衆議院

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第6号 平成19年3月20日(火曜日)

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平成十九年三月二十日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鴨下 一郎君

   理事 谷畑  孝君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    加藤 勝信君

      鍵田忠兵衛君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉村 太蔵君

      高鳥 修一君  とかしきなおみ君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      西川 京子君    馳   浩君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    松浪 健太君

      松野 博一君    松本  純君

      松本 洋平君    御法川信英君

      内山  晃君    大島  敦君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    田名部匡代君

      筒井 信隆君    細川 律夫君

      柚木 道義君    坂口  力君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中村 吉夫君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     松浪 健太君

  石崎  岳君     馳   浩君

  加藤 勝信君     とかしきなおみ君

  西川 京子君     鍵田忠兵衛君

同日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     西川 京子君

  とかしきなおみ君   加藤 勝信君

  馳   浩君     石崎  岳君

  松浪 健太君     井上 信治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房総括審議官宮島俊彦君、雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君、社会・援護局障害保健福祉部長中村吉夫君、老健局長阿曽沼慎司君、保険局長水田邦雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。民主党の菊田真紀子でございます。

 きょうは、児童手当法の一部を改正する法律案につきまして、トップバッターということで五十分間質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 先日の人口動態統計によりますと、去年一年間の赤ちゃんの数が三万人ふえて、出生率が一・三を上回る見通しだということが発表されました。

 まず冒頭、大臣に御感想をお伺いしたいと思いますけれども、その前に、実は、中央公論三月号で、前の少子化・男女共同参画担当大臣の猪口邦子氏が感想を述べられておりますので、少し披露させていただきたいと思います。

 これは出生率が一・三を上回るという分析を見て感想を述べられておりますけれども、「旗振り役としての率直な感動は「予想を超えた社会の反応」にあった。」「国の本気度が子育て世代の心に届いたからだろうというのが、私の分析だ。かつては景気のよかった時でも出生率は回復しなかった。若い世代の意識、行動の変化は、「国がここまでやるのだから、安心して産んでほしい」というメッセージが理解を広げつつある結果だと、私は確信する。」と大変自信満々でこのようにお答えになっておられますけれども、柳澤大臣も、猪口氏と同じように、国がここまでやるのだから安心して産んでほしいというメッセージが理解を広げた結果だとお考えでしょうか。国の本気度が子育て世代の心にしっかりと届いたからだという分析か、まずお伺いいたします。

柳澤国務大臣 人口動態統計速報によりますと、平成十八年の出生数は、今菊田委員が御指摘になられたように、前年より三・二万人程度増加いたしておりまして、出生率の分母となる女子人口が減少傾向にあることから、平成十八年の合計特殊出生率は一・三台に乗る可能性が高いものと見込まれているというのが現在の状況です。確定値はことしの半ばごろでしか出せない、こういうことです。

 出生率の改善は雇用環境の改善が要因の一つと考えておりまして、そういうことではありますが、出生数の増加約三・二万人というのは、平成十七年度の減少が約四・八万人でありましただけに、それの三分の二ほどの回復にしかなっていないという状況もあります。今後も女子人口の減少が見込まれることから、出生をめぐる厳しい環境には変わりはないというふうに受けとめております。

 ただ、今、要因として申した雇用環境の改善ということのほかに、猪口大臣の国の本気度云々ということを御紹介いただきましたけれども、そういうことも全く関係がないとまでは言えないかなというふうに思いまして、私どもとしては、成長力底上げ戦略等で経済の成長を今後とも大事に大事に、この軌道を踏み外さないように進めていくと同時に、引き続いて少子化対策に熱心に取り組んでいくんだぞということを実際やり、それがメッセージとして若い男女に伝わるようにしていくということが必要なのではないか、このように考えております。

菊田委員 私は、この合計特殊出生率の数字が上がること、また下がること、余りこのことだけにとらわれて一喜一憂し過ぎるということも問題ではないかなというふうに思っております。あくまで冷静に、そしてまたはしゃぐことなく、しっかりと分析をし、また対策を立てていくべきだろうというふうに思います。

 今大臣は雇用環境の改善ということをその理由の一つに挙げられましたけれども、実は、一九七一年から七四年にかけて年間二百万人以上が誕生した団塊ジュニアの世代が今まさに結婚をし、出産の時期を迎えている、こういう要因があって数字が少し上回ってきている、三万人を超える赤ちゃんが誕生したということではないかというふうに思っております。ぜひこれからも、はしゃぐことなく冷静に判断をしながら、効果のある対策を立てていっていただきたいと思っております。

 さらに、この中央公論の中で猪口前大臣が述べられているところで少しまたお伺いしたい点がございますけれども、この少子化対策を御自身が自信を持って進められたことを受けて、最後に感想をこのように述べられております。「この国では長く、「国民代表」が官僚に従うという構図で政治が営まれてきた。その構造を突き崩した乳幼児加算の「勝利」は、民主主義の本質を問い直したという意味でも、大きな成果だったと思う。」というふうに述べられております。

 そこで私がお伺いしたいことは、この乳幼児加算、この政策一つでも大変な覚悟で官僚と闘わなければ実現できない、そんなに困難なことだったのでしょうか。お伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 これは、児童手当というものがずっと積み重なってきた経緯を見ますと、今回のものにとどまらず、なかなか困難というのが従来の例であったということは言えると思います。

 それはどうしてかというと、児童手当というのは、シーリングであるとかというような予算の枠組みがほとんど決定した後で、政治的な課題としてこれが浮上してくるということになりました。そういたしますと、勢いもう財源は、このシーリング内の要求、それももう本当にぎしぎしにこのシーリング内におさまっている歳出需要というものがありますから、それをどこかどけて児童手当を入れるということは考えられないわけでございまして、児童手当を積むのなら見合いの財源をどこかから持ってこい、今まで想定していなかった見合いの財源を持ってこい、こう言われるというのが常でございます。

 したがって、児童手当を増額しようとすると、その見合いの財源、いろいろございましたから一々は申しませんけれども、例えばたばこの税金を上げてそれを充てるとかいうような、何というか、財源を見つけてくるという作業が大変なことであったということは言えようかと思います。

 今度の児童手当の引き上げにつきましてもほぼ同様のことが起こりまして、そして、乳幼児加算をしたいということで新しい子育て政策というものが出ましたときに、その目玉として乳幼児加算というものがそこに掲げられていたわけですが、それが実際に予算編成の課題として浮上してきたのはもう本当に予算編成の最終段階、こういうことでございまして、毎年のことでございますが、それだったらその財源をどこから見つけてくるんだ、そういういきさつになったということでございます。

 結論はもう菊田委員も御承知のとおりですから、ここでちょうちょう申しませんけれども、いずれにしても、そういうようなことで、財源を見つけてくることで実現するプロセスというのはなかなか骨の折れる仕事だというふうに感じる人が多いということも事実ではなかろうかと思います。

菊田委員 つまりは、何をやるにしても財源をどこから持ってくるかということが常にあるわけでありまして、財政当局との闘いでもあるということでありますけれども、やりくりできなければできないということであります。私は、まさにここに、日本の少子化対策が国家戦略としてきちんと展望が持たれてこなかったことがあらわれているのではないかということを指摘させていただきたいと思います。

 少子化を考えるときに、安心して出産できる産婦人科医が身近にいないという大きな問題があります。とりわけ地方では大変深刻な問題になっております。大臣、なぜ産科医、産婦人科医は減っているんでしょうか。

柳澤国務大臣 産科医師が出生数当たりの医師数では横ばいとなっているけれども、総数は減少している、また分娩取扱施設数は減少している、総じて言えば、病院を中心として、産科の施設、お医者さんを含めて減少しているという状況が起こっております。産婦人科という表札のところでも、わざわざ産を外してしまって、お産は扱わないというようなところも、私の近くの病院でも生じているということでございます。

 私は、この状況を大変危機感を持って見ておるわけですが、背景、理由は何だというふうに申しますと、やはり、各病院に産科のお医者さんを非常に広く薄くしか配置できないなどによる勤務医の厳しい勤務環境、これが第一。第二が、特に産科におけるリスクの高まりや訴訟の増加に対する懸念、これもあるかもしれない。それから第三番目に、将来展望でも少子化による出生数の減少、こういったこともあるかもしれない。こういうようなことがさまざま働きまして、今の産科の先生方の減少につながっているのではないか、このように見ているところでございます。

菊田委員 二月七日の衆議院予算委員会で、我が党の枝野議員が少子化をテーマに質問をしました。医療現場の問題を取り上げて、今私が質問させていただいたと同じように、なぜ産科医、産婦人科医と外科だけ減っているのかと大臣に御質問をいたしましたけれども、大臣は、出生数の減少で、医療ニーズがはっきり低減しているということの反映と答弁されました。つまりは、少子化で赤ちゃんが生まれなくなってきているから医療ニーズがなくなってきたということをお答えされたわけですけれども、この大臣の発言に対して、現場で頑張っている産科医あるいはさまざまな医療関係者から批判が出ていることを承知していますか。

柳澤国務大臣 そういうことはお聞きしました。お聞きしました上に、私は、その後ずっと事態を、いろいろな統計数字あるいはその後の、現場に視察に行ったことなどを含めて、いろいろ総合的に観察をさせていただいておりましたが、それはもう本当に、今私が答弁したとおり、中長期的には私が指摘したようなこともないとは言えないんだけれども、今どういう状況なのかというと、やはり、勤務医の厳しい勤務状況であるとか、あるいはお産に対するリスクの高まり、訴訟の増加というようなことがはっきりあるというふうな認識がむしろ正しい、そういうように考えていくというふうになっているという状況でございます。総合的に考えていかなければ、これは的確な対応が出てこないというふうに考えているということでございます。

菊田委員 大臣は産科医などが置かれているリスクの高い医療現場の実情を全く理解されておられないのではないかと言われても仕方のない発言だと私は思っております。

 私の地元新潟県は、産科、産婦人科の医師が全国でも二番目に少ないところでありまして、人口十万人当たり五・八人しかおりません。全県下で百五十二人しか産科、産婦人科医がいないという中で、この問題は大変大きな問題であります。

 今、統一地方選挙が行われますけれども、どの県議会議員候補も市議会議員候補も、公約の重点項目としてこの問題、医療の問題をどうするのかということを取り上げております。四年前では少し考えられないようなことではなかったか、つまり、この数年の間に、本当に目に見える形で地方の医療崩壊が起こっているということであります。

 新潟県のこの百五十二人の産科、産婦人科の医師なんですけれども、そのうち百人が新潟市などに集中しております。つまり、三分の二が新潟市に集中をしているけれども、それ以外のところにはほとんどいないということでありまして、私の出身の加茂市も、産婦人科、産科の医師がいないという現状であります。

 今ごろになってやっと無過失補償制度の議論が始まったり、あるいは、きょうの朝日新聞朝刊にも出ておりましたけれども、女性の産婦人科医が十年働くと、その半数が子育てを理由としてお産現場を離れるということが記事に載っておりました。そして、このことは本当に社会全体で考えていかなければいけないという指摘がなされているわけですけれども、こういうこともあわせて、余りにも対策が後手に回っているのではないかということを指摘したいと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 医師の状況、医師確保の状況というものが非常に厳しいという状況は、私は就任直後から事務当局からも聞いておりまして、これに、八月でしたか、医師確保総合対策という形でこういう手だてを講じましたというところまで報告を受けて私は引き継ぎをしたわけでございますけれども、本当に、その後の事態の推移でますますそうした声が、今菊田委員が指摘されるように、大きく強くなっているという状況だと私は認識をいたしております。

 これに対しまして、私どもといたしましては、当座に間に合わせるということから、地域ごとに、医療機関相互のネットワークの構築というもので、とにかく現有の医療資源の効率的な活用をまず第一に図っていく。第二に、今委員が御指摘の産科の医療補償制度をつくることによって産科のリスクへの対応を行う、こういうようなこと。あるいは、産科に多い女性医師の就労環境の整備をするというようなこと。さらには、平成二十年度の診療報酬改定においても診療報酬上の重点評価を検討するといったようなことで、多面的にこの現状に対して対策を講じていくというふうに考えているわけでございます。

 加えまして、中長期的には、やはり、非常にお医者さんの少ない地域、都道府県におきまして、医学校の定員について暫定的な定員増を図っていくというようなことも考えまして、これら中長期的及び当面のいろいろな施策によってこの問題に対応していきたい、このように考えているということでございます。

菊田委員 人の命にかかわることですので、一刻も待ったなしで取り組んでいただきたいというふうに思います。

 続きまして、不妊治療についてお伺いしたいと思いますけれども、産みたくても産めない、一生懸命努力しているけれども赤ちゃんを授かれないカップル、不妊に悩む方々はどれくらいいるのでしょうか。

武見副大臣 不妊に悩む方の数でございますが、平成十四年度において約四十七万人と推定されているところでございます。

菊田委員 約四十七万人、妊娠を望んでいるカップルの約一〇%が不妊症であるとも言われております。私の身近にも悩んでいるカップルがいます。こういう産みたくても、授かりたくても授かれない人、産めない人たちに対してどう支援しているのか、お伺いいたします。

武見副大臣 医療保険の適用のない高度な不妊治療を選択せざるを得ない場合の経済的な負担の軽減を図るためには、平成十六年度より特定不妊治療費助成事業を実施しております。配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成しているところでございます。

 さらに、平成十九年度予算案におきましては、支給金額を増額するとともに所得制限を引き上げまして、経済的支援の充実を図ることとしております。あわせて、全国で、不妊専門相談センターというところにおきまして、不妊に悩む方々への精神的ケア等、相談業務を行っているところでございます。

菊田委員 この助成制度を利用して、これまでどれだけの人たちがこの助成を受けられましたでしょうか。

武見副大臣 特定不妊治療費助成事業の支給実績でございますけれども、平成十六年度及び平成十七年度の二年間で延べ四万三千六百件となっております。平成十六年度で一万七千六百五十七人、平成十七年度で二万五千九百八十四人という形になっております。

 平成十六年度には制度を開始していない自治体もありましたけれども、平成十七年度からはすべての自治体で制度を開始しております。また、制度の周知が進んだことから、平成十八年度の支給件数は一層伸びを示すというふうに私ども考えております。

菊田委員 平成十六年度、十七年度で延べ四万三千六百人、そして平成十八年度では、まだ数字が出ていないけれども、さらに伸びていくだろうという見通しということであります。しかし、全国で不妊に悩むカップル四十七万人に対して助成を受けて治療をされた人の数がこれしかないということは、なぜなんでしょうか。

武見副大臣 確実にこの人数がふえてきているということは、この数字の中からも明らかであろうというふうに考えているところでございます。

 特定不妊治療費助成事業については、平成十六年度の制度創設後に、平成十八年度には支給期間を通算二年から通算五年に拡充しております。また平成十九年度の予算案におきましては、支給金額を現行の年間十万円から、今度、一回当たり上限十万円を二回まで、合計二十万円に増額するとともに、現行の所得制限額、これは六百五十万円でございますけれども、これを七百三十万円に緩和いたします。こうした経済的支援の充実を図っていくということでございます。

 このように、特定不妊治療費助成事業につきましては、さらにこれを拡充して、そして効果の見きわめをしっかりしていきたいというのが私どもの立場です。

菊田委員 十分に拡充していただいていることは承知しておりますけれども、大変ありがたいことではありますが、不妊治療というのは医療保険の適用がありませんので、一回当たり三十万円から四十万円も治療費がかかるということでありますし、しかも何年も受け続けなければならないということであります。そういう現状からいたしますと、今の政府が行っている政策で十分だという御認識でしょうか。

武見副大臣 すべてが万事十分だというふうにはまだ言えないかもしれませんが、現在こうした形で充実させているということは確実でございますし、その効果は数字となってはっきりあらわれてきておりますので、それをもうしばらくきちんと見きわめた上でのさらなる充実策を図りたいと思います。

菊田委員 私は、大変困難な中でこういう不妊治療を受けている人たちをもっともっと支援してあげたい、授かりたいという願いをかなえてあげたいという思いで今質問させていただいておりますけれども、そもそも、医療保険の適用はできないのでしょうか。

武見副大臣 現在のところ、まだ医療保険の適用は考えられておりません。

菊田委員 これはぜひ議論をしていかなければならない、前に進めていただかなければならないと私は思っております。

 先ほど所得制限のお話がありましたけれども、今回、六百五十万円から七百三十万円までに緩和されるということでありますけれども、実は、新潟県でこの助成を受けた人を調べてみました。平成十六年度で三百件、平成十七年度で三百九十件、十八年度では四百八十件の予定でありまして、先ほど副大臣がおっしゃったように、少しずつではありますけれども、確実に、この助成制度を受けて不妊治療に当たられる方がふえております。

 しかし、所得制限があるために、これは夫婦合算で六百五十万円ということでありますので、新潟県の場合、ほとんど共働きが多いのが現状であります。つまり、夫婦共働きで所得が六百五十万円以上あると、せっかくのこの助成制度を受けられないということで外されてしまうケースが大変に多いんです。ですから、私は所得制限はなくすべきではないかということを申し上げたいんですが、いかがでしょうか。

武見副大臣 お気持ちは大変よくわかるのでありますけれども、とりあえず今回、所得制限は六百五十万円から改めて、七百三十万円に緩和するわけでございますので、その効果というものをいましばらく見きわめさせていただきたいと思います。

菊田委員 ですから、少子化対策をいろいろ講じておられますけれども、本当に産みたい、授かりたいという思いをまずかなえてあげる。その六百五十万円から七百三十万円に緩和をしましたからしばらく様子を見ましょうというのは、余りにも当事者の気持ちあるいは立場ということに光が当たっていないということを指摘したいと思います。

 加えて、こうした所得制限の問題だけでなくて、フルタイムで働いている女性というのは、不妊治療を受けるためになかなか会社を休めないという現状があります。フルタイムで働く女性が現実的に週に五回も六回も治療を受けに通院をする、ほとんどの場合、会社の始まる前、朝一番に行くとか、あるいは夕方会社が終わってから病院に駆けつけて治療を受けるというのは大変困難があるわけでございまして、多くの女性は途中で断念してしまうということであります。

 休みをとりやすくするためにはどうするのか、これを真剣に考えていかなければならないと思っております。私は、不妊治療の休暇制度というもの、このようなもので支援できないかと考えておりますが、いかがでしょうか。

武見副大臣 残念ながら、今まだ、そうした形の制度というものの導入はできない段階でございます。

菊田委員 全くやる気がないのがよくわかりました。

 不妊に悩む人たちはどこに相談したらよろしいのでしょうか。

武見副大臣 この不妊にかかわる相談業務というものを充実させることは、これは確かに大変大切なことでございます。

 不妊に悩む御夫婦のためには、医学的、専門的な相談、そして不妊にかかわる特にメンタルな心の悩みといったようなことなども含めて相談業務を充実させる必要性がございます。こうした点については、不妊専門相談センターというものを整備するということになっておりまして、子ども・子育て応援プランにおきまして、平成二十一年度までにすべての都道府県、指定都市、中核都市に整備をするということが目標とされております。

 現在ですけれども、全国の五十四の自治体、全都道府県と七市にこの不妊専門相談センターが設置されておりまして、専門的な相談に対応しているところでございます。平成十八年度の補正予算におきましても、同センターの相談体制の質的強化に取り組んでいるところでございます。

菊田委員 今、平成二十一年度までに全都道府県四十七カ所に設置したいとおっしゃいましたけれども、そもそも厚生労働省は二〇〇四年度までに四十七都道府県すべてに設置したいとしていたはずですけれども、いかがですか。

武見副大臣 二〇〇四年に達成するというのは、これは全都道府県というのを目標としてその目標値の設定がされておりまして、その目標は確実に二〇〇四年度に達成されております。

菊田委員 それでは、この不妊専門相談センターの開設時間と開設場所などをちょっと見させていただいたんですけれども、例えば北海道ですと、旭川医科大学医学部附属病院の中で行っておりまして、これは相談日が火曜日の十四時半から十六時までになっております。青森県は、弘前大学医学部附属病院の中で、金曜日の十四時から十六時までということであります。私の地元の新潟では、これは二カ所でやっているんですけれども、やはり相談日が、火曜日十六時から十八時、木曜日十三時から十五時ということでありまして、東京を見ますと、日本家族計画協会クリニックというところでやっているんですけれども、これも週一回、火曜日の十時から十六時までしかやっていないんですね。結局、地域による質の格差というのが大変大きくなっておりますし、全国どこでも気軽に相談できるような体制になっていないわけであります。

 私は、これを見たときに、地方自治体の裁量あるいは自主性に任せるのではなくて、厚生労働省が一括して行うことを検討すべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

武見副大臣 それぞれ地方における特性というものはきちんと尊重しなければならないと考えておりますけれども、委員御指摘のとおり、やはりそうした相談業務というものがより円滑に行われるように、厚生労働省としても、各地方自治体と協力をして、その推進を図りたいと思っております。

菊田委員 今、副大臣は地方の特性とおっしゃいましたけれども、こういうのは特性と言わないと私は思います。格差ですよ、格差。どこに住んでいたってみんな同じような条件で医療を受けられる、あるいは相談できるという体制を厚生労働省が保障してあげるのが私は本来だと思います。ましてや、こういう、なかなか人に打ち明けられない悩みを持っていらっしゃる方々への相談ですから、特に心を配っていただきたいというふうに指摘をさせていただきたいと思います。

 それでは、残り時間がわずかになってまいりましたので、児童手当についてお伺いしたいと思います。

 今回の法改正では、ゼロ歳以上三歳未満の第一子、第二子の児童養育者に対して給付する児童手当を月額五千円から一万円とするという内容でありますけれども、なぜ三歳未満の第一子、第二子に限定しての引き上げなんでしょうか。

柳澤国務大臣 これは、三歳未満の乳幼児を養育する親のことを考えて、大体そのような乳幼児の親というのは一般的に年齢が若い、年齢が若くて、一般的に言えば所得水準も相対的に低い、こういう場合が多いということで、第一子、第二子の児童手当の支給月額を、現行のものから第三子以降と同じように倍増をして一万円にすることにしたということでございます。親御さんの要するに所得水準というものに着目して手当てをした、こういうことでございます。

菊田委員 三歳になったらどうなるんですか。

柳澤国務大臣 これまでの出生順位による児童手当の差は、子供の数がふえるほど、就業中断の期間が長くなりまして家計の収入減につながるなど、子育ての負担がより大きくなることから、一定の意義を有しているというふうに考えておりまして、第三子以降は従前から一万円にしておった、こういうことでございます。

 要するに、先ほど来申し上げたように、三歳ぐらいになるとということでございますが、そこのあたりなってきますと、親御さんの所得もまあまあ、二、三万ずつ上がっていく、こういうことがいろいろなデータからも見てとれるというところからこういうようなことになった。もちろん、財政的に豊かであればもっとしてということも考えられないわけではないんですが、ぎりぎりの、財政窮乏の中から何ができるかということの中から、本当に最小限度の措置としてこうしたものが立案企画された、こういうことでございます。

菊田委員 三歳になったらどうなるのですかという私の問いかけでありますけれども、大臣、はっきりおっしゃったらいいですよ。一万円からこれは五千円に突然下がるんですというふうに答弁していただいた方がわかりやすいんです。

 これは現金給付だから物すごく見えやすいわけですよね。受け取る側からすると、三歳になった途端に一万円だったものが五千円に、半分に減ってしまうということでありますけれども、これは受け取る側からはどういう反応が出ると想像していますか。

柳澤国務大臣 もちろん、三歳になって減額されると、それだけ負担がふえるなというお感じになられることは、これはもうごくごく自然のことであろう、こう思います。

 しかしながら、働く親御さんの所得もそれなりに上がっているということで、理解を求めたいと私どもとしては考えているわけでございます。

菊田委員 働く親御さんの所得が上がっていくという大臣のお話でしたけれども、現実はそんな状況ではありません。今、本当に若いお父さん、お母さん、正社員で働けない方が大勢います。一生懸命働いているけれども、いわゆる非正規の働き方しかできないということで、昔と違って、一年一年働いて経験を積んでいけば確実に給料が上がっていくというような時代ではないんです。そういう中で、三歳になった途端に半分に減らされるということは、なかなか受け手としましては納得がいかないんじゃないか、私はこういうふうに思うわけです。

 例えば、群馬県の太田市がすばらしい取り組みをやっております。第三子以降の妊娠、出産から中学校卒業までの子育てにかかわる必要最低限の費用について、すべて市が負担をするということであります。これは市としても大変大きな負担になるとは思いますけれども、年間で約五億円だそうであります。妊婦健診費、出産費用、保育費、小中学校の入学費用、給食費、ノート、鉛筆などの学用品の購入、あるいは修学旅行の費用まで、そしてまた医療費の自己負担も無料とするということで、群馬県の太田市・清水市長は、少子化の解決には抜本的な対策が必要だということでありまして、人件費を削減したり、あるいは公共工事の入札の競争性を高めるなどして行革を進めればこれはできるんだという取り組みをされております。

 私は、これぐらいやると強烈なインパクトになる、本気さ、真剣さ、ほかを削っても子育て政策、少子化対策をやるんだという熱意が伝わってくるというふうに思います。子供を持つ家庭からすると大変ありがたいし心強い、あるいは、他市町村に住む人から見れば大変うらやましくなるような取り組みだというふうに思いますけれども、こういう政策は地方自治体に任せるんでしょうか。本来、国がこれくらい思い切った取り組みをやろうという考えはないんでしょうか。この太田市の取り組みについてどういうふうにお考えになっているか、お聞かせください。

柳澤国務大臣 群馬県太田市におきます第三子以降の子育て費用の助成については、現在の検討状況の詳細は把握をいたしておりません。まだ市として決定されたものではないと承知いたしておりますが、このような取り組みも含めまして、政府としては、自治体が独自に取り組むさまざまな少子化対策について、その費用対効果も含めて、関心を持って注視しているところでございます。

 いずれにいたしましても、国の少子化対策につきましては、子育て家庭に対する支援として経済的支援は大事ですけれども、ただそれだけではなくて、地域の子育て支援策の拡充や働き方の見直しなど総合的な対策を進めていくことも重要であると考えておりまして、全体として、子育てをする若い親御さんのニーズにできるだけこたえていくような施策を考えていきたい、このように考えております。

菊田委員 母親が妊娠して子供が大学を卒業するまでに、一体どれくらいの費用がかかるんでしょうか。

武見副大臣 こども未来財団の、子育て家庭の経済状況に関する調査研究、平成十七年度というものがございますが、これによりますと、母が妊娠しその子が大学を卒業するまでにかかる全体の子育てコストの推計額、これは典型的な就学パターンでございます、幼稚園及び大学は私立、小学校から高校までは公立に就学した場合で、約二千四百万円となっております。

菊田委員 言葉は悪いですけれども、やはり子育てにはこれだけのコストがかかる、現実にはこれだけのお金がかかるんだということが心理的にも大変大きな負担になっているわけでありまして、だからこそ思い切った支援をしていく。特にどんな政策を国に望みますかというアンケートをしますと、必ず、経済的な支援をしてもらいたいという答えが上がってまいります。私は、この経済的な支援を、財政が苦しくとも国家として一生懸命やっていくべきではないかというふうに思っております。

 ヨーロッパの少子化対策、児童手当制度なんかを見ましても大変進んでおりまして、日本から見たらうらやましいような状況であります。フランスでも児童手当は二十歳未満まで支給対象になるということでありますし、あるいは、ドイツなどでも十八歳未満、イギリスでも十六歳未満ということでありまして、私は、もう一つ注目すべきことは、ヨーロッパ各国では所得制限がないんですね。この所得制限のない国とある国、日本はある国なわけですけれども、これはどういう違いがあるとお考えですか。

武見副大臣 例えばドイツなんかのケースを見ても、実は、国際的には児童手当の支給額は高いんですが、残念ながら、出生率というのは低迷しているんですね。こうした現金給付と出生率との間には、明確な相関関係というものが確実に認められている状況にはまだないわけでございます。

 ただ、いずれにせよ、外国の制度と比較する場合には、児童手当制度のみを単純に比較するということではなくて、年功序列賃金であるとか、あるいは家族手当などの賃金体系のあり方や、ほかの子育て支援策との関係などを総合的に考慮しながら検討する必要があると考えております。

菊田委員 日本は所得制限を設けているということは、そもそもこの児童手当は、お金のない人への手当なのでしょうか。お金のある人は自分で手当てしなさいというのが基本的な考えなんでしょうか。

武見副大臣 諸外国における例では所得制限を設けていない国が多いというのはよく承知しておるんですけれども、我が国の児童手当については、児童の養育費が家計の負担と感じない所得階層にまで児童手当を支給する必要性、効用が比較的少ないということなどから、制度創設時から一定の所得制限を設けているということでございます。

菊田委員 私は、ヨーロッパでほとんど所得制限がないということを見たときに、子供は社会の宝なんだ、国の宝なんだ、未来への投資なんだ、だから、お金持ちの家庭も、お金のない家庭も、どんな条件の家庭で育っても、みんな同じく、みんな一緒に、みんなひとしく社会が、国家が支えていこう、そういう理念とか哲学とか思想に裏づけられているのじゃないか、こんなふうに思うんです。国家の理念や哲学や思想が、たまたま児童手当という一つの形、お金がすべてではないけれども、この制度の一つの形となってあらわれているのではないか、こんなふうに思うわけでありまして、日本は、いかにもこうした理念や哲学が見えてきません。大臣はどう思いますか。

柳澤国務大臣 児童手当の支給を徐々に上積みしてきたわけですが、そのときの財源手当てのいきさつについては先ほどの答弁で申し上げたとおりでございまして、なかなかきつい、いろいろな交渉で決まるというのが現実の姿でございました。

 そういうことから、勢い、高額所得者にまでそれを広げるということについて制約を感ずるところがあってそういうことになって、結果として今御指摘のような形になっているんですが、ただ、だんだんこの所得制限も引き上げてまいりました結果、現在では、全体としても九〇%に近いところのカバー率、子供たちの数でいうと九〇%近いところのカバー率になっておりますし、乳幼児に至ってはもう九〇%以上のカバー率になっているということでございます。

 ただ、委員はあくまでも、九九%であってもそこには質的な考え方の違いが反映されていると多分言われると思いますが、それについては今申したように、厳しい財政事情というか財源事情の中で、それでも皆さん関係者が一生懸命になってその拡充に努めているということを御理解いただければと思うわけでございます。

菊田委員 私は、これはヨーロッパだからできることで日本にはできないことではないというふうに思うんです。やはり、国家が目指す、国家が国民に伝えたい哲学や理念、思想というものが一つ一つの制度に魂となってそこにあらわれてくるような、それこそ私は、猪口前大臣が言うような本気さが伝わってくる政策ではないかということを指摘させていただきたいと思います。

 たくさん、ほかに質問したいことがありましたが、時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 まず、きょう、私の地元仙台の新聞、河北新報が大きく取り上げておりましたが、FOPが難病指定されたということで、私もこの委員会で以前、松島町の武田捷冶君を御紹介申し上げて、十三万三千の署名を持って厚労省にお願いをしたということを触れさせていただきました。大変ありがたいと思います。武田君も喜んでいる、また御家族の方々も安心されている、そして署名に協力してくださった皆様方も喜んでおられるということでございます。お礼を申し述べさせていただきたいと思います。

 一方で、中国残留邦人をめぐりまして、実は、宮城県議会は全国で初めて、残留邦人への国の支援制度の早期実現を求める意見書というのを採択いたしました。現在裁判が行われているんですけれども、宮城県内にも三十七人の原告の皆さんがおられます。国の制度によって中国に渡り、そしてまた国の失政によって長くとめ置かれて、そして、ようやく帰ってきたけれども、なかなか就業もままならないという中国残留邦人の皆さんたち、全国でも同じような裁判が行われているわけですけれども、国として、この残留邦人の皆さんに対する生活支援についてどのようにお考えになっているのか、まず大臣に伺わせていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 中国残留邦人の皆さんへの処遇というものについては、これまでにも厚生労働省の援護局を中心にいろいろきめ細かく手当てをしてきたつもりでありましたけれども、やはりこの残留邦人の方々の御苦労というものが依然として続いておるという状況にあることを、大変私どもとしても遺憾だ、残念だと思っているわけです。

 一月三十日でした、東京地裁で判決がありまして、そのときは国が勝訴をしたんですけれども、安倍総理から私のところに、そういう裁判であるとかあるいは法律問題ということとは別にして、中国残留邦人の皆さんにはしっかりした支援をして、本当に日本にあこがれてあこがれて、恋焦がれてようやく土を踏めた、日本に帰ってきてよかったということを実感できるような支援措置というものを考えてやってくれ、こういう御指示をいただきました。

 そのときに、与党の方もいろいろ議論しているから与党とも相談してくれということと同時に、第三者的な有識者の方々にも御相談をいただいてその方針を決めるようにというお話でございました。

 私は、これも総理の指示だったんですが、中国残留邦人の代表者の方々の実情というかお気持ちというか、そういうものを伺うということをいたしまして、そして今、事務当局もまたさらに、その上にいろいろ御事情を伺うということをしております。

 いずれにせよ、そうしたことの積み重ねの中で、今総理の言葉としてお伝えしたような、そういう言葉を実現するということとして、国民の皆さんに受けとめてもらえるような支援策をつくり上げていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。

 時期としては夏ごろまでに、これらの議論を積み重ねていい結論を出したい、このように考えているところでございます。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

郡委員 残留邦人の皆さんたちも高齢化が進んでおります。夏ごろまでということでしたけれども、一日も早い、そしてよい解決策を政治判断していただきたいと思います。

 それでは、児童手当法一部改正案について質問させていただきますが、児童手当制度の目的というのは、家庭生活の安定に寄与するとともに、次世代を担う児童の健全な育成及び資質の向上に資することであります。少子化対策としての位置づけということであれば、それが出生率の向上という意味合いということになるのでしょうが、この施策の結果的、副次的な効果にとどまるというべきではないかというふうに思っています。

 今回のこの改正は、昨年の六月に内閣府少子化社会対策会議が打ち出した少子化対策、「新しい少子化対策について」におきまして、子育て世帯に対する唯一と言ってもいい直接的な経済的支援であります。この法案の質問に入る前に、まずこの少子化対策について質問させていただきたいと思います。

 安倍内閣は、子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議を新たに立ち上げられました。すべての子供、すべての家族を世代を超えて国民皆で支援する社会の実現を目指す重点戦略を策定するということでございます。しかし、少子化社会対策会議のもとに少子化社会対策推進専門委員会がつくられておりまして、昨年の五月には既に「これからの少子化対策について」という報告書が策定されております。

 この「新しい少子化対策」につきましては、その冒頭で、一九九〇年代の半ばから推進してきた従来の対策のみでは、少子化の流れを変えることはできなかったことを深刻に受けとめる必要があるとして、「新たな少子化対策の視点」を掲げております。それは何かと申しますと、出生率の低下傾向の反転に向け、少子化の背景にある社会意識を問い直し、家族の重要性の再認識を促しというふうにございます。

 異彩を放ちますのは、この冒頭で、大上段に振りかぶった社会の意識改革のために展開されます家族、地域のきずなを再生する国民運動の推進でございます。そのメニューというのは何かと申しますと、家族の日あるいは家族の週間の制定、家族、地域のきずなに関する国、地方公共団体による行事の開催、働き方の見直しについての労使の意識改革の国民運動となっております。

 実施などに当たって政府広報の活用を図るとありますが、今年度はもう既に一億四千万円をかけまして、官民連携子育て支援推進フォーラム全国リレーシンポジウムの開催ということをなさったようでありますけれども、来年はこの予算額をさらに増額いたしまして、二億四千万円でございます。すごいなというふうに思いました。

 子育て支援策の飛躍的な拡充、働き方の抜本的な改革なくして、こうした国家主導の国民運動、社会意識の改革運動が展開されるということになりますと、親の養育力、家庭の育児力のみが求められまして、私などは、従来型の固定的な性的役割分担がますます固定化して、伝統的な家族観が蔓延しかねないというふうに危惧を持ちますけれども、担当省の一つである厚労省はどのようにお考えになっていますでしょうか。大臣、お願いします。

柳澤国務大臣 確かに、「新しい少子化対策」につきましては、かなりその冒頭の部分で、「新たな少子化対策の視点」というところで意識改革というものが掲げられておりまして、今委員が御指摘になられたような、家族、地域のきずなを再生する国民運動というようなことが記されていることは確かでございます。

 実際、平成十九年度におきましては、それの具体策といたしまして、児童手当であるとか育児休業給付であるとか、あるいは生後四カ月までの赤ちゃんのいる家庭への全戸訪問であるとか、あるいは放課後子どもプランであるとか等々、いろいろ実施がなされているところでございます。

 さらに、今般策定することとなりました子どもと家族を応援する日本重点戦略の検討に当たりましては、若い人々が、結婚したいけれども、あるいは子供を持ちたいけれども、それがちゅうちょされたり、あるいは障害に当たったりするというのはなぜかというところに焦点を当てまして、制度、政策、意識改革などあらゆる観点から効果的な対策の再構築を図ろうということで、さらに、この再構築と具体的な施策を結びつけようと努力をしているわけでございます。

 しかし、では、これがあるから、従来型の固定的な性的役割、性別による役割の分担なぞが固定化してしまうのではないかという危惧は、そういう復古的な考え方でこの意識改革を行おうということでは、私はそうではないというふうに受けとめておるところでございます。

郡委員 今大臣がお話しになられたこと、私も余り頭がよくないんでしょうか、何をおっしゃられたのかよくわかりませんでした。

 私が危惧いたしますのは、柳澤大臣も、子供二人で健全というような御発言もありました。そういうような家族観というのが国民運動としてなされてしまっては困るということです。

 加えて、安倍総理大臣も憲法改正に大変意欲的でいらっしゃいますけれども、二十四条は、個人の尊厳と両性の平等に基づく家族ということをちゃんとうたっているわけです。これを、国家主導の国民運動のもとに、公共の基礎としての家族がつくられるのではないかということを大変心配しているということでございます。(発言する者あり)押しつけるものではありません。家族というのは、それぞれが、個人個人がつくり上げていくものだと思います。国から押しつけられるものではないということを、ここで重ねて申し上げておきたいと思います。

 次に、少子化社会対策推進専門委員会の報告は、委員会では、地域や家族の多様な子育て支援、働き方にかかわる施策、児童手当等の経済的支援の三つについて討議を重ねております。特に、前者の二つ、地域や家族の多様な子育て支援そして働き方にかかわる施策、これが重要であるとの意見が多かったというふうに述べられています。これは、実は後から加筆されたものだそうでございますけれども。

 修正案は、続いて「経済的支援の必要性を否定するものではないが、まず取り組むべき優先課題は先の二つの課題にあると考える。」と政策的な優先順位を明らかにしているんですね。

 その理由は、確かに子育ての要望として経済的な支援ということが挙げられることが多いわけですけれども、しかし、専門委員会は、その経済的支援を要望する背景にある子育て中の親や子供たちにとって真に必要なものは何かについて議論を重ね、そして、子育てを支える環境が十分に整備されていない日本の社会の現状では、経済的支援のみでは子育ての安心感の保障にはつながらないこと、経済的支援は、さきに挙げた地域や家族の多様な子育て支援や働き方にかかわる施策が十分に展開された上でないと有効に機能しないものであるとの認識に至った、こういうものでございます。

 この委員会の六人の委員の方々、児童手当などの経済的支援というのは、地域や家庭の子育て支援施策や働き方の見直しが十分に進まなくては有効に機能しないとまで言い切っておられます。こうした政策的な優先順位を明記する修正案に対して、この三つの分野の充実を主張する一委員の反対意見が出されました。

 最終的には、これは両論併記という形になったんですけれども、専門家の議論におきましては、少子化対策の政策課題、政策の優先順位について、八人の委員のうち六人までが、地域や家族の多様な子育て支援あるいはまた働き方にかかわる施策の充実を優先すべきだというふうな意見だったわけであります。

 そこででありますけれども、これらの専門家会議の議論、六人の委員の意見というのはどのように検討されたのでしょうか。あるいはなされなかったのでしょうか。厚労省としては、この政策の優先順位をめぐる議論についてどのように受けとめて、どのようにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。児童手当制度の拡充の是非に関連して、いかがでございましょうか。

柳澤国務大臣 今委員が御指摘になられた専門委員会につきましては、内閣府で主催されたものでございますので、報告書の取りまとめに当たっての詳細な経緯につきましては十分承知しているとは言えませんけれども、経済的な支援の拡充に反対ということではなくて、経済的支援だけを拡充するのではなくて、地域の子育て支援策であるとかあるいは働き方の見直しなどとあわせて、総合的な対応が必要だということを主張されたものと認識するわけでございまして、その趣旨が最終的な報告書にも盛り込まれたものである、このように受けとめているところでございます。

郡委員 つまりは、厚労省としては十分にこの議論を検討しているわけではない、検討せずに今般この児童手当の拡充ということを行ったということですね。確認をさせていただきます。

柳澤国務大臣 そうではなくて、先ほども申し上げましたように、経済的な支援だけを拡充するという一点突破型の施策で何もかもが解決するということではない、地域の子育て支援策も進める、また働き方の見直しも進める、こういうような施策と相まって総合的にこの問題には対処していかなければならないんだということ、その認識は私どもも共有しているわけでございますので、私どもとしては、その三つについて、各省と連携をしてその施策を進めたということでございます。

郡委員 厚労省なりに検討してこの施策を進めたということと今御説明ございましたけれども、ここで、さまざまな支援策が必要である、そして働き方の見直しが必要であるといったことを、担当である厚労省として、やはりこれは重く受けとめて対策に当たっていかなくちゃいけないんだろうというふうに思います。

 後半に労働法制のさまざまな問題も出てまいりますけれども、本当にワークライフバランスということがとれるような働き方を、男性も女性も子供を生み育てながら働くことができるような社会をつくっていくことこそがまず第一に求められるのではないかと、また私も強く思うところです。

 それでは、改正案の中身について、続いて質問させていただきたいと思います。

 二〇〇五年三月の内閣府少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査その他の調査でも、望ましい経済的支援措置として児童手当の金額の引き上げなどが求められていたわけですけれども、今回引き上げられます手当、これはなぜ一万円なんでしょうか。そして、なぜ三歳以上は、先ほども菊田委員もお尋ねいたしましたけれども、五千円となるのでしょうか。この金額の根拠をお示しください。

武見副大臣 手当額につきましては、昭和四十七年一月の制度創設のときにおきまして、旧厚生省の養育費調査などをもとに、おおむね児童一人当たりの養育費の半額程度を目安に、当初は月三千円と設定されておりました。

 手当額の水準につきましては、その後の経済財政状況等に応じて、逐次見直されてきましたけれども、平成四年の改正において物価動向などを考慮して金額を引き上げてからは、第一子、第二子の支給月額五千円、第三子以降は一万円を維持しており、制度として定着をしてきているところでございます。

 今回の拡充では、若い子育て世帯等の負担軽減を図るという観点が特にございます。特に、三歳未満のお子様をお持ちのこうした若い世帯の経済的な負担というものは、やはりできる限り軽減させることが極めて重要という認識のもとで、三歳未満の第一子、第二子の児童手当の支給月額を、現行の第三子以降の手当額と同額の一万円に引き上げる、このようにしたわけでございます。

郡委員 副大臣、私は根拠をお尋ね申し上げました。

 今御答弁ございましたように、昭和四十二年の児童養育費に関する全国調査に基づいて児童一人当たりの現金支出を算出して、その半分程度をめどに三千円と設定されたということでございました。

 これはいろいろと見直しがされているわけですけれども、養育費をどういうふうに見るかにもよります。例えば、こども未来財団が、子育て家庭の経済状況に関する調査研究、二〇〇六年の二月に発表されたものですけれども、生活費と学費などの必要経費を合わせた子育て費用というのは、四歳から五歳の幼稚園時期で合計百二十九万九千百四十一円、年間は六十四万九千七百円、月五万四千円かかっています。その半分ということになりますと二万七千円でございます。

 この手当額についてどういうふうに決められたのか、その根拠をもう一度お尋ねしたいと思います。

武見副大臣 この手当額の水準については、制度の趣旨であるとか目的からすべて一概に決まってしまうというものではございません。厳しい財政状況を踏まえながら、社会経済状況であるとか、あるいは児童、家庭を取り巻く環境の変化であるとか、他の少子化対策との関係等を踏まえまして、総合的に検討すべきものというふうに考えております。

郡委員 先ほども、菊田さんのやりとりを聞いておりまして、何だか本当によくわからないなというのが私の実感でもございました。

 さらに私もお尋ねをしたいと思うんですけれども、昨年の百六十四国会におきまして、北井雇用均等・児童家庭局長は、出生順位によって手当額が異なることにつきまして諸外国の制度を例に出されまして、フランス、ドイツなどのように出生順位の後の方が高くなっている、日本と同じようなことになっているのが一般的だというふうにされました。その上で、その意義、理由について次のように述べておられます。

 子供の数がふえるほど、就業中断の期間が長くなって家計の収入減につながるというようなことを含めて、子育ての負担はより大きくなる、こうした家庭に配慮する必要があるという観点から、むしろ出生順位による差を設けることは意義があるというふうにおっしゃられたわけです。

 しかし、今般、柳澤厚生労働大臣は、三歳未満の乳幼児を養育する親は、一般的に言えば、年齢が若くて、そして所得水準も相対的に低い場合が多い、こういうことを踏まえて、第一子、第二子の児童手当の支給月額を現行の第三子以降の手当額と同額の一万円に引き上げたというふうに御答弁なさっているわけですよね。これは、一般的に乳幼児期の親たちが年齢が若いですとか相対的に収入が低いというようなことは、昨年末になって初めてわかったことでありましょうか。それ以前におっしゃっていることと全く整合性がとれません。

 今回、三歳未満の第一子、第二子については第三子と同額になるわけですけれども、それでは、その理由を明らかにお示しいただきたいと思います。

武見副大臣 この理由については、先ほどから何度も申し上げているとおり、こうした三歳未満のお子様をお持ちの若い世帯というのは、やはり明らかに所得というものが低い、したがって、より子育てにかかる負担が重くなってくる、そこを、とにかく第一子、第二子について負担を軽減させるために、第一子、第二子についても第三子と同様に同額の一万円とするというのが基本的な考え方であります。

郡委員 であれば、昨年のあの議論は一体何だったのでありましょうか。全く基本的なビジョンというものが政府にはないのかというふうに言わざるを得ない。全く見えてこない。つけ焼き刃でその都度その都度切り抜けている。そういうような施策では、本当に子供が安心して生まれてくるような、そういう社会になるのかどうか。菊田委員も言っておりましたけれども、やはり理念が全く見えてこないということであります。

 三歳未満は一万円に引き上げられますけれども、三歳から小学校六年生までは再び五千円に、半額に減らされるわけです。本会議の質疑では、高市大臣は、児童手当の加算対象を三歳未満児に限定したのは、三歳未満の乳幼児を養育する親は一般的に年齢が若く等々、これは要するに柳澤大臣の御答弁をそのまま引いたものでございました。子供の各年齢におけるライフステージごとの子育て費用というのは一体幾らになるというふうに思っていらっしゃるのでしょうか。

 こども未来財団の乳幼児の子育てコストに関する調査研究によりますと、三歳までが年間でおよそ五十万円程度でございます。四歳から六歳にかけては、これは六十二万円から六十六万円ぐらいまでにはね上がるんですね。三歳からの幼児期はそれまで以上に養育費がかかっているのに、なぜ減額されるのか、半額にされるのか、なぜ減らされるのか、そこをお答えください。

武見副大臣 ちょっと誤解を受けているようでございますけれども、今回、これは明らかに三歳児未満について加算したということでございまして、三歳以上という方につきましては現行どおりで、減るというわけではございません。

郡委員 そんなのはわかっておりますよ。そういうことを私は伺っているわけではありません。もっと真摯に、このところをぜひお示しいただきたいと思いますよ。

 なぜ、三歳よりも上になったらば、養育費や何かも、子供にかかる子育て費用も高くなっているにもかかわらず、これが一万円から五千円になるのかということをお尋ねしているんです。

武見副大臣 この点については、すべて順次委員の御指摘のとおり引き上げができるということがあれば、それはもうまことに好ましいことでありますけれども、実際には我が国は極めて厳しい財政状況の中にあるわけでありまして、その中で、改めて三歳児未満についての第一子、第二子の手当額を引き上げるということを優先したという考え方であります。

郡委員 ですから、なぜそうなったのですかと私はお尋ね申し上げているんです。

武見副大臣 これは先ほどから申し上げているとおりでございまして、やはりこうした三歳児未満の若い御家庭の所得というものにかんがみて、負担が重いということを考えた上で、このようにさせていただいたわけであります。

郡委員 ですから、何度もまた同じやりとりになってしまいますけれども、それが昨年末に初めてわかったんですか。乳幼児期の親たちが相当若くて、収入もそれほど、相対的に高くないということが初めてわかったから今般そういうことにされるのですか。昨年の国会では何とおっしゃっていたんですか。

武見副大臣 基本的な考え方が変わっているわけではなくて、現行制度のもとで、これは、優先的に三歳児未満について、第一子、第二子を加算したという考え方でありますので、現行の制度ということについての基本的な考え方を変えたわけではございません。

郡委員 ですから、その根拠をお示しいただきたいとお尋ねいたしましても、同じような御答弁が繰り返されるだけであります。

 時間がもったいないので。

 私といたしましては、そして民主党といたしましては、子供たち、チルドレンファーストということを政策の最重点課題に取り上げているわけです。この児童手当の支給対象年齢の一層の引き上げということも私どもは訴えているわけですけれども、これは、政府として、せめて義務教育期間中は対象とすべきではないかというふうに思うんですけれども、この点については、ないそでは振れぬ、そういう御答弁になりましょうか。

武見副大臣 平成十六年の全国消費実態調査に基づく子供の成長と各世帯の可処分所得の変化というものがございますけれども、これを見ましても、夫婦プラス子供一人で三歳児未満というのは、明らかに、その他の夫婦と子供、さらに年長の子供を持った夫婦と比べてみますと、一月当たりの可処分所得というのは実は最も低いという数字がはっきり出ているわけでございます。

 これは、例えば具体的に申しますと、夫婦プラス子供一人で三歳児未満の御家庭は、三十三万九千九百七十三円というふうになっておりますし、夫婦プラス子供二人で三歳児未満のお子さんの場合には、さらに低くなっておりまして、三十二万八千五十八円になっているわけであります。例えば、長子が大学生の夫婦を見た場合には、五十万九千六百円という一月当たりの可処分所得になっているわけでありますから、こういう実態を見ても、優先順位を設定するとすれば、こうした三歳児未満になるのは、こういう統計的な数字を見ても、私はかなり明確ではないかと思います。

郡委員 では、別の角度で伺いましょう。

 二〇〇五年三月の内閣府少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査の中に、少子化対策として重要な政策として、保育や教育費への補助、医療費補助、児童手当などの経済的支援措置を求めております。「新しい少子化対策について」では、子育て支援税制の検討に留意しつつ、就学前教育についての保護者負担の軽減策の充実というのが盛り込まれているところです。この後の昨年七月の政府の骨太方針でありますけれども、この中には、幼稚園、保育園の機能を強化するとともに、幼児教育の将来の無償化について、歳入改革にあわせて財源、制度などの問題を総合的に検討するとなっております。

 この関連では、来年度予算、幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減等を目的とした幼稚園就園奨励補助の拡充に、これは文科予算なんでしょうけれども、百八十五億円が計上されています。けれども、より抜本的な措置がやはり必要ではないかというふうに思います。

 私ども民主党では、当面、五歳児の就学前教育の無償化に着手して、随時拡大していく方向を示させていただいております。厚労省としては、就学前教育、保育の無償化について、それでは、どのようにお考えになっておられるでしょうか。

柳澤国務大臣 昨年の七月に閣議決定されました骨太の方針等におきましては、幼児教育の将来の無償化について歳入改革にあわせて財源、制度等の問題を総合的に検討することとされているところでございます。

 保育所は、養護と教育を一体的に行う施設でありまして、幼児教育の無償化の検討に当たっては、保育所における教育のあり方も含めて論議されるべきだと考えております。

 幼児教育の無償化につきましては、財源の問題もかかわり、国民の幅広い理解を必要とする問題でございますので、これが実現に向けて進むということになりますと、国民的な理解、議論が不可欠である、このように考えているところであります。

    〔吉野委員長代理退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

郡委員 つまり、初めに財源ありきということなのでありましょう。

 今回の改正による児童手当の追加所要額というのは、平成十九年度は六月支給分から十カ月分の実施で千三百七十億円、その内訳は、国負担分が二百二十億、地方負担分が四百七十億、事業主の負担分が六百八十億というふうになっています。

 事業主の負担分について、平成十九年四月から拠出金の率を引き上げるというふうにしておりますけれども、この引き上げ率はどうなんでしょうか。そもそも、二〇〇〇年の法改正で創設された三歳以上の特例給付の財源というのはすべて公費負担になっているわけですけれども、その理由も改めてお示しいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 千分の〇・四引き上げるということによって、事業主負担についても御協力をいただくということにいたしたわけでございます。

 この考え方の整理ですけれども、もともと三歳未満の児童手当とそれ以上の年齢の児童手当とは、いきさつ的なこともありますが、少し性格を異にしているという位置づけになっております。

 三歳未満の児童手当に係る事業主拠出金の制度は、児童の健全育成、資質向上を図ることによって、将来の労働力の維持、確保につながるという面で事業主にも一定のメリットがあるのではないか、それから、児童手当が従業員に対する福利厚生的な性格も有しているのではないか、こういうようなことを踏まえて導入されたものでございます。

 一方、平成十二年改正以降、十六年、十八年と逐次の改正によって児童手当の支給対象年齢が拡充いたしてきておりますけれども、この財源は、当時の厳しい経済状況の中で事業主負担の引き上げを求めるということが困難であったこと、それからまた、少子化対策の緊急性、重要性等にかんがみまして、全額公費で賄ってきたという経緯を経て、今日の姿に至っております。

郡委員 ということであれば、現在の経済状況を見ますと、事業主拠出のあり方というのを見直すということもあるということでしょうか。

柳澤国務大臣 ただいま御説明申し上げましたように、現行の児童手当制度におきましては、三歳未満に係る手当の財源については、公費のほか、事業主負担の拠出金が充当されております。他方、三歳以上に係る手当の財源につきましては全額公費が充当されている、そういう仕組みになっておりますが、この児童手当における費用負担のあり方については、事業主拠出金のあり方も含めて、広く国民の意見を聞きながら、少子化対策全体の検討の中で議論がされていくことになりますし、また、そうであるべきだと考えております。

郡委員 公費負担分の財源ですけれども、これは、緊急雇用創出特別基金から国庫に返納されるのを前倒しで措置して、地方負担分は地方特例交付金で措置するということになっているわけで、いずれもこれは恒久的な財源とは言えません。

 平成二十年度以降の公費財源について、昨年、内閣官房、内閣府、総務省、財務省、厚労省の間で、税制改革の中で検討することが合意されたそうですけれども、安倍総理の施政方針演説では、二〇〇七年度を目途に、社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通しなどを踏まえつつ、消費税を含む税体系の抜本改革を実現させることを表明されました。

 本改正案の本会議の質問でも、尾身財務大臣は、「平成二十年度以降の財源については、与党税制改正大綱において「少子化対策のための国・地方を通じて必要な財源の確保について、税制の抜本的・一体的改革の中で検討する。」とされていることを踏まえ、適切に対応することとしております。」というふうに答弁なさったわけですけれども、これでは検討の方向性もよく見えない。財源も、どこからどういうふうにその後持ってくるのかちっとも見えない。

 明確な安定財源の見通しがないままに、これを無理やりスタートさせるということでありますけれども、まさか、夏の参議院選挙が政府・与党の決断を促したというふうには思いたくはありませんけれども、一体、税制のどのような改革との関連で、この財源を確保するおつもりなのでしょうか。選挙までは甘いあめを見せておいて、選挙が終わったらばむちをということでしょうか。

柳澤国務大臣 御指摘のように、平成十九年度予算における乳幼児加算の創設につきましては、基金の取り崩しでもってその財源手当てをしたということで、一時的なものというか、永続的なものではないということは御指摘のとおりでございます。

 しからば、平成二十年度以降の公費負担財源につきましてどういうことを考えているのかと申しますと、これはもう累次、財務大臣等を含めて関係の大臣が答えておりますように、ことしの秋から論議が行われるところの、国、地方を通じた税制の抜本的、一体的改革というものの中でこの財源についても検討されるということで、そういう検討の中で適切な対処策というものが確立されてくる、こういうように予定を立てているところでございます。

 だから、具体的なものが明らかでないので心配だという御議論はいただかなくていいように我々は改革を進めるつもりでございます。

郡委員 いただかなくていいように進める、心配しなくてもいいように進めるのだというふうなお話でしたけれども。

 どういうふうに財源をつくっていくのかも明らかにされないまま、では、乳幼児加算がされましたけれども、これがこのまま、二十年度以降も続くのかどうかもはっきりしない、そしてまた、これまでの児童手当の歴史を見ても、本当に一貫性がない、くるくるくるくる制度変更されている。ここに政府の、子育てに対する経済的な支援のあり方という方針が定まっていない、ビジョンがないというふうに私は見てとれるというふうに重ねて申し上げたいと思います。

 さらにお話をお聞きしたいんですけれども、余り時間がありませんので。

 児童扶養手当、これは母子家庭に対するものですけれども、一九九八年に受給者の年収上限が四百七万円から三百万円に引き下げられて、二〇〇二年の改正では支給要件が引き上げられて半数近い家庭の支給額が削られました。さらに、二〇〇八年の四月からは、受給期間が五年を超える世帯は、それまでの支給額の半分を超えない範囲で減額されることとなっております。

 母子世帯の推移を見ますと、二〇〇三年には百二十二万五千世帯、それから、これは五年間に二二%、二十七万世帯増加しているんですね。母子家庭の世帯類型別の世帯当たりの平均所得というのは二百二十四万六千円です。構成員の一人の平均所得は八十六万八千円ということになりまして、全世帯の平均五百七十九万七千円と比べましても大変収入が少ないという中であります。

 直近のデータで、母子世帯数、世帯の平均所得、世帯一人当たりの平均所得というのがあればお示しください。

武見副大臣 母子世帯数につきましては、平成十五年度全国母子世帯等調査によりますと、親などと同居する世帯を含め約百二十三万世帯となっております。

 また、所得につきましては、平成十七年国民生活基礎調査によりますと、母子のみで構成される世帯の平均所得については二百三十三万四千円、世帯人員一人当たりの平均所得は八十三万一千円でございます。

 全世帯の平均所得につきましては、これが五百八十万四千円でございまして、世帯人員一人当たりの平均所得は二百三万三千円でございます。

郡委員 やはり、母子家庭の平均収入というのはこれだけ低いということですね、二百三十三万四千円。こうした収入で、なお児童扶養手当を減額するのでしょうか。

柳澤国務大臣 我が国の社会保障のあり方を考える上で、必要なときには支援を受け、そしてまた、みずから立ち上がれる状況になりましたら自立をしていくという視点が極めて重要であると考えております。

 母子家庭対策につきましても、こうした観点から、既に平成十四年の法改正によりまして、これまでの児童扶養手当中心の経済的支援ということから就業、自立に向けた総合的な支援へと、その位置づけが転換されておりまして、それ以降、そうした趣旨での改革が進められてきているところでございます。

 特に、母子家庭の経済的な状況の改善にもつながる就労支援につきましては、ハローワークや地方自治体による支援の強化を図ってきたところでありまして、その実績についても、委員の立場からすれば不十分だと言われるかもしれないけれども、かなりの成果を見ているというふうな状況にございます。

 平成十四年度から十七年度にかけて、就業件数で一・四倍に当たる六万六千件の就職の状況がもう実現できておりますし、他方、地方自治体による母子家庭等就業・自立支援センター事業につきましても、同じく十七年四月から十二月までの就業件数というものが三千四百三十一件ということで、平成十五年の同時期の七百六十五件に比べるとこれが四・五倍に増加している、こういうようなことでございまして、できるだけ、こうした福祉から自立へ、あるいは福祉から就労へ、支援から自立へといったような、そういう方向で今後の福祉政策を考えていくということの一環として、今度のこの児童扶養手当についても減額の方向での改革を考えているということでございます。

郡委員 厚労省からも、母子家庭の就労支援、福祉から就労へ、支援から自立へということで、さまざまな施策を見せていただきました。そして、就業されている方々、アクセスそのものも年々上がってはきているものの、就職できた方々、非正規、パートといった方々がほとんどでございます。

 この方は、就労支援のための講座を受講された方なんですけれども、ハローワークの母子家庭対象の医療事務の講座を受けた。四十名の講座に百二十名の応募があった。必死で受講にまでこぎつけ、六カ月頑張って講座を修了し、資格を得た。いざ就労しようとすると、医療事務は月初めにレセプト作業が集中する時期があって、そのときは残業が続くので保育の手だてがつかず、医療事務の仕事にはつけなかった。今は時給七百十五円の仕事についている。母子家庭向けだというふうに言われたのに、夢だけ見させられて泣いた。同じ講座に同じような人たちが少なくとも十人はいたというふうなこともあります。

 福祉から就労へ、支援から自立へというスローガンは障害者自立支援法のときも掲げられました。しかし、母子家庭の現状や就労支援等を初めとする自立支援施策の進展状況、その効果、また自立の持続可能性などを十分に評価して見きわめなければならないというふうに思っています。

 既に決まったことだからといって先に減額をしたり、また、きょうはちょっと触れられませんでしたけれども、生活保護の母子加算廃止という結果ありということでは、大変これはセーフティーネットが粗くなって、こぼれ落ちる人たちがたくさん出てまいります。その点を強調させていただきながら、私の質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

櫻田委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 本日は、児童手当法改正の質疑ではございますが、前半、子育て支援策全般に共通する課題として、小児科、産科を初めとして医療政策について少し触れさせていただいた上で、法案質疑の質問をさせていただきたいと思いますので、お時間を少しいただいて恐縮ですが御了承いただきたいと思います。

 きょうは、資料を皆様にお配りをさせていただいておりますので、それを御参照いただきながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭ですが、資料の一ページ目からごらんをいただくと、この三月の十四日に東京地裁において判決がございました、小児科医であった中原利郎氏の自殺を過労死であるという形で認定されたという記事をきょうは資料につけさせていただいております。

 大臣御承知のとおり、小児科はとりわけ救急医療体制が大変厳しい状況にあるというのはきょうの質疑の中でもやりとりがなされた部分だとは思われますが、今回、小児科の過労死としては初めてこういった裁判で認定をされる。一枚目の頭に、「「医師もう殺さないで」 自殺は「労災」 妻、環境改善訴え」と。しかも、その亡くなった中原医師の長女の方が同じ小児科を目指して今勉強されている、そういった状況にあるわけでございます。

 私自身も、あるいは私たち民主党としても、前回通常国会において、小児医療法案を党としても提出させていただき、実は私自身がその趣旨説明を、当時の小泉総理に小児医療の危機的状況の改善をお訴えもさせていただいたわけでありますが、その中で、この中原さんの奥様から実際に、御主人がみずから命を絶たれるまでの過酷な労働状況というものを何度もお話を伺った経緯もございます。ですから、やはり今回のこの結果を受けて、全国でこうやって自己犠牲もいとわず頑張っている小児科医師の方々の窮状を何とかしないと、これは医師はもとより、当然、将来生まれ来る子供たちの未来も大変危険な状況になっていくという思いでございます。

 御承知のとおり、全国で四百程度ある小児医療圏のうち、小児科の夜間、休日救急医療体制が整っているのは、昨年のデータですが二百四十六地区ですから、四〇%ぐらいの医療圏ではまだそういった整備が整っていない状況にある。これは私も大臣に質疑でさせていただいた記憶もございます、前厚生労働大臣とだったと思いますが。

 こういった状況にある中で、親御さんの不安な状況は依然改善をされず、そして現場の小児科のお医者さんたちが、労基法を守っていてはとてもお子さんの診療はできないとはっきりとおっしゃっているわけです。まさに今回の判決は、こういった小児科医の過酷な勤務実態に司法が警鐘を鳴らすものであると記事にもございます。

 亡くなった中原医師の長女の智子さんが医学部進学を希望した際に、中原医師御本人が医師にだけは絶対になるなと大反対をされた、そういう記事もこの中に掲載されています。しかし、その娘さんが、小児科医だけは絶対にならないといって医学部に進学をした、しかし、小児には発達があり、未来がある、そういう教えに、言葉に打たれ、父が常に子供たちと真剣に向き合っていた姿を思い出し、今その父と同じ道を歩み始めていると。

 やはり、この冒頭にあります「医師もう殺さないで」という妻であるのり子さんの悲痛な叫び、そして、実はこの中原医師自体は、小児科医師は自分の天職であると言って常日ごろ笑っていた、そういう中原医師がなぜみずからの勤務していた病院から投身して命を絶ってしまわなければならなかったのか。医療行政にかかわるすべての者に、今、真摯かつ早急な対応が求められていると思います。

 この判決を受けて、大臣、ぜひ御感想をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 本件の三月十四日、東京地裁での判決等について、具体の話を、コメントを申し上げることは差し控えさせていただきますが、小児科の勤務医も含めて病院勤務医全体について、開業医の方々と比べて大変厳しい勤務環境にあることは私も十分承知をいたしております。特に小児科は、産科と並んで医師不足が指摘をされている診療科でございますが、その要因として、特定医療機関に集中したり、あるいは特定の時間帯に集中したりということで、患者の集中が生まれやすいという事情があるようでございますし、また医療機関相互の連携が必ずしも十分でないということも指摘をされているところでございます。

 そういうことで、そういういわば一番厳しいところに身を置かれたこういう小児科のお医者さんが、若くしてみずから命を絶ってしまうところまでいってしまったということについては、これはもう本当に個人的には哀悼の気持ちを申し上げたいと同時に、私どもとして、この間の状況の改善に真剣に取り組んでいかなければいけないという思いを強くしたところでございます。

柚木委員 大臣の率直な、そしてまた真摯な御感想を述べていただいたと思います。

 そういった御感想を踏まえてですが、ぜひ私からこれはお願いをさせていただきたいと思うんです。

 実は、私あてに、中原さんの裁判の原告である奥様ののり子様、そしてその過労死認定を支援する会から、訴訟の判決が出た日に早速お手紙をいただいておりまして、実はこのはがきも、ぜひ柳澤大臣を初めとして、新宿の労基署の署長さん、さらには東京の労働局長さんあてに送ってください、署名をぜひいただきたいというものをいただいておりまして、実際にお送りしますが、ぜひ大臣、直接この文面をお伝えしたいと思うので、御検討いただきたいと思うんです。「厚生労働大臣 柳澤伯夫殿 小児科医中原利郎先生過労死裁判について 控訴しないでください!」とあるわけです。この文面について、もう一つ一つは述べません。先ほどの記事の中に述べられているとおりです。私は、メッセージを書くところがございましたから、大臣あてにこう書かせていただいております。「子どもたちと小児科医の未来のために柳澤大臣のご英断を求めます。」とお書きしておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 その御検討いただきたいということは、当然、大臣、答弁いただくのは難しいのかなと思います。しかし、どうか、先ほどの感想に加えて、お答えいただける範囲で、この控訴断念という訴えに対して、いま一度大臣、御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

柳澤国務大臣 私も、事案は新聞報道で読ませていただいたということと、テレビでもある程度報道があったかと思いまして、たまたまそれを見せていただいたということでございます。個人的には非常に、私自身の仕事との関係もありまして、胸を痛めたということで、これは先ほど来申し上げたとおりでございますが、対応につきましては、関係機関と協議の上決めていくことになろうと思います。なろうと思いますけれども、私の気持ちはそういうところにあるということで、御答弁とさせていただきます。

柚木委員 ぜひ大臣、その気持ちを少しでも形に変えていただくことを重ねてお願いし、今度は具体的な、まさに対応についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 小児科を初めとして、子育て支援にかかわる部分でいえば、当然産科であったり、それに付随して麻酔科であったり、いわゆる不足診療科の問題、これは当委員会でも重ねて議論が行われてきたところでございます。実はきょう資料をおつけしておりますのは、予算委員会において、安倍総理と我が党、あるいは厚労委員でもございます阿部先生の討論も載っているわけですが、きょうはこの資料をぜひごらんいただきたいんです。総理から、診療報酬のあり方を検討したいという答弁をいただいているわけでございます。

 この資料にございますように、荒井委員とのやりとりの中でも、総理は、実際に、出生数減少で産科医をやめた先生を何人も直接知っている、一方では、地方では出生数と関係なく産科医が減少している、いずれにせよ、診療報酬においても、来年の改定で、産科、小児科の診療報酬のあり方を検討していきたい、こういう答弁をされています。さらに阿部委員が踏み込んで、何を指すのかというので、どういう考慮が可能か、これを具体的に検討していきたいという答弁をされているわけですね。

 柳澤大臣御自身も、先日三月一日の予算委員会分科会で私とやりとりをさせていただいた部分、御記憶にもあるかもしれませんが、ここでも大臣から、きょうも少しやりとりがあったように思われますが、この厳しい実態を受けて、大臣はこのように述べられています。やはり事がここまで進んでいるという事態は、これはもう診療報酬改定のそういう段階においてもやはり考慮せざるを得ないと私は考えております、そういった中で、中医協も含めて、専門家の先生方の意見を踏まえながら、できるだけ効果的な診療報酬の実現ということに向けて努める立場であると認識をしているという御答弁をいただいております。

 先ほど多少やりとりがあったように思われますが、こういう今回の判決も受けて、ぜひ、ここはいま一歩踏み込んだ方向性を示していただく御答弁をお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 先ほど柚木委員も御指摘になられたとおり、産婦人科、それから小児科といったような、非常に偏在が強くて、実際に病院の先生方の勤務条件も非常に厳しいものになっている、そこからいろいろな問題も具体的に発生しているというようなことの中で、これはやはりいろいろな各般の手だてを講じて問題の解決を図っていかなきゃいけない、こういう気持ちは、もう総理を初めみんな共通に持たせていただいておるということでございます。

 平成十八年度の診療報酬改定でも、昨年末の予算編成で、全体でマイナス三・一六ということに決めたわけですけれども、政府・与党の医療制度改革大綱を受けまして、小児科、産科、麻酔科の医療の質の確保等への重点的な評価を行っております。

 そういうことで、いろいろと具体的にも、厳しい財政事情の中で最大限の措置を講じておるわけでございますが、平成二十年度の次期診療報酬改定におきましても、小児科、産科などへの対応を含めた診療報酬のあり方につきまして、今後中医協での御議論等を踏まえて、私どもとしても真剣に検討していく必要があるということは認識いたしております。

柚木委員 これから秋にかけて本格的に議論がなされていく中で、ぜひ大臣、そこはしっかりとリーダーシップを大臣として発揮していただきたいと思います。

 そういう中で、具体的に先日の分科会でも、一つ私、新しい御提案ということで申し上げました。大臣、覚えていらっしゃるでしょうか。御承知のとおり、大学医学部の地域枠、そして奨学金制度、こういったものが連携をして、それなりに成果も上がっているわけでございます。きょうはちょっと事前に詳しい通告をさせていただいておりませんので申しわけございませんが、あのときの答弁、大臣、このようにおっしゃっていただいたわけです。

 現状としては、地域枠と奨学金と連動した形で行っているのは五県あるんですが、その地域枠で奨学金をいただいて医学部からお医者さんになられる学生さんが必ずしも、例えば小児科、産科を初め、不足している診療科に進まれるとも限らない。あるいは、場合によっては、地域枠で入った方であっても他県へ就職をされてしまう。この問題を何とか改善しないと、まさに小児医療圏の未整備四割、これも解消されないわけです。そこで私が御提案申し上げたのが、特定診療科勤務を希望する学生を対象とする奨学金制度、小児、産科、麻酔科を初めとして現在六県において導入をされておる特定診療科勤務を希望する学生の奨学金と、そして地域枠、この二つを連動させれば、実は不足診療科の解消のみならず、医師の不足地域における偏在解消にもつながるという御提案を申し上げました。

 大臣としては、大変新しい御提案をいただき、すぐにということは難しいかもしれないが、これはぜひ研究を行っていきたいという御答弁を、先日の分科会でいただいております。

 ちなみに、きょう資料をおつけしております二枚目の中原医師の記事の左側に、こんな記事が実は出ているんです、これは「医師のへき地勤務 日医が義務化検討 中間報告」と。実は大臣、武見副大臣もよく御存じだと思いますが、これまで日医は、勤務地域の義務づけについては、個人の選択を縛るべきではないと反対の立場をとられていたわけであります。しかし、さすがにこういった状況になってきて、今回、中間報告で、新人医師が義務づけられている二年間の臨床研修を終えた後の一定期間、僻地や医師不足地域での勤務の義務化を提唱とあるわけですね。

 こういった提言も徐々に上がってきているような状況にある中で、改めて大臣にお伺いをしたいんですが、前回の私の、不足診療科希望への奨学金の制度と地域枠とのセット、連動の研究をぜひ、お子さんのたらい回しという言い方は私は余り好きではありませんが、そういったことや医師の過労自殺、こういったことを防ぐためにも、その解消策のまさに一環として、いま一歩踏み込んで具体的な施策の研究を行っていく、その指示を大臣がぜひ厚労省の方に出していただきたい。研究する指示を出すか出さないか、ぜひ大臣、御答弁をお願いいたします。

柳澤国務大臣 これは、先般来そういう柚木議員からの発言がありまして、それは十分医政局なぞも聞いておりまして、私は最初、奨学金を出して、それを受けて地域枠で入っていくときに、十八歳で診療科を決めるということが本当にどういうことなのか、私はそうしたことを勉強、履修したことがないものですからわからなかったんですね。通常は、今は早くから決める人もおりますけれども、全体の研修を終えていよいよ医局に配属になるというときに、どこの科の医局に行くかというところが決定的なポイント、こういうふうに私の頭ができ上がっていましたので、そこは難しいかもしれませんねというお話を申し上げたのでございます。医政局はその話を聞いておって、もう検討をしておるようでございますので、私からもそれをさらにプッシュするようにいたしたい、このように考えます。

柚木委員 大変前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほどの小児医療圏の計画も実は、〇九年度でしたね、完全に整備をするという計画目標のもと、依然として四割近い医療圏においての夜間、休日の診療体制が未整備であるというような小児科における現状、もちろんその他の状況もありますが、ぜひ、こういった部分に対する新しい取り組みということで、さらなる御研究、そして今もおっしゃっていただいた上でのリーダーシップをお願いさせていただいて、次の質問に入りたいと思います。

 少し時間がありませんので、産科医療についてお伺いをしたかったんですが、これはまた別の機会にさせていただいて、これは大臣、先日やりとりをさせていただいておりますが、総合周産期母子医療センター、この未整備の八県、来年度中の完備を確約いただいておりますので、現状としてなかなか難しい状況は私も承知をしておりますが、これはやるとお答えいただいたわけですから、ぜひ来年度中の取り組み、具体的に取り組んでいただくことをお願いして、次の質問に入りたいと思います。

 資料の六ページ、七ページをごらんいただきたいんですが、薬害肝炎について、これはお子さんだけじゃなくて、当然患者さん、当時出産をされた方々、あるいはそのお子様だった方々が今成人になられたりとかいうようなこともありまして、治療が必要とされている、大変国民的な大きな問題であります。

 御承知のとおり、薬害肝炎についての東京地裁での判決が三日後の二十三日にございます。既にこれまで、B型については最高裁で国、製薬会社の敗訴ということで確定をしておりますし、C型訴訟においても大阪、福岡地裁でいずれも国、製薬会社が敗訴ということになっておりますが、こういった間にも毎年三万から四万人もの方々が肝がんで亡くなっていくというような状況があり、御承知のとおり、その八割がC型肝炎によるものと言われております。

 昨年十二月に与野党超党派で肝炎対策に対する申し入れも行い、来年度予算では、この肝炎の検査体制の強化、あるいは治療水準向上に予算増額が実現するなど一定の成果は確かに出てきていると思います。しかし、大臣、これも決してまだ十分とは言えないと思うんですね。しかも、この六ページ、七ページの資料を見ていただくと、生体肝移植に対する保険適用の問題で大変今現場が揺れていると。

 大臣、先日は余りそういった認識ではいらっしゃらないというような御答弁を分科会でもいただいたんですが、実際にここを見ていただくと、全国でもう本当に大勢の方々がこういった状況で困っており、また、医療機関も困っていて、そのあげくの果てには、請求しても保険が出るかどうかわからないから手術そのものを受けないとか、あるいは、その前の治療を受けずにいきなりそういう手術をするかどうかの決断を迫られるとか、大変な状況になっているということをぜひ御理解をいただきたいと思うんです。

 その上でお伺いするんですが、この二十三日の判決、ここで福岡、大阪に続いて三たび国が、製薬会社も含めてですよ、敗訴するようなことがあったとしたら、ここはぜひ一度、大臣、原告の方々を含めて被害者の方にお会いされてはいかがでしょうか。それだけでも原告や被害者の方々のお気持ちも違うと思われますが、大臣、いかがでしょうか、御答弁をお願いします。

柳澤国務大臣 三月二十三日に薬害肝炎の東京訴訟の判決が予定されているということは私も承知をいたしております。これについて、私どもといたしましては、それぞれの時代時代の医学的、科学的知見に照らして厳正な司法判断を求めたいということを考えておるわけでございまして、その考え方は今後とも一貫していかざるを得ない、このように思っているところでございます。

 ただ、今柚木委員も御指摘になられたとおり、皆さんの御努力で、訴訟の問題とは別に、肝炎対策を推進するための諸施策というものは十九年度予算でも非常に拡充した姿となっておりまして、このようなことで、検査体制の強化、診療体制の整備、治療方法等の研究開発、こうした総合的な取り組みを推進してまいりたい、このように考えている次第でございます。

 なお、この訴訟の結果について、結果、どのようなものになるかは予見は許されないわけでございますが、いずれにせよ、そうした関係の方々と会ったらどうか、こういう御提案をいただいたわけでございますけれども、従来は、訴訟の当事者とはやはり裁判所という場で主張を闘わせていくということが主でございますので、片方でいろいろ面談をしたりして、そういう本筋の、主張を闘わすということを、逆に、そこに混乱の要因を入れてはいけないということで、私どもとしてはそうしたことについては差し控えさせていただいてきたということでございます。

柚木委員 大臣、病気は待ってくれないんです。申し上げましたように、年間三万人、四万人の方がもう既に亡くなっていっているんです。原告の方々以外の方々も大変困っておられるんです。ぜひ、判決を踏まえていま一度お考えいただいて、大臣の、ふだん御答弁をいただくその答弁に、本当に私は誠意を感じておる部分が大変あるわけです。ですから、そういった部分を踏まえて、この二十三日の判決を受けて、大臣、これはぜひ御検討をいただきたいと思います。

 この問題については、実は、私が伺っている範囲では、武見副大臣も大変熱心にお取り組みをなされているというふうに伺っております。お父様が「二十一世紀は慢性肝炎が国民病になる」というふうな著作まで書かれておる、それぐらいに、ある意味ライフワークとしてお取り組みになられているというふうに私も承知しておるんですが、ぜひ副大臣にも御答弁いただきたいと思うんです。今大臣の御答弁もありましたが、今後、裁判による国の責任とは別に、例えば全国三百五十万人と言われるこの肝炎感染者対策のための何らかの制度創設の研究を行うことは考えられないんでしょうか。

 特に、インターフェロン治療などに対しての、例えば高額療養費の特例措置を拡大するとか、何らかの政治判断によってこの対策を前に進めるんだ、そういうお考えはおありかどうか、副大臣、どうでしょうか。ぜひ御答弁いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

武見副大臣 ただいま私、厚生労働副大臣という立場でございますので、その立場でお話をしなければならないというふうに思っておりますけれども、御指摘のとおり、C型肝炎の対策というものについて、特にインターフェロン治療の効果というものは確実にあるわけでございますから、この治療の促進というものについてさらに検討を加えるということは、一つの極めて有意義な考え方であろうというふうに思います。

柚木委員 ぜひその取り組みを、少しでも具体的に取り組んでいただくことを私も希望しておきたいと思います。

 ごめんなさい、もう時間が、児童手当の方に入りたいので。

 この肝炎については、昨日から東京新聞でも、「「被害拡大 国の責任」 情報開示せず解明遅れ」、こういう連載も始まっておりますし、また、読売新聞でも本日から、「「命返して」病床から証言 闘病十九年 無念の死 国・製薬会社の無策問う」というふうな連載もございますので、こういう本当に大きな時期を今迎えているということを改めて私からもお伝えして、もう一つだけ、ごめんなさい、タミフルの関係。これは、子供たちがある意味では大変大きな被害を受けるというか、副作用によって命が失われる、そういう状況が今あるから、これだけ一つ質問をさせていただいて、児童手当の方に入らせていただきたいと思います。

 この八ページ目の資料にもおつけをしておりますが、昨日、タミフル脳症被害者の会の方々が、実は厚労省の方に申し入れをされているわけですね。私の地元でも、これは大変具体的に異常行動の件数等も伺っています。そういった中、このタミフルの服用と突然死との因果関係の判定を見直すべきではないかという要望がなされたと聞いております。前回、田名部委員が御質問されていたと思いますが、厚労省は、秋までに一万人規模調査を進め結果を出すとの予定と聞いておりますが、事は、未来ある子供たちを初め、命を守る観点からも大変に重要な提言と思われます。

 こういう提言を踏まえて、要望を踏まえて、大臣に伺いたいんですが、秋までに結果を出すというこの調査、少しでも前倒しで集約をして、その結果を示されるお考えがおありかどうか。少しでも前倒しで、事は本当に命にかかわることですから、そういったことをお願いしたいんですが、そのお考えがおありかどうか、御答弁いただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 複数の団体の方々から、タミフルの安全性にかかわる疫学的研究の促進方について種々の御要望をいただいておるということは私も承知をいたしております。

 現在、研究班が前回研究よりもさらに規模を大きくしまして調査を行っているわけでございますけれども、専門的なことで、私も十分つまびらかではありませんが、一つ一つを評価し積み上げていくというような、かなり丁寧な作業の総合体が調査結果ということになるようですので、なかなか、それを前倒しするということを何か簡単に言えるような調査ではないんだと注意を受けているんですけれども、私といたしましては、本当にこの調査、国民的な関心が高い、まして、今委員の触れられたような、被害者という、これも言うべきかどうかということを私の口から申し上げられませんが、会の名前として被害者の会ということを名乗っていらっしゃる方々、そういう方々にとっては切実きわまりない問題でございますので、できるだけ早くに結論を出して、国民に明らかにするように努めたい、このように思います。

柚木委員 きょうの朝日新聞にも、やはり副作用との関連がある、そういうデータもあるというふうな記事も出ておりますので、ぜひこれは早急な検証をお願いしておきたいと思います。

 大変お待たせしました、済みません。児童手当について、きょうは資料の九ページ目以降におつけをしております。

 私からお伺いをしたいのは、子育て支援にかかわる公的支出と、実際に例えば対GDP比率であったり、あるいは、よく指摘もされるところですが、高齢者の施策というか公的支出との例えば比率の妥当性であったり、さらに例えば少子化予算の費用対効果の検証、これも当委員会で質疑がなされているものと思いますが、きょうは幾つかデータをおつけしておりますので、こういったものを踏まえて幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 この九ページ目のグラフを見ていただくと、日本は右から四番目にございます。対GDP比率でいえば、高齢者の公的支出が七・三%、一方、子育て支援が〇・六%ということです。こういう数値があるわけですが、実は、先日の衆議院本会議で、我が党の高井議員の代表質問に対して、高市担当大臣の方の御答弁の中で、少子化対策予算を前年比一二・三%増で、できる限りの対策を盛り込むことができたというふうに御答弁をいただいているんですね。

 しかし、では、こういった形で対GDP比率で換算した場合に、日本は実は下から四番目だ、そういう状況にあるわけです。もともとが少ないのに一二・三%、これで必ずしも十分と言えるのかどうなのか、こういったこともやはりしっかり検証していかなければいけないと思うんですね。

 大臣、このデータをごらんになられた上で、今後の子供、家庭に対する公的支出のあり方について、その大きな方向性をぜひお示しいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 柚木委員のお示しになられた、先進諸国における家族、子供向け公的支出と高齢者向け公的支出の対GDP比を見ますと、我が国は決して誇るべき地位を占めていないということは私も同感でございます。

 私どもの方のデータで申しますと、平成十六年度ですけれども、我が国の社会保障給付費の中で、高齢者関係給付が七〇・八%を占める、それに対して児童、家族関係給付費は三・六%にとどまっている。まことに格差が大きいし、その比率は隔絶している、こういう状況でございます。

 それが、ほかの国ですと、例えばフランス、スウェーデンなぞは高齢者関係が三、四〇%に対して児童、家族関係が一〇%というようなことでございまして、全体として我が国の社会保障の構造が高齢関係給付にウエートの高い形になっているということでございます。

 これについて、どうあるべきかということについてはなかなか一概に言えないと思いますけれども、急速な少子高齢化が進む中で、もっと現役世代というか家族、子供向けの社会保障給付の充実を図っていかなきゃならない、そういう力はやはり我々は受けとめていかなきゃいけない、こういうように思うわけでございます。

 今回、少子化対策については、子どもと家族を応援する日本重点戦略を策定して、制度、政策、意識改革など、あらゆる点から効果的な対策の再構築、実行を図るということになっておりますので、できるだけ、今申した観点あるいは我々の立っている立場から、やはりしっかりした努力をしていきたい、このように考えております。

柚木委員 資料にもおつけしておりますように、費用対効果の問題も日本はまだまだ大変低い部分があります。費用は低くても出生率上昇に転じている国もありますから、ぜひ御研究をいただいて、お取り組みをいただきたいと思います。

 最後に、児童手当の支給対象年齢の引き上げについて、ぜひお伺いをしたいと思います。

 先日の本会議で、高市少子化担当大臣の方から、児童手当の支給対象年齢は、小学校三年生修了時であったものをこの十八年四月から六年生修了時までとしているという御答弁があったわけですが、その際に我が党の高井議員からは、これはしかし、フランスの二十歳未満であったり、あるいはドイツの十八歳未満、イギリス、スウェーデンの十六歳未満に比べて全く不十分ではないかというふうな指摘もあったわけですが、その際には御答弁としていただいておりませんので、厚生労働大臣として、先ほどは支給金額の問題もありましたが、この支給対象年齢について今後さらに引き上げを検討していく考えがおありかどうか、これをぜひ、方向性で結構ですから、御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今回の児童手当の拡充というのは、年齢を別に拡充したということではなくて、従来あった乳幼児の児童手当について、先ほど来御説明申し上げているような理由から、それを加算させてもらったということにとどまっているわけでございます。

 今委員の御提案の児童手当の拡充の方向というのは、もう少し支給対象の年齢を引き上げることを考えないか、こういうことでございますが、今回、先ほど言ったように、この施策の重点戦略を考えるということの中で、こうした子育て関係のものが、私の受けとめ方としては、かなりリシャッフルされる、もう新規まき直しでこの議論をされるということも期待されるんじゃないか、こんなふうに受けとめて、私は今スタッフなぞにはいろいろなアイデアを準備するようにということを指示しておるわけでございますが、そういう中で果たしてどうなるかということに尽きると思います。児童手当の、先ほど委員もおっしゃられた費用対効果、こういうようなことも当然考えなくちゃならないわけでございます。そういうようなことの中で、果たしてどういう考え方が出てくるか。

 私といたしましては、今ここで年齢の拡大ということが何か具体のイメージとしてあるかといえば、むしろちょっとそれには、費用対効果でどういうことになるんだろうかというような気持ちもありまして、すっと前に進んでいくという勇気と申しますか、そういうものはなかなか持ち合わせていないのでございます。

柚木委員 終わりますが、先ほどの費用対効果の図を見ていただければ参考になる国々がたくさんあろうかと思いますので、ぜひ御検討いただき、リシャッフルされた後で結構ですが、ぜひ我が国が子育て先進国となる、その先頭に立って大臣が頑張るということを最後に重ねてお願いして、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今回の児童手当法の改正については、小幅ではあるものの拡充であり、賛成としたいと思います。ただ、懸念されるのは財源問題であります。今回は、緊急雇用創出特別基金からの国庫返納を前倒しすることで国と地方の拡充分を賄う、地方については地方特例交付金として手当てするというものであります。しかしながら、平成二十年度以降については、秋以降の税制改正を含め検討するとされ、明確ではありません。

 大臣、少子化対策と言いながら、子育て世帯に増税では本末転倒だと思いますが、今後の財源について大臣の見解を伺います。

柳澤国務大臣 平成二十年度以降の公費負担財源の裏づけがないじゃないか、こういう御指摘でございますが、たびたび申し上げておりますように、与党税制改正大綱におきまして「少子化対策のための国・地方を通じて必要な財源の確保について、税制の抜本的・一体的改革の中で検討する。」この一文を入れたわけでございますが、その心はひとえに、ひとえにというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、この児童手当の財源をまず念頭に置いてこれを記したというのも正直なところでございます。

 そういうことで、来るべき税制改革というのはかなり抜本的、一体的改革になる、こういうふうに私ども想定しておりますけれども、その中で、今回の児童手当の公費財源負担分程度のものは十分これで確保するような、そういう財政的なフレームワークを打ち立てることができよう、このように考えておるわけでございます。

 その方向が子育て世帯に対する負担の増大にならないようにという御注文までいただいてしまったわけですが、これはまたいろいろなことを念頭に置いて公平公正な税制を仕組むということでございますので、そういう全体のでき上がりの中でまた御判断いただくしかないんじゃないか、このように考えております。

高橋委員 きょうは、ここは要望にとどめたいと思います。

 せっかく念頭に置いて財源を確保するのだと言いながら、ふたをあけてみたら子育て世帯に増税では本末転倒なんだ、このことを繰り返し指摘して、やはり財源の捻出に当たっては、不要不急の事業の見直しや大企業優遇税制の見直しなど、最優先してやるべきことがあるのではないかということを指摘しておきたいと思います。

 そこで、きょうは児童扶養手当について伺いたいと思います。

 先ほど郡委員の質疑の中でもありましたけれども、母子家庭は今百二十三万世帯、児童扶養手当を受けている家庭は九十六万世帯を超えています。

 政府は、平成十四年の母子寡婦福祉法の見直しで、平成十九年度中に最大で半額まで児童扶養手当を削減することを決めました。この問題では、私も昨年三月の当委員会で強く反対を述べました。改めて、児童扶養手当は命綱であり、削減するべきではありません。

 まず、一体どれくらいの方に影響が出ると考えておりますか。また、削減幅を今年中に決めることになりますが、どうやって決めるのでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお話がありましたとおり、児童扶養手当制度につきまして、平成十四年の法律改正において、離婚等による生活の激変を緩和するための給付へというふうに位置づけを見直しました。その受給期間が五年を経過した場合にはその一部を支給停止するという仕組みを導入したところでありまして、これが今お話ありましたように、二十年四月から実施されるということでございます。

 その際、法律の中でも、一つは、八歳未満の児童を養育している者あるいは障害を有する者などについて一部支給停止の対象外とするほか、また二つ目に、支給停止する場合も、その給付額については少なくとも二分の一は保障するということが規定されているところでございます。

 今後の進め方でありますけれども、一つは、一部支給停止の対象外となる方の範囲をどうするか、それから、その支給停止する額について検討をすることが必要なわけでありますが、具体的には、現在作業中で夏ごろにまとまる予定であります全国母子世帯等調査、こういったものの結果をまずは踏まえなければなりません。また、法改正時の附帯決議を踏まえまして、改正法の施行状況なども勘案しなければなりません。

 こういったことで、以上の点を勘案しながら、これは年末の平成二十年度予算に向けて結論を得ていきたいということに考えておりまして、その影響を含めて、中身についてはまだ検討中でございます。

高橋委員 まず、私は、平成十四年の改正のときに、この児童扶養手当の性格を激変緩和だとしたこと、そのこと自体が重大な問題である、こういうふうに指摘をしたいと思います。

 その上で、どのくらいの方が影響を受けるのかはまだ全く明らかにされていないということが今の答弁でわかりました。そして、夏ごろにまとまる調査などを踏まえて、国会決議などもあり、具体的な中身を決めていくということでありますが、その作業と来年度の予算案の策定作業がほとんど重なるわけですね。そういう中で、本当に実態を踏まえて正しい判断ができるのかどうか。何が何でも削減ありきということが前に来ている、これをまずやめるべきではないかと言わなければなりません。

 今回、この見直しに当たっては、就労支援との引きかえでありました。しかし、私は、このことも、それが成果をまだ見ないうちに削減することを決めること自体が問題だと指摘をしました。

 児童扶養手当受給者の自立を促進するため、個々の受給者の希望、事情等に対応した自立支援プログラムを策定し、これをもとにハローワークなどと連携して、就業に結びつけていくことをやるということを決めて、平成十七年度はモデル実施、今年度からは本格実施になっておりますが、その成果がどうなっているか、伺います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 母子自立支援プログラム策定事業でございますけれども、これは、平成十七年度に東京都、大阪府、それから指定都市におきましてモデル的に実施して、平成十八年度から全国展開したところでございます。

 自治体の数で申しますと、十七年度の十八自治体から、十八年度は百七十五自治体に増加しております。また、そのプログラムの策定数を申し上げますと、十八年度の四月から十二月の実績が約二千二百件ということでありまして、十七年度の同時期の約二百件と比べますと大幅に増加しておるということが見てとれるわけでございます。

高橋委員 どうしてそういう都合のいい数字ばかりを述べられるんでしょうか。

 十七年度モデル事業で就業に結びついた数は七十一人にとどまっております。大変情けない数字ではないでしょうか。その中でも、常勤者はわずか十八人、非常勤、パートが五十二人、自営業が一人。これ自体がプログラムの成果と言えるのかも怪しいと言わなければなりません。

 今、十八年度で二千二百件とおっしゃいました。しかし、対象となる自治体は、都道府県、一般市合わせて八百自治体あるんです。八百自治体のうち、策定したのが二千二百件、それから実績がどう上がったかというのはまだ未知数であります。到達数でいっても、自治体の二割しかまだ策定にこぎつけていないという状況です。これがあと一年で飛躍的に進むと考えていらっしゃいますか。

大谷政府参考人 実態につきましては、今、母子世帯の実態調査を含め、あるいは就業支援、ハローワーク等での事業等を行っておりますので、その成果について、この夏に向けて見きわめてまいりたいと思いますが、かなりの進展を見ておるものというふうに考えております。

高橋委員 もう一度聞きます。

 かなりの進展と言いました。九十六万の児童扶養手当の受給者に対して、今の数字がこの一年で飛躍的に改善されて、削減を考えてもいいような状態になるんですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、ハローワークのケースについて見ましても、母子家庭につきまして、これは平成十四年度から十七年度の間に、紹介件数で一・五倍、これは二十七万件、また就職件数でも約一・四倍、六・六万件というふうな増加も見られるところでありまして、こうした推移というものを見きわめながら、今後の判断の参考にしていきたいというふうに考えております。

高橋委員 何倍かになっているという、それは数字で見ればそうかもしれません。これから何年かけてもやっていくというのであればいいんです。しかし、もうおしりは決まっています。夏には予算編成作業があります。そういう中で見きわめるというときに、見きわめるんであれば、これは削減をやめるしか道はないと思います。

 大臣に伺いたいと思います。

 就業に結びつき、一定の年収があれば、おのずと児童扶養手当は必要とならなくなります。しかし、今お話を聞いてわかるとおり、ことし一年で、もう三月になりましたけれども、飛躍的に改善される見通しがないのに見切り発車でいいでしょうか。児童扶養手当、子供一人で全部支給になっている方、月額約四万一千円をもらえる所得の上限は百三十万であります。今でさえとても厳しい基準ではありませんか。手当を足してようやく百八十万の年収で親子が暮らす、それでも受給者の六割以上が全部支給になっている、それほどに受給世帯の収入は低いのです。これを削ることは余りに酷ではありませんか。大臣の決断を伺います。

柳澤国務大臣 児童扶養手当の一部支給停止というのは、もうかなり前、平成十四年に決めてありまして、要するに、理念としては、児童扶養手当中心の経済的支援から、就業、自立に向けた総合的な支援へと転換するということをかなり前広に告知をして、そのもとでいろいろな努力もさせていただいている、こういうことでございます。

 いろいろな努力と申しますのは、今委員との間でいろいろ応酬のありました就業のための支援でございまして、ハローワークの方は、絶対数の就業件数でも六万六千件というような状況ですから、これは私はかなりしっかりしたものだというふうに思います。

 それから、自治体における母子家庭等就業自立支援センターの事業というのは、それでも、十五年に比べると、十七年におきましては増加しているということで、今、雇・児局長の方から御答弁をさせていただいたわけですけれども、そういう状況の進展を見ながら、いよいよその時期が近づいてきているというのが現況でございます。

 ここで、それでは児童扶養手当の一部支給停止を、今委員が言うようにストップしてしまったら一体どうなるんだろうかといえば、そういう努力をしてきたことがやはりかなり大きく影響を受けるということは必定だと私は思います。そういうことではなくて、やはり今の一つのフレームワークでみんなが一生懸命やっていることをまずそのまま進めていくということが、最初に掲げた旗印の点からいっても私は正当だと思うわけでございます。

 ただ、実際にどの程度これを停止するか、一部と言ったのはどういうものであるか、あるいは対象の方はどうするのかというようなことにつきましては、最終的に、ここにありますように、「改正法施行後における子育て・生活支援策、就労支援策、養育費確保策、経済的支援策等の進展状況及び離婚の状況などを十分踏まえて制定する」、それから「その際には母子福祉団体など幅広く関係者の意見を十分聞く」というようなことが、これは衆議院の厚生労働委員会の附帯決議でございますが、そういうこともうたわれておりますので、そういうことを総合的に判断して結論を出していくということを考えているわけでございまして、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

高橋委員 大臣、今おっしゃったことの意味がわかっていらっしゃるんでしょうか。削減をストップしたらどうなるんだろうか、そういう努力が無駄になるという意味のことをおっしゃいました。就労支援の努力が進めば児童扶養手当を受ける必要がなくなるんです。無駄にはなりません。それをあらかじめストップしなければいけないと決めるということは、いわゆる兵糧攻めにすることと同じことです。そういう意味がおわかりですか。

 残念ながら時間が来ましたので、このことは強く抗議をして、関係団体の皆さんが限りなく削減幅は小さくしてほしいと言っている、そのことを少なくとも踏まえて、今のようなことはないように、影響を受けないように強く要請をして、終わりたいと思います。

 以上です。

柳澤国務大臣 もう高橋さんは終わられてさっさと席に帰られたのに、私が答弁に立つのもいかがかと思いますが、私は、議論として申し上げたわけでありまして、私の考え方というのは、最終的に申したように、これを決めたときの厚生労働委員会における附帯決議なぞも総合的に勘案して決めますよということを申したわけでございます。

 これ以上は申しませんが、そういうことでございますので、誤解のないようにお願い申し上げたいと思います。

高橋委員 誤解していませんから。また次にやります。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本来の審議にかかわります児童手当の第一子、第二子、五千円から一万円への加算につきましては、基本的に賛成いたします。ただし、この児童手当の問題を、一つには少子化問題として論ずるのか、あるいは家族政策として論ずるのか、あるいは社会保障の問題として論ずるのか等々、私は、この短時間の中ではとても審議が尽くせないほどの問題が背景にはあると思います。あわせて、昨今のいわゆる働き方の問題、これは少子化にも直に影響しておりますが、若い人たちの不安定で先の見えない働き方ということも含めて、総合的な政策が必要なものとは思っております。

 法案自身については賛成の意を表し、私に与えられた時間で、実は、三月の十四日の日、中央社会保険医療協議会、略して中医協で審議がなされました、リハビリのいわゆる日数制限打ち切り問題について質疑をさせていただきます。

 これは、先ほど高橋委員と厚生労働大臣の質疑の中でもそうですが、例えば児童扶養手当、特別児童扶養手当等々にもまず削減ありきということを決めておいてからやるということは、現実の場でそのことをもってしてしか生きていけない方たちにいかにも問題が多いやり方だということは、高橋委員の先ほどの御指摘のとおりと私は思います。あわせて、このリハビリの打ち切り問題も全く同じような経過をとってございます。

 思い起こせば、一年前、医療制度改革の中でこのリハビリの日数制限ということが打ち出されて以降、実は、多田富雄先生のさまざまな活動、私も大臣に御紹介申し上げましたが、署名を募り、最終的には四十八万という署名が昨年の十月段階で提出されております。リハビリが受けられない、受けたくても受けられないという声は、洪水のように我が国の中に広まりました。

 特に大臣には御存じと思いますが、社会学者で、大変高名ですから皆さんも御承知と思います、鶴見和子さんという方が、昨年の七月の三十一日、お亡くなりでありますが、それに先立って六月にリハビリが打ち切られたという、これが直接の死因ではございません、大腸がんで亡くなられましたが、しかし、その六月十五日、誌上に発表されたものの中に二つの句がございます。大臣には特によく聞いていただきたいです。

  政人(まつりごとびと)いざ事問わん老人(おいびと)われ生きぬく道のありやなしやと

御高齢で十年余りをリハビリをやりながら過ごしておられたけれども、この改定に伴う中で、リハビリの打ち切りが宣告され、そして、彼女はもう一句詠んでおられます。

  寝たきりの予兆なるかなベッドより起き上がることのできずなりたり

その一カ月弱後にお亡くなりであります。

 この鶴見さんのように句を残され、そして、実はそういうこともままならない多くの声がここにあり、厚生労働省としては今見直しをしている途上であるからということでずっと一年引っ張ってまいりました。しかし、結果的に見れば、実はさまざまな形で、このリハビリを受けられない方たちの存在が明らかになりました。厚生労働省がおやりになった調査でも、二千八百二十二医療施設から八百五十五施設の回答を得た中でも、疾患によっては一割、そして少なく見ても、例えば非常に少ない数しか上がってございませんが、脳血管障害の患者さんでも、リハビリが効果があるのに打ち切られた方すらございます。

 大臣は、一体、こういう政策のやり方、すなわち、先に打ち切っておいて、そして事が生じ、失意の中で亡くなる方も出て、そして、一年間放置してリハビリを見直したといっても、やはり事が逆なんだと思います。生身の人間の命がかかった厚生労働行政でこの手法が続く限り、やはり人間的な社会にはならないと私は思います。

 まず、大臣には二つお願いがあります。やはり政策のこうした非人間性について謝罪をしていただきたい。そして今後、いわゆるこうした犠牲になる方がないような政策をとるという決意を、まず冒頭、お聞かせください。

柳澤国務大臣 今回のリハビリテーションの体系の見直しと申しますのは、これは、もちろん専門家の方々による十分なデータの収集とその分析の結果によって慎重に立てられたものである、こういうように私は承知をいたしておりまして、それをいろいろと、非人間的だとかというようなことでおっしゃられるというのはやや一方的なのではないか、こういうように私は考えるわけでございます。

 現に、今回の調査、検証、これは前倒しで行ったわけでございますけれども、患者の大半は、算定日数上限の前に必要なリハビリを終えているということがうかがえますし、早期のリハビリテーションに重点を置いた医療機関では、患者数が大幅にふえたということが紹介されるなど、発症後早期のリハビリテーションに重点を置いた十八年度の診療報酬改定は、全体としてはまあまあ妥当であった、こういうように先生方もおっしゃっているというふうに私は承知をいたしております。

 そういうことでございますので、今回、このリハビリテーションの見直しを、調査、検証を踏まえ、また先生方のいろいろな御議論も、適用がなかったとは私は思いませんが、そうしたことで個別のいろいろな改善すべき点を改善するということをさせていただいたわけでございまして、これは行政の行き方として大間違いをしているということはない。しかし、できる限り、そういう途中での見直しというようなものが必要でないような運び方をどうすれば今後できるのかということを、さらに勉強していくということは必要なのかな、このように思っている次第でございます。

阿部(知)委員 今の大臣の御答弁で、専門家が十分慎重に事を計画し、政策に起こしたとおっしゃいます。しかし、一番抜けているのは、現場を見ていなかった、患者さんたちの実態が把握されていなかった。

 例えば、医療保険から介護保険のリハビリに行きなさいと言いましたが、介護保険の受け皿は現実には半数の人がなかった、これを机上の空論というのです。そして、生身の人間が苦しむのです。大臣には、ぜひ厚生労働行政というものを、本当にやはりこれまでの大臣の長い経歴の中のものとは異質な分野がそこにあるという認識に立っていただかないと、生身の人間が本当に、命も含めて危機にさらされます。もし、今大臣がおっしゃったようであれば、実は、今回のこのような見直し結果は出なかったのではないですか。

 そもそも、疾患別に上限日数を定めて、その上限内に何割の人が終わったか、ここを基準にしております。でも、医学的に見れば、大事なのはそこまでで終わらなかった人なのです。たとえその数が二割を欠くもの、しかし、二〇%から三〇%、もし、終わることがない、そこで症状が残り、リハビリが必要だという人があれば、そこから話は始まるのです。そこに回復の見込みがないという言葉をもって、実は多くの人を切り捨てました。

 大臣、医療とは回復の見込みがなければ切り捨てていいものですか。私は、この発想が非常にこの後も医療保険制度に影を落とすと思います。回復の見込みがないという言葉をお使いになったことによって、実は回復の見込みのある人ももちろん切り捨てられました。その状態を維持するということに本当に苦労している患者さんも医療者も非常に苦しみました。大臣は、今もって医療保険の打ち切りが回復の見込みのないということにのっとってやられることはいいとお思いなのですか。それが日数制限ということです。お聞かせください。

柳澤国務大臣 介護保険というものが他方で整備をされまして、そして、医療保険のもとでのリハビリの対象になる人と介護保険のもとでリハビリの対象になる人が、両方可能になった制度を私どもは持ったということでございます。

 その考え方で、リハビリテーションというものをしている方の中で、医療保険の対象としてリハビリをするべき人なのか、あるいはそういうことよりもむしろ介護保険のもとでリハビリテーションをするのがいいのかということが、両方可能になっているものですから、そこでそういう、ひとつどういう人だったらこちらに行っていただくのがいいかということを考えて今回のようなことが行われたというふうに言わせていただいてよろしいかと思うんですが、そういうことなんです。

 それで、今この医療側のリハビリテーションの終わった人が行き場がなくなったなどというようなことはないようにしようということを私どもも考えておりまして、もう医療保険のもとでのリハビリをやっているその間に、次の介護のリハビリをやる人たちとの間でよく打ち合わせをして、シームレスな形でそこのトランスファーというか引き継ぎができるようにしようというようなことも考えているわけでございます。

 そして、何よりも今度は、医療のもとでのリハビリというものをしていれば改善の見通しがあるというような方々については、これは個別判断の問題として、できるだけそうしたことも考えていこうというふうにしておるわけだし、またさらに、リハビリなんだけれども、やはり医療のもとでのリハビリと介護のもとでのリハビリとが少し流儀が違うということで、医療のもとでのリハビリの方がいいと思うような方についてもそういったことについて配慮をしていこう、こういうようなことまで考えております。

 ですから、今委員が御指摘になられたことは十分今度は参酌して、そういうことにおいて遺漏のないような制度にしていこうという改善が行われているわけでございますので、ぜひ御理解を賜りたい、このように思います。

阿部(知)委員 もともとリハビリというのは個別性があるのです、オーダーメードでその人に合わせて。それを無理無理、疾患別に日数制限したところの骨格を変えず、ちょうど障害者自立支援法の応能負担ではなく応益負担にしたのと一緒です。その結果がこれを生んでいます。

 大臣は御存じでしょうか。例えば、全国保険医団体連合会が五百六十二医療機関を調べて、脳血管疾患で中断された方、一万七千人です。今回の厚労省の調査では氷山の一角も出ていません。

 そして大臣、恐縮ですが、実はこの政策の最大の誤りは、既に皆さんがお好きな、例えばリハビリ人生とか訓練人生とかいろいろ言っておられるところの、第二回高齢者リハビリテーション研究会で指摘された大川委員の指摘、しかし、これを厚労省は、自分たちの理論に合うところだけ取り上げて、この委員の真摯な提言を取り上げなかったのです。

 ここでは、維持期のリハビリテーションについて、時々、間欠的にぎゅっとやれ、あるいは医療と連携してやるべきだ、そして、もっともっとOT、PTを活用して、そして今の訪問リハも医療の中でも充実していくべきだ等々、何ら今回の改正とはかかわりのない、違う方向の指摘がなされています。

 ついでに、今度の中医協で最後の結論が、これから維持期のリハについて見直していくということでした。だったら、こうした政策をやってから、被害者が出て悲しい思いをしてからではなく、厚生労働行政をきっちりとやる、このことを大臣にはお願い申し上げて、終わらせていただきます。

櫻田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 私は、限られた十分間という時間の中で質問をさせていただきたいと思いますが、まず大臣に、経済支援策という観点から、将来のビジョンについて質問したいんです。

 少子化対策における経済的支援の重要性というものは子育て中の女性のうち約七割が感じている、こういう期待は非常に高いものがあるわけでございます。ただ、現行の児童手当制度の枠組みにとらわれず、もっと大きな視点で経済的支援のあり方というものを検討すべきではないかなというふうに思います。

 例えば、児童手当だけではなくて、税制の人的控除ですとか雇用保険の育児休業保障制度との関係、そして児童手当のような現金給付と保育所等の現物給付、こういうものの関係、さらには、社会保障給付における児童、家庭向けの給付の配分のあり方、こういうもの等、さまざまな論点というものが考えられると思うわけでございます。また、経済的支援策につきましては費用対効果、こういうものをしっかりと分析していただいて、その上であり方を検討すべきだというふうに思います。

 大臣は、財政、税制の専門家でいらっしゃるというふうに思いますが、少子化対策において、児童手当を含めた経済的支援の将来ビジョン、これを今後どのようにするおつもりで、どのように明らかにしていくおつもりなのか、お伺いできますでしょうか。

柳澤国務大臣 児童手当を初めとする少子化対策というか子育て支援の経済的な措置でございますけれども、その将来ビジョンをどのように考えているか、こういう非常に大きな御質問をいただいたわけでございます。

 今までは、率直に言って、税の方でも扶養控除という今委員が御指摘になられたようなことをやってまいりましたし、それからまた、片方、現金支給というような形で児童手当というものが並立するようなことがございました。

 どちらかというと、児童手当については、最近においては、先ほど来申し上げたように、対象者について、所得制限をすべきかすべからざるかというような問題が常につきまとうというようなことが一方ございます。それに対して、扶養控除というようなことについては、割とそういうような側面はないというようなことで、両々、長所短所がそれぞれにあるから、これを並立させていっていいのではないかというような考え方があったとまでは言えないかもしれないけれども、結果においては、そういう考え方のもとで制度が形づくられてきた、こういうことであります。

 それを、これから、本当に日本が少子化の社会になっていく中で、先般来申し上げているように、若い人たちの結婚や子供を持つことの希望をかなえるということの中で、一体、どういった総合的な、しかもよく理念のすっきりした、また効果のはっきりした、そういう少子化対策の総合政策みたいなものを打ち立てていくかということは、これまでにも努力はいたしてきたわけですが、その経験を踏まえて、今回、新たに重点戦略検討会議というものが立ち上がっておりますので、そこで今まさに糸川委員が提起されたような問題に回答を出す、こういうような状況にあるのではないか、このように考えまして、私ども厚労省におきましても、そういう全体の中でしっかりした施策を提案して、我々の仕事、分担もしっかりと努めていきたい、このように考えております。

糸川委員 大臣、少子化対策をずっとしてきた結果でも、その対策、下げどまっている感じもまだまだないわけですよね、ということは、なかなかその政策が成功しているとは言いづらいわけですよ。ですから、そういう観点からも、本当に子供をふやしたいという気持ちがあるならば、これは何度も言っておりますけれども、しっかりとこれに取り組んでいただかないと、本当に手おくれになるということを申し上げたいと思います。

 次に、これは武見副大臣にお尋ねしたいんですけれども、マタニティーマークというものがございます。交通機関等の協力を得て、第三者に妊婦であるということを示す、こういうものでマークがございますが、せっかくそのマークを妊産婦の方がつけていてもだれも気づかない、このマークが何であるかということを理解していない、また、そのマークの存在自体を知らないという意見が非常に多いわけです。

 みんなにこのマークを認識してもらうために、こういうマークというものをつくったんですけれども、多くの方々、特に電車通勤の多い都市部のサラリーマンの男性にその存在を今後知ってもらわなければいけないんだろうと思うんですが、武見副大臣が母子保健にも造詣が深くて、そしてマスコミのお知り合いも多いというふうに伺っております。ですから、このマタニティーマークをサラリーマン等の一般の人々に知ってもらうために、マスコミ等を使った啓蒙普及というものに取り組んでいただけたらいいのではないかなと。

 そういう観点から、副大臣としても、大臣をお支えになられて、そのマタニティー、つまり妊産婦の方々に手助けをするということは重要なことだと思いますけれども、そこをどのように取り組まれるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

武見副大臣 妊婦の方に特に優しい社会環境をしっかりとつくっていくということは、本当に大切なことであることはもうだれもが認めるところだろうと思います。特に妊娠初期というのは流産するリスクも高うございますし、そうしたことも踏まえて、このマタニティーマークというのを国民の間で周知徹底するという努力は私もしっかりやっていきたいと思います。

 ただ、これは、メタボ対策みたいなときには、私もハイリスク三%の一人で自分がモデルになってやれるんですけれども、私がマタニティーマークをつけるわけにもいきませんので、これをどう普及させるかというのは、少し真剣に考えて、具体的な手だてをつくって着実に実行していきたいと思っておりますので、よろしく御支援、御協力いただければと思います。

糸川委員 いや、副大臣、これからつくるのではなくて、ぜひ本来であればつくっておいていただきたかったんですね。本当は、この場でそれを発表していただきたいなというぐらいの気持ちだったんです。

 というのは、これは大臣も、妊産婦の方々がそれだけ大事だということを認識されているのであれば、このマークを普及するということは、当然これは厚労省として取り組まなきゃいけないんですよ。そういうところにやはり思いやりというものを国民の皆さんが感じるんだろうと思うんですが、それが、そのデータ、どういうふうにやるんだということがないと、これは優しくないなというふうに言わざるを得ないわけですから、そこはしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

武見副大臣 その具体的な手だてはもう既に始まっていて、私が言った意味は、それをさらにより具体的に充実させていくという意味でございまして、もう既に母子健康手帳とあわせてマタニティーマークの配付を行えるように、地方財政上の措置、十九年度予算案にこれは織り込んでいるわけでございまして、政府広報による国民への周知、それから関係省庁を通じた関係団体への協力依頼、各自治体の自主的な取り組みの促進ということを通じて、妊産婦に優しい環境づくりの具体策、まさに今進めているわけです。

 ですから、これをさらに常に工夫して、よりよいものにしていくための努力というものは必要だという意味で先ほどお答えしました。

糸川委員 今後も、この取り組みというものを期待しております。

 終わります。

櫻田委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子です。

 私は、ただいま議題となりました政府提出の児童手当法の一部を改正する法律案について、民主党を代表して、反対の立場で討論をいたします。

 反対する第一の理由は、政府・与党が、児童手当制度全体についての将来ビジョンを持ち合わせておらず、小手先の見直しを繰り返しているからであります。

 児童手当法は、ここ数年でも支給対象年齢などが何度も変更されておりますが、これは児童手当制度が極めて不十分であることの証左にほかなりません。

 第二に、政府が、児童手当などこれまでの子育て政策に関する十分な評価や検証を行うことなく、場当たり的な対応に終始しているからであります。

 平成十六年の法改正時には、当時の坂口大臣が、スウェーデンの例を引き合いに、少子化対策として実施する政策の効果の検証制度を我が国でもつくり、政策の優先順位を考えていかなくてはならない旨の答弁をされていました。坂口大臣の思いはその後どうなっているのでしょうか。

 そして、今回の乳幼児加算についても問題があると考えています。

 政府案の対象となる第一子、第二子を養育する保護者には、子供が三歳になるまでは月一万円を支給されますが、その子供が三歳になった途端に、手当がもとの五千円に事実上減額されてしまいます。この点、政府からは明快な説明がなされておりません。

 安倍内閣では、財源が限られているからその範囲までしか支給しないのだということでしょうが、政治が本当のリーダーシップを持って、子供、子育てを応援するのだと内閣の意思を示せばいいのではないでしょうか。少なくとも、民主党が政権をとれば、子供そして人づくりに対して責任を持って、しっかりと予算配分をしていくことを最後に申し上げて、私の反対討論とさせていただきます。(拍手)

櫻田委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、児童手当法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

櫻田委員長 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。山井和則君。

山井委員 お昼どき、前回の質疑の五分間、続きをやらせていただき、本当に恐縮であります。早速、お配りしました資料に基づいて、前回の続きをさせていただきます。

 ここにありますように、パート労働法の差別禁止に関しては、パート労働法の一番の関心規定であります。これについて、二月二十一日に質問いたしました。

 これは、三条件、業務が正社員と同じ、二番目に配置、転勤が正社員と同じ、三つ目が期間の定めのない契約という三点セットが政府案の差別禁止の条件であります。しかし、柳澤大臣が予算委員会で答弁された四、五%というのは、この資料にもありますように、平成十三年の調査でありまして、ここでは二つ目までの条件、正社員と同じ職務、責任、そして転勤も同じようだ、しかし、期間の定めのないか否かというのは調査していないわけですね。ですから、期間の定めのない人をさらに掛け合わせると、四、五%よりも減るのではないかというのが普通の考え方であります。この四、五%というのは誇大な広告ではないかと思います。

 この新聞にありますように、きょうも新聞に出ておりましたが、毎日のように差別禁止は四、五%、四、五%と数字が躍っているわけですが、繰り返しになりますが、三条件目の、期間の定めのない契約の部分を、質問していない過大な数値を発表されたということで、私は非常におかしいと思っております。この点について、なぜ三条件目の期間の定めのない契約という部分を、聞いていないこの四、五%という数字が、そのまま差別禁止の対象者の数字として答弁できるのか、そのことについて改めて答弁をお願いいたします。

柳澤国務大臣 この山井委員の配付された資料によりますと、一番上ですが、「責任の重さや配転・転勤等の取扱いも含めて同じ仕事をしているパートの割合」ということで、そこにありますように、四・七とか五・〇とかというような、正社員ですと四・一というような回答があった、こういうことでございます。

 他方、今委員が御指摘になられたように、この左の下の部分でございますが、これはパート労働法改正法案の要綱からコピーされたと思うんですけれども、確かにここで、イ号におきましては、1の業務と責任の程度、それから2の人事上のいろいろな範囲、それから3の期間の定めのない労働契約というものが要件になってございますが、実は、もう一つ、このイ号の後にロ号というのがございまして、「イの期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとすること。」というくだりがございまして、つまり、「期間の定めのない労働契約」とここに書いてありますが、それは形式上の期間の定めがあるかないかということではなくて、実質的に期間の定めのない労働契約を結んでいると同じような状況にある労働者につきましても差別禁止の対象としたい、そういうことで法律要件を整えようというふうに考えておったわけでございます。

 そういうようなことで、実際、差別禁止の対象になる労働者、パート労働者についての実はどんぴしゃの統計データはないということでございましたので、私は、今委員も御指摘の、平成十三年の二十一世紀職業財団が調査をした調査の結果で、大体これが近似値として一番近いデータではないか、それによれば四、五%というところぐらいが近傍値ではないか、こういうような趣旨で御答弁をさせていただいたということでございます。

山井委員 全く答弁が変わっておりません。

 もう時間がありませんので、一問だけ質問します。

 ですから、前回も聞いたように、契約期間の定めのない、正社員と同視できる有期の反復更新の人が四、五%のうちどれぐらいかということを前回から聞いているんですよ。四、五%のうち、無期の人及び今おっしゃったロの反復更新で無期と同視できる人はどれぐらいなんですか。これで終わります。

柳澤国務大臣 この十三年の調査によります調査の回答が、配転、転勤等の取り扱いが正社員と同じと回答したものでありますことから、その大多数は長期にわたって雇用される予定の者である、したがって、短期の契約者と差別的取り扱い禁止の対象とならない者のほとんどは、既に転勤、配転等の取り扱いが正社員と同じという、そのことからは除外されているというふうに考えております。

 山井委員が全く一かけらもないのかと言われれば、私も、それは一かけらぐらいはあるでしょう、こういうふうに言わざるを得ないんですけれども、しかし、そうしたことを明確に裏づけるような、そういういわばデータがない、こういうことでございますので、そもそもが四、五%、こういうことでもございますし、前にも申したように、私の答弁も断定をした答弁にはなっておりません。しかし、何のめどもなくてこういう大事な議論をするというのはいかにも不適当だと私は考えましたので、こういう近似値で大変恐縮だけれども、そうしたことを御答弁させていただいたということでございます。

 それが、その四、五%の中で、あるいは配転、転勤を繰り返しされて正社員と同じだとほかの人が見ている者の中で、この差別禁止に当たらない人がどのぐらいあるかを言えと言われても、なかなかこれは難しいと言わざるを得ないということで御理解を賜りたいと思います。

山井委員 以上で質問を終わらせていただきます。また引き続き質疑をさせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十九分散会


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