろな仕事の邪魔になるという話じゃないですか。

 そういう考え方じゃなくて、生活保護というのは、無差別平等の原理、これは第二条に規定されているわけですけれども、必要な方は憲法に基づく権利なんだからきちんと申請を受理しなさいという立場で指導していただきたい。

 それから、私は、今の答弁を聞きながら一層のことこれは問題だと思ったんですけれども、実は、厚生労働省が社会保障審議会の専門委員会で出している自立支援プログラムというのがあるんです。これを見ますと、福祉事務所が自立計画というのを策定するわけですけれども、生活保護を受けている人の方の取り組みが不十分だと事務所側が認めた場合には、保護費の減額または保護の停廃止も考えられるというプログラムを出しているんですね。

 私、これこそ今の実態からいきますと、やはり生活が厳しくなっておりますから、厚労省の統計を見ましても、生活保護を申請される世帯がずっとふえているんですね。現実に保護を受けている方もふえているわけです。それを結局、支給の減額や申請の抑制の側にシフトをしていく、これが自立支援プログラムじゃないか、そういうふうに思うんですが、こういうやり方じゃなくて、必要な方にはきちんとした法に基づく支援をしてあげる、そういう立場で仕事をしていただきたい。

 もう一回、援護局長、答弁をお願いします。

小島政府参考人 自立支援プログラムにつきましては、生活保護受給者の方々がそれぞれの立場で自立に向けて努力をしていただく、そのためのプログラムを実施機関の方でメニューをそろえるというようなことで今進めておりまして、保護受給者の方々に自立をしていただくということが一番の目的でありまして、今法律にございます保護の停止、廃止、減額等々ということを目的にしているわけではございません。

 しかしながら、とにかく自立して、一歩でもできれば生活保護から脱却して自立生活を送っていただきたいというふうなことで、ばねになるようなプログラムを考えていきたいというふうに考えてございまして、それは何も、働けなければ自立プログラムを適用しないということではないということでございます。

山口(富)委員 自立を支援していく上で、今、日本の生活保護行政で大事なのは、間口が狭過ぎるんですね。これを広げることが大事だと思うんです。

 ここに、ILOの、これは世界の統一した基準ですけれども、生活保護費の各国別のGDP比の比較というのがあるんですけれども、これを見ますと、日本は主要国で最下位の、最低の水準なんですね。大体、欧米に比べますと四分の一から五分の一なんです。ですから、問題になっているのは、本当に自立を支援しようとしたらやはり間口を広げていく、その方向も同時に追求していく必要があると思うんです。

 もう一点、確認しておきますけれども、母子加算の縮減の方向の問題なんですね。

 これも、どうも最近、再び専門委員会の方に提案をして、専門委員会では了承が得られなかったということなんですけれども、何で繰り返し母子加算の縮減の方向を打ち出すのか、これを説明していただきたい。

小島政府参考人 生活保護の母子加算につきましては、昨年、専門委員会がスタートしたときから、もう既に問題となっておりました。

 一人親である被保護世帯を主な支給対象とする母子加算につきましては、これまでも、加算を加えた母子世帯の保障水準が一般低所得母子世帯の消費水準と比べて相対的に高くなっているため、結果として就労意欲を阻害し、保護からの脱却、自立を困難としているとの指摘がなされているところでございます。

 これに対応して昨年から検討をしておりまして、さらに、専門委員会におきましては、現在も、このような指摘を踏まえつつ、一般低所得母子世帯の消費水準や消費実態等も踏まえ、母子加算について、世帯の自立につながるよう、要件、金額、名称等の見直しを行う必要があるかどうかといった点について、今御議論をいただいているということでございます。

山口(富)委員 私は、ぜひ実態をよく見ていただきたいと思いますね。

 厚労省の資料で国民生活基礎調査というのがあります。これを、各年度をとってみますと、母子世帯の平均所得は、二〇〇〇年の二百六十一万七千円を頂点にしまして、減少に転じているんです。それで、直近の二〇〇二年では二百四十三万五千円、二十万近く減っているんですね。大体、母子世帯自身が低賃金で所得が低いわけですから、その低い世帯の平均と比べて母子加算について云々するというのは、私は本末転倒だと思います。

 母子世帯の方への支援を同時にやりながら、母子加算の制度についてはきちんと維持拡充していくというのが、今の日本の生活をめぐる実態からいきまして欠かせない問題だということを重ねて指摘して、内閣委員会の方に行かなきゃいけないということですから、社会・援護局長への質問はこれにとどめておきます。

 続いて、私はきょう、実は冒頭に聞いておきたかったんですけれども、尾辻大臣にお尋ねしておきます。先ほども山井委員から質問がありましたが、無年金障害者の訴訟の問題なんです。

 先日十月二十八日に新潟地裁の判決が出たわけですけれども、政府と私たち立法府の責任が厳しく問われました。

 それで、判決を見ましても、例えば、「昭和六十年当時、」一九八五年ですが、「原告らが強制適用の対象となる法が施行されていれば、原告らが故意に保険料の納付を怠るなどの例外的な事情がない限り、障害基礎年金の支給対象者となっていたはず」だ、「しかし、原告らは、昭和六十年法により強制適用の対象から除外され、障害基礎年金を受給することができなかったものであり、そのため、経済的にも家族に依拠せざるを得ず、将来に深刻な不安を抱き、社会的自立にいっそうの困難を強いられたものであり、現在に至るまで十数年間の長期にわたり、多大な精神的苦労を被った」と、このことを認めて国家賠償を認めたわけですね。

 先ほどの大臣の答弁は、この判決がおりた日に年金課長の名前で出されました「未加入者年金訴訟の判決について」というペーパーが私たちに回ってきたんですけれども、この中にあります「今後の対応については、判決の内容を十分検討のうえ、関係機関と協議して決定することとしたいと考えております。」これと全く同じなんです。

 私がお尋ねしたいのは、今度新潟地裁で問われたものは、日本の厚生労働行政が憲法とのかかわりで問題を持っているという指摘なんですね。特に憲法十四条の法のもとの平等との関係で、この二十以上の学生の問題がいわば谷間に置かれたということは重大な立法不作為だという認定になっているわけですけれども、大臣は、今度起きた問題というのが、憲法に基づく厚生労働行政の質が問われている、そういう性格の問題だという認識はきちんと持っているんですか。

尾辻国務大臣 今私がお答えできますことは、先ほどの繰り返しになりますけれども、まず、判決が、昭和六十年改正において学生を強制加入の対象としなかったことについて国の違法性を認めるなど、国のこれまでの主張が認められず、大変厳しいものであるというふうに考えております。

 これから先は、今お読みいただいた繰り返しになりますが、したがいまして、今後の対応を問われるならば、判決の内容を十分検討し、関係機関と協議の上、決定することとしたいと考えております。

山口(富)委員 ですから、大臣、私が端的にお尋ねしているのは、この裁判で問われた厚生労働行政をめぐる問題というのは、憲法にもかかわりますよという指摘をされているんですけれども、そういう問題をはらんでいるという認識を持っているかどうか、この点を言ったんです。

尾辻国務大臣 判決の中で述べられております立法不作為、ここの部分について、憲法との絡みで指摘をされておる、判決がそういう内容になっておるということは承知をいたしておるつもりであります。

山口(富)委員 今度の判決で注目すべきなのは、二〇〇二年に出されました当時の坂口厚生労働大臣の坂口試案に言及していることなんです。

 坂口試案は、「無年金障害者は本人はもとより、その扶養者である両親をはじめとする親族等は高齢化が著しく、看過できない事態に立ち至っている。」「速やかに実態調査を実施して、これらの人達への対応を開始しなければならない。」こういう当たり前のことを言ったんですね、すぐに手を打とうという。ところが、判決では、この坂口試案にも触れながら、「厚生労働大臣により無年金障害者の救済に関する試案が発表されるなどしたものの、現在に至っても無年金障害者の救済のための立法はなされておらず、」「国家賠償法上違法の評価を免れない」、こういう指摘があるんです。

 ですから、私は、この点でいきましたら、国はやはり、今度の場合は、尾辻大臣が就任されて、いわば初めて行政の責任が憲法上問われるわけですよ。そういう事態に立ち至っているんですから、しかも、具体的に坂口試案の名前まで挙げられて問題にされているんですから、これは、控訴などしないで、直ちに問題の解決に、立法府ももちろん取り組みますけれども、政府を挙げて取り組むべき、そういう性格の問題じゃないか。この点をもう一度答弁願います。

尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、関係省とも協議をせざるを得ませんので、その上で判断をしたい、判断せざるを得ないということを申し上げておるところでございます。このことは御理解いただきたいと思います。

 その上で申し上げるわけでございますが、年金を受給していない障害者に関する対応として、訴訟とは別に、現在、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案などが、民主党からも同じような内容のものが出されておりますが、継続審議になっておりますので、今後の国会における御論議を踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えておるところでございます。

山口(富)委員 確かに法案は出ておりまして、私たちも、これは今国会中に積極的な審議をやって、成立の方向に行くべきだというふうに考えております。

 同時に、その道をつくるためには、国自身が控訴をしない、その政治的な判断が決定的なんです。

 私、この問題で非常に悲しい思いをしましたのは、新潟の判決の日に原告や全国の支援者の人に会ったんですけれども、開口一番何を言われたかというと、判決が画期的だということじゃないんです。国はまた控訴するんでしょうかと聞かれたんですね、東京地裁の例がありますから。私は、それで本当に胸を締めつけられたんですけれども、今日ここに立ち至った以上、厚生労働大臣として、控訴をするのでなくて、解決のための手だてを打っていく、そのことを重ねて申し上げまして、時間が参りましたから、質問を終わります。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 尾辻大臣初め皆さん、長時間御苦労さまでございます。

 本日は、今後の厚生労働行政全般にかかわります尾辻大臣のせんだっての所信表明、骨格的な部分について、まず御質問申し上げます。

 この第百六十一回国会の大臣のごあいさつの中で、私は、全般、お伺いいたしまして、特に今国民が最も求めております社会保障政策ということにかかわります部分で、これは何を意味するのかなというところで、少し、大臣御自身の言葉で御説明いただきたい部分がございますので、冒頭お願いいたします。

 社会保障政策に関しましては、各種懇談会等もございますが、ここの大臣の言葉の引用をさせていただきますと、厚生労働省としては「この懇談会の御意見や国会での与野党の協議をめぐる動向等を踏まえつつ検討を進め、自立と予防をキーワードとして、国民が安心して暮らすことができる社会保障制度の構築に取り組んでまいります。」となっております。

 社会保障制度と申しますのは、年金、医療等も含んでおりますし、この「自立と予防をキーワードとして」というところと「社会保障制度の構築」というところは、多少御説明の追加をいただきませんと、なかなか大臣のお考えが伝わってまいりませんので、一点目は、特にこの自立というところでの大臣のお考え、そして、社会保障全般というところにかかる言葉になっておりますから、その内容はどういうことかという二点、抽象的にもなりますが、恐縮ですが、基本的な態度としてお示しいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 もとより、自立と予防で社会保障制度が全部解決できるなどと思って申し上げたものではありません。ただ、私が大臣になりまして、ぜひこういう視点も強く社会保障全体の中に取り入れていきたいなと思う気持ちで申し上げたところでございます。

 まず、そのように申し上げてお答え申し上げたいと思います。

 我が国の社会保障制度は、自助と自律の精神を基本として、個人の責任や自助努力では対応しがたいリスクに対して社会全体で支え合う制度でございますけれども、急速な少子高齢化が進む中で、持続可能で安定的なものとしていくためには、不断の改革を行っていくことが必要でございます。

 その際に、例えば、障害者ができるだけ身近な地域で自立して暮らせるようにすること、要介護の高齢者も住みなれた地域でできるだけ自立した生活を送れるようにすること、生活保護の被保護者について、その実情に応じて、できるだけ自立できるようにすることといった視点が重要と考えており、そこで、今後の方向をあらわすのに自立という言葉が適当であると考えております。

 これは、私が自立と言いましたのは、ある障害者の方とお話ししておりまして、私たちはタックスイーターからタックスペイヤーになりたいんだ、こうおっしゃったことが大変印象に残っておるものですから、そういう意味でも、自立と申し上げました。

 ただ、今申し上げましたように、自立というと働けということかというふうにまた言われると、決してそういう意味で申し上げているつもりではありませんで、申し上げたように、障害者の皆さんが、まさに生活を自立なさるというような意味でも申し上げておるつもりでありまして、障害者の皆さんだとか生活保護を受けておられる皆さんだとか、広い意味で自立していただくといいなと思う意味で、一つのキーワードに自立ということを申し上げたわけでございます。

 また、健康寿命を延ばすとともに、医療保険制度や介護保険制度を持続可能なものとしていくためには、予防といった視点も、今後の社会保障のあり方を考える上で重要なことであると考えております。

 これも申し上げますと、介護保険制度、今度見直しますけれども、要介護度一、二の皆さんの数が非常にふえておることは事実でございます。そうした皆さんに、ぜひ、予防ということで、要介護にならないようにしていただければ、こんないいことはないと思っておりますから、そうしたような意味で、今度は、予防という言葉を使わせていただきました。

 こうしたことから、私といたしましては、今後の改革の大きな方向を、自立と予防というキーワードでお示ししたものでございます。

阿部委員 私は、今大臣がおっしゃったような趣旨であれば、予防という観点も加えてということで言及していただければ、より誤解が少ないかなと思います。なぜなら、今は、自助、自立、自己責任と、三つ、言葉がすぐつながっていくような風潮が、経済的な財政難ということも加わって、一方で進んでおります。

 私は、ここでぜひ、特に前半の自立ということに関しましては、もう少し共通認識を持っていただきたい。自立は、例えば身体のお悪い方が身体的自立という形になるのは、別に、介助を必要としなくていい状態になるのではなくて、介助も含めてして支援することで、自由にその方が次のステップに行けるということですし、専らこの間、いろいろ生活保護の問題等々で問題になっておりますのは経済的自立の問題でございまして、何かそこばかりがまた肥大しております。

 一方、自立というものの根本は、実は、自己選択と自己決定、みずからの運命をみずから決めていけるように、これは例えば、痴呆の御老人でも、成年後見人制度を設けたりいたしまして、なるべくその方の本意であろうということに近づいていくということを称していうのだと思います。大臣がもしその自立をキーワードにとおっしゃってくださるのであれば、そこの意味を本当にみんなが共有できるように、よろしくお願いしたいと思います。

 引き続いて、またこれも骨格的なことで恐縮ですが、改革のグランドデザインでも幾つか気になるところがございます。

 この改革のグランドデザインでは、「自立支援型のシステムへの転換」となってございますが、これはもともと障害のある方の障害が消えるわけでもございませんので、一方の就労支援ということも必要ですが、さらに、かてて加えて、ここには「自己実現」と「社会貢献」という言葉がくっついております。自立支援して、自己実現して、社会貢献してもらおうという、この社会貢献という部分はいかなる意味で使われているのか。これは西厚生労働副大臣にお願いいたします。

衛藤副大臣 自立についても、今お話がございました。

 実は、私どものもともとの福祉というのは、当初は弱者救済とか貧困者救済という立場でございましたけれども、国際障害者年等を初めとして、完全参加と平等という形で、ずっと貧困者救済の上に次々に重ねてきたところだと思います。その大きなステップが、まさに自立であったというぐあいに思っています。

 ですから、自立支援ということに関しましては、先生も仰せのとおり、日常生活も自立に向けて、それから社会生活も自立に向けていくということが必要であろうというように思っております。そのために就労支援もあるというぐあいに考えているところでございますので、生活全般の自立をどう確保するのかということに、弱者救済の上にその新しい理念を追加してきている状況で、それをグランドデザインではっきり書こうとしているというように思います。

 私どもも、平成七年の暮れに出した障害者プランにおきましても、先生仰せのとおり、自立と共生ということを書き込んでおるわけでありまして、それを今後の基本にしたいということで、大きくカーブを今切ろうとしている最中であるというぐあいに思っています。

 そういう中で、また、社会貢献ということ、それはやはり、社会からいつもお世話になるという形よりも、日常生活や社会生活を自立することによって、あるいは就労することによって、社会との関係を大事にしながら、そこで社会にいろいろな影響を与えていく、あるいは感動を与えていくというようなことがちゃんとできるんだ、それがまた生きがいにつながるんだという観点から、このことを入れたということでございますので、そういう意味での社会貢献という意味でもございます。どうぞよろしくお願いいたします。

阿部委員 それも若干舌足らずのように思います。社会貢献という言葉は、むしろここでは、衛藤副大臣もおっしゃったような共生、いわゆる障害のある方もない方も一緒に暮らすことで、よりお互いに、いわば人間的膨らみを持って生きることができるんだという表現にしていただかないと、就労支援して、働くことによる社会貢献というふうにとられがちですので、これもまた、私は、追ってまた細かな現実的な部分は質問させていただきますが、ぜひ、言葉の使い方としても舌足らずのように思いますので、よろしく御検討をいただきたいと思います。

 先ほど来問題になっております支援費問題についてお伺いいたします。

 支援費は始まりまして二年目で、特に、私も、自分の自治体でどのようなニーズが掘り起こされて支援費が現実に成り立っているかということを調べてまいりましたところ、特に在宅系では、身体障害のみならず、知的障害、あるいはいろいろな障害を抱えた子供たちへのホームヘルプサービスの量が増加して、約四〇〇%増と。

 私は、これはとてもよいことですし、支援費制度が、実は財源的にはさまざまな問題があり、そのほかにも非常に問題のある部分がありますが、障害者自身が地域に暮らし、自己決定していくというプロセスを、いろいろな不安がありながら一歩踏み出していると思います、この制度によって。しかし、そのことがまだ十分定着もしないまま、一つは障害者基本法で、今度は各自治体が各自治体ごとのプログラムをつくるという段階にやっと来たところで、また次の制度設計が乗っかってきております。

 この支援費制度ということについて、担当省庁としてきちんとまず総括をするべきだと思いますが、それは実数の調査も含めて。そのようなことの上に、もう少し実績を積み重ねて、実態がそこに充実していって、次の施策に反映されていくということが望ましいと思いますが、いかがでしょうか。

塩田政府参考人 支援費制度は、自己決定とか自己選択という理念のもとで、障害を持つ人たちが地域生活を暮らすということを目指した制度として発足したわけですが、制度の理念自体は大変すばらしいものであったと思いますし、サービスが順調に伸びているということも、支援費制度の本来のねらいが実現しているということで、評価すべきものと考えております。

 一方で、制度にさまざまな問題を抱えている。ケアマネジメント制度がないとか、サービスのルールがしっかりしていないとか、一番大きなのは、居宅サービスについての国や都道府県の財政責任がはっきりしていないとか、いろいろな課題を抱えておりますので、支援費制度が抱える理念を実現するためには制度のいろいろな課題を克服することが必要ですので、今後とも、支援費制度の本来の理念を実現する観点から、制度が地域でどんな役割を果たしているのか、それはきちんと検証しながら、しっかりとした制度になるべく、見直しを進めていきたいと思っております。

阿部委員 尾辻大臣に再度確認させていただきますが、やはり、拙速に次の制度設計をする前にきちんと、この支援費制度がもたらした、光の部分と影の部分と当然あると思います、そういう総括を、行政の特に長としての大臣がなさってくださることによって、いわゆる自立支援と自己決定、これはとても重要なキーワードですから、それがいろいろな施策に反映されるようにお取り組みいただきたいと思います。

 これは確認の部分ですが、拙速でなく、十分に総括し、理念が充実するようにという三点にわたって御答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私どもは障害者福祉を大きく見直そうといたしております。その中でまた介護保険制度との関係も出てくるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そうした中で、支援費制度が今いろいろな問題を抱えておることは事実でございますから、しっかりもう一度見直してみるべきであろう、そういうふうに考えております。

阿部委員 では、引き続いて、BSE問題に移らせていただきます。

 先ほど来の泉委員との質疑を私は拝聴いたしておりまして、なるべくダブらない形で話を進めさせていただきたいと思います。

 一点目、まず簡単にお伺いいたしますが、アメリカはBSE汚染国でしょうか。大臣、これを一問目、アメリカはBSE汚染国でしょうか。

尾辻国務大臣 昨年の十二月二十五日、これは現地時間でございますけれども、米国においてBSE感染牛が確認されたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、当該牛はカナダから輸入された牛であるが、どの段階で感染したか明確でないこと、それから米国におけるBSE対策が必ずしも十分とは考えられないことなどから、米国をBSE発生国、発生国として、牛肉の輸入を禁止しているものでございます。

阿部委員 今大臣のお話の中にありましたが、いわゆるBSE対策が十分でないという部分が、今後我が国がこの輸入の解禁を考える場合に非常に問題になってくると思います。

 大臣は、重ねて恐縮ですが、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病で発病された患者さんが二〇〇三年の十二月以降にアメリカにおられることを御存じでしょうか。

尾辻国務大臣 申しわけありません、承知いたしておりません。

阿部委員 やはりこのBSE問題は、どういう伝播方式で人に感染するのか。当初は、イギリスで発生した当時も、人には感染しないという形で政策が進められてきて、しかし、この間私たちの得た知見は、変異型という形での人間への伝播があるということで、極めて深刻であると言われております。

 ぜひ、厚生労働省として、このアメリカでの人に発生した変異型クロイツフェルト・ヤコブ病への情報をお集めいただきますとともに、きょうは農水にも来ていただいておりますから、アメリカの畜産の飼料管理と申しますのは、血粉は禁止されておりませんし、いわゆる反すう動物間の肉骨粉の肥料としての投与は中止しておりますが、鶏とか豚とかには相変わらず肉骨粉が投与されておりますし、また危険部位がレンダリングに回るという、三つのリスクファクターを抱えていると思います。

 私が今言ったようなアメリカの畜産状況というものは、農水省でもきっちり把握しておられますでしょうか。高橋さんにお願いします。

伊地知政府参考人 米国の飼料規制につきましては、反すう動物に由来する血液、血粉等の血液製品以外のたんぱく質を反すう動物の飼料に使用することを禁止しております。これら禁止されたものを使用した飼料につきましては、反すう動物に与えてはならない旨の表示も義務づけられているというふうに承知しております。

 なお、血液や血液製品の牛への給与、それから、今言われました肉骨粉の豚、鶏飼料への使用につきましては禁止をされておりませんが、米国では、昨年末のBSE感染牛の確認を受けまして、現在の飼料規制を強化するために、SRMの飼料利用の禁止、それから反すう動物用の飼料の製造設備、輸送手段等の専用化、それから哺乳動物と家禽に由来するたんぱく質を反すう動物用飼料に使用することを禁止するということ、それと歩行困難牛、死亡牛の飼料への利用の禁止について検討中であるというふうに承知しております。

阿部委員 今のことを繰り返せば、今が極めて危ない状態だということだと思います。血粉はまだ投与されている、交差汚染もまだ起こり得る、よろよろと歩くへたり牛についてのみこれから対策されようとしている、また危険部位はレンダリングに回る。こういう、どう考えても、私は、アメリカの畜産状況というのは、この間長い間世界が学んできたBSE発生の根絶に向けた努力からは遠いところにあるように思います。

 ここでの安易な解禁がやはり世界に禍根を残すということもあり得ると思いますので、先ほど来の御答弁で大臣のお話は伺いましたから、十分慎重に、そして、アメリカから最大限、単に取り出した肉だけじゃなくて、畜産状況についての情報を集めていただきたいとお願い申し上げますが、いかがでしょうか。大臣にお願いします。

尾辻国務大臣 けさからずっとお答えいたしておりますように、私どもは、国民の食品の安全を守る立場でございます。そのことをしっかりと守るべく、すべての手を打っていくつもりでございます。

阿部委員 引き続いて大臣にお伺い申し上げますが、私は、この所信表明の文面をつらつら拝見して、一つ大きな問題で、前国会まで厚生労働省が取り組んでこられたことの中で、今回所信からは述べられていないことがあると思うので、一つお聞きを申し上げます。

 今、国民の医療における最大の関心事であり不安事は、医療被害、医療ミス、医療事故、医療過誤と言われるように、さまざまに医療の安全性、安心性ということが問われております。

 そもそも、医師が医療上のさまざまな問題を起こしたとき、医道と書きますが、医道審議会というのがございまして、そこで医師の資格にふさわしいかどうかということを審議する会がございますが、実は、さきの歯科医師会、歯科医師政治連盟からの献金で問題になられました臼田さん、現在裁判中と思いますが、この方が医道審議会のメンバーでありました。

 私は、前に坂口大臣にも、医道審議会のみずから医師を処分する側に、このような贈収賄の嫌疑がかけられる方がおられるのはどうかというふうにお尋ね申し上げましたが、きょうは時間の関係で、そのことは尾辻大臣に御認識いただいた上で、一九八〇年に起きました富士見産婦人科事件という事件について、大臣の御認識を伺いたいと思います。

 大臣も御記憶かもしれません、一九八〇年、今をさかのぼること二十四年前の富士見産婦人科事件とは、医師ではない方が、エコー、当時超音波というのはまだまだ珍しゅうございましたが、それを用いて、女性たちの子宮や卵巣が腐っているとか傷んでいるとか、真実ならざることを言って、それを摘出してしまいました。そして、本年の七月、最高裁で民事裁判の判決が下されましたが、いわゆるこの富士見産婦人科事件は、明らかに軌道を逸した集団的異常行為と言うべきであって、単なるもうけ主義とは格段に、別個に異質のものである、およそ医療という名に値しない乱診乱療だというふうな最高裁判決もおりております。しかしながら、医道審議会では、長年、この加害側に当たった医師の処罰ということがなされておらず、医師は今も診療をされております。

 確かに、刑事事件ではいわゆる傷害罪にはなりませんでした。しかし、民事で、最高裁で、もう医療の論外のものだと言われるような事件を起こした医師が、医道審議会で全く何のおとがめもない。この事態について、極めて私は異常と思いますが、大臣に、恐縮ですが、わっと言って所見を求めるのは本当に申しわけございませんが、とても重要なことですので、大臣が今この場でどのようにお考えか。私は、厳密に処分していただきたい、この一点をお願い申し上げるのですが、御答弁をお願いします。

尾辻国務大臣 あってはならない事件だというふうには、まず認識をいたしております。

 そこで、今、最高裁決定がお話しのように出たところでありますから、この機会が医道審議会で取り上げるかどうかを決める最後の機会である、こういうふうに考えます。処分するかどうかは別として、民事判決を分析するなど、どのような問題点があるかを含め、今、事務局で論点を整理してほしいという意見も出されておりまして、事務局で作業を進めておるところでございます。作業がまとまり次第、直ちに医道審議会に御説明をいたしまして、御論議いただきたい、こういうふうに考えております。

阿部委員 処分するかどうかは別とはしないでいただきたいですが、そもそも、ここの委員会に臼田さんがおられたということも含めて、この委員会のやはり信頼性にもかかわってきますし、あと、今後、患者団体の御意見もぜひ聞いていただきたいとお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

鴨下委員長 次に、第百五十九回国会、内閣提出、児童福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 児童福祉法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

尾辻国務大臣 ただいま議題となりました児童福祉法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 急速な少子化の進行等を踏まえ、総合的な次世代育成支援対策を推進するため、次世代を担う子供が心身ともに健やかに育つための環境を整備することが喫緊の課題となっております。このため、児童虐待等の問題に適切に対応できるよう、児童相談に関する体制の充実等を図るとともに、慢性疾患にかかっている児童に対する医療の給付を創設する等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、児童相談に関する体制の充実であります。児童相談に関する市町村、都道府県及び児童相談所の業務に関する規定を整備するとともに、地方公共団体は、児童に関する情報の交換等を行う要保護児童対策地域協議会を置くことができることとしております。

 第二に、児童福祉施設、里親等のあり方の見直しであります。要保護児童に対する適切な保護と支援を図るため、乳児院及び児童養護施設の入所児童の年齢要件を見直すとともに、児童に対する里親の権限の明確化を図ることとしております。

 第三に、要保護児童に係る措置に関する司法関与の見直しであります。要保護児童とその保護者の関係の改善等を図るため、児童相談所による保護者に対する指導措置について家庭裁判所が関与する仕組みを導入することとしております。

 第四に、慢性疾患にかかっている児童に対する医療の給付の創設であります。本給付については、都道府県が行うこととし、国は、都道府県が支弁する当該給付に要する費用を補助することができることとしております。

 このほか、保育料収納事務の委託に関する規定を整備するとともに、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書を締結するための規定を整備することとしております。

 最後に、この法律の施行期日は、平成十六年十月一日としておりますが、児童相談に関する体制の充実、要保護児童に関する司法関与の見直し等については、一部を除き、平成十七年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十八分散会


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