衆議院

メインへスキップ



第10号 平成18年3月17日(金曜日)

会議録本文へ
平成十八年三月十七日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 岸田 文雄君

   理事 大村 秀章君 理事 鴨下 一郎君

   理事 北川 知克君 理事 谷畑  孝君

   理事 寺田  稔君 理事 園田 康博君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    上野賢一郎君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      清水鴻一郎君    柴山 昌彦君

      菅原 一秀君    杉村 太蔵君

      鈴木 馨祐君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      平口  洋君    福岡 資麿君

      松浪 健太君    松本  純君

      御法川信英君    やまぎわ大志郎君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      小宮山洋子君    郡  和子君

      仙谷 由人君    田名部匡代君

      古川 元久君    松木 謙公君

      三井 辨雄君    村井 宗明君

      柚木 道義君    高木美智代君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           小宮山洋子君

   議員           西村智奈美君

   議員           郡  和子君

   厚生労働大臣       川崎 二郎君

   総務副大臣        山崎  力君

   厚生労働副大臣      赤松 正雄君

   厚生労働副大臣      中野  清君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            名取はにわ君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  竹花  豊君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           荒木 慶司君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       北井久美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 塩田 幸雄君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁次長)    小林 和弘君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     鈴木 馨祐君

  菅原 一秀君     やまぎわ大志郎君

  原田 令嗣君     柴山 昌彦君

  三井 辨雄君     小宮山洋子君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     原田 令嗣君

  鈴木 馨祐君     木原 誠二君

  やまぎわ大志郎君   菅原 一秀君

  小宮山洋子君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  松木 謙公君     三井 辨雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)

 児童手当法の一部を改正する法律案(小宮山洋子君外四名提出、衆法第九号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

岸田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案及び小宮山洋子君外四名提出、児童手当法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府男女共同参画局長名取はにわ君、警察庁生活安全局長竹花豊君、総務省大臣官房総括審議官荒木慶司君、自治財政局長瀧野欣彌君、法務省刑事局長大林宏君、文部科学省大臣官房審議官布村幸彦君、厚生労働省大臣官房総括審議官金子順一君、医政局長松谷有希雄君、雇用均等・児童家庭局長北井久美子君、社会・援護局長中村秀一君、老健局長磯部文雄君、保険局長水田邦雄君、政策統括官塩田幸雄君、社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁次長小林和弘君、国土交通省大臣官房審議官和泉洋人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岸田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 きょうの審議のトップバッターに立たせていただきました。どうぞよろしくお願いをいたします。

 二〇〇四年の国民生活基礎調査によりますと、一歳未満のお子さんを持っている母親の実に六四・二%が、子育てに対して不安や悩みやストレスを感じているということでございます。我が国は、男女共同参画社会を目指しているといいつつも、子育て環境を見ますれば、父親の協力を含め、子育ての孤立化が大変加速しているというふうに懸念されます。

 実は、私の地元、宮城県の鹿島台町というところで、先週末でございましたけれども、一歳と四歳の我が子を刺して心中という事件がございました。二人の子供は亡くなりました。母親は命を取りとめました。詳しい事件の背景はまだわかりませんけれども、子育てに悩んでいたというような地域の情報もあると聞いております。大変痛ましい事件でございます。

 子供の命は今さまざまな危機にさらされています。児童虐待も深刻でございます。現在もどこかでSOSを発している子供たちがいると思えてなりません。今回の児童福祉法の一部改正では、児童相談所の施設整備事業が一般財源化されることとなっております。児童相談所につきましては、この前の改正で、その趣旨を踏まえ、児童虐待防止対策の一層の充実強化を図っていくことが求められているところでございます。

 そこで、まず、子育て支援の中でも最も緊急でそして真剣に取り組むべき問題といたしまして、児童虐待の問題を取り上げさせていただきたいと思います。

 まず、警察庁に伺います。過去五年間の虐待検挙数とそれから死亡例について、推移についてもお尋ねいたします。

竹花政府参考人 お答え申し上げます。

 警察が検挙いたしました児童虐待事件の検挙件数は、平成十三年中百八十九件、平成十四年中百七十二件、平成十五年中百五十七件、平成十六年中二百二十九件、平成十七年中二百二十二件となっております。また、このうち被害児童が死亡した事案につきましては、平成十三年中は六十件、十四年中は三十八件、十五年中は四十一件、十六年中は四十九件、十七年中は三十七件となっております。

郡委員 大変高い数字で、本当に痛ましく思いますけれども、これらの結果から見えてくる事件の傾向やそれから特徴ということはございますでしょうか。

竹花政府参考人 十七年中に検挙いたしました児童虐待事件二百二十二件について、その傾向を見てみますと、まず、虐待の態様別に見ると、身体的虐待が全体の七〇・三%を占め、次いで性的虐待が二四・八%、怠慢または拒否が五・〇%となっております。

 また、十七年中に検挙した児童虐待事件二百二十二件の被害児童は二百二十九人でございますけれども、これを年齢別に見ますと、六歳以下が全体の四八・五%を占めておりまして、さらに一歳未満につきましては一四・八%となっております。

 また、十七年中の検挙事件の都道府県別の状況を見ますと、最も検挙件数が多かったのが大阪府の二十五件、次いで北海道と埼玉が二十件となっております。

郡委員 ありがとうございます。幼い子供たちが多いということと都市部に多いという傾向があるというふうにうかがえます。

 これらの状況というのは、厚生労働省も当然のごとく把握されていらっしゃると思いますが、大臣、いかが思われますでしょうか。

川崎国務大臣 今、警察庁から報告がありましたように、十七年で検挙人員でも二百四十二名という状況になっております。

 次代を担う子供が健やかに育ち、子供を生み育てることに喜びを感じることができる社会をつくっていくことが課題となっている中で、子供の心身に大きな影響を与え、さらには生命が奪われるような児童虐待事件が依然として発生していることはまことに遺憾でございます。子供と子育てをする家庭を、世代を超え、行政や地域社会も含めて社会全体で支え、子育てのセーフティーネットを構築していくことが、すべての子供と子育てを大切にする社会づくりを進めていく上で重要と考えております。

 外国では、アルコールとか薬物による理由が割合多いようでございますけれども、日本は少しそれとは違う複雑な要因でございます。したがって、しっかり分析をしながら、そしてやはり早期発見につなげるようにしていかなければならないな、このように思っております。

郡委員 ぜひしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。

 虐待の防止対策というのは、虐待防止法が施行されてからさまざまなメニューが用意されております。承知しているところですけれども、改めまして、そのメニューと予算についてお尋ねしたいと思います。

北井政府参考人 児童虐待防止の対策と予算についてお答えを申し上げます。

 御指摘のように、平成十六年に法律の改正がございまして、児童虐待防止法の改正とそれから児童福祉法の改正を行いました。そういうことを踏まえまして、児童相談に対する体制の充実などを図っております。

 恐れ入ります。もう一度申し上げます。

 まず、対策として、法的措置といたしまして、平成十六年に児童虐待防止法を改正して、児童虐待に係る通告義務の範囲の拡大などを内容とする法改正でございましたが、こうした法改正、それから児童相談に関する体制の充実などを内容とする児童福祉法の改正、これを行ったわけでございます。法的措置を行いますとともに、自治体の参考となるように、さまざまな運営指針、児童相談所の運営指針や市町村の相談援助のための指針といったような、いろいろな指針の策定、改正を行いました。

 それから、国におきましては、全国で起きました死亡事例の検証を行うことといたしまして、専門家による検証委員会を設けて検証をし、その報告書の公表に努めているところでございます。

 それから、児童相談所の児童福祉司の配置基準を見直すということで政令を改正いたしまして、児童福祉司一人当たりの標準人口を、おおむね十万から十三万であったところをおおむね五万から八万に改正したところでございます。こうした影響もございまして、全国の数字で、児童福祉司は、この平成十六年から十七年にかけて、一年間で百七十六人の増員が図られております。

 それから対策でございますが、平成十六年十二月に策定いたしました子ども・子育て応援プランにおきまして、初めて、児童虐待対策を初めとして、特に支援を要する子供とその御家庭に対する支援の推進も盛り込んだところでございます。これまでのエンゼルプランや新エンゼルプランではこうした観点はなかったわけでございますが、そうした対策もきちんと盛り込んで、具体的な数値目標を掲げて、虐待の発生予防から早期発見、早期対応それから子供の保護、自立支援に至るまでの切れ目のない総合的な支援を図っていくことといたしております。

 関連予算につきましては、児童虐待防止法が施行されました平成十二年度に対しまして、十八年度の予算案では大体十二倍となっておりまして、百十八億円ほどの予算をお願いしているところでございまして、対策の強化に努めているところでございます。

郡委員 今、法的措置に伴ってさまざまな取り組みを御紹介いただいたわけですけれども、児童虐待の件数というのはなかなか少なくならないというような状況が続いております。その成果と今後の課題というのはどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

川崎国務大臣 今局長から、対策について、また予算について御説明をさせていただきました。

 国民の理解と認識も深まってきているとは思いますけれども、依然として虐待の相談件数が増加の一方である、潜在的なものが出てきておるのかなという見方もありますけれども。一方で、死亡事件も大変多いということも事実でございます。こうした状況を真摯に受けとめ、引き続き対策の強化を図っていきたいと思います。

 特に、見させていただくと、ゼロ歳児が四割それから一歳児が一五%。ゼロ歳―一歳で五五%を占めている。したがって、学校や保育園や幼稚園に行く前の段階、家庭の段階で起きておるということでございますので、みんなで目を光らせなきゃならないということになるだろうと思います。

 昨年四月から、市町村に児童家庭相談を担っていただいているところでございます。その体制強化や、多様な関係機関による虐待防止ネットワークの構築を図りつつ、発生予防から保護、支援に係る総合的な取り組みを推進することが第一であります。また、虐待を受けた子供の心のケア、虐待を行った親への指導など、家庭全体を視野に入れた支援を強化することが必要だと考えております。

 今後とも、制度改正や対策の実施状況について検証しつつ、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

郡委員 ありがとうございます。

 厚生労働省が二〇〇五年、昨年の四月に児童虐待の死亡例の検証結果というのをまとめられております。また、昨年一年間の新聞報道などを検証いたしますと、幾つか問題点が見えてまいります。

 先ほど川崎大臣もおっしゃいましたけれども、児童虐待防止ネットワークの設置を図っているのだ、そしてその機能を充実させるのだというふうな御答弁ございましたけれども、この問題、まだまだ残されていると思っております。

 また、虐待の大きな要因となっております子育ての孤立化ということが上げられているわけですけれども、さらに質問を進めさせていただきます。

 改正児童福祉法施行で、要保護児童対策地域協議会を設置するということとなりました。そして、児童虐待防止のためのネットワーク、これを設けているというお話ございましたけれども、現在、全国にどれぐらい設置されているのか、お尋ねいたします。

北井政府参考人 市町村域において、児童虐待防止にかかわる多様な関係機関が必要な情報交換をして保護者等を支援していくための虐待防止ネットワークにつきましては、平成十七年六月一日現在、千百十三カ所で設置をされております。それから、今御指摘のございました法定協議会でございます要保護児童対策地域協議会につきましては、同じ平成十七年六月一日現在、百十一カ所で設置をされております。これらを合わせますと、当時の数字で、全国二千三百九十九の市町村のうち、五一%に当たる千二百二十四カ所で協議会あるいはネットワークが設置されているところでございます。

郡委員 五一%ということで、およそ半分はまだ設置されていないということになろうかと思います。

 それから、児童虐待防止ネットワークと要保護児童対策地域協議会、これはどういう違いがあるのか、簡単にお願いいたします。

北井政府参考人 地域協議会は児童福祉法に位置づけられた協議会でございまして、この協議会は、設置されたときはその旨を公示がされます。そして、運営の中核となって調整に当たる機関を決めます。そして、協議会のメンバーには守秘義務がかかっております。そういうようなことで、個人情報の保護という要請と関係機関が協力連携をして支援をしていくという関係を明確にし、守秘義務をかけながら、そして責任機関も指定しながら多様な関係者が情報交換をし、支援措置を講じていくということにしたわけでございます。

 一方で、ネットワークは、事実上のいわゆる多様な関係者が集まっているネットワークということで、違いがございます。これまでのネットワークがこの法定協議会に移っていくということが期待されるわけでございます。

郡委員 今御説明いただきましたけれども、半数のところではまだ設置をしていないという状況もございます。それから、設置していない中で、協議会設置予定、ネットワークについても設置予定がないというのが三〇・六%にも上っているということで、もっと特段の御指導をお願いしたいところだと思います。ぜひ、一日も早く体制整備を行っていただきたい。

 全国市町村の半分が設置されていないということですけれども、一〇〇%の設置はいつを目標とされていらっしゃるのか、では副大臣にお尋ねいたします。

中野副大臣 郡議員の虐待防止ネットワークの設置についての御質問にお答えをしたいと思います。

 児童虐待の対応におきましては、関係機関ができるだけ虐待を早期に発見して、把握した情報を関係機関で共有をして、連携しながら積極的かつ適切な支援、サービスを提供することが重要である、これは今先ほど大臣が仰せのとおりでございますが、各市町村における虐待防止ネットワークの設置を促進するためには、まず第一に、毎年のネットワークの設置状況を公表し、未設置市町村に取り組みを促すということがございます。

 それからまた、いわゆる市町村の児童家庭相談援助指針によりまして、ネットワーク活動の好事例についても積極的な情報提供が必要だと思いますし、また次世代育成支援対策交付金の活用による財政支援等の施策が講じられると思っております。

 今お話しのとおり、これから子ども・子育て応援プランにおきまして、平成二十一年度までには遅くとも全市町村に設置をする、そういう目標に向けまして、今全力で努力をしているところでございます。

郡委員 おととしの十一月の厚生労働委員会の審議の中で、実はこの件に関しまして、我が党から、設置を義務化すべきだというふうに投げかけさせていただきました。これに対しまして、当時の尾辻大臣は、今後の課題になるのかなと思うというふうに答弁されております。もしこれが達成目標に届かないことがわかったら、法改正も視野に入れて一日も早い法整備を再度求めたいと思います。

 なぜ設置を義務化しなかったのか、また厚生労働省として、地域対策協議会、ネットワークが有効だからこそ法改正をしたのだろうというふうに思うわけですけれども、これを実体のあるものにしていくための具体策というものを本当にお持ちになっていらっしゃるのかどうか、改めて伺います。

北井政府参考人 この地域協議会は、法文上は設置することができるという言い方になっておりますが、やはり、できるだけ、守秘義務がかかりながら関係者の間で情報を共有して、そして支援措置を講じていくというこの協議会システムに移っていただきたいと思っているわけでございまして、私どもとしては、子ども・子育て応援プランの目標のもとに、自治体に対して精いっぱいの働きかけをしているところでございます。

 具体的には、毎年ネットワークの設置情報を公表することによって未設置市町村に取り組みを促しておりますし、財政支援もソフト交付金を活用して行っているところでございます。そして、全国の会議の場であるとかさまざまな機会を通じまして、個々にもお願いをしているところでございます。

 そうしたことで、目標達成に向けて進んでいきたいというふうに思っております。

郡委員 児童虐待による死亡事例の検証結果についてという、これがございますけれども、今までの警察庁の御説明それからこれらの結果から、ネットワークが設置されていながら機能していなかった例というのが随分ございます。報告の中では、二十四例中十九例、七九・二%がネットワークが設置されていたんですけれども、関与したのはそのほかの機関を含めて五つの事例にとどまっております。なぜこういうことになるのか。

 また、機能の充実のために、コーディネーターの養成とか事例研究のさらなる充実など、さまざまな取り組みが必要というふうに考えますけれども、その姿勢についてお尋ねいたします。

北井政府参考人 私どもの調査の中で出てきておりますのは、ネットワークが関与していなかったというのは、要するに把握をしていなかったということでございまして、児童相談所なり関係機関がその事例について接点がなく、把握をしていなかった、その間に事件が起きた、こういうことだろうというふうに考えます。

郡委員 つまり、まだまだ不十分であるということだろうと思います。

 この事例調査の中では、虐待が起こった背景といたしまして、「地域からの孤立」というのが五〇%、また「転居してまもない」というのが三三・三%になっております。警察庁の報告にもございますように、都市部での検挙件数が多いことなども考えますと、子育ての環境というのが大変孤立化しているということが大きな要因になろうかと思います。

 そこで、孤立化している親を救う積極的な取り組みというのが求められているわけですけれども、そのために、ここにこういうものを設置しているからこちらに来なさいというのではなくて、地域の中で小まめに活動なさっている最も身近な同世代の子育てグループなどの支援を活発化させて、地域のコミュニケーションというのをさらに高めていく努力というのが求められているのではないかと思います。

 地方交付税などの支援をこの地域子育てネットワークなどにも求めたいと思うんですけれども、これは大臣に前向きな御答弁をお願いしたいと思います。

川崎国務大臣 孤立した育児は児童虐待のリスクの要因の一つであります。児童虐待防止の観点から、育児の精神的負担の軽減の観点からも、御指摘のような子育てサークルなど地域で子育てを支え合う人間関係をつくり、孤独な育児をなくしていくことは必要であると考えております。

 その中で、国としては、まず、地域子育て支援センター、これは全国に二千七百八十六カ所ございますけれども、ここの運営を補助いたしております。子育てサークルとこの支援センターのつながりというものを大事にしていきたいと思っております。

 一方で、つどいの広場、これは、子育て中の親子が気軽に集い、相談、交流できるつどいの広場の身近な場所での設置を推進するということで、現在百五十六カ所でございます。事業内容は、子育て親子の交流、集いの場の提供、子育てアドバイザーが子育て、悩み相談に応じる、地域の子育て関連情報を集まってきた親子に提供する等の事業をやっております。

 このつどいの広場、次世代育成支援対策交付金、ソフト交付金の仕組みの中で今推進をいたしているところでございます。

 この地域子育て支援センター、つどいの広場、こういう事業を通じながら、子育てサークルというものをしっかり支援していくというか、ネットワークを構築していくということが一番大事だろうと考えております。

郡委員 こういうメニューを用意しているのでこちらに来なさいという姿勢ではなくて、孤立している、あるいは転居して間もないのだというような例から見ますと、地域の中で仲間に入れるという、こちら側から働きかけるという姿勢が必要なんだろうと思います。そういう意味でも、地域で活動なさっている子育てサークルというようなものをより多く活用するというのがその近道になろうかと思いますので、提案をさせていただきます。

 次に、虐待を受けました子供たちのケアですとか受け入れ体制、これについて伺います。

 現在、児童相談所、満杯であるということが報じられております。そしてまた、補完する意味で、情緒障害児短期治療施設、この設置が行われております。

 二〇〇四年に策定いたしました子ども・子育て応援プランの中では、この情緒障害児短期治療施設、これを全都道府県に設置するということになっておりますけれども、現在の状況をお願いいたします。

北井政府参考人 情緒障害児短期治療施設は、十八年二月現在の数字で、二十二道府県におきまして二十七カ所が設置されております。

郡委員 全都道府県に設置される目標というのはいつでございますか。

北井政府参考人 子ども・子育て応援プランが五年の計画でございますので、二十一年度までにはということになると思います。

郡委員 二〇〇九年度ということですけれども、その間、被害を受けた子供たちが置き去りにされるということになります。これはぜひとも急いでいただきたいというふうに思います。

 次に、副大臣にお尋ねいたします。

 財政難などということは決しておっしゃらずに、まず子供を守るという観点に立って、この目標をすべてクリアできますように、その決意のほどを伺います。

中野副大臣 引きこもりとか、情緒障害とかという情緒障害児の短期治療施設につきましては、今局長が御答弁しましたように、二十二道府県で二十七カ所ということでございますが、虐待を受けた子供たちの専門的な心理的治療実施施設として、この役割はますます重要だ、委員のおっしゃるとおりだと思っております。

 今、これも御質問ございましたように、二十一年度までに全都道府県に設置することを目標にしておりまして、この目標の実現に向けましては、全国のいろいろな会議の場とか、またあらゆる機会をとらえまして、未設置の都道府県に働きをかけておりまして、今後とも、この目標に向けまして、設置促進については全力で努めてまいりますことをお約束したいと思います。

郡委員 ぜひお願いをいたします。

 次に、里親制度についてお尋ねいたします。

 虐待を受けました子供たちを養育する専門里親という制度がありますけれども、これが非常に少ないと聞いております。これは、今お話にも出ている情緒障害児短期治療施設を補完する役割を十分担えるものだというふうに考えますけれども、なぜこれが十分活用されないのか、現状の御報告をいただき、そしてなぜ少ないのか、またあわせてふやしていくための取り組みについてもお答えいただきます。

北井政府参考人 まず、専門里親の登録数でございますが、平成十七年三月末現在で二百五十四人ということになっております。そのうち、実際に子供を預かっていただいておる里親数は四十五人でございます。したがいまして、全国的にまだ少ないわけでございます。この専門里親の制度は平成十四年に制度化したものでございまして、年々その数は増加しておりますが、まだ少ないということでございます。

 その要因でありますが、委託児童の養育期間に原則二年以内という要件がございまして、その制限があるからではないかという御指摘がなされておりましたので、私どもでは、平成十七年一月よりその見直しを図りまして、その二年ということにとらわれずに、里親や子供さんの状況に応じて弾力的な運用を図ることができるようにしたところでございます。

 それから、この専門里親を含めて、里親制度の普及については、もっともっと里親制度が普及できるようにしていかなきゃいけないと思っておりまして、さまざまな広報も含めまして今行っているところでございます。

郡委員 次の質問に移らせていただきますけれども、このところの新聞報道など、虐待児を守る場、パンク状態という報道が続いております。児童相談所の体制ですけれども、全国の児童福祉司や児童心理司が本当に全国各地で激務のために悲鳴を上げている状況でございます。

 ちなみに、昨年の八月の日経新聞なんですけれども、全国児童相談所の所長会の調査で明らかになったものというふうになっていますけれども、虐待の相談に対する一週間当たりの平均件数なんですけれども、児童福祉司一人当たり、多いところで百三件にも上っております。

 これではもう、幾ら虐待をなくすんだ、この問題に対応するんだ、子育てを支援するんだというふうにおっしゃられても、それこそ仏つくって魂入れずという状況であろうというふうに思います。大幅な増員が緊急に必要だと思いますけれども、すぐに取り組んでいただけますね。

 また、子供の命を守っていくんだという責務も、そしてまたこれら福祉司の労働条件の改善という責任も、これはすべて厚生労働大臣が背負っておられるわけです。どうぞ大臣、はっきりとした決意を持ってお答えいただきたいと思います。

川崎国務大臣 児童虐待相談件数の急増等の厳しい状況を踏まえ、平成十六年、児童福祉法の改正により、都道府県等の児童相談所のみならず、市町村においても児童家庭相談に応じることといたしました。児童相談所の児童福祉司の配置基準を強化するなど、地域の児童相談体制の充実を図ってまいりました。配置基準改正前が人口おおむね十万から十三万まで、改正後は人口おおむね五万から八万。

 これに近年、児童相談所の児童福祉司等の増員が図られてきておりますが、平成十六年から平成十七年にかけて厚生労働省が全自治体を対象に実施した児童相談所の実情調査結果において、児童相談所長や所管課の認識として、虐待相談や処遇困難事例の増加により職員の業務負担は増加しており、現下の児童相談所の体制は依然として厳しいとの声が寄せられております。

 児童相談所や新たに児童家庭相談に応じることになった市町村への支援や、専門性の高い困難な事例への対応などの役割が求められており、これらの現場の声なども踏まえると、児童相談所の中心的な役割を担う児童福祉司及び児童心理司の数はまだ十分でないと認識しております。業務を適切に行うために必要な職員の配置の充実を図られるよう、関係方面に働きかけてまいりたい。現実、交付税ということでやっておりますので、地方自治体に御理解をお願いしていくということになろうかと思います。

 先ほどの議論にも出ておりました。法律で書いてもこういうことでありますので、そういった意味では、障害者の雇用の問題とか、最近の問題として出ていますのは、例えば小児医療の問題で、シャープ八〇〇〇番というのがありますよね。あれがやはり約半分の県しか対応していただけない。

 私自身は、基本的には公表をもっとする。例えば私ども三重県の状況はどうなっているか、まあ今は多少わかっていますけれども、国会議員としての立場では余りわからなかった。やはりもうちょっと、どんどんどんどん公表していって発信しながら、地域の事情というのはこうなっていますよということは国民、県民にわかるようにしていかないと、なかなかインセンティブが働かないのかな。場合によってはトップの方が知らなかったなんということまで出てまいりますので、その辺をやはり考えながら進めていかなきゃならない。

 言われるとおり、これだけの課題が出ておりますので、必要な人員の体制を強くお願いしてまいりたいと考えております。

郡委員 ぜひ、今の御答弁のように、しっかりとした取り組みを大臣が旗を振って進めていかれますように、なおお願いをいたします。

 次に、子育て費用の軽減について伺ってまいります。

 格差社会が拡大しております今、子育て世代の所得というのも大変減少傾向にあると言われておりまして、平成十六年の国民生活基礎調査によりますと、これは厚労省のものですから既に御存じのことと思いますけれども、年収が、児童のいる世帯で百五十万円未満の方が三・三%、それから三百万円未満の方が一二・二%、四百万円未満の方が二一・六%と、大変低所得者層がふえております。

 毎月どれぐらいで暮らしているんだろうということを考えますと、住居費を払ったり、それからさまざまな費用が出ていくところを見ますと、政府案の児童手当の支給額というのが本当に十分と言えるのかどうか。あわせて、政府の児童手当の支給金額五千円の根拠の御説明をいただき、見解をお尋ねしたいと思います。

川崎国務大臣 我が国の場合は、基本的には、児童手当、税制での支援、それから公務員や企業は配偶者手当と子供の手当、こういうものがなされております。国によってはもうこれは一本化して児童手当にしていこうという国もあります。また、税額控除を残している国もございます。その議論というのはまさに我々与党の中でも随分しておりまして、税制でやるべきか手当でやるべきか、こういう議論をずっとしてまいりました。

 今回、基本的に小学校六年生まで拡大をさせていただいた、いろいろな財政のやりくりをさせていただいたわけでありますけれども、一度整理をしていかなければならないなという御答弁をこの委員会でも二回、三回させていただいております。

 特に、問題になりますのは子育てに対する支援でございますから、もう一つは教育の側面を考えなければならないだろう。特に負担が大きいというのは、乳幼児期の負担というのがまず多い。それからまた高校、大学の進学というものをめぐって非常に多い、こういう二つの側面がございます。

 したがって、こうしたものをどう若い夫婦に対する支援として総合的に仕上げることができるか、財源問題も含めてしっかりした議論をしなければならない。支援ですから、できるだけ金額が多ければ多いほどいいわけでありますけれども、諸外国と比べて、税制や企業の負担も加えていくと、まあそう大きく劣るという話ではないなという感じがいたしております。

郡委員 世界各国を見ましても、日本の今回の政府案の第一子、第二子五千円、そして第三子一万円という額がいかに各国と比べて低いかということをここで改めて申し上げたいと思います。

 先ほどの虐待事例調査の中にもございますけれども、虐待家庭の養育背景に、経済的な不安ということを上げていらっしゃるところ、失業ですとかあるいは職を持たない、持ち得ないというようなところが三三・三%もあるというふうに報告されているんですね。子育て費用に対する特段の支援というのが必要だということは間違いないわけでございます。政府案の児童手当ではこの問題が解決するというふうには到底思えません。我が党の思い切った支援策にぜひとも御賛同いただきたいというふうに思います。

 さて、次に参ります。

 働きながら子供を生み育てることのできる社会の構築について伺わせていただきます。

 妊娠を理由とした解雇それからその他の不利益な取り扱いというのに、これまでも多くの女性たちが大変つらい思いをしてまいりました。そこで、男女雇用機会均等法施行以来、均等室へ、妊娠や出産などを理由といたしました解雇など不利益な取り扱いに対する申し立て件数というのはどれぐらいあったのか、件数それから推移と、またこの妊娠、出産ということを理由にした不利益の割合についてお答えいただきます。

北井政府参考人 労働局の雇用均等室におきましては、男女雇用機会均等法に基づきまして、労働局長の個別紛争解決援助を行っているところでございますが、その中で、妊娠、出産などを理由とした解雇等の個別紛争解決援助件数は、五年間申し上げますと、平成十二年度五十三件、平成十三年度六十一件、平成十四年度七十七件、平成十五年度九十六件、平成十六年度百六件と増加傾向にあるところでございます。

 また、援助件数全体のうちで妊娠、出産等を理由とした解雇等の件数の割合も増加傾向にございまして、平成十六年度におきましては七割を超えているところでございます。

郡委員 現行の均等法でも、妊娠、出産についての解雇ということに関しては禁止されるわけですけれども、なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。本当に均等法自体もどうなんだろうというふうに悔しい思いがしてならないわけですけれども、実際に事例がございまして、さらには結婚したことによっても不利益な扱いを受けているというようなこともございます。それから、妊娠を理由にパートに身分を変更するとして辞表の提出が強要された、その後説明がないまま執拗に退職勧告が行われて退職を余儀なくされたというような、こういう報告も上がっているところです。

 大変厳しい状況で、しかもこれからは女性も働きながら子供を育てていくということを応援しなくちゃいけないわけですから、なお対策というのは、企業に対しての厳しい支援というか厳しい取り締まりというか、そういうところもしっかりしていただきたいと思います。

 こういうことを働く女性の側も、また企業主の方も知らない、あるいは知っていて知らぬふりをしているということもあるんでしょうけれども、すべての人たちに、妊娠、出産にかかわる解雇というのはだめなんだということをテレビなどのマスメディアを通じて広く啓発そして普及する活動というのをお願いしたいと思いますけれども、これについては副大臣、いかがでしょうか。

中野副大臣 今委員から男女雇用均等法の趣旨、また意味というものについてお話ございましたけれども、この男女雇用均等法につきましては、全国の都道府県の労働局雇用均等室におきます周知啓発により、社会全般に対する浸透に今全力で努めているところでございますが、現在の均等法では、今おっしゃるとおり、妊娠、出産を理由とする解雇以外に、例えば不利益な配置転換とかいわゆる雇いどめとか、今委員おっしゃいましたけれども、そういうような不利益な取り扱いは禁止されておらないわけでございますが、今般、これを禁止するところの均等法の改正法案を今国会に提出したところでございます。

 この改正法案につきましては、これから御審議をお願いするわけでございますが、特に男女雇用均等法の改正内容を広く周知することが社会に浸透させる上で重要であると思っておるわけでございまして、この改正法案が成立した暁には、速やかに周知に努めてまいりたいと思っておるわけでございます。

 特に労働者に対して、均等法で禁止された妊娠や出産を理由とする不利益な取り扱いを受けた場合につきましては、都道府県の労働局雇用均等室が担当でございますが、ぜひ御相談をいただけるよう、そうすれば速やかな対応をさせていただくということを、政府広報はもちろん、その中にはいわゆるテレビのCMもできればしたいと思っておりますけれども、それからホームページとかリーフレットとかパンフレットとか、または労働者や使用者の団体の協力を得つつ、あらゆる手段をもって周知を図ってまいりたい、そういう決意でおります。

郡委員 出されております雇用機会均等法については、また議論を別の場でさせていただこうと思います。

 次が育児休業制度なんですけれども、これは、まだ育児休業制度について就業規則の中に明記していない企業というのが随分あるというふうに知って、びっくりいたしました。この底上げを図っていく、そしてまた、企業の中に育休というものを徹底させていくんだという取り組み、これはどうなされているのか、次にお尋ねいたします。

北井政府参考人 現在、育児休業制度を就業規則等に規定している事業所の割合は、平成十四年度の調査で、総計で六一・四%となっております。規模別に見ますと、やはり大規模な企業の方が規定率が高く、中小企業になるほど規定率が低くなっております。

 私どもでは、育児休業は事業所内の規定の有無にかかわらず法律に基づいて直接取得できるものではございますけれども、やはり容易に取得できるように、本当にとりやすくするためには、各事業所において就業規則などに規定していただく、そうしたことによって明確にルール化していくということが重要であるというふうに認識をいたしております。

 こうしたことから、まず規定整備の必要性についての周知徹底を図り、事業主への相談援助によって具体的に規定が進むように援助や指導をしているところでございます。また、個別訪問の機会等も通じまして個々にも御相談に応じているところでございます。

 また、平成十八年度の予算案におきましては、特に育児休業の取得が立ちおくれております百人以下の中小企業に対しまして、特別の手厚い助成措置を盛り込んだところでございまして、最初に育児休業者が出た事業所については一人目百万円、それから二人目六十万円というような助成制度も盛り込んだところでございまして、こういう助成金も活用しながら、育児休業制度について具体的に就業規則において明確化していただくように要請をしていきたいというふうに思っております。

郡委員 今、十八年度には特段の予算をつけたという御説明がございましたけれども、なかなか実効性が上がっていないという状況だと思います。子育てを支援する企業というのは、先進的な取り組みをなさっている企業、ぽつぽつと出ておりまして、この春闘でも賃上げのほかに、これは少子化対策というようなことでしょうか、育児退職者の再雇用を掲げる企業もあれば、特段の育児支援をされる企業も出てきていることが報じられています。

 ある民間調査機関の調査によりますと、育児とそしてまた仕事とを両立させる取り組みをしっかりとしている先進企業の過去十数年の売上高の伸びというのが、一般企業は二割減ったんですけれども、逆にこの先進的な企業は三割近く伸びているという調査結果がございます。

 育児休業を利用して、働くお母さんたちを応援する、あるいはお父さんたちを応援するというようなことが企業にとってもとても有益になるということをここで改めて申し上げておきたいと思います。

 そして、なお現在六一・四%しか育児休業規定をしっかりと就業規則の中に盛り込んでいないというところですから、しっかりとした企業の取り組みを推し進めるためにも、例えば、入札制度の中で、子育てを一生懸命やっている企業に対しては優先的に指名をするというようなことを総務省に働きかけていただいたり、また優遇税制を取り入れるというようなことを財務省と協議していただいたりというような、さまざまなアイデアと努力とをしていただいて、さらなる拡充を図っていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

川崎国務大臣 週休二日制の導入のときに、ちょうど私はその時代にサラリーマンだったものですから、やはりトップランナーがいる、たしか電機とか自動車が中心だったと思いますけれども、週休二日制に、月四回ですか、踏み込んできた。一方、官公庁はそれの後をついていった。なかなか中小企業はそれについてこられない。それは、今御評価いただいたように、そういう配慮ができる企業がだんだん業績を上げていく。一方で、業績がいいからそういう配慮ができる。これは二つ重なるんですね。

 ですから、それがある中で、トップランナーというのにどんどん先へ走ってもらって、みんながそれに追いつけるようにしていく、トップランナーのやり方を我々がしっかり世の中に説明をしていく、こういうことが一つは大事だろう。一つは、中小企業等、なかなか追いつけない人たちにどう支援をしていくかということで、それはさまざまな助成措置を組ませていただいたというのが今日の状況であろうと思うんです。

 今言われた入札というものは、基本的には、できるだけオープンにしようという世の中ですから、そこはちょっと御勘弁願いたいと思うんです。税制等での支援とか、いろいろな切り口はあると思います。いろいろな知恵を出しながら、いずれにせよ、多くの企業が、また中小企業に至るまで、この育児休業というものに理解をいただいて、社会全体が子育ての方向へ向かっていくように努力をしてまいりたいと思います。

郡委員 やはり、国が国の責任において、子供を育てる人たちを大切にしていくんだ、そしてまた子供を大切にしていくんだということを示していただき、そして企業への働きかけというのも、企業の自助努力を待つのではなくて、やはりそこは国としての姿勢というのをしっかりとお示しいただきたいと思います。

 ところで、先日の参考人の陳述にもございました、女性が一生涯就業を中断することなく働いた場合、育児休業等も利用しながらですけれども、生涯所得は幾らになるかというと、試算が出ております。

 これは、国民生活白書の平成十七年版でも紹介されているものでございますけれども、二億七千七百万円、女性が一生涯ずっと正社員で仕事をしていた場合。一方で、女性が育児をしながら、例えば、子供を産んで一たん仕事をやめ、そして二番目のお子さんを産んで六年後に再就職をした場合、こういう試算が出ているんですけれども、その生涯年収は幾らかといいますと、四千九百万円です。二億二千八百万円も差があります。これを機会費用の損失というふうに参考人は陳述されましたけれども、これをできるだけ少なくしていく取り組みというのが重要だというふうに重ねておっしゃっておりました。

 この育児休業につきまして、賃金保障がないということもありますし、それからまた育児休業そのものをとらせにくい企業体質というのもございます。

 また、女性ばかりが子育てのために仕事を中断してこういう結果になるわけですけれども、男性との間の格差というのも大きなわけで、次には、男性の育休の取得について、これをどういうふうに政府として旗振りをされるのかということも含めてお尋ねします。

 男女がともに子育てを担っていくというような理想からは非常にかけ離れた状況が今の日本だというふうに思います。これではだめだ、父親もやはり育児に参加しなくちゃいけないんだということは、大臣も同じお考えをお持ちのことと思います。厚生労働省、男性の育休を頑張ってとらせましょうということを言っていらっしゃるわけですけれども、ちなみに、厚生労働省の男性の職員の方々の育児休業の取得率、それから何日とったのかというのを御紹介いただけますでしょうか。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省の職員、これは、施設等機関、地方支分部局も含めてでございますが、平成十六年度に育児休業を取得した男性職員は十四人でございます。育児休業が実際に取得が可能と考えられる職員を分母に置きましてその率を算定いたしますと一・三%。その平均取得期間は、日数ではございませんが、四・七月というような数字になっております。

郡委員 それでは、女性職員の育休の取得についてはいかがでございましょうか。

金子政府参考人 今申し上げましたことの女性についてでございますが、同じ平成十六年で女性職員の場合、六百九人が育児休業を取得しております。取得率につきましては九七・四%。その平均取得期間は十・七月というふうになっております。

郡委員 やはり随分と男性と女性の間に差があるということがはっきりしたかと思います。

 厚生労働省では、男性の育休の取得をさらに推し進めようということで目標値を設定されているわけですけれども、これも随分先の話で一〇%。この一〇%で本当に十分なんだろうかどうなんだろうか。私なんかは、やはり、女性と同じぐらいに取得するような、そういう社会にならなければならないというふうに考えているわけですけれども。そういう旗振り役をやっていらっしゃる厚生労働省の男性の育休の取得率が一・三%でしかないという、この現状について、どういうふうに、大臣、お感じになりましたでしょうか。

川崎国務大臣 もちろん、役所が先頭に立ってやらなければならないことですから、全省庁は〇・九、厚生省が一・三、一・三で上だからいいじゃないかということは私は考えません。しっかりやらなきゃならぬなと思っております。

 よく御質問いただきましたのは、障害者雇用等の問題を厚生省はきちっとやっているかと。今、病院が少し数が少なかったものですから、一生懸命やらせています。そういった意味では、さまざまな厚生省が抱える課題、先頭に立ってやらなければならないときに、役所の中で徹底をしながら努力をしてまいりたい、このように思っております。

郡委員 徹底をしながらやってまいりたいと思いますという御答弁でございましたけれども、この一〇%という目標値を掲げていらっしゃるわけですから、厚生省がどこよりも早くこの目標値に達するように、本当に大臣には頑張っていただきたいというふうに思います。

 今日本の社会は、子供がなかなか育てにくい、育ちにくい社会であります。働いていらっしゃる女性の多くも、いわば出産ストライキをしている状況というのが現在だと思います。このストライキをやめてもらえるような、そういう状況整備というのをぜひしっかりと多方面にわたってやっていただかなくちゃいけないというふうに考えております。

 現状の子供をふやしたくない社会というのは、大変、大人にとっても、もちろん子供にとってはさらにですけれども、生きにくい社会であるということの裏返しだと思っております。子育てに伴う不安や、そしてまた子供を持つということに対しての不安や不信、それから不満というものでしょうか、それを、一つ一つ種を取り除いていく努力というのが求められているんだろうと思います。

 実は、私自身の話をして申しわけありませんけれども、私は子供を一人しかもうけませんでした。働きながら子供を育てていくというのには、さまざまな、やはり障壁が高いというのが今もなお続いているんだろうと思います。大臣も御自身の状況をおっしゃっておられましたけれども、団塊の世代で四・幾つだったという出生率のお話もございましたけれども、私の祖母は、産めよふやせよの軍国時代でございました。六人の子供を持ちましたけれども、私が一人しか持たないことに対しましては、子供はそんなに多く産まなくたっていいんだ、とにかく大切に育てなさいというふうに励ましてもらいました。

 政府がこの間やっております子育て支援というふうなこと、これが、くれぐれも人口政策、経済的な面から、この国の将来が、国力が弱くなっていくんだということで旗を振るのではなくて、女性が、例えば子供を産めないという女性に肩身の狭くなるような思いをさせないような、本当に子供が欲しい人が持てるような、そういう取り組みというのをさらに進めていただきたいと思います。

 質問を終えます。どうもありがとうございました。

岸田委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 引き続きまして、この三位一体の改革、児童手当法の一部を改正する法律案につきまして、私からも、いただきました時間に基づきまして質問をさせていただきたいと思います。

 そして、私は、これまでの議論を伺っておりまして、大臣の率直な御答弁といいますか対応を、いわゆる論理的な形で語っておられ、そして、その論理、ロジックがきちっとしたものであるならば、やはり自信を持っておっしゃっておられるなという気がいたしております。恐らく、政治的な判断とそれから論理的な判断、さまざまな観点の中から、それを組み合わせてしっかりと御答弁をいただいているというふうに感じております。

 私自身も、実は、論理的な物の思考といいますか、そういう形をとらせていただいて、それに納得したものから順番に物事を進めていくという、どちらかというと石橋をたたく人間の方だというふうに自分自身は思っておるところでございますけれども、恐らく、そういうところと、それにプラスアルファした政治的な思い切った判断、それを両者兼ね備えた大臣であるのかなという、勝手ながら、私からの思いを語らせていただいております。

 そんな中で、今回、この三位一体の改革、全体、総括的な部分をまず最初に大臣にお伺いをしたいというふうに思っているわけでございます。

 今回の二〇〇四年の骨太の方針から始まりましたこの三位一体の改革、いわば国と地方のあり方論議というものが、ここに来て、私から申し上げさせていただくならば、いわば財政効率化の議論に最終的には終始してしまったのではないかな。すなわち、本来ならば、ずっともう三十年、四十年前から、私ども学問的な立場からも言わせていただくならば、地方分権、あるいはそこから名前がどんどん変わってきて、地方主権、これからの時代は地方主権だという形も言われ始めてきたこの昨今の状況の中で、いわば財政的な観点に基づいて、あるいは最終的な政治的な判断というものがその中で下されたのかもしれませんけれども、いわば本質的な理念がこの三位一体の改革の中に果たしてあったのかどうかということは、私はしっかりとここで検証をしながら前に進めていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 そういった観点からでございますけれども、大臣の御評価でも結構でございますが、まず、この政府が進めてまいりました三位一体の改革のいわゆる総括といいますものと、それから、これからの次なる施策、どういう形でこの地方主権という時代を構築していくのかという将来的なビジョンというものをお示しいただければなというふうに思っております。

川崎国務大臣 実は、私も、昨年のこの三位一体改革の議論を知事さんや市長さんとしていて、いろいろ悩みました、正直申し上げて。

 我が国はどこの方向を目指しているんだろうか。今の四十七都道府県という体制の中での地方分権を考えていくのか、すなわち道州制というものまでにらみながらの地方分権を考えていくのか、ここがまだはっきりしていない、こんな思いがいたします。すなわち、我が国は、ドイツという国を見本にしながら、あそこまでの分権を進めていくのか、イギリスやフランスというものを見ながらやっていくのか、こんなものを、どこへ方向を定めているのか、実はそこが基本的には成り立っていなかったような気がいたしております。

 それだけに、いろいろな議論が出ました。そういった意味では、生活保護費をめぐってもいろいろ、当然国がやるべきだ、それはイギリス、フランス型の議論でございます。我々の主張は、どちらかというと、道州制でないのにドイツ型の議論をしたということは間違いないと思います。ただ、方向づけをどうするのか、しっかり国の行方としては定めていかなければならないな、こんな思いを実は三位一体の改革の中でしております。

 しかし、一方で、五十兆円という事実上の税収の中で三兆円の移譲というものはなされるようになった。少なくとも、国から地方へ税が移り、権限が移った。権限の移り方について御批判はいただいています、移り方について御批判はいただいていますが、移るようになった。十七分の一でしょうか、そこまでいったというのは、そうはいうものの、やはり地方分権は進めなきゃならないぞという理解が中央省庁も含めて少しずつ醸成されつつあるなと。

 県も市も、実はまとめるのに大変御苦労をいただいたようでございます。議論していく中で、例えば、この間も参議院の予算委員会で御質問いただきました。難病治療というものを全部地方へ分権してしまうのか、おかしいじゃないかと御質問いただいた。しかし、それは地方から要求が出て、私どもはノーと言った話ですよという話をした。ところが、地方の担当者はそれを知っていたかというと、知らない。

 しかしながら、やはり向こうも、議論をまとめるためにはある程度大なたでやっていかなきゃならぬということでおまとめになった。私どもも従来の主張があった。その中でずっと去年議論をして、そして両者が一致した点でまとめさせていただいた。

 その中で、児童扶養手当、児童手当の問題、また施設整備費の問題、積極的に御評価いただいたのは、この施設介護給付の見直しとそれから施設整備費の一般財源化、こういうものを地方は最も望んでおりますと、二重丸をつけていただいたのかな、こう思っております。

 その他の部分については、国と地方が重層的な役割を担うということについては余り変わりない。そういう意味では、高い評価をいただいたとは思っておりません。しかしながら、両者が最終的には一致して、この問題を今回提案させていただくに至ったという経過でございます。

 今後の議論も、ここでお話しさせていただいたことがございますけれども、やはりどうあるべきかというのをしっかり考えた方がいいんだろうと思うんです。今、北海道の道州特区というものも議論されていますけれども、その中におきましてどのような分権を進めていくか。極端な言い方をされる人は、防衛と外交以外は全部地方に任せてしまえ、こういう意見も言われる。

 ただ、私は社会保障を担当しておりますし、先ほどからの議論のように、やはり国がある程度ルールを決めて、ずっと北海道から沖縄までしっかり目が届かなきゃならぬぞ、こういう御指摘をいただきますと、ある程度財源というものを持たないとおくれておる地域に手当てをしていけないな、こんな感も持っております。

 しかし、いずれにせよ、基本をどう考えていくかというのをもうちょっと県とやっていかなきゃならないな。といいますのは、うちの仕事自体が、幾ら言ったって我々ではできないんですね。県、市町村の御協力をいただかなければほとんどできない事業ばかりでございます。そこは他の省庁も似たような省庁はございますけれども、厚生労働省というのは最も県と市町村と協力し合いながらやらないと事業が進まない役所でございますので、そういった意味では、忌憚のない意見を知事さんと交わしながら方向性を出していかなきゃならないだろう、しかし、できるだけ地方に任せていくという方向づけだけは間違えないようにしなければならないな、こう思っております。

園田(康)委員 大臣、本当に率直にお答えをいただいたというふうに思っております。

 だからこそでございますが、すなわち、これまでの三位一体の改革のこの三年余りの論議が、いわば私から言わせれば、えいやあというか、とりあえず三兆円という額が、四兆円から三兆円になって、三兆円というものを半歩前進、いや、半歩どころではないですね、もっと小さな歩幅でありますけれども、前進をさせてきた。させなければいけないと。したがって、ではどの事務事業を移管するのかという形で、省内での議論、それから地方との議論、実は、それがさまざまな混乱を生んでしまった一つの原因ではなかったのかなと。

 すなわち、こういったものは地方に移すんだ、あるいはこれは国の仕事である、そういうきちっとした理念と目的がきちっとした形で最初に定まっていなかったからこそ、とりあえずぶち上げたものであるから、地方分権、あるいはこれだけの財源を移譲するというふうにぶち上げてしまったからこそ、後でどこをどういうふうにしようかということで後追いになってしまったのではないかなと。

 だからこそ、これからの三位一体の議論のいわば進化形というのか、あるいは第二次三位一体の改革というのか、あるいは新分権改革というのか、それはさまざまな言葉であらわされるでしょうけれども、私は、今後の議論の中においては、その理念というものをきちっとまず定めていかなければいけないものではないかというふうに思うわけでございます。

 そこで、今までの混乱した議論の反省の意味を込めて、ちょっと私から一つ、提案ではないですけれども、もしこれが今後の議論の中心的な理念という形で受けとめていただけるのであるならば、一つ提案という形をさせていただきたいと思いますので、ぜひ大臣、頭のどこかに入れておいていただければなというふうに思います。

 すなわち、分権の理念そのものは、これも学問的な言い方でいきますけれども、先ほど私、くしくも地方に移譲すると申し上げてしまったわけでありますが、それは、分析をすれば、いわば国の観点からしか見ていない言葉ではないかなというふうに思うわけであります。

 すなわち、国の形あるいは地域の形を考えていくならば、私は、まずは基礎的な自治体というものが中心になっていくものではないかなと。そして、そこの行政サービスであるとか公のサービス、公の社会の実現という言葉で表現してもいいのかもしれませんが、住民とのかかわり合いを持つ極めて高い基礎的な部分、ここがまず一つ、事務事業を担うものではないかというふうに思うわけであります。

 そして、そこが中心となって私たちの国民生活あるいは市民生活を担うわけでありますけれども、それをいわば補完的な形で、そこではどうしてもできない、もっともっと広くしていかなければいけない部分がある、そういった場合には、今の考え方の延長線上になるかもしれませんが、広域自治体という考え方が次に来るのかなという気がいたしております。そして、その広域自治体の延長線上にあるのが、いわゆる道州制というものが今議論が出てきておりますけれども、そういった広域自治体がその次に担う事務事業として考えられる形である。

 最終的に国の役割というものはそれをすべて包括するわけでありますけれども、基礎的な部分があって、それを補完する広域的な部分があって、そして最終的には国が大きく包括をするわけでありますけれども、中心となるものにはどんどん事務的な事業というものを公のサービスという形で行ってもらう、行う。そういう形の整理をしていけば、おのずと国の役割、地域の役割、あるいは中間的な役割というものがはっきりしてくるのではないかなというふうに思うわけであります。

 そして、それが公のサービスあるいは社会の実現というふうにいった場合に、いわば現物的な支給と現金的な支給の仕分けというものも、ある面、私は考えられていいのではないかなと思うわけであります。

 すなわち、現物的な支給、給付的な行政サービスというふうに切り分けたときには、今私たちが考えておりますのは、いわゆる高齢者介護もそうでありますし、先ほど大臣もおっしゃっていただきました障害であるとかあるいは難病であるとかそういった部分、それがいわば現物的な行政サービスという部分にくくられるものではないか。すなわち、これが可能な限り住民に身近な地方政府、いわゆる地方政府という考え方で仕分けをしていくということもこれから視点として考えていただきたいなと私は思うわけであります。

 あるいは、一定の規模、中間的な部分でありますけれども、広域自治体、こういった部分は、いわゆる雇用であるとか職業訓練、これは厚生労働省に限って今申し上げておりますけれども、そしてこれから議論をされようとしている医療の制度、こういった部分がいわば広域自治体部分で担う現物的なサービスの役割ではないかなというふうに思うわけであります。

 そして一方、先ほど申し上げた直接的な現金支給サービス、これは今ちょうど議論が、後ほどさせていただきますけれども、いわば子ども手当というもの、あるいは年金などもその部類に入るのではないかなというふうに私は思っておりますし、失業保険や労災保険、こういったものも、現金の支給サービスという形で仕分けをしていけば、これこそがまさしく国が果たすべき役割というものとして対応する、そういう一つの考え方を私はきょう申し上げておきたいと思っておるわけであります。

 児童手当、あるいは民主党が提案をしております子ども手当、そういったものは、直接的な現金給付、すなわち財政調整機能というものも出てくるわけであります。したがって、現金給付をすることとともに、それぞれの地方政府あるいは地域自治体、基礎的な自治体の中で財政調整機能というものも一方では果たしていかなければいけないわけでありますので、大臣がよくおっしゃっておられる地域間格差、これをなくすということを国の責任で行うことを、今後の検討材料といいますか理念の一つとして、ぜひお考えをしていただきたいなというふうに私は思うわけであります。

 そこで、これだけ私から申し上げさせていただいた上で再度お伺いをいたしますけれども、今回の、政府が政府全体で行ってきた三兆円という考え方であります。三兆円の税源移譲、なぜ三兆円であったのか、私は根本的な疑問を呈すわけであります。この三兆円という根拠でありますけれども、なぜにこれは三兆円という形になったんでしょうか。その点の御説明をいただければありがたいんですが。

川崎国務大臣 これは、私が担当する前に決まりましたので、踏襲してお話しさせていただきます。

 基本方針二〇〇三年において、国の地方向け補助金約二十兆円、このうち五分の一、おおむね四兆円程度を目途に廃止、縮減等の改革を行う、これが大方針だろうと思います。一方で、税源移譲の考え方として、地方の権限と責任を拡大するとともに、国、地方を通じた行政のスリム化を図る観点から、個別事業の見直しを行い、引き続き事業を実施する必要のあるものから税源移譲することとし、その規模はおおむね三兆円を目指すと二〇〇三年のときに決めました。

 二十兆円に対して四兆円ぐらいをまず目標にしよう。言われるとおり次の問題もあるわけですから、とりあえずこの数年間の間でやる目標として五分の一を決めたということが基本ではないでしょうか。

園田(康)委員 とりあえずというお言葉でありましたけれども、繰り返しになりますが、先ほど申し上げた本来的に地方が行うべき事業あるいは権限というものを、本来ならばしっかりと明記しておかなければいけなかったものではないのかなと。したがって、それに従っていけば、先ほど申し上げた切り分け作業といいますか、何兆円になるのか、あるいはそれが幾らになるのかということはその後に出てくるものであって、とりあえずというプロセス的な言い方と政治的な判断的な言い方というものが、むしろ混乱を招いてしまったのではないかということだけ指摘をさせていただきたいというふうに思っております。

 そういう観点から、私から一言で申し上げさせていただくならば、今までのこの改革論議につきましては、理念のない改革であったということが言われたとしても、私はこれは弁解の余地がなかったのではないかなと思います。

 したがって、これからの論議の中においては、ぜひ大臣、先ほど申し上げた、どういう形が国の形であるのかというものを、きちっとした理念をぜひもう一度打ち立てていただくように、大臣が中心となって政府の中で働きかけをしていただきたいというふうに思っております。

 そこで、ちょっと飛ばせていただきまして、各論に少し入っていきたいというふうに思います。

 今回、生活保護費の問題が当初厚生労働省から出てまいりまして、それに伴いましてさまざまな議論があったわけでありますけれども、最終的には児童手当と児童扶養手当という形で決着がついたというふうになっておるわけでありますが、いわば生活保護費がだめで、移譲ができなくて、すなわち、根本的な理念がなかったからこそ財政的な効率性あるいは財政的なつじつま合わせという形でこういう結果が出てしまったのではないかなと私は指摘をさせていただきたいわけであります。

 きちっとしたこの合理的な説明というものを私はまだ伺っていないと思っておりますが、この生活保護費が移譲はできず、そして児童手当と児童扶養手当というもので地方との合意ができたということから始まったというふうに言われておりますけれども、しかしながら、今回、本来的にやるべきものと、本来的に地域でやるべきでないものという形での議論があったのかどうかも含めて、お聞かせをいただきたいと思います。

川崎国務大臣 先ほど御提言いただきましたので、私も基本的にはそうだろうと思います。

 ただ、手法の問題として、特に小泉総理の手法でございますけれども、郵政民営化をやるんだと号令をかけて、あとは民営化の内容を考えろと。実はそれで仕事というものがはかどることも事実。

 片一方で、逆に、初めから積み上げが始まると、官僚は官僚で守ろうとする、地方は地方でという話になって、なかなか進まない。したがって、数値目標をぼんと掲げてやれというのが総理の今日の手法なんだろう。また、国民もその方がわかりやすいということで御評価いただいていることも事実だろう。私どもは積み上げの方がいいと思うんですけれども、積み上げていると、いつまでたっても回答を持ってこぬ、こういうおしかりを実はいただいて、今度は公務員五%削減、御党も出していますよね、削減。しかし、お互いにそれにはまだ内容がついていませんね。だから、そういうやり方もあるんですよ、自民党でも民主党でも。そういう意味では、目標を先に掲げるというやり方もあるのかな。ただ、次にやるときは、園田さんの御意見に私も基本的には賛同いたしております。

 それからもう一つは、これはドイツでも起きていますね。分権が一番進んだ国だけに、東西ドイツの合併の中で当然東が低いわけですよ。結局、国の調整機能というのは、だんだんだんだんドイツも大きくならざるを得ない。豊かなところから豊かでないところへいろいろな支援をしていかなきゃならない。そういう意味では、国民全体の理解が、分権というのは自分たちでやっていくのだよということをまず基本に据えないと、国が調整をしてくれるのが基本だよということへ頼っていれば、これはいつまでも進みません。

 今、北海道でも議論していますね。しかし、やはり、公共事業のかさ上げはそのまま残してくれという前提の中での分権議論というのは、我々横で聞いていても、なかなか難しい議論をしているなと。分権だけれども、国からの調整を頼むということを大きく期待する。そこはやはり、多少地域間格差というものは是認する中で、我々は我々でやるという気概が国民全体、県民全体で出てこなきゃならぬな、我々はそういう雰囲気が出ていくように努力をしなきゃいかぬ立場だろう、こう思っております。

 それから、生活保護につきましては、二年やったのですね。去年の話じゃなくて、おととしから始まって、この生活保護の問題と児童扶養手当の問題について議論しましょうと。十数回やりました、尾辻さんが出ていた時代、私が出ていた時代、随分議論しました。私の方から、実はきょうここでお話ししている話もしているんです。ドイツのあり方、フランスのあり方、どうですかねと。日本は、実は、国が責任を負っているわけでもない、地方が責任を負っているわけでもない、両者が負っているんですね。生活保護でも四分の三と四分の一、三分の二と三分の一という形で負っているわけですから、重層的に担っていますよと。

 一方で、園田さんみたいな御意見があるのは当たり前ですから、私どもは今回、まさにあなたの言われているとおり、生活費という現金支給部分については国がやりましょう、しかし、住宅とか医療とかいう物は、この部分はもう地方が責任を負ったらどうですかと、適正化の問題で。実は、私どもはあなたの言うような提案をしたんです。そこで分けていったらどうでしょうか、現金は我々がやりましょう、物の提供はどうぞ地方ができるだけ判断をできる材料を持っておやりになったらどうですかと。その中で、まあ正直言って話がつかなかった、言われるとおりです。話がつかなかったということが事実でございます。

 その一方で、それでは、児童扶養手当の問題、これは就労支援の問題もかみ合いながらの話ですから、どう考えますかというときがあって、最後の段階で、では全部自分の方でそれをやろうかという御意見もあったのです、児童扶養手当、権限も全部やるかと。しかし、それをやると、実は法務省的にも議論したのですけれども、そこは無理だね、やはり国の責任の分野というのは当然これは残るという見解になりまして、それで両者の話し合いが行われたというのが流れでございます。

 そういった中で、三分の一を私どもが負担をし、そして地方が御負担をいただくという形で変更になり、あわせて、児童手当の問題、これも児童扶養手当と児童手当の負担率が違うのはどうですかという御意見もいろいろあったものですから、それではこの問題も一緒にお互いが重層的に役割を担うということでよろしゅうございますかということで、最終決着に至りました。

 ただ、私から先ほど御説明申し上げたように、施設整備費については二重丸をやると言っていただきましたけれども、これについては丸ぐらいしかもらえなかったのかな、こんな思いはいたしております。

園田(康)委員 施設整備費の議論が出ましたので、ちょっと先にこの部分だけお伺いをしたいと思うんですが、今大臣がその過程をお話しいただいたわけでありますけれども、私は、ぜひそういう議論をやはりもっと活発にしていただくことだろうというふうに思いますし、もっともっと地方が自主的に、よく言われる、自分たちのことは自分たちで決めるという意識をしっかりと持っていただいて、いわば住民の意識の向上というものは絶対今後必要になってくるんだろうなと私は思っております。

 したがって、多様なニーズがどんどん出てきておりますし、あるいは個性の時代だというふうにも言われておりますし、一方で、住民の参加意識の高まりというものも期待をしなければいけない。同時に、住民の参加意識が高まってくると、今度は住民のいわば監視というものもその一方で出てくるのかなと思うわけでありますので、これが政治の活性化といいますか、地域の活性化にも最終的に私はつながっていくものではないかなと。

 いわばぶち上げてやる手法というやり方も、確かに時には必要なのかもしれませんけれども、ぶち上げられたから慌てて積み上げていくということではなくて、日ごろからのきちっとした理念に基づく積み上げもやっておけば、そういうぶち上げも一方でできる、あるいは、ぶち上げられたとしてもそれにしっかりと対応できるものではないかなという思いでいっぱいであります。

 日々の大変な大きな事務事業、業務の中ではそこまで頭が回らないかもしれませんが、どこかでそういったことも企画をしっかりと行っていくというものも同時にお願いをしたいというふうに思うわけであります。

 そこで、今ちょうどたまたま、二重丸、あるいは一重丸ではなかったかというようなお話がありましたけれども、先に、ちょっと順番を変えさせていただいて、今回の法律の形式のその他法改正事項というものの中で、施設整備費等がございました。御指摘がありました。これは、身体障害の援護施設を初め、障害に係るいわば公立の施設整備分につきまして、平成十八年度に一般財源化されるというふうに予定をされるわけであります。

 これに関しましては、昨年、私もかかわらせていただきました障害者自立支援法が成立をいたしまして、この四月からいよいよ施行される。そして、この施設部分に関しましては、二十三年度を目途にしっかりと基盤整備を図っていく、計画的に進めるというふうに一方では私は受けとめさせていただいているわけでありますけれども、今回の御提案をしておられます施設整備分、この公立の部分をどのように進めていくおつもりであるかということ。

 一方で、地方の要望といたしましては、これは大臣も御承知のように、公立部分ではなくて、すべての施設整備を一般財源化してはどうかということの要求が出ておりました。今般のこの障害者自立支援法との関係の議論にもあったとおり、私はこれは基本的には国の責任でしっかりと障害施策を進めていくべきではないかというふうに思うわけでありますけれども、政府のお考えはいかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今回の法律で障害施設等公立の施設につきましては、整備につきまして国庫補助を廃止、一般財源化することといたしております。

 これは、例えば一九七五年の障害者施設の公立、民立の割合をとりますと、公立が、一九七五年には四七・九%でありましたものが、二〇〇三年では二三・七%、逆に民間が五二%から七六%ということで、近年の施設整備は民間が非常に活発であるということ、いわば公立については定常的になっている、こういうことから、公立の整備については定着したということが考えられること。また、公立施設でございますので、当然地方自治体が主体的に整備、運営を行うことが可能である、こういう観点から、地方団体の御要望もあり、まず公立施設につきまして一般財源化をする、こういうふうにいたしたところでございます。

 委員から御指摘ございましたように、障害者自立支援法では、障害福祉サービスの基盤を計画的に進めるということで、十八年度から障害福祉計画をつくっていただくということで、三年を一期とする計画をつくっていただくことといたしておりまして、十八年度中に第一期計画をつくり、第二期計画は御指摘のとおり二十三年度までとなっておりますので、国としては、障害福祉基盤整備のあるべき姿、二十三年の姿を想定し、基本指針も示させていただくこととなっております。

 私どもの考えといたしましては、障害施設につきましては、まだまだ地域格差があるということでやはり国としての助成も必要であるということで、地方団体からはすべて一般財源化の御要望もありましたけれども、今日の障害福祉の地域格差が大きいことを考えれば、なお全国均一化するための施設整備費の必要が民間についてあると考え、今回、提案しているようなこととさせていただいた次第でございます。

 いずれにしても、障害福祉施設の基盤整備が重要であることは論をまたないわけでございまして、一般財源であれ国の補助金であれ、双方相まってこの基盤整備を進めていく、その意味で、国の責任分が後退するということはないというふうに考えております。

園田(康)委員 おっしゃるとおり、今回のこの改正案、そして、いわば一般財源化になっていくと考えられる部分もあるわけなんですけれども、しかし、今お話がありましたとおり、地域間格差はまだまだ大きなものがあるという観点からすれば、と同時に、今、民間部分、私立の部分が大変伸びております、これをもっともっと拡充していくという観点からすれば、国の責任が大変大きな役割を私は示すのではないかと思っておりますので、ぜひ、障害者自立支援法の施行状況と合わせて、この基盤整備というものをしっかりと行っていただきたいというふうに思うわけであります。

 そして、きょうは、理事会の御許可をいただきまして、皆さんに資料を配付させていただいております。その中で、まず一番目でございますが、これは厚生労働省の人口動態統計から抜粋をしてきているものでありますけれども、これはいわゆる出生数とそれから出生の構成割合をお示ししたものであります。特に右側の出生構成割合をごらんいただければなというふうに思うわけでありますが、第一子、第二子、第三子、そして第四子という形になっておりますけれども、いわば第一子が全体の数の中でどういう割合を占めているかという形をお示ししているものであると私は理解をしております。

 これを見ますと、統計がとられ始めたのが昭和二十五年からでありますが、見ていただければおわかりのとおり、第一子が全体の二七・二%、そして第二子が二八%、第三子が一六・五%、第四子が二八・四%という形で、第二子あるいは第四子以上の割合というものが大変多うございます。そして、第一子は逆に第二子、第四子に比べれば低いという形が見てとれるわけでありますけれども、この時代は大変出生率が高く、そしてお子さんの数も多いというものではないかなというふうに思うわけであります。

 これが、昭和二十九年から実に、第一子が一番多く、三一%を占めて、第二子以降を逆転してしまったわけでありまして、ずっとそれが今日まで推移をしております。二〇〇〇年では、第一子が四九%、そして第二子が三六・五%、第三子が一一・八%、第四子は二・六%と、ほとんどが第一子である。すなわち、一人の子供を産むのが大変であるし、割合がそれだけ大きくなっている、ふえている。第二子以降はなかなか子供を持ちたくても持てない、あるいは産めないという状況がこれから見てとれるのではないかと私は思うわけであります。

 厚労省としては、この数値をどのように分析され、そして今後どういうふうにこれに対して対策を行っていこうとお考えであるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

北井政府参考人 人口動態統計のそれぞれの出生順位別の割合は、今委員が御指摘になったとおりでございます。

 私どもとしては、現在の児童手当についてでございますけれども、第一子、第二子が同額で、第三子以降月額一万円ということで手厚くしているところでございます。この児童手当制度の月額の差につきましては、子供の数がふえるほど就業中断の期間も長くなって、家計の収入の減につながるといったようなことで、子育ての負担がより大きくなるということによるものと考えておりまして、第三子以降の額を手厚くする制度となっていると承知をいたしております。

 今後の手当制度のあり方につきましては、総合的にいろいろな観点から議論がなされる際に、こうした第一子、第二子、第三子以降の出生の状況というのも踏まえながら、議論の一つとして考えていく話ではないかというふうに思っております。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 つまり、大臣、これをよく見ていただければおわかりの、今も御指摘がありましたけれども、当初この法律、児童手当が作成されたときには、第三子以降に大変大きな負担がかかってくるであろうということから、第一子が、そして第二子が月額五千円、そして第三子以降にようやく一万円という額を持ってきたという形でありましたけれども、ここからすると、第二子、もう第三子ではなくて第二子を持つことすら難しい状況になってきているという形をかんがみれば、第一子と第二子、同額の月額五千円、五千円という形を持つというのは、私はこの実態に合っていないのではないかなという指摘をさせていただきたいと思います。

 すなわち、本来考えるのであるならば、第一子とそれから第二子、そして第三子と段階を設けて、児童手当の額というものも、さらに段階がこの中であってしかるべきではないのかなと思うわけであります。すなわち、第一子が五千円、第二子が例えば中間の七千五百円、そして第三子が一万円というふうに、政府の考え方にのっとって考えるのであるならば、そういう考え方が私は成り立つのではないかなと思っているわけであります。

 ただし、これはあくまでも今の政府の言い分にのっとって、私から、本来であるならばそういう考えが考えられるべきではないでしょうかというふうに申し上げておるものであります。

 私ども民主党としては、何度も提案をさせていただいておりますけれども、一人一人の子供に着目をするという形をとって、一万六千円という形をとらせていただいている。前提条件が私どもと政府とは全く違うわけでありますけれども、この政府の考え方そのものからすれば、第一子と第二子の同額という部分は、私は現状、現実に合っていないと指摘をせざるを得ないのではないかなというふうに思っております。これは、指摘だけにさせていただきます。

 それから、児童扶養手当につきましてですが、ちょっと時間が、後半の方がかなり重たい話をしなければいけませんので、ちょっと急ぎます。簡単にお答えをしていただきたいと思います。

 児童扶養手当の受給人数、これが年々増加傾向にあるというふうに、私も昨日資料としていただきました。簡単で結構でございます、これについての理由と、それから、これをどのように分析し、そして今後の手続、支援策まで教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

北井政府参考人 最近の児童扶養手当の受給者数は、平成十年度末には約六十二万五千人でございましたが、平成十六年度末には約九十一万一千人と、毎年増加をいたしております。増加の理由といたしましては、離婚件数が高水準にあることに伴いまして、母子世帯が増加していることが大きな要因であるというふうに理解をいたしております。

 施策につきましては、平成十四年の法改正によりまして、母子家庭対策につきましては、児童扶養手当を中心とする支援から、子育て、生活支援、就業支援を含めた総合的な自立支援に政策を転換しておりまして、以来、さまざまな施策のメニューも導入しているところでございます。また、十八年度についても、福祉と労働サイドが連携した新たな取り組みも全国展開をすることにいたしております。

 こうしたことで、特に就業支援ということにまずは力を置いて施策を進めていきたいというふうに思っております。

園田(康)委員 そうですね。経済的な支援というものが私は大変大きなものであるというふうに思っておりますので、就業支援というものをあわせて行っていただきたいわけであります。その際に、いわば母子生活支援であるとかあるいは就業支援、求職活動の支援というものの中で、ハローワークとの連携であるとか、あるいはそういった施設、団体との支援、あるいは母子家庭等就業・自立支援センターというものがございまして、こことのきちっとした連携と、それから、なるべく手続関係においてはワンストップで行っていただける、手続の簡略化ですね、それを心がけてやっていただきたいというふうに思います。

 それから、最終的な部分で、児童扶養手当につきましてはこの部分にさせていただきたいと思います。

 あと、基礎年金の国庫負担割合の部分も今般の改正では言われているわけでありますけれども、お配りをさせていただきました資料の三枚目であります。

 この部分については、今回、基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げるという形をとっているわけでありますけれども、定率減税の縮減、廃止を盛り込んで、この部分を基礎年金の国庫負担割合を引き上げるための財源として用いられたわけでありますけれども、この定率減税の性格からすれば、いわば現役世代の負担という形に私は考えているわけです。今まで定率減税を行って、それを廃止するということは、現役世代にすなわち増税という形で負担がかかってくるものではないかというふうに指摘をするわけでありますけれども、定率減税の縮減分を基礎年金の国庫負担割合の引き上げに充てた、そのお考えというものをぜひお伺いしたいと思うわけであります。これは、私から言わせれば、安易な充当の考え方ではなかったのかなと思うわけですが、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 平成十六年の年金制度改正におきまして、できる限り保険料の上昇を抑制しつつ、長期的な給付と負担の均衡を図り、持続可能な制度を構築するため、国庫負担割合を二分の一に引き上げるというふうに決まっております。

 基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるためには安定的な財源の確保が必要であり、平成十六年年金改正法では、まず、平成十七年度及び平成十八年度において、所要の税制上の措置を講じた上で、国庫負担の割合を適切な水準に引き上げる旨、規定されております。

 他方、もともと定率減税は平成十一年に景気対策として導入された暫定的な税負担の軽減措置であって、経済状況の改善等を踏まえ、平成十七年度税制改正において二分の一に縮減したところであり、平成十八年度税制改正においてその廃止を行うものと考えております。

 税制上、定率減税の廃止など、所得課税をあるべき姿に改革していく中で、その結果得られる安定的な財源を基礎年金の国庫負担の引き上げに充当することは、年金制度を将来にわたって持続可能なものとし、年金制度への国民の信頼を確保することにつながるものであると考えております。

 正直、これから消費税の議論も始まるんだろうと思います。また後で質問があるのかもしれませんけれども、二分の一に引き上げるとなると、この議論を避けて通るわけにはいきません。そのとき、当然、実は増税になります。現役に、当然増税になってくる、現役以外にもなりますけれどもね。何らかの税制的措置を講じるということは、裏返せば、当然どこかに御負担はいただかなければならないということになりますので、そういう意味では御理解をお願い申し上げたい。

園田(康)委員 おっしゃるとおりだと思いますね。

 したがって、今回の定率減税の充当分、ここでいきますと、十七年度一千百一億円、そして十八年度は二千二百億円という形で千分の二十五という形であります。

 次の資料で、もう先に私から答えを申し上げるわけなんですが、資料の四枚目で、基礎年金国庫負担割合の引き上げに要する見通しという形で計算をしていただきまして、平成十八年度、現行の二分の一への引き上げに要する額という形で、これは二兆三千億円が現段階で必要だということなんですね。

 したがって、今、ことしの充当分は二千二百億円です。二兆三千億円のうち、二千二百億円しかまだ手当てができていないということからすれば、今後の財源の議論というものは、こういう定率減税であるとかそういったものを充当する、ちょこちょこちょこちょこという形でやるのではなくて、この国庫負担割合を、いかなる税負担を行うのかということを、やはりこれはきちっと最初に提示しなければいけないものではないかというふうに思うわけなんですね。

 よくよく聞きますと、十九年度以降につきましては、来年以降ですね、まだ明確な財源が明示されていないわけですね。そうしますと、二十一年度までに二分の一に完成させなければいけないわけでありますので、これは与党の皆さんもこれから真剣に考えなければいけない問題だと思うわけであります。

 したがって、十九年度以降の財源措置、これをしっかりと、今後議論をぜひ精力的に行っていただきたいというふうに思うわけでありますし、同時に、私は、やはりもう一度年金制度の抜本的な改革というものを図っていかなければいけないわけであります。

 時間がなくなってまいりましたので私から申し上げますが、納付率、今、一昨年の年金議論の中で、国民年金の納付率の悪さ、収納率の悪さというものが各方面から大変指摘をされたところでございます。そこで、電話督促であるとかさらなるさまざまな対応をしながら、納付状況の改善を行ってきたというふうに見ておるところでありますけれども、今の段階では六四・八%、十七年度実績で、直近の数字でございますけれども一月末現在で六四・八%という形で、二年前、三年前に比べれば、六一%後半でありましたから、三%弱は収納率がアップしている、納付率がアップしているというふうに数字的には見てとれるわけなんですが、大臣、全体からすると、過去のデータをさかのぼってみますと、七〇%、八〇%は、十年前でも七〇%を超えていたわけなんですね。

 そうすると、ここで満足していてはいけない数字である、六四・何がしのパーセンテージで満足していてはいけない数字であると私は思うわけでありますので、ここもしっかりと社会保険庁が今後、改革の中で対応されるものであろうと思うわけでありますけれども、きちっとした対応をしていただきたいというふうに思うわけであります。

 そこで、その社会保険庁の問題に入るわけでありますが、その前に、今般の平成十八年度予算の中の特別会計部分に関して、これは大臣、私は、昨年あるいは一昨年と、それぞれその時々の大臣に、御要望と考え方をお聞かせいただきたいということで常に申し上げてきた事柄がございます。

 それは、いわゆる特別会計の話の中で、厚生保険特別会計の業務勘定というものがございます。その中の事業資金といたしまして、特別保健福祉事業資金、厚生年金の保険料から一兆五千億がこちらの特別保健福祉事業資金という形で流れております。あちこち質問項目を飛ばしております。この厚生保険特別会計の年金の保険料から一兆五千億が別勘定の中に組み入れられて、そして、そこの利子運営といいますか、運営費において、いわばさまざまな福祉事業を行っているというふうになっているわけであります。

 ことしの特別会計予算の中でいきますと、業務勘定で貸借対照表を見ますと、二百三十ページでありますが、特別保健福祉事業資金といたしまして一兆五千億円が計上され、昨年度よりもふえているんですね。そして、これは十六年度において生じた決算上の特別保健福祉事業に係る余剰金、七億二千二百八万百七十八円が余剰となって特別会計にまた組み込まれているわけなんですが、この余剰金、どうしてこういう形になったのか、御説明をいただきたいと思います。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

水田政府参考人 お答えいたします。

 まず、この特別保健福祉事業資金についてでございますけれども、先生からのお話ありましたとおり、厚生保険特別会計業務勘定の中に、一般会計からの繰入金をもとにして資金を設けまして、老人保健制度の基盤の安定を図るために、被用者保険の保険者に対する二つの助成事業を行っているものでございます。一つは、老人保健拠出金に対する助成事業、もう一つは、老人医療費の適正化等に関する事業に対する助成、この二つを行っております。

 お尋ねの平成十七年度の剰余金の受け入れでございますけれども、これは平成十五年度に実施いたしましたこれらの助成事業の決算で生じました剰余金を繰り入れたものでございます。

 具体的に申し上げますと、平成十五年度におきまして、先ほど申し上げました事業のうち二つ目の老人医療費の適正化等に関する事業の一環といたしまして、健保連、健康保険組合連合会が被保険者に対して行う保健師等によります保健指導、それから、組合の業務の効率化を図るためのレセプト審査業務に関するシステム開発に対して助成をすることとしておりましたけれども、これらの事業計画が変更されたことによりまして、交付した助成金の一部が返還され、御指摘の七億円余りの剰余金が発生したものでございます。

園田(康)委員 そうしますと、この事業そのものをどう評価するかというところにかかわってくるんだろうというふうに私は思うわけでありますが、一昨年、二〇〇四年の四月の二十八日に、私から時の坂口厚生労働大臣に指摘をさせていただきましたら、坂口大臣はこれに関しましては、一応新しい制度を平成二十年を目指して高齢者医療保険制度をきちっとやることに、これは別途医療保険の方でやっておりますと。十九年から二十年には明確にするということに、これは医療制度改革の話でありますけれども、いたしております、そのときには決着をしなければいけないことでございますという形で、この議論は、すなわち特別会計の中でこの業務勘定を、こういう形で事業資金をいわばへそくりのように別勘定に持っていっているということからすれば、この果たす役割、これが十年、二十年、平成元年の話であるならば、利息は年間九百億ぐらいはついておりました。したがって、大きな高齢者医療の中の事業資金としては大変有用なものであると言えるわけでありますけれども、今般では、私は九十億円ぐらいの程度しか見込まれていないというふうに、これは現に九十億円しかありません。

 そういった中で、余剰金も余ってくるというような形であるならば、それはもうやめた方がいいのではないかということに対して、時の坂口大臣はそのようにお答えをいただいたわけでありまして、同時に、お借りをしていることだけはもう間違いない事実でございます、それに対して利息をつけてお返し申し上げる、その利息をつけてお返し申し上げるのは早い方がいいと私も思っておりますというふうに大臣はお答えをいただいておりました。早ければ十七年、遅くとも十八年には国会にその案を御提示して、高齢者医療の問題を一方において決着をいたしておりますから、それにあわせてお借りをしているものは返済をしていくという方向で努力をしていきたいというふうにおっしゃっていただいております。

 それから、昨年も同じく私から指摘をさせていただきましたけれども、時の尾辻厚生労働大臣はこのように答えていただきました。この今の資金のあり方というものは老人保健制度のあり方と不可分でありますので、したがいまして、今、来年の、いわばことしですね、通常国会に高齢者医療制度の創設を含む医療保険制度改革のための法案を提出したいと思いますので、その際にこのこともあわせてというふうに考えているところでございまして、できるだけ早期に返済することを検討したいと存じますというふうに御答弁をいただいたわけでありますが、この事業資金の業務勘定でありますけれども、改善がなされていないんですが、どのように対応するとお考えなんでしょうか。

川崎国務大臣 御指摘いただきましたように、過去の答弁におきまして、新たな高齢者医療制度の創設とあわせ、特別保健福祉事業の廃止及び資金の年金財政への繰り入れをできるだけ早期に行うよう検討し努力する旨、お答えをいたしてまいりました。

 しかし、一方、新たな高齢者医療制度の創設に伴う健保組合への影響を考慮いたしますと、まず第一に、個別の保険者ごとに見れば、引き続き拠出金等の負担の軽減措置が必要となる組合がございます。また、健保組合等からは事業の存続の要請も出てきております。当面、特別保健福祉事業を存続させる必要があると考えております。

 いずれにせよ、特別保健福祉事業資金は、法律上、厚生年金保険事業の長期的安定を確保するために必要があるときは、特別保健福祉事業の必要性を勘案しつつ、年金勘定に繰り入れることができることとされており、厚生年金財政の状況も踏まえつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

園田(康)委員 ことし、医療制度改革が行われ、審議をされるわけでありますので、この根本的な事業のあり方をきちっと見直していかなければ、これはいつまでたってもずるずると同じ繰り返しをしてしまって、いわゆるサラリーマンが払っている厚生年金保険料、これが全く、その財政が厳しい折にもかかわらず、一兆五千億というお金が戻ってきていない、戻ってこないという形で半永久的になってしまうおそれがあるということだけ、私から指摘をさせていただきたいと思います。

 それから、もう時間がなくなりますので、最後に、きょう社会保険庁の長官もお越しをいただいておりますので、一言指摘をさせていただいて、御回答だけいただきたいと思います。いわゆる年金事務費の取り扱いについてであります。

 昨年から、社会保険庁に対するさまざまな改革と、それから厳しい国民の指摘があります。そして、それに対する信頼回復というものはやはり同時に行っていかなければいけないわけでありまして、そのことが、村瀬長官が民間から社会保険庁に入ってきた大きな意義であるというふうに私は思っております。

 そこで、いわゆる保険料は人件費には流用しないというような原理原則があったというふうにお伺いをしておりますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

村瀬政府参考人 年金事務費につきましては、委員御存じのように、原則として国庫負担、平成十年度からは、年金事務費の一部について保険料を充てる特例措置というのが国の厳しい財政の中でできている。その中で、昨年度、職員人件費につきましては基本的には国で、それ以外につきましては、事務費について保険料でという切り分けをさせていただいておりまして、その趣旨に基づいて、この十八年度についても同じような形でやっていきたいというふうに考えております。

園田(康)委員 時間が参りましたので、最後に指摘をさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 今長官がおっしゃっていただいたわけでありますけれども、職員人件費は国庫負担、確かにおっしゃるとおりであります。しかしながら、資料でもお配りをさせていただいておりますが、年金相談員と言われる方々がいらっしゃいます。こういう方々に対しては、いわば非常勤的な扱いではありますけれども、福祉整備費という観点の中から謝金という形でお金が出されております。

 したがって、これはいわば通常からいけば、非常勤でありますので、人件費と私は変わらないものであるという観点からすれば、年金保険料をここに充当するというのは、切り分けとしては正しくない方向ではないかということだけ問題点として指摘をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岸田委員長 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 きょう、私は、今回出ている法案の中で、特に地域介護・福祉空間整備等交付金の見直しについてお話ししたいと思うんです。

 今回の今私たちが審議している法案は、児童手当ばかり目が行っています。だけれども、いろいろな地域の福祉関係者の方々に聞いてください。本当に皆さんに今衝撃が走っています。なぜならば、この児童手当の中に隠れて、大きな問題が起こっているからです。

 今まで、この地域介護、国が大きく面倒を見てきました。そして、この地域介護についての交付金、何と八百六十六億円から四百七十六億円へ四五%もカットされるんです。自民党の皆さん、これから介護の需要はふえるんでしょうか、減るんでしょうか。確かに財政が足りないのはそのとおりです。だけれども、四五%もその整備のための交付金をカットして、本当にこれから介護の需要に私たちが対応できるのかどうなのか、そこを真剣に議論しなければならないと思います。

 この地域介護・福祉空間整備等交付金見直しの問題は、児童手当と一緒じゃなくて、これだけで十時間でも二十時間でも十分議論しなければならないほど重要な問題ではなかったか、私はそう思うんです。

 さて、その中で、まず皆さんにお配りした資料を見ていただければと思うんです。この資料を見れば、もともと都道府県交付金が三百九十億円で、それがそのままカットされるかのような誤解を一ページ目の資料は与えるんですが、これは正確に見たら違いますよね。二ページ目を見てもらってわかるように、都道府県の部分が八百三億円、三ページ目にあるように、市町村の部分が五十三億円だったんです。だとすれば、この一枚目の矢印、このとおりにはいかないわけです。都道府県交付金がもともと三百九十億円だったんなら、この矢印のとおりに廃止、一般財源化したらいい。市町村交付金が四百七十六億円だったんなら、この図は当てはまるんです。ところが、もともと圧倒的に、都道府県交付金の方が九割方を占めてきた。

 さて、では、この廃止、一般財源化される三百九十億円という数字はどこから出ているんでしょうか。大臣、この積算の根拠を御説明ください。大臣、お願いします。

磯部政府参考人 十八年度の三位一体改革の一環といたしまして、政府・与党間の調整が行われました結果、厚生労働省関係分の施設整備費といたしまして五百億円を税源移譲対象とすることといたしまして、そのうちの地域介護・福祉空間整備等交付金の都道府県交付金分として三百九十億円を廃止、一般財源化することとしたところでございます。

村井委員 私は大臣に聞いたので、大臣にそのまま関連質問をしたいと思うんですが、では、この三百九十億円も廃止、一般財源化して、今後大丈夫なのかどうなのか。特に大臣に聞きたいのは、今後、介護の需要はふえると思いますか、減ると思いますか。そして三百九十億円もカットして本当に対応できると思いますか。どうでしょうか。

川崎国務大臣 これは先ほどるる園田委員の質問にお答えをさせていただきました。地方からも、施設整備費を国から地方に移管すべきである、そうした強い御主張の中で、私どもは、ある程度施設整備が行き渡ってきた、今後は都道府県の判断にゆだねていきたいということから、給付金もあわせまして一体的に移譲することにいたしました。地方においてもこのことについては大変歓迎をしていただいておる、もちろんこれは知事さんとの話し合いでございますけれども。このように考えております。

村井委員 今大臣から、ある程度施設整備は行き渡ってきた、だからカットしてもいいという説明なんですが、でも、今、実際、皆さんのそれぞれの選挙区に帰ってもらったらわかると思うんです。入所待機者とか、どれだけ出ているんでしょうか。たくさんの方が施設、それからもちろん在宅も含めてサービスを受けたいけれども、一年、二年待たされるという地域、まだまだ少なくありません。私は、そういったところにもしっかりと対応していくべきではないか、だから安易な交付金のカットというのは大きな問題があるんではないかということを言いたいと思います。

 さて、それだけお金がなくなっていく中で、各地域、特におくれていかないように激変緩和措置が必要です。総務省には、このための起債の措置、そして起債措置がいつまで続くのかなどについてお答えいただければと思います。

瀧野政府参考人 今回の地域介護・福祉空間整備等交付金の税源移譲に際しまして、補助率のかさ上げ分も含みまして、従来の補助金相当分については特別の地方債を充当するということによりまして、地方公共団体が引き続き必要な事業を円滑に実施できるようにしていきたいというふうに考えております。

 この措置、いつまで続くのかという御質問でございますけれども、当面の激変緩和措置という考え方に立っておるわけでございまして、税源移譲の趣旨を踏まえれば、将来的には見直す必要があるかなと思いますけれども、実際にどの時期になるかということについては、事業の実施状況あるいは国庫補助金改革に伴います制度の移行状況などを踏まえて、慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。

村井委員 慎重に検討するということで、まだいつまで激変緩和措置が続くかもわからない。私は、こういうことで本当に大丈夫か、大きな不安を持っています。ぜひ、今後もしっかりと、起債措置でもいい、それでもいいですから、ちゃんと全国の各地域に整備が行き渡るようにしていただきたい、そのように思います。

 さて、次の質問に入るんですが、四枚目をあけていただければと思うんです。

 今、全国の市町村が何に注目をしているのか。そうです、八百六十六億円を四百七十六億円まで、五五%に縮減をした中で、では自分のところはこのまま当たるのかどうなのか、どんな基準で交付してもらえるのか、そして、そのどんな基準で交付してもらえるという基準から外れたことによってもらえなくなるのか、そこに注目が集まっています。それはそうですよ、もらえると思っていた分、大体四五%はなくなるわけですから。

 さて、その優先順位を示したのがこの採択指標なんです。もちろん、私は、客観的指標の一番目とかいいと思うんですね。高齢者の増加率によって優先される、これは当然です。

 そんな中で、自分のところはどういうふうなものを提案すればより優先して受けられるのか、私は、もっともっと客観的な指標があれば、各市町村はそれを知りたがっていると思うんです。

 さて、そこで、例えば、この客観指標で一、二、三では何点ぐらい、政策的指標(加算)はそれぞれ何点ぐらいというふうな形で公平に分析して読めばいいんでしょうか。厚生労働省磯部老健局長、お答えください。

磯部政府参考人 委員が配付されておりますこの指標は、十七年度の交付金の際にお示ししたものでございます。そしてまた、結果的に、その結果状況を評価点として後日お示ししておりまして、客観的指標について平均点を五十点として点数化する、あるいは、政策的指標につきましてはほぼそれぞれ二点ずつを加算するといったような基準で十七年度は実施しておりますが、十八年度につきましては、これから法律を通していただいて、その後、こうした評価をどういうふうにするか、検討していくことになると考えております。

村井委員 その十八年度の指標はいつごろに発表されるんでしょうか。老健局長、お答えください。

磯部政府参考人 実施要綱によって示すことになると考えておりますが、十七年度におきましては大体五月ごろに発出しております。

 我々は今非常に多忙でございますけれども、何とかこの五月ごろには出したいというふうに考えております。

村井委員 十八年度はこれからつくるというのでわからなくて当然だと思うんですが、この十七年度のときは、客観的指標、例えば本当にもっと公平公正に分析するんだったら、それぞれ点数をつけていたんじゃないかと思うんです。一、二、三、四、五、六、七、それぞれ点数とかあったんでしょうか。お答えください。

磯部政府参考人 ちょっとまたよく調べますが、先ほど申し上げたようなやり方で十七年度はやっております。

村井委員 その中で、さらに今後も、来年度、十八年度の交付金をもらえるかどうかの指標の中の解釈についてちょっと聞きたいんですが、例えば小規模多機能型居宅介護事業、これは今回、この間の介護保険法改正で大きな注目を集めています。今後も、この部分は当然十八年度の指標でも残ると思っていいんでしょうかが一問目。

 二問目、聞きたいことがあります。それは何かというと、既存資源の活用があります。既存資源の活用の中で、公民館の一部それから保育所の空き教室、これも当然です。ところが、地域だと今何が起こっているのか。そうです、少子化それから人口減に伴って、民家の空き家、これがどんどんどんどんふえています。民家の空き家も交付金の採択の指標として優先されるのかどうなのかを二問目に聞きたいと思います。

 老健局長、お願いします。

磯部政府参考人 先ほども申し上げましたが、十八年度につきましては、市町村計画について対象事業を拡大したといったようなこともございまして、十八年度分の計画の採択の可否についての評価方法につきましては、法律が通りまして、その後、対象事業を子細に検討し、その具体的な評価のあり方はそれから検討したいというふうに考えております。

村井委員 大臣はこれをどう思われるでしょうか。よりもっと公平で透明にしてもらった方が、きっと各市町村、その厚生労働省の方針に合わせて計画をつくってくると思うんです。

 さて、それで次の質問に移らせていただきますが、地域介護・福祉空間推進交付金、一枚目のところのソフト交付金の内訳について聞きたいと思うんです。

 これはなぜ三十三億円なのか。これが一問目です。

 二問目が、この三十三億円、実施要綱が出ると思うんです。実施要綱がいつごろ公表されるのかについてお答えください。

磯部政府参考人 最初の御質問でございますが、地域介護・福祉空間推進交付金のうちのソフト交付金につきましては、市町村からの要望も踏まえまして、市町村交付金をより使いやすいものとするために設備整備等に係る交付金として創設したものでございます。予算編成の過程で、こういう新規事業であることも踏まえ、過大あるいは過小過ぎないという両方の水準から、四百七十六億円のおおむね十五分の一程度の三十三億円を計上させていただいているところでございます。

 それから、これにつきましての実施要綱でございますが、先ほども申し上げました全体の実施要綱とともに、できるだけ早く発出したいと考えております。

村井委員 できるだけ早くということだけで、まだ詳細がわからない。だけれども、我々国会議員はこれをあっさり採択する。まず、本当にそれでいいのかどうなのかを皆さんにちょっと問いかけたいと思うんです。

 これは全国の福祉関係者にとって非常に大きな問題なんです。がらっと変わる話なんです。これが児童手当の中に隠れて一緒に採択されて、よくわからないまま賛成。私は、そうじゃない、もっともっとこの問題は来週も時間をかけて審議をする、そして、中身をしっかり詰めないと、全国の高齢者、介護の従事者、大きく注目されている問題だということだけ、皆さんにお伝えしたいと思います。

 さて、その三十三億円のソフト交付金の内訳について、まず、夜間対応型訪問介護のために必要な設備を整備する事業、高齢者と障害者や子供との共生型サービスを行う事業などとなっていますが、このサービスの具体的な内容を私ら国会議員に教えていただければと思うんです。特に、その中には道具や人件費も事業費に含まれるのかどうなのかもあわせてお答えください。

磯部政府参考人 今委員御指摘の、まずソフト交付金のうちで、夜間対応型訪問介護の事業のために必要な設備等を整備する事業と申しますのは、こうした今回介護報酬を新たに設定いたしまして立ち上げます事業、これにつきまして、その事業の実施に不可欠な通信機器等の整備その他の事業の支援を考えております。

 また、高齢者と障害者や子供との共生型サービスを行う事業につきましては、グループホームやデイサービスの事業所で高齢者とともに障害者や子供に対してもサービス提供が行われるような形態の事業の支援ということを考えております。

 また、これらの交付金を交付された市町村から助成を受けた事業者が、その事業の支援として得た助成金の中で設備や人件費に充てることもあり得るものと考えております。

村井委員 わかりました。設備や人件費も含まれるということがわかっただけで大きく進歩だと思います。

 私は、一個だけでも厚生労働省を非常に褒めたいなと思う点があるんです。これは何かというと、高齢者と障害者と子供との共生型サービスの必要性を今回認めていただいた。これが本当に私はすばらしいことだと思うんです。

 人間は何によって幸せが決まるんでしょうか。建物の立派さだけで決まるがじゃないがです。例えば高齢者の場合、子供と一緒におることによって幸せになれる要素が強い。子供たちにとっても、やはり高齢者と一緒に過ごすことによっていろいろな勉強になる。

 そういった中で、今回私は、予算全体を減らすことについては反対ですが、ただ、こういった新しい高齢者と障害者と子供との共生型サービスの推進に大きく厚生労働省がかじを切ったことについては、非常に高く評価をしています。大臣はそれについてどのように思いますでしょうかというのが一問目。

 そして二問目は、大臣に、この高齢者と障害者と子供との共生型サービスという厚生労働省が打ち出した方針をさらに進めるためには、お金だけじゃなくて規制の緩和も必要だと思うんです。高齢者の施設、障害者の施設、子供の施設といった縦割りの規制のままでは、本当にこの共生型サービスは進められないんです。お金だけではなくてその縦割りの規制の緩和も必要だと思うんですが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

川崎国務大臣 お尋ねのいわゆる共生型サービスについては、構造改革特区などを活用し、各地でデイサービスを中心に意欲的な取り組みがなされているものと承知しております。今後、年齢や障害の有無を問わず住みなれた地域で生活を続けていくことができるようにしていくため、共生型サービスは示唆に富んだ取り組みと考えております。

 一方、今後は、高齢者、障害者、子供、それぞれに対するサービスの質を担保しなきゃならない。これは、グループホームの火事がございましたので、そういう意味では安全管理というものもしっかり担保した上で、共生型サービスを実現するとすればどのようなことが考えられるのか、今、知見の収集を行っております。よりよいサービスのあり方を検討してまいりたいと考えております。

村井委員 それで、今回、三十三億円とはいえ、もちろんそれ以外のハードも含めて四百七十六億円、今回は減るわけです。

 さて、その中で、私はちょっと確認したいことがあるんです。ハード、ソフト、それぞれの交付金、今までは社会福祉法人がメーンでした。だけれども、これからはNPO団体や株式会社も交付金の対象に含まれると思ってよろしいんでしょうか、どうでしょうか。

磯部政府参考人 地域介護・福祉空間整備等交付金は、従来の補助金のように個々の施設ごとに採択するのではなく、各市町村が作成する整備計画全体に対して交付金を交付する仕組みでございまして、どの事業へ助成して整備計画を遂行していくかというのは各市町村の裁量にゆだねられているところでございます。

 したがいまして、交付金の交付を受けた市町村の判断によりまして、NPO等の民間事業者に対しまして助成することが可能でございます。

村井委員 今、そこで六枚目の紙を見ていただければと思うんです。「国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律の施行について」というものですが、「抜粋」というところの一番下の方にアンダーラインを引かせていただきました。

  なお、この改正により創設した交付金は、従来の個々の施設の整備に対する補助金とは異なり、市町村又は都道府県が作成する施設整備計画の遂行を国として支援するものであり、市町村又は都道府県がどの事業者に助成して計画を遂行するかについては、当該市町村又は都道府県の裁量に委ねられるものであること。

これを見れば、よく読めば、NPO法人だろうが株式会社だろうが、国民に社会福祉法人と同じようなサービスを提供しているところには助成がされるものだということは考えられると思うんです。

 ところが、実際どうでしょうか。多くのNPOのさんらち、株式会社でやっておられるさんらちに聞いてみたら、いや、社会福祉法人しかもらえていないのが実態じゃないかと言うんです。今まではどうしてもそうだった。グループホームにしてもデイサービスにしても、社会福祉法人とNPO法人で同じサービスを出していても、法人格の違いだけである程度の差別もしくは区別があった。それに対して、私たちはもっともっとわかりやすく各市町村に、今後はしっかりとNPOも補助対象であると通達か何かを出す必要があると思うんです。よりいいサービスを出してもらうためには、いろいろな団体の種類にかかわらずやっていくべきだという通達を出すべきだと思うんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

川崎国務大臣 こういう国会での審議も通じて御理解をいただけると思っているんですけれども、御指摘の通知により、市町村の裁量でNPOや株式会社を含むどのような事業者にも助成ができると十分明らかになっておると考えております。読めばわかるというお話をいただきましたように、読めばわかるような通達を出しておりますので、そういう意味では、こうした審議を通じながらももう一度御理解をいただければと思っております。

 いずれにいたしましても、市町村が新しい制度へ移っていく中でしっかり御理解いただくようには努めてまいりたいと思います。

村井委員 次に、通達していた一問、ちょっと時間が足りないので一問飛ばしたいと思うんですが、地域包括支援センターの方にも、今回、補助の対象になっていっています。この交付金の内容の中の一つなんですが、さて、その地域包括支援センターの運営協議会の委員の選任についてお話ししたいと思うんです。

 今回、厚生労働省、すばらしいです。何がすばらしかったのかといえば、在宅介護支援センターの場合、抱え込みがあった。そうなんですよ。在宅介護支援センターに指名されているところは、自分のところにばかり客にとってしまう。

 都会ならともかく、私らみたいに田舎だと、まず何かあったら民生委員さんに相談するがです。民生委員さんに相談したら、その地域の在宅介護支援センターに振られる。その地域には、五カ所、六カ所、何カ所も施設があるにもかかわらず、在宅介護支援センターになっているのは一個だけ。当然そこにお客が優先して行く。そこは入所待機者がどんどんどんどん積み重なる。ほかはあいているにもかかわらず、そういった抱え込みによる不公平が起こってきたのが事実だ。

 それをわかられて、今回、地域包括支援センター運営協議会というものをつくって、浅く広くやることによって抱え込みを防ごう、厚生労働省のこの方針、すばらしいです。このすばらしい、打ち出した抱え込みを防ぐという方針を私はもっともっと徹底するべきだと思うんです。そのためには、この地域包括支援センターの運営協議会の委員の選任にも、ちゃんと厚生労働省は思っている方針をしっかり伝えていくべきだと思うんです。

 この運営協議会の選任について、公平公正を期するため、どのように対応しようと思っておられるのか、大臣のお考えをお聞かせください。

川崎国務大臣 地域包括支援センター運営協議会は、市町村が責任主体となるセンターの運営を協議、評価する場として市町村に置かれるものであり、センターの円滑で適切な運営の支援や公正、中立性の確保などの役割を担うこととされております。

 運営協議会の構成員については、国としての考え方を示しております。サービスの利用者や被保険者、介護保険サービスや地域サービスの関係者、医療、福祉関係の職能団体など、地域のさまざまな関係者を地域の実情において市町村長が選定することとしております。NPOについては、介護保険サービスや地域サービスを担っている場合等には市町村の選定により構成員となることが想定されるものであります。

 全国介護保険担当課長会議というのがありまして、これは十七年の八月五日にやっておりますけれども、そのときにも、「地域包括支援センター運営協議会(仮称)」、「NPO等の地域サービスの関係者」というふうに明記いたしておりますので、既に御理解をいただいているものと考えております。

村井委員 今、そうやってNPOもしっかり課長会議の中の資料に盛り込んでいただいているというのは非常にすばらしい。

 その中で、さらに今後は、この運営協議会の委員、だれがどんなふうになっていったかというのをちゃんとチェックしていただきたいと思うんです。そうせぬと、これまでどおり、どこか一つの社会福祉法人だけが抱え込みをしていく。市町村に任せておって、在宅介護支援センターだって市町村に任すという話で、これできれいになりますと言うとったのにならぬかったがですよ。

 そこで、今私たちは、せっかく地域包括支援センター運営協議会をつくったわけですから、ちゃんとこの後、運営協議会のメンバーはどんな人らになっていったかを国で調査していただきたいと思うんですが、老健局長、どうでしょうか。

磯部政府参考人 運営協議会につきましては、先ほど大臣からも御答弁いたしましたように、市町村において設置し、それを運営していく。また、その関係者、参画メンバーの選定方法につきましても、それぞれの市町村において公正公平に行われるものと考えております。

 委員御指摘のようなことにつきましては、我々が示しました方針に反している事例が多いというような情報でもあれば格別でございますが、基本的には、市町村を信頼してその運営に任せたいと考えております。

村井委員 これで地域介護・福祉空間整備等交付金の話は終わるんですが、皆さん、この問題、もっともっとしっかり議論しようじゃありませんか。全国で八百六十六億の交付金が四百七十六億円まで、五五%にまで下がるという問題、やはり、この児童手当に隠れて、あっさり、すんなり通すというわけにはいかないんですよ。それぞれの地域の声、このハード交付金の内容なんかもしっかりと議論していかなければならないんです。ソフト交付金についても、三十三億が実態何なのか、実施要綱としてどんなものを募集していくのか、私は、それについてしっかりもっと議論していく、そして、この法案はこの法案だけで独自に本来議論すべきであったものじゃないかということをしっかり主張したいと思います。

 それでは、もう一つの方の争点を上げたいと思うんです。

 今回、生活保護の問題も上がっていました。さて、この生活保護の問題の中で、私、山谷とか西成とか、現場を見に行ってきたがです。ホームレスの人たち、たくさんおられるんですね。今回、地域の方に大きく任せていくという方針、地方分権によって生活保護を任せていく、これはこれで一つの考え方なんですが、まず、皆さん、考えてみてください。ホームレスの人たちは、本当にその市町村に住民票を持っているかどうなのか、違いますよね。山谷や西成に住民票を持っておるわけじゃないがです。もっといろいろなところからホームレスになって、仕事がない、家賃が払えぬようになって出ていった、それで、そういった一部の地域に集まってホームレスになっているわけなんです。そういった人たちにもちゃんと生活保護が適用されるようにしなければならない。

 生活保護というのは何なんでしょうか。そうです、憲法に規定してあるように、我々政治家、そして国は、すべての国民に健康で文化的で最低限の生活を保障する義務があるんです。そして国民には、健康で文化的で最低限な生活をする権利があるんです。だから、今、そのために、ホームレスについても市町村に任すだけではなくて、国としてしっかり生活保護適用要件を満たしていくようにしなければなりません。

 さて、そこで中村社会・援護局長にお聞きします。ホームレスに対しての生活保護適用要件はどうなっていますか。お答えください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護は無差別、平等に適用するということになっておりますので、ホームレスであるからといって特別に基準があるわけではございません。生活保護は、他法他施策や利用し得る資産、その方が働けるかどうか、その他あらゆるもの、まず自立というものを最大限活用した上で、また、他法他施策、利用し得る施策をすべて動員した上で、なお生活に困窮する方に対して行われるものでありまして、これは、ホームレスであれどなたであれ、この基準が平等に適用されます。まずそういったことを前提とさせていただきます。

 それから、今、住民票というお話がございましたけれども、生活保護は、住所地にある方に対して適用するということでございまして、いわば、現にそこにおられるということで適用しているものでございまして、ホームレスという方は家がないわけでありますが、どこかに物理的にいるわけであります。居住地がないことをもって生活保護を適用しない、そういうことでもございません。

 例えば、神戸市では、国が十五年一月に調査いたしましたときに、三百二十三人のホームレスの方がおられ、現在、十七年八月、二百二十一人のホームレスの方がおられます。こういう数字は一時点の数字でございまして、ホームレスの方というのは、ある方がホームレスでなくなっても新たに入ってくるということで、一時点の数字で誤解されますけれども、百人くらい神戸ではホームレスの方、時点では減っているわけですが、この間、千三百七十五人の方に神戸市では生活保護を適用している。こういうことで、生活保護を適用する。

 例えば今はたまたま神戸市の例でございましたけれども、生活保護を適用する要件に当たっている方であれば、ホームレスであれホームレスでない方であれ、生活保護は適用される。ただし、その方が働ける状態にあるのに働かないという方は、ホームレスであれそうでない方であれ、生活保護は、まず働いていただけませんか、そういうことをお願いしているということでございます。

 そういったことで、現に自治体では、生活保護が必要な方については、神戸市の例で見たように、一時点、二百人くらいのホームレスの方ですが、三年間の間に千三百七十五人の方に生活保護を適用されています。そのように、自治体の方では、逆の言い方をしますと、ホームレスの方がおられるということは相当生活保護の面でも負担になっているということ、また、そういう方が流入してきているということで、二十三区と政令指定都市で全国のホームレスの方の七二%の方がおられますので、いわば都市問題である、こういう認識をいたしております。

村井委員 今、中村局長の方から、住民票がなくてもホームレスの人でも生活保護をもらえるという話がありました。だけれども、多くのホームレスのさんたちに聞いてみてください。いや、おれは住民票がないからだめなんだと皆さん言いますよ。確かに福祉事務所へつなげていけばもらえる可能性があるけれども、では、実際多くの二万五千人のホームレスのさんたちがそれを知っているかどうかです。(発言する者あり)今、山井さんから、行っても断られるよという話がありました。

 今、本当に、ぜひ厚生労働省の方で、そういったホームレスのさんたちに福祉事務所の窓口へ行くように、そして、場合によっては生活保護をもらえるんだよということをちゃんと徹底してほしいと思うんです。どうでしょうか、局長。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 ホームレス対策については、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法に基づきまして、国が基本方針を示し、各自治体がそれに即してホームレス対策をしております。

 そういったものの中の一番大きな柱が総合巡回相談でございまして、ホームレスの方々、御存じないということでございますが、例えば東京でいえば各区では、上野公園のホームレスの方に巡回相談員が行ってお会いして、まず自立センターに来てくださいと呼びかけをしたり、さまざまなことを行っております。その主体は、各区であり、市であり、福祉局がやっておりまして、市役所でも全庁的に取り組んでおります。そこの傘下に福祉事務所があるわけでございまして、当然、そういうことを知っております。

 逆に言いますと、福祉事務所に来られていろいろ御指導を受けて、そこでホームレスの方々はその指導に従わなくて約束を破ったりしてその市にいられなくなって、そういった方がまた別の市に行って福祉事務所のところに行く、こういうことでございまして、こういう言い方は適切かどうかわかりませんが、なかなかホームレスの方々もしたたかで、行政の方も困っているということであります。

 いろいろな実態がございますので、我々もやっておりますし、今、二万五千人とおっしゃいましたが、各自治体の調査で減少傾向にあるということはそうでございますけれども、また新たな流入もあるということで、先ほどの神戸市の例のように、百人減少するために千三百七十五人の生活保護の適用をしている、そういうことでございます。

 逆に言いますと、ホームレスの方であればどういう状況にあれ生活保護を適用するということになれば、みんなホームレスになれば生活保護を受けられるということで、これはもう生活保護行政が崩れてしまう、こういったことも御理解いただきたいと思います。

村井委員 最後に大臣にお聞きしたいと思うんですが、政治家の使命というのは、すべての国民に健康で文化的な生活を保障することですよね。今、ホームレスのさんたち、本当にその健康で文化的で最低限の生活ができていると思いますか、どうですか。お答えください。

川崎国務大臣 国の仕事の、政治家として大きな仕事は、やはり自立をどうやって助けていくかということであって、その意思が大事であります。そういう意味では、ホームレスの自立をどうやって支援していくか、すなわち就労というものをどうしていくか、こういう面に立ちながら、東京都を初め、各団体が大変苦労されてさまざまな施策を行われております。

 一方で、そうした施策を利用し、また対策を打ちながら、結果として真に生活が困窮する、こういう場合には地方自治体において適切に生活保護の適用が図られる、これは神戸の例を先ほどお話し申し上げました。そういう意味では、やはりホームレスの方々も健康であれば働いていただくということをまず主眼にしながら、しっかりやっていかなきゃならない、こう考えております。

村井委員 ごめんなさい、最後の最後にもう一言だけ言いたいと思います。

 何かというと、あの山谷にしても西成にしても、何であそこがそういうホームレスの町になったのか。あそこの真ん中にあるのは何なのか。そうですね、職安がありますよね。職安の周りにスーツを着たまま段ボールで寝ているがです。何でスーツのままなのか。そうですよ、就職する気満々だからです。就職する気満々の人たちが、スーツのまま段ボールに寝ておる。朝起きたら職安に行く、だけれども決まらない。実態はそうじゃないですか。

 確かに、何人かはもうあきらめておられる方もおられるかもしれない。仕事をする気がない方もおられるかもしれない。だけれども、多くの人たちは就労する気そのまんま、満々だけれども、だけれども就職できなくて、就職する気がないんだから生活保護をもらえない、そんなふうに言っておられる。

 そんな中で、ぜひ政治家の使命として、健康で文化的で最低限の生活を保障するという我々政治家の使命を果たすために、大臣には一度現場を見に行っていただきたいと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

川崎国務大臣 昨年暮れにも、東京、大阪の都会議員、府会議員の方々含めてお見えになりまして、一度私も時間ができれば、特に大阪ですけれども、状況を見させていただこうか、こうは考えております。

村井委員 ありがとうございました。

岸田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 まず、児童手当を含む少子化対策についてお尋ねいたします。

 児童手当に関しましては、今回の法案において、国と地方の費用負担割合の見直しとともに、支給対象年齢を拡充して、小学校六年生まで支給対象とすることとされておるわけでございます。

 確かに、昨年の十月八日に内閣府が発表いたしました少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査というところにおいても、約七割の女性が、児童手当を今後の少子化対策の中で重要な施策として位置づけていらっしゃる。また、そのうち約四割の方が、児童手当の支給対象年齢の引き上げが望ましいとおっしゃっていらっしゃる。そういう回答、データがあるわけです。

 ただ、一方で、同じく約四割の方が、児童手当の金額の引き上げが望ましいとも回答されているわけでございます。

 そこで、大臣にお尋ねいたしますが、少子化対策のためには児童手当の拡充というのが不可欠でございますけれども、今回のこの拡充内容では子育て家庭への支援がまだ不十分なのではないかなというふうに思いますが、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

川崎国務大臣 いろいろ議論してまいりましたように、児童手当は、もともと企業の御負担からスタートをいたしました。今は、企業と国と地方の御負担ででき上がっております。

 一方で、諸外国の制度を見てまいりますと、例えば、イギリスは、児童手当に集約をして、第一子から出すようになった。フランスは、児童手当に集約しておりますけれども、これは第二子から出しております。ドイツは、児童手当か所得控除、有利な方、税金がたくさん返ってくる方か手当の方か、これの選択制になっております。

 そういうことを考えますと、我が国の方向をどうしていくか、まさにこれからさまざまな議論が出るんだろう。諸外国と比較するときに児童手当という側面だけ見ないでください。税制があります。それからもう一つは、我が国独特の企業の支援制度、これは、配偶者に対する支援、子供に対する支援、こうしたものを行っております。三つそろえて考えたときにどうかということになると、そういう意味では、今回小学六年生まで引き上げましたけれども、ここに対してはそこそこのものができてくるようになったのかな。

 一方で、中学生、高校生の問題、特に高校生、大学生、まあ中学からかな、教育費という問題が側面として出てまいります。手当という側面と、一方で教育費という問題が出てきます。そういったものを総合的にもう少し議論をしていかなければならないのかな。

 申し上げておりますとおり、六月には歳入歳出一体改革というものを与党内で行うことになります。この中で、歳入歳出でありますから、税源というものをどう求めながら何をしていくかというものを考えていく。それにあわせながら、少子化対策全体をどうしていくべきかというものも議論していきます。いずれにせよ、財源をつくらないとできないものですから、今回、正直、苦労しながら財源をつくり上げて、小学校六年生まで拡大をさせていただいたところでございます。

糸川委員 それでは、その児童手当の財源について、今、基礎的な部分には事業主からの拠出が含まれておるわけでございます。拡充部分は公費によってのみ賄われておるわけでございます。社会全体で子育てを支えるという観点からすれば、事業主の拠出をもっとふやすべきではないのかなというふうに思いますが、御見解はいかがでしょうか。

北井政府参考人 今大臣からも御説明がありましたとおり、制度発足当初は、この児童手当の財源は主として事業主拠出でございました。それから、近年の改正、拡充のときには公費でやってまいりました。現在の財源構成は、国と地方と事業主とそれぞれ応分の負担をして支え合っているということでございます。

 こうした考えをもとに、今後、事業主負担をさらにどうしていくかということにつきましては、企業におきます家族手当のあり方であるとか、そのほか、現金給付以外の、地域の子育て支援あるいは働き方にかかわる施策など多岐にわたる次世代育成支援施策のあり方とあわせて、少子化対策の全体的な検討の中で合意を得ていくべきものであろうと考えております。

糸川委員 今、少子化対策のためには、児童手当だけではなくて、これはもちろんのことなんですけれども、保育サービスですとか、それから放課後児童クラブなどの充実ということが不可欠になってきておるわけでございます。特に放課後児童クラブについては、児童が放課後を安全に過ごすためにも各小学校区に最低一カ所は設置すべきだと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

北井政府参考人 放課後児童クラブにつきましては、子ども・子育て応援プランにおきまして、平成二十一年度の目標値を全小学校区の約四分の三に当たります一万七千五百カ所としております。これは地方の計画等も踏まえましてつくり上げたものでございますが、現在、全国で一万五千百八十四カ所でクラブができております。

 必要な地域に放課後児童クラブは整備をしていただかなきゃなりませんが、地域によりましては、小学校区一つといわず、二つも三つも必要な地域もございますし、また、僻地保育所で代替できるなど必ずしもクラブが必要でないような地域もございます。そうしたことで、必要な地域に必要なクラブをということで私どもも整備を進めてまいりたいと思っておりますが、まずは、この一万七千五百カ所、まだ達成しておりませんので、できるだけ早期にこの目標が達成できるように、十八年度予算案におきましても対前年度九百カ所増の予算を計上しているところでございます。

 こうした予算を引き続き確保していきまして、地方自治体にも積極的に取り組みを働きかけ、クラブの推進のための努力をしていきたいというふうに考えております。

糸川委員 ぜひ早期の目標達成をお願いしたいと思います。

 働きながら子育てをされている場合、児童手当などよりも、最も切実な課題としては、子供が病気になったときだろう。病児保育など、子供が病気のときに対応できる仕組みというものをもっと普及させるべきではないのかなと思うんですが、御見解はいかがでしょうか。

北井政府参考人 子供が病気のときの対応につきましては、病気の回復期にある子供さんを医療機関、保育所などの専用スペースでお預かりする、乳幼児健康支援一時預かり事業を実施しているところでございます。この一時預かりの事業は、平成十六年度末現在で大体五百カ所で実施をされておりますが、子ども・子育て応援プランにおきましては、これを平成二十一年度までに千五百カ所で実施するということを目標に掲げております。まずは、この病後児保育につきましても、この目標達成に向けて、ソフト交付金の支援によりまして整備を進めてまいりたいと考えております。

 また、十八年度におきましては、保育ママ事業の中で、看護師等の資格を有する保育ママを活用した病後児保育をモデル的に実施することといたしております。

 こうしたことによりまして、子供が病気のときに対応できる仕組みを充実させてまいりたいと考えております。

糸川委員 もう一つ、子育てをしながら安心して働くために、妊娠中も、例えばつわりがひどいときとかそういう場合の配慮とか、体調に配慮した働き方ができるということ、これも重要になってくるのかなと思うんですけれども、厚労省の認識というものはいかがなのか、教えていただけますでしょうか。

北井政府参考人 職場において、女性が妊娠中や出産後も安心して働くことができる環境を整備することは大変重要な課題であると認識をいたしております。

 このため、男女雇用機会均等法におきましては、事業主に対して、いわゆる母性健康管理措置の義務づけが図られております。具体的には、事業主に対して、医師の指導に基づいて、妊産婦さんの健康状態に配慮した時差通勤であるとか勤務時間の短縮であるとか休業等の必要な措置を講ずることを義務づけているところでございます。

 今後とも、このような母性健康管理措置が徹底されるように、事業主や女性労働者への周知徹底に努めてまいりたいと考えております。

糸川委員 私も、つい先日、もとの学校の友達と話をしていまして、結構結婚しているんです、私はまだ独身なんですけれども。それで、子供がいるかという話をしたら、やはり四分の一ぐらいの人しか子供がいないんですよ。本来、団塊の世代の子供というのが私たちの世代ですけれども、その人たちが今子づくりをしなければ、どんどん人口が減少していってしまうわけですね。平成二年の一・五七ショックを契機にこういう少子化問題が上がってきたわけですけれども、それ以降、対策がされているようでなかなかされていないのかなというのが現状なのではないんでしょうか。やはり、どんどんどんどん減少してきているなと。

 例えば、児童手当が今度こういう法改正があってねという話をしたんですけれども、ほとんどの人が冷ややかですね、五千円もらっても、一万円もらってもねと。

 その中で、これで子供の生活がよくなるんじゃないかとか、ないよりはあった方がいいかもしれないけれども、本当に必要な人たちに、例えば所得三百万円ぐらいの人たちに渡るとか、そういう手厚いものがないと、だれにでも給付すればいいというものでもないでしょうし、かといって、所得の少ない人たちに対してだけ手厚くというわけにもいかないかもしれませんが、やはりいろいろな対策を今打っていただかなければもう歯どめがかからないのかなと思っておりますので、ぜひ取り組んでいただければなと思います。

 次に、高齢者介護についてお尋ねいたします。

 今、少子化対策も重要な課題ではございますけれども、今後の高齢化社会を考えますと、高齢者介護をどうするかということが非常に重要だと思っておるわけでございます。今回の法案の中で、介護関連部分について基本的な考え方を御質問させていただきます。

 まず、介護施設の整備に係る都道府県交付金の見直しとあわせて費用負担の見直しを行う趣旨というものがどのようなものなのか、お答えいただけますでしょうか。

磯部政府参考人 都道府県交付金につきましては、特別養護老人ホーム等の広域型施設の整備に充てられてきたものでございますけれども、これらの施設が全国的に見て何とか一定水準の整備が図られてきていること、それから地方団体からも一般財源化の要望が上がってきていることを踏まえまして、今般、この都道府県交付金を廃止し、一般財源化することとしたところでございます。

 一方、こうして整備されました介護保険施設等の給付費につきましては、二号保険料や国の負担など、全国プールされた費用によってその半分以上が賄われているということがございまして、施設整備に係る責任を都道府県にお願いすることと、そうした施設運営に係る都道府県の役割の見直しというものは一体的に行うことが不可欠であると考えたところでございます。

 このため、今回の三位一体改革におきましては、特別養護老人ホーム等の整備に係る都道府県交付金の廃止と、それから、介護保険施設等の給付費に係る国と都道府県の負担割合の見直しということを一体的に行うこととしたところでございます。

糸川委員 それでは、介護施設の整備に係る都道府県交付金を廃止するにもかかわらず、市町村交付金を廃止しない理由というものはいかなるものなのか、お聞かせいただけますか。

磯部政府参考人 市町村交付金につきましては、都道府県交付金と異なりまして、市町村が指定権限と計画に沿って整備する責任を有するといたしまして、新たに制度化されました地域密着型サービスを主な対象としておりまして、今後、サービスの基盤整備を行うことが不可欠であること、それから、これらのサービスの円滑な導入を図るための必要な設備の整備など対象事業の拡大を求める声が強いことなどから、今般、市町村交付金を残し、さらにメニューの拡充を図ったところでございます。

糸川委員 次に、今回の三位一体改革によって、障害者施設などのうち公立の施設整備に要する費用については、これは国庫負担の対象外とすることとなっておりますが、その趣旨についてお尋ねします。

 公立の障害者施設に係る施設の整備費が一般財源化されることとなりますが、その理由はいかなるものなのか、簡潔にお願いいたします。

中村政府参考人 ことしの四月から障害者自立支援法を施行するわけでございまして、その中で障害者サービスの基盤整備が重要だと考えております。一方、三位一体改革において、地方団体より、障害者施設を含みます社会福祉施設について、施設整備費の国庫負担金の廃止、税源移譲を強く求められたところでございます。

 一九七五年当時は、公立と民間の施設の割合が、公立が四八%、民間が五二%という状況でございましたけれども、二〇〇三年をとりますと、七六%が民間、公立が二四%、こういう状況でございます。

 近年、施設整備は民間中心に図られてきておりますので、私ども、障害者施設については、民間につきまして障害者自立支援法に基づく基盤整備については国の補助を残し、地方自治体が希望されている施設整備費の税源移譲につきましては、公立部分につきましてはみずから設置するものでございまして、地方自治体独自の判断で整備が可能であるということから、公立施設分の整備費について廃止、税源移譲の対象とさせていただいたものでございます。

糸川委員 時間がもうほとんどないので大臣にお聞きしたいんですが、年金制度についてお尋ねしたいんですけれども、平成十六年の年金制度改正で基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げることとしたその趣旨というものがいかなるものなのか、まずお答えいただけますでしょうか。

川崎国務大臣 基礎年金は高齢期の基礎的な生活に対応する全国民に共通する公的年金給付であることから、制度が安定的なものとなるよう、従来から三分の一の国庫負担が行われてまいりました。

 平成十六年の改正におきましては、できる限り保険料の上昇を抑制しつつ、長期的な給付と負担の均衡を図り、持続可能な制度を構築するために、基礎年金の国庫負担割合を遅くとも平成二十一年度までに二分の一に引き上げる道筋を定めるとしております。保険料の上昇をできる限り抑制しつつ上限を固定する、保険料水準の範囲内で給付水準を自動的に調整する仕組みの導入、積立金の活用を一体的に行い、現役世代の負担を過重なものとしない、このような改正を行わせていただいたところでございます。

 年金制度にとって、長期的な給付と負担の均衡を確保することは制度の根幹にかかわる重要な問題であり、基礎年金の国庫負担割合の引き上げを初めとする平成十六年の改正は大きな改革であったと考えております。

糸川委員 では、最後に、平成二十一年度までに、今、大臣、基礎年金国庫負担割合を二分の一への引き上げをするというふうにおっしゃられたわけでございますが、この方針について、最後に大臣の見解をお聞かせいただけますでしょうか。

川崎国務大臣 小泉改革の最後として、歳入と歳出の一体改革、六月中にまとめる政府方針になっております。

 その中で、社会保障給付、年金、医療、介護、その他福祉を足してどのぐらいの数字がかかるか。特に、これから人口構造が大きく変化をいたします。簡単に言えば老人の数がふえてくるという中で、この社会保障給付をどう担保していくかというのが大きな論議であろう。そのときに、当然、歳入の問題を絡め合わせながら議論をしなければならない。

 財務大臣との昨年の暮れの交渉の中で、二十一年までには二分の一へ引き上げるということは、お互い了解事項だろうと思っております。そうなりますと、財源問題を議論しなきゃならない。正直申し上げて、消費税問題を外してこの議論をすることはできないだろう、このように思っております。

 いずれにせよ、安定的な財源の確保に努力をしていきたい、このように思います。

糸川委員 ありがとうございました。また、それは議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。

岸田委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十九分開議

岸田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。川条志嘉君。

川条委員 自由民主党の川条志嘉でございます。

 本日は、内閣提出の国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 まず最初に、今回の法案につきましては、財源の限られた中での児童手当の拡充であり、時代の喫緊の課題に即したものであるという点で、与党の先生方、関係者の皆様方の御尽力に感謝申し上げたいと思います。また、公明党の先生方におかれましては、長年女性や子供に優しい社会の実現のために取り組んでおられることに敬意を表したいと思います。

 私も、これまでお話を聞かせていただいた多くのお母さん方の声をもとに、女性が安心して子供を産み育てることのできる社会をつくりたいと思っております。伝統や日本人の心を大切にしながら、市民の目線から時代に合った制度をつくることに取り組んでいきたいと思っております。

 早速、質問に移らせていただきます。

 平成十七年の内閣府の少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査によれば、少子化対策として重要なものの第一位は経済的支援措置で、七〇%もの人が望んでおります。

 そこで、副大臣にお尋ねします。

 厚生労働省としては、少子化対策として、子供のいる二十歳から四十九歳の女性が一番望んでいることはどのようなことという認識でしょうか。また、経済的な支援を求める声に対して、これからどのような方針で対応していかれるのか、教えていただきたいと思います。

中野副大臣 川条議員御指摘のとおり、内閣府の少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査によりますと、子供のいる二十歳から四十九歳の女性の七〇%が、児童手当など経済的支援措置を少子化対策として重要に考えておりまして、この結果などから、経済的支援についての高い要望があると認識をいたしております。こうした声を受けまして、今般、政府・与党における議論の結果、児童手当につきまして、その支給対象年齢を小学校三年生から六年生まで引き上げることが決定されたわけでございます。

 ただし、仕事に関する負担感というものは、経済的なものだけでなくて、肉体的、心理的なものや、それから仕事と子育ての両立の負担などさまざまでございます。そのため、児童手当等の経済的支援のみならず、保育や働き方に関する施策など多岐にわたる次世代育成支援策につきまして、税制や企業の賃金体系との関係を踏まえまして、総合的に検討を進めていきたいと考えておるわけでございます。

川条委員 副大臣、ありがとうございました。

 平成十八年度の次世代育成支援対策の主な取り組みとして、次の三つが挙げられています。

 一つ目は、地方公共団体や企業の策定した行動計画に基づく取り組みの支援、二つ目は、経済的支援の拡充、三つ目は、子育てする女性の再就職、再就業支援とあります。今、年齢別人口構成は逆ピラミッド形です。また、人口減少がことしから始まり、平成十七年度の出生数は百七万人と見込まれています。

 先ほどの対策と今の現実を総合的に考えたとき、今回の児童手当の拡充は少子化対策として有効と考えられるでしょうか。

北井政府参考人 児童手当制度は少子化対策の一つの柱として重要なものであると考えておりますが、今も副大臣からお話がありましたように、少子化の要因は、経済的なものだけではなくて、心理的、肉体的負担や、仕事と子育ての両立の負担などさまざまでございますことから、児童手当一つだけをとって効果を評価することはなかなか難しいと思います。

 こうしたことから、少子化対策は長期的に一貫した施策を総合的に進めていくことが重要であると考えますが、今般の児童手当拡充につきましては、支給対象児童数が、約九百四十万人から約千三百十万人ということで、約三百七十万ふえることになります。これによりまして、これらの子供さんを養育される多くの家庭の生活の安定と子供の資質の向上に効果があるものと考えております。

川条委員 御答弁賜りましてありがとうございました。

 ところで、今回の改正におきましては、支給率九〇%を達成されているという点で、非常にわかりやすく、公平だと思います。また、我が与党案におきましては、扶養控除や特定年齢扶養者控除をこれまでどおり継続するという点では、この法案成立後に他の委員会においてさらに複雑な手続を必要としないという点で、国政の円滑な遂行を進めるという点からも高く評価したいと思っております。

 ところで、厚生労働省の人口動態統計によれば、出生率が一・九一人と二人に近かった一九七五年では、第一子誕生時の父親の年齢は二十八・三歳です。また、出生率一・二九二、少子化時代と言われ、その要因が晩婚のためと言われる二〇〇四年でも、第一子誕生時の父親の年齢は三十・九歳です。つまり、まだ若く、収入も少ないんです。どれくらいかといえば、二〇〇四年、厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、二十五歳から三十四歳の男性の賃金の平均は、大卒の人で、賞与も含め四百二十九万円から五百四十万円、高卒の人では三百七十四万円から四百三十九万円の年収です。

 正規労働者の人は、安いとはいえ安定した収入があるのでまだいい。もっと生活が不安定かつ低収入と考えられるのは、非正規労働者二百万人、ニート百万人といった人々です。しかし、定職がないからといって正規社員になるのを待っていては婚期を逃してしまい、一層少子化にも拍車がかかっていく。このような不安定な収入の人たちにも安心して子供を産んでもらって、産むだけではなく、親としての責任と愛情を持ってしっかりと教育してほしいと願っております。

 その前提に立って、もし正規社員でない若い人たちが子供を二人育てる場合を考えると、大きな経済的負担感を感じると予想されます。厚生労働省の試算におかれましては、一カ月の子育てにかかる費用は幾らくらいと考えておられるでしょうか。

北井政府参考人 こども未来財団の子育てコストに関する調査研究、これは平成十二年のものでございますが、それによりますと、子供がゼロ歳から高校を卒業するまでにかかる食費、被服費、おもちゃ代、学費などを含めた子育てコストは、これは幼稚園は私立、小中高は公立に就学した場合でございますけれども、約一千三百三十七万円となっております。これを単純に一月当たりの平均といたしますと、約六万円程度となるところでございます。

川条委員 北井局長、ありがとうございました。

 子供一人育てるということは非常にすばらしいことで、充実感と達成感のあることだと想像されます。しかし、単純に、愛があれば大丈夫だとか、子供はかわいいとか、子育ては楽しいとか、若いうちからさっさと結婚させて子供をつくらせたら少子化は解消するなどという一部の知識人や我が自民党以外のごく一部の議員の無責任な発言には、私は非常に憤りを覚えております。実際に一月これだけのお金がかかり、一般の市民にとっては非常に大きな金額なのですから。

 次の質問の方に移らせていただきます。

 私は、子育てにかかる費用は、出産や新生児用品、学校教育に伴うお金といった必需的費用及び食費や服代、水道光熱費といった生活費用に限れば、ほぼ同じであると考えております。

 ところで、昨今、東京二四・八%、大阪二七・九%というように、特に大都市圏では就学援助費の受給率がふえており、全国平均でも一割を超えている。支給額は、小学校の平均額七万円から中学校の平均額十二万ということです。支給率九〇%という今回の改正は、広くあまねくという観点からは公平だと評価できる反面、年収三百万の人と年収八百万の人では、一人五千円という児童手当の重みが異なってくると思います。

 ニートが百万人、その人たちに雇用の門戸を開いているのは半数以下の企業しかないという厳しい現実の中で、低収入の人たちも前向きに生きる気力を得て、安定感を持って子供を育てられる世の中にしていきたいと私個人は痛切に思うのです。本日はここにはおられないですが、先日、川崎大臣も個人的な思いとしてちらっと述べておられたように思います。

 さはさりとて、この点につきましては、低所得の人ほど恩恵は厚くという逆累進制を提唱したいのです。税制との兼ね合いもあるとは思いますが、今後の可能性についてお伺いしたいと思います。

北井政府参考人 児童手当制度は、広く一般の子育て家庭を対象として、その生活の安定と児童の健全育成及び資質の向上を目的とするものでございます。したがいまして、児童手当につきましては、諸外国の例を見ましても、子育て家庭に対する普遍的な給付として、親の所得にかかわらず一定の支給額としている国が一般的でございますし、我が国も、現在の制度におきましてはそういう考え方をとっているところでございます。

 なお、今後の検討といたしましては、経済的支援のあり方を検討する際には、御指摘の点も含めて、児童手当のみならず、税制の問題やあるいは企業の家族手当といったような手当のあり方といったことも含めた幅広い視点からの総合的な検討が必要であるというふうに考えております。

川条委員 局長、ありがとうございました。

 次に、子供の教育という観点からお尋ねさせていただきます。

 子供は産むだけでは育ちません。責任感のある人ほど、親になった場合、出産後の費用や子供の教育のことを考えて前向きになれないという人は多いのではないでしょうか。諸外国の例を見ていると、女性の就業継続が比較的多い北欧諸国は、保育サービスや父親の育児参加という点が充実している。例えばフランスやイギリスなどの国においては、児童手当や税額控除などの積極的な経済的支援あるいは家庭的保育サービスの拡充が行われている。オランダは、ワークシェアリングが非常に充実したものを感じる。非常に充実しているんです。

 ところで、児童心理学では、三歳までの大脳の発達というのは著しく、また、音感や色彩感覚なども六歳から七歳までに形成されてしまうと言います。その意味で、幼児期に親と触れ合い、愛情を確かめ合う時間というのは、学習面でも情緒面でも非常に重要だという認識を私は持っております。

 しかし、同じ女性として、日本の現実に直面したときを考えれば、今の日本においては、子供の出産、育児のために職業を一たんやめると、再就職の道は閉ざされ、非正規社員として働かざるを得ないのが悲しい現状です。実際に就業履歴に空白があれば、半数近くの企業が、その一点のみ見るだけで、個人の能力や人間性というのは全く見ようとせず、最初から門戸を閉ざしています。三〇%の女性が結婚時に自発的に仕事をやめ、残りの七〇%の人のうち、出産で七〇%がやめてしまう。育児休業をとれるのは全体の約二〇%にすぎない人たちだというこの現実を見てください。

 女性の再雇用の問題について、ファミリー・フレンドリー企業の表彰などよりも、もっと踏み込んだ新たなアクションプランが私は必要だと思います。今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。

名取政府参考人 お答えいたします。

 活力ある社会を築いていくためには、男女を問わず、一人一人が個性と能力を十分に発揮できるようにすることが重要でございます。しかしながら、議員御指摘のとおり、子育て等により一たん退職した女性が再チャレンジを希望する場合、希望する仕事になかなかつけないという状況が見られます。このため、政府は、昨年六月に閣議決定した経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇五に基づき、関係閣僚から成る女性の再チャレンジ支援策検討会議を設置し、昨年十二月に女性の再チャレンジ支援プランを取りまとめたところでございます。

 このプランにおきましては、地域におけるネットワークの構築等による再チャレンジ支援、学習・能力開発支援、再就職支援、起業支援、国における総合的な情報提供・調査等の五つを主な柱として、各省庁連携して施策を講ずることとしており、内閣府におきましても、地方公共団体と連携して、男女共同参画センター等、地域の身近な場所で再就職等の相談ができる窓口の整備などに取り組むこととしております。

 今後は、プランに盛り込まれた施策を着実に実施していくとともに、さらなる課題の検討を進め、女性が再チャレンジしやすい社会を実現するため、関係省庁と連携して取り組んでまいります。

川条委員 名取局長、ありがとうございました。

 次に、家庭中心の幼児教育を考えるのか、施設中心の幼児教育なのかによって、大きく施設のあり方が変わってくると思います。家庭中心の教育を考えるのであれば、施設はそれを補完する役割が期待され、施設中心の幼児教育であれば、知育、徳育、体育、さらに文化や伝統の継承、さらに情操面でも、両親のかわりとなる役割を担わなければならない。これからの日本を担う次世代の人材育成のための幼児教育のあり方のビジョンをお伺いしたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、幼児期は、人間形成の基礎が培われるという重要な時期でございます。その時期の教育は、次代を担う人づくりという観点からも極めて重要なものと認識しております。

 このため、子供の発達段階に応じた対応が必要という観点から、文部科学省及び厚生労働省の審議会の合同の検討会議におけるまとめにおきましては、ゼロ歳から二歳までは大人への依存度が高く、特に親を初め特定の大人による個別の対応が重要であること、また、三歳以降は子供同士の集団による活動が重要であるという提言をいただいております。

 また、子供たちの健やかな育ちを支えていくためには、家庭における教育、子育てを基盤といたしながら、こうした子供たちの発達段階を踏まえながら、家庭、地域社会における大人の人たち、そして幼稚園や保育所などの施設の三者がそれぞれの役割を果たしていくことが必要と考えております。

 以上のような基本的な考え方のもとで、まず一つ目には、幼稚園や保育所における教育や保育の機能の充実、また二点目には、家庭や地域社会の教育力、子育ての力というものの向上に対する支援、そして、これらを政策的に支援していくことが重要でありますし、これに加えまして、働き方の見直しなど、社会全体で子供たちの育ちや子育てを支援していくことが重要であると認識しております。

 文部科学省におきましては、こうした考え方に立ちまして、厚生労働省を初め関係省庁と連携させていただきながら、幼児教育の充実に努めてまいりたいと考えております。

川条委員 布村審議官、ありがとうございました。

 もう少し踏み込んでのお答えを期待しておりましたが、今いただいたお答え、ビジョンがこの日本国、全国あまねくどの町村でも実施されるようにお願い申し上げて、次の質問に移らせていただきます。

 今回の改正は、経済的支援の拡充で、期間も延び、給付率九〇%という点で一歩進んだものと評価したい。しかし、一つ気にかかっているところがあります。児童手当の支給が小六で終わってしまう。特定年齢扶養者控除が高一から始まるので、中学の三年間というのは、今の制度では、子供一人の試算で年額六万円の減額になります。塾通いの費用や中高一貫制の私立中学への進学者のことを考えると、中学の三年間というのは、小学校にも増して教育費の負担がふえると予想されます。さらに、現在の保育所徴収金基準額から考えて、もっと幼児期のことを考えてみても、一般サラリーマンでは、共働きで子供を保育所で預かってもらうと、三万円から六万円の負担があると見られます。これを基準として考えれば、児童手当は月三万円ぐらい欲しいというのがお母さんたちの本当の心の声じゃないかと思います。

 欧米諸国との比較をしながら、あるいは人口減少時代の対策を考えれば、今回の改正よりもさらに踏み込んで、義務教育費の無料化あるいは女性の再就職の支援等、省庁を超えた取り組みが必要ではないでしょうか。もちろん、国債七百兆円というこの大きな借金を考え、財源を考慮しながら進めていかなければいけない施策であると重々承知しております。

 ところで、副大臣に、この経済的支援あるいは間接的支援について御見解をお伺いしたいと思います。

中野副大臣 児童手当は養育費の一部を支給するものではございますけれども、その支給額の水準につきましては、今議員がおっしゃったようなお考えも当然あるわけでございますけれども、単純に子育てに係る費用のどの程度までを支援するかという観点だけでなく、家族の生活様式や経済水準が目まぐるしく変化する中で支援すべき範囲をどのように考えていくかという点や、税制による支援や企業の賃金体系との関係、また、限られた財源の中での、保育や仕事と家庭、育児の両立というような他の次世代育成支援施策との関係などを踏まえまして、総合的に判断する必要があるわけでございます。

 いずれにいたしましても、児童手当等の経済的支援のみならず、保育や働き方に関する施策など、多岐にわたる次世代育成支援策につきまして、税制や企業の賃金体系との関係を踏まえまして、総合的かつ効果的な観点から検討を進めていくことが重要だと考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。

川条委員 副大臣、ありがとうございました。

 時間も押し迫ってまいりましたので、最後の質問に移らせていただきます。

 家事、育児というアンペイドワークに従事する時間が、統計によって若干異なる部分はあるのですが、働く女性は男性の約五倍、専業主婦は約十倍という結果が出ております。それも男性の家事の内訳にお茶を入れるとか、新聞をポストにとりに行くとか、おふろの湯を張る、つまり水道の蛇口をひねるだけというものも入れられた結果がそうなのです。これらの仕事を家事、つまり家の仕事というのに値するかどうかは、きょうは取り上げません。

 ただし、食事をつくる、子供の教育をする、子供の世話をするという仕事に対して、同じ仕事を家の外で行えば、調理師、教育者、保育士という名称で呼ばれて社会的評価を受けられ、賃金や社会保障といった経済的評価が受けられます。つき合いの幅も広がり、専業主婦として一生懸命家の中で同じ仕事をするのとはまた違った人生が開けてくるのです。

 現在は、アンペイドワークに対する評価はまだありません。評価どころか、男性は毎日働いて女房や子供を養ってやっているんだから、家事や育児といったアンペイドワークの評価など全く不必要で、空気や水のように、女子供の仕事として当然とすら思っている人も世の中にはたくさんおります。

 確かに、儒教概念のあった戦前までは、大家族制で主婦は家計を握り、子供の進路や結婚においても大きな権限を持っていました。言いかえると、アンペイドワークが感謝とか権力という形で無形に評価されていたわけです。しかし、現在は核家族で、家計は等分に負担する家庭がふえて、子供は子供で価値観を持っている。専業主婦は主婦として自信が持てないわけです。

 けれども、同一の労働に対する価値は家の内と外で同じであって、私は、信念として、このような家事、育児といったアンペイドワークを積極的に評価していくことこそが、人口減少時代、子供をつくろう、家庭を持とうという一歩踏み出す力を若い人に与えることにつながるのではないかと思っております。

 そこで、家事、育児というアンペイドワークと言われる、主に女性が家庭内で担当している労働の現状についての認識と、これからの社会を考えたときのそのあり方について、中野厚生労働副大臣の見解をお伺いしたいと思います。

中野副大臣 男女ともに家事、育児、介護をしながら働き続けることができるように、仕事と家庭の両立を推進するとともに、特に、家事、育児の負担が女性により多く課せられている現状を踏まえてみますと、男性を含めた働き方そのものを見直していくことが私は重要であると考えております。

 このため、厚生労働省といたしましては、次世代法に基づくところの企業の行動計画書の策定とか実施の促進とか、また、仕事と家庭のバランスに配慮した働き方ができるファミリー・フレンドリー企業の普及の促進とか、また、労働者にとって長時間にわたる時間外労働の是正等に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、これらの取り組みによりまして、委員がおっしゃったように、男女ともに安心して子育てしながら働くことができる社会の実現に努めてまいりたいと思います。

川条委員 ありがとうございました。

 今回、国からの子育て支援の費用を具体的に比べるために、私はきのう、与党案と対案を、年収約五百万円、税率一〇%のサラリーマンをモデルケースとして、子供一人、出産したときから大学卒業のときに至るまでの国の支援の額というものを計算しました。

 与党案では、七十二万円の児童手当に加えて、扶養控除の配偶者分八十七万四千円、扶養控除百七万四千円の合計二百六十六万八千円。一方、対案では、対案成立後に所得税等に係る扶養控除が廃止されるとのことですから、全額で二百八十八万円となります。

 この二十一万二千円の差は、大学卒業時までですから、生まれたときから卒業時までの二十二年間で割ると年九千六百円の差にしかならず、一カ月わずか八百円しか変わらないのです。我が党の案はたった五千円だと朝からさんざんこきおろされておりましたが、月一万六千円と一見充実しているようでも、トータルでは与党案と月八百円しか変わらないんです。

 最後にこの点を指摘させていただき、私の考えを最後に述べさせていただいて、終わりたいと思います。

 今、日本は自由な国なので、さまざまな価値観や生き方があって当然です。国としても、そこを大切にしながらの対策でありますから、難しいと思います。

 ただし、本来なら希望にあふれている若い人たちが、夢を失って待たされていると社会から目を背けないでもいい国であってほしいし、子供は親を選べないわけですから、あまねく多くの子供たちに、生まれてよかったと思ってもらえるような社会をつくっていかなければならない。そのためにこれからもぜひ御尽力いただきますことをお願い申し上げまして、質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

岸田委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 私は、民主党提出の児童手当法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきたいと思っております。

 その前に、まず、赤松副大臣に質問をさせていただきます。

 今回の児童手当法の改正につきましては、近年では四回目の拡充となるわけでございます。政治家としての先輩として、ずっと長く取り組んでこられた経緯もあられると思います。一言感想をいただければと思います。

赤松副大臣 この問題は中野副大臣の所掌でありますにもかかわらず、私を御指名いただいたということは、今、高木委員が言っていただいたように、昭和四十四年から公明党にかかわっておりまして、今配っていただいた児童手当の主な沿革、高木委員の資料でありますが、この一番左端の昭和四十六年よりもっと前から公明党の人間としてやってまいりましたので、その辺の感想を述べろということで、ちょっと時間をいただきまして、少しだけ感想を述べさせていただきます。

 公明党が結党されたのは昭和三十九年ですが、初めて児童手当がこの世に誕生したというか、創設されたのがこの昭和四十六年度で、第三子以降、義務教育終了前、月額三千円、この数字を改めてここで見させていただいて、そして、この右の端、平成十八年、小学校修了時まで拡大予定、所得制限も緩和をされて八五%から九〇%の人たちが対象になる、こういうふうな沿革を見させていただいて、はるけくも来たな、そういうふうな実感を持つ次第でございます。

 先ほど来といいますか、先日来、川崎大臣も、皆さん方からの御質問に答えられて、自民党の中にもいろいろな意見があるんだということをしきりにおっしゃっておりますが、今日まで、ここに来るまでの間、なかなか児童手当というのは市民権を得られなかった、平成十二年以降、かなり急激な変化をしてきているわけですけれども、そして今日を見たときに、ようやくこの日本の国の中に児童手当というものが市民権を得たというか、しっかりと皆さんの支持を得てきたんだなということを私は実感として感じます。

 特に、これから高木委員が民主党の皆さんに対して質問されるわけですけれども、野党第一党、巨大な存在の民主党の方から、かくも立派な児童手当に関する法案が出てくるということ自体、大変力強く感じる次第でございまして、大臣からもありましたように、単に経済的側面の児童手当という側面だけではなくて、あらゆる手だてを講じて少子化に対応するための、これからの施策は必要だと思いますけれども、その重要な柱としての児童手当ということについてしっかりとした議論をしてまいりたい、そんなふうに思っているところでございます。

 以上です。

高木(美)委員 はるけくも来たなと、本当にすばらしい感慨を述べていただきました。

 そこで、まず、民主党さんのこの法案そのものに入ります前に、提案理由の説明を先日伺わせていただきました。この中に、この二段落目の一行目になりますが、「どの党よりも早くから」という一言がございます。

 これは、今の赤松副大臣の感想もあられ、そしてまた、我が党の主張、これはもう事実でございますので、また後ほど申し上げさせていただきますが、感慨を深くされている方も、また応援をしてくださった方、それは当然他党の方も全部含めてでございます、ここまで進んできたという感慨をお持ちかと思っております。

 そこで、この民主党さんがどの党よりも早くからとおっしゃる、その根拠といいますか、それをまず簡潔に御説明いただきたいと思います。

小宮山(洋)議員 どの党よりも早くからと申し上げたのは、この子ども手当のことだけではなくて、総合的な子育て支援ということをほかのことよりも優先をして、党全体として、子ども第一、チルドレンファーストという言い方でやり始めましたのは私どもが一番最初ということを申し上げました。

高木(美)委員 それは何年から取り組まれたということでしょうか。何年からお取り組みになられたということでしょうか。

小宮山(洋)議員 私が当選いたしましたのが一九九八年でございますので、チルドレンファーストという形で子ども第一を全体として取り組んだのが最初という言い方をさせていただいております。

高木(美)委員 私も民主党さんのホームページで、一九九九年、子ども手当とおっしゃっているのを拝見いたしました。しかしながら、その後、二〇〇三年のマニフェストには、子ども手当という言葉は発見することはできませんでした。これについては、また後日説明をお願いしたいと思っております。

 そこで、お配りしました「児童手当の主な沿革」、このプリントをごらんいただきたいと思います。

 今、総合的な子育て支援というお話でございました。当然、児童手当だけを進めてきたわけではございません。ただ、この「どの党よりも早くから」という文言は、これは本来であれば全党挙げてこの子育て支援をこれからどのようにしていくか、こういう論議のその中にあって、わざわざこの文言を出されるということは、これは大変に大きな影響を与えている、私はそのように認識をしている一人でございます。

 今、赤松副大臣からもいみじくもこの資料を使ってお話がございましたとおり、これは昭和四十六年というふうになっておりますけれども、一番最初に日本で児童手当を実現しましたのは千葉の市川市でございます。当時の市会議員の方が、四十二年十二月の定例市議会で訴えました。子供たちの健全な育成は、保護者ばかりでなく市としても何らかの援助を行うべきだ、この見地から児童手当制度を早急に実施すべきである、この質問こそ、恐らく初めての児童手当制度の創設を提唱する発言であったと認識をしております。

 当時、高度成長時代に入っておりましたけれども、子供たちの養育は家計の生計費を圧迫しておりまして、決していい環境にはなかったと思っております。当時、各国を見ますと、イタリア、西ドイツ、イギリス、デンマーク、フランス、スウェーデン、世界の六十二カ国が既に実施をしているという状況がございました。

 東京都は四十四年十二月から実現をいたしました。そして、これが引き金となりまして、当然このときも我が党先輩たちが多くかかわらせていただいたわけですが、国会でも矢のような質問攻勢を行ったと語り継がれております。そして、四十七年一月、多くの議員の方たちの賛同を得ましてこの児童手当法が施行になった、これが、昭和四十六年のスタート、そして四十七年から施行という、まず第三子以降、始まったわけです。

 そして、平成二年、書いてございませんが、一・五七ショックがありました。そして、平成四年、ここから本格的にスタートをするわけでございますけれども、その後平成十二年、ここまで、なかなか伸びないという状況がございました。我が党が、平成十一年、一九九九年、連立政権に入りましたときに、連立合意としてここで、児童手当及び奨学金の拡充等、等でございます、少子化対策を進める、既に政党の連立合意としてこのような形でスタートをしたわけでございます。そこから一気に、自民党さん、そしてまた当時の保守党等々御協力をいただきまして、力を合わせて、平成十二年、十三年、そしてまた十六年、十八年、こうした拡充につながっていくわけでございます。

 今回は、小学校六年までということで、九百四十万人が千三百十万人まで拡大をされる。当然、今、ここに至るまでにはいろいろなことを言われまして、選挙目当てのばらまきであるとか、このことは毎回毎回言われたわけでございます。

 そこで、民主党さんにもう一つお伺いをしたいのは、政策の一貫性といいますか、制度の趣旨、位置づけにつきまして、どのようにこの児童手当をとらえていらっしゃるか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

小宮山(洋)議員 この法案は、先ほどから申し上げておりますように、私どもが子ども第一、チルドレンファーストという方針のもとに、この児童手当につきましても子どもに着目をし、子どもがまず安心して育つことができるよう、そして保護者が安心して子どもを育てられるように、子育てに係る経済的負担を社会全体で負担すべきだという考え方に立ってつくっております。児童を養育している者に子ども手当を支給することによりまして、児童の養育に係る経済的負担の軽減を図るとともに、次代の社会を担う子どもたちが健やかに育つことができるためにも資することとしております。

 民主党は、昨年の衆議院選のマニフェストにおきましても、月額一万六千円の子ども手当の創設を初め、幼保一体化の推進、小児医療体制の充実、仕事と家庭の両立支援策など、子どもが安心して育つことができる社会の実現のための政策を打ち出しております。本法案は、民主党の子育て支援策の大きな柱の一つである子ども手当制度を内容とするものでございまして、政府の児童手当法等改正案への対案として提出させていただいたものでございます。

 もちろん、公明党さんが児童手当のためにずっと努力をされてきたことはよく承知をしております。先ほど赤松副大臣も、野党第一党から立派な法案を提出してもらってと言っていただきましたように、子どものことにつきましては、これはある意味で党派を超えてしっかりとやっていければいいというふうに考えております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 今、小宮山議員より説明がございました。

 実は、前回、前々回と二回にわたって、この児童手当の拡充に対しまして民主党さんは反対をしていらっしゃいます。今お話がありましたように、確かに、財源を見つけながら一つずつ世論の理解を得ながらまさに地をはうようにしながら、皆様のお声をまとめながら、そしてまた、多くの議員の方たちの論議をいただきながら、ここまでまとめてきた児童手当でございます。それに対しまして、前回の平成十六年、そして前々回の平成十三年、二回にわたってこの児童手当法案に反対をされたわけでございます。

 そして、実は前回のときだったと思いますけれども、同じくこの委員会で、ある議員の方が、選挙目当てのばらまきであるということを明快におっしゃいました。きょうはあえて議事録は引用しませんけれども、そのような御発言、これは参議院でも何度もあった事実でございます。

 また、現実、二〇〇〇年の本会議におきましては、小宮山議員は、本会議の席上、「何度も申し上げましたように、児童手当は子育て支援の一つの柱にすぎません。」本当にこれは、議事録を見ますと何度もおっしゃっていらっしゃいます。そして、前回十五日のときでしたけれども、その委員会におきましても、そのときは、私は大事な柱だというふうに思っています、このようにおっしゃっていらっしゃいます。

 恐らく、このように児童手当ということに対する認識が大きく変わってきた、そのように私は大きくとらえさせていただいておりますけれども、果たして民主党さんは、児童手当はあくまで子育て支援の一つの柱にすぎない、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるのか、大事な柱である、経済的支援は重要である、このように認識なのか。まず、その点をお伺いさせていただきます。

小宮山(洋)議員 先ほど、二〇〇〇年の私の参議院での本会議のことを取り上げておっしゃいましたけれども、おとといでしたか、質問の中で私も申し上げたように、私どもが反対しているのは、額を上げることに反対しているのではありません。そこのやり方が、例えば二〇〇〇年の場合は、その一年前に子どもたちへの税の控除、そこの減税を十万円しておきながら、今度は、財源ということで、それをまた十万円下げて財源に充てたというやり方に反対をいたしましたので、それぞれのときにその反対の理由がございます。

 それで、先日の参考人質疑でも、公明党さんが推薦をされました参考人の方も、もちろん経済的支援も大事だけれども、そのほかにも、ワークライフバランス、その大きな全体の働き方の問題ですとか、いろいろなことが必要だとおっしゃっていましたよね。そういう意味で、私どもはいろいろなことが必要だと思っております。ただ、別に大きな柱と言うか柱の一つと言うかというのは、そんな大きな、そうやって取り上げて言葉じりをとらえられるような問題ではないと思っております。

 現在は、経済的な支援が足りないから持ちたい数の子どもが持てないという方が一番多くいらっしゃいますので、大きな柱という表現をいたしましたが、一つこれだけでできるわけではありませんから、それこそ、やはり働き方の問題とか、さまざまに総合的なことでやっていく中の柱、その中の大きな柱ということを申し上げましたので、以前に柱と申し上げたこととそんなに中身が変わっているとは思っておりません。

高木(美)委員 それでは、前回のときに多くの議員の方がおっしゃっていた選挙目当てのばらまき発言でございますけれども、そういうことをおっしゃるのであれば、私は、この提案理由説明の中の「どの党よりも早くから」、やはりこの一言といいますのは、これは当然削除してしかるべきではないかと思いますが、御見解はどうでしょうか。

小宮山(洋)議員 私が「どの党よりも早く」と申し上げましたのは、チルドレンファースト、子ども第一ということを党全体の政策の柱にしたのが最初という言い方をいたしましたので、児童手当のことを最初にやったというふうに言っているわけではございません。

高木(美)委員 余りこういうことを、先ほど申し上げましたように、本来は全党を挙げて子育て支援をどうするか、それが一番大事な話でございまして、それを「どの党よりも早くから」、こうしたことは見識が疑われる、こうしたことにつながっていくわけでございます。

 その点につきましては、ぜひとも、きょうはあえてこれ以上このことにつきましては論議申し上げませんけれども、これはやはり、私は訂正をしてしかるべきではないか。チルドレンファーストを先に言わないといいましても、これはそもそもイギリスにある言葉でございます。そういう意味では、今後とも、この文言につきまして削除されることを希望いたしまして、次の質問に移らせていただきます。

 今、前回のときの財源論の話が問題になりました。今回、民主党さんの財源につきましては、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、もちろん、その中に特定扶養控除の廃止が入っております。こうした控除を廃止して、そしてその財源に充てるとされているわけでございます。当然、もらえる側に、受け取る側にとりましては、一万六千円、義務教育終了まで、大変これはうれしい話でございます。

 しかしながら、反面、こうした控除を切ってそこに充てていく、これでは、先ほど来お話がありました教育費等の負担の大きい高校生、大学生、このお子さんを持つ家庭の負担を重くすることになると思います。その点につきましてどのようにお考えでしょうか。

郡議員 お答えさせていただきます。

 子ども手当を何歳までにするのかということにつきましては……(高木(美)委員「そのようには聞いておりません、財源です」と呼ぶ)はい。いろいろ議論があるところですけれども、私どもは、さまざまな手当額の水準ですとか、それから所要財源、財源措置あるいは欧州におきます子供手当の状況など総合的に勘案した結果、中学生以下の子供を持つ御家庭を対象とすることとさせていただきました。政府案よりも大幅にふえているということでございます。

 御質問の高校生以上のお子さんを持つ家庭への対応につきましてですけれども、これは、希望者全員に対する奨学金の無利子貸与、それから私学学校通学者に対する授業料の直接補助、そのほかの措置によって別途支援していく考えでございます。

 それでは、政府案につきまして一言つけ加えさせていただきますれば、児童扶養控除を初めとする扶養控除と、それから児童手当を併存させて、なおかつ児童手当の所得制限を設けておりますために、サラリーマン世帯では児童手当と扶養控除を合算した額が所得制限額を超えると落ち込むという逆転現象が生じる、こういう問題もございます。今回の政府案でもまた、所得が八百六十万円からの逆転が起こるということが見込まれるわけでございます。

 私どもは、控除を改廃することによりましてその財源を見込み、そしてまた、これまでの歳入歳出をしっかりと見据えた上でこの財源を確保していくということでございます。

高木(美)委員 もう一度重ねて伺います。

 それでは、大学生、高校生のお子さんの家庭で今回の特定扶養控除が廃止になった場合、増税はどれだけになるか、数を言ってください、数字を言ってください。

小宮山(洋)議員 私どもの試算によりますと、中学生以下はどこの御家庭でもこれは負担が減ることになります。そして、高校生以上のところでは、高校生、大学生のいる御家庭では年間十万円余りの負担がふえると思いますが、そこにつきましては、今、郡委員がお答えいたしましたように、希望する者全員に奨学金の無利子貸与を可能にする仕組みなどを設けまして、教育環境の整備を図るなどの対応をとっていきたいというふうに思っております。

高木(美)委員 こうした特定扶養控除を切るという場合、当然、どの程度の負担になるのか、正確な数を押さえるのがまず私どもの責任ではないかと思います。お一人これがなくなりますと、六万三千円ふえるわけでございます。例えば、大学生、高校生いらっしゃれば、年間十二万六千円の増税につながるわけです。

 子育ての経済的負担というふうにおっしゃいますけれども、教育費の占める割合が大きいというのが現状でございます。小さいころにかかる、そしてまた教育費にかかる、これは何度もそのようにおっしゃっている話でございます。要するに、最も教育費がかかる高校生、大学生の家庭の負担をふやして、その分を中学生以下に回す、こういう案にすぎないととられてもやむを得ないと私は思っております。

 重ねましてもう一つ申し上げます。

 奨学金でつなぐというお話がございました。例えば奨学金、どのような試算になるのか。これはそれぞれ状況が違います。ですので、あえてこれは先ほどの例も踏まえまして、もう時間もありませんので私の方で申し上げますが、例えば高校で第一種月額一万八千円を借ります。三年間で合計額六十四万八千円。大学に行きまして、きぼう21プランを借ります。月額五万円、四年間で二百四十万円。合計しますと、卒業するころには三百五万円。これを返済するに当たりましては、返済月額一万五千円を十七年間払い続ける、こういう試算になるわけでございます。

 これが普通の御家庭にとって、しかも、今の団塊の世代のような高所得の望めない、そういう若い世代にとって、これを国の方針として押しつける、セーフティーネットではなくて、これをそのような方向に誘導する、こうしたことに対しては、私は大変怒りを覚えている一人でございます。

 このことにつきまして、どうぞ、一言。

小宮山(洋)議員 私どもは、奨学金につきましてはさまざまな方法を考えておりまして、例えば平成十八年度の民主党予算案では、希望者全員への奨学金貸与を可能にする、貸与額の五〇%程度の引き上げ、例えば自宅外の私学生の場合は、現行六万四千円を九万六千円にすること、保護者の所得要件の撤廃などの条件緩和、こういうことをするために、政府予算に六百億円ほどを上乗せするとできるというふうに考えております。

 先ほど申し上げたさまざまな方法で、高校生、大学生につきましては奨学金の方をしっかりと手当てする予算もつけておりますので、全体として、そちらの御家庭の負担が大きくなるということにはならないと考えております。

高木(美)委員 借りたら返さなきゃいけないんです。また、そういうことをきちんと国は教えなければいけないわけです。恐らく今のお話を聞いていらっしゃらなかったと思うんですが、借りたら返さなきゃいけない。それをどのようにその金額を引き上げる、金額を引き上げたとしても、その分は本人が返さなければいけないわけです。

 今私が例を申し上げましたのは、恐らく高校から借り始めて大学卒業するまでに、普通合計三百五万円、返済額月一万五千円、十七年間返し続ける、このお子さんのことに対してどうなのかということでございます。

 セーフティーネットとして、それは御両親の経済的な状況が厳しくなった、それは一時期奨学金で、このためにありとあらゆる措置をするのが奨学金でございます。どうぞ、一言。

小宮山(洋)議員 それは、今おっしゃったようなセーフティーネットの話とはちょっと違うのではないかというふうに思います。学びたい人がその家庭のいろいろな状況の中で、学びたいときには、今の大学生の学ぶ状況などにいたしましても、自分で奨学金を借りて、行けばそれだけ一生懸命勉強もいたしますし、このことだけでセーフティーネットというのは違うというふうに考えております。

 私たちは総合的な施策の中で、先日から申し上げておりますように、税制と社会保障の制度全体を抜本的な見直しをする中で、継ぎはぎの小手先ではないようなことをするために、どこに集中化をし、どこの部分は違う方法でカバーをするかということを、セーフティーネットというのは落ちたときに張るネットですが、そうではなくて、私たちは落ちる前に包み込むような政策をとりたいというふうに考えております。

高木(美)委員 わかりました。今私が申し上げたセーフティーネットという意味は、これは一人のお子さんにとって、例えば自分のお子さんと考えてください。大体初任給二十万ぐらいですよ。それで、返済月額一万五千円、これを十七年間払い続けるわけです。そして、その途中、結婚もある。こういう負担を高校生、大学生に強いるような方策をとっていいのかという意味で私は申し上げているんです。特定扶養控除を廃止するというのはそういう意味です。

 私の申し上げたセーフティーネットといいますのは、それはあえて、そういう状況のときは奨学金でつなぐのは、それは一番必要なことですし、それはそれです。ただ、国の方針として、特定扶養控除を切る、切って奨学金でつなぎなさい、あなた、これだけ負担しなさい、そういう方向に誘導するのはいかがなものかと申し上げているわけです。先ほど特定扶養控除が切られた場合どのぐらい増税になるか御存じなかったので、恐らくそこまで計算していらっしゃらないことですから、議論がかみ合わないのだと思います。

 ただ、こうした奨学金、滞納率につきましては、これは平成十六年末ですけれども、今約二千二百九十七億支払っていただかなければいけない中で、五百七億滞っているわけです。四分の一が滞納となっております。明らかにこうした、奨学金でつなぐという民主党さんがとられる方向というのは、なかなか、将来、支払えないという、そのような結果につながっていくのではないかと思います。

 そこで、もう一つ伺います。

 実は、この財源につきましてそのようなお話がありました。私は試算をいたしました。子供が小学生二人いる場合は、確かに一万六千円、二倍になりまして、それは家計は潤います。ところが、そこに高校生、大学生、そこが入ってきた場合につきましては、例えばお子さんが小学生一人、高校生一人、そういう御家庭では、年収六百四十四万円まで、そこまでは児童手当といいますか、子ども手当ですね、そちらでおっしゃる、そちらの方が効果は大きいです。しかし、六百四十四万円を超えますと増税となるわけです。

 まして、そこが大学生と高校生のお子さんの家庭では、子ども手当も届かない、年間十二万六千円の増税。子育ての経済的負担、先ほど来申し上げておりますように、この教育費の占める割合が大きいことを考えますと、高校生、大学生の負担をふやして、その分を中学生以下に回す案にすぎない、このように言わせていただきたいと思っております。

 最後にお伺いしたいのは、当分の間という、暫定措置というお話でございますけれども、この所得財源もずっと見積もらせていただきましたが、今必要な金額といいますのは、民主党さんおっしゃるのは、約三・六兆円という所得財源の見積もり、もう少し違う数字が三兆三千何百億、数字の中で出ていたかと思います。この中で、将来、当分の間は国庫負担が百分の九十二というふうに考えていらっしゃいます。これを要するに三・三兆円必要であるというふうに考えましても、もう四月一日施行というふうにこの案ではなっております。組まれている今の来年度政府予算は〇・三兆円しかありません。当然三兆円が足りないわけです。このままでいきますと六月支給には間に合わない、こういう現実的な話でございます。

 この点につきまして、どのようにされるか、お考えを伺います。

小宮山(洋)議員 当分の間と申しましたのは、所得税のやはり抜本的な改正を行う際に、私どもはこの控除を廃止するという案をその以前から出しますけれども、そこの議論をぜひ政府の方でも、定率減税廃止の前になさるはずだったものを早くやっていただきたいと思います。その当分の間は、その事業主、都道府県及び市町村にこれまでと同様の負担をお願いすることとしております。

 先ほどおっしゃいました奨学金につきまして、全く私どもの考え方と違うんですね。私たちは、全体の教育制度の改革の中で、今現に小学生などでも教育の扶助を受けなければならない御家庭が非常に多い。そのように今の格差が開いている中で、いろいろ教育の格差ということにも広がっていく中で、私たちは当然、子どもたちが学ぶ権利といたしまして、高校生、大学生には、いろいろな条件を整えた上で、自分たちで奨学金できちんとできるような体制をとりたいと思っておりますので、そこにしわ寄せをするということではございません。

 先ほどおっしゃいましたように、私どももさまざま試算をしておりますが、それぞれ年収によって、また片働きか共働きかとか、いろいろケースがございますので、先ほどは丸めた数字で申し上げましたので、私どももしっかり試算はしております。

高木(美)委員 奨学金の考え方というお話でございましたけれども、私は、やはりそのお子さんが大学を卒業したときに、果たして自分で返せる能力があるのかどうなのか、そこのところをしっかり見ていくべきではないかと思っております。当然、自分の意思で奨学金を受けていただくわけですけれども、ただ、余りの負担、要するに特定扶養控除、年間一人六万三千円切るということは、七年間では四十四万円になるわけです。極端な話、先ほど三百五万円借りてという話を私は申し上げました。半分聞いていらっしゃらなかったようですけれども、そこにこの特定扶養控除の四十四万円が残っていれば、お子さんの負担は二百六十万で大学まで出ることができるという、私はやはりこの教育費の負担をどのようにしていくか、これはまさに大事なことであると思っております。

 これは教育の今後の方向性にもかかわってきますので、まさにこれこそ今後の大きな課題として、先般も大臣がこうした子育て支援、それは当然そこに文部科学省のこうした考え方も入れて、連携をとってというお話もございました。こうしたことを含めまして、論議をお願いしたいと思います。

 ただ、こうした法案を出されるのであれば、四月一日施行というふうに書かれているわけでございますので、現実的な案をぜひ提案をいただきたいと思っております。それだけが大変残念であると思っております。

 以上で質問を終了いたします。

岸田委員長 次に、仙谷由人君。

仙谷委員 きょうは諸般の事情で三十分しかございませんので、簡潔に質問をしてまいりたいと思います。

 まず、現在の委員会にかかっております法案に関しましてでございますが、いわゆる三位一体改革関連の税源移譲に伴う法案、こういうことになっておるようであります。

 厚生労働省の方に私の方から適宜、計算してみますと十六本の補助金、交付金、負担金でございますけれども、これがどのような事務なのか、つまり、分権一括法上、自治事務なのか法定受託事務なのか、それをお伺いいたしました。当然のことながら、厚生労働大臣は、分権一括法に言う自治事務の意味、法定受託事務の意味というのがおわかりになっていらっしゃると私は思います。

 それで、そんな中でお答えをいただきましたら、当初は、医療施設運営費等補助金、医療施設等設備整備費補助金、この二つが法定受託事務、医療関係者養成確保対策費等補助金、それから医療施設等施設整備費補助金、これも法定受託事務、こういうお答えだったものですから、いや、それはその根拠を示してくれということを申し上げましたら、いや、実はこれは自治事務でございました、こういう話でありました。

 実は、自治事務にとっての補助事業という、私から見れば何か論理的にどうつながるのかわからないようなことが、これは厚生労働省だけではありませんが、行われている。それで、機関委任事務としての補助事業、補助事業を機関委任事務としてこなすとか、いわゆる分権一括法ができる前に行われていたやり方とどこがどう違うのかというのが、この分権一括法の大問題であるはずであります。つまり、地方と国の仕事のそれぞれの責任範囲をちゃんと画する、そして財源もそのことがちゃんと保障される、補完性の原則にのっとってそのことが、つまり、生活に近いところ、身の回りのことはまずは自治体、地方政府が行う、これが地方分権のあるいは地域主権の趣旨であったはずであります。

 そういう観点からお伺いしたいと思いまして資料を要求したら、今のところ、きのうあたりになってこういう資料が出てきております。これは、どういうふうに補助金の実務の書類が行ったり来たりするかということをちゃんとこれで立証しようと思って、資料をお願いしたわけであります。来週も時間をいただけるようでございますから、その点はじっくりやるとしまして、厚生労働大臣、厚生労働省にとっての法定受託事務というのは、例の地方分権推進計画にも書かれておりますけれども、その法定受託事務と、そして、ほとんど今度の補助金が出されておって、これを一部税源移譲するというふうに法案として出されておるわけでありますが、この補助事業と自治事務の関係というのはどういうふうに考えたらいいのか、その点についてまずお伺いいたします。

川崎国務大臣 今具体的な例でお話しいただきましたので、先に私どもの方から資料を出したのでしょうか、医療施設運営費等補助金、医療施設等設備整備費補助金等、四項目ですね、これを一番最初は法定受託事務だと言って、その後自治事務だという御回答を申し上げた。

 実は、これは両方入っているわけですね。基本的に国が全額負担をして民間に交付すべきものと、地方に私どもが補助金を出して、県がそこへ上乗せ等をして民間へ出すべきもの、これは二つの仕事が入っているものですから両様になるのであろうと思っております。

 一方で、生活保護というものを見たときには、四分の三を国が負担、地方が四分の一、しかしながら、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるということで、これは四分の三、四分の一というかかわり合いになっておりますけれども、法定受託事務になっている。

 だから、逆に言えば、補助金を出したからすべて自治事務である、もしくはその逆であるということにはならないのではなかろうか、そことの関連はストレートではないというふうに受けとめております。

仙谷委員 ストレートでなくしているのが今の霞が関。あるいは、そのことに未練たらしくしがみついて、そのことにというのは補助事業に未練たらしくしがみついて、そしてこれを地方の事務として財源をつけてちゃんと補完性の原則にのっとって仕切らないのを、仕切ることができないのが、今の厚生労働省だけとは言いませんが、霞が関。分権一括法も推進法も推進計画も、ほとんど骨抜きに近い状況になってしまっているということであります。

 考えますと、法定受託事務というふうにされておる、それで、法定受託事務以外は全部自治事務というふうに分権一括法でされておるわけでありまして、法定受託事務と都道府県、市町村に事務が委託されておる分は、本来は国が全部行うべき話であります。

 生活保護も別に四分の三国が負担して四分の一地方に負担させる必要は全くなくて、一〇〇%国が負担をして、事務委託費をちゃんと都道府県に払えばいいだけの話であります。あるいは、今回問題になっている児童手当も、国の事業として行うのであれば、児童手当それからもう一つは児童扶養手当ですか、これも、国が子育てのために国の事業として、つまりナショナルミニマムとしてこのことを設定するのであれば、国がすべてお金を用意すればいい。その事務の作業を都道府県なり市町村に委託するのであれば、委託費をちゃんと事務委託費としてお支払いすればいい。これが本来の法定受託事務あるいは国と地方の関係だと思うんですよ。

 自治事務については、これは極端に言えば、補助金として今渡されているものは、これはすべて補助金をやめて税財源を譲与すればいいじゃないですか。何の問題があるのかということを次の質問以降で聞きますけれども、つまり物事が逆さまになっているんですよ。いつまでたってもちょっとでも補助金を握っておりたい、つまりは、補助事業の実施要綱を持ってきていただきましたから、これからこの十六の補助事業の実施要綱を分析しますけれども、つまり、事業認可をする。あそこに寺田さんがいらっしゃるけれども、あの人も徳島県で物すごい苦労をした。(発言する者あり)だから、本当に、この補助金の申請あるいは事前協議から始まる作業、これを全部霞が関は判こを押さないと気が済まないわけだ。判こを何回も押して、さあ、金をもらいに来いというふうなことがいまだにやられている、ここが私は大問題だと思います。

 これは、次回以降に詳しく質問をさせていただきます。

 きょうは、先ほどからお伺いしておりましても、子育て、この問題に対して、やはりようやく日本のこの国会も大きな論議ができるようになってきたのかなと思います。

 少子化白書が出たのが一九九二年だったと思います。私も、この間、十年あるいは十数年、この問題に余り深く関与もせず、まあそのうちにというふうに思ったこともあったわけでありますが、気がついてみたら、こちらの方が六十になって老境に入って、子供はどんどんふえないという大変深刻な状況になっているのが今の状況であります。

 児童手当の問題もそう。私が先般から医療についても申し上げているように、厚生省の予算をこの枠内でどちらに、つまり、お年寄りに現在使っているものを子供に使うとか、そういうちまちました話では、少子化対策といい、次世代支援といい、子育てといい、小児科医療といい、周産期医療といい、すべての子育てにかかわる対応策が、厚生省の中だけで解決しようと思ったりしても全然解決に至らないということはもう今や明らかじゃないかということをまず前提にしなければならないと私は思うんです。

 ところが、これが、総合的というかトータルに俯瞰したところから政策が出てこない。極端に言えば、農業土木を半分に削ってでも子育てに予算を突っ込む、あるいは道路特定財源を一般財源化してそのうちの五千億でも突っ込むという気になれば、子育て対応策だってどおんと進みますよ、そのくらいのことをやれば。

 そういうことが考えられないうちにまたまた事件が起こってしまったというのが、この間の福島における加藤さんというお医者さんが、二月十八日に逮捕をされて、三月十日に起訴をされ、幸い、昨日保釈をされたようであります。分娩をめぐって、つまり、帝王切開をされているときに出血多量ということでお亡くなりになった、その該当者の方にはまことに残念でございますしお悔やみを申し上げなきゃいけないと思いますけれども、法務省、この事件はどういう事件でございましたか。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 福島地検は、本年三月十日、福島県立大野病院の医師一名を業務上過失致死及び医師法違反により福島地裁に公判請求したものと承知をしております。

 お尋ねのうち、業務上過失致死の公訴事実の要旨は、被告人は、福島県立大野病院において産婦人科医師として医療業務に従事していた者であるが、平成十六年十二月十七日、大野病院において被害者に対し執刀医として帝王切開手術を実施した際、術前検査において前回帝王切開創部への胎盤の付着を認めるなどしていた上、女児を娩出した後、胎盤が子宮に癒着していることを認識していたのであるが、このような場合、直ちに胎盤の剥離を中止して子宮摘出手術等に移行し、胎盤を子宮から剥離することに伴う大量出血による同女の生命の危険を未然に回避すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、クーパーを用いて漫然と胎盤の癒着部分を剥離した過失により、胎盤剥離面から大量出血させ、同所において同女を失血させたというものであり、また、医師法違反の公訴事実の要旨は、同日、大野病院において被害者が死亡し、同所において同女の死体を検案した際、手術中の胎盤の癒着部分を剥離した結果、胎盤剥離面から大量に出血しこれに起因する出血性ショックによって同女が死亡したものであり、同死体に異状があると認めたにもかかわらず、二十四時間以内に所轄警察署にその旨届け出をしなかったというものであると承知しております。

仙谷委員 事件の論評をしますと弁護士と検事が何か論争しているようになりますからやめますけれども、しかし、捜査で、最初、一回の取り調べが一年ぐらい前にあって、その後に急に一挙に逮捕して持っていった、それで勾留をした。こういう突発性湿疹のような捜査のやり方をやったというのは、私は、この種の過失事案、そして、本来は医療の行為というのは正当行為でありますから、刑法三十五条でありますから、この種の手法は余りなじまない、そういう捜査手法だったんじゃないかという感想を持っております。これはお答え要りません。

 ただ、問題は、医療の世界で大変大きな動揺と波紋が広がっている。このことを法務省あるいは検察当局は予想していたのか。まさに、今の周産期医療がどのような状態にあって、この事件に対して、つまり、これは事故調査委員会の報告も出ておるわけでありますが、この事案に一年後に急に有無を言わせず逮捕して勾留をしてしまう、そのことによって、産科、婦人科、周産期医療の世界で大変大きな波紋が広がったということを、そして現在も大変大きなうねりになっているということを、法務省はどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。

大林政府参考人 今委員が御指摘になりましたけれども、さまざまな意見が表明されている旨の報道もなされていることも、私ども承知しております。

 しかしながら、お尋ねは現在裁判所に係属中の事件にかかわる事柄でございまして、法務省としての所見を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

仙谷委員 患者とか医療とか国民とか子育てとか子供のことを主として考えなければいけない厚生労働省は、医療の世界から、地域社会から、この広がりというのをどういうふうに今受けとめていらっしゃいますか。

川崎国務大臣 公判中の案件でありますので、このことについての詳細なコメントは差し控えさせてもらいます。地域の病院が、限られた資源の中で医療を担い、地域住民の生命、健康を守るべく努力されていることに対しては、敬意を表しておきたいと思います。

 今回の事件に対するさまざまな声明等においては、一つは、高度な医療に関連して業務上過失致死と医師法第二十一条違反の容疑で医師を逮捕、勾留したことへの異議、システムの問題等さまざまな要因が事件の背景にあるにもかかわらず、医師個人の責任に帰せられたことについての異議、今後の周産期医療確保への懸念等が今回寄せられておると考えております。

仙谷委員 この今度の、どちらが事件になるのかわかりませんが、つまり、検察庁が、あるいは警察、検察が起こした事件というふうに将来なるのではないかと私は思っておるんであります。

 この件は、医療上の問題もございますけれども、政治家から見ますと、僻地医療であるということですね。それから、つとに矛盾が指摘されてきた小児、周産期、この医療の中で起こったということ、その世界で起こったということなんですね。

 厚生労働省にもお伺いしたいわけでありますが、そもそも医療行為というのは前提的に私は正当行為だと思います。そういうときに、手術の前に全く診断が確定できない本件のこの前置胎盤、癒着胎盤というのは極めてレアレアケースというふうに、専門家でなくても、大体普通の方は、ちょっと医療の世界のことを知っている方はおっしゃるようであります。

 これは、事前の予測不可能な事態で予定した治療が続行できなくなった、こういう場合に、手術の方法を変更したり修正したりしなければならない。こういうときに、何を医療的準則にするべきなのかという問いがお医者さんには絶えず突きつけられておるようでありますが、こういう場合には何を医療的準則にすればいいというふうに厚生省の担当者はお考えなんですか。

松谷政府参考人 御指摘のとおり、医療には予測し得なかった事態が生ずる可能性が常に含まれているわけでございます。生命を扱うわけでございますから、生命は予測不可能なところがもともとございますし、それに侵襲を加えるというのが医療でございますから、なかなか予測ができない可能性があるというのは事実でございます。その際には、その時点で考えられる最善の努力をするということが医師の務めである、こういうふうに考えてございます。

 一方、多くの患者さんが最善の結果を得るためには、医療安全を確保する観点から、事前に当然十分な準備やあるいはチーム医療の体制の確立など、多面的な努力が必要であることもまた論をまたないと考えております。

 このように、医療の実施には多様な側面がございまして、不断の努力によって向上するものであるというふうに考えております。

仙谷委員 今厚生労働省がチーム医療、こういうお話をされました。この福島県立大野病院の場合には、どうすればこの産科、婦人科でチーム医療が成立するような前提的条件ができるんですか。そういう前提的な条件がないときには、当該のお医者さんはどうしたらいいというふうにお考えになりますか、厚生省は。

松谷政府参考人 医療は与えられた条件の中で最善の努力をするということでございますので、もちろんチームといっても、看護師さん、助産師さん、いろいろな方がいらっしゃいます。そういう方とできるだけのチームを組んで実施をされているというのが医療の現実ではないかと考えておりますし、所与の与えられた中で最善の努力をするというのが医師の務めであるというふうに考えております。

仙谷委員 何が言いたいかといいますと、お産というか出産というのは待ってくれませんよね。時間指定してくれない。ほかの外科手術は医者の方が何時に始めましょうということを言えるかもわかりませんが、お産の、特にこの種の病気の状態といいましょうか、大変高度なかつ深刻な手術が必要なときには、子供の方は、子供というか胎児は待ちませんわね、別に。こういう場合に、一人医長が僻地で行っている、二十四時間、三百六十五日、へとへとになっても働いているというような体制が全国の病院で今どのぐらいありますか、これは、産科の問題。きょうはもう子育て問題に特化して聞きますけれども、産科で一人医長はどのぐらいの病院でやっていますか、これは、一人医長。

北井政府参考人 平成十七年七月一日に日本産科婦人科学会が調査した結果によりますと、全国の大学病院から産科医の派遣を受けておられる分娩取扱病院九百二十七カ所のうち、産科医一人体制の病院は百三十二カ所、一四%であったと承知をいたしております。

仙谷委員 厚生労働省から見て、この産科の、九百二十七のうちの百三十二とおっしゃいましたか、こういう体制で周産期医療などというものが持続可能なんでしょうか。つまり、小児科もそうなんですが、小児科医療の世界が三交代勤務体制でもとるようなシステムをつくらない限り、ちょっと無理なんじゃないか、小児救急の世界は特に無理なんじゃないかという話が出て久しいですよね。先進的な病院ではそういうことを取り入れている。

 周産期の場合は、こんな僻地で、一人で何とかなる、どういう事態にも備えられる、逮捕されないように、逮捕、勾留されないようなことがちゃんとカバーできる、システムとしてカバーできる、そういうことになるんでしょうか、いかがですか。

松谷政府参考人 安全な医療の確保のためには、お医者さん自身の努力はもちろんですけれども、リスクに応じた医療従事者の確保あるいはその相互協力というような体制の整備も必要だというふうに考えております。

 もちろん、その病院の立地の状況等によってお医者さんの体制というのは、そこに与えられた条件があるというふうに思いますけれども、それに応じて、お産ならお産、もちろんお産の中でも正常産の場合は助産師さんが取り上げることもあるわけでございますし、そのお産のリスクの状況によってそれぞれに対応するということになるのではないかと思っております。

仙谷委員 助産婦さんはこの癒着胎盤とか前置胎盤のときに対処できるかのようなお話になってくるので、おかしいなと思って聞いておったのですが、いずれにしても、残り時間が少ないですから聞きますが、結局、エラー・イズ・ヒューマン、やはりそういう側面があるんだということが一つ。だから、システムの問題として厚生労働省は、あるいは我々は、あるいは病院経営者もドクターの方々も、そういう側面も非常に大きいというふうに考えていかないと、これは警察が捕まえて、起訴して、一罰百戒で、どうなります、どういうふうに世の中は動きますか。多分、そんな危ないことやめておこう。もう既に、この事件で加藤さんというお医者さんが逮捕されてから、産科医が退職したために診療を継続できなくなった病院がネット上だけでも十出てきているというんです。これは調べておりますか、厚生省は。また調べたら後で御連絡いただきたいのでありますが。

 要するに、ただでさえ矛盾が大きい周産期医療でこの種のことが行われると、まじめな人ほど、もう産科は特にやめよう、あるいはもう勤務医やめよう、僻地やめよう、こういうことになることは必定であります。

 厚生労働省が、平成十七年六月二十八日、小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究報告書を公表しております。こういうことがせっかく研究されて報告されているのに、そちらの方向に向かって現在の周産期医療の体制が前進しているというか、豊富化しているというか、現実化しているというか、そのことが感じられないんですね。感じられないところへ今回の逮捕、勾留、起訴という事件が起こって、大変な混乱と動揺が走っているというのが私は今の事態だと思うんですよ。これは党派を問わない、全く党派関係なしに、このたった一週間で六千名ぐらいの医療関係者の署名というかドクターの署名が集まっているというんですよ、これはおかしいという。

 この報告書に書かれたような、過酷な労働条件、労働時間、一人医長の解消、あるいは女性の産科医が多くなってきたので院内保育所をちゃんとつくらなきゃいかぬとか、それから、さっきから児童手当が問題になっておりますけれども、お産手当の問題とか、出産料を保険でカバーするかどうか、もっと真剣に考えていいのではないか。あるいは搬送システムの問題、あるいは医療事故の調査をもうちょっと違った格好でやった方がいいんじゃないか。いろいろな提言が今もなされておるし、厚生労働省も相当深刻に考えていらっしゃるじゃないですか。

 だから、そのことを着実に予算をつけてやっていく、そのことが、子育てであれ、少子化問題に対する、わずかであるのかもわからぬけれども、貢献に私はなるんではないかと思うんです。どうかひとつ、今後本気で、我々もこの問題、党派を問わず、今度の問題をきっかけに、この周産期医療、あるいは小児科の医療、これを本格的に取り上げたいと思っておりますので、今後とも、厚生省もその気になってください。大臣、いかがですか。

川崎国務大臣 一つは、福島県自体も、この事件が起きる前から、やはり産科医療提供体制の集約化、この検討をされていたようでございます。そのスピードを速めていただかなければならないなという感じがしております。また、一方で、今回の事件で、医師法二十一条違反に問われたことが関係者の間で問題にされており、厚生労働省としては、医療関連死にかかわる死因究明のあり方について検討する時期にあると考えております。

 今後、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業、現在実施中でございますけれども、その実施状況を踏まえながら、制度化について検討を進めていきたいと考えております。

仙谷委員 終わります。

岸田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 民主党さんについて、一問だけお伺いをしたいと思います。限られた時間ですので、なるべく簡潔にお答えをお願いいたします。

 民主党の子ども手当法案は、全額国庫負担を財源とし、当分の間の経過した後でありますけれども、扶養控除や配偶者控除等を廃止して財源に充てると。ただ、不足する分について、歳出削減とかさまざまな工夫があるとは思いますけれども、その中で消費税を財源の中に検討されているのかどうか、その点について伺いたいと思います。

郡議員 高橋委員にお答えいたします。

 将来的に、民主党では、子ども手当の支給に要する費用というのは国が全額負担すべきだということを旨としておりますけれども、そのための財源を補うためには、所得税にかかる扶養控除、また配偶者控除などの改廃によっておよそ二兆円を、またそのほかにつきましては、特別会計の見直しでありますとか、それからまた公共事業のあり方などを見直しまして、行財政改革を進めることによる徹底した歳入歳出の見直しによって捻出するというふうにいたしております。

 したがいまして、今お話ございました、消費税の増税というものを子ども手当の財源としては考えてはおりません。

高橋委員 確認させていただきました。

 午前の議論でも、大臣自身が、消費税の議論は今後避けられないだろうということに言及をされていることや、民主党さん自身が、年金の問題で、基礎年金の財源に消費税を充てるべきだと主張しているという、そういうことがあって、やはり影響が及ぶと考えざるを得ないことから確認をさせていただきました。

 消費税は、あまねく国民、赤ちゃんのおむつ代から子供のささやかな小遣いにまで課税をするものであり、本当に、子育て世代の経済的負担を軽減するという趣旨からは逆行するものになることですので、これを消費税の増税には結びつけないようにということを、ぜひ政府にも、民主党さんにも指摘をしておきたいと思います。

 また、あわせてですけれども、一昨日以来ずっと議論がされているとおり、各種控除の廃止では、やはり子ども手当の対象とならない高校生以上の世帯は、どうしても増税となります。我が党も実は試算をしてみましたけれども、あえて紹介はいたしません。増税になるということ、また高校生、大学生、最も子育てにお金がかかる世代が重い負担をする、直撃するということであって、その点については賛成できないなということをお話をしていきたいと思います。

 続けて、政府にお伺いをいたします。

 認定こども園について、実は十五日の委員会で保育問題を質問させていただいたんですけれども、そのとき中身で触れられなかった部分について少し伺いたいと思うんです。

 二〇〇五年から総合施設のモデル事業が全国三十五カ所で実施をされ、ことし十月にも本格実施とされております。余りにも急速な動きではないかと思います。

 この総合施設認定こども園には、四つの類型があるとされています。つまり、幼稚園と保育所が連携し一体的な運営をする連携型が一つ。もともとは幼稚園であるというものを拡充する。もともとは保育所であるというものを拡充する。それと、プラス、地方裁量型、幼稚園、保育所、いずれも認可はないけれども、知事が認定をする地方裁量型というものがあると聞いております。

 最初の三つについては、厚生労働大臣と文部科学大臣が示す指針を知事が参酌して決める基準が適用されること、四つ目の地方裁量型については、その基準には合わないけれども、知事の裁量で認定こども園の看板をつけるものだというふうな説明を受けております。そこで伺いますが、両大臣が示す指針、基準に盛り込まれるものとはどういう内容でしょうか。

北井政府参考人 認定こども園でございますが、現在、就学前の教育、保育を一体的に提供する仕組みをつくるということで、関係法案を今国会に提出をさせていただいております。これから御審議を賜りたいと思いますが、その上で御説明をさせていただきますが、認定こども園、今御指摘のありました四種類の類型を想定はいたしております。

 そのいずれにつきましても、この認定こども園の具体的な認定は都道府県知事が行うことになりまして、そしてその認定基準は、文部科学大臣と厚生労働大臣が協議して定める指針、法案では基準と言っておりますが、その指針を参酌して、都道府県の条例で定めることになります。したがいまして、いわゆる地方裁量型のものも、条例で定められる認定基準に従って具体的な認定が進むということでございます。

 その上で、その条例で定められる基準の、参酌していただくことになる国の基準の内容でございますが、今月中の取りまとめを予定しております全国三十五カ所のモデル事業についての有識者の御評価を踏まえて定めることとなると考えております。

 具体的には、例えば、この認定こども園は、いわゆる保育に欠ける子と欠けない子供が同じ建物の中にいるだけではなくて、共通の理念のもとで一つの施設として活動が行われているといった一体的な運営のあり方であるとか、それから現在の幼稚園、保育所の基準を基本としながら、職員配置や施設設備等のあり方、それから幼稚園教育要領や保育所保育指針を踏まえた上で、子供、保護者双方の生活スタイルの相違といった認定こども園の特性に配慮した教育、保育の内容のあり方、それから、地域子育て支援の具体的な事業内容のあり方などを定めることになるのではないかというふうに考えております。

高橋委員 昨年の四月六日に、総合施設モデル事業の実施要綱が発出をされております。

 つまり、三十五カ所のモデル事業をやるに当たってどのようなものをするかという中身であるかと思うんですけれども、それを見ると、例えば幼稚園の実施型、既存の幼稚園部分は幼稚園設置基準の適用を受けて、定員外保育施設部分については認可外保育施設指導監督基準に準じて取り扱うことを原則とすると書いております。

 これは、職員の配置やあるいは職員の資格要件についても、大体このような中身ではないか、イメージとすれば、幼稚園の部分は三十五人学級という、小学校よりも多いんじゃないかと私たちは思うわけですけれども、時間が、幼稚園の時間が過ぎたら預かり保育ですよ、しかしそれはもう認可外の世界ですよ、そういうイメージになってしまうわけです。そして、給食の部分については、外部搬入を可能にすること、こういうことまでが盛り込まれております。

 この実施要綱が結局両大臣の指針のベースとなるのか、この点いかがでしょうか。

北井政府参考人 いわゆる総合施設モデル事業につきましては、平成十六年三月の閣議決定を踏まえて、十八年度からいわゆる認定こども園を本格実施するということに向けまして、平成十七年度に試行的に実施をしようということで始めているものでございまして、この趣旨は、職員配置であるとか施設設備、教育、保育の内容などの調査、評価を行うために試行的に実施をしているという趣旨でございます。

 したがいまして、試行事業の実施期間中に限りまして、児童福祉施設最低基準や幼稚園設置基準について、若干裁量の余地を認める特例を設けたところでございます。

 今後、本格実施をすることになりますと、文部科学大臣と厚生労働大臣が協議して定める指針につきましては、このモデル事業についての有識者の評価を踏まえて定めることとなるわけでございまして、その際、基本となるのは、従来の児童福祉施設最低基準と幼稚園設置基準でございまして、前提としてモデル事業の基準を土台にするというようなことは考えておりません。

高橋委員 モデル事業の基準を土台にすることは考えていないということをまずお答えいただいたので、そこは確認させていただきたいと思います。

 それで、今私がお話しした外部搬入の問題ですけれども、八カ所の特区でやっている給食の外部搬入をことしの八月には全国展開したいとしているわけですね。それは、本来なら昨年の八月には展開するつもりだったけれども、一年先送りせざるを得なかった、そういう背景がございました。

 それは、評価委員会が評価をするに当たって、アンケートをした。その中で指摘をされているのは、例えば、食物アレルギーに対するきめ細やかな対応、体調不良児等に対するきめ細やかな対応が行われていなかった。搬入元との委託内容にかかわる契約書を締結することや入所児童の栄養基準及び献立の作成基準を事前に明示することなど、遵守がきちんとされていないところが多かった。こうした指摘を受けて、さらなるデータの収集や取り組みの改善を求めたところだと思います。

 私たちが、保育関係者の皆さんも非常に心配されているのは、やはりこのことだと思うんですね。給食を義務づけなければならないその背景には、こうしたアレルギーだとか小さな世代の体調不良などに対してどれだけきめ細やかに対応できるのか、そのことが問われているときに、やはり指摘も、わずか八カ所ではあるけれども、やってみたらこういう指摘がされた、そういうことがあるわけですね。だけれども、八月には全国展開という、もうゴールは決まっているのか、それはいかがなものかと思うんですね。

 大臣にここはちょっと伺いたいと思うんです。

 この給食の問題というのは、外部搬入によって死亡事故なども起こっている。アレルギーというのは本当に、場合によっては命にもかかわる、非常にセンシティブな問題でもあるんです。そういう点で、ゴールを決めてしゃにむに進むということはあってはならないと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

川崎国務大臣 御意見をお伺いしましたけれども、まだモデル事業の結果をしっかり見ながら、最終的に判断いたしてまいります。

高橋委員 ゴールありきではないということでよろしいですね。

川崎国務大臣 まだ最終判断に至っていない、こう申し上げました。

高橋委員 では、私が聞いたことと同じ意味だというふうに伺いたいと思っております。

 次に、なぜ地方裁量型をつくるのかということと、それから認定こども園の入所児童数は待機児童に含まれるのか、伺います。

北井政府参考人 まず、認定こども園法案と言わせていただきますが、その法案において、地方裁量型を位置づける理由でございますが、この認定こども園は、地域によっては従前の、既存の制度の枠組みだけでは多様化する就学前の子供の教育、保育に対するニーズへの対応が困難な状況がある中で、地方分権の流れも踏まえて、こうしたニーズに地域が自主性を持って適切かつ柔軟に対応できるよう、新たな枠組みとして設けることとしたものでございます。

 こうした基本的な考え方に立ちまして、認定基準につきましては、今御説明申し上げましたように、国の指針を参酌して都道府県の条例で定めることになるわけでございますが、現在、地方単独施策として保育ニーズへの対応に一定の役割を果たしておられるような認可外保育施設もございますので、こうした一定の認可外保育施設も含めて認定を行うことができることとして、都道府県の裁量を拡大することとしたものでございます。

 それから、いわゆる地方裁量型の認定こども園に入所をしている子供が待機児童にカウントされるのかという御質問でございますが、厚生労働省の今の待機児童につきましては、付近に保育所がないといったようなことで、やむを得ない事由により、保育所以外の場所で適切な保護を行うために、地方公共団体における単独保育施策を実施している場合には、その単独保育施策で保育されている児童は待機児童に含めないこととしております。

 そして、この地方公共団体の単独保育施策と申しますのは、認可外保育施設であって、都道府県あるいは市区町村が独自の基準を設定し、運営費などを補助されているものとしております。

 したがいまして、この地方裁量型の認定こども園に入所をしている児童が待機児童に該当するかどうかは、この認定こども園がこうした単独保育施策の定義に該当するか否かによることとなるものでございまして、一律に認定こども園の子供を待機児童の定義から除外することにはならないというふうに考えております。

高橋委員 認可外であっても、やむを得ない事由その他、自治体が補助を出しているとか、そういう施設であれば待機児童としないということで、定義を見直ししたのが二〇〇三年だったかと思います。それに準ずるということだったと思います。

 私たちは、やはりいろいろな地方の事情があって、やむを得ずもうほかに、ここしかないんだということが仮にあるかもしれない、問題は、そこをどうだと言っているのではなくて、やはりこの問題が起こってきた背景に何があるだろうかということを見なければならないのかなと思っております。

 この先、待機児童が仮に飛躍的に解消する、あるいは、認定こども園だ、それはもう知事のお墨つきを得たんだ、だったら安心して預けられるだろう、そう父母は思うかもしれません。でも、そこで安上がりの保育だったり企業が参入して期待とは違うものができていたらどうなのか。そうしたことに対して、しっかりと歯どめをかけてほしいと思っているんです。

 平成十六年十二月二十四日の規制改革・民間開放推進会議の第一次答申の中では、幼保一元化の問題について、多様なニーズや待機児童の解消という口実のもとで、適正な価格でのサービス、直接契約、応益負担、そしてどちらか緩い方の水準に合わせるべきだ、そうしたことを指摘しているところであります。

 同時に、先ほどお話をした給食の問題やあるいはスペースがなければ園庭がなくても近くの公園でもいいや、そうしたことまで具体的な提言をされております。私たちは、そういう姿はやはり本来の保育所の姿ではないだろうと思っております。

 これが一律にこうしたことにならないということで、今後も保育のサービスを守っていくんだということで、もう一度御確認をさせていただきたいと思います。

北井政府参考人 いわゆる保育所の規制改革とそれから認定こども園の仕組み、両方のことを御指摘いただいていると思います。いずれにしても、教育、保育の質ということを考えながら、しかし、地域の多様なニーズに即した制度化ということもありますので、その両方のことについて大きな宿題がまだあると思っておりますので、今後、いろいろなことを考えながら方向づけをしていかなければいけないというふうに思っております。

高橋委員 多様なニーズを口実としてないがしろにしないということを強く指摘をしていきたいと思っております。

 次に、きょうは児童扶養手当について伺いたいと思います。

 母子世帯が百二十三万世帯、うち九十一万千四百七十世帯が児童扶養手当を受給しています。平成六年に、十八歳に達する日以後の三月三十一日まで受給できるというように定義を拡大した。その最初の年は六十万三千五百三十四世帯ですから、一・五倍にもふえております。しかしこれは、単純に離婚が多いからとかそういうことだけではなくて、この間、所得制限を二度見直しをしておりますね。そういう中でもふえ続けているということは、やはり本当に深刻な今日の状況を反映しているのではないかと思っています。

 重大だと思うのは、平成十四年、母子寡婦福祉法の一部改正があり、児童扶養手当の考え方が大きく変わりました。離婚直後の一定期間に重点的に給付することにより、離婚直後の生活の激変緩和を図るものとして、一方では自立を促進する、そういう考え方、激変緩和という考え方に変わったのではないかと。そのことによって、二〇〇八年、平成二十年には、手当の受給期間が継続して五年を超える場合、半額まで削減をすること、母子家庭の母の就労の支援に関する特別措置法ができましたけれども、これも同じく平成二十年三月末までの時限立法とすること、こうしたことが決められました。私は、このこと自体重大な改悪であり、絶対にやめるべきだと考えています。

 まず伺いますが、就労支援を三年間実施してきて、実績はどうなのか、これをどう評価しているのか。思うように成果が上がっていないと思いますけれども、その理由について伺いたいと思います。

北井政府参考人 法改正以来数年たつわけでございますが、その間の就業支援策の効果という御質問でございます。

 まず、母子家庭の母に対する就業支援策といたしましては、ハローワークが基本的にその職業紹介、就職相談を行っておる機関でございまして、そのハローワークの現状から申し上げますと、年間約五万件の母子家庭のお母さんの就職がハローワークにおきまして実現をいたしております。そして、とりわけ母子家庭のお母さんなど就職困難者を常用労働者として雇用する事業主に対して支給されます特定求職者雇用開発助成金を約二万件支給しておりまして、こうした助成金の活用によりこうした就職が実現しているのではないかというふうに思っております。

 一方、地方自治体におきます就業支援でございますが、平成十五年度から、母子家庭等就業・自立支援センター事業や教育訓練に対する支援等を行ってまいりました。

 そして、母子家庭等就業・自立支援センター事業におきましては、合計で、例えば平成十七年の四月から十二月の就業実績が六千二百九十三人となっておりまして、これは前年同期と比べますと実績は一・五倍に増加しておりまして、年々伸びてきているということでございます。

 そして、自立支援教育訓練給付金事業におきましては、平成十七年の四月から十二月の支給者数が前年同時期の実績の約一・八倍、就業実績が前年同時期の約二・一倍ということでございまして、このように、出だしがなかなか、悪かったわけでございますが、伸びとしては大きく伸びてきております。

 今後とも、そこの充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

高橋委員 私も数字をもらっていますので、伸びていることは確かにわかっております。しかし、求められる水準からいうとそれでいいのか、あと二年で本当にやめて、これでもう目的を達したと言えるのか、決してそうとは言えないと思います。当事者の皆さんに話を聞きますと、確かに母子家庭等就業・自立支援センターという窓口はできた、でも行っても全然求人はない、登録したからといって一度も連絡はこなかった、あるいは、研修会に行ったけれども満杯で受けられなかった、そういう実態が寄せられております。

 そもそも、母子家庭就業支援事業、関連五事業ありますが、実施率は一〇〇%ではありません。常用雇用転換奨励金事業は、都道府県では十七、指定都市などでは三十二が今後も実施をする予定がないと答えています。母子自立支援プログラム策定事業では、都道府県が二十三、指定都市などでは三十六が予定なしと答えております。つまりは、そもそも都道府県が独自のそういう取り組みをやろうと決めたけれども動かなかった。そういう受け皿がないという状況の中で進めていっているという中で、もうこれで時限を切っていいのかということが問われるのではないかと思うんです。

 ちょっと時間がないので、このことを踏まえていただいて、後で大臣にもう一度伺いたいと思いますので、これとあわせて答弁をいただきたいと思います。

 その上で、私は同時に、特別な財政措置をしなくてもできること、つまり、働きながらも子育てにちゃんと専念できるように、いろいろな面で環境づくりをしてあげることもあわせてやっていかなければならないと思うんです。

 その上で大事なことが住宅の確保です。家賃は、わずかなパート収入の半分が吹き飛ぶ大きな課題です。きょうは、国土交通省に来てもらっております。母子家庭優先入居の取り組みについてまず伺いたいのと、事実上は別居をしているけれども、養育費をもらっていないけれども、しかし離婚の協議が終わっていないために籍がある。そうすると、夫が公務員だからというなどして入居要件から除かれてしまう、所得があると。籍が抜けるまでは、本人の意思にかかわらずさまざまな事情があり、最も精神的にも経済的にも負担が大きい時期であります。実態に照らして取り扱うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

和泉政府参考人 お答えを申し上げます。

 公営住宅法におきましては、公営住宅の入居者としまして、住宅に困窮する低額所得者を対象としております。公営住宅の入居者は、少なくとも入居収入基準、同居親族要件及び住宅困窮要件の三要件を満たすことが必要であるとしております。

 公営住宅を管理する事業者におきましては、母子の入居につきまして、原則として戸籍上離婚していることを必要としつつも、実態的に住宅に困窮する低額所得者の居住の安定確保を図る観点から、御指摘のような事実上母子家庭となっていることが明らかと判断できる場合は母子家庭として扱い、公営住宅への入居を認めているところでございます。

 この判断を事業主体が行うに当たっては、不自然な世帯分離等により本来住宅に困窮していないにもかかわらず公営住宅に入居する不正入居を防止する観点から、事実上婚姻関係が解消され、現に住宅に困窮していることが明らかであることが客観的に認められることについて、事業主体が的確に確認できることが必要とされております。

 国土交通省としましても、真に住宅に困窮する低額所得者に公平に公営住宅を供給していく観点から、こうした的確な入居資格の審査を行った上で入居を認めていくことが適切と考えております。

 なお、御指摘のように、入居資格を満たす母子家庭につきましては、従来より優先入居の取り扱いも行っておりまして、今後ともしっかりと取り組んでまいりたい、こう考えております。

高橋委員 現に住宅に困窮をしていて、また実態上婚姻が解消されているという場合は、母子家庭として扱っていただけるというお話だったと思います。この点をぜひ周知徹底していただいて、やはり、国はそう言っているけれども現場では全然受け入れてもらえないんだということがないように、周知徹底の方をよろしくお願いいたしたいと思います。

 また、あわせて母子家庭優先入居の問題ですが、優先というところにちょっとみそがありまして、実際には抽せんであることに違いがありませんね。抽せんのときに一定確率を高めるために優先という意味であって、必ずしも入れるわけではないし、そのために何年も待たなければならないという現実がございます。その点では、やはり、公営住宅の有効活用と同時に、民間への家賃の補助なども含め、住まいの確保へ支援を強めるということは要望しておきたいと思います。この点で厚生労働省としても同じく対応していただきたいと思いますが、伺いたいと思います。

北井政府参考人 住宅に困窮している母子家庭のお母さん方が困らないように、厚生労働省としても努力していきたいというふうに思っております。

高橋委員 では、大臣に伺いたいと思います。

 母子家庭の所得が一般より極めて低いのは、この間議論されてきて、もう十分承知だと思っております。二〇〇二年の十一月に、児童扶養手当の改正があったときに、参議院の委員会で参考人に立って母子家庭の窮状を訴えた小山田さんという方がいます。

 この方は、履歴書を二百枚書いても正社員として受からず、昼も夜も働きました。三百六十五日眠いということがどんなことか、つまり、昼も夜も働いているからとても眠いんですが、子供が寝る前にうちに帰れるのは週に一回か二回だ、そして、しかし、どんなに眠くても、また疲れていても、病気のときや不安そうな子供に対して、やはり母としてこたえなければならない、そういう実態をお話ししてくださいました。また、この方は、その後百回の面接を経てついに正社員になるわけですけれども、しかし、そのために、結局児童扶養手当が引き下げられる、また、会社の給料も減って、この先本当にどうなるのか、そして、二年後には半額になってしまう、今でも一部支給なんですが、どうなってしまうのかと本当に不安に思っています。

 就労支援が成功すれば、黙っていても受給者は減ります。ですから、このことは引きかえにするべきではないと思うのです。この問題がしっかりと確立していないうちに時限立法とし、また、二年後には半額、こんなひどいことは絶対にやめるべきだと思いますが、大臣の見解を伺います。

川崎国務大臣 母子家庭への支援については、平成十四年の児童扶養手当法等の改正により、児童扶養手当ばかりでなく、就業、自立に向けた総合的な支援を実施するとともに、受給期間が五年を超える場合の児童扶養手当の一部支給停止措置を導入したところでございます。これは、減額は手当額の二分の一を超えることはできない、三歳未満の児童の養育者、障害者など自立困難者への配慮を行う、こうなっております。

 一部支給停止の具体的内容については、平成十四年改正時の附帯決議に、今後、子育て・生活支援策、就労支援策、養育費確保策、経済的支援策等の進展状況及び離婚の状況などを十分踏まえて決めることとされており、この決議を踏まえて、十九年度中に結論を出していくことになると考えております。

 現時点では、母子家庭の就業、自立に向けた支援の充実強化に全力を挙げたいと考えております。日本経済全体が雇用に少し明るさが増してきたところでございます。就業支援に全力を挙げてまいりたいと考えております。

高橋委員 繰り返しますが、就労支援がうまくいけば、当然受給者は減るわけです。ですから、そういう実態がまだ伴わないうちに打ち切るということはないように、そのことを重ねて要望して終わります。

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 当委員会は、子供の出生から保育、教育、そしてやがて成長し、年を重ねて病を得る、あるいは介護の状態になるという人間の本当に長い人生、総体を対象としておりますので、日々、皆さんの熱心な論議、長時間で大変に御苦労さまだと思います。きょう、私がまた最後でございますので、大臣にはよろしくお願い申し上げます。

 私は、冒頭、これまで質問通告して積み残した件から入りたいと思いますが、もう何人かの委員が取り上げてくださいました、いわゆる放課後児童クラブの問題で、一点確認をお願いいたします。

 きょう、大臣のお手元にも資料を配付させていただいておりますが、いわゆる学童保育と呼ばれますこの放課後児童クラブについては、繰り返し御答弁の中で、平成の二十一年度までに一万七千五百カ所にふやしていくということで、現状において非常にお母さんたちの声も高いし、まして、この間の子供の安全ということをめぐって希望者もふえておるということでございました。

 ここにお示しいたしましたように、現在、学校の余裕教室やあるいは学校の敷地内で教室以外のところを使われているところが約四十数%となってございますが、重ねて、やはりさらに、ゆとり教室等々ある場合に、学校内の使用等々がお母さん方からも強い要望で上がっております。

 これは、学校というのが文部科学省の管理になっておりますし、厚生労働省として児童家庭局の方の連携したお取り組みが必要と思いますし、大臣にあっては既にそうした御尽力もいただいていると思いますが、さらに、現状をかんがみて、これから平成二十一年度まで急速にふやしてまいりますとすれば、当然、最も手近にあるインフラであり、きのうもNHKの九時でやってございましたが、学校というのは地域の財産でございますので、そうしたことに積極的に文科省と厚労省と連携の取り組みをしていただける音頭をとっていただけるということの御答弁をひとつお願いいたします。

川崎国務大臣 厚生労働大臣を拝命しまして、それ以来いろいろな仕事に取り組んでおりますが、文科省との関係が多いな、こんな感想を持っております。先ほどの保育と幼稚園の問題、それからニート、フリーターの問題等々、いろいろな問題が文科省と一緒にやっていかなければ解決していかない。特にこの放課後児童クラブの場合は、まさに小学校の子供たちがその対象になってまいりますので、そういった意味では、教育関係としっかり情報交換をしながら、また政策の整合性をとりながらやっていかなければならない、このように思っております。

 そのため、本年二月、放課後児童クラブを実施するに当たっての、余裕教室を初めとする保健室や体育館等学校諸施設の利用、下校時刻の変更が生じた場合の情報交換等、学校との連携協力等について、文部科学省との連名により、都道府県等に依頼したところでございます。そうした一つ一つのものを積み上げながら、文科省と提携しながらしっかりやっていきたい、このように思っております。

阿部(知)委員 現場段階でまだまだなかなか連携がとれていないところも、私の耳にはたくさん聞こえてまいりますので、重ねて大臣の御尽力をお願いいたします。

 もう一点、先ほど仙谷委員がお尋ねの、福島における産婦人科の医師の逮捕の案件でございますが、この案件をめぐっては、先ほど大臣も、医師法二十一条の問題もこれありという御発言でございました。もちろん、医療行為に伴ってそれが事故や過誤を起こした場合でも、即警察に逮捕という形になりますと、医療者としてはいたたまれないということで、今たくさんの方の署名が集まっておりますが、その一方で、この案件につきましては、この加藤さんという医師は、病院にはきちんと事情も話し、届け出がなされていたが、今度、病院から警察の方に、医師法二十一条に基づく届け出がなされていなかった、そして逮捕されたのは御本人である加藤さんであったということで、突然でもあり、いろいろな混乱が起きているという事態なんだと思うんです。

 この案件に関しましては、実は、病院の側もいろいろな調査報告を出しておられて、その中で適切な判断を怠った部分もあるというふうにお認めなのですが、しかし、これが異状死かどうかと問われますと、医療関係者の中では、医療上の判断ミスとかであったとしても、医師法二十一条の言う異状死ではないんだろうと判断をしたわけです。一方の司法関係の方は、いや、これは異状な死なんだと判断されて、ここの大きなそごが不幸の始まりになり、今後医療が萎縮しまいかということで、今本当に全国に動揺が広がっております。

 ここで、ぜひ厚生省に早急に、実は厚生労働省の方でも、前坂口大臣の折からこの医療安全ということには大変力を入れてくださって、いろいろな死亡事例の、解剖も含めた対処はしてくださっているんですが、そもそも何を異状死として届け出るかのガイドラインを早急につくっていただかないとまた不幸が繰り返すと私は思うのです。やはり医療現場は命を扱うところですから、いろいろなところが現実に起こります。

 そこで、大臣には、現場部局は実はよくやってくださっているのですが、このガイドラインづくりというのがちょっとちょっとおくれている間にこの事案が生じた。法医学会の判断、病院協会の判断、いろいろある中で、厚生省がやはりリーダーシップをとって、先見性を持って、せめて医療者が安心して医療できるよう、逆に、もっと言えばそれが患者さんの安全につながるのですから、ここをぜひ厚生省がリーダーシップをとって早い時期にガイドライン策定に実を結んでいただきたいと思いますが、いかがでしょう。

川崎国務大臣 この問題については、昨日も参議院で御答弁申し上げました。

 異状死というものをどう判断していくか。正直言って、一つ一つのケースがございますので、ガイドラインが本当にできるだろうか。私は、実は担当者に、ガイドラインがつくれるならアメリカやフランスやドイツにあるんじゃないか、それを持ってこいと言ったんですけれども、ないと言われるんですね、正直言って。そういう意味では、世界的にも異状死をどういう書き方をするかということについては大変悩んでいる問題だと思っております。

 一方で、医師法二十一条の問題としてストレートに警察へ届けるという形は、諸外国を見たときには余りないようですね。そういう意味では、今モデル事業をしておりますけれども、どこかの中立機関なり行政機関なりというものが入るのも一つの手かな。

 いずれにせよ、こういう事件も通じながら、皆さん方からさまざまな御意見を賜っております。余り時間がかかるとおしかりをいただくことになると思いますので、しっかり議論しながらやってまいりたい、こう思っております。

阿部(知)委員 私が思いますのは、報告と届け出は違うと思うんですね。医師法二十一条で警察に届け出るとなりますと、医療側は、これは、交通事故で運ばれた方の死とか、それから死因が不明な死は届け出なければいけないと思います。

 ところが、報告、医療事故、医療過誤、医療ミス、いろいろなことが生じてしまった、このことの報告はやはり別途違うところにやらせていただきたい。そうでないと、やはり非常に現場は混乱をします。報告をしたことがすぐ処罰とかに結びつくという形ではなく、これは、報告されることによって再発防止策がとられるという前提の報告でございます。

 私は、確かに、大臣がこれは現場に聞くと難しいよとおっしゃった、それも事実だと思います。しかし、ここで政治的リーダーシップをとっていただかないと、この現場の混乱というのは非常に広がって、とどまるところを知らないところまでいくと私は案じております。私の今お願いしました、届け出と報告、違う仕分けにしていただきたい、これはぜひ大臣の御英断で早急に検討をしていただきたいと思います。御答弁は、よく御理解してくださっていると思いますので、よろしくお願い申し上げたいという件でお願いいたします。

 では、引き続いて、きょうは、いわゆる少子化対策という問題について、私はもともと子供の医者ですから、余り少子化が対策されるというのは、ばんそうこうみたいで嫌だなと思うのですけれども、しかし、子供の数が少なくなっていくということは、やはり社会の活力や楽しみや、本当に愛らしいものですから、いてほしいという願いからは遠くなっていくんだと思います。

 一九八九年に一・五七ショック以降、実は政府の方でも、これは何か起きているなということで、政策の中にも幾つか取り組まれていると思います。名づけてエンゼルプラン、新エンゼルプラン、新新エンゼルプランということで、二〇〇四年の十二月が最終的というか、そういうネーミングをした新新エンゼルプランでございました。

 同時に、その年にはいわゆる次世代育成支援のための大綱がつくられたり、いろいろなことがそこの二〇〇五年度までということで続いてきておりますが、果たして、今日見られますように、子供の数はさらに減り続け、それは大臣がおっしゃいますように、昔、私どものような団塊世代の数が多かったから、もうちょっと、もうちょっと減らしてもいいかなと思っているうちに行き過ぎて、あらあらというところに現状なってございます。

 大臣とされては、この二〇〇四年、恐らく新新エンゼルプランのときに三つの確認点があったと思います。時間の関係で恐縮ですが読ませていただきますが、一つが、働き方の見直しをしよう、二つ目が、子育て支援サービスがもっと十分になるようにしよう、三つ目が、若者が社会的に自立することが難しい社会経済状況というのがやはりこれもあるだろう、この三点の指摘がございました。大臣は、この長い経過とそれから最近おまとめのいろいろなお考えの上にのっとって、現状、何を一番総括とし、今後とされるか、お願いいたします。

川崎国務大臣 いつも申し上げておりますけれども、若い二人の夫婦に対してどういう支援をするか。エンゼルプラン等見させていただいて、保育の面というのが一番多かったのかな。しかし一方で、言われておりますとおり、雇用の面と経済的支援、ここについてもう少ししっかりしなければならない。

 そういった面では、今回、小学校六年生まで拡大をした提案をさせていただいているのが児童手当でございます。一方で、雇用の問題も、男女雇用均等法を出させていただく、その中で女性の雇用という問題をしっかり前向きに進めていかなければならない、このように思っております。

 一方で、日本経済自体がこの十年間厳しいときにあった、まさに四十代、五十代の皆さん方までリストラに遭った時代でございます。そういった意味では、新卒である高校を出られた、大学を出られた若者たちにそこで挫折感を与えてしまったこともあったんだろうと思います。

 やっと経済も復調の兆しになってきた。春闘におきましても、今までは、会社の中でよくできるやつに給料を出していた、なるべくそこに手厚く処遇したいと思ってきた。しかし、ことしの新年で経団連の副会長みずから、そういう時代から、黙々と汗を流して働く多くの人たちに報いなければならない時代にやってきた、こういう新年のごあいさつをいただいた。それに合わせたような春闘になり、また、ことしの雇用も、新卒者、高卒、大卒とも数字が三ポイント以上よくなってきた、こんな背景になってまいりました。

 したがって、やはり雇用というものをしっかりしていかなきゃならない。それも、雇用が改善が進めば進むほど、何とか若者に正規雇用という場を与えることによってまず結婚というものをもう少し進めていかなければならないな、こんな思いをいたしております。

 そういう意味では、確かに、近年一・二九まで落ちました、また落ちるかもしれません、そういった中で、さまざまな状況がかみ合いながら、一方で国の施策が十分かみ合わずに今日を迎えていることは事実だろう。何とか皆さん方の御理解を得ながら、もう少し一つ一つの分野において手厚くやらなければならない。委員会でも御指摘いただいています不妊治療の問題も、もう少し踏み込めないものかなということで、今勉強をさせていただいているところでございます。

阿部(知)委員 子育てと少子化対策ということをとりますれば、この委員会でも、民主党の皆さんが出された子ども手当あるいは政府の児童手当の延長のような、子育てに係る直接的な費用の軽減、あるいはもう一方で教育的な支援等々と、もう一歩ぜひ私は、先ほどの大臣のお言葉を受けて、二〇〇六年を元年といたしまして、働き方の非正規化に伴う少子化、非婚、晩婚、晩産と言われていますが、非正規であれば当然、なかなか結婚できない。

 これは町村前外務大臣が予算委員会の中で出されましたが、三十歳から三十四歳の男性の正社員の方と非正規の方と、結婚されている率を上げて、正社員の方は六割、非正規の方が三割だというデータ。あるいは、逆に女性たちは、正社員の方の方が、その後いろいろ出産等々に結びついている数が多い、これは当たり前のことなのですが、このことがこれまでの少子化問題の中で実はさほどの要因と考えられていなかったのではないかと私は思っております。ぜひこれを、大臣の御就任に伴って大きなフォーカスとしていただきたい。

 そして、これを申し上げるのは、大臣は、せんだっての委員会の中で、韓国の政治関連の方とお会いになったときのお話をしておられましたが、実は今、韓国でも、非正規雇用が五五%、日本より多うございますし、出生率の下がり方も日本よりも著しくなり、社会保障を非正規雇用で持っておられる方は三〇%、労働組合の組合組織率は三・一%と、ほとんど日本と同じような、もっと劣悪な条件にあると思うのです。

 こうしたグローバル経済化のもとで、同じような非正規、韓国は一九九七年のIMF体制のもとに入ったということもあって急速に非正規化を進めた、我が国でも九〇年代後半から非正規化を進めた、ぜひここにフォーカスを当てた政策をしていただきたい。もちろん景気が上がれば順次正規はふえますよという受けの対応ではなくて、例えば、同一価値、同一労働、同一賃金、あるいは社会保障政策の実際の待遇の均等待遇ということを鋭意努力していただきたいと思っております。

 この件に関して、せんだっての私の質問の続きで、いわゆる児童扶養手当をお受けになっている母子家庭のお母様方が非正規が多いというお話をさせていただきました。児童家庭局の北井局長にお伺いいたしますが、社会保障の加入状況、例えば、組合健保に入っておられるか、厚生年金に入っておられるか、失業保険をお持ちか、そういう観点から、母子家庭、特に児童扶養手当をお受けになっている方のプロフィールを明らかにされたことはおありでしょうか。

北井政府参考人 母子家庭のお母さんに限定した社会保険の加入状況については、調査したものはございません。今後、本年には全国調査を行いますので、そのときに項目に入れられるかどうか、調査の負担との兼ね合いもございますので、少し検討してみたいと考えております。

 ただ、パートタイム労働者の実態調査において、事業所にパートの社会保険の加入状況を聞いたものがございますが、それによりますと、雇用保険については、すべてのパートを加入させていると答えた事業所が四六%、全く加入させていないと答えたのが四%、残りが、一部あるいは相当数パートが加入しているというものでございます。それから、健康保険と厚生年金については、すべてのパートを加入させていると答えた事業所が一六%、それから全く加入させていないと答えた事業所が二三%、残りが、一部または相当数加入させているという数字がございます。

阿部(知)委員 大臣に、今の数値をお聞きになって、お考えと、それから、ぜひ私のお願いの方向に御尽力いただきたいということで御答弁をお願いいたします。

川崎国務大臣 この間も、こんな話をいたしました。六十五歳までの雇用が四月から義務になってきます。その中で、各会社がいろいろな対応を打ち出してきています。単純に延長が一番喜ばしいんですけれども、なかなかそうはならないで、契約社員としてやっていく、しかしながら五年間ぐらいの雇用はするよ、こういう時代を迎えてきて、これも非正規になるんですね。しかし、それはちょっと見方は違うなと、安定した雇用になっているんじゃないか。

 パートというものを見たときに、一律にパートという考え方は少し変えていかなきゃならぬな、パートがいいという人も当然いますから。その中で、特にスーパー関係を中心にしながら、労働組合をつくり、そして雇用の安定化をしていく、また六十を超えても雇用する、こんな政策を打ち出してきているところもあります。一方で、正社員と同様の仕事をしながら、パートという名前だけで半額の賃金しかもらえない、こういうところもある。そういう意味では、できるだけパートというものに対する企業側の理解というんですか、それをやはり進めていかなければならないだろう。法律でどうこうというよりも、やはり労働行政全体の力の中で説得をしながらやっていかなければならない問題かな、こう考えております。

 いずれにせよ、正規雇用とパート労働者の賃金の格差をできるだけ埋めるべく努力する、それは我々の役所全体の方針としてやっていきたい、このように思っております。

阿部(知)委員 厚生労働行政ですから、そして何度も申しますが、例えば、お母さんたちはあと三年とか、今大臣のおっしゃる有期のようなものですよね、そういう形で未来が見えないということではとても子供を育てていけないと思いますので、そこはやはり逆に厳しく企業主の皆さんにも周知徹底していただくというような御尽力をぜひお願いしたいし、そこは大きく社会が変わるきっかけになると思います。

 引き続いて、今回のいろいろな国庫負担の見直しにおいて、御高齢者の施設整備費の負担割合の見直し、先ほど村井委員も御指摘になりましたが、いわゆる地方のこうした介護老人福祉施設への、大型なものへの補助金はやめ、地域密着型だけ続けるというお話が午前中もございました。それに関連してお伺いをいたします。

 二ページ目をあけていただきますと、ここには「入所申込状況調べ」という一覧が載ってございますが、世の中的にいえば、これは、例えば特別養護老人ホームなどの待機者というふうにお考えいただいていいと思います。重複して幾つかの箇所に申し込みをされている場合は二とカウントされているようなものも、米印がついてございますが、そういうダブリングも排除してあるものも多うございますが、そうした中で三十三万八千二百十一、現状で全国的には待機者がおられるということであります。

 前は老健局長であった中村さんに偶然お伺いすることになりますが、これは、ゴールドプラン、新ゴールドプラン、介護保険、そして去年は交付金、平成十七年度から一年ということで施設整備をやってこられたと思うのですね。到達段階と、現状においてこれは逆に待機者になるわけですから、これだけ多くの待機者がおられる現段階で、その大型施設の交付金が廃止されるということにおいて大きな矛盾はないのか、あるいは埋めていくものは何なのかということをお願いいたします。

磯部政府参考人 特別養護老人ホームの入所申込者が御指摘のような数になっているということは事実でございますが、この中には、今御指摘のありましたように重複の問題、それからそれ以外にも要介護度三よりも軽い方の割合が六割ぐらいとか、あるいは病院や他の施設に入院、入所しておられる方がやはり六割ぐらいおられるなど、直ちに特養入所の必要があるか、なかなか判断の難しい方々も相当数含まれております。

 いずれにせよ、介護が必要になっても安心して地域で暮らし続けられるようにするために、在宅での生活が困難になった場合には施設を利用することができるよう、在宅、施設のバランスのとれた整備を進めていくことが必要であると考えております。

 また、十七年度の交付金、実際に議論されたのは昨年度でございますけれども、この過程におきましては、やはり基盤整備をした後に、その後の運営費の増大があります。それで、それにつきましては、運営費のうち約六割を国費とか第二号の被保険者で負担しているといったことで、介護保険料にも影響を与えるということなどもございまして、国が関与することで全国的にバランスのとれた整備を進めていくという考えで進めてきたわけでございます。

 これに対しまして、十八年度における三位一体改革の議論におきまして、都道府県から、一つはこの交付金を廃止、一般財源化すべきというような御意見があり、また、介護保険法の施行後、五年が経過しまして、特養ホームでいいますと三十八万床、老人保健施設でいきますと二十九万床ということで、御指摘のゴールドプランで考えられていた数を上回る、あるいはほぼ同等になっているといったような状況もございまして、こうしたことを踏まえまして、整備費のみならず運営費における都道府県の責任を強化するということを前提といたしまして、都道府県交付金を廃止し、一般財源化をするということとしたものでございます。

阿部(知)委員 箱物と言われるものへの国からの補助が果たして地方にとってどうかという問題はもちろんあると思うのです。でも、今の御説明にあったように、例えば、他の病院に入っているけれども特養を申し込まれる方は、その次、行く先がそこしかないと思って、あるいはそちらが待機待ちなので病院に入院しておられるというところもあると思うんです。現状、これだけの数あるということを私はもっとシビアに分析してみないとならないと思うんですね。

 特に、このたびはいろいろな療養型病床群というものの見直しの中で、長期に入院で、医療保険ないし介護保険をお使いで、医療施設に入院の方々をどのように医療の必要性において区分けして、その後の方向を模索しようかということが一方で行われております。その行われていることを実際に現実的なものにするためにも、ぜひこの中身分析というものをもう少ししていただきたい。

 私は、とりあえず今回は数をお願いいたしました。今のお答えはいろいろなケースがあるということで、この先を緻密に見ていただくということは、これはなかなか難しいと言われればそうですが、しかし、現実的に、どんどんどんどん高齢化し、やはりどこに行っても特養の問題は待機待ちだという声が強いわけですから、どんな施策があって、どんな安心をメッセージできるのかは重要と思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げたい。

 大臣、最後になりますが、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

川崎国務大臣 三位一体の中での話し合いで、特に知事さんの方から、できるだけ財源と自分たちの裁量権を任せてほしい、こういう議論の中で、介護施設の県への補助金というものを地方にゆだねることにしたということでございます。

 もちろん、すべてを地方に任しっ放しというわけではありませんけれども、やはり県というものが中心になりながらこの仕事をやっていこうと強い意欲を示された、それに対して私どもこたえたということですので、県がしっかりやってくれるものと強く期待をいたしております。

阿部(知)委員 また、医療制度改革の中で引き続いた論議をさせていただきます。

 ありがとうございました。

岸田委員長 次回は、来る二十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.