衆議院

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第12号 平成19年4月11日(水曜日)

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平成十九年四月十一日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 石崎  岳君

   理事 鴨下 一郎君 理事 谷畑  孝君

   理事 宮澤 洋一君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      阿部 俊子君    新井 悦二君

      井上 信治君    飯島 夕雁君

      鍵田忠兵衛君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉村 太蔵君

      高鳥 修一君   戸井田とおる君

      冨岡  勉君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      馬渡 龍治君    増原 義剛君

      松野 博一君    松本  純君

      松本 洋平君    川内 博史君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    田名部匡代君

      筒井 信隆君    西村智奈美君

      細川 律夫君    横山 北斗君

      柚木 道義君    坂口  力君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          上田 紘士君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    川崎  茂君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        桑島 靖夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     馬渡 龍治君

  清水鴻一郎君     鍵田忠兵衛君

  福岡 資麿君     飯島 夕雁君

  吉野 正芳君     増原 義剛君

  内山  晃君     横山 北斗君

  大島  敦君     西村智奈美君

  園田 康博君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     福岡 資麿君

  鍵田忠兵衛君     清水鴻一郎君

  馬渡 龍治君     阿部 俊子君

  増原 義剛君     吉野 正芳君

  川内 博史君     園田 康博君

  西村智奈美君     大島  敦君

  横山 北斗君     内山  晃君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     加藤 勝信君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第九号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 法務委員会において審査中の第百六十四回国会、内閣提出、少年法等の一部を改正する法律案について、法務委員会に連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、法務委員長と協議の上決定いたしますので、御了承願います。

     ――――◇―――――

櫻田委員長 内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外二名提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局公務員部長上田紘士君、統計局長川崎茂君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、健康局長外口崇君、医薬食品局食品安全部長藤崎清道君、労働基準局長青木豊君、雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。園田康博君。

園田(康)委員 おはようございます。民主党の園田康博でございます。

 ただいま議題となっておりますパート労働法の改正案、これにつきまして質問をさせていただきたい、そのように思っております。後ろの時間が決まっておりますので、私も手短に御質問をさせていただくと同時に、明快な御答弁をお願いしたいというふうに思っております。

 そして、大臣、昨日は参考人の方々においでをいただきまして、政府案あるいは私ども民主党案に対してさまざまな御意見を賜りました。総じて、私ども民主党案に対しましては、理念的には大変一定の評価をいただけるという御評価をいただいたというふうに思っております。

 やはり、このパート労働法の改正案というものは、今の現実に働いていらっしゃる方々にとってみれば大変待ち遠しいものでありまして、したがって、一刻も早く、政府の方もそういった方々の現実、現状をしっかりととらえていただいて、いい法案へと向かっていただきたいなという期待を込めさせていただきたいと思っております。

 そこで、質問に入る前に、先週の四日でございましたけれども、山井議員から、今回のパート労働法、政府案に対しての質問の中で、いわゆる対象者、正社員と同視すべきパートについての差別的取り扱いの禁止、これについての対象者がどれぐらいいらっしゃるんだと。大臣は、根拠的なものがまだ不明確であるというような部分も示しつつ、いらっしゃるんだということをおっしゃっておられたわけでございます。したがいまして、それに対して、では、実際にいるという根拠を示してほしいという質問をさせていただいたところ、それぞれのいろいろなやりとりがあったわけでありますけれども、その中で、今週、次回の委員会までにぜひ調べて、調査をしてお示ししてほしいという要望を出させていただいたところであります。

 その事例について、大臣、調査をされた結果、どのような結果があったかということをまずお伺いしたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 まず、昨日の参考人の意見聴取におきまして、それぞれに、政府案、民主党案、これについていろいろな御論議があったという御報告もいただき、また、園田委員の方からは、現実にこの法律を適用になる、そういうことの見込みの人たちからは非常にこの改善について期待があるんだから、よく、しっかりやれ、こういう御激励をいただきまして、この御激励に対しては、しっかりと私ども政府として受けとめて努力をしてまいりたい、このように思っておりますことを申し上げたいと思います。

 差別禁止規定の対象者の事例について、山井委員の質疑と私どもの答弁につきまして前回いろいろな往復があったわけでございますけれども、これにつきましては、個別に当たるということについては、いろいろな事情からこれを行うということは困難というふうに、あるいは適切でないというふうに考えたところでございます。

 しかしながら、事務当局の方から事業主団体に問い合わせたところでは、差別的取り扱い禁止の対象と考えられるパート労働者は、パート労働者の基幹化が進んだ流通業等ではなくて、むしろ相対的に基幹化がおくれている製造業等に多く存在していると考えられるというようなことで、この団体の本部にも会員企業から差別的取り扱い禁止規定についての問い合わせが多数寄せられているということの報告があったところでございます。

 また、昨日の参考人質疑におきましては、日本経団連の松井労政第二本部長の意見陳述にあったそうでございますが、差別的取り扱い禁止は、人事労務管理への影響が極めて大きく、実際に地方の企業や関係業界から相談が多く寄せられているという趣旨の御説明があったようでございます。

 このような事実を踏まえますと、差別的取り扱い禁止の対象者が存在することは明らかではないか、このように思っておりますが、特定の実例をお示しすることは難しいし、また、適切でもないということで御理解を賜りたいと思います。

園田(康)委員 そうしますと、事業主団体に対して事務当局がまず問い合わせをした、それに対して多数の意見があったということで、大臣はそれを今御報告されたというふうに理解をいたしました。

 しかしながら、私は、それでは実は不十分ではないのかなというふうに思っております。すなわち、これは、大臣ではなくて事務方の方で結構でございますけれども、どういう形でヒアリングをされて、それが多数あったということでありますけれども、ではどのぐらいあったのかということもきちっと調査をされたのかどうか、私は疑問があるわけでございます。私も素直な人間でありまして、大臣も大変素直な方であるというふうに拝察させていただいておりますので、事務方から言われれば、そのまま、はい、そうですかというふうに私も思ってしまうんですが、ただ、それがきちっと、本当に事実かどうかということをやはりお示ししていただかなければ、少なくとも国民は納得しないし、先般の山井議員も絶対にこれは承服しかねるというふうに思われるのではないのかなと私は思っております。

 したがって、事業主団体に問い合わせたという事実だけをもって、これが根拠になるというのは少し弱いのではないのか。逆に、それが仮に、では他の団体からそういった事実はないと言われれば、それがないということになってしまいかねないわけでございます。したがって、その辺の調査をしっかりと厚労省の事務方としてやるつもりはあるのかどうか。局長、もしそのおつもりがあればさらにお答えをしていただきたいなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 今回の法律でいいます差別的取り扱いの禁止となる対象事例でありますけれども、これも、先般の御審議の中でも、事実認定について非常に困難な面が多々あるということで、これは、両者の言い分を調整して、過去のケースでも裁判によって初めて明らかになったというような形もあるわけでありまして、非常に確定がしにくいというのがまず一つであります。

 また、今回の法律で禁止対象になるというものは、現在の法制の中でも民法上の公序良俗違反にもなりかねない、そして、今回法律が改正されると違反になるというわけでありますから、これは、事業主に聞いて、私どもがそういうことでありますというのは、なかなか申し出いただくのも難しいということ等々ありまして、非常に確定に苦慮しておるというのが実情でございます。

 その事情を事業主団体に我々が問い合わせましても、やはり事業主団体の方も、Aという企業が実際には違法かもしれないということで話をしてきているというあたりは、これはなかなか確たることを集計するのは難しいという事情もあるようでありまして、我々も、存在するということを団体から確認することはできましても、どこどこに何件、何人とか、なかなかそれがとりがたいということで、その実例、数字について申し上げるのが難しい、こういうことを申し上げたところであります。

 ただ、きのうの参考人の意見陳述にもありましたが、今回の差別禁止対象の考え方でありますけれども、正社員と同視し、例えば退職金や住居手当を含めて全く同じ処遇を当てはめようというのが今回の趣旨でありますから、それに適当な対象はどういう人かということについて考え方の基準を決めた、その基準がまずは正しいかどうかということが第一に今回の対象の意味ではなかろうかという佐藤参考人の話がありましたが、そういったことで、今回の数字の問題についての関係を御理解賜りたいと思います。

園田(康)委員 事実認定が困難というふうにおっしゃいますけれども、それは全く逆の論理で考えなければいけないんではないでしょうか。つまり、立法事実があって、それに対してどういう形の施策を打っていくのかというのが法律の根幹にあるものだというふうに私は思っています。

 したがって、それがないかどうかわからない、調査もしていない、そしてそれに対してこの法律をつくるということに対しては、どうもまだ納得のいくものではないというふうに私は思っております。

 したがって、この議論、もう一度宿題にさせていただきたいというふうに思っておりますが、しっかりとその辺の根拠たるものをお示ししていただきたい、そのための時間を、猶予をつくりたいというふうに思っておりますが、また今度の審議までにそれをよろしくお願い申し上げたいというふうに思っております。

 次に移ります。

 総合的な施策の必要性というものに関して、少し大臣に理念的なところをお伺いしたいというふうに思います。

 私ども民主党も、今回のパート労働法の改正をめぐりまして、やはり実際にさまざまな問題があって、そして差別であるとか、あるいはそういう処遇に置かれているという方々を、どのような形でこの格差を是正し、そして一千二百万人を超える非正規雇用の方々に対して手を差し伸べていくかということを総合的に考えていかなければいけないんではないかというふうに思って出発をさせていただきました。

 そこで、今回のパート労働者の処遇改善というものを全体的に考えたときに、その処遇だけではなくて、それに伴う、いわば課税最低限の問題ですとか、あるいは家族手当の問題ですとか、そういったところもやはりその根底にある問題であろうというふうに思うわけでございます。したがって、ただ単にパート労働者の処遇改善だけの問題ではなくて、税制であるとかあるいは社会保険制度、そういったものも幅広い形の中で考えていかなければいけないんではないかというふうに思っております。

 したがって、かつてのそういう、これが適当な言葉かどうかは少し議論がありますが、主婦パートというような形で、家計の足しにしたい、少しでも楽にしたいというところからスタートしているパートというものも含めて、そういう枠組みというものが社会の構造変化とともに、大臣もおっしゃっておられるように、さまざまな働き方の要素が変わってきている、そういう中で、これからのそういう働き方というものの選択肢というものは、幅広い形でお示しをしていかなければいけないんではないか。

 ただ単に、処遇改善というだけの話ではなくて、税制も含めた幅広い形の中で、こういう働き方があるんですよというビジョン、将来的なビジョンというものをやはり大臣の口からお示しをいただきたいなというふうに私は思っているんですが、大臣のその点の御所見はいかがお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 今回のパート労働法の改正につきましては、明らかに、今委員が御指摘のように、働き方の多様化というものが基本にあるわけでございます。

 先ほど委員御自身もお触れになりましたように、パートというものが主婦パートで、本当に家計の足しになればいい、補助であればいいというようなことではなくて、やはりいろいろな、多様な働き方の中で、パートというものがその一つとして位置づけられる、働き方の一つなんだというようなことが出てまいりまして、若者や高齢者というものも考えられる、あるいは基幹的な役割をそういう中で担う者も考えられる、こういうような現実がございます。

 それからまた、将来の労働力の推移を展望したときには、やはり女性であるとか、あるいは高齢者というような方々について、かなりの労働力率の上昇を期待せざるを得ないということがありまして、そういう中で、このパート労働あるいは非正規雇用というものをどう位置づけていくかという問題も、我々、将来の課題としては当然持っているというふうに考えております。

 今回のパート労働法の改正を初めとする労働法制の整備におきましては、これを、どういう働き方をするにしても、できるだけ安心、安全、それからまた納得して働いていただくという環境整備を行うことが大事だということから、今回のような改正を提案申し上げている次第でございます。

 しかし、将来展望を考えたときに、ある種の打ちどめというか、これで十分将来展望に対してもこたえていけるのかということであるかと言われれば、やはり将来においてはいろいろなことを考えていかなければならない、このように思っておるわけでございます。

 私は、今度、ワークライフバランスであるとか、あるいは政府、内閣の、子どもと家族を応援する日本重点戦略会議向けの厚労省の考え方というものを打ち出すに際しては、やはり働き方と家庭生活あるいは自分の自己啓発というようなこととの間で幾つかのモデルというようなものを提示できないのかということを検討してみたらどうかということを、実は事務方に投げかけているわけでございます。

 そういうようなことで、国民がこれからは自分はこういう生き方をする、このモデルというか、そういうものを選択して生きるとしたら自分はどういう職業になるんだろうかというようなことも考えていくということが必要なんじゃないかというふうにも考えておるわけでございまして、まだここで申し上げるのは本当は実に口幅ったいことですけれども、せっかく委員がそういう問題提起をしていただきましたので、私が個人的に今事務当局に投げかけている問題意識というものを申し上げた次第です。

 そういうものができてきますと、社会保障制度の対応はどうあるべきか、あるいは税制の対応はどうあるべきかということが当然そこから幾つかのタイプ別に出てくるのではないか。そういうような非常にいろいろな多様な生き方、価値観に基づいた働き方というものが出ておりますから、そういったことまで考えていく状況になっているのかなというのが私の現段階での考え方でございます。

園田(康)委員 したがいまして、今回のいわゆるパート労働法の改正案というものは、つけ焼き刃的な部分がやはり私は否めないというふうに思っておりますので、大臣が今おっしゃったように、総合的な将来ビジョンというものをしっかり示しつつ、そういう個別の対応というものをやるということになっていくんだろうと思うんです。

 したがって、個別的な対応ばかりやって、そういう将来的なビジョンというものがどっちに向いていくのかわからない、あるいはどういうふうになっていくのかわからないというものでは、やはり私は、一つ一つ先ほどのような議論に陥りやすいというふうに思うわけでございます。

 したがって、大臣がそういう指示をしたということであるならば、私はそれは評価をさせていただきたいというふうに思っております。したがって、本来ならばそれがきちっと最初にあって、そこから一つ一つの個別的な問題へと取り組んでいくんだろうというふうに思っておりますので、ぜひその考え方というものは共有をしていただきたいなと思っております。

 そして、そういう形の中で今現実に、パートあるいはアルバイト、フリーター、ニート、あるいはさらに労働契約であるとか嘱託社員であるとか、そういう形がふえてきているわけであります。したがって、今、総労働者の中の大体三割がそういう非正規雇用だというふうに言われておるわけでありますけれども、それが今後ふえていくということは私は望ましい姿ではないというふうに、それがいろいろな働き方があって結果においてそうなっていくというものであるならば、それはいたし方ないのかもしれません、職業選択の自由あるいは人格形成権というものが個人的にあるわけでありますので。

 しかしながら、今の現状をひもといていくと、決して望んでパートやアルバイトあるいは契約社員というものになっているというふうには私には映っていない。したがって、それを是正しつつ対策を行っていかなければいけないわけですが、これが三割から四割へとどんどんふえていくということが望ましいのではないのかなというふうに私は思っております。

 したがって、そういう観点の中から、今回政府案が提出されているパート労働法の改正がどういう歯どめというものになっているのかということを、やはり大臣からもう一つ踏み込んで、先ほどのお示しになったビジョンとともに御所見をお伺いしたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 今委員が仰せのとおり、非正規雇用というものが非常に多くなっているわけですけれども、私どもは、これはやはり、企業がグローバリゼーションの中で非常に経営の構造あるいは経済の構造に対応していくという面があったことは否めない、しかし他方、労働者の側にも、いろいろな自分の選択からそうしたものを選びたい、こういうことで、両者のニーズがあってこうした状況が出現しているということは事実であろう、このように思います。

 そうした中で、私どもが今度パート労働法で考えていることは、まず、パート労働をなさっている労働者の皆さん方がみずから選んでパート労働をしている場合には、これは処遇を均衡化させていくということをしなければいけない。それから、そうではなくて、望まずしてやむを得ず、実は正社員として働きたいんだけれどもとりあえずこういうことでやらざるを得ないというような方々については、これはできるだけ正社員の方に移行していただく、そういう措置が必要だろう、こういうように考えておりまして、パート労働法の今回の改正にはその両面を盛り込ませていただいたということでございます。

 そういう意味合いでは、今回のパート労働法の改正というのは、今委員からは厳しく、その場の対応というような御指摘をいただいたのでございますが、現実に立ってみて事態を一歩でも二歩でも前進させていくということの中では非常に重要な歩みである、こういうようにぜひ御理解を賜りたい、このように考えている次第であります。

園田(康)委員 問題は、やはり、それぞれの個人が考える働き方というものに今の制度が合っているかどうかというところに焦点を当ててやっていかなければいけないというふうに思うわけであります。

 その際に、私ども民主党は、きょうはちょっと答弁席にお願いをしていなかったものですから、先般質疑の中でも明らかになっておりますけれども、民主党の考え方をお示しさせていただいたように、個別の企業の中でそういう検討会をつくって、そしてその中で物差しをきちっとまずはつくっていくというところも一歩踏み込んで考えられるのではないかなというふうに思っているわけですね。これは厚生労働省の中にも、平成十二年ですか、以前にその物差しづくりというものを検討していたという事例を私も伺っているわけであります。

 同一価値労働同一処遇の原則について、それを確かに今の日本の雇用システムの中できちっと当てはめていくんだ、すぐさま当てはめていくというのはやはり少し難しいのかなという部分は私も思っておりますが、だけれども、これを理念的に捨ててはならない。これを最終的な目標としてそこに近づけていく、どういうステップで近づけていくのかということを少し踏み込んで考えていただきたいというふうに思っておるわけであります。

 そこで、その中において、例えばパート労働の職種内容といいますか、そういったものであるとか時間であるとか、あるいは処遇の内容的なものを、職務分析という形で、その中一つ一つにおいて、そういった手法を用いてケース・バイ・ケースで判断していくというものもあわせて行うことがそれぞれの中で可能ではないのかなというふうに私は思っているんですが、そういう観点にのっとって私ども民主党は提案をさせていただいたというところがあったんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ありましたように、そういった方向については政府内部でもかねてから検討しておった経緯もあるところでございます。また、現状におきましても、先進的な雇用管理を進めている企業におきまして、いわゆる今御指摘の職務分析により職務を評価し、そういったものを実務に生かしておられるという例があるということも聞いているところでございます。このような事例は、正規雇用それから非正規雇用との間で働き方の評価の基準を公正かつ中立的なものとしていくためには、これは望ましいものというふうに考えるところであります。

 職務分析の手法がいまだ国内で確立されているとは言えないという現状において、今回法律で強制するということはとれなかったわけでありますけれども、今後、そういう先進的なこういう雇用管理の事例につきまして我々も勉強し、また、できるだけそういったものがあることについて情報提供を進めるということで、そういったものの普及促進を考えたいと思っております。

園田(康)委員 私どもはしっかりとそれをやりたい、やっていきたいというふうに明示をさせていただいておりますけれども、大臣、ぜひ、これは民主党案が成立することを私は望んでおりますが、仮に政府案が成立をした際に、法施行後三年の見直しという規定が入っておるように見受けました。

 したがって、法施行後、今回は法律の中に職務分析等のそういったものはできなかったという今局長答弁でありましたけれども、ぜひ、三年後の見直しに向けて、そういう検討の場、物差し研究会なるものをしっかりと厚生労働省内に設けて、そこでしっかりと取り組んでいくというお考えは、大臣、今の局長答弁も踏まえて、お考えにあるかどうか、御答弁をお願いしたいと思っております。

柳澤国務大臣 先ほど委員も御指摘のとおり、厚生労働省内におきましても、いわゆる物差しということで、実質的な均衡を図るための手法というものが見つからないかということで検討はしてきたわけでございますけれども、結局、今回は、それについて労使の合意が得られるような形での手法というものはなかなか見つけ出し得なかったということでございます。

 そういうことではありますけれども、均衡処遇の要請というものにはこれはこたえていかなければならないということで、今回のような均衡処遇のための措置を事業主に課すという法体系のもとで、この目的とするところを実現しようという手法をとったということでございます。当面は、事業主の取り組み状況等、私どもの今回の改正後の制度がどのような定着ぶりを見せていくかということについて、その状況を見守っていくということでございます。

 しかしながら、もし見直しが必要だというようなことの場合には、そのときの状況もよくにらみながら、今委員が言われたようなことというものも念頭に置いて見直しが行われるということにはなろうと思いますけれども、今この場で私どもが申し上げられることは、とにかく今度の改正がどのような定着ぶりを示していくかということをまず見守っていきたい、こういうことでございます。

園田(康)委員 ぜひ、改めてまた検討の場というものを設けていただきたいというふうに強くお願いを申し上げておきたいというふうに思っております。これは、民主党案、政府案、どちらが成立しても同じ結論が出るのかなというふうに思っております。

 そして、公正な賃金の改定、決定について、先ほど局長も、さまざまな企業間の中でそういった職務分析の手法は取り入れてやっていらっしゃるという御答弁もいただいたわけでありますけれども、それをさらに共通の業界の中でやっていくという動きがあるというふうに聞いております。例えば流通業のデパートですとか、そういった流通業の中でも、一つの企業だけではなくてそれぞれの業界の中でそれに対してしっかりと取り組んでいくというようなお話が今あるわけであります。

 私としては、そういった取り組みをパート労働法の改正とともにしっかりと政府として支援していくということが考えられるのではないのかなというふうに思っておるんですが、政府として、そういう業界団体あるいは業界でそういう取り組みをしている、そのことに対する具体的な支援策というものは何か考えていらっしゃるんでしょうか。

大谷政府参考人 今御指摘ありましたように、一つの業界の中で共通の物差しづくりに向けた取り組みがなされていくということは、正規雇用、非正規雇用との間で働き方の評価の基準を公正かつ中立的なものとしていくためには、これは望ましいというふうに考えております。

 したがいまして、政府といたしましては、このような取り組みを支援するために、この法律改正案において事業主団体向けの助成金を創設することとしておりますが、そこで、正社員と共通の評価や資格制度、いわゆる賃金制度の導入等に係る傘下の企業支援を行った、こういった事業主団体に対して助成を行うということも準備しておるところでございます。

園田(康)委員 それでいきますと、本年度の予算案の中で、いわゆる短時間労働者均衡処遇推進助成金というものであろうというふうに伺っておるわけでありますが、ここでいきますと、まず、中小企業事業主団体向けというものと、さらに団体向けだけではなくて事業主向けにもあるというふうに聞いているわけでございます。

 そこで、まず、国が行う、団体ではなくて事業主に行うものとして必要な措置を講ずるというものはどういったものになっていくんでしょうか。

大谷政府参考人 短時間労働者均衡処遇推進助成金ということで今お話しの制度がございまして、さきに申しました事業主団体以外に、個々の事業主に対しましても支援するという助成金を現在準備しているところでございます。

 具体的には、例えば、正社員との均衡を考慮した賃金制度を設けた事業主に対しまして実績に応じて三十万から五十万円、また正社員転換制度を設けた事業主に対して実績に応じて三十万円、さらに正社員との均衡を考慮した教育訓練制度を設けた場合に実績に応じて三十万円、こういったものが例示でありますが、こういった個別事業主に対する支援も現在準備しておるところでございます。

園田(康)委員 その際に、正社員との均衡を考慮した評価資格制度というものが設けられて、三十万から五十万円ということでありますけれども、この評価資格制度というものはどういったものを設置すればよろしいんでしょうか。具体的にお答えをいただきたいと思います。

大谷政府参考人 ここで言う評価資格制度とは、具体的に言いますと賃金制度のことになろうと思います。

園田(康)委員 それから、正社員への転換において、この場合は、通常の労働者への転換を推進するために短時間労働者について三つの措置が講じられるというふうになっておりますが、そのうち、まず、通常の労働者の募集を行う場合の周知というふうになっているわけですが、この周知というものはどういう形で行われるものと理解をしてよろしいんでしょうか。

大谷政府参考人 通常の労働者への転換を推進するための措置のうちの正社員募集情報の周知でありますが、これは例えば、その事業主に、ふだんから目にする掲示板に掲示する等、パート労働者が現にその募集情報を知ることができるような周知の方法をとらせるということにしておりまして、こういう形で行いたいと考えております。

園田(康)委員 したがって、パート労働の方々がしっかりと正社員への転換というものの募集を明確に認識するという形でないとまずいけないということでありますので、その辺はしっかりと指導をしていただきたいというふうに思っております。

 時間がなくなってまいりましたので、あと、ちょっと順番が変わりますけれども、労働条件に関する文書の交付等、法律の六条の部分でありますけれども、労働基準法の第十五条、ここにおいては、もう御案内のとおり、労働契約の期間であるとか就業の場所であるとか従事すべき業務、あるいは始業、終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇等、そして賃金の決定、計算、支払いの方法、退職というふうに、これを文書として交付をしなければならないというふうになっているわけでありますが、今回、このパート労働法においても、特定事項というふうに明記をしているわけでありますが、これは何を示し、そしてさらに、パート指針において、安全衛生であるとか、あるいは教育訓練、休職、これについては努力義務というふうになっておりますけれども、どうしてこれが努力義務という形になったのか、その経緯をお示しください。

大谷政府参考人 改正法案の第六条に定めます特定事項につきましては、昨年末にいただきました労働政策審議会の建議において、昇給の有無、それから賞与の有無、それから退職金の有無、この三つとするというふうにされております。この三つが改正法案では雇い入れ通知書における記載義務事項とされたわけでありますが、その考え方は、その待遇の中でも特に重要な賃金に関する事項である、またパート労働者にあるかどうかが現状まちまちでありまして、事後のトラブルにもなりやすい、こういったことから、この三つが審議会でもいわゆる義務的な記載の事項にされたというところであります。

 この三つのほか、労働基準法にありますような規定、安全衛生や教育訓練、休職についての規定でありますが、現在でもこれは指針に定められているところでありますけれども、さっき申しましたような、パート労働者であるというような現状なり、そういった理由で事業主に特段の措置を法律で義務づけるということには至らないということで、今回は先ほどの三点が法律事項として浮上し、委員が言ったようなものは引き続き指針等で確保を図っていくというふうになったところでございます。

園田(康)委員 ぜひこの点もしっかりと盛り込んでいけるように努力をしていただきたいと思います。

 さらに、パート労働者を雇い入れる期間についての雇い入れ通知書、これに関して、雇用期間の有無の明示でありますけれども、これはどのような趣旨で盛り込まれるようになったのか。そして、例えば三カ月なら三カ月という形で雇い入れをしましょう、あるいは六カ月なら六カ月というふうに雇い入れをしましょうというふうに明示をするわけでありますけれども、なぜ三カ月であるのか、なぜ六カ月であるのか、なぜ一年であるのかという理由までやはりこの通知書の中に盛り込んで、きちっとパート労働の方々に明示をするべきものではないのかなというふうに私は思っているんですが、この辺の理由というものまで付記する、明示するということに関して、どのようにお考えでしょうか。

大谷政府参考人 このパート労働法の趣旨は、労働の時間が短い、短時間性に起因する問題に着目しまして、必要な労働者保護を図る、こういう法体系で整理したところでございます。

 御指摘のいわゆる雇用期間について、例えばその有無だけでなくて、期間の理由を示す、こういったことについてでありますけれども、これは契約のいわゆる有期性というものに伴う考え方でありますが、この問題は、いわばパート労働者であるかどうかにとどまらず、これはフルタイムの契約社員を含めて、一般的な検討課題というふうに考えておりまして、このパート労働法の中でその理由まで掲げるということには至らなかったというところでございます。

園田(康)委員 これは、おっしゃるとおり、全体的な問題ではありますけれども、とりわけ今回のパート労働に関しては、有期という限定が課せられるわけであります。したがって、なぜあなたは三カ月であったのか、あるいは半年であるのかということはきちっと明示するように私は努力をするべきであろうというふうに思いますし、そういう形で理由を示されれば、働き手側からすれば、将来予見性というものもそこの中で生じてくるであろうというふうに思っておりますので、ぜひ前向きにこの点は検討をお願いしたいというふうに思っております。

 まだ幾つか質問事項を用意しておりましたけれども、時間が参りましたので、まだまだ少し疑問点もありますし、さらに先ほどの一番最初の宿題等もございますので、その点も踏まえて、今後の議論に付したいというふうに思っております。

 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。

櫻田委員長 午前十時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時四十六分休憩

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    午前十時四十一分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。

 今回、パート労働法が一九九三年の施行以降、大変大幅な見直しということで、私たちも期待をしておりました。これまで、審議会建議、そして法案要綱、法案と出てまいりましたものを見て、多くのパート労働者の方々が抱いていた希望は、むしろ、どちらかというと失望に変わったというふうに思います。

 今、日本の労働市場というのは激変をしておりまして、その中でも多くの矛盾点、問題点をいわばこのパート労働の分野が抱え込まされている。そうした中で、本当に多くの働いている人たちは、やはり不合理な差別や不当な差別によって苦しんできたという実態があります。これは多くの事例もありますし、幾つかの裁判例もありますし、大臣もよく御承知のことでありますので、改めて申し上げるまでもありません。

 しかし、こういった実態をどう解決していくのか、解消していくのか、そして、すべての人に働きに見合った処遇を確保するためにどうするかというのが、今回のパート労働法の改正の立法趣旨でなければならなかったと思っております。しかし、これは大変不十分なことがいろいろある。

 私たち民主党からは、今回、いわば対案という形でお示しをいたしました。すべてのパート労働者に均等待遇を義務づけるということ、そしてまた、新しい職場でのいわばルールづくり、物差しづくりを目指すという点で、事業所内の均等待遇等検討委員会というものを設置している。これは多くの有識者の皆さんから、今、大変高く御評価をいただいているところでありまして、ぜひこの法案を成立させていただいて、そして、次の時代に向けた新しいワークルールづくり、これに踏み出していきたいと思うところでございます。

 きょうは、私、民主党案に質問するわけにはまいりませんので、政府案に対して幾つか質問していきたいというふうに考えております。

 今回の政府案の一番大きな問題点は、通常の労働者とパート労働者のいわゆる均衡処遇というものを見ていくときに、その比較の対象となるところが極めて限定的で、パート労働者のうち本当に差別禁止の対象になるパート労働者というのは極めて限られるのではないか、そしてまた、今、実態は、通常の労働者といえども極めて長時間労働なり過重な労働が強いられているという実態にありますので、一体どの通常の労働者とどのパート労働者を比較するかということが、やはり大変大きな問題なんだろうと思っております。

 そういう点からまず質問させていただきたいと思うんですけれども、一体だれとだれを比較するのか。通常の労働者の働き方も一律ではありません。これは、先日内山委員が質問されていたことでありますけれども、つけ加えてということで質問していきたいと思いますが、まず第一点目は、所定労働時間が週三十五時間の労働者、これは、このパート労働法で言うところの通常の労働者にもなり得るし、また短時間労働者にもなり得るということだと思うんですけれども、一体どういう要件を満たせば通常の労働者となるのでしょうか。恐らく通達だということなんでしょうが、しかし、通達の中には三十五時間という数字などはどこにも書いていないわけですね。いかがでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律で考えております通常の労働者とは、いわゆる正規型の労働者を言い、具体的には、社会通念に従い、フルタイム勤務の者について、当該労働者の雇用形態が期間の定めのない契約であるかどうか、それから待遇、その中身としては、長期雇用を前提とした待遇がなされているかどうか、こういったものを総合的に勘案して判断するということにしているわけでございます。

 今御指摘のありました週の所定労働時間が三十五時間という方でありますが、この方につきまして、今申しましたような要件を満たせば、これは通常の労働者ということで判断されるものというふうに考えております。

西村(智)委員 別の聞き方をいたしますけれども、それでは、通常の労働者の中には、いわゆる短時間正社員も含むというふうに考えてよろしいのでしょうか。

大谷政府参考人 通常の労働者につきましての概念、先ほど申し上げましたところでありますが、今お話のありましたいわゆる短時間正社員でありますけれども、この方につきましても、雇用の要件を満たせば通常の労働者として判断されることになるわけでありますが、ほかにフルタイムの通常の労働者がいる中で、例えば極めて短い労働時間勤務の短時間正社員という方がおられた場合については、これはいわゆる正規型のフルタイム労働者と判断される可能性は低いのではないかということで、個別の事情により判断する要素があると考えております。

西村(智)委員 雇用期間の定めのない契約を結んでいる労働者は、今のパート労働者の中で一定の比率を占めております。どういう要件を満たせば、こういう労働者が通常の労働者となるのでしょうか。長期雇用を前提とした処遇となっているかどうかが判断基準となるのか、伺います。

大谷政府参考人 通常の労働者の考え方は、冒頭申し上げたとおりでございます。このケースの考え方でありますけれども、パート労働者と一般に言われている方の中で、期間の定めのない方があるわけでございまして、こういった方々につきましても、冒頭申し上げました通常の労働者という要件を満たせば、この法律上の通常の労働者として判断されるということはあり得ると考えております。

西村(智)委員 それでは次に移りますけれども、既に正社員と同じ処遇制度が適用されている短時間労働者も存在いたしております。こういった短時間労働者はどういう要件を満たせば通常の労働者ということになるのでしょうか。これは雇用期間の実態で判断するのかどうか、お伺いいたします。

大谷政府参考人 このケースでありますが、例えば、正社員と同じ処遇制度が適用されているということになるわけでありますけれども、この方については、一般にパートというふうに呼ばれている方が多いわけであります。これらにつきましても、先ほどのケースと同じでありますけれども、通常の労働者、いわゆる正規型の労働者がいるということ、それから、フルタイム勤務の者でその雇用形態や待遇を総合的に勘案して判断するということについては、これも同じ考え方でありまして、その要件を満たせば、これは通常の労働者として判断されることになるというふうに考えております。

西村(智)委員 同じ職場に週四十時間の正社員と週三十五時間の正社員がいる場合に、短時間労働者の差別禁止あるいは均衡待遇の比較対象は、その両者を含むと考えてよろしいでしょうか。つまり、週三十五時間の正社員との比較もあり得るという理解でよろしいでしょうか。

大谷政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたとおり、週三十五時間の正社員という方もおられるわけであります。そういう方については通常の労働者と判断される場合がありますので、その場合は、今回の改正法の適用において、比較対象としては、いわゆる短時間労働者と通常の労働者との比較対象になり得ると考えております。

西村(智)委員 転換制度が今回あるわけでありますけれども、同じ職場の中で通常の労働者への転換という場合に、週三十五時間の通常労働者への転換も含むというふうに考えてよろしいでしょうか。

大谷政府参考人 週三十五時間の正社員のケースでありますけれども、先ほど申しましたような考え方でこの方が通常の労働者というふうに判断される場合につきましては、そういう形への転換の推進策を講じるということは、これは改正法案上のいわゆる転換の義務を履行したことになると考えます。

西村(智)委員 今のお伺いの中で、実態で判断するという一連の御答弁でありました。つまり、事業所側の主観ではなくて実態で判断するというのは、非常に重要なポイントであろうというふうに考えております。

 それで、だれとだれを比較するかという項目でいいますと、最後の項目でありますけれども、今は週三十五時間の正社員というのは存在いたしませんが、新たにそうした枠組みをつくることも当然含まれると考えますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 個々の事業所におきまして、週三十五時間の正社員、こういう新たな枠組みを設けられるという場合につきましては、その新たな正社員が通常の労働者と判断される場合については、その形への転換というものも今回の推進の中に含まれているということでございます。

西村(智)委員 続きまして、次の項目に移りたいと思います。

 今回、法律の中では、第八条「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」、ここが大きな争点になるだろうと思っております。いろいろな分析をいたしておりますし、これまでの答弁もあるんですけれども、やはりまだまだ懸念というのは消え去らない。今までのパート労働者の置かれていた実態というのは、非常に厳しいものだったというふうに思っております。

 つまり、事業主が、一つの事業所の中で、通常の労働者、普通に働くいわゆる正規型、典型型の労働者と、それからパート労働者の人たちがいたときに、この人には、例えば長期的なキャリア形成を考えているのでこういうコース別の管理をします、パートの人たちに対しては、そういった長期的な人材活用は考えていないからこういうコースですということで、まず入り口で、コース別雇用管理で分けられるということが大変多かったわけですね。

 ですので、昨年の男女雇用機会均等法の改正のときに私たちが主張してきたのは一つはこの点でありまして、やはり性差別、間接差別という法理とあわせて、このパート労働法も一緒に見直しをしていかないと、実際にパート労働者の抱えている様々な問題というのは解消できないということで、昨年の均等法改正のときに、私たちはパート労働法の改正案も一緒に出したわけでありますけれども、政府の方では、パートの問題に対する認識というのがやはり薄いのではないかなというふうにずうっと拝見をしておりました。

 今回出てきた法案においても、やはり今実際にパート労働が抱えている問題への対策というのは極めて弱い。これで本当にパート労働の抱える問題が解消できるのか。この第八条の中で三要件をつけたことによって、むしろ、パート労働者の中でもさらに格差が広がっていくし、通常の労働者との間でもますます格差が広がっていく、そういうことが懸念をされているわけであります。そこのところをしっかりと皆さんは見ているのか。

 大臣の答弁もこの間ずっと伺ってまいりましたけれども、非常に高邁な、高尚な議論になってしまって、先日の小宮山委員との議論、私は正直言ってついていけないところがありましたが、きょうは、大臣に御答弁をいただく前に、政府参考人とこの第八条についてしっかりと議論をしたいというふうに考えております。

 まず、第八条、異動の範囲についてでありますけれども、昨日参考人質疑がありました。その中で佐藤参考人が指摘をされております。パートタイマーが働いている職場に正社員が配属されてきた、こういう場合に、その正社員は、キャリア形成を前提としたいわゆるジョブローテーション、この一環として配属されてきたのであって、同じ職場にいても、そうしたジョブローテーションが想定されていないパート労働者とは処遇が異なっても当然だ。こういうことはあり得ることだというふうに思っています。

 しかし、これもきのうの参考人の御意見、中野参考人の御意見の中にありましたけれども、正社員のすべてがそういうジョブローテーションをしているとは限りません。中には、一定の部署を受け持つ範囲だけで異動している、そういう人たちもいるはずだと思うんですね。あるいは、実態や職場の慣行から見て、異動の範囲がおのずから限定されているという人もいるはずであります。

 つまり、質問はこうです。正社員の中でも幾つかの区分けがあるという場合には、パート労働者の異動の実態から見て、同じ区分けになる人同士を比較するということになる、そういう理解でよろしいのでしょうか。

大谷政府参考人 改正法案の第八条の差別的取り扱いの禁止、それから第九条第二項の均衡待遇において比較の対象となる通常の労働者は、職務内容が同一であることと、それから、今お話がありました人材活用の仕組み、いわゆる異動の範囲を含めてですが、そういうものが同じであること、この両方が最低限必要なわけでありますが、御指摘の人材活用の仕組みにつきましては、職務内容が同一であるという正社員について比較対象として見るということでございます。

西村(智)委員 では、別の聞き方をいたしますけれども、異動の範囲について、それは単なる取り決めではなくて実態でということであれば、きちんとした実態を伴うものでなければならないというふうに考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

大谷政府参考人 改正法案の第八条それから第九条第二項において規定しております職務の内容及び配置の変更の範囲につきましては、当該事業所における慣行その他の事情から見るということとされております。

 したがいまして、単なる取り決めが慣行とは異なっているというような場合もあり得るかというふうに考えますので、これは、そういった規定ぶり、それからその職場の慣行、双方で見て実態判断するということになると考えます。

西村(智)委員 その職場の慣行などというものが、やはり往々にして使用者の主観的な思いであるということは、これはあると思うんですね。例えば、このパート労働者について長期的な人材活用を予定しているか予定していないかと聞かれたときに、予定していますというふうに答える使用者は、それはなかなかいないと思うんですよ。

 この条文、八条の中で、いわゆる「見込まれるもの」というふうにありますけれども、ここの部分です。ここの部分は、私は、正直言って削除すべきではないか、政府案の中でも非常に問題の多いところでありますので、最低限ここは削除して出すべきではなかったかというふうに思います。

 まずその点について伺いつつ、また、その見込まれるということでありますけれども、入っているということでお伺いをするんですが、単なる予定ですとか、そういった予定や使用者の主観的な思いであってはならないというふうに考えています。職場の慣行を含めて、客観的な事情によって明らかになるものだというふうにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 今お話しになりました職場における事業主のいわゆる主観みたいな問題をどう考えるかということでありますけれども、ここで考えておりますのは、そういった単なる予定とかそれから事業主の主観ということではなくて、それは規定や慣行というものを客観的に見て判断していくというふうになると考えております。

 それから、見込まれるということの考え方につきましては、後ほど御議論があるかもしれませんけれども、どの時点で判断するかということでこれは必要な規定だというふうに考えておりますけれども、それは単に主観のことを言っているわけではないというふうに思います。

西村(智)委員 その見込まれるというところは、結局、この前、小宮山委員の質問にもありまして、どの時点からというような議論ともかかわってくることだとは思うんですけれども、私は、これはまさに法案が骨抜きにされるおそれのある、極めて重大な文言だというふうに考えております。

 続いてなんですけれども、異動について、単なる形式的な異動、先ほど申し上げたような、単に機械的なジョブローテーションということではなくて、職務との合理的な関連性が必ずこれは要件になるべきだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 異動の中身でありますけれども、これは、法文上は、当該事業所における慣行その他の事情から見るということになるわけでありますが、その異動の範囲が合理的かどうかということであります。これは正社員も含めて、職場における人事異動がどうなっているかという、むしろ比較する対象との関係で、実態によって判断していくものであろうというふうにこのパート法の中では考えるわけであります。

 しかしながら、合理性云々につきましては、当該の人事異動の内容が、例えば転勤であって、それが先ほどもお話しになりましたような、昨年も議論がありましたけれども、男女雇用機会均等法の中で男女間の間接差別とみなされるような場合にありましては、これは男女雇用機会均等法による規制の対象となっていくかというふうに整理して考えております。

西村(智)委員 均等法ではよろしいんですけれども、それでは今回のパート労働法では、職務との合理的な関連性は要件にされていないという理解ですか。

大谷政府参考人 職場の実態として行われている異動というものを対象の尺度にするということだと思います。

西村(智)委員 そこが、非常に法律のいろいろなところにまたがって、結局、いろいろなところで穴に落ちてしまう危険性のあるところなんだろうと思います。そこは、やはり性差別という視点をしっかりとここに含めて考える必要があるということからいたしますと、不十分な答弁だったかなというふうには考えております。

 それで、ちょっと具体的に異動の範囲について伺っていきたいのですけれども、具体的な事例を申し上げますので、それに即してお答えいただければと思います。

 あるパート労働者、週四日勤務で働いているのですが、そこでは、正社員は、就業規則において異動ありの規定の適用がある、こういうふうにされております。しかし、正社員でも部門によっては異動が全くないところもあれば、異動はあってもせいぜい三〇%前後の社員が経験をするだけで、残りは異動しないまま定年まで勤務をしております。それであるのに、週四日勤務であるパート労働者は日給制で、金額にも開きがあって、その他の労働条件にも格差が生じているというケース、こういうときに、異動の範囲は実態で判断するのでしょうか。あるいは規定の適用で判断するのでしょうか。

大谷政府参考人 この改正法案の第八条や第九条第二項におきまして規定しております職務の内容及び配置の変更の範囲につきましては、先ほど答弁申し上げましたとおりに、規定と慣行の双方から判断するということになるわけでありますが、今御指摘のケースについて、実際に異動しておられない正社員がいたといたしましても、集団として異動しているという実態があれば、それを勘案するというふうに考えます。

西村(智)委員 何と、本当にそれでいいんですか、集団として実態があればと。ここはちょっとやはりおかしいんじゃないかと思います。異動の範囲は実態で判断する、規定の適用、両方だということであればまだ、ちょっと理解できないんですが。

 ほかにもありますので続けて伺います。では、単なる予定にすぎない異動や社員としての位置づけ、例えば将来の幹部候補などということ、それによって、今回、改正パート労働法の八条の適用、これが決せられるということになるのでしょうか。

大谷政府参考人 繰り返しになる部分もありますけれども、この改正法八条、それから九条二項において、これにつきましては、当該事業所における慣行その他の事情から見ることとされているわけでありますが、今お話にありましたような予定ということで、この予定が事業所における慣行あるいはその他の事情から見てほとんど実態と異なるというようなことであれば、これは、第八条や第九条第二項の規定の適用がある可能性があるということで考えます。

西村(智)委員 そういうことであるとすれば、採用するときに、予定が違うというように関連する労働条件の違いを盛り込んでおけば、パートは低賃金で雇えるということになりますが、法改正はそういう趣旨だというふうに受けとめてよろしいのでしょうか。

大谷政府参考人 予定について、これはさっき申しましたみたいに、客観的にこれは見なければいけないわけでありますけれども、その範囲でこの法律は適用されていくというふうに思います。

西村(智)委員 ここはやはり、異動の範囲ということでいいますと、本当に厚生労働省はパートで働いておられる方々の職場の実態を見ておられるのかなというふうに、今回の答弁を伺っておりますと痛感いたします。

 これまでにも何度も議論はありましたが、実際に差別禁止の対象となる人たちが、山井議員が、もう一カ月くらい前になりますよね、もしそういう人がいたらここに連れてきてくれと言っているのに、まだそういう人も出てきていない。しかも、今、この第八条の関係でいろいろ質問をいたしましたけれども、本当に、ただ規定をつくっただけで実際にこれで実効が上がるのかどうかというのは、私は、法律が実際に施行されたときに大変大きな心配をしております。

 私たちの考え方は、八条のように、こういった三要件をつけて対象となるパート労働者を限定するのではなくて、すべてのパート労働者に対していわゆる差別的な不合理な取り扱いを禁止するということにいたしました。こうすれば実にすっきりとして、職場の実態に合った均等待遇が実現されていくというふうに考えておりますけれども、この政府案の中では、ますます本当にパート労働が分断されていくおそれ大だということを、この場で申し上げたいと思います。

 引き続いて、やはりこの第八条の関係でありますけれども、期間の定めについて伺いたいと思います。

 第八条の二の要件になっております期間の定めのない雇用でありますけれども、期間の定めがあっても契約を更新して継続していく、継続して働くことを前提とするもの、こういうふうに客観的に判断できる場合は含まれるというふうに理解してよろしいでしょうか。

大谷政府参考人 改正法案の八条第二項は、期間の定めのない契約となっているかどうかを実態で判断するということが趣旨であります。御指摘のケースは、期間の定めがない契約と実質的には変わらないと客観的に判断できる場合であれば、これは対象となると考えます。

西村(智)委員 そうでありますれば、実際に反復更新をしていない場合であっても、契約を更新して継続して働くことを前提とした契約関係にあると判断されれば、契約更新を予定するものとして、仮に一度も契約更新をしていなくとも、第八条の二項の要件を満たすというふうに理解してよろしいでしょうか。

大谷政府参考人 改正法八条第二項は、期間の定めのない契約となっているかどうかを実態で判断することが趣旨であるというふうに申し上げましたが、このケースにつきまして、期間の定めがない契約と実質的には変わらないと客観的に判断できる場合であれば、今御指摘のような一度も更新されていないというケースでも認める場合がある、対象になることはあり得ると考えております。

西村(智)委員 そうしましたら次の項目に移りますけれども、いわゆる職務の責任についてであります。

 今回、職務の要素とされている責任につきましては、あくまでもその職務内容に必然的に伴う責任でなければならないというふうに考えておりますが、例えば突発的な事故やトラブルに対する対応というのは職務に伴う責任だと考えられます。その結果として残業するケースが生じることもあるだろうというふうに思います。また、職場全体の業務が多忙で、そこから残業が生じるということもあり得るだろうというふうに考えます。

 しかし、だからといって、あらかじめ残業に対応できるかどうかということが責任の程度を判断する第一義的な要件にはならないと考えますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 残業についての考え方であります。職務の内容の要素であります責任が同じということに当たるかどうかというのは、今お話ありましたように、トラブルの発生時とか臨時や緊急時の対応とかノルマ等が、同じように職務上の責任として含まれるかどうかを判断するということであります。

 したがいまして、残業につきまして見ますと、職務上の責任の軽重に伴って差異が生じるということはあるとは考えますけれども、今御指摘のありましたように、残業を責任と見る、一義的にそういうふうに見るということにはならないというふうに考えます。

西村(智)委員 そこは大事なところだろうと思います。しかし現実は、残業できますかできませんかということは、恐らく使用者の側は常にパート労働者に突きつけている問題だろうと思いますので、そこのところは、言ってみれば、政府の指導体制ということになってくるんだろうと思うんですね。

 それで、その指導体制というところについては後でまたお伺いをいたしたいと思いますけれども、その前に、ILOの問題について伺っていきたいと思います。

 これも、昨日の参考人質疑の中でありました。中野参考人がILOの条約勧告適用専門家委員会、ここの引用をされまして、二〇〇七年の報告書において、女性パート労働者は男性パート労働者よりも長く仕事についているのに時間給は男性より低いという事実を指摘しております。賃金のジェンダー格差に対して講じられた措置とその影響について政府に検討結果の報告を求めるなど、数点にわたって、ことし六月の総会までに情報提供するように求めているわけですが、この中に、同一価値労働同一報酬の原則を実施するための手法の開発という、極めて重要な項目を含んでおります。

 今回の短時間労働者法、今回のパート労働法の改正に当たって、こうしたILOの要請に即した措置を盛り込んでおくことが国際的な責務としても求められると考えますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 御指摘いただきましたILO条約勧告適用専門家委員会の意見におきまして、同一価値労働同一賃金原則の実施に関して、客観的な職務評価を促進するためにとられる措置について示すように求められているということでございます。

 厚生労働省といたしましては、企業に対して、公正、透明な人事制度の確立を含むポジティブアクションを促すとともに、平成十五年四月に作成いたしました男女間の賃金格差解消のための賃金管理及び雇用管理改善方策に係るガイドラインにおいても、賃金決定基準、評価基準の基準の明確化等、あるいは、公正、透明な賃金制度、人事評価制度の整備に取り組むべきとしているところでありまして、このような取り組みが企業において進むということは、男女間の賃金格差の解消に資するものというふうに考えております。

 この六月に開催されますILO総会に向けてどのように対応するかにつきましては、現在まだ検討中でございますけれども、いずれにいたしましても、我が国の取り組みの状況について可能な限り情報提供してまいりたいと考えております。

西村(智)委員 賃金決定方法の明確化、これが男女の賃金格差の解消につながるとおっしゃった、その根拠を教えてください。

大谷政府参考人 これは、今回の審議でもるる御指摘いただいているところでありますけれども、パート労働法の中でいえば、これは、そういう職務についての分析を進めて客観的な評価を進めていって、格差がそれによって縮まるということが考えられるわけでありますが、それと同じような考え方が、このILO百号条約をとらえましても想定できるのではないかというふうに考えております。

西村(智)委員 ILOにどう報告するかは今検討中だということでありますけれども、それでは、今回の改正に当たっては、ILOの要請に即した措置は盛り込まれていないというふうにお考えでしょうか。

大谷政府参考人 ILOにどういうふうに報告するかにつきましては、現在、まだこれは政府内で、あるいは関係者間で検討していかなければなりませんけれども、今回の法律の改正をごらんいただければ、パート労働者の七割が女性であるという実態にかんがみますと、この法案が成立すれば、それは結果として男女間の賃金格差の縮小にも資するものであるというふうに考えております。そういったことについても書き込むかどうか検討してまいりたいと思います。

西村(智)委員 同一価値労働同一報酬の原則を実施するための手法の開発ですね。それでは、こういう項目について政府案は何かしらの対応ができているということで考えておられるのか、私たちはそうではないと思いますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 これは朝の質疑でもございましたけれども、そういったことについて政府部内で研究してきたこともあり、それから、今回の法律改正のプロセスにおきましても、どういった法制上の立て方があるかということでいろいろ検討してきたところがあるわけであります。

 それに加えまして、企業における先進例等というものも少しずつ出てきていることをこちらも把握しているわけでありまして、こういったものを促進、支援することも含めまして、その進展については何らかの考え方が示せるのではないかと思います。

西村(智)委員 しかし、一部の企業でやっておられるのを待ってそれから政府の方で何らかの対応を考えるというのは、これはやはり、何度も申し上げることになるでしょうか、現状追認でしかない、現状に追随をしているだけで、立法する側の意思というのはどこにも示されていない、こういう問題点が今回の法案の中でもあるわけでありますね。私たち民主党の案では、今回、均等待遇等検討委員会、この中で、物差しづくりに向けて一歩を踏み出していきたいというふうに考えております。

 今の日本の中では、職務給というものが全く確立をされていない。幾つか、ペイエクイティー研究会なども存在しておりますし、また、その裁判例で非常に大きな影響を与えた、そういう事例もあります。学界の方でも、学術の世界の方でもいろいろな検討がされているということであるのですけれども、しかし、どういう働きをどの程度までやったときにどの程度の賃金あるいは処遇が確保されるべきかという、その物差しづくりにいつまでたっても踏み出していかない限り、やはり、今回のパート労働法のように、細かく、政府案が言うところのグラデーションですか、グラデーションといいつつも、結局いろいろな要件がそこにぶら下がってくるわけでありますから、例えば、いわゆるパートの労働者の側から見たいろいろな問題点と使用者の側から見たいろいろな問題点というのは必ず合わないといいますか、ギャップが生じるわけですね。

 そのギャップをいつまでもほったらかしにしたままにしておくと、物差しづくりに踏み出さない限り、こういう問題はいつまでたっても先送りされることになると思うんです。ですから、今回はそういった意味での物差しづくりに踏み出す大きなチャンスだったのではないかというふうに思うんですけれども、今回、また政府がそのチャンスを逃してしまったということでありますので、私たち民主党の方から提案をさせていただいた。

 大臣、ここでちょっと御意見、御所見をお伺いしたいんですけれども、ILOのこういった要請もありますし、この物差しづくりにやはり政府としてはこのタイミングで踏み出すべきでなかったかというふうに私は考えます。大臣は現状追随だというふうにお考えになっておられるようなんですけれども、しかし、法律をつくる側がそんなことでいいのか。

 やはり、いろいろなパート労働者の方々のお話を聞きますと、いわゆる政府の方から、まあ、ガイドラインという言葉が出たりすることもあるんですが、やはりきちんとした考え方を示していただくための努力はしてもらいたい、こういう声があるわけですね。大臣はいかがお考えでしょうか。

柳澤国務大臣 この前も園田委員の御質疑に対して私からお答え申し上げたことでございますけれども、厚生労働省といたしましても、物差しづくりと申しますか、均衡待遇の均衡とは一体何なのかということについて研究を重ねてきたわけですけれども、やはり、現在の労働法制というものは、そこにあらわれた労使の意思の合意ということを大きな枠組みといたしておりまして、それに到達することができなかったということでございます。

 しかし、そうであることを放置しておけばいいかというと、そうではないということで、今回は、まず均衡待遇ということを実現すべく、もろもろの措置によってそうしたことを実現していこう、そして、その中で通常の労働者と同視すべき方々については、これは差別の禁止という均衡処遇の究極の形ということでそういうものを適用させていただく、こういうことにいたしたというのが経緯であります。

 したがいまして、今委員のおっしゃるような物差しづくりということについては今後とも追求していくということにはなろう、このように思いますが、政府が、現実の実態と乖離した、そういうことを目的としたような法律改正をするのがいいのか、あるいは、現実を一歩一歩改善していく中で実態の方がいろいろとまた動きを持ってくる、そういうふうなことで、例えば職務給というようなものがある程度広範に認められるようになる、そういう事態になると、今御議論になっているような均衡処遇というものが非常に見える形で、水準の形で出てくるというようなことも考えられるかと私としては思っているわけでございます。

西村(智)委員 実態は、このパート労働法ができてから、パート労働者の中にいわゆる有期雇用というのがふえ続けてきているわけですね。こういった実態があるということからいたしますと、やはりその有期雇用契約も含めて全体的な取り組みを進めていかないと、このパート労働法が改正されたときに、次に何が懸念されるか。有期、派遣、こういったところにどんどんといわゆるパートからこぼれていってしまうことですよ。つまり、パートからそういった別の雇用形態にまた移っていく、こぼれていってしまうということも懸念されているんですね。

 ですから、今回のパート労働法の改正に当たっては、これはもう重々慎重でなければならないというふうに考えますし、また、いわゆるその有期雇用契約についてでありますが、この通常国会で、労働契約法の中で入ってきていないというふうに伺っております。検討項目としてはあったんだけれども、法案の中には入っていないと伝えられておるんですけれども、この有期雇用契約の問題、これを政府は一体どういうふうに対処しようとしているのか、この点について大臣の所見を伺います。

柳澤国務大臣 有期雇用の社員についても、先ほど雇・児局長から御答弁申し上げましたとおり、例えばフルタイムの有期契約社員というのは、これはまさに、パート労働法の対象では直接ないのでありますけれども、この雇用管理に当たっても、当然にこのパート労働法改正法案の考え方が考慮されるということは、我々、強く期待をいたしておりますし、そうでなければならない、このように考えているということを、まず第一点、これは雇・児局長の答弁の復習ですけれども、申し上げておきたい、このように思います。

 それから、有期契約労働者一般の問題について、例えば、労働契約法制の中で考えるべきではないか、こういう問題の提起でございますが、この点については今委員御自身からも御指摘がありましたように、審議が行われたわけでございますけれども、この審議においてやはりコンセンサスを得るに至らなかった。労働者代表の委員からは、均等待遇原則というものをぜひ契約法制の中で位置づけるべきだという意見が出されたのに対して、使用者側からは、有期労働者の態様というものが非常に多岐にわたっておる、具体的にどのような労働者についてどのような考慮が求められるのかということが不明ではないかということで、今申したように、合意に至らなかったわけでございます。

 したがって、この問題は審議会自身においても引き続き検討することが適当であるということで、これから、今後また、この答申を踏まえて検討を進めていくということを表明しておりますし、私どももそうしたことを推し進めてまいりたい、このように考えております。

西村(智)委員 今までも何度もこの有期雇用契約の問題を議論する場はあったと思います。そして、いつも課題として議題には上がってきたんだろうと思います。しかし、その審議の過程の中で、結局、政府のリードの不足もあったんでしょう、まとまらなかった。結局、この問題はずっと置き去りにされ続けてきているわけですね。

 今、大臣は、これから検討していきたいというふうにおっしゃっておられますけれども、これはいつまでたったら本当に議論ができるんだろうか、今回のパート労働法の改正案を見ていても、有期という視点は全くありませんし、またこれから先ほったらかしにされるのではないか、そういう懸念を強く持っているわけであります。

 ですので、今回の法案については大変大きな問題点があるということを申し上げ、私たち民主党の法案の中では、均等待遇、この大原則を貫くのだというこの柱をしっかりと立てております。こういった点では、政府案にはない、極めて特徴的なよさもある法案でありますので、ぜひ委員の皆さんからも御賛同いただきたい点でございます。

 ちょっと時間が少なくなってまいりました。賃金の決定方法について伺っていきたいと思います。

 今回、政府の法案においては、一定の要件を満たす短時間労働者について、賃金の決定方法を通常の労働者と同一にする、そういう努力義務を課すことにしております。これは、もう既に現行の指針があり、それに盛り込まれている内容ですが、今回、この指針から法律にいわば引き上げた。

 それで、確認なんですけれども、指針に基づいて指導や助言を行ったり、それによって改善が図られた事例というのはどのくらいあるのでしょうか。

大谷政府参考人 現行のパート労働法第十条に基づき行いました助言の実績といたしましては、平成十七年で助言で終了したものが千百七件ということでありますけれども、賃金の決定方法を通常の労働者と同一にするとか、こういった細目についての件数は把握していないところでございます。細目についての件数は把握しておりません。

西村(智)委員 多分ないと思うんですね、ないと思うんです。

 そういたしますと、これが今回法律に引き上げられた、努力義務になったということなんですけれども、これによって行政の対応は何か具体的に変わるのでしょうか。

大谷政府参考人 今回、この法律によりまして、その措置をパート労働の指針から法律上の努力義務に引き上げるわけでありますが、そういったことによりまして、法的な正当性あるいは社会規範性がこれは格段に向上することになるところでございます。

 これに伴いまして、その行政指導を行います場合につきましても、法律上の根拠に基づき、強い社会規範性による実効性が期待されるというふうに考えておりまして、行政としても、本法案の成立、施行の際にはしっかりその施行に努めたいと考えます。

西村(智)委員 法規範性が高まるということは、それはそれでいいと思うんですけれども、実際に役所側の相談体制みたいなもの、受け入れ体制、これについてしっかりとやる仕組みをつくる必要があるのだろうというふうに考えております。

 今回、賃金の決定方法を合わせるということについては、既に企業の取り組みが進んでいるところがあります。法律で範囲を限定するのではなくて、行政として、その普及、促進を図っていく施策が必要ではないかというふうに考えますが、そういう取り組みを強化する考えはあるのでしょうか。

大谷政府参考人 改正法案に規定しております均衡待遇、これを確保していくための措置は、これは法律で一律に強制することができるのは最低限のものにすぎないというふうに考えておりまして、御指摘の、賃金の決定方法を通常の労働者と合わせることに限らず、個々の事業主がより進んだ雇用管理を行っていただくことが望ましいということは言うまでもないところでございます。

 厚生労働省といたしまして、短時間労働援助センターによる助成金の支給を通じて支援をしていくということ、また、先進的な雇用管理の事例について今後もできる限り情報提供に努めてまいりたい、そういうふうに考えております。

西村(智)委員 特に中小企業などでは、考え方は理解できてもなかなかその実施が難しいという面があるんだと思うんです。その特段の指導、今、短時間労働援助センターを通じて助成金というような答弁もありましたけれども、私はやはり、全国に津々浦々、労働局の中に例えば専門官を配置するなどをいたして、しっかり政府として取り組む、そういう体制づくりが必要ではないかというふうに考えておりますけれども、現時点で政府は、そういう仕組みづくりといいますか体制づくり、きちんと専門官を配置するというようなことを含めて、やるおつもり、意欲があるのかどうか、その点について伺います。

大谷政府参考人 今回、もし法律を成立させていただきますれば、これは先ほどお話のあった、中小企業への指導のみならず個別の相談への対応を含めまして、重要な業務が生じるというふうに考えておりまして、これは各都道府県の労働局の中で、雇用均等室のみにとどまらず、その局としての対応を進めていきたいというふうに考えておりますし、その専門官の配置について、全国配置等の議論についてはまだ確たるものは申し上げるところではありませんけれども、研修等を含めて、その担当する職員の能力あるいは意欲なりについて、その体制の強化を進めていきたいと考えております。

西村(智)委員 今回の改正法では、いろいろ第八条を中心に大変多くの問題点がある。私たち民主党の案は、本当に均等待遇、これは何度も申し上げておりますけれども、完全にイコールにするという意味ではありません。

 言ってみれば、職務の実態に応じた比例的な均等待遇というものを目指しているわけでありまして、これまでも議論になってまいりましたように、例えば慶弔休暇もないといったパート労働者の実態は広く知られております。慶弔休暇やあるいは通勤手当というようなものは、これはもう賃金の一部だということからいたしますと、これがないというのは明らかに賃金格差ということになってまいりますし、そこのところがしっかりと解消していけるような政府案には今回なっていないわけですね。

 そこのところを私たちは問題にしているわけでありまして、これからの働き方、恐らくもっともっと多様な複雑なものになっていくんだろうと思います。そういったことを見越して、私たちはきちんとした法案を提出しておりますので、ぜひ、これをまた契機として均等待遇に向かって進んでいきたい。政府の方からもぜひ十分な取り組みをしていただきますようにお願いをし、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 今までの質問を聞いていて、当たり前のことだと思ったことをちょっと最初に確認したいと思います。

 今度の改正法案は、同一価値労働同一報酬の原則の立場に立った改正法案なのか、それともそれを否定した改正法案なのか、この点を最初に確認して質問に入りたいと思います。

 もう今まで何回も出されておりますILO百号条約等々で、同一価値労働同一報酬の原則、これは日本政府も批准しているわけでございますから、当たり前とは思っていたんですが、それを言葉として法制化していないにしろ、その原則の立場に立っていることは当たり前と思っていたんですが、いろいろな答弁から見るとどうも疑わしいところも出てきた。

 まず、その原則を容認する立場にこの改正法案が、法律の立場としてそうなっているのかどうか、それともそれを否定しているのかどうか、その点お答えください、大臣。

柳澤国務大臣 同一価値労働同一賃金ということにつきましては、これは我々、その原則に立って考えているということでございます。今、筒井委員、直截な御質疑でございますから、私もそのように原則的な答えを申し上げました。

筒井委員 ありがとうございます。単刀直入な質問をしたいと思いますので、そういうふうにまたお答えいただきたいと思います。

 一緒にお聞きしますが、均衡待遇の原則あるいは均等待遇の理念という表現もされておりますが、この立場にも立っておられますね。

柳澤国務大臣 我々は、均衡ある待遇というものを実現しようということで、今回の改正法においても努力をさせていただいているわけです。

筒井委員 そうすると、今度のパートタイム労働研究会最終報告書でも引用されております長野地裁の判例がありますが、それは、今言った二つの原則、同一労働同一賃金の原則、その根底にある均等待遇理念、その事件の場合はそれに違反しているから、正社員よりも賃金が八〇%以下になるとそれは違法である、無効であるという判断をしているわけですが、この判決の立場と今度の改正法案の立場は同一というふうにお聞きしてよろしいでしょうか。

大谷政府参考人 御指摘のケースは、いわゆる丸子警報器事件の判決のことであろうかと思いますけれども、このケースは、ちょっと補足をいたしますと、組み立てラインにおいて基幹的業務に従事しながら、その同一業務に従事する正社員よりも低い賃金が支払われてきた女性臨時社員について、賃金額が同じ勤続年数の女性正社員の八割以下となるときは、公序良俗違反として違法となるという考え方を示されたものでございます。

 今回の私どものこの法案の立場に立ちますと、これと全く同じ論理構成ではなく、むしろ均衡処遇というものについて各比較を進めてその処遇の改善をする、それから、その中において正社員と同視すべき方については、八割というよりも、全くこれは同一労働同一賃金ということで、同じ待遇を求める、差別禁止を求めるという立場に立っております。

 もしこの丸子警報器事件の事実認定が、今回の私どもの法案で考えました差別禁止の対象、いわゆる職務の内容、長期にわたる人材活用、契約期間、こういった三つの要件が同じという方であれば、これは今回の法律においては、同一労働同一賃金を実現するべきだという立場に立って、このケースについても十割、いわゆる八割を超えて十割の待遇を求めるということになろうかと思います。これは仮定の議論でございます。

筒井委員 仮定というのはちょっとあれなんだけれども、ただ、私、具体的な事例として挙げて、しかもこれは、先ほど言いましたように、研究会最終報告でも引用されている判例ですから、ここでは具体的な事例全部、労働契約期間に関してだってみんな事実認定されているわけですから、こういう事実関係を前提にした場合には、今の答えですと、論理的には違うけれども、八〇%まで通常労働者と同じくすればいいというんじゃなくて一〇〇%同じくしなければいけない、今度の改正法案の立場だとそういう結論になるということですね。

大谷政府参考人 より詳しく申し上げますと、さっき申し上げましたが、職務が同じであるかどうかとか、長期にわたる人材活用の仕組みが同じであるかどうか、あるいは契約期間について、個々のケースについて認定したわけではありませんので、あの判例だけでこれに当たる、当たらないと断言するわけにはいかないわけでありますが、恐らく、こういったものを当てはめていきますと、同じであるのではなかろうかというふうに考えますと、それはむしろ八割というのではなくて、同一労働同一賃金ということで、差別を禁止するという立場でこの法案は構成されているというふうに思います。

筒井委員 そうしますと、この同一労働同一賃金の原則、均等待遇の原則ということをはっきり認めた上でも、それの適用になる場合かどうかというのは、個々具体的な事例で判断されるわけですね。

 今度の場合も、だから、丸子警報器事件では、裁判所の方で判断をいろいろしているわけです。だから、同一労働同一賃金の原則ということがはっきりしたとしても、具体的な事例でいろいろなことが判断されて最終的に決定される、こういうことがちゃんとなされるわけでございます。

 その上で、同一価値労働同一報酬の原則、それから均衡待遇の理念あるいは原則、この立場に立つというのが今度の法案のはっきりした立場であるならば、何でそれを法制化しなかったんですか。

大谷政府参考人 もし、同一労働同一賃金についてこれを全パート労働者に適用しようと考えましたときには、これは比較する中で職務というものが分析されて、同じであるということが確認されなければならないわけであります。これは審議会でも長々議論になったところでありますが、現在の我が国の実情においては、これは正社員も含めまして、その職務を分析して、同一労働同一賃金という形になっていないということで、現在、法律でそれをパート労働者に強制的に適用するということはなかなか難しいということで、むしろ、現在とり得る手段として、その比較をして、合理性のない格差を均衡ということで縮めていくということを原則に考え、なおかつ、同じと認められるものについては同じ対応をするというものをさらに突き進めて、規定を盛り込んだという形でございます。

筒井委員 おかしなことを言われる。同一価値労働同一報酬の原則の立場に立っている、その立場に立った規定が今度の八条なんでしょう、そちらからいえば。これはその立場に立ってみれば、極めて基準として私は誤りだと思うんだけれども、その三つの条件をつけて、職務の同一性だとか、人事の拘束性だとか、あるいは期間の定めのなき労働契約だとか、そういうのを含めて同じ労働に関しては同一報酬をきちんと払わなければいけないという、今度の八条は同一労働同一賃金の原則に立った規定だという解釈じゃないんですか。今の答弁はさっきとまた違ってくるね。

大谷政府参考人 今回の私どもの考え方は、均衡というものの原則に立ちまして、しかし、全く同視すべきものについては同じ処遇をするという形になるわけであります。そこについては、同一価値労働同一賃金と申しますか、その賃金体系、給与もそれは同じにしてほしいということなので、究極的にそうした形で実現していく、差別禁止部分についてはそういう形になる。

 ただし、これは審議会でも長く議論があったところでありますけれども、同視するということになって同じ処遇を認めるということになりますと、それはこの賃金だけでなくて、住宅手当であるとか、あらゆる処遇をそろえるということになりますから、その要件については、それは関係者がひとしく納得ができる基準というものを立てて、その基準に合ったケースについて同一を確保しようという形でございます。

筒井委員 問題を広げないでください。同一価値労働同一報酬の原則を容認した立場だなということは、最初に私は確認している。八条はそうでしょう。その立場に立った上で規定しているんだから、この八条は同一価値労働同一報酬の原則に立った規定なんでしょう。今、住宅手当か何か、全然問題を別にずらそうとしているけれども、同一報酬といったって、その具体的な中身は職務関連の賃金だとかそういうものに限定されるとか、そういうことの問題であって、今そんな別のことを言っているんじゃないんです。

 さっきの質問をもう一回しなきゃいかぬな。八条は同一価値労働同一報酬の原則に立っているんですか。立っていないんですか。

大谷政府参考人 八条は同一価値労働同一賃金という形の考え方に立っているわけでございます。

筒井委員 だから聞いているんです。そういう立場に立っていて、そういう規定をつくっているならば、同一価値労働同一報酬の原則をなぜ直接法制化しなかったのか、こういう質問なんです。

大谷政府参考人 そういう方に、適用するべき対象について、今回法制化したということでございます。

筒井委員 私の質問にちゃんと、わかっていて逃げられると思っているんだろうと思うけれども、同一価値労働同一賃金の原則の立場に立った規定が八条だ、そう認めているわけですよ。そうしたら、直接その原則をなぜ法制化しなかったのか、こういう質問なんです。

大谷政府参考人 繰り返しになりますが、第八条においては、対象者を確定して、その対象者について同一価値労働同一賃金の実現を目指したという規定ではありますけれども、このパート労働法につきましては、すべてのパートタイマーを対象に考えた法律でございまして、それは、その対象ごとにその考え方、均衡待遇が適する方、それから均等待遇まで適用できる方ということを区分してすべての対象者をつくったということで、その原則の対象部分もありますけれども、そうでない方については均衡待遇という考え方で全体を整理しているわけであります。

筒井委員 均等待遇、均衡待遇の原則については後で聞きますよ。今、はっきり限定しているでしょう。何回も確認しているでしょう。八条は同一価値労働同一報酬の原則に立った規定だということを何回も認めておられるでしょう。それを認めていながら、この規定は不十分なんだけれども、それは別にして、そういう原則に立っているならば、その原則をなぜ直接法制化しなかったのかという質問なんですよ。問題をずらさないでください。

大谷政府参考人 その部分については直接法制化いたしたところでございます。

 ただ、すべてのパートタイマーに適用するということにはなっていない。すべてのパートタイマーには均衡原則と、それから究極的に同一労働同一賃金を実現する労働者がいるということでございます。

筒井委員 同一労働同一報酬の原則といったって、同一労働であるかどうかは、それはその具体的な中身によって決まってくるわけだから、同一労働同一報酬の原則を決めたからって、全部のパートにそのまま直接的に同じ扱いをしなきゃいかぬなんということはありっこない。そんなことをこっちは言っているんじゃないんですよ。八条は同一価値労働同一報酬の原則の立場に立った規定だということを、当たり前なんだけれども、それを認められているならば、何で直接その原則を法制化、法文化しなかったのかという質問なんです。

 八条と同じ趣旨なんですよ。八条は、だから、その原則を直接法文化しないで、その具体的な、その下の具体的な適用の方だけ法文化しているんだ。それを、原則そのものを法文化したって同じことなんですよ、そっちの立場に立てば。何でそれを、だけれども法文化しなかったのか、原則を。その質問なんですよ。

大谷政府参考人 法文の書き方の問題になるのかもしれませんけれども、私どもの書きぶりとしては、差別禁止という言葉をもってこの同一価値労働同一賃金を体現したというふうに考えています。差別禁止という考え方でございます。

筒井委員 それで、今の同一労働同一賃金の原則を法文化するかどうか、いろいろ議論されたと言われましたが、つまり、それを法文にするという意見もあったわけですね。

大谷政府参考人 審議会の経過の中ではあったと記憶しております。

筒井委員 それを最終的に法文化しなかった理由は何ですか。

大谷政府参考人 我が国全体の雇用慣行がそういう事態になっていないということで、この差別禁止という文言をもって、今回の対象についての同一労働同一賃金を実現したということであろうかと思います。

筒井委員 全然答えになっていないんだけれども、同じことを、またどうせ同じ答えをしてくるでしょうから、繰り返し。

 私は、同一価値労働同一賃金の原則からいえば、この八条のうち職務の同一性、これの基準は適切だと思うんですよ、せいぜい責任の程度を含めて見れば。業務の内容及び責任の程度、これが第一に書かれている。これが同一労働であるという原則であって、これが同じだったら原則同じ報酬を払うべきだという規定にすべきで、この後の、期間の定めのあるかないか、あるいは、人材活用といいますか、この法文上では配置の変更の範囲となっているけれども、この二つ目、三つ目の基準というのは、これは要らない。最初のものだけでいいというふうに考えるんですが、それはこの後また聞いていきます。

 それを別にしても、この八条に違反をした場合、当然、先ほどもちょっと出ましたが、その労働条件は違法、無効となって通常の労働者と同じ水準になる。これは今までも何回か答えられていると思うので、また当たり前の話なので、それを前提にしてお聞きします。

 その点、労使の方でどうしても話がつかなかった場合に、八条に違反する、しかし、使用者側は違反しないと言って調停になったり、最終的に裁判になったりした場合に、労働者側は何を証明しなくちゃいかぬのですか、この法文からいうと。差別である、違反であるということは労働者側が証明するんですか、それとも使用者側が証明するんですか。

大谷政府参考人 今、調停のケースそれから裁判のケースがあったわけでありますけれども、今回の制度におきましては、まず、事業主が判断して労働条件を決める。しかし、労働者がそれに対して、今回意見を求める権利が入っているわけでありますが、意見として自分たちの待遇について尋ねて得心がいかないといった場合に、これはまず都道府県の労働局にお運びいただいて、そういった際には、パート労働者の方が御主張があれば、労働局の方で事業主を呼んで、そういった事実関係について調べるということで、労働局が主体的に関与して、なおその先、調停まで進めるということになると思います。

 ただ、裁判のケースになりますと、これはその申請、要求をされる方からの証明が必要になるというふうに思います。

筒井委員 それがおかしいので、だから、法文の規定の仕方もおかしいんですよ。合理的な理由がある場合を除いて差別してはならないとか、つまり、同一価値労働同一報酬の原則をはっきり法文化して、そして合理的な理由がある場合を除いて差別してはならないとすれば、例外規定になりますから、それで使用者側の方に証明責任が出てくるんだけれども。この点があいまいなんだ、この法文は。

 今あなたが答えたような、労働者側に証明を要求する、それは現実問題として非常に困難性を労働者側の方に要求することになるんじゃないですか、結果として。

大谷政府参考人 今回の法律におきまして、そういう差別禁止の対象であるかないかについて、要件をその分明確化して、それなりに当事者間の関係の整理に資するものというふうに考えているわけでございます。

筒井委員 今意味不明だったんだけれども、何をするんですか。何をして何とかに資するというんですか。具体的に何をするかをちょっと言ってください。

大谷政府参考人 今回、当事者間に認識の違いがあるということがないように、さっき申しましたけれども、要件を、職務の内容、人材活用の仕組み、それから契約期間ということを明確にして、それによって、まず当事者間の事実認定について少しでもはっきり区分ができるようにするということでありまして、特に今回の法律で、事業主に対して自分の処遇に関してどうしてそうなっているのかということを尋ね、それについて事業主が答える義務を今回規定したわけでありますから、その中からも事業主からかなりの判断基準というものが引き出せるのではないか。また、労働局に相談いただければ、労働局も主体的にその中身に関与して調べ、またそれに協力する。

 そういったものが蓄積されて、当事者間の関係が形成されるというふうに考えております。

筒井委員 今の答えは、例えば、職務内容同一である、責任の程度が同じである、通常労働者との比較でいいわけだから、通常労働者がどういう職務内容なのか、責任程度がどうなのかというのは、パート労働者の方で全部証明はできませんね。資料はないですね。今の答弁は、通常労働者の職務内容がどうで、責任の程度がどうだという資料は、聞いたら出すという義務を使用者側に与えているということですか。

大谷政府参考人 みずからの処遇がどうして正社員と違うのかということについて事業主に対して説明を求める、また、事業主はそれに対して説明する義務があるというふうになると思います。

筒井委員 微妙にずらさないでね。私の質問に答えていないのです。今、自分がなぜそうなのかということを聞いたら答えると言った、そんなことを聞いているんじゃないんです。通常労働者との比較において同一であるかどうかを証明しなきゃいかぬのですよ。それでないと、禁止された差別かどうかを証明できないわけですよ。通常労働者の職務とか責任の程度、これについて証明しなきゃいかぬ。それは、何か先ほどの答弁だと、聞けば答えるんだ、義務を与えたんだと答弁されたから聞いているので、それは聞いたら使用者側に答える義務があるんですね。

大谷政府参考人 事業主の責任といたしましては、労働者が尋ねたことに対して説明する義務があるわけでありますけれども、ただ、その回答の内容については、聞いた側が納得するまで全部固めなければならないということにはなっておらないわけであります。

筒井委員 だから、それは労働者側が自分の主観として納得するかどうかの問題ではないんです、今言っているのは。最終的には裁判所による客観的な判断ですよ、最後は。客観的に、通常労働者の職務内容、責任の程度の説明がなされたかどうか、その義務は使用者側にあるんですねという質問なんです。今、労働者側は主観として納得できるまでみんな出すのかどうかということじゃないんです。客観的に、通常労働者の職務内容、責任の程度と言えるもの、その実態を出す義務は使用者側にあるんですねという質問なんです。

大谷政府参考人 現在、御指摘いただいた事項について、それを明示的に出す義務があるということではないと考えております。

 ただし、両者の関係の中で納得がいかないといった場合に、都道府県の労働局に相談いただいて、労働局がその両者を呼んで事実関係を確認し、両者間の調整をするというのが今回の法の形でございます。

筒井委員 それ自体がおかしいんだけれども、さっきの答弁とまた違う。さっき、聞いたら答える義務があると言ったでしょう。さっきそう答えなかったですか。だから私、それを今確認しているのだ、今度は義務がないと言っている。

大谷政府参考人 事業主は労働者の質問に対して答える義務がありますが、今お答えしましたのは、具体的に言われたそういった三要件についてまで、具体的にこれとこれを答えるというふうに明示しているものではないというふうに申し上げたわけでございます。

筒井委員 そうしたら、答えなくてもいいわけだ。通常労働者の実態について答えなくてもいいわけだ。それは労働者側に証明せよということなの。証明できないじゃない、初めから。

大谷政府参考人 ただいまのケースについてお答え申し上げますけれども、当事者間で質問し、そして回答し、それについて得心が得られないというケースであれば、これは都道府県の労働局に御相談いただいて、さらに事態を明らかにしていただくということが今回の法律の形でありまして、特定の事項について、この法律で、雇用者にこれとこれとこれについて明示的に答えるということまでを義務づけしたものではございません。

筒井委員 いつも問題をずらすけれども、今言っているのは、これを裁判で最終的に決めるのだということを何回か答えておられるでしょう、今度のこの委員会でも。だから、裁判で最終的に決まるわけだ。そのときに、そういう資料を出す義務があるのかないかで全然違ってくるわけですよ。証明できないじゃないですか。労働者は自分のことだったら言えるけれども、その会社の通常労働者側の実態がどうか何というのは会社側が資料を出さない限りはできないでしょう。まずその点、どうですか。

大谷政府参考人 ただいまの御質問の範囲において、従来の民事訴訟の枠組みを変えるものではないと思います。

筒井委員 今そういう質問をしているんじゃないんだ。通常労働者との比較において同一であるかどうかというのがこの法文のまさに該当するかどうかの判断になっているから、通常労働者の実態を証明しなければならない。だけれども、通常労働者の実態をつかんでいるのは使用者側だけでしょう。労働者側の方にそれを証明せいといっても、それは無理でしょうということを今聞いているんです。

大谷政府参考人 それは、現在の民事裁判がそうでありますように、この法案で直接そこを変更することはないわけでありますが、そのために、この法律では、行政の簡便な措置として労働局が間に入ってまずその両者の事情を聞き、調整しようというところをこの法律で規定したところでございます。

筒井委員 だから、今、無理だということを認めているんだね。だけれども、それを認めていない、ほかのところに問題をずらしているから。私は、裁判での証明の問題を言っているのに、今何か労働局だとかなんとかという問題にずらしている。やはり、それははっきり無理だと思っているでしょう。裁判になって、通常労働者の実態を労働者側に証明せいといっても、使用者側が資料を出さない限り証明はできないでしょう、そういう事実認識について聞いているのです。やはり、しつこくそれを確認します。

大谷政府参考人 それは、先ほどの答えの前半部で申し上げましたとおり、現在の民事訴訟で起きている枠組みをこの法案が変えるわけではないということでありますから、現在起きていることとそこは同じであります。

筒井委員 私の質問に全然答えていない。意味が違うんだよね。(発言する者あり)

櫻田委員長 筒井信隆君、もう一度質問してください、ちゃんと答えさせますから。もう一回言ってください、念のために。

筒井委員 今裁判に限定して聞いていますから、裁判の証明をどっちがやらなきゃいかぬかということを前提にして聞いているんですから。その場合に、裁判所でこの八条の適用対象になるかどうかは通常労働者との比較の問題だから、通常労働者の職務の内容、責任の程度、これを証明しなければなりません。しかし、その証明は労働者側には無理でしょう、使用者側が資料を出さない限りは労働者側にはその証明は無理でしょう、その実態だけ言っているんです。その事実認識はどうですか。

大谷政府参考人 使用者側が資料を出さなければ労働者がその情報を得ることができないというのは、おっしゃるとおりであります。

 ただし、今回の法律においては、過去と何が違うかと申しますと、最初の初動の段階で、まずその労働者が質問権を持っているということで、ある程度の情報を引き出せるから現在よりは前進しているということと、それから、さっきの繰り返しになりますが、労働局が関与することによって、さらに両者に割って入って状況等を聴取し、新たな資料が得られるということは、現在よりも前進しているのではないか。しかし、民事上、そういう証明の難しさがあるということは、おっしゃるとおりでございます。

筒井委員 だから、無理だということ、裁判まで行ったときには。その前の段階のことを聞いているんじゃないんだから。労働局とか何かの話とか調停とかやって、話がつかなくて最後、裁判になるんだから。そのときに、使用者側があくまで資料を出さなければ無理だということを認めているんですね。裁判で証明できなければ労働者側が負けるじゃないですか。使用者側が拒否さえすれば、使用者側は勝つじゃないですか。裁判におけるそういう実態、そういう事実認識の上に立って、それに対する対処方法は何にも規定していないんですね。

大谷政府参考人 民事訴訟の進行については、この法律で何も変更するものではありませんが、繰り返しになりますが、その前提における労働者の立場というものは、現在よりは格段に強まっているのではないかというふうに考えます。さらに、先ほどの丸子警報器等の事件がございますけれども、今後そういった裁判がありますときに、今回示されたような差別禁止の基準といったものも、またその労使の判断基準の一つになっていくのではないかというふうに考えるところでございます。

筒井委員 実質上、最後まで使用者側が争った場合、これはもう救済が無理だというふうな、そんな不十分な法案。内容的に不十分であることも、これからちょっと聞くんだけれども、余り時間がなくなった。しかし、手続的にも不十分。

 内容的には、先ほど言いましたように基準は職務内容の同一性だけでいいんですよ。基準が適正であるかどうかが問題であって適用労働者の数がどのぐらいかというのは問題じゃないと、この前参考人でしたか、佐藤教授が言っておられた、それはそうかもしれない。だけれども、この基準は余りにもいっぱい入れてきたから、三つも入れてきたから、その結果として適用対象の労働者が少なくなってしまったんですよ。基準が悪いからほとんどいなくなってしまったんですよ。

 それで、一つ目の職務内容に関してはいいと思いますが、二つ目の人材活用あるいは配転、配置の変更、これらを基準にする、これを差別の合理的理由の一つに挙げるのは完全に間違いですよ。

 残業とか、それから転勤に応ずるかどうかというのは、これは応じた場合には別に残業手当を払うでしょう、転勤に応じたら転勤手当を払うでしょう。そういう形でそれに対するきちんとした対応をすればいいので、応じないからといって基本給そのものを変えるというのは、これはまさに同一労働同一報酬の原則に反するんじゃないですか。残業に応ずるか、転勤に応ずるか。残業はある程度日常的だけれども、残業手当が払われる。転勤に応ずるかとか何かは、人によっては一生の間に何回かの話だ、それに応ずるかどうかでもって毎月の基本賃金を変えてしまうというのは、まさに同一労働同一報酬の原則に反する。

 単位時間としては、職務内容が同一ならば労働は同一価値でしょう。だから、そちらが認められた同一価値労働同一報酬の原則から見れば、まず、残業に応ずるかとか配転に応ずるかとか、こういうことを合理的な差別の理由にして挙げるのは、それはみずからの原則に反するんじゃないですか。

大谷政府参考人 今回、法案の審議の過程の中で、どうやってそういった適正な処遇を確保し、格差があるものはそれを縮めていくかという議論をする中で、パートタイマーにはいろいろな形態があるというところから議論があったわけであります。その中には、補助的なものもあれば、本当に正社員と区別がつかないようなものまである。それぞれにやはり当事者が納得のいく当てはめ、ルールというものが必要だということで、いろいろ議論がされまして、その要件というものが浮かび上がってきたわけであります。

 例えば、人材活用の仕組みということをとりましても、同じ部署で同じ仕事をしている方であっても、人事のローテーションの中で、そこに一時的に来ている正社員の方と一時的に同じ仕事であるからということで、それを差別禁止ということで、すべての処遇、さっき申しましたみたいな退職金から住居手当すべてが正社員並みということにするには、やはりこれは使用者を含めて疑義があるということで、個々に比べる中で、同じ人はどこまでの人かということを絞り込む中で生まれてきたわけでございます。

 特に、我が国の雇用のシステムというのは、ある程度長期の雇用を想定して人材育成を行うとともに、待遇の決定をするということが慣行でありまして、そういった中で、今回も、同一であるということを比べる基準がこういう議論の結果定まってきたというふうに理解しております。

筒井委員 補助的な業務であるかどうかは別の問題です。職務の内容が同一であることを前提にしているんですよ。その上で、同一であれば、残業とか転勤とか、これはまた別の問題だろうと言っているんです。

 時間が来たので、この前も延ばしてしまったので、この点と、期間の定めのある契約を排除する、これに関しても極めて不当だと思いますが、きょうはこれで質問を終わります。

櫻田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房統計情報部長桑島靖夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑を続行いたします。川内博史君。

川内委員 川内でございます。よろしくお願いいたします。

 早速、質問をさせていただきます。

 本日、参議院の本会議で、雇用保険法が修正可決をされたということでございます。この雇用保険法については、厚生労働省さんの、大臣の言葉をかりれば、大失態によって修正を余儀なく、施行期日の書きかえを余儀なくされた、可決がおくれたということでございます。衆議院でまた再び可決をしなければならないわけでありますが、厚生労働省によると、これはあくまでも新聞の記事でございますが、加入者らに不利益は生じない見通しというふうに、厚生労働省の幹部の方のコメントとして出ております。

 加入者に不利益が生じないとする根拠を、まず、大臣の方から御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今回のことによりまして、国民の皆様、なかんずく保険料を納付されるべき事業主の方々に大変御迷惑をおかけいたしておるわけでございます。

 きょうの修正議決されました法律案によりますと、施行の日は公布の日ということにさせていただいたわけでございますけれども、遡及適用を認めていただきまして、国民の側あるいは保険料納付の側に不利益でないものについては、四月一日までこれを遡及するということの修正をいただきました。

 私、その新聞の記事をどうこう言うわけではありませんけれども、恐らく、そういう意味で、不利益変更のものを遡及するということではなくて、そういったことでないものについて遡及するということになれば、不利益を保険料等の面で生じないということを言わんとした発言ではないか、このように考えるところでございます。

川内委員 不利益変更については遡及をしない、それ以外の部分については遡及適用を修正によって認めていただいたということでございますが、不利益変更になる部分というのは、もし、その不利益変更になる部分というのが遡及適用されるとすれば、どういうものが不利益変更であるというふうに考えればよろしいのでしょうか。

柳澤国務大臣 保険料率については、原案が保険料の引き下げでございましたので、その限りでは、そうした明文の規定を置くことにして、そのあたりの状況をはっきりさせたわけですけれども、では、遡及適用をするとなった場合は、どこか不利益変更があったのかと言われれば、現実には存在しなかったと言わせていただいてよろしいのではないか、このように考えます。

川内委員 不利益が生じないならば、もともと、その施行期日を四月一日というふうにしていたことの意味というものを、もう一度、大臣の方から教えていただきたいんですが。

柳澤国務大臣 実は、先ほども申したように、御迷惑はかけているわけです。保険料率の上下ということについて不利益を生じることは避けた、避けたというか、そういうことは、今度、遡及適用してもないわけですけれども、実は、大変な御迷惑をかけているというのが実情でございます。

 それはどういうことかと申しますと、労働者の給与から控除すべき保険料が不確定になりまして、現実に給与の支払いをもしこの期間の間に行うとすると、保険料として納めてもらうものが一体幾らかということが判然としないというか、形式的に言えば、旧の料率になるわけでございまして、そうなりますと、一たん旧の料率で納めておいていただいて、後でこれを返還するというような手続を必要としますので、その意味では非常に御迷惑をかけることになります。

 したがいまして、そういったことの裏腹として、四月一日施行というものが断然望ましかったということでございます。

川内委員 この問題は、余りきょう長く引きずるつもりはないんですけれども、そもそも、今回このようなことになったのは、厚生労働省さんの、大臣の言葉をかりれば、大失態に端を発しているということでございますので、私どもとすれば、今後、かかることのないように十分注意をしていただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 最近、BSEの、米国産牛肉の問題について、米国側から日本に入ってくる牛肉についてさまざまな問題があるわけでございますが、BSEの問題というのは、私は、まだまだしっかりとした対応をしていかなければならない問題であるというふうに考えております。最近は、鳥インフルエンザが盛んにニュースなどでも話題になるわけでございますが、私は、鳥インフルエンザ由来のインフルエンザと同等に、まだまだBSEの問題についてもしっかりとした対処をしていかなければならないというふうに思っております。

 そこで、お尋ねをいたしますが、OECD加盟国における鳥インフルエンザ由来のインフルエンザにおける死亡者数というのは何人でしょうか。

外口政府参考人 世界保健機関、WHOの公表によれば、高病原性鳥インフルエンザ、H5N1の患者の発生状況は、平成十九年四月十日現在で、全世界で、発生国十二カ国、患者数二百九十一人、死亡者数百七十一人であります。このうちOECD加盟国における発生状況はトルコのみであり、患者数十二人、死亡者数四人となっております。

川内委員 それでは、BSE由来のバリアントCJD、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病で死亡をされたOECD加盟国における死亡者数をお答えください。

外口政府参考人 英国保健省が公表した情報によると、これまでのOECD加盟国におけるvCJDの発生数は二百一例であり、このうち死亡者数は百九十一名となっております。

川内委員 OECD加盟国における鳥インフルエンザで死亡された方々の人数は四名、BSE由来のバリアントCJDで死亡された方々の数が百九十一名。OECDというのはいわゆる先進国と言ってもいいと思いますが、BSE由来のvCJDというのは、まだまだ注意が必要であるということがこの数字からも受け取れるのではないかというふうに思います。

 ちなみに、アメリカ国内におけるvCJDの死亡者数をお答えください。

外口政府参考人 米国におけるvCJDの死亡者は三名と承知しております。

川内委員 そういうアメリカから、ばら肉の輸出証明書に記載のない貨物が入ってきたり、あるいはタンの輸出証明書に記載がない貨物が入ってきたりということが最近相次いでいるわけですが、この二つの事例について、その概要を簡単に御説明ください。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 経緯も含めてでございますけれども、まず、タイソン社レキシントン工場の牛肉混載事例についてでございます。

 本年二月五日、同工場より出荷された貨物の一部に、米国農務省発行の衛生証明書に記載されていない米国産牛肉、ばら肉二箱、四十三キログラムが含まれていた旨の報告が倉庫業者から動物検疫所川崎分室にございました。

 米国側に当該事例の調査を要請いたしましたところ、二月十六日、当該牛肉が二十カ月齢以下と証明できる牛由来ではない可能性があると報告されたために、当該施設からの輸入手続を保留するとともに、米国側に対し詳細な調査を要請いたしました。

 三月二十三日、厚生労働省及び農林水産省は、米国農務省より提出された調査報告書を受け、同工場からの輸入手続を停止するとともに、米国政府に対しまして、当該施設について対日輸出認定リストから除外すること、他の対日輸出認定施設に対して出荷段階におけるチェック体制の点検を指導することを要請いたしました。

 また、カーギル社ドッジシティー工場の牛タン混載事例についてでございますが、三月二十八日、同工場より出荷されました米国産牛タン二百五十箱の中に、スペイン語表示のラップに包装され、日本向けの外箱に入れられたものが四箱含まれていた旨、輸入業者から報告があり、米国側に調査を要請いたしました。

 四月六日、当該品は日本向けではない牛タンであり、詳細については現在調査中であるとの報告がございました。

 これを受けまして、厚生労働省及び農林水産省は、米国側による調査結果の報告を受けるまで、当面、当該施設からの輸入手続を保留することとしたところでございます。

川内委員 まず、一例目のばら肉の件でございますけれども、厚生労働省と農林水産省は、当該施設からの輸入手続を停止するとともに、米国政府に対し、当該施設について対日輸出認定リストから除外するよう要請いたしましたというふうに今御答弁がございました。

 それでは、当該施設は、米国政府が公開をしている対日輸出認定リストから今現在除外をされていますか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 タイソン社レキシントン工場につきましては、先生御指摘のように、米国農務省の調査結果を踏まえ、対日輸出認定リストから除外するよう米国側に要請したところでありますが、現在、米国農務省におきましては、施設の改善措置が終了するまでの対日輸出証明書の発給停止等により、認定リストからの除外と同様の効果がある措置をとっているとの連絡を受けているところであります。

 厚生労働省としましては、米国側に対し、今回の事例に関し認定リストから除外しない場合には、その具体的な理由や認定リストから除外する際の判断の考え方等について、さらに確認を行っているところでございます。

川内委員 いろいろ御説明をいただきましたが、今現在、対日輸出認定リストから除外をされていないということを、私が聞いたことを正確に御答弁いただけますか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点で、対日輸出認定施設のリストから除外されてはおりません。

川内委員 大臣、二十六日から安倍総理が訪米をされて、日米首脳会談、訪米による初の首脳会談が行われるというふうに聞いておりますが、先日のニュースでは、米国内の牛肉の生産者に向かってブッシュ大統領が、日本に対して米国産牛肉の輸入の全面解禁をするように話をするというようなニュースも報道されておりました。

 しかし、今、さまざまに厚生労働省あるいは農林水産省の事務方の皆さんと議論しておりますのを聞いていただいてもおわかりいただけるとおり、米国産牛肉の問題というのは、私はそう簡単ではないというふうに思っております。

 先方は、OIEのステータス評価が五月に、恐らく米国については、管理されたリスクの国ということに変更される、それを前提として輸入条件の緩和というものを日米首脳会談で言ってくるのではないかというふうに思いますが、OIEのステータス評価と米国産牛肉の我が国におけるリスク評価は全く関係がないということを一点、大臣の御見解として確認をさせていただきたいと思います。

柳澤国務大臣 委員の御指摘のOIEの評価でございますけれども、現在のところは、まだこれが決定されておらないということでございます。私どもといたしましては、OIEが動物衛生分野の国際機関であることから、農林水産省との連携を図りながら、OIE総会での結論を注目いたしているところでございます。

 いずれにいたしましても、現在の米国産牛肉の輸入条件につきましては、我が国の食品安全委員会におけるリスク評価結果を踏まえて決定したものでございまして、仮に見直しを検討する場合であっても、これは食品安全委員会におけるリスク評価が必要であるということでございまして、それなしにOIEの評価が出たからどうという、我々の措置の方に直接的に何かつながってしまう、こういう手続にはなっていないわけでございます。

川内委員 大臣、ぜひOIEのステータス評価案を読んでいただきたいというふうに思うんですが、それに何と書いてあるかというと、アメリカについては、管理されたリスクの国と書いてあって、しかし、飼料規制の問題あるいはサーベイランスの問題がアメリカ国内においては依然としてリスクとして残っているという趣旨のことが書いてあるんですね。

 我が国は、アメリカ政府に対して年次改革要望書、我が国からも、アメリカに対して毎年年次改革要望書を出すわけでございますが、その中に、アメリカ国内における飼料規制の強化あるいはサーベイランスの維持拡大、強化がなければ、アメリカ国内におけるBSEリスクというのは減っていきませんよということを、年次改革要望書の中でアメリカ政府に対して申し入れをしております。

 したがって、厚生労働大臣は安倍総理に、安倍総理が訪米される前に、ブッシュ大統領が米国産牛肉のことについて言及したらば、それは我が国から申し上げているとおり、飼料規制の強化やサーベイランスの維持拡大がなければとてもとてものめる話ではありませんよと言い返すべきであるということを厚生労働大臣から総理にアドバイスをしていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

柳澤国務大臣 日米首脳会談の議題につきましては、私ども承知している限りでは、現在アメリカ側と調整中ということでございまして、まだ何ら決定がなされていない、そのように認識をいたしております。

 米国産牛肉の輸入問題につきましては、国民の食の安全と消費者の信頼確保ということを大前提にいたしておりまして、関係省庁と連携をして、特に農水省との連携を密にして適切に対応していきたい、このように考えております。

川内委員 大臣、せっかく大臣にお聞きしているんですから、まだ議題が決まっていないとか適切に対応していきたいとか、そんな何か形式張った御答弁ではなくて、日本の政府がアメリカ政府に対して、飼料規制の強化とサーベイランスの維持拡大については年次改革要望書で昨年正式に申し入れをしているわけですね。文書ですよ。さらに、ブッシュ大統領は、安倍さんが来たら牛肉のことについて言うとニュースで言っているわけですから、それに対して、日本側としては食の安全の確保と消費者の信頼の確保、ではどうやるのかということについて、私は、飼料規制の強化とサーベイランスの維持拡大が必要なんですよということを総理にアドバイスしておくべきだと。

 ただ単に消費者の信頼確保とか食の安全の観点で検討するという言い方では、何が何だかブッシュさんもわからないと思うんですね。何がアメリカ国内において問題なのかということをちゃんとブッシュさんに指摘すべきだということを申し上げているわけで、もう一度、私の今の発言を踏まえて、大臣としての御答弁をいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 国際会議、特に首脳会談においてどういう応答をされるかということについては、最終的には総理御自身の判断ですけれども、私どもも、その対応について、私どもの供給すべき情報あるいは判断というものは、とにかくしっかりつなげておくことは必要である、このように考えます。

川内委員 供給すべき情報の中に飼料規制の強化、サーベイランスの維持拡大が入っているということでよろしいですか。

柳澤国務大臣 そうしたことを含めて適切に情報供給をいたしておかなければならない、このように思います。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、次の論点に移らせていただきます。

 今後の児童扶養手当制度のあり方についてでございますが、来年四月一日から、児童扶養手当については、受給期間が五年を超える場合の手当の一部支給停止に係る措置がとられる、そしてそのための政令が本年度中に定められるというふうに聞いております。

 大臣、これは御存じですか。NPO法人のしんぐるまざあず・ふぉーらむというところが出した「母子家庭の仕事とくらし」という冊子、さらには、NPO法人ウィンクという、これもシングルマザーのママさんたちの集まりでありますが、養育費と面接交渉の調査と推進事業報告ということで、報告書が二つ出ておりまして、母子家庭のママさんたちの大変に厳しい状況がつづられております。

 このレポートなどを読むと、児童扶養手当の一部支給停止というものは、私は慎重でなければならないというふうに思います。法律には二分の一を上限としてという書き方をしておりますので、今後、政令の中でどのように定めていくのかということが議論をされていくのであろうというふうに思いますが、その母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議、平成十四年十一月八日、衆議院厚生労働委員会の附帯決議の中では、この政令を定めるに当たっては、「母子福祉団体など幅広く関係者の意見を十分聞くこと。」というふうに附帯決議がつけられております。

 実は、せんだって、内閣委員会で、少子化担当副大臣である平沢副大臣に、この母子福祉団体の意見を十分に聞くだけではなく、十分に聞いて、その意見を踏まえて政令改正に当たっていただきたいと思うがいかがかということをお聞きいたしましたらば、平沢副大臣は、十分に聞き、その意見を踏まえて政令改正に当たるべきであるというふうに、少子化担当副大臣としても考えているという御答弁でございました。

 この母子寡婦福祉法は厚生労働省の所管でございますが、しかし、少子化対策基本法の中には、以前、私も予算委員会で議論をさせていただきましたけれども、子供を生み育てやすい環境を整備するというのが政府の仕事であると。児童扶養手当を一部支給停止することが子供を育てやすい環境を整備することだとはとても思えない。

 そういう中で、法律で決まっていることだから政令を定めるわけですけれども、ではどう政令を定めるのかということについて、母子福祉団体の意見を聞き、その意見を十分に踏まえて政令改正に当たるということを、厚生労働大臣としても御見解をいただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 児童手当につきましては、今委員も御指摘のように、平成十四年の改正におきまして、この位置づけを、生活にかかる費用への支援ということから、離婚等による生活の激変を緩和する措置というふうに変更いたしまして、受給期間が五年を経過した場合には、その一部を支給停止にするという枠組みを導入したところでありまして、御指摘のように、平成二十年四月からこの規定も実施に移されることになっております。

 今後、この規定によりまして、一部支給停止の対象外となる者の範囲、あるいは支給停止する額、これは今御指摘のように、二分の一を上限とするわけですけれども、この検討を進めることになっておりますが、具体的には、私ども、夏ごろまでに全国母子世帯等調査をまとめたいと思っておりまして、その結果を踏まえること、それから、法改正時の附帯決議を踏まえまして、改正法の施行状況なども勘案しながら、年末の予算編成に合わせて結論を得てまいりたい、こういうように考えております。

 その際、法改正時の附帯決議にもございますように、母子福祉団体など関係者の意見をお聞きするということでございます。

 そういうようなことで、この調査結果あるいは当事者の方々の御意見をよく聞きまして、そのお聞かせいただいた意見も考慮しながら結論を得ていく必要があろう、このように考えております。

川内委員 厚生労働大臣は、このNPO法人のしんぐるまざあず・ふぉーらむとかウィンクの皆さんにお会いになられたことはありますか。

柳澤国務大臣 私自身はまだお会いしたことはございませんが、この母子福祉団体の意見につきましては、三月十三日に参議院会館で、先生もお出かけいただいたそうでございますが、開催されました母子家庭の実情を聞く会、こういったことなど、さまざまな機会を通じまして、その状況を事務当局から報告してもらっている、こういうことでございます。

川内委員 大臣は、今国会の冒頭でそれこそ大失言をされて、しかし、その職責を全力で果たすことによって信頼回復に努めたいというふうにおっしゃっていらっしゃいます。そういう意味では、このシングルマザーの皆さん方が今置かれている現状がどのような状況なのかということについて、事務方から報告を聞くだけではなく、直接お会いになられてその事情を聴取する、意見を聞くということが、私は、その信頼回復、全力で職責に当たるという大臣のお言葉が本当であればそのようにしていただきたいというふうに思いますが、大臣、こういう母子福祉団体の方々と直接お会いになられてお話をお聞きになられたらいかがかということに対して御決意をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 いずれかの適切なタイミングをはかって、私としてもそのようにさせていただきたい、このように思います。

 ただ、予算編成期に当たっての結論を出すということでございますので、そのタイミングは考えないといけない、このように思っております。

川内委員 タイミングを考えるというのは、予算編成の前ということですよね。前ですと言っていただけますか。議事録に全部残さないと不安なんです。

柳澤国務大臣 当然のことながら、予算編成の中で結論を出すということでございますので、それにふさわしいタイミングということでございます。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、本委員会の主要な議題でありますパート労働法について質問させていただきます。

 昨日、厚生労働省の方々からパート労働法の改正についてという三枚の紙をいただきました。それの一番冒頭の部分でございますが「パート労働者は近年著しく増加し、平成十八年には約千二百五万人。」というふうに書いてございます。この千二百五万人という方々はどのような基準で統計をとられたのか、数えたのかということについて御説明をいただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありました千二百五万人という数字でございますが、これは総務省の労働力調査において週間就業時間が三十五時間未満の雇用者の数字を挙げているものでございます。

川内委員 総務省の労働力調査で、週間就業時間が三十五時間未満の雇用者。それでは、週間就業時間が三十五時間以上四十時間未満のパート労働者の人数は何人ですか。

大谷政府参考人 総務省の労働力調査によりますと、勤め先での呼称、呼ばれ方がパート、アルバイトで、月末一週間の就業時間が三十五から三十九時間の者は、平成十八年平均で百二万人であるというふうに承知しております。

川内委員 厚生労働省はやはりちょっとずるいですね。

 大臣、労働政策審議会の雇用均等分科会議事録を私は読ませていただきましたけれども、限りなく正社員に近いパート労働者は何人ぐらいいるんですかと委員の方が聞いたら、審議会の事務局はわかりませんと答えているんですよ。私にも、きのうのレクの段階では、週三十五時間以上四十時間未満のパート労働者の人数は厚生労働省としては把握しておりませんと答えたんですよ。

 だから、それは、その後、総務省の統計局に来ていただいていろいろ数字を聞いたから、今そのようにお答えになられたんでしょうが、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長の答弁としては、私どもは週三十五時間以上四十時間未満のパート労働者の人数については把握しておりませんと答えるのが正確な答弁じゃないですか。もう一回答弁し直してくださいよ。

大谷政府参考人 審議会のどの部分であったかちょっとわかりませんが、今回、審議会の中で、正社員に近い、まさに同視すべき労働者はどういう人かというのを議論しております中で、これはけさ方の審議の中でも繰り返し出た議論でありますけれども、今回は、職務が同じである、また人材活用の仕組みが同じ、また契約期間が同じ、こういう要件で、そういう方が正社員と同視すべき方だというふうに決めましたので、それに合致する人の人数については正確な人数は持っていないということが恐らくその文脈では出たんだと思います。

 今ほど私が申し上げましたのは、今度は三十五時間と時間だけで切って、そういった時間働いている方はどうかという統計について申し上げますとさっきの数字ということで、いわゆる時間の問題と、プラス今回正社員と同視すべきというそれ以外の要素も絡めておりますので、そういう議論になったのではなかろうかと思います。

川内委員 私が審議会の事務局のようなことをしてもしようがないですけれども、平成十八年十月十日の第六十五回雇用均等分科会において、「所定労働時間が通常労働者とほとんど同じで、同様の就業の実態にある短時間労働者の労働時間の状況についてという質問がありました。私どもの方で努力しましたが、なかなかやはりそこの部分についてのデータが取れませんでした。ただ同様の就業の実態にあるということからすると、労働時間が相当程度短い方が同様の就業の実態になるとはおよそ想定できないことなので、そういう意味では所定労働時間は長く、通常の労働者に近いところの方が多いということは、およそ推定できるのではないかと思います。」数についてはわかりませんと審議会で言っているじゃないですか。

 だから、私は何かちょっとごまかしが多いなと思うんですが、きょうは別にごまかしを指摘してどうこうするという議論ではないので、では、とりあえず、厚生労働省の児童家庭局長としては正確な数はわかりませんということでございます。

 では、総務省の川崎統計局長にお聞きいたしますが、三十五時間以上四十時間未満の就業時間のパート労働者の人数は何人ですか。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの総務省の労働力調査では、勤め先での呼称がパート、アルバイトとなっている方々の数を把握しております。それによりますと、月末一週間の就業時間が三十五時間から四十時間未満の者は、平成十八年平均で百二万人でございます。

川内委員 総務省の統計局の調査では、就業時間について、三十五から三十九、さらには四十から四十八時間、そして四十九時間以上という統計もとっていらっしゃるというふうに聞いております。四十から四十八、さらには四十九時間以上の就業時間数のあるいわゆるパート労働者の人数について、それぞれお答えください。

川崎政府参考人 週四十時間から四十八時間働いておりますいわゆるパート、アルバイトの方は百九十五万人でございます。それから、同じく週四十九時間以上働いておられますパート、アルバイトと呼ばれる方は四十八万人ということでございます。

川内委員 そうすると、週三十五時間以上の就業時間のいわゆるパート労働者というのは、今お答えいただいた数字を合計すると何万人になりますか。

川崎政府参考人 合計いたしますと三百四十五万人となります。

川内委員 三百四十五万人になると。

 そうすると、大谷局長、先ほど千二百五万人の根拠は、総務省の労働力調査による週間就業時間が三十五時間未満の雇用者を千二百五万人というふうに書いていますよね。私は、少なくとも千二百五万人プラス三百四十五万人で千五百五十万人というふうにここは書かなきゃいけなかったのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 最初に申し上げました数字は、総務省の労働力調査において週間就業時間が三十五時間未満と、定義で申し上げたわけでございます。今回の法律の対象とこの統計とは、必ずしも定義が合っているわけではございません。この労働法におきましては、いわゆる均衡法という仕組みの中での考え方になりますので、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用されている通常の労働者よりも短い労働者を対象にしております。したがいまして、今回の法律の対象としている者につきましては、週三十五時間未満の者に限定しているわけではございません。

 一方、きょう午前中の西村委員の、通常の労働者とは何かということでも随分詳しく御審議賜ったわけでありますけれども、三十五時間の労働者の中にも、その事業所の実態においてむしろ通常の労働者に区分される者もあるということでございまして、法律上の、今回均衡法の対象とすべき者についてはまさにその実態に応じて考えていくということがこの法制でございます。

川内委員 今の御答弁もちょっと私はおかしいと思いますけれどもね。

 これは平成十八年十一月二日の議事録でございますけれども、通常労働者とは、「いわゆるその事業所における正規型の労働者です。」いわゆる正社員ですと説明しているんですよ。だったら、いわゆるパートも、パート労働法におけるパート労働者の数というふうなことで含めて考えていかなければいけないんじゃないですか。

大谷政府参考人 パート労働法で規定します通常の労働者とはどういう者を指すかということで、これは今御紹介ありましたけれども、けさのこの委員会でも申し上げましたように、いわゆる正規型の労働者をいい、具体的には、社会通念に従い、フルタイム勤務の者について当該労働者の雇用形態、これは例えば期間の定めのない契約であるかどうかといったもの、それから待遇、これは長期雇用を前提とした待遇がなされているかどうか、こういったものを総合的に勘案して判断するということを申し上げたところでございます。

 その中で、きょうの御審議にありましたように、例えば短時間正社員というようなものが現在存在するわけでありますが、こういう方も、事業所の中においては通常の労働者に当たるかどうか、これは個々に認定していくということで申し上げたわけでありまして、この法律に言う通常の労働者それからパートタイマーというのは、その実態に応じて相対的に見きわめていかなければならないということでありますので、統計上、いわゆるということで、呼称、こういうふうに呼ばれているというものとは厳密に言えば違っているわけであります。

川内委員 ちょっとよくわからないですね。

 ここの千二百五万人という数字が、総務省の労働力調査でいわゆるパートと呼ばれている人を週間就業時間が三十五時間未満で数えました、三十五時間以上の者は数えません、しかも、厚生労働省としてはその数について知らないということにしていましたということに関して、私は、合理的な説明がなされているとはとても思えないんです。

 それでは、厚生労働省としても、三十五時間以上の就業時間の方々の数を把握していたのではないかという観点で、厚生労働省の大臣官房の統計情報部長桑島さんにお運びいただいておりますが、平成十五年に就業形態の多様化に関する総合実態調査というものを厚生労働省統計情報部でおやりになっていらっしゃいます。その中で雇用形態別の就業者数を出していらっしゃいますが、契約社員、嘱託社員、出向社員、派遣労働者、臨時的雇用者、パートタイム労働者、そしてその他、さらには、その他のうち、正社員と一日の所定労働時間と一週の所定労働日数がほぼ同じでパートタイム労働者その他これに類する名称で呼ばれる者、いわゆるフルタイムパートの方々の数もこの統計では把握をしていらっしゃると思いますが、人数をお答えいただけますか。

桑島政府参考人 ただいま川内委員がおっしゃいました定義のとおりでございますけれども、そういう名称で呼ばれる者の人数でございますが、百三万一千人ということでございます。

川内委員 厚生労働省としても、いわゆるパートさんという方々の数を把握していらっしゃるわけでございます。しかし、このパート労働法を所管するところは、週間就業時間が三十五時間以上の者はこのパートタイム労働法のあたかも対象ではないかのごとく今おっしゃっているわけでございまして、これは私は甚だ理解に苦しむわけでございます。

 そもそも、今数字が出た総務省が調査している三百四十五万人という方々、そして今大臣官房の統計情報部が答えられた百三万一千人という方々、これらの方々をどう処遇していくのかということをしっかり議論しなければならないのではないかというふうに思いますが、大臣、御所見をいただけますか。

柳澤国務大臣 私どもは、今回は短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案ということで提出をさせていただいておりまして、この法律におきますと、短時間労働者というのは、同一の事業所の通常の労働者の一週間の所定時間に比し短い労働者をいうということが定義として与えられております。

 もちろん、この法律でそれをさらにまた何らかのめどを立てて定義を変えるということもあり得るかもしれませんけれども、私どもとしては、この定義のもとでどのような均衡待遇を実現していくかという問題意識のもとに、ここに取り組んだということが実態でございます。

 しかし、それを上回るいわゆるフルタイムパート等の方々についてはどうするかということですが、先ほど来ずっと審議をいたしてまいりましたところですけれども、それは直接にはこの法律がカバーするところではない、しかし、その趣旨はこれらの方々にも生かされるべきだ、こういう考え方を表明してきたところでございます。

川内委員 今大臣は重要なことをおっしゃられたわけですが、以前にも議論されているようでございますけれども、正社員と所定労働時間が同一のパートさん、いわゆるフルタイムパートさんは本法律案の対象の短時間労働者ではないということを、ちょっと事務方で確認をしていただきたいと思います。

大谷政府参考人 ただいまの、いわゆる呼称によるフルタイムパートでありますけれども、通常の労働者と所定時間が同じ労働者あるいは上回る労働者があった場合には、仮に職場でパートタイムというふうに呼ばれていたとしても、このパートタイム労働法の適用対象ではございません、短時間労働者という意味での適用対象ではございません。

川内委員 大臣、法律は法律に定めがある人にのみ適用されるわけであって、その趣旨が生かされることを望むという大臣の答弁はほとんど何の意味も持たない答弁ですね。ほとんど何の意味もないという、ほとんどという言葉は要らないですね。意味がない答弁ですね。

 大臣、しかし、そういういわゆるフルタイムのパートさんたちをどう均衡処遇あるいは均等処遇していくのかということについて、平成十八年十二月二十六日付の労働政策審議会から厚生労働大臣に対して出された建議においても、なお書きの部分で、「パートタイム労働以外の非正規労働に関する問題等、必ずしもパートタイム労働法の範囲内に収まらない問題があることに留意する必要がある。」というふうに建議されております。

 さらには、このパートタイム労働法は平成五年に制定をされたわけでありますが、そのときに定義された短時間労働者の定義と現在のいわゆるパートさん、フルタイムパート、ここのところが急激にふえてきている、非正規雇用がふえてきている、パートさんがふえてきているという社会情勢を考えたときに、先ほど大臣が定義を変えるということも考えられなくもないがというお話をされたわけでありますが、私は、こういういわゆるフルタイムパートの方々をどう処遇していくのかということを政府として早急に議論を開始すべきであるというふうに考えておりますが、大臣の御見解をいただきたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 これは、仮にそういう方がみずからをパートと呼ばれるということの背景には、多くの場合、恐らく契約期間の定めといったものが随伴しているのではないか、こういうように考えるわけでございます。

 この点については、労働政策審議会におきましても、いわゆる有期労働契約の雇用について、どのようにこれに取り組んでいくかということが論議をされたわけでございます。しかしながら、現在の労政審の枠組みというのは、申すまでもなく、労使ともに参加をして、その方々の合意が必要ということになっておりますけれども、そういう中でこの合意が成立するに至らなかったという経緯を背景にいたしまして今回のような法律改正案になっている、こういうことでございます。

 いずれにせよ、この労政審でも論議の対象になったということにあらわれておりますように、この問題については今後とも引き続いて検討をしていかなければならないということを示しているものだ、このように考えます。

川内委員 行政の方が検討していかなければならないと言うと、検討しないということになるわけですが、検討に着手するとか検討を始めるという言葉をお使いいただけないですか。

 これは大問題だと思いますよ、少子化対策についてもあるいはワーキングプアという問題についても。三十五時間以上働いているいわゆるパートさんが三百四十五万人いるんですからね、先ほど数字が出ましたけれども。

 この方たちがどう処遇されていくのかということについて、厚生労働大臣として、これからも検討していかなきゃいかぬことだなということで済ますのか、すぐさまその実態を調査し、その実態に基づいて検討を始めたいとおっしゃるのかでは、全然違ってくるというふうに私は思いますが、いかがですか。

柳澤国務大臣 労働形態あるいは働き方というものが多様化する中で、こうした多様化する労働市場に労働法制というのがどう対応していくかということで、今回の六法、あるいは数え方で七法と言わせていただきたいわけですが、そうした法制をもって対処するということを一応労政審などの審議を経て決定をして、私どもが今御提案しているわけでございます。

 そういうことでございますので、私どもとしては、まずこの法律改正案を国会で御審議の上、ぜひとも成立させていただきたい。しかる後に、これらの法制の定着ぶりというものを少し見させていただきたいというのが我々の基本的な考え方であり立場であるべきだ、このように考えております。

 その後にどういうことがあるかということでございますけれども、労働市場というのは、これは私が言うまでもないことですけれども、非常に急速に変貌を遂げているということが実態でございます。そういう意味合いからすると、私どもとしては、次の機会についてはより総合的な取り組みというものが求められる、そういうことになりはしないかということでございます。

 だからといって、今委員が御提案のものを、私がそういう御提案のとおりにしたくないということを言っているわけじゃないんですけれども、要は、今度の法改正というのも私どもとしてはかなり大がかりなものなので、したがって、まずその定着ぶりを見たい。その後どういうことが展望されるかということについては、これからまた包括的な取り組みということがかなり必要になってくるじゃないかということをむしろ私はここでは強調しておきたい、こういうことでございます。

川内委員 残念ながら、まだ質問を余して質疑の時間が来てしまいましたが、大臣、所定労働時間が三十九・九時間の人はパート労働法の対象になり、正社員への道が開ける。しかし、所定労働時間が四十時間のいわゆるパートさんは、正社員への道が全く開けないわけですよ。これは不合理、不公正だと思いませんか。おかしいと思いませんか。それを私は言っているんですよ。そこに政府として、その人たちが一体何人ぐらいいるのか、実態を調査し、そしてどうしていくのかということを検討するということぐらいはしていいのではないか。

 この法律にどさくさ紛れについてきた二十一世紀職業財団の改正部分ですけれども、これは私ども民主党が予備的調査で厚生労働省から何人ぐらい天下っているかということを調べたものですけれども、財団法人二十一世紀職業財団には厚生労働省から六十七人が天下っているんですよ。パート労働法でパートの皆さんを処遇するようなふりをしながら、自分たちの正規雇用を確保している。これでは、本来本当に手をつけるべきところに手をつけずに、次の機会に総合的にやりますみたいな、ちょっと何をやるのかよくわからない答弁では私はとても納得するわけにはいかないということを申し上げて、きょう余した質問をぜひまたやらせてください。

 では、これで終わります。

伊藤(信)委員長代理 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 この間の審議を聞かせていただきましても、新たなパート差別促進法とでもいいましょうか、そういった要素がかなり大きくなっているのだということを大変心配するものであります。

 先ほど川内委員からの質問にもありましたいわゆるフルタイムパート、疑似パートと呼ばれるような方々のところに対しての手当てが全くできていないということになるのだろうと思いますけれども、もちろん、大臣御承知のように、このパートという働き方につきましては、責任も正社員とほとんど同じという方々、あるいはまた、パート労働で生計を立てているという方、一つのところではとても生活を賄えないので幾つかかけ持ちをしながらやっとやっと生活をしているという方々、パート労働というのをどういう方々が担っているのかということをまず大きな視野に立って見詰めていくことこそが大切なことなんだろうと思っています。

 例えば、母子家庭のお母さんなどから大変深刻な御相談を受けます。そういう方たちは、今回のこのパート労働法の改正につきまして大変期待を持っておられて、どんなふうに変わってくるんですかと聞かれたときに、私はやはり即座に答えることができません。

 大臣は、そういう方々に対して、今回の改正でどういうふうになるんですよというふうに説明されますか。

柳澤国務大臣 今度のパート労働法の改正は、大きく二つございます。

 一つは、パート労働者にその職務あるいは異動の範囲、それからさらには契約の期間といったようなことに従って均衡ある処遇を確保するということが今回の目的である。それからもう一つの目的は、パート労働者の中で希望される方についてはできるだけ正規の雇用に移っていただくような手だてを講ずるものである、これが今回の法律改正の目的だということで御理解を願っていきたい、このように考えます。

郡委員 私は、今回の法律の中にもさらなる不利益の変更が隠されてはいないかと心配になる部分がございます。

 まず第一点、指摘をさせていただきますれば、期間の定めのないパートの方々、今およそ四割いらっしゃるわけですけれども、今現在、期間の定めのないパート労働者が有期契約に切りかえることといたします。そうしますと、少なくとも、今回のこの第八条一項、差別禁止の対象からは除外されることになってしまうんじゃないでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘がありましたような形のパート労働者の方が期間の定めのない契約から有期契約に契約が変更された場合のケース、これは改正法八条に規定する差別的取り扱いの禁止の対象になるかどうかということにつきまして、そのパート労働者の就業実態を踏まえ、反復更新により無期契約と同視することが社会通念上相当と認められるかどうか、こういうことで判断していくことにしているわけであります。

 なお、労働条件の引き下げというものを事業主の一存で一方的に、あるいは合理的な理由がなく行われるという場合は、これは法的には許されないものというふうに考えております。

郡委員 実態を見て、それに即して対応するのだ、八条二項に即するものはそういうふうにしてすくい上げていくこともある、しかし、そこから漏れることもあるということですよね。今まで期間の定めがなかった人があしたから期間の定めを三カ月後にいたしましょうとされたときには、そのときにこの八条二項に該当しなくなるケースもなくはないということですよね。そういうことになりますよね。

大谷政府参考人 御指摘のようなケースについて、実態を判断した結果、なくなるということは起き得ると思います。

郡委員 では、そうした不利益をさせないための何か手だてというのはありますでしょうか。

大谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、労働条件の変更といいますのは、事業主から労働者に一方的に、あるいは合理的内容でないものを決めつけるということはあってはならないわけでありますので、これは法律的に、そういうことがあってはならないということが、もう判例でも確立しているところでございます。

郡委員 それは使用者と労働者の契約ということになるのでしょうけれども、でもそれが、今局長は大分楽観的なお立場での発言であったと思うんですけれども、使用者側の方が圧倒的な力を持っているわけで、不利益変更を生じさせないようなしっかりとした手だてを講じておくことがなければ、使われている身としては何とも言えない。弱い立場だということも考慮すべきじゃないでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 さっき申し上げましたみたいに一方的な変更というものはあってはならないわけでありますけれども、そういう合理的な理由がなくて不利益な取り扱いがなされたという場合であれば、これは、個別労働関係紛争解決促進法に基づくあっせんなどの紛争解決の援助を受けることができるということでございますし、最終的には民事訴訟という形もあるということでございます。

郡委員 そもそも、この期間の定めということについての考えが、期間が定められている、そのときに、例えば季節的なことだとか、あるいは短期的なことだとか、臨時的に何かがあってこの期間というふうな期間の定めがあるのは合理的だと思うんですけれども、恒常的にずっと続いている仕事で期間の定めというのがあること自体が不合理だと私は思うわけです。どうでしょうか。

大谷政府参考人 その期間の定めがあることが合理的か不合理かということにつきましては、その職種なりそういう労働の状況において個別にその労使で考えていくべきものではなかろうかと。一概に決めつけるのはなかなか難しいと思います。

郡委員 やはり、合理的な理由がなければ期間の定めということはしてはならないような、そういうふうなちゃんとしたものがなければ、これは本当に差別的なものから脱し得ないのであろうというふうに私は思います。

 次に、いろいろと問題点がありまして、改正案というのは第一条の目的で「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図る」というふうにうたっているわけでございますが、同じ業務と責任で仕事をしているパート労働者は、所定の時間が来れば仕事が終了するわけですよね。ところが、今の正社員の働き方というのは、いろいろなところで指摘もされております、大変長時間の労働が恒常的になっております。時間が来ても残業が常態化していたり、有給休暇の取得もままならないというような働き方であります。パート労働者はそのような正社員の仕事ぶりにはついていけないというそれぞれの事情を抱えてパート労働になっているというふうに考えられるわけであります。

 正社員並みの働きの人を均等、均衡待遇にするということですけれども、その場合、残業や長時間労働などのような正社員の働きぶり、仕事ぶり、これに合わせるということではよもやありませんでしょうね。確認をさせていただきたいと思います。

大谷政府参考人 均衡待遇と申しますのは、個別の事業所ごとにその通常の労働者と職務の内容、人材活用の仕組み、それから契約期間を比較して、その異同に応じて公正な待遇を求めるということでありまして、それが例えば正社員並みに働くことを求めるということでもございませんし、特にこの法律におきましては、均衡待遇ということでありますから、いろいろな働き方の形態に応じて今回の均衡待遇のレベル、ルールを規定しているわけでありまして、それぞれその態様ごとに適正な働き方、現在、仮に通常の労働者とパート労働者に乖離があるとするならば、近づいていくという仕組みであろうかと思います。

郡委員 もう少し簡単にお答えいただけるものかと思いましたけれども。働きぶりには、正社員のそういった働きぶりに対して均等、均衡というふうな、そういうことではないということの理解でよろしいわけですよね。もう一度重ねて伺いますけれども。

大谷政府参考人 例えば、午前中議論になりましたけれども、残業の有無というものが一義的に職務の同一になるかというようなことを考えますときに、責任が伴う残業についてはある程度判断基準にはなりますけれども、一般的に残業することが正社員並みの要件ではないというふうに考えるわけでありまして、こういったことで、そういう正社員のいろいろな働き方の問題点をすべて包摂して近づけるということではないというふうに考えております。

郡委員 はい、わかりました。

 それでは、その責任について次にお尋ねしたいと思います。

 改正案の第八条、第九条第二項、それから第十条第一項は、職務内容同一短時間労働者に適用されております。第八条で、職務の内容というのは「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」というふうにされているわけですけれども、ここで言うところの「責任」あるいは「責任の程度」というのは具体的にどういうようなことをいうんでしょうか。何に対してどのような責任をいうんでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 責任が同じかどうかにつきましては、現行の通達におきましても、トラブルの発生時や臨時、緊急時の対応、ノルマ等が同じように職務上の責任として含まれているかどうかを判断するとされているところでございます。このような責任は、外形的にとらえにくい概念でございますけれども、責任の違いがあらわれている業務を特定いたしますと比較することができるものと考えております。通常の労働者が担うそのような業務のすべてをパート労働者が担っている場合は、両者の責任がこれは同じであると言えると思います。

 例えば、一次的クレームの処理はパート労働者も行うけれども、二次的なクレーム処理は正社員のみが行う、こういった場合には責任が異なるというケースに当たると思います。また、ある製造業務に正社員、パート労働者がともに従事する場合を想定しまして、課されているノルマが同じであれば、これは責任が同じではなかろうか。また、事務職におきまして、課長と係長が外見的には同じデスクワークを行っているという場合でありましても、内部決裁であるとか対外交渉の権限というのが異なる、こういった違いがあれば、これは責任が異なるということになるわけでありまして、こういったぐあいに個々に判断していくことになろうと思います。

郡委員 今、パートタイム労働指針を挙げられて御説明をいただきましたけれども、では、例えばノルマを挙げさせていただきますと、ノルマ、例えば販売業務での一定期間での売上高ということになるんだろうと思うんですけれども、この場合、業務内容やほかの責任の程度が同じであって、所定内労働時間四十時間の正社員と、それから二十時間のパート労働者、これが一定期間の売り上げのノルマで考えますと、四十時間働いている方を一〇〇とすれば二十時間のパート労働者は五〇、これで同じ責任ということでよろしいんでしょうか。

大谷政府参考人 パート労働者と、それから正社員の責任が同じかどうかということにつきまして、その責任の内容が、ノルマのほかにトラブルへの対応等ほかの要素もあることから、一律に労働時間に比例して認められる、こういうことではないと思います。

郡委員 今、労働時間に比例してはいないのだというお話でした。

 ちょっと別の角度から質問させていただきますけれども、当初、厚生労働省の御説明、雇用均等分科会などでも説明をされていました。パートタイム労働指針にある所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じパート労働者は、今回の改正案第八条の職務内容同一短時間労働者で通常の労働者と同視すべき短時間労働者に当たるのだというふうに、いわゆる差別取り扱いが禁止されるというふうに説明をされておりました。

 このパートタイム労働指針にある所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じというパート労働者については、通常の労働者としてふさわしい処遇をするよう努めるものとするという規定があるわけですけれども、今回のこの改正案については、どこにそれが書かれておりますのでしょうか。

大谷政府参考人 今回の改正の考え方は、例えば通常の労働者が八時間で、そしてパート労働者が七時間四十五分であるか、そういう時間の近接概念よりも、むしろその職務の実態や人材活用、それからその実態が職場においてどれぐらいの期間続いていることが観察できるか、そういうことで判断することといたしましたので、まさにそのわずかな違いで見きわめるという形はとらなくなったということでございます。

郡委員 そうですよね。今回の改正ではないわけですよね、これは。入っていないわけです。改正案の第八条、差別的取り扱い禁止の対象となるパート労働者の要件には、時間の長短、時間の要素は入らない、そういうふうな理解をさせていただきました。

 正社員と所定労働時間がほとんど同じパート労働者、すなわち正社員の所定労働時間の八割から九割の労働時間のパート労働者のみならず、もっと短い所定労働時間のパートの労働者も差別取り扱い禁止の対象となり得るかのようにも聞こえますが、一見すると時間の要件はなくなっているわけですよね。しかしながら、改正案で差別的取り扱い禁止の対象となるパート労働者というのは、職務内容同一短時間労働者であることが要件になっていて、その職務内容同一というときのその職務内容の中に、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」というふうに規定されているわけであります。そして、その「責任の程度」というのが、トラブル発生時や臨時、緊急時の対応、ノルマ。パートタイム労働指針の解説、先ほど局長が御説明になられたものなどが同じかどうかで判断をされるということです。

 例示されているこれらの責務というのは、先ほどもノルマの事例を出して伺いましたけれども、労働時間、拘束時間とこれは密接に関連している場合があるんじゃないかと思うわけであります。先ほども申し上げましたように、週四十時間の人が一〇〇のノルマを課せられている、二十時間であれば五〇のノルマで、ノルマに関しては同じ責任があるというふうに考えられる、ここに時間概念が入ってくるわけだと思うんです。

 職務内容同一短時間労働者であるかどうか、責任の程度が同じであるかどうかを判断しようとするときに、これは間接的ではありますけれども、やはり今申しました時間的な要素が入り込んでまいります。時間の長短が責任の程度に反映してしまうんじゃないかと考えますが、いかがでしょうか。所定労働時間が正社員と比べてほとんど同じパート労働者に適用が限定されていて、相当短いパート労働者はこれまたここから除外される、最初からもう適用除外になるのじゃないかと懸念されますが、私の心配点に対しては何とお答えになりますでしょうか。

大谷政府参考人 今回、差別禁止の対象とすべき労働者については相当長期間の議論があったところでございます。

 今お話がありました時間の観念でありますけれども、時間が近接しているということを要件にはしなかったわけでありますが、確かに、今お話しのように、職務の内容とかそういった中にそれの要素がある程度入っていることは見てとれるわけでありますが、しかしながら、六時間という勤務であって、その六時間の中で責任とノルマをこなしているというケースがあれば、これは六時間ということにおける正社員との差別禁止ということは起こり得るというふうに考えておりますので、今言ったような形で個々に見なければなりませんが、最初から例えば時間の短い方が除外されているかということであれば、そんなことはないと考えております。

郡委員 第九条第二項は、職務内容同一短時間労働者で、人材活用の仕組み、運用が一定期間正社員と同じと見込まれるパート労働者には、正社員と同一の方法により賃金を決定するように努めるものと規定されております。

 この場合の職務内容同一短時間労働者にも、責任の程度という要件の中で時間の要素が入り込んでくるとしましたならば、所定労働時間が正社員とほとんど同じのみが適用の対象になってしまうんじゃないか。これもまた心配になりますけれども、そのように限定されてしまうとすれば、パートタイム労働指針からも後退してしまうことになりますが、この指摘についてはいかがでしょうか。

大谷政府参考人 その職務における、あるいは責任における時間の概念というのはある程度実態的な判断基準に含まれるわけでありますけれども、先ほど申しましたように、その所定の時間の中で相応の責任が果たされている場合、そしてそれが例えば六時間なら、言うなれば八分の六の責務を果たしていることであれば、それは緊急時や何かについては別途加味する要素はあるかもしれませんけれども、その責任が果たされ、仕事が行われて、人材活用が行われていれば、そういう扱いを受けるということになると考えているわけであります。

郡委員 それもこれも事業主、使用者側にゆだねるということになるわけですよね、これまで伺ってきた流れからいたしますと。それではやはりパート労働の方々に対して大変不利益になるケースが出てこないとも限らないと思うんです。ですから、ぜひここは指針などで明確に示していただいて、一方的、恣意的な運用だとか、理解不足による無用な混乱などを起こさないようにすべきだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 今回の法律の改正の趣旨が労使それぞれに徹底いたしますように、指針等を含めまして、その理解の促進に努めてまいりたいと考えております。

郡委員 ぜひ指針で盛り込んでくださるように、無用な混乱、また不利益変更などが起こらないようにぜひともしていただきたいと思います。

 それから、責任の程度の比較については、午前中の西村委員とのやりとりでもあったように思いますけれども、異動の範囲を比較する場合、これについてもちょっとお尋ねをしたいと思います。

 これも重ねての確認ということになりますけれども、配置の変更の範囲、つまり異動の範囲と頻度という場合、同じ職務内容の正社員の中にも異なる人がいるわけですよね。そのことを踏まえた上で、短時間労働者と比較対照になるのは、同じ職務の正社員の中でも、短時間労働者と同じような異動の範囲と頻度の正社員と比較をするということで、確認ですけれども、これはよろしいのでしょうか。

大谷政府参考人 改正法の第八条の差別的取り扱い禁止規定の適用に当たりまして、パート労働者の異動の範囲につきましては、当該事業所の中で、その事業所における慣行その他の事情から見て、同一の範囲で異動すると見込まれる正社員と比較するということになると思います。

郡委員 次に、それでは、第九条の第一項にございます、事業者は、正社員との均衡を考慮しつつ、パートの賃金を決定するよう努めることですね。その際に、事業者は、パート労働者の職務の内容だけでなく、職務の成果、意欲、それから能力または経験などを勘案するというふうになっているわけですけれども、ここで言われるところの意欲、これはどういうようなものでありましょうか。どういうような指標でその意欲のあるなしというのを評価されますのでしょうか。

大谷政府参考人 改正法案の第九条第一項におきましては、賃金について、短時間労働者の意欲等を勘案して決定することとしておりますが、実際に勘案するに際しまして、事業主の主観に基づくものではなく、総合的かつ客観的な判断がなされるべきものであると考えております。その評価の要素あるいは基準等について客観的な説明ができるということが求められているものと考えます。

 例えば、あるスーパーで、短時間労働者が遅刻、欠勤がなく勤続したという場合に、当該労働者の意欲を勘案して、精勤、皆勤の手当を支給するといったことが想定されるのではなかろうかと思います。

郡委員 今、総合的に判断できるような基準というふうにおっしゃられたわけですけれども、これは、ですから、どこがどういうふうにつくるわけなんですか。

大谷政府参考人 これは、この法律では、一義的には事業主が判断していくということになると思います。

郡委員 ですから、何度もこれまでの議論の中でもありました、事業主が決めることであります。

 パートで働いている人たちが、自分は差別を受けていますというふうに思って、それを立証するのが大変難しいというのも、先ほど午前中の筒井委員とのやりとりで出てきたわけですよね。労働者は、自分が差別を受けているということに対して立証をする力が弱いんです。使用者側、事業主側にそういうものをすべてゆだねてしまって。

 これは、こう申しては大変あれですけれども、きのう参考人質疑をさせていただきました。参考人の陳述を聞かせていただきまして、使用者側の立場でいらっしゃる委員が、まさに厚労省の、今回、今まさに審議している法案の代弁者であるかのように見えました。つまりは、この法案というのは、働く者の立場に立っていない、パートで働く方々の現実のところを全く理解していない、経営側の立場に立ってだけ書きかえたものである、やはりそう思わざるを得ません。

大谷政府参考人 今回、こういう均衡の待遇あるいは差別禁止、こういう条項を盛り込むとともに、そういったパート労働者の方が自分の処遇について知る、それも、事業主から、それは責任としてそういう説明を求めることができるという規定を設けて、従来、事業主にそういう責任がなかったところに新しい一歩を投じているわけでありますけれども、それに加えまして、今回簡便な行政措置等もとるということで、その内容について理解ができない場合に、労働局に御相談いただければ、それは双方の立場を聞いて、その実態を分析するということも起きるというふうに考えておりますので、現在の状況から見ますと、相当の前進があったというふうに考えるわけであります。

 この説明義務等につきましては、審議会のプロセスを申し上げましても、経営者側は、非常にこれは抵抗が強かった部分でございまして、そういう中で、今回御理解賜って盛り込んだというふうに理解しております。

郡委員 では、ちょっと別の観点からまた伺わせていただきますけれども、転換制度について、それでは聞かせていただきたいと思います。

 これは第十二条の通常の労働者への転換制度ですけれども、第一項一号で、正社員の募集の際には、その募集事項を掲示するというふうに。掲示すれば、この転換推進の措置を講じたことになってしまいます、壁に張っているだけで。これで実効性がありますんでしょうか。

大谷政府参考人 現状を考えますと、パートの方が働いているところで、全く知らないところでまた新しい採用が行われるということがあるわけでありますから、それは、パートタイムの労働者の方がそういう募集をされているということを知り、またそれによって応募する機会がふえるというわけでございまして、一定の前進があるものと考えております。

郡委員 これは、ですから、掲示するだけで、そのパート労働者の方々全員に、そういうふうなチャンス、こういう機会があるんですよということを知らせたことになりますか。どこに張って。それは、見た人は見えるかもしれませんけれども。壁に張っておくだけで、これはもうその措置を講じたことになってしまうんですよ。これは何か使用者側の言いわけ、アリバイづくりとしか思えないですが。

大谷政府参考人 この周知につきましては、その職場で働くパート労働者全員にそれを知らしめるというのが趣旨でありまして、特に掲示方法について規定しているわけではありませんが、ポスター一枚を掲示して終わりということではないと思います。

郡委員 ちょっと待ってください。ということではないと思いますというふうにおっしゃいましたけれども、それは全部、事業所にそういうふうに徹底されるわけですか。一人一人にちゃんと見えるように掲示しなさいというふうになるわけですか。

大谷政府参考人 今回、転換のための措置ということで三つの方法が提示されているところでありまして、どういった措置を講じるか、これは事業主が判断することでありますけれども、必ず、それぞれの条項について、それが労働者の知らないところで行われていたということはないようにしなければならないというふうに考えておりますし、そういった考え方は施行の中で徹底していきたいと思います。

郡委員 ですから、それで十分だと本当に思っておられるのでしょうか。本当に、行政としての責任放棄だと思います。

 どなたかも触れておられたかと思うんですけれども、パート労働者の優先雇用制というのは、このパート労働法が九三年につくられる前から、既に一九八九年、当時の労働省が告示を出しております。外部の応募者よりも優先的にフルタイム労働者に雇用するパートタイム労働者の権利が保障されなければならないと。正規雇用形態のフルタイム労働からパートタイム労働への転換を希望する場合は本人の同意を要件とし、パートタイム労働者と正規雇用形態のフルタイム労働者との労働条件の格差をなくす必要もあると思います。

 告示は労働省が一九八九年の段階で出しているんですけれども、これを実効性のあるものにするために二十年近くかかってこれですか。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

大谷政府参考人 今回の転換の措置でありますけれども、これは、今申しましたような三つのいずれかをとる義務を事業主には課したわけでありますけれども、その過去の指導との関係で申しますと、今回の方法は法律で義務づけるということになるわけでありますから、その採用において、どういった方を採用するかという最終的な権限のところは、今回、法律で介入するということはとらなかったというわけでありますけれども、現場において従来から、そういう考え方について引き続き進めていただきたいというふうには考えております。

郡委員 義務づけであっても、掲示をしたり、登用試験というのもあるようですけれども、これも、登用試験をしたけれどもあなたはだめだったわというふうな弁解を使用者側にさせることが可能になったりするわけですよね。

 新しい新卒の新人の採用をするのと、ここでずっと熟練してきてパートで働いてきた方と比べた場合に、私は、今までずっとやってこられた方の方が会社のためにもさらに役立つわけですし、全く知らない人とあわせてわざわざ登用試験をしなくちゃいけない、何でそういう制度になるのかもよくわからないです。

 つまりは、これは審議会の議論の中でもありましたけれども、パートタイム労働者というのは、採用の仕方がまず違っているのだからそれは当然なのだ、あたかも差別されて当然なのだというような議論を使用者側の方がされている。こういう本当に差別的な、偏見に満ち満ちたものだと思うんです。

 今この仕事をしっかりとこなしているその方を、正社員の席が空いたのであれば優先的に登用するのは、スムーズにそのまま正社員として採用するのは、ごくごく当たり前のことだと思います。

 何かまだまだおっしゃりたいんでしょうか。

大谷政府参考人 今お話がありましたように、そういった長期の勤続による経験や能力が高められて、そういう方を正社員へ登用するということがむしろ企業にとって有益だというケースについて、近時、多くの企業で正社員への転換が進められているわけでありますけれども、そういったことの流れというものは大変望ましいことだとは思います。しかしながら、先にパートタイムの労働者の方が何人かおられたら、その方々の希望が全部満たされるまで新規の、別からの採用がないということになりますと、それは審議会でも相当厳しい議論があって、今回も、優先的にパートタイムの方をいわば法律によって採用を決める、こういうことはとり得なかったということでございます。

郡委員 いずれにしましても、大変実効性が乏しいものではないかというふうに指摘せざるを得ないと思います。

 パートで働く多くの方々というのは本当に、賃金はもちろんですけれども、そのほかのことでもさまざまな差別を感じておられるわけです。慶弔休暇や見舞金もそうですし、一時金もそうです。あるいはまた、社内旅行などに行こうという場合、これは社員の場合は福利厚生費で賄ってそのときの負担はないけれども、パートの人だけ全額自己負担してくれとか、あるいは、住宅資金だとか教育資金の貸付制度、こういうものについてもさまざまな差別があるわけです。

 そのさまざまな差別を受けながら、パートとして、同じ責任を持って、それこそ同じ意欲を持ってやっておられる方々、これを、先ほど来お話が出ている同一価値労働同一賃金、この原則に沿って、差別の解消に向けてしっかりとした処遇をしていくのがこの法案の本来の趣旨であろうかと思います。その意味においては、私からも今指摘させていただきましたように、大変問題が多いというふうに言わざるを得ないと思います。

 まだまだ質問の予定がございましたけれども、時間になりましたので、これで終わりとさせていただきます。

 ありがとうございます。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、パート労働者の中でも特に公務パートの問題について伺いたいと思います。

 パート労働法は公務パートを適用除外にしております。日本政府は、ILOパート労働条約を批准しないばかりか、公務を適用除外にするよう提案し、各国から孤立をした経緯がございます。しかし今や、公務パートは全体の三割とも言われ、公務員といいながら、雇いどめを繰り返す、半年更新で十年、学期ごとに雇いどめ、十年全く賃上げがないまま勤務しているなど、余りに身分が不安定、かといって、民間労働者のようにパート労働法すら適用になりません。まさに宙ぶらりんな存在、足場が欲しい、そういう声が上がっています。私たちは、公務パートを適用除外にすべきではないと考えております。

 そこで、まず総務省に伺いますが、自治体で働く臨時、非常勤職員は一体どのくらいいるでしょうか。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 臨時、非常勤職員というものにつきましては、いろいろな任用形態、勤務形態がございまして、正確な統計をとることは正直申し上げて難しゅうございますけれども、あえて一定の前提を置いて、平成十七年四月一日現在で状況を調査したものがございます。

 これによりますと、条件は、任用期間が六月以上または六月以上であることが明らかである者であり、かつ一週間当たりの勤務時間が二十時間以上の職員数ということでとっておりますけれども、その総数は、これは都道府県、市町村を含めてでございますけれども、四十五万五千八百四十人でございます。

 ちなみに、数の多いところで申しますと、一般事務職員で十一万二千人、あるいは看護師等で二万一千人、保育士等で七万八千人、それから技能労務職で五万七千人、こういったところが大きな数が出ております。

 以上でございます。

高橋委員 実は、今お答えいただいた資料を皆さんに配らせていただきました。今回実態が本当にわからなくてぜひ数字が欲しいという関係団体の要望も非常に強くあった。今部長がお認めになられたとおり、まだまだ正確な数ではないだろう、実態を反映しているものとはまだ言いがたいかもしれない。しかし、それであっても四十五万五千八百四十人という数字が出てきたというのは、やはりまだまだ多いだろうとは言いつつも、しかし、これほどいるんだなということに驚きを禁じ得ません。

 この方たちの身分は公務員なのですか。そして、労働者としての権利はどうなっているのか伺います。

上田政府参考人 今調査の対象になりました四十五万五千人につきましては、厳密に言うと特別職と一般職がまじっておりますけれども、いずれも公務員でございます。

高橋委員 済みません、後段に答えていただけますか、労働者としての権利の問題。

上田政府参考人 労働者としての権利というのがどういう定義かわかりませんけれども、公務員法によりまして、公務員としての権利は当然法律上与えられているというふうに考えます。

高橋委員 そういう意味でなくて、例えば労働基準法との関係、パート労働法は入らない、あるいは雇用保険との関係、国家公務員との違いとか、そういうのがあると思いますけれども、いかがですか。

上田政府参考人 法律の適用関係、全部私がこの場で網羅してお答えできませんけれども、例えば労働基準法でいえば、適用される規定と適用されない規定があります。それから、雇用保険には基本的には常勤職員の場合には入っておらないというようなこと、それから、国家公務員との違いは、これはちょっとここでどの点ということを申し上げかねますが、大体のところは同じですけれども、済みません、細かなところで違うところもあると思います。

高橋委員 そうですね、もう少し詳しく資料でも出していただければよかったかもしれません。

 ただ、今のお話の中でも、労働基準法が基本的にはあるんだけれども、当たらない部分もあるというお話だったし、雇用保険は常勤職員は当然入らない、身分が保障されておりますけれども、しかし、短時間という性格上入っておるということがあるのかなと思うんですね。今の説明を聞いただけでも、公務員である部分と民間の労働者である部分を何か両方兼ね合わせているような、そのことがいい意味ではなく、どちらにも足場がないという問題が非常に起こっているということを指摘せざるを得ないんですね。

 配付資料の二枚目をごらんください。これは、東京春闘共闘会議が平成十六年の東京都内の民間の求人を見て時給調査を行ったものをグラフにまとめてみたものであります。まず、東京都の最低賃金は七百十九円です。東京都庁のパートの時給、これは一般事務で比較しましたが、七百三十八円、最賃すれすれですが、民間の時給平均は一般事務で九百二十二円という形で、二百円の差が時給で出ている。非常に驚く差があるのではないかなと思っています。

 都の生活保護費は、平成十七年度基準で見ますと、一級、二級、三級とありますので、一番低い三級地でかつ単身世帯で比較をすると、いわゆる最低生活費に当たると思うんですが、それが十二万六百二十円なんですね。それで換算すると、フルタイムで働いてようやっとかなということになりますので、当然生活保護基準以下であることは明らかだと思います。

 自治体職員の一員として安全、安心の住民サービスを行う労働者が実はワーキングプアだ、こういう現実は改善されるべきだと思います。この点で、大臣に率直な感想を伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 東京都庁の公務のパートの時給が低いのではないか、こういう御指摘でございます。この点につきましては、これから最低賃金の方も見直してまいりますし、またパート労働法の改正によりまして、そこで民間との競争も起こるということの中でこの時給の調整が行われていくのではないか、このように考えております。

高橋委員 今の、パート法の改正により、民間との競争により時給調整が、ということは、一定民間格差が縮まっていくだろうという意味でおっしゃったと確認してよろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 私どもは、今度のパート法の改正それから最低賃金法の改正というものが、パートの皆さんの時給にもプラスの方向で力がかかっていくというふうに思っておりまして、したがいまして、東京都庁の公務のパートの時給もそういう中で競争するという結果が生まれてくるだろう、こういうことでございます。

高橋委員 ありがとうございます。ぜひそういう方向で進むことを期待したいと思います。ただ、現実はパート労働法の適用除外になっておりますので、除外を今解くとは答えられないにしても、法の趣旨に準ずるということがあってしかるべきだということを、ぜひ検討願いたいということを要請しておきたいと思います。

 それで、なぜこういうことになっているのかを考えていきたいと思います。

 まず、自治体のパート職員の賃金はどのように決められるのでしょうか。賃上げするとき、賃下げするとき、それぞれについて伺います。

上田政府参考人 地方公務員の給与につきましては、基本的には勤務条件法定主義の一環で、地方公務員ですと、条例で給与または報酬の額を定めるということになります。したがいまして、臨時、非常勤の職員の方々に対する給与は基本的には報酬という種目になりますけれども、これは地方自治法あるいは地方公務員法、これらの規定あるいはこれに基づく条例の規定などによりまして、その勤務の形態とか職務の内容、それから民間における同様の労働者の状況等を勘案しながら、各地方公共団体において法定されるべきものというふうに考えております。

高橋委員 具体的に伺いますが、その条例の改正をするとき、賃上げのときは上限を上げることになりますので議会の議決が必要だ、上限はそのままだけれども上限の範囲内で下げるときは議会の議決が必要ないと伺いましたが、正しいですか。

上田政府参考人 地方公共団体によりまして条例の定め方がさまざまかと思います。定額、一定の額を定めているところがあるかもしれませんし、上限額を定めているところがあるかもしれません。

 仮に、上限額を定めているという団体の場合であると、上限額そのものを上げる場合には、納税者にこれ以上払うかもしれないということをお断りしなければいけませんので、条例改定が必要ということになります。逆に、定額、一定の金額を書いている団体の場合には、上げも下げもその都度書かなきゃならないということになると思います。

高橋委員 ですから、私が問題だと思っているのは、上限は決まっている、それを上げるときは当然税金がふえるんだということで議会に諮るのですけれども、下げるときは構わないんだ、構わないと言えば失礼ですが、議会に諮らないんだと。ここに非常に大きな問題があると思うんです。唯一の歯どめは最賃でしかないということなんですね。それがこうした実態を生んでいるのではないか。

 自治体は、よく公務員全体が行革という厳しい環境にあると答えます。しかし、もうそういうレベルではなく、民間との格差がこれだけ下がっているというときに、下げるときだけ正職員並みというのはそもそも理由が立たないのではないかと思うんですね。ことし、日給で三十円アップしたそうです。最低賃金ですら時給で五円引き上げられているのに、驚くべき低さだと思います。

 これは、私は東京都を例にして言いますけれども、全国的にもこういう問題が当然あると見なければならないと思います。例えば交通費が四百円、定額だ、それが七百三十八円プラスの場合、都の場合はそうですが、区、市町村になりますと交通費込みになっている、あるいは全くなしという状態もあり、わずかな賃金をさらに交通費が食っている、そういう状況になるわけですね。余りにも待遇が低過ぎて人が集まらないという声さえも聞こえているわけです。少なくとも交通費の別途支給などは当然だと思いますが、総務省としてその考え方を明らかにするべきではないかというのが一つ。

 それから、あわせて、臨時職員の人件費について、自治体予算の中ではどのように計上されているのか、お願いします。

上田政府参考人 臨時、非常勤の給与は報酬という形で定められていると思いますので、一般職の職員の給料、手当という体系と比べると極めて包括的な定めになると思います。したがいまして、その中でどういう要素を考慮して報酬額を決めるかということは、やはり各自治体で、議会で十分議論されて決定さるべきものであるというふうに思います。

 それから、済みません、あともう一つ、一緒に聞かれたことは。(高橋委員「交通費」と呼ぶ)交通費ですか。ですから、そういうものをどういうふうに評価するかということを含めて、各自治体で御決定いただくものだというふうに思います。

 済みません、もう一つ、何か言われたような気がしたんですが……(発言する者あり)予算の形態、ありがとうございます。

 それから予算の形態の話は、報酬という項目で出す場合には地方公共団体の地方自治法施行規則で節をいろいろ区分しておりますけれども、報酬というところに上がってくる場合もありますし、あるいは賃金という種目で上がってくる場合もあるというふうに思います。

高橋委員 今、賃金というお話がありましたけれども、その前がございます。

 地方財政調査研究会の「地方公共団体 決算統計ハンドブック」によれば、まず物件費という仕分けがございます。維持補修費、普通建設事業費、災害復旧事業費及び失業対策事業費に係る物件費を除くその他の経費の物件費を計上する、その一が賃金ですね。ですから、賃金は物件費の中に入っている、こういう整理がされていると思うんですね。まるで物扱いではないか。だから、ワーキングプアになろうがどうしようが、物件費なんだから関係ないということが現場の実態ではないのかと思うんですね。住民から見たら同じ仕事をしています。責任を持っています。なのに人として扱われていない。ここから脱したい、自分たちは労働者なんだ、そこを認めてもらいたいというのが現場の声なんです。

 自治体の中には、これは先ほど紹介した東京春闘共闘会議が東京都内の自治体の皆さんと懇談を重ねていって、今紹介したようないろいろな声があるんですが、その中に、パート労働法に準拠して考えたいという答弁もあったと紹介されています。ですから、私は、先ほど来ずっと議論されているように、パート労働法本体が非常に不十分だと思っていますけれども、少なくとも、公務パートの労働条件をパート労働法に準拠するという立場に立つべきではないか、この点、いかがでしょうか。

上田政府参考人 今回のパート労働法、公務員は別になっているわけですが、短時間で働く方の待遇が不当に低いものとならないようにしようという考え方、これについては、公務員が別法だからといってそれを潜脱するというたぐいのものではないと思います。ただ、法体系としては、公務員の場合には勤務条件法定主義ということで、法律または自治体の立法である条例によってそれを保護するということになっておりますので、例えば東京都であれば、東京都の条例のレベルで適正な処遇を確保するようにすべきものであるというふうに考えます。

高橋委員 少し具体的に話を進めたいと思うんですが、資料の三枚目に、任期付短時間勤務職員の表がございます。調べていただいた都道府県、政令指定都市、市区町村、合わせて六百十名いらっしゃるということなんですが、これは、任期付職員法が平成十六年改正で設けられた制度であります。

 私は、最初にお断りしておきますけれども、自治体の臨時職員の考え方については、公務員も多様な働き方があっていいんだという全体の流れにはくみする立場ではありません。やはり本当に臨時的に増員や補充が必要な場合に限るものだと思っています。ただ、先ほど来話を進めているように、今四十五万人以上も公務の現場でパート労働者がいるという実態から見れば、均等待遇ということが喫緊の課題であろう、このように思っているんですね。

 この表にある任期付短時間勤務職員という方たち、これは任期付職員法第五条の中の、住民に対して直接提供されるサービスの提供体制を充実させる場合などの任期付短時間職員は、試験または選考が条件となっておりますけれども、その待遇においては、いわゆる今議論しているパート労働法でいうところの通常の労働者と同視すべき労働者、これと同じであるかどうか。お願いします。

上田政府参考人 パート労働者と同視すべきかどうかというのはちょっとどこをとらえたらいいかわかりませんけれども、例えば、パートタイム労働法案でいうところの通常の労働者と同視すべき短時間労働者という言葉について、法文に照らして見てみますると「当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの」というふうに書いております。

 この言葉に当たるかどうかということ、法律は適用されませんが、この観念に当たるかどうかということについていうならば、任期の定めがあるという点において、パート労働法の今の同視すべき短時間労働者は期間の定めのない契約というふうになっておりますから、その点において、この観念には任期付短時間職員というのは該当しないというふうに考えております。

高橋委員 私が聞いているのは、そのことは前提として聞いております。つまり、条件は当然違うんです、任期の定めがあるというのが大前提でありますので。だけれども、その待遇においては、つまり、表を最後につけておきましたけれども、正社員と同視すべきパート、いわゆる賃金が正社員と同じ仕組みで、ただ、時間ですから時間比例になりますね。その他の身分保障についても同じであるという点では、待遇においては同じ扱いですねというふうに、確認します。

上田政府参考人 任期付短時間勤務職員については、給与の体系がいわゆる臨時、非常勤と違っています。御案内だと思いますけれども、報酬の体系から給料、手当の体系になっております。その意味においては、どちらかというと、臨時、非常勤の四十五万のグループよりは一般職の職に近い部分にあるということが言えようかと思います。

 それから、任期付職員の場合は、身分保障につきましては、任期期間中については当然その保障があるということになります。

高橋委員 身分保障については当然あるとおっしゃった。私は、待遇の問題を聞いていたんです。それは基本的には同じだということを確認した上で聞いていますので、部長が全然違うようなことをおっしゃると非常に困るんですね。待遇においても考え方は同じですね、ということです。

 同視すべき労働者として、正規職員と待遇において同じだということを確認したいんです。

上田政府参考人 パート労働法のこの観念と同じかと言われるとちょっと困りますけれども、多分、先生の御指摘の範囲でいうと、要するに時間数が少ないことを除けば、ほかの常勤職員とパラレルであろうということについて言えば、それはそのとおりでございます。

高橋委員 ありがとうございます。大変ここを苦労しました。それが言いたかったわけです。

 つまり、今回のパート労働法は、非常に厳しい要件をすべてクリアしなければ対象とならないということから見たら、当然任期つきである、あるいは人材活用の仕組みが任期があるためにない、そういう条件はあるけれども基本的に待遇が同じだというふうに仕組みを組んだのがこの任期付短時間勤務職員のあり方である、このことを、まずパート労働法においても波及させるべきではないかということを私はまず考えている。これは厚労省に要望をしておきたいということなんです。

 そこで、そうは言っても、総務省にもう一度伺います。これらの制度はまだまだ始まったばかりで、活用は少ないかと思います。もちろんいろいろな条件があります。三年の任期で、再任用されるためにはまた試験に受からなければならない。だからもろ手を挙げてというわけにはいきませんけれども、少なくとも救済されるパートがいるならば、それを大いに救済されるようにするべきだと思いますし、期限とかいろいろな問題で難しいけれども、いわゆるパート労働法の均衡処遇、政府で言うところの均衡処遇に準拠すべきという考え方を総務省としても持つべきだと思いますが、いかがでしょうか。

上田政府参考人 実は、この任期付短時間職員制度を企画立案するときに、私は直接担当の課長であったものですから、若干我田引水ですが、この制度はぜひ使ってもらいたいというふうに思っております。

 ただ、公務員というのは、伝統的にそうなんですけれども、フルタイムで必要な定員を確保して仕事を切り回すということが原則になってきておりまして、そういったものの例外として、近年、任期つきとか、あるいは短時間とかという制度を正面から新たに導入してきたという経緯があります。

 したがいまして、その普及には若干時間がかかると思いますし、それから、短時間制度ができたから、どんどんふやせばいいということではない。さっき先生がおっしゃったとおり、有期の仕事とか、あるいは繁忙期の時間帯とか、そういう短時間の人が勤務するのに適する仕事というものをよく選ばれなきゃいけませんが、そういう目的に合致する範囲で、できるだけこれを活用してもらいたいというのが正直な気持ちでございます。

高橋委員 もちろん条件つきで、私は、ただただ短時間をふやせという意味で言ったのではないんです、待遇の面でお話ししました。

 時間が来たので要望にいたします。

 先ほど、私は、物件費で整理されているというお話をいたしました。今お話をしている任期付短時間勤務職員になれば、必要な職員という扱いになって交付税措置がされると思っております。つまり、そこで初めて物から人になるということなんですね。私は、本来みんな人ではないのかと。公務パートは重要な役割を果たしている。なのに、人が集まらないとか、ワーキングプア状態に陥っているなど、少なくともこういう事態は避けるように、公務でも民間でも法の趣旨が平等に貫かれるべきだということを、先ほど大臣がプラスに働くようにということをおっしゃいましたので、ぜひ強く要望をして、終わりたいと思います。

 以上です。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、予定いたしました冒頭の質問、出産の場の確保と助産のあり方につきましては、武見副大臣にお願いいたしましたが、他に委員会があり御不在であるということで、次回送りにさせていただきますので、配付しました資料とは違う資料を用いまして、本来の質疑に入らせていただきます。

 先週そして参考人の皆さんのお話も伺いまして、きょうの審議に臨み、また朝からずっと今まで伺っておりましたが、何人かの委員も御指摘でございますが、果たしてこのパート労働法の改正というものが、パートという身分格差を固定し、むしろこれから先その方たちにとって抜けることができない状況をつくり出すのではないかという懸念を私はまたきょうも深く抱きました。

 そこで、私は、残念ながらこの法案がいいものと思いませんけれども、それでもせめて現状を後退させることがないようにくらいは獲得したいと思いますので、そういう観点から伺わせていただきます。

 今回の法案の大きな枠組みは、いわゆる均衡処遇と申しまして、同じ職場内で働く正社員の方とパートを引き比べて、同じ職務や、あるいは人材活用の仕組み、あるいは期間の定めのない雇用であれば、なるべく同等にしていこうということであるとは理解しておりますが、そもそもこの法の枠自体、例えばそこに比較すべき正社員の人がいない場合だってありますし、はなから規定の立て方がおかしいなとは思います。それでもあえて質疑させていただくとすれば、そもそも職務のところで、きょう大谷局長が何度も何人かの委員に御答弁でありましたが、残業の問題で最後にまた確認をさせていただきたいと思います。

 今、現行法でございますと、第三条の事業主等の責務にあるところの、就業の実態を考慮してというところで、厚生労働省がお使いになる解釈通達、こう理解してこのように施行、実施するんだという通達の中に、その就業の実態には、業務の内容、所定外労働の有無、配置転換の有無、契約期間、勤続年数、職業能力等々が挙げられているわけであります。ところが、現行のパート指針においては、逆に、このパートの皆さんに対して、短時間労働の労働者の多くは家庭生活との両立等のために、事業主はできるだけ所定労働時間外または所定労働日外に労働させないように努めることとなっておるわけです。

 パート労働指針では残業と言われる部分についてはさせないように努めるものとされていて、しかし、今回の改正法の枠組みでも、現行の枠組みでも、もしこの所定外労働というところが就業の実態の考慮すべき事項に挙げられるとしたら、これは大きな矛盾ではないかと思うわけです。せっかく改正なさるなら、この所定外労働、もともとそれを求めるということ自身も労基法からかんがみていかがかと思います。ここは何回か御答弁でしたが、しかし最終的にはっきりしないんですね、この解釈通達等々に用いられている就業の実態を考慮してという部分の、所定外労働は思い切って削除されてはどうでしょう。いかがでしょうか。

大谷政府参考人 現行のパート法第三条に規定されております就業の実態ということにつきましては、今お話がありましたように、一つは、業務の内容や労働時間などのほか、所定外労働の有無が含まれるというふうに解釈しているところでございます。

 今回の改正におきまして、差別的取り扱い禁止の規定を設けまして、その対象者につきましては、何度か申しておりますけれども、職務の内容、それから人材活用の仕組み、契約期間、この三つの要素に整理しております。

 その職務の中の責任という考え方につきまして、所定外労働時間の有無、これはやはり含まれないと言うことはできないと思います。ですから、含まれ得るものと考えますけれども、ただ、本日何度か御答弁申し上げましたが、正社員の残業の有無にかかわらず一律に考慮されるという要素ではない。やはり責任に伴う必要な残業については考慮されますが、正社員が残業するから、その連動でパートタイマーについてもただ同じものを当てはめる、というわけではないということでございます。

阿部(知)委員 それではミミズがはったくらいの前進と、受けとめたいですけれども、せっかく改正なさるんだから。しかし、そのような実態の中では、例えば懸念されるのは、残業しないからあなたは同じ働きをしているんじゃないんだよというふうに理解されかねない余地を残すわけです。そこは局長もわかって御答弁だと思うんです。せっかく改正なさるなら、やはりそういう余地が残らないようにすることこそ、私は厚生労働行政だと思います。

 二点目。同じような、人材活用の仕組みというところで、皆さん転勤という言葉で言っておられるのですが、果たして本当にそこを転勤というふうに言い切らなきゃいけないのかどうかで、人材活用の仕組み、運用等とは、人事異動の幅、頻度、役割の変化、人材育成のあり方などと挙げられているんですね。

 転勤という問題は、例えばことしの四月から施行された男女雇用均等法の中では、募集や採用や昇進に際して、転居を伴う転勤を要件に挙げたら間接差別である、差別であると言われているわけですよ。そうすると、せっかく始まった雇用均等法との並びもまたここで後退させていくのかというふうな懸念にとらわれるわけです。

 この点は、雇用均等局長、どうですか。

大谷政府参考人 これは、今回の短時間労働者の法律と、それから今御指摘のありました男女雇用機会均等法、二つの法理念をいわばかけ合わせて考えなければならないと思うわけであります。

 パートタイム労働法におきましては、職場における転勤、正社員に転勤があるとするならば、比較すべき対象がそうである範囲において比較対象と連動してその違いを考えるということで、ここは合理性の中身よりも実態に着眼して判断をするわけであります。しかし、昨年改正しました男女雇用機会均等法にかんがみまして、その転勤が合理性がないものということであれば、そちらの法律根拠に基づいてその企業の実態が指導されていくべきものというふうに考えております。

阿部(知)委員 雇用均等法というのは大変大きな法の考え方の概念の転換ですから、もっと積極的にそちらの水準に合わせるということで、今のもまたミミズ一ミリでしたけれども、まあ前進というふうにとらえてやっていただきたいです。

 それから、三点目。いわゆる期間の定めのない雇用ということに関して申しませば、これもこれまでさまざまな有期労働契約の締結、更新及び雇いどめに関する基準というものが厚生労働省告示で上がっております。「使用者は、有期労働契約(当該契約を一回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。」という厚生労働省の告示であります。

 今回の法案で、期間の定めがないと同視されるというときの判断は、この告示を十分に受けとめたものと考えてよいのですか。どうでしょう。

大谷政府参考人 この改正法における差別的取り扱い禁止の対象者の要件につきまして、有期契約を反復更新し、期間の定めがない場合と社会通念上同視し得る場合については、期間の定めがない場合に含まれるものというふうに明快に規定しているわけであります。

 この社会通念上同視される場合の解釈、運用につきましては、これは雇いどめが権利濫用に当たるか否かに関して蓄積された有期契約の反復更新に関する裁判例を踏まえつつ解釈、運用していくことになると考えておりますけれども、これまでの進め方について、それを後退させることはないものというふうに考えております。

阿部(知)委員 その点はきっちりお願いしたいと思います。

 特に、やはり最も問題が大きいのは、有期契約、反復更新、そしてそれを労側、使側、おのおのどのように受けとめているかというところがいつも一番最大の争点になるわけです。そもそも、共産党の皆さんが修正案に挙げられていますが、私も、この有期契約ということについても今回のパート労働法がきちんと対応できるものとなることが本来望ましいと思っておりますが、政府の法案はそういう体系をとっておられませんので、政府どおりの法案であるとすると、今局長が答弁された点はかなり重要になってまいると思いますので、行政サイドとしてよろしくお願いしたいと思います。

 引き続きまして、今言ったような三要件、三つのハードルが労側と使側から見ておのおの判断が違う、これが一番混乱のもとであるわけです。その中にあって、これは先ほどの筒井委員との御質疑だったと思いますけれども、民事裁判に行く前に雇用均等局は頑張るんだ、労働局も頑張るんだというお話でありました。それを素直に実は受けとめたいのですけれども、しかし、ちょっとどうかなと思うことがございまして、次の質問に移ります。

 皆さんのお手元に配らせていただいたのは、「男女雇用機会均等法に基づく紛争解決援助及び調停の件数」ということでございます。今回のパート労働法でも、雇用均等法ででき上がった体系を踏んでいくということになると私は受けとめました。しかし、雇用均等法で実際に行われている助言、指導、勧告、調停の数々は一体どうなっているのかなというのをデータで出していただいたものがこれであります。

 先ほど大谷局長は、平成十一年から十七年全部の助言を合わせて千百七というふうなお答えだったんだと思うんですね。では、指導、これは大体件数は足していけばわかるわけですが、非常に数が、毎年一けた台ですから、どのような内容で指導されたのですか。勧告、一例も事案はないんですよね。そういう体制で臨んで、果たしてこのパート労働法、本当に助言、指導、勧告ができるでしょうか。

 どうしてこんな実態なんですか、お答えをお願いします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 まず前半、雇用機会均等行政の中でのいわゆる調停等、こういう実例が少ないという御指摘でございます。

 これは、今資料にありますように、十七年度の機会均等調停会議による調停の申請件数が四件ということでございまして、これは原因をいろいろ中で検討したところでありますけれども、調停制度の存在がまだ十分知られていなかったり、あるいは相談者自身が名前を明らかにして事業主と争うということを躊躇するというようなことがあって活用が進んでいないのではないかという分析もしているところでございます。

 そういうことで、男女雇用均等法の制度につきましては、この調停制度について周知を行うとともに、均等法に関する個別紛争についての相談があった際に積極的に機会均等調停会議による調停の利用についても説明するということで、実はこれは先般開催しました全国の雇用均等室長会議におきましても指示したところでございまして、こちらの分野における調停制度の一層の活用というものも図っていきたいと考えるところであります。

 今回のパートタイム労働法について申し上げますと、労働局におけます調停制度あるいは指導、勧告というものがこの制度の特に均衡処遇の実効上非常に重要な要素というふうに考えておりまして、新たにパート労働法に基づく調停制度が創設されたことについて十分に周知を行うとともに、労働者から相談があった場合にも、この調停制度というものをきちっと紹介していく、また、助言、指導、勧告につきましては、事案に応じて適切にその権限を行使していく、こういったことによりまして、この法の実効を上げていきたいというふうに考えております。

阿部(知)委員 勧告に至るような実態はまずなかったんでしょうか。上げていきたいと思いますとおっしゃる気持ちはそうでしょう。しかし、これは実績なんですね。実績を見ると、先ほど申しましたが、指導もほとんどないし、勧告は全くない。おっしゃった調停が、名前を明らかにして言い出しにくいから、あるいは周知徹底されていないからといっても、もう六年たつわけですよ。そうすると、このたびパート労働法が改正されてまた同じような轍を踏むのではないか。

 やはり、ここをどう見直されて前に進もうとしているのか。そこが具体的でないと、おいそれとは、今度この法律ができても、さっき言いました、逆のハードルになってパートという身分が差別的なままに固定されるんじゃないかという懸念を一方ですごく多くの人が抱いているわけです。そうなったら、それを少しなりとも違うんだと厚生労働省が言うためには、行政の部分がしっかりしなきゃいけないと、きのうの参考人も、中野弁護士もおっしゃっておられましたね。労政審の委員であった方もおっしゃっていました。

 私は、その意見を素直に受けたとして、しかしこの実績を見て、さっきの局長の、これから労働局の雇用均等室の中で受けとめる、あるいは労働センターでとおっしゃいますが、今まで一例の勧告もしていない。調停については、だって三十一件あったのは平成十一年度だけで、そういう調停事案が少なくなるということはいいことですが、では、実際に性差別がなくなっているかというと、そうではないと思うんですよ。

 そうすると、もう少し実のある御答弁、局長、本当に実感としてどう思われますか。何をしていったらいいか、もう一歩踏み込んで答弁いただかないと、これはとても懸念が広がりますが、どうでしょうか。

大谷政府参考人 男女雇用機会均等法につきましても、これは昨年法律改正をさせていただいて、この四月から新たに施行するということになっておりまして、その新制度をさらに周知する、また雇用均等室がその指導力を高めていくということは非常に重要であるというふうに考え、現在、鋭意取り組んでいるところであります。

 それから、このパート労働法におけるこれまでの実績の関係でありますが、平成五年以来、いろいろ制度が推移してまいりましたけれども、基本的には指針において進んできたわけでありまして、今回、義務事項、努力義務事項、相当の前進を見たところでありますので、これを根拠にして、またその行政をさらに推進していきたい、この法律の実効を上げるためにもそれは大変重要であるというふうに認識して取り組みたいと考えております。

阿部(知)委員 今の答弁を一応は伺っておきますし、また何年かして実績も出るやもしれませんから、そのときにも伺わせていただければと思います。

 最後に、大臣、お待たせをいたしましたが、実は、ことしの十月から郵政公社が民営化されます。いわゆる郵政民営化ということで、選挙も経て、政府の中心事項として大変に進められたことではありますが、果たして大臣、現状でも結構ですが、今郵政公社ですが、郵政公社にもまた多くの非正規雇用の方がおられます。正規雇用と非正規雇用の方の数の比というのは御存じでありましょうか。まず一問。

柳澤国務大臣 日本郵政公社の職員の中における常勤、非常勤の数でございますけれども、十八年度におきましては、常勤は徐々に減っているわけですが二十五万四千、それから非常勤は徐々にふえておりまして十三万二千ということですので、大体二対一の割合ということかと思います。

阿部(知)委員 資料をもらわれてお読みになればそうだと思うんですね。しかし、そこに働く一人一人の人間に目を向けると、今大臣がおっしゃった数は違ってくるんですね。常勤は確かに一は一なんです。二十五万四千百七十七人は七十七人なんです。ところが、非常勤は十三万二千四百十二人となっておりますが、常勤換算なんですね。ここは大臣、やはりパートで働く、時間を限られて働く、ここに膨大な数の非正規雇用が人としているんですね。私は、きのう総務省に、本当に人はそこに一体何人いるのかと伺ったんですけれども、定かな数は上げていただけませんでした。

 しかし、これも先ほど高橋委員もおっしゃいましたが、例えば物件費で処理される人間の処遇のされ方、それもやはり私はおかしいと思うんです。こうやって数で出てきたときも、常勤換算という概念は理解しますし、必要な場合もあるとは思いますが、労働現場で働く人に目をやる政策というものでないと、本当のパートの処遇改善には結びつかないと思うんです。

 これが十月から民営化されますと、今までは先ほど高橋委員がお取り上げになった公務員の中のパート労働者、これも非常に問題が多うございます。しかし、今度は膨大な数の、最大規模かもしれない民間のパートがここに発生するわけです。この人たちの処遇が本当にきちんとした今の法の枠、政府がおっしゃるのは均衡処遇ですね、そういうものになるかどうかについてもきちんと目を光らせていただきたい。

 まずはその御決意と、後ほど、もし次回でも時間をいただければ労働実態、非常に区分されていて、複雑でこれだけ身分があるのかと思うような実態なので、中身については次回できればやらせていただきますが、まずは概略的なところで大臣に事態を認識していただいて、ここに膨大に発生するパートの人、一人一人に気を配る行政をやっていくという御決意をお願いいたします。

柳澤国務大臣 パート雇用労働法の改正は、私ども、雇用の形態が多様化する中で、前から何回も申し上げておりますように、希望する方はできるだけその希望がかなえられて正規雇用に移行することを応援していきたい、しかし、選択をしてみずから非正規の一形態であるパート労働というものに従事し続けるという方においても、処遇において、パートだからという理由で大幅に劣後するということがあってはならない、そういうことで全体として日本の労働市場というものをもう少し立て直していきたい、こういう気持ちを何回も我々表明させていただいているわけですが、いわば、その非常に重要な部分の一つとしてさせていただいておるのが、今回のパート労働法の改正でございます。

 そういう意味合いで、私どもは、この法律によって、そのような私ども政府の持つ基本的姿勢が実現されるということでなければならないと強く考えておりまして、そういう方向に沿った行政を通じて、この法律の所期の目的が確保されるように努めてまいりたい、このように考えます。

阿部(知)委員 郵政の現場で、例えば一人の労働者が正規職員でありたいと願っても、そうならない状況も起きているやもしれません。次回、それはまた御質疑させていただこうと思います。

 ありがとうございます。

櫻田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 昨日も参考人の質疑がございまして、今国会、この非正規雇用の問題に対してどのように取り組んでいくのかということが非常に大きな問題となっているんだなというふうに感じました。このパート労働法の改正案はその第一番手でございまして、本日は、この法案によって本当にパート労働者の方々の処遇が改善されることになるのか、具体的にお聞きをしたいというふうに思います。

 まず、大臣にお聞きしたいんですけれども、これまでの議論におきまして、今回の政府案では処遇が改善されるパート労働者の対象者が少ないのではないか、こういうような指摘がされております。この点につきまして大臣の見解をお聞きしたいのと、また、今回のこの法案の理念についてお伺いをしたいというふうに思います。

柳澤国務大臣 今回のパート労働法の改正は、八条で差別禁止ということをうたっておるわけでございますが、それは、私どもの、パート労働者全体について実現したいという、均衡ある処遇のいわば一番究極の形というふうに私どもは位置づけておりまして、パート労働者全体には均衡ある処遇を確保する、こういうことでございます。だから、パート労働者全体に対して、均衡ある処遇ということを通じてその処遇の改善を図る、こういうことが基本でありまして、その究極の差別禁止ということで、これは通常の労働者と同視すべき労働者について差別禁止ということをやる。

 そのことについていろいろと、対象者が少ないのではないかというような御議論もあるわけでございますけれども、私どもがねらいとしておりますのは、パート労働者全体についての処遇の改善、雇用管理の改善を図るということが目的だということをぜひ御理解賜りたいと思います。

糸川委員 わかりました。

 では、パート労働者の正社員への転換についてお尋ねいたしますけれども、正社員となることを希望しているパート労働者に対して正社員になる道を確保していくこと、これは重要であるというふうに思います。

 今回、この法案で設けられた正社員転換の措置義務は、転換の推進のためにどのような措置を講ずるのかについては、これは事業主が選択できることとなっております。本当に実効性があるのか、事業主が選択できるということは何ら強制力がないんじゃないのかというふうに考えるわけですけれども、この点について御見解をお伺いしたいと思います。

大谷政府参考人 正社員への転換の推進でございますけれども、今回の政府案では、事業所の外から通常の労働者を募集する場合には、その雇用する短時間労働者に対して当該募集に関する情報の周知を行う、これが一つ。それから二つ目としまして、社内公募として短時間労働者に対して通常の労働者のポストに応募する機会を与える。それから三つ目として、一定の資格を有する短時間労働者を対象として試験制度を設ける等、通常の労働者への転換を推進するための措置を義務づけているところでございます。

 現実にも、その経験なりそれから意欲が認められて、事業主側が正社員に転換をしておられるという例が近時多く見られるところでありますけれども、今回、こういった義務を通じましてこの法の実効性を確保するために、これは都道府県労働局長の方で、こういった義務を果たしてもらうよう、助言、指導、勧告、こういうことで実効性を担保していきたいというふうに考えております。

糸川委員 ということは、都道府県の方にゆだねて、助言、指導していくことをしっかりと厚労省が監督するということなんですか。

大谷政府参考人 若干補足しますと、都道府県労働局、これは国の機関でございますので、国として責任を持って推進していきたいと思います。

糸川委員 実効性が本当にあるのかどうかということは、とりあえずしっかりと確認をさせていただきたいなというふうに思います。

 もう余り時間がないんですけれども、もう一問、局長にお尋ねしますが、パート労働者がこのような正社員への転換のチャンスを物にするためにも、日ごろのスキルアップ、これはしっかりと図っていく必要があります。また、能力の向上というものが重要であるというふうにも考えるわけです。これが、正社員の方々であれば、企業側がいろいろと人材育成のプランというものを立てているというふうに思うんですが、パート労働者の場合というのは、現状ではなかなかそういうふうにいっていないのではないか。

 今回の法案によって、教育訓練についても、正社員との均衡待遇というのが規定されるわけですけれども、それによって事業主が講ずる措置の内容、これはどのようなものになるのか、簡潔にお答えいただけますか。

大谷政府参考人 事業主が講ずる内容ということで、これは、教育訓練について、それぞれの職種の必要に応じて、正社員に行っておられるようなものについて事業主も取り組んでいくといったことについて、その義務を課していくということでございます。

 また、最初にお話ありましたように、この改正法について、これは事業主としてはまた非常に新しい取り組みが多いということで、その支援の中に、こういったいろいろな訓練とかそういう取り組みについての中小企業向け支援も考えていきたいというふうに考えております。

糸川委員 大臣、こういうことを受けて、では、事業主への支援というのはどういうふうになるのかということで、今回の法案については、事業主にはさまざまな義務を課すことになっているわけですが、企業間の競争に日々さらされている中で、特に中小零細企業の事業主にとっては負担が重いというような声もあるわけです。パート労働者の方々の待遇をまずは改善しよう、これはもう必ずやらなきゃいけないんですが、企業経営が成り立たなくなってしまうと元も子もないわけですね。

 パート労働者の方々の待遇の改善にまじめに取り組む事業主に対して、国として十分な支援、これを行う必要がある一方、事業主に対して、義務を果たすために周知徹底を図る必要性があるというふうに思いますけれども、この周知徹底の部分も含めて、大臣の今後の決意と御見解をお聞かせいただきたいなというふうに思います。

柳澤国務大臣 まず、改正法の周知でございますけれども、これは先ほど来、どこかに一枚、ぺらっと張っておけば事業主の言いわけの根拠になるのではないかというような、随分厳しい御批判もあったわけですが、周知というのは、あまねく知らしめるという字でございまして、これは、もうそのとおり、文字どおり周知方を図らなければならないということで御理解を賜りたいわけでございます。

 さて、改正法の周知につきましては、私どもは、具体的な事例や対応方法をわかりやすく解説いたしましたパンフレット、あるいはQアンドAを集めたものによりまして、事業主やパート労働者に対して、具体的な理解をいただくべく、十分な周知を図ってまいりたい、このように考えております。

 それから、本法案において事業主に対して義務を課した事項があるわけでございまして、まず第一に、事業所内での紛争については早期に解決され、放置されることがないように自主的な解決に努めてもらいたいということで、これを事業主に努力をお願いしているわけでございます。

 また、そこで解決できなくて、いよいよ紛争ということで外部にこれが持ち出された場合には、この解決援助の仕組みとして、都道府県労働局の局長による助言、指導、勧告というものが一つございますし、その上に紛争調整委員会、これは男女雇用機会均等法と並びでございますけれども、この調整委員会による調停の対象としたところでございます。

 そして、さらに相談や紛争が起こった場合の行政側の対応でございますけれども、これは労働局に加えまして、全国に約三百カ所設けております総合労働相談コーナーにおきまして相談に対応するほか、専門的な事項や事業主への指導が必要な事項については雇用均等室に円滑に引き継ぐなど、労働局全体での取り組みというものを適切に行ってまいりたい、このように考えております。

 また、パート労働法の施行のための行政体制の整備に努めますと同時に、必要に応じて関係の労使の団体、さらには自治体にも協力を求めていきたい、このように考えている次第でございます。

糸川委員 時間が参りましたので終わりますが、大臣、事業主への支援でございますので、今の御答弁でよろしければ、そういうことでよろしいですね。

柳澤国務大臣 短時間労働者雇用管理改善等助成金制度を見直します。そういうことを通じまして、新たな助成金制度を設けておりまして、例えば中小企業団体向けということになりますと、各年度の目標達成度合いに応じて、年一千万円を上限にして支給するということを予定いたしておりますし、また、事業主向けにつきましては、三十万ないし五十万ということで、パート労働者の雇用管理の改善に向けた事業主の努力に対して助成を行ってまいりたい、このように考えております。

糸川委員 ありがとうございました。終わります。

櫻田委員長 次回は、来る十三日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十三分散会


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