衆議院

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第11号 平成17年3月30日(水曜日)

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平成十七年三月三十日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    加藤 勝信君

      上川 陽子君    川上 義博君

      木村 義雄君    小西  理君

      近藤 基彦君    左藤  章君

      菅原 一秀君    高木  毅君

      原田 令嗣君    松島みどり君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      石毛えい子君    泉  健太君

      泉  房穂君    内山  晃君

      大島  敦君    小林千代美君

      城島 正光君    園田 康博君

      中根 康浩君    橋本 清仁君

      本多 平直君    水島 広子君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      高木美智代君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   財務副大臣        上田  勇君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    竹田 正樹君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          尾山眞之助君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 太田 俊明君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           高橋 直人君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総合観光政策審議官)     鷲頭  誠君

   参考人

   (ハンセン病問題に関する検証会議座長)      金平 輝子君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  中山 泰秀君     加藤 勝信君

  福井  照君     近藤 基彦君

  三ッ林隆志君     高木  毅君

  吉野 正芳君     松島みどり君

  渡辺 具能君     川上 義博君

  藤田 一枝君     本多 平直君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     中山 泰秀君

  川上 義博君     左藤  章君

  近藤 基彦君     福井  照君

  高木  毅君     三ッ林隆志君

  松島みどり君     吉野 正芳君

  本多 平直君     藤田 一枝君

同日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     渡辺 具能君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人としてハンセン病問題に関する検証会議座長金平輝子君、食品安全委員会委員長寺田雅昭君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として財務省大臣官房審議官加藤治彦君、国税庁課税部長竹田正樹君、文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官尾山眞之助君、厚生労働省大臣官房審議官大槻勝啓君、医政局長岩尾總一郎君、健康局長田中慶司君、医薬食品局長阿曽沼慎司君、雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君、社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君、保険局長水田邦雄君、政策統括官太田俊明君、社会保険庁運営部長青柳親房君、農林水産省大臣官房審議官高橋直人君、国土交通省大臣官房総合観光政策審議官鷲頭誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。御法川信英君。

御法川委員 おはようございます。自由民主党の御法川でございます。よろしくお願いいたします。

 まず冒頭、先日また起きましたインドネシア沖の地震ですけれども、早速政府の方としては災害派遣をしているということですが、引き続き、災害復興支援に対して政府の積極的な関与をよろしくお願いしたい、こういうふうに思っております。

 最初に、これは昨今、テレビ、新聞等でも話題になって、我々もよく聞く話でございますが、ライブドアによるニッポン放送株の敵対的買収という件でございます。

 これは、我々の厚生労働委員会だけでなくて、いろいろなところで話をされているわけでございます。現在国会に提出されている会社法案に対しても、外資による日本企業の買収が促進される、このことについてどうかという懸念が各所で示されているということだと思いますが、それに伴って、投資ファンド会社が特定の会社の株式を大量に取得してやっていく、そういうような動きも今見受けられるようになってきた、そういう状況だと思います。こういう企業買収に対して、日本企業としても、これはやはりちょっと準備不足の面があるというようなことがあると思いますけれども、早急にこういうことを念頭にした対策を講じていく必要があるんだろう、これは企業ベースでももちろんこういう必要があるとは思います。

 それと同時に、こういう企業買収のしわ寄せがその企業で働く労働者の方々にもたらされる、そういう懸念があるんじゃないかというふうに考えております。

 現に、これはもう報道されている件なんですけれども、東急観光という会社がございますけれども、この東急観光とそこの労働組合との間の労使紛争、これが今報道されております。アクティブ・インベストメント・パートナーズという株式会社、AIPという投資ファンド会社がありまして、そこが東急観光さんの株式をかなり大量に取得して、そこから起こってきた、そういう件でございます。

 この事案に関しましては、現在、東京都の労働委員会の方で審理が進められているということでございますので、当然、政府としては、個別具体的な案件についてどうだという話はできないというふうに思いますけれども、この件に限らず、これからこういう案件が多数出てくる可能性、おそれがある、また、実際にもうかなりの数こういうことがあるのではないか、そういう懸念もございます。

 そこで、日本の企業が健全に発展していくためには、その基盤として、やはり働く人たちと使う人たち、労使の健全な関係が築かれ、そしてそれが損なわれないように、政府としても何らかの対策を講ずる必要があるのではないかと思いますけれども、この件についての御所見を伺えますでしょうか。

西副大臣 お答え申し上げます。

 ただいま委員の方から、東急観光を例に出されて、これは委員がおっしゃられますように、東京都の労働委員会にただいま係属中という案件でございますが、御指摘のようなことがございました。

 委員からお話がありましたように、そういう事情もございまして、このことに関して私どもからただいまどうこうということは申し上げられませんけれども、御指摘のとおり、最近話題になっております企業買収につきましては、労働者にとってもこれは大変大きな関心事であるし、また、個別具体の問題もあろうかと思います。このような場合であっても、健全な労使関係が維持されていく、また、そのことによって労働者の権利が不当に害されることのないような、そういう関係を維持するということは大変重要なことだというふうに考えております。

 このために、まず、私どもとしましては、最近の企業買収が労使関係に及ぼす影響等についてこれからしっかりと勉強してまいりたい、こう考えております。

御法川委員 敵対的企業買収というのは、十五年あるいは二十年前ぐらいにアメリカで非常にはやったといいますか、流行した現象でございますけれども、アメリカの方では今はもう鎮静化いたしまして、やはりそういうやり方というのは企業の健全な発展につながらないということで、修正が施されてきたという部分があるわけでございまして、そういう前例もありますので、ぜひよく御研究の上、政府としての対策を立てていただきたいな、そういうふうに思っております。

 次に、国立の病院、特にがんセンターについてなんですけれども、若干お話をさせていただきたい、そういうふうに思います。

 今、国立でやっている病院というのは全国に六つ、あとは、ハンセン病の療養所、これが十三カ所あるというふうに聞いております。国立で、政策医療としてこういう病院なり療養所を運営していくというのは、もちろんこれは国家が国家の意思として、そういうものに対して積極的に関与して、そして、がんであればできれば撲滅ということで進んでいきたい、そういう意思のあらわれでもあると思っております。

 個人的なことで大変恐縮でございますけれども、私の父、二年前に亡くなりましたが、胃がんでございまして、その際に、築地にあります国立がんセンターの方に非常にお世話になりました。

 そのときに、もう摘出はできないということで化学療法ということで、いわゆる抗がん剤をずっと服用しておったわけですけれども、二週間に一回ほど、担当の医師の方と面談というか問診をしていただくような形で通っておったわけでございます。私が毎回一緒に同行してやっておったんですが、もうとにかく、大盛況という言い方をしたら問題なんですけれども、本当に込んでいる。これは、外来だけでなくて入院の方も本当に混雑しているというのが、いつ行ってもそういう状況でございまして、そこで働いている皆さん、本当に大変なところなんだなということをそのころから思っておりました。外来の方に対して、病院で働いている方の数というのは本当に適正なのかなというような印象をちょっと受けていました。

 先般、たまたまそこで働いている看護師の方々とお話をする機会がありましたのですが、やはり大変勤務状況が過酷であるということで、なかなか有休なんかもとりにくい、年次休暇なんかもとりにくい状況にあるということでございました。今あそこは三交代でやっておりまして、日勤があって、あとは準夜という分け方があって、あとは夜勤というふうに、三交代で看護師の方々は働いていらっしゃる、そういうことでございます。

 準夜を一人ふやすだけでもかなり違うんだけどなという非常に具体的な話はあったんですけれども、もっと大きな話として、国立病院における労働状況の改善ということについて御所見をいただけますでしょうか。

西副大臣 お答え申し上げます。

 実は、先生のお話を聞きながら、私も家族がほぼ同じ時期に同じ病院にお世話になったこともあり、実情はほぼ把握しているところでございます。大変充実した医療を提供されているなという印象と、お一人お一人が本当に忙しい思いをされているなということは、私も実感をいたしております。

 決められた定員等がございますので、その範囲の中で一生懸命にやっていただいているということは事実でございますが、今後ともまた、その充実のために、医療提供体制、また高度医療の発展のために私どもも努力していきたいというふうに思っております。

御法川委員 今はとりわけ行財政改革ということで、公務員の数、こういうものはできるだけ減らしていこう、そういう政府の姿勢の中で今こういうふうに行政をやっていらっしゃるということは十分に理解をするわけでございますけれども、一方、国民のニーズのある部分に対しては、公務員であり、そういう方々の拡充もしていくという必要もやはり私はあると考えます。とりわけ、国立の病院ということで国を挙げて政策医療としてやっている分野に関しては、また定員の問題なんかも含めて、積極的にやっていっていただきたい、そういうふうに思いますけれども、もう一度御所見を伺えますでしょうか。

西副大臣 国が主体的に取り組んでいるいわば政策医療の分野につきまして、今後どういうことが適正なのか、定員を含めまして課題だとは思っておりますが、現状は、今は定員いっぱいいっぱいで運営をしていただいているということは事実でございまして、今後の課題だというふうに考えております。

御法川委員 ありがとうございます。引き続き積極的な御指導のほど、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、ちょっと全然話題は変わりますけれども、いわゆる中国残留邦人の皆様に関連した質問をさせていただきたい、そういうふうに思います。

 実は、きのう、これは私、後から聞いたら、今回は尾辻厚生労働大臣の肝いりで新たな施策を発表したということでございました。具体的には、政府では直接はないわけですけれども、政府が委託している財団法人中国残留孤児援護基金というところがありますが、ここが事業内容を拡大いたしまして、いわゆる残留邦人の方々が養父母を訪ねていく、そういうときの資金援助を今までは一回のみやっていたということなんですけれども、これを一回のみでなく二回目もそちらの方で資金を出す、そういうことでございます。また、もし養父母の方々、これは高齢な方々が非常に多いということでございまして、何か緊急の場合にあれば、利用回数の制限とかそういうものなく、優先的にそういう人たちに対して資金の提供をするということでございまして、非常にある意味画期的な拡充ではないかなと思って、私は大変いいことだな、そういうふうに思っているわけでございます。

 今、残留邦人の方、孤児あるいは婦人を含めると、平均年齢が大体六十代の半ばぐらいだと思います。そうしますと、六十年前の戦後のときからの計算ですので、その方たちのお父さん、お母さん、養父母の方々というと、はるかにその上をいっている、八十代あるいは九十代の方々が多いと思いますけれども、そこから計算すると、大体どのぐらいの方にこれが適用されることになるか、もしわかれば教えていただきたいと思います。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 中国養父母お見舞い訪中援助事業の拡充につきまして昨日発表させていただいたわけでございますけれども、この点について、対象となる養父母の数はどれぐらいかというお尋ねかと思います。

 この点につきましては、同じく月曜日に発表させていただきました中国帰国者生活実態調査の数字等も勘案いたしますと、およそ三百数十名程度ではなかろうかと推定をいたしております。

御法川委員 ありがとうございます。

 今、残留邦人の方というのは大体五千人超ぐらいのところのオーダーを聞いておりますけれども、そういうことを考えれば、五、六%の方にしか対応にならないと思いますけれども、非常に画期的な施策だと思いまして、(発言する者あり)まだまだこれからでございますけれども、その中でも少しでも前進しているということで高く評価をさせていただきたい、そういうふうに思います。

 それで、先般、厚生労働省の社会援護局の方から、中国帰国者生活実態調査の結果という冊子をいただきました。もう皆さんに、一般にお配りされているものだと思いますけれども、これは、今までもこういういろいろな調査をやっていらっしゃったと思いますけれども、今回は包括的に、要は帰国してから今までのところの総括的な調査をしていただいた、そういうことだと思います。いろいろな項目がございまして、例えば日本語の理解程度あるいは生活状況、いろいろなことについてかなり事細かく調査をしていただいたということだと思います。

 これを見ますと、総体的なことを言えば、帰国してよかったという方々が六割から七割ぐらいだったと思いますけれども、それはやはり、自分の国、祖国に帰ってきて生活することができたんだというその思いでよかったというふうにここにはありまして、これだけ見ていれば、ああよかったなで終わっちゃうような話なんです。

 しかしながら、私、去年、東京在住の残留の方々の実態調査を一緒にしまして、北区のあれはたしか都営住宅に住んでいらっしゃる方々数人といろいろなお話をさせていただきました。現実の生活の中で、来たのはよかったなと思いますけれども、しかし、いろいろな困難が皆さんあって、本当に大変な生活をしていらっしゃるということで、やはりこの残留邦人の方々に対しては政府のさらなる関与が必要ではないかと思いますけれども、この点についていかがでしょうか。

西副大臣 中国からの帰国者の皆さんの実態調査をさせていただきまして、先生御指摘のように、六、七割の皆さんが、帰ってきてよかったという結論をいただいておりますけれども、まだまだ言葉も、特に最近お帰りの皆さんは高齢でもいらっしゃいますし、まだ期間も短いということで、言葉そのものがやはり十分ではないというような事情もありまして、大変苦労を相変わらず強いられているというのが実態だと思います。

 厚生労働省としましては、このような事情にかんがみまして、平成十七年度から、医療、介護を必要とする方も、もう高齢ですからたくさんいらっしゃいまして、その人に自立支援通訳を派遣させていただいて、専門用語が多いものですから、きちっとお医者さんまたは介護の皆さんにつなげる、こういう事業拡充をさせていただいております。

 また、最近におきましては、帰国当初おおむね三年の支援ということでございましたが、それにとどまらず、中長期的に支援を継続的に行うということを方針といたしまして、平成十三年度から、中国帰国者支援・交流センター、これは東京、大阪、福岡に設置しておりますけれども、開設をいたしまして、日本語の習得の支援、それから地域交流等のお手伝いもさせていただいております。

 帰国者及びその家族に対する今後の生活支援につきましては、このセンターを核として中長期的な支援の充実を図るということが基本だというふうに考えておりまして、このたびの調査結果も勘案いたしまして、厚生労働省として今後の支援のあり方についてさらに検討してまいりたいと思っております。

御法川委員 ありがとうございます。

 今、西副大臣の方からもちょっとお話が出ましたけれども、中国帰国者支援・交流センター、こういうものをつくって、今そういうところを拠点としていろいろなことをやっていらっしゃるということで、非常にありがたいなと思います。

 これは今、東京、大阪、福岡の三カ所にたしかあるという話を聞いておりまして、もちろんいわゆる帰国一世の方々、そして今は二世の方々、この方たちのお子さんの方々がいらっしゃって、そういう方も積極的にこういう場所を使っていただかなくてはいけないだろうと思います。また、帰国者支援センターというのは、実は私パンフレットを見ましたら、中国から来た方に限らず、樺太の方からの人たちに関しても日本語習得なんかの支援はやっているということでございます。

 このパンフレットがこうやってございますし、ホームページもあるということですけれども、高齢者の方がホームページをごらんになるというのはなかなか考えにくいことでございますし、このパンフレットも、この間実は別のお役所さんのところで、内容を言ってしまうとばれてしまうんですけれども、あるキャンペーンをやるということでそのパンフレットを出した。どのぐらい刷ったんだといったら、たった千部だと。千部というと、国会議員に配ったらもうほとんどないという話でございまして、なかなか認知をされるまでにはいかないような部数でございまして、私は、何部ぐらい刷っていらっしゃるのかわかりませんけれども、そういう方々にあまねく行き渡るように、人数でいって今五千幾らですから、最低それぐらい、あるいはもう少しの数をちゃんと用意してできればやっていただきたいな、そういうふうに思います。

 この支援・交流センター、設立していろいろなことをやっているというふうに書いておりますが、今後、そういう一世の方々の高齢化なんかに伴いまして、このセンターの使い方というのも、やはりこれはできるだけ使い勝手がいいようにしていきたい、そういうふうにした方がいいんだろうなと思いますけれども、そういう意味で、内容的にこれから重点的にやっていく部分がもし何かありましたらお教え願いたい、そういうふうに思います。

大槻政府参考人 中国帰国者支援・交流センターの事業につきましてのお尋ねでございます。

 御指摘のように、中国帰国者の方が高齢化している、また帰国をされます二世、三世の方、こういった方々も増加をしておるということがございます。そういった意味で、帰国者の方も多様化しているということで、日本社会に円滑に適応していただくという面でいろいろな課題がございます。

 このセンターにおきましては、事業内容としては、就労が可能な二世、三世の方々に対しまして、就労に結びつくような日本語教育、あるいは生活相談といったこともやっておりますし、また、他の帰国者とか地域住民あるいはボランティアの方々との交流事業などもしております。

 あるいはまた、高齢帰国者につきましては、地域での孤立化ということも見られますので、帰国者のお宅に中国語で電話をする、あるいはまたボランティアがお宅を訪問するといった形で話し相手になるというようなことを初めといたしまして、高齢者向けのさまざまな対策を講じておるところでございます。

 今後につきましても、そういった意味で、それぞれの日本語の習得度に応じました日本語教育、遠隔地教育も含めました教育、特に就労に結びつくような教育、また、高齢化している方々に対する引きこもり防止対策、こういったことに引き続き重点を置いて事業を推進してまいりたいと考えております。

御法川委員 ありがとうございました。引き続き政府の御指導をよろしくお願いしたいと思います。

 そして次に、これからこの委員会で本格的に法案審議の中でいろいろな議論がされると思いますけれども、障害者自立支援法、そして介護支援等の今後の法改正に伴う種々の問題点の大きな話をさせていただきたいと思いますけれども、いずれも今後はやはり制度的には市町村というところに落としていって、そこでいろいろな判断をして施策を進めていただくというのが大きな柱の一つだと私は考えております。

 折しも、今、市町村合併、これも三位一体に伴いやっておるわけでございまして、例えば私の住んでいる町というのは、一市七カ町村が合併いたしまして、サイズとしては九万八千という、人口レベルでいくと大したことがない町なんですけれども、一市七カ町村の議会が全部合体しましたら、議員の数が百三十六人と全国で一番大きい議会になってしまいまして、大変なことになっておるわけでございます。体育館を使って議場にして今やっているということで、きのうもニュースに載っておりました。

 そういう合併の後の一般的な行政の運営についても非常にいろいろな混乱を来す可能性があるという中で、この障害者自立支援あるいは介護等の施策の策定、あるいはその実行ということも、一緒になって新しい市町村がやっていかなくてはいけないというところで、これはもちろん市町村によるからという話になりますけれども、ある程度軌道に乗るまでは国の方からちゃんと適切な指導なりそういうものをしていってあげないと、かなり現場で混乱が起きるのではないかと私は危惧をしておるんです。その点について、大まかな話で結構でございますけれども、政府の方でどのようにお考えか、聞かせていただきたいと思います。

塩田政府参考人 この国会に提出しております障害者自立支援法案に関連してのみお答えをさせていただきますが、障害ある方々が地域で暮らすという意味で、市町村の役割が大変大きいということでございます。今度の法案では、身体、知的に限らず精神障害も含めて市町村で一体的な福祉サービスを提供していただくということでございます。

 一方で、御指摘があったように、市町村合併とかさまざまな懸案を抱えている中で新しい仕事、大きな役割を担っていただくということでありますので、国、都道府県がきちんと重層的に市町村をバックアップすることが不可欠だと考えております。

 幾つか申し上げますと、市町村に障害福祉計画をつくっていただきますが、その計画をつくる上での技術的な支援をすることとか、相談事業についても難しい相談とか広域的なものについては県にやっていただくとか、あるいは、移動介護とか手話通訳とかいろいろな地域支援の事業を市町村にやっていただきますが、広域的なものとか市町村で対応ができない場合は県に担っていただくとか、あるいは、最大のものは、今福祉サービスについて裁量的経費、補助金であるものを、今度は国と都道府県は義務費に、負担金にさせていただいておりますということで、全面的な支援をしたいと思っております。

 それから、法案の施行まで期間が限られておりますが、丁寧な説明会もやりたいと思っておりますし、モデル事業もやって、新しい市町村審査会とかいろいろなことをやっていただきますので、いろいろな形で国としては全面的に市町村の応援をする努力をしていきたいと思っておるところでございます。

御法川委員 これは、やはり現場でこういうサービスを受けている人たちは、この法律が改正されることによってどうなっちゃうんだろうという現場での心配というのは非常に多うございまして、いろいろな心配がありまして、それは単に給付金の問題だけでなくていろいろなことがございます。その中で、私先ほどから申し上げていますように、市町村によるサービスのばらつきということが非常に懸念されている部分でございまして、例えば隣町に行ったら同じサービスが受けられなくなっちゃうのかなというような、そういう非常にせっぱ詰まったような具体的な心配をなされている方が少なくないということが、我々選挙区に帰って、あるいは毎日生活していて、皆さんから聞く声がそういうことだということだと思います。

 政府というのは、もちろん政策というのは、マクロ的に日本の国を俯瞰して、そして社会に対していろいろな政策を考えるということだと思いますけれども、我々国会議員、そして市井の方々というのは、やはり、ミクロの場においてどういう声があるか、これをちゃんと吸い上げて、そしてマクロにちゃんとそれを反映していく、そういう作業を必ずしなければいけないわけでございますので、厚生労働省の皆様におかれましては、引き続き、そういう皆さんの不安を払拭するような形での説明会、あるいは我々に対する御指導をいただきながら、納得した形で改正をしていただけるようにこれからもよろしくお願いしたいと思いますが、この点に関して御所見をいただけますでしょうか。

塩田政府参考人 今度の改正はかなり大きな改正でありますし、市町村の役割は大変大きいということでありますので、御指摘ありましたような丁寧な説明会もしたいと思いますし、どこの市町村でも最低限の必要なサービスが受けられるよう、国として、いろいろな角度で、この委員会での御意見も参考にして、準備には万全を期してまいりたいと思っております。よろしく御指導をお願い申し上げます。

御法川委員 今お話ありましたように、引き続き、市町村あるいは県とは、地方自治体とは密接な連携を持ちながら種々の改革を進めていただきたいと思いますし、やはり、大きな流れとしての社会福祉、これから国としてどう考えていくんだ、このこともぜひ忘れずに、これからの改正をやっていただきたいなというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、尊敬する西副大臣が答弁にお立ちくださるということで、安心して直球をびしびしと投げ込ませていただきたいと思っております。

 実は、我が国の出生率は一・二九、御存じのとおり、欧米先進諸国であるG7の中でもイタリアを除きまして最も低いとなっております。アジアの中におきましては、香港、韓国など日本よりも出生率が低い地域も存在いたしますが、現在の日本のような下降傾向が続けば、世界じゅうで最も少子化が進行した国の一つとなることは間違いないと思っております。

 こうした少子化、そして高齢化と相まって、社会保障費の負担が高まり経済力が低下をする、そのために出生率を上げるべきだ、こういうお話、経済界に多くこういった御意見はございます。また反対に、一方では、江戸時代までの日本の人口は現在の四分の一だった、そして日本の人口密度は世界的に見ても高水準である、そう考えれば、むしろ環境破壊を制限するためにもこういった傾向は望ましい、こういう意見をお持ちの方もいらっしゃいます。

 ただ、私は、大事なことは、こうした経済や環境の政策目標のために出生を誘導する、そういうお国のためという発想ではなくて、むしろ、子供を産み育てたいという意思がありながら、若いカップルが望んでいる御自分たちの出生数を実現できないというこの要因を取り除くことは、まさにこれは政治に課せられた責任の一つであると思っております。

 そうしたことも含めまして、公明党は少子社会総合対策本部を立ち上げまして、子供が生まれ、育ちやすい環境をつくれば、結果として子供の数は増加するのではないか、そのためには、今起きている晩婚化、未婚化などの現象につきまして、その背後まで光を当てて、思い切って、子育てを中心にした、子供を大事にした社会システムづくり、ここまで踏み込まなければならないのではないか、このように考えております。

 当然その中には、仕事と生活の調和といった、これから企業また日本の社会のあり方にまで踏み込まなければならない大きな課題がございます。私は、その中から、本日は、この仕事と生活の調和につきまして質問をさせていただきたいと思っております。

 これは、働いていらっしゃる男性の側から考えてみましたら、三十代の男性は四人に一人の方が六十時間以上働いていらっしゃいます。当然、そういった週の働きの時間でございますと、子供と向き合う時間も少なくなります。そして、男性の家事、育児の時間が世界で最も低いということは有名でございまして、一日のうち日本の男性の育児時間は、六歳児未満のお子さんをお持ちの家庭でございますけれども、一日の時間、日本では育児時間は〇・四時間、また家事の時間は同じく〇・四時間、二十分ということでございます。

 また、アメリカではこれは〇・六時間、そして家事の時間は二時間、スウェーデンでは育児一・二時間、家事は二・五時間、こういう時間をアメリカ、スウェーデン等は確保しながら生活と仕事と両立をしていらっしゃる、こういう内容でございます。

 こうしたデータからも、男性の家事、育児時間、こういった割合が低いと出生率も低くなる、こういう傾向も指摘をされております。こうした働き方を見直さなければ、こういう観点。

 そしてまた、今度、女性の側から見ましたところ、働く女性の六割近くの方が出産後に会社をやめざるを得ない、こういう状況に追い込まれております。残った三、四割の方たちのうちで育児休業を取得していらっしゃる方が七三・一%。ですから、子ども・子育て応援プランの中にも目標値八〇%等ございますけれども、やめた方を除いた、残った方の七三・一%というのが今の状況でございます。依然、M字カーブは回復をされていない。G7の中でこんなM字カーブがあるのは日本だけでございますけれども、出産、妊娠をとるか仕事をとるか、女性の側も選択を迫られている、大変つらい思いをされている女性も多くいらっしゃいます。

 当然、家族政策が充実をして女性の就業率が高いと出生率も高い、それが各国の例が示していることでございますけれども、こうした状況をかんがみまして、働く時間と生活する時間、これを調和させた社会へ考え方を転換することが急務と思われます。こうした女性のことだけではなくて、男性の働き方を含めた社会のあり方、これを見直す必要があるのではないかと思っております。

 このことは、当然企業の協力がなければできないことでございまして、企業のあり方にかかわる問題でもございますので、厚生労働省といたしまして、こうした企業のあり方等含め、御認識を伺いたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 先ほどから種々データを上げていただいて、よくわかる御質問をいただきましたけれども、特に、子育て中の男性が日に〇・四時間の家事、育児の時間しかとっていない。これは、私もちょっと拝見しましたら、土日も含めての平均がそれだということを聞きまして、本当に実態は、女性の、特に家事、育児をされている時期の女性にとっては大変厳しい実態だなと。逆に言えば、男性は、私どものときもそうでしたけれども、相変わらず、仕事、仕事というか、家事、育児のことに余り構わない風土が残っているという実態をお示しいただきました。

 とはいいながらも、男性も女性も子育てをしながら働き続けていくことができるようにするためには、これは子育て中の女性の支援だけではなくて、先ほど御指摘いただきましたように、長時間労働の是正、それから男性も含めた働き方そのものを見直していくことが大変重要だというふうに思っております。このためには、各企業が仕事と家庭を両立できる働き方、それから職場風土をつくっていくことが大事でありまして、このことに積極的に取り組んでいく必要がある、こう考えております。

 四月の一日から次世代育成法が施行されることになりまして、このような企業の自主的な取り組みを進めるために、企業に行動計画の策定、実施を求めているところでございます。政府としても、この次世代法による企業の行動計画策定、実施を支援するほか、例えば、仕事と家庭のバランスに配慮した柔軟な働き方ができるファミリー・フレンドリー企業、これは、現行の法を上回る育児・介護休業制度を規定しておって実際に利用されている、柔軟な働き方ができる制度を持っておりましてそれが利用されている、例えばフレックスタイムとかそういうことができる、それから仕事と家庭の両立がしやすい企業文化を持っている、そういう企業に対して厚生労働大臣から表彰をするというようなことも今進めておりまして、また長時間にわたる時間外労働の是正等に努めておりまして、私どもとしましても、真剣に仕事と家庭の両立のできる社会を目指して取り組んでまいりたいと思っております。

高木(美)委員 この行動計画につきまして後ほどお伺いしたいと思っておりますが、実は、きょうの日経新聞に「少子化対策へ官民協議」という記事が掲載されておりました。「官民共同で少子化対策を推進するため、関係閣僚と日本経団連など経済界による協議を四月中にも開催する。」とございます。ここには、細田官房長官、また法務大臣、また尾辻大臣、また中川大臣等のお名前が掲載されておりますけれども、こうした協議会のねらい、そしてまたどういう方向づけをお考えなのか、その点につきまして御説明いただいてよろしいでしょうか。

西副大臣 細田官房長官が主導でということになっておりますが、社会保障全体の有識者会議の席上、実は官房長官からお話がございまして、少子化対策を本格的に取り組むことが大事だという御発言がありまして、特に企業の皆様にも協力していただくということが欠かせない要件である、当然政府の方も、関連する各省庁から出席をして、企業の働き方また少子化対策に対する考え方をどうあるべきかということで直接協議をさせていただきたい、こういうところから出発しておりまして、政府が本格的に日本の企業の中で少子化対策をどう取り組んでいくかということにリーダーシップを発揮させていただきたいということのあらわれだというふうに私は解釈をしております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 これはいつごろまでお続けになるおつもりなのか。また、そうした中から、例えば財政面、当然、少子化対策また子育て支援には、企業に対しましても予算の措置は必要かと思いますので、どのような形で今後開催をされるのか。それにつきましてお伺いをいたします。

西副大臣 このことにつきましてはまだ詳細なことは決まっておりませんで、会議の中でそういう方向性が決まっていくのではないか。いつまでにということは、特に私は今の段階ではお聞きをしておりません。予算につきましても、その方向性に沿った形でということになろうかというふうに考えております。

高木(美)委員 ただ、きょうの日経新聞にはかなり詳しく出ておりますので、また折に触れまして詳しい御説明をお願いできればと思っております。特に、こういう中に、具体的目標値を盛り込むように政府の方から企業に強く要請するとか、幾つかのポイントも示されておりまして、こういう点はまさに今時宜を得た大事なことかと思っておりますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 そこで、企業に関連いたしまして、先ほどお話ありました、次世代育成支援対策推進法に基づきました行動計画を各企業が策定をすることになっております。この計画の中にどのような育児支援の内容が盛り込まれることになっているのか、また企業にどのような責任を果たしていただくおつもりなのか、この点につきまして重ねてお伺いいたします。

伍藤政府参考人 次世代法に基づく行動計画の内容でございますが、大きく三つに分けて策定していただきたいということで私どもお願いをしております。

 一つは、育児期の労働者を直接支援する施策。例えば、子供の出生時における父親の休暇取得の促進、あるいは育児休業法の規定を上回る、より利用しやすい育児休業制度の実施、そういったことを企業がどういうふうに取り組むか、そういう直接、育児期の方々の両立支援というのが一つであります。

 それから、育児期の両立支援に直接はかかわりませんが、その背景にある企業風土全体を変えるという視点から、働き方の見直しに関する施策についても計画に盛り込んでいただきたい。例えば、年次有給休暇の取得促進にどういうふうに取り組むかということでありますとか、職場優先の意識あるいは固定的な性別の役割分担意識、こういったものを変えるためにどういうふうに企業として取り組んでいくか、こういうのが二つ目の項目であります。

 それから、その他といたしまして、地域住民とか一般国民を対象にした企業としての独自の取り組み、例えば企業自身にバリアフリーの設備を設けるといったようなことでありますとか、若者の自立を促進するためにインターンシップやトライアル雇用、こういったものにどうやって企業として取り組むか、こういう幅広い視点からの施策、こういった内容についてそれぞれの企業の取り組みを具体的に記述していただきたいというようなことをお願いしているところでございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 こういったことにつきましては、やはり企業の意識向上が大事であると思っております。この計画を具体的に厚生労働省の方に提出をするという内容ではございませんけれども、いずれにしましても、その中身をまた今後よくごらんいただきながら、工夫されている企業については、やはりアナウンス効果で、顕彰していただく等のことをお願いしたいと思います。

 それに関連しまして、次世代認定マークにつきましてお伺いさせていただきます。

 この認定の基準と、それから認定を受けることでその企業にとってどういうメリットがあるのか、説明をお願いしたいと思います。簡潔で結構です。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

伍藤政府参考人 次世代育成計画の認定でございますが、これは幾つかの要件がございます。

 一つは、計画期間内、計画期間というのは二年から五年というようなことを考えておりますが、こういった計画期間内に男性の育児休業の取得者が現に一人以上いるというようなことでありますとか、女性の育児休業取得率が七〇%以上である、こういった要件でございますとか、所定外労働の削減のための措置を講じておる、あるいは年次有給休暇の取得の促進のための措置を講じておるといったようなことでありますとか、それから三歳から小学校に入学するまでの子を持つ労働者を対象とする育児休業の制度または勤務時間短縮等の措置に準ずる措置を講じていること、こういった幾つかの、主として育児休業とか勤務時間短縮とかそういったことについての積極的な目標を設定し、しかもそれがある程度実現をされたということを認定の基準にしておるところでございます。

 そういった企業に一定の認定マークを付していただくということで、企業のイメージアップとかいろいろな労働者のモラールの向上とか、そういったものが期待できるのではないかということで、こういう施策を進めておるところでございます。

高木(美)委員 恐らくこれは、環境のイメージからいきますとエコマークのような、そういったものではないかと思われます。私がかねがね思っておりますのは、例えば将来的に、環境であればさらにグレードアップした形でISO14001を正式に取得をされて、まさに企業としてこれだけ努力をしていますよと。当然、認定マークの中にもいろいろな幅が出てくるかとも思います。このISOを取得するには二、三百万かかるというお話もございますけれども、やはりこうした中身をある程度第三者が精査をして、そして位置づけをしていく。中には、それができないところは、環境報告書であるとかエコアクション21であるとか、種々の取り組みが工夫されているところです。こういう次世代認証、いわば、認定といいますよりもさらに踏み込んだ認証というものも今後工夫をお願いできればと思っております。

 こうした方向性につきまして、西大臣の御見解を伺いたいと思います。

西副大臣 今のお話は、第三者の認定から、さらにもう少しはっきりとした客観的な指標のもとに認定という形にしたらどうかという御提案だったと思います。

 確かに、これからの時代、子育てについても、特に少子化を解消して、一人でも多くのお子さんを安心して産み、子育てをしていただけるという環境をつくるということは大変大事なことで、若い人たちが就職をするにおいて、また働くにおいてそういう環境ができ上がっているという会社は大変好ましい、若者たちにとっては好ましい企業だということが言えると思います。

 そういう意味で、もう少し客観的にというお話につきましては、私どもの方でまた検討させていただきたいと思っております。

高木(美)委員 ありがとうございます。ぜひ御検討をお願いいたします。

 続きまして、事業所内保育施設につきましてお伺いをいたします。

 これは、私は三種類あると認識をしているのですが、例えば東京でも三多摩地域のように郊外に会社があって比較的に通勤が楽なところ、そういうところは、事業所内に置かれまして、昼休みには一緒にランチを食べて、残業のときもお子さんを連れて一緒に退社するという、いわばアメリカ型のような保育所でございます。

 また、二つ目には、例えば東京の中心部に会社があるような場合、一つの企業でそれを運営するには対象人数も少ないということから、周辺の幾つかの事業所がまとまりましてその地域で構成をして、そしてそこには地域のお子さんたちも半分ぐらい入れて、それでフレックスタイムで出勤をし対応をする、こういうパターン。

 あと、三つ目に、新たな形としまして、企業のネットワーク型保育サービスというのがございます。これは、保育施設をつくる企業が互いに共通の利用券を発行しまして、それらの企業に働く方たちが複数ある施設の中から使い勝手のいい施設を、ここは駅に近いからとか、自分はここに住んでいるからこちらの施設とか、それを利用できるようにする、こういうやり方でございます。

 そこで、質問ですけれども、こうした事業所内保育所につきまして、全国どのくらいあるのか、また取り組みを推進するための公的な助成はどのように行われているのか、お伺いしたいと思います。

 重ねまして、こうした、これは雇用保険事業として五年間というふうに聞いております。ただ、保育所待機児童ゼロ、こういう観点からいきますと、今民間参入の保育所をつくるということは、大変これは厳しいというお話もございます。企業がもう少しそこの幅を広げてこうした事業所内保育施設を推進していくというこの観点は、大変今後大事なことであると思っております。

 この点もあわせて、方向性、どのようにお考えかも含めまして、お答えをいただきたいと思います。

伍藤政府参考人 まず、事業所内保育施設の状況でございますが、十六年三月現在で私どもが把握している数字で申し上げますと、全国で三千三百七十八カ所、入所児童数で約五万人というような状況になっております。

 こういうものに対する支援の仕組み、状況でございますが、施設を設置する場合にそれに対して支援をする、それから運営費については、今御指摘のありましたように、五年間運営費を補助する、こういう仕組みになっております。

 まず、設置費につきましては、施設の設置あるいは整備に要した費用の二分の一を限度に補助をするということで、限度額が二千三百万円ということになっております。運営費につきましては、施設の運営に要した費用の、これも二分の一を補助するということで、運営開始後五年間を限度とする、こういう基本的な枠組みで実施をしておるところでございます。

 十七年度予算においては、こういった全体の経費として約七億九千万円を計上しておりまして、平成十五年度の実績で申し上げますと、百八十件支給いたしまして、七億八千万円の補助をしたところでございます。

 こういったものをぜひこれからも推進していく必要があるということは私どもも認識をしておりますし、先ほど申し上げましたそれぞれの企業が取り組む行動計画の中においてもこういったことに積極的に取り組んでいただきたい、そういうメニューの一つに、ぜひ可能な限り取り上げていただきたいというようなこともお願いをしているところでありまして、将来的にもこういった形で支援をしていきたいと思いますし、企業にお願いをしていきたいというふうに考えております。

高木(美)委員 そこで、この運営費の助成につきましては、私も保育所の数、データを拝見いたしました。たしか、前年度に比べまして少し減っているという傾向も見ております。

 こういう保育所がどういう理由で減っているのか、そうした実態もまたよく調査をしていただきながら、もし運営費等で厳しい状況があるのであれば、例えば、今五年間というお話でございましたけれども、これをさらに六年間、また七年間ともう少し引き延ばす、こういうことがあり得るのかどうか、ぜひ弾力的な対応をお願いしたいところでございますが、この点について再度お伺いさせていただきます。

伍藤政府参考人 いわば無認可施設であるこういう保育所にどこまで支援をしていくかということは、いろいろ限界もあろうかと思いますが、どこかで線を引かなきゃいかぬことも事実でありますから、五年を少し延ばすのが非常に効果的なのか、必要性はどの程度、それによってどの程度の効果が生まれるかというようなことも含めて、全体的に検討していかなきゃいかぬ。財源の問題もありますし、それをいかに新規のところに、今は、新規のところにバックアップをして立ち上げの経費を支援する、こういう基本的な考え方で実施をしておりますから、そういった考え方との兼ね合いとかいろいろあろうかと思いますので、全体のそういう視野の中で検討をさせていただきたいと思っております。

高木(美)委員 ぜひとも、今までは立ち上げるというところが主眼だったと今お話が伍藤局長よりございました。それをもう一歩進めまして、今後そうしたことをよりよく運営していただくという、当然、無認可というお話がございましたので、そこのところをどのようにクリアするかという課題はおありかと思いますけれども、ただ、入れているお子さんをまたほかに移すというのは、また逆に親御さんにとっても大変大きな負担になる場合もございます。よりよい運営ができますように、ぜひ、弾力的な応援、そしてまたバックアップをお願いしたいと思います。

 最後に質問させていただきますが、特定事業主というところで、官公庁も全部この行動計画を策定するという中に入っているかと思います。例えば父親の育児参加ということにつきましては、やはりまだまだ父親の育児休業制度の取得率も少ない。というところから、私は、ここはやはり、うちの党がマニフェストでずっと推進をしているところですけれども、丸々一年間、また一年半、父親が休暇をとるというのは大変厳しいかと思います。何日間か、例えば年間十日間とか五日間とか、そのくらいのもっととりやすい形、パパクオータ制、割り当て制と呼ばせていただいておりますけれども、何日間かを義務としておとりいただきまして育児に参加していただく、こうした使い勝手のいい制度も考えていただければと思っております。

 また、こうしたことにつきましても、今の公務員の方たち、また大企業も含めまして、やはりこれはやれるところからやっていただきたいという気持ちがございます。まず足元の厚生労働省からどのようにお進めになるおつもりなのか、最後にお伺いしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 先ほど冒頭の議論にもありましたように、確かに子育て期の男性の育児にかかわる時間が大変少ない。実は育児休業の取得率も〇・四四%、二百人に一人という実態が出ているということも事実でございます。

 これを少しでも引き上げるために、パパクオータという形で義務制というお話がございましたが、このことについては少しまだ議論が必要かと思いますが、特に、男性の労働者が奥さんが出産をするときに、年次有給休暇をここでは少なくともとろうというような形をぜひとも重点化していきたいな、重点的に今整備していきたいなというふうに思っておりまして、そのことによって、また二人目、三人目も産んでいただける可能性も、また環境も出てきますし、また親子関係もそのことによってさらに親密度を増していくという観点からも、次世代法に基づく企業の行動計画の中にぜひとも盛り込んでいただきたい、こういうことを考えております。

 また、平成十七年度から、男性の育児参加の促進にモデル的に取り組む企業への支援を行うということで、若干の予算ですがつけさせていただくことになっております。

 これらを手始めとして、男性も仕事と家庭の両立ができる社会、先ほどの細田官房長官を中心とした企業の皆さんとの話し合いも始まりますし、本格的にいろいろな面で女性にとって出産、子育てをしていきやすい環境をつくるために頑張ってまいりたいと思っております。

高木(美)委員 ぜひとも、今政治のリーダーシップが重要なときでございますので、やはり厚生労働省が先頭に立って、また西大臣にぜひ先頭に立っていただきまして頑張っていただきたいことをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、五島正規君。

五島委員 民主党の五島でございます。

 本日は、このたびハンセン病問題に関する検証会議から膨大な報告書が出されまして、この検証会議の座長をしておられました金平さんにもおいでいただきましたので、日本の公衆衛生、とりわけ感染症問題に関しての一つの大きな問題点でありましたハンセン病に関する検証会議の結論に沿った形で質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初にお伺いしたいわけですが、今回検証会議が明らかにしたハンセン病患者に対する我が国のとってきた医療、公衆衛生活動、その中における極めて深刻なという以上の、言葉に尽くせないような人権侵害の事実の数々、これが明らかになったわけでございます。そういう意味においては、ハンセン病にかかった人、それを取り巻く人々、そうした人々の大変な人権侵害の実態、そしてそういうふうな状況を生み出してきた個々の問題についての事実は明らかになったわけでございますが、まず、この検証会議の目的が何であったのか、そこをお伺いしたいと思います。

 個別の人権侵害の実例を中心にお集めになったのか、それとも、それ以上にこの検証会議の報告で明らかにしようとする目的があったのか、その辺からお伺いしたいと思います。

金平参考人 ハンセン病検証会議の座長を務めました金平でございます。本日は、発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございました。

 五島委員の御質問にお答えしたいと思います。

 その前に、恐れ入ります、お手元にこういう資料をお配りしているかと思います。これが、私どもが今回出しました検証会議の要約本でございます。三月の一日に厚生労働大臣に報告をいたしました。その報告書はこういう三部作になっておりまして、全部合わせますと千五百ページにわたるものでございます。これは一応ここに持ってまいりましたけれども、先生方には要約本をお配りしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今、五島委員の方から、今回検証会議が明らかにしたものは何かということでございます。今回、私どもは、検証を通じまして、ハンセン病の患者さん、また家族を襲いました社会被害、そしてハンセン病患者が療養所内でこうむった在園被害、この複合的な被害を持つ、言語に絶すると申しましょうか、そういう深刻な、しかも広範な被害を明らかにしたと思っております。この人生被害は、いわば広く財産的な損害、それから身体的な損害、それから精神的な損害、さらには社会の中で平穏に暮らす権利の侵害などから成っております。

 これらの被害に、私どもは、お尋ねのように、なるべく多くの方から話を伺う、聞き取りをいたしました。しかし、個別の問題だけでなく、すべての方からのお話を通しまして私たちはこれらの被害に接したわけでございますけれども、私たちの被害観というものは、実はこの聞き取りを通して大変、一変していったと言ってもいいかと思います。

 一応、先生のお答えに対しまして、以上でございます。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

五島委員 今、金平座長がおっしゃいましたように、個別の極めて深刻な被害の数々については、それなりに非常に明らかになったというふうに思っております。

 しかし、同時に、私どもといたしましては、こうした大変深刻な被害が出されたこの一連の政策、この政策がどのような形で生まれ、それは、現在らい予防法が廃止になった段階で、日本のそうした公衆衛生活動あるいは感染症予防対策の中において絶縁したものであるかどうかということもまた検証しなければいけない大事な課題だろうと思っております。ロードマップ委員会の提唱もされているわけでございますが、まさにロードマップ委員会においてやらなければいけないのはそういうことが含まれるのではないかというふうに考える次第でございます。

 そういう意味で、若干経過を追って質問をしていきたいと思いますが、日本におけるいわゆるハンセン病の最初の調査は、明治三十七年、三万三百九十九名が、その当時ハンセン病の患者として調査の結果明らかになっております。これは明治三十七年でございます。そして、その三年後の明治四十年になりまして、これに対する法律の布告がされております。この明治四十年の段階におきましては、御案内のように、扶養義務者のない患者に限られてそうした治療施設に収容されるということになって、経過をいたしております。

 そして、その後、昭和五年に至りまして、すなわち一九三〇年、約二十五年後、ハンセン病の患者の数は一万四千二百六十一名に減少しています。その当時の収容率は二三・六%。二三・六%しか収容していなかったにもかかわらず、患者の数は約半数になっています。言いかえれば、この二十五年間における近代化の中で、国民の衛生状況や生活環境の改善というものがあって、すなわちハンセン病に対する治療の技術が進んだわけではなくて、そうした生活環境や衛生状況の改善によって約半数になっている。ところが、半数になった昭和五年に至って、昭和六年に癩予防法ができ上がっていく。その中で、いわゆる隔離政策に近い方向が打ち出されてくるわけです。この事実関係については、この検証会議の文書を見ても、その経過についてはお述べになっているとおりであろうというように思います。

 しかし、ではなぜ、昭和五年、約半数になったにもかかわらず、その後、明治四十年以後、癩予防法の改定案が出され、昭和十五年になって国民優生法などというような法律が出され、収容された患者さんたちが、強制収容されるとともに、非常に悲惨な状況、検証会議が明らかにされたような悲惨な状況が生まれてくる、それは何だったんだろうかという問題が大きな問題だと思います。私は、検証会議の中において、そこのところがあえて余り触れられていないのではないかと。それぞれの宗教団体を初めとして、マスコミも含めた責任の問題は書かれています。これは一体何だったのか、ここのところは明らかになっていない。

 しかし、このことは実は明らかでございまして、すなわち、一九四〇年、昭和十五年、十年後に控えた皇紀二千六百年を迎えた、国民挙げての、いわゆる国家の体面をどう守っていくか、それがさらに進んで、急性伝染病のペストとか、あるいは急性伝染病のコレラと言われたときもあるわけですが、ペストとらい、あるいはコレラとらい、これの撲滅が近代国家の体面を保つ上に大変重要なんだということが非常なる勢いでキャンペーンされてくる。さらには、皇紀二千六百年の二年前の昭和十三年ぐらいに至りますと、血の純潔運動などというようなものがこれとの間において生まれてきて、社会全体としての一層の隔離政策が進んでくる、これが経過であったと思います。

 このあたりについては、私もまだ完全にこの膨大な皆さん方のおつくりになられた検証会議の報告書を隅から隅まで読んだわけではございませんが、見る限りにおいて、余りそのあたりについてはお触れになっていないけれども、実はそれが一番大きかったのではないか。

 そして、その中で書かれている内容は、急性伝染病の場合は、その感染力の恐ろしさ。それに対して、このハンセン氏病の場合は、罹患された患者さんの悲惨さ。その悲惨さの中には、隔離その他による悲惨さ、あるいは疾病の結果としての悲惨さ、それぞれのものがあるわけですが、その悲惨さということだけが国民にキャンペーンされ、そして、国民から、いわゆる大変な勢いでもって社会防衛論として、このハンセン氏病の患者を地域から出していく、そういうキャンペーンが誘導された。これが事実だったと思うわけです。そのことによって、あのとんでもない隔離政策あるいは断種政策というものが完結したというふうに私は考えるわけでございますが、その点について、もし金平座長の方で御意見ございましたら、お伺いしたいと思います。

金平参考人 議員が御指摘のように、やはりこのハンセン病に対する排除、差別、偏見というふうなものが非常に大きかった。そして、しかも、優生法とかそういうふうな、こういう患者さんたちに対する社会からの分断を公権力においてなされようとした、こういうところは非常に、この法律の成立経過、その後の政策を見ましてもわかるかと思っております。

五島委員 さらに、今回の検証会議でお書きいただいた内容の中で十分でないと私が思っている事例でございますが、この隔離政策の中で、隔離されなかった人の治療を受ける権利というものがいかに奪われたかという問題がございます。

 これは、私自身が経験し、たしか一九七二年、公衆衛生学会の研究会で出した雑誌の中にも載せたわけでございますが、例えば、私がその当時おりましたある市で私は無医地区診療を担当しておりました。その地域の中におきまして、実はハンセン氏病の患者さんがおられた。昭和二十年に南方戦線より帰国をいたしまして、二十八年に、頑固な皮膚病ということで、市内の開業医によってハンセン氏病を疑われ、そして県の予防課の職員に同行されてある瀬戸内海にある療養所を受診し、診察を受けています。ところが、そのときはハンセン病ではないという診断がされました。

 そしてその後、地区の地区長などをやって農業をやっておられたわけですが、病状が進行いたしまして、それからちょうど十年ぐらいいたしまして昭和三十八年になりまして、地域の人たちが非常に不安がるということがありまして、保健所が県の予防課を通じまして専門家の派遣を求めました。すなわち、ハンセン氏病の専門家というのは当時療養所にしかいないわけです。そこの療養所の医者が参りました。前回と同じ医者が来まして、ハンセン氏病だという診断をしました。当然患者さんは、十年前に受診したときに違うと言っておいて、ここに来てハンセン氏病だと、何事だということで、大変こじれました。それで、治療に結びつかない。

 そこで県はどうしたかといいますと、そこは僻地である、感染の危険性は少ないからということで、患者さんの収容をやらずに放置いたしました。御案内のように、当時、らい予防法のもとにおいて、一般医療機関でこのハンセン氏病の治療はできません。したがいまして、そこにおいてまた放置されたことになります。

 そして、さらに約十年、四十六年、病状が非常に悪化して、癩セツをつくりまして、知覚が鈍麻しますから、傷をつくります。そこに雑菌感染を起こして、体じゅうが化膿する、膿汁が出るという状況の中で、もう地域から完全に村八分状態。農業も何もできない、全財産を失うという状況になりまして、再び、地域の中で、万一このケースが死亡した場合、私たちはそのお葬式を手伝うのは嫌だということがあって、また県の方に働きかけて、また医者が来ました。それもまた、もうかなり高齢ですが、最初診た元らい療養所の医者が来ました。当然患者は、ここまで放置したという恨みの中で言うことを聞きません。結果的に、この患者さんをそのころから私が診ることになりましたけれども、残念ながらお亡くなりになりました。

 結局、そこで何が問題だったかといいますと、このらい予防法があった時期において、療養所に収容されなかった患者さんも、逆に、この法律によって当然受けられるべき治療が受けられないという状況、特別の認可のあった大学の外来以外では治療が受けられないという状況がついこの間まで続いていたという事実。そういう意味においては、私は、悲惨な権利侵害、そして悲惨な状況に遭われたのは、入所された方々だけではなく、この法律の陰で、入所を拒否された、あるいはあえて入所させなくても感染の可能性はないねということで放置された在宅の患者さんにとっても、大変悲惨な結果であったというふうに思っております。

 この点についての調査というのはまだまだ不十分で、全国の僻地には多数残っているはずだと思っております。そういう意味では、ぜひ今後も引き続き、私どもも含めての役割、特に公衆衛生に携わってきたすべての人の責任だとは思いますが、この検証会議がこれで終わりにならないようにお願いしたいと思います。この点については御答弁はいただく必要はないと思います。

 こうした状況の中で、今私どもが考えなければいけないのは、往々にして、こうした伝染病が起こってきた場合、それに対する対応というものが科学的にきちっととれない場合に、社会の安全、防衛、多数者の保健という概念、これは、当然公衆衛生活動の中にある概念です、この社会の安全、防衛、多数者の保健という概念と患者の人権とが対立関係になる場合が現実に存在する。これはハンセン氏病の問題だけではありません。エイズの最初のときにもありました。この間のSARSの事件でもありました。常に起こってくる問題です。

 一体、こういう対立的関係にあった場合、国民世論に従うべきなのか、科学的判断に従うべきなのか、それとも、いかなるときも人権を中心に対応すべきなのか。これはやはり、公衆衛生行政をやる上において、きちっとしておかなければいけない重大な課題だと思います。そういう意味において、検証会議の座長として、金平先生がこれまで検証会議を通じてどうお考えか、お伺いしたいと思います。

金平参考人 お答えいたします。

 民主主義には、質と量という二つの側面があるように思います。二〇〇一年の熊本地裁判決も、らい予防法の隔離規定は、少数者であるハンセン病患者の犠牲のもとに多数者である一般国民の利益を擁護しようとするものであり、その適否を多数決原理にゆだねることはもともと少数者の人権擁護を脅かしかねない危険性が内在している、こういうふうに分析しております。医学的な知見あるいは患者の人権にかかわる分野などでは、量の民主主義にも増して質の民主主義と申しましょうか、これが問題になるかと思います。

 我々の再発防止の提言の中で、公衆衛生等の政策決定が今後最新かつ公正な科学的な知見に基づいて行われるようにすること、そして、公衆衛生等の政策によって人権侵害をこうむる危険性のある患者ら、当事者が問題点を洗い出して、法案の草案作成の段階から議論に参加していく、こういう機会を十分に尊重することなどを私どもは提案させていただきましたが、これは、ただいま述べましたような私どもの考えに基づいているものでございます。

 お尋ねの点の中で、急性の感染症のようなものにつきましては、強制隔離が必要な場合もあるかと思いますけれども、それに伴う患者の人権の制限はやはり必要最小限にしまして、患者に対しては最善の医療が保障されなければならないと思います。慢性感染症につきましては、急性感染症のように感染力が強くないこと、患者の人権に対する重大な侵害なしには隔離できないことから、原則として患者の隔離を行ってはならない、このように問題提起をさせていただきました。

五島委員 同じ質問を私は厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 社会の安全、社会の防衛、多数者の保健という概念と、それから患者の人権という概念が対立関係に陥ることは往々にしてあります。

 その場合、マスコミのキャンペーンいかんによっては、社会的防衛論という形での国民世論が盛り上がる場合は当然ございます。

 一方、科学的判断、もし科学的判断に従っているとすれば、実は、日本の場合、癩予防法が制定されました昭和六年の段階において、これはきちっとした衛生環境の向上によって改善できるという判断がその当時のデータからも見えたわけです、後ほどそこのところは触れますが。そうした科学的判断に従って世論に対してそれを啓発していくという立場をとるのか。

 それとも、いかなる場合も患者の人権というものがそうした活動の基本に置かれるべきで、人権は抑制されるべきではないとお考えなのか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 御質問は、いわゆる社会防衛という概念と個々の患者の人権という関係について見解を問われたものである、こういうふうに理解をさせていただきましてお答えをさせていただきます。

 保健行政におきましては、いわゆる社会防衛的な施策に限らず、科学的な根拠と分析に基づき各種の施策を進めていく必要があると認識をいたしております。また、いわゆる社会防衛的な施策と個々の患者の人権との関係につきましては、その両立を目指しながら個別具体的に対処していく必要があると認識もいたしております。

 仮に、科学的な根拠と分析に基づいた上で、いわゆる社会防衛的な施策を行う際に何らかの人権制限をかけざるを得ない場合には、制限を必要最小限にとどめ、人権の保護に配慮してまいるべきであると考えております。

五島委員 極めて優等生的答弁をいただいたわけですが、現実にはなかなかそうはならない。かつて精神病患者に対する保安処分というものが議論されたこともあります。これは感染症でも何でもない。しかし、そこには、非常に誤った、精神病者は非常に危険であるというふうなマスコミその他に誘導されたキャンペーンがあり、その中で、そうした精神病患者さんを施設に収容していくという、いわゆる保安処分というものが出されたこともございました。もう随分前の話ではございますが、例の触法精神病の問題でも、非常にそれに似ているのではないかという議論をされたことは記憶に新しいところでございます。

 そういう意味においては、非常にこの問題というのは難しい問題だと思います。疾病の予防というものあるいは感染症の対策というのは、病原対策と、それから経路対策、そして感受性対策、この三つが基本だと言われています。経路対策といっても、生活水準が向上すればするほど、それを目的としなくても基本的に改善がされていく。しかし、それはインフラの整備その他に非常にお金がかかります。一番簡単にできるのは、病原対策と称して患者の隔離、これが一番安くて簡単にできるというのは事実です。だから、どうしてもそこへ行ってしまう。しかし、一たんそのことによって埋め込まれたそういう国民的な誤解というのはなかなか払拭できない。

 らい予防法がようやく二〇〇〇年代になって廃止されましたけれども、ついこの間まで、感染症予防法の中に日本脳炎まで法定伝染病に入っていたんですよ。さすがに近年、そんなばかな医者はいなくなりまして、日本脳炎で隔離はしなくなっていましたけれども、法律どおり実施しようと思えば、日本脳炎の患者さんを隔離しなければいけなかった。日本脳炎は、御案内のように、もう今は中学生、高校生でも知っているように、蚊によって媒介されるウイルスによってなるものです。その患者さんを隔離したからといって何のメリットもない、科学的根拠が明らかになりました。にもかかわらず、その法律の改正はできなかった。

 一たん法律というものが動き出してしまって、それが個人の権利を抑制することによって対応しようというこの発想というのは、実は厚生行政そのものが、もともと内務行政として出発し、その中において、伝染病が行政警察権の行使によって成り立っていたという歴史の中から、そうした政策に一歩踏み出すと、すぐに公衆衛生活動というのは行政警察的発想に陥ってしまうということ、このことを大臣には十分に認識していただいて、その観点から、やはりもう一度この検証会議の結果というものを、大臣自身が全部読めというのはむごい話ですから申しませんが、厚生省の官僚には必ずこの検証会議の報告書を読ませていただきたい。

 そこのところが、一たん行政警察的発想でそれでよろしいよとなりますと、後からは何ぼでもへ理屈がつきます。多くの場合には、例えば、施設に収容することをやめた途端に、らい患者に対する予算を大蔵省をちょろまかして持ってくることはできない、だから、らいの患者さんは地域の中に置いておくと、十分な治療も受けられないし、感染の危険性もあるし、地域が混乱するんです、だから隔離政策を続けるんですと言って、隔離政策を続けるからという理由でもって大蔵省の予算をとってきたというふうな経過もあったわけです。

 ここにも持ってきておりますが、先ほど申しました「歪められた日本の公衆衛生」という、一九七二年に出した、これは公衆衛生学会の若手研究者で出した雑誌です。実は、この本の作成には、その後厚生省の医系官僚になった人たち、大体今はもうOBになった人たちが多いでしょう、ほとんどこれに参加しておられる。だから、その当時から、らい予防法というものがいかにでたらめで問題のある法律かということは、厚生行政に携わっている人たちも知っていた。にもかかわらず、三十年間にわたってそれを廃止することができなかった。この責任は、私は、今廃止になったからいいということではなくて、人間の人生にとっていかに大きかったかを考えた場合に、これは無視できるものではないというふうに思います。

 再度、その点について、大臣と、そしてまた金平座長の方からも御意見があればお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 最後に御指摘いただきました点につきましては、入所者らの処遇改善が図られたために、厚生省は予防法廃止を言い出せないまま時間が経過した、あるいはまた権威者とされた人たちの独善的で非科学的な知見が国の誤ったハンセン病施策に大きな影響を与えた、こうしたことが検証会議の最終報告書の「再発防止のための提言」でも述べられております。今先生にも御指摘いただきましたけれども、検証会議で報告書に述べられておるこれらの御指摘というのは、改めて、本当に改めて重く受けとめなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。

 こうした我が国のとってきた医療、公衆衛生活動における人権侵害の事実の数々につきましては、まさにハンセン病隔離という二度と繰り返してはならない施策がもたらしたものでございます。

 今般、こうした御提言をいただいておりますから、私どもは、絶えず関係省庁と連携しながら、今後の施策立案、実行に当たるべく検討もしてまいらなきゃいけないと思っておりますし、反省を忘れてはならない、こう考えております。

金平参考人 議員が御指摘になりましたように、私どもも、この検証作業の過程におきまして、戦前だけでなくて戦後も、国のハンセン病政策には行政警察的な発想というふうなものが見られたと言えると思います。

 戦後は、医療・福祉等の保障ということが療養所への強制隔離の口実とされておりましたけれども、療養所において行われましたのは、非医療・福祉であり、また、反医療・福祉でありました。このような貧しい医療・福祉はやはり治安政策の支えなくては成り立ちませんでした。ちょっと例を挙げさせていただきますけれども、その象徴が菊池恵楓園に隣接いたしまして開設されました、一九五三年でございますけれども、癩刑務所にあったかと思います。

 もとより、行政警察的な発想はこれにとどまりませんが、絶対隔離政策の結果、ハンセン病の医療、予防ということも療養所の中だけに隔離されるということになりました。これは先ほど議員御指摘のとおりだと思います。生活水準の向上によって、ハンセン病の発症が大変、著しくと申しましょうか、低下するといったような研究、あるいはハンセン病の感染についての国際的な動向というふうなものを踏まえた研究などが、絶対隔離政策とは矛盾するものとして退けられてまいりました。

 日本の絶対隔離政策で科学的な根拠が示されたことは最初から最後までありませんでした。強制隔離政策とハンセン病の医療、予防の質、量の両面での不足ということは表裏一体であったかと私どもは考えました。

五島委員 今、大臣の御答弁の中に専門家という言葉も出てきたわけでございますが、これは現在でもよく利用される方法ですけれども、専門家と称するボス支配が行政の一端として分担させられているということはよくあるわけですね。これがいかに行政の責任逃れであるか。

 私は、今るる話してきたことにつきましても、専門家から、生活水準の向上や感染経路対策が不十分もしくは未整備であることを覆い隠すために、この疾病予防の名のもとでこういう隔離政策が行われているということを書いたものを見たことがありません。光田さんもそういうことは触れていない。だけれども、事実はそうです。

 一方、専門家と称するものなら、昭和二十七年のWHOの第一回の専門家会議において、私が勧告という言葉を使ったら、何か日弁連からも政府からも、あれは勧告ではありませんというばかげた御指摘がございました。確かに、一国に対する、我が国に対する勧告ではなくて、その当時アメリカも含めて世界じゅうにあったらい患者に対する隔離政策に対して真っ向から異を唱えたのがこのWHOの指摘でございました。その点は検証会議の中にも書かれているわけですが、いやしくも、らいの治療あるいは公衆衛生活動に関しては、政策を決定するのはあくまで科学的な公衆衛生上の立場からであって、公衆の恐怖や偏見から行われてはならないということを明確に指摘して、各国政府に対してこれは勧告として出されています。

 その内容は極めて科学的でありました。当時、日本においてらい療養所の中に専門家という方々がたくさんおられた。このWHOの専門家会議の答申に対して、では日本の専門家がそれにどのように反論をするのかということを期待することもなく、個々の専門家の御意見、らい政策を変えるべきではないという意見のままでこの政策が続けられ、御承知のように、その翌年の昭和二十八年には事務次官通達が出されまして、それまでのらい政策が継続されるようになりました。

 すなわち、昭和五年以後約十五年間にわたって、例の皇国史観のもとで、国家の体面あるいは血の純潔、そういうふうなある種のイデオロギーに裏打ちされた国民世論が巻き起こり、つくり上げられ、その結果、らい政策が続いてきた。戦後になって、新しい憲法が生まれ、そして昭和二十七年、五二年にWHOがそういう勧告を出した。にもかかわらず、この事務次官通達が出てきた。その中で大きな役割を果たした根拠になっているのは、専門家という言葉です。だけれども、らいの専門家と称するのは、もうその当時既にお年寄りのよぼよぼの人ばかり。私は岡山大学出身ですから知っています。本当にお年寄りの方が中心でした。もっと言えば、らい療養所にしかハンセン氏病の専門家はいなかった。それを専門家の声として、こういう事務次官通達まで出した。そこにやはり、専門家と称する者をそういう行政が利用していく、その問題点はあったと思います。

 なぜ、WHOはそれから後も三回にわたって専門家会議を続けますが、そういう専門家会議の結果は無視して、事務次官通達でこれまでの政策を続けることになったのか、その経過についてお伺いしたいと思います。

金平参考人 お答えいたします。

 一九五三年、今おっしゃいましたように、らい予防法の可決を受けまして、厚生事務次官通知、すなわち「らい予防法の施行について」と題された通知が出されております。そこでは、外出の制限、それから、そのほか患者として守るべき義務を遵守して療養に専念するように、それを指導するようにというふうなことが強調されておりました。

 この法律の成立する前の年、一九五二年に、これも今議員御指摘のように、リオデジャネイロでWHOの第一回のらい専門委員会というものが行われておりまして、ここで報告が出されておりますけれども、その報告書の中に貫かれているのは、やはり患者への人道的な配慮、また病気に対する偏見、差別の除去といった視点がうかがえるわけでございますが、残念ながら、この事務次官通達の中にはそれはうかがうことができません。

 問題は、議員御指摘のようにその理由でございますけれども、プロミンなどの特効薬が出現しても、ハンセン病というのはやはり基本的に不治の病である、こういうふうな考え方、また、戦後、入所者の方々が自治会などを通しましていろいろと運動を展開してまいりますけれども、このような権利運動というのは認められない、入所者たちはあくまで恩恵とか慈悲の対象にとどまるべきだろうというふうな、このような療養所長さんたちの誤った見解、いわゆる三園長発言等に典型的に見られますけれども、それが当時の国の置かれた政治状況、あるいは、らいのない県をつくるという無らい県運動等によって作出、助長されたハンセン病に対する国民の強い偏見、差別などのために、国や世論というふうなものが大きな影響を与えられまして、絶対隔離政策を続ける、継続させるということになったのかと思っております。

五島委員 そのとおりだと思うわけでございますが、ただ、この二十八年の事務次官通達が出されずに、WHOの勧告に基づいてらい患者の治療が一般的にできるようになっておれば、先ほど紹介した、在宅の中において悲惨な死を遂げるという患者は救われたわけです。事実、私もその当時、数名の在宅の患者さんを、保険診療ができませんので、まあ厚生省に言わせたら違法だったんでしょうが、治療していました。

 多くの地域の人たちが差別をされる理由としてあるのは、ハンセン氏病特有の病像ではなくてそれの合併症、まともな治療が受けられない、知覚が失われる、鈍麻する、その結果、方々に傷をつくってもわからない、治療しないから化膿する、膿汁が出る、そうした状態を見て、大変恐ろしい病気だというふうに考えておられた。

 きょうの新聞にも、残念ながら却下されたわけですが、お父さんがハンセン病で、娘さんが育っていたけれども、籍に入れなかった。籍の回復をと願ったけれども、お父さんがお亡くなりになってから時間がたっているということで却下されたという新聞記事を読みました。そういう子供も生まれなかった。あのときに普通の処理をしておれば、そういうことにならなかった。

 また、そのころ、プロミンの生産が日本において緒につき出したころですが、生産量としては足らなかったとしても、その当時既に、らい菌の感染力というものは結核等に比べても非常に弱い、日光にも非常に弱い。事実、その時期には、らい療養所の中で働いている看護婦さんへの感染率の計算もされている。もう圧倒的に感染能力が低い、そういうふうな性格までわかっておりながら、今、金平座長が御指摘になったような状況である。

 これは、やはり本当に、一たん国民に恐怖心を植えつけて、そのことでもって本来の行政としての正道をごまかしてしまえば、そのツケがいかに大きいかということの、乱暴な意見ですが、一つの証明であると思っています。

 そういう意味では、質疑時間がなくなりまして、もっともっと検証会議の皆さんにはお伺いしたいこともありますが、この内容が個々の患者さんの被害の実態を明らかにするとともに、これからの日本の公衆衛生活動、それが二度と繰り返してはいけない数々についてもやはりロードマップ委員会の中において明らかにしていただけるようにお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。

鴨下委員長 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 質疑時間が十分間と限られておりますので、簡潔な御答弁をお願い申し上げたいと思います。

 冒頭、大臣、大臣は使われたことがあるかどうかわかりませんけれども、ピップエレキバン、こういうものがございます。これは、来月、四月から医療用具販売管理者の講習を受ける、これを売るために講習を受ける必要があるというふうに大臣は御存じでしょうか。

尾辻国務大臣 知りませんでした。

内山委員 それは驚きでございます。

 皆さんに資料をお配り申し上げております。改正薬事法が来月、四月一日から全面施行されます。ここに平成十四年七月二十四日、改正薬事法が審議された、薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法一部改正の審議録があります。私が調べた範囲では、薬事法の質疑をされておりません。国会で具体的に医療用具販売管理者についての審議をされた経緯がありますか。お尋ねをします。

阿曽沼政府参考人 過去の議事録を確認しておりませんので、詳細なことは申し上げられませんが、確認してまた申し上げたいと思います。

内山委員 来月、四月一日から、こういうピップエレキバン、これはどこにでも売っているんですよ、これを販売するのに当たって、医療用具販売管理者の講習を受けなければならないということが、実は平成十四年の七月二十四日の改正薬事法の中に、どさくさに紛れて抱き合わせで含まれていたんです。国会では薬害エイズやHIVの関係で非常に関心が高かった。しかし、この医療用具販売管理者の件について、私が調べた範囲では、衆参ともどこにもこの販売管理者についての質疑はされていないんですよ。これはどうなっているんですか。

 昨日販売されました写真週刊誌フラッシュ、十六年度医療用具販売及び賃貸管理者の講習の実施について詳しく出ております。配付資料をごらんいただきたいと思います。これを見ていただきますとわかりますけれども、今回の医療器具のクラス分けは極めて官製資格ビジネスで、資金集め、無理やり資格を必要とするカテゴリーをつくったとしか思えない。

 配付資料の写真の左上の方に、MRIとピップエレキバンがクラス2。MRIというのはホームセンターで売ってないですよ。そうでしょう。何で同じクラスなのかまず理解できない。そして、ピップエレキバン、何で販売管理者が必要なんですか、こんなの。しかも、これは全く審議されていないんだ、はっきり言って。

 ここに平成八年の五月二十六日の毎日新聞の朝刊があります。ここには、「資格講習で五億円 厚生省OB天下り財団」、改正法義務づけて資格ビジネスをやっている。たたかれているんだ、平成八年五月に。これをまた同じようなことをやろうとしている。しかも、ここの、たたかれている役者は皆同じなんだ。財団法人医療機器センター、専務理事も健在、当時の筋書きと全く同じ。これはどうなっているんですか。

 そして、この医療用具販売及び賃貸管理者講習会の受講料収入というのを見ると、三日間で七千九百二十二人が受講し、一億三千四百六十七万四千円がセンターに入っている。一億三千万円も収入がセンターに入っているんですよ。なぜこんな、とにかく必要性もない講習を受けなければならない。

 さらに、この記事でもありますけれども、コンタクトレンズ販売管理者講習というのがある。事故防止の名目で新設され、去年の八月三十日、三十一日、九月の九日の三日間、二十九会場で、受講料が一万七千円。眼鏡店の就業者、大体全国で六万から七万人いると言われている。この人たちが全部受講すると十億円になっちゃうんだ、十億円。この官製資格ビジネス、これは大変な売り上げですよ。いいですか。コンタクトレンズというのは医師の処方せんを持って買いに行くものじゃないですか。何で購入するのに販売管理者が必要なんですか、そこの売るところで。どうなっているんですか、大臣。

阿曽沼政府参考人 ちょっとその前に事務的な事情を御説明いたしたいと思います。

 まず、コンタクトレンズについてのお尋ねでございますけれども、コンタクトレンズというのは、大変、目の粘膜に直接かぶせて視力の補正を行うものでございます。したがいまして、適切に使用いたしませんと、粘膜との間で細菌が入ったりいたしますと、角膜の障害だとかあるいは白内障を起こすというようなこともございます。

 したがいまして、これはいろいろな議論がございまして、そういう重篤な視力障害などになるおそれがあるということから、また最近でも事故がかなり急増いたしております。そういう観点から、今般の薬事法の改正におきまして、コンタクトレンズをリスクの高い高度な管理医療機器として規制をするということにいたしました。

 したがいまして、そういう形で規制をいたしましたときに、店舗ごとに管理者の設置を義務づけまして、販売段階での品質確保、それからコンタクトレンズ使用者への適正使用という形での適切な情報提供をお願いしているということでございます。

内山委員 医師の処方せんを持って買いに行くんですよ。しかも、この販売管理者の講習なんというのはビデオを見るだけで、内容が乏しい。こんな講習を受けた人に、何がその事故防止ができるんですか。冗談じゃありませんよ。

 それから、もう一点指摘しておきたいことに、さらに、社団法人日本ホームヘルス機器工業会というのは、先ほど申し上げた団体とは別にもう一つあるんだ。ここが、昨年十一月八日付官報に登録講習機関として公示されている。この団体も厚生労働省の外郭団体なんだ。これがとてもすごい収入を得ている。いいですか。十六年度に、受講して一万七千円、これが十七会場で五千人受講しているんですよ。ことし、十七年度は六万五千人。合わせて七万人が受講すると十一億九千万円の売り上げになるんだ。とんでもない話じゃないですか。

 小泉総理、規制緩和と言っているじゃないですか。これは、官製の規制強化じゃないですか。必要としない医療用具販売管理者を新たに設置し、しかも、講習内容がおざなりですよ、高過ぎる。業界の参加した人からそういう声が出ている。

 医療機器を販売している会社からすると、しかも、新規に採用した者は講習を受けなければ販売業務に従事できない。だから、店舗に講習受講修了者が一人いればいいんじゃなくて、その物を扱う者全員が受講しなきゃいけないという仕組みになっている。中小企業の販売している会社にとってみれば、講習料の費用というのは会社負担である、非常に負担が増加しているという現状もあります。会社によっては、それをカバーするために価格に上乗せして、結局だれが払うのかといったら消費者なんですよ、消費者。

 大臣、これをどう思いますか。どう考えたって、小学生が使ったって死にやしませんよ、こんなの。なぜ、こんなのに販売管理者が必要なんですか。こんな仕組みをどさくさに紛れて、薬害エイズ、HIVの法律のときに抱き合わせでやったんでしょう。そうでしょう。審議されていないんだよ。これはとんでもない話だと思う。白紙撤回を求めたいと思うんですけれども、大臣、所見をお願いします。

尾辻国務大臣 このたびの措置は、医療機器は、先ほどもお答え申し上げましたけれども、人の健康に重大な影響を与えるおそれがあり、最近事故等も増加しておる状況にある、このことは事実だと思います。そして、私が聞いておりますのは、例えばペースメーカーだとか、それからコンタクトレンズでありますが、これも先日テレビを見ておりましたら、コンタクトレンズの何か大変事故が多いというのも出ておりました。

 したがって、そういう意味で必要な措置だなと理解はいたしておりましたけれども、今御指摘のようなお話もありますので、これは、正直言いまして私も初めてお聞きをした話でありますから、よく調べてといいますか、勉強させていただいて対応したいと考えます。

内山委員 時間ですので、この程度にしておきます。問題提起にとどめますが、この修了証にも、「厚生労働大臣の登録を」、こう書いてありますよ。大臣、しっかりしてくださいよ。厳しい追及をこれから進めますからね。よろしくお願いします。ありがとうございました。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。横路孝弘君。

横路委員 BSEの問題を議論する前に、ちょっと一、二点、厚生労働大臣にお尋ねしたいと思います。

 東数男さんという原爆の被爆者の方が医療給付の認定を求めて厚生大臣に申請をしたわけですが、それが却下をされた。その却下を取り消す却下処分の取り消しの裁判が、東京地裁で、これは東さんの方が勝ったんですね、却下処分を取り消しなさいと。これに対して国の方が控訴しまして、東京高裁の判決が昨日ありまして、これはいずれにしても国の控訴棄却ということになりました。

 この東さんという方は、十六歳のときに長崎の市内で原爆に遭われまして、やけどを負ったりガラスの破片でけがをされたりしたわけです。その後もいろいろと苦労されながら、一九八一年ごろに肝機能障害というのを指摘されまして、その後、入院や退院を繰り返していたわけですが、被爆者援護法の十条一項、十一条一項ということで認定の申請を厚生労働大臣に行いまして、それが認められず、異議の申し立てをしたわけですが、それも棄却をされたということで、裁判を起こしたわけです。そして、東京地裁でその言い分が認められた、高裁でも認められたという状況に今ございます。

 そこで、厚生労働大臣に、この判決についてどうされるかというのは、きのうの判決ですからこれから検討されるというように思いますが、私は、上告理由はないというように思います。憲法違反、判例違反というのもありませんし、上告の受理申し立ての理由も、事実認定が争点になっていたわけですから、それもない。

 この判決は確定させるべきではないかというように思うんですけれども、厚生労働大臣の御見解を承りたいと思います。

尾辻国務大臣 判決の内容につきましては、昨日出たばかりでございますから、現在、詳細に検討を行っておるところでございますが、国の主張が認められなかったものというふうに考えております。

 上告に関する今後の対応につきましては、関係省庁とも協議をしなければなりませんので、協議をいたした上で決定をいたします。

横路委員 この人は、認定の申請をしてから、厚生労働省の段階だけでも五年経過しているんですね。それから裁判をやりまして、東京地裁でやはり約五年間、高裁は一年間の判決で、もう既に十一年たっているわけです。この方はことしお亡くなりになられまして、高裁の判決を聞かずに亡くなられたわけでございます。

 私は、そんな意味で、認定申請から十一年というのは余りにも長過ぎるというように思いますし、それから、問題は、事実認定が争点になったわけでございますから、私の見るところ、これは上告理由はないだろうと。前にも、白血球の減少症の放射線起因性ということが裁判で大体争点になるわけですが、小西訴訟でも、これは上告理由はないということで、厚生労働大臣が上告をしなかったというケースもございます。

 今回の裁判の特徴といいますか、この種裁判は、いつも放射線による被曝との因果関係ということが問題になるわけなんですけれども、今まではどうも、C型肝炎だとしたら、もうそれは認定却下みたいな実務をずっとしてきたんですね。

 これに対して、やはり新しい観点からの判決だというように思いますので、十分考えて、余り死者にむち打つような行動をとられないで、国は国としてのお立場もあるんでしょうけれども、しかし、原爆被爆からもう六十年以上たっているわけですね。この間いろいろ苦しんでこられて、そして病気になって、今回裁判所でその起因性というのを総合的に判断して認めますよという判決になったので、ぜひこれを確定させていただきたいということで、ぜひメンツにこだわらずに十分なる御検討をいただくように、その点、もう一度ちょっと厚生労働大臣にお答えをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 申し上げましたように、十分検討いたしまして、関係省庁とも協議の上で決定をいたします。

横路委員 次に、BSEの問題でございますが、昨年の十月に、尾辻大臣と農林水産大臣から食品安全委員会に対して、特にBSEにかかわる全頭検査、この検査について、全頭検査をやめて二十一カ月以上の検査でいいのではないかというような諮問をされたわけですね。

 食品安全委員会の方でそれに対する専門委員会で議論してきて、これが二十八日の日ですか、一応結論が出て、この次の食品安全委員会にかかるということなんですが、まず厚生労働大臣に、全頭検査をやめなければいけない国内的な理由というのは何かあるんですか。国内で今までやってきた全頭検査、これで国民は安心して安全な食べ物ということで牛肉の消費も回復してきたわけですね。これは何か国内的に理由はあるんでしょうか。

尾辻国務大臣 これまで全頭検査をやってまいりました。そして、そのこれまでの検査の結果で、二十カ月までのところの牛にそうした危険性がないというのが、言うならばこれまでの検査の結果で言えるということで、私どもとしてはその諮問をお願いいたしたところでございます。

横路委員 危険性がないわけじゃないんですよ、これは。

 いずれにしても、今回、では全頭検査をやめて二十一カ月以上にした、問題はものすごくたくさんあるんですけれども、一体今度緩和することで国民はどういう利益を得るんですか。今まで安全、安心だったというのがなくなるわけですよ。リスクそのものは絶対に高まるんですよ。違いますか。

阿曽沼政府参考人 BSE対策についてどういう観点から見直しをしたかということでございますけれども、経緯から申し上げますと、BSEの対策は、他の食品の安全対策と同様、科学的な合理性を基本として判断すべきだというふうに私ども考えております。

 全頭検査の見直しにつきましては、食品安全委員会が行いました最新の科学的知見に基づきまして、BSEの国内対策に対する評価、検証の結果を踏まえまして、私どもとしても食品安全委員会に諮問した、そういうことでございます。

横路委員 そこはごまかしがあるんですね。食品安全委員会の方で中間報告が出たからという、その中間報告を理由にして諮問するなんというのはおかしな話で、今の質問に答えてください。全頭検査をやめることで、日本の国民にとってどういう利益があるんですか。安全性が高まるんですか、安全性が高まらないんですか、変わらないんですか。どうなんですか、それは。

阿曽沼政府参考人 私どもとしては、あくまでも最新の科学的知見に基づいて判断をしていくということでございます。

横路委員 全頭検査をやってきた背景というのがあるわけです。まず、狂牛病が発生したときに、原因がわからない、一体どういうような汚染の状況にあるのかということもわからないということで、国民の不安も高まるということで全頭検査をやってきたわけです。これは、国民に安全な牛肉を提供すると同時に、何が問題なのかということを解明する一助にもなるわけですね。

 これはどこにお尋ねしたらいいのか、農林水産省になるんでしょうか。今まで十六頭の牛が狂牛病として発生しています。この原因はわかっているんですか。全部調査しているんですか。よく肉骨粉と言われますよね、しかし、皆さん方が調査した七例までですかの調査結果を見たら、肉骨粉は与えていないというわけでしょう。ではたんぱく強化の代用乳だと。しかし、それに肉骨粉を入れたという証拠が全くなくて、因果関係がはっきりしていないんでしょう。今でも、十六頭狂牛病が出ているけれども、原因も、どういう感染のルートなのかもはっきりしていないんですよ、これは。違いますか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでのBSEの原因の究明でございますが、平成十五年九月に公表されました専門家から成るBSE疫学検討チームの報告書では、国内七例目までの調査内容についてまず報告をしております。その中身は、まず感染源といたしましては、イギリスからの輸入生体牛、生きた牛の輸入、あるいは一九九〇年以前に輸入されたイタリア産の肉骨粉が感染源として想定される。それから、感染の経路といたしましては、肉骨粉については直接は給与されたという事実がないことから、配合飼料工場における製造、配送段階において牛用の配合飼料に交差汚染した可能性があるというふうにされております。

 その後、幾つかまた例が出ておりますが、平成十五年には二例、それから十六年には五例、ことしに入りまして二例の感染牛が新たに確認されておりますけれども、そのおのおのにつきましては、調査結果がまとまったものについては、専門家によりますプリオン病の小委員会で、与えられた飼料の調査分析結果を報告して、現在分析をいただいているところでございます。今まで分析結果がはっきりしたものは先ほど申し上げました七例目まででございますが、先ほど申し上げたような報告内容をされているところでございます。

横路委員 つまり、一般論として可能性が肉骨粉にあるよというだけの話であって、しかも、あるいは飼料工場でもって交差汚染したかもしれないという話であって、実際にその牛が狂牛病になった、これが原因ですよという原因は特定されていないんですね。

 ですから、全頭検査をやる意味合いというのは今なおかつあると思いますよ、これは。厚生労働大臣、そうじゃないですか。だって、はっきりしていないんですから。つい先日も、新しく狂牛病の牛が出ましたよね。これだってわかっていない。調べた結果は、それらの牛には肉骨粉を与えていないというように調査の結果なっているわけですよ。まだわからないんです、一体どこにどういうルートの飼料が入ってきて、どこの工場でもって交差したのかということだってわからない。

 だから、今何も全頭検査をやめるということじゃなくて、全頭検査をやる意味というのはあるんじゃないですか、まだ。厚生労働大臣、どうですか、そこは。どう思いますか。

尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私どもは二十カ月齢以下の牛を検査対象から除外してもリスクが増加することはないと考えましたので、食品安全委員会に諮問をしたわけでございます。後は、食品安全委員会が科学的に御判断をいただく、こういうことでございます。

横路委員 日本の場合、第八例が二十三カ月ですよね、九例は二十一カ月の牛がBSE、狂牛病の牛だということになっています。

 イギリスでは二十カ月以前で発症したケースもあるわけでして、本当に安全なんだ、問題は全くないんだということを言えるんですか。二十一カ月と二十カ月ですよ。この二十一カ月の牛だって、十九カ月で検査して検出している可能性だってあったんじゃないんですか、たまたま二十一カ月ですけれども。二十一カ月だからそれ以下は安全だという根拠にならないんじゃないんですか。

阿曽沼政府参考人 大臣からも御答弁申し上げましたように、昨年九月に食品安全委員会で取りまとめられました最新の科学的な知見に基づきますBSEの国内対策の評価、検証におきまして、検出限界以下の牛を検査対象から除外するとしてもvCJDリスクが増加することはない、それから二十一カ月齢以上の牛についてはBSEプリオンの存在が確認される可能性がある、そういったような結論が示されましたので、二十カ月齢以下の牛を検査対象から除外をしてもリスクが増加することはないというふうに考えまして、食品安全委員会に諮問したという経緯でございます。

横路委員 つまり、現実に二十一カ月、二十三カ月というのは発症しているわけですよね。それまでは、大体二年以下には牛には発症することはないんだということが一般的には言われていたわけですよ。

 しかし、日本で八例、九例ですか、二十三カ月、二十一カ月と出てきた。専門家の話ですと、高濃度の病原体がまじった飼料などを食べれば、若い牛でもやはり発症する可能性があるのであって、若いから絶対心配ないんだということではないという意見も非常に強くあるんじゃないですか。違いますか。

阿曽沼政府参考人 私どもといたしましては、食品安全委員会の中間取りまとめの概要といいますか、その内容に沿って諮問をいたしたということで、繰り返しになりますけれども、そういう経緯でございます。

横路委員 では、それは何か国内的な要因があったわけじゃなくて、食品安全委員会が中間報告を出したからやったというんですか。出すように何か皆さんの方でやったんじゃないの、行政の方で。違いますか。

阿曽沼政府参考人 繰り返しのお話になりますけれども、最新の科学的な知見に基づいて総合的に判断するのが食品安全委員会であるというふうに思っているからでございます。

横路委員 食品安全委員会の委員長さんが来られていますから。

 例のプリオン専門調査会の方で三月二十八日の日に健康影響評価をまとめられた。これを読んでみますと、今回の諮問について二つの批判的な意見があったということを留意すべきであるというようにこの中に書かれています。

 一つは、「BSEプリオン蓄積度に対する輸入配混合飼料の影響は不明であり、その対策の実施はこれからの課題として残っている。」と。今、日本に随分輸入されているわけですね、配合飼料、混合飼料が。ところが、その原料が何であるかということをチェックしていなかったというわけですね、今まで。それが今回明らかになったわけですよ。それで、それをもう一度やりましょうということですから、中には汚染されている配合飼料がまじっている可能性もあるということをこの専門委員会は認めたわけです。

 それから、特定危険部位の除去については、その監視体制の構築、それから、日本でやっている、ほかはもう禁止されているんですが、ピッシングの廃止ということを含めた対策強化がこれから実施されるだろうが、「月齢の見直しは」つまり二十カ月以下はやらないということの見直しは、「これらの一連の対策の実効性が確認された後に行うのが、合理的な判断である。」という意見がついています。私は、これはまことにもっともな意見だというように思います。

 それから、やはり問題は検査の感度を高めるということだということを言っています。私は、全頭検査をやめることよりも一番大事なことは何かというと、検査のレベルアップを図って、よりはっきりさせるようにするということが非常に大事ではないかというように思っています。そういう意見がついて、留意すべきであると言っています。

 もちろん、これから食品安全委員会の方で議論するに当たってこの専門委員会の意見というのを参考にされるんだろうというように思いますが、この点について、これから審議するに当たって、これらの留意点についてはどのようにお考えでしょうか。

寺田参考人 御質問にお答えいたします。

 これはプリオン専門調査会の先生方が、十月の二十六日から、諮問を受けたのは十月の十五日でございますが、おっしゃいました三月二十八日まで八回にわたって公開で熱心に討議した後、こういう結論というのを出されまして、そのときに、意見といたしましては、今先生がおっしゃいました意見が、留意すべきであるという形で報告書の案の中に出ております。

 私どもといたしましては、これからこの報告書案を、パブリックコメントを一カ月出しまして、その後にまた審議をいたして、その結果を管理官庁、諮問を受けた厚生労働省、農林水産省にお返しするということになると思います。今この段階で、どうするああするということは申し上げることができません。

横路委員 同じ影響評価の専門委員会の報告書の中に、「本評価報告は、我が国における過去の集積データ及び評価を行うに足る関連データに基づき、基本的には背景に予想されるBSEの汚染度、と畜場における検査でのBSE陽性牛の排除、安全なと畜解体法、特定危険部位の除去などの効率について評価し、二〇〇五年三月の時点での若齢牛のリスク等を総合的に評価したものである。」ということで、ここで主に評価したのは、今言った全頭検査か、二十一カ月以下か二十カ月以下かという点と、トレーサビリティー、飼料規制、それから特定部位の除去とピッシングといったような四つの点について専門委員会で議論したわけですね。そしてここに、「このような様々な背景リスクから切り離して年齢のみによる評価を行ったものでは」ありません、こういうようにこの中で書かれています。

 つまり、肉骨粉についての規制も含めて、日本でとっているいろいろな規制というものをトータルに考えてこの案を出したんですよ、つまり、二十か二十一かというところだけの議論をしたのではありませんよという報告になっています。これは非常に大事な点だと思うんですよ。非常に大事な点だと思います。

 この点、ある意味では当然のことだと思いますけれども、これは日本における国内の状況についての判断をされたということで、その背景には今までとってきた政策のトータルな蓄積がある、それを前提にしているというように理解してよろしいですか。

寺田参考人 おっしゃるとおりでございます。

横路委員 そこで厚生労働大臣に、今度は、アメリカ産の牛肉の輸入の問題に関連してちょっとお尋ねをいたしたいと思います。

 アメリカで狂牛病が発生したときに、輸入停止の措置をとりました。そのときにアメリカ側に要求したことは何かというと、日本の国内でとっている我々の措置と同じ措置をとってもらいたいと。その同じ措置とは何かという議論の中で、全頭検査も入るんですよというのがずっと今までの基本的な姿勢だったというように思うんですね。

 したがって、問題は、今もお話があったのをお聞きになったと思いますけれども、専門委員会の方で、単なる月齢をどうするかということだけを判断したんじゃなくて、トータルな、我が国における今まで安全のためにとってきた措置全体の中で判断したんだと。ここが非常に大事なポイントなんですね。

 したがって、私は、アメリカに対してもやはりそのような同じような対策、つまり、全頭検査の問題だけじゃなくて、飼料の規制の実効性でありますとか、特定部位の排除だとか、トレーサビリティーをどう確立するか。日本はもうそれを確立しているわけです。しかし、アメリカはなかなかそれは難しい点があると思いますよ。そういう点などを含むのは、これはもう当然の話だというように思いますが、つまり、国民の健康、安全ということにかかわる問題ですからね。いかがお考えですか、厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 いつも申し上げておりますけれども、BSE問題に限らず、私どもの立場というのは、国民の食の安全の確保を大前提にしなければなりません。したがって、そのためには、科学的知見に基づいて対処をしてまいります、このことをいつも申し上げておるところでございます。

 そこで、米国産牛肉の輸入の再開につきましても、我が国と同等の安全性が確保されておるということが必要でございます。このことが確認されなければ、私どもとしては、輸入再開というのはあり得ないということを申し上げたいと存じます。

横路委員 厚生労働大臣にその姿勢をしっかり守っていただきたいというように思います。

 それで、食品安全委員会の方にこれから先新たな諮問が例えばおりてきたとして、いろいろな調査、資料集めをされるんだというように思いますが、そのときに、一つは、アメリカの会計検査院、これは国会にあるんですが、GAOの報告書がありまして、GAOの総評としては、米国国内の牛をBSE蔓延のリスクに引き続きさらしているというのが、これはアメリカの会計検査院の報告であります。そして、特に肉骨粉の飼料について、どうもチェックがうまくいっていない、それが分離されていない。つまり、そこでもって混合するというか交差する可能性、危険性があるということを会計検査院は指摘しています。これもしっかり調査していただきたいというように思います。

 それから、昨年の八月に欧州の食品安全機関が、アメリカのリスク度、アメリカの飼料規制には抜け穴があって、BSE感染が広がるリスクが高いということを欧州の食品安全機関もランクづけをしています。これもしっかりデータを収集してやっていただきたいというように思います。

 それからもう一つ、国際機関がやはりアメリカに対していろいろと勧告をしているんですね。これは昨年の話でございますけれども、BSEに関する国際科学者委員会の勧告というのがありまして、アメリカに対して何を言っているかというと、特定危険部位の除去の徹底、ダウナーカウの検査と食物・飼料連鎖からの排除、高リスク牛と三十カ月以上の健康な牛の全頭検査、すべての肉骨粉の反すう動物飼料への使用の禁止、交差汚染防止対策の強化、トレーサビリティーの確立ということを指摘しています。アメリカには、高リスク牛、歩行ができないとか、歩くことがなかなかできない、立ち上がることができないというような牛が四十四万六千頭いるそうです。ですから、その検査というのはほとんど行われていないんですね。

 こういう指摘がいろいろな国際団体からも言われているという状況に今のアメリカの牛の状況というのはあるわけですから、そこをやはり、データをみずから集め、そして、今厚生労働大臣が言ったように、国内と同じような扱いにして初めてどうするかということを判断するというようにしていただきたいと思いますが、こういう幾つかのいろいろな既に発表されているものがあります。これは情報としてとって、資料として、データとしてとって、そして慎重に検討していただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

寺田参考人 今先生がおっしゃいましたGAOの報告書、あるいはEFSAの、ヨーロッパの科学コミッティーの報告書、あるいは米国で二〇〇三年十二月にBSEが発生した後のヨーロッパのキムさんを団長とする国際調査団の発表、そのことはすべて承知しておりますし、そのことも考慮に入れながら、諮問の形がどういう形で来るかもわかりませんが、慎重に審議していきたいと思っております。

横路委員 委員長、もう一つ。

 何か新聞報道によると、変な形の諮問をするみたいな報道があるんです。しかし、諮問にかかわらず、食品安全委員会は安全委員会として、自分たちの判断で行うことができるんですからね、調査でも何でも。それはちゃんと食品安全委員会の法律の中に入っている。何も、諮問があったからその諮問に答えなきゃいけないということじゃないんですよ。その諮問の背景も全部調べて、委員会独自の判断でやることができるわけです。

 食品安全委員会は、行政とか政治とは距離を置いて、国民の健康を守る、食品の安全、それは消費者の、国民の安全ということになるわけなんですが、それをやはり、ともかくすべてそこで科学的に判断をするということでありますので、大分政治的なプレッシャーがいろいろと国会の答弁を通じてもありますが、もう一度繰り返しますが、食品安全委員会というのは政治や行政からは距離を置いたところにある独立の機関であって、専ら科学的な要因に基づいて食品の安全を確保するというのが仕事でありまして、当然だと思いますが、そういう姿勢でこれから対応していただきたいということを、最後にちょっと御答弁をいただきたいと思います。

寺田参考人 独立、公正、透明性を持って科学的に評価をしていきたい。私どものところは評価機関でございますから、科学的な評価をし、いろいろなことは、あとは、政策決定あるいはマネジメントに関しましてはこれは管理機関に渡す、それから、食品安全基本法にありますように国民の健康を第一として、それを肝に銘じて委員会を運営しているところでございます。

横路委員 それで、厚生労働大臣、変な諮問になったら、これはやはり厚生労働大臣の責任ですから、変な諮問じゃなくて、先ほどおっしゃったようなことをきちっとやっていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、城島正光君。

城島委員 御苦労さまでございます。民主党の城島でございます。

 きょう、私は、午前中に与党の自民党の御法川先生も取り上げられたということでありますが、今のこういう経済情勢の中で、企業のあり方あるいは労使関係のあり方といった面で極めて重要な今後のあり方ですけれども、重要な点を示唆しているのではないかというふうに思うテーマでありますので、東急観光の今の労使の状況について、これは象徴的なことだと思いますので、少し掘り下げて論議をさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、まず所管の国土交通省に聞きたいわけでありますが、観光日本を代表する大手旅行業の一つであります東急観光株式会社が二月十日に提出をしております有価証券臨時報告書によりますと、お手元の資料一ページから四ページにお目通しいただきたいわけでありますが、「親会社となるもの」には次のようになっているわけですね。親会社は、名称がJPE・Ltd日本支店。住所が、そこにありますように、千代田区丸の内二丁目二番一号。代表者の氏名は青松英男さん。資本の額は十万円。事業の内容は投資業。ところが、このJPE・Ltd日本支店というのは、東急観光の議決権の八五・〇三%を占める親会社でありながら、実は、私、どういう会社かなと思ってインターネット等を検索しても全く見当たらないわけです。実態がちょっとよくつかめないという会社であります。

 そこで、東急観光の有価証券報告書とかあるいはその訂正報告書をさかのぼっていきますと、次のようなことが、二〇〇四年の三月から十二月のわずか九カ月という短い期間でありますけれども、この九カ月間に起こっていることがわかりました。

 まず一つは、東急電鉄が、昨年の三月、東急観光の株、八五%を超えるものをアクティブ・インベストメント・パートナーズという会社に売却をした。これは資料五ページにお目通しいただければわかると思います。各紙に、新聞紙上にそういうふうに報道されております。しかし、実は、実際の売却先はアクティブ社ではなくてJPE・Ltd日本支店、それと、AF2・Ltd日本支店であったということでありました。さらに、昨年十二月には、このAF2・Ltd日本支店の株すべてがJPE・Ltd日本支店に譲渡された、こういうふうに訂正がされたわけであります。したがって、この結果、JPE・Ltd日本支店が、東急観光の株、八五%を超える株を保有する親会社となったということのようであります。

 そこでお尋ねしたいのですけれども、この東急観光の親会社JPE・Ltd日本支店というところは今最大の株主なんですけれども、これは法人なのかどうか。さらに、役員構成は一体どうなっているのか。従業員数は何人で、設立年月日はどうなのか。有価証券報告書ではJPE・Ltd日本支店となっておりますけれども、本店はどこにあるのか。所管の国土交通省にお尋ねしたいと思います。

鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生おっしゃられました、東急観光の親会社に当たりますJPEリミテッド社とAF2リミテッド社について御説明申し上げます。

 両社ともに、英国領ケイマン島にその本拠を置いておるいわゆる投資ファンド会社でございまして、その企業実態については私どもにも具体的に判明しない部分が大変多く存在いたします。

 国土交通省で東急観光から聴取をいたしましたが、両社は、JPEリミテッド社、AF2リミテッド社というのは、有力国内機関投資家、例えば損害保険、大手銀行、企業年金などからの出資を得て投資ファンドを構成しておりまして、このファンドを活用して、東急観光を初めとする会社の株式を取得、保有しているとのことでございます。

 この東急観光の株式の取得、保有の主体というのは、今先生もおっしゃられたとおり、両社日本支店となっておりますが、営業実態というのはなくて、その運用管理はアクティブ・インベストメント・パートナーズ社という日本法人に委託されているというふうに聞いております。

 それから、役員につきましても、そういう意味では、この会社につきましては承知をしておりません。

城島委員 余り定かなところはわからないということですね。

 では、財務省にお尋ねしますけれども、この会社は法人税の課税の対象になるんでしょうか。

竹田政府参考人 個別にわたる事柄につきましては、守秘義務が課されております関係上、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論といたしまして、外国法人といいますのは、国内に源泉がある所得に対してのみ納税義務を負いまして、国内において事業を行う拠点、恒久的施設と申しておりますが、そういうものを有するかどうかによって課税の範囲も異なってくるわけでございます。外国法人が国内に支店等を有する場合には、国内で行う事業や国内にある資産から生ずる所得につきましてはすべて法人税の課税対象となりますし、また、そういう国内の支店等の恒久的施設を有しておらないような外国法人、これにつきましては、原則として、利子、配当、使用料などの一定の所得に対して所得税の源泉徴収が行われる。

 いろいろ細かいことはございますが、大まかに申しまして、こういう課税関係になろうかと思います。

城島委員 それでは、国土交通省に、もう一つのAF2リミテッド社日本支店というんでしょうかね、この会社についても、どのような会社か、おわかりになったら御報告いただきたいと思います。

鷲頭政府参考人 先ほどお答え申し上げたときに、JPEリミテッド社とAF2リミテッド社ということで御説明申し上げたとおりでございまして、AF2リミテッド社というのも、英国領ケイマン島に本拠を置いているいわゆる投資ファンドでございまして、具体的にその実態が判明しない部分が大変多いわけでございます。

 仕事につきましては、同じように東急観光から聴取しましたところでは、機関投資家からお金を集めて投資ファンドを構成して、それを運用してリターンをとるという会社だということのようでございます。

城島委員 ちょっと大臣、ぜひここは頭に入れておいていただきたいと思いますが、今あったように、実態がよく判明しないというのが実はこの東急観光の今の最大の筆頭株主の実態である、これを一つ入れておいていただきたいと思います。

 それで、財務省にお尋ねしますが、これは一般論で結構なんですが、Aという法人が所有する株がBという法人に譲渡される場合に、どのようなときに課税対象になるんでしょうか。

竹田政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、外国法人か内国法人かということで違ってまいりますけれども、内国法人が所有株式を譲渡した場合の譲渡益というのは、これは全体の収益ということで計算されるわけでございます。外国法人の場合につきましては、これは国内法と租税条約の規定に従って判断することになろうかと思いますけれども、国内法では、内国法人の株式の二五%以上を所有する外国法人がその株式の五%以上を譲渡するような場合、これにつきましては、いわゆる事業譲渡類似株式の譲渡に該当する場合には我が国で申告納税するということになります。

 先ほど申し上げました恒久的な施設を有するというふうな場合には、これは、内国法人の株式を譲渡いたします内国法人の株式の譲渡益を含む国内源泉所得ということには全体として課税されるわけでございますので、外国法人が国内支店等の恒久的施設を有する場合には、この株式の譲渡益は法人税が課税されるということになろうかと思います。

城島委員 先ほどちょっと冒頭述べたように、有価証券報告書の訂正というのが実は出されているわけでありますけれども、昨年三月の日本経済新聞の夕刊には、資料五ページに記載させていただいておりますが、「東急電鉄、二十四億円で」「東急観光の売却を発表」という見出しの記事が載っているわけですね。その記事によると、八五%分の持ち株をアクティブ・インベストメント・パートナーズに売却するというふうな発表になっている。これは新聞報道にはそうなっているわけです。したがって、訂正されたとはいえ、世間の多くの人は、この段階で、東急観光の持ち株会社はアクティブ・インベストメント・パートナーズだ、こういうふうに理解をするということだと思います。

 そこで、同じようにちょっとお尋ねしますが、このアクティブ・インベストメント・パートナーズ社はどういう会社なのか、それと、このアクティブ社と、先ほど言ったJPE社、AF2社の関係はどういう関係にあるのかをお答えいただきたいと思います。

鷲頭政府参考人 お答えいたします。

 私どもで東急観光から聴取しましたところでは、アクティブ・インベストメント・パートナーズ社というのは、東急観光の株式を所有しあるいは所有していた、先ほども先生がおっしゃられたJPEリミテッド社それからAF2リミテッド社の保有する資産の運用管理会社として一九九九年十月に設立をされまして、現在、日本法人としての登記を受けているということでございます。

 したがって、アクティブ・インベストメント・パートナーズ社は、JPEリミテッド社やAF2リミテッド社の保有する資産について、これらファンド会社がこの資産を活用して株式取得した会社の経営改善といったことを通じて運用益の向上を図る立場にあるというふうに聞いております。

 また、このアクティブ・インベストメント・パートナーズ社というのは、東急観光のほかにも、過去においては、同様の手法によりまして通信販売大手のニッセンとかパソコンメーカーのソーテックといった会社の経営の改善を手がけたとのことでございます。

城島委員 そのアクティブ社の役員のうちに、東急観光の役員を占める人は今何人いらっしゃいますか。

鷲頭政府参考人 お答えいたします。

 東急観光におきましては、現在、取締役総数九名のうち五名に、監査役総数三名のうち二名に、それぞれアクティブ・インベストメント・パートナーズ社の出身者が就任しております。

 これらの者の就任につきましては、平成十六年三月二十六日に開かれました定時株主総会におきまして、その時点で東急観光の株式一〇〇%を所有しておりました東急電鉄の承認を受けて決定されたというふうに聞いております。

城島委員 株主総会で決定されたということですけれども、先ほどから、実態の最大の株主というのが、現実的には当初からこのアクティブ社ではなかったわけですね。しかし、その段階で、マスコミというか世間的にも、あるいは有価証券にもアクティブ社が最大の株主になるような報告がされて、そして、今のでいいますと三月二十六日ですか、その段階でアクティブ社から多くの役員が派遣され、役員の就任が決まった。九人中五人、それから監査役三人中二人がそうやって決まった。やはりちょっと不自然さを感ずるわけですね。

 と同時に、これは大臣の御感想でいいんですけれども、昨今、企業はだれのものだとかいろいろな論議が盛んにされていますよね。そういう中で、例えば、私は、少なくとも企業というのは株主だけのものだというふうには思っていない立場ですよ。やはり企業というのは、株主もその重要な一つである、構成員であろう、しかし、従業員であるとかあるいは取引先であるとか、場合によってはその地域社会とかいうところも企業を構成する極めて重要な要素だと思うんですけれども、その中の株主も重要だ、百歩譲って企業はかなりの部分は株主のものだとしても、それは私の意見と違うんだけれども、その株主というのが、今あったように実態がよくわからない。

 これは、そこで働く従業員からしても、そのことだけとっても極めて不安感になるんだろうと思うし、有価証券報告書が修正、訂正されて、しかも、実際の株主とは違う、運用を任されている会社から多くの役員の派遣が決定されたというのは、それは手続上は株主総会ですからきちっとなっているんでしょうけれども、何となく、非常にある面でいうとどういうことなのかなと。その訂正報告も含めて我々としては不可解な点がいっぱいあるし、実際、株主の実態がよくわからない、実態はわからないですよ、ということあたりをお聞きになって、御見解はどうですか、大臣。

尾辻国務大臣 今お聞きした範囲での、私の全く個人的な感じでありますけれども、そうした自分たちの株主がよくわからない、働いている会社の株主がよくわからないということであれば、働いておられる皆さんが不安に感じられるというのはそのとおりだと思います。

城島委員 それと、先ほど国土交通省さん、いろいろヒアリングというか、東急観光からお聞きになったけれどもということの中でお答えいただきましたけれども、率直に言ってちょっと解せない点があるのは、先ほど言った、最大の株主である、略称にしますがJPEですか、そこの代表は青松さんという方ですよね。今、その方は東急観光の役員に就任されていますよね。それで、取締役会の議長か何かされている。そうすると、よくわからないということの方がおかしくて、JPE社の代表を務められている方が既に東急観光の役員に入られているわけだから、このJPEというのはどういう会社かというのは、その方が言えば明確にわかるはずですよね、本当は。

 しかし、何か、東急観光からいろいろヒアリングされたということの中でも実態がいま一つよくわからないという報告というのは、正直言って非常に解せないやりとりだなということは、ちょっと申し上げておきたいなというふうに思います。

 それで、この間のこうしたいろいろいきさつある東急観光の中で、午前中も質疑があったようでありますけれども、労使関係に今大きな波風が立っているわけであります。

 それで、厚生労働省に一般論としてお尋ねをさせていただきますが、ある企業において、労働組合員にはボーナスは支払わないけれども、組合から脱退すればボーナスを満額支給するという場合、これは労組法の七条一号の不利益取り扱い、不当労働行為に当たり、法律違反だというふうに考えられますけれども、いかがでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の不当労働行為でございますけれども、お話がございましたように、労働組合法の第七条で定められているところでございまして、具体的には、例えば一号で、今お話がございました、使用者は、労働者が労働組合の組合員であること等を理由に労働者に対して不利益な取り扱いをすること、それからもう一つ、三号にも、労働組合の運営に支配介入すること、こういうことは不当労働行為であって、行ってはならないというふうに定められているところでございます。

 一般論でございますけれども、今御指摘がございましたように、使用者が労働組合員であることを理由にその労働者に対しまして賞与について差別的な取り扱いを行うこと、こういった一連の行為というのは、一般的には労働組合法第七条の不当労働行為に該当するというふうに考えているところでございます。

城島委員 そういうことを前提の中で、それではちょっと厚労省にお尋ねをしたいわけであります。

 今、少し東急観光の件を申し上げましたけれども、この東急観光労働組合が昨年十二月に、アクティブ社に対して団体交渉に応ずるように求めて、地労委、東京都地方労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。ことし二月には勧告が出されたわけでありますけれども、会社側が今この受け入れを拒否しているという一連の流れについては御存じでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 東急観光の労使紛争でございますけれども、今お話がございましたように、東急観光労働組合が東京都地方労働委員会に対しまして不当労働行為の救済を申し立てたことは承知しているところでございます。

 本件につきましては、既にマスコミ等でも報道をされるところでございまして、私どもとしましては重大な関心を持って見守っているという状況でございます。

城島委員 私が入手した資料によりますと、いわゆるファンド運用会社であるアクティブ社から東急観光には、先ほどありましたように、代表の青松さんを含め計五人が取締役、そして二人ですか、監査役として派遣され、計七名が取締役として派遣をされているというか就任されているということであります。また、東急観光の取締役会の議長もこの青松さんが務められているというふうに聞いているわけであります。

 この青松さんの権限が、経営者として、賃金を含めた労働条件にも及んでいるのではないかということは、昨年三月に開催された東急観光の会議において次のような発言をされていることからも明らかではないかというふうに思うわけであります。

 すなわち、ポイントだけ申し上げますと、青松さんの発言では、今の給料を下げるということはいたしません、変わる部分ですが、カルチャーを成果主義に変えていきます、賞与は原資を確保した上でがっちりと恥ずかしくないものを払えるようになればと思っておりますと。まさに最高意思決定権限を持っている方の発言と言っても過言ではないだろうというふうに思います。

 ところが、この青松氏らが東急観光の取締役会議長に就任して以来、東急観光労組が通常の労使交渉を申し入れても、経営の実権を握る青松氏は労使交渉には出席をされないということのようであります。

 その結果、何が起きているかというと、ほかの執行役員の方が団体交渉に形の上では応ずることがあっても、実際は、説明に終始をしたり、決定するということにはなかなかいかないという状況が続いているということでありまして、言いかえれば、株主である会社は、労使交渉の当事者ではないということを理由に、どうも、唯一の交渉権限のあるこの取締役会の議長が不在のままに、実質的な労使交渉というのができない状況。すなわち、労使自治が働かない膠着状況が続いた末に、労組としては、思い余って、やむにやまれず、先ほど言いましたように、昨年十二月に東京都地方労働委員会に救済申し立てをしたのが実態ではないかというふうに私は一連の流れを読むと読み取れますし、そういうふうに聞いているわけであります。

 ところが、この労働組合がアクティブ社に対する申し立てをしたところで、まさにこの労働組合に対して、特に労働組合のメンバー、組合員に対して、かなり報復とも言えるような措置が行われるようになったということのようであります。

 東急観光は、社員会というようなものをつくって、それまでの東急観光労働組合からのいわゆる脱退工作及び社員会への加入工作というものを展開して、社員会に入った人にはボーナスを払う、組合にとどまっている人にはボーナスを支払わないという状況が続いているということであります。

 幾つかヒアリングをさせていただきますと、組合員に対しては所属の支店の上司から、例えば、社長の指示なので社員会に行ってくれないかとか、あるいは賞与支給を受けたい組合員は社員会へ入った方がいいよとか、あるいは社員会に入ったらボーナスが出るよ、自分も会社から半分以上は社員会に加入させろというような指示を受けて困っているんだというような管理職の発言があるんだというように報告がされているわけであります。

 まさに、この行為が実際だとすれば、これは不当労働行為そのものであることは明らかでありまして、まさにこうした組合差別によるボーナス不支給は不当だということで、裁判に訴えざるを得ないという状況にまで陥っているわけですね。

 これは報告ですけれども、こういう状況だということの中で、大臣、どういうふうにお聞きになるんでしょうか、大臣の御見解を聞きたいと思います。

尾辻国務大臣 具体的にお話をいただいております本件につきましては、これもお話しいただいておりますように、現在、独立行政委員会であります東京都労働委員会が不当労働行為事件として処理をいたしておるところでございますから、厚生労働省として具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、一般論として言いますならば、企業は、事業活動を行うに当たっては、単に商法上のルールだけでなくて、労働組合法に定めるルールを守ることは当然でございまして、同法で禁止されている不当労働行為を行ってはならないことは、これはもう言うまでもないことでございます。

城島委員 今日本ではまさに、先ほど申し上げたように、金がすべてだとか、いや、そうではないんだ、あるいは企業とは一体だれのものだということの中で、連日のようにいろいろな報道がされて、いろいろな意見が闘わされているわけであります。

 それでもあえてこの労使紛争の事例を私が取り上げるのは、これは単なる不当労働行為事件を通り越していて、まさに日本の社会あるいは企業社会、そういったところの屋台骨を壊しかねない本質的な問題を含んでいるのではないかというふうに思うからでありまして、これが現行のルールの中ではなかなか解決し得ない状況である。したがって、これはやはり何らかのことを考えなければいかぬのじゃないかという問題を提起しているということだと思いますね。そういう中で、今、東急観光の従業員の皆さん、非常に懸命にそういう面では頑張られているんだろう、我々としても応援しなければいかぬなというふうに思っているところであります。

 今、そういう面でいうと、私の問題意識のもう一つは、こういった今の急速な日本の流れの中で、会社を何とか守ろうじゃないかというのは即、クイックリーに検討していますよね、まさに会社法をどうしようかというようなことも含めてでありますが。それ以上に、こういった状況にならないように、まさに、では、そこで働く人たちをどうやって守っていくかということもクイックリーに我々は検討するということが、私は大事じゃないかというふうに思っているところであります。

 今回のこの東急観光の労使紛争というのは、一般化して申し上げれば、当該労働組合とは直接の労使関係にはないファンド運用会社が、いわゆる投資事業組合を通じて当該企業の株を取得するということだけではなくて、その取締役会議長におさまって実質的な経営権を握る、そして労使交渉をある面では空洞化させている、そして、ひどい場合は今回みたいに不当労働行為というのがまかり通っている、こういう図式ではないかと思うんですね。

 これまでの日本の社会のまさに基盤を支えてきたいわゆる良好な労使関係、あるいは労使自治ということの原則が形骸化するのではないかという根本問題をはらんでいるんだろうというふうに私は思っております。国内企業の再編が多くなることが今の状況からすると予測される中で、今後こうした労使紛争が増加して、このままほうっていくと、あるいは社会的混乱が頻発していくんじゃないかということを危惧せずにはいられない状況ではないかというふうに思います。

 そこで、資料十一ページにお目通しいただきたいんですけれども、そこに記載をさせていただいておりますが、これは日本経団連が昨年十二月に発表した経営労働政策委員会報告の中にあるわけであります。すなわち、「労使はいまこそさらなる改革を進めよう」という一端を資料として載せさせていただきました。

 星印のところをお目通しいただきたいと思いますが、「例年の春季労使交渉は、労使が定期的に情報共有・意見交換をはかる場として、大きな意義をもつと考える。そして今後の労使関係においては、賃金など労働条件一般について議論し、さらに労働条件以外の経済・経営などについても認識の共有化をはかることが重要である。したがって労使協議の役割が、労働組合の有無を問わず、」あるなしを問わずです、「一層重要性を増すといえる。」こう述べているわけであります。

 私もそれはそのとおりだというふうに思います。まさに日本企業は、従来から、人を大切にする姿勢というものを経営の根幹に据えてきたわけであって、これが日本的経営のよさの一つであったというふうに思いますし、これは、ある面でいうと、やはり変えてはならない部分だろうというふうに思っております。

 最近では、企業の社会的責任、CSRというのが注目を浴びているわけでありまして、利潤の極大化、株主利益の拡大、そういった目標達成だけではなくて、より広い範囲で、先ほど私が申し上げたような、消費者あるいは取引先、そこで働く人などといったいわゆる利害関係者をしっかりと視野に入れて、社会的存在として企業の役割を果たしていくべきだという協調する考え方が一つ大きく広がっているんだろうというふうに思います。

 そのいわゆる企業の社会的責任において、コンプライアンス、これは基本であり、大前提ではないでしょうか。組合員にはボーナスを払わないなどという不当労働行為そのものは、当然もってのほかではないかというふうに思うわけであります。

 良識ある経営者であれば、あるべき社会の姿を見据えながら、その中で、企業倫理、あるいは行動のあり方というものを根本から考えるものではないのかというふうに思っているわけでありまして、企業の再建はまさに一朝一夕にできるものではなくて、そこで働く人たち、その雇用と労働条件を、長期的に、しかも安定的にさせていくというところにこそ、ある面では時間をかけながら、そういう仕組みをつくっていく、あるいはそういう仕組みに変えていく、そして社員が安心して能力開発に取り組める、そういうことがやはり一番大事な、企業のある面では成長であり、場合によっては企業再建の根本ではないかというふうに私は思っているわけでありますが、大臣の御見解があれば承りたいと思います。

尾辻国務大臣 企業が果たすべき社会的な責任というのは、もうお話のとおりだと存じます。そしてまた、そうした中で、資料としてお出しをいただきましたこの日本経団連の意見、これもまたそうした面を述べておるものだ、こういうふうに考えます。

 そういう中で、私ども厚生労働省の任務は、労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることでございますから、私どもとしては、こうした任務を全うするために今後とも精いっぱい取り組んでまいります。

城島委員 今回のこの東急観光のケースのように、投資ファンド運用会社、いわば純粋持ち株会社というのが経営権を握った場合の使用者性、これについては現行法は手当てをしていないのではないかというふうに思うんですね。今回起こったようなケースというのは、今まで、こういったケースが生ずることを想定してこなかったのではないかというふうに思うわけです。

 これまで、直接の雇用主ではない者についての使用者性、例えば事業持ち株会社と子会社との関係、派遣先企業と派遣元との関係、それから請負発注先企業と請負会社の関係など、労組法上の使用者性、すなわち、団体交渉に応ずるべき立場にあるのかないのかの判断については、最高裁において、基本的な労働条件について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるという考え方が示されているわけであります。これは平成七年の二月二十八日、朝日放送事件の最高裁判決であります。

 それでは、純粋な持ち株会社の使用者性についてはどうかといえば、これは資料にも記載をしておりますけれども、実は、一九九九年、持ち株会社解禁時に一度論議されてきましたけれども、実質的には中断されたままになっているということではないかと思います。

 資料十七ページをごらんいただきたいんですけれども、九九年に、持株会社解禁に伴う労使関係懇談会というのが中間報告をまとめております。二十三ページ、ここに、「団体交渉当事者としての純粋持株会社の使用者性が問題となるケース」が仮にあったとしても、「これまでの判例の積み重ね等を踏まえ現行法の解釈で対応を図ることが適当であると考えられる。」というふうに結論づけられているわけであります。

 といいますのは、八年前でありますけれども、当時は、二十二ページにありますが、使用者側の主張がそこに書いてありますが、そこには、純粋持ち株会社の動きも見えず、問題もまだ生じていないとか、「純粋持株会社においては、グループ内において、戦略的に経営資源の配分を行うのが本来の役割であり、子会社の役員人事と財務しか扱わないのではないか。したがって、純粋持株会社においては、子会社の日常的な経営判断に関わることはなく、また、子会社の労働者の労働条件の決定にまで関わることもない」、こういうふうに使用者側の主張があります。というのは、恐らく当時としては、私もうろ覚えでありますが、本当の実態であったろうというふうに思いますよ。

 ですから、この段階では、例えば、親会社である投資ファンド会社の代表者がその子会社の取締役会の議長におさまって、子会社の労働者の給与とか賞与とかいった労働条件について公の会議において考え方を示すといったようなことを含めて、日常的な経営判断にかかわるといったようなケースは想定できなかっただろうな、また想定していなかったんだろうなということだと思います。

 さらに、この中間報告では、二十四ページを見ていただくとわかりますが、「使用者性が推定される可能性が高い典型的な例」ということで次の二つを挙げておりますね。一つ、「純粋持株会社が実際に子会社との団体交渉に反復して参加してきた実績がある場合」。二点目が、「労働条件の決定につき、反復して純粋持株会社の同意を要することとされている場合 例えば、賃上げ等について、子会社が反復して純粋持株会社と相談し同意を得た上で決めているような場合やその都度純粋持株会社に報告して同意を得ないと実施できないような場合等が考えられる。」

 この二番目にちょっと注目をしたいと思うのであります。すなわち、投資ファンド運営会社の代表がみずから子会社の取締役会の議長となり、その同意がなければ労働条件の決定ができないにもかかわらず、先ほど申し上げたように、労使交渉とは名ばかり、実質的な労使交渉が形骸化しているばかりか、組合員であることを理由にボーナスが支払われないような不当労働行為が横行する場合、これはまさに純粋持ち株会社が経営に大きな支配力を持っているというふうにみなされて、今言った二点目に当てはまるケースではないかというふうに思います。

 日本の経済社会情勢が大きく今変わっているわけでありまして、特に企業再建市場というのは、今、日本企業の再建にとって重要なツールとしてまさに大きな注目を浴びています。昨今、しょっちゅうこういうニュースが大きく報道されることが多いわけであります。

 しかし、投資ファンドとて、当該企業における労使自治、あるいは労使協議という社会的ルールをないがしろにするということであれば、それはまさに、よく言われるように、ハゲタカファンドとかあるいは買収屋といったような悪いイメージがまさにひとり歩きをしてしまうという危険性があるのではないかというふうに思います。

 労働組合員であることを理由にボーナスを支給しないというような、これは今言った代表例でありますが、こういう不当労働行為がまかり通るのであれば、再建企業、再建市場の健全な発展そのものをそういうのが阻害してしまうのではないか。今こういう再建市場は大事ですから、そういうことが健全な発展を阻害するんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、この辺の御見解はいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 持ち株会社の使用者性の問題につきましては、きょういろいろお話をいただきました。そして、平成十一年の持ち株会社解禁に伴いますところの労使関係懇談会の中間取りまとめについても、資料でお出しをいただいてお述べいただいたとおりでございます。

 しかし、その後の、これも先生お話しいただいておりますけれども、企業の投資活動の変化の中で、御指摘ありましたような投資ファンドが株式を保有するというような新しい類型が見られるようになったところでございます。そこで、今後、新たに研究会を設けまして、このような場合における労使関係の実態を把握するとともに、新たな対応を行う必要性について検討を始めてまいりたいと考えます。

城島委員 ぜひそうしていただきたいのでありますが、持ち株会社が解禁された当時に危惧された、この純粋持ち株会社の使用者性に関する問題が現実のものとなってきたということでありまして、そうした状況の中で、EUが九八年にEU指令を出しておりますね。これは、企業譲渡の時点で存在している雇用契約または雇用関係から生ずる譲渡人の権利及び義務は、そのような譲渡の理由により譲受人に移転する、こういうふうにEU指令は規定しているわけでありまして、これは、企業譲渡によってその企業に対して有する労働者としての権利を一方的に奪われることがないようにしようということを明記したものだということだと思います。

 日本では、小泉内閣における規制緩和の名のもとに、企業再編あるいは企業譲渡においてもまさに市場論理が優先されている。先ほど申し上げたように、今回のようなケースについても、今起こっているようないろいろな事象についても、企業防衛をしようというのが先に行くわけでありますが、そこで働く人たちをある面では安心して働けるようにというその防御策がなかなか動きとして出てこないということで、まさに働く人に対して一方的に痛みとかが押しつけられているだけではないかというふうに私は非常に危惧をしているし、その点については怒りを持っているわけであります。

 この際、今大臣ちょっとお触れになりましたけれども、具体的に、持ち株会社解禁に伴う労使関係懇談会、先ほど申し上げましたけれども、そういったことを再開させるとか、あるいは、もうちょっとスピーディーにやるためにも、企業譲渡等に伴う労働者の雇用あるいは労働条件の保護法制、権利義務関係についての立法化といったような作業を視野に入れて、実務者ベースとかあるいは学識経験者といったことを含めた検討会を早急に発足させるべきだというふうに思うわけですよ。

 ですから、ぜひ、企業防衛ということだけにとどまらず、我々、特に大臣の所管であります働く人をしっかりと守って、しかも、日本の一番の財産は人でありますから、そこに対しての対応策ということを責任を持って検討していただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 先生がお話しになっております、企業はそこで働く人を大事にすることが重要という点につきましては、私も全く同感でございます。そして、改めて申し上げますが、先ほども申し上げましたように、私どもの任務は、労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることでございますから、そのために精いっぱい取り組んでまいりたいと存じます。

 そして、これまた既に申し上げましたけれども、新たに研究会を設けまして、新しい労使関係、いろいろお話しのようなこともございますから、労使関係の実態を把握しますとともに、新たな対応を行う必要性について鋭意検討してまいります。

城島委員 ぜひお願いしたいと思います。

 この東急観光の労使の正常化への回復を願いながら、しかも、意外とさらに多くのところで同じようなことが起こっている可能性が非常にあると思います。そうしたところを含めて目配りをしていただきながら、こうしたことが二度と起こらないような策を考えるためにも、今おっしゃったことを早急に、精力的に御検討いただきたいと思います。

 以上で終わります。

鴨下委員長 次に、水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 本日は、幾つかのテーマについて尾辻大臣にお尋ねをしたいと思います。いずれも一つ一つきちんと御答弁いただかなければならない重要なテーマばかりでございますので、ぜひ大臣には明快な御答弁をよろしくお願いいたします。

 まず、学童保育について伺います。

 少子化社会にありまして、ますますその役割が大きくなっている学童保育でございますけれども、私のところの上の子も学童保育のお世話になっておりまして、大変よく育てていただいておりまして、本当に心から感謝をしているところでございます。

 その学童保育に、この年度末になりまして大変なことが起ころうとしております。厚生労働省は二月二十八日の全国児童福祉主管課長会議で、突如として、四月からの予算の組み方を大きく変えることを発表いたしました。つまり、一施設への補助金として、これまであった障害児受け入れ加算、つまり障害児二名以上で年間六十九万円、時間延長加算、年間三十一万円、土日開設加算、すべての土曜日開設で年間二十二万円をすべてなくしまして、一律に約三十二万円だけを上乗せするというやり方でございます。

 そもそも、学童保育の補助単価は余りにも低いわけですから、三十二万円の上乗せそのものが悪いわけではございませんけれども、例えば障害児の受け入れなどは、頑張っているところには補助をするという方針でやってきて、ようやく浸透し始めたところなのに、今回の変更で完全に逆行してしまうことになりかねないと思います。

 これほど大きな変更を、一月二十日の厚生労働部局長会議でも全く知らせないで、二月二十八日に突如として知らせるというのは明らかに異常だと思います。各市町村では、今までの制度に基づいて予算編成も済ませてしまっております。ここに来て突然新しい方針を出されて、本当に混乱しているということでございます。

 なぜこんな急なことになってしまったのか、周知期間として十分だと思っていらっしゃるのか、この際撤回していただけないのか、責任者としての厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 放課後児童クラブに係る補助制度につきましては、本年一月二十日の全国厚生労働関係部局長会議において、交付申請手続の簡素化、補助基準単価等の大くくり化等により、地方自治体の自由度が高まることなどについて検討しておりまして、全国児童福祉主管課長会議の際には具体的に示すということをまずお知らせをしていたところでございます。その上で、今お話しいただきましたけれども、二月二十八日に開催いたしました同会議において具体案をお示しいたしました。

 この日程につきましては、例年に比べまして必ずしも遅いものでもございませんけれども、やはり今お話しいただきましたように、地方自治体における準備などを考えますと、今後は、例えば別途に地方自治体に連絡するなど、より十分な周知期間を地方自治体が確保していただくための工夫は考えていきたいと存じます。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

水島委員 別途に連絡をするということでございますけれども、それが何を意味するのかということをもう少し明確にお答えいただきたいと思います。障害児の受け入れについて別個に御検討いただけるということを意味しているのでしょうか。

 この障害児受け入れは、二〇〇一年から試行事業としてスタートしたもので、二〇〇三年からは、当初四人以上の受け入れだったものを二人以上として運用しやすくしたものでございます。そういう意味でまだまだ新しい制度です。

 この間の補助金制度が功を奏して、障害児を受け入れている学童保育のある市町村は、一九九八年には全体の三四・五%にすぎなかったものが、二〇〇三年には四七・四%となっております。そうはいっても、いまだに全体の半分の市町村では障害児の受け入れをしていないという現状でございます。

 障害児の受け入れが義務づけられているわけでもない、そして市町村の財政も非常に厳しい、このような現状で今回のようないわゆるマルメのようなやり方をしてしまいますと、障害児の受け入れが進まなくなるということを私は大変心配しているわけでございますけれども、大臣、個々への周知というものを、こういうことも含めましてしていただけるのかということをもう一度御答弁いただけますか。

尾辻国務大臣 先ほどもお答えいたしましたけれども、今回、放課後児童クラブに対する補助金の大くくり化につきましては、地方自治体の自由度を高めることでありますとか、交付申請手続の簡素化を図ることなどを目的といたしまして、今お話もございましたが、従来の障害児受け入れ加算等の加算部分を基本部分と一括して基準額を設定するという見直し案を先般の全国児童福祉主管課長会議でお示ししたところでございます。

 しかしながら、すべての加算を基本部分と一括して基準額に入れようという案をお示ししましたけれども、今先生のお話もございますし、特に障害児の受け入れということでいうと、これはまだまだというところがございますから、これは特別に考えた方がいいという判断を実は私どもも改めていたしまして、先生の御質問の趣旨を踏まえまして、地方の自由度を高めるという今回の見直しの趣旨も考慮しつつ、より効果的な補助の仕組みのあり方について早急に検討をいたします。

水島委員 これは、障害児の部分はきちんと別個に対応していただくような方向での御検討をいただくというふうに御答弁をいただいたという確認でよろしいでしょうか。もう一度、議事録に載るように、はいと言っていただけますか。

尾辻国務大臣 そのような方向で検討をいたします。

水島委員 さすがは尾辻大臣、本当にありがとうございます。

 本当に、あさってから四月ということでございますので、ぜひ速やかに御検討をいただいて、障害児の受け入れなどを逆行させないためにしっかりとお取り組みをいただきたいと思います。

 政府がつくりました子ども・子育て応援プランにも学童保育の充実というのは明記をされているわけでございまして、どうやって全国的に実効性を上げていくかということが厚生労働省に問われていると思います。子供の虐待ですとか障害児関連などについては、やはり地域間格差をなくすことを政府の責任の一つとして私は位置づけていただきたいと思っております。

 地方分権の流れの中でのナショナルミニマムの確保のあり方については、以前も大臣に質問をさせていただいているわけでございますけれども、このような観点を持ちまして、今回こうして英断を下していただきましたこと、本当に心から感謝を申し上げますけれども、ぜひこれからもこのように柔軟な対応をしていただけますように、くれぐれもよろしくお願い申し上げます。

 それでは、次に、BCGについて伺いたいと思います。

 こちらもこの四月から大変なことが起ころうとしております。結核予防法の改正に伴いまして、四月からBCGの直接接種が導入されます。この接種時期については政令にゆだねられましたが、政令では、「政令で定める定期は、生後六月に達するまでの期間とする。ただし、地理的条件、交通事情、災害の発生その他の特別の事情によりやむを得ないと認められる場合においては、一歳に達するまでの期間とする。」とされました。つまり、生後六カ月以上の時期の接種については任意接種となってしまい、公費負担の対象とはならず、かつ、予防接種法の被害救済制度の対象外となってしまうわけです。

 この件については、二〇〇四年十一月二十一日付で、日本小児科学会から厚生労働大臣に見解が出されています。この見解では、第一に、定期接種の対象が生後六カ月までとされたことを問題にしています。政令のただし書きの解釈の幅は非常に狭く、市町村等の実情を考慮しない内容となっています。

 具体的には、接種できない理由としての住民側の体調不良、家庭の事情、基礎疾患等で生後直後から六カ月過ぎまで入院していたこと、医師会等の協力や実施体制が整わない場合、小規模の村であって接種機会が少ない場合などは、定期接種としては一切認めず、市町村の法的責任であり、法定期間に接種できなかった場合には、任意接種となるとしているわけでございます。

 この結果、六カ月までに接種を受けなかった人が六カ月以降に接種を希望した場合には、任意接種となるために自費で受けざるを得なくなってしまいます。また、市町村も財政的負担や接種時の事故への懸念から積極的な接種の姿勢がとれなくなります。

 その結果、BCG接種者は減少し、BCG未接種者を増加させ、ひいては小児結核患者増加につながるおそれがあります。BCGは結核性髄膜炎などの重症結核症に効果があると言われておりますので、肺結核だけではなく重症結核症が増加する可能性もあります。また、接種実施の現場は大きく混乱することが考えられます。

 また、任意接種であるということは、定期接種では認められていた接種医の免責、つまり、健康被害について賠償責任が生じた場合であっても、その責任は市町村、都道府県または国が負うものであり、当該医師は故意または重大な過失がない限り責任を問われるものではないというこの免責がなくなりますために、接種側には、接種事故を懸念し、時に接種にちゅうちょを示す場合も考えられ、接種率の低下に影響を与えるおそれも懸念されます。

 まず、小児科学会から出されておりますこの第一の懸念についての厚生労働大臣としてのお答えをいただきたいと思います。大臣、大臣です。

尾辻国務大臣 まず、基本的なことだけをお答え申し上げました後、局長から専門的に答えてもらいたいと思います。

 結核につきましては、我が国は世界的に結核中蔓延国として位置づけられておりまして、乳児の結核の重症化を予防する観点から、今般の結核予防法の改正をお願いしておるところでございます。

 そして、BCG接種の前に行われるツベルクリン反応検査を廃止いたしますとともに、生後六カ月に達するまでの期間にBCGを接種することとしたところでございます。

 その後の答弁は局長にさせますので、お聞きください。

田中政府参考人 ちょっと技術的なことで御説明申し上げます。

 御承知のとおり、BCGの乳児に対する接種でございますけれども、乳児期の、つまり一歳までのお子さんの結核の重症化、これを防ぐというのが早期にBCGを打つ目的でございます。ですから、遅く打ってしまうと、その早期の結核感染による重症な後遺症等を防ぐことができないということでございますので、結核感染前の生後早期に接種をするというふうにした法改正の趣旨に照らして、余り例外規定を広げてしまうということは必ずしも適切ではないというふうに考えているところでございます。

 また、乳児の保護者の希望によりまして、あるいは医師の判断によりまして、BCGを任意接種にするということは可能でございます。

 なお、任意接種につきましても被害者救済制度がございます。

水島委員 何か完全に支離滅裂な御答弁をいただいているわけでございますけれども、これはかなり重大な問題だと思います。

 生後半年までに接種した方が効果が上がるということは、それはそれで認めるとしても、半年までに打つように推奨するということと、半年を過ぎたら一切定期接種として認めないということとは、全く別の話だと思います。

 また、虐待傾向があるような親の場合に、半年を過ぎたからといって経済的問題を理由にして接種しないということは十分あり得まして、そのときにも小児科医が、これは決められていることだからといって子供の利益のために一生懸命説得をしたりということが必要になるわけでございます。

 虐待防止法を所管している厚生労働大臣として、そういうところに思いが至らないわけはないと思うんですけれども、また、少子化対策とか小児医療の充実というかけ声とは裏腹に、こうやってさらに小児科医を萎縮させるような内容の改定をしているというのは本当におかしいことだと思いますし、実際に任意接種ということになりますと、定期接種と全く違った枠組みになるわけでございますので、非常におかしいということになるわけです。

 これで、半年過ぎるまでに接種できないというケースは、いろいろなケースが考えられるわけでございますけれども、そういう医療上の必要があって接種できないというケースまで、例外規定を拡大する、いたずらに拡大するというようなところに一くくりにされるというのは明らかに常識を欠く答弁だと思いますけれども、これはちょっと大臣にお答えいただかないといけないので、最後にまとめて大臣から、ここから先は大臣にきちんと御答弁いただきたいと思うんですけれども、今までのところは、大臣、御理解いただけましたでしょうか。はい。

 では次に、日本小児科学会のもう一つの懸念もこれに多少関連することですので、これについても伺いたいんですけれども、もう一つの懸念というのは、これが出生直後からのBCG接種の積極的な奨励につながりかねないという点でございます。

 我が国では、小児科学会を初めとした専門機関、団体の意見に基づき、生後三カ月以降の接種が標準とされております。きょう皆様のお手元に資料として配らせていただいておりますのは、これは厚生労働省からいただいたものですけれども「予防接種と子どもの健康」、厚生労働省が監修をしておりますが、この六ページの部分を皆様のお手元に配らせていただいております。

 そこを見ていただけるとおわかりになるんですが、BCGがこの表の一番下にありますが、確かに予防接種法で定められた予防接種の期間、法定期間としては生まれた直後から四歳までという白い囲みになっておりますが、できるだけ接種を受けましょうという推奨期間は三カ月から一歳まで、そこの部分に斜線がかかっております。厚生労働省が監修をしている、そして厚生労働省からいただいたこのパンフレットでも、明らかに三カ月からが望ましいということをしっかりと認めているわけでございます。

 BCG接種の最も重い副反応として致死的な全身性BCG感染症が存在しますが、接種時期を早めて、新生児期や生後一カ月などの時期に接種を実施すれば、免疫不全症児に接種をしてしまう、致死的な全身性BCG感染症を生じさせる可能性があります。諸外国の報告では、乳児の致死的副反応は百万人に一から一・五六例程度で、その場合の多くが免疫不全者に対する接種であったと言われております。

 我が国でも極めてまれですけれども重篤な副反応報告も見られまして、可能な限り副反応を減少させる努力が求められています。そのために我が国では、従来から、免疫不全者に接種することを避けるためにBCG接種時期は集団接種では生後三カ月からとし、新生児期や生後一カ月などの時期を避けてきました。重症複合免疫不全症を主とする細胞性免疫不全症候群三十四例の感染起始月齢を見ると、七四%が三カ月以前であったと報告をされております。このことは、新生児期に接種せず、早くても三カ月以降に接種してきたことの妥当性を意味しております。

 また、最近の症例の登録事業のデータによりましても、重症複合免疫不全症の発症月齢は三カ月以内が四五・八%、慢性肉芽腫症でも発症月齢は三カ月以内が三七・八%あったと言われており、原則生後三カ月からの接種の妥当性が示されていると言えます。

 さらに、諸外国では、結核感染リスクが高くBCGの副反応より結核感染によるリスクの方がはるかに高い途上国では生下時すぐの新生児期接種が一般的ですけれども、結核感染リスクが低下してきた欧州の各国では、新生児期に接種することで避けがたい致死的な全身性BCG感染症を回避する目的で、接種時期の乳児期後期への変更が行われてきているというのが現状でございます。

 定期接種の対象を今回生後直後から六カ月というふうに限定してしまいますと、接種時期がどうしても前倒しになってしまうという危険性があると思います。この日本小児科学会の二点目の懸念について、大臣の御答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、乳児期の結核の重症化を予防する観点ということで、接種時期を生後直後から生後六月に達するまでの期間とした、できるだけ早い方がいいだろうというのが今回の法改正の趣旨であるということは再三申し上げております。ただ、そのことについて専門家の間でもさまざまな御意見があることは承知をいたしております。

 そして、二点目のお尋ねでありますが、これは率直に言わせてください。専門家でない私には、非常にわかりづらい部分が多くございました。したがいまして、少し勉強させていただく時間をお与えいただきたいというふうに存じます。

 そして、申し上げましたように、専門家の間でもさまざまな御意見があるわけでありますから、そしてまたケース・バイ・ケースで、まさにいろいろなケースも考えられるというようなことでありましょうし、私なりの勉強させていただく、検討させていただく時間をお与えいただきますようにお願いを申し上げます。

水島委員 先ほどいろいろなことをずらずら言いましてわかりにくかったかもしれないので、簡単にまとめて申し上げますと、つまり、免疫不全のお子さんにBCGを接種してしまうと、それが非常に重症な、時には命にかかわるような副作用を起こすことがある。その免疫不全の特にそういうBCGと相性の悪いもの、これが診断されるのは大体三カ月以内に、大ざっぱに言ってしまうと約半分が診断される。ですから、まず集団接種、一律に接種する場合には三カ月以内を避けるということで、そういう非常にハイリスクなお子さんたちの約半分をそこで避けることができる、リスクを避けることができるということになるわけです。

 集団接種の場合はそのような考え、また、もう一つは、主治医がきちんとついていて、このお子さんはどうだろうな、ちょっと怪しいなと思いながら慎重に様子を見ていくというケースもございます。そういう場合に、何とかこの子にはBCGは打てそうだという判断が、一歳ぐらいになってからその判断が下されるというケースも実際にあるわけでございます。そういうときに、単に半年を過ぎているからこれは定期接種として認めない、そのようなことは医学的に考えてもどうしてもおかしいわけですけれども、最初に申しました、まず三カ月以内を避ければ非常にそういう命にかかわるような重度の副反応を約半分のお子さんで避けられるという場合であれば、厚生労働大臣としての当然の判断としては、三カ月以内は避けましょうというのが当たり前の判断だと思いますけれども、そこはいかがなんでしょうか。

尾辻国務大臣 私が承知いたしておりますことを申し上げます。

 今のお話でありますけれども、およそ数十万人に一人の割合で発生するケースだというふうに承知をいたしております。そして、これらの疾患というのは必ずしも一般的に生後三カ月の間に診断されるわけではなく、これを理由として接種を生後三月以降に限る必要まではないというふうに承知をいたしております。

水島委員 全然納得していないんですが、ちょっと厚生労働省の方に確認したいんですけれども、今の大臣の答弁、また今回の方針に基づきますと、今お手元に配っているこの図、斜め線がかかっているこの部分、ここの書きぶりというのはどういうふうに変わるんでしょうか。

田中政府参考人 御指摘の「予防接種と子どもの健康」の記述でございますけれども、これは財団法人予防接種リサーチセンターのつくりましたガイドラインでございます。今回の法改正後は、接種時期は生後直後から生後六カ月に達するまでの期間というふうに法令上書かれておりますので、そのとおり記述されるようにお願いしているところでございます。

水島委員 もう少し、この白い枠組みの法定の部分と推奨の接種の時期、斜め線をかけているところ、これについてもっと教えてください。

田中政府参考人 繰り返しになりますけれども、ゼロから六カ月までのところになるということでございます。

水島委員 ゼロから六カ月、全部べたで斜め線がかかるというふうに考えていいんですか。

田中政府参考人 斜線というのはあくまで推奨するということでございまして、新しい版では白になっております。つまり、これは法律に書かれているのがこういうことであるということで、そのように表現をさせていただいたということでございます。

水島委員 白といいましても、ほかのポリオ、三種混合、麻疹、風疹、日本脳炎、みんな白の枠の中に斜線部分が必ずあって、麻疹なんかもかなり短いんですがきちんと推奨期間というのがあるんですけれども、BCGだけただの白抜きですか。

田中政府参考人 これは、予防接種法上どういうふうに規定されているのかということを反映したものなんですが、予防接種法上は、白い部分が法定に、記載されているような表現ぶりになっておりまして、通知でもって推奨期間を定めているところでございます。そうすると、そこの部分を斜線にしてあるという表現になっております。BCGの場合はそういう推奨するということを現在のところしておりませんので、法律に書かれたものだけが表現されているということでございます。

水島委員 推奨するという通知をしていないという割には、なぜ厚生労働省が監修しているここで斜線部分というのが三カ月からになっているんですか。

田中政府参考人 ちょっと過去のことに関しては、よく詳細わかりませんけれども、恐らく、その後ろの方に編集委員というのが書かれておりますので、その先生方の御判断でそういう推奨というのがされているのではないかというふうに判断しているところでございます。

水島委員 先ほどの御答弁、その法律と通知に基づいてこれをつくっているというのと、今の後ろの先生方の御意見というのと、既に矛盾しているわけなんです。

 先ほどから、大臣、恐らくきちんとした情報を上げてもらっていないんじゃないかなと思うんですけれども、これは明らかに、大臣が今まで役所の方からお聞きになっているということは、結局、三カ月までの部分に何もその大半が診断されるわけではないとか、ちょっと間違った説明を受けているんじゃないかなという気がするんです。尾辻大臣がそのような事実を踏まえた上で、まさかこんな判断をされるわけがないと私は思いますので、もう一度正しいレクチャーを受け直していただきたいなと思うんです。

 大臣、先ほどから申しているように、例えば免疫不全の疑いがあるとか、あるいは物すごく低体重で、未熟児で生まれた赤ちゃんとか、そういうお子さん、長期にわたって入院されていたりとか、全く生き延びるだけで精いっぱいで、それ以外のことがとてもできないような状況のお子さんというのが生まれますよね。そういうお子さんが、例えば半年過ぎるまで入院をされていた、小児科医もこんな子にBCGを打つなんてとんでもないと言ってきた。そういう子が、半年を過ぎました、どうにか元気になってきました、では、結核になると困るからBCGを受けましょうといったときに、その子が定期接種にならない。それは任意で、どうぞ自分のお金を払って、それで何か問題が起こっても小児科医のリスクで、どうぞ勝手にやってください、厚生労働大臣は全くそんなの知りません。そんなことが言えるんでしょうか、大臣。

尾辻国務大臣 確かにその後は、六カ月を過ぎると、任意の接種として接種していただくことが当然のこととして可能であるというふうには考えておりますけれども、そのことに対してどう考えるかというような今のお話でもございますし、前段の今の先生のお話もありますから、私ももう一回よくその辺の話は聞き直してみます。

水島委員 私の一番の希望は、今までどおりに、法定期間を変えないで、ただ六カ月以内に受けてくださいということをぜひ推奨だけしていただきたいというのが私の希望でございますけれども、どうしてもそんなのだめだという場合には、せめて、この定期接種と認めるべき要件のところに、「医師が必要と判断する場合」、それを一言入れていただくだけで、その子たちの個別の状況を医師が判断できるように、一番わかっているのは主治医ですので、その医師の意見が反映されるように、せめて、最低限それだけでも変えていただきたいと思うんですが、先ほど学童のことについてすぱっと御英断をくださった大臣のことですから、よもや、これはだめだとおっしゃるわけはないと思うんですけれども、尾辻大臣は子供の味方ということで、これは絶対に御検討いただけると、もう一度一言お約束いただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 検討はいたします。

水島委員 ぜひ、きょう私が質問申し上げましたこと全部にすらすらと答えられるような検討の結果を出していただきたいと思います。

 私、何も非常識なことは申していないつもりでございます。当然、厚生労働行政にかかわる方たちにとって当たり前のことを申し上げてきたつもりでございますので、ぜひ検討をしていただいて、その結果をきちんといただけますように、そして必ず、この方針を、これは政令事項でございますので、そこに一言その要件を加えるということを何らかの形で各市町村に伝わるようにしていただけますように、どうぞ必ずよろしくお願い申し上げます。今、力強くうなずいてくださっておりますので、尾辻大臣なら必ずやり遂げてくださると楽しみにしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。これも、もうあさってからの話ですので、駆け込みで申しわけないんですけれども、小児科学会の方は去年から言っているようでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、残り時間があと二十分になってきたんですけれども、次に、エイズ及び性感染症についてお伺いしたいと思います。

 エイズ動向委員会の報告によりますと、二〇〇四年の速報値では、HIV感染者七百四十八件、エイズ患者三百六十六件といずれも過去最高となっておりまして、また、献血された方からのHIV抗体・核酸増幅検査陽性件数も九十二件、十万件当たりの陽性件数は千六百八十一件で過去最高となったとあります。

 まさに危機的な状況にあると思われますけれども、大臣はそのような認識をお持ちになっておりますでしょうか。

尾辻国務大臣 御指摘のように、エイズ動向委員会からの報告によりますと、速報値ではございますけれども、二〇〇四年の一年間に新たに報告されたHIV感染者、エイズ患者は、合計千百十四件と、初めて一千件を超えております。

 また、これまでの累積数も約一万件、正確に言うと九千七百八十四件でございますが、となっておりまして、極めて危機的な状況が続いておるというふうに認識をいたしておるところでございます。

水島委員 正しく認識していただけているということでございます。

 また、最近、G7の中では、ここのところエイズ患者がふえ続けているのは日本だけということで、先進国のエイズ関係者などの集まりでは、日本のエイズ対策の取り組み方の甘さが話題になっているということを医者の仲間などから伺うことがございますけれども、エイズ患者がふえ続けているのはG7の中では日本だけというのは事実なんでしょうか。

尾辻国務大臣 今の御指摘の点でございますけれども、HIV感染者まで含めて考えますと、例えばイギリスにおいても増加傾向が見られるところではございますが、エイズ患者に限って言いますと、御指摘のとおりに、日本においてのみ患者数が増加しておるところでございます。

水島委員 このようなゆゆしい現実を前に、国としてはどのような取り組みをしておられるのでしょうか。また、その効果はどのようになっているんでしょうか。

尾辻国務大臣 先ほど申し上げましたエイズ動向委員会の報告でございますが、その中に、我が国におけるエイズの最大の感染経路が性的接触であることを言っております。そのことを踏まえまして対策を考えておるわけでございますが、感染拡大を防止するために、HIV、エイズに関する正しい知識の普及啓発、それから利用者の利便性に配慮した検査体制の充実、さらにエイズ治療拠点病院における医療体制の整備などの取り組みを進めておるところでございます。

水島委員 効果も聞きました。

尾辻国務大臣 失礼いたしました。

 それらの効果を見ますと、例えば、これらの取り組みにより保健所等においてみずから検査を受ける方々の数が年々増加しておるところでございます。

水島委員 今大臣がおっしゃいましたように、エイズと性的接触ということは重大な関係がございまして、エイズの前には性感染症ありという言葉をよく耳にするわけでございます。HIV、エイズが拡大する背後には性感染症の拡大があるということでございます。日本における性感染症の現状もかなりゆゆしいものとなっておりますけれども、大臣の現状認識と、それに対してどのように取り組まれているのかの御答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 お話しのとおりでありまして、性感染症は、若い男女における大きな健康問題の一つでございまして、重要な課題と認識をいたしております。

 そして、発生動向調査の結果によりますと、増加傾向にあります性感染症も認められますことから、今後も、発生動向の的確な把握に努めますとともに、先ほど申し上げましたものとダブるところもございますけれども、感染予防のための正しい知識の普及啓発、保健所が行う性感染症検査の支援、相談指導の実施など、取り組みを今後も積極的に進めてまいりたいと考えております。

水島委員 私も、厚生労働省が出されています性感染症に関する特定感染症予防指針を拝見させていただきました。これを読みますと、実にきめ細かな対応策がまとめられておりまして、感服をいたしました。今、これの見直し作業に着手しているということも聞いております。もちろん、時代に即した検討を加えていくということはとても大切なことでございますけれども、それ以前に、ここに提起されておりますきめ細やかな一つ一つの事項がどう実行されているのかということの検討が必要だと思いますけれども、どのように検討されて総括をしていらっしゃるんでしょうか。これも大臣にお願いいたします。

尾辻国務大臣 今御指摘いただきました予防指針でございますが、これは、感染症法に基づきまして平成十二年に策定されたものでございます。同指針に沿いまして、国、地方公共団体、医療関係者、民間団体等が連携して普及啓発等に積極的に取り組んでおるところでございます。

 厚生労働省でも、厚生労働科学研究事業を通じまして、同指針の活用状況の把握に努めますとともに、性感染症対策をより実効性の高いものとするために、エイズ・性感染症ワーキンググループにおいて同指針の見直し等についても検討を行っておるところでございます。

水島委員 具体的に、今まで足りなかったところというのはどのようなところというふうに、大ざっぱで結構ですけれども、どういうふうにとらえていらっしゃるんでしょうか。

田中政府参考人 今具体的に申し上げることはできないんですけれども、例えば、普及啓発につきましては必ずしも十分ではないという御指摘をいただいておりますし、検査の体制につきまして、先ほど大臣が言われましたが、検査件数はふえているということでございますけれども、夜間あるいは休日等における検査というのが必ずしも十分ではないというようなこと、あるいは、医療に関しましてもまだまだ不十分であるというような御指摘をいただいているところでございます。

水島委員 今何でお答えいただけないのかわからないんですけれども、これはきのう質問を事前通告しておりまして、その質問取りのときには、教育機関との連携が悪いとかずばりお答えになっていたので、それをちょっと今御答弁いただきたいんですけれども、どうでしょうか。

田中政府参考人 今申し上げましたのは、私どもの省の中の問題でございますけれども、他省との連携という面でも必ずしも十分ではない点は御指摘いただいております。

水島委員 まさにそれなんですね、今まで足りなかったことというのは。厚労省が書き上げられたものは本当にきめ細やかですばらしいことが書いてあるんですけれども、十代までの若者、子供たちというのは学校に行っているわけですから、こんなすばらしいものが仮に保健所にあったとしても余り関係ないんです。いかに、これを教育現場と連携して、実際に当事者となる子供たち、若者たちの目に触れさせるかというところが重要であって、厚生労働省内のことばかり総括されていても全く意味がないということをきょうは声を大にして申し上げたいんですけれども、今まさにそれを実演していただけたものということで、ぜひ、大臣には、これが現状なんだということをまず御理解いただきたいと思うわけでございます。

 そして、教育機関との連携、後ほど続けさせていただきたいんですが、ちょっとここで過去の復習をさせていただきたいんです。私、二〇〇二年七月十七日の厚生労働委員会で、十代の性の問題について質問をさせていただいたことがございますけれども、そのときに、性感染症の問題とともに、十代の人工妊娠中絶の多さという、これもまた重大な問題について質問をいたしました。その際に、私は、緊急避妊薬について質問をいたしました。

 日本以外の国では緊急避妊法というのがございまして、レイプされた、コンドームが破損した、避妊できなかったなど非常事態のとき、七十二時間以内にある薬剤を飲んだり、子宮内避妊具を使ったりという方法がとられております。二〇〇二年七月の段階では、開発に取り組んでいる企業が一社あるので、その状況を見て適切に対応したいという御答弁をいただいておりますけれども、これはその後どうなったんでしょうか。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 緊急避妊薬の問題でございますけれども、現在開発に取り組んでいる企業が一社ございまして、治験届を提出していただきました。ただ、内容に十分でないという点がございまして、企業の方からもう一回届け出を取り下げて治験計画を見直すということのお話がございまして、現在企業の方で見直しが行われているというふうに承知をいたしております。

 当該企業は、接触いたしましたところ、専門家の意見も聞きながら早期に治験を開始できるように検討中であるというふうに聞いておりますので、今後、その開発が適切に進められますように、私どもといたしましても、学会等の意見も聞きながら、医薬品医療機器総合機構による治験相談の制度を活用するなどいたしまして、適切に対応していきたいというふうに考えております。

水島委員 この緊急避妊法というのが存在しないのは、先進国の中では日本だけだというふうに伺っております。日本人は特に望まない妊娠が多いわけですから、本当に心も体も傷つける人工妊娠中絶を防止していくためにも、これは早急に緊急避妊法を使えるようにすることが重要だと思っております。

 今治験のことについての御説明があったわけでございますけれども、本当にこの緊急避妊法のようなものが治験になじむのかというのは、私、とても疑問がございます。そういうレイプされたとか何か突然の非常事態で、いつ訪れるかわからない人を待ち続けて、来院した場合に、同意書をとって必要な措置がとれるのかどうかというと、ちょっと考えてみれば、これは変な話なんです。

 それで、アメリカも、EU諸国も、自国での治験結果を踏まえて承認したのではなく、WHOの治験結果をもって承認をしているわけでございます。薬剤の安全性の検討については、もちろんこれはきちんとしなければいけませんけれども、望まない妊娠に苦しむ女性たちが、いつできるかわからない治験の結果を待てるんでしょうか。これは、このままの状態を放置していいのかというのはとても疑問が残ります。

 二〇〇二年に質問をさせていただいて三年近くが今たっているわけでございますけれども、もうこんなにたっているわけですし、WHOの治験結果のみで承認した国もアメリカとかEU諸国とかあるわけですから、国民の幸福を願って、そのような超法規的な措置はとれないものなんでしょうか。これは大臣に伺いたいと思います。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

阿曽沼政府参考人 治験の問題は、御指摘のように大変デリケートな問題でございます。それで、今この薬につきましては、開発をする企業が早期に治験を開始できるように努力をしているということでございますので、私どもとしてはそれを見守りたいと思っております。

 ただ、WHOの治験をどう活用するかとか、あるいは海外の治験をどう活用するかということについては、当然、十分意を酌み取っていきたいというふうに思っております。

水島委員 では、これはきちんと具体的にいつまでに何をしていただけるという形で、もう一言御答弁いただけますか。

阿曽沼政府参考人 具体的にいつまでとかいうことについては申し上げるわけにはいきませんけれども、いずれにいたしましても、企業等あるいはまた関係学会とも十分御相談して対応していきたいというふうに思っております。

水島委員 官僚の方がお答えになった感じとしては前向き答弁かなという感じがするんですけれども、大臣、これは本当に、日本だけがそういうものが使えない。その結果として、結果として中絶をしなければいけない人ができてしまっている。それも、レイプとか、全く本人に罪のないようなことでこういう被害に遭っている。そういうことが放置されているのは先進国では日本だけということは、もしかしたら大臣は今初めてお聞きになったかもしれないんですけれども、何かしなければいけないなということは今御答弁いただけますでしょうか。

尾辻国務大臣 少なくとも五十カ国以上で販売されておるということでございますから、早急に検討しなきゃならない課題だとは考えております。

水島委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それで、残り時間が五分になってきたんですが、きょう文部科学省からもいらしていただいておりますので、ちょっと一つ質問させていただきたいんです。先ほどの文部科学省との、教育現場との連携ということなんですけれども、先ほどのこの性感染症の特定感染症予防指針では「近年増加が報告されている若年層を対象とした普及啓発を予防対策の中心とする必要があるため、学校等におけるいわゆる性教育と積極的に連携していく必要がある。」と明記をされているわけでございますけれども、これに基づいて、エイズや性感染症予防を念頭に置いた文部科学省及び学校での取り組みの現状を教えていただきたいと思います。

尾山政府参考人 お答え申し上げます。

 性感染症の予防の上で学校教育の果たす役割は極めて重要であると認識しておるところでございます。

 具体的には、エイズや性感染症につきまして、中高等学校の保健体育科を通じまして、その疾病概念、感染経路及び予防方法のほか、予防には社会的対策とともに個人の適切な行動が必要であることについて理解できるようにすることとしておるところでございます。

 また、文部科学省では、性感染症に関する教師用指導資料でございますとか、中高校生を対象といたしましたエイズを知るためのパンフレット等を作成、配付しておるところでございます。さらに、学校の要請によりまして各診療科の専門医の派遣を行うなど、学校と産婦人科医等が連携しながら児童生徒の心身の健康相談や健康教育を行うために、学校・地域保健連携推進事業を平成十六年度より開始しているところでもございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも、性感染症の予防の重要性にかんがみまして、厚生労働省とも連携しながら、学校教育における性教育の充実に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

水島委員 日本家族計画協会の北村先生が行いました全国調査の結果が今手元にございますけれども、六割を超える国民が、コンドームの使い方については中学卒業までに知っておくべきだと回答しております。性感染症予防にはコンドームが必須であるということは常識となっているわけでございますけれども、やはり義務教育の間に自分の健康を守るための最低限の知識は身につけられるようにするのが文部科学省としての責任ではないかと思っておりますが、このあたりはきちんと中学までに教えられているんでしょうか。

尾山政府参考人 コンドームについてでございますけれども、中学校の保健体育科におきまして、エイズや性感染症の予防方法について指導することといたしておりまして、コンドームを使うことが有効であることにも触れることになっておるところでございます。

水島委員 有効であることにも触れるということなんですけれども、自分自身の中学時代なんかを振り返っても、ちょっと触れられたようなことを覚えているとはとても思えませんので、やはり教育のあり方というものは本当に工夫していただく必要があると思います。

 教育のあり方としては、科学的な事実をきちんと教えるということが第一の柱、そして、性という問題を通してお互いの人格をどのように尊重し合うか、そのためのコミュニケーションの方法はどうあるべきかといったことを教えるのが第二の柱だと思っております。

 この双方を踏まえた効果的な教育方法の一つにピアカウンセリングがございます。日本語で言えば、同世代同士の話し合いというところだと思いますけれども、ピアカウンセリングを効果的な教育法の一つとして御認識いただけていると思いますが、そのような認識に基づいて、さらに厚生労働省と文部科学省ときちんと連携をしていただきたいと思います。

 最近、性教育批判が少数派によって繰り返されているだけではなく、それにおびえた学校がしり込みして、国民の基本的権利としての学習機会を奪ってしまっているということは許しがたいことであると思っております。方法論には、もちろん今申し上げましたように、もっと改善すべきこともあると思いますけれども、しかし、一たんインターネットやビデオなどに向かえば、目を覆いたくなるほどの性情報がはんらんしているわけですし、きちんとした性教育によって、科学的、具体的な情報を提供しなければ、子供は偏った情報のみにさらされることになってしまいます。

 教育現場の果たす役割は限りなく大きいと思いますので、ぜひ、これは厚生労働大臣として、文部科学省との連携を、先ほど見ていただいたとおり、本当にそれぞれの省庁の中にとどまっている限りこれは全く効果をあらわさないということになりますので、ぜひこれはきちんと意気込みを持っていただきたいと思います。

 また、世界では常識となっております、先ほど言いましたような緊急避妊法などが使えないということが、逆にコンドームの使用に積極的になれない原因になっている可能性もございますので、エイズ、性感染症を、感染症という視点だけでとらえるのではなく、人間の性と生殖に関する健康という広い視野から取り組んでいただきたいと思います。

 そして、最後に一言申し上げますけれども、昨日の参議院厚生労働委員会で民主党の朝日俊弘議員が質問しておりましたが、心神喪失者医療観察法について私からも一問質問させてください。

 これは、二〇〇二年から二〇〇三年にかけて国会で大議論になった法律でございます。大臣は当時大臣ではありませんでしたけれども、私たちは民主党としての対案を提出しまして政府案に反対いたしましたけれども、それを押し切って無理やり成立させたという経緯があるのは大臣も御存じだと思います。

 ここのところの報道によりますと、施行日までに専門病棟が確保できないので、経過措置としての代用を可能にできるように施行期限前に法改正する検討に入ったということが言われておりまして、きのうの質問に対しまして、大臣は、とりあえず努力はするけれども法の施行は必要というような答弁にとどまっております。

 あれだけの議論を経て、鳴り物入りでスタートさせる制度なのですから、準備が整っていないのであれば、法施行を凍結させるのが筋だと思います。まさか代用などということはあり得ないと思いますけれども、最後にその点だけ確認させていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 医療観察法の件でございますけれども、これは精神医療や精神保健福祉を底上げするために、どうしてもこの法律をしっかりと施行することが必要不可欠であるというふうに考えております。このことは昨日も申し上げたところであります。

 確かに、指定病院の確保ということが非常に厳しい状況にあることもまた事実でございます。このことも申し上げました。

 そこで、私どもとしては、とにかくぎりぎりまでの努力をさせていただきたいということを今申し上げておるところでございます。

水島委員 今大臣がおっしゃったようなことは、私たちは当時の審議のときからずっと指摘をしてきたことばかりでございますので、とりあえず、きょうは一言、宣戦布告のようにさせていただいて、これからしっかりとこの点については議論をさせていただきますように、くれぐれも安易なことをされないように最後にお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、本多平直君。

本多委員 民主党の本多平直と申します。

 きょうは、初めて厚生労働委員会で質問をさせていただきますので、大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、きょうテーマを一つだけに絞っております。新型インフルエンザへの対策、日本としてどう取り組んでいるのかという課題でございます。

 この委員会は専門家も多いのでございますが、新型インフルエンザというと、普通に今もはやっているインフルエンザと言葉が似ているのでどうしても誤解をされがちでございますけれども、その被害の大きさ、例えば亡くなる方の多さでも全く違うものであるということを、まず委員の皆さん、そして大臣にもしっかりと御認識いただきたいと思います。

 例えて言えば、第一次世界大戦のときに、大体あのころは人口が今の約三分の一ですけれども、その当時に三千万人から四千万人が世界で亡くなった、そういうものが数十年単位で世界では繰り返されている。それが鳥インフルエンザと関連がある、変異してきて起こる可能性があるわけですから。ちょうど鳥インフルエンザの流行が去年もありました。そして、今もまた北朝鮮などで報告をされています。大変危険な状態になっているという認識をまずしっかりと持っていただきたいというのが一点でございます。

 そして、これの発生を防ぐことはできないわけですから、世界各国、起こったときにできるだけ被害を小さくする、そういう観点で対策に取り組んでおるところでございます。

 それで、どれぐらいの被害が予測されているのかということをまず私の方から申し上げますと、例えば第一次世界大戦のころのスペイン風邪と同程度の場合、これは国立感染症研究所の学者の方の予測でございますが、少なくとも人口の約二五%、つまり、初めてかかるわけですね、今まで抗体がないわけですから、理論上一〇〇%の方がかかってもおかしくないけれども、過去の例からいうと、国民の大体二五%から四〇%がかかる、世界的にもそういうことになります。そして、世界でいうと六千万人が死亡するという予測の数字が国立感染症研究所の学者さんで出ている。そして、もっと強力なものが出た場合には、死亡者がそれこそ億という単位での予想も出ているということもまず御理解をいただきたい。

 そして、そういった予測以上に、皆さんが一応これで検討された小委員会での予測でも、日本国に限って言っても、患者数が、少なくても約千三百万人、そして多いときは二千五百万人。そして死亡者数も、少ないときが六万八千人、多いときは十六万七千人。この十六万人という数も、スペイン風邪タイプではなくて、少し前にもうちょっと弱い新型インフルエンザ、香港風邪などがはやったんですが、そのときの少な目の数なんですね。

 こういった大変に大きな被害が出る可能性のある新型インフルエンザの対策についてお伺いをするということなんですが、実は、大臣にお伺いしたいんですけれども、私は安全保障委員会などにも属していまして、いろいろな危機管理の話をします。日本に今起こり得る危機として、この十六万人、人が亡くなるということだけに限って言うと、例えば地震のこともいろいろ議論されていますけれども、これだけ、十万のオーダーで人が亡くなるということを政府が、政府の研究会が認めているような危機というのは、ほかにありますでしょうか。国務大臣としてもお答えをいただきたいんですが。

尾辻国務大臣 今頭に浮かびますのは、大型地震でかなりのそういう危険を予測しておると思いますけれども、今私が思いつくのはそれぐらいでございます。

本多委員 そのとおりなんですね。大型地震で大体、東海地震でも一万を超えない。そして、東南海からあっちの方で起こったときにやっと二万弱の数字を政府でも予測している。政府の予測ですから、私たちから言うとこれでも少な目だと思うんですけれども、それでもその程度。ですから、これでも本当に日本にとっては大危機なわけですけれども、その十倍の規模のことを厚生労働省さんは自分たちがつくった検討会で死者を予測されているということをまず認識していただきたいと思います。

 それで、その対策なんですが、これが非常に私、納得がいかないんです。

 幾つかの対策がありまして、起こったときに、治すわけにはいかないけれども症状を軽くする、まず薬を飲むという方法と、それからワクチンという二つの方法があります。ワクチンの方は、つくるまでに、起こってから何カ月か時間がかかります。ですから、ワクチンも大切な論点なんですが、ひとつ薬という論点とワクチンという論点があるのをまず御理解いただいて、二十分しかないのでワクチンはきょうはおいておいて、薬の方、当座、被害が軽く済む、亡くなる方を減らす、特にお医者さんなんかが亡くなったら大変だから、お医者さんなんかにはしっかり薬を飲んでもらう、その薬の話です。

 これを世界的にもちゃんと備蓄しておけということがWHOでも言われております。それで、この研究会でも、しっかり備蓄をせよという、私から見ると少ないんじゃないかという数ですけれども、しっかり備蓄の計画が出ました。多分これにも基づいてだと思うんですが、厚生労働省さんとしてはしっかりと予算で概算要求をされたはずですけれども、今どうなっているかというよりも、まず、どんな概算要求を予算の査定の前にされたのかという、概算要求の方はおわかりになりますか。ちゃんと通告はしてあるはずでございますが。

尾辻国務大臣 細かな数字は今探しておりますけれども、大きく申し上げたいと存じます。

 まず、私どもとしては、二千五百万人分の備蓄をしたい、こういうふうに考えておりまして、二千万人分が流通在庫としてある。それで、五百万人分を国が三分の一、都道府県が三分の二という割合で、足らない分が五百万人分ですから、これを新たに備蓄したいという考え方で概算要求はいたしたところでございます。

本多委員 そのとおりです。この厚生労働省の概算要求にも私は後からけちをつけたいんですけれども、それが財務省の切り捨てによってどういう予算に今回の予算でなっているのか、厚生労働省、大臣で結構ですからお答えください。

尾辻国務大臣 六十万五千人分を五年間で備蓄するという予算になっております。

本多委員 そうなんですね。まず最初のところで、私はそれでもいろいろ問題がある厚生労働省の概算要求、これは四億三千万円なんですよ。日本全体の予算からいってそれ。それを財務省というところは一億五千万円に削ったわけです。

 それで、私は、財務省のこういう査定というのは常に批判するわけじゃ当然ありません。むだ遣いを削らなきゃいけない、重要な役割を果たしているわけなんですけれども。事これにおいてこういう、人数ががくっと減っているわけですから、そのこと自体ももちろん問題なんですが、もう一点、今回、財務省によって削られて財務省によって押しつけられたときにスキームが変わっているんですよ。では、どういう人なんですか、この六十万人というのは。

尾辻国務大臣 この六十万五千人がどういう内訳になっておるかといいますと、まず診療等に当たっておる人たち、この人たちがまず頑張ってもらわなきゃいけない。人を助ける側の人ですから、助ける側が、俗っぽい言い方ですがやられてしまうというのは困るということで、まずその人たちが二百四十二万一千人おる、大体そんな数字でありますが、先ほどの二五%という数字がありますから、この人たちも二五%がかかるという前提で、二五%を掛けての数字。

 それから、六十万五千人のうちに、あと、社会機能維持、自衛官であるとか国家公務員等でありますけれども、どうしても社会機能を維持する人たち、この人たちもまずということでその六十万五千人を計算しておる、こういうことでございます。

本多委員 大臣の御説明のとおりなんですけれども、私、これはびっくりしたんですよ。つまり、人数を減らしただけだったら、財務省がよくやっている話で、そうかなと思うんですけれども、その減らす理屈、この二百四十万人分しか薬が要らないという理屈が、大臣、今の大臣がおっしゃったうちの、二百四十万のうち二百三万人はいいんですよ、医療従事者だから。まず医療従事者が大変なことになっちゃったら大変だから、まず医療従事者に薬を飲んでしっかりしてもらう、これは賛成です。自衛隊まではいいとしましょう。

 ところが、この財務省の足し算には国家公務員の内部部局というのが入っているんですね。三万八千人、これは何なんですか。これはどういう方たちだと思いますか。

尾辻国務大臣 これは社会機能維持ということで上げておるわけでございますが、手元にあります資料で申し上げますと、自衛官がまず二十五万三千人、それから内部部局が今お話がありましたように三万八千人、それから治安関係、海上保安官等でありますが、これが五万人、入管、税関等が一万三千人、それから国会等として三万二千人、こういう内訳になっておるところでございます。

 これを社会機能維持としてどう判断するかだ、こういうことであろうかと存じます。

本多委員 今、国会等三万二千人というのは、委員の皆さんも大臣もわからないと思うんですけれども、裁判所の職員とか全部です。国会職員、国会議員も入っているそうです、ありがたいことに。こういうのを足して三万二千人だそうですけれども、これは、社会機能の維持ということで足し算するとしたら、なぜ警察、消防が入っていないんでしょうか。

尾辻国務大臣 警察の方は都道府県で備蓄すべき数の中に入れております。

本多委員 ここからは厚生労働省の概算要求もおかしいという話に戻るんですが、実は、厚生労働省の最初の概算要求、額が大きいことは私は評価します、財務省が査定する前より。

 しかし、これも三分の二は県でやってくれというんですよ。実は、では県でどれだけやっているかをチェックする仕組みはあるんですかといったら、ないんだそうですね。つまり県にお願いしているだけなんですよ。必要な量とこの報告書で出しておいて、三分の一は国でやるけれども、三分の二はこの財政難の県でやれと。それは、知事さんが一生懸命かどうかで、群馬県にはたくさん薬があるけれども埼玉県にはないとか、こういう状況が想定され得るわけですよ、この厚生労働省の最初のスキームでも。

 それから、この財務省の、国土交通省の役人とか経済産業省の役人とか、こういう時点で社会機能維持に役立つと思えない人の人数はカウントして、そして警察、消防は、埼玉県は埼玉県でやれ、神奈川県は神奈川県でやれと。私は、これだけの多くの方が亡くなる感染症の対策として、本当に十分なのかという非常な危機意識をこれを聞いて持ちました。

 それで、きょうは財務副大臣にもお越しをいただいています。細かな査定に御本人が携わったわけではないと思うので追及しませんけれども、与党の政治家として、まして人間をとても大切にされていると私は思っています連立与党の副大臣でございます。この査定、私の今の説明を聞いてどういう感想をお持ちになられるか。そして、次も副大臣が副大臣として予算の査定にかかわられるとしたら、こういうスキームで本当に我が国の新型インフルエンザ対策がいいのか、そこの感想をぜひ副大臣にお聞かせいただきたいと思います。

上田副大臣 お答えをいたします。

 十七年度の予算の内容というのは今厚生労働大臣の方から御説明があったとおりでございますけれども、社会機能の維持や国全体の医療体制の確保などといったところに、最小限のものに限って国として計上させていただいたわけでありますが、この内容につきましては、予算編成の過程で厚生労働省ともいろいろと御相談をさせていただきながら決めさせていただいたものでございます。

 十八年度予算のお話でございますけれども、まだ十七年度予算の執行もされていない段階でありまして、これから、むしろまずは厚生労働省の方からどういうような御要求が出てくるかということを踏まえなければいけないわけでありますけれども、よく相談させていただきながら対応していきたいというふうに思っております。

本多委員 今のは役所の方が書いた答弁に沿って言われたと思うんですけれども、副大臣、政治家として本当にこれでいいと思われるかどうか、ぜひちょっと御感想をお聞かせいただけますか。

上田副大臣 もちろん、今委員からいろいろと御説明があったように、大変重大な問題だというふうには考えております。ただ、やはりこれは、国の役割、地方の役割というのもあるわけでございますし、それぞれが責任を持って対応するということが重要なのではないかというふうに思います。

 もちろん、これは人の命にかかわることでありますので重要な問題であるのはよく理解をいたしますけれども、ただ、では、それは国が全部面倒を見て、予算を全部つければ解決するのかという問題でもないのではないのかなというふうに思います。

 そういう意味では、厚生労働省においても、また我々財政当局においても、地方ともよく相談をさせていただきながら今後対応していかなければいけないことだというふうには思っております。

本多委員 さっきの国家公務員とか、海上保安とか入管とかはいいとしても、中央官僚にというこのリストなんですけれども、これ自体も実はもっとおかしいことがありまして、では本当にこの人たちに行き渡るのかといったら、実はこの量を確保しているだけで、本当にお医者さんや看護婦さんや、皆さんが大事だと考えている自衛官や中央官僚に行くかという保証はないそうなんですね。

 では、何のためにその数字を出しているのか。単に数字を削るための材料としてこれを出してきたとしか思えませんので、副大臣、財務省の中でもこういう査定のための査定のようなことを、ほかの分野ではしてもいい場合はあると思いますが、こういう人の命にかかわる、ましてや国家の危機にかかわるところではぜひしないでいただきたいということをしっかりお願いしたいと思います。

 そして、時間がなくなってまいりましたが、実はこのリストの問題にも絡むんですけれども、これは、私なんかは、予算で、つまり十億の単位にいっていないんですからね。頑張ったとしても、私が理想論を言ったとしても百億の単位なんです。皆さんが、いろいろ野党が批判しているような、新幹線だとか関空だとか、そういうのに比べると、ミサイル防衛もそれは大事かもしれません、人の命を救うために。ミサイル防衛にもすごい予算がついていますね、今度審議しますけれども。一千億円を超えているんですよ。それで、それに対してこれは一けた億の数字の話なんですよ。

 でも、それでやったとしても、順番という問題はどうしても出てくるんです。つまり、どういう人を先にやるかということ、国民の理解が本当に得られるのか。つまり、警察官、医療従事者まではいいとしても、では、本当にその後の順番づけをどうするのかということは、実はこれが起こってからだと当然パニックになります。自分がかかっている、自分の家族がかかっているときにこういう議論をしてもパニックになりますから、そういうことも、例えばトラックの運転手さん、流通に携わる方々、こういう方々は国家にとって大事だと私は思います。

 しかし、これは本当に専門家で早目にじっくり検討しなきゃいけません。こういうことをしっかりと事前に検討していただけるのか。こういう中途半端な量なんですから、皆さんの予算は。私の提案は、もっと大きく予算でとるべきだと思います。韓国など、人口比でいうと日本よりずっと多い備蓄をしようとしているんですね、国家として。ですから、私は量でカバーするわけだと思いますが、皆さんのようにこういう中途半端なスキームでやるという場合には、その順序をどうつけるかという厳しい問題が出ます。こういう検討を事前にしっかりする部署をどこかへ設けていただけるのか。

 もう一点は、WHOは、こんな問題は厚生労働省だけでは当然対応できません、省庁横断のしっかりとした国家での委員会みたいなものを事前につくっておけと。事前につくっておいてそこで研究をしておく、そしてもし事が起こったらそこが対策の中心になって進めていく、こういう組織をつくるべきだという勧告を日本にもしてきていると思います。

 この二点、薬の優先順位の問題をどこかでじっくりと検討する検討会を設けるべきではないかという点と、WHOの勧告に従って省庁横断の連絡会をつくるべきではないかという二点、これはいかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたように、抗インフルエンザウイルス薬というのは、発病以前に行うワクチンと異なりまして、既に発病している方に投与するものでございますから、ワクチンと同様の優先順位をつけておくということが大変難しい問題であるとは認識をいたしております。

 ただ、特にインフルエンザに罹患した場合には、重症化しやすい方等への優先投与が可能かどうか、そうしたところが問題だと思いますから、専門家の御意見もお聞きしながらこれは検討すべきことだというふうに考えておるところでございます。

 それから、二点目でございますけれども、厚生労働省といたしましても、関係省庁と連携をいたしまして、新型インフルエンザの発生に備えますとともに、御指摘の連絡会議についても関係省庁と十分協議をしてまいりたいと考えております。

本多委員 この件は、やっていただけない限りまたしつこく質問をし続けますので、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。そして、これは実は、日本だけで私が言うような理想論で対策をしたとしても、では、薬を準備できない途上国はどうするのかという問題が世界的には発生をしてきます。大変大きな問題ですので、ぜひとも国内だけでこういう、もちろん薬だけでは完全ではないわけです、ワクチンも、両面でやらなきゃいけない、さまざまな問題がありますので、ぜひ危機感を持ってしっかり取り組んでいただければありがたいと思います。

 きょうは、ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 本日は、感染症に対する一般質問ということで、私も幾つか、大きく分けて二点の御質問を御用意させていただいたところでございます。

 そのうちの一点が、先ほど科学的あるいは学問的な見地から、大臣から大変すばらしい前向きな答弁をいただいた水島広子委員とほぼ重なっている部分がありますけれども、私といたしましては、問題意識をさらに確認するという意味で、別の数字的な観点からも御質問をさせていただきたいと思っているところでございます。

 すなわち、HIV感染者あるいはエイズの患者に対する対策ということでございますけれども、まずその前に、九八年に改正が行われました感染症予防法の趣旨というものを御説明いただきたいと思います。

尾辻国務大臣 一九九八年に制定されました感染症法でございますが、これは、近年の新興さらにまた再興感染症の出現に加えまして、医学、医療の進歩、それから人権の尊重への要請、さらにまた衛生水準の向上、国際交流の活発化等の感染症を取り巻く状況の変化を総合的に踏まえて施策の抜本的な見直しを行ったものでございます。

園田(康)委員 今大臣から御説明がありましたとおり、当時の新興あるいは再興の感染症、いわゆるHIV、エボラウイルスであるとかO157、あるいはBSE、先ほども議論になっておりましたけれどもSARS等々の新型の感染症が突発的に出てきたということに対する、背景としては社会的なパニックが少しあったということ。それから、過去にさまざまな部分で、ハンセン病でありますとか、さまざまなそういった感染症の患者等に対するいわばいわれない差別、偏見というものがこの中で出てきたものに対する反省から、こういった改正が行われたものであるということで、趣旨は私も大変納得といいますか、賞賛をさせていただいているところでございます。

 これに関連いたしまして、この趣旨というものが、今後、改正から五年たったわけでございますけれども、しっかりと行われているのかどうかということも、しっかりともう一度、人権を守るという観点からも再点検をしていただければなという思いがあります。

 それから、来年に向けて感染症予防法のまたさらに改正というものを何かお考えだというふうに聞いているんですが、そういった事実はありましたでしょうか。

田中政府参考人 現在のところ感染症予防法の見直しというのは考えておりませんけれども、感染症予防指針の見直しということは今作業に取りかかっているところでございます。

園田(康)委員 済みません。ちょっと予告をしておりませんでした。失礼いたしました。

 そうしますと、指針の見直しということになりますと、それは恐らく、私が聞いている範囲では、テロ対策あるいはバイオハザードの部分でそういった防御を張らなければいけない、感染症対策、新型のウイルス、そういったものを予防していかなければいけないという観点でいわば指針の見直しが行われるというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

田中政府参考人 いろいろな面で検討はしなくちゃいけないと思っておりますけれども、特にエイズそれから性感染症の予防ということについては、これは五年後の見直しの時期にちょうど入っておりまして、きちっと過去の行政を点検して今後の対策を考えていきたいというふうに考えているところでございます。

園田(康)委員 さまざまな観点から見直しが図られるというふうに私も理解をいたしておるところでございますけれども、いずれにいたしましても、さきに大臣もおっしゃっていただきました、九八年の感染症予防法の改正のときの趣旨というものをしっかりと踏まえて見直し、策定に当たっていただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 そして、先ほどちょっとお話がありました、HIV感染者あるいはエイズ患者における新規報告書、数でいきますと、私が持っている資料はちょっと古いんですが、二〇〇三年におきましては、まずHIVの感染者数は六百四十人、それからエイズ患者におきましては三百三十六人というふうになっているところでございます。これを感染経路別にいたしますと、どのような形になってくるんでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 エイズ動向委員会の報告によりますと、今のHIV感染者六百四十件の内訳でございますが、異性間性的接触によるものが二八%、それから同性間性的接触によるものが五六%、静注薬物乱用によるものが一%、その他あるいは感染不明のものが一六%となっております。

 また、新規エイズ患者報告の感染経路別の内訳でございますけれども、異性間性的接触によるものが三九%、同性間性的接触によるものが二九%、静注薬物乱用によるものが一%、母子感染によるものが〇・三%、その他あるいは不明のものが三一・五%というようなことになっているところでございます。

園田(康)委員 今の御説明で、数字的にいえば、パーセンテージで今お示しをしていただいたわけでございますけれども、異性間の性的接触におきましては百七十八人ということで、それから同性間の性的接触に関しては三百五十六人、全体の約半分は同性間の性的接触という形で出てきているものであるということ。それから、もう一つ私が注目、後でもう一つの大きなテーマとして大臣にもお伺いをしたいと思っているところでございますけれども、静脈注射による薬物乱用、これが原因としてエイズ、HIV感染者というものが出てきて、まだいまだにあるんだという事実がございます。

 そこで、これをもう少し先ほどの観点から申し上げますと、年齢別でいきますと、これはどういう形になってくるでしょうか。

田中政府参考人 同じくエイズ動向委員会の報告でございますけれども、新規HIV感染者報告六百四十件の年齢別のものでございますが、三十代が最も多くて全体の約三七%を占めておりまして、次いで二十代が三一%となっているところでございます。

 また、新規のエイズ患者報告三百三十六件の年代別の内訳でございますけれども、これも最も多いのは三十代で、全体の三三%でございます。次に多いのは四十代、二四%、二十代が一一%というふうになっているところでございます。

園田(康)委員 ありがとうございました。

 いずれも三十代が一番多いという数字が出ているわけでございまして、それをいただいた資料でもう少し詳しく見てみますと、HIV感染者の方六百四十人中、二十歳から二十四歳が六十五人、そして二十五歳から二十九歳が百三十六人、さらには三十歳から三十四歳が百二十六人、そして三十五歳から三十九歳が百十人ということで、全体の、ほとんどここに集中をしていると言っても過言ではないのかなという気がいたしております。

 ここ十年の累計を見ても、明らかに二十代から三十代にかけて数がほかの年代に比べればかなり多いものであるということからすれば、この原因を少しヒアリングのときにお伺いいたしましたら、感染者が出てくる、いわば保菌をしてからそれが表に出てくるということから、少し潜伏期間があるんですよということで、いわば二十代、三十代が多いということをもう少しさかのぼってみれば、八年から十年の潜伏期間があるというのであるならば、十代から感染してしまっているという現状がこの数字から見ても明らかになってきているのではないのかなという気がいたしているところでございます。

 そこで、先ほどの水島委員と同じ結論に至るわけでございますけれども、若年者対策というものをやはりしっかりととっていく必要があるのではないかということを私は問題意識として考えているわけでございます。こういうのを踏まえて、現状の対策というものはどういったものをやっているのか、ちょっと簡潔にお願いをいたしたいと思います。

田中政府参考人 対策でございますけれども、大臣も先ほど申し上げましたが、一つはHIV、エイズに関する正しい知識の普及啓発、それからもう一つの柱は、利用者の利便性に配慮しました検査体制の充実、それからエイズ治療拠点病院におきます医療体制の整備、こういう三本柱でやっているところでございます。

 特に、今、先生、青少年層、若者に対する対策というようなことを申されましたけれども、特に平成十六年度からは学校現場でのエイズ予防教育の実施というようなことも新しい事業として行っているところでございます。

園田(康)委員 ぜひ、先ほども少し御指摘がありましたけれども、他省庁との連携というものをきちっと行った上で、ここに特化させて、正しい予防策の普及啓発に取り組んでいただきたいということをまず申し上げておきます。

 それから、一方、検査の方では、利用者の利便性に即した検査体制を整えているということでございますけれども、伺いますと、迅速検査というものを導入されているということでございます。そこで、これは十五分から三十分程度で簡易に検査ができるというものであるわけでございますけれども、これにつきましても、実施機関、保健所、県のレベルで実施されているのは四十七都道府県中まだ十四県であるという現状があるわけでございますので、それぞれの地域事情もあろうかと存じますけれども、やはりこの辺の体制ももっともっとしっかりととっていただきたいということをお願いをしておきたいと思っているんです。

 大臣、ちょっとどうでしょうか、今後の考え方として。

尾辻国務大臣 きょう御指摘いただいておりますさまざまなこと、私どもも、しっかり踏まえながら対策をとらせていただきます。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 そしてもう一点、薬物対策、先ほど静脈注射によりますエイズ患者、感染者も出ているということでございますので、この薬物の関係を少し明らかにしていきたいと思っているところでございます。

 私もこれで三度目の取り上げになるわけでございます。我が党からも、三井委員からもしっかりと先般御指摘をさせていただいたとおりでございますけれども、従来の乱用中心であった覚せい剤に加えまして、最近はMDMAあるいは大麻、大麻はずっと前からあるわけでございますが、そういった社会汚染というものがまさに危機的な状況にあるという点でございます。

 平成十六年の検挙人数、これは警察庁発表でございますけれども、薬物銃器対策課から発表されているものでございますが、これがMDMAあるいは大麻ともに検挙人員あるいは押収量とも過去最高の人数と量を示してしまっているという現状がございます。特に、二十代を中心といたしました若年層への乱用拡大、これはもう申し上げるまでもないと思っておりますけれども、そういったものも御指摘をされているわけでございます。

 さらに、税関の調査といいますか実績の発表を見ますと、不正薬物の密輸事犯におきましての摘発状況、こちらから見ても、つまり外から入ってくる部分ですね、実際に使われてそれに対して検挙したという数ではなくて外から入ってきた数、密輸ですね、それの数を見ましても、覚せい剤、大麻等の押収量は二年連続して一トンを超えてしまっている。同時に、MDMA等の錠剤型合成麻薬については十五年に引き続いて、一昨年に引き続いて昨年も過去最高を示しているということでございます。

 これは、実は税関からいただいた資料でございますけれども、十六年で合計が、件数にいたしまして、覚せい剤、大麻、ヘロイン、コカイン、アヘン、MDMA、向精神薬ということで、件数が五百六十二件、キロ数でいきますと一千三百五十八キログラム、そして四十二万九千錠ということで、これがいわゆる先ほど申し上げた過去最高の数字であるということなんです。

 参考といたしまして、これは使用回数でいきますと二千十五万回使用ができるということなんです。これは国民六人に一人が使用できる回数になるんですね。この委員会、きょうは少ないですけれども、四十五人いるとすれば七、八人は使用できる、そこまでの量が摘発された分だけでもあるんだという現状なんですね。

 この現状を踏まえて、やはり対策をきちっととっていかなければいけないというふうに私は考えているわけでございますけれども、きょうは、ちょっと時間がなくなってきましたが、まず青少年に対してどれだけ怖いものであるのかということを知らしめていきたいというふうに考えております。

 そこで、まず代表的なものとして、先ほど申し上げた覚せい剤であるとかMDMA、大麻、こういったものはどのような有害な作用があるのかということと、それから依存性はどの程度強いものであるのか、この三つを比べていただければ大変私はわかりやすいと思っております。それから、乱用し続けるとどういう状況になるのかということをちょっと簡潔にお答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 覚せい剤とMDMAと大麻についてのお尋ねでございます。

 まず、覚せい剤でございますけれども、これは主に注射などを用いて摂取をされます。強い興奮作用がございますけれども、効果が消えますと疲労感、脱力感を生ずるということでございます。それから、精神依存性が大変強うございまして、乱用が進みますといわゆる覚せい剤精神病を起こすということがございます。

 次が、MDMAでございますけれども、これはエクスタシーとも呼ばれておりまして、先生おっしゃいましたように錠剤型の合成麻薬でございます。経口摂取で用いられるということでございます。興奮作用と幻覚作用をあわせ持ちまして、精神依存性が極めて高いということでございます。長期の乱用によりますと慢性の精神病状態を来すことがあるというような報告がなされております。

 三つ目が、大麻でございますけれども、主にたばこのように吸煙という形で、吸う形で用いられるわけでございますけれども、幻覚作用がありまして、多量の摂取をいたしますと不安とか妄想とか錯乱症状があらわれるというふうに言われております。それから精神依存性もございまして、長期乱用することによりましていわゆる大麻精神病を起こすことがあるというふうに言われております。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 まさに、本当に人間の体あるいは心までむしばんでしまうという大変恐ろしい効果が出るんだということでございます。

 そこで、先ほど錯乱状態に陥るあるいは精神状態が不安定になるというようなお話があったわけなんですが、警察からの発表によりますと、乱用し続けることによってこれまた死亡例が出てきているんですね。さまざまなほかのものとあわせて服用すると、それがまた体に対して大きな損傷を与えてしまうという大変危険な状況になるわけでございます。

 平成十六年中の乱用死者数等に行きますと、全部で乱用死が二十二人。自殺が、これはいわゆる注射あるいはそういった薬物を服用することによって心身が錯乱状態になってしまう、そこで、例えばベランダから飛びおりてしまったりとか、あるいは自分で何か恐怖感を感じて首をつって自殺をしてしまったという事例が十二件もありました。それから、自分で傷をつける、これはゼロでありましたけれども、さらには錯乱状態になるわけですから車を運転していたら交通事故にも遭ってしまう、これが十五人。

 合計四十九名でありまして、一昨年に比べるとプラス八名、ピークのときは平成十二年の百三名であったわけですけれども、そこから比べると少しは改善はされているとはいえ、まだ依然として私は高い状況にある、死亡例が報告をされているわけでございます。

 最近残念なことに、先ほど若年層に浸透しつつあるということでありましたけれども、先ほど申し上げたMDMAで中学二年生が熊本県警で逮捕されたという三月二十二日の事例もございます。

 それから、昨年の十一月六日になりますけれども、これまた女子高校生が覚せい剤を買っていたということで、九州の福岡県ですけれども逮捕されたという事例がございます。

 それから、あとは女子大生、昨年の十二月ですけれども、女子大生がインターネットで密売するために覚せい剤を所持していたということもございました。そのうち、十八歳の、これまた女性でございました。

 それから、昨年の一月二十七日にも、都立の高校、都内の高校生でも十六歳あるいは十七歳の男子生徒あるいは女子生徒が書類送検をされた。これはMDMAをやはり密売をしよう、あるいは受け取ったということで、こういったものが事例として、逮捕というか、そういう形で出てきているわけでございますが、こういう若者たちは今どういう形で手に入れているというふうに考えられるでしょうか。

阿曽沼政府参考人 薬物の入手ルートについてのお尋ねでございますけれども、従来は、暴力団の密売人とかあるいは知人から入手するというケースがほとんどでございましたけれども、最近は、イラン人等の来日の外国人に加えまして、先生御指摘ございましたように、若者の間では、インターネットやあるいは携帯電話などを悪用しまして薬物を入手するケースが多く見受けられているところでございます。

園田(康)委員 いわゆるインターネットでそういったものが簡単に手に入るような形になってきてしまっている。あるいは携帯電話の、大臣、御利用されたことがあるかどうかわかりませんけれども、携帯電話でもインターネットと同じような機能を持って、サイトというものを見ることができるんですね。そこから購入することもできるという形にまでなってきてしまっているんです。

 あるいは、いわゆる販売、受け渡しの部分なんかも、携帯電話などを使えば、つまり、入手方法に関しましては、例えば、ここの携帯電話に電話かけてくださいと。その携帯電話に電話をしますと、じゃ、どこどこまで行ってくださいというふうに指示をされるわけですね。どこどこまで行った、またそこから電話をかけて、じゃ、どこどこを探してください。つまり、直接のやりとりをしなくても、販売元、販売人もわからない、あるいは受ける側もわからないというふうな形で特定しにくくなってきてしまっているんですね。

 そういったところに対する対策という形で、やはり私は、そういったサイバーコントロールといいますか、まず大もとのインターネットそのものをしっかりとコントロールといいますか、規制ということではありませんけれども、これを監視をきちっとやっていく必要があると思っているんですが、どうでしょうか。

阿曽沼政府参考人 御指摘のように、私どもとしても、インターネットの監視をやることが大変必要であるというふうに思っております。

 最近は、インターネットあるいはプリペイド式の携帯電話を利用した薬物犯罪というのが、匿名性が高く、また販売先が全国に及ぶということで、捜査機関側にとってもその実態を解明することがなかなか難しい状況にございます。

 しかし、私どもといたしましても、地方厚生局の麻薬取締部におきまして、インターネットを利用して不特定多数にMDMAあるいは大麻などを密売していた者を検挙するとか、そういった形で、そういうインターネットあるいは携帯電話を利用した薬物犯罪の摘発を行ってきているというところでございます。

園田(康)委員 そこで、麻薬及び向精神薬取締法の第二十九条の二というものの中に、「麻薬に関する広告は、何人も、医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、行つてはならない。」という規定がございます。

 この麻薬に関する広告というものの中に、いわば医薬関係者以外の者はやっちゃいけないというふうに読み取れるわけなんですけれども、この解釈としては、インターネットにおける広告もこれが含まれるというふうに考えてよろしいんですね。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のように、麻薬及び向精神薬取締法の第二十九条の二におきまして、麻薬の乱用防止のために、医療関係者や研究者以外の者を対象とした広告を禁止しております。これに違反した者は、三年以下の懲役もしくは五十万円以下の罰金ということになっておりまして、インターネットを利用してこのような広告行為が一般向けに行われるとするならば、法律の違反になるというふうに考えております。

園田(康)委員 そうしますと、きょう午前中の議論の中で、ライブドアさんの話がちょっと出ておりましたけれども、大臣、ごらんになったことありますですかね。ヤフーという、今ライブドアさんとフジテレビさんとの間でいろいろありますけれども、そこに割って入ったというか仲介役というか、大手のソフトバンク・インベストメントというのがありまして、いわばそこの親会社じゃないですけれども、連結している会社のソフトバンクの行っているインターネット検索エンジンというのがあるんですね。

 そのヤフーというのは、私が何か記事の検索をするときは必ずまずここから使う検索エンジンのサイトでございます。これは本当に恐らく我が国においては一番の有名な検索エンジンであろうかなというふうに考えているわけでございますけれども、そのヤフーの、これは本当に一番一般的な形なんです。恐らく、私以外にも使っていらっしゃる議員の方もいらっしゃるでしょうし、若い人たちにとっては、特にここが一番使いやすいところになるんですね。

 そこで、ちなみに、その検索エンジンの一番ファーストページに、私はMDMAというものを入力させていただいて検索をしてみたんです。そうしましたら、実に二十三万九千七百九十件のMDMAに関するサイト及び関連記事というものがずらっと出てきたんですね。そのうち、一番フロントページですよ、フロントページに載っていた、私でも見つけられたんですけれども、きのうちょっと役人の方に来ていただいて、これは、この二十九条、先ほど言った取り締まりの広告に当たるかどうかということをちょっと調べておいてくれというふうなものをお見せしたんですけれども、それでいきますと、実にMDMAを販売しているがごとく出ているものが、サイトとして、私自身は、これは見つけたというか見ております。

 これでいきますと、ちょっと読ませていただきますが、「MDMA やっとこさ納得のいく完成度に達しましたので、お譲りしたいと思います。」こんなことが堂々と載っているんです。「言うまでもなく、MDMAは「メタンフェタミン興奮剤の類」ですのでお間違えのないように…。 尚、メイドインたかおのMDMA」、「メイドインたかお」というのはこの文章をつくっている人ですね、「のMDMAは、結晶化させたものをカプセルに詰める形でお譲りすることになりますので錠剤ではありません。 この理由は、ヨーロッパのMDMAのように、密造段階から製薬会社が絡んでいるわけではない点と、個人で密造した場合には錠剤にすることが至極難しいの二点です。 要は成分さえ一致していれば立派なMDMAなのです。」といって、その後、ちょっと読むにもたえないようなことがずっと書いてあるんですね。

 これが一番有名な検索エンジンの、MDMAといって検索をして一番最初のページの中に出てくる一つなんですね。こういったものが簡単にいまだに世の皆さんに、世間一般に広まってしまうというか、簡単に入手することができるという点。

 もっと違うページを見ますと、要は、やはりさっき申し上げたように、携帯電話が指定がありまして、ここに電話をしてくださいと。そうすると、「「お互い顔合わせは一切無し」「商品確認後の代金後払い」の二点を徹底しております。」実に、あなたと私は密売をしますよというようなことをここにきちっと書いてあるんですね。

 先ほど申し上げましたが、この徹底、サイバーコントロールではありませんけれども、監視を、もっと規制をきちっと行っていただきたい。そうでないと、やはり若年層にどんどん簡単に手に入りやすいという状況がまさしく出てきてしまいます。そのことを強くお願いしておきたいと思っております。何かありますか、これ。いいですね。

 そして、大臣、時間が終了するということでありますので最後になりますけれども、このような状況をどのように考えていらっしゃるのかということと、それから、私から最後に申し上げたいことは、この麻薬、薬物の取り締まりに関しては、今申し上げた、情報の収集と分析がこれは確実に欠かせないものであるというふうに考えております。ここは、いわば警察庁であるとか厚生労働省であるとか税関であるとか、縦割りの話ではないはずなんですね。どの省庁でもきちっとした情報を共有できるように、そういった体制をもっとしっかりととっていただきたい。

 それから、取り締まり職員体制の強化というものも、これは合同捜査という形でも、きちっとこれから行っていく必要がある。今でもやっていらっしゃるということでありますけれども、さらにこれも強化をしていただきたい。

 それから、取り締まり機器の増強というものも、しっかりとこれをとる必要があるのではないかということを私から申し上げたいんですが、その点も踏まえて、大臣、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 今もびっくりするようなお話を伺いましたけれども、現在の薬物情勢につきましては、依然として第三次覚せい剤乱用期にありますし、また、大麻やMDMA等錠剤型合成麻薬の乱用が青少年を中心に拡大するなど、憂慮すべき状況にございます。したがいまして、薬物対策を積極的に推進していく必要があると私どもも認識をいたしておるところでございます。

 そこで、厚生労働省といたしましては、薬物の供給を遮断するための取り締まりの強化、それから青少年が薬物に手を出さないようにするための啓発活動、きょうも随分お触れいただきましたけれども、そうしたことなどさまざまな施策に積極的に取り組んでいかなきゃならない、こういうふうに考えております。

 特に、取り締まりにつきましては、これまたお話しいただきましたけれども、麻薬取締官の増員でありますとか、それから捜査用機材の充実等によりまして、携帯電話やインターネットを利用した薬物の密売にも対応した捜査体制の強化を図りまして、徹底した取り締まりを行っていく所存でございます。

園田(康)委員 時間がなくなりましたのでこれで終わらせていただきますけれども、ぜひ、その取り締まりの強化というものをしっかりと行っていただかなければ、麻薬といいますか薬物のはんらんというものは、本当に厳しく、若者の間にどんどんどんどん広がっていってしまうということを強く御指摘をさせていただきたいと思っております。どうかよろしくお願いをします。質問を終わります。

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうは一般質疑ですので、私は、四つほど分野を定めまして、これから質問してまいりたいと思います。

 まず、中央防災会議の専門委員会が首都直下型の地震について被害想定を発表したわけですけれども、これを見ますと、死者が最悪で一万二千人、約八十五万棟の建物が全壊する、あるいは焼失するおそれがあるという深刻な発表なんですが、当然、地震の場合、医療機関や福祉分野での被害も甚大になります。

 昨年の十二月に、委員長を先頭にといいますか一緒に、私たち、中越地震の問題では、十日町市の中条第二病院、それから小千谷の小千谷総合病院の実情を医療機関の被災として調べて、政府にも対応の強化を求めてまいりました。

 それで、首都直下型の地震について、私は今、一つは災害予防、減災対策と今言われているようですけれども災害を減らしていく対策、これが一つ、もう一つは、災害時それから事後の対応についての対策を抜本的に強化する、この両面からの接近が求められると思うんです。

 まず、確認しておきたいんですが、この首都直下地震の被害想定を受けまして、現在、医療機関や福祉施設などの災害予防、被害軽減対策、安全基準の見直しなどいろいろな面があると思いますが、その検討や、実際それが実施されているかどうか、そのあたりの報告をお願いいたします。

岩尾政府参考人 国民の生命、健康を守る拠点であります医療機関、社会福祉施設が地震の際にも十分に機能するという意味で、耐震化が重要だと考えております。

 病院の耐震化に関する補助制度につきましては、私どもで、災害拠点病院の補強に関する耐震化の事業を初め、幾つかの施設整備の事業を持っております。これまで、耐震化に係る都道府県からの要望についてはできる限り対応してまいりました。

 それから、社会福祉施設に関する補助制度につきましては、古い社会福祉施設ほど耐震化が図られていないという現状がございます。老朽施設の改築整備に当たって耐震化対策を行う場合は、国庫補助を優先的に採択するとともに、地震防災対策上必要な補強改修を行う大規模修繕について、国庫補助の対象としております。

 首都直下型地震の対策については、政府全体として内閣府を中心に災害予防、減災対策について検討を行っております。十七年度中取りまとめと聞いておりますので、今後とも各省庁と連携して取り組んでまいりたいと考えております。

山口(富)委員 今は災害予防の話だったんですが、もう一点、災害時の対応の問題が大事になります。

 被害想定を見ますと、帰宅困難者が六百五十万、避難生活者が四百六十万に上る可能性があるというふうに指摘されている。首都圏の地震対策については既に南関東地域の地震対策に関する大綱というものがあって、この中で、災害拠点病院の指定を初めとして、広域的な医療活動について幾つか示されております。

 新しい被害想定のもとで、救助、救急、医療活動のあり方、これは私は新しい視野で見直す必要があると思うんですが、先ほど内閣府を中心にして今年度中に対応を考えたいという話がありましたけれども、この救助、救急、医療活動などの災害時それから事後の対応、これについての検討は実際に始まっているのか、どういう形でやろうとしているのか、これを示してください。

岩尾政府参考人 先ほど申し上げましたこの首都直下型地震については、二月二十五日に内閣府の方で調査会が被害想定をしたということで、現在、具体的な対応策については関係省庁と連携して対応しようということです。

 私どもとして、大規模地震の際の医療ということで、機動的に災害派遣のチームをつくって、DMATと呼んでおりますが、速やかに近隣の都道府県から現場に人員を投入いたしまして医療活動を行い、それから、帰宅困難者等々を含め、被災地内で治療が困難な患者を被災地域外の医療施設で治療を行うような広域の医療活動について対応する事業を新たに実施することとしております。その実施のために、現在、他省庁との連携について協議を進めつつございます。

 首都直下型地震についての今後の検討の際も、こういう新しい取り組みについて積極的に検討していくということで進めております。

山口(富)委員 他省庁との連携という話がありましたけれども、次に大臣にお尋ねしたいんですが、今度の被害想定を見ますと、これは、東京都、千葉、埼玉、神奈川県の一都三県にわたっています。それは当然のことで、ここが一つの生活地域、社会的な基盤になっておりますから、広域的に見ているわけですね。

 ですから、各省庁との連携だけでなくて、この関係する一都三県との連携についても、災害医療、さまざまな厚生労働行政にかかわる問題で地震対応を求められる問題、これは協議を私は直ちに始めるべきだというふうに思うんですが、この点はどうなっていますか。

尾辻国務大臣 先ほど来御報告申し上げておりますように、首都直下地震につきましては、内閣府が取りまとめております中央防災会議の首都直下地震対策専門調査会で被害想定がまずされたところであります。今後、内閣府を中心に、首都直下地震に対する具体的な対策を政府として策定していくことになります。

 その中で、厚生労働省といたしましても、甚大な被害に対しては関係都県のみでは十分な災害医療活動ができないことも想定されますから、今御報告申し上げました大規模地震の際の多様な医療に対応できる災害派遣医療チーム、DMATの機動的な投入など、考えられるさまざまな被災状況に災害時の医療活動が適切に対応できるように取り組んでまいるところでございますが、今お話いただきましたように、関係の都県と国が密接に連携していける対策づくり、これは大変重要なことでございますから、積極的に取り組んでまいります。

山口(富)委員 これからさらに検討される点もあると思うんですけれども、きょうは、耐震対策の問題、それから救急医療のチームの組み立ての問題と幾つか例示がありました。私はぜひ、省庁間だけでなくて、大臣も認めましたけれども、一都三県との連携をやって、きめ細かい抜本的な対策を必ずとるようにしていただきたいと重ねて求めておきたいと思います。

 きょうは、二つ目に、小児救急医療にかかわる問題をお尋ねいたします。

 これは私もこの委員会で取り上げたことがあるんですが、東京世田谷区に国立成育医療センターがあります。二〇〇二年に開設されたわけですけれども、ここは、高度専門医療センターとして、小児救急、母性、父性の医療、関連・境界領域を包括する医療、私ども、実際に現場に行きまして、院長に案内を願ったんですけれども、なかなかの専門医療をやっているというふうに思いました。

 それで、ここは当初、東京都の休日・全夜間診療事業の体制、簡単に言いますと救急車が入るかどうかですね、これに入っていなかったんです。私は驚きまして、当時は坂口大臣でしたけれども、この問題を取り上げて、小児の救急医療の充実の問題は国が率先してやるべきだ、どうなんだと聞きましたら、坂口大臣は、小児救急医療をやらないのは怠慢だ、国の責任としてはっきりさせたい、こういうふうに述べて、その後、この病院も東京都の体制に組み込まれたんです。今、八十万人が世田谷区に住んでいるわけですけれども、夜間、休日の救急病院というのはこの成育医療センターただ一つだそうです。

 そこで、新たな問題が起きているんですね。どういう問題かといいますと、例の特定療養費の問題なんです。

 これは病院間の機能分担ということで設けられたわけですけれども、その評価については私は政府とは立場は違いますが、成育医療センターは特定療養費を、千五百円としていたものを今四千二百円に上げている。しかも、夜間の小児救急の患者さんからも、入院の場合は別ですよ、その患者さんに入院の必要がない、大丈夫だとなった場合は四千二百円を徴収するという対象にしている。これは直接センターの発言として、これをやって救急患者を減らす効果があった、そういう発言さえ出ているんですね。

 もともと、この特定療養費というのは、先ほども申し上げましたように、病院間の機能分担を図るということで入れられたわけですが、実際にはここは小児救急を、患者さんを抑制するような方向に働いている。

 私は政府に確認しておきたいんですけれども、国の基本政策として、小児救急医療の体制の充実を目指すというところが国の揺るぎのない立場なんだな、そのことをまず確認しておきたいと思います。

岩尾政府参考人 国立成育医療センターの理念でございますが、高度専門医療センターとして、日本に唯一でございます、病院と研究所が連携いたしまして成育医療のモデル事業ですとか高度先駆的な医療をやろうということで、小児の難病ですとかさまざまな患者さんが全国からも来られております。

 そのうちの一つとして、地元の救急医療ということも進めていくということで始めてやっておりますが、先生御指摘のように、緊急で来られて、入院するような方々を除きましては、現在、医療保険で認められております特定療養費の徴収ということを行っております。

 私ども、こういう全国に一つの高度な専門医療機関という病院の機能を考えますと、効率的な医療提供体制の整備を図るという趣旨にのっとってこのようなものが適正に運用されているのではないかと思っておりますし、患者、御家族に対しましても、この制度については運用を非常によく説明させていただいて、御理解いただくようお願いしているところでございます。

山口(富)委員 適正にやられているなんてとんでもないですよ。医政局長は実態を知らないんじゃないですか。

 厚生労働省は、この特定療養費について、紹介状がない場合でも、緊急その他やむを得ない事情により来院した場合は徴収しないと言っております。しかも、この点について、病院内に見やすい場所にこのことを明示しなさいというふうに言っているんですね。

 だから、各病院、どういうふうに言っているか。私は幾つか調べてまいりましたけれども、例えば和歌山県の病院では、時間外及び土日、祝祭日における救急等の緊急による初診の場合、お支払いいただかなくて結構ですと。それから、これは大阪ですけれども、時間外、夜間、休日の救急診療はお支払いの必要がありません、これは特定療養費ですけれども。

 大体、各病院は、救急で搬送された場合は取りませんよとはっきり述べております。それはなぜかというと、厚労省自身が救急患者の場合は取らなくていいということを言っているからなんですよ。

 先ほど岩尾局長は、あたかも、救急で運ばれた人で、入院した患者さんの場合は取らない、しかし、そうでなかった場合は説明して取る、だから適正なんだと言う。しかし、実際に救急のお子さんを抱えた場合に御両親や親類の方がとる態度はどういうものか。そんなことを一々調べませんよ。もう一大事だということで、自家用車なり救急車を呼んで、急いでお子さんを病院にとにかく連れていく。だって、大体、病院を訪ねても適切な診療を受けられずに亡くなったお子さんが何人もいるんだから。

 この場でも私たちは、岩手県の佐藤頼ちゃんの問題が事件になったときに、私も厚生労働省に直接足を運んで、御両親と一緒に小児救急の体制の充実を求めましたけれども、そうやって来て、そして実際に医師の判断を仰いで、大丈夫ですよと言われたときのうれしさはないと思うんですね。では、あなたは大丈夫だからお金を取りましょうというのは、小児救急体制の充実を図るという基本精神と相入れない。しかも、特定療養費は、もともと救急搬送の場合は取らないという大きな原則があるわけですから。

 ですから、私は大臣に重ねて求めたいんですが、まず実態を調べていただきたい。この成育医療センターで何が起こっているのか。地元の方からは、これは、救急患者さんがたくさん来ると成育医療センターの運営に支障を来すから、抑制策としてやられているんだと公然と語られている。国がやるべきは、高度の専門医療の分野をきちんと担わせると同時に、地域医療でも、特に小児救急医療の充実は欠かせませんから、これをどうやって成り立たせるのかということに知恵を絞るのが行政のあり方であって、これを無慈悲に、特定療養費はいただきますというやり方をとるべきじゃない。大臣、事態を調べて、問題がある場合はきちんと改善の措置をとっていただきたい。

 答弁をお願いします。

尾辻国務大臣 まず、国立成育医療センターでございますが、先生もお行きになったというふうに話されました。私も参りました。大変すばらしい病院で、これだけの病院だから、それにふさわしい、ちゃんとした医療をやってもらわなきゃいかぬなというふうに思いました。そういう役割を担っておるところだというふうにまず思います。

 それから、特定療養費については、これはもう改めて申し上げるまでもありませんけれども、ひところ三時間待ちの三分間診療とかそんな言葉もありましたし、やはり専門的な検査や入院が必要な治療を行う病院と、それからふだんの健康維持の相談を行う、言うならば診療所、そうしたものをちゃんと分けて患者さんの方も行っていただこうということでつくった制度でございます。

 したがいまして、今のお話でありますけれども、国立成育医療センターのようなところが初診料として普通よりも乗せてもらうということはあり得るわけでございますが、ただ、お答え申し上げておりますように、緊急その他やむを得ない事情を除きということでございますから、緊急な場合はそれをいただくということはないわけでありまして、そこのところは私どもは適正に運用しておると考えておりますけれども、今先生のお話もありますから、調べろということであれば、実態は調べさせていただきたいと存じます。

山口(富)委員 では、実態を調べていただいて、問題があれば改善していただくということで確認してよろしいですね。

尾辻国務大臣 それは、ふさわしくないことがあれば、当然改めさせます。

山口(富)委員 私は、この問題は、救急患者を、特にお子さんの場合は、入院というところの基準で考えるのは正しくないと重ねて申し上げておきます。だって、御両親はその判断をできずに救急でも運んでくるわけですから。それの受け方として、今のやり方は全く適正でない。

 次に、今、地域医療の問題でもう一つ大きな問題になっております、厚生年金病院それから社会保険診療所、健康管理センター、この譲渡、売却あるいは廃止問題が地方から不安と危惧の声になって出ております。関連法案も提出されております。

 この点について確認しておきたいんですが、地域医療として、例えば、先ほどから問題になっております災害拠点病院になっているところもある、エイズ関係の仕事をやっているところもある。そういう病院を、私は、年金や健保をめぐっていろいろ起きている不祥事問題、あるいは浪費の問題、こういうものといわばセットにして、地域医療に現実に貢献している病院を一律に売却したり、譲渡、廃止、こういうことをやるというのは、これは医療分野での、あるいは福祉分野での公的責任の後退であって、国民の皆さんが納得する道理がないんじゃないかと思うんです。いかがでしょうか。

青柳政府参考人 年金の福祉施設につきましては、年金制度の厳しい財政状況あるいは社会経済情勢の変化ということにかんがみまして、例外なく整理合理化を進め、年金資金に貢献するという考えでございます。

 このうち、お話のございました厚生年金病院の整理合理化につきましては、厚生年金病院が公的な医療機関として重要な役割を果たしているという点で他の年金の福祉施設とは異なる性格を有しているということは、十分承知をしているつもりでございます。こうしたことを踏まえまして、それぞれの厚生年金病院がこれまでそれぞれの地域医療において果たしてきた機能等を勘案しつつ、関係する地方公共団体等とも協議の上で、地域における医療の提供に支障が生ずることがないように対応してまいりたいと考えております。

山口(富)委員 一方で例外なしといいながら、もう一方で実情を見るというお話でしたけれども、私は、ここに幾つか、地方議会が三月議会で上げた意見書を持ってまいりました。

 例えば、高知の場合は、厚生年金高知リハビリテーション病院、この存続と機能充実を求めるという意見書が上がっております。これを見ますと、この病院が、高知県初の本格的リハビリ施設として、地域住民に模範的保健医療を提供する仕事をしてきた。疾病の予防、治療を初めリハビリ事業全般のパイオニアとして、県内の牽引役を務め、身体・言語障害者の治療、訓練に大きく貢献してきた。だからというので、こう言っているんですね、「画一的縮減計画の見直し」、見直しをしてほしい、そしてこの病院の存続と機能充実を実現してほしいと求めております。私は、これは当然だと思うんです。

 大臣に答弁願いたいんですが、先ほど社会保険庁の方は、地方公共団体と調整してという話がありました。私は、それに加えて、地域医療を守るために、地方公共団体とともに、現にそこで働いている皆さん、お医者さんもいるし看護師さんもいるし、いろいろ、訓練士の皆さんもいらっしゃる、そういう職員の皆さんも含めて、地域での病院の機能が十分に生かされていくように、そういう視野でこれに当たっていただきたいと大臣に求めたいと思います。

尾辻国務大臣 これは申し上げるまでもありませんけれども、社会保険庁が大変厳しい批判にさらされました。そして、その中で、社会保険庁が設置しておりましたところのすべての福祉施設、これを売却するということが決まりました。その中の一つが厚生年金病院でございますから、厚生年金病院も、売却するという大きな方針は既に決められたところであります。したがって、その方針に沿って今後売却をしてまいるということでございます。

 ただ、今先生お話しのように、厚生年金病院が地域医療にとって大変重要な役割を果たしてきておることも事実でございますから、譲渡に当たっては、今お答え申し上げましたように、地方公共団体等とも協議の上、病院機能の公益性を損なうことがないよう十分に検証した上で、適切な方法で整理合理化を進めてまいるという方針でございます。

 そして、このことは、この整理合理化計画は平成十七年度に策定することといたしておりますので、これからの策定になるわけでございます。そうした中で、働いておられる皆さんのことも考えながら、調整しながらというお話がございましたけれども、当然、そうしたことも配慮しながらの整理合理化計画にしたいと考えております。

山口(富)委員 整理合理化というのはなかなか言葉が微妙ですけれども、私は、最後に大臣が、地方公共団体と同時に、そこで働いている職員の皆さんの話もきちんと受けとめながら考えるというふうにおっしゃったので、その点を重視したいと思います。

 同時に、これはあたかも決まったかのような話をされましたけれども、国会の中でも社会保障の改革の問題ではこれから政党間協議をやるわけでしょう。だから、これは幾らでも、先行き、いろいろなプランがあり得るんですよ。ですから、地域医療の問題で、これは絶対に後退させないという視点で取り組みに当たっていただきたい。一律的な売却、譲渡、廃止、これは私は絶対に地域住民の納得を得られないし、やるべきではない、このことを重ねて申し上げます。

 最後になりますが、ことしは被爆六十年です。私は、三月九日の質問で尾辻大臣に、戦後六十年、被爆六十年ということで、戦争被害者の問題をめぐっていろいろな未解決の問題があるというふうに申し上げました。被爆者の問題をめぐりますと、在外被爆者を含めまして、認定基準の問題、それから区域の設定の問題等々、六十年たつのに、被害を受けた方との関係であつれきがたくさんある分野はないと思うんです。

 大臣に確認しておきたいんですが、大臣は私への答弁で、戦後六十年たって、やらなきゃいけない戦後処理はまだまだ多く残っている、こういうふうに言われましたけれども、この被爆者問題というのはやはり解決すべきいろいろな課題があるという認識をお持ちなんですね。

尾辻国務大臣 そのように認識をいたしております。

山口(富)委員 そうしますと、政治家というのは、認識しているんだったら、それを実際に生かしていくことが大事なわけですね、行動に移していくことが。

 それで、尾辻大臣には失礼かもしれませんが、恐らく尾辻大臣は閣僚の中でも一番訴訟を抱えている大臣です。この間、無年金障害者の問題、一連の違憲判決がありましたけれども、きょうも、横路委員が質疑に立ったときに、昨日の東京高裁での東数男さんの原爆症認定をめぐる国側の敗訴が決まったわけですね。大体、訴訟問題を私たちが聞きますと、尾辻大臣は判で押したように同じ答弁をするんですよ。関係省庁と協議をいたしましてということですよ。しかし、私は、関係省庁と協議するのも大事だけれども、それは政府ですから必要でしょう、しかし、ここで必要なのは、実際の被爆を受けた被爆者の方、その声を聞いていただきたい。

 昨日、私のところに、原告東数男さんの承継された方、それから訴訟の弁護団、日本原水爆被害者団体協議会、日本被団協ですね、この皆さんが尾辻大臣にお渡ししたはずの原爆症認定裁判に関する申入書というのをいただきました。

 まず確認しておきたいんですが、この申し入れ書は尾辻大臣に今届いているんですか。

尾辻国務大臣 これは昨日いただきました。

山口(富)委員 この中で、三つの点が趣旨として述べられております。

 一つは、東数男さんに対する認定却下処分を取り消した東京高等裁判所の判決を受け入れ、上告を行わないこと、二つ目に、「原爆症認定制度の運用改善に関する要求」を真摯に受けとめて、被爆者切り捨ての原爆症認定行政を改め、抜本的改革を図ること、そして三つ目に、上記二点について、直接、厚生労働大臣が原告承継人、弁護団、日本被団協と面談すること、会って話を聞いてくれ、こう言っております。

 私は、大臣がこの訴訟の問題で上告すべきでないと重ねて申し上げておきますが、少なくとも、この関係者の方々と直接面談するというところをここで答弁していただきたい。

尾辻国務大臣 昨日、この要求書はいただきましたけれども、さっと目を通させていただいただけでございまして、まだ詳しく読ませていただいておりません。

 それから、判決も出たばかりでございまして、これから検討させていただきたいと思います。

 そうしたことは、よく読ませていただいたり、検討させていただいた上で、またお答え申し上げたいと存じます。

山口(富)委員 とにかく、よく検討してください。

 東さんは、余計な話かもしれませんが、ことし一月二十九日に亡くなりましたけれども、私の誕生日なんです。それだけに私はこの報道を非常にショックに受けとめたんですが、ぜひ、この申し入れ書をよく読んで面談していただきたい。

 そして、この訴訟は、東さんだけでなくて全国で起きているわけですね。戦後六十年たって被爆の被害を受けた方々が訴訟に訴えなきゃいけないような事態がまだ続いているというのは、やはり私は解決すべき深刻な事態だと思うんです。ぜひ、この問題で大臣が被爆者の皆さんの要求を謙虚に受けとめて、被団協の提案もきちんと検討をして、被爆者への援護行政が今後実りあるものとなるように、そういう仕事をやっていただくように重ねて求めて、本日の質問を終わります。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、長時間の委員会審議、大変皆さん御苦労さまです。特に尾辻大臣にあっては、本日は一般質疑とあって、ありとあらゆる角度からの厚生行政、期待が大きいところですので、各委員、真剣な質疑が行われている中で、大臣も大変お疲れであろうと思いますが、もうしばらくよろしくお願いいたします。

 私は、本日、質問通告をしてございますこと以外に、実は、先ほど水島委員がお尋ねくださいました小児のBCGの予防接種に関しまして、水島委員と健康局長田中さんの御答弁、あるいは大臣の御発言を聞きながら、やはりこれでは小児科の現状、子供の現状、そして、まかり間違うと、予防接種が、本当に個人個人の子供の状況を見きわめて接種しなきゃいけないという、これは社会防衛という考え方から個人防衛、個人を守るということに大きく転換した、日本の予防接種行政を後戻りさせるような発言を聞いたやに思いますので、幾つか私から重ねて質疑をさせていただきます。

 私が実は小児医になりましたのは、いつもお話しさせていただきますが、三十年前で、私が一番最初に勤めた病院は、川崎にございます稲田登戸病院という国家公務員共済の病院でございました。この病院は、実はその昔結核病棟から戦後一般病棟に転換したということで、いわゆる結核の患者さんを多く診てきた病院であり、昔のカルテなどを見ると、赤ちゃんの結核という非常に悲惨な状況についても、直接ではなく学び知ることはできました。でも、幸いに私個人はというかこの三十年やっている小児科医は、本当に幸運だと思いますが、小児の髄膜炎を国内で見るということは本当に少なくなり、私自身も国内で見たことは実はございません。

 私が小児の結核性髄膜炎の患者さんを拝見したのは、JICAの仕事で南アフリカに行かせていただいて、アパルトヘイトのすぐ近くにある病院で拝見したのと、あるいは、タイのエイズで療養中のお寺、そこの中で小さな子供が結核性髄膜炎であったなどの経験。そして、せんだってモンゴルに行きましたとき、モンゴルの小児病院に結核性の髄膜炎の患者さん、ちっちゃい子がいて、ああ、まだまだ世界では大変なんだなという思いと同時に、我が国が、今、結核は我が国でもふえてはおりますが、とにかくこの重症の乳児の結核性髄膜炎ということについては、ある程度戦後の行政が成功的には推移してきたろうということをうれしく思った次第です。

 しかし、しかしです。もし今回このような形での改正が行われますと、実は私がよかったと思っていることが、逆さに、これからは大丈夫だろうかと、本当に私は、さっき水島委員とのお話を伺いながら感じました。

 一点目は、先ほど、重症の免疫不全、体が十分にばい菌やウイルスと闘えないという障害を抱えた子供たち、これはごく赤ちゃんのうちはわかりませんが、赤ちゃんのうちに予防接種をすると、ちょっとしたウイルス、ちょっとしたばい菌、結核菌がやってきても重症になる。その辺を経験的に小児科医は知っておりますし、一万人から二万人に一人そういう子供が生まれるとあって、BCGは全員にやりたい、やらなくちゃいけない、重要だと思いますから、例えば今百万人子供が生まれたとしたら、その百万人に受けてほしい、ところが、一万人から二万人にお一人あれば、五十人から百人は早くに接種し過ぎると危険を伴う。

 先ほどの健康局長の御答弁だと、頻度が少ないからというふうにおっしゃいましたが、私たちはリスクを本当に勘案して、ここから始めたら安全なんじゃないのというところで、小児科学会の要望は、これまでのような三カ月から一年を一番いい期間とみなしてくれまいかという要望でありました。

 しかし、お答えは頻度が少ないということで、それは、しかし、答えになっていないのです。頻度が少なくても、起きたら困る、そして、その子の予備力がわからない月齢があるということです。

 この件に関して小児科学会とどんなやりとりをされたでしょうか。もう一度お願いします。

田中政府参考人 何回か小児科学会あるいは小児科の専門医とのやりとりはございます。

 ポイントは二つございまして、一つは、BCGの予防接種をすることがどのぐらいの効果、成果を期待できるかということでございます。

 今、確実な統計を持っておりませんけれども、一歳未満でも、まだ結核の患者さんが二十人ちょっとぐらい出ていると思います。そのうちの半分ぐらいは肺外結核あるいは重篤な粟粒結核等でございます。こういう不幸なお子さんがまだ生じているということで、それを予防するためになるべく早くBCGを打ちたいということでございまして、これに関しては、ほとんどの小児科医あるいは結核の専門医の合意が得られているところではないかというふうに思っているところでございます。これは原則でございます。

 それから次に、副作用の問題でございまして、副作用は、先ほど水島先生も引用されましたけれども、小児科学会の見解の中に、重篤な致死的な副反応、これは免疫不全等によるものでございますけれども、百万人に一ないし一・五六程度というような数字が上げられておりまして、ないわけではない。これは日本の場合どのぐらいあるのかということはよくわかりませんけれども、同じ小児科学会の見解の中に、重症複合免疫不全症あるいは慢性肉芽腫症、こういうようなものがあって、これがすべてスクリーニングすることはできませんので、こういう方々に対して何らかの副作用というのが発生する可能性はある。

 可能性はあるけれども、しかし、BCGの予防接種をすることによって得られる利益の方がやはり多いのではないかという総合的な判断のもとに、なるべく早く、つまり六カ月までにBCGを打つという判断がされたということでございます。

阿部委員 今の局長の御理解は私は少し誤解があると思います。

 最重症の免疫不全は百万人に一人ですが、そのほかに、免疫的に要するに弱みを持った子供がいるわけです。それが私が申しました一、二万人に一人。予防接種をやる場合には、最重症はもちろん予防接種で死に至るその怖さもあります。しかし、そのリスクを抱えた子供たちがある程度見分けられるようになってくる、その意味で、三カ月を超えた方がより安全性が高いだろうというのが小児科学会の見解です。そして、小児科学会は、従来国がおっしゃっているように三カ月から一年くらいで、やはりここをやってくれということです。

 しかし、今回のように六カ月までとされますと、赤ちゃんを育ててみるとわかります、六カ月というのは夢のようです。生まれた、ふにゃふにゃだ、ああ首が据わったかどうしたか、ああ熱を出したか、そんなことを思っているうちに、あっという間に六カ月過ぎてしまいます。

 そして、この六カ月過ぎたら途端に任意になって自己負担という枠では、実は、今非常に赤ちゃんにアトピーといって皮膚がざらざらがふえています。化学的な物質による汚染か、大気汚染か、食物の問題か、現実に二十年前の十五倍にふえています。四、五人に一人はそういう皮膚の状態かもしれません。そうすると、ここに接種できません。もうちょっと待ってあげたい。それが六カ月を過ぎることは間々、多々あります。

 そういう現状からすると、そして六カ月過ぎると自費になると、例えば八千円だとします、これは医療機関が勝手に決めるのです。でも、八千円、若い両親にやはり出してもらえない。非常に高いお金です。そのことを勘案して、予防接種というのは、その子供の健康状態のよいときに、条件のよいときに受けさせてあげたい。

 その意味で、小児科医が長い経験の中で、三カ月から一年の幅を時期としてとっていただければ、そして含みを持たせていただければ、そのために、さっき水島さんが聞いた、この期間の中の特に推奨期間というのを設けたらどうですかということでした。

 これは、実は四月一日から改正されて、あすからかかわってきます。というのは、私も小さなクリニックをやっていますが、この件がなかなか確定されないので、どんなふうにクリニックに通知が来るのかを絶えず待っておりました。しかし、まだはっきりした通知が来ない。そして、もし今度の四月一日からであれば、現在、五カ月目、四カ月目で、とにかくその方たちに全員早く通知して受けてもらわないと、お金がすごくかかるようになります。ここには、移行期の措置も私どもには伝えられていません。本当に子供を守り、どんな経済状態の子でも受けてもらわないと、結核の重症に、条件の悪いところに生まれた子供がかかるんです。

 私は、そのことが余りにも勘案されていない今回のBCGの接種をめぐる厚生労働省の方針の変更。きょうアナウンスされて、四月一日から本当に全部に伝わらないんです。六カ月までに駆け込みたいといったってできないんです。そこはどうお考えでしょう。移行措置はあるんでしょうか。

田中政府参考人 まず、この法律自体、去年、御審議いただきまして、可決成立したものでございまして、その後、さまざまなプロセスを経て施行に至ったことでございます。事前に、当然、都道府県に対する通知等も行っておりますので、周知という意味では、ある程度されているのではないかというふうに思っております。

 そして、六カ月を超えた場合の扱いでございますけれども、先ほども申し上げましたように、このBCGの予防接種はあくまで乳児期の赤ちゃんの結核の重症化を防ぐということが目的でございまして、例えば、六カ月を一日でも超えればそれは全然意味がないというわけではないんですが、六カ月を過ぎてしまいますと、所期の期待しました効果というのは大幅に少なくなってしまうということでございまして、ぜひ、そういう事情を御理解いただければというふうに思っております。

阿部委員 今のは医学的にもうそだと思いますが、要するに、乳児というのは一歳までをいうんですよ、乳児期の。そして、確かに二、三カ月の方が結核性髄膜炎は重いですよ。でも、十分に、後期の一歳前後でもありますし、私たちが求めていることは、やはり一歳というところまで、従来のそこの指導の幅を持っておいた方がより、とにかくお金を払えない人たちが絶対にそこにいて、その人たちはふだんから足が遠いんです。あるいは、条件が悪くて打てない子たちがいるんです。その現状をちゃんと見て、子供たちのための、弱い子供を守るための行政をしてこそ、厚生労働省の行政になるじゃないかということを言っております。

 大臣、重ねて、水島さんも聞かれました、私ももう本当にしつこいと思います。しかし、私は、六カ月が余りにも短い、その後は自己負担になる、自費になる、高い、払えない、そして、そういうおうちこそ問題を抱えたおうちで、その子たちが守られなくなる、非常に不安であります。もう一度、よりよく検討していただけまいか。御答弁をお願いします。

尾辻国務大臣 きょうの御審議を聞いておりまして私が感じましたことは、今先生のお話の中にも通知という言葉が出てきましたけれども、まさしく運用の部分のことが大分あるなと考えました。

 したがいまして、そのまさに通知、運用の部分について、検討すべきことがあれば検討をしてみようと考えております。

阿部委員 こういう厚生省が決めたことに基づいて教科書なども書かれて、例えば、六カ月までがきちんと定期で、後は任意というふうに図示されていくわけです。本当に、もう一度学問的にも検討し直してください。お願いします。

 私の予定した質問に移らせていただきます。

 皆さんのお手元にきょう配らせていただきましたのは、日経新聞の三月二十日付の記事でございます。ここに「脳死移植、法改正で四倍」というタイトルがございまして、これは、今、与党内で、脳死臓器移植について新たな法改正を行うということで検討がなされているように報道されておりますが、この新聞記事を読みます限り、そうした与党内の動きを踏まえて、移植学会がこのような試算を出した。もしも本人の同意ということがはっきりしない、わからない方たちも提供者にしたら、どれくらいふえるだろうかという試算をした記事であるというふうに書かれています。

 では、伺います。本当にこれは臓器移植ネットワークが組織として試算されたのでしょうか。

田中政府参考人 御指摘の件でございますけれども、社団法人日本臓器移植ネットワークの担当者に確認したところ、その担当者は、既存のデータに基づいて、一定の仮説のもとに、もし与党が今考えておられるような形で臓器移植法が改正された場合には、どのような結果になるかというようなことを計算したものであるというふうに聞いております。

阿部委員 質問には正しく答えてほしいんです。私は、組織としてやったことですかと聞いたんです。

 臓器移植ネットワークは、公平性と公正性を旨として、例えばどこかから依頼を受けて基礎データを出すためにこういうことをやったのですかと。イエスかノーかで答えてください。

田中政府参考人 ある臓器移植のコーディネーターが専門的な立場から情報を提供したというふうに聞いております。

阿部委員 いわば組織としてのことじゃないということですよね。臓器移植にお勤めの個人ですよね。

 そういたしますと、臓器移植法の第十三条、ここには秘密保持業務というのがございます。私は、この間改正が言われますので、一体この法律はどんな法律であったろうと改めて目を通すことが多いわけですが、ここには、いわゆる臓器のあっせん機関に携わる者「若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由がなく、業として行う臓器のあっせんに関して業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。」という、ここに法律が決められております。

 私がこの質問をあらかじめ投げましたときに、例えばその御家族が同意をしていたかしていないかは、秘密じゃないという答弁でした。しかし、明らかに業務として知り得た内容ですよね。御家族同意の有無、そういうことを個人が勝手にメディアに報道、垂れ流してよいのかどうか。私は、そういうことがまかり通るようであれば、この保たれるべき組織の何度も言いますが公平性、そして業務上知り得たことについてぺらぺら言ってはいけない、当たり前のことだと思いますが、そうしたことがこうやって裁量行政によって、おもんぱかり行政によって、予測によって次々と破られていくということはゆゆしき事態だと考えます。

 大臣にこのことについて、厚生労働省が指導する機関です。そして、臓器移植ネットワークが組織としてやったのではなくて、その中の一人の方が、自分がデータ処理したものを、メディアの要請に基づいて、このような形で法改正にしたら何倍になるよと情報提供をした、こういうことは管理監督官庁としてあり得べきことなのかどうか、お考えを伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 今回の件でございますけれども、社団法人日本臓器移植ネットワークが、法改正を推進する意図はなく、客観的なデータとして説明したものとは考えておりますけれども、臓器のあっせん機関としてさらに信頼を得ることができるように、今後とも適切に指導してまいります。

阿部委員 私は、家族の同意ということも含めて、いわゆる微妙な条項だと思います。そういうところが全部明らかになってしまって、勝手に処理されて勝手に使われて情報操作されるというような事態を本当に国民が望んでいるかというと、そうではないと思います。そういう点からも厳正な対処を求めたいと思います。

 そして、私は、もう一点、この記事の中でおやと思うことに目をつけました。ここには、いわゆる脳死状態を経て、脳死法的判定を経て、脳死からの臓器提供ではなくて、心停止、心臓がとまって臓器提供されるときに、鼠径部、またのところから入れるカテーテルについては実は心臓がとまってからでは遅いので、心臓がとまる前に、いわば生きておられるうちに入れるという処置がとられた例が四十二件あるということが述べられています。

 私は、現実に医療現場にいますので、もちろん移植で臓器の新鮮さを保つというためにかかる処置のこれまであることも、また必要性のあることも全否定するものではありません。しかし、ちょうど臓器移植法ができて直後の、できてというか審議のさなかの平成十年の五月二十日でしたが、このことで大阪地裁で裁判が起こりまして、心臓死される方に、それの前に先立ってカテーテルを入れることについて、本人のあらかじめの同意を、臓器提供されるという、これは生前のお元気なときに私は心臓がとまったら臓器を出すよと言っている方ですから、本人の生前にカテーテルの挿入についても同意を得べしという判決でした。しかし、厚生労働省は、その後通達によって、本人の同意はそこには要らない、家族でよろしいということの行政上の指導をしてこられました。

 私は、臓器移植というのは納得、それも御本人が提供してさしあげようという納得に基づく医療であってほしいと思います。また、そうでなければうまくいくはずがありません。だまし取られたり十分に説明を受けないで、あるいは御本人と家族の利害関係がよくわからない、人間社会は複雑です、そういうことも含めて、安易に拡大されることを一番懸念しております。

 そうした中にあって、なぜ家族の同意、家族がそれをオーケーとすればいいという方を本人への説明に先立って取り入れているのか。私は、厚生労働省がやるべきことは、腎提供をしてくださるという方に、腎提供とはかかる処置です、あなたが心臓がとまる前にここに管を入れることはあります、そういう情報をきっちり流して啓蒙していくべきだと思います。

 もう死んじゃうかどうかわからない、意識がない、何もわからない、だから家族に聞いてとりましょうというようなことは本末転倒、大きに問題と思いますが、これは田中健康局長に聞いてもいい答えは得られませんが、しかしとりあえず答弁してもらいましょう。

田中政府参考人 今の事例でございますけれども、それは心臓停止下の腎臓提供のルールのお話でございまして、これは臓器移植法に基づいて行われているということでございます。

 腎臓の移植術を医学的に適正に実施する上で、以下の措置は必要と認められている、つまりカテーテル挿入が必要、腎臓摘出に対して医療現場において一般的に行われている医療行為であり、またカテーテル挿入は身体に対する侵襲性は極めて軽微である、こういう認識に立っているものでございまして、もちろん、救命治療を尽くすことは当然の前提でございまして、結果として臨床的に脳死状態と診断された後であれば、これは臓器移植法の上でございますけれども、家族の承諾に基づきまして御指摘の術前処置を行うことは、予定している行為であるというふうに考えているところでございます。

阿部委員 厚生行政が何でも法律じゃなくて、政令とか、まかり間違うと通達、これは通知、通達の世界ですよ。私が言っているのは、それなら本当に提供したいという人にあらかじめこういう処置がありますよと言っておくべきでしょうと言っているだけで、どうして真正面から答えないんですか。法律事項じゃないですよ、そんなの、今あなたの答弁は。そうやってごまかしながら事をやろうと思うから、かえって疑りが深くなるんです。

 どういうことかというと、これは、腎臓を洗うための管ですと患者さんの家族にも言われるんですよ。そうすると、ああ、自分の愛する人の腎臓、体、助けてくれるための管かと思うじゃないですか。当然ですよ、一縷の望みです。しかし、これはそうじゃないんです、ごめんなさいね、あなたのためじゃなくて次のステップですよと。あるんです、あり得るんだから、しようがないです。

 だったら、そういうこともあるんだということを、あらかじめ本人が提供者になるというドナーカードに意思を示した方にもきっちりとわかる形で通知しておくことが、きちんとした、医療現場の混乱をなくすことにつながると言っているんです。こうやって、全部通知の行政で、やみからやみにやってきて、あげくに情報操作するなんて、本当に悲しいし、命にかかわるこういうやりとりはやめていただきたい。

 私は、きょうあと二つあるんですが、ちょっとできなくなってしまったので、最後に一つだけお願いがあります。これは、大臣にお願いします。

 皆さんに手元にお配りした中に、四枚目、見ていただきますと、この間の臓器移植でお亡くなりになった方のデータというか、人数だけがわかるデータがございます。この間、心臓で二例目がお亡くなりになった。三十二例目の症例です。そして、肺では既に六人の方がお亡くなりです。肝臓では四人の方。

 しかし、こういう情報は国民は知らされていません。例えば、きょう御参加の委員の皆さんで、ええ、臓器移植って、もうやったけれども亡くなった方が出たんだということを、果たしてどれくらいの方が御存じでしょうか。そして、移植を受けられた方がその後どのような生活を送られたか、ハッピーであったか、あるいはQOL、クオリティー・オブ・ライフはどうであったか。

 この心臓移植の二例目の死は、移植後四カ月で亡くなっておられます。移植をしなければ六カ月生きられないと言われた人が四カ月で死んでしまいました。こういうことだってあるんです、移植というのは。

 しかし、そのことも、私は、これからは国民は知って選ぶ時代、移植という医療を知って選ぶ時代。であれば、厚生労働省として、これまではドナー側の検証会議は一生懸命やってきました。中には、日弁連が人権侵害だと言っても、厚生労働省はゴーゴーとやってきたものもあります。しかし、検証会議をしないよりはましです。

 この移植で亡くなられた方の状態、これは臓器移植法の三条、国民の理解という、この臓器移植法は、国民が移植医療について理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければいけないということをうたっています。必要な措置とは、移植について知ること、光と影、メリット、デメリット、本当にそのことで、逆に言うと移植医療は定着するかもしれません。隠して、だまして、本人同意なくとろうというような方向よりは、きちんと移植医療を厚生労働省としても検証していただきたいが、大臣、いかがでしょう。

尾辻国務大臣 移植後の生存率等の移植成績につきましては、これは、お話しのとおり、きっちり国民の皆さんにお知らせする必要があると思いますけれども、今、社団法人日本臓器移植ネットワーク、先ほどお触れになりました、このネットワークにおいて集計して公表をしておるところと理解をいたしておりますけれども、今後とも、移植を考えておる患者さんを含め、国民の移植医療に関する理解が深まりますように、まさに三条にありますように、適切な情報提供に努めてまいります。

阿部委員 いいところずくめじゃないわけです。だからこそ、きちんと知って選んでいくという時代の要請に尾辻大臣にこたえていただけますようお願い申し上げて、質問を終わります。

鴨下委員長 次回は、来る四月一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十三分散会


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