衆議院

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第37号 平成17年7月29日(金曜日)

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平成十七年七月二十九日(金曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 大村 秀章君 理事 北川 知克君

   理事 長勢 甚遠君 理事 宮澤 洋一君

   理事 五島 正規君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      青山  丘君    井上 信治君

      石崎  岳君    小渕 優子君

      上川 陽子君    小西  理君

      菅原 一秀君    中山 泰秀君

      原田 令嗣君    福井  照君

      三ッ林隆志君    御法川信英君

      宮腰 光寛君    八代 英太君

      吉野 正芳君    渡辺 具能君

      石毛えい子君    泉  健太君

      泉  房穂君    内山  晃君

      大島  敦君    小林千代美君

      城島 正光君    園田 康博君

      中根 康浩君    橋本 清仁君

      藤田 一枝君    水島 広子君

      横路 孝弘君    米澤  隆君

      高木美智代君    古屋 範子君

      山口 富男君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小田 清一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           塚本  修君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房官庁営繕部長)        奥田 修一君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十九日

 辞任         補欠選任

  森岡 正宏君     小渕 優子君

同日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     森岡 正宏君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働安全衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、労働安全衛生法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、五島正規君外三名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。城島正光君。

    ―――――――――――――

 労働安全衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

城島委員 おはようございます。民主党の城島でございます。

 ただいま議題となりました労働安全衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブを代表し、提案理由を説明いたします。

 昨今、潜伏期間が数十年と長いアスベストによる健康被害が明らかになるにつれて、発症原因のほとんどがアスベストとされるがんの中皮腫などで死亡した人の労災認定が、死後五年という時効の壁に阻まれるケースが相次いでおります。

 私どもは、医学的証拠によりアスベスト関連疾病であり、石綿粉じん吸引の職歴が客観的に裏づけられていても、潜伏期間が数十年と長いことなどのため、当該疾病について業務に起因するものであるという認識がないまま時効期間が経過した場合、時効期間の経過後であっても業務災害に関する保険給付の請求を可能とすべきと考えます。

 そこで、潜伏期間が長期にわたる石綿等に起因する業務災害に関する保険給付については、当分の間、消滅時効が完成した場合においてもその請求を可能とする立法的措置による解決が急務であると判断し、本修正案をここに提起させていただくものであります。

 以下、その内容を御説明いたします。

 第一に、石綿その他の長期にわたる潜伏期間が経過した後に症状があらわれる疾病の原因となるものとして政令で定めるものに起因する業務災害に関する保険給付については、当分の間、労働者災害補償保険法第四十二条の規定によりその消滅時効が完成した場合においても、その請求をすることができるものとします。

 第二に、第一の請求の特例に係る保険給付の額については、メリット制に係る算定の基礎に含めないものとします。

 第三に、第一の規定の施行後、速やかに、第一により請求をすることができる者以外の者であって、石綿等に起因する業務上の災害その他の業務上の災害について、特別の事情により、労働者災害補償保険法による保険給付または労働基準法による災害補償を受ける権利を有しないものに対する補償のための方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしております。

 なお、これらの施行期日は、平成十七年十月一日としております。

 以上が、本修正案の提案理由及びその内容の概要であります。

 現在、政府提出の労働安全衛生法等改正案が審議されている中、私ども国会議員がこのアスベスト問題について緊急にできる法的手当てがこの修正案であり、党派を超えて取り組むべき課題としてここに提起させていただきたいと存じます。

 何とぞ各委員の御賛同をお願い申し上げます。

 以上です。(拍手)

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長岩尾總一郎君、健康局長田中慶司君、労働基準局長青木豊君、労働基準局安全衛生部長小田清一君、雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君、経済産業省製造産業局次長塚本修君、国土交通省大臣官房審議官和泉洋人君、大臣官房官庁営繕部長奥田修一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。

横路委員 私は、アスベストの問題と、労安法に関連して時短問題についてお尋ねしたいと思います。

 アスベストの問題は本当に大きな広がりを持っていて、一体どこまでこのアスベストによる被害が拡大をしていくのか、ちょっと想像もつかないような状況にございます。問題は、一千万トン輸入されて、九割方建材と言われていますけれども、それはまだ国内で使われているわけですね。そうしますと、むしろこれからやはり問題が大きく拡大をしていくということは、アメリカなどの例を見ても言えるわけでございます。

 そこで、まずお尋ねしたいんですが、中皮腫並びに石綿肺がんによる死亡者というのは、二〇〇三年に二千六百三十四人ということで、これは毎年ふえていっていますね。これは一体、今後どういうような見通しを考えておられるのか。学者によりますと、二〇三〇年ぐらいがピークだろうと言われているわけですから、これから多分三十年とか五十年とかというような時間で考えていかなければいけない問題だと思うんですね。そんな意味では、こうした死亡者が毎年ふえているという状況で、潜伏期間を考えると、これからむしろふえていくだろう、こういう点について、厚生労働大臣、まずどのように御認識しておられるでしょうか。

小田政府参考人 お答えいたします。

 今後の石綿による中皮腫あるいは肺がんによる患者発生の見通しについてでございますが、中皮腫につきましては、一九六〇年代に石綿の輸入量が急増しまして、その後一九七〇年から九九年に輸入のピークになっている、それから委員御指摘のように、この潜伏期間が三十年から四十年である、当時使われていた石綿が青石綿という毒性の強いものの割合が多いということから、当面患者さんの発生数は現在の増加傾向が続くであろうと思っております。

 ただ、一九七一年には、特定化学物質等障害予防規則の施行によりまして暴露防止措置が導入されております。また、一九八〇年以降は青石綿及び茶石綿の使用量が減少しまして、一九九〇年以降に使用された石綿のほとんどが白石綿となっていることから、長期的には、石綿による疾病患者数が現在のような傾向を続けるとは考えにくいと思っております。

 ただ、いずれにしましても、将来の患者発生数につきましてはきちっと予測するということが重要でございますので、研究班において専門的な立場から将来予測について研究していただくということとしております。

横路委員 大体ピークはいつごろになるんでしょうか。

 それと、学者の予測を見ますとかなり深刻でして、ある学者の予測ですと、二〇三〇年ピークで、そのときに中皮腫で亡くなられる方が年間で五千人とか六千人とか、多ければ一万人を超えるような数字も予測として出されています。

 そういう可能性は、可能性としては、将来のことでございますけれども、やはりあるんじゃないかと思うんですね。これは非常に危機感を持って対応していかなければ、本当に戦後いろいろな公害が起きましたけれども、その中でも最大級のものになる、そういう心配をしている人はたくさんおられるわけなんですが、こういう学者の予測などについてはどのようにお考えでしょうか。

小田政府参考人 今委員の御質問なされました二〇三〇年まで毎年五千人というような数値につきましては、その根拠がどのようなものであるか私どもとしては承知しておりませんが、いずれにしろ、将来の患者発生数につきましては危機感を持って対応する必要があると思っておりまして、研究班で十分な検討をしていただきたいと思っております。

横路委員 それで、例えば中皮腫で亡くなった人について、どこで生活をしていて、どんな状態で亡くなったのかという全体の把握がやはり必要だと思うんですね。

 それで、大臣、資料として、中皮腫で死亡した人というので、平成十年、十一、十二、十三、十四、十五と、年齢別の数字をちょっとごらんいただきたいと思うんですが、平成十五年を見ますと、二十代で三人、三十代で八人亡くなっていますね。そして、平成十四年を見ましても、これは十代の人までいるわけなんです。

 潜伏期間を考えると、例えばアスベストによるということになれば、これはもう子供のころに、小さなころに被曝したということになるわけでして、例えば、住宅を解体してほこりだらけのところでほこりを吸ったとか、あるいはアスベストの鉱山のところで生活をしていて被曝する機会が多かったとか、いろいろあると思うんです。

 これは、例えば平成十五年のところを見て、二十代、三十代にこういう中皮腫により死亡した人が出ているということについて、どのように受けとめればいいのか。今までの調べですと、必ずしもアスベストによるということが証明されない人が二割ぐらいはおられるということのようでございますけれども、しかし、それもアスベストでないとは言い切れないわけでございまして、若いところに被害が出ているということは非常に深刻な問題だというように思いますが、これは大臣、どのようにお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 今先生お示しいただきましたものを見るにつけても、これまで二十年、三十年、その後でと、こういうふうに言ってきたこととどういうことになるのかというふうに考えますと、大変深刻な問題だなと思うところでございます。

 御指摘のように、少数例でありますけれども、若年発症の中の中皮腫が報告されておるわけでございます。

 文献的にはこのような若年発症例につきましても石綿との関連を示唆するものもありまして、今後の調査研究を、今局長も申し上げておりますが、しっかりと調査研究をやらなきゃいかぬと思っておりますので、こうしたものを通じまして、このような方々の暴露歴の有無でありますとか、これもお述べいただきましたけれども居住地等だとか、そうしたことについて調査を行いまして、石綿との関連性の有無について明らかにしなければならないと考えております。

横路委員 これは、二〇〇三年については行うというのをちょっと聞いたんですが、それ以前についてはどうなんでしょうか。

 私は、中皮腫で亡くなった人、調べられる限りにおいて全数調査をちゃんとやって、そして実態がどうなっているかということを把握することが対策を進める上でも大事だというように思いますので、その点はいかがですか。

小田政府参考人 現在、二〇〇四年の人口動態統計、あるいはこれから入院等をしていく患者さんのデータ等につきまして調査研究の対象とすることとしておりますが、委員御指摘のように、過去のデータをさらに集めて調査すべきではないかということでございますので、そういった点も含めて研究班の対象としていきたいと考えております。

横路委員 それをまずしっかりやっていただきたいというように思います。

 次に、経済産業省の方にお尋ねしますけれども、先日、七月の十五日ですか、アスベストによる健康被害の実態調査結果、八十九社について四百六十二名という被害の発表がございました。しかし、メーカーの数はこれで限られるものではないわけでございまして、そういう点の実態調査というのはその後おやりになっているんでしょうか。

 というのは、私の地元の北海道で、この発表によると、四つの箇所でアスベストのメーカーがありましたよという報告になっているわけなんですが、道の調べだとほかにも三社ぐらいあって、それは地元の方で対応しているようでございます。ですから、必ずしもこれに限定されるものではもちろんなくて、相当まずたくさんあるというように思うんですが、これは、石綿の製造業や石綿の協会など、情報を持っておられると思うので、それをやはりしっかり公表すべきではないかと思います。

 メーカーの数というのは大体どのぐらいあったのか、もちろんなくなっているところもいろいろあると思いますが。そういう掌握、把握はされているんでしょうか。

塚本政府参考人 お答えしたいと思います。

 今先生の御指摘のとおり、当省といたしましては、七月の十五日に、関係六団体等を通じて八十九社の状況を把握したわけでございます。これにつきましては、早急に実態把握をするということで、そういう石綿協会等関係六団体を通じて調査するのが一番とりあえず早急に調査できるということでやったわけでございまして、その結果につきましては、当然のことながら関係省庁に今御提供申し上げているということでございます。七月一日に調査を始めたわけでございまして、その時点ではそれなりの最大のカバレッジであったのではないかと思っています。

 ただ、先生御指摘のように、アスベスト製品の製造企業のみならず、それを使うユーザー企業も含めて関係しておりますので、こちらにつきましては、七月二十五日付で約四百団体、延べにしますと数万といいますか、そういう会社に対しまして情報公開をしていただくように要請したところでございまして、そういう情報開示の結果を受けまして、そういうところも実態把握に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

横路委員 そうすると、今のお話ですと、メーカーと、それからユーザーについて四百団体、数万企業ということですから、一応数万企業が、数万というのはちょっとどのぐらいなのか教えていただきたいと思いますけれども、それが一応メーカー並びにユーザーであるというように今の段階でお考えになったということだと思うんですが、数はこれはどのぐらいあるんですか。

塚本政府参考人 製品の製造メーカーにつきましては、我々が一応認識しておりますのは八十九社、プラスの数社といいますか、そんなに何十社もということではないと思っています。ただ、それを使っているユーザーにつきましては、かなりの数に上る。ただ、そういうところでどういう被害があっているかというのは、まさしくこの情報開示の要請を受けまして実態把握がなされていくというふうに考えております。

横路委員 問い合わせしたのが数万企業ということでございますから、本当に広い分野にわたっているわけでございます。

 それで、厚生労働省、前から議論されておりました労災認定事業所名を公表すべきじゃないかということで、きょう連絡会議で議論されたようですが、それは決めて公表するということになさったんですか。

尾辻国務大臣 公表することにいたしました。

横路委員 それはどのぐらいの事業所になるんでしょうか、数は。

青木政府参考人 今精査をしているところでありますけれども、平成十一年から十六年度の労災認定、中皮腫、肺がんによって労災認定をした事業場数が延べで三百八十六事業場ございますけれども、今精査をしているところでございます。

 時期にもよりますけれども、きょう公表するとすれば、今、三百ぐらいになるのじゃないかと思っております。

横路委員 あと、厚生労働省の方で、特定化学物質等障害予防規則の関係で、メーカーの検査や指導というのは行うことになっているので、その実態はどうなのかということをちょっと担当の箇所に言いましたら、それは情報公開法によって提出できないということだったんですが、やはりこれだけ国民の安全に関連する問題でありますので、今までともかく厚生労働省が、これは旧労働省の方ですが、集めているそういう数字、企業実態というものは、できる限り公表すべきだというように思いますが、これは厚生労働大臣、いかがですか。

尾辻国務大臣 石綿を製造し、あるいはまた取り扱う作業を行う事業場につきましては、これまで監督指導等を通じて把握しているところでございますけれども、これにつきましては、個別の企業情報でもございまして、このために、公表することについては慎重な対応が必要だと考えているところでございます。

 ただ、大変、このところの問題の重要性、重大性を考えますと、十分検討しなきゃいけないことだというふうには思っておりますので、今検討させていただいております。

横路委員 それは大臣、どのぐらい、事業所でいうと、何か一千事業所ぐらい調査したんでしょうか。

青木政府参考人 十六年度で二千六百ほどの特殊健康診断の報告書があったかと思います。

横路委員 これは、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の第五条の第二号で、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。」ということですが、「ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。」ということになっていまして、まさにこれは人の生命、健康に関する大事な情報でございますので、やはり公表をしていただいた方がいいのではないかと私は思います。それで後、近隣の人たちの健康診断とかこれからいろいろと必要な措置というのは、それでとれるわけでして、そんな意味では、厚生労働省がそういう特定化学物質等障害予防規則の問題で検査、指導して持っておられる情報というのは、ぜひ公開する方向で検討していただきたいと思います。

 厚生労働大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 御趣旨は十分よく理解をいたしておりますので、申し上げましたように検討をさせていただきます。

横路委員 国土交通省、来られていますか。

 一つ、建設の現場で従事されている方というのは、これからの解体を含めて、非常に大きな問題だと思うんですね。これは国土交通省としては、そういう建設従事者の状況ということについて、例えばどれだけの、どういう企業、どういう仕事に患者が発生しているのかというような調査は国土交通省でやっているんでしょうか。

和泉政府参考人 済みません、ちょっと事前の通告がなかったものですからあれですが、いずれにしましても、解体現場等で今後深刻な状況が起こる可能性がありますものですから、いわゆる建設関係団体、住宅関係団体等につきまして、アスベストに係る解体作業等を行うときに当たって、きっちり関連法規を守りながら、そういった障害が生じないようにという通知につきましては幅広く関係団体に通知して、事態が改善されるように努めております。

横路委員 通知はしたはずでございますが。今までどういう発生をしているのかということはお調べにはなっていないんですか。建設の関連の事業者に対して、そういう実態調査というのはやっていないんでしょうか。

和泉政府参考人 済みません。建築物自体の吹きつけアスベスト等の状況につきましては、この七月から調査を行っておりまして、九月をめどにまとめることとしておりますけれども、具体の建設現場について、国土交通省として、建設業等における障害の発生については、今のところまだ調査はしてございません。

横路委員 それは建設の業者を調査する必要があるんじゃないですか。何か被害はみんな厚生労働省じゃ、これは困りますよ、幅が物すごく広いんですから。それぞれの省庁が、関連する業界についてはちゃんと調査をされて把握するということが必要だと思いますよ。建設現場は、絶対これからさらにふえていくし、今までもあるんですから、配電したり配管したりしている人たち。ですから、それはちょっと建設の業界の方に指示をして、どういうケースがあるのか、やはり上げることをやらないとだめだと思いますよ。いかがですか。

和泉政府参考人 建設労働者の特性としまして、現場がしょっちゅうかわるものですから、そういった難しさがございますが、御指摘の点、重要でございますので、いわゆる労働災害を調査しています厚生労働省とよく連携して、どういうようなことが可能か、少し検討させていただきたいと思います。

横路委員 いや、まずやはり建設現場の、要するに建設の事業者の方に認識がちゃんと徹底しなきゃだめなんですよ。それには、皆さん方がそこに対して、こういう点を調査して上げろといって調査をおろせばいいわけですよ。経済産業省がやったように、協会を通じてやればいいじゃないですか。それをやってくださいよ。全くそれは関係ない、もう労災は全部厚生省ですよということじゃなくて、やはりそれぞれの省庁が責任を持ってやってもらいたいと思います。どうですか、ちゃんと業界に対してそういう調査をやってください。

和泉政府参考人 厚生労働省が行っている調査と重複しては困りますので、それをよく調整した上で、不足があれば検討したいと思います。

横路委員 これは本当にいろいろな問題がこれから起きてくるわけでして、その中で各省庁も、やはり一義的にちゃんと自分たちのところで負うべき責任は負ってもらいたいというように思います。

 次に、ちょっと水道管についてお尋ねしたいんですが、水道管に使用されているアスベスト、アスベストの水道管というのは結構ありましたけれども、何か地震に弱いということで少しずつこれはかえてきたということのようですが、今どうなっているのか。

 それから、安全性について、WHOの方はないとは言ってないんですよ、そう大きなものではないというような表現のように承っておりましたが、政府としては、ちゃんと安全性などについて調査しておられるんでしょうか。今どういう状況なのか、ちょっと報告していただきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 石綿のセメント管でございますけれども、平成十五年度、一万九千キロほどまだ使用されているところでございます。これは、我が国の水道管路の三・二%に相当するものでございます。

 それから、健康影響の問題でございますけれども、先生御指摘のとおり、WHOは健康影響という意味では水道水中のガイドラインを定める必要はないというふうに言っておられるところでございます。私どもも、平成四年に水道水質の基準を改正いたしましたけれども、そのときに専門家の御意見を伺いましたところ、経口摂取に伴う毒性は極めて少ないというようなことをいただきまして、基準は定めていないところでございます。

横路委員 厚生労働大臣、これはともかく相当やはり大きな問題になりますので、実態と、それからアスベストが今どういうところでどのようにして使われているのか。

 例えば、公共的な建築物とか、人の出入りの多い大きい民間の建築とか、本当はちゃんと表示をしてもらうとわかりやすくていいと思うんですが。商品も、随分たくさんの商品が出ていまして、どれにアスベストがどのぐらい使われているのかということが必ずしもみんなよくわかっていません。したがって、不安も非常に大きくなっているということもありますので、どこにどのように使われているのか、どんな商品があって、それはアスベストを何%ぐらい含んでいるのか。

 ですから、これは解体するということになりますと、例えば一千万トンのうちの九割建材として使われているとすれば、それを含むものというのは膨大な量になりますよ。多分、一億トンとか、あるいはそれ以上のものになる。そうすると、これの解体、廃棄というのはどうするのかというのが非常に大きな問題になります。

 例えば、今の水道管も取りかえてはいっていますが、では、水道管をどうやって処分しているのか。ああいうようなものですから、多分破砕して埋め立てや何かやっているに違いないんですね。そういうのがどうなっているのかということが、必ずしも今追跡されていません。

 いろんな現場がたくさんありまして広がっていますので、まずそこのところもひとつしっかり押さえていただきたいというように思いますが、この点いかがでございましょうか。

尾辻国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、けさも関係閣僚会議でもこのアスベストの問題、大変深刻な問題であるから、政府全体できっちりと対応しなきゃいけないということをまず決めたところでございます。

 そして、そうした中で、今先生いろんなことを御指摘いただいておりますけれども、本当に数え上げていけば切りがないほどにやらなきゃならぬことが次々にございますので、しっかりと各省庁間で連携をとりながら、政府全体として一つずつしっかりと対応してまいりたい、こういうふうに存じます。

横路委員 次に、労安法の質疑に移りますので、後はほかの方は結構でございます。

 そこで、日本の場合の今の問題点の一つは、やはり長時間労働ということですね。他方、パート労働があって、これは低賃金で不安定な労働だ。

 一つは物すごい長時間労働があるということで、大臣、今資料をちょっとお配りしたのを見ていただきたいんですが、週五十時間以上働く人の割合といったら、日本が断然トップですよ。そして、その真ん中の右側に週六十時間以上働く男性の割合、三十代で二三・七%、四人に一人ぐらいはそういう労働をしている。週休二日ということで考えますと、一日十二時間以上の労働になるわけです。これに通勤を考えますと、例えば南関東の場合の男性の平均の通勤時間というのは、片道一時間半ですから合わせると三時間、そうすると、十二時間以上働いて、三時間通勤にとられるというような生活を毎日送っているわけですね。

 その結果、右下の、これは東京労働局の資料なんですけれども、月百時間または二カ月から六カ月平均で月八十時間を超える残業が、これは過労死の認定基準の一つですよ、そういう状態はどうなのかということで、既にありますよというのは三五・七%の企業、これから可能性ありますよというのは二二・二%。合わせてこれは幾つになりますか、五七・九ですから、六割の企業はそういう状態だというような労働の状況に今日日本の働いている人たちは置かれているわけですね。

 この状態をどう思いますか。これは普通だと思いますか、やはりちょっとほかの国と比較して異常だというふうに思いますか。こういう長時間は減らさなければいけないと思いますか、やむを得ないというふうに考えておられるんですか。労働大臣の基本的なところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 やはりこの数字というのは外国と比べて、異常という表現がいいのかどうかわかりませんが、先生の方で異常とおっしゃったので私も同じ言葉を使わせていただきますと、異常だというふうに思います。そして、これは減らさなきゃいけないと考えます。

横路委員 今回の千八百時間という目標をなくしてしまったその過程の審議会なんかの議論をいろいろ見ていますと、経済団体の方からは、労働時間の規制をするということは国際競争力に響くんだということをよく言われているわけです。

 しかし、この左側の「週に五十時間以上働く人の割合」というところで、労働時間が非常に低いところの国、オランダ、スウェーデン、オーストリア、ベルギーとかフィンランドとかデンマークとか、ではこういう国は国際競争力弱いのかというと、決してそんなことはなくて、ダボスの世界経済フォーラムなんかを見ますと、フィンランドとかスウェーデンとかノルウェー、デンマークというのは、大体上から五番目以内ぐらいにみんなそれぞれ入っている企業なんですね。

 ですから、むしろやはりゆっくり休暇もとって、人の生活というのは、仕事をするということも非常に大きな要素ですが、しかし、そればかりじゃなくて、家族や家庭の団らんとか、自分が余暇を楽しむとか、あるいは社会的な参加を何らかの形でするとかですね、時間というのは一日に二十四時間なんですから。これをやはりどういうように、一日、一週間の時間をどうするか。

 よく言われる仕事と生活の両立ということなんですが、そういう観点からいっても、やはり日本の労働時間というもの、特に月百時間以上、その二枚目の紙をちょっとめくっていただきたいんですが、「一箇月の法定時間外労働の実績」というので、これは何か企業の割合のようですけれども、大企業ほど、三百一人以上の企業で五%の企業に百時間超える人がいますよという数字のようでございますが、いずれにしても、百時間超えるということになると、一日どのぐらいの労働になりますかね、これは十二時間どころの話じゃなくて、十五時間ぐらいの労働になってしまうんじゃないかというように思います。

 したがって、やはりこういう実態を解消しないと、少子化というのはますます進んでいくことになるわけです。この真ん中の資料ですね、これは厚生労働省の厚生労働白書に出ている数字ですが、平日の帰宅時間が二十三時以降翌朝三時未満の父親、就学前児童のいる父親といいますから三十代が中心でしょう、南関東で二〇%超えているんですね。こんなサラリーマンの状態というのはやはり解消しなければいけない、このように思います。

 先ほども労働時間が長いのは少し解消していかなければいけないというお話がございましたが、そこで、どうして今回千八百時間という目標をなくしてしまったんでしょうか。千八百時間よりもさらに労働時間を短くするんだよという話なんでしょうか。

尾辻国務大臣 時短促進法に基づきます現行の計画に掲げられております年間総実労働時間千八百時間という目標でございますけれども、これに関しましては、労使初め関係者一体となった取り組みによりまして、時短促進法の制定以来、年間総実労働時間が百二十四時間減少するという成果をおさめております。

 しかしながら、この成果は、特に近年においては短時間労働者数の大幅な増加によりもたらされた面が大きいために、今後とも全労働者一律の年間総実労働時間千八百時間を目標と掲げることは時宜に合わなくなっていると考えております。そういうことが今回の改正をお願いしておる理由でございます。

 ただ、一方で、先生御指摘のとおりに、労働時間分布が非常に長い人たち、今お示しいただいておりますけれども、一方でまた短い人たちがおりますから、長短二極化するという現象が起きておりまして、この中で長時間労働に伴う健康障害が増加をしております。あるいはまた、育児、介護、ひいては家族の団らんといった、これも先生お話しになりましたけれども、生活時間の確保に配慮した労働時間の設定が求められております。そういったようなことなど、新たな問題が起きております。

 こうした課題にこたえるためには、個々の労働者の健康でありますとか生活に配慮した労働時間等の設定に向けて、事業場の実情に応じた取り組みを労使が自主的に進めていただくことが重要になると考えて、今回の法案は提出をいたしたところでございます。

横路委員 先ほど御紹介した東京労働局の調査によりますと、過重労働の結果、脳や心臓疾患の懸念があるというのがだんだんふえてきていまして、平成十六年で三八・三%とふえていっています。それから精神的な問題、この懸念というのもふえていって、平成十六年では三三・八%という事態なんですね。

 では、そういうような措置に、長時間労働の結果なっている、過重労働の結果なっている、では企業はどういう対応をとったのかという、そのとった対応を見ますと、時間外労働を削減したというのはわずか六・六%です。年次有給休暇や連続休暇を取得することを推進したといったのは、少し多いですけれども一九・二%ということで、労働時間の減少に直接つながる対応というのは企業経営側がとっていないんですね。とっていないんですよ。今、労使間に任せるというお話でございましたが、任せると労働時間は長くなるんです。だから、そこはやはり役所の方である程度のガイドラインで抑えていかなければいけない。

 これは皆さん方、実態調査をやって、その結果は明確に出ているじゃないですか。時間外労働を削減するというのは本当に少ないんですよ。今、経営者にとっては、今の社員を残業させた方が新しい雇用をするよりも安上がりなんですね、二五%の賃金を払ったとしても。払わないでやっていれば、なお安上がりになるわけですよ。そういう状態をやはり改善していこうということでなければ、将来の日本は本当に大変ですよ。

 ですから、大臣、これは後でまたもう一度議論しますが、役所の方としても、労使関係に任せてそれで終わりではなくて、やはり大事なところ、基本的なところ、それは働いている人の健康を守って、そして、労働ばかりじゃなくていろいろな生活もできるようにする役割はやはり役所が果たさなければ、何でも規制緩和で自由ですよというのでは、働いている人たちは死んでしまいます。だから大臣、ぜひそういう意味で、やはり必要な基準はちゃんとつくって、余り変なことにならぬように、今少なくとも異常な事態だと私は思います。これをやはり減らしていく努力をある程度誘導する政策をしっかり役所としてとってもらいたいというように思いますが、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今御指摘のことは、私どもも極めて大事なことだというふうに考えております。

 そこでまず、今日あります労働基準法の遵守に向けて監督指導の徹底等に努めますとともに、今回お願いいたしております改正法に基づき、個々の労働者の健康や生活に配慮した労働時間の設定に向けて、まずは労使の自主的な取り組みを促進していくことによって我が国の長時間労働を抑制してまいりたいと考えておりますけれども、御指摘の点はまたよく踏まえて私どもも対応させていただきたいと存じます。

横路委員 不払い残業、これは、厚生労働省の方も賃金不払残業総合対策要綱というのを、平成十五年ですか、取りまとめて通達をされました。そして、不払い残業をなくすということで御努力をいただいているわけでございますが、いろいろとやられている不払い残業の実態、それから今後はどうなさるのか。私は、これは積極的に今後とも進めていかなければいけない、このように思います。しかも、大企業は大体、入ればほとんど不払い残業の実態にあるということで、大きいところですと、何十億という不払い賃金を後で払っている企業もあるわけでございます。

 今の不払い残業、この問題について、どのように実態を把握され、これからさらに厚生労働省としてどうなさるのか、お答えいただきたいと思います。

青木政府参考人 賃金不払い残業、これは賃金不払いということで労働基準法違反でありまして、あってはならないことだというふうに思っております。

 私どもとしては、こういった労働基準関係法令の遵守を徹底していきたいというふうに平生から監督指導を行っているところであります。こういった事業場への立ち入りによります監督、個別の監督指導あるいは集団的な監督指導、そういったものを通じまして賃金不払い残業を把握し、その是正に努めているところでございます。

 平成十五年四月から平成十六年三月までの一年間の個別事業場への監督によります監督指導の状況を見ますと、未払いになっていた割り増し賃金について是正指導いたしまして、その結果、百万円以上支払った企業数、是正して払ったということになったのが千百八十四企業でございます。それから、それによって割り増し賃金を受け取った労働者数が十九万四千六百五十三人ということでございます。割り増し賃金の合計額は約二百三十九億円ということになっております。

 今申し上げましたように、賃金不払い残業の解消につきましては積極的に取り組んでいるところでございますけれども、これに加えまして、お話しになりました平成十五年五月に策定した総合対策要綱に基づいて総合的な対策を推進しております。

 私どもとしては、引き続き、それに基づく、賃金不払い残業の解消を図るために事業主が講ずべき措置等に関する指針の周知を図ってまいりたいと思います。また、重点監督月間を設定いたしまして、的確に監督指導を実施して、総合的に対策を講じていきたいというふうに思っております。

横路委員 二〇〇五年版の経営労働政策委員会報告という経団連の報告書があるんです。その中の「労働法・労働行政への対応」ということの中で、「企業の労働条件は、基本的には労使間の交渉・協議により決められるべきである。しかし、最近の労働行政は、企業の労使自治や企業の国際競争力の強化を阻害しかねないような動きが、とりわけ労働時間をめぐる労働監督行政において顕著である。」と言って、サービス残業の摘発についてクレームをつけているんですね。

 大体、自分のところで、さっきおっしゃったように法律違反で、あれはたしか刑事罰だってあったですね、そういうことをやっておきながら、監督が入ってくるのはけしからぬと言う経済団体というのが僕はよくわかりませんけれども、経済団体のこういう考え方について、厚生労働大臣、どう思いますか。やはりだめなものはだめとちゃんと言わないと、こんなのでずるずる、一昨日も議論されていましたが、ホワイトカラーの労働時間については労働基準法の適用を外すみたいなところに何か押し込まれていっているように思いますけれども、経団連のこの考え方、どのように受けとめられますか。

尾辻国務大臣 今先生がお述べになりましたのは、二〇〇五年版経営労働政策委員会報告、日本経団連の報告についてであろうかと思います。

 先生もちょっとお触れになったところでありますけれども、例えば、「労働者が企業の管理施設内にいる時間をすべて労働時間として取り扱おうとするなど、」といったような記述もありますけれども、そのようなことは全くいたしておりませんので、事実に基づかないものであるというふうに認識をいたしておるところでございます。

 また、労働条件の最低基準を定める労働基準法の遵守がなされない場合には、これは監督行政として責務を果たすことは当然でありまして、企業の労使自治や国際競争力の強化を阻害するものではございません。監督署の指摘を受けた企業においては、その指摘を契機として、労使の信頼関係がつくられているかどうかなど、冷静な判断のもとで、みずからの企業のあり方を見直すことを期待したいと考えております。

 厚生労働省としては、今後とも事業主に対して労働時間を適正に管理させるとともに、全国同じ考え方のもとで適正な対応の徹底に努めてまいります。

横路委員 なぜ、日本の場合、長時間労働なのかということについて、労働政策研究・研修機構というところの調査がございます。

 この調査を見ますと、やはり人員が削減されて人手が足りないというのが第一なんですね、なぜ長時間労働になっているか。その次は、労働時間内では片づかない仕事の量、仕事の量がふえているということですね。これはリストラをやっているからこういうことになっているわけですよ。そして、納期に間に合わせるためにどうしても残業が必要だということで、なぜ長時間労働なのかという理由がこの調査ではそういう方向性が出ています。

 これは、いろいろな調査を見ましても大体同じでございますので、そうすると、これは専ら経営の責任ですね、経営側の責任ですよ。もう限度、限界に来ていますから、ここのところをやはりちゃんと経営団体を指導もしてほしいな、このように思います。

 ですから、資料の最後のところをちょっと見ていただきたいんですが、お渡しした資料の一番最後、ことしのギャラップの調べで、企業に対する帰属意識や仕事への熱意があるかないかという調査なんですね。私は、これを見てびっくりしました。日本の企業で働いている人というのは企業に対する忠誠心というのは昔からすごくあるということであったはずなんですが、このギャラップ調査を見ると、最低ですよ。それは何かというと、やはり企業が働いている人を粗末に扱ってきているからなんです。だから忠誠心がなくなっていっているんですよ。忠誠心が非常にあるというのはわずか九%ですよ。これは、何となく我々が思い描いていたイメージと、この調査結果というのは全然違うものです。

 だから、企業の経営者もそういうことをやはりちゃんと認識してもらわないと困る。その下の仕事を見ると、三十代のところに、九三年と比べて二〇〇三年、「仕事がつらくてとても疲れる」、疲労が増しているという数字が出ていますよ。これもやはりベースは時間外労働。それは何のためにそうなっているか。人が不足している、仕事の量が圧倒的に多い、正社員が減らされて、その分、残された人間が仕事をやっていますからこういうことになっているわけですね。ですから、こういう基本的なところをやはりしっかり考えていただかなければいけないわけですが、忠誠心のこの調査を見て、いかがお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 私も、今初めて見せていただいたんですが、先生がおっしゃったことと全く同じように思いました。

 日本の場合は、もっと職場への帰属意識というのは強いものだと思っておりましたので、非常にあるという割合が九%で、しかも、諸外国との比較をしてみますと、びっくりしてこれを見たところでございます。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

横路委員 びっくりして見ただけではなくて、後をちゃんと、企業に対する指導をしっかりやっていただきたいと思います。

 それで、時間外を、どうやって長時間労働を抑えるかということなんですが、一つは、労働時間の上限をやはりちゃんと押さえるということなんですね。EU指令では週四十八時間、日本の場合の残業の一応の基準の上限でいうと、八時間と足して五十何時間ぐらいになったんでしょうかね。いずれにしても、日本の場合は特別協定が乱用されていまして、非常に労働時間の上限がないんですね。

 だから、これから皆さん方が労働時間短縮の指針をつくるときに考えるべきポイントの一つというのは、三六協定、特別協定ということで、一応基準は皆さん方つくっておられますよ、基準はつくっておられますけれども、その基準というのはほとんど守られていなくて、どんどんできるようになっている。一週間で十五時間ですか、時間外労働の限度に関する基準というのをつくられましたね。これをやはりしっかりもう一度確認していただきたい、このように思います。その点、いかがでしょうか。

青木政府参考人 今委員が御指摘になりましたように、時間外労働につきましては、一般的な労働時間の規制の中では、労使が協定をしていれば残業ができる、時間外労働ができるということになっております。

 しかし、そうはいっても、余り長いものは好ましくないということで、御紹介ありましたように、労使が決める協定の上限時間をそれぞれ、一週でありますと週十五時間の限度時間、一月であれば四十五時間までの時間、一年間であれば三百六十時間などというように定めております。これをもとに私どもとしては指導をいたしているところでございます。

 これは指導基準でございますので、これらをできるだけ守っていただくということでやっております。引き続き努力をしたいと思っておりますけれども、お話にありましたように、なおかつ、この基準を守っている労使の皆さん方でありましても、緊急的に、非常に仕事が入ったというようなことで、特別な場合にはさらにその時間を超えて熟慮して決めることができるということになっておりまして、こういった特別協定、特別条項つき協定というようなものも認めております。これについては、平成十五年の十月に告示改正を行いまして、特別の事情というのは臨時的なものに限るんだという趣旨を明確にいたしまして、その遵守徹底を図っているところでございます。

 私どもとしては、この限度基準というものをきちんとよく周知いたしまして、また理解をしていただきまして、守っていただくように、引き続き努力をしていきたいというふうに思っています。

 本年度に、時間外労働協定や時間外労働そのものの実態を含む労働時間の実態調査を実施しているところでございますので、時間外労働の限度基準というもののあり方についても、この調査結果や関係者の御意見も伺いながら検討をしていくことになるだろうというふうに思っております。

横路委員 時間外労働を抑えようということで、所定外労働削減要綱とか時短法に基づいて労働時間短縮推進計画というのがありますね。この内容というのは、これはそのままやはり進めていくということなんでしょうか。これも全部この際御破算にしてしまうんですか。

青木政府参考人 今御審議をお願いしておりますこの法案につきましては、確かに、労働時間の短縮ということで目標を立てて、これはまさに日本の国全体の目標といいますか、国民運動となったというふうに思います。非常に難しい、労働時間、それぞれの企業の経営あるいは労使の関係、さまざまある中で、労働時間を短くするというコンセプトを皆がこぞってやっていこうということで進めてきた十数年間のものとしては、大変意味があったと思っております。

 しかし、一定の成果を上げましたけれども、いろいろな状況が変わってまいりまして、平均的に見ても下げどまりといいますか、というような状況も起きておりますし、あるいは就業形態が多様化いたしまして、非常にパートタイマーを初めとするそういった多様な就業形態が出てきたということでありまして、どうも単純に平均的にやるのでは、なかなか本来の目的であります労働時間を短縮して個々人の労働者の生活やさまざまなニーズに応じた調和のとれた労働生活、労働時間といったものにはなりにくいだろう、今後は、そういった観点から少し、ターゲットでありますとか、あるいは個々の方々、あるいは個々の事業場、個々の労使関係、そういったものの中で自分たちでよりよいものを決めていただくというような形がいいのではないかということで御提案を申し上げているところでございます。

 そういう意味では、一律的に計画をつくってやっていくというよりも、むしろ具体的な取り組み方とかあるいはアイデアとか、そういったものを具体的に示していくことの方がより実践的ではないかなというふうに思っているところでございます。

横路委員 いや、全然わかっていないんじゃないですか。先ほど私は、経団連の文書をちょっと紹介いたしました。ではなぜ長時間労働かという理由も御紹介いたしました。労使関係に任せておいて時間短縮ができるものなら、それはとうの昔にできていますよ。できないから今までつくってやってきたわけじゃないですか、目標として。だから、そこを本当にわかっていないと思いますよ。

 大臣、私は、週の労働時間の上限をやはり決めて、かなり厳しくそれをコントロールすべきだ。これはEU指令なんかもそうです。それから、ブレアが行った仕事と生活両立政策もそれが一つの柱になっています。

 それからもう一つは、残業手当の方が人員をふやすよりも低コストだということに今なっているわけですよ。二五%割り増しというのは五〇%に上げるべきだと思います。上げるべきだ、これは大体世界はそうなっているわけですから。そういうようなことをしっかりやらないと、それは経営はやりませんよ。

 それから有休。時間もありませんから一緒にあわせて聞きますが、フランスやドイツでどうなっているかといいますと、年度の初めに全従業員の休暇計画を聴取するんです。そして、企業の業務計画と調整をして決めていくんですね、年度の初めに。それは前にもお話ししましたが、ブレアの仕事と両立政策の中も、そういういわば企業の業務計画と、個人がこういうように働きたいということ、休暇も含めてどうするかという調整をコンサルタントが派遣されてやるんですね。そのお金を国がバックアップするということで成果を上げているんですね。

 ですから、これは本当に任せっ放しにしないで、ちゃんとやるならば、そういうヨーロッパでとられている政策というのはあるわけですよ。この政策をやって初めて、やはり働いている人たちが仕事も一生懸命やり、同時に、家庭の団らんも時間をとることができ、それから、何か自分の余暇を楽しむこともできるし社会的な活動に参加もできるということになるのです。

 今は、ともかく疲れて帰って何もする気がないという三十代の働き手というのは、世論調査をやると物すごく多いじゃないですか。こんな状態でよくなると思いませんよ。そして、いずれも規制を外せといって自由にしろと言っているのが日本の経営者なわけですから。

 どうか厚生労働大臣、そういう点で、この時間外を本当にどうやったらなくすことができるのか。企業に任せていたんじゃ、絶対できませんから。だから、そこをどうするかということを、これから皆さん方、指針を作成するわけでしょう、その指針の中に、労働時間だとか有給の休暇のとり方、あり方とかいろいろありますね、それをやはりしっかり私は入れていただきたい。

 だから、これからこのあれが本当にプラスなのかマイナスなのかというのは、大臣の指針の内容にかかっています。指針が労使関係に任せるなどと言った途端に、労働時間はますます長くなっていきますよ。ますます過労死する人間が出てきますよ。そういう状態だと私は思います。基本的に厚生労働大臣、いかがお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 本年度に、今いろいろお話しいただいております時間外労働協定でありますとか、時間外労働の実態を含む労働時間の実態調査を実施いたしておるところでございますので、今お述べいただいたようなことも含めて十分実態を調査いたしまして、時間外労働の限度基準のあり方につきましては、そうした調査結果それから関係者の御意見も踏まえながら、さらにまた、こうした国会での御審議は当然のこととして私どもの検討の中に加えさせていただきながら検討いたしたいと存じます。

横路委員 一つ、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画についてお尋ねしたいと思いますが、三月の末に提供された、結果として先日発表されたものを見ていますと、この中に、所定外労働の削減というのが四三・一%、有給休暇の取得の促進というのが四一・四%というように数字が上がっているわけですが、これは所定外労働時間をどれほどカットする予定なのか。少子化対策の中では、たしか一〇%ぐらいという穏やかな数字だったように思いますけれども、これはどういう中身になって上がってきたんでしょうか。

伍藤政府参考人 次世代法の計画でございますが、これは法律の枠組みで計画を策定したという旨を届けていただくということで、それから、具体的なそれぞれの事項については届け出をしていただくということになっておりますが、それぞれの企業がその項目別にどういう目標を具体的に設定したかということまでは把握するような仕組みになっておりませんので、今御紹介ありましたような、事項別にはこういう項目についての計画が多いという実態は把握しておりますが、どの程度の削減率を目標にしているという企業がどのぐらいあるかといったことについては、詳細は私ども承知はしていないところでございます。

横路委員 それで何か効果はあるんですか。これは具体的に計画を立てずに、今これだけの所定外労働時間をこれぐらい減らすというような内容にはなっていないんですか、なっているんですか。それをちゃんと把握して、そして少子化対策の大綱、この大綱の中で方針を具体的に出しているじゃないですか。それはこっちの方と余り関係がないんでしょうか。

 確かにこの表を見ると、項目としてアイウエオとあって、見直しに関する労働条件の整備とありますよね。これは丸をつけて出すだけであって、その中身、この時間をこれぐらい減らします、有休をこれぐらいにしますよというのは掌握していないということですね、今の答弁は。

伍藤政府参考人 個別の企業がどのくらいの目標を設定しているかという具体的な内容までは把握をしていないということでございます。

横路委員 これで何か効果はあるんですか。

伍藤政府参考人 こういった企業の自主的な取り組みを促していくということが次世代法の趣旨でございましたので、この中で今六割程度の企業が計画を策定していただいておりますが、これが進むということ自体に、私どもはかなりの意義があるというふうに考えております。

横路委員 時間ですので終わりますが、要するに、労使に任せるという規制緩和路線なんですね。アメリカからも要求されていることに皆さん方はこたえようとされていますけれども、日本の労働者は本当に大変な事態、状態になりますよ。だから、そこのところをぜひしっかり受けとめて、指針をつくるときにいい内容の指針にしていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、藤田一枝君。

藤田(一)委員 民主党の藤田一枝でございます。

 本日は、メンタルヘルス対策の充実に関連してお尋ねをしてまいりたいというふうに思っています。

 今回、労安法の改正によって、過重労働あるいはメンタルヘルス対策というものの充実が図られるということは、それなりに評価をするものでありますけれども、先ほど来お話がありましたように、カローシという言葉が国際語になってしまうほど問題が深刻化をしている、こういう状況を考えますと、遅きに失しているのではないか、こんな印象も否めないわけでございます。

 かつて、これもよく言われたことでございますけれども、けがと弁当は自分持ちという言葉がございました。労働者は、労働力は提供してもみずからの命は提供していない。労働者の命と健康を守る闘いの歴史というのは本当に過酷なものがありました。そういう経過の中で、使用者責任の明確化ということがずっと図られてきたわけでございます。そのことをぜひ私はしっかりと踏まえていただきたい、このように思いますし、さらに、この過労死や過労自殺の労災認定ということについては、本当に遺族の皆さんの無念の叫びの中から問題が顕在化をしていった、このことも御承知のとおりであろうというふうに思っています。

 こうした経過を考えますと、この長時間労働に対する厳しい規制あるいは労働安全衛生法規の遵守の徹底ということについて、何で厚生労働省はもっと毅然とした対応がとれないんだろうか、いつもそんなふうに思っておりますし、このたびのアスベスト問題の対応を見ておりましても、今本当に厚生労働行政の立ち位置が問われているというふうに私は思っているところでございます。

 冒頭、ちょっと感想めいたことを申し述べさせていただきましたけれども、ぜひこの現状をしっかりと踏まえていただきたい。そして、過去のいろいろな事例がございます。いろいろな歴史的積み重ねの中で、労災、職業病の問題、公害の問題、今日に至っているわけでありますので、そのことをしっかりと検証していただきたい、このように思うところでございます。

 そこで、きょうは、ぜひ、命と健康にかかわる問題というのは積極的に先取りをしていくんだ、こういう意気込みで取り組んでいただきたい問題についてお尋ねをしたいと思います。それは、職場におけるセクシュアルハラスメントの問題でございます。

 セクシュアルハラスメントというのは、セクハラというような言葉で大変定着をしてまいりました。やってはいけない行為である、重大な人権侵害行為であるということについては認識をされるようになってきているわけでありますけれども、法的規制という面からいきますと、DV法ができたことに比べると、まだまだセクシュアルハラスメントの規制というのは弱い段階にございます。男女雇用機会均等法の二十一条において、事業主に対して、セクハラ防止のための雇用管理上の配慮義務というものが課せられて、そして、配慮すべき事項について大臣指針というものが定められています。しかし、そういうレベルでございます。

 しかし、セクハラ行為というのは本当に増加をしてきています。雇用均等室への相談件数だけを見ても、全体の四割近くがセクハラ関係であります。内容は非常にエスカレートしてきています。言葉によるセクハラから、さわったり、抱きついたり、関係を迫ったり、さらにはレイプという悪質な犯罪行為にまで及んでいるわけであります。そして、相手は、社長や上司、同僚や取引先、さまざまにあるわけであります。

 そして、被害者が上司あるいは第三者機関に相談したらば、何と一方的に配転になったり解雇をされたりしている。そして、派遣あるいは契約やパート、こういう形で働いている皆さんは直ちに雇いどめになってしまう、こんな実態がございます。また、仮に職場での解決というものができたとしても、被害者の精神的苦痛というのは残ってしまいます。

 さらに、労働組合がない未組織の職場であるとか零細企業など、なかなか法律の実効性というものが担保できない、そういう職場においては、本当に被害者は泣き寝入りの状態で、精神的なショックで働けない、解雇にならなくても自分でやめざるを得ない、こういう状況に追い込まれているというのが実態でございます。これは決して誇張して言っているわけではなくて、NGOの調査だとか相談内容というのを見ていただければ如実に出てくるケースばかりでございます。ぜひ、この辺、大臣にも一度実態を把握していただきたい、このように思うわけでございます。

 今本当に働く女性はふえてきているわけでありまして、女性にとって働く場所が安全でないということはとんでもない話であります。当然、これは対策を強化するということが必要なわけでありますけれども、現行の均等法二十一条と大臣指針だけではやはり足りない。もっといろいろな角度から、多面的にこの問題をとらえて、やはり対策を講じていく必要があるのではないか。

 そういった意味で、今回、労安法が改正されるということで、労安法の一条に掲げられている「快適な職場環境の形成」、こういう観点からも、しっかりとセクハラ対策に取り組む必要があるのではないか、このように考えるわけでありますが、大臣の御見解、まずはお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 職場における働いておる皆さんのメンタルヘルス不調、そして、その中でもたらす大きな要因としてのセクシュアルハラスメントのことをお取り上げいただきました。

 この問題は、職場における人間関係の問題、それから仕事の量、質、仕事の失敗などがありまして、このメンタルヘルス不調をもたらす要因としてそういうものがあるということを申し上げたわけでありますけれども、仕事や職業生活に関して強い不安、ストレスを抱える労働者が六割を超える状況にあるなど、労働者の心の健康づくりが極めて重要な課題になっておると認識いたしておるところでございます。

 そして、その大きな要因でありますセクハラについて、私も改めて見てみたんですけれども、これは、途中で先生がお述べになりましたように、相談件数の中でセクハラの占める割合というのは、平成十四年度で四二・三%ですし、平成十五年度でも四〇・五%、先生、四割という表現を使われたと思いますけれども、まさにその状態にあるということでございまして、これはこのまま放置できない問題だというふうに認識いたしております。

 厚生労働省といたしましては、平成十二年八月に、事業場における労働者の心の健康づくりのための指針を策定いたしまして、事業場に対し普及啓発に努めてきたところでありますけれども、今回の法改正とあわせまして、現行のメンタルヘルス指針の見直しを行いまして、労働安全衛生法に基づく指針として、事業者または団体に対して必要な指導を行う、それから、衛生委員会の審議事項にメンタルヘルス対策を追加して、労使による取り組みを促進する、さらに、産業医等を対象とするメンタルヘルスに関する研修を実施するなどの施策を進めることといたしておるところでございます。

 これらメンタルヘルス対策の一層の充実強化を図る中で、お話しいただいておりますセクシュアルハラスメントなどによる職場の人間関係の問題への適切な対応を含めた職場の環境改善の促進を図っていきたいと存じております。

藤田(一)委員 一応、大臣は、セクハラの問題、放置できない問題で、適切な対応をしていかなきゃいけないという御認識をお述べいただいたというふうに理解はいたしますけれども、しかし、問題は、具体的にどうしていくかということが今問われているわけでございます。

 大臣の方からお話がありました心の健康づくりに関する指針の見直しということも含めて、残念ながら現行の、例えば快適職場形成に関する指針、事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針であるとか、今お話があった心の健康づくりのための指針であるとか、あるいは第十次の労働災害防止計画であるとか、いろいろなものがたくさんあるわけですけれども、こういう指針であるとか計画の中に、やはり従来は、メンタルヘルスということについては意識はしていたとしても、セクシュアルハラスメントというこの問題についての意識というのはやはりなかったのではないか、認識が欠けていたのではないかというふうに思うんです。

 そこを、今これから、やはりきちっと、快適職場の形成という観点からも、安心して働ける職場づくりという観点からも、このセクシュアルハラスメント問題をそういう中に具体的に位置づけていただきたい、こういうふうに私は思うんですね。

 したがいまして、今お話しがあった心の健康づくりのための指針、見直すというお話でありますし、従来からあるいろいろな指針に関しても、それも含めて、やはり性的な言動というもののない職場づくりということを明確にうたっていく、そのための措置をきちっと位置づけていくということをやっていただかないと、言葉だけではさらっと流れてしまうということだというふうに思います。その点いかがでしょうか。

青木政府参考人 今ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、まさに委員が御指摘のとおりだと思います。いろいろなところで、そういった配慮といいますか、念頭に置いて、さまざまな活動をしていくということが必要だと思います。

 メンタルヘルス対策としても、とりあえず私どもとしても新たな指針を策定しようということで考えておりますので、そういった中でも、既に、おっしゃいましたように、一応セクシュアルハラスメントというような文言は入れてあるわけです。いわばそういうことで配慮をするということになっているわけでありますけれども、そういったことについても、いろいろな面で、例えば手法を考えながら、御指摘のような趣旨が実現するように考えていきたいというふうに思っております。

藤田(一)委員 ぜひ、どうしてもこれは具体的にきちっと押さえていかないとなかなか浸透していかない問題だというふうに思うんです。

 既に均等法二十一条に基づく大臣指針の中では、事業主がセクシュアルハラスメントは許さない、そういうきちっとした意思というものを、目標というものを掲げていくというようなことも指針の中で一つ入っているわけですね。ですから、具体的にそれをやはり実効性のあるものにしていくために、心の健康づくりの指針であるとかあるいは快適職場形成のための指針の中にその措置をきちっと入れていくということ、そしてまた、具体的にそういう問題が起きたときにどう対処していくのかということについて、被害者のケアということをそこでどう図っていくのかということについても十分に配慮をして、指針の中で整理をしていただきたいということを強くお願いしたいというふうに思います。

 具体的に、今局長の御答弁で何らかのそういう対応をしたいというお話でありましたけれども、セクシュアルハラスメントの防止とあるいはそれに対する対処への配慮ということを今後の新しい指針あるいは現行のさまざまな指針の中できちっと打ち込んでいただける、こういうふうに理解をしてよろしいでしょうか。もう一度御答弁をお願いいたします。

青木政府参考人 今おっしゃいましたような心の健康づくりの指針などでも、とりあえず私どもはその改定を考えておりますので、そういったことも十分配慮したいと思いますし、また、そのほかのものについても、関係の方にもよく話を伝えて検討してもらうようにしたいというふうに思っております。

藤田(一)委員 ぜひ具体的に実現できるようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次に、少し具体的な問題でお尋ねをしたいと思いますけれども、セクシュアルハラスメントを受けたことによる精神障害の労災認定についてお尋ねをしたいと思っています。

 これは、事業主がセクハラ防止配慮義務違反を認めて改善策を講じたりあるいは解雇を撤回したとしても、先ほど申しましたように、被害者の精神的苦痛というのは非常に大きなものとして残ってしまいます。ましてや、問題が解決されなければ、心的ショックが大きくて、精神障害を来して長期間にわたって苦しんでしまう、こういう状況になるわけであります。現行の均等法二十一条では、どうしても職場環境の改善、啓発ということに力点が置かれる、置かざるを得ない状況でありまして、被害者の経済的なあるいは精神的救済という意味では十分にその保障がされないという問題があって、最近労災認定を求める動きというものがふえてきております。

 現在までの労災の申請件数等についていろいろと事前にお尋ねをしてまいりましたけれども、セクシュアルハラスメントということでその原因を特定しての集計はしていないというお話でございましたので、これは、これからこういう原因を特定してのケースの集積ということをぜひきちっとやっていただきたいということをお願いしておきたいと思いますし、私が聞いている限りでは、昨年一年間でも東京都だけでも四件の申請が上がっている、その前の年には北海道でも一件上がっている、そういう形でケースが出てきているということを聞いております。

 そして、業務上認定ということでは、過去三年間の中で一件認定がされているということであります。まだまだケースとしては、数としては少ないんだと思いますけれども、これから当然ふえていく可能性もありますし、問題をきちっと把握し、そしてその原因に対して対処していくためにも、このケースについてきちっと集約を精査していただきたい、お願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 今お話しになりましたように、平成十四年度から十六年度までで業務上と認定しました精神障害事案の中で、セクシュアルハラスメントを受けたことによる精神障害を発症したものということで認定したのは一件でございます。おっしゃいましたように、そのほかにも途中経過の労災の手続のものもございます。数としては非常にまだ少ないわけでありますので、そういった状況なども見ながら検討していきたいというふうに思います。

藤田(一)委員 これから質問をさせていただくいわゆる認定基準とのかかわりで、セクシュアルハラスメントという原因を特定してケースを集積して分析していくということは非常に大事になってまいりますので、ぜひその点はきちっとお願いをしたいというふうに思っています。

 一つ具体的な事例を紹介させていただきながらお尋ねをしたいというふうに思うんですけれども、二年半にわたって上司から執拗なセクハラを受け続けて退職に追い込まれた女性のケースであります。詳細省きますけれども、会社は配慮義務違反を認めて、退職については地労委で和解が成立をしている。しかし、被害者は心理的後遺症に苦しんで、主治医からPTSD、心的外傷後ストレス障害と診断をされて、労災申請をいたしました。監督署で業務外の判断、そして審査請求を行って棄却をされているというケースについてであります。

 監督署の判断理由は、これは担当者が本人に説明をしたということでありますけれども、セクハラの被害事実はあり、本人の障害はそのために起きたと思われる。しかし、セクハラ行為は業務上の行為とは認められない。あくまでも加害者個人の問題で、労災認定に必要な業務上の行為に当たらないと説明をしたというふうに言われている。

 そして、今度は審査請求段階での棄却理由であります。精神障害専門部会の意見書では、本人の精神障害は診断ガイドに照らして適応障害とみなすのが妥当であるが、セクハラ行為が繰り返し行われたこと、その行為は犯罪行為と見られることなどを考慮すると、出来事の心理的負荷は強と認められる。一方、業務内容、労働時間、労働条件、作業環境等について特に困難な状況は認められないことから、特に過重な状態ではない。よって、本人の業務における心理的負荷の総合評価は中と判断され、精神障害を発症させるおそれがあるほどの心理的負荷とは認められないので、発症した精神障害と業務との因果関係を認めることは困難。これが棄却理由であります。

 これは、精神障害等の労災認定に関する心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針に基づいて、判断指針では、対人関係のトラブルとしてセクハラは心理的負荷強度2とされているんですけれども、これに基づいて判断をしたのであろうというふうに読み取れるんですね。読み取れるんですけれども、私が申し上げたいのは、この二つの判断は、職場におけるセクシュアルハラスメントを正しく理解していると大臣は思われるでしょうか。私は、セクハラによる心理的負荷というのは、行為そのものであって、仕事の量や質や労働時間などとは関係ないと思いますけれども、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今私も初めてお聞きをする内容でございますので、そしてその具体的なことについて承知をいたしておりませんので、なかなか今直ちにお答えするということはできませんから、改めて事実をよく調べてお答え申し上げたいと存じます。

藤田(一)委員 業務上外の判断というのは、どうしても業務との因果関係という話になっていくわけです。これが通常の労災の認定、業務上外の判断であれば、業務との因果関係、仮に精神障害であったとしても、どれだけの長時間労働をしていたのかとか、あるいは配転によって新しい環境の中でなじまなかったのかとか、いろいろとこの基準の中にも明示をされているわけであります。ですから、業務との因果関係として、仕事の量であるとか質であるとかということを総合的に判断することはあるだろうと思います。

 でも、私は、セクシュアルハラスメントが原因で精神障害になったということを考えたときに、仮にもし、ほかに同じような、別の場面で何かストーカー行為に遭っていたとか家庭内暴力があったとかというような因子があるんだとか、あるいはほかに心理的負荷の要因があるということであれば、消去法でもって、職場でセクハラがあったことの心理的負荷というものがほかとの関係の中で低くなるということはもしかしたらあるかもしれません。しかし、そんなケースはほとんどないと思いますけれども、もしかしたら判断としてあるかもしれません。

 でも、業務との関係で、仕事の量であるとか長時間労働をしていないからとかということが、そのことによってセクハラの被害が軽減されるわけでは全然ないわけであります。したがって、セクシュアルハラスメントの場合、業務との因果関係というのは、まさにその職場そのものだというふうに私は思います。

 この点、現在のこの業務上外の判断指針というのは対人関係の中でセクシュアルハラスメントの項目を入れていますけれども、総合的判断をこういう形でやってしまうのでは、正しく問題を理解したというふうにはならないということだと思うんです。その点、ぜひ御見解をお聞かせいただきたいと思います。

青木政府参考人 セクシュアルハラスメントにつきましては、今るるお述べになりましたが、非常によく理解できるところでありますけれども、確かに、業務との関連性が認められるか否かの判断は非常に難しいというふうに思います。また、受けとめ方が被害者ごとに大きく異なるというような特質もあります。そういうことで、業務上外の認定というのは難しい場合があるのも事実でございます。

 したがって、判断指針をつくっておりますが、これに基づいて業務上外の認定をするに当たりましては、やはり個々の事案ごとに、どのような経過でそういったセクシュアルハラスメントが生じたかとか、あるいはそれらの出来事が一般にどの程度の心理的負荷と評価されるのか等について、詳細に、個々に調査検討の上、一つ一つ判断をしてきているわけであります。

 そういう意味では、大変難しい問題があるということも御指摘のとおりだと思いますので、私ども、それを踏まえて研究もしたいと思いますし、あるいはそういったものを踏まえて第一線職員への研修などをいたしまして、認定がきちんとできるという形をとっていきたいというふうに思っております。

藤田(一)委員 もうちょっと明確に、しっかりとらえていただきたいというふうに思うんです。

 実際に、均等法二十一条では事業主の配慮義務というのが課せられているわけです。そして、きょう伍藤局長はもう退席をされていますけれども、雇用均等・児童家庭局ですかね、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止ということで、セクシュアルハラスメントとはどういうものなのかというセクハラの定義もちゃんと書いています。

 これは言わなくても十分御存じの話だと思いますけれども、残念ながら、現実にはまだそのことがきちっと正しく理解をされていないから、セクシュアルハラスメントとしての心理的負荷は、先ほどの棄却理由でも心理的負荷は強なんですよ、心理的負荷は強でも、確実にセクハラによってPTSDが引き起こされたということを認めていながら業務外だというふうに棄却をしてしまうという、この矛盾なんですよ。

 これはやはりセクシュアルハラスメントというものを正しく認識していないからこうなってしまう、従来の判断基準をそのまま機械的に当てはめてやろうとするからこうなってしまうということなんです。せっかくちゃんと精神障害における基準というものもつくって、そして今メンタルヘルスケアということをちゃんとやろうというふうにしているわけですから、ぜひここをしっかり認識して、本当に古くて新しい問題なんですけれども、こうして労働災害という形で、労災認定として出てくるのはまだまだ数が少ない、新しいケースだと思います。

 まだ今のうちにきちっとした対応をしていただくということが、労災、職業病の問題では一番大事なんです。たくさん被害者の人が、本人が何度も何度も申請する、その歴史的過程の中でやっと動くということでは間に合わないということでありますから、これをできるだけ短くする、問題が起きたときに直ちに適切な対処をするということをぜひやっていただきたい。ですから、この認定基準のとらえ方、従来のとらえ方では不十分だということをぜひ受けとめていただきたい。

 もう一回、大臣、御理解いただけたんじゃないかと思いますから、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

尾辻国務大臣 まず、きょうお話しいただきましたことは私もしっかりと認識をいたしました。その上で、判断基準、指針が適切であるのかどうかというのをまず調べてみる必要があろうと思いますので、これを見てみます。

 そしてまた、その上で、それをどう運用するかといいますか、個別のケースでどういうふうにするかというのがもう一つの問題だろうと思いますので、ここのところも、今お述べいただきましたようなことを認識しましたと申し上げたところでありますから、その認識の上で、判断基準をどう判断するというんでしょうか、そこのところも個別の例でもしっかり行えるようにしてまいりたいと存じます。

藤田(一)委員 時間になりました。

 個々のケースはいろいろあると思います。しかし、基本のところを、ぜひ正しくセクシュアルハラスメントを理解して対処をしていただきたいということを強くお願い申し上げたいと思いますし、同時に、先ほど局長が、それぞれの第一線のところできちっと正しく対応できるように研修もというお話もございました。最初に本人が労災申請をして対応するのは、調査官、担当官、監督署の監督官の方であります。そこでのいろいろな事情聴取というのは、まさに二次被害を、あるいはセクハラをさらに引き起こすような、そんな事情聴取のやり方もいろいろとあるということも漏れ伝わっています。そういったことも含めて、徹底した研修、正しい認識をよろしくお願いしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 私、前回の質疑で労働安全衛生法の改正とアスベスト問題を取り上げたんですけれども、そのときも、このアスベスト問題というのは被害の救済とともに被害予防という点で政府を挙げての緊急の対応が必要だという指摘を申し上げました。

 きょう、ちょうど関係省庁の閣僚の会議が発足したということですので、まず初めに大臣に、きょうの閣僚会議で一体何が決まったのか、それから、この会合に厚生労働省としてどういう問題を提議し、しかも今後検討課題としてまだ残っているものがあるのか、そのあたりをまず報告していただきたいと思います。

尾辻国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、本日のアスベスト対策に関する関係閣僚会合におきましては、とにかく大変深刻な問題だ、したがって、政府全体としてしっかりと対応していこうということをまず基本的に決めたところであります。特に、省庁間のすき間をつくってはいけないということで、関係閣僚会議でしっかりとそういうすき間をつくらないように対応しようということをまず決めたところでございます。

 そこで、それぞれいろいろなお話があったわけでございますけれども、私が申し上げたことを申し上げるとちょっと長くなるかもしれませんが……(山口(富)委員「構いません」と呼ぶ)構いませんか、よろしゅうございましょうか。

 それでは、けさの関係閣僚会議で私が発言したことについて申し上げます。

 まず、七月二十二日に省内の関係部局が一体となって施策を策定、推進するために西副大臣をキャップとするアスベスト対策推進チームを立ち上げたところである、その成果がきょう政府全体で取りまとめられた当面の対応にも反映されておりますということを申し上げました。そして、私どもの主な対応につきましては、国民の重大な不安を取り除いていくためには、従来のやり方にこだわることなく、果断かつ迅速に事に当たるべきだと考えておりますということを申し上げました。

 そして、今私どもがやっていることを幾つか申し上げました。

 それを申し上げますと、建築物の解体現場における重点的な監督指導の実施等石綿暴露防止措置、飛散防止措置を徹底させる。

 それから、例外的に用いられている石綿含有製品の早期の代替化については、遅くとも平成二十年までとしておる全面禁止の前倒しを含めた検討が必要であると考える。それから、禁止が除外されていた一部在庫品については、その販売を直ちに禁止するように命じまして、これは二十六日に既に要請をさせたところであります。

 それから、労災補償の問題につきましては、労働者が事業場を転々とする等により石綿暴露の事実確認が困難な場合もあることから、確認方法の思い切った簡素化により、迅速、的確な労災補償を進めるための通達を、これは二十七日に発出いたしました。うんと簡素化したいというふうに考えておるところでございます。

 それから、診断、治療法が必ずしも確立していない中皮腫について、国立がんセンターの垣添総長とすぐ私もお話をしまして、同センターにおいて中皮腫の早期診断や治療方法に関する研究に早速取り組んでいただくことにいたしました。

 それから、石綿暴露作業による肺がんまたは中皮腫の労災認定を行った労働者が所属していた事業場の名称等に関する情報を私どもは持っております。これは本来公表を前提とした情報ではないわけでありまして、つい先日、私が文句が出るからという表現をして、その意味を改めて申し上げたりもいたしましたけれども、確かにそれをやるというとあちこちからクレームがつくことは予想されるわけでありますが、そんなことを言っておられる状況じゃありませんから、これもきょう公表したいというふうに考えておりまして、先ほどの関係閣僚会議でも私どもとしては公表しますということを申し上げたところであります。

 それから、もう一つありますのは、平成四年以降は石綿特殊健康診断結果というのがありまして、特殊の健康診断をやっていたんですが、これは三千を超す数がありまして、また、その情報を労災認定事業場名に加えて公開することについては、対象事業場数が多いことでありますとか、労災認定の事例のない事業場も多く含み、そこで健康に及ぼす石綿量の程度も低いと考えられることから、いたずらに周辺住民の無用の混乱とか風評被害をもたらしてもいけませんし、しかしまた公表すべきだという御意見も当然ありまして、私どももこのことについてはもう少し検討させていただきたいと思いますし、きょう関係大臣にも、ぜひ大臣の御意見もお聞きをしたい、それを踏まえて我々も態度を決めたいということを言ったところであります。

 それから、先日来御議論いただいております、時効によって労災補償を受けずに亡くなった労働者の方々の問題については、石綿による疾病についてのみ法律によって定められている時効制度の例外を設けることは難しいと考えておりますけれども、この問題について、お気の毒であることは間違いのないところでありまして、何とかしたいと私も思っていますし、これも御答弁を申し上げたところでありますので、解決策を見出すことができないか、これは政府全体の立場でぜひ検討していただきたいということを、きょうは問題提起を関係閣僚会議の場でさせていただいたところでございます。

 幾つか申し上げましたが、けさ、そういう議論をいたしたところでございます。

山口(富)委員 労災認定の迅速化の問題ですとか事業所名の公表などは、これはきちんと私もやるべきだというふうに考えております。

 それで、前回の質疑で私が特に重視いたしましたのは、石綿の場合、潜伏期間が長いですから、当然、健康管理、健康診断が非常に大事になるわけですね。ところが、今の尾辻大臣の説明では、きょうの閣僚会合には、この石綿にかかわる事業所、その事業所をどこまで見るかという問題は議論しなきゃいけない点ですが、健康診断の問題、そういう問題については提議されていないんですか。

尾辻国務大臣 働いておられた方だけじゃなくて、今度はその家族の皆さん、それから周辺の皆さんの問題等がございます。今度はまたその皆さんの健康診断だとか、今後、また御心配をなさるでしょうから、そうした心配を取り除いてさしあげなきゃいかぬといったようなことが今申し上げたほかにもございます。このことも今私どもも検討いたしておりますし、これまた、きょう環境大臣もいろいろ発言をしておられましたけれども、この問題は、御一緒になって課題として取り組んでいくということはきょう決めたところでございます。

山口(富)委員 そうしますと、石綿事業場の労働者、退職者、近隣住民、また家族も当然関係してくるわけですが、この皆さんへの健康診断についてはこの会合でも検討するというところまではいったわけですね。

 では、続けてお尋ねしたいんですが、大臣の報告の中で七月二十七日の通達が紹介されました。その通達の具体的中身の問題をまず尋ねておきたいので、青木局長に答弁願いたいんです。

 この七月二十七日の通達は、七月十五日付の「石綿による健康障害防止対策の緊急的な対応について」という通達の労災補償の迅速、適正な実施にかかわる問題をいわば具体化したものだ、そういう関係だと思います。

 私は特にこの中では、職場等を移動していく転々労働者についての労災認定のあり方を示したという点では重要なものだと思うんですけれども、確認しておきたいのは、「転々労働者等の事実認定の具体的方法」の中に七つの作業が上げられているわけですね。具体的に申し上げますと、耐火建築物に係る鉄骨への吹きつけ作業、断熱もしくは保温のための被覆またはその補修作業、スレート板等難燃性の建築材料の加工作業、建築物の解体作業、鉄骨製の船舶または車両の補修または解体作業、それからタルク等を含む取り扱いの作業、こういうものが上がっております。

 確認しておきたいんですが、こういう仕事にかかわる事業場は石綿則の対象事業場になっているのかということをまず確認しておきたいと思います。

青木政府参考人 ちょっと済みません。急なあれだったので、もう一度、どういう事業場ということを、恐縮ですがお願いいたします。

山口(富)委員 だって、これはあなた方の通達なんですよ。しかも、大臣がきょう閣僚会合に報告したという通達の中身ですよ。そこで具体的に七つの作業内容が書かれていて、こうした作業をやっている事業場については石綿則の対象の事業場になるのかと。つまり、健康診断が義務づけられているわけですから、そういう事業場なのかと確認しているんです。それさえわからないんですか。

青木政府参考人 済みません、やっと今手元に……。

 この七つの事業場のお話でありますが、例えば耐火建築物に係る鉄骨への吹きつけ作業等というこの作業ですね、これはなるということであります。

山口(富)委員 大臣、私が感じておりますのは、たしか二十二日に西副大臣を責任者にするチームが立ち上がったということなんですけれども、省庁内の横断的な仕事をするというわけですが、それが本当にできているのかという危惧を持っているわけですね。

 今例を挙げたんですけれども、例えばこの二十七日の通達のもとになりました七月の十五日の通達を見ますと、事業場については三つの区分があるんですね。一つの区分は現に石綿含有製品を製造しまたは取り扱っているところ、それから、取り扱ってはいないんだけれども石綿に係る労災が出てしまった事業場ということ、それからもう一つは過去に扱っていた事業場という、三つの分類をやって、それぞれの健康診断や健康管理という問題を提議しているわけです。

 ちょっと私も説明だけでよくわからない点があったんですが、私はこの二十七日の通達に入っている七つの作業を行うような事業場は全部含まれるのかと聞きましたら、青木さんは一カ所だけ上げてこれは含まれますというふうに言ったので、ここをもう一回確認しておきたい。七つ全部含まれるのか。

 それから、十五日の分類で事業場というのが三つに分けられているんですが、この事業場数はそれぞれどれだけあるのか、報告願いたい。

青木政府参考人 突然お示しになった通達は、これは課長通達で、私も今見たところでありますが……(山口(富)委員「大臣に失礼だよ。大臣だ、最初に言ったのは」と呼ぶ)いや、この二十七日の通達でありますが、これを今見ますと、解体作業、補修作業でありますので、解体作業ということでありますので、なると思います。

山口(富)委員 では、七つがなるという確認答弁だと思います。

 それは私は大事な確認だと思うんですが、しかし、今の答弁の中で私は改めて驚いたんですけれども、この通達はどう見たって、「厚生労働省労働基準局」と書いた上で「労災補償部補償課長」というふうになっているわけで、局長さえ見たことのないような通達が出ているのか。これだけアスベスト問題で省庁横断的、統一的、間違いのないようにやろうと言っているときに、どうなっているんですか、大臣。御説明願いたい。大臣に説明願いたい。

青木政府参考人 これは労災の事務を迅速化するために事務処理の明確化を図るということで出されているわけでありますので、こういったさまざまな取り扱いについての指示とかそういったものは通常なされるものでございますので、御理解いただきたいと思います。

山口(富)委員 何だよ、それは。我々は命にかかわる問題を審議しているんですよ。もちろん、その命にかかわる問題は実務的な作業で支えられる、それは当たり前のこと。何ですか、その答弁は。では、あなたは、はっきり言いますよ、見ていないんですね、この通達を。

青木政府参考人 見ておりません。

山口(富)委員 大臣、これは大問題ですよ。二十二日に西副大臣をトップにしたチームをつくり、しかもきょうの閣僚会合にまで報告している大事な通達を労働基準局長が見ていない。どうなっているんですか。

尾辻国務大臣 二十二日にこのチームをつくりましてから、毎日このチームは会合を開いておりまして、しかも、次の日聞きますと、きのうも一時間半も二時間もずっと議論していろいろなことを決めましたという報告を私は聞いておりますので、西副大臣以下、必死でやってくれているというふうに理解をいたしておりました。

 ただ、今の部分について、局長は見ていないと言っておりますから、これが何でこんなことになったのかといいますか、なぜ見ていなかったのかというのは私もこの後また聞いてみたいと思いますが、ただ、全体は非常に頑張って仕事をしてくれているというふうに私は理解をいたしているところであります。

山口(富)委員 事実ははっきりしているんですね。大事な通達を労働基準局長が見ていなかった。これについて所管の大臣が、聞いてみましょうということでは、これは大臣の姿勢が問われますよ。これはけしからぬ、こういうことは直ちに改めるということをまず言わなければ、きょうの一回目の閣僚会合の意味がないじゃないですか。少なくともそこをまず確認していただきたい。

尾辻国務大臣 ですから、事実をよく確認して、叱責すべきと判断すれば、たちどころに私も叱責をいたします。

山口(富)委員 いや、私はそういうことを言っているんじゃないんですよ。事実として、労働基準局長がこの通達を見ていなかったとはっきりこの場で述べているんだから。なぜそういうことが起こるのか、これは間違っているじゃないかと。命にかかわる、しかもチームまで立ち上げて一緒に取り組もうとしているときに、労働基準局といったらこのアスベスト問題の本当にかなめですよ、その局長が見ていないなんという、そういう行政の責任は驚くべきことだよ。私はまず謝罪していただきたい。

青木政府参考人 地方第一線でいろいろな事務処理を行っておりますので、そういったことについて、迅速に処理をするということでさまざまな具体化、明確化を図りながら事務を斉一的にやっているわけでありますので、基本的方針に基づきそれぞれの任されたところで指示をしていくということだろうと思っております。

 そういう意味で、すべての指示について必ずしも逐一あるということでありませんで、基本的方針に基づいてそれぞれの所掌に応じて事務を処理するという体制でやっているところでございますので、御理解をいただきたいと思います。

山口(富)委員 この通達の中身というのは、大変大きく扱われ、歓迎されたんですね、ある点で。それは、労災認定のおくれや対象者のことをどうするのかと大問題になっているわけだから。その当事者が知らないということを謝りもしない、責任も認めない。私はこういう行政にアスベスト対策を託すわけにいかないと思うんですよ。大臣、改めようじゃありませんか、こういう現状を。

西副大臣 お答え申し上げます。

 先ほどから御紹介いただきましたように、対策本部長を大臣から命ぜられて、全省庁、全局長、もちろん部長も局長も集まって毎日熱心な議論が重ねられております。この件につきましても、全局長の議論のもとにこういう方針が打ち立てられました。

 ただ、その個々の業種についての詳細につきましては、その場ではどうするという細かな議論はございませんでしたけれども、全員が承知の上で決断をしたことでございます。

山口(富)委員 これは、この通達をもう一回読んでください。どこが細かいんですか。どこが実務なんですか。これは非常に大事な中身を書いてありますよ。

 アスベストというのは、当初危険性が世界的には早く認識されていたのに日本の場合はおくれた、もうこれは厳しく指摘されています。そして、現状でも一体どこにどれだけ残っているかもよくわからない。それから、職場をかわって転々とした方、既に事業場そのものがなくなっていることがある、そういうことについて急いで対応しなきゃいけないということでつくった大事な通達でしょう。そうじゃないんですか。だから、その大事な通達さえ基準局長が中身を知らないというんだから、これで国民の皆さんに顔向けできますか。

 大臣、これは改めるというところは、私、きょうは労安法の問題で時短の問題も含めてやる予定で質問通告、大分やっておりますが、そこに行く前のところで終わっちゃいそうですから、少なくともこういうやり方は改めるということは答弁してください。

尾辻国務大臣 見ていなかったということについては、私からもおわびを申し上げたいと思います。しっかりと仕事を、少なくとも自分の名前で出ている通達でありますから、そのぐらいは見ておくべきだというふうに思いますので、そのことについては私からもおわびを申し上げたいと思います。

 ただ、決して言いわけさせていただこうとは思いませんが、先ほども申し上げまして、また西副大臣からもお答え申し上げましたように、このチームは毎日本当に必死になって作業しておりますし、この通達も、とにかく皆さんのためによかれと思って、何かしなきゃいかぬと思って出した通達でありますので、その精神のところは局長もきっちり理解して出したものだということだけはぜひ御理解いただきたいと存じます。

山口(富)委員 これは精神論ではありません、行政責任が問われているわけですから。

 それから、少なくとも七つについては石綿則の対象の事業場だと認められたので、これは私、引き続きより細部については聞いてまいりたいと思います。

 きょうは時間が参りましたから、これで終了いたします。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 冒頭、本日の議題以外のことで恐縮ですが、尾辻大臣に一問お願い申し上げます。

 実は、昨夕の読売新聞にも出ておりましたが、この間、尾辻大臣もおっしゃってくださっているように、特定機能病院という、大規模で、そして国がある程度いろいろな診療報酬上の優遇措置もしておる八十一病院で、あちらこちらで医療事故が起きておる。慈恵医大の青戸病院、埼玉大学の附属病院、東京女子医大病院と。こういう相次ぐ医療事故に対して、特に東京女子医大におきまして、二〇〇一年に中学生の女の子が心臓手術でお亡くなりになって、これが医療事故であるということの事実はもう既に認定されております。

 それに伴って、二名の医師がカルテを改ざんいたしました。おのおののその医師の改ざんの問題以上に、実は、東京女子医大は研修教育病院でもありますし、特定機能病院という厚生労働省の御印籠、お墨つきの病院でもありますから、先週の金曜日と今週の月曜日、さらにはことしの四月にここに医療監視が入りまして、カルテ改ざんに伴って保険請求もうそがあったのではないか等々の監査をしております。

 私は、このたび罪に問われた二人の医師、カルテ改ざんも含めて問題だということが問われておりますが、それのみならず、やはりそれらの医師を管理監督し、病院としての信頼を、国民に対してあるいは患者さんに対してきっちりと責任を負うべき本体の病院、すなわち東京女子医大のあり方においても、やはりきちんとした厚生労働省側としての検討、検証がなされるべきであると思っております。

 予告してございませんので恐縮ですが、冒頭、大臣はこのことについて、ちょっとお触れいただけましたらと思います。

尾辻国務大臣 御指摘いただきました件でございますけれども、現在事実関係を調査中でございますので、具体的な対応について現時点で確定的なことは申し上げられないところでございます。

 一般論として申し上げますと、カルテの改ざんなどというのはあってはならないことでございますし、改ざんされたカルテなどに基づいて診療報酬の請求が不正に行われた場合には、しっかりその対応に応じた処分や措置が行われるものでありまして、今回の事案につきましても、今調査中と申し上げましたけれども、仮にそのような事実が確認されれば、当然のこととして厳正に対処してまいります。

阿部委員 大臣の御認識がちょっとずれておられるかもしれません。実はもうカルテ改ざんの事実は認定されておりますし、裁判においても、あるいは平成十四年八月の東京女子医大の医療安全管理外部評価委員会の中にも指摘がございます。そして、個々の医師が改ざんをしたというだけではなくて、この外部評価委員会では、そのようなことが例えば主任教授の指導方針等々に基づいて起こったということもあるという指摘もございます。

 恐縮ですが、事態を後退させては患者さんたちにも申しわけありませんので、これは特定機能病院というのは、何度も申し上げますが、研修も教育も、患者の評価も厚生労働省の評価も高い病院である。そういうところで改ざんが行われた事実ということを、個別の医師だけの問題にしていただきたくない。そのような姿勢を厚生労働省がきっちりと持っていただいて、やはり病院のあり方、全体の病院の体制のあり方という認識で臨んでいただきたい。それが、大臣がおっしゃる特定機能病院の見直しということだと思います。

 このたび新たに見直して、その認可をどうするか。今、この件で女子医大は特定機能病院を外されております。そこもございますので、恐縮ですが、ちょっと今の御答弁は、私も突然で申しわけなかったですけれども、やはり特定機能病院のあり方として、カルテ改ざん問題も含めて、管理体制として見直していくというふうな方向への御答弁をお願いしたいと思います。

尾辻国務大臣 お尋ねの一点は特定機能病院そのものについてのお話だと思いますが、特定機能病院をどうするかということについては私どもも今後の検討にいたしておりますので、きっちりまた、大きくは来年の通常国会でと申し上げております医療提供体制あるいは医療保険をどうするかという見直しの中で答えを出していきたいというふうに思っております。

 それから、東京女子医大の件でありますけれども、これはことしの一月だったと思うんですが、患者の皆さん方が私のところにお見えになったこともございます。そんなこともありで、私もずっと実は関心も持ってこの問題を見ておりますから、ある程度事実は把握しておるつもりでありますし、承知もいたしておるつもりでございます。

 そうした中での、まさに今特定機能病院から外れていて、これをどうするかというのも随分、その一月のときも、患者の皆さんが見えたのも、そのことをめぐることもあって来られたりしたのでありますけれども、申し上げておりますことは、私もその間ずっと事実はある程度承知をいたしておりますので、間違いのない対応をしていくつもりでありますということを改めて申し上げたところであります。

阿部委員 ぜひそのようにお取り扱い願います。

 あと、先ほど来山口委員との御質疑を承りながら、やはり私は、厚生労働省の主体的な物事への対処ということを切に求めるという視点から、きょうの質問をさせていただきます。

 実は私は、先回、国立病院等々にも吹きつけアスベストが使用されており、そのことは八七年に調査したが、それは文部科学省における学校建築の調査の例と同じように、当時ではアスベストが含有されながらチェックされなかった品目が多かった、そこで再調査をすべきであるという質疑をせんだっていたしました。岩尾局長の答弁は、失礼ながら木で鼻をくくったというか、必要かどうかを検討してみますということでした。

 私は、きょう、皆さんのお手元に二枚目の資料でお上げいたしましたが、このときに使われた、どんなガイドライン、どんな指針で点検されたかというところで、吹きつけアスベストと、アスベスト含有吹きつけロックウールという二段構えの書いたものがございます。吹きつけアスベストに八品目、そして表の三の三に十五品目ございますが、実はこの八七年段階の調査では、一部、アスベストの三〇%以上を超すものについては検査されておりますが、文部科学省の学校検査でも問題になりましたアスベスト五%以下というところについては、部分的に完全にはチェックされておりません。

 このことを受けて文部科学省では、中山大臣がこの夏に再調査するとおっしゃいました。私は、当然ながら厚生労働省も、私の指摘を待つまでもなく、こういうことは当時一斉に行われたわけで、せんだっても申しました、病院はやはりお体の弱った方が入院されています。今、新大阪の駅でもそうですが、天井でアスベストがむき出しだったことなどが問題になっておる折からですから、厚生労働省がみずからの過去の行政の、ある程度、これはやれなかったことも含めて見直すという意識がないと、いつもいつも、だれかが指摘して、見ていなかった、知らなかったという形で過ぎたのでは、やはり本来的な信頼をかち得ないと思いますので、きょうは時間の関係で、恐縮ですが大臣にお願いいたします。

 けさの政府内の、内閣内の会議の中でも出た話題かもしれません。病院というのは、これから震災が起きて、被災地、被災の場所にもなる、避難所にもなる。病院と学校は極めて重要でございます。この病院を預かる厚生労働省、安全を預かる厚生労働省が、みずから主体的に見直すという御答弁をきっちりいただかない限り、こういう審議の意味がありません。

 本来はそちらからやられるべきことだと思いますが、大臣、いかがですか。

尾辻国務大臣 まず、病院におけるアスベスト対策についてでございますが、昭和六十三年に、国立病院において使用状況を調査いたしますとともに、そのときに、民間の病院に対しましても、病院関係団体への通知により注意喚起を行ったところでございます。過去、そういうことがありましたということをまず申し上げます。

 そこで、今回でありますけれども、今先生からもお話しいただきましたように、本日の関係閣僚会議におきまして、民間も含めた病院におけるアスベストの使用実態の把握に取り組むことを決めております。それで、来週早速調査を、民間約九千の病院がございますけれども、その病院に対して調査をいたします。

阿部委員 至急なお取り組みをよろしくお願いいたします。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 私はきょう、本年の二月に石綿障害予防規則の施行が決まり、七月一日から現状施行されておりますことに関しての質問をいたしておきたいと思います。

 実はこの石綿障害予防規則は、本日この場で問題になっているようなさまざまな、石綿が現在もそこに使われているという現状にのっとって、このことが今後環境被害を拡大させないということも含めて、例えばビルの解体であるとか等々においてもある程度の注意喚起がなされたものです。申しわけないですが、ある程度と申しましたのは、私は、この予防規則の施行について出された通達、また通達で恐縮です、三月十八日の通達を目にしまして、またこれでは誤りを犯すと思いましたので、きょうはこの予防規則のことに関してお伺いを申し上げます。

 もともと、予防規則の中で、石綿等の使用がされているビル等々を解体いたしますときに、その作業を発注する者は、石綿等の使用状況をその作業を担う方々に「通知するよう努めなければならない。」義務ではなくて「通知するよう努めなければならない。」というのがこの石綿障害予防規則の八条でございます。そのほかのものは、例えば、ねばならないと。努めなければならないというのは努力義務でございまして、必ずしも禁止したりあるいはそれを義務づけたものではないということが一点ございます。

 これからは石綿は環境被害に大きく転化してまいります。今までの労働現場での災害、労災問題から、あるいは周辺住民の問題からさらに拡大して、四十年代、五十年代につくられたものが非常にアスベストを使っておりますので、これの解体、もっと大きな建物は義務づけられておりましたので、この解体ということが今後の最大の予防対策の目玉だと私は思っております。

 しかしながら、この七月一日施行の石綿障害予防規則では、解体について、ビルの解体を発注するもとの発注者は、石綿使用状況について通知するよう努めねばならないということで規定されておるだけであって、きょう皆さんのお手元にもう一つ、私が通達、三月十八日をお手元に配らせていただきましたが、これも実は、基準局長ですから青木さんになるんでしょうか、御存じないかもしれないといけないので大臣にしかと読んでいただきたいのですが、六番に「八条関係」という一項がございます。ここの、「「発注者」とは、」と書いてございまして、イの部分に「本条は、発注者が石綿等の使用の状況等に係る情報を有している場合に通知するよう努めなければならないものであり、情報を有していない場合まで通知を求める趣旨ではない」となっております。となると、石綿は使われている、そして発注者はそのことを知らなかったと言えば、実は、そこで解体作業にかかわる方には何ら健康の保障、労災を受けるかもしれないそういう危険が通知されなくてもよいことになっております。

 わざわざこの通達の中で「情報を有していない場合まで通知を求める趣旨ではないこと。」こういうことを徹底させてしまったら、本来であれば、発注者は自分の管理するビルに石綿が使用されているかどうか、これは知ることに努めなければならないがまず第一で、その知るための情報を、いろいろな業界やあるいは場合によっては消防庁やいろいろなところが今お持ちなわけです。それを情報提示して、最終的には解体に当たる人を守っていかなければ、あるいは解体されて環境中にたくさんのアスベストが飛散していくことから守っていかなければ、実は今のこの行政も誤りを犯します。

 この石綿予防規則ができましたのが、この間の四月以降のアスベストが急速に問題になった以前であるとはいえ、私は、この通知のあり方、この通達のあり方、やはり本末転倒だと思います。発注者がまずその情報を知るように厚生労働省を初めとして各省庁が努める、そして発注者は責任を持ってその情報を解体なさる方に伝える、こうなっていかないと、みんなアスベストの被害の中に投げ込まれてしまいます。

 大臣、私は、本日この場で、これが時間的にさかのぼるものであったから不十分であった、今これから解体が、けさの内閣のお話の中でも環境被害、解体問題をおっしゃいました。であるならば、この部分をきっちりと検討し、見直していただきたい。これが私たちのこれから三十年、五十年を決めます。発注者はその情報を得るように最大限努める、当然ながらそれがあって、そして、もしそれでもなお知らないならば別です、しかし、多くのビル管理責任者にそのことがきちんと情報化されなければ、だれもが危険を避けられない状態になります。いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、八条の関係についてから申し上げたいと存じます。

 確かに、「努めなければならない。」こういうふうになっております。なぜこういうふうになっているかといいますと、解体をしてほしいといって発注するその発注者というのは中古住宅の購入者なども多いわけでありまして、そういう中古住宅を買った人が果たしてそこで、その中古住宅に石綿が使われておるかどうか、何かそういう建材が使われておるかということを知ることは必ずしも確実にできないということがありますので、そういうことを考えた上で八条はこういう規定にしたということでございます。

 ただ、それでは、今先生おっしゃるように、大変危険ではないかということがございますので、これはまた第三条におきましてどういうふうに決めておるかといいますと、解体作業を行う場合には、その建築物等について石綿の使用状況を事前に調査しなければならない、こういうふうに決められておりますので、解体作業をする業者はこれは石綿が使われているかどうかしっかりと事前の調査をしなきゃいけないというふうに決まっておりますので、解体業者がそれを調査する、そこで必要な手を打つということで危険は避けられると考えてこういうふうな決まりにしたところでございます。

 ただ、今改めてこういう大きな問題になっておりますから、この八条の規定につきましても、当然また私どもの中では検討もさせていただきたいというふうには存じております。

阿部委員 特に、ビルなどの大きな建物については飛散するアスベスト量も多うございます。今大臣がおっしゃったように、個人住宅の場合は問題がございましょう。しかし、ビルなどの、やはりある程度以上の平米を決めて、そこに発注者にもきっちりと責任を持ってもらわないと、事は私は予防できないと思います。

 例えば、今回の安全衛生法の中で、他の化学物質については発注者責任を決めたわけです。このいただきました厚い御本の三十一条の二は、「化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う設備で」云々、「注文者は、当該物について、当該仕事に係る請負人の労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」これは、化学薬品については今回の労働安全衛生法が定めた発注者責任であります。

 石綿は発がん物質であり、より大きな被害を及ぼす。ぜひ、今の大臣の御答弁のごとくに、この石綿の予防規則、落ち度があれば、不備があれば、本当の被害を拡大させないために御尽力をいただきたいと思います。

 前向きな御答弁をいただきましたことを感謝いたしまして、本日の質問を終わらせていただきます。

鴨下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十一分散会


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