衆議院

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第17号 平成18年4月25日(火曜日)

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平成十八年四月二十五日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 岸田 文雄君

   理事 大村 秀章君 理事 鴨下 一郎君

   理事 北川 知克君 理事 谷畑  孝君

   理事 寺田  稔君 理事 園田 康博君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    上野賢一郎君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    薗浦健太郎君

      高鳥 修一君   戸井田とおる君

      冨岡  勉君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      平口  洋君    福岡 資麿君

      松浪 健太君    松本  純君

      御法川信英君    岡本 充功君

      菊田真紀子君    北神 圭朗君

      郡  和子君    仙谷 由人君

      田名部匡代君    三井 辨雄君

      村井 宗明君    柚木 道義君

      上田  勇君    高木美智代君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   参考人

   (全国市長会国民健康保険対策特別委員会委員長)  河内山哲朗君

   参考人

   (社会福祉法人賛育会賛育会病院院長)       鴨下 重彦君

   参考人

   (鳥羽市立神島診療所所長)            奥野 正孝君

   参考人

   (NPO法人日本がん患者団体協議会理事長)    山崎 文昭君

   参考人

   (横浜市立大学附属市民総合医療センター母子医療センター医師)       奥田 美加君

   参考人

   (日本福祉大学社会福祉学部教授)         近藤 克則君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     薗浦健太郎君

  古川 元久君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     井上 信治君

  北神 圭朗君     古川 元久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

 小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出、衆法第一七号)

 医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出、衆法第一八号)


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     ――――◇―――――

岸田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案、小宮山洋子君外四名提出、小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案及び園田康博君外三名提出、医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、全国市長会国民健康保険対策特別委員会委員長河内山哲朗君、社会福祉法人賛育会賛育会病院院長鴨下重彦君、鳥羽市立神島診療所所長奥野正孝君、NPO法人日本がん患者団体協議会理事長山崎文昭君、横浜市立大学附属市民総合医療センター母子医療センター医師奥田美加君、日本福祉大学社会福祉学部教授近藤克則君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず河内山参考人にお願いいたします。

河内山参考人 全国市長会の国民健康保険対策特別委員会委員長を仰せつかっております柳井市長の河内山でございます。

 本日は、このような意見陳述の機会をいただきまして、まことにありがたく、御礼を申し上げたいと思います。

 地方自治体の立場から、また、国民健康保険ほか、保険を運営する者の立場から、今般の医療制度改革、とりわけ医療保険制度の改革につきまして意見を申し述べたいというふうに思います。

 まず第一でございますが、言うまでもないことでございますが、お手元にも資料を、新聞の記事をお配りいたしておりますが、国民皆保険というものを守りながらもどうやってそれを維持していくかということは、これは国民共通の財産でございますし、極めて地方自治体あるいは地域の住民の方々の利害にも関係をすることでございまして、このたびの改革は国民皆保険というものを維持するものでなければならない、これは当然のことでございます。

 我々日本人は、保険証を持っていけば、どこでも、だれでも、いつでも医療の提供を受けることができる、空気のようにとらまえておりますけれども、これは本当に長年にわたりまして、国、地方あるいは多くの医療関係者、力を合わせてつくってきました日本の文化と言っても言い過ぎではないというふうに私は思っております。

 昨年秋に、中日友好協会の招きで、全国市長会の何人かの市長と一緒に中国の大きな都市を訪問いたしました。北京市、あるいは四川省の成都市、あるいは広東省の広州市、いずれも大きな都市でございますが、その市長あるいは副市長が口々に言われましたのが、安定した社会をこれから建設していかなきゃならない、とりわけ、これから特に農村部における医療制度、保険制度も含めてですけれども、これをつくっていかなきゃならないというのが非常に大きな課題である、また、このことはそう簡単にできないという話を、期せずして何人かの、自治体といいますか、向こうの市の政府の幹部がお話しになりました。

 我々としましては、先ほども言いましたように、国民皆保険というものがあってそれが当然と思っておりますので、さほどありがたさを感じずにいるということは少し反省をするというか、大いに今後とも国民皆保険の維持というものに努力していかなきゃならないなというふうに思いながら、そのお話を聞いたところでございます。

 さて、具体的に申し上げますと、国民皆保険を維持しなきゃなりませんけれども、一方で医療費をどうやって適正化するかというのは、今次の本当に重要な課題だと思っております。

 高齢化が進みまして、我々国民健康保険を預かる自治体といたしましても、毎年毎年医療費の増嵩というのは手の打ちどころがないといいますか、対処のしようがないような状況にあるというのが現実でございます。

 長寿化が進むことはもちろん国民にとって幸せなことでございますけれども、一方で、医療保険制度というものを維持していく上で、何とかこの医療費の増嵩というものに結果として歯どめがかかるような生活習慣病対策、あるいは諸外国に比べまして我が国は入院日数が長いというふうに指摘をされておりますので、国民の生活の質の向上、あるいは医療の質を落とさないことを前提条件としながらも、医療費の適正化を何としても進めなきゃならないと思っております。

 特に、我々市町村としましても、生活習慣病の対策については、これは保険者の立場から、そして市民の健康、長寿というものを実現する立場から、何としましても、健診あるいはこれまで続けてきております保健、こういう各種の事業を通じまして、保険者としてこの生活習慣病対策を熱心に行っていきたいと思っております。

 ただ、このことにつきましては、実は非常に専門的な見地からの支援というものも必要でございますし、取りかかりのヘルスの事業というものの基盤をつくっていく上では、やはりそれぞれの国民健康保険の保険者として財政的には脆弱でありますので、財政的な応援、こういったものもあわせて行うことが肝要でございます。

 いずれにしましても、最も身近な政府として、地方自治体が今後とも生活習慣病対策に取り組んでいかなければならないと考えております。

 また、今回の改正の中で、療養病床の廃止がうたわれております。やむを得ないというふうに考えますが、廃止後の受け皿の整備はぜひとも必要だと考えております。

 このほかにも、予防、入院あるいは在宅の医療、こういう切れ目のない医療の機能、こういうものが地域のあらゆるところで提供されるということが必要でございますので、これについては国として大きな責任を果たしていただきたいと考えております。

 それから、二点目としましては、医療保険制度全体の一本化への方向性でございます。

 かねてより、全国市長会を初めとする地方団体は、医療保険制度というものが幾つも分かれているこの状態というのはよろしくない、一本化をすべきだということを主張してまいりました。保険運営を広域化しまして、また、保険というのはある程度リスクを分散して機能を強化しなければやっていけないものでございますので、そういう意味での保険基盤の強化が必要であります。

 今回の医療制度改革大綱において、医療保険制度の一元化を目指すことが明記をされ、基本方針に示された方向が再確認をされたこと、このことについて一つの前進だというふうに受けとめておりますけれども、今後とも、先生方におかれましては、医療保険制度というものが持つ今の分化している、分かれている状況がよいのかどうか、このことについては改めて再考をいただきたいと考えております。

 それから、今回の医療制度改革の焦点となっております高齢者医療制度でございますが、この運営主体について、広域連合、都道府県内のすべての市町村が参加をする広域連合がこの保険の主体となりましたことについては、我々としては大きく評価をいたしております。

 当初、厚生労働省の試案では、市町村がこの保険者といいますか運営主体を担うこととなっておりましたが、市長会としましても、これについては到底容認できない、受けることができないという姿勢をずっと貫いてまいりました。これは、そういう大事な問題から市町村が逃げているというものではなくて、この後期高齢者の医療制度というような非常にリスクの大きいものにつきましては、可能な限り大きな単位で保険の運営主体となることが望ましい、こういう保険としての筋道の話でございます。

 政府・与党合意におきまして、広域連合という形で決着をしたわけでございますが、これについては、今後とも課題はたくさんあると思いますけれども、我々市町村も、保険料の徴収であるとか、あるいは先ほど申し上げましたような生活習慣病をどうやって身近なところで対策を行うか、こういったことについて、大きな責任から逃れるわけではございません。円滑なスタートが切れるように、これは今後とも国、都道府県においても御支援いただきたいと思いますし、市町村としましても精いっぱいの努力をしてまいりたいと考えております。

 また、これは全市町村が参加をする広域連合とされているところでございますが、やはり県の果たすべき役割は非常に大きいものがございます。都道府県の医療提供体制をちゃんと知事さんが確立をされているわけですけれども、保険の方においても責任ある立場をとっていただくように、都道府県の方々にもちゃんと意見も聴取をされて、先生方の方からも、ぜひ働きかけもお願いできたらと思っております。

 最後に、国民健康保険の問題につきまして一点だけ申し上げます。

 このたびの財政安定化の施策でございますが、私どもは大きな評価をいたしております。

 全国、合併をいたしましてもなお小さな保険者もある国民健康保険の主体であります市町村、これは運営主体としては本当に力不足のところがございます。小さな自治体では、糖尿病の深刻化によって透析を行うというようなことがありますと、一遍に保険の歳出が大きくなりまして運営が非常に困難になる、そういうような状況もございますし、国民健康保険の被保険者の方々は半分以上が無職者というような状況になってまいりまして、高齢者であり無職者の保険を担っている国民健康保険というのは、なかなか保険としては成り立ちにくい、そういう構造的な問題を抱えております。

 今回の財政の安定化に対する施策につきましては、一定額以上の医療費が出た場合に、従来はそれを超えた部分を再保険いたしておりましたけれども、根っこの部分から都道府県単位で財政安定化のために財政調整をするということになりました。この金額を徐々に下げていけば、都道府県内一つの財政運営に近づいていくわけでございまして、今回そういう財政安定化の拡充が行われたことにつきましては、私としては、大変大きな進歩だ、前進だというふうに考えております。

 引き続き、平成十五年に示されました医療制度改革の基本方針にもありますように、保険というのは可能な限り都道府県単位を軸とした再編統合が行われる、その前段階として評価をしておりますので、その方向でさらに検討が加えられ国民健康保険事業の安定に資する施策が打ち立てられますように、お願いを申し上げたいと思います。

 以上、三点にわたりまして申し上げましたけれども、国民健康保険を初めとしまして医療制度を担う立場であります市町村も、介護もあり、それから最近では、さまざまな障害者福祉を初めとする人的なサービスについて大きな役割を担うことになりました。保険というのは、繰り返しになりますようですが、もう少し大規模な単位で、繰り返し申し上げておりますとおり、都道府県単位ぐらいで行われる方がより望ましいのではないかということを重ねて申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、鴨下参考人にお願いいたします。

鴨下参考人 御紹介いただきました社会福祉法人賛育会病院の鴨下でございます。

 平素は、委員の先生方には、我が国の医療の発展につきまして格別の御理解、御支援を賜っておりますことに対しまして御礼申し上げます。

 また、このたびは、このような機会をちょうだいしましたことを大変ありがたく思っております。

 私は、小児科の専門医でございますが、小児医療、産科医療に対する国民の不満あるいは不安、これが拡大することを憂慮されました坂口元厚生労働大臣の命により、その背景にあります医師不足の現状や原因を調査研究し、対策を考えるべく発足いたしました調査研究班、小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究班の主任研究者としまして、平成十四年から十六年まで三年間、厚生労働科学研究費を受けて調査研究を行い、昨年その報告を取りまとめたところでありますが、お手元に配付させていただいた一枚紙の上半分は、大変分厚い報告書なんですが、その要旨のさらにエッセンスを圧縮したものをまとめて記載してございます。

 また、私は、今回の政府の医療提供体制の改革案取りまとめに向けた検討の場でございます社会保障審議会の医療部会の部会長を務めさせていただいておりました。

 したがいまして、本日は、本委員会におきまして活発な御議論をいただいております小児医療、周産期医療の確保と、在宅医療の推進という二つのテーマに絞って、医療従事者の立場から意見を述べさせていただきます。

 まず、小児医療、周産期医療について申し上げますが、急速な少子高齢化が進行しております現在の我が国において、子供を安心して生み育てる環境を整備することが国として取り組むべき最重要課題の一つであると認識いたしております。そこで、医療政策の面からは、特に、二十四時間対応のできる小児救急医療の確保と、安全かつ適切な周産期医療の整備が喫緊の課題でございます。

 小児科や産科は、他の診療科に比べましてそれ自体が救急医療の色彩が強い、私はよく、警察や消防と同じだと申しておりますけれども、二十四時間体制の質の高い医療の提供が求められております。医療現場では、そのニーズにこたえるべく、特に二十四時間医療を提供する病院に勤務する医師は、他の診療科に比べて回数の多い当直あるいは夜勤の業務、夜勤明けの通常勤務、少ない休日、そういった厳しい労働環境のもとで、辛うじて使命感に支えられて医療を提供しているという現状がございます。

 若手小児科医師に行ったアンケート調査で、おおむね半分が小児科をやめたい、あるいはやめたいと思ったことがあるという結果が出ております。その結果、勤務医が疲労して病院から去り、残された勤務医の労働環境がさらに悪くなるという悪循環が見られております。

 小児医療、産科医療あるいは母子医療を特別に位置づけるということが必要ではないかと思います。これからは、地域におけるこれら分野の医療資源のトータルな把握も含め、グランドデザインを描き、医療提供体制を計画的に構築する仕組みにしていただきたいと思っております。小児医療、周産期医療をこのように医療計画に明示することは、医療関係者にとってだけでなく、子供を大切にすることが重要だということを国民の意識に働きかける上で大変大きな力になるというふうに考えます。

 安心できる医療の提供のために、また、特に医師の勤務条件の改善のために、産科、小児科にかかわる医療機能の集約化は避けられないことのように思われます。集約化によりまして、二十四時間三百六十五日の医療提供が可能となり、シフト制、交代制の勤務形態が導入され、医師側の負担の軽減が図られます。その際には、身近な医療機関の協力も得まして、地域住民の不安に対応することも重要であります。

 女性医師が仕事と育児を両立できる就労条件の整備、徹底した女性医師支援策が必要であります。

 それから、これらの医療分野における財政的基盤整備のため、診療報酬上での特に手厚い評価も重要であります。今回の医療制度改革案ではこうした意見が取り入れられていると評価できますけれども、今後さらに一層の重点的な取り組みをお願いしたいと思います。

 小児科につきましては、診療ニーズと休日夜間診療体制のミスマッチがございます。よく言われますけれども、夜間救急の六、七割あるいは八割は小児であり、そのまた九割は軽症患者でございます。このため、これは私どもの研究班でやったことでありますが、電話相談事業、これは〇・五次救急と申しておりますけれども、全国展開をしていただきまして、親の不安を解消する上で大変効果を上げております。また、他科の医師が小児を診る、救急を診るということも必要でありまして、これも小児科医の負担を軽くする上での取り組みでございます。

 産科については、安全かつ適切な周産期医療を二十四時間確保する必要がありますので、総合周産期センターを各都道府県に整備する、それからハイリスクな分娩に対応できる医療施設を整備すると同時に、これら高度専門的な医療機関と地域の主治医との連携を特に密に構築する、周産期ネットワークを構築していく必要がございます。

 また、産科は他の診療科に比べまして訴訟になるケースが非常に多く、そのために産科が、若い医師、医学生から敬遠されている現実がございますので、ここにも書いてございますが、無過失補償、これは欧米あるいはアメリカでも一部制度化されておりますけれども、そういった訴訟の減少を図るための方策が必要と思われます。

 次に、第二のテーマである在宅医療について申し上げますが、今回の医療制度改革では、医療機能の分化、連携を推進し、急性期から回復期を経て、できるだけ早く在宅での日常生活に復帰することを目指しております。住みなれた家庭や地域で療養しながら生活を送る、また、身近な人に囲まれて日常生活を送る、今後の超高齢社会における医療を考えていく上で、こうしたことは基本的視点として欠かせないように思います。

 在宅医療の充実は、このような患者の生活の質の向上という観点から、乳幼児から高齢者まで全世代を対象として、その推進がなされなければならないと考えております。もちろん、入院医療が望ましい場合、また患者や家族が在宅での療養を望まない場合にまで強要されるものではございませんけれども、介護保険などのさまざまな施策との適切な役割分担、連携も図りつつ、患者、家族が在宅医療を希望する場合の選択肢となり得る体制を地域において整備することが重要と思われます。

 そのために、まず第一に、在宅医療というのは、チーム医療が最も求められる領域である。病院内のチーム医療の考え方はもう最近かなり広まっておりますけれども、在宅医療では、医療機関同士、それから介護サービス事業者との間での連携が欠かせません。今後、がんを初めとする疾病あるいは小児医療等での事業ごとに医療連携体制を構築していく上で、主治医だけではなくて、地域の訪問看護ステーションの看護師あるいは薬剤師、ケアマネジャー、そういった多職種が共同して患者を支える体制を地域ごとに構築していくという努力が必要と思われます。

 それから二つ目、これは症状の急変時の対応が重要でありまして、在宅医療を希望しながらそれができないという最も大きな理由になっております。症状が急変しましたときにいつでも往診が可能である体制を確保する。それから、これは一人の医師では負担が大き過ぎますので、複数の医師による連携が必要でありますし、また、症状が急変した場合にすぐ入院できるような病床体制を地域で確保しておくことが必要であります。

 それから三つ目は、何といっても医療従事者の意識改革と申しますか、知識、技術の向上を図っていく必要がございます。病院の医師は、在宅医療の選択肢を患者、家族に積極的に提示できるようになる必要がある。そういう意味で、学生時代からの臨床実習を初め、その重要性を認識すると同時に、卒後、在宅医療の専門家を後期研修等の期間を通して培っていく必要があるというふうに思います。

 在宅医療の中で特に重要に考えなければならないのは、がんを初めとする緩和ケアの充実でございますが、これにつきましても、病院、診療所、訪問看護ステーション、薬局等の関係機関の連携を図ることで充実させていく必要があると思います。

 また、患者、家族が在宅医療を受けようとするときに必要となる情報提供ですね。患者が退院した際に自宅で療養を受ける場合のほか、特にケアハウスと言われる、狭い意味での自宅だけではなくてさまざまな居住の場で、やはり在宅医療が考えられなければならない。

 現在、日本では、亡くなる方の八割が病院で、一割強が自宅で死亡するという現状でございますけれども、今後、例えば平成五十年には百七十万人の人が一年に亡くなる。その八割が病院で亡くなりますと、病院はそれだけでもうパンクしてしまいます。ですから、そうではなくて、むしろ病院で生まれて家で死ぬ、そういうような大きな社会的な流れをつくっていくことが必要ではないか、そんなことを考えております。

 今回の医療制度改革では、医療法等の法制度面からも診療報酬における評価の面からも、在宅医療に力を入れた改革が行われておりますが、こうした流れが一層大きな流れになり、希望するだれもが在宅医療を安心して受けられるという社会を実現していきたい、そのように考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 以上二点について意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、奥野参考人にお願いいたします。

奥野参考人 昭和二十九年に第一回の新潮社文学賞の受賞作品というのが三島由紀夫の「潮騒」という小説であったんですけれども、その「潮騒」という小説の舞台になりました三重県鳥羽にあります神島という診療所からやってまいりました奥野と申します。

 神島という島は、人口五百人、歩いて回っても一時間で回ってこられるという非常に小さな島であります。私は、一九七八年に自治医科大学の一期生として卒業いたしまして、現在までこの島に三回赴任して、通算で十四年目の勤務になります。そういった勤務あるいは母校での教員生活、僻地医療等を伝えるというふうな中身を通じて、僻地医療ということを皆さんに知っていただきたく、きょうのお話を進めてまいりたいと思います。

 僻地医療、離島医療というのはとても大変ですねと一般的によく言われるんですけれども、僻地医療といいましても千差万別でありまして、離島医療といっても、大きいのは七万人の佐渡島から小さいのは一人の島まであるのでありますけれども、少しきょうは、僻地の大変度といいますか、大変な度合いを知っていただくために、三つの要素でもってちょっとお話をしてみたいと思います。

 その三つの要素といいますのは、僻地医療で一人の医師が対象とする人口、どれぐらいの人を診ているか、それからもう一つは、僻地の診療所、医療機関を支えてくれる病院がどうであるかということ、それから僻地の診療所、医療機関から病院までどれぐらいの時間で到達できるかというふうなこの三つの要素で、僻地の大変さといいますか、大変度をはかってみようというふうな話をしてみたいと思います。

 まず、私の神島で例えますと、人口が五百人であります。それから、私どもを支えていただける病院が比較的しっかり存在しております。それから、診療所から支えてくれる病院まで、一番速い漁船で走りまして二十分、港で救急車で待っていただいてから病院まで二十分、その他もろもろ入れますと約一時間以内で病院に着くことができます。そういうことで、私のところは人口が五百人で、支えてくれる病院があって、そこまで一時間かかる。

 それはどういう内訳かというお話をしますと、五百人といいまして、ともすれば僻地というところは病気が多いとか特殊な病気があるんじゃないかというふうなことが言われることもありますけれども、それはほとんどそうではなくて、五百人なら五百人というふうなところから発生する健康問題あるいは病気というものは、ほぼ町とも変わりありません。ただ、中身の人口構成によって発生する病気が異なるということはあるんですけれども、余り変わりはございません。

 五百人ですと、私の診療所ですと、一日の外来数が約十五人、それから一カ月に一遍ぐらい、支えてくれる病院まで運ばないといけないような重症の患者さんが一人ぐらい出る、それから三カ月に一遍ぐらい、在宅で亡くなられる方が出るというふうな状況であります。そういいますと、大変度といいますと、私の診療所では、私は楽だというふうな範疇に入ります。

 ならば、どれぐらいなら大変かといいますと、すごく大まかではありますけれども、一人の医師が支えられる人口というのは大体二千人ぐらいまでだろうというふうに言われておりますし、考えております。ですから、二千人を一人で支えていく、それ以上であればそこの僻地は大変だというふうになります。

 それから、支えてくれる病院の存在が非常に僻地にとっては大切であります。といいますのは、旧来ですと、診療所では何でもできて何でもやってしまうというのが僻地の医療であろうというふうに思われがちですけれども、現在ではそうではなくて、私たち医師にとってもそれから住民にとっても、そこを支えてくれる病院があるということが非常に大きな、大切なことであります。私にかかるにしても、私がいつでも大きな病院を紹介できるというふうなことで、住民の方が非常に安心感を持っていただけるということであります。

 ところが、昨今、医師不足ということで、支えてくれる病院ががたがたになっていくといいますか、そういうことは我々僻地の診療所の立場にとっても非常に大きな影響を受けるということであります。ただ、私のところですと、現状で支えてくれる病院が近くの町に三つほどありまして、一つは、内部事情でその病院がそういう形態でなくなったということ、そして残りの二つが、今の小児科医不足ということで、二カ所あった小児科の病院が一カ所に集約されていったというふうな事情があります。

 ところが、我々のところから見ますと、かえって大変かというとそうでもなくて、一つの病院に集約されまして、仕組みとしても単純化されまして、二つでどうしようと選ぶよりも一つのところにすぐにやってもらえる、それから比較的その地域でのいい医療が受けられるというふうなことも考えられますので、一カ所に集約されたということは、図らずもではありますが、決して我々にとってはマイナスということではないということであります。

 ただ、集約されてしまうことによってちょっと危惧されることは、一カ所に力が集中いたしますと、ともすれば独占的になったりとかあるいは支配的になったりする傾向があるわけですけれども、幸い今のところそういうことが見られないので、私のところでは、そういう意味での支えてくれる病院に対する大変度は楽ということになります。

 それからもう一つは、時間であります。

 救急の問題というのは、僻地医療にとって一番大きな問題であります。現場でどうするかということも一つでありますけれども、しかるべき病院までいかに短時間で運べるかということが、診療所あるいは僻地の医療機関の命運を左右すると言っても過言ではありません。

 私のところでは、先ほど言いました一時間というのが、大変度からいいますと少し大変というふうになります。一一九番をコールいたしまして、救急車が来て病院まで到達するのが大体全国平均ですと三十分以内、四分の三が三十分以内に到達できるというのが一般的でありますけれども、我々のところでは、特に離島医療、僻地医療ではこれが非常に長いということが問題になります。

 それから、この三つのポイントについては、僻地、山間でありましても離島でありましても問題は変わらないんですが、ただ一つ、この時間について、離島が僻地の中でも大変だと言われるのは、ふだん天気のいい日はよろしいんですけれども、荒天時、天候が荒れた場合にどうしても運ぶことができないというふうな状況が発生するということ、これが離島医療にとっては、人口が少なくてもあるいは支える病院がしっかりしていたとしても一番の大きなポイントでありまして、そこをいかにうまくクリアするかといいますか、いろいろな方策をとってやっていくかということが大きなポイントになると思います。

 ということで、僻地の医療をお考えいただく中には、医師一人当たりがどれぐらいの人口を支えているか、それからしかるべき支えてくれる病院がしっかりあるかどうか、それからそこへ到達する時間をいかに短くできるかというふうなところが大きなポイントになるかと思います。

 さて、僻地に行く医者が少ないというふうなところでお話をさらにさせていただきたいと思います。なぜ医師が行かないかということを考えるのも一つなんですけれども、ちょっとそれと反対に、なぜ例えば私が僻地にいるかというふうなことをお話しさせていただきたいと思います。

 実は、私だけではなくて自治医科大学の卒業生は、義務が終わりましても僻地へ勤務している者が結構多いわけですが、いろいろな要素が考えられるんですけれども、一番、多分自分で感じて、それからその人たちから話を聞いて思うことは、自分がだれのために役に立っているかということが非常にすぐ目の前で自然にわかるということなんです。

 朝起きまして、診療所に行く途中に子供たちに会います。それから、老人に会います。ああ、そうかそうか、僕がいることによってこの人たちのために役に立っているんだということが日々わかる、自然にわかってしまうということが、今長くいるということの非常に大きなポイントになっているんではないか。

 逆を考えれば、地域の病院の先生方がなかなか定着しないという中には、そういった、日々の中で自分たちがだれのために役に立っているんだということが、自分で知ろうともしないかもしれませんけれども、なかなか知るチャンスがない。知るチャンスというのは、例えば市町村等が、自分たちの町ではこういうことをしたいんですとか、あるいはこういうことを一緒にやりましょうとか、日々わかるようなアプローチがない、あるいはそういった機会がないというふうなことも大きなことではないかと思います。

 それからもう一つ、今長くおれる一つの大きなポイントは、少し単純な話なんですけれども、休暇がとれるということです。以前は、僻地の診療所におりますと、休暇をとることもままなりませんでした。ただ、今は仕組みというのができまして、へき地支援医療機構というのができまして、気軽に代診、かわりに来て診察をしていただけるという仕組みができました。

 休暇というのは小さなことと思われるかもしれませんけれども、島のことは忘れてといいますか、きょうもそうなんですけれども、頭から離して一時間でも一日でも時間を過ごせるということが、その次にまたやってみようという活力につながるというふうなことであります。

 それから、そういった中で、診療所医療というのが楽しいというお話を少しさせていただいたんですけれども、実際、実は、僻地の診療所を希望する医師は、徐々にではありますがふえてきております。私が卒業したころには全くいなくて、とても大変であったんですけれども、最近は、若い人たちがそういったふうにして僻地医療というものに少し目を向けてくれるようになりまして、希望者がふえてきている。それから、我々の卒業生も定着しつつある。それから、私ぐらいの五十歳ぐらいの、病院で勤務しておられた先生方がどうも病院での勤務に疲弊されて、疲れ果てておられるようなんで、こういった診療所を希望されているということがかいま見えてまいります。

 そういうことで、僻地の診療所ということに関しては、徐々にではありますが、少し明るい兆しが見えてまいりました。

 ならば、どこに問題があるのかといいますと、実は地域あるいは僻地にある小さな病院であります、特に医師不足という問題におきまして。

 その背景には、小さな病院ですけれども、我々のような診療所としての機能を期待されているということが一つ、それから、病院であるという名のもとに、逆に今度は大きな病院での専門性も期待されているということ、しかも少ない人数でですね。さらに、病院というところは、基本的には地元の大学なんかの医局の支配といいますか、医局からの医師の供給を受けておったところが多いわけです。それで昨今の医師不足で大きな影響を受けている。

 どうも僻地の医療を論ずるときに、診療所で足らないんじゃないかというお話がよくされるわけですけれども、実は、今一番大きく問題を抱えておるのはむしろ小さな病院であるというふうに考えていただければと思います。

 ならば、その解決方法はあるのかというと、なかなか難しいのでありますけれども、一つの例を挙げさせていただきたいと思います。

 私どもの三重県の南の方にある二百床ぐらいの病院だったんですけれども、そこに内科医が八人勤務しておりまして、ある日突然、地元の大学が引き揚げるというふうなことで、そのうちの四名が引き揚げることになりました。残ったのは、僻地勤務を義務づけられております自治医大の卒業生が残ったわけなんですけれども、そこのところで、苦肉の策といいますか、窮余の策でその病院がとったのは、外来を全部やめて地元の先生方、医師会の先生方に皆お願いしたということです。

 とても暴挙というふうに思えることで、なかなかうまくいかないんじゃないかということであったんですけれども、その地元の先生方も、実は病院があることによって自分たちの医療も支えられているんだという理解のもとに大変な協力をいただきまして、それをなし得たわけです。

 そういたしますと、実は病院の医療が、八人でやっていた医療が、四人でもある一定期間継続することができたというふうなことがあります。これは図らずも、本来的には病院が入院、それから外来機能は地元のかかりつけの先生ということが苦肉の策で出たわけですけれども、意外といい結果を生んだんじゃないかというふうな感じがいたします。

 ただ、後日談といたしましては、募集いたしましたところ内科医が少しふえて、それから病院の収入が外来がなくなりましたことによって非常にがた落ちしまして、徐々にまた外来を少し始めてきているということで、できれば、そういうことをうまく支える仕組みであるとか、市町村あるいは県がそういった試みをしっかり支えてくれるというふうな方策があったら、よりうまく方向づけられたんじゃないかというふうに思います。

 ここは、そういった中小病院の問題の解決の一つの方法として、もう一度医療機関が担う仕事の中身を考え直して、機能分化をさせて、もう一回再編成すれば、小さな少ない人数でもある程度解決の糸口が見つかるんじゃないかなというふうなことを感じた次第であります。

 最後に、僻地の診療所では楽だというお話をいたしましたけれども、ただ、最低限整えておいてほしい部分があります。それは、当然のことでありますけれども、町で働くお医者さんと同じようなレベルで僻地の医療の環境を整えておいていただきたいということです。

 例えば、単純な話ですけれども、医師の報酬でありますとか住居環境でありますとか、それを普通の町並みにしていただきたいとか、あるいは医療機器等、最新のとまでは言いませんけれども、きっちり更新をしていただくとか、それから住民にとっても大事なことですけれども、少しは小ぎれいな診療所にしていただくとか、それから休暇をちゃんととれるとか、それから情報収集の方法がしっかりあること。

 それから、市町村の方々に持続的に仕事を理解していただいて、ともに一緒に地域のものを考えていこうという姿勢というふうな、ごくごく当たり前であるようで、実行されているところもありますけれども、実はなかなかそうでないところもたくさんありますので、そういうふうなところを基本的に整えておいていただくことが大切であろうかと思います。

 以上でございます。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、山崎参考人にお願いいたします。

山崎参考人 皆様おはようございます。日本がん患者団体協議会理事長の山崎と申します。よろしくお願いいたします。

 私たちは、多くのがん患者団体とともに、日本のがん医療を向上するために活動しております。皆様も御存じのように、日本人の死因ナンバーワンはがんです。国民の三一%ががんによって亡くなります。計算によると、二人に一人はがんになる、三人に一人はがんで亡くなるということです。

 このがん医療なんですけれども、これまで多くの対策が打たれてきましたが、なかなか成果が上がらないというふうに多くの国民は思っています。なぜかというと、アンケートなんかをとっても、国民の関心が、医療問題、特にがん医療に関してとても高いということがそれをあらわしていると思います。

 これまで、例えば欧米では日本と同じように年々がんの死亡率が上がっていました。ところが、近年、がんの死亡率が下がってきたんです。日本は相変わらず上がっております。特に、これからは少子高齢化、お年寄りがたくさんふえる社会になります。そうなりますと、がんで亡くなる方はますますふえるでしょう。こういう人たちに対して、国家レベルとして、がんをなくす、がんにかかる人を減らす、こういう活動というのが今後さらなる重要な問題になると私たちは考えております。

 さて、最初の一ページなんですけれども、ここに施設別の除痛率のグラフがあります。一番右側、緩和病棟なんですけれども、八五%のがん患者さんの痛みがとれるというデータが出ております。

 がんというのは、御存じのように、必ず死に至る病です。強い痛みが伴います。これは多くの方々が訴えていることですが、これを八五%の割合で緩和病棟の先生が取り除いているという事実がございます。しかし、左側をごらんください。例えばがんセンター、がん診療施設は六〇%の痛みをとる率、大体四割の方が痛みがとれない。大学病院になるともっとひどくて、三九・八%、四割しか痛みがとれておりません。

 これは一体何を物語っているかといいますと、次のページになりますが、WHO方式のがん疼痛治療法というのがございます。これは世界標準のものなんですけれども、日本でそういうWHO方式の治療法、知識がある病院というのが、調査したところ、八七%とれておりました。諸外国でも、一〇〇%から七〇%の間、痛みがとれております。一番下、WHO協力センターというところでは、熟知している国というので七五%が痛みがとれている。ところが、このWHO方式を熟知していない国々というのは五〇%しか痛みがとれていないということです。

 ということは、日本の大学病院、四〇%しか末期の患者さんの痛みがとれていない、この世界二十五カ国のレベルよりもまだ低い、これは一体何を指しているのか。これから導かれる結論というのは、がんの医療には地域格差、医療格差が依然として存在する、そういう事実があるわけです。

 これまで研究や開発が全く進んでいなくてがんの方々の痛みがとれないという問題ではなく、実際にとれているところがあるということは、最新の医療や技術が日本各地に還元されていない、日本津々浦々よい技術が行っていない、そういう根本的な問題があるということがわかりました。ということは、全国である一定のレベルの医療水準に上がれば、低コストで日本の患者さんの満足度が上がるという事実があるということなんです。私たちの活動というのも、それを解消するために始まったわけです。

 患者さんからの多い質問は、どこに行ったらいい病院があるのかわからない、ある病院に行ったら、あなたは末期です、もう助かりませんという告知を受けて、別の病院に行ったら、いや、まだ二割ぐらい助かる可能性のある治療法が残っていますよ、そういうことを言われた、こういう訴えというのが実際かなり多いんです。

 そういうことを二十一世紀に入ってマスコミの方で報道されたものですから、日本のがん対策はうまくいっていないんじゃないかというふうに国民が思っている、それで国民の不満が高まっているというのが現状なんです。ですから、政府の方で、十年間で生存率の二〇%向上を目指す、これを私たちがん患者会はぜひとも達成していただきたいと思っています。

 そこで、去年なんですが、私たちが行った活動の一つなんですが、これまで厚生労働省というのは縦割りでした。審査管理の方、保険の点数、生活習慣病、横のつながりがなくすべて縦でやっていたので、いろいろな問題がありました。そこで、当時、自由民主党の尾辻厚生労働大臣と一緒になりまして、縦割りじゃだめなんだ、国民のために、プラスになるには、横断的にがん対策をしようということで、尾辻大臣の決断により、厚生労働省の中にがん対策推進室というものができまして、それから情報公開、情報センター、おかげさまでかなり進んでまいりました。

 今回、がん対策法、私たちが必要だと言っていることは、昨年自民党の尾辻大臣につくっていただいたその流れをもっと大きく推進させて、国レベルでがん対策を行っていただきたい。先ほど厚生労働省の中は縦割りだと言いましたが、実際、がん対策というのは厚生労働省だけではなく、例えば文部科学省、教育の問題だとか、大学病院の管轄が文部科学省です。あと法務省、これは個人情報の問題とかあります。総務省、いろいろなところがかかわっています。

 それで、国家レベルとしてやっていかなければいけないな、そういうことを訴えて、去年からもう一歩ステップアップしていただきたい、それががん対策法であり、与党の先生の方々、野党の先生の方々も今回これを推しているということを聞いて、がん患者の方々、日本の国民の方々は物すごく喜んでおります。

 そして、二〇〇六年、ことしなんですけれども、民主党さん三月十五日、三月二十四日公明党さんが、がん対策法の要綱骨子を発表されました。三月二十八日は与党政策責任者会議で今国会提出というお話がまとまりました。四月十二日に与党のがん対策推進に関するプロジェクトチーム初会合、がん対策に関してどんどん進んでおります。

 実際、これは諸外国の例なんですが、アメリカでは、一九七一年に、当時ニクソン大統領が国家がん対策法を成立させております。お隣の韓国でも、二〇〇〇年以降がん対策専門の部署を設置したり、国立がんセンターの設立、二〇〇三年にはがん対策法を成立させました。これによってかなりの成果があります。日本も、これからのがん医療を向上させるために、ぜひともがん対策法、これはつくっていただきたいと思っております。

 今回、公明党さん、民主党さん、法案が出ていますが、私たちもヒアリングを受けました。そのときにお話ししたことというのが九カ条ありまして、がん対策推進本部の設置、がん対策推進計画の策定、がん情報の提供、がん登録の推進、がん予防の推進、医療機関の整備、専門的な人材の育成、抗がん剤、医療機器等の早期承認、緩和医療及び終末期医療の充実、こういう基本的なことは、すべて各党の要綱骨子の中へ盛り込まれております。よって、自分たちが望むことは、このようなすばらしいがん対策法を国家戦略として位置づけて日本のがん対策を推進してほしい、そういうことを願っております。

 現在、これだけすばらしい日本の医療があるのは、一九六一年に皆保険制度をつくっていただいた私たちの先輩の国民及び国会議員の方々のおかげだと思っています。がん対策法も、これをしたからといってすぐに成果が上がるとは限りません。ただ、原因がしっかりわからなければ対策も打てない。そのためのがん対策基本法なんです。ですから、十年、二十年後、そのときになって、がんで亡くなる方が減り、データをもとに、科学的根拠をもとに、有効ながん対策、がんの医療が進歩すれば、それは、今この場で、この法律に対して一生懸命審議をして検討していただいた皆様方のおかげだと自分たちは考えます。

 国民の安全と幸せ、それを考えてお仕事をなさっているのが国会議員の先生の方々だと国民は思っております。がん対策、国民のニーズがとても多い、死亡原因ナンバーワン、実際に科学的にしっかり対策を打てば、がんで亡くなる人が減る、そういう根本的な問題を解決するがん対策基本法、これをよく審議していただいて、誤っているところは正していただき、よいところは盛り込んでいただき、ぜひとも六月十八日の今国会に通していただきたいな、与野党の方々でよく協議をして通していただきたいな、それが国民であり、私たちがん患者団体共通の願いであります。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、奥田参考人にお願いいたします。

奥田参考人 よろしくお願いいたします。

 横浜市大の母子医療センター、産科の現場の責任者で主任の奥田と申します。本日は、私のような若輩者にこのような場で発言させていただく機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 当センターは、地域の周産期の基幹病院としてハイリスク分娩を引き受けるとともに、教育病院として正常分娩の予約も一定数引き受けております。当センターの一勤務医師として、現在の産婦人科医師の勤務状況の実態について述べさせていただきます。

 お手元の資料は、分娩できる施設が急に減った神奈川県西部で緊急に開かれたシンポジウムで横浜市大の平原教授が話したものです。最近の産科医療の現状として御参考になさってください。

 この一年程度で、周辺の分娩取り扱い施設が相次いで分娩を取りやめました。当センターでは、早産などのベビーを受け入れるNICUを持ち、また救命救急センターを備えておりますので、いかなるリスクの妊婦さんでも引き受ける必要があります。

 本来は、高度のリスクを有する母体を引き受けるために、中程度のリスクやリスクのない方はほかの施設で多くお引き受けいただきたいのですけれども、そのやめられた影響で分娩予約が殺到し、あっという間に分娩予約枠がいっぱいになっております。重い合併症をお持ちで、ほかの施設ではどうしても困難であるというケースは無理にでもお引き受けしておりますが、昨今は少しでもリスクのある妊婦さんを抱えたがらない施設がふえておりますので、どこにも行き場のなくなった中程度のリスクの方もお引き受けせざるを得ません。

 さらに、最近ふえているんですが、どこにも受診したことのない妊婦さんがいきなり陣痛が来て救急車を呼ぶ、そのようなケースも、最近では、どのような赤ちゃんが出てくるかわからないということでどこでも受けていただけず、すべて我々周産期センターに集中しておりますので、病棟が満床でもとにかくお引き受けして対応しております。そういうわけで、限界以上の分娩件数をこなしているというのが現状です。

 先日のある一日を例にお話をします。

 午前中は外来業務、午後に帝王切開の予定が二件入っておりました。午前十時ごろ、他院から重症患者様の受け入れの要請がありました。当院に到着したのが十三時ごろ。緊急を要する状態でしたので、予定の方より先に手術室に入室したのが十四時ごろ。帝王切開が終了し、もとの予定の方が手術室に入室し、赤ちゃんが十六時五十二分に生まれました。予定の二番目の方は、実に夜の十九時に分娩となりました。

 その執刀をしている最中に、病棟で分娩進行中の方の胎児の状態がよくないとのことで、これも帝王切開になるとの連絡が入り、ほかのメンバーで並行して帝王切開術を開始し、十九時五十七分にそのベビーが生まれました。当センターの手術室は、全国でも本当に有数の忙しさだと思っております。この間に病棟ではほかの分娩もございましたので、スタッフの全員が二十一時過ぎまで残っておりました。

 なお、実は私はこの日、前日は当直医で、前日の朝から当日の朝までフルに働き、午前中の外来をこなし、四件の手術のうち二件の手術には主任として、指導医として入り、すべて終了して帰宅したのはたしか二十三時も過ぎており、翌日も実はまた当直業務をしております。

 このほか、深夜の勤務帯、すなわち零時から八時までの八時間の間に八件のお産があって、担当医が持病のぜんそく発作を起こしてしまったということですとか、夜中の二時過ぎに、たった十八分間の間に三件の分娩が重なったりしたこともあります。また、夜間に他院から搬送された緊急帝王切開の最中に次の依頼の電話が入り、続いてお引き受けして、もう一件帝王切開をしたということもございます。また、大出血で救命処置を必要とする患者様の隣に切迫早産の患者様が運び込まれるということも間々ございます。

 分娩は胎児心拍モニターを監視しながら行っておりますが、そのモニターのパターンが急に悪化することはよくあり、必要と判断すれば患者様を走って手術室に運んで帝王切開をして、決断から十分ほどで赤ちゃんを出すということも日常のことです。このように数秒から数分で対応を決断しなければならない私たちのストレスは、またかなり大きいものです。

 もちろん、二十四時間三百六十五日同じように忙しいわけではありませんが、分娩は時間を決めてできるものではありませんので、物事が同時に重なって起こることはしばしばあります。当直帯に二、三名の医師での対応が不可能なことはしばしばです。一睡もせず、どうにか乗り切ったとしても、疲れ切ってしまい、当直医は翌日すぐに帰らせてあげたいのですが、業務をこなすには人手が足りず、少々の仮眠をとれればいい方です。代休はございません。病院からは夜勤明けは休むようにというふうに言われておりますが、業務の量からは、とても翌日休んでいては臨床の業務がこなせません。とりわけ責任を負った立場ではなおさら業務を減らせないのが通常です。二交代や三交代にする人手もございませんので、当直医は三十六時間連続勤務も通常のこととして働いております。

 また、大学病院ですから、学生の指導にも時間を割き、若手医師の教育ですとか、医療の進歩に貢献すべく臨床データを学会発表するなどの努力もしております。そのデータをまとめたり、若手の発表の指導をしたり論文の添削をしたりというのは日常業務が終わってからですから、やっと医局の机に座るのが二十一時過ぎ、それからパソコンをたたいてデータ処理を夜中の二時過ぎまでやり、一度帰って翌朝七時には病院にいる、そんな日々も決して珍しくはありません。

 ほかに、患者様の診療に必要な文献を検索して読むという時間も同じように深夜となります。さらに、私の役割では、院内の委員会ですとか対外的な委員会も数多くございます。月に少なくとも数回はそうした会合に出席する必要があります。出るだけでなく、これら会議の準備が必要な場合は、それも深夜、休日の仕事です。

 平日に一回当直があり、ほかに緊急手術や患者様の家族とのお話、診療の下調べなどのために病院に残り、休日に帝王切開で呼ばれて一回登院という比較的平均的な週の在院時間をざっと計算してみますと、八十五時間ぐらいになるでしょうか。四週間にすると三百四十時間です。これに休日の当直が二回ございまして、三百四十足す四十八で三百八十八時間は病院にいるという形になります。

 フルメンバーがそろってやっとこの状態ですから、女医さんが妊娠しても、やっと規定ぎりぎりの産休をとらせてあげるのが精いっぱいです。私もそうですけれども、大抵産後八週で仕事に戻ります。産休中に欠員の補充はあり得ません。育休をとる体制もございません。WHOは、六カ月間は母乳以外何も必要がないと言っており、当院でも母乳育児を推進していますが、当の産科医自身がそれを完遂できておりません。

 私には小学一年生になる息子が一人おりますが、そんな日々ですから、息子の起きている姿を何日も見ないということはしょっちゅうです。きょうこそはと思い切って早く帰れる日でも、帰宅時間はせいぜい二十時ごろです。土日祝日も家にいられないことが多く、たまにいるときは、緊急の際に呼ばれて駆けつける自宅待機、これを我々はオンコールと言っておりますが、オンコールですので、食事中に携帯電話が突然鳴り、やっといてくれたお母さんがまた出かけてしまうと半泣きになっている息子を置いて病院に向かうこともまたしばしばです。それで、勤務先の病院から電話をかければ、ねえ、きょう帰ってくるのというふうに聞かれる日々です。

 我が家は、七十一歳になります私の母が、老骨にむち打って息子の面倒と私が全くやらない家事とを一手に引き受けてくれますので、私は幸いこうしてフルに働くことができますが、そういう家族のバックアップがない女医さんにとっては、私と同じように働くのは不可能です。

 こんな生活をしている折に、疲れて大学の医局を離れて、健診センターに就職したという方が、九時―五時で土日はお休みという生活で、我々よりより多くの享受、給料をもらっているというお話を聞きますと、もちろんお金のために働いているわけではないんですけれども、何だかがっくりときてしまって、使命感だけではモチベーションを保てないというのが正直なところです。

 妊娠し子を産み育てるという人々を守るべき立場の私どもが、自分たちのこれらの生活を守れずにいます。子供を産んでお母さんになった同僚や先輩後輩が一線を退く選択をして、やめていく方もたくさんいます。子育てと産科医が両立できなくなったとき、産科医であることを切り捨てる、その気持ちも痛いほどわかります。大体、我々の医局ですと、子供さんをお産した後、ちょうど半分ぐらいが一線を退いている、そのような数字になっております。女医さんがふえていますが、それがふえるということは、一定の確率でやめていく人がいるので、やめる人数がふえることになっております。

 そして、現場で、そこでできる範囲内で最善を尽くしても、結果が悪いということは、ある一定の確率で起こり得ます。妊娠、分娩というものがたった数分で急変し、母児の生命にかかわることがあるというのは、我々産科医にとっては常識のことですけれども、それに遭遇してしまった患者様はそれがすべてであり、その悲しみと怒りの矛先が我々医療者に向くのもよくあることですから、お気持ちはよくわかります。

 たとえ、それがどんな対応をしていてもその子を救えなかったのだという事態であったとしても、しばしば患者様たちは私どもを責められます。それも患者様のお気持ちですから、誠意を持って対応しております。悪気は全くありません。手を抜かず精いっぱいやっております。

 産科には、一生懸命今の医学の最善を尽くしても結果が不幸になることが間々あります。とりわけ、救急を担います我々にはなお頻繁に起こり得ます。でも、結果が悪ければ、それがすべて罪となり、我々が罪人として責められるというのであれば、悪い結果になる可能性がだれにでもあり得る分娩自体が不可能になってしまいます。このことは、熱心に産科に取り組む医師ほど悪い結果に接する機会が確率でふえ、さらにやりきれない報われなさを感じるということが多くなっております。

 というわけで、労働条件がほかの科に比べて極めて劣悪であるこの仕事に好んでつこうとする人は、今どきの若い方には特にいらっしゃらないのではないでしょうか。この春に初期研修を修了した研修医が神奈川県に約六百名いるそうですが、産婦人科を選択したのはたった十名です。既に産婦人科を選択した人の中でも、産科医療、周産期は敬遠されております。昨今の分娩施設減少を受け、当センターでは分娩数をふやすべく整備しようというふうに発言をすれば、周産期があるせいで産婦人科を目指す若手医師が減るんだから、これ以上忙しくするなと仲間からも悪口を言われる始末です。

 横浜市内の産婦人科に所属する医師は、毎年十人前後やめるか、フルの勤務から退いております。もっと労働条件と報酬のいい職場に移る方、産科自体をやめる方、完全に仕事をやめてしまう人、昼間の外来業務だけ手伝ってくれる人、子育てのためにしばらく休むと言って戻れない人、分娩を取り扱わないクリニックを開業する人、いろいろです。そういうわけで、産婦人科医の全員が分娩を扱っているわけではなくなっております。

 産科医が疲れ切ってやめていき、人数が減ってさらに忙しくなって疲れてやめるという悪循環を断ち切るためには、分娩施設を整理し、一分娩施設当たりの産科医の数を今の二倍から三倍以上に集約する必要があると思います。早急に労働環境を改善しないと、若手は産科を選びませんし、やっている人もどんどんやめていきます。

 産科医療はだれかがやらなければならないですし、産科を専門としている私は、現在の仕事は確かに好きですが、こんな状況ですので、自分がやめもせず、壊れもせずに何とかやれているというのが本当に不思議です。今頑張っている産科医は、もう少し何とか皆踏ん張れると思うんですが、次世代がふえてくれないともう限界だと思っております。

 以上、現場で働く一産科医として述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、近藤参考人にお願いいたします。

近藤参考人 日本福祉大学の近藤です。

 お手元に資料が用意してございます。これに沿って話を進めさせていただきます。

 きょう私が参考人として述べさせていただく意見を一言でタイトルに要約すれば、今回の医療制度改革の究極の目標といいますが、最も目立ってしまう目標、医療費抑制、それに偏重した目標。

 医療費抑制に目を配るということが避けて通れない時代だというのは、私もそう思っております。しかし、後ほど御紹介するように、それ以外にも医療においては重視すべき目標があるのではないか。そちらが余り出てこなくて医療費のことばかり出てきてしまう、それを指して偏重と表現しましたが、そういう改革は、今生々しい現場の声がありましたけれども、医療の現場をさらにゆがめてしまうのではないか、そのことをぜひ国会議員の皆さんに御承知おきいただいて、今回の改革をどのようにするのか審議していただきたいということです。

 時間が限られておりますので、きょうは、私、三点に絞って意見を述べさせていただきます。

 第一点が、医療費抑制という目標が果たして妥当なのかという点。それから二番目が、今回導入が検討されております高齢者の自己負担増加が果たして医療費抑制に本当につながるのかということ、これを国際的な経験から考察を加えたいと思います。それから三点目、既に日本も健康格差社会になっております。それをどうしたらいいのかということについて意見を述べさせていただきます。

 まず、一点目の医療費抑制という目標が果たして妥当か、これは今から言う三つの理由でとても心配だというふうに感じております。

 まず一つが、こういう論議のときに、厚生労働省の方から基礎となる今後の医療費の推計というのが出てきて、それに基づいてこのままでは大変だといって論議がされるわけですが、右のスライド四に書きましたように、過去の厚生労働省から出た推計、意図があってかどうかは知りませんが、見事に常に高い推計でして、新しい推計値が出るたびに下がってきております。果たして今回の推計値はどの程度の、言うならば見通しのもとに出ているものなのか、その辺危惧するところです。

 それから、二番目の理由が、国内の状況を見て、実際に医療の現場を見て、医療費を抑え過ぎているゆがみがもう既に顕在化しているのではないかということです。例えば医療事故、連日報道されておりますそういう医療の質の問題ですけれども、国民は、もう少し医療の質を高めてほしい、安全性を高めてほしいと願っております。しかし、それが守られていない現状は、今も奥田参考人の話が直前にありましたから先生方御理解いただけたと思いますが、現場にいる医師、看護師は必死にやっているんです。もう個人の努力ではどうしようもないところまで来ているんです。その背景には、医師不足があり、看護師不足があるんです。

 今、世界に百九十ぐらい国がありますが、その中で人口当たりの医師数、日本は今六十三位だそうです。いわゆる先進国、七カ国の中で見ると、イギリスと並んで少ない国です。ここからさらに医療費を抑えるということがどのような事態を招くのか、ぜひお考えいただきたいと思います。

 あと、医療事故で最も多いのは処方ミスであるということがわかっております。処方ミスを防ぐのに有効であるとあちこちの国で確認されたいわゆるエビデンスのある対策があります。それはコンピューターを導入して処方内容をチェックすることです。しかし、これを今日本でやろうと思いますと、大体ベッド一床当たり相場で百万円程度と言われております。つまり、百床の病院に一億円情報化投資をすれば医療事故は減るんです。

 ところが、今それに対して国の方からそれを整備するというようなのはなくて、一部補助金はありますが、各病院の自助努力というような形になっております。ぜひ、情報化戦略というのは国にとってもメリットがあるわけですから、国民のニーズの高い医療の安全性を高めるために、必要な投資はする、そういう視点を持って御検討いただけないでしょうか。

 それからもう一つが、国際比較の視点で見ると、日本の医療費水準、日本だけ見ていると高いようですが、ほかの国々に比べますと実は日本の医療費は低いという事実です。スライドの五に数字を並べましたが、これはOECDが出している国際比較のデータです。右端の二本を見ていただきたいんですが、OECD、先進国三十カ国が加盟しております。

 今までの経験では、経済力が豊かになるほど医療費により多くのお金をかける、これがいろいろな国々の経験です。ですから、三十カ国に比べますと右端の七カ国では医療費がふえております。日本の医療費水準はどうかといいますと、左から二本目、これが二〇〇二年の数字ですが、実はOECD三十カ国の平均を下回っているのが日本の現在の医療費水準です。

 厚生労働省が出している推計値でいきますと、二〇一五年、医療費がふえて国が滅びるという雰囲気で言われておりますが、実はこれは現在のドイツの水準よりも低い医療費水準です。さらに、二〇二五年、もう一二%を超えたら持続不可能だという論調ですが、これは現在のアメリカよりも低い水準です。ですから、今の医療制度からさらに医療費を抑制するようなことをしなくても、日本が滅びるとはとても思えない、むしろ、ほかの国々の医療費水準から見れば、大体一割ぐらい今日本の医療費水準は安いというような推計が出ております。

 では、逆に、日本よりも医療費が低い国、このグラフでいうと左端のイギリスですが、そこで一体何が起きたのかということを、私もイギリスに一年滞在しておりましたので、そのとき見て驚いた話をごく一部御紹介したいと思います。

 題して、「イギリス医療荒廃の経験」としました。これについては後ろに論文の資料も添えてあります。「イギリスの医療改革と日本医療の現状と課題」という論文ですが、この前半部分にイギリスの悲惨な状況を幾つか書いてありますので、ぜひ後ほどお読みいただけたらと思います。

 わかりやすい待機者リストのことを二、三例を挙げますと、例えば、救命救急センターで医者が診て、この人は入院が必要だと判断してからベッドにたどり着いて入院できるまでの待機時間が三時間半です。これは、現場は必死にやっていますが、次々と患者さんが来て、それに対応する医師、看護師がいなければ、そこでウエーティングリストができてしまうという現実があったわけです。

 さらに、専門医療の方でいきますと、何と入院待機者が百三十万人、手術を一年半待っているという人が二百人というような状況にまで陥ってしまいました。

 このような状況になって、さすがにイギリスの国会でも大問題になりまして、一体何が犯人なんだと。論議がされた結果、世界の他の先進国に比べて異常に抑え過ぎた医療費、これが主因であるということで国民の意見が一致して、日本からは想像できませんが、何と医療費を五年間で一・五倍にするという医療改革に現在取り組んでおります。

 カナダも、このような状況を経験して、医療費をふやすという医療改革に取り組んでおります。

 先進国の中では、むしろ医療費をふやす形で必要な投資をして、質を高めつつ効率を高めるという医療改革を検討している国々が多いんです。日本だけが逆行しているんです。そういう大英断を先生方はするのかどうか、ぜひ慎重に御検討いただきたいと思います。

 しかし、イギリスは医療費をふやして状況はよくなったかといいますと、後ろの論文で紹介しているように一部改善が見られております。しかし、待機者、かつて百三十万人いた人たちが、今まだ八十万人残っております。五十万人改善したといえば改善したのですが、まだ八十万人いるんです。

 なぜ回復しないのか。これについては、現場の医師たちからこのような声がランセットという有名な医学雑誌の巻頭言で紹介されております。国会議員たちは、現場の労働者の士気の問題を余りに軽視している。現場の士気が一たん崩壊したら、それを取り戻すのには膨大な時間がかかるのだということをぜひ知っておいていただきたいと思います。

 二枚目に行っていただいて、これはイギリスだけの経験ではありません。OECDに加盟する三十カ国で、医療制度改革というのは世界共通の関心です。それで、いろいろな国々での経験を束ねて、一体どういうことが経験則として言えるのか、それを束ねた本が「世界の医療制度改革」という本で、二〇〇四年に出されております。

 その中を見てみますと、十九ページにこんなくだりがあります。医療費、それに伴う価格とか賃金を低く抑えると、一番目、費用削減による医療の質の低下を招く、これが国際的な経験です。これを今先生方は選ぼうとしているわけです。それから二番目、人材の確保、離職防止困難、これは前の奥田参考人が言ったとおりです。それから三番目、サービス、革新的医薬品の供給不足に陥る。こういうリスクがある選択であるということを、十分自覚された上で選択していただきたいと思います。

 それから二番目、このような論議をしますと、医療費の総枠を減らせとは言っていない、公的に面倒を見るところだけ減らすと言っているんだ、アメリカのように医療費総額ふえてもいいじゃないかというふうにおっしゃる方がいます。しかし、そういう方には次の点をよく聞いていただきたいと思います。

 これもOECDに加盟する世界の経験です。患者の自己負担は果たしてコストの削減につながるかということです。意外なことに公的医療費の削減にはつながらない可能性が高いというのが国際的な経験です。どういうことかといいますと、その理由は、立場の弱いグループ、いわゆるお金のない人たち、その人たちには医療を受けるなとはさすがに言えません、そうすると、そういう低所得者層については最低限のことは保障しようということになります。

 その結果、どうなるかといいますと、アメリカでは保険に入っていない人が今や四千万人です。その結果、長期的に見ると、その人たちのコストを結局公費で全額見るということになって、これは意外なことですが、公的保険制度のないアメリカの税金のうち、医療費に割いている割合は日本以上に大きいんです。このことを知った上で、ぜひ御判断いただきたいと思います。

 それからもう一つ、日本で、ではそういう低所得者が医療にかかりにくい問題は起きていないのかといいますと、先日の朝日新聞のトップを飾ったように、現在、公立病院の未収金、言うなら、患者さんがお金を払えずにできたときに払うからと言って一年以上払えないでいる額が、この三年間で一・五倍にふえております。さらに自己負担がふえれば、この額がふえて、それをだれかが肩がわりする、公的病院が肩がわりすれば、結局税金で補てんすることになります。ですから、自己負担をふやすことは決して公費での医療費負担を減らすことにはつながらない、これが国際的な経験です。

 それからもう一つ、自己負担増加がもたらすものですが、自己負担をふやせば無駄な受診が減ると言われます。しかし、総医療費に占める自己負担割合、これは、実に意外なことに日本の方がアメリカよりも高い水準になっております。自己負担割合、公的には三割あるいは一割ですが、差額ベッド代、高いところですと一カ月に十万円になります。そういうような実質の負担額がふえると、既にアメリカ以上の負担割合だということを知っていただきたいと思います。

 あとは、減るのが果たして不要な受診だけなのか、必要な受診は減らないのか、早期発見、早期治療がおくれて、結果的に医療費はふえないのか。そういうことを、特に低所得者層に負担が出ないのかという視点も、ぜひ御勘案いただきたいと思います。

 そのデータを二つだけ持ってまいりました。スライドの十、これは横軸が所得水準で、縦軸が要介護認定割合です。見ていただくと、左の男性、右の女性で見ても、最低所得層に要介護状態が多いという現実があります。この格差、実に五倍です。もう一つ、十一番のスライドを見ていただくと、これは男女一緒にしたグラフですが、やはり低所得者層でうつ状態の人が五倍も多い。これが日本の高齢者のデータです。

 以上、示したように、日本も既に五倍もの健康格差社会になっています。さらに、社会の格差拡大で、国民全体のいわゆる勝ち組も含めた健康状態が悪化する危険が、この間、社会疫学の分野で蓄積されております。

 与党の先生方はなかなかこういう本は怖くて手にとらないと思ったので、この「健康格差社会」という本、すべての厚生労働委員の先生方にお送りしてあります。見た覚えがないという方はぜひ秘書の方にお尋ねください。

 そこにその理由がちゃんと書いてありますので、省きますが、今問われているのは、日本が、一体今から言う二つの道、どちらを目指すのかという選択だと思います。

 一つがアメリカ型、医療はサービスだ、商品だ、お金持ちがいいもの買えて当たり前だ、貧乏人は安いもので我慢しろ、サービスとして考えて、貧富の格差を認める社会です。もう一つがヨーロッパ型です。ヨーロッパでは、医療や健康は人権だ、格差を認めるべきではない、命の差、貧富の差をつけるべきでない、そういう社会を目指すのか、それを今回問われているんだと私は考えております。

 三枚目に参りますが、実際にヨーロッパでどういう動きがあるか。イギリスの例を持ってまいりましたが、ヘルス・インイコーリティー、健康の不平等、それを阻止するようにタックルをかける、これは何とイギリスの厚生省が出している文書なんです。その序文にブレアが写真入りで出てきて、このような健康格差の問題はもはや無視できない、イギリス政府はこれを阻止するといって行動プログラムを出している。

 こういうヨーロッパの国が実際にあって、これはイギリスだけではありません。そういうヨーロッパ型を目指すのか、アメリカ社会に近づけるのか、それをよく考えていただきたいと思います。

 右に行きますが、では、日本の世論はどうなっているか。見てみますと、社会保障、負担がふえてもいいから現状を維持してほしい、さらに充実してほしいという声が実は半分を超えているんですね。増税、社会保険料をふやせというのは先生方の立場からなかなか言いにくいというのはよくわかりました。そういう意味で、私ども、露払いを務めたいと思いますが、国民の潜在的な意識としては、本当に安心できる医療を受けられるんだったらふえてもいいという声がこれだけあるということも、一方で知っていただきたいと思います。

 それから最後、私の専門とする医療政策評価の立場からぜひ御理解いただく点を強調して、終わりにしたいと思います。

 政策評価、経済的な評価、効率の評価だけでは一面的だということが指摘されております。それと同じぐらい大事な医療の評価の軸が、一つが効果、これは医療の質だとか安全性です。そしてもう一つが公正です。これは必要な人に必要な医療が届いているかどうかという視点です。

 今論議されているもの、数値目標が明示されているのは何でしょうか。この一番に当たる医療費抑制だけではないでしょうか。なぜ医療の質に関する目標あるいは健康格差の是正に対する目標を掲げないのでしょうか。それを保障するのも国の責務ではないのでしょうか。

 最後、そうはいってもなかなか現実は厳しいということも理解しているつもりです。せめて、国民への説明責任を果たすような内容を附帯決議でも何でも加えていただけないかというのがお願いです。

 医療費抑制の目標達成度だけではなくて、医療の質もモニタリングしてほしい。例えば医療事故の件数がこれ以上ふえないのか。あと医療従事者の時間外労働が労働基準法の規定を超えていないのか。実際には超えているということを二十一ページ、論文資料に入れておきましたが、これがさらにひどくならないのか。さらに、研修医の四割がうつ状態で働いております。長時間労働で働いている医師の注意力、調べてみると、飲酒運転並みです。飲酒運転が禁じられているのに、なぜ長時間労働の医師の労働は禁じられないのでしょうか。そういうこともぜひモニタリングして、医療の質を担保していただきたいと思います。

 それからもう一つ、公正の視点です。

 低所得者に受診抑制がふえないのか。さらに、ヨーロッパの国々では所得階層別の死亡率のデータを政府が発表しております。しかし、この間調べましたが、日本政府はそのようなデータをモニタリングすらしておりません。少なくとも公表しておりません。私のような研究者が分析したいからデータを出してほしいと言っても、データは出してもらえません。ぜひ、そのような評価が可能な環境を整備していただきたいと思います。

 具体的に言えば、医療費の〇・一%で構いません。ぜひ、このような今回の医療制度改革のインパクト、光の面も影の面も含めて総合的に評価するために、〇・一%を振り向けていただくような制度も同時に入れていただきたいと思います。

 最後、まとめです。現在の日本の医療費は他国に比べれば抑制し過ぎです。さらなる医療費抑制は医療の質を低下させる危険が極めて高いと思います。さらに、日本は既に健康格差社会です。これに自己負担増加を加えれば、低所得者の受診を抑制して健康格差を助長する危険が高い、これが先進国の共通の経験なんです。しかも、公的医療費は増大して医療費抑制は成功しません。これがアメリカの経験なんです。こういうことを踏まえて、世界に例のないことにチャレンジするというのならば、それにふさわしい戦略を示していただきたいと思います。

 医療費抑制、効率だけではなく、ぜひとも医療の質の向上、それから健康格差の是正、公正も重要なのですから、そういうこともしっかりモニタリングして、五年たった時点で、もし思わしくない結果が出た段階に、早くそれに気づいて軌道修正できるような仕組みも、ぜひ今回の法案に入れていただきたいとお願いして、私の発言を終わりにします。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

岸田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田(稔)委員 自由民主党の寺田でございます。

 きょうは、参考人の先生方におかれましては、大変お忙しい中をお越しいただきまして、まずもって厚く御礼を申し上げます。また、先生方、それぞれのお立場から、我が国の医療の発展に多大なる御貢献をされておられますことに対しましても、心からの敬意を表する次第でございます。

 さて、時間も限られておりますので、早速、本題の方に入らせていただきます。

 現在の国民皆保険制度、今から四十五年前の昭和三十六年に確立をしたわけです。時あたかも池田内閣の二年目だったわけでございます。このときの議事録を見ましても、いかに、持続可能な医療制度を適正な形でもって構築をして、国民全体が保健医療の恩恵に浴することができるかというふうな議論が展開をされております。特に、費用負担面で申し上げますと、保険料、患者の負担、そして足らざるところは公費で補う、公費でサポートする、この医療保険制度を構築すべきというのが立法者意思であったわけでございます。

 そして、今日に至りましてこの皆保険制度、維持をされております。そして、恐らく当委員会の総意としても、この皆保険制度を引き続き堅持すべきであるということは、もう論をまたないというふうに私も認識をいたしております。

 そこで、問題となりますのは、これから本格的に到来をいたします少子高齢化社会、ふえ続けます医療費の負担をいかに分かち合っていくか。先ほど申しました制度趣旨、立法者意思から申しますと、当然のことながら、診療側、受診側、そして保険者、さらには公的主体、この四つが適正な負担関係でもって分かち合っていくというふうなことが、本来の制度趣旨にかなう形でもっての改革であるというふうに私は考えております。

 そこで、今回の法案を、このような費用負担面の制度設計から検証してみたいというふうに思うわけです。すなわち、今回の医療制度改革法案、診療側は、レセプトのオンライン化を含みます医療運営の効率化をしてください、そしてまた、予防対策に力を注ぐことによって医療費本体の抑制、抑えてください、またさらに、適正な受け皿を用意していく中で療養型病床群の整理を行ってください、こういうふうなことを求めている。

 また、患者側に対しては、いわゆる窓口負担の問題、これにつきまして、後期高齢者については一割負担、そして前期の高齢者については、いろいろな所得態様、また患者自身の態様に応じて二割ないし三割というふうな制度設計でございます。

 他方、保険者については、保険者機能を大いに発揮してくださいと。そして、今回、新たに創設をされました保険財政共同安定化事業、これによって広域化を図ることによって保険財政の安定を求めている。当然、それに対しては公的主体からの適正な支援を求めております。

 そして最後に、公的主体も、一定の分野におけます公的支援をさらに強化していく。国保支援で申しますと、今回の提案によりますと、これは単年度の数字ですけれども、三千六百六十億の負担を公費から出すということを予算案にも盛り込んでおります。

 こういう負担面からの制度設計を各参考人の先生方はいかに評価されるか、それぞれお伺いしたいと思います。非常に時間も限られておりますので、大変恐縮でございますが、なるたけ一言で、でき得れば一分以内で陳述をお願いできればまことに幸甚でございます。

河内山参考人 ごくごくかいつまんで申し上げたいと思います。

 保険者の立場の話は先ほど既に申し上げておりますので、一点だけ、保険者機能を今後どういうふうに発揮していくか。これは、今までも国保の場合は市町村で保険者機能を発揮してきたつもりではございますが、いささか足らざるところがあった。

 なぜかといいますと、患者さんといいますか、被保険者と保険者の関係で申し上げますと、保険者機能を発揮しようと思いますと、やはりさまざまな生活習慣、もろもろのことに対する、まさしくプライバシーであり個人の領域であります、このことに介入をしていくということが、保険者機能を発揮して長期にわたっては生活習慣病の対策等につながってまいります。その辺の受容性というのは、十人十色といいますか、地域によってもいろいろと差があったと思います。

 よく言われるところですけれども、やはり小規模の保険者で、少し保険者として努力をしますと医療費に大きなプラスの方の影響がある部分、小さな保険者としてのメリット、これは、被保険者と保険者の関係でいうと、さまざまな健康づくりあるいは生活習慣病対策等々に対する、自分以外の方々からいろいろなことを言われることに対する受容性があるということですね。

 したがって、今回の、今後長期にわたって生活習慣病対策等を行おうとしますと、プライバシーの問題も含めまして、少し健康について、いろいろと生活に介入をしていくことについての受容性を世論喚起していかなきゃならない、こういうことを非常に強く感じております。

 さまざまな負担が診療側にもあります、それから患者さん方にもあります。これは今回、審議の過程でいろいろな御意見があると思いますけれども、長期にわたって持続可能な制度設計をするという意味では、負担が可能な高齢者の方には負担を求めていくというのは、今の時代としますと、さまざまな分野でそれぞれ考えなきゃなりません。しかし、本当に負担が不可能な方は、先ほど、例えば国民健康保険の財政安定化の話もそうでございますが、どうしても成り立ちようがない部分については公費の投入を含めて、やはりきちんと、国家として、あるいは最終的には納税者としてそれを認めていくということが持続可能な社会保険制度として大事ではないかというふうに考えております。

 極めて雑駁な感想でございますが、そのように思っております。

鴨下参考人 一つだけ申し上げますが、私は小児科医でございますので、これまでの日本の医療費の高齢者対小児という観点で見ますと、非常に不均等というか、もっと子供に対して手厚くしていただきたかった。ですから、高齢者が今後も負担していただくのは当然だと思いますし、今回の足りないところは、国費で子供のために補っていただきたい、その点だけを申し上げたいと思います。

奥野参考人 私の立場で大所高所に立って物を述べることはできないんですけれども、日ごろの診療で医療費ということで感じていることを述べさせていただきます。

 私も、五百人しか住んでいない島、しかも漁村ですのでいわゆる低所得者層の方が多いというふうに思いますけれども、しかるべく、医療費を少しでも減らそうということで、あるいは、例えば検査をするにしても、一つの自分の考え方としては、今の検査をなぜするか、もしするのであれば、することによって何か自分の考え方とか方針が変わるのであればこの検査をしよう、だけれども、検査をして何も変わらないのであればそういうことはやめようと。無駄という言葉が適切かどうか知りませんが、そういう方針でやっております。

 そうしますと、島の人の評価も、全部じゃありませんけれども、この医者は検査をしない医者ということになるわけですね。レントゲンなんかもそういう意味で撮らないことが多いんですけれども、今度はレントゲンを撮らない医者というふうにとられることもございます。

 それから、医療費ということに関して、老人の方がどういうふうに感じておられるか。それだけ自分としては努力して、例えばそれが自己負担としては五円、十円、二十円減ったというふうなことよりも、むしろ検査をしてもらって百円ふえた方が患者さんは喜んで帰るというふうなのが現状ではあるわけです。

 ただ、これがいいか悪いか、あるいはそのために自分としてどういうふうな医療費の説明をするか、あるいは予防とか、そういった私の検査に対する考え方をどういうふうにして伝えていくかということが、今までの経験ですと、物すごく時間がかかるということであります。

 つまり、現場で困っているのは、毎年毎年、微妙に変化いたしまして、いつもそれを一つずつその患者さんに説明していって、やっとわかっていただいたらまた変わっていくということが、現実としてはとても大変だなというふうなことであります。

 現場の声でございます。

山崎参考人 個人的には寺田先生の考え方に全く同感です。

 昭和三十六年、皆保険制度ができて、そのときに、持続的な医療、質のよい医療を提供しようと、その考え、ビジョンというのは今でも継続されていると思います。ただ、今、時代が変わって、ビジョンは全く同じですけれども、継続していく方法が変わりつつある、もう世の中変わっていますので。それが今問題になっているというふうに自分たちはとらえているんです。

 そのときに、先ほど近藤先生の方からちょっとお話もありましたけれども、絶対的な金額じゃなくてパフォーマンス、質の面での評価という部分がもう少しあった方がいいんじゃないかと思うんです。例えば、百億円使うにしても、百億円を使って患者さんが百万人助かったというものと、五十億円使って患者さんが三十万人しか助からなかった。では、どっちがいいということになれば、パフォーマンス的には、たくさんお金を使ったとしても一人当たりの単価では下がりますから、そういうような手法を入れて、いかにお金、税金を有効に活用するかという視点があればもっといいんじゃないかなと思いました。

奥田参考人 私、医療費のことは素人ですので、私の時間は近藤先生に譲りたいと思いますが、一つだけ、近藤先生のお話を聞いていて、とにかく医療にはお金がかかるという認識がやはり非常に大事で、私、産科医ですので、産科医療現場をしていて感じることは、分娩費はまだまだ安いというふうに思っております。

 産科医療は自己負担の非常に大きいところなんですけれども、それを例えば、では公費で賄ったら少子化がストップできるかというのですけれども、現場の感触としては、それを行っても、御本人の負担を減らしても、少子化対策にはならないというふうに感じております。どちらかというと、お支払いができないような方の方がどんどんお産されておりますので。

 私からは、現場として、それだけ一言。

近藤参考人 財源の問題につきましては、このように考えております。財源は三種類しかない。保険料、自己負担、公費。先ほど言ったような理由で、自己負担をこれ以上ふやすというのは、もう当時から、例えば健康保険の本人はゼロだったものが今三割まで来ているわけですね。持続可能にするために、既に自己負担はこれだけふえてきているんです。ここからさらに上げるという選択は、弊害の方が大きいのではないかというふうに考えております。

 では、お金持ちの年寄りもいるんじゃないか。そこから取るのは私も大賛成です。それを自己負担で取るのか、保険料ないしは税金で取るのかということだと思います。

 そのときに、ぜひ先生方に事実認識として持っていただきたいのが、さっき見ていただいた健康格差があるということです。お金持ちの年寄りと貧乏人の年寄り、どっちが病気になる確率が高いか。これは、お金持ちは病気になりにくいんです。そうすると、その人たちにたくさん負担してもらえばいいじゃないかといっても、考え方としてはそのとおりですけれども、実態としてどうなのかというと、低所得者層ほど、自己負担にすればするほど負担する割合が大きくなるということです。さらに経済的にピンチになって、病院のお金を踏み倒して未収金をふやすか、さらにまじめに払おうとして自分を追い詰めて自殺するとか、そういう形で追い詰めてしまうわけです。

 ですから、お金持ちから取るべきだというのであれば、社会保険料ないしは税金で取るという選択肢もあるということをぜひ忘れていただきたくないというふうに思います。

 ただ、そのように持っていくためには、国民が、社会保険料が上がる、税金がふえるということに対しては、いわゆるアレルギーがあります。それを払拭するためには二つのことが必要だと考えています。

 一つが、レセプトのオンライン化初め、あるいは領収書の明細がわかるものの発行も含めて、提供者側で襟を正すべきこと、努力すべきことがまだあるというのは、そのとおりだと思います。

 それからもう一つが、国のレベルで、先ほども言いました、医療の質であるとか効率であるとか公正であるとかをちゃんとモニタリングして、国民に、自分たちが払ったお金がちゃんと無駄なく必要なところに使われているぞということが見えやすくなるような、これはイギリスがやったことですけれども、そういうアカウンタビリティーを高めるような仕組みづくり。それをつくったことで、国民は医療費を一・五倍にすることに同意したというのがイギリスで起きたことです。ぜひそれも御検討いただきたいと思います。

寺田(稔)委員 それぞれ貴重な御意見、ありがとうございました。

 それでは、時間もわずかでございますけれども、次の議題、お伺いをいたしたいと思います。

 これは、まさに地域におけます地域と医療機関との連携の問題なんでございます。

 すなわち、この今の皆保険制度をきちんと維持していくためには、地域の医療資源を有効に活用する、そうした中においてこのシステム構築をしなければならない。実際に医療機関を選択する患者の立場に立てば、地域と医療機関との連携が目に見える形でもってきちんと示されて、住民が安心をして地域で過ごせるということが当然必要になってまいります。

 実は、そういうふうな観点から見たときに、地域におけます医療提供体制、非常に今いろいろな問題が出てきております。特に、救命救急患者、先ほども先生方から御議論ありましたが、時間、距離がかかる問題、あるいは患者のたらい回しの問題等、いろいろな問題が出てきているんです。

 私も、地元の医療機関、特に指定病院、あるいはまた患者さん、さらには県の担当者、そして市の担当者から実際に意見聴取をしてみました。この救命救急患者の問題について、非常に幾つかの複合的な問題が浮かび上がってきております。

 例えば、県の医療圏の組み方の問題、あるいはまた受け入れ病院側の体制の問題、そしてさらには消防と医療の連携の問題、これは実は救急車の回し方と医療機関との連絡、連携という意味でございますが、これらの問題が指摘をされているわけです。実際、先生方からごらんになって、こういったような救命救急患者の問題の解消のためには、一体どこが根本原因で、それに対して一体どういうふうな対策、処方せんを打てばいいのか。

 時間も限られておりますので、なるだけ多くの先生方にお伺いしたいと思いますので、一人ずつ、一言ずつで結構でございますので、御意見の方をちょうだいいたしたいと思います。

河内山参考人 救急救命医療を初めとしまして、医療提供体制につきまして、やはり今の法体系の中で県知事さんが権限をお持ちであります。我々としましては、例えば市町村長というのは消防の業務をやっておりますけれども、どうしてもこれは最終的には、病院の皆さん方や、ひいては医療提供体制をどういうふうに組むかということでございますので、本当は、きょうのこの席に知事会の代表の方に来ていただいてお話ししてもらうのが一番いい。

 そういう意味では、保険の枠組みと、医療提供体制の枠組みと、救急医療の体制とか、それから、きょういろいろ話題になっております小児医療だとか、さまざまな問題について、非常にちょっとでこぼこがありますので、こういう制度改革をする際に、そういう医療提供体制の方も少し再整理をする時期が来ているのではないかなというふうな感想を持っております。

鴨下参考人 これは大変難しい問題でございますけれども、私どもの医療部会でもかなり議論をいたしまして、結局、実際にこれから実行する方向として、各都道府県別に協議会のようなものを結成して、そこできめ細かく検討していただく。

 先ほど申しました産科医療、小児科医療の集約化というのも、地域によって非常に事情が違いますので、それぞれその地域ごとにきめ細かくやっていただくことが必要だと思っております。

奥野参考人 僻地では、運ぶというところは非常にシンプルでありまして、患者さんが出た場合に、私がすぐおうちまで行きまして、それから自分でもって一緒に漁船に乗って運ぶ。ですから、アクセスというところまでは非常にシンプルであります。問題点としては、その時間を縮めるというのが非常に大きな問題でありまして、例えば島に橋をかけるとか山にトンネルをぶち抜くとか、そういったことが必要なんですけれども、現状としては、アクセスまではいい。

 だけれども、今の問題は、受けていただく病院の救急体制というものが、指定はされておりますけれども、現在の中でやりくりをして救急業務を行っているというのが現状でありまして、もっともっと救急専門のセンター、あるいは、幾つかの病院から集約いたしましてセンター化して、いかなる場合でもどのような時間でも、素早く受け入れていただいて高度な医療ができるというふうなことが、我々にとっては今のところ最も望むところであります。

山崎参考人 国民としてはとても望むところなんですが、がんの患者というのは緊急性があるものではないので、患者会の立場として論理的にちょっと言葉が述べられないので、次の参考人にお話を回します。

奥田参考人 私ども産科救急の立場として、神奈川県のシステムとして依頼があって、自分のところで受けられなかったら探すということをやっておるのですが、探している時間よりも送ってもらう時間、さっさと決めて送っていただく方が多分スムーズだと思うんですね。なので、やはり受け取る側が、依頼があったら一〇〇%すぐに即決して受けられる、そのためには我々産科のベッド、NICUのベッドも拡充して救急のシステムをつくっていくというのが一番大事だと思っております。

近藤参考人 政策というのは非常に複雑系でありまして、何か一つだけで解決するとはとても思えません。少なくとも四つぐらい、今の時間にも思いつきました。

 一つは、地域の特性があるので、地域ごとに協議会をつくる、言うなら考える頭をつくる、主体をつくるという要素が不可欠でしょうし、あとは、それを担う人材養成、例えば臨床研修、私も救急車を受ける病院で勤めていたのでわかるんですが、いわゆる大学病院出、専門分化したところだけで育った医者は対応できないというようなことを初め、いろいろ技術レベルの問題もあります。それがないまま当直をやるというのは医者の側にとってもとても怖い、それが断る理由になっているという面もありますから、その技術、人材の面があります。

 それから、それを裏打ちする診療報酬のあり方、あるいは、私は診療報酬だけでやるのは危ないと思っていまして、必要な補助金もうまく使うというのが大事だと思っています。さらに、一つの病院にある程度人を集めることを初めとした、配置を工夫するシステムの問題もあろうかと思います。

 一つだけで解決するというのは夢物語だと思います。

寺田(稔)委員 貴重な御意見をありがとうございました。

 それでは、時間が参りましたので、これにて終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

岸田委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、各先生方、お忙しい中お越しいただきまして、また貴重な御意見を御開陳いただき、心より感謝申し上げます。

 御存じのとおり、今回の医療制度改革につきましては、持続可能な制度へ、次世代にツケを回さないという、この思いで私も取り組ませていただいております。

 まず、今後の社会保障制度の考え方という点につきまして申し上げたいと思いますが、この委員会の審議でも、やはり国そして都道府県また市町村、それぞれ担うべき役割をある程度明確にしながら考えていくべきではないか、例えば、年金は国が行う、また医療については都道府県が責任を持つ、そしてまた介護については区市町村が責任を持つ、このような役割分担のもとで、当然相互の連携を図りながら行われるべきではないか、このような論議もございました。

 そこで、何点かお伺いしたいのですが、まず河内山参考人にお伺いをさせていただきます。

 今、医療計画等に加えまして、医療費適正化計画につきましても都道府県が作成をすることに今回の法案でなっております。また、医療機関に関する情報を集約するとか財政面での主軸を担っていただくとかさまざま、都道府県の役割が一層重要になるという方向で明示をされております。そのことにつきまして、市町村としてどのように役割をお考えになっていらっしゃるか。また、その際に都道府県にどのようなことを望まれるのか。

 また、あわせまして、先ほど来、国保の財政の御提案も三点目にいただきました。当然、国保財政は悪化しております。また、未納もふえ始めているという状況もあります。今回、そういう中でも、共同事業の拡充であるとか、これもやはり都道府県が財政を担い、運営は市町村が従来どおり行う、こういう形になっておりますが、そのことも含めまして御示唆をいただければと思います。

河内山参考人 高木先生が御指摘になりましたように、国の役割、都道府県の役割、市町村の役割、これを分権の時代にきっちりよく仕分けをすることがまさに求められております。

 昨年、一昨年と、三位一体改革で金目の方は随分議論がありまして、私どももいろいろと心痛をしたことがございます。というのは、国の役割、都道府県の役割、市町村の役割というのが整理されていませんと、どうしても、余り理屈といいますか哲学がない話で三位一体のこともいろいろと議論をせざるを得ない、そういう不幸なことがございました。

 改めて、今先生が御指摘になったとおりでございますが、年金であるとか、私は、つけ加えまして生活保護も含めまして、それは国がきちんと役割を担っていただきたい。

 それで、まさに御指摘にありましたように、都道府県の単位というのは、制度が先にあるから、あるいは実態としてそれぐらいが適当だ、どちらが先かわかりませんが、医療提供体制、あるいは今の医療費の適正化の計画等々、ひとつ医療にかかわっては都道府県が大きな役割を担っていくのがいいのではないかというのは、これは我々市町村からしますと違和感のないお話でございます。これはやはり今回の後期高齢者の医療制度しかり、それから国民健康保険の再編統合の枠組みもしかりでございますが、できれば、医療提供体制だとか医療費適正化を図っていく責任ある行政主体と保険の方もやはり一つになった方がいいのではないかというふうに、もう従来から私も申し上げておるところでございます。

 その上に立ちまして、きめ細かな対人的な話ですね、例えば、先ほども少し申し上げましたけれども、健康づくりをどうやってやっていくかとか、あるいは最終的に障害者の方々の自立の支援をどうやってやっていくかとか、こういうのは非常に難しい課題でもありますし、手間暇もかかりますけれども、これはやはり、最も身近な政府でないときめ細かな体制はつくれない、対応はできないだろうと思いますので、市町村の仕事だと思っています。

 いろいろと国保の方の問題も、今申し上げましたとおりでございまして、保険も少し広域化をしていくべきだということからしますと、先ほど冒頭に陳述申し上げましたように、今回の方向性としては都道府県単位を軸とした再編統合の方に向かっているのかな、こういうふうに考えておりまして、これは今後実効性が出てくればいい制度ではないかと考えております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 続きまして、奥野参考人に伺わせていただきます。

 大変僻地医療につきまして御苦労を重ねながら尽力をされているという、自治医大一期生という誇りを大変痛感させていただきました。

 そこで、今、私は東京所属でございまして、東京にも小笠原という島がございます。船で二十六時間かかるという島でございまして、出産するには四カ月がかりで、都内に来て、そして宿泊をして、子供の首が据わるころ島へ戻る、このような形になっております。

 やはり僻地、離島におきまして安定的に医療を確保するということは大変困難であると思っております。この離島医療の確保につきまして、国や都道府県の支援策としてどういったものが有効とお考えか、御示唆をいただければと思います。

 これは私の考えですけれども、例えば、そうした地域に若手医師の方に積極的に行っていただく、このような制度の創設はいかがかと思います。ただ、ほやほやの方ですと、なかなかそこで一から本を参考にというわけにはまいりませんので、ある程度基礎をきっちりとやった上で行っていただく、そしてまた、お戻りになったら何かしら御本人の恩典といいますか希望がわくような、そのような配慮ができる、こういったシステムも必要なのではないかと思っておりますが、この点につきまして御意見を伺いたいと思います。

奥野参考人 若い医師が僻地に行くというふうなことで、一つ非常にわかりやすいのが、自治医科大学の卒業生というのは義務ということで僻地に行くわけですけれども、その義務が終わった後でも、僻地に勤務をしたい、あるいはしているという方が結構多いんですね。

 それはどういうことかといいますと、まず、学生教育におきましても、それから卒後の研修におきましても、現在は変わってきておるんですけれども、従来、僻地で物を学ぶという仕組みあるいは制度が全くなかったわけです。医師が将来どういうふうな医師になりたいか、どういうふうになろうかと選ぶときには、必ずや、学生のときにそういう現場を見ている、あるいは体験する。それから、もっと大事なことは、医師になって、医師として責任ある立場として現場に行くということでその現場を知って、たくさんある選択肢の中から、内科になる、外科になる、またもう一つは地域の医療に行くというふうなことができるわけです。

 ですから、仕組みの中で僻地での医療を体験するといいますか実際勤務するというふうなことが、僻地に行く人をふやすといいますか、知っていただかない限り、それを知らないのに僻地医療を選ぶというのはなかなか勇気の要ることであります。

 それから、若干ポイントは変わるかもしれませんが、僻地というものを考えられるときに呪縛というのがありまして、僻地に行くには、まず、いろいろな科ができないといけない、それから、長くいないといけない、あるいは長くいてほしい、それから、住民と溶け込んでほしい、そういったことが望まれるわけですけれども、ともすれば、皆さんの僻地に対するイメージの中から、そういうことがあらかじめできていないといけないよというふうなことがあります。

 それは、三つとも、どちらかといえば余り大きなことではなくて、長くいても、私も結構長くいるんですけれども、いいこともありますが、一人の医師が長くいるということは弊害もあります。私を好きな患者さんもおりますけれども、嫌いな患者さんもおるわけで、そうしますと、長い間その患者さんはつらい思いをするわけです。

 それから、短期間で医師がかわるということも、いろいろな医師がいろいろな見方をして、僻地の医療を物すごく長い目、百年とか二百年で見れば、長い医師もいてもいい、短い医師もいて、いろいろな角度でそれが見られるというふうなこともあります。

 それから、たくさんの科が診られるということは、それはとても無理な話でありまして、ただ、たくさんの科のいろいろな患者さんをひとまずは診ることが大事だということです。ひとまず診るということは、私は眼科をやっていませんから眼科は診ませんということではなくて、ひとまず診ることができる。そのためには、今やっております医師臨床研修制度のようにして、いろいろな科をひとまず回っておくというふうなことが大事かなと思います。

 答えになったかどうかわかりませんけれども、この辺でお答えとさせていただきます。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 それでは、小児医療、また女性医師の問題につきまして、鴨下先生とそれから奥田参考人にお伺いをしたいと思います。

 まず、小児医療のことにつきましては、これは大きな課題でございまして、この委員会でも大変熱い審議が繰り広げられております。小児医療は、今後の方向性としましても、まず、十八年度、各都道府県が病院を重症患者向けと軽症者向けに分ける、そういう再編プランを策定する、また、小児専用の集中治療室を全国十カ所の民間病院に整備する、こうした集約化が図られているところでございます。

 このことにつきまして、小児医療の今後の本当に大きな方向性といいますか、今、医師不足である、そしてまた夜間に集中しがちである、こうしたことに対しまして先ほど来提言をいただいているわけですが、鴨下先生に重ねてこの点につきましてお伺いをさせていただきます。

鴨下参考人 ただいまの御指摘は大変重要なことでございまして、小児医療の集約化ということは前々から考えられておりました。ただ、基本的に、これは私個人の意見でもございますが、やはり今火事だから火を消すという段階で、やむを得ずやるという方向かと思います。

 長期的には、むしろ小児科医をふやす、産科の場合も同様でございますが、そのためには、これは文科省の管轄になろうと思いますけれども、現在の国立大学等にぜひ、母子医療センター、そういうものをつくっていただいて、医師をどんどん学生時代からそういう方向へ向けていただくということを考えなければいけないのではないかと思います。

 それがお答えでございますけれども、よろしゅうございましょうか。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 先ほど来、鴨下先生が母子医療を特別に位置づけるとおっしゃることをしっかり受けとめさせていただきました。

 実は、我が党も今、少子社会トータルプランの最終の取りまとめに向けまして準備が最終段階に入っているところでございます。先ほど来、子供を大切にする意識、これを国民の大きな力にしなければいけないというお話も受けとめさせていただきました。

 そこで、私申し上げたいのは、女性医師の問題でございます。

 近年、御存じのとおり、女性医師が大変ふえておりまして、最近では医師試験合格者が三割であるとか、また、ことし、産科医につきましては四割が女性である。こうした傾向はますます強くなると思います。

 先ほど奥田参考人からもお話ありましたとおり、やはり育児、出産と、女性医師が仕事とどのように両立できるかという観点から考えますと、女性医師には特別な支援がなければ就労継続はなかなかできないのではないか。今、この傾向はますます強くなりますので、五年後、十年後を考えますと喫緊の課題ではないか、このような意識を持っております。そうしたところから、女性医師バンクの提案もさせていただきましたし、我が党を挙げて今取り組ませていただいているところでございます。

 そこで、女性医師の支援につきまして伺わせていただきたいと思います。

 院内保育所であるとかさまざまなことが行われると思いますが、今一番求められている、また対応しなければいけない対応策といいますのはどのような点が考えられますか。このことを鴨下先生と奥田参考人にお伺いをさせていただきます。

鴨下参考人 これも、今先生がおっしゃいましたように、大体もう全国レベルで学生の数で申しますと、ほぼ四五%以上かと思います、女性が医師になる。そういうことで、今後、五年、十年あるいは二十年後には、むしろ女性医師の方が総数としては多くなるという状況で、そういう中で、女性医師を支援するということを徹底的にやらなければいけないのではないか、こう考えております。

 具体的には、子供を育てながらでも勤務できるような体制、保育所もそうでございますし、それから、今まで常勤医というのは一人ということでしたけれども、女性は、仮に時間をずらしてフレックスタイムで二人で一人とか、勤務体制をできるだけリベラルにする、そういうことで女性医師がもっと働きやすい環境にしなければいけませんし、それから、産休、育休で第一線を離れて復帰する場合にも、ぜひ再教育の期間も必要でございますので、そういった点についての配慮が、これは主にやはり病院なり医療機関として考えていかなければいけないことだと思います。

奥田参考人 私も鴨下先生に全面的に賛成ですが、現場の声として言わせていただきますと、やはり保育所の問題はあると思います。外資系の企業なんかですと、保育所の中が充実しているというふうに聞いておりますので、やはり我々の勤務体制、先ほど申し上げたような勤務からすると、二十四時間三百六十五日、安心して預けられる保育所を院内につくる、医師が預けられるもの、お金がかかっても結構ですので、院内にそれをつくっていただきたいとずっと考えております。

 ただ、そうしますと、逆に子供と接する時間がすごく少なくなって、我々としてはせつないというのもございます。

 あと、やめていく女性医師の一つの声として、私はどうしても当直はやはりできない、でも、当直ができない状態で常勤の数を埋めてしまうとほかの当直する先生の当直がふえて申しわけがない、そういう遠慮から、もうちょっと働きたいんだけれどもやめますというふうにやめる人も結構いるんですね。

 なので、鴨下先生のおっしゃるとおりで、やはり勤務体制に区別をつける。やはり病院も、そういう形で人数をたくさん雇うのはしてくれないんですね、どうしても。やはりそういういろいろな勤務体系があっていい。そのために、何人をどういうふうに雇ってもいいんだというような形で、病院が柔軟に対応していただけるというのが一つ解決策になるのではないかとずっと考えております。

高木(美)委員 貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。

 小児科、産科、両方ともこの問題は共通する大きな課題でございます。やはり女性が働きやすい環境にどのようにしていくか。それによりまして、それが恐らく僻地医療にも、またそれぞれ地方の病院にも、今の医師不足、母体をしっかりしますと、派遣することができる、また地方に残ることができる。この女性医師の問題の解決というのが、私は、大変これは今後の少子高齢社会に対応するためにもまさに喫緊の課題であると思いますので、今後ともしっかり取り組ませていただきたいと思います。

 最後に一点、もう一度、恐縮でございますが鴨下先生にお伺いしたいのですが、在宅医療のことでお話がございました。やはり在宅医療は、今後どうしても推進しなければならない大事な点であると思っております。

 そこで、先ほどのお話の中で、卒後、在宅医療の専門家を後期研修を通して育成したいというお話がございました。当然、在宅医療につきましては、先ほど乳児から高齢者までという御提案もいただきまして、この先生の御提案につきまして、どのような人的な資源で対応することがふさわしいのか、またそのための研修をどのように行われるべきなのか、この点につきまして最後にお伺いをいたしたいと思います。

鴨下参考人 お答え申し上げます。

 これは、在宅医療の専門医あるいは専門家というのは、非常に今まだ少ないわけでございますね。学会も熱心にそういった方面から開かれておりますけれども、今後、ちょうど今、医師の研修について申しますと、初期の二年が終わったところでございますので、これからの後期研修の課程としてそういう道をぜひつくるべきではないか。

 先ほど来、奥野参考人は自治医大の卒業生で、自治医大の卒業生は、やはり現場に若いときに行って、そこでいろいろ学んだことをそのまま生涯通して頑張っているわけですね。ですから、それと同じように、やはり医師としての早い時期にそういったターミナルケアあるいは子供の在宅医療ということに触れた者が専門の道に入っていくということが必要ではないか。それを何か義務的にやらせるということではやはり解決しないのではないか。診てもらう患者さんの方にとっても、決してそれはハッピーなことではないだろうと思います。

 ですから、そういう道を自然につくっていくということで、恐らく文科省にはまだそういう卒前教育の構想といいますか、ないのではないかと思いますので、せめて卒業してからの早い時期にそういう道を開くことを考えていかなければならないのではないかというふうに、これは多分に個人的な考えでもございますけれども、そう思っております。

高木(美)委員 大変貴重な御提言をいただきまして、ありがとうございました。

 時間の関係で山崎参考人また近藤参考人に御意見を伺うことができませんで、おわびを申し上げたいと思います。大変にありがとうございました。以上で終わらせていただきます。

岸田委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 きょうは、参考人の皆様方、それぞれのお立場で大変貴重な御意見をお聞かせいただきました。私からも深く感謝を申し上げます。

 今般審議に上がっております医療改革関連法案、政府の案は医療費の抑制が第一義に掲げられております。私は、本来の医療改革の大切な視点というのは、一つは、患者である私たちの権利や尊厳がしっかりと確立されること、それから、現場で働いていらっしゃるお医者さんたちの労働者としての権利が明確化され、そしてまたモチベーションを上げて、誇りを持って働き続けられる基盤整備を行うこと、そしてまた、医療事故などが起こったときの補償制度、これが重要であるというふうに考えております。

 私どもは、その観点から、今国会に民主党として三つの医療関連の法案を提出させていただきました。きょうは、良質な医療を構築するためにも、参考人の皆様方からの貴重な御意見、大変参考にさせていただきたいと考えているところでございます。

 けさの新聞にございました、産婦人科医、二年で四百十二人、八%減という新聞のコピーをとってまいりました。この新聞を見て、そしてまた奥田参考人の意見を伺いまして、思わず納得せざるを得ないような、そんな気がしたところでございます。大変現場の厳しい状況がお話しされたわけですけれども、ワークライフバランスをどういうふうにとっていくのかということが大変重要な観点になるなというのを改めて認識させていただいたところです。

 そこで、奥田参考人にお話を聞かせていただきたいと思います。

 まず、女医さんとして、産婦人科医として現在まで勤務を続けてこられましたけれども、今現場で強くお感じになっていらっしゃること、先ほどの意見陳述にもございましたが、おっしゃり足りなかったところがあれば、ぜひお加えいただきたいと思います。そして、私どもの政策として何が重要であるというふうにお考えになっていらっしゃるのか、お願いをいたします。

奥田参考人 ありがとうございます。

 とにかく人手が不足しています。先ほどお話ししましたとおり、現場の医師が疲弊し切ってやめていき、新しい人は入らない。この悪循環を断ち切るためには、やはり先ほどから申していますように、分娩取扱施設を集約して、一施設当たりの医師数をふやして労働環境を改善するというところが急務だと思っております。どこにどれだけの分娩数を扱える病院を整備するか。そこに何名の医師を、しかも産科だけでは無理ですので、麻酔科と小児科と含めて何名集めるか。もちろん、集めるためには分娩を取りやめなければいけない病院もある。

 でも、そうすると、行政とか病院の方のそれぞれの思惑も絡んでくるということで、現在は医師の配置は、やはり各大学レベルで配置をしているのが現状ですけれども、おのおのの大学レベルではなくて、もう全体の国レベル、各県レベルで介入をしていただかないと、我々どもの対応だけでは不可能だというふうに思っております。広く薄くやっていくことは、もはや現状ではすべきでないと考えております。

 それでよろしいでしょうか。

郡委員 ありがとうございます。

 先ほど来のお話の中にもございましたけれども、産婦人科学会の女性医師の割合が、三十五歳以下ですと五七%にも上っている、四十歳以下で四九%になっている、女性も本当に働きやすいような職場環境の整備が必要であろうと思うわけですけれども、大変ハイリスク分娩というのもふえているというふうに聞いております。

 そういった場合の、何か起こったときの無過失補償制度といったようなものを設けるべきであるという意見も多いわけですけれども、これに対しての御意見と、それから、先日、福島県の大野病院で産婦人科医が逮捕されるという大変ショッキングな事件がございました。現場の産婦人科医の皆様たちにはどのようにこの事件が衝撃として伝わったのか、そしてまた、この事件を教訓にどういうようなことをすべきと考えていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。

奥田参考人 昨今、確かにリスクの高い分娩がふえているというのは現場でも感じておることでございます。

 まず、何か起こったときの無過失補償制度というところからですけれども、私、ちょっと知識がまだ足りなくて、勉強不足で申しわけないんですが、無過失補償制度、そもそものところは、分娩のときに子供さんがぐあいが悪くなって何らかの障害を残してしまうということは、分娩に際してある一定の頻度で起こってまいります。それが果たして我々産科医の介入によって防ぎ得たものなのか、それともどうしようもなかったものなのかということの判定は非常に難しく、専門家の考えとしては、子供さんが障害を残された場合に、それが分娩時の酸素が足らない低酸素によるものではないケースの方が多いというふうに考えております。

 そうした、結局、医師に過失があるのかどうかもわからない、でもそこに、対応が必要とされているぐあいの悪い子供さんがいるというのは事実で、まずその子供さんたちを守ってあげなければというところで、補償の先にまずその方たちに手厚くしてあげるというところにあるというふうに考えておりました。

 ですので、それは、医師だけを守るというものではございません。

 また、大野病院の件ですけれども、分娩というのは、やはり我々がどんなに精いっぱい対応しても、母体死亡ですとか新生児の後遺症、亡くなられるという結果になってしまうということは、本当にどうしてもある一定の確率で必ず生じ得るということは我々の中ではまるっきり常識のことなんですけれども、やはり当の、それに当たられた方というのは、それがすべてということで、御納得いただけないというのは感じました。

 私は法律に関しては素人ですので、その素人である我々にとって、刑事事件で逮捕をされるということは、刑事事件というのはやはり自分が何か悪いことをして、悪いことをしたんだから逮捕をされるというイメージがありますので、何の悪気もなく、一人医長で、しかもその場でやれる限りのことを一生懸命、精いっぱいの力を尽くしても、それでも起こってしまった母体死亡ということに対して逮捕をされるというのは、やはり我々、全く納得がいっておりません。

 ですので、リスクのあるものに対して尽くした結果が悪いと責められるというのであれば、結局、悪い可能性になるかもしれないものには手を出さないということで身を守るしかない、結果として、産婦人科、産科に携わることはしない方が自分の身を守るためにはいいということで、なり手がますますいなくなり、しかも、産科医をやっていてもリスクのありそうな分娩には手を出さない、全部送りつけてしまおうということで、周産期センター、我々のところにすべて集中し、ですが、現在の我々どもの周産期センターでは、それをすべてお引き受けするということは、体制では全く対応し切れません。それを受け入れて、医師が疲弊して、またやめていくということの悪循環を今繰り返しております。

 ですので、今回の事件というのは、産科医の減少に拍車をかけただけだというふうに私は考えております。

 あと、産科の医師が減っているというその数字ですが、先ほども申し上げたように、数字上はそうですけれども、その中で分娩に携わる医師の割合はもっと減っているというふうに思っておりますので、それも一応述べさせていただきたいと思います。

郡委員 ありがとうございます。

 奥田参考人のいらっしゃるところは、日本の中でもハイレベルの産科医療の施設だと伺っておりますけれども、そういう現場においても大変ぎりぎりのところでいらっしゃるということがよくわかりました。

 次に、がん対策基本法についての大きな期待をお寄せいただいた山崎参考人にお尋ねしたいと思います。

 お話を伺っておりまして、これまで政府が行ってきたがん対策というのは、患者の皆さんたちの声にしっかりとこたえていなかったのだなというようなことも改めて感じたわけでございます。患者の不安やそれから苦悩に対して寄り添うようにして考えなくちゃいけないことであり、また、積極的に情報を提供して問題を共有する姿勢に欠けていたのではないだろうかというようなことも感じざるを得ませんでした。中途半端な財源投入に終始すれば、がん治療を行えないがん難民の方々が今後もふえていくんじゃないかと実は危惧を持ったところでございます。

 そういう中で、今法律改正案の中で、政府案では、がんの情報につきまして、情報センターを設けるということで十五億円余りの予算がつけられました。これはがん患者の皆さんたちにとって朗報になり得るものなのかどうか、そしてまた、各国の状況とも比べてお話しになりましたけれども、日本でがん対策がなかなか進まなかった理由というのはどういうところにあったとお感じになっているのか、お話を聞かせていただきたいと思います。

山崎参考人 御質問をありがとうございます。

 日本のこれまでのがん治療が進んでいなかったということなんですけれども、情報センターに関しましては、昨年、尾辻元厚生労働大臣ががん対策室を厚生労働省の中につくっていただいて、そこでアクションプラン二〇〇五というのをつくっていただきました。その中で、患者さんにとってプラスになる情報というのを、国立がんセンターの情報センターを中心に津々浦々全国に回しましょう、こういうことをしていただきまして、先ほどお話があったように十五億円の予算がついております。これは十月一日から始まるプランなんですけれども、今現在、かなり進んでいるというようにお話を聞いています。

 私たち患者会としても、これまで、厚生労働省のがん対策推進室、あと、各政党のがん議連の方々、プロジェクトチームの方々とお互いに良好なコミュニケーションをとり、患者にとってプラスになるにはどういうことをしていただきたいかということをお伝えしていまして、それででき上がったプロジェクトがアクションプラン二〇〇五というものなんです。それなので、あれに関して私たちはとても期待を持っていますし、国民としては、あれが実行されることをとても注目して考えております。

 諸外国と比べて日本のがん治療というお話なんですけれども、今の状況は先ほどお話ししたとおりなんですが、厚生労働省だけですべてのがんの医療、がんの罹患率、死亡率が下がるとは私たちは考えておりません。諸外国の例でもわかるように、国家が中心となって、厚生労働省だけじゃなく、法務省だとか文部科学省だとか総務省だとかいろいろなところと連携をしてしなければいけない、そういうふうに考えております。先生方もそのように同じお考えだと思いますので、今回、がん対策法というお話が出てきたのではないかというふうに思いました。

 それなので、今回、日本のがん医療を進めるためにはどうしてもがん対策基本法というのが必要であり、国民のニーズの一番高いこれを何としても推進していただきたいということで、よろしくお願いしますというのが、先ほど十五分いただいて話した趣旨でございます。

郡委員 情報センターを構築する上でも、この情報というのが、根本的な基礎研究がしっかりなされているのか、情報の格差はないのかどうかというところも気になるところだと思います。情報の格差が依然ある中、そしてまた未承認薬の問題などもあると思うんですけれども、そのためには、しっかりとした、がんという病気に対する研究とそして治療に対する研究基盤の整備が重要な課題であろうというふうに考えております。

 今法案の中にも、がん登録というふうなことも入っているわけですけれども、このがん登録の必要性と、また一方で、個人情報の漏えいにつながるのではと危惧する御意見もあるようですが、この点について少しお考えをお話しいただきたいと思います。

山崎参考人 今回、がん対策法、日本のがん患者会の多くは賛成なんですが、中には個人情報収集という部分でちょっと疑問を持っている方々もいます。どういう問題といいますと、今御指摘があったように、なぜがん患者だけ個人情報を提出しなければいけないのか、それが自分たちにどういうメリットがあるのか、それがわからないと、とても情報が漏れたときに心配ですという御意見です。

 ところが、これに関しては自分たちはこのようにお話ししています。まず、今すぐ自分たちにプラスにはならないかもしれない、ところが、情報を蓄積していくことにより、各都道府県でどういうような傾向があるか、病院の格差はどうなっているのか、どこの病院がよくてどこが悪いのか、そういうものが統計学的に科学的根拠にのっとって出てくる、これが日本の医療を進める上で一番大切と考えております。

 また、個人情報をとることに関しても、これはがんだけではなく、既に例えば結核などでもとっていますし、今回、個人情報が漏れるという問題と情報収集して役立てようという問題は全く別なことだと考えています。あくまでも情報が漏れないようにしっかりしたシステムを構築した上で、科学的根拠にのっとって、全国一律にがん登録により情報を収集し、これからの医療に役立てる、その部分というのははっきり分けていただいて考えていただくのが、今後の日本の医療、世界的標準に近づくためにも絶対に必要だと私たちは考えております。

郡委員 ありがとうございました。

 時間も余りなくなってきたんですけれども、次は鴨下参考人にお話を伺わせていただきたいと思います。

 産科医療と同時に、また小児科の現場も大変厳しい状況を先ほどお話しいただきましたけれども、これを、勤務医の方々を二交代あるいは三交代にして勤務状況を少し緩和してあげることが重要であろうというふうにも考えているんです。このためには、現行の診療報酬ですけれども、産科の場合は分娩費用ということになりますが、これを倍にしなければできないのではないか、そういう御意見も聞くところですけれども、どういう御見解でいらっしゃいますでしょうか。

鴨下参考人 ありがとうございます。

 小児医療に手厚くしていただくことは全く異論がないところでございまして、二倍でも三倍でも上げていただければ結構でございます。

 ただ、医師の勤務という点から見ますと、やはり小児科医、これは医師の数の不足ではなくて、ここに書いてございますけれども、実際にはワークフォースといいますか、小児科医は過去十年少しずつ学会員としてはふえているんでございますね。しかし、働ける人数が少ないということでして、これは、一つは医師が高齢化をしてどんどん第一線から去っていくということと、それから先ほど来問題になっております、女性医師が非常に多くなってきていて産休、育休等で戦線を外れるという問題でございますね。それに対して、男性の医師なりがカバーしているわけです。

 特に女性の医師が、三交代というよりも、できるだけそこを、フレックスタイムとか、勤務を一人で常勤というのではなくて、二人、三人で常勤並みに病院として手当を出していただくというような方向で解決できるのではないか、そういうふうに考えております。

郡委員 ありがとうございます。

 先生がおまとめになられました小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究の報告書の中にも、小児科の病院の収支というのが大変厳しい状況である、その施設の四割が赤字であるというふうな御報告がありまして、地域医療圏ごとの小児医療体制の見直しと赤字対策に抜本的な対策が必要である、特段の財政の投入というのが必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

鴨下参考人 そのとおりでございまして、ぜひそういう方向でお考えいただきたいというふうに思います。

 実際に、私は小さな病院の病院長をしておりますが、小児科をやめれば黒字になることはわかり切っているんですけれども、それはやはり病院といいますか私どもの使命上そんなことは絶対にできないから、歯を食いしばっても頑張るということでございます。よろしくお願いいたします。

郡委員 大変ありがとうございました。

 河内山参考人、それから奥野参考人、また近藤参考人にもお話を伺うべきところでございますけれども、時間が参りました、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、六人の参考人の皆さん、お忙しいところ本委員会においでをいただきまして貴重な御意見を聞かせていただきました。本当にお礼を申し上げます。限られた時間ですので、本当はすべての皆さんに質問したいのですけれども、多分そこまでは行き渡らないだろうということを初めにおわびしておきたいと思います。

 最初に、河内山参考人にお伺いをしたいと思うんですが、高齢者医療制度が都道府県を単位とする広域連合となる、このことについて評価をするというお話でありました。私は、財政が脆弱な市町村においてはやはり市町村単位では大変なんだという声が全国的にも多いということを踏まえての発言かと思っておりました。同時に、今回、保険者の再編ということが盛り込まれておりまして、高齢者医療制度においても、あるいは国保の問題においても、都道府県単位で均一の保険料、こうしたことを決めなければならないということになると思います。

 しかし、当然市町村においてはかなりの格差がございまして、これを均一化を図るということによって、医療費の抑制ですとか、あるいは大幅な値上げを余儀なくされるということがどうしても持ち込まれるのではないかという危惧がございますけれども、その点について伺いたいと思います。

河内山参考人 市町村ごとに運営をしております国民健康保険を例にとりますと、給付そして負担の格差というのは、同じ都道府県内でもありますことは事実でございます。

 これは一体何に起因するのかということにつきましては、いろいろな専門の先生方が分析をされております。保険者の責めによるべきことというのは、ないわけではないと思います。というのは、例えば、全くもってヘルスの事業に取り組まないとか、あるいは、ほかに何か具体的事例があれば申し上げますが、さほど、そういうふうに保険者の責めによるべきものというよりは、ある地域は非常に高齢化が進んでおりますとか、あるいは、医療提供体制との関係でいいますと、受診をしやすい地域と受診をしづらい地域というようなことがございます。あるいは、医療に対する市民といいますか被保険者の意識も、これも非常にばらばらでございます。

 例えば、高齢化が進んでいるからといって、では極端に医療費がかかるのかといったらそうでもないことは、もう全国津々浦々いろいろな事例がございます。今、市町村合併が進みましたので町の名前自体はなくなりましたけれども、山口県の東和町という、私の柳井のすぐ近くの周防大島という島の中の町がございまして、一時期全国で一番高齢化が進んだ、五〇%を超えるような高齢化の町がございまして、ここの方は意外に元気でありまして医療費はさほどかかっておりません。

 したがって、さまざまな要因で保険料は格差があり、医療費支払いの方も格差があるわけでございまして、差があるというのは、本人たちの努力、保険者の努力不足というんじゃなくて、社会的なさまざまな要因によってそうなっているわけでございますので、それを徐々にならして同じような負担で同じようなサービスが受けられるということにする方が、私は、保険の本来の意味合いからしたら正しいのではないかと。余りにも小さいところで保険者として本当に基盤が全くない保険者よりは、保険の基盤が安定している方が保険として望ましい、そういう意味で広域化は望ましいと申し上げたいというふうに思います。

高橋委員 徐々にならしてということでありましたけれども、確かに、そういう一定の不均一な措置もしながらという制度が盛り込まれておりますが、やはり心配しているのは、それが被保険者への大幅な負担増といいますか、そうしたことにつながらなければいいなということを危惧しておりました。そのことでは多分同じ立場ではないかなと思われますけれども、もし意見があったらまたお聞かせいただければと思います。

 あわせて、ヘルスの問題なんですけれども、今回、生活習慣病対策としての特定健診については保険者に義務づけることになったわけですが、その他の保健指導については健康増進法によってまた市町村が負うことになるかと思います。また、四月から導入された介護予防、これについてもやはり市町村にその実施が委託されると思いますけれども、これらを実効あるものにする上で市町村の課題は何かということ、私は、やはり、ここにかかわる保健師さんですとか、マンパワーの確保というのが非常に大事ではないかなと思っているんですけれども、その点での御意見をお聞かせいただきたいと思います。

河内山参考人 いわゆるヘルスの事業というのは、先ほども言いましたけれども、市民の意識が非常に大きな影響を与えると思いますが、と同時に、御指摘のように、どういうふうな実施体制で行うのか、どの程度行うのかということが非常に大事だというふうに思います。

 マンパワーの確保の問題ももちろん一つの大きな課題であると思いますが、これは、今は公的な機関だけではなくて民間の企業も含めまして、健康を保持し健康を増進するためにさまざまなプログラムを開発して成功の事例をおさめたところもございます。したがいまして、単にマンパワーを確保すれば物事ができるというよりは、非常にこれは科学的なものだというふうに考えております。

 科学的だというのは、どういうふうにやればヘルスの実効性が上がってくるのかというのは、これは市町村にとりましてはやはりノウハウが非常に大事だ。今まで、市町村が行いますヘルスの事業は、やっているんですが、ややもしますと次のようなことが生じます。というのは、何の問題でもそうですが、よく理解をされて、健康に非常に関心があって、日ごろから生活習慣も改善をしようという意欲のある方が市町村が行うヘルスの事業には参加をされる。本当に来ていただきたいハイリスクの方々はなかなか集まられない。

 したがいまして、今後、市町村が行うヘルスの事業を実効性あらしめようと思いましたら、診断が非常に最初の段階で大事です。健診が大事ですね。それと同時に、ハイリスクの方々をどういうふうにして選んで、ハイリスクの方々に適切なプロモーションというか実行すべき課題というものを認識してもらって、それを今度は検証して、さらに実行してもらう、こういうプログラムというのが非常に大事だと思います。

 そういう意味では、マンパワーの確保と同時にそういうノウハウの導入というのが市町村にとって大事でありますし、それはこれまでも国民健康保険の分野ではヘルスアップ事業等で取り組んでまいりましたし、今後も私どもも取り組もうと今思っておりますけれども、全国各地でそういう実践的なことをやって、さらに実効あらしめることが非常に大事だというふうに考えております。

高橋委員 保健、健康指導の民間企業の活用といいますか外注の問題についてはまた少し意見が分かれるところでございますので、ひとつこれは参考にさせていただきたいと思っております。

 次に、山崎参考人に伺いたいと思うんですけれども、がん対策に対して基本法をぜひという非常に熱意あるお訴えをいただきました。短い時間で本当は語り尽くせないことがたくさんあったと思うんですけれども、がん患者の皆さんが抱えている思いや課題というのが非常に伝わってきたかなと思っております。三人に一人はがんで亡くなるということで、だれもが関心を持っている課題でありますし、私も父をがんで亡くしておりますので、この問題では本当に皆さんと力を合わせて成果を上げていきたいと思っております。

 それで、きょうは、こういう機会ですのでぜひ伺いたいのは混合診療の問題であります。

 現行制度では、国内未承認薬が国内で承認されるまでに時間がかかり、欧米で承認されているのに、全額自己負担でないと使えない、そういう声が上がっているとして、規制改革・民間開放推進会議が混合診療の全面解禁を要求し、二〇〇四年の十二月十五日に、当時の尾辻厚労大臣と行革担当大臣で、いわゆる「混合診療」問題に係る基本的合意が取り交わされました。この合意に基づいて、今回の保険外併用療養費、この中にほぼ混合診療すべてに対応する内容が盛り込まれているということを厚労省から私は説明を受けております。

 そこで、患者の皆さんが、もう一般的に欧米では使われているものがあるのに、なぜ国内では使えないのだろうかとか、あるいは、混合診療が認められていないためにすべてが自由診療になってしまって、全額自己負担は本当に大変だとか、そういう切実な声があるということは十分承知をしているところなんです。

 ただ、同時に、それで本当に混合診療一路に進んでいいのかというと、やはり保険でかかれる医療、これを拡充していくことが本来は大事なのではないか。安全、安心は確保されるのだろうか、あるいは、結果としてお金のある人しか高度医療や最新医療を受けられなくなるのではないか、こうした心配があるわけですけれども、ぜひ山崎さんの率直な御意見を伺いたいと思います。

山崎参考人 御質問をありがとうございます。

 今の質問に対して二つお話しさせていただきたいと思います。

 一つは、まず、当時、いわゆる混合診療ということで、先ほどお話があったように、厚生労働省とお話がつきましたが、その中で、お金の問題だけではなく、厚生労働省の方でも、欧米で承認された薬に関しては半年以内に審査をして、国内で必要かどうか、もし必要だったらそれを製薬企業にフィードバックして、少しでも早く治験をするようにというシステムもできました。これは自分たちは大変評価をしております。そういうプラスの面があった、そういうことが一つ。

 もう一つは、混合診療、欧米で承認されている、日本で使えない、それを使うと、これまで一割負担または三割負担だったのが、全額自費になるのはおかしい、これは自分たちが主張しておりました。この主張などの根本というのは、あくまでも緊急避難的にやっていただきたいということで、基本的には日本のフリーアクセス、均一料金、それでよい医療を受けたい、これは自分たちも堅持したいと思っています。

 そこで、今治験の検討会というものが厚生労働省の中で行われていますけれども、本当にいいものはできるだけ早く出すようにする、もし害があったら、それをすぐとめる、そういう基本的なものをしっかりやっていただければ混合診療云々という問題というのはそう大きな問題じゃないと思っているんです。

 自分たちも、あくまでも、たとえがんの患者さんでもいつかはがんで亡くなることがあります、しかし、薬害で亡くなるというのも認めているわけじゃありません。がんで一年闘病できる方が薬害で半年で亡くなってしまうのは、それは本末転倒なので、あくまでも科学的根拠にのっとって、薬はリスクもあります、ベネフィットもありますから、そういうことをてんびんにかけてしっかり審査していただきたいね、それが基本的だと思っていますので、あくまでも混合診療どうのこうのという問題はそれに付随する緊急避難的なお話だと考えております。

 基本的なことをしっかりと国民を代表する皆様の間で審議していただいて、国民のコンセンサスをとり、結論を出していただきたいなと思っております。

高橋委員 非常に貴重な意見をありがとうございました。

 だんだん時間がなくなってきましたので、奥田さんにもぜひ一つだけ伺いたいと思います。

 本当に想像を絶する実態というか、過酷な勤務の一端をお聞かせいただいたと思います。貴重な時間を割いて本委員会に御出席いただいて、本当にこれを受けとめて、私たちの責任を果たしていきたいと思っております。

 奥田さんの提案は、やはり集約をし、また分娩に係る医師をふやすことであるという提案でありました。

 私は、その前段として、集約するにも医師がいないような地域にも住んでおりますので、なかなか課題は多いのではありますけれども、しかし、まずそれを図っていく上で、報告の中にも出ていたかなと思っているんですが、今非常にハイリスクの妊婦を抱えているということが分娩の現場でも起きているのではないかなと思うんですね。そこがやはりもう周辺の産院では対応し切れなくて集中してくるという実態が紹介されたのかなと思うんですけれども、その点でできることがあるのではないか。

 つまり、妊婦のときのもっと健診の充実ですとか、民間の産婦人科といわゆる初期段階でのデータを共有するですとかの連携の問題とか、あるいは思春期の教室などということを保健師さんがやっておりますけれども、そういう今ハイリスクの妊婦ができてくるその背景には、若いうちの未熟な出産でありますとか、あるいは働き方の問題ですとか、そういうさまざまな要因がございます。そうしたことをあわせて連携がとれるということも一つの方策ではないのかなと思っているんですが、御意見を伺いたいと思います。

奥田参考人 御質問ありがとうございます。

 どちらからお答えすればいいのか、まず地域の問題ですけれども、私は確かに首都圏に勤めておりますので、集約化しろ集約化しろといっても、地域で集約化してしまうと非常に距離が長くなってしまう、そこをどうやって解決していくかというのは、私のような若輩者にはちょっと荷が重いところでございます。

 それでも、先日、東北地方の女性の医師とお話をしたんですけれども、月に十回当直をしている、またちょっと今大きな学会をしておりますけれども、その学会に何とか出席をするためにゴールデンウイークはすべて勤務であるというような話をちょうど聞いてまいりました。でも、それを聞いても別に全然私は驚かないんですね、産科医師はそんなものだというふうに思っておりますので。ただ、それを解決するにはどうしたらいいのかというのは、先生方に本当に考えていただきたいと思っております。

 それから、ハイリスク妊婦の方なんですけれども、ハイリスクと最初から認識をして、我々どもの周産期センターにお送りいただいているという症例はまだいいんですね。ですけれども、分娩というのは、先ほども申し上げたように、全く何の問題もない、合併症もなく経過も順調だった方に突然何かが起こってしまうというようなことも、それもやはりハイリスクであり、予測できないものである。やはりそれをすべて解決するには、どれにもすべて余裕を持って対応ができるというような周産期センターの分娩をふやしていくということに尽きると考えております。

 そうしますと、産婦さんのニーズですとか、例えば近いところに分娩施設がないですとか、もっと自然に分娩を、病院でも結構自然にはやっているんですけれども、助産所でお産をしたいとかというニーズの問題も出てきますが、そのようなニーズに対しても、何か突発的なことが起こったときにすぐに受け入れてあげられる体制、そのためには、我々どもに余裕を持っておかなければいけなくて、でも、病院側は空床があるとか余裕のある人員とかということにどうしても首を縦に振っていただけないのが現状ですので、そういうことを解決していただけたらというふうに考えております。

高橋委員 ありがとうございました。

 もう少し伺いたいんですが、時間がないので、残りの時間を近藤先生に伺いたいと思います。

 非常に短い時間で簡潔に説明いただきましてありがとうございました。

 一つに、まず「医療費抑制という目標は妥当か?」ということで、厚労省の推計は常に過大であったということが提起をされました。

 先生の説明の中にも出てくるように、やはり自己負担の増加が、結果としてはコスト削減につながらないのではないか、あるいは受診抑制が強まるのではないか、そうした指摘などもされていたところでありますが、私は、多分そういう背景で今日まで推移してきて、今後も、厚労省は、二〇二五年に五十六兆円になり、そのうち後期高齢者は二十五兆円という試算をしておりますが、やはりこういう、いいだけ抑制が進んできて、そこまで急には伸びないだろう、もっと緩やかに伸びるのではないかというふうに思っておりますが、その点、伺いたいと思います。

近藤参考人 今後どうなるかという予測については、これはだれにもわからないもので、どういう政策をとるのかということによって変わってくるんだと思います。

 ぜひ先生方に御検討いただきたいのは、どのような政策にも言うならば光と影があって、自己負担がゼロの時代に一割にするとかいうのはプラスの面が大きかったんだろうと私も思います。しかし、高齢者の国民年金満額もらっている人でも月六万円という人たちの自己負担をふやすということが一体どうなるのかという、副作用の面もぜひ御勘案いただきたい。

 こういうことを言いますと、いや、高額療養費制度があるだろう、だから低所得者はそれで救われるんだというふうにお答えになる方が多いんですが、ぜひ、現場を見ていただくと、日本には差額制度、ベッドの差額がいまだにあります。首都圏でいいますと、大体一カ月、恐らく先生方の御両親を入れてもいいかなと思われるような良質の病院になりますと、月に二十万を下りません。

 それで、言うならばいい病院だと長生きする、安い病院だと早く死ぬというのが、もう関係者の間でうわさになっておりまして、極端に言うと、早く死ぬ病院はどこですか、うちには貯金が二百万しかないんです、そんなやりとりすら現場の中では起きているんです。そういうこともぜひお知りいただいて、今回とる政策判断が、プラスの面が大きいのか、マイナスを大きくするのか、その辺はぜひ慎重に御検討いただきたいと思います。

高橋委員 もう少し伺いたいことがあったんですが、残念ながら時間ですので終わります。

 先生が指摘された健康格差という問題が、これからの医療費抑制政策の中でさらに拡大するのではないか、私もそのような危惧を持っておりまして、そういう点で、今後も政府に対して指摘をしていきたいと思います。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 我が国は、現在、未曾有の少子高齢社会に入り、社会的にも、そしてとりわけ命を支える医療という分野でも大きな変革が迫られているさなかだと思います。

 この委員会でも、医療制度改革が委員会において二回ちょっと話され、非常に早い段階できょうは参考人の皆さんにお話を伺う段取りを委員長初め与野党の理事の皆さんで御準備くださいましたが、その真意というか、その本当の意味するところは、やはり医療の現場あるいは地方自治の現場、そうしたところからより多くの声を聞いて、本当に必要とされている改革をこの委員会が審議できる場でありたいという全体の願いからかと思います。その願いにこたえてくださって、各参考人の皆さんは、きょう、非常にリアルなお話、あるいはまた、近藤参考人にあっては、今、逆さの流れじゃないの、医療費は削るんじゃなくてふやさないと時代的には大変になるんじゃないのという御指摘もいただきました。

 私は、限られた時間の中で、本当は全員の皆さんに御質疑いたしたいですが、お時間の関係でお聞きすることができないこともあるかと思います。お許しをいただきたいと思います。

 まず、冒頭、鴨下参考人にお願いいたします。

 鴨下参考人は、現在、社会保障審議会の医療部会の責任者であられるということで、先ほど申しました大きな変革を迫られる医療という分野、社会保障の中でも、とりわけ、やはり命にかかわる医療という分野は、本当にここが安定して安心しなければだれもこの社会を安心して生きることができない分野ですから、ぜひ、きょう伺いましたお話も非常に参考になりましたし、ますます御活躍をいただきたいわけであります。

 実は、こう言っていても何となく面映ゆく、理由は、鴨下先生は私の恩師でありまして、私が東大病院の小児科に勤めておるときの教授であらせられます。また、それ以前は自治医科大学で、我が国における僻地医療の問題を積極的に解決するためにつくられた大学で小児医療の教授をしておられた。

 思い起こせば、やはり各県一医科大学並びに自治医科大学の設立と申しますのは、当時も、医師が僻地やあるいは地域で不足する、そういうことも踏まえて、大きな改革、変革が行われた時代でございました。もうそれから既に三十年近く、そして一期生の奥野先生がここに参考人でお越しくださるのですから、今また私は同じような医師不足の現状や、あるいは数はいても中身として追いつかない現状の中で、何が国の仕事で何が地域の仕事なのかという区分けをきっちりしていって医療提供体制を安定させたいと思う視点から、鴨下先生にお伺いいたします。

 きょうの先生のお話を伺いましても、やはり教育という分野が、ぜひこれから国が、医師教育、医師育成というところで見識を持って取り組んでいかねばいけない分野だというふうに私は承りましたが、ここに先生がおまとめでございます「医師不足の背景」の中には、小児科医あるいは産科医は氷山の一角で、麻酔科医も不足しておる、当直がない、救急がない、がんがない、三ない科に若い医師の人気が集中する等々、本当にこれは現実であろうかと思います。

 それで、この間、我が国では、いわゆる研修の義務化ということが行われて、研修の仕組みも大きく変わりました。さらに、これからです、本当に必要なところに医療が届くように医師を育成していく場合に、何が最も重要な視点となるかということについて、冒頭お願いいたします。

鴨下参考人 どうも攻守ところを変えたようでございますが、質問ありがとうございます。

 先生の御指摘のように、やはり最後は教育だと思います。

 それで、これは文科省の責任でもございませんけれども、医学教育、医学教育と言ってまいりましたが、実際には医師の教育であるべきなんですね。それがなかなかなされていない。現在医学部を卒業する学生、年に八千人で、そのうち国家試験に受かるのは恐らく七千ちょっとかと思いますが、それが大学院の定員が五千ぐらいあるんですね。ですから、医学研究者を育成する方向に形の上でなっているというところが一つ大きな問題ではないかと思います。

 私は、やはり今後は医学研究者と医師の教育をはっきり分けて、アメリカの医療を私は決してすべてがいいとは思わないんですが、医学教育、医師の教育に関してだけは大いに学ばなければならない。それは、向こうはほとんどみんな医師になるんですね、医学研究をやっているのはむしろ生物系の基礎学者、その辺が日本は今後変えていかなければならない一つの重大な方向ではないかと思います。

 自治医大の話が出ましたけれども、私は、確かに奥野君には小児科は教えましたけれども僻地医療は教えなかったですね。だけれども、やはり自治医大の教育が、学長以下、あるいはそれをバックアップされた自治省なんかの政策といいますか方策がそういうふうにしむけたといいますか、自然に卒業生がみんな僻地で生きがいを感じて医師としてやっている、それが本当に大部分だろうと思うんですけれども、そういうことが医療の世界で今後なされなければいけないのではないか。

 特に、そういう点で小児科医、産科医、これも私、先ほどの研究班の班長をやりまして、産科と一緒にやって、最初は小児科の、でも産科の方がはるかに事態が、今お話もございましたけれども深刻なんですね。そういうことをお互いに知らない、知らないまま過ごしてきたということを大変大きな問題に思いました。

 そういうことで、やはりすべて教育で、特に、ここまで言うとまたいろいろな意味で袋だたきに遭うのは承知なんですけれども、もう一つ、私、あえて申しますと、看護の教育が、これは看護大学、四年制の大学が今百三十五ぐらいになりましたでしょうか、それの教育を文部科学省の医学教育課でいわば昔のままの体制でやっておられるのが、いずれ看護教育にもう一つ大きな問題が起きるように思っております。

 それで、医師の教育とそれからいわゆるコメディカルの教育、すべてを一緒に視野に入れた教育といいますか、そういうことを今後国としてお考えいただかなくてはいけないのではないか、そんなふうに感じております。

阿部(知)委員 教授の時代もそうでしたが、いつもじゅんじゅんと諭すように心にしみるお話でありました。ぜひ先生には、これから日本の国民の本当に命にかかわるそれを扱う医療者の教育の面において、国においても多くの発言とリーダーシップをとっていただきたいと心からお願い申し上げます。

 次に、奥野先生に伺いますが、私は、実は、先週の末に宮崎県の高千穂というところのすぐ隣町の五ケ瀬というところに行ってまいりまして、人口五千人くらいの町でありました。また、その奥にいわゆる平家の落人が行ったという椎葉村という村がありまして、そこにも自治医科大学の御出身の先生がおられたり、配置されたりということで、この自治医科大学が、僻地というものについて、ある義務を、義務年限の中で若い医師に行ってもらい、しかし、そこで新たに発見したもの、地域を愛する、人を好きになる、いろいろな意味で若い医師に多くの財産を残していると思います。

 一方で、それは義務年限という義務を課したものでありましたが、私は、あえて言えば、義務年限ということのかせの中でそれが可能になった面もあると思います。一期生として、そして今も地域の診療を一線で担われる先生として、この自治医科大学に学んで、さらに、日本の教育の中で義務年限ということをどういうふうに考えられるかという点をお願いいたします。

奥野参考人 義務年限といいますのは、自治医大を私は出ましたが、お金を、修学資金を借りまして、その修学期間の二分の三倍ですね、義務として都道府県が指定する僻地に勤務しなさいというふうな中身であります。私は、図らずもでありますけれども、義務という形で勤務させていただいたんですが、私としては非常によかったというふうに解釈いたします。

 それは、まず普通ですと、その当時、医者になるのには、医局に入って、卒業してすぐにその道を決めてしまうわけですけれども、我々は、その義務という名のもとにいろいろなところに行かされたわけです。私も、卒業しましてぼんやりしていまして、当時まだ研修なんか受けていないところに僻地に行ってくれと言われまして、大慌てで行ったわけです。先ほど、私、地域医療は楽という話をしましたけれども、これは二十八年のキャリアを積んだ上での楽でありまして、当時行ったときは、全く研修もせずに、当時まだ人口が倍だったものですから、千人の島にほうり込まれまして、そこで一番怖かったのは夜で、急患が出たときにどうしようとどきどきしながら過ごしたわけです。

 そういった場面であるとか、あるいは、後期の研修として、当時また大学に戻って研修を受けることができました。それは、小さな部分を見て、その島というものを二年間見た上で、今度は大学というところに帰ってまた大きな部分。それから、すごくうれしかったのは、自分はその小さなところで悶々としてやっていて大変なんだけれども、大学に戻って日本全国の人たちに会うことによって、またそれが、いろいろな人がいっぱいいるんだけれども、同じようなことを考えて、同じように行動している人がいっぱいいるんだというふうな意味合いでもって前に進むことができた、あるいはまた小さな病院に行くことができた。

 そして、義務が九年あったわけなんですけれども、それでもって、大体医師は十年たちますと一人前と言われますが、そのときに、これから自分がどうしようかというふうなことを決めることができましたので、その義務、確かに義務ではあったんですけれども、それはよかった。

 つまり、今の医師の方々も二年間の臨床研修というのが義務づけられておりますけれども、自分がどういう道でどういうふうになっていくんだということを決めるのは、もう少し後になってもいいんじゃないか。その間にいろいろなことが経験できるような仕組み、経験して、例えばあそこに行ってしまったからもうこちらには行けないとか、そういう仕組みじゃなくて、あっちもこっちも行けて、それでもって十年目ぐらいに自分のしかるべき道を進むことができるというふうな仕組みがあってもいいんじゃないか。そういう意味では、義務ではあったんですけれども、私は、あるいは卒業生を含めてよかったと思います。

 もう一つの証拠といいますのは、決して十年過ごしたからといって全員が僻地に行くんじゃなくて、いろいろな道に、あっちこっちの専門医もおりますし、公衆衛生もいますし、いろいろな形で卒業生が羽ばたけたのも、いろいろな経験ができたからだというふうに思います。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 次に、奥田参考人に伺います。

 私も同じ神奈川なのですけれども、先生の病院に非常に周産期、お産が集中していて、なおかつ、先ほどおっしゃったように、それまでかかっていた方ではない方が飛び込みで出産なさるような状況がこのごろふえているというお話も含めて、非常に産科医療の大変さということを改めてきょうも実感させていただきましたが、いわゆるセンター化、集約化の一方で、しかし逆に地域の中核病院が今、ちょっと申しわけないけれども、がたがたになっているということは、このセンター化したところに過剰な現状を生んでいるということもあるかと思うのです。

 先生がお示しくださった資料の中にも、各地域で分娩をできるところが減っている。これは、苦肉の策で現状、現実のこの産科医でやれるところはこのくらいだということで、集約化はやむを得ざる措置とは思うのですけれども、やはりどうしても、一、二、三次全部が来ると、それでも悲鳴だというところがあると思うのですが、そのあたりの現状の集約化と、もうちょっと欲張りな、本来的にどういう形を望まれるかということをお願いいたします。

奥田参考人 ありがとうございます。

 理想的に言えば、軽いところ、中くらいのところ、重いところというのをシェアするというのはいいかとは思うんですけれども、何度も申し上げているように、やはり突発的に何が起こるかわからないというのが分娩ですので、例えば、救急に対応できないところで分娩しているときに突然の大出血で、運んでいる時間の間に亡くなってしまうというようなことも想定すると、すべての妊産婦さんの命を救ってあげるという点からですと、私は、個人的には、やはり大きな病院でたくさんお産をするということが大原則だというふうに考えております。

 ですけれども、そうすると、確かに集中してきた我々どものところの疲弊がまた非常に問題にはなってきますので、一つの対策としては、周辺の施設と協力しながら、例えば、健診ですとか、最低のところ、リスクの非常に低いところを御負担いただいて、分娩をこちらの方で一緒にさせていただく、セミオープンですとかオープンシステムですとか、そういうことも導入していくのが理想的かとは思いますが、現状、近未来的にとにかくというふうに考えると、先ほどから申し上げているように、広く薄くではなく集中して厚く、最終的には、我々どもの人間がふえれば広く厚くというのが最終目標とは思いますが、現状の緊急課題としてはやはり集中化しかないかと私は考えております。

阿部(知)委員 非常に苦しい中で、終始、子供たちのために頑張ってくださっていることに本当に感謝いたします。

 最後に、近藤参考人にお願いいたしますが、いただきました先生の資料の中でも、これからの医療政策をどう評価するか、そこには二つの視点、やはり国民が参加しなきゃいけないだろうということと、国の制度の中にきちんと医療政策を評価するものをつくれという御指摘かと思います。その点について、時間の制約でお触れになれなかったところがあったかもしれませんのでつけ加えて、全体の医療費の〇・一%は政策評価にかけていいのではないかというレジュメもございましたし、お願いいたします。

近藤参考人 一番言いたいことは先ほど言いましたので、もう少し具体例を御紹介したいと思います。

 イギリスの例でいきますと、お金のことも非常に気にしております。これは先進国共通の現象です。しかし、それと同時に、例えば、地域ごとでどれぐらい、がんもそうですけれども、薬の利用率、あるいは検診を受けるまでの待機期間のモニタリングとか、いろいろなことをやりながら、問題が大きいところを優先的な政策課題とする、そういうチェックシステムができ上がっているというのがすごいところだと思います。

 その中には、何と医師、看護師の仕事をしていることに対する満足度、そういうこともモニターしておりまして、例えば、小児科医、産婦人科医の労働実態が大変だということは、私も臨床医出身だからわかりますが、もう十年前から現場ではわかっていたことなんです。ただ、現場の人たちは、それをほかの科の医者に語っている時間がないぐらい飛び回っていて、先ほど小児科医と産婦人科医がお互いそんなに大変だというのを気づかなかったというお話がありましたけれども、そういうのはさもありなんという実態です。

 これだけITが進んでいる時代なのですから、イギリスでいうと、最初、四百指標ぐらいつくって総合的にモニターを始めて、言うならば赤ランプがついたところを、その背景を調べて早目に手を打つ、そういう仕組みをつくって、限られた資源をできるだけ効率的に、なおかつ質を高める、しかも不公平の問題も軽減する、そういう総合的な枠組みづくり、これがあるという点だと思います。

 先ほど、国と都道府県と市町村、あと現場の病院の役割分担という話がありましたが、一体どういう政策の枠組みをつくるのかという構想と、そしてそれに対する裏打ち、例えば政策評価に〇・一%をかけてちゃんとチェックするんだ、そういう枠をつくる仕事は決して臨床医にはできません。病院にもできません。市町村にもできません。都道府県にもできません。これは国でしかできないんです。国会議員の皆さんには、そういう大きな、百年の計とは言いませんが、十年もつような、そして自分たちで問題点を早く見つけて早く軌道修正がかけられるような仕組みづくりを、ぜひ今度の医療制度改革には組み込んでいただきたいということを改めてお願いしたいと思います。

阿部(知)委員 きょういただきました貴重な御意見の数々で、これからの審議を深めていきたいと思います。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 参考人の皆様におかれましては、本日、地域医療について日々御尽力をいただいている観点から、非常に貴重な御意見を賜りまして本当にありがとうございます。私も幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、奥野参考人にお聞きいたしますが、もう何度もお答えいただいていると思いますけれども、離島において一人で診療を続けることが大変困難な点であるとか、それから、今後も診療を継続することで心配と思われる点について参考人の御見解をまずお聞かせいただきたい。

 それからまた、例えば、医師をほかの地域からお願いして来てもらって、曜日や時間によって医師が交代で離島の診療所を運営する、そういうことについて、患者の側の気持ちからして、患者さんの気持ちを含めてどうなのかということを、率直な御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

奥野参考人 長く勤務するということにつきましては、一般的には、僻地の医療ではそれがよしとされるわけですけれども、先ほど述べましたように必ずしもそればかりがいいわけじゃないというふうなところがあります。それは、言ってみれば、一つはマンネリ化する、我々がマンネリ化してしまうというふうなこと、それからお互いなれが生じてしまう。実際、やっておりましても、結構つらいところは、その住民の人たちを知れば知るほど家族に近くなっていって、どちらかというと感情移入をしていって冷静な診療ができなくなってしまうというような面もあります。

 それから、ちょっと答えになっていないかもしれませんけれども、短期間でかわるというふうなことに関しましては、逆に、いろいろな目でその地域を見ることが大切であるということは言えると思います。ただ、住民感情といたしましては、当然、長くいてほしい。

 それから、先ほどおっしゃいました、医師が交代して診療するというふうなことに関しては、やはりなれていないと違和感があります。やはり、もともと、代診とか、かわりに診る、診てもらうという意識がなかったものですから、確かに、私も代診に日本全国の診療所に行ったことがあるんですけれども、初めのころ、非常に違和感を覚えます。

 ただ、少しなれてまいりますと、そういうことが逆に自分たちにとってはプラスである。例えば、私には言えないけれども代診の先生に言えるというふうなこともあるわけなんですね。それから、先ほど言いましたように、医師が来てもらうことによって自分のいろいろな意味での回復ができるということも含めまして、来ていただくこと、それからいろいろな人が診ていただくことはプラスの方が多いかとは思います。ただ、全く何のベースもなしに物見遊山に来ていただくと、ちょっといろいろトラブルの起こることもあるというふうなことも確かでございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、今、医師の確保のために医師が働きたくなるような環境づくりが必要だというふうに思われますが、具体的に、医師が僻地医療を担いたくなるような環境というのはどういうものなのか。

 それから、それでも僻地における医師の確保が難しいという場合、一定の範囲内で僻地勤務というものを義務化するということに対して、奥野参考人の御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

奥野参考人 済みません、ちょっと前半の……。

岸田委員長 糸川君、もう一度お願いします。

糸川委員 僻地医療において、医師が働きたくなるような環境づくりが必要だ、そこで具体的に医師が僻地医療を担いたくなるような環境とはどういうものなのかというのが前段でございます。

奥野参考人 申しわけございません。

 医師が働きたくなるというのは、初めから決まっているのはなかなか難しいんです。実は、我々も、初め、卒業したときに、先例がないものですから、僻地に飛び込むことが怖くて怖くて仕方がありませんでした。とても、楽しむとか楽しいというふうなことはありませんでした。

 ただ、環境づくりというふうになるかどうかわかりませんけれども、私たちの役目としては、実はそういうことをやってきたのだけれども、とても楽しいこともあるんだよ、おもしろいこともあるんだよということを、学生教育とか研修教育でもってまず伝えていくということが大事だと思います。

 それから、具体的に受け入れているところの話ですと、報酬とかなんとかという下世話な話もあったんですけれども、一番大事なことは、特に公的な医療機関であれば、例えばそこの市町村が、どういうふうな考え方で、どういうふうにこの僻地を持っていきたいんだということをあらかじめ示していただいて、それから、持続的にそれを理解して行動していただくということがとても大事じゃないかと思います。

 往々にしてあるのが、こんなはずじゃなかった症候群というのがありまして、行く前に、村長さんとか町長さんが来て、こんなことをやってください、あんなことをやってください、どんどん応援しますと言っていただいたのだけれども、行ってみると、実際そうではなくて、ちょっとがくっとした、こんなはずじゃなかったということで、結局やめてしまうというようなこともありました。

 つまり、医療者だけじゃなくて、その周囲の方々、住民も含めての理解ですね。それは、初めから、すごい、地域医療に対してこういう高邁な考え方を持ってくださいという意味じゃなくて、ともに歩むとか、ともに考えていただくという姿勢をその人たちに示していただくということが一番の環境づくりになるのじゃないかというふうに思います。

糸川委員 ありがとうございました。

 今、病院勤務の小児科医が減少しているという状況があるわけでございます。その小児科の医師の確保というものが、これも喫緊の課題となっておるわけでございます。

 そこで、鴨下参考人にお尋ねいたしますが、今現在、診療科の偏在問題の解決に向けて一定の範囲で専攻する診療科についての制限をかけるような手法について、参考人の御見解、また、小児科医を中心に我が国の医師教育のあり方についての参考人の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

鴨下参考人 これは大変難しいところがございますが、基本的には、小児科、あるいは産科もそうかもしれませんが、診療あるいは学問としての小児科学、産科学というものをやはり大学の責任者ができるだけ魅力のあるものにして、学生を呼び込むという努力が一つは必要だろうと。これは現場の努力でございます。

 それから、これはまた文科省のことになってしまうんですけれども、国立大学にぜひ母子センターのようなものを、以前そういう構想があったように聞いておりますが、そういうものをつくる。これは具体的に申しますと、例えば、県立の小児総合医療施設というのは、静岡県とか、最近では宮城県でしょうか、いろいろなところにございます。二十何カ所全国でございますけれども、それはみんな経営に非常に苦労なさるんですね。赤字経営になります。ですから、その辺を国として、大学の中に、母も含めて、母子センターをつくって、そこで産科医あるいは小児科医の教育研修をするということが、中期的といいますか、そういう点で将来展望があるのではないかと考えます。

 その二つ、現場と国といいますか、そういうことがあると思います。

 それから、今、小児科、産科の医師不足がここへ来て特に急激に話題になっておりますのは、臨床研修必修化がなされましたその影響がやはり無視できないように聞いております。そこで、やはり、どちらの科も非常に勤務が厳しいことを、回ってきた、せっかく産婦人科をやりたい、あるいは小児科をやりたいと思って来たけれども、あれではとてもできないというので、ほかの科へ行ってしまう、その辺の問題をどう解決するかというのが一つ大きな問題として残っております。

 診療科の偏在というのは、それに対してある程度の強制的な枠をかけるべきかどうかということにつながると思うんですが、これも患者さんの視点ということを医療部会でも重視してまいりましたけれども、患者さんの方から見た場合に、強制的に来た、嫌々来ている先生に診てもらっても、それこそ事故が起きるかもしれませんし、決して患者さんにとってもありがたくないことではないか。その辺をどういうふうに考えるか、大変難しい問題で、お答えにならないと思うのでございますが。

糸川委員 ありがとうございました。

 課題があるということだけはちゃんと理解しておりますので。

 続きまして、山崎参考人にお尋ねいたしますが、先ほど、山崎参考人のこの資料によりますと、がんの治療において、緩和病棟では八五%の痛みがとれると。そこで、WHO協力センターのデータでは五〇%と。これは、日本の病院のレベルでは除痛率というのが五〇%という形で非常に低い。日本の医療レベルというものが実際に低いのでしょうか。その辺についてお答えをいただけますでしょうか。

山崎参考人 御質問ありがとうございます。

 これは、日本の医療のレベルが低いということでなくて、医療機関に差があるということをこのデータにより表現したいと思いました。

 実際に、八五%の痛みがとれる病院もあれば、大学病院みたいに四〇%しかとれないところもある。この差は何だろうということなんですね。WHOの協力センターの五〇%というのは、二十五カ国でWHO方式のがん疼痛治療法を熟知していない国々、そういう国々で五〇%の痛みしかとれません、それよりも日本では低いところが実際にはある。もちろん、八五%のところもあれば四〇%のところもある。フリーアクセスで均一料金なのに、医療に差があるのはおかしいね、それが二十一世紀になって患者さんがわかった、それでみんな怒り出しましたというのが、ここ最近マスコミが大きく報道され、患者会が活動をして問題が大きくなったところだと思っております。

糸川委員 ありがとうございました。

 もう余り時間もなくなってきましたので、奥田参考人にお尋ねいたしますが、だんだん産婦人科医というものが少なくなってくると、そこではもう病院の経営の中で産婦人科をやめようと。例えば、通っていらっしゃる妊婦さんがいらっしゃっても、もう今月からやめる、そういうような形で、今、地域の産婦人科というものが集約をされてきておるわけでございます。その集約化によって、患者さんですとか、たくさん不安を抱えてしまったりという弊害があると思うんですけれども、この弊害に対して、どのように取り組んでいったら緩和することができるのか、医師の点からも、そして患者さんの側から、両方の観点からお答えをいただければありがたいなと思います。

奥田参考人 ありがとうございます。

 確かに、分娩をやっていた病院を引き揚げて、もうお産はやらないからほかに行ってねというのは、我々医師としても非常につらいところでございます。ですけれども、そこには、今まで申し上げてきたように、これ以上はもう頑張れないという限界に達しているという事情があることを御理解ください。

 首都圏ですと、かわりがまだありますので何とかなるんですけれども、地域で引き揚げてしまうと、そうすると山を越えて次に行かなければいけないという状況があるというのは聞いております。

 これは、全く理論的でも公的でもないんですけれども、もし私が同じ立場でその患者の目に遭ったとしたら、解決できることといえば、分娩をすべき施設のそばに宿泊所なりなんなりをつくっていただいて、何カ月かになったら産婦さんはそこに暮らせるような、そういうバックアップがある、もしくは、すぐに到達できるような交通手段をつくっていただくというバックアップ体制をするしかないかなと。

 とにかく現状では、だれもが、それこそ投票所じゃないですけれども、十分で歩いてお産に行ける場所がたくさん、たくさん、たくさんあるのが理想なんですけれども、それが本当に全く不可能な状況にありますので、そうなると、集中化したところに産婦さんをお連れするという手段を考えるというのは一つ解決策かなと思います。

 済みません、お答えになっていないかもしれませんが。

糸川委員 ありがとうございました。

 これは非常に難しい問題だと思うんですけれども、やはり産婦人科医が多くいるということが少子化対策にもなりますので、しっかりとその辺も取り組みたいなと思います。

 今のような参考人の御意見を聞いて、河内山参考人にお尋ねします。

 今現在、市町村国保ですとか介護保険に加えて、新たに後期高齢者医療制度の運営にかかわることとなる市町村の負担というのが大きくなってきております。今の集約化というところに関連して質問しますと、医師確保対策などとして医療機関の集約化を行うこと、例えば、その地域から病院がなくなる可能性があるとか、その調整に困難が予想されるとか、そういうことに対しての参考人の御見解ということをお聞かせいただけますでしょうか。

河内山参考人 これは、医師の確保のみならず、これから地域社会というのは、全国いろいろな地域がありまして、人口減少が甚だしいところ、高齢化が甚だしいところ、そういうところでは、まさにこれまで起こり得なかったような新しい現実というのに直面をする地域がたくさんございます。お医者さんがいないだけではなくて、先ほど奥田先生がお触れになりましたけれども、例えばアクセスをしようにも交通機関というものが壊滅をするような地域、日本の中で、使いたくない言葉ですけれども、うまくいっている地域と、いろいろと挑戦するけれどもなかなかうまくいかない地域という、やはりそこの格差といいますか差ができている。

 そういう中でいいますと、地域社会の中で必要不可欠なものから順番に優先順位をつけていきますと、やはりお医者さん。今、例えば島根県の隠岐の島では、まさしく産婦人科の先生がいなくなって、本土に来なければお産ができないというような状況が生まれつつある。そういうことは始まっておりますけれども、お医者さんの問題。

 それから、同じ日本の国に住むのであれば、そこへどうやって、最低限アクセスを可能にするような地域で成り立つ交通体系、こういったものをどういうふうにつくっていくかというのは、これは、今後、国の仕事でもあるし、地方自治の仕事の中で一番大事だ。

 人口減少しても少子化が進んでも生き残れる地域社会をどうやってつくるのかというのが、我々、実は全国、それは関係ないというところもありますけれども、多くの地方自治体を運営している首長としましては、今の医療提供体制も含めてですけれども、他人任せではなくて、最終的にどこまでは我々は身を挺してでも守っていくか、そういう時代に入ってきたと思っています。そういう意味では、生易しい話ではなくて、話し合いをすれば解決するという話じゃなくて、どうやったらあまねく必要なものは確保できるかというのを、これは国も地方も本当に本気で考えなきゃならない、そういうテーマだと思っています。

糸川委員 ありがとうございました。

 もうほとんど時間がございません。本来六人の方にお聞きしたいんですけれども、最後に、それでは、奥野参考人と近藤参考人に一言ずついただきたいんですが、今回のこの医療制度改革について、評価できる点と、それから評価できない点について、両参考人の御見解を簡潔にお聞かせいただけますでしょうか。

奥野参考人 とても難しい質問で、簡単に答えられないんですけれども、僻地医療の立場といたしましては、特に僻地医療対策のことですけれども、現場で一人であるいは自分たちの市町村だけで頑張ってこなければいけなかった現状を、例えば県という大きな枠組みで、その県全体の僻地の仕組みをどういうふうに考えて、あるいはどういうふうにして支援していこうかというふうなことが、以前にも増して具体的な方策として提示されてきておりますので、私といたしましては、その点は高く評価していきたいと思っております。

近藤参考人 批判ばかりしているわけじゃありませんで、評価できると思っている点は二点あります。

 一つは、医療費の目標だけを取り上げられているので、私はそこを批判しているのであって、これからは、何らかの形である程度目標を掲げて、それに向かって努力して、うまくいったらその理由を探る、うまくいかなければそれを反省する、それで次の手を考える、そういう政策のサイクルを回すこと自体は、これは必要な段階に来ていると思います。そういう意味では、医療費だけじゃなくてほかのもそうしませんかということを言っているのであって、そういうサイクルを持ち込もうとしているという動きは一歩前進だと思っております。

 あともう一つは、保険者の単位をもう少し大きくしてリスクの分散をしようというのは、これは当然の流れではないかなと考えております。

 問題点の方は言いましたが、最後にまとめさせていただくと、一つが、エビデンスに基づいていないということ。

 最近、見える化というのが話題になっていますけれども、わからないまま、見えないまま、手探りで弾を撃っているという感じで、もう少し見える化しませんか。ちゃんと評価して、どこがよくてどこが悪いということを共有の情報に基づいて判断できる、そういうエビデンスづくりをもう少し、エビデンスに基づいた政策をやるべきじゃないでしょうか、それが足りないと思いますというのが一つです。

 それからもう一つが、戦略を感じないという点です。

 ほかの国が失敗したと言っていることをあえてやろうとしているんです。だとしたら、それをほかの国はこうやってやって失敗した、しかし、我が国は世界に誇るこういう戦略があるからうまくいくはずだと、少なくとも国民が信じられるような戦略を提示してほしいと思います。

 それでいうと、例えば、先ほど、産婦人科医、小児科医が足りないというのがありましたけれども、私が知っているので二つ、国が政策をとって医師の分布を変えた例があります。

 一つが、専門医がふえ過ぎたアメリカで、プライマリーケアをふやすために、これは国会の議員立法で動き出したというのを読んだことがあります。それで、プライマリーケアを担う医者を養成する講座をつくった大学には補助金を出すという形にしたら、多くの大学がそういう養成に走り出した。あと、お隣の韓国。日本と同じように高齢化が急速に進むということで、急いで高齢化に対応できる医者をふやそうというので、すべての医科大学にリハビリテーション科の専門医を養成する講座を必置義務にしたというふうに聞いております。

 きょうは高齢化の問題は何か後回しになっていますけれども、私、リハビリの専門医でして、その立場からすると、実は、高齢者に対応する医者も日本は足りません。もう少し戦略的に、これからの十年後、こういう医者が要るんだ、それに対してもっと誘導するような、国家としての意思を、戦略を示すような取り組みをぜひしていただきたいとお願いしたいと思います。

糸川委員 ありがとうございました。今後の審議の参考にさせていただきたいと思います。

 終わります。

岸田委員長 以上で本日の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表しまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明二十六日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十八分散会


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