衆議院

メインへスキップ



第24号 平成19年5月25日(金曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月二十五日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鴨下 一郎君

   理事 谷畑  孝君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      阿部 俊子君    新井 悦二君

      井上 信治君    石崎  岳君

      小川 友一君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉村 太蔵君

      高鳥 修一君   戸井田とおる君

      冨岡  勉君    長崎幸太郎君

      西川 京子君    林   潤君

      原田 令嗣君    平口  洋君

      福岡 資麿君    松野 博一君

      松本  純君    松本 洋平君

      内山  晃君    大島  敦君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    田名部匡代君

      筒井 信隆君    長妻  昭君

      細川 律夫君    柚木 道義君

      坂口  力君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           園田 康博君

   議員           枝野 幸男君

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁総務部長)  清水美智夫君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (社会保険庁社会保険業務センター所長)      皆川 尚史君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十五日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     平口  洋君

  松本 洋平君     小川 友一君

  柚木 道義君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 友一君     大塚  拓君

  平口  洋君     阿部 俊子君

  長妻  昭君     柚木 道義君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     木原 誠二君

  大塚  拓君     松本 洋平君

    ―――――――――――――

五月二十四日

 労働契約法案(内閣提出第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本年金機構法案(内閣提出第七八号)

 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)

 歳入庁設置法案(山井和則君外五名提出、衆法第二三号)

 国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第二四号)

 公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案(山井和則君外五名提出、衆法第二五号)

 労働契約法案(内閣提出第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案並びに山井和則君外五名提出、歳入庁設置法案、国民年金事業及び厚生年金保険事業の適切な財政運営に資するための国民年金法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省年金局長渡辺芳樹君、社会保険庁長官村瀬清司君、社会保険庁総務部長清水美智夫君、社会保険庁運営部長青柳親房君、社会保険庁社会保険業務センター所長皆川尚史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 国民の皆さんの老後のまさに最も重要な生活保障とも言えるこの年金の問題、必ずしも十分な審議をし尽くしたとはまだ言い切れない状況の中で、さまざまなことも言われております。きょうは、そういった意味では、我々民主党の三つの提案、そして政府のこの年金機構法案等のそれぞれ対比をしながら、委員の皆さん、さらには国民の皆さんに、今回のこの年金の問題の論点がどこにあって、何が重要なのか、そういったことをやはりこの国会の場でしっかりと明らかにしていくということが、国民の皆さんの年金不信の解消のために最も重要だというふうに私は考えておりますので、そういった視点に立って質問をさせていただくことを冒頭お伝えさせていただきたいと思います。

 今、資料をお配りしておりますのは、私がこちらに「「消えた年金記録」救済スキーム」というボードをつくらせていただきました。一応、わかりやすいように左右対比で、「民主党案」、そして右側には「政府与党案」という形で書いておりますが、実際、これはどこまで内容が精査されてあるのかどうかということも、きょうは一つの大事な論点であるというふうに考えております。

 ちなみに、冒頭ですけれども、本日午後の当委員会に安倍総理大臣が御出席をされるという中で、その午後に新たな提案が、きょうこの段になって、私がこうやってボードを用意してきている、このクエスチョンの部分、私が全く何も知らないまま提案をされるというふうなことも聞いております。

 こういったことでは、国民の最大の関心事であるこの年金の問題、この国会の中で十分な議論が尽くせるとはとても言いがたいと、私は冒頭強く抗議を申し上げたいと思います。

 午後から総理がお越しになられるということですが、少なくとも午後の質疑に、我が党議員も質疑に立つ予定もございますし、その内容について少しでも、そういった資料等をやはり各委員の皆さんに御用意いただくのが大変重要だと私は思いますが、委員長、このことはこの委員会でお願いできますでしょうか。ぜひお願いしたいと思うんですが。

櫻田委員長 後刻理事会で協議します。

柚木委員 午前中にぜひお願いしたいと思うんですが、午前中に。午前中にお願いしたいんですけれども。

櫻田委員長 急な申し入れで対応に困りますので、理事会で後刻相談します。

柚木委員 急なことは、実は私たちの方が急に知ったわけでありまして、まさにきょう、最も重要なこの議論が行われようという中で、ここにあえて私も書いているわけですよ、「政府与党案」。

 これまでは、大臣がひたすらに、申し立てがあれば調査をする、そういった対応に終始してきたわけです。しかし、民主党あるいは野党の皆さんそれぞれ、そんなことでいいのかという委員会の中の議論があって、私たちの具体的な提案を申し上げますが、そんな中で、一昨日あたりから、では、年金時効救済法案なるものをこの秋の臨時国会に出すとか出さないとか、あるいは不明の納付記録を自主調査するとか。しかし、それも実は、中身をよく聞いてみると、あくまで申し出があった場合に対して調べるにすぎない、従来どおりのそういう視点であるにすぎないとか、こういうところがどうなるかわからなければ、当委員会での実のある質疑ができないわけですよ。

 ですから、総理が午後からそういった提案をされるということであれば、今この段階でなければおかしいじゃないですか。委員長、これはぜひ、午後までに用意をいただくと理事会で協議いただけませんか。

櫻田委員長 理事会で協議いたします。

柚木委員 いつ協議していただけるんですか。どの時間。

櫻田委員長 理事会開催時でございます。

柚木委員 これは、午後から総理が来るということが既にもう決まっている中で、やはり今、こういったものについて十分な資料が私たちにないまま質問させていただく、そのことは、国民の皆さんも大変な不利益をこうむりかねない、そこの部分についてしっかりとした議論が尽くせないわけですから。

 そんな中で、私がまず冒頭質疑に立たなければいけないということは、私も皆さんと同じく国民の皆さんの負託を受けてこの場に立たせていただいているわけで、私は大変強く憤りを覚えますし、抗議をさせていただき、私、トップバッターで質問時間も余りないんですけれども、この点について資料を、ぜひ、少なくとも午後の、総理が来るまでに質問をする委員の皆さんに配付をいただけると今お約束いただけませんか、委員長。

櫻田委員長 質問を続けてください。

柚木委員 これは、今の返事をお答えいただかないと質問が続けられないわけですよ。私以外の委員の方々も、きょうそれぞれ質問を用意しているわけですよ。それに対して、あえて総理が午後からそういった提案をされるということについて、今この段階で資料がなければ、私は質問を続けられません。委員長、お願いします。

櫻田委員長 柚木君、質問を続けてください。(発言する者あり)

柚木委員 今、与党委員の方々から、あくまでもマスコミベースだとおっしゃるんだったら、午後からそういった提案はなされないということでいいんでしょうか。そう言われているんですから。深まらないんですよ、質問の材料がないので。総理が提案する材料があれば、そこをここで堂々と議論することができるわけですよ。

 では、大臣。大臣が御存じじゃないわけないですね。午後から総理が新提案をするというようなことを年金所轄大臣の柳澤大臣が御存じないことはあり得ませんね。大臣、総理が何を提案するのか、ここで御説明ください。そうじゃないと、この質疑、続けられません。

柳澤国務大臣 年金の記録の処理の問題というのは、年金の運営に当たる社会保険庁の改組の問題に対して改正案を出した冒頭から、ずっと議論をされてまいりました。

 そういうことの中で、予算委員会で御質問がありまして、五千万件の持ち主不明の記録と、現に年金を受給している方の支給漏れが起こっているということが一番問題なので、それを突合したらどうかという御提案がありまして、これについては総理から、できるだけのことをするという答弁がありましたのを受けまして、私としても、検討はしてみますというようなことをお答え申し上げておるわけでございます。

 時効のことについては、私も、新聞報道やテレビの画面で、そういう動きが与党の首脳の中にあるということは聞いておりますが、そういうことが具体の問題になったときに、私ども政府としての考え方を決めてまいりたい、このように考えています。

柚木委員 今のじゃ全然何にも答えていないんですよ。これまでの議論を総括したにすぎないんですよ。与党案にこの二つのことを書いているわけですけれども、今大臣は、総理が支給漏れを突合したらどうかということを提案されている、それで、大臣としては、できるだけのことを検討してみますと答えている、これじゃ今までと全く変わらないわけですよ。

 今回、一番問題になっているのは、そういった支給漏れの方々が、年金の記録自体も紛失している、そして領収書も持っていない、だから、本来ならば受給できる可能性のある年金額を不受給である。現在受給中の方々の中でも、例えば、六十五歳以上八十以下の方で千九百万人の方々を一つ一つ突合していくと大変な数の方が出てくるかもしれない。だったら、そういったことを全数調査することによって、国民の、あるいは受給者の、その年金不信の解消に努めるべきじゃないかということを我々は提案してきているわけですよ。それに対して総理からきょう新提案があるということであれば、まさに私たちのこの提案に対する答えでもなければいけないわけですよ。

 ここに民主党案、四つの項目を書いております。いいですか、大臣、ここのボード、見えますか。五千万件の持ち主不明の記録をだれのものか徹底調査する、そして二番目に、既に年金受給している方の支給漏れの被害者を救済する、さらには、公的年金制度のすべての被保険者、受給者に納付記録を送付しチェックをしてもらう、そして四番目に、この消えた記録の修復、回復のためにすべてのペーパー台帳とコンピューターデータを照合し、入力ミスや入力漏れを訂正する。こういったことを総合的に行わなければ、まさに政府・与党案、ここにクエスチョンと書いているんですけれども、こういったことを実際に行うことにもならないわけですよ、これをやらなければ。

 そして、実際にこういった全数調査をやるのであれば、あえて右下に書いてあるんですよ、どれだけの期間がかかるか、人員やあるいはシステムの開発も含めてどれだけのコストがかかるのか。そして、それが何年もかかるのであれば、その間に、本来であれば受給すべき年金受給額をいただかないままに亡くなられる方も当然出てくるわけですよ。

 そういった状況にあるからこそ、今回のこの法案の審議の中で、この審議の中で採決までにこういったことをしっかりと明らかにしておかなければ、これがもし日本年金機構等でこれまでと違うスキームで行われることになれば、まさに今、年金基金の運用の裏金づくり等で問題になっているあの独法の理事長からこの国会の質疑の中で意見を聞こうとしても、理事会の中でそれが却下をされる、同じようなことが、今後、こういうことを聞いていこうと思っても、仮に年金機構の理事長からその話を聞こうと思っても、聞くことすらできない、そんなことになりかねないわけですから、この委員会の法案質疑の中でこういった中身をしっかりしておかなければ、この問題、あいまいになってしまうんじゃないんですか。

 そして、大臣がなかなかそうやって、申し立てがなければやらないということを言われるものですから、本来ならば柳澤大臣が厚生労働省に対して、しっかりとこの国民の年金不信を解消するために行うようにすべき立場にあるじゃないかと我々も言ってきたわけですよ。だからこそ、そんな中で総理自身が新しい提案を出すというのであれば、その提案がここに、今この段階で出ている状態で、初めて質疑が深まるわけですよ、大臣、違いますか。

柳澤国務大臣 私どもは、御党を初めとする野党、それから与党もですけれども、この方々の質問には、本当に誠心誠意お答えを申し上げているところでございます。

 ですから、今も申し上げましたように、過去の話とおっしゃられるんですが、その非常に重要な部分は、この左側の、御党の案とされるものと重なり合っているということは、柚木委員もお認めになられると思います。

 つまり、こういう問題が起こったときに一番まずやらなければならないのは、既裁定者について、現に支給され、あるいは給付されている、そういう年金の支給不足が起こっているということが一番優先的に解消されるべきではないか、こういう観点から、その三千万の今の受給権者の名簿とこの五千万の未統合の記録との突合ということを最初にやったらどうか、こういう御提案がありまして、それらを受けて総理が、できるだけのことをやって丁寧に一人一人の給付に結びつくことをやりたい、こういう御答弁がありました。その後に立ちました私は、総理がそういうことをおっしゃった後ですから、私はその方式について検討させていただきますというお答えを申し上げておりますということでございます。

 したがいまして、そうした検討を今進めているということであるわけでございまして、答えを出せとおっしゃっていらっしゃいますけれども、やはりまだいろいろなものを総合的に考えなければならないということでございますので、今、私としてベストの答弁をさせていただいている、こういう次第でございます。

柚木委員 今大臣は、その総理からの指示を受けて、できるだけのことをやるとおっしゃったんですから、これは、従来は申し出がなければやらないと言っていたのをできる限りのことというのは、考えられるのは当然、全件自発的に調査をするということでいいんでしょうか。

柳澤国務大臣 どういうことを言われているかわかりませんが、今のことであれば、つまり、受給権者三千万件と未統合の五千万件を突合調査するということを検討している。それをやれるのは当方しかないわけですから、それを検討しているということを申し上げた次第でございます。

柚木委員 少なくとも、検討段階でこの法案質疑が打ち切られるということはあり得ませんね。大臣、答弁ください。

柳澤国務大臣 それは、どこまで検討したといっても、例えば法律が要るというようなことになるのかどうか、私は全くわかりませんが、そういうこともあるということになれば、その場合には今の柚木委員の分類ではどうなるのか。

 私は、検討をしてできるだけ早くに御審議に間に合わせるということで、今一生懸命やってくれているということだというふうに理解をしているわけでございまして、審議の中でそうしたことが、検討がそれでは不十分だと言われてしまうかもしれませんが、検討をしてとにかく外に出せる段階になれば、できるだけ早く外に出して御議論していただく。しかし、その検討の取りまとめが、ぴしっと何から何までわかるということは、これはなかなか難しいんじゃないかと思いますね。

柚木委員 少なくとも、審議に間に合わせると今大臣答弁されたんですから、きょうの段階でそういったことがきっちりと煮詰まらなければ、審議に間に合ったことになりませんから、そのことを今ここで確認しておきますよ。大臣、よろしいですか。一言で。よろしいですか。

柳澤国務大臣 我々としては、先ほど言った、今回のいろいろの年金記録の処理の問題で、政府の方針というものをお尋ねされている、このことに何とか答えたいという努力をしておるということでございますので、その向きの検討の結果と申しましょうか、そういうものをお示ししたいという気持ちで今鋭意取り組ませていただいているということだと思います。

柚木委員 もう持ち時間がありませんので、きょうは幾つか本当に重要な個別具体事例も含めて用意をしておりまして、残された時間でできる範囲で大臣に質疑を申し上げたいと思います。

 きょう、私、このテープレコーダーをお持ちして、本当はこれを聞いていただきたいと思っていたんですけれども、とても時間がなくて、社会保険事務所で実際に事務局も含めて記録が見つからなくて、必ず払ったという確証がある中で、三十年前の領収書を持っていない、それによって本当に今苦労されている方の肉声がここに詰まっているわけです、そのやりとりが。しかし、もうそれを聞いていただく時間もありません。

 実際に、今大臣のお答えを伺っている限りでは、この中に含まれているような、例えば三十年前の領収書がなくて、しかし払った記憶はある、そういう方々が、突合する期間あるいは実際に突合されるのかされないのか、そういうことも含めて、今の現段階での政府の対応では必ずしも救済されないおそれがあるということを私は強く指摘しておかなければいけないと思います。

 そして、時間がありませんから個別具体事例に触れたいんですけれども、私が大変怒りを覚えているというか、総理の認識を大臣としてどうお考えになるかぜひ伺いたいのは、五月二十二日の参議院の文教委員会で、我が党の蓮舫議員からこういう質問があったわけですよ。実際に五千万件の方々が記録が宙に浮いている状態で、それに対して本当に今の対応を総理としてどう考えるか、認識しているか。そんな中で総理の答弁は、実は、その五千万件とは全く関係のない答弁だったと私は思いますけれども、二百十五万四千件中二百十四万四千件は正しいから、いたずらに不安をあおるのはよくないという答弁をされたわけですよ。

 そういう答弁をされたことを大臣は御存じだと思いますが、この発言を聞くと、私は、総理は本当に実態がわかっておられないんじゃないのかと、国民の立場に立つときに怒りを禁じ得ないわけであります。九九%が真正な記録であったらいいなんて、とんでもないんです。過去六年間で、社保庁は、支給が始まった人のうち既に二十二万件、年金額を訂正しているんですよ。これは、全受給者からすれば〇・七%なんですよ。総理の認識だと、これぐらいのことでいたずらに不安をあおるなということになってしまうんですよ。

 大臣、あるいは、昨年八月からことしの三月にかけて、実際に二百十五万人が社保庁に相談に訪れて、その一%の二万六百三十五人が保険料を納めた記憶があると訴えたが、同庁は記録がありませんと退けたわけですね。そして、年金加入者と受給者が合計一億人いることを考えると、記録が残っていない可能性のある人が一%計算だと百万人になるわけですよ。

 ですから、単に一%だからということで判断をするという総理のコメントは、私は大変不正確であると思いますが、大臣は、一%のある意味ではレアケースだから、残りの九九%は正しいんだからいたずらに不安をあおるなという、その総理のコメントについて、同感であるか、そうでないのか、御所見をお聞かせください。

柳澤国務大臣 大量の数の被保険者、受給権者の、しかも長年にわたる履歴を記録として管理するという使命を私ども持っておるわけでございまして、その間、制度の改正もあり、また、記録の仕方の紙からコンピューターへという技術革新に伴う絶え間ない大きな飛躍もそこにあったわけでございまして、もちろん、それも乗り越えて信頼される記録の処理が行われていなければならないわけでございますけれども、そういうことでないという案件がいろいろ御指摘をいただいておる、こういうことでございます。

 ただ、大数的にいうと、窓口に来られた方で、九九%の方が即座に、いわゆるウィンドウマシンと称せられるスコープの上で確認されるということが行われているという状況を総理として申し上げたということだと考えます。

柚木委員 私は、その一%の方々をそういう認識で扱われることは、決して、これは総理大臣としていかがなものかと思います。

 では、最後に、もう時間がありませんので、この質問にだけお答えいただきたいんですが……

櫻田委員長 柚木道義君に申し上げます。

 既に持ち時間は経過しておりますので、質疑を終了してください。

柚木委員 重要な質問の材料を提供していただけなかったので今こういうことになっているので、最後に一つお答えください。

 いいですか、大臣。実際に……

櫻田委員長 質疑を終了してください。

柚木委員 この問題に対して、今後、全数調査をやるかやらないか検討すると言われたんですから、そのための費用対効果、大臣、その検証も必要だということをこれまでおっしゃってきたわけですよ。実際に……

櫻田委員長 柚木道義君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

柚木委員 今後、全数調査について、期間がどれだけかかって、どれだけの人員でやって、どれだけのコストでやるのか、そのことをぜひ検討していただくということをこの場でお答えください。

櫻田委員長 質疑を終了してください。

柳澤国務大臣 それは、実施するということになれば、それぞれの実施の年度におきまして予算も必要でしょうし、そういったことから……(柚木委員「実施するんですか、しないんですか」と呼ぶ)実施するとすればそういうことになるということで、今言われたような期間だとか予算だとかというのが当然検討の対象になる。予算を一年度分要求したって、財務当局は必ず、全部では全期間では幾らかということを言われるに決まっていますから、いずれにしても、そういったことがその暁には検討されることになるでしょうということでございます。

柚木委員 大変不誠実な今の御答弁だったと思います。遺憾でございます。(発言する者あり)

櫻田委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、優に時間は超えております。席にお戻りください。

 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 冒頭から、委員長のこの委員会の運営に対して抗議を申し上げたいと思います。

 どちらが誠実に答えているのかいないのか、質問に答えているのかいないのかを御判断いただきたいと思います。

 私も、この消えた年金の問題について、限られた時間ですけれども、お話を伺わせていただきたいと思います。

 新聞報道によれば、大臣は今し方の柚木委員とのやりとりの中では明らかになさいませんでしたけれども、既に一年半をかけて全件調査をする方向だとか、それにかかる費用は十億だとかいうものが新聞で報じられております。マスコミに対してそういうことをリークし、国会の場で明らかにしないというのは、一体どういうことでしょうか。国会軽視も甚だしいと思います。大変怒りを覚えますが、いかがですか、大臣。

柳澤国務大臣 私は、今、郡委員がおっしゃられることを全く知りません。全く知りません、私は。

 ですから、そういう、一年半かかるとか九億とかおっしゃられたですけれども、私はそんなことを、だれかマスコミの人が、柳澤大臣が言ったと言う人がいたら本当にお目にかかりたいぐらいに、全く私はその報道については関知いたしておりません。

郡委員 午後の総理のお話でも、そういった提案はないというふうに考えてよろしいんですね。

柳澤国務大臣 それは、私どもは、これまでの御議論もありますし、また、せんだっての総理及び私の答弁もありますから、そういうことで答弁をしたことは、私らなりにさせていただいているわけでございます。それは柚木委員にもお答え申し上げたとおりでございます。

 ですから、その今言った一年半とか九億とかという話が出るのかというようなことについては、私は、先ほどその報道については私は知らないということを言ったわけですが、それはもう本当に知らないわけでございまして、どういうところで、そこで郡委員が、それが午後あらわれるのかということを聞かれても、私といたしまして、何ともお答えのしようがないんですよ。そういう状況にあります。

郡委員 大変、年金のこの問題を所管する大臣として本当に不誠実な御答弁だと思いますよ。これだけテレビあるいは新聞などで大きく報じられていながら、なぜ、この国会の場にそれを明らかにできないんですか。何も審議ができませんよ。本当にどういうおつもりでいらっしゃるんですか。審議妨害も甚だしいというふうに言わざるを得ません。

 それでは、伺います。

 これまで大臣が御答弁なさったのは、六月の支払い通知に、御不満のある方、不安のある方はぜひ問い合わせてほしいというようなことを書かれるということでした。これは六月の十五日ですね。そうしますと、もう時間が余りありません。これはされるのですか、されないのですか。

 大臣にお伺いします。されるのかされないのかですから。

柳澤国務大臣 私は、そのように長官に対して指示を出しています。ただ、それを実際にどういうふうになさるかというのは、やはり社会保険庁長官の責任で行われるものと思います。

郡委員 ちょっと待ってください、大臣。ということは、大臣が指示をして、それにこたえなくても、部下がこたえなくても、それはいいということですか。これはどういうことをおっしゃられたんですか、今。

柳澤国務大臣 これは、行政組織というものをしっかりあれしておいていただきたいんですけれども、社会保険庁長官というのは、多分私は、これは私の持っている権限ですけれども、彼も行政官庁なんです。我が名において、国民に対して権利義務の設定ができるんです。そういう人をもう全く私のスタッフのように使うわけにはいかないわけであります。

 したがって、私は、その社会保険庁の実務を仕切っている最高責任者は社会保険庁長官でございますから、社会保険庁の長官が判断をされる、その判断を聞いてあげてくださいということを申し上げているわけであります。

村瀬政府参考人 委員長指名ですから、よろしいですか。(郡委員「長官には伺っていません」と呼ぶ)まず事実関係だけをちょっと御説明させてください。(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛にお願いします。

村瀬政府参考人 先ほど大臣から答弁されましたように、まず、社会保険の保険者、国の責任者、社会保険庁長官は私でございます。そして、社会保険庁の職員に対する任命権も私が全部持っております。

 したがいまして、先ほど大臣からお話がありましたように、六月に、振込通知書ということで、年金を受給される方々については、その中で、御疑問のある方についてはぜひ社会保険事務所へお越しください、こういう文言を出す予定で今準備を進めております。

郡委員 今の長官の話はわかりましたけれども、大臣の答弁は到底信じられないものです。

 今議論になります日本年金機構ですか、これは特殊法人になるわけですね。その所管する一番トップに立っているのは厚労大臣じゃないんですか。今もそういう仕組みですよ。

 しかしながら、先ほど大臣がおっしゃったのは、私の言うことがそのまま伝わるべきものでもないのだということですよ。であれば、これはどういうことになりましょうか。とんでもない、大臣の今の御発言、御答弁の持っている意味というのを本当におわかりになっていらっしゃいますか。大変驚きました。もう年金についての一切の責任を大臣は負わないというふうにおっしゃられたんだと思いますよ。とんでもない御発言だと思います。

 長々と弁解されるのも困ります、限られた時間ですから。それでは、伺いましょう。

 三千万人の受給者に対して、来てくれというふうなお知らせをする。そのお知らせも大変小さいもので、わかりにくい。これから実際に決めるのだということで、今五月の二十五日ですね、この二十五日になってもまだ決まっていないということです。

 そして、その文言なりなんなりを、見せていただきましたけれども、まだ決まっていない、これから準備をするのだということでした。そして、それが全戸配布されたことになりましょう。それでは一斉に社会保険事務所にどっとその方々が訪ねられた場合に、対応できるんですか。今だって全然、もう待ち時間が何時間もあるという方々が多いんです。全国からそれぞれの社会保険事務所に三千万の受給者の方々がどっと押し寄せた場合に、しっかりとした対応ができるんですか。私はそうは思いません。さらにまた社会保険庁の対応が後手後手に回って、さらにさらに国民の不安も不満も多くなるんではないかと思われますが、いかがでしょうか、長官。

村瀬政府参考人 まず、五千万の認識の問題だと思います。五千万、消えた、消えたということですけれども、これは基礎年金番号に統合されていない番号でございます。したがいまして、三千万の方々にお送りしたとしても、どれだけの方がお見えになるかということは、やってみないとわからないというのが現状でございます。(郡委員「そんなことは伺っておりません。そんなことは聞いておりません」と呼ぶ)

櫻田委員長 御静粛にお願いします。

村瀬政府参考人 それと同時に、今現在、社会保険庁としましては、事務所単位でどのような混雑状況になっているかということについては常に把握をしてございます。それも一時間単位で把握をしてございます。事務所によりまして、何時から何時までは待ち時間がないだとか、何時から何時までは一時間待ちだとか、そういうものをすべて確認した上で運営をしてございます。また一方、インターネットであるとかお電話であるとか文書であるとか、ルートとしては、必ずしも事務所だけではないルートも持っております。

 したがいまして、個別案件についてはしっかり対応するということで、どうしてもそこで人が足らないということであれば、人員シフトとしても対応していく、こういう形でいくんだろうと思います。

 その中で、今どういうことをやっているかということで御認識いただきたいと思いますけれども、第二土曜日も開庁をさせております。それから、月曜日は夜七時まで毎週やらせております。それと同時に、予約制ということで、お時間を決めていただければ親切に対応できるという仕組みをとっておりまして、あらゆる角度でやらせていただいた中で、かつオーバーフローするというのであれば対策を講じていく、こういう考え方でございます。

郡委員 今でさえ、そのような体制をとっておられるということですけれども、事務所に見えた方々が大変長い待ち時間をとっている。そして、しかも、調査をお願いしても、門前払いをされたり、あるいはまた長い長い調査時間がかかったりしているわけです。それが、そのお知らせによってどっと来ることによって、対応できるのですかということを聞きました。

 また、今現実に、裁定が決まるまでに一月あるいは一月半以上かかっているというふうに承知しておりますけれども、それでは、これがどれぐらいの間で突合なりなんなりができて再裁定に結びつくというふうにお考えでしょうか。その期間はどれぐらいと予想されているんでしょうか。

村瀬政府参考人 まず、三千万人の方々につきましては、裁定時に一回突合しているわけですね。したがいまして、御疑問に思われた方々については、どこの部分が御疑問かということをおっしゃっていただきながら、相手さんと一対一の関係でしっかり対話をしなければ、結果は見つかりません。したがって、時間はかかるというのは、私は当たり前だと思います。時間がかからないものであれば、既に突合は完了しているはずでございます。

 したがいまして、そこはいかに丁寧にやるかということが一番大事な仕事だろう、このように考えております。

郡委員 それでは、大臣が五十五分から参議院本会議に御出席だということですから、その前に大臣に伺っておきたいと思いますけれども、時効の問題です。

 時効の問題、これまた新聞報道によりますと、与党でもこれを取っ払うというようなおつもりになっているというふうに報じられております。この時効を取っ払うというのは、秋に出てくる議員立法ということを待たねばならないということになりますか。どうなんでしょうか。

柳澤国務大臣 私も、これは、テレビで丹羽総務会長が演説でしょうか講演されているところを拝見して、そういう意味で聞いているわけですけれども、議員立法で、当然、秋になるのか、とにかく国民の皆さんに迷惑をかけないようにしますということをおっしゃっていたようでございますので、与党で御検討いただくことになるのかなと思って見ておりました。

 政府の中でこれをやるということになると、恐らく調整は大変なことになっていくだろうというふうに思うわけでございます。これは会計法の大原則を例外をつくるということですから、したがって、そうしたことの問題の性質に顧みて、恐らく党が、政府内の調整にゆだねるよりも、手早くやるためには議員立法の形がいいというような方向での検討をしているのではないか、このように思うわけでございます。

郡委員 大臣、私たち民主党は、今回法案を出させていただいております。なのに、なぜそれを議論せず、審議をせず、与党の皆さんたちが秋の臨時国会に向けて議員立法にするというようなことだそうですけれども、今これはやっておかなくちゃいけないことだと私たちは認識して、そういうふうに御提案申し上げているんですよ。これをないがしろにして、なぜそういうふうな態度なんでしょうか。非常に納得できないです。

 では、伺いますけれども、もし、これは仮定の話になってしまいますけれども、その与党が提案された議員立法が通り、時効を取っ払うということになりました、では、そのときに、時効をなくしていこうというのはどの段階からになりますか。その法律が施行された段階からになりましょうか。今までの、これからの方々、その秋までの方々は、では、やはりこれはそのまま損をするということになりますか。大臣、どういうふうにお考えになりますか。つまり、ここでまた受給者に対する大きな差別が生まれるということになります。このことについてはいかがお考えになりましょうか。

柳澤国務大臣 これは、実際にその立法措置をとるときに対象者をどう規定するかということに係るわけでありましょうから、それは私が今この場で、そもそも議員立法の内容について私がお話しするというのは筋が違うと思いますが、どうしても郡先生がどう考えますかということですから、私があえて言えば、それは対象の決め方ということになるでしょうということを申し上げたわけです。

郡委員 ですから、この国会におきまして、今まさに問題になっていることなんですよ。今問題になっていることです。私たちは、このことについてどう考えるかということを議論するわけなんですよ。それなのに、これから後出しで、そういうことをしますのでこれは議論しませんということでいいんですか、そういう態度で。

 本当に、これまでの議論が何であったのか、そして、これからの、年金機構に対しての議論ですとか、それから年金そのものに対する議論も、これはできないんですよ。そのことを何で御理解いただけませんでしょうか。

柳澤国務大臣 時効の問題というのは、随分ここで議論をされたというふうに私は記憶をいたしております。

 それで、私の方の答弁というのは、これは会計法の非常に基本的な原則であります、したがって、この枠内に我々はいるわけでということで、高橋委員がお示しになられたような、はっきりした裁定請求を出しておられた方については、これは、その裁定請求が時効の中断の効果を持って、そうして、時効を援用しようとしても、そんなものはだめだといってさかのぼったというケース、それからまた、もう一つは、請求者が請求をするに当たって、何か債務者の方で極めて重大な障害をそこに置いておったというようなことの場合には、これは、信義則上、時効の援用というようなもので通るわけではないというようなことがこれまでにも明らかにされているところですということを御答弁した。そういう議論の行き交いがあったということでございまして、時効の問題について何も議論がなかったということは、私はなかったと思います。

郡委員 本当に情けないというか、そもそも、この五千万件の宙に浮いた年金記録、支払いに結びついていない記録、このミス、責任というのはどこにあるんでしょうか。国民に全く責任はありません。国の責任だとやはり言わざるを得ません。それなのに、このことに関する謝罪も全くない。そして、今、時効の問題にしましても、いろいろ大臣御答弁されましたけれども、国には何の落ち度もないといったような立場でお話をされている。そもそものところが私は違っているんだと思いますよ。

 そしてまた、与党が提出される予定だと報じられている救済法案というのは一体何を意味するのでしょうか。これは本当にミスを犯した国の責任ですけれども、今この時期に、私ども一生懸命に議論しようというときに、その中身も明らかにしないで参議院選挙の間際にこういうことを出して、そして有権者の皆さんたちに与党がやりますと、その中身も何もわからないで、私たちは、ああ、そうですかと納得するわけにはいかないんです。今この場に、この審議をしている期間に出していただきたいですよ。でなければ議論できないということを重ねてずっと申し上げているわけです。柚木さんもそうでした。私もそうです。ここにおられる皆さんたちもそうですよ。でなければ議論が進まないんです。

 そして、大変残念ですけれども、これは与党の皆さんたちの選挙対策で、その後、選挙が終わってから出てくるという法案の中身がそれこそ国民を裏切るようなものであれば、まさに詐欺国家です。(発言する者あり)言い過ぎではありません。本当にそういうふうな思いで、国民の皆さんたちもこの国会の議論を見詰めているんですよ。そのことをしっかりと大臣には心にとめていただかなくちゃいけません。

 のらりくらりと答弁をされて、午後に総理がお見えになって何をお話しになるか。全く議論ができない。そして、報じられるところによりますと、まだ日本年金機構のこの法案について議論が全然なされていない、この大きな大きな問題の解決策も見出せないうちに、よもや採決というようなことがあれば、これは大変なことになります。

 では、大臣がまだお見えになっている間に伺わせていただきたいと思うんですけれども、もしその時効ということも取っ払われて、これまで払われるべきものが払われないでいたわけですから、払われるべき総支給額、宙に浮いている五千万件のうちの本当は払われなくちゃいけなかった保険金の総支給額というのは幾らぐらいになりますか。

柳澤国務大臣 ちょっと飛躍が、郡委員のせっかくの御質問ですが、私のことは、今時効についてのこれまでの答弁として、要旨を申し上げたところでございます。

 したがって、与党の方で、先ほども私、報道で見たということで申し上げましたが、議員立法される。それからまた、その対象についても、いろいろその立法の中でお決めになられる、こういう手順で進んでいくというふうに思いますので、そういうものを先取りして私が、この時効で救済支給される金額がどのくらいになるかというところまで、私はとても御答弁するだけの資料を持っておりません。

郡委員 今、総支給額も幾らかわからないということでしたけれども、これは受給される方々の権利保障という問題だけではないというふうに私は申し上げたいのです。今現実に保険料を払っている現役世代にも大きく影響を及ぼすものではないかというふうに思っているから、今お尋ねをしたわけです。

 なぜか。現役世代の被保険者も大いに関係してくると申し上げました。これまで、厚生年金と国民年金というのは、二〇〇四年までは五年ごとに財政再計算をしてきたわけですね、経済指標だとかあるいは出生率だとか。

櫻田委員長 郡和子君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

郡委員 これの前提条件というのを甘くしてきたということは、もう既にいろいろと御承知おきのとおりだと思いますけれども、この前提の計算も狂ってくる。つまりは、実際に今保険料を納めている方も保険料の負担を強いられ、あるいは受給額も少なくなるのではないかということを申し上げたいのです。

櫻田委員長 郡和子君に申し上げます。

 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

郡委員 というふうな、こういう審議の進め方で、これまで私も随分用意してまいりましたけれども、何も伺えません。前提となるところを大臣は何もお答えにならないからです。こういうことできょうの委員会というのは成り立ちましょうか。

櫻田委員長 郡和子君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

郡委員 とんでもありません。怒りを持って、質問を終わります。

櫻田委員長 次に、高鳥修一君。

高鳥委員 自由民主党の高鳥修一でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日まで、当委員会において、社会保険庁改革関連法案について熱い議論が続いてまいりました。時には議論白熱する場面もたびたびあり、また、既にさまざまな角度から質問が出ておりますけれども、しかし、私自身がまだ腑に落ちない点がございますので、改めて質問させていただきたいと思います。

 年金改革に対する国民の期待は非常に強いものがございます。年金に対する信頼を回復するために改革を進めなければならない、これは党の立場を超えて共通であるというふうに私は思います。そこで、改革を進めるためには、まずしっかりとした原因究明をしなければならない。原因を究明して、そして問題を解決して、正しい反省の上に立って正しい改革ができるのではないか、そのように思うわけであります。

 まず、年金の納付記録についてお伺いをいたします。

 年金の納付記録に間違いがある主たる理由は何ですか。パソコンに入力する際の打ち間違いという話が出ておりましたけれども、この作業はすべて社会保険庁の職員が行ったのでしょうか。外部のアルバイトを使ったということがあるのでしょうか。また、チェックはどのようにされたか、御答弁願います。

青柳政府参考人 納付記録の誤りについての原因究明というお尋ねでございました。

 直接のお答えに入ります前に、それがどういう経緯を経てこれまで行われてきたかということに少し触れさせていただきたいと存じます。

 まず、国民年金の記録についてでございますが、これは昭和三十六年に制度を発足してから昭和四十年までの間は、まず市町村にさまざまな届け出あるいは納付が行われるわけですが、そこから社会保険事務所の方に報告が参りまして、その報告に基づきまして、被保険者台帳というものを社会保険事務所で記録して管理を行っておりました。その後、昭和四十年の四月からは、この被保険者台帳の管理を継続すると同時に、社会保険事務所で記録を収録したものを本庁、社会保険庁に進達をするということで二重に管理をするということにいたしました。この進達に基づきまして、社会保険庁で磁気テープに記録を収録するという管理方式に改まったわけでございます。

 一方、厚生年金保険につきましては、昭和十七年に制度を発足したわけでございますが、この時点から、被保険者台帳それから被保険者名簿によりまして、各社会保険事務所が管理をずっと行ってまいりました。昭和三十二年の十月には、本省に、当時は保険局が実はこの仕事をやっておったわけですが、被保険者台帳を順次移管いたしまして、この移管された被保険者台帳をもとに、磁気テープに記録を収録し、管理するというような経緯を経ております。

 最終的には、既にこの委員会でも御議論になりましたように、昭和五十年代に入りましてから、オンライン化という形で、社会保険庁がそれまで磁気テープで管理してまいりました記録をもとに、国民年金や厚生年金保険の磁気ファイル、現在、オンライン上の記録になっているわけでございますが、これを作成したということでございます。この磁気ファイルの作成に当たりましては、その際に、現存する被保険者の方については、社会保険事務所に私どもの磁気ファイルの切りかえ表というものを送付いたしまして、事務所の方の記録との補正あるいは確認の作業を行ったという形で、最終的な磁気ファイルを作成したという経緯がございます。

 ただいまも申し上げましたように、市町村あるいは社会保険事務所、そして本庁という形で、記録をそのたびごとに突合し、あるいは照会をしながら、記録、管理に励んできたわけでございますが、その間に、例えば市町村に対してのさまざまな届け出の誤りであったり、市町村からの進達の誤りであったり、あるいは事業主の方が介在して厚生年金保険は届け出が行われるというようなことがありましたので、残念ながら、その過程その過程においてヒューマンエラーが発生したということは否めないのかなというふうに承知をしております。

 お尋ねにございました、例えばアルバイトを使ったのか、あるいはチェック体制はどうだったのかということにつきましては、当然のことながら、相当多数の情報を短い期間で移しかえをしなければいけないという状況の中で、職員だけで手の足りない部分を外部委託等に頼ったということは聞き及んでおるわけでございますが、具体的な分量あるいはその詳細の内容につきましては、残念ながら、現在、記録の残存期間が経過しておるために、詳細についてお答えできない点をお許し願いたいと存じます。

高鳥委員 人の一生を左右するような記録をもしアルバイトに任せたというのであれば、私は大変問題であると思いますし、その詳細な記録が残っていないというのは本当に理解ができないことであるというふうに思います。

 次に、未統合のデータが五千万件あるといいますが、どうして未統合になったのか、その理由を教えていただきたいと思います。

青柳政府参考人 未統合五千万の記録についての原因究明ということでございます。

 これは、一言で申し上げれば、基礎年金番号の導入以前において各制度ごとに記録を管理していたことに端を発するわけでございますが、しかしながら、当時におきましても、実は、例えば厚生年金であれば、各事業所に勤めて資格を取得した際には、必ず資格の取得届を被保険者が事業主を通じて社会保険事務所にしなければならない、これは現在でもそういう法律上の義務がございます。また、国民年金につきましても、御本人が市町村を通じて必ず取得届を出さなければならない、こういう手続が行われることになっておりました。

 初めて資格を得たときには、この資格取得届に基づいて年金手帳と番号が当然付与されるわけでございますが、その方が住所が変わった場合、あるいは勤務先がかわった場合には、その年金手帳をそれぞれ変わった住所の市町村、あるいは事業所にお出しをしていただく、こういうルールになっておりました。

 したがいまして、現在のように例えばコンピューターが発達していない、あるいは基礎年金番号がない時代でありましても、届け出が適時適切に行われれば、その届け出が行われたときの番号をつなぎ合わせていって間違いのない記録が管理できる、こういう仕組みが制度発足以来とられておったわけでございます。

 ところが、残念なことに、手帳をなくされる方があり、また、事業所をかわったときに、前の事業所のことを知られたくないということで、初めて資格を取得したというふうに申請をされる方があり、さまざまな理由でこの届け出が適時適切に行われないために番号が複数付番されるというようなことが生じておったということが、この基礎年金番号導入前にあったということは事実でございます。

 そして、平成九年に、すべての制度を通じて一元的に記録を管理するための基礎年金番号を導入したわけでございますが、その際には、一義的には当時加入していた制度の番号を基礎年金番号として使用するということにしたわけでございますが、それ以前の、先ほど申し上げましたような番号については、御本人に照会をして初めて統合するということが可能になったという事情がございます。

 大変残念なのは、適時適切に届け出が行われておれば昭和三十六年以降ずっと一つの番号で管理できたものが、さまざまな事情でそういうふうにばらばらになっていたということがこの五千万の記録未統合の背景にあるということについて、ぜひとも御理解を賜りたいと存じます。

高鳥委員 基礎年金番号導入後はすべての記録が基礎年金番号によって管理されるため、将来的にこのような問題は生じない、今指摘されている事態は過去の問題だという話も聞きますけれども、これらの問題は決して過去の問題ではなく、現在進行形の問題ではないでしょうか。

 私も、サラリーマン時代に厚生年金、そして選挙に出て落選中も国民年金に加入して、間もなく二十五年になりますので、受給資格がいただけるものと思います。しかし、一般の国民にとって、年金手帳は大切である、こういう感覚はあっても、納付記録をすべて保管をしている人はほとんどいないのではないでしょうか。逆に、社会保険庁はその道のプロであり、それゆえに国民は全幅の信頼を寄せてきたのではないでしょうか。今までの議論をお聞きしていると、国民の側に立証責任があるとか、年金の給付は本人の請求に基づいて行っており、年金額の変更は支給漏れではなく請求漏れという態度は、いささか不親切ではないでしょうか。

 先ほど関連する質問もあったようでありますが、五月二十三日の予算委員会で、大臣は、統合漏れの可能性があったとお知らせすることは予算と手間がかかるが検討したいとおっしゃっておられます。これは、具体的にはどういう作業を指すのでしょうか、二日間でどういう検討をされたのでしょうか。これは、統合されていない五千万件のうち受給世代に当たるデータが千九百万件、これを現在受給している三千万件と突合するという意味なのでしょうか。御答弁をお願いします。

石田副大臣 この年金の問題につきましては、私も自分のことを考えてみますと、大学院を出て、東京都に勤めて共済に入りました。それから厚生年金に移り、また選挙に出るということで国民年金に移った。ですから、私も多分今三冊ほど手帳を持っているんじゃないかと思いますけれども、なかなかそういう一人一人の人生何十年間を追いかけていくということは、もう相当責任を持ってやっていかなきゃいけない、こういうことも議論を拝聴しながら考えておりました。

 この二十三日の問題につきましては、総理からは、いたずらに不安をあおるようなことは行ってはならず、国民の不安を解消するための工夫をすべきとの御指示がございました。大臣が具体策について検討されていると承知しておりますけれども、副大臣としても、大臣を十分にお支えをしてしっかり取り組んでいきたいと思っております。

高鳥委員 大臣がおっしゃったように、仮に予算と手間がかかっても、国民は真実が知りたいのだと思います。納得ができれば納付率も上がると思いますので、信頼回復を言うならば、みずからが不信感を払拭する努力をするべきであると思います。ぜひ、困っている人を救済することにちゅうちょしないでいただきたいと思います。

 次に、日本年金機構の職員の採用についてお伺いをいたします。

 社会保険庁の出先も含めた職員の数、これは常勤、非常勤合わせて何名でございますか。

清水政府参考人 社会保険庁の職員数についてのお尋ねでございます。

 地方も含めた平成十八年度末における数字でございますが、正規職員数約一万七千百人、非常勤職員数約一万一千五百人、合計約二万八千六百人でございます。

高鳥委員 過去十年で不祥事で処分をされた社会保険庁の職員は何人ですか。

清水政府参考人 社会保険庁におきまして、平成九年から平成十八年までの過去十年間に、国家公務員法に規定する懲戒処分を受けたか、または、懲戒処分を行うまでには至りませんものの、監督上の措置として訓告または厳重注意、これを受けた職員の数でございますが、非常勤職員を含めまして、合計で延べ六千八十人でございます。

 なお、一言付言させていただきますと、このうち五千五百三十八名は、不祥事による大量処分があった平成十六年から十八年の三カ年のものでございます。

高鳥委員 大変大きな数で、驚いております。

 そのうち懲戒免職になった方は何人ですか。そして、主たる理由はどういう理由ですか。

清水政府参考人 今申し上げました過去十年間に懲戒処分を受けた職員のうち、免職となった職員の数は合計二十七人でございます。

 免職となりました主な処分事由について申し上げますと、保険料などの公金横領二十名でございます。国家公務員法、倫理法に違反する収賄、供応三人ということになってございます。

高鳥委員 先ほどの六千八十人という数は、これは延べ人数であり、またこの十年間に退職された方も相当数おられると思います。しかし、これは本当は正確な数を教えていただきたいんですけれども、恐らくまだ現在、社保庁に、四、五千からの何らかの処分を受けた職員が残っているというこの事実であります。これは、百人に一人とかというレベルではないわけであります。

 そして、国民が最も許せないのは、不正を行った職員がぬくぬくと新機構にそのまま再雇用される、こういうことは絶対に許せないわけであります。ここで厳正な線引きをすることの一点は、非公務員型の新機構に移行する際に絶対に譲ることができないと思います。

 業務目的外ののぞき見をしたり、無駄遣いをしたり、過去に何らかの処分を受けた職員は、そもそも国民に奉仕する公務員としての資質に欠けるのではないかと思いますが、いかがですか、副大臣。

石田副大臣 社会保険庁におきましては、これまでさまざまな不祥事が発生してきましたが、職員の非違行為に対しては、その都度、その内容に応じて、当該職員の責任を問うために厳正な処分を行ってきたところであります。

 しかしながら、国家公務員に対する懲戒処分は、国家公務員法第八十二条の規定に基づき、職場の綱紀を粛正し、秩序の回復、維持を図ることを目的に行ってきたものであり、過去に何らかの処分を受けたということのみをもって、直ちに将来にわたって国家公務員としての資質に欠けているとまでは断じがたいものがあると考えております。

高鳥委員 村瀬長官も、この件に関して御決意をお聞かせいただきたいと思います。

村瀬政府参考人 まず、今お問い合わせの件、副大臣からもお話し申し上げましたけれども、基本的に、その都度処分というものをしてございます。

 社会保険庁としましては、人事評価制度を導入いたしまして、個々人の仕事の仕組みというものを今評価できる仕組みになってございます。したがいまして、この評価に基づきまして、具体的に設立委員会がどういう形で募集をするかわかりませんけれども、我々としては、判断基準として提出を申し上げたい、このように考えております。

高鳥委員 次に、保険料の無駄遣い防止についてのことをお聞きしたいと思います。

 今回の法案においては、いわゆる福祉施設規定を廃止した上で、年金保険料により実施する事業を明示的に列挙、限定したといいます。しかし、新たに、年金相談、年金教育・広報、情報提供等の事業を行うことができる旨の規定を設け、適用、徴収、給付等の保険事業運営に直接かかわる経費は年金給付と密接不可分な費用であるとされております。

 数年前に、某タレントを起用した広告に六億二千万円かけて非難を浴びた事例がございましたが、こういう保険料の使い方は、いつ、だれが決めたんですか。

村瀬政府参考人 今お尋ねの某タレントを起用した広報でございますけれども、当時六億二千万をかけて広報したわけでございます。

 社会保険庁では、広報委員会というのを設けておりまして、平成十五年三月から設置をしてございます。

 当該件につきましては、平成十五年の五月二十一日の広報委員会におきまして決め、六月十九日の企画競争、十八社参加されておりますけれども、そこで広告代理店を選定し、実施したというふうに確認をしてございます。

 その後、平成十六年七月以降につきましては、反省を踏まえまして、広報媒体につきましては基本的に新聞等の活字媒体とする、タレントの起用については、イメージ広報はもう実施をしない。また、広報の予算自体につきましても厳しく締めている、また、新聞等による広報につきましては、効果測定を行いまして、その広報が効果があったかなかったか等、事後検証もしっかりしてございます。

 また、これを民間の皆さんの目でということで、社会保険事業運営評議会というものがございますけれども、そこに事業主の方々、被保険者の方々も参加していただいておりますが、そこで御報告をし、評価を得ているという形で運営をさせていただいております。

高鳥委員 日本年金機構においては、無駄遣いをチェックする仕組みはあるんでしょうか。現行の社保庁のチェック体制とどう違うのか、無駄遣いを防止するための歯どめを明確に教えていただきたいと思います。

村瀬政府参考人 まず、日本年金機構の運営に対します交付金でございますけれども、これは国の年金特別会計として計上されることになってございます。したがいまして、国の予算として精査を受けます。また、会計検査院の検査も当然のことながら受けるということで、国の予算として国の厳しいチェックを受ける、こういう仕組みにまずなってございます。

 一方、日本年金機構の経費の執行の中身という問題からいきますと、事業計画や予算、これは厚生労働大臣が毎年度認可する仕組みになっておりまして、その段階で予算執行面での無駄がないかチェックをする仕組みができております。また、あわせて、不適切な予算執行があれば大臣が是正命令を行う、こういう形になってございます。

 また、機構本体でございますけれども、現在、社会保険庁でも行っております調達委員会、これで厳格な審査をしておりますけれども、これは当然のことながら継続して行う。一方、公法人でございますので、監査法人の監査を受けるという形で、新たな民間の監査も受ける形になろうかと思います。また、年金保険料の使途が国民の目に明らかになるようにということで、ホームページ等で公表するということを義務づけられておりますので、そういう点では新たなものも加わるという形でございます。

 このような仕組みをつくりまして、無駄の排除に万全を尽くしていきたい、このように考えてございます。

高鳥委員 今、民間の外部監査を受ける等るる説明がありましたけれども、やはり年金に対する不信感の一つの大きな原因として、保険料の無駄遣いというのが過去にあったわけでありますから、二度とこういうことが起こらないように万全の体制で取り組んでいただきたいと思います。

 次に、参考人質疑のときにお話が出ましたけれども、徴収方法の一元化について渡部参考人が意見を述べられております。徴収の民営化は非効率であるという指摘に対して、どのように反論されるかお答えください。

清水政府参考人 先般のこの委員会におきます参考人質疑の際に、渡部参考人から、保険料徴収体制の民営化は非効率という御意見があったと承知してございます。

 今回の私どもが御提案申し上げてございます改革案におきましては、厚生労働大臣が公的年金に係ります財政責任、管理運営責任を担う一方で、新たな公法人を設立いたしまして、国の直接的な監督下で一連の運営業務を担わせるというものでございますので、徴収について一言、民営化というように考えることは必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えてございます。

 機構が行います保険料の徴収業務につきましては、機構に対しまして、国民年金保険法などに基づきまして、必要な権限を委任いたします国と同様の公権力の行使を認めるものでございます。

 さらにでございますけれども、強制徴収につきまして、悪質な事案に関しては国税庁の徴収ノウハウを生かす、そういうことによって効果が期待できる場合には国税庁に委任するということをしてございまして、非公務員組織が中心ということでありましても、徴収能力が低下するという形にはなっていないということでございます。

高鳥委員 国税当局による税金と社会保険料の一元化徴収体制についてはどう考えますか。

清水政府参考人 国民年金と国税を比較した場合の数字を申し上げますと、国年一号被保険者二千二百万人のうち、所得税申告納税約三百五十万人というふうに推計しておるところでございまして、徴収の対象も大きく異なっているということが一点ございます。

 また、国民年金保険料につきましては、最高でも未納額は二年分の約三十万円という比較的少額の多数の債権という特性を有しているところでございますので、対象者の方に年金制度の意義などを御理解いただき、また、いろいろと、コンビニ納付でございますとかインターネット納付でございますとか、そのような納付環境も整えながら、自主的な納付に結びつけることが基本というふうに考えておるところでございます。

 また、それでも未納であるという方々につきましては、やはりお一人お一人の属性に応じたきめ細かい対策ということが必要と考えてございまして、まずは、効果的な納付督励の実施ということ、二点目としましては、やはり負担能力のある方であってなお未納の方でありますれば強制徴収をかけるということ、それから三点目には、免除基準などに該当する方には免除などの申請勧奨を行いまして年金受給権に結びつけていくこととする、こういうふうに考えておるわけでございます。

 一方、国税庁の方は、さまざま、いろいろな方面、大きな案件を抱えられていろいろと御苦労されていると思いますが、やはり大口案件、悪質な案件、そういうものの滞納案件の対応に重点を置かれている、そのように承知しておるわけでございます。

 今申し上げましたように、国年保険料の徴収、国税徴収ということでは、対象でございますとか業務の特性が基本的に異なっておるというように考えてございまして、両組織の統合ということでは、なかなか効果は期待できないのではないかというふうに考えておるところでございます。

高鳥委員 国民各層からこの年金改革に寄せられる期待というのは非常に大きいものがございますので、引き続き、今大臣おられませんけれども、柳澤大臣また村瀬長官におかれましては、国民の立場に立って、親切で信頼できる体制を築くことに今後とも全力で取り組んでいただくことを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 公明党の福島豊でございます。

 私どもも、この委員会でるる指摘をされました年金記録の問題、政府としてできる限りのことをすべきだ、そしてまた、与党としてもできる限りの対応をして、年金に対しての国民の皆様の信頼、これを揺るぎないものにする必要がある、そのことを、まず冒頭申し上げておきたいと思っております。

 そしてまた、一方で、どうしてこういう問題が起こったのかということについては、そしてまた実際にどういう事態なのかということについても、いろいろと誤解があるようでありますから、この点についても明らかにすることは、この委員会としても有意義なことだと私どもは思っております。

 五月九日の委員会でも何点か質問させていただきました。基礎年金番号を導入した当時にこうした事態が考えられていたのか、ここが一つのポイントなんじゃないかと私は思っております。

 平成九年の一月から基礎年金番号が導入されました。それまでは、年金制度は各制度ごとに分立し、年金保険料の納付記録も各制度ごとに保有するという状態で、裁定に際して複数の年金保険料納付記録を統合しなければならず、大変時間がかかった、これが実態だったと思います。

 当時厚生委員会でございましたけれども、政府委員からは、「公的年金制度が複数制度に分立いたしまして、記録管理がそれぞれの制度ごとに行われているという状況のもとにおきましては、未加入者が発生しやすいとか、あるいは制度をまたがる年金相談とか裁定が非常に迅速的確に行えないとか、そういった問題点が指摘されているところでありまして、基礎年金番号は、こうした状況に対応いたしまして、現在それぞれの制度ごとにあります年金番号を共通化いたしまして、年金サービスの向上なり未加入者の解消を図ろうとするものであります。」こういった点が指摘をされております。

 また、「これが実施されますと、二十歳に到達した場合に国民年金に加入すべき者というものがはっきり把握できるようになりますので、届け出の勧奨を行うことが可能になるとか、あるいは、複数の制度を異動した場合においてうっかり届け出を忘れるというような場合もあるわけですが、そういった者についても把握できるようになりますので、こちらの方から連絡ができるようになります。 また、制度をまたがりました資格、記録関係の相談でございますとか裁定につきましても、従来よりも迅速に対応ができるようになると考えております。」こう述べられております。

 そしてまた、導入に当たりましては、国民に周知するということから、一億人を超える方々に基礎年金番号を通知すると同時に、他の制度の加入歴がないか、あるいは他の年金手帳を有していないかということのお尋ねをし、照会の結果として、九百万人の方々から回答があった、それは統合されました。また、当時、社会保険庁の記録で氏名、性別、生年月日が一致するので同一の記録ではないかと思われる方々九百万人に対して改めて照会し、合わせて一千八百万人の方々については統合が行われたわけであります。

 その後、裁定というプロセスを経て着実に統合が進められていると思いますが、いまだ統合されていない記録が五千万件。年齢から、既裁定年金受給者等となっている方々が千九百万件あるのではないかということが、この委員会で指摘されているわけであります。特に、後段の千九百万件と言われる既裁定者の方々の問題というのは、きちっと対応する必要があると私どもも思っております。

 しかし、こうした年金記録というものが各制度ごとに分立している、そしてまた、それぞれの制度内においても複数の記録もあり得る、厚生年金でも先ほどの指摘がありました、こうしたものをどうするのかということについて、当時、基本的な方針というか検討があったのかどうか、ここのところが私は大事なところじゃないかというふうに思うわけであります。

 基礎年金番号導入は平成九年一月からですが、それに先立ちまして、JRの共済等の統合の法案の処理を通常国会で平成八年にいたしております。そのときの国会の議論を全部調べてみましたが、こうした複数の年金記録、これをどう統合するのかという問題について、残念ながら、国会で指摘をした議員は一人もおりません。私も質問しておりますけれども、未加入者の問題をどうするか、こういうことが逆に問題になっている。

 さらにまた、統合されることによって、将来的に、情報ネットワークを活用してさまざまな年金情報を国民に提供できるようになるんじゃないか、こういうことを、私、十一年前でありますが質問しまして、ようやくそういうことができるようになった。十年かかったわけであります。

 大臣の発言にも、このような課題への配慮をうかがわせる発言は残っておりません。当時、厚生省としてどのような議論をしていたのか、この点について、まず確認をしたいわけであります。

青柳政府参考人 基礎年金番号導入時の省内における議論はいかなるものであったかというお尋ねでございます。

 まず、前提として申し上げなければなりませんのが、先ほどのお尋ねの中でもお答えを申し上げたわけでございますが、本来、それぞれの制度が分立しておりましても、届け出が、市町村あるいは事業主を通じて適時適切に行われていれば、そのことを通じて記録の連続性あるいは同一性というものが確保されるということがまず制度上の前提としてあったということを、前提として御認識いただければと存じます。

 しかしながら、導入当時におきましても、基礎年金番号導入実施前に複数の年金手帳の記号番号を有していた方がいるというようなことは、当然のことながら私どもも認識をしておったわけでございますので、それについては過去記録の整理という考え方で、すなわち、照会等を行うことによって記録を整備していくことによって対応ができるのではないかという認識でございました。具体的な方法は、先ほど委員の方から御紹介がございましたので繰り返しをいたしませんが、そのような認識でいたことは間違いないようでございます。

 また、それに加えまして、年金の請求時に、例えば基礎年金番号の記載がないものや、あるいは他の年金手帳の記号番号が記載されているというようなものが来れば、その時点で御本人に確認の上、年金記録の整備を行い、決定すれば足りるのではないかとの認識であったと承知しております。

福島委員 平成八年、基礎年金番号の導入の準備が本格的に行われた時期だと思います。その当時の大臣は菅直人先生。民主党の代表代行の菅直人先生が、この平成八年大半を、大臣をいたしておりました。

 菅直人先生が大臣のときの発言ですが、「平成九年一月から、公的年金各制度に共通する基礎年金番号の導入を図ることとしておりますが、これが実現すれば、より根本的、効率的な未加入者対策ができるようになる」と述べておられます。未加入者対策に着目していたということがうかがわれるわけでありますけれども、こうした、分散すると言っていいと思いますけれども、年金記録を将来にわたってどうするのかという、たくさん出てくることは間違いない、ですから照会をかけたわけですけれども、それでもなおかつ残るものは当然あると考えるのが私は筋だと思います。そういったことについて、最初の導入の段階できちっとした仕組みをつくっていない、方針を示していなかった、ここに最大の問題があるんじゃないかと私は思います。

 ですから、先ほど郡委員の方から、だれに責任があるのか、謝罪すべきだ、こうおっしゃられましたけれども、天につばすると言うと言葉が悪いのでありますけれども、菅直人先生に私は責任があると思いますよ。それは当時大臣だったんだから。(発言する者あり)笑うのはおかしいと思いますよ。最初の段階で、どういうふうに制度を仕組むのかということについて十分配慮していなかったんじゃないか、こう言われても仕方ないんじゃないですか。

 ですから、年金制度は政争の具にすべきじゃないというふうな発言がきょうメディアで流れておりましたけれども、そういう意味では、与野党を超えて、どういうふうにしていい年金制度にするか、こういう議論が深められるべきではないかというふうに私は思います。

 副大臣、やはり当時の大臣の責任は私は重いと思いますけれども、いかがですか。

石田副大臣 平成九年に私は落選中でしたので、その議論はつまびらかにいたしませんけれども、行政の継続性ということになれば、現在の段階においては柳澤大臣が全責任を持っているということは当然でありますけれども、その導入当時に、ある意味でいえば、現在を見越して年金の統合ということが考えられておったかということについては、今福島委員が過去の会議録をごらんになって、そういう議論が余りなかった、どちらかというと未加入者の対応であったと。こういうところで、なかなか現在のような状況というのは想定していなかったのではないかということは、今委員の御発言から率直に感じます。

 また、平成八年当時、私もたしか厚生委員をやっておったんですが、そのときはたしかJRの統合の問題で、何としても一緒にしてくれ、そうしないとJRの年金が破産をする、その問題が一番大きな問題であったように記憶しております。

福島委員 菅先生は、大臣在任中に、エイズの問題で大変大きなお仕事をなされた、すばらしいお仕事をなされた、これは間違いないことだと私も認めておりますが、しかしながら、一方で、将来にわたって禍根を残すような、制度導入の対応の基本方針を決められなかったんじゃないか、そういうふうにあえて言わざるを得ないと思います。

 いずれにしましても、さまざまにこの国会で指摘された事態、これを放置しておくことは国民の年金に対する信頼を損ねるものであり、年金制度本来のあり方を踏まえた上で、公明党としても適切な対応をしていかなきゃいけない、このことを重ねて申し上げたいというふうに思っております。

 次に、前回の委員会でといいますか、この委員会で、社会保険庁の法的な責任、これはどういう立場にあるのか、被保険者からの相談を待つまでもなく、みずからの責任で記録を真正のものとする責任があるんじゃないか、こういう御指摘がありました。これは、主体的にきちっと調査するという話と、そしてまた法的な根拠がありますよという話と、これは別の話でございますので、このあたりは客観的に整理をしておく必要があると思います。政府の御見解をお聞きしたいと思います。

石田副大臣 年金給付は長期間の保険料納付実績に基づき支給されるものでございますから、年金法におきましては、社会保険庁長官に対して、年金原簿を備えるとともに、これに個々の被保険者の資格の取得、喪失、保険料の納付状況等を記録する義務を課しております。

 一方で、年金記録のもとになる被保険者の資格の取得、喪失、住所の変更等については、基本的に被保険者が届け出義務を負っております。また、届け出の際に、被保険者は年金手帳を提出し、情報を更新することになっておりまして、年金手帳には年金記録を管理する役割もある、これは今運営部長がるる御説明をされました。

 また、被保険者の資格等に関する情報は、市町村や事業主を通じ集約される仕組みとなっております。年金給付の裁定は、すべての被保険者の受給権発生について保険者が把握することは不可能、こういう考え方から、請求によることとされております。

 また、これらの点を踏まえますれば、年金法におきましては、年金記録の適正の確保につきましては、社会保険庁単独では難しい面があり、被保険者本人、市町村、事業主等の協力のもとでこれを果たしていくことが想定をされております。そのように考えられております。

 現実問題としましては、被保険者の氏名、生年月日、性別、住所、個々の被保険者の資格の取得、喪失、保険料の納付状況等から成る年金記録は個人情報であり、本人でなければ直近の正確な情報を知り得ないものも含まれております。こうした性格を持つ年金記録を適正な内容としていくためには、加入者本人の協力を仰ぎ、一つ一つ確認しながら進めていくということは合理的な面があると思っております。

福島委員 今の御答弁できちっと整理をされたと思いますが、加入者御本人もやはり主体的にかかわっていただく必要がある、このことは非常に大事なことだろうというふうに思っております。そしてまた、一方的に統合するというようなことでまた誤りを生じることを繰り返してはならない、このことも事実だろうというふうに思います。

 次に、昨日の日経新聞で報道されておりましたが、本来厚生年金の適用であるべき事業所が適用逃れをしている。これは昨年総務省から、行政評価・監視の結果として、適用漏れのおそれのある事業所数が約六十三万から七十万事業所が存在するんじゃないか、また、適用漏れのおそれのある被保険者数が約二百六十七万人存在するんではないか、こういう御指摘をいただいて、社会保険庁として調査をしたものだと思いますけれども、この実態についてまずは御説明ください。

青柳政府参考人 厚生年金の未適用事業所についてのお尋ねがございました。

 まず、ただいま御紹介のございました平成十八年九月におきます総務省の勧告でございますが、これは、一定の前提を置きまして、例えば労災保険に適用されていない事業所がこれだけある、それから考えると、厚生年金に未適用なものがそのうちこれだけ含まれているだろうというようなものと、雇用保険は適用されているが厚生年金は適用されていないものがこれだけあるのではないだろうか、そういったいわば推計数として、御紹介のあった六十三万ないし七十万事業所というもののお示しがあったというふうに承知をしております。したがいまして、個別具体的に事業所をお調べになられてそれを把握したものではないという点がまず一点ございます。

 これに対しまして、私ども社会保険庁におきましては、事業所の業務実態あるいは従業員の勤務形態を個別具体に把握して、それを適用に結びつけるという形で仕事をしなければならないという状況に置かれております。

 このため、具体的には、雇用保険の適用事業所のデータ等と突合する、あるいは法人登記のデータ等と突合するというようなことでまず把握を行い、これに基づいて、それが実際に厚生年金を適用すべきものであるかどうかということを一つずついわばつぶしていく、こういった作業をさせていただき、さらにそれを継続的に適用に結びつける、最終的には職権適用するというようなことをしておるわけでございます。この結果、十八年三月末現在で私どもが個別具体に把握をしております未適用事業所は、六万三千五百三十九カ所となっております。

 いずれにいたしましても、これらについては、先ほど申し上げましたように、最終的には職権適用も含む適切な適用に努めてまいりたいと考えております。

福島委員 そうした事業所に対して、社会保険庁としてしっかりと取り組みを進めていただくと同時に、また御本人、この日経新聞の報道でもありますように、自分の勤務先が厚生年金に加入しているかどうか、社会保険事務所に問い合わせればすぐにわかるものである、こうした注意喚起が必要だ、こういうことが述べられております。こうした、自分の事業所が未加入であるということに気づかずにおれば、これは保険料を払ったつもりであっても、実際にまた保険料を着服するような事業所もあるようでありますけれども、一方的に不利益をこうむるわけでありまして、御本人に対しても、こうしたことについて周知をするというか啓発をするということも必要だと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

石田副大臣 厚生年金に加入すべきであるのに加入していない、いわゆる未適用事業所の存在というものは、年金の公平性と信頼性を確保する観点からも早急に解消を図らなければいけない、このように認識をしております。

 これまでも行ってまいりました未適用事業所の的確な把握、加入指導、事業所調査、職権適用という一連の対策をより強力に進めるとともに、平成十九年度から新たな対策としまして、一つは、全社会保険事務所で民間委託による加入勧奨を行う、そして雇用保険の適用事業所情報の総ざらいによる最新の実態把握を行う、そして各社会保険事務所、事務局ごとに適用促進対策を進めるための行動計画を策定する、こういうことで厳格な適用の適正化を推進してまいりたいと思います。

 今委員もお触れになりましたように、本人は入っているつもりで会社が納めていなかった、これは極めて悪質な例でありますから、そういうものは言語道断である、このように思っております。

福島委員 ぜひしっかりと取り組みを進めていただきたいというふうに思います。

 先般の委員会でも、社会保険制度内の連携ということで、保険料の滞納処分にかかわる登録申請に関しての処分のあり方、いろいろと議論がありました。条文では、保険料の滞納処分を受け、かつ、当該処分を受けた日から正当な理由なく三月以上の期間にわたり保険料のすべてを引き続き滞納している者について登録を拒否することができる、こういう規定になっているわけであります。

 それは、社会保険労務士に対して、ほかの士業と比べて非常に不公平な負担を押しつける規定じゃないか、こういう御指摘もありましたが、社会保険労務士の皆さんの、社会保険を支えていく、その中核的な業務として担っている立場ということを考えれば、ぜひ、こうした点についても御理解をいただければと思っているわけであります。

 しかしながら、さまざまな事由があって保険料を納めることができない、こういうことも恐らくあるんだろうと思います。実際に、開業してほとんど収入がない、こういう場合も恐らくあるんじゃないかというふうに思います。ですから、この「正当な理由なく」、こうした規定については適切な運用をしていく必要があるというふうに私は思うわけでありますが、この点についての政府の見解をお聞きしたいと思います。

青柳政府参考人 社会保険労務士の登録拒否事由に当たりましての正当事由についてのお尋ねでございました。

 今回の措置におきましてこのような制度を設けましたのは、保険料の滞納処分を受けたにもかかわらず、なおその後も意図的に滞納を続けるような確信的滞納者ということでございますので、確信的滞納者その者に正当な理由があるというのはなかなかイメージがしにくいというようなこともおありの上でのお尋ねかと想像いたしました。

 具体的に、この場合の正当な理由ということにつきましては、保険料の滞納が継続していることについて、どなたがごらんになっても合理的に考えてやむを得ないと認められるような場合を想定しているわけでございまして、例えば、天災等によりまして保険料の納付猶予や免除に該当しない程度の損害を受けた場合、それから、病気やけがなどやむを得ざる事由により収入を得られないような場合というようなことが具体的には想定されるところでございます。

 いずれにいたしましても、このような措置は、年金保険料の自主的な納付を促進するために必要なものということでございますので、余り正当な理由を広く解しますと、そういった法の目的が実現できませんし、また、これを余りぎちぎちに運用しようといたしますと、先ほど申し上げたような事例に当たる方が不当に制限をされるというようなことも生じかねないというふうに思いますので、いずれにいたしましても、私ども、この正当な理由についての運用は適切に行ってまいりたいというふうに考えております。

福島委員 よろしくお願いいたしたいと思います。

 きょうは、民主党の提出者の皆様にもお越しいただきました。ぜひお尋ねしたいことがあるわけであります。

 一つは、年金記録の問題でありますが、政府・与党としてもできる限りのことをすべきだ、こういうように思っております。しかしながら、委員会でも取り上げられておりますけれども、記録が全くない、こういう事例がある、これをどう考えるか。私も御相談を受けたことがありますが、記録がない、領収書もない、どうするか。非常に悩ましい問題なんですね。

 民主党提出の、消えた年金記録被害者救済法案、これを拝見いたしました。また、委員会審議での民主党の先生方の御質問を聞いておりますと、保険料の納付に関する資料が何もなくても、御本人の申し立てだけで記録訂正と年金の増額を認めるべきではないか、こういう御主張が一貫しているんじゃないかと私は思っております。

 しかし、御本人の申し立てがそのまま通るということになると、例えば、本当は納付していないのだけれども、納付した、記録がないのはおかしいと申し立てる方が出てきても、これを認めなければならないことになってしまう。もしそのようなことが認められれば、一方で、まじめに年金保険料を納めてきた多くの方々からすれば、そうした不心得者がまかり通ることは断じて許せないということになります。(発言する者あり)一方的に決めつけているわけではないんです。これは一方的に決めつけているわけじゃないんです。

 そこで、御本人の申し立てだけで記録訂正と年金の増額を認めようとの御主張をなさる上では、そうしたモラルハザード、これを排除するため、実効性があり、かつ、実現可能性のある仕組みを用意しておくことが責任ある立場だと思います。何とかしたいという気持ちは共通です。しかし、モラルハザードを起こしてもならないということも事実です。

 そこで、どういう具体的な制度をつくることができるのか、何かお知恵があれば、我々も参考にしたいと思いますけれども、御回答いただけますか。

枝野議員 民主党は一貫して、申し立てがあれば支払うというようなことは申し上げたことはありませんので、ぜひ、後ほど、理事の皆さんで議事録を訂正していただきたいというふうに思います。

 私どもは、記録、領収書がない場合、あるいはいわゆる物証がない場合であっても、支払いに値する場合があり得るということを申し上げているだけであります。この場合に、つまり厳格な証明というものを申立人に求めるのかどうか、領収書があるのかないのかとかということを求めていたのでは、これは政府としての役割、責任を果たしていることにはならないだろう。

 法的な意味で、厳格な意味での疎明という言い方がぴったり当てはまるかどうかは別としまして、状況証拠等において、なるほど、この方の主張は一定の合理性を持っているという場合には、その挙証責任は逆に政府の側に転換をされる。政府の側で払っていないということであるならば、そのことを政府の側で証明する。全体について言っているわけではありません。一定の申立人側の疎明があれば、政府の側で払っていないことを証明する責任があるのではないか。こういう扱いをきちっと整理すれば問題は解決するというふうに思っています。

福島委員 挙証責任が転換されるというのは、私は余り納得しないのでありますけれども、一定の確実性、そういうものがあればと、そこは共感するんですよ。それをどこで線を引くのか、そこを教えてほしいと言っているんです。どうぞ、もう一回、再答弁を。

枝野議員 例えば裁判において、民事裁判と刑事裁判では、立証の程度の高さというものは区別をされています。刑事事件の方が、より確実な立証が求められています。しかしながら、それについて抽象的な基準とかいうものが、例えば、裁判実務上においても法令上においても規定をされているわけではありません。まさに、それぞれの社会常識、社会通念に基づいて他に疑いを挟まない程度というのが刑事事件であり、民事事件においては相対的に事実と認められるということで、それぞれ立証ということが認められています。

 本件においては、時代が非常に古い、そして、政府に対する信頼というものは一般的には国民の間で高いということを前提にして、当時支払ったということについて一定の納得できる説明がある場合においては、もしそれを否定する場合には、国においてそのことをしっかりと論証すべきである、こういった社会通念に基づいて判断をすれば十分であるというふうに思います。

福島委員 とすると、何らかの第三者的な判断をしていただく、裁判じゃありませんので、そういうことが必要だということになるんでしょうか。

園田(康)議員 福島委員も読んでいただいたと思っておりますけれども、私どもが提出をさせていただいているこの法案の中には、第三者委員会というのを設置するという項目がございます。そして、その中において、調査の方法、実施状況、調査結果の取りまとめ、記録の訂正、被害者の救済という形までここにおいてしっかりと行う必要があるというふうに、私ども、考えは同じでございますし、また、先ほど来御答弁させていただいておりますけれども、当然のごとく、それはもうケース・バイ・ケースで、個々の事例というものがあろうというふうに思っております。

 福島委員が恐らくお取り上げであろうというものは、先般、山井委員からの御提案であった、六十六歳の女性の事例を取り上げておっしゃっておられるんだろうというふうに思っておりますが、この場合でいきますと、昭和五十四年の六月から五十九年の十一月か十二月、この部分において、国民年金を支払いに市役所の支所まで毎月通ったというふうにおっしゃっておられたわけですね。しかも、それは、お子さんと一緒に通っていらっしゃったという形が明確に御本人の記憶の中にある。その部分においてやはり蓋然的に証明ができるであろうという部分で、私どもは、この部分をきちっと第三者委員会において議論をし、調査をし、そしてそれを認めるというのが当然国の責任の中にあるであろうというふうに思っておるところでございます。

福島委員 非常に大切なところ、やはり一定の証明がないといかぬという話ですね、そこのところは。御発言はよくわかりました。しっかりと参考にさせていただきたいというふうに思っております。

 続いて、最後に、いぶかしいのは、民主党の年金政策を三年前にいろいろと議論させていただきました。民主党は、十六年の国会で、給付と負担のあり方やその財源なども含めて独自の年金改革法案を提出されておりましたけれども、国会では廃案となった。一方、今回民主党からお出しいただいております年金関連の法律案の中では、従来、民主党が年金政策の核としていた年金制度本体に関する独自の提案はなくなっています。このため、年金改革に関して民主党が今どう考えておられるのかということは、法案を見ただけではよくわからない。しかし、昨年十二月ですか、民主党は、政策マグナカルタを発表されておられますね、政権政策の基本方針。年金政策についても言及はされておりますが、基本的な部分で私は中身が大きく変わったなという印象を受けざるを得ないわけであります。

 従来、民主党は、十六年の国会では、年金目的消費税を創設すると、財源について、消費税の引き上げを主張されました。それが責任ある政策提言と自負されたのではないかというふうに思うわけであります。しかし、現在の基本方針では、基礎部分の財源はすべて税とする、全額税方式は変わっていないんですが、消費税は現行の五%を維持するとなっています。これは、私は、財源論としては極めて矛盾している。

 実際に、数字的なことを申し上げれば、平成二十一年の推計値で、月額六万六千円、これは全額税方式で賄った場合に、国庫負担は二十三兆七千億円になります。消費税で換算した場合に、追加的な国庫負担としては十六・三兆円、約七%になる。こういう数字になるわけであります。現行の五%の消費税の水準でこうしたことを全部やりますというのは、そもそも自己矛盾じゃないですか。前回の、平成十六年の御議論の方が、そういう意味では首尾一貫していたというふうに私は思うわけであります。

 先ほどから、選挙前にと、こういう御批判が民主党の席からたくさんありますけれども、まさにこれこそ、選挙前だからこうした矛盾した御主張をなさっているんじゃないかと私は思うんですが、御答弁いただけますか。

枝野議員 昔、台湾の李登輝総統とお目にかかったときに、政治というのは時間の関数であるという哲学的なお話を聞いて、そのときは何なのかなと思っていたんですけれども、最近、先ほどの話も含めて、なるほどなと思いました。

 社会状況は、我々が国会で議論しているのを置いて、どんどんどんどん先に変化をしております。我々が年金目的消費税を主張した段階以降、自公政権において、所得税、住民税などを中心として、かた目の計算の仕方をしても、八・八兆円の国民負担増をしています。これは、消費税率に換算すると、三・三%に相当いたします。

 ここから先は実は政治の選択で、これをもとに戻して消費税の我々の従来の主張を維持するというのも一つの方法でありますし、逆に、そうやって、我々が本当はやるべきではないと思った増税、負担増だけれども、既にスタートしている以上は、それを前提にして全体の財政を組み立てるというやり方と、これは両方あり得るわけでありまして、その上で後者を選択した。

 つまり、自公政権が、今の経済社会状況の中でするべきではない増税をしてしまっていますが、そのことによって増収になっている財源を我々が目的消費税で増税せざるを得ないと思っていた分に充当すれば、実はおつりが出る、こういう状況でありまして、そこは、社会状況を変化させたのは自公政権であるということでございます。

 ちなみに言いますと、先ほど、確かに十一年前、基礎年金番号をスタートさせるときの準備段階での厚生大臣は菅直人さんでありましたが、スタートのときの厚生大臣は小泉純一郎さんだったと記憶をしておりますし、あの時点で、こういった五千万件を超えるような適合されない、突合されない年金記録が出るということは、ある意味ではだれも想定をしていなかったわけであります。むしろ責任があるとすれば……

櫻田委員長 枝野幸男君に申し上げます。

 答弁は簡潔にお願いします。

枝野議員 責任があるとすれば、こうした事実が明らかになったのに、それを我が党がこの国会等で追及するまで隠していて、その解決を十年余りにわたって放置してきたことが問題なのであるというふうに、まさに時代状況、社会状況を踏まえて判断すれば、言えるのではないかと思います。

福島委員 答弁上手の枝野先生、答弁は御上手ですけれども、やはり私は、制度発足当時の基本的な考え方、これがしっかりしていなかったということは、どこまでいっても免れないと思います。そしてまた、この国会において我々は、しっかりと今の現状というものを改めるための最大の努力をしたいというふうには思っています。

 そしてまた、財源の話をしますと、これも私は、枝野先生は非常に論理的な方なのに、全然論理的でないことをおっしゃられる。この間の八・八兆円というのは一体どういう形で、それはキャッシュでそこにあるわけじゃありませんで、さまざまな形で社会保障の給付はふえている、そこに充当されているわけです。その上で全額税方式にすると言っているのに、五%で済むと言っているのは甚だ矛盾じゃないですか、この質問に対しては全くお答えになっていないというふうに言わざるを得ないわけでありまして、以上で質問を終わらせていただきます。

 大変ありがとうございました。

櫻田委員長 午前十一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時十七分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆です。

 年金納付記録の消失、これはまさにひどい話でございまして、絶対心配ないから、あなたに有利だから、将来色をつけて返すから年金の保険料を払ってくれ、そして、保険料をずっと長年納付したら、あなたの納付した記録はないから、あなたに年金を支払うことはできない、納付した記録が出てきたら、今度は時効であなたにやはり支給できない。こういう論理は、詐欺罪の被告人の論理構造と似ていると言わざるを得ない。こういうことを国が行ってきたこと自体、私は、国として反省が全く見えない、これは強く言わなければいけないと思います。

 そして今度は、時効に関する議員立法を検討中だ、こういう報道もなされているし、大臣もそう答弁したようでございまして、与党が時効の主張はしない、これは結果としてはいいことです。当然のことなんです。当たり前のことなんです。

 ただ、問題は、これをさも救済策であるかのごとく宣伝しているところが問題なわけです。例えがよくないかもしれないけれども、詐欺罪の被告人が詐取した金を返して、これが救済策だと言えますか。これは慰謝料をつけて返さなければいけない、それが当たり前の話なんですよ。それを救済策というふうに宣伝する、これは私は選挙目当てだと言わざるを得ないというふうに思います。

 そして、そもそも議員立法の必要性はないんですね。解釈で、これは時効成立せず、時効期間がそもそも進行しない、こういう判断をすれば当然それで済むことで、議員立法の必要性はないんです。

 その関係でちょっと確認したいんですが、今、個別対応で、何か一人のようですが、時効の主張をしないで救済した実例があるというふうに大臣が答弁されたようですが、その内容は、そのことはあるんですね。そして、それは時効は成立したんだけれども適用除外にしたんですか、それとも、時効は成立しないという判断として適用除外という結果になったんですか。

青柳政府参考人 ただいまお尋ねのあった件がどのケースを指しておられるのか、ちょっとにわかに判断がつかない点がございますが、これが、支給誤りがあったことを私どもが後にわかって、その分について時効を適用しなかったケースというのであれば、さきの委員会の席で私の方からお答えを申し上げました。

 まず最初に、老齢年金を受給した方が亡くなって、その方の遺族の方がそれをもとに遺族年金に変わった。ところが、その遺族年金を計算する際に、亡くなった方の老齢年金が、厚生年金とそれから旧の船員保険年金の期間に基づいて計算されていたものであった。ところが、遺族年金になったときに、私どもの手違いで、厚生年金の期間の分だけで遺族年金を計算してしまった。ところが、御本人の申し立てによって、旧の船員保険の期間が老齢年金にはちゃんと反映されていたことが判明したために、これは私どもの全くの間違いであるということから、改めて船員保険の分の期間も合わせた遺族年金に計算し直して、しかもその時効は適用しなかった。こういうケースであれば、そのようなケースを御説明したことはございます。

筒井委員 だから、それは時効が成立したけれども援用しなかった、適用除外にしたのか、そもそも時効は成立しなかったという判断だったんですか。

青柳政府参考人 これは時効を適用しなかったものと記憶しております。

筒井委員 だから、それがまさに正当な形でできるわけでしょう。時効が成立していない、現実にその例があるわけで、それを私は前回の質問の際にも、今回の場合はまさにそうだろうと。それをやれば、別に議員立法の必要性はないんですよ。

 国民は、今ずっと社会保険庁に対する不信感を持っていますが、しかし、自分の納付した記録ぐらいはきちんと残っているだろう、そういう前提で対応していますから、それについて、何かおかしいから要求して、それで調べ直して、それで権利行使する、こんなことを期待できないでしょう。

 今言ったような実例を、それが可能だったんだから、ほかの場合もそれは可能な場合に適用すればいいじゃないですか。

青柳政府参考人 ただいま申し上げましたような実例は、他にも、例えば平成十六年に年金の過払い、未払いという問題が起きましたときに、私どものシステムの誤りといったようなことから起こったものなども過去には例がございました。しかしながら、これは委員に改めて申し上げるまでもございませんけれども、要するに、時効の問題については、まさに個々の事案に即して個別具体に判断することが必要なものというふうに考えております。

 その場合には、そういう意味では、一律にどれを適用し、適用しないということが明確なルールとしては確立しておらないわけでございますので、例えば、今問題になっておりますようなケースにつきましては、私ども社会保険庁が受給権者の請求権の行使を著しく困難にさせた結果、例えば五年以上経過したというようなケースであれば、これは消滅時効の主張がまさに信義則に反して許されない場合があり得るとは承知をしておりますが、それが個別具体に当てはめたときにいかように判断されるかについては、私ども一律にはなかなかお示しできないということでございます。

筒井委員 だから、それは具体的なものについては個別の問題ですよ。だけれども、今部長は、私どものシステムの誤り、その場合に時効の適用除外にした。今民主党が問題にしている、野党が問題にしているのは、まさに社会保険庁の誤りでしょう。五千万件の記録が宙に浮いている、これがすごく非常に大きな問題だ。その宙に浮いている原因は社会保険庁の誤りでしょう。

青柳政府参考人 五千万件の件につきましては、先ほどの委員会の席上でお尋ねがありましたので、一部お答え申し上げましたように、本来、年金制度においては、例えばコンピューターでありますとか基礎年金番号が導入される以前の姿を思い起こしていただければよろしいわけでございますが、適時適切な段階で、御本人が市町村を通じて、あるいは事業主を通じて届け出を出していただく、資格の取得、喪失その他のケースにおいて。そうすると、そのことを通じて、いわば一つの手帳の記号番号において同一性、連続性を持って記録が管理されるということがこの年金制度の制度発足以来の基本的な考え方になっておるわけでございます。

 ところが、先ほども申し上げましたような事情で、何らかの事情で、これは御本人だけの事情ではないかもしれません、場合によっては市町村や事業主に責任を帰せられるケースもあるかもしれませんが、いずれにしろ、何らかの事情でその同一性、連続性が損なわれた結果がこの五千万件ということの原因の一端を担っているとするのであれば、これらをすべて社会保険庁の責に帰するというのは、いささかいかがであろうかというふうに申し上げたところでございます。

筒井委員 では、もっと限定して聞きますが、社会保険庁の手書きの台帳、これをオンライン化する際に、書き写す際のミス、それから市町村の記録にあるもの、これを社会保険庁の方に移記する際、移す際の、きちんと移さなかったミス、これは被保険者のミスではなくて、社会保険庁、行政側の責任ですね。

青柳政府参考人 この委員会の中でも既に御議論になっておりますように、現在、オンライン上に残っている記録と、例えばマイクロフィルムでありますとか市町村の被保険者名簿の記録の間にそごがあるという事実は私どもも確認したところでございますが、それがどのような理由によって生じたものであるかについては、残念ながら、今日これを確認することはできないという事情にございます。

筒井委員 何を言っているんですか。私が聞いているのは、手書きの台帳からオンライン、電磁的ファイルに移す際の、その移す際のミス、例えば名前の読み違いだとか、これらは社会保険庁の責任でしょうと言っているんですよ。

青柳政府参考人 繰り返しになりますが、その原因については必ずしも今日特定することが困難であると御認識いただきたいと存じます。

筒井委員 今、被保険者、届け出者の行為は何にも入っていないんですよ。その範囲で限定して聞いているんですよ。社会保険庁が電磁ファイルに移記する際のミスは社会保険庁の責任でしょうと言っているんですよ。

櫻田委員長 青柳運営部長、再度質問に答えてください。

青柳政府参考人 先ほども申し上げましたように、届け出が適時適切に行われた場合には、それによって記録は連続性、同一性を確保できるというのが制度の根幹にある考え方だというふうに申し上げたわけでございますが、そういう点で、適時適切に届け出が行われなかった場合というものについての責任は社会保険庁にすべてを帰すわけにいかないということではないかと存じます。

筒井委員 ちょっと、今のままの答えだったら、重要な問題なんだから、質問できない。

 もう一回だけ最後聞きます。届け出がどういうふうな形であったかどうかは今関係ないんです。社会保険庁の持っていた手書きの台帳、ここから電磁ファイルに移す作業、これは社会保険庁がやったんだ、その際のミスは全面的に社会保険庁の責任でしょうという確認です。

柳澤国務大臣 その限りでは、例えば紙の台帳からコンピューターに入力するときに入力ミスが起こったということであれば、そういうことであれば、それはもう筒井委員のおっしゃるとおりなんです。

 ところが、今青柳運営部長が答えたのは、今、要するに、オンラインとマイクロフィルムあるいは手書きの台帳、さらには市町村の名簿というものの間にそごがあったときに、その原因はいずれにあるか、どういうところにあるかということを調査してわかったものが合計で十九件あるわけです。

 それはどういうことで起こったかというと、これは市町村が、保険料を納めたんですけれども、納めてあった期間を未加入期間としてこちらに転記してしまった、これはどうしてか。それからもう一つ、もっとわかりやすい例は、市町村が検認台紙ということで検認をして、納まったということを証拠立てているわけですが、それを本来は社会保険庁に送らなきゃいけないというものが送られていなかった、これは今度は市町村が送っていないということになるんじゃないんだろうか、こういうようなことを言っているわけですね。それから、市町村の発行した納付書の記号番号が本来の国民年金の手帳の番号と違っていた、納付の番号が違って発行された、こういうようなことがいろいろあるものですから、それでさっき青柳部長の答弁のようになったということで御理解を賜りたいと思います。

筒井委員 私の質問は限定して聞いていますから、大臣。

 今冒頭で、まさに移記する際の記入ミス、これは社会保険庁の責任だと認められました。そうすると、その部分は時効は適用せず、こういう形になるわけですね。

青柳政府参考人 先ほど時効の一般原則について触れましたように、それが今お尋ねのようなケースに該当するかどうかは個別具体に判断されるべきだと考えております。

筒井委員 私は限定して聞いているんだ、部長。もうこれからは参考人として申請しないわ、あなたは。社会保険庁のミスとして認めた部分は時効は適用除外ですねという確認なんだよ。

柳澤国務大臣 単純な入力ミスということですけれども、個別の判断が必要だというのは、ミスであった場合でも、そのミスがどうして起こったかということについてもっと考えなければならないケースもある、こういうことを運営部長は実務の責任者としての立場で言ったということなんです。(発言する者あり)いや、聞いてないって、お望みどおりの答弁がないから、そんなことじゃないという言い方は、それはちょっとおかしいのであって、我々はやはり誠実にお答えしているわけですから、御理解をいただきたいと思います。

筒井委員 私は限定して聞いているので、ほかのところに話題をずらさないでください。先ほど大臣が認められた、それは社会保険庁のミスですねと言った部分だけに限定しているんです。その社会保険庁のミスで支給漏れになった場合には時効は適用除外ですねという確認なんです。

柳澤国務大臣 今筒井委員が言ったように、原資料も完全だ、振り仮名も振ってある、そういうような前提で、入力のときに、例えばこの前の例示のときにあったように、読み方ですね、章一というのがあったときに、アキカズと読むかショウイチと読むか、こういうようなことについて誤ったということになると、そもそも、そのもとの原資料の表示が十分な注意が払われていたのかどうか、そういう話になってしまうわけでありまして、しかし、これはもう一義的にぴしっと決まるものが、仮に章二となっちゃった、一を二に誤った、こういうようなことであれば、これはやはり入力ミスということになるだろう。そして、その場合には、私は、個別の判断でもやはりしんしゃくされる要素だろう、こう思います。(筒井委員「しんしゃくというのは適用除外ですね、時効は」と呼ぶ)いや、その判断を最終的にするのにしんしゃくをされる要素だろう、こういうことを言っているわけです。

 その他のことがすべて個別具体の判断のときには問題になるものですから、それで政府としては慎重な答弁にならざるを得ない。しんしゃくということで、そこだけ問題にするということで、筒井委員が、あとは全部、例えば中継の市町村あるいは事業所でも何のとがめがない、ミスがないということで、そこだけだということになれば、私は、そのしんしゃくが一〇〇%になるだろう、こう思います。(筒井委員「一〇〇%になるとどうなるんですか」と呼ぶ)それは、時効は進まない、こういうことだろうと思います。

筒井委員 先ほど政府参考人の方も、私どもの誤りの場合に時効の適用除外をしたと言われた。そして、今の大臣は、社会保険庁のミスであることがはっきりした場合には時効は進まない、だから時効期間の進行はとめられている、こういうふうな答弁をされました。それをはっきり、今言った、これは大きな問題なので。

 私は、先ほどから言っているように、社会保険庁の誤り、社会保険庁のミスであるかどうか、ちょうどその境目のときは、それは中にはあると思いますよ。それは、判断をいろいろしなきゃいかぬというときもあると思いますよ。しかし、私が今限定して聞いているのは、社会保険庁のミスであるということが明らかになった場合には、大臣にもう一度確認しますが、時効期間は進行しないということでよろしいですね。

柳澤国務大臣 要は、それが、今私が例え話で言ったようなことが統合の障害になって、それで年金加入記録からそれが欠落をして、そして年金記録が本来の加入の履歴に基づいた給付金になっていない、そこまでずっといくということを前提にすれば、私は、そのしんしゃくをするという要素がそこまで、つまり、時効をとめるというか、当方のとがめで重大な障害になってという、そういう個別判断の要素になっていくだろう、こういうことを申し上げたんです。

筒井委員 わかりました。

 そして、もう一つ確認したいのは、今、社会保険庁のミスの場合で聞きました。市町村の記録に関して、市町村の方のミスでもって社会保険庁の方に届け出が何かされなかったとか、いろいろなものがあるというふうなことでした。市町村のミスの場合には、これは被保険者、届け出人のミスじゃありませんね。それで支給漏れになった場合にも、これはやはり同じような扱い、時効期間をとめる、時効期間は進行しない、こういう判断をされるわけですね。

青柳政府参考人 先ほど来、委員のお尋ねの中では、被保険者なりあるいは役所の側のミスが明白である場合という前提でお尋ねがございます。

 ただ、通常の場合には、そのミスが明白であるかどうかがわからないケースが多いわけでございますので、私ども、なかなかそこを明白にお答えできないわけでございますが、あくまでも、それは個別具体に判断した上で判断させていただくべき問題と承知しております。

筒井委員 部長は、もうこれから参考人として呼ばないわ、言い逃ればかりで。大臣はやはり知性あふれた人だから、あんな言い逃れは恥ずかしくてできないんだろうと思うんです。

 私は今度も限定して聞いているんです。市町村のミス、被保険者のミスではない。これがどっちのミスなのかは個々具体的に、それはちょうど境目のものもあるでしょうから、判断を要するでしょう。だけれども、市町村のミスだと判断される場合には、これは時効期間は停止されるんですね。

柳澤国務大臣 市町村のときにどうなのかということでございますけれども、ここまでいきますと、やはり時効の障害になっているということで、時効を援用した場合に信義則に反するよと。つまり、完全な、先ほどの社会保険庁の入力ミスというようなもので、もしそれがずっと最後の給付不足まで起こったとき、それ以外に何のとがめもないというようなときには、時効を援用したらやはり信義則違反になるでしょう、こういうことなんですね。

 ですから、結局は、もう明々白々の入力ミス、社会保険庁のコンピューターと台帳の間で起こったというようなもう明々白々のケースの場合、やはり時効を援用したら信義則違反になるだろう、しんしゃくすべきだ、こういう私の判断を申し上げたわけです。

 しかし、これが市町村になる、さらに、筒井委員は多分お聞きになるかもしれませんが、事業主になる、厚生年金の場合には非常に事業主が大きな役割を果たしているわけですけれども、そういうようなことになっていった場合には、やはりこれは個々の判断をお聞きしなければ、それを援用することが信義則違反ということまでなるかどうかということは、なかなかそこまで問題が発生したことが長い距離で生ずるということになると、ここで私が判断をして申し上げるというようなケースには当たらなくて、大変恐縮ですが、いろいろと、この信義則違反になるかどうかということについては個々に判断が分かれる面もあるだろうと思います。

筒井委員 私は先ほどから事業主のことは一言も聞いていないし、事業主も保険料を納付する、そういう点では被保険者側ですよ。だけれども、行政の方は、以前は市町村が完全に保険料のことに関しても全部やっていたし、いずれにしても、現在もそうですが、市町村も社会保険庁も保険者側ですよ。その保険者側のミスは、先ほどの社会保険庁の場合と同じように、市町村の場合も時効期間は進行しない、こうなんだろうということを確認したいんです、大臣。

 それでは、それをもう一度限定して聞きますが……(発言する者あり)いやいや、裁判でやるのは、どっちのミスかはっきりしないときとかなんかは、それはあるかもしれませんよ。だけれども、私が今前提として聞いているのは、市町村のミスであることがはっきりしている場合、これは社会保険庁のミスである場合と同じように、時効期間は進行しませんね。

柳澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、非常に単純なケース、社会保険庁の台紙からコンピューターへの入力ミス、これについて、私は、その他のことについてもう一〇〇%完全であるというようなときにそれを援用するということは多分信義則に反することになるだろう、こういうふうに申し上げたわけですね。

 市町村のミスの場合というようなこともおっしゃったわけですが、やはりこのミスというものの具体的な形態とかあるいは周囲の事情とか、抽象的ですからね、ミスというのは。ですから、私としては、それが時効援用にとって信義則違反になる、そういうものかどうか、そのことというのは、事務の実態というものからして、判断がなかなかつきかねるところであります。

筒井委員 先ほどから何回も私は限定して聞いているんですよ。市町村のミスであることがはっきりしている場合。先ほど、社会保険庁のミスであることがはっきりしている場合はもう確認しました。今度は、市町村のミスであることがはっきりしている場合も、保険者側のミスなんですから同じだろうと。それは具体的に、市町村のミスであるかどうかはっきりしない場合に、境界線上の場合に、いろいろ検討しなきゃいかぬ場合が個別事案としてはあることはわかりますよ。だけれども、市町村のミスであることがはっきりしている場合には時効は成立しませんねという限定した質問ですから、それ以外は答えないでください。

柳澤国務大臣 私が申し上げたのは、今ちょっと筒井委員は、社会保険庁のミスと言ってすごくまた広範にされましたけれども、私が答えているのは、台紙からオンラインに、磁気ファイルにするときの単純なるインプットのミス、これを前提にして、その他のところで一〇〇%完全だというときには、これをしんしゃくしないと、やはりそれをしもさらに時効援用ということになったら、それは信義則違反ということになるだろう、こういうことを申した。

 ですから、同じことを言いますと、市町村のミスと簡単におっしゃいますが、ミスの形態というのは大変なものでありますから、そういう抽象的なことでお答えするということにはやはり私、ちゅうちょするということであります。

筒井委員 先ほど部長ですか、答えられた、市町村の記録があるのにそれを社会保険庁に通知しなかった場合、これは完全に保険者内のミスですよね。あるいは間違って通知をした場合。もう一度言いますが、市町村の記録にはあるんだけれども、しかし、それを社会保険庁に通知しなかった場合、あるいは通知をしたけれども間違って通知をした、この場合に、まさに時効だからといって支払いを拒否するのは、今大臣が強調されている信義則に反するでしょう。

柳澤国務大臣 本来、検印の印紙で納付が行われたときに、その台紙を切り離して送付するというようなことが全くなかったがために、そこは納付が行われなかったというようなケース、ですから、こういうような明々白々のケースで、その他のことについて何の問題もないというようなことであれば、それのみがまさに支給が少額になった理由であるという場合には、私は、それでもって時効を援用したら、やはり信義則に反するということになるのではないかなと。ただ、これはあくまでも個別の判断ですから、私としてその限りで申し上げているということです。

筒井委員 今の大臣の方針で、まず社会保険庁の今の取り扱いを徹底していただきたいと思うんですね。先ほどの話だと、何か、社会保険庁に言うけれども長官があとどう判断するかは別だみたいなことを言われましたが、今の時効問題は極めて重要で、今度与党が議員立法を出すとかなんとか言っているけれども、今のことをはっきり徹底していただければ、全部議員立法が必要なくなるとは言いませんが、多くはなくなるんですよ。今のことは社会保険庁の実際の現場にも実務にも徹底していただけますね。

柳澤国務大臣 これはちょっと私、法文を今手持ちで持っていませんが、基本的に、私は大臣でありますが、その場合に、長官を置いたときに、その人とどういうふうな関係に立つかというのはかなり微妙だと私は思っているわけですね。

 今回の場合、日本年金機構の場合に、社会保険庁に授権していた権限をすべて私に、厚生労働大臣に取り戻すという規定が置かれているわけです。つまり、そのくらい、やはり、庁を置いて、そしてそこに長官を置くという場合には、包括的に一定の権限が行っているわけですね。ですから、社会保険庁長官も大臣室には余り来られない。これは内局の局長なんかとはもう全然違うわけです。余り来たらおかしいんですね。やはり、独立して責任を持った、分掌している仕事を自分の判断でやっていくということでなければ、これは長官ではないわけでありますから。

 では、それに、具体的に私がどういうふうに方針を指示するかということは、それは別途あってもいいと思うんです。大臣ですから、こういうことでやれということで言うわけですけれども、実務的にそれをどうこなすかということは長官にお任せしている。基本的にそうで、それを一々、内局の局長の分掌の事務のようには指示はできない、また差し控えるべきだと私は思っているということを申し上げたということです。

筒井委員 今の社会保険庁の場合にはなおさら、厚生労働省のまさに指揮監督下にあるわけでしょう。そして、今度の機構に関しても、これは国の監督のもとに置かれるのでしょう。中期計画とか年度計画に関しては、国が認可するのでしょう。それで是正命令も持っているのでしょう。そういう権限のもとに、国の権限というのは厚生労働大臣だ、そのもとにあるわけですから。

 そして、今の時効の問題は、まさに、信義則違反、法律上の問題だ、法令上の問題だ。こういう問題、しかも、国民の権利に基本的にかかわる、直接かかわる問題ですよ。こういうのを、細かい問題であるから長官に任せるとか、今度は、新しい機構になったって、では、もっと管轄外の問題になってしまうのか。これはおかしいので、こういう国民の権利に直接かかわる問題。信義則違反かどうかなんて、まさに法令の問題だ。これに関しては、社会保険庁時代、現在においても、機構になった以降においても、大臣はきちんと指示、監督すべきではないですか。

柳澤国務大臣 これは恐らく、機構になったときの方が、私が明確にいろいろなことを申し上げることができる立場に立つと思います。

 それは、現在は、法文上の根拠は私もつまびらかでないんですけれども、こうした外庁というか、外に行政庁を置いて、そこに長官を置いた場合には、そこの所轄の大臣とその長官の関係というのは、これはいろいろ配慮をして指揮監督するということでないと、やはり、実務、執行事務について全責任を負っているわけです。それは、社会保険庁長官というクレジットで幾つも文書を出す、こういうことでございますから、これはもう筒井委員には釈迦に説法ですけれども、今度の場合はそこは非常にはっきりして、すべてが私の権限だ、それを法律によって、法定受託というか法定委託というか、そういうようなことになるというのが今度の日本年金機構になるのではないか、このように考えています。

筒井委員 今、この点を社会保険庁の方にも確かめたいんですが、しかし、部長はまた先ほどみたいなああいう、どうせ言い逃れの答えでしょうから、大臣の方にはっきりと、先ほどの時効の点についての考え方を徹底するべきであるというふうにもう一度申し上げておきたいと思います。

 そして、これは大体、今度のような五千万件の記録が宙に浮いている、こういうことは考えられないミス、誤りなわけですが、しかし、これは五十年前にも懸念されていたんですね。先ほど何か、基礎年金番号の導入の際のことがいろいろ言われていましたが、その前に、納付記録や何かはそれぞれの地域の社会保険事務所が管理していた時期があった。それと、市町村ももちろん保険料の納付を受けますから、そういう時期から、中央の方に納付記録が全部集中する、こういう時期が五十年以上前にありました。

 その際に、なぜそういうふうなことをやったのか。これは社会保険庁の方の文書等でもはっきり認めていることですが、納付記録を正確に作成して、安全に保管すること、これは至上の要請である。手作業で五十年以上前からずっとやっているわけですが、これをやっていたら、将来取り返しのつかない弊害が惹起されるものと懸念されていた。これで中央の方に一元化した。その際に、アメリカの企業から二百台を超える近代的な総合会計機械を税金でみんな買い取って、それで納付記録をきちんと管理するというふうにやったわけでございまして、そういうところからずっとやってきて、国民としては、自分の納付記録がどこかへ消えちゃうなんということは想像もしていないわけですよ、幾らひどい社会保険庁でも。

 そういう多くの国民に対して、おまえは権利行使をちゃんとしないから、だから支給漏れになったんだ、だからそれは時効でだめになるんだと言うのは全くおかしい。

櫻田委員長 筒井信隆君、申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

筒井委員 はい。わかっています。

 さらに、私は、今の質問は一点目の質問で、これから本論に入る予定だったんですが、全然そっちに入ることができませんでした。

 きょう採決するのではなくて、さらに引き続いて十分な審議をすることを要求して、私の質問を終わります。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 時間がないので、端的にお答えください。

 まず、各種届け出書の入力業務は、基本的にすべて外部委託になっておりますね。それは派遣契約ですか、請負契約ですか。

村瀬政府参考人 二通りございまして、健康保険、厚生年金、国民年金にかかわる関係届け出書等につきましては、派遣労働者の方々を使わせていただいております。一方、大量に紙で提出される算定基礎届等の届け出書につきましては、請負方式によりまして業者に委託をする、こういう形で業務を行っております。

高橋委員 二通りあるというお答えがありました。先ほど来、大量の紙の入力ミスだったのではないかということが問われていましたので、非常に不安を覚えるわけであります。

 資料を配っております。派遣個別契約書、一般的な派遣の契約書を結んでおり、誓約書一枚で守秘義務を課しております。

 四枚目です。これは、四十七都道府県すべての社会保険事務所の派遣の契約先の会社の一覧表をつけておきました。派遣会社と聞いて思いつくほとんどすべての会社がずらっと並んでおります。介護保険の関係などで指導を受けた会社の名前もございます。

 派遣社員という性格上、一人の社員が仕事をする期間が大変短かったり、幾つもの会社に登録したり、移ったりすることは避けられないと思います。この間、保険料財源の事務費流用問題の中でも、例えば、繁忙期に雇い入れる謝金職員には保険料を使うんだなどという説明もございました。しかし、これからは繁忙期には派遣社員の数をふやして調整するということですね。

村瀬政府参考人 前回、答弁で派遣社員という定義はさせていただけなかったと思いますけれども、基本的には、繁忙期については、あらゆる形でいろいろな方に御協力を願うという形で、例えばパート的な扱いをする方を採用することもあり得ますでしょうし、いろいろな形が出てくるんだろうと思っております。

高橋委員 派遣社員が扱う仕事は、委託対象届け出書となっておりますが、これはどのくらいの情報があり、個人を特定できるものでしょうか。

村瀬政府参考人 先ほどお話し申し上げましたように、届け出書でございますので、届け出書に書いてある項目につきましては、当然のことながら、その派遣社員は見て対応するという形になります。

高橋委員 実は、資料として、届け出書なるものがどのようなものかという一覧表をいただいたんです。三百六十一件あるんですね。要するに、個人の情報すべてですね。基礎年金番号がそうであり、延滞の状況がそうであり、職歴がそうであり、まさに人の年金にかかわる情報すべて、人生そのものが処理をされるということになると思うんです。それが今のこの不安定な雇用の中で入力作業をされていくということになるわけですね。本当にこれで大丈夫なのかということは、当然考えなければなりません。

 改めて大臣に伺いますが、今大変な問題になっている最中の年金記録五千万件の問題、大臣は、この間の答弁を聞いておりますと、これから調査もする、時効だなどと機械的な対応ではなく、なるべく救済をしようとお考えになっていると思います。あるいは、今後はねんきん定期便できちんとお知らせをして、トラブルもなくなるとお考えかもしれません。しかし、大事な年金情報を基本的にすべて外部に、しかも不安定雇用の中にゆだねてしまうことは、新たな年金記録の消滅など、トラブルを生むことにならないでしょうか。

柳澤国務大臣 これは、率直に言ってなかなか悩ましい問題だろうと思います。

 要は、業務の効率化というものが他方にある、それからまた、他方には、今言ったような個人情報保護の問題、あるいは業務の正確性というものをどうやって担保するかという問題等々、いろいろな要請があるわけでございますけれども、そのバランスを見て、私どもは、業務の効率化のために外部委託もあり得るという体制でこれから臨もうとしておりますが、その際には、非常に、個人情報保護であるとか、あるいは業務の的確性だとかということについては、十分な配慮をした上でこれを行わなければならない、このように考えます。

高橋委員 私は、効率化の域を超えていると思います。外部委託をするに当たって、よく定型的な業務と言うんですけれども、確かに、さっきの契約書を、二枚目を見ていただければわかると思うんですが、入力担当者とは、テンキー入力百五十タッチ毎分以上とか、かつ文字入力四十字毎分以上を処理する者をいう。あとは、ワード及びエクセルの基本操作ができる者、こういうことになっていて、作業そのものは確かに定型かもしれません。しかし、その扱っているものは、先ほど私がお話をしたように、すべての個人の情報そのものなんだ。そして、そのことが、これまでのいろいろな基礎年金番号の統合の中で出てきたようなものだって、結局そういう経過だったんだ。そのことを言ったときに、単に効率化ということでゆだねていいんだろうか。守秘義務とかいろいろ言うけれども、人が常に入れかわるのが派遣社員という業務の性格なんだということを踏まえて、ここはしっかりと、そこにゆだねてはならないんだというふうに思いますが、もう一度お答えください。

柳澤国務大臣 これは先ほどの繰り返しになりますけれども、業務の効率化というものも当然我々が抱えている大きな課題ですし、他方、今委員が厳しく考えるべきだという個人情報あるいは業務の的確な運営、それぞれに非常に強い要請であります。

 したがいまして、今委員は、こちらの方を尊重して業務の効率化はあきらめろ、こういう御主張でございますけれども、やはりそういうことではなくて、できるだけこちらをよく確保した上で、業務の効率化も適切に図っていかなければならない、このように思います。

高橋委員 ちょっと大臣、効率化をあきらめろとか、そこまで言うのはちょっと行き過ぎです。

 先ほど言ったのは、効率化の域を超えていると言ったんです。効率化を図るのは、いろいろな意味でできると思います。しかし、すべて丸々外部に委託する、それでどうして責任が持てるんですかというふうに言ったんです。もう一度。

柳澤国務大臣 業務の的確性というものについてはできるだけ、したがって、継続的な契約をして、そうしたことについてスキルを確保していこう、こういうことで心がけていきたいと考えておりますし、個人情報の保護については、法律上も、また契約上も、いろいろな義務を課してこの確保を図っていこう、その上で効率化のために適切な外部委託を活用していこう、こういうことでございます。

高橋委員 大変不安が広がってまいりました。私は、このまま前へ前へと進んで本当にいいのだろうかと。

 私がお話ししたかったのは、この間の議論の中で、第三者機関が大事ですよ、ポイントですよ、業務の切り分けをするんですと言っていましたが、切り分けはもうほとんど終わっているんです。もうほとんど外部に委託しているんだと。そういう中で、国の責任を果たしていくということが本当にできるのだろうかということを改めて問われなければならないし、不安定雇用を拡大することにもなるんだということなんです。

 そして、今言われている、ねんきん定期便をやって安心を図っていきますよということさえ、絶対に担保できることはない。立ちどまって振り返ること、そして年金の安心をしっかりつくっていくこと、そのことが最優先であり、今回の法案は廃案にすべきだ、このことを指摘して、終わりたいと思います。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。私にちょうだいいたしました時間が十分でございますので、御答弁は簡潔にお願い申し上げます。

 この社保庁の改革問題での審議も六回を重ねてまいっておるわけですが、私は、この審議を通じて、解体されるのはいわば社保庁の責任であって、その象徴が五千万件に及ぶ宙に浮いた年金記録、残るものは実はぬえのような社会保険庁の体質。このぬえの本質は何かと私はずっと考えましたが、やはり保険料をずっとずっと手元でハンドルしたい、扱いたい、この執念にも似たものが残り、そして、御答弁を聞きましても、例えば、大臣、長官、現場の青柳さん、現場に行けば行くほどガードがかたく、何ら本当には変えたくない、この繰り返しであるように思います。

 大臣は政治家ですから、国民に向けて政治の意思を話さねばなりません。大臣、例えば、この間問題になっております五千万件については、当初この委員会では申請主義を唱えられました。しかし、この間、政治の意思で、社保庁の側からアクションを起こす、働きかける、この政治の意思は、大臣一言でお願いしますね、大臣の心の中では決まっていますか、安倍総理の心の中では決まっていますか。二つ、一言でお願いします。

柳澤国務大臣 私どもは、基本的に、個人の申し出によって、修正をするならば必要な修正をする、こういうことでありますけれども、だからといって、では社会保険庁の側から何も働きかけないかといえば、そうではなくて、我々の方から、ここでは繰り返しませんが、いろいろな機会に、これでよろしいですか、これでよろしいですかということをやっておりまして、今後ともその考え方でまいりたいと思っております。

阿部(知)委員 大臣、ごまかさないでください。それじゃ何にも政治の意思を語っていないんですよ。今までだって、繰り返し、裁定のときには働きかけてきたんですから。でも、今、この組織を変える段に当たって、五千万件、やはりきっちり処理していただきたいんですね。そのためには、百年、川がきれいになっていくのを待つんじゃなくて今働きかけるべきだ、そこに政治の意思があるかどうかなんですよ。三千万人の既裁定者、五千万件の宙に浮いた年金、これを、午後もし安倍総理がこの場に来てきちんと政治の意思を示されるのであれば、実は柚木さんも当初おっしゃいました、その政治の意思をこそ、ここは話す場なんですね。現場がぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃわけのわからないことを言ってごまかして、時間を浪費して、国民には何の答えも出せない、それでは委員会の意味がありません。

 委員長、お願いがあります。

 もし、本日午後、安倍総理がいらして、その政治の意思が示された場合には、この委員会は政治家の責任を持ってそのことをきちんと論議する、そのように理事会でお取り上げいただきたいですが、いかがでしょうか。

櫻田委員長 理事会で後刻協議いたします。

阿部(知)委員 後刻協議するということは、その前によもよも強行採決などはなさらないということであります。私たち政治家は国民に責任があります。そして、この間、何度も何度も、社保庁問題は、またか、またか、またかの繰り返しでありました。国民だって、いいかげんにしろと本当に思っています。そんな不安を抱えたまま、一歩も進むことができないんです。この委員会の責任ですから、重ねてお願い申し上げます。採決以前に理事会で、午後の安倍総理の御答弁を聞いて、お考えを願いたいと思います。

 引き続いて、私の質問に……(発言する者あり)与党はそんなとき、答えなくていいよなんて余分なことを言うべき立場じゃないんです。与党だって国民に責任があるんです。こんなこと、与野党を超えて、五千万件も浮いたものをどうするんですか、本当に。そのことも決めないで次のステップになんて行けないんですよ。

 村瀬さん、質問があります。

 村瀬長官は五千万件の件はいつお知りになりましたか。そして、次の機構に移るといいますが、どこまでに何をなさいますか。短くお願いします。

村瀬政府参考人 五千万件の内容を知りましたのは五月でございます。

 それから、あと、現在の中でどうするかという時間軸の問題でございますけれども、まずやらなければならないことは何かといいますと、やはり年金の場合には、既裁定者につきましては、お互いに記録の突合でございます。そのためには、システム的にいろいろなことを仮に検討したとしても、今すぐにはできません。やはり、疑問に思われている方に事務所へ来ていただきまして、一人一人、過去の記録を親切丁寧に対応していく、これしか解決の道は私はないと思います。

阿部(知)委員 それではこの委員会が始まったときから一歩も進んでいないんですよ、来てもらったらやりますよと。あるところで確認しなきゃいけないのは事実ですよ、貴重なデータですし、受給権にかかわりますし。でも、何のために六回も委員会をやってきたんですか、浮いた年金のために。本当は、もっと違う、中身の論議をしたかったわけです。徴収を民間ではないところのよくわけのわからない公法人、看板かけかえ法人に任せて大丈夫かどうか、給付のシステムはもっとサービス向上ができるんじゃないか、そのためにはどんな組織がふさわしいか、その本質論議に入る前にみんなここでストップしているんですよ。そのことの責任は、九割以上、いわば、社会保険庁の側のこの五千万件をめぐる、どうするかのアクションプログラムがないことが起因しているんですね。そのことを長官は、少なくとも今の責任者として自覚なさるべきですよ。

 私は、村瀬さんは、さっき言ったぬえのようなところに行かれて、それなりの努力をしましたね。納付率を上げろと言ったら不正免除、そして、五千万件ある、これもまた、村瀬さん、待つんですか。それじゃ、あなたが民から行かれた意味もないし、結局そこに残ったのは、非効率で、不誠実で、看板だけが変わるよくわけのわからない特殊法人ですよ。そんなことを国民はだれも望んでいません。

 次の質問に行きます。

 きょう、お手元に、先日お伺いした納付率の問題、これはもう長官の方がようよう御存じだと思います。納付率、表面上は六七・一%、しかし、不正不在等々を処理すれば六五%くらいになるかもしれない。結局、何で納付率は上がってきているか。免除がふえる、免除をふやすしか納付率を上げることができなかったこの数年が、これは山井先生も同じデータをおつくりでありました、しかし、如実にこのグラフは物語っています。普通、民間であれば、この手法、この商品はどうなのか、いいのかどうか。私は、今、年金にとって危機的な状況を生んでいると思います。

 二点目の資料をおめくりいただきたいです。

 ここには、実は、国民年金の免除がふえるごとに厚生年金からの国民年金への繰り入れがふえていく図がかかれております。丸で示されたのが国民年金特会への繰入金であります、今や十兆円を超えました。保険料収入は二十兆円で低迷しております。給付は赤になってきております。

 このまま国民年金の免除、免除、免除をし続ける体制が実は厚生年金の屋台骨を揺るがして、一方で、福島委員も御質疑になりました厚生年金の未納、未加入問題、これも早急に手当てしなきゃいけない。屋台骨が揺らいできたら、年金は本当にこの国の社会保障の根幹に座り続けることができなくなります。

 大臣、やはり政治は、この厚生年金の適用拡大、徴収の効率化、未納、未加入の処理、あわせて、もう実際に免除を除いたら五〇%になっちゃっている国民年金のこの制度設計、この三つに答えを出すべきではないですか。御答弁をお願いいたします。

柳澤国務大臣 いや、最後の制度の改正、こうおっしゃられましたけれども、この点は、私どもは、去る十六年度改正でかなり安定したものに、軌道に乗せることができている、このように思います。

 その他の、適用の拡大、あるいは未納の率の縮減、あるいは免除というようなものを本来受けるべき人にきちっと免除の措置をとるというようなことに努力をすべきだというのは、私は委員のお考えに同意をいたします。

阿部(知)委員 先ほどの高橋委員の御質疑にもありました、非正規あるいは不安定な働き方がふえればふえる都度、我が国の年金が揺らいでいるという姿です。これに政治が答えを出すべきだと。本来は、そういう審議をして、それにふさわしい組織のあり方、徴収については、やはり私は一元化がいいと思います、そういう審議をこそすべきだと思います。

 午後の安倍総理の明確な見解を私は期待して、終わらせていただきます。

櫻田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本来、年金は弱者の生活の基礎になっていなけりゃいけない。ただ、そこが、五千万件の問題であったり、そしてだんだん未納率がふえてきたことで、では給付も下げようとか、でも皆さんから取るものは取ろう、こういうような流れがあるわけです。その中で、我々の世代、若者の世代というのは、こんな年金にお金をかけられるかという人がだんだんふえてきて、悪循環に陥っているんですよ。

 そういう中で、今大臣が取り組まなきゃいけないことは、誠意を持ってまずはこういう不安を払拭していく、ここに傾注をしていただきたいわけで、この法案の成立をまずありきに考えないでいただきたい。これだけは、まず冒頭強く申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で、この年金記録をめぐっては、さまざまな問題が今指摘をされているわけでございます。今回の法案では、現在省令で規定されております基礎年金番号が法定化されることになっております。これによって年金記録問題の解決に寄与できるのかどうか、この点を含めて、今回法定化する理由をお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 基礎年金番号は、これはもうスタートをいたしておりますが、今回の法律改正によりまして法定化という措置をとらせていただきたいという御提案を申し上げております。

 御指摘の、年金記録をめぐる問題の解決にこれが直接寄与するかということであれば、そういうことは、もう今までやっていることをしっかりやるということ以外にはないわけでございますが、今後、基礎年金番号の利用拡大ということを展望いたしますと、利用制限等保護措置を設けることによって、年金記録の適正な管理あるいは活用といったようなことには資するものである、このように考えております。

糸川委員 それから、大臣、年金事業の今回の運営には莫大な数の個人情報が関係するわけでございます。今回のこの改革で、年金運営組織が国の組織でなくなる。そうしますと、年金の個人情報がどのように扱われるかということも非常に不安に思われる方が多いのではないか。

 民間の企業の場合、流出しました、ごめんなさいで終わってしまうケースが非常に、さまざまなケースを見ていますと、それで終わってしまうような気がするんですが、大臣、今回のこの新機構での年金個人情報の保護はどこまで担保されるのか。その点について、例えば、この人は未納者だ、この人はしっかりと納付をしている、そういうデータが流出するのかしないのかという、絶対にできない環境をどうやって大臣が担保していくのかということを御説明いただきたいと思います。

柳澤国務大臣 この前もお話を申し上げましたけれども、オンラインそのものは完全にクローズドのネットとなっておりますので、そこから何かが流出するというようなことはないというふうに考えております。

 ただ、実際、最近いろいろなところで起こっているのは、外部委託をする、それをまたさらに再委託をするというようなことで、規律というものがだんだん希薄になっていく中で、個人情報のテープをそういう個人の家に持ち帰ってしまうとかいうようなことから誤りが起こっているというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、この面についての運用に当たってはもう最大限の注意をしなければならない、私はそのように考えております。

 法律的なことは、もうあえて申し上げるまでもなく、要するに、守秘義務を課す、それは罰則で担保している、こういうようなことで、また、年金情報の活用範囲を法律上限定することにしているというようなことで、これから実際の運用に当たって相当の覚悟で臨まなければ、私は非常にリスクは少なくないと思っております。

糸川委員 大臣の答弁は非常に丁寧なようですけれども、若干、やはりこういう個人情報を扱う上では、私はもっともっと、国がどこまで関与できるのか、これは、今後民間にアウトソーシングしたり委託したりすることが非常に多くなってくるという中で、特にこの個人情報に関しては、例えばダブルチェック、トリプルチェック、そういうものをどこまで導入させていくのか、これを大臣、しっかりと管理していただきたいというふうに思います。

 それから、もう余り時間がないんですが、今回のこの新機構において、保険料の滞納処分を行う場合、これは大臣の事前の認可が必要になっているわけでございます。この滞納処分が公権力の行使である以上、これは当然の手続だというふうにも言えるわけでございますが、ただ一方で、迅速に執行されないと保険料を収納できなくなる可能性もあるわけでございます。

 保険料の強制徴収を公法人に行わせる際に、手続に時間がかかるということが問題点の一つだったわけですが、こうした問題の防止のために手続の面で工夫が必要になってくるのではないかなというふうに考えますが、これは大臣、具体的にどのようにされるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 日本年金機構、先ほどちょっと民間法人という御発言もありましたけれども、これは公法人でございますので、ぜひ、しかも個別の法律をもってつくっているわけでございます。

 それはともかくとして、保険料の強制徴収を行わせるに当たっては、厚生労働省による事前の個別認可が必要になっているということは御指摘のとおりでございます。

 では、個別ということになると、手続に入っていくのに非常に時間がかかるのではないか、こういうことでございますが、その点については、私ども工夫をいたしたい、こういうように考えておりまして、滞納処分の対象となるものとして事前認可を申請すべき事案の基準をつくりまして、それを明確化し、これに該当する事案を定期的にリストアップして、オンラインシステムを通じて厚生労働省で決裁するというような、そういう迅速化のための工夫をいたすつもりでございます。

糸川委員 大臣、これでもう私の質問、時間がありませんので質問いたしませんが、どうも、滞納処分ですとか、取る方に関しますと大臣は物すごい積極的なんですよ。ただ、例えば五千万件の件にしても、救済をしなきゃいけない人たちのことに関すると、どうも消極的な答弁のような気がするわけで、大臣、やはり年金というのは国民の大事な財産です、我々若者も含めて、これから年金を納めなきゃいけない人たちも含めて、これは失望させたら絶対うまくいかないですよ。

 この法案だけで、今マスコミの皆さんも、きょうは非常に多く入られています。すごく注目しているということを感じます。そういうことから考えても、大臣、この法案を通すのが先なのか、この中身の、もっと、五千万件の人たち、それから救済をどういうふうにしたらいいのかというところまでこの委員会で議論をした方がいいのではないかとか、その辺は大臣、よく御配慮いただきたいと思います。

柳澤国務大臣 私どもは、この法律案を提出させていただきまして、これもしかも二度目、三度目のチャレンジということで、法案をせっかく国会に提出したのに、また問題が起こってそれを審議未了とせざるを得ない、それでまた再提案させていただいているわけでございまして、ぜひ御理解をいただいて、早期の成立をお願いしたい。

 そして、いろいろとその間指摘をされました記録の処理の問題については、先般の予算委員会で私もお答えさせていただきまして、検討させていただくということを、受給権者の方々と今の未統合の記録との突合というようなことについて申し上げたわけですが、総理からは、できることはすべてやって国民の信頼を回復する、そういう対応策を早急に取りまとめるべきだ、こういうことを御指示いただいておりますので、現在その方向で努力をさせていただいているということでございます。

糸川委員 ありがとうございました。

 終わります。大臣、しっかり取り組みをよろしくお願いします。

櫻田委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮澤洋一君。

宮澤委員 自由民主党の宮澤洋一でございます。

 総理、連日お疲れさまでございます。

 きょうは、厚生労働委員会、安倍総理として初めての御出席だろうと思います。私も、安倍内閣ができて以来、道路特定財源の改革、また公務員制度改革とやってまいりましたけれども、本業は社会保障でございまして、厚生労働委員会がホームグラウンドでございまして、こうして初めて質問させていただきますことを大変光栄に思っております。

 まず、社会保険庁改革、大変いろいろ議論をした末の提案でございましたけれども、私も三年前、年金改革に同じく理事として携わっておりました。未納問題、未納問題と言われて、未納三兄弟なんと言われておりましたけれども、おっしゃった方が未納だったりということで、よくわからないことから始まったわけであります。

 よく考えてみますと、そのときから、業務外閲覧というようなことで、何千人も社会保険庁の職員が業務外で、仕事外で記録を見ていたというような不祥事から始まり、正直言いまして、三年間、不祥事のオンパレードということ、社会保険庁というのは私はもう腐っているとしか思われません。

 一方で、民主党案のように歳入庁というようなことも自民党の中でも一応考えましたけれども、やはり新鮮なリンゴの中に腐ったリンゴを入れた途端にみんな腐っちゃう、こういうことでは困るわけでありまして、解体して一から出直す、こういう案を現在提案させていただいております。

 まさに、総理も六分割という発言をされておりますけれども、この社会保険庁の改革の意義について、総理のお考えをもう一度御説明していただきますとともに、恐らく、制度ができ上がりましても、きっちりした政治のリーダーシップでこれを運営していかなければいけない、そういう御決意を最初に伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘になったように、社会保険庁は国民の信頼を失った、このように思います。年金制度は国民の信頼の基盤の上に成り立つものであって、だからこそ国民の安心、これを担保できる、私はこのように信じています。

 社会保険庁の問題は、さまざまな問題がありまして、現在も社会保険庁の抱える問題点が指摘をされています。私も、実は幹事長時代には、私の年金記録は三十人にも上る人たちに不法に閲覧をされていました。結構人気があったんだな、このように思うわけでありますが。こうした国民の信頼を失った社会保険庁はもう廃止をしなければいけない、これは政府・与党共通の思いである、このように思うわけでございます。

 今回の改革案におきましては、公的年金に関する国の責任はしっかりと保持しつつ、堅持をしながら、そして新たに非公務員型の日本年金機構を設置するとともに、民間企業への外部委託を徹底していきます。また、いわゆる悪質な滞納者に対しましては、強制徴収を国税庁に委託するなど、廃止・解体六分割を断行していくものであります。

 これを断行することによって、国民の信頼を回復し、そして国民の期待にこたえる、効率的で、そして国民のいわば安心を守っていく、そういう組織に生まれ変わっていく。そういう組織にしていくためにも、私も全力を尽くしてまいりたい、このように決意をいたしております。

宮澤委員 次に、年金記録の問題に移らせていただきます。

 この委員会でもたびたび、基礎年金番号に統合されていない年金記録番号が五千万件あるといった点、非常に議論になってきております。一方で、我々といたしましても、ではどういう人たちがこの仕事をしていたのかなといいますと、先ほど言いましたような腐った組織であります。

 例えば、これは自治労との確認事項でありますけれども、オンライン化に当たって、窓口装置の一時間使用時間は四十五分以内とし、操作時間は四十五分ごとに十五分の操作をしない時間を置くとか、一方で、その前でありますけれども、ファクシミリの導入に当たっては、問い合わせが国民の方からあっても即時の回答を要求しないというようなことを組合が要求して、覚書が結ばれている、確認事項がある。こういう組織がやっていて、正直言って非常に心配であります。

 今回、いろいろな議論を経てまいりました。基礎年金番号のついていない年金記録につきましては、やはり今後、システムを新たに構築して突合を行っていかなければいけないと私どもも考えております。

 そういう中で、まず厚生労働大臣に伺いたいんですけれども、まず、現在、突合を行った上で、年金を支給しておられる方について優先的に進めるべきであると考えますが、どのようにお考えでありますか。

柳澤国務大臣 長いこと、この法案について御審議をいただく中で、特に年金記録の処理の問題について、多くの方から御疑問等を提起されたところでございます。

 私ども、未統合の年金記録につきまして最も問題なのは、実はそのことによって年金を現に受給している方に支給不足が起こっているというケースかと思っております。したがいまして、もし、というよりも、これを総理の御指示で私どもやらせていただくということにいたしましたけれども、この未統合の年金記録と受給権者の年金記録の突合に当たりましては、まず支給不足が起こっているということを中心として考えていきたい。

 そこで、六月に送付する振込通知書におきましてその照会を勧奨することといたしましたけれども、今申したように、総理から格別の御指示をいただいたことを踏まえまして、まず、基礎年金番号に統合されていない年金受給年齢到達者、これは約二千八百八十万件、五千万件の中にあるわけでございますが、さらに生年月日を特定できないものも含めまして、それと年金受給者約三千万人の記録を突合いたしまして、同一人の可能性がある受給者に対し、その方の年金加入記録を改めてもう一回見ていただくということとともに、その旨、つまり、ほかに番号がある可能性がありますよということをお知らせし、照会の申し出をお勧めしたい。

 そして、それ以外、突合がなかった年金受給者の方につきましても、その方の年金加入履歴をもう一度改めてお見せいたしまして、その確認を求めて照会の申し出を勧奨する。

 以上によりまして、最終的にはすべての年金受給者の方に加入記録を送付し、記録の御確認をいただけるものと考えているところでございます。

宮澤委員 いずれにしても、ともかく、その方の年金記録の可能性が高いということになったときには、役所の方から連絡をとって確認作業を勧める、こういうことを御答弁いただいたと思っております。

 次でありますけれども、受給権者が整理されたとして、被保険者についても対応をとらなければならないと考えますが、どのように対応していくお考えか、伺いたいと思います。

柳澤国務大臣 被保険者の方につきましては、今後、毎年五十八歳通知を行う都度、年金加入履歴を通知いたしますとともに、未統合記録への注意を、できればその同じ年齢で未統合記録がこのくらいあるということを示しつつ、御注意を呼びかけ、御自分の年金記録の照会を申し出ることを勧奨してまいりたいと考えております。

宮澤委員 さらに、年金を受給するための資格要件を満たしていない方であっても、記録統合により年金受給に結びつく方もおられると思いますけれども、こういう方にはどういうふうに対応をされるおつもりでございますか。

柳澤国務大臣 極端に言うと、二十四年十一カ月、年金保険料を納めた、しかし受給資格を満たさない、こういう方々につきましては、社会保険庁側はそのリスト等のデータを保有しておりませんので、未統合記録との突合を確保するためには、社会保険庁だけでは対処できないわけでございます。

 そこで、市町村に対しまして、介護保険料納付通知書等の送付の際に、それとあわせて未統合記録への注意と照会の申し出の勧奨を呼びかけてもらうことを依頼したい、こういうことを考えております。こうして、これらの方々に対しても対策を講じてまいりたいと考えております。

宮澤委員 一方で、オンライン化をされていないマイクロフィルムとか、また市町村の被保険者名簿等に記録があったもの、こういうものについて何とか対応していく必要があると思いますけれども、どう今後対応されていくお考えでございましょうか。

柳澤国務大臣 マイクロフィルム化された被保険者台帳がこの前十一件、市町村の被保険者名簿に記録があったものが十八件、にもかかわらずオンライン記録にはなかった、こういう案件への取り組みでございます。

 国民年金及び厚生年金を通じまして未統合記録を完全に把握する、つまり、五千万件あるといっても、まだ散逸している未統合の記録があるかもしれない、そういうことを把握するために、社会保険庁内のすべての記録、これは特殊台帳を含めます、及び市町村の保有するすべての記録とオンライン記録との突合を計画的に実施いたしたいと考えております。この作業には長期間を要しますが、その進捗状況を定期的に公表しながら、確実に進めてまいりたいと考えております。

宮澤委員 今大臣のお話にありましたように、かなり時間を要する作業だと思いますけれども、着実に進めていただきたいと思っております。

 さらに、社会保険庁及び市町村で記録が確認できず、御本人も領収書などの資料をお持ちでない、そういう方がいらっしゃるということが国会の場で議論になっておりますけれども、こういう場合にはどのように対応されるお考えでございますか。

柳澤国務大臣 社会保険庁側、照会申し出者側双方に記録、証拠がない場合の取り扱いにつきましては、さまざまな関連資料の調査の中で適切に納付記録の有無の判断に結びつけていけますよう、その取り扱いの手続、これは現行の審査体制の再構築を含めてでございますが、この手続等をできる限り早期に策定してまいりたいと考えております。このように、今後、できることはすべて実施してまいりたい、これが私ども、総理の指示を受けての検討の結果でございます。

宮澤委員 いずれにしても、一昨日の予算委員会における総理の、今後、工夫を行いながら国民の不安を解消したい、厚生労働省にも努力させたいという御答弁を受けてのお話だろうと思います。総理におかれましても、これは大変大事な問題でございます。政府を挙げて実行していただきたいと思っておりますので、御決意のほどをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま、詳細については厚生労働大臣から答弁をいたしたとおりであります。

 大切なことは、何といっても、年金制度は国民の皆様の信頼があってこそ成り立つものであります。その信頼を揺るがすことがあってはならないわけでありますから、国民の立場に立って、今回の問題についてもしっかりと対応するように指示をしたわけでございます。今回の年金記録の問題について、国民の視点に立って、行うべきことはすべてやるように、このように指示をいたしました。そして、しゃくし定規な対応をするのではなくて、まさにこういう問題があるという指摘があれば、その人の立場に立って対応するように指示をしたわけであります。

 この問題については、いたずらに国民の皆様の不安をあおってはいけない。しかし、国民の不安を解消するために私たちは全力を尽くしていくということをお約束したい、こう思う次第でございます。

 ただいま厚労大臣がお答えをいたしましたように、今までのように、こちら側の方から、政府の方から、社会保険庁の方から、こちらから親切に説明をする、そういう姿勢が欠けておりました。ですから、こちらから通知を行い、喚起を促していく、そして、こういう可能性がありますよという通知をしっかりと出していく、これは既に受給されておられる方も、また、今いわゆる被保険者と言われている受給に至る年齢の前の方々、すべての皆様方に対してきっちりと対応してまいりますことをお約束申し上げます。

宮澤委員 時間も参りました。年金改革全体に関する総理の御決意を最後に伺いたいと思っておりましたけれども、午前中、福島委員の質問にもございました。三年前、理事として参加した者からしますと、年金改革全体に対する民主党案はどこに行ってしまったのかなという気がしております。消えた年金ということをおっしゃっていますが、私から申し上げますと、消えた年金制度改革ということをもう一度本当に考えていただきたいなということをお願いいたしまして、私の質問をやめさせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、福島豊君。

福島委員 公明党の福島豊でございます。

 総理、大変に御苦労さまでございます。

 社会保険庁の解体、そしてまた新しい出直し、この法案の審議をめぐっては、社会保険庁のさまざまな実態が明らかになったと思います。年金記録の問題にいたしましても、実際にその年金の記録をどのような思いで職員の方が扱っていたのか、これだけなぜ誤りが起こったのか、こういうことも指摘をしなければならないと思います。

 そしてまた、民主党の先生からもいろいろと御指摘がありましたけれども、私の年金記録はどうなっているのか、相談に行ったときのその対応はどうであったのか、余りにも親切ではない、これは、まさに現在の社会保険庁の組織のあり方自体に問題の根源が一つはあるというふうに言わざるを得ないと思います。そういう意味からも、日本のこの年金制度に対しての国民の信頼を回復するためには、やはり新しい組織として出直す必要がある、私はそのように思っております。

 その上で、この国会におきまして、年金記録の問題がさまざまに問題になりました。これを聞いておられる国民の皆様もさまざまな不安を感じておられると私は思います。これに対して、政府として、信頼の年金制度にするために徹底した対応をする、このように総理が決断をいただいたことは、大変私は高く評価するものでございます。

 ただいまの宮澤委員の御質問に対しまして、徹底して調査をし、また国民の皆様にもお知らせをする、こういう方向性が示されたわけであります。そして、この調査そしてまた報告、こうしたことの次に何があるかといいますと、これは、今年金を受給しておられる方々が、仮に年金記録の問題で年金の額が減っている、この場合にこれを回復してあげる、このことが一番大事でございます。

 しかし、そこで問題になりますのは時効の問題でございます。年金額が記録の見直しによりまして増額された場合に、五年より前の期間分は、会計法の規定によりまして、時効にかかって消滅するため、支給されないことになっております。本来、納めた保険料に見合った年金給付を受けることができるよう取り扱うべきでありますけれども、時効に関しては、国の債権債務に係る法律関係の安定性を確保するための共通ルールとして、会計法において、国に対する金銭債権は五年で時効消滅し、国は時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないと規定が定められており、こうした一律の取り扱いとなっていると私は承知しております。

 こうした会計法の取り扱いの例外として、個別のケースについて、具体的な事情や責任の所在に基づいて時効の適用の可否を判断するとしても、ケースごとに具体的な事情や責任の所在はさまざまでありますから、御本人と社会保険庁との間のやりとりがこれまで必ずしもきちんと記録されていなかったことを踏まえると、何らかの公平な基準を設けて運用で対処するということは、大変難しいと私は思います。

 しかしながら、このような問題を乗り越えて、保険料をきちんと納付すればこれに見合った年金給付が確実に行われるという国民の信頼にこたえる必要があります。与党としては、既に年金を受給されている方の年金記録が訂正され、年金額が増額されたのにもかかわらず、その増額分の一部が時効消滅した方を救済する方策を進めていきたい、そのように思っております。

 具体的には、こうした方が一定の期間内に申請をいただければ、時効で消滅した部分の回復措置を講ずる方針であり、そのための立法措置を検討していきたいと考えております。与党の提案によりましてこうした立法措置が講じられた場合には、政府としてしっかりと運用していただきたい、そのように考えますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま福島委員が御指摘になった点は極めて重要な点であろう、このように思います。問題の認識、考え方は、私も全く同じでございます。

 年金記録の訂正に伴い年金額が増額されたにもかかわらず、一部が時効で消滅するといった事態を招かないようにすることが必要であることから、時効消滅したすべての部分の回復措置を講じ、そして救済するための特別立法について、今後、政府と与党が一体となってその実現に努力をしていきたい、私も総理としてそのことをお約束申し上げる次第でございます。

福島委員 ありがとうございます。

 先ほど大臣の御答弁で、記録がない、領収書もない、こういった場合にどのように対応するのかということについて、手続をきちっとしていきたい、このように御説明がございました。現在までも、領収書もない、そしてまた記録もないけれども極めて蓋然性が高いという場合には、それを認めるという措置をとられていると思いますけれども、この点についての経過を御説明いただきたいと思います。

柳澤国務大臣 昨年の四月に、再審査請求の過程におきまして、社会保険庁から記録を訂正した事案がございました。

 具体的には、昭和五十二年四月から五十四年の三月までの期間を口座振替により納付してきたという申し立てにつきまして、当該申し立て期間の前後の期間について、社会保険庁においては未納と記録いたしておったのでございますが、本人が所持していた領収書や市町村に保管されていた収滞納一覧表によって納付の事実が確認でき、納付記録を訂正しております。本人は昭和五十年一月から任意加入しており、本人の意思で加入する任意加入期間について、未納の状態を二年度にわたり放置することが考えにくい、こういうことから、納付があったことが確実と考えられ、納付記録を納付済みと訂正したものでございます。

 このように、いろいろな客観的な状況を我々は勘案しまして適切な判断を下していきたい、このように考えております。そういうことをたくさん蓄積いたしまして、ここに一つの実態的なルールともいうべきものが構築できれば、このように考えております。

 また、手続についても、今の審査体制については、年金記録にかかわる審査請求というような手続にのるものが実は非常に少ないわけでございまして、これらについても、もっと本当にこの制度が機能するように、その再構築も同時に考えてまいりたいと思っているわけでございます。

福島委員 よろしくお願いいたします。

 そしてまた、今回の年金記録の調査が行われた場合に恐らく出てくる事態として、あともう少しで年金がもらえるけれども、そこまで届かない、こういう人が出てくる可能性がまたあるんじゃないかと私は思っております。

 そういう意味で、公明党としましては、年金に関しましての事後追納の制度、これについて一定の規制緩和をする、広げる、拡大をする、こういうことについて、ぜひ提案をさせていただきたいというふうに思っております。こうした形で、あらゆる手段を講じて年金の給付を確保していく、国民の年金の受給権を確保していく、そのために頑張ってまいりたいと思っております。

 続いて、ねんきん定期便についてお尋ねいたしたいと思います。

 今回の法案におきましては、さまざまな収納対策が講じられることとなっております。しかしながら、保険料を自主的に払っていただくことが本来の姿であります。そのためには、年金制度への信頼と理解を深めていただくことが、迂遠なようでありますけれども、近道である、そのように考えております。そのような意味で、保険料の納付実績や将来の給付など、お一人お一人に対して示してくれるねんきん定期便は、年金制度を身近に感じさせてくれるきっかけとなるものであり、制度への信頼を高めるものであります。

 総理は、ねんきん定期便の実施の前倒しを指示するなど、ねんきん定期便の重要性というものを早くから認識しておられたと伺っております。改めて、ねんきん定期便の意義や役割について御説明いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国民の皆様の年金に対する御関心は大変高いわけでございますが、しかし、何となく不安を持っておられる方々も多いんだろう。一体、自分が払っていて、将来、その払った保険料に見合う給付があるんだろうか、こういう不安があると思います。なぜそういう不安があるかといえば、情報がちゃんと十分に国民の皆さんに伝わっていないということではないかと思います。それはやはり、社会保険庁自体が、そういうサービスをしっかりと自分たちがやらなければいけないという気持ちがなかった、いわば親方日の丸根性というんでしょうか、そういう気持ちが蔓延していたからではないかと私は思います。

 国民の皆様にこの年金という仕組みをよく知っていただき、また、自分の年金がどうなるかということをよく知っていただくためにも、毎年、年金の加入期間、そしてまた、これまで払った保険料、そして、将来どれぐらい、これからも払っていけば年金をもらえるのかということをお知らせするべきだ、これは、私が昨年総裁選挙に出たときのお約束でありました。それが、いわばねんきん定期便として実現をしていくわけであります。

 その一環といたしまして、従来の五十八歳到達時に加え、三十五歳、四十五歳到達時には、それまでの加入履歴も入れてお届けするということになっています。そして、平成二十年からは、すべての年齢の皆様に、これは加入履歴というよりも、先ほど申し上げました三点についてお知らせをするということになるわけでございます。これによって、国民の皆様が年金に対して大変身近に感じていただけるのではないかな、このようにも思うわけでございます。

 当然、先ほども申し上げましたように、この年金の記録の問題がありました、このねんきん定期便を通じても注意を喚起していきたい、こう考えております。

福島委員 このような重要な機能を持っているねんきん定期便については、政府としても積極的にPRを行っていくべきだ、このように思いますけれども、所管大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

柳澤国務大臣 このねんきん定期便は、年金に対する国民の関心にこたえるという意味で、今総理が言われたように、非常に有力なツールだというふうに私は思います。

 特に私が思いますのは、若い人たちの年金に対する、やや不安に根差した不信というか、そういうものを払拭するには非常に重要なツールになる、このように思います。年金の保険料を納めていないのがいいんだというようなことがもし若い人たちにあるとすると、このねんきん定期便で皆さんのところに納付の実績と将来の給付の見込み額のようなものが届くといたしますと、友人同士、自分は全く今まで納付していない、片方の友人は納付してある、見比べたら、将来に対する安心というのはどっちが本当のところ強まるか、私は、その効果はかなり大きいものがあるだろうと期待をいたしております。

 そういう意味で、このねんきん定期便が今後の若い人たちの納付率の向上にも資することを私として期待をいたしているところでございます。

福島委員 時間も残り少なくなりましたので、年金制度についての総理のお考えをお聞きしたいと思います。

 十六年の年金改革では、負担と給付の抜本改革を実現し、百年先までの財政を見通した揺るぎない制度を確立した、そのように考えております。少子高齢化など人口構造の変化、また、経済の動向を見据え、頻繁な制度改正を繰り返す必要のない、安定して財政運営のできる持続的な仕組みとしたわけであります。

 しかしながら、こうした年金制度についても、その改革の意義について、いまだ十分国民に理解をされていない向きもあるのではないかと思います。しかし、世界的には、この十六年の年金改革というものは極めて高く評価された、これは私は間違いのないところだと思っております。

 そしてまた、年金財政も、この数年間の景気の回復というものを前提といたしまして、大変堅調に推移している、これも事実だと思います。少子化につきましても、さまざまな対策を行って、若干の改善の兆しが見えているということも事実だと思います。

 しかしながら、今後、この年金制度、安定して運営していくことができるということを国民にもっともっと理解してもらうためにも、総理の確信ある御説明をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 年金制度は国民の皆様の信頼の上に成り立っております。ですから、制度の正しい姿を国民の皆様に知っていただく努力を私たちはもっともっとしていかなければいけない、こう思います。

 十六年度の改正によりまして、将来にわたっての給付と負担のバランスをとったわけであります。平均寿命、あるいはまた将来の労働力人口等々を、これはマクロ経済スライドという形で給付を調整する、そういう仕組みをつくって、五年ごとに、この再計算によってかえって出生率等々の変化によって不安があおられないように、毎年、五年ごとに変えなくてもいい、そういう安定的な仕組みを構築することができた、こう申し上げてもいいのではないかと思います。

 その中で、確かに、昨年末公表された新しい人口推計では、一層の少子高齢化の進展が見込まれるわけでありますが、しかし、もちろん我々は、徹底的な少子化対策を行っています。

 一方で、これまでの積立金の運用利回りは、平成十六年財政再計算の見込みを四ポイント程度上回っているわけであります。いい方に上回っているということであります。そして、厚生年金の被保険者数も見込みを百六十万人程度上回っているということも、これも新しい、いいニュースと言ってもいいんだろう、こう思います。

 年金財政は、この三年間で見込みよりも十二兆円程度好転をしているわけでございます。また、本年二月に発表された暫定試算でも、新人口推計の中位推計や近年の経済動向を織り込むと、最終的な所得代替率は五一・六%と見通されるなど、好転をしています。これは、まさに私たちがお約束をした五〇%以上、これは大丈夫ということでございます。

 このような中で、引き続き、平成二十一年度までに基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げることについて、十六年年金改正法附則の規定に基づき、その税財源も含め、責任を持って検討をしていかなければいけない、このように思います。

 また、年金制度は、国民の信頼があってこそ成り立つという制度でございます。年金制度の意義等についても、改めて国民の皆様に私たちも誠意を持って御説明申し上げていきたい、このように思う次第でございます。法律の規定に基づき、平成二十一年までにしっかりと財政検証を行い、国民の老後生活等の安心の確保に最善を尽くしてまいります。

福島委員 どうもありがとうございました。

 何よりも大切なことは、いたずらに国民の不安をあおるということではなくて、着実な改革を進めていく、このことだと思います。総理にはますます頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井です。

 これから四十分間にわたりまして、安倍総理に質問をさせていただきたいと思います。この間、柳澤大臣とは、もう何度も何度も同じ質疑をしておりますので、きょうはせっかくの総理入りということですから、ぜひ安倍総理、制度の細かい議論は私はいたしません、原則のことを議論したいと思いますので、御議論をいただければと思っております。

 それで私、今、与党の方の質疑を聞いていて、報道によると、消えた年金記録の救済、被害者の何かすごい救済策を発表されるのかなと思って非常に期待をしていたんですが、今の答弁を聞いていたら、今までやってきたことをきっちりするということで、そういう意味では、本当にこれでこの方々の不安が解消されるのかなということを感じました。

 私は、この最終日、非常に不思議だったのが、重要広範議案であって、以前から、最後、安倍総理が来られたらテレビ入りで質疑をやろうということを言っていたのに、急にテレビ入りにしないということを与党がおっしゃってこられて、いい案を出されるのだったら、テレビの前で正々堂々と言われたらそれこそ国民の皆さんも安心されるんじゃないかなと思ったのに、与党の方々がNHKに大相撲が理由で断られたということを聞いたんです。何かそういうことも実際にはないそうでありまして、なぜテレビ入りにならないのかなということを不思議に思っております。やはり、国民の信頼回復のためにも、本来テレビを入れてやるべきではないかということを私は思っております。

 それでは、安倍総理にお伺いをいたします。

 安倍総理、振り込め詐欺というのがありますね、振り込め詐欺。振り込め詐欺というのは犯罪なんですが、なぜこれは悪いんでしょうか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 ただいま御質問で、これは犯罪なんですからとおっしゃいましたね。犯罪だから悪いのは当たり前です。

山井委員 どういう趣旨で振り込め詐欺は悪いんですか。

安倍内閣総理大臣 犯罪は悪いに決まっているじゃないですか。そもそも振り込め詐欺というのは、これは詐欺ですから、詐欺行為そのものは犯罪であります。ですから、そういう犯罪というのはやってはいけない、だから悪いのは当たり前だ、このように申し上げたわけであります。

 特に、この振り込め詐欺は、例えば肉親に対する心配等を利用して、そしてだます。また、お年寄り等がお孫さんや子供のことを心配している、そういう人の情、人情につけ込んでお金を振り込みさせる。こういう手口自体に大変な悪質性を私は感じ、憤りを感じるところであります。

山井委員 私も、今の安倍総理の意見には全く同感であります。

 それでは、具体的に、今、消えた年金記録の被害者としておられる方の話をしながら議論をしていきたいと思います。

 お手元に資料をお配りしております。この方は、六十歳の定年時のときに裁定を申し出たところ、何と七年十一カ月分は記録が見つからなかった、そして、一年半しか厚生年金を支給されなかったということです。それで、何度も社会保険事務所に交渉されたけれども、記録がないということで却下されました。それから十六年たって、七十六歳のときに、テレビでいろいろ社会保険庁の不祥事が報道されて、そして、ふともう一回、年金手帳を見直してみたら、一番最後のページに、ある事務所の判こがあった。それを持っていったら、ほかの事務所にならあるかもしれないということで調べたら、ほかの事務所にこの七年十一カ月分の記録が見つかったわけなんですね。

 それで、問題は、それによって十六年ぶりにやっと見つかった、社会保険事務所が見つけてくれた、それでこの十六年間の年金を下さいと言ったら、先ほどの議論ではありませんが、時効ですから十一年分はあきらめてください、四百九十三万円は不支給です、過去五年間しか払えませんということになって、今、国と裁判をされているわけであります。

 このことに関しては、柳澤大臣からも先日の質疑の中で、本人には落ち度がない、社会保険事務所のミスであるという答弁もいただいて、大変遺憾であるという答弁もいただいております。

 安倍総理、まさに先ほど時効を救済するということをおっしゃいましたが、このように記録がほかの事務所にあったわけですから、本人は払っていたことは明らかになったわけですね。このような方々が、時効によって四百九十三万円、非常に大きな額ですが、もらえない。これについて安倍総理はいかが思われますでしょうか、この実態について。

安倍内閣総理大臣 まさに今、委員が御指摘になられたように、御本人には落ち度がなかったわけであります。落ち度がなかったにもかかわらず、それがわかった段階によって時効だ、これは本人にとってはそんなことは受け入れられない、私もそう思います。だからこそ、これは特別立法を行って、この時効消滅したすべての部分の回復措置を講じていかなければならない。そのために政府・与党で特別立法に取り組んでまいりたいと思います。

山井委員 安倍総理、しかし私は、立法以前の問題として、本人に正しい年金情報が知らされていなかったわけですよ、あるあると言ったにもかかわらず。社会保険事務所のミスによって。

 ということは、これは時効はそもそも適用除外であるということに、そもそもですよ、議員立法以前の問題としてなるはずでありまして、午前中も筒井議員の質問に対して柳澤大臣が、例えば手書き台帳から原簿に書き写すときのミスを社会保険庁が行って、それだけの理由による支給漏れ、明らかな社会保険庁のミスである場合は、現時点においても時効の適用除外であるという答弁をされていますし、また、市町村が記録を社会保険庁にそもそも渡さなかった、あるいは渡さなかったことによって、それによって、本人に何の落ち度もないのに支給漏れになっているのは、現時点においてもこれは時効適用除外だという答弁をされています。

 ですから、安倍総理に申し上げたいのは、議員立法以前の問題として、このように本人に落ち度が全くなくて、社会保険庁のミスであるならば、そもそも時効の適用除外だというふうに安倍総理は思われませんか。安倍総理。

柳澤国務大臣 山井委員から私の午前中の答弁にもお触れになりましたので、私から……(山井委員「短く答弁してください」と呼ぶ)はい。

 法律に基づく行政の一般ルール、それから個別の権利救済との調整の問題でございます。

 これは、個々の事案に即して個別具体的に判断される、こういうことを申し上げました。例えば、先ほどのオンラインへの入力ミスといった事案につきましても、その一局面だけで、私は先ほどあえて仮定の問題としてお話し申し上げましたけれども、当該事案の全体にわたるさまざまな事情を見きわめて総合的に判断される、しかも……(山井委員「限られた時間ですから結構です」と呼ぶ)結構です。

 それで、信義則の話にも私は踏み込ませていただいて御答弁申しましたけれども、これを援用して行政が判断するということは、近時の判例の例としては非常に少ない、やはりこれは裁判所が判断するというようなことが一般的な傾向のようでございます。

 そういうようなことで、もともと判例で認められているケースが非常に限定的であることと相まって、立法措置によらないで、行政運用上の対応だけで現在問題となっているようなケースを広範に救済することは難しい。したがって、新たな立法をした方が、はるかに法的な安定のもとで救済が図られるという判断があるものと考えております。

山井委員 安倍総理、なぜ私がこういう質問をするかというと、これは難しい議論じゃありません。本人には全く落ち度がない。社会保険事務所が一方的に記録をなくしたか、ミスったことによって年金がもらえない。安倍総理、そもそもこれは時効が適用になる方がおかしいですね。

 ですから、安倍総理、運用で今すぐにでも改善できることをわざわざ議員立法にして、何か選挙対策に使うような、そういう非常に不純な動機を私は感じざるを得ないんです。そもそも法律の解釈として時効が成り立つはずがないと思うんですが、安倍総理、改めて答弁をお願いします。本人に全く落ち度がなくて、社会保険庁の完全なミスで支給漏れの場合が、現時点においても時効が成立するのか。

安倍内閣総理大臣 それは選挙対策ということであれば、全く逆じゃないですか。それは法も何も乗り越えて、さっと給付すればいい、こういうことになります。しかし、日本は法治国家ですから、その中で、法にのっとって、我々は責任ある立場ですから、対応をしていかなければなりません。

 これは、年金の保険料を払っている方々すべてにとっても納得のいく形にしていく、法律の根拠を持ってやっていかなければならない。そしてまた、かつ、柳澤大臣が答弁をいたしましたように、一件一件個々に、いろいろな状況がある中において、一件一件例えば裁判所が判断するということになっていけば、かえってこれは膨大な時間がかかっていくわけでありますから、我々もそれは、時効のある方々にその部分は認めないということを言っているのではなくて、むしろ認めるためにどうすることが正しい方法か、このように考えているわけであります。

 そこで、私たちはきっちりと、日本は法治国家ですから、法律によって、すべてのそうした今困難を抱えている方々に対して、この時効の部分についても救済をしていこう、こういうことでございます。

山井委員 安倍総理、答弁がかなり苦しいんですね。そもそも社会保険庁の一方的なミスで、時効になるはずがないじゃないですか。そういう解釈をきっちりとやることで対応できるんですよ。これは、今一言答弁をすれば済む話なんですね。

 これは、実は大きな話ですよ。本人がまじめに払ったのに、社会保険庁がミスしたことで、そして時効になって、もらえない、そのことを安倍総理は今認めておられるわけですから、それはやはり法治国家としておかしいわけですよ。そういうことだから、年金の不信は高まるんです。

 また次の具体的な被害者の方のお話をしたいと思っております。

 実は、本日も傍聴席にお見えになっておりますが、中村正見さんは、国民年金を七年八カ月払ったはずのものが未納というふうに社会保険事務所で言われました。中村美津子さん、奥様は四年四カ月、きょうの資料にもありますように、一括全納されたんですね。三ページにありますように、昭和五十年四月に国民年金に加入した。そのとき既に、正見二十七歳八カ月、美津子二十四歳四カ月、二十歳からの分を全部その当時払うことができたから、正見さんが四万三千三百円、美津子さん三万千五百円、七万四千八百円を払った。にもかかわらず未納扱いになった。当時二歳の息子を連れて、親子三人で区役所の窓口に行って、これは大きな額ですからね、七万四千八百円、間違いなく払った。にもかかわらず、記録がないということで、今、年金支給が受けられないということになっているわけです。

 また、もう一人の隅田美江子さんも、何と十年九カ月も国民年金が未納というふうに役所に言われた。しかし、実はこの方は御主人と年金番号が連番になっておりまして、一緒にずっと払いに行かれていた。御主人はずっと払っている。一緒に払いに行っていた奥さんの年金記録は消えてしまっているということになるわけです。

 そして、最後、匿名の方は、おひとり暮らしの六十六歳の女性。この方も、会社を遅刻して毎月国民年金を役所に払いに行った。にもかかわらず五年六カ月認められない。そして非常に苦しんでおられます。

 安倍総理、この四人が例外なく言われているのは、勘違いじゃないですか、証拠を出してください、三十年前の領収書を持ってきてくださいということを言われているんですね。安倍総理、やはりこれは領収書がないとこういうのは認めないということになっておりますか。やはり領収書がないとだめなんですか、安倍総理。(発言する者あり)

安倍内閣総理大臣 確かに……(発言する者あり)済みません。

櫻田委員長 御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 大切な年金の審議をして、今お答えをしているんです。ふまじめなやじはやめてください。今……(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 私は静かにしていただかなければ答弁できませんよ。よろしいですか。

 今御質問があった中村さんの件、また隅田さんの件、こうした皆さんにとって、それはやはり二十年、三十年前の領収書を持ってこい、こう言われても、それはなかなか、ないという方々もおられるんだろう、このように思います。

 隅田さんは、二十歳から昭和五十二年三月までの国民年金保険料が未納とされているわけでありますが、昭和五十五年四月に当時行われていた国民年金の特例納付により支払ったと申し立てておられる、このように承知をしております。

 また、中村さん御夫妻は、二十歳から昭和五十年三月まで国民年金保険料が未納とされているが、昭和五十年四月に横浜市鶴見区役所で当該期間の国民年金保険料を支払ったと申し立てている、このように承知をいたしております。(山井委員「説明は結構です。領収書は要るかと聞いているんです」と呼ぶ)

櫻田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 この対応についてでありますが、ここはやはり、私が先ほど申し上げましたように、しゃくし定規によって、領収書がなければだめということではなくて、まず十分丁寧に、そして親切にお話を伺い、調査をしていくことが大切であろう、このように思います。

 そして、領収書だけではないですね、そのとき払っていたということを証明できるいろいろな、それは可能性としては十分にあるんだろう、当時の状況はどうだったかということも含めてお話を伺いながら、これは支払っておられたということが間違いないということになれば、お支払いをしていくということも考えていかなければならない、このように考えております。

山井委員 でも、それはやはり物証が必要ということですか。何かそういう証拠がないとだめだということなんですか。

 例えばこちらにも、保険料の納付のものがありますが、「この領収書は、大切に保存して下さい。」と書いてありますけれども、これがなかったら年金を支給しませんとは、当然書いてないわけなんですね。

 安倍総理、大事なところですから、領収書やそれにかわる何か証拠がないと、払ったとは認められないということですか。総理。

安倍内閣総理大臣 先ほど答弁をいたしましたように、領収書等がない場合であっても、御本人の立場に立って、さまざまな資料に基づいて、納付があったと認められる場合には、記録の訂正を行うという姿勢で臨むべきであろう、このように思うわけでございます。

 もちろん、そういう申し立てがあったら自動的にというわけには、これはまさに多くの方々の年金の負担によって成り立っている給付であります、そこはやはり、ある程度私たちは責任ある立場ですから、それはそれなりに責任を持って対応していかなければならない。そこは御理解をいただきたいと思います。

 しかし、そうした、まさにこの方々に落ち度がないにもかかわらず、せっかく今まで負担をしてきたのに給付に欠損があってはならないわけでありますから、そこは、先ほど申し上げましたように、しゃくし定規に考えずに、これはさまざまな資料に基づいて、納付があったと認められる場合は記録の訂正を行うという姿勢で臨んでいかなければならない、私はこう考えています。

山井委員 安倍総理、そういう抽象的な話ではだめなんですよ。

 これは、お一人お一人、額を見てもらえれば、中村正見さんの場合は、これから基本的な平均寿命まで生きていかれる場合、ここが認められなかったら、二百七十七万円も受けられるべき年金が受けられないんですよ。中村美津子さんは二百万円、隅田美江子さんは何と四百九十七万円、そして、おひとり暮らしの六十六歳のAさんは、本当にこの国民年金しか収入がなくて貧しい貧しい生活をされている中で、これが認められるかどうかで二百五十四万円。二年間も役所や社会保険事務所に通っても通っても、領収書がないからといって何回も追い返され、そして、友人の方々に話を聞いてこいと、そういう扱いを今受けて、多くの方が老後の不安で泣いているわけですよ。それが今の実態なんですよ。

 安倍総理、安倍総理は、三十年前の領収書というのは保管されていますか。

安倍内閣総理大臣 急に言われても、私は今お答えのしようがないと思いますが、かつての厚生年金に、サラリーマン時代の記録等はとっておりますが。しかし、今、私、答弁したじゃないですか。今まで社会保険庁の体質に大きな問題があったんですよ。いわば親方日の丸という問題があった。だから、私たちは非公務員型に変えていくんですよ。廃止をして分割していく、解体をして分割していくんですよ。

 そこで、今あなたが質問をされた、領収書を……(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 やじっておられると皆さんよく聞こえませんから、私、答えようがないですね。(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛にお願いします。答弁中でございます。

安倍内閣総理大臣 先ほど私が申し上げましたように、領収書を持ってきなさいという姿勢自体が、やはりこれは今までの社会保険庁の姿勢だったというふうに私は思いますよ。今までのこの年金の記録の問題、私も本当に憤りを持っている。これはみんなそうだと思います。それをどう変えていこうか、みんなで考えているんじゃないですか。

 だから、私が今申し上げましたように、そういうしゃくし定規の対応はだめだ、このようにはっきりと申し上げたわけであります。しかし、自動的にというわけにはいかないから、そこで、この領収書以外のもので何とか証明できる方法について親切に対応するように、もしそれが証明できるのであれば、それは証明できる、このように認識できるのであればお支払いをするという方向で対応していかなければならない、私はこのように申し上げているわけでありますから、当然これは、窓口も今までの対応を変えていくことになる、これははっきりと申し上げておきたいと思います。

山井委員 安倍総理、ここは非常に重要な、お一人お一人の人生がかかっているところですから、明確に言ってもらわないとだめなんですけれども、では、領収書以外のものがなくてもいいんですね。今は、ものがなかったら全部はねられているんですよ、これは。ものがなくても可能性はあるということですね。安倍総理、そこははっきり言ってください。ものがなかったら現場ははねられているんです。領収書以外の何らかの証明の紙を出せと言われているわけですよ、現場は。そこは安倍総理、大事なところですから、紙がなくても救済の可能性はあるということですね。そこをはっきりしてください。

安倍内閣総理大臣 これは、個々によってさまざまなんだろうと思うんですね。ですから、ここで私が今、ではすべて、これはこういう疑問がある、あるいは、私は払いましたよと言ってくれば、すべての皆さんに給付を出す、そういう無責任なことは言えないんですよ。

 ですから、そこはやはり、まじめに個々の案件については当たって、領収書がなければだめだったというのが今までの態度ですよ、それは改めるということを私は申し上げているわけであって、領収書以外においてそのことを証明できる、客観的に証明できるということになっていけば、これは訂正をするという方向で検討をしなければならない、このように考えています。

山井委員 安倍総理、これは本来、社会保険庁のミスなんですよ。お金を取るときは強制徴収で取っておいて、そして、当たり前の権利として年金を下さいと言ったら、証明しろ、証明しろと。三十年前の証明をしろと。これはやはりおかしいんじゃないですか。もちろん、思い違いやうそを言う人はだめですよ。でも、そこは、やはり蓋然性が高いときは認めるというふうに踏み込んでいかないと、三十年前の客観的な証拠と言われても、それは非常に難しいわけであります。

 これは、きょう何度も、国民の年金に対しての不安をあおるなということをおっしゃっています。しかし、今の答弁を聞いていたら、客観的な証拠がなかったら認められないのかというふうに思うじゃないですか。これでは、この多くの消えた年金被害者の方々は、やはり不安はぬぐえないわけなんですね。

 今、民主党で、消えた年金に対する一一〇番をやっております。まさに、確かに払ったと言ったのに門前払いで追い返されて、証拠を出せ、証拠を出せと言われている方々の悩みが毎日来て、本当に私たちも対応に苦慮するぐらい来ております。

 その中で、安倍総理、こういう句を送ってくださった方がおられました。ここで申し上げます。「社保庁が振り込め詐欺とは気がつかず」、自分が振り込んだのに証拠がないと言って払わないのは、結局、これは詐欺じゃないですか。これはやはり、こういうことを変えていかないとだめです。

 この被害者の方々もこうおっしゃっていますよ。もし、若い世代の人たちに年金を払って得か損かと言われたら、自分たちのように払ったのに証拠がないと認めてもらえないんだったら、払うより貯金した方が安心だと言わざるを得ないとまでおっしゃっているんですね。

 安倍総理、やはりこういう姿勢を変えねばならない。ですから、このような立証責任を、なぜ払ってないのか、払ってないという立証を逆に社保庁の方がやっていく、そういうふうなところまで、安倍総理、これは組み込まざるを得ないと思いますよ。要は、払った人に証明させるということは限界があるんです。いかがですか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 ですから、社会保険庁にも、すべての方々を突合するという努力をさせます。

 それと、私は山井さんに聞きたいんですが、じゃ、申し立てがあった人にはすべてお支払いをしろということなんですか、何の証拠も状況がなくても。それと同じことをあなたはおっしゃっているんじゃないですか。(発言する者あり)だから、私は、領収書がなければだめだと言っていたのは、これは改めるということをはっきり申し上げているじゃないですか。領収書がなければだめだという姿勢は改めなければいけない、しかし、申し立てがあればだれにもお支払いするということは、これはだめだというのは山井さんも一緒ですね。それは当然だと思いますよ。

 である中で、どう工夫していけばいいかということを私は申し上げているわけであって、基本的には、領収書がなければ一切お支払いをしません、そういう、いわばしゃくし定規に、親方日の丸に、不親切に対応する姿勢はだめだ、これは私ははっきりと申し上げているわけであって、領収書がなくても何か客観的な、これは証明できるということが、そういうことがわかってくれば、証明できるということになってくれば、これはお支払いをする、こう申し上げているわけであります。(発言する者あり)

 では、私のどこがいけないのか、具体的に言ってくださいよ。

山井委員 安倍総理、今大変なことをおっしゃいましたよ。領収書がなくても、客観的に三十年前に払った証明があれば年金を給付すると。そんなものじゃないじゃないですか。払っているわけですから、それを証明しないとお金を給付しない。民間の保険会社や民間の銀行であり得ますか。保険給付を受けるときに、行ったら、保険料を払ったことをあなた証明してください、客観的にと、それが証明できたら預金はおろせますよ、保険給付しますよ、そんなことあり得ないじゃないですか。だから、こういう被害者の方々は、これは国家的な詐欺だということをおっしゃっているわけですよ。

 だから、安倍総理、客観的に証明できるものがないと、年金は幾ら払っても支給してもらえないんですか。そこは大事なところですから、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 私が先ほどお話をしたように、社保庁に対しましても、すべてしっかりと自分たちで当然、突合するという、すべての方々に対して突合するという努力をさせます。先ほど厚労大臣から答弁したとおりです。

 そして、今おっしゃったように、領収書がなければだめだ、こう言われている方々、しかし、残念ながら、社保庁にとってもこれはなかなかわからないということも起こり得るわけでございます。そこについては、そういう方々が何らかの形で証明するということをしていただければ領収書がなくてもお支払いをする、こう申し上げているわけであって、そして山井さんも、そういう客観的なものがなければ、それをすべて払うのはおかしいというふうにおっしゃったじゃないですか。(山井委員「言っていない、言っていない」と呼ぶ)

 ということは、客観的なそういう証明するものがなくても、申し出があれば自動的にどんどんお支払いをしてもいいんですか。

山井委員 これは今、消えた年金記録で問題になっているのは、本人の落ち度じゃなくて、社会保険庁のミスで五千万件もだれが払ったかわからない納付記録が宙に浮いてしまっているわけですよ。本人の落ち度じゃないんですよ。おまけに、その納付記録自体も完全に消えているケースというのも今明らかになっているわけですよ。

 ですから、もちろん思い違いとかうそを言う人に払うことはだめです、でも、物証がなくても、話にある程度の蓋然性があるならば、払っていないという立証責任は、逆に社保庁の方にあるんじゃないですかということを言っているんです。

 安倍総理、きょうの傍聴席に被害者の方々が多く来られています。実際、年金記録を消しちゃったと言われている人も来ているわけですよ。そういう人たちにとったら、五千万件調査しても見つからないんですよ。そうしたらどうするんですか。小さなけたじゃないんですよ、これは。四百九十七万円、夫婦で五百万円、証明できなかったら払えませんという、これはそういう次元の話じゃないと思うんですよ。

 安倍総理、安倍総理、ちゃんと聞いてくださいよ。安倍総理、だめです、だめです、安倍総理と議論している。

 安倍総理、大事なところで逃げないでくださいよ。安倍総理、客観的に証明できるものがないと払えないという答弁では、この消えた年金記録の被害者は救済できない方が多いんですよ。立証責任は本人にあるんだったらおかしいじゃないですか。払うときは強制徴収しておいて、最後、記録がわからなくなったら、払ったことを本人が証明しろと。

 それで、もう一つ、安倍総理、言わせてください。安倍総理。ちょっと聞いてくださいよ、柳澤さん。

 ここに書いてありますように、例えば、この中村さん御夫妻も去年の九月にもう申し立てを出しているんですよ、七カ月も前に。払ったはずだ、ちゃんと確認してくれと。それから七カ月たってもナシのつぶてですよ。隅田さんも七カ月たってもほったらかし。

 つまり、五千万件の調査も進んでいないわけですよ。五千万件あって、この八カ月で統合できたのがたったの百四十三万件。これはゆっくりやっていたら、皆さん体調が悪くなったり、運が悪かったら、もう十年もかかったら、本当に、お亡くなりになる方もいるかもしれないんです。

 だからこそ、安倍総理、ここでぜひ答弁をしてください。客観的に証明できるものがなくても、話の内容によって蓋然性があったら、逆に、払っていないという立証責任は社保庁の方にある、そういうふうに変えていかないと、この問題は永遠に解決できませんよ。安倍総理、お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 今、山井さんはいろいろな議論をごっちゃにされているだろう、このように思いますが、最初に大臣からお話を申し上げましたように、もしかしたら、これは支払いを、今まで年金で加入をしていたかもしれないけれども落ちたかもしれない、そう思っておられる方もおられるかもしれないし、また、それがわからない方々もおられるということなんだろうと思います。

 ですから、すべて名前を突合して、そして突合して名前等々が合った方々についてはお知らせをして、もしかしたらあなたの場合は払っているけれども落ちているかもしれません、このように通知をするわけであります。そして、通知をした方々については、年金の履歴も通知をいたしますから、この年金の履歴を見て、それ以外について、自分は、ああ、このときは仕事していたなということを思い出していただければ、それを社保庁に言っていただければ、これはお支払いをするということになるわけでございます。

 そこで問題は、記録そのものがなかなか見当たらないということになってきたところが問題であって、これは全部についてお話をされると、いろいろな方々に私は不安をあおってしまうことになるんだろうと思いますが、大方の方々はこのように、我々は新たな取り組みとして、すべての年金の受給者の方々についても、しっかりと突合をしながら、そして名前が合えば通知をして、履歴を送って、これは我々も当然、社会保険庁としても御相談に乗っていくということになるわけでございます。

 そこで、今、記録がなかなか見つからない、この二つのケースでありますから、個別のケースを私にいきなりぶつけられても、どうなっているかということは答えられないから、今大臣に答えてくれ、こう申し上げたわけでありまして、私は決して逃げているということではないですよ。個別の例について総理大臣の私に聞かれても、個々のケースについて詳細についてわかっていないわけでありますから、今いきなり聞かれているわけですから。今いきなり聞かれているんですから、今いきなり個々の名前がわかるわけないじゃないですか。当たり前でしょう。(山井委員「委員長、もういい」と呼ぶ)いや、そこで、先ほど……(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛にお願いします。総理が答弁をしております。

安倍内閣総理大臣 先ほども申し上げているように、今、社会保険庁にそういう記録がない場合については、今までは、これは領収書を持ってこなければだめですよ、こうしゃくし定規に答えていた、そこはやはり親方日の丸の組合的な問題があった。私はかなりこれは問題があったということは申し上げているわけであって、しかし、そこで、全く証明がなくてもお支払いをするということは、これはやはりなかなかできないわけでございます。

 ここはやはり、何らかの客観的な状況について、ある程度お話をしていただくなり証明をしていただく、これは領収書以外でも結構ですから。そういうことに対しては、もしそこでこれはそうだということが証明できれば、これは訂正をしていくという方向で検討していくのが、私は当然ではないか、こう考えているわけでございます。

山井委員 総理、やはりそれは逃げていられますよ。私が聞いているのは一言なんです。一般論です。記録、客観的に証明できるものがないときに、立証責任は、本人に行ってしまうのか社保庁にあるのか、それ一点しか聞いていないんです。それはどっちなんですか。安倍総理、安倍総理です。もう時間がないから、安倍総理。(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛に。

柳澤国務大臣 そのことは、ここでも、山井議員との間でも、さんざん議論をしたことであります。法律は、これは申請主義なんです。申請主義になっているんです。ですから、申し出を受けて裁定をするというのが基本的なありようなんです。しかし、そういうことで事実上硬直的にやっていると、事態を解決することはできませんので、私どもは、私どもが持っている情報をすべて、経歴をお知らせして、それで御検討をお願いするという仕組みにしているということでありますから、ぜひそこのところは御理解をいただきたい。これは、何回もここで議論したことであります。

山井委員 これは注意してください。安倍総理を助けたいのか知らないけれども、出てきて、関係ない、私が聞いていないことを答弁しないでくださいよ。

 安倍総理、安倍総理。安倍総理、客観的に記録がない、でも確かに本人の方々は払ったということでいろいろな話を総合しても、そういうふうに蓋然性に信憑性がある、そういうときに、立証責任は……

櫻田委員長 山井和則君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

山井委員 立証責任は本人ですか、社会保険庁ですか。安倍総理、どっちですか。

安倍内閣総理大臣 ですから、先ほど来申し上げているじゃないですか。ですから、領収書がなければ、これはお支払いしませんよということはもうやらない。これははっきりしているわけであります。そして、その上で、しかしながら、この期間については私は払っていますよということは、申し出があったら直ちに、自動的にお支払いをする、そういうことはできないわけであります。そこはやはり、社会保険料によって成り立っているわけであります。

 そこで、社会保険庁も、そういう申し出をされた方と一緒に、これはまさにお話を伺いながら、丁寧に丁寧に調査をしながら、国民の立場に立って丁寧に調査をしながら、そして、そこで払っていたということが領収書がなくても証明ができる、こういう認識を持てばお支払いをする、こういうふうに申し上げているわけでございます。

櫻田委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、山井和則君におかれましては質疑を終了してください。

山井委員 私がやろうと思ったら柳澤大臣が三分ぐらい関係ない答弁をしたじゃないですか。

 最後に一言申し上げます。最後に一言申し上げますが……

櫻田委員長 持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 柳澤大臣が、関係ない答弁が入ってきたんじゃないですか。だから足りなくなったんじゃないですか。だから一言、もう質問じゃないですけれども、申し上げます。

櫻田委員長 山井和則君に申し上げます。

 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 柳澤大臣に注意してくださいよ。質問していないことを答弁して。

 安倍総理、結局は逃げられましたね。安倍総理の、客観的な証明を本人がしないと年金を給付しないという、そういう姿勢がこの消えた年金の被害者や年金の関係者を一番不安に陥れているんだと私は思います。こういう状況で議論も深めず、強行採決なんかをすることが一番の年金不信を拡大させるということを申し上げて、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、内山晃君。

内山委員 民主党の内山晃でございます。

 安倍総理に質問いたしますのは初めてでございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それでは早速、山井議員が今お求めになっておりました件も、私も実は聞こうと思っておりました件でございましたので、先に飛ばしましてお尋ねをしたいと思います。

 多くの方がやはり、私どもにメールをよこしていただいておりまして、前回、前々回の質疑でも、領収書がない、この領収書がやはり、保管期限がうたわれている。茅ヶ崎にしても所沢市にしても、五年間であると明確に明記をされている書類が配られています。こういう扱いは、恐らく全国にたくさんあろうかと思います。この全国の市町村の調査をぜひ行うようにと、前回の委員会でも申し上げましたけれども、与党の皆さんの拒否によりまして行われておりません。

 こういう前提のもとで安倍総理にお尋ねを申し上げますけれども、被害者できょう来ています隅田さん、中村さん御夫婦の場合、そもそもの納めた領収書はありません。しかし、どう考えても客観的に、御主人と奥さんが連番なんですよ、番号が。国民年金の被保険者番号が繰り出されているのが連番でありまして、具体的に納めに行っている。しかし、奥様の方が、マイクロフィルムそのものがない。これはやはり、特にマイクロフィルムがないというのは、さかのぼって国民年金保険料を納めることができた特例納付、この特例納付はすごく事故が起きているところでございます。

 安倍総理、今私の手元の、幾つかのサンプル、メールを読ませていただきたいんですけれども、六十二歳、渋谷区在住の方。引っ越しを繰り返す中で領収書をなくしてしまいました。社会保険事務所に行ったら、領収書がなければだめだと言われました。十八年十二月生まれの六十三歳の女性。四十年前の領収書、通帳を持ってくるように、こういうふうな形で言われました。相手にしてもらえませんでした。私は京都に住む者です。二十歳のときから父親が、自分の結婚するまで国民年金を払っていてもらいました。しかし、社会保険庁に行きましたら、その記録がないということでした。父親はきちっと払っていました。

 少ない記録の持ち主でも、やはり数カ月国民年金と厚生年金に入っていたにもかかわらず、記録がありませんでした。こういったところは全部、年金手帳、領収書を持ってこないと対応してくれないということなんですよ。ここはやはり、山井議員のところでありました立証責任というのがどこにあるのかですよ。

 茅ヶ崎の件、所沢の件、その時点では、領収書の保管が五年でいいですよということでうたっているわけですよ。それが、政府参考人は、勝手に市町村が独自にやっていることだなんという答弁をしておりましたけれども、国も地方もこれは、年金行政というのは一心同体で、当然国が管理しているわけでありますから、市町村が独自にやるわけがありません。

 総理、どうでしょうか。国民が納めたという保険料の疑義がある場合には、社会保険庁、国は、国民が本当に保険料は払わなかったと立証すべきではなかろうかと思うんです。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今委員がおっしゃっているのは、国側に記録がないケースであろう、このように思うわけであります。

 なかなか本人とはっきりしないけれども、記録がたくさんある中において突合して、この人かもしれないという方々に対しては通知をして、その旨を通知するわけであります。納付記録をともに通知するということによって、そうした今までの記録が浮いているものについて突合し、本人にお支払いするべきものはお支払いをしていきたい、このように申し上げているわけであります。これは、新しい措置として我々は行ってまいります。

 そこで、今問題にされているのは、いわば記録自体が社会保険庁側にもないという、ないかもしれないという状況のものについてであろう、こう思うわけであります。確かに、今、茅ヶ崎の例を挙げられました。これは五年間保存というような通知がなされたということをおっしゃっておられるんだろう、このように思います。

 ですから、そこは最初に申し上げましたように、しゃくし定規に考えるのではなくて、ケースをよく見ながら検討もしていかなければならない、こう思うわけでありますが、これは何といっても、皆様の年金の保険料をお預かりして、皆様の年金保険料の中から給付、お支払いをしなければいけないという立場であります。これはだれのものでもなくて、まさに年金に加入しておられる皆様の保険料からお支払いをするという観点からいって、ですからそこは、やはり払っていたということが、何か具体的な状況が記載された資料があるなど、納付があったということが確実と考えられるという場合においては、これは領収書がなくても納付を行うという姿勢で臨んでいかなければいけない、このように申し上げているわけでございます。

内山委員 実は御本人は、領収書にかわる、また、それを明らかに納めているというその他の書類がないんですよ。だから困っているんですよ。家計簿についていたとか、そういう何かの記録でも特別相談のところではいいとかという話も聞きますけれども、ないんですよ。だけれども、御本人は、明らかに間違いじゃない、御夫婦で出向いて払っている。その方だけがマイクロフィルムがない。

 これは前回も言いました、国民年金徴収員が着服したケースが数多くありましたね、柳澤大臣、私は前回で指摘をさせていただきました。蒲田社会保険事務所、一千二百万ですよ。練馬、三百四十万。大阪が二十八万。安倍総理、職員が国民年金の保険料を徴収して猫ばばしてしまったんですよ。これはたまたまそういう記録で出ていますけれども、では、全国、ほかにそういう事実はなかったと言い切れますか。(発言する者あり)何をおっしゃっているんですか。その管理責任をしているのは政府・自民党じゃないですか。委員長、不規則発言ですから、次、注意してください。

 こういうミスがどこにあるかわからないんですよ。いいですか、役所の担当者ですら保険料を着服している。

 さらには、前回の配付資料でもありました佐賀社会保険事務所の事務処理ミス。総理がおられませんでしたので、この件を一度総理に御説明したいと思います、お疲れだろうと思いますけれども、淡々と説明をしますから、冷静に聞いていただきたいと思います。我が党はいろいろな種類の議員がいますもので。

 まず、この佐賀の件というのは、紙台帳からコンピューターにデータを切りかえる際に、マイクロフィルムから正しくコンピューターに入力をしなかった職員のミスです。そして、原因の二つ目としては、六十三歳のときにこの方は年金相談センターに相談に訪れました、私の年金の加入記録。そうしましたら、このときにおいて、相談センターの担当者はコンピューター画面から見まして、あなたの加入記録は未納です、これだけしかお答えをしなかった。本人はおかしいなと疑義を感じていても、そのまま引き下がらざるを得なかった。

 そして、昨年、新聞報道等によりまして、もしかして私も年金の加入記録がやはり不正ではなかろうか、こういうことに気がつきまして、相談に行きました。そこでやっと、マイクロフィルムを見たら、そのマイクロフィルムに納付した記録のデータが映っていた。

 ここでは、多くの職員のミスがあるわけでありまして、まず一番最初、紙からコンピューターのデータに入れかえるときに転記のミスをしています。さらには、その段階でダブルチェック、トリプルチェックもされている、こう答弁されておりますけれども、そのチェックも漏れているじゃないですか。そして、二度三度足を運ばなければ、マイクロフィルムまで尋ねていって調べることをしなかった、この不親切さですよ。やはりこういう職員のたび重なるミスが、こういう問題に起きているわけです。保険料を猫ばばした、入力を間違えた、ダブルチェックを間違えた人もいる、相談に行って、画面だけのデータしか、疑義を感ぜず説明をした。

 こういう人たちに本当に立証責任があるんですか。何もない、私は納めている。どうするんですか。確かに、真贋を峻別しなければならないですよ、本当に納めたのか、記憶の間違いなのか。しかし、こういう事例だってあるということをぜひ認識していただきたい。どうでしょうか。答弁をいただきたい。

安倍内閣総理大臣 ただいまの佐賀の例でございますが、この件については、マイクロフィルムに特例納付された御本人の記録があったということで、判明したわけでございます。即日補正入力を行いデータを正すとともに、所長が御本人の御自宅を訪問して、事務処理の誤りについて謝罪をした、このように私も承知をいたしております。

 このように、マイクロフィルム等の記録があるという場合、オンラインシステム上の記録が間違っているかもしれないということについては、御指摘のような事例があったということを踏まえまして、今回、新たにマイクロフィルム等の記録とオンラインシステム上の記録の突合調査を行わせることといたしたところでございます。

内山委員 ただ、それだけでは今の年金加入記録に疑義を感じている方は救済できません。そもそも、マイクロフィルムがないんですから、きょうお見えになっている方は。これはどうやって立証するんでしょうか。五千万件の基礎年金未統合の中に含まれていない人たちもいるんですよ。こういう人たちをどうやって救済しますか。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 マイクロフィルムがないというのは、いわば国民年金の方々の中でそういう方々がおられるということだと思います。幾つかの市町村においては、台帳をとっておられるところもある、このように伺っておりますから、そういうところにおいては、そういう台帳と当然突合するということをしていかなければならない、このように指示をいたしている次第であります。

 そこで、先ほどの山井議員との議論の中にありましたように、なかなか現在の段階で、全くこちらの資料の中に見当たらないというケースをどうしようかということでございますが、やはり基本的には、この年金の給付は、いわば皆様からお預かりをしている保険料の中から給付をしていくわけでございまして、そういう大きな責任があるわけでございます。

 その中において、しかし、やはり今までに大きないろいろな問題が社会保険庁にあったのは事実であります。だからこそ、与党において、また政府・与党において今回思い切った改正案を出しているわけでございますが、今回のこうした問題については、今までのような、領収書だけではなくて、それ以外においても証明できるものがあれば、それであれば、当然訂正してお支払いをしていくということにしなければならない、こう考えているところでございます。

内山委員 この五千万件の件ばかりで、本法案の質疑になかなか入れませんでした。いろいろ聞きたいことがたくさんありました。ちょっとずつ聞いていましても、とてもとてもまだまだ時間が必要だなと思っておりまして、今、この五千万件に絡んで、安倍総理の発言から少し疑問を感じましたので確認をしますけれども、新しく日本年金機構になりましたら、この五千万件の件というのはだれが責任を持つんですか。

柳澤国務大臣 この五千万件の未統合のオンラインというか電磁ファイルも、現在の基礎年金のいわば正規のオンライン上、あるいは電磁ファイルと言ってもいいんですが、その電磁ファイルと同じ電磁ファイルに入っておりまして、したがって、五千万件だけがどこかほかの管理者になるということはないわけでございます。基礎年金番号と一緒に、当然新しい機構の管理のもとに置かれる、こういうことでございます。

内山委員 これは柳澤厚労大臣の管理下のもとに起きた事案ですよ。これはしっかりと、国会が責任を持って国民のこの記録を守らなきゃならないじゃないですか。新しい組織にこの仕事を任すなんという、これはとんでもない話だと思いますよ。皆さん、どう思いますか。

柳澤国務大臣 私も、今委員が指摘をされたこと、同じ気持ちなんです。つまり、新しい機構がこういう負の遺産をそのまま引き継いだ形でスタートさせたくない、こういうように私は思っております。しかしながら、この五千万件を、二十二年一月、私どもが機構の発足の日と定めて予定をしてあるところまでにこれが解消できるかということになると、なかなか厳しい見通しを持たざるを得ない。

 そういうことで、管理は、今申したように、通常の基礎年金の電磁ファイルと同じように管理をされますけれども、私は、この解消に向けての責任というのは、我々の今の体制、つまり厚労省が背負っていかなければならない問題だ、このように考えております。

内山委員 大臣、では、今の話をもう少し掘り下げて確認したいと思います。

 大臣の管理下で起きた問題でありまして、新しい組織に行こうが行くまいが、この件は、国会で我々がきちっと明確に結論を出すまで大臣の管理下に置いてくださいよ。厚生労働大臣の管理下に置いていくべきだと私は強く申し上げたいが、安倍総理、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 同じ電磁ファイルの中にあるわけでございますので、管理と申しますか、そういうことは共通に行われないと、これはもう非効率だし、また現実に混乱も生じかねないということですが、この問題に対する責任ということについては、まさにいわば厚労省、社会保険庁時代に生じたものでありますので、私どもがどこまでも責任を負っていかなければならないもの、このように考えております。

内山委員 それでは、明確に、柳澤厚生労働大臣が、この五千万件、この記録をきちっと管理していくということを明言してください。

柳澤国務大臣 したがって、もう第一歩から我々は始めるわけでありまして、先ほど私が宮澤委員の御質問に答えましたように、まず給付不足が起こっている方々と突合しなきゃ申しわけない、こういうことで、それをまず突合して、そして実際の年金の受給権者の方に、改めて、今のこの年金給付の基礎になっている年金の加入履歴と一緒に、履歴を送付するのに合わせて、あなたのこの年金には統合されていない可能性のあるものがありますので、ぜひこれを確認してください、そうした形で御注意を喚起させていただいて、早くお申し出をいただくように奨励をいたしたい、勧奨いたしたい、このように申し上げたところでございます。

内山委員 答えになっていません。

 私が申し上げているのは、この件が解決しなければ社保庁改革なんかあり得ませんね。国は国民の年金制度を守る責務があるじゃないですか。こういう五千万件のような大きな問題を抱えていて、社保庁改革などという、器を変えてどうなるんですか。さらに国民に対する不安をあおる。安倍総理、あなたは今、いたずらに国民に年金不信をあおるなどと発言されておりますけれども、その趣旨をちょっと御説明ください。どういう理由でお話をされているのか。

安倍内閣総理大臣 先ほど委員がおっしゃった、今のこの社保庁のままでいい、そのようにお考えであれば、我々はそのままにしておくわけでありますが、いろいろな問題があった、このままではならない、いわば親方日の丸のこの考え方を変えさせなければいけないということで、まさに廃止・解体六分割をするこの法案を出しているわけであります。

 当然、新しい日本年金機構ができても、機構の業務や予算については国が直接管理監督をするわけでありますし、厚生労働大臣が管理運営責任を負うため、引き続き国会の監視を受けることは変わりがない、国会の関与が弱まることはないということは申し上げておきたい、こう思うわけであります。また、機構の役員についても、他の独立行政法人等の役員と同じように、国会の手続に沿って、参考人として国会で必要な答弁を行うことになるということも申し上げておきたいと思います。

 そこで、いたずらに不安をあおってはいけないというのは、例えばこれは、将来年金が全くもらえなくなるかもしれないというようなことを軽々に発言して不安をあおってはいけない、このようにも思うわけでありますし、また、先ほどあったように、まるで詐欺を意図的に行っているかのごとく発言するのも、これも間違いであろう、このように思います。詐欺とは何かといえば、最初からお金をだまし取ろう、こう思って、まさに人をだましてお金を取ることでありまして、年金そのものをそうやって誹謗するということは、これは明らかに間違いではないか、まじめな議論とは言えないと私は思いますよ。

内山委員 安倍総理、私が先ほど申し上げました国民年金の徴収をされた方が着服をしている件、こういうのは詐欺じゃないですか。それはいたずらに国民の不安をあおらないですか。私の年金保険料を本当に届けているだろうか、そういうふうに思う国民はたくさんいると思いますよ。そうじゃないですか。いたずらに不安をあおるんじゃなくて、これは国民に、あなたの年金もしっかりとしなければなりませんよという注意を喚起しているんですよ。しっかりみんなが、自分の年金に、どのような加入期間があるのか、これをしっかり注意喚起すれば、柳澤大臣がおっしゃっているように、国民お一人お一人からそういう問い合わせが来るかもしれないじゃないですか。決して国民の不安をあおるというような行為にはなっていません。それは総理大臣の言葉がやはり間違っていますよ。

 同じようにもう一度聞きますけれども、これは調べるということで、前回からもお話をしております。では、この五千万件の中の生年月日が壊れた人たちはどのように対応するんですか。

柳澤国務大臣 私は、五千万件について、まず三千万人と突合をさせていただく、そのときには、年齢が、生年月日が、例えば年が欠けているという場合には、年もわからないわけですけれども、しかし、もうそれを全部突合の対象にして、今の年金受給者と突合してみますということを考えております。

 それからまた、被保険者について、五十八歳通知をするときにもその突合をさせていただいた上で、いろいろな情報を与えながら、確認の勧奨をしていくわけでございますけれども、そのときにも生年月日の欠けている方々は突合の対象にして、常にそれは、その年齢の方が対象としてあり得るという想定のもとで、丁寧に突合の対象にして、確実にその確認をしていきたい、こういうように考えておるわけでございます。

内山委員 新聞の報道はすべてが正しいとは私も思っておりませんけれども、社会保険庁の幹部の方が、この五千万件のデータはほぼ年金受給に結びつかないなどと発言をされている方がいらっしゃるわけでありまして、安倍総理、どう思いますか。こういうことが新聞に書かれているんです。答弁を求めます。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 今の発言は私は直接聞いたわけではございませんので、何とも言いようがないわけでありますが、私どもといたしましては、この五千万件について、最初に柳澤大臣が自民党の宮澤洋一議員に対してお答えをいたしましたように、誠心誠意国民の不安を解消するために我々が努力をしなければならない、このように思っております。

内山委員 いや、安倍さん、内閣総理大臣として、厳しく社会保険庁の幹部に注意をすべきなんですよ。それこそ不安をあおる行為ですよ。その記事を見て、ああ、みんななくなっている記事なのか。またテレビに出て、いずれ六十歳になるとき年金受給に結びつくから大丈夫ですなどと言うんだったら、根拠をここにきちっと示すべきですよ。何人の方がなくなっていて、何人の方が受給に結びつくのか、それすらわからないで、そんな無責任なことを言っている政府はとても私は信じられないですね。

 どうですか。もう一度答えてください。

安倍内閣総理大臣 今私が申し上げたのは、その社会保険庁の幹部、だれかわかりませんし、発言そのものは私は知りません。だから、私は、それは論評のしようがない、このように思ったわけでありまして、実際にそのようなことを社会保険庁の役人が言ったかどうかというのは、私は今は確認のしようがないわけでありますが、しかし、我々は、冒頭に申し上げましたように、年金を受給されておられる方、そしてまた年金をこれから受給される方々に対しては、しっかり注意を喚起するように呼びかけるわけでございます。

 そしてまた、さらには、氏名の突合を行いながら、もしかしたらこの方には、過去に記録が、さらに年金の受給がふえるかもしれないということになれば、その旨を通知して、それは今までにやっていなかったことでありますから、さらにそれは通知を行っていく。そしてまた、これから年金を受け取られる方については、五十八歳になった段階で、これは年金の履歴を通知すると同時に、また、三十五歳、四十五歳でも行っていくわけであります。また、平成二十年にはすべての方々に通知を行っていくということになるわけでございます。

内山委員 安倍総理が提案をなさったねんきん定期便という話は先ほど聞きましたけれども、ねんきん定期便は、年金受給者のところには行かないんですよ。年金受給者の人たちは、五千万件で、自分の受給資格に結びつく人たちはどのくらいいるかわかりません。そういう人たちに対してどうやってフォローするんでしょうか、その支払い期月のたびに。

安倍内閣総理大臣 ですから、私が申し上げましたように、年金をこれから受け取られる方々にはということで、ねんきん定期便のお話について申し上げたわけでございます。そして、その前に申し上げましたように、年金受給者の方々にも年金の振込通知とともに注意を喚起するということを行います。そして、それプラス、年金の受給者の方々に、先ほど申し上げましたように、名前を突合しながら、もしかしたらこれは、年金について、かつて納付していた期間があるかもしれないということについて、その方々にはその方々だけに通知をする、こういうことをさらに行うということを申し上げたわけでございます。

内山委員 先ほど、ちょうど福島委員の質問に対しまして安倍総理がお話をしたことについて確認をしたいと思うんですが、十六年度の年金改正は、給付と負担のバランスをとったと発言をされておられます。財政再計算の話がございましたので、この件についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、毎勤統計の調査、平成十九年の二月の速報では、前年同月比で見て、現金給与総額は、昨年より〇・七%減になっています。毎勤統計の十八年度分の結果速報では、十八年度の一人平均月間現金給与総額は、前年度比〇・一%増の三十三万四千三百七十四円になっています。厚生労働省は、二〇〇〇年の年金改革で、二〇〇四年に集まる年金保険料を二十六兆七千億円と見込んだが、実際には二十兆二千億円しか集まらなかった。六兆円が下回りました。この理由は何でしょうか。答弁をしてください。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 その主たる要因といたしましては、標準報酬の伸びが、見込みのようには伸びなかったということが主因であります。

内山委員 これは質問通告をしておりますので。

 もう一つ、被保険者数の想定が下回ったということになっているはずです。

 それでは、続けて質問したいと思います。

 これでは予定より六兆円少ないんですよ。年金積立金の百七十一兆円が予定より早く底をついてしまって、安倍さんのおっしゃる百年もちますということにはならないだろう、こう思っております。

 そうすると、再度、保険料の引き上げをするのか、年金給付の引き下げをするのか、または所得代替率を低下させるのか、こういう方法しかないと思いますが、安倍総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これまでの積立金の運用利回りでありますが、これは平成十六年の財政再計算の見込みを四ポイント上回っています。これはまさに経済が好調になっているということを反映しているんだろう、このように思います。

 そして、それと同時に、厚生年金の被保険者数も見込みを百六十万人程度上回っています。これは、経済が好調になってまいりまして、いわば、非正規の雇用の方から正規雇用の方々に移る方々がふえてきたということを反映している結果、百六十万人、これはかなり大きな数字といってもいいんだろう、私はこのように思います。

 こうした結果を受けて、年金財政はこの三年間で見込みよりも十二兆円程度好転をしているということは申し上げておかなければならない、こう思う次第でございます。

 平成十六年の改正で構築された枠組みのもとで、我々、財政検証をしっかりと今後も行ってまいる考えでございます。

内山委員 それでは、賃金上昇率につきましてお尋ねをしたいと思います。

 平成十六年年金改正法の制度設計に使用されております賃金上昇率、物価上昇率、運用利回り、合計特殊出生率等があります。この中の賃金上昇率について確認をいたします。

 「人口の変化等を踏まえた年金財政への影響」平成十九年二月六日、厚生労働省年金局の資料では、ことし、二〇〇七年の賃金上昇率は二・五%と設定をしています。二・五%ですよ。しかし、ことしの春闘ではどうでしょうか。賃上げが五百円、よくて千円ですよ。賃上げが五百円、よくて千円。平均的サラリーマンの給与、年金でよく使います三十七万円の方に該当しますと、この方、千円の賃上げが行われたとすれば、賃金上昇率は〇・二七%です。いいですか。厚生労働省年金局設定の賃金上昇率二・五%に対し、ことしの賃金上昇率を仮に〇・二七%として計算をしますとマイナス二・二三%。賃金が上がらないので保険料収入が上がらないということになります。

 しかし、厚生労働省は賃金の上昇率を、皆さん聞いてください、平成二十年には三%、二十一年には三・五%、二十二年には三・八%、二十三年には四・一%まで今の賃金が上昇するという設定の見込みを立てているんですよ。これは一つ、政府の上げ潮政策を反映した努力目標で、現実的にはとても不可能な数値と言えると思います。選挙対策、所得代替率五〇%を維持することができないことを認めたくないため政治的な意図を反映していると批判されています。大臣、答弁をお願いします。

柳澤国務大臣 私も今内山委員が指摘をされたような論旨の論文を読んだことがございますが、しかし、私ども、今回の評価に暫定的な試算ということで発表させていただいているわけですが、これは、人口推計が出ましたので、国民の皆さんから、その人口推計でもって年金の見通しを見直してほしい、どうしてもこういう期待が出るわけで、その期待にこたえようということであえて暫定的な試算を行った。しかし、法律に基づいて行われる本格的な試算というのは専門のエコノミストの先生方にお願いして計算をするわけですが、それは平成二十一年度に行う、こういう予定のものでございます。

 したがいまして、今度の暫定試算というのは、明らかになった将来の人口推計と同時に、近時政府の中で発表されている数字を経済前提に使わせていただく。これは我々が独自の数値を挙げるわけにはまいりませんので、そういうことで、この近時発表されている政府の数字を使わせていただいた、そういう暫定試算である。そういうことはしっかりと我々は前提として皆さんにお知らせしながら、そうした限定的な性格のものですよということを申し上げているわけでございまして、我々が独自にまたそうした経済の指標をつくって、そして本当の見通しをするというのは、二十一年度に向けて我々がなさなければならない課題である、このように認識をいたしております。

内山委員 このような状況が長期的に継続をしますと、保険料収入が大幅に減額になります。さらに、団塊世代の大量定年が発生をしますから、平均賃金をさらに下げる、保険料収入がさらに悪化をする。実は、合計特殊出生率が低いというよりも、賃金上昇率の方がこの百年の年金に大きく影響があるということなんですよ。この事の重大さ、どうでしょうか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 私どもが申し上げているのは、二〇二六年の所得代替率が何%かということで、先ほど申し上げましたように、我々は五一%ということを申し上げたわけであります。足元の経済の状況というのはその時々でいろいろな状況がありますが、年金はまさに長期的な見通しのもとで我々は申し上げているわけでございます。

 先ほど申し上げましたように、今の年金の運用も大変好調になっている。かつては一時調子が悪いときもありました。七、八年前の議論においては、今の状況でいえばあっという間に年金の財政は枯渇をしてしまうではないか、こう言われたときもありました。しかし、年金は長期的に見なければいけません。例えば株式市場の状況も大きく影響するわけでありますが、現在の段階では、例えば三年間で十二兆円好転するということは三年前にはとても考えられなかったわけでありますが、三年間で十二兆円も今年金の財政が好転をしているということは事実でありますから、そのことは申し上げておきたい、このように思います。

内山委員 今年金の財政が好転をしているということをおっしゃられましたけれども、実は十七年度の収支決算報告がここにあるわけでありまして、九千六百七十二億が黒になっているわけでありますけれども、黒字にするために厚生年金基金の徴収金を取り崩しているんですよ、三兆四千億円も。積立金六兆二千億円も取り崩した帳じり合わせをしているということはぜひ指摘しておきたい、こう思います。

 時間がありませんから、この続きはまたやりたいと思います。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、消えた年金記録の被害者の方も来られておられますので、ぜひ端的な御答弁をいただきたいとお願い申し上げます。

 そもそもこの社会保険庁の問題は、我々民主党が年金流用問題、これを調べ上げて発覚いたしました。六兆円もの皆様方が払った厚生年金、国民年金の保険料、六兆円もが年金の支給以外に使われた、こういう事実を我々は明らかにいたしました。そして、厚生年金、国民年金保険料あるいは政管健保の保険料、これで社保庁の役人が一億円以上も飲み食いをしていた、こういうことも我々の調査で明らかになり、監修料六億円を社保庁は懐に入れていた。しかし、全額返還すると約束しながら、いまだに一億円ちょっとしか返還されていない、まだまだ済んでおりません。

 こういう追及をしていましたところ、私ども民主党のところに、二、三年ぐらい前から、消えた年金という言葉のメールあるいはお手紙、自分の年金記録が消えた、年金が消えたというのが何通か来るようになりました。私も初めはどういうことなのか詳細はわかりませんでしたが、調べるうちにこの問題の重大性を認識いたしまして、ちょうど一年ぐらい前から党として本格的調査に入ったわけでございます。

 そのときは、毎週毎週、議員会館に社会保険庁の方に来ていただいていろいろお話を聞きましたが、一切数字は出さない、資料は出さないということで逃げられないように追い詰めて、被害者の方とも連携しながらデータをやっと聞き出して、若干ずつデータが出てきて、五千万件というデータもそのときに出てきて、我々はびっくりしたわけであります。しかし、政府は微動だに、全く動こうとはしませんでした。マスコミはさすがに反応をし始めて、いろいろぽつぽつ報道が出た。そして、大きな問題になると、政府は慌てて非常に小手先の策を出してくる、いつものパターンでございます。

 今週の水曜日に、ある程度事の重大性をやっと政府は認識したんじゃないのか。しかし、認識しただけではいけないわけでございまして、具体的な対策を打ち出す、これが重要でございます。我々は前から具体的策を提言しておりますけれども、一つ一つただしていきたいというふうに考えております。

 まず、柳澤大臣が先ほど述べられました対策でございますが、紙台帳とコンピューターデータとの突合というのはいつまでにやるんですか。

柳澤国務大臣 私は、先ほど、紙台帳とオンライン上の突合、紙台帳と申しましたけれども、紙台帳だけではなくて、マイクロフィルムに撮られたもの、さらには市町村で手書きの名簿でとられているもの、そういったものを突合するということを申し上げたのでございますが、これにつきましては、前からこれは長妻委員に御答弁しておりますように、物すごく手間がかかるわけです。私は、現実に社保庁に行って見ましたけれども、実際、一つの案件を調べるだけでも相当の手数がかかる。そういうことから、私どもとしては、今ここで皆さんに申し上げるわけには、そういうことはできないということでございます。

 ただし、そう言っておくと、いつまでもいつまでもだらだらやられるということも私どもは本意ではありませんので、したがいまして、私は、その進捗状況を定期的に必ず公表しますということを先ほども申し上げた次第でございます。

長妻委員 膨大だというのは、大臣、わかりますよ。基本的に、厚生年金では、手書きの納付記録、原票と言われるもの、名簿と言われるものをマイクロフィルムですべて保管されているということを聞いております。さらに、国民年金では、特殊台帳のマイクロフィルムも社保庁にある。しかし、ほとんどの台帳は社保庁は捨てちゃっている、こういう通知を出して、昭和六十年の九月の通知で。だめじゃないですか、捨てたら。ほとんどないんですよ、国民年金の手書き台帳。

 そして、国民年金、市区町村が持っている被保険者名簿というのもある。しかし、市区町村の中では捨ててしまったところもある。しかし、それは貴重な情報だから、全部集めて、コンピューターのデータと照合して、コンピューターが間違っていればそのデータを正しく修正する、これはもう当然のことであります。

 私は、昨日、民主党の視察団として、マイクロフィルムが保管されているところへ行ってまいりました。確かに膨大な量ではあります。しかし、政治家が期限を決めないで、だれが期限を決めるんですか。積み上げていって、お役人に期限を出させたら、百年と言いますよ。政治家がこのくらいの時期でやれということを命じる、そして、ある程度、人、物、金はかかりましょう、それは予算措置をして緊急的にやる、こういうことでなくてどうするんですか。どのくらいですか。

柳澤国務大臣 長妻委員も、膨大なものである、それからマンパワーのかかるものであるということはお認めになられているわけでございます。

 そして、今、我々がこうしたことにもあえて着手しようということを申し上げまして、では、どうするんだ、このマンパワーをと。

 我々は、今考えておりますのは、例えば社保庁のOBでこうした事務に練達な者を、また一つの組織をつくらせようかというようなことまで、テンタティブではありますけれども考えている。そういうことでありまして、例えば、その体制ができて、必要なマンパワーがありまして、そういう我々の、それに力を割けるマンパワーがあって大体のめどがついてくるということでありますから、今、我々がそうしたことに着手しようということを言った段階ですぐ、デッドラインがいつかということを明確に述べるということはなかなか難しいということを御理解賜りたいと思います。(発言する者あり)

櫻田委員長 お静かにお願いします。

長妻委員 今、消えた年金記録救済法案もこの委員会で審議していますよ。この委員会で、開いているうちに、採決の前に期限を言わなければ、だらだらだらだら実施が担保できないと私は思っているんです。

 きょうは、被害者の方々を救済ということで、ある意味で我々は決死の覚悟で質問に立っておりまして、何としても期限をアナウンスしていただきたい、大臣として。やればできるんですよ、人、物、金をかければ。言ってください、ぜひ。私は絶対あきらめませんよ、言っていただくまで。

柳澤国務大臣 長妻委員もまさに懸念をされる、その懸念は私も同じように持っているわけです。したがって、だらだらはさせない。ですから、私は、まさに我々が割き得るマンパワー、それから、一体この仕事にどのぐらいのマンパワーが要るかということの見通しをつけて、これを考えていきたい。

 しかし、今言えることはどういうことかといったら、必ず進捗状況を定期的に公表しますということでとどめるわけです。そして、これはいずれ、そういうことがある程度見通しがついた段階には、定期的な公表の進捗状況と同じようなことで、私は、皆さんにもお知らせできる段階が来るであろう、このように考えるわけであります。

 要は、今この段階で、どのぐらいのマンパワーがかかるか、それからまた、我々が割き得るマンパワーが幾らかということに何のめどもなく、それで申し上げるというのは、私はむしろ、それは無責任な、気合いで仕事をするわけではないわけですから、気合いももちろん必要ですけれども、同時に、そういう客観的な仕事の量、それからまた割き得るマンパワー、これから仕事というものは計画的に出てくるということは、これはもう自明だろうと思います。

長妻委員 いや、大臣、おかしなことを言われますね。何のめどもなく期限も決められないと言われましたね。しかし、きょう、対策を出したわけでしょう。期限がなくて何で対策を出すんですか。大臣、普通の企業では、何かプロジェクトをやるときに、対策と期限、必ず出しますよ。いつまでやる、目標を出しますよ。

 きょう、こういう国会の場で、正式に対策を発表されたわけでしょう。期限がない対策というのはあり得ないじゃないですか。それは変な話、まさか思いつきで言っているんじゃないでしょうね、きょうの答弁は。

 では、期限はどのぐらいですか。言ってください、ぜひトップダウンで。

柳澤国務大臣 長妻委員も無理を承知でおっしゃっているのかもしれません。私は、こういうことをやりますということを申し上げているわけであります。しかし……(長妻委員「ちょっと委員長、侮辱だ、侮辱」と呼び、その他発言する者あり)

櫻田委員長 答弁中でございます。御静粛に。

柳澤国務大臣 静かにしてください。(長妻委員「無理を知って言っているという答弁は取り消してください」と呼ぶ)静かにしてください。(長妻委員「取り消してください」と呼ぶ)何ですか、私の答弁中に。(発言する者あり)

櫻田委員長 答弁は終わっておりません。御静粛にお願いします。

柳澤国務大臣 座りなさい、あなた。座りなさい。何ですか、私の答弁中に。(長妻委員「無理を承知でなんて言っていない。取り消してください、では」と呼ぶ)座りなさい。(長妻委員「取り消してください」と呼び、その他発言する者、離席する者あり)

櫻田委員長 御静粛にお願いします。

 席にお戻りください。

柳澤国務大臣 ということで、昨晩の総理の指示がありまして、これはもう、総理が、やれることはすべてやれ、こういうふうに言われましたので、私どもは、これもやろうと。

 しかし、この仕事については、まさに膨大で、本当に大変な仕事。ではどうするんだといったら、今のようなアイデア、これはかつての社保庁の従業員が生み出した負の遺産なんだ、だから、彼らにやってもらおう。それからまた、これは長妻委員も御承知のとおり、かなり専門的な知識が要りますから、アルバイトなんかを雇ってできるような仕事ではないわけです、記録を見るというのは。そういうことからいいますと、しっかりこれに動員できるマンパワーの見通しをつけないと、我々は、仕事の量を、どのぐらいのスケジュールでこれをこなせるかと言うことは当然できないわけです。

 したがって、私は今言えることは何かといったら、進捗度合いとそれから定期的なその公表ということで、それで、ある程度めどがついてきましたら、それはデッドラインを言い得る、そういう状況もあり得るだろうということでありまして、それは理解をしていただかないと、私としては大変無責任になるわけでございます。

長妻委員 大臣、私は無理を承知で言っているんじゃないんですよ。これは期限を言わなきゃだめなんですよ。つまり、無念に……(発言する者あり)ちょっと、自民党席、黙ってください。

 今、無念のまま亡くなっておられる方もいらっしゃると思いますよ。もらえるはずで社保庁と交渉して認められない、そして、年金を少ない金額でもらい続けて亡くなっておられる方、いらっしゃると思いますよ、年金というのは高齢者に支払うものですから。あるいは、御本人は全く気づかない、まさか少ない年金とは気づかない、それで、知らずに亡くなった方もいっぱいいらっしゃると思いますよ。

 早急に措置をとれば、時効だって、我々山井議員の主張で取っ外すんでしょう、与党は。それは当たり前だと思いますよ。そうすれば、早くやれば、そういう高齢者の方は、ひょっとすると何百万円、今までもらっていない年金が戻ってくる方もいっぱいいらっしゃるかもしれないんですよ。どんどん亡くなっておられるんですよ。

 これは、安倍総理、ぜひリーダーシップで期間を明示していただきたい。

安倍内閣総理大臣 この問題については、我々は、まず、やると、このようにはっきりと申し上げているわけであります。

 そこで、時期については、やはりこれは、私ども、政府としてやるということをお約束申し上げた以上、無責任なことは言えません。マイクロフィルムと紙台帳を突合していくというのは、これは機械ではできないわけであって、一人一人が実際に手作業で見なければいけないわけであります。もちろん素人にも任せるわけにはいかないわけでありまして、どれぐらいのマンパワーが確保されるか、そして、作業にどれぐらい時間がかかるかということを、我々はめどをこれはつけながら、そして、その進捗状況はちゃんとお知らせをするということを申し上げているわけでございます。

 ですから、そこは今無責任に、今ここまでやると言ったって、それはできないかもしれない。そういうことを私たちが言うことは、かえってまた逆に無責任なことになってしまうわけでありますから、信頼性を低下させていくことにつながっていくわけでありますから、我々は、まずは正確に、どれぐらいのマンパワーがかかるか、そして、手作業でマイクロフィルムと紙台帳を突合していく作業にどれぐらいかかるかという作業の進捗スピードを勘案してから、どれぐらいの期間だということは申し上げていきたい、このように思うわけでございます。

長妻委員 これは、すべての情報は我々は持っていないんですよ。膨大なコンピューターの中を見られるのは皆様方なんですよ。政府の方々なんですよ。ですから、期限を政治家が、ああいう組織ですから、トップダウンで、これでやれ、これでやるにはどういう体制が必要なんだ、こういうようなリーダーシップを持って、期限のないものを出してくるというのは無責任ですよ。

 そして、きょうまさか強行採決することはないと思いますけれども、それで逃げ切って、もう我々が質疑するこの法案の審議の委員会はないじゃないですか、衆議院では。ここで逃げ切るわけにはいきませんよ、本当に。ですから、どうしても期限を明示していただきたい、めどを。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 私たちは、やるとかやらないとかいうことを申し上げているわけではなくて、先ほど申し上げましたように、やるとかやらないということを、これをうやむやにしているわけではなくて、まず、やるということははっきりと申し上げたわけであります。その上において、この決定は、我々は、今回、政治的な判断としてやるということを申し上げているわけでございます。そして、きょう、こうした答弁をしています。

 しかし、今直ちに、いつまでということについては、先ほども申し上げましたように、これは、マイクロフィルムまた紙台帳と本体をそれぞれ突合させていく、手作業で一つ一つやっていくという作業は果たしてどれぐらい時間がかかるかということは、まずはやってみないとこれはわからないという点もあるんですよ。だから、私は、例えばここで、では、あと三カ月とか半年とか一年とか二年とか三年とかと言えば済むという話ではないんですよ。それは、私たちは誠意を持ってちゃんとやっていきたい。だからこそ、大臣が答弁をしているように、進捗状況についてはオープンに示していきますよ、今どこまで突合ができましたということはちゃんとオープンにしていくということを申し上げているわけでございます。

長妻委員 安倍総理は御存じないと思うんですが、我々民主党が命じて、特殊台帳だけは今サンプル調査していただいているんですよ。大臣、よく御存じのように、社会保険業務センター。三千の特殊台帳のマイクロフィルムのデータと今突合作業をして進めているわけですよ。そうしたら、大体事務量がわかるじゃないですか。我々はずっと前からこのことを言っているわけですから、期限を出していただかないと、政治家がリーダーシップを持っていただかないとだめだということを申し上げているんです。

 なぜ私がきょう、期限にこだわるのか。当然、期限があるのは、これは常識でございますが、その後の作業が重要なものがあるんです。つまり、先ほど柳澤大臣、三千万人の受給者にも納付履歴、加入履歴ですか、どっちですか、納付履歴もですか。(柳澤国務大臣「納付履歴、加入履歴」と呼ぶ)納付履歴と加入履歴の両方を送られると言いました。我々もそれを送るという措置を盛り込んでおりますけれども、今送っても、本当に正しいデータかどうかわからないものを送る危険性も出てくるわけですよ。

 つまり、コンピューターの中のデータを紙台帳と至急突合して、正しいデータにした上でお送りをする、こういうことが本来は重要だ。今も暫定的に送ってもいいですよ、それは。しかし、早目に正確になったデータをお送りする。あるいは、柳澤大臣だって窓口相談が重要だと言っていますね。そうしましたときに、違うデータを示したら意味がないじゃないですか。ですから、一刻も早くコンピューターのデータを正しくするということがその後の救済策に全部連動してくるんですよ。

 そこで、我々は言っているんです。つまり、これは五千万件の宙に浮いた年金記録の解決にもつながるんですよ、つながる可能性もあるんです。例えば、厚生年金の手書き台帳は、かつては名前は振り仮名なんかなくて、全部漢字でした。そして、読み方を推定して仮名で入れた、当時は漢字はコンピューターに入りませんでしたから。ですから、漢字を入力すればいいんですよ、もう一回コンピューターの中に。そうすると、五千万件の中だって、スムーズに突合できるものも出てくる可能性は私は高いと思う。そういう意味で、その後の作業に全部連動してくるんですよ。

 ですから、めどをぜひ、何月何日までとかそういう細かいことは私も聞きませんよ。このぐらいの期間でやらせるんだ、計画を出させるんだ、何としてもやるんだ、あるいは役所のほかの部署も使ったり工夫をしてやるんだ、こういう工夫は幾らでもできるじゃないですか。企業は不祥事が起こると必死ですよ。なぜか。つぶれるからです。つぶれたら、従業員は裸で外にほうり出されますよ。責任をとりますよ。政府は、いいかげんにしても何にしても、結局、お給料が出るじゃないですか。つぶれないじゃないですか。ぜひ、安倍総理、めどで結構ですから。

柳澤国務大臣 ちょっと事務的なことでございますので、御説明をさせていただきます。

 まず第一に、長妻委員は、特殊台帳のサンプリング調査をしたから、それで、ある程度必要なマンパワーがわかるのではないか、こういうふうにおっしゃいましたけれども、私どもは、単なる台帳のマイクロフィルムだけではなくて、実際にそのまた台帳の基礎になった手書きの台帳、さらには市町村にあるいわゆる名簿、こういったものまで当たろうということを考えておるわけであります。マイクロフィルム化された特殊台帳というのはかなり整然となっています、それを現在の正規の基礎年金番号によるファイルと突合するというのは非常に易しい仕事なんです。そういうことでは、市町村における手書きの名簿までさかのぼってチェックするというマンパワーを正確にはかることは私はできないということを申し上げたいのでございます。

 それからまた長妻委員は、受給権者に対して我々が履歴をお送りして、そして、しかもそれは五千万件の名簿とチェックをした上で、実際に五千万件に未統合で残っている可能性があるということを、その対象を絞って、そうしてお送りするということを言って、早く受給不足が起こっている方を救済したい、こういうことを言っているわけでありますが、その受給権者の履歴を出す前に、また市町村までさかのぼって紙のペーパーをチェックした上で出せというのは、これはちょっと、私は、一刻も早く受給不足を救おうということにそぐわないお話だというように思います。

 それやこれやで、私は、責任のある仕事ということを考えましたら、必要なマンパワーに対して供給、投入できるマンパワーをしっかりとらえた上でここでめどを立てる、そういう手はず、手順をたどっていくべきだ、このように考えております。

長妻委員 安倍総理に聞いているんです。(発言する者あり)

安倍内閣総理大臣 場外からのやじは少し注意していただけますか。(発言する者あり)

櫻田委員長 総理が答弁しますので、御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 では、静かに聞いてください。

 ただいま大臣が答弁をいたしましたのは、どのような、この作業を進める上において課題があるかということは、やはり国民の皆様にも知っていただかなければならないという観点から、誠意を持って、こういう課題があるということをお話を申し上げた。めどをなぜ我々が今の段階で申し上げることができないかということについて、こういう課題についてどう我々は対応していくかということも大切であります。

 そこで、私たちは、やらないということを言っているのではなくて、ちゃんと突合させていかなければならないということを申し上げているわけであります。マイクロフィルムとそして紙台帳と本体をそれぞれ突合させていく、そのための作業において、どれぐらい作業に時間がかかっていくかということについても、我々、まずはちゃんと把握をした上において、そしてめどをつけていかなければいけない、こう申し上げているわけであります。

 そしてさらには……(発言する者あり)

櫻田委員長 答弁中でございます。御静粛に。

安倍内閣総理大臣 そしてさらには、進捗状況を、これはちゃんとお示ししていくということは、どれぐらいの期間でどれぐらい進んでいくかということを国民の皆様にもお示ししていくことにもつながっていく、こういうことではないか、こう思うところでございます。

長妻委員 総理、だから私も、何月何日とか、そういう細かい期限を聞いているんじゃないんですよ。どのぐらいのめどか。対策が何にもめどがない。しかも、きょう強行採決する、そういう情報もあります。

 そうしたら、絶対きょうしないでくださいよ、強行採決、期限が出るまで。期限が出るまでしないでくださいよ。委員長、どうですか。

櫻田委員長 どうぞ、質問を続けてください。

長妻委員 待ってください、委員長にお伺いしているんです。期限が出ないうちに強行採決というのは、私はおかしいと思いますが、委員長、どうですか。

櫻田委員長 私は答える立場にございません。

 長妻昭君、質問を続けてください。

長妻委員 おかしいですよ、それは、一方的で。答えてください、逃げないで。

櫻田委員長 質問を続けてください。

長妻委員 では、質問を続けますけれども、委員長の感想でいいですよ。櫻田委員長は、期限がこの採決の前に出ないで強行採決するというのは私はおかしいと思いますが、委員長はいかがですか。

櫻田委員長 法案に対する質問を続けてください。

長妻委員 今法案に対する質問をしてくれと言われましたので、我々民主党もこれはここに出しているんですね。消えた年金記録被害者救済法、その絡みなんですよ、この対策というのは。ですから、その対策の期限が出ないうちに強行採決するというのはおかしい。委員長の感想をお伺いしているんです。どうですか。

櫻田委員長 私は、公平公正な立場に立って審議を円滑に進めるのが私の務めであります。

 質問を続けてください。

長妻委員 理事会で協議してください。

櫻田委員長 質問を続けてください。答弁者に対して質問をしてください。

長妻委員 それでは、委員長、理事会で協議をお願いします。

櫻田委員長 質問を続けてください。(発言する者あり)

 答弁者が用意されております。質問を続けてください。(発言する者、離席する者あり)

 議事の進行は委員長に任せてください。席にお戻りください。

 長妻昭君、質問を続けてください。(発言する者あり)

長妻委員 強行採決などしちゃだめですよ、期限が出ない前に。

 総理、柳澤大臣、ちょっと聞いていただきたいんですが、つまり、私もここまでしつこく聞くのは、私も国会議員をやらせていただいて七年ぐらいたちますが、今まで何度もだまされているんです、政府に。つまり、やると言って期限がないものがあって、全然やらない、うやむやになる、こういう苦い経験を私自身何度もしています、はっきり言って。ですから、柳澤大臣も若干さっき懸念があると言われましたね。だから同じ気持ちなんですよ。

 そういう意味では、この場である程度のめどを示す、この中でやれ、この中で計画を出せ、こういうことがないと。そして、きょう強行採決するわけでしょう。何できょう、そうしたら、きょう本当、発表してくださいよ、それを。チャンスは今の時間しかないんですよ、これは。五時半とかそのぐらいに強行採決をするとすれば、あと一時間で切られて終わっちゃうじゃないですか。期限が確認できませんよ。

 そして、先ほど柳澤大臣は特殊台帳の突合だけじゃないんだと言われましたね。市町村の被保険者名簿まで当たる、そんなものはいつもやっているじゃないですか、社会保険庁が個別相談で。市町村の個別相談で一個ずつ市町村の名簿に当たる作業なんてやっているじゃないですか、何年も前から、何十年も前から。そのぐらい積み上げればすぐわかるじゃないですか。対策を出すときに期限のめども明示して出す、そうでなければきょうの強行採決はやめる。

柳澤国務大臣 そういうようにだらだらと仕事をやって、何というか、うやむやにしてしまう、そういう仕事であっては絶対ならないと私も思っているわけです。

 したがいまして、私はそういうことを、正確なデッドラインは言いかねるんだけれども、しかし、私が言っているように、進捗状況と、それからその進捗状況について定期的に公表するということでとりあえずスタートをさせていただいて、そうして、今申したように、必要なマンパワーと、それから我々が投入できるマンパワーがある程度つかめた段階でこれはめどを示すことができる、こういうことを申し上げているわけです。それまでは、これは本当に大変膨大な作業であるということは、長妻委員もよくおわかりのとおりなんです。

 だから、そういうめどをしっかり立てた上ででないと、無責任なことを言うわけにはいかない。私は責任ある立場でございますから、そういうことで御理解をいただこう、こういうことを申し上げているわけでございます。

長妻委員 それでは、この件は答えられないので保留をいたしまして、次のテーマに行きます。

 五千万件の突合です。これはもう一回確認いたしますけれども、五千万件の中で、氏名や生年月日、性別が受給者と一致をする、あるいは一致するだろうと推定される方に、当該データを工夫してお示しをして確認をする。つまり、例えばヤマダヒロシさんが同じ五千万件にあって、同じ誕生日、同じ性別、同じ名前、それがあったときに、その記録が例えば昭和四十何年から何年までスズキ運輸に勤めていた、保険を払っていた、こういう記録があったら、その記録を取り出して、ヤマダヒロシさんに、こういう記録がありますが、あなた様のですか、確認してください、こういうことをやるということですか。

柳澤国務大臣 かねてから長妻委員はそういう御提案をいただいているわけでございます。しかし、私どもが今回やらせていただこうということで御提案というか、今後考えていく、検討して、もうこれはやることは決まっているわけですが、その手法を考えていくわけでございます。

 その場合には、我々は、そのヤマダヒロシさんならヤマダヒロシさんの履歴をお送りする、それとともに、あなたには未統合の記録をお持ちの可能性がありますということをお知らせします。そうしますと、御自身の履歴を目の前に置いているわけですから、どこが可能性として五千万件の中に登録されているんだろうか、そういうことをより切実に吟味をしていただけるだろうと私は考えているわけでございます。

長妻委員 いや、大臣、がっかりしますよ。

 それは平成十年から十八年度まで社会保険庁がやっていることじゃないですか、今までずっと、その手法は。同じじゃないですか。一千八百万件に送付したわけじゃないですか。そのうちの九百万件、ヒットした方を、名前と生年月日と年齢、同じ手法じゃないですか。そうしたときに、一千八百十八万人に照会したけれども、五百六十五万人は未回答だったじゃないですか。何にも、うんともすんとも回答がない、わからないんですよ。あるいは、九百二十七万人、これは統合された。しかし、まだまだ五千万件残っているわけですよ。

 同じ手法じゃだめだという趣旨で、我々はずっとこの直接的な工夫をしてお示しするということを申し上げているのに、例えば、極端な例を申し上げますけれども、認知症の方、息子さんから私に相談が来ましたよ。お父様が転職を繰り返してわからない、しかし社保庁では教えてくれない、あるらしいと。しかし、寝たきりの方もいらっしゃると思いますよ。

 ですから、そういう方に、これは全部社名まで教えるか教えないか、これは要検討だと思います。何年何月から何年何月まで、ある程度こういうような会社に勤めていたかどうか丁寧にこちらからお尋ねをする。そして、それが本当にそうであれば、その方と結びつける。あるいは、その方の状況を見て、本当に寝たきりの方とか認知症の方は直接それをお教えして御家族に御確認をいただくとか、こういう丁寧なことを、我々五千万件結びつけてくださいと何度も言っているのに、これまでと同じ手法をやることで何か新しいことをやるみたいな錯覚を与えないでください。

柳澤国務大臣 さすがに長妻委員も御見識の方だなと思ってお聞きしたわけですが、まさに具体的な会社名を知らせなくてもいいがとおっしゃられたかどうか、その細かいお言葉遣いまでは私は記憶をいたしませんでしたけれども、やはり、そのものずばり教えたのではちょっとまずいことが起こるんじゃないかという、長妻委員はそういう御懸念をお持ちだろうと思うんです。我々は思っているんです。

 現に、多分、ダブっていらっしゃるだろう、もう一つ年金番号をお持ちだろうと我々の方がやったものの中で、何と三百万人以上の方が、私は自分が持っている年金番号だけで、ほかには持っていませんということを言ってこられたということもございまして、また、他方、実際には全然違う方の番号を統合してしまって、後で真正な人が名乗り出てきたものですから、ああ、これは間違いではなかったですか、そういうようなこともあって、混乱いたしますので、したがって、私どもとしては、実際の履歴とそういう御注意、そういうようなことをしっかりとお示しをして、確認の注意喚起をお願いしよう、こういうふうに思っているということでございます。

長妻委員 柳澤大臣、こういう問題は、ディテールというか詳細なことを詰めて議論する必要があるんですよ。

 柳澤大臣、今、配付資料で二ページ目をごらんください。柳澤大臣も総理も、二ページをごらんいただくと、これが平成十年から十八年度まで、宙に浮いた年金記録の名前、性別、生年月日が同じ方に送られた資料の抜粋ですよ、二ページ、三ページ。これは十ページぐらいありましたけれども、私も全部読みましたが、わからなかったですよ。私もわからずに、お役所の方を、社会保険庁の方を呼んで説明を聞いたら、やっと意味がわかったんですよ。これは、普通の方はわからないですよ、こんな形で。

 それで、柳澤大臣は、いや、三百万人の人がおれの記録じゃないと突っぱねてきた、だから、同姓同名でも、生年月日が同じでも、違う人も三百万人もいるんだというような趣旨を言われましたけれども、きちっとした調査でそういう結果が返ってくるんだったら、柳澤大臣、私も、なるほどそういう傾向かと思います。しかし、ディテール、詳細が重要なんですよ、こういう制度の場合。これで、三百万人の方、私は、ほとんどの方が、わからずに返信した方が多いと思いますよ。委員の皆様も、これを読んでわかるんですか、こういうのが送られてきて。

 ぜひ工夫をして、一つ一つ抜けている情報を、例えばヤマダヒロシさんならヤマダヒロシさんに、何月何日、何年からこういう情報がございませんでしたか、御記憶ございますか、こういうことを御提示するということを我々は前から言っている。同じことをやるということじゃだめなんですよ、大臣。

 そしてもう一点、調査の件。我々民主党が言っておりますのは、受給者あるいは被保険者一億人の方々、約一億人です、そして、二十五年の納付がなくて、涙をのんで、保険金は没収され一円も受給できない、六十五歳以上で今四十万人おられるというデータをいただきました。

 そういう方々に対して、一億人の方に対して、緊急宣言を出して全員に納付記録を緊急に送る、この案を私は前々回の予算委員会での安倍総理とのやりとりで申し上げましたところ、安倍総理は、長妻さんの提案はいたずらに不安をあおるんだ、こういう趣旨の発言をされました。何でですか。

 一億人の方々、今柳澤大臣が言われているのは、受給者には納付履歴を送る、しかし、ねんきん定期便も、納付履歴が入っているのは三十五歳、四十五歳、五十八歳の方だけなんですよ。ほかの方には送られない。例えば四十六歳の方は十二年間納付記録なんて送られないわけですよ、五十八になるまで。そういう意味で、一億人の方に納付履歴を送る。

 しかし、私が先ほど期限にこだわったのは、正しい納付記録を送らないと意味がないから、コンピューターのデータを早急に直さなきゃいけない。その時間のめどを教えてくださいと、だから言ったわけです。

 この一億人への送付、緊急チェック、わけのわからないこういう難しい言葉じゃなくて、あなたの記録が抜けているかもしれない、消えているかもしれないからぜひきっちり見てください、こういう通知をぜひ出していただきたいと思うんですが、いかがですか、一億人に。

柳澤国務大臣 長妻委員が御指摘になられましたように、確かに私どもは、平成九年の一月に基礎年金番号を付番させていただいたときに、確認のためのこうした御通知を申し上げて、もしほかに番号をお持ちの方はぜひ御返答ください、御照会ください、こういうことを呼びかけましたけれども、率直に言って、その返答率、回答率というのは必ずしも高くなかった。

 これは、私はなぜ高くなかったのだろうかと考えるときに、やはり年金は受給資格年齢に到達するほどに切実なものになってきて関心も高まるんだろうと思います。若いころにそんなに履歴を送ったとしても、どうしても回答率というか、それを検討していただいてそれを返されるということが少ないということは、私はある意味で理解できる。

 ところが、我々が今度やろうとしているのは、現に受給をしている方と受給に非常に近い五十八歳の方に、ダブルに番号がおありになる可能性がありますよということをお知らせするわけですから、この受け取り側の関心は非常に強いわけです。強いと想定して間違いないわけです。ですから、恐らくこれに対してしっかりした御検討の上の御回答が期待できるだろう、こういうように私は考えるわけでございます。

 その同じことが、七千万の今の被保険者にそういうものを全部、履歴といったって、まだ二十とか二十何歳の人にその履歴を、何でそれだけのことを出すのか。我々は、ねんきん定期便ということでそういったことには対応いたしたい。そして、現実に年金の受給に対して関心が高まってきた五十八歳、それから現にまた受給を受けている方々が、本当に今受けている給付がしっかりした自分の履歴に基づいたものかどうかということをチェックしていただくということをやろうとしているわけでございますから、これは私は、本当に私どもこれから考えるに当たってとるべき対策であろう、こういうように考えているわけでございます。

長妻委員 与党の皆様方も、ねんきん定期便というのは基本的に被保険者全員に出すということなんですね。百億円の経費がかかる。しかし、全員に出すのに、三十五歳、四十五歳、五十八歳には納付履歴の一覧がついている。ところが、今言った年以外の方は、国民年金二百五十カ月とか厚生年金百カ月とか、それしかないんですよ。抜けがわかりますか、それで。百億円かけて、そんなものを何で送るんですか。全員に履歴をつければいいじゃないですか。

柳澤国務大臣 私どもは、やはり節々に自分の年金というものを顧みていただく、そういう手法をとって、そして、先ほど来申し上げておりますように、五十八歳という受給年齢に非常に近づいた段階できちっと確認をしていただく、こういう措置をとることが我々がとるべきことだろう、このように考えて、そういう対策を講じようとしているわけでございます。

長妻委員 どうせ一億人にねんきん定期便も最終的に百億円かけて送るわけですよ。

櫻田委員長 長妻昭君、申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

長妻委員 総理、いかがですか。総理、一億人に履歴を送る。

安倍内閣総理大臣 先ほど長妻委員は、平成九年と同じことをやっているではないか、このようなお話でありましたが、そのときには被保険者であって、年金受給者には出していないんです。今度は、年金受給者の方々に、ちゃんと突合をして、もしかしたら年金の加入履歴があるのではないかということをお知らせするわけでありますから、これはまさに新しいことをやるということはまずははっきり申し上げておきたい、このように思います。(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛に。答弁中でございます。

安倍内閣総理大臣 その上で、さらに被保険者の方々については、いよいよ年金の受給が近づいた五十八歳のときに年金の履歴をしっかりとお知らせする。そして、節目節目に、三十五歳、四十五歳と、このようにお知らせをします。

 それ以外にも、年金に加入した方々については毎年お知らせをするわけでありますが、しかし、毎年毎年履歴をお知らせする必要はないじゃないですか。だから、三十五歳、四十五歳……(発言する者あり)

櫻田委員長 御静粛にお願いします。答弁中でございます。

安倍内閣総理大臣 節目節目にちゃんとやっていけば私はいいのではないか、このように思うわけであります。

長妻委員 安倍総理に申し上げますけれども、一億人全員にねんきん定期便は送られるのに、この被保険者に。納付履歴をなぜ送られないのか、これを御答弁いただきたいと思います。

櫻田委員長 長妻昭君に申し上げます。

 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

柳澤国務大臣 これはもう繰り返しの答弁になりますけれども、我々としては、年金の履歴をお知らせするというのは、節目節目、特に五十八歳のときにしっかり確認のために送る、私はこういう考え方でございます。

 定期便につきましては、この被保険者全体、特に、また若い層の方々に年金そのものに対する関心を持っていただく、こういう考え方でこれを発出しようということを考えている制度でございます。

櫻田委員長 長妻昭君に申し上げます。

 既に持ち時間が経過しております。質疑を終了してください。(発言する者あり)

 既に申し合わせの時間が経過しておりますので、質疑を終了して、次の人に席を譲ってください。(発言する者、離席する者あり)

 席にお戻りください。席にお戻りください。(発言する者あり)

 長妻昭君の質疑時間は既に終わっております。席をあけてください。

 本来ならば、既に時間は経過しており、質疑は終了でございますが、特別なお計らいによりまして、安倍内閣総理大臣が答弁をすることをもって質疑を終了するという約束ができましたので、発言を特に認めます。

 せっかくでございますので、御静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 委員長、ありがとうございます。

 ただいま厚労大臣から答弁いたしました、また私も答弁いたしましたように、まさに、この節目節目に、三十五歳、四十五歳、そしていよいよ年金の受給が近づいた五十八歳のときに、三十五、四十五、五十八、この段階において年金の履歴もあわせて通知をするわけでございます。そして、注意を喚起するわけでございます。

 そして、ねんきん定期便というのは、最初に私が申し上げましたように、一体自分はどれぐらいの期間払っているか、幾らぐらい払っているか、そして将来幾らもらえるかということを、国民の皆さんに、被保険者の皆さんに知っていただく、特に若い人たちに知っていただくことによって、年金に加入するという意味を知っていただきたい、こういうことでございます。

 ですから、そこにおのずと違いがあるわけでありますが、しかし、今回について、こういう年金の記録等の問題については、先ほど大臣が答弁いたしましたように、五十八歳、いよいよ近づいた方については、まさに受給を前にして、受給の段階でちゃんとしていればいいわけでありますから、三十五そして四十五、五十八、この段階で履歴も含めてすべてお知らせをする、こういう仕組みになっているわけでございます。

櫻田委員長 以上の答弁をもちまして、長妻昭君の質疑は終了しました。

 次に、高橋千鶴子君。(発言する者あり)(長妻委員「ちょっと待ってください。質疑は終了します。質問はいたしません。私が先ほど期限を申し上げましたのは、やはり強行採決ということなので、それは、このままやられるというと、本当にどのくらいのめどなのか。政治家のリーダーシップを発揮していただきたい、そういう思いなんです」と呼ぶ)長妻昭君の質問時間は、既に経過をしております。次の質問者は高橋千鶴子君です。

 高橋千鶴子君、お願いします。(長妻委員「つまり、いろいろなこれから打つ施策も含めて実効性を高めるためには記録を正確にしなきゃいけない。これを一刻も早くしないと、すべての次のアクションが連動していかないんですよ、効果が出ないんですよ。そういう思いで質問をしたわけでございます」と呼ぶ)長妻昭君、席をお立ちください。質問者の質問を妨害することは許されません。(長妻委員「委員長の采配に大変抗議をいたします。質問を終わります」と呼ぶ)

 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 まず、総理に伺います。

 総理は、今国会の施政方針演説の中で、国が責任を持つ公的年金制度は破綻したり払い損になったりすることはありませんと述べられました。この言葉は、今も、これからも変わりありませんか。

安倍内閣総理大臣 公的年金制度というのは、国が責任を持っています。そして、年金の給付とというのは、負担があって初めて給付が成り立つものであります。そして、この負担、つまり、これぐらいの負担であれば、国民の皆さんが、払った方がいいな、払える、このように納得していただける中において給付も確保できるわけでございます。

 このような給付と負担のバランスがしっかりととれている上においては、国が責任を持っておりますから、私は、払い損になったり破綻することはないということを申し上げておきたいと思います。

高橋委員 今、繰り返し確認をされました。破綻したり払い損になったりすることはないと。私は、今にすると、このことは大変重みがあると思います。

 担保するものは何もないと。払ったはずなのにもらえない、だれの年金記録かわからない五千万件が大変な問題になっておりますが、これに対して、何の責任がとれるのか。私は、総理がそう言っている以上、この問題が本当に解決するように、その推移を見る、見きわめる責任が国会にあると思います。

 委員長に申し述べます。委員長にしか答えられません。よく聞いてください。

 少なくとも、政府が言う救済策、まだ私たちは条文で見ておりません。これがどのようなものか見きわめる時間が必要です。十分な審議が必要です。そのために採決はしないと約束をしていただけますか。

櫻田委員長 そのようなことは私は答える立場にございませんので、公平公正な議会運営、議事運営をするのが私の務めでございます。

 法案の中身について御質問願いたいと思います。

高橋委員 運営については委員長しか答えられないんです。委員長が答えられないのであれば理事会を開いてください。

櫻田委員長 法案の中身について質問してください。

高橋委員 理事会を開いてください。ちゃんと委員会で正式に答えを請求しているのに協議をするというお答えがないというのは、民主主義に反すると思います。

櫻田委員長 質問時間中でございますので、理事会を開催する予定はございません。

 高橋千鶴子君、質問を続けてください。

高橋委員 私、持ち時間が非常に少ないので質問を続けますが、公平公正だと委員長が述べましたので、絶対にきょうこれで採決をするということはないということを確認したいと思うんです。

 だって、これからの中身が全然わからないのに、この先新しい機構になって、国民の不信にこたえられるのか、記録の問題はどうなるのか、さっぱりわからないんです。ですから、そのための、見きわめるための時間が必要だということを重ねて指摘しておきたいと思います。

 私がきょう述べたいのは、実は新しい機構になっても、これからもこういう問題は起きるということなんです。

 二十三日の委員会で、愛媛県や秋田県の住基情報の大量流出事件を取り上げました。どちらも委託会社から再委託をされ、派遣社員のパソコンからデータ情報が流出するという大変ずさんな事件でした。これには国民年金情報も含まれていました。大臣は、大変怒りを持って、再委託は許さない、そういうことを述べられました。

 しかし、今や社会保険庁は、年金記録の入力業務はすべて外注であります。そして、先ほど来話題になっている、大量の紙からディスクに移すパンチ業務、これは外の業者、つまり社会保険庁の中ではなくて外の業者が請負契約をしております。

 長官に伺います。紙の情報をどのようにして委託会社に届けるのですか。一番遠い例でお話しください。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

村瀬政府参考人 今委員御指摘は、多分神奈川事務局の例だろうと思います。

 神奈川事務局では、熊本の業者に委託をしてございます。当然ながら日本の国の中でございまして、郵送はきちっとできておりますし、それなりのセキュリティーを持ってお送りしているという形でございます。

 それからまた、個別の監査につきましては、当然のことながら、前回御説明申し上げましたように、させていただいておりまして、別に距離が遠いから委託業者についてだめだ、いいんだということではないんだろうというふうに思います。

高橋委員 まさか、国内だからいいなどと開き直られるとは夢にも思いませんでした。

 先日取り上げた問題は、総務省が、なるべく事務所の中、特定の場所、すぐ近い場所でデータ処理をするようにと言っていたのが、契約違反で再委託で遠くに飛んでいったという話なんですけれども、これも同じなんですね。神奈川から熊本の作業所に空輸するんですね。データですよ、大量のデータが損なわれるおそれがないか、監視の届かない作業所で流用されるおそれがないか。それは、請負会社との契約はしておりますが、その中の社員がどういう状態になっているのかわからないんです。

 さっき、監視がされていると言いました。最初の定期の監査のときに、たまたま抜き打ちで行った社保庁の職員が見たのは、携帯を持って電算室の中に入っている女性社員の姿であります。こういう実態であります。

 大臣、知っていたでしょうか。社会保険庁の職員ののぞき見で処分の事件もありましたが、それどころの問題ではありません。先ほど総理が、三十件も自分の情報を見られたと言っていましたけれども、たくさんの会社、たくさんの社員が実はさわるんです。こういう状態で、データが損なわれないということを保証できますか。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 高橋委員は、かねてよりこの業務、特にコンピューターへの入力の業務を外部委託することにつきまして、個人情報の漏えいということについて非常にたびたび御注意をいただいているわけでございます。

 私も、この年金の記録というのは大事な個人情報だと心得ておりまして、これから先の業務の運営については、その点は重々気をつけていかなければ、仮にそうしたことが起こったら、また再び、新しい機構の業務としても、私は世の大変な御批判を受けることは必至だと思っておりまして、これはよくよく注意をしなければならない、このように指示をするつもりでございます。

高橋委員 重々とおっしゃいましたけれども、私は、今この間、長い間指摘をされてきた問題、国民の皆さんが関心を持っていた問題、先ほど長妻委員も繰り返し指摘をしていましたけれども、この問題から何も学んでいないと言わなければならない、そしてまた同じ事件が起こらないという保証が全くない、そう思います。だって、見きわめることをしないうちに出発をする、そして、その出発する姿は全く外部委託であり、データは空輸であり、そうしたことが平気で行われるわけですね。そういう中で、どうして新たなトラブルが起きないということが言えるでしょうか。

 私は、今度の問題で、第三者機関を設置して仕事を切り分けすると言っていますが、今や強制処分と年金の裁定くらいしかないほど外部委託が進んでいて、社保庁は骨くらいしかありません。(発言する者あり)骨もないという意見があります。これで国が、国民の年金に対する信頼を取り戻すとか責任を持つということが本当にできるでしょうか。公務員さえ処分すれば改革が進むかのように国民の目をそらせ、一番大事な国民の情報と年金そのものを民間市場に開放、切り売りするものであり、絶対に認められません。

 審議は終わらない、廃案にするべきだ、このことを重ねて指摘して、終わります。

櫻田委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、総理御出席のもとということで、本来であれば、総理が冒頭おっしゃいました、現在の社保庁を廃止・解体六分割、腐った組織を変える、こうした内容が何であるかをもっと審議したいと思います。

 しかし、きょう、総理が来ておっしゃったことは冒頭のそれだけで、あとは、宙に浮いた五千万件の年金の処理について、やっと初めて、六回の委員会審議を経て、この間、へねごねつべこべ言っていた大臣、あるいは、もちろんやる気のない社保庁、その皆さんの答弁を、たった一言、総理は、この五千万件について、処置をする、処理をするということを言いに来られただけです。では、具体的にどうするんだとなると、見通しも内容も全く空疎、中身がありません。

 私は、このことを詰める前に、もう一つ、総理にはきょうこの場で、今回の法案が持つもう一つの非常に危険な側面を指摘させていただきます。このこともきょうぜひ総理に御回答いただきたいと思います。

 私はきょう思いました。おためごかしの救済法案と、そして一方で、強権行使の、新たな、特に年金の未納問題に絡めた国民健康保険の短期証明書の問題、これが子供たちの未来を奪うという問題です。

 総理は、日ごろ十分知識をお持ちでしょうから、平成十八年度、短期保険証は百二十二万世帯に交付されております。当然、ここには子供さんをお持ちの家庭もおられます。先回、先々回の審議の中で高橋委員もお取り上げですが、今回、この政府のやろうとしている法案によれば、さらに短期の資格証明書、国民健康保険です、年金ではありません、全く仕組みの違うもの、この違う仕組みに対しても、三カ月、一カ月と期限の切られた国民健康保険証が渡されます。その御家庭に子供がいたら、夜、急に熱が出た、しかし保険証の期限は切れている、病院に行くに行けない、こういうことが、今百二十二万世帯、これからこの倍、恐らく二百四十万世帯に起こり得る可能性があります。

 総理は、この子供たちの奪われた受診権、もし万が一そのことで何か起こったら、命への責任がとれるでしょうか。冒頭、私は、この法案は五千万件の問題でこれだけ揺れております、しかし、その陰に、強権的に国民年金の納付をさせるために、ありとあらゆる手だてを使って国民の暮らしや子供たちの命を脅かす法案であると思いますから、冒頭一問、これをお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 突然の御質問でございますが、ただ、今阿部議員は、実はかなり大げさにおっしゃっている。命を脅かす、まるで受診ができないかのごとくの質問でございましたが、これは普通の被保険者と同じように受診できます。お子さんが病気になれば、短期の保険証を持っていっていただいて受診ができるわけであります。

 しかし、期間が短い。期間がなぜ短いかといえば、それは、なるべく市町村と未納者の方々が接触する機会をふやしていただいて、免除が必要であれば免除の措置をする。また、払う能力があるのであれば払っていただく……(発言する者あり)済みません、理事、私は答えているんですから。(発言する者あり)いや、だって、質問に対して答えているんですから。

櫻田委員長 総理が答弁中であります。御静粛に。

安倍内閣総理大臣 理事だったら、少しルールどおりやってくださいよ。(阿部(知)委員「答えてください、あと五分なんですから」と呼ぶ)

 ということを申し上げているわけであって、ですから、そういう誤解があるようなことは言っていただきたくない。つまり、これは短いか長いかというだけの差であって、受診はできるということははっきりと申し上げておかないと大変な不安を広げてしまう、このように思うところでございます。

阿部(知)委員 この不安は、総理が仕組みをわかっていないからですよ。三カ月で期限が切れたものを持って親御さんは来ないんですよ。そんなことは庶民の暮らしの当たり前なんですよ。庶民はそれだけ萎縮して暮らしているんですよ。その実態を見ないで、この五千万件の年金問題もそうです。きょう、ここにたくさんの人が来られている。社保庁に行って、あれ出せ、これ出せ、それ出せ。出せないんですよ。行くだけだって敷居が高いんですよ。その五千万件に対してやっと総理が手をつけると言った。しかし、具体的にどうするのか。

 柳澤大臣と総理に伺います。

 このために、例えば三千万人の既裁定者、五千万件のデータを突合するために新たなシステム開発をなさいますか。その人件費あるいはシステム開発代はどこから出る予算でしょうか。よもよも保険料を流用などはしないのでしょうね。さっき柳澤大臣は言いました、この負荷を次の組織にはかけないと。であれば、当然、予算、このことにかかわるコスト、きちんと別建てで法律なりなんなりを手だてしてやらねば、やれるようなことではありません。この間ずっと年金の保険料の流用は続いてきました、事務費という形で。そして、このシステムが導入されて、毎年一千億のシステム経費、みんな保険料から払っています。かてて加えて、この起きた事態を、大臣、どこの予算から出しますか。総理もお願いします。

安倍内閣総理大臣 今回の件につきまして、保険料を充てるということについて、それは自分の給付にも影響があるのではないだろうかという御批判、御懸念があることは十分に承知をしております。そうした国民の皆様のお気持ちを十分に踏まえながら、今後しかるべき財政の合理化努力の中で捻出をさせていきたい、このように考えております。

阿部(知)委員 お金をどこから出すか。では、一般会計の中で別建てでなさるんですね。これはしかと柳澤さんに答えていただきたい。

 実は、平成九年、基礎年金番号が導入されて、そのときのシステム開発の問題が大きく尾を引いていると私は思います。その開発上の問題。要するに、ソフト、コンセプト、考え方とこのシステムがうまく合致していかないところに、そして先ほど答弁でした、村瀬長官がこの事態に気がついたのは二〇〇七年二月であった。指摘されねばずっと放置され続けて、看板がかわり、責任が解体する、こんなことは到底看過できないのです。

 大臣、はっきりしっかり、お人を雇うとおっしゃった。システムも、もしかして突合のためにつくるとおっしゃった。そのための予算は、どのように、どこから捻出し、国民への謝罪はどこでなさいますか。

安倍内閣総理大臣 先ほども答弁をさせていただきましたように、国民の皆様が、今回のことについて、これが自分の給付にかかわってくる、あるいは保険財政に大きな影響が出てくるんではないか、このような御懸念があることは十分に承知をしております。

 我々は、今回の処置についての費用について、保険料から賄うということは考えていないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

阿部(知)委員 そうであればある分だけ、実は、このいま一つの年金かけかえ法案、新しい年金機構、この法案の採決の前に、めどを立てていただかねばならないのです。そのめどを先ほど来、委員は皆さん、聞かれています。

 いいですか、総理、きょう来ていただきましたけれども、総理はただ一言、これを五千万件は宙に浮かせないということをおっしゃいました。いいことです。当然です。そのための立法は、私は、立法などせずとも今の行政の手続の中でできることを、おためごかし立法だと思います。だって、落ち度は社会保険庁にあるんですから、納めた側には何もないのです、瑕疵は。それをわざわざ立法して、会計法の云々、確かに柳澤大臣は詳しい。だけれども、本質的なものを私は見誤っていると思います。

 まだまだ、安倍総理が当初おっしゃった解体六分割、腐った組織の中身の話は、何も総理と私どもはいたしておりません。私は、そういう段階で、よもよも委員長は採決などなさらないと思いますし……(発言する者あり)どうでしょう、委員長。

櫻田委員長 質問を続けてください。きょうは総理も厚生労働大臣もおりますので。

阿部(知)委員 はい。総理に伺います。

 きょう、総理は来られてわかったと思います。この新たな組織の内容についての論議は、私ども委員会のメンバーと総理はほとんど交わしておりません。いいでしょうか。たった一言、大臣に命じた、あるいは腰の重い社保庁にこれから大臣は言うんでしょう。そうやって順送りみたいなことがやっと動いただけです。本来の大事な信頼を取り戻すための組織についての論議を総理と十分に重ねたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。

櫻田委員長 持ち時間が既に終了しておりますので、総理、短目に答弁願います。

安倍内閣総理大臣 この法案につきましては、この委員会で担当の大臣との間で十分な議論が、深い議論がなされてきた、このように思う次第であります。私は、これは重要広範議案でありますから、本日出席をいたしました。この中で、今回、この年金の記録の問題について主に御議論をさせていただいた次第であります。

 そして、私は、たった一言ではなくて、これは被保険者の方々に対してはどういう対応をするか、あるいは既に年金を受給されている方々にはどういう対応をするか、突合をどのようにやっていくか、またあるいは、五年のいわば時効と言われた方々についてはどうするかということについて、詳細に私どもの対策をお話しさせていただいた、このように思っております。

 いずれにいたしましても、年金は国民の信頼の上に成り立っている。私ども、信頼をしっかりとかち得るべく努力をしていきたいし、この社会保険庁の改革をしっかりと行うことによってこそ、私は、年金への信頼をかち得ることができる、このように確信をいたしております。

櫻田委員長 阿部知子君、既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

阿部(知)委員 わかりました。

 総理は今、重要法案とおっしゃいました。法案の中身は何も話されていないのです。そのまま採決など、絶対に許されないのです。

 そのことを私は最後に申し添えて、委員長に知恵ある采配をお願いいたします。

櫻田委員長 吉野正芳君。

吉野委員 動議を提出いたします。

 ただいま議題となりました内閣提出二法案の質疑を終局し……(発言する者、離席する者多く、聴取不能)省略し、直ちに採決されることを望みます。

櫻田委員長 吉野正芳君の動議に賛成の諸君の起立を……(聴取不能)起立多数。よって、本動議は可決されました。日本年金機構法案に賛成の諸君の起立を求めます。起立多数。よって、本案は可決されました。国民年金の……(聴取不能)委員会報告書の作成は委員長に一任することに……(聴取不能)暫時休憩いたします。

    午後五時二十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後六時三十七分開議

櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 再開に先立ちまして、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・そうぞう・無所属の会所属委員に対し、事務局をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・そうぞう・無所属の会所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案及び最低賃金法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 労働契約法案

 労働基準法の一部を改正する法律案

 最低賃金法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柳澤国務大臣 ただいま議題となりました労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案及び最低賃金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、労働契約法案について申し上げます。

 就業形態や就業意識の多様化等が進み、個別労働関係紛争が増加しているという状況のもとで、労使双方が安心、納得した上で多様な働き方を実現できるよう、体系的でわかりやすいルールを整備することが重要な課題となっております。

 このため、労働者及び使用者の自主的な交渉のもとで、労働契約が円滑に継続することを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資するための基本的なルールを法制化するため、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、労働契約に関する原則について、労働契約は労働者と使用者が対等の立場により締結、変更すべきものであること等を定めることとしております。

 第二に、労働契約の成立及び変更に係るルールについて、労働契約は、労働者及び使用者の合意によって成立し、または変更される旨を明確にすることとしております。

 その上で、現に広く用いられている就業規則と労働契約との関係を明らかにすることとしております。具体的には、使用者が、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益になるように労働契約の内容を変更することができない旨を定めるとともに、就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を周知させ、かつ、就業規則の変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、変更後の就業規則に定めるところによるものとすることとしております。

 第三に、使用者の権利の濫用に当たる出向命令や懲戒は無効となることを明確にすることとしております。

 第四に、期間の定めのある労働契約について、使用者は、必要以上に短い契約期間を定めた上で反復更新することのないよう配慮しなければならないこと等を定めることとしております。

 最後に、この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 次に、労働基準法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 少子高齢化が進行し労働力人口が減少する中で、子育て世代の男性を中心に、長時間にわたり労働する労働者の割合が高い水準で推移していること等に対応し、長時間労働を抑制し、仕事と生活の調和がとれた社会を実現する観点から、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、時間外労働に関する見直しとして、特に長い時間外労働を抑制するため、一カ月について八十時間を超えて時間外労働をさせた場合には、その超えた時間の労働について、法定割り増し賃金率を五割に引き上げること等とし、さらに、労使協定により、法定割り増し賃金率の引き上げ分の割り増し賃金の支払いにかえて、有給の休暇を与えることができることとしております。

 なお、中小事業主については、法定割り増し賃金率の引き上げを猶予することとしております。

 第二に、年次有給休暇の見直しとして、年次有給休暇を有効に活用できるようにするため、労使協定により、年次有給休暇について五日の範囲内で時間を単位として取得することができることとしております。

 最後に、この法律の施行期日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 次に、最低賃金法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 就業形態の多様化等が進展する中で、最低賃金制度については、賃金の低廉な労働者の労働条件の下支えとして、十全に機能するよう整備することが重要な課題となっております。

 このため、最低賃金制度について、社会経済情勢の変化に対応し、必要な見直しを行うこととし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、地域別最低賃金については、あまねく全国各地域について決定されなければならないこととするとともに、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定められなければならないものとし、労働者の生計費を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとすることとしております。

 さらに、地域別最低賃金の実効性を確保する観点から、その不払いに係る罰金額の上限を五十万円に引き上げることとしております。

 第二に、産業別最低賃金については、すべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網とは別の役割を果たすものとして、関係労使の申し出を契機として決定されるものとし、最低賃金法の罰則は適用しないこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 以上が、労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案及び最低賃金法の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

櫻田委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四十八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.