衆議院

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第19号 平成17年4月27日(水曜日)

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平成十七年四月二十七日(水曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    上川 陽子君

      木村 義雄君    小西  理君

      河野 太郎君    柴山 昌彦君

      菅原 一秀君    高木  毅君

      谷川 弥一君    中山 泰秀君

      原田 令嗣君    福井  照君

      三ッ林隆志君    御法川信英君

      宮腰 光寛君    森岡 正宏君

      渡辺 具能君    石毛えい子君

      泉  健太君    泉  房穂君

      大島  敦君    小林千代美君

      城島 正光君    園田 康博君

      中川  治君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    藤田 一枝君

      松本 剛明君    三日月大造君

      水島 広子君    村井 宗明君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      高木美智代君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      衛藤 晟一君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            青木  功君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  吉野 正芳君     谷川 弥一君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  中山 泰秀君     柴山 昌彦君

  三ッ林隆志君     高木  毅君

  泉  健太君     村井 宗明君

  内山  晃君     松本 剛明君

  中根 康浩君     三日月大造君

  橋本 清仁君     中川  治君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     中山 泰秀君

  高木  毅君     三ッ林隆志君

  中川  治君     橋本 清仁君

  松本 剛明君     内山  晃君

  三日月大造君     中根 康浩君

  村井 宗明君     泉  健太君

同日

 辞任

  高木美智代君

同日

            補欠選任

             西川 京子君

    ―――――――――――――

四月二十六日

 障害者自立支援法案(内閣提出第三五号)

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

同月二十七日

 利用者負担の大幅増など介護保険の改悪反対に関する請願(松崎哲久君紹介)(第一〇〇九号)

 同(阿部知子君紹介)(第一〇一八号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(小宮山洋子君紹介)(第一〇一〇号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第一〇一一号)

 同(阿部知子君紹介)(第一〇一九号)

 同(松崎公昭君紹介)(第一〇二〇号)

 同(赤城徳彦君紹介)(第一〇二五号)

 同(坂本哲志君紹介)(第一〇二六号)

 同(田村憲久君紹介)(第一〇二七号)

 同(赤羽一嘉君紹介)(第一〇三三号)

 同(河村たかし君紹介)(第一〇三四号)

 同(倉田雅年君紹介)(第一〇三五号)

 同(仙谷由人君紹介)(第一〇三六号)

 同(船田元君紹介)(第一〇三七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一〇五九号)

 同(加藤紘一君紹介)(第一〇六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇六一号)

 同(野田聖子君紹介)(第一〇六二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一〇六三号)

 同(五島正規君紹介)(第一〇八五号)

 同(近藤洋介君紹介)(第一〇八六号)

 同(松野頼久君紹介)(第一〇八七号)

 同(坂口力君紹介)(第一一一六号)

 同(高木陽介君紹介)(第一一一七号)

 同(橋本龍太郎君紹介)(第一一一八号)

 同(古川元久君紹介)(第一一一九号)

 同(前田雄吉君紹介)(第一一三六号)

 同(桝屋敬悟君紹介)(第一一三七号)

 同(七条明君紹介)(第一一六二号)

 同(山口富男君紹介)(第一一六三号)

 臓器の移植に関する法律の改正に関する請願(阿部知子君紹介)(第一〇二一号)

 同(阿部知子君紹介)(第一一二〇号)

 障害者自立支援法案の改善及び通院治療を必要とする精神疾患患者に対する福祉施策の規定に関する請願(渡辺周君紹介)(第一〇三二号)

 年金法の実施中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第一〇五〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇五一号)

 同(山口富男君紹介)(第一〇五二号)

 混合診療の解禁反対、特定療養費制度の拡大反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇五三号)

 同(石井郁子君紹介)(第一〇五四号)

 臓器の移植に関する法律の改正及び臓器移植の普及に関する請願(野田聖子君紹介)(第一〇五五号)

 同(坂口力君紹介)(第一一一四号)

 在宅酸素療法の健康保険適用と生活保護者の一時扶助支給に関する請願(山口富男君紹介)(第一〇五六号)

 安心できる介護制度など社会保障の拡充に関する請願(山口富男君紹介)(第一〇五七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一〇五八号)

 総合的難病対策の早期確立に関する請願(高村正彦君紹介)(第一〇七八号)

 無認可保育所への公的助成等に関する請願(五島正規君紹介)(第一〇七九号)

 同(山口富男君紹介)(第一一六〇号)

 パーキンソン病根本治療研究促進に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一〇八〇号)

 同(小坂憲次君紹介)(第一〇八一号)

 同(小林千代美君紹介)(第一〇八二号)

 同(五島正規君紹介)(第一〇八三号)

 同(横路孝弘君紹介)(第一〇八四号)

 同(寺田学君紹介)(第一一一五号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一一三五号)

 同(上川陽子君紹介)(第一一六一号)

 最低保障年金制度の創設に関する請願(山口富男君紹介)(第一一〇四号)

 介護保険の改悪反対、改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一〇五号)

 同(石井郁子君紹介)(第一一〇六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一〇七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一〇八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一〇九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一一〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一一一号)

 同(山口富男君紹介)(第一一一二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一一一三号)

 同(今野東君紹介)(第一一五八号)

 同(山口富男君紹介)(第一一五九号)

 最低保障年金制度の実現に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一二一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一二二号)

 医療費負担軽減、介護保険の改善に関する請願(河村たかし君紹介)(第一一三〇号)

 介護保険・障害者福祉の利用制限や負担増などの改悪反対に関する請願(高木義明君紹介)(第一一三一号)

 同(松本剛明君紹介)(第一一三二号)

 同(松本龍君紹介)(第一一三三号)

 同(古賀一成君紹介)(第一一六四号)

 医療費窓口負担の軽減、介護保険の改善に関する請願(松本剛明君紹介)(第一一三四号)

 医療と社会保障の充実に関する請願(山井和則君紹介)(第一一五四号)

 パートタイム労働者の均等待遇実現に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一一五五号)

 HAM及びHTLV―1ウイルス感染症の対策強化に関する請願(山口富男君紹介)(第一一五六号)

 保育・学童保育・子育て支援施策の拡充等に関する請願(山口富男君紹介)(第一一五七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)

 障害者自立支援法案(内閣提出第三五号)

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、介護保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省健康局長田中慶司君、社会・援護局長小島比登志君、社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君、老健局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口富男君。

山口(富)委員 おはようございます。日本共産党の山口富男です。

 今回の介護保険法の一部改正案は、審議を通じて次々に問題点が明らかになってきた法案だと思います。今度の改正の中心的な内容の一つである新予防給付をめぐりましても、私は、三月二十二日に本会議質問に立ちまして、尾辻大臣にお伺いしたんですが、その際の答弁では、新予防給付の導入の理由として、現行のサービスは軽度の方々の状態の維持、改善に資するものとなっていないという答弁でした。しかし、厚生労働省の資料によりましても、要介護一の方の八割を超える方々が状態の維持、改善につながっているという資料が明らかになりました。

 それからまた、新予防給付の新しいサービスの内容の筆頭に上げられてきました筋力向上トレーニングにしましても、市町村のモデル事業についての厚生労働省の中間報告でも明確な効果があるという認定はできませんでした。

 このように、私は、新予防給付の導入一つめぐっても、いろいろ理由立てにしたものがことごとく覆されてきた、事ここに至っては、本来これは撤回して根本からの議論をやり直すべき、そういう性質の法案になっているというふうに思うんです。その意味で、私は、採決に付すなんというのはもってのほかだと。しかも、審議で明らかにすべき問題は山積しているんですね。

 きょうは、その中から、まず施設整備の問題をただしたいというふうに思います。

 大臣にお尋ねしますけれども、特別養護老人ホーム、この充実というのは引き続き大きな課題であるわけですけれども、昨年十一月の厚生労働省の発表でも、重複は一部ありますが、全国で三十四万人の方がいわゆる待機者になっているという資料が出ております。それで、今度の施設整備なんですけれども、この改正案と関連いたしまして、地域介護・福祉空間整備等交付金、これで行われるということになるわけですが、特に、特養ホームなどの広域施設については都道府県に対する交付金が対象になるということなんですけれども、この方向で待機者の解消が進むのかどうか、これを示していただきたい。

尾辻国務大臣 今、先生がお述べいただきましたように、特別養護老人ホームの待機者は三十四万人おられます。ただ、待機者三十四万人といいましても、先生御自身も重複があるというふうに今お述べになりましたけれども、複数施設に申し込みをしておられる方、あるいは直ちに入所が必要ではない中軽度の方も含まれておりまして、申込者の方々の状況というのはさまざまでございます。今後、介護サービス基盤の整備は、こうした状況も踏まえながら行っていくことが必要であるというふうに考えておるところでございます。

 その上で、今後の介護サービス基盤の整備については、まず、できる限り住みなれた自宅や地域で生活を続けられるよう、在宅サービスや地域密着型サービスの充実に努めてまいりますほか、自宅で生活を維持することが難しい高齢者のために、安心して住みかえできる新しい住まいの普及を図りまして、在宅で常時介護を受けることが困難な方のために特別養護老人ホーム等の整備を進めるなどいたしまして、地域のニーズに応じて多様なサービス基盤の整備を進めていくことが重要であると考えております。

 私どもといたしましては、今回創設をいたしました地域介護・福祉空間整備等交付金によりまして、全国的な状況を見て整備がおくれている地域を重点的に支援することにより、バランスのとれた整備が可能となり、さらに、交付された交付金の範囲内で、地域の実情に応じて事業者への助成の程度を変更したり整備量をふやすなど、自治体の自主性、裁量を発揮できる仕組みといたしましたことから、効率的な介護サービス基盤の整備が進んでまいるものと考えておるところでございます。

山口(富)委員 大臣はいろいろお述べになりましたけれども、実態からいきますとどうなっているかといいますと、現状は、待機者については、改善どころか、五年間連続でふえているんですね。

 在宅サービスを改善するというのは当たり前のことなんですけれども、この特養ホームについて、今、重点的あるいはバランスよくという話がありましたが、現実には、国は特養ホームの建設費の補助金を削減している。今度の関連している交付金でも、昨年度は九百三十一億円だったんですが、これは今年度八百六十六億円に減額されているんですね。しかも、新たな交付金というのは、国の基本指針にそぐわないと支給されないんです。しかも、市町村の場合は、三年間の計画で一億円を上限としますから、そこからはみ出る部分は地方の持ち出しなんですよ。

 こういう枠組みの中で、果たしてきちんとしたバランスのいい特養ホームの建設、整備が進んで、待機者が解消できる道ができたのかと、私は大臣に重ねて尋ねたいと思います。

尾辻国務大臣 今回創設いたしました地域介護・福祉空間整備等交付金、これは先ほども申し上げましたとおりに、それぞれ地域の裁量を大きくして、それぞれ地域の実情に応じて整備をしていただくということをねらいにしたものでございますから、まさに、その地域の御判断で整備を進めていただく、その裁量が大きくなっているという意味で私どもは地域に応じた整備が進んでいく、こういうふうに考えておるわけでございます。

山口(富)委員 私は、これは裁量を広げたとはとても思えませんね。具体的に示しましたように、市町村の場合は三年間で上限がつくんですよ。そこからはみ出ていく部分を今の市町村の財政からいって負担できるのかという問題があるわけですね。ですから、これは、県や市町村の交付金の活用任せにしないで、国が待機者を解消する措置や施設整備の充実を図る具体的な計画を持つということが今極めて大事だということを重ねて述べておきたいと思います。

 次に、局長にお尋ねしておきますけれども、今度の改正案によりますと、今後、要介護二以上でないと特養ホームに入所することができません。その場合、市町村が整備する三十人未満の特養ホームに入所することは可能ですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 特別養護老人ホームは予防給付の対象にはなっておりませんので、三十人未満の小規模の特別養護老人ホームにつきましても、軽度の方の入所ということはできない仕組みになっております。

山口(富)委員 これまで入所できた方が入所できないという、これは重大な制度変更なんです。それで、局長に重ねて示していただきたいんですけれども、現在、要介護一の方で特養ホームに入所されている高齢者は何人いらっしゃるのか。

中村政府参考人 平成十七年一月審査分、すなわち十六年十二月の特別養護老人ホームでサービスを受けておられる受給者の方は三十七万人おられますが、お尋ねの要介護一の方は、二・四万人であり、全体の六・六%を占めておられます。

山口(富)委員 大臣、今局長から二・四万人、二万四千人であるという話がありました。この方々は、今度の改正案では、附則の十一条というのがありまして、向こう三年間は入所ができるということになっているわけですが、三年たちますと、介護状態が維持された場合に新予防給付ということになりまして、外れていきます。ですから、二万人を超える規模で特養ホームから転所してもらうという問題が起きてくるわけですね。これは、私は非常に大きな社会問題になるというふうに思うんですが、これについてはどういう対応をするというお考えなんですか。

尾辻国務大臣 お述べいただきましたとおりに、今回の改正法施行前に特別養護老人ホームに入っておられる入所者の方で、施行後に要支援認定を受けた方につきましては、三年間、したがいまして平成二十一年三月末までになりますけれども、猶予措置として特別養護老人ホームへの継続入所を認めることにいたしております。

 しかしながら、こうした方々については、本来、在宅等で生活し、新予防給付を受けていただくことで生活機能の維持、改善が見込まれる可能性が高い方でございますから、要支援の方々でありますからそういう方々でありますし、また御本人にとっても在宅等への移行が望ましいと考えられます。さらに、特別養護老人ホームは、平成十四年から要介護度が高いなど入所の必要性が高い方から優先的に入所していただく仕組みとしておりますので、そうした必要性の高い方ができるだけ早期に入所できるようにしていく必要もございます。

 そうしたことがございますので、市町村や地域包括支援センターなどが中心になって、御本人あるいは御家族等の希望も踏まえながら、猶予期間の間に在宅等での生活に円滑に戻っていただけるよう支援をしていくことが重要だと考えております。

山口(富)委員 大臣、大臣がそこまで言われるから私は重ねて大臣に聞きますけれども、この問題は、御本人たちが希望して、そしてプランが立てられて、特養ホームに現に入っている方たちなんですよ。その方たちが、三年の猶予といいますけれども、最後に御本人や家族の希望もお伺いしてという話がありましたが、とにかく出ていってもらう措置をとるんですよ。これは御本人たちにとっては重大な社会問題ですよ、そういう認識さえないんですか。

尾辻国務大臣 ですから、まず三年間の猶予期間を設けた。そして、その間に御本人とか御家族の御希望もお聞きをしながら、お話も伺いながら、在宅を希望される方についてまず円滑に戻っていただけるように支援をさせていただく、そのことが大事なことだというふうにお答え申し上げたところであります。

山口(富)委員 大事な問題ですから重ねて聞きますけれども、だったら国が責任をとるんですね。それから、本人が重ねて入所を希望した場合は入所できるんですね。

中村政府参考人 大臣からもお答え申し上げましたように、三年間の猶予期間がございますので、その猶予期間の間に在宅あるいは新しい住まいということで、住んでいただく場所の確保は必要であるというふうに考えております。

 それから、現在、大変、委員も御指摘のとおり、特別養護老人ホーム入所をお待ちいただいている方がございます。平成十四年から優先入所という仕組みで、御家族の状況でございますとか、特に、要介護度などが、地域によりまして、特別養護老人ホームに入所される方については要介護度の高い方、通常三以上の方をお願いしているところでございます。そういった意味で、御指摘の要介護度一の方々については猶予期間の間に適切な場所にお移りいただくということが、待っておられる重度の方々のためにも必要ではないかと考えております。

山口(富)委員 適切な場所と言いますけれども、現実にはまだできていないんですよ。よくそういう答弁ができると思いますよ。軽度者と言われますけれども、今後、新予防給付によってサービスの抑制というものが起こるわけですね。しかも、新たなサービスメニューというのは効果が明確でないということになっている。ところが三年の猶予があるからということで転所してもらうというのだから、私はこれほど高齢者の皆さんに冷たい措置はないと思うんです。

 しかも、今度の場合は、低所得者でも特養などに入っておりますと居住費と食費が取られていきます。そして、国の税制によりまして今度は住民税でも課税になっていきますから、今用意されている低所得者対策でも、そこから外れていく人たちが生まれてくる。しかも、国はそこに加えて特養については個室化を進めるという方針をとっておりますから、入所したい、そこで生活を、介護を受けたいという方にとっては、ますますそこから出ていけということにならざるを得ないということを、私は重ねて厳しく指摘しておきたいと思うんです。

 最後に確認しておきますが、社会福祉施設職員の退職手当の共済問題なんです。二点まとめてお尋ねいたします。

 まず大臣に、今回の措置によると、国と都道府県の補助を外しますから、単純に言いますと公的支援の後退で事業主負担は三倍になります。そのことを踏まえた介護報酬の改定というものを検討されているのかどうか。もう一点は、二〇〇六年四月以降の新入職員について、この共済に加入しない場合、厚労省が設けております中小企業退職金共済、いわゆる中退金、これに新入職員を加入させることができるのか。この二点をお尋ねいたします。

小島政府参考人 では、まず私の方から、中小企業退職金共済制度との関連についてお答えいたします。

 今回の社会福祉関係の退職手当共済制度の改正では、既加入職員については公的助成を維持し、制度改正後の新規採用職員についてのみ公的助成を廃止するものでございます。これに伴いまして、新規採用職員につきましては、退職手当制度に加入し続けるか加入しないかの選択を可能としているところでございます。

 一方で、御指摘の中小企業退職金共済制度では、当該中小企業のすべての従業員が加入することが原則とされておりまして、現行制度では、退職手当共済法改正後の新規採用職員についてのみ中小企業退職金共済制度に加入することはできないというふうに承知しております。

尾辻国務大臣 今回の退職共済制度の見直しに伴って介護報酬を見直すのかというお尋ねでございます。

 まず、介護報酬について一般論でお答えいたしますと、サービスの提供に要する費用の実態を勘案して、社会保障審議会の意見も聞きつつ設定するということになっております。その上ででありますけれども、今回の退職共済制度の見直しで事業主の負担が増加することになり、それが経営の実態に反映することになれば、それを勘案した報酬改定が行われる仕組みになっております。

山口(富)委員 介護労働者の労働条件の改善は介護サービスの質を高める上で欠かせない問題ですから、退職金問題で不利益が起こらないように重ねての検討をお願いいたします。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日、私に与えられた時間が十五分でございます。ただいまの山口委員と中村局長並びに大臣の御答弁を私は聞きながら、本当に実は憤りを禁じ得ないものがあります。この介護保険という法案は、成立した当初、一つは介護の社会化、二つ目は御本人の選択、いわば人間がどう生きるかの選択ということを掲げて発足した制度であります。しかし、今の、例えば要介護一の方の入所問題に関しましても、先ほどの中村局長の答弁にございましたように、出ていっていただくということを前提にした道しかないのです。その中で幾ら美辞麗句で選択という言葉を使おうと、最後は、重い方への配慮で出ていっていただくというのが局長の締めくくりの言葉でした。

 果たして私たちの社会は、そんなふうに強制的に、一つの、社会的なさまざまな施策の中で、個人の生き方を強制していく社会になっていいのかどうか。このことは私は、何度この審議を重ねてきても、どうしても、言葉の美辞麗句と実際に行われる政策のこの貧しさというものが、いかようにも納得しかねます。しかし、きょうは十五分ですので、その憤りを腹におさめ込んで、骨格的な論議を、これは私は、きょう、大臣といたしたいと思います。

 一点目は、予防給付問題でございます。これはこの委員会の審議の中で最も時間をとりましたが、せんだっての大島委員との質疑の中でも明確にされましたように、果たしてこの介護保険という仕組みを予防の方に膨らませていくべきなのかどうか、ましてその予防の給付の仕組みは極めて使いづらい、本人の選択の幅が少ない、自治体の主体としての幅が少ないものでございます。

 大臣に伺います。

 イギリスにエージコンサーンという御高齢者のためのNPO団体がございます。大臣はいろいろなところにお若いころ行かれたこともあるということですが、このエージコンサーンというグループ、御老人たちの団体です、御存じでしょうか。

尾辻国務大臣 存じません。

阿部委員 先般来、老人クラブ連合会の御参考人が地方公聴会でもここの公聴会でもおいででございました。私は、この国会の論議の中で、今後私どもが目指すべき少子高齢社会の中で、いわゆる公でもない、民でもない、共の部分、お互いの助け合いの部分、ここを国としてどのように支援し、育成し、来るべき少子高齢化に備えるかという、今そのかじを切るべき重要なこの国会であったと思います。エージコンサーンという全英にネットワークを持つ団体は、例えば地域での御高齢者の給食サービスや、あるいは移動サービスや、あるいはおうちのカーテンのつけかえまで、それは、政府がある程度NPO団体の支援の仕組みをつくり、御高齢者たちがみずからもサービス提供側になり、助け合いながら稼働している団体でございます。

 私は、今、この新予防給付の問題で、事細かに、あれだめ、これだめ、リハしなさい。ちなみに、私はパワーリハビリにプラスの評価を持っております。しかし、このようにきちきちと本当に利用者が選べない形にするよりは、予防という幅広い部分は、公、共の、共の団体にもっともっとゆだねて、選択の幅を広くして、高齢社会を支える仕組みをつくるべきだと思います。

 大臣が、今、とても正直な方ですので、御存じないと言ってくださいましたので、ぜひ、厚生労働省としても参考にしていただきたい。

 実は三年ほど前のこの委員会、厚生労働委員会の視察で、鈴木俊一委員長でございましたが、私どもは、ドイツ、イギリス等々ヨーロッパに行かせていただいて、そのイギリスで拝見してきた団体でございます。きっと大臣のお考えの中にも参考になろうと思いますし、このような形で、悲しい追い出しや、あるいは、本当に、やはり人間意欲あってこそトレーニングの意味も出ますが、一々例えば認定を受け、スクリーニングを受けというような生き方が御高齢者に合うのか合わないのか。大臣御自身はそういうふうに生きたいのか、スクリーニングにかけられて、あなたはこれこれこれこれのリハコースをやりなさい、そういうふうに生きたいのか。私は、決してそうではないと思います。

 しかし、今、現状で、例えば私が預かる施設でもパワーリハビリをやってございます。現状の介護給付の中で十分にできます。わざわざ新たに一区切りこっちに持ってきて、そして使えない人ばっかりをふやしていくということの愚を、私は重ねてここで指摘したいと思います。

 そして、大臣に一つ伺います。

 例えばこの新予防給付コースができたとして、地方自治体の皆さんがおまとめになったこの介護予防市町村モデル事業のおまとめの中でも、全サービスについてそうです、口腔内清拭、フットケア、あるいは筋力トレーニングなどでも、どれも送迎が問題だという言葉が繰り返し出てまいります。これは、せんだって西副大臣が送迎の問題も指摘されているということを言ってくださいましたが、送迎が問題とは何かというと、二つあります。

 そのエリアでどのくらいの実際の人を集められるか。そして、その送迎にも当然人手が要ります。大臣がこれからこれを新予防給付で始められるといったときに、果たしてどれくらいの地域でその送迎が可能であるか。この点についてはきっちりと御認識いただいて、なぜなら、北海道のように本当にぽつぽつぽつとお人が住むようなところではなかなか、送迎で、まして要支援の一とか二とか、人を拾い集めて事業の実施ができようはずもありません。遠くて、集めるだけで大変でございます。分ければ分けるほどコストも高くなり、サービスを受けられない市町村が出てまいります。

 この送迎ということの意味するものを大臣としてどのように受けとめておられるか、きょうはその一点だけで結構です。よろしくお願いします。

尾辻国務大臣 先日も申し上げましたけれども、まず、東京の現場を見せていただきましたときに、お話を伺うと、そこでは隣にコンビニがあるというお話でありました。しかし、全国そういう場所ばかりではないから、ヘルパーさんに買い物を手伝っていただくということ一つとっても、地域の実情に応じてそれぞれ考えなきゃいかぬなということは感じておるところでございます。

 そして、今の、今度は送迎という話でございますが、一度広島県のかなりへんぴなところをこれまた見せていただいたことがあるんですが、非常に坂の多いところでありまして、皆さんが集まってこられるのに、その坂をどうするかというようなことだけでも大変苦労しておられるという話を聞きました。

 したがって、全国いろいろなところがありますから、あらゆるサービスでその地域差ということを考えなきゃいけないというふうに思っておるところでありますけれども、特に送迎ということは、その地域差ということが大きなところだ、分野だと思いますので、このことについて配慮しながら、また今後、私どもの課題としてよく検討してまいらなきゃいけないことだというふうに認識をいたしております。

阿部委員 実際に、そのような過疎と言われる地域で、果たしてこの新予防給付ができるのか。できなかったら、保険料は納めても実際にサービスはないわけでございます。このことの深刻さが今回の論議の中で十分尽くされず、実際に枠がつくられていくということは、重ねて私としては異議を申し立てたいと思います。

 引き続いて、先回の私の質問で最後にお尋ね申しました、今後、この十月からも開始される、いわゆるホテルコスト、居住費や光熱費やあるいは食費負担の問題で、これが在宅との見合い、在宅との公平性ということでずっと語られておりましたが、実は、居住費についてはその施設の減価償却費を利用者さんに払っていただく、食費については材料費プラス調理員の調理コストを払っていただく。私は、これは在宅との見合いとは言わないんだと思います。

 例えば、在宅の方は、おうちで生活支援のホームヘルプを受けたとして、お食事をつくっていただき、それを召し上がることも含めて介護保険給付でございます。しかし、一たん施設に入れば、調理員さんの給与も全部御自分でお支払いしなさいというのがこの食費負担でございます。この考え方自身がおかしい、ごまかしであると私は思います。

 在宅との見合いということでいうのであれば、何度も例示させていただきましたが、きょうは特に居住費のことで資料を、一枚目、提示させていただいていますが、居住費の家計調査に見る実態というところで、ここには、せんだっても御紹介しました、全世帯、持ち家、民営の借家、公営住宅あるいは公団住宅などのもの別に分けてございますが、大体住居費は、高くても、借家であっても五万四千八百三十九円でございますが、この安い方と高い方の平均をとれば二万といかない、居住費は一万八千百円と平均値が出てまいります。

 今回、減価償却費というのは、例えばその建物が建てられて何十年の中で償却していくというときの計算方法でございます。税金が投入された建物は、その建物自身の建設費は税金でございます。そして、減価償却費ですから終わるわけです。終わった後は払わなくてよいのかとか、考え方自身に多くの矛盾をはらんでおります。

 私は、御高齢者の乏しい年金、そしてつましい生活を考えたときに、在宅との見合いというのは、生活実態を把握して見合う、その程度の御負担は了解していただこうということであれば、国民的納得も得られると思います。施設に入った方が明らかに高い設定がされました。それでは選択できません。金がないから選べません。そして、さまざまな減免措置を行われると聞いておりますが、極めて不十分だと思います。

 この算定根拠が私はおかしいと思いますが、大臣、いかがですか。

鴨下委員長 中村老健局長。(阿部委員「ごめんなさい、きょうは局長はもう結構です。もうせんだって伺いました。ごめんなさい」と呼ぶ)

 尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 算定根拠というお尋ねでございましたから、局長から答えさせようと思いましたけれども、考え方といいますか、私どもが思っておりますことだけを申し上げたいと思います。

 私どもも、今回見直そうといたしておりますのは、あくまでも負担の公平性ということでございますから、在宅の方も施設の方も同じように負担していただこうということで算定をいたしたものでございまして、先生が言っておられますような生活実態に合わせて算定をしたつもりでございます。

阿部委員 そうであれば、大臣がそう思っておられるのであれば、局長たちの算定方法が違うので、これはきっちり正していただきたい。減価償却費やその施設職員の給与のため、調理員さんの給与から見合って算定するのではなくて、生活実態に合わせていただきたい。ここは答弁のそごがございますので、後ほど詰めていただきたいと思います。

 それから、三点目。私が一番取り上げたかった保険料のことでございます。

 お開きいただきまして、三枚の資料がございます。これは武蔵野市というところがずっとこの間出されておる資料で、既に石毛委員もお尋ねでございます。これは、世帯見合いで保険料を決めていったときに、御本人の所得ないし年金の収入と世帯の所得との間で保険料の負担に著しい逆さま現象が起きてしまいます。ちなみに、世帯で五百二十万、四百六十万、三百八十万の方ですが、保険料の負担は実はこの三百八十万の方が一番多いというような逆転現象が起きるという図でございます。

 そして、おまけに、二枚目を見ていただきますと、ここには、この保険料の徴収は国民健康保険なり組合健保に乗っけてございますので、例えば未納率が国保で高まってまいりますと、保険料も介護保険料も取れない。今後、年齢拡大がされていくということも考えますと、三十歳未満というところを見ていただきますと、年収二百万円以下の三十歳未満、あるいは三百万円以下をとってもよろしゅうございます、国民健康保険の保険料は七五%しか納付されておりません。年齢を拡大しても、ここの部分は国民健康保険に払っておられないゆえに介護保険も払えません。私は、現在、年金の空洞化問題を一方で年金審議で論じさせていただいておりますが、このような実態も同時に進行しております。

 三枚目は、国保の最低の保険料と介護保険の最低保険料が逆転してしまっている。

 いろいろな矛盾をはらんでおります。保険料のあり方について私が今指摘したことを踏まえて、ちょっと時間足らずで舌足らずですが、大臣に、さらに、公平で納得のいく保険料のあり方についてお考えいただくという御答弁をいただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、保険料設定でございますけれども、六十五歳以上の被保険者の方のうちの四分の三が住民課税非課税層でございます。したがって、この四分の三の皆さんをどう分けてまた保険料を設定するかというのは大変難しい問題でございますので、今、私どもは、そういう方々を、まず世帯に全く課税者がいない方々、それから世帯に課税者がいる方、こういう分け方しか今ないものですから、その分け方で保険料を設定いたしますと、御指摘のようなところも出てくることは事実でございます。

 先生繰り返し言っておられますように、公平に負担していただくものでなきゃいかぬということは当然のことでございますから、そのようにまた私どもも努力はしてまいりたいと存じます。

阿部委員 以上で終わらせていただきます。

鴨下委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 介護保険制度の改正案の審議ということで、恐らく後ほど同僚議員からもさまざまな総括がなされるであろうというふうに思っておるところでございますが、私なりに少し振り返って総括をさせていただきたいと思っております。

 それは、まず、これは政府からの提出ということに絡む話ではありませんが、介護保険制度そのものの重要審議をしなければいけないというところからすれば、残念ながら、この審議時間というものがもう少しきちっとした形で確保できなかったのかなということは、私自身は感じておりました。これは全体的なスケジュールの中ではいたし方ないのかもしれませんが、であるならば、もう少しこの審議時間の中で、与党の皆さんあるいはこの厚生労働委員会の中の委員の皆さんが、しっかりとした出席のもと議論をし尽くすべきではなかったのかなということを私自身は感じておった次第でございます。

 それから、この法律そのものの中身をいろいろひもといていきますと、残念ながら、やはり政省令事項の多さというものは否めなかったわけでございます。

 そういった意味では、法律のつくり方等々がさまざまな形であるんでしょうけれども、そして、答弁の中でも、これは政省令事項であります、それから大臣のさまざまな告示で行うものでありますという御答弁もいただいて、これは後ほどの検討事項になりますという御答弁をいただいたわけでございますが、確かに、私も法律を学んでおった人間といたしましては、国会でつくられる法律に従って、その後に政省令事項というものがつくられるのは当然の流れでありますけれども、しかしながら、それは、あくまでも法律の範囲内できちっとそれを行っていくということが大前提にあるわけでございます。

 したがって、その法律の範囲内で政省令を決めていくということであるならば、その内容をしっかりとこの法律の審議の中でやはり明確にしていく必要があるのではないか。であるならば、最初の意見、考え方として、その政省令事項をどういう形で考えておられるのかということもあわせてやはり御提示をしていただきながら、その法律の範囲というものをきちっと決めていく必要が私はあると思っておりました。しかし、残念ながら、その中身の内容になってきますと、これは後ほど決めるという形になってきたわけでございますので、その点は、私は、もう少し踏み込んだ議論というものがさせていただければなということを思っておりました。

 それから、これは、恐らく視点、観点の違いが大きくこの審議の中でさまざまな議論のそごが出てきたのかなというものは感じました。すなわち、何を言わんとしているかといいますと、すぐ後ほど触れさせていただきますけれども、当初、厚生労働省から示されたさまざまな資料の中に、やはり財政的な部分というのがかなりのウエートを占めてきたということであります。

 すなわち、財政はこれぐらい、しかも、今後、介護保険料の増大という保険料の増大、給付の増大、そういったところから、抑制的に行っていかなければこの介護保険制度の維持そのものが難しくなってくるというような論調で、私自身は印象として受けたわけでございます。それを示すようなさまざまな資料も御提示をいただきました。したがって、恐らく、利用者の方々のそういった御意見等も踏まえつつも、しかし最終的には財政という面がその中で大きく抑制的になってきてしまったということは、私、ちょっと残念ではないのかなという気がいたしております。

 すなわち、そういうこともしっかりと責任ある制度持続性的な部分を行っていかなければいけないという姿勢というものは確かに理解はできます。理解できますし、私たちも、それをもって、その限られた財源の中でどういう形がいいのかということをしっかりと議論をしていかなければいけないというのはよくわかっておるつもりであります。

 しかし、私どもの立場からすれば、まず利用者の視点に立って、どういうサービスが果たしてお年寄りの方々に対して自立的な部分であるのか、あるいは、先ほど御指摘がありましたけれども、介護の社会化というものを守っていけるのか、あるいは、利用者御本人の自分らしさ、自立や選択というものを、これはやはり人間の尊厳の根幹にかかわる部分でありますから、そこからのスタートという形で、私は、この介護保険制度というものの議論を積み上げていく必要があったのではないのかなということを強く思っているところでございます。

 そういう意味では、今回のこの介護保険制度は、いよいよ大詰めになってきたということが言われておりますけれども、もう一度、議論の過程の中ではしっかりと、その過程といいますか、視点の出発点というものを十分お含みおきいただきながら、今後、政省令事項を作成する際にはぜひそういう形で当たっていただきたいということを、まず総括とともに御要望として申し上げておきたいというふうに思っております。

 そして、きょうお配りをさせていただきました資料でございますけれども、資料といいましても、これは厚生労働省さんから事前に私どもに御提示をしていただいた資料でございますので、これをもってどうのという話ではありませんけれども、きょうは私自身にとっても最後になるかもしれませんので、思いのたけを話させていただいた上で、この中身をもっときちっと理解を深めたいというふうに思っております。

 まず、お配りした資料でございますけれども、この二枚目をごらんいただきたいと思うわけでございますが、介護給付費の見通し、ごく粗い試算という形でお示しをいただいたわけでございます。

 それによりますと、第三期、平成十八年度から二十年度におきましては、現行のまま推移した場合は七・二兆円ということをお示しになっておられます。そして、給付の効率化、重点化を図る場合には、ケース1におきましては六・五兆円、そしてケース2においては六・六兆円という形になっておりました。

 まず、この給付の効率化というものはどういったものを想定されておられるんでしょうかということと同時に、この右の方に書かれておりますけれども、重点化を図る場合というものはどういうものであるのか。また、ケース1は「介護予防対策が相当程度進んだケース」というふうに三枚目で書かれているわけでございますけれども、ケース2の場合ですと「介護予防対策がある程度進んだケース」というふうに書いてありますが、このように解釈していいのかどうか。そして、同時に、これはちょっと通告に出しておりませんでしたけれども、相当程度進んだケースと、それからある程度進んだケースの違い、この違いを少し明確にお示しをいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員がお示しいただきました資料は、私どもが昨年十月に出させていただきました介護給付費の見通しでございます。

 委員のまず御質問の給付の効率化、重点化ということでございますが、介護給付費の見通しのこの作成に当たりましては、地域支援事業の導入や新予防給付の創設といった介護予防対策の推進により給付費の増加が、ふえるわけでございますが、増加の度合いが減少する効果と、二番目といたしまして、施設給付費の見直し、これは居住費用や食費についての改正でございますが、給付費が減少する効果を見込み、これら施策を全体として給付の効率化、重点化と呼んでおります。

 ケース1、「介護予防対策が相当程度進んだケース」は、この両者の効果のうち、施設給付の効果と予防効果が半分ずつのケースでございまして、予防も相当進んだケースというふうに考えております。

 それでは、ケース2とケース1の違いでございますが、予防効果の違いでございまして、ケース2につきましては、ケース1の予防について半分程度の効果があらわれる場合を想定いたしております。

園田(康)委員 半分程度の効果ということでありますけれども、そうしますと、三枚目の資料で読ませていただきますが、ここで軽度者に対する給付、「「新・予防給付」の創設」という形で、一点は「軽度者の重度化の防止」というのが上げられております。それから、二点目といたしましては「軽度者に対する給付費用の効率化」と。半分程度というふうにおっしゃいましたけれども、さらに、そのケース1あるいはケース2の中で、半分ずつの効率化というものが示されているわけでありますが、この違いというものはどういったものなんでしょうか。

中村政府参考人 お尋ねの点についてお答え申し上げます。

 今の資料のケース1、ケース2の、介護予防対策が相当進んだケースとある程度進んだケースにつきましては、アの(ア)「軽度者の重度化の防止」それからイの「「地域支援事業」の導入」の効果、いずれも、効果のあった方の人数が、ケース1の半分をケース2というふうに見込んでいるところでございます。

園田(康)委員 済みません、「軽度者の重度化の防止」と「軽度者に対する給付費用の効率化」というふうに二つに分かれておりまして、そしてこの給付費用の効率化というものが何を示すのかということもちょっとあわせて御答弁いただけますか。

中村政府参考人 大変失礼いたしました。

 ただいまの点につきましては、まず、「軽度者の重度化の防止」というのは、軽度者の方が要支援一、二から要介護二などに重度化することを防止する効果でございます。「軽度者に対する給付費用の効率化」でございますが、介護予防マネジメントが徹底されることによりまして軽度者に係ります給付費用が効率化される効果を見込んでおります。すなわち、もう一回繰り返させていただきますと、「軽度者に対する給付費用の効率化」は、介護予防マネジメントの徹底による効率化に相当するものでございます。

園田(康)委員 私どもが当初から抱いておりました、軽度者に対する給付費用の効率化によって今まで受けられていたサービスが受けられなくなるのではないかという懸念がここにあったわけなんですね。

 そうしますと、ケアマネジメントあるいはさまざまな予防給付の事業によって軽度者がさらに改善をするということをここで考えて、それによって費用が抑えられるというふうに考えておられるということでよろしいんでしょうか。

中村政府参考人 改善効果につきましてはそのとおりでございまして、重度化を防ぐことによりましていわば給付費の増加が防げる、こういうふうに考えております。

 また、「軽度者に対する給付費用の効率化」というのは、今委員から適切に使っている給付がカットされるのではないかという御懸念をいただいたと理解したわけでございますが、再三この委員会での御審議でも御答弁申し上げておりますように、適正なマネジメントに従って行われている適正な利用については制限されることはない、こういうふうに考えております。

園田(康)委員 そうしますと、もう一回二枚目に戻っていただきたいんですけれども、昨年十月に御提示をしていただいたこの資料で、粗い試算という形ではありますが、段階的に、現行のまま推移した場合と、それからある程度予防効果が進んだ場合、ケース1、ケース2という形で試算は出されていらっしゃる。私も、いただいた資料あるいは御説明をいただいた資料で、各年度ごとでどういう形で考えていらっしゃるのかということをお伺いしましたら、それは各期の平均的な部分でしか数値が出てきませんよということをおっしゃっておられたわけでございます。

 そこで、来年度からもう始まるわけでございますけれども、当初の三年間は、経過措置等々も踏まえて、まだその予防効果が出てこないということを考えておられるようでございますが、しかしながら、現に、三期の半ばからこのように六・六兆円と六・五兆円という形でケースの違いをお示しされていらっしゃるわけであります。そうなりますと、利用者の立場に立って考えますと、先ほどから懸念をしているというふうに申し上げておりますけれども、自分たちが今までサービスを受けている部分が、抑制された、削減されているこの部分の中に入り込んでしまっているのではないかという懸念と心配があるわけなんです。この点をきちっと御説明いただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 この介護給付費の見通しは全国的な推計でやっています。委員御承知のとおり、介護保険は市町村でやっておりますので、実績の方になりますと各市町村の給付の全部の積み上げになりますから、いわばトータルになってくる。三期も四期も五期も、実際問題としては、それぞれの市町村の保険料の総額、それと税金の総額がこの給付費になるということでございますので、そういった意味では、三期、四期、五期もこうなるかどうかというのは、市町村の方の実際の計画、それから実績がそれに合うかどうかという点でございます。

 第二点目は、今御指摘のありました二期から三期につきましては、ごらんいただいておりますように、給付費は相当ふえるということでございます。七兆二千億にふえるところが六兆六千億なり六兆五千億でとどまるかどうかということでございますが、この効果のかなりの部分は施設給付の見直しの効果でございまして、委員御指摘のとおり、予防の効果につきましてはまだ徐々に市町村の取り組みが上がっていくというふうに考えておりますので、第三期については相当低目な効果になっているということがございます。

 それにしても、現在の第二期の平均に比べまして一兆円程度ふえるというふうに見込んでおります。要は、ふえるんだけれども、そのふえ方が少し抑えられる、こういうのが第三期の姿ではないかと思いますので、先ほど来御指摘になっている今適切に利用されている方の削減効果というものがここに入っているわけではない、また削減されるものでもないし、削減効果がそういうことで入っているわけではないということでございます。

園田(康)委員 そうしますと、今くしくも局長が、保険料あるいは税金の投入に基づいて、全国の実施状況によって積み上げられてくるものであるというふうにおっしゃっていただきました。全国の課長の担当者会議でも、恐らくこれは昨年のうちにお示しをされたんだろうと考えております。通告では、どのようにお示しをされたんですかというふうにしておりますけれども、恐らく今のような御説明があったんだろうと推察をいたします。

 そこで、大臣にちょっとお伺いをしたいわけでございます。

 先ほど、一番最初に私も御指摘をさせていただきましたけれども、私どもは当初、いわばこの数値が最初にありきに受けたわけなんですね。すなわち、これは、いわゆるマニフェストと我々も言っておりますけれども、数値目標というものを最初に掲げて、そしてここまでは削減しなきゃいけないんですよという形にお示しになったものであるというふうにどうしても受け取ってしまうんです。

 したがって、大臣もよくおわかりだと思っておりますけれども、政府が発表する数字であるとかいわゆる厚生労働省が発表する数値、全国の担当者の方々に対してお示しをする数値というものは、やはりこれは大変重い影響力を示すものであるというふうに私は考えてしまうんです。

 そして、受け取った側からすれば、一〇%あるいはそれ以上の数値目標に抑えなければいけないということからすれば、これから事業を実施していくときに、無理無理こういった数値に合わせるような形に、さまざまなサービスの抑制、あるいはその効果を上げていかなければいけない、重度化を防いでいかなければいけないということで、今回の審議でさまざまな懸念がありましたけれども、無理やり、これはないというふうにおっしゃっておられましたが、何か運動器の機能向上を無理無理押しつけていくような形にもつながりかねない心配というものをある面で私たちは抱いてしまうわけなんです。

 したがって、今回お示しをされたこの数値、目標という位置づけになっていないかどうか、私はこれをまず心配として上げているわけなんですけれども、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 私ども、これまでも数字はお示しをしてまいりました。それは、先ほど来局長が言っておりますように、参酌すべき標準という言い方でお示しをしております。それは、現在の介護保険法ですけれども、これの百十六条に基づいて国が定めます基本指針において、各市町村が介護保険事業計画に盛り込むサービス量の見込み量を算定するに当たってまさに参酌してくださいということで、今までもお示しをしてまいりました。今までも参酌すべき標準というのは示してきましたということをまず申し上げたわけであります。

 今、いろいろ数字を言っていただいておりますけれども、これまでと同様に、平成十八年度からスタートいたします第三期介護保険事業計画の作成に当たり、市町村が要介護、要支援認定者数を算定する際の今度は十八年度からの算定に当たってのまた参酌すべき標準としてお示しをしておるものでございます。

 したがいまして、今までとこういう数字の示し方が変化しておるものでもございませんし、またそれは、こうした数字というのは市町村の参考にしていただくための数値として私どもがお示しをしているということを改めて申し上げているところでございます。

園田(康)委員 あくまでもこれは参考の数字で、推計であるということでありますので、これが、ある種ここに最終的な結論、結論といいますか帰着点を持っていくものではないということで、あくまでも、新予防給付あるいは地域支援事業というものを通じて、結果がこういう数字になれば一番いいという状況として私どもはとらえたいというふうに考えております。

 ぜひ、そういう積み上げ的な部分で最終的にこのようになるんですよということであって、最初にこの数字ありきではないということをもう一度大臣に確認いただきたいと思います。

尾辻国務大臣 これは、今先生のお話を伺いながら、経済財政諮問会議で私と民間議員の皆さんがいつもやりとりしておる議論を思い出しておりましたけれども、私は、いつも経済財政諮問会議においても、社会保障というのは積み立てなきゃやっていけません、皆さんがおっしゃるように、最初に頭からキャップをはめられてこの数字でやれと言われてもやれないでしょうということを言っておることでございまして、私は絶えずそういう主張をいたしております。

園田(康)委員 ありがとうございます。ぜひそういう観点で今後も進めていただきたいというふうに思っております。

 それから、ちょっと幾つかさらにお願いをしておきたいことがあります。

 新予防給付につきまして、これは改正後、介護サービスに係る都道府県が行うサービスのうち、介護予防サービスにつきましては、給付限度額は、大臣告示ということで五十五条にこの算出規定があるわけでございますが、いわば必要サービス量、今の話ではありませんけれども、まず必要サービス量というものをきちっと確保した上でこういった限度額というものを設定していただきたいというふうに思っております。

 そして、引き続き大臣にお伺いをしたいんです。

 ホームヘルプサービスですね、介護予防訪問介護を行う際のガイドライン、これにつきましては、今回どういう観点で、いわゆるケアマネジメントをきちんと行うとなっているわけでございますが、どういう項目をここで加えていくというふうに考えておられるでしょうか、具体的にお示しをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 これは、何回も御答弁申し上げたことでございますけれども、今回導入いたします軽度者に対する新予防給付の基本的な考え方は、本人にできることは可能な限り自分でやっていただくという考え方のもとで、本人の生活能力を引き出すためのサービスを適切に組み合わせ、手助けする場合も、できる限り本人が今持っておられる能力を生かす工夫をしながら行うというものでございまして、これは介護保険の自立支援の考え方を徹底するものでございます。

 したがいまして、ガイドラインにつきましてもその観点で行いますということを今申し上げたわけでございますけれども、介護予防訪問介護につきましても、今申し上げたような観点から、現場において、利用者も含め、専門家がよく話し合って適切なマネジメントを行った上で利用者の自立支援に資するサービスが提供されるよう、内容を見直してまいりたいと考えております。

 すなわち、いろいろ申し上げましたけれども、必要なものは引き続き必ずサービス提供されるということは繰り返し申し上げてきたところでございます。

園田(康)委員 その御答弁は大変、最終的には私にとりましても安心をするわけであります。

 要支援になった方のケアプラン作成に当たりましては、いわば今おっしゃっていただいたさまざまな自立的な観点というものから、どういった項目が加えられるでしょうか。これは具体的にもう考えていらっしゃるでしょうか。

中村政府参考人 新予防給付のケアマネジメントにつきましては、利用者の選択を専門家が支援する、こういう基本的な考え方に立ちまして、御利用者の心身の状況をきちんと把握した上で、生活機能の改善可能性について評価をマネジメントする人たちがする、それから、いつまでにどの程度向上するのかという短期と長期に分けての個別具体的な目標を設定し、御利用者の方の意欲を重視しながら、改善後の地域の予防サービスを利用することも念頭に置いて、また介護保険以外の地域のサービスも組み入れるという観点から、モニタリング、評価についても配慮しながらケアプランの見直しを行う、こういう一連のケアプランの策定作業を考えているところでございます。

園田(康)委員 そうしますと、やはりここは利用者にとりましては一番大切な部分であろうと思うわけでありますけれども、要介護認定において新予防給付の対象者の選定というものが大変大きなポイントになってくる、制度改正においてはポイントになってくるというふうに考えます。

 そこで、介護認定審査会の審査、いわゆる二次判定がここで行われるわけでありますけれども、これによって、要支援者かあるいは要介護者という形でここで振り分けられる、スクリーニングが行われると先ほどから御答弁をいただいておりますけれども、この二次判定の際に、実際に対象者の介護度合いを見ている、やはり私が考えるには主治医、これが一番よくわかっているわけですね。それから、ケアマネジャーさん、このケアマネさんの作成の特記事項というものが重要な指標となるというふうに私は考えておるんですけれども、いかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、認定審査会では、一次判定の上で専門家による二次判定がございますが、それは、コンピューターによる一次判定のほか、主治医の意見書、それから調査票の特記事項、参考指標等が大事になってまいりますので、委員御指摘のとおり、それらの特記事項、主治医意見書が大事になってくると考えております。

園田(康)委員 その際に、参考指標というのを今御答弁いただきましたけれども、これはいわば改善可能性を審査するという点で、参考指標というものを用いて検証するというふうになっているわけですが、これは具体的にどういったものでしょうか。

中村政府参考人 要介護認定調査の調査票の中で、二次判定の際に御利用いただく参考指標というものが幾つかございます。そういう参考指標は今も第二次判定で非常に重要な役割を果たしておりますけれども、今回、新予防給付の際の二次判定で必要になりますので、参考指標につきましても、コンピューターを用いた認知機能や追加項目の結果、そういったことにつきまして参考指標として、改善可能性が審査できるように充実してまいりたいと考えております。

園田(康)委員 ぜひその辺をよろしくお願いしたいと思います。

 そして、今回、改善可能性を掌握する項目の整理の中で追加されたのは、活動の状況における三項目であったわけであります。日中の生活や外出頻度、あるいは家族、住居環境、社会状況などの変化という形でありますけれども。

 この際に、心身の状況については、現行の認定調査項目から変更なしという形で全国の担当者の課長会議の中でお示しをされているわけでございます。私から言わせれば、こういった改善可能性の中においては、やはり心身の状況が安定していること、これが一番重要ではないかというふうに考えているわけでありますけれども、現行のこの七十九項目の形ではやはり私は不十分であると。

 すなわち、今回のこの予防給付あるいは新予防給付の制度改正の中においての一番の重要点というのは、お年寄りといいますか、利用者のいわばやる気だと思うんですね。自発的に、自分たちでこういうふうにしていきたい、ああいうふうにしていきたい、一番最初にも申し上げましたけれども、やはり自分らしさというもの、そして、自分らしく年をとっていきたい、そういうのが観点になければ一番だめだと思うんです。

 したがって、心身の状況というものを現行も見させていただきますと、大変不十分であるというふうに私は思っているわけですけれども、いかがお考えでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘ありました心身の状態が安定しておられるということは非常に大事なところでございまして、私どもも、その点をきちんと把握していく必要があると思っております。

 現在、今御指摘ございましたように、新予防給付の対象者の方を選定するための認定調査方法の見直しについて考えておりますが、ある意味では、これは市町村の方がやっていただくことでございますので、できる限り簡易に対象者を選定できるということも大きな要素になっております。

 そこでいろいろ専門家とも御議論していただいておりますが、今委員から御指摘ございましたように、心身の状況については、既存の七十九項目を活用してさらに精査をしていくとともに、特に、今特記事項とございましたけれども、特記事項につきましては、活動性との関連の深い項目について特記事項に記載していただく、特記事項といっても記載をする様式がございますので、その記載内容の充実を図っていただく、その辺は調査員の方のマニュアルなどできちんとお願いをしていきたい、こういうふうに考えておりまして、御指摘のありました心身の状況の安定性ということについてきちんと把握できるようにしてまいりたいと思っております。

園田(康)委員 時間が参りまして、大臣にも最後予定をしておったものがこれで切れてしまったわけでございますけれども、今後、一番最初に申し上げました観点をぜひ忘れずに、今後の法律、政省令事項も多いということも含めて、今後またさらに自立支援法、障害者の法律にも入っていくわけであります。そういった意味では、ぜひ利用者の立場に立った法改正そして制度の充実というものを図っていただきたいということを最後にお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時四十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山井和則君。

山井委員 これから三十分間、質問をさせていただきます。どうかよろしくお願いをいたします。

 介護保険改正法案の審議も終局に近づいてまいりましたが、冒頭に一つ。

 四月二十二日、福岡地裁において、学生時代の発病により障害者となった原告に対する障害年金不支給処分を取り消し、原告勝訴の判決を言い渡しました。このことで、何としてももう控訴はやめてほしいということを最初にお願いしたいと思います。この判決は、地裁が本人やその御家族の置かれた窮状や切なる願いに対して真摯に耳を傾けたからにほかなりません。

 きょうのこの資料の最後のページに、「原告の親からのお願い」という平川栄一さん、そして不二子さんからのお便りをつけさせていただきましたので、その中で割愛して読ませていただきます。

  四月二十二日、福岡地裁が、学生時代の発病により障害者となった長男の無年金障害者に対する障害年金不支給決定の行政処分を取り消すよう判決を下しましたことを、感無量の気持ちで感謝いたしております。

  息子の発病当時、私どもはいまだ若く、何とか病気を治して人並みの勤めができることを願って、あらゆる努力をいたしました。しかし、その甲斐もむなしく息子の病気は進行し、重い障害者となってしまいました。その間の親の苦しみは筆舌に表せないものがあります。

  しかも、父親の私自身が昨年十一月二日、福岡地裁の結審から十一日目に大腸ガンによる腸閉そくで手術を受けました。第一リンパ節に転移していたため、五年生存率六十%と再発の可能性も低いとは言い切れない状況です。

  もし、高等裁判所に控訴され、さらに最高裁判所まで控訴が続くようなことになれば、果たして私が生きているうちに救済がなされるのか不安です。親亡き後の息子の将来が一番気掛かりです。この訴訟が親としてできる最後の勤めかもしれません。

というふうに、切々とつづっておられます。

 大臣、どうか、このような思いをしっかり受けとめていただいて、これがもし控訴されたら、本当にまたこれから長期間の御苦労を今まで以上に与えてしまうことになるわけです。控訴の断念を切にお願い申し上げます。

 大臣、答弁をお願いいたします。

尾辻国務大臣 去る四月二十二日の福岡地裁の判決は、私どもも重く受けとめておるところでございます。

 これは、今お話しいただきましたように、二十前に病院を受診しておられるその日を障害基礎年金の受給要件である初診日と認定をして、そして、社会保険庁長官が行いましたところの障害基礎年金の不支給決定処分を取り消すというものでございます。

 今後の対応につきましてですが、判決の内容を十分に検討いたしまして、関係機関と協議をして対応してまいります。

山井委員 これはほかの委員からも、参議院でも指摘があっていると思いますが、何としても控訴を断念していただきますように、改めて強くお願いを申し上げます。

 それでは続きまして、介護保険の質問をさせていただきます。

 まず最初に、認知症の予防のことについて質問させていただきたいと思います。

 三月に、平成十六年度老人保健健康等増進事業の認知症予防教室(増田方式)に関する調査研究結果というものが、このグリーンの冊子で出されました。

 それで、今回の審議では筋トレにスポットが当たっていましたが、筋トレ以上に重要であり、効果が明らかなのが認知症予防教室です。そして、これは、脳機能の低下段階において適切なサービスを提供するという脳のリハビリにより脳が活性化され、閉じこもりが減少し、家族以外との交流頻度がふえる効果が上がっています。具体的には、週に一回五カ月の教室参加で、リズム運動、パズル、風船バレー、じゃんけんなどの簡単な運動を楽しみながら、密接なかかわりで濃密なケアを行うものです。

 実は、私も、今から十年以上前からこの教室に行っておりまして、やはり将来、寝たきり防止とともに、こういう痴呆予防というものを、まだまだなかなか大きな課題でありますが、やっていかないとだめだという思いは十年以上前から持っておりました。そんな中で、今回、こういう調査結果も出たわけであります。

 その結果がどうかというと、ミニメンタルステートテストの指標でも、ここの資料、皆さんのところでも一ページ目に出ておりますが、パネルにもつくっておりますが、五二%が改善をしているわけですね、この上で。そして、四八%が変化なしという結果が出ております。そして悪化はゼロであります。

 注目していただきたいのは、筋トレの場合は一六%が悪化しているというデータもあったわけですけれども、これはそういう悪化はないわけですね。もちろん、認知症の予防というのは簡単な話でなくて、エビデンスについてももっともっと詰めていかねばならないと思いますが、先日の高知県で行われました地方公聴会でも、悪化の七割程度がやはり認知症の進行によるという、そういうふうな参考人の方から御指摘もあったわけでありまして、この認知症に対してどう対応していくのかということは非常に大きな、最大のテーマの一つであると言っても過言ではないと思います。

 そういう意味で、この報告書、厚生労働省さんとしても恐らくざっとお目通しかとは思いますが、このことについての見解と、そして、できれば予防通所介護という中でぜひともこういうことをやっていくことが可能なように要望したいと思います。大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、認知症に対してどう対応するか、このことが大変重要な今後の課題であるということは、もう私ども全くそのとおりに考えております。

 そして、認知症に対する対応については、早期発見、早期対応が大変重要である、こういうふうにもまた認識をしておるところでございます。そこで、特に軽度な方々に対する働きかけにより進行を予防できるのではないか、こういうふうに考えまして、これまでもさまざまな取り組みがなされてきたところでございます。

 先生が今御指摘いただきました認知症予防教室につきましても、これはもう御案内のとおりでありまして、厚生労働省として、研究事業を通じて支援をさせていただいてきたところでありまして、こうした取り組みの中から、有効な方法を開発する必要があると考えておるところでございます。

 したがいまして、全体の取り組みの中では、まだ認知症の状態になっていない方も含めた幅広い集団に対して事業を実施する形がふさわしいと言われておりますから、地域支援事業において介護予防事業の一環として実施をすることといたしておるところでございます。

山井委員 こういうことは、何をもって認知症の予防というかという定義とか難しい面もありますが、今回の委員会審議では筋トレという肉体的なリハビリの方が脚光を浴びましたが、やはりこの脳のリハビリ、認知症の予防というのは非常に重要であると思います。

 少し紹介をさせていただきますと、認知症予防教室、そこでは優しさのシャワーという大原則がありまして、一人ずつへの言葉かけやタッチング、褒める、感謝の言葉を言う、落ちこぼれをさせない、一人ずつにスポットを当てる。やはりこういう中で、この資料にもありますように、趣味が多くなり閉じこもりがちが減少したとか、あるいは、閉じこもりがちが四十三人から十六人に減少というような効果も上がってきております。

 何よりも、繰り返しますが、悪化している人はいないんです。やはり、六人に一人は悪化するとか、そういうふうなもの、もちろん筋トレがいい人もおられるでしょうけれども、そういう意味では、筋トレも一つのメニュー、そしてこういう認知症予防教室も一つのメニューとして、ぜひとも近い将来、予防通所介護などで制度化をしていただきたいというふうに思っております。

 私もこういう教室に何回か参加させてもらったこともありますが、やはりお年寄りに楽しんでもらう、仲間ができる、笑ってもらう、そういう意味では本当に人間の本質に非常に合っていると思うんですね、楽しみながらできるということで。ぜひとも、こういう教室を広げていくように、厚生労働省としても御支援をいただきたいと思います。

 それでは次に、この介護保険の改正法案の新予防給付のことをちょっとまた触れていきたいと思いますが、四月六日の質問のときに言いましたように、この介護保険がなかったら私も国会議員にはなっていなかった。この介護問題を十数年私ずっと研究しておりまして、大学でも教えておりまして、そんな中で、介護をよくするために、もっと言えば介護保険をよりよいものにするために、国会議員にならせていただきました。

 そんな中で、やはり今回の審議を通じて、本当にまだまだ疑問に思う点が非常に多いわけです。この国会での議論が余りにも現場からかけ離れてしまっているというふうに思います。

 そこで、少し時間をいただいて、要支援、要介護一のお年寄りの姿を改めてちょっと御説明をさせていただきたいと思います。(写真を示す)

 八十五歳、ひとり暮らしの男性、要介護一。ホームヘルパーさんに週に二回、二時間半ずつ来てもらって、一時間半は一緒にリハビリを兼ねた買い物、一時間は調理、洗濯、掃除などをしてもらっているわけなんですね。

 それで、この方がどうおっしゃっているかというと、脳梗塞で昨年入院し、退院してひとり暮らしをすることになったときは、不安で不安でたまらず、死にたいと思ったこともあった、しかし、ホームヘルパーさんに支えられ、励まされ、元気になった、ホームヘルパーさんの訪問回数が減ったらどうなるんだろうということで非常に不安に思っておられます。

 また、ホームヘルパーを余計に使って税金のむだ遣いの老人もいるかもしれないが、しっかり助かっているお年寄りもいる、まず実態を知ってほしい、十カ月の入院で六十二キロだった体重が四十九キロに減り、私は骨皮筋右衛門になった、筋力もほぼゼロ、もうお葬式の準備までしていた私がここまで顔色がよくなったのもホームヘルパーさんのおかげというふうにおっしゃっておられます。まさに命綱なわけですね。

 この方も、八十歳、要介護一。週に二回、一時間半ずつホームヘルパーさんを受けてひとり暮らしをされている女性の方ですが、この方も、自分でも調理ができる範囲はやっている。でも、握力がなく物が持ち上げられない。野菜をゆがくのは自分でやっている。ホームヘルパーさんと一緒に調理をしている。同行したケアマネジャーさんは、軽度者の家事援助をなくすとかえってお年寄りが重度化するのではないかというふうにおっしゃっておられます。

 三人目、最後のお年寄りの写真を紹介しますと、この方も、八十五歳で要支援でひとり暮らしで、週一回だけホームヘルパーさんがお風呂の掃除と買い物に来てくださっています。週二、三回ホームヘルパーさんに来てほしいが、厚かましいし、頼り過ぎると甘えになるので週一回で我慢しているということをおっしゃっておられます。

 そして、こうおっしゃっているんですね。昨夜ホームヘルパーさんからの電話で、あした話があると言われて昨夜は眠れませんでした、睡眠薬を飲んでも眠れませんでした、もうホームヘルプに来られへんと言われるのかとびくびくした、私はこのホームヘルパーさんに死に水をとってもらうことにしているというふうにおっしゃっているわけであります。

 先日、尾辻大臣も現場に行っていただいたわけなんですけれども、やはり今、現場のお年寄りは、今回の改正で家事援助がカットされるのではないか、今までのホームヘルパーが利用できなくなるのではないかということで非常に不安に思っておられます。詳しくは後ほど、確認答弁で横路議員がやってくださると思いますが、こういう本当に今不安に思っている高齢者の軽度の方々に、大臣にぜひとも、大丈夫ですよという言葉をかけていただきたいと思います。いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 先日も申し上げましたけれども、先生のお勧めもございまして、私も現場を見せていただきました。そのときに感じましたのは、今先生お述べになりましたように、利用しておられる方とヘルパーさんとの間の大変な信頼関係といいましょうか、人間的なきずなができているなということは感じました。これは、今先生お話しのとおりだと私も感じたということを申し上げるところでございます。

 そして、これも何回か申し上げたように思いますけれども、その現場を見せていただいた帰り際に、みんないましたから、きょう見せていただいたようなこうしたサービスが、今度の改正で、見直しで、まさかカットされるようなことにはならないなと言いましたら、これはもうそんなことには決してなりませんときっちり答えております。

 私が申し上げたいのは、今までそうして適切にお受けになってきた必要なサービスというのが、今度の見直しでカットされるものでは決してありませんということを明確に申し上げておきたいと存じます。

山井委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 余りくどく言ってはなんなんですが、先日、二カ所行かれた、そこのサービスは減らないということですが、くどく言って本当に恐縮なんですが、まさかそこは例外的なところを行かれたというわけではないですよね。代表的なところへ行かれたということですよね。ちょっとだけそこを確認しておきたいと思います。

尾辻国務大臣 正直に言いまして、私も連れていかれたところを見せていただきましたので、そこがどんなところかということを正確に承知しておるわけじゃございませんが、私をそういう例外的なところに連れていって見せたとは思いませんので、ごく標準的なところを見せてくれたんだと思いますし、私も、感じからしても、ごく普通の利用をしておられる方のところにお伺いをしたというふうに思っております。

山井委員 そういう標準的なケースではそれほどカットはされないというふうに理解をしたいと思います。

 法案審議も大詰めに近づいてきましたが、私はやはり何点か非常に気になることがあるんですね。

 一つは、今も、なぜわざわざこんな写真を前回に続いて委員会で出させていただいたのかというと、私も十五年間ぐらい老人ホームで実習したり、デイサービスセンターで実習したり、ホームヘルパーさんと一緒に在宅のお年寄りの家を回ったりして、老人福祉のために議員にもなったわけなんですけれども、そこで感じているのは、軽度の、要支援、要介護一の高齢者であれ、非常にか弱いということなんですね。そういうホームヘルパーさんが減ることによって、先日も水島議員から話がありましたが、ホームヘルパーさんが減るかもしれない、そういうことを聞いただけで、もうそのショックで症状が悪化してしまう人もいるかもしれない、そういう状況であります。

 私も、議員になった一つの引き金というのは、あるお年寄りがこういうのをもっとよくしてほしいということを私に言われたのが一つのきっかけでありまして、私もそのおばあさんとの出会いが大きかったので、当選して二日後にそのお年寄りのところに電話をしましたら、残念ながら電話はつながりませんで、私が当選する少し前にそのお年寄りは亡くなってしまわれていたんですよね。

 なぜ亡くなられたのかなと思ってホームヘルパーさんに聞いてみたら、少し前に、ホームヘルパーさんが制度の改正によってかわることになったと。そうしたら、結局、何年間か一緒だったホームヘルパーさんがかわるだけでも、もう結構です、介護してくれていた夫も先に天国に行ったから、ホームヘルパーさんがかわるのを機に、私ももうこれ以上生きている気力がありませんと言って食事を拒否して、それから一週間後に亡くなってしまわれたということなんですね。それぐらいひとり暮らしのお年寄りというのは不安で不安で、やはりホームヘルパーさんが命綱になっているという面があるわけなんです。ぜひとも、そういうところ、慎重に対応していただきたいと思います。

 私は、今回の法改正でおかしいと思うのは、法律の中に高齢者の尊厳と書き込みながら、大臣も先日からおっしゃっておられましたが、家事援助をたくさん受けると廃用性症候群になるとか、何か逆にお年寄りの尊厳に反するような考え方が入っているんではないかというふうに思うわけです。やはり、こういう、筋トレをやらないと廃用性症候群になりかねないよと言わんばかりの趣旨というのは、私はおかしいと思うんです。

 大臣、私は、こういう、弱ったお年寄りを安易に廃用性症候群という非常に失礼な名前で呼ぶということは、高齢者の尊厳というものを書き入れた今回の法改正に矛盾している、ふさわしくないと思うんですが、いかがですか。弱ったお年寄りを安易に廃用性症候群と呼ぶということはやはりやめるというか名前を変える、そういうことを、大臣、高齢者の尊厳というのならば決断をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 この法案の審議が始まりまして、事務方といろいろなやりとりが始まりましたときに、率直に申し上げて、この言葉、まずいなと思う言葉が幾つかございました。そういう言葉については、これはかえようといって、あるいはもうこの言葉は使わないようにしようといって、かえたものもございます。

 ただ、今の言葉でいいますと、学術的に使われてきているとかいろいろ言うものですから、何かかえられる言葉があるのかなと思いながら今日に至ってしまいました。そして、せめてもう自分では使わないようにしよう、こういうふうに思っておるところでございます。

 くどくど申し上げておりますけれども、今度のことで私が反省しましたことの一つは、何かそのことにかかわり合っていると、ついつい、違和感がなくというか、もう惰性でそうした言葉を使ってしまうときがあるなと。そういうことについて私どもは絶えず気をつけなければそういう言葉を使ってしまうということも感じたところであります。

 したがいまして、ふさわしくない言葉、本当にお年寄りの皆さんの尊厳を損なうような言葉遣いというのは厳に慎むようにしたいと思いますし、今日まで惰性で使っていたような言葉、とにかく一つずつかえていく必要があるというふうに感じておるところでございます。

山井委員 私は、これは一つの言葉の問題じゃなくて、この法改正の、何か象徴しているような気がするわけなんですね。

 それともう一つ、私はやはりおかしいと思うのは、繰り返し厚生労働省さんは、訪問介護などをたくさん利用し過ぎるとそれこそ廃用性症候群になってお年寄りの症状が悪化すると言わんばかりの主張をしてこられました。私、この法改正で本当に納得いかないのが、現場を支えておられるホームヘルパーさん、ケアマネジャーさんあるいは老人ホームの職員さん、その方々に対する感謝の念、ねぎらい、激励という気持ちがこの法改正から感じられないんですね。

 どういうことかというと、訪問介護の利用し過ぎでお年寄りは廃用性症候群になっちゃった、そういうことを厚生労働省さんから言われると現場のホームヘルパーはどう感じるのか。そして、今回の法改正も、ケアマネジャーさんに任せておいたら不適切なケアプランをたくさんつくるから市町村がタッチしますと。確かにそういう例もあるでしょう。

 しかし、そういうことを言う前に、ケアマネジャーさんの独立性も担保されていない、中立性も担保されていない、また少ない介護報酬で、介護報酬、ケアマネジャーさんはマネーマネジャーとかと言われながらも、本当に、バーンアウトして、燃え尽きて、倒れてしまった方も私の知り合いのケアマネジャーさんにもおられます。過労の方、そして多くの方が、もうケアマネジャーをやめたいとおっしゃっている方もおられるわけですね。そういう苦しい苦しい中でケアマネジャーさんが頑張ってくださっているということに対する感謝とねぎらいの言葉もなく、ケアマネのプランは不適切なものが多いから法改正するんだと。やはりそういうところは私はちょっと違うんではないかというふうに思います。

 そこで、一つお願いと要望ですが、今までからこの審議の中でも、訪問介護をたくさん利用すると廃用性症候群になったり症状が悪化すると。確かにごく一部そういうケースもあるかもしれませんが、やはりそういうことは大々的に厚生労働省が言うべきことではないと私は思うんですね。

 その前に、繰り返しになりますが、ホームヘルパーさんが、あるいは介護職員の方が、ケアマネの方が、過去五年間最前線で、十分とは言えない労働条件の中で、雨の日でも風の日もお年寄りのために献身的にやってくださっているから、五年間で介護保険に対する評価もここまで上がってきました、ありがとうございます、しかし多少制度はいじらねばならないということにならないと、私は話の順序が逆なんじゃないかというふうに思うんです。

 今回の法改正でも、要支援の方や要介護一の方というのはほとんど文句なんか言いに来られません。あるいはホームヘルパーさんやケアマネジャーの方もほとんど、この法改正に対して文句を言う、そういう機会も与えられていないんですね。

 そこで、大臣、どうでしょうか、訪問介護の使い過ぎが廃用性症候群をつくるとか、やはりそういうふうなことというのは誤解を招く発言であった、基本的には多くのホームヘルパーさんのおかげでお年寄りが幸せに、こうやって継続的に在宅生活を過ごせているんだ、そのことに対して、厚生労働省を代表して、大臣としても非常に感謝して、労働条件をよくするために頑張りますということを一言言っていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 お言葉を返すつもりは全くありません。

 ただ、先日、これも申し上げておりますけれども、ホームヘルパーの皆さん方ともいろいろなお話をさせていただきたいと思いまして、何人かの方に大臣室に来ていただいて、いろいろなお話を伺いました。そのときもやはり、今、一部の皆さん、一部のケースというべきだと思いますが、そうしたことがあるという事例については、またそれぞれに皆さんが言ってもおられました。

 厚生労働省といいますか、私どもとしては、やはりそういうおしかりの部分、ここがまずいぞと言われることについてはずしんとくるわけであります。ですから、その言われていること、まずいと言われておしかりを受けることがどうしても頭の中にあるものですから、すぐそのことが口に出てしまうということ。申し上げましたように、決してお言葉を返すつもりもありませんし、言いわけをするつもりもありませんが、御理解いただければありがたいと思ってつい申し上げたところでございます。

 しかし、先日も、先生との間でも大部分か一部かというような議論もいたしましたけれども、多くの皆さんに頑張ってきていただいたおかげで、五年間で介護保険という私どもが初めて導入した制度がここまで定着をした。これはもう本当にありがたいことだと思っていまして、その影というよりももう主役として、ケアマネジャーの皆さん、ホームヘルパーの皆さんが一番現場で頑張っていただいてきた。そのことを否定するつもりも全くありませんし、もうそのとおりだと思っておりますので、改めて、皆さんのおかげで介護保険が五年間ここまで定着をしましたという御礼は申し上げたいと存じます。

山井委員 私の質問時間も本当にもう残すところあと数分となりましたが、そういう意味では、私は、こういう老人福祉をライフワークとする人間として悔しいという思いもあります。

 やはり、反論することもできないホームヘルパーさんがこうやって廃用性症候群をつくったと批判され、あるホームヘルパーさんは、私たちはそんな極悪非道なことをやったんですかということをおっしゃっていられました。また、ケアマネジャーさんも、本当にケアマネジャーさんをやると家の帰りが遅くなって家庭が崩壊するとまで言われながら、歯を食いしばってやりながらも、国会審議の中ではケアマネには任せられない、不適正なケースが多いと。やはり私は、そういう、お年寄りの幸せのために、日夜、三百六十五日、本当に献身的に働いておられる方々のことを思うと、何か今回の国会審議というのは非常に悔しいという気がします。

 なぜ、この委員会審議がこれだけ混乱したか。私は、やはり厚生労働省さんの持っていき方はおかしかったと思います。

 私だったらこう言うというのをちょっと考えてきました。

 五年間、現場の方々のおかげ、市町村の皆さんのおかげ、また利用者の理解と協力があって、ここまで介護保険は定着してきた。しかし、給付が予想以上に伸びて、このままでは持続可能性が危うい。重度の方は切りにくいので、軽度の人を少しだけカットさせていただきたい。できるだけ悪影響が出ないようにするので、何とか協力してもらえないか。また、すべての人ではないが一部の人には筋トレも効果があるので、それも新たなメニューに加えます。ここまで介護保険が評価をされているのは、安い賃金、不安定な労働条件の中で、お年寄りのために献身的に働いてくださっているホームヘルパーさんや介護職員さん、ケアマネさんのおかげです。また、これからもサービスカットで御苦労をかける面もあるが、どうか何とかよろしくお願い申し上げます。最前線で頑張っていただいている皆さんは国の宝です。

 やはり、こういうことを言って法案審議をお願いするのが私は筋だと思いますが、そうではなくて、家事援助よりも筋トレをやった方がお年寄りは元気になるんですとか、そういうふうなことを言い出すから、本当なのかということで、この審議もその方向に流れてしまった面もあると思います。そういう意味では、私たち民主党も、正直に言ってくださったら正直に私たちもこたえるわけなんですよね。

 そういう意味では、この審議が、残念ながら、そういう入り口の筋トレや新予防給付に集中したことを、私も責任の一端はあるのかもしれません、非常に残念に思っていますし、本音を言えば、もう一回時間を返してほしい。ほかにもやらないとだめな審議の問題はいっぱいあるわけですよ、積もり積もった五年間の介護保険の問題が。

 ところが、やはり厚生労働省さんがここ半年間、わかっていられるでしょう、テレビを見ても新聞を見ても、筋トレマシンでお年寄りが元気になったという報道をあれだけはんらんさせて、やはりそういう問題点はあったと思うんです。

 最後に、こんなことを言ってもなんですけれども、尾辻大臣から、今回の改正によってお年寄りを幸せにするんだ、そのことの最後の決意を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。

尾辻国務大臣 私どもが申し上げたかったこと、気持ちとして持っておったことを最後に先生にお述べいただきました。私どもの言葉が足らなかったといいますか、あるいは説明がまずかったといいますか、そうしたことでもし皆さんに誤解を与えたとすれば、これはおわびをするものでございます。

 最後に決意を述べろということでございましたけれども、私どもは、介護保険の中でそうしなきゃならぬと思っています、お年寄りの皆さんの尊厳を守るということ、そして、お幸せに生きていっていただくというそのことについて全力を傾けますということを改めて申し上げて、答弁にさせていただきます。

山井委員 時間が来ましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長青木豊君、職業安定局長青木功君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 次に、五島正規君。

五島委員 大変時間のかかってまいりましたこの介護保険改正に関する質疑も、きょうで三十六時間という大変な時間を費やしてまいりました。そして、お互い、この議論の中において非常にいろいろな思いがございます。それを今、山井議員が非常に率直に語ってくれたと思っています。私も実は、きょう最後の質疑の中で同じことを申し上げたいと思っておりました。

 厚生労働省は今回法案を出すに当たりまして、政省令事項が非常に多い法案でした。それだけに大変な不安を国民は持った。それはやむを得ないことだと思います。問題は、厚生労働省がさまざまな政策を新たにやっていくときに、もう少しだれが考えても常識的なところで物事の判断をしたらどうなのか。

 例えば、一番最初に出されてきたのは、家事サービスが多いから高齢者の介護度が悪化する。あほ言いなさんなと。そんなもの、家事サービスがふえたから悪化度がふえるということはまずあり得ない。

 今度は、筋トレ。筋トレという言葉自身が最近の流行語になっていますが、高齢者に対して筋肉トレーニングをする場合は、間違いなく有酸素運動です。そういう意味においては、器械を使う、エアロビクスを含めてそういう運動をすることが、一定の条件においてそれはお年寄りの状態を改善するでしょう。しかしながら、要介護になっているお年寄りの問題というのは、それが最大の課題かどうかという検討はどうだったのか。

 例えば、そのお年寄りに基礎疾患の管理ができていない場合、あるいは認知症がある場合、あるいは九十を超える高齢だった場合、そういうふうなそれぞれのリスクファクター、それを超すほどの効果が筋トレにあると。ばかなことを言いなさんなと。そんなことはやらなくたってわかる話。一体どういう範囲においてそういうものが必要なのか。そういう解析が全く出ない。

 それどころか、やはり大事なことは、個々のお年寄りに対して一定の効果を判定するときに、医療ではありません、まして運動選手をつくるわけではありません。そうだとすれば、要介護度というのは一体何なのか。

 これは、お年寄りが年をとることによって、あるいは障害を持つことによって、人としての尊厳を維持するために、第三者がお手伝いをすることによって人としての尊厳を維持させる、その目標のもとでどれだけサービスが必要かということを出しているのがこの要介護度。そうだとすれば、要介護度が進行するケース、二年間なら二年間、進行するケースについては何が原因で介護度が悪化したか、そういう調査をされたらどうですか。一つも難しくありません。

 例えば、ヘルパーさんやケアマネジャーさんに、二年間たって介護度改定をして、悪化していると思われる人について、その悪化原因について書きとめていただく。ほとんどのケアマネさんは書いておられます。それを集計すれば、何のことはない、何が原因で介護度が悪化しているのか、何が原因で改善したのか、わかるわけですね。そういうことをしないままに、何かある日突然筋トレという言葉だけが出てくる。

 恐らく、今回の介護保険の改正をやらざるを得ない理由については、今山井議員が指摘したとおりだったと思います。ところが、そこを避けて、そういうふうな思いつきのような、議論を最初から聞いて、僕はあほくさい議論をしているなと正直思っていました。なぜ家事サービスがあれば介護度が悪化する、そんな常識外れなことを言っておったら、なぜそんなものが通ってくるんだろうかと。これが、施設に入れておれば介護度が悪化するというデータがあるんですが、そうであればまだよくわかる。そうではなしに、例えばそのお年寄りが閉じこもりである、ヘルパーさんが行って、その人を外へ連れ出すことに成功した、それで改善したというのならまだわかる。そういうことの分析も何もしないままの議論が始まったということが、私は、この委員会審議の中でむだな時間を使ってきた最大の原因であったと思います。

 この点については、恐らく、大臣も副大臣も、あるいは厚生省の幹部の皆さん方もわかった上での話だろうと思いますから、時間の都合がありますので、返事は要りません。しかし、そのことについては、最後に当たって強く申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、こうした問題との関連の中で、厚生省がいろいろ出されてきましたデータがございましたが、大変興味のあるデータを手に入れることができました。

 これは、福岡県八十二市町村を対象として、国保と介護保険のデータすべてを結合させた検討のデータでございます。すなわち、一九九九年に三百日以上長期入院していた患者さんが介護保険導入後どういうふうに変わってきたのかということを、一つはまとめています。それで見ますと、九九年に三百日以上入院していた方々は、介護保険ができましてから四つのところに移っています。一つは特別養護老人ホーム、一つは老健施設、そして一つは介護療養型、一つは医療療養型、それぞれ移っておられますが、トータルを見てみますと、それぞれの施設の間の移動はあるけれども、ほとんどはその方々は在宅には戻っていないまま経過している。これは、介護保険ができて、在宅をと進めようとしたということが目的でした、しかし、そこについては、少なくても福岡県では成功していないという一つの例ではないかというふうに思います。

 もう一つは、同じくこの方々について、それぞれの施設について、その施設に入ってからの死亡について、いわゆる標準化死亡率といいますが、死亡について計算しています。そうしますと、介護保険導入後も、そうではない対照群と比較してみて、死亡に関しては、ほとんどが施設に入所されてもされていなくても差がないという数字を出された資料が入ってきています。

 その辺から見ると、介護保険の問題というものを、今回盛んにエビデンスとかなんとかいう形で医療と一体になったような話をしておられましたけれども、やはりメジャーが違うんじゃないか。介護保険というのは、人としての尊厳を自力では維持できなくなった人に対して、第三者がどの程度サービスを提供することによって維持できるか、そこのところを果たすメジャーが必要なのを、それをあえて目をつぶって議論してきたということではないだろうかと、この資料からも言えると思います。

 そして、第三の問題として、詳しいことは申しませんが、同じデータの中から、例えば今施設に入っているお年寄りは非常にサービスの質が悪いというふうに受け取られたら困ります。というのは、三施設とも介護五の状態になったお年寄り、その人の平均余命がどれぐらいあるかというのもこれは計算しています。そうしますと、要介護五の段階でも、男性の七十歳で平均余命は三・四年、八十歳で二・四年、九十歳では一・六年でした。しかし、女性の場合は、介護五でも七十歳の平均余命は七・一年、八十歳では四・五年、九十歳でも三・二年。これは大方倍の違いが出ます。男と女とによってもそういうふうな生命力の強さといいますか、そういうふうなものが違ってくる。

 基本的に大きな問題は、施設がどうなのかということを超えて、若年時代からの健康度の問題や男女の性差というものが、要介護の状態になっても、生命という問題で見るならば出てきている。そういうふうなものを前提とした議論をもう一回構築する必要があるのではないかというふうに私は思います。

 そのために大事なことは、介護予防という言葉を盛んに使われました。そして、それに対して、我が党の議員の中からも、予算の関係も含めて大変反発もございます。問題は、予防の中に介護予防を入れていくということは、介護状態になることを防止するということは当たり前だろうと私は思っています。しかし、それが、高齢期になってきて要介護状態になってからの話ではない。そのためには、現在の四十代あるいは三十代からのそうした予防の体制をどうつくるのか、そこのところが大事なんだろうというふうに思います。

 この辺もかつて私も申し上げましたので、後ほど一括して答弁をいただきたいと思いますが、どうお考えかをぜひ後ほどお話しいただきたいと思います。

 そうした私の見解のもとで申し上げるとするならば、今、何が一番高齢期になった場合に大きな問題かといいますと、施設、在宅の人たちに対して、さまざまな基礎疾患を持っておられます、高血圧あるいは脳血管障害、あるいは糖尿病、そうした生活習慣病が加齢によって大変問題になっているケースがふえてきています。こうした基礎疾患のコントロールができていないと、筋トレやあるいは家事サービスがあったとしても、そんなものを超えてリスクファクターが大きいと私は思うわけですが、そうしたことはどうするのかということが第一点。

 二つ目の問題として、認知症の問題とうつ病の問題です。

 認知症の問題は非常に深刻になってきています。一体、認知症の早期段階はどのような形で発見させるように厚生労働省はガイドラインや何かをおつくりになっているのか、また、それは実際どういうふうになっているのか。

 もっと深刻な問題はうつの問題です。人口の五%がうつにかかると言われています。高齢期になっても非常にふえています、高齢期のうつがふえてきています。これに対しては、精神科の医師がタッチすればいいという話ではありません。そうかといって、今開業医が早期のうつの状態をきちっと診断できるのかどうか。もし診断できれば、今の時代、薬物療法を含めてかなり対応は楽になります。しかし、それは不可能、現実にはなっていない。

 そうすると、この問題はどういうふうに対応しようとしているのか。その辺の問題をまずきちっと整理することから介護の悪化度あるいは改善の問題というのは議論に入るというのが私は筋だと思うわけですが、そのあたりについて、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。

中村政府参考人 委員の方から大変広範な御指摘とそれから高齢期の問題としてとりわけ二つ、基礎疾患のコントロールの問題、それから認知症の問題、うつの問題等の御指摘がございましたので、お答えをさせていただきたいと思います。

 委員の方からもデータに基づきましてお話がございましたが、大変重度の方がふえております。要介護度五につきましても、男性が約十万人、女性が約三十万人ということで、男女比も大きい。また、要介護五の方のほぼ半数、四八%が八十五歳以上の高齢者であるというような問題、それから、要介護度五の方々をとりますと、原因疾患の四三%が脳血管疾患でありましたり、認知症の方が一二%おられるということで、そういうさまざまな原因疾患を持っておられる。

 また、委員御指摘のとおり、糖尿病等さまざまな基礎疾患があり、こういった方々、要介護五ですから、要介護度そのものの重度化ということはスケール的にはありませんが、実際問題としてはさらに重度化するというようなことは、こういう基礎疾患の悪化、認知症の進行、そういったことがあるのではないかと認識いたしております。

 そういった中で、介護予防の御指摘がございましたけれども、高齢期からの話ではなく、四十代あるいは三十代からの取り組みが必要ではないか。これは、前回委員がこの委員会で御質問に立たれたときもそういう御指摘がございました。

 私ども、今回の介護保険法の中で、六十五歳以上の介護予防対策については御提案させていただいておりますが、現在、再三御答弁申し上げておりますように、四十代からやっております老人保健事業の見直しにつきましては、十八年度の医療制度改革の中で省として再度御提示させていただきたいと思っております。その健康づくりの問題、健康日本21も含めまして、四十歳からでよいのか、さらに若齢期からの取り組みといったことなどについても、あわせて十八年度改革の中で、私も老人保健事業担当の局長でございますし、同僚の皆さんと協議し、成案を得て、ぜひまたこの点については省として御提案をさせていただきたいというふうに考えております。

 また、高齢期の問題として御指摘のありました基礎疾患のコントロールの問題、これは、介護保険の立場から申し上げますと、介護保険の中でどれだけ医療サービスを提供するのか、介護保険制度の中で提供するのか、あるいは医療保険との連携をもっときちんとするかという問題であろうと考えており、ここのところは、私ども、十八年四月の介護報酬、診療報酬改定の中で、委員からの宿題として、さらにこの点について前進させていただきたい、こういうふうに考えております。

 うつの問題につきましては、担当部長が来ておりますので、そちらの方に答弁を譲らせていただきます。

 認知症対策につきましては、今回法律の中で痴呆という名称を認知症に改めさせていただきましたが、これは、何も名称を変えるということで事足れりということではなくて、認知症対策、これからまさにサブスタンス、実質の面でも進める必要があると考えておりまして、そういう一環として名前も変えさせていただきましたので、本年を認知症を知る一年として位置づけ、国民の皆様方にもキャンペーンもさせていただきますが、委員御指摘の、地域で認知症の初期症状をチェックできるような体制づくりもしていく必要がある。

 それから、非常に迂遠な話と考えられるかもしれませんが、そのキャンペーンを通じまして、実は十年がかりで、認知症になっても地域の中で安心して暮らせる地域づくりを十年間かけて実現していきたい。そういう中で、もちろん十年たたなければできないということではなく、認知症の早期発見や早期診断につきましては、地域の医師会あるいは専門医、そういった方々が協力し合って今よりもずっと進んだシステムになるよう取り組みを進めてまいりたい、こういうふうに考えております。

塩田政府参考人 高齢期のうつの問題は大変重要な問題だと考えております。高齢者の自殺の理由のかなりの部分をうつが占めているということでございます。高齢者のうつの問題、原因はいろいろあると思います。家庭内での役割がなくなってきたこととか、地域社会での役割がなくなってくるとか、いろいろな事情があると思いますが、その一方で、高齢者自身が訴えをされないとか、身体症状の中に隠れていてなかなかうつが発見しにくいとか、いろいろな問題があります。

 いずれにしても、早期に発見して早期にサポートするということが大事であろうと思っております。精神科医がいらっしゃれば精神科医が対応できると思いますが、普通の地域では、必ずしも精神科医がいらっしゃいませんので、一般のかかりつけ医の方とか保健師の方とか福祉の関係者とか、いろいろな人が早く気づいて早くサポートをすることが大事だろうと思っております。そういう意味で、医師の方々あるいはいろいろな関係者にうつのことを正しく理解してもらうということが大変大事であろうと思っております。厚生労働省で昨年うつの対応マニュアルというのをつくりましたが、こういうものの普及も図ってまいりたいと思っております。

 一方で、全国各地で先進的な取り組みの事例があると聞いております。秋田県の取り組みでありますとか青森県の八戸市とか六戸町でいろいろな関係者が一堂に会してうつ対策をして効果を上げているということでございます。総務省では、そういう事例の調査をして、全国にいい事例が普及するように調査をされるということでありますので、厚生労働省もそういった調査に協力しまして、いいうつ対策の取り組みが全国各地に広がりますように努力したいと思っております。

五島委員 先ほど中村局長のお話ありましたけれども、介護五の重度の障害を持ったお年寄り、女性は三十万、男性十万というお話なんですが、これは、七十歳、八十歳、九十歳、いずれの年齢をとってみてもそういう要介護五になってからの平均余命が女性は倍はあるわけですね。したがって、個別のそういう要介護五になる人の数にその差があるわけではなくて、結局男の方は、要介護五になった場合、女性の半分で死ぬから数が少ないというだけの話であるということは注意していただきたい。すなわち、保険給付の上でいえば、そういう現状が問題になりますが、全体的なそういう介護の体制を考えた場合、そのあたりもぜひ置いておいていただきたいと思います。

 そしてもう一つ、認知症の問題ですが、脳血管性障害、痴呆の場合は別として、いわゆる認知症、アルツハイマーの問題、この点については、これは老健局長にお伺いするのは筋違いのような感じもするんですが、最近は随分とアルツハイマーに対する治療薬とそれからアルツハイマーに対するワクチン療法、これはアミロイドの沈着を防止するためのあれですが、随分と今取りざたされています。このアミロイド沈着に対するワクチン療法というのは世界でも非常に注目されている。これは、一日も早く日本においてもこの問題について対策を考えていただきたい。それができるならば、少なくてもこの認知症については少しは対応策が持てる。今のように何の手段もないという状況から変わってきます。

 しかし、もしそういうことをやるとすれば、ではそれはどこがするかといえば、当然医療になるんだろう。だから、介護と医療との区別というのはあるんだ、それを、乗り合いはだめよと言っているところに無理があるのであって、そこのところもぜひ検討していただきたいと思います。

 そして、もう一つ、障害福祉部の方にお願いしたいわけですが、うつの問題につきまして、やはり早期に、重度のうつでずっと若いときからの人は別として、多くの場合は、早期にうつ状態に対応すればかなり改善できる。これを一体どうするんですか。まさかそこのところを、中村さん、これをヘルパーさんに任せてうつの問題が何とかなると思っていないでしょう。開業医に対してどうとおっしゃるけれども、それは非常に大事なことで、ぜひ、早期のうつを開業医の地域のドクターが診られるような対策をとっていただきたいわけです。

 やはり何よりも大事なことは、こうした問題の気安い相談ができる、そういう人材の問題。実は、高齢者に対しても、ケアマネさんとヘルパーさんとだけおれば高齢期のそういう問題が全部解決できるんじゃないんです。僕はやはり、臨床心理といいますか、今医療心理士をつくろうと言っておりますが、そういう方々が地域の中に出てこない限り対応は大変なんだというふうに思うわけなんですけれども、そのあたりはどうでしょうか。

中村政府参考人 先生から御指摘をいただきました点について御報告をさせていただきます。

 まず、アルツハイマーの治療の問題。今、対症療法でございますけれども、薬が出てきているということで、特に早期の場合ですと進行が一年程度遅延するということで、非常に御家族、御本人のためにも有効視されておりますので、そういった意味でも、早期発見、早期診断、早期治療ということが重要なのではないかということで私ども取り組んでいるところでございます。

 アミロイド沈着を除去するワクチンについては、一九九九年に世界的に注目され、アメリカなどで実際に投与されたようですが、五%の患者さんが脳炎様症状を起こしたために今そちらの方の開発はとまっているようでございますけれども、私どもの国立長寿医療センターの方で、経口ワクチン療法についての研究は平成十五年度より実施しているということで、マウスによる実験段階を経て、現在、アフリカミドリザル、霊長類の経口投与の段階まで来ている。世界各国でこのワクチン療法の先陣争いをしているようでございますが、国立長寿医療センターの方でもそういう取り組みがされているということを御報告させていただきたいと思います。

 それから、うつの問題でございますが、先ほど、私どもも、認知症の早期発見、早期対応が重要であるということですけれども、地域で、かかりつけ医の方に認知症についてその役割を果たしていただきたい、かかりつけ医の果たす役割は大きいわけでございますが、すべてのかかりつけ医の方が認知症に対して十分知識や患者さんへの対応を習得していないという状況でございますので、ここのところは、まだ地域的なモデル事業でございますけれども、都道府県の医師会でかかりつけ医の研修をする、それと、認知症サポート医をつくりまして、このサポート医につきましては、国立長寿センターなどで研修受講をしていただいて、地域のかかりつけ医をサポートする、こういう体制をとりたいと思っておりまして、その中で、うつの問題などについても、サポート医は精神科のお医者さんなどを考えておりますので、非常に機能を果たしていただけるのではないかということが第一点。

 介護の問題でもうつの問題は大変重要でございます。介護関係者のためにも、うつに対するマニュアル、予防マニュアルの作成を今専門家にお願いして作成していただいているところでございますので、そういった側面からも、うつ対策について介護の分野でも対応してまいりたいと考えております。

五島委員 介護の分野でもそういうマニュアルを使って知識を持ってもらうというお話なんですが、私は、それはひょっとしたら危険かもわからないと。同じようなうつの状態であったとしても、ある人に対しては、軽く背中を押してあげることによって効果が出る場合もあるし、ある人に対しては、そのことに対して、それが引き金となって、より悪くなる場合もあるということがございます。そういう意味においては、その前に、やはりそうしたプロの方々をもう少しふやしていくということが大事なんだろうというふうに申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間も過ぎましたので、次の問題に進めたいと思います。

 私は、もう一つこの委員会の中で十分議論されていなかった問題がヘルパーさんの問題だと思っています。

 今、全国で約二十六万ぐらいのヘルパーさんがお仕事をされています。今、日本の中で、パートの仕事というとよくコンビニの仕事とヘルパーさんという名前が出てくる。それぐらいパートの人たちの働く職場はヘルパーさんというのが非常に一般的になりました。事実、二十六万のヘルパーさんの中で常用労働者として働いておられる方は二割ぐらいしかおられません。残りの八割はパート労働として働いておられます。

 その中で、大変さまざまなヘルパーさんに対する労働条件の問題等々があるわけですが、介護雇用管理改善計画というのがございます。これは、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律というものが平成四年にでき上がり、そして、えらく時間を置いたものですが、先般また改正された内容ですけれども、その中において、やはり基本的に、この法律を補完するという意味で、介護労働者に対する何らかの労働基準を、その上、パート労働者を前提としてつくるべきではないか、そのように思うわけですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

青木(功)政府参考人 パートで働く介護労働者の方々についての課題でございます。

 既に今回の法案審議の中でも何回か御指摘をいただいておりますけれども、介護分野の雇用の改善というものが必要であるという認識をしております。

 そして、今お触れになりましたように、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律、この第六条に基づきまして、厚生労働大臣が介護雇用管理改善等計画というのをつくります。これは、介護労働者の労働市場の問題から、具体的な雇用管理の改善、能力開発等を含む計画となっております。その中で、今回の介護保険法の改正等を踏まえて見直しをする必要があるわけでありますが、やはり一定の雇用管理の到達目標的なことも含めて検討しなければならないというふうに思っております。

 具体的にどのようになるかというのはこれからの見直しでございますけれども、今の先生の御提案も含めて、到達目標なり目安なりというものを意識した計画になるように検討してまいりたいというふうに考えております。

五島委員 青木局長にお伺いしますが、この法律は、でき上がって十二年たっています。この十二年間において、具体的に数字の上で、この法律があったことによって、介護労働者の雇用管理、あるいは労働条件含めまして、どのような点が改善されてこの法律が機能したと言えるのか、お知らせいただきたいと思います。

青木(功)政府参考人 具体的に統計をということになりますと、抽象的なことになるわけでございますけれども、この法律に基づいて私どもやっている事業といたしましては、介護事業者の方に対する雇用管理改善のための講習会、あるいはサービスインストラクターによる相談援助ということでございまして、こういった形で関係者の理解が深まるというふうなことを期待いたしておるところでございます。

 さらに、制度導入当初は、介護労働に参入する方々を応援しておりまして、この点については、今、手元に初期のころの数字はございませんが、相当数の方々のこの市場への参入に寄与したものというふうに考えております。

五島委員 それがヘルパーさん自身にどれだけ役に立っているかということなんですね。実際問題、今おっしゃいましたように、さまざまな小口の助成制度がございます。

 例えば介護基盤人材確保助成金、これはヘルパーさんを確保するための助成金なんですが、これが一番大きなお金で、約五十億ぐらいの予算。それに対して、平成十六年度で約五十二億の実施、七千八百七十二名を確保されたということになっております。しかし、例えば、労働者の健康診断や何かにも使えるような問題、あるいはヘルパーさんの能力開発、そういうふうな面はどうなっているのかと見てみますと、介護能力開発給付金ございます。これは一億八百万ありますが、昨年といいますか、ことしの二月までに使われたのが千七百万。これで、千七百万で二十六万のヘルパーさんの能力アップのためにどういうふうな使い方をしたのか、ぜひ教えてほしいと思いますが、皮肉になりますので、もういいです。また、介護雇用管理助成金、六千四百万。実施は四千六百万。こんな小口の助成金はあるけれども、実際にこの数字を見た場合、実効性を持っていると思えない。一体、これはどのように変えていかれるつもりなのか。

 そのことを踏まえて、やはり、今の介護労働者のあり方、せっかく法律ができておりながら、この介護労働者のあり方をどうするんだ、雇用をどうするのか。後ほど言いますけれども、介護労働者としての非常に特殊な労働条件もあります。そういうふうなものをどうしていくのか、今のいわゆるパート労働者一般の規制の中で、それでいいのかどうか、再度御答弁お願いします。

青木(功)政府参考人 ただいま委員から御指摘のございました、この介護雇用管理支援の助成の仕組みでありますけれども、ただいま御指摘がありましたように、制度導入当初は、むしろ、この介護労働市場に参入をしていただけるようなところに焦点があったというふうに考えております。

 今後において、この介護労働者の雇用管理改善、非常に重要な課題でありますので、先ほど申し上げました介護の管理改善計画の見直しも含めながら、その中でどういうふうに実際の働く現場の状況を改善していくことができるかという観点に立って見直してまいりたいというふうに思います。

五島委員 その一方で、例えば福祉施設に対する退職金制度ですか、現在、三分の二が国庫補助。それを、この法律ができ上がると事業主が全額負担という話が出ています。私は、そうなったときに、やはりその場における事業所の中で労働者はどう変わるだろうかということを考えて、それに対する手当てをきちっとしていかないといけないんだろうと思います。

 例えば、ことし採用された福祉施設の職員の方、ことしまでずっと入っていた人に対しては引き続き国庫補助がありますので、その方々は、今回若干下がりますけれども、二十五年勤めて八百数十万の退職金が保障される。ところが、来年からはそれは全額事業主が負担しないといけない。あれは割と保険料高いです。それに果たしてどれだけの福祉施設、社会福祉法人がこたえて、引き続き全額払ってくれるんだろうか。払えないところはどうするだろうか。

 去年までの先輩が、全部、退職についての共済制度の中で退職時の退職金が保障されている。来年から採用される人にはそれが全く保障されない。そんなことになってきた場合、私は、職場の中の労務管理はがたがたになってしまうだろう、混乱するのは目に見えている。混乱しても、混乱を避けながらそれをどういうふうにやっていくかとすれば、一番手っ取り早いのは、やはりパートにかえることです。いわゆる基幹職員としてどうしても必要な人を除いては、もう全部パートにかえていく。そういう方向になることは目に見えている。

 この問題は、後ほど確認答弁の中で、横路議員の方からもしていただきますが、中退金の加入をようやく認めていただきまして、そこでそういう状態を少なくとも少しずつ避けるという方向の手当てをしてもらうことになりましたけれども、基本的に、そういう制度を変更する場合、そのことによって職場やあるいはそういうヘルパーさんたちの仕事の内容はどう変わるだろうか、そのことをやはりきちっと想像力を働かせていただきたい。筋トレやったらよくなるというのは、これは想像力と言わずに妄想です。やはり想像力をきちっと働かせていただきたいというふうに思います。

 そこで、大事な点についてまたお伺いします。

 ヘルパーさんのお仕事というのは、何らかの障害を持っているお年寄りを対象にします。そして、非常に身近なところでさまざまなお仕事をされます。あるいは、施設の中でも一緒ですが、そういう意味においては、非常に病気に弱いといいますか抵抗力の落ちたお年寄りを相手にする。また、逆に、そういうお年寄りは、多くの場合、さまざまな疾病にかかりやすい。言いかえれば、介護する人に対して感染を起こしやすい。すなわち、介護を必要とするケースの方も、介護をする人も、非常に健康上のリスクの高い仕事をされている、あるいは健康上のリスクの高いところに置かれている。これはほぼ病院と同じような状態だろうというふうに思います。そこのところはわざわざ確認答弁しなくても御理解いただけると思います。

 とするならば、そこに大量のパートの人が投入されている。パートの人に対して、その方々の健康診断やあるいは危険からの回避という措置、これは全くとられていないんじゃないでしょうか。労安衛法でいうところの一般的な健診だけで果たしていいんだろうか。それもとられていないのではないだろうか。

 先ほどの例で申しますと、そういうふうなヘルパーさんなんかに対するそういう健診の助成はどうなっているのかということに対しては、この介護能力開発給付金、一億八百万円、今のところ千七百万しか使っておりません、このお金をそこに使っても構いませんと。ちょっと待ってください、二十六万のヘルパーさんに対して一億で使って何の健康管理ができるんですか。

 一方で、いわゆる家政婦派遣所の家政婦さんたちに対する健康管理上の介護労働者健康診断助成金制度、これは、介護保険でいうところのヘルパーさんではありません、家政婦さんたちです。これに対しては、平成十五年度でも七千八百万円、補助金が出ています。なぜそちらには七千八百万円、多いことはないですよ、決して多くはないんですが、利用者数でも一万人ぐらいが利用しておられる。

 ところが、現在圧倒的にパートになっているヘルパーさん、しかも、その方々から、患者さんに対する、あるいはお年寄りに対する感染も防止しなければいけない。昨年は、ノロウイルスでそういうような問題が起こりました。そういうふうな予防をしないといけない。あるいは、そういうお年寄りが持っておられる病気に対して、直接喀たんの吸引等々もヘルパーさんがやってもいいということになるとすれば、それからの感染防止も必要です。

 一体、そういうことはどこでどういうふうにやろうとしているのか。今のまま使い捨てみたいな形で、ヘルパーさんをパート労働のまま、パート労働であっても、他のパート労働者と同じように、何らそういう安全面、衛生面の特別な措置をしないということで大丈夫とお考えなのかどうか、御答弁をお願いします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今ホームヘルパーの方々のさまざまな感染防止問題、あるいは安全衛生問題についての御指摘をいただきました。

 委員御指摘のとおり、利用者の方に直接接するサービスをホームヘルパーさんは担っていただいておりますし、それも、お一人の方でなく複数の利用者と接するということでございますので、ヘルパーさん自身を感染の危険から守るという必要もございますし、また、ホームヘルパーさんが感染源とならないようにしていく必要があると思っております。

 介護保険の方の制度では、訪問介護事業者の方にまず衛生管理の基準がございまして、訪問介護員等の清潔の保持、健康状態についての必要な管理を行わなければなりませんし、運営に関する基準でも、訪問介護事業者は、訪問介護員等が感染源になることを予防し、また訪問介護員等を感染の危険から守るため、例えば、使い捨ての手袋等、感染の予防をするための備品等を備えるなどの対策を講じる必要があるということでございまして、私どもがやっておりますのは、こういう基準が守られているかどうか、都道府県による事業者指導監査の際、チェックするべき項目として国から都道府県に周知徹底しているところでございます。

五島委員 老健局は、そういうふうな管理ということでしか物を言わないわけです。

 本当に、そこで働いているヘルパーさんに対する健康上の配慮、あるいはそのヘルパーさんから患者さんに対しての健康上の配慮、そういう今のようなパート労働者であるからということでいいのかどうか、その辺について労働基準局、あるいは、そういうパート労働者としてのヘルパーさんの雇用のありようについて職安局、それぞれどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 労働安全衛生法におきましては、委員が少しお触れになりましたけれども、ヘルパーが短時間労働者である場合には、少なくとも、事業者は、年に一回の健康診断の実施というものが義務づけられているわけであります。この短時間労働者の定義、要件はもちろんございますが、原則そういうことになっているわけであります。

 また、そういう意味で、今、私ども労働基準局といたしましては、そういうことで事業主に対し指導を行っているところでありますので、事業者による健康診断が的確に行われるようにいろいろな機会を通じて周知徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。

 感染症との関係で若干申し上げれば、感染症の多くは発熱だとかせきなどの自覚症状が見られるということでありまして、健康診断を待つまでもなく、早期に医療機関において治療が開始されるのではないかなというふうに思っています。むしろ、先ほど老健局長からもお話がありましたように、感染を未然に防止するための感染防護措置の徹底というのが重要ではないかなと思っております。

青木(功)政府参考人 パート形態の勤務を含む介護労働者の皆様方の職場環境の改善なり仕事の環境の改善というものは極めて重要であります。そして、これは、事業活動として行っている以上は、基本的に事業者の責任であるというふうに私ども考えておりますが、そういった事業者の方々がさまざまな措置を導入しやすいように、どういうふうに応援ができるかということも含めてこれから検討してまいりたいと存じます。

五島委員 労働基準局長にお伺いしますが、直行直帰型の登録ヘルパーさんを含めて、パート労働者は、一体、定期健診をどれだけ受けているんですか。

青木(豊)政府参考人 これは、平成十六年の調査によりますと、先ほど申し上げました定期健康診断の実施率でありますけれども、常勤の人が八六・七%、非常勤の人が七五・四%、登録ヘルパーの人が五四・四%ということでありますが、非常勤、登録ヘルパーについてはこの調査で無回答の割合も高くて、若干そういう面はありますけれども、以上のような調査がございます。

五島委員 だから、現実問題としては、あなたが、労安衛法に基づいて健診をやっているといったって、半数近くの人がやっていないんですよ。そういうふうな状態に現在介護労働者が置かれたまま放置されて、ここできょう議論があったように、家事介護がどうのこうのというふうな話をしているわけです。

 だけれども、人としての尊厳を維持するためにどうしても必要な介護というもの、それをヘルパーさんたちにお願いしている以上は、雇用の関係がどういう状態であろうとも、その人たちが最低限安全で働けるような措置を考えることは当たり前じゃないですか。家政婦さんに対しても手当てしているわけですよ、家政婦紹介所に対しても。それを全くやっていない。

 しかも、一方では麗々しく、何をやっているのかわからないけれども、介護雇用管理改善計画などというふうなものを持ち、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律というようなものを掲げ、それの延長修正もし、だけれども、中身は変わっていない。これじゃ、何をしておったんだと言われても仕方ないと思います。

 こればかりやっていても仕方ありませんので、この点については、私は、この介護保険の審議が終わったとしても、引き続き、皆さん方にどういう状態になっているのか聞き続けていきたいと思っておりますので、お願いします。

 最後になりましたが、私は、九六年、前回の介護保険をつくったときから、本当に衛藤副大臣とは一緒になってつくってまいりました。ちょうどあのとき、確認答弁をつくるために夜遅くまでやっていましたが、それと同じような状態を今回も経験させてもらいました。

 この委員会は、担当は西副大臣ということで、衛藤さんは出てきておられなかったんだけれども、やはりここで私は一つ衛藤さんに申し上げたい。

 あのとき一緒につくった責任からいって、そして、あのときに見直しの規定も入れ、その見直し規定の意味は何だったかおわかりのはずです。それは、そのときそのときの国会の状況、政党内の議論によってそれが曲げられることがあるということは私はよくわかっています。しかし、基本的に、やはりこの介護保険というものは、年齢拡大を達成してお互いのあのときの思いが終了するというものだろうというふうに思うわけなんですが、その辺、どうお考えでしょうか。

衛藤副大臣 創設当時のことは、一緒にずっとやらせていただきましたので。

 平成六年からスタートをさせていただきました。そのときから見ますと、実は予算も、毎年六千億ずつ国庫負担を上げていくということを与党間で決めさせていただきました。現に、我々は社会保障の国庫負担を、十三・四兆の時代、平成六年でありますけれども、この十一年間かけまして二十・二兆まで、ことしの予算でございますけれども、ふやしてまいりました。片っ方で、平均しますと一年間に六千百億というペースで社会保障の拡大を続けてきたわけであります。これは、この国の経済にとりましては大変な予算上の措置だったというように思います。

 その片っ方でまた、少子高齢化の中で、どうしても介護保険制度というような形で、何とか一刻も早く整備しなきゃいけないということでございました。

 そういう中で、五年経過しましたが、大変多くの心配があった中で、皆さん方の御尽力の中で、本当によくここまで定着してくれた、先ほど山井先生からもお話がございましたけれども、私はそういうぐあいに感じる次第でございます。

 当然、このスタートに当たりましては、共生と自立ということをテーマにスタートいたしました。ですから、一定の自己負担、自助努力もお願いしようじゃありませんかと。そして、保険という形で共助の世界に、今までは全部公助、税という世界を、ともに支え合うということで共助の世界を入れるということで、自助、共助、公助という世界にこの介護保険制度というものを持ち込んでやってきたというぐあいに思っているわけであります。

 そんな中で、大変多くの心配がございましたから、スタートに当たりましては、年齢もとりあえず皆さんから御理解いただける四十歳からスタートするしかないであろうと。世界で初めてのような介護保険制度、ドイツではやっておりましたけれども、あくまでも、ある意味では損害保険のような形の保険でありましたから、日本のようにサービスが必ずつくという形の介護保険制度は初めてでありましたから、このスタートに当たりまして、非常に多くの心配をしながらスタートいたしました。

 ですから、保険料をいただく方々につきましては、二十歳という案もありましたけれども、四十歳から、国民的な合意をいただける中からまずスタートして大きく育てる必要があるのではないのかということでありましたので、そういう意味での見直しについて、やはり一刻も早くやらなければいけないのではないのか、多くの方々によって負担をしていただく、二十歳あるいは二十五歳の方々、全日本人によって負担していただくということが必要ではないのかというぐあいに当初から考えておったことは間違いないことでございます。

 そしてまた、まずはお年寄りの介護ということからスタートしながら、医療保険でも、障害者につきましても、あらゆる人の医療についてこれを担うということでありますから、将来は介護保険もあらゆる日本人、国民の皆さんの介護について担えるような制度にしなければいけない。しかし、まずはここからスタートしようということでスタートしてきたというような思いであります。

 そういう意味で、いろいろな議論が今回なされてきましたので、ぜひ、将来に向けたそのような思いがやはりちゃんと介護保険制度の中で実現されるように期待をしているものでございます。

 改めまして、スタートに当たりましては、保険料徴収が市町村で本当にうまくいくんだろうかとか、あるいはサービスがスタートしても追いついていくんだろうか、いわゆる保険あってサービスなしなんということにならないか、あるいは要介護認定が間に合うんだろうかというような数々の心配もしながらスタートしましたが、先ほど山井先生、また五島先生からもお話ございましたように、大勢の方々の努力の中で、いろいろな問題もありますけれども、よくここまで定着してくれたというぐあいに思っている次第でございます。

 お互いにスタート時点からタッチさせていただいたことを、またある意味ではありがたいとも思っている次第です。

 以上であります。

五島委員 もう私の質疑時間は終わりましたので、これで終わりますけれども、やはりこの介護保険の問題というのは、今回の改正があったとしても到達点にはまだまだある。やはり介護という問題、これは、人がこの日本で生きていく上において、地球で生きていく上において必要な人の尊厳を維持するために、本人で無理なところはそれをサービスとして提供して人の尊厳を維持させるんだというところにこの値打ちがある、それは年齢とは関係ないんだという当たり前のことを前提としてこれからも取り組んでいただきたいし、一日も早くこの年齢拡大にも到達していただきたい、そのことをお願いして、質疑を終わります。

鴨下委員長 次に、横路孝弘君。

横路委員 この介護保険法の改正案、この委員会で四月の一日から審議が始まりまして、今日まで大変熱心に審議が行われてきたというように思います。先ほど、山井委員と五島委員から、今回の介護保険法の改正案について、そしてまたこの審議を通じての厚生労働省の対応について、いろいろと思いを述べられましたけれども、私も同感でございます。

 そして、この審議が進むにつれて、介護の現場で不安が広がっていったというように思うんですね。私たちは、そうした人々の不安を取り除いて、そしてできるだけよりよい介護保険制度というのを目指していきたい、このように思っております。住みなれた地域で、自宅で老後を過ごすことができるように、そのための必要なサービスが必要な人にきちんと提供されるということ、それから同時に、制度も途中で破綻してしまったのでは困りますから、持続性のある制度にしていくということもまた大事なことだというように思っております。

 そこで、今日までの審議を踏まえまして、少しでも人々の不安を解消し、よりよき介護保険制度にしていくために、私どもも厚生労働省の皆さんと協議をしてまいりまして、合意をいたしました内容について、この委員会で厚生労働大臣から確認の御答弁をいただきたい、このように思っております。確認を求める事項について一つ一つお尋ねをしていきますので、一つ一つお答えをいただければと思います。

 まず第一に、予防給付の問題、その中の家事援助の問題でございます。

 新予防給付では、家事援助が一律にカットされるのではないか。そしてまた、新要支援一、二のサービス限度額というのは、現行の要支援、要介護一の水準を大幅に下回らないようにすべきではないかと思いますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 今まで御審議をいただきました中から、そして、その中で御指摘、御質問いただいたことについて確認をなさるということでございますので、私も正確を期して答弁をさせていただきたいと存じます。

 まず、ただいまの御質問でございます。

 新予防給付におきましても、家事援助を一律にカットすることはありません。適切なケアマネジメントに基づいて提供される家事援助は認められることでございます。

 具体的には、自力で困難な行為、例えば掃除だとか買い物だとか調理等のことでございますが、そうしたものがあり、それについて、同居家族による支えや地域の支え合い、支援サービスや他の福祉施策などの代替サービスができないケースについては、ケアマネジメントによる個別の判断を経た上で、サービスが提供されます。

 新予防給付は、軽度者の既存サービスのうち、一部の不適正なケースの適正化を目指すものであり、原則として、現在提供されている適正なサービス、すなわち、適正なケアマネジメントに基づいて、独居や要介護同士の夫婦の利用者が行うことができない家事をホームヘルパーが行う家事援助は、今までどおり利用できるものとしてまいります。

 また、新予防給付におけるケアマネジメントにおいては、当該サービスによる心身の状況の変化等について、加齢に伴う機能の変化も含め、適切なアセスメントを行うものとし、その中で必要とされるサービスについては、新予防給付導入後も引き続き相当するサービスを受けられることとしております。

 新たなサービス限度額の設定に当たりましては、国会での御論議を踏まえ、現行の要支援と要介護一の限度額水準の違いを勘案しつつ、費用の効率化など財政的な観点と必要なサービス内容の確保の観点から、適切な水準とすべきものと考えております。

 具体的な水準につきましては、今後、介護給付費分科会における報酬の議論を踏まえ検討してまいりたいと考えますが、その場合も、こうした国会でのただいままでの御議論は同分科会にも報告をさせていただきます。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

横路委員 次に、筋力向上トレーニングについてでございますが、いわゆる筋トレ、これは強制されるのか。あるいはまた、マシンや資格など、筋トレをめぐる新たなビジネスで介護給付費が膨らむのではないか。さらに、筋トレを行う場合には、利用者に対して事故などについての十分なインフォームド・コンセントを行うべきではないかと思いますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 新予防給付のサービスにおきましても、利用者の選択が基本でありまして、強制されることはありません。マシンの利用や有酸素運動等を含む筋力向上を中心とするプランを本人が望まない場合は、それらのプログラムを含まないプランが適切なケアマネジメントに基づいて提供されるものと考えております。

 また、筋力向上トレーニングを受けられない、あるいは受けたくない利用者が介護予防通所介護を利用できるように、介護予防通所介護で提供されるサービスとして、現行の通所介護と同様に筋力向上プログラムが含まれないサービスも提供されるものとしてまいります。

 また、マシンの費用については個別に介護報酬の対象とすることはいたしません。新たな資格制度を創設することも考えておりません。

 さらに、筋力向上のためのメニューを導入する前に、マシンを用いた筋力向上トレーニングの実施方法や効果を持続させるための方策等について、市町村におけるモデル事業や試行の結果を踏まえ、慎重に検討してまいります。

 なお、他のサービスと同様、筋力向上トレーニングの利用者に対しても事前に十分な説明を行い、同意に基づくサービス提供を行ってまいります。

横路委員 介護予防通所介護の指定ということでございますが、これに筋力向上トレーニングマシンの設置というものを条件とするのかどうか。

尾辻国務大臣 筋力向上トレーニングマシンの設置を介護予防通所介護の指定要件とすることは考えておりません。

横路委員 次に、介護予防サービスの提供期間でございますが、介護予防の各サービス、例えば訪問入浴介護とか通所介護などにおきまして、「厚生労働省令に定める期間にわたり」というようにあるわけでございますが、その意味は一体何なのか。サービス提供を停止する口実あるいはきっかけに使われることはないのか、こういう心配がございますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 御指摘の規定は、生活機能の維持または向上のためには、個々の利用者の状態像に応じた適切なサービスが提供されているかどうかを定期的に評価いたし、必要に応じプランの見直しを行うことが必要であることから設けたものでございます。

 当該サービス期間が終了いたしましても、引き続き当該サービスが必要な場合には、当然に新たな提供期間が設定されて引き続きサービスを提供すべきものでございまして、その趣旨は保険者等に徹底してまいります。

横路委員 次に、これもいろいろ議論になりました施設給付についてでございますが、特に居住費、食費についてお尋ねをいたします。

 施設に入っている方の居住費や食費を保険外にする場合に、第三段階、いわゆる年金が八十万を超えて二百六十六万円以下の人ですが、このうち、所得の低い層にとりましては、負担額が重く、そのために手元にお金が少額になってしまう。また、残された配偶者の在宅の生活が困難になるということも生じるわけでございます。さらに、個室には入れなくなるのではないか、こういった不安もあります。

 また、税制の改正、高齢者の非課税限度額の見直しに伴いまして、十八年度以降は、従来非課税であった世帯が課税となって、保険料だけでなくて利用料が急増するのではないか。

 こうしたケースについて、施設入所が困難とならないように配慮すべきではないかと考えますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 低所得者、第一から第三段階の方々でありますけれども、これらの方々につきましては、入所者の負担が過重とならないよう、負担上限額を設定して補足給付を行うことといたしておるところでございます。

 こうした仕組みにあわせて、三点申し上げます。

 まず一点は、新三段階のうち、所得の低い層の方や、十八年度から税制改正により利用料が急増する層の方については、現行の社会福祉法人による入所者負担軽減措置の運用を拡充することにより、きめ細かな対応を行ってまいります。

 二点目でございます。

 利用料のみならず、保険料につきましても、税制改正の趣旨を踏まえまして、激変緩和措置を講じてまいります。

 三点目でございます。

 保険外負担につきましては、改正後の実態を把握しつつ、必要があれば適切な是正を行っていくことといたしたいと考えております。

 なお、社会福祉法人による減免措置の拡充につきましては、収入要件を百五十万円に引き上げる方向で検討をいたしたいと存じます。

横路委員 次に、保険料段階が新四段階以上であっても、高齢夫婦二人暮らしで一方が個室やユニットに入った場合には、残された配偶者が在宅で生活が困難となる場合がございます。こうした場合への対応はどのようになさるのでしょうか。

尾辻国務大臣 御指摘のケースで、残されました配偶者の収入、資産が一定額以下となりますような場合には、当該世帯は新三段階とみなして、特定入所者介護サービス費を適用する方向で、運用面での対応を図ることといたしたいと存じております。

横路委員 次に、高額の介護サービス費でございますが、ホテルコストの導入は十月からとされているわけでございます。利用者負担の軽減を図るために、新第二段階についての高額介護サービス費の上限の引き下げも早急に行うべきではないかというように思いますが、いかがでございましょうか。

尾辻国務大臣 高額介護サービス費の上限の見直しにつきましては、施設サービス、在宅サービスともに、十月から施行することといたしたいと考えております。

横路委員 次に、医療療養病床の居住費用でございますが、療養病床のうち介護保険適用の病床は居住費、食費が保険外となりますけれども、医療保険適用の病床についてはどのような対応を考えておられるのでしょうか。

尾辻国務大臣 医療保険適用の療養病床の居住費、食費のあり方につきましては、平成十八年の医療保険制度改革の中で検討をしてまいります。

横路委員 次に、介護療養病床における施設・設備基準の経過措置の問題でございますが、介護療養病床については、病床面積や食堂などの施設・設備基準について経過措置が講じられておりますけれども、入所者の療養環境の改善を図る観点から、廃止すべきではないかというように思いますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 介護療養病床の施設設備の経過措置につきましては、昨年七月の介護保険部会報告におきまして、その見直しの必要性が指摘をされております。この指摘も踏まえ、一病室当たりの病床数を四床以下とする原則を徹底するなど、療養環境の改善に向けた介護報酬の水準のあり方を含め、具体的措置について平成十八年四月の介護報酬改定に向けた議論の中で検討をいたします。

横路委員 次に、これも議論されてまいりました末期がんの問題でございますが、特定疾病に末期がんを追加するに当たりましては、小児がん以外はすべてこれは対象に含めるべきではないかと考えますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 専門家の御意見を踏まえつつ、御指摘の方向で検討をしてまいります。

横路委員 次に、介護事業者の情報開示でございますが、介護事業者の情報開示において、介護現場における労働条件なども開示の対象とすべきではないかと考えますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 介護事業者の情報開示に当たりましては、労働条件などのうち介護サービスの質に直接関係するような事項、例えば、従業員に対する健康診断の実施、夜間を含む労働時間、勤務体制、従業員一人当たり担当利用者数などにつきましては、情報公開の対象とする方向で検討をいたします。

横路委員 次に、社会福祉施設職員等の退職手当共済制度の問題でございます。退職手当共済制度を見直す場合においても、人材確保の観点から、新規職員を含めて適切な退職手当が確保されるようにすべきであるというように考えますが、この点、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 人材確保の観点から、退職手当共済制度への加入継続努力を促しますとともに、公的助成の廃止の対象となりました新規加入職員につきましても、中小企業退職金共済制度に加入する選択肢も可能となるよう、必要な措置を講じてまいります。

 なお、個々の職員に対して、どのような退職金が支給されるかについても適切に情報提供がなされるよう、関係者に周知してまいりたいと考えております。

横路委員 次に、二号被保険者等の給付への関与でございますが、二号被保険者や医療保険者が給付、サービスに関与できるようにすべきではないかと考えますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 介護保険制度について、二号被保険者や医療保険者の代表が制度運営により関与していく観点から、自治体における介護保険事業計画等の策定への参画を進めてまいります。

横路委員 次に、被保険者と受給者の範囲の拡大の問題でございます。

 これまでの審議におきまして、附則第二条に規定する検討におきまして、十八年度末までに結論を得るように新たな場を設けて行うということが答弁されておられますが、まず一つ、新たな議論の場はどのようなイメージであるのか。二つ目は、いつから議論に着手をするのか。そして、議論の経過について国会はどのように関与していくことになるのか。この三つの点についてお答えをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 これまで議論を重ねてまいりました社会保障審議会介護保険部会とは異なる構成となると考えておりますけれども、その場合、できる限り幅広く国民各層を代表する方の参画を求めることといたしたいと考えております。

 なお、範囲の拡大が議論の課題として含まれておりまして、拡大の検討対象となる方を代表する方の参加も検討することといたしたいと存じます。

 八十年度末までには結論を得られるために、法律の成立後できるだけ速やかに人選に着手し、議論を開始することといたします。

 また、議論の状況次第でございますけれども、来年度夏までには議論の中間報告を行うように努めてまいりたいと存じます。(発言する者あり)

 十八年度末と読むべきところを八十年度末と読んだようでございますので、訂正をさせていただきます。十八年度末でございます。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

横路委員 次に、認知症と高齢期のうつ対策でございますが、認知症と高齢期のうつが介護度を上げる主な要因であるという理解は一致していると思います。しかし、本法案においてその対策が打ち出されているかというと、そうは言えない状況にあるのではないかと思います。

 うつや認知症の適切な把握を行わないでサービスの提供を行えば、介護度の悪化というのは避けられないわけであります。保険財政の健全化、あるいは制度の持続可能性を高めるためには、認知症や高齢期うつ対策の取り組みを順次進めていくということが必要であると考えますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 心身の状態の把握は、介護予防を行う上での前提となると考えております。

 ケアマネジメントやケアカンファレンスに携わる者がうつや認知症の知識を持つことは当然のことながら、介護サービスに従事する方にも、うつや認知症の知識を得るための研修を行い、早急に体制の整備を行いたいと考えております。

 また、認知症やうつに関する介護予防の手法についても研究を行い、エビデンスを備えた介護予防策を取りまとめてまいります。

横路委員 次に、地域支援事業についてお尋ねをしたいと思いますが、地域支援事業の創設によりまして、従来老人保健事業で行ってきたヘルス事業のうち、六十五歳以上の者に対する介護予防のための事業について、介護保険の中に含まれることになりました。地域支援事業につきましては、制度実施後も不断の見直しが必要であると考えますけれども、その点、いかがでございましょうか。

 また、ヘルス事業には生活習慣病予防もあることから、六十五歳を境にして分断をされるというものではなくて、六十五歳未満の者に対する施策との連携ということも必要であると考えますが、いかがでございましょうか。

尾辻国務大臣 地域支援事業につきましては、審議の過程においてお示しいただきました財源や事業内容をめぐる御意見を尊重して取り組んでまいりますとともに、その実施状況を見ながら有効性や効率性を確認して、不断の見直しを行ってまいります。

 また、六十五歳を区切りとして事業の連続性が失われることがないよう、高齢期においても健康な生活ができるように健康な心身を維持する観点で、有機的な事業連携を図ってまいります。

横路委員 次に、地域包括支援センターについてお尋ねをいたします。

 地域包括支援センターの運営協議会、これが今度の一つのポイントになっているわけですが、利用者や被保険者の意見が反映されますように、これらの参加というのが必要だというように思いますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 運営協議会の構成団体としては、サービス利用者や第一号及び第二号被保険者の代表を入れるよう、市町村に周知してまいります。

 また、地域包括支援センターにおいて行われる地域支援事業につきましては、保険料を充当する事業の範囲が過度に拡大しないように、その費用の上限及び事業内容を政令で定めますとともに、各保険者において事業実績の公表が行われるようにしてまいります。

横路委員 地域包括支援センター、これがやはり非常に大きな、大事な役割を果たすことになると思いますが、その運営については、やはりしっかりした体制をとっていなければ、私はなかなか新しいこともうまくいかないのではないかと考えています。しっかりした体制をとるべきではないかと思いますが、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 地域包括支援センターの運営につきましては、公正中立を確保する観点から、市町村が責任主体であることを明らかにいたしますとともに、その設置に当たりましては、職員体制が確保され、地域に根差した活動を行っております在宅介護支援センターの活用を図ってまいります。

横路委員 次に、医療との連携ということでございます。

 この点も、従来から言われながらなかなか強化されないできた問題でございますが、まず最初に、訪問看護ステーションを活用した多機能なサービスについても、これを介護保険制度において実施すべきではないかと考えますが、この点、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 難病など、医療ニーズと介護ニーズをあわせ持つ在宅の中重度の方への対応などの観点から、日中、訪問介護ステーションで要介護者をお預かりする試みも行われておりますけれども、医療と介護の連携等で検討すべき課題は多いと考えております。

 社会保障審議会介護保険部会の意見書におきましても、医療型多機能サービスについて「一つの方向性として考えられる。」とされておることもございまして、今後、新たなサービス形態として検討を進めてまいります。

横路委員 そして、サービス提供が何としても必要なのは、在宅の、特に中重度の人への支援というのをやはり強化していかなければいけないと思います。その点がなかなか進んでこないわけでございますが、この支援を強化するということについてどのようにお考えですか。

尾辻国務大臣 小規模多機能サービスなどの地域密着型サービスの充実、訪問介護ステーションや地域に密着した医療機関を活用した医療と介護の連携強化を図ることにより、在宅の中重度者への支援の強化を図ることといたします。

横路委員 次に、グループホームでございますが、グループホームも全国にどんどんふえて、六千カ所を超えております。このグループホーム入居者の健康管理の体制につきまして、もっと整備を図るべきではないか。非常に格差がある状況にありますので、ぜひ整備を図っていただきたいというふうに考えますが、いかがですか。

尾辻国務大臣 まず、二つ前と一つ前のお答えで、訪問看護ステーションと申し上げるべきところを介護ステーションと申し上げたようでございますので、訪問看護ステーションでございます。訂正をさせていただきます。

 それでは、ただいまの御質問についてお答えを申し上げます。

 グループホーム入居者に係る健康管理体制につきましては、医療との連携の強化や外部の訪問看護サービスの活用等も含め、介護報酬の見直しの中で検討をしてまいります。

横路委員 今回の法律は政省令が多いわけでございますが、今後の政省令の制定に当たりまして、ただいま厚生労働大臣から御確認をさせていただいた答弁を踏まえて政省令の制定に当たるということについて、確認をしていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 本日御答弁をさせていただきました、確認をさせていただきました内容を踏まえまして、政省令の策定作業を進めてまいります。

横路委員 以上で、私の確認を求める事項については終わりとさせていただきます。

 政省令も多い。政省令がなかなかわからないと、議論していても、どこが本当にどんな姿になるのか、これは後の障害者自立支援法も同じなんですけれども、それから厚生労働省ばかりじゃなくて、どうもほかの法律も、このごろはもうやたら政省令が多くなって、どうも私どもは法律を審議するに当たって、実体の姿というのはなかなか思い浮かべることができないままに議論しているということで、これでは、本当に国会の責任というのを果たすことにはなりません。

 ぜひ法律を出す場合には、ある程度どんなことなのかということも考えられて、しかも、政省令は後でいろいろと審議会などを開いて決めますという話が非常に多いわけでございまして、具体的な姿をお互い持たないで議論しているというようなところが、今回の審議の中でもいろいろやりとりの中で浮かび上がってきたのではないかと考えております。

 いずれにしても、介護保険制度というのはこれからの日本の中でますますその重要性を増していくということでございまして、高齢者はふえていくばかりなわけですから、制度を持続させると同時に、本当に必要なサービスがきちんと提供されて、そして、住みなれた地域、自宅で生活のできる、そういう体制を何とかバックアップしていくために、私どもも努力していきたいというように思いますし、これから皆さん方が、参議院の審議に入るわけですが、いろいろと作業を進められるに当たっても、私どもは時々報告を求めて、この委員会を通じて議論させていただきたいというように思っております。

 ありがとうございました。

鴨下委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、大村秀章君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。三井辨雄君。

    ―――――――――――――

 介護保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

三井委員 ただいま議題となりました介護保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、公明党、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、提案理由を説明いたします。

 修正案はお手元に配付したとおりでございます。

 以下、その内容を御説明申し上げます。

 第一に、地域支援事業に関する事項について、被保険者に対する虐待の防止及びその他の被保険者の権利擁護のため必要な援助を行う事業については、市町村の任意事業から必須事業に改めるものとすることとしております。

 昨今、高齢者虐待や高齢者の消費者被害等が急増していますが、一方で、その対策の重要な柱となる成年後見制度は、約二割の自治体でしか実施されていないなど、対策のおくれが目立っています。そこで、成年後見制度と相まって高齢者の権利擁護事業の両輪とされている介護保険制度に新たに規定される地域支援事業において、権利擁護事業を市町村の必須事業とし、高齢者の権利擁護事業を総合的かつ迅速に充実強化することが適当であると考えます。

 また、現在提案されている障害者自立支援法案において、権利擁護事業は市町村の必須事業とされているにもかかわらず、高齢者を対象とする本改正案では任意とされたことは整合性に欠き、かつ、与野党それぞれにおいて高齢者の虐待問題について積極的な立法作業の検討を進めている現状を見れば、本修正案は極めて自然な内容であると考えます。

 第二に、政府は、この法律の施行後三年を目途として、予防給付及び地域支援事業について、その実施状況等を勘案し、費用に対するその効果の程度等の観点から検討を行い、その結果に基づいて所要な措置を講ずる旨の規定を追加することとしています。

 この規定については、新予防給付等の対象者の基準、基本的なサービスの内容、効果等が現段階では不明確なため、施行後にその再検討を政府に義務づけるものであります。

 当委員会において三十時間以上の審議を重ねた現在においても、家事援助のカットや、卒後も含めた明確な効果が確認できないままに筋力向上トレーニングを介護保険のメニューに組み込まれたことなどについて、国民の不安を払拭できたとは言えない状況にあります。この国民の不安に対応するために、三年の期限を設け、今回新設される新予防給付及び地域支援事業について、実施状況を勘案して検討を行うことによって、介護保険制度の信頼性及び持続性の確保、サービス利用者の生活改善のために必要な措置を講ずるものであります。

 以上、修正案の提案趣旨及び概要を御説明いたしました。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。北川知克君。

北川委員 私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となっております介護保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対して自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党が提出した修正案につきまして、修正案及び修正案を除く原案に賛成の意を表するものであります。

 介護保険制度については、施行から五年を迎え、サービスの利用者数が施行当初の二倍を超え、各種世論調査でもその評価は年々高まってきているなど、国民の老後生活を支える基礎的なシステムとして定着しつつあるところであります。

 しかし、サービスの利用の伸びに伴い、給付費も急速に増大しており、今後の十年、二十年を展望して、介護保険制度が将来にわたり国民生活の安心を支え続けられるよう、また、認知症の高齢者の増加等の新たな課題に対応できる制度となるよう、改革を行うことが必要であります。

 政府原案は、こうした状況を踏まえ、予防給付の対象者、内容、マネジメント体制の見直しを行うなどにより、制度を予防重視型のシステムへ転換することとし、また、公平性の確保という観点から、在宅と施設の間の利用者負担の不均衡の是正等のため、低所得者への配慮を行いつつ、介護保険施設等における利用者負担の見直しを行うこととしております。

 また、一方で、認知症の高齢者の増加等に対応し、身近な生活圏域単位での新たなサービス体系を確立するため地域密着型サービスを創設することや、サービスの質の確保、向上を図るため、介護サービス事業者の指定等について更新制を設けるとともに、介護サービス事業者について情報の公表を義務づけることとしております。

 以上申し上げましたように、政府原案は、多くの国民に支えられ、そして支持されている介護保険制度を、将来にわたって国民生活の安心を支え続けられる仕組みとするよう、給付の重点化、効率化等を図っていくとともに、認知症の高齢者の増加等の直面する新たな課題にも適切に対応しようとするものであり、その趣旨に賛同するものであります。

 また、自由民主党外二党提案の修正案により、主として次のような諸点について所要の修正を行うことにより、一層の制度の改善が図られるものと考えております。

 第一に、地域支援事業のうち、被保険者の権利擁護のため必要な援助を行う事業について、市町村の任意事業から必須事業に改めるものであります。

 第二に、この法律の施行後三年をめどとして、予防給付及び地域支援事業について、その実施状況等を勘案し、費用に対するその効果の程度等の観点から検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする旨の規定を追加するものであります。

 以上の修正によって、法案の目的の達成と円滑な実施に資するものと考えるものであります。

 以上申し述べましたように、介護保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対して自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党が提出した修正案は、介護保険制度を将来にわたって安定したものとし、同時に直面する新しい課題に対応したものとなるよう制度全般にわたる改革を行うものであり、私どもとしては、この修正案及び修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。

 これをもちまして、私の賛成討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島敦です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出、介護保険法等の一部を改正する法律案及び介護保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案に対して討論を行います。

 私たちは、介護を家族だけに担わせるのではなく、社会が高齢者と家族を支える社会連帯の理念に基づく介護保険制度が、この五年間で我が国に定着したと考えます。これから団塊の世代が退職期を迎えることを考えると、介護保険制度が持続できるのか、持続するにはどのような制度設計がなされるべきかを検討する介護保険法施行五年目でもありました。

 しかしながら、今回の法案では、今後を見据え、何が給付と負担の関係を明確にする社会保険としての介護保険給付の対象か、何を福祉施策の対象とするのか、また、その財源がこれまでの介護保険財源によるのか、新たに加わった地域支援事業財源によるのか、明確に切り分けられていないことで、議論が深まらなかったと考えます。そのことについて、法案を提出した政府の反省を求めます。

 しかし、今回、私たちの求めに応じて、政府は、この法律の施行三年をめどとして、新予防給付と地域支援事業について現在のところ費用対効果が実証されていないことから、実施状況の検証を行い、見直しを行う旨の修正を図ることといたしました。

 また、本法案は、現行法の附則第二条による、介護保険制度施行五年を迎えるに当たって行うべき介護の普遍化について、方向性そのものを明らかにせず、再び検討事項に積み残すこととしております。懸案事項を再度先送りすることに、内心じくじたる思いです。

 しかし、制度が存続する道を開いていくために、附則の事項について、審議を通じて、介護保険制度の被保険者、受給者の範囲の拡大を検討することを確認してまいりました。

 さらに、高齢者の権利擁護事業も、市町村の必須事業としての位置づけとすることが修正されました。

 本法案では、多くの事項が法律において方向性も明らかにされないまま政省令にゆだねられていますが、法律案の審議を通じて政府からの答弁を得ることで、少なからず方向性を確認いたしました。

 以上申し上げてまいりましたとおり、政府案は修正を加え、審議を経ることにより、十分とは言えませんが、あるべき介護保険制度へと一定の前進をさせることを確認することができております。

 したがいまして、修正案及び政府案に賛成すること、あわせて、本法案が国会で成立し、今後政府が政省令を定め、その実施を図っていくに当たっても、その動向を注意深く関与していくことを申し上げ、私の討論を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党を代表して、介護保険法等の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、新予防給付の導入に伴い、従来の居宅サービスが抑制されることです。その対象は百六十万規模となり、居宅生活が維持できないという深刻な不安を広げています。

 現行のサービスは、軽度の方々の状態の維持、改善に資するものとなっていないというのが、新予防給付導入の理由とされました。しかし、厚生労働省の資料によっても、要介護一の八割以上が居宅サービスによって状態を維持、改善しています。

 一方、新たなサービスの筆頭に上げられた筋力向上トレーニングは、市町村モデル事業を分析した厚生労働省の中間報告でも明確な効果を認定できませんでした。

 新予防給付を導入し、家事援助などの居宅サービスの削減を図る理由は、ことごとく崩れました。この上、軽度者の状態の維持、改善を図り、日常生活を支える上で不可欠となっている居宅サービスを削減することなど、許しがたいものです。

 第二に、予防重視型システムをめぐる問題です。新たに導入する地域支援事業は、現行の老人保健事業、介護予防・地域支え合い事業などを再編したものです。これによって、国の費用負担は大きく減額され、その分が一千億円に上る介護保険料負担となってはね返ります。また、高齢者の健診や福祉事業が介護保険に組み込まれることで、国や自治体の公的責任が後退し、一割の利用料負担も広範囲に導入されかねません。

 さらに、地域包括支援センターの実態は不明瞭この上なく、保健師一人で三百件余りのケアプランに責任を負う事態すら考えられます。これらのシステムの前提となる介護予防のスクリーニングの規模と内容も、一向に示されていません。

 第三に、居住費や食費、保険料などの国民負担増です。居住費と食費の負担増は、平年度で三千億円、入所者一人当たりでは年間三十九万円余りとなります。低所得者対策をとっても、年金生活者などの負担は重く、新たな住民税課税で低所得者対策から締め出される人も生まれます。利用者負担の押しつけは、低所得者にとって事実上施設利用を制限するものです。

 そのほか、特養ホームの待機者の解消、施設整備を充実する手だてが極めて弱く、今後、施設入所を要介護二以上に制限することも重大な問題です。また、社会福祉施設職員の退職金への公的支援の打ち切りは、介護労働者の労働条件の改善に逆行する事態です。

 本法案への修正案は、これらの問題点を何ら改めるものではありません。

 以上の諸点を申し述べ、私の反対討論といたします。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となっております介護保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。

 本法案は、ただただ介護保険費用の縮減のみを目的として、利用者の負担をふやし、サービスの削減を押しつけるものにほかなりません。直面する超高齢社会に向かって、制度の充実、発展を図る改正点はごくわずかであり、逆に、介護保険制度制定以前の介護不安に国民を再び突き落とす内容を多く含んでおります。

 まず第一に、新予防給付並びに介護保険に財源と責任を押しつけた地域支援事業の創設は行うべきではありません。

 要介護認定という行政処分によって、介護給付とサービスの異なる新予防給付に軽度要介護者を振り分けることは、必要なサービスを自分で選び、自分らしい暮らし方を自分で決めるという介護保険制度の理念を根本から覆すことになります。

 審議の中で、政府は、法改正によって、どのケースが適当な家事援助とみなされ、軽度要介護者が従来のサービスを利用することができるのか、一切明らかにしませんでした。

 法案は、抽象的な枠のみを示し、利用者の生活と直結する肝心なことはすべて政省令にゆだねるという姿勢で、余りにも無責任であります。

 政府は、データをねじ曲げることなく、家事援助による生活負担の軽減が、要介護度の悪化を予防し、自立を守る有効な手段の一つであることをしっかりと認識すべきです。本人の事情を軽視して利用を制限すれば、かえって重度化を招き、財政的な悪化にも結びつくことになります。

 また、対象を自立の高齢者に広げて行われる地域支援事業には、事故、リスクに基づいて給付をする保険の原理を踏み外した点があります。健康寿命を延ばすための老人保健・福祉の政策は、小児期から高齢期に至るまでの一貫した地域健康政策として税を財源として行うべきです。これを安易に介護保険に流し込むことは、介護保険費用の膨張、老人保健・福祉の後退につながりかねません。

 四月十五日、審議も後半になって、政府は、やっと今回の介護予防給付の目玉である筋トレ等を含めたサービスの市町村モデル事業の結果を公表しました。しかし、その分析はおろか、市町村から指摘された問題点にも真摯な対応を一切とることがありませんでした。まして、こうしたサービスが可能な地域についての検証もなく、過疎地での実施は恐らく極めて困難と思われ、都市中心型の発想に基づくものと言わざるを得ません。

 そもそも、介護保険法には、「要介護状態の軽減」「悪化の防止」という用語は出てきますが、改善はもともと出てまいりません。国が筋力向上トレーニング等の統一的なメニューで介護予防を行うことは、結果的に改善を強調し、要介護状態になること、老いて心身が衰えていくことが社会悪であるかのような誤った印象を国民に植えつけます。高齢者の尊厳を脅かすものであり、介護を社会連帯で支えようとする法の理念に反しています。

 第二に、介護保険施設の居住費、食費を保険外に出すべきではないと考えます。

 現金給付である年金が先細っていく中、現物給付である介護保険の自己負担分をふやすことは、国民に過度な負担を強いることになります。施設と居住の違い、施設が食事の提供に責任を持つことの意義、施設建設における公費補助の大きさなどを考慮し、居住費、食費は引き続き保険給付内にとどめるべきです。

 本法案は、高齢者の所得の状況、そして個々人の税、医療保険、介護保険など社会保障の自己負担を総合的に勘案した上での制度設計とはなされていません。

 来年六月から実施される住民税の大幅改正による住民税非課税世帯の変化、保険料と利用者負担額の変化もあえて無視しています。

 施設利用者に新たな負担を課すにもかかわらず、施行予定は本年十月からで、余りにも周知期間の短い乱暴な法案です。

 在宅と施設の利用者負担の公平性が目的であるのなら、まず、重度要介護者を在宅で支えられるような介護保険を充実することが先決であります。

 最後に、本法案は、介護棄民、介護地獄を誘発しかねない内容であることを申し添えて、本法案に反対いたします。

 なお、修正案につきましては、本来、御高齢者の後見人制度等、権利擁護は極めて重要な施策であると思いますが、まず、国の責任が明示されて、しかる後に、市町村の取り組みの中に明文化されるべきと考える点を申し添えて、反対を表明して、終わらせていただきます。(拍手)

鴨下委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、介護保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、大村秀章君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、本案に対し、大村秀章君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。大村秀章君。

大村委員 自由民主党の大村秀章であります。

 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    介護保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 附則第二条第一項に規定する検討は、平成十八年度末までに結果が得られるよう新たな場を設けて行うものとすること。また、その場においては介護保険制度の被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲の拡大も含めて検討を行うものとすること。

 二 難病など医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ在宅の中重度者への対応や、在宅におけるターミナルケアへの対応などの観点から、訪問看護ステーションや地域に密着した医療機関を活用して医療と介護の連携を図ることにより、在宅療養をより一層支援していくために必要な措置を講じること。

 三 地域包括支援センターの運営については、公正・中立を確保する観点から、市町村の責任を明確化するとともに、地域に根ざした活動を行っている在宅介護支援センターの活用も含め、地域の実情に応じた弾力的な設置形態を認めること。

 四 ケアマネジャーについては、中立性・独立性を重視する観点から、資質の向上を図るとともに、介護報酬についても見直しを行うこと。また、介護に携わる人材の専門性の確立を重視する観点から、研修体系や資格の在り方の見直しを行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、尾辻厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

鴨下委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鴨下委員長 次に、内閣提出、障害者自立支援法案及び障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 障害者自立支援法案

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

尾辻国務大臣 ただいま議題となりました障害者自立支援法案及び障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、障害者自立支援法案について申し上げます。

 障害保健福祉施策につきましては、障害者及び障害児の地域における自立した生活を支援することを主題に取り組んでおりますが、現在は身体障害、知的障害、精神障害といった障害種別等によって福祉サービスや公費負担医療の利用の仕組みや内容等が異なっており、これを一元的なものとすることや、その利用者の増加に対応できるよう、制度をより安定的かつ効率的なものとすることが求められております。

 これらの課題に対応し、障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行うことにより、障害者及び障害児の福祉の増進を図り、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与するため、今般、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、自立支援給付は障害福祉サービス、自立支援医療、補装具の購入などに要する費用の支給とし、当該給付を受けようとする者は、市町村等に申請を行い、その支給決定等を受けることとしております。

 第二に、自立支援給付の額は、障害福祉サービス等に通常要する額の百分の九十を原則としつつ、利用者の負担が多額となる場合等については、家計に与える影響等を考慮して給付割合の引き上げを行う等、負担の軽減措置を講ずることとしております。

 第三に、市町村及び都道府県が行う地域生活支援事業に関することを定めることとしております。

 第四に、市町村及び都道府県は、国の定める基本指針に即して障害福祉サービスや地域生活支援事業等の提供体制の確保に関する計画である障害福祉計画を定めることとしております。

 第五に、自立支援給付に要する費用は、一部都道府県が支弁するものを除き市町村が支弁し、その四分の一を都道府県が、二分の一を国が、それぞれ負担することとしております。

 このほか、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律を初め関係法律について所要の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行日は、自立支援医療に関する事項など一部の事項を除き、平成十八年一月一日としております。

 次に、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。

 共生社会の理念が浸透しつつある中、障害者の社会参加が進展し、障害者の就業に対する意欲も高まっております。

 このため、精神障害者への雇用率適用や在宅就業支援による障害者の就業機会の拡大、福祉施策との連携強化等、障害者が職業生活において自立することを促進する施策の充実を図ることとし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、精神障害者に係る対策を充実強化するため、雇用されている精神障害者について、障害者雇用率制度上、身体障害者または知的障害者を雇い入れたものとみなすとともに、障害者雇用納付金等の額の算定対象に加えることとしております。

 第二に、自宅等において就業する障害者の就業機会の確保等を支援するため、これらの障害者に直接、または厚生労働大臣の登録を受けた法人を介して業務を発注した事業主に対して、特例的な調整金等を支給することとしております。

 第三に、国及び地方公共団体は障害者福祉施策との有機的な連携を図りつつ障害者雇用促進施策を推進するように努める旨の規定を整備するとともに、社会福祉法人等が行う職場適応援助者による援助に対して助成金を支給する等独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が行う納付金関係業務を拡充することとしております。

 最後に、この法律は、平成十八年四月一日から施行することとしておりますが、障害者福祉施策との連携及び助成金に関する部分は、平成十七年十月一日から施行することとしております。

 以上が、二法案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鴨下委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十一分散会


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