衆議院

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第35号 平成17年7月20日(水曜日)

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平成十七年七月二十日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    大前 繁雄君

      上川 陽子君    木村 義雄君

      小西  理君    菅原 一秀君

      中山 泰秀君    原田 令嗣君

      福井  照君    三ッ林隆志君

      御法川信英君    宮腰 光寛君

      宮下 一郎君    森岡 正宏君

      八代 英太君    山本  拓君

      吉野 正芳君    渡辺 具能君

      石毛えい子君    泉  健太君

      泉  房穂君    稲見 哲男君

      内山  晃君    大島  敦君

      小林千代美君    城島 正光君

      園田 康博君    中根 康浩君

      橋本 清仁君    水島 広子君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      高木美智代君    古屋 範子君

      山口 富男君    吉井 英勝君

      阿部 知子君

    …………………………………

   参議院厚生労働委員長   岸  宏一君

   参議院議員        清水嘉与子君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   環境副大臣        高野 博師君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部技術参事官)  舌津 一良君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        鳥生  隆君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小田 清一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       森山  寛君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           塚本  修君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   高橋 英樹君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       滝澤秀次郎君

   政府参考人

   (環境省環境管理局長)  竹本 和彦君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     山本  拓君

  菅原 一秀君     宮下 一郎君

  藤田 一枝君     稲見 哲男君

  山口 富男君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     大前 繁雄君

  山本  拓君     河野 太郎君

  稲見 哲男君     藤田 一枝君

  吉井 英勝君     山口 富男君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     菅原 一秀君

    ―――――――――――――

七月十五日

 母体保護法の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 母体保護法の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第三号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件(アスベスト問題)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 参議院提出、母体保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院厚生労働委員長岸宏一君。

    ―――――――――――――

 母体保護法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸(宏)参議院議員 ただいま議題となりました母体保護法の一部を改正する法律案について、その内容を御説明申し上げます。

 現行の母体保護法では、都道府県知事の指定を受けて受胎調節の実地指導を行う者が受胎調節のために必要な医薬品を販売することができる期限を本年七月三十一日までとしております。

 本法律案は、この期限を平成二十二年七月三十一日まで五年間延長しようとするものであります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 以上でございます。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 本案につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、母体保護法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鴨下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鴨下委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件、特にアスベスト問題について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長大島寛君、大臣官房文教施設企画部技術参事官舌津一良君、厚生労働省大臣官房統計情報部長鳥生隆君、医政局長岩尾總一郎君、労働基準局長青木豊君、労働基準局安全衛生部長小田清一君、労働基準局労災補償部長森山寛君、社会保険庁運営部長青柳親房君、経済産業省製造産業局次長塚本修君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官高橋英樹君、国土交通省住宅局長山本繁太郎君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君、総合環境政策局環境保健部長滝澤秀次郎君、環境管理局長竹本和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上信治君。

井上(信)委員 おはようございます。自由民主党の井上信治です。きょうは、アスベスト被害の集中審議ということで質問をさせていただきます。

 このアスベスト被害でありますけれども、本当に今、全国じゅうで大変なことになっているなというような、そんな厳しい認識を持っておるところであります。連日のように各企業が被害者の死亡者数とか患者数というものを公表している、そして被害がどんどんどんどん拡散をしている。ですから、そういう意味で、工場での労働者の方々だけではなくて、家族であるとか周辺住民であるとかにどんどん広がっていく。そういう意味では、我々国民一人一人がいつその犠牲を受けるかもしれない、そして今既にもうその暴露を受けて罹災しているかもしれない、そんな本当に大変深刻な問題だというふうに思っております。

 テレビや新聞などでも毎日のように特集が組まれておりまして、このアスベスト被害問題にどういうふうに対応していくのかということが大変な問題になっている。そういったときに、この厚生労働委員会でアスベスト被害の問題について集中審議が行われるということについては、私は一定の評価をさせていただきたいというふうには思っております。むしろ遅きに失したというような気もしないでもないですけれども、きょう一日、しっかりとこの問題についての御議論をさせていただきたい、そんなふうに思っております。

 実は、これは私ごとで大変恐縮なのでございますけれども、私も今から九年前に母を肺がんで亡くしております。まだ五十六歳の若さでありました。我が家も、家族六人、だれもたばこを吸ったことがない、もちろん本人も五十六年間で一度もたばこを口にしたことがない、あるいはまた母の先祖代々をたどってもがんで亡くなったといったような方はいない。そうした中で、なぜ肺がんにかかってしまったのだろうか、当時大変悔しい思いをしたことを本当によく覚えております。そういったときにこのアスベスト被害の問題が起きて、ひょっとしたらこの被害者であったのかもしれない、そんな思いを我々家族は実は思っております。

 これは私ごとでありますけれども、こういった同じような思いを全国の中でたくさんの方がひょっとしたら今思っているかもしれない。そしてまた、このアスベスト被害というものは、被害が広がっておりますから、単に工場で作業に従事していたかどうかではなくて、もう既に今そこにある危機だと私は思っております。あらゆる建物の中にアスベストが使われているかもしれない、あるいは、周辺被害という意味ではこの漂っている大気中にアスベストがたくさん含まれているかもしれない、そういった認識のもとに、政府がどのようにお考えなのか、そこをぜひ伺いたいというふうに思っております。

 実は、きょうの厚生労働委員会、尾辻大臣にも御出席をお願いいたしました。参議院の郵政民営化特別委員会の方に御出席だということであります。これはいたし方ない面もありますけれども、確かに郵政民営化も大切であります、しかし、このアスベスト問題は国民の命、健康にかかわる問題でありますから、郵政民営化以上に大変大切な問題だというふうに私は思っております。ですから、そういった意味では、大臣がこの場にいらっしゃらないということは厚生労働省の甘い認識をあらわしているのではないか、私はそういう意味では大変不満に思っております。

 せっかくお越しいただいた西副大臣には申しわけございませんけれども、西副大臣の方から、厚生労働省としてのこの問題に対する認識、それから今後の見通し、そういったことについてまず御答弁いただきたいと思います。お願いいたします。

西副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、きょうは残念ながら参議院の郵政特別委員会に出席のために尾辻大臣はこの場におりませんけれども、私、一生懸命に対応させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 この石綿、アスベストの問題が非常に大きな問題となってまいりました。このことに対しては、特にそれが原因として起こる中皮腫それから肺がん等は大変重篤な健康被害であるということから、これは我々としても全力で取り組んでいかなければならない課題だというふうに考えております。既にそれぞれの省庁、横断的に本部を立ち上げておりまして、非常に綿密な連携をとりながら今対策に当たっているところでございます。

 我々としましても、この石綿製品等の禁止、健康障害の予防対策、それから労災の補償等について、これまでも必要な措置を講じてきたところでございます。

 現状といたしましては、この労災補償に関しましては、平成十六年度までにおける石綿による肺がん及び中皮腫の労災認定件数、これは肺がんが三百五十四件、それから中皮腫が四百九十五件、合計八百四十九件という数になっております。

 一方、その原因となります石綿の輸入実績に関しましては一九七〇年から一九九〇年がピークでございました。その後は規制等でぐっと減っておりますが、石綿による疾病の潜伏期間、これは一般的に三十年から四十年というふうな大変長い潜伏期間を持っていると言われておりますので、まだまだこれはいわばこれからだという感じもいたしております。特に近年、中皮腫による死亡者数が非常に増加しているということを考えますと、石綿による疾病の労災被害の請求件数は今後とも増加する可能性が多いのではないかというふうに心配をしているところでございます。

 厚生労働省におきましては、平成十五年の九月に疾病の認定基準を改正しまして、労災補償について迅速、適正な処理に努めるということにしておりますが、事務処理体制をさらに整備するとともに、中皮腫に関する労働者、使用者、医療機関等の関係者の理解の促進、それから医師に対する認識のもう一度徹底ということを通して一層努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。

井上(信)委員 どうもありがとうございました。

 いろいろお答えいただいたんですが、ただ、私が伺っておりますと、何だか人ごとのような御答弁であるのかなといった感は否めません。

 やはり私が思いますのは、このアスベスト被害、本当に数年にわたって毎年のように何十名もの方が労災認定を受けているということでありますから、その間になぜ少しでも早い対応がとれなかったのか、それを非常に強く感じております。

 そういう意味では、各個別の企業の責任といった議論もあると思いますけれども、それと同時に、その企業を管理する行政の役割、行政の管理の不行き届き、そしてまたその規制のおくれ、怠慢ということがやはり焦点になってくるのではないかなというふうに思っております。

 諸外国と比べても大分我が国の対応は遅かったのではないかというようなことが指摘をされております。七〇年代には、ヨーロッパを初めとして、ILOなどからその危険性というものが指摘をされていた。そして、八〇年代、九〇年代、各国で、ノルウェー、オランダ、ドイツ、フランスなどで全面規制といったような措置が施された。

 しかし、そういう中で、我が国としては、二〇〇三年に一部を除くアスベストについて禁止措置をとったというようなことで、本当にごく最近であります。なぜもっと早くこの全面禁止の措置をとれなかったのかということ、そしてまたそれに対する責任ということに関して、やはり私は政府に一定の責任があるのではないかなというふうに思っております。

 近年の政府の発言を見ますと、尾辻大臣としては、諸外国と同じ対応をとってきた、我が国だけが特におくれたわけではないといったような御発言をされております。しかし、他方で、細田官房長官は、より早く禁止措置がとられればよかったと思う、一種の蓄積公害みたいなものだと。あるいはまた、中川経済産業大臣は、日本の規制が国際的に見ておくれたことについて今となっては反論することはできないといったような発言もしておられます。

 ですから、この行政の責任、怠慢ということに関してどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

青木政府参考人 この石綿については、大変危険性が強いということで、極めて厳しい管理をしなければいけないということだろうと思います。

 若干、事実について申し上げますと、実は、この石綿につきましては、じん肺になるということで、じん肺健診ということで、昭和四十七年に、お話にありましたような、ILOだとかWHOががん原性物質であるということを言う前に、我が国としては、じん肺法に基づくじん肺健診の義務づけなどを行って、健康管理に留意をしてまいりました。

 そしてまた、四十六年には特定化学物質等障害予防規則を制定いたしまして、その排気をきっちりするとか、あるいは容器に取扱注意の表示をさせるとか、あるいは作業主任者を選任させるとか、作業環境を測定させるとか、保護具を備えつけさせるというような規制を行って、事業主に対する義務づけを行ってまいりました。

 その後、今申し上げましたような、四十七年に、ILOとかWHOの専門家会議で、石綿ががん原性物質であるということが公表されました。

 これらを受けまして、日本では、昭和五十年に、一九七五年でありますが、石綿等の吹きつけ作業、これは大変飛散して危険だということで、これを原則禁止にいたしました。また、作業を行う場合に湿潤化を義務づけるというようなことをいたしましたり、特殊健診の義務づけをしまして、規制を強化いたしました。

 お話にありましたように、大変危険性の高い青石綿、茶石綿と言われるものについては平成五年になりましてEUが禁止をいたしました。我が国は、若干おくれましたけれども、ほぼ同時期の平成七年に製造、輸入、譲渡等の禁止をいたしております。あわせて、その他の作業につきましても、解体工事における使用状況の調査だとか、あるいは除去作業における作業場所の隔離などを義務づけるというような規制強化をいたしました。

 そして、今御紹介ありましたように、平成十五年に危険性が相対的に少ないと言われる白石綿と言われるようなものについて原則的に製造等の禁止を我が国でいたしました。これらについてはEUは平成十七年に原則禁止にいたしております。

 私どもとしては、こういった規制をする、製造等の禁止とあわせて、使用する場合の作業等についての管理を厳しくするというような規制をいたしまして、労働者の健康障害の予防、防止に努めてまいりました。

 同時に、こういった規制とあわせて、この法令も遵守されなければ意味がありませんので、こういったものについても個別事業場に対します臨検監督等を行いまして、法違反等が認められた場合には厳しく是正指導するということで対処してまいりました。そういうことで考えております。

 個別の事業場に対する監督指導だけではなくて、例えば石綿粉じんの除去のために換気装置を設置するという際にはその計画をつくって監督署へ届け出ろということになっていますので、そういった届け出の機会をとらえて個別の指導を行ったり、あるいは、衛生に関する改善計画の作成を指示できる制度もございますので、そういった制度を活用しまして、特定の事業場を衛生管理特別事業場に指定しまして、継続的な指導を行うなどの対応を行ってまいりました。

 そういったこともろもろを通じまして、基準行政としてはできる限り対応をしてまいったというところでございます。

井上(信)委員 いろいろ御説明をいただきましたけれども、要は、先週の大臣の御発言どおり、厚生労働省としては、我が国だけが特におくれたわけではない、全く責任はないというような御見解でよろしいんでしょうか。

青木政府参考人 行政としましては、私どもとしましては、できる限りの努力をして、労働者の健康障害、健康被害を防止するように努力をしてきたということでございます。

井上(信)委員 先週の大臣の発言があってからも被害がどんどんどんどん拡散をしている。本当に想定しているよりも大きな被害が出ております。これからどんどんどんどんさらにふえる可能性もある、そんなときに、そういったような御認識であって本当にいいのであろうかということを非常に強く感じております。これ以上尋ねても同じ回答だと思いますけれども。

 そういう意味では、とにかくこれからどうすればいいかということが大切だと思いますけれども、やはり、とにかく、一部の例外も認めないで、早急に、一刻も早く私は全面禁止ということをすべきだと思っております。何か、厚労省の発表によりますと、遅くとも平成二十年までに全面禁止を含めた規制の検討を行うというようなことをおっしゃっているようでありますけれども、これもまた非常に認識が甘く、かつ、対策として不十分だというふうに思っております。

 一刻も早い全面禁止といった措置に踏み込むようにお願いしたいと思いますけれども、この全面禁止についての御見解を伺いたいと思います。

青木政府参考人 まず申し上げたいのは、これは大変、石綿についての危険性については私どもも十分承知をいたしているつもりでございます。

 ということで、先ほどちょっと申し上げましたが、平成七年に茶石綿、青石綿を全面禁止いたしまして、その際に、その他のものについても作業規制等の規制の強化をいたしまして、きっちり管理をするということで進んでまいりました。その後、先ほど申し上げましたように、平成十五年にその他のものについても原則禁止ということで、今委員御指摘のありましたように、原則の例外がまだあるわけでございます。これらにつきましては、この例外は、当時の使用されている割合からいいますと、その当時のアンケート調査では二、三%程度が残っているという状況でございました。実際にはほとんど全面的に禁止されているというふうに考えてもいいだろうと思っております。

 実は、この残りの部分につきましては、化学プラントとか原子力発電所等で使用されておりますジョイントシート、シール材、配管などのジョイント部分についてすき間を埋めていくというようなものでございますし、あるいは、これも原子力発電所等で使われている耐熱電気絶縁板等でございますが、こういったものがいわば残されているわけでありますけれども、これらについては、内容物の漏えいを厳しく管理する必要がございますし、非石綿製品の代替品についての安全性の検証がないままに使用すれば事故のおそれがあるとか、あるいは使用条件によっては爆発するおそれもあるというようなことでございまして、そういうことで、例外的にこの部分については今禁止の対象から外されているわけでございます。

 こういったものについては封じ込めをきちんとして、作業も管理をするということでやっておりますけれども、あるいはまた、代替化を促進するということで代替化についての要請などもずっと行ってきておりますが、いずれにしても、石綿が非常に危険で重篤な健康被害の原因となり得るものであるということを考えますと、石綿の製造等の全面禁止というのも早急に実施することも考えなければいけないのではないかなというふうに思います。その際には、やはり関係団体に対しまして代替化を促進するよう要請をしたり、あるいは経済産業省にもお願いをして、代替化の促進についての業界の周知などをお願いするというようなこともやってまいりましたし、今後ともやっていきたいと思います。

 こういった状況も踏まえながら、専門家による検討を行いまして、遅くとも平成二十年までには、全面禁止ということも頭に置きながら規制の見直しを行ってまいりたいと思います。

 ただ、平成二十年と申しますのは、さまざまの実は手続がございます。WTOあるいはアクションプログラム等々がございます。そういった手続を最小限にしてやっていったとしても所要のものがかかる、それから、罰則を伴う禁止規定でございますので、規制をする場合には一定の周知期間も必要ということでございますので、実際にこういったものを禁止していくには若干時間がかかるということだと思っております。したがって、それまでの間には、きちんと管理をするよう要請をしてまいりたいと思いますし、そういった周知なども努めていきたいというふうに思っております。

井上(信)委員 本当に非常に甘い認識ではないかとしか申し上げることができません。そんなことで、実際に罹災された患者の方々、あるいは不安におののいているすべての国民に対してそういった御答弁が本当に通用するのかどうか大変疑問でありますけれども、時間がありませんので、最後に一つだけ。

 今回の対策がおくれたということは、日本の国はこのアスベスト被害を労災問題としてしか見なかった、むしろ公害問題じゃないか、そういった考え方の転換をすべきであったといったような話があります。確かに、実際の工場の作業者だけではなくて、御家族やあるいはその周辺住民にまで被害が広がっているということでありますから、やはり公害として認定をしていく。例えば公害健康被害補償法における公害認定とか、そういったことも含めて考えていただきたいというふうに思いますけれども、高野副大臣、よろしくお願いいたします。

高野副大臣 お答えいたします。

 アスベストによる周辺住民への健康被害につきましては、基礎的な情報収集を行うことが必要だということで、環境省といたしましては、都道府県を通じて今実際に調査を行っているところでありますし、経済産業省等の関係府省においても同じような調査をいろいろな観点からやっております。

 そこで、一つは、公健法の問題でありますが、この調査をきちんと分析する、そして評価をするという手続を経た上で、公害健康被害補償法、いわゆる公健法は、相当範囲にわたる著しい大気汚染などの影響による疾病、すなわち公害だということが認定されなくちゃいけない、その上で、汚染原因者の負担による補償給付を行うというのがこの法律でありますから、いわゆる民事の損害賠償に当たるかどうか、汚染原因者の負担ということも含めまして公健法の趣旨に合致するものかどうかということを慎重に見定めるということが必要だと考えております。

井上(信)委員 ぜひ早急な検討をお願いしたいというふうに思っております。

 とにかく、今回のアスベスト被害に関しましては、やはり我々の頭の中には、過去の水俣病であるとかあるいは薬害エイズの問題などということがオーバーラップをするわけであります。そういった問題も、当初は本当に行政が大変甘い認識をしていた、そうした中で世論が盛り上がり、かつ被害が拡散していった、そんな過去の歴史があるわけであります。そういったことを二度と繰り返さないように、もう少し重大な厳しい認識を持ってぜひ取り組みをお願いしたいというふうに思っております。

 きょうは時間がありませんでしたので、一番大切なこれからの対策ということについて伺うことはできなかったんですけれども、これからほかの委員の方々が御質問されるというふうに思っております。

 私は、今回の問題について、いろいろ御説明を各省庁に伺いました。そのときも、本当に各省庁さんとも、それはうちのことではない、うちの責任ではない、それは何とか省さんの話だろう、そんな話ばかりなんです。しかし、これはやはり、各省庁の縦割りを超えて政府として一丸となって取り組んでいかなければいけない、あるいはまた、我々政治の方も与野党を超えて国民の命そして健康のために取り組んでいかなければいけない問題だというふうに思っております。

 先ほど来、野党さんの方からも応援のありがたいやじをいただいておりますけれども、我々も一丸となって取り組みたい、本当に、これから、国民のためにしっかり行政と政治も一体となって頑張らせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いします。

 本日は、大変ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、アスベスト被害について、先ほどの井上委員と重複する部分もございますが、順次質問を行ってまいりたいと思います。

 今、各種のアスベスト製品を過去に製造していた工場、またその家族、また工場付近の住民など、がんの一種である中皮腫で死亡するという事例が相次いで報告をされております。一九七〇年代をピークに大量に輸入されている、また使用されていることからも、今後発病者がふえる可能性が懸念をされております。

 私の地元横須賀市、造船とは切っても切れない都市でございますが、ここの造船所に勤務をしていた夫の妻三人が中皮腫で死亡していたことが明らかとなりました。横須賀共済病院また横須賀市立うわまち病院の共同研究グループが三十年間にわたりまして診察をしてきた患者の追跡調査によりますと、夫が自宅に持ち帰った作業着をはたいたりして洗濯して、その際にアスベストを吸い込んで発症した可能性が高いと言われているわけでございます。このうわまち病院の副院長によりますと、今まで六十四人の中皮腫の患者を治療してきたけれども、そのうち六十二人はアスベストを吸い込んでいる経歴があるとおっしゃっていたわけであります。

 こうしたアスベストの健康被害の拡大がどこまで広がっていくのか、現在想像がつかないところでございます。しかし、これまでと大きく異なるのは、被害者が、アスベストを直接扱った、仕事として扱った人だけではなくて、周辺にまで大きく今広がっているということでございます。長い潜伏期間があるということでありますので、また、一般の医療機関ではこうしたことがなかなかわかりづらかったというのが現状であります。

 今、この被害の広がり、今後、五年後また十年後、どのような被害を及ぼしていくのか、はかり知れないということでございます。この被害が一体どこまで広がるのか。先日、八日には、二〇〇八年までには全面禁止とされていますけれども、このアスベストの危険性を考えますと、これは即刻禁止にすべきであると思います。

 この危険性の指摘があるのに、それを過小評価して、問題を先送りしていたのではないか。やはり私も、水俣病また薬害エイズを思い起こさずにはいられないわけであります。行政の怠慢がこのアスベストにも繰り返されたのではないか、このように思いますが、この点についての御認識を伺います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 地元横須賀の事例も引かれましてお話がありましたけれども、特に、今回、私ども大変大きな問題だと思いますのは、アスベストを使用している工場内、または、例えば現場で作業をしてアスベストに近く、始終触れている、そういう労働者の皆さん、いわゆる労働災害という側面から、それだけではなくて、周辺の地域住民の皆さんがそのことによって同じくアスベスト、石綿の被害に遭われたという、この事態を大変重く受けとめているところでございます。

 そういう意味で、石綿による健康被害が大きく増加をしているということは、これはマスコミの皆さんによる大きな報道以前から、数年前から若干そういう傾向があったことは事実でございまして、このことについてもやはり大きな問題だというふうに考えているところでございます。これまでの我が国における石綿の使用状況等を考えますと、今後もこの被害はふえていくのではないかという大変大きな危惧を抱いているところです。

 今回のことがございまして、実は緊急に研究班を立ち上げさせていただきました。そして、人口動態調査等を活用して、中皮腫で亡くなられた方の症例がありますが、その症例で、まず職業、それから石綿暴露と中皮腫との関係はどうなんだろうか、先ほど横須賀の例をおっしゃっていただきましたけれども、本格的に調査をしたい。つまり、中皮腫でお亡くなりになられた方が、いつ、どういうときに具体的に石綿の暴露があったのかということをきっちりと調べていきたい、こういうふうに思っております。

 それから、もう一つ大きな問題は、これは大変厳しい病気でございまして、そんな意味で、治療法それから今までの治療成績等につきましても早急にまとめ上げていきたい、こういうふうに考えております。

 そのことによって実態の把握を進めていきたいということで、本年度の厚生労働科学特別研究の中で、急遽専門家に集まっていただいてこの中皮腫の問題についての解決を図っていくというふうに決断したところでございます。

古屋(範)委員 その調査研究また迅速な対応というものをぜひともよろしくお願い申し上げます。

 次に、医療体制の確立についてお伺いをしてまいります。

 公明党も、先日十二日に、冬柴幹事長を顧問に、また井上政調会長を本部長に、アスベスト対策本部を設置いたしまして、十三日はクボタの旧神崎工場、また、十四日には第一回目の会合を開きまして、こうした因果関係の解明を踏まえ、立法措置も含めた具体策を今検討しているところでございます。

 私も、先週、地元の横須賀市立うわまち病院に、具体的な健康被害の状況などを聞き取りに行ってまいりました。このアスベスト疾患に詳しい三浦副院長は、中皮腫に対する知識が乏しい医師が多い、さらに、ふえているが、悪性中皮腫の確定診断に必要な免疫染色検査ができる医療機関がまだ限られていると指摘をされております。今後も中皮腫の患者は間違いなくふえる、複数の医師で協議して診断できるような体制を構築する必要があるのではないかとおっしゃっています。

 患者の急増が予想されますが、一刻も早い実態調査とともに、的確な診断ができる医療機関、医師の確保、またその情報公開、複数の医師で協議して診断できる体制などの整備が早急に求められていると思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。

青木政府参考人 今後行政の怠慢があってはならないというのは、おっしゃるとおりだと思います。

 潜伏期間が長い石綿による健康被害については、やはり息長くきちんと管理をしていくということが大切だと思っております。同時にそれは、医学的な面での対応というものも当然伴ってくるものだというふうに思います。

 今、現状で申し上げますと、独立行政法人労働者健康福祉機構が設置しております労災病院におきまして、従来から、石綿による疾病に対する診断、治療、特殊健診などを行ってまいりました。今般、こういった健康被害に対する関係者の不安に対応するために、労災病院のこういった機能を活用いたしまして、新たにそこに相談窓口を設置いたしまして、石綿暴露歴のある労働者等からの相談を受け付けることといたしております。

 それからまた、全国四十七都道府県に設置されております産業保健推進センターにおきましても、産業保健の関係者あるいは石綿暴露歴のある労働者それからその家族の方からの健康に関する相談も行っているところでございます。

 さらに、労働者健康福祉機構におきましては、全国の労災病院で診断、治療を行いました石綿肺がん及び中皮腫の症例につきまして、過去にさかのぼりまして分析する研究を行って、今後の療養に役立てることといたしております。

 先ほど副大臣からも申し上げましたように、新たな研究班も立ち上げて調査研究を行うこととあわせまして、そういった医療体制の整備にも努めていきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 ぜひもっと、専門家による早急な体制というものを確立していただきたいと強く要望いたします。

 次に、労災認定について伺ってまいります。

 今回、国は、廃業した工場も含めアスベストを扱った事業所などの実態調査をして、退職者を含めた従業員や家族またさらに周辺住民の健康調査の実施、健康相談窓口の開設等を行うという方針を示していらっしゃるということでございますけれども、やはり国の対策は後手に回っているのではないかと思うわけであります。せめて、今、労働者や工場周辺住民の不安を解消するためにも、国は一刻も早くアスベスト被害の実態を詳細に調査して、見過ごされていた被害の救済に乗り出すべきであると申し上げたいわけでございます。

 また一方、労災認定者が非常に少ないということがございます。

 アスベストが原因と見られる中皮腫による死亡者、これが二〇〇三年では八百七十八人いるということでございますが、このうち労災認定されている人は八十三人でございます。なぜ、アスベストに起因すると見られる中皮腫の労災認定者が実際の死亡者の一割にも満たないのか。大手メーカー、クボタの旧神崎工場のように、アスベストの飛散によると見られる住民被害が見落とされているというふうに想像されるわけです。国は、アスベスト労災の増加もアスベストの公害化も予想できたのではないか。

 さらに、労災申請には、死亡の場合、その翌日から五年以内に遺族の申請がなければ時効になってしまうという問題が存在いたします。

 今回、厚生労働省は、労災補償制度及び健康管理手帳制度の一層の周知徹底を図るとの対応を示されていますけれども、現行制度では、がんなどを発症するおそれのある業務についたことのある人が、退職後、国から健康管理手帳が交付されて、年二回健診を無料で受けられることになっている。

 アスベスト関連の業務は一九九六年から対象とされています。ただし、アスベストを吸った経験があるだけでは手帳はもらえない、胸部エックス線写真で陰影が見つかるか、あるいはアスベストを吸い込んだ人に特有の胸膜肥厚ができているという厳しい条件がついているのです。うわまち病院の三浦副院長は、肥厚に関しては通常のエックス線写真では見つけるのは困難であるともおっしゃっています。また、肥厚が生じるのはアスベストに接して約十五年後、退職時には見つからずに手帳の交付対象外となっている、その後、肥厚ができることもあるわけです。継続的に観察が必要なはずの人たちに手帳が行き渡っていないというのが現状であります。

 ここで、企業が労働者にアスベストの危険性を告知していない場合、また、医師が中皮腫とアスベストとの関係を患者に告げていない場合は労災申請に時効を適用しないなどの例外規定を設けるべきではないかと思います。また、この制度を有効に活用するため、例えば、アスベストを三カ月以上吸った経験などを基準に手帳を交付するなど、交付基準も見直しをすべきではないかと考えます。さらに、中皮腫や肺がんなどで死亡した従業員については、アスベスト作業との関連が確認されれば、すべて労災認定を行い救済を図るべきだろうと考えますが、この点について御見解をお伺いいたします。

青木政府参考人 確かに、中皮腫なりで健康被害を受けられた方と労災認定の数あるいは健康管理手帳の数というのには乖離があるというふうに思います。これはさまざまな原因があると思いますけれども、私どもとしては、対象になるような方についてはきちんと周知もし、関係者への理解も求めながら、それからこれは何分にも、労災認定になりますと、非常に潜伏期間も長くて、昔のことでありますので、そういったことについての認定のやり方などについても十分配慮をして、救われるべき者は救われなければならないということで基本的な事務を進めていきたいと思っております。

 今お話がありました時効との関係でありますけれども、これについては、労災保険法により、労働者の死亡という支給事由が発生した日の翌日から五年を経過したときは時効により消滅するというふうになっておりますので、これは労災保険法上そういうふうに規定されておりますので、いろいろな事情が、個々人の御事情がある場合でありましても、石綿による疾病についてのみ運用で例外的な取り扱いをするというのは困難だと考えております。

 健康管理手帳につきましては、今るる委員から御紹介ありましたようなことでやっておるわけでありますけれども、平成七年の専門家の対象業務についての検討会の報告においても、委員が御指摘になりましたような二つの要件ということを言っておりますが、最新の知見に基づいて必要な見直しというのを行っていくということは重要だと考えておりますので、石綿暴露による医学的な所見について専門家による調査研究を早急に行いまして、その結果に基づいて、健康管理手帳制度を含めまして健康管理のあり方について検討していきたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 昭和四十七年、WHO、ILOがアスベストとがんとの関係を確認したと発表しておりますが、もしそのときにかなりの大きな周知徹底、国民へのそういったPRがあれば、この方たちは、がんになってまでこの仕事を続ける必要はないとみずからその職場をやめるという選択肢もあり得たのではないかと思いますと、やはり早急な対応というものを求めてまいりたいと思っております。

 次に、先ほども質問がありましたけれども、公害認定について質問をしてまいります。

 このように、作業を行っていた労働者だけではなく周辺住民また家族へ被害が広がっている、このようなことも考えますと、公害認定というものが必要なのではないかと考えるわけでございます。環境基本法第二条第三項には、「この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁」「及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること」とありますけれども、公害とはまさしく今回のような場合を指すのではないかと思います。

 拡大するアスベスト被害につきまして、公害による健康被害と認定される必要があるのではないかと考えますが、この点について、環境省さんにぜひ前向きな御答弁をちょうだいしたいと思っております。

滝澤政府参考人 公害健康被害補償法の関係でございますが、この法律の趣旨といたしましては、今御指摘もありましたように、相当範囲にわたる著しい大気汚染等の影響による疾病に対しまして、汚染原因者の負担による補償給付を行うというのが制度上の趣旨でございます。

 そこで、目下の対応といたしまして、アスベストによる周辺住民への健康被害の問題についてでございますが、まず、基礎的な情報収集を行うことが重要であると考えまして、環境省といたしましても、七月の十二日付で都道府県知事、保健所設置市長に対しましてお願いをいたしております。保健所等において健康相談を通じて得られた一般環境経由であることが疑われる事例、つまり、特定の工場とかそういうことではなくて、一般環境経由であることが疑われる健康被害について、ぜひ情報提供をしてほしいというお願いをしておるところでございます。これらの情報をもとに、アスベストの被害につきまして、専門家からの専門的、科学的助言もいただきながら、今後分析をしていくということでございます。

 また、関係省庁、経済産業省等におきましても、並行してアスベストの被害についてさまざまな調査を実施しているところでございまして、そうした調査全般の情報収集を通じまして、必要に応じ、公健法の趣旨に合致するものかどうかなどを慎重に見定めてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 ぜひ前向きな御検討をよろしくお願い申し上げます。

 次に、学校内でのアスベスト対策について伺ってまいります。

 文部科学省は、小中学校の校舎内のアスベスト使用が問題になった一九八七年の調査の際、公立の小中高一千三百三十七校で吹きつけアスベストが使用されていると確認をしています。昨年度まで一千一校が除去をしたそうでありますが、残りの三百三十六校については把握されていないということでございます。

 この吹きつけアスベスト、老朽化し、また振動し、飛散する、それをまた子供たちが掃除する、健康被害が非常に心配されるわけでありますが、文部科学省は、当初の再調査はしないとの見解を覆しまして、今月下旬に全国の学校施設の調査を行うと発表されています。

 私は、子供の健康を守るために、早急にアスベスト除去の現状を詳細に調査し、その後の対策は徹底しているのか点検するとともに、学校現場の適切な指導を行うなど、強力な実効性ある対応をすべきと考えております。再調査後の対応策はどのように考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘のように、文部科学省におきましては、学校施設それから公営住宅等におけるアスベスト使用がいわゆる社会問題となった昭和六十二年当時に調査を行っております。御指摘のとおりでございます。それらをベースにいたしまして、学校施設に使用されたアスベストの除去等のための補助制度を設けるなど、アスベスト対策をこれまで実施してきたところでございます。

 先ほどお話がございましたように、文部科学省におきましては、昨今、事業所等でのアスベスト被害が社会問題化している、こういった状況にかんがみまして、子供たちの安全対策に万全を期すという観点から、このたび、改めて公立学校施設におけるアスベスト使用状況等の全国調査を実施することとしたところでございます。

 全国の公立学校におきまして子供たちが安心して学び、生活できる環境が確保されるよう、調査結果を踏まえまして、文書による指導、会議等における周知徹底、あるいはアスベスト対策に対する国庫補助による財政支援といったものを通じて除去などの対策、これらを速やかに行えるような適切な対策を講じてまいりたいと存じます。

古屋(範)委員 子供たちは学校の外に出ていくことはできないわけであります。子供たちの健康、命を守るために、ぜひ早急な対策をとっていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、一九七〇年代からこのアスベストが大問題となりまして、八〇年代にはアメリカではアスベストの集団訴訟が相次ぎまして、その規制が強化されている欧米に比べて、やはり日本ではその取り組みが常に一歩おくれていたと言わざるを得ません。

 そして、全面禁止には二〇〇八年までかかると言われているわけでありますけれども、国として、患者の急増に備えて健康被害に対する新たな救済制度を考えるべきではないか、アスベスト被害根絶に向けまして、強い責任を感じるとともに、ぜひ厚生労働省また副大臣の強力なリーダーシップのもと、各省庁間の垣根を越えて被害者の救済体制の確立、また今後の被害防止への取り組みに政府一丸となって強力に推進をしていただきたい。副大臣の力強い御決心をお伺いいたします。

西副大臣 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘が若干ありましたけれども、私は、今回のことを通して二つの問題をやはり考えていかなければならないんだろうと思います。

 一つは、三十年から四十年前に石綿に暴露して、そして今現在既に発症している、また近々発症する可能性のある、そういう人たちの治療といいますか、健康問題をどうしていくかという喫緊の課題がございます。それと、今現在のこのアスベストの問題を、将来にわたってこれはきいてくる課題でございますから、これをどうするか。この二つの課題を解決していかないと、アスベスト問題の解決にはならないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、大変重要な問題だというふうに考えておりまして、さらに、今私どもが所管する労働災害における救済措置以外に、それ以外の皆さん方が被害に遭われているという新たな課題も出てまいりました。既に熱心に関係省庁、今聞きますと、二日に一回、三日に一回ぐらい集まって、それぞれの省庁の情報を持ち寄りながら対応を考えているところでございますけれども、そういういわば一般の皆さん方に対するどういうふうな救済の方法があるのかということも含めまして、早急に私どもとして頑張ってやってまいりたいと思っているところでございます。

古屋(範)委員 以上で質問を終わりにいたします。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、五島正規君。

五島委員 民主党の五島でございます。

 この議論に入る前に、基準局長、あなたは先ほどから盛んにアスベストの禁止、アスベストの禁止とおっしゃっておりますが、一体、状況の認識を誤っておられるのではないですか。

 我が国において過去に輸入されたアスベストだけでも一千万トン、その九割は建材として使われています。御承知のとおりです。そして、その九割の建材は、現在も利用しているんですよ、使用しているんですよ。だから、禁止のヘチマのというのは、これから新たに建材としてつくることを禁止するのであって、アスベストの暴露というその危険性からいえば、現在まさにアスベストのピークのもとにおいて我々が生活している、どうもその認識がないのではないか。そのことは答弁をもらってもしようがありませんので、言うておきます。

 そこで、この問題を議論するに当たって、私自身、非常に残念な思いがございます。私は、一九八〇年代から職業病の一環としてのアスベスト肺の問題も取り組んでまいりました。そして、九〇年に国会議員になりまして、そのとき既にアスベスト規制の全国連絡会議というものが、労働組合や各県にありました労働安全センターなどと一緒につくられていました。そういう方々と協力いたしまして、一九九一年に、当時社会党の中でアスベスト規制法というものをつくりました。そして九二年の通常国会に出そうと思ったわけですが、当時、ちょうどPKO法案の中でそれを出すことができず、その秋の百二十五臨時国会に、石綿の規制等に関する法律案というものを当時の社会党は提出しました。

 これは残念なことに、その年の十二月十日、議運においてずっとつるされたままに置かれまして、会期末の継続について与党自民党、当時の自民党さんの、メンバーが随分入れかわっておりますのであくまで当時のと言っておきますが、当時の自民党さんの反対によって廃案になってしまいました。大変残念なことだったと思います。皆さん方のお手元にその当時の社会党として出した案をつけておりますが、ちょうど私は、そのとき国民生活局長だったか社会政策局長だったかやっておりまして、提案者の一人でした。

 その当時に、この法案をまとめるに当たって、石綿協会は随分といろいろな反対の働きかけをされました。そして、廃案になった後、この法案を翌年の通常国会に再度提出しようとしたときに出された石綿協会の意見を四ページ以後に載せております。この中で石綿協会が述べているのは、既に石綿は、「今後は作業従事者の健康障害は起こりえないと確信できます。」「一般環境においては石綿による健康問題は発生しておりません。」等々の見解書を出して反対されたわけです。

 この石綿協会の見解書と要請書は、厚生労働省にも、当時の通産省にも建設省にもお出しになっていることは間違いありません。当時、このようなばかげた意見書に対して各省庁はどのように対応されたのか。当時、この石綿協会を所管しておられたところは通産省です。通産省は、このような非常識な、一九七二年以後世界的に問題になり、八〇年代にはアメリカで大問題になって、一九八六年にはILO条約ができ上がる、そういう状況の中で、もっとも日本はこの八六年にできたILO条約を先週の金曜日に通したのですから我々の責任も大きいと思います、しかし、こういうふうな状況の中で、当時各省庁は石綿協会の働きかけに対してどのように対応されたのか、お伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

塚本政府参考人 ただいまの先生お尋ねの件でございますけれども、平成四年当時でございますけれども、当時の関係者によりますと、社団法人日本石綿協会は、全面規制はヨーロッパの一部で行われているものの、ILOとかWHOの見解等国際的な一般認識はむしろ管理すれば使用できるというものであり、一律禁止は国際的認識にまず反すること、それから、代替品の開発は困難であり、代替品の安全性が十分確保されないまま規制を行うことは望ましくない等の理由により、石綿協会としては反対声明を行い、当時の通商産業省もその反対声明と見解の提出を受けたというふうに承知をしているところでございます。

五島委員 当時、この問題について、この石綿協会の見解書は当時の労働省に対して出されましたでしょうか。

小田政府参考人 確認しておるところでございますが、出されたという明確な事実はないようでございます。

五島委員 お読みになっていないはずはないんです。我々はこの問題も、大げんかをしながら、当時の社会党の中において、労働省の方もおいでいただいて、川俣健二郎さんがそのときの社労部会長でしたが、労働省に対しても強くおっしゃったことを覚えています。したがって、知らないはずがない。

 ただ、そのときに出てきた話が問題なんです。今回出てきている最初の企業の大半、クボタさんとかニチアスさんとか、そうしたメーカーの方々が石綿協会を代表して反対運動をしておられました。その中で彼らが言われたのは、一貫して、自主規制に任せてくれ、あるいは代替製品に全部が移行するためには無理があると。

 既にそのころ、建材や多くのものについては代替製品ができておりました。ただ、その時期に、例えば超高層ビルのエレベーターのブレーキシューとか一部のものについては代替が困難。あるいは、今も問題になっておりますが、原子力発電所だけではなくて火力発電所を含めたところのジョイントなんかについてはまだ代替技術は確立していない。しかし、一番、九割使っていた建材については、あるメーカーでは全部代替化されているんです。しかし、代替化されていない製品もつくられている。何でか知らないけれども、既に吹きつけ作業が禁止になっているにもかかわらず、ニチアスさんは吹きつけ材もつくっておられましたね。

 そういうふうな事実がありながら、すなわち、技術的には既に代替品ができている、コスト的にもそれができている、にもかかわらず、まだそれを使いたいという企業があるからという形で、当時の通産省も、あるいは私は建設省もそうだったと思います、あるいは労働省にしても、そのことに対して何ら規制を強くメーカーに求めるということをしなかった。

 私は、この責任、きょうここで議論をしていますと、一時間しか時間がありませんので終わりませんから、この問題は改めてこの場において追及させてもらうということを申し上げて、次に行きます。

 これはごく最近の問題です。二〇〇二年になって、前の厚生労働大臣坂口さん、彼はもともと公衆衛生の医者で、この問題に対して私はピカ一の存在だったと思っています。坂口前厚生労働大臣は、アスベスト製品の原則禁止を表明されました。これは皆さんも覚えておられるはずです。そして、その年の十月に代替化等検討委員会というものが非公式に組織されたわけです。これの所管は厚生労働省でしたね。

小田政府参考人 そのとおりでございます。

五島委員 お配りしました資料の一番最後のページを見てください。

 この石綿の代替化等検討委員会の委員というものの名前が載っております。東京農工大学工学部の機械システム工学科の助教授、芝浦工大建築学科の助教授、原子力研究所の研究システムの研究員、それから明大理工学部の建築学科の教授、東大工学部の建築学科の教授、早稲田の建築学科の教授、そして委員長は消防研究所の理事長。こういうメンバーが委員になって、坂口さんの原則禁止を受けて委員会をつくられるわけです。

 厚生労働省がこういう委員会をつくるのであれば、当然、健康に対する被害なりそうした観点からの研究を続けている専門家、あるいは、さっきも言いました。実質的に、既に二〇〇二年のときには使用量はかなり減っています。使用量というのは、新たに使われる量が減っている。しかし、社会全体の中には一千万トンを超すアスベストの山。当然、それに対する処理、廃棄物の問題、そういう専門家が入って委員会をつくられてしかるべき。

 ところが、これを見てください。全部、非常に狭い範囲の中でその議論をする、そういう学者だけで委員会をつくられた。そして、その報告が二〇〇三年の四月に出されて、アスベスト製品の原則禁止どころか、部分規制にとどまる内容になってしまっている。

 なぜ、こういうふうな委員会の組織と報告になったのか。そのことに対して業界からの圧力、あるいは厚生労働省に対して他省庁からの圧力があったのかなかったのか、お答えください。

小田政府参考人 委員の構成についての御質問でございますが、当時、代替化の促進という観点から、代替製品の性能とかあるいは代替化技術の進展といったこと、それから代替した場合の安全性、そういった問題から、工学系統に偏った、健康の関係の方が産業安全技術関係以外に余りいらっしゃらないというふうなことになったかと思います。

 いずれにしましても、こういった人選に当たって何か外部からの圧力といったものがあったかという御質問については、私ども、そういった業界等から特段の圧力があったというふうには認識しておりません。

五島委員 何かもごもご言われてわからないんだけれども、よそからの圧力はなかったと。ただ、大臣が原則禁止と言われたけれどもそれは困るから、こういうメンバーをつくって代替化を広げたということなんですね。それは、厚生労働省の責任でそうやったというふうにおっしゃったことになります。

 そうしますと、これを受けてじゃないんですか、同じ年の二〇〇三年の十月には、労安衛法の施行令が改正されていますね。この施行令の中には、クリソタイルの輸入は合法として認めており、また、石綿製材の在庫類の利用、使用というのは認めているんですね、在庫がなくなるまでは構いませんと。

 何か私は今回の発表を見てみると、メーカーとしては、在庫が全部切れたから、やれやれ、もうこれから先は使わない、だからここで事後処理に入ろうということでああいう発表になったのかなと思わざるを得ない。そして、それを誘導したのはどうも厚生労働省じゃないかと、今のおっしゃるとおりであれば思わざるを得ない。その辺、どうなんですか。

小田政府参考人 二〇〇三年十月の政令改正の関係でございますが、これは、先ほどの検討会の結果を踏まえまして政令改正を行ったわけでありまして、当時流通していた品目の数%を残して禁止だ、ただし、その時点で、施行日前に製造され、あるいは輸入された製品については経過措置により禁止措置が除外されているということでございますが、これにつきましても、できるだけ早くそういったものについて対応するようにということで、本年の六月に、在庫品を有している業界団体に対しまして、在庫品の販売を補修に限るということを文書にて要請を行ったところでございます。

五島委員 クリソタイルの輸入を認めた理由は何なんですか。すなわち、白色石綿の輸入を禁止しなかったですよね、この施行令のときに。それは何でですか。

小田政府参考人 基本的に、代替化可能なものについては禁止をしたわけでございまして、代替化が非常に難しい、あるいは安全性の観点等からそういったものの代替が難しいというものにつきましては、一応当面使用をして、速やかな代替化を促す、しかし、その使用に当たっては、可能な限り健康安全の被害がないような形で実施するというふうなことを当時行ったわけでございます。

五島委員 この間、労基局の人たちと話していますと、白色石綿、すなわち蛇紋岩からとるクリソタイルについての危険性の認識が非常に弱いように思います。クリソタイルは、もちろん安全とは思っていないんでしょうが、ほかのに比べて毒性が低い、だからいいんだという思いがあるのではないですか。確かに、肺がんに関して言えばそういう例もあるわけですが、中皮腫に関して言えばそうじゃないですよね。胸膜の中皮腫、あるいは後腹膜の中皮腫。

 アスベストについて、これは公表するなと言われているので余りしゃべるつもりはなかったんですが、アスベストによる中皮腫というのは、別に胸部にだけできるわけじゃないんですね。睾丸にもできるし、喉頭にもできますし、それから腹膜にもできます、アスベストが原因で。

 そういう意味では、中皮の中に含まれているアスベストというのは、実は、去年の国際アスベスト会議の中における発表、アメリカの人の発表ですが、百六十八例の組織を調べた結果、中皮に組織的に浸透、移行するのはクリソタイルが圧倒的なんだということで、中皮腫に対してはクリソタイルの危険性を物すごく訴えているんですね。その辺は、昔からの伝統で、ほかのアスベストに比べてクリソタイルは安全だというふうに考えた対応をすると、大変な間違いを起こすだろうと思います。

 この点については、今後そういうことがないようにお願いした上で、さらに、アスベストの問題によって起こってくるこれからの問題。

 今までのアスベストによる被害というのは、当然、周辺住民やそういう人たちにも被害が出てきています。ちょうど八〇年代のアメリカの状況に日本は近づいてきたんだろう。これはピークの時期を合わせてみても、大体それぐらいです。これから日本は大変なことになってくるんだろうと思っております。

 これから大変になるというのは、いわゆる労働衛生として大変になるところというのは、解体とかそれからごみの焼却、運搬、そういうところが問題です。しかし、これから問題になる場合は、ひょっとすると公害としてのアスベストに転化してくる。だって、一千万トンのアスベストがいっぱいあるわけです。

 一九五〇年までの鉄骨構造の建物は、耐火被覆をしなさいと建築基準法でありましたよね。厚生労働省はそのとき毒性をわかっていたんですよ。わかっていて、現実にそんなことを労働省がするかどうかは別として、つじつまを合わすために、しようがないから、送気マスクといって潜水夫が着るようなマスクをつけさせて、長いホースで空気を送って、それで仕事をしなさいというむちゃなことをやっていたわけです。監督が来たときはそれを着たんでしょうね。けれども、ほとんどやっていないでしょう。

 しかし、その後どうなったか。例えば、鉄骨構造の二階の床の下の側面は鉄板ですね。そこにアスベストを吹きつけています。そして、一階の天井と二階のサンドイッチの間にさまざまな配管が通っています。配管工の人たちが建築後十年、十五年たって入っていくと、本当に真っ白のほこりの山です、アスベストの。僕も、おまえもそれを見てみろと言われて、怖かったけれども中に潜り込んで写真も撮りました。そして、配管工の人たちの吐くたんからアスベストボディーの検出もできました。

 こういう人たちに対しては、当時、労働省は、一般的マスクの着用は言っていましたけれども、粉じんのあるところにマスクを使えというだけの話で特別なことはやっていません。方々でそういうことがある。命の問題、健康の問題に対する知見の問題は軽視して、経済官庁やそういうところの主張が通って、厚生労働省は常にその両者の中でつじつま合わせをやってきた。それが、余りつじつまも合わないままにここへ来た。これが現実じゃないですか。

 だから、これからそういうふうな解体の作業があります。しかし、これからは公害としてのアスベストの問題が大変深刻になります。

 もう一つは、アスベストの大変ややこしい問題で、ほかの物質と違って、ドーズレスポンス、すなわち、量と時間の暴露量と発症量は必ずしも正の相関をしません。言いかえれば、短期の大量暴露でも、二十五年から四十年の間に中皮腫や肺がんを起こしたりする可能性があります。断続的な使用でもそういうことは起こることがあります。そして、製造現場では一cc中十繊維ぐらいの濃度に対して、環境中においては一リッター中に十繊維ぐらいの環境基準を持っているんですが、その環境基準が安全かどうかというのは怪しくなってきているんです。

 これも去年の国際アスベスト会議で出された症例ですが、七十歳の男性、この人にはアスベストの被曝歴は全然ありません。家族にもありません。ただ、その人の職場が、アスベストの吹きつけをしている倉庫の清掃を三十年間やってきた。月に数回、数時間、数十時間と言っていいですか、そのぐらい、アスベストを吹きつけた壁のあるところで掃除や何かの作業をしていた。その人が、労災にはまだ認定されておりませんけれども、典型的な悪性胸膜中皮腫でお亡くなりになって、解剖までされている、アスベストの中皮における大量の存在も見つかっている。

 こうなると、アスベストを吹きつけているところで働いていたんですから、この労働者は、どう理屈づけても、労災保険になりますか。基準局長、これは労災保険になりますか。

青木政府参考人 今、具体的なことはにわかにはあれですが、労災の認定をするためには、業務上の災害、疾病だということでありますので、それが業務上になるかどうか、通常労働者が行っている業務の中でそういった危険性が本当にあるのかということでありますので、たまたまそういったところへ行ったというのはなかなか難しいかもしれません。具体的な作業状況を見てみないとわかりませんが、そういうふうに思われます。

五島委員 通常は、アスベスト製材をつくっているわけでもなければ、それを扱って加工しているわけでもない。その倉庫の中にアスベストで吹きつけされていた、そこで働いていた。その人がアスベストで中皮腫になって、業務遂行性、起因性というのは非常に証明の難しい話だと思います。だから、この労働者なんかの場合は、今労災問題でもめているようですが、大変難しいケースだろうと思うんです。だけれども、これからはそういう人はふえるんですよ。

 皆さん方、霞が関に行って、下の方は鉄筋かもわからぬけれども、あれは鉄骨構造ですから、五〇年以前ですから、間違いなく耐火被覆をアスベストでやっていますよ。天井をのぞいてごらんなさい。恐らく、あなた方はアスベストの下で生活しているんでしょう。

 そういうふうなところに入って工事する人たち、まさかアスベストの作業とは思っていない、通常の配管工事や配線工事と思ってやっている。それを三十年、四十年後になって、そういう作業をやったかどうか一々覚えている人がおったら、よほど頭のいい人なんでしょうね。私なら絶対忘れています。

 だから、こういうふうな病気というのは、業務遂行性、起因性の証明というのは非常に限られた例しかできない。だからといって、これを全部公害として公害指定して、公害病として扱っていくとすれば、アメリカで七兆数千億、恐らく十五年か二十年すれば日本は二兆を超すでしょう。そんな基金、どこでつくるんですか。

 私は、はっきり言って、次の段階、必要なことは、製造物責任の問題。さまざまな建材やそういうものをつくって、それが人に対して有害な物質である、そして、それを扱うことによって人に対して有害性を持つとすれば、それの除去なり対策というものに対して、やはり製造物責任を明確にさせるということなしにはこれからの政策は進んでいかない。

 手帳の問題もおっしゃいました。ニチアスにしても、そこで働いている人はいいでしょう。大量のニチアスの下請で働いた人やパートの人たち、三十年たって、そういう事業主証明がとれますか。結果として、その人にアスベストの蓄積があるかどうかということで手帳を出していかないと健康管理できないという理屈じゃないですか。その辺、どうお考えですか。

小田政府参考人 石綿業務従事者の退職後の健康管理というのは非常に重要なことでございますが、この石綿による健康被害が増加しているということを踏まえまして、現在、事業者に対しまして、過去に石綿を取り扱う作業等に従事して退職した労働者であって、健康管理手帳の要件を満たさない者に対しても、健康診断を速やかに実施するよう要請を行っているところでございます。

 これとは別に、先生の御質問は、制度的に抜けがあるのではないかというふうなことでございますが、石綿を取り扱う作業等に従事した労働者の健康確保のため、御指摘のような点も踏まえまして、専門家による調査研究を早急に行って、その結果に基づいて、健康管理手帳の内容を含めまして、その健康管理のあり方について検討してまいりたい、こういうふうに考えております。

五島委員 例えば、ここに三重の建設労働組合がやったアスベスト関係の健診の結果のデータがあります。二〇〇二年、二〇〇三年、二〇〇四年と四千五百から五千の間の人数が受診しておられます。そして、二〇〇二年には有所見者の数が百名、二〇〇三年には百二十四名、二〇〇四年には百五十四名とふえているんです。

 これは、この二〇〇二年、二〇〇三年、二〇〇四年とアスベストの被曝がふえているからでないことはすぐ御理解いただけると思います。その二十年前なりその前の被曝によって、所見の発生がおくれて出てきているということです。そして、建設労働者ですから、ほとんどが一人親方ですね。これから見ると、極めて膨大な労働者が健康手帳も受けることもできずに放置されている実態は明らかじゃないですか。

 しかも、制度的な抜けもありますよね。アスベストは船で輸入されてきました。昔はドンゴロスの袋に入って送られてきたんです。あの上で寝たら気持ちよかったそうです。国鉄だって、昔の貨車は、ある文献によりますと、シートの詰め物にアスベストを使っていると書いてあります。断熱性はありますし、弾力性はありますし、よかったんでしょう。そういうふうな輸入に従事してこられた船員の方々、これは船員手帳ですから、手帳の対象になっていないですよね。

 また、先日お伺いすると、国土交通省は、旧国鉄の人も手帳交付の対象になっておりますと言うし、それから、JR連合の委員長に聞いてみると、JRになってからの労働者は手帳の交付の対象になっているけれども、それ以前の、いわゆるアスベスト作業、工場で物すごくやっているわけですが、被曝者は手帳を交付されていないと言っている。それはひょっとしたら、やはり当時民間でなかったということでされていないのかもわからない。

 そういうふうな人たちに対してはどういうふうな健康管理をしていくのか。これは厚生労働省と、それから社会保険庁の方からちょっとお聞きしておきます。

小田政府参考人 健康管理手帳制度は労働安全衛生法に基づく制度でございますので、その法文上、旧国鉄職員を排除する規定はございませんので、旧国鉄職員も健康管理手帳の交付対象となっていると認識しております。

青柳政府参考人 船員に対するお尋ねについてお答えいたします。

 船員に対します労働安全衛生上の健康管理責任は、船員法及び船員労働安全衛生規則に基づきまして、一義的には船舶所有者に属するものというふうに承知をしております。

 現在は、そもそもアスベストに関連する業務に対する船舶所有者の健康検査の義務は規定されていないということになっております。

 一方、一般労働者に対する労働安全衛生上の健康管理責任は、労働安全衛生法に基づきまして事業者に属するものとされておりますし、さらに、アスベストに関連する業務につきましては、そもそも事業者の健康診断実施義務が規定されていることに加えまして、離職後の健康診断に関して政府が必要な措置を行うこととされておりまして、これを担保する具体的な手段の一つといたしまして、労働者災害補償保険法に規定する労働福祉事業といたしまして無料健康診断の事業が実施されている、こういう構造になっております。

 したがいまして、お尋ねのアスベストに係ります無料健康診断に係る船員についての労働安全衛生上の対応につきましては、まずは船舶所有者の健康管理責任を担保する仕組みとしてどのような施策を講じることが適切かという観点が重要になってまいりますので、船員法等を所管する国土交通省の御意見も踏まえまして、こういったものの対応を検討したいというふうに考えております。

五島委員 火災が起こると、一番困るのは船舶や飛行機ですよね。ですから、ボイラー周りや何か含めて、アスベストの塊。特に軍用船なんかはその最たるものです。だから、造船所で次々と起こっている。ボイラー室や何かにおいてアスベストで固めている、そこで働いているのが船員の方ですよ。今の青柳さんの言ったように、何もしていないんだけれども、へ理屈だけ並べる。結局、手帳も行っていないわけです。何もされていないんです。

 しかも、常用でずっと船員である人は少ないんです。船というのはさまざま変わっていっている、フォローできない。そんなもの、聞くだけむだだから言いませんけれども、一人の船員がアスベストの輸入業務にどれだけ携わったかわかるかい、わかるはずがないんです。わからないことであれば別の方法でシステムをつくって管理しなければいけないのを、わからないと言わずに何のかのと言い逃れして、そして問題を先送りしようとしている。私は、そんな時期はもう過ぎたし、そんなことをしていたら大変な時期になってくる。

 しかも、中皮腫の死亡というのは、二〇三〇年には、ある学者の推定では、男性の中皮腫で年間五千名。また、一昨年の産衛学会の発表で見ますと、アスベストによる死亡者の数は、二〇三〇年には二万数千人から五万、六万ぐらい出るだろうという数字を出しています。これはいずれも予測値ですから、きちっとした調査を続けて経年的に追いかけてみる必要があるんでしょうが、今とは違ったオーダーでふえてくるということはあり得るかあり得ないかというと、アメリカにおける発症例を八〇年代から九〇年代を追いかけてみれば、それは当然そうなるんでしょう。それに対応した対策がとれていないじゃないですか。

 時間もなくなりますので次に行きますが、そうした問題の中で、どういうふうに早期に発見するのか。先ほど、免疫学的にアスベストの検査というのもおっしゃっておりました。確かに、組織を傷つけて、そこで生まれてくる特殊なたんぱくというものに着目した検査方法というのも今開発されようとしております。しかし、確実なのは、やはりプラークといいますか、胸膜の肥厚とかそういうふうなものですね。黒く映るわけですが、それを十年から十五年の間にチェックする。これを確実にチェックする方法は何かといったら、スパイラルCTです。

 この前、ある人に聞いたら、スパイラルCTなんて高いからできません、そんなもの、余りないでしょうと。今スパイラルCTがあるところというのは、中以上の病院なら普通でしょう。だからやれる。コストも、何ぼでできるかですから、五、六千円ぐらいでできるのではないかと思いますが、それぐらいは最低の金としてかかるんです。それによってフォローしていくしかない、医学的にも。

 そういうふうなことを皆さん方がどこで踏み切ることができるかなんですよ。そんなもの、金がかかるし、大変だし、責任が出てくるし、それは踏み切れないなと言うておれば、今のスピードで、大量の爆発につながってしまう。そこのところをどう考えているか。西副大臣、僕はきょうは官僚をやっつけるつもりで、副大臣に聞くつもりはなかったんだけれども、西さん、ちょっと政治家として、その辺、将来の問題をどう考えるか。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

西副大臣 先生から専門的な知見に基づいて、随分新しい事実を今御質問いただきました。私もそれに答えるだけの知見はございませんけれども、先生今おっしゃられたように、これだけ急拡大をして、しかも今後さらにふえるおそれの十分あるこの対策、いわゆる労働関係の分野だけで済まない可能性のある問題ですので、そのことも十分視野に入れながら、関連省庁とも協議をしていきたいというふうに考えます。

五島委員 次に、いずれにしても、アスベストがはんらんしている。吹きつけだけではないですよ、モルタルにもアスベストは入っているんです。だから、あらゆるところにアスベストをまぜてやったわけですね。コンクリートにもまぜて使った。そういうふうなものの風化その他によって被害をこうむるわけです。

 製造現場と比べてどうなのかという議論はあります。それは、発症率においては量が少ないだけ低いかもわからないけれども、今度は公、全地域ですから、人数が多いですから、やはり大変なもの。いずれは、これは下手をすると公害と言われる状況になるんだろう。

 だけれども、私は、本当に公害というのは不特定多数者による不特定多数者の損害が公害なのであって、水俣病とかイタイイタイ病とか、あれを公害と言っているのはおかしい。すなわち、損害の広がりが大きければ公害と言っているという、日本的な使い方をしています。しかし、この問題に対して公害対策という形で適用するというのは間違っているんだろう。

 まず金の問題ですよ。さっきも言いました。製造物責任というものをきちっと生かして、製造者の責任において除去をやらせていく、あるいは措置をさせていく、その観点をきちっとここで打ち立てないと、大変なことになるんだろうと思っています。

 例えば、今回厚生労働省がお出しになりました資料の中に、アスベストを使った建材を事前に調査し、そしてそれ特有の樹脂でもって取り壊し、そしてそれは特別管理廃棄物として処理をすることになっています。胴体が大きいからといって、あの波板、たくさんありますね、まだ国鉄のホームなんかにもありますよ、あの波板を粉々にして細かくして運べば、量は少なくなりますから処理しやすいんですけれども、そんなことをしたら粉じんがいっぱい出るからやってはいけないとなっている。

 そうすると、そういうふうなものの処理のコストを考えた場合に、例えば、四十坪ぐらいの住宅で、スレートがわら、アスベストの壁板、そういうものを使っておられる家屋を解体して処理しようとすれば、一戸当たり幾らぐらいのお金がかかるんですか。

 きのうそれを言ったら、国土交通省の方は、そんな金の試算は厚労省がしろというふうな話でしたが、そこは任すと言っていますが、どちらでも結構です、お答えください。

小田政府参考人 あくまで試算で、一例として申し上げますが、ある文献に紹介されている例を挙げますと、平均的な床面積三十坪程度の戸建て住宅の解体工事の請負金額というのは百数十万円程度と言われているようでございますが、これについて石綿対策というのは含まれていないということになっております。

 以上でございます。

五島委員 石綿対策が含まれていない解体費用を聞いているんじゃなくて、アスベスト製材を厚労省の主導によってやっていき、そして産業廃棄物としての処理のコストも含めることによって、どれぐらい金が余分にかかるのかを聞いているんですよ。

小田政府参考人 アスベスト対策に係る解体にかかる費用の具体的な金額というものでございますが、これは建設物の種類あるいは規模、建材の種類、工期等に応じて、あるいはどのような対策をとるかによって異なるというふうに認識しております。

五島委員 しかも、これはユーザーに対して、値切ったらいかぬと書いてあるんですね。値切ったらいかぬといっても、四十坪の家を解体するのに、一説によれば一千万かかると言う人すらいる、それはかかるかどうかわかりませんけれども。当然、ユーザーとしては、それは勘弁してくれ、今まで百五十万でできていたのなら、二百万ならしようがない、二百五十万ならしようがない、そんな膨大な金が払えるかとなってくると、結局それは一般廃材と同じような形で、ずさんな扱い方、ずさんな解体になるわけですよ。

 なぜそういうふうなものが、厚労省は、せっかく省令の中で細かく書かれたのなら、そのことに伴っての経済的負担がどれぐらいふえるのか、そのまま放置した場合に厚労省が言うとおりの手順でもって処理できるのか、検討するのが当たり前じゃないですか。

 私は、次までに、委員長にお願いして、またぜひこの集中審議をやってもらいたいと思いますから、しかるべき時期までにその辺の試算をやっておいていただきたいと思います。

 また、環境省の方にもお伺いします。

 アスベストの吹きつけを固化して、そして除去して二重のビニール袋に詰めてしまう処理をした場合は、意外と簡単なんですよね、コスト的には。ところが、ああいう建材、スレートあるいは壁面、あるいは波板、もう至るところにあるアスベストの製材です。これもアスベスト製材ですから、通常、年数によってアスベストの含まれているパーセントは五%から二五%ぐらいまででしょうが、アスベスト製材ですから処理しなきゃいけない。

 そうすると、今のところ、解体工事は水でぬらしてできるだけ飛散せぬようにして処理できるんですが、それを運んでいく廃掃業者、既にそれによって支障が起こっています。廃掃業者に対して、安全管理面の何らかの指示をされるのかどうか。

 次に、持ってきた特別廃棄物、これをどうするんだという話。これは、バーゼル条約のときにも私はこの問題で質問しているんですよね。

 常識的に考えると、これは埋設をして、その上に土をかけて被覆をして、またその上にアスベスト材を捨てて、またその上から土をかけて被覆する、そういうふうなサンドイッチ方法で埋め立てるしか安全な方法はないはずです。野積みしていて被害が起こったというのは、アメリカの例からも、アフリカの例からも、フィリピンの例からも出ています。だから、これはもう埋め立てるしかない。そうすると、本当に膨大な埋立地が必要になってくるんですよね。

 環境省、その辺、何かお考えになっていますか。

由田政府参考人 御指摘のとおり、飛散性のある廃石綿等につきましては、廃棄物処理法に基づきまして、平成四年七月に、特別管理産業廃棄物として通常の産業廃棄物よりも厳しい基準が適用されております。

 具体的には、御指摘のありましたように、収集におけます飛散防止とか、あるいは処分におけます溶融、あるいは耐水性材料での二重こん包等の基準が定められているわけであります。

 それからまた、アスベスト成形板などの非飛散性の廃石綿につきましても、ことしの三月にその取り扱いに関する技術指針を策定いたしまして、破砕による飛散を防止する観点から、極力破砕を行わないなどの適正な処理が図られるよう指導しております。

 これらによりまして、廃石綿等の処理費用が通常の産業廃棄物の処理に比べると多額になることに関しましては、やむを得ないというふうに考えております。これは、環境保全上、必要なものというふうに考えております。

 環境省としましては、これらの規制とか指針によりまして廃石綿等の適正処理が確保されるよう、排出事業者あるいは産業廃棄物の処理業者等の関係者に対しまして、指導の徹底についてこの七月十二日付で指導の通知を発出したところでございます。

五島委員 これは、昨年の東京で開かれた世界アスベスト会議でのアブストラクトです。一度お読みになったらいいと思いますよ。そういう石綿スレート板とか、それから石綿を含んだあれが、放置した場合に、風化してどういう危険性をもたらしているかという世界各地からの報告がありますよ。

 これは、やはり安全にするためには埋設するしかないんです。その埋設に要する埋設地の確保というのは大変ですよ。ほかのものなら、その分だけ捨てていって、順番に捨てていけますけれども、飛散させないために土壌被覆をしてはやってということになれば大変なことになってくる。深海にでも捨てるということが許されるのなら一番簡単なんでしょうが、そんなことはできないとすれば、これは大変なことになってくる。

 今おっしゃったような話を聞いている限りでは、余りアスベストの問題、これはリサイクル課がやることでは、リサイクルできないんですからリサイクル課がやってもらったら困るんだけれども、どうも環境省は、このアスベストの問題を取り上げてきちっと対策を考えているようには、今の御答弁では思えません。

 それらの問題もまたいずれ改めてお伺いするとして、最後に、これは、もうきょう質問をして、データは出ないと思いますからお伺いしますが、現在使用されているアスベスト製材のそれぞれの種類、建材であっても、吹きつけ材であってみたり、屋根材であったみたり、いろいろな基準があります。

 きょう私のお配りしました資料の中にも、七のところに、どういうふうなところに使われているかという一九九五年の使用状況があります。とりわけこの中で一番多いのは、やはり建設材。この年でも九二%です。建設材について、どういうところに大量に使われてきているのか、その使用総量、言いかえれば、これから除去しなければいけない総量に相当するわけですが、この使用総量はどれぐらいになるのか。そうしたものを、先ほどから禁止、禁止とおっしゃったわけですから、期限を設けて除去するのか、それとも、自然に風化して大気中に舞い上がってなくなるまで待つのか、それとも、そこを利用している人が気持ち悪くなって自分のお金で処理してくれるのを待つのか、どういうふうに考えているのかお伺いしたいと思いますが、もし今それに答えが出なければ、期限を切ってデータの提出をお願いしたいと思います。

塚本政府参考人 先生のお尋ねの件でございますけれども、当省として、今、建材関係でどういうふうな分野にどれだけ使われているかということで調べたわけでございますけれども、先ほどから御案内のように、我が国の輸入量は、四十九年当時三十五万トンから、足元、平成十六年には八千トンということでございます。それから、累積でということでございますけれども、昭和五年から平成十六年、七十五年間ということで約一千万トンというお話、我々、貿易統計によりまして九百八十八万トンということでございまして、このうちの九〇%以上が建材。

 平成二年の使用状況を見ますと、この建材のうちの約三四%が住宅の屋根用スレート、一五%が屋根や外壁用の波形スレート、それから一四%が内装、外装用の押し出し成形セメントというふうに用いられている。その他、石綿のセメントボード、それから珪酸カルシウム板、こういうものに使われているというふうに承知をしております。

五島委員 それはもう既に他の代替品が出だしたときの使用状況なんですが、もっと古い時代から考えてみて、現在まだ使われている建物の中に建材として使われているものについて言えば、少なくても九百万トン近くのアスベストが建材として使われて、輸入量だけでですよ、そして、その中でまだ現在も除去されずに、あるいは解体されずに残っている量というものが、やはり八百万トンぐらいはまだ残っているだろうと考えて間違いないんだろうと思う。

 八百万トンのアスベストを含んでいる問題というのは、解体するにしても除去するにしても、アスベスト単体ではなくて、ほかのものと一緒に混和しているわけですから、容積的には非常に大きくなりますね。そういうふうなものの処理のコストというのはかかるわけですから、その辺は環境省の方もぜひ、どういうふうに処理していくのか。

 アスベストの無害化というので、最近、新聞に、何か熱を加えてどうのこうのといって出ていましたけれども、それは実験室的な問題で、製品的になったものの処理にはそんなもの不可能でしょう。そうすると、そのコストをどうするんだという話が必要になってまいります。同じようなことが人間の体にも起こっている。

 そういう意味では、これからこの問題について当委員会においても引き続き審議、質疑をさせていただくことをお願いして、きょう第一弾としては終わります。

鴨下委員長 次に、泉健太君。

泉(健)委員 京都の泉健太です。

 きょうは本当は、ある意味、もっと感情を交えながら、今のこのとてもひどいアスベストの被害実態ということについては訴えたいところなんですが、私に与えられた時間は三十分間です。大変短い時間の中で、しかも、このアスベスト問題についてはきょうが初めての一般質疑ということで、その中でお伺いしたいことがたくさんございます。ですので、ぜひとも簡潔に、誠意ある御答弁をまずはお願いしたいというふうに思います。

 私は、実はきのう、私の地元京都からほど近いものですから、尼崎に行ってまいりました。そして、クボタの阪神事務所長さん、安全衛生推進部長さん、そして尼崎市役所の担当の方、また、実際に被害を受けられた、これは一般住民の方で中皮腫になられたというケースの方ですけれども、その方から話を直接お伺いしてまいりました。そこで実態もよくよくわかりましたし、まだまだ政府がそういった現場の実態に踏み込んでいないんじゃないのかということを私は感じて帰ってまいりました。

 我が党では、今質問をされました五島議員を座長として、今、プロジェクトチームを立ち上げて、これから対策を進めていくところですが、政府も、現状の中でもまだまだ対策が足りないということを私は感じざるを得ません。例えば、七月の十一日に関係省庁の会議というものが開かれたようですけれども、それは課長級というふうに聞いておりますが、それ以降はこういった会議は開かれていますでしょうか。

青木政府参考人 ちょっと今手元に資料がございませんが、五回ほど会議が開かれていると記憶しております。

泉(健)委員 それは、課長級よりもさらに位、ランクが上がった会議ということになっているんでしょうか。

青木政府参考人 関係省庁の課長級の会議が五回だったというふうに記憶いたしております。

泉(健)委員 この質問をするに当たって各省庁からいろいろな資料をいただいたんです。「アスベスト問題への対応」ということで関係省庁会議としての資料が出されているわけですが、私はまず第一点びっくりしたのは、厚生労働省は、基本的には労働災害ということで労働者の健康被害についてカバーをする、そして、一般住民や家族については、唯一、窓口を設けて話を聞くというところしか実は書いていないんですね。何も、例えば健康調査をするとかそういったことがないという状況に、今、私は大変びっくりしました。

 そして、きのう、被害者の方にお会いをして、今いろいろ問題になっています、きのう、実は私が行ったそのちょっと前にはNHKさんが取材に来られていた。いろいろなテレビ局、新聞社が取材に来られているそうなんですが、国からは一度もまだ意見を聞かれたことはないと。これはおかしい話なんですね。

 明らかに中皮腫という診断を受けている方にもかかわらず、全くそういった国からの協力要請もないんだということをおっしゃっていました。その方は、だからといって国を今の段階で批判するということではなくして、やはり非常に不思議そうにしていました。何をしているんだろうかというような思いを持たれています。そしてまた、この尼崎の工場周辺では、今、相談件数の中にはもう既に死亡されたというようなケースが数十件上がってきているという状況もありますので、これはもっともっと広がるでしょうということをその被害者の方はおっしゃられていました。

 そこで、早速、幾つか指摘をさせていただきたいんですが、やはり今回のアスベストの問題を通じて感じるのは、非常に情報の出が遅い、あるいは情報が有効に活用されていないというところだと思います。

 例えば、先日の新聞記事ですが、これは、尼崎市役所が人口動態資料をもとに死因を調べようと思ったら、これが統計法上の目的外使用に当たるということで、厚生労働省から許可を受けなければならないということがあるようですが、厚生労働省、これはいつまでに許可を出せそうですか。

鳥生政府参考人 人口動態統計調査の調査票の目的外使用につきましては、それを使用する市町村等から調査を所管する厚生労働省を経由して、統計法を所管する総務省に目的外使用の申請を行い、総務省の承認を受けるという流れになっているわけでございます。

 アスベスト被害に関連いたしまして人口動態統計を目的外使用する場合においても同様でございますが、厚生労働省といたしましては、市町村等からの申請を受けまして、速やかに総務省に対して対応していきたいというふうに考えております。

泉(健)委員 先ほど言いましたように、時間がないんです。速やかにというのはもう当たり前の話で、いつかという話を聞いているんです。ちゃんと答えてください。

鳥生政府参考人 これにつきましては、現在、市の方で申請資料を作成中ということを伺っております。

 私どもといたしましては、資料が提出され次第、迅速に処理をいたしまして、総務省に対して申請を行うということにいたしておりまして、総務省に対しても、こういった現下の状況にかんがみ、可能な限り早く承認をしていただくように話をしていきたいというふうに考えております。

泉(健)委員 しかし、その申請資料は、厚生労働省から出すようにというふうに言ったんじゃないんですか。

鳥生政府参考人 統計法に基づく処理を行うということで、資料についての内々の打診がございまして、それに基づきまして、現在、市の方で適正な申請資料を提出すべく作業中だというふうに聞いております。

 私どもといたしましては、その資料が提出され次第、現在の状況というのは御指摘のとおり非常に切迫しているという状況でございますので、可能な限り早期に総務省の方に承認の申請を行うということにいたしたいと考えているところでございます。

泉(健)委員 といいますと、これは厚生労働省として、こうした関係省庁の会議を開いているのであれば、それこそこのアスベストについては、いろいろな自治体から、尼崎だけじゃなくて今後も出てくるという可能性があるときに、毎回、自治体からの申請資料の提出を待つ、そしてそこから総務省に届けて許可をもらって、またそれを許可を出すということを繰り返すのか。それとも、それこそ、これは厚生労働省と総務省の間で話ができる話じゃないですか。副大臣、どう思われますか。

鳥生政府参考人 目的外申請につきましては、同一の目的によりまして反復して調査票を使用するということが見込まれる場合には、包括的な申請を総務省に対して行うといったことがございます。

 現在のところでは単独の市の申請ということでございますが、今後、具体的な動向を見守りながら、それに対応して、そうした包括的な承認の申請といったことも含めて迅速な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

泉(健)委員 その包括的な申請というのは非常にありがたいお話です。ぜひやっていただきたいと思います。

 さらに言えば、動態資料だけではなくして、実際に死因がわかって自治体が訪問調査をしたいというときに、これまた許可が必要じゃないですか。

鳥生政府参考人 承認の申請の中に、どのような調査をどういった利用者の範囲で行うかといった計画を含めて申請が行われるということでございますので、その中で承認がなされた場合には、その個々のケースにおいて、それぞれの過程での承認ということにはならないものと存じます。

泉(健)委員 では、ぜひ各自治体に対して、これは先ほども言いましたが尼崎だけではありません、こういった市民への健康調査を行いたいというような自治体がある場合には、ぜひその包括申請という手段を積極的に国から提供していただきたい、その情報を言っていただきたいと思います。

 今おっしゃられたように、一つ一つの動作、行為をするについて、毎回申請書を上げなきゃならないというのは大変な問題だと思います。ですから、人口動態資料をいただき死因を調べ、そこからさらに健康調査もしという、あるいは、そこからさらに、例えばこれは医療機関からの情報提供ですとか、いろいろなことがまた考えられると思うんですが、そういったことのなるべく包括的な申請をぜひ自治体の方にも皆さんから呼びかけていただきたいということをまずお願いしたいというふうに思います。

 そういう中で、私はきのう、クボタに行って、資料をいただいてまいりました。その中で、神崎工場の従事者ということで、在籍一年以上の社員合計、いろいろと数字が書かれているわけなんですが、私はそこで非常にびっくりしたのは、退職者の方々で、もちろん部局にはよるんですが、ある部局では、五百名以上の退職者の中で二百五十名以上が住所不明だというような状況なんですね。

 確かに、退職をされた、引っ越しをされたら、会社としてそれを追跡するものではないですから、そこは確かにそのとおりなのかもしれないんですが、しかし、この実態、先ほどたしか答弁の中で、青木局長だったでしょうか、対象者へしっかりと周知をするということを言われていたわけですけれども、やはり、クボタさんが御自身の会社の中で調べた中でも半数の方々が住所不明になっているということから考えますと、これは先ほど来御指摘があるように、ある意味、広く被害者が拡散をしている。

 言ってみれば、公害というか、公害というのは普通はそこに住んでいる方々にばっと物質が広がって、そこにいながらずっと症状が出てくるというケースが多いんですが、今回のアスベストの場合は、ずっと潜伏が長いということで、全国に飛び散ってしまっているわけですね、アスベストを持っている方々が。そういうことでいうと、地域だけで見るというのは非常に難しいことだというふうに思います。

 そういった意味では、やはり全国的な周知が絶対に必要ですし、これから、私は後で公害健康被害の指定についての話もさせていただきますが、これは地域ということだけではなかなか割り切れない問題だということで御認識をいただきたいと思います。

 例えば、こういった住所不明者について、企業から行政の方に、例えばこの方がどこへ行ったんでしょうかということを含めてお伺いをしても、これもまた、多分、個人情報や統計法上の関係でなかなか情報提供が難しい。ともかく、統計法上、また個人情報保護法の関係で、いろいろなデータが使いにくくなっています。特にそういった御意見を省庁内でもしっかりとすり合わせをして、各自治体が、あるいは企業が、あるいは支援団体がそういったことで苦労なさらないように、ぜひ皆さんからも配慮をしていただきたいというふうに思います。

 私は、実際に被害者の方ともお会いをして、ぜひやはりここは、きょうは大臣おられませんけれども、大臣ないしは副大臣に、一度被害者の方か、あるいはこの支援団体、非常に今各企業とも連携をとりながら一生懸命やられていますので、実際に意見を聞く場、被害者の方から意見を聞く場をつくっていただきたいと思いますが、副大臣、いかがですか。

西副大臣 お答え申し上げます。

 残念ながら、この事態が発生して、私自身はそういう機会を持つことができませんでした。種々の事情がございまして余裕がございませんでしたが、できるだけ早い機会を見て、実際にその被害に遭われた皆さん方の御意見も直接聞いてみたいというふうに考えております。

泉(健)委員 きのう被害者宅にお伺いしたときに、お名前を出してもいいのでしょうかという話をしましたら、私はもう取材をたくさん受けているし、みんな知っているからいいよというふうに答えてくださった方が、土井さんという五十六歳の女性の方です。

 この方は、クボタの工場の付近で生まれまして、昭和二十二年から四十四年までそこで生活をされていたそうです。もちろん、小さいころよく地域で遊び、また生活をしていたということで、当時から全く何も意識はしていなかったそうなんですが、つい最近、数年前に、風邪だと思って少し検査をしに行ったら、実際にはどんどん次の病院、次の病院と紹介をされて、大きな病院の方で、あなたは石綿の仕事をしていましたかというふうに聞かれたそうなんですね。そのときびっくりしたそうなんです、まさかと。今はもう尼崎から住所を変えて大阪近郊に住まれていますので、なおのことびっくりしたそうなんですね。

 いろいろとこの報道なんかで、やはりそういった因果関係があるんじゃないのかということで、今、こういった患者として生活をされているわけですが、もう、片一方の肺は全部摘出をされております。ある意味、いつ私には命の危険が迫っているかわからない、これまでのような生活はもうできないという中で、非常に不安を感じながら生活をしています。

 そして、本当に悲痛な声でお話をされていたのは、それはもう私の肺が戻ってくるわけじゃないけれども、やはり繰り返さないでほしい、そして対策をしっかりしてほしい、私のこの受けた事態について、それを生かしてほしいというんですね。でも、国からはまだ何にも情報提供の協力要請もない、意見聴取もない、私はいろいろな団体とも連携をとっているけれども、その団体にも余り国からは、特にこの七月十一日以降、まだまだ尼崎の方、連絡がないというような話があって、これは非常に残念がっていたわけです。

 ぜひとも、そういったことで、今、副大臣お約束をいただきましたので、早急にそういった面会をお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、公害健康被害補償法の適用をすべきではないかということについてです。これは兵庫県からももう要望が出てきているわけなんですけれども、これをぜひ私はお願いをしていきたいと思っています。

 これは環境省になるわけですが、第一種地域、二種地域というのがあって、今回の場合は、アスベストというものは中皮腫との因果関係が非常に強いというふうに私は思っておりますので、諸説あるかもしれませんが、この第二種地域というところで指定をすることが可能ではないのかなというふうに今考えております。

 この第二種地域の要件としては、相当範囲にわたる著しい大気の汚染、そして二つ目には、原因である物質との関係が一般的に明らか、三つ目には、当該物質によらなければかかることがない疾病が多発している、この三つが基本的には要件とされているんですが、今までの答弁をお伺いしていますと、なかなか色よいお答えではないというふうに大変残念な思いをしているんですが、どの部分が現在このアスベストの被害についてひっかかって、この認定がまだできないという判断なのか、お聞かせいただきたいと思います。

高野副大臣 まず、公害とは何かということでありますが、環境基本法におきまして、公害とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、あるいは土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭によって、人の健康または生活環境に係る被害が生ずることをいうものというふうにされております。これが定義であります。

 したがいまして、今、周辺住民への健康被害等については、環境省は都道府県を通じて調査を行っているところであります。先ほども御答弁を申し上げましたが。したがって、その調査に基づいてきちんと分析をし、評価をするということであります。

 他の省庁もやっておりますが、まず、この基礎的な情報収集を通じて実態把握を行うということを通じて、それがいわゆる公害に当たる、相当範囲にわたる大気の汚染と言えるかどうかというところを慎重に見きわめる必要があるというところであります。

泉(健)委員 ということは、既に今私が三つ示しましたそのうちの二、三の部分ですが、ある意味、原因である物質との関係が一般的に明らか、これはもうアスベストですね。当該物質によらなければかかることのない疾病が多発、中皮腫はそれだけではないとはいえ、しかし、その工場周辺でこれだけ確率が高く死因なりそういった症状になっているのであれば、これはもう当然そういった因果関係があるということで、私は、今の御答弁ですと、認識ができるんではないのかなというふうに思います。

 その今言われました一番目、相当範囲というところをどう判断するべきかなんですが、これをぜひもう少し詳しくお伺いしたいんです。例えば、それは発症者数ということなのか、あるいは大気の中での特定物質の濃度ということなのか、あるいは発症者の人数にかかわらず程度ということによるのか、あるいは何か特定の物質が存在しているということで、それをもって相当範囲というふうに呼ぶのか、その辺のことを詳しくお伺いしたいと思います。

滝澤政府参考人 先ほどの副大臣の答弁に若干追加的な意味も込めまして申し上げますが、先生いろいろと要素を御指摘になっております。そうしたことを、目下、健康相談という形で個別にいただける情報、それから経済産業省が企業を通じて行っております諸調査、もろもろのいわば素データでございます、こういう素データを鋭意収集しまして、これはぜひ専門家の評価、分析を仰がなければなりません。そうしたことを経まして、御指摘のような点がどうかということについてさらに分析を進めるという段階を踏まえまして、公健法の考え方に合致するかどうかという判断をしていくことになろうかと思います。

泉(健)委員 そうしますと、これまでも、この第二種地域の指定の場合には、そういった専門家の方々が今言ったような要件を総合的に判断して決められていたということでよろしいですか。

滝澤政府参考人 第二種地域の指定でございますが、先ほどもお話がございましたが、事業活動その他の人の活動に伴って相当範囲にわたる著しい大気の汚染または水質の汚濁が生じていること、それが一点目でございます。二点目の条件として、その影響により、当該大気の汚染または水質汚濁の原因である物質との関係が一般的に明らかであり、かつ、当該物質によらなければかかることがない疾患が多発している。こういうことについて、それぞれ水俣病、イタイイタイ病という例示がございますが、それぞれの専門家によって判断され、考え方が整理されたということでございます。

泉(健)委員 副大臣、きょうは本当に、大臣がおられませんので、副大臣が責任者だと思って私はお話をするんです、もちろんそうだと思いますが。

 例えばアスベストの全面禁止ということについて、私の認識が間違っていたらぜひ言っていただきたいんですが、二〇〇八年までに全面禁止だという中で、来年専門家会議を開いて、安全な代替品があるかどうかや禁止時期なども検討に入るということが言われているようなんですね。これは本当に来年専門家会議なのかということ、全面禁止を検討することについて。今おっしゃられた公害健康被害補償法の第二種地域の適用についても、専門家会議だと。もちろん別な専門家の方々が集まるわけですが、これも、いつやるのかということをぜひお伺いをしたいんですね。

 これはやはり、今の状況からいけば、両方とも今年度中にやるべきじゃないですか。今年度中というか、ことしじゅうにやはり専門家を集めてやるべきじゃないですか。二つのことをぜひお答えください。

滝澤政府参考人 済みません、二点目の方が先になってしまいましたが、るる申し上げたその素データ、情報収集を経まして、専門家、これは疫学、あるいはもちろんこのアスベスト疾病の専門家も含めて、主として医学系の専門家になろうかと思いますが、そういう方々に早目にお集まりいただいて分析をしていただく、評価をしていただく、次にどのようなことをすべきかということを提言していただくということは早急にいたすつもりでございます。

青木政府参考人 非常に危険なこのアスベストに対する規制については、先ほど申し上げましたように、平成十三年当時のアンケート調査によれば、そのほとんど、九八%は既に今禁止をしているところでございますが、残っている、原発とかの配管等で使われているごく一部につきましてはまだ許されているわけでございます。

 これらについては、いろいろな状況の変化を踏まえて定期的に見直す必要があるというふうに思っておりますし、早急にこの検討委員会を開いて、先ほど申し上げましたように、その後のパブリックコメントでありますとか、アクションプログラムだとか、WTOへの通報だとか所要の手続がございますので、時間はかかりますけれども、遅くとも平成二十年までにその見直しをしたいというふうに思っております。

 専門家による委員会についても、事前の調査、企業調査等も必要でございますので、そういった手順を踏みながら、全体として、早急に行えるように考えていきたいというふうに思っております。

西副大臣 今担当から答弁をさせましたけれども、時間がかかるということは最低限の手続は踏むという前提でございますが、我々、リーダーシップを持って、最大限早く結論が出るように努力してまいりたいと思います。

泉(健)委員 やはり、今七月ですから、これは、来年ということを国民に示されるというのは非常に不満を高めることになると思いますよ。

 副大臣、今の御答弁は私はことしじゅうだというふうに認識を、もちろん、よっぽどの、何か情報をそろえなければならないということがなければですが、やはりこれはことしじゅうにぜひとも取り組んでいただきたい、いただけるものというふうに思っておりますので、どうかよろしくお願いします。そしてまた、公害健康被害の専門会議の方も、ぜひこれはやるべきじゃないですか。早急にといって時間がかかるのが常ですから、やはりこれは絶対ことしじゅうにやるべきですよ。検討を始めないと。ぜひよろしくお願いします。

 もう時間が余りなくなってきましたけれども、次に、阪神大震災のときのことについてちょっとお伺いをしたいと思います。

 というのは、阪神大震災のときにも環境省は調査をされているわけなんですね。災害が起こった、いろいろな廃棄物、解体作業等々を含めてやっているわけですが、実は、このアスベストのモニタリング調査を阪神大震災以降の災害でやっていないみたいなんです。環境省に問い合わせをしたら、それはやっていない、阪神大震災のときだけやっていたと。これもおかしな話なんですね。

 まずその理由をお伺いしたいのと、阪神大震災のときのモニタリング調査の結果を私は見ました。そうしましたら、いわゆる基準である十本というアスベストの数があるわけですけれども、石綿の濃度が一リットル当たり十本以下であることということなんですが、それを上回っている報告も出てきているわけなんです、解体作業現場の中では。

 そういったことから考えても、きのう私は被害者の方からお伺いしたんですが、もうあと十年もしたら、あの関西周辺なんかは工場の被害なのか震災の被害なのかわからなくなっちゃうよ、それこそ労災なのか、もしかして兵庫県に住んでいたら、震災の被害によって粉じんを吸い込んでしまって、アスベストによる被害なのかも全然わからなくなっちゃうよというような話もされているわけです。だからこそ、これは早急に進めていかなければならないということもあるわけです。

 現在、私の認識が間違っていたらまたこれも教えていただきたいんですが、特定粉じん排出等作業ということで、大気汚染防止法が平成八年に、震災後、改正になった。しかし、これは特定建築物の延べ面積が五百平米以上であり、吹きつけ石綿の面積が五十平米以上である作業が規制対象となるということで書いてありますけれども、一方で、石綿障害予防規則という、ことしの七月からようやく普及をしたこの中では、そういった建物の要件というのがちょっと私わからなかったわけなんですが、これはすべての建築物が対象だということで考えてよろしいんでしょうか。

小田政府参考人 石綿障害予防規則の対象はすべての建築物でございます。

泉(健)委員 そうしましたら、今ある、もう一方の大気汚染防止法の中での特定粉じん排出等作業というところでの規制対象というのは、これは現在はまだ変わっていないわけですか、それとももう変えられているんでしょうか。――だれもわからない。

鴨下委員長 答弁者を指定してください。

泉(健)委員 大気汚染防止法ですから、環境省でよろしいでしょうかね。環境省、副大臣に。

滝澤政府参考人 済みません、ちょっと答弁の準備がございませんので、後ほど対応させていただきたいと思います。申しわけございません。

泉(健)委員 済みません、もう質疑時間が終了してしまいましたので、大変、まだ半分程度しか終わっておりませんが、私の質問をこれで終わらせていただきたいと思いますが、とにかく、今、各種支援団体からもいろいろな要望が出ております。ぜひそういった要望をよくよくお読みいただいて、答えられるところからぜひ返答を、支援団体の方には回答という形でぜひお渡しをしていっていただきたいということを最後につけ加えまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 初めに、郵政民営化よりもこのアスベスト対策が国民にとって大変重要な問題だと思います。この席に尾辻大臣がいないのは非常に残念に思います。

 それでは、早速、時間がありませんので、簡潔にお答えをいただきたく、質問をさせていただきます。

 まず、アスベスト、石綿が原因で起こります中皮腫の死亡者数に対しまして労災認定数が十分の一程度と極めて少ない現状があります。厚生労働省はこの原因をどのようにつかんでいらっしゃいますでしょうか、まずお尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 確かに、今委員御指摘のように、中皮腫で死亡した方の数と、それから労災で認定をした数では相当の乖離がございます。これは、もちろん、労災は業務上の疾病ということでありますので、業務上にならないものについてはまず除外されるわけでありますので、当然のことながら同じような数字になるわけではございません。しかし、中皮腫がアスベスト、石綿によるものがほとんどだということであれば、乖離が大きいというのはおっしゃるとおりだと思います。

 そういった面はおきまして、あと考えられますのは、やはり石綿に暴露してから実際の症状が出てくるまで非常に長い時間があるということもございまして、労災によるものかどうかという認識がなかなかしづらいというのも確かだと思っておりますし、また、それは、労働者の方々だけではなくて、事業主の方あるいは実際にお医者さんにおいても、必ずしも、十分にそういった関係を承知をされて、労災ではないかということで指導してくださるということもまたなかなかないということもあろうかと思っております。

 そんなことでありますので、私どもとしては、労災として救われるべきものは当然救われなければならないということで、医療関係者も含めましてこういったことについての周知をまた改めて要請をしていくことにいたしております。今後とも、そういうことで周知活動、それから相談窓口なども全国に、四十七都道府県の産業保健推進センターでありますとか、労災病院は労災関係について、とりわけこの石綿による健康被害について重点として考える項目の一つにしておりますので、労災病院等にも相談窓口を設けるというようなことで対応していきたいと思っております。

内山委員 労災補償給付には時効がありますね。自分の職場でそもそもアスベストがあったとは知らない労働者もいたとか、また、労災補償を受けられることも知らない労働者もいるというようなニュースも伝わっておりまして、そういう時効の関係で請求できない被災者やまた亡くなった方の遺族等の請求に関して、しゃくし定規に五年の時効というのを適用することではなく、例えば原因企業の危険告知の有無を確認するとか、また弾力的な法の運用をするとかといった、今後の優しい対応というのができないだろうか、こうお尋ねをしたいのです。

 先ほど五島議員の方からもありました業務遂行性、起因性、これはやはり時間がたちますと、当然、証明することそのものができない状況があるわけでありまして、こういったところも認定にどう考慮するのか、ぜひお尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 時効の問題でございますけれども、時効につきましては、労災保険法におきまして、死亡という支給事由が発生した日の翌日から五年を経過したときは時効により消滅するということになっております。したがって、個々の労働者の方々がその事実を知っていたか否かにかかわらず時効が適用されるということであります。

 これを、確かに、石綿による疾病というのは長期間潜伏期間があるということもございますし、そういうような事情は理解できるわけでありますけれども、この石綿による疾病についてのみ法律を超えて運用で時効を延長するような取り扱いというのはできないというふうに思っているところでございます。

内山委員 石綿特有の、症状が出てくるまでに長期間時間がかかるというところですから、そこをぜひ検討してほしい、そういうことで私は今お願いをしているわけでありまして、型にはめてしゃくし定規にはかれるものばかりではないわけであります。

 それでは、質問を変えまして、クボタの旧神崎工場周辺の住民に対しまして厚生労働省は健康調査は行ったでしょうか。

青木政府参考人 クボタということではございませんが、石綿による健康被害というものがこういうことで非常に危険だということで認識もされましたし、私どもとしては、労災認定をされている事業場につきましてはまた改めて調査をすることにいたしておりまして、具体的に指示も発しております。

 そういうことで、事業場についての調査を踏まえて、それを参考にしながら、必要な対策はまた講じていきたいと思っております。

内山委員 私がお尋ねをしておりますのは、工場周辺の住民に対しての健康調査をしているかということです。

滝澤政府参考人 クボタの旧神崎工場周辺の状況につきましては、環境省といたしまして、七月五日にクボタの担当者からヒアリングを行っております。また、先週十四日、担当者二名を現地に派遣いたしまして、現地の状況の視察、それから地元の尼崎市との情報交換を行ってきたところでございます。

 その際、市役所の方から、保健所等への相談状況を確認した結果、保健所と公害部局当局合わせまして三十数件の健康被害の相談があったと聞いております。内容等は精査中ということでございました。

 一方、クボタに対しましても、周辺住民の死亡者について三十四件の相談が寄せられていると聞いておりまして、今後、クボタが職歴等についてさらに追跡調査をするということでありまして、また再度、我々環境省といたしましても、クボタから状況を聞きたいというふうに思っております。

 また、尼崎市でございますが、別途、旧神崎工場周辺の死因調査を実施するということでございまして、先週、担当者を派遣した際にも、調査の考え方あるいは調査方法等について、我々も説明を受けてまいりました。

 そうした状況を私どもも注目し、環境省といたしましても、それぞれの調査結果等を踏まえまして、市役所とも連携し、早急に実態の掌握に努めてまいりたいと考えております。

内山委員 アスベストを使用していました工場周辺の住民に対する環境暴露や、従業員の作業服を洗った家族が吸引した家族暴露、こういったものは、現在、労災の補償制度の中には入っていないわけであります。そういうものの確認、把握、健康管理、健康被害の早期発見等のシステムをつくらなければならないと思いますけれども、その辺はいかがでございましょうか。

滝澤政府参考人 中皮腫ということで申し上げますと、早期発見あるいは集団検診的な手法、有効な手法があるのかないのか。その辺、例えば結核検診のような形、あるいは胃がんのバリウムを飲んでというような手法も確立しておりますけれども、そういったものがそもそもスクリーニングになじむものかどうか。これは専門家にいろいろ聞いて我々も勉強したいと思っていまして、そういうことをクリアして、一般的な住民に効果的な対策が打てるかどうかということも吟味したいと思っております。

内山委員 健康管理手帳についてお尋ねをしたいと思います。

 粉じん作業や、石綿を製造しまたは取り扱う業務に従事し一定の要件を満たす労働者に対して、離職の際または離職後に住所地の都道府県労働局長に申請すると、労働安全衛生法に基づく健康管理手帳が交付されます。この健康管理手帳が交付されますと、年二回、健康診断を無料で受けることができる、こうあるわけでありますけれども、この年二回の健康診断でアスベストが原因であります中皮腫の早期発見が可能であるかどうか、お尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 例えば、アスベストによる胸膜肥厚でありますとか、そういったものは発見ができるというふうに考えております。

内山委員 健康管理手帳の交付が有効であるとすれば、例えば、今、一定の要件に達しない者には健康管理手帳は交付されないわけですね。こういったところの基準というのを、例えば本人の申請や一定の要件によらず、事業主の責任で健康管理手帳の交付が可能となるような、もっと優しく、広く配れるような方法は考えていませんか。

青木政府参考人 これは、今委員が御紹介ありましたように、健康管理手帳が交付されますと、年二回の健康診断を無料で行うことができるという制度であります。

 これは、労働者に交付されるということで、労働者から申請をするということになっているわけでありますけれども、例えば、労働者に交付されるものでありますけれども、離職の際の交付申請には事業者がその申請をかわってやるとか、そういったことは指導をしているところでございます。

 健康管理手帳があるということについても、十分労働者の方に知っていてもらうことも必要でありますので、そういった周知ということも努力をしているわけでありますけれども、同時に、事業主の方からも周知をするように、そういった周知徹底を指導していきたいと考えております。

内山委員 アスベストをどこで吸うかわからない。非常に、やはり国民全体が少し恐怖に、パニックに近いような考えを持っているんじゃなかろうかと思います。

 そこで、国及び地方自治体は、石綿及び石綿製品製造・取扱企業、事業所の名称、所在地、使用石綿の種類、量、時期等の情報を開示する必要があると思いますけれども、情報開示についていかがでしょうか。

青木政府参考人 労災認定を通じまして把握しました事業所に関する情報、この中には、例えば建設工事従事者のように石綿の暴露場所が特定できないもの、あるいはその事業所所在地とは別のところで明らかに暴露をしている、したがって事業場には石綿はないというようなところもございます。そういうこともございます。

 それから、事業所名を一律に公表することとした場合には、今申し上げたようなこともございますので、国民に誤解を与えたり、無用の混乱や不安を生じさせるおそれがあるというふうに思っておりますので、かえって公益の観点からも問題があるのではないかなと思っております。

 当該労働者につきましては、むしろ事業所を通じまして、またさらなる周知、理解を深めるということに努めていきたいと思っておりますし、周辺住民や被害者の家族あるいは同僚の方々の御不安に対しましては、現在、関係各省庁と連携しながらこの石綿対策について協議をしておりますので、その方策のあり方についてもよく相談しながら対応していきたいというふうに思っております。

内山委員 どこでどういう危険なものがあるのか、やはりこれは情報開示した方がいいと思うんですね。そういう会社に私も勤めていたかもしれないと思い当たる方もいらっしゃるかもしれません。ぜひそこは検討していただきたいと思います。

 次に移りまして、七月一日から施行されました石綿障害予防規則第十条に基づく、労働者を就労させる建物の壁、柱、天井等の吹きつけ石綿があるかどうか確認し、損傷、劣化等をしている場合には除去等の措置を講じなければならないと決めがありますけれども、いつまでにその措置を講じさせるのか、お尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 今お話のございました石綿障害予防規則十条は、この七月一日から施行をされた新設の規定でございます。したがって、これはもう今現在においても適用されているということでございます。

 お話のような損傷等をしているようなものにつきまして、いつまでということでございましたが、法律上はこれをきちんと除去、囲い込みをすぐしなければいけないということであります。実際の場合には、事業主の方にそういう義務がなされておるわけでありますので、そういうことをしてもらうということであります。

 私どもとしては、監督指導という、個別事業場に対する指導という手法も持っておりますので、監督指導などもしまして、こういった履行状況をきちんと把握して、履行確保を図っていきたいというふうに思っております。

内山委員 のんびりしていられないと思うんですよ。日々、アスベストを暴露している事業所があるかもしれません。ここは、西副大臣、全国一斉に緊急にこの履行状況というのを監督すべきと思いますけれども、西副大臣、いかがですか。

西副大臣 確かに、損傷している部分への手当てというのは、今後の、さらに先々の健康被害という面では大変重要な課題だというふうに考えております。

 私どもだけではなくて、関係省庁、特に現場をお持ちのところについては、他の省庁に関係する部分も多いものですから、私どもの方とまたそれぞれの省庁の合同の会議の場において検討させていただきたいというふうに思っております。

内山委員 緊急に対応していただきたい、こう思います。

 次の質問に移ります。

 石綿障害予防規則は、石綿を使用したビル等の解体工事従事者の健康障害防止対策の充実を図る法律と理解をしております。では、解体工事現場周辺の住民に対する石綿飛散に伴う健康障害防止に対応する内容の規則は、一体この中に含まれていますでしょうか。

青木政府参考人 労働安全衛生法に基づきまして労働者の健康の確保のための規則で、事業主に対しまして罰則をもって義務づけて規制をしているというものでございますので、基本的には労働者を保護対象としているということでございます。

内山委員 七月一日に施行されました石綿障害予防規則には、周辺の住民に対する健康管理、健康予防ということは含まれていないわけですね。

 それでは、環境省の方にお尋ねをしたいと思います。

 これから、アスベストが使われた古い建物が、二〇二〇年から二〇四〇年まで、ピークで年間十万トン前後ものアスベストが排出される、こういった推計があるようでありますけれども、ビルなどの解体の際に飛散防止対策をとらない、アスベスト、公害をまき散らす解体業者に対して何か罰則はありますか。

竹本政府参考人 私どもが承知しているところでは、罰則については、ないということでございます。

内山委員 ここに大きな問題があるわけでありまして、今現在、例えばもう中皮腫を患っている人たちよりも、これから大変多くの方が建物の解体に伴ってアスベストを暴露してしまう。すべての解体業者がまともに仕事をするとはとても限らない、不法な産廃なんかもしている実態があるわけでありますから、ここを野放しにしておいては、これから、多くのビルの解体に伴うアスベストの地域住民に対する飛散というのが大変大きな問題になろうと思うんです。

 副大臣、いかがですか、今こういう状況なんです。

西副大臣 お答え申し上げます。

 すべてが私どもの所管の部分ではないというふうには感じますが、今後の暴露対策としては、先ほど、残った部分の製造過程の問題ももちろんございますけれども、今これだけたくさん日本全国に散らばっているアスベスト、使用済みのものもあるし使用中のものもありますが、その問題をいかに解決するかということは大変重要な課題だというふうに考えております。

内山委員 安衛則九十条、石綿則第五条の関係で、吹きつけ石綿の除去作業について、工事開始の十四日前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない、こう決めがありますね。この届け出をした場合において、ここの工事現場は届け出がされていますよと外部からわかるようなものを何か交付する予定ですか。

青木政府参考人 規則にはそこまではなかったかと思いますが、そういったことについてきちんと指導もするようなことを考えていきたいというふうに思っております。

内山委員 石綿障害予防規則、これを七月一日から適用されていても、真摯に届け出をしているかいないかというのが外部からわからなければ、その周りに住んでいる者というのはより不安が生じると思うんです。しかも、悪質な業者がいてどんどん地域に飛散をしているなんということになりますと、これはたまったものじゃなくて、近くで工事現場があったらそこに行かないように、また、風下の方は本当に注意しなければいけない、そんな状況だろうと思うんです。

 今回のこの規則の中というのは、届け出だけで後の公的機関のチェックというのが入っていないんですよね。ですから、ここは、届け出をしたら必ずやはり公的機関のチェックをすべきだと思いますけれども、いかがですか。

青木政府参考人 これは、労働安全衛生法の体系、私どもの労働基準法関係法令の施行に当たりまして考えているところでありますけれども、基本的に事業主の責任としてやっていただくということでありますが、なかなかその履行確保が徹底しないということもありまして、全国の監督官がそういった現場に立ち入り、事業主に監督指導を日々行っているところでございます。

 そういうことで、先ほどちょっと申し残しましたけれども、既にそういった事業場に対する調査、履行の確認状況等について指示をしているところであります。したがって、必ずしも全事業場を直ちに一遍にというわけにはまいりませんけれども、順次そういったところについて監督指導できるものというふうに思っております。

内山委員 特に建物に関しては、ビルだけではなく一般住宅でも石綿含有建材というのはかなりあろうと思います。例えば住宅屋根用化粧スレート、それから建物の外装材、サイディング、石綿含有建材がかなりやはり使われておりまして、石綿の使用量にかかわらず、一般住宅の解体でも石綿障害予防規則が適用されるのかどうか、確認をしたいと思います。

青木政府参考人 これは、作業が石綿にさらされるおそれのある解体事業であれば、労働者保護のためでありますので、建造物のいかんを問わず適用されるということでございます。

内山委員 そうしますと、一般住宅でも、内外装材それから屋根のスレートなんというところにも必ず石綿が含まれた建材があるわけでありますから、これをすべて届け出してもらわなきゃならないということになるんじゃないんですか。これは本当に一体できるのかどうか、非常に疑問に思うんですけれども、いかがでしょう。

青木政府参考人 簡潔に申し上げますと、例えば住宅を建てる場合でも、住宅を持つ普通の一般の方が実際の建てる作業をするわけではありませんで、建設事業者に請負契約を結んで発注をするわけですね。そうすると、請け負った建設事業者が労働者を使って解体事業をやったり建設事業を行うということでございます。こういった労働者を使っている事業者に対して義務を課しておりますので、一般住宅であろうとあるいはそうでない建物であろうと、同様にこの規制はかかるということでございます。

内山委員 やはり、人は生まれながらにしてきれいな空気を吸う権利というのは持っていると思うんですね。

 三月に環境省が策定しました非飛散性アスベスト廃棄物の取扱いに関する技術指針のみでは、このアスベスト公害に対して不十分だろうと思います。法令による規制のあり方を早急に検討し、労働安全衛生法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、建設リサイクル法を基軸に、整合性を持った石綿対策基本法の策定を早急にしなければならない、こう思うんですけれども、横断的に、副大臣、どうでしょうか。

竹本政府参考人 ただいまの点につきまして、アスベストの大気環境への飛散防止でございまして、大気汚染防止法に基づく規制措置を講じているところでございます。

 先ほどの御質問につきまして、私、ちょっと誤解をしておりまして失礼をいたしました。

 製品製造関係施設に対して、届け出、また境界での濃度基準の遵守というのを義務づけておりまして、これに違反しますと罰則がかかるわけでございます。また、解体に関しましても、平成九年、大気汚染防止法を改正いたしまして、当該作業の届け出、また飛散防止のための作業基準の遵守を義務づけておるところでございまして、これについても罰則がかかるということで、先ほどは大変失礼をいたしました。

 それからまた、廃棄物からの飛散防止につきましては、吹きつけアスベストなどの飛散性を有する廃石綿等につきまして、廃棄物処理法に基づきまして、平成四年から特別管理産業廃棄物に指定をいたしまして、普通の廃棄物よりも厳しい基準を適用して処理を義務づけております。先ほど先生御指摘のございましたアスベスト成形板等の非飛散性の廃石綿につきましても、本年の三月、その取り扱いに関する技術指針を策定いたしまして、極力破砕を行わないなど、適切な処理が図られるよう指導してきております。

 こういった規制措置によりまして、現在におきまして、一般大気中のアスベストの濃度は健康に影響のない範囲に抑えられているものと考えているところでございます。したがいまして、新たに法律を制定するのではなく、これらの規制措置の一層の徹底を図ってまいりたいというように考えております。

内山委員 やはり行政の事後対応だと思います。これだけアスベストの被害が出ている。薬害エイズと同じような行政不作為というところの声もあります。公害健康被害の補償等に関する法律を適用すべきで、労災補償給付で救済できない工場周辺の住民を早急に救済すべきだろうと申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 引き続きまして、この集中審議でありますアスベスト問題につきまして取り上げさせていただきたいと思います。

 それで、きょうは厚生労働委員会ということでございますけれども、先ほどから御答弁をいただいております環境省の皆さん、それから国土交通省、文部科学省ということで、各省庁にわたりましてお越しをいただいておりますので、それだけ、先ほどからお話がありますように、関係省庁がきちっと連携をとってこの問題に対応していくということでは、やはり各省庁の皆さん方が主体的になって頑張っていただきたいというふうに思っておるところでございます。

 そこで、先ほどから少しいろいろお伺いをしておりまして、各省庁、いろいろな面からこの問題に対して対処をしていただいているわけでありますけれども、いわば厚生労働省におかれましては労働安全衛生法における労災認定という形、それから、環境省においては大気汚染防止法等々のさまざまな公害という観点からでございます。さまざまの各省庁の所管というのは私も一応一定の理解をさせていただいておりますし、それ以上のことを求めるつもりはないわけでありますけれども、しかしながら、今回のこの問題の広がり方を見ますと、やはりもう少し柔軟な対応といいますか、広範な対応が必要になってくるのではないのかな。

 先ほど副大臣もくしくもおっしゃったわけでありますけれども、所管の範囲内でということでありました。確かにそれは当然のことだろうと思うんです。したがって、であるならば、私は、実はきょう環境省の方に来ていただいているわけでありますけれども、この問題の本当の主たるといいますか、中心となって取り組んでいかなければいけない省庁といいますと、本当だったら環境省ではないのかなと。環境省そのものの性格からしますと、一つのものに対してではなくて、いろいろな省庁のいわば横断的なこの日本の国土における公害やあらゆる面での環境行政をつかさどっていくということであるならば、やはり私は、環境省さんにもっと中心的な役割を示していただけないのかな。

 なおかつ、それをもって、例えば厚生労働省さんにはこの分野をきちっと、人に対する補償をきちっとやっていただきたいですよ、あるいは学校教育に関して、学校のところに関しましては、文部科学省さん、ちゃんとやってくださいね、あるいは民間の建物に関して、あるいは公共物に関しましては、国土交通省さん、あなたがちゃんとやってくださいねというような形で、環境省がイニシアチブをとってやっていただけないのかなという思いがしてならないわけであります。

 したがって、この関係省庁の会議の中で、本来ならば内閣の官房がしっかりとこの部分をハンドリングをして行っていくんだろうなと思うんですけれども、残念ながら、ここの会議においては事務局という形で入っておられるということでありました。したがって、これからのこの会議の体制の見直しと、どこが主管となってやっていくのかということをもう一度この議論の中を通じて整理していただきたいなというふうに考えているところであります。

 それからもう一つは、このたびのさまざまな省庁の姿勢を見させていただきますと、ちょっと耳の痛い話かもしれませんけれども、旧厚生省の対応において、皆さんも御承知のとおりだと思うんですが、実は私が生まれる前の話でありました、熊本あるいは鹿児島においてのチッソの水俣病の問題でありました。

 このときには、昭和三十一年に、既に熊本大学の研究班、ここにおいて、本疾病は伝染病疾患ではなく、一種の中毒症であり、その原因は水俣湾産の魚介類の摂取によるものであるという報告がまずなされていたわけなんですね。三十一年でございます。

 それにおくれること一年たった次に、厚生労働省としては、熊本県の照会に対して、水俣湾内の特定地域の魚介類のすべてが有毒化しているという明らかな根拠が認められないので、水俣湾内の特定地域において捕獲された魚介類のすべてに対し食品衛生法四条二号を適用することはできないものと考えるというような、まだこの時点において当時の厚生省としては把握をしていなかったようであります。

 その後おくれること二年、昭和三十四年の十一月十二日に、時の厚生省の食品衛生調査会水俣食中毒特別部会という中で、水俣病の原因究明の結果についての答申ということで、水俣病は水俣湾及びその周辺に生息する魚介類を大量に摂取することによって起きる、主として中枢神経系統の障害される中毒性疾患であり、その主因をなすものはある種の有機水銀化合物であるという形でしっかりと答申がなされたわけであります。

 しかしながらでございますが、明くる日、昭和三十四年の十一月十三日、閣議において、時の厚生大臣でありました渡辺厚生大臣からその報告を閣議でされたわけであります。それに対しまして、時の通産大臣でありました池田勇人さんでありますけれども、翌年の総理大臣でございますが、水俣病の原因が企業の公害であると断定するのは早計であるという異例の発言をされていたわけでございます。そこで、そのチッソに対する、水俣病に対する対策がしばらくの間とまってしまっておりまして、最終的に公害病として認定されたのは、おくれること九年、そこから数えてですよ、九年の昭和四十三年の九月の二十六日でありました。

 そして、この一連の流れを見ますと、何か今回のアスベストに対応するものと、僕はどちらかというと、リンクさせてはいけないのかもしれませんし、リンクしてほしくないですし、この問題に関しましては、もう二度とこういうような国の対策としておくれをとったということなく、先ほどの委員からの指摘もありましたように、早急かつ緊急に、そして広範に重要課題として取り組んでいただきたいということをまず最初に申し上げておきたいというふうに思っております。

 それでは、大体、午前中から今までの議論がなされておりましたので、少しポイントを絞って、事前にお伝えをさせていただいている質問に基づいて御質問させていただきたいと思うわけであります。

 まず、中皮腫による死亡者数の総数としまして、平成七年、一九九五年からの統計によりますと、六千六十人の方が死亡者数の総数として出ているわけであります。さらにアスベストが原因による肺がんの死亡者数というものを把握されているのかどうかということも含めて、厚生労働省が今回のさまざまな各社の自主発表を受けて死亡者数を実態としてどこまで把握されているのかと同時に、どういう原因に基づいてそれが死亡原因となっているのかということをあわせてお答えいただければと思います。

青木政府参考人 石綿による健康被害につきましては、平成十五年の人口動態統計による中皮腫の死亡が八百七十八件ということでございます。これに対しまして、私どもが労災として認定をして補償しているというのが八十三件、あるいは健康管理手帳を発給して健康診断を進めているというのが八十八件ということでございます。

 それから、肺がんにつきましては、その発症原因としては、たばこだとか遺伝的な要因など、他の影響が非常に強くて、個々の事例において石綿の暴露との因果関係の証明が困難ということでございますので、石綿暴露により肺がんを発症したか、その詳細な調査を実施することは難しいというふうに考えております。

園田(康)委員 しかしながら、労災認定を受けた方のうち、アスベストが原因で肺がんによる死亡者ということが一応特定はされていらっしゃるわけですね。そうしますと、そこの労災認定を受ける際に調査をするということができているのであるならば、やはり広範な形で肺がんの方の調査というのは、今まではしてこなかったということであるならば、これからやっていこうというおつもりはあるでしょうか。

青木政府参考人 平成十七年度に特別研究として中皮腫の専門家による研究を行う予定にいたしております。これは、石綿による健康被害をもたらすものとして最も関連性が強いのがまず中皮腫だということで、これを詳しく研究してみようということであります。その研究結果も踏まえて、さらにいろいろな検討をしていきたいというふうに考えております。

園田(康)委員 ぜひ、恐らくこの中皮腫というのがアスベストからの中心的な疾病であるということが明らかになっているわけでありますけれども、ほかの疾病の部分も、石綿肺の部分はまたそれに至るまでの前段だということでありますが、ほかの疾病に関してもきちっと診断書を、その時点から診断を可能な限りとるように努力をしていただきたいというふうに思っております。

 それから、次でございますけれども、先般、ニュースといいますか、新聞紙上でいきますと、これは毎日新聞の七月の一日でありましたけれども、環境省が住民健康調査を行っていくんだというような報道があったわけでございます。これが本当のものであるのかということと同時に、環境省の対応としては、住民健康調査ということに対してこれからどういうふうに取り組んでいかれるのでしょうか。

滝澤政府参考人 関連事業所周辺の健康被害の問題でございますが、私どもは現時点で、健康不安への対応、それから実態把握、この二つが重要だろうと思っております。

 このため、健康不安への対応という意味でございますが、都道府県知事等に対しまして十二日付で通知を発出いたしまして、健康相談の受け付けを各保健所にお願いしているところでございます。また、経産省が行ったアスベスト健康被害の実態調査の公表を契機としてこうした相談もふえてくることが予想されておりまして、さらに健康相談の際に参考としていただくべくQアンドAを作成して、追いかけ都道府県等に通知をさせていただいたところでございます。

 さらに、実態把握の関係でございますが、各省でさまざまな視点から調査が同時進行で行われておりますし、また保健所等における一般の健康相談を通じて寄せられる情報、特に私どもの関係では一般環境経由が疑われる例ということで、特に情報提供を都道府県等にお願いしておるところでございます。また、クボタの旧神崎工場周辺の状況でございますが、七月五日に状況をヒアリングいたしました。また、先週、現地にも担当官を二名派遣させていただいております。地元の尼崎市とさらに情報交換を深めていきたい、連携を深めていきたいと考えております。

 これらの諸情報等をもとにいたしまして、一般環境経由のアスベスト被害についてさらに専門家からの科学的、専門的な助言もいただきながら状況を分析し、その後どのような対応が必要かということを検討してまいりたいと考えております。

園田(康)委員 先ほどの尼崎の調査の件でもそうでしたけれども、恐らく、暴露された方あるいは不安に思っていらっしゃる住民の方々からすれば、相談窓口を設置しましたよという話もあるわけでありますけれども、それはあくまでも設置をされているだけの話であって、住民に対して何らアプローチといいますか、来ていないわけであります。そういったことからすると、幾ら設置をしましたよ、設置をしましたよといっても、これは結局、実態把握をするためには住民の皆さんがそこに来ていただかなければ困るわけでありますね。

 そうすると、尼崎の部分はこれだけ全国的に有名になりましたけれども、ほかの地域の皆さんからすれば、本当にそこにそういう工場があったのかどうか、あるいはあったことすらも知らない住民もいるわけでありますし、私はそういった住民調査ということを本当は全国的に展開していく必要があるのではないのかなというふうに思っているわけでありますけれども、あくまでも相談窓口だけを設置しましたよというだけでは、何らこれは調査が進まないのではないかなというふうに私は考えております。

 したがって、これからの対応策としては、受け身ではなくて、ぜひとも知恵を絞って、何とかこの実態のきちっとした把握をできるように、環境省さんも含めて、それから厚生労働省も積極的に取り組むということを少し考えていただきたいなというふうに思っているんですが、厚生労働省の場合はその辺はいかがでしょうか。

西副大臣 お答え申し上げます。

 厚生労働省といたしましては住民の健康の問題という形になろうかと、もう一つはもちろん労働における災害という分野はあるんですが、一般の住民の皆さんの健康の問題をどう扱うかということだろうというふうに、今、ふと、先生の御指摘を聞いて思いました。特に、その周辺に大きなリスクがある、そういう事態を、これからちょっと調査をしてみないとわかりませんが、いろいろな各省庁と連携をしながら、どういうふうにしていったらいいのかということは検討していきたいと思います。

 ただ、今現在住んでいる人といえども、石綿を暴露した、吸い込んだときの接点があるかどうかできっと健康の状態が違うんだろう、昔ここに工場があったけれどもなくなって今来た人と、昔あったときにおったけれども今どこかに行っている人とか、非常に複雑な移動がございますので、そのあたりも十分考えて、これから検討していかなければいけない課題も多いんじゃないかなという感じがいたしました。

園田(康)委員 副大臣おっしゃるとおりだと思います。その場所から移動された方も、恐らくその地域だけではなくて、これは全国に散らばっている部分もあるのではないのかなという気がいたしておりますので、そういった部分も一刻も早く把握をするように、ぜひともお願いをしておきたいと思います。

 それから、次でございますけれども、これは先ほど来からお話が出ております、厚生労働省は労災給付に関してさまざまな観点から取り組むということでありますけれども、あるいはそのほかの、家族でありますとか出入り業者の方々への、あるいは周辺住民に対する健康被害についてどのように補償していくかということであります。

 話に出ておりました公害健康被害補償法でありますけれども、この補償対象というものがいわゆる事業主責任という形で、先ほど来出ておりますように、相当程度の範囲に著しい大気汚染があるものというふうになっているわけであります。そういった形で、後はその評価は、専門家の評価や分析の上で判断というふうになっているわけでありますけれども、これをいわばもう少し広義に解釈してはどうなのかなと私は思っております。

 すなわち、先ほどの水俣病の部分でも、申請している方で約二万人でございました。そのうち認定がされたのが二千人弱という形でありますけれども、そこでも、少し、一割ぐらいしか認定をされていないという部分で、しかしながら、二万人という地域限定の中でこの水俣病というのが公害指定されたわけであります。

 したがって、この部分に関しても、アスベストに関しては、恐らく、今は総計六千人という形でありますけれども、これからもっともっと全国的な広がりということを考えれば、往々にしてこれは一万を優に超えてしまう被害の形になっていくというふうに私は想像しているわけでございます。

 したがって、数であるとか、あるいは先ほどいろいろな要件があるんだろうというふうにおっしゃっておられたわけでありますけれども、この点をもう少し柔軟にというか広範に解釈できるということを考えてはいかがでしょうか。環境省さん。

滝澤政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、公健法の対象ということになりますと、御指摘がありましたとおり、相当範囲にわたる著しい大気汚染等と言えるかどうかというのが一点、条件でございます。それから、汚染原因者の行為と被害の因果関係が認められるかどうか、それからさらに、原因者による負担がなされるかどうか、こういった点が明確となる必要があるわけでございまして、今回のアスベスト被害につきましても、先ほど来申し上げているとおり、基礎的な情報収集に目下専念をしておりますけれども、そうした実態把握を行った上で、この公健法の趣旨に合致するものかどうかを十分慎重に吟味していく必要があると考えております。

園田(康)委員 恐らく、過去の例からいきますと、これもいわゆる公害認定というものには私は当たっていくと思いますし、早急にこれを解決しなければ、その認定、補償がされないという方がどんどんどんどんふえたまままた歴史を繰り返してしまうのではないかと思っておりますので、ぜひともこの点をきちっと早急に対応していただきたいというふうに思っております。

 それから、次に移りますが、時間もございません。先ほど来からやはり出ておりました一九七五年当時を振り返りますと、さまざまな形でこのアスベストの危険が報じられ、一九七五年以前に建築されたRC建築物の鉄鋼などへの吹きつけ、あるいは昭和六十二年、八七年当時でありますけれども、学校や公営住宅などでのそういった吹きつけのアスベストというものが問題となってまいりました。それに対して、当時の文部省あるいは建設省がそれに対する調査を行ったというふうに伺っておりますけれども、それから今日までの、現在までの状況をお知らせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

舌津政府参考人 お答えいたします。

 昭和六十二年の公立学校施設における吹きつけアスベスト使用状況に関する実態調査は、学校及び公営住宅等における吹きつけアスベストが社会問題となりまして、文部科学省においてその対応方策について早急に検討するために、当時、毒性が特に強いとされました三種類の吹きつけアスベストの使用状況について、その大勢の把握を目的として、調査範囲を普通教室等に限定して調査を行ったものでございます。その結果、当時、千三百三十七校の学校において使用されているということが判明しております。

 その後、昭和六十三年に当時の建設省でございますが監修いたしました指針において、それまでの三種類の商品を含め危険性を有する二十三商品が新たに示されるなど、アスベストの使用に係る規制が強化されましたことから、その後、通知や会議等を通じ、その趣旨の徹底を図ってきたところでございます。

 文部科学省としては、学校は子供たちが安心して学び生活できる場であることが何よりも大切なことでございますので、このたびの事業所等でのアスベスト被害が社会問題化していることにかんがみまして、改めて公立学校施設におけるアスベストの使用状況等について調査を実施することにしたわけでございます。

山本政府参考人 公営住宅につきましては、昭和六十三年に吹きつけアスベスト粉じん飛散防止処理技術指針というものが出ましたことを踏まえまして、全国の公営住宅の管理者に対しまして、吹きつけアスベストを使用している公営住宅について、この技術指針に沿った対策を措置するようにお願いした経緯がございます。

 その経緯を踏まえて、今般、改めまして公営住宅を管理いたします地方公共団体に対しまして調査をお願いいたしました。調査内容は、処理状況の調査でございます。

 まず、吹きつけアスベスト等の現状把握ということで、さきの技術指針に従って、除去をしたのか、除去以外の処理をしたのか、あるいは未処理なのかということをまず聞きます。

 その上で、処理方針について調査をいたします。これは、今までどういう方法で処理をしたか。除去についてはよろしいわけでございますけれども、除去以外の処理方法、指針で定められております封じ込め、塗料で封じ込めるというようなことでございます。それから、シート、板などで囲い込むといったようなものについては、今後これをどういうふうに処理するんだということを聞きます。それから、処理状況調査で未処理だと答えたものにつきましては、どういうふうに今後処理していく方針かということを今調べてもらっておりまして、一カ月半ぐらいでまとめてまた御報告したいと考えております。

園田(康)委員 ぜひ早急にそれも対応していただきたいというふうに考えております。

 また、さらに国交省さんにお伺いをいたします。阪神大震災のときに、いわゆる建築基準法の改正以前の建物の倒壊率が極めて高かったという御報告が来ておりまして、その際のいわゆるアスベストの飛散というものが問題化をいたしました。その後の調査というものはどのようになっていたでしょうか。

山本政府参考人 実は、民間建築物については、一九八七年に学校とか公営住宅以外の本当の民間建築物について吹きつけアスベストの使用状況について調査をしまして、それ以降調査しておりませんので、今般、改めて一千平米以上のものについて調査をかけているところでございます。

園田(康)委員 調査を行っていなかったということでありますので、ぜひ行っていただきたい。

 ただし、注文をさせていただきます、要望だけ申し上げます。今、局長がおっしゃったみたいに、千平米以上の建物だけというふうに限定をしておられます。したがって、それは集合住宅という形、あるいは多数が住んでいらっしゃるということでありますけれども、できましたら千平米以下の部分にもしっかりと目を向けていただきたい、余裕があればという話でありますけれども、ぜひそういった形も今後対策という形で考えていただきたいというふうに考えております。

 そして、時間がなくなりましたので、最後の質問になろうかと思います。環境省さんにお伺いをしたいと思います。

 今まで、先ほど来から、では、一体この日本の中にどれだけのアスベストが輸入をされたのかということをまず考えなければいけないのではないのかなというふうに考えておりました。そして、そこから、経済産業省さんからいただいた資料によりますと、一九三〇年から二〇〇三年までの合計で、先ほど来から一千万トンというふうに言われておりますけれども、正確には九百八十七万九千六百五十四トンが日本に輸入をされたアスベストの量でありますね。

 この量に対して、いわゆるこれだけの量が我が国の中に入ってきたわけでありますので、この量が、では、果たしてどれだけ廃棄をされたのかというものをまず私はお伺いしたいと思います。

 すなわち、何を申し上げたいかといいますと、これだけの一千万トンのアスベストがこの日本に輸入され、そして廃棄された部分がこれだけですよというならば、現存しているアスベストが幾らあるのかということが自然と数値上出てくるのではないのか。それで、なおかつ、どういったところに使われているというのが、そういった戸数のそれぞれの調査をすれば、どういう対策をどういう形で行っていけばいいのかということがおのずときちっと把握できるのではないかというふうに私は考えているわけなんです。そこで、環境省さんにお伺いをいたしますが、廃棄量、アスベストがきちっと正規に廃棄をされた量というのは御承知でしょうか。

由田政府参考人 特別管理産業廃棄物であります廃石綿の排出量は、把握している範囲で申し上げますと、平成十一年度で約一万四千トンでございます。

園田(康)委員 平成十一年までとおっしゃいましたですよね。私もきのう伺いましたら、確かに十一年までは資料として把握をしていらっしゃるわけなんですけれども、それ以降の廃棄量というものは把握はされていないのでしょうか。

由田政府参考人 以降に関しましては、地方の判断にゆだねるということで、その後の量に関しましては把握をいたしておりません。

園田(康)委員 地方の判断にゆだねるということで環境省としては把握をしていないということでよろしいですね。そうしますと、今般、これだけの大きな問題になっている、なおかつ特別管理産業廃棄物として指定がされている危険物であるアスベストの廃棄量が把握をされていないというのは、私はちょっとずさんではなかったのかなという気がいたしております。

 したがって、今回、いろいろな廃棄物、法律によってアスベストの処理方法が決まっているわけであります。そして、マニフェスト等を使って、これもきちっと把握をして、どこにどれだけの部分が廃棄をされてきたのかということをしっかりと監視するという意味で調査をしていただきたいなというふうに私は思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、大きな量のアスベストが我が国に入って、そして、いまだそれもきちっとした形で処理をされていないという部分があるわけでございます。それが行く行くは、いわゆる野積みになってしまって環境汚染をするような形にまで膨れ上がるような、違法な産廃という形でどこかに捨てられてしまうような、あるいは、もっと言うならば、海外にこういったものがさまざまに形を変えて輸出をされる、逆輸出をされるという危険性も私はひょっとしたらあるのではないかなというふうに考えておりますので、その辺の監視もしっかりと怠らずに行っていただきたいということを申し上げて、質問時間が参りましたので終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 日本共産党は、山原健二郎議員が一九七二年の六月七日の委員会でアスベストと肺がんについての質問をして以来、国会審議の中でアスベストの禁止とそして安全対策を主張してまいりました。

 それでは、七〇年代から石綿による中皮腫やがんで労災認定した人が年度別に何人になるのか。実は、これは全国の労基署の持っているデータを中央の方で全部集めてきちっと整理すればすぐわかるわけです。私は七月の五日の日に七〇年代から毎年どれだけの人を認定してきたのかと求めてきたわけですが、毎年の、きのうまでのところでは、八〇年代以降はわかるのだが七〇年代はわからないということなんですが、七〇年代の数もきちっともうつかめていますか。まずこれを伺います。

森山政府参考人 労災認定の件数でございますけれども、昭和五十四年以前につきましてはまとめて十九件ということでございまして、五十五年度以降につきましては各年度ごとの数字を把握しているところでございます。

吉井委員 実は、きのういただいたのでは、八〇年度以降は毎年で、それは今おっしゃったようにないというのですけれども、しかし、「病理と臨床」という雑誌などで厚生労働省の産業医学総合研究所の方が出していらっしゃる論文の中などを見せていただいても、七〇年代もちゃんと出ていますね。グラフ化されているわけですよ。これを見れば、七〇年代に労災認定したアスベストによる死亡者の方が出ていて、八〇年代からふえていって、そして特に九五、六年ぐらいからぐんと非常に急峻なカーブを描くようにふえていっているわけですよ。

 だから、私は、アスベストの問題を議論するときに、まず全体像をつかむ、被害の実相をきちんと明らかにするということが出発点だと思うわけです。それが、七〇年代について今のようなお話では、本当にこれは困ったものだというふうに思うわけです。

 いずれにしても、七〇年代から日本のアスベストによる死亡を労災認定しているわけです。しかも、全体として増加傾向にあることはデータを見れば読み取れるわけですから、そうすると、アスベストは死に至る危険な物質だという認識を厚生労働省は持つことができたわけですね。そういう立場にあったわけですが、危険な物質だという認識を持ったのはいつからですか。

青木政府参考人 石綿につきましては、非常に危険だということで、さまざまな対策を講じてきているわけでありますけれども、特に石綿を取り上げまして対策を講じましたのは、昭和三十五年にじん肺法が制定された際に、じん肺として、じん肺健診の義務づけをしたということでございます。今非常にお取り上げになって問題になっておりますのは、昭和四十七年にILO、WHOが、石綿ががん原性物質だということがそれらから公表をされました。ということでありますので、その四十七年より前の四十六年に特定化学物質等障害予防規則で、いろいろな、排気装置の設置を事業主に義務づけたり、容器への表示を義務づけたりいたしましたけれども、このがん原性ということに関しましては、四十七年を受けて昭和五十年に吹きつけ作業の原則禁止などをいたしておりますので、そのころかと推察をいたします。

吉井委員 七一年から危険だという認識を持って、それで特に七二年にILOの今おっしゃったように石綿による職業がん公認ですね、公認しているわけですから、そのときから危険な物質だということを認識すれば、もっと、対策もそうなんですよね、まずデータをきちっととることが当然のこととしてなされなければいけないのになされていないというのは、本当に出発点からして、私は、大変な誤りといいますか、立ちおくれといいますか、重大な問題を抱えていたということをまず指摘しなきゃいけないと思うんです。

 七月四日に、私、クボタの本社へ行きまして、七月六日にはニチアスの本社の方へ山口富男議員とも一緒に参りましたけれども、そこで、事情を聞くとともに、一人一人の認定を受けた方について、入社時期、勤続年数、どんな職場か、何歳のときに労災認定したか、死亡時期と年齢とか、きちっとしたデータをまずいただきたいと。そうしたら、ちゃんと整理してくれたんですね。これはニチアスの方からもらいましたけれども。固有名詞、もちろん私は要らないですから、個人情報保護にひっかからないわけです。ちゃんともらっているんですね。

 それで、これはこういう資料を個々の企業も出してくれるわけです。厚労省の方は、七〇年代以降の労基署でのデータがきちっとあるわけですから、これは整理すれば、直ちに全国の、アスベストによってがんになり、中皮腫になり、お亡くなりになった方の勤続年数はどうだったかとか、きちんとしたデータが出るはずなんです。私はそれを明らかにするようにというのを求めているんですが、一向に出てこないんですけれども、これはきちんと整理して、つくられますか。

青木政府参考人 ちょっとにわかに、資料状況は今、現に把握をしておりませんので、お答えはしかねますけれども、おっしゃるように、実情というものをきちんとつかまえるというのは大切だと思っております。いろいろな対策を講じる上での基本的なアプローチの仕方だと思います。

 そういう意味でも、私ども、労災認定をされました人たちに係る事業場について、それぞれ個別に立入調査をして、実態調査をしたいと思いますし、その後の状況、それからもし、まだ石綿等を取り扱っているとすれば、それの管理状況等もあわせて調査をしたいというふうに思っております。そういうことで、具体的な指示ももう既に発しているところでございます。

 なお、昔のことについては、確かにおっしゃることもそうなのでございますが、例えば八〇年代の数字でも、昭和五十五年から八〇年代ということでしょうが、五十五年は、石綿による肺がん、中皮腫、こういったものの合計が一人でございますし、五十六年が二人、五十七年、七人、五十八年、四人というような状況で推移をして、以後ずっと、委員御指摘のような、九〇年代に入って二けたになり、それがさらに、次のサイクルではまたふえ、確かに八〇年代以降をとってみても、急増しているというのは確かでございます。しかし、七〇年代のところは、そういうことで状況が明確にできるかどうかは、ちょっとわかりかねるところがございます。

吉井委員 これは今、急に言っている話じゃなくて、あなたの部下の方には、ちゃんとこのニチアスの資料もお見せして、こういうふうに企業だってやっているんだからやりなさいということを言っているんですから、直ちにこれは取り組んでいただきたいと思います。

 きょう、お手元に資料を配らせていただいております。資料一、これはニチアスの資料を整理して私がつくったものなんですが、ニチアスの方で石綿使用量がどう変わっているかは折れ線グラフです。見事に石綿使用がふえるに伴って、あなたは八〇年度は一人とかいう話ですが、そうじゃないんですね。七六年でも二人、一九七九年で四人とか、ニチアスという一企業でさえあるわけですから、石綿で死亡されて労災認定を受けた方ですね。ですから、さっきのようなお話は当たりません。これは、使用量とともに、ちょうどそれに合わせて、ふえもすれば、減ったときには減っているという傾向もあるんですが、同時に、もう一つ大事なのは、石綿の使用量がほとんどゼロに近づいてからでも、ずっと認定した死亡者の方がふえているということなんです。

 その事実を踏まえた上で、二枚目を見ていただきたいと思うんです。これはニチアスの石綿疾患死亡者の方の勤続年数と、そして死亡者数です。これを見れば、明らかに勤続年数が短い方でも石綿によって中皮腫とかあるいは石綿がんで亡くなっておられる方が出ているし、勤続年数二十年を過ぎますと、ぐんとふえておるわけですね。三十五年を前後としてピークになっている。まさにこれは、静かな時限爆弾と言われていることがニチアスの百四十一名の方のこのデータによってもはっきり示されているということを見なきゃいけないと私は思うんです。だから、労災認定したすべてのデータをこのようにすれば、事態の深刻さというものは本当によくわかるんですよ。

 ですから、副大臣、これは、内閣としてまずこういう基礎になるものをきちんとつくり上げる。なぜかといいますと、それは被害の実相、全体像をつかむということと同時に、今後の発生をどのように予防していくか、解体工事その他ですね、それから安全対策をどう進めるか、その対策を考える上でも、これは出発点なんですよ。ですから、これはまず内閣の責任においてやっていただきたい。副大臣に伺います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 貴重なデータをちょうだいしたと思います。特に、この石綿疾患が三十年なり四十年という長期の潜伏期間を置いて発症するというふうに言われておりますが、このお一人お一人が、いつ、どの程度石綿に暴露したのかというのが、若干この生産量とそれからお亡くなりになった時間のタイムラグがどうなっているのかということは、大変重要な問題を提起しているなというふうに思って、拝見させていただきました。

 御指摘のとおり、これからきちっと科学的な知見もそろえないと対策にはなりませんので、できるだけの努力はさせていただきたいと存じます。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

吉井委員 実は、これはもちろんクボタにも言ってありまして、クボタもできていますからね。ですから、すべての企業に求めてつくらせることも大事ですし、同時に、ある資料ですから、それを整理して、対策というものをきちっと進めていけるように、まず出発点でやっていただきたいと思います。

 次に、二〇〇二年四月に「わが国における悪性胸膜中皮腫死亡数の将来予測」というのが研究者の方から発表されておりますが、二〇〇〇年からの四十年間に約十万人。これは、九五%の信頼限界で見れば四万人から二十六万人の死亡ということで、もちろん、大きな数字となれば二十六万人ということになるんですが、大体十万人が妥当な数字であろうということで、十万人なんですね。ですから、過去十年の約五十倍、今後石綿による死亡者が出るという可能性があるわけですね。

 ですから、アスベストの使用をやめてからも、今後三十年、五十年たってからの発症ということを考えることは大事だというのは、ニチアスのデータで出ているわけなんですが、ニチアスのデータ、百四十一人を見てみると、石綿製品製造工程での労災死亡は百人です。それから、研究所でも、研究員の方、二人ですね。営業マンも一人。工場内や客先での保温材取りつけ等、工事関係で二人、石綿吹きつけ作業で三十六人の方が亡くなっておられます。このほかに二十四人の方が療養中ですから、工事関係ということだけ見れば、死亡三十八人と療養中五人を合わせると、四十三人の方が被害を受けているわけです。

 その多くはアスベストによるじん肺ということになっておりますが、逆に、これまでのじん肺で労災認定された人を洗い直して、石綿環境にあった人々を調べれば、実は石綿による労災と見られる人はさらに多くなるわけですね。

 そこで、緊急に全国の労基署のデータとアスベスト関連企業や就業者の協力を得て、私の整理したようなものはもとよりですけれども、どういう職場環境の中でどうであったかということを含めて、まずアスベスト被害の実相を明らかにする、これをやっていくことが今必要だと思うんです。重ねて伺っておきます。

青木政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、個別の事業場に対して立入調査をするというふうに申し上げましたが、その中で、そういったことも含めて調査をすることといたしておりまして、そういった指示も既に発しております。

吉井委員 それは大変すぐにやってもらいたいと思うんですけれども、個別の企業だけで済まないという問題を次に触れておきたいと思います。

 個別の企業で言いますと、奈良県でニチアスの地元説明会ですね、ニチアスと下請含めて四百人の住民の方が参加しておられます。それから、クボタの神崎工場周辺でアスベスト被曝した人の話を地元スタッフが直接伺っておりますが、このクボタで、七十八人の労働者と、神崎工場周辺の三十四人の住民の方、合わせると百十二人と非常に大きなものになってくるんですね。

 一方、少し視点を変えまして、実は大阪の泉州といえば繊維産地なんですが、ここはかつて、泉南市などは、副大臣、近いからよう知ってはるかと思うけれども、アスベストの零細企業が非常にたくさんあったところですね。これはマスコミでも以前紹介されましたが、あの周辺で、この間の経産省の中堅以上は十一社のデータ発表ですけれども、六十社ぐらいはあったわけですね。これは泉南市の民生部長さんがかつて議会でお話しされたのでは、一九七八年で二十八カ所あったというんですね。そこでつくったものが鉄鋼とか造船へ製品として流れていったんですが、あの円高不況の中で随分廃業が出たときには、男里川という川の上流の金熊寺川にアスベストが三百トン捨てられてしまったりとか、いろいろな問題があったところです。

 何しろ路地の奥にある零細工場なものですから、なかなかアスベストから働く人を守る対策は大変です。集じん機といっても形ばかりの集じん機で、それは外向きに出すわけですから、言ってみればアスベストの微細なちりを住宅地向けに噴き出すような環境にもあったわけです。

 ですから、こういう点では、零細工場で働いてきた人とか、アスベスト関連の工場周辺、これは大小にかかわらずですね、学校、ビルなどの解体とか建設工事に当たってきた人とか、アスベスト環境に置かれている人の健康調査というものがまず緊急に必要だと思うんです。これをどのように進めていきますか。

滝澤政府参考人 目下、地域の保健所等を通じまして個別の相談状況を収集しております。

 また、それぞれ関係省庁におきましても、それぞれの切り口からの調査が実施されているわけで、全体にその調査の集計が、まだ情報収集という意味ではこれからでございます。その情報収集をした上、さらに専門家の科学的、専門的な助言をいただきながら、次のステップとしてどのようなことをすべきか、あるいはどのような調査が可能か等も含めて検討をしていくことになろうかと思います。

吉井委員 健康相談もいいんですけれども、実態は相談だけの話じゃないんですね。健康診断にしても、手術にしても、抗がん剤の使用にしても、アスベストの被害者がすべて今負担しなければならないのが実態ですよ。国がアスベスト禁止を長く放置してきた間に、住民の間では被害が広がっているんです。まず、労働者と周辺住民の健康調査ですね、泉南とか阪南市のような例も含めてそれをやることが今緊急に必要なんです。

 実は、その検診はやるということはかつて国会でも約束しているわけですから、私は健康調査の実施をまずやっていく必要があると思いますが、これは厚生労働省として取り組んでいかれますね。

滝澤政府参考人 先ほどの答弁でも、関係省庁のそれぞれの切り口、視点でというふうに申し上げましたが、実際に、その周辺の住民も含めての個別調査も行われているやに、ちょっと私、不正確に申し上げるといけませんけれども、聞いておりますし、そういったことを相談、私の答弁は相談ということが中心になってしまいますけれども、ほかの省庁はほかの省庁で、ほかの切り口での、関係者も含めて、あるいは周辺も含めての個別調査もしているというふうに伺っておりますので、その辺の情報をあわせまして総合的に解析していく、それで、次のステップとして何が必要かということで、関係省庁が連携して相談して進めたいと思っております。

吉井委員 何が必要かはもうはっきりしているのです、特に健康を害している人からすると。健康診断にしても、手術にしても、抗がん剤使用にしても、アスベストの被害者の方が医療費等をすべて負担しているのが実態です。

 実は、これについては、一九七二年六月七日の委員会で、滝澤さんと同じ滝沢さんが、公衆衛生局長だった滝沢さんですが、「一般住民の検診について」、これはアスベストにかかわるがんの話なんですけれども、「一般住民の検診についてはわれわれのほうで考慮する必要がある、」ときちっと答弁しているのです。これは三十三年前に、当時の厚生省はきちんと、一般住民の検診をやると言っているのですよ。それが、相談はしますが後はわかりませんじゃ、全然話にならないわけですよ。

 これは厚生省はちゃんとやりますね。前は公衆衛生局長が、厚生省の方が答えているのですが、厚生労働省という名前に変わったらあいまいにしちゃいかぬから、答えてください。

滝澤政府参考人 先ほど、済みません、別の方の答弁で申し上げたように、健康調査をするにしても、その手法の問題が私なりにあると思っております。調査をして、それで、結構ですと、五年後に発症した、ということでは意味がありませんし、的確に効率よくきちっと調べられる手法ということも解決しなければいけません。

 労働安全衛生の方もそれなりの従前からの蓄積もあるわけでございまして、そういったことを相互に話し合いながら、連携しながら、どういう仕組みが可能かという入り口論も整理する必要があると思っております。

吉井委員 三十三年間、手法を研究してきたんじゃないのですか。「一般住民の検診についてはわれわれのほうで考慮する必要がある、」ということで答えてきているんですよ、三十三年前に、厚生省の公衆衛生局長の滝沢さんがね、局長が。だから、三十三年間、今おっしゃったような手法は、そんなのはわかり切った話ですよ。直ちに発症する場合、十年後に出る人とか、いろいろあるでしょう。しかし、それらの人々の健康障害について、これはきちんと検診しましょうということなんですから、相談したら済むというものじゃないのですよ。

 これは、労働者には、認定の仕方に問題があっても、一応労災補償はありますね。元従業員でも健康管理手帳で医療費の補償がある場合もあるのです、全部あるわけじゃありませんが。しかし、周辺住民や労働者の家族で被害者になった人には医療費などの補償はないのですね。

 だから、アスベスト被害を受けたときに、その検診さえお金の問題から心配しなきゃいけないんです。その三十三年間、手法は研究してきているわけだから、私は直ちに、この問題については、後の健康被害補償とかをどうするこうするは、これはまた、きょうは一回目ということですから、また次の機会ということにして、まず検診については三十三年前の約束どおりやっていくということを、最後は、副大臣、これは内閣としてその取り組みをやはりやっていく必要があると思うのですね。内閣としてどう検討するか、そこのところを伺うようにしたいと思います。

滝澤政府参考人 アスベストとこの中皮腫の関係、非常に、職歴でありますとか家族歴でありますとか、そういう、ほかの病気と違いまして特性がございます。お一人お一人をレトロスペクティブにたどっていくという愚直なやり方が適切かもしれません。

 ですから、そういうことも含めてきちっと考え方を整理しなきゃいかぬというふうに申し上げているわけでございます。

吉井委員 時間が参りましたから終わります。

 ただ、検診だけは三十三年前の約束をきっちりやっていただきたいと念を押して、質問を終わります。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、与野党の理事の御発案、そして委員長の御決断によって、この厚生労働委員会、アスベスト問題での集中審議というのが持たれておりまして、国民の関心事でもあり、また、午前中から今に至るまで熱心な御論議が続けられております。

 ただしかし、非常に残念でありますのは、どなたも御指摘されましたように、尾辻厚生労働大臣が郵政民営化関連法案の審議にお出ましで、ここにはおられないこと。そして、それ以上にと申しますと大臣には失礼ですが、残念なのは、実はこの問題に対しての危機意識の共有が、これまでの御答弁の数々からはちょっと私はうかがえない。せっかくこの委員会がこれをわざわざ設置いたしましたにもかかわらず、厚生労働省を初めとしたきょう御答弁くださった方の認識が、私は非常に危機感に薄いものだと思います。

 尾辻大臣のかわりにというか、全権委任で責任者として西副大臣がおいでくださいまして、御答弁の数々はあったのですけれども、果たして、私は、西副大臣のお人柄とか、お勉強の熱心なことはよく存じておりますから、ここでやはりもっときっちりお願いをしなければならない。

 このアスベスト問題は、私も含めて認識が甘かったんだと思いますけれども、アメリカを初め欧米先進国の取り組みは、いわゆる危機管理に等しい対策をある時期きちっと打って、その後の発生ということに災いを残さないようにやっております。先ほどの吉井委員とのやりとりの中で、例えば住民の健診をどうするか等々については、アメリカでは一九八五年に、例えば州の病院とかを九時から四時開放いたしまして、無料で健康診断を行うという政策、施策をいたしました。多分一九八四年とか五年のことだと思います。

 私は、きょう、押しつけがましいですが、西副大臣なら読んでくださると思って、その間のアメリカでの取り組みを日本に引き比べて書いた「静かな時限爆弾」という、有名な本ですので、広瀬弘忠さんの御本です、ぜひお読みいただきたいと思います。やはりそれくらいの危機意識と、それから政治の優位性、きっちりとした政治責任をとる姿勢がないとこれは解決いたしません。

 例えばここには、先ほど紹介しました、「明日、午前九時から午後四時までの間、コロンバス市内の某病院で、アスベスト関連の病気の無料健康診断を行う。」これはさっき吉井委員が求められたことと同じでございます。必要な人は受診するように、そして、また合衆国の環境保護庁は、アスベストと健康障害についての小冊子を、無料で、電話で御依頼の方には配付していると。環境省の取り組み、それから医療サイドの取り組み。

 そして、実は、根本は、もとを絶たなきゃだめ、発生源はアスベストにあるわけです。きょうの審議を承りますと、その発生源の対策について、二〇〇八年に全面禁止だということですが、既に他国では全面禁止できているわけです。そうすると、技術的に不可能ではない。そして、にもかかわらず、先ほど来の西副大臣の御答弁であると、何度も何度も二〇〇八年とおっしゃいますが、もしかして、私と一緒で、現状を余り御存じではないのではないかと思います。

 私はきのう、建設現場の方からもお話を聞いて、例えばですが、現在でも左官用モルタル混和材というのがあって、これがアスベストを含んでおりまして禁止されておりません。この左官用モルタル混和材については、その中には、アスベストという表示がなくても、産業医学総合研究所で調べるとアスベストが入っておって、これをぬらしてモルタルに塗るまでの間にも暴露してしまうということが現在進行形で、オンゴーイングであります。

 こうした実態をほっておいて二〇〇八年までというのは、やはり知ったからには、知らない昔じゃない、知ったからには今とめなきゃならないのではないかという点で、西副大臣がまだ十分御承知おきでなければ早急に検討していただきたいのが一点。

 それからもう一点は、私は、全面禁止まで二〇〇八年と期限を置くことによって、あの非加熱製剤の駆け込みの使用と同じような、エイズ禍で起きたと同じような、現在あるものを禁止されるまでに使っちゃおうという形の問題が必ず発生すると思います。エイズの場合でも、加熱製剤が出てくることが予測され、非加熱製剤はそれまでの間に全部使い切ろうと思ったために非常に使用量がふえました。同じ構造が産業の売らんかなの構造の中では必ず起こってまいります。だからこそ、今即断即決しなきゃいけない問題なのだと思います。

 以上二点にわたって、西副大臣に重ねての御答弁。私が御紹介した左官用モルタル混和材、私も、現在どこに使われているのと現場の方に聞きました。そして、それがどのように危険なのかも聞きました。その結果、やはり即断しなきゃだめなんだと一つ思ったんです。それから、その間を設けたら、絶対駆け込みで使われます。売ってしまわねば元が取れません。これが当たり前の構造です。だからこそ、政治が決断していただきたい。この二点について、きょうは全権委任大使でありますから、明確な御答弁をお願いしたいと思います。

西副大臣 お答え申し上げます。

 今まで、アスベストの危険性については、私も知らないことはありませんでした。ただし、このような大規模な、労働災害以外の部分まで広がって大きな問題になるということについては、正直想定をしておりませんでした。

 私も、化学をやっていることもありまして、石綿の保温材なんというのは毎日のように使っておりまして、これが危ないものであるということは知りつつも、それ以外代替のものがなかったものですからやむを得ず使っていたというような身近な問題意識もございまして、この事態に対して、事の深刻さについては、この短い期間ですが、自分なりに認識はしてきたつもりでございます。

 ただ、その詳細につきまして十分な知識を必ずしも持ち合わせているわけではございません。そんな意味で、また先生に御紹介いただいた書物等も勉強しながら、一生懸命に取り組んでいきたいというふうに思います。

 今、それぞれの企業が持っている在庫品、これが、二〇〇八年までの期限ということになると駆け込みで使われてしまうのではないか、処分するためにかえってたくさんのものができてしまうのではないかというお話でございましたが、現在製造が禁止されている建材等の石綿の製品のうちで、禁止規定の施行日前に製造されて、または輸入された製品については、経過措置によって禁止措置が除外されているというふうな事情が実はございます。しかし、本年六月には、まだ在庫品を有している業界団体に対して、譲渡、提供を自粛してほしいという要請を行ったところでございます。さらに、今後の制度の見直しの中でこの例外の規定も見直させていただこうということで、検討を開始しているところでございます。

 二〇〇八年という期限も、先ほど当局から答弁がありましたけれども、最低限やらなければならないプロセスは当然あるわけで、今すぐにやめるというわけにはいかないという前提のもとで、できるだけ早い機会に、やはり二〇〇八年を待たずにできるという努力はさせていただきたいというふうに思っているところでございます。

阿部委員 やはり被害は刻一刻問題なのだと思います。そして、どのような段取りで、どこでお時間がかかっているのか。何度も言いますが、他国では全面禁止できているわけです。代替のものがないわけでもございません。そして、先ほどおっしゃいましたが、例外的な使用という形でお持ちのものもまだあるわけです。だからこそ、何度も申しますが、わかったからには政治が優先して決断しないと、必ず禍根を広げます。

 その意味で、私は今の答弁、納得したわけではありませんが、西副大臣に問題の所在をさらに御理解いただいたというふうに考えて、次に進めさせていただきます。

 私は、この問題、特に最近メディア等々でも大きく話題になりますところの大きな理由が、労働災害であるだけでなく、地域住民の被災、あるいは労働者の御家族の、例えば奥様がお洗濯をなさった、その洗濯をした奥様がかかられるというような家族の被災ということが大きく現状として報道されるようになって、その汚染の広がり、被害の実態の大きさ、そして、これまで対策してきたにもかかわらず全く不十分だったのではないかという指摘があるんだと思います。

 そこで、厚生労働省にお伺いしたいのは、アスベストの労災の認定ということはずっとやってこられましたが、それに基づいて、あるいはそういう労災認定の過程で、住民についての被災、被害、あるいは中皮症の発症などについて、厚生労働省はこれまで何かデータをお持ちでありましょうか。

青木政府参考人 労災の認定状況というものは、労災認定基準の見直しとか、労働者の健康確保の施策の推進のための分析などに用いてまいりました。関係省庁等への情報提供を通じたりしまして、周辺地域住民に対する調査とか、そういったことに結びついた事例として承知しているものはございません。

 今回、石綿による健康被害の問題が大きな問題となりまして、環境省等に対しましては、環境省等の施策の推進に役立ててもらうために、事業場ごとの労災認定件数等の情報も提供しているところでございます。それで連携を図っております。今後とも関係機関との連携を図っていきたいというふうに思っております。

阿部委員 今の御答弁の確認ですが、これまでも労災発生について環境省に御報告されてきたという意味ですか、これからするという意味ですか。短くお願いします。

青木政府参考人 これまでそういうことをしてきた事例というものはないというふうに承知をいたしております。

 しかし、今回の石綿による健康被害の問題に当たりまして、今般、環境省等に対しまして情報提供をいたしたところでございます。

阿部委員 今やったということですね。

 では、家族についてはどうですか。これは、ある勤労者について労災認定された、その御家族について掌握している、把握している事例がありますか。イエスかノーでお願いします。

青木政府参考人 労災の認定ということでございますので、あくまでも事業場に雇用されている労働者を保護する制度として私ども行政を展開しております。家族の方は労働者でございませんので、特段把握をいたしておりません。

阿部委員 今回、クボタでも一名、あるいは、横須賀共済でとったデータですが、横須賀の造船所関係では六十四人の勤労者の御家族に三人、あるいは、兵庫県の建設労働組合連合会では、百十四人のうち御本人が九十六人、御家族が十八人という形で、あるいは厚生労働省の研究班でも、女性の六十五人のうち約八割は職歴でのアスベスト被曝がないということで、やはりこれが非常に国民的にも心配を広げておるし、むしろ逆に、厚生労働省のこれまでの労災行政の中で、先ほど、環境省にも言っていなかった、そして家族については眼中になかったというお話であったかと思います。しかし、本当に眼中になかったのか、これまで知り得たことはないのか。

 例えば、外国などの事例でそうした指摘はないのか。先ほど御紹介したこの一九八五年の出版の本には、アメリカにおける、家族、奥さんと娘さんが中皮症になったという報告が八五年にございます。さて、厚労省は、これまで一貫して住民についても家族についてもこうしたことを聞いたことがなかったのかどうか、どうでしょう。

青木政府参考人 かつて、海外の調査結果に、中皮腫の患者中に家族あるいは事業場周辺住民が含まれているということを示したものがございまして、それをかつて地方に対しまして局長通達の附属資料の中で示したことがございます。それは、石綿の危険性、重大性についてよく周知をするための一つの資料として使えるのではないかということで示したというふうに承知をしております。

阿部委員 今の局長の御答弁は年度をおっしゃいませんでしたが、これは昭和五十一年の通達でございます。五十一年五月の二十二日、一九七六年の段階で、特定化学物質等障害予防規則の改正に際する通達の中に、住民や御家族の被害例が挙げられております。

 これは、もとになった文献は一九六五年のロンドンの病院での事例で、全体で八十三例の中皮症という診断の方のうち、石綿関連の疾患の方のうち、九人が身内、親族、十一人が工場近くに居住だという事案でございます。この中で被曝歴なし、ありでまた分けてありますが、ありが五十一人で、その中で九人は身内、十一人は工場近く。すなわち、五十一人被曝歴がありとされる中で、半数くらいは勤労者だったけれども、あと半々は住民と家族であったというデータでございます。

 そして、これを、今青木局長がおっしゃったように、地方に通達では出しているわけです。でも、厚生労働省本体の施策の中には取り上げられなかったわけです。地方に通達を出し、知らしめなきゃいけないと言っている本人が、そうした視点を持たないで、三十年間行政をやってこられたわけです。

 西副大臣に伺います。この中には、例えば、家族にまで災害が及ぶおそれがあることが指摘されているので、石綿の業務に従事する労働者のみならず、当該労働者が着用する作業衣を家庭に持ち込むことはいけないという指導をしたとされています。しかし、それが指導どおりに実施されないから、奥さんは洗濯して洗い、アスベストを吸い込み、家族じゅうでアスベストの被害を受けるという実態が生じております。

 私は、本当に知らなかったのかと何度も厚労省に聞きました。何か通知はないのかとも聞きました。それで、きのうの遅い段階でやっと出していただいた資料です。出していただいたことには感謝しますが、しかし、こうした通達がありながら、三十年間放置されたがゆえに御家族の悲劇も住民の悲劇も起こったということに、私は、一つの本当に厚生労働省がみずから反省すべき行政の不作為があるように思います。

 副大臣は、これを今初めてお聞きになったかもしれません。しかし、私は、先ほどのエイズも水俣もそうです、こうしたことが続く限り、厚生労働行政が国民の命を守ることができないことになってまいります。そのことを深く憂えますし、今私と青木局長との答弁の中でお聞きになったこの現実に対してどのようにお考えか。

 もちろん、過去のことは戻るわけではございません。しかし、行政のあり方として、真剣に反省し、そして、今後真剣に、さらに、本当に、先ほどの住民健診もそうです、取り組む姿勢がこの場で確認されないと、きょう一日を費やした意味がございません。これだけの時間、皆さんお残りになって、空席もちらちらとある中ででも、本当に熱心な方が残って、何とかしなきゃ、国民の中で何とかこの発生を予防しなきゃという強い思いです。その思いを実行できるのは、実は、行政の長たる大臣や副大臣であります。

 行政の不作為。立法の不作為もあったかもしれません、禁止問題で五島委員が御質疑なされました。しかし、行政面での、通達を出しながらみずからが実行しない、このあり方についてどのようにお考えでしょう。

西副大臣 お答え申し上げます。

 この事実につきましては、今先生からの御指摘で初めて知りました。非常に、いわば、厚生と労働とは当時別々、環境という分野もその後できたというようないろいろな事情がございますが、労働災害の一種という、そういう狭い限定のもとに今までこの事態を引きずってきたということが、今に至って、家族それから近隣の皆さんの被害というものに気がつかなかった。

 よく言う縦割りという言葉であわらしますけれども、労働行政の中では労働者以外は眼中にない、しかも、環境という側面からは、これは今まで確たる事象としてとらえられなかった、健康という厚生行政の中でもそういうものが拾えなかった、いわば三者の谷間のような、狭い意味でもそういう状況にあったのではないかというふうに思います。

 いずれにしましても、この事実をわかりながら、そのことについての後々のフォローができていなかったということは、これは今では取り返しのつかない問題ですけれども、これは、決定的な私どもの省庁の失敗だったのではないかなというふうに私自身は個人的には考えております。

阿部委員 真摯な御答弁でありがとうございます。もしもこの作業衣が御家庭に持って帰られなければ亡くなることはなかった御家族であります。幾重にも悔やまれますし、逆に、本当にこういう通達が紙一片で、そして、実際はどこまで実行されたかがチェックされない行政であれば、いわばなくてもいいと言われてしまうと思います。

 そして、逆に、私は、このことを忠実に実行した例が一九七七年の埼玉県羽生市の大手ブレーキメーカーの曙ブレーキ工業の例だと思います。これは、七七年に実際に起きた労災、労働者災害と同時に周辺住民にも、十一人が死亡しているという事例を埼玉の羽生市で労基署の署長が上の労働基準局に上げております。

 となると、通達は出した、通達を実行した、そして報告が上がった、しかしその後の処置がとられていないということにもなって、二重、三重の不作為問題になってくると思います。このことは、今事実を確認中だという御答弁でありましたので、もうこれ以上伺いません。

 もう一つ、それと同じ事案で、昭和五十年、一九七五年にこの法の改正、いわゆるこの年は、石綿が発がん物質だとわかったということで行政が変わった年ですが、特別管理物質として規制が強化され、使用や業務の実態や労働者の健康調査について事業者に三十年間のデータ保存を義務づけた年であります。それが現状どうなっておるのか、そろそろ、申しわけないが発症の時期であります。これについても、私がきのう省庁に伺ったら、それは企業に任せてあるという答弁でした。五十年につくった改正法にのっとってやった規制の問題です。各企業任せにしないで、通達を出しっ放しにしないで、きちんと企業から三十年の報告を上げてもらう。この件についても西副大臣に明確な御答弁をいただきたい。

 失敗を二度と繰り返さないために、今からでもやれることを全力を挙げてやるしか私たちには手だてがないんだと思います。今の点、いかがでしょう。

青木政府参考人 これもきょう、毎々申し上げておりますけれども、過去に労災事例の発生した事業場に対しまして、労働者の作業環境管理あるいは健康管理をどのように行っていたかということについて調査を実施することとしているところでございます。それらの結果を整理して、従事労働者の適切な健康管理等のために活用してまいりたいというふうに思っております。

 今御指摘になりました、そのほかの、事業者に対する記録保存を義務づけたことによるその記録の活用ということでございます。これはお話の中でもお触れになりましたけれども、これは、もともとは事業者の責任において厳格な管理をしてもらうということのために設けられているものであります。しかし、これらの情報を収集するということも参考になるかと思いますので、今申し上げました過去の労災発生事例の事業場調査、これの結果も踏まえながら検討していきたいというふうに思っております。

阿部委員 労災の発生事例だけでなく、事業所全体に規制をかけたわけですから、それもお願いしたいし、また、時間の関係で最後に申し添えますが、ぜひ中皮症の登録制度をつくっていただきたい。これは、諸外国では既にあるものですし、実態を把握していくために非常に重要なことだと思いますので、重ねて西副大臣にお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

鴨下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十七分散会


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