衆議院

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第22号 平成18年5月17日(水曜日)

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平成十八年五月十七日(水曜日)

    午前九時二十三分開議

 出席委員

   委員長 岸田 文雄君

   理事 大村 秀章君 理事 鴨下 一郎君

   理事 北川 知克君 理事 谷畑  孝君

   理事 寺田  稔君 理事 園田 康博君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    上野賢一郎君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      西川 京子君    林   潤君

      原田 令嗣君    平口  洋君

      福岡 資麿君    松浪 健太君

      松本  純君    御法川信英君

      小川 淳也君    岡本 充功君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      仙谷 由人君    田名部匡代君

      古川 元久君    古本伸一郎君

      三井 辨雄君    村井 宗明君

      柚木 道義君    上田  勇君

      高木美智代君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   厚生労働大臣       川崎 二郎君

   厚生労働副大臣      赤松 正雄君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            鈴木 直和君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 塩田 幸雄君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  古川 元久君     小川 淳也君

  三井 辨雄君     古本伸一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     古川 元久君

  古本伸一郎君     三井 辨雄君

    ―――――――――――――

五月十七日

 無免許マッサージから国民を守る法改正に関する請願(伊藤忠彦君紹介)(第二〇一三号)

 同(土屋品子君紹介)(第二〇一四号)

 同(桝屋敬悟君紹介)(第二〇一五号)

 同(横山北斗君紹介)(第二〇一六号)

 同(鷲尾英一郎君紹介)(第二〇一七号)

 同(赤松広隆君紹介)(第二〇四二号)

 同(伊藤忠彦君紹介)(第二〇四三号)

 同(泉健太君紹介)(第二〇四四号)

 同(糸川正晃君紹介)(第二〇四五号)

 同(北神圭朗君紹介)(第二〇四六号)

 同(河本三郎君紹介)(第二〇四七号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第二〇四八号)

 同(谷本龍哉君紹介)(第二〇四九号)

 同(仲野博子君紹介)(第二〇五〇号)

 同(根本匠君紹介)(第二〇五一号)

 同(野田毅君紹介)(第二〇五二号)

 同(古川元久君紹介)(第二〇五三号)

 同(松木謙公君紹介)(第二〇五四号)

 同(松野頼久君紹介)(第二〇五五号)

 同(伊藤忠彦君紹介)(第二一一一号)

 同(飯島夕雁君紹介)(第二一一二号)

 同(糸川正晃君紹介)(第二一一三号)

 同(大野松茂君紹介)(第二一一四号)

 同(古賀誠君紹介)(第二一一五号)

 同(清水鴻一郎君紹介)(第二一一六号)

 同(園田康博君紹介)(第二一一七号)

 同(高市早苗君紹介)(第二一一八号)

 同(葉梨康弘君紹介)(第二一一九号)

 同(平口洋君紹介)(第二一二〇号)

 同(三原朝彦君紹介)(第二一二一号)

 同(三井辨雄君紹介)(第二一二二号)

 同(山崎拓君紹介)(第二一二三号)

 同(山本拓君紹介)(第二一二四号)

 同(渡辺具能君紹介)(第二一二五号)

 同(太田誠一君紹介)(第二一四一号)

 同(木村隆秀君紹介)(第二一四二号)

 同(高木毅君紹介)(第二一四三号)

 同(渡辺周君紹介)(第二一四四号)

 同(安住淳君紹介)(第二一六八号)

 同(伊藤忠彦君紹介)(第二一六九号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第二一七〇号)

 同(実川幸夫君紹介)(第二一七一号)

 同(薗浦健太郎君紹介)(第二一七二号)

 同(田名部匡代君紹介)(第二一七三号)

 同(渡海紀三朗君紹介)(第二一七四号)

 同(中川昭一君紹介)(第二一七五号)

 同(西村康稔君紹介)(第二一七六号)

 同(武藤容治君紹介)(第二一七七号)

 同(山本幸三君紹介)(第二一七八号)

 患者負担増計画の中止と保険で安心してかかれる医療に関する請願(黄川田徹君紹介)(第二〇一八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二一七九号)

 同(石井郁子君紹介)(第二一八〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一八一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一八二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一八三号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一八四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二一八五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二一八六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二一八七号)

 介護療養病床の全廃、医療療養病床の大幅削減に反対し、療養・介護の環境及びサービスの整備・拡充を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二〇一九号)

 患者負担増の中止を求めることに関する請願(高山智司君紹介)(第二〇二〇号)

 同(日森文尋君紹介)(第二〇五九号)

 同(細川律夫君紹介)(第二〇六〇号)

 同(大島敦君紹介)(第二一二七号)

 臓器の移植に関する法律の改正に関する請願(金田誠一君紹介)(第二〇二一号)

 同(保坂展人君紹介)(第二〇二二号)

 同(細川律夫君紹介)(第二〇二三号)

 同(辻元清美君紹介)(第二一二八号)

 患者負担増に反対し、保険で安心してかかれる医療に関する請願(岡本充功君紹介)(第二〇三五号)

 同(古賀一成君紹介)(第二〇三六号)

 パーキンソン病患者の療養生活上の諸問題救済策に関する請願(尾身幸次君紹介)(第二〇三七号)

 同(岡本充功君紹介)(第二〇三八号)

 同(笠浩史君紹介)(第二一〇八号)

 患者負担増計画の中止と保険で安心してかかれる医療を求めることに関する請願(古賀一成君紹介)(第二〇三九号)

 同(郡和子君紹介)(第二〇四〇号)

 同(古川元久君紹介)(第二〇四一号)

 同(小川淳也君紹介)(第二一〇九号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(園田博之君紹介)(第二〇五六号)

 障害者の福祉・医療サービスの利用に対する応益負担の中止に関する請願(岡本充功君紹介)(第二〇五七号)

 はり、きゅう治療の健康保険適用の拡大を求めることに関する請願(古川元久君紹介)(第二〇五八号)

 脳血管病による運動機能障害者への医療支援に関する請願(笠浩史君紹介)(第二一〇六号)

 高校・大学生、青年に雇用と働くルールを求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二一〇七号)

 パートタイム労働者の均等待遇実現に関する請願(石井郁子君紹介)(第二一一〇号)

 最低賃金の引き上げと全国一律最低賃金の法制化に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一二六号)

 男女雇用機会均等法等の改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一五九号)

 同(石井郁子君紹介)(第二一六〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一六一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一六二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一六三号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一六四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二一六五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二一六六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二一六七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)

 小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出、衆法第一七号)

 医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出、衆法第一八号)


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     ――――◇―――――

岸田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案、小宮山洋子君外四名提出、小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案及び園田康博君外三名提出、医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長松谷有希雄君、健康局長中島正治君、職業安定局長鈴木直和君、保険局長水田邦雄君、政策統括官塩田幸雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岸田委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北川知克君。

北川委員 おはようございます。自由民主党の北川知克でございます。

 きょうは小泉総理出席のもとでの質疑ということでありますけれども、総理出席に当たりまして、我が党の鴨下委員初め国対関係者の御努力をいただきまして、きょうこのように出席をいただいての質疑になったわけでありまして、感謝を申し上げますと同時に、総理に質問をできる、光栄であると思っております。せっかく総理がお見えでございますので、今回の医療保険制度の改革はもとより、社会保障全般についても質問をできればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 この委員会が始まりまして、それぞれの今回の法案についての問題点、それから将来の改革へ向けての不安点等々が議論をされてきたわけでありますけれども、川崎厚生労働大臣の真摯な答弁もございまして、ある程度問題点も集約をされてきているのではないかなと思っております。

 私は、その中で、今回の法案の中であります医師の偏在、そして小児科医師、産婦人科医師、先日の新聞報道でもありましたけれども、脳神経外科の医師の不足の問題が問われております。こういう不足という点について、今回の法案でその医師の配置といいますか偏在について不安のないようにしていかなければならないわけでありますけれども、ただ、医師の方々がどういう科目といいますか、小児科を目指されるのか、内科、外科を目指されるのか、これはあくまで医師を志した皆様方のそれこそ意思であろうと思っております。

 そういう中で、やはり国の法律やそして国の施策等において個人の意思まで左右をされてはならないでありましょうし、あくまで国というものは、法律の枠組みをつくったり制度の枠組みをつくったり、機能をつくり上げていくことが大事であろうと思っております。その点において、やはり国家の、それこそ国の権力や法律が心の部分まで踏み込むことのないようにしなければいけないと思っております。

 そういう点につきまして、今回の法案の中での国民の医療に対する安心、信頼を確保していくためにも、僻地や産婦人科そして小児科における医師不足を解消するに当たって国が条件整備をしていく、そして今回この医療制度改革においてどのように対応していくのがいいのか。この点について総理の御所見をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 今まで、医師は全体として過剰ぎみだ、これからは医師の数を減らしていかなくてはならないということでありましたけれども、医師によっては地域に偏っていたりあるいはある科に偏っていて、必要なところに必要な医師が行っていないという苦情が最近とみにふえております。

 そういう観点から、これから、この委員会での審議も踏まえまして、厚生労働省を中心にして関係省庁よく連携しながら、今御指摘の点も適切に対応していかなきゃならないと思っております。

北川委員 ありがとうございます。

 日本全国の各地域において、それぞれ現場においても御努力をされているところもあると聞いておりまして、私の地元の大阪におきましても、第二次の医療圏の中で、小児の入院医療と時間外の外来医療を医療機関が役割分担をいたしまして、連携しながら夜間医療に対応する体制を構築されているわけであります。あるいは、地域の看護師を活用され電話相談事業を実施されているところ、夜間の病院における小児救急医療への負担軽減を図るなど、医師不足への対応をされているところもあるわけでありますから、こういう事例を踏まえながら、国民の医療に対する安心、信頼を確保していくように、今後とも政府、厚生労働省の方にお願いをいたしておきます。

 さて、小泉総理、就任をされまして五年がたちました。大変御苦労さまでありまして、お疲れであろうと思います。あと四カ月の期間でありますけれども、なお一層、この改革の流れをとめることなく、全力で残すところの在任期間を務めていただければありがたいなと思っております。

 この五年の経緯の中で、格差社会が生じてきたとも言われております。ある意味、恐れず、ひるまず、とらわれずでしたか、総理がおっしゃられて、従来の慣習やそういうものにとらわれずに新たにチャレンジをして、経済の回復、景気の回復を見てきたのも事実でありましょう。今イザナギ景気を超すというような話もあります。世の中の流れを受けて、みずからがみずからの英知や、そして技量や、そして頭脳といいますか、そういうものを発揮して成功をされた方々もおられますし、そして、そういう中で皆さん方のおかげで今の経済、景気の回復もあったと思います。

 就任をされた当時は、景気の回復が国民の一番の関心事でありました。その中で、今回この恐れず、ひるまず、とらわれず、あと、あきらめずという一言があればよかったかなという思いもいたしますけれども、しかし、この現状において、景気は確かに回復をいたしましたが、国民の皆様方の関心は、やはり将来へ向けての我が国の社会保障制度が果たしてこのままでいいのかどうか、こういう意見というか心配もあるわけであります。

 しかし、改革の中で、みずからの意思に関係なく影響を受けた方々もおられるわけであります。こういう方々に対して、政府としてやはり今後きちっとした対応をしていくことが重要であろうと思います。そして、これから、みずからの意思に関係なく病気や事故に遭われる方、しかし同時に、何かにチャレンジをしてけがをされる方、先日の大リーグの松井選手ではありませんけれども、あのようなプレーの中でけがをされることもあります。そういう方々に対して、やはり安心のできる医療の提供というものも必要であるわけであります。

 今回の法案、そして我が国の社会保障制度を考えるに当たって、今後の人口構造の変化、財政経済状況を考慮すると、我が国が小さな政府を目指しているということであります。しかし、小さな政府を目指すことによって、ある意味、日本の国家の統治機能といいますか、こういうものも弱まるのではないか。特に、社会保障制度というものは、私は、国民と国を結ぶ大事な国家を統治していく機能であろうと思っております。こういう心配もあるわけでありまして、こういう点も踏まえながら、総理に今回のこの医療の改革、そしてこれからの社会保障制度の全体改革に向けて、この国家統治機能の重要な機能を有している部分が薄れるということのないようにしていただきたいと思いますし、この点につきまして、ぜひ総理の御所見をお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 少子高齢化の時代にあっては、さまざまな要望に対してどう対応していくか、ますます難しい状況に今直面していると思います。

 特に、今までは、どのような分野においても予算をふやすということが政治家としての大きな役割でした。地元に行ってさまざまな声を聞けば、この分野、もうちょっとよくしてください、医療分野、負担を軽くしてください、道路をふやしてください、公共施設を建ててください、さまざまな要望を担って予算をふやすということが、政治家として選挙区での存在感とか役割を発揮する重要な問題だったわけであります。

 しかし、このように財政が厳しくなりますと、その各地域の、また各団体の要望というものを予算でふやすことができなくなってきた。むしろ、削減していかないと増税という立場になる。増税は嫌だというのが多くの国民の声であります。しかし、自分たちの要求、予算をふやしてくれと。

 特に、予算編成をする場合には、医療を初め、年金、介護等、社会保障関係が今国民の税金を一番使っている分野であります。これは、法定部分が決まっておりますから、高齢者がふえれば当然病院に行く機会がふえる、どんどんかかってきます。また、高齢者がふえれば年金を負担するよりも年金を受ける部分がふえていきます。これは、また自然に、黙っていても、法定が決まっていても、どんどんどんどん国からの税負担投入はふえてまいります。

 そういうことから、できるだけ歳出を削減していこうということになりますと、ほかの分野は前年度より減らすことができても、社会保障関係は伸び率を減らすということがせいぜいでしょう。前年度より額を減らすということはできない。伸び率、いかに一兆円伸びるというところを何千億円削減していこうかとか、そういうふえる部分をいかに抑えていくか。そして、できるだけこの保険制度というものをこれからの若い世代にも持続して、病にかかった場合には一定の負担で医療を得ることができる、そういう制度をこれからも持続させていかなきゃならない、その点が難しいんだと思います。

 特に、少子高齢化で、これで人口が減るということを心配されていますが、百年前は日本の人口は約四千七百万人だったと聞いております。今、歴史始まって以来、一億二千万人というのは最多の日本の人口であります。人口がどのぐらいの規模が国民にとっていいのかというのは、まだ定まった議論が行われておりません。日本より人口が少ない国が豊かでないのかというと、必ずしもそうではありません。日本より人口が豊かになった国が日本よりも豊かであるか、これも決まっておりません。そういう点から、人口の最適規模という議論は余り行われていませんし、このままどんどんどんどん少子化が進むということは大変憂慮すべき状況でありますが、果たして、それでは、今歴史始まって以来の多くの人口を持っている日本が、このままふえたらいいのか、減ってもどの程度の規模がいいのか、そういう点の議論はまだされているとは思えません。

 そういう点を含めて、せっかくここまで築いてきた社会保障制度、医療制度、今後も一定の負担をすれば医療が受けられる、多くの人が病院を選ぶことができるという制度は、これからも維持していかなきゃならない、持続させていかなきゃならないと思っております。

北川委員 ありがとうございます。

 今後の我が国の社会保障制度についての御意見もいただいたわけでありますけれども、総理がこのゴールデンウイーク、アフリカのガーナとエチオピアに行かれて、その後スウェーデンに行かれたわけでありますが、この国々を比較するのはおかしいのでありましょうけれども、やはり社会保障制度においても随分違いがあると思います。社会保障制度が議論をされる中で、スウェーデンがよく例に挙げられるわけでありますが、このスウェーデンというのは、大変な高福祉であります、その福祉の施策の充実のことは随分言われるのでありますけれども、余り負担の点というものも言われないわけであります。

 先日も、この厚労委員会の参考人の中でも、今の我が国の社会保障制度をこのまま維持していくのは大変難しいのではないか、国民に幅広く協力を求めていくべきではないか、こういう意見もありました。

 この点において、豊かなといいますか社会保障制度が充実をしているというか、余り過度な期待というものを国民に抱かせてもならないと私は思いますし、それと同時に、国民に負担を強く強いていったときに民間の活力というものもなくなるわけでありまして、そういう点両方を踏まえながらの政策がこれから重要であろうと思っております。

 こういう点につきまして、最後に総理に、スウェーデンそしてアフリカの二つの国を訪問されて、その御感想といいますか、社会保障について御意見もお聞かせを願えればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 スウェーデンは、人口一千万人おりませんし、確かに福祉は手厚い。しかも、自民党以上に長期政権です。政権が交代することが余りない。そういう中で、福祉が手厚いということは合意が得られているようでありますが、これまた、付加価値税といいますか、日本の消費税に当たる税が二五%です。よくここまで国民が耐えているなと。

 日本も、二五%という、そういう声が大きく出てくればもっと手当てをしてもいいという声が出ますが、日本は、やはり二五%の消費税の負担に耐えていいという人はごく少数じゃないでしょうか。やはり負担と給付、それを両面考える必要があると思っております。

北川委員 ありがとうございます。

 時間がなくなりましたので、これで私の質問を終わらせていただきますけれども、いずれにいたしましても、政府として、これから国民の声を真摯に受けとめて、安心のできる医療制度を初め社会保障制度の構築に向けて全力で取り組んでいただきたいと思っております。どうもありがとうございました。

岸田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 総理大臣、本日は、厚生労働委員会に御出席をいただきまして、心から感謝と御礼を申し上げたいと思います。そしてまた、五年にわたりまして改革の闘いを断行してこられたことに心から敬意を表する次第でございます。

 医療制度関連法案、現時点で質疑時間は三十三時間を超えました。福島県、福岡県両地域に地方公聴会としてお伺いをし、さまざまな意見をお聞きいたしました。また、中央におきましても、参考人の多くの方々から御意見を承ったところでございます。いよいよこの審議も機が熟してきたということが言えるのではないかというふうに私は思っております。

 そうしたことから、総理大臣に御出席をいただいて充実した仕上げの質疑をして、ぜひこの法案について処理を進めるべきである、そのように私どもは考えております。(発言する者あり)そのことは、また後ほど申し上げます。

 我が国の社会保障制度は、大きな転換点にあることは間違いございません。少子高齢化という人口構造の変化、そしてまた、いまだかつてない財政状況の悪化、さらには、かつてのような高度経済成長は望むべくもない。平成十四年に医療制度改革を行いました。十六年には年金制度改革、十七年には介護保険制度改革さらに障害者福祉改革と、矢継ぎ早に改革を実現してまいりました。この一つ一つの改革は、将来にわたって大きな変化の中で制度を維持していくためには避けられないと私どもは考えました。

 そしてまた、給付の削減、負担の引き上げばかりではないか、こういう指摘がありますけれども、それは一方では、若い世代の方々、現役世代の方々、将来世代の方々の負担の増加を抑制する、そのことに直結している、このことをぜひ私は理解していただきたいというふうに思っております。

 しかしながら、こうした改革を続けてまいりましたけれども、二〇一一年、プライマリーバランスを黒字化する、政府にとって最大の課題の一つでございます。しかし、その達成のためには、こうした改革を経てもまだ大変大きな困難が存在をしているというふうに思います。将来世代にツケを先送りしない、これは与野党を超えて同じ立場に立つべきであると私は思っております。

 この六月、骨太方針、総理にとって最後の骨太方針になりますけれども、それに向けて歳出歳入の一体改革の議論がなされております。率直に言いまして、私どもの立場では、この一連の改革というのはやらざるを得なかったけれども、やはり厳しい改革だったことは間違いがないと実感しております。そして、その中で国民の声が今どうなっているか。これは、セーフティーネットとしての社会保障制度について一定の水準は維持してほしい、そのための負担であればやはりやむを得ないんじゃないか、私はそういう意識が強くなってきているのではないかというふうに思います。

 ただ、一方では、我が国の財政状況のこの極度の悪化状態について国民の理解はまだまだ十分ではない、こういうことも言えるんだろうと思います。この骨太方針、歳出歳入一体改革、どのような形で取り組んでいかれるのか、総理大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 歳出と歳入を一体的に見て改革していかなきゃならないというのは、御指摘のとおりであります。

 委員会の議論におきましても、歳出の分野を議論しますと、この部分が足りない、もっとふやせという議論が多いと思います。また、歳入の分野に議論が及びますと、これ以上増税はいかぬという議論が出てくると思います。

 しかし、政府として考えると、歳出と歳入は一体的に考えていかなきゃならない。特に、財政と経済も一体的に考えていかなきゃならない。財政状況がよくなれば経済がよくなるか、必ずしもそうでない場合もあるだろう。全体的に見れば、財政の健全化は必要であります。しかし、時期的な問題もある。このように財政状況が悪いときに、財政健全化を急ぐ余り、全体の経済という問題をよく考えなきゃいけないという議論も出ております。

 そういう観点から、この社会保障制度に関して言いますと、これから一番国民の税金を使う分野であります。今の制度が続く限り、最も国民の税金を使う分野であります。一番、黙っていても歳出がふえる分野であります。これから経済成長がある程度行っても行かなくても、ふえる分野がこの社会保障分野であります。

 だからこそ、社会保障分野の改革といいますか、給付と負担の面、ある程度負担できる方々には負担していただく、給付も余裕のある方については抑制していただくということがない限り、この社会保障分野の増加分がますますふえていくということは、他の分野にも政府全体の予算を見る場合には影響してくるわけであります。

 そういう観点から、平成二十一年度までに、年金の国庫負担、基礎年金の部分については今の三分の一から二分の一に引き上げるということが決まっております。これを含めて考えますと、今後、社会保障分野の問題におきまして、今までの制度でいきますとますます負担がふえてまいりますので、どういう点を抑えていくか。必要な医療の部分、あるいはまたある程度皆さんに負担していただく部分、よくそういう点については専門方の意見を聞きながらも対応していかなきゃならないし、負担する側だけじゃない、医療関係者、提供側にも効率化を考えてもらわなきゃいけない。例えて言えば、診療報酬明細書等も電算化しようという問題も起きてきて、あるいは薬も、できるだけ安い薬を使ってもらえば費用の削減にもつながる、予算の削減にもつながる。

 そういう具体的な各論に踏み込んで議論していかなきゃならない問題もあるでしょうが、全体的に言えば、この六月をめどに、歳出歳入を一体的に考えて、どの程度社会保障分野というものの増加を抑えていくか。社会保障分野の予算を減らすことはできません、ふえる分をどの程度抑えていくかというのを、財政状況と経済の成長率、そしてこれから歳出削減がどの程度可能か、増税がどの程度可能か、この両方から見て一つの方向を出していこうというのが今の経済財政諮問会議の方針であります。六月ごろにはそのような選択肢を提示できるように検討を進めております。

福島委員 社会保障制度の改革と並んで極めて大事だというふうに認識されてきたのは、私は若い世代のことだと思います。若者の世代がこの失われた十年の間に正規雇用から非正規雇用の方に大きくシフトしていった、かつては若者といえばどちらかというと強い立場だ、元気もある、チャレンジ精神もある、しかし、今の若い世代はひょっとすると弱者の方に位置づけられるんじゃないか、そういう指摘もあるわけであります。今後の社会保障制度改革を経て安定して制度を維持していくためには、支え手の側にしっかりしてもらう、このことが非常に大事だと思っております。

 総理のもとで若者自立・挑戦プラン、大きく前進をさせていただきました。現在の官房長官のもとで再チャレンジ推進会議が行われ、検討が進められていると聞いております。この若者の世代をどういうふうにして支えていくのか、支えると言うと多分言葉はおかしいんでしょう、しっかりしてもらうのか、これについては政府を挙げての取り組みが私は必要だと思っておりますが、この点についての総理のお考えをお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 若い方々がこれからの時代を担っていくということでありますが、中には、まだどうしたらいいかわからない、あるいは職を探しているんだけれども探すことができない方もたくさんおられるわけであります。

 そういう点に対して、最近、そのような言葉として、今までにないニートとかフリーターとかいう言葉が出てきておりますけれども、中には、まだ自分は職につくまでの準備が足りないんだ、少数派かもしれませんけれども、あえて職につかない、準備期間だとして勉強している方もおられるでしょうし、あるいはフリーターといっても、仕方なくフリーターなんだという方の方が多いんだと思いますけれども、いや自分はフリーターでいいんだ、一日短時間働いたり、あるいは会社に出るのは好まない、自宅で仕事ができればそれがいいんだという方もおられるでしょう。

 ニートにしてもフリーターにしても、一概に一くくりに定義しちゃうということはできませんが、好まないんだけれども、仕方なくフリーターだ、ニートだと言われる人に対してどのように職を探して将来のことも考えてもらうか、またこういう仕事があるという点については、官民協力して、職を持つ重要性また働くことの喜びというものを日ごろから考えてもらうような対策がますます必要だと思います。

 これは、単にニートやフリーターになってからだけじゃありません。子供のころから、社会体験、企業体験、実際にお父さん方、お母さん方がどういう仕事をしているのかということを見てもらう、仕事をすることによって自分の生活が成り立っていくんだということを早い段階から理解してもらう、なるほど仕事というのは大事なんだな、そういう教育も大事でしょう。教育面、実際の職探しに対しての、こうすれば職は見つかりますよ、こういう会社があなたの仕事に似合っているんじゃないですか、あなたの能力ならこの程度の仕事はできるんじゃないですかというような、そういうきめ細かい、官民一体となった、省庁連携した対策がますます重要になってくると認識しております。

福島委員 最後に、がん対策のことを申し上げたいと思います。

 民主党におかれても、がん対策の問題、熱心にお取り組みをいただいて、私ども公明党においてもまさしく同じでございます。先日、自民党との間でのプロジェクトで一定の合意が形成をされました。ぜひこれの法案化を急ぎ、この国会で成立を図っていきたい、そのように思っております。

 いろいろと議論は紆余曲折ございましたけれども、国民の関心が極めて高いがん対策について基本的な法律というものをつくっていく、このことは必要なことだと思っております。ただ、健康保険法の改正また医療法の改正、こうした医療制度を安定して運営していくということが、がん対策であろうと難病対策であろうと、その土台になることだけは間違いがありません。まず、この改革を実現して、その上でがん対策をどうするか、こういう位置づけではないかというふうに私は思っております。

 お手元に資料を配ってございます。がん対策、中曽根内閣以来、三次にわたって取り組んでまいりましたけれども、いまだ、例えば放射線治療については、アメリカには五千人の放射線治療の医者がいるけれども、日本は人口は半分ですが放射線科医の数は五百人、十分の一しかいない、こういう非常におくれた領域もある。緩和ケアの問題、日本は本当に末期になってから症状の緩和を図る緩和ケア、こういう位置づけではないか。しかし、これは、がんの初期の段階から、早期の段階からそうした視点で治療していくことが大事だ、こういうことも指摘をされております。

 こうした、今まで大きな前進があったことは事実でありますけれども、いまだ不十分である、このように指摘されている分野について前進を確保するためにも、がん対策法の成立を期していきたいと思います。そしてまた、それを受けて政府として今まで以上に御努力をいただきたい、そのように考えております。

 最後に一言だけ、総理からがん対策についてお聞かせいただければと思います。

小泉内閣総理大臣 現在、第三次がん対策の段階に入っておりますが、福島議員も、与党のがん対策プロジェクトチームのメンバーでありますから、よく御承知のことだと思います。

 これから、がんで亡くなるがん死亡率が一位になるでしょう。既にもうそういう状況でありますから、専門家に聞きますと、人間はだれでもがんになる、長生きすれば必ずがんになるということであります。そういう観点から見ますと、がんの治療というもの、これが発達すればますます長生きすることもできると言えるかもしれませんし、そういう点からがん対策に真剣に取り組もう、そういうことを考えますと、まだまだ研究者も足りない、設備等も不備だという点がありますので、福島議員もメンバーであります与党のプロジェクトチーム、現時点においてどのようながん対策が必要かという点につきましては今検討を進めておりますので、今後とも御協力をお願いしたいと思います。

福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 前回までこの質疑を行ってまいりました。私は常に、国民の安心につながる医療の確保というもの、これは重要であるというふうに考えまして、お話を伺ってまいりました。今回は前回に引き続きまして、緊急時における国民の医療へのアクセスという観点から救急搬送体制についてお伺いをしたいと思います。特に、すべての国民が平等に医療を受けることができる体制ということが重要であることから、僻地それから離島における救急搬送体制というものを中心にお伺いしたいというふうに思います。

 まず、小泉総理大臣にお伺いいたします。

 少子高齢化が急速に進展する中で、さまざまな面で医療ニーズというものが高まっていると考えますが、このうち特に救急医療の確保の必要性についての総理の御見解というものをお聞かせいただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 一番困るのは、突然病気になって、どうしたらいいかわからない。苦しい、痛い。普通の人では、どうしてこういうことが起こるかわからないときに、結局お医者さんに頼る。急に病気になるというのはだれでも起こるわけであります。昼間には限らない、早朝でも深夜でも起こり得る。そのときに見てもらうお医者さんなり医療機関があるということは極めて重要だし、あるいは、旅先に行ったり車に乗っていたりしても事故に遭って思いがけないけがをする場合もある。その場合に、すぐ救急車に来てもらう。こういう体制を整備していくことは極めて重要だと思っております。

 救急医療体制について、今までも与党におきましてもさまざまな議論が行われ、ある面においては、お医者さんでなくても救急の場においてはある程度の治療ができるようなことを認めてもいいのではないかというようなことまで議論してやってまいりました。

 そういう中にあって、救急医療、それは、たくさん医療機関があるところにおける救急医療と、なかなか付近に医療機関がないというところにおける救急医療も対応が違ってくるでしょう。そういう点も含めて、今後、救急医療体制というものの整備に取り組んでいかなきゃならないことだと思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 そうすると、僻地や離島といった、地理的に特色のあるというか、特色のあると言っていいのかあれなんですが、そういう地域の救急医療につきましては、都心と同じ取り組みでは対応できないというふうに思います。

 離島は最もこの典型的な例でございまして、そこで、これは川崎大臣にお伺いいたしますが、離島での医療を確保するために、厚生労働省として実際どのような取り組みを行っているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

川崎国務大臣 離島を含む僻地における医療につきましては、昭和三十一年からへき地保健医療計画を策定し、僻地診療所の整備、巡回診療の実施、僻地勤務医師等の確保などの方策を進めてまいりました。

 特に、離島においては、一つは、これからの大きな課題でありますITを活用した遠隔医療により専門医の診断に基づく治療を可能とするための設備整備補助、それから離島に勤務する医師からの代診医の派遣要請にこたえるためのへき地医療支援機構の強化、離島で診療を担う医師からの診療上の専門的な意見照会に対応する体制の確保、僻地、離島に赴任する医師のためのへき地・離島医療マニュアルの作成、こんなことを行ってまいりました。

 一方、どうしてもその離島の中では処理できない、これは委員前から御指摘いただいているヘリの問題、この活用もしっかりしていかなきゃならぬ。

 先日も長崎県の知事と話し合う機会がございまして、こんなことを、いろいろ意見交換をしながら、知事の御要請も聞きながらやってまいりたい、このように思っております。

糸川委員 今大臣がヘリコプターとおっしゃられましたので、ヘリコプターによる救急搬送につきましては、消防庁ですとか防衛庁ですとか、そういう関係省庁が複数になる。こういうことによりまして、緊急時における対応というものがおくれるということにつきましては避けられないのかなと。ただ、こういうことは避けなければならないわけですね。この関係省庁の連携というものは十分に図られていると言えるのか。それから、今後、救命医療のため、関係省庁との連携の強化に向けてどのように取り組んでいくのか、川崎大臣、お答えいただけますでしょうか。

川崎国務大臣 まず、ドクターヘリを持っていただく、これは一番効果的な方法であろう。しかし、現実十機しかないわけですから、その他の県においてはいろいろなことを考えられている。先日は青森では、防災ヘリを使ってやろう、そこへ必ずしもドクターでなくて看護師さんを乗せたらどうだ、こんな議論をしていただいておるようでございます。また、長崎県では海保、海上保安庁との連携、また、地域によっては自衛隊との連携、こうしたものがあります。

 我々も関係省庁間でしっかり協力をしてまいりたいと思いますけれども、一方で、やはり各県の知事さん、もしくは知事の部局と、自衛隊なり海保なりと、これは大きな災害対応も含めましてふだんから連携をとっていただくことが一番重要であろう、このような認識をいたしております。

糸川委員 実際本当に、救急のときには自衛隊ですとか海上保安庁と連携がとれる、こういう体制をつくらなきゃいけないわけです。

 そこで、最後に総理にお尋ねしたいんですけれども、離島や僻地におきまして航空機で速やかに救急搬送を実施する、こういうことが今大臣も必要であるというふうにおっしゃられたわけです。私もそのように考えています。

 ただ一方で、患者の航空搬送に有効なヘリコプターを有する省庁というのは、例えば、海上保安庁、防衛庁、消防庁、警察庁など、こういうさまざまな省庁がかかわっているというふうに聞いております。こうした場合、それぞれの省庁が独自に行動することによって、救える命も救えない場合も出てくるのかな、これは逆に救えない命が救える場合に変わってくるんじゃないのかな、こういうふうに思います。

 私は、人の命を預かる救急搬送につきましては、最終的に救急医療の対応を行う厚生労働省が中心となって、適切な指揮命令系統に沿った行動というものを要請するということが重要であるというふうに考えますが、総理はどのようにお考えでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 救急医療ということを考えますと、災害の場合も救急医療が出てくる可能性が強いわけですね。

 災害の場合を考えますと、一省庁ではできません。各省連携して災害対策をするわけです。そういう点から、私は、救急医療についても災害対策のような各省常に連携して当たっていこうという危機管理体制みたいな連携が、日ごろから訓練なり対応を考えておくということが重要だと思います。

 災害対策の場合は、自衛隊、海上保安庁とか消防庁、警察、もちろん国土交通省初め、緊密な危機管理体制、連絡網が今できております。その中に、災害と一緒に医療なんかにもどう出動するかということが入っているわけですので、救急医療体制を考えますと、一省庁のみならず、関係省庁が緊密に連絡をとって、できるだけ早くできるだけ近くの医療機関と連携をとれるような体制をより一層考え、準備しておくことが必要だと思っております。

糸川委員 実際、例えば救急車で現場到着までの所要時間なんか見ますと二十分以上かかるところもたくさんあるんです。離島なんかはさらに時間がかかる。

 今総理は関係省庁とというふうにおっしゃられるわけですけれども、実際、関係省庁と連絡をとって、それから海上保安庁が出ていって飛行機を出してヘリコプターを出してと。例えば、もしこれが救急隊員から直接、これはもうまずい、すぐに海上保安庁に連絡をしてヘリコプターなり飛行機なりを出して搬送できないといかぬというふうなときには、消防庁から海上保安庁に直接すぐ連絡ができる、そういう体制づくりというものが今後絶対必要になってくると思うんです。

 どこも、日本全国の国民が必ず安心で安全な医療を受けられる、この体制づくりというものは、今後課題として必ず取り組んでいただかなければならないと思いますので、災害だけではなくて、平時にも、ぜひそういう体制が整うように、総理、しっかりと取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 総理にまずお伺いをいたしますが、今の日本の医療について、総理はどういうふうに評価しておられますか。うまく機能していると思っていらっしゃるか、あるいは問題が多いというふうに考えているか、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 各国、相対的に考えて、日本の医療体制というのは先進国の部類に入ると思っております。できるだけ負担は少なく給付は厚くということをどの国民も望んでおりますし、また、医療機関をできるだけ身近なところに持ちたい、病気になったらお医者さんにかかりたいということ、これを戦後六十年間整備してきたからこそ、世界で最も長生きできる国になってきたんだと思います。

 当初、戦後、日本政府は長生きできる社会という目標を掲げました。それはなぜか。長生きできる社会はいい社会だから目標に掲げたんです。長生きできるためには、まず、病気にかかったら診てもらうお医者さんがいなきゃならない。お医者さんをふやしていこう。伝染病、かからないようにきれいな水を提供しなきゃならない。水道。汚れた水を飲んで病気になって伝染病がはびこったら大変なことになる。そして同時に、食料が、食べ物が国民に行き渡らない限り、栄養失調で病気になったり亡くなってしまう。そういう三つの主な条件を改善していくことによって、長生きできる社会にしよう、だから、長生きできる社会というのはいい社会だとみんな思っていたから、戦後そのような目標を立てたわけです。気がついてみたら、世界で一番長生きできる国になった。

 ところが、政治の難しい点は、その目標を達するとそれでいいかというとそうじゃない。目標を達しますと、当時、目標を立てたときには想像できないような問題が多い。今言っているこの法案の審議の中でも、まだまだお医者さんの数も足りないじゃないか、あるいは医療機関も不十分じゃないか、あるいは負担が多いんじゃないか、これからこの保険制度というのは持続できるのかという不安があります。そういう点をよくこの委員会でも議論されておりますので、今後、一つの目標を達した、世界で一番長生きできるという目標を達した後、やはりこれからも、長生きできる時代だったらば、元気で長生きできる時代にしていかなきゃならないということの中での医療の充実というのは極めて重要なことだと認識しております。

古川(元)委員 話を広げて私の聞いていることに答えないということはちょっとやめていただきたいと思うんですね、時間がないんですから。

 今の日本の医療、総理が言われた、国民のニーズにちゃんとこたえるような状況になっているという認識はありますかと聞いているんです。あるかないか、答えてください。

小泉内閣総理大臣 それは、個々一人一人によって足りない点はあると思いますが、相対的に考えて、国別です、相対的に考えて先進国の部類に入ると思っております。

古川(元)委員 いや、ほかの国と比べてどうかという話じゃなくて、国民が満足している、今の医療をいいと認識しているというふうに思っているかどうかということを聞いているんです。どうですか。

小泉内閣総理大臣 それは、全部一人一人が満足しているとは思いません。それは、病気にならない人の負担によって医療制度というのは成り立っているんですから。病気にならない方は病気になった方に対しては負担をしていただく、これが医療保険制度ですから。そして同時に、すべての人が税金で負担する、そういう分野でありますから、人によっては不十分だという点もあるでしょう。しかし、人によっては、ああ、よくやってくれているという人もいるでしょう。一人一人が全部満足しているとは言えないと思います。それは、どの点についてもどの分野においても言えるんじゃないでしょうか。

古川(元)委員 総理、さっき、各国と相対的に言えば日本はいいと言いながら、今度は、では日本の国民はと言ったら、それは個別には、相対的に言えないんじゃないですかみたいな話は、それはおかしいでしょう。

 では総理、聞きますけれども、今のこの日本の医療の問題点はどこにあると。一つ上げるとしたら、それは、さっきから言われているのだと、これはもう医療費だと感じますけれども、その点の認識は、一番の問題点はどこだというふうに感じていますか。

小泉内閣総理大臣 それは見る視点からいって違うと思いますが、政府全体から見ると、国民負担の点から見ると、やはり、どの程度国民が負担して、どの程度の水準の医療を得られるかということだと思います。またお医者さんの分野から見れば違う視点があるでしょう。

古川(元)委員 ちょっとまた別の視点から質問させていただきますが、総理は、御自分の小泉改革というのを、今までだれも手をつけられなかった改革に手をつけたのが、郵政民営化とか道路公団の民営化、こういうことを称して、小泉だからできたというふうに自画自賛しておられるわけでありますけれども、では、その視点からこの医療制度改革を見たらどうなるんでしょうか。

 この医療制度改革は、総理だけじゃなくてある種だれもが手をつけてきた。御自身も、厚生大臣として、そしてまた総理としても何度も取り組んできたんですが、手をつけなかったものに手をつければ、小泉だから手をつけられたんだと言えますよね。だれもが手をつけてきたけれども、なかなか問題を解決できなくて抜本改革が先送り先送りにされてきたこの医療制度改革、小泉だからできたと言って胸を張って国民にアピールできるところはどこですか。

小泉内閣総理大臣 抜本改革というのは一つじゃありません。民主党が言う税負担、消費税で全部負担しろ、年金あるいは医療。消費税を上げろという方から見れば、今の税と保険で両方対応していくというのは抜本とか言えないかもしれない。しかし、全部消費税で、あるいは全部税負担、税負担をもっとやってやるのが抜本改革だといえば、ほかから見ればそうとも言えない。抜本改革というのは一つじゃないんです。

 しかし、そういう中にあって、今までの改革では、特にこのままの制度では、ますます税負担がふえる、保険料もふえていく、それだともたない。やはり、健康な方々も含めて保険の負担と、そして一般国民の税の負担とあって初めて、病気になったときには軽い負担で医療、治療を受けられるという制度のためには、高齢者がどんどんふえていく、高齢者の方の方が病気にかかる率が多い、また頻度も多いということを考えると、ある程度高齢者に対する負担もお願いしなきゃならない。

 では、増税しようか。これは増税、ほとんどの人が反対です。そういう点も考えて、では医療提供体制の方々にも我慢していただこう、診療報酬等も引き下げる、あるいは医療の効率化を図っていこう、レセプトも電算化しよう、さまざまな改革をしてまいりました。

 まだまだ不十分な点もあるでしょう。しかしながら私は、今後、この医療保険制度を考えますと、税負担と保険の両方の制度を維持していく方が国民の理解を得られやすいんじゃないかと思っております。

古川(元)委員 それは、別に小泉さんじゃなくてもほかの人もみんなそう言ってきたんです。小泉だからできたというところはあるんですか。この医療制度改革で、あの郵政民営化や道路公団の民営化で叫ばれるように、私だからできたんですということが一つでもあるんだったら教えてください。

小泉内閣総理大臣 私一人ではできません。国会議員、多数の支持がなきゃ、国民多数の支持がなきゃ、何をやってもできません。

古川(元)委員 ということは、総理の中の、小泉改革の中の優先順位でいえば、郵政民営化や道路公団の民営化よりもこの医療制度改革は優先順位が低かった、そういうことですね。

小泉内閣総理大臣 総理大臣になるとわかりますが、全部の省庁の仕事が全部大事なんです。

古川(元)委員 あなた、でも、総理は、自分だからできたんだと。手をつけただけであたかもそれが大改革であるかのような、そういうことをこの五年間言ってきたわけですよ。御自分が厚生大臣何度もやられて、総理になってからでも二度もこの医療制度改革、法案が国会に出てきている。少なくとも、それくらいやってきたものについて、私だからできたというものが一つぐらいあってもいいんじゃないんですか。そこまでこの法案といいますか医療制度改革には余り熱がなかった、あの郵政民営化のように、三十年来ずっと言ってきた、そういう思い入れというのはないんですか、この医療制度改革については。

小泉内閣総理大臣 今までもお話ししておりますように、負担の問題、給付の問題、医療提供者側の問題、医療を受ける患者さんの問題、それぞれ多くの方々の反発を受けながらも、最終的には、ああこれはもう仕方ないな、やむを得ないなと、理解を得ながらやってきたつもりでございます。多くの皆さんの御協力に感謝申し上げます。

古川(元)委員 昨年の今ごろとはえらい違いですね。今ごろは、反対するんだったら出ていってもらえばいいと言っていたその人とは、とても同じ人だと思えませんが。

 では、そういう視点で、今のお話を聞きますと、私は、総理のやってきた医療制度改革を総理お得意のワンフレーズで象徴的にあらわすとすれば、医療費抑制こそ改革の本丸、そういう形でやってきたんじゃないかなというふうに思うんですね。これは、総理が小泉厚生大臣在任のときから、そして総理になってからの間の医療制度改革をめぐる主な経緯を見ていくと、目立っているところは、患者負担の引き上げのところと、診療報酬改定でマイナス改定をした、やはりそういうところなんですね。医療費抑制が改革の本丸だというふうに総理が考えておられる、そういう視点からやっておられるとしたら、その大前提に、先ほどからの話でもありますが、伸び続ける医療費をどう抑制するかという命題があったはずだと思います。

 その命題の根拠となった医療費推計なんですけれども、これは資料を見ていただくと、総理も見なれている資料だと思いますが、国民医療費の推計値の推移を見ると、推計のたびに、試算のたびにどんどんと下がっているわけですね。一九九四年には、二〇二五年の国民医療費は百四十一兆円になるというふうに試算をしておりましたが、九七年の試算では百四兆円、二〇〇〇年には八十一兆円、二〇〇二年には七十兆円という形でどんどん下がってきて、二〇〇五年には六十五兆円まで減っている。十年余りで約四割もこの推計が減っているわけですね。

 こんな推計で、この数字を根拠にして、これを前提に、例えば今回の改革によって、このままの制度だったら二〇二五年に五十六兆円になるはずの医療給付費が、今回の改革を行えば四十九兆円まで七兆円削減できる、そういうことを言うことに、これは総理、どれくらいの意味があると思いますか。

小泉内閣総理大臣 医療費の伸びの推計、推計が多くなると、結局、ふえた負担をどうやって国民で分かち合っていくかという問題が出てきます。また、医療費の伸びがそれほど伸びないというのであったらば、将来の負担も軽く済む。経済成長の度合いによっても違うと思いますけれども、推計は推計として、これが将来にわたってこの推計どおりにいくかという点については、必ずしもそうではないということでありますけれども、当初よりも推計の精度というものが、かなり、今まで試行錯誤しているうちに、正確を期さなきゃならないという御批判も浴びてきたものですから、その推計をできるだけ、そんなに外れたものにならないような、そういう体制も進んできているんだと思います。

 いずれにしても、推計というのは、私はどういう形で推計するというのは詳しくは知りませんけれども、専門家の皆さんの意見をよく聞きながら、この程度の伸びだったらばどのぐらいの負担が必要か、また、どのような効率性が必要かという点について大きく寄与するものだと思っております。

古川(元)委員 これは驚きましたね。厚生大臣何度もやった人が、医療費の推計の仕方を知らない。そして、それが精査されてこういうふうな医療費に変わってきた。

 川崎大臣、総理に、医療費の推計、どういうふうに推計しているのか、それで、一九九四年と二〇〇五年とで推計の仕方、変わったのか変わっていないのか、教えてあげてください。

川崎国務大臣 まず、過去の推計が結果として当たっていなかったじゃないかという御批判に対して、確かに、その当時の一人当たり医療費の伸び、これをとってそこから延ばしてまいりますので、そのときの状況判断と、物価また賃金等が結果としてどう伸びたかということになると、そこに大きな乖離があった。したがって、当時、こういう形で物価も賃金も伸びるというのが頭の中にありながら、足元の五年間を取り上げて、そこで伸びを引っ張っただけの線ですから、それは外れたということは事実であろう。

 今回は、そういった意味では、同じように、今、足元の状況が、物価が極めて低い、賃金が低い、そこへさまざまな改革をしてきた。そのことを前提にとるということになると、また数字が違うことになるかもしれぬ。そういう意味では、一番安定した時期をとらせていただいて推計を出させていただいた。総理が言われたように、過去のいろいろな御批判もあった中で、今回の推計方法は従来と多少違う。それは期間のとり方が違ったということで変えさせていただいた、こう思っております。

古川(元)委員 期間のとり方が違うといっても、これは、だって、過去の医療費の伸び率、何年間の部分を平均した、それをそのまま延長した、それだけでしょう。それ以上、私は一回来てもらって、もっと複雑な計算しているのかなと思ったら、それだけですと言われて、そういう簡単な計算ですよね、大臣。

川崎国務大臣 まさにそのとおり、足元の医療費の伸びというものを五年間ぐらいでとって、そしてそれを推計として延ばしている。

 それで、古川さんの言われたとおり、随分違ったじゃないかと言われるから、その当時、人件費の伸び、また物価の伸びというものが、我々が考えていたものと現実、今の時点が違ったから、数字的には残念ながら推計が外れたということでございます。

古川(元)委員 総理、そんな難しい計算じゃないんですよ、これは。それくらい、やはり、厚生大臣もやっていて、これだけ医療制度改革を何度もやられたんだったら、知っておいてもらわないと。それで、知らなくて、計算の仕方はよく知りませんがと。それでこの医療費が七兆円も減りますということで、今回の改革はすばらしい改革なんだと言われても、これは国民からしたら全く、本当に信用ならないと思うんですね。本当にこの一点をとっても、私は、この法案は到底、そんな、ここで審議をして採決をするような状況には至っていないというふうに言わざるを得ないと思っています。

 そこで、時間が限られていますから、次の質問に行きたいと思いますが、総理、今、医療提供体制の危機というのがあちこちで叫ばれておりますけれども、このことは御存じでしょうか、総理。

小泉内閣総理大臣 医療費、提供体制、さまざまな分野で問題があるということは承知しております。

 また、先ほど、私は推計等を専門家に任せることにしているんです。本当に言って、どうやって計算していいかわからないんです。古川さんみたいに頭がよくないからね。ああ、難しいなと。専門家の意見を聞いてもなかなかわからないから、信用することにしているんです。そういう、多くの方々が批判を受けながら信用した点、これをもとにしていろいろ考えるのが適切じゃないかなと。私の足らざる能力を使ってもなかなか難しい点は、私よりもはるかにすぐれた人の意見を尊重することにしているんです。

古川(元)委員 総理、そこの話、私はもうそこまで、御自分で言われたから言いますけれども、さっきも申し上げたように、この医療費の推計というのはいわば議論の大前提のところですよ。総理、どう言っているか、自分で。伸び続ける医療費をどう抑制するか。その根底になっている数字の、いや、計算聞いてみた、推計聞いてみたけれども、難しいからわからなかったならわかりますよ。最初から聞きもしない、任せるんだ、余りにもこれは責任者として無責任じゃないんですか。どう思いますか。

小泉内閣総理大臣 いや、総理大臣として責任ある態度だと思いますよ。私は自分で鉛筆をいじって計算なんかできませんよ。だから、専門家の意見を尊重して、それを理解して、それをもとにやるのが責任者の立場じゃないでしょうか。私は専門家の意見を聞いた方がいいと、私は専門家ではありませんから。

古川(元)委員 いや、僕は、だから、専門家の人がやるぐらいのそういうちゃんとした推計なのかなと思って聞いてみたら、過去の伸び率の平均を出すと。これは小学生でもできる話ですよ。

 総理は、自分は頭のいい人じゃないからと言いますけれども、こんな計算もできないんだったら、日本の教育基本法の改正案なんか出していますけれども、そんなことも、総理になってこれは難しい話ですからなんと言っているような話だったら、日本の教育はどうなるんですか。極めて、非常にシンプルなこういう推計がなされて、しかもそれがこの医療改革の議論の大前提になっている、このことについては、総理はもっとしっかりと、ちゃんとそこのところを知る責任があるし、任せているというようなことでは、私はこれは認められないと思いますよ。

小泉内閣総理大臣 私は知らないことは知らないと言っているんですよ。高校のときには微分積分をやりましたけれども、今はもうすっかり忘れていますね。足し算、引き算、割り算ぐらいはできるかな。しかし、連立方程式ももう覚えているかどうかわからない、政界の連立方程式も難しいようだけれども。

 しかし、そういう数字の突き合わせという点については、私は自分でする気もないし、する必要もないと思っています。そういう数字を積み重ねた統計等の問題につきましては、専門家の意見を聞いた方がいいんじゃないか。私より優秀な方々がたくさん周りにおられますから、そういう方々の、専門家の意見を尊重して、私よりもできる人にお任せして、それをもとにした資料で政策を打っていくというのが政治家の立場として適切ではないかと思っております。

古川(元)委員 総理、そんなのうてんきな話をされますけれども、この数字をベースにして、将来伸び続ける医療費を抑制しなきゃいけない、削減だ、診療報酬改定もどんと下げる、すべての議論の前提になっている数字なんですよ。そんなふざけたことでカットして、本当に国民が求めているニーズに合った医療というのが提供されるんでしょうか。

 先ほど、総理、医療提供体制崩壊の危機、そういう話は聞いているという、その程度の御認識はあるようですけれども、今現場で起きていること、勤務医の人たちを中心にバーンアウト現象といって、もう燃え尽きてやめちゃう。また、小児、産科、これは総理、総理の地元で横須賀・三浦地区、資料を見ていただければわかりますけれども、この地区なんかではどんどん子供を産むところがなくなっちゃっているんですよ。こんな状況が起きていることを知っていましたか。

 総理は、あの貴乃花が優勝したときに、痛みに耐えてよく頑張った、感動したと。私は、今、現場のお医者さんとかなんかは、とにかく一生懸命、必死に頑張っていると思いますけれども、総理から頑張った、感動したと言われても、もう頑張り切れないぐらいの状況になっている。それぐらいの認識をぜひ持っていただきたい。それぐらいの認識があるのかどうかを最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

小泉内閣総理大臣 産科、小児科のお医者さんが少なくて、その担当医師が過重労働で大変困難な状況に陥っているということは承知しております。だからこそ、診療報酬の問題においても、これからめり張りをつけてそういう対応をしていかなきゃならないということをしているわけであります。

岸田委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 総理に、医療提供体制あるいは健保法の改正、この法律に関しての質問をさせていただきたいと思いますが、先ほどからの議論を聞いておりまして、あるいは、総理のこの医師不足あるいは今の国民が求めている医療、これに対する御認識、大変私は甘いのではないかという気がいたしております。

 と同時に、総理、きょうは厚生労働委員会にお出ましをいただいているわけでございますけれども、一言申し上げるならば、おいでになるのが余りにも遅過ぎます。先ほど、この医療制度改革関連法が重要法案だ、だけれども、総理になればほかの各省庁のいろいろな意見もある、そういった、大変私にとっては憤りを感じる御答弁があったわけでありますが、この医療制度改革は国民の命を、健康をつかさどるそういう法案だという御認識を総理は真剣にお持ちなんでしょうか。

 四月の六日に本会議で私からも総理に対して質問をさせていただきました。本来ならば、この委員会に付託をされ、そしてすぐ総理がこの場においでをいただいて、まずはきちっと総理の御認識、あるいは、さまざまな形で、どういう方向へこの法案を持っていこうと考えておられるのか、総理からお示しをしていただける、そう私は願っておったし、そしてそれを求めてまいりました。しかし、残念ながらそれがかなわない。

 今日まで三十二時間、先ほど与党の委員からも、審議時間が三十二時間もうここで来た、そして、ここで総理がおいでをいただいて総くくり的な部分でこの法案を採決しよう、そんなときにおいでをいただいても、私は全然ありがたくも何ともない。国民に対して、これからしっかりとこの法案の中身をお示しし、理解をしていただいて、そして改革を進めていくというのであるならばまだ話はわかります。

 まず、総理、この医療に対して、総理は国民に対してどういうメッセージを発せられるんですか、どういう医療提供体制をつくろうとしているんですか、お聞かせください。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 健康にまさる財産なしと言われるように、この健康の分野において一番熱心に取り組んでおられる医療関係者、医学関係者は極めて重要であります。医療は国民が最も関心のある分野であります。病気になって初めて健康のありがたさがわかる、健康になれば何も要らない、多くの病気になった人がそう思う。医療は極めて重要であります。

 総理は出席しなくていいというお話でありますけれども、私は出席しろという要求があったからきょう出てきたわけであります。

 総理大臣というのは、各省、担当大臣を置いております。各委員会、担当大臣が責任を持って出席し、審議に応じております。民主主義国におきまして、最高責任者がすべての委員会にすべて出ないと重要と感じないのかというのは違うんじゃないでしょうか。アメリカ大統領は一度も議会に出ません。しかし、担当大臣はそれぞれ置いております。私が出席しないから医療を軽視しているのではないかという点は誤解であります。医療は大変重要なものであります。

園田(康)委員 決して私は全部に出ろとは言っていません。この国会審議の中で、この医療関連法案は重要広範議案として位置づけられたんじゃないでしょうか、この国会の意思として。だから、本会議でも、総理はちゃんと私たちの質問に答える、そういう場があったわけですよ。それと同時に、委員会でも同じようにそういう形をとるのが普通じゃないでしょうか。

 と同時に……(発言する者あり)ちょっと待ってください。同時に、私たちはそれを求めさせていただいたんだけれども、行政改革関連法案であるとか、そちらの方の時間でお忙しい、そういう形を総理はおっしゃっておられるわけで、政府がそういう対応では、この現場できちっとした議論を、そして、私たちは大切な医療制度関連法案を、国民に対してきちっとメッセージを発していかなければいけない。総理の口からもちゃんと、私はそれをお伺いしたかったんですよ。

 最後の最後になって、ちょっと話を聞いて、はぐらかしのような話をして、それでもう、すぐ出ていく。そういう姿勢だけは、私は断じて許されない。安心と安全の医療を総理が提供するというのであるならば、それに対する、ちゃんと国民に対して納得を、理解をしていただけるような姿勢を示すのが普通じゃありませんか。私は、総理にはその態度がないというふうに申し上げたい。どうでしょうか。

小泉内閣総理大臣 すべて国民生活にかかわる法案を各委員会で審議しております。どの委員会に出席するかどうかというのは国会でお決めになることであります。私はそれに従っているまでであります。どの法案も大事であり、医療関連法案、これはまた極めて重要な法案であります。

園田(康)委員 そうしましたら、この国会に何本重要広範議案があったんでしょうか。そして、この限られた会期の中でこれだけの重要広範議案を審議しなければいけない、そういう難しい選択を政府から国会に対して、私は、どうも押しつけているとしか言いようがない。私たちはしっかりとした議論をしなければいけないし、三十時間やったからそれでオーケーだという話ではないはずだ。国民にどのように理解をしていただくか、そして、その上で納得の医療を提供する、そういう形をとるのが普通じゃないでしょうか。

 そして、総理、後で質問をさせていただきますけれども、私は、総理の政治姿勢というもの、これをしっかりときょうはお示しをいただきたい。つまり、人に理解をしていただくためには、一番何が必要なんでしょうか、総理にとって。どういうふうにいつもされてきましたか。

小泉内閣総理大臣 人に理解してもらうということは重要であると思っております。しかし、世の中には、話せばわかる人もいますし、話してもわからない人もいますし、話さなくてもわかる人がいる。大きく分けて言えば三種類の人間がいると思うのであります。

 しかし、政治家は、話してもわからない人に話さなきゃならないのが政治家としての務めだと私は思っております。一番いいのは、話さなくてもわかる人と一緒にいるのが一番気は楽なんですけれども、しかし政治は、そうであっては務まらない。

 私は、民主党も含めて、国会で、どれが重要法案として総理が本会議に出席するか、委員会に出席するか、国会が与野党集まって決めている問題だと承知しております。それに従って私は国会に出席しているわけであります。

 私は、すべての法案、重要だと思っております。それを判断するのは国会の皆さん方であります。民主党も参加して決めているんじゃないでしょうか。

園田(康)委員 それであるならば、人に理解をしてもらいたい、そういう話をするのであるならば、相手の立場というものをきちっと尊重してくださいよ。突き放したような、人をばかにしたようなそういう態度というものは今後改めていただくように、それは私からもお願いをさせていただきたいと思っております。

 総理、この医療提供体制で、今まで小児科、産科、そして救急、さまざまな形が、医師不足、そういう声も最近になって出てきたというふうに先ほどおっしゃいました。いつごろ聞かれましたか。

小泉内閣総理大臣 私が厚生大臣をしていたときも、両方の意見があったんです。医師は過剰だという意見と、医師は不足していると、両方の意見がいつも出ていました。しかしながら、現在、医師がふえておりますけれども、抑えようという人たちもいるし、いや、もっとふやそうという人たちもいる。この点については両方の意見があるということについてはいまだ変わっていないと思っております。

園田(康)委員 では、まだ、ここに及んで医師は全く足りているというふうな意見も総理は是認をされるということですね。

小泉内閣総理大臣 偏っているんだと思いますね。足りている分野もあるし、足りない部分もある。全体で見ると、医師はふえている。医師を目指す方々、大学等を見ると、これからもふえる傾向にある。そういう点については、今後、足らざる分野にどうやって医師を養成していくか、あるいは足りていない地域に医師に行ってもらうか、あるいはそういう機関を置くか。これは大変重要なことだと思っております。

園田(康)委員 総理、足らざるところがあるんだというところ、それはお認めになるわけですね。それをきちっとこの法案の中に盛り込むと同時に、もう一つ申し上げるならば、総理が厚生大臣のときに、もう既に地域偏在の問題というものは、そのころから地域的な部分で足りていないというところは指摘をされていたんですよ。この間に、それがどういう形で是正をされ、そしてこの法案によって、その足らざるところがどういう形にきちっと提供体制が確保されるのか。国民にとっての安心した医療提供体制というものが確保されるのか。その点、総理はどのようにお考えなんですか。(発言する者あり)

川崎国務大臣 この中で……(発言する者あり)委員長の指示に従って立っております。委員長の指示に従って立っておりますから、御答弁させてもらいます。

大村委員長代理 御答弁ください。川崎大臣、御答弁ください。

川崎国務大臣 先日も、熊本県の知事さん、長崎県の知事さんとお会いしました。青森県の知事さんともお会いした。

 一つ一つの状況が違いますね。一つ一つの状況が違います。国全体で偏在問題を一挙に解決できるかといったらそうではない。今度の仕組みとしては、知事さんを中心にしながら、大学の機関、また病院の機関、また場合によっては地域のまさに医療を受ける側の人たちも入ってもらって、きちっとした体系を位置づけていきましょう、それが今回の施策の中に入らせていただいている。

 そして、先ほどから申し上げているとおり、例えば熊本では、小児医療の問題、話しました。そうしましたら、やはり少し足りない感がある。その部分については、内科のお医者さんに一次医療という形で受けていただくように熊本県と話をしながらやらせてもらっている、こういう具体的なお話もいただいている。そういう意味では、青森県においても長崎においても、それぞれ知事さんが今先頭に立って頑張られている。私はそういう認識を強く感じております。

    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

園田(康)委員 総理がきちっとそのことを認識をして、そしてこの法案の中で、どういう形でそれを総理自身が先頭に立って指示をされたんですか。

小泉内閣総理大臣 現在、川崎厚労大臣の答弁のとおりなんです。法案に書いてあることだけをやるということでなくて、今まで積み重ねがあり、さまざまな要望があるんですから、法案に書いていなくても、今、知事さんと地方の意見を聞きながらそういう対応をしていくということであります。

園田(康)委員 だから、この法案と同時に、総理が在任期間中、この五年間でもいいですよ、一体、小児科、産科、救急、この分野において医師の偏在というものがもう指摘をされてきた、それに対してどういう形の指示をされたんですか。

小泉内閣総理大臣 そのような声がありますから、それに対応できるような施策を打ってくださいと大臣に指示しております。

園田(康)委員 それに対して具体的な策が何もないんですよ。この法案の中にも、先ほど認めたじゃないですか、この法案の中でも何もそういう形がとれていない。そして、それに対して現場に勤めている医師の方々は大変つらい思いを今されているんです。

 先ほども少し議論がありました。医師の自分たちの高いモラル、道徳によって、一生懸命に医療提供体制を、身を粉にして、犠牲にしてやっているんですよ。生活がぼろぼろになり、それでも患者が運ばれてくる、救急的に運ばれてくる、それでも当直して休みなしに働き続ける。この医師の労働条件を、一体どういう形でこの法案や予算や施策によって解消されるんですか。こういう認識を総理はお持ちなんですか。

小泉内閣総理大臣 持っているからこそ厚労大臣に指示しているわけであります。

園田(康)委員 では、具体的にどういう指示をされたんですか。総理が指示をされた内容を聞いているんです。(発言する者あり)

岸田委員長 ちょっと待って。川崎厚生労働大臣。まず大臣。順番。(発言する者あり)

 御静粛にお願いいたします。御静粛にお願い申し上げます。

 川崎大臣、どうぞ。

川崎国務大臣 私のときじゃないですよ、私のときじゃないですよ。私、五年間厚生労働大臣をやっているんじゃないんだから。

 しかし、総務大臣と文科大臣と厚生労働大臣が三省でこの医師不足問題について協議しなさいと、これは総理の指示がなければないじゃないですか。(園田(康)委員「協議をするだけなんですか」と呼ぶ)いや、やったじゃないですか、現実に。その結果として、今申し上げたように、都道府県単位に対策協議会を立ち上げてやりますよ、そしてそれをより公的なものにしていく。もう一つは、民間の病院にも公的な立場で担ってもらおう。こういうものもきちっと法案に入っていますよ。そういう意味では、全く入っていないということを言われるから、私、現場の立場として、そういうものは入っていると。

園田(康)委員 全くとは言っていません。それが、きちっとした形で、具体的にどういう形であらわれるのか、私たちにはまるで説明がついていないんですよ。だから先ほど、最初、総理に申し上げました。わからない相手に理解をしていただくためには、誠意を持ってその説明をきちんとしなければいけないんです。そのための時間というものは大変大きくかかるんですよ。総理だって、諸外国と交渉するときにさまざまな形で、相手もわからない対応がとられるでしょう、それに対してしっかりと、信念を持って、時間をかけてじっくりと話をするのが普通じゃないですか。今だってされているわけでしょう。ああ、していないですね、していないからこそ何も進まない。だから、総理、私は、時間をもっときちんとかけること。

 そして、総理、もう一つ指摘をさせていただきます。総理在任中のこの五年間で、格差が生まれたということが言われましたね。総理は、最初は格差は認められない、そんなことまで言っていました。ところが、途中から分が悪くなったんでしょうか、格差が生まれることはいいことだ、そこまで言い切った。生活保護世帯数がふえ、ジニ係数というのも最初は知らなかったようでありますけれども、そのジニ係数によって、所得格差も生まれ、そしてあげくの果てには子供の就学援助率、これまでどんどんどんどんふえてきた。

 その中で、高齢者世帯の、高齢者の実態に対して所得格差がこの中でも生まれて、これ以上年金の給付を減らし、そしてさらにはこの負担までふやしていく。介護もそうである。そして、今回のこの医療でも、ねらい撃ちはお年寄りの生活弱者やあるいは経済弱者と言われている方々、こういう方々にしわ寄せをやろうというんでしょうか。

 この格差の関係、健康格差がこれ以上生まれて、国民に対してこれを押しつけるのであるならば、しっかりとした理解を求めるような総理の態度というものを私はお示ししていただきたい。

小泉内閣総理大臣 私の言葉を、誤解なり、端々をとって批判されておりますけれども、私が言っているのは、ジニ係数によって、格差が生まれているということじゃないんです。ジニ係数というものによって格差が広がっているという数字があるから専門家から聞いたら、それほど格差があるという状況じゃないという専門家からの意見を受けているということを申し上げているんです。そして、どんな時代においてもどんな国においても、格差は今までもあった、これからもあるでしょう。しかしながら、格差を固定化しないように、一度や二度失敗してもまた挑戦できるような機会を提供していかなきゃならないということを言っているんです。格差ゼロの社会はないと言っているんです。

 そういうことから、私は、これからも格差というものを固定しないで、できるだけ多くの人がさまざまな持ち味を生かすことができるような社会をつくっていきたい。そして、日本は各国に比べても格差は低い方の社会である。今後、この格差を固定化しないように、さらに多くの人が頑張って、努力する人と努力しない人がいたとしても努力する人が報われるような社会をつくっていくべきだということを言っているわけであります。

園田(康)委員 格差そのものがなくなるとは私は思いませんし、自由主義経済の中においては、ある面、当然のことだと思います。問題は、格差が拡大をしていることが問題なんですよ。小泉政権のこの五年間の間で、先ほど申し上げた格差が拡大しつつあるんです。これに対してどういうセーフティーネットを張るんですか。本年、ここにおいても、この医療制度関連法案においても、これまた高齢者に対して負担を押しつけるわけですよね。この負担に対してまたここで格差が生まれますよ。これによってさらに生活が苦しくなるお年寄りもふえてくるわけなんですよ。それに対するセーフティーネットはどういう形で張っていらっしゃるんですか。どうでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、必要な医療はどこまで国が負担するかということは大事であります。その点については、日本は先進国に比べてもかなりしっかりとした制度を持っております。

 ただ、どんどんどんどん能力がある人が伸びていくというこの点については、私は、足を引っ張ることなく、そういう方々がどんどん出ていただければ、税金も納めてくれますし、それはやはり歓迎すべきことじゃないでしょうか。

 要は、どうしても負担し切れない、必要な方々に対してどの程度まで国が負担するか、これが大事であります。だから今回も低所得者に対してはしっかりとした低い負担でおさめるような改革をしているわけであります。

園田(康)委員 それだけではありません。今回は、お年寄りもさることながら、現役世代にもまたさらに負担をこれまた拡大させようというわけですね。そして、その中においては、この一般的な保険料率というものが明確にまだされていません。法律の中には、全体的に上限は決めておりますけれども、その中身の部分においてはそれが不明確なまま、まだ明らかになっていないのが実態ではないでしょうか。

 特定保険料率、この部分に関して、総理はどういう認識を持っていらっしゃいますか。これをどうやって上限をつけようとされるのでしょうか。この部分が現役の負担の、高齢者に対する負担割合という形になってくるのですけれども、総理はこの辺、きちっと認識していらっしゃるのですか。

川崎国務大臣 後期高齢者医療制度における保険者の負担分、この問題について今御質問いただいたのだろうと思います。

 すなわち、国がまず後期高齢者については五〇%負担をする、一方で、保険者に、健康保険組合等に四割の負担をしていただく、そして後期高齢者は一割を負担する、その数字が、特に若い人たちが入っておる保険組合においては、その負担が場合によっては高くなる、支払いが不能になるのじゃないか、こういう御心配があるのだろうと思います。

 ここにつきましては、負担調整措置ということで、私ども、赤字になるようなことになるまでに、これまでと同様、給付費等臨時補助金を使っていきたい、このように考えております。したがって、赤字になるから、そこで負担が一挙にふえてしまうということはないと考えております。

 ただ、これから十年、十五年、全体の流れの中でこの動きを見ながら、最終的保険料の問題というのは調整をしなければならない時点は出てくるだろう、このように思っております。

園田(康)委員 まだまだ不明確な部分がこの法案には多過ぎます。と同時に、総理の認識も私はまだまだ甘いと思っておりますし、この法案によって、総理は、このまま強行させることによって、国民の医療まですべてぶち壊すことになりはしないかということを私は懸念をさせていただき、そして指摘をし、質問を終わらせていただきます。

岸田委員長 次に、仙谷由人君。

仙谷委員 仙谷でございます。

 今、我が党の議員と総理のやりとりを伺っておりました。総理、きょう出した、医療制度をめぐる主な経緯、ずっとごらんいただきましたら、平成八年から、今平成十八年ですから、十年間です。そこで、小泉総理大臣が厚生大臣として、あるいは総理大臣としてかかわった年数は大変長いわけですね。いわば、医療制度改革と言われている問題について、総理から言わせれば、全部任せているんだから形式的だ、こうおっしゃるのかもわかりませんが、そうはいかない。政治家としてかかわった以上、現在の事態にある種の結果責任といいましょうか、政治責任があるというふうに考えなければならないことは当然だと私は思うんですね。

 そして、この現在の事態を総理がどのように認識しているのか、これが、この法案審議をするに当たって我が党の議員の疑問であったために、先ほどのようなお話を聞いたわけですが、どうも予算委員会などと同じように、はぐらかしといいましょうか、傍聴席にいる方やあるいは厚生省の方やあるいは与党の議員でも、どうもぴたっとこないな、これは困ったものだな、こう思われたのじゃないかなと私は思うのでございます。

 今の園田さんの質問を引き継いで、こういうことをちょっとお伺いしてみたいわけでありますが、格差論争がございました。収入、所得の格差、これがつくのはやむを得ない、拡大し固定化するのが問題だ、ここまでおっしゃいました。

 さてそこで、健康に格差がつくのは、これはある種自己責任の問題だといって切り捨てられるでしょうか。それから、受け得る医療に格差がつくとすれば、これは日本国に住む日本人として、あるいは外国の方々も含めて、憲法二十五条の趣旨にも照らして、さあ、どのようにお考えになるのか、所得の格差と医療格差、受け得る医療に格差があるかないか、ある場合にはどう考えたらいいのか、総理はどうお考えでございますか。

小泉内閣総理大臣 それは、健康にも格差があると思いますね。生まれながらにして健康、丈夫な人、弱い人、あると思います。そして、お医者さんがいるから、薬があるから暴飲暴食していいのだということではないと思います。生活習慣によって、いいお医者さんもいる、いい薬もあるけれども、やはり一番大事なのは、その以前の日常の食生活等、十分に気をつけている人と、余り気をつけないで無頓着に食事をしている人とは格差が出てくると思います。また、お医者さんによっても、名医と必ずしもそうでない方に診てもらう場合には、やはり差が出てくるでしょう。

 そういう面において、私は、格差はあると思いますけれども、全体的に考えて、日本の医療体制というのは、世界の水準からいっても先進国の部類に入る、このような医療保険制度は、持続させるように改革していかなきゃいけないと思っております。

仙谷委員 資料の二枚目でしょうか、所得と抑うつの関係、所得と要介護高齢者率の関係というのをちょっとつけてみました。ごらんください。

 やはり、所得の問題も、実は高齢化をするというふうな条件が加わりますと、要介護率が男性も女性も飛躍的に高まったり、所得の低い人ほど、所得の低いお年寄りほどそういう要介護率が高まったり、あるいは精神状態が抑うつ的になる、つまり、病的な状態に近くなる、これはそういう一つのデータを表にしたものであります。このあたりも本当は厚生省が、あるいは内閣として、ちゃんとデータをとるべき時代に入ってきておるわけでありますが、この種のデータがない、ここは一つ、そういう問題点を指摘しておきます。

 さらに加えて、先ほどちょっと小泉流のお話をされましたけれども、個人の自由に帰せないような理由で、つまり、そういう素因があるからある病気に罹患した、あるいは、生まれながらにしてハンディキャップを持ったという方も医療を必要とする方の中にはいらっしゃるでしょう。それから、加齢によって医療を受けなければならない、こういうリスクというのは当然どなたでも増してくることは、これは世の習いというか、古今東西はっきりしたことであります。

 その際に、受け得る医療に格差がある、これは、この日本国においては、できる限り格差が発生しないように、その差が少ないようにする、そして、日本における最低の基準はここだということだけはちゃんと守る、設定する、そのことを維持するために努力を払う、これが、憲法を持ち出すまでもなく政治の役割だと思いますけれども、総理はいかがお考えでございましょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、お金をかければ切りがないほど、医療にかける方もいると思います。しかし、それが必ずしも治療に役立っているかどうかということを考えますと、役立っているときもあるでしょうし、全く無意味な場合もある。健康食品を買う方はいますけれども、こういう方、健康食品を食べている方が必ずしも健康かというとそうでない。

 しかしながら、必要な医療はどこでもだれでも受けられるという、その体制はしっかりと日本でもつくらなきゃいかぬということで今までやってきた。医師もふやしてきた、でもまだ足りないということでありますので、まだまだ不十分な点がありますが、こういう点につきましては、国会の審議を通じて、またさまざまな国民の御意見を聞いて、改善すべきはしていかなきゃならない。私は、改革に終わりはない、どのような時代においてもこれで一〇〇%いいということはないのではないかと思っております。

仙谷委員 さっき偏在というお言葉を使われました。偏ってあるという話、それから今この間の、これはがん治療から言われてきた言葉でありますが、厚生労働関係では均てん化という言葉を使われている。ということは、裏を返せば均てんされていない、だから均てん化が必要なんだ、不足しているところがある、こういう話だと思うんですね。

 それで、総理にぜひ認識を改めていただくというか、より掘り下げて認識をしていただきたいのは、先ほどから、医師がふえているけれども不足だと言う人がおると、こういう一般論で、今語るべき事態ではなくなっているということをまず認識していただきたいんです。

 足りないのは、病院の中堅の医者が圧倒的に足りなくなっている、急性期病棟の医者が圧倒的に足りなくなっている、そして科で言えば、分娩を扱う産婦人科のお医者さんが圧倒的にいなくなっている、あるいは、そういう病院でいなくなっている、そこが不足している、小児救急の病棟でのお医者さんが圧倒的に不足してきている、こういうことであります。

 それから、いいですか、御存じだと思いますが、毎年毎年七千五百人から八千人のお医者さんができますが、今、毎年毎年四千五百人ぐらいの中堅のお医者さんが、勤務医からバーンアウトしているのか、もっと違う思いなのか知りませんけれども、開業をされている。当然のことながら、マクロ的な統計の数字の上では不足としてあらわれてきません。しかし、病院のお医者さんは圧倒的に不足している。

 もう一つ、これは通常のお医者さんの問題でありますが、もう一つの大問題は、高度先進医療にかかわるお医者さんは、例えば、がんの腫瘍内科医とか、先ほど福島先生おっしゃっていましたが、がんの放射線治療医とか、圧倒的にこれは不足です、いません。腫瘍内科医は、ちゃんと認定された専門医は四十七人です。あと暫定の方が五百人弱です。一人もいない県もあります。つまり、そういう先端を行く、あるいは、もう国民が既に情報を知っているけれども、どこへ行ったら医療にアクセスできるのか、行ってみたらないというこの医師不足、専門医の不足。それから、今までは当然のこととして前提にされていた産科や小児科、そして最近では、外科、麻酔科、脳外科、そういうところを中心に急性期病棟においてお医者さんが圧倒的に不足してきた、こういう問題なんですね。

 さらにもう一つは、インフォームド・コンセント、これはいいことであります。私も、自分の病の体験からして、いや最近は丁寧になったなと思います。ありがたいことです。問題は、インフォームド・コンセントと、ある種医療技術のIT化の中で、丁寧にやれば従来の医療よりも、はるかにお一人お一人の患者さんに対する時間が勤務医の先生方を中心にかかるということなんです。そうすると、当然、対患者に使う時間数は、本来は少ない人数しか診察、治療できないはずでありますけれども、そこのところの人数を手当てされないと、どんどんどんどん残業になるか忙しくなってくる、寝る間もなくなってくる、こういう医師不足の問題なんです。

 皆さんも経験しておると思いますが、コンピューターを使えばペーパーレス時代になる、こう言われましたね。何か持ち運びも簡単だし仕事量が減るんじゃないか、効率化されて仕事量が減って、人間労働の中に余暇が生まれる、こう思いました。

 どうですか、皆さん。私もそんなに熟達しておりませんが、少々使えます。パソコンを使った仕事を始めたら、すぐ従来の二倍、三倍、四倍の仕事量をこなさなければいけなくなります。夜寝る暇も本当になくなります、メールの返事を打とうとすれば。つまり、このIT化というのはどうも仕事をふやすんですよ、お医者さんも。ペーパーレスじゃなくてペーパーがふえるんですよ、IT化というのは。どうもそういうことだと思います。

 医者不足は、そういうことの要因もあって、子供が減っているのになぜ小児科と産科が不足するのか。これはだれも、おかしいんじゃないか、絶対量あるんじゃないか、こういう感覚で見ておったわけですが、足元がこんなになってしまったということであります。ここは別途、特別の対策が私は必要だと思いますが、総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 今の御指摘は、大変私は重要なことだと思っております。前から、お医者さんは多い、どんどんふえていく、減らさなきゃいけないという専門家の方々の意見と、一般国民の声を聞くと、いや、お医者さん足りない足りないという声を私も常に受けております。どうなんだろうと。

 今、お子さんが減っていくのに、なぜ産科と小児科が足りないんだろうか、ここがやはり大きな現在の問題点でもあるし、お医者さんがふえているのにもかかわらず少ない少ないと言っているのは、やはり偏っている、お医者さんの希望者なり、お医者さんが働く分野が偏っているんだと思います。

 今後、なぜ医師が多過ぎて減らさなきゃならないかということを聞きますと、これは、医師養成に大変お金がかかると。この医師の養成、医師の国家試験、医師免許を取ってもお医者さんの仕事につけないというのが出てくる、これは好ましくないだろうということで、医師の数がふえ過ぎるから減らしていかなきゃならないということを、もう学校の段階から考えているわけであります。

 今後、この偏在というもの、医師の偏り、必要な分野に行ってもらうという点については、診療報酬等の面についてある刺激をつくる、こちらの分野に行くとかなり有利なことになりますよという点も必要でしょうけれども、同時に、さまざまな地方の意見を聞くことが大事でしょう、足りない部分もやろう。それと、財源を捻出する場合には、どういう財源を確保するかということも必要でしょう。あるいは医療提供体制の効率化を図るためには、IT化という分野に適することでかなりできる分野もあるでしょう。

 しかし、そのようなさまざまな意見がありますから、医師を減らして本当にいいんだろうか、医師の免許を受けても医師の分野につけなくても、医師の免許を持たせていいんだろうかという点も含めて、検討していかなきゃならない課題だと私は思っております。

仙谷委員 まだちょっとおわかりいただけていないような気がするんですが。

 いいですか、今ここに、「医療崩壊」という本を持ってまいりました。何と、国家公務員共済組合が経営する虎の門病院の泌尿器科の部長さん、小松さん、これは、そこにいらっしゃる赤松副大臣の医療問題のアドバイザー。先般、委員会でおっしゃるから、僕は買ってきて読んでおるわけであります。「「立ち去り型サボタージュ」とは何か」という副題がついています。これは、もし時間をつくれるようになったら、総理もお読みください。厚生労働大臣もお読みいただきたい。赤松副大臣は中身をおわかりになっていると思いますけれども、要するに、今私が申し上げたようなことも書いておるのであります。

 厚生労働省も、いろいろな研究会で、なぜこんな事態に立ち至っているのか、小児科、産科を中心として医師不足、決定的に少ないということになぜなっているのか、研究はほぼ終わっているんですよ。立派な先生方が、ついせんだっても、この参考人質疑のときにいらっしゃってちゃんとしたことを、厚生省の研究会の班長さんですよ、責任者。自他ともに認める立派な先生。この委員会の自民党の筆頭理事の鴨下先生と同じ鴨下さん、鴨下重彦、極めて立派な先生。ほとんど医学の世界では、医療の世界では尊敬されている先生。

 その人を長にして、もちろん小児科の専門家ですが、なぜ小児科、産科がこんな状況になっているのか、大体方向性としては答えが出ているんですよ。政治が動かない、政策がない、とりわけ予算がつかない、これが、もう素人が見てもわかる現在の状況です。

 そこで、連日のように新聞に、がん難民は去年の話で、まだがん難民も大量に存在しますけれども、産科難民、小児科難民ときて、今度のこの健康保険法の改正で平成二十年から始まる療養病床群のベッド数の削減で、それに対応する施策が六年でうまくいくとは思えない、そうだとすると、これは介護難民が大量に生まれるんじゃないかというところまで来ております。

 総理は、この医療崩壊とか小児科難民、産科難民、がん難民、介護難民とかという言い方は、大げさだと思いますか。それとも、そういう危機的な岸辺に日本はたたずんでいる、これは早急に何とかしなければいけないとお考えですか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 御指摘の話は私も聞いております。そういう問題点があるからこそ、この問題について改善をしていかなきゃならない。医療の分野においてさまざまな問題点が指摘されますし、こういうことについては不断の見直しが必要だと思っております。

仙谷委員 ここで総理に、この五年間の小泉政治を振り返って、胸に手を当てて、これでよかったのかなと考えていただきたいんです。

 というのは、よく御記憶されておると思いますけれども、ことしの診療報酬改定で、総理は、三回の診療報酬改定に総理としてかかわったことになるんですね。平成十四年、全体マイナス二・七%、診療報酬本体マイナス一・三%。平成十六年、全体マイナス一・〇%、本体〇%。平成十八年、全体マイナス三・一六%、本体マイナス一・三六%、これがことしです。その都度、小児科に対する重点配分とか急性期に重点配分、こういうことが言葉で出て、少々の加配、重点配分とかがなされたことは間違いありません。

 ところが、この平成十四年の診療報酬改定、お配りした二枚目の表でおわかりいただけると思いますが、この平成十四年の診療報酬改定は、三方一両損、これが総理のワンワードポリティクスでした。いろいろ、議会でどういうふうにおっしゃったか、調べてまいりました。事もあろうに、三方一両損というのは全体的に国民が一番得をするというところまで言い切った。

 三方一両損の医療制度改革なのか医療保険財政改革なのか知りませんが、この改革によって、いいですか、現在国民が受け得る医療は、部分的なのか全体的なのかはともかくとして、崩壊の岸辺に立っている。崩壊の兆しを来している。多分、お子さんをお持ちの方はこれから大変苦労すると思います。これからお子さんを産もうとする方は、これまた大変苦労すると思います。これはもう、この委員会で今度大きく問題になりました。

 がんになっても、アクセスの仕方をこれから探すような方々は、これまた大変苦労します。がん検診に至っては遅々として進まない。今度のこの医療制度改革では、ついにがん検診は市町村の老人保健事業からもたたき出されて、各保険者の業務ということになってしまいましたけれども、だれがやるかどうか、それももう自主的な話ということになるわけであります。

 つまり、小泉政治五年間というのは、医療制度改革というのは医療保険制度改革であり、医療保険財政改革に終始し、医療提供体制の改革、これは言うだけで何もしなかった。むしろ、拱手傍観をしたばかりにこんなにひどい状況になってしまった、なりつつある、こういうことじゃないかと私はこの間の審議を通じて見ておるんです。まじめに見ておるんです。病気の体験者として、これはゆゆしき事態になったなと本気で思っているんです。これではいかぬ、こういうふうに思っているんです。

 ちょっとお金の話の裏側なのか、どっちが表か裏かわかりませんが、国民が受ける医療の質をよくしなきゃいかぬということは何回も言っておりますけれども、それからさらに踏み込んで、病院、勤務医、急性期病棟、小児科、産科あるいはがん、リウマチ、難病というふうなところに特段の手当てをしていくというようなことが完全に没却されたことが、今の事態を生み出しているとつくづく思います。

 一つは、このお示しした資料の一番最後の、胃がん検診の実施状況の推移から肺がん、大腸がん、子宮がん、乳がん、これをちょっとごらんください。平成六年度からです。平成十三年度からごらんいただいても結構ですし、総理が厚生大臣時代あるいは総理になられてからのときのところをごらんください。

 総理ががんについて国会で本会議や委員会で答弁をされたり、あるいは厚生省からの、先ほどちょっと引用されましたけれども、第三次対がん十カ年総合戦略、これをごらんになったりして、こういうところでは、「有効ながん検診の普及等のがんの早期発見」、例えばこう書いてあります。それから、これは平成十七年でありますが、平成十六年でも、「検診の充実など予防の推進」、まことにごもっとも、書いてあります。これが、「罹患率と死亡率の激減を目指し」という頭言葉の中で出てくるわけであります。

 この検診実施は、昭和五十七年から始まったとか昭和六十二年から本格的に始まったとか言われておるわけでありますが、そのぐらい歴史のあるものでありますけれども、この数字の推移をごらんになって、総理、どういうふうにお考えになりますか。

小泉内閣総理大臣 がんが我が国の死亡率の中でも第一位である、また、お医者さんに伺うと、人間は年をとれば必ずだれでもがんになるという、これからもがんの死亡率は一位になっていくのでしょう。それだけに、がん対策が重要だという御指摘だと思います。

 現に、かつてはがんを宣告されるともう死を覚悟しなきゃならない、いかに教えないで、家族にどうやって打ち明ければいいかと苦労されたお医者さんも多いかと思います。最近では、むしろ本人に教えた方がいい、あるいは本人も教えてほしいという患者さんもふえてきていると聞いております。

 そういう中で、がん対策も私は進んでいる面が随分あると思います。今御指摘の不十分な点もあると思いますけれども、治療等については格段に進歩している分野もたくさんあると思います。そういうことが両面であるわけでありますが、今後も、がんの対策について、重要だからこそ第三次がん対策を総合的に考えようということでやっているわけでありますので、今いい点は伸ばしながら、不十分な点、どうして改善していくかということが重要ではないかなと思っております。

仙谷委員 ここで、例えば乳がんというのがございますね。これは実は、視触診という部分の数字でありますから、大して信用ならないのであります。つまり、平成十二年からは、国の方もマンモグラフィーという撮影機を導入して、それで、マンモグラフィー併用の乳がん検診をやった方がいいですよ、こういうことにしているんですね。これは、都道府県に助成をしたり、あるいは市町村に助成をして今までやってきた。

 ところが、ことしの予算、女性のがん緊急対策と称して、効果的ながん検診の普及で平成十七年度はマンモグラフィー導入に対して四十一億三千万円を予算措置した、ことしになったら二十四億一千万円になっている。何でこれを減らしたんだと僕は厚生省の人に聞きました。いや、十一億円も去年余りまして、使えないんですよと。

 各県別のマンモグラフィー併用のデータというのが厚生省にはないけれども、健康保険組合ではつくった人がおります。ほとんどが、つまり四十近い都道府県はマンモグラフィー併用の検診が、受診率がたった五%以下です。一%、二%のところもいっぱいあります。富山県だけが一五・七%、特段に力を入れている。次は宮城県、一〇・八かな。力を入れなければならないということを一方で書いたり言ったりしながら、予算が減ってくる。いや、それは地元で受けてくれないんですよと。

 今度は、先ほどから申し上げておりますように、がん検診を含めた健診、これも市町村の老健事業ではなくする。国保の事業であったり、政管健保の事業であったり、普通の組合健保の事業である、こういうことにしてしまうというのでありますが、こうなってくると、本当に、中央政府が、国家が国家意思としてがんの予防と早期発見のための検診、検診の精度を向上させる、そのために人材を養成する、人材養成のために資源、予算を投入するというふうなことを言っても、どうも羊頭狗肉、看板だけということになっているのではないかと思います。

 総理、先ほどもおっしゃいましたけれども、お金の話を一生懸命されておりますが、そのとおりなんですよ。だから、政治が必要なんじゃないですか。国家の意思が必要なんじゃないですか。道路の財源を一千億持ってくれば、がん対策なんかどんと進みますよ。小児も産科も、多分、単年度で言えば二千億か三千億のものを突っ込めば、これは一挙に改善の方向に向かう可能性があると思います。あるいは、今の崩壊を食いとめられることが一時的にせよできる可能性があると思います。しかし、そのぐらいの単位のお金は必要です。

 先ほどから申し上げていることは、専門医をつくる、専門性のために、つまり人材育成のためにお金をこの医療の世界でももっと使わないと、専門医の不足という事態は解消できない、これが一つ。

 もう一つは、勤務医の世界は、むちゃくちゃに過酷な労働条件や、あるいは訴訟や、あるいはいろいろな親御さんとの接触、インフォームド・コンセント、そういうところで労働環境、労働条件が悪過ぎる。特に、女性のお医者さんがふえていますから、家庭を持ったり子供を育てながらということで、三十八時間労働でその次の日はまた通常勤務につくなんということが続いたら、それはとてもじゃないけれども、もう、ちょっとこの世界は勘弁してくれ、ゆっくりと診療所でも行って、あるいはパートにでも行きたい、こういうことになるのは、これは人情というよりも人間として当たり前じゃないですか。

 つまり、犠牲的な、労働基準法違反のむちゃくちゃな労働条件で勤務をせざるを得ない勤務医の世界というのが、いまだにか、以前よりももっとひどくか知りませんけれども、存在するということなんですよ。二交代、三交代にできるものだったら、やっていくためには人の数が倍要るわけですから、少なくとも人件費は五〇%増しぐらいは要るわけですよ、人件費カウントでも。そのために、医療の崩壊を防ぐために予算措置をする、あるいは法律をつくるというのが政治の役目じゃないですか、国家意思じゃないですか。

 そこのところ、この法案を単なる時間パックのようにして通そうと何か焦っている方がいらっしゃるらしいけれども、今の医療の現場と実態はそんな事態ではない、そのことを申し上げますし、総理の答弁をいただきたい。

小泉内閣総理大臣 それは、予算全体の中では民主党も削減に積極的であると聞いておりますし、私もさまざまな委員会で民主党の議員からも質問を受けますが、医療費もまだまだ無駄が多い、削減せよという声もよく聞きます。恐らく、診療報酬のマイナス改定にも民主党は賛成されているんだと思います。

 そういう中で、各予算の中におきまして、それぞれふやしてくれという要望があるんです。道路も減らせといいながら、地元に行きますとふやせという意見が多い。それは与野党問わず、さまざまな地域の要望を聞きますと、予算を減らしてくれというよりもふやしてくれという方が多い。かといって、それでは、消費税にしてもほかの税金にしても増税していいかというと、増税はやめろということでありますので、確かに、費用と対策というのは切り離すことはできません、予算と。歳入と歳出、両方考えていかなきゃならない。そういう中で、できるだけ効率化しながら、社会保障の分野はますますふえていきます。医療だけではありません。

 そういう中で、全体の予算を削減していく中で、社会保障の分野は減らさないで伸び率をどうやって抑制していくかということの中で、効率的に必要な分野にどう手当てをしていくかという御指摘、御審議を踏まえて、これからも改善策を講じていきたいと思っております。

仙谷委員 政治はやはりプライオリティー、優先度のつけ方、めり張りのつけ方ですから、それを申し上げたかっただけでございます。

岸田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 まだ本委員会での議論が十分尽くされたとは到底言えるものではありません。私は、この間の議論を通して、患者さんにとっては、所得のあるなしで受けられる医療の格差が拡大する、地域による格差、そして病院にも格差をもたらすものだということを痛感いたしました。医療制度改革が国民皆保険制度を堅持するものだと言っておきながら、本法案はこれに逆行するものであることを強く指摘したいと思います。

 初めに総理に伺いたいのは、国民健康保険制度の問題です。約二千五百万世帯を擁する国保制度は、言うまでもなく国民皆保険制度の土台であります。しかし、その土台が今大きく崩れようとしています。

 四月六日の本会議で私が質問をさせていただきました。国保税の滞納者が四百七十万世帯に達し、そのうち約三十二万世帯には資格書、いわゆる窓口で全額現金で払わなければ治療が受けられない、実質保険証取り上げということが起こっている、そしてそのために命を落とす事態も生まれていることを指摘いたしました。総理はそのときに、負担能力があるにもかかわらず保険料を納めていない方の未納分は他の被保険者の負担となり、被保険者間の公平が損なわれることから、資格証明書制度は必要なものと答弁をされました。

 では、伺います。資格書を交付されている方たち、これらはすべて負担能力があるにもかかわらず保険料を納めていない、いわゆる悪質な滞納者だとお考えですか。

岸田委員長 川崎厚生労働大臣。

高橋委員 総理に聞いています。総理です。総理でなければだめです。(発言する者あり)

岸田委員長 まず大臣にお願いします。

高橋委員 総理でなければだめです。これは絶対総理でなければだめです。(発言する者あり)

岸田委員長 静粛にお願いいたします。

 小泉内閣総理大臣。

小泉内閣総理大臣 それは、私が答弁するよりも厚生大臣の答弁の方が、よく詳しく御承知ですので、厚生大臣が先に答弁された方がいいと思って、先にと私が言ったんです。私が答弁しろというんだったら、厚生大臣の答弁をかわりに私がするんですけれども、専門的な分野におきましては、詳しい厚労大臣の方が丁寧でしょう。

 私は、総理大臣として全体を総括しております。そういう面において、必要な全体の問題については答弁いたしますけれども、より詳しく個別の問題については、厚生大臣の答弁の方が適切な場合があると思うんです。あるいは、政府参考人の答弁の方がいい場合があるのです。しかし、あえて……(発言する者あり)

岸田委員長 静粛にお願いを申し上げます。

小泉内閣総理大臣 総理大臣に答弁しなさいということでありますので、答弁いたしますが、資格証明書は、保険料を納付することができない特別の事情があると認められる場合は交付対象となっておらず、負担能力があるにもかかわらず保険料を納めていない方に交付しているものと私は承知しております。

高橋委員 私は、総理に大臣の答えるべきことをかわりに言ってほしいと言ったのではないのです。三十二万世帯が悪質なのかと聞いた。

 それは、払えないために命を落としている方がいらっしゃいます。これは、昨年十二月に地方紙各紙が、国保停止で十一人死亡と報じました。その後の調査などで、二十一人を超えているということが判明しています。ことし一月二十五日、石川県加賀市で五十五歳の女性が子宮がんで亡くなりました。国保税を滞納していたため、保険証がなかったんです。この方は、滞納していたために窓口に短期保険証が据え置かれていた。ですから、お金を払いに行かなければ保険証がもらえないという状態になっていた。こういう事態がこの間、各紙に報道されていました。

 そういう事態を受けとめて、それでも悪質だと思うのかどうか、総理の見解を伺いたかったのです。もう一度伺います。

小泉内閣総理大臣 悪質かどうかというのは、私は、具体的にどういうものか、今この場でその事実というものを現実によく把握しておりませんからわかりませんが、やはり、負担能力があるにもかかわらず負担しないというのは、これは好ましいことではないと思っております。

高橋委員 能力があるかどうかはさておき、私が言ったように、命を落とすような事態は起こってはならない。(発言する者あり)そうじゃありません。私が聞いているのは、そういう事態が起こっていることを踏まえて聞いているんです。

 つまり、そういう方たちは、特別な事情があると考慮されるべきだ、そのことはお認めになりますね。

小泉内閣総理大臣 特別な事情があって負担能力がないという方に対しては、それなりの対応はしているということでございます。

高橋委員 それなりの対応が実はされていないということで、私は、今度は大臣に伺いたいと思っているんです。

 たくさん実例はございますが、例えば、私の地元の青森県で、生活と健康を守る会が、毎年、実態実例集をつくっております。

 四十三歳の妻が余命六カ月と宣告されているのに、三カ月間の短期保険証。この方は、妻が肝硬変とがんを患い入院しております。自営業で仕事が激変し、七歳から十歳の子供が四人いらっしゃいます。医療費の負担そのものが高額なために、国保料を一年滞納したら資格書だと言われた。役場に特別な事情を届けに行ったら、三カ月有効の短期保険証を交付された。小さい子供たちを残していかなければならない寂しさと、保険証やお金の心配でゆっくり治療に専念できずにいる妻を見るのがつらく、せめて正規の保険証にしていただけたらと思っています。

 こうした話がたくさんあります。つまり、若い方であれば、生活保護を申請しても働けと言われます。自営業者は借金があるので受けられません。さらにサラ金などから借りて国保を払っている状況であります。ですから、事情のある方でもいろいろなことがあります。そうしたことを本当に踏まえて機械的に資格書を出さない、そうした措置を現場でできるような対応をしていただけるでしょうか。大臣に伺います。

川崎国務大臣 総理からもお答え申し上げましたように、低所得者等の事情のある被保険者の方々について、保険料を軽減するほか、保険料を納付することができない特別の事情がある場合には、資格証明書を交付しないなどの措置を講じております。したがって、今後とも資格証明書の発行事務について、各市町村において行っておりますけれども、適切な運用が行われるよう留意してまいりたいと考えております。

高橋委員 具体的に通知なり、徹底した対処をお願いしたいと思います。

 そこで、今回新たに創設される高齢者医療制度の中でも、大体二割の方が、年金からの天引きではなく保険料を直接納付するということになる。同様に、同様にというのは国保と同様に、一年以上滞納した場合、資格書が交付されることになりました。その方たちは、月一万五千円以下の年金の方たちというのが想定されております。

 私は、そこまで低い方からまで保険料を取らなくてもいいだろうと思います。また、少ない年金から天引きするのもひど過ぎます。今回の措置によって、さらに深刻な事態が生まれないだろうか。毎日新聞に、二月でしたけれども、「老人は早く死ねと言われているようで悔しい。」、こういう投書が寄せられていました。このことを本当にしっかりと受けとめていただきたいと思います。

 大臣は、二〇二五年には、団塊の世代が後期高齢者になり、二千万人にもなる、医療費がふえるのは確実だと言い続けてきました。その根拠があいまいだということはこの間の議論でも既に指摘をされてきたとおりです。問題は、現役世代と高齢世代の不公平感を是正するのだという命題によって、患者も医療機関も自治体も、大変な負担を求められるということであります。

 その一つとして、都道府県は、生活習慣病対策や長期入院の是正など、中長期的な対策を柱とする医療費適正化計画の策定が義務づけられます。医療保険者には、四十歳以上の被保険者を対象とする糖尿病などの予防に着目した健診、特定健診及び保健指導の実施を義務づけ、実施及び成果に関する目標の達成状況を毎年評価し、各保険者の後期高齢者支援金をプラマイ一〇%加算、減算するとしています。

 こうした仕組みは、都道府県に対し、例えば医療費適正化計画の中で特例で診療報酬に差をつけるということも可能にいたします。また、医療保険者に対しては、今言ったように、支援金の加算、減算という形で実効率を上げるためのインセンティブが仕組まれているわけですが、そうなると、伺いたいのは、被保険者に対してはどうでしょうか。まさかと思いますが、生活習慣病は自己責任だからという理屈で、健診、保健指導に対して従わないために病気になった者へのペナルティーなどがあり得るのか、考えていらっしゃるのか。これは大臣に伺います。

川崎国務大臣 生活習慣病を予防するため、医療保険者に効果的、効率的な健診、保健指導の実施を義務づけ、国民がみずから生活習慣を改善する仕組みを設けることとしております。

 今、御質問いただきましたのは、健診、保健指導を受けなかったから、それで三割負担に上乗せして自己負担があるのか、こういう御質問だったと思いますけれども、そんなことは一切考えておりません。

高橋委員 確かに今大臣、そんなことありませんとおっしゃいました。当然あってはならないんです。私も、まさか、考えがたいことだなと思いました。

 ただ、こうした議論は別に初めて私がしたわけではございません。連休中に発表された厚生労働科学研究、医療費分析による保健医療の効率評価に関する実証研究というものがございます。この研究は、国保加入者約五万人を九年間追跡し、禁煙、肥満、運動不足の三つについて、いずれも該当する者の医療費は、いずれも該当しない者の医療費と比べて四三・七%も増加をした、しかも年を追うごとに増加しているとの結果を出しております。

 このことで、主任研究者の辻氏は提言を述べております。すなわち、生活習慣などのリスクに応じて、予防の実践程度に応じて医療保険の負担と給付を設定することにより、健康づくり、疾病予防を進めることが国民に動機づけられるであろう。例えば既に民間の生命保険、医療保険では導入されているように、喫煙の有無や肥満度などに応じて保険料を設定することは可能である。あるいは、適切な予防医学サービスを受けているかどうかで医療費の自己負担率を変えることも可能である。そう言い切っております。この方は筋トレで介護予防の提唱者でありますので、大変よく御存じだと思います。話題を呼んだ方であります。

 この間、メタボリックシンドロームなどの基準が定かではない、あいまいではないかということが言われてきました。エビデンスがないということも言われてきました。この方は、グループの研究でありますけれども、厚生労働科学研究の中で、エビデンスを得られたとして、そして明確なエビデンスが得られたら、これを自己責任でもいいじゃないかとまで言っているんです。

 それを明確に否定していただけますか。

川崎国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、保健指導を行わなかったから、その人の負担をふやしたり、違う措置を行う、そのようなことは一切考えておりません。国民の皆さん方に、できるだけ自分の健康、将来のことを考えて、自分の健康管理をしてほしい、こういうねらいでございますので、どうぞ御理解を賜りますようお願い申し上げます。

高橋委員 そのことを今後も変えずに徹底していただきたいと思っております。

 突き詰めていけば、やはりこういうことになるのではないか。国は直接の責任は自治体に押しつけながら、そして医療費を減らそうとする。国民の健康向上と医療費適正化の一挙両得のようなプランを装いながら、しかし実際には弱者を必要な医療から追い出すだけである。それが今度の医療改革の中身ではないか。

 総理がよく言う医療構造改革、自立自助、自己責任、この言葉が、行き過ぎた自己責任論で生存権の否定につながってはならない。このことを強く指摘して、残念ですが、時間が来ましたので終わりたいと思います。

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、総理がこの審議にお出ましくださいましたが、何となく委員会が不穏な気配でございます。私ども野党は、まだまだ審議も深まっておりませんし、国民の最大の関心事である医療に、総理みずからもそうですし、厚生労働行政としてももっとしっかりした答えを出してほしいと思っておりますが、私の質問途中で不当な動き、不穏な動き等々ないようにまず冒頭お願い申し上げて、質問に入らせていただきます。

 総理、端的に伺います。先ほどの仙谷委員あるいは他の委員も御指摘ですが、現状で、特に子供たちが生まれ出るための産科の医療、非常に私は崩壊の現状があると思います。

 先ほど総理は、日本の社会の人口規模のお話をなさいました。私は、政治は、人口規模がどうあったらいい、こうあったらいい、まさか富国強兵ではありませんから、産めよふやせよでもありませんし、しかし、一人の親になる世代の若者が本当に子供を、我が子を得て、健やかに育てたいという思いにどう政治がこたえていくかということが最も肝要であると思っております。

 その観点から、先ほどの仙谷委員の資料の中にもございましたが、産科医は、幾ら集約しようと何をしようと現状で減っております。これは、他の実態において働いているか否かで総数が、総数は足りていても現状働いていないという形とは全く違います。産科医が減っていること、そして、このたび集約化という形の、実は切り捨てが行われるだけでは、何の解決も来しません。

 総理として、一体、産科医の育成に国はどのような責任をとろうと思うのか。教育、研修、そして実際に働き続けていただくための国の政策の明確な御答弁を一点お願いいたします。

小泉内閣総理大臣 御指摘の産科医の不足については、どういう対応があるか、関係専門家の皆さんの意見をよく聞いて、この不足を解消するように私は厚生大臣に指示しているところであって、具体的にこうだというのは、よく専門家の意見を聞いて対応するようにという指示を出しております。

阿部(知)委員 そんなことじゃ遅いんです。既に、厚生労働大臣だった小泉さんだって、一九九〇年代から産科の問題はあるんですよ。あなたが気がつかないうちに、あなたが厚生労働大臣としてきちんと手当てしないで、今また総理として川崎厚労大臣に丸投げ、これじゃ本当に医療崩壊を救うことができないんです。

 例えば、大学にも母子センターがあります。あるいは、国は、厚生労働省の予算の中で総合母子センターをつくっています。ただしかし、そこで教育的な側面に全く配慮がないんです。お金もついていない。若い本当に有能な産科医を育てなければ子供は生まれません。

 総理、あなたの少子化対策とはさほどにいいかげんなものなんですか。私は、今この場で総理にきちんとした産科医の教育、育成、これに総理としてのきちんとした見識を持っていただきたいからこの質問をしました。もう一度御答弁お願いします。

小泉内閣総理大臣 もう一度同じような答弁になるんですが、どのような対策があるか、一朝一夕に改善されるものではありません。すぐさまふやせというわけにもいかぬし、この問題については強制的に解決できるものでもありません。それには時間もかかりますし、専門家の方でも意見が分かれる場合があります。さまざまな点を勘案しながら、しっかりとした対策を考えることが必要だと思っております。

阿部(知)委員 十数年もほっておいて一朝一夕は、本当におかしいですよ、総理。今問題になって、今から手当てなんていうことで、今から聞いて、そんなことで何が国の少子化対策ですか。あなたの少子化対策というのはそんなものですか。

 それからなお、総理、本当に今、もう一つ、産婦人科の問題では、訴訟の多いところが敬遠されると言われています。では、果たして医療現場においての医療事故や医療ミスにこれまで国はどれほどの手だてをしてきたでしょうか。この審議の直前に福島での産婦人科のお医者さんの逮捕の問題がありました。これはもちろん、警察がそこに介入すべきかどうかという問題が一方でありながら、しかし、医療において数多い医療事故やミスに厚生労働省みずからがきちんとしたルールをつくってこなかったことのツケを患者も医師も社会も払っていることだと思います。

 総理に伺います。私の本会議質問で、これからは医療事故やミスがあったら調査をする、そういうふうにおっしゃいました。医療現場に調査に入り、何が問題であったか、そういうことを行うためにどれだけの予算を今回つけられていますか。これは総理に質問通告しましたので、お願いします。

小泉内閣総理大臣 医療事故については、調査をして、今後、どのような対策が必要か、そういう点からも調査が必要だと思っておりますし、モデル事業も、どうあるべきか、展開していかなきゃならないと思っております。

阿部(知)委員 委員長、これは私は質問通告してあるんです。幾ら予算がつきましたか。明確に聞いたことは、明確に答えてもらってください。委員長の仕切りです。お願いします。(発言する者あり)私の時間は十五分です。時間をとめてください。幾ら予算をつけていますか。(発言する者あり)

岸田委員長 金額を聞いているんですよ。(発言する者あり)今の質問は金額への質問ですが、答弁、出ますか。

 阿部知子君。

阿部(知)委員 私は、きのう明確に質問通告をいたしました。金額が幾らか答えてほしい。お願いします。

岸田委員長 質問は金額に対する質問であります。その用意があるかどうか。お願い申し上げます。金額をお願いいたします。(発言する者あり)

 川崎厚生労働大臣。(発言する者あり)いや、金額の質問です。金額をお答えいただきます。

川崎国務大臣 診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業、総理からモデル事業をしているとお答えがありました。その金額をお尋ねでございますので、十七年度予算額が一億二百万、十八年度が一億二千万でございます。

阿部(知)委員 申しわけありませんが、私はこれを総理にと、答弁者を指名してきのう質問を投げました。それでは私の質問権はどうなりますか。なぜわざわざ質問取りに来られましたか。

 総理、お願いします。総理です、今度。

小泉内閣総理大臣 数字だからほかの方でもいいと思うんですが。質問通告を受けていなかったものですから、どのような質問かを調べながら、今厚生労働大臣が答弁したんですよ。

 数字でも総理が答えろと言うんだったら、私が答えますけれども、十七年度予算額は一億二百万円、十八年度予定額は一億二千万円。(阿部(知)委員「わかりました」と呼ぶ)通告がなくても答弁しているんですから。(阿部(知)委員「私の時間は限られていますから、もう結構です。ありがとうございます」と呼ぶ)丁寧に説明しているんですよ。

阿部(知)委員 それならそれで、早く答えてください。何度も言いますが、きのう質問通告もいたしました。それだけの額で今二万件以上と言われる医療事故、医療ミス、一体どれだけ調査できますか。本当にやる気があるとは到底思えない。

 そして、私はきょうもう一点、今の時間が本当に無駄でしたから、ああ、たかだかそれだけの額ですかと、承りましょう。小児医療についてもそうです。おっしゃることと実際の予算措置と、何ら現実を解決する方法になっていません。そして、その一方で、では、国民にはどんな負担を強いているか。とりわけ高齢者医療制度について、私はきょう総理に明確にお答えいただきたい。

 これからは、七十五歳以上の方で年金が十八万円以上の方は天引きだそうです。それ以下の方は普通徴収だそうです。果たして総理、十八万円以下の方で、普通徴収の紙が回ってきます。払えない方が発生したら、その方は無保険者になりますよね。この認識はお持ちですか。あるかないかだけで答えてください。

小泉内閣総理大臣 保険証は皆に行きますから、無保険者とはならないはずです。

阿部(知)委員 そんな認識で総理大臣では困るんです、申しわけないが。

 保険証が行っても、納付していなければ、さっき高橋委員も聞いたでしょう、資格証明とかいう形で、かわってそれが送られるんですよ。だからこそこれだけたくさんの無保険者が発生しているんです。総理、そんな認識で、保険証は確かに納付していればありますよ。納付しなきゃ来ないんです。

 そして、その方たちが病院に来たときに、果たして病院は、治療を断ることはできません。どんな方も、それこそ私たちはいつでもだれでもどこでも受け入れて、患者さんの御病気に対して誠心誠意働いてきました。そして、今、その病院自身が多額の未収金に泣いています。総理の時代になってからのわずか三年のデータでも、各病院ごとの未収金は一千万円ずつふえました。

 では、どういう方が病院で医療費を払えないのか、結果的に未収金になるのか、このデータは、厚労省お持ちですか、調べてありますか。お願いします。厚労省でいいです、原局で。これもきのう投げました。

松谷政府参考人 病院あるいは診療所等での、病院が多いと思いますけれども、かかった場合の一部負担金の未収の件でございますが、医療の提供は、患者さんの支払い能力に応じて差があるのではもちろん決してなく、医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるべきものでございます。

 病院の未収金の実態につきましては、四つの病院団体の協議会がございますが、そこでの調査が今進められているということを承知してございまして、現在、精査中であるというふうに伺っております。

 病院の未収金の要因につきましては、医療の高度化等によって医療の単価が増大したことなど、背景はさまざまであり、一概には申し上げられませんけれども、治療費の未払いにより病院の経営に影響を及ぼしていることは事実だと認識してございます。

 国民に良質で適切な医療を提供していくためには、医療機関の経営が健全で、かつ安定していることが重要でございまして、このまま未払いが続くことは、地域医療の安定的な確保の観点から好ましくないと考えております。(阿部(知)委員「もう結構です」と呼ぶ)こうしたことから、患者さんにおきましても、医療サービスが患者の自己負担と国民の連帯による保険料や税金で支えられていることを自覚していただくとともに……(阿部(知)委員「もう時間をとらないでください」と呼ぶ)医療機関においても、未収金対策としての支払い督促など徴収の努力をしていただきたいと考えているところでございます。

阿部(知)委員 私の時間、十五分なんですよ。調べていないなら調べていないと一言言ってくださいな。

 病院協会の調査によれば、最近のこの未納、未収金の大きな原因は、低所得者層の増加、救急搬送患者の増加、出産時の入院金などが払えないんですよ。生活困窮者、年金、多重債務者、無保険者、失業中の人、こういう実態があるんです。

 総理は、保険証を持っているからいいじゃないですかと。持っていても、保険料が払えなきゃ無保険者になるんですよ。そして、今現実に病院がそのために非常に苦しい思いをしているんですね。こうした法案を出す前に、大体、介護保険の普通徴収だって、未納率一〇%ですよ。払えないんですよ。その実態で、またこの医療保険で屋上屋を重ねて払えない人をつくり、結果的に病院に搬送されたときはひとえに病院側が負担を負うんですね。

 総理、このことに明確に答えていただきたい。保険証があるでしょうでは改善されないんですよ。未納、未収金の一つ調べていないで、どうしてこの審議が成り立ちますか。明確にお答えください。

小泉内閣総理大臣 これは、保険料を皆さん一人一人に負担していただくことになっておりますけれども、低所得者については軽減措置も設けております。

 今のお話でありますけれども、できるだけ保険料を納めやすくする措置を今後も講じていきたいと思っております。

阿部(知)委員 委員長、私の質問の趣旨を伝えてください。

 無保険者が生じたらどうするんですかというのは、これは病院の現実の問題なんですよ。私たちは断らないし、断れない。命は助けなきゃいけない。でも、そこに保険のない人が来られているんですよ、現状でも。減免措置へったくれじゃないんです。減免されても払えていない。あるいは、これからは扶養家族だから、家族の息子か娘かだれかに、保険料を払ってくれとお年寄りが本当に肩身の狭い思いをして頼むわけですよ。

 そういうことをあなたはやっておきながら、本当に今の答弁では答弁にならない。無保険者が生じたら、これによってふえたら、あなたは医療機関にも国民にも、あるいは肩身の狭い思いをする御高齢者にも、どうこたえるんですか。きちんと私の聞いたことに答えてください。

小泉内閣総理大臣 すべて保険料を負担していただくことになっておりますが、特別な事情がある方については軽減措置も講じているし、今後も負担しやすいような措置を講ずると、御指摘の点も踏まえて今後検討していきたいと思っております。

阿部(知)委員 委員長、聞いていただけばわかると思うんです。

 私は、そうであっても、なおかつ現状で病院に保険証を持たずに駆け込まれる患者さんがいて、それで病院は未収金が物すごくふえているんです。そして、今度三%の診療報酬削減をしましたが、未収金が医療収益の〇・九%まで行っている病院だってあるんです。どうやって運営していきますか。国もほうり出す。結局、来られた患者さんは、医療が最後の受け皿になって、身銭を切ってやっているんですよ。今そういう患者さんがいるという現実を総理はどう思い、どうこたえているんですか。申しわけないけれども、答弁にもなっていないし、私の言うことがわからないなら、お尋ねください、もう一度私は繰り返し言わせていただきますから。

 しかし、これを明確にしていただかないと、病院の運営だってやっていけません。本当に殺していいんですか。捨てていいんですか。私たちはそんなことはできない、しない。だけれども、医療政策上そういう方が発生するような政策をしかれて、私たちはこれ以上身動きだってできないんですよ。だから、この場で総理に明確にしていただきたい。病院に来た無保険者は、国保でもいいです、全額国が面倒を見ますか、病院に負担をかけませんか、未収金がこれ以上ふえるようなことをしませんか、お願いします。

小泉内閣総理大臣 これは、駆け込んできた方に対して病院も医療措置をされるでしょうし、そういう中にあって、病院経営も苦しくなってくる場合もあるでしょう。しかし、そういう中で、できるだけ未収金に対しては、どうやって改善策を講じていいかということを今検討している最中なんですから、病院にしても医療機関にしても、駆け込んでくる方に対しては、たとえお金がなくても治療行為をしているわけですよ。そういう中にあって、どのような改善策を講じるか、これは今後、各医療機関も、また厚生労働省としても、よく意見を聞いて対応していかなきゃならない問題だと思っております。

岸田委員長 阿部君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しております。御協力をお願いいたします。

阿部(知)委員 わかっています。

 だって、この法律が通ったら、平成二十年度から高齢者医療制度は始まるんですよ。今検討していただかなければ困るんです。法律の通過に私たちはイエスを言えないんですよ。だから、総理に伺っています。

 これは、この審議で採決しないなら、今の総理の答弁でもオーケーでしょう。でも、採決されて、この制度が始まるんですよ。始まって、現状の無保険者の未納金も何にも手だてされていない中で、さらに絶対にふえますよ。だって、今まで保険料負担していない方が入るわけですから。このことに、どう……(発言する者あり)そんなことは、みんなで考える前に、この審議の中で明確にしていただかなければ困るんです。私は、これは本当に医療の現場の総体の声です。

 総理、事の重大性と、そしてそういう形でこの採決が行われていくことの理不尽さはどのようにお考えですか。これから調べるんじゃ、遅いんです。採決の前に答弁を出してください。お願いします。

川崎国務大臣 後期高齢者医療につきましては、基本的には介護保険と同じスキームでございますから。

 今、介護保険の徴収率は九八%でございます。一方で、先ほど共産党さんからの質問にもございました、その残りの二%の中で特別の事情のある方ということについては、当然、支払い猶予という形になるであろう。また、支払い能力ある方々についてはできるだけお願いをしていくという中で、その差の、二%になりますでしょうか、努力をしてまいりたい。また、事情によってさまざまな措置をさせていただきたい、こう考えております。

阿部(知)委員 川崎大臣、申しわけないけれども、普通徴収の一号の被保険者の未納率を何%とお考えですか。普通徴収の、年金の天引きじゃない人の。今の答弁は間違っていますよ。間違っていなければ、ここでやめましょう。でも、間違いを正せなければ、今の認識のまま進まれては困るんです。大臣、明確に答えてください。

 普通徴収の介護保険の未納率はどのくらいですか。九八%の徴収率じゃない。大臣、明確にしてください。一号被保険者の普通徴収の未納率を、間違いなく、議事録を訂正せずに済むように答えてください。

岸田委員長 阿部君に申し上げます。

 質疑時間が既に終了しております。御協力をお願いいたします。

 その上で、川崎大臣、もう一回御答弁お願いします。

川崎国務大臣 全体のデータとして申し上げた、介護保険の徴収率は九八になっていますから。ただ、その中で、今度現金でもらわなければならない人たちの未納率がどのぐらいになるか、これはアバウトな数字しかないと思います、正直言って、まだ。アバウトな数字しか。

阿部(知)委員 そんなことないです、きのう伺いましたから。よほど事務局がちゃんと伝えていないんじゃないですか。私は、ちゃんと質問を振りましたよ。

 普通徴収でどのくらい未納が生じるか。額ですよ。一〇%なんですよ。今度医療保険で同じことが起きたら、その分無保険者なんですね。

 私は、大臣もそんな認識で高齢者医療制度を始めると言う、総理に至っては保険証を持っているから大丈夫でしょうと言う。全然違うんですよ。こんなことで採決しないでください。

 大臣、いかがですか。きちんとした認識に至るまで、もちろん大臣の裁量範囲ではないですよ、でも、今大臣だって御存じじゃないです。こんなので、高齢者医療制度を始めるこの法案の採決はままならない。

岸田委員長 阿部君に申し上げます。

 申し合わせの時間が来ております。御協力をお願いいたします。(発言する者あり)

 川崎国務大臣、もう一度。

川崎国務大臣 ですから、基本的には、まず後期高齢者医療制度が始まる、保険証が全員に行く、その間で納めていただく。納めていただけない方々に対して、先ほどからいろいろな共産党の議員の方の、高橋さんの質問に答え、総理もお答えになりましたように、特殊な事情があるときには猶予をいたします、また減免もいたします、さまざまな中で対策を進めてまいります、こうお答え申し上げております。

岸田委員長 阿部君、質疑を終了してください。お願いします。

阿部(知)委員 猶予でも減免でも賄えない人が無保険になっているんですよ。大臣のその認識も全く間違っていますし、事実ではありませんよ。だったら、私たちは未納金には泣かないんです、未収金には泣かないんです。そこを明確に答えていただけない。そして、採決をなさるという。

 委員長にお願いがあります。

 事を正して、先ほどの、どのくらいの未納率があるかだけ、大臣に、私は時間を延長してでも御答弁をいただきたい。私の時間がそうであるならば、ここで終わりましょう。でも、大臣が……(発言する者あり)聞いてください、一号被保険者の介護保険の普通徴収の未納率を答えてください。

岸田委員長 申し合わせの時間が来ております。

川崎国務大臣 では、最後に答えます。

 まず、特別徴収については徴収率が一〇〇%でございます。普通徴収につきましては九〇・二。したがって、合計が九八・二%でございます。

岸田委員長 阿部君、質疑を終了してください。

阿部(知)委員 最初から九〇・二とお答えいただければ。

 それだけの未納者が出るんですよ。そして、そのことに無自覚で、総理も、厚生大臣もですよ、そんな、この法案を通そうということに私は強く抗議をいたします。

 終わります。

岸田委員長 寺田稔君。

寺田(稔)委員 動議を提出いたします。

 ただいま議題の内閣提出二法案の質疑を終局し……(発言する者多く、聴取不能)直ちに……(聴取不能)望みます。

岸田委員長 寺田稔君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。起立多数。よって、そのように……(聴取不能)それでは、健康保険法等の一部を改正する……(聴取不能)賛成の諸君の起立を求めます。起立多数。よって、本案は可決されました。……(聴取不能)体制の確立を図るための医療法等の一部を……(聴取不能)賛成の諸君の起立を求めます。起立多数。よって、本案は可決いたしました。両案の委員会報告書の作成は、委員長に御一任願いますように……(聴取不能)賛成の諸君の起立を求めます。起立多数。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十八分散会


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