衆議院

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第7号 平成17年3月17日(木曜日)

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平成十七年三月十七日(木曜日)

    午後二時一分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      河野 太郎君    菅原 一秀君

      中山 泰秀君    原田 令嗣君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      宮下 一郎君    森岡 正宏君

      吉野 正芳君    渡辺 具能君

      石毛えい子君    泉  健太君

      内山  晃君    大島  敦君

      小林千代美君    小宮山泰子君

      城島 正光君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      古本伸一郎君    水島 広子君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      高木美智代君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   参考人

   (前全国市長会国民健康保険対策特別委員会委員長) 河内山哲朗君

   参考人

   (全国町村会長)     山本 文男君

   参考人

   (北海道空知郡奈井江町長)            北  良治君

   参考人

   (財団法人地方自治総合研究所理事・主任研究員)  辻山 幸宣君

   参考人

   (全国保険医団体連合会会長)           室生  昇君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  吉野 正芳君     宮下 一郎君

  園田 康博君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     吉野 正芳君

  小宮山泰子君     古本伸一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  古本伸一郎君     園田 康博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、前全国市長会国民健康保険対策特別委員会委員長河内山哲朗君、全国町村会長山本文男君、北海道空知郡奈井江町長北良治君、財団法人地方自治総合研究所理事・主任研究員辻山幸宣君、全国保険医団体連合会会長室生昇君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず河内山参考人にお願いを申し上げます。

河内山参考人 二月まで全国市長会の国民健康保険対策特別委員会の委員長を務めておりました、前柳井市長の河内山と申します。

 本日は、先生方に、国民にとりましても、また地方自治体にとりましても大変重要な医療制度改革、とりわけ国民健康保険にかかわりまして意見の陳述をさせていただく機会をいただきまして、まことにありがたく、御礼を申し上げたいと思います。

 それでは、限られた時間でございますので、早速、私の考えておりますことを大きく分けて三点申し上げたいと思います。

 まず第一は、今回の改革が三位一体の改革の文脈の中で出てまいりましたことについての所感を申し上げたいと思います。第二点には、今回の国民健康保険の都道府県の役割強化についての所感を申し上げたいと思います。第三点としましては、国民健康保険自体が抱えております構造的な問題につきまして、自治体として、保険者として日ごろから考えておりますことを申し上げたいと思います。

 まず第一の、三位一体の改革についての所感でございます。

 御高承のとおり、国と地方の関係の中で、いわゆる分権の大変重要な局面であります税源の問題、国庫補助金の問題は、昨年一カ年、非常に大きな動きがございました。小泉総理から、地方の考え方については、これは非常に重要視をするというボールが投げられたわけでございまして、骨太の方針が決まりまして以降、本日も関係の山本町村会長もお越しでございますが、知事会、市長会、町村会を初めとする地方六団体は、大変大きな議論の末、国庫補助金の改革につきましての提案をしたところでございます。

 これまで地方自治体は、国に対しまして、私どもの自治体は道路が欲しい、私どものところは社会福祉施設だ、こういうふうに、それぞれ自分たちが必要なものを国に対して要望したり陳情してきたことはございますけれども、この補助金については整理をすべきであるとか、あるいは、場合によっては削減をすべきだということを言いましたのは、恐らく今回が初めてであります。

 それぞれの自治体、四十七都道府県はもちろんでございますが、三千を超える市町村、それぞれ事情があります中でこの改革案をまとめるというのは、相当な困難でございました。

 私自身も、全国市長会の政策推進委員会の委員の立場で最後の決定の局面に立ち会いました関係から申し上げますと、国民健康保険にかかわる補助金の問題、あるいは同じ厚生労働行政の中で申し上げますと生活保護費の問題、これらについては、地方六団体が申し上げた、あるいは出しましたリストの中にはなかった問題でございまして、これが出てまいりましたことについては、私どもは、六団体の一員として、大変唐突であり、今回の改革についてはいささか足並みが乱れる要素が生じたというふうに考えております。今後は国、地方の中で協議が行われると思いますけれども、やはり、真摯に受けとめるというお言葉があった以上はそのことを大変大事に考えていただきまして、政府の皆様そして与党の皆様にも御一考をいただきたいということを、この第一点目で申し上げたいと思います。

 しかしながら、第二点目で、都道府県の負担が今回大きくなりますこと、あるいは役割が強化されること、このことにつきましては、市町村国庫を運営する保険者の立場としましては、従来から、もっと都道府県にこの医療保険問題にも役割を果たしてほしいということを申し上げた立場からいたしますと、一定の評価をいたしたいというふうに考えております。

 先生方御高承のとおり、国民健康保険はそれぞれの市町村が保険者でございまして、人口の規模あるいは被保険者の所得の状況、あるいは高齢化の状況、それぞれ違います。特に、小さな規模の保険者でありますと、近年のような、医療が高度化いたしまして、一回の診療報酬が数百万というような規模の医療費が出てまいりますと、保険運営には大きな支障が出てまいります。

 やはり保険というのは、ある程度、一定の規模を持ちまして、助け合いの精神のもとにリスクを分散するというのが保険の仕組みの非常に重要な要素でございますので、このたびの改革の中で、都道府県がその負担であるとか、あるいは、今後具体化をしてまいりますけれども、調整交付金という形で国庫にかかわりをお持ちになることは、非常に、基盤の強化にもつながりますし、かねてより市長会を初めとします国民健康保険の関係の団体が申し上げてまいりました医療保険制度の一本化、一元化、こういうことにも一定の大きな第一歩がしるされたのではないかというふうに考えております。

 わかりやすく言いますと、都道府県知事さん方に保険のことに関心を持っていただきたいということが非常に大事な要素でございます。やはり、負担なくして関心なしであろうと思います。

 都道府県の方々が一体全体地域の健康づくりをどう考えるか、あるいは予防をどう考えるか。これは介護保険にかかわっても言えることでございますけれども、どうやったら県民の幸せ、都道府県民の幸せにつながるのか。その中でこの医療保険というのは非常に重要でございまして、医療費を適正化するということは、いろいろと方法はありますけれども、やはり健康づくりや予防ということについて都道府県を挙げて県民運動をやるということが非常に大事でございます。

 負担がなければどうもそういう方に関心が行かないというのは、これはいたし方ないことかもしれません。今回の改革では、そういうふうに都道府県に一定の役割を果たしていただける、そういう大きな窓があいたような気がいたしまして、私としましては、その点については評価をしたいというふうに考えております。

 第三点目でございますが、国民健康保険が抱えております構造的な問題、もうこれは既に先生方御高承のとおりでございます。

 制度が始まりました昭和三十年代の後半とは社会の状況が大きく変わってまいりました。当時は、自営業者の方、農家の方、こういう方々の保険として始まったわけでございますが、今や国民健康保険の被保険者は五千万人を突破いたしました。従来は高齢者がどんどん被保険者に入られるという傾向がございましたけれども、最近ではリストラ等によりまして失業された方、離職された方がどんどん入ってまいります。従来から被保険者の中では高齢者や低所得者が非常に多かったわけでございますが、その傾向がさらに進んでまいりました。

 そういう非常に被保険者の方からしますと最後のとりでである国民健康保険制度なのでありますけれども、運営をする方からしますと大変でございます。負担をされる層は少なくなる、一方で、高齢者を初めとしまして給付を受ける可能性のある方はどんどんふえてくる。これではなかなか保険が成り立たないのは当然でございますし、それに拍車がかかっているというのが今日の状況だと思います。

 そのことを何とか改革をするためには、先ほど触れましたけれども、ぜひとも被用者保険との一本化、一元化、こういったものも視野に入れて、今社会保障審議会医療保険部会で議論がされておりますけれども、ぜひ将来に継続が可能な、安定的な保険運営が可能なような、そういう保険制度の抜本的な改革をぜひとも議論いただきたいと考えております。

 国保の抱える課題はさまざまございますけれども、本日はたくさんの参考人からもそれぞれお話があると思いますので、私からは、最後に一点だけ申し上げますと、今、国保の財政は、保険料、それから国庫負担を初めとする公費というもので運営をされていますけれども、やはり一般会計からそれぞれ市町村の場合は繰り入れを行っております。これは、制度的に決められたルール分の繰り入れもありますけれども、現実には国保財政の赤字を補てんする形での繰り入れが行われておりまして、全国ではそれは、総額では既に一兆円に達するというような大規模なものになってまいります。

 三位一体の改革で市町村財政は極めて困難な状況でございまして、一般会計も非常に苦しい、国保財政も苦しい。国保財政だけを救うために一般会計から引き続き多額の繰り入れをするということは、これからは困難になるのではないか。一般会計も赤字傾向、国保の財政も赤字というものがこれから顕在化をする、そういうことも大いに考えられることでございまして、ぜひそういう国保の抱えております構造的な問題につきまして、国会の先生方にも十分な御理解と、そして国としてのしっかりとした、国民皆保険を維持するという意味での財政的な責任も果たしていただけるように御議論を進めていただきますことをお願い申し上げまして、意見の陳述を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 次に、山本参考人にお願いをいたします。

山本参考人 全国町村会長の山本でございます。

 最初に、平素から私ども町村の行政について先生方には格別な御支援それから御指導をいただいておりますことに対して、お礼を申し上げさせていただきます。また、今日はこのような機会をつくっていただきまして、ありがとうございました。お礼申し上げます。

 私は、きょう、国民健康保険に関しまして六点ほど申し上げたいと思います。

 まず最初に医療保険制度の現状、それから二番目に国保の現状、それから国保と他の保険制度との比較、それから保険制度に対する一本化ということで、その次は、都道府県が今回の調整を行うための制度に入ってきたということ、それから一番最後のまとめでお話を申し上げたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず最初に、医療保険制度の現状というのは、私がここで申し上げるまでもなく先生方は十分に御承知だと思いますけれども、あえて申し上げさせていただきますが、我が国の医療保険制度は国民皆保険制度を採用しておりまして、世界でも最もすぐれた制度である、私はそういうふうに思っております。言いかえますと、フリーアクセスをとっているのは日本だけじゃないか、一番すぐれている医療保険制度じゃないか、そういうふうに思っているところでございます。この国民皆保険制度を堅持することは、国民の総意であると言ってもいいと私は思っているところでございます。

 ただ、国保の場合は、御承知のように、自営業者や無職の人が大変多いということです。有職者の人が一〇%以下でございまして、あとほとんど年金、あるいは言いかえると無職者が大半であるということで、中でも無収入の方がたくさんいるということでございます。こういうような、言うなら被保険者の構造が極めて、一番悪い状況下にある、こう言ってもいいというような気がいたします。

 市町村国保には人口の約三六%が加入しておりまして、その財政運営というのは、さっきのお話がありましたように、極めて危機的な状況でございます。さらにまた、最近では、リストラやフリーター、それからまたニートの増加等に起因いたします、そういう人たちがどんどん入ってきております。さっき申し上げたように、無職者が多い、低所得者が多い、その中にそういう方がどんどん入ってくるということでございます。もちろん、これは入ることを拒むわけではありません。どうぞというところなんですけれども、そういうような被保険者の構造になっているということでございます。

 ですから、こういうようなことを考えていきますと、先ほどもお話がありましたように、言いかえますと一兆円以上の財源不足が生じているということでございます。さらにもう一つは、老人医療費がかなり圧迫を加えているという状況下であります。これが今の国保の現況ではないかというふうに思っておるところでございます。

 続いて、今の国保なんですけれども、この現状を見てみますと、平成十四年度の市町村で国保の財政状況を申し上げますと、法定分で一般会計繰入金が六千百三十四億円となっており、あわせて、法定外の負担、言うなら純粋な繰入金として扱っているのが三千六百八十億円でございます。これらを合わせますと一兆円になることになるわけでございまして、それにもかかわりませず、そのように繰り入れているのにもかかわらず四千百八十八億円の赤字となっておりまして、保険者の六割、いわゆる保険者でございます市町村ですが、六割が赤字の運営を行っているというところでございます。したがいまして、国保の運営がいかに市町村に重荷になっているかということが言えると私は思います。

 国保の事業については、もう御承知だと思うのですけれども、特別会計で行っておりまして、住民のことを第一と考えれば、制度を維持するために、市町村の一般会計から毎年多額の法定外繰り入れを行っています。さっき申し上げたとおりです。それでも赤字収支となっている現状を考察いたしますと、もはや国保制度は破綻をしていると言ってもいいと思っているところでございます。

 国保の保険料の収納率でございますけれども、平成十五年度の全国平均は九〇・二一%でございます。町村部は九三・七六%でございます。毎年低下傾向にあるわけでございますけれども、何としてでも九〇%を超える収納率を維持してきたことは、市町村の努力の結果であるというふうに思っているところでございます。

 しかしながら、今日の厳しい経済情勢及び介護保険制度の導入に従いまして、国保加入者にとって負担感が大きくなっています。国保と介護保険料は一緒に徴収をいたしますので、納入するということになっておりますので、負担増になったんだ、そういう感覚を持たれているようでございます。したがいまして、この収納率がだんだん厳しくなってくるということが予想されているところでございます。

 また、近年は、さっき申し上げたように、失業された方やそれから所得のない加入者が増加をしておりまして、保険料の未納者の増加につながってくるおそれがあるというところでございます。

 結局、収納率が低下いたしますと、制度を維持するためには穴のあいた金額を市町村が一般会計より補わなければならない、そういうような悪循環を繰り返していくことになると思います。

 一般会計から法定外の繰入金を投入することは、本来市町村が行うべき事業の予算へは回りません。したがいまして、各種の福祉施策や行政サービスを阻害することになりかねない、そういう状況にございます。言うならば、今が最高の限度に達しているんじゃないか、そういうふうに思っているところでございます。

 また、このことは、国保加入者のみならず、間接的には、他の被用者保険加入者を含めた全住民がこの国保の負担をすることになると思います。要するに利用し合うということでございます。

 次に、国保とほかの制度を比較してみますと、どういうふうになっているかといいますと、保険の主なものは、もう御承知だと思いますけれども、政府管掌の保険、一般の健保、それから国民健康保険というので大体被保険者の皆さんが大別される、そういうふうに思います。

 そこで、国保でございますけれども、市町村国保は、今、四千六百十九万人の人が加入しております。率でいきますと三六・一%でございます。そのほかに国保組合というのがございますが、これは四百十一万ぐらいで、政管健保が三千五百八十五万人の方が加入しておりまして、二八%。それから、組合健保ですけれども、これは三千五十七万人で二三%ぐらいの比率。そのほか、共済組合、その他がございます。

 特に、三つの大きい組合を対象にいたしますと、年齢が、国保は五十二・五歳、政管健保は三十七・二歳、それから組合健保が三十四歳でございます。

 特に一番気になるのは、一人当たりの平均的な標準の月額の収入でございますけれども、国保の場合、一人当たりがなかなか出てまいりません。政管健保は二十八・九万円、それから組合健保は三十七・二万円の収入でございます。一世帯当たりしか国保の場合は出てまいりません。一世帯当たりを見てみますと、百五十三万円が国保で、政管健保は二百三十七万、それから健保組合は三百八十一万円で、健保組合に比べますと半分の所得しかない、こういう状況でございます。

 こういうような状況で運営をしているために、さっき申し上げたような財政的な破綻状況が起こり得る可能性が高いということでございます。

 次に、医療保険制度の一本化でございます。

 私ども全国町村会は、かねがね、この医療保険制度の一元化、一本化について提言を申し上げて今日に至っておりますけれども、負担と給付の公平化のためにも、ぜひともこの一元化というのはやるべきである。医療費というのは、全国平均でうまくいけばいいんですけれども、御承知のように、地域によっては医療費が高いところもあれば少ないところもございます。ですから、県単位ぐらいで一元化を図って、将来全国一本化を行っていくことが望ましいのではないかというのが、私ども町村会で考えていることでございます。

 ところが、それぞれの健保組合には歴史がございますので、簡単に一本化というのはいかないようでございますけれども、いずれにしても、県単位程度で、この国保だけでも早く一元化をすることが必要ではないか、こういうふうに思っているところでございまして、できれば今回の措置で一元化が実現すれば、もっともっとこの運営がやりやすくなっていくんじゃないかというふうに思っているところでございます。その点については、今回もそういうことをねらいながらの法改正をお願いしているというところでございます。

 御承知だと思いますけれども、平成十五年の三月に、政府は医療保険制度の基本方針を閣議決定されました。

 その中で、「保険者の自立性・自主性を尊重した上で、医療保険制度を通じた給付の平等、負担の公平を図り、医療保険制度の一元化を目指す。」二つ目は「保険者の財政基盤の安定を図るとともに、保険者としての機能を発揮しやすくするため、再編・統合を推進する。」ここが私もさっき申し上げたところでございますが、「再編・統合を進めるに当たっては、」「都道府県単位を軸とした保険運営について検討する。」ということを決められたことはもう御承知のとおりでございまして、次に、市町村国保についてでございますけれども、「都道府県と市町村が連携しつつ、保険者の再編・統合を計画的に進め、広域連合等の活用により、都道府県においてより安定した保険運営を目指す。」こういうふうにされておるところでございます。

 これらから考えて、最終的には医療保険制度の一本化を目的に、段階的な措置として市町村単位の国保を都道府県単位に推進すべきではないだろうか、そういうふうに思っているところでございます。

 そして、都道府県単位の次の段階として、同じく県単位で分割し運営することになります政管健保を国保と一本化することの方が、今ちょうど、言うなればその時期に来ているんじゃないかと思います。御承知のように、政管健保は保険庁でやっておりますので、社会保険庁の方がああいう状況でございますので、この際、思い切って政管健保と国保を一本化することによって、私は、広域的な保険運営ができることになるんじゃないかと思いますのと、みんなで支え合っていく、そういう保険制度をつくり上げていくことができるんじゃないでしょうか、そういうふうに思っているところでございます。

 言いかえますと、できればこういう保険者というのは、最終的には国が保険者になることの方が一番望ましいというふうに思っているところでございます。どうぞ、早い時期にすべての医療保険については一本化をして、国がその保険者となって運営をしていただくような、そういう時代を先生方のお力でつくってほしいというふうに願っているところでございます。

 それから、次でございますけれども、都道府県の財政調整交付金の制度でございます。

 都道府県の財政調整交付金で、今まではございませんでしたけれども、今回そういう制度を設けることになりましたのは、私ども市町村に対しては、当然地方という立場からいくならば、都道府県がその一端を担っていくということについては大賛成でございます。早くそういうふうにやっていただければよかったのではないかと思いますが、これが、私は将来の全国一本になる一つのきっかけと切り口になるというふうに思っているところでございます。

 言うならば、都道府県の方はできるだけこういうものには近寄らないようにしよう、近寄ることによって財政負担を担わざるを得ないというお考えもあったかもしれませんけれども、むしろ将来のことを考えていくならば、今都道府県がこの調整金だけでも負担をするということになっていけば、将来の全国一本化への道を切り開いていくことができるのではないか、そういうふうに思っておりますので、今回のこの制度については、私は全く賛成でございます。

 もう一つは、介護保険もそういうふうにやっていくべきだと思います。ばらばらの、市町村単位の保険者というのはもう存在しない、そういう時代ではないというふうに私は思います。ですから、できるだけ広域的にこういう制度というのは活用していくことが、より被保険者の皆さんたちに利益を与え、そして負担をそう増大していくことがないというふうに思っているところでございますので、ぜひともひとつ、こういうことを考えていけば、今回の調整交付金を県が一部担当することになったことは、将来に向かって大変大きな貢献をするきっかけをつくることになる、そういうふうに思っているところでございます。

 最後でございますが、取りとめのないようなことをいろいろ申し上げましたが、医療保険制度は国民生活に直結する重大な問題であります。しかしながら、国保を初め、医療保険財政は各制度とも崩壊状態にあることは御承知のとおりでございます。残念ながら、国保はもう既に破綻状況にございます。現状のまま持続するほどの体力はもう残っておりません。

 今日まで、数度にわたりまして抜本改革の実行年度が示されておきながらも、意見集約等に困難を来しまして、実現されるに至っておりません。もはや一切の時間的な猶予はないと思います。早急に医療保険制度の一本化をさせなければならない、そういう状況下にあると思います。今回の改正はそのための第一歩であるというふうに思っておりますので、ぜひとも先生方の格別のお力で、よりよい保険制度の確立をしてくださることをお願い申し上げて、私の意見を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 次に、北参考人にお願いいたします。

北参考人 ただいま御紹介いただきました、北海道の奈井江町長の北と申します。また、空知中部広域連合を、介護保険、国民健康保険、老人保健ともに広域化を進めているところでございます。

 それでは、私からの意見を発表させていただきますが、まずは、本日、国民健康保険の保険者の立場から意見を申し述べる機会をいただきましたことに対しまして、厚くお礼を申し上げる次第であります。

 初めに、国保の現状について簡単に申し上げますが、今ほど山本会長から詳しくお話がございましたから、重なり合うところもございますので、簡潔に申し上げたいと思います。

 国保制度につきましては、国民皆保険を支える制度として、他の医療保険に属さない人をすべて受け入れる構造となっておりまして、その結果、高齢者や低所得者、さらには無職者を多く抱えておるところでございます。そのため、国保につきましては、医療費は限りなくふえ、財源は限りなく減っていく構造になっております。このようなことから、市町村は、やむを得ず、一般会計から約四千億円にも上る繰り入れを行っております。高齢化社会を迎え、今後も大きな赤字を計上していくことは、改めて説明するまでもございません。

 我が町におきましても、国保財政については毎年赤字でありました。単独で運営することが財政的にも事務的にも大変であることから、保険者機能の強化、給付と負担の平等、また事務の効率化を大いに推進するため、規模を大きくし安定した保険運営を目指して、平成十年八月に近隣一市五町で空知中部広域連合を設立いたしまして、国民健康保険及び介護保険、老人保健事業の効率的な運営を図ってきたところでございます。

 さて、一昨年三月に閣議決定いたしました基本方針においては、国保の保険者を都道府県単位にすることが示されましたが、私の経験からいえば、国保保険者の広域化は、国保財政の安定及び将来の医療保険制度一本化へのステップとして必要なことであると考えておりますが、いきなり都道府県単位や二次医療圏単位での保険者では、規模が余りにも大き過ぎる。特に、北海道のような広大な面積におきましては、地域住民の顔が見えにくくなると考えております。やはり、ある程度の地域コミュニティーが図られる規模での単位が望ましいということから、住民みずから判断し、住民みずから行動して、健康運動や疾病予防などにつなげることができるような身近なところに権限及び財源を移行していくことも大切であると考えます。

 次に、三位一体改革について意見を述べさせていただきます。

 今回の改革において国保に都道府県の負担が導入されましたが、市町村国保関係者は、長年、国保における都道府県の役割の強化を主張してきております。導入の経過はともかく、一定の評価はいたしておるところでございます。しかしながら、次のようなことが懸念されます。

 一つは、都道府県の負担についてであります。

 国は、都道府県が市町村へ交付する財政調整交付金に、給付費の七%でございますが、不足が生じないよう、確実に都道府県に税源移譲をすべきであり、その具体的方法等について早急に明らかにしていただきたいと考えております。

 また、市町村保険者といたしましては、現在国から交付されている財政調整交付金と余り金額に乖離の生じないように、都道府県に財政調整交付金を配分していただきたいと考えております。

 特に、我が北海道については、所得が低く医療費が高いことから、国から交付される財政調整交付金が多額となっておりますけれども、北海道庁の配分方法いかんでは、大幅な保険料の、いわゆる保険税もそうでございますが、増加を余儀なくされる保険者が出てくることは容易に想像がつくところでございます。国が示す都道府県財政調整交付金のガイドラインにつきましては、そのことを考慮したものとしていただきたいと強く考えております。

 基本的には、余り大胆にやらないで、地域みずから国民健康保険の必要性を認識することが一番大切であり、だんだんと広域化の規模を大きくしながら、最終的には都道府県単位に進めていくべきではないかと考えております。そうしていかなければ、保険料の、税もそうでございますが、徴収問題が発生いたしまして、年金の不払いと同じような事態にもなりかねないということでございます。

 二つ目については、保険者が行う健康づくり事業であります。

 今回の都道府県負担の導入につきましては、医療保険の保険者を都道府県単位に再編統合するステップであると言われております。現在、国民の健康づくりにつきましては、昭和五十三年に市町村の保健婦が一般衛生部門に一本化されたこと、及び平成九年の地域保健法施行によりまして地域住民の健康づくりの権限が市町村に移譲されたことに伴い、住民に最も身近な市町村が行っておりますが、保険者が都道府県単位となった場合においては、都道府県が効果的、効率的な健康づくり事業を行えるかが大きな課題でございます。この点については十分配慮をしながら進めていかなければいけない。

 私ども広域連合につきましては、国保での保健事業につきましては、構成市町の保健師が各市町の地域住民に合った事業をそれぞれ独自に展開しております。

 さらに、介護保険の安定のためには、健康寿命の長い健康老人をふやすことが不可欠でありますが、そのための介護予防、疾病予防を都道府県単位で実施できるかが大きな課題でございます。

 また、医療保険制度改革につきましては、基本方針を踏まえ、現在、社会保障審議会医療保険部会等で検討されておりますけれども、国民皆保険制度を将来にわたって堅持するためには、医療保険制度の一本化、一元化が必要であると考えております。

 最後に、地方財政を安定させるために、保健、医療、福祉の連携が重要であります。

 我が町は、平成六年六月より病診連携推進事業を展開しております。町立国保病院と地元診療所が連携をしながら高度医療機器や検査業務の共同利用を行っておるほか、町立病院のベッドを利用する連携事業を展開して、医療費の削減に努めております。

 あわせて、一昨年から、国保中央会が実施いたしておりますかかりつけ医推進モデル事業に神奈川県伊勢原市と長野県茅野市とともに参画しておりまして、かかりつけ医を中心とした各種施策を実施しております。

 先ほどお話し申し上げましたように、三位一体改革における国保への都道府県負担においても、都道府県は、住民の健康づくり、疾病予防対策、及び総合評価に対する経費等に特に配慮し、配分していただきたいと考えております。

 その結果、私ども、このかかりつけ医制度を実施したことで、子供からお年寄りを通じた健康づくり事業を積極的、効果的に行うことができるようになりまして、近隣の市町村と比べても医療費の伸びが低く抑えられております。

 何はともあれ、かかりつけ医を中心とした健康づくり、疾病予防を実践することは、医療保険財政の安定に寄与するばかりでなく、少子高齢化対策にも大きな影響を及ぼすことから、積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。

 また、保健、医療、福祉一体的な取り組み、その中で最も大切なことは、医療制度改革、そして医療制度を含めた保険、介護保険、こういったものを、疾病予防、介護予防一体的に取り組めるシステムづくりが今後大きな課題となっているということを率直に申し上げて、私からの意見陳述を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 次に、辻山参考人にお願いをいたします。

辻山参考人 辻山でございます。

 私、医療保険制度、ましてや国民健康保険の制度を熟知しておりません。地方自治のありようとかあるいは分権の意義というようなことについて研究をしておりますが、そのような立場から今回の法案についての考え方を述べさせていただきます。

 というようなわけでございますので、余り多く申し述べることはありません。

 今、既に三人の参考人の方の御意見を伺っていても、医療保険、あるいは介護保険も含めた社会保障制度というものを分権的に設計することの意義は何だろうか、あるいは、集権的でなければ、つまりもっと大きな規模でなければ運営できない、そうすると失われる分権的な要素とは何であろうかというようなことを考えておりました。大変難しい課題であるというふうには思っております。

 そこで、まず、二十世紀最後の十年間に私たちは地方分権改革というものを断行したといいましょうか、一九九三年の国会における決議、歴史上始まって以来の地方分権の推進に関する決議が引き金となって、九五年には地方分権推進法が制定され、そして、地方分権推進委員会による審議を経て、二〇〇〇年から地方分権システムへと移行する地方分権一括法の制定という歴史的出来事をなし遂げたと考えております。

 問題は、なぜそのような改革をしなければならなかったのかということでございまして、恐らく、そこで述べられた集権型の行政システムと言われるもの、これは長らくこの国の仕組みとして定着してまいりましたけれども、一定の役割が終わって、むしろそのシステムが弊害になりつつあるという認識が国会を初め地方団体及び国民の間に定着していったからではないかと考えられるわけでございます。

 では、その弊害とは一体何であったのかと申しますと、全国的に公平で分け隔てのない、しかも高い水準の行政サービスが供給される、提供されるという集権システムのメリットが一方にありながら、他方では、国民はこれに飽き足らないという感情を持っていたのではないかと言われているのでございます。

 御承知のように、この国は高度経済成長を経て、国民は豊かさというものを手に入れました。そして、その次に、もっと個性的な価値であるとか、あるいは量よりも質が大事だというような考え方が一般化してまいりまして、この全国的に画一的な行政サービスというものについて不満を抱くようになったと考えるべきでございましょう。したがいまして、大ざっぱに言えば、公共政策の持っている効用が低下した、国民にとってのありがたみが低下したと受けとめられた、ここに分権改革の背景があったと考えているわけでございます。

 したがって、そこで実現すべきものは何であったかと申しますと、それぞれの地域の事情やそこに住んでいる人々の状況に合わせた政策決定とサービスの供給というシステムをどうつくり出すかということでございました。分権改革がキーワードとした地域における自己決定、これこそがまさに分権の価値なのでございます。これは別に、地方自治体がもっと権力を、権限を振るえるようになるとかそういったことではなくて、そこに住んでいる人たちが手ごたえのある政策を実現していけるというところにあるのでございます。

 御承知のように、中央集権体制あるいは中央集権型行政システムというものは大きく二つの要素で組み立っていたと言われておりますが、その一つが、今申し上げた機関委任事務制度に代表される政策決定の仕組みでございました。この面については、いわば事務の徹底的な洗い直しを経て、かつての機関委任事務の大半は自治事務として法定化されたわけでございます。

 しかしながら、もう一つの柱であるところのいわゆる国庫補助負担金制度と申しましょうか、この面については、ついに分権改革の過程では手をつけることなく今日に至った、このことが三位一体改革を現実のものにした理由であろうかというふうに思うのでございます。

 とりわけ、昨年六月の閣議決定、基本方針二〇〇四において、この国庫補助負担金の具体的な改革案を地方の側にまとめよという形で要請がなされ、これによく地方六団体を初めとしてこたえた、このことは私は大変評価しているわけでございます。

 さて、ここで申し上げておきたいのは、三位一体の改革というのは、一般に、地方へ地方へ、国の、府省の持っている権限や財源を地方へという流れとして受けとめられ、そして、各府省はこれに対する危機感を強めているようでございますけれども、実はこの三位一体の改革によっても、市町村を初めとする地方自治体は大変な困難を抱え込むことになるのでございます。

 何よりもまず、税源移譲という、いわば耳ざわりのよい言葉でございますけれども、これは各自治体によって新たに税負担を住民にお願いするということになるのでございます。この困難をどのように今の自治体が乗り越えていけるであろうか、私は大変心配しているのでございますが、住民が快くその税負担の増にこたえてくれるのだろうか。こたえてくれたにしても、その後の財政運営に対して厳しい監視の目が向けられるに相違ありません。しかしながら、それでも引き受けるというところに実は意味があるのでございまして、一般財源の使い方をめぐってはまさに地域の自己決定が通用するということになるからでございます。

 まさに、そういう意味で言えば、受益と負担の関係を地域で緊密な関係の中でもう一度打ち立てていく、組み立て直していくという地方自治の試練がこれから待っているわけでございます。そのような試練に耐える、あるいはこれからの人々の暮らしの不安にきちっとこたえるために、安心で暮らし続けることができる、そういう地域をつくっていかねばならないということから、ある自治体では市町村合併の道を選び、ある自治体では多くの行政改革に取り組むということを今やっているわけでございます。

 そういう観点からいえば、これからの改正というものは、つまり国庫補助負担金を削減してその後に用意されるものは、地域における自己決定をふやすということでなければなりません。

 そこで、今回の法案を見てみますと、まず、国庫負担率、定率の負担金の率を引き下げる。これによって、当然ながら保険者であります市町村の財政に穴があくということになります。これをどのようにして埋めるかと申しますと、いわば都道府県の調整交付金という仕組みを使ってそこに穴を生じさせないようにしようという考え方のようでございますが、実はこの定率国庫負担金を引き下げる、そしてその一部が一般財源化されるということによって地域の保険医療体制にどのような分権的要素が追加されるのか、このことについての説明が見られないわけでございます。とりわけ、保険医療制度においてどのように地域的な裁量というものが生かされる道があるのか、この点についても検討が必要だろうと考えているところでございます。

 したがって、まず第一に、定率国庫負担金の引き下げということ自体は、実は今この国が要請している課題にこたえていることにはならないということが言えそうでございます。

 ただ、この法案は精緻にできておりまして、都道府県のレベルに調整交付金の交付と配賦ということを通じて都道府県における自治裁量を認めていこう、特色を認めていこうという考え方のようでございます。しかしながら、この自治裁量が余りに大きく働くと、市町村保険の穴が埋まらないということになるのでございます。逆に、この穴をきちっと補てんしていくという観点から、都道府県に交付された都道府県の調整交付金を正しく市町村の削減分に充てていくということであれば、これは都道府県レベルでの自治裁量というものが失われる。そうした中で、都道府県が負担してまでこの調整に応じなければならないのかという問題が生じてくるように思われます。

 さてそこで、恐らく、今回、都道府県の役割ということを法案の柱に組み込んできているのは、これまで何度か話がありましたように、抜本的に医療保険制度の組み立てということを考え、そしてその方向性として都道府県を保険者とするという方向性、こういったものへの一つの芽出しであろうかと私は受けとめているのでございますけれども、実は事はそう簡単ではなくて、既にお聞きのとおり、参考人の間でも、より大きな組織で、できれば国でという考え方、あるいは保険医療は地域で住民に近いところでなければならないという考え方、いろいろございまして、これをどう調整していくのか、時間がかかろうというふうに考えているわけであります。

 まさに順序が違う。まず、どのような制度設計をすれば、持続的に国民が安心して暮らせる、そういう社会にできるのかということから、介護保険制度も含めた保険制度全般の見直しをやってから、これがもし、都道府県レベルを保険者にするのが適当であるという国民合意が得られるのであれば、そこに財政的な手だてをしていくということが考えられるのでございます。

 そういう意味で申しますと、結論から言えば、今回のこの改正というのは時期尚早、順序が違うというふうに考えているのでございまして、まずは保険医療制度の仕組み、全体構想を示す、それが国会に求められている見識ではなかろうかと考えておるところでございます。

 以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 次に、室生参考人にお願いをいたします。

室生参考人 全国保険医団体連合会の室生でございます。

 当会は、開業医を中心に医師、歯科医師十万人が加盟する団体でございます。私自身は内科医でございまして、名古屋で百歳の姉妹、きんさん、ぎんさんの、ぎんさんの主治医をしておりました。本日は、そういう地域の医師の立場から意見を述べさせていただきます。

 本日は、多くの先生方、医療に関して多大の御関心をお持ちいただいており、また、このように発言の機会を設けていただきましたことを心から御礼申し上げて、意見を述べさせていただきます。

 本日は、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案について述べさせていただくわけでございますが、御承知のように、市町村の国民健康保険は、国民の四割が加入する、国民皆保険制度を支える重要な柱でございます。残念ながら、現在、この大黒柱が危機的状況に陥っております。

 まず、保険料または保険税の滞納世帯の問題でございます。以下、保険料と略して発言させていただきます。

 配付資料を先生方にお配りしておりますが、その下に書いてあります一のように、二〇〇四年六月一日現在で四百六十一万世帯、加入世帯の一八・九%が滞納しております。非常に危機的な内容でございます。なぜかと申しますと、保険料の滞納が多いのは、払えるのに払わないという悪徳滞納者ではなく、保険料が高過ぎて、払いたくても払えないところに原因があるからであります。

 配付資料二「保険料と平均所得額の比率の変遷」の末尾をごらんいただきたいと思いますが、二〇〇二年度で平均所得が年百七十六万四千円、それに対して保険料は年十四万五千円何がしであります。所得の八・二三%が保険料として徴収されております。一九七七年まではそれが五%以下でしたが、一九八四年に国保の国庫負担割合が医療費総額の四五%から医療給付費の五〇%、医療費ベースで三八・五%に削減され、それ以降、国保料の引き上げが顕著になっております。月十五万円程度の収入の中から一割近い保険料を払うわけですから、大変な負担であります。

 さらに、サラリーマンは退職後に国保に加入します。必然的に、無職の人、高齢者が増加する構造的宿命を国保は負っております。厚生労働省の報告によると、無職世帯は五〇・九%、所得なしの世帯は二五・六%です。所得なし世帯でも、平均で二万五千六百二十七円の保険料が課せられております。

 このように、保険料を払いたくても払えない滞納世帯が増加しておるわけでございます。それにもかかわらず、二〇〇四年、国保法改定で、特別の事情がないのに一年間以上保険料を滞納した世帯主に対して、国保証の返還を求めることが市町村に義務づけられました。

 返還請求に応じた世帯主には国保被保険者資格証明書が発行されます。これを持って医療機関を受診した場合は、患者は医療機関の窓口で医療費の全額を支払い、保険給付分は、後日患者が市町村の窓口に領収書を添付して請求し、返還を受けることになります。滞納期間が一年半を超えている場合は、返還を受けたお金から滞納保険料を差し引いてもいいということになっており、実質的には医療費の全額を負担しなければならないこともあるわけです。この結果、資格証明書を交付された世帯の受診率は著しく低下しています。福岡県での私どもの調査では、資格証明書の世帯と一般の世帯の受診率は百倍もの開きがあります。

 現在、この資格証明書が交付されている世帯は、配付資料三にありますように、二〇〇四年六月一日現在で二十九万八千五百七世帯で、毎年増加しております。

 また、資格証明書とは別に、滞納世帯には、一般の更新期日より有効期限を短く設定した短期保険証を交付できるとなっております。配付資料四にありますように、百万世帯に交付されております。これは有効期限が切れて更新する際には滞納保険料の分納が求められるので、そのお金が用意できない人は更新手続ができず、有効期限が切れて保険証がなくなります。

 国民健康保険法は、その目的を「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。」と定めております。憲法二十五条の社会保障制度に対する国の責任からするならば、健全な運営のために国は責任を負っていると言えます。

 私は、今日の国保の改革に求められている課題は、以上述べたような国保の危機的状況を打開し、健全な運営の回復に寄与すべきものでなくてはならないと考えております。この点からいたしますると、今回の改定は危機打開に結びつくものとは思えません。むしろ、市町村によっては国と都道府県の負担が減額となり、市町村の一般会計からの持ち出しや国保料の引き上げにつながることが危惧されます。

 今回の国保法改正の中心点は、給付費の七%に当たる都道府県財政調整交付金を新たに設けることであります。これにより、定率国庫負担は四〇%から三四%に、国の財政調整交付金は一〇%から九%となり、国庫負担は七%も引き下げられます。

 財政調整交付金は、主に所得の地域格差により生じる保険料収入の格差是正のために設けられるものです。政令指定都市などいわゆる財政力の豊かとされている市町村は交付されません。配付資料五に現在の不交付自治体を示しております。

 都道府県調整交付金が交付されない自治体は三四%の定率国庫負担のみとなり、現行より六%もカットされることになります。

 さらに、厚生労働省の資料によりますと、新たに都道府県が財政調整を実施し、保険運営の広域化や医療費の適正を促すよう市町村に配分、あわせて財政調整交付金の枠を拡大とされていることを考慮しますと、広域化の方針に従わない市町村や医療費が相対的に高い市町村への減額措置、いわゆるペナルティーが一層強まることを危惧します。

 これらの措置が保険料の引き上げ、滞納率の高まり、国保財政の悪化、さらなる保険料の引き上げという悪循環を生み出しかねないということで、さらに医療担当者として最も危惧するのは、資格証明書や短期保険証の発行の増加です。

 先ほど、財政力の豊かとされる政令都市への国庫負担の削減で保険料の引き上げが懸念されるということを申し上げましたが、実はそれらの政令都市では資格証明書の発行数が多いのです。配付資料の六に示したとおり、全国平均のほぼ二倍であります。短期保険証の方も一・二倍の交付率となっています。政令都市でこうした傾向がさらに拍車がかかりますと、医療を受ける権利が奪われるということになるわけです。

 資格証明書や短期保険証によってどのような実害が起きているか御紹介したいと思います。

 配付資料七は沖縄タイムスの記事です。二〇〇二年十一月に那覇市の四十八歳の男性が心筋梗塞で亡くなりました。男性は四年前に退職し国保に加入しましたが、仕事が見つからず、妻のパート収入で生活をしておりました。保険料が払えずに短期保険証の交付を受けておりましたけれども、更新は、分納金が用意できず、発作を起こして病院に運ばれたときには保険証は有効期限が切れておりました。妻が夫の病状を説明して短期保険証が発行されましたが、入院一カ月後に男性は死亡しました。男性は緊急入院の数日前から寝込んでおり、糖尿病の治療を受けておればこの悲劇は防げたわけであります。

 次の例は、二〇〇四年一月五日の夜、二、三日前から足の脱力があり、動けないということで、私の病院の救急外来に救急車で搬入され、即時入院となった資格証明書の患者さんです。

 話を聞くと、五カ月も前から右下肢の痛みがあったが保険が使えないので我慢していたということであります。精密検査で大腸がんの腰椎転移と診断しまして、一月八日、入院三日後に手術を行いました。病院の交渉で生活保護申請をしました。調査の結果、所持金が十数万あったために、国保を復活させて、一月は国保で行い、二月から生活保護となりました。そして、同年の五月八日に退院いたしましたが、一週間後にがん性の疼痛が激しくなって再入院して療養を病院で継続しておりましたが、本年一月にお亡くなりになりました。保険証が交付されていないため受診がおくれ、がんが転移し、病状が悪化し、不幸な転帰をとられた例でございます。

 医療現場では、そうした患者さんに対して、短期保険証は数カ月で有効期限が切れますから滞納保険料の分納を勧めたり、場合によっては今申しましたような生活保護の申請を助言するなどしておるわけでございますが、これらの患者さんは、病状が非常に悪化しているために医療費がかさむ上に、それにもかかわらず不幸な転帰をとられることが多いのであります。しかも、このような患者さんの背景には、受診を我慢している多数の方々がいらっしゃるということを御理解いただきたいのであります。

 最後に、低所得者に対する保険料の軽減額を補てんする保険基盤安定制度について述べさせていただきます。

 法案では、現行二分の一の国庫負担をなくして、都道府県の負担を四分の三にふやすことが提案されています。二〇〇一年度の国保実態調査では保険料軽減世帯の割合は四割に迫る勢いです。高齢化の進行などを考慮すると今後も軽減世帯は増加することが予想され、都道府県や市町村の負担が重くならないように配慮することや、該当者が漏れなく軽減措置を受けられるようにしていただきたいと思います。

 国民健康保険は、その構造から加入世帯の保険料だけでは運営が困難でありまして、社会保険の企業負担に相当する公費負担が欠かせないものでございます。これまで述べました国保の危機的状況を打開するためには、公費負担の増額が必要であります。当協会といたしましては、国庫負担を従前の医療費ベースで四五%に引き上げることを提言しております。

 医療費適正化を主目的として都道府県の財政調整交付金を新たに創設することについては、これまで述べてきたように弊害が予想され賛成できませんが、どうしても創設するのであれば、少なくとも定率国庫負担部分の削減でなく、国の財政調整交付金の範囲内でそれに充てることをお願いいたしまして、私の発言とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石崎岳君。

石崎委員 自由民主党の石崎岳でございます。

 きょうは、参考人の皆様方、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、本当にありがとうございました。

 先ほど、山本会長さんからは、国保制度はもう既に破綻しているんだ、これまで何度も約束した抜本改革を実行していないじゃないかという大変厳しいお言葉もございました。政治の責任は大変重いというふうに感じている次第でございます。

 また、きょうは、今次の改正にとっては重要なステークホルダーといいますかプレーヤーであります都道府県関係者が、地方議会のいろいろな御都合で出席がかなわないということでありまして、これはやはりこの法案の議論にとってはちょっと残念なことであります。今、知事会で議論されております浅野試案というものも拝見をさせていただいておりますが、こういうものも参考にしながら御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、河内山参考人にお聞きをしたいと思います。

 先ほど河内山さんからも、昨年末の三位一体改革の議論とこの医療改革の議論について、かなり優しい言葉で穏やかに御意見が開陳をされましたけれども、我々与党の議員も、三位一体の議論、大変なあの議論の中で一つの結論を出したわけであります。

 地方六団体からの提案があった、それに対して各省部分的な対案も出した、その中に医療の問題も入ってくるわけでありますけれども。国の方針としては近未来として保険制度を都道府県単位で改変したいという計画がある、その一方で三位一体の議論があった。そういう中で、厚生労働省としてこの補助金カットはのめないけれども、長期的には保険制度を都道府県単位にするのでこの三位一体の中に盛り込んでしまえというような、そういう抱き合わせの議論が、本当に短時間の間で昨年行われたわけでありますけれども、地方の現場を預かる側からすると、なかなかこれは短時間の議論で大変なことだったのではないか。

 あるいは、それぞれきょうは穏やかな表現でありましたけれども、腹の中ではいろいろなお考えをお持ちではないかというふうに思いますが、河内山参考人から、率直に、国の三位一体の流れとこの医療改革の流れ、本来はペースが違ったはずなのに突然合体してしまったということについての御感想をお聞かせいただきたいと思います。

河内山参考人 石崎先生が御指摘の点は、これは浅野知事がここで参考人としてお話をされるのが一番わかりやすい例を出されるのではないかと思っております。

 社会保障審議会の医療保険部会の折にも、浅野知事一流の例え話で、医療制度改革は、二十時発の電車、いわゆる二十年度ぐらいの話、今回は十六年度ですから十六時の電車、二十時発の電車のつもりでいたら十六時の電車に乗るようなことになってしまった、こういうお話をされました。

 確かに、地方六団体が、三位一体の改革の補助金改革案というのは、本当に細かな何億円単位というようなものから非常に大きな義務教育費等々の一兆円を超えるものまでたくさん種類がございまして、やはり小異を捨てて大同につくということでないとまとまらないということでまとまった内容でございますので、地方六団体の方からすれば、先ほども言いましたけれども、その文脈でこの医療制度改革の話が出てくるのはおかしいのではないかという意見は、これは多々あると思います。

 私は、医療保険部会でもかねてより都道府県がもっと医療制度改革に利害関係者としてかかわりを持っていただきたいということを申し上げておりましたし、いずれは、以前と違いまして、都道府県の代表である浅野宮城県知事も、おいでにならないのに申し上げるのは大変失礼でございますけれども、やはり関心を持ち、決して議論に参加をしないという話ではないのだとおっしゃっておりましたので、今回の医療制度改革の中で都道府県を単位とした医療保険制度の改革、これについては、議論がこれから深まるちょうどそのときにあると思いますので、唐突ではありますけれども、予定調和説じゃありませんが、大体いい方向に行っているのではないのかなということが実は私の率直な感想でございまして、先ほど申し上げましたとおりでございます。

石崎委員 うまくまとめていただきまして、ありがとうございました。医療保険に都道府県をもっと引っ張り込みたいという国の考えと市町村の考えが期せずして一致してこういう流れになったのかなという感じもしますが。

 山本会長の方は先ほど、これが都道府県を中心にするということの第一歩で意味があるというふうに御発言をしておられましたけれども、しかし山本会長がさっきおっしゃった、最終的には健康保険制度を国が保険者として一本化すべきだと。ところが、国の計画としては、基本方針としては都道府県中心に再編したいということでありますから、ちょっと国の考えと町村会、山本会長のお考えと食い違う。これはどのように整理しておられますか、山本会長にお聞きします。

山本参考人 お答えします。

 国が保険者になるべきだと言ったのは、ちょっと私の言い過ぎというよりも、短くして言ったものですから。私どもが常々主張しておるのは、国単位での一本化が必要である、こういうことなんです。

 ですから、先生御存じのように、国民健康保険は中央会と各県の連合会とがございます。ああいうような組織にして、国単位で一元化、一本化をやった方がいい、こういう意味なんです。それを一括して国と私は言ったんですが、言うならば、国が保険者になるという意味でなくて、国単位での保険者になることが望ましい、そういう意味で言ったわけです。だから、やり方はいろいろあると思いますので、そのときに検討すればいいのです。私どもはそういうふうにずっと提言をしてまいりましたので、そういうことで訂正させていただきます。

石崎委員 奈井江の北町長にお伺いしたいのですけれども、同じ北海道ということで日ごろからいろいろなお考えを聞く機会が多いわけでありますが、今山本会長の方は大きく大きくと。ところが北町長は、いきなり都道府県というのも大き過ぎるし、もっと小さな単位でというお考えをさっき披瀝されておりましたけれども、広域連合への取り組みということで全国的にも北町長のところは有名になっておりますが、その広域連合という単位、これでどの程度成果が上がっているのか、あるいは最終的な医療単位としてはやはり都道府県ということがベストかどうか、その辺をお聞きしたいと思います。

北参考人 今石崎先生のお話でございますが、はっきり申し上げまして、最終的には都道府県ということについては山本会長と一致いたしますし、そういう点ではそのとおりでございます。

 ただ、その間のプロセスが大事である。これは、なぜ大事かといいますと、私の考えといたしましては、いわゆる健康づくりを含めた住民の認識、今介護保険では介護予防、これは適切なことでございますが、予防を含めた健康づくりというのは、それぞれの人たちが自分の健康は自分で守るという認識に立ってもらわなければいけない。特に、老人といいますか、高齢化対策の中でも、どう自立をしていくかということをどうみんなが支えていくかという政策をつくらなければいけない、私は基本的にそう思っております。

 ですから、広域化の中でどういうメリットがあったかといいますと、一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、いわゆる給付と負担の問題、それから事務の効率化、特に事務の効率化については、一市五町でやっておりますけれども、大変コンパクトにまとまって、単年度でいえば五千六百万ぐらい、今行財政改革に市町村は必死になっておりますが、これをいち早くやったということは大変大きかった、こういうふうに思います。

 それから、いま一つは、広域化による大きなメリットとしては、いわゆる安定した保険運営ができるということ、ただ小さな町で保険運営そのものが先ほどお話もいたしましたように赤字体質になる、やはり広域化して、連携して、そして広域連合で今日やることによっていわゆる保険財政基盤が安定したということも申し上げていいかと思います。

 それと、いま一つ大切なことは、私どもがやっている中の成果といたしましては、健康づくり運動、予防運動、先ほども申し上げましたけれども、一市五町で例えば医療費の分析などを、国保運営委員会で各市町から委員が集まってまいります、それを全部分析し合いながら、どう医療費を上げないか、そしてそのためにはどんな健康づくりをすることがプラスになるか、予防活動をすることがプラスになるか、この中でみんなで支え合いながら、協議をし合いながら、医療費抑制に大変な貢献がそういった意味であったということが言えるかと思います。

 そこで、都道府県に一気に持っていくのはいかがなものか。私は、最終的には都道府県に持っていく、先ほど申し上げましたとおりでございますが、地域、例えば二次医療圏の範囲内で、お互いに見える形で、それぞれ責任を持ち合いながら進めていくということが必要。特に、保険料の、税もそうでございますけれども、いわゆる未納解決に私ども空知中部広域連合は大きな貢献をしております。示唆に富んだことは言えませんが。

 いずれにいたしましても、それぞれの町で全責任を持つ、そして個々に医療費を抑制することによって国保税がこれだけ違いが出てきますよということもみんなに見える。こういう形によって健康運動、健康増進運動を大変大きな弾みになってできるということで、住民一人一人がなるほどなという説得力を持つためには、余り一気に大きなことにしないで、北海道のような範囲で、県単位なら別かもしれませんけれども、二次医療圏ごとにするだとか、そういったことの広域化によって、住民と市町村職員、市町村長の認識を一致した中で、いわゆる最終的に都道府県に一本化していくということが私の考えであるということを申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

石崎委員 今、北町長がおっしゃった目に見える範囲での対策、健康づくりも、未納対策も、保険料の問題も、医療費の問題も、そういうことでかなり示唆に富む取り組みだというふうに思います。

 その上で、河内山参考人にまたお伺いをしたいと思いますけれども、先ほど申し上げました知事会の議論が今進んでおります。これから知事会でもんで、それから市町村にも議論が投げかけられるというふうに思いますけれども、いわゆる浅野試案というものに対する評価というか見解ですね。

 それから、スケジュールを見ますと、三月いっぱいということでありますから、知事会でもんで、市町村の意見を聞く時間というものが余りないように見受けられるわけであります。また、国と地方の関係の、国から地方へどんと強制的に行くような流れが、また都道府県から市町村に強制的に上から下へというような議論の流れになりはしないかという危惧を持ってしまうわけでありますけれども、この点、浅野試案の評価、それからこのきついスケジュールについてはどう認識しておられますか。

河内山参考人 浅野試案というものを拝見いたしますと、今回の浅野試案のポイントは私なりに解釈しますと二つあります。一つは、やはり今回はまず暫定的な問題として対応せざるを得ないのではないかという点。それから調整交付金等につきましては、いわゆる国が今まで行ってきたそれを後追いするような形での固定的な部分と、それから都道府県が裁量性を発揮する部分と二つ分けましょう。それはなかなか、現実的な話としましては、市町村としましても、いわゆる実務的な部分でそう違和感のない試案だというふうに考えております。

 それで、浅野試案がこのタイミングで、もうそれは市町村、いわゆる保険者とすり合わせをしなければならないタイミングだろうとは思いますが、三位一体改革全体がやはり国の予算編成の時期等々との兼ね合いからしまして、地方でよく具体的な、実務的なところまでちゃんとすり合わせをしてということにはなかなか、三位一体改革といいますか、補助金改革は、すべての点でと言ってもいいと思いますけれども、きちんと合致しないというのはいたし方ないところだと思っておりますので、我々としましては、先ほど山本参考人がお話しになりましたようなことで申し上げますと、やはりちゃんと税源移譲の方も目に見える形でお示しをいただいて、それがちゃんと約束したとおりに進むのであれば、実務的な部分では少し後追いになっても仕方がないなというふうに考えております。

 極めて雑駁な感想でございますが、浅野知事がおいでになっておりませんので、これ以上は控えさせていただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

石崎委員 そこで、知事会の浅野試案の中に財政調整交付金のあり方についてお考えが述べられておりますが、浅野試案では、国の財政調整交付金を廃止する、そして都道府県の財政調整交付金に一本化するというお考えが示されております。

 山本会長にお聞きしたいと思いますが、国の財政調整交付金をやめる、都道府県だけにする、その場合に、例えば一つの県の中の市町村の調整というのはできるんですけれども、全国的に都道府県格差というものを調整するという方法がどうなるのかなという心配がありますけれども、山本参考人は、浅野試案の国の財政調整交付金をやめるという考え方について、いかがお考えでしょうか。

山本参考人 財政調整金というのは、御承知のように、財源の基礎的なものになっているわけですね。直接に支払い費になっていないわけです。それが全体で一〇%になっているわけです。それを今回削減して、地方にその分だけ負担しろ、こういうことになっているわけですけれども、これを県へ渡しますと、県が全額そういうことで持つようになったとしますと、格差がございますから、格差によって、受ける方にまた同じように格差が出てくるのではないでしょうか。

 ですから、私は現在、都道府県に移すように決めてありますけれども、今回、四%と一%なんですが、トータルで十七年が五%ですね、十八年が七%になるわけですけれども。やはり、県に配分の事務を行っていただいて、最終的な調整の確定は国がやっていかないと、各県ごとの格差が出てくるおそれが出てくる、そのために、市町村が受ける調整金にまた格差が出てくる、こういうことになりますので、できれば、財源負担を県にさせるというよりも、県と国との交付のやり方についてのガイドラインをきちんと決めていただいて、やっていただくことが必要だと私は思います。

 だから、県が負担するのが嫌だからそれはもう廃止すべきじゃないかという論拠であるとするならば、これは私は間違っていると思います。県側が負担をしないでいこうという思いで、こういう意見が出されているとするならば、一番困るのは市町村だ、私はそう思います。ですから、最初に申し上げたように、地方という立場からいけば、県も市町村も同じやり方の中に入るべきだ、私はそういうふうに思います。

 以上でございます。

石崎委員 この辺もまた、これからいろいろ議論になってくるかというふうに思います。

 最後に、北参考人にお聞きしたいんですけれども、地方の本当に小さな町の現場でずっと御苦労されてきて、国、都道府県、市町村、この連携というものがこの改革、この医療問題でも非常に重要だというふうに思いますが、現場で長らく地方行政に携わっておられて、これからの改革についてどういうことが大事かということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

北参考人 私の率直なお話を申し上げたいと思いますが、医療改革を含めて、国、都道府県、市町村、それぞれ役割分担があると思います。

 今ほど、調整交付金等も含めてお話がございました。各県ごとに、また北海道もそうでございますが、格差がございます。その格差は、やはり国がしっかりと財政調整をしていかなきゃいけない、山本会長さん、おっしゃったとおりだ、この役目はそのとおりだと思います。

 都道府県は都道府県として、先ほど来、一本化の話はしておりますが、役割はやはりきちっと担っていかなければいけない。市町村は、それぞれ連合体を含めて、やはり市町村行政の中に、最も身近なところにある行政でございますから、健康づくり、介護予防、疾病予防、こういったものを含めて、保健、医療、福祉、そして介護をどう連携していくか、現場の市町村、基礎自治体の住民とのかかわり、そのことを、きちっと現場の意見を聞いていただきながら、そして都道府県と国との役割分担をきちっとやっていくということが私は何よりも必要だと。

 そのためには、基礎自治体の市町村に、都道府県にすべてを一本化するから、自分たちは知らない、そういうことはないと思いますが、そういう現象が起きることが私の心配していることの一つです。

 私は、市町村長は、都道府県に全部一本化することによって、我々の任務、役割というのは少し減ってくるのではないかというちょっと錯覚めいたところも、逆な立場でいいますと、あるかもしれません。しかし、それは基礎自治体の市町村といたしましては、健康づくりを含めて、疾病予防を含めて、そういったことに本格的に住民のニーズに応じて取り組むということと、徴収の問題がございます。負担と給付、やはり住民にきちっと説明責任があって、住民にその責任をきちっと全うできるような市町村行政をしなければいけない。これは国と都道府県と市町村の役割分担というのが極めて大きい、より連携していかなきゃいけない、私はそう思っております。

 以上でございます。

石崎委員 貴重な御意見、ありがとうございました。終わります。

北川委員長代理 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、参考人の皆様方、御遠方より、御多忙の中、国会においでいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、大変にありがとうございます。

 昨年、国と地方の税財源を見直す三位一体改革では、地方、国との激しいやりとりが展開をされました。公明党としましては、地方分権を強力に推進するため、国から地方へ、また地方にできることは地方に、そして地方団体の理解が得られるものをと一貫して主張してまいりました。そして、三位一体改革の方向につきまして、おおむね地方団体の理解が得られたかというふうに考えております。

 きょうの本題に入ります前に、先ほども河内山参考人より、構造的な問題というような問題提起がございました。こうした医療、介護、年金、社会保障、またその他さまざまな、我が国の今後の将来に向けまして、そうした表面に出てきた多くの問題、課題、その地殻の奥にはやはり少子高齢社会というものが存在をしていて、そしてそこの大きなマグニチュードというものが、今激震が走っていると考えております。この問題に関しまして、国のみならず、地方公共団体、そして国民も企業も、皆が真っ向からこのことを認識し取り組んでいかなければいけないと考えております。

 公明党におきましても、この問題を党のメーンのテーマとしまして、今、少子社会総合本部を立ち上げ、さまざまな積極的な活動を展開しているところでございます。また、自治体、企業における子育て支援の行動計画の策定を義務づけました次世代育成支援対策推進法が、十年間の集中的な取り組みとしてスタートすることになっておりますが、どのような施策を展開するにせよ、各地方自治体のトップの皆様の意識というものが大変重要であることは言うまでもありません。

 そこで、本日お見えになっていらっしゃいます市町村長の皆様、この少子化、少子社会への強力な支援体制を構築すべきであると考えております。それで、参考人の皆様にこの少子社会に対する危機意識、また取り組みへの御決意など、河内山参考人、また山本全国町村会長、そして北町長、三方にお伺いしたいと思います。

河内山参考人 古屋先生御指摘のとおり、次世代の育成支援、これは名前は非常に前向きの計画でございますけれども、非常に我々は危機感を持っております。

 高齢社会問題は、どちらかといいますと、団塊の世代が来年以降どんどん定年になられて、二十年もたちますと、二〇二五年になりますと団塊の世代の方が大体八十歳ぐらいになられます。そのための備えというのが、医療も介護も年金もそうなんですけれども、今我々の関心度合いも強いので、国も地方自治体もこれまで集中的に随分いろいろなことをやってまいりました。介護保険が始まって丸五年たとうとしているわけでございますが、まだまだ課題があるにせよ、一定の仕組みというのができ上がって、これによって随分助かったなという方はたくさんおいでになると思います。

 ただ、その次世代育成のことにつきましは、私も時折感じますけれども、例えば子育て中のお母さん方、一歳のお子さんをお持ちのときの悩みと、三歳のときと、五歳のときと、十歳のときと、どんどん変わっていきます。高齢者の方の悩みはある程度固定化しまして、六十五歳のときの悩みも七十歳のときの悩みも余り変わりませんが、お子さんをお持ちの方はお父さんもお母さんもどんどん変わってまいります。

 したがって、忘れやすいということもありますので、我々自治体としましては、固定的にというか定点的に、忘れないように、やはり年齢に応じて適時適切に、今欠けているものについては重点化をしなきゃなりませんし、今ある程度、例えば私が市長を務めておりました柳井市におきましては、例えば保育所の数についてはもう大体充足をしているとすれば、今度は、レアなケースも含めてどういうふうにお子さんたちをケアしていくかとか、そういったところを、やはり指摘されたこと、あるいは悩みを忘れないようにするということが自治体にとっては非常に大事ではないかなというふうに考えております。

 非常に幅の広い問題でございまして簡単にはお答えできませんが、そういう所感を持っております。

山本参考人 的確なお答えができるかどうかわかりませんが、高齢化の問題は、私はいつも思っているのですけれども、自分自身が自覚しておりますから、高齢化は何とか切り抜けることができるだろうと思います。

 一方、少子化の方は、これはもう大変でございまして、いろいろな現実的な制度や、それから施設をつくったからといって少子化が解消するとは考えられません。

 一番大事なことは、やはり少子化というのは意識革命じゃないでしょうか。少子化がいけないんだということがいわゆる若い人たちに浸透しなきゃいけない。なぜ少子化になったかという原因をやはり私どもは真剣に追求していく必要があると思いますね。この少子化の原因をつかむことができれば、ではそれに対してこうすればいいというものができるのですけれども、ところが、その当該者の皆さんたちが意識的に、いや、それに乗っからないよということになれば、いつまでたっても少子化というのは解消することは難しいと思います。

 だから、ここで一番大事なことはやはり教育じゃないでしょうか。したがって、皆さんが、少子化では国が今後大変なことになるよ、重大なことだよという認識をして、では、少子化の弊害をなくしていくことに私どもは努力していくんだ、そういう考えになることが大事じゃないかと思いますね。

 だから、やれることは幾らでもやりますよ。例えば、お子さんが生まれたときに幾らの祝い金や、あるいは小学校に行くまではこういうこともやりましょう、あれもやりましょうとやっています。我々のところもやっておりますけれども、それでもなおかつ少子化が続いていくということは、すなわち意識革命がないから。私はそういうふうに思っておりますので、そういうところに力を入れていけば、私は、少子化は何とか、ある意味では少しは解消できるのではないか、そういうふうに思っております。

 以上です。

北参考人 今、古屋先生、非常に時の問題として大切なことをお聞きいただきまして、ありがとうございます。今、私は全くそのとおりだと思います。少子化時代をどうとめるか、私どもの一番現場として苦労のあるところでございます。

 そこで、我が町の内容について少しく申し上げたいと思いますが、一つは、子育てに対して、若い子育て中のお母さん方がみずから、キッズネット、私どもの町は奈井江ですから、「キッズネットないえ」というのをつくりまして、みんなで保育し合おう、そして預け合おう、こういうサポートシステムを確立いたしました。これが十三年度から始まったのですが、非常に広がってまいりまして、家庭でもう子育ての終わった五十歳、六十歳、また七十歳の人たちもこれに参加していただきまして、援助会員という言葉を使っているのですが、その人たちも皆さんで、地域総ぐるみ、町総ぐるみで子育てをみんなで協力し合っていこう、こういうことで、報道にもちょっと大きく取り上げられたのですけれども、今、そういうサポートシステム、お母さん方みずから、町としてもこれについては支援をしております。保育士を配置いたしまして全面的に協力する。これが非常に功を奏してきているな、こういうふうに思います。

 そして、いま一つは、高齢化時代。この高齢化時代とどう結びつけるか。私ども奈井江町に特別養護老人ホームがございますが、これを開放して遊びのフロアを設置いたしまして、入所者や通所者と乳幼児、母親等の交流を図りました。そういうことで、今年の十七年度、予算化もいたしまして、入所者の人たちは、幼児を見る、子供たちを見る、孫、ひ孫の顔を見る、これによって本当に元気が出てきます。もう目つきが変わってきます。そして、子供さんたちのさまざまな行いに関心を持っている。こういうことを含めて総合的に、幼保総合施設というのがありますが、私は老保総合施設的にしていこうという取り組みを今させていただいているところであります。

 そこで、ちょっと申し上げたいのです。余分なことかもしれませんが、今、少子化時代の中で、全国的には一・二九人でございます。一人の女性が産んでいただける数といいますか、一・三二から減って一・二九になりました。

 ただ、東京は一人を切ってきました。都市は、大阪もそうでございます。地方は健闘しているのです。私の町も、実は七千人ちょっとでございますが、一・四七人であります。隣町の浦臼町というところがありますが、これは二千五百人ぐらいの町でございます、一・四八人でございます。それから滝川市は、四万七千人ぐらい、一・四五人ぐらい。それから産炭地の上砂川でございますが、これも五千人ぐらいの人口でございますが、一・六三人でございます。驚くなかれ、北竜町、二千人ですよ、その二千人の人口のところで一・九三人。それは平成十五年です。

 ただ、子育てして大きくなっていったら、みんな都市へ行っちゃう。ですから、これはある面では流れとしてやむを得ない。働く場がございません。

 いずれにいたしましても、地方はそれだけ健闘している。これは支え合う制度なんです。向こう三軒両隣なんです。そして、その中で、今日の少子化時代を切り抜けるためにはもっともっと地方に目を向けていただきたいとお願いを申し上げて、私の発言にかえさせていただきます。

 終わります。

古屋(範)委員 ありがとうございました。それぞれに貴重な御意見をちょうだいいたしました。

 河内山参考人にお伺いいたします。

 前という名前がついておりますが、山口県の柳井市の前市長をされていたということで、グラフを見ますと、山口県は一人当たりの医療費が、決して低くはないというか、高いレベルにありまして、この原因についてはどのように、県、市でも結構ですが、お考えになりますでしょうか。

河内山参考人 国保の連合会の理事長も私は仰せつかってやっておりましたので、山口県の医療費の特性としまして幾つか言えることを申し上げたいと思います。

 一つは、例えば国保の被保険者だけに限りましても、高齢者の被保険者の率が非常に高い。これは多分、島根県に次いで山口県が高い。したがって、山口県全体がある意味では高齢化先進県でございます。非常に速いスピードで高齢化が進んでいる県の一つだ。いわゆるそういう人口構成上の問題として、医療費が高どまりになっている原因があると思います。

 もう一つが、これがなかなか、山口県の場合もどこの県の場合も、鶏が先か卵が先かの問題になるんですが、医療提供の体制、医療供給量、もっと簡単に言うと、ベッド数とアクセスの容易さ。

 山口県は今市町村合併が進んでまいりまして、多分来年には十三市六町ぐらいに再編をされると思いますけれども、余り中核的な大都市がございません。瀬戸内海側、日本海側、それぞれバランスのとれた人口構成になっておりますので、その町々にというか、その市ごとにある程度の能力を持った総合病院が大体そろっております。そうしますと、患者さんの方からしますと非常にありがたいわけでございますが、医療供給体制が充実をするとやはり医療費は高くなるのかなというようなことを考えておりますが、これがなかなか、果たしてそれだけなのかどうかわかりません。

 いずれにしましても、高齢化の問題と医療供給、医療提供体制の問題、これは医療費の問題として非常に密接な関係があるというふうに考えております。

古屋(範)委員 非常に皮肉な現象と言えるかもしれませんが、こうした医療費の削減、抑制ということも含めまして、国民健康保険の広域化、また都道府県の役割についてどのようなことを期待されているか、河内山参考人にお伺いいたします。

河内山参考人 これは私の一つの夢でもあるんですが、やはり三十歳、四十歳の人に適切な健康づくり、これをどうやってやってもらったらいいのだろうか。これができれば、大分、生活習慣病の問題あるいは高齢時におけるさまざまな生活の質の低下を押しとどめることができるのではないか。

 今、国保中央会でも、糖尿病の対策をもう一回しっかりとやっていこうという検討をされておりまして、私も一緒に勉強させていただきますが、大変いい勉強になります。

 国保の方だけで考えて、高齢者の方々の生活習慣病の言ってみれば結果のところの医療費の問題を云々しましても、やはりそれは余り国民的に幸せではございません。だれも病気になろうと思ってなる人は少ないわけですね。四十歳ぐらいでいろいろと気づいたり、あるいは適切な対応が始まる。ですから、例えば糖尿病の場合でいうと、境界域というよりは正常域にどうやってアプローチしていくかということだと思うんですね。

 そのときに、都道府県の役割というのは非常に大事だと思うんです。例えば、柳井の隣に光市というところがありますけれども、新日鉄光という大変大きな会社がございます。そこの健保組合の方に対しまして、私が、三十歳、四十歳のときから健康づくりをもっとやりましょうと言ったんです、企業は企業でやっておられますけれどもね。そうは言っても、それは別に市長さんに言われる筋合いはないですよということになりますけれども、これをやはり都道府県知事が音頭をとって、大県民運動ですね、糖尿病対策をとにかく山口県として徹底的にやっていく、そういうことをもし県の施策としてやるようになれば、これは大きな進歩があります。

 そのことにやはり関心を持たれるためには、先ほど少し触れましたけれども、負担なくして関心なしだと思うんですね。やはり医療費の問題が非常に気にかかるというふうに県当局、知事さんがお考えになる、そういう意味では、今回の改革は非常に意味があると私は思いますし、広域化というのはそういう意味で、財政基盤が安定するだけではなくて、県民、国民にとって非常にいいことではないかなというふうには考えております。

古屋(範)委員 もう時間がなくなってきましたが、本当に生活習慣病を含めた予防というものが今回のこうした改革の中で進んでいけば、これは本当によい点であるというふうに考えております。

 そこで、先ほど北町長から御紹介がございましたかかりつけ医推進モデル事業、こういうことを実施された結果、近隣の市町村と比べ医療費の伸びが低く抑えられているということでございました。この具体的な施策内容、また住民の方々の参加の意欲とか反響、手短で結構ですがお話しいただきたいと思います。

北参考人 今のお話でございますけれども、内容を簡単に申し上げますと、私ども取り組んでおる中で一番大切なこと、今ほど三十歳、四十歳代というお話が出ました。全くそのとおりでございますが、同時に、やはり家庭が大事だと思います。

 そのために、私どもは国保中央会の取り組みを行って、私も、この取り組みをひとつ認めていただきたいということでやっていることは、小学校の生徒、中学校の生徒、高校の生徒、さわやか健診をやっております。その中で、いわゆる食に対する、食事の偏向だとか、肥満だとか、それから、今生活習慣病の初兆というものが子供のときからあらわれているわけでございます。

 こういったものをいわゆる調査、健診した結果について、お母さんたちといろいろと話をするんです。お母さんたちというのは、やはり今少ない子供さんでございますから、子供の健康には物すごい関心。だんなの健康にはそれほどでもないんですけれども、まあお酒を飲んだりなんかするので。だけれども、子供の健康というと目の色変えますよ。ですから、家庭の料理が変わってくる。このことが町民総ぐるみの健康運動に大きな役目を果たしているということが言える。時間がないというメモが入ったようでございますから、余り申し上げませんけれども。

 いずれにいたしましても、そういったものを契機にいたしまして、食生活改善協議会などを通じてやっておりますし、健康づくり応援団というのは、町民、住民と今どういうかかわりがあるか、これは六十人、七十人、八十人と膨らんできておりますけれども、そういった中で、地域地域でみんなが食を中心とした健康運動を町民総ぐるみでやっている。したがって、高齢者医療もそれほど上がらない。抑制される。そして、介護保険の要介護率も奈井江町近隣としてはうんと低いんです。こういうことが成果としてあらわれてくる。

 予防介護運動がどれだけ必要か。疾病予防運動、このことにもっともっと力を入れていただきたいと私はお願いを申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

古屋(範)委員 貴重な意見、ありがとうございました。以上で質問を終わります。

北川委員長代理 次に、五島正規君。

五島委員 民主党の五島でございます。

 本日は、参考人の皆さん方には、北海道から九州まで遠路おいでいただきまして貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。心からお礼申し上げたいと思います。

 私の方からも幾つかの点について質問をさせていただきたいと思うわけでございますが、まず、今回、三位一体改革の関係で厚生労働省はこの国民健康保険の問題について出されてきたわけですが、私は、これが必要があるかないかという前に、本来こういう形でこの問題が起こってきたことは大変不幸であったと思っております。

 先ほど山本参考人からもおっしゃっておられたわけでございますが、国保そのものが客観的に見て破綻の危機に瀕している。そういう状況の中で考えなければいけないのは、やはり医療制度をどう変えて国保制度をどうしていくかという議論であって、三位一体あるいは地方分権の議論でその問題が解決できるかどうか、何ら検証されないままにそこに行ったことは非常に不幸であったというふうに思っています。

 しかし、同時に、今、河内山参考人もたしか委員として参加しておられたと思いますが、社会保障審議会の医療保険部会においてこの問題について議論されています。そして、その議論が、国保の大変な緊迫の状況の中においてまだ十分な結論を得ていない。そういうふうな中で、この問題が突然出てまいりました。

 そうした状況の中で、具体的に二、三についてお伺いしたいと思うわけですが、今回問題になるのは財政調整の交付金の問題でございます。

 この財政調整の交付金は、簡単に言えば、国がガイドラインを出しますよ、それによって県がそれぞれの県内に配分してください、こういうふうな言い方をされています。ただし、厚生労働大臣は、このガイドラインは参考でございまして、それは、守るか守らないか、どうするかは知事さんの御自由です、そのお金はどう使っていただいても結構です、言いかえれば、そのことについて知事さん、県に対しては責任を負わせません。これは委員会でもそのように答弁されました。

 そこで、先ほどからも話題になっておりましたけれども、一部の知事さんの中では、では、うちの県では小児医療の自己負担の軽減のためにこれを使いますよというふうな話が出てまいります。事実、地方分権という形で県がそうした財源を国から移譲されて、県民の健康のために知事さんが独自に使うということであれば、そういう選択肢もあって不思議ではないと思います。

 問題は、この国保が、現状においても、法定外で一般財源から約四千億近いお金を投入しながら、なおかつ赤字であるという状況。その中で、この調整交付金が、保険医療の役割、県としてやれることで知事さんが自由に使うとした場合に、本当に国保の財政はもつのか。特に、大都市で豊かなところはいいのかもわかりません。しかし、多くの町村において、そうなれば国保はますます穴があいてしまうじゃないか、そういう問題が出てくると思います。

 この際、もし、こういうふうに県に調整交付金を持たせ、役割を果たすとするならば、ここまで厚生労働省が強引にされるのなら、思い切って、国保連合会に県も入って、県も保険者の一員になってくれとおっしゃれば、これはいろいろな事業をしても国保全体の決済にまで責任を持たないといけないわけですから、まだわからないわけではない。国保の議論からいえばそういうことになるかと思います。

 一方、地方分権の話からいえば、そんな形で県に責任を押しつけられたとしても、それは地方分権としてこの医療保険制度全体をどうするかということを出してくれないと、分権ということでの権限、あるいは独自の行政を展開するということにならない、それはどうも地方分権とは関係ない話じゃないですかというのが知事さんから出てくるのも当たり前なんだろうと思っております。

 そこが非常にあいまいなまま進んでいきますと、多くの県においては、地方分権と関係なしに、これまで国が果たしてきた役割、この交付金をそれぞれの保険者に配分するということに終わるか、それとも、非常に分権を重要な問題として考えておられる知事さんは、保険については保険者が市町村だから、そこで保険料を上げてもらえばいい、県としてはその財源でもって独自の費用に充てていくという話になってくるかと思うわけですが、そのあたりについて、まず、河内山参考人、山本参考人、北参考人、お三人にどのようにお考えかお伺いしたいと思います。

河内山参考人 先ほど来繰り返し御質問にもございましてお答えを申し上げましたけれども、明らかに、この三位一体の改革の文脈と、背景には地方分権ですね、地方分権の文脈、そして医療保険制度の改革という文脈、これは似通っているというか同じようで、実はそれぞれ違うんだろうと思っております。

 しかしながら、私は、今回の医療保険制度改革、医療制度改革における県の役割というものは、今まで都道府県というのはなかなかガードがかたくて、この国保の問題についても余り触れたがられないというものが一歩ずつ動き始めたという意味で、非常によかったと思っているんです。

 これは、まさに、あるべき論からしますといろいろと議論はありますけれども、現実論といたしますと、今まで数十年にわたって、国保制度が始まって以来、なかなか都道府県がこの国保制度とのかかわりが深くならなかったという経緯もございますので、そういう点では、三つの文脈の中の前半二つを言いますと、それは私どもも、地方分権を推進すべし、地方の裁量をふやすべし、こう言い続けてきた経緯がございますので、すとんとは落ちない論理でございますけれども、繰り返しになるようでございますが、医療制度改革における県の役割を、一定の進歩、一定の歩みを進めていただくようになったことについては評価をしたいと考えております。

山本参考人 調整金の地方への移譲のことですけれども、それによって分権がそこへついていくということにはならないのではないか、私は最初からそう思っております。

 ですから、これは三位一体の財政改革の中で、私どもが出しましたのは、厚生省には九千四百億円の補助金と交付金の削減を行ってほしいという地方計画案をつくりました。ところが、それに対して厚労省側は、言うならば余り賛成でないものですから、結局国保と生活保護という二つを出してきたわけですね、代替案として。

 ですから、生保については今まだ決着を見ておりませんけれども、十七年度で五%ぐらいの国保の財源のうちからこの調整金分を削減する、地方へ移していくということで、ある意味では決着はついたんですが、これも、きちんとした、さっき言った理論的にこうしたら一番よろしいということでやったものではないと私は思います。恐らく、調整をしながら四%と一%という数字を出したものだ、そういう判断をしておりますが、私どもは、それで、ああ、いいと満足をしているわけではありません。

 ただ、この今回の十七年度から五%、十八年度は七%ですけれども、こういう調整金を県に移譲するということは、今までは、県は国民健康保険に対しては、市町村に対して指導的な役割だけしか分担をしておりませんでした。だから、口は出すけれどもお金は出さないという立場でした。ところが、今回はそれを、お金も出す、口も出すということになってきますから、県自体の役割分担というのが非常に高くなってきます。

 だから、私は、さっきも申し上げましたのですけれども、国保の財政というのは非常に厳しくなっておりますから、県だけがらち外であっていいということは考えられない、いわゆる同じ地方であるとするならば、県も同じように国保に関与してくることが大事じゃないか、そういうように思っておりましたので、今回の調整金の削減は、決してそれで満足をしているものではありません、しかし、切り口をつくったということで、ある意味では成果があるんじゃないかな、そういうように思っているところです。

 しかし、私どもの削減計画案の中には国保は入っておりませんでしたから、これは厚労省側から出されたものであって、だから、受け入れる方としては最初のときは大変困惑をしましたけれども、さっき申し上げたように、県も同じ地方であるとするならば、国保の運営が非常に苦しくて厳しいんだから、その一端を県も担うことはいいんじゃないか、そういう意味でこれは受け入れてもいいという、言うなら苦渋の選択をして、調整金を地方へ移すことに賛同したものでございます。

 ですから、今までは指導だけすればいい、言葉が悪うございますけれども、口だけ出してお金は出さないということでなくて、本当の意味での地方の国保の医療保険に対して県も積極的に関与して、よりよい制度の実施を行っていく、そういう切り口をつくったという意味では、私は、ある意味ではこの移譲は私どもにとっては一つの成果であった、そういうように思っているところでございます。

 以上です。

北参考人 今のお話でございますが、山本会長と一致するところはございますが、いわゆる地方分権の流れをつくるということには、ちょっとこの内容については私は疑問を持っております。

 簡単に言いますと、先生のお話のとおりでございまして、定率国庫負担の四〇%を六%引き下げて都道府県に移譲されるということでございますし、その給付金をどこが負担するかで都道府県のいわゆる調整機能が全くなくなることと私は思っております。したがいまして、言いかえれば、都道府県独自政策で調整しますと、市町村に負担が来る可能性がございます。

 そのようにならないように、保険者としての現行の財源を維持できることと、市町村の国保財政が急激に変化し影響を及ぼさないように、市町村の意見を十分尊重してやっていかなければ、逆にそういった影響が加えられるということになりますと、市町村としては大変不本意でございます。

 今、山本会長さんがおっしゃったように、したがって、そういう意味では今回のは分権型にはならないと思いますよ、ただ、都道府県がそれぞれ権限の調整交付金にある程度関与しながらその中で調整するという、都道府県も関与をある意味でしてくるということについては、切り口としては大事な、大切なことの一つだろう、こういうふうに思っております。

五島委員 ありがとうございます。おっしゃるお話については私もよく理解できるわけですが、ただ、全国的なさまざまな調整についてはやはり国でやらざるを得ないだろうし、それから、都道府県内における調整は県がやらざるを得ないんだろう、それは私もそのように思います。

 ただ、その調整をやる場合に、どういう形でやるのか。これまで国がやってきたように、保険者として参加せずに、県は県の中で、出せる範囲の中でやっていくということでいくのか、それとも保険者として国保というものに責任を持つ立場でもってやっていただくのかということは非常に大きな問題だと思います。

 もし国保というものに直接責任を持たないのであれば、むしろ、国保の調整ではなくて、例えば、国保の統一的な事業に責任を持つとか、人件費に責任を持つとかということの方がまだ理屈が立つんだろうな、しかし、それはいずれにしても分権とは余り関係ないねというふうに思うわけでございます。

 そういう意味では、今回の措置というのは、一方で、近々の課題として医療保険制度の見直し、中でも国保の見直しや老人医療の見直しが切迫している中において、そこの審議を急いでもらうということでなしにやられて、しかも保険者ではないという形でその財源を移され、それぞれの知事さんにお任せになったということについては、私は、非常に問題があるんじゃないか。知事さんに任せたから地方分権になるのかどうか。

 今、山本参考人も北参考人も、地方分権とは余り関係ないんだけれども、当面の措置としてまあまあというようなお話だったかと思うわけです。辻山参考人にお伺いしたいと思うんですが、三位一体の本来の建前は地方分権であったはずです。しかし、それが現実問題、六団体からの要求の中に、恐らく厚生労働省としてはいろいろと意見のあるものもあったかもわかりません。それに代替するものとして、こういうふうな国保に対する調整交付金を県に移すという形で措置してきたのは、私はむしろ地方分権の議論を抑制するものでしかないんじゃないかというふうに思うわけですが、そのあたりについて辻山参考人の御意見をちょうだいしたいと思います。

辻山参考人 おっしゃられるように、今回のこの法案は、いわば三位一体改革という国の各府省と地方団体との間のやりとりの中で、いわばアリバイのような形でつくってしまったというところが私には危惧されるところでございまして、先ほど私が順序が逆だと申しましたのは、いわゆる県の単位、県に保険者としての役割を期待するのか、もっと大きなのか。

 山本参考人はいい言葉を使われましたが、国単位の組織、これになぞらえて言えば、県単位の組織というものと県がやるということはかなり違ってまいります。つまり、県がやるということになれば、いわゆる住民の信託を受けた統治団体として住民に責任を負っていくということになりますし、県単位でということであれば、広域連合であれあるいは国保連合会の改組であれ、違ったタイプの組織が可能なのでございます。

 そういうことの議論がきちっとなされないままに、とりあえず三位一体改革で厚生省に求められた補助負担金の額をはじき出すというところに今回のそもそもの出発点の間違いがあったのではないかというふうに私は考えているのでございます。

 以上でございます。

五島委員 まさにそこのところが大事な問題だと思います。山本参考人もおっしゃいましたけれども、国保という問題を考えた場合に、保険者を県にするということはあり得ないだろう。もし県一本にして県を保険者にした場合には、私は、国保の徴収という問題を考えても、明らかに未納者が今よりもふえてしまって、ますます厳しいものになるだろう。そういう意味においては、国保の保険者は基礎自治体が中心にならざるを得ないということは当然だろうと思います。

 しかし、同時に、例えば医療配置、医療計画等々が県の責任であるように、この国保の医療費の消費といいますか使われ方については、やはり県の政策が非常に大きく影響します。また、北参考人が指摘されたように、疾病の予防や介護予防、これはそれぞれ別の部分もありながら、先ほど河内山さんからもお話ありましたように、例えばお年をとってからの骨折の防止ということになって、七十歳になってから骨粗鬆症に対してサプリメントを飲ませたって役に立たない。やはり妊娠、出産という時期に対する指導が大事でしょうし、また、糖尿病の問題につきましても、二十代で境界値ぐらいの糖尿病でも、そのときはいいでしょう、しかし、必ずこれが六十代、七十代になってくると、やはりさまざまな疾病の原因になってくるということを考えてくると、介護予防と疾病予防というのも継続的な部分もたくさんあります。

 そういうふうなものをきちっと県が責任を持ってやっていくとした場合には、今度は、単に仕事をしただけでなくて、そのことの結果、国保の財政がどのようになっていっているのか。

 医療配置一つとってみても、今各病院が、ちょっと大きい病院ができますと、うちも腎臓の移植をしたい、透析をしたいなんというようなことが出てまいります。本当にそういうものが必要なのかどうか、県全体で医療の配置を考える、あるいは子供の医療について言えば、もっと身近なところで救急体制をつくっていく。そういうふうなことが結果において国保の医療費の削減に、あるいは削減までいかないとしても、その増加に歯どめがかけられるかどうか、そういうことを県自身が検証していきながら、そのことで結果として医療費がふえていった場合には、県そのものがこの調整金についてもふやしていかざるを得ない、これが保険者の立場なんだろう。そういう立場として県も保険者になってもらうということについては、私は大賛成です。

 しかし、そういう前提も何も、まだ議論も煮詰まっていないところでやられて、今まで国から来ていたものが県から来るのかな、来ない自治体は、あの知事、へぼだからということになってしまうのでは、大変な問題になるというふうに思うわけでございます。

 そういう意味では、先ほど辻山参考人の方からおっしゃったんですが、確かに地方分権は大事だ、大きな流れだと思いますが、しかし、医療の問題について言えば、医療の中における地方分権と、それから集権的な政策というのとどうなのか、どちらが国民にとって役に立つのか。集権的にやりながらも、その中で地方の実情に合わせた形の医療の仕組みがあるのかないのか、そのあたりがやはり議論されないままこのようなかじり取りを起こされたことに対して、私は大変残念であるというふうに思っております。

 時間が参りましたので、この点について、現職の首長さんもおいでになりますので御意見は申しませんが、私の意見とさせていただきまして、質問を終わります。ありがとうございました。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうは、皆さんからの御意見と提案、大変貴重なものとして受けとめました。特に、きょうのお話は、国民健康保険をめぐる問題におのずと焦点が置かれたんですけれども、やはりそれは、危機的な状況があるという認識と同時に、国や、地方といいましても都道府県それから市町村、それぞれがどういう仕事をすべきなのかという皆さんの本当に現場からの問題意識から、きょうのような五人の方々の陳述になったと思うんです。

 私は、これから、意見陳述された順番にお一人ずつまずお聞きして、それから、残された時間の中で再度何点か聞きたいというふうに思うんです。

 まず、河内山参考人にお尋ねしたいんですけれども、今の国の財政調整交付金の交付のやり方の中に、保険料の収納率によって減額措置をとるということをやりますね。それで、皆さん方の、全国市長会の文書を見ましても、保険料収納割合による減額措置を撤廃しなさいという声が繰り返し出てくるんですけれども、この点については、どういうお考えと実態があるというふうにごらんになっていますか。

河内山参考人 全国市長会でもいろいろな議論がございます。

 収納率の問題というのは、本当に、多分、きょうお二人、町長さんがお越しでございますが、町長さん方の方が私どもよりも収納率がいいんだろうと思います。柳井市の事例だけ申し上げますと、平成六年、九五・七〇%、これは都市部、市の中ではさほど悪くない方だと思いますが、決して威張れる数字じゃございません。十五年でいうと九四・一四%、余り減っておりませんので我々としては安心もしているんですが。

 やはり、本人の責めによらない、先ほど冒頭の意見陳述で申し上げましたが、リストラによって無所得者になられたとか、あるいは、例えば高齢者のおひとりの世帯で、以前は私どもも、いわゆる所得割だけではなくて、固定資産税に加えて国保の方でも保険税の中に資産割というのを設けておりましたので、おひとり暮らしでフローはないけれどもストックはたくさんおありになる、こういう方から徴収するのはなかなか大変だ。これは、決して本人が悪いわけでもないし、また自治体の収納の仕方が悪いわけでもないというのがたくさんありますので、そういった点は、やはり実態というものをよくよく見ていただきたいというのが現場の当事者の声だと思います。

 しかしながら、そういう制度、仕組みというのは、いろいろなことを盛り込みませんと、フリーライダーとは言いませんけれども、別に努力しようがすまいがということもまた、これは決して社会正義上許されない。なかなかこれは、私どもも頭が痛い。これは今度は、対市民的にも我々も同じことを考えるわけですね。全く何のペナルティーもなければ、世の中というのはやはりやすきに流れる。しかしながら、余りにも厳しいペナルティーを科すということは、実情を見ると、本当に本人の責めによらないものもある。その辺の兼ね合いではないかなと思っていまして、私もちょっと不勉強でございまして、両方必要だというふうに考えております。

山口(富)委員 続いて、山本参考人にお尋ねいたしますが、今、収納率の問題でも、御本人の事情、責任に負わせられない問題があるというので、リストラという名前も上がりました。私は、皆さん方のお仕事の中で、本当に、今度は、個々人でなくて市町村の責任に帰せない問題も多々あると思うんです。

 例えば、私は、九州、特に福岡の場合ですと、石炭六法の廃止という問題が、非常に地方の自治体にとってショッキングな事件だったと思うんです。この点で、一体、国のこういうやり方が皆さん方の地方行政の中でどういう影響を与えたのか、これを幾つか示していただければと思うんです。

山本参考人 石炭六法が与えた影響というのは大変大きなものでございます。

 ただ当面こういう対策をやればいいということだけで石炭六法はずっと対策を行ってまいりましたが、ところが、石炭六法が廃止になりましてから今日、さらに残っているのは何かというと、高齢者なんです。いわゆる石炭で働いていた人たちが全部、転職をしなかったんです、そのままその現住所に残っていったんです。

 それはなぜ残ったかといいますと、失業対策事業を、特殊なものを行ってきたからです。例えば開発就労事業、特定地域開発就労事業、それから一般失対もございました。それから緊急就労事業、こういった四つの就労事業を実施してきましたから、その就労事業に皆さんが就労して生活をしてきたものですから、それが終わってしまいました。全部そんなものはなくなりまして、今はまだ特開は実施をしておりますけれども、それ以外のものはほとんどなくなってしまいましたから、その間、だんだんだんだん、五十歳の者は六十歳になり、そして七十歳になり、八十歳になってきました。こういう人たちが今ずっと残っているわけです。しかも、残る方がまた大変変則でございまして、夫婦で残ればいいんですが、片一方だけが残っていく変則な残り方になっているんです。ですから、産炭地は介護保険料が、給付費が一番高いんです。

 だから、これは私に言わせると石炭後遺症である。ここまでの対策を国がちゃんと考えていたとするならば、私はこういう現象は出なかったであろうと。言いかえますと、人に対する対策というのが手薄であった、こういうことなんです。だから、いつかはこの就労事業で働いていても就労できなくなることはわかり切っているわけですから、その後のことを考えなかったのは、これは、私どもも含めて、みんなやはりそこらあたりは手落ちであったというふうに思うんです。

 だから、そういう人たちがたくさん残っておりまして、私よりもうんと年上で、もう八十を超えている人たちがいっぱいおりますが、そういう皆さんたちが生活保護と介護保険と両方を受けて生活をしているというのが現状なんです。だから、石炭産業の影響というのはいまだに解消していないというのが実態でございます。

 以上です。

山口(富)委員 私は、今、河内山さんと山本さんの話を聞きまして、個々の国民の実態を知ると同時に、地方の政治が抱えている実態を踏まえた国保改革が必要だなということを痛感いたしました。

 では、続いて北参考人にお尋ねいたしますが、きょうも随分、宮城県知事の浅野さんの浅野試案が問題になりました。今度の政府の提案は、都道府県負担を取り入れるというわけですけれども、その場合、一つが調整金ということで、これはきょう随分議論になりました。そしてもう一つは、保険基盤安定制度という低所得者対策の問題で、これを突然国が引き揚げて、県負担を一気に上げるわけですね。

 浅野試案を読みますと、こういうふうに言っているんです。「今回の改革による保険基盤安定制度の都道府県の負担増は、都道府県の役割や権限の強化とは無縁の、単に国庫分負担を転嫁したものであり、従来の枠組みに戻すべきである。」

 私は、これは当事者からの本当に厳しい逆提案だと思うんですが、北参考人は、この点についてはどういうお考えをお持ちでしょうか。

北参考人 今のお話でございますが、保険基盤安定資金というのは、非常に貴重な、私どもにとりましても大切な資金でございます。

 したがいまして、これがどうなるかということは我々にとって重大な関心でありますが、今言いましたように、これを都道府県に転嫁するということに相なっておりますけれども、そういった中で、やはり国がいわゆる基盤安定のためにどれだけの、交付税を含めて、交付金が確実に都道府県に届くかどうか、私はそのことが重大な関心です。

 したがいまして、それがなければ基盤安定基金に大変影響を及ぼしてくるだろう、住民生活に大きな影響を及ぼす、そのことを前提にして私どもは考えなければいけないだろう。そういうふうに国はすべきである、こういうふうに考えております。

 以上でございます。

山口(富)委員 本来の趣旨に基づいてこの制度がきちんと安定的に運用されるように、制度設計をよく見なさいという御意見だと思うんです。

 そうしますと、辻山参考人に続けてお尋ねしますけれども、先ほど順序が逆だったというお話がありました。

 それで、ちょっと二つ示していただきたいんですが、一つは、社会保障の分野で国が基本的に果たす役割は一体何なのかということを示していただきたいのです。それからもう一つは、分権論が入ってきますと話がなかなか混雑してきますけれども、国のそういう仕事と、地方が果たすべき役割と、地方というのはこの場合県と市町村を分けなければいけないかもしれませんけれども、国と地方という、社会保障の分野で果たすべき役割を考えたときに、どこを基本の視点に置いておく必要があるのか、その両面から示していただけないでしょうか。

辻山参考人 私の最初の陳述でも申し上げたのですけれども、そこが一番難しいところで、社会保障の分野で国民に対してきちっと責任を負っていくというときに、それは必ず分権でなければならないのかということが提起されているなと思っていまして、社会保障をどのようにして国民に保障するかといえば、憲法の要請は、恐らく中央政府、県のレベル、市町村のレベル、それぞれが役割を出し合って、その三つの、いわば今はやりの言葉で言えば、三つのレベルの、政府の総和として保障していく、ユニバーサルに保障していくということが期待されている。

 問題は、では、国は何か、都道府県は何か。これは切れるかどうか大変難しいのですが、そもそも県である以上というような定義が難しい。これはなぜかといいますと、国の国会において事務配分が決定されるという日本の仕組みにあります。県や市町村が自分でこの仕事はやりますといって控除しておいて、残ったものを国がやりますという仕組みであれば、それぞれの団体の責任で仕事を果たしていく、その領域が確定できるのでありますが、そうはなっていない。恐らく、御質問の趣旨に沿って言えば、社会保障についての国の役割はやはり基金としての政府だと思います。要するに、安定的に運用できる基金の配置ということだろう。

 それに引きかえて、では都道府県、市町村は何か。都道府県が大変難しいと私は思っておりますが、少なくとも住民に一番近い市町村は、社会保障を下支えする条件の醸成、きょう、たくさん参考人の方からいろいろ言われました。食生活の改善だとか、もっとみんなで楽しく運動して健康になろうとか、あるいは被保険者資格のない方をどうやって救済するかとかいうようなこと、これはやはり住民に一番近いところが担当していくということになるのでしょう。

 それにあわせて、先ほど御指摘があった、みんなで合意して制度を運用していくという意味では、どこのレベルが最もこの保険料を集めやすいかという問題、これは信頼の問題だろうと思っていますが、そういうことを基軸にしながら考えていくしかない。しかもその場合には、もしかすると、ある地方では県にみんなゆだねるけれども、あるところは市町村の連合でやるというような選択制があってもいいかもしれないと考えております。

 恐らく正確にお答えしていないかもしれませんが、そんなところでございます。

山口(富)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、室生参考人にお尋ねいたしますけれども、実は、私、きょう、この七枚の資料をいただきまして、大変感心させられたのです。

 といいますのは、例えば二枚目の「保険料と平均所得額の比率の変遷」というところの、この資料の読み方として、室生参考人は、一九八四年の国庫負担率を引き下げたという問題が、平均所得額に対して保険料が占める割合が、五%以内から一気に八%台まで上がってきたということとしてごらんになりました。

 それからもう一点、二〇〇〇年の問題で、資格書の交付や短期の証明書ですね、この問題でも、国の義務規定というものがいかなる影響を与えたのか。この数字を見て、私もいささか、想像以上に、これはもう本当に劇的な変化だなと。国は盛んに劇的変化が起こると激変緩和措置をとるという話をしますけれども、ここにこそとるべきだなというのを改めて感じました。そういう意味で、国保の問題での国の政治の責任ということを痛感したのですけれども。

 一点、お尋ねしたいのは、今辻山参考人からも憲法の話が出ましたけれども、きょうの意見の表明の中でも、憲法二十五条の話が出ました。開業医をやられている立場から、実際に医療現場で仕事をなさるときに、やはり憲法に基づいてもっと仕事を国はやってほしいな、そういうお気持ちをかなりお持ちなのでしょうか。

室生参考人 今の御指摘の件ですけれども、人の命は地球より重いということが言われております。それから、日本の戦後の社会、これはやはり平和と住民の生活の安定、あるいは人権の尊重、こういうものが中心になっておったと思うのですね。

 そういう意味で、これを規定したのが憲法でございますし、特に生活の安定あるいは保健の問題、これは二十五条の、社会保障をやっていく上での基本的な条項として設定されたわけで、そういう意味で、先ほど山口議員から御指摘がありました国保における国庫負担が下げられた八四年ですか、このときから保険料率が上がってきたという点につきまして、これは保険料率が上がる場合も、いろいろ、加入者の経済状況によって違いまして、いろいろ地方自治体の御努力等もありまして、九〇%を超えた納付率になっておりますが、実は世帯でいいますと、二〇%近くが滞納者になっておる。

 これは、ずっと低所得者の方に負担が重くなっておるために、先ほど私も申しましたように、月々十五万円程度の収入なのに、その一割近くが保険料で、一万二千円ぐらいは納めなければいかぬ。国保料だけではなくて、ほかのいろいろな納めなければいかぬものもありますし、家賃その他もございますから、これは非常な負担になっておる。ただ、先ほど申しましたように、納めたくても納められない方が非常に、二〇%もある。

 こういうことは、憲法二十五条の精神に即して言えば、これは全く実践されていない。これはまさに国がそういう点での、憲法を守るということを無視したといいますか、軽視したといいますか、実際にはそういうふうになっておる、こういうふうに思います。

 それからもう一つ、いわゆる滞納者に対する、保険証を発行しないことを義務化したということ、これは大変なことでございまして、悪質滞納者については当然それなりのペナルティーなりはやらなければいかぬわけですが、納めたくても納められない、先ほど私出しました二つばかりの例もすべてそういうことに入りまして、これも全く二十五条の精神に反したもので、こういう反したことは即刻やめていただきたいと思っておりますし、憲法の精神に基づいた国の施策をやっていただきたいと強く感じております。

 以上であります。

山口(富)委員 持ち時間が限られてまいりましたので、五人の方皆さんにまず一問ずつお聞きしたんですが、最後になるかもしれませんが、今度は逆から進んでまいりますので。

 室生参考人にお尋ねしたいんですけれども、きょうは国保の問題を中心に、この影響がどう出るかというお話だったんですが、いわゆる三位一体改革とのかかわりで、医療分野でこれがやられた場合に危惧される点はどういう点があるのか、示していただきたいと思います。

室生参考人 行政論とか財政論というのは私よく存じませんので、三位一体改革の中で、実際、私先ほど申し述べましたが、地方分権とかそういうことも非常に重要でございますが、分権と同時に、地方がそれぞれの権利を持つという強化しなければいかぬという側面と、同時に、国全体に対する国の責任というものをやはりきちっと果たしながらやっていただきたい。

 そういう意味で、三位一体改革の中で、先ほど申し述べました、国の負担金が四〇%から三六%に減少するとか、あるいは調整金ですか、これも一〇%から九%に減るとか、こういうような、地方がやれるような財政的裏づけを全くせずに、むしろそれを削減してやるということには、非常に私は大きな矛盾を感じております。

 以上であります。

山口(富)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 きょう御出席の五人の参考人の皆様には、日々国民の生活に最も身近で、喜びも悲しみも、また老いも病もともに支え生きてこられる町村会長の皆さん、あるいはまた、長年患者さんを診て、ずっと、きんさん、ぎんさんのお話もありましたが、長く人の老いとおつき合いの室生先生、あるいは、今の分権論を学識経験者の立場から鋭く問題点を指摘いただきました辻山先生、本当に御苦労さまでございます。私も、与えられた時間の許す限り、五人の方それぞれに御質問をいたしまして、また許されればもう一めぐりいきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

 まず、河内山先生でしょうか、国民健康保険対策特別委員会の委員長もなさって、そして政策委員会の方にもおかかわりだということで、もしかして私の勝手な理解だったらお許しいただきたいのですが、私は、この国保財政の問題が論じられますときに、もう一方で、医療というのは医療保険制度と医療提供体制とこれは両輪で回っておるもので、特に今、医療提供体制についても実はドラスチックに変容している。医師が足りないというところ、あるいは病院が消えちゃうというところ。

 実は、私が国会議員になりましてからまだ五年なのですが、国会議員になってしょっちゅうお声がかかるのは、うちの町でお医者さんがいなくなっちゃうんだけれどもどうしてくれると。私もそんなこと言われたってどうしようもないのだけれども、でもすごくそういうお声が、多く実情を訴えてこられる方がある。

 私がきょう河内山さんにぜひ伺いたいのは、国保も関連して、国保中央会で病院を全国にお持ちであるのだと思うのですが、私が十分理解していないのでごめんなさい、先ほど北さんがお述べくださいましたように、国保町立病院というんですか、そこと連携、ネットワークが組めていってうまくいっているような病院と、そうではなくて、スタッフィング、要するに医師の手配とか等々が大変で、なかなか運営が難しいという状態のような場所、病院等々の現状はどのようになっておるのか。突然聞いて恐縮ですが、もし政策的論議の中でおありであれば、教えていただけましょうか。

河内山参考人 先生御指摘の国保の関係の医療機関というのは国保の直診施設のことかと存じますが、全く私も不勉強でございまして、山口県内のことであれば若干わかりますが、全国的な状況はよくわかりません。

 山口県内は、先ほど少し申し上げましたが、大体バランスがとれた、都市が適当にばらついているという関係で、市立の病院もあれば、先生御指摘の国保の直診の施設もあれば、いろいろとございます。離島、山間はやはり自治医科大学の卒業生の方々にも御協力をいただいて、先生に勤めてもらっているというようなこともございますが、幸いにして、大体、山口県も最近では、車で走れば一時間ということではなくて三十分、四十分、そんなところに適切な診療施設があるかなというような状況でございまして、これは全国津々浦々そうではないことは十分承知しておりますが、恵まれた県だなというふうに思っております。

 それが先ほど御質問ございました医療費の問題と、これはなかなかはっきりは言えませんけれども、表裏一体の関係にあるのではなかろうかというふうに考えております。

阿部委員 ありがとうございます。

 先ほど、おられる山口県のお話は伺いましたので、全国そうであってほしいなと思う次第であります。

 続いて、山本参考人にお伺いいたしますが、私は、この委員会でも特に福岡県のことは取り上げさせていただいて、炭鉱離職者の問題等々、その方たちが高齢化し、当然、病を抱え医療費も高くなるというところで、大変に国保の運営も御苦労をなさりながら、しかしずっと頑張ってこられた方として、お名前は拝聴しておりました。

 先ほど、お話を伺う中で、いわゆる広域化の問題で、参考人のところでも広域化なさったことと思いますが、事務量はそれでいって軽減いたしますことを前向きと評価したい。そして、もしも何か問題となるところがあるとすると、今度広域化することによって、参加意識というのか、責任意識というのか、御近所の底力というのか、やはりみんなで支えないと同じ状況を切り抜けられないという意識が、これがどこまでウイングを広げれば共有できるかというところは、私はこれはまだちょっとなかなか難しいかなと思うのです。

 ただ、収納率だけで語るものではありませんが、広域化したことによって、例えば収納率そのものはどう好転するのか。運営基盤が安定すればそれもよい方向に出るのか、それとも、もう現下の収納率というのは、はっきり言えば努力しても払えないという状態の方が多くなっておられて、その辺が苦しいところに差しかかっておるのか、このあたりはいかがでしょうか。

山本参考人 収納率が下がっていくというところは、どうしても、さっき申し上げたように石炭六法の関係の地域がやはり収納率が低い、こういうことです。

 私のところを申し上げますと、田川というところでして、十カ市町村ございますが、これは全部石炭で今まで栄えてきた市町村でございますが、なくなったその後はもうずっと衰退を続けていて、もうとうとういまだに立ち上がることのできない厳しい状況下になっております。ですから、収納率は非常に低いと思います。

 先ほども私申し上げましたんですけれども、収納率は大体九〇%ぐらいを維持しておかないと運営上困るということはもう御承知のことだと思いますが、私どものところは九〇%に至らないんです。ひどいところは八二%ぐらいのところもございます。そういう町もございます。ですから、八四、五%を守るのがやっとという状況でございますから、この収納率をどうして高めていくかということが非常に大きな課題に今なっておるところです。

 そこで、ついでですが、申し上げておきたいんですが、例えば、大きくしたからといって、大きいところ一カ所で納入をしていただくというようなことをやっても効果は上がりません。これはやはり小さいところ、言うならば、十カ市町村が一つになって運営をしていく、そうすると、徴収も十カ市町村が一つでやっていくということになると、徴収はなかなかうまくいきません。ですから、やはり、それを組織するそれぞれの市町村が個別に徴収だけをする、運営は十カ市町村一本でやるというやり方が効率的であるというふうに思っております。

 そのように考えておりますので、申し上げておきます。

阿部委員 ありがとうございます。

 北参考人には、子供のことから働く者の健康管理まで御意見を披瀝いただきまして、大変参考になって、ありがとう存じます。

 私は、先ほど河内山参考人にも伺いましたが、医療提供体制というものにとても不安を持っておりまして、北海道は、民主党にもおられます、名物知事と申しては失礼ですが、横路前知事もおられて、すごく頑張ってこられました。でも逆に、ここのところ、例えば名義貸し問題とかで問題になったり、医師をどう配置するかというあたりは、これはもう市町村だけでは何ともならない。そして、県も尽力しておられてもなかなか難しい。

 北参考人のお話の中で、県の役割は介護予防、疾病予防に計画的なものを提供していただく、ここも非常に重要ですし、勤労者とそれから国保にお入りの方の間での統一的なものもできていくというのはとてもいいことと思いますが、現下の市町村側から見た医師不足について、北参考人のところでは上手にネットワーク化されているということでありましたが、そのあたりで何か国の政治に望まれるものがあったら、お願いいたします。

北参考人 阿部先生の御質問でございますが、大変重要な、今、北海道もそうでございまして、都市は別でございましょうけれども、地方にとって医師の不足というのは深刻な状況でございます。

 私は、総務省の関係で委員に選ばれまして、私なりの意見を相当言いました。その中で、今言った、北海道などもそうですが、名義貸しなどもありまして、地方にとりましたら、医師がいないということは市町村長も成り立たないんです、もう選挙で必ず負けるんです、お医者さんが来ないということ、不足になりますと。そして、かてて加えて、御存じのとおり、医師の標準数というのがありまして、標欠というのがあります。このペナルティーが非常に大きいということで、こういったことを含め合わせますと、市町村行政の、地域医療を守るための大変難しい課題であることは事実でございます。

 ただしかし、私の町の例を言って大変申しわけないんですが、先ほどもちょっと申し上げましたように、私どもは病診連携体系をつくらせていただきました。開業医と町立国保病院が一体になって、地域医療、開業医の患者さんに、いわゆるかかりつけ医の患者さんに病院を開放している。ベッド数をきちっと、九十六あるうちは十二床を開放している、十五人になっても十六人になっても我々は共同でやっている、これが非常に大きなメリットだと思うんです。同時に、開業医も入院施設をやめまして、そういうふうにしました。

 同時に、あわせて言えることは、高度医療機器を共同で使っている。そうすると、検査体制も共同で開業医とともどもやっているということが、先ほど言った医療費の二重的なものは避けることができるということはあります。

 ただ、こういう取り組みが、一つの医師養成といいますか、今、医師の新臨床研修医が出ておりますけれども、医師についても確保しやすいと言ったら語弊がございますけれども、私のところは、標欠でいえば一〇〇%来ていただいております、自分が手を挙げて来ている。そういう、やはり地域地域で魅力的な、知恵と工夫と発想の転換をしながら病院運営をしていくことも、大切なことの一つだと思います。

 ただしかし、その中で、今ありましたように、全部が全部そうなるかといいますと、本当はやればできないことはないんですが、北海道の場合も、いわゆる中核病院を、センター病院をきちっと位置づけながら、そしてその周辺病院との医師の連携を図っていく。私どもも、隣町の砂川市立病院という総合病院、センター病院がある。ここでは私ども、病病連携をやっております。ということはどういうことかといいますと、急性期だとか高度医療というのはそこの病院に、プライマリーケアは私ども町立国保病院でやります。慢性期あるいは介護型、医療系、介護系については、私どもの町立国保病院が担う。

 そういう連携の中で、医師の確保対策をきちっと決めながら、そして医師が研究できるように、こういうこともそれぞれの地域で発想していかなければいけないだろうと思いますし、同時に、中核病院を育てて、そして周辺病院を、その連携システムをつくるために、国がそのことについて、やはり対策協議について、本格的な支援対策ということをやらなきゃいけません。

 医師確保についても、やはり地域枠を広げるだとか、それから、私の北海道は三医育大学というのがあります、この三医育大学が連携して窓口を一つにするだとか、こういったことを国あるいは都道府県が連携し合いながら、地域医療を守るために、そして、保健と医療と福祉、介護、一体的にするために、国がそういった支援をすることが大切でないかな、基本的にはそういう思いをいたしております。

 以上でございます。

阿部委員 ありがとうございます。

 続いて辻山参考人にお伺いいたします。

 先ほど来、今回のこの三位一体という名で行われているところの、国保の県への調整機能の移管という形では、なかなか、真実、三位一体なるものにはなっていないのではないかという御指摘でありましたが、逆に、どのような形であれば、あるいは、この医療というようなものにおいての、さっき言っためり張り、中央集権的である部分と分権的である部分の中でのお話もありましたが、さて、県の役割とはどのように考えたらよいかというところで、お願いいたします。

辻山参考人 この国保制度というのは、日本のさまざまな制度の中でも珍しく、俗にヨーロッパで言われる補完性の原理で組み立っているものだと考えております。個人がいて、個人では支え切れない疾病だとか老いだとかといったことについて共同体がまず支える。共同体の力が今低下しておりますので、当然、最も身近な市町村がそれを支える。その市町村ででき切れない部分は都道府県がというふうに補完をしていく。最終的に国が全国民に対する責任という形で補完する。

 こういう考え方からいいますと、現在の、都道府県の補完というところはほとんどなくやられてきているというところが一つの問題だとは思います。

 よく言われるのですが、都道府県行政が、あるいは財政が厳しくなったら、市町村に仕事を押しつけて楽になるとかいうような、県と市町村とがお互いに押しつけ合うような関係も一部にありまして、ところが、住んでいる人間にとってみれば、市町村の住民であると同時に県民でもあるわけでございまして、県がその一人一人にどのような役割を果たすかと考えれば、市町村ででき切れない部分、例えば財政的な負担であるとかというものを補完するというのは、ごく当然のことだと考えています。

 どの程度の補完を県に求めるかということが全体の設計で問われてくる、こういうことになるんだろうと思っています。

 以上です。

阿部委員 では、最後に室生参考人にお願いいたします。

 室生先生は、もしかして昭和三十六年の国民皆保険制度の前からお医者様でいらしたかどうか、私はちょっとわからないのですが、長い歴史をごらんになって、先生のデータの中での、非常に収納率の低下、あるいは、資格証明書というのは出てもなかなか窓口負担が高くてかかれないというような状況を見ますと、せっかく日本が得た国民皆保険制度、特に健康保険制度は、戦前に富国強兵の中で組合というか勤労者に対してしかれましたが、国民健康保険制度は、先ほどの辻山先生のお話のように補完性と、もう本当に最後の受け皿的なところで医療の安全を支えてきたものだと思うのです。

 この間の先生の長い臨床の中で、今の国保の状況をどのように見ておられるかということを最後に、済みません、時間がなくなって、お願いします。

室生参考人 私は三十年に医学部を卒業したんですが、当時はインターンがございましたので、三十一年から正式な医師として仕事をしております。

 最初、私が三十一年に医師になった当時、名古屋市の周辺部で勤務医として医療のお手伝いをしておったわけですが、この地域は、名古屋市は国民健康保険はまだなかったんです、三十一年当時は。そして、社会保険で、地域の企業に勤めてみえる方はありましたが、半農半工地帯でございまして、農家の方は国民健保がない。だから、全額負担でありましたから、非常に受診率が悪い。それで、お見えになるとき少量のお金を持ってきてかかる、だからなかなかめったにかかれないというような状況がございました。

 昭和三十六年に皆保険になりまして、名古屋市にも国民健保ができました。それで非常に受診率が上がって、我々としても仕事がしやすくなりました。

 ただ、当時は、社会保険の家族も五割負担でございましたし、それから国民健康保険の方も、名古屋市の場合には世帯主が八割給付、それから家族構成員は五割給付でございましたが、やはり五割給付しかない社会保険の家族の方、特に御老人ですね、こういう方は高血圧その他の病気がありましても中断率が非常に高かった。年金が入りますとお見えになる、年金がなくなって二月ほどすると、いつの間にか中断される、こういう繰り返しが多くて、そのうちに脳卒中で倒れられた方や心筋梗塞で亡くなられた方も、私、たくさん見ました。

 それが、給付率が改善されまして、今、家族も七割になりました。それから保険の本人の方は、かつては無料、負担がございませんでしたね、これが給付率の変動によって、現状でいいますと、健康保険本人の方も三割になったために、非常に受診率が落ち、中断率も高まっておるというのが現状でございます。

 そういう意味で、国民健康保険が全国に普及されたということは非常によかったし、その給付率が三十六年当時よりも上がってきたということは、非常に日本の国民の健康の保持のためによかった。これはどうしても保持しなきゃいけないし、それから、先ほど多くの参考人の先生方もおっしゃいましたが、会社をやめて最後に行き着くのは国民健康保険であり介護保険、こういうことでございますから、この点を十分に充実していかないと、これは今後の日本の安心した社会という点では非常に危惧する形になっていくんじゃないかと思って、どうしても国民健康保険は、国を先頭にして充実したものとして守っていただきたいと思っています。

 以上であります。

阿部委員 ありがとうございました。

鴨下委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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