衆議院

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第6号 平成16年11月10日(水曜日)

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平成十六年十一月十日(水曜日)

    午前十時四十分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      河野 太郎君    菅原 一秀君

      高木  毅君    中西 一善君

      中山 泰秀君    原田 令嗣君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    内山  晃君

      大島  敦君    小林千代美君

      小宮山泰子君    今野  東君

      城島 正光君    園田 康博君

      中根 康浩君    橋本 清仁君

      藤田 一枝君    水島 広子君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      高木美智代君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   厚生労働大臣政務官    藤井 基之君

   会計検査院事務総局次長  重松 博之君

   会計検査院事務総局第二局長            増田 峯明君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 深山 卓也君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁次長)    小林 和弘君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     高木  毅君

  石毛えい子君     今野  東君

  桝屋 敬悟君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  毅君     河野 太郎君

  今野  東君     石毛えい子君

  高木美智代君     桝屋 敬悟君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第三四号)

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第三五号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 第百五十九回国会、内閣提出、児童福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治財政局長瀧野欣彌君、法務省大臣官房審議官深山卓也君、民事局長房村精一君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君、社会・援護局長小島比登志君、社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁次長小林和弘君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局次長重松博之君、事務総局第二局長増田峯明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木美智代君。

高木(美)委員 おはようございます。公明党の高木美智代でございます。

 本日は、児童福祉法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。

 私は、青少年問題に関する特別委員会の一員として児童虐待防止法改正に携わってまいりました。本日は、質問の機会をいただき、感謝をしております。今審議中のこの法案が成立することによりまして、児童虐待防止についての実効性が生まれることになります。多くの国民の皆様が心配されている児童虐待の防止の問題につきまして、まだまだ完璧な整備とは言えないとは思いますが、この二つの改正案がそろうことによりまして、予防から社会的自立に至るまでの、切れ目のない支援体制への大きな前進と期待をしております。

 そこでまず、今回の法改正によりまして司法関与の強化が図られております。一つは、児童の入所措置について、期限を新たに設けて二年、必要と認めれば延長することができる。またもう一つは、保護者に対して指導措置が必要な場合は都道府県にその旨を勧告することができるとしております。こうした強化の意義につきまして、まず厚生労働省にお伺いをいたします。

衛藤副大臣 先生おっしゃいましたように、今回の児童福祉法の改正は、まさに児童虐待防止法と車の両輪のような関係になるというふうに思っております。そういう中で、児童相談所の体制強化というだけじゃなくて、これを司法の方にも拡大して、関与してもらいたいというふうに思っている次第でございます。

 司法関与をやることによって、今申し上げましたような入所措置の二年の有期限化だとか、いろいろなことをやることによって、その体制を補強するというか、そういう形を司法において考えているところでございます。あるいは、保護者に対して行う指導にしましても、都道府県に勧告ができるわけでありますけれども、都道府県も、保護者に対しての指導についても、司法の方の判断もそうですよと言うことによって指導しやすくするとか、そういう形で、この児童相談における体制を補強しようとするものでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

高木(美)委員 それでは、法務省にお伺いをいたします。

 やはりこうした司法の介入ということにつきまして誤解があったり、また理解が得られていなかったり等の報道もあるかと思います。

 まず、二十八条審判につきまして、現状はどのようになっているのかお伺いいたします。

房村政府参考人 児童福祉法二十八条の承認の審判について、裁判所でどのような対応がなされているかということについて御説明いたします。

 この二十八条に基づく入所措置の承認を求める申し立てがありますと、多くのケースでは、直ちに家庭裁判所調査官に調査命令が出されます。それに基づきまして、家裁調査官が児童相談所の担当者に面接をして問題点についての説明を受けたり、児童や保護者と直接面接するなどして調査を行うということを聞いております。

 また、調査を機動的かつ多角的に行うために、複数の家裁調査官による共同調査体制がとられることもあるというように聞いております。必要に応じまして、裁判官が速やかに審問期日を開いて、児童相談所の担当者や児童の保護者等から直接事情を聴取するということもあるように聞いております。

 このようなことで得られました資料を総合して、裁判官が施設入所を承認するかどうかを決定しているという実情にございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 慎重に、また大切に、そのように調査をしてくださっているという事実をお伺いいたしました。

 さらに質問なんですが、親に対しまして指導措置が必要と思われる場合、都道府県に対しましてその旨を家裁から勧告することができるとなっております。しかしながら、親と児童相談所は対立関係になるケースが多く、児相の指導をなかなか聞き入れない親も多いと聞いております。まして、虐待をしているという自覚がない親も多いと聞いております。そのために、もっと強い権限を持った司法が深く関与をして、例えば家裁から親に対して直接勧告できるようにすべきではないか、都道府県への勧告というよりも、どうして親に対して直接できないのか、こういう率直なお声がございます。欧米では裁判所の関与が普通になっている、このこともあるかと思います。

 この点につきましても今後十分検討し、導入する必要があるのではないかと思われますが、法務省の御意見をお伺いいたします。

房村政府参考人 現在の児童福祉法におきましては、保護者に対する指導というのは、同法の二十七条で行政処分としてその指導を行うという形がとられております。

 今回の改正で、先ほど申し上げましたように、家庭裁判所が関与をいたしまして種々の資料を収集するということから、それらの資料に基づきまして、付随的な判断としてこの指導を行うことが相当な場合には都道府県等に勧告ができるという制度が導入されているわけでございますが、この指導措置はあくまで行政処分ということでなされますので、その実効性の確保というのは、その行政手続として、その範囲内で確保していただくというのが本来の制度のあり方ではないか。

 やはり行政と司法の役割分担というものがございますので、現行の制度を前提といたしまして、行政処分としてなされた指導の実効性を確保するために裁判所が親に直接勧告をするというのはやはり行政と司法の役割分担を越えるのではないか、こういうことが考えられます。

高木(美)委員 今の御説明を伺いまして、要するに、児相が申し立てをする、それに対して家裁が審判でそうした措置を決定するという、このルールからいきますと、当然、親への勧告というのは直接ではなくて、その流れを戻す形で都道府県に対して勧告をする、このようにとらえてよろしいんでしょうか。

房村政府参考人 そのような理解でよろしいのではないかと思います。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 私も、今回、こうした司法の介入につきまして、最高裁の事務担当の方にもお伺いいたしました。私、もう一つ疑問に思っておりましたことは、家裁の中で児童虐待防止チームのような専門的なチームをつくって検討するという研究は必要ないのか、こういう質問をしましたところ、今まだ年百数十件である、したがって、そういうチームをあえてつくるという必要は、今のところは、人員もそろっているので、ないのではないか、また、既に事例も重なってきているので知見は集まっている、それを今内部で分析をして、それをもとに研修を行うことなど、これから検討をしていきたい、こうしたお話をちょうだいいたしました。

 こうしたそれぞれの分野の努力、こうしたことが集まりまして、それでこの児童虐待の防止も可能になるかと思います。ぜひ、こうした、また司法からの努力をお願いしたいということを申し述べまして、次の質問に移らせていただきます。

 それで、ここから厚生労働省にお伺いをいたします。

 先ほどお話がございました親への指導、カウンセリングにつきまして、これは現在、強制的ではなくて、むしろ親の主体性に基づいて、児相がお声をかける、それに対して親が希望するかどうか、また児相まで足を運ぶかどうかという、こういう形で行われているようですが、こうした体制も全国まちまちのように思われます。

 どの部門でどのような専門の方が責任を持って行うようになるのかお伺いしたいというのが一点。その際、やはり、親御さんへの指導、カウンセリングですから、全国で格差があっては困ります。基本になるプログラムを作成すべきではないかと思っておりますが、この点についてもお答えをいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 保護者に対する指導の問題でございますが、これは、児童相談所に児童福祉司というのが配置をされておりますが、この児童福祉司がその中心になって保護者への指導に当たる、こういう体制になっております。

 それから、こういった技術を高めていくために、現在、児童相談所におきましては、地域の精神科医の協力を得て、保護者に対するカウンセリングの充実を図る事業を平成十三年度から実施をいたしておりますが、こういった事業を継続して技術力を高めていく。

 それから、さらに本年度からは、地域の医療機関あるいは学識経験者などの専門家の助言も受けながら、児童相談所の相談援助機能を強化するモデル事業を開始したところでございまして、こういったことで、より一層専門性を高めて保護者指導の徹底を図っていきたいというふうに思っております。

 それから、御指摘のありました、児童相談所によってプログラムとかやり方がまちまちではないか、こういう御指摘でございますが、こういったことにつきましても、確かにまだ未成熟な分野でございますし、これから開発をしなければならない課題がたくさんございまして、御指摘のとおりだと思っております。

 一部の県あるいは児童相談所においては、先駆的にいろいろな工夫を重ねてプログラムを開発しているところもございますが、そういったことを私どもも幅広く収集をして、できるだけそれを広めていきたい。それから、国としても、独自にいろいろな研究事業で、今、既に研究をした成果もございますし、これからも親指導のための、あるいは再統合のためのプログラム開発ということにいろいろ研究を重ねていきたいというふうに思っております。

高木(美)委員 ぜひとも、充実、推進をお願いいたします。

 そこで、いわゆる二十八条事件ですけれども、ここでは子供の入所措置は二年という期限が設けられました。ただ、それとは別に、保護者が同意した場合、一般的な入所措置については、これは特に見直す期限というのは今まで余り伺っておりません。どのような形で、もうこのお子さんは親元に戻していいのではないか、こういう期限を検討していらっしゃるのか。私は、この期限につきましても、例えば二カ月に一度とか設定する必要があるのではないかと思いますが、御所見をお伺いいたします。

伍藤政府参考人 児童福祉施設に入所している児童を保護者のもとに帰すかどうか、こういう判断は極めて重要なことでありまして、保護者の同意が得られない場合のケースもしかりでありますが、保護者の同意を得た場合も同様に、非常に難しい課題を抱えておるというふうに認識をしております。

 このため、私どもとしては、従来から、「子ども虐待対応の手引き」という、いわばマニュアルを作成して、その中で、家庭に引き取っていただく際の確認事項として、子供について確認すべき事項、あるいは保護者について確認すべき事項、それから地域の関係機関等と調整すべき事項、そういうことに分けて、ジャンルを分けて細かく指針をお示ししているところでございます。

 それから、本年二月に専門家による研究会を設置いたしまして、児童相談所による適切な相談援助活動のための実態把握でありますとか、いわゆる把握された情報をどういうふうに評価をするか、こういったもの、あるいは帰した後の自立支援計画といいますか、そういったものをどういうふうな形でつくるかということを、今試行調査などをしながら検討しているところでありますので、こういったものを、より精密なものをつくって、親元に帰すかどうかの判断に資するようにしたいというふうに考えております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、例えば親が同意している入所児童を親元に帰す場合、そこで判断する基準といいますのは、今お話がありました対応の手引き、これに沿った形で行われると。

 また、先般からずっと言われておりますけれども、一時保護をせっかくしても、慎重にいろいろ検討して保護しても、やすやすと親元に帰してしまって死亡につながった、そういう事例も報告をされております。いわゆる児相の方に一時保護されている、こうしたお子さんにつきましても、親元に帰すときの判断はやはりこの対応の手引きによる、別途ガイドラインは必要なのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

伍藤政府参考人 児童相談所に一時保護したような場合、そういった子供を保護者の元に帰すか否か、こういった判断、これも極めて重要な、難しいことでございますが、こういったものにつきましても、「子ども虐待対応の手引き」という先ほど申し上げましたマニュアルの中で、一時保護中の児童を家庭に引き取っていただく際の留意点、これをいろいろ細かく明示をしておるところでございます。

 この手引きにつきましては、本法律の改正後に改定をする予定でありますので、これまで得られた臨床的知見でありますとか、これまでの研究成果、それから、そのほかのいろいろな実態調査の結果などに基づいて、より精度の高いものにして、できるだけこういった不幸な事例が発生しないように努めてまいりたいというふうに考えております。

高木(美)委員 先ほどお話がございました児童福祉司、この資格につきましても今回大きく拡大されると伺っております。そうした意味で、専門性が低くなるのではないかと懸念するお声もございます。そうした点を踏まえまして、今のこの対応の手引きを含めて、児童虐待に臨むそれぞれの決意といいますか、ここはやはり深く認識していただけますように、また、こうした専門性の技術力、これも高めていただけますように、ぜひとも研修の徹底等をお願いいたします。

 そこで、次の質問になりますが、これはある研究報告ですけれども、児童相談所職員のメンタルヘルスについてでございます。職員が一時保護の際、殴られたり、脅迫されたり、中には事務所に火をつけるというおどしがあったり、親からの加害、妨害について、特にここ三年半ぐらいで三百五十件ぐらい発生をしている、そのうち一時保護に関するものは過半数に及ぶ、このように報告が出ております。

 事件が起こるたびに児相の対応が甘かったのではないかとか、いろいろ取りざたをされるところでございますが、私は、児相の方たちに、何カ所かお会いをさせていただきながら、やはり児童相談から虐待相談、また一時保護の児童ケア、親の指導、カウンセリングまで、まさに限界を超えた状況であると認識をしております。

 また、今回の法改正では、そうした一般的な相談体制、この一部が市町村に移行すると言われておりますけれども、この市町村の後方支援であるとか、そのためのまた研修指導であるとか、ますますまたこれは負担も多くなるのではないかと懸念をしております。既に今、職員の方たちはストレスにさらされまして、三年もちませんという悲鳴のようなお声も聞いております。燃え尽き症候群になる方もいらっしゃると聞いております。

 こうした児童相談所の保安体制また危機管理体制の確保、また保護者から加害や妨害に遭ったとき、そういう職員の方たちの精神的ケアにつきまして、どのように今検討していらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。

 また、そのために、親の面会とか通信の制限も命ずることができるように特別家事審判規則の改正も視野に入れていらっしゃると伺っております。この点につきまして答弁をお願いいたします。

伍藤政府参考人 委員から今御指摘のありましたように、都道府県の業務の中でも、最近の状況をお聞きしますと、児童相談所の職員の、御苦労といいますか、ストレスというのは非常に大きいというふうに、私どもも直接間接にいろいろ聞いております。こういった方々がどういうふうな形で健康状態を保ちながら仕事をしていくか、これは私どもも重大な関心を払っていかなきゃいかぬ問題だというふうに考えております。

 基本的には、それぞれの自治体で、職員の健康管理その他について適切な指導なり管理が行われているというふうに承知をしておりますが、私ども、これから、最近の児童虐待の状況でありますとか、今回の法改正の状況も踏まえて、今年度いっぱいかけて、全国の各児童相談所の実情調査を、実地に赴いて把握をしていきたいというふうに思っておりまして、その中で、児童相談所職員のメンタルヘルスとか、そういった健康面についても調査を行うこととしておりますので、そういった調査結果も踏まえ、現場のいろいろな意見も聞きながら、これから、総合的な対策といいますか、考え方を整理してまいりたいというふうに考えております。

高木(美)委員 また後で、もう一つ質問に関しましてお話をさせていただこうと思っていたのですが、新しい事業を立ち上げるときには、国がその方針または法で打ち出しをする、それに対して、現場がどうなっているのか、その問題点をフィードバックしてもらう、やはりこの往復作業がこれからますます大事になるのではないかと思っております。

 ぜひ、それぞれ、児相で抱えている課題、問題等につきまして、これはボトムアップでよく検討していただきながら、こうした、今まさに喫緊の課題になっております精神的ケアにつきましても御検討をお願いしたいと思います。

 それで、次の質問なんですが、私、今東京の在住でございます。東京の板橋区で、特区の申請ということで、児童相談所を設置したい、このように申請を出したそうでございます。私は、こうした子育てに対しての、虐待防止に対しての真剣な取り組みに拍手を送りたいと思った一人でございます。

 今法案の改正によりまして、これから、中核市に児童相談所を希望するところは設置できる。その場合、現在、都道府県に児童相談所が設置されておりますけれども、これから中核市として設置をしたいという、そこの両方の関係と役割分担はこれからどのように整理をされるおつもりなのか、伺いたいと思っております。この役割分担がはっきりしませんと、手を挙げたくても、中核市はどこまでやっていいのかわからないということで、これはなかなか検討のしようもないと思っております。

 児相に付随します児童保護施設であるとか、また更生施設であるとか、この連携につきましてどのようになるのか、お伺いをさせていただきます。

伍藤政府参考人 激増いたします児童虐待、その他の相談体制にどう対応していくか、こういう観点から、今回の法改正におきましては、従来の都道府県、指定都市に加えて、中核市程度の人口規模、約三十万人以上ということでございますが、そういったところの市にも児童相談所を設置できる、こういうふうな改正をしているところでございます。

 具体的にどういうところで設置をしていくか、これは、それぞれの市で御判断をいただき、また、都道府県と調整をして役割分担をよく御相談していただきながら進めていただきたいと考えております。

 中核市というのは、大体、県庁所在市が多いわけでありますので、そこに中核市が新たに児童相談所を設置するということになりますと、既存の都道府県の児童相談所、特に中央児童相談所というふうに称している都道府県の中核的な児童相談所は大体そこにあるケースが多いわけでありますが、まずはそことの調整が必要になるということでございます。

 中核市において、既存の都道府県の児童相談所を譲り受けて、それを中核市が運営をする、都道府県はそのほかのところでまた設置をするということも考えられますし、あるいは、同じ中核市内に併存をして、中核市の児童相談その他については中核市の児童相談所が受け持ち、それから、既存の都道府県の児童相談所は、その中核市以外の周辺の町村あるいは市町村を担当する、こういう役割分担も可能でございますが、それぞれの地域の実情を踏まえて判断をしていただきたい。激増するこういう相談体制の強化に向けて、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいという期待を持っておるところでございます。

高木(美)委員 これは東京の取り組みかと思いますが、家庭支援センターという取り組みを東京では今やっております。そこでは、児童相談そしてまた簡単な一時保護、そこまでできるという踏み込んだ運営をしております。そうしますと、中核市にこれから設置したい児童相談所、こことの役割の微妙な違いが生まれてくるかと思います。

 ですので、今恐らく行政でも取り組んでいるところが多いかと思われます子ども支援センターであるとか、今申し上げた家庭支援センターであるとか、要するに、簡単な一時保護の機能まで持っているところ、そことの線引きをどのようにしていくか、そこもあわせてぜひまた今後御検討をお願いしたいと思います。

 ここで総務省の見解を伺いたいと思っておりますが、今、三位一体の論議が大詰めを迎えております。その中に、児童虐待対策費三十億円、また、児童入所施設措置費七百十億円、これも、いわゆる地方の知事会から出てきた案によりますと補助金削減の対象に挙げられていると聞いております。

 こうした児童虐待防止に関する事業は今やっと緒についたばかりでございまして、今回、この法改正で盛り込まれました内容も、これから全国的な規模で国の新たな施策としてこれから実施をしていく、そこでどこまで充実できるかという、そこにすべての立場の大人が力を合わせて取り組んでいこうという、そういう段階でございます。

 こうした児童虐待防止、このことにつきまして、総務省としてどのようにお考えか、決意もあわせてお答えをいただきたいと思います。

瀧野政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の児童虐待防止対策につきましては、これまでも厚生労働省からの御意見も踏まえまして、例えば児童福祉司につきましては、最近四年間で一県当たり九名増員して二十五名にするというような対策を講じるなど、充実をしてまいったところでございます。

 そういった中で、今回、今御指摘ございましたとおり、三位一体の改革におきまして、地方六団体の方から、この児童虐待防止対策につきまして、税源移譲を前提といたしまして一般財源化すべきという、そういう国庫補助金の一つとしての提案がされたわけでございます。これは、それぞれの地方団体におきまして、さらに地域の実情を踏まえながら、こういった重要な政策課題に機動的に対応していきたい、こういう気持ちのあらわれということだろうというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、こういった国庫補助負担金の見直しに当たりましては、地方団体が引き続き主体となって実施する事業、こういったものにつきましては、その必要な額を地方財政計画にきちんと計上する、それで、地方交付税の基準財政需要額にも適切に算入をする、そういうことで確実に財源保障をしていくということは、骨太の方針におきましても既に閣議決定をされておるところでございますので、我々といたしましては、補助金の見直しということになりました場合にはきちんと一般財源の総額を確保して、地方団体がこういった施策にきちんと取り組めるようにしていきたいというふうに考えておるところでございます。

高木(美)委員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 最後に、厚労省にお願いですけれども、やはりこうした法改正につきまして、今総務省の方からお話がございましたとおり、今後の三位一体の論議を見守るところでございますが、やはり、今後、市町村のネットワークがどのように動いているのか、また、人材の配置がどのようになっているのか、予算の確保は市町村でどのようになっているのか、こうした実態の把握にぜひとも努めていただきたいと思います。

 また、先ほど御提案がありました児相の総点検につきましても、ぜひ定期的に行っていただきたいと思います。

 最後に、短時間で恐縮ですが、厚生労働省の副大臣の御決意を伺いまして質問を終わらせていただきたいと思います。

衛藤副大臣 三位一体改革が叫ばれる中で、御承知のとおり、児童虐待対策につきましてはまだまだ地域間の格差があります。国の支援が必要だろうと思っております。

 そしてまた、子供の命にかかわる問題でもございまして、保護者に対しても発言するという立場をなかなか持っておりませんので調整の力が働きません、監視する力が働きませんので、そういう意味で、やはり国がちゃんと関与をしながら児童虐待を防止していく、改善していくということはどうしても必要かというぐあいに思っている次第でございます。

 それで、国を挙げての努力をしなければいけないというように私ども認識をいたしております。よろしくお願いいたします。

高木(美)委員 大変にありがとうございました。

鴨下委員長 次に、橋本清仁君。

橋本(清)委員 民主党の橋本清仁です。

 けさの新聞、テレビなどで報道がありましたとおり、広島県でまた幼い一つのとうとい命が失われました。今現在、本当に虐待の被害に遭って苦しんでいらっしゃる児童の苦しみを肝に銘じて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先週の厚生労働委員会におきまして、先輩の山井和則委員が指摘なされましたとおり、世界の国々と比較いたしまして、我が国の児童虐待の防止策、児童相談所の特徴は、司法の関与が低い、そして児童福祉司の数が少ない、児童福祉司の専門性が低いなどの特徴がございます。

 今回、児童福祉司の専門性が低いという点に関して質問をさせていただきます。

 二〇〇〇年に衆議院青少年対策特別委員会で各党の先輩議員の方々が、社会福祉士を新たに任用資格に加えるものといたしました。さらに、当時の民主党案では、専門性を高めるため三年ほどの経過措置、激変緩和措置を置きながら、いわゆる準ずる者、そして「同等以上の能力を有すると認められる者であつて、厚生省令で定めるもの」という規定を排除いたしておりました。前回委員会での御答弁では、保健師、助産師、保育士、看護師などさまざまな方々が挙がっておりましたけれども、これほど多種多様な方々がソーシャルワーカーとして、児童福祉司としておられる国はほかにはないと思います。今回の改正案第十二条の規定は、児童相談所長及び児童福祉司の任用資格を大幅に甘くするものであり、世界の流れに逆行するものではないか。

 そういった中で、尾辻厚生労働大臣、世界各国、八十カ国にわたるところをお回りになったという、そういった経験とまた行動力をもちまして、この現状に対しまして、お話を伺いたいと思います。

伍藤政府参考人 児童相談所の専門性の問題でございますので、まず事務的に御答弁をさせていただきたいと思います。

 児童福祉司の専門性を、いかに量と質を確保していくかということが非常に大きな課題になっておりますが、こういった観点から、私ども、児童福祉司の質的なレベルをアップするために、平成十四年度に国立の研修センターを設置いたしまして、指導的な立場にある児童福祉司の研修等を集中して今実施しておるところでございます。

 それから、今お尋ねのありました、任用資格を広げるのは、質の低下といいますか、専門性の低下につながるのではないか、そういう趣旨の御質問だと思いますが、私ども、前回の改正でも、児童福祉司というものの質をある程度高めるという方向に沿った改正をして、今回も大きな流れはそういう趣旨に沿った改正だというふうに認識をしておるわけでございまして、ただ、虐待問題というのは非常に背景が広く、幅広い問題でありますから、いろいろな職種の方がこういう相談とか対応に当たられるということも一つの方法ではないかというような趣旨で、今回児童福祉司の任用資格について、専門性を確保するという前提のもとに、幅広い人材の登用を図るための見直しをしたいというふうに考えているわけでございます。

 間口は広げましても、その方々の専門性が決して従来水準より低下しないように、いろいろな研修とか実務研修、そういったことも含めていろいろなレベルアップを図っていきたいというふうに考えております。

尾辻国務大臣 児童福祉司の専門性につきましては、今局長が御答弁申し上げたとおりであります。

 そこで、お尋ねの大きな部分に今後の児童相談体制をどうするのかというようなこともあったかと思いますので、改めて私からそこの部分についてはお答え申し上げたいと存じます。

 先日、この委員会のお話でもございましたので、私も新宿にございます児童相談センターを、一昨日、見てまいりました。わずかな時間でございましたけれども、そのわずかな時間でも、今本当にこれは大変な状況にあるんだなということを実感したところでございます。そのことを踏まえてお答え申し上げたいと存じます。

 深刻な虐待事例が頻発をいたします中で、児童相談体制の充実は、これはもう喫緊の課題でございます。

 そこで、厚生労働省におきましては、その中核を担ってもらう児童相談所の児童福祉司について、交付税の増員要望を行いまして、標準団体当たり、平成十一年度の十六名から毎年増員し、平成十六年度においては二十五名の配置としたところでございます。数の充実はできる限り図ってきたということをまず申し上げたところでございます。

 そしてまた、平成十三年度から、児童相談所に併設されました一時保護所に、児童の心のケアを行う心理療法担当職員の配置を行うなど、一時保護中の児童に対するよりきめ細やかなケアに努めているところでございます。申し上げました新宿の児童相談センターも一時保護所が併設されておりまして、そこも見せていただきましたけれども、大変職員の皆さんが御苦労なさっておられるなということを、ここでもまた感じたところでございます。

 さらに、地域の医療機関、弁護士、学識経験者などの専門家の援助を受けて、相談援助活動を行うことができるような児童相談所の相談援助機能の強化を図るモデル事業も実施をいたしておりまして、相談体制の充実、質の充実ということにも今努めておるところでございます。そのことを申し上げたつもりであります。

 さらに、来年度の交付税要望におきまして、児童福祉司の増員とともに心理判定員の増員要望を行っているところでございまして、今後とも関係省庁や地方公共団体に強く働きかけてまいりたいと思います。

 質と量の充実に努力をしてまいりたいということを申し上げました。

橋本(清)委員 既に新宿の児童相談センターにいらっしゃったということで、本当に行動力のある大臣だなということで、これからもよろしくお願いいたします。

 今回の法改正におきまして、市町村に相談窓口が置かれ、児童相談所はより専門性の高い事例を扱い、後方支援に回るようなスキームになっていたと思われます。そういった中で、この市町村の相談窓口、どのような機関で相談に応ずるのか、また、最も重要な点として、だれが相談に応じるのか、そして相談に応じる時間帯、そういったものについてお答えいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 各市町村におきまして実際の窓口をどのような機関に設置するか、こういうことにつきましては、それぞれ自治体、いろいろお考えがあるかと思いますし、既にいろいろ幅広く取り組んでおります自治体においても、対応がそれぞれ異なっております。

 そういった自主性を尊重しながらやっていくことが基本ではないかと思いますが、例えば、代表的な例では、市町村の保健センターという保健機関がありますが、ここが窓口になっている例が非常に多いわけであります。それから、市の場合には福祉事務所というのがございますが、その中に家庭児童相談室という子供担当の部署もありまして、そういうところが第一次的な窓口になっておる、そういう体制にしておるところもありますが、それぞれの自治体で、今までの実績も踏まえながら、これから体制を整備し工夫をしていただければありがたいというふうに思っております。

 私ども国としては、こういった相談体制が円滑に進むように、児童相談所が市町村を支援するモデル事業をこれから実施したいと思っておりますし、それから、中核的な役割を果たしていただいております保健師につきましても、これまでも増員を図ってきたところでありますが、来年度についても、市町村においてこういった児童相談を担当する職員や保健師の増員などについて、現在、交付税の所要の措置を要望しておるところであります。こういった総合的な体制を整えてまいりたいというふうに考えております。

橋本(清)委員 先ほどお話の中にもありましたとおり、家庭児童相談室、これが、昭和三十九年に当時の児童局が児童家庭局に改編された際に新設された、こういった事例は歴史の教訓となると思います。

 例えば、大阪では、このときに若い専門家を多く配置し、成功をおさめたそうです。しかし、ほかの自治体におきましては、退職した学校の校長先生などが相談室長となったおかげで、相談に来た母親にお説教をしてしまって、そのお説教をされた母親は二度と訪れなかったという失敗例があったと伺っています。大工の名棟梁は左官をうまくできないようなもので、やはり、ほかの分野ではプロフェッショナルでも、事相談分野、ソーシャルワークの部分においては素人だった方が相談に当たったため、こういった悲劇が生じてしまう、そういったこともございます。

 今回の法改正で、本当にだれが相談に応じることになるかというのは大変重要なポイントであります。役所の一般の人事制度の上がりポスト的な位置づけになってしまうおそれや、公立保育所の保育士OB、学校の校長先生、すべての人がだめだとは言いませんけれども、全くそういったところの雇用吸収の場になってしまわないように、厚生労働省主導で、こういったところをきちんとやっていくべきではないかと思うのですが、お願いいたします。

伍藤政府参考人 今御指摘のありましたような実態というのは、多分あるんだろうというふうに思いますし、私どもも、市町村においてできるだけ有用な人材がここに登用されるようにしていくべきだと思いますし、そのように指導していきたいと思います。

 いずれにしても、市町村において、限られた資源、限られた人材の中で、こういう体制をいかに整備できるかという、限界もあることも一方であるわけでありますが、そういう中で、市町村の人材の中で本当に家庭あるいは児童問題にある程度の経験や知識を持った方が積極的に登用されるように、いろいろな機会を通じて私どももお願いをしていきたいというふうに思っております。

橋本(清)委員 現場の声を聞きますと、本当に大変な仕事で、虐待の相談に限らず、一般の相談のものでも簡単なものはなく、専門性、人員、財源とも要求されるものでございます。特に、先ほどから申しておりますとおり、専門性の高さが本当に必要になると思います。

 世界の各国では、専門性の高い大学院などを卒業したソーシャルワーカーの方々が相談援助機能を担っていらっしゃいます。日本におきましては、ソーシャルワーカーに当たる専門職として、昭和六十二年の社会福祉士及び介護福祉士法によって創設された社会福祉士などが挙げられております。社会福祉士及び介護福祉士法によれば、第六条に、社会福祉士試験は厚生労働大臣が行うとあり、厚生省が所管する国家資格でございます。

 そういった中で、社会福祉士の性格や定義について、また、社会福祉士が国家資格として行われている意義について御答弁をいただきたいと思います。

小島政府参考人 社会福祉士につきましては、今先生御指摘のように、社会福祉士及び介護福祉士法におきまして、「専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業とする者」とされております。

 社会福祉士の実情でございますが、平成十六年十月末現在で約五万九千人の方が社会福祉士として登録をされております。その就業状況につきましては、日本社会福祉士会の調査によりますと、約一万七千人のうち、社会福祉施設等に約四三%、社会福祉協議会等に約一五%、医療機関に約一一%、福祉事務所等の行政機関に約六・五%ということでございます。

 社会福祉士につきましては、広範な社会福祉の知識と専門的な援助技術に基づきまして相談援助を行うものでございまして、今後の少子高齢化社会の中でその意義はますます大きくなるものと考えておりますし、また、社会のあらゆる分野でこの資格を活用していただきたいというふうに私ども考えているところでございます。

橋本(清)委員 ありがとうございます。

 この社会福祉士というのは、専門性の高い職種として、厚生労働省が保証していると考えてよろしいんですね。よろしいんですね。

小島政府参考人 私どもは、社会福祉士につきましては、社会福祉分野の専門家という専門技術的な知識を十分に持っている者ということで、その活用を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

橋本(清)委員 日本の社会福祉、子供福祉の責任官庁として厚生労働省がイニシアチブをとるべきでありまして、市町村の相談窓口に厚生労働省が創設した専門家である社会福祉士を置くべきであるというふうに私は考えるんですけれども、そういったところをガイドラインとしておつくりになるというようなお気持ちはございますでしょうか。

伍藤政府参考人 児童福祉の分野でどういった人材を活用していくかということにつきましては、先ほども申し上げましたように、その市町村の限られた人材をどう有効に活用するか、こういった観点から、しかも専門性をある程度確保するということで、それぞれの市町村で工夫をしていただきたいというふうに思っておりますし、基本的には、どういった方々を登用するかはそれぞれの市町村の実情に応じて市町村が個別に判断をしていただくことだというふうに思っておりますが、御指摘のありました社会福祉士という一定の資格を持った方を活用していただくということは、これはより望ましいことであるというふうに考えておりますので、今後、福祉の分野全体に通ずる資格でございますが、児童福祉の分野についてもこういった資格の活用が図られるように私ども期待しておるところでございます。

橋本(清)委員 ありがとうございます。

 先ほど、社会福祉士の数、約五万九千人ということを伺いました。そういった数がある中で、限られた数の中でというふうにおっしゃっておりましたけれども、それだけの数がいる中で、社会福祉士の資格をお持ちでいらっしゃる方がこれだけいる中で、児童福祉司の職務を行いたいという方が数多くいらっしゃることもまた事実です。そして、そういった中で、わざわざなぜ児童福祉司の任用資格をさらに広げる必要性があるのか、そういったところに私は疑問を感じておるんですけれども、その点についてお答えいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 基本的には、先ほど御答弁申し上げたとおりでありますが、現在でも、児童福祉司として、あるいは児童相談所長として社会福祉士の方がそういう資格を持って登用されているというケースもかなりあるわけでございまして、こういった分野に社会福祉士の資格を持った方が、制度ができてまだ歴史も浅いわけでありますから、これからこういうふうな公的な分野でもぜひ活用されていくことが必要じゃないかというふうに考えておりますし、私どもは、児童福祉の分野、先ほど言った児童相談所でだけでなく、市町村においてもいろいろ活用が図られることを期待しておるということでございます。

 児童福祉司の間口をなぜ広げるかということでございますが、その点につきましては、先ほど申し上げましたように、できるだけ、多様な児童虐待、いろいろな形に対応していくためには、いろいろな専門職の方の知恵あるいはノウハウを活用していくという側面もまた必要ではないか、こういうことから、今回改正案をお願いしておるところでございます。

橋本(清)委員 いろいろあるでしょうけれども、厚生労働省が今回の法改正あるいは省令、規則で任用資格を広げること自体、みずからが国家資格として保証している社会福祉士資格をないがしろにするものである、そういった自己矛盾するものではないかというふうに私には感じられます。

 時間も短いので、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 先週の、我が党の先輩、水島広子委員の質問にございましたとおり、今回の法改正の目玉といたしまして、初めて保護者の指導に関する家庭裁判所の勧告が盛り込まれたことがありました。しかし、残念ながら、家裁の勧告先は、親に直接ということではなく、都道府県、児童相談所に対してのものであり、司法の関与がこの点弱いというふうに考えられます。

 大臣の御答弁の中におきましては、法務省が、家庭裁判所と児童相談所の関係は司法と行政の関係であり、そして、家裁が保護者に直接というのは、司法が行政を飛び越え、直接保護者に指導、勧告を行うのは問題ではないか、そういったことをお話しになったと覚えております。この点、法務省に確認を求めたいと思います。

房村政府参考人 今回の改正法案におきましては、家庭裁判所は、児童福祉法二十八条の審判をする場合に、保護者に対する指導措置をとるべき旨を都道府県に勧告できることとされております。これは、児童福祉法の二十七条で保護者に対する指導措置が行政処分としてなされる、こういうことを受けまして、それについて行政処分を行う都道府県に対して裁判所が勧告をするという構図をとったものでございます。

 これは、指導措置そのものは、やはり直接児童を扱っております行政の立場においてやっていただく必要がある、そういうことになりますと、行政と司法の役割分担といたしましては、やはり行政指導を行うところに対して裁判所が資料に基づいて指導が必要と思ったときに勧告をする、こういう構図をとることが役割分担のあり方としては望ましいということで、こういう法案になったものと理解しております。

橋本(清)委員 世界各国の法制を見ますと、裁判所がカウンセリングの受講義務を保護者に課して、それを保護者が受けない場合には子供は返さないといったことが行われています。緊急に諸外国の実勢を調査なされた上で実行に移していただきたい。ぜひ、司法の分野、法務省も、子供の命を守ることにさらに積極的になっていただきたいと思います。

 そして、今回の法改正により、現行十八歳までであった親権喪失の請求を満二十歳未満まで広げていただいたことは、性的虐待など著しくひどい扱いを受けている場合の救済に関しましては、本当に役立つものと評価しております。

 改正防止法案では、虐待の定義に同居人による虐待、性的を含むが加わったが、性的虐待件数を把握する上で、厚生労働省の統計におきましては、これをそうした性的虐待を放置したネグレクトとしてカウントするように指導なされていると伺いました。これでは日本の性的虐待件数は隠されてしまうのではないか。そうでなくても、見えない、そして隠された虐待であるそういった性的虐待の実態を把握するためには、現在の統計手法を改めて見直すべきではないのでしょうか。

 これまでに児童相談所が行った性的虐待に関する調査、一九九〇年度、大阪七児童相談所のランダム調査、三十九ケース、そして、二〇〇三年度の神奈川の中央児童相談所が行った調査、三十六ケースがあると伺っています。

 ところが、この調査、大阪で行われました調査は、主訴、主なる理由ですね、それが性非行で調べていくうちに性的虐待の被害者だったということがございました。また、神奈川県での主訴は、性的虐待だったものにカウントされたのは限られており、実際には非行というカウントに隠されてしまっているものが多いと伺っています。

 そういったところで、見えない、隠された虐待と言われるこの性的虐待の実態と統計の改善について伺いたいと思います。

伍藤政府参考人 御指摘の性的虐待につきましては、一見して明らかな身体的所見を伴うことが少ないということでございますし、基本的に被害を受けた児童本人からの訴えが重要な手がかりになるわけでありますが、家族が崩壊をする、こういった不安、あるいは、事実を話すことへの強いためらいといったことから、なかなか訴え出ないことが多いということで、正確に実態を把握することは非常に困難ということは御指摘のとおりだというふうに思います。

 ただ、私ども、こういった状況を踏まえて、どういうメルクマールでこういった問題を発見するかということを、いろいろな現場の知恵もおかりしながら、初期対応についてのガイドラインを現在検討しているところでございまして、そういったことの充実に努めてまいりたいと思います。

 御質問のありました数字につきましても、そういった観点から、どれだけ正確に把握できるかというのは限界がありますが、平成十五年度におきましては、全体の虐待の相談件数二万六千五百六十九件のうち、性的虐待があったというものが八百七十六件、三・三%、こういう数字を把握しておるところでございます。

橋本(清)委員 この性的虐待、私、以前、大臣の足元にも及びませんけれども、世界各国を回る上で、フィリピンで恵まれない子供たちに食糧援助をする、そういった仕事もさせていただきました。その中で、実の父親、そしておじいちゃんにそういった性的虐待をされて、クライシスセンター、そういったところに隔離されている女の子たちに実際に会ったこともありました。そういった女の子たちは、自分からそういったことを言えないですからね。

 本当に、実態を把握していただいて、これは一九九〇年から行っている調査ですから、現状を正確に把握しないとその後の対策というのはとれないと思いますので、こういった現状の正確な把握、努力するとか、今行っているとか、そういう問題じゃなくて、この調査が始まったのは一九九〇年ですからね、本当にこういった手法を改めていただけるかということを厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 おっしゃるとおりに、どう対応するかということの前に、実態をきっちり把握するということは、まず極めて大事なことであります。今のお話を伺っておりまして、私どももそうしたことに努めなきゃいかぬということは十分理解いたしましたので、今後の検討にさせていただきたいと存じます。

橋本(清)委員 もう時間がございませんので、この後、本来ならば、親権の喪失請求などさまざまな質問をさせていただきたかったんですけれども、虐待で苦しんでいらっしゃる本当に幼いとうとい命、また性的虐待で苦しんでいる、そういった子供たちの苦しみを少しでも和らげていただきたいということで、本当に救っていただきたいという思いでおりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、中根康浩君。

中根委員 こんにちは。中根康浩でございます。

 きょうは児童福祉法の一部を改正する法律案の審議ということでございますけれども、前回からの引き続きの宿題といいますか、積み残しのことがありますものですから、まずそういったことに触れながら、法案の審査の方に入っていきたいと思います。

 まず初めに、前回の委員会で資料請求をさせていただきました引っ越し代あるいは委託業務にかかわるもの、それから社会保険事務局あるいは事務センター、それからレセプト点検センター、こういったものの家賃、こういったものにつきましては、昨日までに資料を作成して届けていただいております。このことに対しまして、大変お忙しい中、私どもの要望に対しまして御理解をいただき、お仕事をしていただきましたことに感謝を申し上げますし、この間、与野党の理事の皆様方にも御理解、御協力を賜りましたことにお礼を申し上げたいと思っています。

 このことについては、まだ自分自身、詳細にわたっての分析が終わっておりませんものですから、また改めて質問等をさせていただく機会があろうかと思いますので、本日につきましては、資料を作成していただいたことにつきましてのお礼だけ、まず申し上げておきたいと思います。

 続きまして、今までのこの委員会等における御答弁と異なる事実がいろいろとわかってまいりました。したがいまして、まずそういったことにつきまして、改めて確認作業をしなければならなくなってしまいました。

 ここに、きょう持たせていただいておりますのは、もう既にきのうの段階で内閣の方に報告をされた平成十五年度の決算検査報告、会計検査院から出されたものでございます。

 会計検査院というものは、御案内のとおり、憲法第九十条で規定をされた、内閣から独立した立場で行政をチェックする、そういった機関でありますので、大変権威のある機関である、したがって、そこがつくった検査報告というものは最大限尊重されなければならないというふうに思っております。

 最大限尊重するべきものと、この委員会における大臣あるいは副大臣の皆様方の御答弁が食い違った場合は、我々は、あるいは国民は、どちらを信用していいのかわからなくなってしまいます。

 今までの御答弁の中では、例えばカワグチ技研の問題につきまして申し上げますと、随契は妥当に行われていた、あるいは仕方のないことだった、小口分割発注も意図的ではない、偶然、全国の社会保険事務局、事務所でカワグチ技研さんになってしまった、会計法にも違反をしていない、そういう説明がなされたわけなんですけれども、きのう内閣に報告をされた、この会計検査院の判断はかなり違いますよね。

 全部読み上げる時間はありませんので、関連する重要な部分だけ読み上げさせていただきますと、ひどいですよね、これ。

 例の金銭登録機に関すること。

 「同一日に」、要するに同じ日に、「三回に分けて購入契約を締結する一方、納入は一括して行わせていたり、三日間連続して購入契約を締結し、納入は一括して行わせていたりしているものがあった。 したがって、金銭登録機は大量に調達するものであり、また、複数の会社から販売されるなどしているのに、本庁で一括して調達することなく各社会保険事務局等で小口に分割して随意契約により調達するなどしていて、契約の公正性、透明性、競争性、経済性等が確保されておらず、一般競争契約を原則としている会計法令の趣旨に反し適切でなく、不当と認められる。」と、はっきり断罪をされておる。

 そして、いわゆるパピアート、届出用紙等印刷システムの方なんですけれども、これについては、「使用数量が限られることがあらかじめ予想される印刷システムの導入に当たって、費用対効果を考慮し、その必要性の検討、また、届出書等のコピー等での対応などの代替手段との比較検討がなされていたかについて検査したところ、これらについての具体的な資料が見当たらず、導入決定までの経緯も明らかではない状況となっていた」。「また、同庁では、市区町村に設置した印刷システムの使用状況を全く把握しておらず、」云々。「出力枚数は、設置した九百二十一システム中二百五十四システムにおいて全く無く、使用実績のある六百六十七システムの出力枚数をみても、全体で六万八千六百四十二枚、一システム当たり年間平均百三枚程度であり、ほとんど使用されていないと同然の状況であった。 一方、印刷システムを設置していない市区町村においては、届出書等のコピーで対応したり、社会保険事務局等から届出書等を入手したりすることで十分足りている状況であった。 したがって、上記の使用実績などを考慮すると、印刷システム導入に当たって検討を十分行ったとは認められず、届出書等のコピー等で十分に対応が可能であったのに、印刷システムを導入したことは適切でなく、不当と認められる。」と。

 まさに私どもが疑問に思って主張してきたとおりのことが、会計検査院、憲法で規定された公正な機関によって断罪をされているということ、そのことと、今までこの委員会等で御説明のあったこととの不整合、このことについて、一体どのように厚生労働省あるいは社会保険庁の皆さんはお考えになっておられるのでしょうか。まずお尋ねをしたいと思います。

小林政府参考人 今委員御指摘の、会計検査院の方から私ども社会保険庁の金銭登録機あるいは届出用紙等印刷システム、パピアートと言われております、こういう契約についての御指摘がございました。私どもとして、非常に厳しい御指摘であるということにつきまして重く受けとめておるところでございます。

 カワグチ技研問題に関しましては、公平性あるいは透明性というような観点から、種々御批判をいただいているところでございます。現在、警察の捜査というようなことも行われている、そういう状況でございますので、そういう動きを注視するとともに、また省内には、信頼回復対策推進チームというものを設置させていただきまして、そのもとで調査班も置かせていただいております。この調査班で徹底した調査を行うということで、今進めさせていただいております。

 なお、十六年度につきましては、金銭登録機の調達に関しましては、契約の競争性あるいは透明性ということを確保するために、競争入札で実施、調達をいたしております。また、パピアートの方につきましては、本年七月末で契約の終了ということで取り扱わせていただいているところでございます。

中根委員 今の御答弁にありましたように、ことしの八月には入札で六百六十五台買っているわけなんです。そうしましたら、カワグチから随契で買ったときよりも約二万円安くなっているんですね。このことについて、明らかに社会保険庁の皆さんの職務怠慢、あるいは意図的な犯罪的行為によって、国民に大きな損失をもたらしたというふうに考えることもできるわけです。

 したがいまして、私どもは、予算執行職員等の責任に関する法律、昭和二十五年に制定されている法律なんですけれども、この予算執行職員等の責任に関する法律に基づいて、随契と入札によって行われた差額、あるいは、パピアートなどは、まさに必要のないものが二十二億円、保険料がむだ遣いをされた。こういったことにかんがみて、ぜひとも、カワグチ技研、あるいはこの予算執行に関係した職員の方々に、国民に対して弁償をしてもらいたいというふうにも考えさせていただいております。

 会計検査院の職員さんにお尋ねをいたしますが、このことについて検討をするお考えはありませんか。

重松会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 私ども会計検査院は、予算執行職員等の責任に関する法律、予責法と言われておりますが、この第四条一項の規定に基づきまして、予算執行職員が故意または重大な過失により法令等に違反して支出等の行為をしたことにより国に損害を与えたと認めるときは、その事実があるかどうかを審理し、弁償責任の有無及び弁償額を検定することとなっております。そして、本院の毎年度の決算検査報告での指摘の事態に関しましても、今御説明申し上げました予責法に定める弁償責任の要件に該当するかどうかなど、必要な検討を行っているところでございます。

 したがいまして、今回の社会保険庁の契約に係る指摘の事態につきましても、今後同様な検討を行ってまいるものと承知しております。

中根委員 会計検査院は、本当に重大な責務を帯びているにもかかわらず、一方では、検査対象に対する天下り、そういったものがあったりしたり、あるいは他の省庁との交流人事があったりして、検査が甘くなっているのではないかというふうな問題意識も持たれているわけであります。したがいまして、ここは一番、年金問題に関して国民の意識も高まっている、そういった中で、この予責法というものの適用もぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 この検査報告で不当という言葉であらわしたものは、いろいろなランクがある中で最も悪質性の高いものであるというふうに言われているわけでありますので、ぜひ、悪質性の高いこのカワグチ技研の問題について、会計検査院、今まで以上に、今までも本当にこの十五年度についてはよく検査をしていただいたと思っております。これからも、税金のむだ遣いだけではない、保険料のむだ遣いも決して許さない、そういう姿勢で臨んでいただきたいと思います。このことについては、国民も大きな関心を持っています。

 きょうは引用が多くて申しわけないんですけれども、例えば十一月四日の朝日新聞の朝刊、「声」という、オピニオン、投稿欄に、「納得できない 監修料の受領」、これは監修料についてなんですけれども、抜粋して申し上げますと、「納税者として、その返還を要求したい。厚労省や社保庁に限らず他の省庁でも行われていて、国家公務員としての省庁全体の調査を国民に開示する義務がある。 国が大半を買い上げた補助事業的出版物の監修を行い、監修料を受け取っていたことは補助金の還流である。たとえ国家公務員倫理法に抵触しなくても国民として納得し難い。法改正を行う必要がある。そもそも監修や校閲ができるのは本人の努力を加味しても、公務員としての日常の職務から生じた知識や資料が源泉である。 言い換えれば、税金で培われた知識に再度税金で報酬を支払う形になり、監修料は二重支払いとなる。」こういうふうに、岐阜県の中津川の人が投稿しておられるんです。まさにこのとおりだと思うんです。

 したがいまして、私ども民主党といたしましては、議員立法で、国家公務員倫理法の改正によって、今まで報告の義務のない係長以下の方にすべて、監修料等の受け取りについて公開、報告をする義務をお願いする法律の改正案を、この臨時国会において今提出をする準備中だということを申し加えておきたいと思います。

 ここにも、この監修料ということについても、返還、国民のそういう希望がある、強い意思があるわけなんです。ですから、カワグチ技研、明らかに不当であるというような事件に関しては、もう逮捕者も出ているわけでありますので、改めて会計検査院の方々の御奮闘をお願い申し上げたいと思います。

 いま一つ、今までと違うというものがあります。今申し上げました監修料のことなんです。

 今まで監修料は、時間外に行う、職場外で行う、そして、監修料は監修業務を行った本人が受け取り、確定申告を行い、本人の所得として本人が費消している、そういう説明でございました。もともと私たちは、監修業務の実態が怪しい、それから監修料の決められ方も、例えば出版物にすれば、初版分なのか、発行部数なのか、総売り上げなのか、一体どこなのかわからない、庁内でプールされて、本人以外も使っているのではないかという疑問も持っています。つまりは、国家公務員倫理法上、報告義務のない人が受け取り、義務のある方も含めてみんなで使っている。

 例えばタクシー代。この間の独自調査報告でも、タクシー代四億円。あるいは懇親会費や夜食代にも何千万円。深夜業の夜食代で四千八百万円、それから職員同士の懇親会費などで八千万円使われていた。タクシー代で四億円使うというのは、どういうふうに使ったら使えるのか、夜食代に五千万円も使うというのは、何を食べたら使えるのか、本当にわけがわからないわけなんですけれども、こういう実態。

 実は、今まで皆さんが説明してこられた監修あるいは監修料というものと実態との乖離といいますか、は明らかにある。それが、また新聞の報道で恐縮なんですけれども、新聞報道だから、違っていたら違っているというふうにおっしゃっていただければいいんですけれども。十一月の七日の日曜日、読売新聞、「監修作業を行った各課の職員が監修料を業者から受け取ることはほとんどなく、所属する課の庶務担当職員が代わりに、口座振り込みや現金で受領していた。 各課の庶務担当職員は、こうして集めた監修料のほぼ全額を、同庁の予算編成などの業務を行う経理課予算班の担当職員に現金で「上納」」「各課が実際に行った監修の作業量とは無関係に、各課に所属する職員の人数に応じて分配額を決め、春、秋二回に分けて各課の庶務担当職員に渡していた。 各課への分配額は、職員一人当たり年間二十万円前後で計算されていたとみられ、職員数の多い企画課などでは、年間一千万円を超えていた。各課は、分配された監修料を、残業時の夜食代や職員同士の懇親会費、書籍代などに充てており、正規の予算にはない「裏金」として使っていた。 経理課が監修料を組織的に分配するシステムは、少なくとも十年前には出来上がっていた」「一方、同庁では、職員が特定のタクシー会社のチケットを使った場合、経理課が一括して代金を支払っていた。タクシー代は毎月数百万円に上っていた。経理課は、このタクシー会社への支払いを、各課に分配する分とは別に取り置いた監修料で賄っていた。」

 そして、「経理課は、同庁の本庁の各課から吸い上げた監修料の中からタクシー代分を取り置いており、同課担当者の机の中には、三千万円以上の現金が保管されていることもあった」。

 三千万円も机の中に保管していて何とも思わないといいますか、それが当たり前に行われている社会保険庁の職場というのは一体何なのかと、この新聞を見た、我々だけじゃなくて国民が、これはあいた口がふさがらないといいますか、何と思われるのか、恐ろしい思いがいたします。これは改めて答弁は求めません。

 あわせて、きょう、資料を請求したいと思っております。

 監修業務が適正に行われていたかどうかを調べてもらいたいんですけれども、その一環といたしまして、国家公務員法第六条に、利害関係者からの依頼に応じて行った講演、監修、著述、編さん等は倫理監督官の承認が必要だというふうに規定をされております。

 この第六条に基づいて、承認を求める資料、そしてそれを倫理監督官が承認をした資料、それぞれが全部きちんとそろっているかどうかということを確認したいと思っておりますので、ぜひ。いつまでとは申しませんけれども、いつまでと申し上げたらいい……(発言する者あり)一週間ぐらいですね、一週間ぐらいの時間を置いて。というか、これはもう既に、承認を求める資料あるいはそれを承認、決裁をした資料というのは、過去のことですから、もう既にどこかに蓄積されているはずなんです。一週間なくても、今すぐにでも出していただけるような内容だと思いますけれども、あえて一週間の時間でこの資料請求をさせていただきたいと思っております。

 それから、これも今までの議論でやったことの確認なんですけれども、またカワグチで申しわけありません、カワグチからの金銭登録機の導入の理由の一つなんですけれども、平成十四年の七月から六件の個人カードの紛失、盗難、それによって被保険者のプライバシー、個人情報の流出ということを防ぐために金銭登録機を導入するという理由も今まで説明をされています。

 これまた新聞記事があるんですね。十一月二日の朝日新聞の朝刊です。小さな記事なんですけれども、目にとまりました。「国民年金未納一覧表を紛失」、愛知県豊田市の推進員ということであります。愛知県豊田市の愛知社会保険事務局の管轄の中の豊田社会保険事務所に所属する国民年金推進員の方が、国民年金の未納者十三人の氏名を記した戸別訪問用対象者一覧表を紛失したというふうにあります。

 六件のたび重なる紛失盗難事件を今までどのように総括し、反省をしていたのか。そして、そのことを防ぐために金銭登録機を導入したにもかかわらず、この豊田の推進員の方は金銭登録機を使っていなかったのでしょうか。このあたりの事情をよく調べていただいて、これもまた一週間後で結構でございますので、私どもにその詳細を御説明いただきたいと思っております。

 それから、会計検査院の方にお願いをしたいことがあります。

 国会法第百五条によって、国会が会計検査院に調査をお願いすることができるということになっております。今までも、この国会法百五条に基づいて調査が行われたのが、例えば、衆議院においては公的宿泊施設の運営に関する会計検査、それから、参議院において政府開発援助、ODAに関する調査、それぞれ衆参一件ずつ、この国会法百五条を適用した調査が会計検査院によって行われているわけでございます。

 改めて本日お願いを申し上げたいのは、この社会保険庁の年金保険料を財源とした随意契約、それから、社会保険庁が作成をする出版物、書籍、冊子、パンフレット、こういったものが適正な部数、本当につくられていたか、あるいは不必要なものがつくられていなかったか、それに対する監修業務は適正に行われていたか、監修料の金額は適切なものであったか、そういった事柄につきまして、会計検査院の方にぜひ、今回、カワグチのことについてお調べをいただいたわけなんですけれども、この国会法百五条に基づく調査を社会保険庁について適用し、行っていただきたい。このことを、この委員会として御決定をいただきたいと思っております。

 これは、与党の皆様方の御理解もなければ進んでいかない話でありますので、ぜひとも、与党の皆さんにも御理解をいただき、百五条の適用をこの厚生労働委員会として求めてまいりたいと思っていますので、ぜひ、委員長、お取り計らいを賜りますように、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

鴨下委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議をいたします。

中根委員 ぜひ理事会で御協議をいただいて、これは、民主党は当然反対をしないわけなんですけれども、社民党さんも反対をしない、共産党さんも反対をしない。そうすると、自民党さんと公明党さんにかかってくるわけなんです。これを反対されたら、反対した人は社会保険庁の味方だ、疑惑隠しだというふうにだれもが思うことでしょう。

 それでは、児童福祉法の方に入っていきたいと思います。

 その前に、ちょっと新潟のことについて触れなければなりません。

 今までの御答弁の中で、大臣も前向きにお話をいただいておるのが、グリーンピア津南とか年金福祉施設なども被災者の方々に積極的に活用していただいて、いっときでも暖かい場所でお休みをいただいて、温かい食べ物を食べていただいて、温泉につかっていただいて、いやしていただくということを行っていただくことをお約束いただいておりますけれども、今までの段階で、例えばグリーンピア津南、あるいはそのほかの福祉施設、どのように具体的に活用していただいているか、実績といいますか、その状況を教えていただきたいと思います。

小林政府参考人 今御指摘の、新潟県中越地震の関係でございます。実績ということで、簡単に申し上げます。十一月の八日現在ということで調べてまいりました。

 まず、年金の福祉施設に関しましては、被災地に所在いたします国民年金保養センターこしじという施設がございます。ここの全室を被災者の方々に提供するということで、延べ二百九十八名の被災者の方の受け入れを実施しております。また、新潟の厚生年金スポーツセンターなどにおきまして、災害復旧関係者の宿泊施設といたしまして、延べ千四百九十二名の受け入れを行っております。

 また、御指摘のありましたグリーンピア津南の関係でございますが、被災者向けの取り組みとして、避難所としての施設の提供あるいは大浴場の開放ということをやっておりますが、八日時点の実績といたしまして、延べ六百三十三人の被災者の受け入れを行っておりますほか、大浴場を開放して、延べ一千八十七名の方々の御利用をいただいております。また、災害復旧関係者の宿泊施設といたしまして、延べ千四百八十九名の方の受け入れを行ったというところでございます。

中根委員 ありがとうございます。

 そういったものは将来廃止をされていくのかもしれませんけれども、最後に一花咲かせる意味で、積極的に活用していただいて、被災者の方々に暖かい場所を提供していただきたい、これからも続けていただきたい、そんなふうに思っております。

 地元の話をよくするんですけれども、私の地元の方で、社会福祉法人が児童養護施設をつくろうとした。そうしましたら、場所を確保したつもりで、本当にもう設計をして建てようと準備をしたら、地元の同意が取りつけられない。地元の同意書を持ってこないと役所が承認できない、こんな話になって、急遽、その予定していた場所を変更して、改めて、その地元の方々が了承してもらえるような場所を探し直したというようなことがあるんです。それは、児童養護施設、米山寮というんですけれども、そういった事例がもし全国至るところにあるとするならば、これは少し問題視しなければいけないという思いなんです。

 この地元同意書というものは、必要なものなのか、一体どんなものなのか、どんなふうに厚生労働省の方はとらえておられるのか、お聞きしたいと思います。

伍藤政府参考人 これは児童福祉関係だけではなくて社会福祉関係全体に通ずる話だとは思いますが、御指摘のありましたのは児童養護施設の設置のケースでございます。社会福祉法人が児童養護施設を設置する場合には都道府県知事の認可を得る必要があるわけでありまして、その際の認可に当たって、地域住民の同意が必要とされているわけではございません。

 ただ、私ども、国として、施設整備費の国庫補助の協議を県を通じて受けますが、その際に、地域住民との調整状況というのをその協議書の中に一応参考までに明記をしていただく、こういう形にしておるわけでございます。したがいまして、私どもに上がってくる段階では、その調整がついたものが国庫補助協議として毎年具体的に上がってくる、こういう状況になっておりますので、全国にどのぐらいあるかということは私どもの段階では把握できない、こういうことでございます。

中根委員 現実に地元同意書が必要とされているケースがあるみたいですので。地元同意書みたいなものはとっちゃいけないと。何というか欠格条項みたいなもので、この地元同意書がないとできないというのは。もうとっちゃいけない、そういう作業すらしちゃいけない、むしろ、こういう施設は地元の方々が温かく受け入れていただいて、最初は嫌かもしれないですけれども、交流をすることによって、お互いに理解し合って助け合っていくというような日本でありたいというふうに思っておりますので、難しいのかもしれませんけれども、厚生労働省としても、うまく御指導を賜りたいというふうに思っております。

 質問時間が終了いたしましたという紙が回ってきてしまったんですけれども、実は、児童売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書、このことについてもお尋ねをしたかったんです。

 子どもの権利条約というものができてから十年になった。子どもの権利条約の上に新たにこういう条約を締結することの意味合い、意義。子どもの権利条約が制定されてから、二回にわたって我が国は勧告を受けております。その勧告によっていろいろ国内法の整備等を行っていかなければいけなかったのに、そのことも遅々として進まなかったという実情があります。

 この条約を批准するだけしておいて、なかなか国際的な約束を守っていかない、そういった現実問題についてお尋ねしたかったんですけれども、済みません、前段で時間をとり過ぎてしまいました。時間配分が下手で申しわけないと思っております。

 先ほど請求させていただきました資料でございますけれども、一週間というふうに申し上げたんですけれども、私どもの理事さんの方から、一週間では長過ぎる、来週の火曜日までにと言い直しなさいというふうな御指示がありましたものですから、来週の火曜日までということで、申しわけありませんが、よろしくお願いを申し上げて、本日の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時四十八分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山井和則君。

山井委員 三十分という限られた時間ですが、児童福祉法改正を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 その前に、わざわざ村瀬社会保険庁長官にも来ていただいて非常に恐縮なんですが、ひとつ、社会保険庁の問題、年金の問題について、尾辻大臣と村瀬長官にお聞きしたいと思います。

 きょうの新聞を見ますと、国民年金保険料の納付率のアップが非常に少ない。このままでは村瀬長官がリーダーシップをとっておられる納付率のアップにつながらないんじゃないか、目標が達成できないんじゃないかという危機感も出てきているわけです。そんな中で、村瀬長官も記者会見で、国民年金あるいは社会保険庁の信頼回復に努めねばこの納付率は向上しないだろうということをおっしゃっておられます。そのとおりだと思います。

 そこで、ちょっと変わった質問をするかもしれませんが、尾辻大臣、村瀬長官、聞くところによると、テレビには出られないということを聞いております、出演されないと。私もそれは、おやっと思いまして、例えば村瀬長官は、この国会の審議の中でも、これからこうやって社会保険庁を改革していくんだということを、リーダーシップをもって答弁もしておられるわけですから、録画であってもいいですけれども、テレビ番組にも出て、そういうことを堂々と述べられてはどうかと思っております。

 もうちょっと具体的に言いますと、例えばですけれども、別に特定の番組ということはないんですが、例えば土曜日の朝、「みのもんたのサタデーずばッと」という番組がありまして、社会保険庁の問題をいつもやっていられるので、私もよく見ているんですが、この番組は、尾辻大臣は、九月に就任されて以来六週間出演依頼をしているけれども、一回も出てくださらない。それで、村瀬長官については、五月に就任が決まってから三十四週間、ずっと出てくださいということを言っているけれども、出演されないというふうになっております。

 これは、私は別に特定の番組の応援をする気はさらさらないんですが、素朴な疑問として、これだけ年金や社会保険庁に対して疑問や不信があって信頼回復が必要なときに、尾辻大臣も村瀬長官も、録画でもいいと向こうは言っているわけですから日程調整可能だと思うんですが、堂々と述べられた方が、本当に年金の信頼回復のためにいいのではないかと私は思います。

 このことについて、尾辻大臣、村瀬長官、答弁をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 私どもが担当いたします社会保障といいますのは、国民生活に一番密着したものでございます。したがいまして、私どもがこう考える、あるいはこうしたいというようなことをできるだけ丁寧に御説明する、このことは大変重要なことでございます。そして、機会をとらえてそうしなきゃならないとも思っております。ですから、そういうふうな趣旨の、社会保障についての内容を御説明申し上げる機会があるような番組については、これは私としてはできるだけ出演させていただきたいと、まず基本的に思っております。

 ただ、もう率直に申し上げますが、大臣になりまして、こんなに忙しいものだとは本当に思いませんでした。ですから、今のところ、これも正直申し上げているんですが、時間がないんです。

 それと、もう一つ御理解いただきたいのは、衆議院の先生方には、参議院の全国比例区の事情というのがきっと余りおわかりいただけないだろうと思うのであえて申し上げるんですが、全国、全国区とも言った時代がありますが、皆さんとの御縁があります。そうすると、四十七都道府県なんです。そして、週末の数が五十二回なんです、一年で。ですから、週末五十二回の数で四十七都道府県というと、一つずつ回ってちょうど一年に全国一周できる、そういう数になりまして、とにかくもうびたっと週末の日程が先に詰まっているというような事情もありますことも、決して言いわけするわけじゃありません、御理解いただければと思ってあえて申し上げたところであります。

山井委員 その理由はあんまりじゃないかというふうに思います。やはり大臣になられたら日本の社会保障をしょって立つわけですから。そういう事情で週末が詰まっているというのは、私は理由にならないと思いますし、短時間の録画も可能なわけですから、ぜひともお願いしたいと思います。

 村瀬長官も答弁をお願いします。

村瀬政府参考人 今の御質問にお答えさせていただきたいと思います。

 まず初めに、マスコミの皆さん方に対する対応でございますけれども、記者クラブを通じまして、記者会見であるとか、それから、定期的に記者懇談会を開催させていただいておりまして、そういう点では、社会保険庁の改革につきまして積極的に開示をし、ニュース等でも流させていただいております。したがいまして、まず私自身の気持ちとしまして、メディアに対してはいろいろな形で情報発信はさせていただいている、このように考えております。

 一方、御存じのように、社会保険庁は実施庁でございまして、国民の皆さんと接する事務局、事務所、ここが具体的にどう変わったかというのが多分一番大事な部分だろうというふうに思っております。したがいまして、私自身は微力ながら、現在、仕事の重点を全国各地の事務所、事務局を回ることに力を注いでございます。きょう、この国会が終了した後も大阪、兵庫へ行く予定にしておりまして、極力現場の職員としっかり話をした上で、国民の皆さん方に、社会保険庁はこういう形で変わったという形を示したい、こういう形で動いてございます。

 この十一月、社会保険庁変わります宣言ということで、庁内的にしておりまして、具体的にはどういう形で変わっているかということをお話し申し上げますと、この十一月の六日から十二日まで年金週間ということで、現在、相談業務の充実をさせていただいております。その中で、初めて六日、七日の土曜、日曜日に相談業務の開庁をさせていただきまして、全国の皆さん方から非常に喜ばれたという結果も出てございます。また、この十二日までは七時までの時間延長ということで相談業務を延ばさせていただいていまして、国民の皆さんから見て見える形で変えるのがやはり非常に重要なのではなかろうかというふうに考えております。

 それから、先ほど収納率の問題が出ましたけれども、昨日、国民年金の上半期の収納率を公表させていただきました。従来ですと年に一度の収納率の公表でございますけれども、前倒しでどんどん情報開示いたしまして、その部分をやはり国民の皆さんにもわかっていただく。また、実際、実施をしております事務局、事務所の職員も目標に向かってしっかり行動を起こす、これが極めて重要なんだろうというふうに私自身は考えております。そういう点で、改革を具体的な形で国民の皆さんがわかっていただける、そういうところにまず重点を置いて仕事をさせていただけたらということをぜひお願い申し上げたいと思います。

 それから、今具体的な問題で、テレビへの出演というのがありましたけれども、スケジュールが合えば、私自身は出られるものであれば出たいと思っております。その点だけはお話を申し上げたいと思います。

 以上でございます。

山井委員 スケジュールが合えば出るということですが、はっきり言って、もう三十四週間も断っておられるわけですね。三十四週間もずっとスケジュールが合わなかったということは考えられないんですけれども。

 個別のことを言ってなんですけれども、そうしたら、この番組にも村瀬長官も、録画ででもいいですから、出るということでいいんですね。

 もちろん、現場を回ることは私も大事だと思いますから、ぜひやってもらったらいいと思います。しかし、信頼回復のためには、テレビから呼ばれたら出ていって、今おっしゃったようなことを堂々と、不信があったあるいは隠ぺい体質が疑われていた今までの社会保険庁を私がこう変えていくんだということを、現場を回りつつ、テレビというメディアでも訴えられたらいいと思うんですよ。

 村瀬長官、もう一回答弁をお願いします。

村瀬政府参考人 先ほども申し上げましたように、メディアに対してはいろいろな意味で発信をさせていただいているつもりでございます。したがいまして、今たまたま個別の番組の問題で出る出ないというお話がありましたけれども、本件については、趣旨等も踏まえて、その出演の可否については、スケジュールと、それから、何を御報道されたいかという中身を見ながら、個別判断をさせていただくということでお願いできたらというふうに思っております。

山井委員 でも、記者会見とかそういう場じゃなくて、テレビから出演依頼があったら基本的には前向きに検討するというのが、まさに社会保険庁の改革の旗頭である長官の務めじゃないんですか。今の答弁を聞いていると、趣旨を聞いて、その番組の性格を見て、社会保険庁を批判している番組だったら出ないとか、何かそういう意味ですか。

 国民の信頼を得るためには、いろいろ厳しい意見も聞くかもしれないけれども、そこに出ていって堂々と、自分は変えていきますということを訴えるべきなんじゃないでしょうか。テレビに対しては、記者会見というような、社会保険庁さんの土俵の問題じゃなくて、呼ばれたらテレビにも出演して訴えていくということを言うべきじゃないですか。長官、いかがですか。それとも、テレビには出ないんですか、やはり、呼ばれても、これからずっと。いつまで出ないんですか。

村瀬政府参考人 先ほども申し上げておりますように、実は記者さんからも物すごい強烈な質問をばんばん受けておりまして、それについては適正にお答えをしているつもりでございます。したがいまして、メディアに対してお答えをしていないということはまずあり得ないという認識に立っていただけたらと思います。(山井委員「出演依頼のことを質問しているんです」と呼ぶ)したがいまして、個別の番組については、何をもって御報道されたいかというのははっきりさせる必要があろうかと思いますので、それによりまして個別に判断させていただくということでお答え申し上げたいと思います。

山井委員 時間にも限りがありますので、きょうはここでやめておきますが、私は今の答弁を聞いて何を感じたかというと、社会保険庁が信頼回復のために国民に対して説明責任を果たす気が村瀬長官はないんだな、そういうことを私は感じました。

 やはり信頼を回復するためには、長官の最大の役目は、国民に対して、改革をやっていくんだ、こういう具体的なことをするんだということを出ていってPRすることだと私は思います。そういう意味では、本当に、村瀬長官のその説明責任の意識というものを私は疑いたいと思います。また、そういう番組を見た国民がどう思うか。何回言っても長官は出てこない。現場を回るのはいいけれども、現場を回るとともに、録画でも出たらいいじゃないですか。私は非常に、そういうことでは本当に長官の姿勢に疑問を感じています。ぜひともテレビに出て、堂々と自分の思いを語っていただきたいと私は思います。

 では、本題の児童福祉法の質問に移らせていただきます。

 一昨日、児童相談所に私も訪問させていただきまして、また昨日も児童養護施設やグループホーム、何カ所か訪問をさせていただきました。その中で、尾辻大臣に要望とともに質問を申し上げたいんですけれども。

 例えば、私、昨夜もグループホームに行って、そこのお子さんたちと一緒に食事をさせてもらいましたが、そのお子さん方が、大きな施設からグループホームに移ってきて、とても居心地がいい、こちらの方がいいということを口々におっしゃっておられました。

 例えば一例ですが、あるお子さんは、大きな施設からグループホームに移ってきて、非常に声が大きくて落ちつかないというケースがあるんですね。なぜかというと、御存じのように、児童養護施設は、人員配置基準が六対一で、一人の職員が六人の虐待を受けたりしている子供たちのお世話をしているけれども、三交代だったら一対十八、やはりこの数では、どうしても、施設のお子さん方は大きな声を出して自己アピールをしないと職員さんも構ってくれないという、ある意味で愛情が十分に受けられないというようなことにもなると思うんですね。これは要望だけですので。

 ですから、今までから委員会で問題になっていることですけれども、こういう人員配置基準をふやしたり、あるいはグループホームを推進したり、そして、中学生、高校生の方がきのうもおっしゃったのは、中学生、高校生になったらやはり個室に入りたいということをおっしゃっていました。四人部屋とかだったら一人で好きな音楽も聞けないということをおっしゃっておられました。ぜひともそういうことも推進をしていただきたいと思います。

 この要望をして、そこで質問なんですが。

 児童養護施設を出てから一番困っていることは何かということを、きのう、御本人さんに聞かせていただきました。そうしたら、やはり住まいがないと。児童養護施設を十八歳で出たら、大学に行くにも、寮がないとだめで、勤めるとしても、寮があったり住み込みのところしかだめで、選択肢が非常に限られると。もっと言えば、もし何かの事情で仕事をやめてしまったら、寮がなくなるわけですから、住むところもなくなってしまう。そうしたら、仕事を何らかの事情でやめたら、友達の家に転がり込んだりして、転々とする中で、やはりまた身を崩してしまうというケースもあるそうなんですね。

 そういう意味では、児童福祉施設を出た十八歳のお子さんたちの住宅の確保とかあるいは家賃の補助とか。貸すのだと、これは後で返すのがまたなかなか大変なんですよ。十八歳で、親からも援助を得られない、ひとりぼっちで、持参金がほとんどゼロの子供に、お金を貸すから、はい百万、将来返してくださいよといっても、そう簡単に返せないわけなんですよね。そういう意味では、こういう家賃補助とか住宅の確保ということをまず要望したいと思います。大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

尾辻国務大臣 御指摘のとおりに、児童養護施設等を退所した児童が社会的に自立するために住まいを確保するということは、これは極めて重要なことでございます。

 このために、退所後、保護者等の支援が見込めない場合には、就職の際に必要となる住居費等として約十四万円を給付するとともに、住居確保のために必要な資金の低利の貸し付けも行っているところでございます。さらに、平成十五年十月末から、雇用促進住宅の入居要件を緩和するなどいたしておりまして、施設退所後の児童の住居確保の支援に努めているところでございます。

 今申し上げたようなことを行っておるところでございますが、退所後の児童の社会的自立を積極的に推進してまいりたい、こう考えます。

山井委員 ぜひわかっていただきたいのは、普通の若者にお金を貸すのと、もう本当に親からの支援も受けられない、ひとりぼっちの十八歳の子供にお金を貸すのとでは、その借金を負う負担が全然違うということなんですね。ですから、私は、家賃に関しては、もう返さなくていいお金で出してあげるということ。それと、今おっしゃった住宅もまだまだ満杯なわけですから、そういうのをぜひとも積極的にしていただきたいと思っております。

 村瀬長官、もう終わりましたので、お帰りいただいて結構です、お忙しいと思いますから。ありがとうございました。

 それでは、次に、衛藤副大臣に御質問したいと思います。

 お配りした資料、少し大きな話に移りたいんですが、例えばノルウェーの児童福祉はどうなっているか。私も昔スウェーデンに二年間行っておりましたので、こういう北欧の福祉のことは関心があるんですけれども、そのノルウェーの一例を見てみますと、例えば上の表にありますように、要は、ケア支援対応というのが、自宅以外なんですけれども、これが五千二百六十一人で、生活支援対応、つまりこれは在宅サービスなんですね。このグラフにもありますように、近年は施設というのが非常に減ってグループホームなどになってきて、逆に、伸びているのは在宅支援ということなんです。レスパイトのケア、週末のウイークエンドホームという、週末だけ里親さんがお世話するケースとか、あるいはホームヘルプとか育児支援とか。

 衛藤副大臣も御存じのように、老人福祉でしたら、在宅サービスをまずやって、無理ならば施設ですよね。ところが、今の児童福祉の場合はこの在宅メニューがないから、親と切り離すか、あるいは、危険だけれども親と一緒にいてもらうか、二つに一つみたいな感じがあると思うんです。そういう意味では、今後の方向性としては、こういう在宅での支援サービスをもっともっと拡充していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

衛藤副大臣 虐待をめぐる児童の問題も、高齢者の問題も障害者の問題も、私ども、福祉全般がそういう方向を今とろうとしているというぐあいに思います。そういう意味で、児童福祉につきましても、この虐待の問題につきましても、本来であれば、隔絶するというやり方よりも、その地域なら地域の中で、そして家庭の中でできるということが最もすばらしいことだというように思っております。そういう意味で、虐待についての在宅支援サービスについて、まだいろいろなものが整っていないということは認識しながら、これを進めていかなければいけないというふうに思っております。

山井委員 これは方向性の問題ですけれども、ぜひともそういうサービスを拡充していっていただきたいと思います。

 次に、また尾辻大臣にお伺いしたいんです。

 先日の金曜日の質問の中で、コンビニを一つの窓口として、コンビニの店員さんが虐待を受けているおそれのあるお子さんたちを、あざとか雰囲気とかで発見した場合に、児童相談所とか警察に通報しやすいように、ポスターを張るなり、あるいはチェーンストア協会を通じて協力要請をしてほしいということを言ったんですけれども。

 それの延長線上なんですけれども、今地域に児童・民生委員さんとかあります。子供の相談の窓口になっているところですけれども、そういうところにお子さんが行くというケースはほぼあり得ないと思うんですよね。そういう意味では、やはりコンビニも児童虐待のときの駆け込み寺なんだ、コンビニに行ったら何とか助けてもらえるんだと。もちろん、その店員さんが助けるということじゃないですけれども、そこでSOSを発したらその店員さんが児童相談所や警察に通報してくださるんだというようなことを世の中にPRして、チェーンストア協会からも協力を得たら、もちろんそれで何件の子供がコンビニに駆け込むかというのは別として、やはり社会的に子供にとっても安心感があるし、また親にしても、余り殴ったり、あざがあって、一緒にコンビニに行ったら、これは大変なことになるなというふうな抑制効果も出てくるわけですから、そういうような形でチェーンストア協会に要望をしていただきたいと思いますが、この件についていかがでしょうか。

尾辻国務大臣 先日御提案がございましたコンビニエンスストアに対しましては、昨日、協力依頼を行ったところでございます。まず早速行いました。これで、お話のように、児童が立ち寄りやすいと思われるコンビニエンスストアなどで今後適切な対応が図られると大変ありがたいと思いますし、期待もしております。とりあえずお願いをしてみましたので、今後のこと、よくまた事態の推移を見ながら考えてみたいと思います。

山井委員 次に、また衛藤副大臣にお伺いしたいと思います。

 虐待を受けた子供を診療するために児童精神科医というのが必要だと思うんですけれども、その養成が全然追いついていなかったり、諸外国にあるのにその講座が日本の医学部になかったり、また、それの診療に対する報酬が非常に低かったりという問題があります。

 専門家の方々から聞くと、そういう児童精神科医という専門家をしっかり養成していくことが必要だというふうに言われております。理想的には、児童相談所にそういうお医者さんを常駐させていくとか、難しいかもしれませんが、やはりそういう方向性も検討していかないとだめだと思います。この養成の件に関して、副大臣、いかがでしょうか。

衛藤副大臣 今回、児童相談所を充実しながら、看護師さんや保健師さんにもということで、その福祉の方の仕事の任用規定を、いわゆる質量ともに上げようとした、バランスをとっていこうとしたところにまだまだ児童精神科医と言われるような方が本当に少ないということが言えると思います。

 私も、例えば知的障害者の療育等で、大分で県会議員のころ懸命にやっていましたけれども、その専門の指導のお医者さんが実質的には来てくれません、いらっしゃいませんでした。心当たりの方は何人かおられたんですが、やはりなかなか、そこまでの責任を持っていざやるとなると、極めて難しいというようなことで。実は、そういう専門の先生は全般的にそうだというふうに思います。

 現実に、虐待のみならず、知的障害の方も、精神障害の方も、あるいは最近の、発達障害の方も、自閉症の方も、登校拒否の方も、相談するところを、実質的には専門の先生方を探しながら、皆そこのところでうろうろしているというのが実態であると思います。

 私の方も、子供もちょっと学校に行かない時期がありまして、本人は登校拒否と言っていませんけれども、周りの人は登校拒否と言っておりますが、本人は、僕は違う、行けなかっただけだ、ぐあいが悪くて学校に行けなかっただけであって、登校拒否ではないなんということを言っておりましたけれども、そのときにも、やはり専門の先生を探すのに大変苦労したところでございます。小児科の先生あるいは精神科の先生、いろいろな方のところをずっと行ったりしましたけれども。

 全般において、まさに今先生御指摘のとおり、児童精神科医と言われる方々、この乳幼児にかけての、相談に乗って、指導ができる専門の方々を本気で養成していく必要があるんではないのかというぐあいに思っています。

 厚生労働省といたしましても、それを何とか図ろうじゃないかということで今スタートしたところでございまして、平成十六年度内に検討会、今年度中に検討会を持って、そしてまたそのことを具体的に検討してまいりたいと思っています。来年には、それらの検討を受けながら専門の養成プログラムをつくっていきたい、養成のためのプログラムをつくっていきたいというぐあいに思っている次第でございます。

山井委員 児童虐待死と言われる形で毎年四十人、五十人の方々が、残念ながら、お子さんたちが亡くなっていっている、それはどんどんふえているような状況なわけですね。また、児童虐待の件数は二万五千件以上にどんどんふえていっている。

 そんな中で、大臣に要望とお伺いをしたいんです。

 これは、児童虐待防止法も改正されたし、また今回、児童福祉法も改正されるわけですけれども、審議を通じても、まだまだ日暮れて道遠しだと。これで虐待が撲滅できると自信を持って言える人というのはほとんどいないと思うんですね。そういう意味では、これは相当の決意を持ってやらないと、私は予算にも限りがある中で難しいと思うのです。

 ここで大臣の決意を、そして厚生労働省の決意を示していただく意味でも、児童虐待死ゼロ作戦なのか、児童虐待ゼロ作戦なのか、ネーミングはわかりませんけれども、やはりそういうものをしっかりつくって――今まで寝たきり老人ゼロ作戦、待機児童ゼロ作戦はありましたけれども、もうほかでもない、命にかかわる問題なわけですから、やはり厚生労働省、そして尾辻大臣が先頭を切って、児童虐待ゼロ作戦というのを力強くやっていく。そして、先ほど言ったような、コンビニ、いろいろなことを含めて、啓発も国民的にやっていくんだということが、私は政治家の責務としてやはり必要だと思うのですね。こういう法改正はしたけれども、虐待は減らせなかったでは済まない問題だと思います。

 その点について、そういうゼロ作戦の推進ということ、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 とにかく、思いついて、いいと思うことは何でも、そして一歩一歩進めていくということが必要なことなんだろうというふうに思います。

 その中で、今御指摘いただきましたように、虐待による死亡事例の撲滅作戦といったような、国民にとってわかりやすい指標なども検討いたしまして、国全体で児童虐待防止対策の推進に強力に取り組んでまいりたいと考えます。

山井委員 私、先日も児童相談所に行ったのですが、児童相談所の方々はやはり苦悩されているんですね。虐待で死亡事故が起こったら、児童相談所が悪者になる。しかし、実際に親のところに行っても、親に対して強制力を持って指導することがなかなか難しい。言うことを聞かなかったからといって罰則もない。そういう刀がないのに戦えと言われてもなかなか苦しい、逆にもう過労で児童福祉司が倒れていっているような状態だということをおっしゃっています。

 そこで尾辻大臣にお伺いしたいのですが、児童相談所を訪問されたことがあるかということと、されたことがあるんではないかと思いますが、今の児童相談所に対してどうしたらいいと思っていられるか、大臣からお聞きしたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、この前の委員会でのお話もございましたから、一昨日、私も児童相談所へ行ってまいりました。そして、本当に皆さん方の御苦労というのを目の当たりにしてきました。大変だなと思いました。

 その中で、具体的に、今私が、何ができる、どうしようということを直ちに具体的に申し上げるよりも、とにかく、今後全力で取り組んでいきたいということをお約束を申し上げておきたいと思います。

山井委員 時間が来ましたので締めくくらせていただきますが、最後に大臣に改めてお願いがございますが、先ほどおっしゃったように、厚生大臣の仕事が非常に激務である、それとまた、御自分の政治家としての事情で、全国を回るのが、なかなか日程が、週末が大変であるということをおっしゃいましたけれども、日本の社会保障、日本の子供、お年寄り、御病気の方々あるいは働く方々の健康と命をつかさどる最高の責任者なんですから、私は、せめて厚生大臣をされている間は、そういう御自分の選挙の事情のことはおっしゃらずに、厚生労働省の仕事最優先で働いていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど申し上げたことを選挙の事情だというふうに御理解いただきましたら、それはまずいなと思いましたので、あえて立たせていただきました。

 先ほど申し上げたのは、決してそういうつもりでもありません。とにかく、まさに社会保障に関係のある皆さんが多いものですから、説明に来いとか話に来いとかというお話で、まさに今の仕事の重要な部分としてやらせていただいているという意味でありまして、全国、御縁は多いものですからと申し上げましたが、決して選挙の事情でという意味で申し上げたものではございませんので、ぜひそのように御理解いただきたいと思います。

 そして、おっしゃるように、大臣であります間、もう全身全霊、力を振り絞って、大臣としての仕事に邁進していきたい、そう思っております。

山井委員 以上で終わります。

北川委員長代理 次に、石毛えい子君。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。

 本日は、児童福祉法の一部改正法案、主として母子福祉ですとか児童の福祉の事業にかかわる、そこのあたりを中心に質問をしたいと思います。

 初めに、少し私の質問の視点と申しましょうか、そのようなことも含めながら申し上げたいと思います。

 今回の児童福祉法の改正は、まさに基礎自治体である市町村が、子供の安全、もっと積極的に言えば、子供の最善の利益を守るために、児童虐待の防止を含めて、普遍的、総括的に児童福祉事業に取り組むことを法定化しようとしている大変重要な法案であるというふうに認識をしているものでございます。言葉をかえて言いますと、子供の妊娠、出産から子育て支援、要保護児童への支援、必要な場合には市町村から児童相談所へ連携をとること、また、児童相談所が単独で、それ自体としての活動も積極的に進めることということで、まさに、子供が出生してからサポートを必要とする状態に至るまで、地域に根差してシステムとして重層的に構築していく、そういう体系性を持った提案だと思いますし、それが個々の法案に分解されてと申しましょうか、規定されているというふうに私は受けとめております。

 ですから、問題は、これが果たしてきちっとワークするかどうか、ワークさせるように中身を込めていかなければならないというところが今回の法律改正の大きなポイントであると思いますし、とりわけ、新しく事務事業を規定される市町村から見れば、これがどんな中身になっていくんだろうということを、ある種緊張感を持って、大変注目をしているというふうに私は理解をしております。

 そこで、そういう視点に立ちまして、本当にシステムがワークするように、実効性を持つように働かなければならないだろうというその観点から、以下、質問をさせていただきたいというふうに考えるところでございます。

 そこで、まず第一の質問でございますけれども、第十条、市町村が児童及び妊産婦の福祉に関しという規定がございますけれども、厚生労働省はこの第十条一項一号、二号、加えて三号も含めまして、どのような事業を実際に想定されているのでしょうか。そしてまた、どのような職種を念頭に置いてこの規定をされているのでしょうか。ここを生き生きと、具体的にお示しいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 今回市町村に、虐待を中心といたしまして、児童福祉の総括的な任務を担っていただく、こういう規定を置いたわけでありますが、今御指摘のありました改正法の十条第一項でありますが、第一号につきましては、児童及び妊産婦の福祉に関する養育状況や保護を要する状況の有無等の実情の把握に努めること、こういうことを想定しておりますし、第二号は、支援を必要とする者に適切な保健福祉サービスを紹介するなどの情報の提供を行う、こういった趣旨のことを予定しております。第三号につきましては、家庭等からの相談に応じ、必要な調査や指導を行うことというようなことを考えておりまして、いわゆる一般の子育て支援サービスなど身近な資源を活用して市町村が中心にこういった問題に対応する、こういうことを予定しております。

 どういった職種が担当するかということでありますが、こういった業務につきましては、従来から、児童福祉の担当課でありますとか、あるいは市の場合には福祉事務所が子育て支援サービスを担って担当しておりますが、こういった従来からやっておる福祉担当の職員、それから保健相談などの事業を担当しております保健師、こういった方々が主としてこういった任務を担っていただけるものというふうに考えておりますが、各市町村において、それぞれ工夫をしながら児童相談に対応する体制を整えていただきたいというふうに思っております。

石毛委員 局長、法文に書いてあるところはなるべく御指摘にならないで、時間を有効にお願いしたいと思います。

 それでは、この法律は、二項にあります専門的な知識及び技術を必要とするものについて、児童相談所の技術的援助、助言を求めなければならない、それとの見合いの関係で、児童相談所の方は応じなければならないという、この関係のところが重要だということで。

 もちろんここは重要なんですけれども、局長の御答弁よりもっと幅広く、市町村が子供の出生だとか福祉だとかにかかわっているところはもっと広く、今福祉事務所と保健師、先ほど橋本委員に対しては市町村母子保健センターをお挙げになりましたけれども、もっと幅広く、地域でさまざまに子供にかかわっている、例えば保育所だってそうですし、公民館の保育室もありますし、公民館のいろいろな講座もありますし、それから市町村が医療機関を持っている場合の小児医療の場もあるでしょうし、さまざまにたくさんあるところまでまなざしをもっと広げて地域を、今までの行政はもちろん重要ですけれども、それに加えて、さまざまにあるところをやはりきちっと国としてメッセージを市町村に発していかないと、この法律が持つ画期性というようなものがなかなか市町村行政の方には移っていかないのではないか、そういうことを私は若干懸念するものですから、もっと、質問で生き生きと伝わるようにと申し上げましたのはそういう意味もありまして、もし御答弁を重ねていただけるようでしたら、お願いいたします。

伍藤政府参考人 答弁があれかもしれませんが、御指摘のとおり、従来から市町村はいろいろな形で児童の問題に取り組んでおりますし、いろいろかかわりがありますので、そういった資源をできるだけ総合的に有効に活用していただく、まさに総合性を持って市町村が児童の問題に当たっていただきたい、そういう趣旨は私として全く同感でございます。

石毛委員 次の質問も、他の委員の方からなされた質問をもう一度させていただくことになりますけれども、新しい事業として、保健師による育児支援家庭訪問事業がなかなか伸びないでいて、まさに虐待で命を落とす子供さんの年齢は乳児が多いということで、保健師さんによる訪問の重要性、これに着眼して厚生労働省はこの事業を新設したわけですけれども、なかなかふえないのは自治体の側の人件費を捻出していくという財政事情にあるのではという御答弁がこれまでだったというふうに私は伺いました。

 ただ、私は、それだけが事情ではないのではないかと。もっと、子育てに伴ってさまざまな家庭の技術的困難ですとかいろいろな問題がある、そのことに対して適切なサービスの内容が届けられていないという現実が、なかなか伸びないでいる、そういう理由があるのではないかというふうに私は受けとめているんですけれども、もちろん、財政事情も重要な要件としてございますが、そのあたり、これからこの事業を積極的に普及していくために、どこをどのように変えていったら伸びるのかというふうにとらえていらっしゃるか、そこらあたりをお聞かせください。

伍藤政府参考人 この事業につきましては、本年度から発足をしたばかりでありまして、御指摘のとおり、私どもが想定したほど市町村でお取り上げいただいていないという実情があるわけでありますが、その原因として、今御指摘のありましたような、自治体の財政難、あるいはこの事業の意義というものについての理解がまだ浸透していない面もあるのではないかなというふうな気もいたしますし、これから事業を実施していく上で、これは保健と福祉の総合的な体制づくりというのが必要になりますが、そういった人材の確保ということについても市町村でなかなかちゅうちょしている面があるのかな、こういうふうに思っております。

 それから、この事業内容そのものが本当に効果的かどうかというような御指摘でありますが、これは非常に柔軟にやっていただくということを私どもも考えておりまして、それぞれ一定のメルクマールで選んだ家庭に出向いて、口頭で指導するだけではなくて、いろいろ技術的な助言、支援を行った後に、実際にどういう状況かということも見守って確認をするというところまでやっていただきたいというようなことも考えておりますし、滞在時間についても、一定の時間内にやるというような規制もありませんし、支援内容に合わせて、いろいろ家庭における滞在時間も決めていただければいいわけでありまして、それぞれ実際に現場でやりながら、試行錯誤を重ねながら、できるだけ柔軟に実施をしていただきたいというふうに思っておりますが。

 今言ったように、これは、それぞれの家庭の事情に合わせてやるという大変難しい、難度の高い行政の施策だろうと私は思っておりますので、そういう個々の家庭の個別のニーズにどうやって対応していくかということで、今しばらく、少し浸透を図っていくには時間が必要かな、こういう気がいたしております。

石毛委員 関連して、最初に質問通告をした部分を少し私が落としてしまいましたので、戻って質問をしたいと思います。

 私は、新聞などで、虐待で亡くなりました子供さんに関する報道を読んでいてとても気になるのは、同居している男性のせっかんというか暴力によって命を落としているという実例がかなりあるというふうに受けとめております。そうした事実を前提としますときに、児童福祉法の改正の中に、例えば先ほど指摘をしました第十条もそうですけれども、今の育児支援家庭訪問事業も、父親の存在、同居人である男性の存在とか、それから妊産婦にかかわって配偶者がどのような存在であるのかとか、そうしたことに関する記述がもうちょっとクリアに法律の中に出てきてもいいのではないか。

 話が少し飛躍しますけれども、法律の名前が母子福祉法であって、一人親福祉法にはまだ変わっていませんし、父子家庭に対する積極的な規定が行き届いているわけでもない、むしろ欠如していると言っても言い過ぎではないと思います。

 とにかく、今の子育ての困難というのは、ひとり母親だけの課題ではなくて、子供にかかわる大人の問題であり、男女両性の問題であるとすれば、ちょっと話が広がってしまいますけれども、今まで子供にかかわってきている職種というのは、事実上、男女両方参入にはなっていますけれども、保育士は女性の方が多いですし、保健師も圧倒的に女性の方が多いですし、まあ社会福祉士になればそうでもないでしょうし、児童福祉司になればまた男性の方が多くて、これはこれでまた男女のバランスという意味では課題があるのではないかというふうに思っているんですけれども。

 もう少し、子供と妊産婦とその家庭といいますか、あるいは両親とか男女とか、そこが法律に見えるような書きぶりというのはなかったものなのかとか、あるいは厚生労働省にそこのあたりの認識がどの程度おありになるのかという、この際ですので、ちょっとそこのあたりも含めて、もう一度局長の、まあ余り形式にとらわれないで結構ですので、忌憚のないところで、御意見あるいはこれからの方向性、お考えになっているところをお示しいただければと思います。

伍藤政府参考人 包括的な御質問でなかなか難しいんですが、私ども、児童あるいは妊産婦、こういうふうな規定になっておりますが、今日の社会で生じておるさまざまな問題にやはり機敏に対応していくということが一番必要なことだろうというふうに思っておりますし、そういった意味では、従来、母子家庭対策が中心でありましたが、父子家庭はどうするのかとか、いろいろな形で今までの制度のひずみとかゆがみの是正を求められている分野はいろいろあると思います。

 児童や家庭の問題はその縮図みたいなところでもありますから、おっしゃるような御趣旨の、いろいろな家庭の総合的な問題にできるだけ幅広く対応していく、先ほど申し上げたとおりでありますが、市町村がそういう総合的な窓口になる機能をぜひ果たしていただきたいというような趣旨でとらえていきたいというふうに思っております。

石毛委員 ぜひその方向で、ビジュアルに、見えるように、理解できるように方向性をお示しいただければと思います。

 第十条の一号等々の規定のしぶりに関しましても、児童及び妊産婦及びその家庭の福祉に関しというような書きぶりも不可能ではなかったのかという思いもいたしますし、三号は、書きぶりは「家庭その他からの相談に応じ、」という書き方にもなっております。

 私は、法律的に書きぶりを精査したわけではありませんけれども、申し上げたいことは、やはり潜在意識として、社会的にもまだ子育ては母親という意識が強い中で、実態は父親、男性の起こしている事件だとか、あるいは責任だとかということもきちっと社会の中で認識されるような、そういう法定化を求めたかったという、こちら側の思いも含めまして受け取っていただければと思います。

 次でございますけれども、二十一条の二十九、これは従前からある条文で、条文の数が変わったというところと、あと若干書きぶりが変わっている、条文の数も変わっていないのでしょうか、中身の書きぶりが若干訂正になっているということですけれども、子育て支援事業につきまして、具体的にどのような窓口あるいはどのような組織体制を想定しておられるのか、どのように実施されているのかということを簡単に御紹介いただきたいと思います。

伍藤政府参考人 市町村が行います子育て支援事業でございますが、これは例えば、地域子育て支援センター事業でありますとか、つどいの広場の事業、あるいは一時保育とか子育ての短期支援事業、こういった種類のものが各種あるわけであります。

 どういう窓口で行うかということで、これは市町村が直接自分の職員でやることも可能でありますが、できるだけ柔軟にということで、具体的にこういったものを、保護者に対して助言を行うというコーディネート事業につきましては、主として、地域子育て支援センターでありますとか、つどいの広場でありますとか、そういうところが窓口になって、幅広く住民にこういったサービスの存在を周知したり、その情報を提供していったり、こういうようなことを想定しておるところでございます。

石毛委員 今の厚生労働省の事業で、児童家庭支援センターというのがございます。これが来年度の予算要求に関しましては、現在六十カ所から六十八カ所に拡充していくという予算要求になっていますが、この児童家庭支援センターは、ただいまのこの第二十一条の二十九に相当するというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。ここは質問で問うてはいなかったんですけれども、簡単にお答えいただけるところだと思いますので。

伍藤政府参考人 児童家庭支援センターにつきましては、これは各児童養護施設等に附属して設置をしておるような事業でございまして、ここで今御指摘のあります二十一条の二十九、これは市町村レベルでいろんな子育てのための支援事業を行うということでありまして、この児童家庭支援センターは、直接にはこれには入らないというふうに理解しております。

石毛委員 そうしますと、従来の保育行政の中で、子育て支援事業のようなことが想定されてきたと思いますけれども、そうしたことの実践、先ほどのつどいの広場とかというようなことであって、具体的にセンター的なものが今はあるということではないという、確認ですが。

伍藤政府参考人 現状におきましては、地域子育て支援センターが中心になってやっておるという事例が一番多いのではないかというふうに思っております。

石毛委員 それでは、次の質問です。

 これも確認ですが、児童福祉法で規定している要保護児童と児童虐待防止法の児童虐待の定義、あるいは虐待を受けたと思われる児童というのは、特段留意して理解をする必要があるのかないのか、そこのあたりの確認をお願いいたします。

伍藤政府参考人 児童福祉法と児童虐待防止法に、児童福祉法の方は、要保護児童を発見した者はこれこれに通告しなければならない、児童虐待防止法は、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者はこれこれに通告しなければならない、同じような規定が置かれているわけで、その関係の御質問であります。

 要保護児童とは、保護者が行方不明の児童あるいは虐待を受けた児童のほかに、障害児あるいは非行児なども幅広く家庭の状況によっては含まれるというふうに理解をしておりますので、幅はこの要保護児童はかなり広いというふうなことではないかと思っております。

 一方、虐待防止法の虐待を受けたと思われる児童とは、そのうちの虐待児童につきまして、虐待を受けたことが明らかな児童に加えて、今回の改正によりまして、虐待の事実が必ずしも明らかでなくても一般の人の目から見れば主観的に児童虐待があったのではないかと思われる児童ということで、虐待の分野については、虐待防止法の方が虐待の概念を少し広げて、できるだけ迅速に対応する、こういう関係に一般法と特別法の関係でなっておるというふうに理解をしております。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

石毛委員 それでは次でございますけれども、第二十五条の六です。

 これは、市町村、都道府県福祉事務所、児童相談所が通告を受けたときに、速やかに児童の状況の把握を行うというふうに規定をしております。虐待防止法のときも、この「速やかに、」というのは論議の焦点になったことの一つでございますけれども、児童福祉法の方で規定して、「速やかに、」というのはどのように解することができるのでしょうか。特に、市町村がこれを行う場合に、やはり市町村の側からすれば大変留意すべき事項だと思いますので、御答弁ください。

伍藤政府参考人 通告があったときから安全確認までの時間につきましては、御指摘のとおり、虐待防止法の改正の際も議論をされたことでございますが、時間を示すということは、一律に示すことはなかなか困難であるということでございます。

 その理由の一つは、期間を示すと、かえって、場合によっては逆に、初動がおくれるのではないか、そういうことも懸念をされますし、それから、市町村に寄せられます事案は非常にさまざまでありますが、こういった事案の優先度にかかわらず、一律の期間設定あるいは時間の設定ということが適切かどうか、こういった問題があるわけでありまして、これは虐待防止法のときにも同じような議論を行ったかと思いますが、そういった観点から、一律に示すことは困難というふうに考えております。

 ただ、私ども、その初動の重要性ということは、極めて重要なことだというふうに認識をしておりますので、緊急一時保護の要否を判断するための指標、これはいろいろ細かく示しておりますが、これの活用を一層促すというようなことのほかに、二十四時間三百六十五日体制というようなことで、今回、十七年度の予算要求に所要の予算を要求しているところでございまして、こういった体制整備によって、必要な、迅速な処置が行われるように努力していきたいというふうに思っております。

石毛委員 後で、市町村と児童相談所の連携の境界のようなところでももう一度かかわってくるかと思いますけれども、今回、市町村が受ける子育ての相談といいますか、これは非常に幅広いわけですよね。

 それで、例えば、比較的難易度の低い、少し子育てのテクニカルなことをアドバイスすれば済むような場合だったら、そんなに急がなくても済むのかもしれない。だけれども、もしかしたら、そのもとに虐待というようなことが入っているかもしれないという、そこのあたりの見分けは非常に難しいんだと思うんですね。

 だから、今おっしゃられました二十四時間三百六十五日、緊急に対応するというシステムがつくられるのは結構なんだけれども、もう一歩、これは少しゆっくりしてもいいのかなと思うようなことのあたりの見分けが現場では非常に難しい。ましてや、今回法定されて、その意味で初めて稼働し出す、事実上はなかったわけじゃないでしょうけれども、法定化されたという要件は市町村にとっては非常に重いものがあると思いますから、そこのあたりで具体的に少し、前回からガイドラインを出していくという御答弁はいろんな部分で厚生労働省はされていますけれども、この「速やかに、」につきましての判断のスタンダードといいましょうか基準、基準といいますかね、考え方、それを少し概念化してというか、類型化してお示しになるというところはいかがでしょうか。

伍藤政府参考人 市町村が事務を処理する上で、大変難問といいますか、頭を痛めるところだと思いますので、私ども、今まとめようとしておりますガイドラインの中で、今御指摘のありましたような観点からの、どこまで具体化してできるかは難しい問題でありますが、できるだけそういう方向で努力をしてみたいと思っております。

石毛委員 第二十五条の二、要保護児童対策地域協議会に関してでございます。

 この二十五条の二は、設置することができるという、できる規定になっておりますけれども、これはもっと積極的に、設置するものとするとか、しなければならないという義務化をかけるかどうかというところまでは検討の余地があるかもしれませんけれども、もう少し積極的に設置ということを置く必要があったのではないかと私は考えるんですけれども、このあたりを御説明ください。

伍藤政府参考人 市町村の事務として、今回、児童の問題を扱う、こういうことは明記したわけでありますが、どういった体制でこれに対応するかということで、この要保護児童対策地域協議会というのがこれまでのいろんな経験に基づくと非常に有効ではないか、こういう経験則といいますか事例の積み上げから今回これを法律に盛り込んだわけでありますが、これはいわば行政機関を中心とする横の連携確保のためのような組織でありますから、これをすべて市町村に必置を義務づけるということまではなかなか法律上難しいのかなということで、任意でありますが、都道府県及び市町村がこれを設置できる、こういう規定を置いて、事実上これを促進していこうという決意を示したものでございます。

石毛委員 今回のこの児童福祉法の改正は、十条で市町村に児童及び妊産婦の福祉に関して責任を課して、そして、要保護児童に関して、要保護児童対策地域協議会も含めて、要保護児童というピックアップというか、そこをつけて、そして、協議会をつくる市町村もつくらない市町村も、必要に応じて、専門的な技術的な助言や技術を必要とする場合、あるいは児福法第二十七条にかかわるような場合に関しては、児相に相談するなり児相との連携をという、こういう構造になっているわけですね。それで、市町村の協議会をつくるところと、必置ではないからつくらないところ、調査をすれば、児童虐待防止のネットワークはかなりの自治体にできているようでございますから、中身はおくとしまして、事実上はかなりできてきている。

 この法律の特徴は、一つは、児相と市町村との二十七条を介した先ほど申しました連携と、それからもう一つは、協議会ができるところはその協議会でのいわば検討というか、それができるようなシステムなんだと思うんですよ。

 この委員会の中で、児童福祉司の専門性がかなり議論になりました。それも重要だと思います。ですけれども、一つ一つの職種の方、職能の方が、御自分の見る見方がそれで必要であるか十分であるか、あるいはどこかに何か課題があるのかということを考える場合に、他のセクションの方が指摘をされる方との協議の中で気がつくという、そのことが非常に重要なんだと思うんです。どんなに優秀な方だって、一人の職能あるいは一つの職能の中での見方というのは当然限界があるということは、これは能力の問題ではなくて、関係の中で物事を考え決めて決断をしていくということからいえば、能力が高いか低いかじゃなくて、人が何かを判断し決定していく、あるいはある組織が何かを判断し決定していく場合に、やはり、異職種が協議をする、もちろん関連し合うわけですけれども、そこがとても重要なところ。

 私は、だから、協議会はやはり、今、必置の御時世ではないと行革の方は盛んに言うわけですけれども、でも、組織の必置は、それはそれで不可能なことではない、可能なこと。だから、せめて、やはり市町村はどの市町村も協議会を設けるものとするというような規定のしぶりの方が、現場の人の苦労を少なくするんじゃないか。一人の職能、一つの職能が物事の責任を負うというのは大変な負担なわけですから、協議のシステムを自治体が持つということがとても重要なことだというふうに私は考えて、その意味で、二十五条の二が「置くことができる。」というできる規定であるというのは、非常に隔靴掻痒の感があるといいましょうか。

 そしてまた、確かに、厚生労働省が調査をされまして、虐待防止ネットワークは四十数%、五割近くつくっているわけですけれども、やはりそこも予算措置がつかなければ、やはり一つの職能の人が努力をするというのは限界があるわけで、実際、この法律をつくられても、なかなか市町村でワークするのは困難だというふうに私は思うんですね。

 ある自治体でネットワークを稼働させるのに、少なくとも数千万単位のお金はやはり欲しい、必要だということ。今、都道府県の方から助成金が出ていて、それで何とかこなしているけれどもという。組織をマネジメントする人、動かす人、そしてその組織の中できちっと協議をするというシステムじゃないと、協議会ができて、設置できて、そこで、場合によっては警察も含み、学校も含みということで協議できる場を持つところと、それから、できなくて――私、だから第十条の局長の答弁にもこだわったんですけれども、従来の保健師さんだとか従来の福祉事務所のケースワーカーが、幾らワークせよといったって、それは非常に厳しいということを申し上げたいわけなんですが、大臣、いかがでしょうか、このあたりは。

尾辻国務大臣 私ども厚生労働省といたしましては、そのネットワークの設置については、とにかくできる限り各市町村においてつくっていただきたい、設置していただきたい、そう願っておりますし、また、積極的にも働きかけてまいりたいと思っておるところでございます。

 ただ、今般の、では、法律上ということでどう考えたかといいますと、それぞれの業務をどのような体制のもとで実施するかについては、それぞれの地方公共団体の判断を尊重すべきである、こういうふうに考えたものですから、こういう規定にしたところでございます。

 しかし、今の委員の御指摘などを聞いておりまして、いろいろまた今後の課題になるのかなというふうには思って聞いておりました。

石毛委員 もう一度、時間があれば申し上げたいと思いますけれども、もう一つ、これは前回水島委員も質問されていたことと重なる部分もあるかと思いますけれども、専門的な案件であるということを媒介にして市町村と都道府県、児童相談所が役割分担をするというその境界、そこのところはどう判断するんですかということと、それから、そこに判断するということを含めまして、市町村の側の携わるスタッフのスキルの養成をどのように行うのかということは、非常に大事であり重要な課題だと思います。

 ここは研修でと、御答弁はそういうことなのかもしれませんけれども、私が現場で伺いましたことは、今の児童相談所の方が伺ったら、児童相談所の方はまた、もう緊張するかもしれませんけれども、児童福祉司を一定期間派遣していただきたい。それは地域性もあるかと思います、いろいろな要件を検討してでいいんだと思いますけれども、やはり、児童福祉司を派遣して、そして実際にワークする中で経験を積んで、身につけて、自分たちがそれを引き受けていくという、そのようなことをぜひ考えていただきたいというのが現場から伺った意見ではあるんですけれども、いかがでしょうか。

伍藤政府参考人 いろいろなケースについての児童相談所と市町村の役割分担というようなことだと思いますが、一律にどういうケースということで基準を示すことはなかなか困難なことだというふうに思っております。

 一般的には、地域の子育て支援を使って、その市町村で対応できるものは市町村中心の対応をぜひ行っていただきたいということに尽きるわけでございますが、そういった中で児童相談所と市町村のかかわりというのが当然いろいろ出てまいりますので、児童相談所がその市町村のネットワークの一員になるということもあり得ますし、そうじゃなくても、それぞれの市町村から送られた重大なケースについて、その事後的なフォローを市町村にお願いする、あるいは、市町村が担当するものについても、一定のものについては児童相談所がバックアップをして助言する、いろいろなケースがあり得ると思いますので、そういった市町村と児童相談所の対応関係の中で、市町村職員自体の技術レベルといいますか専門性も高めていっていただく必要があるのかなということで、ここのところは大変難しい課題でありますので、私どもも制度がスタートいたしましたら、そういう状況をよく見ながら、どういった市町村職員の体制づくりをしていったらいいのかということについてはよく検討していきたいというふうに思っております。

石毛委員 局長の御答弁で、対応できるものは市町村でとおっしゃいましたけれども、対応できるかどうかの見きわめが非常に難しいわけで、対応できるものが市町村でということがわかるぐらいだったら、精神的なあるいは身体的なプレッシャーを市町村職員が感じることはないだろう。

 ましてや、これに関して、特定の予算づけがどれぐらいされるのかというのはこれからだと思いますけれども、来年度の予算要求の中ではないですよね。予算の要求の中で、ありますか。市町村の側でこれに関してで。そのことも含めてきちっと検討していただかなければということを申し上げたいということ。

 もう一点、これは職員の仕事にかかわってですけれども、児童相談所の児童福祉司は児童福祉司としての権能を法律的に付与されているわけですよね。指導だとか、さまざまあります。場合によっては措置。措置は、今回、市町村の仕事ではありませんから、そこはおくとしまして、指導だとか、それから聴取をすることだとか、その権能が市町村の職員にどれだけ明定されるのかということが、仕事ができるかどうかということにかかわってくる。

 それで、ちょっと実情として、ぜひぜひ、あれもこれも言っている感じなんですけれども、やはり児童虐待の問題とか子供の福祉の問題で難しいのは大都市の問題だと思います。見えない家族がいっぱいふえてきている。

 見えない家族、見えない母子・父子福祉を探すのにどういうところが有効なのかといえば、先ほど山井委員は、一つはコンビニを挙げられましたけれども、でも、新しく引っ越してきて、住民票を出すわけでもないようなところでかかわっているのは、例えば不動産屋さんがいらっしゃるだろうとか。

 だから、従来の福祉だとか保健だとかという領域ではないところに、もっとネットワークが広がっていく。そういうところとも連携していかなければならないというときに、市町村の職員がどれぐらいの、権能というと少し表現が厳しいというか、かたいかもしれませんけれども、どういうことができるのかということが、もっときちっとわかるようにならないと、やはり実際、市町村はなかなかワークしにくい。自分たちは何に基づいて聞き取りに行くことができるんだろうかとか。そういうこととあわせて、専門的な資質をどういうふうに担保するか、獲得するかということだと思うんですけれども、どうでしょうか。

伍藤政府参考人 具体的にどのように対応していくかということにつきましては、そういった援助の指針、そういったものを盛り込みましたガイドラインを、何回もお答えしておりますが、この中で、できるだけ市町村職員が、これを権能というのか何というか、職務権限といいますか、どういうことができるかということも含めて、できるだけ具体的なものをお示ししていきたいというふうに思っておりますし、それから、そういった専門性の確保ということにつきましては、これから事業の推移を見ながら、どういった体制で市町村職員の専門性を高めていくかということを引き続き検討していきたいと思っております。

 体制の整備につきましては、来年度の交付税要求の中で、市町村職員あるいは保健師の増員について、引き続き、今、総務省に要求をしているところでございまして、そういった量の面での確保ということについても引き続き努力していきたいと思っております。

石毛委員 ベストのモデルであるのかどうか、私はそういう評価をする力量は持ちませんけれども、たまたまイギリスの児童虐待への対応の「ワーキング・トゥギャザー」という冊子を入手いたしました。

 この冊子の中で、一番最後の方に「援助の必要な子どもとその家族の判定枠組み」ということのモデル図がここに書かれておりまして、この三角の図にとても私は感銘を受けるんですけれども、「子ども 幸福を守り、高める」というのがこの真ん中に書かれておりまして、三角のそれぞれの辺は、「子どもの発達ニーズ」、それから「家族と環境の要因」、そして「親の力量」ということで、それぞれがまた六項目ぐらいに分かれていて、これが別に、虐待の子供の発見あるいは判断というところでも作用すると思いますけれども、普通に支援を必要として登場してくる子供の判断にも該当すると読めます。

 子供が危険な状態にあるかどうかというのは第一義的な判断基準ですけれども、それでも、例えば社会的な要因として、収入がどうか、就労がどうか、社会とのかかわりはどうか、住居はどうかという幅広いアセスメントの仕組みになっているようでございます。

 こうしたことが今の段階で、例えば試案であったとしても、厚生労働省の方から積極的に検討素材として提供されてくれば、もっと基礎自治体、市町村はビビッドに受け答えをすることができるでしょうし、私どももそうしたことを前提にしてもっともっと深い審議ができていく、これは私に関してかもしれませんけれども、できていくというふうに私は思います。

 そういう意味では、もっと積極的に検討状況の開示を、今制度がスタートしたらと局長がたまたま御答弁になりましたので、心もとないなという思いもしながら、そういうことを思いましたので、御紹介をさせていただいたわけでございます。

 私は、これは児童福祉法そのものの第一条、第二条を改正するにも匹敵するような大きな内容の課題だというふうに認識をしております。できれば、第一条に子供の最善の利益の実現とか子供の幸福追求権とかということを書けば、第十一条とか第二十五条の関係がもっとクリアにクローズアップされてきたであろうということを申し上げまして、時間が来てしまいましたので、終わらせていただきたいと思います。ぜひ積極的に中身を詰めていっていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 本日も、大臣、よろしくお願いいたします。きょうは持ち時間がわずか四十五分間で、伺わなければいけないことが本当にたくさんございますので、こちらも早口で失礼いたしますけれども、ぜひ御答弁も必要十分に、明解に、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 今回の法改正でも、自立援助ホームは重要な役割を担わされているわけですけれども、かねてから自立援助ホームへの支援を厚くする必要性は言われてまいりました。自立援助ホームというのは第二種社会福祉事業でございますので、行政のすき間に落ち込んでしまう子供たちや青年たちの受け皿としての貴重な働きをしていると同時に、その性質ゆえに、経済的には苦しいという現実がございます。

 私の地元にも大変すばらしい自立援助ホームがございまして、しっかりと子供たちの心の支えになっておりますけれども、その運営実態は実に厳しく、子供たちのための資金集めで消耗してしまっているというような印象がございます。自立援助ホームの方たちからも、小規模児童養護施設並みの補助金をという要望が出されていると思いますけれども、厚生労働省としても、もっと頑張って支援していただけるのかどうか、まず大臣の御決意を伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 平成十六年度予算におきまして、自立援助ホームにつきましては大幅な改善を図ったと私どもは考えております。

 まず、箇所数が大幅にふえたこと、これはもう御案内だろうと思います。また、一カ所当たりの予算をほぼ二倍にもいたしました。

 さらに、本年六月に閣議決定された少子化社会対策大綱においても、「居住の場所の確保、進学や就業の支援など自立を支援するための施策を講じる。」とされておりますから、今後とも児童の社会的自立の支援に努めてまいりたいと考えます。

水島委員 かなり大幅に拡充していただいているということはもちろん了解した上で、それでもまだ十分ではないというふうに認識をしておりますので、ぜひ、さらに頑張っていただけますように、まずお願いを申し上げておきたいと思います。

 また、自立援助ホームの設置状況は、現在のところ、大きな地域間格差がございまして、自立援助ホームを利用したくてもできない地域がまだ多数派でございます。児童虐待防止ネットワークの設置状況にも大きな地域間格差がございますし、児童福祉司の配置についても、地方交付税積算基礎を満たさないところが六割で、地域間格差が大きいということは大分知られてきたわけでございます。

 現在ですらこのように地域間格差が目立つところを、三位一体改革がどのように決着するかわかりませんけれども、いずれにしても、今後地方分権が進んでいく中で、どうやってナショナルミニマムを確保していくかということについては、大臣はどのようにお考えになっているでしょうか。

尾辻国務大臣 児童虐待対策につきましては、国としてはいろいろと施策の充実を図っているつもりでございますけれども、お話しのように、残念ながら、地方自治体の取り組みについて地域間格差があることも事実でございます。このため、厚生労働省といたしましては、児童虐待対策の重要性、緊急性について、全国会議の場や通知、その他あらゆる手段により、地方自治体に対し理解を求め、積極的な取り組みを促していきたい、こういうふうに考えております。

 また、三位一体の関係との絡みでございますけれども、「地方六団体提案に対する厚生労働省意見」として私どもが出しましたのは、児童虐待対策については、いまだ地方自治体の事務として定着しているとは言えず、今後さらに国が積極的に関与して推進する必要がある事業、こういうふうに意見を述べて、私どもとしてはそうしたい、こういうふうに考えておるところでございます。

水島委員 いろいろ通知を出していただいていても現状で、補助金制度でやっていても現状ということでございますので、恐らくそんな簡単なことではないんだろうと思っております。この点については、ぜひもう少し、どのようにガイドラインをつくって、それをナショナルミニマムとして確保していけるのかというような、その仕組みづくりということは本当に真剣に考えていただかなければいけない時代だと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。また、この点については、改めてこの委員会の中でも伺ってまいりたいと思っております。

 地域間格差ということでもう一つ伺いたいわけですけれども、現在、子供は、その親の居住地の児童相談所がその子供の問題を担当するということになっていると思いますけれども、地域間格差が大きい現状では、子供が、別の自治体の児童相談所の支援を受けたいとか、別の自治体のプログラムに参加したいと希望するということもあり得ると思います。あるいは、子供が家出をして実際にほかの自治体にいるということもあるわけです。

 そういう場合に、原理主義的に親の居住地の児童相談所の方針に従うべきというふうにするのではなく、自治体同士で連携をして、結果として子供にとって最もよい形で支援が受けられるように運用することはできるでしょうか。また、それが、ひいては自治体間の格差をなくしていくというようなことにもつながっていくのではないかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

伍藤政府参考人 支援を必要とする児童に対して、基本的には、その居住地の都道府県あるいは児童相談所が当たっているわけでありますが、相談の内容とか児童の状況によって、居住地以外の都道府県の児童相談所、あるいは各種福祉施設で対応した方がいいと思われる場合には、当該都道府県とそれから受け入れ先の都道府県と協議の上、適切に活用しておるということでやっております。

 現在、いろいろな各種通達等、あるいは運営指針でもそういうことを明記しておりますが、今後ともそういったことが一層図られますよう、周知をしていきたいというふうに思っております。

水島委員 ぜひ、その際に、子供にとって何が一番よいかというその適切さを判断するときに、当事者である子供の意見もきちんと聞いていただきたいと思いますので、その点について一言確認させていただいてよろしいでしょうか。

伍藤政府参考人 相談の内容あるいは児童の状況と先ほど申し上げましたが、児童の状況というのは、児童がどういう思いでいるかということも含んでおることだと思いますので、そういうことを十分踏まえて児童相談所が対応していただきたいというふうに考えております。

水島委員 ありがとうございます。

 さて、この虐待をされた子供たちに良好な家庭的環境を確保していくためには、里親とグループホームが非常に重要な柱だと思っておりますけれども、それと同時に、児童養護施設の人員配置についても、家族のような愛着関係を築くという観点から、しっかりと見直さなければならないと思っております。

 現在の児童養護施設の人員配置基準は余りにも不十分であるということはずっと指摘されてまいりましたし、この審議の中でも、既にほかの方が指摘をされております。日本の児童養護施設では、子供対大人が六対一となっておりまして、交代制で働くので、実際には一人の大人がもっと多くの子供を見なければならないわけですが、ちなみに、私が昨年の夏、青少年問題特別委員会の視察で見てまいりましたノルウェーの青少年ホームでは、子供対大人が一対二という配置でございます。交代制で働くので、マンツーマンの支援をするにはこの基準が必要ということで、日本は六対一、ノルウェーは一対二ということで、完全に逆転をしている数字となっているわけでございます。

 確かに、被虐待児を受け入れる場合の加算などについて、厚生労働省も配慮してくださっているということは承知をしておりますけれども、それにしても、マンツーマンにはほど遠い現状でございます。

 そもそも、厚生労働省として、人員配置の数値目標をどの程度に置いていらっしゃるんでしょうか。ノルウェーのような配置は厚過ぎると思われているのか、それとも、日本もそのくらいを目指していくべきだと考えているのか、厚生労働省として適正な人員配置についての何らかの検討をされたことがあるのか、お聞かせいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 児童養護施設等の人員配置、基本的には、今御紹介のありましたように六対一ということでございますが、この数年来、いろいろな形で複雑化あるいは多様化するニーズにこたえるということで、その最低基準に上乗せする形で、ファミリーソーシャルワーカーの配置でありますとか、虐待に対応する対応職員の配置でありますとか、あるいは、ことしからは心理療法担当職員などの加算、こういうことも導入しておりまして、実質的な意味では、この人員配置、かなり、六対一以上に今体制強化されてきたところでございます。

 どの程度の配置を目標にするかということにつきましては、全体の福祉行政の中で、あるいは財政状況の中で、いろいろ限界もございますのでなかなか難しいわけでありますが、やはり、時代とともに変化し、複雑化しておる児童行政に的確にこたえるということを私ども基本的な認識にしながら、引き続き、ケアの充実のための体制整備について努力していきたいというふうに思っております。

水島委員 たしか、前回の審議の最初に、大臣が、お金がないからということは申し上げないつもりだと言ってくださったことをよく覚えておりまして、大変心強く思ったんですが、今の局長の御答弁も、全体の福祉行政の中で、またその財源を考えてというようなことであるわけですが、まず、ここが理想だけれどもお金がないから現在ここにとどまっているというふうに言っていただければ、こちらも大変わかりやすいわけです。では、どれだけの予算をつければ理想的な数が実現するのかということがもっとわかりやすくなりますので、ぜひ、まず数値目標というものはきちんと、本当に必要な数値として示していただきたいと思っております。

 それが、ひいては、地方分権化の中でのナショナルミニマムの確保というときにも、やはりその数値というのが基準になってくると思いますので、ぜひ、その数値目標ということを示す努力はとても重要だと思っておりますから、最初から、全体の中があるのでなかなかその数値を示すのが難しいという態度をとらずに、理想とするのはこの程度の配置であって、そこに行き着くまでにはまだ予算が足りない、そのようなことを明確にしていただいた方が、よほどよいと思っております。

 ぜひ、今まで、どのくらいの人員配置が適正なのかということについて、目に見える形で、現場の声や専門家の声を聞いて検討してくださったということがないようでございますので、その数値目標を立てるために、現場の声や専門家の声を聞いて、そしていろいろと、子供にとって何が一番よいのかということをきちんと明確にしていただくような努力をしていただいて、そして、その目標に向かって人員配置を厚くしていく努力をまた同時にしていただきたいと思っているんですけれども、このあたりを大臣に、また御決意としてお聞かせいただいてよろしいでしょうか。

尾辻国務大臣 今おっしゃるようなことが極めて大事なことだということは、よく理解をいたします。ただ、今私どもの示せる数字というのは、最低基準であったり、それが具体的には六対一であるわけですが、まさしくその最低基準としてしかお示しできないということは、これは残念なことだと思っております。

 御案内だと思いますけれども、そこで、加算の職員なんかをつけ加えて、実際には三・四五人に一人ぐらいのところまでは頑張っておるわけでありますが、引き続き、おっしゃるようなことも検討の中に入れながら私どもの努力を続けていきたい、こういうふうに思います。

水島委員 恐らく、厚生労働省の方が相手だと、現場の方もお行儀のいいことしかおっしゃらないのかもしれませんけれども、私どもなんかが現場に参りますと、もう本当にすがりつくような勢いで、人が足りないんだから何とかしてくださいと必ず言われるわけでございます。

 それが明らかに変わってきているんだということが目に見えてこないと、現場で働いている方たちも本当に燃え尽きてしまいますので、ぜひ、応援という意味も含めて、きちんと取り組んでいらっしゃるという姿勢を示していただきたいと思いますし、くれぐれも、基本的には六対一で十分だと思いますなどというようなことは、もうゆめゆめおっしゃらないでいただきたいと思います。厚生労働省としては、必要なのはもう十分わかっている、何とかその予算がとれるように、このくらいの人数になるように頑張っているところですというのを言っていただければ、大分現場の方でもまたやる気が出てくると思いますので、ぜひその辺、わかりやすい態度をよろしくお願い申し上げます。

 さて、もう一つ、里親も重要な柱でございまして、同じく、私、昨年の視察で見てまいりましたデンマークのコペンハーゲン市では、親が親子再統合に適した親かどうかを数カ月のうちに判断をして、適していないと判断されれば、一年以内に里親を必ず確保するということでございました。私、そこで、もしも里親が見つからなかったらどうするんですかと間の抜けた質問をいたしましたら、そんなのは市の責任において必ず見つけるんですといって、かえって怒られてしまいましたけれども。

 つまり、子供を施設に一年以上は置かないという決意がそこにあるわけでございます。私も、以前からこの委員会でも申し上げておりますけれども、里親へのサポートを充実させて、もっと里親をふやしていただきたいと思っております。

 厚生労働省もこの方針であると思いますけれども、この点についても、申しわけございませんが、大臣から改めて決意を確認させていただきたいと思います。

伍藤政府参考人 里親の問題でございますが、我が国は、里親の数が、里親での対応が非常に諸外国に比べて少ない、こういう状況でございます。それも、戦後ずっと一貫して里親の数が低下をする、こういう状態でございましたので、この数年来、専門里親制度とか、あるいは親族里親とか、あるいは短期の里親とか、いろいろな制度改革をして、それから、その処遇といいますか、そういったものに対するいろいろな支援というものも充実をするということで、この二、三年、反転の傾向にあります。

 これからぜひ、この里親制度というものについても、大変いい制度といいますか効果的な制度ですが、なかなか一般の国民にわかっていただくことが難しい、私どもの努力不足もあるかと思いますが、そういったことも含めて、謙虚に反省しながら、ぜひ普及に努めてまいりたいと思っております。

尾辻国務大臣 先日来お答え申し上げておりますけれども、なかなかこの里親制度の普及というのが進んでいない、これはもう事実であります。そして、それはいろいろな理由もあるんでしょうが、やはり、今まで私たちがそういう制度になじんでいないところが、大きな理由の一つだろうと思います。

 ですから、できるだけこの問題、皆さんにわかっていただくように努力しながら進めていきたい、こういうふうに思います。

水島委員 ぜひよろしくお願い申し上げます。

 そして、今回の法改正で里親の権限が明確化されるということは結構なことだと思っておりますけれども、ここにまた懲戒という言葉が出てくることに、私はひっかかりを感じるわけでございます。

 そもそも、厚生労働省は、懲戒権というのをどういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

 国連子どもの権利委員会の二〇〇一年の勧告では、従来からの委員会の姿勢を反映して、家庭及び学校におけるあらゆる形態の暴力、しつけ及び規律の維持の形をとるものも含むとされておりますけれども、たとえ軽いものであっても禁じることが勧告されております。

 ところが、日本の民法では、親の懲戒権について何の制約原理もございません。このようなむき出しの懲戒権というのは、少なくとも先進国では珍しくなっていると言ってもよいと思います。日本の民法は明治以来手つかずで、親子関係について真剣に検討されてこなかったと言えるのではないかと私は思っておりますけれども、民法は法務省の所管だと官僚的なことを言わずに、虐待を所管している厚生労働省としても、そろそろ懲戒権のことについてきちんと考えるべきときではないかと思っております。

 虐待をした親の少なからぬ数が、しつけのつもりでやったと言うのは皆様も御存じだと思いますけれども、この現実に、一体大臣としてどのようにお答えになるのかということを伺いたいと思います。しつけを言いわけにしているという事例もあると思いますけれども、本当にしつけと虐待の違いがわからないという不安を訴えてくる親御さんも少なくないわけでございます。懲戒のことに触れずして、虐待防止を本当の意味で行うことはできないと私は思っておりますけれども、大臣の御意見はいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 もう言わずもがなですが、理屈を言えば、民法第八百二十二条において、親権者は必要な範囲でみずからその子を懲戒できることとされておる、このことでございます。

 しかし、いつも問題になりますように、しつけと虐待との間、これをどうきっちり区別するのかというお話でございますけれども、児童虐待防止法に定義する児童虐待に当たる行為である場合には、親の意図にかかわりなく、懲戒権の行使として許されないことは明らかである、これが、私どもが今考えておるものでございます。

水島委員 児童虐待防止法に定義されている虐待といいますと、結局、その児童の人格を傷つけたりとか、そういうことだと思いますけれども、実際に結果を見てみないとわからないというところもございますし、これは私、今、意地悪で申し上げているんじゃなくて、私は子育て相談とかよく受けるんですけれども、そういうときに、自分がやっていることがしつけなのか虐待なのか本当にわからないといって、パニックになっている親御さんがいらっしゃるわけです。

 ですから、例えば、厚生労働省としては、子供をしつけるときには基本的には手は上げないとか、何かそういう、もう少しわかりやすく言ってあげていただいた方が、子育て支援としてはずっとよいと思うんです。実際に私も子供をたたかないで育てておりますけれども、たたかないでも実際に育てられますので、ぜひそういう形での、たたかないで子育てをしていくというノウハウを、もっときちんと厚生労働省として示していただきたいと思います。

 実際に、民間レベルのノウハウはいろいろございまして、そういう意味では学術的に参考にできるものもあると思いますので、きちんとその辺については、やはりたたく子育てはよくない、たたかないでこういうふうにした方がむしろ子育てとして効果的だし、お互いに感情的にならないできちんとできますというようなことを、もう少し、もう一歩踏み込んで示していただきたいと思っておりますけれども、何かそういう方向で、大臣、御検討いただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 お話を伺いながら、昔我が子をぶん殴ったことを反省しておりますけれども、いろいろな御意見もあると思います、よく勉強させていただきたいと思います。

水島委員 尾辻大臣の弁護をするわけではないんですが、昔はもっと地域の子育て力がありましたので、親が少しぐらい感情的であっても、ほかの大人がそれを補ってくれたりという機能が昔はありましたので、昔に比べて今の方が、親が子供をたたくということの虐待的な要素というんでしょうか、それは多分、昔より今の方がずっと高まっていると思いますので、現在の子育て環境に即した検討をぜひ進めていただきたいと思います。

 皆様、多分、昔子育てされた方は、自分も殴ったからというようなことで、つい現在の状況を見てしまうと思うんですけれども、現在、本当に、子供とつながっている大人は親しかいないというようなお子さんも多くいらっしゃるわけですので、ぜひ、そんな中で、この懲戒の問題をもう一度きちんと考えていただきたいと思っております。

 そして、きょうは法務省の方にもいらしていただいているんですが、実際に子どもの権利委員会の勧告があるわけですけれども、この勧告も踏まえまして、法務省では懲戒権についてどのような検討を進めてこられているでしょうか。

 そもそも、親権者として子供に対して何をすべきであり、何をしてはならないかという点の社会全体での検討が進んでいないために、家庭内虐待も施設内虐待も起こってきていると思いますので、そろそろきちんと整理すべき時期だと思いますけれども、法務省はいかがでしょうか。

深山政府参考人 児童虐待への対処措置として懲戒権に制限を加えるべきではないかという御指摘は、これまでもたびたびされております。

 そのたびに、民法を所管している法務省としては、懲戒権のあり方について検討はしてきているんですけれども、先ほど来出ていますように、民法の規定というのは、親権者が必要な範囲内でみずからその子を懲戒することができるという、非常にシンプルなものでございます。これは、親権者が、子の監護上、子の非行や過誤を矯正し、それを指導するために必要かつ相当な範囲内の措置をとることを権利として認めたものでございます。この懲戒行為が、子の監護上必要かつ相当な範囲内のものであるかどうかというのは、一般的な解釈として、その当時の健全な常識によって判断されるべきものである、こう言われております。

 しかしながら、いずれにしましても、懲戒権は親が子のために行うべきものですから、児童虐待と判断されるような行為は懲戒権の濫用でありまして、許容されないことは明らかであります。

 ところで、民法は、民法上の権利すべてについてですけれども、権利の全般についてその濫用が許されないということを、民法第一条第三項において明確に規定をしております。したがいまして、民法上、さまざまな権利のうち懲戒権についてだけ、その濫用が許されないということを改めて条文で明定をするというようなことをする必要はないのではないか、そういうふうに考えております。

水島委員 その権利の濫用ということのほかに、懲戒権に含まれているものが一体何なのかという、行為として何が含まれているのかということも、ここでもう一つのテーマだと思うんです。

 実際に、国連の子どもの権利委員会の勧告として、しつけであっても、しつけ及び規律の維持の形をとるものであっても、また、たとえ軽いものであっても、子供に対するあらゆる形の暴力を禁ずる、そのようなことが出ている中で、法務省として、この懲戒権の内容について、もう少し検討されるということはされていないんでしょうか。

深山政府参考人 今御指摘ありました、懲戒権のさらに具体的、細目的な内容がいかにあるべきであるかというのは、先ほどもお答えしたとおり、一般的に、時代によって社会常識が変わるというようなこともございまして、法律の解釈としては、そのときの健全な常識によって判断するしかない。あるいは、それを基本法の民法の中で事細かに全部挙げていって、これはできてこれはできないという形の規律をある時代の社会常識のもとに法文として書きあらわしていく、これはなかなか法技術上も難しいもの、であるからこそ、そういう解釈になっているんだろうと思っております。

水島委員 時代に応じた変化をするということが、法務省という役所の性質上、なかなか難しいところがあるのかなといつも思っております。

 ただ、これは法務省だけの話ではなくて、当然政府全体、この問題、虐待にどれだけ本気で取り組むかということでございますから、政府全体として、本当の虐待防止のためには、やはりこの懲戒権の整理、今の時代に適した整理をきちんとしなければいけないと思っておりますから、これはぜひ大臣に改めてお願いを申し上げたいと思っております。

 さて、今回、親権喪失の宣告の請求が拡大されておりまして、これは私もよいと思いますけれども、そもそも親権については、児童虐待防止法の三年後の見直しまでの積み残しとなっております重要な事項でございます。

 この親権について法務省は、親権の一時停止、一部停止というのは必要なく、親権喪失の規定を適切に運用すればよいという立場をとられていると思いますけれども、親戚などに親権を代行できる人がいない場合、児童相談所の所長が親権喪失の申し立てをいたしますと、児童相談所所長本人が親権者となる仕組みに現在はなっております。本人が児童相談所長の職を離れても親権はついてくるという仕組みになっているわけです。

 まず、尾辻大臣にお伺いしたいんですが、大臣の個人的な感想で結構でございますけれども、児童相談所の所長としてその職務上親権喪失を申し立てて、ほかにだれも親権者になる人がいないから自分がなった、ところが、児童相談所の所長をやめても自分はその親権がついてきてしまう。これは当然の責任と考えられますか、それとも、ちょっと重過ぎる責任ではないかと思われますか。

尾辻国務大臣 全く個人的な意見として申し上げれば、やはりそれは重過ぎるだろうなというふうに考えます。

水島委員 率直なお答え、ありがとうございます。私もそう思います。

 そして、このことが親権喪失の申し立てにブレーキをかけているという側面があるのではないかと思っております。個人名ではなく児童相談所長という資格で、あるいは自治体そのものが親権者になれるような仕組みが必要だと私は思っております。親権喪失の規定を適切に運用すればよいというのが法務省の言い分ではあるけれども、実際に見てみますと、適切に運用するようにということを規定した児童虐待防止法が施行された後も、親権喪失の件数というのはふえておりませんで、親権喪失の規定が適切に運用されているとは言いがたいと私は思っております。

 ですから、個人名ではなく、その職名で、あるいは自治体そのものが親権を代行できるような仕組みが必要だと思いますけれども、これも大臣の御一存でお答えになれないかもしれませんが、政治家としての大臣に伺いたいと思いますけれども、そういう仕組みは必要だと思われませんでしょうか。

尾辻国務大臣 個人後見でなくて、公的な法人による後見も認められるような制度の検討が必要ではないかという御意見があることは、承知をいたしております。

 私の意見を述べろと言われますと、私も検討の必要がある、こういうふうに考えますということだけを申し上げます。

水島委員 ありがとうございます。

 では、法務省の方にお伺いしたいんですけれども、今の点については、法務省としてはどのように検討されていますでしょうか。

深山政府参考人 まず、前提ですけれども、未成年の後見人は、父母にかわって未成年者に対する監護、教育、居所指定、懲戒等の権限と責務を有しておりまして、その職務は未成年の生活全般に密接にかかわるものでありますから、未成年者と日常的に接することができる者を後見人に選任するのが適切であると考えられます。

 議員御指摘のとおり、近親者等に後見人として適切な人がいないという場合には、児童相談所長の職にある者が、個人として未成年後見人に選任される例が現実にあると聞いております。そして、そのような場合には、当該所長がその職を離れる場合には、家庭裁判所に対して辞任の請求をするとともに、後任の児童相談所長を後見人に選任するよう請求するという形で後見人の交代が現に行われている、実務上もそういうふうに行われているというふうに承知をしております。

 御提案の、児童相談所長という行政機関自体、あるいは地方公共団体という法人自体を未成年の後見人に選任するということは、現行の民法ですと、必ずしも明文上禁止されているわけではないんですけれども、理論上なかなか難しい問題がありますし、実際上もなかなかそういう例はないのではないかと思います。

水島委員 今のことも含めて、ぜひ法務省にはこの親権のことをもう少しきちんと考えていただきたいなと思っております。

 私、実は、虐待防止法の改正に当たって、法務省から最初、この親権喪失のことについていろいろ伺ったんですけれども、そのとき最初に伺った説明がかなり事実と違っていたところもあったり、余り真剣に考えてくださっていないのかなとそのとき思ったことを記憶しておりますが、三年後の見直しまでにはきちんとこの親権のことを整理しなければいけないですし、その点について法務省でもきちんと御協力をお願いいただきたいと思っておりますし、皆様にもぜひ御関心を持っていただきたいと思っております。

 法務省の方はもう結構でございます。

 さて、残りの時間で、小児慢性特定疾患について伺いたいと思います。

 小児慢性特定疾患治療研究事業の対象者は、全国で十万人を超えると言われておりますけれども、制度改正を適正かつ円滑に行うためには、改正法の成立から法施行までの期間は、最低でも実は五、六カ月が必要ではないかと、地方自治体の方にも伺った結果として私は考えております。

 まず、法律成立後に示される新認定基準に基づいて、行政内部の調整や県の認定基準をつくらなければなりません。また、新しい制度では、対象者の認定方法が従来の外形的な基準とは異なり、重症患者であることを明確にする診断書の提出が必要となります。所得段階に応じた費用徴収制度が導入されるため、所得状況を証明する書類が新たに必要になりますので、十分な周知期間が必要です。周知が十分でないと、患者、家族はもちろん、医療機関や税務署等においても混乱が予想されますし、結果的に、患者、家族が医療機関や行政の申請窓口に何度も足を運ばなければならないような状況になり、患者、家族に大きな負担が生じます。周知期間はやはり一カ月程度は必要だと思います。

 そして、申請の受け付けが開始されますと、小児慢性特定疾患の診断を行っている医療機関は地域においても限られているため、短期間に特定の医療機関、医師に患者が集中することが予想されます。また、診断する医師にとっても初めての重症認定となるため、ふなれなために、診察及び診断書の交付が通常よりもおくれるということが予想されます。申請書を受理して、それを専門の審査会にかける行政側にとっても、初めての重症認定となると時間がかかることが予想されますし、所得段階の認定も加わるため、申請受け付け開始から対象者決定のリミットとなる法施行日までは、三カ月程度の期間が必要だというふうに考えております。

 このように考えてまいりますと、四カ月ではとても間に合わないと思うのですけれども、厚生労働省としては、そのタイムスケジュールをどのように考えていらっしゃるでしょうか。

伍藤政府参考人 基本的には、この小児慢性特定疾患事業の見直しは、さきの通常国会に提出をしたときには、十月一日施行ということで御提案を申し上げておりました。通常国会で成立するのは通常五月か六月ぐらいでありますから、それから四カ月ぐらいの準備期間を置いて十月一日施行、こういうことで法案を提出させていただいたわけでございます。

 今回、既に十一月でございますが、これからどういう時期に施行できるかということで、今、るる御紹介、御指摘がございましたいろいろな各種の事業が必要になるわけでございまして、特に都道府県で重要なスケジュールといたしましては、電算処理システムの修正というようなものが意外と事務的には大きなわけでございまして、これがやはり三カ月ぐらいかかる。それから、今言いました所得の確認、それの認定、それから医療機関との委託契約、そういったものも当然必要になるわけでありますが、こういったことを並行して進めながら、二カ月から三カ月程度で、かなりこれは集中的にやってでございますが、何とか事務処理できるのではないか、そういうふうに想定しているところでございます。

水島委員 ぜひ、行政の中で急いでいただく部分はもうできるだけ急いでいただきたいと思っておりますけれども、実際に法の施行日までに認定事務が完了しなかった方については、仮に法施行日以降に認定されたという場合には、申請日から認定決定日までの医療費が償還払いという形になるのだと思います。そうなりますと、患者さんや御家族に償還払い申請手続等の負担がかかるということになると思います。

 本来は、患者さんや御家族の手間や医療機関の混乱などを考えれば、ぜひ十分な準備期間をとって施行というふうにしていただきたいと思うわけですけれども、そうはいっても、自治体によって作業のスピードには差があると思いますので、償還払いとならざるを得ないケースも出てくると思います。でも、お子さんの治療に通いながら生計を立てるというのはただでさえ大変なことですし、その上、手続などで何度も足を運ばなければならないということになりますと、母子家庭などでは致命的なことにすらなりかねないわけです。

 ですから、償還払いが仮に避けられないというような場合には、その手続を限りなく簡略にしていただきたいのです。例えば、認定されて受給者証が送られてくる場合、そこに償還払い用の書類が同封されていて、振り込み先の口座を書いて判こを押して送れば、自動的に償還払いが行われるというような仕組みを工夫していただきたいと思いますけれども、大臣、この点はいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今般の制度改正による各自治体における認定事務の詳細につきましては、通知で定めることといたしております。

 そこで、施行までに認定事務が終わらず、今お話しのように償還払いとなるところが出てくる自治体がある場合には、実施主体となる自治体からの御意見も伺いながら、保護者が都道府県等に請求する償還払いの手続に関しては、保護者が必要書類を都道府県等に持参することなく、郵送によることも可能とするなど、保護者の手間を省きたいと考えておるところでございます。

水島委員 ぜひよろしくお願いします。私も病院で働いておりましたので、こういう書類関係の手続が本当に大変だというのはよく存じておりますので、ぜひその点については、くれぐれも御配慮をいただきたいと思っております。

 また、今回の制度なんですけれども、自己負担のあり方についても疑問が残るところがございます。例えば、伺いましたところ、確定診断に至るまでの検査費用は遡及して公費負担とはしないというふうに伺っておりますけれども、この点について確認させていただきたいのと、また、今度の新しい制度では、重症度診断が必要になるため、検査における自己負担も重くなると私は思っておりますので、今まで以上の配慮が本来は必要なのではないかと思います。

 特に、今回、私たち、ずっと虐待についての審議をしてきているわけでございますが、親に虐待傾向がある場合、お金がかかるから子供に検査も受けさせないということもあり得ると思います。本来、それを説得する小児科医の立場に立ってみれば、後でお金が返ってくるから検査は受けておいた方がいいよと言えば、この制度に乗せていくことができるわけですけれども、それが結局お金も返ってこないということになりますと、子供を虐待するような親の場合に、その検査費用を出さないということもあり得るわけです。

 そういうようなことも考えますと、本来は、確定診断のために必要だった検査費用というのは、私は公費負担とすべき性質のものだと思いますけれども、この点については大臣はいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今般新たに設定いたします重症者の認定基準については、疾患の特異性に応じ、症状、検査値、治療内容等による簡便な基準を設けるものでございます。これらは、通常、診断名を確定するために最低限必要な検査でありまして、ごく一部を除いて、これまで以上に検査がふえるものではございません。

 また、検査費用についてのこともございましたけれども、大きな負担をもたらすものではないと考えております。

水島委員 多分、大臣がお持ちの原稿にはそう書いてあるんだと思うんですけれども、先ほど申しましたように、とにかく今、虐待というテーマを同時に扱っているわけであって、そういう親がこんなにたくさんいますという前提で話している中で、子供にお金をかけて検査を受けさせて、子供に最適な医療を受けさせるような、すべての親がそんな親であれば、また虐待の議論は必要なくなるということもあるわけですから、その二つ、全く切り離して考えるのではなくて、やはり、そんな親に対しても小児科医が、でもお金がかからないから検査を受けましょうよというふうに説得できるような、そういう材料を与えていただきたいと思うわけでございます。

 この制度に乗らなければ子供はちゃんと適正な医療を受けられないということにもなってしまいますので、大臣の用意されてきた答弁書はそういうことなんだと思うんですけれども、ぜひこれは尾辻大臣に改めてきちんと考えていただきたいと思っておりますし、大臣なら御理解いただけると思っております。

 今言ったようなことも含めまして、自己負担のあり方ですとか、また対象となる疾患につきましては、今回全く新しい制度でございますので、見直しが必要になってくると思います。当事者の声もきちんと反映された見直しというものを今後していただきたいと思っているんですけれども、この見直しについて、現在大体こんな予定がありますとか、こういうふうにやっていきたいですとか、何かそういうことを御答弁いただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 今般の小児慢性特定疾患対策の見直しは、そのあり方に関する専門家、患者代表等による御論議を踏まえ、法整備を含めた制度の改善、重点化を行い、安定的な制度として、新たな小児慢性特定疾患対策の確立を図るものでございます。

 本事業の今後の見直しにつきましては、本事業の実施状況を見ながら、必要に応じて対応してまいりたいと考えております。

水島委員 ぜひきちんと見直しをしていただきたいと思っております。

 また、今回、施行が、恐らく春の施行というふうになると思いますので、その場合には、前々年の所得に基づいて最初の計算が行われることになると思います。本来、制度としては前年の所得に基づいてやるものだと思いますので、その辺についても、また償還払いですとか新たな手続とか、そういうことが必要になり得ると思いますので、先ほどお願いを申し上げました趣旨に基づいて、手続は限りなく簡単なものにしていただけますように、改めてお願いいたします。

 では、五十三分には大臣を党首討論に向けて送り出さなければいけないということでございますので、残された三分間で、今までの審議の中でちょっと重要だと思われた点について、確認をさせていただきたいと思います。時間が限られていますので、ぜひ大臣には、はい、やります、そのようなお答えを全問についていただければと思っております。

 まず、今回、市町村にその窓口が移されるということが一番心配される点なんですが、今回の改正によって、児童相談所と市町村のすき間に落ち込んでしまうようなケースが絶対に生じないように、基本的に虐待については児童相談所が責任を持って、その調整も含めて行っていただきたいと思っておりますけれども、その点をきちんとお約束いただきたい。

 あと、児童相談所の抱える仕事というのはもちろん多岐に及んでいるわけですけれども、現在は虐待への取り組みがどの児童相談所も中心に据えなければならないものである、そういう極めて中心的なテーマであるということを、明確に改めて御認識いただけますでしょうか。

 まず、この点についてお願いいたします。

尾辻国務大臣 まず、最初のお話でありますけれども、私は、つい思わず一次医療と二次医療に例えてしまいましたけれども、その例えで申し上げると、それはもう、一次医療と二次医療の間にすき間があってはならないわけでございますから、最初のお話は、すき間などつくらないように、ちゃんとしていかなきゃいかぬというふうに思っております。

 二点目の御質問について、ちょっと私がよく理解できませんでしたので、もう一回言っていただくと大変ありがたいんですが。

水島委員 児童相談所というのは本当にいろいろな仕事をされているんですが、ただ、もう今は、どんな児童相談所であっても、もともと人手が足りなかったり、あるいは虐待を余り得意としなかったり、そういう児童相談所であっても、やはり虐待への取り組みというのは児童相談所にとって今日的な中心課題である。それをどの児童相談所もきちんと認識して取り組むべきだ、そのような方針できちんとやっていただきたいと思うんですけれども、それはよろしいでしょうか。

尾辻国務大臣 もう既にその御認識がおありだろうと思いますが、万が一そうでないところがあれば、それはもう当然、そういう認識を持ってもらわなきゃいけないと考えます。

水島委員 あと、今回、保護者に指導措置を受けさせるための勧告が児童相談所に対してなされるという点を、この前も質問させていただいて、多少懸念しているんですけれども、この勧告が実際にどのように機能したのかということを、後日きちんと検証していただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 この問題は、この前もちょっと、私が理解している理屈だけは申し上げましたけれども、いろいろの省との協議も必要なことだとは思います、制度そのものについてどうするかということは。

 ただ、今お話しのように、検証はさせていただきたい、こういうふうに思います。

水島委員 時間がないので、次に、二つまとめて最後に伺いたいんです。

 一つは、関係機関の連携強化はもちろんなんですけれども、民間団体、NPOとの一層の連携というものが改正虐待防止法でも規定されているわけですけれども、虐待防止ネットワーク、全国で見ますと、民間団体が入っているものがわずか五%にすぎない。ですから、この辺について、きちんと一層の連携を図るような積極的なアプローチをしていただきたいということ。

 あとは、例の小山の事件の反省もございますが、保護者への指導、支援のあり方や、また虐待事件の検証結果などが地方自治体にきちんと周知徹底されるような連携や指導に努めていただけますでしょうか。

 この二点を最後に確認させていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 市町村の実情に即した適切なネットワークの運営が確保されるようにしていきたい、こういうふうに考えます。

 それから、最後の民間団体の話ですね、これも努力をしてまいりたい、こういうふうにお答え申し上げます。

水島委員 もう時間ですので、大臣には出ていただいた方がいいかと思うんですけれども。

 今申し上げてきましたようなところ、本当に重要なポイントだと思っておりますので、大臣には、これを機会にさらにお取り組みをいただけますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時六分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうは、私は、法案の質疑に入る前に、きょう国が、無年金障害者の問題で新潟地裁の判決を受けて控訴を決めたという点について、まず国の姿勢をただしたいと思うんです。

 私、先ほど厚生労働省から取り寄せたんですが、これがその大臣談話なんです。私は前回の質問のときに、今度尾辻大臣が厚生労働大臣に就任されて、いわば初めて尾辻大臣のもとでの厚生労働行政が問われる事態なんだと。しかも、判決にありますように、これは憲法に反する、違法な状態だという厳しい批判を受けたわけですね。ですから、これは新たな気持ちで、よく判決文も読んで、原告の皆さんの訴えも聞いて判断するようにということを求めたわけですけれども、ここに書いてあるのは、「総合的に考慮し、年金制度を所管する立場からは、控訴もやむを得ない」という結論だ、その一句なんです。

 これを読みまして、私は、いわばこの紙の向こう側にどれだけの原告の方々の、それから無年金状態に置かれている障害者の皆さんの悲しみがあるのか、そのことを知った上でつくっているのかという、本当に憤りの気持ちを覚えたんです。この点は、厳しく私は抗議したい。

 もう一つ、国としてたとえそういう控訴というところに踏み切ったとしても、立法府としてもこれは判断を仰がれたわけですね、違憲状態の。私たちは、各党とも、法案も出ておりますから、今国会中に何としても無年金障害者問題では救済の道を図りたいと思って、その努力を今続けているわけです。

 その点で、国は控訴いたしましたけれども、立法府としての、原告の皆さんの訴えにもこたえ、そして判決にもこたえた、この努力について、絶対に水を差さない、立法府としては大いに解決のための協議をやり、道を開いてくれ、そういう立場で大臣はおられるのかどうか、その点を確認しておきたい。

尾辻国務大臣 ただいまの件につきましては、後半の方のお話でありますけれども、坂口前大臣の談話もございます。そして、坂口前大臣が言わんとしたことは、まさに、今それぞれ議員立法でお出しいただいておるような内容のことだと私は理解しておりまして、そして、それは当然、前大臣のお気持ちを私も引き継いでやっていきたいと思っております。

 したがいまして、今おっしゃるような、せっかく議員立法でお出しいただいているものを私どもが何か申し上げるというか、邪魔をするとかというような気持ちなど、全くございません。

山口(富)委員 そうであるなら、坂口前大臣の気持ちを酌まれるというのであるならば、私は、控訴はやはりやるべきではないということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 さて、児童福祉法の一部改正なんですが、前回、私は児童相談所の体制の拡充の問題を中心に聞きましたので、きょうは、まず、一時保護所の問題からただしていきたいと思います。

 それで、今、一時保護所の設置の状況がどういう状態にあるのか、この現状に対して厚労省側は今の現状の設置で十分と見ているのかどうか、この点、答えてください。

伍藤政府参考人 一時保護所につきましては、全国に児童相談所が現在百八十二カ所ございますが、一時保護所を付設しておるところが百十カ所でございます。特に、虐待を理由とする一時保護の件数がふえておるということで、全般的には収容する件数も増加しておるというのが一般的な状況でございます。

 この一時保護所につきましては、補助基準面積の改善、それから心理療法担当職員の配置、あるいは虐待を受けた児童のケアを行う職員の配置などによりまして、処遇の改善を図っておるところでございます。

 ただ、今申し上げましたが、全体としてはそういう状況でありますが、定員が全体で二千三百三十九名に対し、全体で一時保護所に入っている児童の数は、十五年三月現在でちょっと古うございますが、千六十八名で、約五割程度が定員に対して入っておるということであります。特に都市部においては、一時保護所が満杯状態というところもありまして、こういうところについては今後どうしていくかということが一つの課題だというふうに認識をしております。

山口(富)委員 一時保護所の場合は、緊急保護の場合もあるんですけれども、一時保護所で行動観察をし、その後の対応についてきちんと決めるという意味で、特に児童虐待では初期の対応が大事になりますから、非常に大事な施設になります。ところが、今局長も言われましたように、都市部を中心にして満杯状態というのは各地に見られるわけですね。

 私、ここに東京都の「事業概要 二〇〇三年版」というのを持ってきたんですけれども、ここで挙げられている数字を見ますと、こういうふうに指摘しています。「年々保護児童数は増加し、また被虐待、非行等複雑で困難な児童の保護が増加しているため、平均保護日数も長くなっている。また、警察等からの身柄通告による保護も五年前の平成十年度の約一・九倍に増加している。」子供たちは一体どの程度一時保護所にいるかというと、二〇〇二年度で二十九・八日、大体一カ月いるわけですね。

 この現状が、実際にはいろいろな非行問題、虐待問題、さまざまな問題を抱えている児童が集まっていますから、これは混合処遇と言われているそうですけれども、実態としては、現場が何とかそれに対応して手だてをとっているというところだと思うんです。

 前回の答弁で、大臣の方から、児童相談所については全国を回って実情を調べたいという話がありました。私は、先ほど百八十二のうち百十に併設されているという話がありましたから、これは、一時保護所についても、せっかく児童相談所に行くわけですから、あわせて実態の調査を必ずやっていただきたい、このことを求めておきたいと思います。

伍藤政府参考人 今回行います児童相談所の実情把握、このための調査におきましては、今御指摘のありました一時保護所についても、十分この実情を把握してまいりたいというふうに考えております。

山口(富)委員 その結果については、しかるべき形できちんと当委員会にも報告いただきたいと思います。

 それで、具体的に一時保護所で今何が改善を求められているのかということなんですけれども、前回の質疑でも取り上げましたが、ことしの八月二十七日付で、全国児童相談所長会の会長飯山さんの名前で、厚労省に対して「児童相談所の体制の充実等に関する要請」というものが出されております。

 これを見ますと、所長会の方は、混合処遇の現状を述べて、それに対応するために次のような手だてをとってほしいと要望しています。ちょっと読み上げますと、「一時保護所においては、職員配置について現行の児童養護施設準拠を改めて、小集団処遇と学習面及び精神・心理面のケアができるよう一時保護所独自の最低基準を制定していただきたい。」

 先ほど局長が、ケアの問題や職員配置も考えているという話がありましたが、ここでは、それにとどまらずに、最低基準を制定してくれという要求が上がっている。そしてもう一つは、職員にかかわって、生活指導の分野、保健師、看護師、心理職員、教育職員、全体にわたっての充実がどうしても必要だというふうに訴えているんですね。

 私は、やはり所長会の皆さんというのは、せんだっての局長の答弁でも、随分経験を積まれた所長も全国にいるんだと、私が研修をきちんとやりなさいと言ったらそういうことを言われましたけれども、そうであるなら、その経験を積んだ人たちが、最低基準の問題の制定、それから職員の配置の充実をこれだけ求めているんですから、厚生労働省として、これは八月段階で上がっている文書ですけれども、既に前向きの検討を始めているのかどうか、これを確認しておきたいと思います。

伍藤政府参考人 児童相談所長会から要請のありました、一時保護所独自の最低基準を定めるということにつきましては、これまで、児童を収容する施設だということで、その施設の設備あるいは運営につきましては、児童養護施設に定める最低基準を準用するという形でやってまいりました。ただ、現場の所長さん方からそういう要請を受けていることも事実でございますから、これから、今言いましたように、一時保護所も実情をつぶさに把握したいと考えておりますので、そういったものを通じて、そういう必要性について私どももこれから研究していきたいというふうに考えております。

山口(富)委員 大臣に確認しておきますが、今局長の方から、検討し研究するという話があったんですけれども、今の一時保護所が児童養護施設に準拠しているということなんですけれども、これは児童虐待が深刻化する前なんですね。

 ですから、今の新たな事態でいきますと、児童虐待問題では初動の体制が大事で、それで一時保護所というのが非常にクローズアップというか、当たり前のことなんですが、どうしてもその強化をしなきゃいけないということになっているわけですから、単に現状を見てくるだけじゃなくて、今度の法改正にもあらわれていますように、児童虐待問題の新たな段階に対応するという視点から、私は、一連の、最低基準の問題ですとか職員配置の問題では真剣に対応していただきたい。これは大臣に確認しておきたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますけれども、一昨日、東京の相談所を見てまいりました。そして、あそこも一時保護所が併設されておりますから、そこも見てまいりました。そして、職員の皆さんの本当に切実なお声、きょうもまたひょっとしたら騒がしくなるかもしれませんというような、皆さんの本当にそういうお話も聞いてまいりましたので、改めて、これは大変だなというふうな感じを持っておりますから、これはそうしたことにちゃんと対応できるようにしていかなきゃならぬと強く思っております。

山口(富)委員 たまたま、偶然なんですが、その同じ場所を私は一月前に視察してまいりました。そこで大臣と同じように、やはり現状は本当に大変だなと。一時保護所というのももう大分古いんですね。建てかえが問題になっておりまして、混合の問題でいいますと、時間差を設けて男女を別にしたり、グループ分けしたり、随分苦労されているということをつぶさに見てまいりました。この点の、現状と、現場からの声にこたえた改善を求めたいと思うんです。

 きょうは、もう一点、児童養護施設について取り上げたいんですけれども、所長会などの指摘によりますと、虐待を受けて心の傷を背負った子供の重要な生活の場である児童養護施設は、その設備、運営の水準が他の福祉施設に比較して大きく立ちおくれていると指摘されています。それで、入所率を見ましても、いっぱいの状態が続いているんですけれども、まず示していただきたいのは、児童養護施設について、児童の居室の一人当たりの面積が、現在、基準はどうなっているのか、示してほしいと思います。

伍藤政府参考人 児童養護施設の居室面積でありますが、最低基準では、一人当たり面積は三・三平米というふうになっております。

山口(富)委員 その三・三平米という基準は、現在、すべて守られているんですか。そして、そうした実態の調査はあるんでしょうか。

伍藤政府参考人 最低基準は三・三ということでございますが、実際に今、改築とか増築とか、いろいろ施設整備をする際に、国庫補助の基準といたしましては一人当たり九・〇平米ということで、最低基準を大幅に上回る基準で施設整備をしておるところでございます。

山口(富)委員 その調査はあるんですか、すべて基準をクリアしているという。

伍藤政府参考人 新しい施設はそういう形で非常に居住環境はだんだんよくなっておりますが、最低基準を下回っている、違反しているところは、少なくとも聞いておりませんし、そういうことはないと思っております。ですから、毎年少しずつ、着実に居住環境は改善しておるというのが状況だというふうに認識をしております。

山口(富)委員 これは実態をよく見てきてください。

 三・三平米の問題なんですけれども、これはどう常識的に考えてみても、お子さんが一人そこで暮らすには幾ら何でも狭過ぎるじゃないかというのは、だれが見たってわかるものなんです。

 先ほど、新しいところについては九平米ということで補助の基準にしているという話がありましたけれども、今の答弁を聞きますと、新しいところはそうかもしれないけれども、どうも従前からつくられているところについてはきちんとした把握がされていないように私は答弁を聞きました。今、老人福祉施設でも十・六五なんですね、平米は。ですから、やはり子供の発達を保障できる生活環境になるように、改善を図っていただきたいというふうに思います。

 それと、先ほども問題になりましたけれども、直接処遇職員の配置基準という問題なんですけれども、大体私の家でも、子供と対応するときは、とてもおやじ一人では大変で、妻と一緒に二人がかりでやるわけですが、今の基準でいきますと、就学児は六対一なんですね。それから、三歳児以上で四対一なんです。

 きょうの午前中から午後にかけての質疑では、最低基準への上乗せで対応しているという話がありましたけれども、私は、上乗せで対応するだけでなくて、最低基準そのものの底上げが必要だと。これは、相手は人間ですから、しかも成長過程の子供ですから、子供への個別的な援助がもうどうしても必要だ。となると、ゆとりを持って対応するとすると、六対一とか、私は数字ばかり言うのは、お子さんのことですから余り言いたくはありませんけれども、余りにも低過ぎる。この改善は、私は真剣に今度の法改正に伴って考えるべきだと思うんですが、その準備はあるんでしょうか。

伍藤政府参考人 最低基準は就学児の場合六対一という、御指摘のとおりでありますが、この数年間、最低基準に上乗せをする形で、それぞれの受け入れの児童の状態に応じて、ファミリーソーシャルワーカーの配置でありますとか、個別対応職員の配置、それから心理療法の担当職員の配置、こういうことで、最低基準以外の職員の確保、改善を図ってきたところでございまして、実質的には、六対一ではなくて、こういう加算、特別の上乗せの人員を加えますと、事実上三・五人に一人ぐらいの状況にはなっているんではないかというふうに思いますので、こういった形で、今後とも、実態に応じてできるだけ改善を目指していきたいというふうに思っております。

山口(富)委員 それが実態に応じていないから、私は繰り返し質問しているんです。所長会の要望を見ますと、これは二対一にしてくれという要望なんですよ。それは私は、子供たちのことを間近に見て接している職員の方からすれば、もう当然のことだと思うんですね。

 先ほど、水島委員が諸外国の例も挙げまして、大体分母が反対なんだという例を挙げましたけれども、相手は子供であって、成長過程にあるんですから、上乗せして三・幾つで何とかという、そういう発想じゃなくて、やはり現場が、所長会が最低でも二対一にしてくれ、そう言っているんですから、私はこれは、積極的にこれにこたえて、基準を変えていただきたいと思うんです。

 それで、尾辻大臣にもう一回、確認的な話になりますけれども、今厚労省のホームページを見ますと、ホームページは大体そうですが、新しく資料を入れると、NEWとかつきまして目立つようになっているんです。

 そこで見ましたら、児童虐待を取り上げている社会保障審議会の児童部会の一番新しい議事録、第二十一回議事録というのが今は新しくなっているんです。これはことしの九月三十日に行われたものなんですけれども、たまたまここでは、「児童虐待死亡事例等の検証等について」という報告が厚労省側からなされているんですね。

 これに対して児童部会の方々が何と言っているかというと、検証はやらなきゃいけない、同時に、この手を打ってくれと言っているのが二つあるんです。一つは、児童相談所の体制が大変貧しい、一番おくれている分野だと、二回にわたって繰り返しているんですよ。それからもう一点は、今後市町村との対応が問題になりますから、児童相談所と市町村との有機的な対応に心がけてほしいという二つの要望が特に上がっているんです。

 きょうは一時保護所、児童養護施設を取り上げましたが、私は前回、児童相談所をやりましたけれども、こうやって見ますと、やはりこの分野は本当におくれている。現場がもう困っている、悲鳴が上がっている。それは、職員の方も子供もみんな同じなんですね。こうなりますと、いよいよこれは私は政治の責任だと思うんです。

 今回の法案の審議で、尾辻大臣は、現状をよく見て改善するところがあれば図りたいという話を繰り返していますけれども、これは再確認になりますが、必ず現場の要望を踏まえて、実態が改善を求めているんですから、改善の方向で仕事をしていただきたい、このことを重ねて求めたいと思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

尾辻国務大臣 改めて、総論的に申し上げます。

 社会全体として最優先で取り組むべき重要な課題である、こういうふうに認識をいたしておりますから、こうした子供たちに対する支援体制の整備に誠心誠意努めてまいります。

山口(富)委員 では、私は次に、里親問題について触れたいと思います。

 登録里親数を見ますと、長期的には減少の傾向があります。先ほど局長は、ここ数年をとると反転の傾向にあると言ったので、私は驚いちゃったんですけれども、たかだかこの数年をとって、反転の傾向にあるなんとはとても言える数字じゃありません。

 それで確認しておきたいんですけれども、今回の法改正によって、里親をふやさなきゃいけないわけですけれども、この現状が改善される見通しがあるのか、これを示していただきたい。

伍藤政府参考人 里親につきましては、昭和三十年代以降、ずっと一貫して減少してまいりましたが、ここ数年、若干ではありますが、長年の減少傾向から増加に転じておるということを申し上げたまででございます。

 この背景といたしまして、私ども、平成十四年度から、専門里親制度あるいは親族里親制度、それから短期に預かるような制度、そういった形で、いろいろな仕組みを柔軟にするとともに、里親に対する支援、手当等の大幅な拡充、アップを図ってきたところでございます。

 さらに、今回の法改正では、里親の定義規定を設けて、里親の位置づけというものを明確にするということを考えておりますし、それから、これまで児童福祉施設の施設長には定められておりました監護、教育、懲戒権、こういったものを里親についても明確化するというようなことをしたわけでございまして、従来、里親の法的位置づけ、あるいは権限が明確でないということが、里親が安心して養育に携われない要因ではないかというような御指摘もありましたので、今回の法改正によって、こういうソフトな面での改善といいますか、こういうことも図りたいと考えているところでございます。

 こういったことに加えて、今年度、里親をさらにいろいろな形でバックアップする予算措置といいますか、制度も構築することを考えておりますので、こういった総合的な対策で里親の充実を図っていきたいというふうに思っております。

山口(富)委員 あなたがここ数年を見ると反転だと言うから、私はそんなことはないと言ったんです。

 ここに厚労省が出した資料がありますが、ここ数年で言いましょうか。二〇〇〇年でいうと七千四百三人、これは登録里親数ですけれども、二〇〇一年七千三百七十二人、二〇〇二年七千百六十一人。下がり続けて、やっと二〇〇三年に百人ふえて七千二百八十六人なんです。ここ数年じゃないじゃないですか。今幾つかメニューを挙げましたけれども、私は実態に応じた改善を図るように求めておきたい。

 それと、もう一点はっきりさせておきたいんですが、例の懲戒に係る問題なんです。

 水島委員からも指摘がありましたけれども、これは民法にあるものですから、今回の法改正でもそのまま手つかずで残ったどころか、今度は里親にまで広げられるということになりました。私、懲戒の問題は現状からいって拡大すべきじゃないと考えますけれども、施設の長については、今、児童福祉施設最低基準などで「懲戒に係る権限の濫用禁止」などの規定があります。となると、里親についても濫用禁止の規定を設けるんですか。

伍藤政府参考人 懲戒に関する権限でございますが、あくまでも、子供を心身ともに健やかに育成する目的で与えられているということでございますので、決して子供に苦痛を与えたりというようなことがあってはならない、そういう懲戒権の範囲内で行使されることは当然だと思っております。

 このため、懲戒に関する権限の濫用禁止について、施設長に対するものと同様、里親に対しても厚生労働省令の中で明記をすることとして、その旨を関係者に周知をしていきたいというふうに考えております。

山口(富)委員 私は、施設の長に続いて、里親にも懲戒問題では濫用禁止ということを徹底せざるを得ないというところに、やはり問題があると思うんです。

 先ほど水島委員からも話がありましたけれども、世界の流れから見ますと、そういうものを入れてある国というのはもうほとんどないんですね。児童虐待防止法の論議の中でも、懲戒に係る民法の規定というのは戦前生まれのものだ、ですから、現在では子どもの権利条約によって解決すべき問題であるという議論が繰り返しなされております。

 今、調べてみますと、二〇〇二年十一月には、栃木県で養育里親による児童の傷害致死事件まで生まれているんですね。ですから、やはり現状を厳しく見る必要がある。

 しかも、きょうは繰り返し実態の、現場からの声ということを問題にしておりますが、ここに、二〇〇〇年一月に発表されました「児童虐待に関する全国児童相談所アンケート結果」というものがあります。これを見ますと、こういう意見がずっと出ているんですけれども、民法の懲戒権については、該当部分を削除しろ、親の養育責任のみで十分、民法八百二十条の監護教育権で十分であり懲戒権は必要ない、しつけと虐待の概念を整理した方がいいという理由で、六七%の所長さんたちが懲戒の廃止を求めているんですね。私は、ここに、今政治が現場の声として踏まえなきゃいけない実態があると思うんです。

 尾辻大臣に、私は本来、里親に係る懲戒規定は入れるべきでないと思いますけれども、以上私が指摘したような点を踏まえた今後の対応を改めて求めたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど来御指摘のように、そもそも、このことは民法第八百二十二条の規定からきておるということでございます。したがいまして、このことの議論は、親権制度全般にわたる幅広い観点からの議論をする必要があるだろうと思いますので、そうしたことを踏まえての今後の検討だというふうに考えております。

山口(富)委員 これは、濫用禁止の規定を設けるだけでなくて、廃止の展望も含めて、きちんとした検討を求めたいと思います。

 最後に、ちょっと時間が押し迫ったものですから一点だけなんですが、小児慢性特定疾患の問題なんです。

 今度の法改正で、これは二十一条の九の二にかかわるわけですけれども、対象疾患の追加、対象年齢の引き上げという改善面があるんですが、同時に、新たに医学的基準を設定して、制度の対象から外したり、医療費の自己負担増の患者が生まれるという仕組みに現状はなります。

 そこで確認したいんですが、この制度が生まれますと、これに新たに加わる対象者、それから除外される方々、それぞれどの程度の規模になるのか、それからまた、医療費の自己負担の影響額はそれぞれどの程度見込まれているのか、答弁願います。

伍藤政府参考人 今回の新たな小児慢性特定疾患治療研究事業、これの対象者でございますが、今回、対象疾患の追加あるいは除外、それから従来通院が対象でなかったものをそこも拡大する、それから年齢を十八歳から二十歳に延長する、いろいろな改善点が含まれておりますので、それを総体として、重点化するところは今最終的な精査をしているところでありますから、まだ正確な人数は確定しておりませんが、その入り繰りを差し引いて、全体としては数千人、この対象者が増加をするというふうに考えております。

 それから、今回対象となる人の負担の問題でありますが、他制度、公費負担医療等との並びで新たに自己負担をいただきたいということで制度設計を考えておりますが、低所得者等に配慮いたしまして、一番高い階層でも、一カ月当たり外来で五千円程度、入院で一万円程度、こういった自己負担を無理のない範囲でお願いをしたいというふうに考えているところでございます。

山口(富)委員 難病のお子さんを抱えている家庭というのは本当に大変なんですね。そういう方々にどの程度の影響が出るのかというと、私は、行政上の言葉ですけれども、精査中というのは、これはいただけない。やはり、それでプラスマイナスすると数千人規模というんでしょう。今でも十万人ですからね、この対象になっている方々は。

 ですから、数千人ということで一くくりするんじゃなくて、やはりきちんと、どういう影響が生まれるのか、それに対して、自己負担が生まれる人たちに対してはどういう軽減の措置をとるのか、これは真剣に検討していただきたい。

 私どもは、この制度につきましては、自己負担を本来求めるべきでない、非常につらい中で子供を応援している家庭に対して医療費の給付をきちんとやるべきだという立場で、これは修正案を提案いたしますけれども、きょうは時間がなくなりましたのでこれで私の質問を終わりますけれども、やはり難病患者自身、また抱えている家族の皆さんには、治療が長期間継続するわけですから、自己負担を、新たな負担をかけるべきでないということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

北川委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 冒頭、本日の審議の法案外のことで、質問予告をしてございませんが、尾辻大臣に質問をさせていただきます。

 十一月の八日から、アメリカがイラクのファルージャにおいて、武装勢力の一掃ということを名目に、空爆あるいは総攻撃という事態が発生しております。私は、この間のイラクの治安情勢の悪化や、あるいは、そこで多くの非戦闘員が傷ついているという現状を非常に残念にも思いますし、また、果たしてこうした攻撃がどこに正当性があるのかということもずっと疑問に思っておりますが、本日ここでぜひともお伺いしたいのは、実は今回の総攻撃の中で、ファルージャ総合病院や、あるいは診療所といったところに米軍が突入したり、攻撃したり、空爆したりしております。

 これは、戦争に大義があるかないかはまた別にして、そして大義がよしやあったとして、国際人道法上もジュネーブ条約等々でも禁止されている行為だと思います。病院と言われるところ、あるいは診療所もそうですが、そこは非戦闘員が多くいる、あるいは戦場で傷ついた人が運び込まれたりするというところで、その意味では、国際赤十字なども、従来、そこが攻撃の対象になるということのないように、国際社会はずっと努力してきたんだと思います。

 今、私が尾辻大臣にお伺いしたいのは、大臣として、こういう病院や診療所というところに攻撃がかけられている現状というものをどういうふうに認識しておられるのか、まずこの一点をお願いします。

尾辻国務大臣 まず、今の具体的なお話については、実情を知りませんから、そのことについてはコメントは、まずは避けさせていただきたいと思います。

 ただ、一般論として、病院やそうした赤十字の旗を掲げておるところを攻撃するということは、これはかつての戦時国際法、今の国際人道法ですか、そうしたものに照らし合わせて好ましい行為ではないということは、一般論としては当然申し上げます。

阿部委員 早急にこの件で、国際赤十字等々からも情報を集めていただきたいと思います。私は、実は、今回ここに質疑に立ちます前に、外務省が何か御存じかと思って聞いてまいりましたが、残念なことに、情報をお持ちでないということです。

 そして、イラクのこれまでの、例えば、刑務所での捕虜なのか捕虜でないのかわからない人たちの扱い、これも、捕虜に対する扱いを定めたジュネーブの条約等々にも大きく違反するということが既に指摘されておりますし、今回またこういう形で、極めて非人道的な攻撃という形をとっていると私は思いますが、もしそうであれば、これは、いかに小泉首相が勝利してほしい、あるいは成功してほしいと願われたとしても、やはりそこで亡くなっていく多くの方々のことを思えば、私は決して国として合意を与えられるものではないと思いますので、大臣にはこの場で、国際赤十字等々から早急に情報を集めていただきたいとお願い申し上げますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 国際人道法に違反する行為があってはならない、これはもう基本だと考えます。

阿部委員 では、引き続いて本法案の質疑に入らせていただきます。

 本法案の質疑は、本日で二日目に入りますし、いろいろ各委員からの御指摘もございましたので、ある意味では十分論点は浮き上がったかと思います。しかしながら、論議全体を見ましたときに、まだまだ児童虐待という事態について、我が国のとっている体制も、それから私たち自身も含めて、いかなる方向にきっちりとした対策が打てるのかということは、これから始まろうとしているのだというふうに、私も改めて認識せざるを得なかったと思います。

 厚生労働省の方も、例えば、児童相談所の現状をこれから一年かけて聴取しますということで、本来であれば、こういう児童福祉法の改正の以前に、一番ここで眼目になりましたのは児童相談所と児童福祉司の問題ですから、せめてその現状、現場の意見というものは把握した上で、この法改正に臨んでいただきたかったと思いますが、このことも含めて、極めて我が国の児童虐待防止対策と言っていいのでしょうか、それが後手に回っておる現状は現状として認識しなければならないのかなと思います。

 例えば、児童福祉司の数にいたしましても、今、厚生労働省が一生懸命頑張っても、人口当たり六万から七万に一人、これが、欧米先進国であれば四千人とか五、六千人に一人という形で配置されているわけですから、数もおぼつかないし、まして質も、欧米ではソーシャルワーカーというある種のソーシャルスキル、そういうソーシャルワークスキルを持った人たちが従事しておられます。

 私は、冒頭、これらの全部の審議を通じて、大臣にここで二つお願いがございますが、一つは、やはり児童虐待防止ということについて、ナショナルセンターというものを設置していただきたい。これは、厚生省の児童家庭局でこれまでお取り組みでありますが、私は、この虐待数の増加とおくれた我が国の施策、政策、そしてもっといえば教育面もありますが、そういうことから含めると、やはり大臣がおっしゃる総力を挙げてということの中には、ぜひともナショナルセンター、例えばですが、今の思いつきで申しわけありませんが、国立小児病院と言われて今は成育医療センターとなりましたようなところに、こういう研究から情報収集から、あるいは研修から教育までも含めて行えるようなセンター機能を持たせていくという考え方もあると思うのです。

 大臣に、これは私の気がついた一例ですが、どこでも構いません、ナショナルセンターとして機能するようなものをきっちりと、これから国の政策の充実に向けてつくっていくようなお考えを持っていただけないかどうか、お願いいたします。

尾辻国務大臣 児童相談に関して専門性を有する職員の確保が不可欠なことは、もう再三申し上げておりますし、まさに我々の共通認識だと思います。

 そうした人たちのための研修を横浜の方でやる、そういう意味ではセンターが一つはあるかと思いますが、今委員がお話しのは、そういう研修のセンターというだけじゃなくて、もっと大きなセンターをお考えのようでありますし、我々としてもいろいろ検討させていただきたい、こういうふうに思います。

阿部委員 私が今いわゆる小児病院を事例に挙げましたのは、各県にも小児病院がございますし、その総合として国立小児病院と従来呼ばれて、今は成育医療センターとなった箇所がございますので、事例の集積、そして検討、研修、そして、逆に言えば、欧米のいろいろな先進国に学ぶような仕組みということも私はもっともっと急がれるように思いますので、ぜひとも検討をよろしくお願いいたします。

 そして、あわせて教育機関についてでございますが、これは研修のみならず、そういう人を育てる、人材育成のために、例えば、これまで児童虐待というのは、実は日本の社会では比較的少ないと言われたものでした。私も三十年前に小児科医になったとき、アメリカ等々では児童虐待はよく聞くが、我が国では少ないんだと言われておりました。ところが、今は欧米を上回る勢いで、これが現状に多く起こるようになり、この審議中にもまた、六カ月の坊やが父子家庭で殺されたという事案がございました。

 この問題を解決するに当たって、一つはそういうセンター集積機能と、もう一つはいわゆる教育、例えば、これはこうした学部が成り立ち得るのかどうかわかりませんが、やはり文部科学省の方ともきっちりとお話しをいただいて、これからの教育課程の中に、もっともっと児童虐待問題をきっちりと学んでいけるような教育の充実ということもないと、私は、この場でずっと論議していたのを聞いていて、もう本当にどちらが鶏でどちらが卵か、あちらで育てる、こちらで育てるとばらばらと政策していたのでは、とても人は育ってこないという思いを強くしています。

 そこで、大臣に対してのお願いですが、これは内閣を挙げての取り組みでありますので、例えば教育サイド、文部科学省にもかかわりますでしょうし、そういう人材育成のための学部の充実、これは言うはやすく、なすはかたいかもしれませんが、そういうことも含めて検討していただけまいか、教育機関の充実ということで御意見を賜りたいと思います。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

尾辻国務大臣 今の新エンゼルプランをつくりますときに、保育所の役割を拡大いたしました。そして、保育所というのが、単なる預かる施設じゃなくて、地域のお母さんたち、保育所に預けていない子供たちのお母さんたちまで含めて、地域の子育てセンターをできるようにという役割を加味させました。そのときに、そうなるとやはり保育士の皆さんに、お母さんたちとのカウンセリング、こういうことも必要になってくるから、保育士の養成課程の中でカウンセリングというようなものも加えよう、こういうようなこともいたしました。

 あえてそういうことを申し上げておりますが、そのようにして、いろいろな教育の場で、こうしたことに対応する体制をつくっていかなきゃいかぬだろうなと思いますということを申し上げたくて、今の例を申し上げたわけであります。

 したがって、そういうふうにして、こういうことに当たる、子供たちに当たる人たちの力を総合的に増さなきゃいけない。その中で、今おっしゃるように、教育の場でのそうしたものを大いに検討する必要があるだろうなというふうに思いますということを申し上げたいところであります。

阿部委員 よろしくお願い申し上げます。

 あと、具体的なことですが、今回の改正で、いわゆる心理学等を学んだ大学卒、まあ新卒者でしょうか、この方を児童福祉司として採用する場合に、一年間の実務経験というものを前提とするというふうに書き込みがございます。

 私は、先回も伺いましたが、保育士や看護師さん等々が児童福祉司に何らかの研修で採用されることの一方、心理学を学んだ人は、一年間どこかでオン・ザ・ジョブ・トレーニングをしなきゃいけない。オン・ザ・ジョブ・トレーニングをするような場所があるのかと、この前、伍藤児童家庭局長に伺いました。児童家庭局長は、児童相談所か保健所か福祉事務所か、あとは家庭相談所かと、四つを挙げてくださいました。私が省庁に伺って、ではそこで実際働いている人の振り分け、内訳はどうかということを伺いました。

 その結果思いますのに、そうしたオン・ザ・ジョブ・トレーニングの人を雇える余地が私はそこからは出てこないと思います。例えば児童相談所は、児童福祉司以外の職員にA職員、B職員というのがあるんだそうですが、その方たちもほとんど、臨床検査技師、栄養士さんそのほかでございます。私は、こういう法案をつくるときに、一体どこで研修できるのか、研修中の身分はどうなるのかということを非常に問題に思います。そういう現実の保障がなければ、これは空文になってしまいます。

 今までであれば、心理学を学んだ人は新卒でも児童福祉司としてとりあえずは採用されました。採用されて、その中で、それこそオン・ザ・ジョブ・トレーニングをしたと思います。しかし、これからは、一年どこかでやってこなきゃいけない。このどこかが本当にあるのかということを、申しわけありませんが宿題ですので、伍藤局長にお願いします。

伍藤政府参考人 これは前回もお答えしましたが、研修というよりも実務経験ということで、県の職員が最初から児童福祉司として活動するというようなことではなくて、一定のそういう関連のところでいろいろな相談業務に従事した経験、こういったことを尊重して児童福祉司に任用しようということでありまして、場所としては、児童相談所、保健所、それから社会福祉事務所、それから県立の各種、児童福祉施設でありますとか、いろいろな施設がございますが、そういう現場で勤務した経験というのも十分活用されると思いますので、そういうところで幅広く、何らかの直接処遇といいますか相談業務、そういったものに携わった経験者、そういった者をできるだけこれからは児童相談所に活用して、業務に携わっていただきたい、こういうふうな考えでございます。

阿部委員 それでは前回の答弁と一緒で、その答弁では、現実にそういう人を雇う余地がないんだということを私が指摘したんです。そのための資料も全部取り寄せて、私は再質問しているんです。

 では、一年後、本当にそうやってそういう場で研修した人が出てくるのかどうか、一年後の結果を見てまた質問してももちろん構いませんが、ポストがないんですというか、そんな余力はないんです、教える側にも、現状で。一年間めぐってみてください。こんな空文をつくられたら、これから心理学を学んで前途頑張ろうという人たちにもポストがなくなるという実態がやってきます。

 私は、この児童福祉司というのは、先ほども申しました、ソーシャルワーカーが平成十四年の四月一日からここに加わるようになりました。ますますきっちり教育された人たちがということには賛成します。しかし、任用の最初でこういうことがあって、そのための場がなければ、本当にこれは、逆に児童福祉司になれる人の道をふさいでしまう。そして、一方で、看護師さんとか保育士さんとか、これは残念ながらやはりマンツーマンのお仕事をしている人で、ソーシャルワークという分野とは遠いと思います。そういう経験の人は研修で入れ、一方で、心理学を学びソーシャルワークをやりたいという人は、どこか研修の場所がなきゃ入れない。しかし、それは現状では、ない。

 こういうことをしていたら、本当にこの法案が向かう先は充実ではなくて破滅になってしまうと思いますから、よろしくその点は、もう二度言って、それ以上いい答弁も、現実も見ていただけていないので、一年間よく児童相談所の現状を見ていただいて、誤りであれば、一年後、正していただきたいと思います。

 引き続いて、私は、自立援助ホームについてお伺いをいたしたいと思います。

 これは先ほど尾辻大臣の御答弁にもございましたが、平成十六年度の予算の中では前年を上回る二倍の予算措置がついておりますが、しかし、この自立援助ホームと申しますのは、いわゆる養護施設を出たり、あるいは児童自立支援施設を出たりした後、家はない、そして働こうと思う、あるいは社会に復帰しようと思う子供たちの大きなよりどころですが、予算的には、実は小規模グループホームの養護施設よりも額は低くなってございます。

 尾辻大臣は前年よりはふやしたとおっしゃる、その努力は私は前向きに評価したいと思いますが、現実に、山井委員の提出された資料にもございましたが、こうした養護施設等々を出た子供たちは、一年後、大体七割また失業してしまう、職についても失業する。この自立援助ホームは、子供たちからもお金を取って、そして補助金ももらってやっているのですが、子供たちが失業したら、子供たちからお金を取るわけにもいかない。しかし、そこでほうり出したらやはりその子の将来がならないということで、本当に身銭を切る形でやってございます。

 そこで、今後はさらに充実していただきたいという方向性と、もう一つ、今即座に活用できるものとして、虐待児童受け入れ加算というのが、ほかの養護施設等々では一人につき二万六千円ございます。虐待を受けた過去は消えません。その子が社会人として、また親になり、ずっと一生続いていきます。就職しても困難を抱えるのは、その子に心のトラウマがあるからです。であれば、私は、この虐待児受け入れ加算というものも、先ほど申しました自立援助ホームの入所に対しても勘案していただけまいかと思います。

 この二点、今後の予算的充実と、当座やれることとして何があるかということを考えさせていただいて、今の提案をいたしますが、これは衛藤副大臣にお願いいたします。

衛藤副大臣 先生御指摘のとおりでございまして、精神障害者の施設等も、大変低かった部分をみんなで努力をして、やっとここまで加算を続けてきたと思っております。そういう中で、自立援助ホームにつきましては、予算的には十九カ所を四十カ所というぐあいにつけておりますけれども、現状においてはまだ二十二カ所ということでございまして、しかも、運営費におきましても、倍ぐらいに加算したといってもまだまだ低いというような現状でございます。

 そういう中で、何とか計画どおりというか、そういうぐあいに自立援助ホームがもっとちゃんとつくれるように、どういうところが隘路になっているのかということについても改めて、とりあえずは平成十六年度予算においてこういう形にいたしましたけれども、役所としては相当思い切った措置であるということは御理解いただけると思います。それがちゃんと実行できるようになるのかどうかということについて検証しながら、そして努力をさせていただきたいというように思っているところでございます。

阿部委員 私は、もう一点、具体的に、虐待児受け入れ加算をしていただきたいとお願いしました。即答ができないのであれば、検討していただきたい。

 これは、一人につき二万六千円。何度も申しますが、この自立ホームでは、子供たちが働いて、そこで三万とか四万をホームに納めて、そのお金と補助金で成り立っていますが、失職しやすいのです、この子たちは。これは、しようがないと言うと変ですが、経験がその子たちをそう追いやっているわけですから、虐待児である過去は消えない以上、受け入れ加算はここにも手当てされて当然であるべきと思いますから、裁量の中ですから、よろしく検討していただきたいと思います。

 次に、小児慢性特定疾患に移らせていただきます。

 小児慢性特定疾患は、今回、法的な根拠を持つことになって、その点では一歩前進ですが、先ほどの山口委員の御質疑にもありましたが、親御さんの負担という新たな問題が生じてまいりました。

 そこで、皆さんのお手元に配らせていただきました資料がございます。これは、この間の我が国における常用雇用者、今、フリーターとか、あるいは非正規労働と言われるような働き方も三十代の世代にもふえておりますが、そうではなく、一応、常用雇用としてボーナスも含めて受け取っている世代の常用雇用者の賃金の、年間の総額の税込みの数値の推移でございます。

 ここでよく見ていただきたいのは、四十歳代、三十歳代ともに、二〇〇一年から総額ががくんがくんと落ちておりまして、三十歳代で四百九十五万ですね、それから四十歳代では五百八十五万という数値になります。これは、厚生労働省の資料の賃金構造基本統計調査報告より抜粋してつくらせていただきました。

 さて、ここで尾辻大臣に伺いたいと思いますが、今、この小児慢性特定疾患を、親御さんの負担、最大でも入院一万円、外来五千円にしようという案で、他の疾患に比べれば配慮したとおっしゃるんですが、しかし、小児慢性特定は、大体一歳から十八歳までとか、ずっと親御さんは続くわけです。そうすると、収入はこのように年次的に見れば、今、不景気の影響、雇用情勢の悪化等々いろいろある中で、ちゃんと正規雇用で働いていてもこういうふうに落ちている。これがこの世代に加える負荷というものを、どのように厚生労働省が考えておられるか。とにかく時間が長いのです、ほかの疾患と違って。この点について大臣はどのようにお考えであるか、一問目、お願いいたします。

尾辻国務大臣 今回この仕組みを考えますときに、私どもが考えましたことは、やはり、どうしても他の公費負担医療との均衡、いろいろございますから、いろいろ自己負担いただいている、その、他のものとの均衡というのはどうしても考慮せざるを得ないと思います。このことを考慮しながら、子育て家庭の大変さはよくわかっておりますから、その家計への負担もさらに考慮し、私どもとしてはできるだけ無理のない範囲でお願いをしたい、患者負担を導入したいと考えて、この仕組みにしたつもりでございます。

阿部委員 やはり今の国の少子化対策、少子化というものは、もちろん親の世代の負担がどのように軽減されるか、働き方がどのように安定するか、そして、まして障害のある、あるいは御病気のある子供を育ててくれている親御さんたちは、逆の意味でいえば、本当に頑張っているねという形で国がもっと積極的に支援しても、私は間違ってはいないだろうと思うのです。

 今回、このような経済状況下で負担を加えたということは、よくよく厚生労働省としても自覚していただきたいし、また、この家庭がさらに、御病気の子を抱えて、収入的にもお父さんも残業とかできなくなるとかいろいろなことがあって、負担が強いわけですから、今後も十分な目配りをしていただきたい。

 今後のことに関係して言えば、今まで慢性特定疾患の子供たちは、入院しても食費というものの負担もございませんでした。今回のこの法の位置づけの中で、食費についてはどのように扱われるのかについて、お願いいたします。

伍藤政府参考人 現行の小児慢性事業におきましても、入院時食事療養費は医療の給付の一部として給付の対象としておるところでございますが、今回の制度改正におきましても、これまでと同様、給付の対象にしていくということにしております。

阿部委員 このごろの国の政策の中では、食事はあなたが食べているんだからあなたが払いなさいと、簡単に言えばこういう政策が非常に多うございますから、これは食費も含めて上限が一万円、外来は五千円だということで、これは私は心からは賛成しませんが、まだ暫定策として、とりあえずの了承をしておるという立場です。

 そして、もう一つ言わせていただければ、入院と外来両方になったらどうなるのと言ったら、一万円と五千円両方ですというお答えでした。やはり、これもいかがなものかと思います。今後、ぜひ検討していただきたい。

 実は、同じ御病気で御兄弟がいて、二人目からどうなるのと聞きましたら、お二人目は一人目の十分の一だというお答えでした。それくらい割引してもらわないと子育て世代はやれないなと思いますが、入院、外来割引というのもぜひ検討していただきたい。これは今後の推移を見てかと思いますが、その点についてお願いいたします。

伍藤政府参考人 御指摘のありましたとおり、児童が二人いる場合には、二人目の児童については十分の一にするというような減額制度を設けることにしておりますが、同一月に入院と外来があった場合、これは診療単位が、今、別というような事務的な扱いになっておりますから、他の公費負担医療制度も参考にいたしましたが、そのような扱いになっておりますので、今回はこれは別々に徴収するとしたわけでございます。

 御指摘の趣旨はよく踏まえて、研究したいと思っております。

阿部委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、大村秀章君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合の四派共同提案による修正案及び山口富男君から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。水島広子君。

    ―――――――――――――

 児童福祉法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

水島委員 ただいま議題となりました児童福祉法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、第一に、市町村は、この法律による事務を適切に行うために必要な体制の整備に努めるとともに、当該事務に従事する職員の人材の確保及び資質の向上のために必要な措置を講じなければならないものとすること。

 第二に、児童福祉施設への入所措置の更新について、当該措置に係る保護者に対する指導措置の効果等に照らし判断する旨を加え、更新に際しては、指導措置の効果や児童の心身の状態等を考慮することを明確化すること。

 第三に、原案において平成十六年十月一日としている児童自立生活援助事業における就業の支援等に関する規定等の施行期日を平成十七年一月一日に、慢性疾患児童の健全な育成を図るための措置に関する規定の施行期日を平成十七年四月一日にそれぞれ改めるものとすること。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鴨下委員長 次に、山口富男君。

    ―――――――――――――

 児童福祉法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山口(富)委員 児童福祉法の一部を改正する法律案に対する修正案について、日本共産党を代表して、提案の趣旨及び理由を説明いたします。

 本法案は、児童相談の窓口や児童相談所の拡大、児童福祉施設の年齢要件の緩和、虐待防止に対する家庭裁判所の関与の強化など、虐待の早期発見を中心に、子供を虐待から守る施策の充実を図るものです。

 同時に、小児慢性特定疾患については、医療給付の創設、対象疾患や対象者、給付範囲の拡大など前進面はありますが、現在の医療給付の対象が医学的基準を理由に給付を狭められること、医療費の自己負担制度が導入されることなど、小児難病の患者、家族の長期にわたる経済的負担に配慮すれば容認できない内容が含まれています。本修正案はこの点を正すものです。

 また、里親などの懲戒権の容認は国際的に見てもおくれた規定であり、虐待を合理化する際の理由づけともなるものです。さらに、保育料の収納事務を私人に委託できるとする規定も、保育の民営化に拍車をかけるものとなり、これらをあわせて削除しようとするのが、本修正案の内容です。

 以上、提案趣旨とその理由の説明といたします。

鴨下委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。

 この際、山口富男君提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 衆議院議員山口富男君提出の児童福祉法の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、政府としては反対であります。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより本案及び両修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 第百五十九回国会、内閣提出、児童福祉法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、山口富男君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、大村秀章君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、大村秀章君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。大村秀章君。

大村委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    児童福祉法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 児童福祉司等専門職員の資質の向上と配置基準の見直し等を行うなど児童相談所及び市町村の体制の拡充を図ること。

 二 子どもたちに良好な家庭的環境を与えるために、職員の拡充、施設のホーム化等児童養護施設の改善に取り組むこと。

 三 児童福祉に関する家庭裁判所の機能の強化に向けての取り組みを進めること。

 四 保護者に指導措置を受けさせるための勧告が、実際にどのように機能したのかを検証すること。また、指導措置の内容について専門的・学術的観点からの研究をさらに進めること。

 五 国及び地方自治体における関係機関の連携強化を図るとともに、民間団体、NPOとの一層の連携を図ること。

 六 里親制度を発展させるための支援を強化すること。また、虐待を受けた者に対して適切かつ多様な支援を行うために、自立援助ホームの充実強化に取り組むこと。

 七 保護者への指導・支援のあり方、虐待事件の検証結果などが地方自治体にきちんと周知徹底されるよう連携・指導に努めること。

 八 小児慢性特定疾患については、子どもに治療を受けさせながら生計を立てているという保護者の立場を理解しつつ、子どもに対して最適な医療を提供するという制度の趣旨を踏まえ、制度のあり方等について検討を続けるとともに、手続きなどの負担をできる限り軽減すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、尾辻厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鴨下委員長 次に、第百五十九回国会、内閣提出、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

尾辻国務大臣 ただいま議題となりました育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 急速な少子化の進行等を踏まえ、総合的な次世代育成支援対策を推進する等の観点から、労働者が仕事と家庭を容易に両立できるようにするための支援を一層推進することが求められています。

 このため、育児休業の対象者や期間の見直し、子の看護休暇制度の創設等、労働者が育児や介護をしつつ働き続けることができる環境の整備を図ることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正であります。

 雇用形態の多様化が進んでいる状況を踏まえて、期間を定めて雇用される労働者のうち一定の要件を満たすものについて、育児休業及び介護休業ができる労働者の範囲に加えることとしております。

 また、育児休業について、雇用の継続のために特に必要と認められる場合には、子が一歳六カ月に達するまで育児休業ができることとするとともに、介護休業について、対象家族一人につき、要介護状態ごとに介護休業ができるものとし、その日数は通算して九十三日までとしております。

 さらに、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、負傷し、または疾病にかかったその子の世話を行うための休暇制度を創設することとしております。

 第二は、雇用保険法の一部改正であります。

 育児休業の期間の延長及び介護休業の取得回数の制限の緩和にあわせて、育児休業給付の給付期間の延長及び介護休業給付の支給回数の制限の緩和を行うこととしております。

 第三は、船員保険法の一部改正であり、育児休業給付及び介護休業給付について、雇用保険法と同様の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日については、平成十七年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十九分散会


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