衆議院

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第5号 平成18年11月8日(水曜日)

会議録本文へ
平成十八年十一月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 大村 秀章君

   理事 鴨下 一郎君 理事 宮澤 洋一君

   理事 三井 辨雄君 理事 山井 和則君

   理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    桜井 郁三君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      西川 京子君    林   潤君

      原田 令嗣君    福岡 資麿君

      松野 博一君    松本 洋平君

      御法川信英君    森  英介君

      山本 明彦君    市村浩一郎君

      内山  晃君    大島  敦君

      菊田真紀子君    小宮山泰子君

      郡  和子君    園田 康博君

      田名部匡代君    筒井 信隆君

      細川 律夫君    柚木 道義君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       渡辺 喜美君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  伊奈川秀和君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     桜井  俊君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     寺村  映君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           藤木 完治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           荒井 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       小野  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小林 裕幸君

   参考人

   (国立感染症研究所感染症情報センター長)     岡部 信彦君

   参考人

   (弁護士)        山川洋一郎君

   参考人

   (東北大学大学院医学系研究科 内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野教授)           賀来 満夫君

   参考人

   (結核予防会労働組合書記次長)          齋藤 康雄君

   参考人

   (バイオハザード予防市民センター事務局長)    川本 幸立君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     大塚  拓君

  加藤 勝信君     山本 明彦君

  松本  純君     桜井 郁三君

  菊田真紀子君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     井上 信治君

  桜井 郁三君     森  英介君

  山本 明彦君     加藤 勝信君

  小宮山泰子君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  森  英介君     松本  純君

  市村浩一郎君     菊田真紀子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第七六号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、国立感染症研究所感染症情報センター長岡部信彦君、弁護士山川洋一郎君、東北大学大学院医学系研究科 内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野教授賀来満夫君、結核予防会労働組合書記次長齋藤康雄君、バイオハザード予防市民センター事務局長川本幸立君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず岡部参考人にお願いいたします。

岡部参考人 おはようございます。国立感染症研究所の岡部と申します。

 いろいろなところで話す機会は多いんですけれども、こういうところで話すのは初めてなので、ちょっととちったりするかもしれませんけれども、どうぞお許しください。

 お手元に参考資料として「感染症法改正審査」というのが書いてございますので、これをもとに御説明をしたいと思います。と申しましても、法律全体の説明は恐らく厚生労働省の方からなされていると思うので、ちょっとその背景的なことをお話しするつもりです。

 一枚目に、私がどういう者であるかということを簡単に書いてありますけれども、もともと小児科の医者で、それで、その中での感染症ということをやっております。小児科だった関係で、この中の委員のお一人の方とは同じ病院に勤務して、当直なんかを分け合ったこともございます。

 二枚目の方に、私が今いろいろ依頼を受けて感染症関係の委員をやっている一覧がございますけれども、この中の、星がついている厚生労働省厚生科学審議会臨時委員、感染症分科会、ここで今回の感染症法の審議が行われているんですけれども、本来ですと、そこの委員長の倉田毅、私のおります研究所の前所長がここで御説明するはずだったんですけれども、ちょっと所用があるということで、いわば代理のような形で御説明に上がりました。

 もう一枚めくっていただきますと、今私のおります国立感染症研究所というところの概要があります。もともとは国立予防衛生研究所、予研というふうに言っていたんですけれども、一九九七年から国立感染症研究所というふうに名前が変わりまして、名前だけではなくて、その中で幾つかの機能が変わってきました。

 そこの研究所の主な仕事としては、もちろん研究ですけれども、予防医学の立場から国の保健医療行政の科学的根拠を明らかにする、いわばエビデンス・ベースド・メディスンとよく言われますけれども、それのエビデンスをなるべく確立していくといったようなことになろうかと思います。

 いろいろな研究、あるいはレファレンス、国家検定、その他いろいろな仕事があるわけですけれども、新しいところで入りました仕事が感染症サーベイランス。感染症全体をいわばウオッチングするような形で、ただ情報を収集するだけではなくて、なるべく早く分析をしてそれを速やかにお返しする。例えば、今インフルエンザの状況がこうである、あるいは、極めてまれな病気は日本には十例ぐらいある、あるいは今ゼロであるといったようなことがわかるわけですけれども、それを全体として公表するような立場にもあります。

 もう一枚めくっていただきますと、図が出ています。これは、特に最近、国内外、国内にもあり得る、それから国外でも、何らかの感染症がまとまって起きたような場合、あるいは一例でもそういうようなことになるわけですが、例えばSARSのとき、あるいは鳥インフルエンザの場合、国内では昨年、東北地方でいわゆるスギヒラタケによる急性脳症といったような問題がございましたけれども、そういったようなときに、私たちの研究所では、研究所の中にこもっているのではなくて、現地に行って、現地の自治体あるいは保健所の方々と実際の調査をやる。疫学調査といいますけれども、そういうようなことを行い、それとともに、感染症ですから病原体がどういうものであるかというのは非常に貴重な裏づけになってまいりますので、そういったようなものに対する調査あるいは検出というようなことをやります。

 これは、いわば実験室診断になるわけですけれども、それをもって予防方法の開発、改良に向けていったり、最終的には、そういうアウトブレークがおさまって、あるいは低いレベルに抑えられて、国民の皆様が安心して暮らせるというようなところを目的とするわけです。

 もう一枚めくっていただきますと、「我が国の感染症対策の重点の変遷」というふうに書いてございます。これは、明治のころから伝染病予防法というのがあったわけですけれども、全体の、社会的に感染症、伝染病と言われていたものをどうやって減らしていくか。特に感染症で被害を受ける子供たちの集団予防ということから、次第にそれは死亡数も少なくなりましたし、高齢者の個人予防といったような形、例えばインフルエンザの予防接種が高齢者において定期接種のような形でなされるといったようなのは、これの典型だと思います。

 それから、感染症医療も、単なる単純な、単一の感染症であったものが、それの治療あるいは隔離、例えば赤痢の治療、赤痢の隔離といったようなものがかつてだったわけですけれども、だんだん複雑になってまいりまして、基礎疾患があって、そこに加わって感染症が出てくる、それをどういうふうにコントロールするかというように複雑になってきたところがあります。

 そして、その感染症そのものも、従来見られる単純な感染症から多剤耐性菌、これは後で述べられる賀来教授が専門にしているところですけれども、そういうものによる院内感染、あるいは新しく起きてきた新興感染症、そして、油断しているとふえてくる、それが典型的な例でいえば結核に当たるわけですが、意外に周辺にたくさんあるような病気、あるいは、国外に目を向けるとたくさん病気がある。新しい病気としては、HIV、エイズ、あるいは今出てくるかもしれないと言われているような新型インフルエンザがあります。加えてバイオテロの問題が残念ながら出てきたというのがございます。

 次のは、そういうようなものが、世界的な状況で感染症そのものが変化してきて減ってきた病気も幸いにありますし、ポリオはもうすぐ、天然痘は既に根絶されたわけですけれども、一方では、左にあるような幾つかの新しい病気あるいは見落としてはいけないような病気が増加している。これに対して、やはり、旧来の感染症だけではなくて、こういうような左側に書いているような疾患について対策をとっていかなくちゃいけないというふうに変わってまいります。

 そういうような疾患は、次に世界地図がございますけれども、これに見るように、決して途上国あるいは一部の国だけの問題ではなく、至るところにこのような感染症が出てくるわけで、これは現在の交通事情をもってすればいつ入ってくるかもわからない、あるいは我々がいつ出すかもしれないということで、世界的な対策が必要になります。

 この絵の日本の地図のところには、EコリO157と書いてございますけれども、これは一九九六年に大阪の堺市を中心にして出た腸管出血性大腸菌の一大発生、アウトブレークが世界じゅうで、日本のようなきれいな国でも食品関係で大量の感染者が出るということで注目されたものです。

 次のスライドに、何か丸っこいものの周りに幾つかの言葉が書いてありますけれども、例の九・一一のときに炭疽事件というのが起きて、バイオテロというのは想定されただけの話ではなくて、現実に起こす者が出てきたということで、安全をやる者のほかに、感染症をやる者にとっても、せっかくなくした病気がこういうものにもう一回使われるということでは非常にショッキングな出来事であります。

 もう一枚めくっていただきますと、そこには「SARSの発生状況」とありますけれども、これは、全く新しい疾患がいつの間にか出てきて、しかもそれについて早くから察知するシステムが少なかった、そのためにこの山がどんどんどんどん膨らんでいって、しかし、多くの方が気がついたのは、この山がずっとふえてから気がついたので、その手前で察知するということがなかなかできなかったわけです。手前で察知するならば、この山はある程度起きたかもしれないけれども、その山を低く抑えることができたのではないか。つまり、日常からこういう病気に対するウオッチング、警戒というものが必要であるということに世界じゅうが気がついたわけです。

 次をめくっていただきますと、そういうような、SARSの事柄は後ですけれども、我が国では、伝染病予防法から感染症法、ここには感染症新法というふうに書いてありますけれども、これが平成十一年にできたわけですが、一番下のところに、これが今までの伝染病予防法と違ったところで、幾つか対象疾患を分け、サーベイランス、つまりウオッチングを強化して、なおかつ人権への配慮をした入院等々に対する考慮というのが行われました。しかし、これは平成十一年にできた法律でありますけれども、今申し上げたようなSARSあるいはバイオテロといったようなものが起きてまいりますと、やはり一部対応できない。

 ただ、それについては、できるだけ速やかに改正をするといったようなこともありますので、平成十五年にその改正が行われたわけです。このときには、地方分権化と言われていた、成立当初ですけれども、やはり大規模な、あるいは問題になるような感染症が発生したときには国が中心になって動かなくてはいけないということで、国の役割の強化、あるいは、いわゆるサーベイランスというのは、届け出られて初めてわかり、一回届けられるとそれ以上なかなか追及できないというようなことがあったわけですけれども、積極的にそれについて、もちろん公衆衛生対策上必要な場合というところですけれども、積極的に疫学の調査をしてその対策に役立てる情報を得る。ただし、プライバシーへの配慮というのは、これは私たちは十分慎重にやらなくちゃいけないわけですけれども、それを踏まえながらも公衆衛生対策をやるということになります。

 平成十八年、ついこの間には、もう一つ小さい改正、しかし、内容は大きかったわけですけれども、鳥インフルエンザ、H5N1が人に感染した場合にどういうふうな対策をとるかということも行うために指定感染症というふうになっております。

 もう一枚めくっていただきますと、そこにはIHR、インターナショナル・ヘルス・レギュレーションという言葉がありますけれども、WHOは、もう既に戦後間もないときから、こういうインターナショナル・ヘルス・レギュレーション、IHRというような国際保健規則を決めてございます。しかし、その対象になる病気は、コレラ、ペスト、黄熱、それから、なくなりました天然痘、この四種類だけであって、水際対策としての検疫、それから保健措置をするためにその規定はあるわけですけれども、発生国の経済保護といったようなことが目的になっています。

 しかし、次に書いてございますように、これは新しい感染症、エボラ出血熱、鳥インフルエンザ、SARS等々、新しいものが出てくると、これにはとても対応ができない。それから、バイオテロの問題についても、もちろんWHOが、バイオテロ対策というよりも、バイオテロが起きたときに早く感染症を検出するといったような意味での新しいものへの対応が世界的にも必要な状況になってきています。

 そして、次のところにIHRの改正の概要というのがありますけれども、国際間でも、この報告対象を拡大し、しかし、それはある特定の疾患だけではなくて、これが重大問題であるということになれば国からWHOに報告をするといったような体制、そういう常時連絡体制を確保する。あるいは、各国においてそういう体制を整備する。サーベイランスであったり緊急時の対応というのが含まれます。

 また、いわゆる公式の情報、日本でいえば、届け出られる情報だけではなくて、そのほかの非公式的な段階でも情報収集して積極的に集める。それをもってWHOがある勧告をしたり、国際間の連携、調整をするというような形の新しいIHRが出まして、これが二〇〇五年の五月、採択されていますけれども、来年の五月にこの改正のIHRが発効することになります。

 次をめくっていただきますと、これは私が改めて説明するまでもないわけですけれども、こういったような背景の中で感染症法の一部改正が行われたわけで、その中には、バイオテロ規制あるいはバイオセキュリティー、つまり、実験上の感染症という、広がったとすればこれはほかの人に迷惑を及ぼすような病原体について封じ込めるといったような形での規制。それから、感染症の、この部分はウオッチングですけれども、情報及び収集の仕方についての問題。あるいは、健康診断、就業制限その他がありますけれども、これは結核に対するもう一つの取り組み。そして、その他として幾つかの項目が出ているのは、もう既に説明されたところではないかというふうに思います。

 しかし、こういうようなものを考えるときに、次にへんてこりんな図がありますけれども、これはちょっと日本語の部分が消えてしまったのですが、公衆衛生という全体を考えなくちゃいけない部分、つまりパブリックグッドと書いてありますけれども、それから、左側のところには、それぞれのいわば人権の問題、インディビジュアルリバティーズというふうに書いてありますけれども、どっちかに偏ってしまうと大きく動き過ぎる。公衆衛生対策は重要です。しかし一方で、それぞれの個々の人権も守らなくちゃいけない。

 時には相反することがあるわけですけれども、ここら辺をきちっとよくバランスをとってやっていただくのが、例えば感染症法が新しいものになったとしても、運用上、これを実行する者は十分行政上では気をつけていただきたいし、私たち感染症を扱う者も、この辺のバランスを常に考えなくてはいけないところであるというふうに思います。

 最後の一枚でありますけれども、いろいろな方法で感染症の予防対策というのがあるわけですけれども、残念ながら、感染症を完全にゼロに全部防ぐというのは実際は無理であります。天然痘あるいはもうすぐポリオ、はしかもそのターゲットに入りつつあるわけですけれども、これは極めて例外的な疾患で、実はたくさんの感染症が出ております。また、それが自然発生的なものだけではなくて、人がつくってしまった感染症もあるわけですけれども、しかし、それの広がりをやはり最小限にするということは私たちは努力する必要があると思います。

 これはしかし、人の努力によってできることですが、個人個人の努力ではなかなかうまくいかないことが多いわけで、この場合に、法律による裏づけ、そして、感染症法が改正された、でき上がったときには、事前型行政対応というようなことが一つの目玉になっておりますけれども、できるだけ事が起きる前に対策を起こす、何か漏れ出る前に、それについてきちっとした規制をかけておく。しかし、自由闊達な研究は一方では保障しなくてはいけない。あるいは、何かSARSのように大きい病気が起きる、それが一例出たときに検出するのは難しいかもしれないけれども、少なくとも、広がりを少しでも少なくする。

 そういうようなことの裏づけができることによって、より安心な生活への向上ができるのではないかということが背景で、今回の感染症法の改正が考えられたということではないかというふうに私は考えております。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、山川参考人にお願いいたします。

山川参考人 私は、弁護士でございまして、法廷で証人を尋問したり、あるいは弁論をしたりするのにはなれておりますけれども、国会で参考人として意見を述べさせていただくというのはなれておりません。よろしくお願いいたします。

 私は、今申し上げましたように、感染症や結核治療の専門家ではございません。ただ、厚労省の厚生科学審議会の感染症分科会の委員といたしまして、厚生科学審議会の審議に参加をしてまいりました。昨年は、今回上程されております感染症予防法の改正の問題についての審議にも参加をさせていただいたところであります。

 私の法律家としてのこの審議会における役割というのは、感染症対策は、当然、患者さんに対する処置、対応を含むものでございますので、その関係で、人権保障の観点から、手続に問題はないかとかあるいは実態的な人権を侵害することがないか、そういう面のウオッチドッグとしての意見を述べ、あるいは見守ることをする、そういう役割であったのかなというふうに思っております。

 昨年四回にわたって行われました厚労省感染症分科会の今回の法律改正に関する審議を踏まえまして、以下、意見を述べさせていただきます。

 これまでは、感染症予防法、略称させていただきますけれども、一般法としての感染症予防法と、結核のみの対応を定めております結核予防法が併存していたわけでございますけれども、今回これを、結核予防法を廃止して感染症予防法に統合しよう、一本化しようとしているわけなのですが、その理由というのは、私どもが受けました説明によれば、テロ対策のために病原体等の規制をする必要がある、これは国際的な要請でもあるということでありました。その中に、結核予防法との関係でいいますと、多剤耐性の結核菌をも含めるということであります。

 それと同時に、結核予防法につきましては、これまで幾つかの問題点があるというふうに指摘をされており、厚労省もそれを認識しておられたようであります。

 一つは、結核予防法という特定の病名をつけた法律をつくり、維持しておくこと、世の中もいろいろ変わってきましたけれども、このことが結核の患者さんに対する偏見だとか差別だということを助長することにはならないだろうか。特定の病名をつけた法律の存在は適切であるのかという問題意識だと思います。と同時に、結核に罹患された患者さんの入院だとかそれから就業制限という問題も起こってくるわけでありますけれども、これは当然に、患者さん個人の人権に対する重大な侵害といいますか制約を含むわけであります。しかるところ、この結核予防法につきましては、そのような入院、就業制限等の人権制約を行うについての手続上の保障がやや不十分ではないのか、欠落している部分があるのではないかという批判もあったところであります。

 そこで、厚労省は、この結核予防法についての幾つかの今申し上げました問題点を改正し、かつ、多剤耐性の結核菌をも感染症予防法の対象にするということで、一本の法律にしようとしているわけであります。

 厚生科学審議会感染症分科会の審議におきまして、いろいろの結核医療に携わる方々の意見を伺い、あるいは岡部参考人のような専門家の方の意見を伺ったのでありますけれども、結核医療の現場にいらっしゃる医師や看護師の方々、それから結核の予防、治療に関係する学会の方々、それから地域でその最先端に立つ保健所の所長さんたちからは、非常に強い懸念と反対の声が出てまいりました。

 御承知のように、結核というのは今もなお国内最大の感染症でございます。これは私が聞いているところですけれども、年間の発症者、新規の患者さんの発生が三万人、それから死亡者が年間二千数百人、昨年は二千三百人だったそうですけれども、ということでありまして、今なお国内最大の感染症であるわけであります。WHOからは、我が国は、非常に不名誉なことに、結核に関しては、高位、中位、下位とあるんだろうと思いますけれども、中位蔓延国、相当に蔓延がまだある国、それから結核対策あるいは結核撲滅については足踏み国という評価を受けているそうでありまして、こういうことからも見られますように、結核医療の最前線にいらっしゃる方々は、今回の結核予防法の廃止、新法への、感染症法への統合について非常に強い懸念を持たれたわけであります。

 具体的に言いますと、そのことによって、我が国における結核問題というのはもう解消したのか、消滅してしまったのかという間違ったシグナルを与えることにはならないだろうか、それと同時に、感染症法には、慢性的な感染症であります結核の治療、予防等に関する規定はこれまでは存在していなかったわけであります。したがいまして、結核予防法にある結核特有の諸施策が、感染症予防法に統合されることによって消えてしまうのではないのかという強い懸念の声があったわけであります。

 これに対しまして、厚生労働省は、感染症分科会の審議の中でも、統合によって結核の予防、治療を後退させることはない、結核予防法にあって感染症予防法にない規定はすべて感染症予防法に移設し、経過措置、政省令の改正に当たってもその点に十分に留意をするというふうに約されまして、感染症分科会は、これを前提に二つの法律の統合、改正を承認したといいますか、異議を唱えないという結論になった経過でございます。

 厚労省は、その後も専門家団体、結核治療の現場の方々の意見を相当聴取されたようでございまして、今般の改正案は、そのような審議の経過を踏まえまして、結核に関する七章の二というのを新たに設けまして、五十三条の二から十五まで十四条にわたりますけれども、これが結核予防法の中からすっぽり移ってきたということになるわけですけれども、結核治療のための新たな章立てをいたしました。

 それと同時に、感染症一般の治療、予防に当たって、これまでは人権に配慮するという規定でございましたけれども、人権に配慮というのはちょっと弱い表現でありまして、これをもう少し強くして、人権を尊重するという表現に改める。それから、患者さんに対する対処、措置等の関係でも、それを必要最小限度の措置に限定することという規定を、四十八条の二でありますけれども、設けた。それから、就業制限だとか入院の勧告あるいは入院期間の延長等に、これは非常に患者個人の重大な人権にかかわるわけでありますけれども、保健所ごとに設けられた診査協議会を関与させて、その意見を聞いた上でそういう決定をしたいというふうな規定を設けてあります。

 したがいまして、今般の改正案というのは、結核予防、治療に携わっておられた方々の懸念を相当程度といいますか、ほぼ払拭するように、新たな規定を感染症法の中に設けましたし、手続的な面でも、患者の人権に対する保障、配慮ということ、尊重ということをそれなりによく考慮したものになっているのかなというふうに思います。

 そのような改正案を拝見するに至りまして、私としては、厚労省としては厚生科学審議会感染症分科会の審議を十分に踏まえた改正案をつくっていただきましたというふうに評価いたしますので、この改正については基本的には賛成を申し上げたいと思います。

 ただ、最後に一つだけ、これは大事なことなので申し上げたいと思うのですけれども、テロ対策のための病原体規制の必要があるということと慢性感染症である結核の予防、治療という問題を一本の法律に併存させることは、根本的なところで非常に自然でない、接ぎ木の感が否めないわけであります。

 例えば、患者の人権のために保健所ごとに設けられた診査協議会を関与させるというふうにあれしているのですけれども、患者さんがたくさん発生しまして就業制限だとか入院勧告あるいは入院措置ということをしなきゃいけないときに、地域の保健所ごとに設けられた診査協議会というのは、本当に全国的にいえば年に数百回も開催されなければならない、しかも、それも迅速に開催しなければならないんだと思いますけれども、そういうものが十分機能するのであろうかというような懸念は、私も持ちますし、現場の方々も持っておられるようであります。

 そういう根本的な問題はありますけれども、ここは、厚労省の改正案をつくるに当たってなされた努力を多といたしまして、基本的に賛成申し上げたいと思うのですけれども、この改正によって厚労省の結核対策ということがくれぐれも後退することのないように、年間三万人も発症し二千数百人も亡くなる我が国の最大の感染症で、こういう分野でこそトップを行くべき我が国がWHOから中位蔓延国、中程度の蔓延国と言われ、結核撲滅対策が足踏みしている国と言われるのは、非常に恥ずかしいことではないかなというふうに思います。

 したがいまして、その点が、くれぐれも治療対策等が後退することのないように、今回の改正によってむしろこれが充実するように、具体的に申し上げれば、法案制定後、政省令の改正に当たって十分にその点を留意した条文立てにしていただくこと、それから、厚労省の結核予防等の予算が減額されることのないように、厚労省としてもあるいは国会としても十分に御配慮をいただくべきではないかなというふうに思います。

 私が申し上げてよいかどうかわかりませんけれども、結核対策が後退することのないようにというようなことは、例えば両院の附帯決議等の中で御検討いただく、そういう可能性もあるのかなというふうに思っております。その点について、先生方の十分な御留意をお願いしたいと思います。

 以上で私の意見は終わりでございます。ありがとうございました。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、齋藤参考人にお願いいたします。

齋藤参考人 今御紹介をいただきました、結核予防会労働組合の書記次長を務めております齋藤でございます。私の意見は、お手元の方にお配りさせていただきましてまとめてございますので、こちらの方を御参照いただければと思います。

 初めに、財団法人結核予防会につきまして少し御説明をさせていただきたいと思います。

 結核予防会とは、昭和十四年四月二十八日、内閣総理大臣に賜った皇后陛下の令旨を奉戴し、閣議決定により設立された公益法人です。設立当初から、結核研究を基礎として、我が国における結核撲滅のため全国にわたる組織を挙げて活動してきましたが、近年においては、結核対策に関する国際協力も幅広く行う一方、結核のみならず、肺がんその他非結核性呼吸器疾患に関する学理的、臨床的研究にも力を入れているところでございます。これらの事業は、国庫補助金のほか多くの方々の善意の募金によって支えられています。

 結核予防会は、創立以来五十五年の間、秩父宮妃勢津子殿下を、次いで平成六年四月より秋篠宮妃紀子殿下を奉戴し、総裁の御指導のもとで事業を推進しております。

 結核予防会での結核に関する事業といたしましては、本部を水道橋に置き、結核の普及啓蒙活動を行っております。水道橋の同じ場所にある第一健康相談所にて、結核の専門外来を行っております。清瀬には結核研究所があり、結核の研究と日本の結核対策を担う人材の育成、国内研修や世界各国の結核対策従事者への国際研修などを行っています。同じ場所にある複十字病院では、結核病床六十床と結核の専門外来を行っております。東村山の新山手病院にて八床の結核病床があります。同じく東村山にて、低肺機能者の方の受け入れにも対応した介護老人保健施設保生の森がございます。

 結核対策につきましては、厚生労働大臣初め、皆様の平素からの御尽力に心より敬意を表します。

 本日、感染症予防法の質疑に際しまして、私に発言の場を与えていただきましたこと、まことにありがとうございます。心より感謝申し上げます。

 これまで厚生科学審議会感染症分科会におきまして御審議いただき、関係団体や関係者の御意見、御指摘を踏まえ、現行の結核予防法の内容も踏まえて、現状の結核対策の後退のないよう法案をまとめていただきましたことを感謝申し上げます。

 法案の中で、分科会で議論となりました医療費負担の問題、命令入所の問題につきましても、結核対策と関連予算は継続されていくこととなりましたこともあわせて感謝申し上げます。

 本日の私の意見は、患者や結核予防会の現場で働く者の立場で申し述べさせていただきたいと思います。

 まず初めに、法律改正に伴う問題点と改善点について述べます。

 本法案は、現行の結核対策の堅持と改善部分が含まれています。しかし、先進諸国の中で、日本の結核対策はまだ十分とは言い切れず、WHOの中でも中蔓延国となっている現状を踏まえると、改善するためにさらなる努力が求められているところであります。

 こうした点からも、まだまだ結核の普及啓蒙活動や研究は重要と言えますので、そうした対策や予算はぜひ継続していただきたいと思います。

 今回、法律改正の御審議をいただくに当たり、ぜひともこれまでの結核対策上の積み残しや今後の具体的な結核対策を決めていただければ幸いです。そして、現状の中蔓延国から脱する取り組みを進めていただきますよう、お願い申し上げます。

 具体的に申し上げますと、ハイリスクや高齢者の患者に対する健診など、財源を含めた具体的対策が今後重要になってくると考えられます。また、結核に罹患した患者の届け出制度を現場の混乱なきよう徹底して進めていただくことが必要です。多剤耐性の対策については、専門家を交えた委員会を開催して決めていただき、入退院の基準の策定や今後の指針を国の立場でお示しいただくことが求められております。

 また、法案の中で気になっている点といたしまして、第二十二条の二「最小限度の措置」の中で、「感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。」ということになっておりますが、これからの患者発見のために重要な要素である健康診断の後退や、入院医療費の公費負担の縮減につながらないように努力していくことが必要であると思います。

 法案の中でのこうした内容は、患者の権利の問題や人権の問題が大切に扱われるようになったことへの影響もあると思われます。現行の結核予防法では、同居者がいないと命令入所の対象とならず、現実には患者となったホームレス、独居老人、単身者などが対象外となっており、現場では大きな混乱がありましたが、この点につきましては、感染症法に統合されることになり、必要な者は入院勧告となりますので、大きく改善をされました。

 しかし、情勢といたしましては、今後さらに結核対策の将来にも積極的に取り組んでいく必要がありますが、法案の中身では、残念ながらそこまでは触れられておりません。

 今後考えられる問題については、この委員会の中でも触れられたとおり、結核の患者は郊外型から都市型に変わっているとの御指摘がなされたとおりです。さらに細かく申せば、都市部、地方部、農村部という形になっていくと思われ、今後は大きく変わっていくことが予測されます。

 具体的に申しますと、都市部では、結核患者が多い地域として東京には山谷地区、大阪にはあいりん地区があります。そこでの対策としては、ホームレスなどの対策が急務となっています。都市部や地方部では、外国人、単身者や独居老人の対策が必要となります。農村部では、患者の減少により、現在の結核病棟での対策がとれなくなりつつあります。

 このことは、既にこの委員会の中でも、結核病床の減少とその実態について御議論されたことからもおわかりいただけると思います。解決策の一つとしては、一定の条件を満たした病院での病室単位の結核病床の確保が必要になってくると思われます。

 結核の集団発生はこれまでも常にありました。一九九九年、結核緊急事態宣言が出されたことは記憶に新しいところであります。結核対策では集団発生の対応が非常に重要なことは言うまでもありません。かつて結核は亡国病とまで言われ、空気感染による拡大の対策の難しさということもございます。感染症法に統合されても、患者数としては九割近くは結核患者であるという事実は変わりません。

 結核の集団発生の対策としては、デンジャーグループと言われている学校の先生や医師、看護師などに対する対策、六十五歳以上のハイリスクグループへの施策としては、老人保健施設などへの健診を推進する取り組みがなされています。

 結核集団発生の対策としてさらに早急な対応が必要と思われることは、外国人労働者への対策です。日本での外国人結核患者はまだ三%と、欧米の約半数と比べると少ないのですが、今後、労働市場の開放が進んでいくことや、現状でも、請負労働者の中には多くの外国人労働者がいることを考えるならば、健診対策を進めるなど具体的措置が必要な時期に来ていると言えます。不法滞在者への対策も含め、外国人結核患者への対応をぜひ進めていただくようお願いいたします。

 次に、予防内服と予防対策の問題について述べたいと思います。

 現状では、結核に感染しても、発病していない時点で発見されれば、一般的に予防内服という治療を行っています。厚生労働省でも、生活習慣病の対策として、健康維持のためにも健診を拡充して、メタボリックシンドロームなどに対する予防対策が重要だと言われておりますが、結核も予防が大変重要です。法案では、薬の副作用の問題に対応されていることも含め、健康保険での対策については考慮をされています。しかし、残念ながら結核は弱者の病気であること、予防内服の内容も今後は変わっていくことも考慮すると、患者の負担の問題をぜひ軽減していただきたいと思います。

 現行の法律三十四条、三十五条の中では、二十九歳未満はゼロ%の負担となっています。この年齢を決めた昭和六十年代と現在では実態が大きく変化しています。ヒドラジッドの副作用出現率が三十五歳を超えるとやや高くなるので、注意を喚起しつつ、特に発症のリスクの高い者への化学療法ができるよう対策をとっていただきたいと思います。現状での年齢制限は、法案改正に合わせて見直していただき、現状に即した形に変えていく必要があると思います。結核の予防をする上で非常に重要な分野が法律には書かれておりませんので、ぜひとも予防に必要な対策の継続と拡充をお願い申し上げます。

 乳幼児の結核対策についてですが、法案の改正後も、乳幼児のBCG接種は定期接種としての期間が生後三カ月から六カ月と短くなっております。しかし現実は、乳幼児なので、接種を受けようと思っても病気であったり未熟児などの理由でこの期間に受けられないと、その後は任意接種となってしまいます。せめて十二カ月までは定期接種としての扱いとする方が現実的な対応ではないかと思いますので、ぜひ御検討いただきますようよろしくお願いいたします。

 さらに、診療報酬の問題と結核のわかる医師の養成についてです。

 現在、医療の現場では、医師不足、看護師不足が深刻な問題となっております。結核では、結核のわかる医師が急速に減少している問題があります。医師の養成は急務となっています。しかし、専門医を養成することは難しいことですので、医学部の教育課程の中で、テストに出題することやカリキュラムに入れるなど、無理なく施行できる方法としていただきますようよろしくお願い申し上げます。

 最近の産科医、小児科医の不足は、これまでの診療報酬の問題もあると考えられます。結核のわかる医師の減少も、診療報酬が低いという問題を避けては通れません。とりわけ、結核病床が国立、公立などが圧倒的に多く、民間病院が極めて少ないことから見ても明らかです。診療報酬自体の引き上げも望まれています。

 本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。今回の法律改正が今後の結核対策をさらに前進させ、安定化させていくことにつながりますよう、格別な御配慮をいただきますことをお願い申し上げ、私の意見を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、賀来参考人にお願いいたします。

賀来参考人 東北大学の賀来でございます。

 私は、東北大学で感染症の診断、治療、また感染症の対策に対応しているといいますか、臨床現場の医師でございます。

 きょう、先生方にぜひお話ししたいことといいますか、御意見を申し上げたいことがございまして、済みません、非常に多い資料なんですが、三つも用意してまいりました。ぜひ先生方に少し見ていただいて、現場の医師の危機感、あるいはぜひ要望したいこと、こういった感染症の新しい法律をつくっていただく中でぜひ御審議いただきたいこと、なお加えて、将来にわたって感染症の重要性をぜひ御認識いただきたいということで、まず、このような機会をいただきましたことを改めて感謝申し上げたいと思います。

 私は、長崎大学の出身でございまして、ここには私の大先輩もおられますが、ずっと感染症の診療に携わっておりました。

 この三つの資料を取りまぜながらお話ししますので、先生方、申しわけございません、時々資料の一から参考資料に行きましたり、資料の二に行きましたりすることをおわび申し上げたいと思います。

 まず、私の意見としては、このパワーポイントの六枚つづりの資料をちょっと見ていただきたいというふうに思います。本日、三つのポイントで私の意見を述べさせていただきます。まず、資料の一―二にございますが、感染症の危機管理がいかに重要であるかということを現場の医師として強く訴えたいと思います。

 資料の一―三にありますように、実は感染症につきましては、先ほど岡部先生もお話しになりましたように、さまざまな大きな問題が出てまいりました。新たな病原体の出現といいますのはSARSやインフルエンザであります。私も、WHOの要請で、SARSの対応でマニラに行ってまいりましたけれども、本当にパニックのような状態でございました。

 また、環境問題というものがございますが、これは、私たちが日本で経験したことがないような感染症も、今日本の中に入りつつあります。先日私も、救命救急部で劇症型の髄膜炎菌感染症の患者さんの診療に当たりました。ほとんど意識がなく、出血傾向があり、本当に重篤な患者さんでしたが、ようやく一命を取りとめたんですけれども、全く感染経路がわかりません。あるいは、そこに書いてありますように、バイオテロも非常に大きな問題であります。今回の感染症の新しい法律の中にバイオテロ対策ということを盛り込んでいただいたのは、非常に私たち現場にとってはありがたいことかと思います。

 また、薬剤耐性株、先般あるいは最近でも、東京あるいはいろいろな大学の多剤耐性緑膿菌の問題が取りざたされておりますが、これは、実はそこにも書いてありますように、病院の中だけではなく、もう既に市中、すなわち地域社会の中にどんどん広がっていっているような様相があるわけであります。すなわち、そこに書いてありますが、感染症の危機管理の範囲は、私たち現場の医師が病院の中で対応することをもうはるかに超えてしまっている。そこに市中感染という言葉が書いてありますが、これは地域社会で起こってくる感染症であります。地域社会で起こってくる感染症と病院の中で起こっている感染症がもう区別がつかなくなってきているということでありまして、危機的な状況にあると言っても過言でないと思います。

 一―五にSARSの問題点をお示ししました。

 実は、そこに黒く塗りましたのは、SARSという病気は、もちろん先生方御存じのように、中国の広州から世界的に伝播したわけですけれども、遠く離れたカナダでは、何とこの黒でお示ししましたところは職業感染、すなわち、これは医師や看護師が施設の中で、職場の中でかかってくる職業感染の率が八割を占めていたということでありまして、こういうことで、感染症に対して、多くの臨床に携わっている者たちは今や恐怖感を抱いているというようなところがあるわけであります。

 また、資料の一―六にはバイオテロのシミュレーションをお示ししました。

 私も、この二〇〇一年、ちょうどバイオテロが起こったすぐ直前の学会、アメリカの学会でしたけれども、そこに書いてありますように、例えば、ショッピングモール内で一万人の方がいて九千名の方が換気システムを通じて炭疽菌を吸い込んだ、そして不幸中の幸いに、テロリストが犯行声明を出したので抗生物質を飲むことができたわけですけれども、それでも実は、次のページにありますように、五千名の方が入院する、そして、重症で人工呼吸器をつけなければいけない患者さんは何と二千六百名に相当する。

 そして、資料の一―八に書いてありますように、NBC兵器の中で、核兵器一メガトンの核爆弾で死亡する方が約五十万から二百万と言われていますけれども、百キロの炭疽菌の芽胞をまくという行為をしますと、何と百万から三百万という死亡に当たるということで、このNBC兵器の中でもバイオテロというのは極めてインパクトが大きいものであります。

 また、先ほど岡部先生も言われましたが、耐性菌の問題、これはアメリカでもイギリスでも大問題になっております。先生方にもぜひ御記憶いただきたいのが、市中感染型MRSAと言われるもので、実は、これは、今まで私たちが病院の中で見ていたMRSAとは全く遺伝的な背景が違う菌が、何と市中にまで広がっている。先日のCNNの放送では、アメリカでは、小中高の学校がこの市中感染型の感染のために閉鎖になったという報道がございました。

 また、資料一―一〇には、私の母校であります長崎大学でも院内感染で五人死亡したと。長崎大学は、実は全国的にも感染症の専門家が最も多いところであります。そこですらこの耐性菌の問題を防ぎ得なかったということでありまして、私が今東北地方でネットワークをさまざま組ませていただいておりますが、資料の一―一一にありますように、そこの左の方に小さく書いてありますが、実はここが非常に大きい問題でございます。介護や老健施設からもこの耐性菌が出てきているという状況であります。すなわち、今やもう病院感染という言葉が死語に近くなってまいりました。

 先生方のところに一―一二にお示ししておりますように、医療関連感染、すなわち病院だけではなくクリニックや診療所、さらに長期療養施設まで含めた形での感染症の問題が広がっているということであります。

 次の資料を見ていただきたいんですが、実は感染症といいますのは、もう御存じだと思いますが、他の疾患とは全く異なります。これは原因微生物が伝播するからであります。例えば、脳卒中がうつったとか心筋梗塞がうつってしまったという話は聞きません。しかし、感染症はうつります。そして、すぐには症状が出ませんので、わからないうちに感染の拡大が起こってしまうという事実があります。

 すなわち、今、先ほども申し上げましたが、この病院の中で見る感染症と社会での感染症はもう壁がなくなった。資料一―一五にお示ししておりますように、感染症はすべての壁を越えます。私たちは、さまざま、先生方も御存じのように、診療科の壁、内科と外科、産婦人科、それぞれの考え方は違うかもしれませんが、実はもうそういうことを言ってはおれない疾患であります。すなわち、ここに書いてありますように、個人の疾患を越え、社会全体のパニックにつながる、すなわち社会全体の共通リスクとして、私たちは、現場で対応している者は本当に極めて大きな問題として受けとめているわけであります。

 そういった中で、今度、先生方が今審議をなさっておられます新感染症予防法が改定されるわけでありますけれども、これは非常にありがたいというところもありますし、現場の医師としては少し難しいところもあるというところを次にお話ししたいと思います。

 資料の一―一七ですが、先生方のお手元、前後して申しわけございません、厚生労働委員会の参考資料というところも見ていただきたいんですけれども、実は感染症新法というのは、感染症を一類から五類まで分類して、そして対応していくものであります。そういう考え方は非常に重要であります。しかし、現実に感染症を診断するのは現場の医師であります。その医師が検査を依頼するときに、検査能力には、実は医療現場には限界がございます。

 そういった意味で、そこの一―一七には、医療施設において検査能力の限界があるので、このようにさまざまな疾患を分類化することは重要なんですけれども、うまく届け出ができないかもしれないということがあります。ですから、そういう意味では、国や地域自治体の協力が必要不可欠でありますし、後でもお話し申し上げますが、各ブロックに国の研究施設を置く、例えば東北、北海道、関東、近畿というように、そういうふうなところに検査センターを置くということが重要になってまいります。

 また、資料の一―一八にありますように、指定医療機関でいろいろな診断あるいは治療を行うんですけれども、そこでのやはり専門家の数が決定的に少ないということが問題として上げられます。そういう中で、トレーニングも受けていない、また、全く見たこともない感染症もあり得るということで、そういう意味でも、ここでも書いてありますが、各ブロックに感染症のセンターを置く必要があろうかと思います。

 また、次のページをめくっていただきますと、一般の医療機関、これは専門機関でない場合も、検査が十分に行えない、また専門家が少ないということで、良質かつ適切な医療の提供が行い得る状況にはないのではないかということを、現場の医師としては非常に懸念をしております。

 一方、バイオテロ対策がこの感染症法に取り入れられたということは、危機管理の面からも非常に重要なことだろうと思います。ただ、多分、法案の中でも見ていただきたいと思うんですけれども、病原体の取り扱いそのほかについて、かなり厳しい基準になっております。そういったような基準を臨床現場に当てはめますと、かなり無理があるということも事実でございます。例えば、多剤耐性結核菌の場合は、結核菌を診断した後、かなり時間を置いてわかってくるものでありますので、そのあたりの取り扱いをどうするのかということもこれから詰めていかなければなりません。

 最後に、今のような危機的な状況の中でぜひ先生方にお願いしたいことを次に長々と書いてまいりました。資料の一―二二にありますように、我が国におきましてはさまざまな課題がございます。先ほど申し上げました、感染症の専門家が極めて少ない、また、岡部先生また厚生労働省あるいは国立医療センターの先生方、非常に頑張っていただいているんですけれども、もっとその先生方の力を集約した危機管理局といったものが必要になります。

 そういった課題の中で、四つ上げさせていただきましたけれども、まず一番は、感染症危機管理センター、これはもう必須であります。

 アメリカやイギリスは、もう感染症対策は国家の危機管理として特別に危機管理センターを置いております。感染症危機管理局と言ってもいいものを日本でも絶対につくるべきだろうと思います。そして、今、先生方御存じのように、がんセンターが地域にありますが、なぜ感染症センターがないんでしょう。東北感染症センター、北海道感染症センター、関東感染症センターがあってもいいと私は思っております。

 次に、ここにもありますように、人材の育成も非常に重要であります。

 我が国の感染症の専門医の数は、ことしの十月で八百三十九名であります。アメリカの感染症医は六千名であります。七倍の開きがあります。これだけではありません。さまざまなところで感染症の専門家が圧倒的に少ない。すなわち、大学の中に感染症科や感染制御科というものをつくり、これは文部科学省にお願いをしなければなりませんが、そのようなことを通じて人材の育成を図っていかなければなりません。

 また、次の資料ですけれども、地域ネットワーク、これも非常に重要になります。

 これも後で見ていただきたいんですが、資料の二として、十月二十一日の日本医事新報に、私たちが今東北地域で取り組んでいる地域連携の記事が載っております。一枚めくっていただきますと、まさにその最初のところに、「一つの施設だけで対応する「院内」感染対策から、感染症を地域全体の共通リスクとして捉え、各施設が「連携」して取り組む体制へ。」すなわち、感染症のパラダイムシフトが始まっているということでありまして、この地域ネットワークをいかに充実させていくかも、先生方の力をおかりしてぜひ充実させていかなければならないことだろうと思います。

 そして最後に、リスクコミュニケーションという言葉であります。

 これももう御存じの先生方も多いと思いますが、これが今最も注目をされております。WHOでも、新型インフルエンザの場合に、そのリスクをどう国民の方に正しく伝えることができるかということがリスクコミュニケーションであります。これを正しく伝えなければパニックになりますし、感染症に罹患しているということからの差別や偏見や診療拒否にもつながってまいります。ぜひ、この感染症に関する情報の共有化をしていただきたい。それをリスクコミュニケーションという言葉で言っております。

 私たちは、東北地区で小学校の子供さんを対象にキッズかんせんセミナーというのを行っております。子供さんたちに集まっていただいて、微生物を見ていただいたり、お母さんや自分たちの鼻の中の菌を見ていただいたりしています。

 ぜひ、現場の医師として、危機的な状況にあるということ、そして、この感染症新法が先生方の審議によってさらに充実したものになることを願っております。

 最後に、WHOは、「我々は今や地球規模で感染症による危機に瀕している。もはやどの国も安全ではない」という警告を、一九九六年、もう十年前に出しております。感染症の危機管理システム構築は、我が国における、国家における最重要課題だろうと思います。

 宮城県では、御存じのように、宮城県沖地震というものに非常に力を注いでおります。ただ、今言えることは、もし感染症が伝播したら、もうどこからも救援することができない、すなわち、感染症の場合の広がり方というのは災害を超える可能性があるということをぜひ最後にお伝えして、先生方、これからこの感染症新法の御審議に当たっていただきたいというように思います。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 次に、川本参考人にお願いいたします。

川本参考人 バイオハザード予防市民センターの川本と申します。

 発言の要旨につきましては、本日、このクリーム色の表紙の配付資料の表紙にまとめております。それに沿って意見を述べさせていただきたいというふうに存じます。

 本日まで、病原体の取り扱いやこういう病原体を取り扱う施設の立地については、何の規制もないというのが現実であります。この二十年余り、国内において、こういった施設の計画地周辺の市民たちが、病原体を扱う施設、以下バイオ施設というふうに申し上げますが、このバイオ施設から病原体等が漏れることによる生物災害、いわゆるバイオハザードを危惧し、バイオ施設の立地規制や実験の差しとめ、安全情報の開示を求めて、全国各地でさまざまな形で取り組んできました。

 市民が心配したとおり、病原体の保有管理状況がずさんな実態にあったということは、一昨年厚生労働省が実施しました全国調査でも明るみに出たところであります。

 私たちバイオハザード予防市民センターは、そうした市民活動に取り組んできましたさまざまな専門分野を持つ市民を中心に、九九年に設立され、各地の市民運動の支援とともに、バイオ施設の実態の調査、法規制調査などに取り組んでまいりました。その成果として、昨年、トヨタ財団から助成を得まして、英国へも調査に行きました上で、バイオハザード対策の社会システム構築の提言活動報告書をまとめたところであります。

 今回の感染症法改正案につきまして、私たちは今年の四月に、お手元の参考資料の一にありますが、当センターの見解を表明してまいりました。本日は、私たちの今日までの取り組みを踏まえまして、バイオハザードの予防、そして人格権を初めとする市民的権利の確立の立場から、法改正案について、大きく三つの点について意見を述べさせていただきたいというふうに存じます。

 まず一点目は、この間の国際動向、世界保健機関、WHOの規定に合致した法規定をということであります。

 感染症法を可決いたしました平成十年の国会の附帯決議で、世界保健機関その他の国際機関等による新たな基準等が定められた場合は、速やかに適切な対応を行うこととされ、当時の厚生省の指針などでもWHOとの連携がうたわれております。しかし、施設の安全の管理という面において必ずしも適切な対応や連携がとられてこなかったということは、市民の側が再三指摘してまいりました。

 この間、WHOの決議など、関連するものとしては三つの文書が注目されます。一つは、二〇〇四年のWHOのガイドライン「病原体等実験施設安全対策必携」の第三版、そして、二〇〇五年のバイオセーフティープログラム、第五十八回世界保健総会決議の三つであります。後者の二つにつきましては、その一部を和訳したものを本日お配りしております参考資料の二に記載をさせていただいております。

 これらの文書は、大きく言いますと、実験施設が周辺住民に対する生物災害、バイオハザードの発生源となる可能性があるということ、そして、その観点から、実験施設の周辺地域へのバイオハザード対策を充実すること、そして、そのことによって周辺住民の安心を得ることが大切なんだということであります。そして、そのためにもWHOの勧告、指針を遵守することを要請しております。

 具体的には、お手元の資料の五ページ目のところですが、このバイオセーフティープログラムの目標のところに、「事故または病原微生物の不適切な取扱いや使用法により発生する病気の広がり」をバイオハザードの中心的部分としております。

 また、資料の七ページ目、ここでは、第五十八回世界保健総会決議でありますが、先ほどからお話が出ておりますSARSをめぐる事態を受けて、バイオセーフティーの目的として、(四)で、「実験室感染の発生とその結果感染が地域社会に広がる可能性を最小限に抑えること」が加盟国への要請事項の一つとして決議されております。そして、その上の部分の(一)では、このバイオセーフティーの実現のためにも、日本を初めとする加盟国にWHOの勧告、指針を遵守することを要請しました。

 こうした点を踏まえて、今回の法改正に当たり、これらに合致した法規定内容とすることが当然求められます。しかしながら、今回の改正、生物テロの未然防止、感染症の分類の見直し、結核予防法を廃止して感染症法に統合するという三つが目的とされておりますが、WHOの勧告、指針、決議にある、先ほど指摘しましたような、周辺地域への生物災害、バイオハザードを予防する、そういう視点が非常に薄いなということを一つまず指摘させていただきたい。

 それではどうするかということですが、そうした地域社会への危険との関係で、次の点が確認される必要があるのではなかろうかと思います。

 まず、法案の基本理念の第二条、人権の尊重であります。この人権には、患者のみならず、周辺住民の人権も当然含まれるべきではないでしょうか。そして、周辺住民の人権の尊重の観点からも、施設の安全性に関する徹底した情報公開と説明責任が住民に対して果たされなければならないということです。

 したがいまして、法案の第十六条、情報の公開の対象には、感染症情報にとどまらず、施設の安全管理の実態も含まれなければならないということになります。さらに、施設から外部への感染の予防、周辺住民の安心、安全の確保の観点から、実効性のある施設基準が策定されなければならないということであります。これについては、大きな指摘事項の三点目で触れさせていただきたいと存じます。

 そして、先ほどの国会決議との関連からも、そもそもWHOの勧告、指針などを本法案が満たしているのかどうか、これは検証されなければならない。こうした点については、審議の中で皆様方に明らかにしていただきたいというふうに存じます。

 次に、大きな二点目といたしまして、生物テロ対策を感染症法に含めること、これの矛盾があるのではなかろうかということであります。この点については、三点ほど触れさせていただきたいと思います。

 まず一点目は、バイオハザード、生物災害と生物テロの異なる概念を一つの法律に押し込めることに無理があるのではないかということであります。

 バイオハザードというのは、病原体を取り扱うことを任務としている個人や機関における事故や規則違反等により非意図的に発生するものです。一方、生物テロは、ある個人や組織が意図的、作為的に実行する反社会的な犯罪行為です。全く違う概念を一つの法律に押し込めることに無理があるのではないでしょうか。

 二点目は、そのことと関連して、情報公開への対応の違いということであります。

 住民とのいろいろなトラブルの中で、一つは、東京都新宿区の国立感染症研究所、この実験をめぐり周辺の住民たちが実験差しとめを求めた裁判の高裁判決で、この判決文の中で、「適正、円滑に安全管理業務を遂行するためには、その実情を地域住民を始めとする国民一般に広く情報公開等して、その理解と協力を得ることが最も重要であると考えられる。」と確定判決でされました。情報公開は最も重要なんだというその意義を説いております。

 一方、生物テロ防止の観点が優先されるならば、地方自治体、保健所、住民への情報が遮断され、住民への説明責任を果たすというのはなかなか困難な状況になるのではないかと存じます。今回、衆議院の調査局が作成しました法案の資料の八十八ページにも記載がありますが、武蔵村山にある感染研のP4施設が、住民や自治体の反対でP4レベルの実験が行えない状況にある。

 地元の理解を得るためには、安全管理に関する情報公開は一つの大きな要素です。生物テロの防止の観点を優先する場合、住民合意を得ることは実は困難じゃなかろうかということを言わざるを得ないと思います。

 そして三点目は、感染症法の目的との矛盾があるんじゃなかろうかということです。

 自治体や保健所、住民への情報が遮断されることにより、災害時の迅速な対応に支障を来すものと考えます。これは、調査局の資料の二十八ページにおいても、必要不可欠な連携協力体制の構築への配慮が本法案には欠けるのではないかと指摘されているとおりであります。

 感染症法は、実験施設内感染にとどまらない、広い意味での生物災害、バイオハザードの発生予防及び被害の拡大防止を目的とし、人権の尊重を基本に推進するものであります。その点で、病原体の厳しい管理、監視、情報の秘密化などを含む生物テロ対策と、そういう面では両立する面はないんじゃなかろうかと思います。生物テロ対策法が必要であれば、本来は、厚生労働省ではない別の省庁で、感染症法とは別の定めにすることを検討すべきではなかったかということを申し上げたいと思います。

 最後になりますが、大きな三つ目の指摘事項として、実効性のある施設基準の策定であります。

 病原体等の施設の基準については、法案第五十六条の二十四関係が厚生科学審議会感染症分科会で審議されております。しかし、この議事録を見る限り、実験者や施設側の立場からの意見しか見受けられず、市民、周辺住民の視点が不足をしております。

 今までの市民運動の状況を踏まえて、二つのことを指摘させていただきます。

 一つは、施設の立地の問題です。

 万が一漏出しても被害が出ないためには、その場合の重要な点は施設の立地であります。WHOの九七年の保健関係施設と安全性では、実験施設は、できる限り患者や住民のいる地域、公共の地域から離れて立地されなければならないとされています。この場合の実験施設は、施設の中の実験室を意味するとともに、一つの実験施設という建物あるいは複数の建物群を意味するものであります。

 このWHOの規定も含めて、現況では、都市計画法、建築基準法上、何の規定もなく、住居専用地域、人口密集地でも立地が可能となっている状況を考慮して、立地規制あるいは環境影響評価の実施なども含めて検討する必要があると考えます。

 二つ目は、耐震安全性の問題です。

 バイオ施設においては、耐震安全性が安全性の最大の目安の一つとされます。建築基準法で規定する耐震安全性は人命の安全性のみで、病原体等が漏れ出ないことを目標とするものではありません。

 阪神・淡路大震災の経験を踏まえて、九六年に当時の建設省は、官庁施設の総合耐震計画基準で、病原体を扱う施設に最も厳しい耐震安全性を要請いたしました。そこでは、こうした病原体を扱う施設については一・五倍の耐震強度を持つ、そうした安全性を求めております。これは既存施設にも求められることにより、この基準との整合性というのを、今後具体的な施設を考える場合、十分検討されてしかるべきというふうに考えます。

 以上、大きく三点を指摘させていただきましたが、これらについては、今後、法案審議の中で、皆様方、ぜひとも明らかにしていただきたいと存じます。

 以上で意見の陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

櫻田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水鴻一郎君。

清水(鴻)委員 自由民主党の清水鴻一郎でございます。

 参考人の先生方におかれましては、大変お忙しい中お時間を割いていただきまして、当委員会のために貴重な御意見を賜りましたこと、心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

 いろいろ話をお聞きして、感染症の恐ろしさといいますか、それに取り組むこれからの日本の体制ということに対しても、大変、新しい法律をつくっていく中でも、どういうふうにすれば感染症と闘っていけるのかということを改めて考えさせていただきました。

 日本の三大死因といいますと、いわゆるがん、あるいは虚血性の心疾患、脳卒中でございます。しかし、これは二十一世紀、今日を迎えて、病気の原因の究明やあるいは治療法というのは随分飛躍的に進歩してまいりましたけれども、感染症に関しましては、一つの感染症が克服できたかなと思いますと、新たな病原体による新しい感染症が発生するということで、人間にとりまして永遠の闘いが続くのかなというふうに感じている次第であります。

 そういう中で、私も脳神経外科の医者として手術をしてまいりましたけれども、先ほど賀来先生ですか、劇症髄膜炎を経験されたということもありますけれども、本当に、手術がうまくいっても、感染症の合併症のために大変困難をきわめる症例に随分遭遇しました。

 そういうことも含めて、感染症の法律が、これから少しでも人間の命が守れるように、そして安全に寄与できるようなものになってもらいたい、そういう思いを込めて質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、岡部参考人にお伺いしますけれども、今回の改正の大きな柱の一つに、病原体等の管理体制の確立ということがあります。我が国におきましては、現時点では適正な管理のための仕組みがほとんど、なかなか存在していない。専ら研究機関などの施設において自主的な管理がされておるという状況だと伺っておりますけれども、テロの未然防止という観点から、極めて危ういような状況ではないのかなと思います。

 そこで、岡部参考人にお伺いしますけれども、現在の我が国における病原体等の管理の状況、あるいは研究機関等において、適正な管理のための通常どのような体制が整備されているのか、また、今回の改正によってどのようなことが導入される仕組みで、十分それが機能するのかどうかということについて御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

岡部参考人 お答えいたします。

 法律的な規制ではないんですけれども、例えば、感染症研究所の中では、取り扱い基準あるいはバイオセーフティーに関する規定を設けています。それについて、例えば、新入職員に対する研修、あるいはそれを受けないと実験室には立ち入れないというような規定等々もございます。それから、学会レベルでは、例えば日本細菌学会というようなところでも、病原体の取り扱いに関する規定をそれぞれ自主的につくってはおります。

 しかし、実際にそういうものに対してどういうふうになされているかというのは、やはりすべて自主的判断にゆだねられているので、中には十分な設備ではない、あるいは、通常の病原体を取り扱うのには問題がないけれども、高度危険性を伴うような場合にはやはりそれなりの設備が必要であるといったようなことの必要性が今回の改正に結びついていくというふうに思っております。

 よろしいでしょうか。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 テロ対策に十分対応できるような体制になるように、この法律は、あと政令、省令といろいろあると思いますので、具体的に管理体制が万全になるようにということで、これから体制を整えていきたい、いかねばならないというふうに思います。

 続きまして、感染症というものは恐ろしい、脅威であるということは、もう先生方の御意見から当然でありますけれども、今社会で大変注目を集めていますのが新型インフルエンザの問題だろうと思います。

 岡部先生も、たしか昨年の暮れですか、雑誌にも、新型インフルエンザの発生の予測というのは不可能なんだというようなことも書かれていたのを読んだ記憶がございます。しかし、新型インフルエンザといいましても、一般の国民の方々にとりましては、一体何が新型で、どうしたらかからないように予防できるのか、あるいは、もしはやった場合には、流行した場合にはどんなことを準備しておけば少しでも対策になるのか、大変わかりづらい部分があると思います。

 今回の改正によりましても、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報を新聞や放送、インターネットあるいはその他の適切な方法により積極的に公表するということが第十六条にうたわれています。

 ほかのインフルエンザでも、また鳥インフルエンザなんかも最近すごく言われていますし、人間への感染も実際報告もありますし、そういうことも含めて、私は京都府の府議会議員をしておりまして、京都府で鳥インフルエンザが発生して、大変悲惨な状況がありました。

 実際、タミフルを服用して、そして京都府の職員の方が対策に行かれましたけれども、やはり後には数人の方から抗体が出たということもございますし、そういうことも含めて、これからそういう公表に対してどのような取り組みが、今回の法律で情報提供ができるのか、そういうあり方について、特に岡部先生は感染症情報センター長という立場でありますので、ちょっと引き続きで申しわけございませんけれども、御意見をいただきたいと思います。

岡部参考人 お答え申し上げます。

 現在でも、情報の公表というのは、もちろん個人情報は十分に注意するわけですけれども、感染症のサーベイランスの中でいただいたものについては、きちんと定期的に情報提供をしております。

 それができるようになったのは、平成十一年の感染症法が規定されて、サーベイランスというものが法律的に行われるというようなところからでき上がっているというふうには考えております。

 しかし、新しい感染症であったり、あるいは感染症対象外のものについては、自主的に行うことはできますけれども、実際には情報の収集や何かが難しいということがあります。

 それで、例えば、新型インフルエンザはまだどこにもないわけですけれども、そういうものが発生したときの検知、これはむしろ情報の公表というより収集、手前の段階での情報をきっちり集める必要があるというふうに考えております。それが、一つはサーベイランスのやり方、仕組みについて、積極的に検知をする、あるいは、この改正の中にも盛り込まれてはいるんですけれども、すべて診断がついてから届けるということではなくて、その手前の段階のある一定の症状を持ったものについてサーベイランスを行う。これはSARSの最初のときがそのように行われたわけですけれども、そういうような仕組みで早く検知をするというようなことがこの改正案には盛り込まれているというふうに思います。

 公表に関しては、恐らくは私たちのところがその公表を担当することになると思いますけれども、これについて、早く公表するためには、例えば、ITの活性化であるとか、あるいは公表のためのグループの問題、それから公表のためには、先ほど賀来先生のお話にも出てきたんですけれども、いわゆるリスクコミュニケーションとしてどういうものが適切な情報であるのかどうか、適切というのは、あくまで一方的に出すということではなくて、受け取る側にとって何が重要か、それからそれをやることによってきちんとした情報提供になるかどうか、そういったようなことについても理論的な研究が必要であろうというふうに思います。

 この改正案の中で、そういうような情報についても触れてあるというのは、そういう意味で私は歓迎できると思うんですけれども、運用についてスムーズにできるように、ぜひ御検討いただければというふうに思います。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 確かに、情報の提供というのは、大変ある意味では難しいものもあると思います。

 つまり、情報だけが垂れ流されると非常にパニックに陥ると思いますし、適切な情報を適切なタイミングで提供する、しかし、そのことは受け取る側と情報を流す側の知識あるいはいろいろなものの差もありますし、大変難しいなと。京都でも、SARSの台湾のお医者さんが来られて、各食堂で食事をされたりあるいはホテルに泊まられた。その後、風評被害も含めて、ホテルがつぶれるとかあるいはその食堂がつぶれるというようなこともある。

 つまり、そういう意味では、正しい情報が正しい形で提供されるということが今回非常に大切だと思いますので、その辺の仕組みを、今回法律がもし改正されましたら、そういう仕組みがしっかりできて、いわゆる風評被害などが起こらないように、しかしながら、適切な情報が国民に行き渡るようにということがなされる必要があるのかなというふうに感じている次第であります。

 次に、感染症対策につきましては、発生の予防あるいは発生の拡大の防止のために必要な手だてを打つことはもちろん当然でありますけれども、過去にいわゆるハンセン病あるいはエイズなどに見られましたように、いわれのない差別や偏見があったという反省に立ちまして、人権の尊重という観点から、対策の実施が今回の一つの柱でもあるわけでございます。

 感染症対策にかかわる保健所あるいは行政機関、あるいは今度、診査協議会ですか、そういうものもできるわけでありますけれども、患者さんの治療にかかわる医療機関等の現場における人権をどう尊重していくのか、あるいは人権教育というのが大変重要であると考えますけれども、山川参考人から、人権教育等について、どのようにしていけば実際機能するのかということも含めて、御意見をお伺いしたいと思います。

 よろしくお願いします。

山川参考人 お尋ねの件でありますけれども、これは、私は必ずしも人権教育の専門家ではございませんけれども、厚生労働省がやはりリードをとっていただきまして、国、地方自治体それから保健所等が協力した上で、いろいろの手段があると思いますけれども、印刷物あるいは放送、テレビ、さまざまな媒体を使って適切な教育をやっていただく必要があるというふうに思います。

 特に、各保健所に設けられます診査協議会、ここには法律の専門家が必ず一名入るようにというふうに今回考慮、手当てをされているようでありますけれども、地域における、地域社会、地域住民に対する各保健所からの広報だとか周知徹底というのはやはり大事なことではないのかなというふうに思います。

 保健所は、地域の予防接種のセンターでもあるわけでございまして、子供、幼児を連れた母親たちに接触する機会も多いわけであり、やはり保健所が一番最先端にあると思いますので、そこを通じての周知、広報。それから、その上にと言うと変ですけれども、大病院あるいは地域の医療機関、ここもその役割を担っていただく必要があるのかなと思います。

 厚生労働省が、医師会だとかそれから自治体等と協力して、さまざまなメディアで御検討をいただく必要があるのかなというふうに思います。

 以上でございます。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 先ほど、新型インフルエンザについて触れさせていただきましたけれども、過去のパンデミックによる死者の数などを考えますと、いわゆるスペイン・インフルエンザでは四千万人以上の方が亡くなったというような報告もあります。そういうことを考えてみましても、感染症対策というのは、先ほど賀来先生がおっしゃいましたように、まさに国や地域における健康危機管理の問題と言っても過言ではないと思います。

 今回の改正の中で、第十六条の二といたしまして、厚生労働大臣及び都道府県知事は、感染症の発生を予防し、また蔓延を防止するために必要な措置を定め、医師その他の医療関係者に対し、当該措置の実施に対する必要な協力を求めることができるとの規定が入っているわけでございます。

 地域における感染症に対する危機管理体制の現状及び今後のあり方、そして、あわせて今回の改正案でその必要性ということについて、先ほど、本当に専門家も少ないし、いわゆる病院、社会、すべての壁がない、そういう状況をお伺いして、確かにこれは全体の医師不足にもかかわるかと思うんです。日本ではいろいろな専門家が不足する、今言われた産婦人科もそうですし、小児科もそうですし、例えば外科医や脳外科医も減ってきているという状況でありますけれども、まさにこの感染症に対する専門家も大変少ない。先ほどデータでも、アメリカに比べても本当に少ないということでございますけれども、そういう現状のあり方、そして、今回法律が改正されるその必要性について、東北大学の賀来参考人に御意見をもう一度お伺いしたいと思います。

 よろしくお願いします。

賀来参考人 先ほど申し上げましたように、感染症はもうすべての壁を越える疾患でございます。今回の感染症法で厚生労働大臣あるいは県知事からの強い指導力のもとに、感染症のトップダウン、トップダウンという言い方はおかしいんですけれども、非常に強いトップリスクマネジメントをうたわれるということは非常に重要なことだろうと思います。

 感染症の、地域におきましてもさまざまなバックグラウンドのある病院がありますので、私どもについては東北大学の方で事務局をさせていただいて、今の資料にもございますように、さまざまな活動、ガイドラインをつくりましたりとか、あるいは目で見えるマニュアルをつくりましたりとか、私たちが直接病院に出向きまして、その病院のリスクチェックをさせていただいたりしております。

 そのときに、大学がとか地域の病院がというよりも、実は、今先生がおっしゃいましたように、行政のお立場が入ってくるということが非常に重要でありまして、私どもは、今東北厚生局とともに二年間にわたりまして東北六県を回っておりますけれども、そのように、非常に強い指導のもとで行うということが、実は各医療施設にとっては非常に背筋がきちっとするといいますか、そういうことも含めて重要でございます。やはり行政そして地域の医師会、またいろいろな中枢的な医療機関、そしてマスコミの方々も含めて、やはりすべてでネットワークを組んでいくという形が必要だろうというように思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 大変難しい問題でありますけれども、すべてが結集して感染症に対して取り組んでいかねばならないということで、先生にもこれからもどうぞよろしくお願いしたいと思います。

 今回の法改正によりまして、一つ大きなものは、結核予防法が感染症法に統合する。その理由としましては、もちろん、先ほどからあります差別や偏見の問題、人権上の問題、あるいは生物テロ対策を念頭に置くというようなことは十分わかるわけでありますけれども、ただ、先ほども山川参考人がおっしゃいましたように、日本では新登録患者数が三万一千六百三十八人、国民の人口比十万人に対しましても罹患率というのは二十五人と、アメリカ、オーストラリアの五倍だし、ドイツの三倍、イギリスの二倍以上ということで、依然として我が国としては一種の国民病でありますし、感染症の大変大きな問題でございます。

 そして、ただ一つ、それが私は心配といいますか、やはりほかの感染症は急性期が大きな問題になりますけれども、いわゆる結核というのは、急性期ももちろんあるわけでありますけれども、それから後、慢性期が非常に大事だ。だから、それを一つにしていくということに対してよほど注意をしないと、先ほど参考人の御意見もありましたけれども、結核に対する注目、あるいは後退しないかどうかということは大変現場の方々が懸念されているというのは、山川参考人やほかの参考人の方もおっしゃったと思います。

 それで、最後、もう時間がありませんので、一言ずつでございますけれども、岡部参考人とそれから賀来参考人に、医療の専門家としてそれは大丈夫かどうかということだけ、ちょっと今の感染症がかなり種類が違うということを含めて、一言コメントをいただければと思います。

 どうぞよろしくお願いします。

岡部参考人 お答えいたします。

 審議会の中でもかなりそこの部分が議論されていまして、もともとこの感染症法は、主に急性感染症に対する取り扱いであったわけですけれども、それを、結核を入れること、それから結核以外にも、例えばエイズ、HIVですね、あるいは、クロイツフェルト・ヤコブ症候群バリアント、新型のものですけれども、そういったような慢性疾患に対することも考えられて構成されているというふうには思います。

 したがって、結核の場合は、山川先生からも御説明がありましたけれども、従来の形のものを崩すことはないというふうに私どもは聞いておりますので、その点はいいと思いますけれども、さらに、私自身の希望としては、その他にも慢性疾患、例えば、これから急性ではなくて慢性肝炎の問題とかいうようなことも入ってまいりますので、継続してこういうようなことに対しての配慮、考慮というものが必要になってくるというふうに思います。

賀来参考人 お答えいたします。

 岡部先生の御意見とほとんど同じなんですけれども、今申し上げました結核が後退しないような形で十分に注意しながら審議をしていただきたいという点と、ただ、結核もやはり伝播をするということについては、伝播をいかに防止できるかということについてやはり感染症法の中で議論していくことが非常に重要でございますので、慢性疾患でもあるんですけれども、伝播して、かなりその影響が大きいということにつきましては、やはりどこかで整合性を持っていくということで、十分な、慎重な議論は必要ですが、まず、そのような方向で第一歩を踏み出すという形でよろしいのではないかと思います。

清水(鴻)委員 ありがとうございました。

 大変参考になりましたし、すべての参考人にお聞きしたかったわけでありますけれども、時間の制約もありますので、以上で私の質問を終えさせていただきます。本当にありがとうございました。

櫻田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 公明党の福島豊でございます。

 本日は、各参考人の先生方には大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、改めて御礼を申し上げる次第でございます。

 早速具体的な御質問に入らせていただきたいと思います。

 岡部参考人からは、インターナショナル・ヘルス・レギュレーションの改正について資料で御説明がありました。大変大切な改正がなされたのだというふうに思っております。来年の五月から発効すると。各国の国際協力というものが十分に行われなければ、SARSでありますとか新型インフルエンザでありますとか的確な対応というものはなされないだろうというふうに思います。

 ただ、問題は、この中では、各国の中核能力、これをどうするか、また常時連絡体制をどう確保するか、また非公式な情報の積極的な活用、こういったことが具体的な事項として資料の中に上げられておりますけれども、これが果たしてどこまで機能するかどうかということが問題なんだろうと思います。SARSの際にも中国政府のさまざまな情報がスムーズには外に出てこなかったということもありますし、そしてまた、病原体の解析におきましてもそのサンプルがスムーズに出てこなかった、こういう問題もあります。こうしたことが果たしてどこまで改善していくのか、こういった点についてお聞きしたい。

 そしてまた、WHOの場合には、台湾はオブザーバーという形になるんでしょうか、正式なメンバーとしては認められていないわけでありまして、この東アジアの地域におきまして、こうした言ってみれば空白地域がある、これは個別に対応しなければいけないということになると思いますけれども、この点についての岡部参考人の御意見をお聞きしたいと思います。

岡部参考人 お答え申し上げます。

 IHRについては、暫定機関を設けて、WHOの方も各国に対して、今、むしろ、我が国のように感染症法ができている国よりも、まずできていない国に対してどういう整備をするかというようなことを進めているわけですけれども、しかし、例えば報告ということで申し上げれば、SARSのような病気があるかないか、そういううわさが起きたときに、WHOがそれをキャッチして、従来はそれまでだったんですね。それについてどうだというときに、これを答えるかどうかは全く国の自由です。

 IHRが改正されたとしても、例えばSARSのような不明の肺炎が起きたときに、WHOは、いち早くそういう情報を非公式情報としてキャッチをしたときに、ある国に対して、それは一体どうなっているのだというふうに聞きます。もしその国が返事をしなかった場合には、返事をしないということ自体が公表の対象になるというふうにいって、できるだけ報告、そのところは自主的に求めるわけですけれども、そういうようなシステムになっています。

 しかし、我が国もそういうようなことを遵守しなくちゃいけないわけで、我が国からいえば時々情報が入ってこないとかいうようなことがありますけれども、私自身の考えとしては、我が国ももっと対外的に早く、英語というバリアがあるんですけれども、そういうようなことを公表できるようなことをきちっとシステムとしてやっていくことが、逆に情報を得るときに非常に重要なことではないかというふうに思います。

 台湾問題については、恐らく政治的なこともあるのでちょっとなかなか申し上げにくいところもありますけれども、感染症をきちんとお互いに情報を共有するという意味では非常に重要で、台湾に限らず、ある特定の国からそこの情報が入ってこないということは、病原体はやはり勝手に出入りをするわけですから、それについての情報共有ということは、たとえ別枠であっても情報共有をすべきではないかというふうに私は思います。

 ちょっとつけ加えますれば、台湾にCDC、アメリカCDCというのと同じ名称を用いていますけれども、台湾CDCという私たちと同じようなファンクション、機能を持っているところがございます。私どもの研究所では、そこと研究レベルでの交流はやっていますので、決して我が国にとって台湾に関する情報が途絶えているということではございません。ただ、そういうようなものがきちんとした形でできるということを私は望んでおります。

福島委員 そして、次は多剤耐性菌の問題なんですが、多剤耐性緑膿菌でありますとかMRSAでありますとか、結核菌も多剤耐性のものが出てきて、どうやって治療するのかと。やはり深刻な問題なんだろうなというふうに思います。

 先ほど賀来参考人から、それはもう院内、医療機関だけじゃないよ、老人福祉施設もあるし、そしてまた一般の市中にもそれは広がっているんだという御指摘がありました。大変大切な御指摘だと思うんです。

 ただ、問題は、ワンポイントワンポイントでこの程度検出されました、こういう報告はあるんですけれども、日本全体で見たときにどこまでそれが浸透しているのか、また経時的にどう変わっているのか、こういったデータが余りないのではないか。そういうフォローが必要なんじゃないか、サーベイランスが必要なんじゃないかというふうに私は思うんですが、その点。

 そしてまた、どうすればこの問題というのは克服できるのか。どうもイタチごっこのような気がいたしますけれども、イタチごっこといっても、やはり新しい薬剤の開発も必要でしょう。もっと根っこの部分というのは、医療機関における感染症のコントロール体制というものをどうするのか、こういうことも非常に重要なんでしょうけれども、この点について賀来参考人の御意見をお聞きできればと思います。

賀来参考人 お答えいたします。

 今言われました薬剤耐性菌の問題は非常に大きい問題でございます。私も先ほど意見として述べさせていただきましたけれども、病院だけではなく地域社会全体に広がりつつある。これは実は、きょうはデータをお示ししませんでしたけれども、アメリカのハーバード大学のグループも、病院の中に多剤耐性菌を持ってといいますか、持たれたまま外来の患者様がふえているという報告もございます。

 今御指摘ありました、御質問がありました、サーベイランスの問題ですけれども、これは国立感染症研究所を中心に積極的なサーベイランスが実際に行われております。そういった意味での経時的なデータも出てきております。

 ただ、確かに、国立感染症研究所の予算をもっとつけていただいてといいますか、大々的に、例えば今先生が御指摘なさいました多剤耐性緑膿菌の場合は、これは定点観測でございます。定点観測ということは、全国のある決まった機関の中で感染症を起こした患者さんの報告でございます。バンコマイシン耐性腸球菌につきましては全数把握でございますけれども、すなわち、今、実はキノロン薬に耐性の大腸菌がもう二〇%を超えてきているとか、よく先生方が普通、病院に行かれましてお使いになる第三世代セフェム薬に耐性の腸内細菌群が急増しているとか、実は、現在の感染症法に含まれていない耐性菌も、世界的に見ますと急増しております。

 ですから、やはりいま一度、先生が御指摘なさいましたように、我が国におきましても、薬剤耐性菌が本当にどの程度広がっているのか、ポイントポイントではなく経時的に、あるいは全国的に、あるいは地域ごとにでも結構なんですけれども、そのようなサーベイランス体制を、現在頑張っていらっしゃいますけれども、より充実させていくということが必須であろうというように思っております。

 ですから、やはりこれはアメリカのCDC、あるいはCDCをもってしてもなかなかその予防ができていないんですけれども、一つの例は、ヨーロッパ連合が、EU諸国が共同でサーベイランス体制を構築しております。国別の耐性菌の率を出しております。そういったものがアジアでできないのかというようなことも、ひとつ、台湾、中国あるいは韓国、シンガポールといった国々とアジアの中のサーベイランス体制を、これは岡部先生のお仕事になるんだと思うんですけれども、そういったことも、やはりもっともっと国が予算といいますか充実をさせて、人も含めてやっていくということが本当に重要だろうというように思っております。

 ですから、まずサーベイランスはそのような形で国家戦略として行っていくべきだろうというように思いますし、できればアジア各国と協調して、ヨーロッパ連合のようにやっていくべきだろうというように思っております。

 それからもう一つ、薬剤耐性菌をどう考えるのかということでございますが、例えば、先生も御存じのように、大腸菌の場合は、O157、これは明らかに毒素を産生する菌でございますので、私たちが通常腸の中に持っている大腸菌とは違うという判断をします。薬剤耐性菌の場合も、実は難しいのは、御存じのMRSAも黄色ブドウ球菌ですし、多剤耐性緑膿菌も緑膿菌ですし、腸球菌も、腸球菌というだけあって腸の中におります。ですから、常在菌で薬剤を使っていったために出てきた菌であります。

 ですから、やはり私は、将来的には、薬剤耐性菌を持っていることはどのようなリスクがあるのか。これは、菌の病原性をもっと解析しまして、MRSAを持っているんだけれども、薬は効きにくいんだけれども病気を起こす力は少ないですとか、そういう微生物側のもっともっと研究が進んでいくということが一つ重要でありますし、もう一つは、先生も御存じのように、病院の中には、いろいろな病気を持っておられてもともと抵抗力が弱っている方もおられますので、どういった抵抗力の弱った方の場合は、例えば多剤耐性菌がついた場合非常にリスクが高いのかというように、人間側といいますか、宿主側といいますけれども、そのあたりのリスク、すなわち、リスクをアセスメントしていくような研究がより進んでいく、あるいはそういった対応ができていきましたら、病院の中でも非常に対応しやすくなります。

 ちょっと長くなって申しわけありません。また、結核菌の場合は、うつりやすいけれども病気は起こしにくい菌ですとか、非常にうつりにくいんですけれども一たんうつりますと病気を起こす、そういうことがわかってきておりますので、そのような総合的な基礎医学あるいは臨床微生物学の研究が進んでいくということが、実は、薬剤耐性菌に対する偏見あるいは差別、そういったものをやはり防いでいくのではないかというように思っております。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

福島委員 岡部参考人、何か補足する点がありましたら。

岡部参考人 お答えします。

 実際に耐性菌のサーベイランスは行われてはいるんですけれども、しかし、その情報を提供することによって、耐性菌があるということがイコール汚いというような誤解に基づいたり、その菌があるがゆえに危険な病院なのではないかというようなところから、なかなか集まりにくいことも事実です。

 したがって、これは賀来先生もおっしゃったように、一般の方も含めて、耐性菌というのはあること自体はある程度は仕方がない、しかし、それを超えたときにどういうふうにしたらいいか、そういったような形であったり、浸透していかないと実際のサーベイランスとしてはなかなか基本的な線がとりにくいというのがあります。

 かなりの医療機関で協力していただいて、一応、かなりのスパンで、平成十一年の改正以来、少しずつ少しずつデータはできつつありますけれども、それを提供する側あるいは利用する側のお互いのもっともっと理解、それから一般の方々の耐性菌というものに対する考え方を私たちはもっとお伝えしなくちゃいけないと思いますし、仕組みの中でもそういうものがきちんと出されるような工夫というものがもっともっと必要だろうというふうに思っております。

福島委員 どうもありがとうございます。大変勉強になりました。

 山川参考人にお尋ねをしたいんですが、結核予防法の取り扱いをめぐってさまざまな観点の議論があったということはよく理解をされました。今回の改正によりまして、手続面においてもより人権というものについて配慮されることになるというふうに理解いたしております。

 ただ、参考人おっしゃられましたように、現場で診査、診査会がどう行うのか、こういう話ですね。なかなかこれは大変なんじゃないか、こういうお話がありました。特に、これは結核だけに限らないわけでありますけれども、集団発生などした場合に、慌てふためいて人権どころではないような話も起こり得るんじゃないか、こう思ったりするわけですね。

 そういう意味では、リスクコミュニケーションというか、より集団がそのリスクに対してよく理解をするということが人権に対しての配慮を確保するという意味からも大切だろうというように思うわけでありますけれども、このあたりの点について参考人の御意見をお聞きできればと思うんです。

山川参考人 今回の改正法におきましてこの診査協議会の役割というのは非常に重要なものになってきておりますのは、今先生御指摘のとおりなんでございます。

 それで、結核のみならず、その他の感染症のアウトバーストということを考えますと、確かに、全国的にあるいは一地域的に集中して非常にたくさんの審議が一時に発生するということがあり得るわけでございまして、この診査協議会というのを各保健所ごとにどういうふうに立ち上げておくのか。それが、一朝事あったときにどういうふうに招集し、どういうふうに審議し、どういうふうに機能するのかということを事前に十分に備えておかなければいけないというふうに思います。

 私は、この診査協議会が現実にどういうふうに機能するのか、いま一つよくわからないのですけれども、法律家もこの中で役割を果たすべきだということになっておりますので、厚労省が政省令でこの法律の実施の準備をされる段階にそこの手当てを十分にしていただくと同時に、保健所とのコミュニケーションをよくとっていただいて、常日ごろの備えが非常に重要なのではないのかなというふうに思っております。

 甚だ一般的な意見で恐縮でございますけれども、そんなところでございます。

福島委員 ありがとうございます。

 政省令を決めるに当たりまして、先生の御指摘等も踏まえながら我々もフォローしていきたいというふうに思います。

 一般的な質問をちょっとさせていただきたいんですが、最近、格差社会、こういうことが言われて、しかも、健康格差につながっている、健康格差社会だ、こういうふうに言う人がいるわけですね。

 私、大阪なんですけれども、結核が多い。その結核が多い理由というのは、例えばホームレスでありますとか貧困層が非常に多い、こういうこととつながっているわけですね。そういう意味では、感染症というのはそうした社会構造、社会変化というものに影響されるんだなということを実感しております。

 例えば戦争のときに感染症がはやったりとか、そういうことも当然あるわけでありますが、感染症自体は人類とともに永久に消え去ることはないのでありましょうけれども、こうした社会と感染症という観点から、岡部参考人、御意見がありましたらお聞かせいただければと思います。

岡部参考人 お答え申し上げます。

 なかなか難しい御質問で、どうお答えしていいかわからないんですけれども、後戻りは私たちはできないわけで、昔の社会に戻そうというのは、これはなかなか無理であります。それから、確かに、感染症が怖いといいながらも、かつてに比べれば、伝染病にかかるともう危ないんじゃないかというようなところは随分変わってきております。

 しかし、貧困だけではなくて、社会構造の変化によって、例えば性感染症の変化とか、あるいは食材からくる感染症の変化、あるいは、まさに国際感染症なんですけれども、旅行者による、旅行という形態をとっての病原体のやりとりというようにふえてきていますので、感染症の問題は、必ずしも、感染症のエキスパートといいますか、今までのような医療関係者あるいは研究者、保健行政関係者だけで考えてもなかなか進まない部分がございます。

 新型インフルエンザが来たらどうなるか、パンデミックがどうなるかという話もよくあるわけですけれども、これも、医療関係者だけが一生懸命考えてすべて解決できるのではなく、むしろそれは困難でありまして、社会の変化という意味では、いろいろな分野の方々が感染症ということについて、人間の問題としてそれを解決するというような取り組みをしていただければというふうに日常考えております。

福島委員 時間が参りましたので、質問を終わります。

 大変貴重な御意見をお聞きできまして、感謝を重ねて申し上げます。質問ができませんでした参考人の皆様にはおわびを申し上げたいと思います。

 大変ありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、田名部匡代君。

田名部委員 参考人の皆様、本日は大変お疲れさまでございました。貴重な御意見を聞かせていただきましたことに心から感謝を申し上げたいと思います。

 短い時間でありますので、早速質問に移らせていただきます。まず基本的なことをちょっと何点かお伺いしたいんですけれども、賀来参考人にお伺いをいたします。

 この感染症に対する取り組み、これは国際的に見た場合に、国際的に取り組んでいて日本の方がすぐれている点もあるのかもしれませんけれども、そうではなくて、やはり日本がもっともっと強化していかなければならない点、または早期に取り組むべき点、そういったことを、今回の法改正を見てもまだまだ不十分だと思われるようなことがございましたら教えていただけますでしょうか。

賀来参考人 お答えいたします。

 先ほど私の意見の中でも述べさせていただきましたけれども、今回の感染症法の改定に当たりましても、私たちが今まで見たことがないといいますか、経験したことがない感染症もまた入ってくるといいますか、そういった時代になっております。そういった意味からは、私たちが経験をするということは、臨床家にとって経験をするというのは非常に大きいことでございまして、やはり全く見当がつかない感染症を、ただ教科書しか見たことがない感染症を診ていくということについては物すごいハンディキャップがございます。

 欧米の医学教育の中では、例えば熱帯地方、あるいはさまざまな感染症を勉強するために、多くの医学生が若い時代から海外で研修を積み、あるいはそういった機会をいただいております。私の母校であります長崎大学も熱帯医学研究所がありまして、アフリカやアジアに多くの学生が行っておりますが、そういった学生はかなり感染症が専門的に強くなりまして、臨床の現場でもかなり活躍をしております。

 そういった意味では、今日本に欠けているというのは、やはり医学教育、看護教育、あるいは検査、薬学の教育の中で感染症というものについて、これは抗生物質がよく効くからという意味ではなくて、やはり体系的に感染症に対する医学教育あるいは教育システムが、やや欧米に比べますとおくれているのではないかというように思っております。私の意見の中でも述べさせていただきましたが、やはり大学を中心としたそのような医学教育あるいは看護教育の中で、感染症の重要性というものをもう一度教育していくというようなシステムをぜひつくっていかなければなりません。

 先ほどちょっと言葉が足りませんでしたけれども、実は感染症のアウトブレーク、集団発生が起こりましたときに、その原因を究明するホスピタル・エピデミオロジスト、病院や疫学者も圧倒的に日本は少ないわけであります。日本は今三十名ぐらいですけれども、アメリカは年間八十名、韓国でも年間十五名出ているということを考えますと、やはり今回この感染症法が新たに改正されるに当たりましても、この法律が先行して現場がついていけていないという状況が見受けられますので、やはりそのあたりを確実にその差を縮めていくような努力をしていかなければならないのではないかというように思っております。それが一番の重要なポイントではないかと思います。

田名部委員 ありがとうございます。

 今のお話を伺いますと、やはり厚生労働省だけではなくて文部科学省との連携もしっかりとりながら、教育現場においてもぜひこういった感染症の対策というものを考えていかなければいけないのかなというふうに思いました。

 それともう一点、現場でお仕事をされているお立場から、こういった感染症が起こったときの検査能力だとか対応の仕方というのは全国でもいろいろあるんだと思うんです。先般、医師不足の問題でこの委員会でも随分議論をしたんですけれども、そういったことを考えますと、例えば、都会というか東京の方ではあらゆる設備も整っていてすぐに対応できるけれども、私は青森県の出身なんですが、東北では余り、そういう情報が乏しいのではないか、そういう心配もあるんです。

 先ほど先生、東北で全国に先駆けてネットワークづくりをされたということでもありますが、ぜひ関連して二点お伺いしたいんです。実態として、検査能力とか対応できる状態にあるのかということ、そして先生がおつくりになられているネットワークは、東北というのは医者も足りない、専門医も少なそうなところで、どういった形でその体制をつくられたのかということをちょっと具体的に教えていただければと思います。

賀来参考人 ありがとうございます。

 私、長崎大学の出身と申し上げましたけれども、長崎大学におりましたときに、離島の方がMRSAを持っていらっしゃるということで、実は、あるお店を開かれていたんですが、MRSAを持っているというだけでお店を閉めなければならなかったという悲劇がございました。そういう意味で、離島も情報が非常に不足しているということでネットワークが必須であろう。

 先生方のお手元に資料を置かせていただきましたけれども、やはりネットワーク、すなわち多くの方が情報を共有化できること、そして多くの方がともに手をとり合って連携できること、そして何か困ったことに支援態勢をつくれること、この三つをアクションプランとしまして、現在東北大学の総長をしておられます吉本先生がちょうど病院長でありましたときに、私は病院長の先生を集めて、ぜひこのネットワークを東北で、特に東北は先生も御存じのように雪深く、本当に行こうと思ってもなかなか行けないこともあるものですから、そういう意味で、ITを使ったもので、あるいはそういった情報をもっと共有化できるホームページのようなもので、あるいは共通のガイドライン、東京にはすばらしいものがあると思うんですけれども、地域にも地域でできるガイドラインもあるんだということで、さまざま、その三つのアクションプランに基づいてネットワークを立ち上げてまいりました。

 現在も厚生労働省は、ネットワークを二十一世紀における感染症対策の一つの中心的な項目に上げているんですけれども、一九九九年からさせていただきまして、さまざまな患者さんあるいは地域住民の方への教育システム、あるいはセミナーも含めまして行ってまいりました。

 今先生が御指摘なさいました検査能力というのは、実は非常に大きな問題でございまして、先生方が御存じかどうかというのはちょっとわかりませんが、実は病院の中から検査部が消えつつあります。これは、検査にかかる医療費に抑制がかかりまして、検査にかかる費用が物すごく削られております。どんどん外に検査を出していく状況にあります。

 東京でも先日、セラチアによる院内事例がありましたが、あの事例も、実は外注、外に検査を出したために情報がおくれたということが原因でありまして、ぜひこの点も、全国の検査部が病院からなくなりつつある。検査というのは、先生方も御存じのように、すべての感染症も含めたさまざまな疾患の原因を探るところでありますので、そういったものがなくなってきているという現状が非常に大きく、この感染症法が新しくできたときにそのギャップもまた埋めていかなければならないんだろうというように思います。

 もう一つ、今、東北地域で、地域コアラボといいまして、コアというのは核になるという意味なんですけれども、地域の中で、東北大学の中にそういうラボをつくりまして、これは本当は国の方でまたつくっていただきたいんですけれども、東北大学の中にそういうラボをつくりまして、いろいろな検体を集めさせていただく、あるいは何か問題が起こったときに東北大学にそれを集めて、速やかに情報をフィードバックするようなシステムもこの四月から立ち上げております。そういったものが、先ほど私意見を申し上げました、地域に国の研究機関あるいは検査機関があるということが、非常に地域の方にとっては大きなよりどころになるのではないかというように思っております。

田名部委員 本当におっしゃったとおりでありまして、各ブロック単位とか地域ごとに、こういった検査機関だとかそういう専門機関があればそれにこしたことはないわけでありますが、なかなかまだそこまですぐにというわけにはいかない中にあって、先生が全国に先駆けておつくりになったようなネットワークというものを各地域ごとに、またブロックごとに、これは早急に、国でもリーダーシップを持って主導しながら、こういったものをつくっていく必要があるんだろうというふうに思いました。

 それと、何名かの参考人の方が情報ということに関しての重要性についてお話しになっておられました。賀来先生からも、リスクコミュニケーションということで情報の共有化の重要性ということをおっしゃっておられました。

 まさに、正確な情報をもとに正しい判断で行動する、決してパニックに陥らないとは逆に、危機感というものを決して忘れないということが大事なんだと思うんですけれども、具体的に、情報の発信だとか、逆に、我々国民にとってはどういったところからその情報を、どのように受ければいいのか、判断すればいいのか。そして情報発信も、マスコミも含めて、どういう形で早い段階で正しい情報というものを発信していくのか。具体的な手だてがあれば、賀来先生、そして岡部先生にもちょっとお伺いをしたいと思います。

賀来参考人 ありがとうございます。

 また後で岡部先生がお答えになると思いますけれども、今先生が御指摘なさいましたリスクコミュニケーションというのは非常に重要であります。

 私どもは、リスクコミュニケーションの一つの手だてとして、先ほど資料にもお示ししましたキッズかんせんセミナーというものを、大学の中で、あるいは地域の小学校に出向きまして、子供さんたちあるいは親御さんに、感染症、すなわち微生物は、鼻の中をぬぐってもらいまして、それを染めてもらうんです、口の中を染めてもらうんです。そうしますと無数の菌がおります。ですから、微生物は私たちと共存しているんだということ。先ほどもお話が出ました、感染症は永遠のテーマであるということなんですけれども、私たちは微生物と共存しているので、抗菌グッズというものではなく、例えばどんなときに危なくて、どんなときにきちんと歯を磨いてとか、どんなときにうがいをして、どんなときに手を洗ってということを子供さんのレベルからやっていけないかということで、そういう取り組みをしております。

 また、もう一つ、メディアの方々とも、セミナーにも来ていただいているんですけれども、東北大学で今度、宮城メディカルメディアワークショップといいまして、メディアの方々にどんどん来ていただいて、先ほども言われました、耐性菌は一体どんなものなのか、本当に危険なものなのかというようなことをメディアの方にもわかっていただく、あるいはメディアの方々も理解していただけるようなことを私どもが提供していくという形のものをとろうと思っております。

 もう一点、時間の関係で簡単に済ませますが、実は、リスクコミュニケーションがうまくいかないために、病院の中でMRSAを持って何も病気を起こしていない方を老健施設、介護施設にお戻ししようとしたときに、あなたはMRSAを持っているからもう来なくていい、もううちには来られませんというような悲劇が全国的に起こっているわけであります。

 すなわち、患者さんだけではなく、そういった医療従事者も含めた、メディアの方も含めたすべての方が正しい情報を共有化するということを、ぜひこれからも大きなテーマとしてやっていきたいと思っておりますけれども、具体的には、そのような子供さん向けのセミナーですとか市民向けのセミナーといったものを中心にやっております。

岡部参考人 お答えいたします。

 先ほどからもリスクコミュニケーションという言葉がよく出てくるんですけれども、実際は、リスクのときにだけコミュニケーションをとっても間に合わない、あるいは、むしろ情報が十分そしゃく、消化吸収できないというようなことがありますので、私は、リスクコミュニケーションの本当に基本的なところは、ふだんからきちんとした情報を出しておく、あるいは、それを読む読まないは読み側の問題なんですけれども、出す側は常々からそういったようなものに関してきちんとした説明をしておくことが必要だろうというふうに思います。

 ですから、感染症の情報も、例えば新型インフルエンザができてから新型インフルエンザの情報を提供するのではなく、インフルエンザというのは何であるかといったようなことを正しく伝えて、現状をきちっと把握しておくということが重要だろうと思います。

 ただ、私たちは、今どういうものを対象にということが御質問の中にありましたけれども、私たちの立場からは、すべての国民の方々に平易にわかりやすくというのは、とても一人、二人の仕事ではできないので、それを説明する立場の方に御説明するというような形をとっています。

 例えば、最近試みているんですけれども、メディアの方々とは、月に一遍ぐらい勉強会をやって、お互いに感染症の情報の交換とか、それに対して、いわゆるプレスという発表ではなくて、技術的あるいは研究者の目から見てそれはどういうふうなものかというような解説を行ったりは自主的にやっております。そういうようなことが積み重なっていくというのは、何らかのときに花が咲くんじゃないかというふうには思っています。

 ただ、緊急時の場合に、今度は専門家の方々に早く情報が伝わるようにしないと、逆に、中途半端な情報が一般の方々に伝わったけれども専門家はまだ知らないということが、例えば臨床の現場なんかではよくあることですね。ですから、緊急時の情報システムといったようなことも今後構築が必要ではないかと思います。

 いずれにしても、そういうことを担当する人とか、あるいはそれを、今非常にITや何かが進んでおりますけれども、それに対する物の必要性というのはありまして、なかなか一人、二人がすべてのことをやるという状況ではないので、今のところ、十分だというふうには残念ながら申し上げられません。

田名部委員 ありがとうございました。

 本当に、事が起こる前にということと、そしてできるだけメディアも含めたたくさんの情報の中でパニックに陥らないように、そしてしっかりと危機感を持って日ごろから行動できるような体制をつくっていかなければいけないというふうに思ったんですが、それを伺ったときに、先ほど賀来参考人の方から、新たな病原体の出現があるんだというような話とバイオテロの恐怖ということでお話がありました。

 新たな病原体ということの知識というか、そういう情報というのは、専門家の皆さんのところにはもうある程度のものが知れ渡っているのかなということが思われたのと、バイオテロの恐怖、実際に起こり得る可能性があるんだ、十分にそれはあり得るんだということを前提に国としても対策をとっていかなければならないと思うんですけれども、そういったことを考えた場合に、今回、この新たな改正法の中で、バイオテロということに関してまだまだ不十分だなと思われる点、何かそういったすぐに取り組むべき課題というものがあったら教えていただきたいんです。

賀来参考人 実は、バイオテロにつきましては、私どもの東北大学の中で実際に白い粉事件がありまして、ある外科医の先生がアメリカから送られてきた雑誌をあけた瞬間に白い粉がふわっと舞いました。その先生方は五人いたんですけれども、私は新幹線の中で、バイオテロみたいだと。隔離をしなければいけない。

 御存じのように、大学の施設というのはシャワーを浴びるところも余りありませんし、炭疽かもしれないというようなことで、実はそのときに、東北大学の検査部で炭疽を検査できれば一番いいんですけれども、なかなかうちではまだそういう能力が当時ございませんでした。衛生研究所の方にすぐに送らせていただいて、そこで炭疽ではなかった、ただの白い粉だったということだったんですけれども、そのときに、実際に現場に出向いて、すべての病室を隔離して、そしてその先生方を一人一人手術着にかえてシャワールームに運んだ、そのときの恐怖というのがいまだにあるんです。

 先ほども参考人の方から言われましたけれども、確かに、バイオハザードとバイオテロということについては必ずしも一致していないのかもしれないんですけれども、私は、バイオテロを現実にといいますか、そういった疑似的な体験をした身からしますと、やはり検査体制を、きちんとできるような体制をつくること、そして、実際にバイオテロが起こったときに、これは病原体の管理だけではなくて、その施設の体制をどうするのか、だれがそこに行くのか、これは救急隊の方なのかどうなのかというようなことも議論がありますが、そのようなことも含めて、もっともっと法の中で、ぜひ、先生方に審議をしていただき、よりよいものをつくっていただければというふうに思います。

田名部委員 時間が参りました。

 もっといろいろとお伺いしたかったんですけれども、本日は、本当にありがとうございました。皆様の御意見を参考にして、しっかりといい法案を議論していきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、五人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。貴重な御意見をいただき、私自身は大変勉強になりました。たくさん伺いたいことがあるなと思っているんですが、時間の関係で本当にわずかしか聞けないなと思って、残念に思っておりますが、本当にありがとうございました。

 最初に、岡部参考人にぜひ伺いたいと思うんですが、岡部参考人は感染症に関するエキスパートとして、さまざまな分野で発言をされておりますし、本日の意見においても総合的な問題について提言をされているかと思うんです。

 ただ、きょうは、ぜひ新型インフルエンザについて質問させていただきたいと思います。

 二〇〇四年に、日本で七十九年ぶりに高病原性鳥インフルエンザが発生、山口、大分、京都と広がって、大変な混乱があったわけですけれども、その年、私自身も鳥インフルエンザの問題を取り上げ、パンデミックの問題なども取り上げた経緯がございましたが、ただ、その時点ではまだ農業分野の関心事として、家畜伝染病予防法の改正などがあったり、被害の救済対策などが話題となって、まだまだ新型インフルエンザに関しての議論というのは余りなかったという実態でございました。

 ただ、当時、既に三月にはWHOの専門家会議が行われ、新型インフルエンザの出現を阻止することは不可能だ、近い将来に起こる新型インフルエンザは世界を席巻する大流行となるという指摘があり、いかにその被害を最小限にとどめるか、そしてそれは少しでも開始をおくらせることだというふうな確認がされて、国際的な監視体制ですとか新型インフルエンザ流行地における公衆衛生上の介入措置、新型ワクチンの緊急開発、製造、供給あるいは抗インフルエンザ薬の備蓄と使用などを進めることが確認されて、各国の対策も進められてきたかと思います。

 もちろん日本も、その当時、新型インフルエンザ行動対策を持っていましたけれども、やはり飛躍的にそれを高める必要性に迫られたと思うんですね。同対策はことしの五月に改定もされ、九月には机上訓練なるものも実施をされております。

 そこで、まず、世界の流れから見て、また求められる水準から見て、日本の新型インフルエンザ対策の到達をどう評価されますか。また、急がれる課題は何でしょうかということを伺いたいと思います。

岡部参考人 お答え申し上げます。

 新型インフルエンザというのは、先ほども申し上げましたように、世界のどこにもまだあらわれてはいないんですけれども、その前ぶれとしての状況が動きつつあるというのが鳥のインフルエンザであると思います。

 しかし、鳥のインフルエンザから直接新型に来るだけではなくて、地味なところでは、鳥が死なないようなインフルエンザウイルス、あるいは豚を経由してくるというこれまでの考え方がなくなってこっちに来たわけではないので、きちんと従来どおりのことも含めての調査研究が必要であるということがまず前提になると思います。

 それで、先ほど、五月に改定とおっしゃったような気がしたんですけれども、それは鳥インフルエンザH5N1が人に来たときのガイドラインであって、まだ、新型インフルエンザのフェーズでいうと4、5、6というのがあるんですけれども、そこにまではまだ至っていないんですね。ですから、そういう意味では、ステップアップはしているけれどもスピードアップはしていないという残念な状況にあります。

 それで、各国の状況はどうかということですけれども、世界各国といっても本当にさまざまでありまして、やっていない国から見れば日本ははるかに進んでおりますし、例えば薬の備蓄の問題とかインフルエンザワクチンの開発や何かをやっておりますけれども、しかし、例えば欧米というようなところでの関心のある国々に比べると、実際の社会の問題に対してどういうふうに取り組んでいったらいいのか、非常に複雑で連係のあるところですから、これまた私たち保健あるいは医療関係だけで考えられない問題が多数山積しているので、そういったような諸国に比べると進みは遅いと言わざるを得ないと思います。

 その基本的な問題には、例えば、私たちそれに数人で取り組んでいたり、厚生労働省にエールを送るわけじゃないんですけれども、わずか数人の担当者が一生懸命考えているだけではなかなか進まないというような状況、極めて歯がゆく思っている状況で、例えばアメリカはそこに一気に百人投入しているとか、そこまではいかなくても、もうちょっと豊かな発想で、広い意味でいろいろな応用問題をやるという取り組みができるような体制を私たちは望んでおります。

 ただ、それで何にもやらないわけにはいかないので、極めて限られた人数ですけれども、できるだけのことは現在進行中ではあります。

 完成しているかというと、残念ながらそれはできていない状況で、先生の御質問の進捗状況はどうかということとその評価としては、申し上げましたように、残念ながら、進んではいるけれどもスピードアップはされていない状況と言わざるを得ないと思います。

高橋委員 御指摘をいただきましたスピードアップが必要だということと、多彩な研究が必要で、いろいろな分野の知恵が投入されるべきである、スタッフがそのためにも十分必要であるという御指摘だったと思います。その点は、ぜひ私たちも強く求めていきたいなと思っております。

 先生、最初に、鳥だけではないよという話をされまして、それも十分承知をしているところなのでありますけれども、高病原性鳥インフルエンザとヒト・ヒト感染の関係でありますが、近年、タイやベトナムあるいはインドネシアなどにおいて家族内での感染が見られ、家族などの濃厚な接触がある場合には限定的にヒト・ヒト感染が起こり得るということが認識されたのかと思っております。

 この問題をどのように見るべきか。つまり、新型インフルエンザ発生の芽がもう既に出ているというふうなことが言えるのか。あるいは、封じ込め、予防という点では、十分な対策というものも可能なんだよということを教訓として示してくれたと見ればいいのか、若干お願いしたいと思うんです。

岡部参考人 お答えいたします。

 鳥のインフルエンザウイルスが大流行しているのがなかなかコントロールできないというのが根本にあるんですが、先ほどの御質問にあったように、京都あるいは山口、大分というふうに出ましたけれども、幸いに、我が国は、少なくとも鳥のインフルエンザウイルスについては封じ込めることができて、数年間ここでそれができているのは韓国と日本だけという点は誇っていいのではないかというふうに思います。

 ただ、世界的に見た場合、これがなかなかコントロールできない中で人の患者さんが出てくるわけですけれども、御質問にあったインドネシア、インドネシアは私たちも調査チームとして出すことができましたけれども、それで実情がよくわかってきたというのがあります。確かに限定的な家族、極めて限られたところで、患者さんとの濃厚な接触、もう本当にそばにくっついての感染であって、少なくともお隣とか近くの人といったような形での人から人への感染はない。

 それから、分離されたウイルスは、これはインドネシア側の発表ですけれども、危惧されているような、人に流行しやすいような、いわゆるヒト型への遺伝子変異はないということで、WHOも現在のとおりフェーズ3というふうにしているわけです。

 ただ、その遺伝子変化と人から人への感染は、今はないということであって、これはいつ、生物として動き出してくる可能性があるわけですから、そういう意味でのフォローはきちっとやっていく必要がある。その一つのあらわれが、我が国では鳥のインフルエンザウイルスH5N1に感染した人は、少なくとも現在はほかの人に感染などはしないけれども、各国の状況を見ると、それが人から人にうつりやすいというのは、いつ起きるかわからないわけなので、現在の封じ込めとして、その方に入院をしていただき、隔離をしていただき、ヒト・ヒト感染が起こってはいけないという形での、これは早目の対策だというふうに思っております。

 したがって、ウオッチングという意味では、インドネシア、タイの状況については十分に警戒をして、また調査も続けていく必要があるというふうに思います。それはインドネシアだけの問題ではないので、そこが国際間の協調、それから、我々の方もアンテナを高くする、アンテナが高くできるようにできるだけしていただきたいというあわせてのお願いになります。

高橋委員 どうもありがとうございました。

 次に、賀来参考人に伺いたいんですけれども、先ほどの御意見、きっと、時間がとてもなくて、もっとお話ししたいことがあったんだろうなと思っているんですけれども、さっき少しだけ紹介があった宮城県内における感染対策地域ネットワークの構築の問題で、先生が取り組みをされているということをこの間幾つかの論文などで拝見して、大変興味を持って伺いました。

 先生が指摘されていることの中に、やはり欧米では感染症や薬剤耐性菌の増加の問題が、一医療施設だけの問題ではない、広く社会全体にかかわってくる重大なリスクであるという危機意識から、感染管理システムの構築やサーベイランスシステムの積極的な取り組みがあるということを述べられて、そういう点では危機意識が我が国では乏しいという指摘をされているかなと思うんですね。

 その上で、まず、いわゆる院内の感染のチームが必要だと。医師が足りない、薬剤師も看護師も足りないという問題は全くそのとおりだなと思うし、それと同時に、院内と地域とのネットワークという、段階的な論を述べられていると思うんですね。

 それで、それを構築する上でたくさん課題がありまして、直ちに取り組むことができるもの、つまり、予算がつかなくても啓蒙とかそんな形でできるものがあるでしょうということと、すぐにはできないけれども予算をつけてでもやらなければいけないもの、あと長期的にやるものと、ちょっとステップを踏んで説明していただければありがたいと思います。

賀来参考人 お答えいたします。

 私たちは、手弁当でといいますか、集まりまして、みんなで草の根的な地域ネットワークをつくってきたんですけれども、やはり、一つは、いろいろな方が情報を持ち合って一つのものをつくっていく、例えばガイドラインにしても、ガイドラインという呼び方をしますけれども、抗生物質の使い方について、その地域の中で十人集まってみんなでそれをつくり上げていくということはすぐにでもできます。

 また、今ビデオがすごく普及しておりますので、ビデオを使って、今までは読んでいくものだったんですけれども、そうではなくて、手袋をどうつけるのか、どう外すのかということをホームビデオでそういうものをつくって、お金は全くかかりませんで、それをDVDにしてお配りすることもできます。そのような、本当に自分たちでできることというのは考えてみるとたくさんありまして、そういうことを一つ一つやっております。

 また、例えば、私どもが病院に出向きまして、もちろん病院長の許可をいただきまして私どもが自分の足で出向いて、その病院で、ラウンドというんですけれども回診を、一階から十階までの全病棟を見させていただく、それは私たちが時間をつくればやることができます。あるいは、先ほど申し上げました子供さんへのセミナーも、自分たちのできる範囲でやることができます。

 ただ、やはり人を育てるというのが、なかなかこれは難しいといいますか、文部科学省から予算をいただきまして、感染症クライシスマネジメント人材育成プログラムということで、三カ年でお金をいただいたんですけれども、これはやはり、先ほども申し上げました人を育てるという意味での教育ということでは、継続的な予算が必要になってまいります。

 また、ITを使って、私たちは、例えばこれは東北地区で、大きな遠隔の、離れていても携帯端末で病棟を見せていただいて、ああ、そのベッドはもう少し離した方がいいんじゃないですかというような、そういうITを使った器具、ハード面、そういったものの充実につきましては、これはやはり予算化していくというようなことが必要になってくると思います。

 幾つか私のこの資料の中にも書かせていただきましたけれども、やはりできることは本当にたくさんあって、それを一つ一つ、先ほど申し上げました三つのアクションプランに基づいてやっていくと、これは草の根的にといいますか、別に何も宣伝しなくてもどんどんどんどん来られまして、そういう成功体験といいますか、自分たちがこういうふうにして成功しましたということを病院の壁を越えて情報を共有化できるということは、やはりそれも、お金がなくてもできることであります。

 端的ではございますけれども、今申し上げたそういったことで、お金がかからないことからまずやっていく、かかることについては、ぜひ先生方の御知恵をいただいて、予算をちょうだいいたしまして、継続的なものをつくっていくということについては、そういう段階はあると思います。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

高橋委員 大変ありがとうございました。委員各位にもぜひ御協力をお願いしたいと思います。

 最後に、齋藤参考人に伺いたいと思います。

 結核予防法が廃止をされ、感染症予防法に結合されるに当たっては、いわゆる三十五条による命令入所と公費負担の仕組みがどうなるのかというのが関心事であったわけですが、感染症予防法においても、結核で入院した場合、医師が保健所に連絡して、認知をされれば公費負担の対象となるわけですが、直ちに保健所の認知が条件となり、結核予防法においてはそれが二週間前までさかのぼることができたのに、感染症予防法では七十二時間、つまり三日間までしか遡及できないことになります。こうした変更が現場での混乱にならないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

齋藤参考人 お答えいたします。

 今御指摘があった点は、現場では非常にやはり心配をしているところでございます。七十二時間、この間に、どういうふうに診査会を開いて、どういうふうに認定がされるのか、これは、各先生方からの御意見にもございましたとおり、どのくらい結核患者がいるかというのが一番の問題なんですね。

 例えば、診査会というのは各地域ごとに行われると思うんですが、その地域でどのくらい発生するかによってこの診査会がどういうふうに対応できるかということになります。先ほど御質問の中にもありました、大阪それから東京などは非常に結核の患者さんが多うございます。この多い患者さんにどう対応できるかというのがはっきり申し上げて心配なところではございます。

 ですから、実態に合わせたような、多少緩やかな部分も含めた対応をしていただく、そういうことを御検討いただくというのが一番よろしいのではないかと思います。

高橋委員 ありがとうございました。

 この点では、審議会の中でも随分具体的に、本当に毎日やるんだろうかとか、いろいろな意見が出されていましたので、引き続いて政府に対しても確認をしていきたいと思っております。

 今回の法案では、結核予防法になかった、人権を尊重するということが入ったわけであります。それは、人権はもちろん当然のことだと思いますが、それゆえの課題というのがあるのではないか。いわゆる長期入院との兼ね合いが一つ課題かなと思っていますが、御意見を伺いたいと思います。

齋藤参考人 お答えいたします。

 人権の問題が入りました点は非常によかったと思っています。これはやはり今まで欠けていた点ということで、いろいろな問題も出ていたと思います。ただ、人権を重視する余りに対策がおくれてしまうということは、やはりどうしても心配が残ります。

 今の御指摘のとおり、実際にこの法案が成立をして運用されていく中で、一般的に言うセーフティーネットのようなものをどういった形でつくっていくのか、そういったこともぜひ御議論をしていただきたいことと、各先生方から御意見がございましたとおり、結核は慢性的な疾患というところと、感染症法ではやはり急性期的なことに対する強制力のようなものがありますので、そこを、感染症法の中で結核をどう扱っていくのかというところは、今後のぜひ御議論をいただいて、こちらも現場に合ったものに、現状に合ったものにしていただければと思います。

 ぜひ治療をしっかりするという観点にも目を向けていただきまして、今後の対応を決めていただければと思います。よろしくお願いいたします。

高橋委員 ありがとうございました。

 時間が来てしまいまして、まだまだほかの参考人の方にも質問したいことがあったのですけれども、おわびをいたします。

 これで終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、五人の参考人の方、とりわけ、二十年前に御指導賜りました岡部先生にも来ていただきまして、貴重なお話を伺うことができました。本当に多岐にわたるいろいろなお話で、私どもにとって参考になるお話でありました。

 冒頭、岡部さんに伺いたいと思うのですが、おまとめいただいたこの資料集の中で、やはり二〇〇五年の五月のWHOの改正と申しますか、国際保健規則の改正というのは、我が国では二〇〇七年から実施されていくことと思いますが、感染症にとってやはり非常に大きなエポックメーキングな出来事であると私も改めて思いました。

 感染症は古くて新しい病気でございまして、生きている生体と、それを寄主とするウイルスやばい菌が絶えず闘いを繰り返しながらお互いに生存を争い合っているようなものでありますが、特に二十一世紀に入りましてから、新たな新興感染症、あるいは再興、もう一度起こってくる感染症、あるいは先生の御指摘のテロなどの問題もあって、構えていかねばならないぞという御指摘であったのだと思います。

 先生がおまとめいただきました、では何をなすべきかという、このWHOのIHRの改正に伴って、改正の概要でおまとめいただきました資料を見ますと、これまでの報告対象はもっと拡大して、あらゆる公衆衛生上の問題となり得るものや、あるいは各国の中核能力をもっと高めなさいとか、あるいは非公式情報を積極的活用しなさいと、本当にこのとおりだと思うのですが、私は、一点大きな、そうであれば、かえって今回の法改正が困ることになるのではないかと思う点があるので、先生の御意見を賜りたいと思います。

 私どもというか、特に先生のように、専門的に疫学も含めてこのサーベイランスの充実ということに従事しておられる先生方には、今回の法体系というのは、例えば事故が起きたりなんだりした場合に、警察と海上保安庁というところにまず報告の義務が課されております。すなわち、公安的、治安的側面が強いということでございます。

 しかしながら、ここでWHOが勧告しておりますようなものは、要するに、疑わしいものまですべて地域情報、サーベイランスというのはそうだと思うのですが、いろいろな情報をできるだけ集めて、新たな病原体の発生、これは未知のものもいっぱいありますから、今まで知らないところまで含めて多くの情報をとるということが医学の使命となってきます。一方、公安、治安、警察と申しますのは、やはり正直言って、余りに過剰に出てきてもらうと生きづらい、息苦しい、困るというエリアであります。

 先生がこれから、もう本当にこの国のサーベイランスを中心的に担う役割と思いますから、そうしたサーベイランス体制の充実ということと、私の懸念します、この法案がかえって治安的側面に公衆衛生が傾くのではないかというところの、いわば歯どめはどうやってかけていけるだろうかという点を一点お願いいたします。

岡部参考人 お答えします。

 なかなか難しい御質問で、昔から難しい質問をいただいていたのですけれども。

 それはさておき、やはりサーベイランスで、できればサーベイランスをする側としては、いろいろな情報があった方がいいわけですし、それは相当にプライバシーにかかわる問題が含まれることがしばしばあります。それは御本人にしてみれば、人が知りたいことは知らせたくないことの方が多いわけで、そこら辺に、常に公衆衛生と個人というのは、私の表に書いたようにバランスを考えなくちゃいけない部分だと思います。

 そして、このIHRにある、公衆衛生上問題となり得るものは全部報告と言いながらも、そこで一つフィルターがかかるようにはなっています。つまり、それがそのまますぐ全報告ということではなくて、きちんと評価をする、そういう専門家集団をつくって、それがいわゆる本物でない、うわさ話にとどまっているのか、あるいは極めて重要な問題になり得るのかといったようなことを、専門的な知識を持っている人たちの間でベリファイする、きちんと評価をして判断するというようなシステムはあります。

 ですから、日本の場合も、非公式情報や何かをこれからできれば構築したいのですけれども、それが何でもかんでも入ってきたり、何でもかんでも垂れ流すというふうにはならないような仕組みは今後必要だと思います。

 したがって、今度はバイオテロのような場合に、公安あるいは警察というような力が入ってくるのですけれども、私たちは、あくまで病気としてそれをとらえる。病気の広がりを防ぐという意味でのサーベイランスであって、役割としては、公安、警察の方は、それに対して犯罪的なものがあるかないかというところで、全く役割は違うと思うのですけれども、おっしゃるとおりに、例えば現場で、私たち、何かアウトブレークがあったときに、そこの場に行ってやるときに、警察が先にやるべきなのか、感染症という病気の方で先にやるべきかというのは、しばしばぶつかり合いがあります。場合によっては、そっちだよということもあるんですけれども。

 そういうことの運用については、十分話し合いができる場であったり、お互いのすり合わせをするようなことが検討されるべきではないかというふうに思います。

 今回の改正でサーベイランスそのものが後退することは私は絶対ないというふうには思っていますけれども、しかし、そういう現場での問題点というのは場合によっては起き得ることですので、法律のもう少し下の部分ですり合わせといいますか、きちんとした運用ができるようなことはぜひ工夫をしていただければ、やる方としてもありがたいというふうに思います。

阿部(知)委員 この件とは直接の関係ではございませんが、今、医療事故や医療ミスをめぐって、警察の、あえて言えば介入という形で、本来的な医療現場の萎縮を来したりしておることも先生は御承知と思います。私は、これがやはり緊急対応、テロ対策ということになってくると、もっともっとまた本来のサーベイランス体制の構築ということにネガティブな影響を与えまいかと懸念いたしますので、その点はなお、立法府におる私どももそうですし、厚生労働省ともすり合わせながら点検を進めていきたいと思います。

 本日、同じ二〇〇五年のWHOの会議を取り上げていただきました市民バイオセンターの川本参考人にお伺いしたいと思いますが、私は、この二〇〇五年の五月の会議は、今岡部先生にお伺いしたような、全世界的にサーベイランスシステムを構築して新たな感染症への備えをつくったという意味で画期的であると同時に、もう一つの側面では、市民というか、当然ながら、これは菌があって研究者がいて研究施設があって、その中で閉じこもったものではなくて、テロの対象も、あるいは、この施設が起こした事故の被害も市民なり住民に及ぶわけであります。

 そこで、市民サイドからいろいろな目で物事をチェックしていくという視点は私は大変に重要だと思いますし、日ごろの皆さんの活動というものを私なりに拝見して、きょうはぜひ来ていただこうと思いました。

 川本さんが少しお時間も短かったせいで、最初の部分をはしょられたかなと思いますので、恐縮ですが、この二〇〇五年の五月の会議で持ち出されましたバイオセーフティーという考え方、バイオハザードというと生物災害でありますね、それからバイオセキュリティーというと施設管理をがっちりきっちり封じ込めよと。今度はバイオセーフティーとなると、果たして何が真髄で何をなすべきか、この点についてもう少し具体的にお願いしたいと思います。

川本参考人 お答えします。

 このバイオセーフティーという考え方なんですが、これはWHOのバイオセーフティープログラムの中に、やはりバイオ施設そのものが、実は、病原体が漏れることによって、周辺住民への生物災害の発生源となる。周辺住民への感染拡大の可能性を認め、その防止の活動を中心的な目標とするということで、やはり安全、安心を確保するということが一つ含まれているというのが重要かと思います。

 それで、二〇〇五年の第五十八回世界保健総会決議においても、今までは実験室の中の医療従事者の感染の問題だったんですが、それだけではなくて、実は、医療施設、その周辺の住民の皆さん、これがやはり心配なんだと。それはなぜかというと、SARSの問題が出ておりますが、一度これが終息宣言を出して以降、北京ですとか台北ですとかシンガポールで、実は実験室の中で感染事故それから一部発症などが起こったということで、もしそれが拡大したらどうなるんだろうかということが生じたわけですね。

 ですから、そこでやはりきちんと実験施設、もちろん、今回、P4施設が必要だろうとかあるいはいろいろなセンターが必要だろうと言われていますけれども、そもそも、その施設周辺の住民の皆さんの安全というのをどう確保するのか、リスクコミュニケーションの中でその不安をどう解除していくのかという視点というのは非常に注目されているということであります。

 以上です。

阿部(知)委員 こういう研究施設も、いわゆる原発施設と同じように、生物化学兵器に象徴されますように、やはり危険性を持ったものをどのように認知し、危険性に備えるかという視点で皆さんの市民活動がおありというふうに賜りましたし、また、そういうものを組み込んで今後社会は進むべきだという点で、大変に参考になる御意見でありました。

 引き続いて、賀来参考人にお願いしたいと思います。

 先ほどのお話を聞いていて、本当に医療現場の切なさ、シャワーもない、検査も病院内ではできない、検査部は縮小の一方でと、本当にそれは思いを共有いたしますが、その中にあっても自助努力というか一生懸命やっておられて、本当に頭が下がります。

 私は、その中でも、わけても、これからもし本当にバイオハザード、バイオテロだけではなくて、研究室から漏れ出るいろいろなウイルスやばい菌の問題も含めて考えますと、地域の保健所やあるいは衛生研究所等々のエンパワーメントということがまずベースにないと、今、東北地方でお取り組みでありますが、現実には住民は守られないと思うわけであります。

 その辺で、病院施設内も困っておるけれども、果たして地域の健康拠点はいかがなものかという点で、少し御意見を賜りたいと思います。

賀来参考人 お答えいたします。

 貴重な御意見をありがとうございます。先ほども申し上げましたように、今、先生も御意見を申されましたように、やはり地域の衛生研究所あるいはそういった行政の研究所と密にタイアップしていくということが、もう本当にこれは必要不可欠であります。

 そういう中で対応していかなければいけないんですが、もう一つはやはり、今先生が言われました、地域の住民の方、例えば私どもの東北大学もそうなんですけれども、この検査の中で、バイオハザードあるいはバイオセーフティーあるいはバイオセキュリティーというふうに、今先生もおっしゃいましたようにバイオセーフティー、今、地域のいろいろな方々に病院の中の見学に来ていただきまして、実際に検査室の中にも入っていただきまして、どのようなことをやっている、あるいは、どのような形で菌をある程度防ぐような努力をしているというようなことも公開をするような形でやっております。

 そのようなことの中で、やはり、地域の方々の中には、ああ、これがセラチアというんですかというか、あのよく新聞に出ているというようなことも言われますし、やはり地域の中での安全をその地域の社会の方々とともに考える視点というのは、先ほどの参考人も言われましたけれども、非常に重要で、私も、地域ネットワークの中で今後取り組んでいかなければならないポイントは、地域の衛生研を含めた行政の方々と、あとはもう一つ、今言われました地域住民の方の視点を取り入れたようなネットワークをさらにつくっていければ、より国民といいますか地域住民の方のためになる、まさに患者さんのためになるネットワークになるのではないかな、きょう、そういったような先生方の御意見を伺って、改めて強く思った次第です。

阿部(知)委員 これからも先進的なお取り組みをぜひお願いしたいと思います。

 もう最後になるかもしれません、齋藤参考人にお願いしたいと思います。

 私が今取り上げました保健所の問題は、特に結核の行政には深くかかわってこられた実績もあるわけです。今回のこの法改正によって感染症という中に結核が一括組み込まれていく場合に、私は、今、非常に時代は格差社会と呼ばれて、さまざまなところでホームレスの方、それから若い方でもインターネットカフェに寝泊まりする方が出てきたり、実は昨夜も私が十一時過ぎに家の近くのスーパーで買い物をしていたら、すぐその外でお弁当を手で食べているホームレスの方がおられたりして、やはり時代というのは大変だなと改めて思っているような昨今の情勢であります。

 やはり弱いところ、それから健康弱者というんでしょうか、それから社会的、経済的弱者のところに、結核がこれから新たな形でまだまだ再興してくるというか広がっていくということを私はとても懸念するわけです。

 お話の中でも触れられましたが、今回の法改正によって、そうした部分、私も保健所にしばらく勤めたこともありまして、例えば、保健所からは、リスクの高いおうちには訪問するなどの指導をして、在日外国人の方とか、少し、いろいろな御病気の方とかにはお訪ねしている業務もあったんですが、だんだんもう保健所も予算が厳しくてやれなくなっているわけです。そういう中で今回のこの法改正があって、果たして保健所の役割ということから見てどのようにお考えかということを一点お伺いいたします。

齋藤参考人 お答えいたします。

 現在、保健所の役割というのは、やはり結核というのが非常に重要な部分を占めていると思います。

 御指摘のとおり、格差社会というのが昨今非常に言われていますし、NHKではワーキングプアというようなことも報道をされております。そうした方々が非常に弱い立場というところはもう先生のおっしゃるとおりで、保健所がそこにどういうふうに、早く見つけて早く対応していくということが今後どうなるのかというのは、まだはっきりしないといいますか、わからない部分があります。

 というのは、法律で、結核予防法という名前がついたものが感染症法の中に統合されるわけですので、当然その対応というのが、法案の名前が、タイトルがなくなったことだけではないとは思いますけれども、やはり自治体の対応なども後退するのではないかという心配がどうしてもついて回ります。

 それと、即座に認知をされるというところについても、今までより感染症法の方が厳密に厳しくなってまいりますので、本当にその対応のところが十分にできるかどうか。

 ぜひこの場でも、御意見がたくさん出ておりますので、御議論の中で、実態に合わせたような対応ができるようなこと、また、先ほどちょっと申しましたとおり、非常に、例えば大阪と長野ですと結核の患者さんの数というのは四倍ぐらい違うんですね。その中での対応をどうするかというところをぜひ御議論いただいて、その中で保健所の役割というのも決めていただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 山川参考人には時間の関係で御質疑できませんでしたが、医療と人権という根本テーマを長くお取り上げでございますので、これからもどうかよろしく御指導ください。

 ありがとうございます。

櫻田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百六十四回国会、内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官伊奈川秀和君、警察庁長官官房長安藤隆春君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長桜井俊君、消防庁審議官寺村映君、文部科学省大臣官房審議官藤木完治君、厚生労働省大臣官房審議官荒井和夫君、健康局長外口崇君、医薬食品局長高橋直人君、医薬食品局食品安全部長藤崎清道君、労働基準局安全衛生部長小野晃君、職業安定局長高橋満君、保険局長水田邦雄君、農林水産省大臣官房審議官小林裕幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

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櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島敦君。

大島(敦)委員 きょうは、質問の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 感染症について質問する前に、今、外務委員会で日本とフィリピンの経済連携協定についての審議がなされておりまして、その中で、看護師及び介護福祉士の受け入れについて議論がされておりますので、何点か確認をさせてください。

 外国人の受け入れについては、平成十一年の八月の閣議決定がございまして、これは第九次雇用対策基本計画の中で、二点ございます。

 一つは、「我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極的に推進する。」ということ、もう一つは、「いわゆる単純労働者の受入れについては、国内の労働市場にかかわる問題を始めとして日本の経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすとともに、送出し国や外国人労働者本人にとっての影響も極めて大きいと予想されることから、国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対応することが不可欠である。」ということになっておりまして、基本的には、外国人労働者の受け入れは、専門的、技術的分野の方に限ると考えております。

 その点につきまして、今回のフィリピンからの看護師及び介護福祉士の受け入れは、この閣議決定に抵触しないのか、まず確認をさせてください。

高橋(満)政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の外国人労働者の受け入れの範囲の考え方でございますが、御案内のとおり、出入国管理法上、我が国の産業及び国民生活に与える影響を総合的に勘案して決定する、こういうような考え方になっておりまして、こうしたことを受けまして、ただいま委員から御指摘のありましたように、平成十一年に閣議決定されました第九次の雇用対策基本計画におきまして、御指摘のあったような考え方、方針というものが決定をされておるところでございます。

 今回のフィリピンとの間の経済連携協定に基づきます受け入れでございますが、これはあくまでもこの経済連携協定の枠内で看護師等を特例的に受け入れていこうというものでございまして、このことによりまして、閣議決定されております基本方針というものあるいは基本政策というものが変更をされるものではないというふうに考えておるところであります。

大島(敦)委員 そうしますと、今回の日本とフィリピンの経済連携協定に基づく看護師及び介護福祉士の受け入れというのは、この閣議決定の例外規定、例外であるという理解でよろしいでしょうか。

高橋(満)政府参考人 そのように私どもは考えております。

大島(敦)委員 そうしますと、例外規定ということで、現行の入管法によりますと、外国人の在留資格ということで、医療従事者として、医師、歯科医師、看護師が在留資格がありまして、医師については、その在留の期間は限定をされておりません。歯科医師については六年間、看護師については今七年間を限度として、日本の看護師の資格を持っていらっしゃる外国人の方は七年間を限度として研修目的で日本で看護の仕事に当たることができるという規定がございまして、厳格に解釈をしているかと思います。

 したがいまして、今回、日本そしてフィリピンの条約の締結がされますと、今の考え方、閣議決定あるいは入管法の例外としてフィリピンから看護師及び介護福祉士を受け入れていきますから、それについては厳格にしなければいけないなと考えるところです。

 そうしますと、今回の受け入れに当たって、例えば、どこの病院あるいは施設に受け入れたのか、国としてはしっかりと把握するおつもりがあるか、ちょっと伺わせてください。

高橋(満)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の受け入れに伴いましての大きなスキームとしては、我が国におきます受け入れ調整機関として国際厚生事業団が一元的にその業務の処理を行う、この厚生事業団が受け入れ施設に対して当該フィリピン人のあっせんを行うわけでございますが、その際に、受け入れるとき及び受け入れた後、一定の受け入れ施設から報告をもらうことになってございますので、一元的にこの国際厚生事業団が受け入れ施設にかかわる情報等を把握、管理をいたすことといたしております。

大島(敦)委員 先ほど申し上げましたとおり、閣議決定及び入管法の例外で今回受け入れることになるものですから、その受け入れたフィリピンの方、どこの病院、どこの介護施設で受け入れが行われているのか、それについて今その受け入れ機関で一定の把握をされるということなんですけれども、私どもあるいはマスコミ関係者がどこの機関で何人ぐらい受け入れていらっしゃるのか照会をした場合には、その一覧表なりを提出することは可能、それは認められるのかどうか、求めた場合に提出するかどうかについて伺わせてください。

高橋(満)政府参考人 今回のスキームに基づきまして受け入れを行いました施設及びその施設の所在しておる場所等につきましては、御照会があった場合には御回答申し上げたいというふうに考えております。

大島(敦)委員 今のは施設の名前とか場所であって、その施設に何人ぐらい、あるいは何年度に受け入れたフィリピンの方が従事しているかということのその詳細については報告をいただけるという理解でよろしいでしょうか。

高橋(満)政府参考人 それぞれの施設で何人ぐらいの方を受け入れているか等につきましても、御照会があれば御回答申し上げたいと思います。

大島(敦)委員 わかりました。

 もう一つ、私どもが懐疑的にならざるを得ないのは、これまで、外国人の研修生、技能実習生の制度について、まじめに受け入れている機関もあるかとは思うんですけれども、そうではなくて、低賃金の労働に従事させて、日本に対して余りいい感じを持たずに母国に帰られる方も多いという事件が多かったんです。

 したがいまして、今回のフィリピンの方の受け入れについても、気持ちよく働いていただき、気持ちよく母国に帰っていただくのが必要だと私は考えております。

 そうしますと、今回は、入国をして、六カ月間の日本語研修、これは看護そして介護の導入研修を受けて、それから、看護師さんについては上限が三年間で就労しながら研修を受ける、介護福祉士さんは上限が四年間で就労しながら研修を受け、その期間中に看護師国家試験あるいは介護福祉士国家試験を受験するということになっておりまして、その上限が三年間あるいは上限が四年間、介護福祉士の場合には、もちろん養成校コースというのもありますから、その点についても承知はしているんですけれども、悪意にとれば、合格しなくても構わない、三年間なり四年間、自分の病院あるいは自分のところの介護施設で従事、働いていただき、そのまま帰国することも可能であるわけなんですよ。

 そうすると、その合格率というのが私は一つの指標になるかと考えております。受け入れた施設が、百人受け入れて、何人が受験をして何人合格するかということは、これは、政府あるいは今政府がお願いするであろう受け入れの機関についても把握して、それを公表することが一つの受け入れ病院、受け入れ施設に対するレベルあるいは研修を充実させることにもつながるかと考えるんですけれども、その合格率及び受験者数を発表する予定、発表を僕はすべきだと思うんですが、それを発表する、あるいは、私たちあるいはマスコミ関係者が聞いたときにそれを公表するつもりがあるかどうか、用意があるかどうかについて、伺わせてください。

高橋(満)政府参考人 受け入れたフィリピン人の方々の国家試験の合否の状況でございますが、これにつきましても受け入れ施設から報告を求めていくというふうに考えておるところでございまして、そういう中で、本枠組みによって我が国に入国いたしましたフィリピン人全体の受験率あるいは合格率、これについては、取りまとめの上、公表をしていきたいと思っておるところでございます。

 ただ、個別の受け入れ施設ごとにどうかということも恐らく御関心としておありなのかなと思いますが、受け入れ施設によっては大変少数の人数、基本的にはそれほど一つ一つの施設としては多人数にわたらないような形で研修の実を上げていただくということがございますので、例えば、施設ごとに合格率を公表するといたしました場合に、結果として個々のフィリピン人の方々の合否が明らかになってしまうようなケースも考えられるわけでございまして、そうしたことも含めながら、御指摘の点も踏まえて、今後適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

大島(敦)委員 合格率、受験者数も僕は必要だと思うんです。二人、三人受け入れられて、全員が受験したのか、あるいは受験せずに母国に帰られたのか、あるいは、受験した方のうち何人が合格したのかということは必要だと思うんです。

 例えば、今おっしゃられた内容だと、少数の、一人、二人、三人ぐらいだとだれが受験したのか特定されるということなんですけれども、特定個人まで関心を持たれて伺う方はいないと思いますし、もう一つは、毎年毎年受け入れていくわけですから、受け入れが三年間であれば三掛ける三で九人、あるいは四年間であれば十二人の方の母数があるわけです。

 したがいまして、私としては、その人数の多い少ないにかかわらず、何人が受験をして、何人が受験をしなくて、受験した人のうち何人が合格したかというのは、これは指標として公表させることがその受け入れ機関に対する大きな、まじめに研修を行わせることにつながってくるのかなと考えまして、もう一度、その点についても、前向きというのか、公表するという前提でのお考えを聞かせていただきたいんです。

 柳澤大臣に振るのは、よろしければ大臣からの回答を得たいとは思うんですけれども。これは、制度を善意に利用する方もいらっしゃいますし、あるいは悪意を持って利用される方もいらっしゃると思うんです。その歯どめとして、厚生労働省の方は、個々の受け入れ病院、受け入れ機関に対してチェックを行うということは言っているんですけれども、一番大きな、例えば、この間、法科大学院の合格の一覧表が新聞で掲載されますと、やはりその合格率を上げるということで学校側は努力をしているわけですし、今回のこの事例についても、受け入れされたフィリピンの方の多い少ないにかかわらず、合否及び受験、未受験の割合は受け入れ機関ごとに出すべきだと私は考えるんですけれども、その点についての大臣の御所見を伺わせてください。

柳澤国務大臣 今の大島委員の御指摘は、要するに、研修に振り分けられた施設が、本当に研修に力を入れて、資格を取ることに協力的であるかどうか、この点は非常に問題ではないか。むしろ、単純な労働力の不足の補充というようなことで、余り研修に熱心でなくて、認められた滞在の日数をいわばそういう労働力の補完としてやってしまうというようなことをいかにして防ぐか、こういうお話でございます。

 したがって、今局長が答弁をさせていただいたように、そういうことに御関心があることは当方としてもよくわかります。しかしながら、また、少数の、例えば二人ぐらいを受け入れたところの施設がそうしたことを明らかにすることによって、個々の受け入れ者の合否というか、そういったようなことがすぐ判明してしまうような結果になりはしないかということをおもんぱかって今後の体制を考えたい、こういうことでございます。

 それから、その労働力不足のことは、私どもとしても、そういうふうに使われるというのは全く本意でないわけでございますけれども、他方、あえてまたここで言わせていただきますと、上限はいずれにしても決まっているという点もありますので、それらのことも総合勘案して、どういう制度が一番この制度の趣旨に合った情報公開の仕方であり、また内容であるか、これは、今局長答弁にもありましたように、今後よくよく検討させていただきたいということでございます。

大島(敦)委員 先ほどお話をしました法科大学院の合格率の新聞報道を見ますと、本当に少人数が受験した法科大学院も公表しているわけなんです。多分、それは、特定して、だれが受験したか特定されるかとは思うんです、日本国内においても。ですから、今、役所の方、部長の方、あるいは大臣の方がおっしゃった危惧というのは、特に外国の方ですから、そこまで特定して追いかける報道機関なり方はいらっしゃらないかと思うので、私が納得するにはもう少し理由が必要なのかなということをつけ加えさせてください。

 もう一つ伺いたいのは、研修です。

 看護師の資格を取るには非常に難しい試験を受けなければいけないし、普通ですと看護学校に行って集中して勉強されるわけです。就労しながら研修を受けて受験するわけですから、ハードルは極めて高いと考えまして、そうしますと、その研修費をだれが負担するかの問題があるかと思うんです。研修費をだれが負担するのか。それはフィリピンの方が負担するのか、それとも受け入れた施設が負担するのか、その点について御答弁いただければと思います。

高橋(満)政府参考人 研修に係る費用の負担でございますが、基本的に、フィリピン人を受け入れた施設におきまして適切な研修が実施できるような体制の整った施設にあっせんするということが大前提でございまして、したがいまして、そうした研修実施に係る費用というのは受け入れ施設から負担をしていただくということでございまして、フィリピン人から特別の費用を徴収するということはございません。

大島(敦)委員 あと、今回は、ODAの予算を使って、フィリピンの方が日本に来る旅費はODA予算で見る、日本に来てから六カ月間の研修の費用もODAの予算を使うということを伺っておりまして、そうした場合、受け入れてから、今度は帰国する費用があると思うんです。しっかりと試験に合格されて、日本で就労してから母国に帰国するのでしたら本人が負担すべきだと思うんですけれども、途中で研修を終了して、受験をしないであるいは不合格で帰られる方の帰国費用というのはだれが負担するのか、その点について教えてください。

高橋(満)政府参考人 受け入れたフィリピン人の方が途中で何らかの理由でお帰りになる場合のいわゆる帰国費用でございますが、現在のスキームの中では特段の定めをしておるわけではございません。

 ただ、私ども、これから一つのモデル雇用契約、これはフィリピン人と受け入れた施設とは日本語研修修了後は雇用という契約になるわけでございますので、モデル雇用契約を定めることといたしておりますが、その中で、雇用契約終了の際の帰国費用については、契約の終了の原因が当該フィリピン人の重大な責に帰する場合を除いて、受け入れ施設が負担するというような内容でのモデル雇用契約というものを定めて、受け入れ施設側に十分周知を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

大島(敦)委員 今回は外交交渉ですから、日本が得るほかの分野での利益とフィリピンが日本に求める利益、フィリピンは国全体として外国で働いていただくということを進めているやにも伺っておりますので、そこのバランスをとるのが難しいとは思います。しかしながら、先ほどの閣議決定が前提となっておりますので、その点を改めておりませんから、その就労については、できるだけ閣議決定に沿いながら、専門的、技術的分野以外の方については的確に進めるのが望ましいと考えております。

 最後に、大臣に、どこで六カ月の研修を受けるかということについて、今までですと大阪とかあるいは東京とか大都市で研修を受けることになっておりまして、しかしながら、日本ですと沖縄が東南アジアには非常に近くて、恐らく、東南アジア、フィリピンの方、沖縄で六カ月間研修を受けられてから日本のこの寒い本土で実際の研修を受けられるということで、六カ月間の研修というのは、もしも今後検討できれば、これは厚生労働大臣が決めることではないんですけれども、他省庁にも働きかけていただきたいんですが、沖縄で東南アジアの方が研修を受けられるようにしてほしいなというお願いをまたほかの省庁にもお願いしていただきたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 大島委員から、受け入れ者の側に沿った大変温かい御配慮をいただく御質疑をいただいたわけでございます。

 確かに、現在、日本語研修が予定されておる海外技術者研修協会の研修所は沖縄にはございません。ただ、御指摘のように、ほかのいろいろな施設については、東南アジアの皆さんの受け入れ先として沖縄を利用することは非常に多いです。私の関係しているNPOなんかも、東南アジアの人たちを呼ぶ便宜からいって、沖縄でいろいろな、これはアドホックの会議ですけれども、そういうところで開くことが多い。これはこれでよくわかる御指摘でございます。

 ただ、どっちみち沖縄で働けない、働く先はやはり本土であったり、場合によっては北海道とかそういうところにもあり得ることを考えると、どこで一体差があるのが一番親切かというような面もあるのではないかと、これは常識論ですが、考えるわけでございます。

 ですから、私としては、機会があれば、そういう御意見を大島委員から表明され指摘をいただいたということは申し伝えますけれども、そこは余りがちがちの話ではなく伝えてはおきたい、このように思います。

大島(敦)委員 この外国人の受け入れにつきまして、最後に手短に答えてほしいんですけれども、今後日本として、例えば、ドイツでは一九九四年に外国人中央データベースが構築され、外国人の入国、在留及び就業に関する行政データが共通化されたということで、ドイツにおいては外国人の就労というのは一元的な管理ができているやには聞いております。

 今後、閣議決定の見直し等もあるかもしれませんし、外国人の受け入れを、ほかの国とのEPA、FTAの交渉の中でも求められてくると思うんです。その際に、今後、外国人労働者の、管理という言い方は余りよろしくはないんですけれども、どうやってそれを国として見ていくかという点につきまして、今後の方向についてお答えいただければと思います。

高橋(満)政府参考人 外国人全般の日本に滞在中におきます在留に関しまして、情報を正確に把握して総合的に管理をしていく、情報の共有も含めまして総合的に管理していく、こういう仕組みを構築していく必要があるのではないかということで、現在、政府全体としてそのあり方について検討を行っておるところでございます。

 そうした一環として、私ども厚生労働省といたしましても、労働市場に悪影響を与えるような不法就労を防止していく、あるいは適正に受け入れた外国人の方々の雇用管理の改善、あるいは、場合によっては離職する場合の適正就労を促進していくといったような観点から、外国人を雇用いたします事業主の方に対して雇用状況の報告というものを義務づけられないかということで、現在、私どもも検討をいたしておるところでございます。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 続きまして、感染症の法案の審議に移らせてください。

 きょうは各省庁幅広くお声をかけさせていただきました。まことにありがとうございます。

 先般九月に新型インフルエンザの机上訓練が行われたかと思います。新型インフルエンザはようやく週刊誌等でも取り上げられるようになってきまして、当委員会でも多くの議員の方が質問をされておりまして、これからインフルエンザのシーズンに入ってくると国民の関心は去年よりも強くなってくるかと思います。机上訓練の、これは非常に大仰な名前がついておりまして、昨年の十二月の新型インフルエンザ対策行動計画というのがありまして、ただ、これは行動計画ということで、非常に大きな前進ではあるかとは思うんですけれども、内容を見るとまだ項目の列記でありまして、行動計画と言えるにはまだ先が長いのかなとは思っております。多分、政府内において、今回は机上訓練を通じて各関係省庁の皆さんにまず関心を持っていただこうというのが目的かなと私は類推をしております。

 つきましては、まず、きょうおいでいただきました金融庁の渡辺副大臣から、金融庁は、多分ワールドワイド、あるいは常に世界のバンカーあるいは金融関係者の方との交流が多いと思いますので、どのような対策をとられているのか、そして、今回の机上訓練についての金融庁としての御所見があれば伺わせてください。

渡辺(喜)副大臣 金融業務の命というのは決済でございます。この決済機能がさまざまな非常時にさらされ、決済不能ということが出てまいりますと、この不安心理が蔓延をしていってしまいます。こういったシステミックリスクというのは金融機関にとっては最大の敵でございますから、さまざまな非常時対応、危機管理マニュアルというものを監督指針の中で定めるようしているところでございます。

 御指摘のグローバルな観点からはどうかということでございますが、IMFがいち早く鳥インフルエンザ対策について検討を始めました。ことし六月のサミット財務大臣会合の声明におきましても鳥インフルエンザ対策が指摘をされておりまして、まさしく共通の課題として認識をしているところでございます。

 金融庁の監督指針、もう既に日本の銀行では、業務継続計画の中で伝染病への対応を含めた計画を策定済みでございます。例えば、伝染病が蔓延してまいりまして人が欠けてしまう、そういう事態が長期化する、そういう場合であっても決済機能は大丈夫ですよというようなマニュアルができております。中には鳥インフルエンザに特化した対策を策定している銀行もあるという状況でございます。

大島(敦)委員 今、渡辺副大臣から、金融庁が所管をされている銀行においては鳥インフルエンザに特化した企業マニュアルをつくっている会社もあるというお話がございました。そして、IMF、あるいはことしの六月に行われましたサンクトペテルブルクの財務大臣会合におきましても、この新型インフルエンザについての議論がなされたというお話がございまして、そうしますと、日本国内ではどのような対応がとられているのかなと思います。

 先般も、私は鉄鋼業出身なものですから、この場でもお伝えしたかと思うんですけれども、経済産業省の鉄鋼を担当される方にお願いしまして、各鉄鋼業における新型インフルエンザの対策についてちょっと教えてくださいというリクエストをして、すぐに教えていただきまして、その中で、新型インフルエンザ対策についてこれから対策をとられる会社もあるという報告を受けました。

 なぜかというと、日本の鉄鋼業の高炉というのは、三百六十五日二十四時間、一たん火を入れますと消すことはできなくて、一たん高炉の火がとまりますと、それを復旧するのには長い時間と費用がかかり、そうすると、日本の産業界に与える影響が極めて甚大でして、特に、今合理化が進んでおりますので、本当に限られた作業員の中で日本の製造業は工場を動かしているわけでして、作業員が同じ部屋の中で三直四交代で仕事をしていますから、一人が新型インフルエンザに感染して、これに全体が感染しますと、もう作業が滞るということになってくるわけなんです。

 経済産業省さんでは、三月の予算委員会での答弁がございまして、基幹インフラの部分については対応を各企業にお願いしているという話がございました。基幹インフラもそうなんですけれども、ほかにも、流通もそうですし、考えられる産業もあるのかなと思っていまして、その点について、この間の机上訓練も踏まえて、経済産業省としてどのような対策をとろうとしているのか、あるいはとってきたのか、その点について御答弁いただければ幸いです。

高木大臣政務官 お答え申し上げます。

 訓練を通じまして、一つは、各府省との情報共有の体制が再確認されるなど、各省連携の強化が図られたと考えております。しかしながら、今回の訓練によりまして、発生する事態が多種多様であることが理解されまして、そうした中で、正確な情報を把握すること、またそれらに対応できる事前の準備を行うことの重要性を認識いたしました。

 例えば、今大島委員よりるる御指摘ございましたとおり、経済産業省が所管しております課題といいますのは、一つは、国外にこれが発生した場合、石油、天然ガス等の安定的な輸入の確保をどのようにしていくか。また、国内で発生した場合、今御指摘ありましたライフラインに関する電力、ガス等のエネルギーの安定供給の確保、また、新型インフルエンザ対応のために、被害を受ける中小企業への対応、やはり中小企業も従事している人数が少のうございますので、ここをどのように支援していくか。

 またさらに、厚生労働省また外務省等の新型インフルエンザに関する情報を産業界へどのように周知し、注意喚起をし、要請を行っていくか。また、各産業への影響の確認もしないといけませんし、衛生関連物資、マスク、医療器具、薬用石けん、手袋等々、こうした安定供給に関する協力要請も必要でございます。また、我が省におきましても、省内職員に対する渡航延期の指示、さらに、駐在員、出張者、旅行者の状況確認や家族等への帰国等の指示がございます。

 ただ、今お話ありましたとおり、一つは、製造業にまつわる化学プラントをどのように回していくか。そしてまた、もう一つはライフライン、ここは、破綻をしますと、国民生活はそのまま破綻もしますし、医療機関もストップをしてしまいます。またさらに、物流がとまれば食料が不足する、こういう事態もございます。こうした点につきまして、これから積み重ねてまいりたいと思っております。

 まずライフラインにつきましては、現在、電力業界またガス業界の主要各社から新型インフルエンザへの対応につきまして聴取をしているところでございます。新型インフルエンザが流行しました場合には、御指摘のような企業ごとの対策の必要性も高まるものと想定をされます。必要に応じまして、所管の各産業界に対して、外務省また厚生労働省が発する新型インフルエンザに関連する情報を周知しつつ、注意喚起、また所要の要請等を行っていく所存でございます。

 各企業の対応計画に関しましては、今後の新型インフルエンザ関連の事態の推移も注意深く見守りながら、関係府省と検討しつつ、必要に応じましてその策定を指導させていただきたいと思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 新型インフルエンザ、ようやく日本でも、私も一カ月ちょっと前から大分関心を持っていまして、たまたまフォーリン・アフェアーズの日本語版、去年の六月のを読んでいましたら、その中でも、新型インフルエンザ、アメリカでは去年の六月以前からもう話題になっていて、APECの中の議題にすべきなんという研究者の意見もあったりもするわけなんです。

 ですから、日本の企業は極めて敏感に反応しますから、特に日本の会社に言うときには、他社がそのような準備をされて、パンデミック、世界的流行になったフェーズ6の段階でも生き残りをしっかりとマニュアルの中に書いている会社もあるということを一言企業に言っていただくと、自分の会社もということになるものですから、ぜひ経済産業省さんとしても関係各企業にお声をかけて、十分な対策をとっていただければと思います。

 話は若干、これから警察庁の方にもちょっと伺いたいと思うんですけれども、その前に新型インフルエンザ、恐らく、九十年前のスペイン風邪のときには、二十五歳から三十歳ぐらいの若い方が多く亡くなられたと伺っております。免疫機能が過剰反応して、私どものような比較的年を重ねた人間ではなくて若い方が亡くなるという話を聞いておりまして、その点について厚生労働省の御所見を伺えれば幸いでございます。

外口政府参考人 新型インフルエンザの年齢別の致死率をどう考えているかという御質問でございますけれども、本年六月三十日のWHOの報告によりますと、二〇〇三年から二〇〇六年四月末までに発症した二百二の症例について、鳥インフルエンザH5N1、この症例全体の致死率は五六%、このうち最も致死率が高いのは十代、十歳から十九歳の七三%、最も低い致死率は五十歳以上の一八%となっております。

大島(敦)委員 警察庁の方に、安藤官房長に質問をさせていただきたいんですけれども、多分警察庁さんも、前の通常国会のときに沓掛国家公安委員長からしっかりと対策をするという答弁がございまして、警察の中でも、タミフルとか、あるいはワクチンができればワクチンの、だれから投与していくかの優先順位づけもできているかなと思うんですよ。

 その際に、体が元気な若い警察官を現場の第一線に出すと意外と致死率が上がったりもして、ではそうすると、四十代、五十代のある程度年期を重ねた警察官の方に現場に出ていただいた方が致死率が下がるのかという議論もあるかもしれなくて、命は同じ命ですからどっちがいいか悪いかという議論は多分できないとは思うんですけれども、そういう点も踏まえて、警察庁における準備の状況についてお話を伺わせていただければ幸いです。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、警察としての新型インフルエンザについての現状認識でありますが、一つはやはり今委員御指摘のように、治安維持機能を担います警察官自体が感染をして、その治安維持確保に支障を来すおそれが十分あるということが一点でありますし、二点目は、新型インフルエンザというものが広く発生、流行した場合には、御案内のとおり、社会機能とか経済活動の混乱を引き起こして、公共の安全と秩序の維持にも大きな脅威を及ぼしかねない重大な問題である。この二点、重要な点を認識しておりまして、そのような事態にも的確に対応できるよう、特に昨年から各県を指導して準備をしているところでございます。

 そこで、具体的な対策ということでございますが、感染予防対策につきましては、これはまず一つ、警察庁では、各都道府県警察に対しまして、新型インフルエンザの危険性や症状を周知徹底させる、今その途上でございますが、そういう対策をとっておりますし、あるいは、これを受けまして、各県警察では防護マスク等の装備資機材の整備を今進めております。

 それから、各県の衛生担当部局と密接に連携をいたしまして、職員の感染防止対策を現在推進しているという状況でございます。

 もう一つの、例えば薬ですね、新型インフルエンザの抗インフルエンザ薬というものを、限られたものでございますので、どう配分するかという点については、非常に細かいシミュレーションといいますか、そういうところまではまだ至っておりませんけれども、今考えておりますのは、やはり患者と濃厚接触がある可能性のある現場警察官に優先的に投与して、警察官の執行力を低下させない、こういう原則を立てておるのが現状でございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 話は前後するんですが、経済産業大臣政務官の高木さんと、あと厚生労働大臣の柳澤さんにお願いしたいんですけれども、各会社には産業医がいらっしゃるわけですよ。産業医の方にこの新型インフルエンザ、恐らくインフルエンザのこの時期になると、産業医の方は御関心を持ってそれぞれの会社の中での健康管理に努めるかと思うんですけれども、新型インフルエンザについても国の方から産業医の方にぜひ指導をして、起きたときにどこの部署が一番感染が広がりやすいかについて検討するようにということを、一言言っていただけるだけでも大分対策がはかどってくるのかなと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 続きまして、総務大臣政務官の谷口さんにお話を伺いたいんですけれども、総務省さんにおきましても、通常国会での答弁がございまして、恐らく対策は大分とっていらっしゃるかなとは思うんですが、現状の対策と今後のあり方について御決意をいただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

谷口大臣政務官 まずお尋ねの件ですけれども、九月十二日に関係省庁で新型インフルエンザの対応の机上訓練を行いました。それに関しましては、総務省及び消防庁としては、連絡体制もきちっと確認をできて、特に問題はなかったかと思います。

 今後の課題ですけれども、関係しますもの、例えば消防行政に関していえば、三つほどあるかと思います。一つは、患者を搬送される救急隊員の感染を防止する防護の服とか、それからマスクなど、こういったものの備蓄をきちっと、十分に備蓄をとらなきゃいけない。

 それから二つ目が、救急隊員、いわゆる社会機能維持者と言われていますけれども、こうした方へのタミフルとか、それからワクチンの適切な予防投与や接種の実施をしなければいけない。

 三点目が、現場において混乱が生じることがないようにマニュアルをきちっとつくっていくということで、今後とも各省庁また各地方公共団体と連携して、この新型インフルエンザへの対策、対応をきちっとしてまいりたい、こういうふうに考えております。

 それからもう一つ、関連するところで通信事業者でありますけれども、電気通信事業者においても、鳥インフルエンザ、それから疫病、流行病、こういったこともいろいろなリスクの中の一つの想定リスクとしてきちっととらえておりまして、それに対応できるよう、危機管理マニュアルをきちっとつくって対応をしております。

 例えば、具体的にはどういうことかといいますと、一つは、ある事業所で感染にかかって対応できなくなったという場合に、そこに別の人が行くような体制をきちっと準備しておくとか、それからそこに入れないというような場合には遠隔操作できちっと対応ができるとか、こういったことをしっかりと各通信事業者も対応している。総務省としても、こういった緊急時にサービスがきちっと確保できるように、これからもきちっと要請をしていきたい、こういうふうに考えております。

大島(敦)委員 政府の対応の状況についてはよくわかりました。

 ただ、これまでの議論もございまして、ことし、ひょっとして、今のフェーズ3、鳥から人への段階から、フェーズ4の人から人への感染になるおそれも否定はできないわけです。ことしフェーズ4に、東南アジアあるいは中近東、あるいはアフリカ、日本も含めて起きた場合には、多分、今の報道を見ますと、過剰な反応をしてパニックになるおそれが私はあると考えています。これは非常にリスクが高い問題だと思っているんです。

 ですから、今お金をかけて取り組むべき内容と今できる内容があると思いまして、先ほど安藤官房長からも、そして今、谷口総務大臣政務官からも、警察及び消防関係者の方はマスクを準備しているやの話があったんですけれども、そのマスクもどういうマスクがいいのかなという議論もありまして、この間の質問で私は抗ウイルスマスクを購入したという話を厚生労働省の方に言いましたら、大島さん、間があいているようなマスクは余り効き目がないという話も聞いたりして、ちゃんとしたマスクが必要なのかもしれませんし、今この時点でフェーズ4に移った場合に国民はどういう対応をすべきかなと。恐らく、すぐマスクがなくなると思いますし、どうしていいかわからない。

 そうしますと、今できる対応につきまして、もう一度なんですけれども、厚生労働省であるいは政府で、国民が、ことしの冬は多分関心が増してくると思うんです、備蓄をしようなんという方もいらっしゃるかもしれないわけです。そのときに、皆さんに伺ったら、どういうマスクを推奨していて、あるいはどういう対策が、外に出るとか出ないとか、あるいは家の中にいるとか、あるいは手洗いとかゴーグルをするとか、いろいろな対応があると思うので、それについて、政府としてどういう対策があるのかというのを打ち出すべきではないのかなと思うんですけれども、その点について御所見を伺わせてください。

外口政府参考人 抗インフルエンザウイルス薬のタミフルとか、それから新型インフルエンザ用のワクチンですとか、そういった今準備を進めているものもありますけれども、先生御指摘のように、今起きたときに何が有効かということについては、通常の一般の感染症対策、例えば、御指摘のマスクだけじゃなくて、うがいとか、手洗いとか、人込みを避けるとか、こういったことは実は大変有効なわけであります。

 こういったことを、今回、新型インフルエンザ対策としての普及啓発も進めていきますけれども、もちろん通常のインフルエンザ対策などを含めて、いろいろな機会を通じて、新型インフルエンザ対策にもこれは有効なんだということも含めて、いろいろな機会に国民の皆様に向けて啓発活動を進めていきたいと思っております。

大島(敦)委員 渡辺内閣府副大臣、谷口総務大臣政務官、高木経済産業大臣政務官につきましては、ありがとうございました。退席していただいて結構でございますので、ありがとうございました。

 続きまして、今話が出ましたワクチン。ワクチンをつくるためには、ウイルス株を海外から日本に持ち運び、そして、日本の中でその強毒性のウイルスを弱毒化してワクチンを製造するという過程だと私は承知をしておりまして、ただ、大きなハードルが二つあると聞いております。

 一つは、農水大臣の許可がウイルス株を輸入するのに必要で、それには一カ月かかるという話を聞いていまして、もう一つは、文部科学省の遺伝子組み換えの文部大臣の確認の手続というのがありまして、これは平常時においては三カ月かかると言われております。

 そうしますと、農水省の許可をとるのに一カ月、文部科学大臣の確認の手続で三カ月で、四カ月かかるわけでして、一刻も早くワクチンをつくり、それを製造する必要があると考えています。もちろん、文部省さんのフェーズ4以降の新型インフルエンザ対策に関する行動計画を読みますと、ここに書いてありますけれども、「遺伝子組換え生物等を使用する場合には、法律に基づく規制の手続きを迅速に行う。」と書いておりまして、それはよくわかるんですけれども、恐らく国民はこういう反応をすると思うんです。

 ある国でヒト・ヒト感染のフェーズ4になった。そこのウイルス株が同タイミングでイギリスに送られ、アメリカに送られ、日本に送られた。半年後あるいは三カ月後に、イギリスではワクチンの投与が始まった、アメリカでもワクチンの投与が始まった、日本ではワクチンができていないのかという話になると僕は思うんです、同じタイミングですから。

 そのときに、恐らく、私が政府でしたら一刻も早く負けないように開発するようにはしたいなとは思うんですけれども、国民の不満を起こさないためには、アメリカとかイギリスと同じタイミングで日本国民もワクチンの投与が始まらないと私はいけないなと思っていまして、今ある法律で迅速化できることと、法律を改正しないと早くならないところがあると思うんです。

 その点につきまして、厚生労働省さん、そして文部科学省さん、農水省さんから御所見を、アメリカとかイギリスに負けないでワクチンをしっかりと、アメリカとかイギリスよりも早く国民にワクチンを投与できる体制をつくるということについて、まだ決意の段階だと思うので、いただければ幸いです。

高橋(直)政府参考人 お答え申します。

 まず新型インフルエンザに対するワクチンの製造の方からちょっと申し上げますが、まず、先生のお尋ねは、今はプレパンデミックワクチンの製造をやっておりますけれども、今のお話はパンデミックワクチンでございますが……(大島(敦)委員「プレでも、プレじゃなくたっていい」と呼ぶ)そうしますと、発生したところからそのウイルスをどこかで弱毒化して、それを日本に持ってくる、こういうことになります。

 そうすると、日本の水際を通るときに、今お話しの、家畜伝染病法の許可、あるいはもう一つ、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ法の許可がございますが、これをクリアされた後、今度は実際の製造に入りますが、その際に、鶏の卵の確保、それから、実際に今度は鶏の卵にそのウイルスを入れましてワクチンの製造に取りかかっていくわけですけれども、これが大体、鶏の卵の確保で八カ月ぐらい、それからワクチンの製造そのものに半年ぐらいかかりますが、もちろん、私どもとしても、こういった手続を早目にやっていただいて、早く製造に取りかかりたいということは強く願っているところでございます。

藤木政府参考人 お答え申し上げたいと思います。

 文部科学省といたしましても、新型インフルエンザに関連して政府として緊急な対応が必要だという場合等においては、ワクチン開発等に対して迅速な対応が極めて大事だという認識を持ってございます。

 先生も御指摘の新型インフルエンザワクチンの開発でございますが、これには、先生今御指摘のとおり、例えば高病原性の鳥インフルエンザウイルス等の病原性の高いウイルスがもととなった遺伝子組み換えウイルスを使用するといった状況が生じます。その場合には、これも先生が御指摘の、遺伝子組み換え生物等規制法に基づきまして、個別の開発ごとに拡散防止措置がきちっととられているということを確認するといった枠組みになってございます。

 これは、この拡散防止措置の確認に、一般案件でございますと通常約三カ月かかってございますけれども、新型インフルエンザウイルス用のワクチンの開発へ向けて政府として緊急の対応が必要だということになった場合においては、既に読んでいただきましたけれども、文部科学省におきましても行動計画を定めておりまして、法律に基づく手続を迅速に行うという方針、先生おっしゃった決意ということかもしれませんが、方針を明確にしております。

 したがいまして、このような場合にあっては、大臣の確認に関する手続を最大限速やかに行うということで対応してまいりたいと思いますし、特に今回、高病原性の鳥インフルエンザウイルスに関連してでございますので、これに関連しましては、既に遺伝子組み換え技術を用いた一定程度の研究実績が蓄積されてきているという認識がございますので、通常よりも相当程度短い期間で実際は確認ができるのではないか、そういうふうに考えている次第でございます。

櫻田委員長 小林大臣官房審議官、申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔な答弁をお願いします。

小林政府参考人 家畜伝染病予防法につきましては、今御指摘いただきましたように、家畜伝染病の病原体を輸入するのには大臣の許可が必要だということになっております。この許可につきましては、病原体が間違って広がってしまってはいけないというふうなことがございますので、利用目的とか保管方法、こういったものをチェックするということが必要になります。

 このため、今お話もいただきましたとおり、通常一カ月程度かかっているということでございますが、ヒト・ヒト感染が世界的に生じる、そういう緊急時にはまた話は別でございまして、ワクチン製造等の対策に支障が生じないよう十分迅速な処理はしなければいけないということで、今御指摘いただいたような迅速な処理をやる方針でおります。

大島(敦)委員 最後に一言だけ。今回のヒト・ヒト感染のフェーズ4、フェーズ3の場合にも、ぜひ一刻も早くつくれるような体制の整備をお願いさせていただき、私の質問を閉じさせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則です。

 これから一時間、質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 きょうは、感染症予防法改正に関連して、B型、C型肝炎患者の方々の救済、そのことを中心に質問したいと思いますが、その前に三点だけ、短く質問をさせていただきたいと思います。

 まず一問目は、先日、我が党の細川律夫議員がされた偽装請負に関する質問に関してでございます。

 その際には、要は、最近、請負や派遣労働者の社会保険加入状況が非常に不明になっているんじゃないかという質問がございました。そのときの厚生労働省の答弁は、今後一歩一歩調べていく、そういう悠長な答弁であったわけですが、そこで具体的に質問いたします。

 今、大企業の工場で幾つも偽装請負という違法な雇用形態が広がっております。昨年度には全国の労働局が九百七十四件の是正指導をしたと伝えられていますが、偽装請負では、安全管理がおろそかにされているだけではなく、社会保険への加入漏れ等待遇面でも問題があると指摘されています。この九百七十四件は氷山の一角とも考えられますが、社会保険庁は少なくとも最優先でこの九百七十四件について社会保険の加入状況について早急に調査を行い、社会保険への加入を徹底すべきではないでしょうか。

柳澤国務大臣 今御指摘のように、最近の請負の形態につきまして、昨年、各都道府県労働局において是正を指導しなければならない案件が生じておることは御指摘のとおりでございます。そういうときに、単に労働局ラインの是正を求めるだけではなくて、社会保険事務所の事業所調査とよく連携がとれる形をとって、そして社会保険関係の的確な適用、徴収といったことについてもしっかりした指導を行うべきだ、こういう御指摘をいただきました。

 これはまさしくそのとおりでございまして、今、労働局の方のラインの仕事と社会保険関係のラインの仕事が分立して、並立している形になっておりますが、我々、労働省と厚生省が一緒になって一つの役所をつくっている以上、この関係の連携というものはもっと緊密にならなければならない、このように考えておるわけでございます。

 そうした意味におきまして、今御指摘をいただきましたように、今後は、労働局の職員のいろいろな調査におきましても、社会保険関係にも十分関心を持って、そういうところから情報がうまく伝わるようにいたしてまいりたい、このように考えております。

山井委員 早急に調査をお願いしたいと思います。

 それでは、あと二問、短く、障害者自立支援法について質問をいたします。

 先日、我が党の園田議員、郡議員からもお話がございましたが、去る十月三十一日、一万五千人もの方々が、史上最大規模で日比谷公園等に集まって、今の障害者自立支援法、出直してほしい、そういう活動をされました。

 きょうお配りしております資料の中にもその資料が入っております。一番ラストのページ、九ページ目でございますが、「通所やホームヘルプ・ガイドヘルプの断念・抑制、生活費を削るなど、予想以上の深刻な影響が出ています。」「「自立支援法」はうたい文句とはまったく異なる状況を生み出しています。」「「三年後の見直し」が明記されていますが、それまでにサービス利用や生活が継続できなくなる事態が相次ぐ恐れがあり、早急な見直しが必要です。」ということを一万五千人の方々がおっしゃっておるわけであります。

 そこでお伺いしたいと思います。

 この資料にもございますし、先日も申し上げましたように、例えば、今回、厚生労働省が受け取った長野県からの資料、六ページに載せてございますが、事例二、工賃と同じぐらいの利用者負担を払わなければならなくなったため、通所施設への通所をやめた。この方は、利用料金がただだったのが二万二千円になった。

 そして事例三は、工賃より高い負担金を払った例として、三十代の通所授産施設に通っておられた女性の方が、通所することで、働いた工賃収入以上に負担金がかかるので、一万五千円の工賃のところに負担額が二万九千円になってしまった、これで利用をやめたということであります。

 それで、七ページになりますが、これも前回と重なりますけれども、それによって、今サービスを利用せずに家に閉じこもっておられる方も出ているわけであります。

 そこで、お伺いをいたします。

 通所施設の利用中止や利用抑制は何%か。また、滞納されている方は何%か。そして、家に閉じこもっておられる方々がどうされているかという実態調査はされているでしょうか。現状を把握されているでしょうか。大臣、お答えください。

柳澤国務大臣 先般来お話ししております利用中止者の割合というのは、通所、入所、いわば込み込みの比率でございました。

 今、先生から、特に通所の利用中止者の割合についてお尋ねがございました。今お答え申し上げる中止者の割合というのは、実はデータが明らかになっている県に限るわけでございまして、そういたしますと、現在、八府県の状況ということになりますけれども、〇・六八%という水準になりまして、先般お話し申し上げました入所の中止者の単純平均の〇・三九%に比べてやや高水準になっているかと思います。

山井委員 それで、これは前回の柳澤大臣の答弁でも、こういう、利用料が高いからということで利用が中断するということは断じてあってはならないと答弁されているんですね。断じてあってはならないけれども、今おっしゃったように、そういう事例が出てきているわけです。

 実際、これは大人の障害者の施設だけでなく障害児のデイサービスでも利用断念というのが出てきております。

 例えば、資料の八ページを見てもらいますと、利用者負担増を理由に退所した方は一%、そして利用減少は六%も出ているというのがこの八ページの熊本県のデータでありまして、通所施設断念が十五人、児童デイサービス断念が何と六十人ですよ。障害のあるお子さんが六十人も自己負担アップによってデイサービスに通えなくなった。

 大臣、ですから、本当に大変心配なのは、これで家に閉じこもられて、もしそこで虐待が起こったり、あるいは親子心中なんということになったら、これは大変なことになりますので、そうならないように、やはりこれはきっちりと措置をしないとだめだと思います。

 そこで提案なんですけれども、さまざまな軽減措置などをしても、なお工賃を上回る利用料や食費を払っているという事態が続いているわけですが、こういう逆転現象が起こっているわけです。やはりさらなる軽減措置等を通所施設、児童デイサービスに関しては行うべきではないでしょうか。いかがですか。

柳澤国務大臣 先ほどはちょっと失礼いたしました。私、御質問に全部答えていませんので、それをちょっと補足させていただきますと、通所施設における利用抑制、滞納は、利用抑制につきましては、調査を行っている六県を見ますと、一・四%ないし二・九%という数字が出ております。また、滞納については、調査を行っている県は一県でございますが、それによりますと一・三%であるということでございます。

 今御指摘のように、通所をして、そしてそこで一定の作業をしている、その作業の対価というか、そういうことでいただく工賃に対して利用料の方が上回っているというような状況についてはもっと配慮すべきではないか、こういうことでございますけれども、私ども、このスキームを考え出すに当たりましては、一つは、ぜひこれは御理解いただきたいわけでございますが、たとえ作業をしておりましても、そこには一定の支援が行われておって、そこに一定の経費がかかっているということでございまして、それとのかかわりで私ども利用者負担を算定させていただいておるということでございます。

 そして、その利用者負担の算定に当たりましてはいろいろな角度からの負担軽減措置をとらせていただいておりまして、私どもの見るところでは、確かに工賃との関係では今先生御指摘のような逆転現象が起こっているというようなこともございますけれども、全体として、負担能力との絡みで、これを十分に支払うことができるのではないか、こういう考え方のもとで今日のスキームを構築させていただいておるということでございます。ぜひ御理解を賜りたいと思います。

山井委員 この熊本県の資料を見ても、利用中止が十八人、児童デイサービスに関しては十一人ですから、そういう答弁をしていて、これは本当に、熊本県だけで児童デイと通所で二十九人、全国的には千人以上の方々が通所を断念して家に閉じこもっておられるわけです。その中で虐待や心中事件が起こったら、これは大変な問題になるということを指摘しておきます。

 それでは、B型肝炎、C型肝炎の質疑に入らせていただきます。

 まず最初に私申し上げたいんですけれども、私も、今回のこの法案審議に入るまでは、名前は聞いたことがあったんですが、このB型肝炎、C型肝炎の問題というのはそれほど深刻じゃないのかなというふうに実は思っておったわけです、恥ずかしながら。ただ二週間ちょっと勉強しただけなんですけれども、やはりこれは知れば知るほど本当に深刻な問題だということを痛感しております。そういう意味では、私も、ある意味で専門家ではありませんけれども、ぜひ、大臣を初めとします方々やきょうの委員会室の皆さんとともに、この問題の深刻さを一緒に考えていって、この解決策を探っていきたいと思っております。

 まず、資料をお配りしておりますが、この資料の一ページにありますように、B型肝炎が大体百二十万人から百五十万人、C型肝炎が二百万人から二百四十万人、合計三百九十万人ぐらいに達するかもしれない。その中で実際発症されている方々は六十万人ぐらいではないか。大体、これは時限爆弾とも呼ばれておりまして、感染してから二十年後ぐらいに発症するとも言われているわけであります。第二の国民病とも言われております。

 しかし、そんな中で、例えば、インターフェロンとリバビリンを併用すれば半分ぐらいのC肝、C型肝炎のウイルスが排除できるんじゃないか、そういう治療法の光明も、残念ながらこれはすべての方に適するわけではございませんが、そういう方法も出てきている。

 それで、大臣御存じのように、今これは訴訟になっております。この資料の新聞記事の方にもございますように、B型肝炎訴訟、C型肝炎、大阪地裁、福岡地裁とか、訴訟になっております。それで国も敗訴をしている部分もあるわけであります。

 しかし、原告の中で既に四人の方々が亡くなっておられる。そういう意味では、もちろん司法で決着をつけるということは一面では重要ではございます。しかし、きょう大臣に特に申し上げたいのは、それまで待てない、それまでに本当にどんどん亡くなっていっておられる、あるいは、手おくれになって生体肝移植しか方法がないとか、がんになってしまうとか、そういう本当に悲劇的な状況が刻一刻と進んでいるわけであります。

 そこで私が提案したいのは、司法は司法としてきっちりやるわけですけれども、同時に、私たちもやはり政治の力でその肝炎対策、救済をせねばならないのではないか、そのことを一緒に考えてみたいと思うわけであります。

 まず、実物でありますが、一つ、この血液製剤、幻の血液製剤で、今はもうないのではないかと言われているんですが、これが、C型肝炎ウイルスをお母さん方に出産の際の出血の際に感染させてしまった恐ろしい薬、フィブリノゲンの実物でございます。これがまさにフィブリノゲン・ミドリでございます。これをこの蒸留水で溶かして、点滴のような形でやっていく。出産のときに大量出血したときにこれでとまる、そういうふうな説明であったわけです。

 しかし、これが日本で大体三十数万人に使われて、そのうち数万人の方々がこれによってC型肝炎に感染したのではないかと言われております。このもとは、アメリカの刑務所の囚人の方々の売血とか、そういう方々の血をもとにつくられてしまった。一九七七年にはアメリカでは使用が禁止されていたのに、その後も日本では使い続けられた、このことが今訴訟になっているわけであります。

 それとともに、今インターフェロン治療が行われております。このインターフェロンの治療においても、これですね、このインターフェロンの注射、これは本当に、非常に痛くて、かつ副作用もある。これは非常に小さなものでありますが、これだけで三万円、あるいはもっとするケースもあるわけです。それで、このリバビリンと併用すると五〇%ぐらいの可能性でC肝ウイルスが除去できる、そういうふうなデータも出てきているわけであります。

 しかし、これも非常に高価な、お金がかかるわけでして、副作用が強いからこのインターフェロン治療をされないという方もおられますし、また、自分に適しないというふうにお医者さんから判断される方もいますし、あるいは、一番深刻なのは、経済的な理由でこれを断念されている、それでみすみす慢性肝炎になって、肝がんになっている方もおられるわけです。

 それで、私も余りこういう写真は得意じゃないんですが、この写真を持ってまいりました。これは見ていただいたらわかりますように、一番上が慢性肝炎の肝臓でございます。それが、放置しておくと時間の問題で肝硬変になる。それが、残念ながら最後にはこういう肝がんになってしまう。これを食いとめるためには、一つの方法としてはインターフェロン治療があるというふうに言われているわけであります。生まれたときに感染して、二十年間自覚症状がない、しかし、二十年ぐらいたってあるとき感染に気づくという、恐ろしいことであります。

 それともう一つ、札幌で訴訟になっているのが注射器での感染でございます。これもちょっと見ていただきたいと思います。恐らく見覚えがあると思います。BCGとかツベルクリン反応のときの、これですね、このブルーのもの。私もこれは非常に苦手で泣きそうになっていたのですけれども、これを五人分ぐらいここに入れて、一人ずつ集団で注射する。ということは、自分の前の人がたまたまC型肝炎に感染されていたら、その次の方も感染してしまう。それで、もうちょっと大きなものは、こういうガラスのものもございました。これでは感染するということで、今日ではこういうプラスチックの使い捨てのものになっているということなんですね。

 ところが、私たちの世代もそうでしたけれども、こういう集団接種、回し打ちというもので利用していて、これによってC型肝炎に運悪く感染された方もいるわけです。このことに関して最高裁は、ほかのB型肝炎感染が考えられないということで、国の責任を今回、最高裁が認定したわけであります。

 そこで、まず柳澤大臣にお伺いしたいのですが、今のこの注射を見ていただきましたように、これは私たち以上の世代というのはみんな見覚えがあるんですね。今回、五人の方が勝訴をされたわけなんですけれども、これを使っているのは、私たち以上の世代は多くの人が使っていると思うのです。ということは、今回、五人がこれによってB型肝炎ウイルスに感染したということで最高裁が判断をしたわけなんですが、これは五人に限らず、この注射を注射器で打たれただれしもが、もしかしたら感染していたかもしれないというリスクはあると理解してよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 B型肝炎の話からお始めになられましたので、そのラインで私の答弁を申し上げますけれども、B型肝炎の感染経路も、今先生御指摘の注射器の回し使用ということだけではなくて、他の感染経路もあるという認識がございます。

 したがいまして、最高裁の判示におきましても、この起源もいろいろ難しい議論があるようですけれども、しかし、基本的に、これが注射の回し使用というものにはっきりと原因が特定できる、他の例えば母子感染のような経路での感染ではないということが証拠に基づいて証明できる部分につきまして、これが原告五人の方々でございますけれども、そういったことについて国の責任を認めたということでございまして、これを他に広げて、B型肝炎一般について国の責任を認めるということにはなっておらないわけでございます。

 これは先生、つとに御案内かと思いますが、そうしたことでございますので、私どもとしては、今、この国の判決には、これはしっかりと服して必要な補償等をとっておりますが、それ以上のことについては、これはやはり判断の問題でございますけれども、これを一般化するということはいたしておらない、こういうわけでございます。

山井委員 大臣、私は、国の過失ということは当然申し上げていないのです。国の過失と言い出すと、今のようなややこしい答弁になるかもしれませんが、私は、シンプルに、この注射で集団予防接種を受けたのは五人だけじゃないですよね、ということは、当然の可能性として、五人以外にも、この集団予防接種でB型肝炎に感染した可能性がある人は日本の中におられますよねという一般論を申し上げているのです。いかがですか。

柳澤国務大臣 それは、その可能性は完全には排除できないと思います。

山井委員 そうなんです。これが感染原因だと特定できる人は、これはいろいろなエビデンスがある方で、めちゃくちゃまれでありまして、一般の人はこれはわからない。ただ、もしかしたら、C型肝炎、B型肝炎になってしまったのは集団予防接種だったかもしれないと。これは、まさに今大臣おっしゃったように、それも排除できないんですよ。その中で、では国の過失があるのかどうか。これもなかなか正直言って難しい判断にまたなってくるわけであります。

 ただ、私が聞きたかったのは、最終的な判断は司法がするわけでありますが、だれしもがこの集団予防接種でB型肝炎なりC型肝炎にかかられた可能性は排除できないということを確認させていただきました。

 それで、次の資料、二ページ目を見ていただきたいのですが、では、そのB型肝炎、C型肝炎の方がどうなるか。B型肝炎の方は、一〇%から一五%だけが慢性肝炎、肝硬変、肝がんになるわけです。C型肝炎ではリスクがもっと高くて、八割、九割以上の方が慢性肝炎、肝硬変、肝がんになっていく、こういうわけなんですね。それで、無症候性キャリアも含めると、多ければ三百万人以上ということになっているわけであります。

 それで、こういう三百万人を上回っているという推計値が厚生省から出ております。これは人口の本当に多くを占めるわけなんですが、このまさに第二の国民病とも言える問題が、もちろん、今司法で争っておられる方はおられます。でも、大臣、申し上げたいのは、圧倒的多数の大部分の方は、それは司法では当然争えないわけですよ。その方々の対応を司法が今やっているから、その結果待ちということになったら、患者の方は亡くなってしまうか、手おくれになってしまうわけです。

 そこで、もう一つ、この感染の可能性があるのがクリスマシンというものなんですね。これは当時、もうアメリカでは新生児の出血症には効果がないとされていた第9因子製剤であります、クリスマシン。そして、このクリスマシンを出産のときに投与されたということでC型肝炎に感染されたのが、きょうの資料の十ページ目ですね、福田衣里子さんであります。実名を公表して福岡地裁で争っておられる。それで、きょうも実は傍聴席にお越しいただいております。真ん中に座っていられるグリーンの服を着た方、きょうはわざわざ長崎からお越しをいただきました。

 それで、また、私、この福田衣里子さんが最近書かれた本も読ませていただきました。「イッツ・ナウ・オア・ネバー」、C型肝炎ウイルスに感染して二十年経過していますと二十のときに言われたと。あるテレビ番組で、知らないうちに、出産のとき出血したときの血液製剤などで感染しているケースがありますよと。それで病院名が公表された。その病院名が自分が生まれたところだったので、念のため見てみたら、これに感染してしまっていたということであります。この本、後でまた柳澤大臣にもプレゼントしますので、ぜひお目通しをいただければと思います。

 それで、一番理想的なのは、大臣に会っていただいて、直接、苦しみ、悩みを聞いていただきたいのですが、それはなかなか難しい面もあろうかということで、実はきょう、福田衣里子さんが柳澤大臣あてに手紙を書いてこられましたので、短く書いてくださったそうですので、ちょっと早口になるかもしれませんが、少しだけお許しを得て読み上げさせていただきます。

  柳沢大臣殿

  はじめまして。福田衣里子と申します。

  もし、そう遠くない未来に、地球が滅びることが分かっていたとしたら、柳沢大臣、あなたはどう生きますか?夢を持つことが出来ますか?将来の為に貯蓄をしたり、勉強をすることができますか?

  死と同等の絶望と恐怖を持ちはしないでしょうか。

  私は今、「死」を意識して生きています。

  私は二十歳の時、感染を知り、それ以来幾度となくインターフェロン治療をうけてきましたが、いまだ完治には至っていません。

  一人、入院中のベッドの中で、「こんなはずじゃなかった。今まで一生懸命勉強したり、我慢して頑張って来た事もたくさんある。でもこんな所で一日中寝ている為にしてきたわけじゃない。もっと可能性が有ったはずなのに…。今の私は、どう生きるかなんて、贅沢な事を考える前に、自分の命を確保することが先なんだ。」そう思って泣いていました。友達はみんな仕事をしたり、結婚をして羽ばたいていて、自分だけが取り残されていくようで、不安と焦りの気持ちでいっぱいでした。

  柳沢大臣、私は、パン屋さんになりたかったんです。しかし、病気と治療で身体が弱って、その夢も諦めました。今の私は、放っておけば、遅かれ早かれ肝癌になる体です。お嫁さんになる勇気も、子供を産む勇気も持てません。

  私はただ生まれてきただけなのに、何も悪い事はしていないのに、ちょうど、これから人生が大きく広がろうとする二十代に動き出す様に仕掛けられた、時限爆弾のようなC型肝炎ウイルスに感染させられました。私は今年、二十六歳になりました。両親とも六十歳をとっくに超えています。お母さんはこんな私に「お母さん達が元気なうちに治してやりたい。どんなことをしても、家を売ってでも治療させてやるけんね。」と言ってくれます。両親を安心させる為に行ったはずの検査で、結果大きな負担と心配をかける事になってしまいました。

  最初、感染を知って運が悪いと思いました。しかし今は、運良く感染の事実を知り、治療を受ける事が出来ていると思っています。まだ感染に気づいていない若者が感染に気づくきっかけになれたら、また、感染が分かってもインターフェロン治療は高いので、治療できず、肝癌への進行をおびえながらも待つばかりの若者もたくさんいます。この裁判をきっかけに肝炎対策に関心が高まり、医療費の助成が実現するように、その力となれたらという思いで、私は実名公表を決意しました。

  起きてしまった薬害や、私がその被害にあった事はもう仕方のない事だと思います。裁判をすることで、病気が治るわけでも、過ぎた時間が戻るわけでもありません。

  しかし、薬害の被害にあった人やその家族がどのような人生を歩むことになったかを、知って欲しいと思います。

  柳沢大臣、私はお医者さんでもありませんし、何の力も無い一人の小さな人間です。

  ですが、あなたには、たくさんの命を救える力があります。どうか、一人でも多くの人の涙がやむように、命が救われるように、お力をお貸し下さい。

    二〇〇六年十一月八日

               福田 衣里子

という手紙でございます。

 本当に、当然、福田さんには何の落ち度もなかったわけでありまして、クリスマシンというこの中にC型肝炎ウイルスが混入をしていたわけであります。三百万人いると言われる日本の肝炎患者の方々のお一人の声として、今、御紹介をさせていただきました。

 それで、今、病床に伏すことも多いので、刺しゅうをされているんですね。実は、きょうも、個展を長崎でやっていたのを一日個展をやめて来られたんですけれども、すごくきれいな刺しゅうのもので、それをポストカードにしたものでございます。柳澤大臣と石田副大臣にこの刺しゅうのポストカードと本を失礼ながらプレゼントさせてもらいたいと思いますので、ぜひまたお読みいただければと思います。

 私もこういうことを二週間前ぐらいから、本当に遅まきながら調べ出して、本当にこれは深刻な問題だなというふうに思っております。

 そこで、柳澤大臣、今までのこのお話をお聞きになって、御感想というか、日本の厚生労働行政の責任者としてのお気持ち、御感想を一言いただければと思います。

柳澤国務大臣 今の福田さんのお話、御本人もあそこにいらっしゃるわけですけれども、お話を含めまして、山井委員の御指摘というのは、まことに胸の詰まる思いで聞かせていただきました。

 本当に、例えば今のクリスマシンによる肝炎というものも、お母様の御出産のときに生じた、治癒させるために使用されたということかと存ずるわけですけれども、それが大変重大な疾病を、後日に大きな疾病を引き起こす要因になってしまったのではないか、こういうことでございまして、本当に、その当事者に対しては、これはもう本当に心から御同情を申し上げるというほかございません。

 ただ、これを国の制度として治療費の面倒を見るということになりますと、これは他のもろもろのいろいろな制度、あるいは、治療の支援というようなことになりますと、他の疾病との比較考量というようなことがどうしても必要になってしまうわけでありまして、その間における合理性あるいは公平性といったものを考慮して制度としては考えなければならない、これも私たちが置かれている立場でございます。

 そうしたことから、現在、我々は一つの考え方を打ち出させていることは山井委員も御案内のとおりでございまして、難病であるとかあるいは通常の生活で感染をしてしまうとかいうようなことの疾病に対しては一定の配慮をするという制度が成り立っておりますけれども、これを広げるということについては、なお、我々として、なかなかこれを踏み切っていくだけの理由というかそういうものを見出し得ていないというのが現状でございます。

山井委員 今、柳澤大臣は合理性、公平性ということをおっしゃいました。合理性とは何でしょうか。公平性というのは何でしょうか。

 明らかなのは、福田衣里子さんには、自分には何の過失もないということであります。そして、もちろん国の過失がどうかということに関しては司法が決めるでありましょうけれども、このクリスマシンという薬によって薬害で感染したということも事実であります。

 柳澤大臣、これは国の過失というと、非常に実はややこしくなりますのが、すべて最高裁まで争わなくてはならなくなるわけですね。治療費が出たときには、もう亡くなっておられるか、あるいは手おくれになって、もうインターフェロン治療もできない時期になってしまっている可能性もあるわけですし、また、三百万人おられるとしたら、全員が訴訟するということも事実上不可能なわけです。そこがこの問題の難しさであります。

 柳澤大臣が、ほかの病気とのある意味で公平性とおっしゃる意味、わからないではありません。しかし、最大の違いはやはり国の過失があったかもしれないということなんですね。

 それで、柳澤大臣、今推定で三百万人、肝炎患者の方がおられます。そのうち国の過失があったかもしれないというのはどれぐらいだと思われますか。

柳澤国務大臣 B型肝炎、C型肝炎につきまして、これには多様な感染経路があるということでございます。

 したがいまして、その中で、確かに国の過失があったかもしれない、あるいは、全く国は関与していなかったというような分類分けが一応できるかと思いますけれども、現在のところ、私どもとしては、このB型肝炎、C型肝炎のそれぞれの感染経路における感染の割合というものは、これを把握することが困難である、こういうことで、不明と言わざるを得ないわけでございます。

山井委員 まさにそうなんです。国の過失があったかもしれない、でも、一人一人の感染経路というのはそう簡単にはもう特定できないんですよ。でも、重要なのは、ほかの病気と違って国の過失があったかもしれないんです。

 ですから、やはりこれは、今、産婦人科で無過失補償制度というのを、厚生労働省、議論をされていて、年内に方向性を出すと。これは、そのときの過失が医師にあったかどうかというのは置いておいて、ある程度補償しようという考え方なんですけれども、それと多少似たような考え方で、お一人お一人に国の過失があったかどうかというのは、これはやり出すということは不可能なんですね。ということは、その議論は司法の方でやるとして、でも、もう待ったなしだから、もしかしたら国の過失があったかもしれない、かもしれない方々に対して国がどうするのかというのは、ほかの病気とはやはり少し違う。どう違うかというと、一般の患者さんではなくて、もしかしたら被害者だったかもしれないわけですよ。そういう可能性がある。ここが私はほかの病気との違いであると思います。

 それと、もう一つの違い、違いというか、今、一つ言えるのが、インターフェロンとリバビリンとの併用でC型肝炎も、これは合う人、合わない人がもちろんあるわけですけれども、半分ぐらい、C型肝炎ウイルスが排除できる治療法というのも出てきているということなんです。

 そこで、お伺いをしたいと思います。

 この資料にも入れさせていただきましたが、虎の門病院副院長で厚生労働省のC型肝炎及びB型肝炎ウイルス感染者に対する治療の標準化に関する臨床的研究班の班長であられます熊田教授がされました調査結果というか研究結果があります。

 どういうことかというと、推定百万人の患者における医療費の比較で、従来の治療法、インターフェロン治療を行わなかった場合、先ほどの写真にありますように、慢性肝炎になって肝硬変になって肝がんになるのを待たざるを得ない可能性が高い。そうすると、百万人からすると八・二兆円、トータルで医療費がかかりますね。ところが、インターフェロン治療、インターフェロンとリバビリンを併用して、それによって、半分ぐらいですか、ある程度治られる方が最近どんどん報告されております。そうすると、トータルの医療費も五兆二千億円で、結局、本人にとってだけではなくて、予防的な意味でトータルの医療費としても低いのではないか、こういう調査結果というか推計も出ているわけであります。

 このような、インターフェロン治療、リバビリンと併用して等で早期に予防的に治療費をかけた方が結果的には医療費としても高くつかないのではないか、こういう研究に関しては、厚生労働省としてはどのように認識をされていますでしょうか。

柳澤国務大臣 今、山井委員御指摘の熊田先生の研究でございますから、私ども、これを何か軽視するとか、そういうふうなことは全くないわけでございます。非常に重く受けとめるわけでございますが、多分先生もお認めになられると思うんですけれども、この推計というのは相当いろいろな仮定を置いてのこうした推計結果ではないか、このように考えるわけでございまして、この試算と申しますか比較が示すような、そういう医療費の削減が期待できるかどうかということを判断することは難しいと思っております。

 また、医療費が節約できるからこうするというような話が、次の段階に進む基礎としてどういう意味を持つかということについても我々考えてみなければならない問題だ、このように考えます。

山井委員 それで、患者の方々の多くの要望がございます。検査体制の整備などもございますが、一つの最大の要望は、やはりこのインターフェロン治療の医療費が高いということなんですね。

 それで、この資料、厚生労働省からいただいた資料にありますが、三割負担として、自己負担がB型肝炎だと年額約三十万円、C型肝炎が年額平均約八十万円。恐らく、これより高い人はもっとたくさんおられると思います。低く見積もって、平均してこんなものだというデータを厚生労働省からいただいております。

 それで、もしなんですけれども、これは仮定の話です。昨日厚生労働省から聞いたら、五万人がインターフェロン治療を今されている。六十二万人も発症されている方の八%にすぎないわけなんですが、現時点で、このインターフェロン治療、リバビリンとの併用というものを、仮定として、三割負担じゃなくて無料にもしするというようなことを一年間施策でやったら、幾らぐらいの費用がかかりますでしょうか。

柳澤国務大臣 インターフェロン治療を行っております患者さんが一年間に五万人いると仮定をいたしまして、現行の医療保険制度における平均的な自己負担、これは必ずしも三割ということにはならないわけでございますが、そういう前提でごく粗い推計をいたしますと、この治療の自己負担部分を無料とする場合は、約二百億円の費用がかかると推計されると考えております。

山井委員 これはよく、肝炎対策をやると、数千億、数兆かかるんじゃないかという議論もあると思うんですが、やはりこの数字の問題はある程度きっちり議論していかないとだめだと思います。

 今お聞きしたように、現在五万人、インターフェロン治療をされている。それを自己負担をゼロにしたら、年間約二百億円、一人頭でいうと四十万円ぐらい補てんするということになろうかと思います。一つの目安ですね。もちろん、今、いろいろな前提を置いた粗い試算ということをおっしゃいました。

 それで、大臣、もう一つお伺いしたいと思います。

 仮定なんですけれども、もしこの二百億円でやってみたときに、全額出るんだったら私もインターフェロン治療をやりますという人が当然出てくると思うんです。先日も、NHKスペシャルの医療、医師不足の番組の中で、ある方が、自分は今非正規雇用なのでお金がなくて、C型肝炎なんだけれどもインターフェロン治療ができないんだということを切々とおっしゃっておりました。そういう方も、無料だったらできるかもしれないんですね。

 かつ、これは、重要なのは、インターフェロン治療は五年も十年もやるものではなくて、半年か一年で、うまくいけばですけれども、C型肝炎ウイルスが除去できるケースがある。先ほど、ある同僚議員に聞いたら、自分のおじさんもC型肝炎ウイルスだったけれども、インターフェロン治療でもうウイルスがなくなったと。それと、きょうお配りしております資料の中でも、読売新聞の記者の方が、十七ページ「治療で消えた肝炎ウイルス」、インターフェロンとリバビリンを併用したら肝炎ウイルスが消えたということを解説部の左山政樹さんが実名入りで書いておられるわけですよ。ですから、大臣、こういう情報が出れば出るほど、できるならば受けたい、あるいは、できるならば我が子に受けさせたいとだれもが思うのが当然だと思うんです。

 そこで、お伺いしますが、こういうふうにもし二百億投じて五万人の方のために無料化したら、無料になったらこれぐらい利用者が、今までインターフェロン治療をされていなかった方がこれぐらい新たにされるんじゃないか、あるいは、一年間やったら、二年目は半分ぐらいの人が治って、もうその方々は治療をしなくて済むので、減る部分もあると思うんですね。そういう、二年目はどうなりそうかという試算というのはございますでしょうか。

柳澤国務大臣 先ほどの試算、二百億円というのは、現在治療を行っている患者さんを推計して五万人と仮定いたしたわけでございます。それをもっと、無料にしたら一体どうなるか。

 こういう言い方が適切かどうかわかりませんが、今自分が肝炎に感染しているということを知りながら治療の方にまだ出かけていない、それから、まだ全然自分が感染しているということを知らないというような方々が、無料にするということでどんな治療のところまで出てくるのか、この推計いかん、こういうお話でございますけれども、これは、私ども、全く仮定の話であるというようなこともございまして、また、推計が実際上難しいということもございまして、今の先生の御質問に対しては、これは全く不明であるというのが私どもの今の持っている情報だと申し上げます。

山井委員 もちろん、これはちょっとやそっとのことで推計はできないと思います。

 しかし、大臣、わかっていただきたいのは、本当にこれによって救える命があるということなんですね。もし、この政策によって一人の人がインターフェロン治療で完治した、これはすごいことですよ。二十代で発症してそのままで亡くなられたら、本当に本人、御家族にとってどれほどつらいことか。ちょっとの助成で、もし四十万円で一人の命が救えたとしたら、ある意味で、安い高いということは私はもちろん言いたくはないですけれども、価値のある政策だというふうに私は思うんです。

 そこで、人工透析とかいろいろなほかの施策もありますが、無理を承知でお願いしたいんですけれども、なかなかこんな推計できない、するのは難しいとは思います。でも、やはり本当に肝炎対策は何とかせねばならないんです。ばたばたと肝硬変になって、肝がんになって、亡くなっていっておられるんですよ。その方々は百万、二百万、三百万とふえていくかもしれない。

 その中で、ぜひこの推計の検討を、一度ちょっとぜひともやっていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 これは、山井委員からどうしても推計しろというお話であれば、それはもう、推計は役所は何とか、私は形を整えるかと思うんですけれども、そういうようなことがその後のいろいろな施策に結びつくようなものであるかどうかということについては、私は極めておぼつかない気持ちがいたします。

山井委員 大臣も当然、軽々な答弁というのはできないと思います。しかしこれは、司法に任せっきりではこの問題は解決はできない、三百万人の問題はできないというのが明らかなんですね。今こそ、これは政治の出番なんですよ。これはやはり、政治家がこのことに対して手をこまねいていることはできない、何らかの政策をやらざるを得ない、肝炎患者の方を見殺しにすることはできないんですよ。

 かつ、もしかしたら何割、何割というか幾らかの人たちは、やはり国の過失があったかもしれないけれども、カルテもない、いろいろなものもないということで裁判もできない。ほとんどの方は匿名でやっておられるんですよ、家族に迷惑がかかるとか、いろいろな差別を受ける、偏見があるということで。それを、勇気を持って福田衣里子さんが今実名で裁判をされているというのは、こういうことで話題がふえて、自分も肝炎になっているということに一人でも多くの同世代の人たちが気づいてくださったら、もしかしたら自分が人の役にも立てるかもしれない、そういう思いでやっておられるわけであります。

 それで、今二百億円という話がございました。これも仮定の仮定の話で非常に失礼かとは思いますが、例えば五年間の時限立法をする、肝炎対策緊急措置法を五年間、二百億掛ける五で一千億、短期的、集中的、予防的にこのお金をかけることによって、恐らく肝がんになる人はかなり減るでしょう、肝硬変になる人は減るでしょう。

 そのことによって、もしこの一千億というものを通じてそういう肝炎対策というものを時限的にやったら、先ほどの熊田教授の試算ではありませんが、どれぐらいトータルの費用が、その一千億を投じなくて肝がんになる人がふえてトータルの医療費がかかるのか、あるいは、それによってどれぐらいの方がC型肝炎ウイルスが除去される可能性があるのか、こういう試算も、柳澤大臣、もちろんその後実行できるかどうかというのは、それはそんなことを簡単に、正直言って言えないと思いますが、まずこれは試算してみて、これぐらいの額だったらどうだろうかというのは、まさに超党派で政治家が優先順位をつけて判断する問題だと思うんです。そのベースを提供するのが厚生労働省ではないかと思うんです。

 そういう一千億を五年間かけてやってみた場合、どういう効果、費用対効果を含めて、費用対効果という言葉はよくありませんが、費用、効果、いろいろなことの試算、これも何とか、粗いもので結構なんですが、一度やっていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 先ほど来のいろいろな仮定計算による推計、これをぜひしろ、こういう仰せでございまして、これをいろいろとくだくだしい理屈をこねて申し上げる気持ちもないわけでありますけれども、この肝炎の治療というか、そういうものが非常にタイミングをとって行われるということが必要だ、こういうこともお聞きしておりますので、そういう意味で、そのウイルスを持っていらっしゃる方については推計できるにしても、そういう場合に、一体、治療の適期というかそういうものに当たる方がどのくらいいるのかというようなことについては、ますますやみくもの話になってしまうということがございます。

 しかし今後、いろいろな訴訟も進んでいくでしょうし、また、いろいろなところでの御議論もありますので、私どもとしてもその御議論に耳を傾けてはいきたい、このように申し上げたいと思います。

山井委員 ぜひ、そういう試算というものをやっていっていただきたいと思います。

 例えば、きょうお配りした資料の中にも、十三ページの毎日新聞の社説、「肝炎訴訟 救済は裁判外にも広げて」、そして十四ページ、産経の主張、「肝炎対策 争うより患者救済が大切」、十五ページ、産経、「B型肝炎訴訟 国は早急に支援策提示を」、これは言い出したら切りがないですけれども、ここ数年の記事全部、私も読みましたが、すべて、裁判は裁判で、もちろんこれは争いになるけれども、それはそれとして、政治の力でやはり早急に肝炎対策をやってほしいという意見ばかりなんですよ。それで、ここにも書いてありますように、「全面解決急いで」「患者に時間ない」ということをこの十六ページにも書いておられます。

 そこで、一通、お一人、東京訴訟の原告十三番、匿名で争われた五十七歳の方が、フィブリノゲンを一九八四年に出産時の出血で投与されて、それから十六年後に肝硬変から、肝がんになって亡くなられた、この方が最後、ビデオを家族が撮られて、その御家族の方が、肝炎の今後の施策のためにということで公開をされています。

 この五十七歳の女性の方の最期の言葉を読み上げさせていただきたいと思います。

  私は二十年間、どこに相談の窓口があるか分からず、苦しみ、闘ってきました。しかも、医療従事者の方からの、差別扱いに戸惑い、悲しみ闘ってきました。ようやく、闘いの窓口にたどりつきました。が、もう体がついていきません。どうか裁判を早く終わらせてください。そして製薬会社の人たちも、自分達のしてきたことを認めてください。国は争うことなく現実を見つめ、人の健康と命の重さを認めてください。私はとにかく元気になりたいんです。そして、この問題を各ひとりひとりが、自分の問題として受けとめて下さい。

  わたしは、こんなふうになりたくなかった。平凡でもいいから走り回り、みんなで…、楽しく、笑い転げながら、これからも生活をしていきたかった。

  いま、とても苦しいです。息が続きません。

このビデオ撮影をされてから二週間後に、二〇〇三年六月十二日、最後に三人のお子さんの名前を呼んで、裁判の結果を待つことなく亡くなられたわけですよ。これからもこの悲劇は続くわけです。

 カルテが残っているとか、相当、あるいはその病状が悪化している人はもちろん訴訟なんか闘えない、そういう本当に待ったなしで、きょうも一日、きょうもまた一日と、三百万人もの方々が、いつ発症するのか、インターフェロン治療もつらい、でも、つらいけれども、それをしなかったらますます治らない。

 実名を公表された第一号の山口美智子さんの息子さんは、次男を産んだときにフィブリノゲンで感染をされたわけですが、その次男さんは、ほかの人から、おまえが生まれなかったらお母さんは病気になっていなかったんだとまで言われているわけですよ。全く罪はないじゃないですか。

 これは、もちろん司法は司法です。でも、何のために国会があるのか、何のために委員会があるのか、何のために国会議員が議論をするのか、それは突き詰めれば、救えるはずの命を救うために私たちは政治家をやっているんだと思っております。司法の解決まで待てないんです。

 柳澤大臣、どうかやはりここは政治的な決断で、医療費の助成を含めた、すぐに医療費の助成をしろとはもちろん言えませんが、含めたそういう肝炎対策をやはり早急に、待てない患者さんのために、国の過失は横に置いておいて取り組んでいただきたいと思うんですが、柳澤大臣の御決意をお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 山井委員が、本当に感にたえない、そういう御様子で切々と訴えられるこのお気持ちについては、私も本当にこの気持ちは酌み取らなきゃいけない、こういう気持ちで聞いております。

 ただ、私も行政の責任者でして、行政というのはやはりどこから見ても、先ほど来申しておりますように、合理的で公平でということを心がけて制度を構築していくということでございますので、今ここでにわかに肯定的なお答えをする用意は率直に言ってございません。

 ただ、この問題については、なおいろいろな御議論を、私としては注意を払って、部内でもいろいろと問題を投げかけ合って、何とか、何か一歩でも半歩でも前進することがあり得るのかどうか、これは、今まで、現在のところ、私もなかなか難しいという感を持ってこの場に臨んでおるわけですけれども、なおそういった方向での私なりの努力は、先生のそういうお訴えにも照らして、私としてしていかなければならない、このように感じております。

山井委員 もう時間になりましたので終わらせていただきますが、これは本当に待ったなしの問題でありまして、司法に任せていると、もう患者の方が次々と亡くなっていかれる、そういう緊急の事態であります。ぜひとも行政のトップであると同時に政治家である柳澤大臣の御判断で、一歩でも二歩でも、石田副大臣も来ていただいておりますし、公明党も非常にこのことには坂口元大臣もお力を入れてくださったわけですけれども、ぜひとも党派を超えて、やはり政治家が、ここは救える命を救うんだという思いでこの肝炎対策に取り組んでいかねばならないと思っております。どうかよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 感染症予防法等改正法案は、最近の海外における感染症の発生の状況等を踏まえまして、生物テロによる感染の発生を防止する対策など、総合的な感染症予防対策推進のための諸施策とともに、結核の予防施策に関する規定を整備するため上程された法案であります。私は、この法案が、我が国の平和、そして国民の安心、安全の社会を維持していくためにも大変に重要な法案であると考えております。

 そこで、初めに、感染症予防法等の改正法案の関連事項について若干質問してまいります。

 私の地元神奈川県横須賀市では、来年市制百周年を迎えますが、この事業の一環として、先月、浦賀港引揚記念の碑を建立いたしました。少し古い話にはなりますが、横須賀市浦賀港は、第二次世界大戦後、当時、引き揚げ船指定港でありました。浦賀港引揚の碑は、海外から帰還する復員兵を乗せた引き揚げ船でコレラが発生し、多くの人々が祖国の土を踏むことなく亡くなった悲惨な歴史を後世に伝えていこうとするものであります。

 今回の法案で、コレラは、二類感染症から三類感染症に見直されたことにより、患者の入院措置が必要なくなりました。さらに、隔離する必要もなくなり、在宅でも治療が可能になったことから、検疫感染症からも除外されることとなっております。

 しかし、一九四五年に最初の引き揚げ船氷川丸が到着した当時、コレラ発生は緊急事態でありました。また、一九四六年春、中国の広東省からの引き揚げが始まりますと、船内にコレラが発生、感染者の乗る船はコレラ船と呼ばれ、引き揚げの指定港であった浦賀港にその二十四隻がすべて泊められたわけであります。陸から隔離された船中は、食料不足と病状の悪化、暴動が起きるなど混乱をして、ふるさとを目の前にしながら多くの人々がコレラに倒れ、相当多くの方々が亡くなったという悲惨な歴史があったと認識しておりますが、この事実を簡単に御説明いただきたいと思います。

 また、当時、横須賀市久里浜にありました旧海軍対潜学校・久里浜検疫所の関係者が供養塔を建てられたと伺っておりますが、このことは御承知でありましょうか、お伺いいたします。

荒井政府参考人 戦後の引き揚げ船でのコレラ発生に関してのお尋ねでございますが、戦後の引き揚げにおいては、引揚者が居住していた地域にコレラの流行地が多かったということもございまして、引き揚げ船内で保菌者がコレラの病気を発病するという形で船内での流行が生じたために、米軍の指示のもとで入港が制限され、隔離されることになりました。このような中で、多数の引揚者の方々がお亡くなりになりました。また、特に浦賀港においては多くの方が亡くなられたところでございます。

 そういう中で、御指摘の供養塔についてでございますが、私ども調べてみました。浦賀港における引き揚げ船コレラ発生に伴いまして、死亡者の供養のために昭和二十五年に建てられたものでございます。現在は、横須賀市の久里浜少年院の中に置かれているものと承知しております。

 また、供養塔は少年院の中にあるということで、自由に参拝することができないということのために、供養塔の移転についての議論がなされていたと聞いておりますが、この点につきましては、関係者の合意のもとで、横須賀市において、先ほどお話がありましたように、ことしの十月に新たに浦賀港引揚記念の碑が設置されたというふうに承知しております。

古屋(範)委員 ただいま御説明いただきました供養塔でありますが、供養塔のあるところが現在久里浜少年院となっているということでありまして、御説明のように、特殊事情もありまして、なかなか立ち入りが厳しいというわけであります。当時を知る人も少なくなり、コレラ船の歴史と供養塔の件は余り知られなくなってまいりました。

 当時一緒に引き揚げてこられた方々から、間接的に私のところに相談が寄せられました。この供養塔についても広く後世に伝わるようにしたい、だれがどこで亡くなったのか、無念の中で倒れていった同僚の思いを伝えたいとの一心で、広く世間に悲惨な歴史を再認識してもらい、だれもがいつでも慰霊できるような供養塔の移設を生きているうちになし遂げたいというような御相談もございました。横須賀市もいろいろと知恵を絞って考えていただいたようであります。移設後の管理等の問題も抱えておりますので、供養塔の移設ではなく、先ほど申し上げました引揚記念の碑をつくるようになったと伺っております。

 しかしながら、やはり、供養塔そのものに魂がこもっているという関係者の思いもあるようでございます。こうした過去の引き揚げ船コレラ事件でありますが、現在、少年院ということで厚生労働省とは所管が違うわけでありますけれども、ここはひとつ、国として少年院内にある供養塔そのものの移設にできれば積極的な御協力をお願いいたしたいと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

柳澤国務大臣 さきの大戦の終結に伴う内地への引き揚げにつきましてはいろいろな事柄があったわけでございますけれども、今委員御指摘の引き揚げ船コレラ事件は、まことに多くの痛ましい犠牲者を出したということでございます。

 御指摘の供養塔の問題につきましては、実は、この供養塔の所在地が、実際にコレラで亡くなった方をだびに付した場所である、しかも、大谷石でつくられたそうでございますけれども、その石自身も実はだびに付した際に使用した石そのものである、こういうような事情があるようでございまして、なかなか、これの移設ということになりますと、またいろいろと関係者の間で難しい問題が起こるのではないか、このように考えるわけでございます。

 そこで、地元の方々の御努力によって、供養塔の移設ということではない別の解決法というようなことで今度引揚記念碑が建立された、こういうふうに伺っているわけでございまして、私ども、この地元の関係者の方々、その中には御党の有力な方々も参画しているということでございますけれども、大変私として敬意を表する次第でございます。

 この供養塔の移設そのものについては、いろいろな周囲の状況の変遷の中で、また別途の解決策が将来講ぜられることを私としても祈っておりますが、ここで何か国の協力ということが具体に考えられるかというと、この点は、大変申しわけありませんけれども、なかなか困難ではないか、このように考えておる次第でございます。

古屋(範)委員 地元の案件で恐縮でございましたが、御丁寧な答弁をありがとうございました。

 次に、法案に関しまして、風疹の発生状況につきまして質問をしてまいります。

 専門家の間で、身近な感染症としてはSARSよりずっと怖いとも言われております風疹につきまして質問を行ってまいります。風疹は、一般的には三日ばしかと言われておりまして、風疹ウイルスにより発熱、発疹の出る急性の感染症で、小児は数日で治癒するため、比較的軽い感染症であると言われております。私の子供もやはり三日ぐらいで治ったという記憶がございます。しかし、二千人から五千人に一人程度脳炎などの合併症が発生するので、決して軽視できない疾患でもあります。また、成人では、小児に比べまして発疹、発熱の期間が長く、関節痛が多いとされております。一週間以上仕事を休まなければならない場合もございます。

 また、さらにこれが重要な問題でありますが、妊娠初期の女性が感染をすると、胎児に感染をして、難聴、白内障、心疾患などの障害を持つ先天性風疹症候群、CRSとして生まれることがあり、決して侮れない感染症であると言えます。

 かつて、ほぼ五年ごとの周期で大きな流行が発生をしております。例えば一九八二年三十二万人、八七年四十万人、また一九九二年には二十二万人、翌年十四万人ということで、こうした五年ごとの周期で大きな流行が発生をしているということであります。

 予防接種の効果もありまして、平成五年に大流行して以降は局地的な流行にとどまっておりました。ところが、二年前、平成十六年、群馬、大分、栃木、鹿児島、沖縄の各県で患者が多数発生いたしまして、この先天性風疹症候群も、平成十一年に全数報告が開始されて以来最も多い十例が報告をされております。過去の流行パターンから判断すると、この流行は小規模ではありますが、今回限りで終息したのではなく、数年は同様の流行が続くことが予想されておりました。

 そこで、初めに、平成十六年の流行から現在までの風疹及び先天性風疹症候群の発生状況と、この局地的な流行が終息したか否かについてお伺いをいたします。

外口政府参考人 平成十六年に風疹の患者数が特に多数であったのは、宮城県、群馬県、埼玉県、大分県、鹿児島県でございましたが、平成十七年にはいずれの県においても患者数は減少しております。

 風疹の患者数、そして先天性風疹症候群の発生数とも平成十六年の流行から減少に転じており、現在、これらの地域を含め、全国的にも流行は見られておりません。

古屋(範)委員 終息をしているという御答弁でございますけれども、局地的とはいえ、確実に流行したと思われる風疹への対策として、厚生労働省としては素早く手を打たれたと思います。平成十六年の九月には、徹底した風疹対策を呼びかける異例の緊急提言、風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言を公表されまして、胎児への感染を防ぐための予防接種の強化など対策を都道府県に通知をし、また製薬会社にワクチンの増産の要請をするなどの対応をされた結果、それ以上流行することなく終息をしたのではないかというふうに思います。

 今回の風疹流行の背景には、緊急提言にも指摘されておりましたように、風疹の免疫がない大人世代がかなりいるという実情があります。平成十四年度感染症流行予測調査事業から得られた推計では、二十代から三十代の風疹に対する免疫を持たない者は五百三十万人、中で女性は七十八万人おり、妊婦の風疹罹患が懸念をされているわけであります。

 そこで、原因を考えてみますと、まず予防接種の空白時代があります。風疹の予防接種は、昭和五十二年に、女子中学生だけを対象に、学校での集団形式で始まりました。平成六年の制度改正によりまして、平成七年四月からは、男女を問わず生後十二月から九十月未満が対象となり、個別方式となりました。この制度改正に伴いまして、昭和五十四年四月二日から昭和六十二年十月一日生まれの人に関しましては接種機会を失ってしまったというわけであります。現在、これらの方々は十八歳から二十六歳という年齢に達していまして、まさに結婚そして妊娠という時期に達しつつあるということだと思います。

 厚生労働省は、平成十五年九月三十日まで、この谷間世代を対象として、接種を公費負担するなどの措置をとってこられましたが、この結果、この世代の接種率はどれほど上がったのかということを御説明いただきたいと思います。また、この経過措置でもさらに漏れてしまった方々への対応についてどのようにお考えか、お伺いいたします。

外口政府参考人 平成六年に予防接種法の制度改正を行いまして、先天性風疹症候群を予防するためには、男女を問わず風疹の基礎免疫を向上させる必要があることから、接種対象者を中学年齢の女子から男女の乳児へと移行したところであります。

 その際の措置として、平成十五年九月までの間については、未接種の状態になってしまう昭和五十四年四月から昭和六十二年十月までに生まれた者を対象に定期接種を行うこととしたものであります。

 平成六年の制度改正以降は風疹の大きな流行は見られておりませんが、経過措置の対象者の接種率は五〇%前後となっております。

 厚生労働省においては、これまでも、経過措置の対象となる年代の者に対して、各都道府県等を通じて風疹予防接種の重要性の周知を図ってきたところであります。

 また、経過措置の対象となる世代の者は妊娠の可能性のある年代の女性等でありますので、先天性風疹症候群のリスク等について平成十六年の結核感染症課長通知を発出するなど、広く周知を行っているところであります。

古屋(範)委員 接種率五〇%ということであります。これも年代別の統計ではございませんので、妊娠の可能性のある女性が半分かどうかということは言えませんが、やはりその中で、妊娠をして、そして風疹の免疫がない方々がかなり多くいるということではないかというふうに考えます。

 私は、先天性風疹症候群を発生させないために、この谷間世代はもちろん、風疹予防接種をしていない方々の接種率を高めるために、国が考えられることはすべて行うべきである、その努力が必要であると考えております。

 と申しますのも、アメリカの疾病対策センター、CDCの加藤客員研究員の調査によりますと、風疹が流行すると、自然流産また妊娠中絶がふえるということが明らかになっております。過去五回の風疹大流行期に中絶と流産の数が突出していることに着目をしまして、風疹を原因とする中絶と流産の数を推計しております。昭和四十三年から平成十四年までの三十五年間、風疹大流行期の中絶と流産の数は合計二万五千九百三件、非流行期の一万二千五百九十三件と合わせて計三万八千四百九十六件に上っているわけであります。かなりの数と言うことができると思います。

 このデータをまとめた加藤研究員は、一人の先天性風疹症候群の赤ちゃんの陰には五十八・八人の流産や中絶がある、先天性風疹症候群も風疹による流産や中絶も予防接種で防いでほしいというふうに述べられております。私も全く同感でございます。予防接種が徹底をされておらず、散発的な流行が起きている今日、緊急提言や関係機関への通知、PRだけではやはり限界があるのではないかと思います。感染症への社会防御の視点からの取り組みを考えるべきであります。

 先天性風疹症候群やそれに伴う人工妊娠中絶を出さないために、例えば、まず、妊婦の配偶者や子供、居住者、産科医など妊婦の周辺にいる方々や、また十代から四十代などの男女で先天性風疹症候群に近い存在の方々、そして、妊婦健診で風疹抗体陰性または弱陽性と判明した分娩後の女性と、免疫がない人々に対する公費負担を導入するといった対応が必要かと思いますが、これに対するお考えをお伺いいたします。

外口政府参考人 風疹の予防接種の対象者につきましては、より強固な集団免疫を獲得するために、一歳代及び就学前に接種することが望ましいことを踏まえて接種対象者を定めているところであります。また、これまでも必要な経過措置を設けてきたところであります。

 妊婦の周囲にいる家族や抗体価の低い女性の風疹の予防接種、これも重要であります。ただ、公費負担ということについては、ほかの施策との整合性もありますので、いろいろ難しい面もありますけれども、必要に応じて、御理解いただいて、個別に接種していただくことが大事ではないかと考えております。

 厚生労働省としては、引き続き、周知広報も含めて風疹対策の強化に努めてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 妊娠をしたかもしれないといって病院に行って、風疹の免疫があるかないかをそこで知ることになるわけですが、それ以前に自分自身が陰性かどうか、陽性かどうかということを認識するというのは非常に難しいわけでありまして、妊娠をしてしまってからでは既に遅いということであります。

 この先天性風疹症候群の発生をなくすために、やはり自分だけが、家族だけが予防接種を受けていただけではだめだということになると思います。より多くの風疹の免疫のない人々がワクチン接種を受け、社会全体で風疹の流行を確実に抑制をしていくことが重要であると思います。妊婦さんから、風疹にかかってしまった、どうしたらいいのかと泣いて相談をされて、予防接種が徹底していないことにやりきれなさを隠せない多くの医師があるというふうに聞いております。政府としても、今回の感染症法の改正を機に、先天性風疹症候群の撲滅に向けまして、早急なる対応をさらにお願いいたしたいと思います。

 八〇%以上の人に免疫があれば流行しないと言われている風疹でありますが、現在、一回の予防接種さえも徹底されているとは言えないと思います。これは、風疹予防接種制度が創設以来何度も改変をされている、医師や各自治体の中でも、現在どのような制度になっているのかよくわかっていないことが一因ではないかと考えられます。

 現在の風疹予防接種体制は、本年四月一日に政省令が改正されて、またすぐに六月二日に改正をされております。こうした二カ月という短期間に改正をされた理由とともに、現行制度についてわかりやすい御説明をいただければと思います。

外口政府参考人 本年四月一日に施行された平成十七年の制度改正による風疹の予防接種につきましては、生後十二カ月から生後九十カ月、七歳と六カ月になりますけれども、に至るまでの一回接種であったものを、生後十二カ月から生後二十四カ月を第一期、小学校就学前の一年間、いわゆる幼稚園の年長児、これを第二期とする二回接種とし、使用するワクチンは、第一期及び第二期に、それぞれ乾燥弱毒生麻疹と風疹の混合ワクチンのみを使用することとしておりました。

 さらに、本年四月一日以前に麻疹や風疹の単抗原ワクチンを接種した者に対しても、第二期に混合ワクチン等を接種した場合の有効性及び安全性が予定よりも早く確認されたこと、また単抗原ワクチンの導入について地方自治体その他の関係者の要望があったことから、本年六月に再改正を行いまして、平成十八年四月一日以前に風疹の単抗原ワクチンの予防接種を受けた者も第二期の対象者とし、当面の措置として、第一期、第二期ともに、使用するワクチンに風疹の単抗原ワクチンを追加接種することとしたものであります。

古屋(範)委員 ただいま詳しい御説明をいただきましたように、現行の接種制度、本年四月一日に改正をされ、さらにまた六月二日に改正をされて、この改正は、先天性風疹症候群で生まれる子供を少しでも減らそう、できるだけの方法を講じて免疫率を高めようという意味で大変よかった、きめ細やかな施策をとっていただいたというふうに思います。

 しかしながら、たび重なる短期間での改正で、実際の現場では混乱はなかったのかどうか。また、こうした制度改正のたびに、ここでもまた予防接種の適用から漏れてしまう方々が出ることも予想されます。これらの人々を含めまして、風疹の予防接種率を上げるために、予防接種に関する検討会でも課題として取り上げていますけれども、これまでの定点観測だけでなく全数報告の導入、また国民が予防接種を受けたかどうか、この予防接種歴を記録したものを残すための予防接種手帳を交付することなども考えられると思います。風疹予防接種率アップへの取り組みについてお伺いいたします。

 また、自治体間によってかなり接種率に格差があるように思われますが、この自治体間格差の解消について政府の見解をお伺いいたします。

外口政府参考人 現行の予防接種法におきましては、風疹などの疾病の発生及び蔓延を予防するために、各市町村長が実施主体となり予防接種を行っているところであります。

 御指摘のように、風疹の予防接種の接種率につきましては地域によって差が見られます。したがいまして、接種率を上げていくことにつきましては、この地域の差をなくしていく、低いところをいかに上げるかということが大事だと思います。

 厚生労働省では、国民に対して、ガイドライン等を通じた予防接種に関する正しい知識の普及啓発に加えて、各市町村等に対して、各地域ブロックごとの研修会や全国主管課長会議等を通じた予防接種制度の周知などを通じて、風疹の予防接種率の向上に努めているところであります。

古屋(範)委員 予防接種が徹底していないというのは風疹だけではありません。日本は、WHOが進めるはしか、麻疹廃絶計画でもおくれが目立っているそうであります。日本に対しては、問題大国、麻疹の最大輸出国とも言われております。我が国にはよいワクチンもあり、また経済力もあり、教育程度も高いにもかかわらず、なかなか予防接種が徹底をしない。この責任の所在は問題だとアメリカからも指摘をされていると伺っております。今後、さまざまな感染症予防のために、国際的な視点も加え、ワクチン施策をより積極的に進める必要があると考えます。

 最後になりますが、子供を安心して産み育てるためにも、先天性風疹症候群撲滅への大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

柳澤国務大臣 今、古屋先生と当局者である健康局長等との話を聞いておりまして、私自身も今の予防接種につきまして、何か予防接種をすると副作用で悪いことがあるからこれはやめにしようとか、あるいは今御指摘になったように、短期間の間に方針を変えるとかというようなことで、昔のように、国民が常識として、何歳になったら何の予防接種を受けるんだというようなことについての理解が少し動揺しているというか、そういう感を私は否めないのではないか、このように思います。

 私は、今のお話を聞いておって思うのでございますが、医学が日進月歩であるということはそのとおりだと思うんですけれども、もう少し各家庭あるいは親御さんに、いつどういう予防接種を受けたらいいのかということについて、何か非常に簡便なマニュアルというか、カードみたいなものですね、そういうものを母子手帳とともに交付するというようなことをやはり考えた方がいいんじゃないか、このように感じた次第です。

 これは私の今のここの感想ですから、果たして、役所に持って帰ったときにどういう反応が、あんな余分なことを言ってなんという話になるかもしれないんですが、私の印象としては、非常にそういう感が率直に言って強いですね。

 ですから、今先生がおっしゃった先天性風疹症候群の撲滅についても同様ですけれども、今後、しっかりした一つの方針のもとで、安全性にも十分配慮して、また高い接種率が確保できるように、今後とも適切な予防接種行政に取り組んでまいりたいと思っております。

古屋(範)委員 大変具体的な御答弁、ありがとうございました。

 以上で質問を終わりにいたします。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、若干BSE問題で確認をしたいことがございます。

 十一月三日、ジョハンズ米農務長官が、共同通信のインタビューに答えて、米国牛肉輸入については、月齢制限を撤廃するよう求めていく考えを明らかにしたと各紙が報じました。米政府は、従来から、三十カ月齢以下と主張してきたわけでありますが、今回は、年内にも松岡農相と会談し、貿易拡大に向けた具体策の協議に入りたいと発言したとあります。

 そこで、農水省に伺いますが、日程協議などが既にされているのか、あるいは、米政府の申し出は到底受け入れられないと思いますが、どう対応するのか、伺います。

小林政府参考人 ジョハンズ農務長官に関する報道についてのお尋ねでございます。

 ただいま御指摘のありました報道があったことは承知しておりますが、これまでのところ、米国側から、本件について年内に松岡農林水産大臣とジョハンズ農務長官との会談を持ちたいという要請はございません。

 翻りまして、米国産牛肉につきましては、全月齢からのSRMの除去、それから二十カ月齢以下と証明される牛由来の牛肉という日米間で合意された条件のもとで輸入手続が七月に再開されたところであります。このため、まずは日本の消費者の信頼を回復するためにも、現在の対日輸出プラグラムの遵守等について日米双方で努力することがまず何よりも重要であります。

 したがって、農林水産省としましては、現在の対日輸出プログラムの見直し等について、直ちに日米間で検討を開始する状況にはないと考えております。

高橋委員 では、この点は確認をさせていただきます。厚労省についても同じ立場であると思いますので、異論があれば答弁の中でお願いをしたいと思います。

 そこで、七月に輸入再々開を決めたわけでありますが、そのとき、三十五施設、いわゆる対日輸出施設のうち三十四が認可をされ、うち一施設は条件つきで認めたという経過がございました。八月に両省は残る二施設をフォローアップ調査を行って、八月十五日、対日輸出施設のリストに載せることを決定したと発表しました。つまり、オールクリアになったということであります。食品安全委員会に報告されたのは八月二十四日、一つも委員からの質問はございませんでした。

 報道でも余り取り上げられなかったということで、いつの間にか粛々と始まっているなという気がいたしますが、今後、粛々と対日輸出施設が拡大されるのでしょうか。この点、伺います。

藤崎政府参考人 お答えいたします。

 米国産牛肉の輸入手続再開につきましては、日本側が本年六月二十四日から七月二十三日までの間に実施した対日輸出認定施設三十五施設の現地調査結果を踏まえ、三十四施設を対日輸出認定施設リストに掲載することを認めることとし、七月二十七日に公表いたしております。

 その際、日本側の現地調査において、企業合併に伴いマニュアルが大幅に変更手続中の一施設については、その後、米国が査察を行い、日本が確認するまでの間は、対日輸出認定施設リストに掲載しないこととしたところであり、輸入手続再開の公表にあわせて、その旨を公表いたしております。

 その後、当該施設につきましては、日本側が八月七日から十二日の間に実施したフォローアップ調査によりまして、適切なマニュアルの整備等が確認されたため、八月十五日に対日輸出認定施設リストへの掲載を認める旨公表いたしました。これにより、三十五の認定施設というふうに相なりました。

 これらの日本側による現地調査の結果や対応につきましては、食品安全委員会に報告いたしますとともに、七月二十八日から八月二十四日の間、全国十カ所で説明会を開催し、消費者等に対し詳細な情報を提供いたしてまいりました。

 なお、米国における対日輸出認定施設の追加については、本来、米国側の責任において行われるものでありますけれども、本年七月二十七日の輸入手続再開後六カ月間は、米国側の対日輸出プログラムの実施状況を検証する期間としていることから、この期間中は、新たな対日輸出認定施設としての認定は行われないこととなっております。

 また、この検証期間が終了して、米国の責任において新たな対日輸出施設の認定が行われた場合でも、日本側が定期的に現地において査察を行い、マニュアルの整備状況、マニュアルに沿った作業の実施体制の確認等、当該施設が対日輸出基準を遵守していることを確認するために必要な対応を行ってまいることにしております。

 以上でございます。

高橋委員 六カ月間の検証期間、この期間は行われないというのは当然わかっていることで、業界なんかは既に来年の三月から本格輸入が開始だということをもう述べているということが業界紙などでも紹介をされているわけですね。

 問題は、その後のことなんです。一月間の査察で全施設を調査したものの、あくまで輸出再開前のデモンストレーション、要するに、まだ対日輸出は始まっていないわけですから、あくまでもデモンストレーションをやってもらってチェックをしたという非常に限定的な査察だったということは当然お認めになると思うんですね。そういう中でも、遵守違反はやはりあったわけですよ。それは、やはり三十四中十四というのは大きいんじゃないのということが七月二十七日の食品安全委員会でも指摘をされていたところであります。

 私が気になっているのは、この食品安全委員会で、厚労省の担当者が、今回の、今回のというのは一月の背骨混入事件について、構造的な問題ではなかったかという指摘がある、そのことに対して、それは、特異な事例であるという米国の主張については、かなりそういった見方ができるものではないかという印象は持っていますけれども、最終的にそうでなかったとまでは言えないのではないかと、意味不明の答弁をしています。米国が言っていることらしいけれども、でも、そうとも言えないと、意味不明なんです。

 だけれども、ここはとても大事な問題なんです。構造的な問題ではないかということが繰り返し指摘をされて、そうではないとは皆さんは言い切れなかった。言い切れなかった以上は、これを黙って進めるわけにはいかないんですよ。フォローアップは、今も、これからも定期的にやっていくと言った。だって、本格的に輸入して初めてそれが、実態がわかるわけですから。

 その点は、お認めになりますか、構造的な問題だというふうにお認めになるのか、あるいは、そうじゃないと言い切るのか、伺います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の事象につきまして、それが構造的な問題であるのか、あるいは個別的な事例であるのかというのは、やはりケース・バイ・ケースで考えざるを得ないだろうというふうに考えております。

高橋委員 とてもこんな答弁で納得できるわけはありませんよ。だって、私、当日傍聴していましたから、食品安全委員会の答弁よりも後退をしていますよ。ケース・バイ・ケースだなんて、そのアメリカで起きた問題が、それは一つの会社の法令違反だというアメリカの指摘に対して、しょっちゅう指摘がされているじゃないかと、会計検査院からも指摘されている、ノンコンプライアンスレコードも出されている。そういうことが繰り返し出されて、やはりこれは構造的な問題ではないかという指摘は、そういう中で出されてきたと思うんです。それを、今になってケース・バイ・ケースだなどということを言える。

 そうしたら、これから先、拡大していく輸出において、入ってくる牛肉において、何ら信用ができないと私は言わなければなりません。

 残念なんですが、きょうは時間がないので、ここは指摘にとどめます。今後もこのまま進むとは到底思えない、このことを強く指摘して、今後も監視をし、また適切な機会に質問を続けさせていただきたいと思っております。

 さて、きょうは、鳥インフルエンザと新型インフルエンザ対策について伺いたいと思います。

 午前の参考人質疑でも大変厳しい意見が出ました。諸外国に比べても、我が国の新型インフルエンザ対策は、内容的にもあるいは人材などの体制的にもまだ不十分であるという指摘だったのではないかと思います。

 きょう配っている資料の一枚目をごらんになっていただきたいと思うんですが、WHOのホームページによる「高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)発生国及び人での発症事例」ということで、大変更新頻度が高いんですね。最新で十月三十一日付でございますが、これで二〇〇三年十一月以降で発生が十カ国、二百五十六人、うち死亡者数が百五十二人にも上っているということが示されております。

 最後の新型インフルエンザ、六八年の香港でしたが、それから既に三十八年たっております。いつでも起こり得る。そして、一度起こるとパンデミック、いわゆる世界的大流行は避けられない、そしてかつて経験したことのない規模での流行が予想されると言われております。

 そこで、具体的に伺います。ちょっと順番があれですが、資料の五枚目ですけれども、新型インフルエンザ対策行動計画、その一部を抜粋させていただきました。フェーズ3A、これは国内非発生の事態の段階のシナリオですけれども、抗インフルエンザウイルス薬の確保、そのうちタミフルの備蓄目標量が二千五百万人分ということが書かれてあります。これはこの間も指摘をされてきたことでありますが、二千五百万人分とはどういう意味かというところで、一人分の治療量が一日二カプセル掛ける五日分なのだという説明があるわけですね。

 ただ、この表を見ても、諸外国の症例から見ても、五日以上服用しているという例もあるのではないか、また、治療に当たる人、防疫関係など予防投与の必要な人もいると思います。その分が考慮されていないのかどうか、お答えいただきたいと思います。

外口政府参考人 タミフルの備蓄目標でございますけれども、CDCの推計モデルによりまして、全人口の四分の一が新型インフルエンザに罹患すると想定して、医療機関を受診する患者数がそのうちの数でございますので二千五百万人になるものと推計して、一人一回五日分で計算して二千五百万人分のタミフルを備蓄することとしております。

 それから、このタミフル二千五百万人分に加えまして、リレンザが六十万人分、それから実際に行動計画にも記載されておりますけれども、通常のタミフルの使用の自粛も行うことになりますので、これがプラスアルファとして加わるかと考えております。

 それで、この二千五百万人分については、これは治療を前提としたものでございますので、先ほど委員御指摘のように、予防投与とか、それから五日を長くするとか、そういった場合には二千五百万人分よりも下回ることはあり得ると思います。

 こうした点も念頭に置きつつ、タミフルの優先配分の具体的な方法、投与の方法については、これは専門家等の御意見も伺いながら随時検討を進めてまいりたいと考えておりますし、実際の投与に際しては、新型インフルエンザの実際の流行状況や患者の発生状況を踏まえて、臨機応変に対応できるよう準備をしてまいりたいと考えております。

高橋委員 今、下回ることはあり得るというお話があったと思います。私は、やはり心は、シビアに見てきちんと伝えるべきだという趣旨で質問させていただきました。二千五百万人分が丸々あるかのように映る、決してそうではないんだということはきちんと言っておかなければならないかと思うんですね。

 WHOがことし三月に示した治療と予防のガイドラインでも、リスク群に分けるということ、最初はまず家族だ、次は医療従事者だ、その中でも、一番接触が近い人とちょっと遠い人というふうにランク分けをする必要性を述べていると思います。このことは、やはり死亡例の発生した国で、地域住民が抗ウイルス薬を求めて病院に殺到し混乱したという経験も踏まえたものだと聞いております。ですから、リスク分類というのは、決して人を差別しているということではなくて、被害を最小限に食いとめるための手だてであるんだということをしっかりと国民に周知をしていく、そのことが非常に大事だと思っております。このことは指摘にとどめたいと思っております。

 次に、資料の二に、こっちは「家きんの高病原性鳥インフルエンザの発生状況」ということで、もう全世界的に広がっておりまして、輸入停止国が四十三カ国・地域にまで広がっているという状況であります。

 私はここを見ると、やはり地図でもはっきりするように、途上国の発生を食いとめるということが非常に重大な要件になっていると思うんです。

 インフルエンザ対策の行動計画もつくれないとか、薬を備蓄する資力がないとか、もちろんWHOがそういう国に対してのタミフルの備蓄などに取り組んでいることも承知をしていますが、一方では、私、〇四年のときに指摘をさせていただいたのは、世界で一つしかないロシュのタミフルを日本はふだんでも半分は使っているという状況があったわけですね。それはもう大分減ってはいると思うんですが、やはりそうした点では、ワクチンも開発を今続けている、タミフルなどもつくる、自前でつくる力をつけつつ、途上国の支援に振り向けるということも当然考慮する必要があると思いますが、その点、いかがでしょうか。

外口政府参考人 新型インフルエンザに関する途上国への支援については、大変重要な課題だと思っております。

 これまで厚生労働省関係としては、WHO等の国際機関への人的、財政的な協力を行っているほか、ベトナムやインドネシアへの専門家の派遣や、途上国の研究者、医療関係者等の研修受け入れ等、アジア諸国の人材育成等の支援を進めているところであります。これに加えて、外務省からも、例えばASEAN諸国を対象としたタミフルの供与等の支援を行っております。

 新型インフルエンザについては、国境を越えた世界規模でのパンデミックが懸念されておりますので、こうしたアジア諸国等との情報交換や国際協力、こういったものが大変重要でありますので、我が国を新型インフルエンザの脅威から守る上でも、今後も引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

高橋委員 よろしくお願いします。

 そこで資料の五、先ほどやったタミフルの下の表でございますが、感染症指定医療機関を当然備えなければならないということであります。これは本委員会でも指摘をされたように、大変心もとない数字であるということですね。特定感染症指定医療機関数が三、第一種が二十四、第二種が三百十、病床数で千六百三十五、陰圧病床は九百十七床にしかすぎない。それで結核病床の空き病床を利用するということを考えているわけであります。

 もちろん、フェーズ4、5というふうに上がっていくと、実際は病床どころか床に寝るということも想定をされているかと思うんですが、やはり初動の段階で専門的な能力を備えた指定病床をしっかり確保することが求められているかと思うんです。

 そこで、ちょっと振り返ると、SARS対策で、平成十五年の四月七日付、SARS患者に対する医療提供体制の確保ということで通知が出されました。それで、資料の四枚目にあるように、ベッドが確保されまして、特定と第一種は先ほど述べた数字、同じです、三と二十五、第二種は百八十で、その他を入れまして計二百五十二医療機関が整備をされたわけですが、それは、幸運にもSARSは日本では一例もなかったということで、一度も使わなかったわけであります。

 ただ、指示を出して、確保しろと言ってその後解除がなかったものですから、全く使えないまま困っている病院もあるんですね、そこを実際見ているんですが。同じ年の七月には、もう既にWHOはSARSの終息宣言を行っている。何の指示もないというのはいかがなものか。どうするつもりなのか、伺います。

外口政府参考人 SARS患者に対する医療提供体制の確保等については、平成十五年四月七日付で地方自治体に対して要請したところであります。

 平成十五年七月にWHOがSARSの終息宣言を出して以降、国外においても流行が認められないことから、当該通知の対応は、解除も含めて、専門家の意見を聞きながら検討中でございます。

高橋委員 まだ検討中ということですね。では、早期に答えを出していただいて、私は、解除だから後は普通に使っていいという単純なことではないと思うんです。今言ったような指定病床に繰り上げをしていくとか、有効に使っていくべきだ。経営にかかわる問題でございますので、早期な対応をお願いしたいと思います。

 やはり、当時は非常に混乱をしていたという背景もあったと思うんですが、場当たり的な対応では、今後もっと大規模に起こる感染症の対策においては、非常に心もとないのではないかということを強く指摘しておきたい。

 あわせて、やはり午前中の参考人質疑でも言われていたように、感染症対策が非常に重要だということを言われているわけで、そのために備える医療機関あるいはセンター機能などはやはり国の責任でしっかり整備するべきだということを、私、きょうは要望にとどめたいと思います。

 そこで、今話をしている感染症指定医療機関の指定の基準を国が出しているわけですが、いろいろなクリアしなければならない条件があるんです。その中に、「診療科名中に内科、小児科及び外科を有し、それぞれに常時勤務する医師があること。」こういうふうに定められております。実際、今、不採算部門を背負っている国立系の病院などでも内科の常勤医師さえ不在しているなど、非常に深刻な実態があり、なかなかこれ自体も壁になるだろうと思うんです。しかし、とても大事なことだと思うんですね。

 やはりトータルで必要だという意味ではないかということで、そこを確認したいのと、その点でも医師確保対策にどう力を入れていくのか、伺います。

外口政府参考人 感染症患者への適切な医療体制の確保のためには、やはり必要なマンパワーの確保が必要であります。

 それで、要件の中には、診療科名に内科、小児科、外科を有し、それぞれに常時勤務する医師があることというのを要件としております。また、単に内科、小児科、外科だけではなくて、実際にはその人たちが感染症のことに関してある程度の専門性を持っているということがさらに重要だと思います。この点で、今後の課題でもありますけれども、こういった方への研修というものを進めていくことが重要ではないかと考えております。

 こういった医師の確保でございますけれども、実際には、目の前にいる患者さんのための確保よりも、この場合はこれから起きるかもしれないという、そういったニーズに対する医師の確保になりますので、その点は、さらに我々も一層努力していかなければいけないと思っております。

高橋委員 しっかりとお願いいたします。

 そこで、パンデミックの話をしておりますが、やはり初期の段階で、いわゆる高病原性鳥インフルエンザの段階で封じ込めることが決定的だと思うんですね。それで、この間、一昨年と昨年あった鳥インフルエンザの教訓というんですか、それを非常に大事に見ていく必要があると思うんです。

 特に、昨年の埼玉、茨城の発生においては、違法ワクチンの使用も疑われていたわけですが、最終的な究明がどうなったのか伺います。

小林政府参考人 昨年、茨城県を中心に確認されました高病原性鳥インフルエンザについてでございますけれども、感染源、感染経路の究明というふうなことが重要な課題でございましたので、昨年七月に専門家による究明チームを立ち上げました。その結果、九月二十八日、最終報告が取りまとめられております。

 その中では、ウイルスの由来、侵入経路、こういったことについては、特定する、確定するということは残念ながらできませんでしたけれども、ウイルスの特性、性質、そういったものから見て、中米由来ウイルス株からつくられた未承認ワクチンが持ち込まれて不法に使用された可能性は否定できないという報告があったところでございます。

 いずれにいたしましても、高病原性鳥インフルエンザの発生の予防及び蔓延というのは大変重要な課題であると考えておりますので、農場の飼養衛生管理の徹底、それから鳥に異常が発生した場合の通報、それから全国的なサーベイランス、こういった対策を引き続き実施してまいりたいと考えております。

高橋委員 今、否定できないというお話があって、やはり非常に重要なことかと思うんですね。

 資料の三に報告書の一部から抜粋をしたものを載せておきましたが、周辺環境ですとか、さまざまな疫学調査をやったデータがございます。

 これを見ますと、例えば、環境整備状況が、AからCのランクのうちCランクのところが六つありますね。それと、飼養衛生管理のところが、やはりCランクのところがかなりございます。これらの案件は、同じ関連の業者から導入をされて次々と感染をしていったので、最初の発生したところが一番の大もとだったとは限らないということで、非常に入り組んでいる結果があったかと思うんですね。

 そういう中で、こういう衛生状況の指摘がまず一つあった。それから、最終報告の中には、古い鳥から陽性が確認されたという報告もあった。これらは、当該農場に対する周辺住民が言っている指摘ですね、これらを裏づけるものではないかということを若干考えさせられるものがあるんですね。この点では、やはり業者としてのきちんとした責務を果たすことができているのか。

 養鶏というのはなかなか中に入れないという、私たちも調査を拒否されたという経過もございます。そういう点で、やはり厳しい立ち入りをやっていく必要があると思いますが、その点での対応はどうだったのかということを農水省に伺って、あわせて、労働安全衛生法という視点からも、外国人労働者も多いということが指摘をされています、重点的な検査なども時にはやるべきではないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。

小林政府参考人 ただいま、調査対象になりました飼養衛生管理の状況等についての御指摘がございました。

 配付していただいていますのは中間報告でございまして、最終報告にも、こういう表の形ではございませんが、同様の分析がなされております。その分析におきましては、こういう飼養管理の状況、あるいは個々の農場と他の農場との伝播の経路というのは必ずしも確定できないというふうなことになっておりますけれども、いずれにいたしましても、最終的に人間の口に入る食品をつくる施設でございますので、衛生管理状況というのが大変重要な問題でございます。

 また、そのことはそういう畜産農家にとってみても生産の効率という点からも重要だと考えておりますので、飼養管理についてはきっちりとした徹底をしていかなければいけないというふうなことについては、従来にも増してやっていきたいというように考えております。

小野政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の養鶏場で働く方々を含めまして、一般に労働者の健康を確保するために、労働安全衛生法におきましては、清潔に必要な措置などの労働者の健康の保持のための措置を講ずること、それから、粉じんや病原体、排液などによる健康障害を防止するために必要な措置を講ずること、医師による健康診断を行うことなどが事業者に義務づけられているところでございます。

 また、これらの規定に基づきまして、清掃等の実施、あるいは汚染床等の洗浄、汚染された排液の処理などが労働安全衛生規則において具体的に定められているところでございます。

 私どもといたしましては、事業者がこれらの措置を的確に実施するよう必要な指導を行いますとともに、特に養鶏場に従事する労働者につきましては、感染予防の観点から、日ごろから専用の作業服、マスク、帽子などの着用などの衛生対策を講ずるよう、既に地方労働局を通じて関係事業者に周知、指導を行っているところでございまして、こうした指導を通じて労働者の健康確保が適切に行われるように対処してまいりたいというふうに考えております。

高橋委員 終息をしてしまうとまたちょっと安心してしまうんですね。昨年の埼玉、茨城もまさにそういう状況の中で起こったものでありました。特に弱毒性だったということもありまして、ですから、今回、今農水省と厚労省が言われたことがしっかりやられていって、今後、もっと早期の段階で封じ込めができるということをぜひ期待したい。ここは今後も見ていきたいと思います。

 きょうは大臣にも一言お願いしたかったのですが、時間が来ましたので、新型インフルエンザ対策について、また総括のときにお願いをしたいと思います。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、大臣初め、委員長、そして各御出席の委員には、三回にわたる長丁場の審議、大変にお疲れさまでございます。私の質疑で最後となりますので、いま少しお時間をちょうだいいたしたいと思います。

 私は、本日、冒頭、臓器移植問題を取り上げさせていただこうと思います。

 一九九七年に我が国で臓器移植法というのが議員立法という形で成立いたしましてからことしで九年目になり、十月の二十八日、五十例目の脳死判定患者さんが報告されております。

 現状において、脳死臓器移植問題は、例えば日弁連等々から、脳死判定を受けられた患者さんの人権侵害事例があるのではないかという問題の指摘や、あるいはまた、一方では、諸外国に比べて臓器移植の提供数が大変に少ないということで、患者さんたちの移植を望む気持ちに十分こたえられていないという反対サイドからの指摘もなされておりますが、いずれにしろ、我が国がとったいわゆる英知の結果が、御本人のしっかりした意思の表明と、それに基づいてなされるところの移植医療という形で今日まで進んできたわけであります。

 しかしながら、一方、九年という歳月の中では、いろいろな予測せざる問題も生じてまいりました。その一つの事案が、これは脳死臓器移植ではございませんが、生体腎移植という形で、生きている方からいただく腎臓で、もう一人の方、レシピエントの治療をするという生体腎移植においては、これも先月でございましたが、名古屋において、摘出した腎臓をごみ箱に捨てちゃったという事案。あるいは、私の所属しておりました徳洲会グループの宇和島徳洲会病院というところで問題になっております、御病気の方の腎臓を取って、もう一つ新しい方に差し上げた。新しい方の中で機能するのであれば、そもそも取る必要があったのだろうかというような、本当に論外とも言えるような事態が生じております。

 私は、昨日、たまたま、夜遅く帰ってテレビをぱちっとつけましたら、柳澤大臣の顔がばっと出てきまして、この徳洲会での臓器移植、生体移植に関しての御意見を述べておられました。

 繰り返しになるやもしれませんが、まず、大臣には、この間の、特に生体移植をめぐってのさまざまに生じている、事件と申しますか不祥事と申しますかいろいろなトラブル、これについてどのようにお受けとめであるか、伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 今回の宇和島徳洲会病院で行われました腎移植につきましては、これが正当であるかどうかということの観点で考えますに、やはり医学的にも、また、手続的と申しましょうか、提供者への説明、あるいは同意の取得などの点にも問題のある可能性があるというふうに考えておるわけでございます。

 この移植については、非常にいろいろな意見が私の耳にも入ります。そういうことで、まだ私自身が、もちろん医学的な知識は全くないわけですから、私が幾ら考えてもいい結論が出るとも思えませんが、私は私なりに考えさせていただく中でも、今のところ、非常に難しい問題だという認識でしかないわけでございます。

 ただ、厚生労働省としては、まず事実の究明が一番肝心だということで、現地に職員を派遣して、病院から事実関係について事情の聴取をしているところでございまして、また必要に応じて関係のところにも調査の対象を拡大して、的確な情報収集ということをまずいたしたい、そしてその後において、関係学会とも連携して必要なルールを検討して、これを徹底していきたい、このように考えているというところでございます。

阿部(知)委員 きのう大臣は、きっととっさの御答弁だったと思うのですが、異常で異例だと。本当にそのように私も思います。ただ、また一方で、本当に異例なのかどうか。異常ではあると思うんです。ただ、それが異例でなかったらもっと問題の根が深いように思います。

 先ほど申しましたように、私自身も奉職した経緯がある徳洲会グループですから、私もまた中におった者として事の究明には当たらねばならない立場にあるということは承知した上で、実は、宇和島の市立病院でも同じお医者様が十例、病気の腎臓を摘出し違う方に植えておられる。あるいは、そのほかに、香川の労災病院や呉の共済病院という形で、幾つも関連する病院の名前が上がってきております。一応最初は、二〇〇四年からじゃないかと言われていましたが、どんどんどんどん対象も広がっておる。

 私は、先ほどの大臣の御答弁でおっしゃってくださったように、まず事実はどうなのかということが国民にも広く明らかにされないと、実際に自分が病気で、本当に取らなきゃいけないと言われて取ったけれども、あの腎臓はどこに行っちゃったのと思うような患者さんが多く出てくるように思います。

 私自身は、やはり臓器移植というのは、二つの人権のぶつかり合う、本来的には避けたい医療だと思っております。なぜならば、レシピエントとなる方の人権もまた非常に危ういバランスの中に立ちますし、他の治療がないのかということも十分な情報が与えられたかどうかも、あるいは、がんにかかった腎臓をもらって本当にいいのかどうかということもございます。一方、ドナーの方は、先ほど申しました、ほかの方の中で生きて動くことができるなら、何で私に返してくれないのと。あるいは、脳死と言われる患者さんにおいても、終末期でございますから、ターミナルな人間の尊厳にかかわってまいります。

 ここで、ぜひ厚生労働省としては、私は、二つの人権がぶつかり合う極めて、本当に微妙な現場の医療であるという御認識を持っていただくことと同時に、実は、ここからは大臣に、ぜひ実態の解明とともにお考えいただきたいのですが、先ほど申し上げましたように、そもそもこの臓器移植法は議員立法という形で誕生をいたしました。しかしながら、今、医療の状況を広く見てまいりますと、医療の中における人権ということがいろいろなところで問題になっております。それだけ科学技術は進歩し、何でもできる時代にはなったんだと思うのです。

 そうしたことにかんがみて、例えばですが、今までの法体系にはない、生体移植のきちんとしたルールをつくる。大臣はガイドラインでとおっしゃいましたが、局長通達という形でなされて、それで十分なのかどうかということは、そもそも、私も医療現場におりましたから思いますが、医療は外からの介入を嫌います。自分たちが使命に燃えてやっているんだからほっておいてくれ、はっきり言うと、そういう考え方も決してないわけではありません。しかしながら、そうやって医師が独断専行した場合には犠牲が拡大するという危険も現在の進んだ技術はもたらしました。

 私は、大臣が、政府の中において、こうした生体移植の現状について、やはり政府として、例えば立法ということもお考えになるような方向も含めて御検討いただきたいですが、いかがでしょうか。即答じゃなくてもいいです。そのように私から提案をしたいと思います。

柳澤国務大臣 今阿部委員の方から、この移植というのはドナー、レシピエントの極めて微妙な人権のバランスの上で成り立つ医療である、こういう御指摘をいただきました。私も本当にそのとおり思います。

 余り申し上げるのもどうかと思うんですけれども、脳死等そういう方からの移植であれば非常に事柄がはっきりしていいじゃないかと言うんですけれども、今言ったように、本当に脳死なのかどうか、人間の世界のことでございまして、残念ながらそこにまたいろいろな作為が働く余地があるという問題があるわけで、かえって生体間移植の方がいいと主張されるお医者様も私はよく承知をいたしております。

 しかし、また生体間移植なら移植で、今日どういう事態か、まだ事実を究明しなければなりませんけれども、先生が今御指摘になられたような、今報道機関を通じて報じられる事実からすると、やはりこれはどこかおかしいのではないか、そういう問題性を我々は感じているというようなことで、そこにもまた非常に複雑な問題が存在するということでございます。

 しかし、ではこの状況を、難しいから放置しておけばそれでいいのかという問題もやはりあるわけでございまして、私ども、先生の御指摘も踏まえて、これから、部内それから部外の学会の専門家の先生方の意見をよく拝聴させていただいて、少しでも前進するように取り組んでいかなければならない、このように考えております。

阿部(知)委員 御丁寧な答弁をありがとうございます。

 もう一つ申し添えれば、実は、京都大学で肺移植を行われました患者さんが、人工心肺というのを回している途中に、脳死状態のように脳に血流が行かない状態になって、これはレシピエントの側が亡くなられました。以降、京都大学では肺移植を今中断、停止しておりますが、本当に、この患者さんも移植で助かるはずだったと思っていたものが亡くなっていかれたりした事案もございます。

 人の命ということを法が律していくことはなかなかに難しい問題がございますが、私としては、せめて人権という観点からの、例えば書面による同意や、いわゆるインフォームド・コンセントと言われている治療の危険性等についての周知ということは、やはり何らかの法制化が必要かなと思うものでありますので、よろしく御検討をお願いいたします。

 では、本日の質問に移らせていただきます。

 私は、先回の質問でも申し上げましたが、この法律案、読めば読むほど、据わりが悪いというか、私にはしっくりきません。

 きょうは、実は午前中、これは委員長を初め与野党の筆頭の皆さんの御高配で参考人の御意見を伺うチャンスを得ました。大変に勉強になりましたし、それをも踏まえて、私は、もし私が立法するのであればどんな形に問題を考えるであろうかと、阿部知子私案というものをちょっとつくってみました。きょう皆さんに「バイオハザード(生物災害)にどう対応するか」というタイトルでお配りしてございますのがそれでございます。出典はすなわち阿部知子であります。どこかから写してきたものではありません。それゆえに未熟な点とか気がついていないところも多いかと思いますが、ぜひ私はお考えいただきたいと思って、こういう形で例示をさせていただきます。

 今回審議されております法案は、特に生物テロというものが大変に世界で問題になっているという中で、感染症法を改正してテロに対しても備えをしようという枠組みでございます。しかしながら、実は、テロという意図的な、意識してばらまくものと、同時に、反対側には1と書きましたように、非意図的な問題で細菌が広がったり、あるいは未知の病原体が発生してしまったりすることがございます。これは、必ずしもあしき意図とかではなくて、現状の私たちの科学技術がもたらしている、本当にいろいろなことがやれるようになった結果、人間が、人間社会がはまり込んでしまった現状であると思います。

 実は、この非意図的なものと意図的なものは相互に全く無縁ではないとは思いますが、一応やはり対策は、大枠は分けて対処すべきではないかと私は思うわけです。

 非意図的なもので、すなわち今もうわかっている病原体によるものをAとして、Bは、どうしてそうなっちゃったかよくわからない、あるいはこれから、今バイオテクノロジーが盛んでございますから、例えば、ここに例を引かせていただきました。栄養剤の中にトリプトファンというある種のアミノ酸が人為的につくられて入れられていて、それを摂取した人が健康被害をもたらした、こういう問題まで含めて、先ほどの臓器移植ではありませんが、技術が生み出したものが私たちを攻撃するという本当に摩訶不思議な時代になりました。

 まず、この既知の病原体については、それを扱います施設内での感染、これをAの1といたしました。この場合には、主に被害を受けるのはそこでやっている研究者でございます。これまでも多く報告されているのは、実は、施設内で働いている研究者がそれにかかってしまった。管理体制の問題が生じてまいります。これに対応するには、やはりマニュアルをきっちりしていくということ。

 そして、Aの2の方は、その施設がどんなにバイオセキュリティーを高くしても、やはり事故で漏れ出て周辺住民に影響が及ぶ。これは、二〇〇二年のアメリカのメリーランド州でございました軍事施設から炭疽菌が漏れ出た事件、あるいは、ソビエトで一九七九年にございました、これも軍事施設から炭疽菌が漏れ出た事件などは、風向きと、それからいろいろな汚染経路によって感染が広がっていったというものであります。

 多様な生物体がある中で、私どもの時代というのは、そういう意図せぬ漏れ出ることにも対処していかなきゃいけない。この場合は、やはり、その施設がどんなものを扱い、周辺住民にはどんな周知がなされ、安全性が守られているかということが主眼になってまいります。

 先ほど申しました未知のものについては、実はBSEやO157、SARSも未知でございました。エイズだって、どこから来たウイルスかわからないということでございます。こういうものについてはますます病体の解明や疫学調査がこれから期待されるところでありますし、さっき申しましたバイオテクノロジーの発達が、何でもかんでもつくれちゃうから、それを受ける人間の側がどうなっていくかということも環境汚染と同じく問題でございます。

 こちら側の非意図的なものに対応するために、まず、検査室のセキュリティーや、あるいは周辺住民とのリスクコミュニケーションや、さまざまな疫学、保健所機能を充実させてほしいというのが私の考えです。

 それで、2、意図的なものについては、これは対テロ対策として、きっちりと各省庁間の連携と、そして被害に遭った人たちの救済までも含めた一つの体系が必要であろう。時に、公安的、治安的、海上保安庁、警察、もちろん、もしかして自衛隊、必要になると思います。でも、今回、1と2を一緒くたにしたら、日々の、いわゆる周辺住民の人権や、あるいは研究者の研究すらも狭められていくように私は思えますので、ここを分けていただきたいと思うものです。

 こうしたことを御案内した上で質問に入らせていただきますが、きょう午前中、お話をいただきました感染研の岡部先生初め、やはり二〇〇五年のWHOの会議を非常に重要視しておられました。これは厚生労働省にまずお伺いしたいですが、インターナショナル・ヘルス・レギュレーションといって、国際的な健康規則というものがこの会議で決定されて、我が国も二〇〇七年から実際にこれにのっとっていろいろなことを進めていかれるということでございます。

 この点について、確認で恐縮ですが、そのような趣旨にのっとってこの法改正はなされているのかどうかというのが一点。

 もう一つ、二つ一緒で済みませんが、その中で一番大きく問題になったのは周辺住民の問題でございます。

 これは、各地でそういう危険なものを扱っている施設は、自分のそばにあったら、実は委員長の千葉にもあるのですが、困るじゃないか、周辺はどう対応するんだ、どんな情報を得ているんだというようなことが、やはり肌で感じる不安になっております。そのために、WHOでは、バイオセーフティーという概念を導き出して、周辺住民への周知ということも組み込んでおるというふうに、私の短い勉強の中で知りました。

 せんだって、外口さんには大変いい御答弁をいただきましたけれども、重ねてですが、WHOのこうした全体的な取り組みについて、厚生労働省はもちろんその線にのっとって進められ、また、今回の法改正もそうしたものであるかどうかをお願いいたします。

外口政府参考人 二〇〇五年の五月のWHO総会でございますけれども、このときは、感染症関係について二つの重要なレゾリューションというか決議が採択されたと思います。一つは御指摘のIHRであり、それからもう一つは、実験室のバイオセーフティーの強化に関する決議、この二つがあると思います。

 IHRは、今後、世界で蔓延する感染症をいかにして各国協力して防ぐか、そのためには、早くそれを見つけて情報を共有するかというようなことに主眼がありますし、それから、バイオセーフティーの強化に関する決議のところでは、これは、実験者と地域を病気や毒素から守るために有効な対策を各国は実施するんだ、こういう決議だと思います。

 この二つとも、国際的な感染症対策の流れの中に位置するものでありますし、厚生労働省としても、当然この方向を取り入れてやっていきたいと思います。

 それから、感染症法のところに、国際的動向を踏まえてという文言がありますけれども、非常に大きなというか抽象的な言葉でありますが、その中でも、国際的な動きを踏まえてということに取り組んでいるつもりでございます。

阿部(知)委員 せんだっても同様の御答弁はいただいたのですが、それを了解、理解した上で、しかし、基本理念という法の中には、「感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の人権に配慮しつつ、」という表現がとられております。第二条でございます。

 ここで私がくどくこだわっておりますのは、「感染症の患者等」の「等」には、周辺住民やその施設で働く労働者あるいは研究者も含まれているのかどうか。私は、この法案にそれが見えません。「等」を深読みしてそういうふうに読み込めという意味なのか。

 おっしゃったように、二つ目の重要なポイントは、やはり地域住民への周知でありました。となると、この法律の中にどうしてそれが出てこないのかと思うのですが、外口さん、お願いします。

外口政府参考人 まず、「患者等」の「等」の考え方ですけれども、これはキャリアを想定しております。それで、「等」を地域住民とか全部入れると、全国民になってしまいますので、そこまでは考えておりません。

阿部(知)委員 私が申し上げたいのは、やはり全国民ではないんだと思うのですね。そこに二段階設けるべきだ。

 だって、そこに例えば原子力施設があれば、その周辺は、原子力の事故を含めて、やはり非常に日ごろからそうしたことに注意が喚起されているわけであります。外口さんも御存じと思いますが、高木仁三郎さんという科学者がおられて、彼は、もともと原発関係の技術者でありました。後々、原発施設は市民とはどう向き合っていくのか、やはり情報公開ということで、原子力資料情報室というものをつくって、ずっと市民活動をしてこられました。

 私は、この例に倣って、だって、生物テロと言われるこの病原体だって、今政府では核論議すべしというのが盛んですが、でも、原発施設と同じようにハザードなものだと認識した上で、そのことから守られるべきグレードにやはり一段階設けていただかないと、私は周辺住民の問題はなかなか真には解決しないと思うのです。

 大臣、急に振って恐縮ですが、私が今申し上げましたことについて大臣の御認識を賜りたい。やはり研究施設というのは、それがあるだけで、例えば、地震が来たらどうなるだろう、あるいは水系、水に流れて出てきたらどうなるだろう、あるいは服について病原体が出てきたらどうなるだろうという近隣の問題が、御近所さんの問題があります。それから、もっと広く国民というのももちろんあると思います。私は、両方はやはりそれぞれのリスクに応じてきっちりと対応されるべきだと考えていますが、大臣の御認識を伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 私の地元にも、昔、JTの子会社だったか一部門だったかの、バイオテクノロジーの実験をする、実際は生産、開発をしているところなんですが、そういうところがございまして、そこを見学したことがありますけれども、バイオといって植物の研究なんですが、それでもやはり、減圧というかそういう施設を注意深くつくって、これがみだりに外に飛散しないようにということで、非常な注意を払っていた状況を覚えております。

 私はそれを見まして、こういう実験をあるいは開発をやるところというのは、非常に厳格な自分たち自身のディシプリンを発揮されて、いたずらに地域住民に不安を与えないようにということで心遣いをしているということで、そのときはそれで安心をして帰った次第なんですけれども、大変とっさの質問で、私、お答えする用意がないんですが、これは非常に植物系のものでございましたので、余り深刻な問題が周辺に起こっていないのかもしれませんけれども。

 いずれにしても、こういう、規律がどういう形で今課せられているのか、あるいは自律的に行われているのかというような、その法律あるいは規制の体系といったものについて、ちょっと今ここでにわかに御答弁する用意がありませんので、今後よく勉強してみたい、こう思います。

阿部(知)委員 さすが大臣は見識がおありだと思います。本当にそういう問題を、これまではノールールでありました、しかし、これからはそうはいかないということが、やはり政治の側の意思として、国民保護というのは、住民保護、国民保護、おのおのやはり私はあると思いますので、大臣が鋭意また認識を深めていただければ幸いです。

 最後に、外口さんに一つ伺います。

 私がこの法律を読んでもう一つ不思議なのは、地方自治体との連携はどうなるだろうということでございます。法案上は五十六条にほぼそういう、事故が起きたら、あるいは運搬のときは、あるいはこの施設が何を使っているのかということを、都道府県ということがほとんど出てこないで、厚生労働大臣は、あるいは警察は、あるいは海上保安庁はとなっております。

 果たして、そういう施設がある自治体、保健所、地域の衛生機関には、この施設の内容なり危険性なり、逆に危険性を認識するからセーフティーが、安全性が出てきますが、これはどのように通知されるのか。まかり間違うと、そういう施設があるのを住民も知らない、自治体も知らないということが起こりかねないと、この法案だと思うのですが、いかがでしょうか。

外口政府参考人 自治体につきましては、これは自治体に伝える情報とそれから伝えない情報とに分かれます。それから、伝える情報でも、伝える時期と伝えない時期があるわけです。

 具体的に申し上げますと、病原体等の規制につきましては、これは生物テロ等による感染症の発生及び蔓延を防止するということも趣旨にございますので、病原体等の盗取やテロ等の犯罪等の防止等の危機管理上の観点から、所持者等に関する情報についてはこれは国で一元的に管理する。ただ、緊急事態等が起きた場合においては、これは都道府県も一緒になって対応しますので、そのときには情報提供も含めて適切に対処してまいりたいということであります。

 それで、それ以外の情報については、これはもちろん自治体と共有することになります。

阿部(知)委員 そのあたりが極めてこの法案は見えにくい、そして、中央政府が恣意的な情報のコントロールに流れがちという問題点を指摘して、また別途金曜日の質問にさせていただきます。ありがとうございます。

櫻田委員長 次回は、来る十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十三分散会


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