衆議院

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第24号 平成17年5月19日(木曜日)

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平成十七年五月十九日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    大前 繁雄君

      上川 陽子君    木村 義雄君

      小西  理君    菅原 一秀君

      谷川 弥一君    中山 泰秀君

      西川 京子君    原田 令嗣君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      森岡 正宏君    渡辺 具能君

      石毛えい子君    泉  健太君

      内山  晃君    大島  敦君

      小林千代美君    園田 康博君

      中根 康浩君    橋本 清仁君

      藤田 一枝君    水島 広子君

      横路 孝弘君    古屋 範子君

      桝屋 敬悟君    山口 富男君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    森岡 正宏君

   参考人

   (社団法人日本経済団体連合会労働政策本部雇用・労務管理グループ長)    輪島  忍君

   参考人

   (日本労働組合総連合会雇用法制対策局長)     長谷川裕子君

   参考人

   (特定非営利活動法人障害者雇用部会副理事長)   土師 修司君

   参考人

   (社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)   竹中 ナミ君

   参考人

   (藍野大学学長)     高橋 清久君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     大前 繁雄君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     菅原 一秀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 障害者自立支援法案(内閣提出第三五号)

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、障害者自立支援法案及び障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、社団法人日本経済団体連合会労働政策本部雇用・労務管理グループ長輪島忍君、日本労働組合総連合会雇用法制対策局長長谷川裕子君、特定非営利活動法人障害者雇用部会副理事長土師修司君、社会福祉法人プロップ・ステーション理事長竹中ナミ君、藍野大学学長高橋清久君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず輪島参考人にお願いをいたします。

輪島参考人 おはようございます。御紹介をいただきました日本経団連の輪島と申します。障害者雇用を担当しております。

 本日は、障害者雇用促進法の改正、障害者自立支援法の改正の審議に当たりまして、私どもの意見を聞いていただくというこのような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 それでは、早速ではございますが、私どもの意見を述べさせていただきたいと思っております。

 今回の障害者雇用促進法の改正のポイントというのは、精神障害者に対する雇用対策の強化、多様な雇用形態による障害者の就業機会の拡大、福祉的就労から一般雇用への移行促進というふうに理解をしております。日本経団連としては、これらの改正ということについて、さまざま少しばかり課題を抱えているというふうには思っておりますけれども、一定の方向性を示すということで支持をしたいと考えております。

 具体的に各項目について述べてみたいというふうに思っております。

 まず第一点に、精神障害者を雇用義務の対象とすることは、直ちにそのようなことではないというふうになっているわけでございますけれども、精神障害者の雇用に対する企業の理解、雇用管理のノウハウというものをまず普及をする。精神障害者を雇用している企業の努力に報いる形、仕組みとして、実雇用率へ反映していただくという選択肢をとったわけでございまして、身体障害者、知的障害者が既に雇用率の適用対象というふうになっておりまして、将来、精神障害者がこのような雇用率の対象になるということは必然だと考えておりますが、こういった企業の雇用管理のノウハウを確立した上で対象にしていくということで、現時点での法案の方向性というものは妥当なのではないかと思っております。

 精神障害者の雇用を促進するという観点から、企業の実務では、現在、基本的には、まず病気にならないための予防というものをしております。それから、万が一傷病を得るということになりますと、速やかに休み、そして休職をして治療に専念する。三番目が、治療で回復をしたらスムーズな職場復帰をしていただく。そして四番目には、再発をしないということをまず心がけているわけでございます。

 そういう観点で、雇用管理のノウハウという意味で、在職精神障害者、採用後精神障害者というような言い方もしますが、企業に採用された後に精神障害という障害を得るという方々に対する雇用管理のノウハウというのは、まだまだ確立をされていないというのが現状かというふうに思っております。

 例えば、職場復帰をする際、休職期間が満了をする前に、試し出社であるとか、リハビリ出勤というような名称で企業独自に職場復帰のためのプログラムを用意しているケースがございますけれども、いかんせん、その期間は休職期間というようなことで、例えば、そのときに労災事故があったり、通勤災害があったりということになりますと、そこはカバーし切れないというようなこともございまして、そういった企業独自でいろいろやっている、工夫をしているようなことも、まだまだ解決ができていないものがあるのではないかというふうに思っております。

 第二点は、実雇用率に精神障害者を算定する際、企業での対象者の把握、確認の方法というものは、精神障害者保健福祉手帳の所持ということをもって行うというふうにされたわけでございます。加えて、精神障害者のプライバシーに配慮した把握、確認の方法が行われるように、企業にとって参考となるガイドラインというものがこの法律が改正をされた後につくられるということになっております。

 この把握、確認に当たってのガイドラインというのは、企業への周知のためにできるだけ早くおつくりいただいて、企業に御周知をいただきたいというふうに思っています。このガイドラインに沿いまして、精神障害者のプライバシーを守りつつ、企業でのスムーズな職場復帰というようなものを実現していきたいと思っております。

 また、在職精神障害者にとって、手帳を取得すること、それから取得しているということを企業の人事部に知らせること、いわゆるオープンにするというふうに言われておりますけれども、このメリットというのは、雇用率が適用されるというようなメリットもあるわけでありますけれども、さらに、職場の上司がそのことを知っている、職場の理解が得られる。例えば、仕事に過剰な負荷がかからないようにするとか、残業を軽減するであるとか、服薬の管理について一定の配慮が得られるとか、定期的に病院への検診に行く時間をつくることができるとか、そういった雇用管理上のノウハウというようなものが会社の方から配慮を得られるというようなメリットもあるのではないかと思っておりまして、そういった点も、今後、整理をしてPRをしていただきたいなというふうに思っております。

 第三は、現在、既に企業に雇用されている採用後精神障害者、在職精神障害者という方々に対するさまざまな施策、支援策というのがメニューとして出ております。リワーク事業であるとかトライアル雇用、そして委託訓練というようなものが最近の行政の施策の中で、メニューは充実をしてきております。ただし、まだまだ、リワークも本年度から全国に展開をされるであるとか、委託事業も二年目というようなことで、その施策は緒についたばかりでございますので、その点につきましてさらなる充実をお願いしたいなというふうに思っております。

 第四点目は、精神障害者という障害特性は、疲れやすくてなかなか長い時間働くことが難しいというふうに言われております。そこで、今回の障害者雇用促進法の中には、週二十時間から三十時間の労働時間の者は、短時間被保険者の役割ということで、〇・五カウント、ハーフカウントという仕組みをつくったわけでございます。また、十五時間以上の人に対しては助成金の支給対象になるということになったり、グループ就労で所定の期限、何人かで一つの仕事をするというようなグループ就労の仕組みもつくられたわけであります。こういった御配慮は大変ありがたいというふうに思っております。

 しかしながら、雇用率の適用ということは、やはり二十時間以上働いていただくところから適用になるということでございまして、そういう意味で、企業としては、雇用契約のインセンティブ、二十時間以上というのは初期の段階ではハードルが大変高いというふうに思っておりまして、そういう意味で、企業の実務のところで雇用契約のインセンティブが限られ、企業にとって、精神障害者の雇用の促進をする立場から、メリットが見えにくいのではないかと思っております。

 第五は、多様な雇用形態による就業機会の拡大ということでございます。

 在宅勤務、在宅就労ということに道を開くものでございまして、方向性として大変重要だと思っております。障害があるゆえに通勤が困難であったりするわけでございまして、そういうところから現在のITを活用して在宅で仕事をするということについては、それにインセンティブをつけていただくということは大変重要なことだというふうに思っております。

 ただし、この中で、企業が発注をするということでインセンティブをつけていただいているわけですけれども、基本は、一人の雇用をする一人分の賃金というところを基本にしておりまして、約四百万円というものを一定の企業の発注額の基準というふうにしております。年間四百万円でございますので、少しハードルが高いのかなというふうに思っております。

 また、中間組織であります在宅支援団体の育成ということも書かれておりますけれども、ここに企業が発注した場合には、結果としては、企業の事務負担というものが過度になるのではないかという懸念を持っているところでございます。

 最後に、雇用と福祉の連携でございます。

 障害者の労働市場というものを見ますと、身体障害者につきましては、やはりその重度化、高齢化ということが言われております。そういった傾向の中で、今後、企業の雇用の場を確保するという観点になりますと、いわゆる人材の供給源というのは、知的障害や精神障害というところから供給をされるものなのかなというふうに思っております。そういう観点から、今般、障害者雇用促進法の改正に伴って、雇用の場の提供と企業側の受け皿というものは環境の整備ができたのではないかというふうに思っております。

 そこで、地域で生活すること、土日の時間の過ごし方、余暇の過ごし方というものは、福祉の社会資源を活用することが今後は重要だと思っております。知的障害、精神障害者の方の雇用を継続していくというのは、企業が雇用の場を提供し、福祉が、福祉側のサービス、社会資源の両立、連携によって雇用の継続が図られるものだというふうに思っております。

 その観点からいいますと、今般の障害者自立支援法案というのも、人材の供給といいますか、そういった環境整備に資するものだというふうに私どもとしては理解をしております。

 そういった観点から、二つの法案につきまして、このように考えている次第でございます。

 以上でございます。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 次に、長谷川参考人にお願いをいたします。

長谷川参考人 私は、連合で雇用法制対策局長をしております長谷川であります。きょうは、このような機会を与えていただきまして、非常に感謝しております。今般の障害者雇用促進法改正法案についての連合の考え方について、述べてみたいというふうに思います。

 第一点は、法案全体への評価でありますけれども、今般の法改正は、一つには、精神障害者雇用について、将来は義務化すべきではあるけれども、今回は、とりあえず法定雇用率を現行の一・八のままで、実雇用率の算定のみを行う。二つ目には、精神障害者の短時間勤務についてハーフカウントをする。三つ目には、障害者の在宅就業に対する支援について、納付金制度による発注奨励策を行うということでありますが、これらは、連合としては一定の評価をしているところであります。

 これまで、私どもは、政策制度要求において、主として、身体、知的、精神障害の特性に応じた、きめ細かい障害別対策を総合的に行うことが必要だということで、政策制度要求の中で提言してきましたが、今般の見直しで精神障害者の雇用が強化されることは評価したいというふうに思っています。

 しかし、問題は、この後提起したいと思うのでありますけれども、何点か解決しなければならない課題があります。ぜひ、この国会の審議の中でそれらを真剣に議論していただいて、今後、実際に法が施行される段階で、精神障害者の雇用の促進に寄与するような、そういうものにしていただきたいというふうに思うところであります。

 それでは、具体的な課題について、私どもの考え方を述べてみたいと思います。

 第一点は、先ほど輪島さんの方からも報告されました精神障害者の問題でありますけれども、在職時に発症した者の掘り起こしにならないようにするための措置について、今回きちんと何らかの形で規定すべきではないかというふうに考えております。

 職場で働いていて、その中で、職業生活の途中で精神障害になる方がいらっしゃるわけですが、その人たちを今回福祉手帳を取得することをもってカウントするという方法、精神障害者の対象者の把握、確認方法があるわけです。このことをもって精神障害者が実雇用率に換算されるということになるんですが、使用者が納付金の支払いを逃れるために、ちょっと少し言い過ぎのところもあると思うんですけれども、こういうことは予想できるんですが、納付金の支払いを逃れようとして実雇用率を上げるために、精神病に既にかかっている在職者の労働者に対して、あなた手帳を取りなさいと。あなた手帳を取りなさい、そういうことをするのではないかということが、審議会の当時からもいろいろと労働者の中から指摘してきたところであります。

 これをいわゆる掘り起こしというふうに私どもは言っているわけですが、この福祉手帳の取得が掘り起こしにつながらないようにするための措置について、例えば、取得や申し出に対して拒絶したりした場合に、あなたはもしこの福祉手帳を取得しなければ解雇しますよとか配転しますよだとか、そういうことがないような、そういう措置が必要なのではないかというふうに考えております。

 二、三日前の新聞にも精神障害者の記事が載っておりましたけれども、障害になったことをもって解雇されたという、そういうのは労働相談なんかにもあるわけでありまして、この具体的な措置について、きちっとこの法案成立後に何らかのガイドラインをつくると言っていますので、研究者と、それから職場のいろいろな実情を知っている労働者、労働組合だとか使用者団体だとか、そういう人たちを参加させる中で、きちっとしたガイドラインづくりをしていただきたいというふうに思うところであります。そのガイドラインの中には、企業が手帳の取得によって差別的取り扱いは禁止するだとか、そういうことを具体的に盛り込んだガイドライン作成が必要だと考えております。

 第二点目は、精神障害者の法定雇用率の実施の期日を明確にしていただきたいというふうに思います。

 厚生労働省の審議会報告では、精神障害者について、将来的には雇用義務制度の対象とするとはしておるんですが、現段階では、実雇用率に算定するだけだというふうになっております。具体的な法定雇用率の算定の日取りは今未定であります。ぜひ、この国会審議の中でその見通しを明らかにしていただきたいと思うところであります。

 例えば、振り返ってみますと、身体障害者の場合は、昭和三十五年に雇用率の算定、そして昭和五十一年に雇用の義務化、知的障害者の場合は、昭和六十三年に雇用率の算定、そして平成十年に雇用の義務化となっておりまして、いずれも十年かかっているわけでありますね。こんなに長く待つことはできないというふうに思います。

 したがって、今般の精神障害者の場合については、次回の実態調査の結果が出ました後、直ちに義務化すべきではないかと考えております。

 次、三点目でありますが、メンタルヘルス対策についてであります。

 現在、在職の労働者に対してもメンタルヘルス対策が行われているんですが、今回この在職の労働者に対して法律が適用されることになったことで、これまで企業が行っていたメンタルヘルス対策を行わずに、安易に福祉手帳だけを取得させて、精神障害者として対策をとればいいのではないかという錯覚を起こす企業もあるのではないかということが懸念されております。

 メンタルヘルスは、特に個人調査や産業医の設置など、経費がかさむというふうにも言われていまして、これらの対策をしないような企業が出てくることのないように、労働基準監督官だとか防災指導員による指導を徹底することと、奨励金の給付に当たってはメンタルヘルス対策の実施を支給の要件にすべきではないかというふうに考えております。

 四点目は、ジョブコーチの問題であります。

 労働組合の役員というのは、私も労働組合の役員ですが、とても優しいというふうに思っております。ぜひ、ジョブコーチについては労働組合役員の経験者を積極的に活用したらどうかという提言をしたいと思っております。

 今般、協力機関型のジョブコーチを増員するということを私どもも聞いておるわけでありますけれども、相談活動など一定のものについては、福祉施設等の出身のジョブコーチも非常に重要ですが、それと同時に民間の企業経験のあるOBも活用することが大切なのではないかと思います。

 私も、障害者分科会の審議委員になりまして、幾つかの特例子会社だとかそういうところを見学したわけですが、福祉の施設とそれから一般の企業の職場というのはやはり違うわけですよね。例えば、仕事によっては連続立っていなければいけないというようなところもあるわけでありまして、非常に企業、働く職場というのは大変なわけでありまして、そのときに、福祉に携わっている方と、それから、現に職場で働いていて障害者雇用に対する対応などの経験があるような、そういう人事担当の方がジョブコーチになって、やはりきちっと福祉就労から一般就労への橋渡しをすることが必要なのではないかと思います。

 幾つかの施設を見たときに、この方は組合の元支部長だったんですよという人に何人か会いまして、ああ、組合の役員というのはこういうところで役員が終わった後発揮するのかなというふうに私も思いまして、ぜひこういう経験のある人たちを積極的にジョブコーチとして採用していただくことも検討していただきたいなと思います。

 五点目は、就業支援のためのチームについてでありますけれども、ぜひ、人材の育成だとかその人材を確保することが重要であるというふうに考えております。

 福祉施設から雇用への移行の促進について、厚生労働省は、ハローワークが中心となって、障害者が在籍する福祉施設、地域障害者職業センターなどの関係者から成る就業支援のためのチームを各地域に設置するとしておりますけれども、障害者の人生一生を見渡した上で判断することも非常に重要でありまして、人材育成についてはしっかりと行うことが必要なのではないかというふうに考えております。

 また、企業が障害者を雇い入れた後においても、引き続き、医療機関と生活支援センターが連携して障害者個々人に合わせた雇用支援対策を充実させることが重要であるというふうに思います。福祉就労から一般就労、企業に就職したとしても、やはりいろいろな環境の変化だとか、仕事のことだとか人間関係とかでいろいろな波があるわけですから、そのときに、企業と医療機関と生活支援センターが連携して対応することが重要なのではないかというふうに考えております。

 そして、障害者が適合していない職業に就業したときには症状の悪化につながることもあるわけでありますので、そういった場合には即時に引き揚げることなども重要ではないかと思います。何度も言いますけれども、支援については、医療機関、生活支援センター、企業との十分な連携による施策とすべきであるというふうに考えております。

 また、地域の障害者職業センターが行うリワーク事業を総合的な支援とすることについては私どもも賛成であります。しかし、地域障害者職業センターは県で一つしか設置しておらないわけでありまして、精神障害者は医療機関との連携が非常に不可欠でありますので、少なくとも毎日通うことのできる範囲にセンターだとかもしくはそれにかわるものを設置する必要があるのではないかと思います。したがって、職場と地域、そこが連携できるような、そういうものが必要だというふうに思います。

 六点目でありますが、きょう私の資料の中に、資料の一番目でありますけれども、国と地方公共団体における障害者の在職状況の表をお配りしてございます。

 この表で見てもおわかりのように、国の機関は二・一五、都道府県の機関が二・二八、市町村が二・二〇というふうな実雇用率になっているわけですが、教育委員会は一・三三という状況であります。教育委員会の実雇用率が進まないのは教員免許資格だというふうなことは言われているわけですけれども、学校の職場というのは教員だけではないはずであります。もっといろいろな職種もあるわけですので、そういうことも考えることができます。また、学校現場の中では、正規の先生のほかに専門職と言われる臨時の職員の方もいらっしゃるわけでありますので、もっといろいろな工夫ができるのではないかというふうに思っています。

 私ども連合の傘下の組合である日教組、学校の先生の組合ですが、ずっと以前から教育委員会の実雇用率を上げるべきだということを提起しておりましたが、今現在でも一・三三というこの状況は改善しなければならないのではないかというふうに思っております。

 それからもう一つ、二枚目の資料でありますが、民間企業における規模別障害者の実雇用率の推移であります。

 かつて障害者を中小企業は積極的に雇用していたわけですが、ある時点から中小企業がずっと落ちていくわけでありますね。企業規模の大きいところが雇用率を上げていくわけですが、大企業の雇用率が上がったのは特例子会社制度があることも影響しているというふうには言われているわけでありますけれども、中小企業に対するいろいろな支援策が必要なのではないかと考えております。ぜひ、中小企業が障害者を雇用できるような、何らかのモデルなどを示しながら促進することが必要だと考えております。

 例えば、少し前後するんですが、公務部門でいいますと、横浜市なんかが行っていると言われているんですけれども、市役所におけるシュレッダー業務なんかについては福祉施設に委託していて、そういうところで積極的に取り組んでいるということも言われていますし、中小企業で検討する場合に、まだ例がないわけですけれども、例えば工業団地だとかオフィスビルだとか、あと同一地域、そういうところで仕事を出し合って何らかの雇用を創出していくという試みも必要なのではないかというふうに思います。

 審議会のときに事例が欲しいと言ったんですが、なかなか全国的な事例はなかったわけです。むしろ、やはり積極的に、いろいろ工夫してそういうものをつくってみて、いい事例について全国的にモデル事例として紹介することが必要なのではないかというふうに思います。

 障害者の雇用を促進するためには、いろいろな場でいろいろな雇用を創出するためのさまざまな工夫が必要だと思っています。特例子会社の話、きょう恐らく紹介があると思いますけれども、大企業が雇用率が上がってきたのは特例子会社が非常に発展してきているからだということも今言ったとおりでありますので、今後、そういう地域だとか工業団地だとかビルだとか、いろいろなところでの、どうやったら実雇用率を上げることができるのかということを、雇用カウントの仕方も工夫しながら、そういう研究、検討をして、全国的ないいモデル事例を出していくことが重要だというふうに思っております。

 私どもは、今回の障害者雇用促進法については、この法律をぜひ施行していただいて、精神障害者の人たちが実雇用率に算定されることで雇用が促進されること、それから、身体や知的障害者の雇用もさまざまな施策の中で雇用が促進されて、福祉就労から一般就労へということで、みんなとともに働いていくということが非常な大きな課題だというふうになっておりますので、私ども労働組合も、労働組合の立場で、同じ職場で働く仲間として努力してまいりたいと思っております。

 以上、私の意見をこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 次に、土師参考人にお願いをいたします。

土師参考人 おはようございます。

 御紹介いただきましたNPO法人障害者雇用部会並びに社会福祉法人電機神奈川福祉センターの土師でございます。このような機会をお与えいただきまして、まず冒頭、お礼を申し上げておきたいと思います。

 簡単に、私どもの法人の状況についてまずお話をさせていただきたいと思いますが、NPO法人は、電機神奈川福祉センターの雇用支援センターという部署がございまして、二年前にそこをNPO法人にしたということで、トータル的には同じところで仕事をやらせていただいております。

 私どもの法人は、設立の母体は、先ほどお話しいただきました連合にも加盟しておりますが、産業別労働組合の一つの電機連合でございまして、特に私どものおります神奈川地協は、一九七二年ですから、今から三十二年前に、労働運動として知的障害者にかかわってまいりました。その二十年の記念事業として、知的障害を持った方の就労、社会自立を目指して、先ほど御紹介させていただきました法人をつくらせていただきました。

 きょう現在で、私どもの法人から就労しております知的障害者、三百五十六人でございます。事業といたしましては、通所の施設二カ所、五十人で、百人でございます。また、神奈川県の県単事業でありまして、全国に先駆けて実施させていただいています地域就労援助センター事業、今、神奈川県下に十一カ所ございますが、そのうちの三カ所をやらせていただいています。県域と政令市であります横浜、川崎にそれぞれ拠点を持たせていただいて、先ほど申し上げました三百五十六人の障害者の就労支援、生活支援を行っております。

 特に、知的障害者が働くということ、先ほどお話もございましたが、十数年の経過があるわけでございますが、実際にその仕事にかかわらせていただいて、本当に、彼らの働いている状況について、頭が下がる思いでございます。目が輝いてきらきらして、自信を持って働いている彼らを一人でも多くふやすことが私どもの法人の役割だというふうに思っております。

 私自身も、実は平成六年に、出身の企業の中で特例子会社を設立させていただきました。もう十年になりますが、知的障害者を雇用するということを、特に大手の企業の中で雇用するということが余りない時代に、いろいろな形で実は苦労いたしましたし、悲哀をなめてきました。そのために、今の仕事の中で、特に、雇用する企業を支援するような立場といいますか、環境づくりに励んでまいりました。NPO法人も実はそうでございまして、企業が企業を支援するような環境をつくらせていただいております。

 お手元に資料を一枚配らせていただいております。

 就労ということを考えたときに、三つの要素があろうかというふうに思っております。一番大事なことは、障害なり障害者を理解し、彼らのよい部分を伸ばし、活用し、労働力として存在し得る環境をつくる、そういう雇用の場の創出が大事だというふうに思っております。今回の雇用促進法もそうでありますが、法律があって、雇うべきだけではなく、そこに血を通わせることがこの法律をよりよいものにする大きなポイントだというふうに思っております。

 二つ目は、就労支援でございます。

 先ほどの私どもの就労援助センターもそうでございますが、平成三年に神奈川県の福祉部と政令市の横浜、川崎が一緒になってつくった制度でございます。二つに枝分かれしておりますが、基本的には、今、国の制度もそうなんですが、中心となるのは障害者でございまして、障害者を就労場面や生活場面でどう支援するかという部分でありますが、上の、雇用する企業を支援する部分については、大変希薄だというふうに思っております。

 先ほど言いましたように、法律があるからということが中心になろうかと思いますが、実態をお話し申し上げますと、知的障害者がどういう環境で働いているかというと、今までは中小零細というところだったというふうに思っております。千人以上の大企業にどのぐらい働いているかといいますと、五人以上の障害者を対象として考えたときに、わずか一%強にすぎないわけですね。そういうところに例えば知的障害者を雇用しろというのは、余りにも理不尽だというふうに思っております。

 後ほどお話しいたしますが、私は、通所の施設もやらせていただいております。彼らは当然、支援費の対象になっておりますが、一人頭年間二百万の税金をいただいて支援をさせていただいております。言いかえれば、二百万円の税金をかけて支援すべき障害者である。それを雇用した経験もない企業に無手勝流で雇えというのは、甚だ遺憾に思うところでございます。

 そういう意味では、この絵にもございますが、雇用側に対しまして、どう雇用を管理するか、日本経団連の輪島さんの話もございましたが、雇用マニュアルといいますか、経団連としてもそういうものを出しておりますが、まず、どうやって雇用したらいいかというノウハウをきちっと企業側に与えるということと同時に、今企業がお持ちの仕事を雇用される障害者に新たな職域開発として与えること、この辺の支援をするということが、この促進法に血を通わせることだと思っております。実際には、一・六から一・八になって、ほとんど実雇用率が変わっていないというのは、べき論だけでは通らないんじゃないかというふうに思っております。

 三つ目は、育てるというところでございます。

 今、養護学校からの就職率というのは、長い間三〇%台にあったと思いますが、年々下がっておりまして、二二・四%だというふうに伺っています。これも毎年下がっております。また、施設からの就労は、〇・九とか八から、やっと一%をちょっと超えるところまでいっているのが実態でございます。

 資料の裏をちょっと見ていただきたいと思います。上に「施設からの就労」という絵をかかせていただいております。一番上がボーダーだと思ってください。私は、施設からの就労を考えるときに、この破線の入っています2のところ、働ける障害者が施設の中にまだまだたくさんいるのではないかと思っています。それから、3のところ、表にありますように、企業の理解と支援と育てるという、働くことを前提に育てるということがあれば、もっともっと働ける人がたくさんいるだろうと思っています。ただ、1のところ、能力はあっても施設にいた方がいい人は施設にいるべきだと思うんです。就労というのは選択肢の一つであって、施設の存在価値も間違いなくそこにあるというふうに思っております。

 もう一つ、下の絵を見ていただきたいんですが、右の方は、措置費と書いています、ちょっと資料が古いものですから。支援費で年間二百万というお金をかけて、施設での工賃というのはせいぜい一万円いくかいかないかというのが現状だと思っています。ちなみに、私のところは、ボーナスも入れて一人年間三万円程度で、それでもまだまだ低位にございます。

 その障害者が実際に左側の働くという状況になったときに、少なくとも最低賃金で雇用されるわけですから、十万を超えるわけです。でも、企業から見たときに、その上に白抜きがございますが、副人件費だとか管理費等を考えますと、十万円のお給料を払うということは、二十万円働いてもらわなきゃならない環境であるということです。ですから、一万円もらっていた障害者が十万円もらってよかったじゃなくて、その障害者は、二百万円をかけた支援環境のない中で働くんだということ。

 当然、働く障害者をどう支援するかということは、障害者を雇用するという法律の中で不可欠な要素だというふうに思っております。また、企業の方を見させていただきますと、二百万円の税金をかけて一万円しか工賃をいただいていなかった障害者に対して十万円を払うという、この大変さもおわかりいただけると思います。

 いずれにしましても、働くということを考えたときに、雇用する企業並びに働く障害者をもっと社会的に支援することが必要だというふうに思っております。

 ちなみに、三百五十人の就労者、一人二百万円を考えますと七億でございます。私ども三つのセンターで年間八千万のお金をいただいております。費用対効果を考えましても、社会的意義を考えても、大変意義深いことだというふうに思っております。

 取りとめのない話をいたしましたが、働くということに関しまして、ぜひ今回の法律改正の中に、従来の雇用すべきだけじゃなくて、実際に働く障害者、雇用する企業に対する支援施策をもっともっと盛り込んでいただきたいと思います。どうもありがとうございました。――まだ早いんですか。まだよろしいんですか。

鴨下委員長 どうぞ。

土師参考人 五分ぐらい、まだいいんですね。済みません、何かチンと鳴ったので、時間を見損ないました。

 もう少し具体的な話をさせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げました私どもの法人から昨年どれぐらいの就労をさせたのかといいますと、八十一人の就労者を出しております。三つのセンターですから二十数人ずつになると思いますが、その中で離職した方が実は二十六人ございます。この離職の内容でございますが、八十一人の当年度の就労者の中では、わずか三人でございます。あと、二十三人は、基本的には本人の事情でございます。また、経済環境の中で企業の倒産等いろいろ論議されておりますが、この二十六人の中ではわずか二人でございます。もう一つ、加齢による、就労不可能だということで引き取りましたのが二人でございます。

 言ってみれば、就労の初期的な問題はある程度、先ほど申し上げました企業の御理解、それから支援、育てるということがあれば十分対応できるんだというふうに思っています。特に特例子会社の設立にいろいろな形でかかわらせていただいておりますが、立ち上げのときには、私どもの職員を一月なり二月なり常駐させまして、企業の不安とそこで働く障害者の不安を取り除くような体制を独自でとっておりますし、その後も継続的な支援をさせていただいていますが、このようなことで初期的なトラブルが解消されていると思います。

 もう一つは、企業のニードに合わせた人を御紹介させていただくということも大事な要素だと思っています。ここで問題なのは、就労して三年、五年たった人が実はやめる機会が多くなってきている。働くことによって社会事実を知った彼らが、社会の誘惑に実は大変ひっかかるんですね。キャッチセールスだとか男女の問題だとか、一般の健常者がかかわるような問題に実は彼らもかかわります。ですから、就労を継続するためには、やはり大事なことは生活支援、企業の中だけの支援でなくて、生活支援だというふうに思っております。

 もう一つ、私どもは、先ほど言いました特例子会社の中に職員を送り込むという話をさせていただきましたが、結果的には雇用する企業さんに私どもの分身になっていただく、企業的なスタンスに加えて福祉的なノウハウをお持ちいただくということがもう一つ大事な要素だというふうに思っております。

 いずれにしましても、もう少しその三つがネットワークを組んできちんとやることによって、まだまだ多くの働ける障害者が出るというふうに思っております。

 そこで、NPO法人でございますが、今、神奈川県で二十数社の特例子会社とそれから就労援助センターの連携をとらせていただいてこの法人をつくらせていただきましたが、基本的には雇用する企業が先輩の企業のいろいろなアドバイスを受けてつくるという、言ってみれば、どう雇用を管理したらいいのか、どう会社をつくったらいいのか、就業規則だとか賃金規定をどうするかといったものも含めて、先輩企業がいろいろ支援をさせていただく。指導する職員の方も、先輩の企業で実習する、私どもも企業で施設実習するというようなことも踏まえて、指導を、かかわりを持たせていただいています。また、企業側から、こういう人を育ててほしいとか、こういう支援をしてほしいという、福祉も教育も私はそれぞれ頑張っていると思いますが、働くということ、就労ということにベクトルを合わせた形で、企業から発信するような体制をつくらせていただいております。

 加えて、啓蒙ということで、毎月雇用部会を開催いたしております。来週の火曜日も、実は百五十人の参加予定がございますが、会を開かせていただいていますが、四十回目になります。また、企業の方から、特に特例子会社の見学会、それから体験実習の受け入れ、特にこの三年間、養護学校の先生、延べで百人になろうかと思いますが、教える方、育てる側が企業で働くという経験がないとこれもまたおかしな話でございますので、特例子会社で何日か体験実習をいただいているというようなこともあわせてつけ加えさせていただいております。

 促進法の少し悪いことばかり申し上げましたが、血の通ったということの最大は、冒頭経団連の輪島さんの話がございましたが、トライアル雇用にあったかと思います。単に求職、求人で雇用が決まるのではなくて、試し雇用があって雇用につながる、しかも、三カ月の訓練、仮雇用した後、雇用しなくてもいいという条件がございますが、結果的に八〇%を超える一般就労への移行率、これはすばらしいことだと思っています。

 加えて、昨年から委託訓練の事業が展開されていますが、このことも、今後障害者が働くという視点でいえば、大変ベースとなる貴重な施策だというふうに思っています。今年度も増員の予定でございますが、さらに多くの人が、働く前に実際に企業で働くとは何ぞやということを体験していただくという、その機会を与えていただくことはすばらしいことだと思っています。

 最後に、蛇足になりますが、私どもの施設からの就労者、五十人の施設でございますが、昨年は二十一人実は就労いたしております。特に特例子会社の件もございましたが、私ども法人としても画期的なことでございます。また、職員の中には企業のOBの方が三割入っております。実際に企業で仕事をやってきた人たちが福祉の職員として、指導員として福祉にあるということも、先ほどの成果につながるもとだというふうに思っております。

 いずれにしましても、障害者が働くということ、当然、憲法で働くということが義務化されているわけでございますが、全部が働くというのじゃなくて、可能性のある方にきちっとしたチャンスを与えるということが大事だと思っています。働くということは選択肢の一つだというふうに思っております。

 長時間どうもありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 次に、竹中参考人にお願いいたします。

竹中参考人 皆さん、おはようございます。

 プロップ・ステーションの竹中ナミこと、ニックネーム、ナミねえといいます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、自分が重症心身障害の娘の母ちゃんとして、雇用とかの中身の細かい部分じゃなく、考え方の根っこみたいなところをお話しするお時間をいただきたいと思っています。

 実は、衆議院でお話をさせていただくのは昨年に引き続いて二回目です。昨年の二月に衆議院の予算委員会公聴会というところで発言をさせていただき、三月には参議院の国民生活・経済に関する調査会の方でも発言をさせていただきました。そして、ことし、またここで私の意見を述べさせていただけるということ、大変光栄に思っております。なぜならば、この国会という場は、日本国民から委託を受けられた多くの国会議員の皆さんが、日本の国の国柄をどのようにするべきかということを議論される場所であるからです。その場所で私が意見を言わせていただけるということは、非常に貴重な時間であり、光栄なことだと思っています。

 今も言いましたように、私は、三十二年前に大変重症の脳障害の娘を授かりました。そのときに出会ったお医者様が、どのように元気に育てていったらいいか教えてちょうだいと言う私に対して、お母さん、こんな子を産んだんあんたのせいちゃうんやから、元気出すんやで、頑張るんやでという励ましの言葉をくれました。私の父は、つまり彼女のおじいちゃんですね、父は、おまえがこんな子を育てていくのは大変やろうから、わしが今この孫を連れて死んだるわとか言いました。

 つまり、障害を持つこと、とりわけ重い障害を持つことはそのようなものなんだなと。かわいそうで大変で不幸で、それに尽きる存在なんだな、しかも、そういう人を抱えたと言われる家族も不幸なんだなと。ほんまか、ほんまにそれでええんかと私は疑問を抱きました。なぜならば、もしその言葉を認めてしまったら、私は、彼女を一生懸命育てていく、愛していく元気もなくなるわけですね。まして、自分ももし彼女と同じような状態になったら、それは病気でなるか年齢がいってなるかわかりませんが、そのようになったときに、同じように社会から、気の毒でかわいそうで実は存在していなくてもいいんだというような自己否定につながってしまうわけです。こんなことがあってもええのかなと私は思いました。

 ですから、私は、彼女の存在だけではなく、障害を持つと言われる状況の人たちの存在が、社会のメーンストリームで堂々と生きていけるような、その尊厳が認められるような道を自分自身で探ってみたいなと思ったわけです。そうしたときに、たまたま十五年ほど前、このプロップの活動を始めたときなんですが、パソコンとパソコン通信というような道具が日本にも上陸といいますか、少し普及を始めました。

 そのときに、私は、全国の大変重度の障害を持つ方々にアンケートをとらせていただいたんですね。もし皆さんが大変重い障害を持っているけれども働きたいと思われたときに、これからはどんなものがそのための役立つ道具になると思いますかというアンケートでした。もちろんこれは、あなたは働きたいですかという質問も最初についていたわけですが、もし働きたいと思ったならばというこのアンケートに、多くの障害を持つ人たちが、私たちも障害が重いけれども働きたい、人から支えてもらいながらでも支える側にも回りたいのだというのが一つでした。もう一つは、これからは恐らくコンピューターや通信という技術が自分たちの働きをバックアップするんじゃないかというふうにそのアンケートに書かれていました。

 私は、目からうろこといいますか、アンケートの回答の八割ぐらいの方がそのような御意見だったものですから、これだけの方が働く意欲を持たれているにもかかわらず、それがなし遂げられていないということと、そのために彼らがコンピューターのような科学技術、そういうものに期待をされているということを知って、ぜひ、私たちが始めるこのプロップ・ステーションの活動では、人の心の応援だけではなく、具体的に道具も活用して、しかも最先端の科学技術なども活用して、その人たちの中の眠っている力、あるいは眠っていると思われている、それは社会からも思われているかもしれないし自分も気づいていないかもしれないですけれども、そういう力を全部引っ張り出すような、そしてそれを仕事につなげていくような活動を始めようということで、このプロップが発足したわけです。

 おかげさまで、大変なスピードで、他の業界と違ってこのコンピューター業界というのは、この十数年、ドッグイヤーとか言われます、最近はマウスイヤーとも言われるそうですが、非常な進展を遂げました。おかげさまで、プロップ・ステーションを通じてコンピューターを学びお仕事をできるようになった障害を持つ方が、次々と世の中に自分の力を仕事という形で発揮をするようになってきました。

 例えば一人、例を申し上げますと、ある難病の、大変重い障害の女性がいらっしゃいました。彼女は、ウェルドニッヒ・ホフマンという大変珍しい難病で、筋肉の難病なんですね。ですから、全身の筋肉の力が抜けてしまうんです。ところが、彼女は絵をかくことが大好きで、しかも、子供のときから外で遊べなかったので、お母さんが読み聞かせてくれる絵本によって自分の人生を豊かにしてきたという彼女でした。彼女は、自分が絵をかくことが好きなので、いつか自分も絵本作家になって、後に続く子供たちに、自分が絵本から学んだことと同じように人の温かさとか楽しさというものを伝えたいなと思ったんですね。

 ところが、彼女は、車いすに座って絵をかかれるんですけれども、その車いすに自分の自力だけでは真っすぐ座っていることができない。全身をコルセットで固め、なおかつ頭までまくらのついたような車いすに乗って、その頭から二センチ、まくらから自分の頭が二センチずれても自分では起こすことができない。まして、絵筆を持つときに絵筆を持たせてもらって、お水をだれかにくんできてもらって、主にお母さんがおうちでかかれるときはサポートされたんですけれども、お水をくんできてもらって、そしてチューブをひねり出してもらって、自分の思いどおりの色が出るまで、もうちょっと白を入れて、赤を入れてという形で、そして、手が動く範囲が限られますから、大きな絵をかくときは画用紙を回してもらって、それでも彼女は、一生懸命自分が制作をしたいという思いで絵をかいておられたわけです。

 ですけれども、彼女がプロップ・ステーションのコンピューターのセミナーでグラフィックソフトと出会いました。彼女は、大好きな絵をこのグラフィックソフトによって思い切りかけるようになったわけです。まず、わずかに動く手をマウスの上に乗せてあげさえすれば、あとは自由自在に色も瞬時に変えられる、あるいは失敗しても瞬時にかき直せる、あるいはどんな大きな画面もマウスによって画面の方が自動的に動いていく、そういう形で、彼女はすばらしい才能でぐんぐん絵の作品をかかれるようになりました。

 今、既に彼女はプロの絵本作家になりました。二冊の絵本が出ました。それどころか、昨年は、プロップ・ステーションが仲介機関として、さる化粧品会社から依頼を受けたカレンダーのお仕事を、一年分のカレンダー、十二枚の絵をかかれるというお仕事をされました。もちろん、彼女自身がカレンダー会社とシビアなやりとりができるわけではありません。私たちは、そういうときのバックオフィス機能もとります。つまり、その人ができることは、その人のできる分量、そしてその内容を働く形にするということなんですね。そして、私たちのやることは、それを仕事につなげるさまざまな方策を生み出すということです。

 私たちは、彼女の絵が非常にレベルが高いものであること、もちろんこれは見ていただいたらわかるんですが、そして同時に、彼女の絵がたくさんの人の心を打つものであることということをその化粧品会社の方とお話をし、説得をし、彼女の今までかかれた絵を見ていただいて、そして、いわゆるプロのアーティストと変わらない金額で彼女のカレンダーの絵を受注することができました。

 おかげさまで、全国のその化粧品会社の代理店の方が彼女の絵に非常に感動をしてくださって、こんなにたくさんお客様から求められたカレンダーは初めてであったということで、実は、また来年のカレンダーのお話もちょうど数日前に始まったところです。そして彼女は、そのカレンダー会社のプロフェッショナルの一流のクリエーターの方と今自宅で打ち合わせをしながら、来年のカレンダーに向けて制作を続けておられます。

 彼女がもしコンピューターと出会わなければ、あるいは仕事のコーディネーションをする私たちのような組織と出会わなければ、あるいはプロフェッショナルの彼女の実力を見抜くことのできるプロフェッショナルの人と出会わなければ、彼女は大変重度のかわいそうな全面介護の障害者でいたと思います。ですけれども、今彼女は堂々と働く人として存在しています。

 同時に、すごいことは、彼女がお仕事をされる何時間の間は、介護をしていたお母さんも自由な時間を得ることができるようになったということなんですね。今までは、お母さんがそばにいなければ、二十四時間だれかがそばにいなければ、彼女は生きていけないとかつては思っていたわけです。ところが、彼女が自分の力によって何時間かでも自分のできることを世の中へ発揮する、しかもそれが収入につながるという状況になったときに、家族の介護の量あるいはその関係性までが変わってきました。このようなことがプロップ・ステーションではたくさんのたくさんの方に起こりました。

 今お手元に置かせていただいています三枚ほどの私の資料の二枚目からが、実は霞が関の各省あるいはさまざまな自治体と私が連携させていただいたり、あるいはプロップ・ステーションが共同でやらせていただいていることなんですけれども、おかげさまで、例えば、昨年から国土交通省では自律移動支援プロジェクトといって、日本のITの最高の技術を使って、どんな障害の方も高齢の方も、あるいは外国から来られて日本語がわからない方もあるいは子供さんも、そういう人たちも、IT技術で自分が今いる場所がどんなところで、自分が行動をして目的に向かって移動することを、全部そのITが導いてくれる、携帯端末が導いてくれるというような事業も始まりました。

 これは国交省、一つの省といいますけれども、道路、鉄道、港湾、住宅政策、すべての局がこのプロジェクトに入って動き出したという、本当の意味でハードからソフトに国土交通省が転換されたユニバーサルな取り組みであろうというふうに思っています。

 それから、総務省では、私、総務省の情報通信審議会という方にも参画をさせていただいているんですが、情報通信、つまり、インターネットのような新しい科学技術がどれだけの人の力を世の中に発揮させることができるのか。そして、その人が会社へ通うことが、あるいは仕事場へ通うことが無理であっても、仕事がその人の手元に来る、そして、その人が最も働きやすい環境の中で、自分の体を傷めない状況で、自分の身の丈に合った働き方で社会を支える一員に回れるというような働き方について、総務省とも今、さまざまな実証実験を行ったり、議論を続けさせていただいています。

 そして、今、厚生労働省では、障害者自立支援法ということで、一人一人の人が、決してマイナスのところだけに着目をされて、あんたはここができへん、ここがあかん、ここが無理な人やねんというのではなく、あんたはここが無理かもわからへんけれども、きっとこんな力はあるよね、それを引き出せる制度にしていこうね、日本にしていこうねという法律に今なりつつあります。私は、この法律に変わりつつあることを大変うれしく思っております。

 例えば、日本の国内だけを見ていたらわからないんですけれども、既に、アメリカやスウェーデンでは、四十年前に、ある意味福祉を通じて国柄を変えました。それはどんなふうに変えたかというと、弱者というものが厳然と存在をして、その弱者には社会が税なりでお手当てをするのだという考え方から、弱者を弱者でなくしていくために使う予算をある意味福祉と呼ぼうじゃないか、それを福祉政策と呼ぼうじゃないかと。そして、本当に弱者と呼ばれる極めて一部の人たちをもみんなで守っていこうじゃないかというふうに考え方を変えたわけですね。

 例えば、アメリカでは、四十年前というのはケネディが大統領に就任しました。一九六一年の二月でしたけれども、ケネディが大統領に就任をされて、最初に議会に提出した教書の中で、彼は、すべての障害者を私は納税者にしたい、タックスペイヤーにしたいとその社会保障の項目の中で書きました。

 これはどういうことなのかと、私は、初めはその意味がわからずに、不審に思ってバックボーンを調べたわけです。そうすると、ケネディ家には、妹の知的障害のローズマリーさんを初め、何人かの重い障害を持たれる方が親族におられた。そして、ケネディは、その人たちが、障害を持つ人たちがアメリカ人としてどんな低い位置に置かれているかということを知った上で、この言葉を初めての議会に出したわけですね。つまり、この人は障害があるから働くことは無理やねん、タックスペイヤーになんかなれへんねん、社会を支える一員にはなれないねんというふうに決めつけることが差別なんだと。彼らを堂々たるタックスペイヤーにしようという意思を国家が持たねばならない、国家が持たねばならないというふうに彼は発言をしたわけです。

 そして、アメリカはさまざまな法律を整備し、お父さんのブッシュ、パパ・ブッシュのときには、アメリカンズ・ウィズ・ディスアビリティーズ・アクトという、どんな障害を持つアメリカ人であっても、障害を持たないアメリカ人と同じように社会に参画し、タックスペイヤーになる権利を平等に持つのだという法律もつくり上げられました。スウェーデンでも約四十年前に、同じような考え方から、弱者を弱者でなくしていく制度というものに切りかわってきました。

 残念ながら、日本ではまだ、その根っこのところ、根幹のところが変わっていません。やはり彼らは無理なんだろう、無理なところがあるだろう、不可能なところがあるじゃないか、そういう目線で、マイナスのところだけに着目をする福祉。ただ、マイナスのところに着目をして、温かい気持ちで接する、あるいは手伝おうとする努力をする、何らかのげたを履かせてあげねばならない、これはもちろん重要なことで、これを否定するものではありません。ですけれども、履かせたげたの上に自分で積んでいくチャンスのない国、これが今の日本なんですね。

 アメリカもスウェーデンも、多くの国々がその上に積むチャンスを、自分でリスクを幾分かとってでもその上に積むチャンスというのを国策でたくさんつくってきました。私は、今、厚生労働省がそのような政策に転換していっていただけるのだというふうに信じています。

 ぜひ、きょうこの私のお話を聞いていただいたすべての国会議員の皆さんが、どの政党であれ、障害者はかわいそうと思っていることにおいては恐らく私は変わりがないんだと思います。ですから、すべての政党の皆さんがここで一斉に、そうではない、可能性の方に着目をしてみよう、それを引き出してみる制度をつくろうじゃないかというふうに団結をしていただけることをきょうは心からお願いをしたいと思います。

 ということで、竹中ナミ、ナミねえのお話を終わらせていただきます。きょうは本当にありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 次に、高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 皆さん、おはようございます。

 先ほど御紹介いただきました藍野大学の高橋でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。

 私は、精神科を専門とする医師でございます。平成七年から国立精神・神経センター武蔵病院の院長として、それから平成十年からは五年間そのセンターの総長として勤務いたしました。そういった公的な立場にいる人間として、国の精神保健福祉医療施策の検討にも長いことかかわってまいりました。そういった立場から、今回の障害者自立支援法案並びに障害者雇用促進法改正案の意義について、考えを述べさせていただきたいと思います。

 平成十四年のことでございますけれども、社会保障審議会の中に精神障害分会というのができまして、そこで一年間「今後の精神保健医療福祉施策について」という検討をいたしました。そのとき、私が座長役を仰せつかったわけでございますけれども、このときに初めて、この種の検討会では初めてでございますけれども、精神障害者の当事者の方が参加されました。そういう意味では、非常に記念すべき検討会であったわけでございます。

 その検討会の報告書の内容を受けて、平成十五年の五月に、厚生労働省の精神保健福祉対策本部が中間報告をまとめました。そこでは、精神疾患に関する正しい知識の普及、そして精神病床の機能分化、さらに地域生活支援のあり方、この三つの大きな課題が提起されまして、そのそれぞれの課題ごとに検討会が組織されました。さらに一年間をかけて検討してきたわけでございます。その検討会にも合計五人の当事者の方が参加されて、大変説得力のある意見を述べられておりました。その検討会の成果が精神保健医療福祉改革のビジョンとしてまとまって、さらにそれが改革のデザインにつながる、そして、最終的には障害者自立支援法が誕生したという次第であります。

 その間、二〇〇二年の七月から二年間、精神障害者の雇用促進等に関する研究会というものを組織されまして、私が座長を仰せつかりました。その検討の成果が、今回の障害者雇用促進法の改正にもつながっているんだろうと考えております。いわば、それらの三年間かけて検討した成果の集大成がこの二法案に集約されている、そのように私は認識しているわけでございます。

 その検討の過程の中で、我が国の精神保健福祉に関する大きな課題、大きな項目が示されました。御存じのように、我が国精神保健医療福祉、これは大幅におくれたものでございます。国際的に見ましても、他の障害と比べてみましても、大変おくれたものでございますけれども、それを一歩でも前進させる、そのためにはたくさんの克服すべき課題がございます。そういった課題の中で、私は七つの課題が特に重要だろうと考えました。

 まず第一は、約七万人と言われる、受け入れ条件が整えば退院が可能な入院患者さんの社会復帰でございます。我が国の精神科の病院の入院患者数の多さ、精神病床の多さというのは、これは国際的にも批判されるほどのものであります。これは皆さん方も、先生方も御存じだろうと思います。まずこの課題の解決が必要である。十年間をかけてそれを実現する、そのために社会復帰施設をつくり、精神障害者の福祉施策を進める、充実させる、これが第一の目標でございました。

 第二には、身体、知的、精神の三障害の一本化ということでした。これは、障害種別を超えて個人の尊厳が重んじられ、社会を構成する一員として社会参加の機会がすべての障害者に与えられる、その障害者基本法の精神を生かすものでございます。さらに、精神障害におきましては、身体、知的の二障害に比べて、その福祉施策というのは大きく立ちおくれておりました。精神障害は支援費の対象にもなりませんでした。そのようなおくれを取り戻すためにも、三障害の一本化は重要な事柄でございます。それが今回の自立支援法によって実現しようとしているわけでございます。

 第三の課題は、市町村が福祉サービスを提供することの義務化でございます。

 障害福祉計画を立てることが市町村の義務ということにはなっているわけですけれども、実際は、精神障害者では、障害福祉計画の中で具体的な数字目標を立てている市町村というのは三割程度というふうに聞いています。多くの市町村がまだその具体的な数値を示すことができないわけでございます。これが我が国の精神障害者の福祉施策が進展しない大きな理由の一つであるということは、検討会の多くのメンバーからも指摘されました。このことも、今回の自立支援法によって初めて実現するのではないかということが考えられます。

 第四番目は、ケアマネジメントの制度化ということであります。

 精神障害者の地域生活を支援するためには、ケアマネジャーの直接サービス、すなわち、常に障害者を見守っている、そういうケアマネジャーがいて、その当事者の方々のニーズに沿った総合的なサービスを提供していく、これが非常に有効であるということが示されております。しかし、それが制度化されませんと、普及してまいりません。こういう点からも、今回の自立支援法への期待が大きいわけでございます。

 第五番目には、いつでも相談できる、病状が悪化すればいつでも医療サービスを受けられるといった相談システム、救急のシステムであります。

 御存じのように、精神障害の特徴としては、障害と疾病が共存しているということが一つの特徴でありまして、非常に状態が不安定になりやすい。病気の症状が悪化するときには、その前兆、すなわち不安であるとか不眠とか落ちつきがなくなる、こういった症状が出てくるわけでありますけれども、それが初期の段階で適切な援助が得られれば軽症で済んでしまいます。単に心配なときに、不安なときに相談する相手がいるということだけで随分と違ってくるわけです。そういった緊急のときの相談あるいは救急システム、これが必要なわけであります。

 それから、第六番目は就労支援です。

 精神障害者も、症状が改善されれば就労可能になります。そのような障害者は現在数多くおります。ハローワークに登録されている精神障害者の数は、年を追って増加しております。しかし、実際に就労できる精神障害者の数は、ごく限られたものにとどまっております。就労支援の事業も次第にメニューが多くなっておりますけれども、しかし、なかなか一般雇用に至りません。

 その原因の一つが、精神障害者が雇用義務の対象になっていないということであります。この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、二年間、研究会をつくって検討いたしました。そこで出した結論が、精神障害者を雇用率の中にカウントする、雇用の義務対象とはまだしない、次のステップとしてそれを見込むわけでございますけれども、まずは実雇用率にカウントするということでした。それは、企業の中に既にたくさんの多くのうつ病を中心とした精神障害者が存在しています。その問題の解決のために、在職精神障害者を雇用している企業への援助、そして在職精神障害者への援助、そういったものを行いながら、さらに新規の精神障害者の雇用を促進する方策、こういったことがよかろうという結論を出したわけであります。それが今回の障害者の雇用促進法の改正案につながっているわけですけれども、これによりまして精神障害者の雇用が進めば、障害者もそれを支援する者にも大変大きな力になるだろうと思われます。

 第七番目の目標、これは非常に大きな目標なんですけれども、精神障害あるいは精神疾患の正しい知識の普及ということです。それによって精神障害に対する誤解や偏見を減らそうということであります。

 現在でも、精神障害者に対する無理解や誤解から、精神障害者の施設をつくったりあるいはグループホームをつくるといったときに、住民からの反対があってそれがかなわないということが多々あります。受け入れ条件が整えば退院可能な約七万人の方々の社会復帰を進める上でも、地域で生活する精神障害者が安心して生活ができるためにも、こういった偏見をなくしていかなければなりません。

 この問題を検討した検討会では、心のバリアフリーを目指してという報告書をまとめました。その趣旨は、精神疾患・障害は生活習慣病と同じようにだれでもかかる可能性がある、だから自分の問題として受けとめてほしい、そういうメッセージを送って、かつ、精神障害者が努力しているということを認めて、受け入れて、そしてノーマライゼーションを実現するためにみんな力を合わせていきましょうという呼びかけを行っております。

 このような一般の理解を進めるためには、一般住民の方々が精神障害者と接して、彼らをよく知る、よく理解するという機会が必要でございます。そのためにも、精神障害者が地域の中で普通に生活ができるということが重要ですが、私は、今回の障害者自立支援法が成立し、雇用促進法が改正されて、それらが有効に運営されて、精神障害者の社会参加が進んで、それによって障害者に対する理解が進むこと、さらには偏見が是正されることを願っています。

 以上、精神保健福祉の施策に関する検討の中で挙げられた七つの大きな目標についてお話ししました。これらの目標のうちの多くのものが自立支援法と障害者の雇用促進法の改正によって実現される可能性が出てまいりました。したがいまして、全体的に見まして、障害者自立支援法とこの雇用促進法の改正というのは、精神保健福祉の立場から見ますと非常に歓迎するものである、ぜひこれが実現することを願っているわけであります。

 しかしながら、まだ不透明な部分も残されております。骨格ができ上がっても、その肉づけにはこれから多くの努力、工夫が必要だろうと思います。その中で最大の問題は、財源の確保と人材の確保だろうと思います。利用者がこれからますますふえると思われますけれども、その財源の確保の努力がこれからなされなければいけないと思います。福祉の本来の姿である、国民がお互いに支え合うシステムを早くつくって、国民の理解を得てそういうシステムを早くつくり、財源を確保する努力、これをぜひお願いしたいと思うわけであります。

 それから、地域生活の支援、とりわけケアマネジメントや就労支援を行うためには、人材が必要であります。とても今の人材では不十分だろうと思われます。このままでいきますと、これまでにもあった市町村格差がますます大きくなる可能性がある。そのためにも、すぐれた人材の育成確保ということが急務でありますので、その点も十分に国が責任を持って果たしていくことを強く望みたいと思います。

 さらに、精神障害分野に関係する者の不安としては、懸念としては、障害程度区分の認定とケアマネジメント制度がいかに行われるかであります。これからのこの法律で、もし法律が成立していろいろな障害区分が認定される場合に、支援費制度あるいは介護保険、そこで使われていたような手法がそのままに使われますと、精神障害の障害の特性というものが把握されません。したがって、それが把握できるような新しい仕組みをぜひつくっていかなければなりません。試行事業としてそういう試みがこれから行われるということでございますので、そこでは十分な工夫と検討をして、精神障害者が適切な認定が受けられるような、そういったシステムづくりをしていただきたいと思います。

 それからもう一つは、ケアマネジメントの実施でございますけれども、精神障害者にとって望ましいケアマネジメントというのは、実際にケアマネジャーがその人のニーズを十分に把握して、それに寄り添う形で、いつでも困ったときに相談に乗れるような形でその利用者のニーズを把握しながらケアマネジメントを進めることでございます。現在の介護保険などで行われているケアマネジメントでは多分精神障害者にとっては十分ではない面があるだろうと思います。そういう面から、精神障害者にも十分に有効である、そういったケアマネジメントのシステム、そしてさらには人材の確保、これが利用者に安心感を与えるケアマネジメントと思いますので、そのようなものが行われることを強く望みたいと思います。

 それからまた、今後、障害者自立支援法が成立して、それが運用された際には、その制度の有用性について定期的に再評価し、見直しを行い、正すべきところは正し、真に障害者が自己実現に向かって希望を持って進むことができるような仕組みをぜひつくっていっていただきたいと思います。そして、この法律が適正かつ有効に運営されまして、障害者の福祉が大いに前進して、ひいては障害のある人もない人も同じように地域で生活するという、いわゆるノーマライゼーションの理想が実現することを念じております。

 まとめとしてですが、この二つの法案が成立し、今後適切な運用がされて、これまで残されてきた多くの精神医療、福祉の課題が解決されて、そして精神障害を持った人たちが地域で安心した生活が得られる、そのための第一歩となる、そういう可能性を十分に示した大変重要な法律になるだろうと期待しております。そのような重要な意味のある法律と思われますので、ぜひ、先生方の御議論の上、これを成立させるよう努力していただきたいと思います。それを念じて、私の意見表明とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

鴨下委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小西理君。

小西委員 おはようございます。自由民主党の小西理でございます。

 参考人の皆様方におかれましては、貴重な意見の開陳に心から感謝を申し上げたいというふうに思っております。なかなか深く難しい問題でございますので、十分な質問をさせていただけるかどうかわかりませんけれども、心の思うところを述べさせていただき、また御意見を伺いたい、このように思っております。

 まず一点目なんですけれども、今回、障害者の自立支援ということなんですが、テーマとして、やはり所得の確保というのが何をおいても基本になってくるんだというように思っております。

 そういう中で、ちょっと輪島参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、福祉的雇用から一般的雇用へというお話を賜りましたけれども、雇用者の意識の改善というのはなかなか難しい問題だというように思っております。我が国も非常に厳しい競争環境に置かれておりまして、大企業はいざ知らず、中小企業においては非常に厳しいたたき合いが現実に行われており、なかなか余裕がないと、障害者を雇用しようという本音はあっても、本音と建前が食い違ってきて、建前はあっても本音のところで、やはり長谷川参考人の資料が示すように、中小企業を含めて非常にしわ寄せを受ける立場にあるのではないかなというように思っております。

 海外においては、もうからない会社があると、私は前から思っておるんですけれども、会社をたたんで次の事業に行く。日本の会社は、もうからないとみんなで頑張る。そういう体質があると、どうしてもついてこれない方がしわ寄せを受けてしまう、こういう企業の体質があるのではないかと思います。

 私なんかは、サービス残業などを撲滅し、企業の体質を改めていくというのが広い意味で障害者の対策にもつながっていくものだと思いますけれども、こういう企業経営者の意識の改革について、どういう考え方、また施策というのを経団連としまして持っておられるのか、お聞かせいただけたらありがたいと思います。

輪島参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど長谷川参考人から資料がございましたけれども、実雇用率の推移というものが二ページ目に示されております。

 先生御指摘のとおり、一・八%の雇用率が課せられているわけでございますので百人に対して一・八人を雇用しなければならない、それを割り戻しますと五十六人以上の規模から一人雇用しなければならないというふうに制度上なっているわけで、そこで、お手元の統計資料で五十六人から九十九人という規模区分が出ております。平成五年の二・一一という雇用率から、直近では非常に落ち込んでいるということでございます。

 ただ、全体といたしましては、昭和五十四年の一・一二から一・四六というところまで上がってきているわけでございます。昨年の一・四八から一・四六と実雇用率が落ちたのは、前回の平成十四年の障害者雇用促進法の改正で除外率制度が一部改正をされた影響を受けまして一・四六ということで下がっておりますけれども、もし前回の法改正がなければ一・五〇というところまで実は雇用率が上がってきたというのが厚生労働省の発表資料に示されております。

 そういう観点からいいますと、全体的には直近でも非常に厳しい経済情勢ではありますけれども、障害者雇用という観点からいきますと、企業全体の意識といたしましては着実に進展をしているのではないかというふうに考えております。

 また、同じ資料でございますけれども、これは厚生労働省で、今ほどの資料と同じところで発表されている第一表というところに一般の民間企業の数が出ております。一・四六に落ちてはおりますけれども、実際には、雇用されている障害者の数ということになりますと二十四万七千九十三人から二十五万七千九百三十九人ということで、実雇用率は一・四六に落ちましたけれども、数としては一万八百四十六人ふえているというのが直近の状況でございます。

 そういったことで、企業側はある意味ではまだまだ努力が足りないというふうにおしかりをいただく部分もありますけれども、着実に努力をしている成果だというふうに思っております。

 私どもといたしましては、そういった企業の努力に支援をするために日本経団連の中に障害者雇用相談室というものを設けておりまして、企業側の実際の雇用のさまざまな悩みにつきまして御支援をする仕組みをつくっております。そこで、先ほど土師参考人からも御披露がありましたハンドブックであるとかQアンドAとかというようなものを参考につくらせていただいて、資するように努めているということでございます。

 以上でございます。

小西委員 どうもありがとうございました。

 我々もまたともに努力させていただきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いしたいと思います。

 それから、次はちょっと飛ぶんですけれども、長谷川参考人にお伺いしたいと思います。

 実際、精神障害者の在職時の発症なんですけれども、私も周りでいろいろ経験をしてまいりました。そういう中で、一たん発症すると、現実には、いろいろ会社は制度を整えているんですが、なかなか職場への復帰というのは難しいという現状があろうかと思います。

 何例かあるんですけれども、ここに先ほどおっしゃいましたように子会社へ出向して復帰した例とかありますけれども、往々に大体若い方というのはもう会社をやめていかれる、そしてみずから起業する、親を頼る、そういう方が多いと思います。

 そういう中で、実際メンタルヘルスケア等をいろいろやっておられるんですけれども、具体的に、これは僕の認識が間違っていれば申しわけないんですけれども、やはり利用していく方が少ないように思うんですが、その辺を推進していくような手だてとして何かいいことがあれば、お聞かせいただければと思います。

長谷川参考人 最近職場の中に、自律神経失調症とかうつだとか、そういういろいろな心の病気を抱える労働者が非常にふえているわけです。

 大体、そういう労働者が自分で病院に行って、そういう病気だとなると、先生の御指摘もあって、働きながら治療を継続しようということで、総務だとか人事担当と相談して、短時間勤務をやるとか、それから今いた職場からもっと別な職場に配置転換するとか、そういう努力はしているわけですが、先生御指摘のように、三カ月とか四カ月してもなかなか治らないとなってくると、自分たちで退職していく。退職後、新しい職場を見つけることはなかなか難しいというのが現実だと思います。

 しかし一方で、厚生労働省が総合対策、メンタルヘルスケア対策の指針を出して以降、各企業における取り組みが強化されております。使用者も事業主も努力しておりますし、それから私たち労働組合も努力しているわけですが、この病気はみんなかかるので、やはりその予防のための努力をしましょうということで、職場の中では、メンタルヘルスケアの一つとして予防対策のための研修会だとか勉強会だとか、そういうことが活発に行われております。

 また、人事担当を行う者に対する事業主の管理者としての教育なども広く行われておりまして、そういう意味では、以前よりそういう企業の対策は強化されているというふうに思っております。

 私が先ほど心配したのは、指針ができて以降、企業の中においてメンタルヘルスケア対策がとられてきて、その症状によっていろいろな対応も企業によってさまざまなんですが、福祉手帳を交付することで企業は実雇用率が上がっていくわけですが、そのことによって、メンタルヘルスケア対策が今まで着実に進んできたものがとまってしまうのではないかという心配をしているわけです。

 したがって、障害者にならないといいますか、そういう病気にならないような労働時間のあり方だとか、それから暮らし方だとか、仕事の仕方だとか、そういう総合的な予防対策を一方で行いながら、もう一方では、そういう障害になった人に対する支援だとか措置だとかというものを両方行っていくことが必要なのではないかというふうに思っています。

 いろいろな現象がありまして、必ずしも全部うまくいっているわけではありませんけれども、かつてから比べたら、ガイドラインが出て以降は、メンタルヘルスケアの対策については企業も努力していると思いますので、さらにその努力を積み重ねていくことが必要だというふうに思っております。

小西委員 どうもありがとうございます。

 ちょっとあっちこっち行って申しわけないですけれども、土師参考人にお伺いしたいと思います。

 私も、地元で、どちらかというと重度の知的障害者の職業訓練をしておられる方がいらっしゃるんですけれども、その方が言うには、製造業での訓練というのは非常に難しい。実際の施設で訓練をしても、工場に入ったときに、ジョブコーチといいますかアシスタントがずっとついてやっていかないとまたもとに戻ってしまう。結局、品質がばらついてしまってなかなか商売になっていかないので、送り出してもなかなか難しいんだと。考えた末に、できる職業として、ホテルのアシスタントサービスであるとか介護の補助であるとか、そういうものをやって、本当に一人前に働けるようなものをこれからやっていきたいんだというようなことをおっしゃっていたわけなんです。

 私も全貌を十分つかまえているわけではないんですけれども、そういう意味で、これから知的障害者の職業訓練をしていく上で重点的に考えておられるような内容であるとか方向性というのがあれば、お聞かせいただければというふうに思います。

土師参考人 まず、企業がどういう人材を求めているかといいますと、これは実習だとか訓練を受けた企業さんからの話でございますが、基本的には、明るくて元気で素直ならいい、仕事は企業が教えると。

 先ほど御説明しなかった一番最後の絵がございますが、この絵は何を言わんとしているかというと、よく、これから障害者を雇用しようという企業さんが、知的障害者は何ができるんだということをお聞きになる場合が多いんですが、私は、何ができるかじゃなくて何をやらせられるかということが問題であると。

 この絵は何を言わんとしているかというと、一番下に黒塗りがございますが、もともと雇用する対象者は障害者であり、業務遂行能力からいえば低いわけですね。当然、企業が障害者雇用をするとすれば、一定のペイラインまでどう乗せるかということ。この絵で言いたいのは、雇用される障害者は仕事を選べないんですね。ですから、先ほども申し上げましたけれども、雇用する企業側にそのノウハウといいますか、いかに自分が雇う障害者が仕事をできるような環境をつくるかというところがポイントだというふうに思っています。企業が雇用した責任だということじゃございませんが、少なくともそういうことであるということを一つ申し上げておきたいと思うんです。

 もう一つは、少し余談になるかもわかりませんが、福祉や教育と雇用と何が違うのかといいますと、福祉や教育は、障害者の持っているハンディの部分をどう是正するかというところにポイントがあるかと思うんです。企業は、必然的にこうなるというとちょっと語弊があるかもわかりませんが、実際に給料を払うわけですから、その分働いてもらわなきゃならない。ということは、その障害を持っている採用した方のいいところをどう伸ばして結果に結びつけるかというのは企業本来のものだと思うんです。

 そこで、先ほど来申し上げましたが、私はどちらかというと、漠然とした形でどう訓練するかじゃなくて、今回、昨年度から展開しております企業に出す委託訓練とかそういう実践の場で、一人一人の障害を持っている方の可能性をより多く求めて、その中で、できれば雇用につながるということがより大事なポイントだというふうに思っております。

 以上です。

小西委員 どうもありがとうございます。

 竹中さん、いつもお世話になっておりますけれども、竹中さんに聞くのではなくて、まさにおっしゃるところ、一人一人のいいところを伸ばして、それで道を見つけていくというのはまさにそのとおりだというふうに私も思っております。

 そういう中で、今お話を伺っていきました中で、いわゆるコンタクトといいますか出会いといいますか、絵本の話を伺いましたけれども、いろいろな方と障害者の方が出会い、触れ合うといいますか、意思を疎通し合う機会というのがすごく大事なんだなと思います。パソコン通信の話がありましたが、それ以上にいろいろな各界の専門の方と触れ合うことというのは非常に大きいんだろうというふうに思います。

 そういう中で、輪島参考人と長谷川参考人にお伺いしたいんですけれども、そういう支援ネットワークみたいなものを経団連なり連合なりで何かできるといいななどと私も思ったりするわけでございますけれども、その辺、お考えはいかがなものでしょうか。

輪島参考人 私どもは今、東京地区で、東京の雇用というようなものをどのように考えていくべきなのかということを検討しておりまして、そういう意味で、東京労働局と私どもと福祉の関係者と、プロジェクトというようなことの表現でございますけれども、月に一回会議を開いておりまして、東京の取り巻く環境というようなものから実際に支援のあり方というものがどのように行われていくことが結果としてよい方向に向くのかという議論をしているところでございます。

 そういったところで、深くこれからいろいろなネットワークを広げていってやっていくことが重要なのかなと思っております。また、労働組合とも一緒にできることは非常に大きいのかなというふうに思っております。

 そういったところからいいますと、やはり特例子会社をつくる、それから、そこの職場をどのようにサポートしていくのかというのは、経営と労働の表裏一体の関係の中でやっていけることなのではないかというふうに認識をしております。

 以上です。

長谷川参考人 先ほど私の方から就業支援のためのチームについてということで人材の育成だとか確保の話を申し上げましたが、労使がどういう場面で協力するかということでありますと、日常的には職場の中で、労使は労使協議を行っておりますから、障害者に対してどのような受け入れをするかとか、どういう体制をとるのかというのは、現場、事業所の労使はそういうところで接点があるんだと思うんですが、それ以外に地域とどうするのか。

 今般、精神障害者も実雇用率に入ってくるわけですが、そのときに、企業、事業所と地域の体制がお互いに関係、情報交換、支援、協力だとか必要だというふうに言ったわけですけれども、そのときの体制づくりの中に、どこでどのようにつくればいいのかというのは少し検討しなきゃいけないんですが、企業とか労働組合、それから医療関係者、福祉関係者だとかが協議するとか情報交換するとか、そういうところに障害者団体の方とかも入りながら何らかのものをつくると、もっと支援体制が強化されるのかなということは思っております。具体的にはまだ構想がないわけでありますが、きょう先生からそういう御質問をされたこともあり、私どもでももう少し積極的にこの後検討してみたいというふうに思います。

小西委員 どうもありがとうございます。

 本当に、今、企業というのは大変大きな人材というのを中に抱えておられて、外に出ていって、多分その部署の中でずっと仕事をしておられて、ああいうコンタクトの機会はないかと思うんですけれども、何らかのそういうデータベースなりネットワークができてくると非常におもしろいなと思いながら聞きましたので、またよろしくお願いしたいと思います。

 最後一分ありますので、ちょっと高橋参考人にお願いを申し上げたいんです。

 財源の確保と人材の確保という根っこのところがあるわけなんですけれども、中でも地域において精神障害者をケアマネジメントする人材の育成、我々田舎におるとなかなかぱっと思い浮かばぬわけですけれども、どういうようなことを考えていけばいいのか、お教えいただければというふうに思います。

高橋参考人 ケアマネジメントの従事者の育成に関しましては、たしか平成十年からだったと思いますが、国がそれに取り組んでおります。そして、各都道府県あるいはいろいろな地域から、まず従事者の養成研修者を育てるための研修を行い、それが各地に戻って研修を広めている、国が主導でございますけれども、そういうやり方が一つあろうかと思います。それがこれから強化されるということで、そういう面から一つは進展が見られるのではないかと私は期待しております。

 それからもう一つは、かなり、これはPSWの方々を中心としてですけれども、自主的にいろいろな研修会を開いておりますし、各地での交流が広まっていると思います。ですから、そういうことを介して、徐々にではありましょうが、今後は人材が育っていく素地はできつつあるだろうというふうに考えています。

小西委員 どうもありがとうございました。

 時間になりましたので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。

鴨下委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、五人の参考人の皆様、朝早くから国会においでいただきまして、貴重な御意見、大変にありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 私たち公明党は昨年の九月、障害を持つ方々の就労支援ということで、次のような申し入れを行ってまいりました。障害を持つ人の就労支援について雇用と福祉が連携するよう法律に明記をする、また法定雇用率制度に精神障害を持つ人を適用する、また在宅就労を促進する施策を行うなど、五項目にわたりまして厚生労働大臣に要望を行いました。

 今回、障害者の就労に重点を置いた支援策の見直しとともに、関連法案として今回審議をされておりますこの障害者の雇用の促進に関する一部改正法案、精神障害者を障害者雇用率制度に加えることなどを中心とした法改正となっておりまして、公明党の要望にも沿ったもの、大変評価できるものというふうに考えております。

 まず最初、竹中参考人にお伺いをしてまいります。

 私も、竹中参考人のあの「ラッキーウーマン」を読んだことがございます。大変エネルギッシュな行動力、本当に勇気を与えていただけるものと大変感動いたしました。また、ユニバーサル社会の構築というものも目指していらっしゃるということでございます。障害を持つ方々をチャレンジド、障害者と呼ぶのではなくチャレンジドというふうに呼ぶ、また、ITを活用することによって、それもあるコンピューター会社から支援を受けてという、そういったさまざまな企業、また多くの人々を味方にしながら、障害を持つ方々の能力を最大限引き出して、そしてすべての人を納税者に、タックスペイヤーにという発想、就労支援を展開されていること、これは本当に障害を持つ方々にとっては大きな喜びだと、希望を与えているというふうに考えております。

 竹中参考人はこれまでも、日本の障害者が働くことを支援する法律というのは法定雇用率の義務化しかないとおっしゃっています。これには、企業に通えなければならない、一定時間以上決まって働かなければいけない、介護は不要など数々の制約があり、重い重症な方々には大変厳しい、難しい仕組みになっていると思います。私は、雇用率という数字ではなく、個々の力を評価し、またそれを最大限引き出せる環境を積極的につくることが求められていると思っております。

 障害者雇用促進法改正案では、障害者の在宅就業支援として、自宅等において就業する障害者に仕事を発注する企業に対して特例調整金等を支給すること、また、在宅就業に対する発注の奨励、在宅就業を支援する団体の育成、さらに、障害者福祉施策との有機的な連携策も充実した内容になっております。

 この在宅就業支援について、竹中参考人が主張されてきた新しい仕組みではないかというふうに感じるんですが、この支援策の効果と期待、先ほどの意見陳述のほかに、さらなる御提案があればお聞かせいただきたいと思います。

竹中参考人 ありがとうございます。プロップの活動を御評価いただきましたことを大変感謝いたしたいと思います。

 先ほども言いましたように、国会議員の皆様方が、この方向に向けて、自立に向けて取り組んでいただくという、大変感謝申し上げているところですけれども、とりわけ、やはりこういった国柄にかかわる部分は、政権与党に携わられる皆さんが何よりまず御尽力をいただかねばならないというふうに、大変ずうずうしい言い方ですけれども、思っております。そういう意味で、与党の皆さん、とりわけ今公明党の皆さんがこの方面に大変お力を注いでくださっていらっしゃるということには、心から感謝をしたいと思います。

 今おっしゃいました在宅就業なんですけれども、今まで雇用一辺倒といいますか、働くということはイコール雇用なんだというのは、これは別に障害を持つ人に限らずすべての人に対してやはりそのような概念で来たわけですけれども、一定時間働くことが無理であるとか、通勤をすることが困難であるとか、それから身体のさまざまな、あるいは精神面のさまざまなサポートが必要であるというときには、自然に、いつかしら雇用というものの枠からも外されてきたというのが現実でした。そういう人たちは福祉の受け手、つまりタックスイーターとして存在をするのだというのが当たり前のような概念でこの法が進んできたわけです。

 ところが、私どもプロップ・ステーションを通じて、コンピューターやあるいはさまざまな技術を磨いて仕事を始めたチャレンジド、今も御説明いただきましたけれども、障害を持つ人のマイナスではなくて可能性のところに着目をした新しい呼び方なんですけれども、このチャレンジドの皆さん方が技術を磨かれ、そして、その人の体調の許す範囲で、体をつぶしてしまわない状態で、身辺の介護等もあるいは精神の介護等も受けながら働けるという仕組みができてきたわけです。

 しかし、この仕組みをつくったのは、法ではなくて、実際のチャレンジド自身が、私たちのできることをまず学ぶことで磨いて、そして磨いたことを仕事につなげる私たちのような、プロップのようなグループをみずから一緒につくり上げてきて、そして、働き方といいますか、働くことを推進していき、そして今、その実態ができたことに、法律が自立支援という形で支援をしようというふうに新しい法も生まれてきたわけです。

 これは、私はまさに自治というものだろうと思っているんですね。だれかが何かをしてくれるのを待つのではなくて、自分たちにとってこのような働き方ができるよということを自分たちで見せてきた、その結果がこの法につながったと大変感謝しておりますけれども、とりわけ、雇用ではなくて在宅の人たちにどれだけのアウトソーシング、お仕事が出ていくかというところがここの一つはポイントだと思います。

 それと同時に、そのお仕事の種類も、決してITだけではなくて、さまざまな物づくりのお仕事もアウトソースが可能だと私は思っておりまして、そういったアウトソースを進めるという法の後ろに、どんなものを進めていけるのか、あるいは、私たちのようなこういうコーディネートをする組織をどれだけふやしていけるのかといったようなところがついてこないといけないのだろうと思います。

 ただ、それを法に任せるのではなくて、私たち自身も、このようにすればできる、このようなアイデアもあるということを自分たち自身でどんどん発信をし実践をしていきながら、それがよりよき法の中身の充実につながるようにしていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 ITだけではなく物づくりにもという御意見がございました。

 私も以前に、これは柏市にありますNPOなのでございますが、コンクリートの平板をつくっているところがありまして、三十センチ四方くらいのコンクリート平板なんですが、そこに廃材を利用しまして、廃材といっても大理石まで廃材になってしまうんですが、タイルのようなものをコンクリートに模様をつけて埋め込んでいく。やっている方々は知的障害者の方々でありまして、ただ、でき上がったコンクリート平板というものは大変美しい、むしろ本当に芸術的な価値があるというような色鮮やかなものでありまして、そういった才能を持っている知的障害者の方々が、また非常に多い。また、そういうところで能力を発揮できるのだなということを感じた経験がございます。

 先ほども、グラフィックに大変力を発揮されている方がいるというお話がございましたけれども、このような障害者の方々を雇用していくということは、やはり生活そのものとかかわりながら支援をしていかなければいけない。ただ仕事をというだけでは済まない面が多いと思いますし、また、精神的なバックアップとか、あるいはもしかしたら家庭とかいろいろな意味での大きな支援が必要なのではないかと思っております。

 そうしたきめ細やかな支援、職業訓練とともに、ITを使わないそういった知的、精神障害者などの方々への就労支援、もしほかにもございましたら御提案をお伺いしたいことと、それから、先ほどスウェーデン、アメリカの例を引かれて、これから障害の有無、また年齢、性別にかかわりなく、あらゆる人がそれぞれのスタイルとまた働き方ができるような社会にしていかなければいけないと私も考えておりますが、このような中でアメリカでは、ADA、障害を持つアメリカ人法というのがあるというふうにおっしゃっていました。日本においてこうした法整備というものの必要性について御意見があれば伺いたいと思います。

竹中参考人 今、法律についての御質問が出ましたので、少し、私の知り得る限りのお話をさせていただきたいと思います。

 ADA法というのは、先ほども少し述べましたが、障害を持つアメリカ人法ということで、障害を持つ人も、持たないアメリカ人と同じように自分の力を世の中に発揮しタックスペイヤーになっていく権利があるのだ、その権利を平等に与えようという法律なわけですね。日本では、残念ながら、タックスからどれだけ手当てができるかというところに主に集中されてしまっていたわけですけれども、アメリカやスウェーデンでは、既にそういう考え方を根幹から変えていったという非常に大きなものだろうと思います。

 特にこのADAが重要視しているものが数々あるんですが、教育の部分が実は大変大きいです。というのは、日本でも学歴社会とかそういうふうにずっと言われてきましたけれども、障害の重い方々はまさに教育の中でも分離されてきて、なおかつ高等教育に進んでいくということに非常に困難性のある我が国です。

 しかしながら、アメリカは、このADA法と、それから、今のブッシュ大統領のニュー・フリーダム・イニシアチブという、新しいユニバーサル社会に向けての構想と、例えば高等教育、大学教育におけるチャレンジドの学生の比率を、全米平均を一〇%にしようじゃないかという大きな数値目標が立てられております。一〇%という数値は、ほとんどすべての障害の種類の方が大学に進学できるようにしようということを意味しているんですね。アメリカでこの方面が進んでいるジョージ・ワシントン大学では現在七%になっていて、決していわゆる身体障害の方だけではなくて、認知的な御障害や、それから読書力の問題であったりLDであったり知的ハンディであったり、さまざまな、日本では問題児とかいうふうに片づけられてしまいがちな人たちが、小中高の教育を受けた上に大学まで進学できる、そのためのさまざまな、物理的な、科学的な、あるいは人的なサポートがあるというような状況を生み出しています。

 現在アメリカは全米平均が四%、大学におけるチャレンジドの平均は四%なんですけれども、では、翻って日本では何%なんだろうというと、残念ながら〇・〇九%という状況ですね。つまり、私たちは国民全員で、重い障害を持つ人たちを教育の場からも、残念ながら受け入れずに来ていながら、かわいそうな人たちと呼んでいる。ここのところにやはり私たち全員がそろそろ気づかないといけないんじゃないかなというふうに思います。

 そして、まず、そういうふうに、すべての人に教育とそれから堂々たる地位が必要であるということがこのADAの主眼になっておりまして、ことし、ちょうど五月一日から一週間、ADAの研修ツアーというのでアメリカへ参りましたけれども、私たちが出会ったさまざまな省の官僚の皆さんの中に、大変重い障害で電動車いすに乗っていたり、白いつえをつかれていたり、盲導犬や聴導犬を連れていたり、テーブルの向こうでノートテークが必要な方が、日本でいうならば霞が関の幹部職員でいらっしゃる。政策を国民に送り出す側にいらっしゃる。もちろん政治家の中にもそういう方が多数いらっしゃったのを拝見しました。

 ですから、やはり人の意識が変わるということと、法律が生まれる、変わるということが、この両方がとても大事なのかなと私は思っていて、そういう意味で、単に障壁を除くバリアフリーではなくて、その人が力を世の中で発揮できる、そして支える側にも回れるユニバーサルという、こういう法案がぜひぜひ生まれていただきたいなというふうに思っています。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、輪島参考人にお伺いいたします。

 私も昨年、ソニー株式会社の視察に行かせていただきまして、そこは光という子会社がありまして、知的障害者の方々が清掃と郵便物の仕分け、この二つの仕事に携わっていらっしゃる。清掃といっても、ここをきれいにするということが障害者の方々にとっては実は大変難しいことでありまして、雇用されている側も、ある意味、生活のことですとか、また、毎日出勤してくれるかどうか、そのような感じで非常に御苦労されながら情熱を持って雇用に取り組んでいらっしゃるということを伺いました。やはりそれは創立者のそういったポリシー、社会に貢献をするというものからも発しているということも、そのときお伺いをいたしました。

 やはり、今、こうした福祉的な就労から一般就労に移行した者が年間わずか一%という中で、企業の側として、やはりトップの方が、これは女性の雇用に関しても同じことが言えるんですが、トップのポリシー、考え方というものが非常に大きく反映してくるのではないかと思いますが、今後の方向性等についていかがお考えでございましょうか。

輪島参考人 障害者雇用、また御指摘のとおり女性の雇用、社会への参画というようなことも、同じようなとらえ方で企業のトップの理解ということが重要だというふうに御指摘をいただいて、確かにそのとおりだというふうに思っております。

 特に障害者雇用の観点からいきますと、先ほど申しましたように、全体的には着実に雇用率への取り組みということが進んでいるというふうに思っております。その中で、特に最近はやはりコンプライアンス、それからCSRということで、企業がどのように社会的な責任を果たしていくのかという新しい観点も取り入れられて、むしろ企業のトップはそういったことに今後非常にセンシティブになっているのではないかなというふうに思っております。そういったことも反映して、障害者雇用への取り組みというようなことも進んでいるのではないかなと思っております。

 また、行政の方の考え方も、行政指導、特に障害者雇用率の達成のための行政指導のあり方ということにつきましても非常に厳格に運用するようになっておりまして、企業名の公表等々につきましての指導の基準というものも明らかにして、その基準に合致しなければ企業名を公表しますというような指導方針に大きく転換をしております。

 企業もそういうことは十分に理解をしているわけでございまして、そういったことと相まって、企業の理解を得られるように今後とも努力をしていきたいなというふうに思っているところでございます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、土師参考人にお伺いいたします。

 年間、昨年八十一名の就労、その手助けをしていらっしゃる、また、こうしたシステムを構築されている、三百五十六人の障害者の方々への支援をしていらっしゃるということで、すばらしいシステムであるというふうに感じました。民間だからこそこうしたことができるのではないかというふうに逆に感じたわけなんですけれども、こうした民間のすばらしいシステムをもっともっと拡大していかなければいけないというふうにも感じました。

 そこの、民間だからこそできる、しかし、このところへの公的支援で必要なものというものがあれば御意見を伺いたいと思います。

土師参考人 特に、NPO法人障害者雇用部会というのは、民間の集まりでございまして、雇用の場の拡大ということを一つの目的とさせていただいています。実際には非営利でございますので手弁当でみんなやっておりますが、そのNPOに参画していますのが、知的障害者を中心に雇用する企業が今二十三社ほどでございます。

 一つ今のお話の中でつけ加えさせていただきたいと思いますのは、それぞれの企業は、特例子会社の設立要件は今五人新しく雇用しろということでありますが、昔は十人だったと思いますが、それぞれの企業さんが一年、二年後には倍、三倍にみんななっている。例えば、十人でスタートしたところが四十人になっているとか三十人になっているとか、半年ごとに六人ずつふやしていっているとか、そういう部分があるんですね。これは、雇用する企業にとっても、この特例子会社という制度は、特に知的障害者を雇用するという面では大変いい制度だというふうに思っております。

 また、そこでの定着率といいますのは、日本経団連さんの方で特例子会社のアンケート調査がございますが、定着率九三%なんですね。そういう意味では、決して知的障害者が働けないとかそういうことではなくて、先ほども御説明させていただきましたが、企業の理解と支援と育てるということがあればそれで十分だと思っています。

 ただ、今、国の方でグランドデザインがいろいろ検討されておりますが、早くあの方向で決めていただきたいと思いますのは、実際に私どもの施設から就労させても、一人頭二万一千数百円しかないわけですね。実際に、年間二百万で考えますと、一月十六万や七万のお金をいただいて支援をしている、支援費はそうなっております。ところが、就労させるということはわずかそれぐらいであるということと、就労した後の支援も、一月以内の支援で先ほどと同額がつくぐらいで、では、一月たったらその働いた人はどなたが支援するんだということもないわけですね。ですから、就労ということをお考えになるのであれば、そういう福祉的な制度も変えていただくということが私は必要だというふうに思っております。

 もう一つは、今回の論議で少し外れているのかと思いますが、教育の分野なんですね。

 私どもの就労援助センターで三百数十人の就労を出しておりますが、本来なら、養護学校を卒業してその人が働き続けられるということ、そのための支援があるべきだというふうに思うんです。私どもは在宅の障害者が対象でございますから、ドロップアウトした人を再就職させる。ドロップアウトした人というのは精神的なメンタル面の負担もあるでしょうし、それから、私ども登録していただいて、本人が何ができるかということも時間をかけて見なきゃいけないとか、いろいろございます。基本的には、やはり、養護学校の就職率を上げると同時に、養護学校を卒業した人をどう支援するかということもあわせて御配慮いただきたいと思うんです。

 加えまして、就業・生活支援センターを見てみましても、大変低額でございます。神奈川の私どもは二千六百万からスタートしました。国の事業は千五百万とか六百万だと思います。実は、就労させるということはプロでなくてはできない部分だと思うんですね。福祉的な専門家でありながら、企業との連携をきちっととれる、働くことを理解する、そういうプロでなくてはいけないと思うんです。私は、数をふやすことも大事でありますが、就労支援にかかわる、生活支援にかかわる人たちのレベルを上げるといいますか、処遇を上げるということももう一つ必要なんだと思っています。

 ありがとうございます。

古屋(範)委員 大変ありがとうございました。

 本日の御意見を踏まえまして、さらに審議をしてまいります。ありがとうございました。

大村委員長代理 次に、五島正規君。

五島委員 民主党の五島でございます。

 本日は、参考人の皆様方には、お忙しいところ、朝早くからお出ましをいただきまして、大変ありがとうございます。

 早速ですが、各参考人がお述べになられたお話をもとに質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、輪島参考人が先ほど、精神障害者の雇用率、将来は対象になるのは必然である、当面は実雇用率へのカウントというところで出発することはそれはいいだろうというお話でございました。

 来年にはもう一度全国調査、実態調査も行われるわけですが、輪島参考人とされましては、この雇用率を一体いつからするのか。よく調査してから十年もたってからというような話もあるわけですが、それでは、先ほど高橋参考人からもお話があったように、七万人からの社会的入院している人たちを出していくという問題も考えた場合に、到底、この障害者雇用というのは進んでいかないし、三障害一体化ということについても、これはかけ声だけで進まないということになるかと思います。

 そういう意味で、輪島参考人とされましては、この将来というのは一体いつぐらいまでにはやるべきだとお考えなのか、御意見をちょうだいしたいと思います。

輪島参考人 障害者雇用、労働政策審議会の審議でどのような議論が行われたのかということを御披露させていただければというふうに思っております。

 審議会の報告書では、この制度の改正後、その適用状況を踏まえ、精神障害者を雇用義務制度の対象とすることについて、具体的に検討をすることが適当というふうに示されております。多くの企業も、この今回の法律改正の後にどのような影響が出てくるのかということは、大変心配をして関心が高いところだということでございます。

 精神障害者のいわゆるみなし雇用ということについて、先ほども、先生御指摘のとおり、スケジュールが明らかにはなっていないということでございます。ただ、知的障害者の関係からいきますと、先ほど御披露がありましたように、昭和六十三年にみなし雇用の制度になって、平成十年から義務化ということで、十年の時間を要したということでございます。そういうようなことが漠然とは考えられるわけでございますが、私どもといたしましては、審議会の報告書に示された「その適用状況」ということが非常に重要だというふうに思っております。

 同じく、審議会に示された現在での試算というものがございます。

 その試算に基づきますと、仮に今法定雇用率に算入をされた場合には〇・二%分ぐらいあるだろう。つまり、法定雇用率を一・八%から二%ぐらいのボリュームがあるのではないかという試算でございます。

 また、実雇用率に換算したときに、ではどれぐらいのボリュームがあるのかというのは、〇・〇九だというふうに記憶をしております。つまり、法定雇用率の半分ぐらいが、今回のみなし雇用になった後に、状況が進んでいけばそのボリュームでみなし雇用が進むのではないか、実雇用率にカウントが進むのではないかということでございます。

 そうしますと、〇・二の半分、〇・一というようなものが、ある一定の水準、目標とする基準になるのではないかというふうに思っております。ですから、いろいろな雇用支援策と絡みながらそのことが進んでいけば、つまり、大体〇・一ぐらいのものが雇用率として達成されてくれば、そのときに、法定雇用率の中に入れていくということが議論になるのではないかなと。

 それがどれぐらいの時間がかかるのかというのは、ちょっと私も今の時点では推測はできないわけですけれども、その適用状況ということが、やはり社会の理解、それから職場、企業の理解というようなものをはかる一定の水準、基準になるのではないかなというふうに思っているところでございます。

 以上です。

五島委員 同じ質問でございますが、ぜひ高橋参考人にもお答えいただきたいと思います。

 〇・〇九ぐらい、実雇用率に入れることによって上がるとおっしゃっているわけですが、それは数字の上ではそのとおりだと思います。問題は、現実の雇用率は一・八からはるかに及ばないし、まして五百人以下のところの実態からいえば、我が国においては障害者の雇用というのは大変おくれているというのが実態としてございます。

 そういう意味で、精神障害者の雇用率への対象にするという時期について、果たして知的障害者のときと同じように十年間という余裕を持ってやっていくべきなのかどうなのか、その御意見をお伺いしたいと思います。

高橋参考人 ありがとうございます。

 結論から申し上げて、十年は長過ぎる、次回の機会にはもうぜひ進めていただきたいということでございます。先ほどお話ししましたけれども、私が座長を務めさせていただいた検討会でも、もう既に、雇用の義務化をすべきだという意見も何人かの委員が言われておりました。

 私自身としても、できれば早くというふうに考えたわけでございますけれども、やはりいろいろ企業側の状況とか、それから採用後の障害者の状況、さらには新規に採用された障害者が適正に企業で支えられる、それには企業側のいろいろな経験も必要ですし、ノウハウというのが必要ですので、そういったものをある程度整える期間としてはしばらく時間が要るのかなと。そうは思いますけれども、それは、ぜひ早くそういうものを習得されて、体制を整えられて、次に機会があるときにはぜひそこで実現させていただきたい、そんなふうに思っております。

五島委員 ありがとうございます。

 若干それと関連いたしまして、長谷川参考人の方からは、在職の精神障害患者の掘り起こしになってしまうのではないかという御懸念が表明されました。私もそのことは非常に大きな問題であろうと思っております。

 今回、労働安全衛生法の改正の中においても、メンタルヘルスの問題というのは非常に大きな問題になってこざるを得ないというふうに思っております。そうした中で、実雇用率へのカウントがなされたことによって、在職の患者さんといいますか労働者の中で、精神障害あるいはうつ状態というふうな人たちが掘り起こされて、それに手帳を取れとかいうふうな話が出てくるとしたら、万一そのようなことが起こるとすれば、これは大変な問題だろうというふうに思っているわけでございます。とりわけ、先ほど輪島参考人の方からは、このオープンによって、職場のサイドからの配慮が可能になるという長所の面をお話しになりました。

 確かに、そういうふうな事業主や上司ばかりであれば、日本の職場というのは随分と改善されて、うつの患者の発生も減るんだろうと思うわけですが、現実にはやはり、ここにおいてそういう掘り起こしが行われた結果として、結果的にそういう労働者が大変な不利益をこうむったり、あるいは解雇に追い込まれてしまう。あるいは、うつの患者であれば、そうしたことに対する干渉によって、例えば次の労安衛法の改正の中においては、面会権、企業からの精神科の医者に対して面接することを拒否してはいけないというところまである。そういうことをされた場合に、病状を悪化させてしまうというふうな心配もあるわけでございます。

 在職で精神障害になった患者さんに対して、その人たちに対して十分なケアが必要であり、その人たちを、しかるべき手続の上で今後実雇用率の中に入れていくということは必要かもしれませんが、そのためには、一つの企業のルールとして、そうした精神障害にもし罹患した労働者に対して、雇用の側により手厚い配慮の義務というものを課していないと、この問題は労働者にとっては余りプラスにならないのではないかというふうに思うわけです。

 その点について、輪島参考人、長谷川参考人、高橋参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

輪島参考人 先生御指摘のとおりに、雇用率ということを企業が考えた場合にそのようなことが懸念をされる、掘り起こしが懸念をされるということがあります。

 審議会での議論では、そういうことを払拭するために、むしろガイドラインというものを示して、それに沿って、企業と実際に障害をお持ちになった方と、これは多分主治医の方、それから産業医の方、こういう連携の中でどのようにしていくのか、休職をし、さらに復職をする場合のプログラムというものを企業なりにつくっていくということを示すためにガイドラインが示されているのかなというふうに思っております。

 それから、配慮義務ということで、先ほど私は、手帳を取得して、そのことが職場に知れていて、そのことが配慮をむしろ促進する面もあるのではないかというふうに指摘をしたわけでございまして、さらに職場の理解というのは大変重要でございます。特に、例えば職場で上司が理解をし、雇用管理の面について配慮しているケースで、その職場の上司が転勤で異動した場合に、むしろ再発をしてしまうというようなケースも多々見受けられるわけでございまして、そこは非常に難しい課題になっているのかなというふうに思っているところでございます。

 以上です。

高橋参考人 ただいまの御指摘は大変重要だろうと思います。特に、仕事をしている、在職中の精神障害者の人権を守る上では非常に重要な問題だろうと思います。ですから、やはりこれを施行するに当たっては、その面での教育といいますか、現在、自己決定といいますか、障害者の方が自分から進んでそれを表明する場合ならばいいけれども、それを強要するということはあってはならないことだし、また、自分から進んでいけるような、進んで示されるような、そういう状況をつくっていくということも一方で大事ですので、あくまでも強要とならない、しかし障害者自身と雇用者側で双方で理解が進むという、そういった状況づくりがこれから非常に重要であろうと私は考えております。

長谷川参考人 既に働いている人に対して、障害者福祉手帳を所持することで実雇用率に換算するということは、ある意味ではいい制度でもあるし、ある意味では危険な制度と、両方持っていると思うんです。実雇用率に換算することによって、恐らくやめていくということが少なくなることもあると思うんですね。企業にとっては、実雇用率にカウントされるわけですから、それなりのメリットがある。そこはメリットだと思うんです。

 ただ、一方で、使用者は、自分のところの企業がなかなか雇用率が上がらないので、自分のところに今いる精神障害者の人たちに対して、福祉手帳を持ちなさいと。職場ですから、病院に行っているとか、その労働者の状況というのはわかるわけですね、勤務の状況を見れば。あなたが福祉手帳を取得すると企業にとってもいいし、あなたにとってもいいですよということは必ず起きると私は思います。

 そのときに、やはり本人の意思で取得する。だから、人事管理、自分の上司から企業にとってもいいことなんだから、あなたそれは取得しなさいというふうに言われるのではなくて、こういう制度がありますということが広くすべての職員に周知されて、本人が、では自分は取得してみようと。福祉手帳を持つことによって日常の生活の中でもメリットがあるというふうに思う、そういう自己決定をさせることだと思うんですね。

 それを強制することはさせないような、そういうものをつくる必要があると思うんですね。それが行われないように、法律が成立しました後、いろいろな研究者の方だとかそういう企業の方だとかが、どういう問題が起きるかということをきちっと出し合いながら、どういうことに注意しなければいけないのかとか、どういうことはしてはいけないのかとか、そういうことのガイドラインをつくることがやはり必要だと思います。まだそういうものの手引もできておりませんので、これからの課題だというふうに思っておりますので、私どもも、それは努力したいと思っています。

 それと、先生はメンタルヘルスの関係を言いましたけれども、労働安全衛生法の今回の改正とも非常に関連があるんです。今回、労働安全衛生法の改正では、時間が百時間を超えた者に対する産業医との面接が入ってくるわけでありますけれども、この産業医と自分がふだんかかっているお医者さんと、それと自分の上司と自分とが、非常にいろいろなかかわりを持つと思うんですね。そのかかわりの人たちが同じ視点でその対応ができるような、そういうものをつくる必要があるのではないかというふうに思います。

五島委員 ありがとうございます。また労働安全衛生法の審議の際に、ぜひ参考にもさせていただきたいと思います。

 時間がありませんので、もう一つだけ質問させていただきます。

 今、土師参考人や竹中参考人からもお話をいただいたわけですが、やはり大事な問題は、障害者の雇用、そのパイをどう広げるのか。パイを広げていけば、結果的に障害者が労働者として働けるという状況になると思うわけです。

 特例子会社というのは、私はそれなりに非常にいい制度であったと思っておりますし、それによっての雇用というのは期待した以上にあったんだろうと思っております。ただ、特例子会社というのは、企業の子会社という性格に制約されておりますので、まだしばらくはふえるかもわかりませんが、おのずから限界があるんだろうというふうに思っております。

 そういう意味では、むしろ、障害者に対して社会全体としてどのようにワークシェアしていくのかという発想のもとで、例えば福祉工場とかそういうふうなところでもよろしゅうございますし、そのほかの障害者を雇用している企業、例えば三五%以上障害者を雇用している企業に対して、障害者雇用の法定雇用率が未達成の企業はたくさんあるわけでございます。それに対しては納付金を納めさせているという状態なんですが、納付金制度というものだけでなくて、もし未達成の企業があれば、その未達成の金額の三倍なり四倍の業務をアウトソーシングして発注してもらう、そういうふうな形にしていくことによって、制度をつくることによって、障害者の雇用の場というものは大幅にふやせるのではないかというふうに思うわけです。

 そして、その場合に大事な問題は、今ジョブコーチの問題が出てきておりますが、やはりジョブコーチの問題だろう。果たしてそのジョブコーチは福祉の関係者が中心がいいのか。それとも、先ほど長谷川さんは労働組合のOBとおっしゃっておりましたけれども、労働組合のOBも含めて、障害者雇用の経験のある方々もジョブコーチに入っていただくというふうな形で、各企業の中における、直接一緒に仕事をされる方々の中でそういうジョブコーチ的な役割の人を養成していくというふうなことが必要ではないかと思うわけですが、もう時間がありませんので、代表して、ぜひ土師参考人の御意見をちょうだいしたいと思います。

土師参考人 まず特例子会社ですが、私も、特に知的障害者の雇用を考えた場合、特に大企業で考えた場合に、知的障害者の雇用の制度とすればこれ以上ない、いいものだというふうに思っております。ある意味ではノーマライゼーション的なものを企業の中につくり得る、しかも、専門的に障害者を雇用管理する組織でありますので。ただ、身体障害者の場合はどうなのかといいますと、いろいろな形でバリアフリー化が進んでいる中で、今後拡大すべきかどうかについては疑問だと思っています。

 質問以外ですが、精神の問題も、私は、知的の場合特例子会社でこの十何年間ふえてきたということを考えますと、何らかの形できちっとした雇用管理体制をつくって、医療ノウハウを蓄積されるということが大事だと思っています。

 それから、特例の話ばかりしていますが、私どもの三百五十六人就労している中で特例に入っているのはどのぐらいかといいますと、四〇%弱でございます。中小、本当に一人、二人のところにも雇用をいたしております。これは、特例に合う人と、そういうところに合う人といろいろな場合があると思いますので、いずれにしましても、きちっとした、雇用条件といいますか、雇用管理をするような支援をしていきたいと思っています。

 なお、最賃除外の話もございますが、私ども三百五十六人のうち、最賃除外で働いている人は十二人でございます。これは県、横浜市の制度でふれあいショップとかともしびショップがございますが、公的機関の中に喫茶店をやったりしている部分ですから、その辺は最賃除外ということは一定の前提でございますので。それ以外は全部、企業の規模にかかわらず、最賃をクリアした形で雇用していただくというふうに思っております。

 それから、未達成の納付金制度でございますが、なかなか難しい問題だと思いますが、まず一つ申し上げておきたいのは、未達成企業はなくならないと思っています。これは制度的にも、もし今例えば一・八になったときに国がどうされるかというと、多分法定雇用率を上げていくと思うんですね。それは納付金の会計をどう使っていくかということとリンクすると思いますが、一般会計から持ってきていただければもっと有効な使い方もあるんじゃないかと思います。

 いずれにしろ、何となくずっと企業をいじめているんじゃないかという、私も先ほどお話がございました労働組合の役員の出身でもございますので、特に私どもの企業は、構造不況の中でリストラを会社と一緒にたくさんやってきた立場でもございますので、その辺のところはというふうに思っています。

 発注については、私はどんどん発注すべきだと思うんです。ただ、よく施設に仕事がないという話がございますが、これはやはり施設側に問題があると思うんです。

 今、品質を含めて企業責任が多く問われている中で、発注した企業が、例えば品質がうまくいかないとか納期を守れない、そういう施設に本当に仕事が来るんでしょうか。やはり受ける方も、先ほども申し上げましたように、企業のOBさんを活用するとか、そういう意味での環境をおつくりいただくということが仕事を得られることになると思いますし、その仕事を通じて、自立するために育てるという施設の機能が全うできるのではないかなと思っています。

 ジョブコーチにつきましては、二つあっていいと思っています。ただ、私どもは、実際に企業の現場で働く人を支援するのであれば、やはり企業のわかっている人がジョブコーチとしてなるべきだと思います。日本の企業は大変閉鎖的でありますし、プライドが高うございます。福祉の方がジョブコーチでございますと言って、その企業の仕事を指導しますよというのは受け入れない環境だというふうに私は思っております。

 以上でございます。

五島委員 どうもありがとうございました。終わらせていただきます。

大村委員長代理 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。きょうは、参考人の皆さん、意見をありがとうございました。

 早速、意見を表明された順番に沿ってお伺いしていきたいんですけれども、まず初めに、輪島参考人にお尋ねいたします。

 先ほど、法定雇用率の問題で、着実に進んでいるんじゃないかというお話があったんですが、しかし、この制度が大改正で設けられたのが一九七六年ですから、もうかれこれ三十年たつんですね。ところが、いまだに大きな企業、日本経団連に参加している企業の七割は、法定雇用率未達成なんです。一体、なぜ三十年もかけて達成できないのか、その理由をお聞かせいただきたい。

輪島参考人 大変難しい問題でございます。

 御指摘のとおり、調査によりますと、千人以上の企業規模の未達成状況というのは七〇%でございます。そういう意味では、未達成状況ということについて言うと、なかなか改善をしていないというふうに思っています。また、ここ三、四年でございますが、全規模で計算しますと未達成企業は五割を切っている状況がございましたけれども、この二、三年は、むしろそれが増加傾向にあるということも事実だというふうに認識をしております。

 ただ、未達成状況の中身を見るということも重要かなというふうに思っておりまして、大企業のところではさすがにそういうことでもないのですけれども、一人足りない、二人足りないというところも未達成ということになります。それが、実際には余りその資料が開示をされておりませんのでよくわかりませんけれども、厚生労働省からの説明を聞くところによりますと、一名足りない、二名足りないというところもこの五十数%の中の多くを占めているというふうに説明を聞いております。

 ですから、むしろそういったところを改善することによって、実は未達成の企業割合というのはかなり改善をするということもできる状況なのかなというふうに思っています。ただ、それが実際に進んでいないというのは先生御指摘のとおりかなというふうに思っています。

 以上です。

山口(富)委員 数字のカウントかという話もありましたけれども、実際に進んでいないということは今示されたと思うんです。私はその理由を聞かせていただきたかったんですが、ここはなかなか難しいということですから、次に進みたいと思うんです。

 日本経団連の経営労働政策委員会報告、これは実は私、しばらく前の当委員会でこの中身について質問したことがあるんですけれども、そのときに参考人として日本経団連に来てもらおうという話もしたんですが、きょうはたまたま輪島さんに参考人で来ていただいたので、一つお尋ねしておきたいんです。

 法定雇用率の問題で、ここにも、これをきちんとしていくのは企業の社会的責任だ、私もそのとおりだと思うんですね。きょうのお話の中で、在職精神障害者の問題が出されました。

 それで、一方では、障害者の皆さんに働いていただくということの社会的責任を果たす必要がある。もう一方で、現実には、今企業で働いている皆さんの中で精神疾患を初めとして新たな問題が起きているわけですね。最近の発表ですと、財団法人労務行政研究所の調査で、うつ病、ノイローゼ、統合失調症などのメンタル不全の社員がふえている企業が五割を超えているということなんです。

 先ほど職場復帰するためのプログラムの作成という話があったんですが、私はそれも大事だと思いますけれども、こういう精神疾患を生むような企業活動のあり方についての自己検討も欠かせないと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

輪島参考人 私どもの発行物を御検討いただいて、大変ありがとうございます。

 御指摘のとおり、私ども、ことしの経営労働政策委員会報告の中では、今般の障害者雇用促進法の改正につきましての基本的な考え方、短いセンテンスではございますけれども、書かせていただいております。

 一方、もう一つは、現場力の回復ということをことしの経営労働政策委員会報告の大きな柱にさせていただいております。そういう観点からいきますと、非常に大きな流れの中で現場力というものが落ちているということは私どもも認識をし、さらにそのことが大変重要な点だというふうに認識をして、ことしの経営労働政策委員会報告に書かせていただいているということでございます。

 先ほど申しましたように、精神疾患の関係につきまして言いますと、人事管理の中では四つの対応をしているのではないかなと思っております。繰り返しになりますけれども、病気にならないための予防ということがまず第一だというふうに思っております。

 ただ、お聞き及びするところによりますと、精神科の先生というのは全国に一万三千人ほどしかいらっしゃらない。その中から、産業医といいますか、企業のことを御理解いただいて産業医として精神科に当たっていただくというのは、またその中の大変一部ということになっておりまして、実際にはそこら辺の対応が難しい部分もまだあるのかなというふうに思っております。

 そういう観点からいいますと、産業医として内科であるとかいうようなことで対応している企業もまだまだ多うございまして、精神医のケアというようなことで、例えば健康管理室であるとかそういったところでの対応というのはまだまだ非常におくれているというところが実態なのかな、そういったところを今後とも充実していくということがまずもって必要なのではないかなというふうに思っております。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

山口(富)委員 では、続きまして、長谷川参考人にお尋ねいたします。

 今、日本の企業は、経団連を初めとしまして、パート労働ですとか派遣労働ですとかを入れてきているわけですね。法定雇用率自体は常用雇用者で考えますから、例えば派遣の場合は一般の場合はカウントされない。パートもそうである。となりますと、障害者の皆さんに働いていただく場を法定雇用率という形で確保していくときに、ここの見直しがどうしても必要だというふうに私は思うんですが、この点についてはどういうお考えでしょうか。

長谷川参考人 先生御指摘のように、派遣労働者の雇用率の適用については審議会でも議論がありましたし、私どもも意見を持っているんですが、きょう前段のところで忘れてしまいました。

 派遣労働者については、派遣元企業に対してはこの雇用率は適用になるわけですね。しかし、そこで、派遣労働者で働いている労働者が派遣先に行った場合のカウントをどうするのかという議論は審議会の中でも行われていました。

 特に、派遣会社の仕事をやっている人はカウントされますけれども、派遣労働者として行ったときの労働者がカウントされないわけですね。したがって、そのカウントのあり方について速やかに調査検討すべきじゃないかというふうに思っています。何らかの形で、派遣だとかそういうパートタイマーだとか、非典型の人たちのカウントについても検討することが必要だというふうに思っております。

山口(富)委員 どうもありがとうございました。

 続いて、土師参考人にお尋ねしますけれども、いただいた図でちょっと教えていただきたいんですが、就労援助センターの上下に、会社と、それから下の場合は養護学校や施設との連携というところがありますが、これは具体的にはどういう連携になっているんでしょうか。

土師参考人 先ほど話に出しましたNPO法人がまさしくジョイント役になっております。百四十から五十、毎月集まる中で、比率からいいますと、三分の一が企業でございます。それから、三分の一が教育関係者、残りが福祉士と行政でございます。そういう中で、ミニセミナーでございますが、二時間ほどのセミナーを通じて話し合いを持つ。さらに、その終わった後、居酒屋で、ほとんど八割の方が集まって車座になって、雇用側も支援側も、それから育成側も一緒になって連携をとる、そういう中で障害者の雇用が進んでいくというふうに思っておりますし、全部自腹で、部会そのものも個人参加でございますので、そういう背景の中でこの連携があるんだというふうに思っております。

 なお、先ほど御説明しなかったんですが、「雇用の理念」の中で、企業さんには、確かにハローワークから雇用することになるんですが、少なくとも雇用した障害者に対して何らかの形で社会資源との連携をとってくださいと。何かあったときに相談する場所がないと、ざっくり言いまして、私も企業として雇用した経験がございますが、素人が障害を持っている人を雇用するわけですから、下手をしますと、先ほど精神障害になりかねない、そういう場面もありますので、こういうことを申し上げております。

 以上です。

山口(富)委員 もう一点、今の話にかかわってなんですが、二時間程度のセミナーをやっているということなんですが、これは例えば年に一回とか月に一回とか、一つは、どういうサイクルでやっているかを教えていただきたい。それから、手弁当でやっているということですけれども、現在の法体系でいきますと、財政的な問題を含めまして、何らかの行政の側からの支援というのは受けられる仕組みがあるのかないのか、教えていただけないでしょうか。

土師参考人 基本的には月一回やっていますので、今回四十回目になります。その中には企業見学会も入れてありますし、それから二、三百人程度のセミナーも年一回やるようになっています。少ないときで百人ぐらいというふうに思っています。

 それから、支援の分につきましては、一つは、NPO法人なものですから、横浜市さんとか県の経営者協会から一部の助成はいただいていますが、本当に一部でございまして、基本的には会費を払ってということを前提としてやっております。

山口(富)委員 では、続きまして竹中参考人にお尋ねしますけれども、きょう私、お話を聞いておりまして、この間長野で行われたスペシャルオリンピックスのときに、ケネディ元大統領の妹さんが来日されて、インタビューに答えられている姿を改めて思い浮かべました。

 それで、今度の雇用促進法の法改正で、皆さんのところは二種の社会福祉法人だということなんですが、これは在宅就業支援団体ということに恐らくなっていくんじゃないかと思うんですが、今度の促進法の方でいいますと、皆さん方の仕事にこれはどういう効果を、力を持つんでしょうか。

竹中参考人 御質問ありがとうございます。

 今回の法改正による在宅就労支援というのは、まさに私たちが長年取り組んできました、重い障害を持つ方々も含むさまざまな働き方をバックアップするものだということで、大変うれしく思っています。

 今までの雇用、雇用率が伸びないというお話も先ほどからありましたけれども、余りにもやはり働くということの前提に、どれぐらいの量働かねばならないであるとか、どれぐらいの時間働かねばならないであるとか、どういう場所で働かねばならないであるとか、そういったものが枠がはまり過ぎていたわけですね。

 つまり、これからは、働く場所はさまざまでよい、働ける時間や量もさまざまでよい、できる内容もさまざまであってよいというような、柔軟な考え方に基づく多様な働き方、雇用だけではない、SOHOであります、自営であります、請負であります、あるいは、私は障害が重いけれどもアルバイトだってやってみたいのよというような、いろいろな思いにこたえるような働き方を広げていくというのが、私は、雇用から就労をプラスした今回の法改正の大きな着眼点であったんじゃないかしらと思います。

 そういう意味で、たまたまそういう働き方にコンピューターという道具が役立ちましたけれども、この考え方に基づきますと、先ほども言ったように、例えばさまざまな作業をしていらっしゃる方に物づくりの発注をするということも出てきますでしょうし、一人一人の力をアートで生かすといったような考え方や、文章が書ける方がその表現でお仕事にしていくというようなことも可能になると思います。

 やはり、雇用になりますと、どうしても時間とそれから最低賃金とかいったようなことが必要になってくるんですけれども、今までの日本の働き方では、その最低賃金に至らないから働けないというか、働かなくてもいいと言い切られてしまっていた人が余りに多かったんですね。私は、ここが大変悲しいことだったと思います。最低賃金という線を引くのではなくて、その人が発揮した能力、きちっとその見合った収入を差し上げるということをまず大きな一歩にしていただきたいと思います。

 そして、その人が自分の能力に見合った働き方ができるようになったときに、初めは在宅で自活型といいますか請負型で、プロップを通じてお仕事をしていた方が、定期的にお仕事を下さる企業の方が、時間が短くてもこれだけのきっちりしたクオリティーを上げられるのであれば雇用したいというようなお声が上がってくる。そしてまた、その方が雇用に至って、でもやはり体調が崩れたときにまた就労へ戻っていくといったような、こういう柔軟な行き来のある、さまざまな働き方を行き来できるようなものが、私たちは実は非常に望んでおりましたが、今回の雇用法の改正の中でもこの部分にも取り組んでいただいておりますので、大きな一歩かなというふうに思っています。

 いずれにしても、人が働きたいという気持ちを持つことが大変とうといという、まずこの前提に立ってさまざまな多様な働き方を生み出していただければ、雇用法の今回の大きな抜本改正の意味があるのじゃないかしらと思っています。

山口(富)委員 竹中さんの先ほどの自己紹介ですと、いろいろ政府関係の審議会等を含めて出席されているようですから、ぜひこの問題では、いろいろ問題があったり改善すべき点があるということを発見されましたら、どんどん提案していただきたいというふうに思います。

 さて、高橋参考人にお尋ねしたいんですけれども、先ほど精神科医という立場から何点か提起されましたけれども、その中の一つに、今度の障害区分の程度の問題とケアマネの問題が出されました。

 それで、私、今度の障害者自立支援法の問題でいいますと、介護保険の問題でも、あれは一年間、昨年モデル事業をやったわけですが、今度の場合は法を出してからその裏づけになる検討をやるという、前後がおかしいということを言っているんです。先ほどのお話ですと、精神障害者の特性の把握という点ではいろいろ難点があるという御指摘だったんですけれども、そのあたり、具体的に示していただけないでしょうか。

高橋参考人 どうもありがとうございます。

 前回の社会保障審議会でその資料が出されたときには、介護保険とそれから支援費制度で使われているような判定方法で障害区分を判定する、それに若干、数項目加わっていましたけれども。それだけですと、精神障害の特性である病状の不安定とか、それから対人関係のまずさとか、それを全般的に含めた生活のしづらさとか、そういったものが十分把握できない点があるかと思います。

 それは、試行事業でまだ内容が固まっていない状態ですので、私どもも意見を申し述べて、それが取り入れられれば、ある程度、よりいいものができるかと思うんですけれども、短時間にそういうものをつくること自体がなかなか難しいんだろうと思うんですね。

 ですから、私は、これから時間をかけて、実際にそういうものを試行して使ってみて、それで改善する機会があれば、だんだんといいものができてくるのではないかというふうに思います。

 ですから、もう一回できたらこれっきりということではなくて、やはりこういう点が問題がある、こういう項目を入れた方がいいというようなことが恐らく出てくると思いますので、それを十分検討する余地が残っていれば、これから時間をかければいいものができるだろうと期待しております。

山口(富)委員 私も、法案の前に時間をかけてその作業をやりなさいということで、これからの審議を進めたいと思うんですが、高橋参考人にもう一点お尋ねしたいのですけれども、精神通院の医療費の公費負担の問題なんですけれども、今度これを変えまして一割負担になっていきますね。その際に、自立支援医療の対象や上限設定のときに重度かつ継続という新しい区分けが生まれてくるのです。

 今の障害区分の話ですと、精神障害者のいわば状態に着目するという視点がもっと必要だという御意見だと思うんですが、今度の厚労省の提案というのは三つだけですね。統合失調症、それから狭い意味での躁うつ、それと難治性のてんかんということになっているわけですが、私は、精神科医の皆さんが調べた調査を拝見しますと、その三つだけでとりますと、三十二条を今利用されている方の何と四割しかその中に入らない、つまり六割が抜けてしまうという結果が出ておりまして、非常に驚いているのですけれども。今度の、重度かつ継続という三つの病状に限定してしまった、これはやはり問題があるのじゃないでしょうか。いかがお考えですか。

高橋参考人 あの問題に関しましては、多少皆さん方が理解しにくい部分、誤解されている部分もあるかと思うんですけれども、我々医者仲間でもその辺の疑問が出ております。

 しかし、あれは所得のレベルでもって公費負担から外す、すなわち三十万以上の税が課される者は外す、外れる者の中にそういう重度、継続の者があったらそれは戻しましょうという話で、今まで公費負担を受けていた者は所得がそう高くなければ継続して受けられるというふうに私は理解しておりますし、厚生労働省の方からもそのように聞いております。したがって、公費負担から外されるという危惧はそれほど大きくないのではないかと思います。

 それから、高所得、比較的高い所得のために外されるという場合に、現在は経過措置として三疾患が挙げられておりますけれども、これは不適当だと思います。ですから、むしろ疾患名ではなくて、例えば状態像であるとかあるいは経過年数であるとか、また別な尺度で見るとか、あるいは疾患名にしても、もう少し幅広く、やはり広く、高額の医療費が長期にわたって必要な疾患というのはございますので、強迫神経症であるとか器質性の精神障害とかありますので、そういうものも入れる方向で検討すべきだろうと思います。それはこれから検討されると思いますので、その十分な対応がされるような期待を私どもはしております。

山口(富)委員 十分な対応がされるように法案段階できちんとさせていきたいと思います。それから、厚労省の説明が妥当なものかどうかも、これは私が法案質疑できちんとさせていきますから。

 どうもきょうは皆さん、ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、障害にかかわる雇用の問題、特に、やはり働いていくということは人間の誇りの根源にもかかわってまいりますので、そういうことから参考人の皆さんにお話をいただきまして大変ありがとうございます。御発言いただきました順序と大体同じように質問をさせていただきますが、まず冒頭、輪島参考人にお願いいたします。

 きょうは主に、これから新たに実雇用において算定されます精神障害の皆さんの雇用率のお話の部分が長うございましたが、もう一点、全般的に障害のある方の雇用率ということに関しまして、まず前段、お伺い申し上げます。

 ちょうど長谷川参考人が御提出いただきました資料にもございますように、この間、我が国の障害者の雇用問題は、五十人から三百人以下くらいのところでは従来の障害者雇用よりも雇用が下がってきており、そして一部千人以上、これは特例子会社などの活用もあり上昇してきておるという図が示されております。

 逆に、障害者にとって、例えば地域の身近な企業に就労できるというようなことを考えますと、特に三百人以下の部分、これは経団連の皆さんとどの程度オーバーラップするか私にはよくわからないところでありますが、そういう部分においてもやはり雇用の道が開かれることが必要と思います。

 一方で、やはり現在はとても人件費比率というものが大きく企業運営にも影響してまいるところと思います。そうした場合、企業に御尽力いただくことも当然ながら、政治の側、政策の側で、何かポジティブに誘導するような政策というのも私はあってしかるべきと考えておりますが、そのあたりで何か御意見がございましたら、一点、お願いいたします。

輪島参考人 御質問ありがとうございます。

 一つ私どもとして大きな関心を持っておりますのは、やはり発注奨励ということだと思います。これは、雇用に限定をして今雇用促進法という中の枠組みで議論をしておりますけれども、先ほど先生からも御指摘がありましたように、大きなワークシェアリング、ワークシェアリングということなのかどうかわかりませんが、企業に仕事はあるわけでございまして、基本的には雇用促進法上で企業が雇用の場を提供するということが求められているわけでございます。それに合わせて、いろいろなところで仕事をしていただく、それが雇用なのか、一般的な福祉的な就労なのかということを殊さら分けていくことがどうなのかというような問題意識は持っております。ですから、今後の観点から言えば、大きくそういったものも、企業の雇用を支えるインセンティブとしての一つの制度というような形で議論をしていただくということは、大変重要なのかなというふうに思っております。

阿部委員 ありがとうございます。また私も勉強して検討させていただきたいと思います。

 もう一点、輪島参考人にお願いしますが、今企業は障害者雇用相談室やあるいは産業医を設置され、その中のどの程度のパーセンテージがメンタルヘルスケアに習熟する専門医であるかという問題もあるだろうし、もう一方でリハビリ出勤というような、ならし保育ならぬならし就業的なものも、どの程度の企業で現実にそういう制度をお持ちであるのか、データ的にちょっとお教えいただきたいと思います。相談室と産業医、全般で構いません、精神科医でなくても。中で精神科医をお備えのところがどれくらいか、それからリハビリ出勤のシステムをお持ちの企業がどれくらいか。

輪島参考人 相談室につきましては、大変多くの企業から御相談をいただいております。特に、特例子会社の設立であるとか、そういったことについて言いますと、ある意味で特例子会社を検討し始めてから実際に立ち上げて操業するまで、短い企業では半年というようなケースもございますし、長く検討されて二年、三年という時間を必要とする企業もございます。いろいろな企業のニーズに合わせて相談室のオペレーションをしているということでございます。実際には、昨年は、延べ数でございますけれども百六十件以上の御相談をいただいております。

 それから第二点目のリハビリ出勤の比率、それから産業医の比率ということは、大変恐縮でございますけれども、私どもは統計を持っておりませんので御披露することはできかねるという状況でございます。大変申しわけございません。

阿部委員 一応、厚生労働省の調査等によりますと、リハビリ出勤という言葉がいいのか試し出社というのがいいのかわかりませんが、二六%というふうに出ております。

 私が日ごろ出会います、私は実は小児科医で、少し思春期とかその子たちが大きくなった先も見ておるのですが、そういうところの患者さんたちに聞きますと、なかなかリハビリ出勤の仕組みがなくて、例えば薬を服用中はまだ出社してはいけないのだというふうな言い方をされたり、特に在職中に発病されたケースなどでは、薬を継続しながらやはり出社していただくというのが一番だと思うわけであります。ですから、なお、お取り組みの中に、そういうことをきっちり企業の運営サイドにも共通認識としていただくというようなこともお願い申し上げたいなと思います。

 二点目、長谷川参考人にお願いいたしますが、長谷川参考人のさっきのお話の中で、例えば産業医をきちんとしたらそれに奨励金を出すような、グッドインセンティブというか、前向きにしたらどうかということもありました。私もこれは経験いたしますが、なかなか、先ほどの輪島参考人のお話にもあったように、精神科の医師の数も多くなく、産業医の先生とそれから受け持ち医との間の意見そごというのでしょうか、受け持ち医は精神的な疾患と書くと、逆に産業医によってはねられてしまう場合もあるという、極めて微妙なところで仕事をしている場合が多いわけです。

 先ほどのおっしゃっていただいた奨励金というのは、私もいい仕組みだと思うんです。日本の中では、前向きに何か誘導して、子供でもそうですが、褒めればやはり育つわけで、そういう仕組みをとるということはいいと思うのですが、そのあたりで、例えば産業医をきっちり企業につくっていただくということについてのさっきの御発言のもうちょっと真意と、それからもう一つ、私は、それは同じように労働組合の中にも労働組合内メンタルヘルスケア部署というのがあってもいいように思いますが、そういうことについてはいかがでしょうか。

長谷川参考人 先生御指摘の産業医に補助金とか助成金というのは私ではないと思います。

 私が申し上げたのは、今回の労働安全衛生法の改正の中のメンタルヘルスケア対策として、時間外労働が百時間を超えた者についての産業医との面談というのは出てきますので、労働安全衛生で産業医が果たす役割があるわけですね。企業にはその産業医がいる。それと、労働者個人は、恐らく日常的には自分のかかりつけのお医者さんのところに、内科であったり精神科であったり、自分でお医者さんのところに行っていると思うんですね。

 もう一つ、職場では、自分と自分の上司と、それと職場の同僚がいるわけですね。こういう関係の人たちが、やはり精神病というものはどういうものかとか、それから、そうであったとしても働けるんだ、みんなでちゃんと働ける環境をつくっていきましょう。事業主は、事業主のやはり責務があるだろうと思うんですね。それに従って、その上司は自分のところの労働者の管理をどうしていくのかということが必要だと思うんですね。周囲のやはり職場の人も、あの人と一緒に仕事をするとうちのグループの仕事が遅くなるから嫌だわ、これは職場でよく言われる話で、そうでなくて、自分だってなるかもしれない、自分だって時間外をいっぱいやって大変だったらなるかもしれない。そうすると、この問題は個人の問題ではなくて、職場全体の問題だというような考え方をする同僚、そういう職場の雰囲気、風土が必要なわけですね。

 あと、基本的には、やはり経営者のトップの幹部がどういう姿勢を持つのかということが重要で、そういう環境にあるわけですが、今回の促進法の中で、やはり地域にも支援するいろいろな機関があるわけですが、そういう生活支援機関と、それから事業主のところのメンタルヘルスケアをやっている担当者とか、産業医だとか、かかりつけの医者がやはり連携しないと、こっちに行ってはこう言われて、あっちに行ってはこう言われて、ここではこう言われて、それで振り回されて苦労して、最後はやめていくというのが今の現実の姿だと思うんですね。

 それをやはりもっと連携を強めながら、社会的にも、みんながちゃんと働けるんですよ、例えば、この人はまだ休んでいた方がいい、でも、この人はもう働いて八割勤務がいい、この人は六割勤務がいい、この人は四割勤務がいいとか、いろいろな対応の仕方があると思うんですね。そういうのをやはり関係者が地域的に連携をとることが必要なのではないか、そういう意味です。

阿部委員 私が混乱をさせてごめんなさい。

 私がお願いしたいことは、やはり産業医の先生と労働という、労働者を守るという労働組合の皆さんが、もうちょっと意見を密に交流することによっていい産業医を育てていただきたい。これから非常に、特に精神疾患の場合に、在職中の発病というのは本当に多くて、昨年の労災認定中も四十七万人がそういう形で上がっている。その方たちが復職していけるには、もちろん地域の支援も大事だけれども、一に職場の仲間の支援であって、そして、その職場の産業医も十分理解してくださるということは、とても大事な環境と思いますので、よろしくお願いいたします。

 あと、土師参考人には、神奈川からおいでだということで、私も神奈川なので、とても進んでいると思ってうれしく伺いました。先ほどちょっと聞き漏らして恐縮だったのですが、八十一人の去年の就労とおっしゃったでしょうか、その中で二十一人離職というお話でしたか、二十六人でしたか、私、ここのちょっと意味をよく理解できませんで、そして、離職の内容は、個人的事情や倒産や加齢ということをお話でしたが、そのほかにも何かあったのかということもお願いいたしたいのが一点。あと、特例子会社や重多雇用企業に支援が希薄だということをちょっとおっしゃっていただいたので、そのあたりも、もし御発言があればお願いします。

土師参考人 先ほど最初のときに、昨年一年で八十一人の障害者の就労をということと、離職者が二十六人おりまして、期末で三百四十一人の就労者を抱えております。もし離職者がいなければ、二十六と三百四十一ですから三百六十七というのが残るはずですが、当年度八十一人の中で何人離職しているかというと、三人でございます。それから、その二十六人の中で、企業の都合でおやめになった、仕事がなくなったとか倒産がありますが、それが二人であって、あとは基本的には本人の都合である。本人の都合のその二十四人の中に、加齢による、体力的にもたなくなったという人が二人ありますよということですね。

 ここで申し上げたのは、これからの就労支援というのは、立ち上げの部分は、冒頭申し上げましたように、企業の理解と支援と育てるというのがあればある程度いくと思いますが、継続して雇用していくということも、企業にとっても、本人にとっても大事なことでございますが、そのためには生活支援というのがどうしても不可欠ですよということ。それから、従来は、私も企業側におりましたのであれなんですが、雇用したら企業の責任だというのが一般的な慣行だったと思いますが、生活部分については、特に知的障害者、いろいろ難しい問題を抱えています。これは、社会資源が基本的にイニシアチブをとるべきだというふうに思っております。

 もう一つは、企業なりハローワークなりは、実際にやめた後、その働いていた人たちがどうなるかというのは、実はすごく難しい問題でありますし、ハローワークの機能として、福祉側につなげるというのはなかなか難しいと思います。ですから、行政側も、労働側と福祉側、教育側、どう連携をとるかということが、働くことをふやすことのもとになるかと思います。

 それから、二点目の特例子会社に対する支援でございますが、私は、特に特例子会社につきましては、今以上のことは必要ないと思っております。当然企業の社会的責任もございますし、お金の問題じゃなくて、より労働力として可能性のある人をどう推薦していただくかということと、先ほどの資料の右の一番下にありますが、企業とすれば、私は「労働力として雇用」すればいいのであって、そこで起こる福祉的な問題はやはり社会資源がかかわっていくんだと。

 企業が、先ほど来の質問の中にも何点かございましたが、未達成企業があるとか雇用にためらいがあるということがございますが、やはり知的障害者を雇用するときに、知的障害者をよくわからないというのが一番のポイントなんですね。何ができるか、どうすればどういうふうになるんだということを含めて、その辺が大変不明確である。雇用はするけれども何かあったときにきちっと相談に乗ってくれる体制があるかどうかということと、もう一つは、最悪の場合は引き取っていただけないかと。

 企業は実際は六十歳定年なんですね。本当に知的障害者が六十まで働けるかどうか。働けなくなったときに、やめてくださいと言うのか。余力を残して次へシフトしていくコーディネート役があるかないかについては、大変大きな違いがあると思うんです。

 そういう意味では、安心して相談できる、最終的には引き取ってもらえる、引き取った後かわりの人は雇いますということは、企業の皆さん申し上げているところでございますので、そういう環境をつくるということが一番の支援であって、私は、お金の問題じゃないのではないかと思います。特に、千人以上の企業に特例子会社をおつくりいただいているわけですから、たかがそれだけの障害者を雇用するのに云々ということはないと思います。

 以上でございます。

阿部委員 ありがとうございます。

 竹中参考人には、非常に根本にかかわる勇気をありがとうございます。いいお話でありました。アメリカのADA法もそうですし、みんなに元気をくれたと思います。ありがとうございます。

 最後に、高橋参考人にお願いいたします。

 お話の中にも出てまいりましたが、ハローワークの窓口業務のことでございます。

 今、若者の就労を支援するためにはヤングハローワークというのもございますが、ハローワークの窓口自身に、精神障害をお持ちの方、あるいは在職中にそういう状態になられた方、この方たち、あるいはそういう傷病名にならなくても、みんな失業中はうつに近い状態になります。ぜひとも、私は、ハローワークの機能の中にそうしたメンタルヘルスケアのカウンセリングなりサポーティブな体制なりが必要と思いますが、その点に関して、もしアドバイス、御助言、御提言があればよろしくお願いします。

高橋参考人 大変精神障害者にとってはありがたい御指摘だったと思います。

 ハローワークに限らず、一般的に行政の窓口では精神障害者は大変傷つくことが多くて、やはりどうしても、行政全般と言っては語弊があるかもしれませんけれども、なかなか窓口のところで精神障害者に対して適切な対応をとれる方が少ないのではないかと思います。ですから、とりわけハローワークなどでは自分みずからカミングアウトして申し込むわけですけれども、中にはそれを隠していく方もあるかもしれませんが、やはりそういう状態の方は非常に傷つきやすいような状態ですので、それにうまく対応してもらうためには、そういう精神障害に対する知識と理解を持った方に、ぜひいていただきたいと思います。

 そういう意味で、これからいろいろな分野においてそういう意味の知識の普及啓発ということは私も非常に大事だと思っていますので、先生の御指摘を肝に銘じたいと思います。どうもありがとうございました。

阿部委員 参考人の皆さんに大変に意義ある御助言をいただきまして、ありがとうございます。終わらせていただきます。

鴨下委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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