衆議院

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第2号 平成17年10月12日(水曜日)

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平成十七年十月十二日(水曜日)

    午前九時三十六分開議

 出席委員

   委員長 鴨下 一郎君

   理事 石崎  岳君 理事 大村 秀章君

   理事 北川 知克君 理事 長勢 甚遠君

   理事 宮澤 洋一君 理事 仙谷 由人君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      上野賢一郎君    岡下 信子君

      加藤 勝信君    上川 陽子君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    河野 太郎君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      戸井田 徹君    冨岡  勉君

      中山 泰秀君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    松浪 健太君

      御法川信英君    吉野 正芳君

      内山  晃君    菊田真紀子君

      五島 正規君    郡  和子君

      園田 康博君    田名部匡代君

      松木 謙公君    三井 辨雄君

      村井 宗明君    柚木 道義君

      古屋 範子君    桝屋 敬悟君

      笠井  亮君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   厚生労働副大臣      中野  清君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   厚生労働大臣政務官    藤井 基之君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   国土交通大臣政務官    伊達 忠一君

   環境大臣政務官      竹下  亘君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           泉 紳一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            福井 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小野  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       北井久美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中谷比呂樹君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           川本正一郎君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 寺田 達志君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十二日

 辞任         補欠選任

  三井 辨雄君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  松木 謙公君     三井 辨雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働安全衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

鴨下委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官布村幸彦君、大臣官房審議官泉紳一郎君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、健康局長中島正治君、医薬食品局長福井和夫君、労働基準局長青木豊君、労働基準局安全衛生部長小野晃君、雇用均等・児童家庭局長北井久美子君、社会・援護局長中村秀一君、社会・援護局障害保健福祉部長中谷比呂樹君、保険局長水田邦雄君、社会保険庁運営部長青柳親房君、国土交通省大臣官房審議官川本正一郎君、住宅局長山本繁太郎君、環境省大臣官房審議官寺田達志君、大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鴨下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤勝信君。

加藤(勝)委員 おはようございます。自由民主党の加藤勝信でございます。

 衆議院選挙後、最初の厚生労働委員会での質問という機会をいただきまして、ありがたく感謝を申し上げます。

 まず、医療制度改革について何点か御質問させていただきたいと思います。

 今、医療制度改革、特に医療費の抑制ということを中心にいろいろ議論をされているわけでありまして、医療費の推移という目で見ますと、医療費ベースでいえば、平成十六年度三十二兆円が、平成三十七年度、二十年後、六十九兆円、約倍になる。また、そのうちいわゆる保険料や公費の負担に係る部分、いわゆる社会保障として出される部分については、同じく、二十六兆円が五十九兆円になる、こういう数字が出てきているわけであります。

 二十年後の数字というのはいろいろあるわけでありますけれども、いずれにしても相当な規模に膨れ上がっていく、これを、いかに医療費を適正にしていかなければいけないか、これは大変大きな問題になっているわけでありますし、またこれから、高齢者医療制度を含めて、年末に向けてさらに議論を進めていかなければならない、こういう問題だろうというふうに思うわけであります。

 確かに、医療費の、ある意味では過大な部分、不必要な部分をいかに抑制していくか、そういう中で、議論としては、糖尿病等のいわゆる生活慣習病をいかに予防していくか、そういうことが一つ議論されるわけでありまして、それに伴う脳梗塞とか心筋梗塞、こういったことも発症が増大していくと指摘をされているわけでありますから、そういった面での取り組み、あるいは我が国の場合に非常に平均在院日数が多い、こういうことも言われているわけであります。

 確かに、そういう取り組みを一方でしていかなければいけないわけでありますけれども、しかし、同時に、やはり今の医療に対して国民が満足しているか。必ずしもそういう状況にはない。医療全体に対する、医療ミスがある意味では隠されているのではないかといったことからくる医療不信、あるいは三時間待っても三分しか診療してもらえない等々のいろいろな議論がある。他方、地方に行きますと、小児科や産婦人科の不足、こういう問題も抱えているわけであります。

 確かに、医療費そのものを適正化にしていくということは当然必要なことでありますけれども、まずその前提として、いわゆる公的医療といいますか、公的保険によってカバーされていく医療というものの適正な姿といったものがどういうものなのか、現状と比べて、どういう部分は削っていける、できるだけ節約をしていく、しかしある部分は広げていく、めりと張りということが当然求められていくべきだと思うわけでありますし、まさにそういうところに議論の出発点、医療制度改革の出発点があってしかるべきだというふうに私は思うわけであります。

 そういう意味で、適正化どうあるべきかということになると非常に抽象的になりますので、今申し上げた今の状況から、あるべき姿ということを考えて、どういう点は削るといいますか節約していく、また、どういう点はこれから伸ばしていかなきゃいけないか、その辺、大臣がどのようにお考えになっているか、お教えいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 厚生労働省といたしましては、二十一世紀においても、国民のだれもが安全、安心で質の高い医療をいつでもどこでも受けられる体制を構築していくことが重要であると考えております。

 このためには、急速な少子高齢化の進展等により医療費の増大が見込まれる中で、今お話しのとおりでございます。そして、これまたお話しいただきましたけれども、その要因となる生活習慣病の予防に積極的に取り組みますとともに、他の先進諸国と比べて長くなっております入院期間の短縮を図るなど、医療の効率化を進めることが必要であると考えております。

 このような観点に立ちまして、来年に予定しております医療制度改革におきましては、まず、申し上げました生活習慣病の予防の充実、それから、地域における医療機能の分化、連携を通じて、入院から在宅まで切れ目のない医療提供体制の構築を図ることにより、申し上げておりますところの平均在院日数を含む総治療期間を短縮化する医療計画制度の見直し、こうしたものを行うこととしておるところでございます。

 そしてまた、先ほど三時間待ちの三分間診療、よく言われることでありますけれども、こうした御指摘もいただきまして、このたびの医療制度改革におきましては、患者本位の医療提供体制の実現という観点から、都道府県を通じた医療機関に関する情報提供の制度化など、患者、国民の選択を支援するための医療に関する情報の積極的提供の推進、それから医療計画制度などを通じた地域における小児医療の確保などについても検討事項といたしておるところでございます。

加藤(勝)委員 いずれにいたしましても、医療費の適正化は当然必要でありますけれども、その前提として適正なる医療の実現というものに全力を尽くしていただきたいと思いますし、これからも、まずそこをベースに議論をさせていただければというふうに思っております。

 そうした医療費の適正化を図っていく際に、やはり具体的な手段として、私は、電子カルテあるいは電子レセプト、これは大変有効な手段ではないかというふうに思っております。政府あるいは厚生労働省においてもそれぞれ取り組みをされているわけでありますけれども、ただ、今の現状を見ると、かなり普及がおくれているな、目標と乖離しているな、そんな思いがするわけであります。

 電子カルテについて申し上げれば、目標としては、例えば、平成十八年度に四百床以上の病院の六割以上、こういうような目標が設定されているわけでありますが、いただきました資料では、平成十六年四月現在では一一・七%、一〇%をちょっと超えた水準でしかない。あるいは、電子レセプトについて、いわゆる病院から国保の場合にはそれぞれの各都道府県ごとの国保連合会、それ以外のものについては支払基金、この間のいわゆる電子レセプト、電子請求について申し上げますと、一応、平成十八年度までに病院レベルであれば七割以上そういう形での電子化を図ろうという目標でありますが、平成十七年八月現在でまだ二一・一%にすぎない、こういう状況になっているわけであります。

 しかし一方で、病院等の電算化というのを見ると、九割以上、大病院においてはもうほとんどと言っていいぐらい電算化が行われている。これは、コンピューター、IT関係で共通性がないとかいろいろな問題があるかと思いますけれども、病院の中ではこれだけ電子化が行われているにもかかわらず、それが広く全体のシステムに波及していかない、これは大変大きな問題だというふうに認識をするわけであります。

 さらに、今申し上げましたのは診療機関、病院と支払基金でありますけれども、もう一つ、今度は支払基金から個々の保険者、組合健保等々に対しては、一〇〇%紙による請求になっているわけであります。せっかく支払基金まで、一割、二割であったとしても電子化された情報にもかかわらず、それがまた紙化されてそれぞれに請求されていくという、非常に今の時代にいかがなものなのかなという思いがするわけであります。

 そういう意味で、もっと本腰を入れていただいて、この電子カルテ、電子レセプト普及促進を図っていただかなければならない。また、そういう形で積み上げてきたデータというものがこれからのまさに医療の適正化議論において大変大きな財産につながっていくということになるわけでありますし、また、そういう仕組みが全体としてできれば、まさに効率化された医療システムといったものの構築につながっていくというふうに私は思っておりますけれども、その辺に対する取り組み、意気込み、大臣の思いをぜひお話しいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 医療のIT化ということにつきましては、患者に対する医療情報の提供や医療連携の促進、それから医療保険事務の効率化などの観点から着実に取り組むべき重要な課題だと考えております。

 このために、レセプトの電算処理あるいは電子カルテについては、それぞれ普及目標を設定して取り組みを行ってきたところでございます。この具体的な数字についてはお述べをいただきましたし、それからまた、実績についても先生の方からお話がございまして、なかなか目標に達していないことは事実でございます。

 そこで、まず医療機関におけるレセプト電算化に当たってでございますけれども、導入時の経費負担が課題になっておりますので、今年度中に導入時に必要な変換プログラムを開発予定でございまして、これにより目標達成に向けての取り組みが進むものと考えておりますけれども、さらなる推進方策についても検討してまいります。また、電子カルテにつきましても、さらなる標準化のための基盤づくりと診療情報連携のための認証基盤の整備などの取り組みを進めることといたしておるところでございます。

 それから、御指摘いただきました審査支払い機関から保険者へのレセプトの提出につきましては、これまでは、医療機関から審査支払い機関へのレセプトの電算化という、いわば川上に重点を置いて取り組んできたところでございますが、今後、川上部門の電算化を進めていくこととあわせまして、審査支払い機関から保険者へという川下部分についての電算化の取り組みが重要となるので、これもまた早急に検討を進めたいと考えておるところでございます。

加藤(勝)委員 いずれにしても、医療費適正化に向けて私は大変大きなポイントだと思っておりますので、ぜひ、このカルテ、レセプトの電子化、これを厚生労働省のリーダーシップで積極的に進めていただきたいとお願いしたいと思います。

 それからまた、そうした公的保険給付の見直し議論の中で、患者負担、食費等の負担とあわせて、いわゆる高額医療費制度、高額医療費の自己負担限度額、この議論があるのであります。先日の十月九日の日経新聞に出てきた記事をちょっと読んでおりましたけれども、その中で、この制度というものを知らない方がかなりおられる。私の周辺も、実はいろいろ話をしてみると、所得税に対する医療費控除の制度というのは多くの方が御存じでありますけれども、この保険制度の中における、高額医療費を返してもらう、こういう制度が必ずしもまだ知られていないのではないか。この記事によりますと、対象者の四分の一ぐらいしか利用していないんじゃないか、こんな指摘もなされているわけであります。

 また、今、医療費について一年間どれだけ使われたか通知が来ておりますけれども、こういう仕組みを使えばもう少し、これは一年間で、高額医療費制度の場合は月ごとでありますけれども、もう少し周知を図る、通知を図っていく、こういうこともできるのかなというふうに思います。

 さらに、この記事の中でちょっと気になったのは、政管健保を運営する社会保険庁、社会保険庁はこれからさらに改革を進めていかなければならないわけでありますが、その中で、一部の社会保険事務所は、今申し上げた高額医療、あなたは高額医療の控除制度を使える可能性がありますよということについて通知を行っているようだが、そうでもない事務所もあるという、事務所ごとに対応が違うというのもいかがなものかなというふうに思うわけであります。

 いずれにいたしましても、この高額医療費制度、制度があるわけでありますから、これをしっかり周知を図っていくということが、逆に言えば、国民から見たときの適正な医療費というものを維持していくといいましょうか、進めていく上においても必要だというふうに私は思いますけれども、これについて、今現状知っている人が余りいないのではないか、こういう指摘等を踏まえて、厚生労働省としての対応をお聞かせいただきたいと思います。

青柳政府参考人 政府管掌健康保険におきます高額療養費制度についてのお尋ねをいただきました。

 現在、政府管掌健康保険におきましては、お尋ねの中にもございましたが、一部の社会保険事務所におきまして、単独あるいは複数のレセプトの合計額が、高額療養費、所得によっていろいろな限度額ございますけれども、一般的な高額療養費の自己負担限度額であります七万二千三百円を超えるもの、これを中心にいたしまして、本来、御本人の請求を待ってお支払いをする仕組みでございますけれども、この請求の勧奨という形でお知らせを送らせていただいているということでございます。

 このような取り組みにつきましては、ただいま委員からも御指摘がございましたけれども、私どもも、サービス向上の観点から、全国的に実施できるようにということで今後取り組んでまいりたいと考えております。

加藤(勝)委員 ぜひ一部でということがないように、しかも、全体を低くじゃなくて高い水準にぜひ合わせていただきたいと思いますし、これは単に政管だけじゃなくて国保等々もあるわけでありますから、これはそれぞれの市町村がやっておられるということではありますけれども、多くの方にこういう制度があるということをやはりしっかり周知を図っていただきたいというふうに思います。

 続いて、少子化対策について一、二お聞かせいただきたいと思います。

 先日、子育て真っ最中の女性の方々を中心とした、内閣府による少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査というものの概要が公表されておりました。

 その中で、いろいろありますけれども、これからの重要な少子化対策として何を期待するかという項目でありますと、経済的な支援、経済的な支援の中には、児童手当あるいは税制上の控除、多分育児休業、あるいは幼稚園、保育園のそうした教育費、あるいは出産一時金など出産にかかわる費用、乳幼児医療の無料化、広範なものがそこには含まれると思いますけれども、経済的な支援を求める声が七割あるわけですね。それ以外の、保育所の充実あるいは出産、育児のための休業、短時間勤務というのは四割というわけでありますから、圧倒的に経済的支援を求める声が、まさに子育てをされている女性の中からは大変強いものがあるということがここから見てとれると思うわけであります。

 これまでも、厚労省を中心に政府においてさまざまな対策も立てられてきているわけであります。そして、次年度予算においても、今予算要求が行われて、それぞれ議論がされているわけでありますけれども、その中身を見ますと、もちろん財源というものがかなり必要であるということはあるわけでありますけれども、この経済的な支援措置について、なかなか具体的な姿が正直言って見えていないというのが私は今の現状だというふうに思っております。

 なかなか、この経済的支援措置も世代によっても効果があるとかないとかいろいろな議論がありますけれども、私は、この経済的支援措置というのは、少子化対策において大変重要な施策のイの一番ではないかと思っているわけでありまして、大臣において、この経済的支援措置の有効性についてどう考えておられるのか、また、これからどういう形でこの支援措置というものをとっていかれようと考えているのか、御所見を伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 少子化につきましては、先生にはかねて高い関心を寄せていただきまして、先日も具体的な御提案もいただいたところでございます。御指導に御礼申し上げたいと存じます。

 御指摘のように、意識調査を初め各種の調査結果等によりまして、子育て家庭において経済的支援に対するニーズが高いということは私どもも認識をいたしておるところでございます。その経済的支援につきましては、昨年末策定いたしました子ども・子育て応援プランにおきまして、地域や家庭の多様な子育て支援、働き方に関する施策、児童手当等の経済的支援など多岐にわたる次世代育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立って、そのあり方等を幅広く検討することといたしております。

 申し上げるまでもなく、少子化については、今政府全体で積極的に取り組まなきゃならないということで、私どももその施策の展開について検討いたしておるところでございますので、今後とも、この極めて重要な課題についてしっかりと検討したいと思っておりますし、また御議論もいただきたいと思います。

加藤(勝)委員 先ほど申し上げました、財源をいかに確保していくか、これとの絡みがあると思いますけれども、ひとつ積極的に議論を、私どももしていきたいと思いますし、政府においても議論をお願いしたいと思います。

 そういう中で、もう一点、少子化を進めていく中で、厚労省さんを中心にさまざまな省庁がそれぞれの少子化対策を進めているのであります。

 特に、児童の放課後の対応、いわゆる学童クラブ等々、こういった面について、厚生労働省さんと文部科学省さんが割と似たような仕組みがあります。厚生労働省においては放課後児童クラブ、文部科学省においては地域子ども教室推進事業、それぞれ国費ベースでは百億円近い規模の予算になっているわけであります。もちろんそれぞれ趣旨が違う、よくわかりますけれども、しかし、地域の子供さんやそうした子供さんを抱える親御さんから見るとかなり似ているものではないかと思いますし、実際にそれぞれの学童クラブの現状を見ても、全国に普及しているわけでもない。また、地域においての状況も、例えば平成十八年度からは障害者の受け入れとか、着実に質の向上を図っておられますけれども、まだまだ不十分な状況になっているわけでありますから、そういうことも考えると、もっと両省連携してこうした施策を推進していただきたい。

 先ほど、あるところで御説明を聞いたら、児童ふれあい交流促進事業、これは厚生労働省さんの件。これもやはり似たようなものが文部科学省さんにありますけれども、これについては平成十七年度、今年度に文部科学省と連携をして、全国的な取り組み状況について現状把握をしているというような御説明はお聞かせいただきましたけれども、これを一歩としながらも、もっと積極的に文科省と連携をとって、限られた予算でありますし、地域の方から見たら大変なニーズがある施策でもございます。どうか、これは役所の事務官同士でといったらなかなか難しい。やはり、大臣が相当なリーダーシップをとって文部科学大臣とお話をしていただかなければ円滑に事業が進まないと思いますけれども、大臣の御所見をひとつお願いしたいと思います。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたけれども、厚生労働省では、保護者が労働等により昼間家庭にいないおおむね十歳未満の児童に対して、適切な遊び及び生活の場を与える放課後児童健全育成事業を実施しておるところでございます。一方、文部省におきましては、希望する小学生から中学生までを対象に、学校等を活用しさまざまな体験活動を実施する地域子ども教室推進事業を実施しているところでございます。

 両事業は、年齢が少し違いますけれども、いずれも児童の健全育成という点では共通をしておりまして、これまでも、余裕教室を地域の実情に応じ放課後児童クラブとして活用できるようにする、あるいはまた、両事業を同じ学校で実施する場合は相互に児童の交流を図ることや地域のボランティアの相互活用を図るようにするなどの点で、両省の連携は図ってきたところでございます。

 今お話しのような御指摘もございますので、今後とも、放課後児童に対する事業を初め、児童に関する施策の実施に当たりましては、より一層文部科学省との連携を図りまして、利用者のニーズにこたえるように努めてまいります。

加藤(勝)委員 どうか、提供するサイドの視点ではなくて、利用するサイドの視点に立って施策を進めていただきたいと思います。

 次に、アスベストの対策についてお聞かせいただきたいと思います。

 アスベスト対策は、今政府も挙げて、また私ども自民党の方も議論をし、一つ一つの施策を展開していこうということであります。国民の不安への対応あるいは過去の被害への対応等々、今進められているわけでありますが、先般、アスベストの使用実態調査中間報告が出されたわけでありますし、また、十一月、民間の建物については十二月になると聞いておりますけれども、最終結果がまとめられていく、こういうふうに聞いております。

 そうすると、だんだん個々の様子が見えてくるわけでありまして、ちなみに、先週末、地元で新聞を読みましたら、私も時々使う岡山駅の、まさに使っているホームの上に若干アスベストを吹きつけたものがあった、こういう記事も出ておりましたけれども、こういう形で、それぞれ具体化した姿が、あるいはここにあるよということが見えてくる。

 そうなると、そうしたものの除去というものを求める声も当然高まってくるわけでありますけれども、これからもう少し調査を進めてみなければ、どれだけの件数になるかもちろんわからないわけでありますが、かなりの件数になっていくのではないか。また、そうなったときに、除去作業そのものは、大変、素人が考えてもかなり細心の注意とそれなりの技術が私は求められていくのではないかというふうに思いますけれども、そうした除去をしてほしい、除去作業を進めたいということになると、それぞれの民間の業者が受けるということになりますし、またそれを労働基準監督署等がしっかりとチェックをしていただく、こういうことになっていくと思います。

 これから大量に除去作業といったものがだんだん出てくる中で、もちろん法律的には労働安全衛生法、厚労省の所管と、大気汚染防止法、環境省さんの所管、これはいろいろあるかもしれませんけれども、まず労働安全衛生法を所管されている厚労省として、安全かつ迅速な除去ということがこれから求められていくと思いますけれども、それに対する対応を今どのように考えておられるのか、御説明いただきたいと思います。

青木政府参考人 一九七〇年代後半から一九八〇年代にかけまして輸入されました石綿の多くが、建材として建築物に使用されております。今後、この時期に建設された建築物が解体をされる、相当の量の解体作業というのが出てくる、委員御指摘のとおりだと思っております。

 このため、建築物の解体等の作業における石綿暴露防止対策の充実を図るために、石綿障害予防規則をことしの二月に制定いたしました。

 この規則に基づきまして、吹きつけ石綿の除去作業場所を隔離させたり、あるいは、そういった保温材、石綿を使っている保温材等の除去作業時の使っているという旨の表示を義務づけたり、あるいは、実際に作業をする場合に当たりましては、飛散することのないように湿潤化による作業のやり方を義務づけて飛散の抑制をする。それから、労働者自身に対しましては防じんマスクの使用などを義務づけるということで暴露防止対策、労働者、あるいはこれによりまして住民の、地域に対する飛散というのもできるだけなくしていこうというようなことでやっているわけであります。

 また、非常に飛散、発じんのおそれが大きい吹きつけ石綿を除去するという作業につきましては、具体的な作業内容について、図面などを添えまして、事前に監督署長に工事計画を提出させることといたしております。これらの計画に記載された石綿暴露対策につきまして、監督署では厳正に審査を行って、必要に応じまして、事業者に対しまして工事の差しとめ命令あるいは計画変更命令などを発するということにいたしております。

 また、解体工事が行われている段階においては、抜き打ち的に作業現場に労働基準監督官が立ち入りまして監督指導を行いまして、所要の対策が講じられているかをきちんとチェックするということにいたしまして、厳正に対処をしていこうということにいたしております。

 特に、ことしの八月一日から十月三十一日までの三カ月間につきましては、石綿障害予防規則が施行されてから間もないということもありますし、非常にこの問題も大きく取り上げられたということもありまして、重点的に石綿が使用されている建築物の解体等を行う作業場に対しまして監督指導を実施しております。違反が認められれば、これは是正を必ずさせるということで対応をしております。

 今後とも、これらによりまして、こういった規則の周知あるいはその履行確保を図りまして、石綿の飛散、暴露防止を図っていきたいというふうに思っております。

加藤(勝)委員 いずれにいたしましても、アスベストは暴露してから発症するまでに非常に長期の期間がかかるということも含めて、大変関心なり不安が高いわけでありますので、それに対する対応、安全ということは一方で図りながら、やはり円滑な処理ということも当然必要になってまいりますので、そうした対応を十分に考えていただきたいと思います。

 最後になりましたけれども、障害者の自立支援法案、これから当委員会でも議論されていくわけでありますけれども、この成立をぜひ図ってもらいたいという声も、相当私のところにも入ってきております。私自身、その早期成立が図られるべきであるというふうに考えております。

 あわせて、今年度においても大幅な予算の増額もなされて、予算要求もされているわけであります。こういう努力をさらにしていただきますとともに、この委員会での修正という形で追加されておりますけれども、就労の支援を含めた障害者の所得確保等々、いろんな施策をこれからまさに一つ一つ積み上げていく、そのいわばスタートにあるというふうに私は思います。

 そうした際に一つお願いをしたいのは、福祉の分野だけではなくて、もちろん就労ということでありますから雇用の分野、これはある意味では、厚生、労働省、一緒になっておりますから、その力をより発揮していただきたいと思いますが、もう一つ、養護学校に入られてから就労する部分について、養護学校の親御さんは大変な不安を持っておられます。どうか、教育部分と、今言った連携というものもより緊密に図っていただいて、そうしたそれぞれの障害のある方の年齢にも応じて、あるいは状況に応じて、切れ目のない対応というものをぜひ図っていただくようにさらに努力をお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。

鴨下委員長 次に、冨岡勉君。

冨岡委員 おはようございます。長崎からやってまいりました衆議院議員の冨岡勉です。小泉チルドレンの一人として、初めて質問に立たせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 きょうは二点に絞って質問をさせていただきます。まず第一点は、先ほど加藤委員からも最後に質問がありました障害者自立支援法、そして、長崎におります関係というんでしょうか、長崎から出てまいりましたので、原爆被爆者対策についてお尋ねをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、国会に参りまして、私、議事堂に来る間に、そこの通路のところに多くの障害者の皆様が座ったりお立ちになって盛んにビラを私たち議員に配っておられるのを目撃いたしました。一体何だろうかと思ったんですが、よくよく見ると、自立支援法についてのことが書いてあります。

 私自身、田舎におります、そして障害者対策なんかをやっていたんですが、こういう光景に初めて出くわしました。それで、一体何だろうかということでその内容を検証したわけなんですが、やはり生存権にかかわるような部分がこの法案で少し不足ぎみではないかというような指摘ではないかというふうに私自身はとらえたわけでございます。

 それで、私自身、障害者の施策につきまして、やはり介護保険との一体化というのを常に念頭に置いて考えておりました。二〇〇〇年に介護保険が成立して、それから障害者施策が大きく転換して支援費制度が出てきた、そういうふうに理解しているんですが、その支援費制度が二年足らずで自立支援法にかわったその経過についてちょっと詳しくお尋ねしたいんです。

 この自立支援法というのは、支援費制度の中に入り込んでしまっているんじゃないかというふうに私自身思っていたんですが、全く独立した法律であって、支援費制度に取ってかわる、そういう経過があると思うんですが、なぜそうなったのか。わずか二年、マスコミなんかでは少し拙速じゃないかという御意見もありますが、その一連の流れについてまずお尋ねを、尾辻大臣の方にお願いいたしたいと思います。

尾辻国務大臣 支援費制度は、施行後、多くの方が新たにサービスを利用できるようになるなど、障害者の地域生活を支援する上で重要な役割を果たしていると評価をいたしております。支援費制度は私どもも評価をいたしておるところでございます。

 しかしながら、同時に、精神障害者が対象となっていないなど、障害種別間で制度やサービス基盤に大きな格差があるということが一点ございます。それから、居宅サービスをいまだ実施していない市町村があるなど、地域間の格差が大きく、サービスが広く行き渡っていないということもございます。さらに、施設、サービス体系が障害種別ごとに複雑なものとなっており、障害者の就労支援、地域生活の支援などのニーズにこたえられないことといったようなさまざまな問題を抱えてもおります。

 このために、今般、支援費制度のいいところであります、すなわち自己決定と自己選択、それから利用者本位の理念、これはしっかりと継承しながら、障害者の自立した地域生活を支援するための施策について、支援費制度を廃止して、障害者自立支援法案として一元化し、こうした課題を解決するために障害者施策を抜本的に見直すことを御提案申し上げているところでございます。

 具体的には、利用者にとりましては、障害者の福祉サービスを一元化することにより、精神障害者も含めまして障害の種類にかかわらずサービスを利用できるようになる。それからまた、サービスに係る規制緩和や障害福祉計画の策定などによりまして、サービスが一層充実し、どの地域でも支援の必要度に応じてサービスを利用できるようになる。あるいはまた、利用者本位のサービス体系の再編によりまして、地域で暮らしたい、もっと働きたいといった個々のニーズに合ったサービスが受けられるようになるなどのメリットがあるものと考えております。

 このような見直しは、障害福祉サービスの充実のために早期に行われることが必要でありますので、今国会に提案をさせていただいておるものでございます。

冨岡委員 ありがとうございました。

 それで、私自身、介護保険と将来的に一緒になるというふうに思っているんですが、介護保険では、保険料は四十歳から、そしてサービスは六十五歳からということなんですけれども、障害者の場合には年齢制限がないということがそのすり寄る際に問題になると思うんですが、その点について大きな流れというのが話の中であると思うんです。

 まず、その介護保険とのすり合わせをする際の年齢制限について、今までの経過、僕はちょっと詳しく知らない部分があるかと思いますので、そういう点について、将来的にはどういうふうに自立支援法がなっていくのかというのをできればお答え願えればと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険と障害者制度との関係についてでございますが、まず委員の方から経緯ということがございましたので、最初にその点をお答えさせていただきます。

 今委員からお話ございましたように、介護保険制度、平成十二年からスタートいたしておりますが、この制度は、四十歳以上の方を被保険者として保険料を払っていただき、原則六十五歳以上の方にサービス給付をするという制度になっております。この制度ができます法律制定当時から、年齢問題につきましては、四十歳以上、六十五歳以上ということではなくもっと幅広くという御議論があり、当初、介護保険法ができた制定当時の附則において、施行後五年を目途に介護保険制度を見直しする際に、被保険者、受給者の範囲のあり方については検討課題になっていたところでございます。

 前通常国会に介護保険法の一部を改正する法律案を御提案申し上げましたけれども、この介護保険法の見直しの議論の中で、被保険者、受給者の範囲の問題については、社会保障に関する制度全般の一体的な見直しが今検討されているところであり、その検討にあわせて検討すべきではないかということから、政府提案の改正法附則第二条でその旨が規定されており、その結果に基づいて、平成二十一年度、これは介護保険は三年ごとに保険料を見直しますので、十二年、十五年、十八年度、こうやってきたわけでございますが、十八年度は間に合いませんので、二十一年度を目途として所要の措置を講ずるものとされたところでございます。また、この介護保険法の一部を改正する法律案の附帯決議におきまして、この検討につきましては十八年度末までに結果が得られるようにということが決議されているという状況になっております。

 以上が、まず介護保険の方の年齢問題の経緯でございます。

 それでは、介護保険と障害者福祉制度との関係はどうかということでございますが、介護保険がつくられたときには支援費制度がございませんでした。また、その後支援費制度もつくられてきたわけですが、この介護保険と障害者福祉制度の関係は一般法と特別法の関係として整理されております。すなわち、介護については一般的な法律である介護保険が優先し、介護保険の給付がなされる部分につきましては障害者福祉制度はその部分は引っ込む、こういう整理がなされておりまして、今、現行制度であります支援費制度でもそのような整理がなされております。

 したがいまして、今介護保険は六十五歳以上の方について給付がなされておりますが、六十五歳以上の方であれば、障害者でおありになるかないかを問わず、要介護認定に該当すれば介護保険の給付が受けられる。介護保険の給付がなされている部分については、障害者の方の福祉制度、支援費制度はその部分については給付しない、こういう法律的な整理になっております。

 介護保険で足りない部分、上乗せ部分あるいは横出し部分については、例えば就労支援とかそういうものは介護保険にないわけですので、そのようなサービスについては障害者制度の方で上乗せなり横出しをするというふうになっております。現に、身体障害者の方の六割以上が六十五歳以上の方であり、そういった意味では身体障害者の方の六割以上が介護保険制度でカバーされているという状況になっております。

 自立支援法との関係でございますが、自立支援法もこのような介護保険制度と障害者制度との関係の整理をそのまま同様に考えております。したがいまして、自立支援法が成立した場合、現行制度では六十五歳以上の障害者の方については介護保険が優先適用され、必要ある部分についてあるいは介護保険でカバーされない部分については自立支援法が適用されるという関係になります。

 また、そういうことでございますので、介護保険の見直しが十八年度中に結論を得ることにされておりますし、その帰趨にもよりますが、仮に介護保険の対象年齢が引き下げられるということになりますと、その引き下げられた部分については、今六十五歳以上の関係と同様に、例えば四十歳以上であれば四十歳以上、二十五歳以上であれば二十五歳以上の世界にまず介護保険法が適用され、その後自立支援法が出てくる、こういう整理になると考えております。

冨岡委員 詳しい御説明をありがとうございました。

 そういうことだろうと思うんですけれども、私自身、何度も申しますように、やはり制度というのは一貫性を持ってつくっていくべきだろうと思っていますし、どうもその制度の中で後で苦労するようなことが起こらないように十分配慮をされていただきたいと思います。

 それから、今回、介護保険もそうなんですが、在宅を中心として、施設から在宅へ、在宅からまた外に出そう、そういう大きな流れがやはりあると思うんですが、今回の自立支援法で在宅サービスを充実するという方向で理解していいものか。私自身、例えば居宅でやる方が、施設内に移ると食費の負担とか、そういう意味では理にかなっているというか、流れとしては理解しているんですが、そのほか、こういう政策をとっているのは在宅を中心とするものではないというふうに大きな流れの中で御説明いただける部分があればお答え願いたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、障害自立支援法の予算などを見ますと、居宅関係の予算が四分の一、施設関係の予算が四分の三ということで、いわば施設関係に投入されている資源が非常に多いような状況でございます。これまで、福祉の歩みとしては施設からスタートしたということもあり、施設で障害者の方をケアしているという現状が多いということだと思います。

 もう一点は、施設の費用につきましては国が義務的負担になっておりましたけれども、在宅の費用については、いわば裁量的経費ということで、国の予算の範囲内で補助するということになっておりまして、そういった財政責任の点でも施設と在宅とに格差があるという現状でございました。

 したがいまして、例えば身体障害者、知的障害者、精神障害者の方のホームヘルプサービスをとってみましても、身体障害者では二割弱の市町村がホームヘルプ事業を実施されていない、知的障害者については三分の一の市町村が実施されていない、精神障害では半分の市町村が実施されていないなど、まだまだ在宅サービスについては、例えば高齢者の介護と比較しましても障害者の方のサービス基盤は弱いというのがまず一番の問題でございますし、地域格差も相当に大きい状況でございます。

 今回の自立支援法はそういった点を見直しまして、国の財政責任も、居宅分についても義務的な負担とするということで財政責任的にも施設と在宅を合わせましたし、また、地域で生活をしていただくというのがノーマライゼーションの方向にかなっているわけでございますので、そういうことが可能な方についてはできる限り地域で暮らしていけるようにするということで、各種のいわば在宅サービス対策の充実を図ろうとしているものでございます。

冨岡委員 施設から在宅へ、そしてガイドヘルプなんかで楽しまれるというか、ようやく世間一般の方が享受されているようなそういう喜びというのですか、それが味わえるように徐々にではあるがなってきているんじゃないかと私自身は解釈しております。

 それで、これは非常に予算が、来年は九百三十億ですか、一千億にもなろうとして、非常に野方図に利用がふえているんじゃないかという指摘があります。ただ、それは当たり前の部分じゃないかということも言われております。

 なぜそういうことが起こっているのかというふうなものをちょっと考えてみますと、例えば介護保険につきましては、認定基準としては、いろいろなグレードで金額、利用サービスが分かれるわけなんです。七十九項目にわたっていろいろチェックして、グレードをして利用サービスの金額のトータルがわかるんですが、それをケアマネジャーさんがうまくサービスの種類を組み合わせたりするわけです。介護保険にあるそういう制度が、この支援費からあるいは自立支援法にないという点が少し問題になっているんじゃないかと思いますが、将来的に両制度を一体化するとすれば、そういった意味でそのすり寄せは今後どう図っていくのか、お尋ねしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の方から、介護保険制度と比較して、例えば障害者の制度、ケアマネジメントあるいは支給決定のやり方に違いがあるのではないか、その点、どういうふうに考えて今後の方向をとろうとしているのかという御質問がございました。

 まず、一番の違いを申し上げますと、介護保険の方は市町村が利用者ごとに要介護度の決定をされるという仕組みになっており、市町村は要介護度を決定する。そうすると、介護保険の方では要介護度に応じました支給の枠がございますので、その枠の範囲内で利用者の方はサービスを組み合わせて利用する、そのサービスを組み合わせて利用するということについて、居宅介護支援事業者、いわゆるケアマネジャーさんが、ケアマネジメント、その調整をし実施する、こういう仕組みになっております。

 支援費制度はそのような仕組みをとっておりません。それは委員御指摘のとおりでございます。これは、現在の支援費制度は市町村が利用者ごとにサービスの種類と量を決める、市町村が支給決定をいたします。利用者は、市町村が決めた支給決定に基づき、事業者との契約によりサービスを利用する、こういう仕組みになっておりますので、支援費制度をつくったときに市町村が量も種類も決めるのでケアマネジメント制度は導入しなかったというので、現行制度になっております。

 今度の障害者自立支援法は、この点につきまして、いわばこの支援費制度の問題点としては、統一的なアセスメント項目や客観的な基準がないために自治体間で判定のばらつきがあるのではないかとか、障害者のニーズに応じた適切なサービスが提供されていないのではないかというような問題点が指摘されておりますので、支給決定について透明化、客観化を図るということで、障害程度区分の認定ということをまず制度として取り入れることといたしております。その上で、市町村が利用者ごとに障害程度区分などに基づいてサービスの種類及び量を決定するということで、そういった面では、介護保険の要介護認定とは項目も違いますし観点も違いますけれども、障害程度区分を導入するということで、支援費制度より介護保険制度に近いような形になっているということが一点でございます。

 第二点は、介護保険制度のようにケアマネジャー、ケアマネジメントを制度化はしておりませんけれども、特に計画的なプログラムをつくってサービスを受けることが必要な方について支援するために、個別の給付としてサービス利用計画作成費を給付することといたしております。こういった方は、相談支援事業者さんに、この相談支援事業者は都道府県が指定しますけれども、その事業者さんに相談して個別の計画的なプログラムをつくってもらうということができるようになっておりますので、そういった面でも支援費制度よりバージョンアップしたのが障害者自立支援法ではないかと考えております。

冨岡委員 いろいろ問題があると思うんですが、やはりこの自立支援法は、自己負担が一〇%、一割ということで、使えば自分が負担しなくちゃいけない。その概念は介護保険と一緒でいいと思うんですが、自己負担の金額が今ちょっと問題になっているんじゃないかと思います。

 障害者一級年金が八万二千七百五十八円、八万三千円ぐらいなんですが、よく比較に出されるのが生活保護世帯との負担の問題なんですね。皆さん御存じだろうと思うんですけれども、介護保険では、生活保護は自己負担は、取られるのですけれども、また扶助で戻ってきますし、利用をする際にはありません。ただ、障害者の場合は、八万三千円ぐらいなんですけれども、上限枠とか、低所得者とかそういう年金の低い方に対してもいろいろな手厚い政策がとられているようですが、生活保護世帯に比べても、やはり何か、その年金から持っていくのかという御意見があるんですが、その点につきましては、全体の流れとして、考え方をちょっと説明していただければと思います。

中村政府参考人 まず、利用者負担のお話の前段の方、サービスを利用すればするほど負担が重くなるのではないか、こういう御指摘がございましたので、その点をお答えし、その後、生活保護というお話がございましたので、生活保護の点についてお答えをさせていただきたいと思います。

 今度の障害者自立支援法は原則一割の御負担をお願いしておりますが、まず所得に応じまして月額の上限額がついております。今委員が御指摘ありました障害年金一級の方については二万四千六百円、障害年金二級の方については一万五千円という上限がついておりますので、たくさんサービスを使う方でもこの上限までの御負担でございます。

 その次に、例えばグループホームを御利用されている方の例をとらせていただきますが、六万六千円が障害基礎年金の二級でございますけれども、一割負担と申し上げておりますが、この障害基礎年金二級六万六千円で資産が少ない方につきましては一割の負担はゼロになるということ。また、それを超えて収入がある場合には、一割負担に充てられるのは六万六千円を超えた収入の半分を上限とさせていただきますし、特に工賃などの収入の場合は、六万六千円を超えた中から三千円はまず手をつけないということ、三千円超えた六万九千円を超えた部分の工賃の一五%を上限にするなど配慮をさせていただいているところでございます。

 生活保護の方、例えば月額何万円と地域によって違いますけれども、生活扶助費がございます。よく一般的に、基礎年金の額に比べて生活扶助の額が高いケースがあるではないかという、そういった意味で生活扶助の水準とこのようなさまざまないわば福祉施策との関係が問題になるわけですが、生活保護は、こういうあらゆる対策を講じた上で、なお自分の家も家屋も、また資産も、相当厳密に貯金なども審査され、一切の手だてがない場合に、最低生活水準として生活扶助基準があり、その方の収入があれば収入を控除して、生活扶助基準とその方の収入の差額を扶助するという仕組みになっておりますので、ちょっと一般的な施策と性格が違うという点があります。

 むしろ我々の障害者施策というのは、生活保護などに陥らないようにするための、いわば貧困に陥らないようにするための、防貧のための対策として実施しておりますので、そういった意味では、生活保護の前のフォワードの方の働きをしているというふうに考えております。

 なお、今回の利用者負担を行うことにより生活保護世帯に今該当してしまうというような場合には、一割負担につきましても、以上の軽減措置の上に、さらに生活保護に該当しなくなるまで負担額の引き下げを行うという措置を講ずることといたしているところでございます。

冨岡委員 もっと答弁を少し早目にしてください。

 わかりました。財源の切れ目が福祉の切れ目にならないようによろしくお願いいたします。それから、その国の福祉のレベルというのは、やはり障害者福祉を見ればすぐわかるんじゃないかというふうに思っておりますので、障害福祉を担当される皆様、ぜひよろしくお願い申し上げます。

 次に、原爆被爆者対策についてお尋ねいたします。

 先般、在外被爆者に対する福岡高裁の葬祭料とかに対する判決が出まして、尾辻大臣が、非常にすばらしいというんでしょうか、私たち長崎市民にとりましてはありがたい控訴断念という、断念という言葉がちょっといただけないかもしれませんけれども、非常に前進だと私自身は思っております。ありがとうございました。

 そこで問題になったのが、被爆者手帳の交付についてもその国でできはしないかというようなのが、一般の市民、私たち、市長を含めてそういう気持ちがあるわけなんですが、何が隘路になっているのか、また見直しはやはり裁判でないとできないのかどうか、最後にその点についてお尋ねいたしたいと思います。

中島政府参考人 お答えいたします。

 被爆者手帳についてでございますが、被爆者健康手帳と今回対象になりました健康管理手当、葬祭料につきましては、法律上の規定あるいは審査の内容が異なっているということがございます。

 まず、法律上の規定について見ますと、健康管理手当、葬祭料の場合については、その認定につきまして、単に「都道府県知事」と規定されておりますのに対して、被爆者健康手帳につきましては、その交付の申請先が法律上で明確に「居住地の都道府県知事」とされておりまして、国外からの申請を認めないということが法律上明らかになっておるところでございます。

 また、審査につきましても違いがございまして、被爆者健康手帳の交付の審査については、今から六十年前の原爆投下時の所在あるいは行動につきまして、申請者一人一人の個別具体的な申し立てが事実かどうか、そして交付要件に該当するか否かを審査しておるものでございます。

 したがいまして、都道府県、市の担当者による対面審査が非常に重要ということでございます。言いかえますと、在外公館を活用することによってもなお適正な審査を確保する仕組みをつくることが極めて困難であるという状況でございます。

 被爆者健康手帳の国外からの申請につきましては、こうした問題がございまして、健康管理手当、葬祭料と同列に論ずることはできず、国外からの申請を認めることは困難であるというふうに考えておるところでございます。

冨岡委員 やはりこれはある意味では政治問題化しているので、国際問題というんでしょうか、そういう微妙な部分があるので、やはり前向きな対応が、今の時点、非常に必要じゃないかというふうなことをつけ加えさせていただきたいと思います。

 御答弁ありがとうございました。質問を終わります。

鴨下委員長 次に、上野賢一郎君。

上野委員 自由民主党の上野賢一郎でございます。

 私も、今回の選挙で初当選をさせていただきました新人議員でございます。何分ふなれな点も多いかと思いますが、よろしくお願いをいたします。

 本日は、社会保障制度、中でも医療制度の改革、今熱心に検討が進められていると伺っておりますが、その医療制度の改革とそれから少子高齢化、特に子育ての関係につきまして質問をさせていただきたいと考えております。

 申すまでもございませんが、日本はことしあるいは来年から人口減少社会に突入をするという状況になります。人口問題研究所の中位の推計でも、二〇五〇年になれば一億人ぐらいに日本の人口はなりますし、あるいは民間の調査機関のデータによれば、八千万人程度になるというようなデータもございます。

 そうした、言ってみれば世界で一番速い、世界最速の少子高齢化社会になるわけでございますが、私は、この環境変化、これを決してマイナスだととらえるべきではなくて、むしろプラスだというふうに考えて、いろいろな制度設計をやっていくべきだろうと考えています。言ってみれば、世界のモデルケース、トップランナーとなれるような、そうした国づくりを目指していくべきだと思いますし、そうした意味では、社会保障制度、これは非常に重要な課題になってくるだろうと思っております。やはり国民の皆さんの安心を確保しながら、そして持続可能な制度を構築していく。これまでの人口がふえる、それを前提にした制度ではなくて、人口減少社会の中でその制度をしっかりとつくっていくことがこれからの非常に大きな政治課題だと考えているところであります。

 そこで、まず総論的なお話で恐縮でございますが、最初にお伺いをいたします。少子高齢化が進む中で社会保障を持続可能なものにしていく、そのためには制度全般の見直し、これが急務だと思いますが、その点に関しまして、厚生労働大臣の基本的なお考え、御所見をお伺いしたいと存じます。

尾辻国務大臣 お話しのように、急速な少子高齢化が進みます中で、社会保障制度を持続可能なものとし、国民の将来に対する不安を解消していくためには、年金、医療、介護など社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付のあり方、公的に給付すべき範囲のあり方などを含めて一体的に見直していくことが必要だと考えております。

 そこで、内閣官房長官のもとに設置されております社会保障の在り方に関する懇談会におきましては、年金、医療、介護など社会保障制度全般について、給付と負担のあり方を含めた一体的な見直しの御論議をいただいているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、将来にわたり持続可能で国民が安心して暮らせる社会保障制度の構築に向けて順次見直しを進めてまいりましたけれども、いよいよ来年度は医療制度改革を断行し、これがまた極めて大きな課題でありますけれども、医療費適正化を推進するなど、歩みをとめることなく社会保障制度の改革を行ってまいりたいと考えております。

上野委員 ありがとうございます。

 こうした大きな制度改革をする場合には、私は、やはり具体的な制度設計をする、これはもちろん大切ですが、それをどうやって国民の皆さんにわかりやすい形でメッセージとして伝えていくか、これが非常に重要だと考えております。その点、今後の議論の中でまたそうしたことにも御留意をいただきまして、議論を進めていただければと思います。

 今大臣からお話がございましたが、社会保障制度の中でも医療費の問題、これも大変大きな重要な問題となってまいります。一九六〇年代から国民皆保険制度が始まりまして、非常にアクセス性のすぐれた、だれでも重い負担なしにサービスを受けられるという非常に世界的にもすぐれた制度だと思いますが、これが一方、少子高齢化が進む中で、あるいは経済状況がそんなに飛躍的に伸びない中で、財政悪化というような問題もございます。この制度自体につきましても、その持続可能性が本当にこれからも守られていくのかどうか、そうしたところに対しての不安というものが非常にこれから強まっていくだろうと思います。

 そこで、まず最初にお伺いをいたしますが、現在の国民医療費の現状、それから将来に向けました伸び、その見通しはどうなっているでしょうか。また、国際的な水準から見てどうかということにつきましても、あわせて御説明をお願いいたします。

水田政府参考人 医療費についてお尋ねでございますけれども、まず、我が国の国民医療費、足元で見ますと、平成十五年、二〇〇三年度におきまして三十一・五兆円となってございます。今後でございますけれども、平成十六年五月にお示しをいたしました「社会保障の給付と負担の見通し」によりますと、平成三十七年、二〇二五年度の国民医療費は六十九兆円に達する見通しとなってございます。

 この医療費につきまして国際比較ということでございますけれども、なかなかやはり制度や社会的背景の違いがありまして、単純に比較するということは困難でございますが、我が国の総医療費の対GDP比、これはOECDのデータで見ますと七・九%、主要諸国の中では十七位ということで、さほど高い水準にあるとは言えないわけでございますけれども、他方で、国民一人当たりの医療費というものを同じデータで見ますと三十一万円弱ということで、主要先進国の中で九位というふうになってございます。

 ただ、今後でございますけれども、急速な高齢化の進展ということに伴いまして、一人当たり医療費が高い高齢者がふえていくということでございますので、医療費の増大、それからこれに伴う財政支出の増大ということは避けられないものと考えてございまして、お尋ね、御主張にありますように、国民皆保険制度を持続可能なものとしていくためには、今後医療費の伸びを適正なものとすることが必要であると考えております。

上野委員 今お話をいただきました数字を聞いても、医療費拡大をするインパクト、これが非常に強いということがわかります。社会保障制度全体の中でもそうだろうと思っています。

 今御説明がございましたが、今のところ、全体の医療費の額ではOECD諸国の中でもそう高くないという説明がありましたが、一人当たりを見ると非常に高いということでありまして、これが少子高齢化の中で、特に高齢化の中でこれからもだんだんと高い水準になっていくのではないかということが非常に懸念をされるわけであります。

 今、全体の医療費の総額規制ということがいろいろな観点から取り上げられております。もちろん、これは患者本位の良質な医療を提供していくんだということが大前提ではございますが、一方で、やはり、要らないもの、不必要なもの、あるいはむだな医療、そうしたものについては適切に対応していくということも、これは重要な課題であると考えております。

 骨太の方針の二〇〇五におきましてもこのことは明記をされておりますが、この中で、GDPベースではございますが、マクロベースでいわゆるキャップ制のようなものを導入していこうというような議論があります。これにつきまして、先般の新聞報道によれば、医療給付費について、国民所得の九%に抑える、そういう旨の指示を、大臣の方からあったというような報道がございましたが、この事実関係、あるいは、さらに、この骨太二〇〇五で指摘されております医療費の適正化方策、これにつきまして、その対応状況についてはどうなっているのか、できましたら今後のスケジュール観も含めまして御説明を願いたいと思います。

尾辻国務大臣 ただいまの件でございますけれども、今お話しいただきましたように、経済財政諮問会議の中でこれまでも随分議論をされてきたところでございます。

 改めて申し上げますと、経済財政諮問会議の民間議員の皆さんは、今お話しいただきましたように、経済指標に対応したマクロ指標をもとに医療費適正化の政策目標を設定するということを主張されております。キャップをはめろ、こういうことであります。

 それに対しまして、私どもは、一つずつ政策を積み上げていって、積み上げ方式というふうにも表現しておりますけれども、それによって医療費適正化の効果を上げていきたい。抑制しなきゃならないということは言っておるわけでありますから、私どもは、一つずつ積み上げていかなきゃいけない、そしてそれが結果的に抑制につながる、これが一番望ましいということを言っておるわけでございます。

 このお互いの主張はずっと繰り返しておりまして、私どもが、そして私がその主張を今変えたものではございませんので、まず一つの質問にお答えいたしますと、国民所得の九%以内に抑える数値目標を導入するという方針を盛り込むといったようなことを固めたり指示したりということはございません。まずこのことは申し上げておきます。

 しかし、途中でも申し上げましたように、医療費の適正化、抑制をしなきゃならないということは、これは双方認め合っておることでございまして、私どももそのように言っておることでありますから、マクロのキャップをはめるという考え方と、私ども、言うならばミクロで積み上げていくという、この接点を見つけなきゃいけない、これが今後の作業だというふうに思っておるわけでございます。

 そこで、今後のスケジュールについてお話がございましたけれども、今私どもが申し上げておりますのは、十月中旬、もう間もなくでありますけれども、十月中旬を目指して、国民の皆さん方に十分御議論いただく、そのための選択肢を含めまして、私どもの厚生労働省の試案をお示しする方向で作業を進めております。間もなく公表させていただきたいと思いますけれども、その後に、当然、経済財政諮問会議でも御議論あるでありましょうし、また、国民の皆さんのいろいろな御議論をいただきながら、年内に成案を得て、来年の通常国会に医療制度改革関連法案を提出したいというふうに考えておるところでございます。

上野委員 今大臣の方から、マクロとミクロの接点を見つけるのが大切だ、重要だというようなお話がございました。まさにそのとおりだろうと思います。

 私は、懸念をいたしますのは、マクロベースでの総額規制、これが殊さら強調されますと、本当に必要な医療、良質な医療の提供という観点が薄まってしまうのではないか、経済合理性のみでそうしたことが判断されてしまうということに対しましては、一定の懸念を持っております。しかしながら、一方で、ミクロベースでどれだけ政策を積み上げても、それは全体としてどれだけの医療費の抑制効果になるのかということがはっきりしないと、なかなか積み上げ方式といっても説得力を持たないのかなというのが正直な感想でもございます。その点、今後、十月中旬というお話が今ございましたので、そのたたき台を踏まえて、またしっかりとした政策議論をさせていただきたいなと考えているところでございます。

 ただ、年内の決着ということでありますと、非常に時間が限られています。非常に国民生活に密着した課題でございますので、慎重に対応しなければいけない部分もたくさん出ると思いますので、その点十分御留意をいただきまして、今後の議論を進めていただきたいと考えております。

 次に、今の医療費適正化のことに関連をいたしまして、その重要な柱の一つが生活習慣病対策だと思います。先ほどの答弁でもございましたが、今、国民医療費の約三割、これが生活習慣病に占められているというふうな統計がございます。これも年々増加傾向にあるものと伺っておりますが、長い目で見て、この生活習慣病対策、どのように講じていくか、医療費適正化という観点からしても非常にウエートの高い問題だと思っています。

 将来のリスクを減らすということが非常に大切だと思います。予防ということですが、やはりその中では、健診の問題とか保健事業の問題、そうした問題が非常に大切になってくると思いますが、この点に関しまして、今後、医療費適正化の観点から見てどういった対策を講じていくのか、その方針につきましてお伺いをしたいと思います。

中島政府参考人 国民医療費に占めます生活習慣病の割合につきましては、ただいま御指摘ありましたように、約三割、約十兆円でございます。また、死亡原因につきましても、生活習慣病は約六割ということになっておりまして、国民の健康寿命を延ばし、さらには長期的な医療費適正化を進める観点から、生活習慣病対策を強化していくことは重要な課題というふうに考えております。

 これまでの生活習慣病対策の課題といたしましては、生活習慣病対策の推進に向けました国としての具体的な戦略やプログラムの提示が不十分であったこと、また医療保険者や市町村等の責任や役割分担が不明確であったこと、医療保険者や市町村等の関係者を総合調整する役割を都道府県が十分発揮していなかったことなどが上げられると思います。

 こうした課題を踏まえまして、個人の生活習慣を改善し、生活習慣病の発症を予防していくために、国民を広く対象とした普及啓発を徹底し、健康づくりの国民運動化を推進するとともに、肥満、高脂血症、高血圧、高血糖を一体としてとらえますメタボリックシンドロームの考え方、概念を導入して、生活習慣病の有病者やその予備的状態にある者を健診により効果的に発見し、重点的に保健指導を行うことによりまして、生活習慣病対策を抜本的に強化していくことが重要と考えております。

 今後、医療制度改革に向けまして、医療保険者による保健事業の取り組みを強化するとともに、医療保険者と市町村等の責任、役割分担の明確化と連携促進のための都道府県の役割を強化するなど、制度的枠組みの見直しにつきましてさらに検討を進めてまいりたいと考えております。

上野委員 今、普及啓発、抜本的にやっていくというお話でございますので、ぜひお願いをしたいなと思います。その際、やはり健診を行う、あるいは健診を受ける、そうした意味でインセンティブが働くような制度設計が必要だと思いますので、その点につきましてもぜひ御留意をお願いしたいと思います。

 次に、骨太の方針にも掲げられていますが、中長期的な医療費適正化につきましては、成果目標の設定、アウトカム目標の設定、それを検証していく、それを踏まえて必要な措置を講ずる、いわゆるPDCAサイクルというものが重要だというふうに言われておりますが、私どもはそのように考えています。

 その際、厚生労働省におきましては都道府県の役割を重視するんだというようなお話を伺っております。各都道府県におきます医療費適正化計画、そうしたものを策定していくというような検討も進められていると伺っておりますが、この検討状況につきましてはどのような状況でございますでしょうか。

水田政府参考人 医療費適正化計画についてのお尋ねかと思いますけれども、その前提といたしまして、我が国の医療それから医療費の動向というものについて見ますと、ただいまお話がございましたとおり、まず糖尿病などの生活習慣病の患者がふえているということが一点ございます。それからもう一つは、平均在院日数が他の先進諸外国と比べて大変長いということがございますし、かつ、それが都道府県ごとに大きな格差があるという事実がございます。これらによりまして、老人医療費を中心にいたしまして医療費の伸びが経済の伸びを上回っているという現状がございます。

 こうした現状を受けまして、生活習慣病あるいは平均在院日数といった医療に内在する要素に着目いたしまして、国と都道府県の協力のもとに、具体的な目標を掲げまして、それを検証して必要な措置を講じていく、こういった対策を推進していくことが必要であると考えてございます。

 都道府県の役割ということでございますけれども、これは現在でも、例えば生活習慣病に関しましては健康増進計画がございますし、また、平均在院日数、入院医療を中心にいたしまして各都道府県には医療計画がございます。それから、医療を効率化する上でやはり大切なのは、最終的に地域あるいは家族のもとで高齢者の方が暮らせる、過ごせる体制をどうつくるかということがございまして、その関係では介護保険事業支援計画、これも県が策定主体になっているということがございます。

 そういった三計画を総合いたしまして、全体として予防を推進し、医療を効率化するという計画をまとめたものとしてこの医療費適正化計画というものを策定していただいたらどうかというふうに考えてございまして、今後は、各都道府県を当然ながら含めまして、関係者の御意見を伺いながら、その計画の具体的内容あるいは目標が達成できなかった場合の措置等を含めまして検討を進めまして、先ほど大臣から御答弁ありましたように、年内に成案を得まして、医療制度改革関連法案を次期国会に提出したい、このように考えてございます。

上野委員 今お話があった点でございますが、確かに現在の医療法でも、医療計画、それからそのほかに二つあるんでしょうか、三計画につきましては県が責任を持って作成をするということとなっておりますが、ただ、この医療費適正化の問題に関して言えば、あくまで第一義的にだれが責任を負うのかということに関して言えば、これは国をおいてほかにないと思うんですね。それは、診療報酬の問題ですとか、あるいは基本的な制度設計の枠組み、それを決定しているのはやはり国なわけですから、そこがしっかりとした責任を担っていかないと、都道府県の側からすれば、一方的にその計画を押しつけられるということになれば、これはやはり過重な負担というふうな感じがいたします。

 その点も含めて、今後、十月中旬にそれも含めて案が出てくると思いますが、各都道府県との協議というものにつきまして十分な対応をお願いしたいと思います。特に、先ほども申しましたが、時間が非常に限られていますので、お互いに納得できるような着地点とか接地点があるのかという問題がありますので、その点十分御留意をお願いして、今後の対応をぜひお願いしたいと思います。

 次に、もう一つの大きな柱といたしまして、高齢者医療制度、これはさきの大臣の所信の中でも、その創設に関しまして次の通常国会に法律を提案する、全力を尽くすというお話がございました。これにつきまして、この検討状況ですが、今どのような状況でしょうか。御説明をお願いいたします。

水田政府参考人 高齢者医療制度の関係でございますけれども、委員御承知のとおり、まず現状といたしましては、老人保健制度とそれから退職者医療制度がございます。

 これらにつきましては、まず、老人保健制度につきましては、これは独立した保険制度ではございませんで、被用者保険と国保が共同事業を行う、運営主体の市町村に対して費用を拠出する仕組みになっているということがございますので、二つ問題点が指摘をされております。一つは、高齢者の医療費につきまして、高齢者自身の負担と若い方々による負担の分担のルールが不鮮明であるということがございます。それから、運営主体と実質的な費用の負担者が乖離しておりますので、制度運営の責任主体が不明確である、こういった問題点が指摘されているわけであります。

 また、もう一つの退職者医療制度につきましては、就業構造あるいは雇用形態が変化する中で、現在は原則二十年間被用者期間におられた方につきましては、これは被用者保険が支えるという仕組みでございますけれども、先ほど申しました変化の中では、制度間の負担の不均衡を是正するということが難しくなってきているんじゃないか、こういった問題点が指摘されているわけであります。

 これらを受けまして、平成十五年三月に閣議決定されました医療制度改革の基本方針におきましては、世代間の負担の公平、透明化を図るとともに、制度運営の責任主体の明確化を図るというために、七十五歳以上の後期高齢者と六十五歳以上七十五歳未満の前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな制度を設けることとしておるところでございます。

 具体的に申し上げますと、まず後期高齢者につきましては、加入者の保険料、国保、被用者保険からの支援、それから公費によって賄う新たな制度に加入するということ、もう一点、前期高齢者につきましては、国保または被用者保険に加入するということは現状維持いたしますけれども、制度の安定性、公平性を確保するという観点から、この前期高齢者の偏在による医療費負担の不均衡を調整するという方針が示されているわけでございます。

 私ども、この新たな高齢者医療制度につきましては、今申し上げましたような基本方針のもとに引き続き検討を進めて成案を得てまいりたい、かように考えてございます。

上野委員 ありがとうございます。これからいろいろな議論が進められると思いますが、高齢者層を支える若年層の体力を奪わないということも大切ですし、あるいは、自己負担の増加によって皆保険制度自体が空洞化しないというようなことも大切だと思いますので、その点に御留意をお願いしたいと思います。

 次に、先般の参議院における審議におきまして、公的年金、それから医療、介護保険の一括納入義務化という話題が出ていたかと思いますが、これにつきましては、どうなんでしょう、厚生労働省のスタンスを確認させていただきたいと思います。

尾辻国務大臣 御指摘の各制度につきましては、それぞれ社会連帯に基づく社会保険方式で運営されておりまして、保険料を納めていただくということが重要でございます。このような観点から、例えば国民健康保険、国民年金、介護保険を一体的に適用して、保険料をすべて納付しなければどの給付も行わないといった考え方も一つの考え方であるというふうには思っております。しかし、他方で、制度や運営主体が異なる中で、他制度の未納を理由にして給付しないということがそれぞれの制度目的に照らして過剰な制限にならないかどうか、精査しなければならないというところもございます。

 現段階では、このような仕組みについてさらに検討を進めさせていただきたいと考えておりますけれども、あわせて、例えば国民年金と国民健康保険の保険料の徴収に当たって連携を強化するなどの対策は、引き続き進めるように検討いたしておるところでございます。

上野委員 確かに、年金の未納の場合に医療サービスを受けられないというのは極端に過ぎますが、ただ、一つの考え方として、年金の空洞化を防ぐためにも非常に重要だと思いますので、前向きな御検討をお願いしたいと思います。

 最後に、少子化対策について一つお伺いをいたします。

 いろいろな地域の皆さんと意見交換をしますと、特に私の同世代の皆さん、少子化問題、子育て問題に非常に関心が高い。その中で、特に将来への不安、それは社会保障制度全般の改革の問題ですが、将来への不安感もあります。あるいは、直近の不安として、医療費、教育費が、子育てに係る費用が非常に高い、そういうことに対して不安感あるいは不平不満、そうしたものを持たれる方が非常に多いというのが現状でもございます。

 一点だけですが、教育、子育てに係る費用、この軽減方策につきまして、厚生労働省としてどのようなお考えか、お伺いをいたします。

北井政府参考人 お答えを申し上げます。

 児童手当を含みますさまざまな経済的支援につきましては、昨年策定されました子ども・子育て応援プランにも指摘されているところでございますけれども、地域や家庭の多様な子育て支援であるとか働き方にかかわる施策などとあわせて、多岐にわたる次世代育成支援対策について、総合的で効率的な視点に立ってそのあり方を検討することが重要だというふうに認識をいたしております。

 特に、この経済的支援の問題については大きな課題と受けとめておりまして、関係省庁と連携しながら、厳しい財政事情の中ではありますけれども、財源の問題も含めまして検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

上野委員 ありがとうございます。ぜひ前向きな御検討をお願いしたいと思います。

 財源の問題がネックになってまいりますが、これは私の個人的な見解で言えば、今の経済財政諮問会議で、別の観点から言えば政府全体の規模をどうするかという議論があります。そうした中で公務員の人件費の総額をどうするか。そうした中での、言ってみれば政府のリストラですね、政府のリストラをして、むだな部分をぜひ少子化対策なり子育ての費用に回していくんだ、そうしたことが私は必要ではないかなと考えております。

 最後に、時間の関係もございますので意見だけ申し上げさせていただきます。

 子育て、少子化対策ですが、やはり各省縦割りになっていますので、先ほども話を聞きましたが、非常に総花的なんですね。めり張りをつけたいんですけれども、なかなかつけられない。そういう問題がありますので、これはぜひ政府、できれば内閣官房なり内閣府に一元的な組織を設置して、そこである程度各省の政策をオーバーライドするような形で、一元的な組織の中で縦割りの弊害をなくして、それを国民の皆さんにわかりやすいメッセージとして伝えていく、政治的なメッセージとして伝えていくというようなことがどうしても必要だと思いますので、その点、今後の課題として御検討をお願いできればと考えております。

 質問を終わります。

鴨下委員長 次に、菅原一秀君。

菅原委員 自民党の菅原一秀でございます。

 一般質疑については初めてでございまして、いつも法案審査ということで、大変きょうはうれしく思っております。

 少子化対策について、るるお話を、お伺いをしたいわけでございますが、その前に、まず冒頭、巷間、盛んに与野党で論議がされております国会議員互助年金制度、いわゆる議員年金について一言申し上げたいと思います。

 私は、昨年のちょうど三月、初めての厚生労働委員会での公的年金の質疑の際に、まず国民の年金に対する信頼を回復するためには、やはり信頼失墜の一因となっていた議員年金の問題、これをまず即刻廃止をすべきであると、当時の坂口厚生労働大臣にも質問をさせていただきました。

 先輩議員やベテラン議員から、おまえ余計なことを言うなと再三文句を言われたわけでございますが、ここに来て、与党のプロジェクトチームにおいて、現行の国会議員互助年金制度は即刻廃止にするという決定を見まして、一年半たって、まさに隔世の感を覚えるわけでございます。

 しかしながら、その論議を今見据えているわけでございますが、厚生年金と共済年金の、いわゆる被用者年金との一元化を新たな制度の中に構築をして、それまでの移行期間の制度として、今申し上げたような、被用者年金と議員年金を一元化するというような案が出ております。しかしながら、これは言ってみれば、議員年金そのものを延命する、こう国民からとられかねない、極めて問題のある論議ではないかということを指摘しておかなければいけない、こう思っております。

 言うまでもなく、議員年金と被用者年金、いわゆる公的年金は、性格が異なるわけでございますから、この点、とりわけ国会議員の議員年金、いわゆる現役の国会議員、そしてまた議員OBがその家族を支える互助年金制度ということに対しまして、いわば国民負担割合が七割、そして十年加入で年間四百十二万を超える受給額、そしてまた国民年金との併加入、こうした問題、厚生年金もしかりでございますが、いわば、一国民として一つの年金に属しながら、また議員年金にも加入をしているという極めていびつな状態というものに対して、国民から極めて大きな不公平感が募っているのではないかな、こんなふうに思っているわけでございます。

 私として私見で言えば、この議員年金制度そのものを即刻廃止をして、移行期間などというものを設けないで、やはり納付金を納めてきた議員OBや家族に対しては、あるいは現役の議員に対しても、納めた分は、受給していない部分に関しては即刻清算金を払って、そして退職金制度、いわゆる国家公務員並みの退職金制度に切りかえをしていく。こうしたドラスチックな対策なくして、議員年金そのものもそうでありますが、今後また持続可能としていかなければいけない公的年金制度への国民の信頼を回復する、そういう一つの道程をつくる意味では極めて重要なことだ、こういうふうに考えております。

 これは言うまでもなく、議運のマターでございますから、御答弁に制約があろうかと思いますが、尾辻厚生労働大臣であれば、しかるべき御答弁をいただけるのではないかと思っておりますが、一言お願いをしたいと思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

尾辻国務大臣 もう既にお話しいただいたとおりでございますけれども、国会議員互助年金は、国会議員の処遇の一部でありまして、特殊性の高い職域年金的な性格を有するものであって、したがいまして、公的年金である被用者年金とは性格の異なるものでございます。

 そういうふうに申し上げますと厚生労働省の所管ではないということになりまして、厚生労働大臣としてお答えするというものではないと思いますけれども、お尋ねでございますので、個人的見解としてお断りをして申し上げます。まず、今、国会議員互助年金の廃止の話がございましたが、もし廃止するといたしましても、既に国会議員互助年金を受給して生活をしておられる方々がおられます。それからまた、これまで既に納付金を納めてまいりました議員の年金生活や期待権への配慮ということも、当然必要であろうというふうには考えます。

 いずれにいたしましても、これまたお話しいただきましたように、この問題は、国会議員の処遇のあり方にかかわる問題であり、国民の声を十分踏まえながら、議院運営委員会等において御議論いただくべきものであろうというふうに考えております。

菅原委員 今、大臣から御答弁ございましたように、確かに受給している方々の財産権やあるいは期待権、こういったことにもかかわってきますから大変デリケートな面もございますが、大事なことは、やはり国民年金、三八%が未納である、あるいは一元化の問題も含めて、公的年金制度にいかにして国民の信頼を取り戻し、そしてまた、それこそ五十年、百年持続可能な年金というものをどうやって構築していくか。

 不断の努力が必要な状況の中で、まずこの議員年金、私が申し上げたような論理をぜひ踏まえていただいて、一元化の論議が出た場合には、今御答弁あったようなお話でぜひ進めていただきたい、こう思っております。

 少子化対策についてお尋ねをしたいと思っております。

 我が国の少子化対策は、まず冒頭申し上げると、社会保障制度の中で年金、介護、医療と比べて極めてウエートが低い、こう言わざるを得ない、こう思っております。八月十二日の尾辻厚生労働大臣の記者会見でも、いわばこれまでの日本の社会保障給付においては、高齢者に対するやや偏りがあって、少子化対策もしっかり取り組まなければいけない、こういう力強いお話がございました。

 御案内のとおり、今我が国は、先ほどもお話ありましたが、子ども・子育て応援プラン、三月に策定をして国民一般にも広く流布をし始めているわけでございますが、国民も企業も、個人についても、あるいは国会においても、いま一つまだ希薄であるということは指摘せざるを得ない、こう思っております。

 その一つのあらわれが、出生数が、団塊の世代と言われる昭和二十四年生まれの方が約二百七十万人、出生数があった。昨年平成十六年に生まれた子供の数が百十一万人。もう二分の一以下に、この約五十七、八年で低下をしている状況。そして、よく言われる特殊出生率、これは平成十六年においては、我が国は一・二八八ということでありまして、OECDの加盟国の中を見ても、イタリアの一・二九、ドイツの一・三四と並んで世界的に極めて低水準にあるわけであります。

 にもかかわらず、我が国の家族分野に対するいわゆる社会支出の対GDP比は〇・六%、これは、イタリアの〇・九八、ドイツの一・九九、フランスの二・八一、スウェーデンの二・九八に比べて、世界一の長寿国になり世界一のスピードで少子化が進んでいる中にもかかわらず、極めてこの比率が低い。この点は、いま一度、厚生労働省のみならず政府あるいは各省庁にまたがって、この認識を新たにしなければいけないのではないか。

 一部の経済学者の中では、こうして生産性の向上があるから、仮に人口減少が進んだとしても生活水準が落ちない、こういう議論があるわけですが、人口減少によって社会そのものの活力が極めて低下することを考えれば、あるいは韓国を初めとする近隣諸国も同様だよというような意見もあるわけですが、これは言ってみれば慰め論にすぎない、こう言わざるを得ない。我が国は率先してこの少子化対策の取り組みをしっかりと進めていかなければいけない、こう思っております。

 総合研究開発機構という機構がございまして、そこのデータによると、現在一億二千万人の人口が、二〇五〇年には九千二百万、二一〇〇年には五千万を切って、そして二五〇〇年という時期に来ると、日本の人口はこのまま黙って推移をすると十三万人しかいなくなってしまう、極めて国家が危機存亡の状況にあることは言うまでもありません。

 そこで、この少子化対策をいわば社会保障の四番目の柱として国策としてしっかりと位置づけ、また取り組みを進めていく、そのためには、やはり少子化関連予算というものを大幅に拡充していく必要があると思いますが、この点について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 御指摘のとおりに、我が国の児童、家庭関係給付の対GDP比を他の主要先進国と比較いたしますと、その水準は低く、また我が国の社会保障給付の割合は、高齢者関係の比重が高く、児童、家庭関係の比重が低い状況にございます。

 もとより、年金、介護が高齢者の社会保障給付の中に入っておりますので、こちらが高くなるというのは当然と言える面もないわけじゃありませんけれども、それにいたしましても、こちらの、こちらのと言いましたのは、高齢者の社会保障給付の割合が社会保障給付費の全体の中で七割に達するのに対して、児童、家庭関係の比重が約三・八%だったと思いますけれども、この数字を比較いたしますと、非常に児童、家庭関係の比重が低いということは申し上げたとおりでございます。

 したがいまして、私もかねてから、比重の低い方にございます児童、家庭関係の社会保障給付費、しっかりと対策をとらなきゃいけないということを言っておるところでございます。

 そうしたことについては、まずは、現在進められております社会保障制度全般についての一体的な見直しの検討の中でも検討を進めておりますし、また政府全体でも取り組むことを決めております。さらにまた、私ども厚生労働省といたしましても、来年度の概算要求の中でも精いっぱいの要求はいたしたところでございます。

菅原委員 そこで、少子化対策というのは非常に、厚労省のみならず各省庁にまたがって、またやるべき施策は本当に百出をしているわけでございますが、厚生労働省として幾つかお尋ねをしたいと思っております。

 十月八日に発表されました、内閣府の少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査、いわゆる母親調査、これが出ておりました。その中で、少子化対策に有効な施策として、七割近くの女性の方が児童手当の拡充など、いわゆる経済的支援を挙げているというデータが出ているわけでございます。

 この児童手当については、与党としても再三国に要望をして、総選挙も戦ってきたわけでございまして、小学校三年生の対象年齢、これを六年生に引き上げをしていく、こういうこともしっかり進めていかなければいけない。しかし、やはり何といってもその財源の問題が極めて大きい。

 そこで、児童手当ということに関して言いますと、その財源は国や地方の負担あるいは事業主拠出金、こういったところに、いま一度、拠出のあり方あるいは財源の捻出のあり方、取り組みを進めていかなければならないわけでございますが、一つの論議として、この財源の捻出のために、いわゆる扶養控除の見直しということが政府税調からも意見を出されたりしております。

 このことをきょうあえて問うことは、税制改正とも絡んでいきますから詳しくはお尋ねをしないつもりでございますが、一点だけ申し上げておきたいのは、扶養控除を仮に縮減なり廃止をして新たな子育て支援の控除を設ける、これも一つの考え方かもしれません。しかしながら、ゼロ歳から三歳とか小学校就学までの子育てに対する事業あるいは施策と、扶養控除には、実際に一番お金がかかる十八歳から二十一、二歳、高校から大学に通わせている家庭の家計の圧迫、負担、こうしたものこそ極めて光を当てていかなければいけない。

 どの家庭に聞いても、確かに子供が小さいときの子育て、児童手当も欲しいけれども、実際にはお兄ちゃんの高校や大学の受験料やもろもろの教育費に大変なお金がかさんでいるから、今の、所得税でいえば三十八万の扶養控除に加えて、六十三万でしたか、特別扶養控除が今ある、ここに手をつけるということは私は断固反対をしていかなければいけない、こう思っております。

 そういう状況の中で、実際、児童手当そのもの、またもとに戻りますが、この財源を含めた拡充、この点についての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 児童手当につきましては、平成十六年四月より支給対象年齢を、それまでが小学校就学前ということにしておりましたけれども、それを小学校第三学年修了前までというふうに変えまして、引き上げをいたしたところでございます。これは国と地方の負担によって行っております。これをさらに拡充しようという御議論が今ございます。

 このことにつきましては、昨年末に策定されました子ども・子育て応援プランにありますように、先ほどの御答弁でも申し上げたことの繰り返しになりますけれども、児童手当等の経済的支援、地域や家庭の多様な子育て支援、働き方にかかわる施策など、多岐にわたる次世代育成支援策について、総合的かつ効率的な視点に立って、そのあり方等を検討することというふうに述べてございます。まさに、そのことは重要な課題と認識をしております。

 きょうの御指摘もございました。お答えとして申し上げますと、まず、このことは政府全体としても取り組まなきゃならないことでございますので、関係省庁と連携をするということと、それから、まさにお話ございました極めて厳しい財政事情を踏まえますと、財源をどうするかという大きな課題がございますので、こうしたことを含めまして、さらに検討をさせていただきたいと存じております。

菅原委員 財源については尽きない議論でございますが、先般、小泉総理のもと、政府でも国家公務員の純減、こうした方向性も打ち出した中で、切るべきところをしっかり切った中で、国として今何が必要なのか、中長期的な視野で今必要な社会保障のあり方ということについては、徹底した議論の上で、財源の捻出ということは極めて重要である、こういうふうに思っておりますので、さらなる取り組みをお願いしたいと思っております。

 次に、育児休業について、今いろいろな議論がございますが、お尋ねをしたいと思っております。

 その前に、保育所の整備ということで、平成十四年から三年間、待機児童ゼロ作戦ということで、政府のもとで厚生労働省も取り組んできているわけでございますが、保育園の受け入れ児童を十五万人増加させるということで取り組みを進めてきたわけでございますが、これはほぼ目的が達成されたようであります。しかしながら、ことしの四月現在、全国レベルでいうと確実にまだ二万三千人以上の児童が待機をしている、こういう現状に対してどうあるべきかということも一つ課題だと思っております。

 とりわけ保育園については、ゼロ歳児の入所定員がもともと少ない。もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんは母親あるいは親の手で育てる、こういう基本的な考え方も一つにはあります。しかし、総合的に社会全体で子育てをしていく、応援をしていく、こういう考え方の中では、保育所の拡充ということが極めて重要ではないかな、こんなふうに思っております。

 とりわけ、この保育園に入る時期というのが、どこの自治体でも全部四月になっております。これはもうちょっとフレキシブルに、常にあきがあれば当然入れるわけですけれども、四月と十月に二回に分けるとか。そうじゃないと、この四月の入所に向けて、とりわけ申請の三カ月前に子供が生まれていないと入れない。そうすると、子づくりやあるいは出産時期も保育園の申請に合わせて子づくりをするような、こんな実態があるわけですね。

 果たして、これでこの国の保育施策というものがいいんだろうかという極めて素朴な思いを持つ中で、保育園についてはさらなる拡充をしていただきたい、こう思っております。

 このような状況を考えてみますと、やはり、生まれてすぐ子供を育てるという母親の役割、これは極めて重要なわけでございますが、現実問題として、我が国では、子供が生まれる前に就業していた方のそれこそ七割が仕事をやめてしまう。つまり、働いている女性十人に聞くと、結婚して三人が仕事をやめる、子供が生まれてまた四人が仕事をやめてしまう。つまり、女性十人働くうちで、十人中七人が出産を契機に仕事をやめてしまっている。

 よく出産した方に育児休業をとりましたかと聞くと、数字はすばらしいんです。直近のデータでは七〇・六%。ところが、この七〇・六%というのは出産時期にまだ仕事を継続している方であって、それは先ほど申し上げたように、十から七を引けば三割、その三割の中の七割ということは、全体でいえば三掛ける七で二割強しか育児休業をとれていない。

 この状況をさらに細かく聞いておりますと、結局、二人目が産みたいんだけれどもというと、会社側の人事担当者から、いやぼちぼち大変だろうからといって、そこから先は言わない。つまり、自分からやめますという言葉を誘発するような企業側の言動が極めてかいま見られる、こういう状況。やはり、この育児休業という制度について企業側にもっとインセンティブを与える、そういう対策も必要ではないか。当然、その後の代理の方を仕事の上で補充をすれば人件費もかかるし、その後がパートであったとしても、当然年間の経費はかさむわけであります。

 この点、来年度の概算要求で、厚生労働省の方で、いわゆる助成金、一人目が百万、二人目が六十万というような概算要求が出ておるようでございます。私は、事業主に助成金を提供するのも一つの案かなと思いますが、例えば育児休業をとった方が職場復帰した場合に、その企業に法人税を〇・〇〇三%減税するとか、やはりもっと企業側のインセンティブを高める、インセンティブを与えることによって実質的に育児休業がとりやすくなる、そういう構造というものをこれからつくっていくことが必要ではないかな、こういうふうに思っておりますが、この点についての厚生労働省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

北井政府参考人 委員御指摘のとおり、妊娠、出産、子育てに優しい企業の風土づくりをするということが特に重要でございまして、とりわけ、希望するすべての方が安心して育児休業をとることができて、また復帰することができるという社会の実現が重要であるというふうに考えております。

 このために、育児・介護休業法に基づきます事業主の指導であるとか、あるいは休む方の代替要員の確保等に取り組まれた企業に対する助成金の支給等によりまして、企業における取り組みの促進に努めているところでございます。

 また、今御指摘がありましたとおり、中小企業につきましては、特に経営基盤が弱いし、また両立支援の負担感が強い等の事情から、育児休業の取得がおくれているところでございまして、重点的な支援を行うための新たな支援策を十八年度予算概算要求に盛り込んだところでございます。

 またさらに、税制措置についての御提言もございました。今後、より効果的に企業の取り組みを促進する方法という観点から、各種税制におきます優遇措置をどのように活用していくことができるかどうかも含めまして、いろいろ検討してまいりたいというふうに考えております。

 今後とも、さまざまな施策を活用して企業の両立支援の取り組みの促進に努めてまいります。

菅原委員 日本とアメリカのいわゆる有職率、つまり子供を産んだ後に約一年とか一年半で復職した率を見ますと、アメリカが七八%、第一子を産んだ後に復職している率が。日本の場合は、生まれて一・五年後で、直近のデータでいうと三六%。アメリカの復職率よりは半分以下。いかに育児休業をとられていないかどうか、この点、やはり非常に大きな問題であると思います。

 いわゆる大企業に限らず中小企業を含めて、経団連とか商工会議所とか、いろいろなことを政治側、行政側に言ってきます。例えば事業所内の保育所を拡充するための助成金とか規制緩和せよとか、いろいろなことを言ってきますが、もっとこの育児休業制度をきちっと各一社一社の企業、事業主がとる、そういう意識改革こそ、まずその前にやるべきことじゃないかな、こんな指導もぜひしっかりやっていただきたい、こう思っております。

 それでは、もう時間が迫っておりますので、出産一時金についてお話をしたいと思います。

 児童手当やあるいはあらゆる施策同様に、やはり子供が生まれる際の出産一時金、これは、夫婦二人で、それこそ初任給二十二、三万、こうした中で子供ができて生まれる。都市部においては、それこそ出産費用、分娩費初め、もろもろ含めると大体五十万前後と言われています。全国平均でも四十万前後というふうに言われておりますけれども、この出産一時金が一律三十万円、この額が実は、かれこれ平成六年からでしょうか、一円も上がっていない。こういう状況の中で、私ども自民党としても、各場をとらえまして、出産一時金の倍増ということで再三訴えてまいりました。

 今、この出産一時金に関しては医療保険から出されているわけでございますが、これは、来年あるいは今始まっている医療費の抑制問題と絡めて、この点について逆に出産一時金の増額が図られないなどというようなことがあるとすれば、これは医療費の抑制が大事なのか、中長期的な日本の未来を支えていくこの極めて重みのある少子化対策が大事なのか、これはきっちり私は分けて考えていかなければいけない、このことを申し上げておきたいと思います。

 それから、妊娠して子供が生まれるまでのいわゆる定期健診、妊産婦健診、これについて医療保険がきかない。子供を産むということは病気やけがと違うから、いわゆる人間の自然的な営みだからということで、今まで厚労省、片づけてしまった。これだけ少子化対策が声高に叫ばれ、国の根幹をなす大きな事業をしていく中においては、これは私は、妊産婦健診についても保険適用すべきであると。

 あわせて聞いてしまいますが、不妊治療、これについても、体外受精や顕微授精、体外受精は一回当たり大体三十万円、顕微授精については四十万から五十万かかっている。これがいわゆる厚生労働省で特定不妊治療助成事業ということで年間一律十万円、これが支給をされております。

 今、聞くところによると、この二年間の事業を五年間に延長するという話を聞いておりますが、果たして十万円ということが妥当なんだろうかと。これは、先ほどの論と同じでございまして、結局、不妊治療というのは産みたい方の独自の思いの中でのいわば治療であるから、本来は本人の負担で不妊治療を受けるべきであるかのごとくの論理が今までずっと続いてきたわけであります。

 しかし、そこに対して事業費が充てられた。しかし、その額たるや十万円ということは、今申し上げた、一年に一回だけ受けるわけじゃないわけですよね、例えば顕微授精なんかは二回も三回も肉体的には可能なわけですよ、受けることが。しかし、年十万円しかということであれば、百万かかることに対して十万円しか補助が出ていない。これはやはりいかがなものかなと。

 この点について、やはり治療の回数、費用、個人差が極めて大きいわけですから、この対応をしっかりすべきであるし、そのためにこそ、個人差があるゆえに保険適用、医療保険の適用ということにぜひとも取り組んでいただきたい、こう思いますが、以上、お答えをいただきたいと思います。

水田政府参考人 出産に関しまして幾つか御質問ございました。まず一点目は、出産育児一時金に関してでございます。

 先生御指摘のとおり、現在三十万円という水準でお支払いしているわけでございます。ただ、この一時金を増額すべきという御意見があるわけでございますけれども、実態を見ますと、分娩料の額は地域や医療機関によってさまざまである、こういうことがございます。またそれから、先ほど来お話ございますけれども、保険財政、大変厳しい状況の中でこの費用の負担をどのように扱うかという問題がございます。

 そういう難しい問題がございますけれども、いずれにしましても、私どもとしては課題認識はいたしておりまして、十八年の改革に向けて検討はしていきたいというふうに考えてございます。

 それから次に、妊産婦健診に対する保険適用についての御質問がございました。これは委員御指摘のとおり、そもそも論、疾病や負傷といった保険事故ではないんじゃないかという議論が、基本的性格にかかわる議論がございますほかに、もう一つは、妊産婦の健診費用の負担の軽減策につきましては、平成十年度に一般財源化が行われてございまして、地域ごとに地域の実情に応じた取り組みとして行われている。こういった整理がなされているといったこともございまして、これらを踏まえまして、今後どうするかということを考えていく必要があるんだろうと思っております。

 それから三点目、不妊治療に関する保険適用ということでございます。これもまた、そもそも論に返ってくるわけでありますけれども、我が国医療保険制度におきましては、有効性、安全性、普及性、こういったことの確立した技術について保険適用しているわけであります。

 不妊治療につきましては、一部ホルモンの異常あるいは子宮、卵管の機能障害など、身体の異常に対する治療については既に保険適用してございます。一方、人工授精あるいは体外受精については、これは疾病の治療と言えるかどうかということの妥当性、あるいは成功率が必ずしも高くないということを考慮いたしまして、中医協におきまして、直ちに保険適用すべきではない、こういった判断がなされているところでございます。

菅原委員 最後に申し上げたい。成功率云々という話ではないと思いますよ。これはやはり人間の尊厳の問題だと思います。子供が産みたくても産めない。そして、不妊治療を受けている方が四十七万人も全国でいる。六組に一人は不妊カップルである。こういう状況の中で、その可能性が低いからといってその施策を講じない、あるいは保険適用しない、この論はとても説得力がありません。

 あわせて、この少子化対策というのは王道がない。しかしながら、低成長の我が国において、やはり世界一の長寿国、そしてまた世界一レベルの少子化が進む中で、我が国に残された時間というのは極めて少ないと思います。極めてスピードアップを厚労省にお願いして、きょうのところは質問を終わります。

鴨下委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、小児医療に関しまして質問を行ってまいります。

 子育て真っただ中の親たちにとりまして一番不安なこと、それは子供の健康についてでございます。大人に比べて子供は、深夜また休診日に症状を訴えるということが少なくありません。我が国の小児医療の実態は、それなりに整備をしてまいりましたけれども、子を持つ親から見ればまだまだ改善すべき点が多々あるように感じられます。この小児医療について質問をしてまいります。

 現在、核家族が一般的な形となり、母親になって初めて赤ちゃんを抱くという女性が九割を超える世の中で、子育てそのものが困難な時代となり、小児科医の役割も大きく変わりつつあるように思います。中でも、小児救急の問題解決が待ったなしの状況にあり、小児科医三、四人の病院、これが二十四時間、三百六十五日の医療を求められ、これら小児科医の激務、疲弊を招いております。

 日本小児科学会が実施した調査によりますと、小児病院に勤務する医師数の平均、わずか二・三人、小児科医が二人の病院が二二%、一人しかいない病院も二七%もございます。七割以上の病院で、本来なら入院患者を診るために夜間当直をしている、その間に連日のように外来の患者がひっきりなしに来る。この時間外診療を担う医師の平均超過労働時間、月平均八十六・七時間。多くの小児科医が不十分な体制の中で過酷な労働を強いられているのが実態でございます。

 八年前、千葉県内の大学病院で当直明けの女性医師がクモ膜下出血、何と十二日間休みなく働いて、過労死として認定をされた。これは記憶にあるところでございますけれども、使命感で身を削って激務に耐えている小児科医の実態、とりわけ小児救急の厳しい現状について、大臣の御認識をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 小児医療、特に小児救急医療でございますけれども、これを担う医療機関において小児科医が不足しておりまして、一人の医師にかかる労働の負荷が過大になり、結果として質の高い小児救急医療が提供されないおそれがあることから、子供の症状に応じた医療が迅速かつ適切に提供されるよう、地域の小児救急医療提供体制の充実を図っていくことは重要な課題であると認識をいたしております。

 このため、厚生労働省といたしましては、平成十六年度より、全国共通番号で、保護者等が夜間等に安心して小児救急医療に関する相談ができる窓口、小児救急電話相談事業と言っておりますけれども、この窓口の設置を推進いたしまして、子供の症状の変化が軽微である場合には、電話相談により適切な指導を行う体制を整備するなどによりまして、保護者等に安心してもらい、適切な受療行動を促すことといたしておるところでございます。

 また、平成十八年の医療制度改革に向けまして医療計画を見直しますけれども、その中で、入院を必要とするレベルの患者に係る小児救急医療の中心となる病院を地域において決定しまして、当該病院に小児科医を集めて、小児救急医療を集中的、効率的に提供できるように検討しておるところでございます。やはり少ないことは事実でありますから、できるだけ集中してやってもらう方がいいというふうに考えておるところでございます。

 今後とも、小児科学会や医療関係団体の協力を得ながら、小児科医がベストコンディションで患者の重症度に応じた適切な小児救急医療に対応できるように努めてまいります。

古屋(範)委員 その電話相談窓口、我が党もマニフェストに掲げ、推進をしてまいった点でございます。

 次に、小児救急医療支援事業の現状についてお伺いをしてまいります。

 小児救急医療の改善のために、厚生労働省におきましては、一九九九年から、小児救急医療支援事業として、全国にある約四百の小児救急医療圏ごとに担当病院の輪番制などを推進してきたわけですが、新聞報道によりますと、導入できたのは半数程度であるということでございます。しかも、担当病院には医師が二、三人しかいないというのが現状で、患者にとっては長時間待って数分の診療であり、医師にとっても過重な勤務を強いるという悪循環が続いております。地域によっては、小児科が少なく、輪番すら組めないというのが実情の自治体もございます。

 そこで、この小児救急医療支援事業の現状、また導入が進んでいない状況について、どのように分析をされているかお伺いいたします。

松谷政府参考人 小児救急医療支援事業の現状と課題についての御質問でございます。

 これにつきましては、休日及び夜間における入院を必要とする重症な救急患者の医療を確保するということを目的としまして、先生御指摘のとおり、平成十一年度より整備を進めているところでございますが、平成十六年度末におきましては、四百四の小児救急医療圏のうち、補助対象外の事業も含めまして二百二十一の地区で体制が整備されたところでございまして、五割を若干超えたというふうになっているところでございます。

 このように、小児救急医療体制の整備がまだ道半ばであるという理由には、地域の小児科を標榜している病院において小児科医が広く薄く配置されていることによって、休日や夜間の診療体制をしくための小児科医が十分確保できないことなどの理由が考えられます。

 一方で、未整備地区におきましても、都道府県等が中心となって、小児救急医療体制確立のプランをつくるための協議会等の設置を行いまして、小児科医の確保方策などについての協議が行われているところでございます。

 小児救急医療を集中的、効率的に提供できるよう、各地域において小児救急医療体制の整備に努めているところでございます。

古屋(範)委員 やはり小児科医が絶対的に足りない、また高齢化もしているということも伺っております。それにつきまして、文部科学省に、この医学教育の中で小児救急分野の強化が非常に望まれていると思いますが、その点についてのお考えをお伺いいたします。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 小児救急医療分野の医学教育にかかわるお尋ねでございますけれども、委員るる先ほど来御指摘のように、医療の現場におきまして、近年、小児科医の不足が指摘されておりますことから、救急医療分野も含めまして小児科医の養成の充実を図るということは大変大きな課題であるというふうに認識しております。

 大学の医学部におきます教育につきましては、文部科学省におきまして、平成十三年の三月に、すべての医学生が卒業までに最低限修得すべき教育内容といたしまして、医学教育のモデル・コア・カリキュラムというものを策定したところでございます。この中におきましては、小児救急領域に関する知識等の修得の重要性にかんがみまして、救急を要する新生児の疾患あるいは小児の感染症等につきまして、医学生の学習の到達目標を設定しているところでございます。現在、各大学の医学部におきましては、このモデル・コア・カリキュラムを踏まえまして、小児医療に関する教育の改善、充実の取り組みが行われているところでございます。

 例えば東京大学の例でございますけれども、小児科学の一連の講義の中で小児救急疾患という授業を設けまして、小児の心肺蘇生法あるいは緊急時の輸液方法等を講義内容に盛り込んでいるといった例。あるいは、旭川医科大学の例でございますけれども、救急プライマリーケアを履修するコースの中で、履修の科目といたしまして、小児救急ということを掲げて乳幼児あるいは小児の救急について学ばせる、こういった取り組みがなされているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも、大学におきますこの分野の医師養成の充実が図られますように、必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 やはり、小児科医の育成は学部での教育が原点だと思いますので、努力はされていると思いますが、さらに今後、御検討をよろしくお願い申し上げます。

 次に、日本小児科学会が目指す、二十四時間対応の地域小児科センター構想についてお伺いをしてまいります。

 公明党におきましては、子供が生まれたい社会、チャイルドファースト社会を目指して少子社会トータルプランづくりを進めてまいりました。私も事務局長としてこの政策立案に携わってまいりましたけれども、この危機的な状況にある小児救急医療の充実はその柱の一つでございます。

 私たち、党少子化総合対策本部では、本年二月、日本小児科学会から、小児医療提供体制の改革ビジョンについての説明をお伺いいたしました。この改革ビジョンの中では、多くの小児科医が不十分な体制の中で超過労働を強いられているこの実情を踏まえまして、小児の救急医療を充実させるために、二十四時間対応の地域小児科センター、仮称でございますけれども、これを全国各地に配置をする構想を伺いました。詳細は省きますけれども、地域の開業医も協力をして、夜間や休日、小児科の専門医が救急診療ができる体制を整える、小児医療の再構築を目指しているものでございます。私は、この小児科学会の構想に賛成でございます。

 このセンター構想が実現をされますと、深夜に子供が病気になってもこの病院に行けば、もしちょっと離れていたとしても小児科の専門医がいる。今は救急病院があっても小児を診てくれないところもあるわけでございます。その安心感が広がり、また、労働環境の改善、当直勤務の削減などにもつながる可能性があります。小児医療の充実が図られるものと考えます。

 厚生労働省も、この地域小児科センター構想を実現するために積極的な後押しをすべきと考えますけれども、いかがでございましょうか。大臣の御所見をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 小児医療体制の整備は、安心して子供を生み、健やかに育てる基盤となるものでございまして、地域の小児医療施設の役割分担を明確にした上で連携を推進し、子供の病気の症状に応じて適切に対応できる体制を地域で構築することが重要でございます。お話しのとおりでございます。

 厚生労働省といたしましては、御指摘いただきました日本小児科学会によります地域小児科センターの提案も踏まえながら、小児医療を担う医療機関の連携と機能強化を通じまして、地域において適切な小児医療が集中的、効率的に提供できるように検討をしてまいります。

古屋(範)委員 この二十四時間三百六十五日対応可能な拠点病院を運営するには、やはり何といっても医師の確保が最重要課題でございます。全国自治体病院協議会の調査によりますと、都道府県や市町村が設置をする病院や診療所の四三%が医師不足の課題を抱え、特に小児科、産婦人科では診療の休止に追い込まれることも少なくないと聞いております。

 私は、八月、選挙前ですけれども、小児科医療では大変高名な賛育会病院院長の鴨下重彦先生と対談をする機会がございました。鴨下先生は、厚生労働省の「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究」を主任研究者としてまとめた方でございます。厚さが十センチくらいある大変膨大な調査研究をまとめられております。

 先生のお話によりますと、小児科医育成のためには、例えばアメリカ流に、大学病院の中に小児病院のシステムを組み入れて、大学病院の一部を母子センターのような形にして、ドクターやナースの人数もふやし、行き届いた子供たちへのケアを行う。それが魅力で医学生が小児科、産科をやろうという気持ちになってくれるのではないかというお話をされていました。

 私も同感でございます。小児科医が大学病院や医療施設の中に小ぢんまりと小児科だけでとどまるのではなくて、文字どおり子供の健康と病気、両様のとりでで活躍できるようになれば、小児科医を志す医学部生、研修医が増加するのではないかと思います。

 二十一世紀を支えていくのはやる気にあふれた小児科医であります。そこで、彼らを育成するため大学病院の中にこのような小児病院のシステムを組み入れるというような構想については、文部科学省としてはどのような見解をお持ちか、お伺いいたします。

泉政府参考人 大学病院におきます小児科医の養成の取り組みについての御質問でございますけれども、まず、昨年度から導入されました新しい医師の臨床研修制度によりまして、大学病院におきましても、他の臨床研修病院と同様に、研修医がプライマリーケアの基本的な診療能力を修得することを主要な目的といたしまして、小児科を含めます複数の診療科で、いわゆるスーパーローテート方式で臨床研修が実施されているところでございます。

 さらに、この研修を終えました若手の医師が来年の四月から出てくるわけでございますけれども、これに対しまして、多くの大学の附属病院では、この卒後臨床研修を終えた医師に対しまして、小児科医等の専門医の養成に向けた取り組みを実施しようとしているというふうに承知しているところでございます。

 各大学の附属病院が、医師の養成という教育病院としての役割を果たす中で、今委員御指摘になられました小児病院のシステムを含めてどのような体制をとっていくかということにつきましては、各大学病院それぞれの判断によるものと考えてはおりますけれども、これまでも大学病院におきましては、産婦人科と小児科の連携領域とも言えます周産期母子センター、あるいはNICUなどの整備を図っているということを承知いたしているところでございます。

 文部科学省といたしましては、この小児科分野の医師養成の充実を図ることが重要であるという認識のもとに、来年度の概算要求におきまして、国立大学の運営費交付金の中に国立大学病院の小児科等の診療分野を支援するための特別支援経費も要求しているところでございまして、今後とも、こういった施策を通じまして、大学病院における小児科医養成の取り組みが一層充実をされるよう支援してまいりたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 この鴨下先生のお考えについては尾辻大臣どのようにお考えか、お伺いいたします。

尾辻国務大臣 小児医療は、地域の小児科医はもとより、小児科以外の医師も軽症患者の診療を行うなど、多くの医師が参加して実施するべき医療でございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、新たに医師となる者に対して、平成十六年度から必修化された臨床研修におきまして、小児感染症やぜんそくなど基本的な小児救急疾患への対処ができることといたしますほか、厚生労働科学研究の成果をもとに策定いたしました小児初期救急診療ガイドブックを活用した研修を地域ごとに進めることによりまして、すべての医師が小児の初期救急医療を担うことを目指した対策をとることを通じまして、地域での小児医療の充実に努めてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 さらに、一部の大学では小児科医志望の学生が減少しているという報告も伝えられておりますけれども、既に医師になっている若手医師を小児科に誘導するというような、小児科医の確保について厚生労働省はどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

北井政府参考人 小児科医師等の確保、育成につきましては、子ども・子育て応援プランにおきましても重点施策の一つとして掲げられてあるところでございまして、その対応に努めているところでございます。

 また、今御指摘のございました鴨下先生が主任研究者でございますところの「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究」の報告書によりますと、小児科医は全体としては微増傾向にあるものの、その過酷な勤務環境などにより実際の活動性が低下しておりますことから、医師の勤務条件の改善、女性医師が仕事と家庭を両立できる就労環境の整備、効率的な小児医療提供体制の確保などを図る必要があると指摘されているところでございます。

 こうしたことも踏まえまして、厚生労働省では、総務省、文部科学省等とも連携をいたしまして、本年八月に医師確保総合対策を取りまとめております。小児科、産科の医療資源の集約化、重点化、それから小児科、産科に多い女性医師が働きやすい環境の整備等の施策を講じていくことといたしております。

 また、十八年度の概算要求におきましては、都道府県におきまして、医師の確保や女性医師の就労支援策などに取り組まれる場合の必要な経費の補助を行う事業も新たに要求しているところでございます。

 こうしたようなことで、今後とも、省内の関係局とよく連携をいたしまして、小児科医師の確保について対応してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 やはりアメリカにおきましても、この点については国の威信をかけて小児科医の育成をしているということでございます。さらに推進の方をよろしくお願いいたします。

 ただいまの答弁にもございましたけれども、やはり女性医師に関してのこれからの施策、大変重要になってくると思っております。

 さきの報告書の中で、小児科医の数自体はこの十年間わずかながらふえている、にもかかわらず実際の活動が明らかに低下をしている、その最大の原因を、全体の五割に近づこうとしている女性医師の結婚、出産、育児のための離職と分析をしております。そして、あるべき支援策について、女性医師が生涯、小児科臨床に従事できるような環境を整備することが急務と結論づけています。

 厚生労働省によりますと、臨床医に占める女性医の割合は、一九六五年には九・三%であったものが、二〇〇二年には一五・七%、国家試験合格者では女性の割合が三分の一を占めるなど、やはり今後女性医の数はふえていくことが予想されます。

 我が党が推進しております女性専門外来も、三カ月待ちというふうに大変好評でありまして、ここでも女性医師が活躍をされています。今後ますますその需要は大きくなるものと見込まれております。

 その一方で、出産や育児により労働しにくくなる、また、女性医師のおよそ三分の一が現場を離れていくのが現状でございます。女性の医師が十分力を発揮できるような環境を整備していかなければ、小児科は成り立たないと思っております。

 私はかねてから、この人材確保のために女性医師バンクというようなものが必要であると考え、また主張をしてまいりました。先ほども御答弁にありましたように、厚生労働省として、医師再就職支援事業、女性医師バンクを来年度概算要求に盛り込んでおり、これは大変に私も評価をしております。厚生労働省が考えていらっしゃるこの女性医師バンク構想について、具体的にお伺いをしてまいります。

松谷政府参考人 女性医師バンクの御質問でございますが、今先生お挙げいただきましたように、臨床医に占める女性医師の割合は現在は一五%でございますが、新たに卒業されて国家試験を受ける方の中で、女性の占める割合は約三分の一となってございまして、今後、女性医師はふえていくという見込みでございます。

 こういった女性医師が、出産や育児といったライフステージに対応して働くことによりまして、診療に継続して従事するということになりますことは、国民に十分な医療を確保する上で重要な課題というふうに考えてございます。

 このため、ことし七月に取りまとめられました医師の需給に関する検討会の中間報告におきましても、当面の医師確保対策の一つといたしまして、短時間勤務あるいは在宅勤務の導入など、女性医師の働きやすい勤務形態についての検討や、全国的な女性医師の就業支援システムの整備によりまして、女性がライフステージに応じて働くことのできる環境整備を図るというふうにされたところでございます。

 このため、来年度、平成十八年度概算要求におきましては、何らかの理由で一たん職を離れましたが再就業を希望する女性医師や転職を希望する女性医師に対しまして、専任のコンサルタントによるきめ細かな相談、そして職業あっせん等を行うほか、あわせて、医療の第一線の技能、知識を習得してもらうための講習会を開催するための経費といったようなものを要求しているところでございます。

古屋(範)委員 やはり女性医師にとって、子育てをしながら勤務を続けるのは大変難しいことであろうと思います。夜勤などがある、そういう病院医というのも大変に難しいと思いますし、また、育児休暇があっても、この日進月歩の最先端医療についていく、このようなことも復帰が非常に難しいのが現状ではないかと思っております。教員の場合には代替教員というものがございます。そのようなシステムをやはりつくることが必要なのではないかと思っております。

 また、保育所の問題につきましても、女性医師の方ともよくお話をするんですが、どちらかというと看護師の方が優先で、なかなか入れないというようなお話も聞いたことがございます。

 このような形で、ライフステージに応じて働くことのできる柔軟な勤務体制、また、そうした最新の医療を学ぶ研修、教育、また病院内保育所など、多方面、総合的な女性医師への支援体制が図られなければならないと思っておりますが、この点に関しましてもいかがでございましょうか。

松谷政府参考人 女性医師が働きやすい環境の整備につきましては、女性一般の場合と同様、例えば、保育所待機児童の解消を目指した保育所待機児童ゼロ作戦の推進、あるいは新エンゼルプラン等に基づく延長保育、休日保育、夜間保育等の多様な保育サービスの提供、さらには育児休業を取得しやすい職場環境の整備など、仕事と子育ての両立支援の促進等に取り組んでいるところでございます。

 また、平成十四年度からは、病院内保育所の運営事業の補助対象といたしまして、従前から看護職員を対象としておったわけでございますが、これに加えて女性医師を含む病院職員の児童を追加いたしまして、制度の充実を図っているところでございます。

 今後は、先ほど述べました一たん離職した女性医師の再就職の支援を含めまして、医師確保対策の一環といたしまして、女性医師が持続的に勤務できるよう努めてまいりたいと考えておる次第でございます。

古屋(範)委員 女性医師とはいえ、女性医師の子供が病気をしないということもございません。やはり子育ての苦労、負担は同じでございます。ぜひとも総合的な、きめ細やかな支援をよろしくお願いしたいと思います。

 このたびの総選挙におきましても女性議員が多数ふえてまいりましたけれども、今後この女性医師が大きく活躍をしていかなければならないと考えておりますけれども、その点に関しまして最後に大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

尾辻国務大臣 今後、全体として女性医師の増加が見込まれるだけでございませんで、例えば産婦人科では、新たに就職する医師のうち半数が女性で占められております。こうしたこともございますので、女性医師の安定的、持続的な就労というのは国民に十分な医療を確保する上で極めて重要な課題となっております。

 このため、女性医師を含めて働く女性のための就労環境整備に取り組んでおりますほか、女性医師に着目した施策としては、女性医師のライフステージに応じた働きやすい勤務体制の構築による就労の継続でありますとか、今局長からも申し上げましたけれども、一たん職を離れた女性医師に対する再就業の促進によりまして、今後とも女性医師の支援に努めてまいります。

古屋(範)委員 少子社会対策、また子育て支援において大変重要な役割を担う小児科医、この育成、また小児医療の充実をさらに求めまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鴨下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

鴨下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷由人でございます。

 今度の総選挙の結果を受けまして、民主党は執行部を交代いたしました。前原誠司さん四十三歳が代表になる画期的な代表選出でございましたが、この執行体制において次の内閣の厚生労働担当を指名されましたので、私なりに、現在の日本の社会が抱えている問題、これを社会政策、社会保障政策、あるいは現在の厚生労働省の守備範囲の中でどのように考えていったらいいのか考えてみたい、こんなふうに思っております。

 大臣も感慨深いと思うのでありますが、前国会からのテーマ、そしてこれからの予想されるこの厚生労働委員会の守備範囲ということを考えてみますと、いわば高齢者医療保険制度といいましょうか、高齢者医療をめぐるさまざまな問題は、私が一九九六年に国会に復帰しましてからちょうど高齢者の一部薬剤費負担が議論をされ、翌年、自社さ政権の内部で抜本改革を二年後に行うという協定を結ばれて高齢者に対する一部薬剤費負担が導入をされたわけでありますが、老人保健制度といいましょうか、あえて言いますと制度ではないこの老人保健制度、そして高齢者医療の問題というものも、私に言わせれば、完全にネグられた、放置された。その中でいろいろな事態が日本では進行する。

 昨年は年金法案がかかったわけですが、これもびほう策と先送り。ことしは介護保険制度が提起をされたわけですが、この最も根幹の改正を要する点とされた適用拡大の問題が、これも棚上げにされてそのまま通ってきた、こういう事態が進んでいるわけであります。

 そして、さらにそれに、今度は反対の極からといいましょうか、後から統計上振り返れば、ああ、二〇〇五年がその年だったというふうに多分皆さん思われると思うのでありますが、人口減少がついに、厚生労働省の予測に、人口問題研究所の予測に反して二年早く、二〇〇五年に、つまりことしピークを打っておるのではないか、こういうのが常識的な判断といいましょうか感覚になっておるわけであります。ピークが二〇〇五年であろうと二〇〇六年であろうとほとんど変わらないといえば変わらないわけでありますが、ついに戦後日本といいましょうか、あるいは明治維新以降の日本で人口減少が始まる、こういう大変大きな構造的な変化が始まっているわけであります。

 そして、さらに、日本を取り巻く状況は、皆様方御承知のように、二極化、リスク化と言われますけれども、その最も基本のところにある事態の転換といいましょうか変わり方というのは、もちろんグローバリゼーションとIT革命が推し進めているということであります。

 私は、この間の郵政民営化騒ぎを拝見しておりまして、ああ、こんなことで日本が何とかなるのかなと、ある意味で寒々としたものを感じながらこの郵政民営化騒動を見ておったわけでございます。といいますのは、このグローバリゼーションとIT革命がもたらした二極化とリスク化というのは、当然のことながら人間集団の中にもそういうものを持ち込んでおりますが、日本の場合には、従来からあった集中と過疎、都市と農村山間部、これも見事に切り裂きつつあるわけでございまして、これを都市部の現役世代の方々の税収や保険料で全国あまねくばらまいていく、とりわけここ十年は借金をしながら公共事業をばらまいたわけでありますが、ここから先はそうはいかない。しかし、にもかかわらず、社会保障あるいは町づくりという面では、本来的には相当程度の分配をしていかなければ、地域社会は多分今よりももっとひどい状況に陥っていくということは間違いがないと思います。

 したがいまして、東京あるいは愛知県を中心にお住まいになる方は、これはまあそこそこの生活をできるのかもわかりませんが、多分四国あるいは北海道、九州、そしてまた、そこも四国の中の都市部ではないところ、あるいは九州の中の中山間地というようなところは、絶対的な貧困になるかどうか、あるいはグローバルなレベルで見て絶対的な額として貧困な生活になるかどうかは別にして、心理の面では極めて疎外をされ、排除をされ、みずからは貧困だというふうな感覚に陥っていくことは間違いがないと思います。

 そこで、この問題を尾辻大臣に少々御感想をお伺いしておきたいわけでありますが、二〇〇四年のOECDのレポートで、日本が貧困率が第五位でございましたか、十年前の貧困率に比べて、日本が一五・三になった。貧困率というのは平均所得以下の人たちの階層が他の人に比べてどのぐらいのパーセンテージを占めるか、そういう率で示すわけでありますが、日本が二〇〇四年のレポートでは一五・三になった。先進国と言われているところ、OECD加盟国ではメキシコ、アメリカ、トルコ、アイルランド、日本でありますから、比べ得るところとしては一番なのか二番なのかわかりませんけれども、そういう貧困率になった。

 現に、改めてそれに付随する日本の各資料をちょっと当たってみますと、日本は六十歳以上の無職世帯というのが二〇〇〇年から二〇〇四年まで一九・一%から二三・二%にふえている。この六十歳以上の無職世帯の貯蓄率はマイナス一六・一%からマイナス二九・二%になっている。貯蓄率が約マイナス三〇%になっているわけであります。つまり、そのぐらい取り崩さないと、当然のことながら六十歳以上の無職世帯の方々は生きていけない、こういう事態に追い込まれているということであります。それから、ちなみに六十歳以上の勤労者世帯の貯蓄率というのは一〇・五%というふうに言われておりますので、無職世帯と勤労者世帯では約三倍、このぐらい貯蓄率の減り方が激しいということになります。

 それから、生活保護のレベルで見ましても、御承知のように、ついに平成十六年度では生活保護を受ける世帯がどうも百万を超して、さらに徐々にふえつつある。そのうち約五〇%近く、これが六十五歳以上の高齢者世帯である。人員にしましても、平成十六年でいいますと百四十二万三千三百八十五名、これは全員の生活保護を受けている人々の数でございますが、六十五歳以上は、まだ去年の数は出ていないようでありますが、平成十五年でも四十八万九千八百四十三名、実に三七・九%の数、全体の、全体というのは生活保護を受けている人々の約三八%の方々が六十五歳以上であるということであります。

 生活保護の中身を見てみますと、この六十五歳以上の生活保護と言われておるものは、金額でいいましても五千八百九十六億円、つまり医療扶助が総額で一兆二千三百六十一億円、そのうち六十五歳以上の方が五千八百九十六億円、四七・七%を使っている。こういう事態が今我々の足元で起こっているわけであります。

 この貧困の問題あるいは二極化の問題というものについて、労働大臣は、この間のいろいろな諸施策に携わってこられたと思うわけでありますが、どういう御所見をお持ちでございましょうか。

尾辻国務大臣 今いろいろお話をいただきまして、そして最後に二極化というふうに言われました。まさしく社会の二極化が起こっておる、これは私もそのとおりに感じておるところでございます。

 したがいまして、そういうときであるからこそ、この社会保障をどうするのかということが極めて大事なときだと思っております。社会保障を今一体的に見直さなきゃならないということで、政府全体で取り組んでおりますし、また官房長官のもとでも有識者会議が設けられて検討されておるところでございます。そのことを所管いたしております大臣として、まさにセーフティーネットの役割をきっちり果たすようにしていかなきゃならないというふうに考えておるところでございます。

仙谷委員 私は先般も、厚生労働省、まさに厚生と労働がくっついた役所の、若いといいましょうか中核的な官僚の方がいらっしゃったので、ちょっと嫌みったらしいことを申し上げたわけであります。といいますのは、二極化あるいは生活のリスク化というふうな問題に対しては、ある意味で、厚生労働というふうな、私が習った大学の学問でいいますと、大河内一男先生の社会保障、社会政策的な観点だけでは全く対応できなくなっておるのではないだろうかと。

 我々が、アメリカ型の社会、大変な所得格差がある。年俸で、もうかる経営者は七百億も八百億ももうかる。そして、低所得者層は膨大に存在して、今申し上げた日本でいう平均所得以下よりもまだ低い人も相当おる。それはこの間のニューオーリンズのハリケーンが示したとおりであろうかと思います。こういう社会が、意外と社会としても安定性を欠くために、非常に問題がそこから発生する。むしろ社会の活性化にもならないというふうに考える。むしろ市場経済あるいは自由な活動を保障するためにも、それ相応の社会的なインフラストラクチャーが備わっていない限り、丸裸の競争を奨励する、小さな政府がいいんだということで、無責任な小さな政府がそこに出現をして、あとは自由にやりなさいというふうな話ではいかんともしがたくなる。

 そういう観点から、旧来型の社会保障という観点だけではだめなのではないか。これはヨーロッパではもうほぼ常識になっておって、要するに貧しくなった人を救う、これもそれほど軽視はできないわけでありますけれども、この救貧をさらに一歩進めて、ポジティブウエルフェアとかという言い方をしている人たちもおるわけでありますが、貧しくなることを防ぐことが社会保障の目的である、そのためには何よりも可能性の機会をつくることだ、あるいは人材、人に投資をすることだ、そういう理論が唱えられているわけであります。

 そこで、私は、まさに厚生労働省のこの労働の方は、文科省の教育とうまく統合をして人づくりに向けて大きく踏み出さなければならない、こういうふうにこの間も申し上げたわけであります。

 労働関係の方々も、割とそのことには、いや、わかっちゃいるけどやめられないという日本の厳然とした縦割り構造の中で、ある意味で、厚生省と九八年の省庁再編成で一緒になったことでほっとしているのか何か知りませんけれども、新たな人材投資の方に大胆に踏み込んでいかない。あるいは、厚生労働省という省のトップがそんなことを言い出したら、どなたかにしかられるのかどうなのかわかりませんけれども、そういう話が全く今のところ出てこない、つまり政治の中での議論としても出てこない。私は、もう一度この厚生労働省をもう少し機能的に細分化、分散をし、かつまた統合させるというふうなことをやらなければ、日本のポジティブな社会保障というかそういうものは打ち立てられないのではないかというふうに思います。

 とりわけ、後からフリーター、ニートの議論をされる方がいらっしゃると思いますけれども、現在の労働状況、あるいは所得の二極化、あるいは地域と都市の二極化というふうな状況は、私は、もう一度原点に返るとすれば、それは一九九四年だったでしょうか、イギリスの労働党のブレアが首相になって、一に教育、二に教育、三、四がなくて五に教育だ、教育、教育、教育だと。何を言っているんだこの人はと、私は当時は思っておったわけであります。つまり、それほどイギリスというのは教育が、つまり我々の言う公教育が劣悪なのかな、こんなふうにも思ったりもしたことがあったわけでありますが、そうではなくて、子供の教育、学習、大人の教育、学習。

 労働力は十年間で陳腐化するというこの現代社会の極めて速い流れの技術革新や産業構造の変化や、あるいは、日本でいえば、中国その他の東アジアの諸国、あるいは東南アジアの諸国との経済の垣根が低くなってくる、その中での労働力の質が問われる、こういう時代になってきたときに、ここに公共政策といいましょうか公共的な取り組みがなされないと、そこもみんな各自が勝手に訓練するなり勉強するなりやってみろということだけではどうもうまくいかない。そこを、日本の官僚的な仕組みを改めてつくれということではなくて、市場原理や競争もそこに取り入れながら、そういう人的資源の刷新といいましょうかあるいは活性化、こういう政策のところに資源配分を移す、予算を移すということでなければならないと思います。

 労働問題の担当をもされている大臣、いかがでしょうか。この文部省との関係を再編成してみる、単なる連携ということではなくて、そういうふうに骨組みを変えて考えてみるというふうにお考えになりませんでしょうか。

尾辻国務大臣 今、大変大事な御指摘をいただいたというふうに思います。

 直接の御質問ではございませんでしたけれども、途中でお触れいただきました、厚生省と労働省が一緒になった、せっかく一緒になったんだからこの利点を生かして施策にまた反映させるべきだというお話は、私どもも全くそのとおりだと思っておりまして、まだその点で足らないところがあるというふうに反省をいたしておるところでございます。

 それから、最後の御質問にお答えする前に、実は私も本当にそうだなと思っておりますことについてお触れいただきましたので、あえて述べさせていただきたいと思います。それは、ニート対策あるいはフリーター対策でございます。

 私もできるだけ現場を見に行こうと思いまして、この対策の現場、ヤングジョブスポットでありますとかヤングハローワークでありますとか、そういうところを見ております。そうしますと感じますことは、これはもう単に労働施策でやっているものではない、それで十分と言えるものではない、本当に一人の人間の教育として、また一人の若者が世の中で頑張っていってくれるように、役に立つようにということで、まさに教育だという思いがいたしております。

 そして、それは、しかも費用のことを考えても、費用に合うように効果を出せと、よく言われる費用対効果というような発想で考えてもそれはとても無理だ、一人に対して一人で徹底して対応してでも、人間一人頑張ってもらうようになるのであればそれは惜しくないということを言っておりまして、今、先ほど先生が言っていただきましたようなことを強く感じておるものですから、あえてそのことも申し上げたところでございます。

 こういうふうに申し上げますと、最後の先生の御質問に対する答えも、私が何を言いたいかということはある程度御理解いただけると思いますけれども、まさに先生が言っていただきましたように、そして私どもも、このごろの施策の中では、特に若年者の労働に対する施策の中では、例えば若者自立・挑戦プランといったようなものは文部科学省と連携して取り組んでおりますし、キャリア形成ということでいいますと、もう広く教育でありまして、それは学校教育であろうと社会教育であろうと教育の中でやるべきでありますし、また、社会教育といった途端に、これは何も文部省ひとりのものではない、私どもも積極的に連携しなきゃならない部分もございますので、方向としては、ぜひ先生がお述べになりましたようなことで進めていかなければならない。ただ、具体的にそれをどう進めるかというのは、またいろいろ御指導もいただきたいというふうに思っているところでございます。

仙谷委員 私は、今の労働大臣の御答弁も多とする部分はありますが、全くいらついております。それは、予算が、局別予算、課別予算、この下からの積み上げでしか毎年毎年組まれないために、本当に必要な統合的な予算とか、どんと新しい分野をつくってそこへ集中的に資源を投入して現在の日本で必要な施策をやっていくということが全くできないということであります。

 これは、一つは、大学が身動きしない。もっと言えば、文部省がもっと身動きしない。例えば、キャリアコーディネーターということが、先ほど尾辻労働大臣のお話との関連で、数年前に言われました。当時は、キャリアコーディネーターの養成をする専門の大学院の講座を持っているのは筑波大学に一つあるだけだと聞いておりました。

 これは質問通告していないから文科省の方は答えなくてもいいですけれども、きのうも、例えば専門職の話として、がんの臨床腫瘍内科、この講座が以前は北海道大学一つだった、昨年か一昨年だったと思いますが、近畿大学にできた、今どのぐらいふえてきたんだと。つまり、この間のがんの患者さんたちの動きも、あるいは厚生省の動きも、私に言わせれば遅々としてではあるけれども進んできた。ここを大胆に、がん克服十カ年戦略をやるとおっしゃるのであれば、今、焦眉の課題は、抗がん剤の問題であったり、腫瘍内科の問題であったり、それは国民の、完治というよりもQOLを高めるような治療が必要なんだというのががんの世界でほぼ主流になりかけたときに、この化学療法といいましょうか腫瘍内科の世界というのが極めて重要だと思いますけれども、これがどのぐらいふえてきたんだ、あるいは専門職を養成するために何がなされておるんだ、こう聞きましても、少なくとも文科省はほとんど反応をされないわけであります。これは独立行政法人になった大学が自由にやっている、こんな話になるわけであります。つまり、国家としての、あるいは中央政府としての統合的ながん治療の政策というのは、あるいは施策というのはあるのかという議論になるわけであります。

 厚生省の今度の、新しい鳴り物入りの対策本部をつくった概算要求といいましょうか、がん対策本部をつくって、そのもとにこういう施策をやるぞというので、対策本部をつくりました。しかし、これを拝見しますと、ことしは初年度だからこんなものだろうというふうに思うのか、やはりこれは金額が一けたは違うんじゃないですかと考えるかの違いだと思います。

 私は、ちなみに、最も日本でこういう面で心配をされている方に聞きました。腫瘍内科の講座を早急に例えば各大学につくるとすれば、人件費とか施設費とか講座の運営費とか、そういうことを考えて、一大学に一億円ぐらいあればこれはできるというわけですね。七十大学としても、単年度七十億円あればできるというわけです。ところが、そんな予算は、厚生省はもちろん、文部省の領域であるからつけるわけにいかない、こうおっしゃる、多分そうおっしゃるんでしょう。文部省がそういうのをつけたということは、つとにして私は伺いません。

 それから、厚生省のがん対策の来年度の概算要求に係る予算を拝見してみましたら、がん専門医等がん医療専門スタッフの育成、ここで三千四百万円の新規の予算要求をしていらっしゃる。これも一けたか二けたか違うんじゃないかと思いますよ。

 つまり、私も国立がんセンターでちゃんと治療を受けましたが、そのときに、もちろん主治医の先生もよくやってくれました、看護婦さんもよくやってくれた。しかし、土曜日、日曜日まで出てきて細々とやってくれたのは、地方の大学や病院から来ているレジデントの先生方であります。

 このレジデントの先生方を、例えば国立がんセンターで年間七十名ぐらい養成をするということを前提にしますと、現在もそういう前提で募集をしているようであります。ところが、レジデントの先生方は約三百六十万円ぐらいしかお手当が出ないということでありますから、必死に土曜日、日曜日も修練のためにということで出てきておるわけでありますけれども、出てくるそのレジデント候補生は約十年ぐらいはたっているわけですね、お医者さんになってからは。それが平均だということであります。三十五歳前後であります。

 二年とか三年とか、あるいは長い人だったら五年ぐらいの臨床の研修をすれば、一人前になって、どこへ帰っても立派にやれるということになるわけでありますけれども、こういう方々がこのお手当というか給料では、よほどおうちがいい方や財力がある方や、若いときに例の宿日直をしてアルバイトをして稼いでためた、こういうことで三年や五年はそういう専門家として修練をしてみようという人しか来られないということがあるようであります。

 大臣、情報センターも結構ですし、拠点病院の相談センターも結構です。しかし、私に言わせますと、すべて予算づけが零が一つ少ない。何か初年度だからということなのかどうかわかりません。これでは本当に、少ないものをぱらぱらと全国に振りまく、御飯のふりかけみたいな話になって、がん克服十カ年戦略で、さあ、ここからは、今まではハードに少々偏った、あるいは基礎研究に偏ったんだけれども、ここからは臨床で、がんの患者さんあるいはその御家族に対して、もう少し安心してもらえる、あるいは納得性が出てくるようながん治療に向けて前へ向いて動くんだ、そういうふうにはなかなか思えないのでありますが、いかがでございましょうか。

尾辻国務大臣 数字につきましては先生がよく御存じのとおりでありまして、また今も幾つかお述べになったとおりでございますから、改めては申し上げません。お話しのとおりであります。

 そしてまた、今お述べいただきました途中でも言っていただいたことでございますが、何しろ今まで予算がゼロであった、そうした予算を組んでいなかったものに対して、ことしの要求で、すなわち来年度に向けての要求でございますけれども、これで私どもとしては精いっぱいの要求をいたしたつもりでございます。

 その額が少ないとおっしゃいますと、これは本来もう少しあればいいというのは私どももそのとおりに思うところでありますけれども、何しろ初めての要求でありますし、また精いっぱいの要求をいたしたつもりでございますので、どうぞ、今後とも、先生方のまたいろいろな御意見を賜りながら、御指導もいただきながら、これがさらに大きな額になるように努力していきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

仙谷委員 後にあるいは後日、アスベストの中皮腫治療の問題も出てくると思います。

 この間、三時間のテレビに、鹿児島から大臣、出演されて、中皮腫というのも、がん治療の中でもまた特異なというか専門的な分野で、専門家がほとんどいない、たらい回しにされたあげく私の母は死んでいきましたみたいな話をされて、大変つらいようなお顔をされていました。

 これは本当に、がん治療の世界あるいはその中のアスベストを原因とする中皮腫の問題も含めて、専門家はいることはいるんだけれども、まさに極めて少なくて、全国に均てんされてはほとんどいない。これは、積極的に養成をする、お金をかけて養成をするということ以外には解決のしようがないわけであります。

 がんの化学療法についても、未承認薬の問題もあれば適応外使用の問題もあったけれども、そこは徐々に遅々として進んでいる。しかし、未承認薬の問題にしても、国際的には標準治療薬になっていて、これを使える人がいないと結局のところはどうにもならない、専門家がいないとどうにもならない、こういう話になるわけでございます。したがいまして、ここはどうやって専門家を養成するのか、これはもう極めてそれほど難しくない話であります。

 つまり、一つは文部省との関係、一つは厚生労働省内のほかの局の予算でも抜いてきてでも使うぐらいの迫力をやはりトップリーダーが示さない限り、私は解決しないと思います。ひとつ、十一月二日以降もその席に大臣がいらっしゃることを期待し、なおかつ、そういう観点で頑張っていただきたいと思います。

 それからもう一つ、次の問題でございますが、例の在韓被爆者の福岡高裁の判決、広島高裁の取り下げ等々の問題であります。

 これも我々から見れば総額として大した金額ではないんだけれども、どうも小出しにちょこちょこちょこちょこ出して、ある種、戦後処理ができない。

 私は、実は、一九九〇年から、サハリン残留韓国人の問題、それからこの在韓被爆者の問題にも少々かかわってまいりました。韓国被爆者協会の方の要望は、当然のことながらおわかりになっていると思います。

 この協会へも御協力をいただいて、現地で被爆者健康手帳がとれるようなことを、早急にその手続ができることをしていただく、こういうことができないでしょうか。そして、もう残り少ない人生に、一応は全部ちゃんと同じように健康管理手当が払われる、そういう方向性で法律上は問題がないはずでありますから、あと規則とか省令か政令か知りませんけれども、そういうものは変えるのは大臣の一声で変わるわけでありますから、そういう方向で。

 今、この韓国被爆者協会は二千三百六十四名いらっしゃって、千九百名が手帳を持っておるけれども、手帳を持っていて手当がもらえない人が十七名、四百六十四名が手帳を持っていない、それから未加入者が百五十名ぐらいおって、六百名ぐらいの被爆者が無援護のまま残っている。この人たちに手帳をとらせてほしいというふうに私の方へも要望が参っております。

 これは、この人たちに手帳をとらせて手当を払う、そして、治療はその気があれば日本でも当然のことながら受けてもらうし、韓国でも治療ができるのであれば治療してもらう、こういう観点で、前を向いてあらゆる困難を乗り越えてというか、バリアをつぶしながらやっていく、こういうふうにさらに一歩進めたお考えを尾辻大臣からお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 ただいまの在外被爆者のことでございますけれども、まず、先日の福岡高裁判決につきましては、これは健康管理手当等の申請に係るものでございましたから、上訴しないということを決めたところでございます。

 このことについてもそうでございましたが、今の手帳のお話でもそうですが、大きく考えなきゃならないことが二つございまして、一つは、法律がどうなっているかということでございます。それからもう一つは、実務がどうなるかということでございます。

 この福岡高裁につきましては、法律の解釈についてはいろいろ私どもも言いたいことがありましたけれども、これは被爆者の皆さんの年齢も考えまして、高齢化しておられるといったようなことも考えて、そういうことは言うまいということで、私は政治的決断ですというふうに表現しましたが、まさにそういうことで上訴することを見合わせ、今後手当の申請は海外においてもやらせていただく。これは、窓口にするという意味でありますけれども、最終的なところは都道府県になるわけでありますが、今そういうことを決めさせていただいたところであります。

 今、今度、改めて手帳の話でございますが、では、手帳の話について法律がどうだということでいいますと、今度の判決の中でも述べられておるところなのでありますけれども、どうしても手帳の方は「居住地の都道府県知事」、こういうふうになっておりますので、今の法律のままで海外における手帳の申請をということは非常に難しいと実は判断をいたしております。

 実務的なこともいろいろあるんですけれども、まずそこのところがありますので、ここをどうするか、やるとすれば法律の改正しかないと思っておりまして、ここのところの御議論をいただければというふうに思っておるところでございます。

仙谷委員 私どももそれじゃ緊急に法律改正の観点からも取り組みますが、要は、金額にしてこの程度のことをああだこうだ言って延ばすというのは、私は、甚だ日本の東アジアにおける国際的な評価にもつながってくる問題で、できるだけ早く解決していくということが必要だと思います。

 きょうは、実は、医療費の総額管理とか医療費抑制の問題、あるいは現在の医療の問題点等々についてもお伺いしようと思いましたが、時間が終わりましたので次の質問者に交代をいたします。どうもありがとうございました。

鴨下委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 久しぶりにこの委員会に戻ってくることができましたので、なおかつ大臣がまだいらっしゃったということで、私も本当に大臣と昨年からいろいろな議論をさせていただいてまいりまして、ぜひきょうは大臣に、率直な御意見といいますか、大臣の御所見をお伺いしたいという思いで、まず質問をさせていただきたいなと思っているところでございます。

 つまり、ずっと大臣とお話をさせていただきながら、質問をさせていただきながら、去年から、本当に近年まれに見る前向きなといいますか、だれと比べているんだと言われると、ちょっとそれは語弊があるので私は申し上げませんけれども、本当に誠心誠意その当事者の立場に立って大臣が御答弁をしていただいているというのは、本当に私からも、若輩者でございますけれども、拝見をさせていただきまして、その誠意が伝わってまいったということでございます。したがって、今後も、私が決めることではありませんけれども、ぜひこの厚生労働という立場の中で大臣には引き続きお願いができないかなという思いはございます。

 ただ、先般大臣も十月二日にお誕生日をお迎えになられたということで、本当におめでとうございます。どなたもきょうお触れになる方がいらっしゃらなかったので、私からもちょっと触れさせていただいて、高齢者医療という部分も、これで晴れて前期高齢者の仲間入りをされたということでありますので、きょう一番最後に医療制度改革についても用意させていただいておりますけれども、順番を追って、そういった観点も含めて、大臣がこれから本当の意味で、国民の生命財産、あるいは医療制度、そしてさまざまな厚生労働行政の分野に対して真摯なるお考えと御答弁をいただければなというふうに思っております。

 前国会から、私もつたない能力でありましたけれども、さまざまな当事者の方々から御意見を聞きながら、障害者施策に対して考えながら審議をしてまいったところでございます。御承知のように、きょうも午前中に少し触れていただいた方もいらっしゃったわけでありますけれども、衆議院では通過をいたしたわけでありますが、参議院で郵政問題をめぐって廃案という形になって、再度、今参議院で審議をされているというところでございます。来週にはこちらの衆議院の方に回ってくるという形でありますけれども、その際に、私は、今まで実は大臣とこういう議論をしてこなかったのかなというちょっと反省も踏まえて、これは厚生労働大臣としてではなくて、政治家尾辻さんという形ででも、ぜひ思いを聞かせていただければなという思いがあるんです。

 つまり、この障害施策を考えていく際には、よく私もこの委員会の中でも触れさせていただきましたけれども、そもそも施策そのものがやはりまだまだ小さい形でありますよねと。ヨーロッパ諸国に比べればまだまだ低い、欧米諸国に比べてもまだまだ低い状況の中で、ようやくこの支援費制度が十五年から始まって、当事者の方々からすれば、本当に明るい社会をこれから自分たちが一生懸命努力することによってつくっていけるんだ、そういう明るい兆しが見えてきた、光が一筋見えてきた。もっともっとできれば我々がそれをお手伝いさせていただく、そういう方向に持っていくことができれば、政治家にとってはこんないいことはないのかな、政治家冥利に尽きるのではないのかなという思いでいっぱいでありました。

 したがって、今回の障害者自立支援法案、政府案が提案をされております。恐らくいろいろな御評価があろうかと存じますけれども、そういう中には、御承知のように、精神も含めた一元化を目指した、私はこれは一歩前進であったというふうに、率直に言えば評価のできるものであったと思います。

 それから、義務的経費化、これも午前中に出ておりましたけれども、これも率直に言って、確かに今までは、支援費制度、措置から支援費になったんだけれども、それは裁量的経費の中でしか予算を確保することができなかった。毎年毎年、予算不足に陥ってしまった。そういう中で、義務的経費化に一歩踏み出したという点は、私は本当にいい判断をしていただいたのかなという思いもしておりました。

 ところが、先ほどの御答弁の中では、その義務的経費化の中に、別にこれはセットという話ではないのかもしれませんけれども、別の理念で定率負担という形を出してこられたという形がございました。私は、この定率負担というものの概念がいまだに実はよく理解ができておりません。すなわち、なぜこの定率負担を導入しなければいけなかったのか。まあ、それは後で局長にお伺いをしたいなと思っているわけでありますけれども。

 ここで大臣にお伺いをしたいのは、申し上げたいのは、自立支援法とは少し離れて、そもそも原点に立ち返っていただいて、この障害福祉サービスというものが、これはすなわち国の税で見るのか、よくこれはずっと議論がされてまいりました。税で見るのか保険で見るのか、そういう議論がずっとあって、いまだにこれは何か私の中でも明確に答えが出ていない、そして答えをいただいていない、すっきりしてこないままにずっとここまで来てしまったというのが率直な、私も思っているところでございます。

 したがって、ぜひ私がきょう大臣に一番最初にお伺いしたかったのは、そしてずっと今までお伺いをしてこなかったのは、この障害福祉サービスについて、国の責任で税で見ていくのか、あるいは保険で見ていくのか、これからの福祉サービスのあり方、基本原理に対してどういうお考えを大臣はお持ちであるのかということを、まず一番最初にお伺いしたいと思います。

尾辻国務大臣 個人的な意見だとお断りして申し上げますけれども、やはりこうした障害者の皆さんに対する福祉は保険方式で考えることではない、保険で考えることではないと思っております。したがいまして、どっちかというふうにお尋ねになりますと、やはりこれは税金でやるべきものと考えております。

園田(康)委員 ありがとうございます。何か今までもやもやしたものが一挙に晴れたような気がいたします。

 基本は税で見ていく、すなわち扶助原理というものがこの中でしっかりと機能していくものであるというふうにまず考えていかなければいけないんだという基本の立ち位置が、私はしっかりとこれで大臣というよりも政治家尾辻さんと一緒に共有できたのかな、初めて私は共有できたのかなという気がいたします。つまり、ずっと今までの議論の中でなぜか腑に落ちなかったのが、保険原理でいくのとそれから扶助原理でいくのと、何か議論の中でごっちゃになっていた部分があったんですね。

 では、今度は話を戻させていただいて、政府から提案をされている自立支援法案の中身を見ますと、よく局長からの答弁、参議院の答弁の中にも少しあらわれていたのかなというように、私もちょっとしっかりと聞いていなかったもので、きょう後で確認をさせていただきたいんですけれども、今回義務的経費化をしたんだ、すなわち国でまずこれはちゃんと見ていくんですよといいながら、それが定率負担という形で一定の負担を、いわば応益負担という形で、言葉は違いますけれども応益負担という形になってきているということからすれば、義務的経費化イコール定率負担(応益負担)という形がどうもあの法律の中には私は見えてきていたんですね。

 そうすると、本来普通に、先ほどはちょっと我が党から、大変高尚なといいますか、新しい社会保障のあり方、理念、原理を考えていかなければいけないんだということがありまして、私もこういう若い人間なんですけれども、オーソドックスな原理を申し上げてしまっていることについてちょっと恥ずかしく思っているわけなんですが、すなわち、本来オーソドックス的な考え方でいくと、社会的リスクというものは保険原理で賄っていくんだ、いわば介護でもそうですけれども、社会的リスクというものはそういう保険原理で見ていく。ところが、自分の責任によらない、そういうものに関してはいわば税で見ていくというのが私の中でのオーソドックスな社会保障のあり方、原理であるのかなという思いがしていたんですね。

 そうしますと、保険原理で考えるということであるならば、当然のごとくそれは応益負担という形で、それをサービス利用される方にはそれ応分の負担をしてもらいますよ。すなわち、今回でいうところの定率負担という考え方がその中でマッチをしていく。ところが、扶助原理という話でいくならば、これは応能負担、すなわち自分の責によらないものに対して税で見ていくということであるならば、当然この原理の中で出てくるのは応能負担でありますから、応益負担という形にはどうしてもそこにはなり得ないものではないのかなと私は思っておりました。

 そうしますと、そこで局長にちょっとお伺いをさせていただきたいんですけれども、今回この自立支援法案の中身からいくと、最初は残念ながら、昨年の暮れからことしの頭にかけて私が説明で伺っていたのは、定率負担ということではなくて応益負担という形で出ておりました。でも、それが違うんですよということで定率負担というふうに直されました。だけれども、内容は括弧して応益負担であったと。

 なおかつ、今度、今説明を受けますと、いや、定率負担で応益的な部分はあるんだけれども、その中に応能負担をいわゆる上限をつけて、あるいは軽減、低所得者対策という形で、低所得者の方々にはそういう能力の部分だけで負担をしていただきますよという応能負担的な部分をこの中で入れてきたというふうにお答えをいただいているわけなんですね。

 だけれども、基本路線は、ここからすると、どうしても義務的経費イコール定率負担(応益負担)だという図式でしか私には伝わってきていないんですけれども、この定率負担の概念と、それから、なぜ自立支援法案の中に、私が考える、実はこれはほとんどの方がそのように考えていただけるのではないかと思うんですが、当然、この障害福祉サービスの中においては、扶助的原理というものが入ってくるならば税で見ていくというのが基本の中に入ってこなければいけないというふうに考えるんですけれども、どうでしょうか。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 今、財源の問題として、保険料か税が財源か、また保険的な原理でやるのか扶助原理でやるのかというお話がありました。

 一つは、委員のお話の中で、自分の責任によらないのは扶助原理だみたいなお話、責任によらないリスクは扶助原理ということが上げられていましたけれども、私の考えでは、例えば生活保護、貧困になることが自分の責任であるかどうかということは別として、最低生活を保障するためにやるということなので、そういうリスクについて自分の責任の有無というのは余り扶助原理とは関係ないと思いますので、そこはちょっと、私お聞きしていて、まず一つ違うのではないかなと思いましたので、させていただきます。

 それで、保険原理とか扶助原理というのは学問的な世界でいろいろ整理されているところで、保険原理は保険技術に基づく所得の再分配で、保険料が財源で負担は応益負担が一般的である、こういうふうに整理されておりますが、現実の世界では、日本の医療保険でも、例えば高額療養費などにつきましては所得に応じまして上限が違うとかいって、そういった意味では、その方の所得に応じた応能負担原則的なものが採用されているとか、扶助原理は、従来の学説では非常にユニバーサルな給付ではなく選別的に給付するものだ。選別的にというのはどういうことかというと、例えば高所得者は対象にしない、低所得であるということに着目して選別的に給付する。低所得に着目するということで、高所得者からはより多く取るということで応能負担である。制度としては措置制度がなじみやすい。こういうふうに学問的に整理されてきたと思います。

 老人福祉も昔は措置制度で応能負担でございましたけれども、介護保険にし、応益負担的になっていますが、負担の上限があるとかそういうところではいろいろ修正を経ているというのが今の姿ではないかと思います。

 この今回の自立支援法は、そういった意味では、所得の有無にかかわらず障害を持っておられる方のニーズに応じましてユニバーサルにサービスを提供する。そういった点では介護保険に近く、いわばすべての方に普遍的なサービスを提供するという前提に立って給付がなされている、そういう制度を保険料ではなく税でやっている、そういう組み立てをしておりますので、いわゆる従来の保険原理、扶助原理の一般的な整理を超えまして、どなたにも契約に基づいて給付を保障する。

 そういった意味で、ユニバーサルな制度にするということで原則定率の負担をお願いしますが、しかし、定率負担が強い世界での医療保険でも所得に応じた配慮をしている、この分野においてはもっと配慮が必要であるということで、所得に応じた上限を設けるほか、再三議論になっております、その方の資産並びに所得に応じてさらなる個別減免措置を講ずるとか、食費や居住費の負担につきましても手元にお金が残るような軽減措置を講ずるというような形で整理させていただいております。いわば保険原理で一般的なユニバーサルな制度を税財源を使ってやっていくということで構築している制度だというふうに理解いたしております。

 なお、そういう費用負担につきまして、国の財政責任を支援費制度の反省に立ち明確にするという意味で、従来、義務的負担でなかった在宅サービスに対する部分についても義務的負担にするという措置をあわせてとって、障害者行政の推進に支障のないようにしていきたいというのが今回の自立支援法だと考えております。

園田(康)委員 そうしますと、いわば措置の時代から行政の税の時代に来て、そして次に来るのは、やはりそういう形で応益負担というか定率の負担をこれから求めていくという、その論理展開の中の今は一過程にあるというふうに理解をするのでしょうか、この法案の位置づけというのは。

中村政府参考人 御説明申し上げましたように、ただいま税の財源のもとに契約制度を取り入れ定率負担を導入する今回の障害者自立支援法でございますが、これは何かのプロセスというふうには私ども考えておりませんで、障害者自立支援法は障害者自立支援法として、障害者の福祉や医療のニーズに対応するべくつくられているということでございます。

 このほか障害者の方の使われるサービスとしては、医療については医療保険があり、介護については介護保険があり、現に六十五歳以上の方については介護保険制度が障害者の方にも適用され、また、その介護保険制度が一般制度でございますので優先されますが、さらなるニーズがある方については、現在でも六十五歳以上の障害者の方に対し横出し、上乗せのサービスがなされておりますので、そういう整理が障害者自立支援法でも引き継がれるということでございます。障害者自立支援法は障害者自立支援法として完結した世界でございますので、これは何かに向かうプロセスであるというふうには考えておりません。

園田(康)委員 そうしますと、当然のごとく、二十一年度に、我々は、附帯決議の中にも出てきましたけれども、衆議院の中でつけさせていただきました、介護保険との関係を見直すとともに、この障害者自立支援法も介護保険の被用者保険の拡大というものも念頭に置いているわけですよね。いるわけですから、当然のごとく、この自立支援法の中にも、先ほど局長もおっしゃっていただいたように、介護保険の利用できるところは利用していく、活用できる部分に活用していくという形でありますから、すなわち、その中で保険原理がこの中に入ってくるというふうに私は理解をしているのですけれども、そういうすみ分けでいかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、介護保険は原則六十五歳以上の方の給付になっております。介護保険については検討して結論を得ることになっておりますが、今委員からの御質問でございますけれども、介護保険の年齢が下がってくるということになりますと、障害者の方であるなしにかかわらず、その下がってきたまでの年齢の方は介護保険の要介護認定を受けてサービスを利用することが可能になりますし、自立支援法の方は、支援費制度もそうでございますが、現在でも介護保険制度の対象になる部分についてはその部分に限って給付しない、こういう一般制度と特別制度の整理をしております。

 そういった意味では、介護保険制度のカバーする部分については、介護保険制度は保険原理の分野でございますので、年齢が広がればそこの部分は広がるということは委員御指摘のとおりでございます。

園田(康)委員 したがって、本来の私が考えているものと少し違う制度に移行をしようとしているのかなという部分は、ちょっと私自身は今伺っていて感じているところでございますが、この点についてはもう少し、この法律そのものが衆議院に来てからお話をさせていただきたいと思います。きょうは一般質疑ということで、時間がございませんので次に行かせていただきたいと思います。

 その中で、やはりずっと不安になっている部分に、所得保障という部分がございました。先ほども少しお話が出ておりまして、やはりこれも衆議院の附帯決議をつけさせていただいたときに、所得保障も考えていくんだということがこの中で明記をされているわけでありますけれども、その後の検討状況というのはどのようになっているんでしょうか。簡単にお願いします。

中村政府参考人 廃案になったものの附則の修正がございましたし、附帯決議にも盛り込まれております。

 まず、今度の法案では、そこのところの検討規定を盛り込んで提出させていただいております。年金や諸手当との関係、サービスを賄うための負担のあり方、就労支援対策、家族、地域社会との連携、今度の自立支援法案でも、就労支援対策あるいは自立支援対策を強化するとされておりますので、それらとあわせて自立支援法規定の三年後の見直しに向けて結論を得てまいりたいと考えております。

園田(康)委員 ぜひこれは引き続きやっていかなければいけないものでありまして、と同時に、本来ならば、障害者基本法ができているときにはもう既にこの所得保障、所得のあり方を考えていくんだという方針が示されているんだけれども、やはりこれも他の制度と整合性がつかないということでなかなか前に進んでいない状況がありましたので、私は、もっと急ぐべきである、三年をめどにという話ではなくて、速やかにできるところからどんどん打っていく、手当ないし就労支援は今回の自立支援法の中に入っておりますけれども、手当でいけるものであるならば、年金に限らず、私はやっていただきたいというふうに考えております。

 そして、今回、この自立支援法に関して、障害程度区分の判定等試行事業というものがやられまして、六十市町村でこれがなされました。その検討結果が今出てきている状況でありまして、先般、十月五日に速報を私もいただいて御説明をいただいたわけであります。

 この中で、残念ながら、この介護保険の部分における要介護認定の認定調査項目七十九項目、これにプラスして、多動やこだわりなど行動面に関する項目、あるいは話がまとまらない、働きかけに応じず動かないでいるなど精神面に関する項目、及び調理や買い物ができるかどうかなどの日常生活面に関する項目、計二十七項目を足して百六項目、これによって選定の試行事業が行われたものであります。

 その結果をちょっとはしょって見ると、後でひょっとしたら御説明をいただけるかもしれませんけれども、すなわち、一次判定と二次判定では大きな開きが出てきているわけなんですね。一次判定結果については七十九項目、これは介護保険の項目をそのまま流用してやった結果から、最終的な結果として二次判定におけるケースで、変更率が五〇・四%もあったという形であったわけなんですね。

 この結果を受けて、再度、この最終結果は、やはりその二十七項目を足して、最終結果は変更して、程度区分ができてきましたよ、そして、その程度区分の結果、非該当から要介護五までの中で、これから障害の種別といいますか区別の区分をしっかりとこの中でつけていきましょう、調査をしていきましょうという形になっているんですが、私からすれば、これだけ調査結果を受けたわけですから、一次判定から二次判定のこの変更率の多さ、同時に、二次判定というのは二十七項目を足して行ったわけですから、最初から百六項目、今度は実際に足したものでちゃんと調査をもう一度やって、その結果が、全国の試行事業の中で、それで本当にこの項目がその区別をしっかりとあらわしているものであるのかどうかということを、私はこれはぜひやっていただきたいと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。

中村政府参考人 今委員に御説明いただいたとおりのプロセスでモデル事業が行われ、結果が出たところでございます。

 今委員からお話がございましたように、二十七項目加えました百六項目を一次判定データにすべく作業をいたしているところでございます。これらについてどの程度いわば検証作業もできるかどうか、時間との関係もございますけれども、努力してまいりたいと思います。

 また、介護保険の際もそうでございましたが、介護保険制度も要介護認定をやってみましたところ、認知症の高齢者の要介護認定の出方が十分ではないということで施行後も修正に努めた経過もございますので、私どもこの百六項目の判定についてまず精査していきますとともに、仮に制度施行後も改善の余地があれば、数次にわたる改善を加えてまいりたいと考えております。

園田(康)委員 ぜひ正確なデータのもとに検証作業というものを行っていただきたいというふうに思います。

 それから、もう時間がありませんので、あと三項目をお願いしていたわけなんですが、薬物対策について申し上げておかなければいけないと思います。

 先般、残念ながら我が党の関係の中にも麻薬を使用した、そして逮捕されたという者がおりました。本当に言語道断な話であると私は思っておりますし、そういう人物がもう二度とこういう形の中であらわれてこないということをしっかりと私はやっていかなければいけないと思っておりますし、残念ながら政府の中でも、自衛隊の関係者の中、あるいは警察の関係者の中にもそういう方がいらっしゃったということで、さらにこの薬物対策というものを強化していただきたいというふうに思っているところでございます。

 今回の衆議院選挙の中では、私ども民主党からのマニフェストの中に、薬物対策というものをしっかりと打ち出して、しかも薬物依存症の中毒者の治療や自立支援及び家族の相談というものの支援策、こういったものもちゃんと打ち出していかなければいけないというふうに申し上げていたところでございます。

 今回のこの障害者自立支援法の位置づけの中で、地域生活支援事業の中には相談事業というものがあるわけでありますけれども、これは民間団体の活用というものも当然のごとく、こういう薬物依存をされておられる方々の家族に対する相談支援、あるいは相談事業、あるいはさまざまな支援というものをこの中の事業の中で行っていくということは、これは私は可能だというふうに考えているんですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。

中谷政府参考人 御答弁申し上げます。

 現在でも薬物依存・中毒者の方を対象といたしました福祉面での支援を小規模作業所などで行っている事例があると承知しております。今般の自立支援法におきましても、このような活動が地域活動支援センターという形で場合によってはできる、このような仕組みを考えているところでございます。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 あと、難病対策についても準備をさせていただいたわけでありますけれども、きょうは時間がなくなってしまいましたので、また後日にお伺いをさせていただきたいと思います。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 きょうはアスベスト問題を中心に大臣に御質問をしたいと思っております。

 今、国民全体にアスベストの不安が広がり続けています。連日、どのテレビを見てもアスベストに対しての不安の声、ニュースなどが次々と起こっています。そんな中で、私たち民主党は対案を提出する新しい執行部をつくりました。このアスベスト問題についても、自民党、そして与党の法案に対してのしっかりとした対案をまとめていきたい、そして、その骨子として、まず二つお話ししたいと思います。

 政府・与党は救済という言葉を使っています。私たちは救済ではなく補償だと訴えていきたいと思っています。まず、救済と補償の違いの中で、行政の対応がおくれたことを認めるかどうなのか、救済という形で責任はないけれどもやってあげるのか、それとも私たち行政や政治の対応がおくれたから補償するのか、それが論点の一つ目です。

 そして、私たち民主党は、二つ目として、もう一つお訴えしたいと思っています。アスベストの救済の法案ではなくて、しっかりと今あるアスベストを除去する、そして処理をする、そういった三十年後のノンアスベスト社会を目指した、除去や安全処理を目指した、そういうものも盛り込んだ法案をしっかり対案として提出し、通常国会も含めて、このアスベスト問題、大臣そして与党の皆様方とともに議論していきたいと思っています。

 まず、救済か補償かの問題で、私は大臣に期待をしています。数年前、菅直人さんが厚生大臣だったときは、きちんと行政の手抜かり、そして不備を認めて国民から高く評価されました。今回も、行政の対応がおくれたことはだれの目から見ても明らかだし、どのマスコミも主張しています。しかし、今、救済だとか行政の対応のおくれはなかったと強弁している中、大臣が率先して、実際やはりこれはおくれていたんだ、だから救済じゃなくて補償なんだとおっしゃっていただければ、名大臣として今後も語り継がれることになるのではないかと期待をしております。

 そこで、その救済か補償かの話の前に、今回、「政府の過去の対応の検証について」という厚生労働省が出した文書を皆さんにお配りさせていただきました。資料一でございます。救済なのか補償なのか、行政の対応に手おくれがあったのか、不作為があったのか。

 さて、そこで、今、厚生労働省が九月二十九日に出した文書、皆さんにお配りしている文書を見ますと、五行目の時点におきまして、こう書いてあります。「それぞれの時点において、当時の科学的知見に応じて関係省庁による対応がなされており、行政の不作為があったということはできない」、つまり当時の科学的知見に応じて対応していて不作為はなかったという前提のもとにそもそも立っています。しかし、これは明らかに今のどのマスコミの報道からも、国民世論からも全く食い違う文章となっています。

 さて、そこで、この科学的知見に応じて対応していて行政の不作為がなかったということについて、まず大臣にお伺いをしていきたいと思います。その部分で、私はこの一、二、三ページ、これは厚生労働省が出した文書で「科学的知見に応じて」というふうになっているんですが、四ページ、五ページ、六ページ目もつけさせていただきました。昭和五十一年の時点で既に労働省がこういった、これは飛ばし飛ばしになっておりますが一つの五十一年五月二十二日に出した文書で、この資料四、五、六は全部同じときに出した五十一年五月の文書なんですが、その九ページ目のところ、つまり資料六のところで既に「がん原性物質として確認した根拠」というふうに出しています。つまり、五十一年の時点で労働省として発がん性を認識していたのではないか。そして、発がん性を認識していたという文書を出しています。

 そこで、大臣にお伺いします。この当時の科学的知見という九月二十九日に出された文書で、この科学的知見ということ、当時の科学的知見、昭和五十一年にはアスベストが発がん性があると認識していた、イエスかノーですか、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 お答え申し上げますと、イエスであります。昭和五十一年時点では旧労働省はそのことを認識いたしております。

村井委員 その五十一年で発がん性物質であると認識していたというのは、これはこの一枚目の文章にある「当時の科学的知見に応じて」の当時の科学的知見だと認められますか。科学的知見に基づいて発がん性物質だったと認めておられますか、五十一年の時点で。どうでしょうか。

尾辻国務大臣 昭和五十一年に労働安全衛生法の特化則といっておりますけれども、正確には五十年だそうでございますが、特化則といっておる部分で、発がん性がある、がん原性があるということを前提にした規制をいたしておりますから、私どもはそのことを申し上げているつもりであります。

村井委員 ありがとうございます。

 となると、この当時の科学的知見というものに応じて、少なくても昭和五十一年の時点でアスベストが発がん性物質であるということは科学的知見に応じて労働省ですら認めていたと。

 他省庁なのでこれは質問にしませんが、一九三四年の時点でアメリカの研究でまず最初にアスベストと気管支がんの関係について発表されました。環境省の方はそれより早く昭和四十七年の時点で、既に公式文書でアスベストと発がん性、さらに近隣住民への暴露なども文書として出しています。これがこの当時の科学的知見です。

 では、この「当時の科学的知見に応じて関係省庁による対応がなされており、」と書いてありますが、関係省庁による対応を見てみますと、青石綿を規制したのは一九九五年です。昭和五十一年、つまり一九七六年の時点で発がん性物質だと認識をしていて、青石綿を使用禁止したのは一九九五年。これは「関係省庁による対応がなされており、」と認識されるのかどうなのか、大臣、お答えください。

尾辻国務大臣 今私がお答えすべきは旧労働省についてお答えすべきだと思いますから、そのことでお答え申し上げますと、先ほど申し上げましたように、五十一年は確かにもうがん原性ありということを認識いたしております。その一年前の五十年に、そのことを前提にしてといいますか、がん原性があるからといって幾つかの規制をいたしております。ですから、私どもとしては五十年に規制をいたしましたというのが申し上げておることの内容でございます。

村井委員 五十年に対応している内容についてもうちょっと詳しくお答えいただければと思います。少なくても、一般的に言われているのは、一九八七年の時点で業界の自主規制があったようだ、そして九五年に明確に青石綿は使用禁止されている、白石綿に当たっては二〇〇四年にようやく建材等への使用禁止がなされているわけですが、もう一度その部分について、関係省庁による対応というものがその五十年の時点でどうだったのか、そして具体的に青石綿、白石綿、それぞれ何年に廃止されたのか、お答えください。

尾辻国務大臣 昭和五十年に規則改正によりまして、石綿等の吹きつけ作業の原則禁止、特定作業における湿潤化による石綿等の発散防止、石綿に係る特殊健診の義務づけ、それから昭和五十一年になりまして、石綿製品を製造または取り扱う事業場における代替化促進についての指導というふうに、昭和五十年、五十一年で規則を改正いたしておるところでございます。したがいまして、私どもが言っておることは、こういうことをいたしましたということです。

 それから、今青石綿についてのお尋ねだったと思いますが、そういうことを規制しながら、当然、規制いたしますから事業場でどんどん使わなくなります。平成元年に全く事業場においては使われていないということは私どもは確認をいたしておるところでございます。

村井委員 という今までの話で、要するに、当時の科学的知見というのでもう五十一年の時点で既に発がん性を認識していた。その五十年、五十一年の時点で、禁止はしなかったけれども、少しだけそういった形での文書を出した。

 まず一つだけお訴えしておきたいのが、吹きつけを禁止したのではなくて、高濃度のアスベストの吹きつけを禁止しただけであって、低濃度のアスベストの吹きつけはその後二十年も続いていたということは大臣多分御存じだと思うんです。要するに、本当に関係省庁によるきちんとした対応がなされていたという文章が私は非常に疑わしいものではなかったのかと思うのですが。

 そこで、ここで「行政の不作為があったということはできない」というふうにあります。行政の不作為があったのかなかったのか、これによって今民主党や国民が言っているような補償なのか、それとも今関係省庁が言っている救済なのかという答えが変わってくると思うのですが、まず大臣は、この場ではどういう意味で不作為という言葉を使っておられるんでしょうか。行政の不作為、つまり不作為とはそもそも何でしょうか。

尾辻国務大臣 先ほどの吹きつけについて少し申し上げておきたいと思います。当時、吹きつけは、五%以上のアスベストを含有したものを吹きつけてはいけないというふうに規制したんですが、当時は実は五%未満なものはありませんでしたから、実質すべてのアスベストを含有する吹きつけは禁止したということを申し上げております。

 今行政の不作為ということについてのお尋ねでございますけれども、一般に行政の不作為とは、法令上有している規制等の権限を行使しないことと考えられておりますから、行政上の権限を行使しないということで申し上げているところでございます。

 アスベストに関して言いますと、アスベスト問題に対する政府の過去の対応については、関係閣僚会合において報告された検証結果にあるとおり、政府はそれぞれの時点において先ほど来申し上げておるようなことをいたしてきたということで、検証の報告の中では不作為があったとは言えないと考えるということを報告いたしておるところでございます。

村井委員 諸外国においてはどんどんどんどん禁止をしていったにもかかわらず、日本はどんどんどんどんおくれていった。だけれども不作為はなかったというふうに今主張されています。多分この後もどんどんどんどん民事裁判が起こってくるのではないかと思います。私は、きっとそういった主張は通じないものではないか、まず、常識外れなこういった主張ではなくて、初めに、早目に大臣の方で認められた方が、はるかに国民からの信頼、そして大臣の評価が上がるものではないかと考えています。

 例えば、ILOの中でこのアスベストの規制について八六年に採択されているのに、批准したのは二〇〇五年なんです。十九年もかかっているわけです。これは行政の不作為ではなかったんでしょうか。どうでしょうか。

青木政府参考人 ILO条約については、事実としては、採択から批准の期間については委員が御指摘のとおりでございます。

 これは、我が国のILO条約に対する姿勢といたしまして、国内法令ですべて担保をして条約上の義務を政府としてすべて履行できるということになってから批准をする、こういう姿勢によっているところでございます。

 そういう意味で、若干、すべての条項について国内法令とそごがありましたので、その調整をした結果、先国会で批准をいただいた、こういう状況でございます。しかし、その一番の中身は、順次履行といいますか法令上の手当てをしてきております。そういう意味で、ILO条約の姿勢というものを踏まえて対応してきたというふうに考えているところでございます。

 なお、先進国におきましても委員が御指摘のようなさまざまな規制を順次やってきておりますけれども、このILO条約の批准については、恐らくかなりの国において、主要先進国におきましてもいまだ批准していないところもございますし、そういう面では、今申し上げたような事情で日本政府がとってきたということでございますので、御理解をいただきたいというふうに思います。

村井委員 今の答弁は、十九年かかったことは不作為かどうかというふうに聞いたんですが、十九年かかったことは不作為ではないという主張だったんでしょうか。

青木政府参考人 不作為につきましては、先ほど大臣からも御答弁がございましたように、行政としてそういう行為を行う義務があったかどうか、それをしなかったということでありますが、ILO条約の批准につきましては特段こういった法令上の規制すべき権限というようなものではございませんので、そういう意味では不作為ではないというふうに思っております。

村井委員 今、行為を行う義務があれば不作為だ、行為を行う義務がなければ不作為ではない、そういう話になってきたようなんですが、さて、私たち政治家には、国民の生命や財産を守る義務が本当にないんでしょうか。国民の生命や財産を守る義務は当然ある、私はそう思うわけです。大臣はどう思いますか。これだけ、もう既に五十一年の時点で発がん性が明らかになっていた。そして労働省側も発がん性があると認めていた。そこで、本当に国民の生命や財産、特に命を守る義務がなかった、発がん性のあるアスベストから国民を守る義務がなかったとお訴えされますでしょうか。どうお考えでしょうか。

尾辻国務大臣 私はそうした、例えば不作為があったとかなかったとかといったようなことについて認めることをちゅうちょしておるつもりは全くありません。これは率直にありません。

 ただ、今私も、私の及ぶ範囲でいろいろ調べてみまして、そして冷静に判断しようと思っておるんですが、これはもう神に誓ってとでもいいましょうか、私が今判断しておるところで、行政の不作為があったかというと、非常に不作為があったとは言えないというふうに私自身も思っております。

 これは今後の御議論もあろうと思いますが、私の思いますこと、事実をどういうふうに認識しておるかということはお尋ねがあれば全部お答えしながら、私がそう思っておりますということは正直に申し上げます。ですから、ちゅうちょしておるわけではありません。

 ただ、今先生がおっしゃった、私どもに国民の命を守る責任があるだろうということでいいますと、それはそのとおりだと思いますし、そういう意味で政治家として結果責任を問われるならば、それは私は率直に責任がある、結果責任は負わざるを得ないというふうには思っておるところでございます。

村井委員 今の、政治家として結果責任を負わなければならないだろうというお話は、私はかなり前へ進んだ話かなと思いました。

 そして、不作為を認めることをちゅうちょしないというお話、まだ完全に認めたというわけではなくて、ちゅうちょしないというだけなものですから、その辺、それでも百歩進まなければならないところを十歩も二十歩も進まれたのではないかなと思うんです。

 さて、そこで、本当にちゅうちょをしない、また今後そうやって、もし我々政治家にとってアスベストを規制する義務がある、そして結果責任があるというふうに認める場合は、この過去の対応の検証について不作為がなかったという文章を訂正される可能性もありますか。大臣、どうでしょうか。

尾辻国務大臣 これは、この報告をつくりますときに、実は私も強く言ったことの一つが、今後やはりきっちりした検証をやらなきゃいけない、特に、少なくとも十年後にはこれはきっちりした検証をしなきゃいけないというふうに言っております。

 それを言っております理由というのは、昭和四十七年が一つの転機であります。これは御案内のとおりだと思います。昭和四十七年にILOとかWHOががん原性ありというふうに言いました。したがって、それ以後必要な手をちゃんと打っていなければ、これはいずれにしても責任があると言わざるを得ないと思っておるわけであります。

 ただ、この昭和四十七年というと一九七二年であります。今私どもが持っておりますデータによりますと、労災認定の皆さんの平均の潜伏期間というのが三十八年間でございます。したがって、一九七二年に三十八年足しますと二〇一〇年でありますから、結局その二〇一〇年が来て、手を打っていたのかどうか、有効な手をちゃんと打ったのかどうかというのはそこから答えが出てくると思っておるものですから、私はそこできっちりした検証をすべきだということを実は言っております。

 先ほど来私が言っております思いというのは、そういうことなどを含めて申し上げておるところでございます。

村井委員 十年後にきちんとした検証をやり直す、そして、今の前に大臣がおっしゃられたように、その場合によっては結果責任を負うという話でした。これは、確かに今までの厚生労働省の返答からはかなり踏み込まれた、そういった意味で大臣を評価したいんですが、本当に十年後の検証でいいんでしょうか。もっと早い時点で、例えば今健康診断、胸膜肥厚、そういったものを調べるおつもりはないでしょうか。どうでしょうか、大臣。

尾辻国務大臣 皆さんの健康診断につきましては、新しい法律出しますと言っておりますから、その中でどういう形がいいのか、いろいろなまた専門家の御意見も伺いながら決めたいというふうに思っております。

村井委員 だとするならば、大臣は、十年後のきちんとした検証によって、結果責任を認めたり、行政の不作為があったということになる可能性までは今おっしゃられましたが、健康診断によってアスベストの被害が明確になった場合、つまり新法による健康診断で被害が明確になった場合は、大臣がおっしゃられたような不作為を認めることをちゅうちょしないという言葉のとおり、不作為であったと認める可能性はありますか。どうでしょうか、大臣。

尾辻国務大臣 まず、先ほど申しました結果責任というのは、私に対して政治家としてどう思うんだというふうにお尋ねでございましたから、それは、先ほども申し上げましたように、昭和四十七年以前、全くがん原性ありというふうなことを私どもが知らないころに暴露して、それで中皮腫にかかっておられるような方が大勢おられるわけでありますけれども、そして今、労災認定をする方は、大半、昭和四十七年以前に暴露しておられる方々であります。

 したがって、そこのところの、例えば先ほどから御議論になっておる行政に不作為があったかということになると、私はやはり行政の不作為というふうには、少なくともまず四十七年以前ということでいえば、ないと思っております。

 しかし、その方々も含めて、やはり私どもには国民の皆さんの命を守らなきゃいけないという責任があると思っておりまして、やはり私どもは、私どもというか私は、そこのところを逃げちゃいかぬ、それであっても逃げちゃいかぬというふうに思っておりますということを先ほど来申し上げておるわけでございまして、結果責任と言っておりますことはそういう意味であるということは御理解いただきたいと存じます。

村井委員 大臣、ありがとうございます。

 だとするならば、まず四十七年以前の暴露と四十七年以降の暴露を分けて考える。そして、四十七年以降対策を打ったと主張している、私たちは十分な対策ではなかったと言っていますが、厚生労働省側が十分な対応だったと言っている。実際、それで被害が出てくるのか、本当にとまるのか、それでどっちの主張が正しかったのか、つまり、ちゃんとした対応が打てていたのか打てていなかったのかがわかると思うんです。四十七年以降の暴露でも、アスベストによる、例えば肺がん、中皮腫などがどんどんふえてくれば、その時点で行政による不作為があったと認める可能性もあるわけですよね、今の話だと。どうでしょうか。

尾辻国務大臣 まさにそこのところが検証だと私も思っております。

村井委員 そこのところが検証だということは、その検証によって四十七年以降のアスベストの被害者が出てくれば、不作為があったと認める可能性もあるわけですね。

青木政府参考人 委員がお取り上げになっている検証報告の中でも、先ほど来大臣がお話ありますように、現実に四十七年以降いろいろな対策を打ってまいりまして、私どもはその時々やってきたと言っているわけでありますけれども、それが本当に効果があったのかということについては、やはり効果があったのかなかったのかわかる時期まで待たないとできないということも検証報告の中に書いてございます。

 ただ、今の委員の御質問は、もしそういう方が出てきたらということでありましたので、それは、いろいろな分析でありますとか全体の趨勢でありますとか、恐らくさまざまなものを検証するときには使って分析をし、きちんと検証、評価をしなければいけないだろうというふうに思っております。

村井委員 もう時間がないので、最後にこの話をまとめさせていただきたいと思います。

 本当はもうちょっといろいろな除去や処分の話などにも踏み込みたかったんですが、今本当に大臣の方から重大な答弁があった。多分あしたのマスコミにも出てくるものだと思いますが、簡単にまとめると、五十一年の時点では発がん性を認識していた。禁止させたのが、一九九五年に青石綿を禁止、白石綿を禁止したのが二〇〇四年。これはもう明らかになっていたことなんですが、ILOの採択から批准まで十九年かかった。だけれども、今の時点ではなかなか不作為があったとは認めづらいけれども、昭和四十七年以降の暴露があったかどうかを十年後きちんとした検証をされる、これが大臣の答弁です。

 そして、私は十年よりもっと早い時点で検証すべきだと思うんですが、昭和四十七年以降の暴露があったと認められる場合は、大臣は結果責任をとると言っておられる。当然、その結果責任には行政による不作為がなかったということをひっくり返すこともあり得るわけです。

 最後に、そういった検証を早めるつもりはあるのかどうなのか。そして、その四十七年以降の暴露、常識的に考えてはあるはずです。そして、アスベストのきちんとした規制をしていなかったというのはだれの目にも明らかだし、それ以降も使っていたということが今だれが調べても明らかになっているわけです。

 さて、そこで最後に大臣にお伺いします。

 四十七年以降の暴露があった場合、そして、私はもっと早めた方がいいと思うけれども、大臣の言った十年後のきちんとした検証によってアスベストによる被害が今後も出てきた場合はどう考えられるのか、行政の不作為を認めることをちゅうちょしないという話も含めて、最後にまとめていただければと思います。

尾辻国務大臣 余り言葉にこだわることもないとは思っておるんですけれども、私が途中で結果責任と言いましたのは、私の政治家としての結果責任ということで言っておりますので、私が責任を感じておるということを言っております。

 ただ、今後の検証の結果がどう出るかということで、当然、それはまた検証の結果次第でそうした答えも出てくると思っております。したがって、当然、検証の結果次第では責任を問われるということはあり得るというふうに思っております。

 ただ、検証の時期を早めろというお話でございますが、先ほど申し上げましたように、昭和四十七年、一九七二年にやはり三十八年足してのその後にしっかりした検証をしないと、数字が出てこないと私は考えるものですから、先ほど来そのように申し上げておるところでございます。

村井委員 質問にいろいろ答えていただいて、そして前向きな、重大な発言、何個もどうもありがとうございました。

 省庁としてではなく、大臣個人としての結果責任を感じるという話、どうとらえたらいいのか、今のところ、また分析しておこたえしたいと思うんですが、できるだけ早目にきちんとした検証をやる、そして、一般の常識的に、今言っているような不作為があったということを認められれば、菅直人さんのときのように、私は尾辻大臣が本当に国民の常識に合った線でお答えされる大臣だと評価されると思い、そのことを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

鴨下委員長 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則です。

 三十分間、尾辻大臣、そして西副大臣に障害者自立支援法についてお伺いしたいと思います。

 一般質疑でございますが、これは半年間、この厚生労働委員会でも議論をしてきたことでございます。来週になりますかわかりませんが、障害者自立支援法の法案審議のときには我が党はしっかりと対案を出して議論をしていきたいと思っておりますが、その以前に、政府案、わからないところだらけでありますので、そのことについて一つ一つ聞いていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 きょう、朝から障害者自立支援法についての質問がございました。自民党の冨岡議員からも、この法案は生存権にかかわる部分があるという発言もございました。朝からずっと園田議員と厚生労働省の方とのやりとりも聞いておりましたが、恐らくここにいらっしゃる方、皆さん一致した意見は、なぜ税方式で応益負担なんだ、そんなことをやっている国は世界にあるのかと。このことは日本じゅうの学者の方も、はっきり言って日本じゅうの政治関係者も首をひねっているのではないかと思います。義務負担にする、義務的経費に変えるから応益負担という説明らしいんですが、それは全く論理的には成り立っていないわけなんですね。

 だから、そういう根本的なおかしさをはらんだ法案。ですから、名前は自立支援法案といいながらも、非常にかみ砕いて言えば、一割負担、応益負担を多少の減免はあるけれども原則的にはやっていく。自己負担アップ法案になぜ障害者自立支援法案と名づけているのか摩訶不思議。これが、厚生労働省が幾ら障害者自立支援法だといいながらも、現場の方々や障害者本人からはこれは障害者自立阻害法案であると言われるゆえんです。七月五日にも、一万一千人の障害者の方々や現場の方々が、この法案では自立ができませんというアピール行動をこの国会周辺で行われたところであります。

 そのような基本認識を述べたところで、最初の質問に移りたいと思います。

 まず、尾辻大臣、重度の方々にとってはこの自立支援法はまさに死活問題であります。そこで、抽象的な質問をしても仕方がありませんので、ALSの患者さんを例にとって質問したいと思います。

 ALSでは、特に、人工呼吸器をつけると二十四時間たんの吸引などの介護も必要になります。それで家族を介護で苦しめるからという理由もあって、人工呼吸器をつけずに死を選ぶ患者さんもおられるというぐらい深刻な問題でありまして、これは生存権の問題にもかかわる問題で、こういうことはあってはならないのではないかと思っております。そのためには、こういう方々を支援するサービスをしっかり整備せねばなりません。

 本日も、公明党の参考人で参議院にALS協会の会長の橋本操さんが来られて、話をされておられます。これは非常にすばらしいことだと思っております。

 そこで、この自立支援法では、ひとり暮らしや老夫婦で重介護を必要とするALS患者さんや、人工呼吸器をつけたALS患者さんが在宅で暮らしていける水準になるのか。地域格差をなくし、ぜひそのような水準にすべきだと考えますが、大臣いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今私どもが御提案申し上げております、新しい制度におきます国庫負担の対象とする費用の基準、国庫負担基準でございますけれども、これにつきましては、先ほども御議論になりましたけれども、現在の大まかな区分を見直しまして、障害者の心身の状態を客観的にあらわすものとして、新たに開発をいたします障害程度区分に応じた設定とすることを考えております。

 そして、特に重度の障害の方を想定して、今お話しのようなことがございますので、ホームヘルプサービスのみを利用される場合には重度訪問介護、極めて重度の方であってもホームヘルプサービスのみ利用される場合もございますので、そういう場合には重度訪問介護、それから、重度であって複数のサービスを併用されるような場合には、重度障害者等包括支援という新たな給付類型を創設することといたしておるところでございます。

 これらの新たな給付に係る基準等につきましては、今後、サービス利用実態調査でありますとか障害程度区分試行事業の結果の分析を行いまして、重度訪問介護等の対象者の範囲、どういう方を対象にするか、あるいはまた、報酬基準や運営基準などとあわせまして、検討していくことにいたしております。

 そこで、具体的にALS患者の方というお話でございましたけれども、いずれにいたしましても、ALS患者等の重い障害を持った方でも、地域で暮らしたいという願いにこたえていくということは、これは極めて重要な課題であると考えておりまして、制度が変わりましても、新しい制度になりましても、現在サービスを利用しておられる方々にとって、大きな変化などは生じないように配慮しなきゃならないというふうに考えております。

山井委員 これは地域間格差もございます。ぜひとも、こういうALSの患者さんを初めとする最重度の方々が地域で暮らしていける水準にしていただきたいと思いますし、それが当然のことだと思います。そういう中身が全く今の法案だけではわからないわけで、当事者の方々は非常に大きな不安を感じておられます。

 それで、引き続きお伺いしますが、きょう資料もお配りしましたが、こういうALSの患者さんや御家族の方にとって非常に今朗報となっているのが、この新聞記事にございます、たんの自動吸引装置であります。これは、大分の協和病院の山本先生や、また厚生科研で法化図教授が研究をされたことでありますけれども、こういう自動吸引装置ができれば、本当に家族の方々やALSの患者の方々にとっては非常に助かるわけであります。

 そこで、要望かつお伺いでありますが、早急に医療機器承認をし、また、購入しやすくするために障害者の日常生活用品の品目に加えるなり、保険適用することを早急にやっていく必要があると思いますが、大臣いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 御指摘の、人工呼吸器をつけている患者さんのための自動たん吸引装置につきましては、現在、医療機器としての薬事法上の承認申請を行うため、企業において資料作成などを進めておられるところだと聞いております。今後、承認申請がなされた際には、有効性、安全性について迅速に審査をしてまいりたいというふうに考えます。

 要するに、まだ申請が出ておりませんので、申請が出ましたら迅速に審査をいたしますということを申し上げたところでございます。

山井委員 これはまさに、こういう装置ができるかどうかによって、本当に、生き長らえるか、あるいは介護者の方々が共倒れしないか、家庭崩壊しないかということにかかわる非常に重要なことでありますので、申請が行われましたら早急にお願いしたいと思います。

 それでは、次の質問、西副大臣にお伺いさせていただきます。

 先日、大阪で公聴会がございました、参議院の公聴会。私も傍聴をさせていただきました。そこで、大阪のことについて、非常にサービスが進んでいるわけですが、議論になりました。

 皆さん、資料の二ページ目を見ていただきたいと思います。これは、先週の社会保障審議会障害者部会で厚生労働省から配られた資料であります。このページ二を見て、皆さんどう思われますでしょうか。新聞でも、地域間格差が激しいホームヘルプ、そして大阪が一番進んでいる、全国で六・三倍というのが出ております。

 私は何を申し上げたいかというと、これだけ資料で出されると、何か大阪はサービスを利用し過ぎなのではないかというふうな印象を持たれるのではないかと思うんですね。でも、不思議と厚生労働省さんは、施設の部分は資料では出しておられないんですね。当然、施設でかかっている費用と在宅の費用と両方出さないとだめですよね、当たり前のことですけれども。

 それで昨日、厚生労働省さんに頼んで施設の費用も出していただきました。そしてそれをグラフにしたのがこのページ三でございます。ちょっと見にくいグラフですけれども、先ほど、大阪のホームヘルプ利用者が人口当たり日本一で断トツでした。しかし、施設利用者を比べると、このグラフにありますように、白抜きがトータルです。そして、在宅が黒い棒です。そして、施設にかかっているお金が横のしま線です。

 ちょっと細かい話になるかもしれませんが、私が聞きたいのは、この自立支援法なりで厚生労働省はどの方向を目指しているのかということなんですよ。都道府県、いろいろなタイプがあるわけです。西副大臣、これを見てもらったらわかると思いますが、西先生も近畿でいらっしゃいますから。要は、居宅サービスが進んで施設が少ないところと、居宅サービス、黒線が少ないから施設に頼っているところがあるんです。どっちを厚生労働省さんはこの自立支援法で目指すんですか。

 そう考えてみたときに、居宅サービスが進むことによって、施設じゃなくて地域で障害者が暮らせているモデルとなる地域、皆さん、どこか見てみてください。そうして見ると、まさにそのモデルとなるのが大阪なんですね。居宅サービスが進んでいるから施設が非常に少なくなっているわけです。

 実はこのことを、先日の公聴会で公明党の遠山参議院議員が見事、指摘をされました。遠山参議院議員、どうおっしゃったか。大阪市が取り組んだことはぜいたくではないと思う、今回の障害者自立支援法は大阪市のような先進的な取り組みを全国に広げるものだと思うと明確におっしゃっていられます。

 そこで、西副大臣に改めてお伺いをしたいと思います。

 遠山参議院議員はこういうことを公聴会でも述べていられるんですが、このような認識、つまり障害者自立支援法は大阪のような先進地域の取り組みを全国に広げるものだと思うというこの認識は、このとおりでよろしいでしょうか。

西副大臣 お答え申し上げます。

 遠山参議院議員のおっしゃった真意というのは、私、必ずしも理解しているわけでも、またお聞きをしているわけでもないんですが、今のグラフを拝見いたしまして、今回の法案、障害者自立支援法案を通してやはりサービス量拡大をしていって、そして現在水準が低いところ、低い地域を中心にしてその水準を上げていく、いわゆる底上げをしていく、こういうことが大事であろうというふうに思っております。この法案の趣旨である自立、また社会参加、そういうことを進めるために、その地域地域に応じたやり方があるのではないか。

 ちょっと拝見しますと、大阪が在宅が多いということは事実なんですが、都市部とそれから若干地方とでもあり方が違うのではないか。もちろん、日常生活の生活空間の距離、御近所の距離とかそういう日常の移動距離等も違うんでしょうし、また、政策の進み方も現状としては違っているというふうに思います。

 しかし、住みなれた地域で過ごせる、そういう基本的な理念に合わせた方向性というのが望ましいのではないか、また、その方向でこれから整備が進められていくべきではないかというふうに思っております。

山井委員 ちょっと漠然とした答弁だったので、改めて一点だけ確認しますが、遠山議員がおっしゃったように、今回の障害者自立支援法は、大阪市のような先進的な取り組みを全国に広げるものだと思うという認識を西副大臣も共有していられますか。それだけお答えください。

西副大臣 基本的なことについては、共有しております。

山井委員 ぜひ、このグラフを見て、在宅が進んでいる大阪はサービスを使い過ぎだというような誤解が生まれないようにせねばと思いますし、そういう意味では、社会保障審議会の資料も、何かホームヘルプが大阪が多いという資料だけじゃなくて、そのことによって施設が非常に少なくなっているということもきっちり私は出すべきではないかと思います。

 それでは、また尾辻大臣にお伺いしたいと思います。

 そこで、なぜ大阪がこういうふうに施設の割合が少なくなったかというと、やはり脳性麻痺で重度の方々というのは、大体月に二百時間から三百時間ぐらいのホームヘルプが必要なんですね。そういうホームヘルプが利用できる体制を大阪はしっかりと先進的につくり上げていったわけです。また、私の京都の知り合いも、二百時間、三百時間のサービスを一カ月利用することによって自立生活をされておられます。脳性麻痺の方でおられますが。

 そこで、そういう方々の深刻な不安は、今二百時間、三百時間サービスを受けて自立生活をしているけれども、そのサービスが維持されるのかということで、これが維持されなかったら死活問題だということなんですが、先ほどのALSの質問にも関連しますが、このような方々のサービス水準というのは、当然維持されるんでしょうね。明確な答弁をお願いします、尾辻大臣。

尾辻国務大臣 現在のホームヘルプサービスにおきましては、まずは、先ほど申し上げましたように、限られた国費でございますから公平に配分するという観点から、市町村を単位として国庫負担の対象とする費用の基準、国庫負担基準でございますが、これを設けているところであります。基準はそのとおりであります。

 それから、その上で、でございますが、市町村がサービスの利用を希望する障害者に対して行う支給決定につきましては、障害者一人一人の状況を総合的に勘案して決定するということになっております。

 今お話しのようないろいろなケースが出てくるわけでございますけれども、それでは、今度新しい制度でどうするかということになるわけでございますが、国庫負担の対象とする費用の基準は市町村を単位とした国費の配分ルールであることは現在と変わりはなく、市町村がサービスの利用を希望する障害者に対して行う支給決定について、障害者一人一人の状況を見ながら行うことになるということでございますから、基本的に変化をいたしません。

 ですから、大きく変化することはありませんから、一番御懸念の百二十五時間で切るのではないかといったようなことを考えておるものではないということを申し上げておきたいと存じます。

    〔委員長退席、石崎委員長代理着席〕

山井委員 この点に関しては、先ほど大阪市の先進事例ということで確認しましたように、こういう二百時間、三百時間で自立生活をされている方々がこの法案で自立生活ができなくなるということでは、全く先ほど答弁された趣旨と違ってくるわけですから、そこはきっちりお願いをしたいと思います。

 それで、次に精神障害者、精神医療のことに移らせていただきます。

 資料の五を見ていただければと思います。これは、尾辻大臣には、この通常国会以来、ほぼ半年にわたって毎回質問をしている問題であります。

 御存じのように、国を挙げて自殺予防ということをやっている中で、精神通院公費助成制度、いわゆる三十二条というのは、精神疾患の方々というのは非常に所得が少ない方が多い、また、長くつらい精神疾患という病気で、通うのがなかなか大変だ。そんな中で、精神病院から退院できない、また、社会復帰できない、そういう悩みの中で、三十二条、精神通院公費助成制度というのができて、五%、あるいは自治体によっては〇%の自己負担で、精神科のクリニックに通ったり、あるいはデイケアを利用できるというサービスがあったわけですね。

 はっきり言いまして、これが多くの方々の自殺防止になったり、あるいは精神病院からの退院の受け皿になったり、また、そこでいい治療やデイケアでのサービスを受けて、就労に戻ったり、家族との円満な関係に戻ったり、そういう効果を上げていたわけです。

 しかし、今回の自立支援法の中で、理由もなく、利用者が多いというだけのような理由で、これがばっさり今切られようとしているわけです。それに対して、この三十二条の存続を求めるという二十三万人もの署名が厚生労働省にも行っているわけです。

 そこで、この三十二条から自立支援医療にかわる中で、厚生労働省はずっと、重度かつ継続の人たちだけは上限を設けて負担を少なくするということを言ってきたわけですね。そして、その重度かつ継続の三つの疾病は、結局、てんかんと躁うつ病と統合失調症と言ってきたわけです。

 半年間、この議論をずっと国会でもやってきました。しかし、大臣、今ゆゆしき問題になっています。先週も自立支援医療検討会がありました。しかし、幾ら現場の精神科医の議論を聞いても、今言った三つの病名だけが重度でかつ継続ではない、三つの病名では切れないんだ、何で厚生労働省は三つで切ろうとするのかという批判の声がわんさと上がっているわけです。

 先週の検討会、私も傍聴しました。そこに出ていた精神科医の方々がここのようなデータを出して、一々説明しませんが、丸がついているものの三つの病名だけを重度かつ継続で、上限を設けて自己負担を軽くしようとしているんですけれども、後でじっくり見てもらったらいいですが、この三つの病名だけがお金がかかって長期化するとは言い切れないんですよ。ほかの病名でも長期化しているものもあれば、ほかの病名でも重度化している、お金がかかっているのもあるわけです。

 この半年間、検討会では現場の方々が毎回のように、病名で区切らないでください、区切れないんですからと言っているわけですよ。先週の検討会で、座長の方はとうとうどうおっしゃったかと思いますか。そうおっしゃらずに、もう一回調査し直して、何とかなりませんかと。何とかなりませんかという、そんなもの、現場は病名では区切れないということを言い続けているわけです。

 だから、ここで大臣に言いたいのは、その病名に入るかどうかで自己負担も決まって、自己負担がアップしたら、デイケアやクリニック通院が抑制されて、自殺する人も出てくるかもしれない、そういう命綱なんですよ。その命綱を、どこで基準を切って安くするかということがいまだに決められない、そういう病名で決められないという状態なわけです。

 ですから、私は要望をストレートに申し上げます。病名じゃなくて状態像で、精神科医の方が、この方は統合失調症じゃないけれども、非常に重度で継続的だというふうに判断される方とかは、やはり状態像で上限を設けて自己負担を軽減できる、そういうふうにすべきではないでしょうか。大臣、いかがですか。

尾辻国務大臣 私が承知しておりますこの問題に対する検討の経緯でございますが、当初、やはり今おっしゃるように状態で判断するのがいいというふうに考えたようであります。

 そこで、専門家の皆さんの御意見を聞いたら、これは私が理解しているところなんですが、なかなか状態で判断するというのが難しいと。それでやはり疾病名でいかざるを得ないというところになって、とにかく疾病名でいくというふうにまず決めたんだけれども、ではその疾病名をどうするかというので、とりあえず、だれもが認めるというか、一番わかりがいいのが三疾病だけれども、しかし、これでとめるという話ではない。

 今少なくとも私どもが思っておりますのは、何もこの三つの疾病でとめるなんということを考えているわけじゃありません。専門家の御意見を聞いて、そして新たに加えるものがあったら加えていただいて、それもどんどん広げていけばいいというふうに考えておるわけでございまして、そうしようと思っておるところでございます。

 ただ、なかなか状態で決めにくいという専門家の皆さんの御意見があるというふうに私は理解をいたしております。

山井委員 はっきり言いまして、大臣の聞いていられる報告と検討会の審議は違います。現場のお医者さんたちは、状態像の方がいいと一貫して言っているんです。病名では切れないということを最初から言い続けているんです。厚生労働省が病名で切りたいと言っているだけなんですよ。

 ですから、大臣、もう一度確認します。これはもう来年の四月からスタートして、検討会では十一月九日の検討会、あと一カ月弱でもう結論を出してくださいというところまで来ているわけですね。ですから、今大臣がちらっとおっしゃったように、三つの疾病からスタートして様子を見て広げていくんじゃなくて、三つの疾病で切る論理的な理由はデータからは一切出てこないんですから、三つの疾病では切らないということを今言ってください。

尾辻国務大臣 少なくともお約束を申し上げます。

 今私は、私が理解しておるところでお答えを申し上げました。そこで、今先生から、少し違うんじゃないかというお話がございました。もう一回、私もよく皆さんの意見を聞いてみます。そして判断をいたします。

山井委員 通常国会でも私は、この部分は、申しわけないが、自立支援医療じゃなくて自殺支援医療になる。精神科クリニック、デイケアというのは、本当に一番苦しんでいられる方々が、家庭が崩壊したり、あるいは会社に通えなくなったり、本当にそういう方々が通っていられるところですよ。そこの自己負担をアップするということは、それをきっかけに通院やデイケアがストップして自殺につながる危険性というのが正直言ってあるわけですよ、これは。そういうところですから、やはり慎重にやってもらわないと。

 だから改めて要望しますが、三つの病名で無理やり切るということはしないでいただきたいというふうに思います。それで、先ほどお約束しますとおっしゃってくださったので、その趣旨は通ったと理解します。

 それで、あと時間が少しですので、もう一つ聞かせていただきます。

 先日、私、近所の障害者の当事者の方々、お母さん方と、この自立支援法について話し合いをしました。そうしましたら、脳性麻痺で障害一級の当事者の男性の方が、尾辻大臣、私にこういうことをおっしゃったんですね。自分は生まれながらに脳性麻痺だ、トイレに行くにも介助が要る、御飯を食べるにも、おふろに入るにも、外出するにも介助が要る。でも、何でトイレに行くのにお金がかかるの、何でおふろに入るのに一々お金がかかるのと。

 それで私は、いや、選挙が終わったところなので、なかなか法案審議も短時間しかされないかもしれないよと言ったら、ちょっと待ってくださいよ、政治家にとってはいっときの法案審議かもしれないけれども、僕らはそこで応益負担、一割負担を入れられたら、一生その一割負担から逃れられない。何でトイレに自分が行くのに一々お金がかかるの、社会参加せいと言うときながら、何で週に一遍社会参加するより二回した方がお金がかかるのと。自分がトイレに行ってお金がかかるなんて、そんな法案、一体だれが考えたんやということを言われました。

 世界で、障害年金しか持たない生まれながらの障害者から、トイレに行くサービスに対して自己負担を取っている国はないんですよ。それが福祉だからですよ。

 尾辻大臣、世界で障害者福祉のこういうトイレに行くサービスに自己負担を障害者年金で取っている国はない。なぜだと思われますか。改めてお答えください。

尾辻国務大臣 外国の例をつぶさに調べたわけじゃございませんから、外国との比較については申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、今の基本的な部分についてはやはり申し上げておいた方がいいと思いますので申し上げますけれども、私どもがこの法案を考えますときに、負担をお願いすることの是非については今みたいなお話もあるかもしれませんけれども、とにかく無理のないところで御負担をいただきたいということをお願いしておるつもりでございます。

 したがって、先ほど来、応能だとか定率だとかという話もございますけれども、私は先日申し上げましたけれども、限りなく応能負担にしたつもりでありますということだけは申し上げました。その思いでこの法案を考えておるということも申し上げました。

 それから、もう一点だけぜひ言わせてください。それは、私どもとしては、今、先ほど先生も言われたいろいろな格差がある、この格差のある、格差でありますから低い方という表現をしますけれども、低い方の皆さんのこれをどうしても上げていかなきゃならない、上げていきたいという強い思いでこれを考えておりますということ。それから、将来ともに、国にお金がなくなりましたからサービスできなくなりましたなどということは絶対言っちゃいけない、それを絶対に言わないようにしておきたいという思いがあるということも、ぜひ御理解いただきたいと思います。

山井委員 大臣、申し上げますが、申しわけありませんが、大臣の答弁は論理のすりかえです。お金がなくなってきたからトイレに行くのに自己負担を入れる、一割負担を入れる、あるいは地域格差があるから応益負担にする、それは全く論理的な答弁にはなっていないんです。応能負担でありながらそうすることもできるんです。

 それと大臣、世界の例はそれほど知らないがということをおっしゃいましたが、はっきり言って、世界の例は調べるべきです。なぜ世界で税金で応益負担をやっている国はないのか、そんなことは、世界で初めてのこういう制度をつくるんだったら考えるのが当たり前でしょう。世界で障害者福祉を唯一保険でやっているのはドイツだけです。ドイツは、御存じですか、障害者福祉は自己負担ゼロですよ。唯一保険制度でやっている国でも自己負担はゼロなんです。

 つまり、なぜ生まれながらに障害を持っている人がトイレに行くときに自己負担を取るのがおかしいか、もっと言えば、応益負担で障害が重い人ほどたくさん負担することがおかしいか。

 私は考えました。なぜ世界でそういうことをやっている国がないのか。それは、そんなことをすると障害者の方々の尊厳を傷つけるからです。

 生まれながらに障害を持ちたいと思って生まれているんじゃないんですよ。トイレに行かないと生きられないじゃないですか。御飯を食べないと生きられないじゃないですか。そういうところにまでお金を払わないとだめだ、そのことに関して、日本じゅうの障害者は今、どんな国なんだ、この国はということで嘆き悲しんでいるわけですよ。

 障害者の尊厳を傷つける、人の道に反する。政治の根本は何ですか。税金のむだ遣いを削って、何のために削るか、最も弱い立場の人たちのためにお金を使うからじゃないんですか。そういう根本的な理念がこの障害者自立支援法では完全に逆行しているから、多くの全国の障害者が反対をしているわけであります。

 法案審議がまたこの衆議院でも近づいてきましたが、私たち民主党は正々堂々と対案を出して、やはりそういう筋の通らない、そして障害者の尊厳を侵す、そういう法案は断固として私は阻止していきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

石崎委員長代理 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党・無所属クラブの柚木道義でございます。

 まずもって、このたび初当選後初めての質問の機会をこうして与えていただいたことを感謝申し上げます。

 さて、質問に先立ちまして、本国会提出の労働安全衛生法改正案について、尾辻厚生労働大臣に一点確認させていただきたいと思います。

 改正案自体は、御承知のように、さきの衆議院解散によりまして廃案になったわけですが、それまでにさまざまな審議が実際に行われたわけです。こうした審議の中での尾辻大臣の御答弁というのは、当然、今国会でも生きているとこれは考えてよろしいのでしょうか。大臣の御答弁をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 今国会に提出をいたしました労働安全衛生法等の一部を改正する法律案は、さきの通常国会において本委員会で御審議いただいた同名の法案と全く同一の内容でございますので、当然、前通常国会に私が答弁した内容については変わりがございません。

柚木委員 ありがとうございます。

 労働安全衛生法の一部を改正する法律案説明の訂正というものもいただいておりますので、そのあたりはぜひ御留意いただきたいと思います。

 それでは質問に入らせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、本委員会は、年金、医療、介護などの諸政策や、子育て支援といった国民生活に最も身近な政策法案審議を行う委員会でもあります。先ほど来よりアスベストの問題や、あるいは先ほどの障害者自立支援法、そういったさまざまな本当に国民の皆さんの生活、健康、安全に直結する、そういう課題を行う委員会で、それだけに、このたび私も初めての質問ではございますが、精いっぱい務めさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、御承知のとおり、我が国は世界に例を見ない少子高齢社会に加えて、人口減少社会に突入しております。そうした中、財政再建の観点から社会保障費抑制の必要性が議論されてもおります。無論、財政再建には、歳出削減と同時に歳入をふやす施策が必要となってまいります。ここでは、歳入をふやし、また現行のそういった社会保障制度を維持していく上でも、さらには少子化対策上も重要な論点であると思われます、フリーター、ニート対策について取り上げさせていただきたいと思います。

 ここで、まず最初の質問として伺いたいのですが、今日一般的となったフリーターという言葉、また最近とみによく使われるようになっておりますニートという呼称についてのおのおのの定義づけを厚生労働省としてはどのように考え、またどれくらいの人数がそういった方に該当すると把握しておられるのでしょうか。中野副大臣に御所見をお伺いいたします。

中野副大臣 柚木議員に、御質問にお答えをしたいと思います。

 厚生労働省の労働経済白書の労働経済分析におきますところのフリーターの定義につきましては、年齢が十五歳から三十四歳で、卒業者であって、女性においては未婚の方となっております。さらに、現在就業している者につきましては、勤め先における呼び方、これがアルバイトとかまたはパートというように言われている雇用者の方を言っております。また、現在無業の方につきましては、家事も通学もしておらず、しかしながら、アルバイトやパートの仕事を希望している方となっておりまして、平成十六年では二百十三万人の方がいらっしゃると推計されております。

 また、ニートの定義につきましては、年齢が十五歳から三十四歳であります。非労働力人口のうちの家事も通学もしていない方としておりまして、平成十六年では六十四万人と推定されております。

 以上でございます。

柚木委員 お答えいただいたように多くの、まさに二百十万人の方々、あるいはニートでは六十四万人という方がいらっしゃるわけですが、その中で、まさに、フリーターと言われる方々であっても、本当は正社員として仕事をしたいのだけれども採用されない、あるいは採用がない、求職もない、そういうやむを得ず型と類型される方々が、実際には四〇%、そのうちいらっしゃるということです。

 ちなみに、私の地元岡山県でも、先日もジョブカフェと呼ばれるところに行ってまいりましたが、さまざまなそういう相談、あるいは実際に、本人のみならず、御家庭の方がそういう話を、相談を持ってくるというふうに私も伺いました。ちなみに、県下の有効求人倍率が今年八月時点では一・二七と前月を〇・〇九ポイント上回っております。雇用状況としては改善傾向にあると見られますが、実はその一・二七のうち三二・七%がパート、フリーターといったいわゆる短期労働であります。

 景気回復の報道もありますが、現状は、家計から企業への大規模な所得移転に加え、雇用面においては、こうしたパート、フリーターが多数を占め、正規雇用が回復しない状況に何の変わりもないのです。

 さらに、フリーター及びパートなどの短時間労働者は事実上不安定な立場にあります。労働基準法上は雇用者として守られておるはずですが、実際にはさまざまな理不尽な理由で職場をやめさせられるケースもあります。また、アルバイト情報誌に書かれていたことと実際の労働が異なるとか、あるいはサービス残業を強要されるといった実情があるとも聞いております。

 こうしたフリーターの労働状況について、厚生労働省としてはどういった御認識をお持ちでしょうか。中野副大臣に御答弁をお願いいたします。

中野副大臣 パートタイム労働者の処遇のうちで、一般労働者との賃金格差を見ますと、平成十六年では、女性一般労働者の一時間当たり平均所定内給与を例えば一〇〇といたしますと、女性パートタイム労働者は六五・七という格差があるというところでございます。

 この要因としましては、職種構成の違いもあると思いますし、また、パートタイム労働者の就業調整、例えば百三十万円の、これは年金でございましたか、それから百三万円の、税金ですか、そういうことにも一つの原因があると考えられております。影響が考えられております。

 しかしながら、正社員が行ってきた役割の一部を担う基礎的な役割を果たすパートタイム労働者が今増加している中で、パートタイム労働者の処遇は必ずしも働きに見合ったものになっていない面があるということは私ども承知いたしております。

 ですから、パートタイム労働者の処遇につきましては、正社員との均衡を図っていくことが必要である、言いかえますれば、働きに応じた公正な処遇の実現というものをすべきだというふうに認識をいたしております。

柚木委員 まさに今副大臣の方からおっしゃっていただきました。さまざまな要因の説明はつくかもしれませんが、実際にその働きに見合ったいわゆる勤労待遇、その部分が、実は今まさにさまざまな職種で働かれているフリーターの皆様が最も求められている部分であります。

 そこで、次にフリーターの待遇改善についてさらに進めた御質問をお伺いいたします。

 実は、若年層を中心とするフリーターと言われる層の経済的基盤の不安定さが少子化進行の大きな要因の一つと言われています。例えば東京都立労働研究所が二〇〇一年に発表したデータでは、大都市圏のフリーター所得は、平均月給が十四万二千二百三十八円、この金額は学卒初任給にも満たない金額であります。大都市でこれだけの収入では、結婚もままならないばかりか、子供を産んで育てるということはましてや考えづらい、そういう状況にあることは多くの調査で証明済みだと思います。

 他方、こうした現状は、年金制度の空洞化を招くなど、社会保障制度全般の問題とも関連してくるものであります。こうした観点からも、フリーターの待遇改善や正規社員への移行を促す労働政策が求められていると考えますが、この点について尾辻厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 働き方にかかわらず、だれもが安心して働くことができるような労働環境の整備は、少子化対策の観点からも非常に重要な問題だと考えております。お話しのとおりでございます。

 この観点から、パートタイム労働者について、賃金などパート労働者の処遇について正社員との均衡を図りますことや、あるいはパート労働者から正社員への転換のための条件を整備することなどを示したパートタイム労働指針を今出しておるところでございますけれども、この周知に努めなきゃいけません。そこで、私どももそれに努めますとともに、助成金の支給など、パートタイム労働者の処遇改善に取り組む事業主に対する各種支援事業を実施しているところでございます。

 それからまた、フリーターが年間十万人程度増加しておる現状を転換いたしますために、本年五月より、関連する施策を最大限効果的に推進するフリーター二十万人常用雇用化プランを推進しているところでございます。

 私どもは、今後とも、これらの施策を通じまして、パートタイム労働者やフリーターに関する施策を推進してまいりたいと考えております。

柚木委員 正社員に向けての処遇の均衡もしくは転職支援という形でのパートタイム労働指針を今出しているところというふうに、前向きな御答弁をいただけたと思っております。

 この点については、さまざまな雇用政策の中で、例えば、まさにセーフティーネットである緊急就労支援、そういった基金なんかもこれまでになされてきた部分があると思いますが、実際の実効性ということから考えますと、なかなか利用例がないといった制度もこれまでにあったと思いますから、実効性のある形でそういった指針を周知させていただくことを改めてお願い申し上げて、次の質問に入らせていただきます。

 今の質問にも関連いたしますが、フリーターと言われる方の相談受け入れ体制についてさまざまな問題、課題が今出てきていると承知しております。パートやフリーターの立場が弱いことにつけ込んで、使用者が当初の雇用計画と異なる仕事や、あるいは、先ほども申し上げましたが、サービス残業を強要したり、そういったケースが間々あると伺っております。

 そういった際に、相談できる窓口や、間に入ってくれる第三者の専門家がいると大変に助かると思います。行政機関でいえば労働基準監督署などが、私の住んでいる地域にもございますが、そこで、この労働基準監督署や、あるいはジョブカフェの話もさせていただきましたが、そういったさまざまな行政機構を、若年層を含めた短時間労働者にとっての相談窓口機能として今以上に強化する取り組みも必要と考えます。

 これは厚生労働省としてはいかがお考えでしょうか。中野副大臣にお願いいたします。

中野副大臣 今御指摘のパートやフリーターという、いわゆる短時間労働者につきましては、労働基準法とか、労働安全衛生法とか、最低賃金法とかというような関係法令が適用されますところから、年次有給休暇の取得とか、賃金の支払いなどについては労働基準監督署が相談に応じておるところでありまして、また監視もしているというところであります。

 また、相談を受けた結果が、今申しました労働基準法を初めとした関係法令に問題がある、そういう場合には、この労働基準法を初めとした関係法規を守る、そういう立場におきまして、事業主に対して監督指導を行う必要がございますから、それに対しての対応というものはきちっとやっておるつもりでおります。

柚木委員 実際、私も労働基準監督署、これは私の地元では岡山、倉敷と話を伺ってまいりましたが、いかんせんその人員の限界もあり、なかなか実態としては、そういう話を聞くにも本当に時間がかかったり、あるいは、そういう企業自体に基準監督署の方なんかに来ていただくにしても、本当に年に一回あるかどうか、そういう実態も伺っておりますので、改めてそういう問題について、強化、お取り組みをしていただくことをお願い申し上げまして、次の質問に入ります。

 職場におけるフリーターの地位向上の施策について、先ほどと重なる面もございますが、重ねて質問させていただきます。

 パートやフリーターというカテゴリーに入られる皆さんにも、当然、例えば労働組合を組織したり、あるいはそれに加入したりすることは自由でございますが、この点での取り組みは必ずしも十分とは言えません。あるパートタイムの組織化している組合の組織の方に伺った話では、実際には、なかなか全体の三分の一程度であったり、そういう話も伺っております。

 ということは、この点についての取り組みというのは、当然、労使あるいは行政での取り組みが必要になってくるとは思いますが、これは正社員もそうですが、職場における働く者であるフリーターの地位安定化及び向上のための環境整備に、厚生労働省としても広報周知などの支援を行っていくべきなのではないでしょうか。御所見をお伺いいたします。

中野副大臣 まず、先ほどのあなたの御指摘については、よくわかりましたし、十分配慮したいと思います。

 また、今議員が御指摘のとおり、いわゆるパート労働者におきましても、労働組合法上の労働者でありますから、労働組合を組織したり加入したりすることは自由でもございますし、また権利でもあります。

 ただ、労働組合を組織したり加入したりすることは、あくまでも自主的に行われるべきものでございまして、または、現に連合等の労働組合におきましても、積極的にパート労働者等の組織化に取り組んでおられると伺っております。

 政府が個別的、具体的に、では、労働組合へ入れというような呼びかけを行うということは、やはり誤解される行為じゃないだろうかというので、その点は慎重にやるべきだと考えております。

 厚生労働省といたしましては、このような誤解を受けないように十分配慮しながら、パート労働者にあっても、労働組合に入れることだとかいう労働組合法に関する法的な知識の提供というものを、パンフレットとかホームページとか、いろいろなものを利用して努めてまいりたいと思っております。

柚木委員 先ほど、前の質問に対しての補足ありがとうございます。

 先ほど、強制ということではということを言われましたが、もちろんそうではなくて、実際に組合をつくりたいんだけれどもどうやったらいいかわからないとか、そういういろいろな実情があるわけですから、そういったところに関しまして、今、広報周知というのはそういう意味合いですから、十分な情報が行き渡る形での支援ということでよろしくお願いいたします。

 次の質問も同様に、今申し上げましたのは労働組合の例を申し上げたわけですが、そのほか、さまざまなパート、フリーターの方々にとって最低限必要な法的知識を提供する仕組みをもう少し整備、工夫されてみてはいかがでしょうか。

 例えば、厚労省のホームページでも労働法制について検索できるようになっておるんですが、小さな文字で、率直に申し上げまして、読みやすいとは言えません。若い世代の方々がまさに見やすい形で、例えば、イラストや漫画風にしてみたり、あるいは目の不自由な方なんかであっても読みやすく、文字を大きくしたりするなどの工夫があってもよいのではないでしょうか。

 また、最近では政府広報を携帯電話で登録無料のニュースサイトなんかでも見られるようになっていたりもすると思いますが、こうしたモバイルツールなどを活用した情報提供というのも積極的に進められてみてはいかがでしょうか。御見解をお伺いいたします。

中野副大臣 パートタイム労働者が安心して生き生きと働くためには、パートタイム労働者を保護する関係法律の内容について、今委員が御指摘のとおり、必要な知識を身につけていただくということは大事だと思います。

 そのために、関係法律の概要については、わかりやすく解説したパートタイム労働者及び事業主向けのパンフレットを作成しておりまして、これを労働基準監督署だとかハローワーク等で広く配布いたしておりますし、また、ホームページについては御意見がございましたので、これについてはよく十分注意しながら、これからも周知を図ってまいりたいと思います。

 また、いわゆるパートタイム労働者として働きたい求職者に対しまして、ハローワークなどで就職に当たって必要な知識を身につけてもらって求職してもらう、そういうようなガイダンスも実は実施をいたしております。

 今後とも、このような取り組みを通じまして、パートタイム労働者が関係する法律の内容について、これは先ほど来おっしゃったものも含めて、また厚生年金の法律だとかいろいろありますけれども、そういうものを含めて必要な知識を身につけることができるよう努めてまいりたいと思います。

    〔石崎委員長代理退席、委員長着席〕

柚木委員 大変前向きな御答弁をいただいたんですが、その周知の中身というのが、先ほどのパンフレットにしても、それぞれの事業所の恐らく総務、人事とかそういったところには周知がいくんでしょうが、個人のそれぞれのフリーター、パートタイム労働者の皆さんにまでその中身が周知されるような形での広報というのをよろしくお願いいたします。

 次に、そういう今フリーターあるいはニートと言われる課題がある中で、今、厚生労働省さんの方でのさまざまな施策の取り組みはお伺いしたわけですが、実際に、勤労観の育成というのが実は大きな課題になってくると思います。それは、フリーターやニートのこういった増加を受けて、私も今さまざまな質問を申し上げましたが、実際の取り組みがどうしても事後的あるいは対症療法的にならざるを得ない面があると思うんです。

 そこで、例えば学校教育現場の中で、ニートと言われる、そういうニートになってからではなく、そうならないためのいわば予防的取り組み、別の言い方をすれば、健全な勤労意識の育成機会というのを提供できないのかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。この点については、文部科学省の御見解をお伺いいたします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 児童生徒に小学校段階から、みずからの能力、適性あるいは興味、関心と将来の自分の人生を関連づけて考えさせ、しっかりとした勤労観、職業観を身につけさせることは大変重要なことであると認識しております。

 政府全体としても、若者自立・挑戦プランあるいは若者の自立・挑戦のためのアクションプランの強化などにおきまして、キャリア教育の一層の推進に努めるということにしております。

 文部科学省におきましても、昨年度からは、小学校で職場見学を行い、中高等学校では職場体験を行うなどの、小中高校を通じた組織的なキャリア教育推進地域指定事業に取り組んでおります。また、今年度から中学生を対象として、公立の中学校において五日間以上職場体験を実施する、また地域の協力体制をつくり上げる、そういう観点からのキャリア教育実践プロジェクトに取り組んでいるところでございます。

 文部科学省におきましては、今後とも、このような取り組みを通じまして、児童生徒の勤労観、職業観を育成するキャリア教育の推進に努めてまいりたいと考えてございます。

柚木委員 御答弁ありがとうございます。

 確かに、今おっしゃっていただいたように、例えば先ほどの各都道府県、これは指定都市もだったと思いますけれども、中学校を中心に五日以上の職場体験やインターンシップの実施、そういう施策が取り組まれておりまして、その点は評価をできると思うんですが、今日のニートの先ほどの人数、六十四万人というのがあって、これはずっと高どまりして減っていないんですね、三年間ずっと。

 その中で、そういう傾向を見た場合に、これは学校五日制という中での本当に困難もあるでしょうが、例えば小中高と、今おっしゃいましたけれども、そういう長期的なスパンの中でのキャリア教育プログラム、中学校で五日間といいますと、多分、どこか一つの企業に研修に行ったりということで終わってしまうと思うんですね。しかし実際には、これはまさに今、親の背中を見て育つ、実際に家で自営業をされていたり工場をされていたりするのがどんどん減って、第三次産業の比率がふえてきていますから、一次から三次までいろいろな産業があるわけですよね。

 そういうまさにさまざまな職業があって、そういう中で将来的に自分がどこに適性を持って仕事をしていくことができるのか。あるいは、社会全体の構造がどういうふうになっているのかということまで含めた上でのキャリア教育プログラムの開発、実践、まさにそういった面での生きる力の学習機会を提供していただくことをあわせてお願いして、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 次に、フリーターの皆さんの今一つの大きな不安、課題になっている面で、健康保険と年金についての問題があると思うんですね。

 御承知のとおり、現状では、すべての法人事業所と五人以上を雇用する個人事業主は、事業所として必ず健康保険と厚生年金に加入を義務づけられております。パート、フリーターでも、正規雇用者の週四分の三以上働く場合には、年金、健康保険の対象となります。数値で見ると、五人以上の事業所に勤める全労働者数が二〇〇五年の七月時点で四千三百三十万人いますが、このうちパートタイマーやフリーターなどの短時間労働者が約一千九十五万人です。

 ここで私が一つ伺いたいのは、厚生労働省として、例えば週三十時間未満の労働を行うフリーターやパートタイマーについても、アルバイト、パート代から天引きで健康保険あるいは国民年金引き落としができるような制度を検討するお考えはないのかということなんです。

 実はもう御承知のとおり、我々民主党は、年金制度については、すべての国民の皆さんが一つの制度のもとで老後の安心を送ることができるという意味での一元化を提案しております。無論、一元化が実現すればこの提案は必要なくなるのではありますが、しかし、現状のままでは、まさに国民年金の空洞化は、これは進行することはあってもおさまることはないんじゃないでしょうか。

 そうであるならば、そのための何らかの処方せんを、やはりこれは厚生労働省としても検討すべきではないのでしょうか。

 そこで、これはあくまでも一つの提案なんですが、そういった健康保険、年金を給料から天引きする仕組みをつくり、これによって、国民健康保険はもとより、とりわけ空洞化の著しい国民年金未納率を低くしていく。これによって、確かにパート、フリーターの賃金制度や、あるいは年金、健康保険制度改革全般にかかわってきますし、そういう問題はあるんですが、技術的な可能性として、今後そういった制度を、本当に本気で長期的なスパンで講ずるということを検討される必要があるのではないでしょうか。厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。

尾辻国務大臣 今、具体的に給与からの保険料の天引きについてのお話でございました。これは年金という観点でも今お話しいただいたわけでありますけれども、昨年の年金の見直しの際にもいろいろ議論のあったところでございます。そこで、実際にこれを実施するというふうに考えますと、まずは法律上の整理と、それから事業主の協力などが必要であると考えております。

 事業主の協力というふうに申し上げましたのは、今、被用者保険でありますとか被用者年金においては天引きをいたしておるわけでありますけれども、その天引きを可能にいたしておりますのは、保険料について事業主負担が課せられているということと相まって、従業員分の保険料も含めた納付義務が課せられているということに基づいております。

 そうなりますと、今、国民保険ということになりましたが、国民保険において事業主負担がないというようなところもありまして、検討していくと大変難しいところが出てくるということをまずは申し上げておるところでございます。

 それからまた、去年のあの年金の見直しのときも、一部の事業主の皆さんからは、もうどうやって計算するんだという大変強い、事務的に処理できないというお話などもございまして、私ども、そういう御意見も伺っておるものですから、ついいろいろな難しい面が頭の中へ浮かんでまいりまして、まずはそういうことをお答え申し上げておるところでございますが、いずれ、年金の問題を含めまして、こうしたことは検討はしなきゃならないというふうに考えております。

柚木委員 技術的に難しい問題というのは、まさに一元化の中でも議論としては出てきているわけですが、それを乗り越えてでもやるのかやらないのかという部分を国民の皆さんは求めているわけですから、まさに前向きな検討をよろしくお願いいたします。

 時間がありませんので、ちょっとニートの方に移らせていただきたいと思います。

 今はずっとフリーターの問題をお話ししておりまして、実際フリーターの問題はさまざまな類型があって、ある意味では夢追求型などの積極的な側面があるのに対して、ニートの方は、これは家族の方々が心配して、先ほども申し上げましたけれども相談をしてくるケースがあって、社会全体として解決していくべき切実な側面をはらんでいます。

 きょうは、ニートという言葉が一般的になった一つの著作を持ってきましたが、この中にも、働くことは悲しいであったり、さまざまな、本当にこういう人たちが現実に六十四万人もいるのかというふうな事例が書かれているわけです。

 こういったニートに対する対策として、これは学校や社会あるいは家族が、実はちょっと質問を飛ばして申しわけないんですが、不登校や引きこもり、そういった問題への対応がうまくできなかった結果の延長として、引きこもり、さらにはニートへといった連関性が指摘されてもいるわけです。

 こうした一連の流れについて、これは文部科学省の方になると思うんですが、どのように認識をされていらっしゃるでしょうか。ちょっと時間がありませんので、短くお願いいたします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 平成十六年度の不登校の小中学生の数につきましては、十二万三千人という数に上がってございます。不登校の生徒数が高校におきましては六万七千五百人、そのうち三七%が高校を中退するという状況になってございます。

 不登校が必ず引きこもりやニート、フリーターにつながるということではございませんけれども、不登校の深刻化から、その後長期にわたる引きこもりなどにつながるケースや、高校の不登校から中途退学した後にニート、フリーターになるケースもあると考えているところでございます。そういった意味でも、不登校の問題について早期に適切に対応することが重要かと考えてございます。

柚木委員 済みません。もう時間がありませんので、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 そういう中で、実際関連性がある、あるいはそれが正確に把握できないにしても、可能性としてはあるという御答弁をいただいたと思うんですが、そういった場合に、ニートの場合には不登校や引きこもりに比べてなかなか実際にその数値が顕在化しづらい面というのがあると思うんですね。

 そこで、これは厚生労働省の方にお伺いいたしますが、今学校現場ではさまざまな取り組みがされております。そこで、例えばキャリアカウンセラーといったような有資格者の方を多数養成して、そういう相談がジョブカフェ等にあった場合に、それぞれの家庭に派遣し、そうした中でまた、顕在化していないニートを、相談窓口を求めている方々の情報収集や、あるいは逆に相談窓口からの情報発信というのを、地域の保健所やあるいは民生委員とかそういった方々と連携してできるような、情報ネットワークを構築するなどの積極的取り組みがあってもよいのではないでしょうか。

 せっかく若者塾といったような新しい取り組みを展開されているわけですから、どうやってそこに来てもらうのかの視点に立っての見解を、これは尾辻厚生労働大臣の方にお願いいたします。

尾辻国務大臣 若者自立塾にどうやって来てもらうかというお話でありますが、これはできるだけいろいろな機会にそういった、こういうことをやっているんですということをPRするしかないと思いまして、機会あるごとにやっておるところでございます。

 先ほども申し上げましたように、もう本当に、一対一で向き合ってこうした人たちと、それぞれのまた新たな自立に向けて頑張ってもらうようにしなきゃいかぬと思っておりますので、全力を挙げてやっていきたいと思っております。

柚木委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたのでこれで終わりますが、きょうはフリーター、そしてニート対策について質問してまいりました。実はこの問題はある意味大変デリケートな側面をはらんでもいます。それは、本当にワークスタイル、ライフスタイルというのは本来はすべからく個人の自由に帰属すべき問題であると思うんですね。しかしその一方で、自由の享受は個人が帰属する社会、公共の利益全体と合致すべきであるとも考えます。

 そうした観点から、フリーター、ニート対策について考察することは、今申し上げたワークスタイルやライフスタイルの多様性を認めながらも、個人が所属する社会全体としてその公共の利益を保持していくことからも、大変重要な政策課題であることに疑いの余地はないと思います。

 質問項目へのそれぞれの省庁の建設的な取り組みを通じてフリーターやニートと呼ばれる個人一人一人が安定した経済的基盤を持ち、また、その結果として安定的な社会制度への貢献に資することを、みずからも若い世代のこれからの社会をともに担っていく一員といたしまして切に希望いたしまして、本質問の結びとさせていただきます。

 御清聴どうもありがとうございました。

鴨下委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 ことし六月二十一日に日本経団連が、ホワイトカラーエグゼンプション、いわゆる適用除外に関する提言を発表いたしました。この提言は、年収四百万円以上のホワイトカラーに労働基準法の労働時間規制を外せということで、マスコミでも取り上げられて、そして大きな懸念が広がっております。これはもちろん日本経団連の提言でありますけれども、政府の規制改革・民間開放三カ年計画でも、一定の労働者の適用除外を検討する、こういう問題が盛り込まれていて、関連していると思いますので、幾つかただしておきたいと思います。

 まず、事実関係でというか、具体的なことで伺いたいんですが、ホワイトカラーという定義、これは何かということについては我が国にはなかなかはっきりしたものがないと思うんですが、大体どのような職業の労働者を指して、どれぐらいの労働者の数が該当すると思われるのか。それから、日本経団連は年収四百万円以上というふうに言っておりますけれども、家族手当など諸手当を含んで年収四百万の労働者といいますと、月収の賃金というのはどの程度になるのか。そういう事務労働者はどの程度の職務、職階に該当するというふうに大体考えたらいいのかということについて、具体的なことをお答えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

青木政府参考人 幾つかホワイトカラーについてお尋ねがございました。

 ホワイトカラーの定義については、委員が今お触れになりましたように明確な定義はございませんけれども、仮にイメージをするとすればどういう人たちかということですが、職業分類別に見るとかなり幅広く言えるんじゃないかなと思いますが、専門的・技術的職業従事者、あるいは事務従事者、管理的職業従事者、それから販売従事者、こういった四つの人たちが含まれると考えておりす。

 明確な定義もございませんが、このようなことでありますので、ホワイトカラーについていろいろ考えるときには、やはりそれぞれ、その場面場面で考えていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 そういったホワイトカラーが、仮にそうだとすれば何人ぐらいいることになるのかというお尋ねがございました。

 これはまさに、統計調査にも具体的にホワイトカラーはこれだということがございませんので明確には述べられないわけでありますが、平成十六年の労働力調査によりますと、先ほど申し上げました四職種、専門的・技術的職業従事者、事務従事者、管理的職業従事者、販売従事者、この四つの職種の合計の雇用者数は二千九百五十四万人ということになっております。雇用者総数の約五五・二%ということでございます。

 それから、その日本経団連の六月の提言の中で年収四百万円というのを一つの基準にしておりますけれども、年収四百万円というのは一体、月収というのはどのぐらいか、職階にするとどのような人たちがイメージされるのかというお尋ねだったかと思います。

 月収とか職階というのは、賃金制度だとかそれぞれの人事管理制度、企業内において相当いろいろ……(笠井委員「端的にお願いします」と呼ぶ)ありますので、一概に申し上げることはできないわけであります。

 年収四百万を月収に換算するときに考えるのは、いわゆる賞与分を差っ引いて考えるということであれば、それを例えば五カ月とか六カ月と考えれば、十七分の一とかいうことで考えるのかなというふうに思っております。

 それから、職階について言いますと、これも今申し上げましたように、ちょっと明確に申し上げることはできませんけれども、平成十六年の賃金構造基本統計調査、仮にそれで当てはめてみます。

 これは百人以上の企業規模ということですから、かなり人数が多いところでありますけれども、これでいいますと、平均年収で見ますと、部長クラスが千十万円、課長クラスが年収八百三十五万円、係長クラスが六百五十七万円というように推計できるかなというふうに思っております。しかし、この百人以上の企業規模でいきますと、全労働者の平均年収約五百三、四十万というぐらいになろうかと思いますので、必ずしもこれでうまくイメージできているかどうかわかりませんが、一応、仮にそういうことで考えるとすれば、そのぐらいのことかなというふうに思っております。

笠井委員 時間がないので端的にお願いしたいんですが、今の答弁を伺っていますと、対象者の総計でいうと、我が国の雇用労働者の過半数、五五・二%が対象になり得る。それから、年収四百万ということでいきますと、事務労働者でいって、今十七分の十二という話もありましたが、月で二十三万円程度以上になりますと、人事院の調査によっても、事務係員といういわゆる役職についていない人まで対象になり得るということであります。

 その結果、経営者から、あなたは対象だというふうに言われれば、労働時間の規制から外されて、長時間労働を余儀なくされた上に割り増し賃金は支払われなくなる。そして、健康破壊や命の危険に追いやられた上に低賃金が実際には押しつけられて、これは少子化対策にも逆行することになるという極めて重大な問題だと思います。

 そこで、大臣にお聞きしますけれども、ことし四月から、きょうが十回目と伺っていますが、労働基準局長の私的研究会として、今後の労働時間制度に関する研究会というのがやられていて、年内に報告をまとめる方向で議論と検討を進めていると承知しておりますけれども、このホワイトカラーエグゼンプションの導入を視野に入れて検討を進めるおつもりなのかどうか、大臣のお答えをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 今お話しいただきましたように、本年四月に学識経験者から成る今後の労働時間制度に関する研究会を立ち上げまして、種々御検討いただいておるところでございます。

 この研究会では、働き方の多様化が進展して、成果が必ずしも労働時間の長短に比例しない性格の業務を行う労働者が増加する中で、労働者が創造的、専門的能力を発揮できる自律的な働き方への対応として何が必要かという観点から御検討いただいておるところでございます。したがいまして、検討いただいているのはこの観点からでございます。

 ただ、その中で、労働時間規制の適用除外も対応策の一つとして、アメリカのホワイトカラーエグゼンプション等も調査しながら御検討いただいておるところでございまして、そうしたものも調査はいたしておりますという、そして検討はしていただいておりますということでございます。

笠井委員 今大臣も言われた、日本経団連がイメージしている、参考にしているアメリカということで、その調査もしながら検討という話ですけれども、アメリカでいいますと、二一%の労働者が労働時間規制から除外、エグゼンプトされている。そして、その一方で、最近では集団的な訴訟、クラスアクションなどが多発しているというふうに承知しております。

 調査して検討ということに乗っているということでありますけれども、私はそのような制度は、およそ今の日本の社会の現状、そして過労死、過労自殺あるいはサービス残業ということで大変な問題になっている中でのこの日本にはなじまないし、導入すべきではないということを強調しておきたいと思います。今、大臣、うなずいていらっしゃいますので、その辺をよく念頭に入れてやっていただきたいと思います。

 そこで、労働時間短縮の現状と政府の責任という問題について次にただしたいと思います。

 私も、参議院時代にこの問題をたびたび取り上げてまいりました。我が国の就業者総数の八五%を占めて、そして日本社会を支え、懸命に働いている雇用労働者の労働時間や賃金など、労働条件を改善していくということは、これは日本社会の安定と健全な発展にとって不可欠だと思います。そしてその点で、政府の国家行政責任は極めて重い、言うまでもありません。とりわけ労働時間の短縮は、労働者の生命と健康を守るだけじゃなくて、家族含めて、ゆとりある生活、これを実現する上で最大の課題だと言ってもいいと思います。

 私、これまで世界四十ぐらいの国々を仕事で訪れる機会があって、いつも日本の労働者は働き過ぎだということを実感してきました。そして、八〇年代の前半には三年間ヨーロッパに駐在をしながら、帰国してまず痛感したのは、日本では朝の通勤時に電車やバスでも寝ていらっしゃる方がたくさんいる、あっちではほとんどないというこの日本の異常さです。働き過ぎ。

 そういう中で、一九八八年の五月に政府が、「世界とともに生きる日本」、経済運営五カ年計画ということで、平成四年度までに年間総労働時間を千八百時間程度に短縮するということを閣議決定をし、世界に向かって公約をいたしました。その後、生活大国五カ年計画や、それから第七次雇用対策基本計画、労働時間短縮促進臨時措置法に基づく推進計画など、次々と閣議決定をされてきたと思うんです。

 そこで、大臣にお聞きしますけれども、一九八八年から今日まで十八年間、足かけになりますけれども、この中で、労働時間を千八百時間に短縮する、こういう政府方針は何回閣議で決定をされたか伺いたいと思います。

尾辻国務大臣 今お尋ねいただきました年間総実労働時間千八百時間を掲げておる閣議決定でございますけれども、お話しいただきました「世界とともに生きる日本」で、すなわち経済運営五カ年計画のときに、これは昭和六十三年でございますけれども、閣議決定をいたしております。それ以来、政府経済計画等で四回、雇用対策基本計画で四回、労働時間短縮推進計画で三回、経済見通しと経済運営の基本的態度で三回、高齢社会対策大綱で二回、生活空間倍増戦略プランで一回、男女共同参画基本計画で一回、少子化社会対策大綱で一回、調べたところではこういったようなものがあると承知いたしております。

笠井委員 今おっしゃったのを合計しますと十九回になりますか。この十八年間で十九回。私は二十回あるかなと思って、政府の決定を含めると、というふうに数えてみたんですけれども。

 いずれにしても、政府は相当にもう労働時間短縮を重視してきたとも言えるというふうに思えるわけですけれども、その結果、どれぐらい時短が進んだのか。一九八八年という時点と十年前の一九九五年と、それから昨年が一番直近かもしれませんが、二〇〇四年の数字の変化はどういうふうになっているでしょうか。

尾辻国務大臣 厚生労働省において実施をいたしております毎月の勤労統計調査によりますと、年間の総実労働時間は、今お尋ねの年度でお答え申し上げます、一九八八年度が二千百時間、一九九五年度が千九百十三時間、二〇〇四年度が千八百三十四時間となっております。したがいまして、一九八八年度以降、十六年間で年間の総実労働時間が二百六十六時間短縮されたところでございます。

笠井委員 今伺っていると、千八百を目標にしてほぼ大体近くなってきたというふうにうかがえるんですけれども、この数字、今おっしゃったのは、パート労働者を含めた、それを母数に入れた統計上の数字だというふうに思うんです。

 労働時間短縮を最も必要としているのは、一般労働者、つまり正規常用労働者であります。この数年、大企業では、リストラで正社員の皆さんの人減らしを進めて、一方ではパート労働者をふやしていくということが起こってきているわけで、パートの方々がふえればふえるほど、政府の発表される統計上の数字というのは、労働時間は計算上は短くなっていくということになります。

 ですから、これは本当に現実を反映しているかというと、そういうふうには言えないんじゃないか。正規常用労働者の労働時間はむしろ毎年長くなっているというふうに思うんですけれども、小泉内閣が発足してから四年半余りが過ぎたわけですが、二〇〇一年発足時と昨年、二〇〇四年の一般労働者、正規常用労働者の年間総実労働時間の数字はどういうふうになっていますか。

尾辻国務大臣 今手元にある資料で申し上げます。

 一般労働者の総実労働時間でございますけれども、どういうふうに申し上げましょうか、平成の、それでは十三年から申し上げればいいでしょうか。(笠井委員「十三と十六で結構です」と呼ぶ)はい。十三年と十六年の変化で申し上げればいいですか。

 そうしますと、平成十三年が千九百九十時間でございます。平成十六年度は二千十五時間でございます。ちなみに申し上げますと、平成十五年、一年前は二千十六時間という数字もございます。この数字でございます。

笠井委員 そうしますと、政府の方針として最高の閣議決定ということで、十九回ないし二十回ということで十八年間の間にやられてきた、しかし実際には、正社員の皆さんの労働時間というのは、短縮が進むどころか、小泉内閣のもとで年間平均で二十五時間も長くなってきているというのが現実だというふうに思うんです。

 しかも、この調査数字というのは、毎勤統計、毎月の勤労統計調査、これ自体が数がどれぐらい反映しているかという問題はありますが、企業からの報告数字でありまして、賃金の支払い対象となった労働時間ということになると思うんです。そうしますと、割り増し賃金を支払わなかった残業時間については、当然この数字には含まれていない。

 サービス残業というのが大問題になってきて、そして不払い残業となっている残業時間をこれにプラスカウントしますと、実際の労働時間というのはもっと長くなってしまうんじゃないか、努力してきたんだけれどもという、事実としてはそういうことがあるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。

青木政府参考人 私どもは、労働基準法に基づく残業の場合の割り増し賃金支払い義務があるものについて支払わなかったというのを、賃金不払い残業、今委員おっしゃったサービス残業ということで、是正を求めて監督指導しているわけでありますけれども、この賃金不払い残業の全体の時間というものを、これはいわば違法なものでありますので正確につかむということはできません。しかし、理屈で言えば、おっしゃったように、統計にあらわれないそういったものがあるということは確かだろうというふうに思っております。

笠井委員 大臣にお聞きしたいんですけれども、政府の最高方針である閣議決定を繰り返しやって努力されてきたのに、労働時間の短縮というのは、正規の労働者の皆さんにとっては進まないばかりか逆に増加しているということは、率直にあると思うんです。

 厚生労働省の統計では、企業が就業規則で定める所定内労働時間というのは確実に短くなっております。これは、一九八七年に労働基準法を週四十時間、一日八時間に改正した三十二条の労働時間の原則が定着してきていることを示していると思うんです。ところが、先ほどからお答えいただいていますことからも明らかなように、年間の総労働時間というのは実際には長くなってきている。

 大臣は、この原因がどこにあるかというふうに認識されているでしょうか、実際に長くなっているという問題について。

尾辻国務大臣 分析でございますので、まず局長に答えさせていただきたいと思いますから、お許しください。

青木政府参考人 いろいろな、さまざまな要因があると思います。

 おっしゃったように、所定内労働時間というのは、ずっと労働基準法の改正で労働時間の縮減というのが進んでまいりましたので、少なくなってきたと思っておりますけれども、所定外については、とりわけ景気の変動等にこれまではよるところが大きくて、かなり変動があるということもございます。

 それから、お取り上げになりました、通常の労働時間働く方々、労働者と、それからパートとかアルバイトとか、そういうことで短時間で働く方々もふえてきて、それぞれ二極化をしている。そういう状況の中で、通常の労働時間働く方々に対しても、国際競争力の激化等によりまして働く時間が長くなるというような状況もあらわれてきているというふうに思います。長時間労働者の割合などもふえてまいりまして、私どもとしては、それをやはり、余りに長い時間働くというのは好ましくないということで、なかなか強権的にするというわけにはまいりませんけれども、いろいろな手だてを尽くして、御理解を得ながら、何とかそういったことを直していきたいということで努力をしているところでございます。

笠井委員 私は、いろいろあると思うんですが、原因として一番大きいのは、やはり労働基準法の三十六条に残業時間の上限を規制する法文がないということが大問題だというふうに思うんです。

 厚生労働省は、二〇〇一年の四月六日にいわゆるサービス残業の解消通達を出して、この四年間いろいろ努力されてきた。実際にそういうことで成果も上がってきていることを承知しておりますし、私も参議院時代にこの問題を取り上げたことを思い出します。さらに厚生労働省は、時間外労働の上限の大臣告示も行ったり、労使にも呼びかけるということをされたけれども、しかし結果は、先ほどお答えいただいたような現実がやはり依然としてある。

 それで、私、大臣に最後に伺っておきたいんですけれども、過去繰り返し、とにかく二十回近くの決定をやりながらもこうなっているという経過から引き出していただきたい教訓として、通達や大臣告示、指針などを策定して、あとは労使の自主的な取り組みに期待する、任せるということでは、現実には労働時間の短縮というのが進まない、やはり法的規制を何らかのものとしてやらないと、ということじゃないかと思うんです。

 例えば、年間三百六十時間の残業規制であっても、それが法的規制であるならば、そして、何年間かの段階的枠組みで実施するということであっても、法的規制であるならば確実にやはり推進する担保になるというふうにお考えにならないか。その点について、率直で明確な答弁を求めておきたいと思うんですが、いかがでしょう。

尾辻国務大臣 今のことについてはいろいろ御議論あろうかと思いますけれども、今国会に提出してお願いいたしております法律案の中では、実は法律にはこのことは触れておりません。それで、その後で、今お話しいただきましたように、労働時間等設定改善指針というもので定めることにいたしておりますので、今先生がおっしゃった御趣旨とはちょっと違う扱いになっております。今国会に提出しておりますので、今私がこれを変えるとかという答弁は当然できないわけでございまして、今そうなっておりますということだけを答えさせていただきたいと存じます。

笠井委員 最後に一つ。

 今、質疑の中で指摘させていただいた流れから見ても、今回の法案でということにはならないだろうというふうに思うんです。それでは本当に労働時間短縮という方向にならないだろうと。これはまた改めて法案のときに議論させていただきます。

 そして、これまでのそういう努力を一切やはり押し流してしまおうというのが、行き着く先がホワイトカラーのエグゼンプションということになると思いますので、私は断じてそういう道はとるべきでないと重ねてそのことを強調して、質問を終わります。ありがとうございました。

鴨下委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、第百六十三国会冒頭の厚生労働委員会でございます。尾辻厚生労働大臣には、重ねての大任、本当に御苦労さまでございます。この委員会は審議時間も長うございますし、週に行われる回数も大変多くて、なかなか大変に気苦労も多い委員会かと思いますが、どうぞお体にお気をつけあそばして大任を果たしてくださいますように、私も一人の議員として心から期待を申し上げます。

 そしてきょう、冒頭でございますので、できればなるべく尾辻大臣と骨格的な論議をさせていただこうかと思います。

 この総選挙の結果は、与党の皆さんがこの選挙制度のもとで大勝なさるという紛れもない事実で、この席の配分を見ても、与党側の方に大分多くなり、野党は少ないなという状況での審議でございます。しかしながら、この与党の皆さんの大勝という現実を前にしても、残念ながら私には、この社会全体が果たしてよい方向に向かっているのかどうか、非常に危惧されるところが多うございます。

 その危惧の根幹は、やはり昨今、いろいろな事件の報道を見ましても、親御さんが子供を殺す児童虐待、あるいは子供が親御さんを殺すような事件の多発、果ては子供が子供を殺すような現実。そして若い人たちが、先ほど来取り上げられたように、働くことに意欲を持てない、希望が持てないなどが繰り返されます都度、あるいは、先ほど山井委員もおっしゃいましたが、お手洗いに行くのに何でお金払って行かなきゃいけないの、こんなこと、やはりどこか変と。変と思う時代がどんどん進めばこれが当たり前になるのやもしれませんが、私はやはりそうじゃないと思うんです。

 変なものをもとに戻していくために、最も根幹的なものから問いかけ、手をつけていきたいと思いまして、私はやはり、月並みな言葉ですが、命ということがどういうふうにこの社会に受けとめられているかということから、きょうは尾辻大臣に御質疑をさせていただきます。

 冒頭一問目は、いわゆる我が国で命のリレーという言葉で使われておりますが、臓器移植、ある方が脳死状態になり、そこから臓器が摘出されて他の方に移植されるという臓器移植が法律としてつくられ、八年がたちました。今日まで三十八例が臓器移植に基づく脳死判定をされ、三十七例が移植が施行されました。

 その一例一例について厚生労働省は検証会議をお持ちでありますが、実は、三十例目の検証会議において、この脳死となられた患者さんについては、いわゆる脳死というのは、脳の中に器質的な何か病変があって、それが死に至るような重篤な状態である、ないしはほかの状態が重くて脳が二次的に損傷されて生命の予後が悪くなるような状態をいうわけですが、この三十例目については、最も基本であり判定の前提条件とされている器質的な、すなわち脳の中に病変があるかどうかをチェックするためのCTというコンピューター断層撮影というものが全くなされなかったということが検証会議で発覚いたしました。

 私は、この脳死臓器移植というものが本当に適正に実施されるために、この委員会でも都度取り上げさせていただきましたが、このような事例は初めてですし、これは、例えば見た目には生きておられるかもう脳死なのかわからないという状態の方をきっちり判定、判断するために、少なくとも前提条件であるところの器質的な脳内の疾患の状態、有無をまずチェックせよというのは、マニュアルの前提条件でございます。

 前提条件すら無視する移植現場というものがあり、そして、実は、この病院は日本医大の川崎にある病院でございますが、自分の院内マニュアルというのを使ってやった、その院内マニュアルで無呼吸テストというのをやったけれども、これも厚生省のガイドライン、マニュアル違反のやり方をした、二重三重に問題が発覚しております。

 尾辻大臣、この事態に対してどう思われ、またどう対処していかれるか。これは現場の本当にその場で助かったかもしれない患者さんでもあります。細かなことを伺う以前に、私はやはりこれは国民への信頼を裏切った行為であると思いますので、もしも大臣の御家族でそのようなことが起こったらどのようにお考えになるか、お感じになるかということを冒頭お願いいたします。

尾辻国務大臣 まず、先生、お医者さんでもいらっしゃるものですから、私の健康についてもお気遣いをいただきましてありがとうございました。私からも先生の御当選をお祝い申し上げたいと存じます。

 そこで、ただいまの御質問でございますけれども、日本医科大学附属第二病院における脳死下での臓器提供事例について、今お話しいただきましたように、臓器移植法の規定による脳死判定の際、一部、法的脳死判定マニュアルに準拠していなかったことが判明したところでございます。これはもう大変残念なことだというふうに考えております。

 そこで、臓器移植法の規定による脳死判定については適正に実施する、これはもう当然なことでありますけれども、この観点から、法的脳死判定マニュアルを示しまして、これに準拠して行うように指導してきたところでございます。

 やはり今回のような事例が起きますと、このことにもまたさらにかんがみまして、私どもといたしましては、当該提供病院に対して、法的脳死判定マニュアルに沿って実施するように、これはもう重ねて指導いたしますとともに、各臓器提供施設に対して改めて周知徹底をしてまいりたいと考えております。

 また、今後このような事例が発生しないように、脳死判定記録書の書式を工夫いたしまして、一部変えました。そのような工夫もいたしまして、脳死判定マニュアルに準拠して行われたことの確認が、より確実にされた上で臓器の提供が行われるようにするなど、改善方法についてさらに検討もしてまいりたいと考えております。

阿部(知)委員 大臣は御存じかどうかわかりませんが、実は一九九九年にも、第四例目、大阪の千里救命センターも院内の独自のマニュアルを使って実施されて、これが日本弁護士連合会から人権侵害であるという申し立てが起きておるわけです。その後、千里救命センターでは厚生省のガイドラインに従うということを表明されております。

 私が言いたいのは、前例もあった、八年もたった、それでもまだこれということは、指導します何をしますとおっしゃっても、これはだれかが亡くならなきゃ成り立たない特殊な医療でございます、その亡くなっていく方に対しての非礼、本当にそれで治療が尽くされたかという人権の問題、幾重にも根が深いと思います。

 四百七十余りある提供病院、各病院が独自のマニュアルをお持ちか否か。やはりまた起こるんです、ほっておけば。あるいは、きちんとそうした独自マニュアルでやる可能性がないということを確認していただくのが一点、私は現実的な対応だと思います。これが二回目。続いたことですので、これを先回対処してくだされば、今回はなかったのではないかと思います。大臣、いかがですか。

尾辻国務大臣 先回のことを、これはもう正直に申し上げますが、私、承知いたしておりません。今回のことは、御質問があるということで、私なりにこのように理解をいたして御答弁申し上げているところでございますが、今、前もあったという先生の御指摘でございますから、ぜひそのことももう一回調べ直してお答え申し上げたいと存じます。

阿部(知)委員 これは人の命にかかわる事態でございます。そしてそのことは、今、現行の法律、十五歳以上で本人の意思による臓器提供でございますが、場合によっては本人意思を外そう、あるいは十五歳以下にしようという法律を準備されている皆さんもおありでございます。現場がこれでは、私は、その先、幾ら屋上屋を重ねても命は守られないと非常に危惧しております。

 そこで二問目。ここに私はパンフレットを持ってございますが、これはことしの二月段階で、各中学生に教育委員会を通じて配られたパンフレット、臓器移植を勧めるパンフレットでございます。これが百二十万人の中学生に配られました。これは理事会で許可を得たものではないので、委員長と尾辻大臣だけに渡して、後は話の中で触れさせていただきます。

 例えば十五歳以下、中学生の子供が死をどのように受容しているか。まず身内で死を経験したことがあるか。死とは何か。非常にバーチャルな世界に生きております。ちょっと前でしたNHKの放送で、三十二人の小学六年生に聞きました、死んだら生き返ると思うか。二十八人が生き返ると答えました。そのくらいに、申しわけないけれども、まだバーチャルな世界に生きています。

 人間が生きるということ、その先にある死ということ、これを子供たちに伝えるには、先ほど尾辻大臣がニートの皆さんに、一人一人丹念に働くことの意味を伝えないともうどうしようもないんだとおっしゃったと同じように、私は、命の教育はこんなもの一枚で、あなたあげますかと中学生に問われるべきではないと思っています。

 今、中学生たちあるいは小学校の高学年の子供たちがさまざまな事件を起こします。その根幹にあるものは、やはり自分の命の大切さにもまだ気づかず、また相手をあやめてその結果がどうなるかにも気づかない子供たちが、残念ながら大変に多くなりました。私たち大人も死を見なくなったからだと思います。

 そう思って、この件で厚生労働省の臓器対策室をお呼びしました。そしてお呼びして、私はきょうこれで聞こうかと思ったけれども、もっとびっくりした資料が配られていたので、より衝撃の大きいそっちを使わせていただこうと思って、皆さんのお手元にカラフルな、こうした一枚の紙が資料で配られております。

 これは組み立てればこういう絵本風になるものでございます。真ん中を切って組み立てていくと、絵本のようになります。そして、例えば皆さんはどう思われますでしょうか、二という大きな数字が書いてある横には、色を塗ってと書いてあって、眼球、心臓、膵臓、小腸、腎臓、肝臓などに色をつけるような、これは仕様になってございます。

 もしも皆さんのお子さんがおうちでこれを色鉛筆で塗る。心臓、肝臓、腎臓。お孫さんでもいいです。子供たちに、臓器が部品であるかのような、物であるかのような、そして、これを全体だれに配るのと聞いたら、小学校低学年だと言われました。果たして死が実感できるでしょうか。犬や猫の死だってまだ見たことがないかもしれません。私は、一番大事なものは命であり、命を子供にどう伝えるかだと思います。

 尾辻大臣、これは厚生労働省が無関係なところでやっているものではございません。これは厚生労働省が臓器移植ネットワークと御一緒に、希望のある小学校には配っておるものでございます。

 余りに安易に過ぎると思いませんか。そして命の教育があってしかるべきです。でもこんな塗り絵で、おまけにこんなパンフで、こんなふうにして、あげちゃうわというものではないと思います。こういうことを繰り返していけば、日本がどんな国になるか、私は本当にこの文化的退廃を案じています。

 これは、臓器はあげたりもらったりという単純なものではありません。臓器移植という治療法があることは存じています。しかし、こんな幼子にこんなもので宣伝されるものでもございません。大臣は、これはどうお受け取りになるでしょうか。

尾辻国務大臣 臓器移植法を審議して採決いたしますときに、私どもの党でも党議拘束を外しておりました。そのことに象徴されますように、この問題については非常にさまざまな御意見があるということだと思います。そしてまた同時に、極めて慎重に考えなきゃいけないものだというふうにも思うわけでございます。

 そうしたことに対するPRでございますから、学校現場などにおけるこうしたものも極めて慎重にやらなきゃならない、この扱いというのは極めてそういう性格を持ったものだというふうに考えます。

阿部(知)委員 私のところにも、二週間ほど前、中学生が自分の中学を終わるときのテーマにこの臓器移植を取り上げたいと言ってやってきました。私は、私がきちんと責任を持って話せる距離で、あなたは死を見たことがあるか、あるいはあなたが亡くなったら親御さんはどう思うかとか、いろいろな話をしました。それほどに重いし、こんなふうに命の贈り物もらいますか、あげますかと、こんなものではないということをぜひ今の大臣の言葉に添えて、行政上の行き過ぎを私は正していただきたい。

 これは本当に子供たちのためにもならない、日本の国のためにもならないと思います。丁寧に生き死にを語ることが今大人に課せられた任務であると私は思っていますので、重ねてお願い申し上げます。

 引き続いて、もう一つの、先ほど仙谷委員がお取り上げになりましたが、我が国で貧困が進んでいるのではないかという御指摘に関係して、生活保護のことについてお伺いをさせていただきます。

 冒頭、大臣、恐縮ですが、生活保護という制度をどのように御理解でありましょうか。

尾辻国務大臣 よくセーフティーネットという言葉を使いますけれども、生活保護というのはまさにセーフティーネットだというふうに私は理解いたしております。

阿部(知)委員 確かにセーフティーネットであるわけですが、生活保護法の第一条には、この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保護する、国の義務を憲法二十五条を引いて規定したものでございます。

 そして、現在その事務等々は地方自治体にお願いをして、また、地方負担も何がしかをお願いして実施されておるわけですが、この間の三位一体改革の中で、国と地方の負担割合をどのように考えるのかという去年から持ち越された問題がございます。特に生活保護の保護率が高い市町村、政令市の首長さんたちが、このままではもしかして押し切られる形で地方が負担を請け負うことも懸念されて、生活保護制度自身に根本的な見直しがなされるということの必要性をお訴えになり、現在これにかかわる、どのくらいの方が生活保護下にあるかという数の報告を七月末でストップしておられると思います。

 これは、国が地方にお願いし、地方からデータを上げてもらって、さまざまな集計が出る大事な国と地方の連係プレーの分野でございますが、それが、今現在この政令市を中心に情報を国に伝達する作業がストップされているという事態と、これをよい方向に打開するために大臣はどのようなお考えを持っておられるかについてお伺いいたします。

尾辻国務大臣 今、確かに、各自治体において報告をしていただくその報告を政令指定都市の皆さんがとめておられるというのは、そのとおりでございます。

 このことが、今直ちに被保護者に対して保護費を支給することに関して支障が生じておるものでもございませんけれども、しかし、これは、こういうことをしておられるというのは、私どもとして申し上げると極めて遺憾なことでございますので、ぜひ報告をまたしていただきたいというふうには思っております。

 ただ、大きくこういう事態にどういうふうに対応するかというお話でございますけれども、このことにつきましては、今私ども協議会をつくりまして、そして、市長会の代表の方も入っていただいて、今後のことを協議しておるさなかでございますから、十分協議をさせていただいて答えを出したいというふうに考えております。

阿部(知)委員 その協議の視点の中に、ぜひ厚生労働省として抜本的にお考えいただきたいことがございまして、きょう、残り二枚の資料提供をさせていただきました。実は、この二枚目の資料の作成に、昨夜遅くまで厚生労働省の担当部局がお働きいただきまして、まず、その件については大臣にも御礼を申し上げます。

 ここの一枚目は世帯類型別の被保護世帯の年次推移というのがございまして、生活保護になる理由が御高齢であるか母子世帯であるか傷病者であるか障害者であるかというものの年次推移が書いてございます。十六年度という年度でまとめ上げますと、現在九十九万七千世帯が総数で、そのうち高齢世帯が四十六万五千ということになってございます。

 これは大臣も御存じだと思いますが、我が国の生活保護制度の際立った特徴で、半数近くが高齢世帯である。残念ながら、高齢世帯であれば、いろいろな自立支援策、就労をお願い申し上げても、大体六十五歳以上でいらっしゃいますから、なかなかそこからお仕事で収入を得るということも、本当のところ難しゅうございます。

 大臣に一枚おめくりいただきたいのですが、その次には、被保護高齢者世帯が年金を受給しておるかどうかの表がございます。平成十年から十五年までずっと見ていただきますと、六十五歳以上の被保護人員のうち年金受給者の数をあらわしたものがございます。例えば、さっきは世帯数ですが、人数だと平成十五年で百三十四万、六十五歳以上の方は四十九万人、そのうち年金受給者は二十三・二万人で、年金受給率は四七・二でございます。これは少ない年金でも何がしかの年金をお持ちである方で、逆に言うと、五〇%以上は六十五歳以上で無年金ということでございます。

 となりますと、現状、我が国の生活保護制度は、高齢者を支えるためのいわば年金にかわるものになっておるのではないかという指摘が、これは従来からもなされておるところであり、さらに下を見ていただきますと、被保護者の年金受給状況を今度は六十歳から七十歳まで段階的に見ていただきますと、この中で、実は六十五歳から六十九歳の年金受給なしが六一・〇%、七十歳以上は四九・一%。高齢者の方がまだ年金をお持ちの方がいらして、六十五歳から六十九歳、基礎年金が入ったにもかかわらず、そこで現状六割が無年金になっておる。

 そうしますと、これは将来のことを考えますと、今、国民年金の空洞化も含めて極めて深刻であるということを考えると、生活保護が本来の生活保護ではない形にさらになっていくであろうと思われます。

 大臣にお願いがございますが、やはり骨格的な論議、この高齢問題が年金問題の給付の半数以上を占め、さまざまに生活保護という最後のセーフティーネットを考えるに当たって、もう少し、例えば他制度、年金制度とこの生活保護制度、あるいは母子世帯への扶助制度と生活保護制度と、もっと大ぐくりな論議を一度私はなさっていただきたい。

 これはいろいろな文献で拝見、拝読いたしましたが、そうした根本論議がなかなか、平成十二年に言われましてからもないように思います。そのあたりが、今各市町村が高齢者をこんなに抱えて年金給付大変なんだと、ここをただ単にお金をどっちが持つかだけの問題で解決していただきたくはないとおっしゃっている根幹だと思いますので、本日は私の問題指摘でございますから、大臣のお受け取りと、また、どのようにお進めいただけるかをお願いします。

尾辻国務大臣 まず、先ほど話題になりました指定都市の市長さん方のお話でございますけれども、昨年この市長さん方からも、生活保護というのはもう制度疲労を起こしているんじゃないかというお話も、要望書として上がってまいりました。そうしたことも受けて、先ほど申し上げた協議会は、生活保護をどうするかということで抜本的な議論もしなきゃいかぬと思って今それを進めておるところでございますから、まず生活保護については、きっちりしたいろいろな角度からの議論をしたいと思っております。

 今、年金との絡みの話もございましたけれども、そうなりますと、それにとどまらず、今度はまた社会保障を一体的に見直すといったような議論の中でも議論が必要になってまいりますし、今その議論もいたしておりますから、これはお話のとおりに、いろいろなところで幅広く議論はさせていただきます。

阿部(知)委員 ありがとうございました。終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

鴨下委員長 次に、内閣提出、労働安全衛生法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 労働安全衛生法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

尾辻国務大臣 ただいま議題となりました労働安全衛生法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 働き方の多様化が進む中で、製造業等における重大な労働災害の頻発、長時間労働に伴う脳・心臓疾患や精神障害の増加など労働者の生命や生活にかかわる問題が深刻化しています。

 こうした問題に的確に対処していくため、政府といたしましては、必要な施策を整備充実するための労働安全衛生法等の一部を改正する法律案を第百六十二回国会に提出いたしました。同法案は、審議半ばで衆議院の解散に伴い廃案となり、成立を見るに至りませんでしたが、一刻も早くその実現を図るため、ここにこの法律案を提案し、御審議を願うこととした次第であります。

 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。

 第一に、労働安全衛生法の一部改正であります。

 事業者の自主的な安全衛生活動の促進、危険・有害な化学物質の表示制度の改善、製造業等における元方事業者による作業間の連絡調整の実施など事業者による措置の充実を図るとともに、医師による面接指導の実施等により過重労働・メンタルヘルス対策の充実を図ることとしております。

 第二に、労働者災害補償保険法の一部改正であります。

 複数就業者の事業場間の移動、単身赴任者の赴任先住居と帰省先住居の間の移動を、通勤災害保護制度の対象とすることとしております。

 第三に、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正であります。

 事業の期間が予定されている事業である有期事業に関し、事業場ごとの災害率により保険料を増減させるメリット制について、その増減幅の上限を百分の三十五から百分の四十に拡大することとしております。

 第四に、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正であります。

 全労働者一律の目標に向けた労働時間の短縮を図る法律から、労働者の健康や生活に配慮した労働時間等の設定に向けた関係者の自主的な努力を促進する法律に改めるとともに、指定法人を通じた助成等の仕組みを廃止することとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、平成十八年四月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鴨下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十二分散会


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