衆議院

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第27号 平成19年6月1日(金曜日)

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平成十九年六月一日(金曜日)

    午前十時二十七分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鴨下 一郎君

   理事 谷畑  孝君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    大塚  拓君

      加藤 勝信君    川条 志嘉君

      木原  稔君    木村 義雄君

      岸田 文雄君    清水鴻一郎君

      菅原 一秀君    杉村 太蔵君

      高鳥 修一君   戸井田とおる君

      徳田  毅君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    松野 博一君

      松本  純君    松本 洋平君

      御法川信英君    盛山 正仁君

      坂口  力君    古屋 範子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局勤労者生活部長)      青木 直幸君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     木原  稔君

  木村 義雄君     御法川信英君

  戸井田とおる君    盛山 正仁君

同日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     徳田  毅君

  御法川信英君     木村 義雄君

  盛山 正仁君     大塚  拓君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     戸井田とおる君

  徳田  毅君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働契約法案(内閣提出第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・そうぞう・無所属の会所属委員に対し、事務局をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・そうぞう・無所属の会所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案及び最低賃金法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長松谷有希雄君、健康局長外口崇君、労働基準局長青木豊君、労働基準局勤労者生活部長青木直幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。

鴨下委員 おはようございます。

 昨日は未明まで、大変、あらしのような国会でございましたけれども、とりわけ柳澤大臣、そして櫻田委員長、大変お疲れさまでございました。

 きょうは一転して、静かな中で、残念ながら野党の出席のない中で、国民が非常に関心を持っています労働の問題について、粛々と議論をさせていただきたい、こういうふうに思っております。

 特に、労働契約法、それから労働基準法、そして最低賃金法、極めて重要な法案でございます。国民の皆さんにも、早くこの法案について成立を図って、そして、特に最低賃金等についてもそれぞれの県で御審議をいただく、こういうようなことになるわけでありますから、一日も早くこの労働三法についても結果を出してまいりたい、これが与党の責任なんだろう、こういうふうに思っております。

 きょうは、私は、三法案のうちの労働基準法改正案について主に話をさせていただきます。

 今、我が国の人口が減少した、こういうようなことでありますけれども、さきの大戦以来、二〇〇五年が初めてであるわけであります。この少子化、そして労働力人口の減少は、いわば社会保障全体に、あるいは国民生活全体に大きな影響を与える、こういうようなことでございます。

 少子化の原因である出生率の低下の背景には、晩婚化や非婚化、こういうものが進んでいるわけであります。その根底には働き方のありようがあるわけでありまして、特に若い方々は、パートタイム労働者や派遣労働者、あるいは不安定で低所得の雇用につくことがふえている、こういうようなことが、ある意味で晩婚化、非婚化につながっている、こういうようなこともあるわけでございます。

 また、正規労働者の長時間労働、特に三十代を中心とする中堅、若手社員の長時間労働対策も、ある意味で喫緊の課題であるわけでありまして、長時間労働によって生産性を維持するあり方をここのところでしっかりと見直して、仕事と子育てが両立する雇用環境を確立していく、これがこのたびの労働三法のいわば本当の趣旨なんだろうというふうに思っております。

 したがって、このいわゆるワークライフバランスを実現して少子化の流れを変えていく、このためには、未婚の若い世代から現に子育て中の世代まで、また、ある意味で、非正規の社員として不安定、低所得の雇用についている人たちから正社員として非常に長時間働いている人たちまで、多様な状況に応じたさまざまなメニューの対策を講じていかなければいけないわけでありまして、雇用の安定確保、所得の下支え、長時間労働の抑制、こういうような、いわば多面的な取り組みが不可欠であるわけであります。

 そこで、まず、今回の労働法制の見直しにより、全体としてこのワークライフバランスをどのように実現しようとしているのか、きょうは労働担当の武見副大臣がおいででありますから、まず副大臣にお伺いをいたします。

武見副大臣 先生、本当に御指摘のとおりでございます。

 近年、我が国の経済産業構造の変化というもの、これは内需主導型での、第三次、サービス産業の拡大であるとか、今相当いろいろ変化が起きてきています。そしてまた、働く側の立場からも、こうした価値観の多様化というものが確実に広がっている。そしてまた、少子高齢化という人口構造の急速な変化。こういったことを背景にして、就業形態というものが本当に多様化をしてきている。そしてまた、その中で、非正規雇用の割合が高まっているという現状をまずとらえておく必要があるかと思います。

 そして、他方で企業の競争条件の厳しさというもの、そして非正規雇用比率の高まりのもとで、正社員による長時間労働の常態化というのがまた深刻化している、こういう受けとめをしております。

 そのために、まず第一に、長時間労働というものを抑制し、仕事と生活のバランスを実現するという考え方に基づいて、この労働基準法の改正をいたします。二つ目には、正規、非正規を問わずに、最低賃金制度がセーフティーネットとして十分に機能するための最低賃金法の改正というものをさせていただきます。第三には、有期契約労働者の雇用の安定などに資する、労働契約ルールの明確化のための労働契約法の制定に取り組んでいるところでございます。

 こうした多面的な法整備によりまして、どのような働き方を選択しても、だれもが安心、納得して働くことのできる環境整備が進むことになると考えております。

鴨下委員 副大臣、ありがとうございます。

 私は、議員になるまでは心療内科の医者をやっておりまして、勤労者の主にストレスの問題で起こってくる治療をしていました。ですから、長時間労働も大変問題でありますし、加えて、長時間の通勤があるわけでありまして、そういうようなことが大きなストレスの原因にもなってきたわけであります。そういう意味で、私は、テレワークというのが一つのキーワードだろうなというふうに思っているんです。

 これは、いわゆる情報通信機器、コンピューターの端末を活用して、勤務場所にとらわれず自宅でもオフィスと同じように働くことができる。このいわゆるテレワークをしますと、往復の通勤時間はゼロになるわけでありますし、みなし労働時間制やフレックスタイム制などと適切に組み合わせて使えば勤務時間も融通がきき、ある意味で、仕事と子育て、それから地域のさまざまな活動、こういうようなものと両立ができるわけで、私は極めて有効な手段だろうなというふうに思っているんです。政府も、このテレワークについてはできるだけふやしていこう、こういうようなことでありまして、テレワークの就業者の人口に占める割合を二割にしよう、こういうようなことであります。

 私は、厚生労働省もテレワークを推進してもらいたいと思いますし、ある意味で、厚生労働省のさまざまな業務の中で、在宅でできる仕事はぜひ切り出してテレワークしてもらいたいというふうに思っているんですけれども、これは役所の方から答えてもらいましょうか。

青木(直)政府参考人 育児や介護、自己啓発など、労働者の抱える事情が多様化する中で、テレワークはワークライフバランスを図る上で有効な働き方の一つでございまして、その普及促進が重要であると考えているところでございます。

 テレワークの普及促進を図りますことは、先生御指摘のように政府全体の目標とされておりまして、厚生労働省といたしましても、テレワーク導入に関する相談、援助、シンポジウムの開催等によりまして、その普及促進に努めているところでございます。

 さらに、平成十九年度におきましては、中小企業を対象といたしましたテレワーク共同利用型システムの試行導入を総務省と共同して実施することとしております。

 今後とも、関係省庁と連携いたしまして、テレワークの普及促進に努めてまいりたいと思っております。

鴨下委員 次に、長時間労働について伺います。

 労働力調査によりますと、週六十時間以上働いている労働者の割合は高どまりしていて、三十代男性についていえば、五人に一人が週六十時間以上の長時間働いているわけでありまして、これはならして言うと毎日夜十時まで働く、こういうようなことであります。我々もきのうは夜中の二時まで働いていたわけでありますが。

 働き盛りが意欲を持って働くということでは、ある意味でめり張りをつけて、しかるべきときには一生懸命やるけれども、そうでないときにはある程度緩急をつけていく、こういうようなことなんだろうというふうに思っております。このたびの労働基準法改正案について、ワークライフバランス、それから長時間労働を抑制する、こういうような観点からどういうふうに取り組むことになっているでありましょうか。

青木(豊)政府参考人 今回は、長時間労働抑制対策といたしまして、仕事と生活のバランスの確保や健康確保の観点を勘案しまして、月八十時間を超える時間外労働について、法定割り増し賃金率を五割に引き上げ、特に長い時間外労働を強力に抑制しようとするものであります。

 それからまた、法定割り増し賃金率の引き上げだけではなくて、大臣告示を改正いたしまして、そこで定められた限度時間を超える労働時間をできるだけ短くするよう労使双方に努力義務を課す。それからまた、過重労働解消のためのキャンペーン月間を設けまして重点的な監督指導を行うことなど、こうした総合的な取り組みを通じまして、長時間労働を抑制してまいりたいというふうに思っております。

鴨下委員 今、法定割り増し賃金率について話がありました。

 一律五割に引き上げるべき、こういうような意見もあるわけでありますけれども、企業の事業運営に与える影響、あるいは、企業を急に圧迫することによって逆に雇用が損なわれる、こういうようなことにもなるわけでありまして、現実的な対策を講じなければいけない、このことについて見解をいただきたいと思います。

青木(豊)政府参考人 時間外労働は、本来、臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものであると思いますが、我が国の企業の行動として、生産変動に対して労働時間によって調整を行う、そしてできるだけ雇用の安定を図る、こういう行動も見られます。そういうことで、業務の繁閑に対応するため、この時間外労働はやむを得ない面があると思っております。

 また、法定割り増し賃金率を一律に五割に引き上げると、お話ありましたように、労働コストの引き上げとなりまして、企業活動に悪影響を及ぼすということも懸念されます。

 そこで、今回の労働基準法改正案におきましては、労働者のワークライフバランスに資するよう、特に長い時間外労働を強力に抑制するということといたしました。具体的には、月八十時間を超える時間外労働についての法定割り増し賃金率を五割に引き上げる内容としたところでございます。

鴨下委員 今のワークライフバランスの実現のために、もう一つは、年次有給休暇を有効に活用する、こういうようなことも重要なわけであります。

 今回の法案においては、年次有給休暇を時間単位で取得できるようにする、こういうようなことにしているわけで、私は、そういう意味では使い勝手がよくなったな、こういうふうに思っているわけでありますけれども、この改正の趣旨、内容について、時間がありませんから簡単に答えてください。

青木(豊)政府参考人 年次有給休暇につきましては、現行労働基準法では、日単位以上で取得するということとされております。特に子育て世代の女性から時間単位の取得の希望があったことを踏まえまして、今回、これを可能としようということでございます。

 これによりまして、子供の学校行事や通院など、多様な目的で有効に活用できるようになるということで、有給休暇の取得率も向上するということも期待しているところでございます。

鴨下委員 大臣に伺いますが、この法案の初めの議論の中で、いわゆるホワイトカラーエグゼンプション、こういうようなことについていろいろな議論がありました。そして、労働時間ではなく、ある意味で成果、こういうようなもので評価される仕組みをつくる必要がある、私もそういうふうに思っているんですけれども、ただ、そうすると無制限にいわば残業がふえていくんじゃないか、こういうようなことをおっしゃる方々もいました。

 そういう中で、今回はぎりぎりの選択でこういう基準法の改正ということに至ったわけでありますけれども、労働者の働き方を見直して、生産性向上につなげて、なおかつワークライフバランスを保ち、地域にもサラリーマンの皆さんが貢献でき、子育てにも寄与していく、こういうような意味で、労働者の働き方、特に今ホワイトカラーの方は多いですから、そういうホワイトカラーの働き方について大臣のお考えを最後に伺って、質問を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。

柳澤国務大臣 今委員がおっしゃるとおり、子育て、それから生産性向上のための自己啓発、あるいは地域社会、家族、こういったようなものに時間を割いて、本当に仕事と生活が調和のとれたものになるということ、つまり、ワークライフバランスはこれからの働き方の中でキーになるコンセプトだ、このように考えているわけでございます。

 そういう意味で、今回の労基法の改正におきましては、一方で長時間労働の抑制ということを図ると同時に、仕事というものを、今委員が仰せられるように、労働時間ではなくて成果ではかる方がいい、そういう一定のホワイトカラーの仕事というものがあるわけでございます。

 そういうものについて、私どもは、このワークライフバランスを実現するために自己管理型労働制というものの導入を考えたわけでございますけれども、これにつきまして、今委員が言われるように、検討の過程で、残業が無制限になるじゃないか、しかもその残業代というものが何も払われないじゃないか、こういうことの議論が非常に強くなりまして、私どもの本来考えている制度の趣旨や目的や具体的な内容について、なかなか議論を深めることができませんでした。

 そもそも、こうした問題については国民の深い理解が前提になるという考え方から、このように残業代ゼロ労働制というようなことを印象づけられてしまいますと、これを乗り越えることはなかなか短時間ではできない、このように我々考えまして、今回、労基法の中に盛り込むことはあきらめたということでございます。

 しかし、いずれにいたしましても、ホワイトカラー労働者の働き方の改革というものは、働く人たち、国民の理解を得て進むべき課題でございますが、この自己管理型労働制につきましても、今後とも国民の理解を得ながら検討を進めたい、このように考えているところでございます。

鴨下委員 今大臣おっしゃるように、ホワイトカラーもさまざまな価値観の方がいらっしゃるわけで、ある方はテレワークで海の見えるようなところに住んで、そしてコンピューター端末で仕事をしたいという方もいらっしゃるし、それから、余り長時間通勤するのは嫌だから、できるだけ都市のマンションに住みたいという方もいらっしゃる。いろいろな方がいるわけで、いろいろなメニューを提示するのが行政の仕事なんだろうというふうに思います。そういう意味では、私は、ホワイトカラーの働き方の一つの選択肢が今回議論できなかったということは非常に残念に思っておりますけれども、引き続き、そういうような方の価値観を吸収するような制度もぜひ考えていただきたいというふうに思います。

 そして、今までは、規格大量生産型の産業のときには、全員が工場に行って、九時にタイムカードを押して、ラインが動き始めて、みんながベルトコンベヤーで頑張るという仕事が主でしたけれども、今はもうまさに、それぞれ専門知識を持って、専門的な分野でそれぞれが働くわけですから、さまざまな働き方、こういうようなことを認める社会にしていかないといけないと思います。もう全員が九時にどっとラッシュの電車に乗っていく、こういうようなことではなくなったんだということを、きょう来ていませんけれども、野党の皆さんにも、労働組合の皆さんにもわかってもらうような、こういうようなことを力説していただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

櫻田委員長 次に、冨岡勉君。

冨岡委員 おはようございます。自由民主党の冨岡勉でございます。

 きょうは、労働基準法の一部を改正する法律案、特に長時間労働という観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今、鴨下先生おっしゃっていたように、きのう我々は、徹夜とはいかないまでも、長時間労働になってしまったんですね。やはり、昼ぐらいから非常に調子が悪くなるんですね。それで、この法律にある割り増し賃金をよこせとは言いませんけれども、何とかしてくれないかという一つの気持ちを、皆さん多く持たれているんじゃないかと思います。

 そこで、これが常態化しているような職種、医師の対策、医師不足の元凶とされている過重労働についてスポットを当てて、きょうは質問をさせていただきたいと思います。

 実は我々も昨夜、そういう状態になったんですけれども、これは記憶に新しい事件として、私は長崎に住んでおりますが、長崎市長が二発の凶弾によって倒れられ、亡くなられた悲しい事件が最近起こったわけでございます。非常に憤りを感じるとともに、銃刀法の規制等も考えているところであります。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

 そういった面とはまた違った切り口からこの事件を見てみますと、まず、その日の午後の七時四十八分に撃たれています。それから救急車が来て大学に運んだわけでございますけれども、当時の江石教授、心臓血管外科、お話を聞きに行ったんですけれども、その日は朝の八時ぐらいに出てこられて、八時過ぎに一報が入ったわけなんですが、そろそろ帰ろうとしていたときに救急車で市長が搬送され、これが八時ちょっと過ぎでございます。

 それからどういう対応がなされたかというと、緊急手術、実際はもう即死の状態ではあったみたいですけれども、一応、体外心、いわゆる心臓の、修復するためにシャントみたいのをつくるわけなんですけれども、そういういわゆる医療処置をされまして、残念ながら、午前の二時半ぐらいに亡くなられております。

 その間は、もちろん医局員、それから看護師さん等はてんてこ舞いの状態になっているわけなんですが、記者会見をされたのが午前の四時半です。私もそれを見ておりました。

 それから法医解剖というのをやっています。法医解剖は主治医が付き添わないとできないわけなので、これが行われたのが早朝になります。法医解剖が終わったのが十時ぐらいで、私もそのときちょうど駆けつけて、法医の霊安室まで行ったんですけれども、そのとき、当直の先生が一人おられましたか、あとはやはり診療に帰られています。外来診療でございます。

 江石教授も、教授ですから外来を診ている。そして、その日の江石教授のやられたことは、外来が終わって、いろいろな診療をやられて、たまたまその日、二つの学術集会があったということで、それで夜の十時ぐらいに帰られたということです。

 考えてみますと、朝出てきて、くるっと夜回って夜中の八時、丸一日して次の日の十時ぐらいということになりますと、三十八時間の勤務ということになります。大変な激務でございます。これは、教授がいないとやはりできないということですね。医局員もそういうことになってしまいまして、結局は、次の日の手術は延期したそうでございます。この延期というのは、患者さんにとっては大変なことです。

 そこで、三次救急病院につきましては、こういった超過勤務の実態が見受けられるのは当たり前のことなんです。この実態についてどのように認識しているのかを、まず簡単に御説明いただきたいと思います。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

松谷政府参考人 今委員御指摘のとおり、病院の勤務というのは、命を扱う現場ということもございまして、勤務環境は大変厳しいものがございます。若手の勤務医の方々を初めとして、今教授の例が出されましたけれども、大変厳しい状況に置かれているものと私どもとしても認識をしておるところでございます。

 厚生労働省におきましては、一昨年に、需給に関する検討会の中で、医師の勤務状況を把握するためにアンケート調査を行ったところでございます。その結果によりますると、常勤の病院勤務医の一週間当たりの勤務時間は、休憩等に当てた時間も含めまして病院に滞在したすべての時間を合計いたしますと、平均で約六十三時間でございました。

 この調査結果は、約四千人の常勤の病院勤務医に対して行ったものでございまして、回答した医師が属する医療機関や診療科によって程度の差はあると思われますけれども、この結果によりましても、病院勤務医の厳しい勤務環境の一端が示されているのではないかと考えております。

冨岡委員 六十三時間というのは、大体週四十時間以上になると超過勤務ということになるわけで、これは平均すると六十三時間ですけれども、例えば百時間以上働いている方は、もしわかれば何%ぐらいおられるか。平均値が六十三時間ということは、恐らく中央値もそこら辺だろうと思うんですけれども、どうなんでしょう。

松谷政府参考人 大変申しわけございませんけれども、この場では細かいデータがございませんので、にわかにはちょっとお答えできないということです。

冨岡委員 では、また後ほど教えてください。

 それでは、このアンケートという言葉がちょっと気になるんですけれども、普通、会社に行きますと、がちゃんと、タイムカードとかありますね。そして、入っていって、それから退社して、入社と退社が正確に、何時から何時までその人が働いたというのが全員わかります。これで、およそ国公私立の、独法化されたとはいえ国立病院、大学病院として、そのうちで、アンケートというのがなぜとられたかの理由と、いわゆるタイムカードなんかがあればアンケートはまず必要なくなってくるんじゃないかと私自身は思うんですけれども、正確に把握される手段を講じられているかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。

松谷政府参考人 それぞれの方からお答えをいただくという形でのアンケートということで、研究の中で行われてございます。

 今タイムカードの御指摘でございますけれども、病院という仕事の性質上だと思いますけれども、国立高度専門医療センター、また今御指摘の、大学病院や国立病院機構における国立病院でのタイムカードの導入というのは行われておらないということでございます。ナショナルセンターにおきましては、人事院規則等に従いまして、他の行政機関もそうでございますけれども、出勤簿及び超過勤務命令簿によっておるというところでございます。管理者がそれぞれ管理簿等で就業時間を管理しているというのが病院の通常の状況だというふうに認識しております。

冨岡委員 要するに、アンケートに頼らないと正確な、アンケートというのは、デビエーションというか、揺れがある。思い、正確とは言えない部分があるわけで、過剰に申告する場合もあるし、過少に申告されるのもあると思います。

 結局、今のお答えだとなされていないということですか。されているのか。大体何%。何か今幾つか挙げられたと思いますけれども、全くゼロなんですか。正確を期するような数値が出せるのは、アンケート以外はないということですか、その確認をしたいと思います。

松谷政府参考人 タイムカードの導入は、先ほど申し上げましたように、ナショナルセンターあるいは国立病院等では行われておらず、出勤簿あるいは超過勤務命令簿などによっておりますので、出勤している日とか、あるいは遅刻、早退等はそれを集めればわかると思いますけれども、いつ出勤していつ帰ったか、滞在期間が何時間であったかということについては、調査をしないとちょっとわからないという状況だと思います。

冨岡委員 要するに、ないということですね。野党さんがおると、おいおいというような声が聞こえてくるような気が僕はするんですけれども。

 アンケートというのは、手間も暇もかかるし、お金も本当にかかるわけなんですね。だから、国立大学というのは八十カ所ですか、わずか八十カ所に設置すればいいわけで、それできちんとした実態が把握できるわけなんですけれども、非常にそういう意味では、実態がわからないままアンケートというファジーな調査でやっているという印象を持つわけでございます。

 それでは、質問ですけれども、六十三時間という数値が出ましたけれども、これはやはり労働基準監督機関においては、そうした正確な実態は把握していないとしても、アンケートでそういう値が出たということは、今までにどういう対処をされたのか、ちょっとその点をまずお聞きしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 勤務医の労働時間の関係でございますけれども、御指摘の六十三時間というアンケートの調査でございますけれども、これは、私どもが承知しておりますのは、実際の始業、終業時間から算出されたいわば滞在時間というふうに承知をいたしております。その時間の中には、勤務時間中の休憩時間あるいは仮眠時間なども含まれるということだろうと思います。

 この休憩時間につきましては、労働基準法上付与が義務づけられている休憩時間に当たるものは、労働者が労働から離れることが保障されているということでありますので、労働時間に当たらないというふうになっております。

 したがって、週六十三時間と労働基準法上の週四十時間との関係は、直ちにはリンクさせるというのは難しいかなというふうに思っております。

 いずれにしても、勤務医の労働時間に関しましては、平成十七年における監督指導結果を見ますと、医療保健業全体に対しましては、千七百五十九件、監督指導を実施いたしております。おおむね立ち入って監督をするということでありますけれども、そのうち何らかの労働基準関係法令違反が認められたものは千三百六十三件、違反率七七・五%でございます。全産業の違反率に比べまして高率となっております。

 違反事項別に見ると、労働時間に関するものがやはり多うございまして、八百六十五件、違反率が四九%ということになっております。

 私どもとしては、こういった監督指導の結果、労働基準関係法令違反を初め法令上の問題が認められた場合には、改善指導を行いまして、改善報告を聴取いたしまして、確実な改善を行っているところでございます。

 いずれにしても、医療機関に対しましても、引き続き粘り強く指導してまいりたいというふうに思っております。

冨岡委員 普通の全産業、他の産業に比べて医療界の違反率は一〇%ぐらい高いというのはデータ的には出ているようでございます。では、わかった、改善しなさいといって、一体どういうやり方があるのか。

 例えば、病院に行きますと、看護師さんがおられます、薬剤師さんもおる、検査技師さんもおる。一般的に看護師さんというのは三交代制をとっていますね。だから、先ほど申しました江石教授がやられた手術の際、恐らくあれは看護師さんが五回ぐらいかわっています。ところが、執刀とかを担当している人は主治医が一人で対応するわけで、交代制で当たる職種として、医師の当直体制、あるいは救急医療の現場の医師あるいはスタッフ、これは同一視して対応するべきだと私自身は思うわけです。

 そこで、先ほど、大学病院を含めて国公立病院の医師の交代制、看護師さんみたいに交代制で対処している施設の数がわかれば、教えてください。そして、全体の何%ぐらいかをお答えいただければと思います。

松谷政府参考人 現在、国立高度専門医療センター、ナショナルセンターの場合でございますけれども、ここにおける交代勤務の対象となっておりますのは看護師及び助産師でございまして、先生御指摘の医師は該当しておらないという状況でございます。したがいまして、夜間及び休日の救急患者対応は、宿日直体制によって行われているという状況でございます。

 病院勤務医の厳しい労働環境につきましては、先ほど申し上げましたけれども、十分認識をしているところでございまして、昨日、政府・与党が取りまとめた緊急医師確保対策におきましても、過重な労働を解消するための交代勤務制など、病院勤務医の働きやすい勤務環境の整備が盛り込まれたところでございます。

 国立高度専門医療センターにおきましても、医師の宿直勤務の勤務状況や配置状況等を踏まえながら、医師の確保あるいは経営状況などにも留意しながら、医師の働きやすい勤務環境について、鋭意検討をしてまいりたいと考えております。

 先生お尋ねの国立大学病院につきましては、申しわけございませんけれども、今手元にデータを持っておりません。国立病院機構の各病院における交代勤務の取り組み状況でございますけれども、国立病院機構の各病院はおのおのの病院が提供する医療が多様でございまして、医師等の勤務体制につきましては、病院の機能及び提供する診療内容に応じて検討されるものでございますが、救命救急センターのある病院などでは交代勤務を実施されているということを承知してございますけれども、その割合については、申しわけございませんけれども、今手元にございません。

 いずれにしても、国立病院機構においても、医師確保は困難な状況ではございますけれども、過重な労働を解消するため、働きやすい勤務環境の整備というのは大変重要な課題であると認識して、鋭意その改善に努めておるところでございます。

冨岡委員 今の一連の質問で、多分、早く把握しなくちゃいけないデータがお手元にないと僕は思います。国立大学の交代勤務の、わずか八十カ所ですよ。八十カ所です、国立大学病院。

 そうしたら、例えば、全国に何カ所あるかわかりませんけれども、救急二次病院、何千カ所かあるんでしょう。それで、交代勤務制にしているのは何カ所ぐらいですか。アバウトな数値、一度ぐらいちょっと見たことがないと、その数値というのは出していないということになるんです。大体、人間というのはそんなものですよ。どうですか、若い方でもいいですよ。

松谷政府参考人 国立大学病院については文科省に問い合わせてみたいと思いますが、救急病院、二次救急の病院の状況はどうかということでございますが、先ほど申しましたように、救命救急センターの場合は、これはもう二十四時間対応ということが前提となってございますので、交代勤務をしている病院も相当数あるんではないかと思います。

 一般的に、これは見聞した範囲内での印象というか感想でございますけれども、病院における看護師さん、助産師さんなどと違いまして、お医者さんの場合は交代勤務をとっていない、そういうやり方で今までやってきたという、伝統というのがございますので、お医者さんの交代勤務をとっているところは、現段階ではそんなに多くないのではないかなと思っております。

冨岡委員 うちの県のことを言いますと、ゼロです、ゼロ。救急病院で。大学ももちろんない。国立病院もありますけれども、一切ございません、交代制をとっているのは。恐らく、限りなく一けたの下の方に、全国でとれば。だから特殊な病院だけが、救急救命をやっている特殊な部分だけが交代制をしているというのが実態だというふうに思います。何か反論があれば。オーケーだったらこれはオーケー、そういうものなんですね。だから、いろいろ過労死とかという問題が生じてくるんだろうと私自身は思っております。

 したがって、そうした長時間労働の抑制策として、今までにとってきた、実態がわからぬからそれの対応策がとれていないと言えばそれで終わってしまうんですけれども、その数値目標を挙げて、例えば交代制に五年以内に三〇%あるいは五〇%になるとか、過去においてはこういう対策を講じてきたんだというものがございましたら、ちょっとお聞きしたいと思います。

松谷政府参考人 お医者さんの勤務状況でございますけれども、今先生御指摘の交代勤務などは、看護師の状況とは違うというふうに先ほど申し上げましたが、これは一つには、患者さんとお医者さんというのは主治医、患者さんという関係にございまして、主治医制をとっている病院がほとんどでございまして、なかなか交代勤務ができないという状況があるのではないかと思っております。

 また、今御質問の医師の超過勤務の状況についての対応ということでございましたけれども、先ほど申し上げましたように、政府・与党でも、この問題について新たに、交代勤務も含めまして対策をとっていきたいというふうに考えております。

 このためには、一つには、一人のお医者さんに業務が集中しないように、お医者さんの集まる拠点病院をつくっていく、あるいは、病院、診療所などの医療機関の相互のネットワークをつくっていく。さらに、病院勤務医の過重な負担の軽減という観点からは、電話相談で済むところは電話相談で行う、あるいは、開業医さんに前さばきをしていただくところはしていただくといったような、病院勤務医と開業医の役割の明確化を図る。

 また、近年増加しております女性医師の継続的な就業を支援して、女性医師の参加がより大きくなるようにするといったようなさまざまな点からの取り組みを進めていくことが大事だと思っておりまして、これを今進めているところでございます。

冨岡委員 対策、いろいろあると思いますよ。ただ、総花的にそういうふうに言っても、それに抗してやはり医師不足というのが進んでいますし、その元凶が過重労働、幾つか理由はあると思います。

 警察とか消防士とか看護師さんを含めて、きちんと制度にすれば、一過性な大変な状態というのは、それは災害時とかというのは当然出てくるわけでありまして、それを私は論じているわけではない。恒常的にそういう状態になっているのを、なぜ手を打っていないのかということを論じている。つまり、労働基準法の一部を改正する法律案の概要ということで、これはもうあめですね、少し賃金を上げたら何とか改善するんじゃないかと。これでは医療の現場は、この法案では全く動きません。

 ただ、診療報酬とかを上げても間に合わない状態になっているのか、何らかの、まだ可逆的な状態なのか、リバーシブルというか、不可逆的なのか、やらないとわからないかもしれぬ。私自身の感覚は、保険点数とかいろいろな、代替休日をつくるとか、振りかえをして勤務時間を少しにするとか、その程度のものじゃもう追いつかぬのじゃないか。つまり、お医者さんをもう少しふやして、交代要員をきちっと確保して、ただ、医師不足に拍車をかけることになりますから、それに対する手当てとかをきちんとしないと、この状態は改善しない。

 武見先生、非常に医療分野に造詣の深い、いろいろな御意見をお持ちですので、その点につきましてはいかがでしょうか。

武見副大臣 御指摘の点については、既に答弁にも立ちましたように、労働基準局、それから医政局、そしてまた配置基準や診療報酬の観点からなれば保険局、それぞれが、実は、この解決策を総合的にきちんと組み立てようとすればかかわってくる問題だということは御案内のとおりでありますし、また同時に、医師数をふやすということになるとすれば、これは文部科学省ともきちんと連携をして協議を進めていかなければならないという課題になってくるわけでございます。

 そういう中で、私、労働を担当している立場で、労働基準局というのは、先ほどもお話がありましたとおり、平成十四年度から平成十六年度にかけて、こうした勤務医の職場実態にかかわる調査を実はかけておりまして、そして、それによって、最終的には、五百九十六の医療機関を対象とした個別指導まで実際にはやっているわけであります。そして、その結果を受けて、それぞれの違反事例というものを確認した上での是正指導をやっております。この是正指導の結果を見てみますと、やはり医師を増員させて、そして交代制を導入する形によって是正措置を講じているわけです。

 このような形で、実際に労働行政の形で、そしてまた警察行政的な手法で取り組むということには限界があります。しかも、これを余りにも極端な形で推し進めるというような形になった場合には、現実にまた現場におけるさまざまな混乱も想定されるわけであります。

 したがって、そういうことをも加味しながら、現実をきちんと踏まえた上で、労働基準局、そしてまた保険局、そして医政局との間で緊密に連携をとりながら、こうした解決策を緊急に講じていく必要がある、こういう認識を持っております。

冨岡委員 ありがとうございました。

 そういうふうなことになると思いますけれども、ただ、先ほどから質問しているんですけれども、やはり実態を完全に正確に把握していないというのを私強く感じました。つまり、普通の会社だったら、だれがどうして会社におって、どういう時間帯に何を、まあ何をまではわからぬかもしれぬですが、どうなっているかがわかるわけなんですね。病院でも職種によっていろいろなカードの色を変えれば、看護師さんがどうしている、助手さんがどうしているというのがわかるわけなんですよ。

 それがないで対策を論じるとか何名不足を補えばいいとかというのは、データの出ようがないんじゃないですか。だから、まずその点を、国公立病院あるいは救急病院の、例えば交代制なんかを含めた明確なデータの集積を行って、それをベースにしてやはり対策等を講じなければいけないのではないかと思います。

 どうなんですか、柳澤大臣。タイムカード一つ、わずか二百施設ぐらいはつけられぬのですか。でないと、勤務状態とか、どこでだれが深夜に働いて、深夜はこの病院は何人おるなんというのはわかりっこないじゃないですか。どうなんですか、そこら辺は。

 まずは緊急にそういう施策を講じて、各病院の実態把握をした後、看護師なり医師なりあるいは補助看さんなり、どういう労働条件下で労働をしているのか、そういう施策を緊急に施すべきじゃないんでしょうか。どうですか、大臣、お考えがあれば。

柳澤国務大臣 今、病院の勤務医の先生方が過重な、厳しい労働環境のもとに置かれているという問題意識は、我々は非常に強く持っているわけでございます。

 そうした中で、私どもとして、先ほど医政局長から答えがあったように、アンケートということに先生御不満のようですけれども、先生方に対するアンケートを、先生方が見識の高い、また良識の豊かな対象であることを考えると、かなりの実態がつかめるのではないか、こういうことで、その調査もさせていただいております。それから、日本病院会でも最近実態調査で非常に厳しい状況だということを我々には教えていただいているわけでございます。

 そういうようなことの中で、厳しい勤務時間ということで、これをどうしたらいいかということは、今医政局長からも申し上げたように、最近、政府・与党挙げての、医師確保対策というものを新たにまた練り直そう、これを骨太の方針に入れ込んで、そしてまた必要な予算というようなものについては年末の予算編成の中でしっかり確保しよう、こういう動きがあるわけでございます。

 今先生から、タイムカードの機械ぐらいやったらどうかとか、あるいは今の宿日直に対する交代制というものを導入したらいいかというようなことで、もろもろ御提案もあるわけでございますけれども、私どもとしては、今回の新しい医師確保対策の中でいろいろと取り組ませていただきたい、このように考えている次第でございます。

冨岡委員 何か前に進んでいくかなというような答弁だけれども、なかなか、難しいとは僕は言うべき部分じゃないと思いますよ、今のタイムカードの問題なんというのは。やりましょうねというぐらいの答弁があってしかるべきじゃないか。そんな、一般の会社がもうたくさんしているわけであって、何で国立大学病院の八十病院ぐらいできぬのかなと思って、不思議でなりません。

 そういう意味で、やはり少し感覚がずれているかなというようなのを持ちましたよ。やはりもう少しきちんとしたデータに、証拠に基づいたような対策を打たないと、ファジーな、アンケートというのは実態が僕は少し乖離している部分もあるかと思います。

 以上、ちょっと苦言みたいなことになりましたけれども、当局の前向きの御対処をお願いしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、新井悦二君。

新井委員 自由民主党、新井悦二です。

 本日は、柳澤大臣そして議員の皆様方におかれましては、昨日の徹夜国会、本当にお疲れさまでございました。また、きょうは野党の皆様方、出席しておりませんけれども、やはりこういう議論の場できちっと論議するのが国会議員の姿だと思いますので、これは断固として抗議していきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いします。

 それでは、きょうは、労働基準法の一部を改正する法律案、そしてまた労働契約法、最低賃金法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 その前に一問だけ、ちょっとお伺いしたいことがありますので、よろしくお願いします。

 私の知人で中枢性尿崩症に苦しんでおられる方がおります。そのことについてちょっとお聞きしたいと思います。

 下垂体機能障害は、難病の四条件であります、まず希少性と、原因不明、効果的な治療法の未確立、そしてまた生活への長期にわたる障害、この四つの条件を満たし、そして、約三十年も前から、北海道とか栃木県、静岡県、和歌山県の四道県、さらには市町村におきましては、名古屋市が独自助成をしている難病であります。治療が難しく、生涯にわたり支払う高額な医療に苦しみ、経済的な理由から最善の治療を受けられない患者さんも少なくないと聞いております。

 また、患者の会では、署名活動を初めとした難病指定の活動を頑張っております。私といたしましても、ぜひとも特定疾患治療研究事業に指定していただきたいと思っておりますけれども、国はどのようにこのことについてお考えなのか、お伺いしたいと思います。

外口政府参考人 特定疾患治療研究事業の対象疾患につきましては、希少性、原因不明、効果的な治療方法未確立、生活面への長期にわたる支障の四要件を満たす疾患の中から、さらに、特に治療が極めて困難であることなどを総合的に勘案して、医学、医療の専門家から成る特定疾患対策懇談会において選定されております。

 この特定疾患治療研究事業によります医療費補助の対象の見直しにつきましては、昨年末、特定疾患対策懇談会において検討されたところであります。その後、現在事業の対象となっている方々の医療の継続を図ることなど、さまざまな御意見があったことを踏まえまして、平成十九年度においては、前年度までと同様の疾患に対して事業を実施することといたしております。

 なお、中枢性尿崩症につきましては、医療費補助の対象とはなっておりませんものの、難病研究を目的とした難治性疾患克服研究事業の対象疾患として、治療法の開発等に向けた研究費の助成を行っているところであります。

 御指摘の特定疾患治療研究事業の対象のあり方につきましては、さまざまな御意見を伺いながら、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

新井委員 経済的な負担というのがかなりあると思うんですね。そこら辺のことを、私たち政治家そして国というものは弱者に手を差し伸べることが仕事であると思っておりますので、ぜひとも前向きにまた取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それでは、本題に入りたいと思います。

 初めに、最低賃金法について、生活保護との整合性についてお伺いいたします。

 賃金の水準が生活保護を下回る都道府県があると聞きましたが、最低賃金の水準が生活保護の水準より低いと、額に汗して働くよりも生活保護を受けた方がよいということになって、就労意欲がそがれるのではないかと思っております。

 そこで、最低賃金が生活保護を下回るという指摘につきまして、今回どのようにこの改正法案で対応しているのか、副大臣にお伺いしたいと思います。

武見副大臣 本来、この最低賃金制度というのは、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障して労働条件の改善を図るということを目的としているわけです。ただ一方、近年、労働者の最低限度の生活を保障する観点、それからモラルハザードの観点、こういったところから、生活保護との整合性の問題が指摘されるようになりました。

 このため、最低賃金法改正法案におきましては、最低賃金制度がセーフティーネットとして十分に機能するよう、地域別最低賃金について、その水準を生活保護との整合性も考慮して決定するということを明確にしているわけであります。

 この最低賃金の具体的な水準につきましては、地方最低賃金審議会、ここでの審議を経て決定されるものでございますけれども、今回のこの法案が成立した後、審議会におきまして法改正の趣旨に沿った審議が行われ、その結果に沿って、現下の雇用経済状況をしっかりと踏まえた上で、最低賃金のそれぞれの地域における適切な引き上げ、こういったこと等の措置を講ずることとしております。

新井委員 私も、ぜひともそれをしっかりやっていただきたいと思いますけれども、この最低賃金制度について、民主党は、通常の事業の賃金支払い能力、これを考慮せずに最低賃金を決定するという改正法案を提出して、時給最低千円を目指すと主張されているようでありますけれども、最低賃金はやはり地域の経済力に見合ったものとすべきであると私も思っておりますし、このような主張は実効性があると言えるのでしょうか。

 そして、また政府にお伺いしたいと思いますけれども、最低賃金の決定に当たっては賃金支払い能力を考慮すべきものと考えますが、この点についていかがでしょうか。お伺いいたします。

青木(豊)政府参考人 地域別最低賃金の具体的な水準につきましては、これは三つの決定基準、一つは労働者の生計費、賃金、それから通常の事業の賃金支払い能力、この三つの決定基準に基づきまして、地方最低賃金審議会における地域の実情を踏まえた審議を経て決定されるということになっております。

 お話がありましたように、このうちの通常の事業の賃金支払い能力というのは、これは個々の企業の支払い能力ということではなくて、地域において正常な経営をしていく場合に、通常の事業に期待することができる賃金支払い能力をいうというふうに考えております。

 最低賃金は、国民経済あるいは当該地域の経済力の水準とかけ離れた水準で決定され得るというものでもない、御指摘のとおりだと思います。最低賃金の決定に当たりましては、御指摘のとおり、通常の事業の賃金支払い能力についてもやはり考慮されるべきものというふうに考えております。

新井委員 ありがとうございます。

 私も、この民主党の、これは最低千円以上を目指すと言っておりますけれども、かなりの地域差があると思っております。そしてまた、私の地元などでも、零細企業にとりましてはやはり負担となりますので、確かに労働基準法というのは労働者のための法律だと思っておりますけれども、経営者のこともある程度考えてあげないといけないと思いますので、ぜひともしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 続きまして、労働契約法について質問させていただきます。

 低賃金で働いている方々の中には、期間を区切って雇用されて、不安定的な地位にある方もいると思います。また、賃金などの労働条件が引き下げられて、紛争となることもあると考えられます。今回のこの労働契約法案は、そうした労働者に対する対策となっているのでしょうか。法案の趣旨につきまして大臣にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

柳澤国務大臣 今回の労働契約法案でございますけれども、二つ大きなポイントがあるということを、委員の今御指摘の問題にかかわるものですけれども、そういうふうに私ども考えております。

 一つは、有期契約の雇用という問題に今取り組ませていただいております。

 有期契約の問題というのは、契約期間中、突然雇いどめというようなことが起こって、これもまた紛争を惹起する要因になっているわけですけれども、今回の雇用契約法案におきましては、解雇できる、できないという場合に、契約期間中はやむを得ない事由がないときには解雇できないということを明確にさせていただくということと、もう一つは、契約期間が必要以上に細切れにならないように使用者に配慮を求める、こういうことをうたわせていただいておりまして、これによりまして、これらの労働者が、いわば安定した立場でもって安心して働けるようにすることを定めております。これが第一のポイントでございます。

 第二のポイントは労働条件の引き下げについての問題でございまして、ここでもまた多様な個別労働紛争が増加をしていることは、委員の御指摘のとおりでございます。

 この問題については、労働条件の設定、変更というのは労使の個別の合意によることを原則とするわけですけれども、それを原則としつつ、日本で広く行われている就業規則による変更というものについてどう考えるかということが問題でございまして、これにつきましては二つ要件が要る。

 就業規則による労働条件の変更には、一つは合理性というものが求められるということと、もう一つは周知が行われなければならない、こういうことをルールとして盛り込んでいるところでございます。これによりまして、合理的な理由がなく一方的に行われる賃金等の労働条件の引き下げが防止されるというふうになるものと考えております。

 こうしたことによりまして、今回の労働契約法案は、有期雇用、それから期間の定めのない雇用契約の者、双方にとって、労働者が安心、納得して働くことができるようになるものと考えております。

新井委員 ありがとうございます。

 続きまして、労働基準法改正法案についてお伺いしたいと思います。

 今回の法案では、どのようにして長時間労働というものを抑制していこうとしているのか、まず副大臣にお伺いしたいと思います。

武見副大臣 子育ての世代の男性というのが特に長時間労働している、そういう実態がございます。こうした長時間にわたり労働する労働者の割合が高い水準で推移しているということにまずどう対応するかを考えなければなりません。そして、労働者が健康を保持しながら労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、いわゆるワークライフバランスというものを踏まえた労働環境を整備する、こういう考え方にあるわけでございます。

 今回の労働基準法の改正法案におきましては、中小企業にも配慮をしております。その上で、月八十時間を超える時間外労働について法定割り増し賃金率を五割に引き上げるということ、これは義務化をしております。

 加えて、今度は、大臣告示を改正いたしまして、そこで定められた限度時間を超える労働時間について割り増し賃金率を引き上げるとともに、時間外労働そのものをできるだけ短くするよう、労使双方にこれは努力義務を課しております。

 加えて、時間外労働の削減に積極的に取り組む中小企業に対する助成金の創設、こういったことも踏まえて、総合的な取り組みによりまして、長時間労働抑制の実を上げていく、こういう考え方で組み立てられております。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

新井委員 現在、私たちのこの国の労働環境というものは、非常に多様化していると思っております。そしてまた、多くの問題を抱えているもの、このように思っております。

 特に、長時間労働問題、そして賃金不払い残業問題、また過労死問題とか年次有給休暇問題などいろいろあります。また、労働に対する成果主義とか能力主義、ホワイトカラー労働者問題など、労使間の立場を十分理解して、そしてまたよい環境をつくっていくということがやはり必要だと思いますので、しっかりとまた取り組んでいただきたいと思っております。

 続きまして、法定割り増し賃金率に関することについてお尋ねいたします。

 この法定割り増し賃金率は、企業の規模や業種によって、企業経営に甚大な影響を与えると思っております。また、長時間労働の増加を背景に、業務に起因する過労死、特にまた最近では、脳血管疾患及び虚血性心疾患による過労死認定を受ける人がふえていると思います。

 そこで、法定割り増し賃金率を月八十時間超の時間外労働から政府が五割とした理由についてお伺いしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 今回の法定割り増し賃金率の引き上げにつきましては、長時間労働抑制対策の一環といたしまして、特に長い時間外労働、これを強力に抑制しようとするものでございまして、仕事と生活のバランスの確保でありますとか、健康確保の観点などを勘案して、月八十時間といたしたものでございます。

 具体的に申し上げますと、長時間労働の実態を見ますと、週六十時間を超えて働いている者は、月に直すと八十七時間の時間外労働ということになりますけれども、こういう人たちが、子育て世代の男性の約五分の一存在をいたしております。このような働き方は、週休二日制、そして九時―六時というような会社で考えた場合には、毎日夜十時ごろまで残業する、一年を通じてそういうことをするという働き方でございますが、これでは家族と過ごす時間がほとんどなくて、仕事と生活のバランスの確保に問題があるというふうに考えられるということが一つございます。また、労働時間が週六十時間以上になりますと、労働時間の長さについて、かなり長いという意識を持つ労働者が最も多くなります。

 そういったことから、長時間にわたる時間外労働は、仕事と生活のバランスの確保に問題がある働き方であると思いますし、また、現行法、他の法律でも、労働安全衛生法におきまして、週四十時間を超える労働、つまり時間外労働が月百時間を超えて疲労の蓄積が認められる労働者に対しましては、医師による面接指導の実施が使用者の義務として既になされております。

 そういったことも考慮いたしまして、月八十時間を超える時間外労働について、法定割り増し賃金率を五割に引き上げることといたしたものでございます。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

新井委員 国際水準並みに五〇%以上にするとか、そういう意見もありますし、また、この割り増し賃金率が大体五二・二%を超えてしまうと、既存の従業員の時間外労働よりもやはり新規に採用した方が低コストになるんじゃないかとか、また、八十時間を超える企業というのは、日本で全体的にどのくらいあって、どのくらいの企業が影響するのかという、できればその統計を出して、しっかりと私たちに知らせていただきたいと思いますので、そこは要望としてお願いいたします。

 それでは、限度基準の割り増し賃金率に関する事項でありますが、今回予定されている限度基準改定では、限度時間を超えた時間の割り増し賃金率の引き上げ、特別条項つき協定を締結する場合の延長時間の短縮はそれぞれ努力義務にとどまっているわけであります。この割り増し賃金率と延長時間の努力義務についてきちんと実効性を上げていくことが重要であると思いますけれども、これについてどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 時間外労働の限度時間、これの目安を定めております限度基準告示につきましては、労働基準法の三十六条三項で労使の遵守義務が、また、同条四項で行政官庁による助言指導が規定をされております。これに基づきまして、時間外労働協定が労働基準監督署に届けられた際、あるいは個々の事業場への立ち入り監督、監督指導の際などに、必要な指導を行いまして、その履行確保を図っているところでございます。

 今回の限度基準告示の改正による割り増し賃金率の引き上げ、それと延長時間短縮についての労使の努力義務についても、このような監督指導を通じて、その実効を上げてまいりたいというふうに考えております。

新井委員 最後に、法定割り増し賃金率の引き上げ分の割り増し賃金の支払いにかえての有給休暇についてお伺いしたいと思います。

 法定割り増し賃金率の引き上げ分の割り増し賃金の支払いにかえて有給の休暇を付与する制度は、時間外労働の抑制にも資するものであり、高く評価しております。しかし、問題は当該有給休暇を現実に取得できるかどうかであります。

 そこで、政府に、考えている有給休暇がきちっととれるような仕組みになっているのかどうか、お伺いしたいと思います。

青木(豊)政府参考人 有給休暇の取得につきましては、これは、取得率向上ということで、取得の促進に努めているところでございますけれども、今御質問の、この仕組みの中で実際にとれることになっているのかどうかということでございます。

 今お話あります割り増し賃金率の引き上げ、今回の引き上げによる、その引き上げた分の割り増し賃金、この支払いにかわる有給休暇につきましては、健康確保の観点から、実際に長時間労働を行った労働者に休息の機会を付与するというものでございます。事業場の実情を熟知した労使により、導入するかどうかを決めていただく制度でございますので、まずきちんと、その当該事業場の労使によりまして、これを決めた際にはきちんと休んでいただくということを考えていくということだと思っております。

 また、この仕組み上、有給の休暇を導入することを定めた場合には、使用者が休暇の日を指定して長時間労働を行った労働者に休暇を付与することとなります。その労働者が実際に休暇を取得した場合にのみ五割の割り増し賃金の支払いに代替できるものであるということを今回の法案には明記しておりますので、長時間労働を行った労働者が確実に体を休めることができる制度となっているというふうに考えております。

新井委員 そうですね。十分環境を整えるということはやはり健康にも必要でありますので、ぜひとも積極的にやっていただきたいんですけれども、時間外労働が多いということは、それだけその企業にとりましても仕事が多いということでありますので、果たしてそれが、本当に有給休暇がとれるのかどうかなんですね。そこら辺のことも、やはり労働者の環境を整えるということと、また使用者の現状というものを十分理解して、そしてしっかりと取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 きょうはどうもありがとうございました。

櫻田委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 大臣初め皆様お疲れのことと存じますが、労働三法に関しまして質問を行ってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 今国会では、労働関連の重要法案が数多く提出をされまして、働く人たちを応援するための労働法制の見直しが行われているところでございます。

 これまでに、育児休業給付を引き上げる改正雇用保険法、また求人の年齢制限を禁止する改正雇用対策法、そしてパート労働者の待遇改善また正社員化を促進する改正パート労働法が成立をし、ようやく今回、労使間の対等な契約を目指す労働契約法案、そして割り増し率を引き上げるという労働基準法改正案、そして最低賃金を生活保護水準に配慮した形で引き上げる最低賃金法改正案の審議となったわけでございます。

 雇用問題が今日本にとって大変重要な問題であり、働き方の改革が確立される社会を築くことが最重要課題であると考えております。今回提出されました労働三法案は、さきに申し上げました雇用保険法、また雇用対策法、パート労働法とともに、今国会での最優先課題であると考えております。

 雇用労働問題を考えるとき、働いている人々が、先ほども話題となりました仕事と家庭のバランスのとれた生活、すなわち仕事と生活の調和、ワークライフバランスの施策を今こそ大きく打ち出す必要があると私は考えております。そのために、長時間労働の抑制を初めとする労働環境の整備が必要であります。

 公明党は、この点に早くから着目をいたしまして、仕事と生活の調和推進基本法案を提案することといたしました。今検討しているところでございます。また、政府は、子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議におきまして、働き方の改革によるワークライフバランス実現への取り組みが検討されていると伺っております。

 そこで初めに、柳澤大臣に、将来の日本を考えたときに、どのような社会を目指した対策を推進されようとしているのか、お伺いをいたします。

柳澤国務大臣 今回、労働関係法制ということで六本、あるいは勘定の仕方によって七本提出をさせていただいて、随分御審議を進捗させていただいたということに、委員も御指摘になられましたけれども、心から感謝をいたしたいと思います。

 私ども、今回、労働関係法制で考えたことは、一つは雇用対策でございます。それから非正規雇用の正規雇用への移行の促進、これが二つ目。それから三つ目は、どのような雇用の形態を選ぼうと、労働者が安心、納得して働けるというのが三つ目でございます。それから四つ目は、あるいは順番からいうと一番早くに言わなきゃならないかもしれませんけれども、仕事と生活の調和がとれるという今委員が最も重視しているポイント、こういうようなことを考えまして、それぞれの対応策をそれぞれの法律でとらせていただいたということでございます。

 今御審議をお願いしております三法案は、このうち、どのような形態をとろうとも労働者が安心、納得して働いていただける、そういう条件を整えようとすることが一つございまして、これの関連では、有期あるいは期間の定めのない労働契約を含め、労働契約の成立、変更、終了に関するルールを明確化しよう、これが一つでございます。

 それから、地域別の最賃の見直しを行って、どういう労働の形をとろうともしっかりした最低限の所得が得られるようにする。

 それから、ワークライフバランスでございますけれども、これは今委員が御指摘になられましたように、労働基準法の改正によりまして、今や恒常化していると言われる長時間労働を抑制しまして、余暇を生み出して、そして生活の面に時間を割いていただこう、こういうことであります。

古屋(範)委員 大臣から四点にわたりまして労働政策の重要な観点をお述べいただきました。

 次に、労働基準法改正案についてお伺いをいたします。

 今回の改正は、公明党が昨年発表いたしました少子社会トータルプランの中で、ワークライフバランスが可能な働き方改革の一環として提言した政策でございます。この中では、時間外労働の見直しの必要性を指摘し、中小企業に一定の配慮をしつつも残業代の割り増し賃金率の引き上げを主張し、取り組んでまいりました。

 党内でもかなりの、さまざまな論議がございました。このトータルプラン発表の際、対策本部の本部長である坂口元大臣は、割り増し率の引き上げに関しまして、抵抗を覚悟の上で提案している、ここまで踏み込まないことには少子社会対策は前に進まない、このように語られたわけでございます。私も、人口減少社会に突入した日本は思い切った構造改革をしなければならない、このように考えております。

 その意味で、今回の残業代割り増し率の引き上げが、晩婚化、非婚化、また少子化の要因と言われる長時間労働の抑制に威力を発揮することが大いに期待をされるわけでございます。

 今回の改正案では、四十五時間以下の残業を現行どおり二五%、そして四十五時間を超し八十時間以下、この間はそれより引き上げる努力義務を課す、そしてさらに大企業に限って、八十時間を超える場合には一律五〇%の割り増し率の支払いを義務づける、このようになっております。

 こうした割り増し賃金率の引き上げが真に長時間労働の抑制につながっていくものなのかどうか、大臣のお考えをお伺いいたします。

柳澤国務大臣 今回の労働基準法改正法案の大きな眼目は、割り増し賃金率を引き上げることによって長時間労働の抑制につなげたい、こういうことでございます。

 割り増し賃金率の引き上げに関しましては、大きく二つに区分されるということをぜひ御理解いただきたいわけです。まず、八十時間以下の時間外労働につきましては、これは大臣告示を改正しまして、そこで定められた限度時間を超える労働時間について、今委員が言われるように、割り増し賃金率は二五%以上のところで決めてくださいよということと、もう一つは、そもそもそこに入って長時間労働をするということについても双方抑制してくださいよ、こういうことを言っているわけです。

 ですから、四十五時間から八十時間のところについては、まず二五%以上にしてくださいということと、時間外の労働はできるだけ抑制してください、このことを努力義務として課している、こういうことでございます。これは労使双方に対して努力義務を課しているわけでございます。

 それから、月八十時間を超える第二の区分については、特に長い時間外労働ということで、労働基準法の法定割り増し率を五割に引き上げまして、かなりの負担を企業に課してこれを抑制する、こういうことをしております。

 これらの二つの方法を組み合わせることによりまして、仕事の効率化だとかあるいは業務処理体制の見直し等、さまざまな取り組みを労使が一体となって進めていただきまして長時間労働を抑制したい、このように考えているわけでございます。

古屋(範)委員 私も、一人の働く方に長時間労働を強いるよりはその分をシェアしていく、そして一人一人の労働時間を抑制していく、この考え方には共感するところでございます。

 次に、労働契約法についてお伺いをいたします。

 賃金、労働時間といった、働く方々にとって非常に重要な労働条件、その決定、変更過程において、労使間のトラブルが発生し、仕事をやめざるを得ないというような事態が発生したり、また、経営者側でいたずらに労働条件を変更される、このようなことがあれば、安心、納得して働くことは難しいわけであります。

 しかしながら、現実には、労働条件をめぐる労使間の紛争は近年増加基調にございます。こうした紛争が一たん発生をしたならば、働く方々に不利益が生ずるのはもちろんのこと、経営者側にとってもコストがかかる。労使双方にとって好ましくないわけであります。

 紛争を防止し、労使関係を安定的なものとして、労働者が安心、納得して働くことができる環境をつくるために、労働条件を定める労働契約について基本的なルールを定めることが必要であります。

 そこで、今回の労働契約法案により、紛争が防止され、働く方々が安心して働くことができるようになる、このようにお考えかどうか、厚労省のお考えをお伺いいたします。

青木(豊)政府参考人 個々の労働者の方々と使用者との間の紛争が大変ふえている、そういう中で、労働者の方が安心して働くことができるようにするためには、やはりこういった労働契約に関する基本的なルールを明確にすることが必要だというふうに私どもも認識しているところでございます。

 今回の労働契約法案では、そもそも労働契約は労使当事者が対等の立場における合意に基づいて締結されるべきという契約の原則、理念、そういったものを規定いたしました上で、労働契約の成立、変更、これは労使当事者の合意が原則であるけれども、就業規則による労働条件の変更は、合理的なものであれば可能だ、合理的なものであることが必要なんだということなど、労働契約に関する基本的なルールを明らかにいたしました。

 これによりまして、労働契約に関する基本的なルールが周知されまして、使用者の合理的な行動が促されるということにも期待をいたしておりますし、労働関係の紛争で多いのは契約の終了場面、解雇や雇いどめといった終了場面、それから労働条件の引き下げというような場面が多いわけでありますが、そういった紛争の未然防止に資することとなるというふうに考えております。

 こういったことによって、労働者が安心、納得して働くことができるようになるものというふうに考えております。

古屋(範)委員 時代とともに就業形態が多様化し、変化をしているということでございます。その中で、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資する基本的なルールを定めた法律案、このように高く評価をしたいと考えております。

 次に、有期労働契約について副大臣にお伺いいたします。

 時代とともに就業形態の多様化が進んでおりますが、パートタイム労働者など非正規労働者の割合が非常にふえております。それに伴って、正規労働者との格差が生じているとの指摘がございます。

 先般成立をいたしました改正パートタイム労働法におきまして、働き、貢献に見合った公正な待遇をしていくその決定ルールを整備するため、すべてのパート労働者を対象に、通常の労働者との均衡のとれた待遇確保措置の義務化が盛り込まれたところであります。今後、その万全な施行を図っていただきたい、このように考えております。

 この法案の審議の過程においては、パートタイム労働者以外の有期契約労働者につきましても、その雇用が不安定なものとならないよう意見が提示をされたところであります。

 そこで、今回の労働契約法におきまして、有期契約労働者に関して生じている問題などをどのように認識されつつ、それにどのような措置を講じていこうとされているのか、また、有期労働者の雇用の安定につながっていくことに関しましてお伺いしたいと思います。

武見副大臣 私どもも、有期労働契約につきましては、これは使用者のみならず労働者のニーズもあることから、有期労働契約が良好な雇用形態となるようにすることが重要だというまず基本認識を持っております。

 そこで、この有期労働契約の実態を見ますと、先ほど基準局長の方からも話がございましたように、実は、契約更新時、契約の終了場面における紛争がやはり多く発生をしておりまして、労働契約の終了というのは労働者にとって影響が大きいことから、今回の労働契約法案におきましては、契約期間中はやむを得ない事由がないときは解雇できないことを明確化すること、それから、使用者に対しまして、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮を求める、こういったルールを盛り込んでいるところでございます。

 これによって、有期契約労働者が安心して働くことができるようになるというふうに考えております。

古屋(範)委員 今御答弁にございましたように、契約期間中、万やむを得ない事由がないときには解雇できない、このことを明確化され、そしてもう一つ、契約期間が必要以上に細切れにならないよう使用者に配慮を求める、このような点に関しまして、有期契約労働者が安心して働ける、前進のための法律案、このように認識をいたしております。

 日本全体の雇用環境でございますが、四月の完全失業率三・八%ということでございまして、一時期と比べますと、労働環境、雇用環境、非常に明るい兆しが見えていると言うことができると思います。バブル経済崩壊の不況下におきましては、どうしても正規雇用が抑制をされまして、非正規雇用者が増大をいたしました。雇用の不安定化を背景といたしまして、長時間働いても生活保護水準以下の収入しかない、いわゆるワーキングプアと呼ばれる人々の存在、非常に大きな課題であると考えております。

 それに対しまして、このたびの最低賃金法改正案、格差是正またセーフティーネットを張っていく、これに資する法案である、このように考えております。

 このたびの法改正、三十九年ぶりとなる抜本的な改正であるということであります。最低賃金制度が働く人々の安全網、支えとして十分に機能し、所得格差の是正に資することができることを期待をしているわけでございます。

 この中で、地域別最低賃金をセーフティーネットとして義務化する、そして地域別最低賃金の原則として、生活保護との整合性に配慮する、そして地域別最低賃金の不払いを行った企業に対する罰金、これは二万円以下から五十万円以下に重くするというものでございます。中でも、生活保護に係る施策との整合性に配慮する、この地域別最低賃金の額が本当に引き上げられるのかどうか、ここが最大の焦点であると考えます。

 例えば都道府県ごとに設定されている地域別最低賃金、産業や職種にかかわりなくすべての労働者とその使用者に適用されるために、労働者の安全網としての機能を持っていますが、その不均衡がございます。

 平成十八年度地域別最低賃金、最高が東京都で時給七百十九円、次いで神奈川七百十七円、大阪七百十二円、最低が青森、岩手、秋田、沖縄の六百十円となっております。全国平均は六百七十三円ですが、最も高い東京都と最も低いこの四県とを比べますと、百九円もの差があるわけであります。一日八時間、二十二日間働いたとしても、東京では十二万六千五百四十四円、一方、この四県におきましては十万七千三百六十円と、実に一万九千百八十円、二万円近い開きが出てまいります。

 このように地域間格差が見られることとあわせて問題なのが、最低賃金水準自体が低いということでございます。

 全国平均六百七十三円、一日八時間働いたとしても月給は十一万八千四百四十八円にしかならない。さらに、毎年の改定額は二円から五円という低水準であります。この批判の的となっている、憲法第二十五条に基づき最低限度の生活を保障するために設けられている生活保護費よりも低額となっているわけであります。これでは、最低賃金制度に求められている、すべての労働者を不当に低い賃金から守るというセーフティーネットの機能が果たせないのではないかということが問題となってまいります。

 そこで、今回の改正を機に、各都道府県の地域別最低賃金を適正水準に引き上げる必要があると考えております。生活保護世帯以上の水準に見直し、生活保護費と最低賃金の逆転現象を解消すべき、このように考えますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 最低賃金制度は、賃金が低い、そういう立場に置かれた労働者につきまして賃金の最低額を保障することによって、労働条件の確保、改善を図ることを目的といたしております。

 今委員の御指摘にありましたように、最低賃金が低いのではないか、こういう御指摘でございましたけれども、労働者の最低限度の生活を保障するという観点、それからもう一つは、生活保護との整合性という意味で特にモラルハザードが起こってしまう、遊んでいた方が高い手当が手に入るというようなことがあってはならないわけでありまして、私ども、今度、生活保護との整合性というものをはっきり法律で書かせていただいたということでございます。それともう一つは、今委員が御指摘のように、地方最低賃金というものを必ず定めなきゃいけないということで義務化をして、その確保を図っている、こういうことでございます。

 最低賃金の具体的な水準ということは、もう委員も御案内のように、地方最低賃金審議会における審議を経て決定されるものでありますが、今回の法案が成立した暁におきましては、審議会において、今回行った法改正の趣旨に沿った審議が行われ、その結果に沿って、現下の雇用経済情勢を踏まえた適切な引き上げ等の措置を講ずることといたしております。

 私どもとしては、本当に上がるのかという委員の率直な御質疑に対しては、もうぜひ上げたい、こういうことで考えてまいりたいと思っております。

古屋(範)委員 大臣から率直に、ぜひ上げていきたいというようなお言葉をちょうだいいたしましたが、諸外国と比較した場合に、日本の最低賃金は六百七十三円でありますけれども、イギリスが千百九十円、フランス千二百三十八円、千円を超えているということでございます。逆に、アメリカは、現在六百十一円でありますが、二年後には八百六十円に引き上げられる見込みとなっております。

 このように、諸外国と比べて大きく低い日本の最低賃金水準、これについていかがお考えでしょうか。

青木(豊)政府参考人 最低賃金は各国でそれぞれ定められておりますけれども、その基礎となっておりますところがかなり異なっているというふうに思っております。

 我が国の最低賃金は、若年者などを含めまして、労働者の年齢にかかわらず一律に適用されるということでありますし、また、労働者を一人でも雇用していればすべての企業に適用されるというものでございます。しかし、諸外国ではそうでない国もございます。英、仏、米などのように年齢によって減額している国もございますし、また、適用対象企業に制限がある、一定の規模以上の企業の労働者というようなことにしているということもございます。そういう国もございますので、各国によって最低賃金制度そのものに違いがあるというふうに思っております。

 また、我が国におきましては、企業規模間の賃金格差が大きいという指摘もあるなど、賃金構造について、諸外国と異なった事情があると思っております。したがって、単純に最低賃金の水準そのものを外国と比較することは難しい面があるというふうに考えております。

 それからまた、最低賃金につきましては、多くの国におきまして、労使も参画した審議会において、賃金実態等を踏まえた審議を経て、その国々の妥当な水準として決定されているものであるということにも留意する必要があるというふうに思っております。

 いずれにしましても、地域別最低賃金につきましては、その水準を、生活保護との整合性も考慮して決定するということで今回の法案をお願いしておりますし、最低賃金制度が安全網として一層適切に機能することになるというふうに考えております。

古屋(範)委員 最後の質問に移ります。

 全国一律最低賃金というものを定めるべきだという指摘も一方でございます。民主党が提出をいたしました、きょうは審議に欠席をしております、重要な労働法案の審議に欠席をする、厳重に抗議したいと思いますが、民主党提出の最低賃金法の一部を改正する法律案の中で、全国一律の最低賃金を設けると規定しています。その上で、全国平均で時給千円を目指すと主張しているわけであります。もちろん、最低賃金を引き上げる、非常に重要なことではございますが、問題はその中身、また、実現性があるのかどうか、ここが非常に重要な観点になると思っております。

 私自身も、景気回復、雇用環境も明るくなってきた、回復の兆しを見せてきたとはいえ、やはり地方、中小企業まで十分行き渡っているとは言えない現状でいきなり平均千円という数字、これは非常に実現性がないのではないかと考える次第でございます。

 この最低賃金について、公明党は、生活保護との整合性を考慮して水準を引き上げるべき、このように主張をしてまいりました。それが今回、こうした改善策を盛り込んだ最低賃金法改正案となったわけでございます。

 いわば国民受けをねらった政策を打ち出しても、実現しなければ絵にかいたもちにすぎないというわけでございます。この民主党案に対しまして、副大臣の御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

武見副大臣 地域によって物価水準等に差があることは御案内のとおりでありますし、生計費も異なります。全国一律に最低賃金を定めるということは全く適当とは思いません。各地域の実情に応じて決定されるべきものと私どもも考えております。

 そしてまた、地域別の最低賃金を例えば千円へ引き上げるというようなことを急に大幅にしてしまいますと、これは今度は中小企業などを中心といたしまして、かえって労働コスト増ということが起きて、逆に雇用の機会が失われるというようなことが懸念されるわけでありまして、こういったことを考えますと、こうした案というものは余りにも非現実的だというふうに私ども考えております。

古屋(範)委員 私も同感でございます。

 国民生活に直結をいたしました労働三法、この早期成立を求めまして、質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十一分散会


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