衆議院

メインへスキップ



第18号 平成17年4月22日(金曜日)

会議録本文へ
平成十七年四月二十二日(金曜日)

    午前十時二十五分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    大前 繁雄君

      上川 陽子君    木村 義雄君

      小西  理君    菅原 一秀君

      中山 泰秀君    原田 令嗣君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    水野 賢一君

      宮腰 光寛君    森岡 正宏君

      吉野 正芳君    石毛えい子君

      泉  健太君    泉  房穂君

      大島  敦君    小林千代美君

      城島 正光君    園田 康博君

      中根 康浩君    本多 平直君

      水島 広子君    横路 孝弘君

      米澤  隆君    高木美智代君

      古屋 範子君    桝屋 敬悟君

      山口 富男君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     水野 賢一君

  渡辺 具能君     大前 繁雄君

  橋本 清仁君     本多 平直君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     渡辺 具能君

  水野 賢一君     河野 太郎君

  本多 平直君     橋本 清仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、介護保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長青木豊君、社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君、老健局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。

横路委員 今日までの議論は、新予防給付とそれからホテルコスト負担の問題に集中して議論が行われてまいりました。つまりこれは、一言で言えば給付をカットして負担をふやすということでございますから、小泉内閣が一貫してとってこられた政策の一つであると言っていいと思います。

 問題は、介護保険が施行されて、この間どういう状況にあるのかということもまたあわせてしっかり見て、充実するところは充実していかなければいけない。ところが、どうもカットの方に先に目が行っているということは、非常に残念に思います。

 問題は、高齢者の皆さんが住みなれた地域で、そして住みなれた自宅で老後を過ごすことができるようにする。では、そのための体制というのが、例えば在宅での支援体制というのが、本当に例えば要介護度四とか五の人にとってそういう環境になってきているんだろうかというと、必ずしもそうは言えません。

 したがって、ますますそういう問題、あるいは認知症もどんどんふえていく。三施設の問題も、そのあり方が今のままでよいとはだれも思っていないわけですね。しかし、そういう改革は出てこなかったということになったわけであります。議論はまだまだこれからしなければいけない課題がたくさんあるということが、今日までの議論を通じて明らかになったのではないかというように思っています。

 そこで、問題は、軽度者はどんどんふえているということの中で、制度の持続性をどのように確保するのかということで、本当は大手介護事業者の行動に問題があったわけでございますが、しかし、そうではなくて、あたかも利用者に問題があるかのごとく家事カットと筋トレ路線を打ち出して、あたかも家事援助というのは何か間違いであるということのように演出をしたところに問題があると指摘せざるを得ないわけでございます。

 そこで、本当にそこに問題があるのかということを、ちょっと基本のところの議論をしてみたいと思うんですが、皆さん方がよく利用されたこの日本医師会総合政策研究機構の資料、この資料の中から幾つかの資料をちょっと取り出して見てみました。皆さんのお手元にもその資料があると思います。皆さん方はこれを使って、要するに、要支援、要介護一の悪化が非常に大きい、したがって、それは家事援助にあるんだ、こういう短絡的な結論を出されたわけであります。

 同じ資料の中に、皆さんのお手元にあるナンバー一の、まず下のところを見てください。要介護一の人です。未利用者、在宅、特養、老健、療養型と分かれています。未利用者と在宅と比べると、ほとんど差がありません、若干在宅の方が悪化度があるということなんですが。しかし、この統計は死亡された人を除いているんですね、死亡という事例を。つまり、悪化の最たるものは死亡ですから、それを除いて数字を出している。

 それで、一枚めくって、二番目の上の方の要介護一のところの事例。未利用者、在宅、特養、老健、療養型ということで、悪化は、未利用者が四七・一、在宅が四九・二、特養が五六・七、老健が六六・一、療養が七〇・九というようになっております。未利用というのは、本人が意欲があって、いや、そういうサービスいいよという場合と、家族が、いや、自分たちでちゃんとやるからといういろいろなケースがあるというように思いますけれども、しかし、未利用と在宅とそんなに差が大きくあるということは、この数字からいうと言えないわけですね。

 したがって、在宅の家事がということにはならないと思うんですが、大臣、この数字、これは皆さんがよく活用された資料の中の数字でございます。いかが受けとめられますか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日医総研で実施されました研究では、このように「所在地別にみた寝たきり度の変化」等がとられております。これは、二年間所在地が同一であった方々についての資料でございまして、未利用者、在宅、施設入所者、それぞれについて変化を見たものでございまして、委員御指摘のとおり、未利用者と在宅、若干の違いがありますけれども、大きな傾向として、委員御指摘のとおりだと思います。

横路委員 つまり、これは、施設よりはやはり在宅、未利用の人の方が悪化度は少ないわけですね。しかも、家事援助を使っていない未利用の場合と、この在宅の人たち、これは多分家事援助を使っているでしょう、それとほとんど変わりないということは、ここからすぐ家事援助ということにはならないんじゃないですかということを指摘しているわけです。

 それから、制度の説明そのほかは十分承知していますので、改めて総論の答弁は要りませんから、答えだけしていただければというように思います。

 いかがですか。ここからすぐ家事介護ということにはならないでしょう。

中村政府参考人 第一点の施設と在宅の方につきましては、施設入所の方は、このランク、例えば要介護度の軽い方につきましては、施設の入所者の数がかなり少ないということは考える必要があるのが第一点。

 第二点、施設に入所されているということは、在宅と施設入所の方とかなり実際問題の状態は違うのではないかというようなことが推察されるということで、単純に、在宅、施設のこれで判断はできないのではないかというふうに考えております。

横路委員 もう一つ、一の上の方の寝たきりの改善度というのを見てみても、これは在宅が一番改善度が、ある意味では改善度というか悪化しないウエートというのは、在宅が一番高いわけですね。そこもちゃんと見ていただきたいというように思います。

 二ページの方の、もう一つ、「要介護度別にみた主な傷病別認定状況の変化」どういうぐあいに変化が起きたのかというのを見てみますと、一番高いのは何かというと痴呆ですよね。これが死亡を含めて六九・七。その次が脳梗塞ですね。その次が精神行動障害です。その次が大腿骨骨折です。その次が高血圧症です。

 これを見ると、廃用性症候群というよりも、精神行動障害なんというのも一つの、ある意味で言うと認知症もこの中に入ってくるんでしょう、むしろ問題は認知症のところにあるんじゃないかと。つまり、悪化しているのは認知症とか脳梗塞とか高血圧症であって、廃用性症候群のところが何か特に悪化しているということではないんですね、病気別に見ますと。

 これはどういうぐあいにお考えになりますか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、データ、委員御指摘のとおりだと思います。悪化が見られるのは、認知症の方、ここでは「痴呆(アルツハイマー以外)」、こういうふうになっておりますけれども、そういった方々の悪化が目立つのではないかということは御指摘のとおりだと思います。

 今回の新予防給付の対象者は、したがいまして、状態の維持、改善可能性に着目して、いわゆる廃用症候群の方々を対象とすることといたしておりまして、認知症の方はなかなか理解がいただけないため予防効果が上がらないんじゃないかというふうに考えておりますので、認知症の方に対する対応は別途の対策が必要なのではないかと考えております。

横路委員 つまり、今まで皆さん方の理論といいますか考え方は、要介護度一を調べてみたら非常に悪化が進んだ、その進んだ理由は何かというと、それは家事介護にある、したがって、そこを要介護度一から外して新予防給付だ、こういう理屈だったわけでしょう。

 しかし、これを見ていると、悪化しているのは、むしろ認知症だとか高血圧症の方が悪化が激しいということが明らかになった。しかも、家事を使っていない未利用者と在宅とそんなに大きな違いはないということが数字として出ていますから、これを見ると、皆さん方の理屈の基本のところというのは必ずしも成り立たないんじゃないんですか。

中村政府参考人 要支援、要介護一の方々の原因疾患を見ますと、今の委員の資料ではグラフで数量的な計数が出ておりませんけれども、認知症の方々の割合はそれほど高くない、こういう問題がございますので、私どもは、要支援、要介護一の原因疾患の多数を占めている廃用症候群の方々を中心に予防の事業を行ったらどうかという御提案を申し上げているところでございます。

横路委員 そこで、次に、まさにその原因、今お話があった原因から見てみましょう。

 介護が必要になった原因で、廃用性症候群が要介護一で大体五〇%だ、ここに家事介護をしたから悪化したんだということですよね、今までの理屈は。それでよろしいですか。

中村政府参考人 私どもが申し上げておりますのは、主として廃用症候群に関連する原疾患の方が要支援、要介護度一に対して大きい、要支援、要介護一については、改善の可能性が適切なプログラムで行われれば高いのではないか、そういったことで、予防重視の改正をする必要があるというのが第一点でございます。

 第二点につきましては、要支援、要介護一の軽い方々に対して行われている現行の介護給付について、問題があるケースということがあり得るのではないか、そういった点についてはマネジメントを適切に見直していく必要がある、そういう考え方で提案をさせていただいているところでございます。

横路委員 要介護度一と認定された人は、二〇〇四年の数字ですが、百三十二万ですよね。そして、認知症高齢者の日常生活自立度二以上の人というのは要介護度一の中で二五%だというように皆さんからお答えをいただいております。

 この自立度二以上というのはどちらに選別されるんですか。要支援二なんですか、要介護一なんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 要介護一に分類されます。

横路委員 そうすると、ここに、皆さんの資料で一番最後のページにありますが、「要介護度別の介護が必要となった主な原因の割合」これを見ると、皆さん方が根拠にしている廃用性症候群に関連する原疾患が五〇%ぐらい、認知症六・七となっているんですね。

 六・七と二五というのは、これは全然違うわけですよ。これはどちらが正しいんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 要介護度別の介護が必要になった主な原因疾患の割合、ここでお出しさせていただいておりますが、それぞれの方について、寝たきり度あるいは認知症の自立度ということをとらせていただいております。

 したがって、例えば脳血管疾患やその他の分類の中でも、そういった意味で認知症関連の自立度で高いスコアが出ているということもあり得るというふうに考えております。

横路委員 つまり、廃用性症候群に関連する原疾患といっても、重複する疾患を持っているケースがあるわけですね、当然。しかし、これは主たる原因に分類していると書いてありますが、つまり、この廃用性症候群の中に痴呆性だとかうつだとかを持っている人たちがいるんでしょう。そうしないと数字が合わないですよ。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員が御指摘になった、一つの数字は国民生活基礎調査、こちらの最終ページに出ておりますのは要介護認定データに基づきます原因疾患が記載されているものの分類でございますので、若干の食い違いはあるかと思います。

 したがいまして、「その他」、そういったところにいわば認知症の自立度スコアで二以上なり三以上の方が入っているというふうに考えております。

横路委員 うつというのはどこに入っているんですか、この原因の割合でいいますと。

中村政府参考人 うつにつきましては、「その他」に入っております。

横路委員 皆さんの資料の中にも、廃用性症候群の状態にある利用者に対しては、身体機能のみならず痴呆やうつ状態の可能性について考慮した上で対応すべきであるという指摘があります。当然の話ですけれども、この点をどう受けとめますか。つまり、廃用性症候群の中にも認知症の人がいますよ、そのことをちゃんと忘れないで対応しなさいということ、これは皆さん方の資料の中に出ています。当然のことだと思うんですけれども、いかがですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 そういうふうに配慮するということでございます。

横路委員 そうしますと、要介護度一を要支援二と要介護一に分けるということで、要件が三つほどありますね。認知機能障害、あるいは疾病や外傷などによって心身の状態が安定していない者とかその他、こうあるわけなんですが、今までの皆さん方の御答弁は、この全体の数字の七〇%から八〇%が新予防給付に移るということの御答弁をずっといただいております。しかし、これを見ると、それで今の御答弁を考えますと、つまり、そんなにはいないわけですよ。

 これは、五〇パーを七、八〇と言ったのは、「その他」や何かを除いたんですか。この廃用性症候群、このものだけでも五〇%なのに、どうして七、八〇外すと。つまり、脳血管とか認知症とかパーキンソンというのは大体は要介護一に残るというように聞いていますけれども、どうして七、八〇になるんでしょうか。

中村政府参考人 先ほど申し上げましたように、国民生活基礎調査で、認知症の自立度二以上の方が二割程度おられる、その逆数で申し上げております。

 具体的に、新予防給付の利用につきましては、従来御答弁申し上げていますように、病状が安定していないとかあるいは新予防給付の利用に係る適正な理解が困難である、こういったことで、従来御答弁申し上げていますような方については除外される、そういった方については要介護一というふうに扱われるということは御答弁申し上げているとおりでございます。

横路委員 だから、重複していろいろな障害を持っている方もたくさんおられるわけですから、ここで「骨折・転倒」とか「高齢による衰弱」とかいって、廃用性症候群、はい、これは除きますよということにはならないんじゃないですか。やはり個別にちゃんと、よほどスクリーニングをしっかりしなければいけない。

 ですから、今までの御答弁のように、廃用性症候群、七割から八割だからそれは新予防給付へと簡単に言われるけれども、とてもそんな簡単な問題じゃないですよ。だから、そこを考えると、私はそんな、七、八〇にはならないと思います。そこをやはりしっかり見てもらわなければ困ります。

 例えば、重度の痴呆は要介護一だというけれども、では、重度でない軽度の、あるいは中度の痴呆という場合はどうなるんですか。新予防給付になるんですか。新予防給付にして、どんな予防給付をするんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 認知症の高齢者の日常生活自立度というスコアがございまして、二以上の方がいわば新予防給付の予防の目的とかそういったことについて御理解がいただけないだろう、したがってこの方々については新予防給付の対象にならないだろうということを申し上げているわけで、軽度の方々につきましては予防の対象になり得るというふうに考えていますので、もちろん、軽度の認知症がおありになるということを踏まえた上で適切なケアプランをつくりサービスが提供される、こういうふうに考えております。

横路委員 それも今までの皆さんの資料とは違っておりまして、いまだ認知症、うつなどをどうすべきかということはわからないので、予防は地域支援事業へ回すというように書いてありまして、新予防給付の中で軽度の痴呆の人に対して行うというようには必ずしも今までなっていませんけれども、それはどうなんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今私が御答弁申し上げましたのは、要介護認定で該当された方のお話を申し上げているわけでございます。例えば、要支援一とか要支援二に該当されている方につきましては、新しく十六種類のサービスメニューが用意されているわけでございますので、それが利用されるというふうになります。

 地域支援事業において、認知症の方々に対するさまざまなサービスなり予防事業ということが期待されるわけでございます。特に、最近は軽度の認知症の方に対する予防対策の重要性が言われております。ランクの二未満、つまり認知症高齢者の日常生活自立度の一と申しますのは、何らかの認知症の症状は有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立されている、こういう方でございますので、そういった方々で要介護認定に該当されない方については、地域支援事業でさまざまなプログラムが提供されるべきだ、こういうふうに考えております。

横路委員 軽度の人も、早く悪化するケースが多いんですね。それは、先ほど来の資料で、要介護一の人で一番悪化度の高いのは痴呆性だということでしょう。重い人は要介護四とか五とかになっているわけですから、やはり要介護一の中で悪化が非常に進んでいるわけですよ。それに対してどういう予防をするのかということは、必ずしもはっきりしていないから、これから検討しますというのが皆さん方の今までの方針だったわけです。

 ですから、痴呆性でも軽度と重度をどうするか、廃用性症候群の中にもいろいろな人々がいるのをどうやってえり分けていくのか。これは、大臣、簡単に丸めて、はい、七、八割は新予防給付ですよということにはならないいろいろな問題があるんです、この原因、状況、そのほか。それから、まだまだ、もちろん後で介護予防というのは何かということもちょっと議論したいと思うんですけれども、やはりトータルに考えていかなければいけない。

 ですから、そんな簡単に、廃用性症候群が原因です、はい、この人は新予防給付です、こういうぐあいにはならないので、一人一人がどんな状況なのかというチェックが物すごく大事ですよ、もし分けるとしても。だから、簡単じゃないですよ、これは。だから、そこを、どうスクリーニングするかというのはこれからなんでしょうけれども、ぜひ、やはり介護給付の必要な人というのはいるわけで、外そうとするのではなくて、必要なところにむしろ目を向けていくということが必要だと私は思いますが、大臣、いかがですか。

尾辻国務大臣 基本的に、今先生が御指摘いただいておること、これはそのとおりだというふうに私も思います。ですから、要介護度の認定に当たっても、要介護一のところの皆さんを要支援と要介護一に分ける、ここのところで、もう一回その認定のところで念入りにやるというようなことを今回の見直しでも御提案申し上げておるわけでありまして、そういうことをやるというのも、今先生の御指摘のことがそのとおりだということを私どもも認めた上でのことと御理解いただければというふうに存じます。

 そして、最後に言われた、私どもも決して、今度のことでサービスをカットしよう、それが目的だということではないことだけはまた改めて申し上げて、御理解をいただきたいと存じます。

横路委員 それで、もう一つ、廃用性症候群の中からさらに改善可能性の高い者を選んでいくわけですね。改善可能性ということが常に言われていて、可能性の高いか低いかということが一つのメルクマールみたいになっているんですが、多分廃用性症候群の人の中でもいろいろな病気を持っている人もいますが、改善可能性の高い、低いというのはどこでどういうぐあいに判断するんですか、これは。

中村政府参考人 まず、私ども、リハビリテーション研究会なり老人保健事業の見直しの検討会なり、また、今度の新予防給付についてのサービスの評価研究会等で議論をしてまいりましたけれども、一般的に申し上げまして、脳卒中や認知症の方々に比べまして、廃用性症候群とリハビリテーション関係者が言っておられるグループは、適切なケアが行われれば改善の可能性が高い、しかしながら、従来、そうした観点に基づいて、必ずしも、リハビリテーションを初め、また、高齢者ケアがなされてこなかった、そういう前提に立って、これからは廃用性症候群の方を中心にそういったプログラムをつくろう、したがって、要支援一、要支援二の方々にターゲットを置こうということでございます。

 具体的なスクリーニングにつきましては、介護認定審査会で行います第一次判定、これは、市町村の高齢者の生活機能を評価する調査項目をコンピューター処理したものでまず第一次判定を行い、第二次判定、主治医意見書、そういったことを踏まえながら専門家の合議によって第二次判定をする。その際に、状態の維持または改善可能性の審査についても行っていただくということを考えております。

横路委員 ちょっとその前に確認しておきたいんですが、廃用性症候群の中で、例えば認知症、そういうものを持っている人というのは、これはやはり外すべきだというように思いますし、それから、改善可能性というのは、一体これは、例えば八十五とか九十の高齢者の人に改善可能性というのは、何をどういうぐあいに考えるんですか。それは、この間のように、握力がどうだとか歩くスピードはどうだとかいうことでまさか考えるわけじゃ全然ないでしょうね。そこをちょっと念を押しておきます。

中村政府参考人 状態の維持または改善可能性でございますので、できるだけ維持をしていただくという観点で適切なプログラムを立て、サービスをする、それで高齢者の方の自立支援、最後まで高齢者の方が尊厳を持って暮らしていただけるようにやっていくということでございます。

 それから、最初の方の御指摘の、まさに、廃用症候群の方々の中にも認知症を持っておられる方があるのではないか、こういうことでございますので、認知症のスコアというものは要介護認定のスコアの中にございます。現実に、三百十四万人の方が該当されていたときに百四十九万人の方が認知症のスコア二以上、このように個々の方々についてスコアがございますので、原疾患が廃用性症候群であっても、認知症の症状があり予防に向かない方については要介護一というふうに分類される、スクリーニングされる、そこは間違いないところでございます。

横路委員 八十五歳とか九十歳のひとり暮らしの人にとっては、ちょっとした家事介護が多分一番改善可能性を高めているんだというように思うんですが、この改善可能性というのは、身体的機能だけじゃなくて生活全体の話だと思うんですね。だから、決して、何かここで見ると、もう今までの議論は、これから筋トレに話が行きますから、すぐ身体的能力の話になってしまう。

 だから、改善可能性が高いか低いかというときは、身体の能力というのは、それは一部であって、そんなの本当の一部の話で、年齢が高くなればなるほどやはり精神的な意欲だとか意思だとかいうような生活全体の問題が大事になってくるわけですから、ここのところ、今のお話を聞いても、後、これから検討しますという話なんですけれども、ともかく皆さん方の方は給付カットが頭にあるから、要介護一から七、八割は除きたいというのが意欲としてぐっと出てきているんですね。しかし、大臣、それはそうじゃなくて、やはり必要な介護はちゃんと提供するということを前提にしていっていただきたいというように思います。

 ですから、改善可能性は生活全体を見ること、特に、年齢の高い人にとってはやはりちょっとした家事介護が非常に大きな意味を持っているということなどを考えていただきたい。その点を十分考えたことにしなければ、皆さんから批判が、これをやればすぐ批判が集中するというように思いますよ。いかがですか、大臣。

尾辻国務大臣 これは前にもお答え申し上げたことでありますけれども、山井先生のお勧めもありまして、私もできるだけ現場を見たいということで現場を何回か見せていただきました。

 その中の一つとして、実際ホームヘルパーさんが来ておられるところに行って、そのさまを見せていただいたわけでありますが、帰りに、まず一番気になりましたのはきょう先生が御指摘いただいているようなことでありましたから、きょう私が見せていただいたこれで、新しく見直しの中で、ヘルパーさんたちに来ていただいているそのサービスがカットされるようなものがあると思うかと聞きましたら、きょう私どもが見せていただいた中でそのようなものはない、きょう見せていただいたサービスというのは今度の見直しが行われたとしても今後とも当然サービスとして供給されるものであると考えるという答えをもらいましたので、私はそういう意味では安心して帰ってきたところでございます。

 あえてそういうお話を申し上げたのは、私も今先生の御指摘のとおりだと思っておりますし、そのようにしなきゃいけないと考えておりますということを申し上げたところでございます。

横路委員 いや、ですから、今の大臣の答弁をそのとおりに、後、これからいろいろ政令をつくったり通知するときに考えてください。そのことを確認しておきます。

 一つ、要介護四と五のサービス給付の強化ということについて、ちょっと御質問をさせていただきたいというように思います。

 重度の人への給付をどう強化するかという点も、現状で大変重要な問題でございまして、特に、自立度三以上でかつ運動能力が低下していない認知症の高齢者の方が、全国二十五万人おられて、今もうちょっとふえています、これは何年か前の数字ですから。そのうち十五万人が在宅なんですね、在宅。それは、皆さんに資料としてお渡しをしたナンバー四のところにあります。

 それを見ていただきたいんですが、この人たち、この十五万人の人は、家庭、家族で、本当に今大変なんですね。物すごい苦労をしているわけです。そして、ここで、家族は休まることはないし、中には本人が虐待を受けているというケースがあって、虐待の六〇%はこれらの認知症の人だというようなことも言われております。しかも、虐待は自分の息子が多いというようなことも何か調査で明らかになったということなんですが、まず、この実態はどうなっているのかということが一つと、それから、施設に入っている人が少ないんですね、在宅でみんな面倒を見ている。これはなぜなのかという二つの点についてお答えいただきたいと思います。

中村政府参考人 まず、実態ということで、高齢者虐待の方でございますが、私ども平成十五年度で実施した調査によれば、虐待を受けている高齢者の八割に認知症の症状が見られる。今委員御指摘のとおり、虐待者の約六割は主たる介護者として介護を行っていた人、そのうち約六割には介護協力者がいない、こういうことでございますので、虐待の発生原因として、高齢者本人と虐待を行っている家族との間の人間関係なり虐待者の介護疲れ。

 そういった意味で、今委員から御指摘ございましたように、非常に重度の痴呆の方で身体機能が自立されている方、この方々は大変介護が大変でございますが、そういった方が在宅に多くおられるということが最大の問題ではないかと思っております。

 それで、施設の方についてでございますが、これまでの高齢者介護の体系がどうしても身体介護中心で発達してきた。こういうことがあり、従来の介護三施設の方で、委員御指摘の重度の痴呆でまた徘回等の症状が生じる身体機能が自立されている方々についてなかなか対応しにくい。こういうことで、実際入所されている方、施設入所者が、七十万人を超えるにもかかわらず、十万人程度にとどまっている、こういうふうに考えております。

横路委員 今後この自立度三以上の人はますますふえていく、二〇〇五年つまり本年では九十万ぐらいになるだろうということが言われているわけで、どうしたらいいのかということがあるわけです。

 一つは、やはり早期発見、早期対応で、医師を含めた専門家のネットワークが必要なんですね。これは、在宅介護支援センターの中でも、進んでいるところはそういうことをしっかりやっています。地域ケア会議を開いて、医師も含めて個別対応するということをやっているんです。

 したがって、早期発見、早期対応というのはよほど地域密着型でなければできないということですね。地域の中にやはり発見する力がなければいけない。それから、医師との協力というのは非常に重要であるというように思うんです。これは、今までも在宅介護支援センターなどでやることになっていながら、しかし、やはりまだまだ十分に行われていない。今度は包括地域センターでやりますよということなんですが、私は、これは後で議論しますが、非常に疑問に思っています。

 この早期発見、早期対応、医師を含めた専門家のネットワークということで、ある意味では医療との提携ということにもなりますし、そこをまず、やはりよほど力を入れて体制をしっかり全国的に整備するということが必要だと思うんですが、大臣、これはいかがですか。

尾辻国務大臣 今のお話は私も全くそのとおりだと存じます。

 先日、尾道方式と言われるサービス提供者の会議も実際に見せていただきました。そのときに、ケアカンファレンスをお聞きしながら、医療と介護、ここがうまく結びつかないと今後はすべてのことがうまくいかないなということを実感して帰ってまいったところでございますので、今の先生のお話、私も全くそのとおりだというふうに考えます。

横路委員 そのとおりだという御答弁で、だから、それをちゃんとやっていただくというのが大臣の責任でございますから、ぜひそこのところをしっかりやっていただきたいと思います。

 そして、本人が落ち着く、家族の休息も大切。本人と家族の関係が悪化しないようにどうするかということで、一つは、小規模なデイサービスセンターとかショートステイとかあるわけですね。しかし、なかなかそこも誘導はできない。ショートステイだって老健施設だって、やっているわけですね。ところが、なかなか受け入れてくれない。だから、少し誘導策が必要だと思うんですね。そこにやはり受け入れるよという気になる誘導策が必要だというと、これは介護報酬、今の場合、報酬で見るしかないわけなんです。

 もっと痴呆性の人に配慮したさまざまな施策展開、あるいは、それも含めて要介護の四とか五という重度の人に対して配慮した施策展開というのがこの際必要だと思うんですね。皆さんもカットばかり考えないで、充実するところをちゃんと充実するということもあわせて考えてくれなければいけないわけで、今回の改正は本当にバランスがとれていないと思うんですが、ここのところをちょっとどのようにお考えか、お答えいただきたい。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員から御指摘ございましたように、認知症に地域で対応しなければならないということで、そういった意味で、今回、地域密着型サービスの創設もし、認知症高齢者グループホームでございますとか認知症高齢者対応型デイサービスなども充実していく、こういうことを考えているところでございます。

 それから、介護報酬のお話がございましたが、中重度の方が在宅で暮らし続けられるように、そういった点の充実が必要だと思っておりますので、その点につきましては、今後の介護報酬の見直しの際に十分議論をしてまいりたいと考えております。

横路委員 あと、グループホームも現在六千百六十一カ所ですか、随分展開されてきていますが、しかし、従来から言われているのは、サービスにかなり差があって、入居者の権利保護も十分でないところも多いという指摘がありました。外部評価も始まって、同じような指摘だと思います。

 こういうグループホームの抱えている問題の一つに、入所者の健康管理が十分でないという点があるわけです。今、訪問看護というのが認められていないわけですが、訪問看護を認めるか、あるいは看護婦を置くように義務づけるか、やはり何らかの対応が必要ではないか。これだけふえてきますと、やはり中に入っている人の健康管理を含めたしっかりした対応というのが必要なんだというように思いますが、その点いかがですか。

西副大臣 お答え申し上げます。

 認知症の高齢者のグループホームにつきましては、私も現地を訪問いたしましたが、外部の目からはなかなか届きにくい、また閉鎖的になりがちであるサービス形態であるというふうな印象を持ちました。そんな意味で、質の確保、向上がとりわけ大事だという問題意識を持っております。

 まず、施設の管理者及び計画を作成する責任者に、この認知症のケアに関する研修を受講することを義務づけしております。また、先ほど御指摘のように、自己評価に加えて、定期的な外部評価も義務づけて、その結果を公表するということを今現在実施しているところでございます。

 グループホームの日常の健康管理につきましては、これは現在、約七割の事業所で、日常的に訪問診療、往診に応じてくれる医療機関、それから利用者の医療について日常的に相談できる医療機関があるという調査結果が出ておりますが、先ほどからも議論のありますように、入居期間が長期化するにつれて重度化が強まってくる、こんなことも予想されておりますことから、医療との連携がますます大事だというふうに考えております。

 このために、この点について外部の専門医療機関や、それから先生御指摘の訪問看護の活用等も含めて、社会保障審議会の介護給付費分科会の議論を踏まえながら、平成十八年四月に予定されている指定基準それから介護報酬等についての見直しの中で検討していきたいというふうに考えているところでございます。

横路委員 ちょっと医療の問題が出ましたので、中重度の人たちは医療ニーズも高いんですね。結局、在宅でのそういうサービス提供をどうするかということが問われているわけなんですが、最近、何か、訪問看護ステーション、これは全国に五千カ所ぐらいあるんですが、そこに昼間通所看護、通うということですね。そこで見てもらう、ある意味でいうと預かってもらう。これは家族の休息にもなるわけなんですけれども。

 そういう事業が行われていて、それが非常に評価されているというように聞いておりますが、それを制度的にしっかりしたものにした方がいいのではないかというようには思います。それも医療と在宅との連携を強めることにもつながりますので、その点もぜひ検討して実現するようにしていただきたいと思いますが、いかがですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 在宅における医療ニーズの高い中重度者対策は、大変重要な課題と認識しております。

 こうしたケースにつきましては、主として訪問看護サービスにより対応をしてきたところでございますけれども、難病等の医療ニーズの高い要介護者の御家族は、その介護のために身体的、精神的な重い負担を負っている状況にある、こういうふうに考えております。

 今委員御指摘の、訪問看護ステーションで日中要介護の方をお預かりするような試みも行われているところもあるようでございますので、訪問系のサービスのみならず、医療と介護の関係で検討すべき課題は多いと考えております。介護保険部会の意見書でも、今の医療型の多機能サービスについて「一つの方向性として考えられる。」し、通所看護と言われていることについても「新たなサービス形態として検討を進めることが望まれる。」と御指摘いただいておりますので、考えてまいりたいと思っております。

横路委員 いわば通所看護が必要であるということでございます。

 それからもう一つ、ケアマネジャーとかホームヘルパーの人々なんですが、やはりケアプランをつくる場合もなかなか苦労があると思うんですね。それから、ホームヘルパーの人も、身体介護などでもやはり重い人については御苦労もそれだけ多いと思うんですよ。

 したがって、そこも、重度の人に対してしっかり見ていく必要があるんじゃないか。念を押しておきますが、これは軽度を削れということを言っているわけじゃありませんからね。重度をちゃんと充実するという政策の中に、ホームヘルパーやケアマネジャー、ケアプランというようなものについても考えるべきではないかというように思いますが、この点、いかがでございますか。

中村政府参考人 訪問介護につきましては、委員御指摘の重度の方につきましては身体介護ということで介護報酬も設定されており、重度の方については八、九割身体介護をお使いになっている。身体介護の介護報酬は、高い介護報酬が設定されているところでございます。

 また、中重度の方に対します介護のあり方については、やはり技術が必要になると思いますので、介護従事者の方々に対する研修なりスキルアップ、資質の向上、こういったこともお願いをしていかなければなりませんし、そのためのシステムということも考えてまいりたいと思っております。

横路委員 いやいや、その介護報酬の面でちゃんと見るべきじゃないかということなんですが、いかがですか。

中村政府参考人 介護報酬の方で、先ほど申し上げましたように、重度のところには現在でも高く評価されていると考えておりますが、訪問介護の実態等を踏まえ、また、これから在宅の中重度の方の対策が重要になるということを踏まえ、介護報酬の見直しの中で検討させていただきたいと思います。

横路委員 そこで、今度は新予防給付について若干お尋ねをいたしたいというように思います。

 先ほども触れましたけれども、介護予防といいますか、生活機能全体の改善を図るということでございまして、そのためには、人と接触する、つき合う、あるいはやろうという意欲がどのように生まれてくるのかとか、いろいろな要素があるわけです。例えば、閉じこもりといっても、それは身体的な要素というより、むしろ精神的な、あるいは社会的なその人にとってのいろいろな要素というのもあろうかと思うんですね。

 家事介護のサービス利用でどうなったのかというアンケート調査を見ていますと、やはり相談や話ができて安心したとか、不安な気持ちがなくなったと。一人でいるとやはり不安になって、戸締まりはちゃんとしているんだろうかどうだろうかと気になると、本当にそれでそこに集中してしまう人というのはたくさんおられます。それが、だんだんうつになったり何かになっていくわけですね。あるいは、話し相手ができてよかった、負担が減って体も楽になったというような評価というのはあるわけです。

 家事介護によって、サービスを受けている人たちがどういう評価をしているのかということは、何か皆さん方はまとめて、厚生大臣の頭の中にはどんなぐあいに入っていますか。マイナスの方の話ばかりなんですか。利用者の中に非常に評価している人はたくさんおられますよ。これはいかがですか。

尾辻国務大臣 今御指摘いただいたようなことでも、私は、皆さん方のサービスというのは評価をしておるものでございます。

 これも先日も申し上げたかと思いますけれども、見せていただいたところで一人の利用者の方が言っておられたのは、一週間に一回買い物をしていただいている。買い物をする行為はヘルパーさん一人でやっていただいておるわけでありますけれども、一週間に一回買い物をしていただくことによって、今度は残りの日を自分で家事をしながらやっていける、大変そのことが助かることだというお話をしておられました。また、そうした中で、今御指摘いただきましたように、利用者の方とヘルパーさんとの間の、どんなものを買ってきますかとか、そういったような会話がなされて、そのことがまた利用者の方の精神的な面でも大変いい面をもたらしているというお話も伺ってまいりました。

 したがって、今先生のお話のようなことで申し上げますと、私も評価をいたしておりますという答えでございます。

横路委員 私のところの北海道は、冬になると雪が降るわけですね。私の母は、九十歳で、家の二階に住んでいて、家の中はもちろん動き回ることができます。外も、夏ですとつえをついて歩くことがあるんですが、四、五年前に家の前で滑って転んで手を折ってしまったんですね。今スパイクタイヤが禁止になっていますから、道路が本当にアイスバーンみたいな状態で、二百メートル、三百メートル離れたところに買い物に行くというのはこれはもう無理ですね、どうしたって無理です。そういうケースですね。

 それから、過疎地域で集落がなくて生活されている方がいますね、八十五、九十でも一人で。そういう人が買い物に行くといったって、自動車の運転はできないし、地域にサービスがなかったらどうするのかということになるわけですよ。こういう人たちが、介護の仕組みができて、そこでサービスを受けられるということで、何とか地域の中で頑張ってやっているわけですね。ですから、どういう判断をするかというときに、そういう地域性というのもあるんです。これは、もうちょっと言えば、一人一人の状況というのはやはり違っているということなんですね。

 だから、そこがやはり今度の場合の非常に大きな問題です。それを全部新予防給付で、はい、あなたは動けますから新予防給付ですよ、家事介護はだめですよと言われてしまったら、やはりむしろ悪化の方に進んでいきますよ、改善じゃなくて。だから、そういう事情、状況をどう判断されるのかという点は、どのようにお考えですか。

尾辻国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、現場を見せていただいたときも、東京都のケースで見せていただくと、確かに住んでおられる隣にコンビニがあるわけであります。そんなところでぱっと買い物ができる地域と、それから、そのとき私も思いましたけれども、それは隣にコンビニがあるようなこういう都会はそれでいいけれども、では、そういう店が近くにないところはどうするんだということは、そのとき私も思ったことであります。したがって、今御指摘のように、極めて地域差があるということもそのとおりであります。

 ですから、ケアプランをつくっていただくときに、そうした地域差のことも配慮しながら、それぞれの利用していただく皆さんに専門家の皆さんが寄っていただいて、一番適切な、適切という意味は、申し上げておりますように、そうした地域の事情も含めて適切なケアプランをおつくりいただくことが望まれるし、またそうしていただくように今回の見直しもしたつもりでございますということを申し上げるところであります。

横路委員 これは、カットされて多分悪化する人が出てくると思うんですね。その場合はどうされますか、悪化する人が出てきた場合に。それに対してどういう対応をするんですか。

 これは、例えば、今まではちょっとした介護でもって、それで自立してやっていた、それがカットされたというと、例えば意欲もなくなってしまうこともあるでしょうし、そうやってやめることによって家の中も汚くなるようなことが重なって、だんだん状態が悪化していく、外に出ることもなくなる。十分これは想像できるわけでして、悪化するケースというのは必ず出てくると思います。

 だから、その場合にどうするのか、それをどうやって見つけて、どうするのかということは、いかがなんですか。

中村政府参考人 まず、大臣からもお答え申し上げておりますように、今回の新予防給付は家事援助を一律に制限するものではない、適切なケアマネジメントを行ってやっていただくということであり、もし状態が悪化するというようなことになりますと、適切なケアマネジメントでなかったということになろうかと思います。それが一つ。

 二つ目は、したがいまして、ケアマネジメントを行う方は、常に評価をし、またそれをチェックする、こういう役割を持っているわけでございますので、例えば、委員御指摘のような状況が生じてきた場合には、ケアプランの見直しとかそういったことを機敏に対応する必要があるのではないか、こういうふうに考えております。

横路委員 新予防給付の中の筋トレですけれども、これは今までの議論の中ではっきりしたことは、効果のある人も中にはいるけれども、かなりそれは限定されているということで、中には悪化する人もいるということですね。ですから、やる場合には、本人の意思とその上に医師の判断、安全の確認など必要でして、むしろこれはお金がかかることになるのではないかなというように思います。

 そこで、通所介護について議論いたしますが、確かに今までのいろいろな通所介護、入浴、食事、ゲームが中心だと言われますが、しかし、いろいろなメニューを持っているんですね、やっているところもたくさんあるわけです。

 お渡しした資料の一番最後のところに、つまり、集団的活動だけじゃなくて、みんなでやる行為、ちょっと広い大きな紙です。集団での活動、それから利用者の状態や本人の希望によって小グループに分かれてやるいろいろなリハ、それから利用者の状態や本人の希望によって職員が実際に直接指導助言のもとで実施される活動というように、いろいろな活動をやっているわけですよ。集団の活動、それからグループの活動、それから個人の活動ということですね。

 これはやはりみんな必要なわけです。通所介護というのは、一つは家族の休息にもなるわけですし、食事というのも、ひとり暮らしの高齢者にとってはきちんとした食事をする機会が与えられるということにもなりますし、あるいは、閉じこもりの人にとっては入浴などということが参加の動機になるかもしれないんですね。ですから、これは全部だめだといって筋トレみたいな議論というのはやはりおかしいので、このそれぞれのサービスというのは私は必要だと思います。

 もうちょっとそこに、個人のことに対応する、例えば、本当は食事だって、その人が何か病気を持っていればそれに対応したような食事を提供するというようなことなども、個別対応するというならばそこまで必要でしょう。また、本人が何をやりたいかということで、この中にも、これは通所のリハの方では一部器械を使ったやつもやっているようですね。しかし、ここにある歩行の訓練とかみんなで体操するとか、理学療法、作業療法、言語療法の人々がそれぞれおられるわけですから、それがついてのサービスのところを、少し選択を広げていくということにして、筋トレは、これは大体評価は定まったと私は思いますよ、この間の議論を聞いていて。

 ただ、そこは、今までいろいろやってきた行きがかりはあると思いますが、あっさりとちょっと認められて、それは全く一つの選択肢であるというようにされて、今までもやってきて、多分皆さん方は、大手の介護事業者がバスでもってわあっと連れていって、ふろに入れて、食事をして、ただ帰すだけというのはちょっといかがかなというように思っておられるんだとは思いますが、それはそれでまた別なコントロールの仕方があるわけでして、まさに、ここにある、集団も必要ですし、小グループも必要ですし、個別のサービス提供も必要だという上に立ってメニューを組んでやるということが私は必要ではないかと思いますが、いかがですか。

西副大臣 お答えを申し上げます。

 先生お出しいただきました資料を拝見いたしまして、通所介護の施設においても、それぞれさまざまな工夫をされながら、集団でやる場合もあり、また小グループで、また個人でやる場合、大変きめ細かな努力をされているということを私は感じました。集団でやる場合も、それぞれ、例えば日常生活の動作訓練、これは集団でもおやりになっていますし、必要なときには個人でもおやりになっている、また、さらに歩行等の訓練も個人的にはやっていただいているというようなことがデータとして出てきているのではないかという印象を受けました。

 現行の通所介護によって、これは今私ども考えていますのは、機能訓練的な内容に再編成をさせていただくとともに、運動器の機能向上などの新しいメニューをいわば追加するということが今回の考え方でございまして、筋力向上トレーニングにつきましては、議員御指摘のとおり、あくまでも介護予防の通所介護のメニューの一つとして行われるという考え方でございます。そういう意味では議員御指摘のとおりだというふうに認識をしております。

横路委員 それをちゃんと実施に当たってそういう仕組みに、大臣、これはしていただきたいと思います。

 やはり、みんなの関心で、筋トレ筋トレということで、皆さん方、モデル事業もやったということで、年齢の高い高齢者にやるのは無理だと思いますし、これは、中で、今までのモデル事業なんか見ていますと、やはり、病気になった、あるいは事前の審査で隠された重大な病気を持っていたというようなケースまで発見されているんですね。それを九十分の、あの何かいただいた資料を見ていると、スケジュールを組んでやるなんというのは、とてもそんな八十五、九十の人には無理です。

 ですから、本当にこれでやった結果、けが人が出たとか亡くなる人が出たなんということを起こしたら、これはもう大変です。しかし、これは無理するとそういう可能性ありますよ。ですから、そこは十分押さえられて、この間、この委員会で随分その点についての議論をされました。大臣もお聞きだったと思いますので、そこのところは十分この間の委員会の中の議論を踏まえて対応していただきたいというように思いますが、いかがですか、大臣。

尾辻国務大臣 当然のこととして、この間の御議論は私もずっと聞かせていただいておりますから、そうした御指摘、御議論は十分踏まえて私どもも実施をすべきだ、こういうふうに考えております。

横路委員 それで、問題はやはり介護事業者、大手の介護事業者のところなんですね。

 これは資料の五番ですか、軽度認定率の低いところと高いところを調べてみましたら、事業所が多い、ケアマネジャーが多い、老健施設などが多いというところが、やはり、いわゆる掘り起こしをしてふえているんですね。確かに訪問介護も通所介護もそういう大手の営利法人のところに集中をしていっています。これは、事業者のそういう行為の中にやはり問題が生まれてきているということでございまして、これをどうされますか、ここのところを。

 つまり、こうした事業者による掘り起こしというのをどうやって是正していくのか。特に、営利法人の場合、軽度なところに集中してしまっているということがはっきり数字の上で出てきています。

 いかがでしょうか。この多いところと少ないところの比較の表を見ていますと、はっきりと数字として出てきているというように思いますが。

中村政府参考人 委員御指摘のような観点がございますので、今回の見直しでは、要介護認定につきましては、まず、新規要介護認定の認定調査は市町村が実施することを原則とするなど、公正な要介護認定が行えるように見直しを図りたいと思っております。また、軽度のケアマネジメントにつきましては、市町村の責任のもとに公正中立的な地域包括支援センターが実施し、サービスとマネジメントの分離を図ることといたしております。また、居宅介護支援事業者においても、公正中立なケアマネジメントが行われますように、ケアマネジャーが担当する標準の利用者数の見直し、個々のケアプランの内容を評価する仕組みの導入などの見直しを行おうとしております。

横路委員 それが本当にできるかどうか。地域によっては、コングロマリットみたいにあらゆることを全部やって、物すごい大きな政治的な力を含めて持っているところもあるわけですよ。そこを、では市町村が本当にチェックできるのかどうかということですね。これは大いに問題でございます。

 例えば、徳島県を見てみますと……(発言する者あり)いやいや、一番高いから言っているだけで、政治的なことを言っているわけじゃありません、居宅介護支援事業所が全国で一番多いでしょう。老人保健施設も全国で一番多いでしょう。訪問介護や療養型病床施設も全国で上から三番目か四番目でしょう。ケアマネジャーも五番目か六番目ですよね。本当にここはたくさんあって、それによってずっと掘り起こしが進んできているということでございますので、今お話が出た点、余りこれ以上は言いませんけれども、しっかり本当にチェックしていくという体制をとっていただきたいというように思います。そのとばっちりを一般の利用者の人が受けているのが今度の介護保険だというように思います。

 それで、時間もなくなってまいりましたので、一つ、在宅介護支援センター、包括地域センターについて御質問をしたいというように思います。

 全国に八千七百カ所ある在宅介護支援センター、活動はいろいろ差はあるにしても、地域に根差して活動しているところが多いわけですよ。そして今、いろいろな介護保険の議論の中で、個々の在宅介護センターの協議会の方も、こういう点を強化していこう、こういう点を直していこうということの議論をしてきたわけですね。しかし、今回の改正では、強化するのではなくて、やめて新しい包括支援センターにするということで、在宅介護支援センターへの補助金は出さないということなんですが、変える理由はどういうことですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 在宅介護支援センターは、平成二年度から整備が始まりまして、委員御指摘のとおり、全国で八千九百になっております。その多くが居宅介護支援事業所、ケアマネ事業所を兼ねていることから、公正性、中立性の問題点が指摘されておりますことと、職員配置、これも時代、時代で変わってきておりますが、最近の職員配置につきましては薄いために、相談業務、介護予防、ケアマネジャーの支援などの役割が十分果たせていないという指摘がなされてまいりました。

 今回の改正におきましては、こういった課題と反省を踏まえまして、公正中立の確保、地域包括ケアの中核機関としての機能強化、介護予防マネジメントへの本格的な取り組みを実現するために、職員体制を抜本的に充実し、地域包括支援センターを市町村の事業として創設することといたしたものでございます。

横路委員 その今言った一つ一つにちょっと反論したいと思うんです。

 まず、在宅介護支援センターというのは、中学校区を一カ所として、市町村全域をカバーするように担当地域を決めて実施してきているんですね。ですから、地域のコミュニティーというのは、きちんとやっているところは大変強い連携ができています。その八千七百カ所を五千カ所にするということは、包括センターのカバーする地域というのはどうなるんですか。全地域をカバーするということが大事なんです、痴呆性のお年寄りの発見というようなこと一つとってみても。中学校区ということはやめるんですか。

中村政府参考人 委員御指摘のとおり、一九九〇年、平成二年にゴールドプランを始めましたときに、全中学校区に一カ所整備ということで約一万カ所の整備、こういうことで整備をしてまいったところでございます。

 これは、平成二年から、在宅介護支援センターで地域の相談とかそういったこと、また介護サービスにつなげる、こういう観点から行われてきたわけですが、平成十二年から、介護保険制度の施行によりまして、サービスにつなげる、そういった意味では、居宅介護支援事業所、ケアプラン制度ができまして、二万八千カ所の居宅介護支援事業所ができるに至っております。

 その中で、地域包括支援センターは、こういうケアマネジメントの事業所を初め、さまざまな地域の関係機関と連携をとりながらやっていくということでございますので、必ずしも中学校区に一カ所つくるということではなく、もう少しそこは広域的な仕事として実施できるのではないか、こういうふうに考えて構想しているところでございます。

横路委員 それが間違いの一つですね。

 それからもう一つ。在宅介護支援センターは、問題として、いわば介護保険が始まってからですけれども、地域型センターの九割が居宅介護支援事業所と併設で、役割分担が不明確だということなんですが、これは認めたのは厚生労働省ですね。それで、今度の包括センターでも同じように委託を認めていますよね。ちょっとそこだけ、総論はいいですから、どうかということだけ言ってください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険がスタートいたしましたときに、在宅介護支援センターが居宅介護支援事業所になれる、こういうことは私どもも認めております。したがって、在宅介護支援センターの地域型と言われるセンターの九割が居宅介護支援事業所、ケアマネ事業所を併設しているところでございます。それはそのとおりでございます。

 今回の地域包括支援センターにつきましては、地域包括支援センターは市町村が行う、地域包括支援センターは適切な主体があれば市町村が委託することができる、こういう仕組みになっております。前の在宅介護支援センターは、市町村の相談業務を在宅介護支援センターに委託できるという仕組みでございますので、そういった意味では、地域包括支援センターも委託できるということでは同一で、委託という意味では一緒ではないかと考えております。

横路委員 だから、そこが問題だったんですが、同じことをやろうとしているわけです。

 それから、専従体制が弱いという点も在宅介護支援センターの場合はみんなが指摘している問題点ですね。スタートのときは、地域型が二人、そして基幹型三人の専従体制の予算がついていたのが、いつの間にか一人と二人になってしまいました。専従体制を強化しなければ十分な活動もできないんですが、事業所の仕事との兼務も認めたということで、一層その活動が地域によっては低下したわけですね。それも厚生労働省の指導のもとにやっているわけですよ。

 職員の専従体制の強化、今度は包括地域センターに三名ということなんですが、在宅介護支援センターを見ていると、そうやって初めはスタートしても、後は予算をカットしてしまって、人の配置は十分でない。専従のいないところが随分たくさんあります。それで兼務でやる。それは厚生省が全部通達で認めてきたことなんですよ。その反省を本当にしているかどうか。

 今言った地域の密着性、それからマネジメントとサービス提供とをしっかり分けるということ、それから専従体制をしっかりとるということ、これが大きな問題なんですね。

 だから、在宅介護支援センターに何か責任をなすりつけて、それで今度新しく包括センターですよといったって、一生懸命やっているところは納得できない気持ちでいっぱいですよ。ですから、同じことをまたやろうとしているんですよ、形は変えたけれども、同じことを。つまり、同じ問題点をはらんでスタートさせようとしているところに非常に大きな問題があるというように私は思っております。

 地域センターも、皆さん方の通達をいろいろと見ていると、事業としてはいろいろな事業をこれはやってきているんですよ。ほとんど地域支え合い事業というのはここで受けてやっているわけでしょう。そして、皆さん方の通達ですか、新しいのを見ていると、介護予防プランの作成、それから高齢者などの実態の把握、介護ニーズの評価、介護サービスの情報提供、総合相談、家庭訪問、痴呆性の家族への助言、必要なときは地域ケア会議を行う、介護予防教室、転倒骨折予防教室、地域のサービスのマップをつくる、ソーシャルワーカーとの提携など、地域やいろいろな機関との連携を含めてやりなさいというのを指示しているわけでしょう。これはちゃんとやっているところもあれば、やらなかったところもある。しかし、ちゃんとやっているところの評価なしに包括地域センターに移るというので本当にいいんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 在宅介護支援センターの流れにつきましては、委員の方から御指摘がございました。さまざま、職員配置の問題、そういったことの反省も踏まえまして、今回は、地域包括支援センターでは、委員御指摘ございましたように、総合相談、介護予防マネジメント、地域ケア支援、それぞれの専門職が対応することを基本とし、そこについての財源を確保する、こういう形で介護保険法上も明記しているところでございます。

 第二点目、よくやっていらっしゃる在宅介護支援センターがあるという御指摘でございます。

 在宅介護支援センターと、今後地域で立ち上げようとされている地域包括支援センターの関係につきまして、具体的に当該市町村がどういう御判断をされるか、こういうことになろうかと思いますが、市町村によっては、そういう活動が非常にきちんとされており、新しく構想される地域包括支援センターをそこにお願いするのにふさわしいというふうに考えられれば、先ほど委員御指摘ございましたような委託ということも開かれると思いますので、現在八千九百ある在宅介護支援センターについて、まさにそういった意味で市町村の方からの評価なりそういったこともなされるのではないかと考えております。

横路委員 私、地元の札幌の在宅介護支援センターの人たちにちょっと集まってもらって、いろいろと話を聞きました。その中に清田区というところがあるんですが、ここは大体十一万の人口で、在宅介護支援センターを四カ所持っています。ここは専従を一人ないし二人配置して頑張っているところなんですね。その人たちが調査をやって調査結果をまとめて、そしてこれは市の方に上げた報告書なんですが、それをちょっと問題のポイントのところだけ簡単に紹介をしてみたいと思います。

 ここは、介護予防と、それから相談ということをベースにしながらさまざまな事業をやってきているわけでございますが、特に介護予防では、すこやか倶楽部という事業をしております。こういった相談の援助、訪問して相談するということや予防事業というのは非常に地域ニーズにマッチしていて、今後も継続する必要がある、その一番の大きなポイントは、本人たちの意欲が変わってきた、それから行動半径が広がってきたということを指摘しています。

 そして、センターの活動で大事なことは、地域生活者としての生活圏域ということで、この場合は単位町内会や町内会連合会、結構町内会の組織率が八割ぐらいの高いところでございますが、そういう単位で生活圏域をとらえて高齢者に働きかけたところは、成功した理由、うまくいっているところであるということですね。そして、意欲がどうしても低下する人々を外に連れて出してくる、そういう交流の場、そこに専門職が加わるということが非常に大事なんだということを、つまり当事者の意欲や動機づけを目指した働きかけが大変大事であるということですね。

 もう一つは、早期相談システム、早期に相談する文化と言っていますが、非常に大事だと。自宅や地域に出向いていって早期に相談を受けることが介護予防に非常に効果があるということが、調査の結果から出ています。それができるのも何かと言うと、やはり地域の町内会、民生児童委員や町内会、老人クラブを含めて、そういう人々とのコミュニケーションが非常によくできているからなんだというように思います。

 もう一つは、やはり地域の人的な資源やそのほかのいろいろな資源のネットワークが大変大事であるということで、ここは、やや医療機関、ソーシャルワーカーとの関連をもっと強めなければいけないという総括をしていますけれども、そこのところを非常に大事にしています。

 ですから、地域に密着して、地域の生活圏域はできるだけ小さな生活圏域の中に対応していくということですね。そして、いろいろな機関とのネットワークを組み、最後にやはり人員だ、人だということで専従職員の配置をしっかりやるということで、専従職員のいるところといないところで札幌市内の状況を見てもやはり差があるようでございまして、そこが非常に大事なところなわけです。

 ですから、ちょっと心配なのは、先ほど言いましたように、中学校区単位からどうもさらに広がるようなお話があるということですね。それから委託が中心になっていく感じがある。専従職員の配置は三名と言っていますが、本当にちゃんと配置できるのか、人材が大体いるかどうかということもありますよ、保健師や看護師の人々を含めて、あるいはソーシャルワーカーなどの人がいるかどうかということもあります。

 これは現場からの声なんですね。現場からの声をしっかり踏まえてやっていかないと、活動不十分なところに包括地域センターもなってしまう、そういう危険性が非常にあるというように私は思いますが、この現場からの声をいかが受けとめられるでしょうか。

尾辻国務大臣 今のお話を伺いながら、先ほど局長が申しましたように、従来の在宅介護支援センターの中で、随分よくやっていただいた、頑張ってきていただいたところがあるということを申し上げましたけれども、その一つの例で、今お話しの札幌市の清田区のセンターもあるということをお聞きいたしたところでございます。そしてまたそのようにお聞きをいたしました。

 ただ一方、これはこの御質問の冒頭で先生が言われましたように、サービスの掘り起こしというようなこともあるというところはかねてまた御指摘いただいておったことでございますから、私どもは、そこを公平中立性を持ってぜひやっていただきたいということで、まずは地域包括支援センターをつくろうということで今回御提案を申し上げておるわけであります。

 こうしたものの数が、確かに在宅介護支援センターの数が今八千九百カ所まで来ておりますから、私どもが今お答え申し上げておりますのは、包括支援センターを約五千カ所あるいは六千カ所ぐらい、こういう言い方をいたしておりますけれども、その数からしますと、ちょっと減る。したがって、一カ所がカバーするところの範囲というのは大きくなるかもしれませんけれども、しかし、その中でぜひ、今お話しのような従来の在宅介護支援センターは新しくまた包括支援センターの中に入っていただいてやっていただきたいと思っておるところでございますから、そうした中でのまたさらなるお仕事を、役割を演じていただければというふうに思います。

 そうした中で、現場の皆さん方のお声、今もいろいろ言っていただきました。そうしたものを私どもが踏まえて、そうしたお声を大事にしながら、よくお聞きしながら今後ともやっていかなきゃならぬというのは当然のことでございますから、そのようにやらせていただきたいと存じます。

横路委員 これは掘り起こしといいますが、在宅介護支援センターは、介護認定を受けた人じゃない、その前の人の段階で、まさに痴呆性を持っているかどうかという掘り起こしは非常に大事なので、それを目的にある意味ではできている、それで仕事としては介護予防と相談事業をするということですから、そこのところをちょっと勘違いされているかなというように思います。

 在宅介護支援センター、ここでは、町内会の会館などを使いまして、やはり毎月十数カ所でずっとやっておりまして、野外での活動、転倒予防教室だとかそれからさまざまなこと、かるた会だとかたこ焼きパーティーだとかいろいろなことやりながら、そこでコミニュケーションを図ることによって閉じこもりも解消していく、まさに介護予防に大変大きな貢献をしているというように思います。

 やっている人々が言っていましたけれども、大体地域活動というのは、一年目で顔を覚えてもらっている、二年目でようやく話が少しできて、三年目でようやく本格的な活動ができるんだということなんですね。だから、在宅介護支援センターが持っているノウハウというのは、地域との関連で非常に大事なものがあるんですよ、これは。これをばっさり、はい、新しくといったって、本当に大変ですよ。ですから、ぜひこの在宅介護支援センター、それは確かに市町村の評価にはよるんですけれども、やはり生かしてやっていく。

 心配なのは、予算のことが大変心配なんですけれども、場合によっては、今までの基幹型というのがありますよね。やっている人たちの希望は、基幹型の中心は市町村直営でやってもらいたいという要望もあります。しっかりしたところがあったら、あとボランチのように在宅介護支援センターを生かすという方法もあるんだろうと思うんですね。ですから、ぜひ一度、皆さんの方でもう一度、在宅介護支援センターの努力をしているいろいろなケース、それをしっかり見てやっていただきたいというように思います。

 もう一つ、この人たちがやはり注意して言っているのは、医療との連携、提携というのが物すごく大事だということでございまして、地域のケア会議、これは、痴呆性でちょっと対応が大変だなというときにケア会議に上げて、そこで医師も入って相談をするという事業などをやっています。

 ですから、包括地域支援センターでも、一応何か主治医との連携とかいろいろ言っていますが、言葉だけじゃ今までもあったんですよ。今までもあって、十分でなかったんです。それが今度仕組みが変わったから、はい、すぐということにならないですね。それはやはりやってきた人間というのを大事にして、それを生かしてやらない限り、人がかわったらネットワークはなくなりますから、システムだけ残ったってだめなんですよ、これは。

 だから、ぜひ、既存のこういう在宅介護支援センターを評価すべきところは評価し、残すところは残し、そして包括地域センターとして活用するところは活用するというようにお考えをいただきたい。だから、変な通知や何かを出さないで、何かばっさり切り捨てんばかりのような意見が結構ありまして、私は実態を見て決してそうではないというように思いますので、その点、大臣からもひとつ御答弁をいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 今の先生のお話、御指摘等も踏まえて、私どもも十分検討して今後のことを考えてまいりたいというふうに存じます。

横路委員 最後に、今までの老健の事業、それから地域支え合い事業、在宅介護支援センター事業が地域支援事業に変わっていくわけですね。これは大体全部行くんですか、そうではなくて、やはり相当変わるところもあるんでしょうか。特に老人保健事業はどんなぐあいになるんでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 地域支援事業がつくられまして、今委員御指摘のさまざまな補助金の事業とかそういった事業の関係がどうなるかということでございますが、十八年度予算編成のときにきちんと明確にはさせていただきたいと思います。

 特に、現在の老人保健事業につきましては、地域支援事業は六十五歳以上の方に対する事業でございますので、当然、四十から六十四歳のところにつきましては老人保健事業の方に残ります。それから、六十五歳以上の健診につきましても、健診とそれから介護予防のスクリーニングのいわば役割分担につきましては、健診制度そのものにつきまして十八年度医療制度改革の中で検討させていただいておりますので、そこの部分については、どちらを持つかということについては十八年度予算要求のときまでに成案を得たいと思っております。

 基本的には、そういった部分を除きますと、現行の老人保健事業の中の六十五歳以上分については地域支援事業の方に移行するというふうに考えております。

横路委員 老人保健事業の費用をちょっとお伺いしたら、事業費ベースで千四百九十三億、そのうち健診が千三百七十八億、九二%も占めているんですね。その部分の方針がまだ決まっていない。四十から六十五以上まで含めてどうするのか、分けるのか、介護保険でいくのか、医療保険でいくのか、地域にやらすのか、わかっていないということでございまして、こういう大事なことをも不明のまま法案を提出されるということは、本当に残念に思います。

 最後に、一つだけ。

 地域事業交付金というのはこの三事業を再編成したわけですが、これは「事業実施による介護予防の成果を踏まえて交付することを想定している」、こう言っています。実施による予防効果というと、例の一〇%、二〇%の話を思い出すわけなんですけれども、一体これはどういうぐあいに介護予防の成果があったというふうに判断して、それによって上がらない場合には市町村に対する交付金を減らそうというわけでしょう、ふやすこともあるのかもわかりませんが。「成果を踏まえて交付することを想定」、この内容は一体どういうことなのか。実施による予防効果というのはどうやって判断するんですか。ちょっとそれだけお答えいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 地域支援事業交付金、これにつきまして今御指摘の記述があるわけですが、いずれにしても、十八年度にスタートをいたしますので、予防の効果といったことについて出てくるというには相当時間がかかるというふうに考えております。したがって、十八年、十九年、こういった少なくとも第三期事業計画期間の中で、なかなか、予防の効果の成果をうまく見込めるかどうかということにつきましては、ペンディングということでございます。

 そういった意味で、交付金制度を考えていく場合に、政策の評価なり事業効果の要素を反映し、効果測定ができるものにつきましては効果測定をし、効果に応じまして交付金の配分、例えば一律に配分するということではなくそういうインセンティブを持たせていただきたい、そういうことを申し上げているところでございます。

 繰り返し申し上げますが、十八年度以降数年間はなかなか難しいのではないかというふうに率直に言って思っております。

横路委員 終わります。

鴨下委員長 次に、水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 大臣、ちょっと突然質問をしますけれども、ぜひ気楽に答えてください。

 大臣、私と一緒にエアロビクスをしませんかとお誘いしましたら、どういうふうにお答えいただけますか。

尾辻国務大臣 大変光栄なことと存じますとお答えを申し上げます。

水島委員 では、そうしたら、一緒にエアロビクスをしていただけるということなんでしょうか。

尾辻国務大臣 お誘いいただきましたら、やらせていただきます。(発言する者あり)

水島委員 なかなか勇気のある、さすがおしゃれな大臣だなと思ったんですけれども。今、委員会室のこの反応ですよね、おおというような歓声が上がることからも。

 今、私が大臣にエアロビクスをお誘いしましたときに、大臣はどういうものを思い描かれたでしょうか。

尾辻国務大臣 実は、私の親しい友人がエアロビクスの教室を持っていたこともありますから、その教室の場面を思い描いたりしながらお答えをいたしました。

水島委員 エアロビクスの教室というのは、当然、インストラクターが前にいて、音楽がかかっていて、みんなでいろいろと、私もエアロビクス好きなんですけれども、そういう教室ですよね。うなずかれているのでそういうことだと思うんですけれども、やはり日本語でエアロビクスと言うと、エアロビックダンスのことを通常指していると思うんです。大臣も当然今そういう前提でお答えいただいているわけなんです。

 何でこんな質問をしているかといいますと、きょう、お手元に資料の一としてお配りをしております文献をちょっと見ていただきたいんですが、これは厚労省からいただいたものなんです。

 「変形性膝関節炎の高齢者におけるエアロビクスとレジスタンスエクササイズとの費用効果」というのを見ますと、日本人がこれを見ると、エアロビクスというのはエアロビックダンス、レジスタンスエクササイズというのは何というと、それは負荷をかけた運動だから筋トレのことだよと。レジスタンスエクササイズというのを使うのもちょっと不親切だなと思うんですけれども、これをぱっと見たときに、みんなが思い浮かべることというのは、やはりエアロビックダンスのことだと思うんです。

 私は、実は、これはどうやっていただいたものかというと、先日、筋トレの効果を示す文献についてかなりここで議論させていただいて、局長が翻訳をしてくださるということで、それをいただいたのです。水曜日の委員会に間に合うようにとお願いしていたけれども、水曜日にいただいたということについては、きょうはもう申しませんので、それはまたぜひ内部で御総括いただきたいと思うんです。

 それはそれとしまして、ぱらぱらと、ああ、やっていただいたなと思って見ていて、三枚目でちょっと目がとまったわけで、きょうはそれを皆様にお配りしているんです。やはりエアロビクスと日本語で言うと、エアロビックダンスのことを思い浮かべるもので、本当にお年寄りにエアロビックダンスをさせたのかな、大胆な研究だなと思って、仕方がないので、また原著を取り寄せて、また英語の論文を読ませていただきました。

 そうしましたら、何のことはない、やはり意味する、これは今度資料二の方、英語の文献を載せさせていただいているので、読める方は読んでいただきたいと思うんですが、右側の方、傍線を引かせていただいているところがまさにエアロビクスという翻訳に該当する部分で、結局のところはまたウオーキングでございました。

 つまり、もとの英語、エアロビックエクササイズというのがもとの英語ですけれども、これは正しい翻訳としてはやはり有酸素運動と訳すべきものであって、日本語でエアロビクスと訳してしまうと、エアロビックダンスというふうに、かなり狭義のといいますか、ちょっと違うものを意味することに、エアロビックダンスというのはあくまでも有酸素運動の一つであるわけですけれども、有酸素運動、ここで意味しているのは、ウオーキングということですので、やはりこの訳は正しくないなというふうに思います。

 前回、わざわざ、厚労省を一々疑って原著を読まなくていいような資料の出し方をしてくださいとお願いをしたはずなんですけれども、この結果出てきたのがこの翻訳で、また私は論文を取り寄せて読まなければいけなくて、本当にまたむだな時間を使いました。

 本当にこんなやり方はいいかげんにしてほしいなと思いますし、今もこうやってこんなことに貴重な質問時間をむだにしているということが本当に残念でならないわけなんですけれども、こんなことをされていると、情報の恣意的操作というふうに言われてもやはりしようがないと思うんですね。

 そうじゃなければ、よほど厚労省の官僚の方というのは浮世離れしていて、エアロビクスというのが町で何を意味するのかというのをわかっていらっしゃらないんじゃないか。浮世離れしている方には、ちょっとこういう生活密着領域の政策に携わってほしくないなと率直に思うわけなんですけれども、ちょっとこの辺、局長で結構でございますので、今の私の議論を聞いていて、御感想なり、何でこんなことになってしまったのか、これはやはり不適切な訳ではないかというあたり、御答弁いただけますか。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の前回の御要請、いただきましたので、何本かの論文の、委員は大変御寛容で、アブストラクトの翻訳で構わないということで、その翻訳をさせていただいて、何本かの論文をお届けいたしました。

 エアロビクスの訳が不適切であるという御指摘でございます。御専門の先生からそういう御指摘でございますので、私どもちょっとそこは、もし不適切でありましたら、もう一度訂正をしてお届けをさせていただきたいと思います。

水島委員 御専門の先生と言われてしまいましたが、私、エアロビクスのインストラクターの資格も持っておりませんし、決して御専門ではなくて、むしろ、今申し上げたのは、庶民感覚からいってエアロビクスという言葉はこういう意味でしょうと。だから、まさに庶民の代表である大臣は、全く何の疑いもなく、エアロビクスと言われたらダンスのことだというふうに思われたわけで、私は、大臣はまさに有権者を代表していらっしゃるんだなとさっき感じながら聞いていたわけなんです。ですから、専門家として指摘したわけではなくて、この翻訳が日本語として受けとめるときに間違った訳ではないですかということを申し上げているので、これはぜひきちんとしていただきたいと思います。

 今の局長の答弁の中でちょっと気になったのが、アブストラクトの訳をすればいいと言ったのでということだったんですが、これはもともとどういうことでこんなことに今なっているのかというと、私もこんな泥仕合はやめたいんですけれども、何でこんなことになってきているのかというと、もともとは、厚労省が、山井さんの長期的なエビデンスがあるんですかという問いかけに対して、ありますと出してきた論文であって、それをああだこうだ言っているうちにこうなってきた。

 ですから、もともと厚労省は、当然、論文をよく読まれて、そこに書かれていることを把握したから今回の施策を組み立てようとしているわけであって、全体の論文も読んでいない、アブストラクトには確かにウオーキングのウの字もございませんでした。だから、私も今回は原著全文を読まなければならなかったんですけれども。そのように、アブストラクトだけではこの訳が合っているか間違っているかわからない、でも、全体の研究を見れば、当然、間違っているということはすぐにわかる。そんな訳をされているようで、本当にこれを厚労省としてエビデンスとしてお出しになるのがふさわしいのかどうかということを申し上げたいわけでございます。

 これについては、本来でしたら、これは理事会の方にきちんと出していただいて、今度は厚労省としてちゃんと責任を持って出した、出している資料でございますというふうに言っていただきたいと思いますので、これは、委員長、ここの部分の訳がやはり不適切でございましたということを含めまして、さっき局長が御検討いただけるということでしたので、新しいものをちゃんと出してもらって、理事会としてそれをきちんとチェックしていただけるということでよろしいでしょうか。

北川委員長代理 また理事会で協議をし、決定します。

水島委員 もうこの話は、時間がなくなっていくばかりですので、次に行きたいんですが、ただ、きょう、資料一でお配りしてしまったので、誤解される皆様がいらっしゃるといけないので、ちょっと説明しておきます。

 これはちなみに有酸素運動と筋トレとの費用効果を比べたもので、これを読んでいくと、結論、費用効果は筋トレの方がややよいというような、そんなことが書いてあります。その効率の差は小さいと書いてあるんですが、これを読んで、やはり筋トレはお金がかからないじゃないかと思われる方がいるといけないので説明しておきます。

 このコストをどうやって計算しているかというのを、私も気になったので、論文を全部読んだのですが、コストの計算方法は、診察や検査をする医師の人件費と、あと、この手の研究のデザインは、みんな、まず三カ月施設でトレーニングをして、その後十五カ月は家庭でトレーニングをする、そういうのがどうも決まったやり方のようです。厚労省のおかげで、私も大分論文を読みまして、詳しくなってきました。

 そのような、三カ月と十五カ月、合わせて十八カ月というのがどうも標準的なプロトコールのようなんですけれども、三カ月の施設というのは民間のスポーツジムを使ってやるようです。ですから、会員料とインストラクターからの指導料、それを合わせたもの。それから、今度家庭でトレーニングする時期になりますと運動インストラクターが家庭訪問をしますので、そのときの人件費。さらには、そのフォローアップをしていくときの電話のコスト。さらには、ここでも、モデル事業の中でも指摘されてきたわけですが、骨折とかそういった事故や副作用というものが起きますので、そうなった場合のコストというものもこのコストの中には入っています。

 何が言いたいのかというと、つまり、今回、厚労省が考えているような、筋トレを新規に購入していくというようなコストはここには入っていません。あくまでも、民間のスポーツジムにある筋トレマシンを使って、そこの会員料というと、本当にせいぜい一万円です、インストラクターもついて一万円というのが月の相場ではないかなと思いますので、そんなようなところ、既存のものを使って、この場合は民間ですけれども、日本であればまた違う形がとれるかもしれません。そうやってやったときにコストを比較してみると、若干筋トレの方がよかったと。

 これは一つだけの論文ですから、ほかの研究をやってみると、今度はウオーキングの方がいいというのがきっと出てくると思いますが、そのような論文ですので、皆様、ぜひ誤解のないように、筋トレすばらしいじゃないかというふうにこれを見て思わないようにしていただきたいということで、おせっかいではございましたけれども、一言御説明をさせていただきました。

 さて、きょうの私の本題に入る前にもう一つ確認しておきたいことがあるんですけれども、前回、四月二十日の審議のときに、民主党の中根議員がNPO法人日本介護協会について質問をしています。この議事録を改めて読み返しましたけれども、中根議員は、厚労省が把握していないような団体が、厚労省が把握していないような資格をつくってビジネスをしているということを問題にしていたと思います。

 私は、この日本介護協会という団体のことを知りませんので、この団体についてここで論じる気はございませんけれども、実際に大臣もよく御存じだと思いますが、何か今資格ブームですし、少しでもスキルアップして職を手にしたいという方も多いですから、何かといろいろな資格がどんどんつくられて、その資格を取るための講座に通ってお金を取られて、資格を手にしたけれども、全然それが就職にとって有利にもならない、そのようなことがいろいろなところであるので、今回のこの介護に関しても、介護予防ということでこのようなことが既にいろいろなところで行われているので、厚労省としても注意をして考えた方がいいですよということを中根議員は指摘したかったんだと思います。

 民間の団体が自分のところの認定資格をつくるのはもちろん自由だと思うんですけれども、厚労省として、ある程度、もっときちんとした厚労省としての資格をつくってみたり、また、それをきちんとメッセージを発していったりしないと、今本当に介護で人のお役に立ちたいと思っている人は結構いますので、ああ、この資格を取ればと思ってぱっと飛びついてみたけれども、実際には仕事にはつながらなかったというようなことが、これは本当に悲劇になってしまいますので、この辺をぜひ大臣にも気をつけていただきたいということで中根議員は質問したんだと思うんです。

 結局、そういうことが起こってくると、だれが被害者になるかというと、もちろん、福祉職を志望される当事者の方がまず第一の被害者になります。よくわからないことで搾取をされてしまうということですから、被害者になる。でも、結局、これがひいては、全体のレベルアップにならないために、介護を受ける高齢者の方も行く行くは被害者になっていくということだと思いますので、この資格問題というものは、きちんと整理をされてもいいんじゃないかというふうに思っております。

 このようなことを中根議員が指摘をされたんだと思いますが、それに対しての厚労省の答弁は、先日この国会に参考人として来られた方がかかわっているという、何か変な答弁でございました。どういう団体かと聞かれて、先日参考人で来られた方がかかわっている団体だということを答えているんですね。

 これは、素直に一般の国民がこの議事録を読みますと、そうか、国会に参考人で行かれるような立派な方がかかわっているということを厚労省が国会の場で認めているということは、これは大丈夫な団体なんだ、そういうお墨つきを与えられたんだというふうに感じる方が多いんじゃないかと思うんですけれども、そういうことでよろしいでしょうか。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 経過をお話し申し上げますと、まず、四月六日のこの委員会で、中根議員の方から……(水島委員「それはもういいです、知っているから質問しているんです」と呼ぶ)はい、ある団体について、厚生省、把握しているかというお話がございました。それで、二十日にまた同じ御照会がございましたので、私ども、六日に御質問いただきましたので、ホームページを開かせていただいて、そこに記載されていることは私ども見させていただきましたということで御紹介を申し上げた次第でございます。

水島委員 私もホームページは見ました。すべての人がホームページにアクセスできると思います。厚労省に質問したわけですよ。だれが聞かれてもそういうことは答えられるんですね、ホームページに書いてあることは。

 厚労省が答弁をしたということは重いことなんです。その中で、国会の参考人に来られた方がかかわっておられますと厚労省が答弁したということは、一般の国民の方というのは、厚労省のおっしゃることは正しいと思っている方が多いですから、それを聞きますと、ああ、じゃ、この団体は安心だなというふうに、ここの資格を取ろうかなと感じられるかもしれません。

 そういうことも含めまして、そこで答弁されるのであれば、ホームページを見ましたけれども、その団体というのは厚労省としては直接どういう性質の団体かは把握していない、よくわかりません、これから調べてみますと答弁されれば十分なわけであって、何でそこで特定の個人の名前を出して、さも厚労省がその団体のことを知っているかのような答弁をしなければいけなかったんでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 私がお答えしましたのは、正確に読みますと、前回も委員から御指摘がございましたので、私どもとして、当該団体は存じ上げませんけれども、当該団体のホームページで得た情報としてはということで御答弁を申し上げました。

水島委員 ホームページにはほかにもいろいろなことが書いてありました。そういうふうに御紹介くださるのであれば、ホームページの全文をそれこそコピーして皆さんに配るくらいのことが一番公平だと思います。

 厚労省の答弁というのはやはり重いわけなので、そこで、よくわからないのに、そこの一部だけをどういう根拠で抜き出してきたかわからないけれども、そうやって特定の個人の名前だけを一人だけを抜き出してくるということは、厚労省は何かの考えがあってやるのでなければ、そのようなことはすべきではないんです。

 ですから、この点について、私は、やはり公権力を持つ人が特定の個人の名前を公的な場で口にするというときには、細心の注意を払っていただきたいと思っていますので、これをもって厚労省がこの団体にお墨つきを与えたという結論でいいのなら、それでいいんです。そうでないのであれば、厚労省としてのこの答弁を撤回していただいて、その部分を議事録から削除していただくということを改めて要求いたします。

鴨下委員長 後刻、理事会で協議をいたしますが、本日の朝も、理事会においてその件につきましては協議をいたしました。引き続き協議をするということが結論でございます。

水島委員 恐らく、これを見たときに一般の国民がどう受けとめるかということについての視点が、多分その議論の中で欠けていたんじゃないかなと老婆心ながら思いますので、これを普通に素直に読んだら、ああ、この団体、いい団体だと受け取ると思いますので、そういう目からもう一度よく読んでいただいて、私は議事録削除が適切だと思いますので、ぜひ委員長また理事の皆様には最大の御配慮をいただきたいと思います。

 それでは、本題に入らせていただきたいと思いますが、先ほど一言言い忘れましたけれども、文献の翻訳を出していただきまして、私が前回取り上げました論文についてはきちんと有酸素運動と訳していただいているわけなんですけれども、私はそこしかチェックしないと思ったのかどうかわかりませんが、その中で、例えば前回、まず最初に、本当のアブストラクトのアブストラクトを厚労省がつくられたときには明らかな改善というふうに書いていたところ、ちゃんと今回は原文に忠実に、多少の改善というふうに書き直されていたあたりは敬意を表したいと思っております。御苦労さまでございました。

 さて、本題に入らせていただきたいと思いますけれども、できるだけ元気に年をとりたいというのは多くの人に共通の願いですから、予防重視を前面に打ち出すというのは決して悪いことではないと私は思っております。ただ、その際に問題になるのは、予防重視だからといって、既に介護が必要な人へのサービスを切り捨ててはいけないという、これは当たり前のことです。そして、本当に予防効果のあることをきちんとやっていくということ、さらには、人々にできるだけ不安を与えないということ、これが本当に重要です。

 介護予防という観点からは、この不安というのは一つのキーワードでございます。不安になりますと、人間はストレスがたまりまして、精神的な健康度が下がります。不安は認知症の症状を悪化させるということも知られております。また、うつ病の発症にもつながり得るわけです。本当にこれは、介護予防という観点からしますと、人に不安を与えるということは完全に予防に逆行するということになるわけです。安心して自分の高齢期を選べるということが確保されていることこそ、実は予防効果につながっていくわけです。

 今回、全く中身のわからない、これだけ審議が進んできてもまだよくわからない、そういう制度改正をちらつかせて人々の不安をあおっているということ自体、介護予防という観点からは既に失格なのではないかと思いますけれども、特にその中でも、ちょっと中村局長に答弁を訂正していただきたいものがございます。

 四月の六日に阿部知子議員から質問をされましたときに、乳がん検診を受けないで乳がんになった人にはペナルティーも考えざるを得ないなどという答弁をしているのを聞きまして、それこそ私もストレスでがんになりそうな思いなんです。検診に行きたくても仕事を休めないとか、家庭が忙しくて検診に行かれないとか、いろいろな事情が人それぞれにあるわけでございます。

 まさか中村局長のような優秀な方がこういう現実を御存じないわけはないと思うんですけれども、幾ら何でもこれは答弁を撤回していただきたいと思うんです。いかがでしょうか、中村局長。

中村政府参考人 前回、阿部委員からいろいろ、私のプライマリ・ケア学会での講演のお話で御指摘をいただきました。私も、そのときどういう観点からこういうことをお話ししたかということについてはもう述べさせていただいていますので、繰り返しは避けたいと思います。

 いずれにしても、がん検診の受診率の向上のために現行制度の枠組みを超えた新しい方策を検討する必要があるのではないかという問題意識に基づいたものでございます。そのときも阿部委員から、もっと女性のがん、特に女性のがんについて、受けやすい体制づくりとかそういった視点も必要でありますし、プラス志向で、プラスの向きで考えるべきであったというふうに私は総括しておりますが、そういう厳しい御指摘もいただいております。

 私の講演が一面的であったのではないかというふうに思っておりますので、そういった意味で、今の水島委員からの御指摘も受けとめさせていただいて、とにかく日本のがん検診がより前向きに進むように努力をするということでお答えにさせていただきたいと思います。

水島委員 局長というお立場ですから、撤回しますと素直に言えないのかもしれませんが、一面的であったという言葉が出ましたので、それをもって、局長がきちんと現状を認識されているということを私として理解させていただきたいと思います。

 がん検診の受診率を本当に上げたいのであれば、例えば、がん検診という理由であればいつでも仕事が休めるとか、がん検診と言えば子供を必ず預かってくれるとか、そういうどうやったって行ける環境整備をして初めて、それでも行かない人がいるときに、私はディスインセンティブではなくてインセンティブを与えるべきだと思いますけれども、では、どうやって経済的なインセンティブを与えていくのかということがその後に初めて議論として来るわけであって、今、急にペナルティーなんか科したら、がん検診に行きたかったのに仕事が休めなかったといったら会社相手にその分の損害賠償を請求できるんですかという話になってまいりますので、本当に、こういう時期に御発言されるというのはやはり現状を認識されていなかったのではないかというふうに思います。ぜひそれは前向きにしていただきたいと思います。

 また、そのときの根拠として、皆保険なので、「被保険者の乳がん適齢期の女性についてちゃんと検診していただいているかどうか、そういうことを保険者の業務として把握した方がいいんじゃないか。」とおっしゃったわけですけれども、皆保険なのでと言い始めますと、介護保険も実は同じ構造です。結局、これでは、保険者機能のことを言い始めましたら、介護保険についても、きちんと筋トレをして介護予防に努めたかどうかを把握してペナルティーを科すという考えと何も変わらなくなってしまうと思います。

 幾ら局長の答弁の後で大臣が、にこにこ温かいお顔で、私どもは決してそんなことは思っておりませんとおっしゃっても、局長がそういう答弁をされている限り、全く大臣の答弁が生きてまいりませんので、そこのところはきちんと認識を改めていただきたいと思っております。

 予防をちゃんとしていないとペナルティーがあるんじゃないかというのは、実はかなり重いテーマでございます。

 お年寄りにはまじめで硬直化した価値観をお持ちの方が多いわけです。例えば、青森で、前、自殺予防の活動が、これは当時の厚生科学研究費ですかで行われていたと思いますけれども、その活動の中でも、働けなくなったら死んだ方がましだという考えが町民の中に根強く存在しているということを保健師の方たちが見出しているわけです。若者から見ると、そんなふうに思い詰めなくても、働けなくたって余暇を楽しめばいいじゃないかと気軽に言いたくなるんですけれども、お年寄りというのは、こうという価値観にしがみつきますと、なかなか、そんなに簡単に、柔軟に考え方を変えられないというところがあるのは皆様も御存じだと思います。

 ですから、筋トレを強制しないとはいっても、義務だと感じる方は多く出てくると思います。それが負担となって精神的に追い詰められたり、また筋トレをできていない自分に対する罪悪感が強まったりするのではないかというふうに思います。お年寄りの価値観とか、また地方における人間関係、何々さんちは筋トレをやっていないんだってとすぐ言い合うような、そういう地方における人間関係を考えますと、強制しないと言うだけでは不十分だというふうに思います。

 この前のモデル事業の中でも、鼻血を出されてもなお続けようとしたとか、ああいう方というのはかなりまじめな方なんだと思うんですね。やはりそのあたりに配慮をしないと、頑張って筋トレのプログラムもつくっていただいちゃったし、勤め上げることが自分の任務だというふうに思ってしまうものだと思うんですけれども、その辺、強制ではございませんと言うだけでは絶対に足りないと思うんですが、どのような配慮をされているんでしょうか。

中村政府参考人 この件につきましては、大臣からも繰り返し御答弁させていただいておりますとおり、介護保険におきましては本人の選択が基本でございますし、ケアプランにつきましても本人の同意ということが原則になっております。

 盛んに、筋トレが強制と受けとめられるのではないかという御指摘でございます。制度として一方的にサービス利用やサービス内容等が決定されるわけではございませんが、もしそういう受けとめられ方をするようであれば非常に問題でございますので、これから丁寧に御説明をし、また私どものさせていただく広報や啓発事業に当たっても、今委員御指摘の点を十分踏まえて、生まじめな高齢者の方が苦しい状況に立ち入らないように、そういう事業の運営を心がけてまいりたいと思います。

水島委員 本当に、効果と、こんな場合には悪化するんですというデータも全部開示した上で、それでもやりたい方はどうぞみたいな、そういうオプションもありますというような形で広報をしていただきたいと思います。それはぜひ、こんな形で広報することに決めましたというときには必ず私どもにお知らせをいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 前から、私、日医総研のデータで、筋トレ終了直後には開始前よりも機能が向上していても、しばらくすると、筋トレ開始前よりも機能が悪化しているというあのデータが不思議でならないわけです。筋トレ終了後よりも悪化するというのは、それは運動をやめちゃったんだから悪化するのは当たり前なんですけれども、筋トレを開始する前よりも悪化しているというのは本当に不思議なデータだなと思ってまいりました。

 こんなのも、例えば、筋トレを義務やお勤めというふうに考えてつい無理をしてしまって、後で疲れが出ているということなんじゃないのかな、一種の燃え尽きと呼んでもいいんじゃないのかな、そんなふうに私なりにデータを眺めて考えているわけです。

 きょうはこの点を質問する時間がありませんが、きのう、事前通告のときにも、これは厚労省としても何でこうなるのか考えてくださいとお願いしておきましたので、このケースがどういうケースだったのかというのをぜひきちんと検証していただきたいというふうにお願いをしておきます。また、その結果もお知らせいただければありがたいと思います。

 また、介護予防について、いわゆる安易な家事代行サービスというところの説明で、本人ができるにもかかわらず、していないからといってホームヘルパーがかわりに云々というくだりがあるわけです。また、不適切な家事援助はなくすということを再三答弁されているわけなんです。また、怠けという言葉も、この委員会審議の中でも何回か聞きました。

 私は本当に嫌な予感がそれでするわけなんですが、怠けというのはうつの症状を誤解してとらえるときによく聞かれる言葉なんです。本当に効果的な介護予防をするには、うつについての知識は不可欠です。心筋梗塞、糖尿病、がん、脳血管障害などの身体疾患によってうつ病の有病率が高まるということも知られておりますし、高齢期のうつへの取り組みの重要性というのは、厚労省も認識をして研究をされてきたはずだと思います。

 家事代行などを考えるときに、何が適切で何が適切でないかということは、実は、うつについての知識を持っている人でなければ判断できないわけでございます。そのような家事援助にとどまらず、どういう介護予防メニューがその人にとって最もふさわしいのかということを判断するには、うつについての基本的な知識が必要であって、「筋トレはけがにつながる可能性が高いので、お年寄りの体の状態を細かく把握する必要がある」という医師のコメントは、新聞でも読みました。また、先日参考人の方もおっしゃっていましたけれども、そのような身体状態だけではなくて、精神状態も実は介護予防を考えていく上ではきちんと把握する必要があるわけでございます。

 まず、これはだれが判断するんでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 地域のケアマネジメントの中で判断するということになりますので、ケアマネジャーさんがやることになると思いますが、その中でケアカンファレンスなどを開きますので、主治医それから地域のそういう精神医療について詳しい方が参加していただければ理想ではないかと思います。

水島委員 理想というのはだれでも持っているものだと思います。

 主治医とおっしゃいましたが、医者全員がうつについての知識を持っているわけではございませんので、そこのところはくれぐれも誤解のないようにしていただきたいと思います。

 ですから、ここで、やはりきちんとうつのことについてわかる人がそこに入るということは非常に重要ですし、できれば、本当に、利用者の方と対面をしないと顔色とか返事をするときの様子とかわかりませんので、うつについての造詣の深い方が必ず利用者の方と一度は会っていただくということが絶対に必要だと思います。書類だけ回されてきてもわかりませんので、それはそういう体制を構築していただかなければならないわけです。

 それから、判断をするというところも重要なんですけれども、もう一つ、相手にそれを伝えるというところもあります。

 今回、サービスが変化する方が出てくるかもしれませんけれども、そのようなサービスが変化するということを通告しますと、相手の不安やうつをあおるということにもなるわけです。伝え方が不適切ですと、自殺を招くことにすらなりかねないわけです。うつのお年寄りは、サービスの切り捨てを伝えられたときに、不服申し立てをしようと考えるのではなくて、やはり自分は社会に迷惑をかけている存在なのだと自殺を考えがちになるわけでございます。ですから、不服申し立て制度があるから大丈夫ですというのは、この際、適切な答弁ではないと思います。

 ですから、通告をする立場の方は大変な重荷を背負うということになるわけです、相手の命がかかってきますので。

 また、うつ病のお年寄りの中には、表現系がわがままとか憎らしいというふうにしか思えないケースも実際にはあるわけです、それも病気が治ると随分よくなってくるんですけれども。そのように、そういう方とコミュニケーションをするというのはかなり高度なテクニックが必要になるわけですし、サービスの変化を伝える役割というのは非常に重いと思うんですけれども、これは、多分、ケアマネジャーさんがサービスのあり方について相手と話し合うというのが厚労省の公式な答弁で、これは一方的に通告するわけじゃなくて相手の合意を得て話し合うんですと答弁されると思うんです。

 ただ、実際のところは、その会話の中で余りうつなどについての知識のない人が、次からこうなりますと言ってしまうと、うつの方はそこで、ああ、そうですかとしょぼんと肩を落として、それで終わりになってしまって、話し合いということにもならない。その後、自殺をされてしまうなどということになったら一体どうするんだろうというふうに思うわけです。

 この点について、サポート体制も含めてどういうふうに考えられているんでしょうか。

中村政府参考人 高齢期のうつの問題、これは大変重要な問題だと思っております。現に、本日現在でもさまざまなケアマネジャーさんがそういううつの方に接する、あるいは具体的にサービスを提供している訪問介護や通所介護の方々もうつの方に接しているということで、そういった意味では、まず、高齢者介護サービス関係者がうつに対する理解を持つ必要があるというふうに考えております。

 特に、委員御指摘のとおり、介護予防ということでさまざま行う場合にうつの問題も出てまいりますし、そういったうつ予防のための知見も必要になるというふうに考えておりますので、私どもも昨年度と今年度かけまして、うつ予防支援マニュアルを慶応大学の大野教授にお願いして、示唆としてそういうこともつくらせていただく、また、ケアマネジャーやホームヘルパーさんの研修の中でも、もっともっとうつなり認知症についての研修、そういったことをしていく必要があると思います。

 そういうことを通じまして、今委員御指摘のうつの方に対する大変難しい問題があるわけでございますので、誤りのないようにしていく必要があると考えております。

水島委員 本当に、サービスの変化を通告したためにお年寄りが自殺するというケースを一例も起こさないようにしていただきたいんです。これだけは本当にお願いをしておきたいと思います。

 そして、今、ヘルパーさんも含めてそういう研修が必要だということを局長がおっしゃいましたけれども、本当にそのとおりで、介護現場にいるヘルパーさんなどに伺いますと、どうもうつ病らしいお年寄りの態度を見て、しっかりしなさいとしかりたくなるということをおっしゃるわけです。結局、どのように接したらいいかということを知らないので、ついつい、ぐずぐずおっしゃる相手を見てしかりたくなってしまう。

 ですから、この辺は、どのように接すればよいかという基本的な知識がやはり必要だと思いますので、ヘルパーさんの研修というのは重要なんですけれども、ただ、実際問題、ヘルパーさんの今の労働条件を見ますと、いっぱいいっぱいで、非常に悪い待遇の中で頑張ってやっていらっしゃる。これで、今度、研修も義務づけられて、それも自分の持ち出しでなどということになったら、もうとてもやっていられないということになってしまうと思うんですけれども、このあたりはどうなんでしょうか。

 今度、地域包括支援センターができるわけです。この中で高齢者の権利擁護というのがあるようですけれども、広い意味で見れば、実はヘルパーさんの相談窓口をつくるということは虐待防止にもつながっていくわけです。ちょっと対応に困ってしまったときに駆け込める相談窓口、それも無料で相談に乗ってもらえるようなそんな窓口があるということは、ヘルパーさんにとってはとても心が安らかになることだと思いますので、地域包括支援センターあるいは市町村でも結構ですけれども、例えば保健師さんなどが無料で相談に乗ってくださるというような仕組みをつくるべきではないかと思いますが、このあたりはいかがですか。

中村政府参考人 まさに委員御指摘のとおりでございまして、地域包括支援センターの中に三つの職種の職員を置くこと、それから総合相談やケアマネジャーの支援、そういったことを行うというのは地域包括支援センターの役割であり、これは市町村の役割だというふうに思っておりますので、今の御指摘のホームヘルパーさんに対する相談というようなことについては、当然地域包括支援センターを十二分に活用してまいりたいと思っております。

水島委員 ぜひよろしくお願いします。

 また、新潟県における高齢者自殺介入活動の比較を見ましても、うつ状態に対する危機介入と並んで、高齢者福祉活動、つまり、訪問や在宅・施設福祉サービス整備状況が自殺抑止効果の発現に関与するということが示唆されているわけです。つまり、どういうことかというと、きちんと高齢者に対して働きかけられるようなそういう環境が日常的に確保されていれば、うつになってからの危機介入も大切ですけれども、うつの予防にもなっていくということだと思います。

 ここで重要なのは、孤立しがちなのは単身の高齢者だけではないということでございます。若い世代との価値観の相違への悩みというのも自殺の背景にあるということもこの研究から指摘をされているわけですけれども、自殺をした高齢者は家庭内孤立に陥っていたということ、また、多世代家族の高齢者は、単身の高齢世帯者に比べまして日ごろからほかの組織がかかわりを持ちがたく、疾病などで容易に孤立する傾向にあったというふうに述べられているわけでございます。

 つまり、単身あるいは高齢者だけの世帯であれば地域の人も気をつけていろいろ声をかけるけれども、多世代同居の場合は、家族がいるからいいやということで、全くそこの中がブラックボックスになってしまうということなんだと思います。

 先ほども横路議員が掘り起こしというのはいい意味でしなきゃいけないんだというふうにおっしゃっていたわけですけれども、私も全く同感です。うつ病については、相手の生活まで入っていって掘り起こしてこなければ、本当の効果を上げることができないわけですので、今回のこの審議の中で、掘り起こしという言葉がネガティブな響きを持って乱用されていることが大変不安なわけでございます。

 こういう多世代同居のお年寄りに対してもうつ病の掘り起こしができるようにするためには、どういうやり方があるというふうに考えられていますか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、早期の対応ということが大事になると思います。当然、さまざまなスクリーニングとか主治医等からの御連絡、要介護認定におきます非該当の方のフォローアップとかさまざまなことが必要だと思いますが、特に、地域の住民の方や民生委員さんからの相談や情報提供、それから、忘れられがちでございますが、ヘルスの観点から保健師さん等によります訪問活動等の実態把握、そういったことが極めて重要ではないかと考えております。

水島委員 ぜひ、いろいろ考えられるときに、単身だけではなく、また高齢者だけの世帯ではなく、多世代同居の高齢者の方というのを必ず忘れないようにしていただきたいですし、先日質問させていただきました宇都宮市の生きがいデイの問題などでも、やはり、条件を絞ってくると、つい単身者という形に絞られてきてしまいがちですので、その辺は、厚労省としても必ず市町村の参考となるようなデータをきちんと示していただきたいと思います。

 もう一つ、うつと並んで重要なのはやはり認知症ということになるわけですけれども、短期間のうちに要介護度が悪化してしまうケースの中には認知症も多いということでございますが、認知症に対していかに適切な悪化防止策をとるかということは、重要な課題だと思います。

 まず、厚生労働省として、認知症の悪化防止策というものをどのように考えておられるのか、それを介護保険制度の中でどのように位置づけられていくのかを御答弁いただきたいと思います。

中村政府参考人 認知症については、特に最近、軽度の認知症高齢者の方をできるだけ早く発見し、御相談いただき、対症療法でありますけれども適切な治療もあると聞いておりますので、そこが大事ではないかと考えております。

 それから、先ほど主治医と申し上げましたときに、委員の方から、主治医でもうつのことは十分おわかりになっていないケースもある、認知症についても同様のことが言えると思いますので、かかりつけ医の方に対しまして、認知症にかかわる研修の充実、それから、地域で認知症の診療や対応に習熟した医師がかかりつけ医をサポートするためのネットワークづくりなどを考えておりまして、かかりつけ医に関する研修としては、実際に地域を選んでそういった研修プログラムを用いた研修の試行も実施したところでございます。

 こういった成果を踏まえまして、医療関係者の方々とも御相談しながら、かかりつけ医、主治医の研修プログラムといったことについても取りまとめてまいりたいと考えております。

水島委員 ぜひ力を入れていただきたいと思います。何といっても、認知症患者の家族を中心とする身近な人が病気について適切な知識を持つということが重要でございます。病気についての理解がないと、患者さんと家族の人間関係が壊れていきます。認知症の症状のコントロールを考えていく上では、やはり患者さんを不安にさせないこと、そしてできるだけ自尊心を保ってあげられるような配慮をすることがポイントとなります。家族が病気を理解できずにパニックになったり患者さんを叱責してばかりになったりということになってしまいますと、患者さんの症状もますます悪化していくわけでございます。

 もう一つは、デイサービスなどを利用して、患者さんが安心できる環境で適切な刺激を与えていくということでございます。刺激を与えないと、それこそ精神の廃用症候群ということになっていってしまいますので、適切な刺激と過剰な刺激を区別するのは、やはり患者さんが不安になったり混乱したりしないでいられるかということだと思いますので、家族をきちんとサポートすることも通して、患者さんが安心と自尊心を保った状態で適切な刺激を受けていくということを実現していければ、在宅生活をできるだけ長くすることができるということは専門家も述べておられるところでございます。

 うつと認知症、どちらもプライマリーケアというのが実は非常に重要で、プライマリーケアにおける啓発というのがある意味では大部分の力を持っていると思いますので、ぜひ、うつと認知症について、きちんとしたプログラムをつくって、プライマリーケア医への研修を徹底していっていただきたいと思っております。

 また、介護予防について、この審議で終わりということではなくて、研究の拠点をつくって、これから研究、検証、そして市町村へのフィードバックをしていくということになるんだと思いますので、ぜひ、地方分権の流れの中でも、研究についてはナショナルセンターをつくっていただいて、市町村の参考になる資料を提供していただきたいということを最後にお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.