衆議院

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第30号 平成18年6月13日(火曜日)

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平成十八年六月十三日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 岸田 文雄君

   理事 大村 秀章君 理事 鴨下 一郎君

   理事 北川 知克君 理事 谷畑  孝君

   理事 寺田  稔君 理事 園田 康博君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    上野賢一郎君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      西川 京子君    林   潤君

      原田 令嗣君    平口  洋君

      福岡 資麿君    松浪 健太君

      松本  純君    御法川信英君

      山本 明彦君    逢坂 誠二君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      小宮山洋子君    郡  和子君

      田名部匡代君    寺田  学君

      西村智奈美君    古川 元久君

      柚木 道義君    上田  勇君

      高木美智代君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働副大臣      中野  清君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 鳥生  隆君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       北井久美子君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   参考人

   (社団法人日本経済団体連合会労政第一本部長)   川本 裕康君

   参考人

   (弁護士)        田島 優子君

   参考人

   (弁護士)        中野 麻美君

   参考人

   (日本労働組合総連合会総合人権・男女平等局長)  龍井 葉二君

   参考人

   (出版労連女性会議議長) 伊東 弘子君

   参考人

   (均等待遇アクション21事務局)          酒井 和子君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  西川 京子君     山本 明彦君

  仙谷 由人君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 明彦君     西川 京子君

  逢坂 誠二君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  学君     仙谷 由人君

    ―――――――――――――

六月十三日

 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案(中山太郎君外五名提出、衆法第一四号)

 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案(斉藤鉄夫君外三名提出、衆法第一五号)

同月十二日

 医療改悪をやめ最低保障年金制度の実現に関する請願(石井郁子君紹介)(第三四四八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三四四九号)

 パートタイム労働者の均等待遇実現に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三四五〇号)

 無免許マッサージから国民を守る法改正に関する請願(稲田朋美君紹介)(第三四五一号)

 同(金子一義君紹介)(第三四五二号)

 同(古賀誠君紹介)(第三四五三号)

 同(土肥隆一君紹介)(第三四五四号)

 同(冨岡勉君紹介)(第三四五五号)

 同(並木正芳君紹介)(第三四五六号)

 同(二田孝治君紹介)(第三四五七号)

 同(船田元君紹介)(第三四五八号)

 同(松本龍君紹介)(第三四五九号)

 同(山田正彦君紹介)(第三四六〇号)

 同(稲田朋美君紹介)(第三五七九号)

 同(太田誠一君紹介)(第三五八〇号)

 同(柴山昌彦君紹介)(第三五八一号)

 同(菅義偉君紹介)(第三五八二号)

 同(谷川弥一君紹介)(第三五八三号)

 同(長崎幸太郎君紹介)(第三五八四号)

 同(冬柴鐵三君紹介)(第三五八五号)

 同(保利耕輔君紹介)(第三五八六号)

 同(三原朝彦君紹介)(第三五八七号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(衛藤征士郎君紹介)(第三四六一号)

 同(金子一義君紹介)(第三四六二号)

 同(村上誠一郎君紹介)(第三四六三号)

 同(渡部恒三君紹介)(第三四六四号)

 難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患に対する総合的対策を求めることに関する請願(佐藤剛男君紹介)(第三四六五号)

 同(田村憲久君紹介)(第三四六六号)

 同(筒井信隆君紹介)(第三四六七号)

 同(冨岡勉君紹介)(第三四六八号)

 同(広津素子君紹介)(第三四六九号)

 同(渡部恒三君紹介)(第三四七〇号)

 同(石田真敏君紹介)(第三五八八号)

 同(清水鴻一郎君紹介)(第三五八九号)

 同(古川元久君紹介)(第三五九〇号)

 臓器の移植に関する法律の改正に関する請願(北神圭朗君紹介)(第三四七一号)

 てんかんを持つ人の医療と福祉の向上に関する請願(阿部知子君紹介)(第三四七二号)

 同(古川元久君紹介)(第三五九三号)

 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(阿部知子君紹介)(第三四七三号)

 同(甘利明君紹介)(第三四七四号)

 同(泉健太君紹介)(第三四七五号)

 同(枝野幸男君紹介)(第三四七六号)

 同(大島敦君紹介)(第三四七七号)

 同(梶山弘志君紹介)(第三四七八号)

 同(木村勉君紹介)(第三四七九号)

 同(北神圭朗君紹介)(第三四八〇号)

 同(後藤茂之君紹介)(第三四八一号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第三四八二号)

 同(佐藤剛男君紹介)(第三四八三号)

 同(塩谷立君紹介)(第三四八四号)

 同(柴山昌彦君紹介)(第三四八五号)

 同(高井美穂君紹介)(第三四八六号)

 同(筒井信隆君紹介)(第三四八七号)

 同(冨岡勉君紹介)(第三四八八号)

 同(中谷元君紹介)(第三四八九号)

 同(西村真悟君紹介)(第三四九〇号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第三四九一号)

 同(船田元君紹介)(第三四九二号)

 同(堀内光雄君紹介)(第三四九三号)

 同(村上誠一郎君紹介)(第三四九四号)

 同(望月義夫君紹介)(第三四九五号)

 同(渡部恒三君紹介)(第三四九六号)

 同(石井啓一君紹介)(第三五九四号)

 同(石田真敏君紹介)(第三五九五号)

 同(今井宏君紹介)(第三五九六号)

 同(江藤拓君紹介)(第三五九七号)

 同(大島理森君紹介)(第三五九八号)

 同(黄川田徹君紹介)(第三五九九号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三六〇〇号)

 同(後藤茂之君紹介)(第三六〇一号)

 同(田島一成君紹介)(第三六〇二号)

 同(田端正広君紹介)(第三六〇三号)

 同(中野正志君紹介)(第三六〇四号)

 同(長妻昭君紹介)(第三六〇五号)

 同(野田聖子君紹介)(第三六〇六号)

 同(伴野豊君紹介)(第三六〇七号)

 同(古川元久君紹介)(第三六〇八号)

 同(松浪健太君紹介)(第三六〇九号)

 同(松原仁君紹介)(第三六一〇号)

 同(山本拓君紹介)(第三六一一号)

 国民の命と暮らしの保障を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第三五五九号)

 同(笠井亮君紹介)(第三五六〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第三五六一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五六二号)

 カネミ油症被害者の抜本的な恒久救済対策の完全実施に関する請願(高木美智代君紹介)(第三五六三号)

 同(長妻昭君紹介)(第三五六四号)

 同(福島豊君紹介)(第三五六五号)

 同(古川元久君紹介)(第三五六六号)

 同(保坂展人君紹介)(第三五六七号)

 パーキンソン病患者の療養生活上の諸問題救済策に関する請願(後藤茂之君紹介)(第三五六八号)

 男女雇用機会均等法等の改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三五六九号)

 同(石井郁子君紹介)(第三五七〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第三五七一号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三五七二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三五七三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三五七四号)

 同(志位和夫君紹介)(第三五七五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五七六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五七七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三五七八号)

 最低賃金の引き上げと全国一律最低賃金の法制化に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三五九一号)

 進行性骨化性線維異形成症を特定疾患治療研究事業の対象疾患に指定することに関する請願(棚橋泰文君紹介)(第三五九二号)

同月十三日

 カネミ油症被害者の抜本的な恒久救済対策の完全実施に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第三六五二号)

 同(谷川弥一君紹介)(第三六五三号)

 同(谷畑孝君紹介)(第三六五四号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三六五五号)

 同(郡和子君紹介)(第三八二三号)

 同(仙谷由人君紹介)(第三八二四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三八二五号)

 同(辻元清美君紹介)(第三八二六号)

 同(土屋正忠君紹介)(第三八二七号)

 同(山井和則君紹介)(第三八二八号)

 同(柚木道義君紹介)(第三八二九号)

 無免許マッサージから国民を守る法改正に関する請願(片山さつき君紹介)(第三六五六号)

 同(上川陽子君紹介)(第三六五七号)

 同(菅原一秀君紹介)(第三六五八号)

 同(高鳥修一君紹介)(第三六五九号)

 同外一件(寺田稔君紹介)(第三六六〇号)

 同(平田耕一君紹介)(第三六六一号)

 同外一件(松本純君紹介)(第三六六二号)

 同(山崎拓君紹介)(第三六六三号)

 同(今村雅弘君紹介)(第三八三三号)

 同(大野松茂君紹介)(第三八三四号)

 同(亀井久興君紹介)(第三八三五号)

 同(北川知克君紹介)(第三八三六号)

 同(近藤基彦君紹介)(第三八三七号)

 同(仙谷由人君紹介)(第三八三八号)

 同外一件(田中和徳君紹介)(第三八三九号)

 同(田村憲久君紹介)(第三八四〇号)

 同(達増拓也君紹介)(第三八四一号)

 同(戸井田とおる君紹介)(第三八四二号)

 同(藤田幹雄君紹介)(第三八四三号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第三八四四号)

 同(町村信孝君紹介)(第三八四五号)

 同(三ッ矢憲生君紹介)(第三八四六号)

 同(渡辺喜美君紹介)(第三八四七号)

 難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患に対する総合的対策を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第三六六四号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第三六六五号)

 同(佐藤茂樹君紹介)(第三六六六号)

 同(菅原一秀君紹介)(第三六六七号)

 同(高鳥修一君紹介)(第三六六八号)

 同(寺田稔君紹介)(第三六六九号)

 同(原田義昭君紹介)(第三六七〇号)

 同(松本純君紹介)(第三六七一号)

 同(今村雅弘君紹介)(第三八六一号)

 同(岩永峯一君紹介)(第三八六二号)

 同(岩屋毅君紹介)(第三八六三号)

 同(篠原孝君紹介)(第三八六四号)

 同(戸井田とおる君紹介)(第三八六五号)

 同(松木謙公君紹介)(第三八六六号)

 同(山岡賢次君紹介)(第三八六七号)

 同(柚木道義君紹介)(第三八六八号)

 無年金の在日外国人障害者・高齢者の救済に関する請願(佐藤茂樹君紹介)(第三六七二号)

 てんかんを持つ人の医療と福祉の向上に関する請願(寺田稔君紹介)(第三六七三号)

 同(松本純君紹介)(第三六七四号)

 同(井上信治君紹介)(第三八七四号)

 同(柚木道義君紹介)(第三八七五号)

 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(木村太郎君紹介)(第三六七五号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第三六七六号)

 同(七条明君紹介)(第三六七七号)

 同(菅原一秀君紹介)(第三六七八号)

 同(寺田稔君紹介)(第三六七九号)

 同(中山太郎君紹介)(第三六八〇号)

 同(野田佳彦君紹介)(第三六八一号)

 同(原田義昭君紹介)(第三六八二号)

 同(藤井勇治君紹介)(第三六八三号)

 同(牧義夫君紹介)(第三六八四号)

 同(松本純君紹介)(第三六八五号)

 同(松本大輔君紹介)(第三六八六号)

 同(松本洋平君紹介)(第三六八七号)

 同(三谷光男君紹介)(第三六八八号)

 同(山口壯君紹介)(第三六八九号)

 同(笠浩史君紹介)(第三六九〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三八七六号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第三八七七号)

 同(石井郁子君紹介)(第三八七八号)

 同(石破茂君紹介)(第三八七九号)

 同(今村雅弘君紹介)(第三八八〇号)

 同(岩屋毅君紹介)(第三八八一号)

 同(江田憲司君紹介)(第三八八二号)

 同(小沢鋭仁君紹介)(第三八八三号)

 同(岡部英明君紹介)(第三八八四号)

 同(笠井亮君紹介)(第三八八五号)

 同(木原誠二君紹介)(第三八八六号)

 同(吉良州司君紹介)(第三八八七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三八八八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三八八九号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第三八九〇号)

 同(坂口力君紹介)(第三八九一号)

 同(志位和夫君紹介)(第三八九二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三八九三号)

 同(篠原孝君紹介)(第三八九四号)

 同(末松義規君紹介)(第三八九五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三八九六号)

 同(戸井田とおる君紹介)(第三八九七号)

 同(野田毅君紹介)(第三八九八号)

 同(平沢勝栄君紹介)(第三八九九号)

 同(藤田幹雄君紹介)(第三九〇〇号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第三九〇一号)

 同(松木謙公君紹介)(第三九〇二号)

 同(山岡賢次君紹介)(第三九〇三号)

 同(山井和則君紹介)(第三九〇四号)

 同(柚木道義君紹介)(第三九〇五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三九〇六号)

 同(渡辺周君紹介)(第三九〇七号)

 新たな障害程度区分に関する請願(前原誠司君紹介)(第三八〇六号)

 すべてのリハビリテーション対象者にリハビリテーションの継続等を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三八〇七号)

 体外受精等不妊治療の保険適用に関する請願(吉良州司君紹介)(第三八〇八号)

 進行性化骨筋炎の難病指定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三八〇九号)

 同(今村雅弘君紹介)(第三八一〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三八一一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三八一二号)

 保育・学童保育・子育て支援施策の拡充等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三八一三号)

 同(石井郁子君紹介)(第三八一四号)

 同(笠井亮君紹介)(第三八一五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三八一六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三八一七号)

 同(志位和夫君紹介)(第三八一八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三八一九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三八二〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三八二一号)

 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第三八二二号)

 パーキンソン病患者の療養生活上の諸問題救済策に関する請願(今村雅弘君紹介)(第三八三〇号)

 男女雇用機会均等法等の改正を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第三八三一号)

 パートタイム労働者の均等待遇実現に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第三八三二号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(伊藤忠彦君紹介)(第三八四八号)

 同(今村雅弘君紹介)(第三八四九号)

 同(西村明宏君紹介)(第三八五〇号)

 障害者の福祉・医療サービスの利用に対する応益負担の中止に関する請願(阿部知子君紹介)(第三八五一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三八五二号)

 同(石井郁子君紹介)(第三八五三号)

 同(笠井亮君紹介)(第三八五四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三八五五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三八五六号)

 同(志位和夫君紹介)(第三八五七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三八五八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三八五九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三八六〇号)

 最低賃金の引き上げと全国一律最低賃金の法制化に関する請願(志位和夫君紹介)(第三八六九号)

 はり、きゅう治療の健康保険適用の拡大を求めることに関する請願(木原誠二君紹介)(第三八七〇号)

 サービス利用の制限や負担増など介護保険に関する請願(篠原孝君紹介)(第三八七一号)

 総合的な肝疾患対策の拡充に関する請願(戸井田とおる君紹介)(第三八七二号)

 体外受精等不妊治療の保険適用を求めることに関する請願(仙谷由人君紹介)(第三八七三号)

 リラクゼーションサービス業の優良業者認定制度創設に関する請願(木原誠二君紹介)(第三九〇八号)

 同(菅原一秀君紹介)(第三九〇九号)

 同(やまぎわ大志郎君紹介)(第三九一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第六八号)(参議院送付)

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(小宮山洋子君外五名提出、衆法第三二号)


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     ――――◇―――――

岸田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案及びこれに対する小宮山洋子君外四名提出の修正案並びに小宮山洋子君外五名提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、両案及び修正案審査のため、参考人として、社団法人日本経済団体連合会労政第一本部長川本裕康君、弁護士田島優子君、弁護士中野麻美君、日本労働組合総連合会総合人権・男女平等局長龍井葉二君、出版労連女性会議議長伊東弘子君、均等待遇アクション21事務局酒井和子君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず川本参考人にお願いをいたします。

川本参考人 川本でございます。おはようございます。

 本日は、男女雇用機会均等法の改正並びに労働基準法の一部改正などの審議に当たりまして、私どもの意見を聞いていただく機会をいただきましたことに改めて御礼申し上げます。

 それでは、早速ではございますけれども、私どもの考え方あるいは意見を述べさせていただきたいと存じます。

 まず初めに、今回の見直しにつきましては、公益の委員、労働側の委員、そして使用者側の委員という三者構成によります労働政策審議会雇用均等分科会におきまして、一昨年の秋、二〇〇四年の九月からでございますけれども、審議が始められまして、真摯かつ活発な議論が重ねられたところでございます。その結果、昨年の年末、二〇〇五年の十二月二十七日になりますけれども、三者の合意に達した報告書が取りまとめられまして、労働政策審議会より厚生労働大臣に建議され、さらに、本年二月七日でございますけれども、建議の趣旨に沿った法律案要綱につきまして諮問と答申が行われたところであることをまず申し上げておきたいと存じます。

 次に、審議に際しまして、私どもの検討の視点、観点というものにつきまして、四点ほど申し述べさせていただきたいと存じます。

 まず第一は、社会情勢あるいは理論や理屈、そういうものに合っているかどうかという視点でございます。

 第二は、企業経営や企業の活力を阻害せず、整合性のとれたものであるかどうかということであります。

 第三は、それぞれの企業におきます現場あるいは職場におきまして対応が可能であって、誤解や混乱を来さないということでございます。

 そして第四でございますけれども、男女雇用機会均等法は、結果の平等を求めるものではなく、機会の均等を図るものであり、その趣旨に合致しているかどうかという視点でございます。

 このような観点から、また、公益委員あるいは労働側委員の御意見も踏まえまして、私どもでは、企業の方々との会合を重ねまして、その結果、審議会で使用者側の委員を通じまして意見を申し上げてきたわけでございますけれども、今回の結論をぎりぎりのものとして受け入れるということを決断したということでございます。

 さて、男女雇用機会均等法、施行されまして二十年たったわけでございます。この間、男女の雇用機会の均等の重要性の意識というのは社会に広く浸透し、企業におきましても男女雇用機会均等法にのっとった雇用管理というのが行われてございます。また、女性をめぐる環境変化というものもしつつあるわけでございます。

 なお、私ども日本経団連におきましては、会員企業を初め、この男女雇用機会均等法あるいはその他の法律もそうでございますけれども、法の遵守というものについて広く周知に努めているところでございます。

 このような中で、審議の結果取りまとめられました今回の改正法案には、多くの項目がございます。時間も限られておりますので、大きな見直しのポイントの部分だけ、考えを申し述べさせていただきたいなと存じます。

 まず、その第一が、現行の女性に対する差別禁止から、男女双方に対する差別の禁止に改める法案となっている点でございます。

 これにつきましては、本来あるべき姿は男女双方の差別の禁止であろうと存じますが、その場合に、女性に対する差別の例外を規定する均等法第九条というものがございます。特例措置でございます。いわゆるポジティブアクションという規定でございますけれども、男女双方について同様の規定を設けるか否かなどが均等分科会において議論になったわけでございます。

 私どもは、企業の自主的な取り組みを尊重しているポジティブアクションの現行規定を変えないということ、当面、女性に対する特例措置のみを維持することを適切とするという考えにのっとりまして、これを前提として、男女双方に対する差別禁止への見直しを行うことが適当であるとしたわけでございます。

 いずれにいたしましても、男女双方に対する差別禁止とすることは、今回の改正案の中でも実は大きなポイントであろうというふうに認識してございます。

 なお、審議の過程におきまして、均等法の目的、理念に仕事と家庭の調和を盛り込むべきとの御意見が労働側の委員さんから出されたところでございます。これに対しまして、使用者側委員といたしましては、働き方の多様化が進展している中にあって、さまざまな働き方が認められるべきである、また、本来の性差別の問題以外の要素を均等法に入れるべきではない、こういう意味から強く反対を表明したところでございます。

 均等分科会での審議の結果、仕事と家庭の調和につきましては、分科会の報告、労働政策審議会の建議並びに法案に盛り込まれていないということを付言しておきたいと存じます。

 第二は、限定列挙による間接差別概念の導入が盛り込まれたという点でございます。

 間接差別につきましては、平成九年の改正時に、その検討の必要性が国会の附帯決議で示されたわけでございます。また、国連等からも指摘がなされていたわけですが、大変わかりにくい概念であることから、均等分科会でも最も議論になったところでございます。

 御承知のとおり、間接差別は、外見上は性中立的な基準等であっても、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与える基準等について、職務との関連性がないなど、合理性、正当性がない場合をいうわけでございます。

 使用者側としては、このような間接差別の概念が一般的にはまだ浸透していないこと、あるいは合理性、正当性の有無の判断に幅があること、性中立的なものであればおよそどのような要件でも俎上に上り得ること、つまり、対象が無制限に広がりかねず、職場や現場が混乱することが危惧されること、そういうことから、その導入に強く反対したわけでございます。しかしながら、公益委員より、予測可能性を高めるべく限定列挙の方式が示されたことから、私ども、内部で改めて検討を行いまして、ぎりぎりの決断として、今回の三項目の限定列挙とすることで受け入れた次第でございます。

 この点につきまして、もう少し具体的にお話をしておきたいと思います。

 今回、限定列挙として挙げられました三項目、一つ目が、募集、採用における身長、体重、体力要件でございます。二つ目が、コース別雇用管理制度におきます総合職の募集、採用におきます全国転勤要件。そして三つ目が、昇進における転勤経験要件であります。この内容についても、大変わかりにくいということから、均等分科会においては、議論を通して内容のポイントを明確にして取りまとめたところでございます。

 例えば、募集、採用におきます身長、体重、体力要件であれば、例えば身長百七十センチ以上という要件をかけたときに、その身長が業務遂行上必要であれば何ら問題はないわけでございますが、業務上の関連性、必要性がない場合は合理性を欠く基準となるわけでございます。これは比較的わかりやすい内容かとも存じます。

 ところが、コース別雇用管理制度における総合職の募集、採用における全国転勤要件というものにつきましては、コース別雇用管理自体が間接差別に当たるんだろうか、あるいは全国転勤要件そのものが間接差別に当たるんだろうか、そういった懸念の声が私どもに多数寄せられているわけでございます。これは、やはり間接差別の概念がまだ一般的に浸透していない、あるいはわかりにくいということから来ていると存じます。

 そこで、均等分科会におきましては、具体的なポイントを盛り込みまして取りまとめたところでございます。具体的には、支店や支社がなかったり、またはその計画等がないにもかかわらず、総合職の採用基準に全国転勤要件を掲げることは合理的な基準とは言えないということが明記されたところでございます。したがいまして、コース別雇用管理制度や全国転勤要件そのものが問題となるわけではないということを明確にしたところでございます。

 いずれにいたしましても、今回の三項目の限定列挙によって、無用なトラブルや懸念を生じさせず、間接差別の概念を浸透させていくことが何よりも重要であるというふうに考えております。

 次に、第三でございます。男性に対するセクシュアルハラスメントも禁止の対象としたこと、あるいは、調停の対象にセクハラに係る紛争を加えることなどを盛り込んだ案となっていることでございます。また、今回の法案が成立すれば、労働政策審議会の議論を経まして、事業主として講ずべき措置についての指針を定めることとなろうかと存じます。

 昨年十二月の審議会でまとめられました建議におきましても、セクシュアルハラスメントの事後の対応措置につきましては、事実関係を確認し、事実関係が確認できたときにはあらかじめ定めたルールにのっとって対応すべきこと、セクシュアルハラスメントに係る紛争を調停に付すことも事後措置の一つとなることを指針において示すことが適当というふうにされたところでございます。

 セクシュアルハラスメントについては、事実やあるいは経緯につきまして、実は被害者やそれから加害者と思われる当事者間でしかわからない場合が多いわけでございます。このようなことから、企業がどこまで深くかかわれるかということは非常に困難な場合が多いわけでありまして、事後の対応措置につきましても、またどのような権限、あるいは確認の度合いをもって対処し得るかというのは大変難しい問題であるわけであります。したがいまして、今回の法案が、実際に企業で対応し得る最大限の内容であるというふうに思っておる次第でございます。

 第四は、女性の坑内労働についてでございます。今回の法案におきまして、女性技術者が坑内の管理監督業務に従事することを可能とする案となってございます。

 女性技術者の坑内労働につきましては、私どものところにも、業界からの要請だけではなくて、女性の技術者の方々から直接電話等での要望が随分あった次第でございます。このようなことから、日本経団連でも規制改革の要望を実はさせていただいておったところでございます。女性技術者の方々にとりましては、大きな前進につながるものと考えておるところでございます。

 私からは以上でございます。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、田島参考人にお願いいたします。

田島参考人 弁護士の田島でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、平成十四年の十一月に立ち上げられました男女雇用機会均等政策研究会に参加し、男女双方に対する差別の禁止、妊娠、出産を理由とする不利益取り扱い、間接差別の禁止及びポジティブアクションの効果的推進方策の四つの事項について検討し、報告書を取りまとめました研究会の一員としまして、今回の男女雇用機会均等法の改正につき意見を申し述べさせていただきます。

 私が均等研に参加しました理由は、自分自身が二十八年前に検察官に任官し、十三年後に退官するまでの間、数々の男女差別に遭遇して、それを乗り越えながら道を切り開いてきました経験から、すべての女性が、そのような経験をすることなく、存分に能力を発揮して職務に専念できる職場環境を実現したいと思ったことにございます。

 私が任官しました当時は、司法修習生の指導を行う司法研修所の事務局長であるエリート裁判官が、女子の修習生に対して、女性は家庭に入って能力を腐らせるのがよいというあからさまな差別発言をしたような時代であり、男子修習生に対して熱心な検察官任官の勧誘がなされているのに、女子修習生が任官したいと申し出ますと、女性は検事に向かないという理由で思いとどまるように説得し、その障壁を乗り越えて任官しましても、女性に取り調べはできないという理由で、ほとんど取り調べのない少年事件の担当か、裁判の立ち会いのみを行う公判係に配属され、捜査手法についての指導もされないため捜査能力が涵養されず、あげくには、女性検事が管理職になることを嫌って、転勤経験がないことを理由に退官させておりました。

 当時は、女性が二十五歳になる前に寿退職するのが常識の時代であり、数少ない私の先輩検事も過半数が結婚を機に退職し、残っているのはほとんどが独身の検事でした。検事に限らず、職場の女性職員は、結婚すると同時に退職するのが当然という雰囲気の中で仕事を続けにくい状況があり、それでも勤務を続けた場合でも、妊娠すれば退職するという不文律ができていて、それに従わない者がいれば、本人の意に沿わない異動によって退職に追い込むという手段が使われておりました。

 酒席では、女性が酌婦がわりにお酌をするのが当たり前であり、それを断れる雰囲気はありません。酔った上司に手を握られたり抱きつかれたりするのが常態で、セクハラといってそれをはねのけることなど思いもよらず、ひたすら耐えて過ごしたものでございます。

 そのような環境の中にあって、仕事が好きで、数々の差別による圧力にも負けず懸命に仕事をした女性検事たちは、徐々に、男性検事が崩せなかった否認事件で自白をとるなどして、女性検事にも十分取り調べができるという実績を示してきた結果、今では捜査能力について男性検事と遜色ないという評価を受け、その数も急激に増加しております。結婚、妊娠あるいは出産を機に退官する女性検事の数も減り、家庭を持ち、育児をしながら勤務し続けることが当たり前になりつつあります。また、地検のトップである検事正も出てまいりました。

 このような環境変化は、昭和六十年に成立した均等法の精神が徐々に社会に浸透し、平成九年の法改正により、当初の努力義務規定を含むものから完全な差別禁止規定に性格が変わったことにより、男女の均等取り扱いの徹底が図られてきたことをベースにしていると言えると思います。

 今回の法改正は、均等法の理想を実現するためにさらなる一歩を踏み出すものとして、重要と考えております。

 本日は、時間の関係もございますので、法改正の中で私が特に重要と考える二点に絞って意見を述べさせていただきます。

 その一つは、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止規定についてでございます。

 女性の仕事に対する意欲が増大し、妊娠や出産、育児をしながらでも仕事を続けたいと希望する女性が増加する中で、一般的には、乗り越えるべきハードルはまだまだ相当に高いものがあると言えます。

 第一子を出産した女性の七割が離職しているというデータがあり、その半数は、家事、育児に専念するため自発的にやめたというものであるとしましても、働き続けたいのに解雇され、退職勧奨を受け、あるいは意欲を持てない仕事や通勤困難な遠隔地への配置転換を受けるなど、不利益な取り扱いを受けてやめていく女性がいるという現実がございます。新聞の投稿でも、妊娠を告げた途端、執拗に退職を迫られたり、パートタイムへの身分変更を強要されたという相談事案が目につきます。

 就職氷河期を経て、出産適齢期の女性には契約社員など有期労働者も多く、安心して子供を産めないという声もよく耳にいたします。少子化が急激に進展する中、さらなる少子化を食いとめ、出生率の増加を実現するためには、女性にとって出産や育児のしやすい環境を整えることが喫緊の課題と考えます。

 妊娠、出産は女性のみが担う機能であり、これに伴う解雇のみ禁止するだけでは不十分で、その他の不利益取り扱いをも禁止しなければ、実質的な男女の雇用機会均等は確保できません。今回の改正案は、こうした問題に対応しようとするものであり、現在出産するか否か迷っている女性にも朗報と言えると思います。

 また、解雇の理由が妊娠等であることについて女性労働者が立証することが容易でなく、訴えの提起や立証に重い負担がかかっている現状にかんがみて、妊娠中や産後一年以内の解雇については、妊娠等を理由とするものでないことを事業主が証明しない限り無効とする規定は、妊娠等を理由とする解雇の抑止力になるものと期待いたします。労働法体系の中で初めて立証責任の転換が図られるという意味でも、画期的改正と評価すべきと思います。

 私が重要と考えます法改正の第二点は、間接差別禁止規定の創設でございます。

 均等法の成立により、女性であることを理由に意図的に行う差別は禁止されましたが、必ずしも意図的な差別ではないものでも女性にとって不利となる制度や運用は存在しており、男女間の異なる取り扱いを排除するためには、このようなものについても禁止する必要があります。平成九年の均等法改正時からこの点に関する問題意識が持たれ、今後の検討課題として附帯決議に盛り込まれたと聞いております。

 今回の法改正では、間接差別禁止規定が創設されることになり、これも画期的な改正と評価しております。

 間接差別禁止規定の内容については、省令で列挙される、募集、採用における身長、体重、体力要件、コース別雇用管理制度における総合職の募集、採用における全国転勤要件、昇進における転勤経験要件の三つの場合を禁じるという限定列挙になり、これが適当でないという意見もあるように聞いておりますが、間接差別概念が国民一般に理解されているとは言えない日本の現状で、間接差別を混乱なく導入し、定着させていくことから始めるのが現実的対応であり、今回の方式は、現時点では適切と考えております。間接差別禁止規定を均等法に導入することが大きな第一歩と評価すべきであります。

 また、均等研では、諸外国の法制度や適用状況を判例も含めて検討いたしましたが、法律上規定されている違法性の判断方法は各国ともほぼ同様の手法となっており、原則としてどのような事案についても間接差別法理の俎上にのり得る仕組みになっておりますが、実際の間接差別法理の適用状況については、国ごとに違いがあり、一様ではございません。

 例えばイギリスについては、ある基準等が一方の性に与える不利益の有無の定まった判断基準はなく、具体的判断はケースごとに労使が参加する個々の雇用審判所が行い、個別事案によって判断がさまざまであり、また、不利益があると判断された場合の当該基準等の合理性、正当性に関する使用者の抗弁が成立するか否かについても、同様に具体的判断は個々の雇用審判所が行うこととされていまして、しかも、使用者にとっての必要性と差別的効果の程度とのバランスで判断される傾向があり、予測可能性がつきにくいものであります。つまり、男女間の格差の大小や差別の合理性の判断基準が明示されていないため、何が間接差別になるかの予測可能性が不明確となり、規制の難しさを感じました。

 イギリスの雇用上訴審裁判所も、間接差別という概念は柔軟であり、ある事案での一般的推定が他において必ずしも通用するものではないこと、あらゆる事案は特定の事実に依拠することを指摘しておりました。

 日本において間接差別の例として挙げられているものを拾ってみましても、人によりさまざまで、意見が区々に分かれております。また、差別の合理性についても、どのような状況があれば認められるかの意見が分かれております。均等研では、間接差別の例として国会や論文等で取り上げられた事例七つについて合理性の議論をいたしましたが、委員の中でも意見は分かれました。

 正社員とパートタイム労働者の処遇差も間接差別に列挙すべきとの意見もございますが、正社員が減少している今の時代には、男性でもパートやアルバイトで働く者が相当数おりますし、ヨーロッパとは違い、仕事の内容が同じで働く時間だけが違うというパートは日本ではそれほど多くないことを考えますと、パートの処遇格差問題は、やはり真正面からパート問題としてとらえないと、全体的な解決にはならないと思います。

 このような状況を踏まえれば、いまだなじみのない間接差別という概念をいきなり無限定に違法なものとして取り込むよりは、今回の法改正のように、労使間で合意の得られた三項目についてわかりやすく明示する手法により規制を行うのが適当と考えます。

 以上でございます。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、中野参考人にお願いいたします。

中野参考人 中野でございます。

 均等法二十年目にする非常に重要な改正のこの審議の場で意見を述べさせていただきまして、ありがとうございます。

 今日、社会問題にもなっております格差の多くは雇用から生じたものです。雇用における格差の最も深刻なものが男女間の格差です。そして、男女間の格差は、性役割を固定して、結婚、妊娠、出産を回避する要因と指摘されておりまして、これは下げどまらない少子化の最も重要な要因であるとも指摘されております。

 問題は、その男女間格差が拡大しつつあるということです。この二十年間、均等法にもかかわらず、男女間の格差は解消に結びついていると実感できないという状況にあり、それはなぜなのかということが問題になります。

 その大きな要因の一つは、均等法が、募集、採用区分ないし雇用管理区分が同じ男女の均等待遇及び機会の付与を義務づけるにとどまったことにあります。企業は、基幹、補助といった仕事の違い、転居を伴う転勤の有無、将来の幹部としてキャリアを積むことが期待されているかといった基準に基づいて雇用管理区分を設け、男女間格差を固定化し、拡大してきました。そして、女性の正規雇用の機会は狭められて、非正規雇用が拡大してきました。

 そうした格差を性差別ではないかと女性たちが訴えたとき、仕事が違う、コースや職掌が違う、非正規で働いている、どこに性と書いてあるかと言われ、それを選択したあなたが悪いのだと逆に責められたりしてきました。能力や努力が足りないからだという切り返しにも遭ってきました。女性たちは、性役割に基づく長時間労働や転居を伴う転勤といった男性規範に適合できないことさえ能力や努力のうちであるとして、低い処遇しか適用されなかったのです。そして、パートタイム労働は、そうした矛盾を凝縮したものでした。

 しかし、女性たちは、決してそうした機会や待遇を望んだわけではなくて、低い処遇の働き口しか用意されていなくて、とりあえず生きるためには働かざるを得なかったり、低賃金や一つの仕事に塩漬けされたりといった差別を受けてきました。性的対象とみなされて、暴力さえも受けてきました。一つの仕事に塩漬けされたり、差別や性暴力から葛藤や自暴自棄を強いられて、それとの闘いに膨大なエネルギーと時間を費やしてきたのに、努力が足りないとされるいわれは毛頭ありません。まして、社会が生み出し放置してきた性役割と家族的責任を、能力不足や自己責任とされる筋合いでもないはずです。それなのに、これらの差別は見えにくく、見えなくさせられてきたのです。

 女性たちが、そのような不合理な格差を生涯にわたって受忍させられるということは、理不尽きわまりないものです。そうした差別が、どれほど女性たちから尊厳や誇り、意欲を奪い取ってきたのでありましょうか。差別は、人間としての誇りや意欲をそぎ、生産性を低下させるものです。産業社会にとって大きな損失を生み出すものです。だからこそ、その解消は労使一致して挑戦すべき課題であり、社会がいまだにこれらの差別の撤廃に無関心であるということは恥ずべきことだと思います。

 だれもが差別はいけないことだとわかっているのに、差別はなくなりません。それは、差別が可視化されて法によって禁止されたとき、形を変えてさらに生き続けるという性質を持っているからです。均等法は、募集、採用区分、雇用管理区分の枠を利用して、男女の区別を社員としての身分、雇用形態の違いに書きかえて、差別の告発を回避する余地を与えました。その結果が深刻な男女間格差の拡大となってあらわれたのです。機会均等が結果の平等に結びついていないのであれば、その社会的背景までも含めて是正する必要があります。

 間接差別の法理は、そうした観点に立って機会均等政策を徹底して、差別を排除しようとするものです。不合理な格差を解消するためには、平等を妨げる障害を除去するという間接性差別の手法が不可欠です。だからこそ、国際社会はその禁止を日本政府に求めたのです。

 労働基準法も均等法も、女性であることを理由とする差別的取り扱いを禁止すると定めていますが、性中立的な基準を当てはめたとしても実質的に性による差別であると判断されれば、法律に違反するとして是正の対象とする規定形式をとっています。すなわち、間接差別の法理に基づいて、実質的に性による差別と考えられれば、これらの法律に基づいて格差の解消を図ることも可能でありまして、日本でも、これまでの訴訟を通じた取り組みと裁判例が、立証責任と性中立的基準の実質的差別性の二つの角度からこうした課題にアプローチしてきました。

 立証責任の点では、内山工業事件広島高裁判決などが、女性に対する差別が根強く残っている社会の構造に着目して、男女間に格差があるときには、その格差が性以外の合理的な事由に基づくものであることを使用者側において主張立証すべきだ、こういうふうに要求していることが注目されます。こうした判断は、間接差別の法理と共通するものでありまして、法制度を運用するについて重要な考え方となるものです。

 また、性中立的基準の実質的差別性の点では、阪神・淡路大震災の被災自立支援金請求事件において、大阪高裁判決が、世帯主被災要件を、世帯間差別あるいは男女差別を生み出していること、合理的な理由を見出せないと判断して、公序に反し違法、無効と判断しています。こうした判断の手法は、均等法や労働基準法の解釈、適用においても及ぼすことができるものです。そして、三陽物産事件判決は、世帯主基準の適用の結果生じた格差について、実質的な性差別であることを認定しています。日産家族手当事件東京地裁判決は、男女間格差をもたらす世帯主基準を、生活賃金保障の合理性という観点から差別ではないと認定しましたが、これには大きな批判が加えられ、控訴審においては、労働者側が完全勝利とも言える和解をかち取っています。

 潜在的な差別の可視化を特質とする間接差別の法理は、差別意図を問わないところに特徴があります。差別されたのではないかと葛藤を強いられている相手から、自分が差別意図を持っていることを立証したら差別と認めてやるといった開き直りを許すのか、そういった制度は人権保障の観点からしても理不尽で、だからこそ、間接差別の手法に基づく差別の撤廃が社会に認知されていく必要があるわけです。

 その点では、三陽物産事件判決が、結果を認容して性中立的基準を適用したことで足りるというように、ハードルを低くしていることが注目されます。均等法上も、女性に対する差別であることを認定するに際して、差別意図は、必ずしも是正に向けた行政権限を発動する上で不可欠とされているものではないはずです。労働基準法にも均等法にもこれは明文で定められていない、規定上の根拠もないのです。

 こうした法律の定めや実務の運用から見たときには、一般条項の解釈、運用によって、間接差別の法理に基づく実質的な差別を排除する余地が認められなければいけません。仕事の違いやコースの区分、雇用形態によって生じたかのように見える男女間の格差が、実態に基づかない全くの口実にすぎないときや、そうした理由を持ち出すことに合理性がないときなど、実質的には性による差別以外にはないと判断されたとき、既にある法律に基づいて格差を是正できるはずなのです。

 そうした運用の到達点は、これまで女性たちの長年にわたる取り組みの成果でありまして、厚生労働省も、コース別雇用管理に関する留意事項に示されたところに従って、この観点から助言指導を行うとしてきたはずです。そして、格差の合理的な根拠は、格差を生じさせた企業が主張立証責任を負担するのが筋であり、そうであって初めて公正かつ透明な処遇を標榜できるのではないでしょうか。こうした当たり前のことが、間接差別の法理に基づく差別の是正と考えます。

 仮に、改正均等法が、七条で厚生労働省令に定めた基準以外は行政権限を発動しないという解釈、運用に流れるとすれば、女性たちの成果を否定する以外の何物でもありません。多くの人が、七条に定めた間接差別を排除する制度が厚生労働省令に定める基準についてのみ行政権限を発動するとしていることについて、潜在的な差別を可視化する手法としての間接差別の法理に矛盾すると批判しています。

 このような論理矛盾を来すような法の運用がなされるなら、それはもはや国連女性差別撤廃委員会の勧告の内容を充足しないものと言わざるを得ません。勧告の内容を充足する法制度とすること、つまり、間接差別の法理に基づく実質的な性差別の排除を少なくとも一般条項に包摂して解釈、運用した上、修正案のように、均等法に基づく間接差別を限定列挙することなく、行政権限を発動して広く排除する制度とすることが求められると思います。

 性に中立的な基準であっても、それを適用することによって、性役割や性に基づく偏見、固定観念に触れ、男女間の格差を生じさせてしまうことはたくさんあります。女性や非正規で働く人たちがこうむってきた性中立的な基準をまとった格差は著しく不合理で、働いても働いても、自立して生きることとは無縁の低賃金、細切れ雇用しか与えられない厳しい現実があります。

 この貧困と格差の連鎖を断ち切るのにふさわしく、均等法がその機能を発揮できるようにすることが、立法、行政、司法の責任であります。その場合、差別は、いつの時代にも、人間の尊厳に対する犯罪であり、社会が許容してはならないものであることに関係者は常に留意すべきであります。そうした考え方は、均等法がどのような規定形式をとっていたとしても、普遍のものであると信じるものです。

 均等法は、努力義務規定から始まりました。この法律が雇用における男女平等を大きく前進させる原動力となることを女性たちは期待しました。しかし、裁判所は、コース別雇用管理について、男女間賃金格差の要因は、募集・採用、配置・昇進差別にありとし、男女別処遇も企業の効率的運営の必要からやむを得ないとか、均等法も努力義務規定にとどめているといって、男女間格差は憲法に反する差別ではあるが違法ではないなどとする判断を下してきました。これは、当時の国会答弁からうかがえる立法者意思にもそぐわないことは明らかです。

 改正均等法が、七条の厚生労働省令に定める以外の基準について、実質的に判断すれば憲法に反する性差別だけれども違法ではないなどという司法判断の根拠とならないよう、違法なものは違法として排除できる法の枠組みの確立を強く求めるものです。

 どうもありがとうございます。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、龍井参考人にお願いいたします。

龍井参考人 おはようございます。連合の龍井でございます。

 お手元に「均等法二十年 今回改正に求められるもの」という資料をお配りしていますので、御参照いただければと思います。

 まず冒頭に、せっかくこういう機会を与えていただいて光栄に思っておりますが、いかんせん、これだけの重要法案がこんなに短い時間で審議されていいんだろうかと、多少憤りに近いものを実は感じております。ただ、幸いというか、皆さん方の審議をしていただく前に参考人ということになりましたので、逆に言いますと、午後に与党の質疑が予定されているということですので、ぜひそこで取り上げていただきたいという課題をきょうは提起させていただきたいと思っています。

 それで、冒頭に、レジュメの中で、均等法が成人式を迎えるということで、当初は、八五年、いろいろ問題はあるけれども、小さく産んで大きく育てようということで、難産の末、辛うじて産声を上げたわけですけれども、本当に今育っているんだろうか。これは、改正、十年ごとですよね、それで二回目、本当にこれが当初望んでいた方向に今進んでいるんだろうか。

 一枚のグラフを用意しています。この十年間、つまり、これは均等法が努力義務から法的義務に変わったその後のほぼ十年間の中で、実は働き方の二極化というのが大変深刻に進んでいる。つまり、三十五時間から六十時間の人が絶対数で減って、三十五時間未満の人、そして六十時間以上の人が急増している。これは、実は主要には、もちろん男性が長時間タイプ、それから女性が短時間タイプに属するんですが、今深刻なのが、女性労働者の中で超長時間派とそして短時間不安定雇用の広がりというのが、二極化が進んでしまっているという事態です。

 私、最近、この準備でいろいろなお話を伺う中で、特に長時間女性と不安定雇用の女性、その双方で実は中絶が非常にふえている。一・二五ショックが報道されましたけれども、基本的にこの働き方の二極化がきちんとまともにならない限り、どんなインフラを整備しようが、どんな金目をつけようが、それは基本的に解決にならないということをこの実態は示していると思います。そういう意味で、大きく育てるという状況になっているんだろうかという基本的な疑念がございます。

 今、中野さんの方からもお話がありましたし、田島さんの方からもお話がありましたように、八五年成立から十年かけて、やっと努力義務が禁止規定に変わった。ただ、せっかく禁止規定に変わったのに、これが、ただしということに、書いてございますように、あくまで同じ雇用管理区分、同じ箱の中の話だよ、雇用管理区分、箱が違っちゃったらそれは比較の対象にそもそもならないよということになってしまったがゆえに、右側の矢印にございますように、今までだったら女性だからという、露骨な差別はさすがに禁じられた。でも、一般職だから、パートだから、何々だから、別のものが用意されてしまえば、それは全く、男女差別でありながら、それが形を変えて温存される、あるいは拡大する。今の法律は、残念ながら、こうした事態に全く無力なわけです。

 したがいまして、この問題、特に雇用管理区分のあり方も含めて抜本的に変えるというのが、本当にこの二十年、そして途中の改正から十年で求められていたはずでした。そして、これも御指摘がありましたように、間接差別の禁止というのは、この九七年改正、十年前の国会の、ここの場での附帯決議でその検討が確認された。では、この十年間、一体何をやっていたんだろうか。いや、私ども労働組合自身も反省しています。十年前から課題が明らかで鮮明になっていたのに、一体何をやっていたんだろう。いまだに、概念があいまいだ、なじみません、そういうことがやはり許されている状況ではないのだろうかということを思っております。

 次のページに、間接差別禁止について、この定義の御説明はもう繰り返しません。ただ、一点だけ申し上げておきますと、川本さんからお話ありましたように、三つ、外見上は性中立的、一方に不利益、そして職務関連性等合理性が説明できないという要件になっていますので、これは分科会でも経営側の皆さんが随分御心配をされて、何にでも広がるんじゃないか。私は逆で、きちんと説明ができればいいんです。ですから、逆に、どういうものがなりますかということが問題なのではなくて、この三つの条件に当てはまるかどうか。現に、これは参議院の段階でも北井局長が答えられていますように、範囲を限定するという例は他国ではない、このスキームだけでやっていく方がむしろわかりやすいと私どもは思っております。

 問題は、この右側にあります、田島さんたちも参加されていた研究会報告の七つから、一、二、四の三つのものに省令で今回は限定するということにされています。

 下にチャートをお示ししていますのでごらんいただきたいんですが、まず、間接差別の定義、今申し上げました、そして、裁判等の根拠とされます間接差別法理、これは北井局長も、幅広いものです、特に省令で決めた、あるいは決める予定の三つに限定するものではありません、そのこと自体もきちんと周知をしてまいりますというふうにお答えになっていらっしゃいます。

 つまり、間接差別の定義を国連からも求められて法制化をしました。その間接差別の定義というものには範囲というのがあり得ません、こういうもので今申し上げた三つの要件をクリアするかどうかが定義です。したがって、非常に、定義、法理というものが限定されないということがまず大前提です。

 ただし、今回の法案の第七条につきましては、これは、あくまで行政指導をする根拠規定として定めました、行政指導をする際に、その対象範囲を限定しないとできません、したがいまして、まず省令で三つに限定しましたという説明をされています。したがって、第七条で規定をされているこの行政指導の根拠規定に限っては、三つの基準で行政は指導してまいります、第七条違反として指導してまいりますというのが今回のスキームです。

 すると、当然おわかりのように、その間はどうなるんでしょう。このAとBの間の、間接差別そのものには限定がございません、範囲は広いものです、今回の法律は行政指導では三つに限定します、となると、その間の、このチャートではCに当たる部分というのは、ではどう扱われるのでしょう。これは、ぜひ今回の午後の討議で解明していただきたい点だと思っています。

 では、もしもそういう訴えがされていたとき、一例を申し上げれば、例えば、福利厚生施設利用の世帯主要件、あるいは住宅資金等々の資金の貸し付けの要件として世帯主要件がある。これは別に女性だからと何も断っていない。世帯主だという要件があることによって、結果的に、まさにこのチャートにございますように、女性が排除されていくことになるというような案件が例えば均等室なり相談センターに持ち込まれた、では行政はどうしてくれるんですか。北井さんは、すべての相談事例について門前払いはしませんと明言していらっしゃいます。

 となると、その事実確認、本当にそうなっているんですか、そしてそれがきちんと職務との合理性があるんですかということまで均等室ないし相談のところで経営者に確認してもらえるんでしょうか。では、それがその要件を設けていることの職務との関連性等の合理性について、きちんと使用者の方に、事業主の方に確認していただけるんでしょうか。結局そこが全くわからない。でも、きちんと門前払いをしないで対応するとはおっしゃっている。

 一つここで、参考というところで、先ほども話題になりましたコース別雇用の留意事項というのが既に示されております。これは後でぜひ御参照いただきたいんですけれども、この留意事項は、三つのレベル、一は明確な法違反、二というのは法に抵触をする実質上の差別、法違反じゃないんだけれども抵触をするおそれのある実質的差別を二として掲げて、これは助言の対象にしています。

 厚労省に聞いていただければおわかりのように、百八十件分精査をして、八割、九割のところが助言の対象になっているという、逆の意味で驚くべきデータが紹介されておりますけれども、いずれにしろ、これは行政として助言をするとなっているわけです。

 では、今回のような場合には、指導、助言、勧告といったスキームの中でどう扱われるんですか。私どもは、これはぜひとも、それを門前払いしないとおっしゃるのであれば、きちんと助言、指導の対象にしていただくということを明確にしていただきたい。そうでなければ、今のままで大丈夫だよということについては何の説得性も持たないと私は思います。

 それで、もう一つ重要な論点が司法判断への影響です。これも既に提起がされていますので繰り返しません。ただ、少なくとも、参議院の段階の御答弁の中で、間接差別法理に基づいて、省令で掲げる予定の三点以外のものについても違法と判断される可能性があるということは明確に述べておられます。そのこと自体を周知していくということも言われていますので、ぜひその点はきちんと確認していただいた上で、ただ、問題は、それであっても、この三つ以外は違法じゃないんだから裁判でも門前払いになるという心配は全くぬぐえておりません。

 衆議院の審議向けに衆議院の調査局が分厚い資料を用意していただきまして、この中で、論点整理というところでその問題に触れられ、幾つかの判例にも触れられて詳しく論点が紹介されておりますけれども、その二十ページのところで、調査局のコメントとしても、「裁判への影響に対する懸念は払拭されていない。」ということがこの資料でも明記をされている。ぜひその懸念を払拭できる道があるなら、この国会の審議の中で明らかにしていただきたいと思います。

 次の論点は、仕事と生活の調和の問題です。

 これは、既に参議院の審議の中では、当然のことですけれどもこれは重要です、これは当然認めていらっしゃいます。これは法律全体で受けてまいります。大臣答弁の中では、強いて言えば時間法制の枠組みで受けるのが妥当ではないかという見解を示されています。

 御承知のように、八五年法には、この項目が職業生活と家庭生活の調和という表現で実は法律に入っていました。九七年改正、これは、ILO百五十六号条約等々を受けた、男女ともに家庭生活も職業生活も担っていくんだということの議論の中で、それが育児・介護休業法にとかいう、つくられていく過程の中でこれが論議されたわけですが、この法律、つまり十年前の段階ではあくまで女性差別に対する禁止の法律だった、女性差別に対する一方禁止規定だから、その法律に仕事と生活の調和を入れてしまうと性役割固定になるという理由が主な理由として、削除されました。当然我々も賛成しました。今回は、今申し上げた一番のネックになります一方禁止規定が男女双方禁止規定に変わります。したがって、少なくとも九七年時点での削除理由のかなり大きな部分は消えたと判断しています。

 実は、もっと本質的な問題は、この問題が単に働き方の問題だからどこかの法律に入ればいいや、どこかの趣旨で受ければいいやという問題ではないということです。つまり、これはまさに働き方の基準、そして、この法律が主管であります、働き方の平等、均等の基準そのものだということです。

 なぜかというと、これまでの女性差別禁止というのは、ほぼ無条件に男性との差別、したがって、男性基準に合わせていく、格差があればそこに合わせていく、その差を埋めていくというのが女性差別を解決する、格差を是正するという方向で、その基準である男性基準というのはほとんど自明なものとして問われなかった、問われずに済んできちゃった。今回はそれが双方禁止規定に変わります。

 ということは、例えば、先ほどのチャートじゃございませんけれども、圧倒的に多くの男性が超長時間で働いている、圧倒的に多くの女性が、同じ職場の中だとしてもほとんどが有期、パートでいる、これは明らかに差別であると認定したとします。だとしたら、どちらに合わせるんですかということです。男女双方差別禁止ですから、多分、今までだったら、無理な働き方をしている男性を基準に女性の正規雇用化とか均等待遇というふうにやっていったでしょう。双方差別禁止ということは、めちゃくちゃな、無理な働き方をさせられている男性、単身赴任を押しつけられている男性、よくわからない配転にも応じざるを得ない男性、もしもそれが男性に集中しているとすれば、これは差別だ、これも北井局長が答えられています。

 ということは、みんながみんな長時間に合わせるわけじゃないよね、みんながみんなパートになるわけじゃないよね、では、どこに合わせることがこの双方差別禁止になるのか。今の例は極端な例かもしれませんけれども、そこが、均等の基準というのが双方差別禁止になったことによって改めて実は問われているんですよ。その問題がきちんと論議をされていないで、双方差別禁止になったということだけでは、この非常に根本的な問題が解決されない。

 要するに、附帯決議にも入っていますような、今男性の働き方こそ見直さなくちゃいけない、その基準そのものを疑ってかからなくちゃいけない。そうじゃなければ、まさに働き方だけじゃない、生活としても持続可能じゃなくなっている、再生産可能じゃなくなっている、これを変えなきゃいけない、そのぐらい実は大事な論点だと思っております。

 したがいまして、時間の関係でこの二点だけに絞らせていただきましたけれども、ぜひこの論点を、きょうの午後以降のところで討議を深めていくということを期待したいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、伊東参考人にお願いいたします。

伊東参考人 出版労連の伊東弘子です。よろしくお願いします。

 私は、出版産業で二十八年間働いている労働者です。一九七八年に入社したとき、雇用機会均等法はありませんでした。大学の授業でも今のように女性学というものはなく、社会的な女性差別の現状を全く理解せず社会に出ました。働き始めてからすぐに、何かが変だという思いにとらわれました。情報の伝達は男性中心、会議への出席も男性のみ、お茶くみ、掃除などの雑務はすべて女性など、すべてが男性優位でした。就業規則に産前産後休暇や育児時間の保障がうたわれていましたが、その権利をとった人はほとんどいませんでした。

 このような状況の中で、仕事の成果を上げるには男性の何倍もの能力と努力が必要であることを実感し、同時に、私にはそれだけの力はないのではないかという思いと無念さに駆られ、入社一カ月後には、会社から帰ると大学時代の恩師の名を呼びながら泣いていました。こんなことなら民間企業に就職するのではなかったというのがそのときの偽らざる気持ちです。

 また、二十五年前に長男を出産しましたが、子供を産んだ女性は当然家庭に入り育児に専念するものだという社会通念を根拠に、上司から何度も退職を勧められました。

 あのころのことを思い浮かべると、随分変わってきました。私のような普通の女性が、普通に定年まで働き続けることが可能になりました。妊娠しても、いつやめるのと聞く人はいなくなりました。今私は、働き続けることができて本当によかったと思っています。

 けれども、本当に男女平等は達成されたのでしょうか。出版で働く女性の現状を述べながら、現在の問題点を述べさせていただきます。

 まず、二〇〇五年五月に実施した、出版に働く女性の長時間労働アンケートの調査結果から考えていこうと思います。お手元に資料を配付させていただきました。

 三十二単組、女性五百九十一人が回答し、九七%が正規労働者です。職種は、編集、管理、営業などです。このアンケートは、男女雇用機会均等法施行後十年を経過した一九九六年より、多少の改定をしながら、ほぼ五年間隔で行ってきました。出版に働く女性たちの労働実態が本人の心身や家庭にどのような影響を及ぼしているかを認識し、討議をし、今後の改善の運動につなげることを目的とするものです。

 一カ月の平均残業時間は、十時間未満三三・七%、十一から二十時間一七・六%、二十一から三十時間未満一〇・七%と、一見、長時間労働が多く見えません。そして、これは九六年以降大きな変動はありません。そのため長時間労働は特に進んでいないように見えますが、二〇〇一年の調査と比べると、以前は長時間労働をしているのは編集職が主だったのが、現在では総務、経理などの管理職場を含め全体に蔓延化しています。また、教科書、学習参考書などの編集職場では、集中して残業が続く時期があり、平均三十時間以上の残業時間が四カ月から六カ月の間続く人が半数、平均百時間が六カ月続いた人もいました。

 深夜労働の回数は、ないと答えた人が一〇ポイント近く下がり、月平均回数はふえています。また、三六協定の範囲を超えて仕事をしている人が一九%いました。

 ただし、この調査で残念なのは、本当に忙しい人はアンケートに答える時間もなく、そのような人の声を十分拾うことができなかったということです。ですから、残業時間は実際にはもっと多いと考える必要があります。

 残業する理由は、仕事量の多さと人員不足によるものです。このような実態の中、長時間、深夜労働が原因と思われる心身の不調が起きた人は五一・六%で、婦人科系疾患だけではなく、うつ状態などの心身のバランスを崩す人がふえています。

 アンケートの自由記述には、家事、育児の責任を担う女性の仕事との両立への努力が痛いほど伝わってきます。幾つか紹介します。

 残業のため趣味、娯楽の時間がとれないということはあるが、家事、育児の時間がとれないということはあり得ない、家事と育児はどんなときでもやらなければならないので、深夜まで家事をしている。夫に頼めるときしか残業できない、無理なときは家に持ち帰ってサービス残業になる。夫とのリレー、子供を見てから夫が深夜再び仕事に行く。とても苦労している、子供の面倒は夫、母、姉、友人の順に頼む。子供のことで仕事が滞ることがないように努力していますが、それでも半人前扱いを受けます、厚かましい、ずうずうしいと男性社員から言われたこともあり、子供を持って仕事をする女は足手まといなのだなと思うこともあります。

 このように努力しても、家族への影響は否めません。子供の精神状態が不安定になった。いらいらが家族にうつり、ぎくしゃくした時期があったとの記述があります。

 介護については、近所の人にお願い、兄弟に丸投げ、ヘルパーに頼む、夫がやるなど、とても手が回らない状態がうかがえます。

 未婚者からは、なかなか現状では結婚、出産に踏み切れないという記述があり、職場の編集職の若者からも、家に帰っても寝る以外の時間がとれない、何もできないという声が聞かれます。

 一年前、妊娠、出産と就労継続に関する聞き取り調査の予備調査、これは出版労連ではなくて女性労働問題研究会という団体の予備調査なんですけれども、出版で働く三十代既婚者で子供がいない女性に話を聞いたところ、今の仕事をしている限り子供をつくることは考えられない、子供をとるか仕事をとるかではなく、考えられないのですという答えが返ってきました。果たして、子供をつくることが考えられないような働き方をしなければならないことが平等な働き方なのでしょうか。少なくとも私たちは、この数十年間、そのようなことを求めて働き続けてきたわけではありません。

 均等法の修正案に「この法律においては、適切な仕事と生活の調和の下、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。」とありますが、まさに、この基本理念なしでは、長時間過密労働をさせられている男並みに、心身の健康を犠牲にし、家族の幸福をも犠牲にしなければならない働き方を余儀なくさせられてしまいます。この上、ホワイトカラーエグゼンプションの導入など、働いても残業代もつかず、自分の裁量として幾らでも働かされる法律が制定されれば、命と健康が脅かされることになります。しかし、仕事と生活の調和という基本理念が浸透すれば、このような労働法制の改悪の発想はあり得ないことです。

 次に、間接差別について考えてみようと思います。

 出版で働く女性に対するイメージは、進歩的なイメージがあり、恵まれて、問題はないのではないかと言われることが多々あります。男女平等のイメージも強いようです。果たしてそうなのでしょうか。答えは否です。

 昇進、昇格は圧倒的に女性に不利です。この十年間、主任、係長クラスは徐々にふえてきてはいるものの、課長以上はまだまだ少なく、部長、役員となるとほとんどいません。ある職場では、女性が主任になるのは四十歳以上で、男性と比べ十年以上はおくれをとっています。課長職の割合は男性の一八%、部長職の割合は〇%という職場があります。

 家族手当を支給されているのは圧倒的に男性が多く、女性が請求しても、運用上の差別があり、提出しなければならない書類の数が男性より多く、嫌な思いをするのが嫌であきらめてしまった女性もいます。住宅手当などは、世帯主もしくは扶養家族の有無で金額に差をつけている場合も多く、結果的に女性の方が少ない額を支給されることになります。

 出版業界では、成果主義賃金が導入されている職場は少なく、基本給は男女同じになっています。しかし、役職手当、扶養手当、住宅手当などの額を組み込むと、明らかに女性の手取りの方は少なくなります。

 私たちは、これらのことは間接差別と考えます。法案では間接差別が三つに限定列挙されていますが、それではこれらの職場に蔓延している差別はなくなりません。私たちが平等で働きやすい職場には決してならないのです。

 お茶くみ、朝の机のぞうきんがけというのは女性であるという職場の慣習もまだまだ残っています。勤続二十年、三十年の女性社員が机をふいているのを横目に新入男性社員が仕事をしているという図も、いまだに存在するのです。もちろん、このお茶くみやぞうきんがけが仕事として正当に評価されることはありません。女性の名刺の大きさが男性の名刺より小さいという職場もあります。男性が営業職で女性は全員営業事務という職場もあります。

 二〇〇〇年に実施したセクシュアルハラスメントの実態調査では、女らしくない、どうして結婚しないのかなどの言葉による侵害を受けた女性は約半数、男性もこのとき調査したのですが、男性でも六分の一います。セクハラの内容についての自由記述は、発言や態度に明らかに女性であることを理由に見下したものがあった、女性には責任ある仕事はできないという言葉の暴力、子持ちの女は半人前と言われた、女性が職場で安住しているような意味を込めて、お茶くみがなくなって一番困るのは女性ではないのかと言われたなど、これまでいわゆるグレーゾーンとかジェンダーハラスメントとか言われているものをセクシュアルハラスメントとしてとらえ、改善を求める声が強く上がっています。

 出版労連では、この調査をもとに、セクシュアルハラスメントの防止のためのガイドラインを作成し、二〇〇一年春闘の重点要求としました。ことし六月、今なのですが、再び同じ調査項目で実態調査をし、職場でのセクシュアルハラスメントの実態の改善の方向を探ります。

 修正案に、職場におけるセクシュアルハラスメントの対象に、性別による固定的な役割分担などの意識による言動を加えるとありますが、今までセクハラを生み出す土壌のグレーゾーンとして認識されてきたものをなくすには、このグレーゾーンこそセクシュアルハラスメントだとしなければ、一人一人の意識も職場環境も変わりません。

 今まで述べてきた間接差別や固定的な男女役割意識をなくす取り組みとして有効な手段が、ポジティブアクションの取り組みであると思います。男女の均等な待遇の確保、女性の勤続年数の伸長、職場の雰囲気、風土の改善、女性の採用拡大、女性の職域拡大、管理職の増加などの観点から女性の能力発揮を進めるため、積極的に取り組むことが強く求められています。しかし、義務化は法案に盛り込まれず、取り組み状況開示を国が支援するというのでは、差別是正の速度は遅々としたものになります。

 確かに、ポジティブアクションという言葉を知らない管理職も多く、まだ概念が浸透していません。けれども、それだからこそ、この取り組みを義務化してほしいというのが私たちの願いです。

 以上、述べてきました働く女性の現状を御理解いただき、真の平等が実現する法改正をお願いいたします。

 ありがとうございます。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 次に、酒井参考人にお願いいたします。

酒井参考人 酒井と申します。均等待遇アクション21という小さなグループなんですけれども、そこで事務局をやっております。

 私たちの均等待遇アクション21といいますのは、二〇〇〇年にスタートいたしましたグループです。二〇〇〇年ということは、前回の均等法が改正されたときに、私たちはそのときから間接差別をどうしても法律に入れたいと強く願っていたのですが、残念ながら間接差別が入らなかったということもあって、それ以降、パートで働く人たちや未組織の正社員の人たち、そして労働組合の方たち、弁護士あるいは研究者、国会議員の方も含めて、そういった思いをする人たちとともに小さなグループをつくりまして、ILOあるいはCEDAWに行ったりとか、さまざまな調査研究をやったり、働く実際の小さな声を拾い集めて、何とか次の改正に声を反映させたい、そういう思いで活動してまいりました。

 本日は、そういった私たちの思いをこういう形で発言させていただいて、大変うれしく思っております。

 私は、きょうは特に、この均等法が、パートや契約社員などいわゆる非正規と言われる女性たちにとって、ああ、均等法があってよかった、本当に均等法は私たちにとって役に立つよね、そういうふうに言われるような法律になってほしいと強く願って発言をしたいと思っています。

 さて、これまでもさまざまなところで、参議院の中でも繰り返し述べられてまいりましたけれども、非正規で働く女性たちにとって一番の問題は何でしょうか。それはもちろん、私が言うまでもなく皆さんよく御存じのように、何といっても賃金差別です。そして、この賃金については常に、いや、これは労基法四条でという形で、均等法の問題ではないというふうに言われ続けてきましたけれども、それならば、ぜひ均等法の中に間接差別としてパートの賃金差別を禁止するということを入れていただきたいと思っているんです。これは、日本では、いや、これは違うと排除されますけれども、国際的にはもう当たり前の常識になっております。

 これまで、参議院の中ではCEDAWの勧告の話がされてきましたけれども、CEDAWだけではありません。ILOの条約勧告適用専門家委員会は、百号条約の日本における実施状況について、二〇〇三年の報告の中で次のように意見を表明しております。

 日本政府の報告が、正規労働者のみを対象としてパート労働者や臨時労働者を除外していることを問題にして、男女の非正規雇用者の賃金も考慮に入れた完全な統計情報の提供を求めております。そして、パート労働者の大半が女性である以上、パート労働者の賃金水準が概して低い状況にあることは、全体として男女間の賃金格差に悪い影響を与えているとしています。そして、委員会の見解として、男女同一価値労働同一報酬の原則は、パートタイム労働者を含めたすべての労働者に適用されると述べております。

 そして、二〇〇三年のCEDAW勧告の中でも、パートタイム労働者や派遣労働者に占める女性の割合が高く、その賃金が一般労働者より低いことに懸念を有するというふうに述べております。

 こうした指摘を受けてか、二〇〇六年のヌエックという国立女性教育会館が発表していますデータでは、初めてパートタイム労働者を含めた男女の賃金格差を掲載しています。それによりますと、一九八五年から二〇〇四年の間の男女賃金格差は、正社員だけならば五六・一%から六五・七%という形で若干縮小をしておりますが、パートを含めた男女賃金格差を見ますと、一九八五年の五二・九%から、二〇〇四年、五一・三%と拡大をしているんです。二十年間でむしろ拡大しているということをようやく政府も認めたわけですけれども、この事実を認めるならば、当然のように、非正規の賃金差別を間接差別として立法化をお願いしたいと思っています。

 次に、非正規の労働者にとって大変大きな問題は、賃金と同時に、もう一つは有期雇用の問題があります。この有期雇用については、これまで雇用管理区分の中で、指針においては、職種、資格、雇用形態、就業形態などの区分であるとしており、有期雇用か常用雇用であるかという区分けが行われておりますけれども、これこそが間接差別であると思っています。

 厚生労働省のパート労働者総合実態調査というのが大体五年置きぐらいに行われているんですけれども、一九九五年には雇用期間の定めのあるパートはわずか三六・八%でした。ところが、二〇〇五年、去年、二十一世紀職業財団がパート労働実態調査を行ったんですけれども、それによりますと、何と、この十年間で雇用期間の定めのあるパートは六六・六%とほぼ倍増をしております。しかしながら、そのほとんどが契約更新をしており、実際には雇用期間の定めのないパート労働者という実態があるわけです。そして、この有期契約労働者のほとんどが女性であるわけで、有期契約であるということをもって賃金が低く抑えられており、それどころか、一時金や退職金もない、そして慶弔休暇とか夏や冬の休みも無給になってしまう、そういう雇用条件や福利厚生などで大きな隔たりがあります。

 有期雇用であるかどうかということを理由にして差別をする、これは雇用管理区分が違うんだから問題にならないというふうに放置することも大きな問題であり、これこそ間接差別としてきちんと是正をしていく問題ではないでしょうか。

 次に、具体的な事例を挙げて少し説明をさせていただきたいと思います。

 きょう皆様にこういう一枚の資料をお配りしましたけれども、大手総合スーパーの人事制度というところを見ていただきたいと思います。

 大手総合スーパーというのは、もちろん日本の中のパートの非常に多くの部分を占めるものであり、そして、大手スーパーではどのようなパートがどのような働き方をしているのかということは、これからの日本のパート政策を考える上でも非常に大きな示唆を与えるものだと思います。

 これはJILという厚生労働省の外郭団体の資料から作成したものなんですけれども、このA社、B社というのは、名前は出しておりませんけれども、最大手のスーパーであります。そして、両方とも共通するのは、最近の人事制度は、これまでの非常に細かな人事制度を変えまして、大体三つぐらいに分けているんですね。その共通性というのは、一つは全国転勤ができるかどうか、それからもう一つは、地域限定、例えば東京都内、あるいは東京と神奈川という、それぐらいの、転居を伴わない転勤ができるかどうか、そして三つ目は、転勤しなくてよい、要するに、転居を伴わない転勤がない、それをすべてパート社員という形で、転勤ができるかどうか、転居を伴う異動があるかどうか、これで一つの区分けをしております。そしてもう一つは、労働時間の長さです。フルタイムなのか、それともパートタイムなのか。

 この転勤の有無と労働時間の長短で人事制度を分けていくというのがスーパー業界の一つの特徴なんですが、これを見ますと、非常に明らかな変化が起こっています。こういう制度に変える前は正社員の中にも女性が結構いたんですけれども、全国転勤という基準をつけた途端に、A社で見ますと、全国転勤型は、男性が七千二百人に対して、女性はわずか千三百人になってしまいました。そして、転居できないという人たち千八百人がパートに切りかえざるを得なくなったんですね。パートに切りかえられたうちの九一・七%は女性でした。そして、パートになるのも嫌だ、だけれども全国転勤もできないという女性たちは、本当にたくさんの人たちが退職に追い込まれていったんです。

 こんなふうにして、転勤の有無と労働時間の長短という二つの基準を設けることによって、生き残れるのは男性だけ、そして、特に家族的責任のある女性たちはみんな、退職をするか、あるいはやむなくパートにならざるを得ない、こういう実態があります。

 そして、では、いわゆる正社員と言われている人たちとパート社員の中で、いろいろ違いはありますけれども、その中でも共通するのは、いわゆる社員は月給制だけれども、パートは時間給であるということ。そして、退職金は、社員にはあるけれどもパートにはない。そして、契約期間も、社員にはもちろん期間の定めがないけれども、パート社員はたとえ十年いても二十年いても一年あるいは六カ月の契約があり、そして、たとえパート店長になっても、パートのリーダーになったとしても、一年更新ということで十年、二十年働き続けている、こういう差があるわけです。

 こうした実態を見ますと、やはり転勤の有無と労働時間の長さをもって正社員とパートの区別にするということ自身が間接差別であり、これは、日本が批准していますILOの百五十六号条約、家族的責任条約に違反するものであると思います。このILO家族的責任条約の勧告、第百六十五号勧告というのがありますが、ここでは、パートタイム労働者の雇用条件は、可能な限りフルタイム労働者の雇用条件と同等であるべきであると述べています。

 さて、次に、もう一つ、きょうお配りしました資料の裏の方をごらんいただきたいんですが、こちらの方にも一つの典型的な例を述べておきます。

 これは、いわゆる疑似パートあるいはフルタイムパートという、とても外国の人たちが理解に苦しむような、しかしながら、日本の中では当たり前にたくさんいるパートの人たちのことなんですが、この会社で働く正社員とパートの労働条件について比較対照の表をつくってまいりました。

 ここの会社は、正社員は一日七・五時間で、パートは七時間勤務なんですね。三十分時間が違うということで、これは疑似パートということなんですけれども、実態としては、パートの人たちはほとんど残業があるんです。ですから、確かに雇用契約書で見れば三十分違うんですが、ほとんど同じ時間働いているという実態があります。

 しかしながら、ここの会社で、正社員は、百二十人のうち、女性はわずか十四人しかおりません。その十四人というのは、未婚の女性、あるいは結婚していても子供がいなくて、いわゆる家族的責任を持たないでもよい、そういう女性しかおりません。そして、パートはほとんどが女性ということで、ここでも、数の上でも女性と男性に分かれているわけですけれども、契約期間の有無にしろ、そして、残業や配転などについてもいろいろ違いがあります。残業や配転は、正社員だけではなくパートにもあります。そして、パートの雇用契約書の中にもきちんと、残業がある、そして必要によっては配転もあり得るということが書いてあるんですね。

 ところが、実際に、一時金は違いますし、それから退職金も、正社員にはあるけれどもパートにないという形で、事細かく隅々まで、どうしてここまで差別をしなければいけないのかというぐらいに差別をしております。

 そして、こうした中で、最近、ここで働くパートの方たちが、大変ショックだということで訴えてこられたことがあります。

 ここの会社では、弔慰休暇として、お母さんやお父さんが亡くなると三日間有給で休みがとれるわけなんですが、先月、あるパートの女性が、お母さんが亡くなって青森に帰られたので、三日間休みをとられたんですね。そして、当然これは、自分の周りの正社員が弔慰休暇をとって休んでいますので、自分も三日間弔慰休暇をとりたいというふうに申請をしましたら、あら、知らなかったの、パートにはないのよ、有休とりなさいというふうに言われたんですね。もちろん、その方はもう有休がなくなってしまったので、結局、三日間の休みは欠勤扱いにせざるを得なかったということがありました。

 親が死んだときの気持ちは同じなのに、なぜ自分はここまで差別をされないといけないのかということで大変ショックに感じておられたんですが、三日間の休みによって何と給与が一万九千円も引かれてしまったんですね。そうすると、ほとんどフルタイムで働いているにもかかわらず、手取りで十万円になってしまった。これがまた大変なショックだったということで、生活にも大変困っているという実態があります。

 こういったことを考えても、特に疑似パートと言われるような方たち、あるいは正社員と全く同じ時間働く女性たちが、雇用管理区分が違うということで差別が是正されないというのは何とも納得ができないと思います。こうした疑似パートやフルタイムパートと言われる人たちは、雇用管理区分が事実上同じものとして、間接差別として是正すべきではないでしょうか。

 さて、もうそろそろ時間がありませんので、この間の参議院の中で、パートはパート法でやるべきだという話が随分と出てきました。それについて私はぜひ反論したいと思います。

 例えば、ヨーロッパでそんなことを言っている国はないと思います。EUの中、例えばイギリスでは、既に一九七五年に性差別禁止法ができて、この中で間接差別が禁止されています。そして、イギリスでは、間接差別禁止をした性差別禁止法に基づいてたくさんの判例が出ています。パートの低賃金や年齢差別、あるいはシングルマザーの深夜勤務など、これらはすべて間接差別として認定されております。

 しかしながら、パート差別は、こうした性差別禁止法の間接差別法理だけではなく、一九九七年には、雇用関係法の中でパート差別を禁止しております。すなわち、性差別と雇用形態差別という二つの視点からパート差別をイギリスでは禁止しているわけで、こうしたいろいろな側面から差別を禁止することが、是正にはより効果的なのではないでしょうか。

 最後に、参議院の審議の中で、パート差別はパート法で是正するという考え方が何度も示されておりますけれども、同時に、均等法はパート労働者や非正規労働者もすべて対象になっているという発言もございます。ところが、このままでは、均等法によるパート労働者、非正規労働者の権利擁護が全くなされないことになってしまいます。そしてまた、パート法でやれと言われますけれども、現行のパート労働法は努力義務による均衡処遇となっているため、是正は一向に進んでいません。

 先ほどの印刷会社の方は、余りにもパート差別が激しいので、労働基準監督署に訴えたんですね。そうしたら、いや、実情はよくわかるけれども、パート法は努力義務だから強制はできないので、無理やり企業に対して強制して是正しろとは言えないということで、何とそこで行われた指導は、経営者に対してパート指針のパンフレットを持ってきたということが実は指導なんですね。こういう指導を行政の方では指導あるいは助言と言われるかもしれませんけれども、私たち女性の側から見れば、これは門前払いとしか言いようがないと思います。

 私たちは、パート労働法を実効性のあるものにするためには、均等待遇と差別の禁止をパート労働法に明記すべきであると考えておりますが、それと同時に、均等待遇がパート労働法の中で明文化されたとしても、性別役割分業に基づくパート差別は形を変えて残っていくと思います。そういう意味では、均等法でもぜひパート差別を間接差別として禁止するよう、皆様にお願いしたいと思います。

 これで終わります。(拍手)

岸田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

岸田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石崎岳君。

石崎委員 自由民主党の石崎岳でございます。

 きょうは、男女雇用機会均等法改正案等について、参考人の皆様にそれぞれのお立場から貴重な御意見を御開陳いただきまして、心から厚く御礼を申し上げます。

 均等法施行二十年というお話でありますが、特に女性の雇用については、国民の意識改革に大きな影響を与えた法律だと思いますが、参考人の皆様から御意見があったように、実態面として格差の解消がどの程度進んでいるのか、また、雇用の二極化でありますとか、間接差別といった差別の潜在化といった問題があるというお話をいろいろ今お聞きいたしましたけれども、そういった面では、実態面について、この法律がこれからもっともっと格差解消に資するという方向性がなければだめだ、そういう御意見を多く聞かせていただいたということでございます。

 基本的には、私は、労働政策審議会における議論、大変熱心に議論をいただいたというその経過、それに基づく建議、そしてこの立法もそれに基づいて行われているということを尊重したいと思います。こういう問題は、それぞれの立場で大変意見の分かれるところ、見方の分かれるところであり、その意見を闘わせた上で一つの方向性を決めるというプロセスがあったわけでありまして、そのプロセスを、その立法過程を尊重したいというふうに思います。

 その上で、各参考人にいろいろお聞きをしてまいりたいと思いますが、大きな議論となりました間接差別について、きょうも各参考人から大変いろいろな意見、また異なる見方が提示されたというふうに思います。

 龍井参考人からは、この問題について、七項目、三項目、三つの基準以外についてどこで救済されるのかというような疑念が呈されたわけであります。一方、川本参考人からは、やはり現場が混乱しないようにある程度の限定列挙というものは必要であるというような御意見もなされたわけであります。法律の専門家である田島参考人からは、法律上これが妥当ではないかという御意見も出されました。

 龍井参考人の御意見、三基準以外の間接差別がどうなるのか、そういうことが一つ疑問としてやはり残る。あるいは裁判になった場合とか、行政対応上どうなるのかという不確定な部分もある。この点について、田島参考人、川本参考人、龍井参考人、御三名にちょっと御見解をお聞きしたいと思います。

田島参考人 お尋ねのありました問題につきましては、限定列挙されました三項目以外にも、当然、間接差別と評価される事象というのは出てまいると思います。これにつきましては、例えばそれが訴訟の場で違法であるということが提起された場合に、裁判所によってしかるべき判断が加えられ、それが違法であれば、しかるべく判決が出て処理されるということになると思いますので、これ以外のものについては全くその俎上に上らないということはないと理解しております。

 よろしいでしょうか。

川本参考人 同様の御質問に対する回答でございますけれども、今の参考人の回答と同様で、裁判所で適当な対応がなされると思っております。

 ただ、私ども、今回限定列挙にこだわりましたのは、非常に、やはりこの問題、一般的な概念として浸透していない。現場も、どういう場合に間接差別になるかならないか非常にわかりにくい。そういう中で、予測可能性を高めていただくという中で、今回三項目のもので決定された経緯があるということでございますから、この今回の三項目の概念を浸透させることによって間接差別そのものの概念というものがだんだん浸透していく、こういうことが非常に重要だろうというふうに思っております。

 以上でございます。

龍井参考人 簡単に二点だけ申し上げます。

 まず一点目の、プロセスというところなんですが、参議院の中では、なぜ三点になったのかという説明のときに、コンセンサスという言葉がどうも誤用されているようで、参議院のときにも申し上げたことですけれども、少なくとも研究会報告の七つのことがそれこそ俎上に上って、それを一つ一つ吟味して三点に絞り込んだ、そういう審議経過がまずございません。

 したがいまして、私どもは、建議の段階で、労働側の代表、労働側の委員の、もともと例示列挙にすべきだという主張を加えてあるだけであって、私どもの認識としては、その七点から三点に絞り込んだことにコンセンサスがあるという認識はまず持っておりません。

 それから、二点目ですけれども、決して私どもも、研究会報告の七つというのが、まさにこれが議論経過にあったものですから、それは少なくとも参考例で示すべきだと申し上げているんですけれども、当然ですけれども七つにも限定されません。もっと幅の広いものです。

 先ほど申し上げたのは、北井局長が、今回定義を盛り込みましたと。国連差別撤廃委員会にもそう報告するんだと思います。だとしたらそれは、幅広いものとして定義をもともとしているわけですから、そこで、行政指導の根拠としての三つに絞り込んだものとの間についてどうするんですか、そういうふうに申し上げているのであって、基本的な考え方からいえば、当然それは七つにも限定されないものだ、間接差別というのはそもそもそういうものだという理解をしております。

石崎委員 間接差別というのは非常に幅広い概念だと思います。そういう意味では、どのような取り扱いが違法となるかを明らかにするということは、円滑な施行を進める上で極めて重要だというふうに思います。

 法律の専門家である田島さん、中野さんにちょっとお聞きしたいんですが、ちょっと調べたところ、これまでのところ、この間接差別法理によって判断された裁判例というのは、雇用の分野では一件もないということであります。ですから、これからの話。これまでは一件もないということでありまして、これによって前進するとか後退するとか、そういう判断にはなかなかならないんじゃないか、これからの話であるということでありますが、この点について、田島さん、中野さんの御意見を聞きたいと思います。

田島参考人 これまで、我が国におきまして、間接差別を正面から取り上げた裁判例はないと理解しております。

 このたび、この法改正によって均等法の中に間接差別が違法であるという条文が盛り込まれることにより、この違法性が明らかとなりますので、今後、裁判の過程でもし間接差別が取り上げられるような事案が出てくるといたしましたときには、これを踏まえてその違法性が認められやすくなるのではないかと期待しております。

 以上です。

中野参考人 明確に間接差別という法理を明示して判断がなされた事案というのはありません。

 しかしながら、これは現職の裁判官、判事でありますけれども、女性差別訴訟についての裁判所の考え方をあらわしたものと考えられる論文がありまして、その中に、裁判所は、間接差別という言葉は用いていないけれども、その手法を実質的にとりながら性差別にアプローチしてきている、こういう解説がなされております。

 私が先ほど紹介させていただきました立証責任に関する判断のアプローチ、それから性中立的な基準の適用の結果として生じた男女の格差に関するアプローチ、これが二つの側面から、間接差別の法理という言葉は用いてはいないけれども、同様の手法を持ちながら、実質的に差別と考えられる事案については違法と判断する、こういう裁判例が確立をされてきたというふうに考えております。

 ただ、体系的にこういった間接差別の法理というものが認識されていないということもありまして、法制度上それが明確に明らかにされたものがないわけでありますから、諸外国の判断事例などを参考にしながら、我が国の確立されてきた法理論を積み重ねながらの適用ということになってきている、このように解釈しております。

 したがって、現在の裁判所がとってきているものを後退させるものでは毛頭あってはならないというふうに考えますけれども、一般条項の適用によって裁判所が積み上げてきたこの考え方というものに基づいて性差別を解消させていくということは積極的に行われなければいけない、このように考えております。

 したがいまして、間接差別に基づく性差別の排除が行政権限を通じて行われるためには、その法的な根拠が必要でありますから、均等法に基づいてその規定がなされる必要があると考えますが、しかしながら、実質的に差別であるというふうに考えられるものについても、一般条項があるわけですから、その排除が何がしかの形で行われてしかるべきだ、こういうふうに解釈できると思います。

石崎委員 龍井参考人にお聞きしたいと思いますが、労働側として、これまでも性差別問題に取り組んでこられたというふうに思います。

 間接差別の問題は、企業の中の制度の改善で解決できる部分もいろいろあろうかというふうに思います。労働組合として、あるいは労使交渉の場において、この問題についてどのような取り組みが行われてきたのかということをお伺いしたいと思います。

龍井参考人 当然、間接差別といってもいろいろな問題の仕方があると思います。

 つまり、個人が自分が差別をされたということを、わかりやすく言えば、例えば同期の人とか、あるいは同じ職場の同じような経験を持っている人ということが恐らく直接的に訴えられる差別であれば、これは当然のことながら直接差別ということになります。ただし、これはまさに見えないものとして、これが性中立的なものであるということの場合に、それであったとしても、個人の訴え、個別紛争からそちらの方に展開していく、あるいはそうした事実の認識、事実の確認がされることによって間接差別と認定される、多分その両方のパターンがあると思っております。

 お尋ねの点なんですけれども、私どもは、もちろんいろいろな制度について、例えば今回も俎上に上っておりました手当の問題等々について、これはきちんと要件を見直していくべきだというようなことを労使交渉の中で取り上げて、随分改善も図ってまいりました。けれども、その他の事案について、なかなか、やはり客観的な、それこそ先ほどから話題になっておりますような、世の中全体としてそういうものが差別に当たるんだということがきちんとまだ認識がされていませんので、実はそういうものが実際上は間接差別に当たることだったとしても、それが明示的に間接差別の訴えとして、あるいはそういう取り組みとしてできるという状況にはまだ残念ながらなっていない、不十分だと思っております。

 したがいまして、今回の問題をむしろ逆に契機とさせていただいて、どれだけ今まで浮上できなかったことが差別に該当するのか、あるいは今まで問題にできなかったことが問題にできるのかということに本格的に取り組んでいきたいと思っております。

石崎委員 かわりまして、審議会の場でも、仕事と生活の調和という議論、この均等法の目的、理念の中でそういうことを明確にしてはどうかという議論がいろいろ闘わされたというふうに聞いております。

 先ほど龍井参考人のお話でも、そもそも今回の法改正においては、男女ともに差別禁止という設定の仕方が変わったのであるから、働き方の基準の議論として、仕事と生活の調和という理念を明確にすべきであるというお話がございました。なるほどなというふうに思います。一方、川本さんは、こういう性差別以外のものをこの法律に持ち込むべきではないという全く正反対の考え方でございました。

 先ほど、川本参考人は龍井参考人のお話をお聞きになったと思いますので、川本参考人に、この法改正において仕事と生活の調和という概念が明示されない、そういうものはこの法律にはなじまないんだという御発言だと思いますが、もう少しその辺のお考えを聞かせていただきたいと思います。

川本参考人 今の御質問についてお答えいたしたいと思います。

 仕事と生活の調和の問題でございますけれども、その重要性そのものは私どもも認識はいたしておるところでございます。

 しかしながら、仕事と生活の調和というものが、男女の性別の問題、性差の問題であるかどうかといったときに、これは別に性差の問題であるとは思ってございません。したがって、性別による差別を禁止しております均等法の目的、理念に盛り込むことは適切でない、切り口が全く異なる、こういう考え方でございます。

 また、仕事との調和につきましては、いろいろな労働関係の法令全体でいろいろ対応していくことになるんだろうとは思っておりますが、ただし、申し上げておきたいのは、実は人それぞれによってイメージする調和がある、これは決して画一的なものではなかろうと思っております。そういう意味で、本当に個々人によって多様な価値観がある中で、どういう調和を求めていくのかというのは、実は法律というもので一つの基準を決めるというのは大変難しいことであり、そぐわない問題だろうというふうに思っております。

 あと、もう一つちょっとつけ加えておきたいのですが、先ほど龍井参考人の方から、審議会の場において間接差別について、この七項目について余り議論はしていなかったようなお話でございますが、これは二回にわたって議論を行っております。本日議事録を持ってきておりませんけれども、処遇の問題あるいは手当の問題等々も含めまして、かなり議論が行われたところであるということは申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

石崎委員 今の川本参考人の御意見について、龍井参考人、今の前段のお話ですけれども、御意見を聞かせていただきたいと思います。

龍井参考人 参考人というより、何かどうしてもシンポジウムみたいになってきているんですけれども。

 私どもは、繰り返し申し上げていますように、まず第一に、八五年法には入っていたという事実です。ですから、これは八五年法に入っていたものが、特に勤労福祉婦人支援みたいな位置づけであったという限界の面はありますけれども、もともとそれがきちんと入っていたことをどう認識するか。それで、さっき触れましたように、九七年法でそれが別の観点からの議論で外されたというまずその経緯について、きちんと皆さん方の議論の中でも事実認識として押さえていただきたい。今新たに全くゼロに入れようという話ではありませんので。

 二点目ですけれども、時間の問題だというのはそのとおりです。ただし、繰り返し申し上げていますように、今改めて、均等、平等の基準というものが、いわば男性正社員すべてではございませんけれども、育児、介護、家事には携わらない、携われないようなことが前提、休みもほとんどとらない、とれないことが前提であるということが、男性にそれが偏っていればこれは性差別に当たるということは、先ほど紹介しましたように、参議院でも答弁されております。

 したがいまして、それが、ある一局面だけをとっての差別ということではなくて、男女というところに偏っている場合、これは恐らくパートでも同じことだと思います、そういう基準によって偏っている場合に、ではそれをどちらの基準に合わせるのか、これは直接差別でも間接差別でも変わらないと思いますけれども、どちらの基準に合わせていくかということが今改めてもう一回問われているんだ。したがって、これはあくまで働き方の基準であり、均等という考え方の基準の問題であるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

石崎委員 最後に、今回は、法改正で妊娠等を理由とする不利益な取り扱いの禁止等が盛り込まれております。先般も、出生率一・二五という大変ショッキングな数字が出されました。少子化対策だけではありませんけれども、働く女性、出産してその後も職場でしっかりと働けるような環境づくりというのが非常に大事な時代、人口減少期における女性の労働力という意味でも大事な論点だというふうに思いますが、今回の法改正、これだけで何かそういう女性の職場復帰の促進ということが期待できるかどうか、いや、まだまだ不十分だ、もっとさらなる政策が必要だということなのか。その点について、田島参考人と伊東参考人に御意見をお聞きしたいと思います。

田島参考人 妊娠、出産、育児という問題は女性の就業の大きな妨げになっておりますために、子供をつくりたいと思っても断念せざるを得ない女性が相当数いると思っております。そのような女性に対して、今回の法改正により妊娠等に対する不利益取り扱いが禁止され、あるいは解雇の無効が規定されるということは大きな助けになると思っております。

 ただ、これが完全であるかということにつきましては、まだまだそういう評価ができる段階には至っていないだろうと思いますので、今後さらにより手厚い方策がとられていくことを、私、個人的には期待しております。

 以上です。

伊東参考人 現場の声から申し上げますと、例えば不利益取り扱いでも、非常に昇進、昇格差別に影響するのではないかとか不利に働くのではないかとか、あとは、結局、周りが忙しいのにとても妊娠、出産していられないというような、労働時間の規制であるとか、そういうことができないとまだまだ不十分であるとは思うんです。

 ですから、ヨーロッパのように、妊娠、出産不利益取り扱い禁止ではなくて、むしろもっと、本当に理想的に言えば、そういう権利をとって働くということが男性にも女性にもプラスポイントとなるような、そういう法律に向けてやっていただけたらいいというふうに思っています。

石崎委員 貴重な御意見をありがとうございました。

 終わります。

岸田委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、参考人の先生方には、大変御多忙の中この委員会の方にお越しをいただきまして、また、貴重な御意見を承ったことに改めて御礼を申し上げる次第でございます。

 また、限られた時間の中で非常にいろいろな角度からの御意見も伺いまして、大変参考にさせていただきました。それで、きょう伺った御意見も踏まえて何点か御質問させていただきたいと思いますが、まず最初に、弁護士であられます田島参考人それから中野参考人に、間接差別の規定のあり方につきましてきょう御意見を伺いましたので、お伺いしたいというふうに思います。

 お二人とも、いかにしてそうした差別を解消していくのか、あるいは差別に遭った人たちを救済していくのかという観点は、そういう目的は同じなんだというふうに思いますが、意見としては、特に法案に対する意見としては、異なった立場をとられて表明をしていただきました。

 田島参考人の方は、予測可能性あるいは被害の救済の有効性とか迅速性、そういったことに着目されて、限定列挙の方が制度として定着しやすいのではないかという立場から、法案に賛成という立場をとられたんだと思いますし、また中野参考人は、それではどうしても救済の範囲が狭められてしまう、対象となる範囲が狭められてしまうというようなことから、反対の意見だったというふうに思います。

 ここでやはり重要なことというのは、いかにして、実際のそういった差別をなくしていくのか、また実際にあった場合に救済を図っていくのか。しかも、それは適正に、なおかつタイムリー、スピーディーにできないと意味がないのだろうと思います。そういう意味で、実際の裁判という手段をとるとすれば、これは残念ながら相当な時間や労力がかかってくるということで、そうすると、やはりそれ以外の、ADRというような手法もあるんでしょうし、また行政による的確な対応というようなこともあるんでしょうが、そういったより迅速性また的確性を高めていくために、行政としてどういうような方法が考えられ得るのか、お考えがあれば、両先生からお伺いしたいというふうに思います。

田島参考人 間接差別という形での差別が行われることはあってはならないと考えております。ただ、まだ現段階では、間接差別という言葉を聞いたことのある者も少ないと思いますし、その意味を正確に理解している方もより少ないだろうというふうに思います。

 そういう段階において、いきなり間接差別すべてについて違法であるというような、そういう包括的な規定を取り込むということにはなかなかついていけないものがあるだろう。そういう現時点での判断で、私は、今回の法改正のように、とりあえず限定列挙の形で、こういったものが間接差別の一つであるのだということを示して、そして、社会がそれを理解し、そこから、さらにこれ以外の間接差別についても違法行為が行われることはいけないのだ、そういう共通認識を持つように方向づけをしていくべきだろうと思います。

 それにつきましては、行政の方で、いろいろな相談を受け、積極的に行政指導をすることを通じまして、より社会的な理解も深めることができると思いますし、むしろ、行政がこれから負担していかれる役割には大きな期待が寄せられるというふうに考えております。

 以上です。

中野参考人 先ほどの御意見をお聞きしておりまして、例えば、仕事と生活の調和というのは性とは無関係である、こういう考え方をお持ちの方もこの社会の中にはあると思います。だけれども、これは、性とかかわって格差を生じさせるという意味では、まさに間接差別をめぐる論議の真っただ中にある議論だというふうにも言えるわけです。

 仕事は男で家庭は女で、最近は、男性は仕事で女性は仕事と家庭という、新しい性役割分業というのが出てきているわけですけれども、こういう男女の異なりを処遇に反映させていくというものをいかに迅速に取り除いていくかということが社会の課題でありまして、こういった迅速な解決というものをいかに早く図っていくか、こういうシステムを社会が持たなければいけないということだと思います。

 そういった意味で、今回、均等法の中に、七条で三つの項目に限って基準を列挙いたしまして、この基準につきましては、男女に格差が生じるようなものとして列挙されたというわけですから、格差が生じているということは労働者側があれこれ主張する必要はない。それについて、使用者側が性以外の合理的な根拠に基づいて行われているのだということを立証しない限りにおいては差別的な取り扱いですというのは、これは迅速な解決に向けては非常に大きな効果を発揮するというふうに思います。

 では、そのほかのものについてどうするのか、こういう話なんだろうと思いますが、格差が生じていることを労働者側が主張し、そして、その格差が生じているという根拠が性以外の合理的な根拠に基づくものだという、これは取り扱う側が主張立証する、こういう手法というものが均等法の運用において貫かれた場合には、相当程度迅速にこの男女間の格差というものが解消されていくのではないかと思います。

 現状の制度の中でこの運用というものを、七条以外のものについて、労働者側が、男女で格差が存在するということを主張して、これは性差別ではないのかということで、例えば機会均等委員会であるとか調停委員会であるとか、あるいは行政に、均等室に訴え出た場合に、それは実質的に性差別ではないのかという視点から調査をし、そして助言指導をしていくというようなシステムが確立されて初めて、お尋ねのような迅速な解決というものが可能になるのではないか、私はそのように思っております。

 その方向で運用されることを切に期待しております。

上田委員 ありがとうございます。

 次に、また田島参考人にお伺いをいたします。

 田島先生からは、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止につきましての御意見を伺いました。これは本当に重要なことだと私も思います。

 今回、この法案にこうした規定が盛り込まれたこと、これは大変評価に値することだと考えておりますが、問題は、これをいかにして実効あるものにしていくかというところにあるんだろうと思います。これは公務とか大企業であれば対応は可能なんだろうと思うんですが、雇用の場の非常に大きな部分を占めます中小企業においては、経営環境もなかなか厳しいですし、ではそのかわりの人をやりくりするというようなことも、なかなか現実には難しいのだろうというふうに思います。

 ただ、どうも経済産業省なんかのデータを見てみますと、規模の小さい企業ほど出産後の女性の継続雇用も多いというようなデータもあるようでありますが、これは多分、そういう人事面での、顔が見えるところでのことなもので、非常に機転をきかせるというか融通をきかせながら対応している、そういう結果なんだと思いますけれども、ただ、これでもやはりいろいろと限界はあるんじゃないかというふうに思います。

 そこで、ぜひまた田島先生に、実際にこうした規定を実効あるものにしていくために、やはり公的部門からのそういう支援策なり後押しが必要なんだろうと思いますけれども、もし御提案がございましたらお聞かせいただければというふうに思います。

田島参考人 大企業よりも、むしろ中小企業の方が、妊娠、出産後の復帰率が高いデータがあるというお話を伺いまして、それはやはり、女性労働者が、かなり能力が高いことを実績をもって示してきた結果、それを評価して、別の人間を採用して一から訓練するよりは、そのベテランの女性を使い続ける方が企業にとって有効である、そういう判断が徐々になされてきているのかなというふうに今感じたのでございますけれども、女性労働者の妊娠、出産、育児を容易にするためにどのような支援方策があるかということにつきましては、具体的に、私が、どういう手法をとるべきかというアイデアを持っている状況ではございません。

 行政サイドで実態を常にきめ細かく把握していただき、どういう方法をとれば、企業にとっても負担が少なく、また女性労働者にとってもいい形で妊娠、出産、育児ができるのかということを考えて、それを積極的に措置していかれるように、それは財政的支援もあると思いますが、それ以外にも、いろいろな形でノウハウを各企業なり労働者なりに提示して、積極的に推し進めていただくということは、ぜひ期待したいと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 続いて、きょうの参考人の御意見の中で、仕事と生活の調和についてということもたびたび触れていただいたわけでありますが、川本参考人、それから龍井参考人にお伺いをいたしますけれども、仕事と生活の調和というのは、少子高齢社会が急速に進んでいる中で、特に重要性が増しているんだというふうに思っております。いろいろなデータを見てみますと、我が国というのは、先進諸外国に比べて非常に長時間労働が多いということになっております。

 では、果たして、何でこういうことになっているのかな、これは、もちろん勤勉性みたいなことというのもあるのかもしれませんが、必ずしもそういうことばかりが理由ではないというふうに私も思います。

 そうすると、では、日本の労働者の生産性が低いのかというと、そんなこともないんだろうなというふうに思うので、そうなると、これは経営側の問題、経営側の経営能力あるいは努力が足りないのか。あるいは、もう一方では、労働者、労働組合の方で、そういった問題について余りこれまで関心がなかったのか、そういった交渉について努力が足りなかったのか、そういうようなことなのか。それとも、いろいろな法律などの制度的な面での整備が不十分だったのか。

 いろいろな要因があるんだというふうには思いますが、経営者、また労働組合のそれぞれのお立場から、なぜこういう長時間労働が、我が国において特にそういう現象が見られるのか。また、経営側また労働側として、これまでこうした問題解決に向けてどういう取り組みをされていたのか。あるいはまた、今後のお考えがあればお伺いしたいと思います。

川本参考人 ただいま、なぜ長時間労働が多いのか、あるいは、経営側あるいは労働側はどういう取り組みをしてきたのだろうかという御質問でございまして、実は、大変難しい御質問を受けたかなとは思っております。

 まず、なぜ長時間労働なのか。

 一つの面としましては、先ほど御指摘がございました、勤勉性という問題もあろうかと思います。私自身も、若い時分、どう思って働いておったかといいますと、体力のある今のうちにたくさん仕事をして能力をつけようというふうに本当に思っておりました。したがいまして、それは人それぞれ違いますけれども、やはり勤勉性ということは言えておるのだろうと思います。

 また、もう一つ、景気の変動がございます。景気の変動の波の中で、やはり、残業時間というものの中で全体の労働そのものを調整しつつ、企業の存続というのを図ってきている面もあろうかと思います。

 それから、もう一つは、これは今度、個々人の働いている方たち、この一種の自律性の問題もあろうかと思います。つまり、非常に周囲の人の目を気にする方たちも多いというふうにも聞いてございます。こういうのも労働時間が長いことにある程度の影響を及ぼしているのかなと思っております。

 また、先ほどの御質問で、経営側、労働側というお話がございました。

 実は、私ども、こういう経営者団体におきましては、当然、仕事と家庭の調和は必要だということ、あるいは、労働時間も適正を図ってもらいたいというお話は、発信をしてございます。これは、労働組合側も、連合さんを中心に、そういう発信はしているところだろうと思います。しかしながら、個々の企業におきまして、これは、経営側が非常にイニシアチブをとって指導をされているような会社もあれば、さほど関心が多分ない会社もある。一方、労働組合側も、個別企業組合で、非常にそこに熱心に取り組んでおられる組合もあろうと思いますし、そうでない組合もあるのかな、こんなふうに思っております。

 ただ、いずれにしましても、この仕事と家庭の調和、あるいは労働時間の問題というのは、余り画一的に法律等で縛っていくべき問題ではなかろうというふうに私は思っております。

 以上でございます。

龍井参考人 長時間の問題は、やはり、先ほどのグラフでわざわざお示しをしたのは、当たり前に働いて当たり前で暮らしていける働き方が減っちゃっているということとセットの問題なんですね。ですから、いわゆる正社員数が九七年までは何だかんだ伸びていて、そこから正社員数が減っているわけですよ。その中で長時間化とパート化が進んでいるというところに、今の問題の深刻さがある。単なる長時間一般ではないということだと思います。

 その場合に、実は、私どもも、労働の時間管理をしっかりやろうよということで、いわゆる不払い残業の問題の実態把握、それから、当然、これは政府に対しても要請をして、大きなキャンペーンもこの数年続けてまいりました。ただ、現場では、率直なところ、組合がそういうふうに取り組んでも、結局、働いている人は残っちゃっているんだよなという声も実は聞きます。

 今、川本さんから個別化の話が出されたんですけれども、今の時間管理というか仕事の業務の与え方そのものが、非常に個人化、個別化をして、狭い範囲のノルマにきゅうきゅうとする、場合によっては本当にリストラの恐怖を抱えながら、とにかく今のこの時期を過ごさなくちゃいけない。川本さんのお話しになったような、今頑張って将来何とかなるというのではなくて、とにかく経営も、どんどんどんどん、半期、四半期のバランスシートに目が行く、長期的に人材を育てようなんということはどこかへ飛んじゃっている。そういう中で働いている現場というのは、非常に短いスパンで、今ある目の前のノルマでどうするか、場合によったら、個人間の競争でどうやって乗り切っていけるか、そういう一つの働き方、あるいは仕事の分担の仕方の問題まで実は見ていかないと、単に総労働時間規制をやったというだけではいかない問題があるというのはとても重要なことだと思います。

 やはりこれは、これから労働時間法制をめぐって、来年に向けて大きな議論になっていくと思いますけれども、もともとの雇用関係というのが、ある時間に限って使用者の指揮命令に従うという、その雇用関係の基本をまずきちんと押さえていただくということがないと、そこのルールがぐしゃぐしゃになってしまっているというのが今の現状だと思いますので、ぜひそういう視点での検討をお願いしたいと思います。

上田委員 もう間もなく時間でございますので、これで終わらせていただきますが、改めまして、参考人の先生方、いろいろな、質疑も含めまして大変貴重な御意見、重ねて伺いまして、まことにありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

岸田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、参考人の皆様におかれましては、大変御多忙の中、当委員会にお越しいただきまして、また、貴重な御意見を賜りましたこと、御礼申し上げます。私も、数点でございますけれども、各参考人の皆様に質問させていただきたいというふうに思います。

 今現在は、もうこの均等法が施行されましてから約二十年が経過したわけでございまして、雇用の分野、こういうものにおける男女の平等の理念、これは社会に着実に定着してきたのではないかなというふうに考えるわけでございます。

 ただ、一方で、依然として、問題のある事例というものも見受けられるわけでございまして、また、差別形態というものも複雑化してきているなというふうに感じるわけでございます。私も、議員になる前は会社の経営者でございまして、そちらの方を本業としていたわけで、そういう中で、女性社員との接し方、いろいろな点で問題というのもあったなというふうに感じておるわけでございます。

 そういう中から、まず最初に川本参考人と龍井参考人に質問させていただきたいと思うんですが、企業におきましては、これまで性差別の解消に向けた取り組みというものを行ってきたのではないかなと思うわけでございますが、まだ女性の活用というものが十分に行われていないのではないかなというふうにも考えております。

 例えば、厚生労働省の女性雇用管理基本調査、こういうものによりますと、管理職に占める女性の割合というものは五・八%でございまして、しかもその多くが係長と、比較的低い管理職にとまっている。

 このような、管理職に占める女性の割合が低い理由につきまして、これはどこにこういう問題があるのか、女性の能力が伴わないからなのか、ほかに理由があるのか。この点につきまして、お二人の参考人の方の御見解をお伺いしたいというふうに思います。

川本参考人 ただいま、女性の活用が十分進んでいない、その問題点はどこにあるのだろうかという御質問でございました。

 御質問の最初に、この二十年間で均等法の理念というのは随分定着してきたと思うというお話がございましたけれども、私どももそう思っております。したがいまして、この機会均等法の理念あるいは法規定そのものは、やはり二十年かけて、また途中に改正もございましたので、かなり浸透してきたなと。そういう中で一歩一歩前進をしていることは間違いない事実であろうというふうに思っておりますし、あわせまして、ポジティブアクションということで、かなり女性の活用について大胆かつ強力に推進している企業の事例も多々あります。

 しかしながら、一方で、そう余り進んでいない企業もあるということで、今言われたデータ的な話にしますと、管理職の女性の割合というのは余り進んでいない、低い率であろう。今後、これは一歩一歩前進していくのだろうと私は思っておりますけれども、ただ、この辺を、どう理念をより浸透させ、そして女性の方たちもいかに頑張っていただくか、あるいは男性の方たちもいかにそれを、活用という言葉は余り好きじゃないんですが、活用していくかということを進めつつ、時間が進めば徐々に解決していくのではないかなと思っております。

 実は、私どもの職場も、女性の管理職というのは随分比率が高いです。したがいまして、そういうのも一つの、企業だったり、私どものようなところがそういう形を見せつつ、より進んだところが、なかなか企業としてちゃんとやっているじゃないかというところがふえれば、一層進むのではないかな、こんなことで期待をしている次第でございます。

 以上でございます。

龍井参考人 幾つか問題を指摘させていただきたいと思うんです。

 一つは、先ほど田島さんが御自身の経験で述べられたような基本的な性役割意識というのが、変わってきたとはいえまだまだ根深いという事実は、眼前としてあると思います。

 もう一つは、管理職データ、我々もとるんですけれども、いきなり管理職に行く前に、では、どういう仕事の分担あるいは責任の分担をしているか。やはり日常の、それこそチームワーク全体の中で、最初から、きちんとどういうポジションに位置づけられることを想定して、教育訓練も含めて、すべてトータルな結果として出てくるわけですよね。その階段の第一歩、第二歩のところで、きちんとそれが与えられていない、先ほどのお話じゃありませんけれども、情報も与えられていない。これでは登用されるチャンスすらない。入り口で機会均等と言われているけれども、基本的には仕事の分担、責任の問題というところに、なかなかデータはとりにくいんですけれども、それが本当に変わっているかというと、まだクエスチョンマークが多いんだと思います。

 それから三つ目は、これも先ほどの男性の働き方と関連してくるんですけれども、今のままの基準で管理職パターンといったら、もうすべて生活をなげうってというコースしかほぼないじゃないですか。それが、そうじゃなくともできるんだよという、まさにそれが私は男女平等の、平等参画、共同参画の目的だと思っているんですけれども、そういう新しいものにつくり上げていくことがない限り、今のままの基準で頑張るといってもそれは無理だし、ほかのものをあきらめざるを得ない。そうではない選択肢をつくることだと思います。

糸川委員 ありがとうございます。

 近年、経済環境が厳しい中で、この男女雇用機会均等の改善のテンポが緩やかになってきているのではないかな、このように言われている意見というのも聞くわけでございます。

 女性労働者が置かれている状況につきまして、男女の雇用機会均等の観点からどのような問題があるのか、参考人の御見解をお伺いしたい。また、そのような問題の解決に対しまして、今回の政府案、この政府案ではどこが足りないのか、不十分なのか、そこの点につきまして、中野参考人と伊東参考人、酒井参考人のお三方に御見解をお伺いしたいなというふうに思います。

中野参考人 経済環境もどんどん変わってきておりまして、それに対応して雇用管理のあり方も変化してきております。一つは、個別化と言われましたけれども、社員をグループ分けして管理をしていくという、多様化が進んだということと、業績主義、能力主義、個人の業績や能力というものによって処遇していくというように、時代が雇用管理を変化させてきたという側面があります。

 こういう変化に対応して、効果的に男女の格差をなくしていくという仕組みを均等法が持たなかったということが問題でありまして、私は先ほど、差別は形を変えて生き続けるということを申し上げましたけれども、見えにくくさせられながら次々と形を変えていくものをどのように先手を打って解決していくか、この手法というものを持たなければならないというふうに思います。

 業績主義的な処遇という点では、実は今回、妊娠、出産による差別的な不利益というものを労働条件全般にわたって禁止をしていくということをうたいましたけれども、では、業績主義処遇との関係で、本当にこの趣旨が処遇の中に貫かれるのかという課題を残しております。

 こういった問題も含めて、女性たちの訴えというものを吸収して、そして差別の解消に向けていくような制度、企業内あるいは国における解消に向けた制度の充実というものが不可欠だったというのが一点です。

 それと、もう一つは、先ほど来問題になっております間接差別の法理に基づく差別の解消をどう広く図っていくのかということが課題だ、まさにそれが実現できるかどうかというところで、三つの基準に限ってこれを行政指導の対象としていくということは、時代の流れには全くそぐわないというふうに判断をいたしております。

伊東参考人 済みません、うまく答えられるかどうかわからないのですが、やはり何といっても、現場の労働者からすると、間接差別の点をもうちょっと進めていっていただかないと、いつまでたってもこの状況は変わっていかないというふうに思っております。

 ですから、そうした概念を広めたり、ポジティブアクションの取り組みをしたりとか、そういう、もうちょっと進んだ法律の整備と、使用者側も労働者側も意識を深めて取り組んでいく必要があるというふうに思っております。

酒井参考人 これは法律の本文にはないことなんですが、私たちはこの前の均等法の改正のときにも感じたことですけれども、国会の中でようやく努力義務が禁止規定になったと喜んでいましたら、実は指針の中で、いや、差別禁止は雇用管理区分の中でしかやらないのだということがわかって、もう、だまされたというような気持ちになったことがあるんですね。

 今、その雇用管理区分というのは、例えば就業の実態、それから職務の違い、それから責任の違い、そして雇用形態の違い、勤務場所の違い、労働時間の違いというような形で、これは通達に細かく区分が書かれていまして、そういうところで、それがすべて同じところでしか差別かどうかを比較できないということになっているんですね。そうしますと、そこの中で一緒に比較対照ができる男女というのはごくごくわずかになってしまって、ほとんどの女性たちが、均等法はあるけれども私自身の差別を是正しようと思うと何の役にも立たないのねというような、非常にむなしい思いを感じております。

 ですから、どうしても、この雇用管理区分についても、目安になっている就業の実態なりあるいは有期雇用かどうかとか、こういう目安そのものが私は間接差別であると思っていますので、ぜひともそれを見直していただきたいと思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、田島参考人にお尋ねをさせていただきますが、男女雇用機会均等政策研究会、こちらでは、間接差別の禁止に関して諸外国の規定について整理をされているわけでございますが、諸外国におきまして、政府案のように、対象となる措置を限定して間接差別を規定している例があるのかどうか。

 また、この研究会の報告書は、予見可能性というものを実際高めて法的安定性を高める、こういうことが必要であるというふうにしておりますが、政府案のように、対象となる措置を限定するという方法も議論に実際上がっていたのかどうか、研究会での議論についてお伺いしたいなというのが一点。

 それから、間接差別の禁止につきましては、国連の女子差別撤廃委員会等から、国内法に明確にこれを定義づけるよう勧告を受けているわけでございますが、政府案の規定というものはこの勧告にこたえるものとなっているのかどうか。また、この対象を限定とした政府案に対する見解というものもお伺いしたいなというふうに思います。

田島参考人 まず第一点目の御質問でございますけれども、諸外国の法制として、今回の改正案のように間接差別の項目を限定列挙したものはなかったと承知しております。

 それから、二つ目の御質問でございますけれども、研究会の中で、今回の改正案のような間接差別に該当する事項を限定列挙して定義するということの妥当性を議論したことは、そこまで具体的に議論したことはございません。このような規定の仕方が適当であろうというような、そういった具体的な意見はございませんでした。

 研究会としましては、いろいろな諸外国の制度等の分析を踏まえて一応の研究の取りまとめをし、それをまた審議会の方で議論していただくたたき台にするというスタンスで議論をしていたにとどまっております。

 それから、三つ目の御質問の、条約の要請との関係で今回の法改正の内容が十分かという御質問につきましては、これは間接差別禁止を均等法の中に盛り込むということで要請を満たしているものというふうに考えます。

 ただ、我が国の現状を踏まえて、当面、省令により該当事項を限定列挙するというスタイルをとっておりますので、その辺は若干、諸外国に比して特異な形態なのかと思いますけれども、これも将来的にはこの幅を広げていく方向にあると思いますし、私もまたそれを期待しております。

 以上でございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 次に、妊娠、出産等を理由とする不利益の取り扱いについて、田島参考人と中野参考人にお伺いをさせていただきたいと思うんですが、今回の政府案の特徴といたしまして、妊娠、出産に関する保護というものの拡大、これを特徴として上げることができるんじゃないかなと思います。この妊娠、出産に起因する不利益を排除する、こういうことは男女の雇用機会均等の実現において重要でありまして、また、急速な少子化が進む中で、女性が働きながら安心して子供を産んで育てていく、こういう環境を整備する上でも重要なことであるというふうに考えております。

 この点につきまして、政府案、これは大変評価できるものではないかなと考えておりますけれども、実際、参考人がどのようにお考えになられているのか。また、今回の改正案で足りない部分ですとか不十分な点をぜひ御指摘いただいて、参考人の御見解をお伺いしたいなというふうに思います。

田島参考人 今回の法改正によりまして不利益取り扱いも違法なものとして禁じられたということは、大変評価すべき有意義な改革であろうというふうに考えております。

 特に、一定の場合につきまして妊娠等を理由とします解雇が無効ということがうたわれ、しかも、その解雇の事実につきましては、それが妊娠等を理由とするものでないということの証明を事業主側で行わなければいけないという挙証責任の転換が入ったということについて、これは極めて有益な法改正であろうというふうに考えております。

 今後は、こういった挙証責任の転換の範囲をもうちょっと広げていくというような方向で、違法行為を行われたときの救済がより容易に現実的に行われることを私は期待したいと思います。

 以上でございます。

中野参考人 私も大変意義のある改正であると思います。特に、立証責任が転換されることが明文化されているということは非常に意義のあることだというふうに思いますが、先ほど田島参考人の方からも意見がありましたとおり、これを一般の労働条件における取り扱いにも拡大していくという問題があると思います。

 それから、もう一つ重要なことなんですけれども、有期で働く人たち、派遣で働く人たち、こういった人たちに、妊娠、出産にかかわる不利益というものがどのように解消されていくのかという問題は、この均等法の適用においてもなお問題になります。

 つまり、妊娠、出産ということを雇用打ち切りの理由にしてはならないということなのですけれども、さまざまな理由で雇用を終了させられる、その結果として、労働条件上の不利益というものを禁止していくこういった規定を潜脱していくといいますか、適用できないようにしていくということも考えられるわけであります。

 特に、派遣労働につきましては、登録型派遣は派遣元と派遣先における派遣契約が打ち切りになれば、どのような理由であっても働き続ける権利はないのだということが一部で言われております。それを認める司法判断も出てきておりまして、こういった分野に女性たちが非常に多く働いているということからしますと、実質的な非正規雇用で働いている人たちに対する保護というもの、差別の禁止というものをどのようにしていくかということが大きな課題になろうかと思います。

 それから、先ほど申し上げましたように、業績処遇の中で業績主義が非常に強まってきておりますけれども、妊娠、出産により職場に行けない、働けないということそのものが不利益に、勤務していないということから、例外的な、もう評価に値しないということになることが予想されまして、こういったものについてもどのように運用されていくのか、将来の課題になっているということだと思います。

糸川委員 本日は、日々、労使間または雇用をめぐる男女平等問題に携わっておられます皆様方からの貴重な御意見を賜りましたこと、本当に御礼申し上げます。今後の審議の参考にさせていただきたいというふうに思います。

 終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美と申します。

 きょうは、六人の参考人の皆様、お忙しいところ御足労いただき、また大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 二十年ぶりの均等法の見直し、本格的な見直しでございます。大変多くの働く女性たちが、大変大きな関心を持ってこの法改正の審議を見守っております。ぜひ、中身の濃い議論をしていき、そして、本当に差別解消につながるような法改正を行いたいというふうに思っておりますけれども、いずれにいたしましても、審議時間が大変短いという中で、限られた中ではありますが、きょういただいた御意見を生かして十分議論していきたいと思っております。

 さて、私たち民主党は、今回の法改正、例えば両性に対する差別が禁止されたことですとか差別禁止の対象が拡大してきたこと、こういったことから、評価する点もございます。しかしながら、今の雇用状況、働く人たちの状況を見るときに、本当にこの法律が世に送り出されて差別の解消にどのくらい貢献できるのだろうかということを考えたときに、やはり不安、懸念がありまして、民主党、社民党、共産党、そして国民新党共同で、修正案を提出させていただきました。

 そして、あわせて、均等法がきちんと運用されましたときにはパートや有期契約などの問題も解消されるというふうに思いますけれども、しかし、パートはパート法でという答弁などもあり、それだったらということで、パート労働者法の見直しも提案をさせていただいているところでございます。

 まず、中野参考人に二点お伺いをいたしたいと思います。

 先ほど、差別の解消は労使一体で取り組むべき課題であるというふうにおっしゃいました。私も全くそのとおりであると思います。差別は人類社会の中であってはならないことでありますので、すべての人が当事者として解消に向けた努力をしていくことだと思います。しかし、この二十年間というもの、やはり当事者が、女性たちが頑張ってきたではないかと、振り返ってみるとその足跡が私たちにははっきりと見えるわけであります。

 そういったことを踏まえて、今回、法改正の中で、間接差別の法理が導入される。なぜこの国には間接差別の法理が必要なのか、なぜそれを用いなければ差別を解消することができないのか、このことを伺いたいと思います。

中野参考人 私は、意見の中でも申しましたけれども、差別というものは時代の変化とともに形を変えて生き続ける。それがいけないことだというふうに法律で禁止されると、職場の中では、そういった外形をとらないで今までの格差というものを温存したり、あるいはもっと拡大しなければならないという要求に駆られる、そういった雇用管理が今まで職場の中で広がってきたのだろうと思います。

 例えば、今まで男女別の賃金体系をとっていたところにコース別雇用管理を導入する。そうすると、その処遇の違いの根拠を、将来の幹部候補として期待しているかどうか、それから全国転勤というものを織り込んでいるかどうか、そして、職務は基幹と補助、そのように分けて、この人は基幹業務、この人は補助業務というぐあいに、言葉をかえてその格差を引き継ぎ、そして女性たちの処遇を固定化してきました。

 しかし、この処遇というのは、基幹と補助という仕事の違いというのは、まさに男女の違い以外の何物でもなかったのです。そして、全国転勤が可能であるのかどうかと問われても、転勤しない男性たちはたくさんいる中で、女性たちだけが、その可能性があるのかどうかということだけで振り落とされてきました。そして、将来の幹部候補として期待されるのかどうかなんというのは、勤務年数が一般的に女性は短いから期待できないということで排除する口実だったわけです。このような基準というものが、パートという世界では、労働時間が短い、仕事と家庭の両立というものを図る、企業との結びつきの弱い労働者であるということを理由にして、低賃金の根拠とされてきました。もちろん、全国転勤ができないということも根拠になってきたわけです。

 このような、性とは書かれていないけれども、基幹と補助の仕事の違いや、全国転勤ができるかどうか、期待度の違いといったような、言葉をかえた基準をもって差別をされてきた、温存されてきた。しかし、均等法はそれに何も手をつけられなかったわけです。この理由は何かといえば、性中立的な基準のように見えても実質的には男女を差別しているのではないかということに対して、強力な行政権限を発動してこれを解消させていくという制度を持たなかったからでありまして、この点は、間接差別というものを排除していくきちんとした法律上の根拠が求められた最も強い要因でした。

 そして、国際社会からも、こういった差別を取り除いていくということを持たない日本において、最も性役割が根強く、改善されていない、賃金格差も、国際的に見れば、主要国の中でも非常に大きくて、極めて恥ずべき状態にあるということが指摘されながら、間接差別の禁止というものを求められてきた。これも女性差別撤廃委員会の中での勧告が示しているものでありまして、そういった諸要素が間接差別というものを法制化する必然性を持っていたというふうに思います。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 中野参考人に引き続き伺いたいと思いますけれども、この法律がしっかりと差別解消のために本当に機能的に役立っていくために、懸念される点が幾つかある。例えば、先ほどの妊娠、出産を理由とした不利益な取り扱いについては、正社員の女性に対してはそれは適用されるが、パート、有期契約の人たちは除外されるおそれがあるということなどのお話がございました。

 この法案の審議の中で、最低限これは担保していかなければいけないと思っていらっしゃる点について伺いたいと思います。

中野参考人 雇用多様化が女性労働の中に著しく進展してまいりまして、実は使用者と労働者との単純な雇用契約関係によっては割り切れない関係のもとで働いている人たちがふえてきております。場合によってはインディペンデントコントラクターというような、請負、委託で働く、労働法による規制を全く受けないという形で、実質的には使用者に対して労働を提供するという形で働く人たちもふえてきています。

 このような人たちが果たして性差別から自由な形で労働を提供しているのかといえば、そうではありません。逆に、例えば派遣労働の世界では差別が強化されてきているのではないかと思える相談事例があります。例えば、事前面接を通じて容姿であるとかそれから女性的であるかどうかという差別的な選別というのがまだまだ強く残っていまして、このような場合に、派遣先に対して均等法に基づく差別の禁止規定というのは適用にならないとされているわけです。

 新しい均等法というのは、新しい時代に適用されるような形で差別の禁止を徹底させていかなければならないわけですけれども、雇用多様化に対応して、均等法がこれらの労働者にも十全に差別禁止規定の利益を受けることができるように、きちんとした運用がなされていくべきだ、また、そのようにきちんと改正されていくべきだというふうに思います。

 また、間接差別につきましても、三つの事例に、基準に列挙されたものに限って行政指導を行うとされているところでありますけれども、例えばパートについて、酒井参考人が発言されましたが、労働時間のあり方というのは、これは諸外国で見れば、性役割の根強い社会の中では男女によって格差を生じさせるという最も典型的な基準とされているわけです。

 こういったものがそもそも雇用多様化の要因であり男女間格差をもたらしてきたものであるとすれば、これにこそ差別ではないのかという検証のメスを入れなければならない、こういったところが非常に大きな課題になっていると思います。

 ぜひこの点について確認をしていただきたいというふうに思います。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 間接差別については、省令の中で三点だけ限定的に列挙されるということでありますけれども、今のお話を伺っておりまして、差別は常に形を変えていく、流動化していく雇用状態の中では、非常にやはり、間接差別という法理を生かす上でも、限定的な列挙は大変大きな懸念を残すということで、私たちとしてもしっかり修正案の御提案を皆さんにさせていただいているところでございます。

 さて、龍井参考人に三点伺いたいと思います。

 まず一点は、先ほど、間接差別の三点に限る省令における限定的な列挙について、コンセンサスが得られていなかったではないかというような御意見だったかと思うんですけれども、石崎委員に先ほど、時間をかけて議論してきたということをおっしゃいました。時間はかけているのかもしれません。しかし、最後のところで、その三点に絞るということにコンセンサスがあったかどうか、これは私は、ここのところを知りたいわけであります。

 あわせて、建議の中では、間接差別の定義について明記をされております。しかし、法案の形になったときにそれが霧消してしまいました。このプロセスについてどのようにお感じか、お聞かせください。

龍井参考人 ちょっと先ほどはしょってしまったんですけれども、川本参考人からの追加の御報告がございましたように、全くしなかったわけじゃない。ただ、参議院で指摘をされていますような、七つから三つにした、そこについてコンセンサスがあったというふうに説明されているので、それはございません。私どもはあくまで、限定列挙では困りますということを最後の建議段階でもお示しをしたということです。

 ただ、問題はもう一つございまして、そもそも何が問題、特に、今回、違法ということですよね、その基準たるものがその時々のコンセンサスということで左右されるのか。やはりそこは、私どもは、もともと明確な価値判断の問題としてきちんと示すべきものであって、その時点その時点でそれが揺らいでいくとかということはむしろ逆にあってはいけないのではないか。そういう二重の意味での指摘をしたいと思っております。

 それから、定義につきましては、これは多分、参議院段階の中では、どこかでその三項目を周知すると思うんですけれども、ただ、私どもも、建議の書きぶりのままの法文化ということを想定していました。ところが、実際には、第七条というのは、ぜひ国会審議の中でも英訳を取り寄せていただきたいと思うんですが、どこで区切っていいかわからないような文章になっていて、しかも、一番肝心なところが間接差別の問題というよりは省令の規定ぶりの説明になってしまっているという意味では、先ほどどなたかが御指摘になったように、本当にそれが国際的に通用する間接差別の説明になっているのかということは大変疑念だと思っております。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 龍井参考人、いただいた資料の中で、A、B、Cとあります。Bについては「省令でまず三つに」ということでありますけれども、Aの部分とCの部分、これはどのように担保されることが望ましい、必要だというふうに龍井参考人御自身はお考えでしょうか。

龍井参考人 まず基本的なスタンスとしましては、私どもは、今回の間接差別の規定に当たっては、先ほども申し上げましたように、限定列挙でなく例示列挙にすべきだというのがまず基本的なスタンスです。

 ただ、御提示をしましたのは、参議院の議論の中で、北井局長が何度も、Aの、つまり限定されない間接差別を今回は決めました、それでCEDAWに報告をしますと。いや、だとしたら、その定義そして法理というものは全く限定されないものがありますと。しかし、行政指導の発動の範囲としては三点にしましたという説明があったものですので、そのチャートをお示しして、では、間のところはどこに行っちゃうのということで、わざわざ問題提起としてつくらせていただきました。

 ただ、そのBの残りのところというのは、私どもとしては、もしも政府案で仮に行ったとする場合でも、ここについてきちんと行政指導の勧告、助言の対象になるというのが最低線だと思っております。

 これもどなたかが御指摘になったように、いきなりそこで裁判かと。やはりそこに行くまでの間に、どれだけの手当てと、そして、職場から問題化していったときに、それがきちんと受けとめられて、これも間接差別に当たるんだということが、逆に言えば使用者側にとってもそれはとても大事なことであって、そういう積み重ねをつくっていく意味からも、北井さんの言う門前払いをしないところから、どこまで担保をするかというのをできる限り、繰り返しますけれども、指導、助言、勧告の対象にきちんと位置づけていただくということが最低線だと思っております。

西村(智)委員 今回の均等法で男女双方に対する差別の禁止が盛り込まれたわけでございます。そういたしますと、今までは、男性の働き方に合わせて、それを基準として女性の働き方を見ていく、そういう意味での男女雇用機会均等だったわけですけれども、私たちは、この双方に対する差別が禁止されたという点から、やはりここは雇用平等を実現するための法律に本当の意味でその本質を変えていかなければいけないんだろう、このように考えています。

 そこで、ワークライフバランスについて、龍井参考人、ぜひお聞かせをいただきたいと思いますけれども、労働組合は、私が拝見しておりますと、男性の社会といいますか、そういうところであります。そこにおいて、ワークライフバランスをこの均等法改正の中で議論することの意味というのはどこにあるのでしょうか。

龍井参考人 これは本当に労働組合運動としても深刻に考えなくちゃいけないと思っていまして、実は、今準備をしております。我々連合の中での、つまり労働組合の中での、男女平等の参画の計画を新しくこれからつくろうと思っています。

 それで、我々も、目標値としては、やはり役職員の比率というのは数値目標としては大事になる。ただ、先ほどの役職の話ではございませんけれども、今のままの男性組合幹部タイプ、これがふえてもしようがないんですよね。やはり、そうじゃない仕事の責任を持ちながら、そうじゃない新しいタイプの人たちがふえてくるような参画計画をどうつくるかというふうに考えていますので、これは先ほど来御指摘になっている、実は正社員とパートの問題もそうなんです。というのは、研究会報告の中で示されたときに、結局、正社員というのは、転勤もするでしょう、拘束性もあるでしょう、責任もあるでしょう、だからパートはと。では、その拘束性とは何なのかということは問わずに来たんですよ。

 でも、今おっしゃったように、それが双方とも差別禁止ということの考え方を延長していくと、なぜ正社員という位置づけだから、拘束性だけを一方的に担わなくちゃいけないのかということががらっと転換してくるわけですね。

 ですから、ぜひ、今議論されていることをパートの均等待遇、パート法に持ち込んだ場合でも、あくまで検討の中身が何か、今御指摘になったその判断基準がそちらでも問われることになるということで、引き続きお願いしたいと思っております。

西村(智)委員 最後に一点、酒井参考人に伺いたいと思います。

 この間、正社員からパートへの流動化といいますか、雇用の切りかえが非常に進んできた、これはいろいろな数字を見ますと明らかなことであると思いますけれども、酒井参考人は、この均等法の改正に望んでおられること、一番どの点を望んでおられるのか、それを伺いたいと思います。

 時々、参議院の中での議事録を見ておったりしますと目にするのは、例えば、コースの転換制度があるから、あるいは、パート、派遣から正社員への転換を導入している企業が少しずつふえているからというようなことなわけでありますけれども、酒井参考人御自身は、この均等法の改正でどの点を望んでおられますか。

酒井参考人 先ほどからも雇用の多様化ということが言われておりまして、雇用の多様化の中で、それはほとんどが実態としては女性のパート化ということになっているわけなんですけれども、そうしますと、男性の方から、パートというのは要するに女性が自分から進んでそういうことをやったんじゃないか、納得してやっているんだからいいだろう、そういうことがいろいろなところから言われるんですけれども、でも、実態としてそうではないということはよくわかっているわけですね。

 会社から、正社員から無理やりパートに引き下げられるということもありますけれども、例えば、自分の家の中で見てみると、自分はもっと働きたいのに、自分の夫が子育てをしないものだから、結局、自分が子育てをせざるを得なくてパートにならざるを得ない、女性は職場の中にいてもそれから家の中にいても、いろいろな働き続けられない圧力があるわけですね。

 そういったときに、では、この均等法が、果たして、自分が正社員でもパートでも、本当に自分のライフスタイルと合わせた働き方を選べるようなそういう法律になっているかといいますと、そこのところが一番やはり欠けております。

 そして、これまでの調査でも、一九九五年に行われた今から十年前のパート労働実態調査の中では、転換制度のある企業は四割あると言っていまして、それ以降ずっとふえていますが、それでも、ふえたといってもまだ四割台なんですね。では、その実態はどうなのかという調査を、なぜか厚生労働省は行っておりません。

 ですから、では、本当にパートから正社員になった人たちがどれだけいるのかというと、これは非常に微々たるものでして、先ほどのスーパーの事例の中でもお伝えしましたけれども、例えば、パートの女性が七万人いて、その七万人の中で正社員になった方が八十人しかいないとか、あるいは、転換制度はあるけれども事例は一つもないとか。なぜ事例がないのかといいますと、正社員になれということは、要するに裁量労働をやれ、男並みに働けということなんですね。そうしたら、これまでワークライフバランスで、せっかく自分でパートというワークライフバランスを選び取ってきた女性が、またそこで男性の働き方に引き戻されてしまう、それだったらばやはり選べないわという事情があるわけですね。

 ですから、そういう意味では、均等法が、本当に今の雇用多様化の中で、パートを選んでも派遣を選んでも、そして正社員を選んでも、どんな働き方をしても、差別をされない、均等待遇が保障されている、そして、一年契約でびくびくしないで、きちんと安定した雇用が保障されている、そういう法律になるように望みたいと思います。

西村(智)委員 ありがとうございました。

 終わります。

岸田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、六人の参考人の皆さん、大変お忙しい中、本委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見を伺うことができましたことに心から感謝を申し上げたいと思います。

 そもそも、衆議院の本委員会では政府への質疑をまだ行っていない中での、参考人の質疑を先にやるという、大変イレギュラーな経過をたどっておりまして、そのこと自体非常に残念である、先ほど来お話がされているように、本当に十分な審議が求められているんだろうということを改めて感想として持ちました。せっかくの機会をいただいて、皆さんの貴重な意見が本当に今後の審議に十分反映されるということを、ぜひ、本委員会の皆さんにも呼びかけたいなと思っております。

 そこで、まず最初に、川本参考人にお伺いをしたいと思います。

 間接差別の概念が今回初めて導入されましたけれども、省令による三つの具体例に絞り込まれた、このことに対して、関係団体からも多くの意見が上がり、参議院でもこの問題が大きな争点になったかと思っております。

 そこで、使用者側は、一般的にはまだ浸透しておらず、性中立的なものであればどのような要件でも俎上に上り得る、対象が無制限であること、そうしたことから強く反対したという意見を述べられたかと思います。

 参議院での局長答弁も、コンセンサスが得られたもの、それがこの三つであったという答弁がありますけれども、まさに、このことと先ほどの御意見を伺いますと、コンセンサスという名でありながらも、使用者側の意見が今回の法案のベースとなったというふうに言わざるを得ないのではないかと思っております。

 そこで、では、三つの要件、コンセンサスが得られた三つの要件に限定することによって、どれほどの救済が実際にされるのであろうか、実効性があるのであろうかということに対しても、非常に疑問を持つものがございます。

 例えば、コース別雇用管理区分においての全国転勤要件の問題、これについて、参議院で局長は、女性が事実上満たしにくい全国転勤を要件としている企業がかなりに上り、かつ要件としていてもその必要性を十分検討されていないまま導入しておられるという企業が四割にも上っているということを示した上で、このことが禁止されることによって、従来指摘されてまいりましたコース別雇用管理についての運用の是正が進むものと考えております、このように答弁をされております。

 ここを受けとめますと、この間のいわゆる間接差別というものの非常に大きな部分がこの全国転勤要件であり、大部分が解決されるんだというようなニュアンスに受け取れるわけであります。

 しかし、先ほどの川本参考人の御意見を言いますと、具体的に言うと、支店や支社がなかったり、またはその計画等がないにもかかわらず、総合職の採用基準に全国転勤要件を掲げることは合理的な基準とは考えられないということであって、その部分だけが合理的ではない、ですから、コース別雇用管理制度や全国転勤要件そのものが問題とされるわけではないということを明確にしたと述べておられます。

 そうなりますと、実際には非常に狭まって、例えば支店がないところが転勤を要件とする必要がないのは当たり前ではないかというふうに思うわけで、合理的な理由がなくという一文が設けられたがために、実際にここで救済されるものを非常に絞り込んだことになりはしないかと思いますが、その点を伺います。

川本参考人 間接差別の部分につきまして、何か使用者側の考えがベースとなったのではないかということ、あるいは、コース別全国転勤のところが非常に狭い範囲になったのではないか、このような御質問かと思います。

 まず、使用者側の考えがベースになったという御意見でございますが、審議会においてそういうことではございません。私ども当初、この間接差別概念そのもの、非常に一般概念化していない、あるいは、審議会でもいろいろ議論いたしました、例えば、退職金だってそういう概念に入るのかなとか、年功賃金というのは一体何なんだろうかとか、あらゆる議論をいたしまして、やはりまだ非常にわかりにくいということでございました。したがいまして、私どもずっと反対をし続けたわけでございます。

 ただ、そういう中で、結局、予見可能性、ここをしっかりすることによって対応ができるのではないかというお話が出てまいりまして、公益委員の方から、それでは限定列挙という形ではどうだろうか、これによって予見可能性が高まるだろう、こういう話になったわけでございます。そして、具体的に、話し合いの中でこの三つという形に収束されていったというふうに考えております。

 したがいまして、私どものベースと言われますとちょっとあれになりまして、私どももともと、まだ導入につきましては時期尚早と思っているんだということは申し上げておきたいと思います。ただし、審議会におきましては、そこを収束させていきまして、今回の中身でまとめたんだということであり、その中で、今回のこういう法案につながっているということは申し上げておきたいなと思います。

 それから、コース別の話でございます。

 これは、例えば雇用管理区分の話というのもございます。その中の一番典型的な例がこのコース別管理でございますけれども、そもそもコース別管理というのは、企業におきましては、一時点の仕事だけを見ているんじゃなくて、長期的な視点から、どういう職種あるいはどういう仕事を今後していくのか、あるいは、どういう資格対応があるのか等々の中で、区分しながら、育成もあるいは処遇等の仕組みもつくっていっているわけでございます。

 したがいまして、このコース別雇用管理そのものというのは、やはり企業の経営上非常に必要と思っております。また、あわせまして、実はこれは、別に男女別の雇用管理というものではございません。コースのそれぞれに、当然、男女にも門戸は開かれているんだという考え方を私どもはとってございます。

 ただ、そのような中で、今回、このコース別管理をとっている中で、採用に当たって全国転勤要件をかけることについて間接差別概念に入れるかどうかという話がありましたので、これについては、先ほど言った、支店がない場合とか、今後も計画がないのにそもそも全国転勤要件をかけている、そうすると、私は転勤できませんと言っている人がそこで排除されてしまうということになりますので、それはおかしいでしょうと。したがって間接差別の概念に今回入れてもいいではないか、こういう結論に達したということでございます。

 以上でございます。

高橋委員 ベースになったのではないかというのに対して、そうではなくて、もともと反対だったというふうな御指摘でございましたので、そうなってくると、私がベースと言った意味はちょっとそういう意味ではなかったのですけれども、初めから使用者側がいいというものしか取り入れないということは、初めから、これからのいわゆる労働者にとっては絶対にもうこれしかだめよということになってしまうから、そういう意味でベースとなったということを指摘させていただいたわけですけれども、今のお話を聞くと、ますますそういうことかなと思ってしまいます。

 しかし、最初にお話しされたように、非常に広い概念であるということは当然認識をされた上で、今コンセンサスが得られるものということでありますから、やはり使用者側として、特に経団連としては、今後、ポジティブアクションについて、今回も努力義務にとどまっているわけですけれども、これを積極的にリーダーシップを果たしていく、企業の責任を果たしていくという点で、どんな役割を果たしていくのかということを一言だけ伺いたいと思います。

川本参考人 今、ポジティブアクションについての御質問であったかと思います。その中で、私どもとしてどういう役割を果たしていくかということだったかと思います。

 実は、私ども、経団連内部にはいろいろな委員会あるいは会合がございます。今日までも、実は、こういう女性の活用をより進めているところとかというのは、その事例を聴取したりしてきてございます。そして、その集大成として、今後こういうものに取り組んでいく必要性があるというのは、毎年十二月に経営労働政策委員会報告というのを発表してございますが、その中にも記させていただいているところでございます。また、今後も、そういう事例等、いいものがあれば、それは私どもの会員企業にPRをしていきたいなとは思っております。

 また、あわせまして、これは行政へのお願いでございますが、今後、このポジティブアクション、先進的な事例というのがありましたら、よりそのPR、周知に行政としても努めていただきたいな、こう思っているわけでございます。

 以上でございます。

高橋委員 ありがとうございました。

 次に、酒井参考人に伺いたいと思います。

 大手総合スーパーの新たな基準による人事制度、これが間接差別そのものではないかという具体例は非常に説得力があったと思われます。

 そこで、仕事と生活の調和について、法の目的に据えるべきだという意見が多いにもかかわらず、雇用の場における性差別の禁止と、仕事と生活の調和は切り口が違うからということで排除をされてきました。しかし、改めて酒井さんたちは、これは切り離せないという立場から、この問題が非常に大事だというふうに主張されてきたと思いますが、一言御意見を伺いたいと思います。

酒井参考人 パート労働というのは、日本だけではなくてアメリカでもヨーロッパでもいろいろな国に広がっているわけですけれども、特に日本におけるパート労働というのは、そもそもの成り立ちが主婦パートというところから始まってきましたから、そういう意味では、初めからパート労働というのは性別役割分業の結果としてあらわれたものであると思っています。

 そして、確かに近年、男性パートもふえてはきましたけれども、例えば、年齢別に見てみますとそれははっきりしていまして、女性のパートというのは、やはり二十代から三十代、四十代、五十代ということで、家族的責任を持つ人たちがパートになっているということが多いんですね。それに比べて、年齢別で見ると、男性のパートというのは、実は学生アルバイトと、それからもう一つ、非常にここ二、三年で顕著になっているのは、六十歳以上の、いわゆる高齢者雇用安定法によって、正社員を退職した後、年金受給までにパートという形で働くという男性が非常にふえています。

 そういう意味では、同じパートといっても女性と男性では全く違う。これを同じに扱うということはできないと思うんですね。やはり女性パート、いわゆる主婦パートとしてこれまで多数を占めてきた人たちの中に、女性労働者が持っているあらゆる矛盾が含まれていると思っています。

 そういう意味では、パート労働を改善し、本当は男性の働き方ではなくて、パートで働きながらワークライフバランスを実践しているこの働き方の方が、実はとても人間にとっても優しいし、それから社会にとっても優しい働き方だということを、まず均等法の中にも、それからパート法の中にも、基本として据えるべきではないかと思います。

 そういう意味で、このワークライフバランスの考え方を、パートでも正社員でも、いろいろな働き方を自分で選択して選べる働き方なんだということから、この法律の基本に据えるべきではないかと思います。

高橋委員 ありがとうございました。

 次に、伊東参考人に伺いたいと思います。

 出版の現場で働く女性たちの具体的な実態が示されたと思います。

 そこで、今回のアンケートは正規労働者がほとんどであったと思いますけれども、非正規労働者も現場にはかなりいるのではないかと思います。現状がどうなっており、どういう取り組みをされているのか、具体的に伺いたいと思います。

伊東参考人 非正規労働者の数は、もう把握し切れないほどになっております。やはり出版労連としては、均等待遇をキーワードにして春闘では取り組んでまいりました。例えば、東京都の産業別最賃の改正に全力で取り組んだりとか、企業内賃金制度の時給千百円以上を労使協定化するとか、非正規労働者の単価は労連基準の時間額千百円以上、日額八千円以上、月額十六万円以上とするとか、フリーランサーの料金調査の取り組みや引き上げについて労使交渉で協議するとか、そのようなことになっております。

 それから、均等待遇のチェックリストなどもつくりまして、男女双方に対する均等待遇の考え方、それから非正規労働者に対する均等待遇の考え方、派遣労働者に関するものは派遣法がきちんと守られているかどうかのチェックリストなどを行って意識を広めていきましたが、残念ながら、まだそれがはっきり浸透していないような状況があります。

 ただ、出版産業では、派遣労働者の皆さんとか、それからフリーランスの皆さんとか、そういう方たちの労働力をいただかないととても成り立たないような構造になっておりますので、ぜひとも均等待遇は実現していきたいというふうに考えております。

高橋委員 ありがとうございます。

 次に、中野参考人に伺いたいと思うのですが、均等法の実効ある担保措置ということで、私たちは、救済措置の強化、職場に苦情処理委員会の設置を義務づけることや労働局均等室などの権限強化が必要ではないかと考えております。参議院でも、行政指導の範囲が司法で争える範囲より狭いのはおかしいのではないかという議論などもあったと思います。また、随時見直していくという点でも、行政がむしろ裁量権を持ち、これを重ねていって見直しにとなっていくのが本来合理的なプロセスではないかと思っております。

 現行法の、今回の提案されている改正案の中で、この実効ある担保措置というのがとれるのかどうか、見解を伺いたいと思います。

中野参考人 現行法といいますか、改正法は、救済措置については、基本的には旧来のシステムを承継するということになってきております。私どもは、効果的に差別を解消していくためには、差別の認定手法をきちんと確立をするということ、そして、これにかかわる専門的な委員会を設置するということが必要だと思っております。現行の制度はそういった意味で非常に不十分なものであるというふうに言わざるを得ないと思います。

 司法救済には時間がかかるということが言われておりますけれども、行政救済につきましても、認定手法を確立した上で、専門家による迅速な差別の認定というものがかち取れるようなシステムというのをぜひ将来の課題にしていく必要があると思います。

 それから、差別と認定されたときに、これは今回の間接差別に関する是正措置についても問題になるところでありますけれども、差別であると認定されたときに、将来に向かってその格差をどのようにして是正していくのかということが、細かく議論をし、そして実践に移されていかなければならないと思います。

 例えば、全国、転居を伴う転勤が可能であるのかどうかという仕分けの基準というのは、正社員の中でも総合職、一般職、そして正社員とパート労働者を区分する基準にもなってきております。これが、性差別である、使用者側が性以外の合理的な根拠に基づくものだということを立証し切れなかったという場合に、それは性差別的な基準になるわけでありますけれども、それを取り除いた結果、賃金やそれから配置、昇進、教育訓練などの男女格差というものを具体的に是正して、そして、将来にわたってそのような格差をもたらさないというような実効あるシステムになるのかどうかということであります。その点は参議院の中でも議論がまだ十分に交わされてきていないところでありまして、ぜひ衆議院のこの段階において、どうなるのかということについて確認をしていただきたいところだと思います。

高橋委員 ありがとうございました。

 今の、御指摘があった、専門家による救済を迅速にということをぜひ実効あるものにしていきたいと思いますし、不十分だと言われていた部分の議論をぜひ衆議院の中で深めていきたいと思っております。

 最後に、伊東参考人にぜひ。

 出版労連の中では、今、大手教科書会社である一橋出版・マイスタッフの争議を係争中と聞いております。その経緯を簡単に御紹介していただいた上で、何が課題かお聞かせいただきたいと思います。

伊東参考人 先ほどから格差の問題であるとか均等待遇の問題とかが話されていましたけれども、そのような非正規労働者の背景は省きますが、一橋出版・マイスタッフ争議というのが出版労連内で起きております。

 この争議は、杉並区にある教科書会社の一橋出版が、グループ企業である派遣会社マイスタッフからの派遣の形をとることで、あたかも合法的に教科書編集者を雇いどめにした事件です。

 出版労連、情報関連ユニオンでは、単産の枠を超えて支援共闘会議などを結成して、支える会も全国規模で拡大して、非正規労働者の権利を確立するために今闘いを強めているところであります。六月二十九日、今月、東京高裁で判決があるんですけれども、何かこれだけではわからないと思いますので、ちょっと長くなって申しわけないんですが、ざっと説明させていただきます。

 まず、一橋出版というのは派遣法違反の事例がかなりありまして、一橋出版とマイスタッフはオーナーが同一人物です。また、複数の人間が両社の役員を兼任するというふうな実態があります。そして、今回裁判になっているK氏の採用の際には、一橋出版の社長以下、役員による事前面接が行われて、労働条件は一橋出版が実質的に決定、本来派遣元が行うべき労務管理を一橋出版が行うということなど、グループ企業が結託して、労働者派遣法にすら違反して、人件費が安く、しかも使い捨ての可能な派遣の形で正社員同様の仕事をさせて、雇いどめにした事件です。

 彼女は教科書編集者で、社員の指示も受けず一人で仕事をして、二年間一人で頑張ったんですけれども、雇いどめを受けたということです。

 やはり、この一橋出版・マイスタッフ争議というのは、現在の格差社会の縮図であると思います。この争議は、格差社会の是正のために、すべての人の働く権利を確立して守る闘いであるとして、ただいま判決に向けて頑張っているところであります。

高橋委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、終わります。

岸田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、各参考人の皆様は、もうお昼も過ぎましたのに、大変長時間の御出席で御苦労さまでございます。

 本日の委員会の参考人からお話を伺うという場は、既に参議院で本法案が成立して、衆議院に移ってきたということで、論議の当初から熟した部分といいますか、かなり皆さんそれぞれの御主張で、参議院での主張をなぞられて御発言の部分も多いと思います。しかしながら、私といたしまして、この衆議院では本日が始まりの始まりでありまして、やはりそもそも論のところも少し私もお伺いしてみたいと思いますので、その点、よろしくお願い申し上げます。

 実は私は、私的なことを申せば、小児科の医者でございます。最近騒がれております出生率の一・二五という値を、もちろん数だけではない、産めやふやせやではないけれども、女性も男性もやはり子供を持つ機会に恵まれること、それからまた、その中でみずからも育っていくこと、社会的にも、そうした子供をはぐくみ、育てられる社会の力があるということはとてもいいことであるし、また未来そのものであるとも思っております。

 そうした中で実は三十一年やっておるのですが、この雇用均等法が二十年前にできて、果たして本当に、正直なところ、よくなったかな。お父さんの働き方、お母さんの働き方、あるいは予備軍である若い人たちの働き方、あるいは子供を生み育ててみようというふうに勇気を持って思えるか、あるいは結果的でもいいんです、できちゃった、育ててみよう、こういうふうになっているかというと、やはりちょっととすごく思います。その結果が一・二五だと思います。

 そして、今、その子供たちを診る小児科医の、数の不足ではなくて、臨床現場からの、何といいますか、立ち去り型サボタージュというんですが、いなくなっちゃうということが相次いでいます。どうしてかというと、本来は、数が少なくなったはずなのだから、小児科医の仕事は楽になっていいはずなのに、受診時間は夕方から深夜、本当の真夜中、三時、四時、うし三つ時にがあっと寄せ集められて、果たしてこの子供さんと親御さんの時間はどんな時間なんだろう毎日日にち、と思うことしきりでございます。

 一方では、社会的に見れば、この数日、世上を騒がせております、ある若いお母さんが御近所の子供さんを殺してしまったかもしれない事件、これとて本当に、正直言うと、数十年前には、私が小児科医になりたてのころには想像もできなかった。どこかがひずんでいるし、ゆがんでいるし、そして願わくば、この本日の雇用の均等法の改正、二十年目、改正がそうしたことに何がしかのパワーを与えてほしいと願うものでありますが、果たしてこのままではそうなれるのかどうかということを懸念するわけです。

 特に、冒頭の参考人である川本さんにお伺いしたいのですが、この間、我が国においては、一九七〇年代は、女性の労働力率は、例えばアメリカやノルウェーよりも高いものでございました。現在では、アメリカ、ノルウェーは、まあアメリカを上げるとまた問題になりますので、ノルウェーとかにいたしましょう、労働力率も上がり、出生率も上がったという経緯をとってございます。

 簡単に言えば、昔は働いていると子供はなかなか持てなかったのが、働くことと子供を持つことがちゃんと両立し得るんだということでございました。でも、日本の場合は、労働力率の回復も、それは多少は回復といいますか上昇もなってございますが、しかし、その中で出生率は下がってきております。労働力率でも、平均すればまだ六割にも行かないんだと思います。

 こうした実態があるということは、すなわち、働く場における、やはり女性、そして近年では、男性の働くということと生活ということの両立がなかなか困難な働き方をしているんだという実態であると思いますが、このことに対して、最も大きな使用者側であります日本経団連の皆さんからごらんになって、我が国の働き方、このままで将来大丈夫だろうか、この一点を冒頭お願いいたします。

川本参考人 ただいま、働き方、仕事と家庭という関係の御質問だったかと思います。

 今、先生の方からは、かなり少子化を前提としたお話があったかと思います。実は私ども、私のセクションではございませんけれども、この少子化の問題についても検討を続けておるところでございます。

 この少子化の問題、働き方の問題もございますし、実はそれだけでなくて、多分要因は多岐にわたっておって、今その多岐にわたる項目を実際どこまでやれるんだろうか、あるいは、今後の日本における労働力人口というのはどの程度必要なんだろうか、生産性はどうなんだろうか、非常にこれは大変な範囲の問題でございまして、現在、私どもの中の担当部署で鋭意これは検討をしているということをまず申し上げておきたいと思います。

 また、今、仕事と家庭ということでございました。この仕事と家庭の両立という、そのものの考え方につきましては、重要だなというふうには思ってございます。

 ただ、先ほども申し上げましたとおり、だからといって画一的な基準でやれるかといいますと、それは大変難しいのであろうと思っております。非常に個々人の価値観も多様化しておりますし、そういう中を受けながら、どういうふうにニーズにこたえていくのか。働く方のニーズだけにこたえるというのも、またこれは難しい部分がございますので、企業としても、そういう仕組みをどうやってつくっていけるのか、こういう企業のニーズと働く側のニーズ、どういうふうにマッチングしながらやっていくかというところで、今非常に各企業においても御検討されているところが多いのではないかなと思っております。

 私どもといたしましては、報告書等を通じて、こういう仕事と家庭の両立あるいは少子化対策として、産み、そして育てていく、いかに社会なり企業の環境をつくっていくかということの必要性は訴えてきているところでございます。

 以上でございます。

阿部(知)委員 私はもちろん少子化の観点からお伺いいたしましたが、社会が健全であるためにも、私は、もう少し企業に、社会的責任と言われる部分と、それから多様化、ダイバーシティーという言葉で昨今企業の皆さんはおっしゃいますが、その中身を具体化していただきたいと思うのです。

 日本の企業は、社会的責任ということについて言えばまだまだ、女性たちの働くことと子育ての両立、あるいは男性方もそうですが、しかし、これが女性に限られて非常に強く出てくるというところには、もちろん、一日の生活時間の調査、この数日、またこれも新聞に出ておりますが、男性、女性を比べれば、圧倒的に女性の方が家事労働も担い、これは働いている女性でもしかりであります。男性方は大体、一日平均二十数分の家事労働、妻が共稼ぎの場合でも。そういう中で現実に暮らしておられるわけですから、やはり本当にこの我が日本の社会が健全で、そして豊かであるためにも、ぜひぜひさらなる警鐘を鳴らしていただいて、私は取り組んでいただきたいと思うんです。

 そういう中で、きょう私は、やはり一番衝撃的というか、私の心に強く響いた発言は、実は中野さんがお話しになったことでありました。すべての差別は、これは差別される側にとって非常に強く認識されますが、差別している側は、それが何かよくわからない。それで、どんどんどんどん見えない差別にすりかわっていくと。

 そもそも、男女雇用均等法を最初につくった二十年前の時点から、この雇用均等法が人権ということとどう密接に結びついた概念であり法の体系であったかということと、それから、今般とりわけ労働が多様化した中で、非常に人権ということを保障されず働いている多くの皆さんがおられるわけで、この時代背景を踏まえてのこの均等法二十年の改正はいかにあるべきか、核心点について、再度お願いいたします。

中野参考人 均等法は努力義務規定から始まったわけですけれども、差別というものは、人間の尊厳、人格に対する最大の犯罪でありまして、これをなくすということは、人類普遍のテーマでありました。

 二十年前に私が本当に御指導いただきました総評の山野婦人局長が、小さく産んで大きく育てようというふうに均等法を発足させたわけですけれども、このときに女性たちが願ったものというのは一体何だったのかということを、もう一度この審議のところで思い起こしていただきたいと思うわけです。

 当時から女性たちはセクシュアルハラスメントを受け続けてきました。低い仕事に塩漬けをされて、その結果として低い賃金しか与えられず、そして、一個の自立した人間として生活を営むということが本当にできないほどの低賃金というものが女性たちを襲っていました。本当に、この奴隷的な労働からいかにして解放されるのかということが、均等法を生み出し、そして女性差別撤廃条約を批准させていったエネルギーであったと思います。

 こういった願いというものは、今女性たちの願いとしてはもっと大きくなっているということ、見えない差別の前に立ちすくむということが、声として差別を告発することを困難にしているということはあっても、この差別に対して、なくさなければならないという思いはさらに当時よりも強くなってきているということを、ぜひ念頭に置いていただきたいというふうに思います。

 一人一人が大事にされない、これはもう差別の基本だと思います。大事にされないということは、次代を生み出す次の世代を自分たちで育てていこう、生み出していこうという意欲も奪ってまいります。そういう意味では、差別はなくさなければいけない。そのために効果的な措置はといえば、何といっても、間接差別の法理に基づいて、目に見えない差別を可視化していくという手法を制度の中に盛り込むことだ、これ以外にないというふうに思います。

阿部(知)委員 ヨーロッパ等々では、そうした間接差別の問題と、働き方の、非正規労働等々の問題をちょうど解決するための、一人の人格としての存在としての労働者の問題として取り上げているというふうに伺っておりますし、願わくば、我が委員会もそのようなものとして審議を深めていきたいと思っております。

 続いて、連合の参考人である龍井さんからお願いいたしますが、私がきょういただきました資料で、ああ、よくできているな、そうだなと思いましたのは、実は一九九七年に雇用機会均等法の改正がございまして、同時に、時代は働き方の多様化ということに向かって、実は均等とは逆方向に車を走らせておったと。十年近くたった今日、男性も女性もこれで走り続けて大丈夫かといえば、男性方は長時間労働で、うつ、ノイローゼ、自殺がふえる、女性たちはもうコマネズミのように働いても働いても働いても摩耗していくだけの中で、例えば出生率を上げよと言われたって、もう頑張れないという状態が来ていると思います。

 そこで、それこそワークライフバランスのお話、繰り返し各委員もあったと思います。これは八五年当初は法案の中にあり、すっと消えてしまった。やはりこの時点で明文化して、さらに強く組み込むべきだという御意見と伺いましたが、もう一度お願いします。

龍井参考人 先ほど、働き方の多様化という表現がありました。私は、別の言い方をすると、多様化はしていないんじゃないか、つまり、ステレオタイプな基準は全然変わっていないということをむしろ強調したいわけです。

 八五年当時の話が出ましたけれども、当時の多くの女性たちは、二十年前、その法制定のもっと前から、つくる運動のときから、男性並みの平等じゃないよねというのがもう一つのスローガンだったわけですよね。

 おっしゃったように、ふたをあけたら、結局そのスタンダードが変わらないで、そのスタンダードというのは男性正社員基準ですから、そのちょっと前でいうと、専業主婦的な、つまりケアをする人が、専業主婦がいるから専業労働者がいるという、ほぼそのユニットで来たわけですよね。そこに女性たちが合わせざるを得なくなってしまう、したがって二極化している。ですから、実はその基準そのものの揺らぎというのが、頑として、ダイバーシティーと言われていてもモデルが変わっていない。

 だから、それが、もういいかげんにしてよというのは、先ほどの例を出せば、例えば、では、男性の管理職の中でちゃんとそれが、育児も含めて、介護も含めて、両立できている人がどのぐらいいるか。男性の管理職割合じゃなくて、男性管理職の中でそういう人たちが。

 実は、日本経団連の今回の経労委報告の中で非常に注目をしていますのは、ワークライフバランスとは単なる育児支援ではなくて、すべての人を対象にということを明記されています。ここはとても大事な視点だと思っていますので、だとしたら、そういうところがまず変われるかどうか、そういうことを後押しできる、あるいはフォローできるような均等法なのかということだと思っております。

阿部(知)委員 昔、第二の性という言葉がありましたが、この雇用均等法ででき上がったものは、もう一人の男性型女性をつくってきたのではないかという御指摘だったと思います。

 私も、実際に目の前にあらわれる子供たちの親御さんを見ていると、本当にそんな気がしてならないわけです。そして、逆に、もっと人間的に生きたいという思いも皆さん絶対に強くなっているし、逆に、少子化の現状も、若い人たちが前の世代を見ていて、これじゃちょっとねというところもあると思いますので、さらに労働団体としていろいろ、これからはホワイトカラーエグゼンプションとかいって、またまた長時間になる。私が町中で出会う若い男の子たちが、若いといっても三十代の男性が最も気にしている改悪でございます。これでもっと、残業もなくなり、労働時間がこんなになったらやれないよと、本当に声をかけてくれる男性が多くなった昨今ですので、ぜひ連合の皆さんも、さらに鋭意取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、酒井参考人にお願いいたします。

 きょういただきました資料を見ると、唖然、歴然、びっくり、本当にこんなふうに、コース別管理という言葉なのか、これがどうかわかりませんが、賃金から働き方まで、寸断され、分断され、なかなか均等たらざる現実というのがあると思います。

 二〇〇〇年段階から、既にこの間接差別のことも含めて熱心に運動してこられて、また、参議院でもいろいろな働き方をされて、衆議院に移ってきたわけです。この段階で最も強調しておきたいこと、最後に一言お願いいたします。

酒井参考人 やはり、特に私は、ずっと非正規労働者、特にパート労働者、パートの女性たちの処遇をどうやって均等待遇にしていけるのかという問題に非常に関心を持ってきましたけれども、そういう意味では、今、パートの女性たちは、今ここでこういう均等法の審議がされているということについて、実はほとんど知らないと思うんですね。

 ここに例えば傍聴に来ておられる方、あるいはずっと均等法について関心を持ってこられた方というのは、やはり労働組合に属している方、それから正社員として働いてこられた方が多くて、恐らく、パート、女性は七百万と言われますけれども、そういう方々は、自分の働き方がここで審議をされているなんということは全く夢にも思っていないと思います。それぐらい均等法というのはパートの女性にとって遠い法律だったんですね。

 今、私は、ここでもう一度この均等法の考え方、基本理念も含めて議論をいただいて、そして、この均等法は決して正社員の女性だけのものじゃないよ、パートで働いていても、派遣で働いていても、契約社員であっても、どんな働き方をしていても、女性にとって自分の働き方を変えていく、差別をなくしていく、そういう法律なんだよということを、もう一度やはりここで、パートの人たちが本当に絶望をしないで、本当にこの均等法で救われると思えるような、そういう法律に変えていっていただきたい。そのためには、やはり間接差別。

 私たちは、実は、この前の均等法が改正されるときに、セクシュアルハラスメントという言葉が均等法の中に入りました。そこで初めて、ああ、そうか、今まで私たちが不愉快な思いをしてきた、これが実はセクシュアルハラスメントというはっきりした名前があって、それによって私たちは権利を侵害されてきたということを、目からうろこが落ちるような思いで感じたわけですね。

 そういう意味では、今回この間接差別が入ることによって、そうか、今まで、パートだからしようがない、パートだから安くてしようがない、パートだから首切られて当たり前と思っていたけれども、これははっきりした間接差別だということで、パート女性の中にとても自信が芽生えてくると思うんですね。

 そういう意味では、限定列挙ではなくて、形を変えてあらわれる差別を間接差別というふうに命名することによって、これまで差別されてきた女性たちが本当にもう一度自信を取り戻すことができる、そういう法律にしていただきたいと思います。

阿部(知)委員 貴重な御意見をありがとうございます。

 田島参考人と伊東参考人には、御自身の経験も踏まえて、また、いろいろな仕事の取り組みも聞かせていただきました。本日、質問時間がなく、伺うことができませんでしたが、心からお礼申し上げます。ありがとうございます。

岸田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼申し上げます。(拍手)

 この際、休憩いたします。

    午後零時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十九分開議

岸田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、参議院送付、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案及びこれに対する小宮山洋子君外四名提出の修正案並びに小宮山洋子君外五名提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長青木豊君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長鳥生隆君、雇用均等・児童家庭局長北井久美子君、年金局長渡辺芳樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岸田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岸田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治でございます。

 本日より、男女雇用機会均等法の質疑が始まるということで、また、それに当たりまして、午前中は参考人の方々に御出席をいただきまして、さまざまな立場からさまざまな御意見をお聞かせいただいたこと、大変有意義な機会であったなというふうに思っております。その参考人の方々の御意見も踏まえた上で質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今回のこの均等法の改正でありますけれども、均等法施行後二十年たって、大変重要な改正だというふうに思っております。と申しますのも、この二十年の間、確かに均等法の施行によりまして女性の雇用環境というものは整備が進みつつあったのではないかな、その功績は大きかったというふうに思っております。しかし、他方で、まだまだ不十分な点もある。そして、その功績も穏やかな進捗だということで、これから引き続き努めていかなければいけないというふうに思っております。

 例えば、データを上げさせていただきますと、女性の労働力率というものも、二十年前、五五%ぐらいだったものが、現在六〇%ちょっとということで、五%程度上昇しているということであります。これも多いか少ないか、これは考え方だと思いますけれども、まだまだ欧米に比べておくれているというような現状もあります。

 そしてまた、私が思いますのは、とにかく今いろいろと格差問題でありますとか、あるいは非正規雇用の増大といったようなことが社会問題というふうに問われております。そうした中で、女性を含む、例えば若者たちあるいは高齢者、障害者といったような方々、働きたいのに働けない、そういう方々もいらっしゃるわけでありますから、そういうような重要な我が国の労働者である方々にその実力をしっかり発揮していただこう、そのための環境整備が必要かというふうに思っております。

 さらに申し上げれば、ようやく日本経済の景気回復の兆しが見えてきたということが言われているわけでありますけれども、景気が悪いと、使用者としても労働者の環境について配慮したくてもなかなか難しいといった現実的な側面もあります。しかし、景気が回復するということは、ここで千載一遇のチャンスがやってきた、あわせて、これからやはり労働者の環境改善にも意を配っていただかなければいけない。そういう意味で、非常に重要なタイミングの、重要な改正だというふうに私は認識をいたしております。

 この質疑の冒頭に当たりまして、中野副大臣から、この均等法がこの二十年間及ぼしてきたその効果について、あるいはまた、現状の女性の雇用環境についての御認識というものを伺わせていただきたいと思います。

中野副大臣 井上議員の御質問にお答えしたいと思いますが、御承知のように、昭和六十年の均等法の制定以来二十年、そういう中で、男女の雇用機会の均等についての考え方は社会に広く浸透して、企業の雇用管理の見直しもある程度進展したと私どもは認識いたしております。

 今、労働力率について御指摘がございましたけれども、そういう意味で、実施面におきましても、女性の雇用者数の増加、これは、例えば六十年から平成十七年までの間を見ますと、約千五百四十八万が二千二百二十九万とふえておりますし、また、女性の平均勤続年数も伸びておりますし、女性の職域の拡大とか、管理職に占める女性の割合の上昇というものも見られているというところは事実だと思っております。

 しかし、現状認識といたしまして、近年の女性差別の状況を見ますると、女性に対する差別という事案が、複雑化というんでしょうか、前は女性であるからということだけでもって差別があからさまにあったということがあったわけでございますし、そういう点がございました。特に妊娠とか出産を理由とした解雇という問題がございました。しかし、それが、退職の勧奨とかパートタイムへの身分の変更だとか、いわゆる雇いどめといった不利益な取り扱い事案というものが近年非常に増加している、これも私どもは厳しく認識をしておるわけでございます。

 こういう状況でございますので、今回のこの改正法案では、こういう現状認識の中におきまして、特に女性に対する、出産とか妊娠を理由として、今までは解雇については禁止されておりましたけれども、今般、退職勧奨とかパートタイムへの身分変更とか雇いどめとか、そういう問題についても禁止するということを含めた前向きな検討を御提案しているわけでございます。

井上(信)委員 副大臣、ありがとうございました。

 女性の雇用の増大に及ぼす影響という点をちょっとお聞きしたかったんですけれども、もちろん、この法案の一番大きなポイントは女性差別の撤廃あるいはその軽減ということでありますから、そういう意味では、これは当然、今回の改正によって大きなよい効果を出していただきたいというふうに思っております。

 そしてまた、今回のこの法案の中身でありますけれども、いろいろな観点、いろいろな議論がありました。しかし、そうした中で、やはり最も大きな議論になったのが間接差別の話だというふうに思っております。午前中の参考人の方々の質疑の中でも、間接差別にかかわる論点が非常に多かったというふうに思っております。

 そして、私が思いますのは、まず労働政策あるいは労働法制というものを考えるときに、当然のことながら、労働者側と使用者側、なかなか意見が一致しない、それは立場がありますから、しかし、そういう中で、両者の異なった意見をなるべくすり合わせをしてコンセンサスを得ていく、それが大切だというふうに思っております。労使が一定の満足を得た上でしっかりとそういった法制をつくり上げていく、そしてそれを施行し、実践をしていくということが、これは企業にかかわるすべての方にとって、ひいては日本経済、地域経済のためにも資すると思っておりますから、この労使間のコンセンサスというものは非常に重要だというふうに思っております。

 そうした中で、午前中の参考人の御意見を伺っておりますと、必ずしも労使がまだコンセンサスを得ていないのかな、意見が一致していないのかなというような印象を受けたのは事実であります。

 しかし、そうした中で、両方の観点を踏まえた上で、いわば折衷案といいますか、三つの項目を限定列挙という形で決めたということ、これはこれで、私は一定の進展だというふうに思っております。今回のこの均等法の中に間接差別という概念を導入して、そういう意味では、少なくともそういうことはしてはいけないんだということを広く知らしめられるということ、これは一歩前進だというふうに私は評価をいたしておりますけれども、この間接差別のことに関しまして、政府側の御見解を伺いたいと思います。

北井政府参考人 間接差別についての今回の改正についての御説明でございます。

 間接差別は、性中立的な要件であれば、おおよそどのような要件でも俎上にのり得る広がりのある概念でありますことから、間接差別を均等法上違法とするに際しましては、対象となる範囲を明確にする必要があると考えたわけでございます。

 間接差別についての判例などが蓄積されておる国におきましては、対象を限定しない方式をとったとしても判例等によって対象となる範囲が明らかとなっておりますので、不明確となるおそれはないと思われますけれども、我が国におきましてはそのような状況にはございません。

 こうした中で、間接差別の概念を法律上導入していくということに当たりまして、改正法案を考えましたときに、この間接差別の対象となる措置を厚生労働省令で規定することとし、必要に応じて対象となる措置の見直しができるような法的仕組みとしたものでございます。

 こうした方式を採用することによりまして、事業主にとりましては予測可能性が高まって問題事案の速やかな是正が図られやすくなりますし、また、労働者にとりましても、個々の事案において、一方の性との比較において格差があるといったことを証明する必要はなくなって、負担が縮減されるというメリットも考えられるところであると考えております。

井上(信)委員 そういう意味では、おっしゃるとおり、今回の間接差別に関しまして、私は一定の前進があったというふうに思っております。

 そうした中で、参議院の審議において、附則が修正されあるいはまた附帯決議ということで、これからしっかり検討をしていくということになっておりますから、これからの社会情勢、あるいは今回の改正の効果といったものを見据えながら、引き続き検討をして、そしてまた、それが労使関係にもいい効果を及ぼすように引き続きの努力をお願いしたいというふうに思います。

 さて、この労使関係でありますけれども、確かに、今回のこの均等法に盛り込まれておりますように、女性に対する差別を撤廃する、これはむしろ当たり前のことであって、こういったことに反対するような人は私はいないというふうに思います。ですから、そういう理念はすばらしいと思いますし、これを実践していかなければいけない。

 しかし、私ごとで済みませんが、私は地元が東京の田舎の方でありまして、そういう意味では中小零細企業が非常に多いわけであります。そうした中で、特に零細企業の経営者の方々、こういう地域に根づいた企業というのは、むしろ家族経営ということを大体モットーとしておりまして、従業員数名であっても、とにかく家族づき合いをしながら、従業員の生活の安全というものの確保、そういったことに非常に気を配りながら、しかし、他方で、厳しい経済情勢でありますから何とかして企業をやりくりしながらやっている、これが現実なんですね。

 ですから、そういう意味では、この均等法の理念あるいは政策というもの、これは確かにすばらしいことですし、ある程度余力のある大企業には、これはもう当然のことながら法律を遵守して、そしてそれを実践してもらわなければいけないというふうに思っております。

 しかし、他方で、その理念に大きな共感をしながら、そしてまた、女性の労働者に対しても多大な理解を持ちながらも、しかし、どうしても自分の零細企業の経営面を考えてしまうと、なかなか法の理念どおりに実際に企業を運営していくというのは難しいな、どうすればいいんだろう、そういうような声も強く聞かれるところであります。

 ですから、私が思いますに、これはもう労働法制というものは、あまねく業種、あるいはその規模もそれぞればらばらです。そして、そうした中で、そこに一定の網をかけていくわけですから、そういう意味で、零細企業に対するある程度の配慮といいますか、そういったことについても御配慮をいただきたいというふうに私は思っております。

 そういう意味では、例えば、出産やあるいは育児に対する休業などについても、これはもちろんいろいろと認めてやりたいけれども、実際には、社員数人の企業で、一人の女性が何カ月も一年も休んでしまわれると本当に困るな、どうしよう、そういう実態があるわけであります。

 そうしたときに、今政府の方でも、例えば休業中の給与に関して一定割合について補助を出したり、あるいはまた、その代替要員の確保、それについての支援もやられているというふうに聞いておりますけれども、こういったことをぜひ拡大していただきたいと思います。

 この特に零細企業に関しての均等法のあり方というものについて、政府の御見解を教えていただきたいと思います。

北井政府参考人 今御指摘のように、均等法も含めた労働法制は、企業の規模を問わずすべての規模、業種の企業に適用されるわけでございます。

 したがいまして、今回の改正法案の検討に当たりましても、中小企業の代表も御参加いただいております労働政策審議会において十分検討いただきまして、中小企業の置かれた実情、実態も踏まえながら、内容を精査して内容を確定してきたところでございます。

 また、間接差別の禁止を含む性差別禁止の規定や、妊娠、出産などを理由とする不利益取り扱いを禁止する規定についても、禁止の対象となる事例を具体的に明らかにするために指針を定めることといたしておりまして、こうした指針によって、中小企業においても十分法を遵守することが容易になるような工夫も行っていきたい、十分周知にも努めていきたいというふうに考えております。

 そしてまた、このような配慮を行っても、特に中小企業においては、妊娠、出産あるいは育児休業に伴う代替要員の困難性などということも指摘されるわけでございます。こうしたことから、国としても、育児休業の代替要員確保に関して、育児休業代替要員確保助成金による支援を行いますとともに、特に休業中の女性労働者がなさっていた業務を事業所内のほかの労働者がどうやって分担し、あるいは代替要員として新たな雇い入れを行うというようなことについてのさまざまな工夫の仕方についても、今後とも情報提供に努めていきたいというふうに思っております。

井上(信)委員 これはぜひお願いしたいというふうに思います。

 そういう意味では、均等法、なるべく女性の労働者の権利を広く認めていくという姿勢は大切ですけれども、やはりそればかりですと、逆に、そういったことによって、零細企業を中心として法の理念に沿わないような行動をとってしまう、そんなおそれもあります。ですから、現実的なところから一歩ずつというような政府の姿勢、これは私は評価すべきだというふうに思っておりますので、引き続き、この点についてもお願いをしたいというふうに思っております。

 さて、均等法といえば、とにかく男女の労働者の差別の問題、均等待遇の問題でありますけれども、今非常に大きな問題となっているものが正規社員と非正規社員との格差の問題。これは、女性に非正規社員が多いということもあって、この均等法に連なる問題だというふうに私は思っております。そうした中で、本当に今非常に大きな問題、社会問題として議論がされているところであります。

 御承知のように、つい最近も、官房長官が議長を務める再チャレンジ推進会議、あるいはまた、いわゆる社会保障の在り方に関する懇談会、在り方懇の中でも、こういったようなテーマというものが取り上げられて、そしてまた、こういうパート労働者と正規労働者との均衡処遇の推進ということが政府の方からも唱えられているわけでありまして、これは本当に非常に大事なことだというふうに思いますけれども、他方で、先ほどから申し上げているように、労働者の権利を拡大していく、守っていくということは、ともすれば、使用者側の論理、経営者側の負担になっていく、そういった側面もあります。

 これも非常に難しい問題だと思いますけれども、この正規労働者と非正規労働者との均衡処遇の問題について御意見をお聞かせいただきたいと思います。

中野副大臣 今委員が、正規、非正規の問題を含めまして、特に中小企業、零細企業の経営者の問題も触れていただきましたけれども、そういう現実の中におきまして、働き方にかかわらず、だれもが安心して働くことができる環境を整備していくということは重要な課題でございますけれども、パート労働者の処遇について、その働きに見合ったことができているかというと、必ずしもそうではないという厳しい認識を私どもは持っておるわけでございます。

 今の安倍官房長官を中心として、内閣におきまして、再チャレンジ推進会議の中間取りまとめにおきまして、パート労働者と正規労働者の均衡ある処遇に向けた法的な整備というものが必要だという提起がなされておりますことは、今委員がおっしゃるとおりでございます。

 私どもといたしましては、使用者である企業側に対しまして、今おっしゃった均衡処遇という観点から、労働者に公正に処遇をするよう粘り強く働きかけをし、いろいろとお願いをし、また啓蒙をしていく以外にないだろうというふうに覚悟をしておるわけでございます。今後のパート労働対策の一層の強化につきましては、例えば法的整備とか、今局長から、例えば中小企業とか零細企業の皆さんに対してのできる限りの政府からの支援、そういうものもございましたけれども、来年度につきましてもそういう点で十分な検討をしてまいりたいと考えておるわけでございます。

 付言いたしますと、私も実は中小企業の経営者でございまして、そういう点で、今委員がおっしゃったような立場におる中小企業がいっぱいおるわけでございますけれども、しかしそれは、それだけでもって許される問題ではないわけでございますから、やはり中小企業の皆さんにも、そういう現実の中で、経営の効率化とかそういうものを図りながら、何としてもこの均衡処遇については一歩一歩前進をさせていかなきゃいけない。しかし、それが現実に、ただ法律をつくればできるという問題ではありませんので、これについてはこれからも努力することをお誓いしたいと思います。

井上(信)委員 副大臣からの力強い御決意をいただきまして、大変ありがとうございました。

 これは参議院の審議における附帯決議の七項にも盛り込まれているということで、やはりしっかりやっていただきたいと思います。もちろん、労使のコンセンサスが前提で、しかし、その上で、やはり何としてもこの処遇改善、均衡処遇の問題、これは本当に大変な大きな問題になっていますから、お願いしたいと思います。

 最後に、最近、この労働政策において少し全国各地でいろいろな問題が起きているということを伺っておりまして、このことについて伺いたいというふうに思っております。

 今、審議会の中でも、労働契約法制あるいは労働時間法制に関してさまざまな検討を進められている、そしてまた、近いうちに法改正を行いたいというようなことも伺っております。そうした中で、今、全国的にパート労働者の労働時間の取り扱いについて問題が起きているというようなことを伺っております。

 地域の労働基準監督署からパート労働者を多く使っている事業所に対して、労働時間、これの取り扱いが不適切であるということで指摘を受けて、そしてそのことによって、さかのぼってそれまでの残業代といいますか時間オーバーの部分を負担している、これが企業側にとっては大変な負担になっている、そんな話も伺っております。

 私が思いますのは、働いた分の賃金をもらうというのは当たり前のことであって、そういう意味では当たり前の行政指導なんだと思います。しかし他方で、とにかく大規模な小売店あるいは流通といったところは多くの非正規労働者を抱えて、その残業代が一人一分でも本当に大変な負担になるということで非常に困っております。それは、今まではどうやらそういったことを余り言ってこなかったという話であります。それが、何か突然、とにかく一分単位で非常に厳しい運用をされているということあります。

 ですから、これは法の理念あるいは法の規定どおりにやっていくというのは当たり前のことではありますけれども、そのように扱い方が変わってしまう、あるいは地域差もあるというようなことも聞いております、そういうことでありますと、現場が非常に混乱をしてしまう。ですから、そういったことに対して政府としてしっかりとした統一見解を示し、そして指導をしていくことが必要だというふうに私は思っております。

 私がこの労働時間の取り扱いについて伺ったところ、一カ月単位でいうと、三十分を目安として、大体それ未満は切り捨て、以上は切り上げとする、こういったような指導をされている。しかし、何だか今までは一日単位で三十分を目安とした切り捨て、切り上げが認められていたというような話もございます。

 それからあと、現場で非常に困っておりますのは、労働時間とは何なのかというその定義の問題にかかわるのかもしれません。終業した後で着がえをしたりあるいはトイレに行ったり、そういったところまで残業代を払う必要があるのだろうか、そして、それについてもそれぞれの監督署で何か別々の指導をしているといったような話もあります。非常に現場が混乱をしております。

 ですから、これについて御見解をお伺いしたいと思います。

青木政府参考人 労働時間についての御指摘でございました。

 労働時間は、これは一般的に、使用者の指揮監督のもとにある時間のことをいうということでありまして、必ずしも現実に精神、肉体を活動させている時間であるということを条件としているものではございません。

 また、時間外労働の端数処理については、まさにお触れになりましたように、一カ月における時間外労働、休日労働、深夜業それぞれの時間数の合計に一時間未満の端数がある場合に、三十分未満の端数を切り捨て、あるいはそれ以上を一時間に切り上げることは、常に労働者の不利となるものでもなく、事務簡便を目的としたということで、労働基準法違反としては取り扱わないということで、昭和六十三年以来、通達を示してそういった取り扱いをしてきているところでございます。

 労働時間については、実態を把握してきちんと定められた取り扱いをするということが当然でありますし、また、お話の中にもありましたような地域によって差が生ずるというようなことは、私どもとしては、全国斉一的に労働者の労働条件の最低基準を定めているという労働基準関係法令からして適当ではないわけでありますので、一律に斉一的にこの事務を進めているところでございますが、なお引き続き、そういったいろいろな取り扱い、あるいは斉一的な取り扱いにつきましても、我々の第一線を含めまして、関係事業主あるいは労働者の皆さん方にも十分わかっていただくように、十分意を尽くして行政を進めていきたいというふうに思っております。

井上(信)委員 この労働時間の取り扱いの問題に関しましては、本当に今おっしゃったような政府の、中央の方針というものを末端まで行き届くようによく指導をしていただきたいというふうに思っております。

 また、あわせて、今、労働時間法制がまさに検討されているわけでありますから、先ほど申し上げた労働時間の定義などについても、きめ細かくそういった指針をお示しいただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 私が労働政策あるいは労働法制というものを考えましたときに、先ほども申し上げましたけれども、とにかく、あまねく広いんですね、やはり労使関係というものは。さまざまな地域、あるいは企業の形態、業種、規模、そういったものをすべて網羅した中で一定の法制をつくっているわけでありますから、これは当然のことながら、こういった法案審議、法律というものも大切です。そして、これは当たり前のことですけれども、それをどのように運用していくか、施行していくか。あるいはそれから、政省令を初めとした細かい基準というのが非常に重要なんですね。

 ですから、そういう意味では、この法案が成立したとして、しかしその後、まさにそれからがスタートで勝負であるというようなお気持ちで、これからの適正な運用、施行ということに心を砕いていただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

岸田委員長 次に、林潤君。

林(潤)委員 自由民主党の林潤であります。

 本日は、男女雇用機会均等法改正案について質問をさせていただきます。

 これまで、私は、昨年の特別国会から今通常国会を通じまして、この厚生労働委員会において、障害者の自立支援法案や医療制度改革関連法案など、こうした論点が分かれるような、そして厳しい内容と思えるような法案で質問させていただきました。こういう質問を通しまして、法案の意義づけをよりはっきりさせ、賛成、反対の立場にかかわらず、双方がより安心できるように問題点を浮き彫りにして、答弁を通じてその解消に向けて努力することが大切だと思うようになりました。

 本日は、六人の参考人の方々から貴重な御意見も賜りまして、こうしたことも踏まえまして、限られた時間でありますが、できる限り焦点を絞り、安全で安心な雇用政策につなげたいと思います。

 こうした中、男女雇用機会均等法は、ことしで施行二十年を迎えます。募集や昇進について、当初は男女差別の禁止が努力義務で盛り込まれ、さらなる九年前の改正で、男女差別が禁止、セクハラ配慮の義務がなされました。いずれも男女雇用について国民的な大きな意識改革につながったことは間違いない事実であります。

 今回の改正案は、性差別禁止の範囲拡大、そしてセクハラ対策が強化されたほか、ポジティブアクション推進などによりまして、全体としては、働きやすい、そして子供を育てやすい環境に向けて前進したと評価をでき得るものと考えます。

 特に、見えにくい差別とされてきました間接差別禁止、これについても初めて規定することとなりました。この点についても、前改正時に国会で附帯決議がなされ、国連の委員会からも法制化の勧告を受けており、改正は時代の要請であります。

 しかしながら、間接差別の基準というものをめぐっては、労使間で大きな意見の食い違いを生じさせたまま、それぞれの主張をつけまして法案としたことで、両者の意見の中間をとって妥協しているのではないか、こういう専門家の指摘もあり、この際、この問題点をはっきりとさせておくことが重要だと考えます。

 そこで、間接差別の禁止について、改正が必要な背景及び趣旨はどのようなものでしょうか。特に、従来の改正法のままで、実態上、女性労働者にどのような不利益が生じたのか、お聞かせください。

北井政府参考人 今御指摘がございましたように、間接差別の我が国への取り入れについては長年の課題となっておりまして、国内的には、平成九年の男女雇用機会均等法の改正にかかわります衆参両院の附帯決議におきまして、政府に対して、間接差別については何が差別的取り扱いであるかについて引き続き検討することという御指摘をいただいたわけでございます。

 また、国際的には、国連の女子差別撤廃委員会から日本政府に対しまして、直接及び間接差別を含む、女性に対する差別の定義が国内法に取り込まれることを勧告されているところでございます。

 そして、女性差別に関する実態面を見てみますと、従来、特に均等法制定前の女性差別は、男女別定年制であるとか女性の結婚退職制など、明らかな女性差別が多かったわけでございますが、男女雇用機会均等法制定以降は、例えば男性だけの求人といったようなことも当初ございましたが、徐々にそれも減ってまいりまして、明白な差別は減少してまいりました。

 反面、例えば、事業主によっては、女性を採用や登用しなくて済むように女性が満たしにくい要件を課すといったような差別事案が複雑化あるいは見えにくくなっているという、それへの対応が課題となっているところでございます。

 例えば、全国の労働局の雇用均等室が、コース別雇用管理を導入している企業につきまして報告徴収を行いましたところ、このコース別雇用管理を導入されている企業のうち、総合職について女性が事実上満たしにくい全国転勤を要件としているけれども、その必要性が十分検討されていないという企業が四割にも上ったところでございます。これは総合職に女性が採用されにくい要因となっていると考えております。

 こうした状況を踏まえまして、今般の改正法案におきましては、業務遂行上の必要、その他の合理的な理由がなければ、労働者の性別以外の事由を要件とする措置で、実質的に性別を理由とする差別につながるおそれがあるものとして厚生労働省令で列挙するものを講じてはならないという旨の規定を置くこととしたものでございます。

 今般のこうした改正法案が成立して施行されますれば、例えばこのコース別雇用管理制度におきましては、合理的な理由なく、全国転勤ができることを要件として募集、採用を行うことは禁止されるということになるものでございまして、問題が指摘されることの多いコース別雇用管理の運用面での是正が進むものと考えているところでございます。

林(潤)委員 先ほどのコース別雇用管理制度、この運用改善が進むということをおっしゃられましたけれども、これについて幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、この法が求める平等の概念というものなんですけれども、これは男性並みの労働を求めていくのか、それとも、労働団体等の指摘があるようなワークライフバランスに基づくものなのか、それについてお聞かせ願います。

北井政府参考人 男女雇用機会均等法は、男女において異なる、性別による異なる取り扱いをするというものを禁止している法律でございますから、どちらかの働き方に合わせるということを求める法律ではないわけでございます。

 しかしながら、厚生労働省として、いわゆる仕事と家庭生活との両立を可能とするための働き方の見直し、両立支援や、働き方の見直しの問題につきましては、大変重要な課題だと思っておりまして、その均等、つまり、性差別のない職場づくりということとそれから両立支援ということを車の両輪として、大きな政策課題として取り組んでいるところでございます。

林(潤)委員 この間接差別禁止の概念の導入については、企業サイドからは、概念がわかりにくく、濫用されるのではないかという懸念がある。こうした一方で、勤労者のサイドからは、対象を絞ると、そのケース以外が差別として扱われにくくなる。こうした双方の心配があるわけであります。

 対象に上げられた三つの要件のうち、募集、採用におけます身長、体重の要件、こうしたことはだれしもが理解できることだと思いますけれども、コース別雇用管理制度における総合職の全国転勤要件、これについては、運用次第によっては、解釈の違いから、現場に大きな混乱を生みかねないと考えております。特に、全国展開する大企業におきましては、こうした全国転勤を管理職昇進の原則条件とする、こういうシステムにより、これまで人材育成のシステムに役立ててまいりました。現実に、平成十七年に、コース区分の要件に転勤を要件としている企業は、千人以上の企業では九七・六%、五千人以上の企業では一〇〇%となっております。

 こうして法に盛り込んだことによりまして、法律を根拠にして転勤と採用、昇進に伴う労使間の訴訟が頻発しかねず、その場合は、企業が転勤の合理性についてその都度立証しなくてはなりません。

 こうした現状から見ましても、今回の間接差別の規定が、結果として、必要以上に企業の人材育成システムに干渉し、これまで形成されてきた各企業の人材育成システムを損なうことにならないかと危惧するものであります。この点についてお聞かせ願います。

北井政府参考人 間接差別につきましては、厚生労働省令で定める措置に該当すれば直ちに違法となるというものではございませんで、そのうち、業務の遂行上の必要性や雇用管理上の必要性がないといった合理的な理由がないものについて、違法となるというものでございます。

 この合理的な理由の具体的な内容については指針で示したいと考えておりますが、この指針を定めるに当たりましては、使用者の代表も入りました労働政策審議会において議論をされる予定になっております。

 こうしたことで労使の議論を十分尽くしていきたいと思っておりまして、そうした御指摘のようなことにはならないと考えておりますし、そのようなことにならないように配慮をしていきたいというふうに思っております。

林(潤)委員 関連いたしまして、この間接差別の規定で、コース別雇用管理制度における全国転勤要件そして昇進における全国転勤要件につきましては、職務と関連性があるかどうか、その合理性、正当性の基準は個々のケースで判断が難しいはずです。だからこそ、労使間で無用の濫用を避けるためにも、判断の参考となる事例をもっと明記し、国民的に周知する必要があると思います。

 例えば、全国転勤要件については、支社や支店が存在しないあるいはその計画がないにもかかわらず、総合職の採用基準に全国転勤が可能なことを掲げる、こうした事例が示されておりますが、これは当然でありまして、こうした極端な例を示すだけでは不十分だと考えます。

 全国展開する大企業において、地方勤務を経験したことがない管理職は、一部の人事、労務、会計あるいはそうした技術畑など、例外的なものでありましょう。例えば、入社十年以内の地方支社勤務を経て本社に戻すシステムは、特に文系、総合職の場合、特段の合理性、正当性を持たないものの、会社の人事システムの慣例として根づいているケースが多く、それでいて社員の経験やスキルアップに大きく貢献しているように感じます。

 しかし、今回の全国転勤要件は、事例があいまいなことで労使間がかえってぎくしゃくしてしまう、こうした事態も考えられ、全国展開する大企業は例外なく戸惑いがあると考えられます。

 そこで、一つでも二つでも結構ですから、全国転勤要件で合理性、正当性を認められないケースとはいかがなものなのか、転勤をめぐる会社と従業員との解釈の違いが今後の混乱を来させないためにも、具体的にはっきりとお答えくださいませ。

北井政府参考人 厚生労働省令で定める予定の三つの措置に関する合理性の有無の判断の考え方につきましては、この改正法案が成立した場合に、労働政策審議会における議論を経て、指針において具体的な例を示したいというふうに考えております。

 そういうことでございますので、現時点では確定的なことは申し上げられませんけれども、この指針の議論の際に参考となりますものは、一つは、やはり労働政策審議会の建議があると考えております。この建議におきましては、例えば、コース別雇用管理制度の総合職の全国転勤要件につきましては、支店、支社がない、あるいはその計画等もないにもかかわらず、総合職の採用基準に全国転勤が可能なことを掲げることは合理性がないと考えるとしているところでございます。

 これだけでは十分ではない、もっと具体的なものを示すようにという御指摘でございますが、なかなか、これ以上のところはまだ示したものはございませんので、十分これから議論を尽くしていきたいと思いますが、逆に、例えば、一般的に言って、全国展開のある大きな会社、全国に支社があるような会社においては、異なる地域の支社等における現場経験であるとか地域の特殊性の経験などが将来の幹部としての職務能力の育成確保に必要であるとか、あるいは人事ローテーション上転勤を行うことが必要であるなどの事情があると考えられるケースもあると思います。こうした場合は、合理性があると判断される場合が多くなるのではないかというふうに考えております。

林(潤)委員 時間がちょっと迫ってまいりましたけれども、これにまた関連しまして、私ごとになりますけれども、毎日新聞という新聞社に七年おりまして、地方勤務も経験をしてまいりました。初任地は札幌で、警察回りからスタートをし、記者としてスキルを積んでまいりました。全国紙の取材記者は、ほとんど例外なく入社数年のうちに地方勤務となります。それを経験することが記者の資質向上に役立つと考えられております。

 例えばゼネコンや都市銀行においても、同様に全国転勤が行われるのが通例でありまして、若いうちは地方で下積みを行い、営業所や支店で地域の実態を学んだ上で東京本社に戻り、管理職として働く、これらは人事システムとして定着をしていると思いますが、こうしたいろいろな事例が合理性がないとされて間接差別の禁止に抵触してしまうのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。

北井政府参考人 合理性の有無につきましては、この法案成立後に定める予定の指針において示すこととなりますので、現時点で確定的なことは申し上げかねますけれども、一般的に言えば、今御指摘のようなケースについては、多くが合理性があると判断されるのではないかというふうに考えております。

林(潤)委員 こうした日本的な雇用の慣行を前提といたしますと、私は、ほとんどの配転は合理性、こうしたものが認められるのではないかな、間接差別が成立することは少ないのではないかなと思いますが、いかがなものでしょうか。

北井政府参考人 間接差別は、業務上の必要性の観点あるいは雇用管理の必要性の観点から不合理な障壁を除去するというものでございますので、今の時点で、個々のケースで合理的な理由があるとされるものあるいはされないもの、どちらが多いかということは申し上げかねるわけでございますが、今のような全国展開をしている会社もあれば、逆に、ほとんど支店もなく転勤をした実績もないのに、念のためというようなことで全国転勤要件をつけるというようなケースについては、今度は逆に言えばまた合理性があるのかなというようなケースも出てまいりますので、今後、成立後、十分指針も定め、そして十分な周知を図っていきたいというふうに考えております。

林(潤)委員 今回の指針が定まっていないという状況の中で、まだまだ戸惑いがあります。こうした質問を通じて浮き彫りにしたかったわけなんですけれども、くれぐれもこうした指針におきまして、労使間に無用な摩擦が生じないように、最大限努力を払っていただきたいと思います。

 今回の法改正により、性差別をなくし、男女ともに出産、子育てがしやすい世の中づくりに向けて取り組んでいただきたいと思いますが、この間接差別の規定につきましては、先ほど、繰り返すようではありますが、混乱を来さないためにも、くれぐれも国民的な周知徹底をお願いいたしまして、本日の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岸田委員長 次に、川条志嘉君。

川条委員 自由民主党の川条志嘉でございます。

 ただいまお配りさせていただいた資料は、明治期から今日に至るまでの求人広告の歴史ですが、これを見ますと、女性の扱われ方、働き方、人権、そういったものの変遷が一目瞭然に見えてきます。今国会においても、男女共同参画は少子化対策に資するとの内閣府の答弁を何度もいただいております。このような今と比べれば、職場の花募集という求人広告が公然と新聞紙上に出ていた時代は本当に存在したのだろうかと隔世の感を覚えます。

 法制度の整備と社会の意識の変化は車の両輪です。この女性の働き方に関する問題は、先輩たちが生涯をかけて取り組むことによって、時代の扉を少しずつ押しあけてきた歴史があります。したがって、この問題は、これからも党派を超え、性差を超えて取り組んでいかなければならない大きな重要な問題です。

 女性の地位と意識が飛躍的に向上した時代がこれまで二度ありました。一度目は、婦人参政権が認められ、労働基準法の施行に合わせて労働省が発足し、婦人少年局が設置された終戦直後の時代です。これによって、女性の地位向上と社会進出が促進されました。そして二度目は、一九八五年に男女雇用機会均等法が制定されたことです。さらに、この後、育児休業法が整備されたことによって、雇用環境が整い、未婚女性の希望するライフコースにおいて、仕事と家庭の両立を望む人は、平成九年には昭和六十三年の一・五倍になっていることからもうかがい取れるように、女性の生涯設計の中に、キャリア形成と家庭の両立という新たな選択肢がふえました。

 このように、女性の生き方や均等法の成立に御尽力されました赤松良子先生、そして労働省初代婦人少年局長の山川菊栄女史初め先輩の皆様方に心からお礼を申し上げたいと思います。また、アンペイドワークという視点から本日の質問をさせていただきますが、このアンペイドワークという概念を御指導いただきました大阪府立女性総合センター館長であり大阪市大名誉教授であります竹中恵美子先生に心から感謝申し上げたいと思います。

 さて、女性の地位向上、性差別の撤廃が大きく進んだ時代は、政権与党が問題の本質に大きな理解を示し積極的に取り組んだ時代でもあります。二〇〇一年骨太の方針において、聖域なき構造改革の五番、生活維新プログラムに、働く女性に優しい社会の構築が位置づけられ、昨年十月の内閣改造におきましては、猪口邦子少子化・男女共同参画大臣が任命され、男女共同参画が少子化、人口減少対策に資するとの社会的な認識が大きく進歩しました。これは小泉改革の大きな成果なのです。特に、今回、多方面からの反対意見にもかかわらず、一九九四年来の国連女性差別撤廃委員会から勧告されておりました間接差別条項が雇用機会均等法の中に位置づけられたことは、画期的な成果です。

 二〇〇四年の、社会の指導的地位に女性が占める割合を示すジェンダー・エンパワーメント指数は七十八カ国中三十八位ですが、これから改革加速という課題を遂行していくためには、そのレベルからの上昇を目指す必要があり、また、すべての教育レベルにおける男女格差の解消を目指すミレニアム国連総会での合意事項を実現する必要があります。

 さて、質問です。確かに、男女雇用機会均等法が制定された時点にはなかった間接差別の規定が均等法に入ったことは、今回の改正の画期的な成果だと思われます。しかしながら、雇用機会均等政策研究会において示された七つの事例が省令で指定される三事項に限定された理由として、まだ間接差別という概念が周知徹底されていないという側面も否定できないと思います。

 先ほど述べたように、法制度の整備と社会の意識の変化は車の両輪なんですが、そのためには整えた制度の周知徹底を図る必要があります。これからどのように周知を図っていかれるのか、中野副大臣にお伺いしたいと思います。

中野副大臣 今川条委員から、男女の間接差別の規定の問題についての熱い思いを伺いましたけれども、本当に、今日までの多くの女性の皆さんの御努力の中で法律にこのことが入ったということは、おっしゃるとおりだと思っております。

 ですから、この法律というものは、内容を広く周知することが社会に浸透させる上でも今後さらに重要になってくることから、この改正法案が成立した場合には、速やかに事業主や労働者に対してこの趣旨や内容の周知に全力を挙げてまいりたい、このことはお誓いをしたいと思うわけでございます。

 特に、事業主の場合に、中小企業も含めまして、均等法についての趣旨や法律、省令、指針とか内容を十分理解してもらって実践していかなければ困る、これは当然でございますから、これに努力したいと思います。

 また、労働者には、特に不利益を受けた場合においては、都道府県に労働局がございます。その中に雇用均等室というのがございまして、そこにまず御相談をしていただく。きっとそのことが、労働者の皆さんにとって不利益をなくす第一歩のような気がいたしまして、そのことを特に労働者の皆さんにわかっていただくように努力をしたいと思っております。そのことが大切だと思います。

 そのためには、政府の公報とか、ホームページや、またパンフレットとかリーフレット、いろいろございますけれども、当然、経営者の団体としての日本商工会議所とか、それから商工会連合会とか、日本経団連とか、または中小企業団体中央会という、いわゆる使用者側といいましょうか、雇用する立場の人たちに対しましても、また連合を初めとした働く人たちの組織に対しましても、このことについて周知徹底をお願いしたい、また、我々も努力したいと考えております。

 また、地方公共団体、市町村とか県につきましても、いろいろな会合等についての講師の派遣とか、またいろいろな意味で御協力を願う、そういうことは当然でございまして、委員が今おっしゃった熱い思いというもの、間接差別ということがこれからなくなるように、そしてまた、そのことのために今後も全力で頑張りますことをまずお誓いをしたいと思います。

川条委員 ありがとうございます。

 さて、私のいただいた時間は十五分ですので、なかなか時間がなくなってまいりましたので、間接差別はさきのお二人の方がさんざん聞かれたので、最後のアンペイドワークについて取り上げさせていただきます。

 婦人は世界の人口の五〇%、公的労働の三分の一を占め、全労働時間の三分の二を占めているにもかかわらず、世界の所得の十分の一しか受け取っておらず、世界の生産の一%しか所有していない、これは第二回世界女性会議採択文書でもある国連女性の十年後半期プログラムの中の言葉です。

 家事、育児というアンペイドワークに従事する時間は、統計によって若干異なる部分はあるのですが、働く女性でも約五倍、専業主婦の場合は約十倍という結果が出ています。しかも、男性の家事の内訳に、お茶を入れるとか、新聞をポストにとりに行くとか、おふろのお湯を張る、つまり水道の蛇口をひねるだけというのも入れられていて、この仕事が家事と言うに値するかは疑問ですけれども。

 とりあえず、食事をつくる、子供の教育をする、子供の世話をするという仕事に対して、同じ仕事を家の外で行えば、調理師、教育者、保育士という名称で呼ばれて、きちんとした社会的評価が受けられ、賃金や社会保障といった相応の経済的評価を受けることができます。社会に出ることでつき合いの幅が広がって、専業主婦として一生懸命家の中で仕事をするのとは全く違った人生が開けてきます。

 現在は、アンペイドワークに対する評価はないに等しく、それどころか、男性は毎日働いて女性や子供を養ってやっているのだから、家事や育児といったアンペイドワークの評価など全く不必要、空気や水のように当たり前にあるものと認識している人も多いのです。

 けれども、儒教の考え方が根強く残っていた戦前までは、大家族制のもとで、主婦は家計を握り、子供の進路や結婚においても大きな権限を持っていました。言いかえると、家父長制度という形式でありつつも、アンペイドワークが感謝とか権力という形で無形に評価されていたわけです。しかし、現在は核家族が中心になって、家計は等分に負担して主婦に任せない家計もふえ、子供は子供の価値観を持つに至り、これでは専業主婦は自信が持てない。

 また、共働きの家庭では、妻は、外で男性と同じ仕事をした上に、家庭でさらにお金で評価されない仕事にも従事しなければならないというダブルバードンの状態になっています。けれども、人の労働の有する価値というのは、家の内と外で同じです。介護は介護保険制度が成立したことによって評価がなされましたが、そのほかの家事や育児についてはまだまだです。この晩婚化、未婚化で出生率も低下して人口が減少している時代に必要なのは、家事、育児といったアンペイドワークを社会全体として積極的に評価することです。

 特に、結婚で就業している女性が七割に減ってしまう、出産を機にその七割の女性のうちの七割がやめて、育児休業の恩恵を受けることができているのはもとのたった二割の女性にすぎないという内閣府の調査があります。これはまさにアンペイドワークの存在の大きさを示している数字です。

 この均等法でも妊娠、出産への対応は規定されていますが、男女ともに場所を問わず働いたことが公正に評価されるためにも、子育てを支える政策を遂行するためにも、雇用の個々の事例に対応するだけでは不十分で、アンペイドワークの算定などを含めて総合的な取り組みが必要と考えております。

 労働法制、社会保障を担って、働き方全般について担当するとともに、国民の暮らしを支える厚生労働省の、家事、育児と言われる、アンペイドワークと言われる、主に女性が家庭内で担当している労働の現状についての認識と、これからの社会を考えたときのその評価のあり方について見解をお伺いしたいと思います。

北井政府参考人 なかなかアンペイドワークについてのお答えは難しいところでございますが、厚生労働省といたしましては、特に雇用均等、児童行政を預かる者といたしましては、一つは、専業主婦の御家庭も含めてすべての家庭に支援が行き届くような子育て支援であるとか、あるいは、男女ともに育児などの生活も大切にしながら働くことのできる環境の整備というようなことが重要な課題であると認識をいたしております。

 こうしたような観点から、ファミリー・フレンドリー企業の一層の普及促進、あるいは地域の子育て支援等の総合的な対策を進めていきたいというふうに考えております。

川条委員 ありがとうございました。

 私は、もう時間も少なくなってまいりましたので、間接差別、七項目あったもののうち三項目に限定されたけれども、これからも広がる可能性があるのかどうか、そこについて簡潔にお答えいただければと思います。

北井政府参考人 今回の改正法案では、厚生労働省令で列挙する方式を御提案申し上げております。これによりまして、成立した後は厚生労働省令を定めていくことになりますが、当初の省令で定めるものは三つということを考えておりますが、その後、省令については見直すということもあり得るわけでございまして、ただ、いつまでに見直すとあらかじめ決まっているものではなく、判例の動向などを見ながら、適時適切に見直しを行っていくこととなるというふうに考えております。

川条委員 ありがとうございます。

 先ほど副大臣も周知に全力を挙げるとおっしゃってくださいましたし、また局長様のお答えにもありましたように、これからの世論の広まりを見ながら、可能性はあるということを心の中にとどめておきたいと思います。

 私は、女性が生き生きと働き、安心して子供を産み育てることのできる社会をつくることをライフワークとしております。子育て中のお母さんの声を聞いて回ったときに、いろいろな立場の女性の声を聞いて回ったときに言われた、私のかわりにこの声を国政に届けてという声にこたえたいんです。これを思うと、この国会の厚生労働委員会で、まさにこの均等法について質問させていただけることに大きな意義を感じています。

 均等法という名前は、どんなに女性が努力しても補助的な地位にとどめおかれて報われなかった非常に厳しい歴史的な歩みを思い起こさせるものであり、また、女性にとって厳しいという社会的な、構造的な欠点を指摘すれば、非常識というそしりは当然のこと、人格的な攻撃までも必ずと言っていいほど受けた時代に、恐れず、ひるまず、とらわれず、命がけで、人生をかけてみずからの信念を貫き通した先輩の生きざまを示すものです。したがって、雇用の機会を均等に与えてほしいという祈りに近い思いがにじみ出ているものを軽々しく雇用平等法と変えることは、女性運動の歴史に対する冒涜であると思います。

 また、働き方そのものの見直しは労働基準法などで行うべきものであり、この法律に、働き過ぎと言われる男性そのものの仕事と生活の調和を基本理念に加えることは、性差別の禁止というこの法律の理念そのものを揺るがす軽率な行為です。お子様ランチじゃないんですから、何でも法律に盛り込んでいいものじゃないんです。

 男女共同参画は、少子化対策にも資するものであり、国家を挙げて取り組んでいかなければならない喫緊の課題という認識もいただいております。党利党略のみで、対案という対立軸にこだわるのではなく、党派を超え、性差を超えて取り組んでいく必要があると思いませんか。

 法制度の整備と社会の意識改革は車の両輪です。アンペイドワークの評価と再就職の支援と非正規労働に対する社会保障の充実こそ、男女共同参画、少子化対策の大きな柱であり、今後も、この実現に一生懸命取り組んでいきたいという私の決意と感想を述べさせていただき、きょうお答えいただきました先生方に感謝申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岸田委員長 次に、高鳥修一君。

高鳥委員 自由民主党の高鳥修一でございます。

 きょうは、さきの質疑者から大変熱のこもった質疑がございましたので、私も負けないように、気合いを入れ直して質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、男女雇用機会均等法が成立して二十年ということでありますが、平成九年の改正に続いて、性差別禁止の範囲の拡大、妊娠等を理由とする不利益取り扱いの禁止、セクシュアルハラスメント対策、男女雇用機会均等の実効性の確保等が今回盛り込まれたわけであります。男女ともに働きやすい環境を整備することは時代の要請であり、育児と仕事の両立がしやすい雇用環境を整備することは次世代支援策としても非常に重要であるというふうに考えております。

 本日は午前中からたびたび取り上げられているテーマでありますけれども、私も間接差別についてまずお伺いをしたいというふうに思います。

 今回の改正のポイントの一つが、間接差別という問題を取り上げたということであります。これ自体は一歩前進と言えると私も評価をしたいと思います。しかし、これからどういうふうに進めていくのか、これが非常に大切ではないかというふうに考えております。

 私は、全く個人的な考えでありますけれども、一般論として、あくまで一般論として、欧米でこういうふうになっているから日本も直ちにそれに倣えという主張には賛成をいたしません。日本には日本のよさがあり、日本的な経営にもすぐれた点があったからこそ、日本企業は世界の中で大きく発展を遂げてきたと思うからであります。

 今回、間接差別として省令で定められたものは、三つの対象に限定列挙とされております。午前中、六名の参考人の方からさまざまな意見を伺ったところでありますけれども、まさに経営側からすれば、原則禁止で状況に応じて判断するということでは合理性の判断に幅があり対象が無制限に広がりかねない、何でも間接差別ということになれば訴訟が連発し現場が混乱するという懸念があるとされております。しかし一方で、労働者側からは、限定列挙では間接差別は解消しない、なぜなら列挙されたもの以外は差別でないという判断が生じるという意見も根強いように思っております。

 そこで質問をさせていただきますが、まず北井局長にお答えをいただきたいというふうに思います。

 この間接差別について、やはり合理性の判断基準という問題が非常に重要なことであるというふうに私は思います。合理性が認められれば差別としない、つまり、今後合理性を判断するに当たり厚生労働省の指針をつくる予定というお話が先ほどございましたけれども、さまざまな意見がある中でどのような形で公平性を保つのか、そしていつごろまでにこれをおつくりになるのか、ちょっと事前に通告していないかもわかりませんけれども、お答えになれる範囲でお答えいただきたいと思います。

北井政府参考人 今回御提案を申し上げておりますこの均等法案を成立させていただければ、その後、速やかに省令や指針の制定作業に入ることになります。問題の間接差別につきましても、三つの措置をまず省令で定める予定としておりますし、そして、その三つの措置についてそれぞれ、労使が予測可能性を持って対応できるように、合理性の有無の判断の考え方について指針で定めていきたいというふうに考えているところでございます。

 したがいまして、省令や指針の制定作業は労働政策審議会の議論を経て定めるということになっておりますので、速やかにこの労働政策審議会で御議論いただいて、それがまとまり次第速やかに公布をし、そしてなるべく早く全国の労使に周知を図るという段取りをとっていきたいと思っております。したがいまして、作業はできるだけ速やかにやってまいりたいというふうに考えております。

高鳥委員 私は、今回の改正につきましては、限定列挙ではありますけれども、やはり確実に一歩前進をさせるべきであるというふうに考えております。

 しかし、新たな事例が出てきた場合、個別具体的な事案ごとに事実認定を行うとされておりますが、日本においては、先ほど来お話が出たとおり、雇用の分野で間接差別の法理に立って判断をされた判例がないという中で、裁判による判例の集積を待つということは非常に費やす時間が大きいことが懸念をされるわけであります。

 これはあくまで将来の問題でありますけれども、新たな間接差別を省令において追加する場合、どのような手続で可能となるのか、間接差別の問題に取り組む決意とあわせて、中野副大臣に御答弁いただきたいと思います。

中野副大臣 高鳥委員の御質問でございますが、今おっしゃるとおり、今回の法案におきましては、間接差別となる措置というものは、いわゆる限定列挙で、三つの限定でございますけれども、厚生労働省令で定めることにしておるということは今御承知のとおりでございます。

 この対象について、今お話しのとおり、判例の動向、これが一番大きな要因だと思っておりますけれども、それと一緒に、例えば、先ほど申し上げましたが、雇用均等室への相談だとかそういう事例の中で、なるほど、これはやはり間接差別で当然だというような問題とか、また、社会全体として、認識が、間接差別としてこれはもう当然あるべきだというような、だれもがわかるようなことが出てまいりましたならば、そういう現場の声といいましょうか、そういうものを基礎といたしまして、見直しの検討を機動的に行ってまいりたいということは当然でございますので、この際、明らかにしておきたいと思います。

 しかし、この場合、やはり、先ほど来委員もおっしゃいましたけれども、公と労と使という三者の構成によりますところの労働政策審議会、ここでいろいろなお立場からの御意見が当然あるわけでございますけれども、できる限りそこで合意をいただいて、これをいわゆる厚生労働省令に規定するというのが我々としては一番妥当ではないかと考えておりまして、ただ、それは、委員が御心配したように、単なる判例の動向だけではないということだけは御理解を願いたいと思うわけでございます。

 このことによりまして、間接差別というものを一日も早くなくして、男女がともに公正に評価される、そういう社会をつくらなきゃいけない、そういう決意を持っておりますことを申し上げまして、御理解を賜りたいと思います。

高鳥委員 ありがとうございます。

 今回の改正は、性差別禁止の範囲の拡大という意味では一歩前進したということを評価したいと思いますが、新たな問題が出てきたときに速やかに対応していただきたいということをお願いいたしておきます。

 続きまして、セクシュアルハラスメント対策についてお伺いをいたします。

 私は、本日質問に立たせていただくに当たりまして、さまざまな相談事例というのを読ませていただきました。一々個別のことは申し上げませんけれども、共通して私が感じたことでありますが、雇用関係上立場の弱い人がセクハラに遭う事例がほとんどですから、相談をすること自体が困難であるということであります。

 これをだれに相談するのか。相談した相手が適切な知識を持たず、適切な対応を怠ると、結果として相談したことによって不利益が生ずる、こういう事例が非常に多いように思います。特に派遣社員などは、相談したことを理由に、職場の秩序を乱した、こういう理由で次の契約更新をしないと通告された、こういう明らかに不当な事例もあるわけであります。

 今回の改正で、雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務づけるとしておるわけでありますが、具体的な内容はどうなるのでしょうか。

 現在の配慮義務の内容としては三つございます。方針の明確化とその周知、二番目に、相談、苦情への対応、三番目に、事後の迅速、適切な対応とございます。今回、改正案に対応して、措置義務の内容も新たに定めるのでしょうか。もし定めるのであるとすれば、私は、以下の三点をぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 まず第一は、防止マニュアルの作成を義務づけるということであります。第二番目に、相談窓口を設けることを義務づけるということであります。第三番目に、相談窓口を設けたことをパートや派遣社員も含めた全社員に向けて周知することを義務づけるということであります。

 今回の改正に対応した措置義務内容について、御答弁をお願いいたします。

北井政府参考人 今回の改正に伴いまして、成立後のセクシュアルハラスメント対策関係の指針の具体的な内容についてのお尋ねでございますが、この指針につきましても、この法案成立後、審議会におきます議論を経て定めることといたしております。その際には、今御指摘のような点も十分踏まえながら、適切な指針となるように検討してまいりたいと思っております。

 特に、相談窓口、担当者の設置につきましては、改正法案の法律上の規定におきましても、事業主の講ずべき措置として、「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」という文言が盛り込まれているところでございまして、この点について、指針でより具体的な内容を規定することになるというふうに考えております。

 いずれにしても、この指針において、さらに事業主が措置義務をきちんと果たせることになるように、趣旨、内容を盛り込んでいきたいというふうに思っております。

高鳥委員 踏んだりけったりという言葉がございますが、セクハラという被害を受けて踏まれ、相談をしたことでいま一度けられる、こういう事態が生じないように、一層の御指導をしていただきたいと思います。

 本日は、大変限られた時間でありますが、せっかく質問の機会をいただきましたので、三番目に、障害者の就労支援について御質問をさせていただきたいと思います。

 障害者自立支援法の成立によって、利用者に原則一割の定率負担を求めるということになったわけでありますが、障害者にとっては、就労は非常に切実な問題であると考えます。

 平成十七年の「障害者施策の概況」、障害者白書案が提出をされました。雇用・就労の促進施策の中で、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく雇用率の達成状況を公表し、未達成の民間企業、国、地方公共団体等に対し、雇用率達成を指導、要請するとしているわけであります。これについて、現状を教えていただきたいと思います。

鳥生政府参考人 障害者の雇用についてのお尋ねでございます。

 一般企業における障害者の雇用状況につきましては、これは、法定雇用率一・八%に対しまして、平成十七年六月一日現在の民間企業の実雇用率は一・四九%ということでございまして、また、法定雇用率達成企業の割合は、四二・一%となっております。

 また、国及び地方公共団体につきましては、二・一%の法定雇用率に対しまして、国の機関の実雇用率は二・一四%、都道府県の機関の実雇用率は二・三四%、市町村の機関の実雇用率は二・二一%となっておりまして、全体として法定雇用率を上回っているところでございますが、ほとんどの機関で法定雇用率を達成しているという状況にございます。

 私どもといたしましては、未達成の企業に対して指導基準を強化するといったことも含めまして、現在、雇用率の達成に向けた指導に鋭意努力しているというところでございます。

高鳥委員 時間が迫ってまいりましたので、あと一問で切り上げたいと思いますが、特に、二〇〇六年から、精神障害者も実雇用率に算定することを認めたということでありますけれども、これで成果が上がるのか、その見通しについて教えていただきたいと思います。特に、精神障害者の場合は、全家連のような組織があっても、地域の支部長でさえ、プライバシーの問題があって会員の名簿を持っていない、つまり、横のつながりや情報の交換を非常にしづらいという難しさがあるわけであります。精神障害者に情報の周知徹底を図ること、また就労支援について特別にどのような配慮をされているのか、お答えいただきたいと思います。

鳥生政府参考人 精神障害者の雇用につきましては、本年四月から、障害者雇用促進法が改正されまして、精神障害者である労働者を各企業の雇用率の算定対象とすることとしたところでございます。

 これらの制度改正とあわせまして、精神障害者に対しては、ハローワークにおけるきめ細かな職業相談、職業紹介を初めといたしまして、医療機関等を利用している精神障害者を就職に結びつけるために、ハローワークから医療機関等に出向き、求職活動のノウハウを提供するジョブガイダンス事業を実施するといったこと、あるいは、直ちに常用雇用を目指すことが困難な精神障害者等が、企業において数人のグループで指導員の指導を受けながら就労し、常用雇用への移行を促進するため、グループ就労訓練に対する助成金を支給するといった、さまざまな措置を四月から講じているところでございます。

 御指摘の、横の連携等がなかなかなくて施策の周知が大事ではないかといった点につきましては、制度を上手に活用していただけるように、精神障害者の当事者団体と連携をいたしまして、セミナーの開催や啓発冊子の作成等により、本人はもとより、精神障害者を支える家族、就労支援関係者、福祉や保健医療分野の関係者等に対して周知啓発を行いますと同時に、ジョブガイダンス事業を初めとする医療機関との連携によりまして、精神障害者が通院する病院や診療所を通じて、利用できる雇用支援制度の紹介を行っているところでございます。

 今後とも、これらを通じて支援制度の周知を図りまして、精神障害者の雇用を進めていきたいというふうに考えております。

高鳥委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、障害者就労支援を含む労働環境の整備に一層の御尽力をいただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 副大臣、また局長、大変御苦労さまでございます。

 先般、合計特殊出生率が一・二五まで低下したという発表がございました。公明党としても、この数年間、少子化対策の充実を訴え続けてまいりましたけれども、まだ道半ばであるなという思いを強くいたしております。より本格的な取り組みが必要である、とりわけ、働き方の改革ということが必要ではないかというふうに思っております。

 現在審議をされておりますところの男女雇用機会均等法は、女性の働き方をどのように支えるのかという点で非常に重要な法律であると考えております。今回の改正、さまざまな論点がございますけれども、女性が仕事と子育てを両立できる環境を築いていくためには、一日も早く成立をさせて、そしてその趣旨を徹底していくということが大切であるというふうに考えております。

 午前中は参考人からさまざまな御指摘をいただきました。参議院でも長時間にわたって審議がなされたわけであります。私は、こうしたさまざまな論点について整理をするような形で、確認的にお尋ねをいたしたいというふうに思っております。

 まず初めに、現状はどうなっているのかということでございます。実態についての質問でございます。

 雇用均等室では、均等法に関し女性労働者の方々からさまざまな相談が寄せられていると思います。また、労使間での紛争解決の援助も取り組んでおられるというふうに伺っております。事実として、現在特にどういう問題が多いのか、そしてまた、今般の改正ではどのような対応がなされるのか、こういう基本的なことについて政府の御説明をいただきたいと思います。

北井政府参考人 まず、全国の労働局の雇用均等室における相談件数の中ででございますけれども、その相談件数におきましては、セクシュアルハラスメントについての相談が一番多く、女性労働者からの相談全体の四割を占めているところでございます。また、労働局長によります紛争解決援助件数の中では、妊娠、出産などを理由とする解雇などの事案が多数を占めておりまして、これは全体の八割以上を占めているところでございます。

 こうしたことから、改正法案では、妊娠、出産などを理由とする不利益取り扱いの禁止、そしてセクシュアルハラスメント対策の強化などを盛り込んで対応することとしたところでございます。

福島委員 ありがとうございます。

 まだまだ日本の働く社会、女性にとっての環境というのが、見直さなければいけない点が多々あるということだろうというふうに思います。

 次にお尋ねをしたいのは、今般の改正をめぐりまして大きな論点となっておりますのが、間接差別をどう取り扱うのかということであります。午前中の参考人の意見陳述の中でも、さまざまな形で説明がなされました。

 今般の改正によって初めて法律上明確に規定される間接差別について、さまざまな意見があるようでございますけれども、規定の趣旨また内容について御説明いただきたいと思います。

北井政府参考人 男女雇用機会均等法制定以降の状況を見ますと、従来ございました男女別の定年制であるとかあるいは男性のみの求人であるとかいった明白な差別は減少をしてまいりました反面、例えば、事業主によっては、女性を採用、登用しなくて済むように、女性が満たしにくい要件を課すといったようなことで、差別事案が複雑化あるいは見えにくいといったものへの対応が問題となってきたところでございます。

 例えば、均等室がコース別雇用管理を導入している企業について報告徴収を行いましたところ、こうした企業のうちで、全国転勤を要件としているけれどもその必要性が十分検討されていないという企業が四割にも上ったところでございます。

 また、あわせて、国内的には、前回の均等法改正のときの国会の附帯決議において、政府に対して、間接差別について、「何が差別的取扱いであるかについて引き続き検討すること。」という御指摘もいただいたところであり、また、国際的には、国連の女子差別撤廃委員会から日本政府に対して、直接、間接差別を含む女性差別の定義が国内法に取り込まれることということが勧告されたところでございます。

 こうした実態、国内的あるいは国際的な御指摘を踏まえて、今回の改正法案に間接差別の禁止の規定を盛り込んだところでございます。

 この盛り込みに当たりましては、これまで我が国では雇用の分野で間接差別の法理に立って明確に判断された裁判例も見出せない中にございまして、間接差別を法律に盛り込むかどうかをめぐりまして、審議会でも意見が一番大きく分かれたところでございます。最終的には、今般の改正において、業務遂行上の必要その他の合理的な理由がなければ、労働者の性別以外の事由を要件とする措置で実質的に性別を理由とする差別となるおそれがあるものとして省令で列挙するものを講じてはならないという趣旨の規定を置くことにしたところでございます。

福島委員 厚生労働省、法案の取りまとめに当たりまして、関係の方々の説得に努められ、こうした形で法案を提出されたということについて、努力されましたことを評価いたしたいと思います。

 しかしながら、一方で、この法案での規定ではまだまだ不十分ではないか、こういう指摘があることも事実でございます。

 幾つかお尋ねをいたしますが、間接差別規定の適用対象を省令で定める措置と規定することについては、直接的に法律に明確に規定すべきではないか、こういうような強い意見があったように伺っております。省令で定める、このようにしたことについて、その理由を改めて御説明いただきたいと思います。

北井政府参考人 間接差別は、性中立的なものであれば、およそどのような要件でも俎上にのり得る広がりのある概念でございます。そうしたことから、間接差別を均等法上違法とするに際しましては、対象となる範囲を明確にする必要があると考えたところでございます。このため、改正法案におきましては、間接差別の対象となり得る措置を厚生労働省令で規定することとして、そしてその内容を必要に応じて見直しができるような法的仕組みとしたところでございます。

福島委員 柔軟な仕組みとすることによって機動的に対応していこうということだろうと思いますけれども、その点については評価をいたしたいというふうに思っております。

 今回の改正の検討に先立って出されました研究会の報告書では、間接差別の事例として七つ列挙されておりました。午前中の参考人の意見陳述でもこの点に触れておりました。これについては、研究会で七つもあったものが法案段階では三つに減らされている、絞り込まれてしまったじゃないか、残りの四つは一体どうするんだ、こういうような批判があったわけであります。

 この点についてどのようにとらえておられるのか、お聞きしたいと思います。

北井政府参考人 御指摘の、男女雇用機会均等政策研究会で掲げられました間接差別の七つの事例は、この研究会で間接差別として考えられる事例についてイメージを示すために、これまで国会での質疑であるとかもろもろの論文などにおいて、間接差別に該当するのではないか、あるいはそういう議論がなされていたものを中心に、研究会において若干事例も追加していただきまして記述をされたものでございます。

 したがって、これらの事例はあくまで参考例でございまして、ここでもって想定し得る間接差別をすべて網羅したものではないし、また逆に、この七つの事例すべてを間接差別の問題として法律で解決すべきというところまでの御提言をいただいたものではないという認識をいたしております。

福島委員 さまざまな議論の経過でございますので、ただいまのような御説明になろうかと思いますけれども、いずれにしましても、まだまだ定義についてさまざまな意見があるわけでありまして、先ほども政府参考人からおっしゃられました、弾力的に今後の取り組みをしていく、こういう観点が大事なんだろうというふうに思っております。

 また、司法との関係での指摘もございました。国会における審議において、間接差別の対象を省令で列挙する措置に限定してしまったということから、従来、民法によって違法とされたケースについてまで適法とされるのではないか、従来よりも逆に緩くなってしまうのじゃないかというような懸念が示されているわけであります。

 しかしながら、今般の規定は、我が国の法制に間接差別、こういう新しい概念を導入し、明確化するということであり、懸念のようなことは司法の場においても生じないのだろうと私は思っております。時計の針を逆に回すようなことになってはならない、そのように考えます。

 政府に改めてこの点についての考えをお聞きしたいと思います。

北井政府参考人 間接差別につきまして、厚生労働省令に規定されない事案でありましても、司法の場で個別に民法九十条の適用などによりまして公序良俗違反として無効と判断されることが今般の改正によって妨げられるものではないと考えております。

 また、これまで雇用の分野において明確に間接差別の法理を用いて出された判例はございませんと認識しておりますので、これまで違法とされていた事案が適法とされるということになるという御指摘は当たらないのではないかというふうに思います。

 なお、この点につきまして、厚生労働省といたしましては、均等法上違法とされる可能性が高いものについてしっかりと周知をした上で、この省令で規定するもの以外のものについても、民法の規定によって違法とされる可能性があることについてもあわせて周知をしたいというふうに考えております。

福島委員 ただいま御説明ありましたように、周知をしていただくということが非常に大事だと思いますし、そしてまた、現に司法の場で今後もさまざまな争いが起こされることだろうと思います。そうした経過についても十分フォローしていただきたいというふうに私は思っております。

 均等法上は省令で規定する措置が対象となるけれども、それら以外であっても裁判の場で違法とされ得るものがあるという今お考えだと思います。

 そして、先ほど、均等法の対象自体も必要に応じて見直すことができるよう省令定めという仕組みになっている、こういう説明がありました。しっかりとフォローしていただいて、そしてそれを受けとめて、せっかく柔軟に対応するために省令定めという形にしたわけでございますので、引き続いての対応が大事だろうというふうに思っております。

 この点についての政府参考人のお考えをお聞きしたいと思います。

北井政府参考人 先ほど副大臣からも御説明を申し上げましたけれども、厚生労働省令につきましては判例の動向などを見ながら適時適切に見直しを行うこととしたいと考えております。

 この場合、判例が出されたということの場合のほか、例えば、均等室への相談事案において間接差別の対象とすることが適当ではないかと思われるような事案が把握された場合や、関係審議会において対象の追加の提起がなされたような場合も見直しの契機になるのではないかというふうに考えております。

福島委員 適切に運用を行っていただきたいと思います。

 冒頭、どういった事案が多数を占めているのかということについてお尋ねいたしました。その中で、妊娠、出産の問題、これが非常に数が多いと御指摘がありました。働く女性が妊娠や出産を理由に不利益な取り扱いを受けることがまれではないというのが我が国の実態でございます。そして、このことがまた私は少子化ということにつながる一つの原因になっているというふうにも思います。

 相談が寄せられる中では、解雇以外の不利益取り扱いの事案もあると思いますけれども、具体的にどのような例があるのか教えていただきたいと思いますし、また、そうした事案に対しての現在の政府の対応状況についてお尋ねをいたしたいと思います。

北井政府参考人 妊娠、出産などを理由とする解雇以外の不利益取り扱いの相談事例といたしましては、退職を強要するであるとか、正社員からパートタイム労働者への身分変更の強要、それから不利益な配置転換、いわゆる雇いどめなどが見られるところでございます。

 こうした解雇以外の不利益取り扱い事案につきましては、現在これを直接禁止する規定が均等法にはないところでございますけれども、このうち、事業主の有形無形の圧力によって労働者の意に反する退職勧奨が行われたようなケース、あるいは、労働契約が一たん終了したものと見られて、その労働契約の終了が事業主の圧力によるものであって真意に基づくものではないと認められるパートタイム労働者などへの身分変更、それから、形式的には有期契約であっても、反復更新されて実質期間の定めのない雇用契約と認められる場合における雇いどめにつきましては、解雇に含まれるとして現行法上でも是正指導の対象としてきたところでございます。

福島委員 退職の強要でありますとかパートへの変更など、さまざまなケースがあるという御説明でございました。

 今般、妊娠等を理由とする解雇以外の不利益取り扱いが禁止されることにより、今までの対応に比べてどの程度この点が強化されるのか。不利益取り扱いとしてまた今後規定することになると思いますけれども、具体的にどのようなことが規定されるのか。この点についての政府参考人のお考えをお聞きしたいと思います。

北井政府参考人 不利益取り扱いには、退職の勧奨、パートタイム労働者への身分変更の強要、不利益な配置転換、雇いどめなどが含まれるわけでございますが、さらに具体的には、この改正法案が成立した後に労働政策審議会の議論を経て定めます指針の中で明らかにしていきたいと思っております。これまで現行均等法の中で工夫をして是正指導を図ってまいったものが、この法律の改正によって明確に是正指導ができていくものというふうに考えます。

福島委員 よりしっかりとした法的根拠を持つということでありますので、現場での運用もさらに徹底してやっていただきたいというふうに思っております。

 不利益な配転も含まれるというお考えをお示しでございますけれども、産前産後の休業から復帰する際には原職に復帰できることが望ましい、現に、自分がどの職場に戻るかわからないということは、働く女性にとってはさまざまに妊娠、出産をちゅうちょさせる一つの原因にもなっているという指摘があるわけであります。

 こうした点について政府参考人はどのようにお考えでございますか。

北井政府参考人 産前産後休業後に原職に復帰させないということが不利益な取り扱いと考えられるかどうかについてでございますが、これは正式にはこの法案成立後定める指針の中で明らかにしていくこととなりますので、確定的なことは申し上げかねるところもございますが、この指針の検討に際して考えるべきことは、産前産後休業後の配置については、統計の調査結果によれば、原職あるいは原職相当職に復帰させることが通常の取り扱いとなっております。

 それから、労働政策審議会の建議におきましても、この不利益取り扱いというのは、通常の人事異動のルールから十分に説明ができない取り扱いを行うこと、これが不利益取り扱いと判断されるのだというようなことも盛り込まれております。

 こうしたことを十分踏まえて、前向きに議論がなされるものだというふうに考えております。

福島委員 妊娠等を理由とする解雇について、妊娠中及び出産後一年以内の解雇が事業主の立証のない限り無効とされることは違法な解雇の強い抑止力になる、このことは間違いないと思います。

 しかし、この規定を生かすためには、法の十分な周知が必要である。国会で法案を審議いたしましても、なかなか国民また実際に企業を経営しておられる方、どこまで理解がされているかな、こう思うことは多々あるわけであります。

 そしてまた、実際、働いておられる女性の方も、こういう権利が法律上あるんだということを知らなければ主張するということにもつながらないわけでありまして、あらゆる面にわたって徹底して周知をするということが必要である、そのことがこの法改正の価値を際立たせることになるというふうに思うわけでありますけれども、この点について政府としてどのように進めていかれるのか、お考えをお聞きしたいと思います。

北井政府参考人 御指摘のとおり、法律はその内容を広く周知してまいりますことがとても重要でございます。改正法案が成立した場合には、速やかに事業主や労働者の方々に対しましてその趣旨、内容の周知に全力を挙げてまいりたいと考えております。

 特に、事業主には、中小零細企業も含めて、今回の法改正の趣旨、内容、省令、指針に至るまでの内容を十分に理解していただきたいと思っておりますし、労働者には、御相談は雇用均等室で承っておりますので、ぜひ不利益を受けたと感じる場合には御相談いただきたいというようなことを広く知っていただきたいということで、ありとあらゆる手段を使って周知をやっていきたいと思っております。

 特に、今回の、妊娠中、出産後一年以内の解雇が事業主の立証のない限り無効というようなことは、その意味では画期的なことであります。こうしたことも十分その周知の内容に入れていきたいと思っております。また、厚生労働省のホームページにも「よくあるご質問 均等法Q&A」というのを入れております。改正法案が成立すれば、これも見直しまして、十分周知をしていきたいというふうに思っております。

福島委員 よろしくお願いいたします。

 妊娠、出産をしても安心して働くことのできる雇用環境の整備、これが少子化対策においては非常に重要である。もちろん、少子化対策というだけではありません。女性の尊厳ということにおいて極めて大事だと私は思っております。今般の改正による不利益取り扱いの禁止もその一助になると期待いたしております。

 一方で、それだけにとどまらず、両立支援や働き方の全般的な見直しも重要な課題であると思っております。現在、政府・与党において新たな少子化対策の検討が進められておりますが、その中にあって、次世代育成支援推進法の見直しを含め、包括的な取り組みが必要であるというふうに考えておりますけれども、政府のお考えをお聞きしたいと思います。

北井政府参考人 妊娠、出産をしても安心して働くことができるためには、今回の均等法の改正も大いに資するものだと考えておりますが、あわせて、両立支援や働き方の見直しを一層推進することが重要な課題であるというふうに考えております。このため、次世代法に基づく企業の取り組みの促進、育児休業や短時間勤務等の措置の普及、定着、それから労働時間等設定改善法の円滑な施行に努めているところでございます。

 特に、御指摘の次世代法につきましては、平成十七年四月から企業の行動計画の策定、実施を促しているところでございますが、三百一人以上の大企業については、施行後一年で策定がほぼ一〇〇%に達したところでございますので、今年度は、この成果を踏まえて、さらに、努力義務とされております三百人以下の中小企業の取り組みを重点的に促進していきたいというふうに考えております。

 また、企業が行動計画の内容などを公表できるサイトを本年四月に開設しているところでございまして、このサイトを活用した企業の自主的な公表の取り組みを働きかけていきたいというふうに考えております。

 さらに、次世代法の見直しを含めて、両立支援や働き方の見直しを一層進めるための方策も含めたさらなる少子化対策については、今月中にも政府・与党間で取りまとめるべく協議、調整が進められておると承知しておりますので、こうしたことも踏まえて、厚生労働省として企業の取り組みがさらに進むように努力をしていきたいというふうに考えております。

福島委員 規模の大きいところから規模の小さいところへと着実に前進をしていっているというふうに思いますけれども、先ほども御指摘がありましたように、特に中小企業また零細企業の場合には、代替要員の確保をどうするかという現実的な問題があるわけであります。

 妊娠、出産しても安心して働くことができる雇用環境の整備、これを進めていくためには、さまざまな支援を企業に対しても行う必要がある。この点についての政府のお考えをお聞きしたいと思います。

北井政府参考人 特に中小企業では、代替要員の確保が難しいというようなことで、両立支援とか雇用環境整備についての負担感が強いわけでございます。こうしたことから、厚生労働省といたしましては、まず一つには、育児休業が円滑に取得できるように、休業中の代替要員を確保される企業に対しましては、助成金の支給によりまして支援を行っているところでございまして、特に中小企業に対しては、大企業に比べ支給額を手厚くしているところでございます。

 また、今年度からは、中小企業における育児休業の取得を重点的に支援するために、従業員百人以下の中小企業に限りまして、育児休業をとった方が初めて出た場合に、一人目百万円、二人目六十万円を支給するといった新たな助成制度を設けたところでございます。

 こうした助成金の活用などによりまして、中小企業において子育てしながら安心して働くことができる環境が整備されるよう、今後も努めてまいりたいと考えております。

福島委員 こうした支援については、昨年来公明党としてもさまざまに政府に要望させていただきまして、具体化を図っていただいたことに感謝をいたしておりますし、そしてまた、引き続きその施策が進んでいくように全力で頑張っていただきたい、そのように思っております。

 次に、問題をかえまして、セクシュアルハラスメントの問題について確認をいたしたいと思います。

 先ほど冒頭の御説明では、最も訴えが多い、こういう御指摘がありました。今般の改正では具体的にどのような対応が強化されているのか、この点について御説明いただきたいと思います。

北井政府参考人 現行の均等法第二十一条で事業主へのセクシュアルハラスメント対策を規定しているところでございますが、二十一条は事業主にセクシュアルハラスメント対策として雇用管理上必要な配慮を求めているところでございます。しかし、一部の事業主の方々の中には、配慮さえすればよいということで、具体的な措置を講じる必要がないというように、責務に対する御認識が不足している場合が見られるところでございます。

 こうしたことから、改正法案におきまして、事業主が一定の措置を講じる義務があるという旨を明記することとして、セクシュアルハラスメント対策の強化を図ったところでございます。

 それから、近年、男性に対するセクシュアルハラスメント事案も見られるようになっております実態にかんがみまして、事業主の措置の対象に男性労働者に対するセクシュアルハラスメントも追加することとしたところでございます。

福島委員 ただいま御説明がありましたように、今までの配慮義務を措置義務に変えるということに伴って、事業主が具体的に行うべき事項について定めているところの指針、これを改正することが必要になると思いますけれども、どのようにこれを進めていくのか、この点についてさらに詳しく御説明いただきたいと思います。

北井政府参考人 今般の改正によりまして、事業主にとって、セクシュアルハラスメントについて具体的な雇用管理上の措置を講ずる必要があることが明確になるわけでございます。これに伴いまして指針を見直すことになりますが、指針につきましては、現行の指針の内容を基本としながら、事業主として行っていただくべき措置の内容をより明確にする方向で見直したいというふうに考えております。

 指針の具体的な内容については、今後、労働政策審議会における議論を経て定めることになりますけれども、昨年十二月にまとめられたこの審議会での建議におきましては、セクシュアルハラスメントの事後の対応措置について、事実関係の確認をし、事実関係が確認できたときには、あらかじめ定めたルールにのっとり対応すべきことということと、それから、セクシュアルハラスメントについての紛争を調停に付すことも事後措置の一つとなるというようなことを指針において示すことが適当であるとされております。こうしたことで、少なくともこれらについては指針に盛り込んでいく方向で進めていきたいというふうに考えております。

福島委員 事業主がセクシュアルハラスメント対策を講じる際に、特に事後対応については、事実確認、今もありましたけれども、これがスムーズに行えるということが極めて大切であると思います。

 ただ、この場合に、事実確認をするときに第三者の存在が必要になるわけであります。先ほども指摘がありましたけれども、ぜひともお願いいたしたいのは、セクシュアルハラスメントに係る相談、苦情を申し出た労働者自身のみではなく、こうした事実確認に協力した同僚等が不利益扱いを受けてはならないということも同時に盛り込まなければならないというふうに思いますけれども、この点についての政府の考えをお聞きしたいと思います。

北井政府参考人 指針の具体的な内容の確定については、今後、審議会の議論を経て定めることになりますけれども、御指摘の趣旨、ごもっともであると思いますので、そうした方向で調整を図るように努力をいたしたいというふうに思っております。

福島委員 次に、ポジティブアクションの問題でございますけれども、今般の改正では、ポジティブアクションの自主的取り組みの推進ということが盛り込まれているわけであります。

 ただ、これが現に進んでいかなければ意味がないわけでありまして、改正法に基づきさらに取り組みを拡大していくためには、積極的な国の支援、関与が必要であるというふうに考えるわけでありますけれども、この点についての政府のお考えをお聞きしたいと思います。

北井政府参考人 我が国におきましては、過去の雇用管理上の経緯などから、男女間で事実上の格差が残っているケースが少なくないわけでございまして、こうした状況を改善していくためには、個々の企業がポジティブアクションにより積極的に取り組んでいただくということが必要なことであるというふうに考えております。

 こうしたことから、今般の改正法案におきましては、これまでの、企業が行う現状分析あるいは計画策定に関する相談、援助の措置に加えまして、事業主がポジティブアクションの実施状況を開示する場合に国の援助の対象とすることをその内容に盛り込んだところでございます。

 具体的な援助の内容としては、ポータルサイトを設けて、個別企業から寄せられた取り組み状況を紹介するといったようなことを考えております。

 いずれにしても、大企業においてもあるいは中小企業においても、その企業の状況に応じて広くポジティブアクションといったことを十分御理解をいただいて積極的に取り組んでいただくということが必要でございますので、国としても、企業の取り組み状況が広く世間に認知、評価されて、自主的な取り組みが促進されていくように促していきたいというふうに考えております。

福島委員 一問、通告しておりました質問を若干省略させていただきまして、時間も大分超過をしつつありますので、最後に副大臣にお尋ねいたしたいと思います。

 人口減少社会を迎えまして、少子化をどうするかということが、日本の政府にとりまして、日本国にとって喫緊の課題であると思っております。

 労働者がそれぞれ、男性であれまた女性であれ、そしてまた若年者であれ高齢者であれ、能力を十分に発揮できる社会を実現するということが極めて重要である、そのように思っております。そうした観点から、ワークライフバランスというものを我が国においてきちっと確保していかなければいけない、そのように私は考えております。

 こうしたワークライフバランスというものを確立していくということについて、中野厚生労働副大臣の御見解をお聞きいたしたいと思います。

中野副大臣 福島委員の基本的なスタンスについての私の考え方を申し上げますと、今、一・二五という特殊出生率ですね、人口減少社会を迎える中で、労働者がその意欲と能力を十分に発揮することができる社会というものの実現のためには、仕事と生活の調和のとれた働き方、すなわちライフワークバランスを図るということが重要な課題である、これは委員がおっしゃるとおりだと考えております。

 そのためには、まず第一に、次世代法に基づくところの企業の行動計画の策定、実施の促進という問題がございます。それから二つ目といたしましては、仕事と家庭のバランスに配慮した柔軟な働き方ができる、いわゆるファミリー・フレンドリー企業の一層の普及促進という問題がございます。それから三点目といたしましては、育児休業制度やそれからまた勤務時間短縮等の措置の普及、定着ということに取り組んでいかなきゃならないと考えておるわけでございます。

 また、労働者が心身ともに充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できるようにするためには、いわゆる労働時間等の設定をして、育児や地域活動の個々の労働者の生活に配慮することが非常に重要だと考えておりまして、それには、ことし四月一日から施行されました労働時間等設定改善法、これの円滑な実施に努めているところでございます。

 今委員がいろいろと御質問されました本法案につきましてもそうでございますが、こうした取り組みの中におきまして、少子化の進行する今日でございますが、今後とも労働者一人一人が仕事と生活を大切にしながら働くことができる、そういう雇用環境というものの整備に努めてまいりますことをお誓いしたいと思います。

 これからもよろしく御指導を願いたいと思います。

福島委員 どうもありがとうございました。

 若干時間を残しましたが、以上で終わります。ありがとうございました。

岸田委員長 次回は、明十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十五分散会


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