衆議院

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第16号 平成19年4月25日(水曜日)

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平成十九年四月二十五日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 石崎  岳君

   理事 鴨下 一郎君 理事 谷畑  孝君

   理事 宮澤 洋一君 理事 吉野 正芳君

   理事 三井 辨雄君 理事 山井 和則君

   理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      飯島 夕雁君    大塚 高司君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉村 太蔵君

      高木  毅君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    松野 博一君

      松本  純君    松本 洋平君

      内山  晃君    大島  敦君

      岡本 充功君    加藤 公一君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      鈴木 克昌君    園田 康博君

      田名部匡代君    筒井 信隆君

      細川 律夫君    柚木 道義君

      江田 康幸君    坂口  力君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           大島  敦君

   議員           園田 康博君

   議員           加藤 公一君

   議員           山井 和則君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   総務副大臣        大野 松茂君

   法務副大臣        水野 賢一君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長)            鈴木 明裕君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 野村  守君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            森   清君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           辰野 裕一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西川 泰藏君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     大塚 高司君

  清水鴻一郎君     飯島 夕雁君

  松野 博一君     高木  毅君

  内山  晃君     鈴木 克昌君

  園田 康博君     岡本 充功君

  柚木 道義君     加藤 公一君

  坂口  力君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     清水鴻一郎君

  大塚 高司君     加藤 勝信君

  高木  毅君     松野 博一君

  岡本 充功君     園田 康博君

  加藤 公一君     柚木 道義君

  鈴木 克昌君     内山  晃君

  江田 康幸君     坂口  力君

同日

 理事石崎岳君同日理事辞任につき、その補欠として吉野正芳君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

四月二十四日

 消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第八八号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

 雇用基本法案(大島敦君外二名提出、衆法第一三号)

 労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案(加藤公一君外二名提出、衆法第一四号)

 若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案(山井和則君外二名提出、衆法第一五号)

 消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第八八号)(参議院送付)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事石崎岳君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に吉野正芳君を指名いたします。

     ――――◇―――――

櫻田委員長 次に、内閣提出、雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案、大島敦君外二名提出、雇用基本法案、加藤公一君外二名提出、労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案及び山井和則君外二名提出、若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局人材局長鈴木明裕君、法務省大臣官房審議官齊藤雄彦君、外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、厚生労働省大臣官房総括審議官宮島俊彦君、労働基準局長青木豊君、職業安定局長高橋満君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、社会・援護局長中村秀一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤公一君。

加藤(公)委員 おはようございます。民主党の加藤公一でございます。

 先週の金曜日に続きまして、年齢差別禁止問題について質問させていただきます。

 まず、前回、文部科学省の非常勤職員の募集における年齢差別問題について指摘をさせていただきました。私もその後も拝見をいたしておりますが、念のため伺います。

 文部科学大臣政務官にお越しいただいておりますので、その後どう対応をしていただいたかということと、先般お約束をいただきました調査についてはいつ御報告をいただけるか、二点について伺います。

小渕大臣政務官 お答えを申し上げます。

 前回、委員から御指摘をいただきましたのが四月の二十日でありまして、その時点で、公募中の三件につきまして、年齢制限を排除するとともに、公募の期限を五月七日まで延長いたしたところであります。また、同日、既に募集期限が終了した一件につきましても、年齢制限を削除いたしまして、五月七日まで今再公募を行っているというところであります。

 また、非常勤職員の過去の募集状況につきましてでありますけれども、その四月の二十日、各局の代表補佐を集めまして筆頭補佐会議をいたしました。その際に、これまでの経緯、そして年齢制限撤廃のことにつきまして説明をし、また今後の調査につきましては、各局各課が公募したものにつきまして、人事課に速やかに、できるだけ早く現状を調べて上げてくるようにという説明をしたところであります。

 できるだけ早く御報告できますようにやってまいりたいと思っております。

加藤(公)委員 きょうは政務官を詰めるためにお呼びしたんじゃないので、もう少しこの間みたいに前向きに答えてください。日にちまで言わなくてもいいけれども、せめて五月中とかゴールデンウイーク明けとか、何か目安があると思いますので、いつですか。

小渕大臣政務官 平成十三年からの調査でありますので、また、不正確なものを提出するわけにもまいりませんので、今、できるだけ速やかにということでありますけれども、大体めどといたしましては、連休明けには提出させていただきたいと考えております。

加藤(公)委員 では、その御報告を楽しみにお待ちしております。

 同じように、前回、外務省の問題についても指摘をさせていただきました。一回失敗した話の後始末ですから、文部科学省が素早く動いたことを余り褒め過ぎるのもどうかとは思いますが、速やかに対応していただいたことは了としたいと思います。

 外務省の方の問題、その後どう対応されたか、御報告いただけますか。

塩尻政府参考人 お答えいたします。

 その後、私どもの方で本件につきまして検討させていただきました。その結果、年齢の資格制限というものを撤廃するということにいたしました。

加藤(公)委員 撤廃をすることにしたとおっしゃっていますが、ホームページの方はいまだ直っておりません。文部科学省の方は、実は、ここで御指摘をした後、すぐにホームページを書きかえていただいております。先般指摘をしたように、外務省の募集も私が質問をさせていただいた日が締め切りでありました。確かに、「当分の間申請期限を延長します。申請期限はあらたに掲載します」、この一文だけは入りましたが、それ以外は何にも変わってはおりません。締め切り、四月二十日金曜日までというのは変わらず掲載をされている話ですから、それに一文加わっただけであります。

 これでは、応募しようという方が、これは一体何なんだと。なぜこの締め切りが延長されたのか、何を意味しているのかもわからないし、条件が変わっていなければ意味はありません。今、官房長お答えのように、本当に変更するのであれば、早急に公募をし直す、つまりホームページを書きかえるというのは当然のことではないかと思いますが、いかがですか。

塩尻政府参考人 今委員が御指摘になりましたように、本件は、四月二十日が締め切りでございましたけれども、ここでの議論を踏まえまして、四月二十日の時点で、今委員が御指摘になったように、当分の間申請期限を延長するということを書いてございます。それと同時に、年齢制限につきましても、合致しない方でも、申請を希望される場合には問い合わせてくださいという一文をつけ加えております。

 いずれにしましても、先ほど御答弁申し上げましたとおり、本件につきましては、年齢の資格制限を撤廃するということで、早急にそういったホームページを書き直すという手続をやっております。

加藤(公)委員 その年齢要件を満たさない方でも問い合わせしてくださいなんて、どこに書いてあるんですかね。私の知る限り、これはけさ確認してきましたけれども、そんなのどこにも載っていないと思うんですけれどもね。これはきょうの本筋じゃないんですけれども、どこに出ているんですか、官房長。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 ホームページに何項目か出ておりますけれども、その「四、応募資格」のところに「以下の年齢に合致しない方でも、申請を希望する場合は問合せ先にお問い合わせ下さい」ということを書き加えております。

加藤(公)委員 応募資格の頭のところですね。わかりました。それはそれでわかりましたが、しかし、一方で、私が問題にした、公務員法に触れているのではないですかと指摘したものはそのまま残っているわけでありますから、決断をされたんだったらすぐに対応していただくというのが筋だと思いますので、官房長、これはきょうじゅうに直していただけますね。

塩尻政府参考人 先ほどお答え申し上げたとおり、早急に書き直すということで手当てしたいと思います。

加藤(公)委員 どうも生煮えの話ばかりで余り気持ちのいい議論ではありませんが、問題が発覚をして、それを直すと決めたんだったら早急にやるというのは当たり前のことでありまして、ちんたらちんたらやっている場合じゃないということは申し上げておきたいと思います。

 このように、文部科学省あるいは外務省、それから、この前、時間がなくて個別の話はできませんでしたが防衛省においても、実際に年齢要件を厳しく置いて募集をしていたという事例があります。つまり、非常勤だったり任期つきの職員だったりはしますけれども、国家公務員の募集において、本来認められていないはずの募集、採用が行われていたということであります。厳然と年齢差別があった、こう申し上げてもいいと思います。

 しかし、これは国家公務員だけに限った話ではなくて、地方公務員においても同様の問題があると私は考えておりまして、きょうは総務省からもお越しいただいておりますので、今度はその件についてお話をお聞かせいただきたいと思います。

 実は日本じゅうの自治体でこれは問題だなと思う募集が見られるわけでありますが、全部を取り上げるわけにいきませんので、余り最初から人様の地域を指摘するのもどうかと思いますから、私のおります東京都の問題を一例として挙げたいと思います。

 昨日、総務省の方にはお渡しをしておりますから、副大臣には御検討いただいているものと思いますが、東京都のいわゆる中途採用の募集で、年齢要件が二十八歳から三十六歳という限定がされております。実はこの問題、私、昨年の予算委員会でも当時の安倍官房長官に質問させていただいた経緯がありますが、これはどう考えても地方公務員法上問題ではないかと思います。副大臣、明確に御見解をお聞かせください。

大野副大臣 東京都の職員の募集にかかわることでございますが、もともと地方公務員法におきましては、合理的な理由なく平等に取り扱わないことは禁止されているところでございまして、その中で東京都がこのような対応をしているところでございますが、東京都の対応そのものについては、地方公務員法の趣旨を踏まえて対応していただいているものと思料しております。

加藤(公)委員 合理的な理由がなく年齢差別をしてはいけません、こういう話でありました。

 先般、これは国家公務員の話になりますけれども、人事院に確認をさせていただいたところ、国家公務員においては、中途採用やあるいは非常勤の職員の募集においては、そもそも年齢要件をつけるだけで、ほぼ合理的な理由はない、こういう判断でありました。地方公務員の場合は二十八歳から三十六歳と限定することに何がしか合理的な理由があり得る、そうお考えなんでしょうか。副大臣、もう一度お答えいただけますか。

大野副大臣 採用に当たって、新規学卒を採用する場合と、中間で、それぞれの経験を生かした分野で採用したいということがございますが、募集をする側の地方自治体においてそれなりの理由を持って募集をすることだろう、こう推察いたします。

 その中で、今回募集しております対象の中で、経験を持った職員を採用したいということの中からこのような形のものをとったのではないか、こう思料いたします。

加藤(公)委員 経験はいいんですよ。職務経験七年以上という条件のことは、私、何にも申し上げていないんです。職務経験七年以上というのはいいけれども、年齢が二十八から三十六と限定するのは大いに問題ではないか、こう伺っているわけです。

 どう善意で解釈をしても、ここに合理的な理由が見出せるとは思えません。地方公務員法を所管していらっしゃる総務省の副大臣に伺っているんですから、これは大いに疑問があるというふうにお考えになられませんか。もう一度御答弁ください。

大野副大臣 地方公務員法におきましては平等取り扱いの原則が定められているわけでありますから、職員の採用に当たっても合理的な理由のない差別は禁止されるもの、こう思っております。

加藤(公)委員 本来は、ここから先は東京都とやりとりする話かもしれませんが、合理的な理由があると言い張ればこんな募集ができてしまう、逆に言えばそういう解釈もできます。これは柳澤大臣にも聞いておいていただきたいんですが、現実の問題として、地方公務員の募集でもこんな年齢差別が厳然と行われているわけです。

 東京都だけじゃありません。先週金曜日の質疑をインターネットでごらんいただいていた方がいらっしゃったようでありまして、実はメールを私のところにいただきました。もちろん御面識のない方であります。

 その方は、日本で英語の教師をしていらっしゃった。もっと自分のレベルを上げたいということで、海外の大学院に留学をされたそうであります。もう一度日本に戻って教師に戻りたいと思ったら、採用の段階で年齢要件があって、応募書類すら受け取ってもらえない、こういうお話でした。海外では考えられないことだけれども、日本ではまだこんなことがあると。たまたまその方が、偶然だと思いますが、金曜日の私の質疑を聞いていただいて、わざわざアドレスを探して、メールをちょうだいしました。その方は、実はまだ海外にいらっしゃるそうです。日本に帰ってきても先生になれないので、まだ海外にいらっしゃる、こういう話でありました。極めて不公平なことであります。

 これは一例でありますが、では、本当にそうかと思って調べてみましたら、例えば、京都府の公立学校教員採用選考試験実施要項、来年度の分であります。確かに、二十代、三十代の方しか受験できないようになっています。明らかな年齢差別であります、明らかに。四十歳になったら受験できないというのは何の合理的な理由があるのか、とても私には理解できない。

 柳澤大臣の御地元、掛川市だそうでいらっしゃいますね。今、募集していらっしゃいます、市の非常勤職員、保育士の方、幼稚園の先生。二十から五十歳、この年齢じゃないとだめだそうであります。

 あるいは、これはちょっと過去の話ですから、二年半ほど前の話でありますが、これもやはり柳澤大臣の御地元だと思います。森町でキャンペーンガールを募集したことがあるそうでございまして、十八歳以上三十歳以下の女性と応募資格が限定をされております。

 総務大臣の御地元、横浜市南区で今、保育所の嘱託の職員の方を募集していらっしゃいます。これはことしの二月に募集されていた。満四十歳以上六十歳以下の方。逆に、二十代、三十代の方は門前払いだそうであります。

 副大臣、私もよく存じ上げておりますが、狭山市長時代には大変すばらしい行政の実績を上げられたと思いますが、残念ながら、その狭山市、ことしの二月に非常勤講師を募集していらっしゃいますが、やはり五十歳まで。明らかに年齢制限を設けております。

 きょうはお見えでございませんが、総務省の土屋大臣政務官、御存じのとおり、つい一年半ほど前まで東京の武蔵野市長でいらっしゃいました。土屋大臣政務官が市長時代の職員の募集であります。市の職員、図書館の職員で四十歳から五十五歳、あるいは高齢者総合センター介護指導員、二十二歳から四十五歳。地方自治体においても明らかに年齢差別が行われているんです。国家公務員については先般指摘をしたとおりであります。

 先日の議論でも、柳澤厚生労働大臣からは、今回の雇対法を改正する議論の中で、公務員については、別途、法的な手当てがされているからいいんだ、こういうお話でありました。本当にいいんでしょうか、この現実を踏まえて。私にはとてもそうは思えません。

 もう一度柳澤大臣に確認をさせていただきますが、今回の雇対法の改正の中でも、公務員を適用除外すると、わざわざ一条立てて書き込んでございます。その理由として、先日、国家公務員法において合理的な理由のない差別は禁止をされている、国家公務員については、別途、法的な枠組みが整備されている、こう御答弁をされましたが、これに間違いございませんか。

柳澤国務大臣 国家公務員、地方公務員につきましては、それぞれの法律におきまして平等取り扱いの原則が定められておりまして、職員の採用に当たりましても、合理的な理由のない差別はこの法律によって禁止されているものと承知をいたしております。

 したがいまして、国家公務員、地方公務員については、こうした別途の法的枠組みが既に整備をされていることから、本法案におきましては適用除外といたしたところでございます。せんだって御答弁申し上げたとおりでございます。

加藤(公)委員 では、あわせて伺いますが、地方公務員についても、同じように地方公務員法を解釈するということでよろしいですか。

柳澤国務大臣 地方公務員法第十三条でございますが、これは国家公務員法二十七条とほぼ同じような規定が置かれておりまして、したがいまして、私ども、地方公務員につきましても、同様、既に別途の枠組みが整備されていることから、本法案については適用除外と考えているところでございます。

加藤(公)委員 では、続けて人事院と総務副大臣に伺いたいと思います。

 まず、人事院の方から。

 国家公務員法上、国家公務員の募集及び採用において、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるべきことは義務づけられておりますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 国家公務員法におきましては、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるべきことを義務づけている明文の規定は存在しておりませんが、第二十七条の平等取り扱いの原則のもとで、職員の募集及び採用に当たって、年齢も含めまして合理的理由のない差別は禁止されているところでございます。

加藤(公)委員 合理的な理由のない差別をしないように禁止はされているけれども、義務はない、こういうお答えであります。

 総務副大臣に伺います。

 地方公務員法におきまして、地方公務員の募集及び採用において、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるべき義務というのはございますか。

大野副大臣 今の人事院からもお答えをしたことでございますが、第一義的には、それぞれの地方公共団体が合理的な理由を持って進めるべきことでありますので、その点の中で、我々もまた公平な人事であることを願って今日までいるわけでございます。

加藤(公)委員 副大臣、もう一度伺います。

 地方公務員法上、地方公務員の募集及び採用において、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるべき義務はありますか、こう伺っています。義務があるかないかお答えください。

大野副大臣 地方公務員法におきましては、今御指摘のように、募集及び採用について、年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを義務づけている規定そのものは存在しておりません。

加藤(公)委員 柳澤厚生労働大臣に伺います。

 今回の雇対法の改正において、民間企業にはいわゆる年齢差別の禁止が義務づけられます。しかし、今の国家公務員法あるいは地方公務員法のそれぞれ担当、所管からの解釈によれば、公務員に対してはその義務はない、こういうお話でありました。

 つまり、今回の法改正がなされますと、民間企業には義務がかかるけれども、公務の世界、公務員の募集、採用においては義務まではない、こういう話になります。これを世の中では官民格差というと思うんですが、大臣、どうお考えになりますか。

柳澤国務大臣 今、私、横で聞いておりまして、地方公務員法、またその前の国家公務員法でも、募集、採用における年齢不問の均等な機会の確保については、平等原則のもとで確保されるということを御答弁なさったというふうに聞いておりました。

加藤(公)委員 そんなことは聞いておりません。合理的な理由のない差別が禁止をされていること、これは国家公務員法上も地方公務員法上も、私も理解をいたしております。

 しかし、今回の雇対法の改正は、民間企業に対して、募集、採用において、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるべきことを義務づけるわけです。民間企業には義務づける、しかし、今柳澤大臣のお隣にいらっしゃる大野副大臣から御答弁のあったように、あるいは人事院からも答弁のあったように、公務員の募集、採用においてはその義務はない、こうお答えでした。

 民間企業に義務づけるのに、公務員の世界では義務がありませんというのでは筋が通らないんじゃないですか、こう申し上げています。大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 規定の仕方の問題だと思います。

 要は、この平等原則ということのもとで、今加藤委員から御指摘のように、一言、加藤委員の威厳ということもあるかもしれませんけれども、平等原則で年齢の禁止をしているのはよくないじゃないかと言われれば、即刻改めるというようなこと、それはなぜ改めているかというと、平等原則に照らしてやはり改めるべきだと考えているから、改めていらっしゃるんだろうと思います。

 そういう意味で、年齢についての平等原則も貫徹されるという、そういう法文の規定が用意されているということでございまして、規定の表現は違いますけれども、私ども、今回、雇対法第十条の改正によりまして、民間の事業主は、均等な機会を与えなければならない、こういう表現で規定しているものと実質的には変わらないものだと考えるわけでございます。

加藤(公)委員 では、大臣が実質的に変わらないとおっしゃるのであれば、わざわざ公務員を適用除外する必要はないんじゃないですか。法律で一条立てて適用除外をする理由はないと思います。変わらないんだったら、最初から、民間も公務員も同じように雇対法の中で義務づけたらよろしいと思いますが、いかがですか。

柳澤国務大臣 既に規定をされているということが前提になりまして、既に規定されているものは、こうしたことは、法文の整理の上で、片方の条文については適用除外にしておくということが、日本の法律における、法制の総合的調整の中では行われていることだというふうに私は理解をいたしております。

加藤(公)委員 いや、そういうことを聞いているのではなくて。

 柳澤大臣御自身が実質上変わりませんと今御答弁になりました。実質上変わらないんだったら、わざわざ一条立てて公務員を適用除外するなどと書く必要はないんじゃないですか、こう申し上げているんです。いかがですか。

柳澤国務大臣 実質的に変わらない働きを持つ規定が先行の法律にあるという場合には、新しく制定される法律につきましては、これは法制における総合調整の一環として、片方はそちらの法条に任せるという意味で、片方、新しい法律におきましては、これは適用除外ですよということを書き込むということは通常行われていることだと私は認識をいたしております。

加藤(公)委員 大臣の答弁自体に合理的な理由がないとしか思えません。

 私が申し上げているのは、さっき指摘をさせていただいたように、国家公務員の募集においても、地方公務員の募集においても、厳然と年齢差別が行われているわけですよ。国家公務員法と地方公務員法は今回改正されるわけではありませんから、ことしの二月の募集であろうが、あるいはさっき申し上げたように、土屋大臣政務官が御自身が市長時代の募集であろうが、今と同じルールが適用されているはずであります。そのときにはっきりと年齢差別をして募集していらっしゃる。これは、きょうは例を挙げただけですから、ほかの地方公共団体を探していただければ幾らでも出てきます。この状態で民間企業には義務を課すというのでは理解は得られない。何度も申し上げますけれども、前回から引き続いて私はこのことを指摘させていただいております。だからこそ私は、民間企業も公務の世界も全く同じ扱いにすべきだ、その思いで公務員を適用除外しない対案を出させていただいたわけであります。

 それはもちろん、公務員の世界の雇用労働における法体系が別だ、労基法もかからないとかなんとかと、それは言い出したら切りがありません。それはそのとおりであります。しかし、例えば男女雇用機会均等法のときには、公務員の世界の方が若干先行していました。公務員の世界の方がそもそも男女平等は実は進んでいた。後から民間企業に努力義務化したり義務化したりして、早く追いついてください、こういう世界でした。今回は逆です。民間企業に義務づけるのに、公務員の世界は全くそうなっていないんです。だからわざわざ適用除外するなどと言わなくてもいいんじゃないですか、こう申し上げているわけであります。

 恐らく何度聞いても同じ話で水かけ論でしょうから、この件はこの辺にしますが、これは聞いていただいている方からすれば、何という理屈で自分たちに縛りをかけるんだと多くの民間企業の皆さんはお感じになられると私は思いますので、このことだけ申し上げておきたいと思います。

 最後に一点、柳澤厚生労働大臣に全く別の件でお話を承ります。

 前回も最後に質問させていただきましたので、よく御答弁の趣旨がわからなかったことがあるので確認をさせていただきます。

 プレスリリースの配付に関して、私が最初、再発防止策としていただいた資料では、マスコミには配るけれども、国会議員には要求がない限り配りません、こういうふうに解釈できる文章が私の手元に来ました。しかし、先日の大臣の御答弁ではちょっとそれが変わっていたように思います。変わるんだったら変わるんで結構なんですが、もう少しわかりやすく、具体的にどういう再発防止策にされたのか、最後にそこだけ伺います。

柳澤国務大臣 従前、私どもは、新聞発表資料につきまして、新聞発表の事前に、実はそうしたことに関心が当然あられる当該法律案が審議された委員会の幹部等の皆さん方にその新聞発表資料を事前にお配りいたしておったわけでございます。ところが、先般誤りがありまして、その新聞発表資料には既にその法案が成立されたものだということを前提にした表現がありましたわけでございますが、にもかかわらず、手違いということでこの事前配付のルートに乗ってしまって議員の先生方にお届けいたしてしまった、こういうことがありました。我々としては、再発防止という観点から、この新聞発表資料の事前配付ということは、これは取りやめるということにいたしたわけでございます。

 ただ、それでは新聞発表資料について先生方が翌日の新聞紙上で初めて知るとかというようなことがあっては、これは私ども、日ごろからいろいろ御指導いただいておる先生方とのいろいろな情報の交換あるいは資料の情報提供、こういうようなことについてやはり適切でないと私は考えるわけでありまして、事後ではあるけれども、新聞で初めて知るというようなことのないようなタイミングでできるだけ先生方のお手元に届くようにいたしたい、こういうことを申し上げた次第でございます。よろしく御理解賜りたいと思います。

加藤(公)委員 終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 おはようございます。民主党の細川律夫でございます。

 先週の質疑で明確な御答弁をいただけなかった点についてもう一度質問をさせていただきたい。そこから始めさせていただきます。政府案の雇用対策法案の中で、特に外国人労働者に関する施策についてお伺いをいたします。

 法務省にお尋ねをいたします。

 法律の第二十九条では、「厚生労働大臣は、法務大臣から、出入国管理及び難民認定法又は外国人登録法に定める事務の処理に関し、外国人の在留に関する事項の確認のための求めがあつたときは、前条第一項の規定による届出及び同条第三項の規定による通知に係る情報を提供するものとする。」こういうふうになっておりますけれども、この規定によりまして、法務大臣が厚生労働大臣に情報を求めるとき、そのときには、その必要性、理由などについて明らかにする予定なのかどうか、まずお聞きをいたします。

水野副大臣 委員御指摘の必要性、理由については、情報提供を求める際に適切に明らかにしていくことになります。

 法務省から情報提供を求める際には、提供を求める情報と、入管法の定める事務の処理に関する必要性や理由を明らかにするわけですが、詳細については厚労省と密接に協議の上、今後検討することにはなりますが、さらに言えば、例えば外国人の氏名、生年月日等の身分事項につきましては、これは外国人を特定するために必要不可欠な情報であることに加え、人物の成りかわりや成り済ましの発見や特定のためにも必要な情報であるとの理由により提供を求める旨を説明することとなります。

 また、外国人の雇用状況等に関する情報につきましては、当該外国人の就労内容が在留資格に適合しているか否かを確認する必要があることなど、出入国管理行政を遂行していく上での必要性や理由を示すこととなるわけでございます。

 いずれにせよ、詳細につきましては厚労省と密接に協議、検討をしていきたいと考えてございます。

細川委員 わかりました。

 それでは、次に、この報告制度の対象者についてお尋ねをいたします。

 第二十八条の報告制度の報告対象となる外国人の範囲というものは省令で定めることになっておるわけですけれども、平成十八年十二月に出されました労政審建議では、この対象は「特別永住者を除く外国人労働者」というふうになっておりますけれども、厚労省の省令でもそのように予定をしているのか、つまり、永住者は対象となるというふうに考えてよいかどうか、大臣にお尋ねをいたします。

柳澤国務大臣 細川委員がただいま御指摘になられたように、労政審の建議におきましても、外国人労働者の範囲につきましては、「特別永住者を除く外国人労働者」ということになっております。私ども、同じような方針で省令を取りまとめたいと考えておりまして、したがいまして、その省令の中においては、永住者の方についても対象とするということを規定いたしたいと考えております。

細川委員 私は、基本的にはこの報告制度というものについては賛成ではありません。反対なんですけれども、仮にこの法案が成立をしたといたしましても、永住者について対象とすることについては、私は、おかしい、この対象から除くべきだというふうに考えております。

 まず、外国人登録法の第四条第一項二十号では「勤務所又は事務所の名称及び所在地」、それから同項九号では「職業」というのが外国人登録のときの登録事項になっておりますけれども、永住者は特別永住者とともに適用が除外されている。外国人登録法では、この永住者というのは、勤務地とかあるいは職業というのはそもそも適用が除外をされております。

 そしてまた、永住者というのは就労そのものについては全く制限がないわけでありまして、もちろん在留期間の限度もない、そういうことになっておりますから、不法就労というのは永住者にとってはあり得ないというふうに私は思います。

 そうしますと、お尋ねいたしますが、この法律案の目的として、大臣はこの間も、第一に雇用管理の改善など、第二に不法就労の防止ということを挙げられたわけなんですけれども、この第一点は別にいたしまして、就労の制限がない永住者について、二つ目の不法就労防止という目的からすれば、これは永住者とは無関係だというふうに私は思いますけれども、大臣、この点、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 先般もお答えしたことを委員御自身から大変恐縮ながら御引用をいただいたわけですけれども、私ども、今般の法律改正におきましては、外国人労働者につきましては、一つは、やはり雇用を安定させるというような、雇用管理の改善を考えているということを申し上げたわけでございます。

 雇用管理の改善等ということの中にはいろいろございまして、仮に離職をした場合の再就職支援であるとか、特にまた社会保険に加入していない者が現実に多いというようなことも視野に入れておるわけでございまして、こういう雇用管理の改善ということも目的としているということを申し上げた次第でございます。

 確かに、永住者の方については不法就労ということは考えられないわけでございますけれども、しかしながら、今申したような点については、私ども、労働、雇用の問題について責任のある立場からいたしますと、この問題に取り組む必要は当然のことながらあると考えております。その観点から、永住者の方についてもこの届け出にのっていただいて、その後の施策の展開が円滑にいくように考えていきたい、こういうことでございます。

細川委員 もう一度確認いたしますが、それでは、永住者については不法就労とは関係ありませんね。

柳澤国務大臣 そのように考えております。

細川委員 そうしますと、法務省から情報の要求があった場合には、それについて厚生労働大臣は応じなければいけない、こういうことなんですけれども、その情報そのものについては、永住者に関しては、法務省との情報のやりとりというのについては関係ないというふうに私は思いますけれども、これは厚生労働大臣、そうですね。

柳澤国務大臣 法務省への情報提供につきましては、法第二十九条に定めるところに従いましてこれを行うものでございますけれども、その際、法務省からどういうことが必要情報として理由をつけて表明されるかということは、それをまたなければならないということでございます。

 永住者として届けられた者に係る事項につきまして、法務省から情報の提供が求められるというようなことがあった際には、同条の範囲内の提供であることを、法務省から示される情報提供を求める必要性や理由等に照らして適切に判断することになろうと思います。

 永住者とみずからが名乗っていれば、それですべて法務省からの情報提供の範囲外、らち外に立つかということでございますけれども、それはケース・バイ・ケースだろうと思います。永住者というふうにみずからは名乗っておられましても、そういう在留資格というものが真実でないという場合もあろうかと思いますので、すべて御本人の名乗りがあればこの情報提供の範囲から除外されるというものでもない、それはケース・バイ・ケースだろう、このように考えるわけでございます。

細川委員 そうしますと、永住者でないのに永住者とかたり、永住者に成り済ましている、そういう者もいるので、法務省から必要性あるいは理由を聞いて、請求があった場合には応じる、こういう趣旨のように聞こえました。

 それでは、ちょっと法務省の方にお聞きをいたしますが、永住者や、あるいは定住者もあると思いますが、では、成り済ましている外国人労働者を見分けるにはどうしたらいいかということが大きな問題だというふうに思います。

 そこで、先週の委員会でも私伺ったんですが、その最も有効な方法は、入管の方で持っている登録情報と厚生労働省側で得た雇用状況の情報を突き合わせていくやり方、これが一番有効な方法、こういうことになると思いますが、この点は、せんだっての委員会で副大臣の方からも答弁がありまして、包括的にいただければそういうことはあり得るんでしょうけれどもというような答弁がございました。

 そこで、もし、正規の滞在者を装って不法就労を行っている者を効果的に捜し出していくのなら、こうした情報を、すべての外国人労働者、この点については、永住者について情報を包括的に求めるしかないというふうに思いますけれども、こういう求め方があり得るわけですね。法務省。

水野副大臣 今委員の方から、先週の答弁について引用していただきましたけれども、既に先週御答弁いたしたとおり、包括的に情報を求める可能性はあるというふうに考えております。

 御質問の永住者については、もう十分御承知のとおり、在留活動が制限されておりませんので、そういう意味では、不法就労とかということは、本当の永住者であればそれは当たらないんでしょうけれども、ただ、そういう永住者の在留資格の特徴を悪用し、不法滞在者が偽変造外国人登録証明書等を用いて永住者を装い、不法就労活動を行っていたと見られる案件が散見されており、このような案件の発見、特定の観点から、法務省としては、委員御指摘のとおり、厚生労働省から永住者に関する情報について包括的に提供を受け、法務省入国管理局が保有している情報と突合するなど有効に活用することは、極めて有効であると考えております。

細川委員 今、永住者に成り済ます、あるいは外国人登録証を偽造なら偽造して永住者に成り済ます、そのために情報を突合してあぶり出す、こういう必要があるというようなことなんですけれども、この成り済ましの永住者というのはどれぐらいおられるんですか。

水野副大臣 これは、現時点では正式な数というものは持ち合わせておらないということでございます。

細川委員 全くわからないんですか。大体の数字くらいはわからないと、そもそもその対策を立てるんですから、全然統計がないというのはおかしいんじゃないですか。

水野副大臣 これは、現時点では数字はわからない。むしろ、厚生労働省の方からデータをいただいて突合して、その中で明らかになっていくわけなんでしょうけれども、新制度が導入されればこういうことというのはあぶり出されていくんでしょうけれども、現時点では数字は把握しておらないということでございます。

細川委員 数字を把握していないといっても、これまでにそういう成り済ましの外国人がいたならば、それを摘発して外国に強制送還するということは事実上あったわけですよ、今まで。なければ成り済ましの問題なんか、こういうところに出てこないじゃないですか。全くの想像上で言っているわけじゃないんでしょう。幾らですか、数字は。

水野副大臣 想像で言っているわけではなくて、犯罪捜査の過程で永住者にかかわる偽変造外国人登録証明書などが判明して、当該の偽変造外国人登録証明書が法務省入国管理局の方に相当数送付されたりしてきたことというのはあるわけですので、全くそれは想像でそういうことは理論上あり得るとかと言っているというわけではなくて、現実にそれは摘発されたことがある、ただ数字として把握はしておらないということでございます。

細川委員 だから、実際にあった数字として把握していないということはどうなんですか。全く我々としてはわからないわけです、成り済ましがどれぐらいあるか。それで、成り済ましで摘発されたというんだったら、どれぐらい摘発されたかというものなんかは、それもわからないんですか、数は。ほんの数件だったら、数件のために永住者の情報を全部集めるなんて、そんなとんでもないことはできませんよ。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 具体的な実際に起きた件数につきましては、今手元で把握しておりませんが、どの程度の件数について私どもの方に連絡等が来ておるかは、これから調べてお答えすることができると思います。

細川委員 これは、どれぐらい成り済ましで摘発されて本国へ強制送還されたか、数が大事なんですよ。

 私がこれから質問しようとするのは、ほんの一部の人の成り済ましを摘発するために、厚生労働省が集めた永住者の情報を全部法務省の方に報告させるということだったら、これはちょっとおかしい。目的外のところに情報を使う、こういうことにもなりかねませんから、これは非常に大事な問題なんですよ。数が多ければ、それはちゃんとそういうことにも対応していかなきゃいかぬと思いますし、ごくごく少数ならば、それはそんなことで全体をやっていくということも、これはまたこれでけしからぬことになるというふうに思いますから、正確な数字を出してくださいよ。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 法務省の入国管理局の方に対しましては、成り済ましに関する偽変造の外国人登録証明書が、全件ではありませんが、検察の方から回ってくるようなシステムになっております。その数などについては把握することができると思いますので、今手元に数字を持っておりませんので、また後にお答えすることができると思います。(細川委員「困りますね」と呼ぶ)

櫻田委員長 細川律夫君、どうぞ質問を。発言の機会が許されております。細川律夫君、質問を。

細川委員 委員長が質問しろということですから質問しますが、数がわからないとちょっとできないんですよ。

 これは、委員長もよく理解してもらいたいんですが、成り済ましがあるから、そういうことで永住者の情報を法務省の方にあれするんだと。だけれども、その成り済ましというのが、本当にごくごくまれな例なのか、一般で大変たくさん行われているのか、数が大体どれぐらいのものかというのがわからなくては、次の質問はできないわけなんですよ。それは厚生労働省の方だってできないでしょう、法務省の方から要求される、成り済ましの要求があった場合に、それに対して報告するかどうかを判断する場合に。そもそもそういうことの議論をしようと思っていますから、数がわからないとこれは質問ができないんですよ。

櫻田委員長 すぐにはできないということで、ちょっと時間が欲しいということだそうでございますので。

 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 齊藤審議官。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 今、私どもの手元の方へ、警察、検察が摘発された者すべてについて連絡が来ている、通知等が来ているというわけではありません。そういうことですので、私どもとして把握しているのは、捜査機関等が把握している分の、恐らく一部ということになろうと思います。

 もちろん、議員御案内のとおり、成り済まし等の事案は隠密裏に行われる事案ですので、相当数あると思いますが、数として私ども把握しているのはごく一部ということでございます。

細川委員 今、回答で御案内のとおりなんて言ったが、御案内していないよ、わかっていないよ、僕は。知らないから聞いているんだから。

水野副大臣 これについては、どのぐらいの数があるのかというのは、我々今手元の中には資料としてはないですけれども、早急に事務方の方にも調べさせていただければというふうに思います。

櫻田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 この際、細川律夫君の残余の質疑につきましては、後刻行うことといたします。

 次に、田名部匡代君。

田名部委員 民主党の田名部匡代です。

 きょうは、障害者の雇用について重点的に御質問をさせていただきたいと思っておりますが、その前に一つ伺いたいことがあります。

 三月十四日の委員会で、厚生労働省の契約派遣社員についてお伺いをいたしました。ちょっとそれと関連したことなんですけれども、国家公務員の育児休業制度について伺いたいと思います。

 国家公務員の育児休業等に関する法律では、三歳に満たない子を養育する職員であれば、男女を問わず、最長でその子の三歳の誕生日の前日まで、その子につき原則として一回に限り育児休業をすることができる、これは三条に定められております。ただ、この中には、常時勤務をすることを要しない職員、臨時的に任用された職員、配偶者がこの法律により育児休業をしている職員その他の人事院規則で定める職員を除くというような規制があるわけなんです。これはつまり、国家公務員は、育児休業法において育児休暇、介護休暇は取得できます、しかし、非常勤、つまり非正規雇用の場合は休暇がとれないということになっているんですね。それで、役所に勤める非常勤、臨時職員は、何年働いていても育児休業法において給付はされないわけなんですけれども、雇用保険はこれをきちんと納めているんです。

 前回、雇用保険法の改正の中にもありましたけれども、民間では、六カ月以上の採用だと雇用保険も加入するし、育児休業の際に六割の給付もあります。しかし、今申し上げたとおり、役所に勤めるというか国家公務員法においては、その中の非常勤職員は育児休暇もとれないし、そういった給付制度もないということなんですけれども、この点について大臣はどのようなお考えをお持ちか、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 先回の委員会でも、委員でしたか、御指摘がありました。国家公務員の非常勤の職員については育児休業がとれない、しかしながら、他方、雇用保険は加入をさせられている。雇用保険の加入者は、民間であればこれはもう育児休業がとれますし、また育児休業手当の支給も行われる、こういうことである。そういうことを考えると、その間に矛盾というものがあるのではないかということでございますが、確かに両制度の間の、いわばすき間ができているということは私も認識をさせていただいたところでございます。

田名部委員 御認識をいただいたのであれば、やはり少子化対策に取り組む所管の厚生労働省といたしまして、ぜひこのことを改善していただきたいなというふうに思うわけなんです。全く同じ期間の育児休暇をとれるとかそういうことではないにしても、やはり働いた期間に見合った育児休暇がとれるような、そういったことをしていかなければならないのかなと。

 今回の雇用対策法の改正の中にも、「女性の職業の安定を図るため、妊娠、出産又は育児を理由として休業又は退職した女性の雇用の継続」といった女性の雇用に関する改正も行われておりますので、ぜひ見直していただきたいと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 非常勤、恐らく期間の定めのある職員だろうと思います、そういう方が育児休業をするということ、それから他方、育児休業手当も、雇用保険に加入しているのだからそういう手当も行われるべきであるということでございます。問題は余り易しいわけではないというように思いますけれども、やはり検討をしなければならない問題ではある、このように考えます。

田名部委員 この問題については終わりますけれども、確かに簡単なことではないのかもしれないんですが、パート労働法や雇用保険法のときにも、できるだけ長く雇用されることが望ましい、また、その後、正社員として雇用されることが望ましいというようなお話もありました。実態としては、契約を更新しながら長い期間非常勤としてお勤めをされている方もいらっしゃいますので、先ほど申し上げましたように、勤務をしている期間に見合った育児休暇の取得、そういうことができるようになれば、働く女性も子供を生み育てやすい環境がより一層整っていくのではないかな、それに一歩近づくのではないかなというふうに思いますので、ぜひ御検討をいただきたい、そのように思います。

 さて、障害者の雇用対策についてお伺いをいたします。

 障害者自立支援法が施行されたわけなんですけれども、その法律ができるまでにも随分と障害者の雇用に対する審議は繰り返されてきました。私も委員会の中でそういった質問を随分してきたつもりでありますけれども、きょうは、改めて、障害者の雇用がどういう状況にあるのかということを伺っていきたいと思います。

 まず初めに、国、地方公共団体における障害者の法定雇用率は二・一%であります。都道府県の教育委員会を除いた国の機関における法定雇用率の達成というのは、国、機関全体であるわけなんですが、わずかですけれども法定雇用率を達成しております。二・一%の法定雇用率のところを二・一三%なわけなんです。

 これは、厚生労働省としても、やはり障害者自立支援法等の絡みもあって、率先をして、力を入れて取り組んでくださったのかな、大変よいことだなというふうに思っておりまして、それでは本年度はどうだったのかと思いまして、ちょっとその数字を聞いてみました。本年度、厚生労働省で障害者は何名雇用されましたかと伺いました。

 その数字を聞いて、がっかりというかびっくりというか、国の、厚生労働省の障害者雇用の取り組みの程度がわかったというか、実態がわかったというか、何とも言えない気持ちになったわけです。

 本年度、厚生労働省で正規雇用された障害者はゼロ名、この数字に間違いないでしょうか。簡潔にお答えください。

宮島政府参考人 お答えいたします。

 出先機関については集計中ですのでまだお答えできませんが、十九年度の厚生労働本省の新規採用職員は合計百四名でありますが、御指摘のとおり、その中に障害者は含まれておりません。

田名部委員 障害者の採用はどのように行っていますか。

宮島政府参考人 国家公務員の採用というのは、国家公務員法において平等取り扱いとか成績主義の原則ということが定められておりまして、その障害の有無で職員の募集、採用の取り扱いを異ならせるというのは、この国家公務員法の制度ということであると困難になっておりまして、厚生労働省でも、常勤職員の採用は原則として人事院が実施する競争試験の合格者の中から行っているというのが現状でございます。

田名部委員 つまり、採用は、国家公務員の試験を受けて合格をした中に障害者がいればその方が採用ということになって、それが法定雇用率を左右しているというようなとらえ方でよろしいでしょうか。

宮島政府参考人 今申し上げましたのは原則でございますが、これによらないで、特定の職種の方で選考採用ということで採用することもできております。したがって、適切な公募とか一定の選考基準に合致すれば採用が可能だということになっておりますので、こういうものがある関係で、厚生労働省全体の十八年六月の法定雇用率は二・一六%が達成されている、そういうような関係になってございます。

田名部委員 今の国家公務員の試験を受けた人以外の採用について、その人数というものは把握していますでしょうか。

宮島政府参考人 済みません。本日のお手元の資料の中では、機関別については把握しておりますが、選考あるいは試験別という数字については用意しておりません。申しわけありません。

田名部委員 きのうこの御説明を伺って、厚生労働省として障害者の雇用を率先して行っているということではなくて、その御説明から、私のとらえ方は、国家公務員試験を受けまして、その中に障害者の方がいた、合格をされた、つまり、たまたま障害者の雇用となっていたということではないのかなと。改めて障害者を雇用しようとか、雇用を促進しようとか、そういう取り組みをしているのではなくて、法定雇用率を達成したこと自体も、何年かかったかわかりませんけれども、国家公務員試験を受けて合格した方が積み重なって、それこそたまたま達成していたというようなことにならないでしょうか。どのようにお考えですか。

宮島政府参考人 そのようなこともありますが、厚生労働省の立場というのは、やはり障害者の問題に率先して取り組まなければならないということもありますので、私どもの労働局などでは、知的障害者の職場実習の受け入れというようなことをやって雇用に結びつけられないかという取り組みなどもやっております。

 また、政府としても、公務部門における障害者雇用をどうやっていくか。この推進チームというのが内閣府に設けられておりまして、ここでどうやったら国が率先して障害者雇用をつくり出せるかという検討を行っております。

 私ども厚生労働省といたしましても、障害者雇用に公的部門が結びつくようにいろいろ検討を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

田名部委員 ぜひそういった取り組みをしていただきたいと思うんですが、大臣はこういった採用の仕方をされているというのは御存じでしたでしょうか。

柳澤国務大臣 国家公務員になるためには、今は、1種、2種、3種でしょうか、それぞれの種別の試験、国家試験というものに合格をして人事院に登録をされる、そういう者の中から各省が上位から選考をされて、それぞれの向き不向き、適性をお考えになられて採用されるということが基本でございます。

 したがいまして、障害者の方につきましても、まずその国家公務員の試験に合格をするということが前提になるんだろうと思います。それから、各省に配られるのも、多分各省の採用枠の何倍かの数を公平の見地からリストに挙げて、この中からお選びくださいというような形になっているのではないか、こう考えます。

 では、その中に障害者の方がいらっしゃらないということはどう考えるのかということかもしれませんが、今宮島総括審議官の方からお答えを申し上げましたように、別途選考による採用というものがありますので、それらをいろいろ工夫することによって、私どもとしては、適性を持つ方に適切な職についていただくというようなことに努めていくということになるんだろうと思います。

 そういう意味では、今宮島審議官の方からお答えしたということを、私もそのように認識をさせていただいているところでございます。

田名部委員 やはり、国家公務員試験に合格することが前提だというふうにおっしゃっておりまして、もちろん、国家のために大事な仕事を皆さんなさっているわけですから、ある程度の試験だとか資格だとかそういうことは必要かもしれませんが、それを言ってしまったら、それは民間でそういう理屈が通用するのかと考えたときに、そうじゃないと思うんですね。

 民間も、それは試験をしたり面接をしたり、それでだめだったから、では雇わなくていいかといったら、決してそうではなくて、そういった民間に対して皆さん方は指導する立場にあるわけですから、私は、今も話がありましたけれども、障害者の雇用の枠というものをしっかりと設けるべきだというふうに考えておりますので、ぜひそのようにしていただきたいというふうに思います。

 もう一つの問題は、法定雇用率を達成したからいいんだというような考え方では困るわけでありまして、健常者も障害者も同じように毎年学校を卒業して、新たに社会に出る人たちがいるわけですので、そういった人たちの雇用の場というものは幅広く、そして確実に確保されていかなければならないというふうに思っています。

 今の話のように、試験に合格すれば別だけれども、そうでない限り、なかなか国の機関に雇用される機会が少ないということのないように、障害があっても、それぞれ能力を持って生かせる仕事というものはあるわけですから、その能力に見合った適切な仕事の場を与えていただきたいというふうに思います。

 昨年もこの委員会で、大臣に、指導する立場にある側が率先して実現させるべきじゃないかということを御質問したんですが、そのときの大臣の答弁はたった一言、寂しかったんですけれども、「仰せのとおりと思っております。」と一言でありました。

 そういった中で、そのときの政府参考人は、状況を把握して指導してきたので、本年度は全機関で障害者の雇用は達成できると思うということでありましたし、そのほかの教育委員会等の障害者の雇用も達成率が非常に悪いんですね。そういったことの質問に対しても、教育委員会であれば教育長に話をして、トップダウンでしっかりとその達成に向けて努力をしていきたいというようなお話がありました。

 しかしまた、その状況というのを見てみますと、教育委員会においては京都と大阪のたった二県しか達成をしていないというふうに伺ったんですけれども、どういう指導を行っていて、なぜ達成できないのか、お聞かせください。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

岡崎政府参考人 公的機関の中でも、教育委員会が一番問題が大きいというふうに認識しております。私どもとしましても、教育委員会を指導する基準を昨年秋に決めまして、文科省とも協力しながら各教育委員会に強力に働きかけをしているということであります。

 教育委員会の方の話としましては、今の公務員の話ともちょっと似ておりますが、教員採用試験に受かった方から採用しているので、こういうことを言われるわけでありますが、私どもとしましては、一つには、その教員採用試験の際に配慮をしていただかないと、なかなか合格できないのではないかと。

 例えば、実技試験等があると、障害者の方はその実技試験が受けられないとかそういうことにもなりますので、やはりそういうところにつきましては、実技試験を免除するなり、障害者の方も合格できるような配慮が必要ではないかということを申し上げております。あるいは、先ほどの選考採用の話もありますけれども、障害のある方を対象とした特別選考みたいなものも意識していただきたいというようなことも言っております。

 それからまた、教員以外の職域もあるわけでございますので、そういった幅広いところを見ながら、とにかく法定雇用率というものがあるわけですから、これを十分認識していただいてやっていただきたい。

 二県と申されましたけれども、京都、大阪で達成しているということは、逆に言えば、教育委員会でできないわけではないと私ども思っていますので、ぜひこれは強力に働きかけていきたい、こういうふうに思っております。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

田名部委員 ありがとうございます。

 おっしゃられたとおりで、京都、大阪でできるのであればほかのところでもできるわけでありまして、配慮が必要なのではないかということではなく、やはり配慮が必要なんですね。

 そういった教育機関の中に障害者の方も一緒に働いて教育現場に携わっていくというのは、私は本当にすばらしいことだと思っておりまして、私自身も、個人的にではありますけれども、障害者の方々と交流を図っているときに学ぶことは本当に多いんです。いろいろなことを学ぶだけではなくて、元気づけられたり勇気づけられたりということもたくさんありまして、そういった中から子供たちが心身ともに本当に優しく、またたくましく育っていってほしいなというふうに思いますので、ぜひ配慮をしていただいて、教育委員会の現場の中でも障害者の方が仕事をしていけるようにしていただきたいというふうに思います。

 次に、職場適応訓練の実施状況についてお伺いいたします。

 この施策は、各都道府県知事が事業主に委託をして、能力に適した作業の訓練をして、その後、事業所に引き続き雇用されることを目的とした事業なんですけれども、過去五年間の実施状況をきのういただいたんですが、毎年実施者数が下がっていっているんですね。これは、委託する事業、逆に言うと、受ける事業主が減っているというふうにとらえてよろしいんでしょうか。

高橋(満)政府参考人 職場適応訓練の実績でございますが、今委員言われたように、全体といたしましてこのところ減少してきておる。この減少してきておる背景でございますけれども、一つは、都道府県の自治事務ということでございますので、都道府県の取り組みということもあると思いますし、また他方、それを進めていく上での受入先である事業所の御理解ということも当然あると思います。両面相まって、この制度の実績が若干減少しておるということかと思います。

田名部委員 減少していることに対して、各自治体に国として指導というのは行っているんでしょうか。

高橋(満)政府参考人 職場適応訓練は主に、特に障害者を初めといたしました就職困難な方々に、この職場適応訓練を通じて正規雇用と申しますか雇用に結びつけていただくという趣旨でございます。そういう意味で、各都道府県におきまして、そうした就職困難者に対する就職支援、国の施策と同時に、自治体におきましてもさまざまな取り組みを行っておるわけでございます。

 そうした意味で、私ども、この職場適応訓練というものも就職支援の中のメニューとして大変効果的なメニューの一つであるというふうにも受けとめておるわけでございまして、この実施に当たりましての費用につきましても、国が一部を都道府県に対して補助をいたしておるわけでございまして、私どもとしては、都道府県におきましてこの職場適応訓練が積極的に活用されるよう、機会をとらえて促し、また指導をいたしておるところでございます。

田名部委員 指導されているわけですね。自治事務なので、それは各自治体でというようなお話もちょっとあったものですから、こうして委託先が減っている、また、そこに行って勤める障害者の人数が減っているということは、せっかくこうした施策を講じながらもそれが実を結んでいないということなので、それは各自治体に、指導だけではなくて、どうして減っているのかというきちんとした実態調査も必要なんだと思っておりまして、そういうことをぜひやっていただきたいというふうに思っています。

 進んでいないこととか後退していることをそのままにしても意味がないわけでありまして、しっかりとした原因を調べて対策を講じていかないといけないんだろう、そうじゃなければ障害者の雇用の促進は図っていけないんだろうなというふうに思っています。この知事からの委託事業がうまくいかないようであればというか、今後も減っていくような状況があるのであれば、平成十七年で全国で九百五十七名ですから、減っていくようであれば、ぜひ新たな対策を講じなければならないと思います。

 減っているものだけではなくて、もう一方、障害者トライアル雇用事業に関しては、常用雇用に移行している方が八三%もいらっしゃるということで、こういった実を結んでいる事業もあるわけです。そういったことを重点的に対策としてやっていくのか、もう一方、今言ったような事業も続けていくのであれば、やはり委託先がきちんと見つかって仕事を続けていけるようにしていかないと、ただこの事業があるだけでは意味がないので、ぜひしっかりとその辺の対策も講じていただきたいというふうに思います。

 次に、ハローワークについてちょっと伺いますが、ハローワークの障害者の対応というか窓口というのは、全国できちんと設けられているんでしょうか。

岡崎政府参考人 ハローワークの規模にもよりますが、障害者なりあるいは障害者を含めた就職援助が必要な方の特別の窓口を設けているハローワークと、規模が小さいところにつきましては、特別の窓口という形ではない形になっているところもあります。ただ、支援の中身そのものはすべてのハローワークで同じように対応しているという状況でございます。

田名部委員 ハローワークでは、障害者の方の就職を探すだけではなくて、その後どれだけ定着しているかというような実態は、これはハローワークではなくてどこかで調査をしているんでしょうか。

岡崎政府参考人 ハローワークで紹介、就職をしていただいた障害者全体について、定着状況の把握というのは実はしておりません。

 例えば、先ほどお話ししましたトライアル雇用等であれば、三カ月のトライアル期間の後どうなったかというようなことについては、八割の方が常用雇用に移行しているということ、あるいはジョブコーチという特別な支援をしているところがあるわけでございますが、そのジョブコーチの支援をした方につきましても、おおむね八割の方、これは六カ月後の状況でありますが、定着しているというような、個別のプログラムの状況、物に応じましては把握しているという状況でございます。

 あとは、個々の方の状況に応じまして、例えば就業・生活支援センター等々、いろいろな制度がありますので、そういう中で定着支援を行っているというのが現在の状況でございます。

田名部委員 就職できるということももちろん大事なんですけれども、どれだけ定着しているのかという実態を調べる必要があるんじゃないか。そのことを把握した上で、多くの人がすぐにやめてしまっているのであれば、何らかのまた施策を講じなければならないのかなというふうにも思いますので、ぜひそういった追跡調査と言っていいんでしょうか、そういったことも、ハローワークで無理なのであれば厚生労働省として行っていく必要があるんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがですか。

岡崎政府参考人 おっしゃるように、最初の段階の就職だけで後が続いていないのであれば、ちゃんと就職したことにはならないという認識を持っております。全数で調査するかどうか等々いろいろありますけれども、私どもとしましても、障害者の方が、それぞれ自分に見合った適切な就職先で長く勤めていっていただけるようにということは、心がけていきたいというふうに思っておりますし、いろいろな形でその定着状況も把握しながら、施策も講じていきたい、こういうふうに考えております。

田名部委員 ハローワークの方も一生懸命取り組んでおられると思いますし、もちろん厚生労働省の皆さんも一生懸命取り組んでおられるというふうに思いますけれども、実は、障害者とか関係者の方々から多少の不満があるのは当然だと思われるかもしれませんけれども、ちょっといろいろな声が上がっておりまして、幾つか申し上げます。

 例えば、全国で多いという話ではなくて一部かもしれませんが、福祉就労から一般就労へ移行するときに、新規、学校を卒業してすぐの就職あっせんとは違って、どちらかというと、ちょっとそこは関係ないみたいな後ろ向きの対応があったとか、一度県外に出てから地元に戻ってきて、地元で就職をしようと思ったときに、学校としてもその就職支援がなかなかしてあげられにくい。では、ハローワークでどうかというと、ハローワークでもなかなかしにくい。

 つまり、新卒じゃなければあっせんしにくいということなのかもしれないんですけれども、そういったことがあるとか、県からの委託で就労支援事業を行っている方々なんかはうまく連携が図れていないんだと。小さなことかもしれないんですけれども、委託をされた就労支援事業でチラシとかパンフレットを置いてくれないだろうかと言うと、それは上司に伺いを立てないとだめだと言うまま結局置いてもらえない、ポスターも張ってもらえないまま終わっちゃったんですよなんという話もありました。

 そういうことはハローワークの側が悪いということではなくて、もう少し、さっきおっしゃったように、すべてのハローワークに障害者の担当がいないのであれば、やはりいないところにはより一層きめ細やかな対応ができるような指導ですとか、地域内での連携が本当にうまくいっているのか、問題がないのかというような連携を上手にとっていくネットワークづくりというものを、しっかりと国としても責任を持ってやっていただきたいと思うんですが、いかがですか。

岡崎政府参考人 障害者の方の就職につきましては、特別支援学校からの卒業者だけではなくて、離職される方も多々あるわけでございますが、そういう方の再就職を含めて、私どもやっているつもりであります。それから、福祉施設からの就職ということにつきましても、障害者自立支援法もできたわけでございますが、そういう中でも位置づけられておるわけでございます。

 そういう中で、私どもとしましても、雇用、福祉、教育、三つの組織がきちんと連携してネットワークをつくりながら就職支援をしていくということが重要だろう、こういうふうに思っておりまして、昨年四月にそういう趣旨の通達も出しましたし、この四月にまたそれをグレードアップするような通達も出しました。それから、別途、そういう関係の方々にお集まりいただいた研究会もやっておりまして、より一層連携の仕方を充実させていくということを考えております。

 今先生から御指摘のあったような、個々のハローワークの中でいろいろな問題もあるのかもしれません。そういったところにつきましては、私ども、福祉、教育と連携しながら障害者の方の就職を進めていくんだ、こういうことが末端のハローワークまでちゃんと浸透するように努力していきたい、こういうふうに考えております。

田名部委員 ありがとうございます。

 ひどいケースなんかでは、職を探して何度もハローワークに足を運んでいたら、何度も来られても就職先はないんだから、余り来ないでくれ、来られても困るというような対応もあったというふうに聞いております。

 全体がそうだというわけではないんですけれども、ただ、この問題というのは、ハローワークだけではなくて、やはり本当に就職先がないんだという実態もあろうというふうに思いまして、それに関連をして、障害者を雇い入れている企業への助成、報奨金についての御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 現在、就職困難な方を、ハローワークまたは適切な運用を期すことができる有料・無料職業紹介事業者の紹介で、継続雇用する労働者として雇い入れる事業主に対し、賃金の相当額の一部を助成する制度というものがありますけれども、この、有料、無料にかかわらず、職業紹介をする事業者というのはどういったところなんでしょうか。

岡崎政府参考人 これは、いわゆる許可を受けて職業紹介をやっている民営職業紹介事業者のことでございます。

田名部委員 例えば、本当のボランティアで、私の地元八戸では、前にも委員会でお話ししたんですけれども、職親会というのがありまして、民間の本当に中小・小規模企業の皆さんが有志で集まって、就職を本当に一生懸命探しているんです。もちろん、みずからの企業でも障害者を受け入れて、仕事をしていただいているというようなことがあるんですけれども、そういう民間の団体というのは今のことに当てはまりますでしょうか。

岡崎政府参考人 実態を少し勉強させていただかないとお答えしにくいんですが、ただ、職業紹介ということであれば、何らかの許可、届け出が必要だというのが今の法制度でございます。そういう中で、どういう形でやっておられるか、ちょっと勉強させていただきたいというふうに思います。

田名部委員 ぜひ、許可が必要だというのであれば、その許可をとりながら、国の方からも支援をしていただけるようにしていけばいいと思うんですが、本当に実績を上げているんですね。ですから、そういった実績を見ながら、やはり障害者の雇用促進に大変力を入れているというところがあれば、そういうところもぜひ対象になったらいいなというふうに思っています。

 それと、もう一つ、障害者の雇用納付金制度で、三百人以下で、障害者を四%または六名のいずれか多い方を超えて雇用する事業主には調整金や報奨金が出るんですけれども、今言ったみたいに、大変小さいながらも、一人、二人雇って頑張っているところもあるんですね、青森なんかは特に不景気でありますから、その中でもそうして雇い入れて頑張っているところがあるんですが、三百人以下というのが一くくりであると、少なければ少ないほど、この対象から外れてしまうんじゃないかというふうに思うんですね。例えば十人の企業だったら、四%か六名のどっちか多い方だと六名ということになりますね。

 ちょっと、この三百人以下一くくりというのはどうかなと思うんですが、いかがでしょうか。

岡崎政府参考人 納付金制度の全体の中での仕組みになっているわけでございますが、基本的には、納付金制度につきましては、障害者法定雇用率を下回る企業から納付金を納めていただいて、それで、それ以上のところに調整金をお支払いする、こういう仕組みでございます。ただ、三百人以下のところは、現在のところはその納付金制度の適用除外にしている中で、一定の促進措置として、今先生のおっしゃったような仕組みになっているという状況でございます。

 納付金制度をどうするかということを含めて考えなければいけない問題だろうというふうに思っていまして、現在、中小企業の障害者の雇用の促進をどうするかという研究会もしておりますので、そういう中で研究していきたい、こういうふうに考えております。

田名部委員 大臣にも今のことをお伺いしたいんですけれども、地域の中で、こうした田舎にというか自分の地元のことですけれども、やはり大きい企業がそんなにないんですね。その中で、小さいながらも障害者の雇用に一生懸命取り組んでいるというところに対して、もう少し国としての、今おっしゃったような見直しが必要なのかなと思うんですが、大臣はいかがお考えですか。

柳澤国務大臣 先ほど来、お答えを事務当局からいたしておりますとおり、障害者の雇用の促進に関する助成措置というのは、多くの部分、障害者雇用納付金制度に基づいて行われているわけでございます。ただ、今、中小企業に対してどうなっているかということでございますが、これは納付金の徴収対象となっていない中小企業に対しても同様の支給をしているという状況だと私は認識をいたしております。

 その上に、ボランティア的なことでやっていらっしゃる方というのは、具体的に、ちょっと私、イメージが結ばないわけでございますけれども、もし中小企業であれば、今言ったことで恐らく例外的な措置になっていると思いますが、納付金制度の対象にならずに、納付金は仮にその基準を下回っているから納めなきゃならないというようなことでない方々の規模、そういう規模の方にも給付金は行われている、こういうことでございますので、それでお答えになっているのかどうか。中小企業でなくて、ボランティアの方々の事業というようなことがちょっとイメージとしてわかりませんので、とりあえずのお答えはそういうことにしておきたいと思います。

田名部委員 もう時間が来たのでやめますけれども、以前にもちょっと職親会の地元の話を申し上げたので、私ももっと丁寧に御説明をすればよかったんですが、中小・小規模企業が、みずからも障害者の雇用をしながら、ほかの企業にも一生懸命、雇用してくれということで歩いて頼みに行ったり、また、障害者が社会で生活をする、その生活費というか家賃というようなものまで皆さんの会費の中で出し合いながら、社会での自立を進めている、取り組んでいるというような方々でありまして、本当はもっとすばらしい活動をしているのでお伝えしたかったんですけれども、時間が参りました。

 障害者自立支援法施行以来、本格施行からは半年がたちまして、工賃倍増だとかいろいろありましたけれども、私の聞く限り、地域の実態というものは、工賃の倍増どころか、スタッフは減って、その減ったスタッフも増員できない、時間もオーバーしながら過重労働を強いられているというような現状もありますので、ぜひ、その後の実態をしっかりと調査をし、把握をし、障害者の皆さんが、また関係者の皆さんが、本当に社会の自立を目指してしっかりとしたいい取り組みができるように、負担とならないようにやっていただきたいと思います。

 長くなりました。どうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、三井辨雄君。

三井委員 民主党の三井辨雄でございます。

 まずは、地域雇用開発促進法案についてお伺いしたいと思います。

 今回、雇用対策法等の政府案、並びに民主党の雇用基本法等の三法案の審議もいよいよ最後に近づいてきたわけでございますけれども、これまで大変熱心に委員会でも議論を深めていただいたんだなということを、私からも、非常にいい審議状況だったなと思っております。

 そこで、地域雇用開発促進法案について、先日、園田議員が質疑をされておりましたが、それにつけ加えて質問してまいりたいと思っております。

 地域雇用開発促進法案に盛り込まれております新たな地域類型といたしまして、自発雇用創造地域というものがありますが、この地域に対する支援措置であります。地域雇用創造推進事業の趣旨と目的について、大臣に御答弁願いたいと思います。

柳澤国務大臣 今、三井委員から逆に御紹介をいただいて恐縮だったんですけれども、今回の地域雇用開発促進法におきましては、従来四つの類型で進めてまいりました地域あるいは事業というものを再編いたしまして、二つのタイプ、二類型にさせていただいたわけでございます。

 そのうちで、前者については若干、正直言うと改善もいたしているわけでございますが、お話の方はそうではなくて、自発雇用創造地域に対するお話ということで、この趣旨ないしは目的はどういうものか、こういう御質問でございました。

 これにつきましては、雇用情勢については、厳しいということは申し上げるわけですけれども、特に厳しいという雇用開発促進地域とはちょっと別建てになっておる。そういう中で、市町村を中心としてなんですけれども、雇用創造に向けたいろいろな試みが行われるということが要件になるわけでございます。

 具体的には、地域の関係の方々が協議会を組織するということが重要な要件になっておりまして、その協議会におきまして計画を策定し、いろいろな新機軸の事業を打ち出すということが前提になるわけでございます。都道府県が計画を策定して、厚生労働大臣に協議をして、厚生労働大臣としてもこれに同意をする、こういう計画、これが前提になっているわけでございます。

 これは、地域の状況について最もよく把握している地域みずからが、その持てる特性あるいは資源を生かしながら、魅力的な雇用の場の創出に向けて自発的な取り組みを支援していくということが地域雇用対策としても非常に有効であり重要だ、こういうように認識をいたしたところから発した発想でもあるし、制度でもあるということでございます。

 この事業は、政府全体としても取り組む事業とされておりまして、法律の中でこのことにつきましても触れているところでございまして、一つは、地域再生のこともそうでございますし、また、経産省等による地域の活性化に資する、そういう産業集積の形成であるとか活性化を促進するとかというような、そういうプロジェクトとの連携も図りながら政府全体としてこれに取り組んでいくということで、こういう活動を通じまして雇用創出を図っていくということが、今回のこちらの制度の趣旨あるいは目的ということでございます。

三井委員 今大臣が御答弁されましたように、やはり地域の特性というのをしっかりと、今経産省を含めて、国全体で挙げて取り組むということでございますけれども、ただ、一義的にやるというのは、私は非常に問題だなと。やはり、今お話ありましたように、地域の特性を大いに生かすようなことをしなければならないと思っておりますし、また、これを見ましても、いろいろな助成制度はございますけれども、非常にこの制度が複雑なんですね。複雑な余りになかなかこの助成制度が利用されないという部分もございますし、それと同時に、大手はいいとしましても、やはり中小企業が、この助成制度についてもっともっと使っていただくような、複雑でないような形をとるべきだ、こういうぐあいに私は思っております。

 次に、この地域雇用創造推進事業の採択の基準について、どのようなものを想定しているのかということでお伺いしたいと思います。

 今回、この法改正の趣旨は、今お話ありましたように、雇用情勢の厳しい状況への支援の重点化にあるということも私も十分理解しておりますけれども、しかし、この事業の採択に当たって、例えば、雇用情勢が特に厳しいという地域にどういうような柔軟な対応が必要なのかということをお聞かせ願いたいと思います。

高橋(満)政府参考人 今御指摘の地域雇用創造推進事業、今回の地域雇用開発促進法の改正に伴いまして、新たに、地域類型並びにそれにかかわる支援事業としての地域雇用創造推進事業でございますが、これは先ほど大臣からもその趣旨について答弁があったとおりでございまして、市町村でありますとか経済団体その他、地域関係者が一体となって、創意工夫を生かして実施をいたします事業、具体的には、雇用機会を結果としてつくり上げていくような取り組み、また、それを支える人材の育成のための取り組み、さらには地域の求職者に円滑に就職を図っていただく、それを促進していくための取り組みといったような雇用対策を、これはそれぞれの地域の中でメニューを考えていただくわけでございますけれども、そうした事業につきまして、地域の特性、資源を生かした産業活性化の取り組みと一体的に行われることが効果的であるわけでございます。

 そうした観点から、事業の採択をするということに当たりましては、やはりそれに取り組む地域の体制というものが、どういう産業を重点にしてこの地域を活性化していこうか、そのためにこの雇用創造推進事業をうまく有効に活用していく、そういう観点からの取り組み体制でありますとか、それから、具体的にその事業の構想をしておる中身、また、その結果としてどれくらいの雇用創造の効果を見込んでいるのかといった点を中心に、有識者等で構成をいたします第三者委員会に諮って判断をするという形で考えておるところでございます。

 また、採択に当たりまして、雇用情勢の特に厳しい地域への配慮ということが必要ではないかという御指摘でございますが、私どもも、基本的にそのように受けとめておるわけでございまして、今申し上げましたような一般的な採択の基準に加えまして、これまで大変厳しい状況にございましたいわゆる七道県について、十八年度におきましては重点的な事業配分ということを通じて特に力を入れて取り組んできたわけでございまして、そうした経緯も十分踏まえながら、こうした雇用情勢の特に厳しい地域に十分な配慮をしてまいりたいと考えております。

三井委員 本当に北海道、私も北海道でございますが、青森、東北というのは大変厳しい状況にあるわけですね。

 やはり、今回のこの法案というか制度でありますけれども、もっともっと幅広に、例えば職についても、今、介護福祉士の法案も出てまいりますけれども、介護の分野というのも大変人が足りなくなってきているというのが現状なんですね。だから、例えばそちらの方に仕事を振り向けるとか、紹介するとか、あるいはトレーニングするとか、そういうことも私は必要になってくるのではないかなと思っております。

 そこで、次に、事業採択のときに審査を行う第三者機関の構成について厚生労働省はどのようにお考えになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。

高橋(満)政府参考人 事業採択に当たっての第三者機関の構成でございますが、考え方としては、公平公正な審査を担保すると同時に、やはり事業主側、労働者側双方の理解と協力を得ながら事業を進めていくということも重要でございますので、学識経験者のみならず、経済団体あるいは労働組合の代表も含めた構成とする方向で考えていきたいと考えております。

三井委員 そうしますと、この構成メンバーについては、地域の関係者あるいは労働組合関係者も含まれているということでよろしいですね。

高橋(満)政府参考人 そのとおりでございまして、本省で設置するものでございますから、全国的な経済団体あるいは全国的な労働団体からの御推薦をいただくということになろうかと思います。

三井委員 それでは、民主党の提案者に御質問したいと思います。

 最初に、今回の雇用基本法について、第二条の第一項において「雇用に関する施策は、すべての労働者が、公正な労働条件の下、人としての尊厳を重んじられ、安心して働くことができる環境を整備することを旨として講ぜられなければならない。」としているわけですけれども、その趣旨についてお尋ねいたしたいと思います。

大島(敦)議員 民主党の大島です。法案提出者として三井委員に答弁をさせていただきます。

 まず、私たちの立ち位置なんですけれども、新しい雇用のモデルが今模索されている時代だと考えております。これまでの雇用のあり方あるいは働き方というのは、私自身を例にとれば、二十五年前に入社をしたときには、会社の先輩の生きざまを見れば、どのような将来が待っているか予想できましたし、安心して働くことができたのがこれまでの時代でした。

 ところが、一九九〇年代後半から二〇〇〇年前半にかけての景気の後退期と、そして団塊の世代がちょうど五十代前後だったことで、その団塊の世代の方たちの中のお父さんたち、父親が失業された場合に、家庭では父親自身の尊厳が失われ、生き方に自信を失い、子供に勉強しろとも言えず、子供もどうしていいかわからなくなり、一つの生き方のモデルが見出せなくなったのがこれまでかなと思っております。

 今回、私たちは、今後予想される人口の減少、人口の減少によって労働投入量も減ってきます。私たちの社会をもたせるためには、できるだけ多くの方、女性の方も高齢者の方も働ければ、そして若年者も、効率的に、より付加価値の高い仕事をしていただくことによって先ほど申し述べました労働投入量を膨らませ、そして、付加価値の高い仕事にはそれなりの賃金を企業側が支払うことによって社会全体の給与総額を上げること、そのことが、ひいては納税にもつながっていきますし、社会保障の保険料の増にもつながっていきますから社会が安定すると考えておりまして、この新しいモデルの前提として、まずは、公正な労働条件のもとに、人としての尊厳が重んじられ、安心して働くことができる環境を整備すること、これが前提条件だということで、二条の第一項についてまず規定をさせていただきました。

 今回は、これから御質疑があるかもしれませんけれども、一つには、ワークライフバランス、仕事と生活のバランスがとれていることが必要だと考えております。これは、先ほど申し述べました、男性が主に働く社会から、女性の方、高齢者あるいは若年者も一生懸命働いてもらうためにはワークライフバランス。

 例えば、これから当厚生労働委員会でも議論があるかもしれませんけれども、時間外労働の割り増し賃金のあり方についても、私の経験からすると、二五%の割り増し賃金ですと、課長、上司としては、残業してでも仕事を仕上げろということになるわけです。それが例えば五〇%になったときには、残業して仕事を仕上げるよりも、できるだけ勤務時間内に濃く仕事をしていただいて仕事は終わらせるということになっていきますから、ワークライフバランスを考える上でも、この時間外労働の割り増し賃金のあり方というのも非常に重要なファクターになってくるかと考えております。

 もう一つは、これまでも御指摘させていただきました、パート労働そして派遣社員のあり方、契約社員のあり方、採用のされ方が違うと賃金が大きく違っている時代に今なっております。これからの仕事のあり方を考え、新しいモデルの前提になるものは、パートであっても派遣社員であっても契約社員であっても、採用のされ方が違っても同じような賃金を支払うことが必要だなと考えておりまして、今回の雇用基本法案の中でもその点について指摘をさせていただいております。

 繰り返しになりますけれども、第二条一項で、基本的考え方として、やはり日本の将来のためにしっかりとした雇用を確保していく努力が欠かせないとの観点から、「すべての労働者が、公正な労働条件の下、人としての尊厳を重んじられ、安心して働くことができる環境を整備すること」を法案においてはっきりと明示したところでございます。

 以上です。

三井委員 ありがとうございます。

 今、大島委員がお話しされましたように、民主党の基本法案、本当にすばらしい法案だと思っております。将来的にも、団塊の世代の皆さんが退職されますと、まさにこれから安心して働くことのできる社会をつくるということが非常に大事になってくると思いますので、ぜひさらに御努力をいただきたい、このように思います。

 そこで、民主党案においての雇用基本計画の策定等を義務づける趣旨についてお伺いしたいと思います。

園田(康)議員 ただいま御指摘を賜りました、民主党案で、雇用基本計画という形で策定をするというふうに規定をさせていただいております。

 先ほど大島委員からも御説明させていただきました、雇用に関するまず第一条の目的、そして第二条による基本的理念、しっかりと今度はその理念にのっとって基本計画を立てていかなければいけないのではないかということを私どもは考えておるところでございます。すなわち、雇用に関する施策を総合的に策定いたしまして実施する責務を有する、それを政府が、雇用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図っていかなければいけないということで、この基本計画がまずなければならないのではないか、その方向性と数値目標というものもやはりしっかりと、ただ単に理念を掲げるだけではなくて、目標というものをその中で明らかにしていかなければいけないのではないかというふうに考え、七条でこのような規定を設けさせていただいたということでございます。

 一方、政府案におきましては、残念ながら、これまで規定をされておりました雇用対策基本計画、この計画の条項がごっそり抜けてしまったわけでありますけれども、先般、私からもその点御指摘をさせていただきましたところ、「進路と戦略」というものがほかにも設けるというようなこともあり、あるいはこの基本計画そのものの実効性について疑問視するという形で今回はこの規定を削除するという話でございました。

 私どもは、この少子高齢化社会における人口構造の変化など経済社会構造の変化、こういったものがあり、それから、この雇用対策というものは、国と地方公共団体あるいは事業主等々の連携がなければ、雇用に関する施策ということに対する実効性が余り有効的に働かないのではないかというところから、そういった連携を強めるということを目的といたしまして、この基本計画を政府みずからが策定をいたしまして、計画的に推進をしていかなければいけないというふうに考えております。

 それによって、先ほど理念のところでも申し上げましたように、「すべての労働者が、生涯にわたって、生きがいを持って働き、豊かで安心して暮らすことのできる社会の実現」こういったものがあるんじゃないかというふうに考えております。

 またさらに、私どもの七条の三項と四項で、この基本計画の案の作成に当たっては、まず閣議決定を行わなければいけないということ、それから、四項におきましては、その作成に当たりましては、まず、先ほどありましたように、例えば経済産業省さんであるとかあるいは農林水産省さんとの連携というものは綿密に行っていかなければいけないのではないかというふうに考えておりますので、そういった関係行政機関の長との協議をしっかりと行っていかなければいけない。及び、その地域の都道府県知事の意見を求めるとともに、これは地域の労働政策審議会、そういったところの意見というものもその中でしっかりと聞いていかなければいけないという形の規定を設けさせていただいているということでございます。

三井委員 ありがとうございます。

 次に、今回のこの基本法案についてでございますが、政府との大きな違いというのは、この雇用対策法制の中で、第十七条の公正な働き方の確保の部分かなと思いますが、特にこの第二項の、具体的にはどのような施策を想定しているのか、お尋ねしたいと思います。

大島(敦)議員 三井委員にお答えをさせていただく前に、先ほど園田委員から、この基本計画についてのお話がございました。

 私どもが考えたのは、経済財政諮問会議の中に常任の委員として厚生労働大臣が入っていれば、これは政府側の答弁というのもわからないことはないわけなんですけれども、経済財政諮問会議の常任の委員ではなくて、その都度、案件があったときには呼ばれる委員という発言のされ方なものですから、雇用のあり方、特に時代の転換期としての雇用のあり方を考えた場合には、国として雇用政策をしっかりと閣議決定をして位置づけることが必要だという思いで、この雇用基本計画を立てさせていただいております。

 今、三井委員からお話がありました点につきまして、これは先ほど述べました契約社員のあり方についての見直しをするべきではないかなという立場に立っております。

 特に、有期労働契約の位置づけでは、これは、例えば、アメリカの市場のように解雇規制が存在せず、期間の定めがなければいつでも使用者の随意に雇用を終了し得るものであれば、有期労働契約は少なくとも期間満了までは一応雇用が保障されることになり、意外と望ましい雇用形態になります。それに対して、ヨーロッパの労働市場のように解雇規制が存在し、期間の定めがなければ原則として雇用の終了が制限されるのであれば、有期労働契約は期間の満了によって雇用関係が自動的に終了してしまうことになり、労働者にとってより不利な雇用形態ということになります。

 我が日本の有期雇用のあり方についての見直しをすべきだという点におきまして、日本におきましては契約の期間の定めのある労働契約の締結それ自体を制限する立法はなく、期間の上限は特別な場合を除き三年となっております。また、反復更新が続いて、実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態になっている場合や、当初から契約期間の満了によって契約が終了することが予定されておらず、契約の更新が期待されているものの、安易な雇用調整を目的として短期の契約期間を定め、いつでも解雇あるいは雇用を切れる状態にしておくという場合も広く見られております。

 このように、契約期間の定めのある労働契約を結んで働く契約社員やパート社員、アルバイトといった方々の多くが不安定な雇用状態にあり、本法案が基本理念として掲げる「すべての労働者が、公正な労働条件の下、人としての尊厳を重んじられ、安心して働くことができる環境」とは相入れない状態にあります。また、労働者が「その働き方を多様な就労形態の中から主体的に選択することができる」という当事者間の対等性からも遠い状況にあります。

 そこで、民主党案の第十七条第二項におきましては、契約期間を定めて雇用される者の雇用の安定を図るため必要な施策を講ずることを定めております。具体的には、現在策定中の労働契約法案において、期間の定めのある雇用契約は、期間の定めをすることに合理性があるものに限定することを想定しているところであります。

 以上であります。

三井委員 ありがとうございます。

 かつては、高度成長期のときは、自分は中流だと考える方が国民の九割方ぐらいいらしたわけでございますけれども、しかし、この五年間で、まさに一握りの富裕層と、また大部分の低所得層の格差がますます広がる。そういう中で少子化対策が叫ばれているわけですけれども、なかなか、今の所得からいっても、ある統計によりますと、男性は年収が四百万を超えないと結婚しないという統計もあります。このように格差が大きく、所得の格差というのがやはり少子化にも影響しているのかな、こういうぐあいに考えるわけでございます。

 次に、十七条の第四項について、具体的にどのような施策を想定されているのか、お聞かせ願いたいと思います。

大島(敦)議員 三井委員にお答えをさせていただきます。

 先ほど三井委員から、年収が四百万、大体三十代ぐらいだと思うんですけれども、四百万円を超えないと、男性の方はなかなか結婚しづらいというのがありまして、先日も二十代向けの女性週刊誌を読んでいて、結婚の特集というのがありました。千人の二十代の女性の方に聞いたら、大体少なくとも三百万から四百万円程度の年収がないと結婚したくないという統計がありまして、そこにおいては、今派遣社員の方あるいは契約社員の方の年収は大体二百万から二百五十万ぐらいだと私は聞いております。関西の大きな鉄道会社に、結構難しい試験を通った私の知り合いも、三十代の前半で二百五十万と聞いております。それでは、結婚もなかなか難しい。したがいまして、派遣労働のあり方について、この四項において検討すべきということを明記させていただいております。

 第十七条第四項におきましては、一般労働者派遣事業についてその見直しを提起しております。御承知のとおり、労働者派遣法は、労働者派遣を業として行うことを一定の要件のもとで認めておりますが、派遣労働者を常用雇用しつつ、企業の注文に応じて彼らを派遣するタイプの事業である特定労働者派遣事業と、派遣労働者を登録しておいて、注文の都度雇用契約を結んで派遣するタイプの事業であることが多い一般労働者派遣事業の二つに大別をされます。

 日本におきましては、労働者派遣法を規制緩和の名のもとに、平成十五年、それまでの労働者派遣の対象業務から除外していた物の製造業務を対象業務に広げました。派遣社員というと、華やかなテレビコマーシャルに象徴されるように洗練された働き方という印象がありますが、実態はそうばかりとは言えません。

 私どもは、労働者派遣登録者の置かれた不安定な状況は解消する必要があり、労働者派遣とは何かという原点に、この原点というのは、常用雇用の代替にならないという原点に立ち返り、労働者派遣を常用雇用に特化する方向で根本的に見直す時期に来ていると考えております。具体的には、一定の労働者派遣期間を超えたら派遣会社が登録者を正社員として雇った上で派遣するということも考えられる、検討をする必要があるのかなと考えております。

 私どもは、雇用形態の違いによって賃金や労働条件が著しく異なるのではなく、同じ価値の仕事をすれば仕事に応じた賃金を得られるような均等待遇を確保していきたいですし、だれでも約束を守り一生懸命働けば安心して暮らすことのできる年収を確保できるようにしていきたいと考えております。

 以上です。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

三井委員 ありがとうございます。

 それでは、時間もございませんので、次に、先ほども出てまいりましたが、十九条にあるワークライフバランスについての趣旨説明をお願いいたします。

園田(康)議員 ありがとうございます。

 第十九条にワークライフバランスということで規定をさせていただきました。

 このワークライフバランスの定義につきましては、「仕事と育児、介護等の家庭生活、修学、社会的活動への参加等の社会生活その他の生活の適切な調和」という形で今回明確にさせていただいているわけでありますけれども、先般、大臣も御答弁をしていただきましたこのワークライフバランスという概念は、大変、その重要性というものは、私たち、この委員の中でも皆さん方共有をしていただいているというふうに思っておったわけであります。さらに、経済財政諮問会議などの労働市場調査会、この中でもこのワークライフバランス憲章というものを策定しなければいけないというふうに提言をされていた。にもかかわらず、にもかかわらずでありますけれども、残念ながら、今回の政府案にはそのワークライフバランスのかけらも見当たらないというところは、少し私は残念な気がいたしました。

 したがいまして、我が民主党では、これを先進的に、やはりこれからの雇用の新しいモデルというものをしっかりと国民の皆さんにお示しをしていく必要があるのではないかというところの観点から、今回この規定を設けさせていただいたわけであります。

 当然ながら、労働者一人一人の人生を通じて確保されなければならないという位置づけのもとでこのワークライフバランスというものがあり、また、働く人というものは労働者とともに社会の構成員という概念の中、仕事とともに家庭の責任を果たし、自己啓発にいそしんで、趣味や地域活動といったものもさらにこの中で楽しんでいただきながら休養というものを通じて英気を養う、こういった個々の意識のニーズというものに合わせたこれからの雇用モデルというものが、やはり人生の各段階においては必要になってくるのかなというふうに思っておるところでございます。

 そういった意味で、今回この規定を明確にさせていただいたということでございます。

三井委員 ぜひ、国民の皆さんに民主党の法案については大いに宣伝をしていただきたい、このように思います。

 時間がございませんので、次に、民主党案において、外国人の労働者の雇用に関しては政府案とはどのように違うのか、お答え願いたいと思います。

園田(康)議員 御指摘をいただきました十六条の一項で、私ども民主党案は、我が国の産業の国際競争力の強化等によって経済社会の活力の向上を図るためということで、高度な専門的な知識または技術を有する外国人の労働者の受け入れの促進、専門的な知識または技術を有する外国人留学生の我が国における就職に関する支援の拡充その他の必要な施策を講ずることというふうにさせていただいております。この点につきましては、政府案と同類でございますけれども、違う点と申し上げますと、その二項と三項という形あるいは四項という形になってくるのかなというふうに思っております。

 すなわち、働く人すべてにとりまして公正な社会を実現するため、外国人労働者の労働条件の改善、そして外国人労働者の子供に対する支援、教育の充実といったものもあわせて行う必要があるというふうに私どもは考えております。したがって、外国人労働者が日常生活、その地域での生活というところの社会生活の円滑な営みというものを行うために必要な情報の提供及び助言等のものを法案に明記したという形でございます。

 また、さらに、四項におきましては、さまざまな、今少し地域で問題等が出ているところでありますけれども、研修生と技能実習生、これに関しても、その運用の改善を図るであるとか、あるいは違法行為に対する監督強化というものの必要性というものもあわせてこの法案の中に盛り込ませていただいたということでございます。

三井委員 最後に、雇用基本法案の第九条において、若年者への就業支援を挙げておりますけれども、第十五条における職業能力開発の促進、その具体的な施策についてお聞かせ願いたいと思います。

 今回、若年者の就業支援法案を提出しているわけでございますけれども、若年者の労働力の現状の問題点とかあるいは将来像について、簡単に民主党のお考えを聞かせていただきたいと思います。

大島(敦)議員 今問題となっている二十代、三十代の若年労働者ですけれども、今後、団塊の世代が定年退職を迎えていきますと、労働の需給はタイトになってきますから、意欲のある若者は多分就職は容易になってくると思います。

 自分でみずから職業訓練を受け、そして自分で働く気がある若者は、正社員化、正社員として雇用される者がふえてくると思いまして、それに対する後ろ盾あるいは支えていきたいという思いと、もう一つは、今の日本の労働市場の中で私が一番問題だと思っているのは、基礎的な能力に欠けた人たちが非常にふえてきているなと思うんです。

 よく言われている報告、連絡、相談、ホウレンソウにしても、なかなかそのホウレンソウができない方、コミュニケーション能力がなかなか整っていない方が今ふえてきたり、あるいは、九時に会社に来てほしいといっても、なかなか毎日毎日九時にしっかり会社に出社するということも、物すごく大切なことなんですけれども、できていない方も多くなっているわけなんです。

 そこで、私たちとしては、基礎的な能力、若者たちに、今言っていたホウレンソウも含めて、九時から五時までしっかりと働いていただくような基礎的能力をつけてもらうために、そこに国の経営資源は重点的に配分すべきだと考えておりまして、今回の九条の中でも、第三項におきまして、「基礎的能力を含めた職業能力の開発及び向上」ということで、労働能力の中でも基礎的能力に重点を置いているという考え方をさせていただいております。

 そして、今回の民主党の雇用基本法案においては、若年者の雇用の安定を図るために、正社員としての雇用を進めること、学校や産業界、地域社会、民間団体等が連携して職業教育、職業訓練、就業の相談等を行う体制を整備すること、職業能力を身につけるための相談や情報提供、指導、助言を実施すること、若者の能力を正当に評価するための実践的な職業能力評価を行うことを明記しておりまして、できるだけ底上げを図りたいと考えております。

 最後になりますけれども、最近、大手の流通関係の会社を中心として、契約社員あるいはパート社員、アルバイト社員を正社員として雇用する動きが強くなってきておりまして、これは、正社員化による雇用の安定がもたらす業績へのプラス評価を評価したと考えておりまして、この点におきましてもできるだけ安定雇用に心がけていきたいと考えております。

 以上で答弁を終わります。ありがとうございました。

三井委員 ありがとうございました。民主党案はすばらしい法案だということがよくわかりました。

 どうもありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、民主党提出の法案について若干の質問をさせていただきますが、先ほど来のようでありますと、とても時間が足りませんので、答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。

 まず、労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律案についてでございますが、政府の現行指針では、年齢差別禁止における十の除外項目の中に、新規学卒者等を募集及び採用する場合というふうにありますけれども、民主案では、法定している四項目にはこれは入っておりません。新卒一括採用については完全になくすという意味でしょうか。

加藤(公)議員 できるだけ簡潔にお答えしたいと思いますが、私どもが考えておりますのは、新規一括採用と今おっしゃった中のその新規学卒者だけに限定をして募集、採用するということは間接差別に当たる可能性が極めて高いという考え方から、それは例外規定に盛り込みませんでした。ただし、新規一括採用という雇用慣行は、そもそも長期雇用を前提とした未経験者の方を事業年度のあるタイミングで同時に入職をしていただくという考え方でありますから、その制度自体を否定するというつもりは毛頭ございません。

高橋委員 慣行はそもそも否定しないというお話でございました。それは賛同するものでありますけれども、ただ、この間の議論を聞いておりますと、提出者は、やはり限定列挙と例示列挙の問題で厳しく政府に対して追及をしているわけです。そうすると、今回は四項目で限定列挙されているわけですから、新規学卒者などを中心とした採用については、これは義務違反になるのではないかと思いますが、いかがですか。

加藤(公)議員 今申し上げたとおり、新規学卒者のみに限定をした採用は例外規定に盛り込んでおりませんので、それはできない、こういう考え方であります。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

高橋委員 そうすると、やはり私は、この問題、先ほど慣行は否定しないとおっしゃいましたけれども、できないということでしたので、ちょっとやはり異論を持っているものであります。

 新卒の採用について私が非常にこだわりを持っていますのは、私自身が実は私立高校に七年間勤めて進路指導を担当しておりました。八〇年代半ばでしたので、当時は山のような求人票と毎日格闘して、職種別の仕分けに追われました。文字どおり生徒一人一人が何が自分に向いているか、あるいは何をやりたいかを考えて、また私自身もそれを引き出すために向き合ってきたわけであります。初めて社会に出る学生が、学校では基本的な知識を学び、また進路指導も受けながら春には巣立っていく、そういう新卒採用の流れは私はあってしかるべきだと考えております。もちろん、そのために既卒者が門戸を閉ざされても構わないと言っているのではございません。

 平成十八年度版国民生活白書、「若年者の適職探しをめぐる壁」によりますと、「新卒一括採用慣行は、「適職探し」という観点からは功罪の両面がある。人々は原則として一生に一回しか「新卒」となれない。企業の採用が新卒に過度に偏っていると、新卒のときに不本意な就職をした若年者が捲土重来を期そうとしても、中途採用枠が限定されているためにそれが困難となってしまう。」と分析をしています。

 そこで、端的に厚労省に伺います。

 現行の年齢指針には、新規学卒者等について、特定の年齢層を採用するための募集、採用を行うことについて、例外的に年齢制限が認められています。しかし、ここで言う年齢制限とは新規学卒者に限定した募集をすることではないと説明をされております。つまりは、新卒者のみとして採用することや、あるいは新卒者と同じ年齢、つまり現役の新卒者、十八歳以下よとか、二十一、二歳以下よというふうに決めて採用することはやはり年齢差別に当たると解釈してよろしいですね。

岡崎政府参考人 現行の年齢指針でございますが、新規学卒者等である特定の年齢層でございますので、新規学卒者のみという場合もあるでしょうし、そうではなくて、もう少し幅広く、若干既卒者を含めたような方を含める場合もあり得ると。いずれにしましても、長期勤続によるキャリア形成を図る観点からそういう募集をする場合には、これは例外として認める、こういうことでございます。

高橋委員 今のお答えは、新規学卒者だけでもよしとするというふうな表現だったと思うんですけれども、しかし、私が今読み上げた部分は、今、現行ある年齢指針のところでありまして、当然今後はそこを含むんだ、いわゆる卒業してたった一年しかたっていない就職浪人生だとかそういう人たちが、さっき読み上げた白書のようにチャンスはもう得られないということがないように、今後は指針に盛り込むなりやっていくんだというつもりでいるのかどうか、伺います。

岡崎政府参考人 新たな法律の場合には省令で書くわけでございますが、その際には、我が国のいろいろな現在の雇用慣行や雇用情勢、そういったものを踏まえながら考えていく。それからもう一つ、若年者の雇用機会の拡大のための指針も予定しておりますので、その両者相まった形の中で今御指摘のような問題についても対応していくということを考えていきたいというふうに考えております。

高橋委員 よろしくお願いしたいと思います。

 独立行政法人労働政策研究・研修機構、第二新卒者の採用実態調査、〇五年によれば、第二新卒者というのは、学校卒業後おおむね三年以内の者を言うようでありますけれども、この第二新卒者を新卒と同じ枠で採用対象とした企業は二二・四%しかありませんけれども、中途などで採用対象とした企業が三三・六%、あるいは採用対象なし企業は四四%まだございます。私は、ここのところがやはり区別なく、第二新卒者が差別されないようにしていくことがまず最初の大きな一歩であるだろう、このように思っております。そのことを強く求めていきたい。

 続けますけれども、同時に白書はこうも言っております。「中途採用の割合が増加すると、それは適職探しのための再就職の機会を増やすが、そのために新卒採用が減少するのであれば、就職できなかったり意に反してパート・アルバイトとなったりする若年者が増えてしまう。」

 つまり、先ほどの、新卒は人生で一回、そのことを考えたときに、いきなりハローワークの求職者と同じ競争の中に投げ込まれる、あるいは新卒者が新たに不安定雇用に流れ込むということはやはりあってはならないのだろう。だから、一定、この新卒採用の慣行というシステムはやはり維持するべきだと私は思いますけれども、この点、大臣の見解を伺います。

柳澤国務大臣 最近の若者の就業あるいは入職の状況を見ますと、学校を卒業するまでに職業生活を選択する気構えと申しますか、あるいは自分の職業能力の醸成というものが間に合わない、そういうようなことでモラトリアム的に何かフリーターみたいなところに就職するというようなことが多くて、それでも今までのところは親のもとで生活が可能だというような形のものが見られるようなことになったわけですけれども、やはり私は、かつての高橋先生のような方が、熱心に学生のあるいは生徒の進路の相談によく乗っていただいて、そうして本当に学窓から巣立つときに自分のしっかりした職業観あるいは職業選択の目を持って、新鮮な気持ちで社会人として巣立っていく、そういう日本の慣行というのは私は重要視されるべきである、このように考えております。

 私どもは、基本のところは、そのことを今回の年齢差別禁止の条項の中でも、一つのしっかりした慣行尊重の立場に立った規定を、省令でもって定めてまいりたい、このように考えております。

高橋委員 前段の、モラトリアムが今どき出てきたのに正直ちょっと驚いておりますけれども、青年が職につけない事情にはいろいろなことがございますので、モラトリアムでフリーターに就職することが云々という御認識はいかがなものかなということをちょっと考えているわけです。

 ただ、後段におっしゃっていただいたように、やはり初めて社会に出るときに、むしろ社会人としての十分な基礎的な知識を積んで、ガイダンスを受けて社会に入っていくということを支援するというシステムをしっかり持っていくということは、やはり私は大事なんだろうということを重ねてお話をしたいと思うんですね。

 問題は、前にも私、本委員会で指摘したことがありますけれども、いつ経験を積めばいいのというフリーターの悲鳴であります。新卒を採用し、職業訓練もしながら長期にキャリア形成をしていこうという企業の思惑と、即戦力のある人材を中途で採用したいという思惑の二極化の中で、キャリア形成をするチャンスが得られなかった、パートやアルバイトなどの経験しか積めなかった若年者がこぼれてしまう、ここをどうするのかというのが最大の課題であろう。これは多分、年齢制限を取り払うだけでは解決しないと思うんですね。それは働き方の問題をやはり大もとから変えていくということ、もちろん公的職業訓練も必要だし、そういういろいろな総合的な対策が必要だろう。

 民主案では、そこに着目した特別措置法も出されているわけですが、ここも大変簡潔にお願いしたいんですけれども、若年者等職業カウンセラーを配置して、個別就業支援計画の作成などマンツーマンの指導をするとありますけれども、その際にも、やはりハローワークの職員の増員、体制強化は不可欠と思いますが、どの程度ふやすと考えておられますか。

山井議員 高橋委員、御質問ありがとうございます。また、ロストジェネレーションの若い世代のパートやアルバイトの方々を安定雇用するため、そのために国を挙げて取り組むという民主党の若年者就労支援法案に賛成の意を示してくださっていることにも感謝申し上げます。

 御質問にお答えいたします。

 若年者等職業カウンセラーは公共職業安定所に置くこととし、一定の要件を満たす若年者等に対して、個別就業支援計画を作成し、同計画に基づいて職業指導、職業紹介を行うなど、幾つかのステップを踏んできめ細やかな支援を実施していくこととしております。

 その数についてのお問い合わせがございました。

 対象若年者等のうち、個別就業支援計画を作成する者が総数で約五十万人、一年当たりで約十万人と想定しております。そして、カウンセラーは一人当たり二十人の対象若年者等を担当し、一年間で延べ六十人の若年者等を担当することを想定しております。したがいまして、人数につきましては、カウンセラーは総数で約千七百人と想定しております。既存のハローワークの職員や団塊世代の退職者を活用するとともに、厚生労働省においては、平成十四年度から五年間で五万人のキャリアコンサルタントを養成することとされており、必要な人数の確保が可能であると考えております。

 また、資格についてもお問い合わせがありました。

 これについては、カウンセラーはその職務を行うのに必要な熱意及び能力を有する者でなくてはならず、また、多様な人材を確保することとしております。例えば、若年世代で引きこもりなどを経験したことのある者、一般企業で人事などを経験した退職者等、コミュニケーション能力にたけた人の力を幅広く積極的に求めていくことが必要であると考えております。

 実際の支援の場面においては、忍耐強く対象若年者等を励まし支える熱意が求められると同時に、雇用や職業についての幅広い知識や、対象者が相談しやすい寛容さ、客観的に対象者を判断できる能力、さらには信頼性や協調性といった人柄も含めた能力が求められると考えております。そのため、法案におきましては、カウンセラーの資質の向上を図るため必要な研修を受けなければならないことも規定しております。

 以上でございます。

高橋委員 そうおっしゃる以上は、ハローワークの民間開放などが今議論されておりますが、やはり公的機関として維持していくということで、御一緒に頑張っていただきたいと思います。

 最後に大臣に伺いたいと思うんですけれども、経団連が四月十七日に提言を出しておりますけれども、例えば、トライアル雇用を現行の三カ月から一年程度に延長せよ、あるいは紹介予定派遣を現行で最長六カ月という期間を一年に延長せよ、こうした提言をしております。

 私は、これらは企業にとって都合のいい人材を安上がりでかつリスクの少ないお試し雇用で確保することをねらいとするものだと考えます。こうした制度の期限を延長することは、長期に若年者を不安定な雇用に置くことにつながり、安易に期限を区切った雇用につながること、今回の若年者対策でそういうことに対しても規制をするべきだと思いますけれども、見解を伺います。

柳澤国務大臣 トライアル雇用また紹介派遣雇用につきまして、現行の期限を延長すべしとの提案があったという御指摘をいただいたわけでございますが、私ども、現段階においてそのような措置をとるという考え方を持っておりません。

高橋委員 終わります。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、本日の細川委員と政府答弁者の質疑を聞きながら、我が国は本当にこれで、外国の方々が働きやすい、そして人権が守られた国としてこれからの二十一世紀を生きていけるのかどうか大変不安に思いました。

 冒頭、柳澤大臣に確認の御答弁をいただきたいと思いますが、実は、四月二十日、私どもの日森文尋が質疑させていただきました在日外国人の届け出の問題に関しまして、一言の御答弁で結構です、届け出を必要とする永住者の中には特別永住者の皆さんは含まれていないという厚生労働省の方針ですね、お願いします。

柳澤国務大臣 仰せのとおり、含まれておりません。

阿部(知)委員 含まれておらないからいいかどうか、もちろんいいと思いますが、しかし、それにしても問題が多うございます。実は、この届け出ということをめぐりましては、いわゆる当事者、個人情報の保有者である外国人の方が、自分にかかわります情報がどのように行政機関に把握されておるかということにおいて、二つの点で大きな問題がありますので、これは安定局長の方に伺います。

 事業主がどんな届け出を行ったかということについて、当事者、外国人の方が知りたいと思ったとき、開示請求権がございます、あるいは訂正権、違うよということを言う権利がございますが、これについては十分保障されているのですね、いかがですか。

高橋(満)政府参考人 今回の雇用状況報告制度によりまして取得した情報につきましては、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、これの対象となるものでございます。したがいまして、この取得した個人情報につきまして外国人労働者御本人から開示請求あるいは訂正請求がありました場合には、同法の規定に基づいて適切に対応をしてまいりたいと考えております。

阿部(知)委員 まあ当然過ぎるほど当然なことであります。個人の情報でありますから。

 そして、もう一つ質問があります。先ほど来、厚生省と法務省の間でどんな情報が行き来するかということで細川委員が御質疑されておりましたが、いわゆる職業安定所が保有する情報のどの部分が法務省に行ったのかということを、情報の当事者である外国人の方には通知されるんでしょうか、いかがですか。

高橋(満)政府参考人 今回の法案の第二十九条にございます法務省への情報提供につきまして、私ども、外国人労働者のプライバシー面にも十分配慮しながら、この規定の範囲内での合理的な情報提供となるよう適切に対応する考えでございますし、また、今御答弁させていただきましたとおり、開示請求、訂正請求につきましても、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づいて適切に対応することといたしておるわけでございます。

 そういう意味で、この外国人雇用状況報告制度により取得いたしました外国人の個人情報につきましては、あくまでも、こうした配慮を加えた上で保有、活用されるものであるというふうに考えているわけでございまして、今御指摘ありました、法務省に情報提供した旨の通知でありますとか提供した事項についての通知につきましては、現在、外国人本人に対しての通知については考えてはおりません。

阿部(知)委員 それが最もおかしいと思うのですね。自分にかかわります情報が行政機関の中で行き来して、本人は知らない。だれの情報なんですか。

 やはり、そこはきっちりと通知すべきではありませんか。大臣、どうですか。

柳澤国務大臣 先ほど職業安定局長からお答え申し上げましたとおりでございます。外国人本人からの開示請求や訂正請求につきましても、個人情報保護に関する法律に基づいて適切に処理をするということでございます。

 そうした配慮を加えた上で、行政庁内部で、行政機関の間での情報提供につきましては、本法、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律でも、本人への通知を求めるというものになっておりませんので、そうしたことも勘案して、我々は、あくまでも運用に当たってはプライバシー等の重要性にかんがみまして運用をするつもりでございますけれども、今の御提起された、本人への通知ということは考えておりません。

阿部(知)委員 本当にそれはひどいことなんだと思いますね。その本人にとってのプライバシー権や自己情報のコントロール権というものが全くそれでは担保されないわけです。そういう法律を、こういう枠組みの中で勝手に乗り越えてつくろうとすること自体、私はこの法案の最大の問題点だと思います。

 引き続いて他の質問に移らせていただきます。

 いわゆる障害者雇用政策について、先ほども御質疑がありましたが、神戸市内の小規模作業所の利用者に対して、いわゆる労働基準法に認められるところの最低賃金法にのっとっていないということで、労働基準監督署の方から改善指導を検討しているということが報道されています。私は、この報道に接したときに、ちょうど医療現場で起こるさまざまな事故などの問題が、例えば検察、警察等々の介入によって、非常に現場にいろいろな混乱をもたらすことと同じような問題をここに見ました。

 現在、厚生労働省は、果たして小規模作業所や更生施設でどんな就労やあるいは福祉的援助の実態があるか、すなわち、小規模作業所では最低賃金として保障したくてもできないような現状があるかもしれませんし、また、一部の作業所では、当然普通の就労と同じことをしていながら最低賃金にも満たない額を働いている方にお支払いしているという実態もあると思うんです。こうした現状を放置している厚生労働省行政、すなわち、今まで、労働分野と福祉分野が合体して厚生労働省となったわけです。また、障害者雇用政策については、この間自立支援法の討議等でも十分問題にされてまいりました。

 大臣は、このたび、こういう労働基準監督署が指摘し指導するというような形で露見した実態について、もっと厚生労働省が本質的に、本来的に監督省庁として実態を把握すべきと思いますが、いかがですか。

柳澤国務大臣 一般的に、小規模作業所等施設における作業員の労働者性というものを、もっと関心を持って、これに必要な調査あるいは行政的なもろもろの措置を講ずる対象にすべきだ、つまり、労働者性のあった場合には、それをしっかり労働行政の観点で監視あるいは監督すべきだというお話でございます。

 このことは、一般論としては私もそのとおりだというふうに思っておりまして、労働者性と申しますか、使用従属性の有無によりまして、労基法の上で言う労働者であるかということを判断して、労基法の労働者性があると判断された場合には、必要な指導を厳に行うように努めておりますし、今後とも行ってまいりたい、このように考えます。

阿部(知)委員 この問題は、実は、昭和二十六年に出された厚生省発令の省令等々によってしか対処されていないわけです。自来、いろいろな国際的な取り組みがありました。例えばILOの百五十九号条約とか、また、近々日本は障害者の権利条約を批准しようとしています。

 大臣は今、労働者性の問題云々とおっしゃいましたが、障害のある方にとって、労働者性の問題と同時に、福祉的援助は相並立して必要なものであります。大臣、例えば障害のある人が、自分が就労するためのその通勤に対して、今どんな援助があるとお考えでしょうか。

 例えば、障害者自立支援法の言うところの地域生活支援事業では、労働者として障害のある人が働こうと思って会社に行くまでの通勤の補助、ガイドヘルプはつけられません。障害者が地域で暮らす地域生活支援のものだったらいいよと。仕事をしていただくように、もっと就労していただくようにという法律を一方でつくりながら、実際には就労のためのガイドヘルプには使えない。こんなちぐはぐなことをしていたら、ここからは就労、ここからは福祉、ぱつんと切ってやっていたのでは、現実に障害のある人の就労の道は狭められます。

 この点について、どのように対処されようとしているのか、事務方からお願いします。

岡崎政府参考人 通勤につきましては、基本的には企業が配慮していくという中での、企業に対しての支援は雇用政策の中でやっているということでございます。

 企業の配慮の中で足りない部分で、では福祉的施策の中でどうするかということだろうというふうに思いますが、これにつきましては、今先生御指摘の、地域の支援事業の中で、各市町村が、企業におきます実態等も踏まえながら、地域の中でそれぞれ判断して事業としてやっていただく、こういうことになろうかというふうに考えております。

阿部(知)委員 そんなに簡単に企業と地域と分けられないんです。毎日の通勤なんですよ。毎日行くのに必要なんですね。企業の方にそれだけ十分な補助なり支援なりがおりているのか。あるいは地域生活事業の中でそれが現実に使えるのか。使えないんですね。だから、障害者は就労したくたってできない、本当に苦しい状況にあります。

 大臣、お伺いいたします。

 厚生労働科学研究において、平成十五年度のものですが、そのような実態に対して、これからは社会的に支援をするような雇用、社会支援雇用といいます。これは、労働実態と福祉のサポートをあわせ持つような、他の言い方ですると、保護雇用という名で呼ぶ国もあります。そういう、一人の障害者が労働者として持つ能力が、例えば通常の三分の一なり四分の一なり半分なりで、サポートを必要とする部分の福祉的な援助もあわせ兼ねないと就労がまかり通らないということについて、諸外国は皆支援をしながら、社会的な支援雇用あるいは保護雇用という制度をとっているわけです。

 我が国も、せっかく労働科学研究の中でこれを一つテーマとして挙げました。これから、大臣として、ぜひ障害のある方の雇用を促進するという意味で、何がハードルで、そしてまた支援せねばならないものは何であるのかを確定し、もっと就労率を破格に上げていくために、一・八%とか、諸外国では全く違います。五から七%等々が就労の実態です。そこには社会的な支援雇用があるからです。こういう日本版の保護雇用制度あるいは社会的支援雇用制度について、研究班を立ち上げるなり、研究班というよりは有識者会議、審議会等々をお持ちになるお考えはないのか、最後にお伺いいたします。

柳澤国務大臣 福祉と雇用の兼ね合いというものをうまく調整した保護雇用という制度もあるのではないかという御指摘でございます。

 我々は、国によってさまざまな取り組みがあるというふうに考えておりますけれども、これはやや中期的な課題として取り組むべきテーマかというふうに思いますので、また、そうした今委員が示唆されたような有識者の方々に相談を投げかける、そういう機会も持ってまいりたい、このように考えます。

阿部(知)委員 日本の社会の構造改革のためにも、ぜひ早急にやっていただきたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。

櫻田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 前回の質疑に引き続きまして質問させていただきます。

 まずは、外国人労働者問題についてお伺いをしたいと思います。

 今回、専門的知識、そして技術を有する外国人の就業を促進する、こういうことが第四条で規定されております。これは、在留が可能な外国人の範囲が変わるということではないというふうに理解をしておりますけれども、まず、そのような理解でよろしいのか確認をしたいというのが一点と、その上で、現在我が国で働いております外国人について、特に日系人等の定住外国人が、言語の問題ですとか子供の教育、あるいは地域社会との摩擦といったことも含めて、さまざまな生活面、そして労働面での問題を抱えつつ生活している場合が少なくないんだというふうに聞いております。こうした事態を放置することというのは、我が国の社会において格差が生まれてしまうことになりかねないわけでございます。

 今回のこの改正、特に政府案におきまして、外国人労働者に関する規定を設けているというふうに思いますけれども、この外国人の適正な就労、安定した雇用の促進といったことについて、どのように取り組まれていくのか、お答えをいただけますでしょうか。

岡崎政府参考人 第一点目につきましては、先生御指摘のとおりでございまして、現在の在留資格の中で、さまざまな専門的知識、技術を持っている方が働ける。そういう方々につきまして、就業を促進していく、あるいは能力が生かされるような形の基盤の整備を図っていきたい、こういうふうに考えているということであります。

 それから、御指摘の日系人等の定住者、永住者の方々につきましては、生活者として見た場合を含めた種々の問題があるということは認識しておりまして、これは厚生労働省だけではなくて、政府全般、教育とかいろいろな部分にかかわりますので、これは、政府全体としても、生活者としての外国人の総合策ということで昨年まとめたところでありますが、厚生労働省におきましても、その一環として、雇用の部分、あるいは社会保険の部分等々、適切に対応していきたいというふうに思います。

 私どもは、今回、外国人の雇用状況報告制度等も設けることにしておりますが、そういう中で、それぞれどういう形で働いているかということも把握しながら、それの中で適切な企業における雇用管理がなされるようにする、あるいは、場合によっては離職された場合の再就職の支援、これはハローワーク等々でやっていくというようなことで、いずれにしましても、外国人の方が、現行の在留資格制度の中でできるだけ能力を発揮して、かつ、より適切な雇用環境のもとで働いていけるような努力をしていきたい、こういうふうに考えているということでございます。

糸川委員 では、今回の改正において盛り込まれました外国人雇用状況報告の義務化についてお尋ねします。

 これは、外国人の適切な就労、そして安定した雇用の促進、こういう観点からも、ある程度、必要性、これも理解できるわけでございますけれども、ただ、一方で、外国人を雇用する事業主は、特に中小企業主も多いのではないかなというふうに思うわけです。そうしますと、この報告のための事務負担、これが過大になってしまうのではないかという懸念もございますけれども、厚労省において事業主の負担軽減、これをどのように図っていくおつもりなのか、お答えいただけますでしょうか。

岡崎政府参考人 この届け出につきましては、事業主の方の負担も考えまして、基本的には、雇用保険の被保険者資格の得喪届とともに出していただくような形で考えていきたい。それから、雇用保険の被保険者資格の対象にならない、要するに雇用保険の届け出のない方につきましては、短期間で雇われる方等でございますが、毎度毎度ということではなくて、ある程度期間を定めて定期的に報告していただくというようなことにするなど、負担の面については十分配慮した形にしていきたい、こういうふうに考えております。

糸川委員 中小企業の雇用面というのが非常に厳しいものがありますので、事務の負担というのでしょうか、そういうことをなるべく軽減していただきたいなというふうに思っております。

 それでは、大臣にお尋ねをいたしますけれども、地域雇用の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 法案の提案理由説明にもございましたけれども、雇用情勢、これは全般的には改善しているのかなというふうな中で、地域によっては改善におくれが見られるわけでございます。そして、依然として大変厳しいという地域もあるわけでございます。この雇用情勢が大変厳しい地域における雇用対策について、現状、どのように大臣が取り組んでいらっしゃるのか、そして、今回のこの改正を踏まえて、今後どのように取り組まれていくおつもりなのか、現状の認識と、そして今後の取り組みについてお答えいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 雇用情勢につきましては、今委員御指摘のように、全体としては改善が見られるというふうに考えておりますけれども、地域格差と申しますか、地域によっては改善がおくれているということが認識されていることは御指摘のとおりでございます。

 この雇用情勢が厳しい地域に対しまして、従来より、地域雇用開発促進法に基づきまして支援を行っているわけでございますけれども、近時、特に雇用改善の動きが弱い七道県につきましては、昨年度から地域雇用戦略会議、これは県でありますとか市町村、あるいは地元の経済団体、それから出先の道県の労働局、経済産業局といった方から成る会議を設置、開催すると同時に、そういう中から地域提案型の雇用創造促進事業を立ち上げることを促進するなどして、これに対して支援を重点的に行っている、こういう取り組みをいたしているところでございます。

 しかしながら、今回、この地域雇用開発促進法の改正の機会に現行法を改定いたしまして、これまでやや広範な地域類型を取り込んできたところを、二類型ということで絞り込みまして、雇用情勢の厳しい地域に、より重点的な支援を行いたい、このように考えて御提案を申し上げている次第でございます。

 具体的に申しますと、雇用情勢が特に厳しい地域ということで、雇用開発促進地域とそれを名づけまして、これは従来同様でございますけれども、事業所の設置整備に伴って雇い入れ等が行われる場合の事業主を助成する、こういう手だてを講じております。それから、今回つくりましたのが、自発雇用創造地域でございまして、これは地域の協議会、市町村、事業主団体等で構成される協議会がいろいろ御検討の上提案される事業、これを都道府県あるいは厚生労働省におきまして手続的に認証しまして、その事業を委託する形で支援する、かなり金額的にも多額の支援をするというスキームでございますが、そういうことを現在盛り込んでいるところでございます。そうしたことで、地域の自発的な雇用というものを創造してもらうという活動を活性化していきたい。

 これには政府全体で取り組むということも考えておりますので、法文上も、地域再生事業と絡める、あるいは、産業集積等をして経済全体を活性化するといったような事業についても絡めるということもうたわせていただいている次第でございます。

糸川委員 大臣、非常に長い御答弁で、私の質疑時間が終わってしまったわけです。

 大臣、私の地元は福井でして、雇用状態は悪くはないんですけれども、そういう地域であっても、それなりの課題があるわけです。特に中小企業の人手不足とか人材の確保ということが課題になっておりますので、しっかりその辺も見ていただいて、取り組んでいただきたいなと思います。

 ありがとうございました。終わります。

櫻田委員長 この際、細川律夫君の残余の質疑を許します。細川律夫君。

細川委員 残り時間は九分ということですので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

 永住者に関して、成り済ましで摘発された数、どれくらいあったんでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 永住者に成り済ました不法就労者の数でございます。

 昨年の例で申し上げますと、昨年一年間で退去強制手続をとった者の数は五万六千四百十人でございます。そのうち不法就労者の数は四万五千九百二十九人でありました。

 このように、非常に多くの者が不法就労をしていたわけでありまして、それらの者がどのような在留資格を有する者に成り済ましていたかにつきましては、不法就労者が必ずしも正直に成り済ましの内容につきまして供述するわけではないといったことなどから、必ずしもつまびらかではありません。

 しかし、そのうちの多くの者が極めて安定的な在留資格であります永住者に成り済ましていたであろうことは推認できるところでありまして、不法就労をしていた四万五千九百二十九人のうち相当の数、具体的に申し上げますと、まことに遺憾ながら、万程度の数の者が永住者に成り済ましていたのではないかと推認しているところでございます。

 なお、外国人登録証明書の偽変造事案は多発しており、例えば昨年十二月に警視庁、長野県警が合同で摘発した案件につきましては、約一万枚の外国人登録証明書が密売された旨報道されております。同様の事案の摘発が相次いでおります。

 このようなことから、相当数の不法滞在者の外国人が、偽造外国人登録証明書を用いて在留資格を有する者に成り済まして不法就労をしていたものというふうに考えているところでございます。

細川委員 それでは、端的に聞きますよ。

 入管で、永住者で、成り済ましで摘発した件数を言ってください。

齊藤政府参考人 永住者に成り済ましたという件数でございますか。昨年、十八年で申しますと、私どもの方に連絡をいただいた件は約十件ということでございます。それは、全国からいただいたということではありませんで、ごく一部の地域からいただいたものということでございます。

細川委員 今答弁がありまして、想像では万を超す、実際に摘発したのは昨年で十件、そういう答弁でございます。

 そこで、先週から先ほどまでの議論を聞いてまいりますと、こういうことが想像されると思います。一部の成り済まし永住者をあぶり出すために、自分は永住者と言っている人全員から情報を集める、これが一番効果的だと。つまりは、本来、直接関係のない多くの永住者の情報を収集して、これを入管当局の求めに応じて提供する、こういうことになります。

 先週、厚労大臣は、リアルタイムで転送するというようなことはないというふうに言われましたけれども、では、こういうように要求が来たらどうしますか。例えば、月一回、永住者情報と突き合わせて、成り済まし永住者を摘出するため、こういう理由で、永住者全員に関する情報を一括して求める、こういうように法務省の方から、法務大臣から厚労大臣の方に要求が来た、こういう場合に柳澤大臣は要求にこたえるわけですか。

柳澤国務大臣 二十九条の規定で、届け出に係る情報の提供ということで、厚生労働大臣は、法務大臣から、外国人登録法等に定める事務の処理に関して、外国人の在留に関する事項の確認のための求めがあったときは、こういう枠組みで情報を提供するものとするということが規定をされております。

 私どもとしては、法務省から情報提供の求めがあったときには、永住者として届け出られた者に係る事項を含めまして、この法条の範囲内の提供であることを、法務省から示される情報提供を求める必要性や理由等に照らし、適切に判断するということでございます。

 今、委員から、一つの例として、こうしたことというようなお問いかけがあったわけでございますが、我々としては、法務省の方からの申し出というものについては、きっちりした必要性、理由が示されるという上で判断をさせてもらうということになろうかと思います。

細川委員 これは永住者の皆さんにとっては人権にかかわる大変重要な問題でありますから、法務省からいいかげんな理由で要求があったときにはしっかり拒否をする、そういう厚労大臣の態度というのは非常に重要だと私は思います。

 もう時間が来たようですから続けられませんけれども、それでは、突合した後、この情報は法務省としてどうするのか、これは廃棄をするのかどうか、こういう点なんかも大変大きな問題があります。したがって、これらについては、法案が成立したらの話ですけれども、慎重の上にも慎重に運用をしていただかなければならないというふうに思いますので、そのことを申し上げまして、私の質問は終わります。

櫻田委員長 以上でただいま議題となっております各案中、内閣提出、雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案、大島敦君外二名提出、雇用基本法案及び山井和則君外二名提出、若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 この際、山井和則君外二名提出、若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 衆議院議員山井和則君外二名提出の若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案につきましては、政府としては反対であります。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これよりただいま質疑を終局いたしました三案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。園田康博君。

園田(康)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、内閣提出の雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案に反対、民主党提出の雇用基本法案、若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案に賛成の立場から討論を行います。

 我が国では、経済産業の構造改革を経て旧来型の雇用モデルが崩れたことを受け、不安定な雇用がふえ、長時間労働や労働条件の低下といった問題が働く人たちの生活を直撃しています。しかし、政府案はこうした状況を打破するには甚だ不十分であり、以下の理由により反対するものであります。

 第一に、政府案は、人口減少社会の到来を見据え、新たな雇用モデルを構築する基盤となっていない点です。

 本来、雇用対策法は、国の雇用のあり方、目指すべき方向性を示し、それに到達するための施策を定めるべきでございます。しかし、政府はその時々の雇用情勢に応じて雇用対策法を対症療法的に継ぎはぎすることに終始してきました。今回の法改正もその延長線上での手直しにすぎません。

 それに対し、民主党の雇用基本法案は、すべての労働者が、公正な労働条件のもと、人としての尊厳を重んじられ、安心して働くことができる環境を整備すること、適切な職業能力の開発等の機会を与えられ、その有する能力を有効に発揮し、充実した職業生活を送ることができるようにするという雇用のあるべき姿を基本理念として明確に定めています。

 そして、雇用に関する施策は、長期の安定した雇用を基本として、労働者が安心して働き、その有する能力を有効に発揮することができるようにするとともに、労働者が人生の各段階において、その働き方を多様な就労形態の中から主体的に選択することができるようにすることを旨として講ぜられなければならないこと、雇用に関する施策を講ずるに当たっては、労働者の職業選択の自由を尊重しなければならず、また、事業主の雇用の管理についての自主性を尊重するよう配慮しなければならないものとすることを定めています。

 第二に、政府案は、雇用対策基本計画に関する規定を削除している点です。

 国が雇用政策に責任を持つとの観点から、基本計画を閣議決定し、政府が一丸となって対策に当たるべきです。民主党案では、雇用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、労働政策審議会の意見を聴取した上で雇用基本計画を策定し、閣議決定を求めることとしています。

 第三に、政府案にはワークライフバランスの観点が欠如している点です。

 労働力人口が不足すると言われる中で、働く意欲のある人が、その能力を十分に発揮し、安心して働き続ける環境を整えることが大きな課題です。そのために、民主党案では、基本的施策として、仕事と育児や介護の両立支援はさることながら、修学、社会的活動への参加等の社会生活との適切な調和を保てるよう、労働条件の改善、就業環境の整備を位置づけています。政府案は、ワークライフバランスの実現を明文化していない点で、社会の要請にこたえていません。

 第四に、政府案では、募集、採用に係る年齢制限を禁止している規定の適用範囲が不明確で、公務員を適用除外にしている点でございます。

 本来、労働者の募集、採用は、その人の能力を十分に吟味するべきであり、年齢や性別を限定して、能力のある若者、高齢者や女性たちが労働市場から追い出されることがあってはなりません。民主党案は、そうした差別を解消し、多くの人々に就業の機会を保障する観点から、公務員の募集、採用についても年齢差別を禁止することとしています。

 それに対し、政府案は、年齢制限禁止の対象を省令で定めることとしており、適用除外が広くなり、募集、採用の機会がどの程度広がるか明確ではありません。また、公務員を年齢制限禁止の適用除外としています。公務員の募集、採用は年齢差別が残ったままで、民間の事業主に義務を課すだけでは、法の実効性が問われ、安倍政権が掲げる再チャレンジに値しないことは明らかです。

 第五に、政府案の若年者就労支援策は、従来の施策を踏襲するだけで、実効性に疑問があります。

 政府は、青少年の応募機会の拡大等を再チャレンジの目玉として掲げていますが、全国二十カ所で展開されてきた若年者就労支援のためのジョブカフェ事業は、モデル事業終了に伴い、予算が大幅に削減されました。財政状況が厳しい自治体では、事業を縮小せざるを得ないことも考えられます。政府が本気で若年者雇用問題に取り組んでいるとは到底言えません。

 いわゆる就職氷河期に社会に出られた方々は、今もなお正規雇用として採用されないなど、厳しい雇用状況が続いています。こうした状況を受け、民主党案では、十五歳から四十歳未満の対象若年者等に対して、若年者等職業カウンセラーが若年対象者等の適性や希望をよく把握した上で、個別就業支援計画を作成し、段階を踏みながら必要に応じて職業指導、さらに職業訓練を受けるなど、安定した職につけるよう、きめ細かな指導を行います。五年を目安とする期間で集中的に若年者向けの就業支援を行うに当たって、国が財政的な支援を行うこととしています。

 第六に、政府案で導入する外国人の雇用状況の情報を法務省に提供する制度に関する問題点です。

 政府案では、事業主に特別永住者を除くすべての外国人の就職、離職の都度、その氏名、在留資格の有無及び在留資格があるときはその名称及び在留期限、国籍等を厚生労働大臣に報告する義務が課され、違反したときは罰則の対象となります。また、本報告制度によって厚生労働省が取得した情報は、法務省に提供されることになります。労働者本人が、使用者が国に報告される自己情報について確認する方法が不明確なため、プライバシー権、自己情報コントロール権等の人権侵害のおそれがあります。

 以上、申し上げたとおり、従来の政策を踏襲し、問題点の多い政府案よりも、我が国が将来にわたって目指す雇用のあり方に関する明確な方針と施策を講ずる責任を法律で定める民主党案の方がすぐれているということは明らかでございます。また、若年者就労支援については、就職氷河期に社会に出られた世代の方々を対象として集中的に支援を実施することにより、職業の安定が図られると考えています。

 皆様におかれましては、民主党案の趣旨への御理解、御賛同をお願いし、私の討論といたします。(拍手)

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行います。

 雇用対策法は、その目的で、国が安定した雇用の維持を図ることで完全雇用の達成を目指すとし、国の雇用対策を具体化する雇用対策基本計画を策定してきました。しかし、時々の経済政策に従属させられてきたこと、とりわけ二〇〇一年の法改正後は、大企業の利潤追求のための産業構造の変化に対応した雇用の流動化を支えるものへと変質してきました。

 今回、雇用対策基本計画が廃止されます。今後は、骨太の方針や「進路と戦略」など、名実ともに官邸主導、経済界の要請に沿った雇用対策が厚生労働省の頭越しに決められることになります。これは、憲法に定める国民の勤労権を保障すべき国の責任を投げ捨てるものにほかなりません。

 反対する主な理由は、外国人労働者の雇用状況に関する報告制度が義務化され、公共職業安定所に集約された外国人労働者の個人情報が、出入国管理行政からの求めがあった場合に提供することが義務づけられているからです。

 雇用保険未加入や極端に低い賃金、残業代の未払いなど、劣悪な労働条件のもとに置かれている外国人労働者の無権利状態を改善することは急務の課題であり、そのために外国人労働者の就労実態を把握することは必要であります。しかし、今回の改正では、不法滞在者の取り締まりという別の目的を有する入管行政と情報が共有され、永住外国人など、適正に働いている多くの外国人労働者まで管理の対象とされます。

 これでは、制度本来の目的を離れ、在留管理強化のために利用される懸念が大きく、外国人労働者の権利侵害につながりかねません。外国人労働者にとって、自分たちを守ってくれるはずの労働基準監督署やハローワークが、自分たちを摘発する機関と直結することになれば、労働行政機関から外国人労働者の足が遠のき、雇用管理の改善や再就職促進も果たせなくなります。こうした懸念は、質疑を通じてますます大きくなりました。

 なお、地域雇用開発促進法改正は、地域類型の再編や助成金の要件を変更するとしておりますが、これまでの支援措置について明確な実証もないままでは、どれほどの効果が期待できるのか、疑問があります。

 また、事業主の施設整備に伴う雇い入れ助成は常用雇用が要件となっておりますが、地域の雇用情勢の改善に資するためには、正規雇用など安定した雇用の確保を条件とすることが求められるということを指摘しておきます。

 最後に、民主党提案の雇用基本法案、若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案については、趣旨としては理解できるため、賛成といたします。

 以上を述べて、討論とします。(拍手)

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、内閣提出の雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案に反対、民主党提案の二法案に賛成の立場からの討論を行います。

 今回の雇用対策法の改正は、人口減少下において、働く希望を持つすべての青少年、女性、高齢者、障害者などの就業参加の実現を図ることを明確化するために行うとしています。しかし、日本で働く外国人に対しては、事業主に外国人の雇用状況の届け出を義務化するなど外国人に対する管理強化を打ち出す一方で、人権の面から見ても看過できない問題をはらんでいます。外国人雇用状況報告制度は、雇用環境を改善し、就業参加を促す雇用対策法と全く異質なものであり、雇用対策法を逸脱するものと言わざるを得ません。

 反対理由の第一は、事業主による外国人雇用状況届け出の義務化や法務大臣への情報提供など、外国人のプライバシーを侵害し、外国人に対する差別や偏見を助長するものとなるからです。

 そもそも永住者や定住者は、就労を目的で日本に在留しているわけではなく、日本社会を生活基盤として在留しているのであって、そうした永住者や定住者まで届け出を義務化する積極的な理由は全くありません。

 外国人雇用状況報告制度を設ける理由の一つに不法就労対策を挙げていますが、いわゆる不法就労をしている外国人を雇用している事業主が、みずから報告するはずもありません。不法就労対策には到底なり得ません。

 反対理由の第二は、外国人雇用状況届け出の義務化は外国人労働者の労働条件の改善に資するためと説明していますが、多くの外国人労働者は、低賃金で社会保険や雇用保険などに未加入のまま、請負会社などのブローカーを通じて、製造業など、三K職場と言われる仕事に従事させられています。外国人の雇用管理については、労働者としての権利を保護すると同時に、偽装請負や派遣など、劣悪な雇用条件の改善こそが先決です。

 こうした外国人の劣悪な雇用環境に対しては、現行法でも可能な労働基準監督署の立入調査や行政指導の強化こそが求められているはずです。こうしたことは全く行おうとせずに外国人雇用状況届け出の義務化を行うことは、幾ら外国人の雇用条件の改善のためといっても、絵そらごとでしかありません。

 反対理由の第三は、外国人雇用状況届け出の義務化は、雇用対策法の立法趣旨から大きく逸脱していることです。

 第一条の目的では、「労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図る」と明記されています。この「労働者」の中には、当然外国人も含まれるはずです。外国人雇用状況届け出の義務化は、明らかに第一条の目的に反し、同法を取り締まり法規とすることになります。

 雇用情勢の大きな変化に対応し、国としての雇用対策の方向性を明確化することは極めて重要です。世界がグローバル化している中で、日本の雇用も変化を強いられています。外国人雇用状況届け出の義務化は、明らかに世界の流れに逆行するものです。

 また、青少年、女性、高齢者、障害者を雇用対策の基本方向に位置づけるとしていながら、打ち出されたものは抽象的かつ一般的な指摘にとどまっています。これまで政府が進めてきた規制緩和などによる雇用の悪化などの政策を点検することから出発しない限り、時代の要請には全くこたえることができず、政府案には反対せざるを得ません。

 また、大島敦さん外二名提案の雇用基本法と山井和則さん外二名提出の若年者の職業の安定を図るための特別措置法については、その基本的理念を評価し、賛成といたします。

 以上、二十一世紀にふさわしい雇用対策の確立を強く訴え、私の討論といたします。(拍手)

櫻田委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより採決に入ります。

 まず、大島敦君外二名提出、雇用基本法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、山井和則君外二名提出、若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

櫻田委員長 次に、内閣提出、参議院送付、消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柳澤国務大臣 ただいま議題となりました消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 消費生活協同組合制度については、組合員の生活の文化的経済的改善向上を図ることを目的とする相互扶助組織として昭和二十三年に創設されましたが、制度の発足以後、今日では、組合数は千百十六組合、組合員数は延べ五千九百十五万人に達し、購買、利用、共済等の各種事業が行われている一方、組合を取り巻く環境も大きく変化しております。こうした中で、事業の健全性を確保し、組合員の保護を図る観点から、共済事業における契約者保護、経営責任体制の強化等を図るための見直しを行うこととし、本法律案を提出することとした次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、共済事業について、組合が、共済契約の締結に関して、共済契約者に対して虚偽のことを告げる等の行為をしてはならないこととするとともに、業務・財務に関する情報開示を義務づけるなど、契約者保護のための規定の整備を行うこととしております。

 また、事業の健全性を確保する観点から、最低限保有すべき出資金額の基準を設定するほか、健全性に関する基準の設定等の措置を講ずることとしております。

 第二に、生活圏の拡大等に対応するため、購買事業の実施のため必要がある場合等には、主たる事務所の所在地の都府県の隣接県まで設立区域とすることができるようにするとともに、例外的に組合員以外の者に事業を利用させることができる場合を定めることとしております。

 第三に、少子高齢社会において、組合における福祉活動を強化するため、繰り越し義務のある剰余金の使途として、組合員が行う子育て支援、家事援助等の活動に対する助成を追加するとともに、医療福祉事業に係る剰余金の割り戻しの制限等を行うこととしております。

 第四に、組合の事業運営の規律を強化するため、理事会、代表理事に関する規定を整備し、事業の規模が一定以上の組合について、員外監事の設置を義務づけること等を行うこととしております。

 さらに、組合に対する監督を強化するため、行政庁による解散命令を強化し、また、役員の解任命令を可能にすることとしております。

 第五に、組合が行う貸付事業に関し、組合が保有すべき純資産額を設定するなど、その適正な運営を確保するための措置を講ずることとしております。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、平成二十年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

櫻田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時六分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官野村守君、総務省総合通信基盤局長森清君、財務省大臣官房審議官佐々木豊成君、文部科学省大臣官房審議官辰野裕一君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、健康局長外口崇君、医薬食品局長高橋直人君、社会・援護局長中村秀一君、年金局長渡辺芳樹君、社会保険庁運営部長青柳親房君、経済産業省大臣官房審議官西川泰藏君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸井田とおる君。

戸井田委員 自由民主党の戸井田とおるです。

 なかなか、自由民主党というのは質問の順番が回ってこなくて、それでも手を挙げたら結構仲間が気安く譲ってくれまして、きょうは、安全、安心ということを最近よく言われていますけれども、その辺をキーワードにして、二つ、三つ質問をさせていただきたいと思います。

 大臣には、この後の時間が大変でしょうからお休みいただいて、お答えいただける方でしたらだれでも結構ですので、ひとつよろしくお願いいたします。

 今般、医療法の改正が行われまして、助産所開設者には嘱託医と連携医療機関を定めなければならないということになりました。

 最近、助産師さんと知り合いが多くて、その助産師さんからいろいろ連絡が入ってくるわけです。ある地方の助産師さんから、自宅出産の助産をするため出張助産師の登録の手続をしようとしたら、嘱託医を決めなければ出張助産師として開業できないと言われて、保健所に登録を受け付けていただけなかったというふうに言われるんですね。そうなのかなと、私もわかったようなわからないような立場ですから、では一遍聞いてみるということでいろいろしたわけですけれども、どうもそういうことじゃないという話も聞きました。

 また、分娩を取り扱わない、母乳ケアの外来のみを受け付けている助産院が、ある助産院から、嘱託医、連携医療機関を定めないのなら、廃業届を出すようにということを言われたと言うんですね。

 非常に、その辺のところが、実態がどうなっているのか、末端の方では大分混乱している。医政局長通達というのも出たみたいですけれども、それがまた混乱に加速、輪をかけて混乱させているというような雰囲気があるんですけれども、その辺の実態のところを、ちょっとお聞かせいただきたいなと思います。

松谷政府参考人 助産所の関係でございますけれども、今委員御指摘のとおり、先般の医療法改正におきましては、従来の嘱託医制度の問題点を踏まえまして、産科または産婦人科の医師を嘱託医師とすること、また、産科及び小児科を有する等、一定の条件を備えた病院等を連携医療機関とすることなどの改正が行われたところでございます。

 委員御指摘の、まず、出張のみによって業務に従事する助産師につきましては、主として業務を行う場所が定まっていないことから、従来より嘱託医師を定めておくこととはしていないところでございまして、今般の改正におきましても変更していないところでございます。

 また、改正前の制度におきましては、分娩の取り扱いの有無にかかわらず、助産所の開設者は嘱託医師を定めておかなければならないというふうにしておりましたが、分娩を取り扱わない助産所につきましては、出産時の異常といった緊急を要する場合が少ないと考えられることから、嘱託医師及び連携医療機関を定めておく必要性に乏しいなどの御指摘もございまして、これも踏まえまして、今般の医療法改正におきまして、分娩を取り扱わない助産所、例えば乳房マッサージ等のみを行う助産所がございますが、こういったところにつきましては、嘱託医師及び連携医療機関を設ける必要はないということとしたところでございます。

 一部、徹底していない面があるやに今お伺いをいたしまして、その徹底に努めていきたいと思います。

戸井田委員 やはりきちっと、伝言ゲームじゃないですけれども、間にいろいろ入ってくると、だんだん最後には違った話になっている。笑い話で済まない部分があると思いますので、そこらのところを徹底していただきたいと思いますし、同時に、実際にどういうふうになっているのか、やはりそういった実態調査というものも必要なんじゃないか。

 私は、男の私が何で助産師のことに首を突っ込むんだとよく言われるんですけれども、何となく自分自身も、かつて自分の嫁さんのお産のときには一切かかわってこなかった。かかわれるのはそのときだけだったわけですけれども、結局、どういうわけか、忙しい忙しいで、だんなとして、だんなというか配偶者として役割を果たしていなかったんじゃないかな、そんな思いもあって、やはりきちっとそういうところを、後で言いわけみたいな形でこういうのに首を突っ込み出したら、割とこれは重要な部分がたくさん含まれているなと思うんですね。

 産婦人科医会も、定型の模範文書みたいなものを流してみたりとか、それも読んでみると、本来、医療に携わるスタッフというのは、もちろんお医者さんが中心になるのはわかるんですけれども、私も今まで随分言ってきましたけれども、医療に携わるスタッフが対立関係にあっていい医療ができるかというと、私はそうじゃないと思うんです。だから、お互いに連携できるような協力関係をつくっていくことが非常に大切なことであって、その協力関係をつくるのに一番いい立場にいるのはだれなのかというと、私は厚生労働省だと思うんです。その厚生労働省がきちっとその役割を果たしているかどうかということがやはり今問われているんじゃないかな、そういう気がするわけであります。

 ですから、今、産婦人科のお医者さんの話を聞けば、また助産師の話を聞けば、看護師さんの話を聞けば、いろいろそれぞれあるわけですよ。だけれども、その中でもって、やはりお互いが納得できて、そして協力体制で対応できる、それがまさに、妊婦さんであったり子供に対して一番いいことなんだ、ごく当たり前のことだと思っているんですけれども、それがなかなかうまくいっていない状況がある、それが今のこの状況なんだろうな。そこのもとをたどっていくと、やはり随分、誤解とかそんなものがあるような気がいたします。

 あえて今、そういう微妙な段階にあるときに、これ以上私は余り申し上げませんけれども、ぜひ厚労省においては、その協力体制がつくれる、そして安心して自分が望むお産ができる、そういう場をつくっていただきたい、そんなふうに思うんですね。そのことについて、局長、どうですか。

松谷政府参考人 今委員御指摘のとおり、患者さんあるいは妊婦さん、産婦さんのケアという上では、それに関係する医療的なケアを提供するお医者さんあるいは助産師さん、看護師さんがそれぞれ持ち分を持って連携しながらやるということが大変大切なことだと思います。

 それも踏まえまして、去る三月三十日に医政局長の通知を発出したところでございまして、この中で、医師、特に産科の医師、そして助産師、看護師、それぞれどのような役割を持ってどのように連携して行っていくかということを明らかにしたところでございまして、実は先般、単なる事務通達だけではなくて、医師会、それから産科医会、そして助産師会、看護協会、それぞれのトップの方に、関係の方に局長のところに集まっていただきまして、お互いの協力関係の再確認をしたところでございます。大変和やかな、打ち解けた形でできたと思っております。

 もちろん、それぞれの会の中、いろいろな御意見の方もいらっしゃいますし、実際の場面でなかなか難しい点も今までもございまして、これからもあるかもしれませんけれども、そういったお互い協力関係を築いてやっていくことが患者さんのケアという点で非常に大事なことでございまして、患者さんのケア、妊婦さん、産婦さんのケアという点に目的を置いてそれぞれ連携してやっていくように今後とも努めていくよう、私どもも努力しますけれども、各四団体の方々にもお願いをしたところでございます。

戸井田委員 では、よろしくお願いいたします。

 それでは、次ですけれども、四月二十二日の読売新聞に、一面トップでもって、「後発薬を優先使用」ということで、「処方せん様式変更 来年度改定目指す」と、ヘッドラインだけ読んでいるとそういうのが出ているんですね。中身は、「これまでは新薬の使用が「標準」だったのを、後発医薬品を「標準」に転換する方針を固めた。」「二〇〇八年度からの実施を目指している。」という内容が書かれているんですけれども、最近テレビでも、我々が見ていても、ジェネリックにかえようとか、加山雄三が出てきて、ジェネリック、ジェネリックと言うわけですよ。

 同じように、みんな現場でもってジェネリックということで、確かに保険財政を考えれば厚生労働省も苦労しているんだなというのはよくわかるんですけれども、しかし、使う方としたら、安全が確保できているのかと。もちろん、役所のやることですから安全というものはしっかりしているんだろうと思うんですけれども、一般の人から見ると、また、それを使用するお医者さんの立場から見ると、安心というものが得られる状況なのかなというと、そこら辺はまた疑問な部分があると思うんですね。

 医師会の白クマ通信というのを読んでみますと、ジェネリックに対してちゃんと調査をやっておられるわけです。ジェネリックに対する、品質に問題があるかという問いかけに、問題ありというのが五三・八%とか、効果に問題があるかというと、問題ありというのが六八・八%という、この数字を見ると、言ってみれば信頼感がないということになると思うんですね。

 それで、いろいろお医者さんの話なんかも聞いてみますと、ある意味でなるほどなと思うような部分もある。今まで先発メーカーの薬を使ってきて、それで安心して使っておられた。だけれども、逆に今度ジェネリックにかえたいと言われて、すぐかえられるかというと、自分の置かれた立場を考えると、そこまですぐできるかどうかわからない。

 また、ジェネリックの薬に対して、市販後の使用成績調査というものがあるんですけれども、それがきちっと行われているのかと。添付資料があるわけですけれども、その添付資料の中に「副作用」とあって、「本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。」ということが書かれているんですね。それの後ろに、この薬の「承認条件」として、「本剤の増量時における横紋筋融解症関連症例の発現については、市販開始後から平成十七年六月三十日までに重点的に調査し、その結果を報告すること。」と入っているわけです。

 この薬はシンスタチンとかいう高脂血症の薬なんですけれども、副作用のところで明確なる調査は実施していないということと、承認条件のところに、そういう調査をしなさい、報告をしなさいと書いてあるんです。矛盾する記載があるんだけれども、これはどういうことなのかなと思っているんです。その辺、お答えいただけるのでしたら。

高橋(直)政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の医薬品の添付文書の方でございますけれども、これは後発品でございますので、まず、この後発品については、市販後につきまして、使用成績調査など、これで副作用の発現頻度が明確になるような調査は一般的に実施しておりません。

 その理由は、先発品でございます、新たな有効成分を含む医薬品につきましては、その再審査までの期間中に使用成績調査を行いまして、副作用の発生頻度なども調査を行っております。ですから、そういう意味では、全体にいろいろな使用例数があるわけでございますけれども、そのうち、その使用例をきちっと幾つか絞って、その中で副作用が何例発生したかということで、その発生した率をきちっと調べるという調査が使用成績調査の中に入っているわけですけれども、先発品の中でそれは既に行われている。

 後発品は先発品と有効成分が同一でございます。飲んだ後の体内における血中濃度が、有効成分、時間的な経過が同じであるということを確認して後発品として承認されたものでありますので、体の中に入れば医薬品の動態としては同じであるということで、そういった調査は要求していないわけでございます。

 ただ、先発品の中でも、後発品を認める際に、まだ先発品の中で調査を終わっていないような副作用がたまにあるわけでございますけれども、そういったものにつきましては、これは有効成分が同一ですから、それは後発品についても同じように、一種の追跡調査といいますか、そういうものを先発品と同様にかけているということでございます。

戸井田委員 成分が一緒と言われれば、確かにそれはそうなんですけれども、私自身、以前歯医者さんで鎮痛剤をもらったんですね。それまでは先発メーカーのをもらって、そのときは、麻酔が切れた後もその薬が効いて、痛みはなかったんです。ところが、あるとき、薬が変わったなと思って、これは鎮痛剤ですかと言ったら、そうですと言われて、それでそれを飲んで、同じようなパターンでくるのかと思ったら、全然それがなかったんですね。それで、夜、もう一晩じゅう痛みを我慢して、夜明けとともに行って、それで以前と同じ鎮痛剤をもらったという経験があるわけです。多分その薬はジェネリックだったんだろうなと、まあ確証はないですけれども、そういうふうに思うわけですよ。

 そうすると、成分が一緒でも、結果、効能が、本当に効果があるのかないのか、副作用もどういう状況で出てくるのか。科学的には今局長の言われることはよくわかるんですけれども、実際自分がこういうふうに経験してみると、全部が本当にそうなのかなという、たった一つそういう事象があったとしてもそういうふうになってくる。だから、ジェネリックのメーカーもたくさんあるわけですから、そんな中で一社だけでもそういう事例が出てきたりすると、なかなかそういう信頼というのは得られぬのかなと。

 基準はそういうふうになっていても、その薬に対する安心感というのは、効能、効果が発揮されてこそそういうものがあるわけだろうし、そういうことを考えると、やはりきちっと後々もそういう報告をしていくということは必要なんじゃないかなという気がするんですけれども、例えば副作用例でも出てきたら、やはりそういうことだけは報告していくということはやっていないわけですか。

高橋(直)政府参考人 先ほど、私は使用成績調査のことについてお話し申し上げましたけれども、これはもちろん、使用成績調査のみならず、一般的には副作用の報告というものは、これは先発品、後発品を問わず、そういうものがあった場合には必ずそのメーカーの方から私どもの方に報告が来るというシステムになっておりますので、その辺のフォローはきちっと私どもとしてはやっているつもりでございます。

戸井田委員 そういうことなんだろうなと思うんですけれども。

 例えば、ジェネリックのメーカーが今何社ぐらいあるのかわかりませんが、同じメーカーにもやはりピンからキリまであると言ったら怒られるのかもわからないけれども、いわゆる先発メーカーに近いような会社もあれば、もう一つ規模の小さな、小さいから信用できないというわけじゃないけれども、そういう会社もあるんだろうと思うんですね。

 そういうジェネリックのメーカーをきちっと集約させて、みんなが安心できるような管理ができるような状況をつくり出そうという計画はないんですか。

松谷政府参考人 いわゆるジェネリック、後発医薬品の企業でございますけれども、後発医薬品企業の定義というのはなかなか難しいところがございますけれども、主に後発医薬品の製造販売を行う中堅製薬企業の団体でございます医薬工業協議会に加盟している後発医薬品企業は、ことしの四月二十日現在でございますけれども、三十九社ございます。

 今先生御指摘がございましたけれども、こういった製薬企業は、医薬工業協議会というような形で互いに情報を出しながら、それぞれのメーカーとして、後発医薬品企業としての資質の向上あるいは製品の安定化といったようなことについて自主的に取り組んでいるという状況ではないかと思っておりますし、私どもとしても、後発医薬品企業といえども、製薬企業として国民の健康に責任を負う立場であるということを指導しているところでございます。

戸井田委員 一般の人というのは何で安心するかというと、余り宣伝でわいわいやられればやられるほど逆に、これは感覚的なものですよ、本当に大丈夫なのかなというふうな思いが出てくる部分が、今の時代、特に強いんじゃないかなという感じがするんですね。だから、そういう意味で、確かに医療保険財政も大変なんだろうと思うんですけれども、余りわいわい言う前に、安全だ、安心できるんですよということをその仲介者であるお医者さんに、やはりきちっとお医者さんからも信頼を得られるような体制づくりというのは必要なんだろうというふうに思うんです。薬の安心感を得るというのはやはりそういうものじゃないかなというふうに思います。

 次に行きますけれども、もう一つ、去年、新聞でもって電磁波の特集をやっていたんですね。気になって、ずっととってそれを読んでいたんですけれども、そういう新聞の記事を読めば読むほど、電磁波というのはすごいなと。自分の身の回りに何があるのかなということを、そういうものを読みつついろいろな資料の本をかき集めて見てみたら、やはり携帯電話から、高圧線は昔からそういう話がありますけれども、それ以外にも、電子レンジ、電子カーペット、それから電気敷毛布とか、家電製品がほとんどそういう電磁波の影響があるというような書かれ方をしているわけです。

 そういうものを読んでいくと、本当にそういうのは安全なんだろうかと、まさに安心感が得られないような雰囲気がこういう報道とか本を読んでいると出てくるわけです。今、そういう電磁波に対する何か規制とか基準とか、そういうのはあるんですか。

外口政府参考人 電磁波による人体に与える影響につきましては、国内外においてさまざまな研究報告が報告されております。

 例えば、厚生労働省関係でも、国立保健医療科学院では、平成十五年度から十七年度の厚生労働科学研究におきまして、携帯電話の発育段階の脳に対する暴露影響評価を、これはラットを用いて行っておりますが、現在の携帯電話で使用されている電磁界強度では、脳の機能、これは血液脳関門への影響を見ておりますが、それに対する影響は見られなかったところでございます。

 厚生労働省といたしましても、電磁界関係省庁担当者連絡会議というのがございまして、そういった機会を通じて、今後とも、電磁界の健康影響について、国際的な動向も含めて情報収集等を行ってまいりたいと考えております。

 あとは、関係省庁の方から補足して説明があると思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 電気製品の中で、今お話の中には明示的にはございませんでしたが、電磁調理器具、最近、IHクッキングとか、そういった製品が出ておるわけでございます。こういった製品、電磁波の強度は高い部類に入るわけでございますが、こういった製品を初めとする家電製品から発生します電磁波につきましては、家電製品の業界団体でございます財団法人家電製品協会という団体がございまして、そこが市販されている器具を対象に調査いたしました。その結果、最大でも五マイクロテスラということでございます。テスラというのは磁束密度の単位だそうでございます。

 これは、こういった分野におけます中立的な国際機関でございますICNIRPという国際機関がございますが、そこが定めて、各国で使われております電磁界の暴露を制限するためのガイドラインに定められました基準値、これは大体八十から百マイクロテスラという数字になるわけでございますが、この数字と比べまして、実測されたレベルは一けた以上小さい値、すなわち、安全サイドに今とどまっているという結果が出ているというふうに承知いたしております。

戸井田委員 そういうふうに言われるんですけれども、国会図書館から借りた本なんですけれども、こういうのを読んでいると、

  日本ではこれまで、電磁波が人体に及ぼす影響について、まともな研究は一つとして行なわれていません。オリジナルな研究は、ないに等しいのです。これまで出された報告書も、そのすべてが、外国での研究調査結果の紹介に過ぎません。しかもその紹介も、「影響はないとする」調査結果を意図的に多く紹介し、「影響がある」とする調査結果の「不備」を指摘することで成り立たせてきました。

  欧米での研究は、もはや電磁波が危険だという認識は当たり前になっています。対策に移行している国や自治体もあります。その感覚のずれの大きさに唖然とするばかりです。

こんなのが書かれているんですね。それとか、自主基準である電波防護標準規格は、「指針は、守らなくても罰則はなく、実効性のないものでした。」こんな文章がつらつら、次々出てくるわけですね。一般の人が読んだら、これは何なんだと思うわけですよ。

 それで、一番気になるのはさっきの電磁調理器ですね。あれなんかだったら、やはり人間が一番前に立つわけですね。例えば妊婦さんが立ったときに、ここに書かれている中では、いわゆる成長の一番小さい大人より子供、子供よりも胎児、胎児よりもまだ小さい細胞のときということで、そんなときに影響があるんだとしたら、まさに一番強いと言われている電磁調理器の前に立って、それも毎日毎日調理しながら被曝するとしたら、これは大変な影響があるんじゃないかなという気がするんですね。

 もっともっと、本当に納得できるような調査研究なり、そういうものを出された後でそういうものは許可されるべきものじゃないかなというふうに思えてしようがないんですけれども、そこらのところを、経産省が言うことと、厚労省の方は厚労省でもって、どっちとも、何か自分の守備範囲と違うというような雰囲気の答えになってくるんですね。

 そんな状態で本当に安全、ましてや安心なんというのは得られるんだろうか。もっと両方が積極的にそれにかかわり合っていって、お互いにそのことを、疑念のところを一つ一つ打ち消していくような話し合いなり調査がなければいけないんじゃないか、私はそういうふうに思うんですね。だけれども、結果、何か出てきたときに、自分らは関係ない、自分らのところは違うというような態度のように、今度の質問取りのときでも、話を聞いているとそういうふうにしか聞こえてこない。

 もう時間がないですから、最後にそれに対する感想があれば言っていただけたらいいですけれども、やはり国民に安全、安心ということで言うのであれば、安心感を与えるということは、そこに携わっている行政が安心感を得るに足る行動をしてもらわなきゃ困るというふうに思うのが一般の人の気持ちだろうと思うんですね。ぜひ、そこらのところをきちっと対応していただきたいと思います。

 今の電磁調理器のことに関して、妊婦さんとの関係ということで何かあったら、一言ずつでも言ってください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げた実測したときの測定方法につきましては、これは、国際的な標準化機関IECというところがございまして、具体的に何センチぐらいのところで測定しなさいという標準が定まっておりまして、その国際的な標準に沿って、踏まえて測定した結果ということでございます。

 また、国際機関ICNIRP、ここで長年そういう電磁界の暴露の安全性について検討して、それがガイドラインとして出されておりまして、これは日本を含めて各国がそれを参考にしておりまして、私どもも、その数字をもとに、実測したその数字と比較して、現在の電磁調理器については十分安全サイドに入っているであろうというふうに考えているということでございます。

 いずれにしましても、先生御指摘のとおり、こういった調理器具を含めて、消費者の方が、妊婦さんを含めて安心して使っていただけるように、厚労省を初めとして関係省庁とよく連携を保ちながら、万全を期していきたいというふうに考えているところでございます。

戸井田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 余りあとは文句も言わずに引き下がりたいと思いますけれども、非常に大事なことだと思います。役所で扱う場合には不特定多数の人が相手ですけれども、個人が使う場合にはまさに自分の体のことであり、自分の子供の体のことであり、そういうことを考えると、やはり役所の立場にあっても、自分の子供が、自分の身内が、そういう気持ちを常に持ちながらやっていただきたい、そんなふうに思います。

 では、終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 きょうは、大臣、大変長丁場ですが、よろしくお願いをいたします。

 先ほど戸井田先生より大変重要な質疑のやりとりがあったと思います。私も、今回いただいた時間の中で、薬事行政の中で、先ほどはジェネリックについてのやりとりもなされたんですが、新薬、新たな治験活性化五カ年計画の制定についてということで、新聞報道にも、最近の記事にも載っておりまして、主にそちらの治験、新薬のより活性化といいますか、そういった視点でお伺いをさせていただきたいと思います。

 その前段、なぜ私が今回、薬事行政について、あるいは新薬活性化について質問させていただきたいと思ったのかと申し上げますと、やはり、今回の一連のタミフルについてのいろいろな形での流れ、これは、一般の私たち一人一人あるいは当然医療機関、本当に今なおいろいろな面で不安な状況にある。そんな中で、ここは薬事行政について少し時間をかりて幾つかやりとりさせていただくことによって、そういった薬事行政の、まさに先ほどのやりとりの中での安全、安心を確認させていただきたい。

 さらにはタミフルにおける副作用の問題です。これはまだ、もちろん調査中の部分はあるんですが、少しでもそういった異常行動、突然死等の心配のない創薬といいますか、そういったものがより一層推進されることの必要性にかんがみて、治験ということを中心にお伺いさせていただきたいと思います。

 タミフルのことなんですが、ちょうど昨日の読売新聞の報道で、これは大臣御存じかどうか、通告してありませんので簡単に記事を紹介いたしますが、「製薬企業から年五百万円超寄付で 医薬品審議から除外」という見出しで、二十三日の厚労省内の薬事・食品衛生審議会薬事分科会において、暫定ルールとして申し合わせがなされた。年内をめどに正式なルールを決めるというふうにございます。

 当然これは、インフルエンザ治療薬の安全性が問題になった際の分科会の調査会に参考人として出席をされた東京大学の教授の方が、輸入元の中外製薬から寄附金を受けていたことが明らかになりといったような経緯の中で今回の暫定ルールがなされている。

 私が伺いたいのは、この記事の中で、「暫定ルールが適用されるのは、同分科会と傘下に設けられている部会や調査会。一企業からの奨学寄付金や、コンサルタント料などが年間五百万円を超えた場合には、その企業の医薬品について審議を行っている間、退室する。五百万円以下の場合は、意見を述べることはできるが、議決には加わらない。」という報道でございます。

 暫定ルールで、年内をめどに正式なルールを決めるということですから、ここで確認、お願いをさせていただきたいのは、一つは、金額の五百万という基準が今回示されておりますが、五百万ということにかかわらず、私も再々質疑の中で触れさせていただきましたが、こういったいわゆる利益相反に該当する事例は、アメリカ等でも、当然、論文を発表する際にも公表する。ですから、私は、利益相反事例はすべて公表すべきであるということが原則、これが一点。そしてもう一点、今回の暫定ルールの場合には五百万円というのが一つの目安になっている。今後、これは年内に正式なルールを決める際の一つの目安になるのか否か。

 この二点。利益相反はやはりすべて公表するという点と、今回の五百万円というのがどういった目安になるのか。この二つについて、通告してございませんので、大臣、可能な範囲でお答えいただけますでしょうか。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 タミフルの安全性の問題につきまして、いろいろないきさつがありました。後で御質問があればお答え申し上げる次第ですけれども。

 いずれにいたしましても、厚生労働省の厚生労働科学研究というのを十七年度に行ったわけでございますけれども、その方々の間に一般の奨学寄附金というものを受領していた先生方がいらっしゃったということがございまして、この問題をどういうふうに取り扱ったらいいかということを緊急に基準を考えて実施することが求められているわけでございます。そういうようなことで、今委員がおっしゃられたように、当面の取り扱いとしてこの緊急の事態に対応するということが求められました。

 したがいまして、過去三年間に審議品目の製造販売業者から寄附金等の受け取りの実績があった場合に、その受取額とこの審議会の審議のあり方というものの関係を律するルールを定めたわけでございます。

 当面のルールでございますが、アメリカの例あるいはEUの例等を参照にいたしまして、過去三年間、いずれも年間五百万円以下の場合、その委員は、意見を述べることはできるけれども議決には加わらない、今委員の御指摘のとおりでございます。

 過去三年間、いずれも年間五十万円以下の場合には、議決にも加わることができるということにいたしまして、したがいまして、五十万円から五百万円の方については、先ほど言ったように、審議には参加できるけれども議決には加わらない。五百万円超の場合にはそのいずれもできない。こういうことをとりあえず決めさせていただきまして、確定ルールとしては今後また検討させていただきたい、こういうことで対処させていただいている次第でございます。

柚木委員 年内に正式なルールを決めるまでの議論で、利益相反事例について、金額の多寡、五十から五百という御答弁がございましたが、やはりあらゆる事例について公表いただくということが、いろいろな調査研究に対する客観性、公平性を担保することになろうかと思いますので、ぜひルールの中に盛り込んでいただきたいということをお願いし、次の質問に移ります。

 前回タミフルに関して御質問申し上げた際に、この薬について大変日本における消費が、世界の中の七割とか、もっと多い数字が出ているところもありますが、五千万人のうち大体七割ぐらいが日本人であるというようなことで、なぜこんなに我が国において服用がなされるのか。いろいろな部分が理由としては考えられるんですが、今回、こういった異常行動あるいは突然死ということが大変な問題になっている中で、やはりここは少し、薬の処方なりあるいは服用なり、私たち一人一人の意識の面も含めて考えていくことが重要なのかなというふうに考えております。

 そういった際に、実は欧米諸国では、いわゆる従来のインフルエンザでこのタミフルを投薬治療することは少ない。当然、その分、服用後の異常行動もさほど問題にならない。私も調べた中で、スイスなんかのお医者さんは、例えば、通常タミフルを処方することはほとんどない、高齢者など合併症が心配な患者さん以外は、まず一週間ほど休養をとることが基本と。国内におけるお医者さんも、これは小児科学会の先生も含めて、私もこの何年か処方したこともないよというような先生もいらっしゃいましたし、やはりこれは、そういった面では、多分にそのお医者さん御自身の御判断によるところもあろうかと思います。

 そこで、今回のような大変異常行動が問題になった部分を受けて、我が国でこういった状況があったことを受けて、例えばEUなんかでも、添付される注意書きに危険性を示すという方針が出されたり、あるいは隣の韓国でも、十代の患者への投与を自粛する方針を決めているというような影響も出てきている中で、伺いたいのは以下なんですが、今後、世界的に、我が国も含めて、新型インフルエンザに備えてタミフルを備蓄に回す、そういう流れの中で、これはWHOの報道官の発言ですが、タミフル自体を通常のインフルエンザの治療に使うか否かは各国が判断すべき問題である。ただ、多くの国は、従来のインフルエンザには使わず、新型用の備蓄に回しているというふうに見解を述べられています。

 我が国として、今後タミフルに対する厚生労働省としての、医療現場あるいは一般の患者さんに対して、タミフル以外の部分にも当然かかわってくるんですが、薬の処方、服用に対してどういった方向性を示していくべきと考えておられるか、これは認識ということで結構ですので、お答えいただけますか。

柳澤国務大臣 タミフルにつきましては、今私どもとしては、三月に緊急安全性情報というものを発出いたすまで、添付文書での副作用の警告でありますとか、あるいは二月の末に注意事項をお示しして、その使用についてのお願いというようなことを発出いたしておりますので、基本的には、この私どものいろいろな予防的な注意と申しましょうか、そうしたことに従っていろいろ対応していただくということを想定いたしているわけでございます。

 さらに、今後の対応といたしましては、私どももそれで十分などということを考えているわけではございませんで、四月四日に薬事・食品衛生審議会を開催して、タミフルが販売された十三年の二月以降の中外製薬、製薬メーカーから報告された副作用報告等をすべて精査し、公開した上で審議を行いました。

 その結果どうなったかと申しますと、因果関係については結論が得られませんでしたので、引き続き詳細な検討を行うということになりました。そして、その検討を行うためのワーキンググループの設置に向けて現在準備を進めているという次第でございまして、とにかく、すべてのケースをもう一度精査して、そしてそれに基づいて専門家の先生に御議論をいただく、こういうことになっております。

 しかし、服用そのものについては、今、冒頭申したようなことで、注意をしながら必要な場合に服用をいただく、そういう先生方の現場での御判断をお願いするということを想定しているわけでございます。

柚木委員 おっしゃった一連の流れは私も承知をしておりますが、私が理解をいたしますには、今回、タミフルの安全性について重大な懸念はないという部分をホームページから厚労省さんは削除されているということが、二十日の時事通信の報道でも出ています。そういった部分等を勘案すると、やはりこれは、厚生労働省としてもかなり慎重な対応を、医療現場なりあるいは患者さんに対しても、緊急性情報にさらに加えて周知をしているというふうな形での認識であると私は理解をしておりますので、先ほどの四日の審議会、引き続き詳細な検討を行うということで、やはりこれはスピードが大事だと思いますので、一日でも早くそういったきっちりとした方向性を出していただくということをお願いして、次の質問に入りたいと思います。

 いよいよ新薬、創薬のことで質問させていただきますが、安倍内閣ではイノベーションを掲げておられまして、各方面での技術開発等の推進を進めていく、その中でも創薬というのがトップに掲げられておりまして、けさの日経新聞に、これもちょっと資料には間に合わなかったんですが、こういった見出しがあります。「画期的な新薬、薬価上げ 厚労省 医薬強化五カ年計画」という形で、この記事で見ますと、あすになっているんですね、官民会議で大臣初め三省の代表がそういった方向性を示すということです。

 なおさらぜひ、これはお伺いをしておきたいんですが、今回、この記事の中に「薬価については「革新的新薬の適切な評価に重点を置く」と明記。」そして、そういったものを「開発した製薬会社が研究投資費用を回収しやすい制度に見直すことを盛り込んだ。」さらに「税制面でも新薬開発の支援策を検討」とございます。

 そこで、ぜひ研究開発予算についてお伺いをさせていただきたいんですね。

 ざっくりとですが、例えば日米を比較した場合に、まず、先日の質疑の中でも、大臣だったと思いますが、御答弁いただいた際に、例えば医薬品機構の人員を単純に倍増ですね。倍増といっても、アメリカのFDAに比べると二千人対二百人だったのが倍増ですから、十倍の開きだったのが五倍の差に縮まったにすぎない、もちろん単純比較はできませんが。それと同時に、研究開発予算を調べてみますと、アメリカの三兆円に対して日本、我が国は三千億ということですから、十倍の開きがあるわけですね。

 ですから、二十六日にどういう方向性を示されるのかちょっと私は存じ上げませんが、少なくとも、人員を倍増してまだこれだけの差があるという中で、研究開発予算に対して大幅な拡充、財源の問題は常にあるわけですが、少しでも新薬開発によって人の命を救う、あるいは手術、難病の治療なんかがなくても、薬の投薬によって病気を治癒することができる、さまざまな面から含めても予算を倍増するぐらいの方向性を示されてもいいのではないかと私は考えるんですが、この研究開発予算について、今後の厚労省としての見通しについて、可能な範囲でお答えいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 創薬に関する研究費あるいは研究費予算というものについての考え方ということでございますが、今アメリカの国立衛生研究所の予算が約三兆円に上っておる、それに対して日本のライフサイエンス予算は、厚労省、文科省、それから経産省三省にまたがって計上されておりますが、合計いたしましても三千四百七十一億円ということで、三千五百億円足らずという状況でございます。これに対して、いま少し、本当にイノベーションの一丁目一番地として創薬ということを考えるならば、予算的な面の拡充というものについても取り組むべきではないか、こういう御指摘でございます。

 私どもも、予算が厳しいものですから、ついつい余り元気のいい答弁というわけにはまいりませんけれども、今回、厚生労働省で文科省あるいは経済産業省とともに策定しようとしている政策パッケージの中には、研究資金の集中投入という項目を挙げているわけでございます。これは、医薬品、医療機器関連予算の重点化の推進、こういうことの表題として研究資金の集中投入というものを掲げているわけでございますけれども、心は、今柚木委員がおっしゃるような方向であるということは申し上げることができようかと思います。

柚木委員 その方向性があす示されるものだと思っておりますので、大いに期待をしておきたいと思います。

 それと同時に、先ほどいみじくも答弁で触れられた部分でもあるんですが、各省庁がある意味連携、悪い言い方をすると縦割りというふうな言い方もできるかもしれませんが、それぞれの研究開発予算の中で、創薬に向けて各段階で取り組みをされていると。

 ところが、この研究開発予算について、私も実際に製薬工業協会の方からいろいろなお話も伺ったんですが、他国におけるそういう研究支援システムをちょっと調べてみると、例えばアメリカなんかでも、NIHが基礎から実用までの一貫したヘルスサイエンス研究開発を行うということで、まさに一元化をして行っている。あるいはイギリスなんかでも、これはオスカーと読むのでしょうか、政府横断的な研究推進母体によって、あちらでいう保健省、経産省その他の公的研究ファンドが、一つのその研究コーディネーション、効率的予算配分ということで、一元化をした中で基礎から臨床研究まで、そういった統括を行っていくというふうな流れになっている。

 こういう中で、我が国でも、この研究開発資金のまさに集中投入という今お話があったんですが、一元的に管理をして、例えばがん対策基本法のこともありましたし、いろいろな分野に対して重点的に思い切った投下をしていくということが、より創薬の承認期間の短縮であったり、いろいろな面で私は望ましいのではないかと考えるんです。こういった形で一元化をしていくということの方向性に対しまして、厚生労働省としてどういった認識であるか、お答えいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 医薬品分野でのイノベーションにつきましては、私ども、先ほど御紹介いたしましたように、私どもの省だけではなくて、文部科学省それから経済産業省と連携をとるという体制をつくらせていただいているわけでございます。

 そういうことで、これを一元化して、そしてそれぞれの省庁に予算を割りつけるというところまでいくかどうかは、ちょっとまだ、今現在段階ではここで確言はできないのでございますけれども、いずれにしても、どういう形で共同してこの創薬のイノベーションを進めていくかという実態面についての協議というのは、これから先とこれまでとは私は随分違ったものになってくるだろう、このように考えるわけでございます。

 そのときに、そういう共通の理解のもとで、では、この部分は我が省で受け持ちますよ、この部分はあなたの省でお願いしますよというようなことの話し合いのもとで、機能分担と申しましょうか、連携の上での機能分担というものができ上がってこようと思いますので、それから先の予算要求というのは、またこれは率直に言って、それぞれの役所にシーリングの縛り等が働きますので、幾々らあなたのところというところまでいくかどうかはともかくとして、今言ったような実態面での機能的な分担というものについては、話し合いが行われた上で予算化というようなことも図られていくだろう、このように考えます。

 したがいまして、今柚木委員が言われるように、予算を一元的に、一つの固まりとして示した上で、それぞれの役所で、そのうちの幾ばくかを分担して要求するというところまでいくかどうかはともかくとして、少なくともそうした体制はつくってまいりたい、このように考えております。

柚木委員 確かに、おっしゃる意味もわかります。しかし、とりわけ命にかかわる分野におけるスピードというものが、まさに安全性とともに、命なわけでありますから、おっしゃった実態面での協議というものが今後いろいろな形で工夫をされるということは当然ですが、ぜひそれをしっかりと検証していただいて、なかなかこれは、そうはいっても期間短縮とつながっていないじゃないかというような場合には、ぜひ一元的な取り組みというものも考慮いただきたいと思います。

 続きまして、同じく創薬のために大変喫緊の課題として伺っておりますのが、人材の育成ということでございます。

 これはどういう形でお答えいただくかあれですけれども、文科省さん、厚労省さん、それぞれお答えをいただいた方がいいのかなと思っておりますが、五カ年計画の中に、さまざまな人材育成の内容についてはかなり詳細に触れられております。

 特にその中で、私、これはちょっと気になるなというのが、CRC、いわゆる治験コーディネーターあるいは臨床研究コーディネーターの養成で、これまでに四千五百名がその養成研修を受講していて、これが大変にふえてきているじゃないかと思いきや、実際医療現場での実働数はその半分にすぎない、これはこの報告書にもございますし、また現場からも、そういう話を伺いました。ですから、せっかく育てても現場で機能しないということであれば、せっかくのこのお取り組みもなかなか実態として進んでいかない。

 当然、それに加えて、もちろん治験臨床研究を計画、実施する医師の養成確保等、ここに述べられているとおりですが、そういった人材の確保、例えば、ぜひこれは参考にしていただきたいし、ひょっとしたらもう既にされている部分もあるかもしれませんが、お隣の韓国なんかでは、これは後ほど伺いますが、国際共同治験なども我が国より大変進んでいる面に加えまして、臨床研究専門医、そしてこのCRCなどのいわゆる支援スタッフ、こういった人件費は国の予算で賄っているというふうなことも聞いております。

 ですから、例えば、今回この五カ年計画の中で、治験、臨床研究を実施する人材養成確保策を、この人件費確保まで含む取り組みとしてお考えいただくことが必要なのかなというふうに考えるんです。既にそういう中身であったらばそういう御指摘もいただきたいんですが、この関係の御答弁、どちらにお答えいただくのか、両方がいいのか、お願いをいたします。

柳澤国務大臣 今柚木委員の方から、韓国あたりは臨床研究専門医あるいはCRC、こういうようなものの人件費を公的予算で確保しているというようなことについて御指摘をいただいたわけでございますけれども、率直に言って、私ども、まだそこまでは我々の議論も至っておらないのが実情でございます。

 せっかくの御質問でございますので、先ほど言った人材育成ということにつきましては、文科省、厚労省、それから日本病院薬剤師会、日本看護協会、それから日本臨床検査技師会におきまして、平成十八年度末までに約五千名のCRCの養成をいたしてきたところでございまして、平成十九年度からは新たな治験活性化五カ年計画のもとで、さらに三千名の養成を目指しているところであるということはちょっと申し上げておきたい、このように思います。

 そのうち、新しい治験活性化五カ年計画におきます予算の面についてちょっと触れさせていただきますと、このうち、中核病院と拠点医療機関を連携させまして治験の実施の体制を組み上げるという考え方を持っているわけですけれども、そのうち人件費につきましては、中核病院についての人件費というのは予算化をするということを予定しているというところでございます。

柚木委員 後ほどそちらについても伺いますが、やはりこれはふやすだけではなくて、実際に実働として機能するかどうかが重要だと思いますので、後ほど少し中核病院の研究費についても御質問申し上げますが、しっかりそこはこの十九年度以降の五年間の中で、三年目の中間見直しの際が一つのタイミングだと思いますが、ぜひこれは人件費確保についても御検討いただきたいと思います。

 もうちょっと本当は踏み込んでいただきたいんですが、ちょっと時間がありませんので、次の質問に移ります。

 国際共同治験の推進について伺います。

 御案内のとおりかとは思いますが、この国際共同治験が進めば、外国で利用されている新薬が、より我が国でも使用できるようになり、当然、国民の健康にもプラスになるわけであります。

 そういった際に、先ほどの韓国の例を初めとして、例えば台湾、シンガポールなどのアジア諸国では、いわば治験立国というくらいに国策として治験を推進しておりまして、韓国では治験の半分は国際共同治験というふうなことも伺いましたが、これにより、世界同時承認プロセスに入っていくことが可能になり、当然、早く当該国でも承認できる。これが、今大変大きなテーマになっているいわゆるドラッグラグの解消につながるというふうな話でございます。

 今回、五カ年計画の中にも当然そういう部分は考えられていると思いますが、我が国における国際共同治験への障害が何であって、そしてそれをどのようにこの五カ年計画の中で改善していくのか、詳細までは結構ですから、ぜひ端的にお答えいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 率直に言いまして、私どもの国のドラッグラグということの大きな要因の一つに、国際的な共同治験への参加がなかなか円滑に実現し得ていないということがあるわけでございます。

 世界的な創薬の動き、それからまた、製薬が実現した場合の市場シェアの獲得競争というものを考えたときに、やはりアジアというものは非常に大きな有望分野ということになっておりまして、アジア人での治験というものが欠くことができないということになっているわけでございます。そのときに、当然、人口の多い日本はその国際共同治験の一環に組み込まれてしかるべき立場にあったわけですけれども、それが、我が方の治験の体制がなかなか対応できないということの中で、この輪からとかく外れがち。かわって韓国が、非常に頼りがいのある国ということで、今委員も一部御指摘になられたような、アジア人の治験ということの中では非常に大きな存在になりつつあるということがあるわけでございます。

 当然のことですが、そういったことを我々は看過できない、そういう考え方のもとで、今度、新たな治験活性化計画、あるいは先ほど言った創薬のための新しい政策のパッケージというものを打ち出さんとしているわけでございます。

 この新たな治験活性化五カ年計画の中では、治験の中核となる医療機関を十カ所、それから拠点となる医療機関三十カ所を設定いたしまして、それに対して治験スタッフの雇用の確保などの支援を行って、ぜひとも国際共同治験の輪の中に有力な存在として位置づけられるようにこれから取り組んでいきたい、このように考えているわけでございます。

柚木委員 今御答弁で、まさに私がこの後伺いたい部分、中核病院あるいは拠点医療機関の機能強化についてお触れいただいたんですが、私は、そこの中身をぜひこれからの五年間の中で検証いただき、また必要な見直しも行っていただきたいというふうに考えております。

 これも実際に医薬品、製薬工業協会の方からかなり詳細なお話も伺いましたが、今回の治験活性化に関する事業の概要、資料の三ページにもおつけしておりますが、大臣の重ねての御答弁のとおり、中核病院十カ所、一病院につき一億ですから十億の予算、さらには拠点医療機関が三十カ所、二千五百万掛ける三十カ所で七億五千万ということで、これは確かに一定の前進と私も認識をしておりますが、実際、やはり問題は、費用対効果といいますか、どれだけ実効性があるか。

 これは常にあらゆる施策がそうかと思いますが、三年で中間見直し、そして必要な見直しを実施するというふうにこの計画の中で触れておられますので、これは私が伺った話ですよ、この中核病院と拠点医療機関の体制では、残念ながら、この五カ年計画が想定をしているような形での治験活性化にはとても及ばないと。ではどれぐらいの取り組みが必要なんですかということを伺った場合に、これは十分精査をすべきとは思いますが、十カ所の中間病院を置く、やはり一カ所一億円ぐらいの補助の中でこの十カ所ということでないと、まず実効性が薄いという部分。さらに、この三十カ所に二千五百万ずつというのは、これも本当に、焼け石に水じゃないですが、どれぐらいというのを伺った場合に、やはり二億円ずつぐらいじゃないと、もちろん、スタッフの充実、データベースの整備、あらゆるいろいろなことをきっちりと、ここに想定されていることを行っていこうと思うと、やはりそれぐらいのことが必要になる。

 当然、先ほどの人材育成、実際に人はふえても、そういう仕事ができる状態に医療機関がなければ、とても治験としても進んでいかないわけですから、今ちょっと、あくまでも目安で、一カ所一億円掛ける十カ所、十億円、そして拠点医療機関には二億円ということで八十カ所、三十カ所でなくて八十カ所、こういった体制ということを伺ったわけです。

 この五カ年計画をスタートしてその評価をしていただく中で、さらに必要ということであれば、そういった見直しをぜひ御検討いただきたいと思うんですが、現段階で、これから始めようということですから、今すぐに詳細な答弁をいただきたいとも申し上げませんが、見直しの中でそういったことも含めて考えていくという形で御答弁が可能であれば、お願いいたします。

柳澤国務大臣 新たな治験活性化計画は五カ年計画としてスタートするわけでございますけれども、今委員からも御指摘いただきましたように、その中間の三年目におきまして、実際に我々のねらいどおりの強化目標が達成できるものかどうかという観点からの見直しを行うことにいたしておりますので、そういった機会を十分活用しまして、治験推進の観点から、全体として適切な対応というものを実現してまいりたい、このように考えております。

柚木委員 その見直しを考えていただく際に、今申し上げました私の一つの数字というのも目安にぜひ御検討いただきたいと思います。

 時間がだんだん限られてきましたので、治験についてずっとお伺いしてきましたが、少し視点を変えまして、薬剤師の皆さん、地元で私も幾つかお話を伺う機会もあったんですが、より患者さんとの日常のいろいろな中での接点が近いという意味合いにおいて、訪問薬剤師さんの現状、いろいろな課題について幾つか伺いたいと思います。

 当然、医療というか医業というか、そして、薬ですから薬業というか、その行為については、やはり、それぞれの患者さんの健康、あるいは場合によっては命にもかかわる大変重要な仕事であろうかと思いますが、実は、この医療の分野と薬業の分野において、かなりいろいろな形で対応に相違というか、格差という言葉がこれはいいのか悪いのか別なんですが、あるやに伺っています。

 その中で、まず伺いたいのは、訪問薬剤師と医療廃棄物との関係について、これは大変今御要望いただいておりまして、ひょっとしたらもうよく御存じのことかと思われますが、病院などの医療機関と違って、訪問薬剤師の場合には、医療廃棄物を処分する際に、処理費用は、これは当然、保険適用ではなくて持ち出しとなってしまう。さらに、運搬の際に感染症の廃棄物の許可をとらなくてはならないということなんですね。

 そういう声が上がっておる中で、これは環境省さん、厚労省さんそれぞれにお伺いすることになっているのかもしれませんが、まず環境省さんの方になるんでしょうか。廃棄物処理法の運用の中で、訪問薬剤師が家庭から持ち帰る医療廃棄物については、産業廃棄物の運搬にかかわる許可をとらなくても、患者宅から薬局までの回収、運搬が可能であるというふうに現場の訪問薬剤師の方が聞いている。しかしながら、そういう許可をとらなくもいいのに、これが実際にはなかなかそういった形になっていないというふうな話を伺っておりまして、この点については、ぜひ、都道府県あるいは各県の薬剤師会などに周知徹底をしていただくことが必要かと思われますが、環境省さんでよろしいでしょうか、いかがでしょうか。

由田政府参考人 お答えさせていただきます。

 家庭から排出される廃棄物は一般廃棄物に位置づけられておりまして、在宅医療廃棄物の処理につきましても、一義的には市町村が処理責任を負うことになります。非鋭利であって、血液が多量に付着していないなど、通常、感染性を有しないと考えられる廃棄物については、患者の利便性を考慮いたしまして、市町村が主体となって回収を行うことが適当と考えられておるわけでありますが、お尋ねの薬剤師が家庭から在宅医療廃棄物を回収する場合にありましては、あらかじめ市町村と協議を行いまして、各市町村が作成する一般廃棄物処理計画の中に位置づけますなどの廃棄物の適正処理が確保される措置が講じられておりますれば、特段許可がなくても薬局までの収集、運搬は可能ということであります。

 これらの内容を含めました在宅医療廃棄物の適正処理につきましては、報告書を取りまとめておりまして、平成十七年九月に各都道府県あてに通知をいたしておるところであります。現在、これら市町村の取り組みなどにつきましてフォローアップ調査を行っているところであります。

 今後とも、このフォローアップ調査を踏まえまして、必要に応じさらに周知を図る等の対策の徹底を図ってまいりたいと考えております。

柚木委員 ぜひ、しっかりとそこの部分をフォローいただきたいと思います。

 同じく、厚生労働省さん、その医療廃棄物の回収といいますか持ち帰りの際に、これは医師も薬剤師も、在宅患者を訪問した際の診療報酬、調剤報酬というものになるんでしょうか、そういったものがあろうかと思うんですが、医療廃棄物について、ボランティア的に、持ち出しといいますか引き取った際に、そのものを今度は廃棄物業者へ回収を委託するというんですか、そういう費用は、例えば調剤報酬の中に加算すべきというような形の考え方は、これは可能なのかどうなのか。何らかの形で持ち出しにならないような形をとらないと、訪問薬剤師さんたちの負担が大変大きくなるというふうに私は考えるんですが、この点について、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 在宅療養されている患者さんの医療廃棄物を薬局や医療機関が自主的な取り組みとして処理しているという御指摘でございます。

 本来は、今環境省から答えがありましたように、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づきまして、家庭から排出される廃棄物は、一般廃棄物ということで、市町村が収集、運搬、処分することとなっているわけでございます。

 しかしながら、患者の負担の軽減という観点から、先ほど申したように薬剤師さん等が自主的に取り組まれておるわけでございまして、このいわば報酬上の評価をどうするかということでございますけれども、家庭から排出される一般廃棄物の処理は、法律上、やはり市町村の責務とされている。言いかえれば、引き取りが薬剤師さんとして義務づけられているわけではございませんので、これを調剤報酬において積極的に評価するということは困難だということでございます。

柚木委員 ちょっと残念な答弁ではありますが、もう時間が来ましたので、最後に一つお伺いして、その答弁をもって質問を終わりたいと思います。

 そういった意味では、同じようなことなんですが、往診時におけるお医者さんの場合、特に緊急車両という形での扱いになる場合が該当するのかなと考えております。訪問薬剤師さんが、例えば薬品の配達、あるいはいろいろな形での服用のチェック、まさに医療行為と同様に命と健康を守る上で公益性も高く、そういった場合のケースに、これはどの程度の頻度なのかということも勘案をすべきところなのかもしれませんが、やはり医師と同様に、薬剤師についても、配達時の駐禁免除の対象に加えることが検討されてもいいというふうに私は思うわけです。これについてぜひ御答弁をいただきたいと思います。あとの幾つか通告した質問は時間がございませんので、ぜひ。

 特に、これができないということになると、私も訪問薬剤師さんの話を伺うと、患者さんにとっても大変心強い、まさにかかりつけ医に対して、かかりつけのそういう薬剤師さんがいることによって、やはり安心していろいろな形での薬の服用もできるし相談もできるということでありまして、例えば駐禁免除等によって、こういうことがより円滑に機能する。

 逆に、これができなければ、自治体ごとにこれは議論されるというふうなお話も伺いましたが、まさに地域における医療格差というものが、そういう訪問薬剤師さんの面でも出てこようかというふうに考えますので、ぜひこれは禁止免除の対象に加えていただけるように御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 緊急の用務に使用される自動車につきましては、公共性が極めて高く、緊急に、広域かつ不特定な場所に対応する必要がある用務に従事するかどうか、こういうことによりまして、駐車規制からの除外措置の対象とすることの可否について判断することとしております。それで、御指摘の医師の緊急往診に使用する車両につきましては、そのような考えによりまして、当該措置の対象となっております。これも御指摘になりましたように、除外措置の具体的な対象範囲につきましては、この考え方によりまして、都道府県公安委員会で判断しております。

 それで、お尋ねの薬剤師の方の訪問の車両でございますが、当庁といたしましては、本件用務についてお伺いをして把握しております限りにおきましては、医師の緊急往診に使用する車両のように、一刻を争うような状況が通常の場合常に想定できるという状況には必ずしもない。したがいまして、現時点におきましては、駐車規制からの除外措置の対象とすべき事由は見出しがたいところでございます。

 しかしながら、これらの車両が、個別具体の事例に応じまして、特定の駐車禁止場所に駐車しないと業務が遂行できないような、そういった特別の事情がある場合には、別途、駐車許可制度というのがございますので、この駐車許可制度によって対応が可能というふうに考えております。

柚木委員 ありがとうございました。ぜひ、チーム医療、地域医療の視点からも、その推進を進めていただきたいと思います。

 きょうは新薬のことを中心にお伺いをしました。最後に、新薬は何万人もの医師に匹敵をするという言葉、創薬の本に書いてありました。ぜひ、さらなる拡充をお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤(信)委員長代理 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 十五分という持ち時間でございますが、できるだけ質問をしたいというふうに思っております。

 まず、国民年金制度について大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 公的年金制度につきましては、保険料を納めても将来年金が受け取れない、こういう不安ですとか不信、こういうものがあり、それを反映して、国民年金保険料の納付率は依然として低迷を続けておるわけでございます。社会保険庁では、恐らく実現が不可能だとは思いますけれども、平成十九年度の納付率八〇%の達成に向けてさまざまな納付対策を行っているというふうに聞いております。

 また最近は、国民年金保険料の強制徴収、これも積極的に実施されているようでございまして、平成十八年十二月末現在の十七年度着手分の差し押さえ件数、これが六千九百七十五件と大きくふえておるわけでございます。

 確かに、悪質な保険料の未納者、これに対しては最終的には強制力を伴った措置も必要だというふうには考えておりますけれども、ただ、保険料を納めていらっしゃらない方の中には、さまざまな理由から、今後も納付を続けても受給資格要件を満たす二十五年に達しない人が含まれているというふうにも思います。こうした、納付を続けても二十五年に達しない人に対してまで公権力を行使すると、当人にとっては老齢給付に結びつかない、保険料の掛け捨てになってしまうのではないかなという見方をする人もおります。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、社会保険庁が現在行っている国民年金保険料の強制徴収の手続の対象者、これはどのような考え方で選定をされていらっしゃるのか、それから、その対象者には納付を続けても二十五年に達しない方も含まれているのか、強制徴収の対象者は基本的に所得のある人と承知しておりますけれども、障害年金や遺族年金、こういうメリットを説明しながらも、保険料納付に応じてもらえないこの理由はどこにあるというふうに考えていらっしゃるのか、お答えいただけますでしょうか。

柳澤国務大臣 一般的に、納付をされない方々に話を改めて聞けば、恐らく年金の信頼性ということを口にされるんだろうと思うわけでございます。しかし、これに対しては、私どもは、十六年度の改正というものは持続可能なスキームであるということを考えているわけでございまして、このことを説得していかなければならない、このように考えております。

 もう一つ、強制徴収についてお尋ねでございますけれども、これについては、今委員も既にお話しになられたとおり、十分な負担能力がありながら、たび重なる督励にもかかわらず納付をしていただけない方、この方々に対して負担の公平の観点から行っているものでございます。

 現在、体制の整備を図りながら、強制徴収の対象を漸次拡大しているところでございます。今御指摘のように、保険料を納められても老齢基礎年金の受給資格には満たないというような方々につきましては、現時点では強制徴収の対象から除外をいたしておりますけれども、将来的にはこれは対象とするということを私どもは基本的な考え方としているわけでございます。

糸川委員 これは通告していないので、もし局長で答弁できればなんですが、これは除外を今はしているけれども、これからは含める、つまり、それは掛け捨てになってしまう可能性もあるけれども仕方ないよねという話なんでしょうか。

青柳政府参考人 重ねてのお尋ねがございました。先ほど大臣が申し上げたことの繰り返しになる部分もございますが、公的年金制度は、国民の公平な負担のもとに世代間扶養によって成り立つ仕組みでございますので、負担能力のある方については、法律上、保険料を納付していただく義務があるということでございます。

 したがいまして、仮に老齢基礎年金の受給権に結びつかないという方でありましても、保険料を納付する義務がある、しかも、たび重なる督励にもかかわらず納付していただけないという場合には、まじめに保険料を納付していただいている方々との負担の公平という観点からは、強制徴収の対象とすることもやむを得ないというふうに考えております。

 ただ、老齢基礎年金の受給権に結びつかない方に対しましても、万が一の場合に例えば障害基礎年金や遺族基礎年金の保障がされるということにつきましては、十分に理解を得ながら徴収をさせていただきたいと考えております。

糸川委員 そうですか。

 我が国の公的年金制度全体を見ますと、やはり年金を受給するためには二十五年という年限が必要なわけで、実際、諸外国に比べて長い加入期間が必要となっているわけです。そうしますと、受給期間に満たない方が実際に強制徴収をされてしまうと、その方々からもまた不公平だという声も上がってくるのではないかなと。

 そこで、この受給資格期間、これの短縮等を求める意見も出てきているというふうに思いますが、この意見に対しては、低所得者は保険料の免除を受ければ加入期間が算入される、七十歳まで加入できる特例措置など、受給権確保に向けた取り組みが実際行われるというような答弁が以前あったかなと思いますが、長さにかかわらず保険料を納めた期間に対応した年金給付が受け取れるという、このわかりやすい制度ということも、公的年金制度に対する国民の信頼回復ですとか、特に若年者の納付意欲の喚起につながるのではないかというふうにも考えるんです。

 いきなり受給資格の期間をゼロにしろという話では全くなくて、少なくとも段階的に期間を短くするようなことが可能ではないかとか、例えば、今大臣、これからは強制徴収を二十五年に満たない人でもしていくんだよと、この方たちは、障害年金とか、障害を持たれた場合にはそういう障害の給付をされることがあるんだけれどもということだけのために掛け続けるのではなくて、そういう方々に短期間でもそれに応じた救済措置等があってもいいのではないかなというふうに考えます。

 現行制度が二十五年としている理由にとらわれない、そして受給資格期間の短縮に向けた大臣の率直な考え方をお聞かせいただければなと思います。

柳澤国務大臣 今いろいろな工夫を年金の受給資格取得期間についてもいたしていることは、もう糸川委員は御案内かと思いますが、例えば、低所得等の理由で保険料負担が困難な方には免除制度を活用していただいておりますが、この免除期間というのは、実は受給資格を構成する期間に含まれるというようなことの制度になっております。

 それからまた、先ほども委員御自身もおっしゃられたように、六十歳以上でも任意加入できるというような道を開いておりまして、できる限り受給資格期間というものが満足されるような制度をつくっておるということが一方あるわけでございます。

 それからまた、受給資格期間を、受給資格要件を短縮するということについては、低額の年金者をふやすということになりまして、結果的には公的年金に対する信頼というものを揺らがせるというように私どもは考えているわけでございます。

 そういうようなことから、やはり年金につきましては、原理原則の世代間扶養という制度の大前提に立ちまして、私どもとしては、受給資格期間を短縮化するというようなことについては極めて消極的な考え方というか、そういうことは考えないということが我々の立場だということを申し上げたいと思います。

糸川委員 これはもしできれば局長か、部長でも構いませんが、それでは、二十五年だというふうにしている根拠というんでしょうか、なぜ短期間ではだめなのかというのを今お答えになることはできますか。

渡辺政府参考人 先生御承知のとおり、諸外国ではいろいろな例が確かにございます。そもそも最低加入期間のない国もあります。また、アメリカのように十年、イギリスの場合には、制度的な理由なんですけれども、男性は十一年、女性は九年数カ月という男女別とか、ドイツの場合は五年、日本に比べれば、もちろん比較的短い数字のところが多いわけでございます。

 したがいまして、白紙で考えますと、いろいろな選択肢があるのではないかという御指摘は私ども常々頭に入れておるわけでございますが、長年、国民年金制度それから厚生年金制度あわせて運営してきている我が国の中で、この二十五年というものを前提にして多くの方々が保険料の納付の御努力をいただいてきている歴史的な事実というものの重みは、やはり私ども十分留意しなきゃいけないと考えております。

 十九年度ベースでございますが、二十五年納付の場合の基礎年金の月額は四万一千二百五十八円、そうなっており、少し違っても同じじゃないか、こういうような御議論はあるかもしれませんが、満額の六万六千円に対比いたしまして、やはり、この四万円台をきちっと保障できるということは、私どもは、制度創設以来の、大切な老後の支えとして、この制度の大事な点であろうかと思っております。

 もう一点申し上げますと、いろいろな御指摘はあります。少し短くてもいいじゃないか、いや、なくてもいいじゃないか、いや、その方が収納率が上がるのではないか、さまざまな御意見をいただいてきておりますが、端的に申しまして、例えば、一度二十年に下げて、もう一度二十五年に上げるということは不可能事ではないかと私どもは考えております。

 したがいまして、この部分については、大臣から、原理原則にのっとって消極的なスタンスで臨む、こうおっしゃっていただいておりますが、実に深いお言葉だというふうに私も承知しておりまして、非常に慎重に考えて判断しなきゃいけない事柄ではないかというふうに考えております。

糸川委員 もう時間もないんですけれども、これは歴史的な重みということよりも、公的年金制度のあり方というのを考えたときに、では、六万六千円で老後がちゃんと安定して、日本人として、そして人間として生まれて、そもそも六万六千円で人間らしい生活ができるのかという話になると、今の日本では厳しいのかな。これは、当然大臣はそのように感じられるんじゃないかなと思います。

 それよりも少ない、二十五年であれば四万数千円だ、これではさらに厳しい。では、それ未満だったら、もうしようがないから短期間にしないで二十五年にしようよという話かもしれませんけれども、今後、強制徴収というものをかけていくのであれば、ぜひ、二十五年にどうやっても満たない人がいるのであれば、その人たちを救済するということをしっかりと考えてから強制徴収もしていくんだと。

 たとえその方々が少ない給付金額であったとしても、強制徴収される方々というのはもともとそれなりの所得がある方、だから強制徴収をかけるんだろうというふうに思いますので、そういう方たちにも不公平感が生まれない、そして、公的年金制度のあり方に不信感とか不安だとか不公平感だとかいろいろ感じていらっしゃる方々が今多いということも認識していただいて、ぜひ、その制度の確立というものを目指していただきたいなというふうに思います。

 以上です。終わります。

伊藤(信)委員長代理 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則です。

 これから一時間にわたりまして、肝炎対策、歯科医療、介護予防、そして社会保険庁問題について質問をしたいと思います。

 まず最初に、きょう資料をお配りさせていただきました。少し量が多いですが、お許しをいただければと思います。

 まず冒頭に、かねてから懸案になっております肝炎訴訟、肝炎対策についてお伺いをしたいと思います。

 まず、一枚目の表紙を見ていただければと思います。

 先日、去る三月二十八日から、五十人の薬害C型肝炎の原告の方々、患者の方々が座り込みをされたわけであります。本当に一般の方の座り込みとはわけが違いまして、御自分の病気と闘いながら座り込みをされた。本当に命がけの行動をとられたわけであります。

 この記事にも書いてありますように、「私たちには、時間がありません」と。ここに出ております写真に写っている方は、このたび実名での原告を決意されました浅倉美津子さん、五十六歳であります。浅倉さんはマイクでこういうことをおっしゃっていました。「控訴を続けて、最高裁で国の敗訴が確定するまで、あと何人の原告の命を奪うつもりですか」と。この浅倉美津子さんのお話は私も何度もお聞きしましたが、今も慢性肝炎で苦しんでおられる。そういう中で、きっちりした治療を受けたいけれども、やはりインターフェロン治療もお金がかかるので十分に受けることができないということで、非常に苦しんでおられます。そして、今回、今まで匿名だった方ですが、実名を出すことによって、またマスコミの方々から取材を受けることによって国が動いてくれるのではないかということで座り込みをされたわけであります。

 このことを受けて、下村官房副長官が首相官邸で原告代表の山口美智子さんと弁護団の代表に会ってくださった。そして、今後与党とも相談して対応を考えますという趣旨のことを安倍総理の伝言としておっしゃったということなんですね。

 あれから一カ月がたとうとしております。五月の連休明けには与党プロジェクトチームも立ち上がると聞いておりますが、これは本当に待ったなしの問題であります。

 そこで、二ページ目を見ていただければと思います。

 先ほどの浅倉美津子さんの言葉にありましたように、恐れていた事態が現実のものとなりました。九州原告三十一番、匿名の方であります。この二ページ目ですね。その方が、残念ながら四月十三日に、肝硬変、肝がんとなり、闘病の末、原告のままお亡くなりになってしまいました。心より御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 この日のうちに、何人かの原告の方々から私のところにも連絡がありました。本当に原告の方々は涙に暮れておられまして、もう何とかしてほしい、こういうふうに国が高裁、最高裁へと引き延ばしているうちに、一人また一人と十分な治療も受けることなく原告が亡くなっていくと。やはりぜひとも早期に政治的決断をしていただいて、治療費助成を中心とする恒久対策を肝炎に対してやっていただいて、患者の救済、そして訴訟の早期終結というものをぜひともお願いしたいと思います。

 この九州原告の方も、ここに下線を引きましたように、昭和六十三年、一九八八年、胃潰瘍で出血した際にフィブリノゲンを投与されました。男性の方であります。四十七歳のときにフィブリノゲンを胃潰瘍で出血した際に投与されて、そして六十六歳で四月十三日にお亡くなりになられました。

 アメリカでは一九七八年にフィブリノゲン製剤の使用が取り消されていた。この資料は、御遺族の御了解を得て弁護士の方から公表してもいいということでいただいた資料でありますが、この三十一番の方は、何でこの薬だけアメリカと同じように使用をとめなかったんだということを最後までおっしゃっておられた。そして、八月の福岡での勝訴判決を聞いたときには、とにかく病気をなくしてほしいということをおっしゃったわけです。そして最後に、四月十三日、国からも企業からも謝罪を受けることなく亡くなってしまわれたということであります。

 残念ながら、次から次へと原告の方は亡くなっていかれます。今までも三人の方が亡くなっておられます。そしてこれは、控訴をすれば、また五年かかるか十年かかるか最高裁になるまでわからない。そしてまたこれは、原告の方のみならず、カルテが残っていないからといって証明できない多くの方々、原告の何百倍、何千倍もおられる方々、肝がんで亡くなっておられる方々が毎日三百人ぐらいおられるわけですね。

 そこで、お聞きしづらいことを大臣にまずお聞きしますが、今まで委員会で申し上げていることですが、控訴していけばいくほど、最高裁まで行った後、お元気だったらまだ救いはあるかもしれませんが、それまで待てない方というのが非常に多いわけですね。そして、これは早く救済をして、治療費助成ができたら、インターフェロン治療や十分な治療を受けられて命が助かる方も多いわけです。

 このような、原告が残念ながら待ちきれずにお亡くなりになられた、こういう訃報に接して、柳澤大臣、いかが思われますでしょうか。

柳澤国務大臣 まず、裁判のことにつきましては、患者を救うための医薬品におきまして生じました問題は、やはり時代時代の医学的知見に照らして、厳正な司法判断を求めざるを得ないというのが私どもの立場でございます。要するに、事後的な、結果責任を負わされる、損害賠償責任を負わされるということは、これは行政を預かる立場からいっても、これを容認するというわけにはいかないということが我々のまず立場でございます。

 ただ、こうした裁判あるいは訴訟の問題とは別に、肝炎対策を推進することは極めて重要であるというふうに考えておりまして、私ども、これまでも早期発見、早期治療の促進、それから治療水準の向上という観点から、検査体制の強化、診療体制の整備、治療方法等の研究開発等の総合的な取り組みを推進しているところでございまして、今後とも、こうした取り組みは一層推進してまいる所存でございます。

山井委員 大臣、質問に答えてください。

 今までと同じ答弁を読み上げてくれと言っているんじゃないんですよ。こういうふうに控訴している間に原告の方がお亡くなりになられた、控訴をされて一カ月以内にこういう非常に悲しいことが起こってしまった、そのことについての大臣の御感想をお聞きしたいということを質問しております。

柳澤国務大臣 亡くなられるということに対しては、もう心からの哀悼の気持ちを表させていただきます。

 ただ、裁判で争っているということは、今損害賠償、国家が不法行為を行ったということで訴訟になっているわけでございまして、私どもとしては、薬剤というものは、要するに有用性というか、緊急に対処しなければならない、命のかかったようなそういう症状に対して、その副作用というかそういうものが想定されるにしても、命を救うということが大事だということでお医者さんが判断をされた、そういうようなことについては、私どもは、これは尊重されるべきだし、そこに国としての不法行為が介在するということについては、これはもう容認するわけにはいかない。そうでないと、これからの医療政策あるいは薬剤の政策ということは立場がなくなってしまうということがあるわけでございまして、そうした訴訟の問題には、今申したような立場でしっかりと国として取り組まざるを得ないということでございます。

 そういう不法行為とか訴訟の問題とは別に、肝炎対策を推進するということについては、私どもとして、現在、先ほど申したような取り組みをしているのですということを申し上げたわけでございます。

山井委員 今までハンセン病もヤコブ病も薬害エイズも、最高裁まで持っていかずに政治決着したじゃないですか。それは結局、そこまで引き延ばしたら、原告や患者の方々が亡くなってしまう、そこで政治家が判断したんじゃないですか。

 今の大臣の答弁を地裁の裁判をやっている最中に聞くのならばまだわからないでもありません。でも、大阪、福岡、そして今回、東京と三連発で負けたわけじゃないですか。これは、常識的に考えたら、最高裁まで行っても、これがひっくり返る可能性というのはほとんどないですよ。やはりそこは、このままいけば、これは、本当に見殺しにすることじゃないですか。

 きょうも傍聴席に大阪の原告の森上さんの御主人がお見えになっております。前回のときには森上悦子さん御本人、肝臓移植をされて、肝がんになって、そして本当にたどたどしい足取りで傍聴席に来られましたが、残念ながら、今また体調が悪化して、本日入院されて、この傍聴席にもお見えにならない。お父さん、かわりにぜひ行ってきてくれということで、きょう、御主人が大阪からわざわざ来てくださいました。

 私も、毎月か何カ月に一遍かわかりませんが、またお一人亡くなられた、またお一人お亡くなりになられた、こんな議論はしたくないんですよ。厚生労働省、そして厚生労働大臣というのは、人の命を守る役所のはずですね。

 厳しい質問かもしれませんが、武見副大臣も、武見太郎先生が今から二十年以上前に、二十一世紀は肝炎の時代になるという、非常に先見性に満ちた御本を書かれて、その当時から警告されていたわけですね、こういうことになることを。

 武見副大臣からも一言、今後の御決意をお聞きできればと思います。

武見副大臣 まずは、原告の方で亡くなられた方に対しましては、私も心から哀悼の意を表したいと思います。

 その上で、やはり肝炎の問題というものについて、裁判という場所における立場というのは、私もやはり大臣と同じ立場をとらなければなりません。

 その上で、肝炎というものに対する対策を強化する、いかに具体的にそれを策定し早期に実施するのかということが、現実的な課題として取り組まなければならない問題だろうというふうに私は思っております。

 したがって、まずは、そうした早期発見のための検査体制の強化、そしてまたさらに、治療にかかわる体制の充実、そして三つ目に、まだ確実に開発されてきていない治療の方法についての、さらなる臨床的効果の高い治療方法の開発の促進、こういったことにやはり取り組んでいくということでなければならないだろうというふうに思っております。

山井委員 これは自民党にも公明党にも、原告の方や患者の方が本当に体調が悪い中、陳情に行っておられると思います。しかし、これは恐ろしいことですよ。そういう陳情に行っておられる原告の方がお一人お一人お亡くなりになられて、陳情もできなくなってくるんですよ、だんだん。そういうことで本当にいいんでしょうか。

 三月二十九日に、公明党の肝炎対策プロジェクトチームが、赤松座長の名前で、全面解決を求める薬害肝炎問題に対する申し入れをされました。内閣官房長官塩崎議員あてであります。この中で、「患者の経済的負担の軽減及び生活の質の向上を図るため、医療費負担の軽減と治療水準の向上に努めること。」というふうに書かれております。

 これは、先日も石田副大臣からこの場で御答弁をいただいた公明党の内容であります。

 今、武見副大臣からもいろいろ御答弁いただきましたが、やはり患者の方々が一番今切実におっしゃっておられるのが、インターフェロン治療への医療費の助成なんですね。昨年十一月八日に答弁していただいたように、七十万人、肝炎で苦しんでおられる、治療が必要な人の中で、たった五万人しかインターフェロン治療を受けておられない。その理由は、やはり自己負担の重さにあるわけです。

 石田副大臣にお伺いしたいと思いますが、この治療費助成についての検討ぐらいは、ここまで与党もPTで動き出す、安倍総理も発言をされる、そういう流れですから、やはり治療費助成の検討ぐらいはぜひともしていただきたいと思いますが、石田副大臣、いかがでしょうか。

石田副大臣 私も、先ほどお聞きをしました、お亡くなりになられた方には心から御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 山井委員からたびたび同趣旨の御質問をいただいておりますけれども、基本的には、大臣がおっしゃいましたように、裁判とは別に、いろいろな体制については充実をさせていく、こういうことについては厚生労働省を挙げて取り組んでいかなきゃいけないというふうに思っておりますが、治療費助成につきましては、直ちにこの場で具体的なことをお答えするのは困難でございます。

山井委員 ぜひとも、与党のPTも連休明けには立ち上がるそうですから、そこが患者の方々、原告の方々の最大の望みですので、そのことを検討していただきたいと思います。

 もう一問だけ、肝炎についてさせていただきます。

 それで、四ページを見ていただきますと、「肝炎対策の現状と課題」、これは参議院の調査室の渡邉将史さんが書かれたペーパーであります。昨年十二月、「立法と調査」に書かれております。B型肝炎訴訟最高裁判決、これは原告がもちろん勝訴しました。そして、C型肝炎訴訟地裁判決を受けてということで、今その原本を柳澤大臣と両副大臣にもお渡ししましたので、後で読んでいただければと思いますが、結論を申し上げます。

 五ページを見てください。どう書かれているか。「早期から適切な治療を行うことにより、肝炎ウイルスの感染を原因とした死亡を減らすことが可能」である。そして、その下に下線を引いてあります、五ページ。インターフェロンについては、インターフェロンの治療を受けている患者は五万人、「全体の患者数と比べて、決して多い数字とはいえない。高額な治療費のためにあきらめている人もいるだろう。国は、訴訟への対応とは別に、何らかの医療費軽減施策を講じなければならないのではないか。」と書かれております。それで、六ページの一番最後の行ですね、「司法の場で続けて国の責任が指摘されたことを踏まえ、裁判による決着を待つことなく、一刻も早く行政上の救済策を講ずるべきである。」というふうに結論が下されております。

 私は、もうこのペーパー、全部で十ページですが、このペーパーに書いてあるとおりだと。もう三連敗して、B型肝炎でも最高裁で十七年もかかって負けた、こういう現状、過去の、ハンセン、ヤコブ、スモン、エイズ、すべてを見ても、こういう結論にしかなりようがないんですね。ほかになりようがない。ぜひともこの方向で検討していただきたいと思います。もうこれ以上、答弁は求めませんが、ぜひともお願いしたいと思います。

 それでは次に、介護保険のことに移らせていただきます。

 これも資料をつけさせていただきましたので、十一ページ、東京都の社会福祉協議会の資料を見ていただけますでしょうか。介護予防に昨年四月から転換して、今まで要支援とかだった方が新予防給付に移った。この介護予防というのが昨年の介護保険改正の目玉だったわけであります。その介護予防がどうなっているかということを少し議論したいと思います。

 柳澤大臣にお伺いをします。

 この介護予防で、今まで要支援とかだった方が介護保険改正で新予防給付の介護予防に移って、サービスは減っているんですか、ふえているんですか。どういう状況ですか。一年たちましたが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 新予防給付導入の前後におきます介護予防サービスの利用者お一人お一人のサービス提供回数の変化につきましては、十九年一月から開始しました継続的評価分析支援事業におきまして、市町村がデータを収集しまして、それを国が評価、分析することとなっております。

 ただ、これとは別に、議員が御指摘になられました平成十八年七月に東京都の社協が取りまとめました介護保険制度の改定の影響についての報告書によりますと、調査対象七百二人のうち、そこに示されたように、今まで利用していた時間や回数を減らさざるを得なくなったとか、利用していたサービスが利用できなくなったというような方々もいらっしゃる、そういう変化となっております。

山井委員 きのう聞いたら、厚生労働省としては東京都の調査は把握しているということでしたが、大臣も見てもらったらわかりますように、「今まで利用していた時間や回数を減らさざるを得なくなった」四九・三%、二人に一人がサービスを減らしている。そして二番目、「今まで利用していたサービスが利用できなくなった」三九・五%、十人中四人が今まで利用していたサービスが利用できなくなった。例えば訪問介護の場合、今まで利用していた時間や回数を減らした方が六三・四%、三人に二人が減らしているわけですね。

 そして、次のページ、十二ページを見てください。これは東京都社協の調査です。例えば、訪問介護「時間が短くなり途中で帰ってしまう、外出できなくなった」、通所介護「回数が減って楽しみがなくなった、閉じこもりがちになった」「三月まで週間に二回だったのが、今は一回になったので、胃が痛くてなりません。」また、通所介護「三十時間が十一時間になり、病院の待機時間が認められず、家族の介護が大幅に増した。」「予防給付の機能訓練は九十二歳の老人には無理。」福祉用具「ベッドがないと起き上がれない、車イスがないと外出できない」「母はベッドがない生活は無理なのに、今回要支援一となり、週二回利用していたデーサービスも一回で、今まで借りていたベッドも九月で返却。本当に必要な人には貸していただけないのでしょうか。これからどうしたらいいのか母も眠れないほど悩んでいます。」こういう現状であります。

 そして、手元に、「シルバー新報」という介護に詳しい新聞がございますが、一面で「制度改正で「不安」六七%」、そして、きわめつけは、二ページ目に、居宅介護支援事業所アンケートがあります。改正介護保険の五段階評価、予防重視型に転換したことに関してはどういう評価か。予防重視型への転換については、最悪という評価が一五・四%、悪いという評価が三九・二%、つまり五五%の人が最悪あるいは悪いと答えているわけですね。

 実際には、末期がんの人が介護予防に認定されたり、またベッドの貸しはがしで苦しんでおられたり、私の知り合いの方も、サービスが減って、そして体調が悪化して、入院を今もされています。ほかにも、今まで利用していたサービスが利用できなくなって、それで体調が悪化した人も何人もおられます。

 これは介護予防の趣旨とは全然違うんじゃないですか、大臣。こういう現状が起こっているのに、一月から調査するというのは、余りにもそれはのんびりしているんじゃないですか。もう一年もたっているんですよ。

 これは二年前の介護保険の改正の議論のときにもしたんですけれども、対象はぴんぴんとした健常者じゃないんですよ。足腰あるいは心身が弱って、本当にひとり暮らしとかも苦しい、介護保険を利用している弱いお年寄りなんですよ。一たんサービスを減らして悪化したら、今後ふやしたってもとに戻らない危険性もあるわけです。

 大臣にお伺いしたいと思いますが、サービスが減ったかふえたかはいつわかるんですか、去年四月やったことで。大臣、お答えください。

柳澤国務大臣 改正介護保険法の附則第二条第二項におきまして、検討規定というものを置いております。政府は、予防給付及び地域支援事業の費用に対するその効果の程度等の観点からの検討を、法律の施行後三年を目途として行うこととされております。

 このため、国におきましては、市町村の協力もいただきまして、継続的評価分析支援事業によりまして、一万人以上の要支援者について、通所や訪問サービスの利用回数やサービスの具体的内容、要介護度、心身の状態等に関する百五十項目以上につきまして、利用開始時及び三カ月ごとに調査をすることといたしております。この調査の集計及び分析結果の公表につきましては、要介護認定の有効期間における経過措置及びその後の新予防給付に関する分析、評価の期間を考慮しまして、平成二十年の秋を目途に行うことと予定をいたしております。

山井委員 大臣、いいかげんにしてくださいよ、これだけ困っている人がいるのに。

 平成二十年の秋といったら、それは始まってから一年半もたっているじゃないですか。今既にサービスが減らされて困っているんでしょう。東京都の調査で、訪問介護も三人に二人は減らされているじゃないですか。それが減らされているかどうかを把握できるのが来年の秋ですか。何を言っているんですか。サービスが減ってその間に体調が悪化したり、入院したらどうするんですか。大臣、ちょっと常識で考えてくださいよ。相手は生身の人間なんです。今始めたんじゃないんです。これは、去年の四月から改正しているんですよ。普通に利用者のことを考えたら、サービスが減っているのかふえているのか、介護予防をいいと思ってやったけれども、お年寄りは元気になっているかな、悪化していないかな、自分の家族だったらそういう心配はしないですか。いや、本当に私はその神経がわかりません。

 私、申し上げたいのは、最近の厚生労働省の政策、ちょっとめちゃくちゃじゃないですか。リハビリも、日数制限で切って、大混乱が起こって、お年寄りがそれで弱った。そうしたら、ちょっともとに戻しますと。障害者自立支援法も、大幅に負担を上げて、利用者が大幅に減って、挙げ句の果てに、それがすべての理由とは言いませんが、障害のある娘さん二人と一緒にお父さんが無理心中までされておられる、あるいは作業所に通えなくなって離婚をされている御両親の家族もあったりする。うまくいかなかったからちょっと負担を軽くします、そういう話じゃないでしょう。お年寄りは病気になり、苦しみ、障害者は倒れ、家庭は崩壊しているケースがあるじゃないですか。それは、自己負担を戻したらもとに戻るんですか。

 本来、政策というのは、やる前に逆にモデル事業をやって、効果があったらやるというのが普通なんじゃないんですか。最近の政策を見たら、やってみます、私たち民主党が大反対して、強行採決して、やってみました、やはり批判されたようにうまくいきませんでした、やり直します、予算をつけますと。相手は生身の人間、それも、介護保険でも自立支援法でも医療制度改革でも、対象としているのは一番の弱者じゃないですか。その人たちを、人体実験みたいなことをやってどうするんですか。大臣、それは通りませんよ。

 介護予防を去年の四月からやって、うまくいっているかどうか、サービスが減っているかふえているか。言っておきますけれども、東京都の社協は三カ月で結果を出しているんですよ。そんなきっちりした全国調査でなくてもいいんです。大体の傾向がわかればいいんですよ。

 大臣、介護予防は今現場でどう言われているか御存じですか。全くうまいこといっていない。現場へ行って聞いてくださいよ。全くうまいこといっていない、お年寄りは泣いている。もちろん、うまくいっているケースも一部はありますよ。でも、報酬も低いから非常に大きな問題になっている。それを、スタートして二年半、ほったらかしているというのは、それは通らないですよ。大臣、本当だったら、一年たったらサービスが減っているかふえているかぐらい把握していないと無責任過ぎるんじゃないですか、改革をやっておいて。

 大臣、改めてお聞きします。

 サービスが減っているかふえているか、来年の秋なんかで通るはずはないでしょう。いつまでに教えてもらえるんですか。

柳澤国務大臣 介護予防サービスの利用の状況につきましては、地域包括支援センターによりましてモニタリングが行われておりまして、仮に不適正な過少サービスということがあれば、これは改善される仕組みとなっております。

 厚生労働省といたしましては、不適正な過少サービスが発生しないよう、自治体職員を集めた全国会議におきまして、地域包括支援センターによる確認の徹底、それから不適正なサービスを提供する事業者に対する都道府県、市町村による是正指導といったことを周知徹底しているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後とも、利用者の視点に立って、介護予防サービスが適正に提供されるよう努めてまいりたい、このように考えております。

山井委員 今の答弁、矛盾していると思いませんか。利用者の立場に立ってと。全然立っていないじゃないですか。そういう是正指導をして、その是正の結果、サービスがふえているのか減っているのか、いつわかるんですか、大臣。もう一回お答えください。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 このサービスにつきましては、理由もなく一律にカットするというようなことで取り組んでいるわけではないわけでございます。

 サービス量の変化につきましては、今後、年度内にも一部仮集計ができるかどうかということにつきまして検討をいたしたい、このように考えております。

山井委員 大臣、それは無責任過ぎますよ。現実に、お年寄りの多くがサービスを減らされて困っているんです。悲鳴を上げているわけです。その人たちは国会に陳情も来られませんよ、苦しんでいるわけですから。

 大臣、もう一つ申し上げますと、この十ページの資料を見てください。こういうことになるのではないかということで、二年前の国会審議でそのことが大きな議論になっているんです。政府・与党が介護予防、介護予防と言うから、介護予防の趣旨は民主党も賛成ですよ、でも、まさか、その介護予防という名前をかりてサービスがカットされて、結果的にお年寄りが弱るなんということになりはしないでしょうねと。

 ですから、これは確認答弁をやっているわけですよ。新予防給付では、家事援助が一律にカットされるのではないか。今までの水準を大幅に下回らないようにすべきではないか。それに対して、当時の尾辻大臣はこう答えているんですね。下線を引いてある部分です。新予防給付は、軽度者の既存サービスのうち、一部の不適正なケースの適正化を目指すものであり、原則として、現在提供されている適切なサービスは今までどおり利用できるものとする、一部の不適正なケースを適正化すると。

 大臣、一部の不適正なケースを適正化するというのと、先ほどの東京都の調査の六三%、三人に二人が訪問介護を減らしているというのは、この確認答弁どおりなんですか。ということは、三分の二の人が不適正なサービスを利用していたということなんですか。大臣、これを読んでみられて、今の現状と、この確認答弁どおりいっているんですか。どうなんですか、これは。

柳澤国務大臣 御指摘の尾辻大臣の答弁でございますか、ここにも、適正なケアマネジメントに基づいてどういうケアの計画を立てるかということが記されているわけでございます。

 私どもも、この地域包括支援センターにおける介護予防の基本理念を踏まえたケアマネジメントがあるということと、もう一つはモニタリングも行われておるということでございまして、利用者の状態の改善や重度化の防止に必ずしもつながらない不適正なサービスについては適正化される一方、過少サービスの方については地域包括支援センターが点検して改善を図るということにいたしておりますので、その方々の御努力というものについて、今実態調査等を踏まえながら、よく見守っているという状態でございます。

山井委員 大臣、私は申し上げておきたいんですけれども、国会の審議というのは重いですよ。国会で、一部の不適正なケースの適正化を目指して、原則として、今まで提供されている適正なサービスは利用できると言っておきながら、実態は全然違うことになっている。そんなのだったら、厚生労働委員会の審議は成り立ちませんよ。今後もこういうことだったら、大臣の答弁も厚労省の答弁も信用しないですよ。

 実は、私はこのことを一年前から言っているんですよ。サービス量が減ったのかどうなのか、お年寄りが元気になったのか弱ったのか、こういう確認答弁もあるから早急に調べてくれと。ところが、きょう聞いたら、何ですか、来年の秋までわからないと。

 もう一つお聞きしたい。これは今調査をやっているとおっしゃいましたが、その調査の資料がここに一部書いてあります。どういう調査か。十五ページ、継続的評価分析支援事業等。十五ページから十六ページ、十七ページということであるわけですけれども、十五ページに、実施主体、市町村と書いてあります。ところが、柳澤大臣、今やっているのは、七十六カ所でみずからが手を挙げた市町村のみなんです。

 大臣、私はこれはおかしいと思います。みずから手を挙げる市町村というのは、力を入れてやっていて、うまくいっていると自負しているところだけじゃないですか。全く平均的な結果なんか出てこないですよ、こんなのは一年半待っても。平均的なところとか、やる気のないところとか、そこにもお年寄りは住んでいるんですから。平均的なところをアトランダムに調べないと。募集しますから調査をやりたいところは手を挙げてください、そんな一部の、いい成績が出せると自信を持っているところだけ集めて調査して、何の実態調査になるんですか。

 大臣、平均的なところとか、アトランダムにもうちょっと入れてくださいよ。そんなもの、うまくいっていないところが手を挙げるはずないじゃないですか。でも、そういううまくいっていないところのケースこそ問題なんじゃないですか。大臣、こういう手を挙げた自治体に限るというこの調査、もっとふやしてください。平均的なところ、手を挙げないところでも入れてください。大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 先ほど触れました継続的評価分析支援事業の実施市町村を選定するに当たりましては、都道府県の介護予防担当部局が管内の市町村に対して、本事業について十分周知の上、市町村の意向を勘案した上で候補を推薦してきたところでございまして、厚生労働省として、特に優良な介護予防の取り組みを行っている市町村の推薦をお願いしたものではございません。

 この推薦に当たりましては、調査対象とされた地域包括支援センターにおきまして、介護予防ケアマネジメントを実施する特定高齢者及び要支援者全員に対して、三十五ページにも及ぶ詳細な調査票の記載を、先ほど御説明したようにおおむね三カ月ごとにお願いしているということでございまして、こうした事務の実情というものを考えますと、県御当局それからまた市町村の意向というものが重要になってくるということも御理解をいただきたいものと考えます。

山井委員 柳澤大臣、このことも私は去年の夏から厚生労働省に強く要望してきました。調査をやるときは、都道府県が推薦するような優良市町村だけではなくて、平均的なところを入れてくれということを去年の夏から何度も私は厚生労働省に要望し続けました。

 柳澤大臣、都道府県が推薦するところというのはうまくいっているところに決まっているじゃないですか。こんなことをやったら、出てきた調査をだれが信用しますか。調査というのはそんなものじゃないでしょう。これからも厚生労働省のやる調査は全部手を挙げたところだけやるんですか。そんな実態調査がありますか。例えば、病院の実態調査をやります、調査に協力してくれるところは手を挙げてくださいと。うまくいっていないところが手を挙げるはずがないじゃないですか、そんなもの。そんな実態調査がありますか。来年秋に出てくるという話とか、手を挙げたところ、都道府県が推薦したところしか調査しないとか。本当にもうあきれて物が言えません。

 繰り返しになりますが、介護保険のことはこれで終わりますが、相手は生身の人間ですから、これでサービスがカットされて介護度が悪化している人がどんどんどんどん出ていっているんですよ。そのことの重みを考えてください。

 大臣、それでもふやさないんですか、新たなところを。出てきても、だれも信用しないですよ、そんな、みずから手を挙げた自信のあるところだけの結果を聞いたって。国会で介護予防の見直しをするときにそのデータをもとにするんですけれども、私たちはそんなことをして出てきたデータなんか信用しませんから。平均的な実態調査の結果を持って、介護予防の見直しの審議をしたいんです。

 大臣、答弁お願いします。

柳澤国務大臣 先ほども御答弁を申し上げましたように、この評価分析支援事業の実施市町村というものは、都道府県の介護予防担当部局が管内の市町村とよく協議をした上で推薦をいただいているということでございます。

 そこで、私は、山井委員の御熱心な御議論もよくわかりますので、この調査対象市町村の問題については、山井議員はこのままでは出てきた調査結果も信用できないと仰せられますから、御信用いただけるような、そういう市町村をつけ加えるということを検討させたいと思います。

山井委員 私が言っているのは、今のまま出てきたら、超優良の、一部のすごくうまくいっている自治体での介護予防はどうなのかという結果としては拝見させていただきます、平均的なものではなくて。

 ですから、今答弁いただいたように、ぜひとも平均的な、これが介護予防の実態だ、現実だというふうな結果が出るように自治体の数をふやしていただきたいと思っております。

 大臣、もう一つだけ聞いておこうかな。ということは、都道府県が推薦しない、みずから手を挙げない市町村も調査対象に入れるということでよろしいですか。

柳澤国務大臣 率直に言って、厚生労働省の行政というのは、非常に都道府県を通じてということが多いわけでございます。特に介護は、市町村が主体となってやっているということもございます。そういうことで、どういう市町村がよろしいかということが問題になれば、それは県当局と協議をするという手続にならざるを得ないですけれども、決して、うまくいっているところ、むしろ問題のあるところ、問題をいろいろ抱えているようなところを選ぶようにいたしたい、このように考えます。

山井委員 ぜひ、そういううまくいっていないところも入れていただきたいと思います。

 それでは、社会保険庁の問題であります。これについては七ページから見てください。これについては法案審議のときに主にやらねばなりませんが、それにしても、この年金の加入記録、いわゆる消えた年金の問題は余りにもずさん過ぎます。

 七ページ、「基礎番号なし五千万件」、結局だれが払ったのかがわからないけれども、確実にだれかのものであるその年金記録が、五千万件も宙に浮いている。ということは、この人たちは払ったのに払えないという人が、かなりの数存在するということですね。

 次の八ページ。そして、過去六年間だけでも、受給者からの指摘で、間違っていましたというふうに修正されたのが二十二万人。でも、この記事の中にも書いてありますように、ある方が、今回の件数は氷山の一角と。これは年金額が訂正されると、過去五年間の不足分は一時金で支払われるが、それ以前の分は時効になってしまうわけですね。これはまさに、うちの社会保険労務士の内山議員の専門であります。そして、今回明らかになった以外にも、多数の支給漏れが起きている可能性が多い。こういうことになると、年金の信頼性が低下する。また、先ほど糸川議員からも議論がありましたが、若者の年金離れにもこれはつながりかねません。

 そして、九ページにありますように、おまけに、今まで払ったはずだと言っても、いや、記録がないからそれは認められませんと言っていて、八十六人は領収書を持っていったら認めてもらえた。ということは、社会保険庁のコンピューターにこれは残っていないわけなんですね。でも、これは八十六人分は領収書を持っていたからよかったけれども、本来、貯金でも何でも、生命保険でも、入った証拠を出してくださいとか、貯金した証拠を出さないと貯金を引きおろさせませんとか、そんなもの、あり得ない話ですよ。ですから、こういうことを見ていると、本当に年金の信頼性が危ぶまれるわけです。

 この五千万件、これはだれのものかということを、いつまでにどうやって調査するんですか。基礎番号なし五千万件、これについて答弁ください。

柳澤国務大臣 基礎年金番号に付番をされていない、または統合されていない約五千万件の年金手帳記号番号の中には、基礎年金番号に統合される必要性のない、まず基礎年金番号導入前に死亡した方、導入後、年金受給前に死亡した方の記録、あるいは、受給要件がなく請求を行うことができない方の記録が含まれているわけでございます。

 これは、年金の本来の性格というものが、やはり、創設当時から年金はみんな保険料を納めるわけですが、そういうことをする人たちの中で、納めながら受給資格を得ないままで亡くなられてしまう方もいらっしゃるし、受給資格を得られる方もいらっしゃるということが年金の枠組みの前提になっているわけでございます。そういうことでございます。(発言する者あり)

 それからまた、もう一つは、まだ年金の支給年齢に達していない方もいらっしゃるわけですが、そういう方については、年金裁定時であるとか五十八歳通知等に基づきまして、いずれ記録の確認が行われるということになるわけでございます。

 そういうようなことで、この五千万件というものは、今申したように、これから先に、裁定時を迎えたり、あるいは五十八歳、あるいは四十五歳、三十五歳というようなことで、これからいろいろな機会に記録確認のための手続が行われますので、そういうことを通じて、これがいわば基礎年金番号の通し番号の中に統合されていくということになろうかと思うわけでございます。

山井委員 これ以上、時間の関係で触れませんが、今いろいろ答弁されましたが、今も内山議員が分布ということをおっしゃっていましたが、その内訳もさっぱりわかっていないわけですね。わかっていないのに、そう答弁をされているわけです。

 これは、民間の保険でも今、保険の不払いとか保険給付の未払いが大問題になっているわけですよ。民間であれだけ厳しく未払いで大問題だと言っておきながら、肝心の国の年金が、給付の未払いにつながる、こういう調査もまだ十分にやるめどもないというのは、それは全く無責任きわまりないと思います。これは、また法案審議のときにやりたいと思います。

 最後に、残された時間はわずかですので、歯科医療について。

 今回、昨年、強行採決された医療制度改革でも、医療全体、非常に深刻な問題となっております。その深刻な問題となっている医療の中でも、直撃を一番受けたのが歯科医療であります。

 この歯科医療、ここに今週号の東洋経済があります。「歯医者さんの五人に一人が年収三百万円!」ということで、きょう入れました資料の二十二ページでも、「当世「歯医者さん」事情 セレブ医院からガード下まで 五人に一人はワーキングプア」「一生懸命働いても一向に豊かになれない」「歯科医の五人に一人の月間所得は二十五万円程度」という結果も出ているわけです。

 もう少しお話を続けますと、二十三ページには、国民医療費がふえても歯科医療費は下がっているということ。そして、一番注目すべきは二十五ページですね。最後のページになります。

 今、一番問題になっているのは、ここに線が引いてあります、「患者への診療内容の文書での提供が多くの診療行為で義務づけられたため、「診療時間の一割強を文書提供作業に費やさなければならなくなった」」これは何回も国会でも取り上げられている問題であります。そして、歯科医療費は、その横の線にありますように、昨年の四月から九月まではマイナス二・六%と、医科全体のマイナス〇・二%を大幅に上回る落ち込み。つまり、昨年の改定は厳しい改定でしたが、その中でも歯科がねらい撃ちにされた。

 その結果、何が起こっているか。下にあります。ちょっとコピーが見づらいかもしれませんが、「希望あり」「希望なし」。例えば、ほかは希望ありの方がかなり多いんですね。内科も小児科も外科も整形外科も産婦人科も、希望ありの方が多い。ところが、歯科が最低ですね。希望あり三一・七%。六八・三%、三人に二人以上が希望なし。これは、医療の中でも格差問題、歯科医療が一番厳しくなっているということがこのデータからもわかると思います。

 大臣、この現状を見て、もちろん厳しい時代だというのはわかっていますが、その医療冬の時代の中でも、余りにも歯科が今厳し過ぎるのではないかと、私は今のデータを見て痛感しておるわけですが、大臣、このことについていかが思われますか。

柳澤国務大臣 平成十八年度の診療報酬改定におきましては、全体がマイナス三・一六%の改定となったということは、委員もつとに御案内のとおりでございます。歯科診療報酬改定におきましてはマイナス一・五%ということにいたしたわけですが、その中で、歯周基本治療や根管治療といった歯科治療におきまして必要性が高いと考えられる治療項目については、むしろ重点化を図ったということでございます。したがいまして、全体として医療費の伸びを抑制するという取り組みの中にありましても、やはり質の確保ということを図っていることは御理解いただきたいのでございます。

 次期診療報酬改定に当たりましては、制度を持続可能なものにするための不断の改革努力を継続しながら、現場の実態もよく把握した上で、適正化すべきところは適正化し、また、重点化すべきところは重点化するということで取り組んでまいりたい、このように思っておりまして、この診療報酬算定ルールにつきましては、現在、中医協のもとでの診療報酬改定結果検証部会において検証を行っておりまして、歯医者の先生方におかれましても、希望ありということがおっしゃっていただけるような結論を見出していきたい、このように考えます。

山井委員 私の親しい知り合いも、若手の歯医者さんなんですが、やはりみんな口々に嘆いていられるのは、将来の希望が持てないということをおっしゃっているんですね。

 大臣、改めてお伺いしたいんですが、今回の改定でも明らかに歯科がねらい撃ちにされているんですね。今後、日本の歯科医療、今、希望が持てるようにということを大臣おっしゃいましたが、どのように考えていられるんですか。

柳澤国務大臣 これは、歯科医療というものが、最近、口腔医療ということで、人間の健康そのものに非常に大きな関連性を持っているということが言われるようになりまして、私どももいろいろな審議会等におきまして、例えば、新健康フロンティアのいろいろな各論を論議するような場所におきまして歯科の先生方の意見が反映されるようにというようなことで、先生方の御参加をいただいている等の努力をしているわけでございます。

 したがいまして、口腔医療ということで、これは医療全体の中でもウエートがむしろ非常に高まっているというように考えておりまして、そういった方向性を見定めての取り組みを今後いたしていきたい、このように考えております。

山井委員 民主党としては、櫻井充参議院議員を先頭に歯科医療改革プランというのをつくって、今までやはり医科と比べて軽視される傾向があった、しかし、歯科は、御存じのように、きっちりした口腔ケアが寝たきりや認知症の予防にもなるとか、また児童虐待を発見できるとか、そういうこともあるわけです。

 そこで、最後にお伺いしたいんですが、このような文書が昨年の改定でふえて非常に困っておられる。診療時間が短くなる、そういう苦情も出ているということでありますが、やはりこの診療内容の文書の義務化が余りにも多過ぎるというか、仕事量が多過ぎる。文書をもう少し軽くする、簡素化するという取り組みが必要だと思います。現場から既にこういう要望は何度も来ていると思いますが、そのことについて、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 私、厚生労働相の役に就任して一番最初に言われたことはこの文書指導の問題でございまして、非常に記憶も鮮明でございます。

 その後、各地の歯科医師の団体、そういうようなところでもいろいろな工夫がなされておるようでございますし、また最近では、日歯といって、全国団体でございますが、そういったところでこの指導管理の様式を非常に工夫されまして、そしてまた、厚生労働省としてもそういう様式で結構ですというようなことをお互い意思疎通を行った上で簡素化するという努力をしておりますので、そういったことで、私としては、こういう治療計画、指導内容等について患者に説明を行うということのむしろメリットをそういった形で発揮していただくということを期待いたしているところでございます。

山井委員 今も答弁ありましたが、まだまだそれは不十分ですので、ぜひともさらなる簡素化をしていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、要保護世帯向け長期生活支援資金、いわゆるリバースモーゲージについて伺います。

 四月の頭に、地元の議員さんを通して市民から訴えがありました。今年度予算の説明記事を見て、家をとられるのかと泣きながら電話をしてきたというのであります。この訴えは、私は当たらずとも遠からずと思っております。多くの訴えが既に寄せられております。法律の改正ではなく、予算措置や要綱の書きかえによってこのような重大な内容が決められたことに、まず強く抗議したいと思います。

 制度の概要について資料を配っております。一枚目をごらんになっていただきたいと思います。

 簡単に言いますと、要保護世帯あるいは保護を受けようとする世帯が評価額五百万円以上の居住用不動産を所有している場合、これを担保に七割までの範囲で、ですから三百五十万円までとなると思うんですけれども、貸し付けを行い、死後、不動産の処分によって返済をするといいます。簡単に言えばそういう制度と理解しております。

 私は、一般的にはリバースモーゲージがあってもいいかと思っております。亡くなった後のことは行政が処分してくれればいいから、当座のお金を用立てたい、そう思う人があっても、それはその人自身が決めることであれば構わないかと思うんです。

 問題は、生活保護にこれを活用するとなると、生活保護制度よりこの制度が優先されるということであります。そういう意味であるということを確認させてください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のございました、長期生活支援資金制度を生活保護を受けておられる世帯にも適用する、こういうことでございまして、そういうことを十九年度から開始したのはそのとおりでございます。

 また、生活保護とこの制度との関係でございますが、生活保護法の第四条に、保護は、生活保護を利用される方が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その生活の維持のために活用することを要件とし、また、民法に定める扶養義務者の扶養及びその他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行わなければならない。これは保護の補足性と言われておりますが、そういったことでございまして、例えば改正前の生活保護の運用でも、大きなお宅を持っておられる方について保護の御相談があった場合は、まずそのお宅について活用していただくということをお願いしている。

 そういった意味では、今回の長期生活支援資金の利用も生活保護法第四条に基づく保護の補足性の原理の適用でございますので、お答え申し上げますと、まず、この貸付制度を御活用いただくということを基本といたしております。

高橋委員 そうすると、現在、保護を受けている方に該当する資産があれば、当然、この制度を利用し、生活保護をやめるようにという指導が入るわけです。

 拒否すればどうなりますか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 現在も、今御説明申し上げましたけれども、住んでおられるお宅の評価額が一定以上は、全国平均二千三百万円でございますが、処分して活用することを求めております。

 これまでは約二千三百万円のお宅ということでございましたけれども、今回、今委員から御指摘ございましたように、五百万円の家については、この長期生活支援資金をまず活用していただくということでございますので、そういうお宅をお持ちでこの制度を利用されないという者については、先ほど申し上げましたように、現在、その方の持っておられるあらゆる手段をまず利用していただくという規定に該当いたしますので、その場合は、生活保護の適用についても、まずはこの制度を利用していただきたいということで、生活保護の適用をお断りするということでございます。

高橋委員 その一言を言うために長々と説明する必要はないんです。私は、その一言だけを聞いているんです。制度の説明はもうさっき終わりましたでしょう。

 資料につけておきましたけれども、「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の一部改正について、三月三十一日付で発せられたものですけれども、今るる説明されたことがいろいろ書いてあります。三枚目、一番最後にこう書いてありますね。「それでも、当該貸付資金の利用を拒む場合については、資産活用を恣意的に忌避し、法第四条に定める保護の受給要件を満たさないものと解し、一 生活保護受給中の者については、所要の手続を経て、保護を廃止する。二 新規の保護申請者については、保護申請を却下することとされたい。」

 つまり、申請もだめだし、今保護を受けている人は打ち切りになる、そのことだと思うんですね。これは大変な内容ではないか。これはまさに問答無用で、法違反だ。完全な悪者扱いになっているではないか。保護を受けられる要件を持っている方であっても、いや、家をとられるのではないか、このことを恐れて、行政に相談に行くことさえもうできなくなってしまう。昨年の北九州あるいは秋田など、生活保護をめぐってさまざま悲劇が起きました。それ以上のことが起きるということも予想されると言わなければなりません。

 保護世帯といっても、ほとんどの高齢者は、長い間働いて、その間ずっと税金を納めてきました。七十過ぎても働けるうちは働いてきた、そういう方が多いです。そして、とうとう病気になったり、事業に失敗するなどして、どうしても生活が立ち行かなくなった。それで、もらえる年金が余りにもわずかなので、それをカバーするために、全部ではありません、少しだけ保護を受給しています。特別な豪邸に住んでいるわけではありません。ささやかな家は、そういう苦労をしてやっと建てた家であり、生活を支える基本であります。

 大臣に伺います。この制度は、一律に運用することなく、個々の事情を踏まえ判断できるようにすべきではないでしょうか。

柳澤国務大臣 今年度から、生活保護というものがセーフティーネットである、いろいろなものを全部、資産、所得等の状況を勘案しても本当に生活費に事欠くという方々に絞って支給されるべきものだという考え方から、先ほど委員が御指摘になったような、自宅、土地を保有する場合には、それを活用してやっていただくことを考えて、そして、生活保護費の支給にかえて貸付金という形でお貸しして、そして償還する制度を導入したということでございます。

 御指摘があったように、例えば、重度の障害を持つ子供が同居しているような世帯については、この制度を適用することは避けまして、親の死後も重度の障害を持つ子供が同じ家に住み続けられるよう、従来どおりの扱いとすることができるようにということを考えております。ぜひ御理解を賜りたいと思います。

高橋委員 セーフティーネットとおっしゃいましたが、もはやそんなものと呼べる状態ではないと私は言いたいと思います。先ほど指摘をしたように、すべてが保護費ではありません。年金をもらっているけれども、足りない部分を数万円補っているにすぎないのだ。

 しかし、本来の生活保護の制度というのは、その年金では足りないから、保護で補って、それで最低生活費、憲法二十五条に規定されている最低生活費を賄っているはずなんですね。その世帯すらも対象になる。医療扶助のみの世帯すら対象になると聞いています。これは、最低生活費という考え方がもう崩壊してしまった、割り込んでしまったということになりませんか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、生活保護につきましては、持っておられる資産とか働ける能力とかそういったこと、活用できることについては活用した上で適用するというのが基本でございます。

 居住用不動産に関しましても、評価額が一定額以上のものは、従来についても、そういうことで売却するなりそういうお願いをしてきたわけでございますが、ストックをフロー化するという手段としてリバースモーゲージという方法があり、リバースモーゲージ制度を使えば、不動産を担保にして資金が借りられる。

 今、一月数万円の保護費というお話がございましたけれども、そういうことであれば、そういう融資を受けることによって、かなり長期間、生活保護ではなくてお暮らしいただける、そういうことに着目して行ったものでございます。

 これにつきましては、審議会の専門委員会や知事会、市長会より、生活保護を受けている方に対して、扶養義務者も義務を果たしていただくということをお願いしていますけれども、生前何の援助もしなかった扶養義務者が、被保護者の死亡時に家屋、土地を相続するような現状は、社会的公平の観点から国民の理解が得られない、資産の活用を徹底すべきである、こういう御指摘があり、そういう公平性の確保の観点から、資産として活用できるものについては活用するということで、この制度を導入させていただいたわけでございます。

高橋委員 今いろいろなことをおっしゃいました。

 まず、数万円の保護費であれば長期間暮らせるじゃないか、二、三万だとすれば、年三十六万とかそのくらいだから、最低でも三百五十万の評価額の中では長期間暮らせるじゃないかと。まさかそういう考え方をされるとは思いませんでした。わずかな部分が保護であって、そのほとんどは年金で暮らしている方にまで、そこまで言うのかなということがまず一つありますね。

 それと、亡くなってから突然名乗り出てきて、相続人だとおっしゃる人がいる、何も扶養義務を果たさないのに不公平じゃないかという議論があったというのは承知をしています。しかし、それは、そういうケースについて対応することと一般的なケースを一緒にしちゃだめなんだと思うんです。

 そもそも、しょせん借金なんだ、さっきから私言っていますけれども、評価の七割です、それに年三%程度の利子がつきますね。そうすると、利子も合わせて評価額を食べてしまえばというか、要するに長生きすればというか、生活保護に戻るわけですね。そうすると、保護に戻るわ、家はとられるわ、踏んだりけったりではないか、そういうことになるわけですよ。少なければ長生きするじゃないか、そういう話ではない。ですから、苦労してやっと建てた家がやはりとられるのかという思いになられるのは当然のことだと思うんです。

 さっき大臣が、聞く前に答えたことなんですけれども、保護世帯の多くの方が心配されているのは、子供さんと二人暮らしの場合、自分が死んだらこの子はどうなるのか、死んでも死に切れないと訴えておられます。障害だけではなく、難病などハンディキャップを持ち、自立が困難なお子さんを抱えて、親が亡くなればほうり出されてしまうのかということなんですね。この点はどうなんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣からもお答え申し上げましたように、御指摘のあったようなケースにつきましては、従来、親御さんが亡くなられた後も障害を持つ方が同じ家に住み続けられるように従来どおりの扱いをすることができる、こういうことを示しておりますので、画一的に、機械的に運用するわけではないということでありますが、しかし、基本は、法律の四条にありますように、活用できるものは活用していただくということでございますし、先ほどのリバースモーゲージは、自分の資産をフロー化して、できるだけその分自活する、その部分は生活保護という形を使わないで過ごしていただくということでありますので、そういった意味では社会にも貢献するわけでございますし、それで資産が切れた場合にはリスクがあるわけでございますが、それはその手段が切れれば生活保護を適用するという形になりますので、そういった意味で、委員からお話のあったようなことにはならないと思います。

高橋委員 最後に、大臣に意見を聞いていただきたいと思います。

 自活ではなく借金をしょい込むわけですからね。本当に六十五歳を超えて高齢の方に、最後にそこまで迫るということは、私は行政が一線を超えたと思うんです。もはや、二十五条の精神どころか、福祉の窓口が恐ろしい取り立て屋にかわる、そう言わなければなりません。現場の混乱、行政のストレスも相当大きいと思います。もし、先ほど言っているように、優先させるということですので、どれだけリバースモーゲージに切りかえられたかということが評価の対象になり、それで競い合いになれば、本当にどうなるのだろうか。昨年の悲劇の繰り返しにならないか、結果を急ぐばかりに、処分できない資産を行政が抱え込むことにもなると指摘せざるを得ません。

 重ねて、こんなひどい仕打ちは絶対に撤回するべきですし、少なくとも一律適用とせずに事情を勘案すること、あるいは今お話をした、残された家族に配慮することを重ねて要望して、終わります。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、私にいただきました十五分のお時間の中で、出産の場の確保の問題と医師の不足問題について質疑をさせていただきます。

 まず、前段の出産の場の確保の問題でございますが、柳澤厚生労働大臣にあっては、この間、やはりこのままでは日本の少子化問題、もう本当に真っ暗やみだということで、真剣なお取り組みをしていただいているものと思っております。

 ちなみに、三月の六日の日でございますが、参議院の予算委員会で共産党の小池委員からの御質疑に対して、九六年から二〇〇五年の間に産婦人科のある病院というものは全体で二八・七%減少しておるが、特に国立病院の産婦人科が減っておる、数値で出すと三五%だという御指摘を受けた大臣は、「国公立病院がどのような役割を演ずるのか、これについては私は腰が引けたような対応は許さない」というふうに御答弁でありました。

 頼もしく思いますし、本当に実行していただきたいと思うのですが、その観点からいたしますと、私は、ここでは小池さんは国立病院の問題をお出しになりましたが、きょうは、いわゆる全国の自治体立病院でどのようなスピードで出産の場が減っておるかということについて取り上げさせていただきます。

 まず、厚生労働省ないしは大臣にお伺いいたしますが、自治体立病院は集計上、統計上は総務省の管理になっておるのは承知しておりますが、しかし、医療提供体制全体は厚生労働省の任務とするところでもあると思います。

 さて、自治体立病院は、現状四百五十四、産婦人科を標榜しているものがございます。標榜というのは、看板がかかっているということであります。その四百五十四ある自治体立の産婦人科標榜病院の中で、看板はかかっていても産婦人科をやっていないというところが大変ふえておりますが、この現状について把握しておられますか。お願いします。

松谷政府参考人 平成十七年度に厚生労働省が行いました医療施設(静態・動態)調査によりますと、産科を標榜する病院数は一千六百十六病院でございます。このうち、地方自治体立病院は五百十二病院と、この時点ではなっております。また、この調査によりますと、このうち分娩を取り扱っている病院数は一千三百二十一病院でございます。

 なお、ここでは設立主体別の数字が集計されておりませんので、地方自治体立病院についての数字は、残念ながら、この調査からは出てこないということでございます。今、先生御指摘のとおり、総務省において最新の数字は持ち合わせていらっしゃるということだと思います。

 なお、厚生労働省では、医師確保等支援チームにおきまして、産科医療について基礎的なデータを詳細に把握するため、現在、各都道府県の医療圏別に病院、診療所、助産所別の分娩数ないし産婦人科の医師数、助産師数、またハイリスク時の主な紹介、搬送先病院などの調査をしているところでございます。

阿部(知)委員 今のお答えは平成十七年度でありました。私が伺いたかったのは、それから一年有余たち、さらに状況は深刻になっており、そして御答弁にもありましたが、厚生労働省は、実際に自治体立病院のどれほどが現実に産科を提供しておられるかは御存じないということであります。

 今、実態を地域別に把握しているんだということは、それはそれでよろしゅうございます。しかし、やはり厚生労働省は厚生労働省として、大臣が明確に御答弁になったように、国公立病院に対して、出産というものは非常に公共性の強いものであります、そういうものに対して、国がなすべき役割があるんだろうと私は思います。なべて平地にならすのではなくて、やはり大臣がおっしゃったように、国公立病院ならではの役割をサポートしていくという厚生労働省の役割がなければ、ほうり投げ状態になります。

 私は、厚生労働省にデータをいただけませんでしたので、総務省にお願いいたしまして、かなり手間暇のかかる集計をつくっていただきましたのが、きょうお手元に配らせていただきました、全国自治体立病院における産婦人科診療の実態という一枚目のグラフでございます。

 大臣にはよくごらんになっていただきたいのですが、先ほど申しましたように、産婦人科を看板だけでも掲げている病院は四百五十四、産科を看板だけで掲げているのは五十五ございます。これを合わせれば、おっしゃったような五百十二近くにはなると思います。

 しかし、これは看板倒れなのであります。何を言っているかというと、看板はあっても中身がない、やれていない。実際、そのうちどれくらい分娩を扱っているかということを調べていただきましたが、これは平成十九年の三月段階の数値でございますが、左のグラフをごらんいただきますと、三百三十六施設しか分娩を扱っておりません。四分の三ないし三分の二に近くなっております。両方合わせれば、そのような数値になってまいります。

 ちなみに、またさらに、もう既にと申しましょうか、分娩の取りやめが予定されている施設が十五ございます。すなわち、ことしのうちにも、分娩が可能な病院は三百二十五に減ってしまうという実態であります。

 大臣には特に伺いたいですが、こうした実態が実はこの五年、とりわけこの一、二年、急速だということであります。

 例えばこの自治体立病院にしても、この十年、一九九七年の四月一日から二〇〇七年の三月三十一日で百九病院が中止、では、この五年では、二〇〇二年の四月一日から二〇〇七年の三月三十一となりますと八十九であります。十年で百九のうち、この五年が八十九、この一年が三十二もございます。雪だるま式、加速度的に産科医療が提供できなくなっております。

 果たして大臣は、こういう実態、国立病院も三五%なくなる、自治体立病院も加速度的に減っておる、こういうことに対してどのようなお考えをお持ちになりますか、御答弁をお願いします。

柳澤国務大臣 自治体の病院も、地方財政の困窮の中で、なかなか経営が思わしくないというようなところを中心にして、かなりきつい合理化の努力をしなければならない、こういう状況に置かれているようでございます。

 私が出ます会議におきましても、自治体について、どちらかというと、自治体財政の困窮ぶりを背景にして、自治体病院についてもさらに合理化に拍車をかけるようにというような、そういう発言をよく聞くわけでございますが、私は、これに対しては、そういうことだけでは困るということを申し上げているわけでございます。

 ですから、いろいろな文書で、そのあたりのことについては私の発言もそれなりに酌み取ってもらって、そして、ただ一瀉千里に合理化というようなことだけではない方向で、もっと必要な機能というものを確保するということに辛うじてなっているというような状況が実はございます。

 今後とも、この自治体病院の合理化ということの流れの中で、産科のクローズドというようなことができるだけないように、私としては努めていきたい、こう思っております。

 それからもう一つ申し上げるのは、先ほど医政局長が申しましたように、私どもは、医師確保のためにきめ細かに地域の実情を掌握する必要があるということで、これは総務省なぞとも語らって支援チームというものを編成したわけでございますが、そこで真っ先に取り上げたのはこの産科医療でございまして、今、医政局長言うように、産科医療の実態について詳細な資料を収集すべく努めているところでございます。その実態の把握の上に立って必要な措置を講じてまいりたい、このように考えております。

阿部(知)委員 この産科医療の問題には、大臣が御指摘のように、全体の経営環境、運営状況の逼迫そして人手不足、両方が両輪になって、もう突進している状態にあります。

 大臣が明確に御答弁いただいたように、公共性を守るために、やはり国が財政的支援ということをもっと真剣にしていただくと同時に、私は、せっかく総務省がこれだけのデータ、各病院に一軒一軒聞いてくださいました、お手数もかけました。しかし、そういうことが厚生労働省の中に全く蓄積されておらないということは悲しむべき事実でありますから、総務省におつくりいただいたデータもきちんと分析していただいて、地域で出産が可能になるように、大臣にもお取り組み願いたいと思います。

 さて、大臣がおっしゃった後段の医師不足問題で、きょう皆さんのお手元に資料を配らせていただきました。実は、医師不足の問題は、厚生労働省は表向きは一貫して、不足よりは偏在であるという御見解をとっておられるやに私は聞きおきます。しかしながら、きょう皆さんの二枚目の資料の中にお配りいたしましたものは、今、各病院が医師の数を、その病院の常勤医のみでどのくらい充足しているだろうかという数値を出しました。

 例えば青森県では、常勤医できちんとした数を持っている病院は二六・四%しかない、あとはいわゆる不足である。これに非常勤の方を加えても、申しわけないが、青森県の場合は四三・四、二つの病院に一つは定足数に足りていない、充足していない、こういう実態が浮かび上がっております。もちろん都市部に行けば行くほど非常勤で賄い得るところが多いですから、例えば神奈川県などは、常勤医のみだと三五・〇%しか満たしていない、三つに一つの病院しか満たしていないが、そこに非常勤を雇うことによって九四・六%になる、医師不足を補っているという実態です。しかし、本来的には、常勤医で賄われる部分がせめて六割ないし七割ないと安定した医療提供体制にはならないんだと思います。

 この現状、惨状ということをまず大臣に頭に入れていただいて、では、それでもなおかつ医師の数は足りないんだろうかという問題、逆に言えば余っているんだろうか、その問題のために、最後のページをお開きいただきたいと思います。

 ここには、厚生労働省が行う三師調査、ここの表は、医師、歯科医師、薬剤師となっておりますが、看護師等々も調査しておりますが、いつも厚生労働省はこの数値をもって、この棒グラフでどんどんどんどんふえていっている、毎年差し引き三千五百から四千人がふえて、平成十六年段階ではほぼとんとんである、これから医師過剰時代が来るぞとおっしゃいます。しかし、ここに大きな集計上のミスがあると私は思います。

 例えば、ここに登録されている医師は、その医師が何時間働こうと一換算されるわけです。しかし、一方で長時間労働、一方でパート、アルバイト、非正規雇用かもしれません。そういう形で、今、医師の働き方も多様になっております。その多様になった働き方を踏まえずに頭数だけ換算すれば、当然、労働の負荷は、まじめに長時間働いている人にさらに拍車をかけます。

 大臣にお願いがございます。やはり、どのくらいの労働時間働いていて、実数、どのくらいかということを見直さないと、医師は足りているのか不足なのか、わからないわけであります。厚生労働省のこれまでの調査では、医師は四十八時間働くことにして、現在の診療所の医師数、病院の医師数は足りているという換算であります。しかし、先ほどお見せいたしましたように、非常勤で働く方が多いわけです。四十八時間も働いていない方も多いわけです。何度も申します。そうすると、残された者に非常に負荷がかかって、医療は、立ち去り型サボタージュと言われるように、疲れ果て、みんなやめていきます。

 大臣、実労働、実際にどのくらい働いているかにのっとって、これは多様な働き方が、特に女医さんもふえてきました、出てきた今日のあらゆる職種の実態でありますから、そうした観点で医師の需給を見直していただきたいが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 医師の需給をどう見るかというのは、なかなかいろいろな議論があるようでございまして、私も、専門家の阿部委員を前にして何か立派な意見が吐けるとも思いませんけれども、この医師の登録数の調査もそれなりの意味を持っているというふうに理解をしております。それは、医師の登録をしているけれども、お医者さんでありながら診療に従事していない医師、そういうような方についてわかるというような面もあるようでございます。

 それからまた、実労働時間というようなことになった場合に、例えば四十八時間とか六十三時間とかというような長時間労働をしている先生が一・五人分に見られてしまうとかというような、そういう面もまた逆にあるようでございまして、何か長時間労働を肯定的につかんでしまうというようなデメリットも生じてくるということを私は聞いております。

 このあたりのことは、一体どういうふうにして実像を、実態をつかんでいくかということについては、私も、今の医師の確保対策というか、率直に言えば不足だと言われているこの事態への対策を考えるに当たって、今後、今の阿部委員の御指摘も勘案し、また念頭に置きながら、的確な判断ができるように実態をつかんでいきたい、このように考えます。

阿部(知)委員 医療現場は崩壊の危機ですので、ぜひ、今の大臣の御答弁を生かしたお取り組みをお願いいたします。

 終わらせていただきます。

櫻田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十分散会


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