衆議院

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第7号 平成16年11月12日(金曜日)

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平成十六年十一月十二日(金曜日)

    午前十一時七分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      河野 太郎君    菅原 一秀君

      中西 一善君    中山 泰秀君

      原田 令嗣君    福井  照君

      松島みどり君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    内山  晃君

      大島  敦君    小林千代美君

      小宮山泰子君    城島 正光君

      園田 康博君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      水島 広子君    横路 孝弘君

      米澤  隆君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   政府参考人

   (警察庁刑事局捜査第一課長)           菊谷 岩夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 山下  進君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            青木  功君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  福井  照君     松島みどり君

同日

 辞任         補欠選任

  松島みどり君     福井  照君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第三五号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 第百五十九回国会、内閣提出、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省職業安定局長青木功君、雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。御法川信英君。

御法川委員 自由民主党の御法川でございます。厚生労働委員会では初めての質問ということで、どうかよろしくお願いいたします。

 法案について、厚生労働省に質問をさせていただきます。

 今回の改正は、基本的には有期雇用労働者、すなわち期間を定めて雇用される労働者、これについて今までの育児休業法及び介護休業法では除外になっていたわけですけれども、今回、法改正によって、こういう方たちにも対象の範囲が広がるということで、この法律がますます多くの方たちに利用されるという意味では大いに評価をさせていただきたいなと思います。

 しかしながら、有期雇用労働者というこの部分ですが、パートの方あるいは契約社員、登録型の派遣の方、いろんな方がいらっしゃると思いますけれども、今回の法改正によって具体的にどのような方に対象範囲が広がるのかということについて、まずお伺いをしたいと思います。

伍藤政府参考人 お尋ねの、今回の改正による対象範囲の拡大でございますが、今回の改正の趣旨でございますが、育児または介護を理由として雇用関係が終了することを防ぎ、その継続を図ることを目的とするということでございます。

 具体的な要件といたしましては、休業の申し出時点におきまして、一つは、同一の事業主に引き続き雇用された期間が一年以上であるということ、それから二点目といたしまして、子が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる労働者、こういった要件を課しまして、こういった方々を広く対象にしていこうということでございます。

御法川委員 現行の育児・介護休業法における現状がどういうふうになっているか、これが法改正によってどのように変わるのかということについて、できれば具体的に、少し御説明をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

伍藤政府参考人 現行の制度は、期間の定めのない雇用者を対象にするということで育児休業を認めておりますが、今回の改正によりまして、有期契約、期間の定めのある者にまでこれを適用しようということでございます。

 どのように変わるかということでありますが、要件は先ほど申し上げたとおりでありまして、今回対象にする有期契約ということでありますが、実態上臨時雇いでありますとか契約社員とか、派遣業とか、世の中では通用している形態がいろいろございますが、そういうものをすべて通じて、先ほど申し上げましたように期間の定めのある契約であって、しかも先ほど申し上げた二点、こういう要件を満たす者に幅広く適用していこう、こういう考えでございます。

御法川委員 恐縮ですけれども、ふえるというものがあれば、数字的なものでこれをお示しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

伍藤政府参考人 今回の改正によってその対象者がどのぐらいふえるかというようなお尋ねだと思いますが、今申し上げましたように、いろんな雇用形態があって、これを精密に推計することはなかなか困難でありますが、私どもの非常に粗い、機械的な推計で、およそ一万人程度対象者が広がるのではないかというふうに思っております。

 現行はどうかということでありますが、現在、育児休業をとりますとそれに伴いまして育児休業給付というのが通常支給されるわけでありますが、こういうことの状況から、育児休業給付を受けているような方の推計をいたしますと、大体年間十万件というようなことでございますので、それに対しまして、今回有期雇用まで拡大することによりまして一万件程度ふえるのではないか、こういう見込みでございます。

御法川委員 済みません。今の質問、ちょっと繰り返させていただきますけれども、そうすると、現在、給付の方の金額から割り出した数が約十万人ということですが、これは、給付を受けてない人は、これに入っていないということですか。

伍藤政府参考人 御指摘のとおりでありまして、給付を受けた方々は行政として把握しておりますが、それ以外に、要件に該当しないとか、申請しないとか、そういう方々は把握をしておりません。

御法川委員 給付の方になるんですけれども、育児休業期間中に雇用保険に加入している方には、育児休業給付金というのは、支給されるわけで、そのときの給料の四割と理解をしておりますけれども、これが十五年の予算で大体七百六十三億円ぐらい、こういう形で支出しているということになっておりますけれども、今回この法改正をすることによって、この給付の額、どのように変わるか、あるいは変わらないのか、御説明をいただきたいと思います。

青木政府参考人 育児休業給付の所要額についてでございますが、ただいまの御質疑の中でございましたように、今回の改正案によりまして、育児休業給付について、育児休業給付の給付期間が延びます。一方、その給付内容としまして、今まで月割りにしていたものを日割りにするというふうな改正内容があるわけであります。

 そこで、こういったことで全体の所要額がどうなるかということでございますが、こういった制度改正によって、育児休業を取得する方がふえるということはただいまございましたが、そういったこともありまして、正確に幾らふえるということは言いにくいのでございますけれども、育児休業給付の給付の期間が長くなるというのは、いわゆる増要素になります。それから、日割り支給という形になりますので、この部分については減額になるということになっております。

 雇用保険の制度運営そのものがなかなか今難しい環境にありますけれども、この法案を策定する際にも、関係審議会、公労使一致で、この制度はいいことであるけれども、財政的に厳しい中で、できるだけ財政的に中立であるようにというふうな提言も受けておりますが、影響としては、ただいま申し上げたようなことになろうかと思います。

御法川委員 済みません。繰り返しもう一度お伺いします。

 そうすると、給付で増額する分というのは、概算で結構ですけれども、大体どれぐらいをお見積もりになっていらっしゃいますでしょうか。

青木政府参考人 過去の実績でございますが、平成十五年度に、育児休業給付につきまして、いわゆる初回受給者、初めてお受けになる方々、十万人を超えておられます。そして、その際の支給総額として、七百六十三億円でございます。ですから、出入りはありますが、例えば、所要人員として一割ふえたとすれば一割ふえるということになりますし、ただ、そこには今度の制度をどのように皆さんが活用されるかというようなことも絡みますので、目安としてはそんなところだと思います。

御法川委員 そうしますと、私は、算数は余り得意じゃないので、大変申しわけないのですが、今十万人いて約一万人ふえると見込まれている。七百六十三億、一〇%ふえるということになると七十六億ぐらいを増額というふうに見ているということでよろしいのでしょうか。

青木政府参考人 しかとは申し上げられませんが、今の仮置きをいたしますと、そのようになります。

御法川委員 逆に、減る分の方でございますけれども、支給単位期間を日割りで計算するということによって、ある程度は減るんじゃないかと今御説明があったと思いますけれども、これはどれぐらいをお見積もりになっているんでしょうか。

青木政府参考人 この日割り計算の方でありますけれども、これは御案内のように、雇用保険本体給付というのも日割り計算でお支払いしておりますけれども、現在時点で、育児休業給付、それから介護休業給付と合わせて二つ、実は同じようなシステムでございますが、これは大体二十億円ぐらいは減額になろうかなというふうに思います。

御法川委員 先ほど言い忘れましたけれども、介護休業給付の方の制限を緩和することによって増額する方の金額というのは、どれぐらいをお見積もりでしょうか。

青木政府参考人 こちらの方は算定がなかなか難しい面がございまして、先ほど答弁いたしましたが、いわゆる日割り計算関係、二十億と申し上げましたが、六十億でございました。失礼しました。

 それで、増額の方が四十億、二十億というふうに十五年度ベースで計算をしておりますので、大体差し引き、増額要素として今十五年度ベースで見ておるもので大体六十億強、それから、減額ベースで六十億強ということで、財政的には中立というふうなことでございます。

御法川委員 あくまでも概算ということですので、若干の増減というのはあると思いますけれども。

 次に、育児休業期間を半年まで、これは理由がある場合については延長できるということに今回改正するわけですけれども、この六カ月というものの具体的な根拠というのがあれば、お示し願いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

伍藤政府参考人 今回、一歳までの育児休業を基本としながら、場合によっては六カ月延長できる、こういう改正案を提案しておるところでありますが、その根拠ということでございます。

 延ばす必要がある最も多い理由は、保育所になかなか入れないというのが社会の現実だというふうに私ども受けとめておりますので、そういうことから、保育所に入れるかどうかという状況を見ますと、すぐに入れないけれども、何カ月か待てば、少し待てば保育所に入れる、こういうことを調査いたしますと、おくれた場合でも、約四分の三の方々は最大六カ月程度の希望する時期とのずれで、おくれで入っておるということが把握できておりますので、こういったことをひとつ考慮したということでございます。

 それから、六カ月ということでありますが、一年というのを基本にしておりますから、そういう基本の原則とのバランスということでありますとか、延長に伴います代替職員を確保しなきゃいかぬとか、そういう事業主の負担もいろいろございますので、そういうことを総合的に勘案して、先ほどの統計のようなデータも参考にしながら、六カ月というふうに設定をさせていただいたわけでございます。

御法川委員 そうしますと、今、厚生労働省の方で別に考えている政策で、待機児童ゼロということで種々の施策をやっていただいているわけですが、極端な話をすると、待機児童がゼロになった時点でこの六カ月は要らないという話になるんでしょうか。

伍藤政府参考人 これは、入れるか入れないかの、希望する時期とのずれをどう考えるかということで、六カ月ということを御提案申し上げているわけでありまして、待機児童数がゼロになったということとこれが完全にイコールといいますか、同じレベルの問題であるということではないというふうに思っております。

御法川委員 もしも、生まれて一歳を待たなくても、子供さんが保育所に入ることができるという状況に日本の国が全部なったときには、この六カ月というのは必要なのかどうかという議論は改めて出てくるのではないかなと思いますけれども。現在のところ、待っている方がいらっしゃるということでこの改正だと、そういう理解をさせていただきたいと思います。

 さて、ちょっと話をかえさせていただきます。

 今、仕事と育児あるいは介護、こういうものが両立できるような、そういう制度を政府の方では推進している。そういう中で、こういう目的に資する種々のことを行っている民間の企業、こういうものをファミリー・フレンド企業という言葉で厚生労働省が表彰しているということなんですけれども、これについての実績、あるいは現状について若干の御説明をいただけますでしょうか。

伍藤政府参考人 お尋ねの、このファミリー・フレンドリー企業というものでございますが、これは、仕事と育児、介護とが両立できるようなさまざまな制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取り組みを行う、こういう企業をできるだけ顕彰して、世の中にモデル事例として広めていこう、こういう趣旨でやっているものでありまして、平成十一年度から実施をしております。

 厚生労働大臣が表彰するものと都道府県の労働局長が表彰するもの、この二段階でやっておりますが、これまでの表彰実績でありますが、今年度まで、厚生労働大臣賞二十一企業、それから都道府県の労働局長賞二百六企業が受賞しておるということになっております。

御法川委員 ファミリー・フレンドリー企業で表彰された場合、企業の方に何か特典あるいはメリットがあるんでしょうか。

伍藤政府参考人 表彰したことに伴います直接的な恩典というかメリットはございませんが、例えば、できればそういう企業の方々を各種のシンポジウムにお招きして、御紹介いただくとか、できるだけいろいろな機会をとらえて、そういう企業の取り組みを幅広く周知していく、そういうものに活用させていただいているというところでございます。

御法川委員 ファミリー・フレンドリー企業というのがふえていくということは、多分喜ばしいことだ、そういうふうに考えますし、これがふえていくような方向がいいんだろうとは思いますけれども、実際に、勤労者あるいは労働者の方々が育児休業をとるということは、これは、企業の方が協力したにせよ、現実は、なかなかとりたくてもとれないという方たちが多くいらっしゃる。介護についても同様だと思いますけれども。

 この育児休業あるいは介護休業等についての取得率というか、幾らとっていただけるかという厚生省側の目標値というのがあれば、教えていただきたいと思います。

伍藤政府参考人 これは、政府全体の目標といたしまして掲げておりますが、育児休業の取得率、当面、男性は一〇%、女性につきましては八〇%という目標を掲げて今いろいろな施策を推進しているところでございます。

御法川委員 目標値の前に、現状はどれぐらいになっておりますでしょうか。

伍藤政府参考人 現在の取得率でございますが、平成十五年度の調査によりますと、男性は〇・四四%、女性が七三・一%ということでございます。

御法川委員 ありがとうございます。

 男性〇・四四%ということですが、これの目標値が一〇%、何かいい具体案があるんでしょうか。

伍藤政府参考人 これが一番難しい、悩ましいところでございまして、私ども、少子化対策、次世代育成支援という観点から、最もこれから力を入れて改革をしていかなきゃいかぬところが、こういう職場の改革といいますか、それから職場の意識をどう変えていくかと。特に、そのシンボルが男性の育児休業取得率、こういうところにあらわれているんじゃないかと思っております。

 現在、次世代育成支援推進法というものに基づきまして、各企業で、こういったことも含めて、それぞれの企業の取り組みを計画にしていただくということを今年度いっぱいかけて今お願いしているところでございますから、そういう作業を通じて各企業に具体的な目標を設定していただき、あるいは職場のそれぞれの職員にそういう雰囲気を、雰囲気といいますかそういう意識を醸成していただくような、そういう取り組みをぜひお願いしたいということで、いろいろ今行政も努力をしているところでございます。

御法川委員 私、実は独身で、まだ子供もおりませんで、私はこれからどういう取り組みをしていけばいいのかという参考にさせていただきたいな、そういうふうに思います。

 この育児休業、介護休業取得の実態というものを考えましたときに、どちらかといえば、都市部の大企業においてこういうものに対する取り組みが割と早く行われている、あるいは積極的にこういう取り組みが行われているのではないか。あるいは厚生労働省の基準を超えるようなやり方をしている企業もあると思います。

 一方、私は秋田三区という、非常に片田舎なんですけれども、地方においては大企業と言われるような企業は、もうほとんどありません。ほとんど中小あるいは零細企業ということで、こういう法律があるということは、頭の中ではわかってはいますけれども、雇用者あるいは被雇用者同様に、なかなかこの法律の恩恵を受けることができないという実態が、これは秋田だけではなくて、地方にはあるのではないかな、私はそういうふうに感じておりますけれども、この点について、地方あるいは中小零細企業に対しての働きかけというものが厚生労働省の方からなされているのかどうか、お伺いしたいと思います。

衛藤副大臣 各企業におきまして、確かにそういう差はあるということなんですが、統計をとってみますと、案外意外な結果が出ていまして、例えば男性の場合〇・四四、むしろ三十人から百人ぐらいの小企業において男性が育児休業制度をとっている人が極めて多いということで、母数との関係があるのかもしれませんけれども。逆に、五千人以上の工場では、男性の場合は〇・〇五と極めて低いとかあっていますので、やはり全般的にこれは頑張る必要があるというように思っております。

 そういう中で、昨年成立いたしました次世代育成支援対策推進法に基づきまして、一般事業主行動計画の策定を大企業においては義務づけ、三百人以下の中小企業においては努力目標というぐあいにして、計画的にこれに取り組もうとしているところでございます。

 また、特に中小企業におきましては、これが義務づけではございませんで努力目標でございますので、事業主の団体、例えば経営者協会とか中小企業団体中央会とか、そういうところとも連携をいたしまして、そういうところを次世代育成支援対策推進センターとして指定をいたしまして、中小企業に対する相談援助を行うというぐあいにして、この推進に努めようとしているところでございます。

御法川委員 先ほどファミリー・フレンドリー企業という話をちょっとさせていただきましたけれども、これと、今副大臣が御答弁なさった次世代育成支援対策、これとの関連というのがもしあれば教えていただきたいと思います。

衛藤副大臣 ファミリー・フレンドリー企業につきましては、私も先日これの表彰式に副大臣として出させていただきました。各企業、いろいろなところが、企業の中で大変な取り組みをしておりますので、そこの表彰をさせていただくということでございますけれども、こちらの方の、中小企業に対する次世代育成支援対策推進センターとしてお願いしているところは、中小企業団体中央会とか、あるいは経営者協会とかいうような中小企業の関係の団体、あるいは商工会議所とか、そういうところにお願いしているところでございますので、直接的な関係はないというように思っております。

御法川委員 育児・介護休業法、これの改正ということで今審議をしているわけでございますが、この法律は、基本的には、勤労者あるいは労働者の方の雇用における権利を守るための法律だというふうに私は理解をしておりますけれども、というと、これは今問題になっている少子化の問題と直接結びつくものではない、そういう理解も可能なのかな、そういうふうに思うんですが、この辺はいかがでしょうか。

衛藤副大臣 少子化対策をスタートしましたときに、働き方と育児という関係の中におきまして、これらの制度を導入いたしました。当初は、平成七年から二五%でスタートいたしまして、そして二度目の改正で四〇%というぐあいに、平成十三年からやったところでございます。

 その一環ではございますけれども、効果は出ているかどうなのか、直接的なのかどうかと言われれば、やはりそれだけでは足りない、効果が必ずしも出ているわけではありませんので、足りないということを言われるかもしれません。もっといろいろな全体的な施策について、少子化について、やはりどうしても考えなければいけないのではないのかというぐあいに私ども認識をいたしているところでございます。

御法川委員 繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、合計特殊出生率がずっと下がってきている、しかも、介護の方は後から入りましたけれども、育児休業法というのは、たしか平成四年から施行されていると私は理解しておりますが、もう十二年たっている。その中で、出生率はどんどん下がってきているということを考えれば、やはり、この法律が、直接いい方向にプラスになっているとは、なかなか言いがたい部分もあるとは思うんです。

 そこで、今これから、先ほど副大臣からもお答えがあったように、次世代育成支援対策等いろいろなことがあるわけですけれども、こういうものを見据えた中で、これからの少子化問題についてどのような取り組みをなされるか、御所信を伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 お話しのとおりに、少子化対策というのはまさに総合的に取り組まざるを得ない、こういうふうに考えております。そして、率直に申し上げて、この育児休業法に少子化対策、これで少し出生率が上がるんじゃないか、期待したことは事実でございます。そしてまた、たしかスウェーデンとかデンマークでは、この育児休業法がそうしたものに対してそれなりの役割を果たしたというデータもあると思います。

 ただ、日本において目に見えた効果が出てこない、これもまた事実でございまして、そんな中で、もう一度申し上げますが、少子化対策は、これはもう総合的に取り組んでいかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。

御法川委員 本当に根の深い問題だと思いますので、これからも、政府そして我々国会議員も、真剣に取り組んでいかなくてはならない問題だと思います。

 最後に、私見なんですけれども、今こういう形で、児童福祉法は先日また改正されましたし、今回この育児・介護休業法も改正される。いろいろな形で、家庭と仕事の両立をするんだ、できやすいような環境にしていくんだということに対する政府の取り組み、これは本当に皆さん一生懸命にやっておられるなというふうに感じておりますけれども、一方で、この日本の中には、こういう制度に全く頼らずに、自助で生きている方もいらっしゃる、これもまた事実でございます。この方たちに対する光をぜひ、光がそちらに当たらなくなることがないように、そちらの方の施策の推進もぜひお願いしたい、このことをお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

鴨下委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律等の一部を改正する法律案について質問をしてまいります。

 これまで公明党は、仕事と子育ての両立を支援するために、育児・介護休業制度の拡充を推進してまいりました。一九九二年四月に制度化された育児休業法は、当初所得保障なしのスタートでございましたが、その後の改正により、所得保障四〇%への拡充や、介護休業制度の法制化、休業取得を理由とした不利益取り扱いが禁止されるなど、子育てをしながら働き続けられる職場復帰の整備が着実に進んでおります。しかし、出産を機に退職せざるを得ないという女性が依然少なくはございません。

 厚生労働省が本年三月に発表した「出産前後の就業変化に関する統計」では、仕事を持つ女性の六割が、第一子を出産後、退職をしているというのが現状でございます。育児休業取得後の職場復帰にはなかなか結びついていないのが事実でございます。

 今後、少子高齢化が一層進むことが予想され、男女を問わず、働きながら育児また介護の負担を担わなければならない者が大きくふえることが見込まれております。このような状況の中で、働きながら子供を産み育てやすい、また介護問題にも対応できる雇用環境を整備していくことは、我が国の社会経済の活力を維持していく上でも、少子化の流れを変える上でも、重要かつ喫緊の課題であり、本改正案は早急に成立させるべきと考えております。

 尾辻大臣は、この両立支援策における育児・介護休業制度の位置づけ、重要性について、どのようにお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 急速に少子化が進行する中で、仕事と子育ての両立支援をより一層推進するためには、労働者が必要な期間に休んで育児などを行い、安心して働き続けることができる育児・介護休業制度の充実、利用促進が重要であると考えております。

 このため、対象労働者の拡大、一定の場合の育児休業期間の延長など制度の改善を盛り込んだ今回の育児・介護休業法等の改正法案の御審議をお願いしておるところでございます。

古屋(範)委員 大臣のこの方面における御見識をただいま承ることができました。

 次に、男性の育児休業の取得促進についてお伺いいたします。

 国連の統計局資料によりますと、先進諸国の出生率、その低下に悩む中で、フランスにおきましては、一九九四年、合計特殊出生率が一・六五に落ち込んだものの、二〇〇〇年には一・八八と持ち直して、二〇〇三年、推定で一・九一と回復傾向にあります。これは、各種手当から子育ての環境整備、そして家族の協力など、政府、また企業、家族が一体となって、新しいベビーブームというものが起こっていると言われております。

 また、ノルウェーにおきましては、閣内に家庭子供大臣がおり、総選挙では育児対策が争点となるというように、特にこの国で目立つのが父親の育児参加でございます。父親が四週間有給の育児休暇をとれるパパの役割制度を導入したところ、取得率は九〇%にも達したと言われております。

 現実の上で、子育て、家事の分担をしてもらえる、これは女性にとっても非常にありがたいことでありますし、また精神的な面でも、子供を産み育てるということに関して強い追い風となることは言うまでもございません。

 一方、日本では、一昨年の男性の育児休業取得率〇・三三%、低い数値にとどまっております。私は、思い切って、ノルウェーと同様とはすぐにはいかないとは思いますが、まずは、例えば十日程度、父親の育児のための休暇を義務づけるなど、まず第一歩として、育児のための休暇をとれるパパ休暇制度というようなものを導入していただきたいと考えております。

 一昨年、総理指示のもとにまとめられた少子化対策プラスワンの中にある男性一〇%、また女性八〇%という育児休業取得率の目標をどのように達成していこうとなさっているのか、大臣の御所見をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 我が国で男性の育児休業の取得が進まない理由でございますけれども、職場の理解不足や仕事量の問題など、男性労働者が育児休業を取得しやすい職場環境が整っていないという企業側の要因、それからまた、法制度に関する理解不足、育児は女性の役割という意識など、労働者側や社会全体の考え方、要因が指摘をされております。

 したがいまして、こうした状況を踏まえますと、男性の育児休業の取得促進のためには、まずです、まずは現行法制度の周知や社会全体の機運の醸成等から取り組んでいくことが重要であろうというふうに考えるところでございます。

 このため、政府は、男女別の育児休業取得率について社会全体の目標値を掲げ、この達成に向けた取り組みを推進しているところでございます。

 具体的には、次世代育成支援対策推進法における一般事業主行動計画の策定、実施により、それぞれの企業における環境整備を図ることでありますとか、先ほど話題になりましたファミリー・フレンドリー企業の一層の普及促進など、こうしたことで男性の育児休業の取得促進を図ってまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 ぜひとも、大臣が先頭に立ってこの推進をお願いしたいというふうにお願いを申し上げます。

 次に、改正案のポイントについてお尋ねをしてまいります。

 まず、対象労働者の拡大についてお伺いをいたします。

 今回の改正案の中での画期的な点は、一定の条件を満たす契約社員、また派遣社員、パートタイマー等の有期雇用者にも育児休業の適用が拡大されたという点でございます。パートなどの非正規雇用者が多い現状を見ますと、育児休業の潜在的なニーズは、むしろ、これまで対象外にあった方々に多いのではないかと考えます。

 そこで、今回、この対象範囲を拡大することになりましたが、その効果についてお答えいただきたいと思います。

 また、休業期間や休業の申し出を理由とする不利益取り扱いの禁止等について、現行の対象労働者と同様の措置が適用されるとの認識でよろしいでしょうか。この点、お伺い申し上げます。

伍藤政府参考人 今御指摘がありましたように、今回、有期雇用者に拡大をするということで、これをいかにまず事業主あるいは労働者に周知をしていくか、これが最大の課題だというふうに思っております。

 したがいまして、改正法が成立をいたしましたら、私ども、この改正法の内容に関する説明会の実施でありますとか、個別相談への対応、あるいは各企業における就業規則の規定例、いろいろなサンプル、こういったものを情報提供しながら、あらゆる機会をとらえてこの周知に努めてまいりたいというふうに思っております。

 それから、新たに適用される有期の労働者についてでございますが、休業を理由とする不利益取り扱いの禁止については、現在の対象労働者と全く同様の扱いになるというふうに考えております。

古屋(範)委員 まさに、おっしゃるとおりではございますが、この改正案、おっしゃるように、有期雇用者にも休業を認める道筋をつけたという点で、私は、大変評価されるものであるというふうに思っております。

 さらに、今後は、雇用形態だけでなく、業務の貢献度に応じて同一価値労働同一賃金を徹底させる必要があり、休暇や福利厚生などさまざまな処遇において、正社員と非正社員の均等処遇が実現することが極めて重要であるというふうに考えております。その意味で、今回の改正は、その実現に向け大きな一歩となるのではないかと考えております。

 一方、対象拡大については、過去一年以上雇用されていて、子供が一歳になっても雇用継続が認められること、ただし、二歳時点で雇用関係の終了が明らかな場合は除外という厳しい条件がつけられております。

 ところが、現実を見ますと、半年以下の契約もふえておりまして、事業主が適用対象を減らそうと契約期間を短期化するという方向に走る可能性が考えられます。労働者が休業取得を申し出た途端、企業が更新予定をやめ、雇用継続の見込みがないと、育児休業がとれないようなことも考えられ、取得の条件が実態に合っていないと、効果を疑問視するのも事実でございます。

 現行法には、契約が有期でも、何度も更新して実質が長期雇用ならば育児休業の対象になり得るという指針があります。非正規雇用者の場合、短期の契約を何度も更新していることが多いため、この指針が本当に生かされるかどうかが課題であります。

 そこで、育児休業及び介護休業の対象者の範囲拡大がうたわれているこの改正案第二条、第五条関係をしっかりと企業の現場で実際に利用できる細やかな配慮が必要であると思っております。この条項の実効性の担保についてお伺いをいたします。

伍藤政府参考人 御指摘のありましたように、それぞれの事業主がどういう行動に出るかというようなことは、これはよく注視をしていかなきゃいかぬ、非常に重要なポイントだというふうに思っております。

 期間雇用者が育児休業の対象になるかどうかということにつきましては、申し出の時点において判明しておる事情に基づいて、実態をよく見て判断をするということが基本でございます。

 さきの労働基準法でも、この有期契約というのを一年から原則三年に延長いたしましたし、今御指摘のありましたように、有期契約でも実質的に無期と同じようなものについては育児休業法の対象にするという、もう既に、今でもそういう扱いをしておりますので、今回の改正法の趣旨が損なわれないように、ここは私ども行政も厳しく監視をしていかなきゃいかぬというふうに考えております。

古屋(範)委員 そうした企業の抜け穴といいますか、抜け道、こういうものに関してしっかりと監視をしていただき、まさにこの改正案が絵にかいたもちとならないよう、よろしくお願い申し上げます。

 次に、子供の看護休暇制度の創設についてお尋ねをしてまいります。

 育児休業取得後に働きながら子供を育てる多くの親が直面をいたしますのが子供の急な病気やけがであり、こうした事態に対応できる看護休暇制度の創設を、その請求権化を含め、公明党はいち早く提案しており、現行の努力義務から大きく前進したものと大変に大きく評価をしております。

 そこで、この看護休暇制度の対象者をどのように規定しているか、また、急な病気などのための休暇であることを踏まえ、運用面における配慮をどのようにお考えになっているか、お伺いをいたします。

伍藤政府参考人 今回新たに新設をいたします子供の看護休暇制度でございますが、この制度は、小学校就学前の子供が病気あるいはけがをしたときに子供の世話をするための休暇として新たに制度化をするということでございまして、労働者一人につき一年度において五日を限度に休暇を取得することができるということにしたわけでございます。

 運用面で配慮すべきだということでございますが、これは、一応五日間ということではございますが、それ以上、いろいろ事業主が工夫をして、半日単位にするとか、時間単位にするとか、そういった面での工夫の余地は、事業主のいろんな柔軟な対応によって可能になるのではないかというふうに考えております。

古屋(範)委員 子供を育てる上では、急な熱、けが、はしか、水ぼうそうなどは避けて通れないことでございますので、ぜひとも柔軟な運用をよろしくお願い申し上げます。

 次に、介護休業の取得回数制限の緩和についてお尋ねをしてまいります。

 今回の改正では、介護分野での改正も大変注目をされております。その内容は、従来、最長三カ月、一回きりであったものが、介護休業を同じ期間内で分割して取得ができるとした点にあります。

 介護の金銭的負担は大きく、仕事との両立を望む方々は大変に多いわけでありますが、現行では介護休業は一人につき一回のみのため、病気の悪化に備えて休みをとることをためらう人が多い実情があります。

 介護は、病状の変化に左右され、先の見通しがつきにくいものでありますので、今回の改正により、介護が必要な状況に応じて複数回取得できる、これは働く女性にとっても非常に活用しやすいというふうに評価をしております。

 一方、介護休業の期間については、通算三カ月ということで、その延長は見送られました。介護休業をとった人の多くが実際の介護に携わっている現状や、病状の変化、施設への入所待ち等を考えれば、三カ月では決して十分とは言えないと思います。

 そこで、将来は、介護の状態に見合った休業期間の延長など、柔軟に対応すべきと考えますが、この点について御見解を伺います。

 また、長期に介護をしていく上で、デイサービスやショートステイなど、さまざまなサービスの利用を組み合わせることにより、休業という方法をとらずに介護を続けていけると考えている人もおります。

 私は、仕事と介護、もちろん育児も同じでございますが、この両立には、短時間労働、またフレックスタイム制の導入など、柔軟な働き方への支援が重要であると思われます。そういうことで、今後は休業以外の支援策もさらに拡充すべきと考えますが、御見解をお伺いいたします。

伍藤政府参考人 まず第一点目でありますが、介護休業の期間そのものの延長についてのお尋ねでございます。

 現行制度の考え方でございますが、介護休業、これは家族による介護がやむを得ない場合の緊急的対応ということで休業を取得するということで、その期間としては、家族が介護に関する長期的な方針を決めることができるようになるまでの期間ということで、今まで三カ月ということで定められておったものでございまして、基本的には今回の改正においてもこの考え方は維持しておるところでございます。

 長期間にわたる介護を、仕事を休んで一人の労働者が担っていくことが適当なのかどうかということについては、介護の社会化とか介護保険とか、今いろいろな制度が整備されている中で、いろいろ議論があるところだと思いますので、私どもは、この介護休業の基本的な考え方は今回は維持をさせていただきまして、これを延長するということについてはなかなか困難ではないかなというのが現時点での考え方でございます。

 それから、こういう介護休業とか育児休業にプラスして、短時間労働とかフレックスタイム、こういった柔軟な働き方を組み合わせていくという御指摘はまさにそのとおりでございまして、これは育児休業・介護休業法の中にもそういった趣旨の規定が盛り込まれておりまして、こういった措置を組み合わせていただくように、これからもいろいろな周知に努めてまいりたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 介護につきましては、社会全体の支援、また介護保険制度というようなものもございますが、やはり家族の存在というものを抜きにしては考えられないというふうに思っております。また、将来に向け、さらなる拡充をよろしくお願い申し上げます。

 いずれにいたしましても、現実として、育児・介護制度を利用しやすく、かつ仕事と家庭を両立させるためには、何といっても、現場の企業の取り組み、管理職や同僚の理解の支援が不可欠であります。

 先ほどの質問にもありました、ファミリー・フレンドリー企業、この代表的な企業でございます、特定の企業名を挙げて恐縮でございますが、先日私ども、株式会社資生堂に行ってまいりました。先日も申し上げましたように、今公明党では仕事と生活の調和に関する検討ワーキングチームというものも立ち上げておりまして、そのチームで視察に行ったものでございます。

 この資生堂さんにおきましては、ワーク・ライフ・バランス、すなわち、育児、介護に限らず、普通の家庭生活を豊かにする生き方、趣味やボランティア、地域活動、生涯学習などができる働き方を実現するための企業の取り組みについて、次世代育成支援対策推進法などの法制化をリードしてきた、前厚生労働省雇用均等・家庭局長でいらっしゃった岩田喜美枝取締役が陣頭指揮をとって、今この方面の企業の活動をしていらっしゃる。その岩田取締役の説明も受けてまいりました。

 この資生堂さんは、子育てをしながら女性が働ける環境を先駆的につくっていこうということで、フレックスタイム制の導入、また育児休業制度も、これもかなりの人数が活用している。また、育児時間制度、これは子供が小学校に上がるまで一日二時間は育児のための時間をとるという、さまざまなシステムを取り入れていまして、また、注目すべきは、wiwiwシステムといいまして、育児休業をとっている間、休業者は、企業また社会の流れからおくれるのではないかという非常に危惧があるわけでございます。それを補う職場復帰支援プログラムというのがありまして、常に、上司がメールを送るですとか、さまざまな情報を発信していまして、これを資生堂さん以外の多くの企業も導入している、そういうようなシステムもございました。

 また、歩いて数分のところにある保育室、カンガルームというのですが、ここも、例えば昼休みにクリスマスパーティーとかハロウインパーティーを開いて、お父さん、お母さんが会社の昼休みのちょっとした時間にそういった行事にも参加できるとか、お母さんがたくさんの荷物を持って都心まで通勤するというのは非常に大変であるということで、なるべく、おむつとかそういうものは置いてあげて、洗濯もしてあげて、荷物を減らしてあげるとか、非常に細々と配慮が行き届いている保育室でございました。

 また、自社だけの戦略ではなく、ワーク・ライフ・バランス塾といいまして、現在三十五社が集ってきているということでございますが、こうした次世代育成、また男女共同参画、こういうものも、この資生堂の岩田取締役がその行動計画を支援するというような塾もありまして、そこに参加をしている企業、各分野における重要な企業が参加をしていまして、その意欲というものも非常に高い。ですので、その企業がまたその分野でのこういった空気を牽引していく存在になるのではないかというような期待もされております。

 このような取り組みをした結果、採用におきまして、年間百人から二百人採用しているそうなんですが、ことしは二万人の応募があり、非常に優秀な人材、特に優秀な女性が集ってきている。集ってきた女性も、第一子、第二子を産んでもさらにキャリアを続けていくという、そういう方にも実際にお会いをいたしましたけれども、そのような取り組みをされているということでございました。

 本法案を真に実効あらしめるためには、こうした企業の取り組みが欠かせないと思います。厚生労働省は、こうした先駆的な取り組みをされている企業を育て、さらに、それに続く中小企業、地域を巻き込んで、全員参加型の社会をつくり上げる使命があると思っております。そして、男性も女性も、働く人すべてが安心して子供を産み育てられる、また多様な生き方を選択できる、だれもが生き生きと活躍できる社会を形成すべきと考えておりますが、大臣の御所見をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 今資生堂のお話を伺いながら、なるほどなと思ったことが実は一つございました。それは、厚生省と労働省が一緒になって、そして局が一緒になった局はたった一つであります。その局が雇用均等・児童家庭局でありまして、その局の初代の局長さんが今お話しの岩田局長さんでありました。まさにこの仕事と家庭の両立ということで先頭に立たれた方でありますから、その方が資生堂へ行かれて、ああ、いい仕事しておられるなと思いながら、今のお話を伺っておりました。

 こうした先駆的な企業がどんどん出てきてくれること、もうこれが私どもの一番望んでおるところでございまして、そして、そうした例を公表することなどによって、みんなが知ってくれる、また自分のところもやらにゃいかぬと思ってもらうというのが一番望ましいことだと思っております。

 そこで、仕事と家庭の両立支援に取り組む企業であることを広く周知できるよう、次世代育成支援対策推進法では、仕事と家庭の両立ができる雇用環境の整備に積極的に取り組んでおる事業主を認定して、そして認定企業は特別の表示ができるという制度を設けたところでございます。こうしたいろいろな取り組みで、仕事と家庭の両立支援のための企業の自主的な取り組みを支援してまいりたいと考えます。

古屋(範)委員 もう最後の質問でございます。

 ただいま御紹介を申し上げましたように、優秀な人材を引きつけ、生産性を向上させるためには、仕事と生活のバランスがとれる勤務形態が必要と、発想を転換する企業も出始めております。企業のイメージも当然上がるわけでございます。そうした企業では柔軟で多様な勤務形態が導入され、社員が生き生きと、特に女性が生き生きと活躍をしております。

 仕事と生活のバランスは少子化対策の観点からも喫緊の課題でございます。仕事も生活もともに充実が欲しい、また、いい仕事をしたいというのは、男性も女性も変わらぬ欲求でございます。そうした、女性のみならず、男性たちの切実な願いにこたえていくことが、今求められている取り組みではないかと思います。

 本年六月、厚生労働省の仕事と生活の調和に関する検討会議は報告書をまとめ、仕事と生活のバランスをとるための具体的な方策を提言されております。また、昨日、十一月十一日付の日経にも、厚生労働省が育児、また、介護両立支援のみなし労働の適用を検討するというような記事も載っておりました。ITの普及、またさまざまな働き方が多様化している、ライフスタイルが多様化している、そのような中でのすばらしい前進になるのではないかというふうに期待もしております。

 激烈な生存競争にさらされている企業にとって具体化が難しいことはわかりますが、日本にとって重要な構造改革の一つとして真剣に取り組まなければいけないと思っております。そして、企業活力だけでなく、個人も地域もバランスよく活躍できる、真に活力ある社会の構築を目指し、尾辻大臣にリーダーシップをとっていただき、大きく前進をしていただきたいと思っております。

 私は、労働者が自分の価値観や生活状況に合わせて主体的に働き方を選べるための条件整備を目的とした、仮称でありますけれども、仕事と生活の調和法というようなものも制定してはどうかと考えておりますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

尾辻国務大臣 御指摘のとおりに、労働者が仕事と家庭、地域、学習などさまざまに組み合わせてバランスのとれた生き方を選択できる、これはもう大変重要なことでございます。

 そうしたことのためにも、今般、私どもはこの法律の改正をお願いいたしましたし、それから、先ほど局長もちょっと申し上げておりましたけれども、次期通常国会に向けては、時短促進法、あるいはまた、個々の労働者の健康や生活に配慮した労働時間の設定を促進するものへと見直すというようなこと、見直しとか、こうしたものは検討いたしております。

 ただ、ちょっとお触れになりました新聞報道は、これは観測記事でございまして、まだ私どもが何か言っているものではございません。

 いずれにいたしましても、こうした取り組みを一歩一歩積み重ねることにより、仕事と生活の調和のとれた働き方の実現に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 最後に、今回の改正が、男性も女性も、すべての人にとって安心して子供を産み育てられる社会、また多様な生き方を選択できる、それを可能とする制度改正になることを強く望みまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 私たちは、前回の本法改正時である二〇〇一年の六月に、初めて民主党の仕事と家庭の両立支援法案を提出いたしまして、秋の臨時国会で政府案とともに審議をしていただきました。仕事と子育ての両立の仕方は、それぞれの人の事情や価値観によるところが大きく、施策としては多様な枠組みを提供する必要がございます。育児休業をしっかりととりたいという方もいれば、残業さえなければよいという方、勤務時間を少々短縮できればよいという方、子供が病気のときだけ休めればよいという方など、さまざまな考えの方がいらっしゃいます。

 民主党案では、育児休業、時間外労働の制限、勤務時間短縮制度、看護休暇など、多様なオプションを提供いたしまして、多様なニーズにこたえております。二〇〇一年秋の国会で、政府案ではなく民主党案を成立させていただいていれば、日本の出生率はもっと希望的な見通しが立ったのではないかと大変悔しく思っているところでございますので、ぜひ今回の審議でも本当に実のある審議ができますように、よろしくお願い申し上げます。

 また、私たちは昨年、労働基準法が改正されたすぐ後に、期間雇用者を法案対象者とするよう民主党案を修正いたしまして、昨年の七月に衆議院に提出をさせていただきました。今回、政府案でも初めて看護休暇制度が請求権化されまして、期間雇用者も法案対象者となりました。民主党の仕事と家庭の両立支援法案を追いかけるような形で改正案を出してくださったことは、一歩前進と評価をしているわけですけれども、でも、その速度を見ますと、現在の日本で必要とされるものに比べると、まるでウサギとカメのような違いがございまして、出生率の低下に歯どめをかける効果を示す気配すらないと思っております。

 まず、この質疑の冒頭に、次世代育成支援についての大臣の基本的な考え方をお伺いしたいと思います。そして、その大臣のお考えと比べまして、今までの厚生労働行政をどのように見ていらっしゃるかを、まず総括していただきたいと思います。

尾辻国務大臣 先月発表されました内閣府の世論調査結果におきましても、国民の八割の方が少子化の進行について危機感を感じておられます。こうした状況の中でございますから、お話しの次世代育成支援施策というのは、これは国の基本政策として取り組まなければならない課題である、まずこういうふうに考えます。そうした中でございますので、昨年成立させていただいた次世代育成支援対策推進法においては、現在、全国の地方公共団体や企業において、行動計画の策定が行われておるところでございます。

 政府でございますが、本年六月に策定いたしました少子化社会対策大綱や、これは今年中に策定したいと考えておりますけれども、新しいプラン、新エンゼルプランのさらに新しいプランでございますが、これに基づきまして、地方公共団体や企業の行動計画の実現に向けた取り組みを支援いたしますとともに、国民に、子供を産み育てやすい環境整備が着実に進められているという実感を持つことができるような、効果的な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 要するに、環境整備を何とかして進めなきゃいけない、その環境整備の具体的な策として民主党もいろいろお出しいただいた、こういうふうに理解しておりまして、私どもも環境整備を進めていきたい。ただ、率直に申し上げて、その環境整備がなかなかうまくいっていないために出生率の低下にも歯どめがかかっていない、私はそういうふうに考えております。

水島委員 今、率直な御意見を伺えて大変うれしく思っておりますけれども、今までの政府の対応を見ておりますと、一九九〇年に合計特殊出生率が一・五七と戦後最低になったことを受けまして、九四年にはエンゼルプラン、緊急保育対策等五カ年事業、九九年には少子化対策推進基本方針、新エンゼルプラン、二〇〇二年には少子化対策プラスワン、二〇〇三年には次世代育成支援対策推進法、また、これは議員立法ですが、少子化社会対策基本法等々、この十年間、いわゆる少子化対策というのはいろいろ提示をされてきたわけですけれども、それが今大臣がおっしゃったようにきちんとした効果を示していないということが、出生率の右肩下がりということからもわかると思うんですが、まず、厚生労働省として、個々の施策がどのような効果を上げたかということを検証されたことはございますでしょうか。

伍藤政府参考人 次世代対策といいますか少子化対策は、いろいろな各般にわたる施策を進めておりますので、それぞれの政策がどういう効果を与えるかというのは、これは個別に実証することはなかなか困難でございます。総合的にいろいろな施策を関連づけて進めておるということであります。

 しかし、御指摘のように出生率が低下傾向にあるということも事実でありますが、こういった背景としては、一つ私ども考えておりますのは、やはり三十歳代の男性の長時間労働、こういう背景が一つあるのではないかということでありますし、それから、そういったことから、職場優先の風潮といったことがなかなか日本では是正されていないということを考えております。それから、育児の負担が女性に集中するという中で、地域共同体の支え合いといったようなことが非常に不十分である、こういったことで、専業主婦家庭といいますか、そういった方々の負担感が大きくなっているというようなことを認識しております。

 そういう認識に基づいて、これからさらに総合的な政策を進めていかなきゃいかぬというふうに考えております。

水島委員 私が質問しましたのは、そのような今までとられてきた政策の評価、検証をされたことがあるかという質問でしたので、今のお答えを伺いますと、多分されたことがないので推論を述べられたんだろう、そういうふうに理解をさせていただくわけですが、一日評論家みたいな方はどこにでもいらっしゃって、推測というのはどこでもされているわけですので、ここで必要なのは、やはり個々の政策の検証作業、効果の評価ということだと思うわけです。

 そんな中で、総務省が本年の七月に、少子化対策に関する政策評価書として、新エンゼルプランを対象に政策の評価を行っております。その中の「把握の結果」の部分を、きょうお手元に資料一として配らせていただいているので、ごらんいただきたいんですけれども、ここで、「政策効果について」といたしまして、「仕事と子育ての両立に係る負担感 いまだ十分とはいえないものの総じて緩和されてきている。」「子育てそのものの負担感 必ずしも緩和されているとはいえない。」「出生数・合計特殊出生率 いずれも低下の一途」と並んでいますけれども、ここに非常に大げさな囲みで、ここの部分なんですけれども、「しかし、低下傾向には、外部要因も影響」と、さも大発見をしたかのように書いてあるわけでございます。

 外部要因とは何なのかと見てみると、「理想の子ども数の減少」とありまして、「子どもが欲しい理由として、社会的な規範意識を挙げる者が減少している等子どもを持つことに対する個人の意識が変化」とあるわけでございます。

 「社会的な規範意識」という大げさな書きぶりに驚きまして、今度その根拠を見ますと、国民生活白書からデータをいいかげんに抜き取っているわけでございます。

 この紙の下の「子どもが欲しい理由」というところに書いてありますが、「子どもをつくるのは自然であるから」が、この六年で三・六%低下、「社会的に一人前になれるから」が四・七%低下、「つくれと周りがうるさくなるから」が一一・一%低下しているのですけれども、それをもって「社会的な規範意識」と言ってしまう感覚にも驚いてしまうわけですが、引用元の国民生活白書を資料二として、こちらも配らせていただいておりますけれども、これを見ると、総務省の感覚にもっと驚いてしまうわけでございます。

 ここには、子供が欲しい理由がずらりと並んでいるわけですけれども、一九九七年も二〇〇三年も、子供が欲しい理由として、過半数の人は「子どもがかわいいから」を挙げておりまして、「結婚して子どもを作るのは人間として自然であるから」が続いております。それ以外のものは、全体から見るとせいぜい二割以下でございます。

 細かく見てまいりますと、「子どもは夫婦の間をつなぎとめる働きをするから」「子どもは老後の面倒をみてくれるから」というような打算的なものが、それぞれ八・一%、三・三%減っておりまして、「結婚すると子どもを作れと周りがうるさくなるから」という、親になることへの主体性そのものを疑わせるようなものが一一・一%低下をしているということで、「子どもがかわいいから」は三・八%ふえているのですから、子供の立場から見ると、むしろ好ましい変化ともとれるのではないかと思っております。

 これを一概に「社会的な規範意識」としてしまうのは、とても客観的な評価作業とは言えないと思います。これを、きちんとした評価、そしてそこから導き出される推論や考察としてこんなことを書き切ってしまいますと、多分、今委員長もほほ笑んでいらっしゃるわけですが、学術論文などでは認められないんじゃないかなというふうにも思うわけです。

 かなり恣意的な、そして客観的ではない評価が、この総務省の一枚紙でされておりまして、私は常々思っていますけれども、政治や行政が行うべきことは、価値中立的な制度の整備であって、価値観や規範意識をつくることではないはずだと思っています。価値観や規範意識というのは別の要素によってつくられるべきものであって、規範意識の形成ということであれば、例えば、むしろ政治と金の問題に決着をつけることとか、公約破りをしないこととか、そういうことの方が、規範意識の形成のためにはずっと重要だと考えております。

 本来行政としてやるべき仕事が進まず、そのために効果があらわれないというときに、国民の規範意識などに言いわけを求めるというのは、とてもよくある責任転嫁の手法だと思っております。大臣はまさかそんな方ではないと思いますけれども、御自身がやるべきことは次世代育成支援のための施策を充実することであって、くれぐれも、子供を持って初めて一人前などとキャンペーンを張ることではないということを、もちろん理解されていらっしゃいますでしょうか。

尾辻国務大臣 総務省が政策評価をした、しかも、その評価された側の私でありますから、そのことについて何か申し上げるということは難しいことでございますので、この際、避けさせていただきたいとは思います。

 しかし、少なくとも言えることは、結婚とか出産などの個人の意識や価値観に関するものは、これはお話のとおりに、当事者の自由な選択にゆだねられるべきものでありまして、これに対して行政が何か言うとかというものではない、これはもうそのとおりであるというふうに認識をします。

 さっき申し上げたように、その中で私どもが反省すべきは、そうした皆さんがいろいろお考えになる、ただ、環境整備をするということが、どういうふうにその後お考えになるかはまさに個人の自由ですけれども、その前提になる環境整備をするというのは、これは私どもの行政の仕事だと思っていまして、その環境整備の部分で至らないところがあった、このことは反省すべきだ、こういうふうに思っております。

水島委員 安心をいたしましたけれども、大臣は、不妊の方ですとか、そういう子供を持ちたくても持てない方たちのサポートをするというのも厚生労働大臣の所管事項だと思っておりますので、そういった立場からも、持ちたくても持てない方たちを追い詰めるような、そんな施策には絶対に加担をしないでいただきたいと思っているところでございます。

 私、先ほど、価値観に行政が何か物申すというのはいけないということは申し上げまして、私もそう思います。ただ、全体的な施策が、いかにも何か子供を持つことを妨げているような、幾ら言っても次世代育成支援が進んでいかない、社会全体で子供を育てていこうというような、そういう勢いが全体の施策から感じられない場合には、やはりそれはまた個々人の価値観に与えていく影響もあると思っておりますので、そういう意味で、今大臣がおっしゃったような次世代育成支援の環境整備を、本当にそちらにしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 私が今回総務省の政策評価にあえて触れましたのは、二〇〇四年度中に策定されることになっております、その後継プランであります新新エンゼルプランに影響を与えるということを大変懸念しているからでございます。

 そもそも、厚生労働省としてみずからの政策評価を行って、新新エンゼルプラン作成に着手すべきではないかと考えておりますけれども、その際の評価は、この総務省のようにかなり恣意的なものではなく、本当に価値中立的に、客観的な視点から行っていただきたいと思いますけれども、この点、確認させていただいてよろしいでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほど局長が御答弁いたしましたように、一つずつの政策で、なかなかこれが即、少子化対策にどのぐらい役に立ったのかというようなことを評価するというのは、かなり難しい面もございます。

 しかし、私は、これは私として今評価しておるというか反省しておることでございますが、大きく言いますと、まず、今新エンゼルプランですが、その前にエンゼルプランがありました。あのときの反省は、まさに少子化を全部保育におっかぶせたようなところがあったと思うんです。あのころは、時の厚生省に限らず、もう少子化対策というと、イコールで結んで保育の充実でした。私はそのころよく言ったんです、では保育が充実したら本当に子供が生まれるか、こう言っていたころがあるんですが、まさにあのころはもう全体として、いろいろなところに、有識者の皆さんに集まっていただいて御検討いただいても、そんな結論が出てくるというようなころがありました。その反省がまずあります。

 その反省を踏まえて、新エンゼルプランでは、もっと社会全体で少子化というのは取り組まないとだめだということでやったつもりでありますが、先ほど来御指摘のように、これが不十分である。

 今度、新新エンゼルプランをつくりますけれども、この反省を踏まえて、先ほど民主党の御意見も伺わせていただきましたし、そんなことも御意見をお聞きしながら、もっと効果あるものにしたい、こう考えております。

水島委員 ぜひよろしくお願いいたします。そのためには、民主党としてもできるだけ、できることはさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 さて次に、この法案の内容に入ってまいりますけれども、子供の看護休暇のことについてまず伺いたいと思います。

 今回の政府の改正案では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、五労働日を限度として子供看護休暇を取得することができるとございます。これは、つまり子供が何人いても五日しか休めないというわけですから、まるで一人っ子誘導策のように聞こえるわけでございますし、一人一人の子供の視点に立った政策とは思えません。少子化、少子化と大騒ぎしている割には、そして、今大臣もよく反省しているとおっしゃっている割には、政府は、就学前の子供は一人に抑えろということを言いたいのでしょうか。

尾辻国務大臣 率直な表現をさせていただきますと、やはり世の中、理想とする方向に一歩一歩近づけていきたい、そう申し上げたいわけであります。したがって、今度のことでは、従来努力義務であったものを義務づけたという、これは一歩前進であることはお認めいただけるんじゃないかというふうに考えるわけであります。

 それじゃ、労働者一人当たりで五日、子供一人当たりじゃないじゃないかという今のお話になるわけでありますが、どうぞ御理解いただきたいといって申し上げたいことは、私どもは最低基準として言っているわけでありますから、その後、最低基準は最低基準として、労使のいろいろな話し合いの中でこれをまたお決めいただければ大変ありがたい。ただ、法律で定めますことは、事業主の負担を考えますときに、今それを定めるというのは、私どもは、困難である、こう判断したわけでございます。

水島委員 今大臣の御答弁の中、一歩一歩近づけていきたいというのと、今の段階ではということがございましたので、こちらとしては当然次を期待するわけでございます。民主党案では、子供一人につき年間取得日数を十日とし、上限を十五日としておりまして、シングルペアレントの場合はその倍ということになるわけですけれども、政府も、何らかの上限は設けるとしても、子供一人につき五労働日というように、ぜひ、本当は今回の段階で考えていただきたいところでございます。

 今、事業主の理解というようなこともありましたけれども、今回どうしても無理なのかということ、また、今回どうしても無理である場合に、理想の方向に一歩一歩近づけていく、次の一歩はやはり子供一人当たりというようなカウントになっていくように、さらに見直しを続けていっていただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 今の、今度改正をお願いしておる、この中で書きかえろとおっしゃられると、それは率直に、大変難しい、困難であるということはまず申し上げたいと思います。

 私は一歩一歩と言いましたから、では、次の一歩が一人当たり五日になるのかと、ぱっと言われますと、私もそう約束しますとまでは言えませんが、我々の検討の事項の中にはそうしたことも含めて、次のことをまた考えていきたい、こういうふうに存じます。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

水島委員 ぜひ、これは現実的な問題としてきちんと考えていただきたいと思います。

 やはり、子供をもう一人持とうかと思うときに、持つと権利がその分半分になる、子供一人当たりで考えますとそういうことになりますので、これは本当に政府が一人っ子を誘導しているわけではないという立場を明らかにするのであれば、本当に必要なことだと思いますし、今回のこの審議の中で、必ず、それが必要だと思って、そちらの方向に進んでいきたいということをきちんと何らかの形で残していただくことが必要だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 そして、今回のところではそれが無理だという場合に、労働者一人につき五労働日ということでございますから、これがお子さんが複数いらっしゃったり、あるいは、一人のお子さんが病気をたくさんされたりして実際に足りなくなるというような場合には、当然これは、今のとっている状況を見ましても、ずっと男性の方がとっている日数が少ないわけなんですが、これは当然、父親も足りない場合にはとっていくべきだというふうに、大臣の方からも一言ちょっと今言っていただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 申しわけありません、今のところ、もう一回お話しいただけますでしょうか。

水島委員 看護休暇の日数が足りなくなってしまうようなときには、現行でも、母親の方が父親よりも子供の病気のために休んでいる日数が多いんですけれども、足りないときには、ぜひ父親がとって何とか都合をつけてくださいということを、世の中のお父さんに向かって、今、大臣からちょっと言っていただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 私が申し上げてお聞きいただけるのであれば、世の中のお父さん方に、ぜひそうしてあげてくださいということは申し上げたいと存じます。

水島委員 ありがとうございます。大変お父さんたちにとって励みとなったと思います。

 それで、今回この政府案では、看護休暇を取得するために六カ月という勤続要件をかけてあります。まず、なぜこの勤続要件があるのかということを御説明いただきたいと思います。

伍藤政府参考人 看護休暇でございますが、原則として、勤続年数の長短にかかわらず、すべての労働者を対象とするということでございますが、労使協定を締結した場合に限り、勤続六カ月未満の労働者を対象から除外できるということにしております。

 その考え方でございますが、休暇に伴う事業主の負担を勘案いたしますと、その要件として、一定期間の企業への貢献を求めるということもやむを得ない場合があるのではないかということで、このあたりは、労使の関係の御相談にお任せをしておる、こういうことでございます。

水島委員 労使の関係というところで、ちょっとするりと政府としては答弁を逃れてしまったかなという感じがするんですけれども。

 ただ、考え方といたしまして、例えば、年次有給休暇は確かに六カ月の勤続要件というのがついております。これはこれで、今のような事業主側の負担ということで考えれば、確かにこの勤続要件というのは納得ができるところだと思うんですけれども、ただ、子供の看護休暇と年次有給休暇とは根本的に制度が異なっておりまして、子供の看護休暇というのは、突発的な傷病で、しかも、子供の場合には急変することもありまして、その点、大人の病気とは異なるわけでございます。これは、雇われて一カ月の労働者であっても、あるいは十年勤務している労働者であっても、これについては同じことであります。

 そして、さらに、勤務が一カ月というような場合では年次有給休暇も取得できないということになりますと、状況は一層難しくなるわけですので、私は、この六カ月という勤続要件は外すべきではないかというふうに考えております。

 今回看護休暇を五日間とした根拠を伺いますと、親が子供の病気のために過去一年に休んだ日数が、その過半数で五日以内にとどまっているというデータを厚生労働省として挙げられていると思いますけれども、実は、この五日以内という日数には、予防接種や乳幼児健診のために休んだ日が入っていないわけでございます。

 大臣は、児童虐待についても所管されていますし、ついこの前まで虐待についての審議をしていたわけですから、子供がきちんと予防接種や乳幼児健診を受けられるように配慮をする義務があると思いますけれども、勤続が六カ月になるまでは予防接種も健診も受けられないというのでは、余りにもひどいと思います。看護休暇の勤続要件を外すか、あるいは、全国のどこでも予防接種や乳幼児健診を休日に受けられるようにするか、何かしていただかないと、これはトータルな政策として困ると思うわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 これはもう委員御自身がおっしゃいましたように、子の看護休暇というのは、突発的に休まなければならない事態に対応して休む、こういう建前になっております。そこで、理屈を言うわけじゃありませんけれども、予防接種だったら事前にちゃんと準備ができる、突発的なものでない、こういう理屈になるわけでございます。そういう整理をしておるということを申し上げたところであります。

 ただ、予防接種のお話がございましたけれども、日本医師会等と連携しまして、子ども予防接種週間を設けまして、土曜、日曜にも予防接種を行うなど、接種機会の拡大は図っておるところでございます。

水島委員 看護休暇は突発的なものに対応するためで、予防接種なら事前に準備ができるということなんですが、事前に準備をして、どうやって受けに行ったらいいということをおっしゃっているんでしょうか。これは年次有給休暇をとって行けということになるんでしょうか。

尾辻国務大臣 ですから、申し上げたことは、看護休暇の方は突発的なものであります、ですから、予防接種は準備ができますね、したがって突発的でないので看護休暇の中では考えておりませんというのが、私どもの整理の仕方でございます。

水島委員 済みません、確認しますと、看護休暇の枠では考えていらっしゃらないと。本来は年次有給休暇というのはそういう目的のものではないと私は考えておりますけれども、そうしますと、予防接種というのは休暇をとって受けに行くべきものではなくて、大臣がおっしゃったような、医師会との協力もありますけれども、夜間、休日でも、仕事以外の時間で受けられるようにしていくべき性質のものだという整理でよろしいんでしょうか。

伍藤政府参考人 どこまで予防接種の方を受けやすくするかということも、これは社会の現実を踏まえて考えていかなきゃならぬと思いますが、今言いましたように、今医師会等と連携をして、少なくとも土曜や日曜には受けられるという形で、そういう形での利用の便をできるだけ促進していこうというふうなことで進めております。

水島委員 済みません、局長にちょっともう一問伺いたいんですけれども、予防接種についてそういう整備をぜひ進めていただきたいですし、私の住んでおります宇都宮市は、まだ乳幼児健診が日曜日には受けられないと思います。ですから、まだ全然全国的にきちんと広がっているとは思えないんですけれども、あと、慢性疾患を抱えているお子さんで、定期的な通院が必要なお子さんというのもいらっしゃるので、突発的なものということでくくってしまうのは少し乱暴な感じもするんですけれども、このあたりはどういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

伍藤政府参考人 看護休暇でありますから、やはり子供の病気ということで今回制度化をするということで、先ほど来言っておりますように、あらかじめある程度予定されるようなものについては、既存の今までのような制度の枠組みを、年次休暇でありますとかそのほかのものを活用していただく。それから、そういうことをやる方の、今言いました乳児健診とか予防接種、これも、実施する側もそれを受けやすくするような体制を組んでいく。この両面からアプローチをしていくしか方法はないのではないかなというふうに考えております。

水島委員 今の御答弁は少し整理が必要だとは思いますけれども、いずれにしても、では、今回の看護休暇の五日間というのは、慢性疾患などをお持ちでないお子さんが、突発的に病気になられたりけがをされたときのための休暇というふうに、とりあえず今のところ理解してよろしいんでしょうか。

伍藤政府参考人 法律上の最低基準としてこういうことを設けたわけですから、企業ごとにそれぞれほかの柔軟な対応の仕方はまたあるかと思いますが、基本的には、やはり病気といったような突発的な事態にどう対応するかということで特別の休暇制度を設けたものというふうに考えております。

水島委員 とりあえずきょうの御答弁としてはそのように伺っておきますけれども、少し疑問が残りますので、またこちらもきちんと検討させていただきたいと思います。

 時間がありませんので、次に、男性の育児休業について伺わせていただきたいんです。

 二〇〇二年の育児休業取得率は、女性では六四・〇%、男性では〇・三三%となっております。同じように権利を与えられていても、実際にはこれほど大きな開きがあるわけでございます。現在の子供たちが置かれている状況を考えれば、父親と子供とのかかわりの重要性は高まっております。その機会を提供するためにも、父親の育児休業取得促進策は重要だと考えます。また、日本よりも出生率が低いイタリアでも、育児休業法を抜本的に見直し、父親が取得すると合計期間が延長される制度にするなど制度改革に取り組み、出生率は徐々に回復してきております。出生率だけのことを考えても、父親の育児休業取得促進策というのは避けては通れない重要なテーマだと思います。

 民主党案では、育児休業を分割取得できるようにすることで、現在よりも気軽に父親が育児休業をとれるようにしております。また、いわゆるパパクオータ制、つまり育児休業の一カ月を父親に割り当てる制度を取り入れる内容となっております。育児休業をとれる期間を小学校に上がる前までとすることによって、より柔軟に育児休業をとれるようにもしております。

 政府も、少子化対策プラスワンでは、男性の育児休業の取得率一〇%を目標にしているようですけれども、具体的にこれをどうやって促進していかれるおつもりでしょうか。

尾辻国務大臣 我が国で男性の育児休業の取得が進まない理由といたしましては、まず、職場の理解不足や仕事量の問題など、男性労働者が育児休業を取得しやすい職場環境が整っていないという企業側の要因、さらに、法制度に関する理解不足、育児は女性の役割という意識など労働者側や社会全体の要因など、これらのものが指摘をされておるところでございます。

 こうした状況を踏まえますと、男性の育児休業の取得促進のためには、まずは現行の法制度の周知、よく知っていただきたいと思いますし、社会全体の機運の醸成などから取り組んでいくことが重要だ、まずこうしたことが重要だと考えておるところでございます。このため、政府といたしましては、男女別の育児休業取得率について社会全体の目標値を掲げ、この達成に向けた取り組みを推進しておるところでございます。男性については、社会全体で一〇%という目標を今掲げております。

 そして、具体的に、ではどうするんだというお尋ねでございました。

 具体的には、次世代育成支援対策推進法における一般事業主行動計画の策定、実施により、それぞれの企業における環境整備を図ること、特に、計画を定めた目標の達成、男性の育児休業取得実績等の基準を満たす企業を認定し、認定マークの使用を可能とすることだとか、ファミリー・フレンドリー企業の一層の普及促進、こうしたことを具体的に考えておりまして、男性の育児休業の取得促進を図ってまいりたいと考えております。

水島委員 ちなみに、厚生労働省の男性職員の方たちの育児休業の取得状況はいかがでしょうか。

衛藤副大臣 厚生労働省の職員の取得状況は、平成十五年度には、育児休業を取得した者は全体で千四百五十人、そのうち男性が十五人で、女性は千四百三十五人になっております。男性で一・〇%、女性で九〇・七%となっております。

 ちなみに、今、全省庁でいきますと男性が〇・五でありますが、全国平均は〇・四四でございます。それから、女性の方は、全国平均が七三でございます。

 それが、厚生労働省本省並びに厚生労働省全体の取得率でございます。

水島委員 やはり、目標の一〇%には全く届いていないようでございますし、取得率が平均一〇%になるということは、もっと高いところもなければそういう最終的な結果になりませんから、まず厚生労働省がぐんとそれを上げていただくように、男性の取得促進を、これは省を挙げてやっていただかなければと思うんですけれども、大臣の御決意を、推奨していただけるという、ちょっとここで一言いただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 推奨はしたい、こういうふうに思います。

水島委員 またこれは時々伺っていきたいと思いますので、きちんとチェックをしておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 やはり、御自身が育児休業をとられることによって、また新たな問題が見えてくるというところもございますから、ぜひ、本日お並びの厚生労働省の男性職員の皆様にも、率先をしてそういう職場環境づくりに取り組んでいただきたいと思っております。

 そして、もう一つお願いしたいのは、与党対策なんですけれども、昨年十一月の総選挙のときに、私は、自民党の対立候補陣営から、国政は子育ての片手間ではできないというチラシを大々的にまかれました。こんなチラシを堂々とまいてしまう政権だから出生率がどんどん下がっていくのだろうと、あきれる思いがいたしました。お子さんがいらっしゃる男性国会議員が多いと思うんですけれども、そういう方たちは父親としての責任を果たしていらっしゃらないのかなと、老婆心ながら、大変心配に思ったわけでございます。

 国政だけではなく、いろいろな職種で子育ての片手間ではできないという空気があるということが、先ほど大臣がおっしゃった、職場の理解ですとか、環境とか、そういう男性の育児休業取得を阻んでいるという現実があるわけですけれども、仕事と子育ての両立を所管される厚生労働大臣として、また大臣は自民党の所属の議員でいらっしゃるわけですから、まずは御自分の党の中から啓発をきちんとしていただけないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 そんなビラをつくって選挙に負けたことが一つの証明でありますから……(水島委員「勝ったんですよ、彼は。向こうが勝ったんです」と呼ぶ)先生がお勝ちになったんじゃないんですか。それじゃ失礼しました、そこのところは訂正いたします。

 いずれにしても、もうそんなことで選挙をやる御時世ではないというふうに考えております。

水島委員 済みません、伺ったのは、与党の啓発活動ということを何らかの形で考えていただけないかということなんですけれども、ちょっともう一言いただけますか。

尾辻国務大臣 基本的な考え方として、その考え方がおかしいといいますか、今私どもが法律改正をお願いしているようなこととは違うものだということだけは申し上げたいと思います。

水島委員 基本的に、国会の多数決の力を持っているのも与党の皆様ですし、また、政府は与党の皆様と一体となって政策をつくっていらっしゃるわけでございますから、基本的に与党側の考え方が変わらない限り、日本の出生率というのは回復することはないだろうと思っておりますので、今言ったような観点もぜひよろしくお願い申し上げます。

衛藤副大臣 お言葉でございますけれども、実は、少子化問題等、全然議論ができなかった時代に、当初、自社さの中で、私どもは何とかこれをしなければいけないといってやってきたわけでございますので、何か自民党は後ろ向きであるとかなんとかじゃなくて、我々は合意を得ながら必死で進めてきている。ただ、その成果が十分に検証できたかというと、まだ足りないところがあるんではないのか。それは、私どもは、子育てと仕事との両立だけではない部分ももっとあるんではないのかというぐあいに思って、今、新新プランの中で検討しようとしているところでございます。

 そういう意味では、いわゆる北欧式のやり方もあれば、フランス式のやり方もあれば、あるいは最近の状況を見ますと、とりわけ東南アジアにおいては、日本よりもはるかに合計特殊出生率が低くなってきている。その状況もちゃんと探りながら、日本においてどうするかということを今決めようとしているところでございますので、一方的に与党が何とかというと、私、ちょうどそのときに自民党で責任者をさせていただいておりましたので、あえて、政府もそういう方向で賢明に努力しているということだけははっきり申し上げたいと思っています。

水島委員 とにかくお手並み拝見でございますので、きちんと、またその成果を見せていただいてから、もう一度副大臣からそういう力強いお言葉をまたいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 また、先ほど私がそのような例を申し上げましたのは、やはりそういうことが非常に大きな話題となってしまっているということは、非常に、いろいろな職場で子育てと仕事を両立しようとしている方たちにとって、足を引っ張るとてもよくない影響があると思っておりますので、これはぜひそういった観点をきちんと持っていただきたいと思っております。

 そして次に、保育所施策でございますけれども、政府は二〇〇一年から待機児童ゼロ作戦を展開しておりまして、本年四月時点で認可保育園の入所待ちをしている待機児童の数は約二万四千二百人で、前年より二千人少ない、都市部では相変わらず待機児がいるというような状況でございます。

 ところで、待機児童ゼロ作戦が始まる前年の二〇〇一年から、待機児童の定義を変更したということを聞いているわけでございますけれども、これは本当でしょうか。東京都の認証保育所や自治体が独自に助成する無認可施設で待機している子、空き保育所があるけれども、通勤の都合等で別の保育所のあき待ちをしている子などが除かれているということでございますけれども、これは事実でしょうか。事実であれば、待機児童の定義が変わった理由をお知らせいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 御指摘のように、平成十三年に待機児童というものについての考え方を整理して、従来からの考え方と変更したということでございます。

 二点ございます。

 一つは、今御紹介のありました認証保育所でありますとか、あるいは横浜は横浜保育室と呼んでおりますが、各自治体が国の認可保育所以外の形で、単独施策として独自の配置基準等を決めて、あるいは運営費の負担もしながら運営をしておる、こういうものがありますので、こういったものは単なる無認可保育所とは違い、公共団体が一定の関与をして保育料の軽減も図られているということから、こういうところに入っている子供さんはいわゆる待機児童にカウントしなくてもいいんじゃないか、こういうことで整理をしたわけでございます。

 それからもう一つは、保護者の方の意向で、例えば一定の無理のない登園の範囲内、時間で保育所に入れるにもかかわらず、保護者の意向といいますか希望で、ぜひこちらに入りたいということで、入れるにもかかわらず認可保育所に入らないで別の形で待機をしておったり、ほかの保育所に預けておる、こういう方々もおるわけでありまして、こういう特定の保育所を希望する、しかもそれが保護者の私的な理由であるというようなものについても、一応、いわゆる待機児童というのものの中からは除外をさせていただくということで考え方を明確にしたところでございます。

水島委員 ちょっとその保護者の私的な理由という方も少し気になるんですけれども、第一の方の理由の方なんですけれども、今おっしゃった御答弁を伺いますと、政府として、認可保育園と無認可保育所というダブルスタンダードを公的に認めたということになるんでしょうか。これは今まで決してお認めにならなかったことなので、かなり大きな政策変更というふうに言えると思いますけれども、そういうことでよろしいんでしょうか。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

伍藤政府参考人 待機児童をどうカウントするか、考えるかということにおいてそういう考え方をとったということで、いわゆる保育所についてのダブルスタンダードというようなことではないというふうに私ども思っております。

 認可保育所で児童を保育すべきである、これは児童福祉法にも明定されておるところでありますし、保育所に入れない場合、やむを得ない場合には、市町村はその他の適切な保護を行わなければならない、こういう形になっておるわけでございます。

 ダブルスタンダードというのは、無認可保育所に入っておる子供、これも私ども、今一定の指導基準というのを設けて、行政指導ベースではありますが、無認可保育所であっても少なくともこういう基準は守っていただきたい、こういう指導もしているところでありまして、認可保育所ということを基本とするという考え方には変わりはないわけでありまして、行政を実態に合わせた形で進めていくという必要から、そういった施策を進めておるところであります。待機児童をどうカウントするかということも、こういう厳しい全体の需要と供給の中で、どういったところをまず優先して考えていくべきか、どれだけ本当のニーズがあるかということをはっきりつかむために、今言ったような考え方も整理をしたということでありますので、行政のダブルスタンダードということではないのではないかというふうに思っております。

水島委員 今、ただ局長は、無認可保育所の基準のこともおっしゃいましたけれども、これは我々が議員立法で提案するまで届け出制もなかったわけですから、さも両方きちんと見てやってきたというような御答弁をされるのは、ちょっといかがなものかと思うんですけれども。

 いずれにしても、今までその姿勢が変わったわけではない、あくまで認可保育園を基準に考えていらっしゃるということであるのであれば、それの是非はまた別といたしましても、そういう姿勢をとられているということであれば、厚生労働省の考える待機児童というのは、やはり認可保育園に希望をしているけれども入れていない子供が待機児童ということになるんでしょうし、現実に今本当に困っている、無認可保育所にも入れていないお子さんは、またそれは別の基準でカウントされればいいことであって、待機児童の定義を変更するというようなこととはちょっと違うんじゃないかと思うんですけれども、この辺の政策のねじれについて、大臣はどうお考えになりますでしょうか。

尾辻国務大臣 そもそも、待機児童の定義は、おっしゃるように、認可保育所に入りたいといって、そしてそれに入れずに、まさに待機しておる子供の数でございます。ただ、待機児童ゼロ作戦や何かを言いましたために、それに合わすためにという、もしそういう御理解もあるのであればちょっと、この定義を変えた時期はもっと前でありますから、必ずしもそういうことではなかったということは申し上げておきたいと思います。

 それから、まずこの辺をどう整理するかはあるんですが、私は、実態として、特に東京都の認証保育所だとか、あるいは横浜の保育室あたりに入っている子供たちは待機児童から外すというのは、実態としてはそれは、正しいと言ったらちょっと適切な表現でないかもしれませんが、実態をあらわしている数字としてはいいんじゃないかと思っています。

 なぜかといいますと、東京都の認証保育所、今、私も気になりましたので取り寄せてみたんですが、この基準をずっと比べてみますと、でこぼこはあるんですが、認可保育所の基準とほぼ同等と思っていい。特に保育料については、例えば東京都の認証保育所は、自由設定とはしてありますが、ただし、国の徴収基準額が上限と。ですから、認可保育所の上限額よりも、そこまでよ、それより下は構わないということでありますから、保育料について保護者の皆さんの負担も認可保育所と全く遜色がないとかということを考えますと、ここに入っている子供たちを待機児童から外すことというのは、実態をあらわす数字としては決して間違ってはいないんじゃないかと考えておりますということを申し上げました。

水島委員 そういうことであると、一つは、この待機、認可保育園に本来は希望しているけれども認証保育所とか無認可保育所に入っている。本当にそれが満足できる形であれば、逆に、認可保育園への入所を希望して待機するという必要もなくなってくるわけですので、ちょっとそのあたりはきちんと実情を見て、そしてそれを待機児童と呼ばないのであれば、これはもうある意味では厚生労働省がお墨つきを与えているということにもなるわけですから。厚生労働省が、本来はそこではなくて認可園に入ってほしいという立場をあくまでもとられるのであれば、お墨つきとは言わないかもしれないけれども、待機児童から外されているということは、厚生労働省としても、このあたりだったらよろしいんじゃないかとおっしゃっているということを意味すると思いますので、ぜひそれは、ダブルスタンダードと言うと言葉が激しいかもしれませんけれども、そういう現実を厚生労働省として認めた上でよりよい施策に取り組んでいかれるというのであれば、私は、それはそれでも一つの考え方だと思いますので、そこは一度きちんとしていただきたい。

 最初の局長の答弁が、今までの厚生労働省の姿勢を踏襲した中で苦しい答弁をされたので、あんな答弁になってしまったわけですので、ここはぜひ、厚生労働省の方がもう少しすっきりした頭で取り組めるように、一度きちんと整理をしていただきたいところであると思っております。

 それから、保育について、仕事と子育ての両立という意味で、これはもうかなり伝統的な悩みと言ってもよいのかもしれませんけれども、二人目以降の子を出産して育児休業をとると、上の子は保育園を退所しなければならなくなるというような自治体がまだございます。

 でも、育児休業中は、基本的に、上の子の外遊びを一緒にしてあげられるような状態ではありませんし、上の子も保育園で自分の友達がいますし、その子なりの生活があります。そこを急にやめさせられるということにもなるわけでございます。やめさせられて、うちに来てみたけれども、親は赤ちゃんの世話で一生懸命で、とても外で一緒に走って遊んでくれる状態ではない。そういうことだと、子供の生活の質にも問題が出てくると思うんです。そして、さらに、復職をしたときにその子がもとの保育園に戻れるという保証もないわけでございます。

 そういう意味で大変評判の悪い制度であって、いろいろなところでそれを克服するための努力が行われてきているということは了解をしておりますけれども、それでも、現実にまだやめなければならないという自治体があることも事実でございます。

 私たちは、そもそも、今の時代に児童福祉法の「保育に欠ける」という条項があるということが問題だと思っておりまして、親が働いていようといまいと、少子化時代の子供たちのコミュニティーとしても保育園にきちんと入れるようにすべきだと思っておりますけれども、せめて、そうならなくても、現状であっても、二人目以降の育児休業中に、当事者が希望する場合には上の子は保育園をやめなくて済むように徹底するべきではないかと思いますけれども、この点は大臣いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 まさに、お話のとおりに、法律に「保育に欠ける」と書いてあります。この解釈になるわけでございますけれども、これは、市町村がそれぞれに、また市町村のお立場で考えておられるというところでございます。

 ただ、厚生労働省といたしましては、次年度に小学校への就学を控えているなど、入所児童の環境の変化に留意する必要がある場合、あるいは、当該児童の発達上、環境の変化が好ましくないと思料される場合など、自治体が必要と認める場合には、地域における保育の実情を踏まえた上で、継続入所の取り扱いとして差し支えない旨を、厚生労働省から通知しておるところでございます。このような通知も出しまして、柔軟な対応を市町村にはお願いをしておる、こういうことでございます。

水島委員 その柔軟な対応の結果として、まだやめなければいけない自治体があるわけですので、ここは、柔軟というよりは、むしろ、本人がやめさせたくないという場合にはやめさせないというふうに、きちんと徹底していただくことが必要なんじゃないかということをもう一度質問申し上げたいんですけれども。

伍藤政府参考人 今、大臣からも御答弁申し上げたとおりに、柔軟な取り扱いをお願いしておりますが、地域によって非常に待機児童が多いところで、こういうお願いをどういうふうに現場でこなしていくかという具体的な問題だと思います。育児休業で休んでおるお子さんを預かっておるために、もう一人待機児童、入りたい人が今度は入れない、こういう実情にどうこたえていくかという具体的な問題でありますから、こちらを優先して、もう既に入っている人を継続してすべきだとまで一律に指導できるかどうか、なかなか疑問に思っておりますが、そういう優先度といいますか、保育をする現場の実情に応じてできるだけ柔軟に扱っていただきたいということは、これからも徹底していきたいというふうに思っております。

水島委員 先ほどの看護休暇のときも、私は一人っ子誘導策ではないかと言ったんですが、二人目を産むときに、上の子の保育園をどうするかというのはかなり現実的な悩みでございますので、これも、今のままのような状態ですと、やはり一人っ子誘導策ではないかとまた言わざるを得ないところにもなってしまいますので、これは、基本的にはもうこれでお願いしたい。今の一律な指導をきちんと検討していただきたいんですけれども、基本的には、子供は継続して入れるようにするのを基本とする、そのような姿勢についてはきちんと、大臣から、今この場で打ち出していただければと思いますけれども。

尾辻国務大臣 現行法の中で裁量の幅があるのかどうか、それを私が承知しておりませんでしたので、あるいは局長なら答えられるかなと思って、局長に答弁してもらったんですが、どうもその辺は、今の局長の答弁を聞きますと、やはり私どもの裁量幅の中にはないと、私は答弁を聞きながら理解しました。ということは、結局、通知しかない、柔軟にやってくださいとお願いするしか今の時点ではないんだろうな、こういうふうに考えます。

水島委員 なかなか、自治体に強制できるかというような話になると、すぐ地方自治の話になってくるんですが、その一方では、今はとにかく国を挙げて次世代育成支援をやっていこうという時代なわけですから、特に、子供にとっての最善の利益のために子供の場を確保するということは必要なわけですから、その辺はきちんと、しっかりとした姿勢で取り組んでいただきたいと思っておりますし、ぜひもう少し、先ほど局長もその中でというふうにおっしゃったんですけれども、今までよりもさらにそれがわかっていただけるような取り組みをしていただきたいと思っております。

 そして、だんだん時間がなくなってきましたけれども、先日も児童福祉法改正案の審議のときに大臣に申し上げましたけれども、子育てがこれほど難しくなってしまった大きな要因として、地域の子育て力が低下したということが挙げられると私は思っております。よく家庭の子育て力と言われるんですけれども、それは地域の子育て力と言い直した方が正確だと私は思います。出生率も問題であれば、やっと生まれてきた子供も、虐待を受けたり、十分な人間的かかわりを地域の大人に持ってもらえなかったりという、ひどい環境に置かれているのが日本の現状でございます。

 自分の子供を育てるための法整備がこの育児休業・介護休業法ということになるんだと思いますけれども、同時に、地域の子供たちとかかわる時間を確保するためにも、子育て中の方でなくても、ワーク・ライフ・バランス、つまり仕事と私生活のバランスをきちんととっていただくことが重要だと思います。

 私たちが提出をしておりますパート労働者の均等待遇推進法案を早急に成立させてワークシェアリングを進めることも含めまして、ワーク・ライフ・バランスにもっと注目していかないと、日本の社会は崩壊してしまうと思っておりますけれども、基本的に大臣も同じような認識を持って施策を考えていただけるというふうに理解してよろしいでしょうか。

尾辻国務大臣 近年、パートタイム労働者は著しく増加をしております。その一方で、その処遇が必ずしも働きに見合ったものになっていない面があること、こういうことは指摘せざるを得ないと思います。そういうことから、正社員とパートタイム労働者との間の公正な処遇を図っていくことが重要な課題である、このことは認識をいたしております。こうしたことから、昨年八月に、パートタイム労働法に基づく指針を改正いたしまして、正社員とパートタイム労働者との均衡な処遇に向けたルールや考え方を示したところでございます。

 今後とも、この改正指針の浸透、定着を図ることにより、パートタイム労働者の均衡処遇を進めてまいりたいと考えております。

水島委員 パートの部分だけお答えいただいてしまったんですけれども、基本的にはワーク・ライフ・バランスというものの重要性は御理解いただけていると思っております。

 時間がなくなってしまいまして、本当は期間雇用者のことについてもいろいろと確認させていただきたいことがあったんですけれども、ほかの委員にその質問は譲らせていただくといたしまして、最後に大臣に確認させていただきたいのです。

 少子化は問題だと言われておりますけれども、議論の中身は将来の労働力や社会保障費用の支払い者が減る点ということが専らでございまして、つまり、経済に支障を来す、公共財政の収支バランスが保てなくなるといった問題意識が先行してしまっているわけです。こうした発想だけが先行してしまうと、産めやふやせやで、子供を持つことができない女性を追い詰めることにもなりかねないわけです。

 多様な生き方を尊重し、子育てが経済的、精神的、物理的に負担を強いることがないよう、社会全体で子育てに協力するという姿勢が、子供を産み育てることへの安心感をはぐくんでいくと思います。

 ノルウェーでは、男女とも働きながら当たり前に子育てができる社会を目指して抜本的な取り組みを進めてきておりますけれども、その結果、一九八三年には一・六六だった合計特殊出生率が、二〇〇三年には一・八〇まで回復しております。施策を推進している大きな原動力は子ども家庭省です。子供のため、男女共同参画のため、家庭のため、子ども家庭省が確信犯的に施策を進めてきたことが、出生率の回復に明らかに結びついております。

 次世代育成支援は、厚生労働省の一部局の問題ではございません、また、縦割り行政の中に埋没してよいようなテーマでもございません。包括的な施策を推進するためにも、日本にも子ども家庭省が必要だと考えまして、私たちは民主党のマニフェストに既に載せたわけでございますけれども、最後に大臣に、一人の政治家といたしまして、日本にも子供や家庭の問題を包括的に取り扱うことができる子ども家庭省が必要だと思われませんでしょうかということを質問させていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 厚生省と労働省が一緒になりましたときに、先ほども申し上げましたけれども、まさに一緒になった局が一つだけあった、それが雇用均等・児童家庭局でございました。厚生労働省としては、ここがまさに、総合的に子育てや仕事の両立を図っていったり、また、働いているお母さんたちの子育てがうまくいくようにという施策を考えたりしておる局でございます。

 こうした局で今のところ進めておるわけでございますから、今の私に何か言えとおっしゃると、ここが頑張るべきだというふうに申し上げたいと存じます。

水島委員 何か、一人の政治家としてのお答えとしてはちょっと小さかったのかなという感じがしますけれども、ぜひそんなこともきちんと考えていただきたいとお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、山井和則君。

山井委員 四十五分間にわたりまして、尾辻大臣、そして衛藤副大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、先日の質問で尾辻大臣にテレビ出演のことをお願いしましたところ、きっちり、出てくださるということで御返事をいただきまして、どうもありがとうございました。そのことを一つお礼を言いたいと思います。年金不信を解消するためにも、年金に対する信頼向上のためにも、説明責任をしっかりと果たしていただきたいと思っております。

 また、きょうの法案の介護休業と育児休業に関してですが、私自身、政治の世界に入った一つの理由がこの介護問題でありまして、議員になる前は大学で老人福祉を学生さんたちに教えておりまして、アメリカの老人ホーム、イギリスの老人ホーム、世界各国の老人ホームを、一カ月単位で泊まり込んでボランティアをさせてもらったりして、回っておりました。

 そういう中で、きょうは、育児休業のことは、さまざま、たくさん質問が出ておりますが、介護休業に絞って私は質問をさせていただきたいと思います。

 まず、きょう資料をお配りしておりますが、ちょっと見ていただければと思います。まず一問目、尾辻大臣に質問をさせていただきます。

 根本的な質問であるわけですが、資料の二枚目を見ていただきたいんですけれども、女性の離職理由というところで、年間、介護が一・一%、離職者数が三百四十一万人ですから、これを見ると、三万七千人ぐらいの方が介護を理由に離職されているかなというふうに統計からは読み取れるわけです。三万七千人ぐらいですね、一・一%ですから。それで、次のページの介護給付の支給状況を見ると、平成十五年度、四千六百六十八人。三万七千人がやめて、ところが、介護休業をとっている人は四千六百六十八人しかいないということなんですね。要は、介護休業をとってかとらずかわかりませんが、やめた人が七倍ぐらいいらっしゃるということなんです。

 何を言いたいかというと、率直に申し上げますが、介護休業というのがまだまだ十分役に立っていないんじゃないか。介護休業制度はあるけれども、やはり介護が原因でやめる人がまだまだ非常に多いなというふうに思っております。

 そういう意味で、こういう制度があるにもかかわらず、介護休業をとることなくやめていっている人が大多数であるというこの現実に対して、尾辻大臣、なぜなのか、どうしたらいいと思われますでしょうか。よろしくお願いいたします。

尾辻国務大臣 いろいろな数字をお示しになりまして、お示しされた数字を見て、ああそういう視点があるなと思いました。

 ただ、私が私なりにこの数字を見て、まず最初に非常に気になりましたのは離職理由の割合なんですけれども、その中で介護を理由にやめた人が一・一%という、この数字が、こんなに少ないのかなということで、ちょっと気になったというか、そんなものなのかなと思ったわけでございます。

 そこのところをちょっと注目して私はこの数字を見ていたものですから、今直ちに、先生のお示しいただいたような視点での数字を見ておりませんでしたから、ちょっと答えがずれるかもしれませんが、ただ、一言申し上げますと、やはり介護休業という仕組みをよく御存じないところがあるのかな、周知が足らないのかな、こういうふうに思います。基本的にそう思います。

山井委員 周知が足らないというのもあるかもしれませんが、まだまだ使い勝手が悪い、あるいは非常に不十分なのではないかという面も強いのではないかと思います。

 そこで、衛藤副大臣にお伺いしますが、これは九十三日、三カ月ということですけれども、この三カ月、どういう趣旨で、どういうための三カ月なのかということをお答えください。

衛藤副大臣 家族に介護が必要な場合が起こってきます。そのときに、まずこの介護休業制度によって介護休暇が取れる、そしてそういう中で緊急的な対応ができる。

 それから、しばらくしていく中で、また最終的に、その時点でどういうぐあいに介護をやったらいいかという方針がすぐ決まらない場合、私も両親にそういうことがありましたので、状況が落ちつくまですぐにやはり決まらない、そういう中で、長期的な方針を決めるまでの期間もかかるということで、三カ月程度でどうだろうかということで九十三日ということにしたのが、この制度でございます。

山井委員 一つ、今のキーポイントは、要は、介護の休業といいながら、答弁を聞いていると、介護の方針を立てるのに三カ月かかるということなんですよね。そういう意味では、ここが私は、最初尾辻大臣に質問した、そもそもこの介護休業の利用を十分にされていない根本的な問題があるんではないかと思っております。

 それで、例えば、きょうお配りした資料の中で、「諸外国における介護休業制度」というのをお配りしておりますけれども、その中でも、アメリカは一年に十二週間、一年に四カ月、ということは毎年四カ月、もちろん事情に応じてですけれども、その前に、直近十二カ月間に千二百五十時間以上労働している労働者とか、そういう条件つきはありますけれども、こういうことをやっているわけです。また、フランスなんかも四カ月ですけれども、更新して一年まで、フランスとかもこういう1と2というケースになっているわけなんですね。

 そういう意味では、この期間に関して、衛藤副大臣、やはり三カ月というのは短過ぎるのではないかというふうに私は思うわけです。

 例えば、第二十五回労働政策審議会雇用均等分科会の発言を聞いておりましても、労働側の委員さんからこういう声が出ております。

 要は、UIゼンセン同盟が調査したところ、UIゼンセン同盟としては方針としては一年を掲げておりますが、それでも全部の組合がそういうことができているわけではありません、三カ月までというところが五七%、三カ月以上のところが四〇%ということで、組合としては労働協約で三カ月の法定以上という契約をしているところがかなり多いという実態があります、利用者もかなりふえつつありますので、実際に家族の介護が発生した人の状況を聞きますと、やはり三カ月では短いということで、ぜひ長くしてほしいという声がかなりたくさん寄せられておりますと。それとまた、結局、この調査結果を見ても、一年間とられた方が一七・七%で、非常に多いということなんですね。

 だから、そういう意味では、この三カ月というのは短いというふうに思うんですが、衛藤副大臣、いかがでしょうか。

衛藤副大臣 正直なところ、企業の理解も得なければならないというふうに思っております。

 そういう中で、日本の場合は、世界に先駆けてというか、ドイツの方が先に導入されておりましたけれども、介護保険制度の導入という形で、全面的に介護について国を挙げてバックアップをするという体制を今とり、また充実しようとしているところでございます。そういう意味では、介護そのもののためにということになってくると、ちょっとやはり、非常に実質的にはもう厳しいというのが正直なところだと思います。

 それで、長期的な方針を決める、それから緊急的な対応措置としていうことで、九十三日というぐあいに上限をさせていただいたので、諸外国と比べてもそう遜色があるわけではないというぐあいに認識をしているところでございます。

 以上です。

山井委員 ちょっと何か自信なげな答弁であります。だから、そういう意味では、今の答弁でも、介護そのものに関しては余り十分なプラスにはまだまだなり得ていない、そういうふうなことを認められたのではないかなと思います。

 それで、このことに関してどんな相談が来ているかということなんですけれども、都道府県の労働局に平成十五年どんな相談が来ているかというと、介護関係の不利益取り扱いに関する事案に関しては五十六件来ているわけですね。労働者側からは十九件、雇用者側からが三十七件。介護休業を申請しても首にならないかどうかとか、あるいは雇用者側からは、こんなことを認めないとだめなのかとか、そういう不利益取り扱いに関する事案が五十六件。

 それで、例えばどんなのがあったんですかということで聞いてみたら、二人事例を聞きました。一、介護休業取得後の配置転換、女性。相談内容、介護休業を取得して復職したが、片道四時間かかる事業所に配転されそうであるということなんですね。片道四時間というと、往復すると八時間ということで、やめろと言わんばかりであります。それと、もう一つは、介護休業取得による賞与の取り扱い、女性。相談内容、三カ月の介護休業を取得しているが、会社から賞与は支給しないと言われたということなんですね。やはりこういうふうな苦情がたくさん来ているわけです。

 それで、今、担当課の方に、この相談が来て、この後どうなったんですかと聞いたら、匿名の電話であって、その後連絡はもう来ていない、だからどうなったのかがわからないということなんですね。

 それで、私、ここで衛藤副大臣にお願いしたいと思いますのは、今回も、この法案の審議の中で何が問題なのかということを知るには、介護休業をとった人とか、介護休業をとらずにもうやめちゃった人の当事者の声を聞かないと、この制度がいいのかどうかというのが採点しようがないと思うんですね。ところが、そういう調査はあるんですかと聞くと、いや、調査はないというわけなんですよ。やはりこれは、こういう制度、せっかくつくられたんだから、きっちりとそういう声を聞かないと、政策評価しようがないと思うんですね。怠慢と言われても仕方ないと思います。

 そういう意味では、こういう介護休業をとった人、今後どうしていったら使い勝手がいいかとか、とるときにどういう苦労があったかとか、あるいはなぜとらなかったのかという調査を私はするべきだと思いますが、衛藤副大臣、いかがでしょうか。

衛藤副大臣 今お話ございましたような不利益取り扱いに当たるようなことがあれば、本気でやはり是正措置を講じなければいけないと思っております。その後連絡がなかったということでございますけれども、何とか、ちゃんと、そのようなことが起こらないようにしなければいけないというふうに思っております。

 また、今お話ございましたように、介護休業取得者に対して調査をすべきではないのかというお話でございました。私どもも、そういう調査を、少しできるだけのところをやらせていただきたいというふうに思っております。

 ただ、仕事と介護を両立しやすくするための施策としては、私どもも、この介護休業制度の充実といった職場環境の整備というか、やはり事業主側の理解をちゃんと得る、皆さんにこのことをもっと知っていただく、それから、介護施設やサービスの充実等についてもっと心がけるというところをやらなければいけないというぐあいに、改めて感じているところでございます。

 先ほど大臣からもお話ございましたけれども、まだ周知徹底が足りないというぐあいに感じておりますので、そのことについて頑張ってまいりたいと思っております。

山井委員 そこをもう一度ちょっと確認したいんですけれども、介護休業を取得した人に関して調査をやりたいという御答弁はありがたいんですけれども、それと、とらなくてやめた人、介護が原因で。それとも、なぜ使わなかったのか、なぜ使えなかったのか、これも非常に重要だと思うんですよね。そのことも調査をしていただきたいんですが、副大臣、いかがですか。これは通告でもしておりますので。

衛藤副大臣 確かに今までそういう調査をしたことがございませんので、いきなりできるかどうかわかりませんけれども、そのようなニーズの把握について努めてまいります。

 今までは、そういう形でやめた方に対して後追いの調査ということを全然やっておりません、確かに。そのことについていきなりできるかどうかわかりませんけれども、できるだけそれを洗い出して、ニーズの把握に努めたいというふうに思っておるところでございます。

山井委員 ニーズの把握と言わずに、ぜひともそのことも調査してもらって、せっかく制度があるわけですし、私の知り合いでも、残念ながら、介護休業をとらずにやめたという人が多いし、あるいは、とっても、とって悩んだ末にやめた、あと定年まで十年残してやめたら、その十日後に介護していたお母さんが亡くなってしまわれたというケースもやはりあるわけなんですよね。そうしたら、その方の残された十年間の生涯賃金はどうなるんだ、人生はどうなるんだというようなことも当然あるわけです。それで、きょうの議論でも出ておりますが、大抵こういう育児や介護の苦労というのは女性にかかっているわけですから、そこをぜひとも柔軟な制度にしていただきたいと思っております。

 それで、尾辻大臣に改めてこのことでお伺いしたいんですけれども、繰り返しますが、この介護休業制度の最大の問題点は、法文には、私が配った資料にも書いてありますように、どう書いてあるか。法文には、「労働者が、」「その要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業」「介護するためにする休業」と書いてあるじゃないですか。

 にもかかわらず、先ほど衛藤副大臣の答弁を聞くと、いや、こう書いてあるけれども、実際は三カ月で方針を決めるんだ、急に脳梗塞で倒れたりしたら、病院の手配とか、退院してからどこのサービスを利用しよう、その方向性を決めるのが三カ月であると。厳密に言うと、介護のための休暇ではないんだという答弁なわけですよね。

 これはやはり、私は、本当に介護しながらも働き続けられるような、そういう介護休業というものに、今回の改正では無理ですけれども、今後、変えていくべきじゃないかと思うんです。大臣、そのあたり、根本的な問題ですけれども、いかがですか。

尾辻国務大臣 改めて申し上げるまでもありませんが、私どもが介護保険をつくるときに思いましたことは、日本の介護というのは家族に頼り過ぎ、また、今お触れになりましたように、その中でも特に女性に負担がかかる、この負担を何とかしようということで、そして、社会全体で介護はやはり考えるべきだということで、介護保険をつくりました。その介護保険が存在しているということとこれをどうかみ合わすかという問題だと思います。

 したがって、この条文に「介護するため」とありますが、ここで介護するというのは、みずからが直接介護するという狭い意味じゃなくて、大きく介護の必要があるという、私はそういうふうに解釈をしておりまして、必ずしも先ほどの副大臣の答弁と矛盾するものではないと考えております。

 ですから、今私がお答えとして申し上げていることは、やはり、介護保険が存在しているということとこの問題をどう、いわば整合して考えてみるのかというこの議論だと思っております。いずれにしても、今後の議論だと思います。

 それから、やはり、率直に申し上げて、これは先ほど副大臣が申し上げましたけれども、事業主の負担というのも、これは現実の問題として避けて通れないことでありますから、そうしたことを、全体を見ながらの議論をしたい、こういうふうに考えます。

山井委員 今の大臣の答弁は非常に苦しいな、無理があるなと私は思います。

 私の知り合いの女性の方でも、育児のときは何とか会社を両立して乗り切ったけれども、やはり親の介護になって、どうしても、仕事を続けたかったけれどもやめざるを得なかったという方も多いわけですね。そういう意味では、本当に人生にかかわる問題ですので、ぜひとも拡大の方向で検討していただきたいと思います。

 それで、衛藤副大臣にまたお伺いします。

 先ほど水島議員から育児休業についての質問がありましたが、厚生労働省についての介護休暇の取得状況、これを調べました。私の資料の一ページ目にあります。平成十四年度、男性六人、女性百四人なんですが、本省に限っては、男性一人、女性二人なんですね。

 尾辻大臣にこれをちょっとお伺いしたいんですが、責任者ですから、どう思われますか、これ。介護休業、本省のものです、特に本省。年間女性二人、男性一人。女性の方が一般的に厚生労働省は多いのは、国立病院とかそういうのも入っていますから多いんですけれども。それはちょっとおいておいて、本省のことです。介護休業をとっている人が、平成十四年度、女性二人、男性一人なんですよ。

 それで、私も聞いてみたんです、何人かの人に。そうしたら、仕事が忙しくて、介護休業なんかとったら周りの人に迷惑がかかるからそんなものとれない、こう言っているわけなんですね。

 これはやはり介護休業とか育児休業の大きな一つの壁かと思うんですけれども、このことに対する感想と、それこそ厚生労働省の職員の方々に、ぜひとも一言メッセージをちょっと言っていただきたいなと思います。

尾辻国務大臣 仕事が忙しくてという話だというふうに言われました。恐らくそれが本音なんだろうなというふうに思います。

 また、この数字、私も改めて確認いたしましたから、省に戻っていろいろな話をよく聞いてみたい、こういうふうに思います。

山井委員 何事もそうですけれども、ぜひともやはり厚生労働省が率先垂範していただきたい。前の時短のときも、坂口大臣、できるだけお父さんも子育てにタッチできるように早く帰らせるようにするとか、そういうこともおっしゃっておられましたので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 では、次に、ちょっとこの後十五分ぐらい、法案から外れるんですが、一つ雇用保険の関係で、私のしごと館という、関西学研都市にある、このことについて触れさせていただきたいと思います。

 資料に私のしごと館の内容が書いてありますが、これは、仕事の大切さを知ってもらうためにできた、大きな大きな施設であります。それで、このことについて、運営交付金が二十二億円、平成十五年度で来ているわけですね、この資料にありますように。運営交付金が二十二億円。ところが、入館料収入が四千八百万円なわけですね。ほとんどがこれは雇用保険からの運営交付金で賄われている。私も二度ほど行ったことはあります。

 それで、これを建設するために、用地費も含めて五百八十億円ぐらいかかっているわけですね。先ほど介護休業に関して、雇用主の方の理解も必要だということを衛藤副大臣もおっしゃっていましたけれども、これはまさに雇用主側の負担になっているわけなんです。

 私は何が言いたいかというと、五百八十億円をかけてつくって、それで毎年入館料の収入が少なくて、運営交付金で二十億円、今年度は十五億円入れるという中で、利用されている方の六、七割がやはり未成年の方で、修学旅行生とか近所の小学校、中学校からの体験学習の場になっているわけなんですね。

 それで、私は二つ要望がありまして、やはりせっかくこれだけお金をかけてつくったわけですから、子供中心ではなくて、大人ももっと利用できるようなものにしていかないとだめなのではないかということ。もう一つは、変な話、この私のしごと館の周りが失業率が高い地域なんですよね。そうすると、やはり地域のというか、大人の雇用創出につながるべきだと思っております。そういう意味では、今のところ、私のしごと館というのはどうしてもお子さんたちが中心になってしまっております。

 こういうことに関して、大臣の方向性、大人がもっと利用できるように、そしてまた、失業者が多いわけですから、大人の雇用創出にもっとつながるようにすべきではないかということについて、答弁をお願いします。今までから何度もこれは言っているんですけれども、なかなか変わらないもので、きょう国会で取り上げさせていただきました。

尾辻国務大臣 私のしごと館につきましては、御指摘のように、修学旅行生など学生生徒の方々に多く利用していただいておるようでございます。ただ、現在でも、キャリアコンサルタントを配置いたしまして、利用者の職業能力の分析、適性の把握等を含む職業に関する相談の実施、あるいは、面接の受け方、ビジネスマナー等に関する就職に役立つセミナーの実施でありますとか、職業に関する多様な情報、資料の提供など、大人の就業支援としても有効な事業を行っていると考えております。

 言いたいことは、今後とも、学生以外の利用者の方へのサービスの向上を含め、全般に役に立つ活動を行っていくことが重要であると考えております。

山井委員 少しずつそういうことをやっていただいているようですけれども、ぜひともそういう方向でお願いしたいと思います。これは五百八十億、年間十五億つぎ込んでいるというのは、これはやはり保険料なわけですから、本当に価値あるものに高めていかねばならないと思っております。

 それと、次に、痴呆予防の質問をさせていただきます。

 先ほど介護休業の話をしましたが、老人ホームなどの利用者の七割以上は大なり小なり痴呆症があると言われております。そういう意味では、今や、寝たきり以上に痴呆症の方が大きな不安であると言われています。特に、痴呆症の方は、平均六、七年と言われておりますけれども、何年介護が続くかもわからないということで、介護疲れで倒れる方も、多くが痴呆症のお年寄りを介護しておられるケースがあるんですね。

 私も十四年間、呆け老人をかかえる家族の会というものに入らせてもらって、痴呆症のお年寄り、そして御家族のための運動をさせてもらっておりますが、そんな中で、きょう資料も入れさせてもらいましたが、先日、国際アルツハイマー病協会の国際会議というのが京都でありました。そんな中で、私も参加をさせていただきましたけれども、その中で大きく取り上げているのが、これからは痴呆のケアと同時に痴呆予防だということで、多くのパネル展示などもありました。ここに資料があるとおりです。

 それで、何が言いたいかというと、先ほど大臣もおっしゃった介護保険の整備の中で、介護予防ということは厚生省、非常に力を入れておっしゃっておられるわけですね。ところが、その介護の中の、先ほども言いましたように、施設に入られる七割が痴呆症であるにもかかわらず、介護予防の中で痴呆予防のメニューが今のところ厚生省は一つもないわけです、はっきり言いまして。

 ところが、私も実は十五年ぐらい痴呆症の問題にずっと取り組んできました。世界を回ってずっとやってきました。そんな中で、もちろん特効薬とか薬はまだまだ開発中ですけれども、この新聞記事にも「初期の不安、和らげるケアを」とか痴呆予防教室と書いてありますが、やはり週に一回ぐらい痴呆予防教室に通って、歌やいろいろなアクティビティーをすることで、治りはしないけれども進行が遅くなるとか、症状が和らぐとか、そして、その前提として早期発見が必要だということなどがかなり言われてきているんですね。

 こういう、やはり介護予防の中で痴呆予防をこれから力を入れていくべきだ。痴呆予防教室やあるいはデイサービスで、介護予防事業の中で痴呆予防のデイとかもやっていくべきだ。そして、早期発見ももっとやっていくべきだ。必ずしもお医者さんの診断ではなくて、保健学的な簡易な診断によって早期に発見して、それで早期からそういう教室に通ったり、あるいは介護する人がそういう教室に通って介護の仕方を知ることによって、お母さんの症状が和らいだというケースもあるわけですね。

 その点について、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 率直に申し上げます。

 けさからこの話、いろいろ私もそれなりに聞いております。いろいろな話をするんですが、結局、痴呆予防のための取り組みというのはさまざまな試みが行われております。ただ、今現在で、それらの効果やメカニズムが厳密な意味で科学的に証明されるに至っていない、こういうことなんだと思います。

 したがって、申し上げたように、いろいろ試みはあるけれどもきっちり科学的にこれだというものがないために、厚生労働省としても、ではどうするんだということで、先ほどお話しいただきましたように、高齢者を対象とした絵画だとか書道、園芸、音楽等の教室を開催する事業を、痴呆介護教室と位置づけて市町村にお願いをしたりしているわけでありますけれども、今のところでやれることはそういうことということになってしまうわけでございます。

 したがいまして、総合的な介護予防システムを確立するために、痴呆予防のメニューも取り入れることができればという期待を込めまして、科学的根拠に基づく痴呆予防メニューを見出したい、そして専門家の皆さんのいろいろな検証をしていただきたいというふうに考えます。

山井委員 私、二年前にもこの質問をさせてもらったんですが、要望を二つしたいと思います。

 一つは、正直言いまして、この痴呆予防に関することは、もう十年ぐらい前からいろいろあるんですよね。ところが、なかなかこれは、確かに痴呆予防というのは難しいです、いろいろな意見もありますし難しいんですが、先ほども言いましたように、今介護保険の財政が膨らみ過ぎてどうするのかという中で、介護予防抜きには私はやはり語れないと思いますので、ぜひともこのことには力を入れていただきたいと思っています。正直、例えば痴呆性高齢者のグループホームでも、そこで適切なケアを受けて介護度が下がったというケースなんかは、やはりかなり出てきているわけなんですよね。そのことが一つ。

 それともう一つは、きょう資料につけましたが、食生活と痴呆に関する調査なども厚生労働省さんはされているそうなんですけれども、その中で、例えばお茶とかも痴呆予防効果があると言われているんですね。やはりこういうことも、私、これも二年前から厚生労働省さんにも農水省さんにも言っているんですけれども、なかなかこれも進まないんですよね。こういうふうなことも、ぜひとも前向きに調査研究していただければと思います。これはもう要望だけにしておきます。

 あと、余り時間がありませんので、ちょっと残された時間でほかのことを聞かせていただきたいと思うんです。

 私は、尾辻大臣が就任されて、最初から聞きたかった年金の質問が一つあるんですね。これは前国会からの引き継ぎなんですけれども、結局、通常国会で通った年金改革法というのは、一八・三%まで厚生年金保険料をアップさせるということなんです。それで、やはりこれは経営側からも組合側からも、これではもたない、せめて、せめてというか百歩譲っても一五%ぐらいで、やはり一八・三では無理だという声がみんな一致しているんですね。こんな一八まで行ったら、海外に工場が移転したり、派遣社員やパートの人ばかりに頼らないとだめだということなんです。

 こういう一八・三まで上げるという、私は本当に非現実的だと思うんですけれども、こういうことで本当に日本の企業が、雇用がもつと、新しい大臣である尾辻大臣は思っておられるのかどうか。これは企業側も働く人も、一番今国民の不安だと思うんですけれども、このことについて、尾辻大臣、どう思われますか。

尾辻国務大臣 まさに、まず基本的に申し上げると、給付と負担の関係でございます。

 私どもは、今度の年金法の改正に当たって、給付の方で考えましたのは、やはりどうしても五〇%ということを考えました。これは率直に申し上げます。そしてまた、法律にも書いてあります。五〇%を何とかして給付したい。これは本当に標準の数字でありますから、高い方が五〇%になるのかどうかという話をすると、もう細かな話になりますからしませんが、とにかく標準として五〇%を給付のところで維持したいと思いました。そのためにも、どうしても一八・三%という数字が厚生年金でいうと出てきたところがあることは、給付と負担の関係ですから、どっちかをいじればどっちかに影響する数字でありますから、これは申し上げたところであります。

 しかし、今のお尋ねの、では、産業の空洞化とか言われる中で、果たしてそれに耐えられるのと言われると、法律をつくった私どもの立場で申し上げると、何とかそこを頑張ってくださいと言わざるを得ないところでございます。

山井委員 正直言いまして、通常国会でもそういう答弁なんですよね。まあ頑張ってくださいでは無理だということが、今のこの年金の不安になっているわけですから、やはりそこは、私たち民主党も今までから抜本改革と言っておりますけれども、厚生労働省としても、政府としてもしっかりと抜本改革を出してもらわないと、一八・三%ということでは絵にかいたもちでありますし、先ほどおっしゃった五〇%の保障というのも、やはりこれも、現実的には出生率も下がり、無理になってきているわけですから、このことはまた、集中審議をぜひともやって、訴えていきたいと思います。

 それと、もう一点お伺いしたいことがあります。余り時間がないんですけれども、精神病院からの社会的入院の問題なんです。

 きょう質問するつもりじゃなかったんですけれども、きのうの答弁で、お聞きになったかと思いますが、西副大臣が、精神病院からの社会的入院七万人の解消を、今までから政府は十年間で社会的入院七万人を減らすということを言っていたわけですね。衛藤副大臣もうなずいておられます。あの心神喪失法案を二〇〇二年に審議したときに、十年以内にやりますということを何度も、当時の坂口大臣はお約束をされました。それで、私は、二〇〇二年に約束されたことですから、十年以内にということだから二〇一二年までに減らすのかと思ったら、きのうの答弁を聞いたらびっくり仰天で、何やら、新しい障害者サービス法の新しい制度が整った二〇〇六年から十年間だというわけなんですよね。こんなばかな話は私はないと思うんです。今後十年間で七万人の社会的入院を減らしますと二〇〇二年に答弁しておいて、そのスタートが実は二〇〇六年なんですということは、私は通らないと思いますよ、そんな話は。

 常識的に考えて、尾辻大臣、これはどう思われますか。例えば、私たちがこうやって答弁してもらって、十年以内に何とかしますと言って、後で聞いたら、十年以内にというのは四年後からの十年以内ですとか、そんなことしていたら国会は成り立たないと思われませんか。大臣、いかがですか、このことについて。急に質問してなにですけれども。これは、きのうあった質疑なんですよ。

尾辻国務大臣 急なお尋ねでございますから、うまく答えられるかどうかということはございますが、私も、きのうの質疑を聞きながら、その辺のことは感じないわけじゃありませんでした。したがいまして、議事録や、二〇〇二年のころ何と言ったかという坂口大臣の発言や何かをよくまた調べてみて、改めてこれは整理したいというふうに考えます。

山井委員 私、ここに議事録、平成十四年十一月二十九日、水島議員の質問があるんですよ。それに対して坂口大臣は、「十年というふうに申し上げたわけでございますが、できる限り、その十年よりも早くできれば、」「積極的に進めたいと思っている次第でございます。」というふうに、「できる限り十年を縮めていくことができればというふうに、率直にそう思っている次第でございます。」と、本当は十年でも長いぐらいだ、もっと早くやると約束しているわけですよ。

 このことはぜひとも、きのうの答弁なんというのはとんでもない話ですから、やはりこのとき答弁したように、二〇〇二年に答弁したんだから二〇一二年までだというふうに方針を転換してほしいと思います。その検討をお願いします。

尾辻国務大臣 そのとおりであれば、率直におわびして訂正しなきゃいかぬ、こういうふうに思います。そして、改めて、私どもがきっちり、今後できることをお示ししたい、こういうふうに考えます。

山井委員 次もまた、これはきのうのニュースでありますけれども、介護保険の被保険者の引き下げに関して、全国の市長会が反対決議をしたということを聞かれていると思います。それで、先日、経済財政諮問会議でも、民間の委員が反対を言ったと。私、これは報道でしか知らないんですが、尾辻大臣は出席されていたと思うんですが、私、一つ不思議に思っていることがありまして、消極的な方々の言い分の一つを聞いていると、被保険者を拡大するよりも、まず介護予防とかに力を入れて適正化すべきだという議論が出ているんです。ところが、前回の委員会でも質問しましたけれども、その被保険者を引き下げる部分の財源の多くは支援費の方に行くわけなんですよね、障害者の支援費や精神障害者の方に。

 だから、そういう意味では、この引き下げというものをしなかったら、支援費や、今言った精神障害者の社会的入院を解消するという、地域の受け皿の問題とも関係してくるんですけれども、そういうものがもたないという危機感がやはりあるわけなんですね。

 だから、ここで尾辻大臣にお聞きしたいのは、ちょっと筋違いかもしれませんが、こういう経済財政諮問会議で引き下げに関して消極的なことをおっしゃっている方々というのは、障害者福祉をどういうふうにしようというふうに思っておられるんでしょうか。そういう議論はないんですか、大臣。

尾辻国務大臣 今、こうした御議論はいろいろなところでしていただいています。

 今お話しになったことの繰り返しみたいになりますけれども、私がまず思いますことは、今の介護保険というのは確かに、加齢、高齢になった方々の介護ということが念頭にあって、それでつくった介護保険です。今議論していただく方の中には、どうしてもやはりその考え方の中で介護保険をとらえる方、それから、私どもはまだ決めたわけじゃありませんけれども、今、四十から六十四のところの方々の、介護保険には加入していただいている、しかし非常に限定的に介護を考えている、この辺のところをもっと広げるという考え方もある。年齢によって介護を変えるんじゃなくて、介護を必要としている方、これは年齢にも関係ない、それからまた、どういうことで介護が必要となってきたかということももう問題にせずに、介護はもう全部介護として考えるか。そうすると、極端に言うとゼロ歳児からの介護という話になるわけです。

 この辺はもう、介護保険そのものに対する考え方が大きく違うものですから、いろいろな御議論が錯綜しております。そのことは感じております。

 だから、私どもも、もう少し整理して、資料もお出しし、議論していただければと思いますから、近く、そういう、もっと広く介護を解釈したときの数値がどうなるかというようなものも皆さんにお示しをした上で議論をしていただきたい、こういうふうに考えております。

山井委員 ある意味で、尾辻大臣がおっしゃったように、多少錯綜している部分もありますが、この議論を一つ整理しないとだめなのは、介護保険の見直しといいながら、一つの大きなポイントは、障害者の支援費や先ほどの社会的入院の解消にもつながるんですが、精神障害者のサービスが非常に足りていない、財源も足りていない、これをどうするんだという話がやはり根っこにあるわけなんですね。

 ところが、私は直接聞いてはいませんけれども、そういう経済財政諮問会議の方々が、いや、介護予防を頑張ったらいいじゃないかというのは、若い人から保険料を取って、それでお年寄りを支えるという発想しか理解されていないんじゃないかと思うんですね。ここは、ある意味で国民全体も、どっちかというとその辺、誤解している部分もあるかもしれないので、そこはやはりこれからきっちり説明していく必要があると思うんです。

 きょうも育児休業、介護休業の審議でありますけれども、まさに大臣がおっしゃったように、介護保険制度ができて、まあまあ家族も仕事と両立できている面があるかもしれません。では、障害児や障害者をお世話されている家族はどうなのかというと、結局、前も質問をしましたけれども、介護保険に比べて本当にサービスが足りないわけなんですね。

 例えば、支援費の障害者サービスに関しても、市町村間で、人口当たりの利用者数で七・八倍も格差があるわけです、七・八倍あるわけですよ。身体障害者のホームヘルプでも五・五倍。例えば、精神障害者のホームヘルプだったら十一・六倍、障害児のホームヘルパーだったら四十四倍も格差があるわけですよ。こういうグループホームも、三割以上の自治体がまだ知的障害者のグループホームを持っていない。これを、老人福祉に比べて二十年ぐらいおくれていると言われている障害者福祉をやはり引き上げていかないと、私は、このままの状態を二十一世紀に放置したら、年齢差別、障害者差別と言われかねないと思うんですよね。

 でも、これをある程度、全国であまねく介護保険と同じように障害者の方々も必要なサービスを受けられるようにしようと思ったら、先日もこの委員会で議論させてもらったように、今の粗い試算では、今後十年間で一兆円ぐらい膨らむんではないか。地方自治体だけでも無理、国だけでも無理という状況に来ているわけなんですよね。やはりそこを、お年寄りをどう支えるかという発想での介護保険の見直しだけじゃなくて、お年寄りのサービスとともに障害者も一緒に支えていくというふうに議論を変えていかないとだめだと思います。

 というのは、全世界の中で、私は世界の福祉を回って研究してきた者ですが、世界の中で、四十歳という年齢で制度を切っている国なんて日本だけですよ。合理的な理由なんか何にもないんですから。すべて年齢関係なく、税でやっているか保険でやっているか、どっちかなんですよ。そもそもやはり過渡的なことだと思うんですね。

 そういう意味では、繰り返しになりますが、お年寄りと同様に障害者の方々がきっちり必要なサービスを受けられるようにしていく、そのことが介護保険の見直しの、繰り返しになりますけれども、介護保険の見直しというとお年寄りの問題と思われがちですけれども、介護保険の見直しが実は二十一世紀の障害者福祉を大きく決めるんだという状況にあるということですので、そのことをまた尾辻大臣もぜひとも、衛藤副大臣とともに取り組んでいただきたいと思います。

 最後に一言ずつ、短くで結構ですので、今のことに対して決意を、大臣、副大臣、お願いしたいと思います。

尾辻国務大臣 いろいろ御指摘がございましたが、一点で申し上げます。

 今お話しのようなことがありますから、私どもは障害者福祉に対して、今度、グランドデザインをお示ししたつもりであります。あの考え方できっちりやっていきたい、こういうふうに思います。

衛藤副大臣 まだ全体的な合意が得られていないという中で、フライング発言になるかもしれませんけれども、介護保険制度は仰せのとおりだと思います。

 ただ、四十歳で切ったというのは、世界で初めて導入する中で、四十歳ぐらいからであれば高齢者にかかわる介護について御理解いただけるだろうという観点から、そうした覚えがございます。それはやはり、年齢を、徐々に理解の輪を国民的に広げていきながらこの制度を拡大していくということは、どうしても必要であろうかというふうに思っております。そういう中で、ぜひ年齢の問題も、それをちゃんとやり上げていくことは必要であると思っています。

 そしてまた、介護保険は、今は加齢に伴うものとしておりますけれども、やはりその趣旨としては、介護全般をフォローできるべきであるというぐあいに思っております。とりわけ、そのときの社会保障全体の中でいかに在宅や地域や、あるいは施設も入りますけれども、いずれにいたしましても、自立をどう高めるかというところをその主たる目的としなければいけないのではないのかというぐあいに思っています。

 そういう意味で、私どもは、まさにこれからの社会保障というものを自立と共生という思想で頑張るべきだというように思っておりますので、ぜひ皆さんの御理解をいただいて、議員がおっしゃるような方向でまとまっていくことができればというぐあいに思っている次第でございます。どうぞよろしくお願いします。

山井委員 この間の厚生労働省さんの御努力もありまして、本当にお年寄りの福祉に関してはかなり進んできたと思いますが、障害者の福祉にも、お年寄りのことには熱心だけれども障害者のことには冷たい国だというふうなことにならないように、ぜひとも頑張っていきたいと思います。

 以上で終わります。

鴨下委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。

 先ほどから本日の質疑を聞いておりまして、非常にこの問題、法案というものは幅が広いんだな、育児やそして介護、また障害者、いろいろな方のために本当に必要な法案なんだということを感じております。

 少子高齢化が進み、労働力人口の減少が避けられない社会におきまして、本当に、先ほども言いましたけれども、平成四年施行、育児休業法が平成七年に改正されて、この育児・介護休業法というのは大変意義のある法案だと思っております。何事も、理念や目的、位置づけというものがやはり初めに問われるものだと思います。

 今、先ほどからの質疑においても、いろいろな視点があるということ、これに関しましては、厚生労働省の労働政策審議会でも議論が出ているようでございまして、そもそも育児・介護休業法は労働者の雇用継続を目的とするもので、次世代育成支援のパッケージの中にあるけれども、労働者の両立支援の観点から議論されるべきだという意見、また、子育て支援と両立支援とは視点が異なるので、次世代育成支援とは別次元ではないが雇用労働問題であることを認識すべきであるという、さまざまな論議があります。民主党は独自の法案を検討いたしておりますけれども、それは仕事と家庭の両立支援という立場にきちんと立っております。

 先ほども、育児、そして介護、また仕事の継続、雇用の継続、いろいろな視点がございますが、大臣は、育児休業法をどのような位置づけをされているのか、また、この育児休業法によってどのような社会を目標にされているのかを、まずお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますけれども、急速に少子化が進行する中で、次世代育成支援対策における大きな課題として、仕事と子育てとの両立の困難さが今言われております。

 このようなことから、今回の法案におきましては、働き方の多様化を踏まえた育児休業制度等の整備及び育児等をしながら働き続けることができる環境の整備を図ることに軸足を置いておる、私はそのように考えております。先ほど来申し上げておりますけれども、環境の整備だ、こういうふうに考えます。

 厚生労働省といたしましては、さまざまな取り組みを総合的に進めることによって、職業生活と家庭生活との両立を初め、個人の多様な選択が可能となるような社会の形成を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。

小宮山(泰)委員 本当に模範的なお答えをありがとうございます。

 個人の選択ができるということ、それはやはり社会的な観念であったりとかではなく、きちんと個人の選択ができる社会であるということを目指していっていただきたいと思いますし、そのような法案にしていかなければいけないという責務を感じております。

 育児・介護休業というのは、労務提供の停止、賃金支払いの停止を、失業に準じた形で雇用保険を適用する制度ともなっています。雇用保険で休業制度を運用する点については、将来も続けていくというお考えでよろしいでしょうか。

 また、現在、育児休業は休業前賃金の三〇%、介護休業は四〇%と、雇用保険の支給であります。例えば、母子家庭のような場合、育児休業で賃金の三〇%、後になって一〇%、総計で四〇%だと思いますけれども、これでは暮らしていけないということも考えられるのではないでしょうか。低賃金労働者の育児休業対策というものはどのように考えていらっしゃるか、この点についてもお伺いしたいと思います。

衛藤副大臣 先ほど、趣旨につきましては大臣からお話があったとおりでございます。

 給付率をもっと上げるべきではないのかというお話でございます。

 確かに、いずれにいたしましても、大変厳しいというように思います。我々も、そういう中で、平成七年の少子化対策を始めたときにやっと二五%、そして十三年で四〇%というぐあいにこぎつけたところでございます。また、雇用保険法から今出しているという中でいきますと、求職者の下限を四五から五〇というぐあいにしましたので、実は、この制度の中でこれ以上上げるということは、正直言ってもう限界であるというぐあいに思っています。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

小宮山(泰)委員 聞いた点なんですけれども、給付率に関しては、雇用保険ということでありますので、すべては無理かもしれませんけれども、将来も続けていくかどうかの点に関しては、いかがでしょうか。もう一度答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 今申し上げましたように、四〇%まで来ています。そして、いろいろな保険のことなど免除されていることなどを考えますと、実質は五〇%ぐらいになる。今、副大臣が答えましたように、この辺がもう限界じゃないかなというふうに私どもは感じております。

 そうなりますと、これから上げるという議論になったら、またほかの議論をせざるを得ない。雇用保険の中でぎりぎりまで来ているということだけを、まず申し上げておきたいと思います。

小宮山(泰)委員 雇用を続けるという中においては、必ずしも給付だけでの制度ではないのではないかと思っています。実際には、やはり経済的な負担というものが、一人親とか、そういう低賃金の労働者のところというのは負担が重くなる。

 例えば、一日の賃金、最低で考えていくと二千百十円ぐらい。そして、三十日の労働という形で、給付の計算でいきますと、大体三〇%の給付ですと一月一万八千円ぐらいという計算があるそうです。こうやって考えてみますと、先ほども大臣が指摘されたとおり、厚生年金や健康保険料の労使ともの支払いの免除があったとしても、現実には生活自体は厳しいということも考えられるのではないかと思っています。

 また、こども未来財団、これは厚生労働省の雇用均等・児童家庭局所管の財団でありますけれども、ここの平成十三年度中小企業の子育て支援に関する調査報告書によれば、子育てと仕事の両立を促進するための環境づくりでは、企業側は環境づくりは「特に行っていない」が八一%を占めて、従業員側は同じ設問で一七%、環境づくりをしてほしいということですね。また、具体的には、定期的な労使間の話し合いの機会の必要性については、必要があると答えている企業は七・七%、従業員は二六%。子育てと仕事の両立支援の重要性や具体的な手法などを教える管理者に対する研修が、従業員は四一%必要だとも答えています。

 つまり、これだけ企業側と労働者、雇用されている側というものは意識の差があって、現実には働き続ける環境がまだ整っていないのではないかということが、この調査からも出ていると思います。

 実際、本当に働き続けるには厳しい。また、少子化ということもこの法案はうたっているんですけれども、子供を産もうと思っても、男性も女性も、上位の理由としては、経済的な理由で産めないという統計も出ております。やはり、生まれたら食べさせてあげたい、ちゃんとさせてあげたい、当然いい教育もしてあげたい、そう思うのが親心だと思います。しかし、自分が食べるだけでも大変なのに、そういった環境を与えなければ、やはり子供を産むとかつくるということ自体にも二の足を踏むというのも、こういったいろいろなところから、社会環境や経済的な理由等で出てくるのではないかと思っております。

 そこでなんですけれども、少子化対策というものもこの法案には当然、次世代育成支援対策を推進する観点というものが入っておりますので、今までもこの急速な少子高齢化の進行には、いろいろな背景があるとは思いますけれども、残念ながら、政府のこれまでの少子化対策が出生率を引き上げる効果をもたらしたとは思っておりません。雇用の促進や持続して成長可能な社会をつくるという意味では、この出生率の問題、当然ここを、せっかく法案をつくるんですから、大変重要な観点だと思います。このような現実、実情について、少子化に対する厚生労働大臣として、どのように現実にはとらえていらっしゃるのか、また、今回の法改正で、少子化にどの程度歯どめがかかるかということをお考えなのか、ぜひお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほど来、再三にわたって御指摘いただいておるわけでございますが、私どもは、新エンゼルプランや待機児童ゼロ作戦などで、これまでも本当にさまざまな角度から取り組みを進めてきたつもりではおるんですけれども、残念ながら、出生率は依然として低下傾向にございます。したがって、そのことは、厳しい御指摘をいただいておりますように、我々ももう一回よく検証しながら反省しなきゃいけないところだ、こういうふうに思っております。

 ただ、こうした状況を生み出す要因というのも考えてみなきゃいけないわけでございますが、これも先ほど申し上げたところでございまして、依然として職場優先、長時間労働の風潮が根強いなど、働き方の見直しに関する取り組みが進んでいない、こういうことがございます。

 それからまた、待機児童もまだまだたくさんおりまして、家庭で待機児童がいるというような状況がまだあります。あるいはまた、家庭で育児している方への支援が薄くなっているケースもあるなど、子育て支援サービスがどこでも十分に行き渡っていないという状況にございます。こうしたことが要因になって、少子化の流れを変えるに至っていないものだと私は認識をいたしております。

 そこで、じゃ、今度の改正法案でどうするんだということでございますから、子育てと仕事の両立支援をより一層推進するために、先ほど来、これもまたいろいろ御議論はございますけれども、子供が一歳六カ月に達するまでの育児休業を可能にし、あるいは、保育所の入所との連続性をより円滑にするための内容などを盛り込んでおるところでございまして、少子化対策に資するものにしたい、こういうふうに考えております。

 ただ、最後にお尋ねでございました、じゃ、数字でどのぐらいか示せるかとおっしゃいますと、今私どもに、出生率が例えばこれだけ上がりますというほどの数字は持ち合わせておりません。

小宮山(泰)委員 今、恐らく最後の大臣の言葉が素直な本当のところなんだと思いますが、年金法案のときには、出生率が上がると厚生労働省ははっきり見込みを、数字を挙げて試算を出されていたような記憶があるんですが、その見込みが、一・三六とか言っていたのが、結局数字を出してみたら現状も違ったとか、そういったことになりますと、では、今までいろいろな出生率を見込んでいた、これはこの法案だけではないと思うんですが、今の大臣の答弁でいきますと、厚生労働省が出しているいろいろな試算というものに関して、特に年金に関して言えば、今まで出ていたいろいろな資料等に関しては、根拠があいまいであるということをお認めになるんでしょうか。

尾辻国務大臣 私が申し上げましたのは、先ほど局長も答弁いたしましたように、一つずつの施策で、これでどういうふうに影響が出るということはなかなか申し上げにくい。したがって、この法律を改正したからどうなるかというところまでは、とても数字で申し上げるというのは難しいということを申し上げたところでございます。

 ただ、年金の計算をしましたときの、長期にわたる私どもの出生率に対する見通しがあります。これは、確かにことし減ったとかということはありますけれども、まだ長期にわたって見直すというところには至っていないというふうに私は考えております。

小宮山(泰)委員 長期にわたって当然年金というのは信頼を得なければいけないものでございますので、そうなりますと出生率の問題というのは大変大きな問題で、今回ではない、その前の改定のときも出生率等に関しては見込みが違って、そして修正、修正と来ているはずです。ということは、現在もそうですけれども、今まで出している出生というものに関しては、希望である、そうなると計算が合うというふうに理解せざるを得ないような気がしてまいります。

 先ほどから、少子化に関していろいろな委員が質問しておりますけれども、やはり決定的な打開策というか秘策というものは、この少子高齢化、特に少子化に対しては、先進国を見てもなかなか見つけられないというのが現実ではないかと私は思っています。ですからこそ、現実に即した数字、本当にどうなるかというシビアな数字というものがこれから出されることを要望させていただきたいと思います。その点について何かあれば。

尾辻国務大臣 数字は、それこそ厳しい数字であれ何であれ、きっちり出して議論をすべきだということはそのとおりだと思います。

 申し上げますと、今度の年金の出生率についての数字も、私どもはいろいろ議論しましたけれども、上位、中位、下位で議論いたしました。下位は一・一六、一番厳しく見たときは出生率一・一六という数字も出しながら議論はしたことだけは、申し上げておきたいと思います。

小宮山(泰)委員 いろいろな計算を出さなければいけないことがたくさんこの分野にも、厚生労働省の関係は特にあると思いますので、ぜひ資料の提出等、民主党にもきちんと出していただけるように、よろしくお願いいたします。

 続きましてですが、私も女性の一人でもございますけれども、特にこの統計を見ていますと、なかなかやはり、先ほどからの議論のとおり、女性が働き続けるということ自体も非常に難しいのではないかという思いがしております。

 実際、雇用の継続を支えるというこの法案の趣旨、提案理由を考えてみましても、ことしの三月の厚生労働省による出生前後の就業変化に関する統計によりますと、子供が生まれる一年前は職についていたけれども、出産前に職を離れた人が五九・九%と、約六割の人が出産前に既に仕事をやめているという表が出ております。また、子供が生まれた後も働いている女性はわずか二九・九%、逆に、無職のままが何と七〇・一%もいるという発表であったと思います。

 育児休業法で、先ほど水島委員も指摘しておりましたけれども、出産した人の休業の取得率を見ていくと、五百人以上の事業所だと七七・二%、三十人未満ですと五五・六%、企業の規模が小さくなると、ちょっと数字はごめんなさい、育児休業の取得の割合は減っていくというのが基本的に見られると思います。制度を機能させるためには、事業規模が小さくても育児休業がとれるような配慮が必要だと思います。

 取得率が特に低い中小零細企業は行動計画の策定は努力義務となっているかと思いますが、そういった取得率を上げていくための施策は何かありますか。あと、再三出ておりますけれども、男性の取得率の向上について何か対策が現実的には具体的にあるか、教えていただきたいと思います。

 厚生労働省の少子化対策プラスワン、これは平成十四年、また平成十五年にもあり、ことしの平成十六年六月四日に閣議決定をしています少子化社会対策大綱などでは、毎年変わらない数字、育児休業取得率の目標を、女性八〇%、男性一〇%とあります。合計しても一〇〇%になりません。全員がとることをまずもって目標にすることすらあきらめているんじゃないかという思いがあります。この点に関して、なぜ一〇〇%を目指さないのかということも、あわせて御答弁いただければと思います。

伍藤政府参考人 まず、中小企業における育児休業の取得、これを促進していくべきではないかということでございますが、現状は、規模が小さい企業においては取得率が低いということはそのとおりでございますので、ここをどうしていくかというのは一つの課題だというふうに思っております。

 今年度いっぱいかけて、今各企業に行動計画をつくっていただいておりますが、三百人以下の中小企業については、これは努力義務ということにはなっておりますが、ここもあわせてできるだけ計画をつくっていただくように、私どももあわせてお願いをしておるところでございます。

 具体的には、事業主の団体を次世代育成支援対策推進センターというふうに指定をして、特に中小企業に対してセンターが集中的に相談とか援助等を行うように、こういうお願いをしておるところでありまして、こんな形で、大企業のみならず、中小企業もあわせて次世代育成支援に取り組んでいくように、これからも一層力を入れていきたいというふうに思っております。

 男性の育児休業の取得を促進するということも、これはまた非常に難しい大きな課題でありますが、先ほど来何回も言っておりますように、まず職場の理解不足といいますか、そういうことをどうやって解消していくかということが大きな課題でありますし、特に日本は欧米と比べて長時間労働、これも若い世代の男性が長時間労働ということが統計にもあらわれておりますので、こういったところを先ほどの行動計画の策定を通じて、少し日本の企業形態のあり方といいますか、企業行動のあり方といいますか、そういったことを変えていただくようなことが必要ではないかと思っております。

 それから、労働者の方の側も、例えば、育児休業というのは、専業主婦家庭の夫である労働者は育児休業はとれないものと頭から思い込んでおる者もまだ多いわけでありまして、例えば、産後二カ月は育児休業として権利としてこういう人でもとれるというようなことになっておりますので、こういう基本的な理解の不足しているようなところをまず解消していくという地道な努力も必要ではないかなというふうに考えております。

 そういったさまざまな取り組みを通じて、いろいろ女性の中小企業対策、あるいは男性の育児休業の取得ということを促進していきたい。

 それから、先ほどの一〇%、八〇%、これは、男性の場合には、配偶者が子供を産んだ場合に育児休業の取得の権利のある人の中で一〇%を目指す、こういうことでありますし、女性は女性の方で、育児休業が取得できる権利を有する方のうち八〇%の取得を目指すということでありまして、合わせたら一〇〇%、こういうことではないということは御理解いただきたいと思います。

小宮山(泰)委員 告知が足りないというか、制度の認知が足りないというような話もありましたので、この点に関しては、まず、先ほどから何回も厚生労働省、ぜひ、この中心地であると思いますので、本省からぜひ多くの方が、対象者であると思われる年代もたくさんいらっしゃると思いますので、まずそこから始めていただき、日本全国にこの制度を知らせていただきたいなと思っております。

 そこでなんですが、この制度、やはりいろいろな企業に厚生労働省としても推進をしていらっしゃるかと思います。私どもに配られました、この法案に関する参考資料の一番最後のページにありますけれども、育児休業及び介護休業等関係給付金の予算という表には、事業所内託児施設助成金や育児・介護費用助成金、また育児休業代替要員確保等助成金とか、育児・介護休業をとった職場復帰プログラムも含めまして、いろいろな助成金を厚生労働省はされています。

 そこでなんですが、育児・介護休業法三十六条に「指定法人」とありまして、全国に一つの法人を定めて、育児・介護休業に関する業務を一手に引き受けている法人があると理解しております。これは財団法人二十一世紀職業財団といいますけれども、これを見ていていろいろ疑問がわいてまいりましたので、質問をさせていただきたいと思います。

 この財団は、昭和六十一年に男女雇用均等法の施行を機に設立され、女性の能力発揮促進事業、両立支援事業、短時間労働援助事業という事業の三つを主要事業に置いている財団であるということ、こういう理解でよろしいでしょうか。

伍藤政府参考人 そのような理解で結構だと思います。

小宮山(泰)委員 この財団のホームページの方から、育児・介護休業法に関連するようなところを、皆様方に資料として配付をさせていただいております。

 こちらの方を見ていただくとわかると思うんですが、一番最後のでありますが、厚生労働省から七十億円を超す助成金、委託費というものが行っております。もともと、この法人、男女雇用参画というか、雇用均等法で設立されましたので、今回のような雇用というのは目的には入っていなかったかと思いますが、これは、定款上たしか入ったのは、育児・介護休業法施行前には入れていらっしゃいます。ここがこういう補助金を扱う唯一の指定法人。

 ちなみに、ここのページに書いてある二十八億円もの助成金等の先は、すべてこの財団法人二十一世紀職業財団が受けているということでありますので、なぜここだけが選ばれることになったのか、その点の御説明を伺いたいと思います。ほかのところはなかったのか。

伍藤政府参考人 助成金の給付事業でありますが、この趣旨は、子供の養育や家族の介護を行う労働者の福祉の増進を図るために、制度ができましても、そういう育児休業とか介護休業を側面から支えていくということで、いろいろな助成事業をやっていることでございます。

 そういった同様な目的の、育児やら介護を進めていくという相談・援助事業もあわせてやることが効果的だということで、こういったものを一つの指定をして、一括してこの法人に実施をしていただく。相談・援助業務もやっていただくし、給付金の業務もやっていただくということで、この二十一世紀職業財団が適当ということで指定をしたものでございます。

小宮山(泰)委員 今、局長の方から適当であるということで御答弁いただきましたけれども、実際、幾つかの事業がありますけれども、育児・介護休業者の例えば職場復帰プログラムの対象人員は、十一年度から十五年度まで約三千五百人から五千人でしかない。平成十五年には約百十二万人が出産しているという、出生率は下がっていますから過去はもっと多いという計算になります、この数字から見ても、育児休業後の職場復帰の制度で恩恵にあずかっている人というのは極めて少ないということが言えるんじゃないでしょうか。

 また、平成十五年の同じプログラムでの中小企業への助成は八百八十二件、大企業では四千二百七十人と、大企業が突出しているようです。これはどのような事情によるものなのか。育児休業をとりにくい中小企業、特にこの制度は、個人に支給されるのではなくて、会社を通して支給をされる制度だと聞いておりますので、実際にはどれだけの効果があるのかということは、いかがでしょうか。

伍藤政府参考人 給付金はそれぞれいろいろ要件がありまして、一定の制度を導入し、それから一定の実績があるといったようなことも含めて、一定の要件に基づいて給付をしておりますので、今御指摘のような状況になっているのではないかというふうに考えております。

小宮山(泰)委員 一定の要件とはいっても、先ほども、まだなかなかこういう法律の周知がいっていないということを考えれば、実際この関係でいえば、七十億円以上も出してはいても、企業への交付金自体は五十億ぐらいということになります。

 それでは、具体的にどのような評価があるのかは、厚生労働省の方には御報告は行っているのでしょうか。

伍藤政府参考人 先ほど言いましたような、一定の要件に該当するところに助成をして、できるだけ普及を図っていこうという趣旨のものでございますので、全体の実績は把握をしております。ただ、支給をした企業それぞれにおいては、確実にその企業にとってプラスになり、制度の導入に結びついているのではないかというふうに考えております。

 評価ということでありますが、すべてではありませんが、例えば事業所内の託児施設の助成金、こういうものについては、助成金の支給後において、定期的にどういう運営状況になっているかというようなことについてはチェックをしておるところでございます。

小宮山(泰)委員 建物については、確かに物を建てますからわかりますけれども……

鴨下委員長 小宮山君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力をよろしくお願いいたします。

小宮山(泰)委員 はい。

 実際には、評価は厚生労働省にも上がって来ていないということなんじゃないでしょうか。五十億円以上も私たちの税金を使って交付金を出していても、実際にはそれの評価もない、それはすべて財団任せ、丸投げにしている、そういったことなんじゃないかと思うんです。しかしそれを、現実にきょうも、本来であればこの交付金に関して答えるのは、実際には財団の人に来てほしいというのは私も要望はしましたが、局長の方からというような話になりました。

 この点に関して、なぜ、出しているのにもかかわらず、すべて局長が答えられるのか、その点に関しても私は疑問も感じますし、これは会費を取っての財団の活動でありますので、八千万ありますけれども、大体、賛助会員五万円と計算しましても、千六百社もしくは千六百の法人というようなことが最低でもかかわっていると計算ができます。

 それで、実際、ではここの財団がどこにどれだけの補助を出したのか、そういった報告は厚生労働省には上がってきていないと聞いてもいます。こんなことで、本当に育児・介護休業法の趣旨が会社とか企業、その雇用者の間にきちんと伝わるのかというのは、先ほども申しましたけれども、疑問であります。特に、この法人が指定法人になっているということを考えれば、本当にこれでいいのか。実際には印刷費も何億か出ていたりする、そういったことを考えていくと、先日ありました、特に会計検査院の方からはっきりと一番むだ遣いが多いと言われている厚生労働省でもあります、やはりこういったむだを排していかなければいけない。

 そして、何よりも、同じ局の所管のこども未来財団の方で出ていた、なぜこの法律を遵守するのか、取り入れたかという企業側の一番の大きな回答は、法律があるからです。きちんとこの法律の……(発言する者あり)

 今、こちらの方で時間だとは言っていますけれども、その割に、さっきから、最低七人ぐらいとか、与党の方は二十六人ぐらいいなきゃいけないのに、非常に少ない中で、大分さっきからはふえましたけれども、熟睡されている方もいらっしゃいましたけれども、どれだけ本当にこの法律に対し、提出者もそうですが、真剣味があるのかというのを疑問を感じます。

 ぜひ、これからも、まだまだ不備のあるところもあります。そして、こうやって、ここは明らかに、理事の中では、唯一、前の労働省の天下り先にもなっているのではないかという疑念も持っております。

 きちんと私たちの税金が使われる、そしてむだ遣いされず、そしてさらに、先ほど厚生労働大臣も言っていらっしゃったとおり、やはり私たちが選択できるきちんとした社会をつくるという大きな目標のために、きちんと細部にわたって議論をしていかなければいけないと思っておりますので、ぜひむだ遣いのない、そして有効な法律の施行をしていただけるようにしていかなければいけないということを伝えさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局捜査第一課長菊谷岩夫君、法務省大臣官房審議官山下進君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 次に、泉健太君。

泉(健)委員 委員長の御配慮に感謝を申し上げます。

 大変長時間にわたる質疑でございます。京都の泉健太でございます。

 実は私も先月子供が生まれたばかりでして、別に少子化のために産んだわけではないんですけれども、やはり子供を産みたい人が産める、育てたい人が育てられる、そういう社会というのは本当に大切だなということをまたさらに強い思いを持って今感じているところでございます。

 そして、この審議に当たって、厚生労働省あるいは関係機関のさまざまな資料を私も研究させていただきました。文章の中には非常にすばらしい文章も多々見受けられました。しかし、そういったものがやはり――私は、少子化率、いわゆる出生率の一・二九ショックというのがありますけれども、それと同じように、例えば男性の育児休業の取得率が〇・三三というのは、ある意味でショック的な数字だというふうに思っております。そして、その数字が、きょうの質疑でも明らかになりましたが、この霞が関内においても同等であるということも、なおのこと、ショックでありますし、これをさらに改善をしていかなければならないとすれば、まずはやはり霞が関から、特にこの所管である厚生労働省から御努力をいただかなければならないなというふうに感じております。

 そういう中で、全国の皆様にもぜひ紹介をさせていただきたい文章というのがあるわけですが、平成十四年の九月十三日、少子化社会を考える懇談会というところの中間とりまとめがございます。もちろん大臣ももう既に御認識かと思いますが、ここの「序」というところには、

 (いのちあるものと共に生きる喜び)

  二十世紀は、物の豊かさや技術進歩による便利さに幸せを感じる世紀でした。そして、夫が外で働き妻が家事と育児を担うという役割分担が一般的な時代でもありました。ところが最近は、そうしたことよりも、好きな人と一緒に過ごすことに幸せを感じるという人が、多くなってきたように思われます。技術文明の成熟は、かえって「いのちあるものと共に生きる」ことを、最大の価値と感じさせるようになったのです。二十一世紀は「いのちの世紀」と言うことができ、歴史の大きな転換期にあるといってよいのではないでしょうか。

  現代は先行き不透明な時代であるといわれます。お金だけでは安心が得られない時代には、生まれ育つ「いのち」とともに生きることが、何ものにも代え難い喜びであり、子どもがいることによってはじめて得られる励ましや元気が、大きな心の支えにつながるのではないでしょうか。

  「いのち」の中でも、子どもはいわば「未来からの預かりもの」です。こうした特別ないのちだからこそ、社会みんなで愛おしんでいく必要があると思われます。

大変すばらしい文章だと思います。

 この「生まれ育つ「いのち」」というのは、もちろん第一義的には家庭、親の喜びであると思うんですが、やはり社会全体という意識を私たちは常々持っていなければならない。ですから、他人の子供が生まれても、同じようにある意味で喜びますし、そして、それを一緒に育てていこうという意識を互いに持ってこの委員会の審議にも臨ませていただきたいというふうに思っております。

 まずは、ちょっと違う問題について触れさせていただきたいというふうに思っております。

 まず第一点は、先日の大臣とのやりとりの中で、虐待に関する施設、あるいは当事者からの声をぜひとも聞いていただきたいというお話をさせていただいたわけですけれども、先日、八日の月曜日に、大臣、御視察に行かれたというふうにお伺いをしております。たしか東京都の新宿かどこかの児童相談センターというふうにお伺いをしておりますが、そのときの感想、そして今後の決意について、改めて端的にお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 短時間でございましたけれども行かせていただきました。そして、いろいろなお話を伺ってまいりました。

 一言で言いますと、これはやはり大変だなと。大変だなというのは月並みな表現になってしまうんですが、本当に今私の言葉で率直に言えとおっしゃると、まさしく、ああ大変だなというのを感じて帰ってまいりました。

泉(健)委員 もう少し具体的にお話をいただきたかったと思うんですが、大変なことはもちろんもうずっと以前から大変なわけですので、そこからさらに担当の部署に声をかけていただいて、しっかりとそういった問題点が解消するように。特に人員配置の面あるいは施設の面、両方とも不足をしている状況でございます。

 先日も指摘をしましたが、中核市における設置というものがこの児童福祉法で言われていながら、もう既に中核市には都道府県が置いた児童相談所があるというところで、施設の重複という問題も、これは本当に国がしっかりと問題を各都道府県に指摘をしなければ、多分そのまま進まないという状態になると思いますので、ぜひともそちらの方もお願いをいたします。

 そして、もう一件児童虐待で、これは最近の事例というか、新しい動きですので、ちょっと見解をお伺いしたいと思います。

 といいますのは、十月の十八日に、奈良県の県警捜査一課と生駒署が虐待をした親を逮捕したわけです。逮捕をしたんですが、これまでは、普通は、傷害罪、外傷がありまして、その傷害ということでの逮捕ということだったわけですが、今回の場合は、いわゆる被虐待児症候群ということの傷害罪で逮捕をした。そして地検の方が起訴をしたという極めて珍しいケースであります。

 これについて、きょうは各方面の方々をお呼びしておりますので、まず警察の方から、この被虐待児症候群での逮捕、これはどういった要件をもって逮捕をされたと。例えば加害者からの事情聴取の上で判断をした、あるいは医師の診断書とか、例えばそういったものを具体的に申し述べていただければと思います。

菊谷政府参考人 御指摘の事案につきましては、奈良県警察が傷害罪で逮捕したものでありまして、一般的には、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があって、かつ逮捕の必要性がある場合に逮捕状を請求し逮捕をいたしているところでございます。

 今回の件につきましては、医師の診断や関係者からの事情聴取などからこれらを疎明する資料が得られたものとしまして逮捕したものと承知をいたしております。

泉(健)委員 これは、その場で外傷がないので、もしかすると、これまでなかなか警察が手を出せなかったケースかもしれないなというふうに思っております。

 というのは、我々が視察に行きました栃木県小山のケースでも、警察がしっかりとその時点で逮捕に踏み切れなかったという部分もあります。あるいは、これは岸和田の本当に有名になったケース、去年の十一月に発生した事件ですけれども、このときも、虐待を受けた長男の弟の次男が被虐待児症候群と診断されたが、証拠がそろわないなどで立件は見送られたということもありました。

 これは、お答えが可能であればですけれども、岸和田の場合、証拠がそろわなかった部分、これは何か理由を把握されていますか、なぜ証拠をそろえられなかったかについては。本人か、あるいは周囲からの聞き込みが足りなかったのか。

菊谷政府参考人 委員御指摘の岸和田の案件につきましては、具体的なことは、申しわけありませんが、承知をいたしておりません。

泉(健)委員 やはりこれは新しい傾向だというふうに思っております。

 ただ、例えば、子供さんを何らかの機会に診断をしたときに、どうも様子がおかしいというところから症候群であるというふうに診断をされて、そしてそこから親の逮捕に至る、例えば学校の健診とか、あるいは別なけがで病院に行った先での病院とのやりとりの中で子供の異状を発見したとか、いろいろなケースがあるかもしれません。そういった意味では、少しその対象が広がったというか、安全を確保するボタンを押す先がふえたのかなというふうには思っているんですが、一方では、症候群があらわれたからといって、これですべてのケース、逮捕をするということになるのかどうかという問題もあるんですね。

 例えば、場合によっては、症候群であっても、親ももう改善の方に向かいつつある、そういうケースで親を逮捕してしまうことは、これは親子の分離ということが当然出てきますし、逆に、親子関係の再構築、良好な家庭環境の再構築というところで、逆にハードルになる可能性というのも私は感じるわけでございます。

 この辺について、警察は、今後、例えば何をもってこういった、もちろん事例によるとは思うんですが、最低の要件みたいなものがあるのかないのか、その辺についてお伺いしたいと思います。

菊谷政府参考人 今の委員の御指摘でありますが、私ども警察としては、いずれにいたしましても、法と証拠に基づいて、個別の事案に応じて厳正かつ適切に対処してまいりたい、かように考えております。

泉(健)委員 お答えいただければ結構ですけれども、今回の奈良のケースでは、当該地域の児童相談所と連携、連絡というのはとっておりますか。

菊谷政府参考人 逮捕に至るまでは連携等はございませんでした。

泉(健)委員 そこはぜひとも私から三点要望したいと思うんです。

 一点は、こういったケース、警察と医師との連携だけで、医師が例えば診断をした、そして警察が事情を周囲から聞き込みをしたということだけで逮捕をするということになると、時には、これは親子関係というところからいけばよくないケースもあるかもしれません。かといって、それを野放しにするという話ではなくして、私は、こういった同様の事例のときには、ぜひ児童相談所とも連携をとっていただきたいというふうに思います。

 そしてもう一つは、医師の診断というものをやはり明確にとっていただくようにしていただきたいということが二点です。例えば、警察内でも心理判定士ですとかいろいろな方々、警察内で相談業務をしている方がおられますから、そういう方が、これはそうじゃないかというふうに感じる部分もあるかもしれません。しかし、やはり専門の医師からしっかりとこういった診断というのをとっていただいた上でというふうに、私は約束をしていただきたいというふうに思います。

 実は、これも含めて三点目は、やはりこういった症候群を扱うことによっての逮捕ということに関しては、新しいこともございます。これから、ある意味で積極的に取り組んでいただきたい部分もありますので、現状でガイドラインがあればそれで結構なんですが、ないようでしたら、これをぜひつくっていただいて、厚生労働省あるいは児童相談所、医師と連携をとっていただいて、全国に周知徹底をしていただきたいというふうに思っております。

 ガイドラインは現時点ではございますか。

菊谷政府参考人 児童相談所等との連携でありますが、今後とも個別の事案に応じて適切に対処してまいりたい、かように考えております。

 また、今御指摘ありましたガイドラインなるものでございますが、この被虐待児症候群の傷害事実による立件に関しましては、今後、実例の積み重ねも踏まえまして、ガイドライン的なものの作成の必要性についても勉強してまいりたい、かように考えております。

泉(健)委員 この虐待の問題というのは、勉強をされている間にも被害が出てくる問題です。もう事例は幾つも出てきているはずだと私は思うんですね。ですから、それはもう早急におつくりいただくということで努力をしていただきたいというふうに思います。どうか、そこはお約束をいただきたいというふうに思います。

 きょうは法務省にもお越しいただいているわけですが、実は、逮捕ということになって、場合によっては矯正施設というところに入られる可能性というのも当然あるかと思います、これは事例によりますが。そういう場合に、矯正施設内においては、親指導のプログラムというのは現在ございますでしょうか。

山下政府参考人 お尋ねの児童虐待による行為によって刑に服している者、実は正確なところをまだ把握できておりません。ただ、該当者はあるにしても、現時点ではそんなに大きな数字ではないんじゃなかろうかと思っております。

 そういうこともございまして、こういう人たちに対する処遇の事例を積み上げて、処遇の技法を整理してプログラムにしていくというところまでは、まだ現在至っておりません。

 ただ、いずれにしましても、受刑者に対する処遇というのは、個々の受刑者が持ち合わせております問題性、これを調査、把握いたしまして、それを本人にも自覚させ、なお本人にも改善に向けての努力を促すということを基本にしておりますので、そういう一環といたしまして、私どもは部内では処遇類型別指導と呼んでおりますけれども、犯罪の行動面に着目いたしまして、共通の問題を有する者については、その者をグルーピングして、そのグループに集中的な特別教育を行うということをしておりますが、その中には、虐待防止にかかわると思いますけれども、生命尊重の教育あるいは性犯罪防止の教育というものは、実はもう既に準備しておるところでございますので、それらを手がかりに充実させて、お尋ねのようなケースにも十分対応できるような仕組みをつくっていきたい、そういうふうに考えております。

泉(健)委員 ここもぜひ今後考えていただきたいと思うんですね。やはり、親指導プログラムというのは、今、もちろん矯正施設外、児童相談所においてですとか、いろいろな団体が研究を進めているところですし、これはぜひ取り入れていかなければならないというものです。

 しかし、残念ながら、今おっしゃっていただいたように、矯正施設内においては、虐待をした親ということについての分け方でのそういったプログラムというのはないという状況なわけですね。ほかをいろいろ引用しながらという話ですので、ここについてはやはりぜひ、これだけ今注目もされている虐待事件ですので、これは子供を幾ら保護をしても、親が変わらなければやはりどうしようもない話でございます。

 ですから、ここは厚生労働省と法務省、ぜひ連携をとっていただいて、法務省は法務省なんだから別にプログラムをつくるということではなしに、厚生労働省の方でも親指導のプログラムについてこれから研究もなされていくと思います。そこの連携をやはりぜひとっていただきたいというふうに思います。

 この件については、この辺にさせていただきたいと思います。本当にもう時間がございませんので、育児・介護休業法について質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、国の少子化対策プラスワン、これは四つの数値目標を出されておりますけれども、端的にお答えをいただきたいと思います。この目標数字というのは、これは理想の数字なのか、当面の目標なのかということについて、大臣、まずお答えをいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 こういったことにつきましては、社会実態に応じていろいろ見直しをしていくべきものというふうな側面も強うございますので、当面の目標というふうに私ども理解をして目標を掲げておるところでございます。

泉(健)委員 理想の数字というものをもし持ち合わせているのであれば、お答えをいただけますか。

伍藤政府参考人 すべての制度について一〇〇%実現するということが理想的ではあると思いますが、現実の社会問題で、企業の実態、社会の実態、それから社会意識、こういったいろいろなものがかみ合わさって、目標といいますか、具体的な施策は進んでいくものでありますから、私どもは、今言いましたような、やはりその足元を踏まえて当面の目標というものを設定することがまずは現実的なことではないかということで、政策を進めておるところでございます。

泉(健)委員 そうですね。やはり制度をつくった以上は、理想であるかもしれませんが、一〇〇%というものをもちろん目指していくという話だと思うんですね。やはり、そこからすると、余りにもスピードが遅いのではないのかなというふうに思うわけです。この一〇%も、これを達成しなかったからといって、恐らくだれも責任はとらないんでしょう。とられる方はいらっしゃいますか。

尾辻国務大臣 急に、責任をとれというものではないと思います。だれかとるのかと言われても、それは、はっきりお答えすれば、とるべき者もいません。万が一というと、私以外にはないと思います。

泉(健)委員 万が一でも大臣が責任をとられるという話であれば、それはそういった決意ということで、ぜひ実行していただきたいと思うわけです。

 平成十三年には衆議院の厚生労働委員会で附帯決議というのがありまして、ここでは「男性の育児休業取得促進について調査研究を行い、有効な措置を講ずること。」とあるわけですね。でも、国会の中では、附帯決議というのは、言いっ放しで終わるよと、私もよく先輩から言われるものです。それではいけない。やはりしっかりとこの数値目標を達成させなければならないわけですね。そこには並々ならぬ決意が必要ですし、しっかりと各方面を調整しなければならない。

 これは厚生労働省の姿勢としてお伺いをしたいんですが、いろいろな審議会は、各方面の方々が集められている、そして議論をした上でそれを尊重するという手順を踏まれていると思うんですが、やはりこの取得率を高めていこうという人たちと、現実はまだまだ難しいよという方々の両方がおられると思うんですね。厚生労働省としては、子供たちの命、そして、子育て支援を考える省庁としては、やはりそこは積極的に、なるべくそういった取得率を向上させる側の、と言うと言い過ぎかもしれませんが、立場であるというふうに考えてよろしいですか。

尾辻国務大臣 そういう言い方になると、そのとおりでございます。

泉(健)委員 私が何を言いたいかといいますと、やはり当面の目標と理想というものをしっかりと分けて考えていただきたい。

 例えば、働く皆さんの集まりである労働組合の連合さんも含めてですけれども、我々民主党も、育児休業期間の延長、こういったことについては、もちろん一年六カ月ということもさることながら、事実、現時点では、例えば入所しようにも、年度年度で入所していくわけですね、こういった施設は。ですから、一年入れなければまた次の年度という話になってくる部分がありまして、一年六カ月まで認めていただいても、空白の期間というのがどうしてもできる、途中で入所できない施設がたくさんありますから。そういう意味で、例えば、こういった施設に入所できない方々については、特例として年度末まで育児休業を認める、そういう方向も、厚生労働省としてはこれを目指しているというふうに考えてよろしいわけですか。

尾辻国務大臣 これは両方から考えなきゃいけないと思います。育児休業の方からも考えるところがありましょうが、保育所の入所という面からも考える、その必要があろうかと思います。

 今おっしゃいましたように、保育所の入所というのは、基本的には四月の一日ではありますけれども、これはもう、途中入所というのはありますし、また、今こうした待機児童が多いという事態を踏まえまして、ある程度の定員オーバーは認めて入所可というようなことで、各保育所は相当柔軟に対応いたしておりますから、そうした中からの取り組みということもあろうかと思います。この両面があるということを申し上げておきます。

泉(健)委員 例えば、もう一つ言いますけれども、深夜業を制限する制度というのがあるわけですけれども、これは、現時点では、小学校の就学始期に達するまでの子供を養育する労働者が請求した場合は深夜労働を制限するということになっているわけですね。我々は、特にこれは中学校の就学の始期ぐらいまでは、親と子は夜は一緒にいさせてあげたいという思いもございます。中学校就学始期まで年齢を上げるということを我々自身は訴えているわけですが、厚生労働省さんもそこは、理想としてはそう思っているけれども、当面は、現時点では小学校の就学始期に達するまでだという考えでよろしいですか。

尾辻国務大臣 通常、子供が小学校に入学するころには、身の回りのことをある程度自分でできるようになっております。親が育児にかける時間もかなり少なくなっております。そうした親の育児負担が、小学校に入学するころにはある程度、ある程度じゃありません、相当軽減されると考えることから、今回の深夜業の制限の対象とする子の年齢は小学校就学の始期に達するところまでとしておるところでございます。

 これは、そうした考え方に基づいておりますから、理想ととりあえずの現実的な判断、判断といいますか選択ということではない、私どもはこれは一つの考え方に基づくものとして考えております。

泉(健)委員 看護休暇の方はどうでしょう。国の方は、子供を持つ親は年五日という話ですが、我々は、子供一人当たり十日。実際の政策判断として、一人当たり何日という部分については、我々もそれはすぐ要求できるものではないと思いますが、その我々のような考え方を理想として感じていられるのか。それとも、これも今おっしゃったのと同じように、もうこれ以上進めていく余地がないというふうにお考えなのか、どちらでしょうか。

尾辻国務大臣 その問題につきましては、この法律を施行した後、いろいろ実際にやっていく上でまた一つの形が出てくるだろうと思いますし、そうしたものを踏まえながら検討すべき事項だと考えております。

泉(健)委員 ありがたいですね。そこはぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 先ほどの深夜業の話も、以前は家庭が子育ての第一義的な機能を有して、それを社会がサポートするという位置づけだったわけですが、実はその家庭の部分が、今どんどん人が減っているというふうに私は思うんですね。以前は核家族でもなかった。ですから、家庭といえばサポートはたくさんあったわけです。それが核家族化になり、父と母になった。今度はさらに共働きで、その核家族の中ですら、家庭と呼ぶものはあっても、事実上子育てというのは、する人がいなくなりつつある現状もあります。

 多分こういう統計というのはなかなかないかもしれないんですが、親と子供の、例えば小学校就学前まで一緒にいる時間の通算時間みたいなものの統計があれば、これは恐らくかなり少なくなってきているはずなんですね。要は、親と子供の接する時間というのが非常に少なくなってきている、これは社会的傾向だと思うんです。

 確かにこれまでは、小学校に入るまでには大体の能力も身につくだろう、だからもう負担もないから大丈夫だという話だったと思うんですが、親と子の接する時間、信頼関係を築く時間というのがまだまだ足りないという現状から考えれば、私は、中学校就学始期まで年齢を上げる、深夜業に関してそういったことがあってよいのではないかというふうに感じております。ぜひそこのところは改めてお考え方を変えていただきたいというふうに思っております。

 そして次に、さまざまな補助金、先ほど小宮山委員からも指摘がございましたが、私もぜひ指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 小宮山委員の資料の中では、二十一世紀職業財団ということで、いろいろな補助金のメニューがあるわけですね。この資料の中にはその主項目が載っているわけですが、そこからさらに育児・介護雇用安定助成金の内訳を調べてみますと、育児休業取得促進奨励金というのがありまして、これは、育児休業を取得しやすい環境づくりを促進するための両立支援対策を計画的に実施し、男女双方に休業者が生じた場合に、一企業七十万円お出しをするというものなわけなんですね。

 これが、平成十五年、予算としてはかなりとっていまして、一億八千四百八十万円、そして件数は二百六十四件分とっているんですが、実績がゼロというふうになっております。この理由についてお聞かせいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 先ほど来言われておりますように、男性の育児休業取得率が非常に低いという状況の中で、多分、推測いたしますに、これは要件が男性、女性ともに育児休業を取得したことということが要件になっておりますので、男性がとったケースがないということで、この対象企業があらわれなかったということではないかというふうに推測しております。

泉(健)委員 厚生労働省として働きかけはされましたか。

伍藤政府参考人 各都道府県の労働局を通じて、こういった制度についての周知、啓発というのには常日ごろから努めておるつもりでございます。

泉(健)委員 大変残念ですが、もう時間です。

 こういう、二百六十四件分、約二億円ぐらいの枠をとっていながら、残念ながらゼロ件という状況は、これは余りにもひどいかなということを感じざるを得ません。

 こういった補助金、ことしも同額、一億八千四百八十万ですか、ことしも書いてあるわけですが、ことしの実績についてはこの表では書いてありませんので、また私も調べていきたいと思います。

 要は、今後予想される事態としては、看護休暇も、統計から見てみますと、女性の方が長くとりたいし、長くとっているという現状がございます。そうなると、これについても、また結局男女差が出てくるんじゃないのかということがもう容易に想像がつくわけですね。

 私も子供がいますが、もちろん、国会議員ですから、一般のサラリーマンの皆さんとは同じに休めないというふうに理解をしております。しかし、男性として、あるいは夫として、やはり子供を看護したい、あるいは育児休業をとりたいというその思いは、一夫としてこれは持っております。自分がもしサラリーマンであればやはりとりたい、とれるような職場づくりをしたいという思いを持っております。

 特に、この男女共同参画という社会の中では、女性の施策が中心に取り上げられる、これはすばらしいことですが、男性の取得率を上げるというのは、非常に大切な男性の施策です。ぜひここを一生懸命取り組んでいただきたいというふうに思います。

 最後に、その件について、大臣と副大臣、お願いをいたします。

尾辻国務大臣 しっかりと取り組んでまいりたいと考えます。

衛藤副大臣 私どもも、少子化問題をずっとやる中で、男女共同参画型社会ということと同時に、少子化については、子育てと家庭ということと同時に、やはりもっと多岐にわたって検討すべきではないのかという感じを今持っているところでございます。

 それが、育児支援というだけでない、例えば、先ほど保育所の話もございましたけれども、保育所は、もともとは保育に欠ける状態のところへの、お母さんが働いている、共働きで働いている方に対する支援という形でやっているわけでありますけれども、今、同時に、仕事と子育ての両立の面ではその理念を持ってやっているわけではありますけれども、もっと少子化対策として、子育て支援にストレートにいくところをもっと検討しなければいけないのではないのかというぐあいにも思っているところでございます。ですから、そういう意味を込めましても、充実方について努力してまいりたいと思います。

泉(健)委員 どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

鴨下委員長 次回は、来る十七日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四分散会


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