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第29号 平成19年6月8日(金曜日)

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平成十九年六月八日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鴨下 一郎君

   理事 谷畑  孝君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 三井 辨雄君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    岸田 文雄君

      清水鴻一郎君    柴山 昌彦君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    松野 博一君

      松本  純君    松本 洋平君

      やまぎわ大志郎君    大島  敦君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    田名部匡代君

      筒井 信隆君    細川 律夫君

      柚木 道義君    坂口  力君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    菅野 哲雄君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            高橋  満君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     柴山 昌彦君

  阿部 知子君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     やまぎわ大志郎君

  菅野 哲雄君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  やまぎわ大志郎君   菅原 一秀君

    ―――――――――――――

六月七日

 難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患に対する総合的対策の早期実現を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第一四二二号)

 同(井上義久君紹介)(第一四二三号)

 同(江藤拓君紹介)(第一四二四号)

 同(大畠章宏君紹介)(第一四二五号)

 同(岡田克也君紹介)(第一四二六号)

 同(鍵田忠兵衛君紹介)(第一四二七号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一四二八号)

 同(小平忠正君紹介)(第一四二九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四三〇号)

 同(近藤洋介君紹介)(第一四三一号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一四三二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四三三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四三四号)

 同(田島一成君紹介)(第一四三五号)

 同(高木義明君紹介)(第一四三六号)

 同(武部勤君紹介)(第一四三七号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第一四三八号)

 同(谷畑孝君紹介)(第一四三九号)

 同(土井亨君紹介)(第一四四〇号)

 同(西野あきら君紹介)(第一四四一号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一四四二号)

 同(平田耕一君紹介)(第一四四三号)

 同(福井照君紹介)(第一四四四号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一四四五号)

 同(藤村修君紹介)(第一四四六号)

 同(保利耕輔君紹介)(第一四四七号)

 同(細川律夫君紹介)(第一四四八号)

 同(前田雄吉君紹介)(第一四四九号)

 同(桝屋敬悟君紹介)(第一四五〇号)

 同(松木謙公君紹介)(第一四五一号)

 同(松本洋平君紹介)(第一四五二号)

 同(松本龍君紹介)(第一四五三号)

 同(三日月大造君紹介)(第一四五四号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一四五五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四五六号)

 同(吉野正芳君紹介)(第一四五七号)

 同(渡部篤君紹介)(第一四五八号)

 同(新井悦二君紹介)(第一五三〇号)

 同(上野賢一郎君紹介)(第一五三一号)

 同(奥村展三君紹介)(第一五三二号)

 同(亀岡偉民君紹介)(第一五三三号)

 同(木原稔君紹介)(第一五三四号)

 同(郡和子君紹介)(第一五三五号)

 同(近藤基彦君紹介)(第一五三六号)

 同(田名部匡代君紹介)(第一五三七号)

 同(高木美智代君紹介)(第一五三八号)

 同(滝実君紹介)(第一五三九号)

 同(谷口隆義君紹介)(第一五四〇号)

 同(谷本龍哉君紹介)(第一五四一号)

 同(辻元清美君紹介)(第一五四二号)

 同(冨岡勉君紹介)(第一五四三号)

 同(中川正春君紹介)(第一五四四号)

 同(野田毅君紹介)(第一五四五号)

 同(原田義昭君紹介)(第一五四六号)

 同(平井たくや君紹介)(第一五四七号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第一五四八号)

 同(福岡資麿君紹介)(第一五四九号)

 同(古川禎久君紹介)(第一五五〇号)

 同(細野豪志君紹介)(第一五五一号)

 同(宮下一郎君紹介)(第一五五二号)

 同(森本哲生君紹介)(第一五五三号)

 同(山崎拓君紹介)(第一五五四号)

 同(山井和則君紹介)(第一五五五号)

 新・腎疾患対策の早期確立に関する請願(桝屋敬悟君紹介)(第一四五九号)

 同(滝実君紹介)(第一五五六号)

 同(冨岡勉君紹介)(第一五五七号)

 マッサージ診療報酬・個別機能訓練加算の適正な引き上げを求めることに関する請願(三井辨雄君紹介)(第一四六〇号)

 同(郡和子君紹介)(第一五五八号)

 労働法制の拡充に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四六一号)

 同(石井郁子君紹介)(第一四六二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四六三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四六四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四六五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四六六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四六七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四六八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四六九号)

 ウイルス肝炎総合対策の推進を求めることに関する請願(川条志嘉君紹介)(第一四七〇号)

 同(細川律夫君紹介)(第一四七一号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一四七二号)

 同(田名部匡代君紹介)(第一五五九号)

 同(山井和則君紹介)(第一五六〇号)

 すべての被爆体験者への医療受給者証交付に関する請願(冨岡勉君紹介)(第一五一五号)

 総合的な肝疾患対策の拡充に関する請願(冨岡勉君紹介)(第一五一六号)

 パーキンソン病患者の療養生活上の諸問題救済策に関する請願(冨岡勉君紹介)(第一五一七号)

 安全・安心の医療と看護の実現を求める医療従事者の増員に関する請願(江藤拓君紹介)(第一五一八号)

 同(川内博史君紹介)(第一五一九号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第一五二〇号)

 同(田嶋要君紹介)(第一五二一号)

 同(田名部匡代君紹介)(第一五二二号)

 同(辻元清美君紹介)(第一五二三号)

 同(中川正春君紹介)(第一五二四号)

 同(萩原誠司君紹介)(第一五二五号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第一五二六号)

 同(古川禎久君紹介)(第一五二七号)

 同(村井宗明君紹介)(第一五二八号)

 同(山田正彦君紹介)(第一五二九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働契約法案(内閣提出第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案及び最低賃金法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長青木豊君、職業安定局長高橋満君、老健局長阿曽沼慎司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三井辨雄君。

三井委員 おはようございます。

 本日の質問に入る前に、私からも、これまでのこの社会保険庁改革関連法案について述べたいと思います。

 実質、五月九日から本委員会で審議に入ったわけでございますけれども、この審議時間は三十六時間三十五分、そしてまた、年金時効特例法案という与党から出されましたこの法案は、たったの四時間三十五分、そしてまた、この委員会の持ち方もまさに委員長職権で、これまで強行的に採決をされた。まさに、私たちとすれば、問答無用のこの与党の姿勢に対して、ますます国民が年金不信に陥ったんじゃないかな、こういうぐあいに思っているわけでございます。

 また、一昨日、私どもの長妻議員が、消えた年金の記録五千万件以外に、大臣の御答弁にありましたように、また新たに一千四百三十万件の未入力の記録が存在することがわかった。これだけ重大な問題が次から次へと、本当にもうこんなによくもあるなと思うぐらい出てきていると思うんですね、大臣も大変御苦労をされているとは思うんですけれども。

 しかし、年金を頼りにこれまで一生懸命働いてきた皆さん、そして、これを老後の糧にする、まさに生活の命綱でもあるわけですね。そしてその中で、強制徴収でありますこの支払いをしてきた、まさに応じてきた皆さんが、まさにこんな短時間で、そして次から次に、せっかく領収書があり、また判明したら時効だと言われた、これでは本当に国民もたまったものじゃない、こういうぐあいに思うわけでございます。私のところにも、五月九日、この審議に入りましてからきのうまで、約三千七百通もはがき等をいただいております。何としてもこれは全部洗いざらい出してほしい、そして我々の年金は守られるのだろうかと。

 きょう私は実はタクシーで来ましたが、その過去の社会保険庁長官の、まさにわたりと称する退職金の問題、タクシーの運転手さんがこういうことをおっしゃっていましたね。お客さん議員ですかと言うから、はい、そうですと。年金、これは頭のいい人たちがやるから本当に悪いですよね、こういうことをおっしゃっていました。ですから、まさにこの問題というのは、やはりもっともっときちっと議論をして、全部出すものは出して、そして新たな機構なり、新しい組織に移行するべきじゃないかな、こういうぐあいに考えるわけでございます。

 質問通告しておりませんが、大臣、一言で結構でございますので。

柳澤国務大臣 三井委員から御指摘がございましたように、年金記録につきまして、いろいろと問題というものが御指摘を受けまして、そしてそのことが、国民の皆さん、本当に年金の保険料を営々とお払いになっていらっしゃる、そしてまた、ある一定の年齢に達して年金をお受けになられるようになって、それを生活の重要な柱として頼みにしていらっしゃる受給権者の皆さん、こういうような人たちに非常に不安を与えているということは、私、本当に認識を強くいたしておりまして、申しわけないという気持ちでおるわけでございます。

 一体どうしてこういうことが起こったんだということで、これはこれでまた検証委員会でしっかりと検証していただきたいということでございますが、どういう、いい意図にしろ、結果としてこのような混乱を招いているということについては、これはもう本当に重大な問題だ、このように考えております。

 今委員がおっしゃられるように、もう何もかもここで明らかにして、うみがあるならばうみはすべて出して、そして新しい年金記録の基盤をきっちり打ち立てて、本当に年金加入者の皆さん、受給をしていらっしゃる皆さんに、これでしっかりしたなというような体制をできるだけ早く確立をいたしていきたい、このように考えております。

三井委員 今大臣の御答弁にありましたように、皆さん、本当に大丈夫か、国がやっているんだから大丈夫だろうということで強制加入に応じてきたと思うんですね。

 きょうはまた、この六月六日ですか、先日報道されておりますように、介護の大手の業者が、まさにコムスンと言っていいんでしょうか、またここで新たな老後の不安といいましょうか、せっかく介護を安心して受けていられる、厚生労働省から認定を受けた業者にまた不正があったということで、今どの新聞でもテレビでもトップで出ているわけでございます。

 今回の、これは私も、自分でも訪問介護等もやっておりますけれども、そんなにもうかるとか利益が出るというものではないんですね。コムスンさんの場合はそういうことでどんどん事業を伸ばしてきたんでしょうけれども、しかし、これを見ますと、わずか七年間で、利用者数は六万五千人、従業員は二万四千人という大変な急成長を遂げている企業でもあるんですね。介護事業を金もうけの道具に使っていたんではないか、こういうぐあいに言っても過言ではないと私は思うんですね。

 今回の取り扱いの影響というのは大変大きいわけでございますけれども、そこで、私がお伺いしたいのは、このコムスンに対して事業所の新規指定及び更新を認めないということについて、これまでの経緯を新聞報道とテレビでしか私も入手しておりませんので、介護保険法の解釈等についてお伺いしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 経緯でございますけれども、四月の十日に東京都が監査結果を公表いたしまして、それで、私どもとして、四月十日に全国に広域的に事業を展開する訪問介護事業者を対象にして各都道府県に速やかに監査を実施するようにというふうに指示をいたしました。

 その結果、株式会社コムスンにつきましては、全国的な監査におきまして、ことしの六月五日現在で、五つの都県で八の事業所において不正な手段による指定申請を行ったということが確認をされました。

 これらの行為は、本来は介護保険法による指定取り消し処分に相当するものでございますけれども、いずれの事案におきましても、取り消し処分をする前に事業所の廃止届が提出されまして、結果的には取り消し処分ができなかったという事実がございます。

 厚生労働省といたしましては、これら不正行為の事実確認を十分にいたしまして、また現行法の適用を検討しました結果、青森県内及び兵庫県内の事例が平成十八年四月以降の申請に基づいた指定のケースでありましたために、介護保険法上「不正又は著しく不当な行為」に該当するということで、居宅サービスを含むすべてのサービスにつきまして、コムスンの事業所の新規指定、更新をしないということで、全国の都道府県に通知をいたしました。そういう経緯でございます。

三井委員 今御答弁いただいたんですが、コムスンについては私も、こういうことも聞いているんですね。業界の皆さんは別に大して驚かない、いつかはこういうことになるだろうということも、当然だという声も聞かれるわけでございます。しかし、そういう中でサービスを受けている皆さんとか、あるいはここで働いている二万数千人の方が本当に路頭に迷ってしまう、これだけはどうしても避けなければならない、私はこういうぐあいに思うわけでございます。

 そこで、今回の処置は例えばコムスンのみが対象なのか、あるいは介護の大手、数社あるわけでございますけれども、こういうところがあるのに、まあ全部が不正をしているとは申し上げませんが、今回はどうしてコムスンだけが対象になったのかという疑問が私のところにも寄せられております。コムスンだけが対象になっているのか、あるいはそれ以外の業者でも、例えば行政指導してもなかなかそれに応じない、そういうところも何社か対象になっているのか、コムスンについて今回、対象になったことについて、ぜひ御答弁願いたいと思います。

阿曽沼政府参考人 先ほども申し上げましたように、厚生労働省といたしましても、四月の十日に全国にお願いしたときには、広域的に事業を展開する事業者を全部対象として監査を実施するようにというふうに指示をいたしました。その際に、コムスンについては、申し上げましたように、五都県八事業所において不正な指定申請を行っているということがわかったわけでございまして、それに基づきまして今回の、新規指定、更新をしないという指示をいたしました。

 当然、ほかの大手の介護事業者もあるわけでございまして、今現在、各都道府県におきまして監査を実施しております。現在までのところは不正の事実があったという報告を受けておりませんので、そういう意味で処分の対象になっていないということでございます。

三井委員 次にお伺いしたいのは、先ほども私はお話し申し上げましたが、今回のコムスンの行政処分によってどういう影響が出るのか。一番影響が出ますのは、何といっても、先ほどからお話し申し上げていますように、介護を受けている方、あるいは家族の皆さん、あるいはそこで働いている職員の皆さん。こういう中で、どうしてもやはり、例えば家族の方も、あるいは今まで介護サービスを受けられている六万五千人の方が、その後も安心して本当に受けられるのかというところが率直なところだと思うんです。

 そこで、このサービスの確保について厚生労働省としてはどのように対処されていくのか、お伺いしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 御指摘のように、サービスの確保が最大の問題、大事な問題だというふうに私ども思っております。

 現在、コムスンの事業所を利用されている方々につきましては、現実に指定の更新が行われるのが来年四月以降でございますので、来年の三月までは今のコムスンという事業者が利用者に対してサービスを提供するという義務がございます。したがって、現在利用されている方々が引き続き安心して介護サービスを利用していただけるように、各都道府県あるいは市町村に対しても十分指導をして徹底しているところでございます。

 それからまた、指定更新が順次到来しますのが四月以降でございますけれども、それ以降の利用者のサービスの利用の問題につきましては、円滑な移行ができるように、コムスンの各事業所に対して介護サービスの利用の移行についての計画というのを七月末までに出してくださいということでお願いをしておりまして、国及び自治体が必要な指示、指導を行うというふうに考えております。

 厚生労働省といたしましても、利用者サービスの確保あるいは家族の皆さんへの信頼の確保というのが最も重要な点だと思っておりますので、サービスの円滑な移行につきまして万全の努力を期したいというふうに考えております。

三井委員 来年の四月からということでありますけれども、何度も申し上げますけれども、やはり何といっても利用者のサービスを確保することが第一だと思っております。

 次に、雇用問題についてお尋ねしたいんですが、コムスンの利用者の方からこういうお手紙をいただきました。

 会社の体質自体に問題があるかもしれないが、事業所の職員のみんなは、いつもとても温かくきめ細やかな対応をしております。真に利用者のことを考えている、コムスンを選んだ理由はそこに尽きます。職員の方々に本当に感謝しておりますという利用者からのお手紙もございますし、こういう内容であります。

 サービスの確保とか、あるいはまじめに働いている従業員の皆さんが、まさに路頭に迷うことなく、雇用の面からもその対策をどのように講じていかれるのか、ぜひお聞かせ願いたいと思います。

阿曽沼政府参考人 利用者のサービスの確保と並んで従業員の雇用の確保の問題も大変重要な問題でございます。この点につきましては、六月六日に私がコムスンの社長に指示をいたしましたときにも、従業員の雇用の確保について万全の配慮をするようにというお話もいたしました。

 それで、コムスンの従業員の雇用の問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、本年七月末までに事業の移行計画というものをコムスンに作成していただくことになっておりまして、その中で雇用の確保についても十分に配慮するようにということで、コムスンに指導いたしております。したがいまして、今後とも、必要に応じて十分な指導を行っていきたいというふうに考えております。

三井委員 そうしますと、今二万数千人の方が雇用されているわけですね。それで、仮に今、譲渡するとかされないとかという議論がありますが、実質、今特に介護の現場というのは三Kの仕事ということで、なかなか仕事につく人が減ってきているという中で、雇用の問題というのは非常に重要だと思うんですね。今阿曽沼局長から御答弁ありましたように、並行しながら、サービスも当然大事ですけれども、そこをぜひあわせて御検討願いたいと思います。

 そこで、これも新聞報道ですが、グッドウィル・グループの日本シルバーサービスに経営譲渡するという、先ほど申し上げましたように新聞報道、テレビ等ございますけれども、この会社も、これは当然グループですから同一資本のグループの別会社であるわけですけれども、しかし、つい先日までコムスンの子会社だった。その中で、私も新聞報道を見ましたが、阿曽沼局長から、その譲渡ということについては、企業というのは倫理とかあるいはそういう企業の責任というのがあるだろう、やはりモラルというのもしっかりととらえるべきじゃないかということがあります。

 このような、明らかにコムスンのような脱法行為をされた企業がまたその同一グループの企業に譲渡されるということは、これでは単なる看板のかけ違えでもありますし、私は、これは何としても許しがたいことだ、こういうぐあいに思うわけでございますけれども、この日本シルバーサービスに経営譲渡されるという件について、改めてお聞かせ願いたいと思います。

阿曽沼政府参考人 この件につきましては、昨日夜、私の方からコムスンの社長の方に指示といいますか申し渡しをいたしました。一つは、利用者の混乱を避けるためにも、平成二十年三月までの間は株式会社コムスンが責任を持ってサービスを提供するようにと。それから二つ目は、今お話がございました、同一資本グループの別会社に事業譲渡するということでは利用者あるいは国民の皆さんの納得を得ることはできないではないか、したがって、日本シルバーサービス株式会社への事業譲渡については凍結すべきであるということで、コムスンに対しまして行政指導を行いました。

 平成二十年四月以降の、現在のサービス利用者に対する受け皿づくりにつきましては、株式会社コムスンから事業移行計画をつくっていただきまして、それで万全の確保をしたいということで指示をいたしました。

 いずれにいたしましても、今後、厚生労働省とコムスンの間で十分に調整、相談しながら、円滑なサービスの移行については万全を期したいというふうに考えております。

三井委員 私も、先ほど冒頭に申し上げましたように、この事業をやっておりますけれども、本当にまじめにやっている業者が報われる、そしてまた、この介護サービスを受けている皆さんとかあるいはそこで働いている皆さんには全く罪がないんですね、そういうことを考えれば、私は、やはりこれからしっかりとこの指導管理というのはもっとやっていくべきだな、やるべきだな、こういうぐあいに思います。

 それとあわせて、これが一つの金もうけになるんだということでなくて、親身に介護サービスなりするということを、やはり原点に立ち返って進めるべきだ、私はこういうぐあいに思っているわけです。今後どういう展開になるかわかりませんけれども、私が今申し上げたようなことについてしっかりと厚生労働省は取り組んでいただきたい、こういうぐあいに思うわけでございます。

 最後に大臣、今この間、私と阿曽沼局長との質疑の中で、この問題点についてどう大臣としてお取り組みになるのか、最後にお聞かせ願いたいと思います。

柳澤国務大臣 今回のコムスン社の引き起こしたこの事案でございますが、まず、利用者に対して多大な影響を与える、少なくとも不安を与えるという問題が生じています。また一方、国民の介護保険に対する信頼もやはり非常に疑いの気持ちを向けざるを得ないというようなことになっているのではないか、こういうようなことで、具体的な影響、また一般的な影響、ともに考えますと、この事態は私は極めて遺憾というふうに言わざるを得ない、このように思います。

 今回の問題につきましては、利用者のサービス確保ということを私ども一番大事だというふうに考えておりまして、自治体と連携をしながら、サービスの円滑な移行や利用者の安全確保に万全を期していく、これがまず私どもの第一の使命だというふうに思っております。

 しかし、再発防止ということを考えますと、これはなかなか難しい問題だということにならざるを得ない。こういう指定をしないとか、あるいは更新を認めないとか、新規の指定を認めないとかというようなことが、別法人になると白紙に戻ってしまうというか、そういうことにならざるを得ない。しかし、その別法人というのが一定の資本的な関係があるときに、法人格が違うだけで別法人と考えるべきかというようなことが問題なのでございます。

 正直言って、今の介護保険法がそこまでのことまで織り込んで規定をしているという状況にないわけでございまして、そうした場合に、国民の信頼をつなぎながらサービスの確保をしていくときにどういうことを今後必要とするかというようなことについては、さらに掘り下げて、私どもとして検討していかなければならぬ、このように考えております。

三井委員 これまでこの委員会では、年金問題も議論してまいりましたが、本当に介護保険もそうですし、そしてまた今労働三法をやっているわけでございますけれども、国民は本当に、何度も申し上げますけれども、全く罪のないそういう皆さんが老後の不安もない、安心して暮らすいい国になってほしいという願いは一緒だと思うんですね。

 そういう意味では、我々というのは大きな責任があるわけですから、ぜひともそういう原点に立ち返ってやはり取り組むことが私は必要だ、こういうぐあいに最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 本日は労働三法の審議ということで、当然そちらの質問をさせていただくわけですが、冒頭、当然働く皆さんにとって大変直結してくるこの年金の問題、当委員会でも議論になったわけですが、積み残した面も多少あるかと思われます。きょうは、それも多少関連もさせながら質問をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。

 まず冒頭、けさたまたま、私もいつも丸の内経由でこちらの会館まで来るんですが、社会保険庁の村瀬長官みずから「国民の皆様へ」ということでチラシを配られているところに遭遇をいたしまして、これは事前に通告しておりませんので、きょう村瀬長官から直接いただいたチラシを資料として、冒頭につけさせていただいております。

 大臣、可能な範囲で結構ですので、村瀬長官がみずから朝早くから街頭に立たれて、国民の皆さんに対するこの一連の年金の問題に対する不安の解消ということで、早朝より街頭に立たれる、その御尽力されている姿に対しては、私も大変敬意を表したいと思っております。その配られたチラシ、きょう資料の一枚目におつけをしておりますので、ぜひごらんいただきたいと思います。

 「国民の皆様へ」と大きく冒頭銘打っておりまして、大きく三行書かれております。「皆様の大切な年金に関してご不安を与え、心よりお詫び申し上げます。年金記録をもう一度チェックさせてください。」という形で、枠に囲まれた項目が書いてあるわけです。ごらんいただいたとおり、相談の窓口、ダイヤル、あるいは窓口を延長し夜まで対応している、さらにはネットでの受け付けという三項目にわたって書かれておるわけです。

 ちなみに、柳澤大臣、このビラなんですが、一体これは全国で何カ所ぐらい、あるいはどれぐらいの枚数作成、配布されているのかというのは、大臣としては御存じでいらっしゃいますか。

柳澤国務大臣 年金記録問題に関する御指摘のチラシの街頭配布でございますけれども、配布部数は全国で二十二万枚ということを予定いたしておりまして、これを今、長官初め、一生懸命国民の皆さんにおわびをしながら配布しているという状況でございます。

柚木委員 二十二万枚というと大変な数でございますから、当然、私もその場でお伺いしましたらば、全国の主要駅、街頭に立たれてお配りになられていると。長官みずから陣頭に立たれているという姿、国民の皆様から見て、不安解消へのそういった取り組みの思いというものは伝わる部分はあるんだと思います。

 ただ、このチラシ、ここに、「お問い合わせには真摯に対応します。気になる方、心当たりのある方は、お問い合わせください。」と、あくまでも皆様から問い合わせをしてきてくださいという文面になっているわけですね。大臣、このビラで国民の皆さんの年金不安、年金不信は解消すると思われるでしょうか。

柳澤国務大臣 これからまたいろいろと、我が方も突合をして、そして、御自身の基礎年金番号のほかにさらに符号番号というものをお持ちになっている可能性のある方にはそのことも告げながら、年金の経歴を御通知させていただいて、そして御確認をいただく、こういうことをこれからやろうとしているわけでございます。

 こちら側からの働きかけというのは、プログラムを新しくつくることにやや時間がかかりますので、それまでは今までのいわば年金記録相談強化体制の延長で考えさせていただくということにならざるを得ないということから、このようなお呼びかけをさせていただいているということでございまして、これから始まる一連の私どもの今回のこの年金問題への取り組み全体によって、国民の皆様の信頼が回復するように我々としては努力をしていきたい、このように考えているものでございます。

柚木委員 大臣にお答えをいただきましたその御答弁の中身、まさにこれから、いわゆる宙に浮いた五千万件であったり、あるいは、一昨日、我が党の長妻議員の質問によって新たに、千四百三十万件の厚生年金が未入力である、しかも宙に浮いている状態ということが明らかになる中で、やはり私は、今回、このチラシを陣頭に立って早朝から配られることは本当にすばらしいことだと思うわけではありますが、私が思うには、国民の皆さんが今最も気になっているのは、この「お気軽に電話してください。」という文面ではなくて、消えた五千万件あるいは千四百三十万件について、どういった形で救済、私たちは補償と呼んでいますが、その措置がとられるのか。

 そういったことに対して、あえて一言も触れられていないのは、大臣、どう思われますでしょうか。

柳澤国務大臣 先ほども申しましたとおり、五千万件の記録というものを、現に機能している被保険者の方々あるいは受給権者の方々の基礎年金番号に統合するということを私どもは既に発表させていただいているわけですが、この作業は、まずコンピュータープログラムの作成というところから始めまして、それについて若干の時日を要する、こういうことがあるわけでございます。

 先ほども申し上げましたように、今、それとは別に、年金記録相談強化体制ということをしいておりますので、当面、その相談強化体制で対応させていただくということをやっておりますので、そういうことについて触れさせていただいて、一刻も早く国民の皆さんの不安を解消させていただく、こういう方向での努力を申し上げている。

 しかも、強化体制の一環として、いわば電話相談等をやらせていただいておりますので、そうしたことについて触れた広報活動をさせていただいて、少しでも不安の解消を早くいたしたいという私どもの気持ちのあらわれだというふうにお受けとめいただければ大変ありがたい、こう思っているということでございます。

柚木委員 このチラシ、私もいただきまして、村瀬長官にも幾つかその場でちょっと質問もさせていただいて、率直に思うところがございました。裏を見ると白紙なんですね。ちょっともったいないなと思うわけです。

 せっかく長官以外にも、全国の社会保険事務所、事務局の方が街頭に立たれてされているわけですから、今大臣がまさにおっしゃられたその突合のタイムスケジュールあるいはプログラム作成とか、そういったより具体的な救済、我々の言う補償、その措置を、もし今度配るときには、ぜひこの裏に記載いただく。この年金ダイヤル、私も覚えやすいなと思うわけです。上から二番目、〇一二〇―六五七八三〇、ロウゴナヤミゼロということですね。老後の悩みゼロにするためにも、やはり具体的な救済スケジュールをこういうチラシの中にも記載していただく。

 そして、こういったチラシを実際にお配りになられてPRをされる、そのことももちろん重要なんでしょうけれども、それと同時に、実際に宙に浮いている五千万件あるいは千四百三十万件、そういった記録の突合作業、そのための人員、予算、実際の行動、そういった部分についても、より国民の皆さんの目に見える形での取り組みをお願いさせていただき、次の質問に入りたいと思います。

 労働法のことも聞きたいんですが、ちょっと今伺った関係で、私はどうしてもタイムスケジュールがずっと気になっておるわけでして、大臣、大分いろいろな面で対応策を明らかにされてこられていると思うんですね。

 私、きょうの朝刊を読みましたらば、今サミットに出かけられておられます安倍総理の方が、こちらに戻ってこられまして、来週早々にも追加の対応策というものを発表されると報道ベースでございますが伺っておりまして、これは一体どういう策が講じられるのか、所轄の担当大臣として御存じであれば教えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 そういう報道があることはよく承知をいたしておりますけれども、私どもは、総理がお戻りになって、もしそういうことがあるならばその場でお聞きをして、御指示を体してこれから活動いたしたい、このように思っております。

柚木委員 参議院で今実際に厚生労働委員会で審議も始まっておるわけでありまして、この衆議院においても、結果的に最終日になりましたが総理がお越しになられて、その時点で、私たちはその朝の時点でもまだ総理がどういったことを打ち出されるのか存じ上げない状態でございまして、やはりそういった対応策というものは、国会の中での議論をまさに与野党を超えて少しでも実のあるものにしていくためにも、少しでも早い段階で我々にお示しいただくことをお願いをさせていただきたいと思います。

 実は、昨日の参議院厚生労働委員会での議論を私も多少見ていたりあるいは議事録を見ましたらば、今回の対応スキームに対しまして、実際に本当に実効性がある形での対応策、これは与党の特例法であったりあるいは我々民主党の提案であったり、本当の意味で実効性のある救済策になるものであれば、私は、どのものであってもそれはそれで、国民にとって実際に記録が回復するということであればいいんだと思うんですね。

 昨日の参議院厚生労働委員会での大臣との質疑の中でもそのやりとりがされたようでありますが、きょうの資料の七ページ目に飛んでしまいますが、これは厚生労働省ホームページからいただいた資料ですが、「年金記録問題への新対応策の進め方」ということで、四日付ですから一番最新のものなのかと思っております。

 この一番上の「一、年金記録の統合に向けての徹底的なチェック」とございます。丸が二つございまして、仮に上側をA、下側をBとするならば、現段階ではA、上側の方、まずは基礎年金番号に結びつけられていない記録五千万件について徹底的にチェックを行う、一年間でプログラムを開発し名寄せを確実に実施、それを五月までに行い、六月から確認のための手続を実施し、お知らせは、受給者については二十年の八月、被保険者については二十一年の三月までに完了とあるわけですね。

 この作業は当然今後進んでいくものと思われるんですが、これは、五千万件の宙に浮いているコンピューター上にある記録と、そして実際に既に基礎年金番号に付番されている大体一億件の記録との統合作業だと思うんですね。それを実際にやってそこから統合していくプログラムを開発するということも当然必要な手続だと思います。また、実効性の面からも、そういう形でコンピューターを開発した後には大きく統合は進み得るという前提に立つならば、大事な手続だと思うんですが、実際に上側の突合をやったとしても、そもそもその五千万件あるいは一億件の基礎年金番号の記録自体も、この下に書いてある方の、過去の記録が統合されていない状態のものもある可能性があるわけですから、間違ったデータ同士を幾ら突き合わせても、実際どこまで突合、統合が進むのか、大変実効性が不安視されると私は思います。

 ある報道によると、これによって統合できるのは二割ぐらいではないかというふうな報道もありますし、そうなってしまうと、一千万件ですから、残りの四千万件をどうするんだという話にもなるわけです。

 ですから、それと同時に、あるいはまさにそれに先行して、手続の面では大変な労力がかかるわけですが、下側の社保庁のマイクロフィルムあるいは市町村が保有する記録と実際のオンライン記録との突合を、ここに「計画的に実施」と書いてあるわけですね、「計画的に実施」の部分を、実際にいつまでに、一日何人体制で何件突合していって、いつになったら一通りの突合の調査が終わるのか、やはりそういった見通しをぜひお示しいただいて進めていくことが重要かと思われるわけです。

 これについて、大臣、下の方の施策、これを何としても具体的な計画をお示しいただいてやっていくことが重要かと私は思うんですが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 今委員から下の方の仕事の手はずのことがお話しになられまして、私どもも、この面の作業というのも非常に重要だというふうに考えております。

 ただ、その前にちょっとだけ触れさせていただきますと、私どもは、受給権者の受給不足がもし起こっているとしたら、それを解消するということが最も優先されるべきことだ、そういう考え方を持っております。受給権者の受給不足が、この五千万件の記録を基礎としてそういうものが生まれているというのは、どうしてもこれはその整理を図っておくことが一番最優先のことであるはずだ。

 しかも、それが、今までやったことがないんですね。やったことがなくて、今回初めてやる。しかも、その数が、中身はそうした今御指摘のような率になるのかもしれません。確かに、死亡されている方等がいらっしゃるということは十分年齢階層からいって考えられるわけですから、多く予想されるわけであります。しかし、何といっても、これを突合するのが初めてであるということ、それから、今現にもう受給が起こっている方についての問題であるというようなことで、私どもはまずそのことから始めさせていただきたいということを申させていただいているわけです。

 今の委員の御指摘でございますけれども、下のマイクロ等々に当たるということは、これは委員はここからもう漏れが起こっている可能性があるという御指摘なんでございますが、実はこれらの資料というのはオンラインをつくるときの資料なのでございます。オンラインの記録というのは、ここの社保庁のマイクロフィルムや市町村の保有する記録というのが社会保険庁に届けられて台帳という形になったものなんです。

 そういう介在をする形ではありますけれども、いずれにしてもそれをオンラインの記録にしたということでございますので、とりあえずはこのオンラインの記録のいわば正しさというもののチェックということになるわけで、こっちとこっちが物すごくずれちゃって、五千万件と基礎年金番号のようにこれがずれている可能性というか、それを統合する可能性というか、そういうものを作業の目的としているというものではないわけで、いわば確かめ作業でございます。

 もちろん、我々のオンラインの記録はいろいろミスもありまして、この基礎になった社会保険庁のマイクロフィルムとか市町村の記録とかというものを正確に写し取れていないということが出てきていますので、それはもう一回やってみようという気持ちになってやっているわけでございます。

 そういうことでございまして、この作業というのは、今も委員御自身も御指摘いただいたように、膨大な作業になるだろうということでございます。

 したがいまして、私ども、今この作業の手順というようなもの、前から申し上げておりますが、どのぐらいのマンパワーを要するか、それからそれに投入できるマンパワーはどのぐらいかというようなことで計画をつくりたい、こう考えておりますが、今現在、そうしためどを示し得るようなそういう計画というのは、まだ作業としても未了の状況にあるということでございます。

柚木委員 大臣、私が伺っていたらもう繰り返しになるんですが、この下側の、実際の台帳、フィルムとの突合の計画というのはいつから実施をされる予定でありますか。

柳澤国務大臣 これも、いわばAと同じような、Aは最初はコンピューターのプログラミングの作業でございますので、それが直接いろいろとスタッフの方の手間をとるということは本格的には考えられないわけでございます。そういう意味で、スタッフの方の手間というのは、むしろしばらくの間は今委員が言われるBの方に割けるんじゃないかということもあり得るわけでございます。

 ただ現実に、その総指揮官たる者が今のところそちらの方に手が割けないという状況になっておりますので、そういうことができるようになったら、早速にこの計画の作成に入って、すぐに、つまりAと同じような考え方で着手をしてもらうという考え方でおります。

柚木委員 ぜひここで本当はすぐにというのを明確にしていただきたいんですが、それとともに、実際にこの作業が進んでいく中で、特にBの方は「進捗状況を半年ごとに公表する。」というふうに明記をされているわけです。これは当然、上側の丸の作業も半年ごとに公表するという理解でよろしいですか。

柳澤国務大臣 これは、まず一年間ということでコンピューター上の名寄せを済ますということでございます。しかる後に、六月であるとかその後のケースもありますが、すぐに確認のための手続に入るということを申し上げておりまして、そうしたお知らせについては、そこに記されておるように、八月ないしは二十一年の三月までに完了するというように、ある意味でスケジュールも書かせていただいております。

 もとより、この後の手続上の作業というのは、今度は受給者とか被保険者の方々のレスポンスというか返答にもかかってくるわけでございますので、その進捗状況等は、適切な節目の時期には必ず進捗状況を御報告しなければならない、このように考えております。

柚木委員 大臣、やはりこれはぜひ同時進行でお願いしたいんですね。

 実際に一年たって、本当に、報道によれば二割とかいうようなことであった場合には、やはり同時にこのもともと間違っているオンライン上のデータというのを正しながら進めていく方が、そのコンピューター上の照合作業も正しいデータになったもので照合していく方が、私は実際に統合される件数も上がると思いますし、そしてまた、下側の私があえてBと申し上げている部分、「計画的に実施」と書かれているんですが、この作業を本当に今の体制でやっていくと、実際報道にも書かれていますけれども、厚労省の方も十年ぐらいかかっちゃうんじゃないかというようなことも出ているわけですよ。ということは、本当に一年一年、実際に受給をされるべき金額をいただかないままにひょっとしたら亡くなられる方も出てくる。

 ですから、やはりこれは一日も早く同時の作業をやっていただく、すぐに、少しでも早くスタートじゃなしに、同時にやっていく。そうでないと、この上側の、「プログラムを開発し名寄せを確実に実施」と書かれていますが、この名寄せというのはつまり統合のことだと思いますけれども、そのコンピューター上の照合だけでは確実に実施とはならないわけですから、少しでも確実にそれを実施していくということであれば、やはり下側の手続というのも同時進行でやっていただく。大臣、これはお答えいただけませんでしょうか。

柳澤国務大臣 結論を申しますと、委員の仰せのとおりのことを私どもも考えております。

 要するに、丸の先の方、いわば作業Aでございますが、作業Aは、まずプログラム、そもそもが機械の中にある番号その他の情報の突合作業でございます。それに対して、下の方は、機械にある番号と手書き等あるいは手書きを写真に撮ったものとの突合作業でありますので、突合と同じように申しても全然性質が違うものだということが言えようかと思います。

 いずれにしても、特に前者の方は機械と機械の間で作業をするということであれば、これはほとんど人手はその間要しないわけでございますので、そういう意味でその人手をこちらに回すということは可能でございますし、我々もそのように実際行っていきたい、このように考えております。

柚木委員 わかりました。ぜひ同時の進行をお願いしたいと思います。

 そして、やはり私は、この手続というのは正確に国民の皆さんにお知らせをしていくということが大変重要だと考えております。

 与党の特例法あるいは我々民主党の提案というものも、それぞれ国民の皆さんにお示しをしていき、より実効性の高いものを判断いただければいいんですが、きょうは私も、この自民党さんのチラシ、大変わかりやすく書かれているなと思ってお持ちをしたんですが、今の大臣とのやりとりを考えますと、これは資料の九ページ目におつけしておりまして、与党の皆さんは当然よく御存じのことだと思いますが、もう少しこれはやはり記述を正確にお書きいただく部分が必要なように私は思えてなりません。

 つまり、ポイント一で、この一年間で五千万件すべての名寄せが完了と書いているわけですね。これは、完了ではなくて照合が一通り終わるわけであって、名寄せ、統合になるわけではないと思われますし、ポイント三の下にグラフがあるわけですね。グラフだけ見るとすばらしくわかりやすいんですが、一年後に名寄せ完了でゼロになっているわけですね。これは、今の大臣との質疑のやりとりの中で考えますと、当然、丸の下側の作業をやって、上側とあわせてやった上で、最終的に、コンピューターだけの照合でゼロ件になるわけではない、そこには手作業が必要になってくるわけですから、これは一年後にゼロということが、大臣、あり得るんでしょうか。

柳澤国務大臣 まず、本当に恐縮なんですけれども、名寄せという言葉は、この段階でどういうふうになっているか、私はまだつまびらかでないんですけれども、統合というのは、我々、統合されていないと言うわけですが、基礎年金番号ではない、最初に加入されたりした年金手帳の符号番号というものが、最終的に基礎年金番号のこの人のものだというふうにつながりがつくということが統合でございます。

 したがいまして、我々の、先ほど委員が言われたAの作業でございましても、そこに我々だけの作業ではなくて受給者であるとかあるいは被保険者の方にお問い合わせをして、この符号番号はあなたのものではないでしょうかみたいなお問い合わせをして、それに対してお答えをいただくということになりますので、つまり、国民の方々の回答の時期いかんにも係るという面が避けがたいわけでございます。

 したがって、統合ということが目標なんですが、それには、私ども期限ということを言うのがなかなか難しくなるというのは、そういう国民の皆さんの側の行為に期待している部分もあるものですから、そういうことで今のようになっておる。我々の方がやる名寄せというコンピューター上のことを、またそれを確認するということだけであれば、これは我々コントロールができるわけですので、それを一年以内にやるということではっきりさせた、こういうことだというふうに御理解を賜れればと思います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

柚木委員 そのあたりの経緯はやはり国民の皆さんにはなかなかわかりにくい部分もありますから、私たちも提案をしておりますように、その名寄せ、それが統合に至る前提としては、やはり記録の訂正というものがコンピューター上の照合作業とはまた別個に必要であるということも、ここはきっちりとやはり明記をいただき、また実際に取り組みをいただくということを重ねて私もお願いしておきたいと思います。

 そして、今、大臣、まさに受給者の方々を優先的にということをおっしゃるわけですが、そういうことで考えますと、私も思いますに、一昨日、長妻議員の質問で明らかになった千四百三十万件の厚生年金の未入力の件、これはまさに、実際に受給年代の方が相当数いらっしゃると思われるわけです。ですから、この千四百三十万件に関しましても、やはり二千八百八十万件と同等に、受給年代の方々はまさに同時進行で、実際のこの未入力分のデータとコンピューター上のデータを突合するという作業、これこそまさに同時進行で行うべきだと思われるわけですが、この千四百三十万件について、大臣、手続の方、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 千四百三十万件につきまして御指摘をいただいたわけでございますが、結論を申し上げますと、作業B、委員が言われる作業Bの最優先の部分ということでこれに着手し取り組んでいきたい、このように考えております。

柚木委員 実効性の面を考えられているんでしょうけれども、しかし、実際にそういう作業の区分けになりますと、受給年代の方々を優先してとおっしゃりながらも、この千四百三十万件については明らかに後回しにならざるを得ない部分が出てくると思うんですね。同時進行というものがどこまで、実際にその計画が、何カ月あるいは一年、半年ごとのその進捗がどの程度進むのかというものをきっちり出していただかないと、この千四百三十万件というものが一体どれだけたてばちゃんと突合作業が行われるのか、ここが担保されないと、大臣、これは同じ受給年代の方々に対してある意味差別をしてしまうようなことにもなりかねないわけですから、このタイムスケジュール、はっきり示していただけるのは、いつまでに示していただけますでしょうか。やはりこの千四百三十万件については特に示していただかなければいけないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 これは、委員の言われるポイントは私どもも理解できるということを申し上げたいと思います。

 ちょっとこちらの状況を申し上げますと、千四百三十万件というのが今現実にはどのくらいなのか。これは、そもそもが、このマイクロフィルムというのは手元にあるマイクロフィルムであるということもありまして、実際にこれまで裁定を行ったりした場合には、これを基礎年金番号に統合するということを既に行わせていただいているものでございます。そういうようなことでございますので、今、千四百三十万が現在残高幾らになっているかということもございますし、また、これについてはいろいろとこれから計画を立てるに当たって考えていくべき要素が複数あるだろう、こう考えますので、まず段取りを決めるということが必要でございます。

 しかし、いずれにしても、最もスピーディーにこれを処理しなければいけないということは委員が言われるとおりで、そういうことで我々としては、今委員が言われるように、受給権者世代の方々の記録であるということに思いをいたして可及的速やかに進めてまいりたい、このように思います。そして、その進捗状況等については、先ほど申したように、節目節目で公表をしていきたい、このように考えます。

柚木委員 大臣、この千四百三十万件については、ぜひ本国会中にプランを出してください。お答えいただけますか。

柳澤国務大臣 私がやれることだったら私が申し上げることもできますが、やはり実務をやる人間は実務の責任者がおりますので。今、今国会中と。今国会はもうすぐ終わるという当初日程によりますとなかなか難しいのではないかと思いますが、いずれにせよ、我々は真剣に取り組みまして、それができた暁には、この厚生労働委員会の委員の先生方には、こういうことでやるということをお知らせしたいと私は思います。

柚木委員 徐々に時間が迫ってきていますので。

 しかし、これは大臣、千四百三十万件といいますと、件数だけで単純比較はできませんが、民間の生損保会社の不払いの問題でも大変な、当然のことではありますが、それぞれ各社が数千人体制で、数カ月でその五百万件を、私も前回申し上げましたが、例えば四千人規模で二カ月で実際に調査に当たって、これはある会社の話ですが、数万件の不払いの問題に対処したとか、もちろん土日返上、会社の食堂やあらゆるスペースを使って、総出でやったわけですよ。

 ですから、これは、五千万件というのがあって、その中でさらに千四百三十万件出てきて、しかも、資格喪失、一九五〇年よりちょっと前ということであれば、本当に今まさに受給年代の方々、あるいはひょっとしたら亡くなられているかもしれない方々、そういう方々に対してもこれまでと同様のお立場だと私への今の御答弁では感じざるを得ないわけでして、これはまたぜひ伺える機会があればと思いますが、何とかこの件数の場合はきっちりタイムスケジュールを出していただきたいと思います。

 時間が迫ってきておりますので、ちょっと労働法制もしたいので、もう一つだけ。

 私、今回の問題は、実は余り当委員会の中でも議論が十分に深まったように思えない部分もあったんですが、我が党の議員からも何度か指摘があったんですが、システム上の問題が、やはり多分に、この宙に浮いている状態あるいはこれから行っていく統合作業の中でも大変重要であるということの問題提起もあったと思うんですね。ところが、今回のこの五千万件の突合調査と同じところに委託をして調査が行われるようですが、いわゆる公共調達、ITシステムをそういった形で行う、実際にそのシステムがきっちりと稼働しているかどうかというものをやはりしっかりとチェックする機関が必要なんだと私は思うわけです。

 これだけ、国民の皆さんの本当に老後の最大の生活保障である、その年金制度が今大きく揺らいでいる、しかもそのシステムがずっと運用されてくる中で、今後、社会保険庁が日本年金機構に移っていくという中にあっても、やはりITシステムそのものをしっかりとチェックしていく機関をつくっていくことが必要なのではないかと思うわけです。

 私も専門の方から話を伺うと、例えばアメリカなんかでは、連邦調達庁といったような機関がITシステムのチェックというものをきっちりと行って、そのシステムが、まかり間違っても今回のように宙に浮いたものが五千万件も出てくるようなことにはならないようなシステムであらなければならないということで、これは一つ提案なのでございますが、こういった公共調達ITシステムをチェックする機関をぜひ我が国にも、これが適切かどうかは御議論いただくとして、例えば会計検査院の中にそういう部門があるとか、とにかくどういった仕組みであっても、年金等あらゆるITシステム、年金運用だけにかかわらず、システムが正確に運用されていくためのそういった機関をぜひ我が国にも設置することを検討していただくべきかと思うんですが、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 ITというのは非常に我々の社会を革命的に変えるような大きな文明の進歩の一つだというふうに考えるわけですけれども、専門的な知識が必要だということの中で、一つはシステムの内容が的確なものであるかというようなこと、それからまた調達コストが適正なものであるかというようなことについて、なかなか通常の外部の人間ではわからない面がありまして、そこにいろいろな工夫が必要だという委員の御指摘は私はそのとおりだ、このように思うわけでございます。

 我が省社会保険庁のIT調達に関しましては、庁内にシステム検証委員会を設置して、専門知識を持つプロジェクトリーダーやCIO補佐官等の参画を得て、システム開発の必要性、開発規模の妥当性等の検証を一応行っているということを御報告いたしておきたいと思います。

 その上で、今委員が御提案になられるような米国の連邦調達庁のような機関を会計検査院の中にでも設置すべきではないかという御提案、貴重な御提案だと思いますけれども、この問題については私がここで何かお答えするという立場ではございませんので、答弁を控えさせていただきます。

櫻田委員長 以上をもちまして柚木道義君の質疑を終了いたします。

柚木委員 済みません。最後に就業規則の面で不利益変更の点を聞きたかったんですが、ちょっと時間が来たようなので、大変申しわけありませんが、委員長のお達しですのでこれで終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、山井和則君。

山井委員 これから四十五分にわたって質問をさせていただきます。

 最初に、例によって、本当に現在、労働法制の審議に勝手に入っていられることに関して強く抗議を申し上げたいと思います。

 長妻議員の質問で、おとつい、千四百三十万件という新たな宙に浮いた記録、その問題が明らかになりました。今の柚木議員の質問に対する答弁を聞いても、何と、この国会中にその一千四百三十万件の記録にどう対応するかは答弁ができないと。まさか、そういう状況の中で参議院でまたしても強行採決をされるのではないですね。

 また、これは衆議院の強行採決前からずっと要望しております、特殊台帳のマイクロフィルムとコンピューターデータの三千件のサンプル調査の結果、これもまだ出てこない。きょうの午前中の理事懇では、谷畑筆頭が来週火曜日の午前中に出すということをおっしゃっておられましたけれども、それもまだ出てきていない。そしておまけに、報道によりますと、安倍総理が帰国になったらまた新しい対策を発表される。衆議院の社会保険庁改革そして消えた年金の審議、終わったどころか、ますます審議をせねばならない点が続々出てくるじゃないですか。そしてまた、おとついも私、数人の実際に年金記録が今消えてしまっている、見つからない方のお話をしましたが、柳澤大臣の答弁はすべて、第三者機関が判定します、判断します。その第三者機関の判断基準はといえば、まだ未定であると。

 今、民主党の消えた年金一一〇番に連日多くのメール、ファクス、電話、手紙が届いております。大体五十歳以下ぐらいの方はメールで、そしてやはり御高齢の方はメールが使えないから直筆の手紙で、自分の年金手帳、カラーコピーを張りつけてくださって、自分の年金記録がいかに消えているか、払ったはずなのに未納扱いされて、何度社会保険事務所に行っても証拠がないからと却下されている、そういう切々たる手紙が山のように届いております。読んでも読んでも、まだこれで数日分です。きのう届いたものは処理し切れませんから、まだ私も目を通しておりません。そして、この方々が書いていられるのは、やはり第三者機関の中身がわからないから、自分たちが補償されるのか救済されるのかさっぱりわからない、そして、今の政府・与党案ではグレーゾーンが多過ぎて解決策になっていないという悲鳴がここに届けられているわけですね。

 きょうは武見副大臣にもお越しいただいておりますが、武見副大臣の質問にまで行けるかどうかわかりませんが、このことについてお伺いをしていきたいと思います。

 そして、柳澤大臣、武見副大臣にぜひ御理解いただきたいのは、私、何人もの議員やスタッフ、秘書の仲間で手分けして読んでいるんですが、本当に頭が痛くなるんです。例えばこの方も厚生年金が二年間未納になってしまっている。この方も国民年金が四年間未納になってしまっている。そして、言い出したら切りはございませんが、本当に非常に深刻な事態になっております。こういうふうな中で、月に一万円受け取れなくなったとしても年間十二万円ですから、二十年間、平均寿命ぐらいまでお生きになられたら既に二百万円ぐらい、そして長い期間の人でしたら五百万円ぐらいなんですね。

 例えば、このメールの方はお母さんががんになっていられる、メールも送れない、だからかわって娘さんがメールを打ってきた。二十年以上年金を掛けてきて二カ月ほど未納の時期があったので、区役所の人からこれだけ払ったら年金がもらえますと言われて二カ月払った。ところが、六十五歳に、ではもらいに行こうと思って行ったら、いや、その二カ月払っておられませんよと言われた、二十五年に達していないと。それで、領収書も紛失したようですが、紛失したと。そして申請の役所に、窓口に行くと、おたくは掛けなければならない時期に二カ月支払いされておりませんので支給はできませんと、けんもほろろの対応でしたと。

 そして、この方は、年金がもらえないんだったらせめて掛けてきた分の保険料だけでも返してほしいと。がんだけれども、がん保険も未加入で苦しんでいる。これ、二カ月未納になっているかなっていないかで天国と地獄じゃないですか、国民年金をもらえるのと一切もらえないのと。二十年間でいったら、五百万、一千万ぐらいの違いになりますよ。

 こういう手紙やメールも、こちらに来ておられるお年寄りの方も、五百万円、未納の関係で、もらえるべきものがもらえていない。私は本当に頭が痛くなるんですよ。五百万円、二百万円、そんな額かと思われるかもしれませんが、繰り返しになりますが、未納期間があって、一カ月に一万円でも二十年で二百万円を超えるんです。一カ月二万円ぐらい違ったら優に五百万円を超えるんです。その二百万円、五百万円、保険料を払ったはずなのにという悲鳴がこれだけ、今読み切れないぐらいに民主党に寄せられている。

 言うまでもなく、年金というのは老後の生活保障の柱であります。本当に、これは何としても、まじめに払った人の年金は保障せねばならない。今、日本の国の老後の安心というのは最大の危機に瀕しているというふうに私は思います。

 にもかかわらず、先ほど柚木議員の話にもありましたが、きょう早朝からチラシをまかれて、そのことには私は敬意を払います。しかし、まさに柚木議員が指摘されたように「お問い合わせには真摯に対応します。気になる方、心当たりのある方は、お問い合わせください。」、まだこの期に及んでも待ちの姿勢じゃないですか。柚木議員が指摘したように、私たちは五千万件に対してこう対応します、気がつかない方に関してもこう対応しますということを、ここまで問題になって、社会保険庁のミスが大きくなった以上は打ち出していくべきではないかというふうに思います。今読み上げさせていただいた末期がんの方も、もう御自分は身動きがとれないわけですよ。気になる方はお問い合わせくださいといっても、そういう待ちの姿勢じゃだめなんですよ。

 武見副大臣にお伺いしたいと思います。

 このような状況に関して、いつも柳澤大臣に聞いておりますので、副大臣、いかが思われますでしょうか。

武見副大臣 既に大臣の方からも幾度となく御答弁をさせていただいておりますけれども、今回の基礎年金番号との突合が行われておらない五千万件と、さらには台帳等とのさらなる結合の問題等、さまざまな観点で国民の多くの皆様方に大変な御心配をおかけしたことについては、心からおわびを申し上げる次第でございます。

 したがって、これらの諸点について、既に具体的にもお話を申し上げているとおり、でき得る限りこれらの考え方に基づいてしっかりとそれぞれ作業を行う体制、それを早急に整えて、御安心をいただくよう最善の努力をするということが必要だというふうに私は思っております。

山井委員 副大臣、今の話の続きになりますが、要は年金がもらえるかもらえないかで天国と地獄なんですよ。御存じのように、ただでさえ医療費の自己負担がアップして、なかなか十分な医療にかかれないんですね。差額のベッド料とか、どんどん病院から追い出されるとか、そのことは武見副大臣も一番御存じだと思います。残念ながら、このがんを患っておられるお母さんは年金がもらえない。もし年金がもらえていたら、もっといい医療を受けられるかもしれないじゃないですか。これから一年かかるのか何年かかるのかわからないけれども、その後発見されたといっても、万が一こういう方がもう病気が悪化していたら、ある意味で意味がないんじゃないですか。このことの深刻さを私はわかっていただきたいんです。この一通一通に一人一人の人生がかかっているんですよ。命がかかっているんですよ。

 柳澤大臣にお伺いをしたいと思います。

 これは通告をしておりませんが、私もきょう見てびっくりしたんですが、きょうの週刊現代、柳澤大臣、お読みになられたかどうかわかりませんが、大きな見出し、「内部告発!!消えたのは五〇〇〇万件どころじゃない 三鷹の倉庫にあった 「社保庁が隠す年金台帳一億件」」、この記事であります。ですから、私も、もちろんこのことについて真偽を確かめることはまだできません。だからこそ柳澤大臣にお伺いしたいんです。こういう報道があり、多くの国民が不安に思っているんですけれども、柳澤大臣、この件について、こういうことはあり得るんですか。三鷹の倉庫にあった、社保庁が隠す年金台帳一億件、こういうことはあり得るんですか、柳澤大臣。

柳澤国務大臣 私、大変不明でございますけれども、今委員が御指摘になられた雑誌の記事を見ておりません。見ておりませんので何ともお答えのしようがないんですけれども、ただ、読んだのか聞いたのか、部下の者によりますと、要するに年金のオンライン化の基本になった台帳の問題ではないか、こういうことを申しておりますが、それでその記事の理解ができるのでしょうか、ちょっと私は何とも、その記事を読んでおりませんので、何か確かなことを申し上げられなくて大変申しわけないと思います。

山井委員 これはけさのものですから、読んでおられないのは仕方ないと思います。

 ここに書いてあるのは、特に特例納付、一括納付ですね。過去三回、一九七〇年の七月、七四年一月、七八年七月からそれぞれ二年間、今まで未納だった人、長期間一気に払うことができますよと。この特例納付の記録が大量に消えているということが書いてあります。

 柳澤大臣も御記憶されていると思いますが、確かにそうなんですね。私がこの委員会で取り上げた中村さん御夫妻も、特例納付、夫婦で十一年分が消えて、合計約五百万円分の年金が不払いになりかかっている。そして、隅田さんも、十年九カ月特例納付で一括して支払ったのが消えてしまっている。本当に、もしこういう特例納付の記録がコンピューターに載らずにまだ倉庫に台帳が眠っているなんということになったら、大変なことになりますよ。

 そこで柳澤大臣にお伺いしたいと思いますが、こういうことはあり得るんですか。コンピューターに載っていない台帳が、三鷹のみならず、倉庫にまだ眠っていることはあり得る話なんですか。ないならないと否定してください。

柳澤国務大臣 ちょっと私はその記事を読んでおりませんので、その記事について委員が御疑問に思っていることに対して的確なお答えができるかどうかちょっとおぼつかないんでございますけれども、要は、オンラインの前の台帳、一番大事な台帳ですが、それは、オンラインに収録された段階で原則は保存の義務を解除されるということになったわけですが、しかし物理的には残っているものもある。それを今社会保険庁では、その物理的に残っているものについては一体どの程度のものか、どういうものかということの調査をしているということでございます。

 なお、特例納付については、これは委員も御承知のとおり、今度、三千件のサンプル調査をいたしたわけでございますが、国民年金の台帳というものについては、オンライン化された後はもう、また保存がなされないんですが、特例納付の記録だけは、オンライン化をするに当たっても、非常に難しい納付記録を伴っているものであるという考え方から、これは現物を保存しておく必要がより高い、こういう認識を持って、それはマイクロフィルムで撮って保存をしてある。こういうことでございますので、何か参考になればありがたいと思います。

山井委員 柳澤大臣、これは非常に大事なことなので、一般論として、一般論としてお聞きします、この記事から離れて。

 このように、コンピューターのデータ、記録に入っていない台帳が倉庫にまだ眠っている、そういうことはあり得るんですか。ないならないとちゃんと言ってください、柳澤大臣、こういう話はあり得るんですか、一般論として。

柳澤国務大臣 基本的に、かつての台帳というものはいわば一番法律上も保存が義務づけられたものでございます。それをオンラインの上で管理しようということでオンライン化をいたしたわけでございますので、そういうものはすべてオンライン化されたということでございます。

 もとより、今回、我々は、残っている台帳とオンラインを照合するという作業を、先ほど柚木委員の分類によれば作業Bとして行うわけでございますので、そういうことで、さらに確かめの作業が行われるわけですが、何か一まとまり、集団的にそういう、今委員が言ったようなごそっと抜けるというようなことがあったかということは、我々としては考えておりません。

山井委員 これは大事な点だから、もう一度念を押します。

 そうしたら、今、すべて台帳はオンライン化されている、コンピューターに入っているということをおっしゃいましたが、それは責任を持って言えますか。倉庫に眠っている台帳でコンピューターに入っていないものはありませんか。柳澤大臣、お答えください。

柳澤国務大臣 基本的にないということでございます。

 ただ、この前、千四百三十万件の、昭和二十九年三月三十一日でしたか、それまでのものにつきましては、これについては、手元にあるというようなことが起因になりまして、手元にあるんだからわざわざオンライン化しなくてもというような、まあ古い話ですから定かではないんですが、そういうものであるということが多分背景としてあったんだろうと見られるわけですけれども、そういうものはオンライン化のときにオンライン化しない、そういう決定が行われたということで、オンライン化はされていないわけでございます。

山井委員 これは、長妻議員が指摘した一千四百三十万件以外にもまだ、台帳だけが残ってコンピューターに入っていないものがあるんじゃないんですか。

 それでは、柳澤大臣にお伺いします。

 まだ読まれていないということですので、三鷹の倉庫にあった、社保庁が隠す年金台帳一億件、このことについてぜひ調査をして、その結果を次の委員会で報告してほしいと思いますが、大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 今度、各事務所あるいは市町村の方々の分も含めて、それらの原資料の存在ということについて調査をしておるところでございますので、そういうものがもし仮にあるとすれば、そういう調査の一環として調査が行われることになる、こういうことでございます。

山井委員 大臣、逃げないでください。これは国民が非常に心配に思うことですよ。三鷹と特定されているんですから、そこで調べたらすぐ済むはずじゃないですか。ないんだったらないと言えばいいわけですから。このことは、やはりこれだけ大きな報道にもなっているわけですから、逃げないで、柳澤大臣、ぜひ調査して、ないならないというふうに報告をしてほしいと思います。大臣、いかがですか。余りこういうことで逃げると、また年金不信が拡大しますよ。簡単なことじゃないですか、これは、三鷹と特定されているんですから。

柳澤国務大臣 私ども、今回は、もう本当に、すべてうみを出し切って国民の信頼を回復できる、そういう記録の体制というものを整えたい一心でございます。

 したがいまして、委員がそういうふうな示唆を与えてくれましたら、私としては、そういうものがあるかないか、しかし、その中身の問題なんですね。今委員が言われるように、一億件もの件数がもう一つオンライン化されていないということを今委員は御主張になっていらっしゃるわけですけれども、そういうものであるかどうかということは、これはよく調べなければならないことである、このように考えます。

山井委員 ということは、調べて、次の委員会で報告していただけますね。

柳澤国務大臣 とにかく、国会の議員でもいらっしゃる、またこの問題に非常に御熱心に取り組んでいただいておる山井委員の示唆でもございますので、私ども、物理的にはそれを調査いたしたい、このように思いますが、中身の確かめということになりますとやや時間がかかるのではないか、こういうことはございます。一億件ものものが本当にオンラインから抜けているかどうかということを調べないといけないわけですから、これはコンピューターと紙の話でございますので、それはまたそれでしっかりした調査をしなければならない、このように考えております。

山井委員 私は別に、一億件が五千万件だったらどうだとか、百万件がどうだからとか、そういう数の問題を言っているんじゃないんですよ。やはりこのことはぜひ調査をして報告していただきたいと思います。

 これはもちろんわかりませんよ、私も三鷹で調べたわけじゃないですから。ただ、この報道を見て、関心を持ったり不安に思われる方が多いと思いますので、ないならないで、安心させるためにも、ぜひとも調査を早急にしていただければと思います。

 それで、先ほど、特例納付で年金が消えて、御夫婦で五百万円、本当に年金が不払いになっている中村さん御夫妻のケースとかは一番深刻で、その中村さん御夫妻はどういうことをおっしゃっておられるかというと、第三者機関の問題点。本日、参議院の参考人として、ちょうど今の時間、御夫妻が発言をされていると思います。そこで、こういう疑問を持っておられるんですね。第三者機関で被害者がその当時の記憶、払った状況をどれだけ訴えることができ、どれだけのことが伝わるのか、伝わらなかったらどうするのか、第三者機関はつじつまが合っているかどうかをだれに聞くのかという、本当に被害者ならではの、一番切実な、具体的な疑問を持っておられるんです。

 そこで、まず柳澤大臣に第三者機関についてお伺いします。これは第三者機関には本人が出て意見を言うことができるということですか。

柳澤国務大臣 私は、第三者機関というものがまだ組成もされていない、それから、議事の運営、委員会の運営というのは、やはり基本的には委員の皆さんの御協議のもとで決まることを尊重いたしたい、このように考えておりますので、ここで、今委員の御質問に対して確定的なことを申し上げるということは差し控えたいと思います。

 しかし、私は、やはりどうしてもこのところはちゃんと出席をしてじかに話をしたいということがある場合には、それは一定のいろいろなルールは設けられるでしょうけれども、そういうことが全く認められないということがないように、先生方というか任命される委員の方々にもお願いしたい、このように考えます。

山井委員 大臣、何か今すごい答弁をされましたね。本人が絶対に来てはならないということはないということは、逆に、本人はそう簡単に行けないということなんですか。

 ストレートにお聞きします。本人が、その第三者委員会に行って、自分の状況のこと、払ったという記憶をきっちり述べたいというふうに希望した場合、第三者委員会で述べることはできますか。

柳澤国務大臣 いや、すごいことをおっしゃったという意味はどういうことを山井委員が意味されているかわかりませんが、山井委員は、本人が出ていくことが認められる第三者委員会になるんだろうかという問いかけを私になさったわけです。

 私は、第三者委員会の委員の運営、ルールというのは第三者委員会の……(山井委員「質問に答えてくださいよ。希望したら行けるのか」と呼ぶ)答えています。第三者委員の方々の相互の御協議の中で決まってくるであろうというふうに思います。その中で、本人の出席、陳述というものをどういうことで認めるかということは、私は今ここで予断を持ってその委員の先生方の意思を縛るような格好では明確に申し上げられないということを言っておるんですが、ただ、私の気持ちとしては、そういうことをぜひ認めていただくように、それはルールはありましょうけれども、認めていただくようにお願いしたいという気持ちを持っていますということを私は御答弁申し上げたのでございます。

山井委員 大事な点ですから、もう一回確認します。

 希望すれば、その被害者本人が第三者委員会で発言できるようにするということでよろしいですか。その方向に持っていくということですね。柳澤大臣、大事なところですから、これは。希望しても本人が行けないんだったら、第三者委員会とは何なんだという根本的な問題になりかねませんので。柳澤大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 私が確定的なことは申し上げることができませんけれども、私としてはそのようなことが認められるという方向になることでお願いをしたいということを私の意思として申し上げたのでございます。

山井委員 この審議で一番気になるのは、もうこの第三者委員会の中身がすべて最大のポイントなんですよ。天国と地獄の分かれ目なんですよ。その一番大事なところが、国会審議では確定的なことは言えないと。では、これはどこでだれが決めるんですか。

 さっきも言ったじゃないですか、一通一通、二百万円とか四百万円とか五百万円とか、その人の老後が決まっていくんですよ。医療が十分受けられるかどうか、それもかかっているんですよ。そのことを国会で議論して決めるんじゃなくて、第三者委員会の委員がそれを決めるんですか、その基準とかを。どういう権限を持って決めるんですか。どういう根拠があって、その御高齢の方の人生が、年金が二百万円、四百万円、受け取れないかどうかという天国と地獄の分かれ目を、どういう権限でもって、どういう責任でもって、国会では議論できなくて、第三者委員会のメンバーがこれを決めるんですか。これは法的根拠もないというふうに参議院の審議で答弁されていますね。柳澤大臣、そんな大切なことを、法文に一行も書かれていない、法的根拠もない、そんな第三者委員会が決めることができるんですか。

 おまけにこれは、道義的な問題だけじゃなくて、お金の問題も大きいですよ。一人一人の二百万、五百万、そういう次元のお金ですからね。それだけたくさん政府の財政支出をする、あるいは年金を給付するということを、法的根拠がないメンバーあるいは機関が、大臣、できるんですか。

柳澤国務大臣 法律の枠組みは、社会保険庁長官が受給権者の申請に基づいて裁定をする、こういう枠組みになっていることは、山井委員御案内のとおりでございます。

 ところが、今問題なのは、この申請をされる方々の考えの内容と裁定をする側の社会保険庁の長官の記録による認識とが折り合いがつかない、こういう問題が起こるということでございます。

 もちろんその前に、私どもといたしましては、一般のこの調査、まずオンライン上での記録の調査をする。それから次いで、私どもは、本当にオンラインができ上がるもとの資料になった台帳であるとか、その台帳がマイクロに撮られているものとか、あるいは場合によっては、国民年金の場合には市町村の名簿というようなものに当たって、そして調査をする。

 そして、今のことで言うと、さらにそれを庁に上げてもらいまして、庁の専門的なチームによってそれをさらに調べるということをやっているわけですけれども、今度の第三者委員会というのは、いわばこの庁のチームの上部に立って、実際に、社会保険庁長官による、実務的には社会保険事務所の所長さんが下す裁定という、下すのはもちろん社会保険庁長官ですが、そういうことについていろいろと高次元の御判断をしていただくということをお願いしているものでございまして、極めて現実問題を解決するためにそういうことをお願いするということでございます。

 それも、しかも、私どもも委員の方々にお願いしようと思っているんですが、本当に国民の立場に立ってそういう御裁断を、それで、そのこと自体の証拠だとかというんじゃなくて、周辺の関連する事項も全部いろいろとお聞きいただいて、それで判断をしていただくということをお願いしようとしていることでございまして、そういうことであるということを申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)

山井委員 委員からも声が出ていますが、全然これは答弁になっていませんよ。さっぱりわかりませんよ、なぜそういう権限を持つのかというのが。

 そして、六月末までにこれを立ち上げると安倍総理は明言されているんですが、お聞きします、これは一カ所ですか、それとも全国に何カ所かつくるんですか、柳澤大臣、第三者委員会。

柳澤国務大臣 これは今も申し上げましたように、庁にあるものに、今、庁がいろいろと最終的な相談というか訂正の問題について議論をしているものの上に立ってやっていただくということになるわけですけれども、現実に、それが事実問題としてどういう事務所の形態をとるかというのは、その事務の需要に応じて、また委員会の対応として、そこからいろいろな対応が出てくるであろう、このように考えます。

山井委員 柳澤大臣、きょうは六月八日ですよ。六月末までに立ち上げると言って、何カ所かも答えられないんですか。

 大臣、そうしたら、もっと簡単に聞きますよ。一カ所ですか、一カ所じゃないんですか、これぐらい答えられるでしょう。大臣、いかがですか。

柳澤国務大臣 これは委員会が発足をしたときに、事実問題として、どこにどういう窓口というか、そのものを置くかというのは、その事務の量によるわけでありましょうから、それとまた委員会の考え方にもよるものでしょうから、そういうことも含めて委員会におゆだねしていきたい、このように考えております。

山井委員 何か今、柳澤大臣、ばかやろうと言われましたね。(柳澤国務大臣「そんなこと言っていませんよ」と呼ぶ)

 これは六月中に立ち上げるんですよ。そうしたら、中身の判断基準とか何カ所かというのは、具体的に来週決めるんですか、再来週決めるんですか。もう来週か再来週しかないですよ。うなずいておられますが、どっちですか、来週決めるのか、再来週決めるのか。そうしたら、ちょっとそれぐらい言ってくださいよ。今でも遅過ぎるけれども、今決まっていないと言うんだったら、来週決めるんですか、再来週決めるんですか。その箇所数と中身の、今の本人が希望したら行けるかどうかとかは、いつ決めるんですか。

柳澤国務大臣 第三者委員会は、私どもとしては今月中の設置を考えているわけでございますけれども、具体的にどういうような事務所のしつらえ方になるかということは、やはり今後にまたなければならない面もあると思うんです。そこに一体どれだけの量の仕事というか、そういうものがかかってくるかということによる面があるだろう、このように私は想定をするわけでありまして、そういうことでございます。

 今、基本的にはもちろん、先ほど来申し上げておるように、本庁の今の機構にかわるというか、それの上部に立つ機関、こう考えておるということを御理解いただければと思います。

山井委員 大臣、わかりましたよ。結局、何にも決まっていないんじゃないですか。何にも決まっていないけれども、安倍総理が六月中に立ち上げると言ってしまった。そして、要は、こういうケースはどうですか、判断基準はどうですかと言われたら答えられないから、答弁から逃れるために、全部第三者委員会が決める、第三者委員会が決めると、逃げるための方便じゃないですか。幽霊じゃないですか。実態は何にもないじゃないですか。これは六月中に立ち上げるということで、委員の人に二、三日前に頼むなんてことじゃ通りませんよ。一週間とか二週間前に頼むんでしょう。そうしたら、内容がもう決まっていなくてどうするんですか、これは。びっくりしました。

 そうしたら、大臣、改めてお聞きします。

 私は、一番来られる可能性が多いのが、過去一年の間、領収書がないばかりに、払ったと強く主張してもはねられた方が二万六百三十五人おられるんですね、一たん、はねられた方が。うなずいておられますが、この方々は恐らく、この第三者委員会にもう一回審査してくれと駆け込まれる可能性が非常に高いと思うんです。お一人お一人、二百万とか四百万とか五百万かかっているわけですから、泣き寝入りできないですよ。そうしたら、その二万六百三十五人は、この第三者委員会に諮ってもらうという要望を受けつけてもらえるんですか、柳澤大臣。

柳澤国務大臣 この方々は、二次の調査の済んだ方でございます。つまり、先ほども申したように、市町村の名簿、それからオンラインの記録のもとになった台帳、こういうようなものに当たって調査結果が出たという方々でございます。

 したがいまして、あと残るのは本庁の、今でいえば本庁の審査チームにゆだねるということになりますが、第三者委員会が発足した後においては、それは第三者委員会の場にゆだねられるということですから、そういうことになれば、それが想定される姿だと私は思います。

山井委員 そうですね、大臣。ということは、六月末に設置されたら、瞬時に二万六百三十五人ぐらいはほぼ確実に行く可能性があるんですよ。それは一カ所で大丈夫ですか、何人もいる委員会なんですか。

 それで、先ほどの答弁だと、希望した人は本人の意見を聞いてもらえる、二万六百三十五人が行く、おまけに、それぞれ、今まで審査に審査を重ねてはねられた、はっきり言って、割とグレーのややこしいケースばかりですよ。それが、まだ全然詰まっていないということで、本当にこれはどうするんですか。

 時間も限られてきましたので、もう一つお聞きします。

 これに関連して、時効撤廃法案。対象推定二十五万人、九百五十億円のお金が、今まで社会保険庁のミス、本人の落ち度が全くなしで年金不払いであったという国家の詐欺的行為が明らかになったわけなんですが、私は、実はこれは、領収書を持っていったり、証拠があって記録の訂正が認められた人だけが二十五万人なわけですから、それこそ、証拠がないということではねられた方というのはこの数倍というか、もっと数多くおられると思うんです。

 柳澤大臣、ということは、今まで時効ではねられる以前の問題として、記録訂正もできなかった方が改めて第三者委員会に要望するということはできるんですか。

柳澤国務大臣 これは当然でありまして、調査をまたお願いしてもらって調査して、そして第三者委員会にまた持ってきていただくということは十分あり得ることだと私は思っております。

山井委員 私も、それは当然だと思います。ということは、これは二十五万人にとどまらず、もっと対象者はふえる可能性があるということと理解してよろしいですか。もう一回、再裁定を第三者委員会で受けた場合、柳澤大臣。

柳澤国務大臣 もともと二十五万人は推計でありまして、しかも、訂正が過去において行われた人を土台にして推計をしたことは、委員御承知のとおりでございます。

 したがいまして、今後、訂正が行われる方々が加わっていくというか、数として積み重なっていくということは当然想定されておるところでございます。

櫻田委員長 山井君に申し上げます。申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力を願います。

山井委員 最後に一言だけ申し上げますが、今、柳澤大臣、また非常に重要な発言をされましたよ。ということは、今まで時効ということで年金不払いになっていた人は推定二十五万人だけれども、これは証拠がなかったからはねられていたのであって、もう少し丁寧にやったら、二十五万人がどんどんもっとふえて、あるいは国家による年金の不払いが九百五十億どころじゃなくて、もっともっと大規模であったということが明らかになるかもしれないということを今答弁されたわけであります。そのことを、私たち民主党が追及するまで、このような問題も知らず存ぜずでされてきたということに、私は強い怒りを感じます。

 最後になりますが、きょうも今見ていたら、何か与党の議員席も妙にきょうは静かで、しんとされていましたが、事の重大さがおわかりいただけたんじゃないか。第三者委員会、第三者委員会とおっしゃっていたけれども、実は、さっぱり何も決まっていなくて……

櫻田委員長 山井君に申し上げます。

 答弁者はこちらにおりますので。

 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終結してください。

山井委員 この救済問題はまだまだこれからだということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

櫻田委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 今、質問の中にも出ていましたし、今までもずっと出ていましたが、余りにもずさんな記録の管理、これがひど過ぎる、これはもうだれから見てもはっきりしております。

 そして、私が今最初に確認したいのは、金の管理はどうなっていたのか、どうなっているのか。年金保険料の積立金、例えば厚生年金でいえば、現在百三十二兆四千億円ある、こう言われております。これらの積立金は、全部、だれが払ったもので、運用収入が幾らで、こういう内訳は厳密に、今帳簿上もはっきりしているんでしょうね、大臣。その点をまず確認します。

 郵便貯金にしても銀行にしても、すごい多額の額になりますが、一円でも違ったらこれは大変なことで、みんな、常時、支店においても残業して、最後の一円が合うまで管理をはっきりさせるわけでございまして、保険料に関しても、国ですから、当然していると思うんです。だから、もう一度厳密にお聞きしますが、今社会保険庁の方の帳簿で積立金が百兆円以上ありますが、この内訳、だれが、いつ払った保険料で、いつ、どういう運用収入で得たものであるか、これらは全部厳密に帳簿に残っておりますね。

柳澤国務大臣 今筒井委員がおっしゃられた、いつ、だれが、幾ら払った保険料でということは、これはないわけでございます。

 それは、保険の積立金の中でそういうものが個人別に明らかになるということではなくて、付加年金でもございますので、保険料と見合いで、もちろん、標準報酬の月額とか、あるいはそれの積み重なったものに一定の率が掛かって給付が行われるわけでございますけれども、そういう積立金の中で、一々個人の保険料が対応して積立金が積み上がっていく、そういう会計経理は、そうした事の性質上行われておりませんけれども、その他の部分につきましては、これはもう当然しっかりとした会計処理がなされているということを申し上げたいと思います。

筒井委員 そうすると、今、保険料収入の総額は帳簿上残っている、しかし、いつ、だれが払った保険料であるかという内訳は一切会計帳簿上残っていないという答弁ですか。

柳澤国務大臣 これは、個人個人の、いわば先ほど来問題になっている基礎年金番号なり、あるいは年金の記号番号なりということの中でこの納付が行われている。その場合の基礎になっている標準的な報酬の金額は幾らであるということが明らかでございますので、そういうことからして、保険料としても明らかという形で管理されているということでございます。

筒井委員 標準報酬が明らかであったとしても、だから、それに率を掛ければ納めるべき保険料ははっきりしますが、実際に納めたものであるかどうかはわからないわけですね。私、今、納付記録の方から聞いているんじゃないんです。積立金の経理帳簿の方から聞いているんです。

 では、もう一度確認しますが、経理帳簿の方でこの金額、保険料の支払い金額の総計であるという、それは帳簿上も残っているんですね、それとも残っていないんですか。

柳澤国務大臣 結局、年金の積立金というかそういうものは、源泉をたどれば、それは保険料であるし、また、保険料の積み重なったものを運用する運用収益であるわけでございますが、その保険料が幾らであるかということは、それぞれの年度の決算において、トータルの金額は明らかにされているわけでございます。

筒井委員 確認しますが、それぞれの年度において納付保険料の合計額、これは帳簿が現在も残っている、それは社会保険庁全体としてですか、社会保険事務所ごとに残っているんですか。

柳澤国務大臣 結局、そのトータルの金額は、年金の特別会計なら特別会計の決算ということで保険料収入幾らということで決算される、こういうことでございます。

 そして、他方、委員がちょっとさっき御関心を示された年金の納付記録というのは、まさに今、いろいろな、ここで議論になっている、いわば個別の人別の管理が行われている基礎年金番号によるところのデータで、納付があるか、納付がされなかったか、あるいは、納付がされないけれどもそれは免除されたものかというようなことが記録されている、こういうことでございます。

筒井委員 だから、今、人別の方の納付記録の方から私は聞いているんじゃないんです。積立金の内訳の会計帳簿の方でどこまで具体的に記載されているのか、それとも、それもどんぶり勘定で合計しか書いていないのか、そのことを聞いているので、どうも先ほどからの大臣の話ですと、年度ごとに合計した納付保険料の総額しか記載されていない、こういう答弁ですが、それでよろしいんですか。

柳澤国務大臣 私、ちょっと筒井委員の御発言のポイントをなかなか正確に受けとめたかどうかおぼつかないんですが、要は、それぞれの年金の保険料は、その年度、その年度の決算の中で、トータル金額として、これが保険料収入でございましたということできちっと明確にされている、こういうことであります。

筒井委員 だから、明確というのは、総合して、この年度の保険料収入は合計で幾らですというところだけがわかるということですね。どこの社会保険事務所の保険料収入であるとか、さらに下がって、だれの、どういう人がいつ払った保険料収入であるとか、そういうところは会計帳簿上もそもそも全く記載されていないということですね。

柳澤国務大臣 これは常識的にそうだということで私は理解しているわけですけれども、保険料収入というのは、特会の収入ですから、国庫金の収入だろうと思います。国庫金の収入でございますから日本銀行に振り込まれるということになりますから、したがって、日本銀行のどこ支店扱いというようなことは、特会そのものが集計をするときには事務手続上当然わかるわけでございますけれども、そういうものが記録として保存されるというようなことは、さかのぼって調べれば調べがつくとは思いますけれども、そういうことが非常に重視された形で記録保存が行われているということは、ちょっと考えにくいと思います。

筒井委員 銀行あるいは郵便貯金のように、いつ、だれが支払った、納付した金額であるかということをはっきり会計帳簿上も書いてあるならば今度のような問題は起こらないわけですよ。ところが、九九年に会計検査院が検査したところ、過去五年間に一千七百万円の保険料の横領事件があったというふうな報告をされておりまして、この横領事件というのは、もちろんほかの銀行でも郵便局でもたまにはあるわけですが、しかし、会計検査院が調べて初めて過去五年間のものがわかった。そういう事実から見たって、社会保険庁は、その会計帳簿といいますか金の管理自体が余りにも雑過ぎるんじゃないか。本来やるべきこともやっていない。納付記録だけじゃなくて、会計帳簿自体が一体どうなっているのか。だから聞いているのです。

 大体、今、納付した保険料がどうも払ったことになっていない。どこかへ消えちゃったと言うと、政府も与党も消えたわけじゃないんだと言いますが、例えば横領した場合には消えているんですね。それで、今みたいな帳簿の管理だったら、その金は一体どこに行っているかわからないんじゃないですか。完全に消えているじゃないですか。

 被保険者の個別の納付記録と同時に会計帳簿上も、まさに、だれが、いつ払った保険料であるか、これをはっきり記録として記載しておくべきではないですか。

柳澤国務大臣 これは、現実の今の厚生年金で申しますと、事業所の事業主が自分たちの従業員の給料を標準化して、これは一定の表があって、現実に支給されたものを標準化して標準報酬月額ということでやるわけですが、そのトータル金額に保険料率を掛けて自分たちの事業所としての納付金額を算出して納める、こういうことでありまして、基本的にその従業員のことについては、むしろその従業員の基礎年金番号のもとでの納付の記録としては、そういう形で、この方の標準報酬月額は幾ら、それからまたそれは納付があったかという形で残されていく、こういう格好になるわけです。

 それから、国民年金につきましては、個別の現金納付もあり得るわけですけれども、そういう場合も、結局、その金額は、このごろは段階的な減額というものもありますので金額を明示することもあるんですが、その場合でも、その段階が記録されていく。こういう基礎年金番号における管理というのは、私が見た限りでは、金額が表示されるということはまずなくて、そういうような、その人のいわば納めるべき立場というか、それと、納付があったかなかったかということを記録されていく、こういうことになっているわけでございます。

 したがいまして、今委員がそういうことを前提にしてまた御質疑があれば御質疑をいただきたい、このように思います。

筒井委員 オンライン上に納付したという記録がないために支給を減額したりあるいは支給しなかったところが、その後、領収書が出てきて、支給を増額された、これが五十五件だと、ほんの氷山の一角だと思いますが、そういうふうに公表されておりますけれども、その人たちは実は保険料を払っていた、しかしオンライン上記録はなかった、だから保険料を払っていないことになっていた。しかしその後、払っていることがわかって増額された。この保険料は、社会保険庁としては払っていなかったと思っていたんだけれども、実はその積立金の中に入っていたんだということになるわけですね。あるいは、その積立金以外のところにそれがあったというわけじゃないでしょう。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 一番わかりやすい例で申しますと、年金のうち、通常の年金、国民年金ですが、これは市町村に納められるということがありました。そのときに、印紙でもって納めるという時代があったわけでございます。印紙を買ったということによって結局国庫への納付金になっているわけです。いわば保険料がそれで国庫に納まっている。ところが、いわばその買った印紙を張りつけた帳面と同じことを検印でやっている。検印でやって、印紙の貼付と検印というものは完全にイコールになっている。したがって、そこを切り離して、これを国の社会保険事務所に届けてくださいということにシステム上なっていた時代があります。

 ところが、今度の五十五件のうちの一件か何件かですけれども、切り離して社会保険事務所に送るということがなかったんです。それは市町村がそういうことをなさらなかった。もちろん、それは被保険者には何の落ち度もないんです。被保険者は、それが切り離して社会保険事務所に送達されるものだということは多分御存じないでしょう。ですから、そうやって、年金記録にしっかりとどめられたといったら大事にしてお持ちだったわけです。ところが、社会保険事務所は、その切り離されたものがない限り納付ということを記録できないわけです。ですから、お金は印紙を買った段階で国庫に納まった。しかし、切り離して、その証拠が納まったということを社会保険事務所に送達しないということで、抜けちゃったものですから、社会保険事務所の中には未納付、不納付ということになっちゃった。

 こういうことが五十五件の中にありましたので、そういうことによって、実際に、受給権者あるいは被保険者の方と社会保険庁側の記録が合わない。しかし、これはもうはっきりした不動の証拠でございますから、私どもとしては、確かに納付されましたねということで訂正をさせていただいた、こういうことが一例でございまして、そういったことがすべてとは言いませんが、そういうことがありますので、ぜひそれもまた参考にしながら御質問をお続けいただきたいと思います。

筒井委員 そうしますと、今の例ですと、国庫に印紙売却収入として納められている、しかし保険料収入としては納められていない。今の例でいいますと、積立金の中には入っていない例という形になりますね。

柳澤国務大臣 私の表現も、印紙収入という表現を使って委員をちょっと誤解させてしまったかもしれませんが、これは国民年金の印紙ということでございますから、一般の印紙の売却収入とはおのずから分別されるということでございます。

筒井委員 そうすると、その売却した金はどこへ送られたんですか、今の例で言えば。

柳澤国務大臣 これは特別会計の収入として、いわば保険料収入ということで経理されるということでございます。

筒井委員 そうしますと、それは特別会計の方では納付保険料として入っているわけですね。保険料として納付されているのに、しかし、保険料として納付しましたという記録を社会保険庁の方に市町村が送付しなかったということですか。

柳澤国務大臣 私が今説明に用いた例は、まさにそのとおりでございます。

筒井委員 今の例で言うと、では、その都度の収入と納付の状況との突き合わせはその都度もやっていなかったということですね。それは全然別だったんですね。

柳澤国務大臣 ちょっと委員の御発言のポイントが必ずしも私理解できないんですが、確かに保険料の……(発言する者あり)

吉野委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

吉野委員長代理 速記を起こしてください。

 筒井信隆君。

筒井委員 納付の保険料として特別会計の方に入っていれば、それが同時に社会保険庁の方に特別会計の方から連絡が行くか、あるいは社会保険庁の方でそのことを知れば、納付記録の方もそうやってちゃんと整理することができたんじゃないですか。全然それを別にしていたんじゃないですか。だから、納付記録の方は納めたことになっていなくて、しかし金は実際には特別会計の方に入っていた、こういうおかしな結果になったんじゃないですか。

柳澤国務大臣 印紙が売却されたときに、どなたがお買い求めいただいたものであるかということを確認して、そしてそれを社会保険事務所のその方の年金記号番号のもとでの記録に残すということは、今申したように、市町村の印紙の台紙を、張りつけたときに並行して行われる検印のその部分の切り離しによって通知されるということによって、納付とそれからその方の納付の記録とが一致をする、こういうことが期待されている仕組みであったわけですが、そこで、その過程において切り離さずに、切り離しをして進達をするということが欠けてしまうと、今委員が言われるように、保険料収入は特会の保険料収入として納付が行われているにもかかわらず、それが各一人別の記号番号の記録として残らないということが起こるということは、今重ねて申し上げているところでございます。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

筒井委員 その会計処理の問題についてはさらに引き続いて聞きたいと思いますが、緊急の問題として先ほど山井議員が質問した第三者委員会の方のこと、もう今月中の問題ですから、これも何点か確認したいと思います。

 今、社会保険審査官あるいは社会保険審査会、こういう手続があって、こういう年金の支給の額、保険料の納付の問題について審査するという手続がありますが、これがあるのにそれとは別に第三者委員会を設置する、この理由はどこにありますか。

柳澤国務大臣 ただいまの御質問は、私ここでも申し上げましたけれども、年金記録についてのいろいろな照会あるいは回答といったようなことにまつわって社会保険審査会が利用されるということが非常に少ないわけなんです。私も聞きました。こうした給付だとか納付だとかというようなことについての、いわばこれはテクニカルタームですから申し上げますが、不服審査、行政用語で不服審査と言われるものはあるんだろう、こう言って私も申したら、それはあるんです、社会保険審査会というものがあるんですと。しかし、年金記録についてのいろいろなこういう紛糾と申しますか、そういったことについてこの社会保険審査会が活用されるということが余り数が少なくて、と申しますのは、不服審査という問題というのは、行政庁の処分が行われた場合、その処分が不服ということで事が始まるということでございます。

 したがって、まず、被保険者について裁定が何も行われていない、つまり行政処分が行われていないのに審査会で何かやるということはないし、それから今度は、受給権者の場合に裁定があった後六十日に不服の審査を申し立てないといけないという、まことに審査請求期間というものが短く設定されているということで、そこでこのルートが余り活用されずに、事実問題として行政の窓口においてこうしたことが行われている。その系統の問題の処理として、今私どもは、委員が問題にもされているこのプロセスのしつらえ方がどうか、こういう問題が起こっているということでございます。

筒井委員 今現在の審査手続は、年金給付とか保険料とか、こういうものについて審査請求することができるわけで、今言われた、裁定があった場合にまさに行政処分ですから十分できる、そして、六十日といっても、その期間に審査請求することができなかった事情を疎明すればそれを延ばすことができる、そういう点では活用できるわけでございますが、ただ、今の大臣の説明ですと、こっちの方が、今現在ある審査手続の方がより被保険者に難しい手続になっている、行政処分でなければいけないとか六十日という規定がなきゃいかぬとか、それをもっと簡易に易しく被保険者の立場に立ってできるようにするためにこの第三者機関を設置したんだ、趣旨としてはそういう説明でよろしいですか。

柳澤国務大臣 結局、現実にこの制度が活用されている、されていない、されていないことを前提にしてどうするかというような問題に直面して、私どもとして実際に年金相談ということをさせていただいているわけでございます。

 年金記録についての相談、こういうことをやっているわけですが、ずっとその相談のプロセスの中で、社会保険庁そのものが、これは当事者でございます、ある意味で裁定官庁ということで当事者でございますので、当事者のことではなくて、そういうふうに当事者間で問題があるということであれば、やはり第三者にいろいろ御判断もいただいたり御意見もいただいたりということがあった方がいいだろうということで、こういう事実の、現実問題の処理のために出てきたという考え方でございます。

筒井委員 現在の審査会が利用できるのに余り利用されていないとすれば、それを利用できるようにすればいいんですよ。もっと利用すればいいんですよ。だけれども、別に今度つくったのは、これは被保険者の立場に立って、最も被保険者の側から見て簡易迅速に補償できるように、そうするためにつくったんですね、先ほどからの答弁を聞きますと、そういう趣旨ですかということで聞いているんです。

柳澤国務大臣 ちょっと表現は、当然人それぞれによって違いますけれども、私が申し上げておりますのも、審査請求手続ということのいろいろな制約というものを外した形で、実際上、被保険者の方あるいは受給者の方々の御納得をいただく、そういう手続としてこれをつくらせていただいているということでございます。

筒井委員 そういう抽象的なことに関しては被保険者のためにということは言うんですが、先ほど山井議員の質問に対して、六月いっぱいにつくるということだけは言っているけれども、どういう構成で何カ所つくるかも今現在も決まっていないというのは、もう不可能じゃないですか。どのくらい第三者機関への申し立てとか何かがあるかわからないと言いましたが、こんなのは予測できるでしょう。こういうのを初めてつくるときには今の相談状況から大体予測して、それでつくるのが当たり前の話ですよ。今現在もそういう中身が決まっていないというのは、もう六月いっぱいにつくる気がないんですか。

柳澤国務大臣 今度の第三者委員会というものについては、私といたしましては、社会保険庁のさっき言ったようなものの、それの中立公正な機関の意見を聞くというプロセスということになれば、社会保険庁なりあるいは厚労省なりに置くという考え方が出てくる、行政的な側面からいうとそういう考え方になってくるわけですけれども、果たして今我々が直面しているような社会保険庁あるいは厚生労働省というものが、本当に残念ながら、御信頼ということについて、そこが問題にされているということであると、本当に厚労省なり社会保険庁なりにそういう委員会を置くということがいいのかどうか、こういう問題も一つあり得るわけでございます。

 そういたしますと、そこのところがまだいろいろ御意見がありまして、そうして今鋭意検討をして、しかし、これはスタートをするというのは、委員の人選さらにはまた委員長の人選、さらには今後の議事運営の手続等を考えるということによって、この骨格はそんなに長く時間のかかるものでないというのは筒井委員も御理解いただけるのではないか、このように考えます。

筒井委員 こんなのは、本当にやる気があるならば必要ないんですよ。行政処分を受けた、裁定した場合には、今の審査官あるいは審査会の制度をもっと充実して、そしてもっと簡易迅速にやるようにやればいいんですよ。その前のものは、記録の照合だけならば相談体制をはっきりさせればいいんですよ。各社会保険事務所で今やっているわけでしょう。それをもっと充実すればいいんですよ。こんなのは必要ない。

 だけれども、これこそまさにパフォーマンス、第三者機関をつくって安心できますよと国民に訴えて、それで何とか支持率の回復を図る。あの時効特例法案も一緒ですよ。この前ここで私は大臣に質問をして、大臣も答弁していただきましたが、一言で言うと、社会保険庁のミスによる場合は時効期間は進行しない、こういう答弁をいただきました。そういう解釈で十分なんですよ。時効特例法案なんか必要ないんだけれども、これもあの法律を一日でもってここで強行採決して、これでちゃんと政府・与党はやっていますというパフォーマンスを示して支持率を上げようとした。だけれどもあれは失敗した、全然支持率が上がらないんですから、その後も全然信頼回復していないんですから。第三者機関もそうですよ。今でさえ中身が定まっていないもの、ますます不安感が高まるだけですよ。

 一番大事なのは、第三者機関で一体どの程度の証明を被保険者、国民に求めるのかという点ですよ。柚木委員が先ほど提出しました資料の中の、厚生労働省のホームページによりますと、御本人の領収書等の証拠がない場合であっても、銀行通帳の出金記録、元雇用主の証言など云々と書いてありますが、通帳の出金記録、何十年前のがありますか。こんなのは領収書と一緒ですよ。元雇用主の証言なんて、どうやって捜すんですか、何十年も前のを。領収書はなくてもいいですと言ったら、今度はこれを要求してきた。

 どっちにしても一貫しているのは、被保険者に証明を要求している点。これが民間の当事者同士でお互いに意見の対立があったら、おまえ、請求するなら証明しろと言うのはいいですよ。だけれども、そもそも社会保険庁がミスしてこんなに記録をなくしてしまったんでしょう。わけをわからなくしちゃったんでしょう。そういう前提であるときに相変わらず証明を要求する、こういうふうに理解されるんですが、これは今、証明の方法は変えてもいい、領収書でなくてもいいということは言っているんだけれども、これからも被保険者の方に支払ったという証明を要求するという態度は一緒なんですか。

柳澤国務大臣 私どもといたしましては、とにかく被保険者の側のおっしゃることに耳を傾けるということでございます。

 ですから、最終の、要するに社会保険庁の方はある意味で何も記録がないということでございますから、これはもうその事実ということに限るわけです。後は、場合によっては納付方法なんというようなことがあり得るかもしれませんが、基本的には、とにかく国民の皆さんあるいは被保険者、あるいは受給者の皆さんの意見に耳を傾ける。そういうことはもういろいろな御事情があると思います。そういう中で、第三者の方々がいろいろな御経験、御見識で、これはこうではないかというふうに判断をしていただくということを期待いたしております。

 それからさらに、私といたしましては、今回のこの件については、特に国民の側に立ってそうした意見に耳を傾けていただいて、御裁断というか御意見を形成していただくことをお願いしたいということを申そうと思っているということを、かねてからここでも申し上げているところでございます。

筒井委員 耳を傾けるなんというのは当たり前の話ですよ。そんなことを聞いているんじゃないんです。

 社会保険審査会よりももっと被保険者の立場に立って簡易迅速に補償できるような、そのために第三者委員会を設置するんだという趣旨のことを先ほど言われましたが、社会保険審査会では、本人からの申し出がある限りその意見を聞かなければいけない、これが義務づけられていますね。意見聴取は義務ですね。今度の場合も、それよりはもっと被保険者の立場に立っているんだから、意見を聞くのは当然の話で、耳を傾けるのは当然ですよ。

 ただ、その場合に、さっき言ったような雇用主の証言だとか過去の通帳の記録だとか、そんな書類がなきゃいかぬなんて言わないで、その意見を聞いて一応確からしいという推測、法律用語で疎明といいますが、一応確からしいという推測ができる状況になったら、これは、それで納付されたという判断をするべき、こういう疎明で十分であることは間違いないでしょう。証明だと、一応確からしいじゃなくて確かだという確信に至る状況が必要なわけで、そういう証明は必要ないでしょう。

 実際に、社会保険審査会においても、あるいは労働委員会とかもそうだし、あるいは裁判所でいうと仮処分なんかもそうですが、みんな疎明でいいんですね。一応確からしいという推測ができる状態になったら、そう判断する。証明が必要なのは、本訴だとかそういう手続の場合である。

 社会保険審査会よりもずっと被保険者の立場に立ったそういう第三者機関だと言っているんですから、少なくとも、本人の意見を聞いて、本人の事情聴取をして一応確からしいという推測を得たらそれを認める。それを否定する場合には、今度は社会保険庁の方で証明をしなきゃいかぬ。そういう対応をしていくことに関しては、少なくとも大臣、よろしいでしょうか。

柳澤国務大臣 第三者委員会を構成していただく委員の方には、そうしたことにそれぞれに練達な方、つまり弁護士さんや何かをお願いしよう、こういうふうに思っておりますので、そういう中で、今回の第三者委員会の設立の経緯等も十分踏まえていただいて判断をしていただくということになるだろう、このように私は思います。ただ、今筒井委員が専門的な立場から投げかけられる御質疑に対して私がいろいろと申し上げるということよりも、そういう練達、高い御見識をお持ちの先生方が、今日の私どもが直面している事態というものを踏まえて御判断になっていただくのが適切である、このように考えております。

筒井委員 全然適切でないし、その委員の人も困るんですよ。ここで判断するときに証明まで要求するんですか、あるいは疎明でいいんですか。方針は、政府が設置するんですから、政府がどこまで要求するんでしょうか、それ次第なんですよ。どこまで被保険者に要求するのか、それを決めるのは第三者委員じゃないでしょう、まさに設置する政府、厚生労働大臣が決めるんですよ。こういう方針でこれは、疎明でいい社会保険審査会よりももっと被保険者に簡易迅速に補償するために、与党の言葉で言えば救済だ、救済でも何でもないので私は救済という言葉を使いたくないんだけれども、救済するために設置したものですから、これは疎明でいいです、疎明の範囲でもって判断してくださいと。専門家であればあるほど、その基準を示してもらわなければ判断のしようがないでしょう。それは厚生労働大臣が決めるべきなんですよ。

柳澤国務大臣 今委員が言ったように、第三者委員会がスタートをする際に、私どもとしても、今我々が立たされている状況を、やはり国民が一番納得していただける考え方、こういうものを練り上げる機会があるだろう、こういうように思っております。

 そういうようなときに我々は、今自分たちが直面している問題というのをつまびらかに説明することは、これは当然いたさなければならない、こういうように思っておりまして、そういうところでスタートに際してそういったことを固めまして、適切な、また国民の皆さんが納得してくださる、そういうことに基本的な考え方に従って、現在のこの状況を改善し、国民の信頼を回復できるような手だてにしてまいりたい、このように考えております。

筒井委員 これはもちろん、学者さんに研究して真実を究明してくれという機関、その諮問ではありませんから、まさに政治的につくるものですから、今大臣が言われましたように、まさに、どういう方針でこの第三者機関をつくるかは大臣の方で説明しなきゃいかぬ。

 では、今の答弁ですと、先ほど私が言いました、一応確からしいという推測でいい、つまり疎明でいい、あるいは証明まで要求する、これらの方針はつくる直前に打ち出すということですね。今の答弁はそういう趣旨ですね。

柳澤国務大臣 今、自分たちが直面している問題ということは我々なりにつかんでいるわけでございます。それからまた、これまで社会保険庁がいろいろと判定してきたことが、それぞれどういう状況で行われてきたかというようなことについても蓄積があるわけですね。そういうようなものが、しかも社会保険庁の判断というものがなかなか国民の納得を得られていない、こういう実績というものも積み上がっているわけでございますので、そういったことを踏まえて、委員の先生方にそういったことをいろいろ御説明させていただく中から、専門的な見識もいただきながら、そういう基準というか考え方というかそういったものをつくらせて、また、多分、今委員が言われたように、それはいろいろ御意見もいただきながらつくるということになろう、このように考えております。

筒井委員 六月に設置してから委員の意見を聞いて、それから基準を決めるんですか。

柳澤国務大臣 私どもとしても、いろいろと先ほど御説明したように、現在直面している問題ということについて、私たちなりの受けとめというものもあります。それからまた、いろいろと社会保険庁が積み重ねてきて、裁断をしたという事例も積み上がっております。それからまた、そういう事例の中で国民の皆さんの納得がまだ得られていないという実績がある。

 そういう事実の積み重ねをお話し申し上げて、それを先生方に、準則の形、基準の形にしていただくというようなことは、よりそういったことに専門の知識あるいは見識をお持ちの方に御相談をしながら決めさせていただくというのが自然のことではないかということで、その御相談をする前に私どもがいろいろ決定的なことを申し上げるということを差し控えたいということを、先ほど来申し上げているということでございます。

筒井委員 要するに、今まで領収書がなきゃだめだと言っていたのが、今度は雇用主の証言だとか通帳の記録だとかいって変わってきただけで、やはり証明を要求してくる。それが物すごく基本的な問題なんです。それでもってみんな支給を否定されてきたんだから。それを今度どう決めるのか、どう変わるのかという判断が基本的な問題なんですよ。

 六月中にその第三者機関で公平迅速に、公平な判断をしますと言っているんだけれども、その基準は、六月に委員を決めて、そこから議論をして、それから決めるという今の答弁ですと、では一体いつから事実上発足するんですか。審査は一体いつから始まるんですか。それこそ一年も二年も先になるんですか。六月から相談者あるいは申し立てに対する審査が始まるのではないんですか。大臣、その点。

柳澤国務大臣 基本的にそういう考え方でおりますので、それまでに設置をして、そしてこの御審議をいただく際の基準というか準則というか考え方を御協議の上、迅速に決めさせていただいて、それはもう事実上は、委員の先生方が決まる過程においてもいろいろ御相談ができようかと思うんですね。ですから、それは、第一回のお顔合わせのときに、議事規則などと一緒に考え方というものを固めていただけるというようなことを想定しているということでございます。

筒井委員 そうしますと、六月からもう審査が始まるという答弁ですから、めちゃくちゃ、大体できっこないですよ、今のあれで。基準も決めて、人数も決めて、場所も決まっていない、何も決まっていないんだから。

 だけれども、その上でも聞きますが、大臣、今までの答弁ですと、被保険者に領収書だとかいろいろな書類関係とか、そういう証明までは要求しないことは確かですね。大臣自身の考えとしてはどうですか。

柳澤国務大臣 ちょっと私、さきの御質問に対して本意と異なる発言をしたかもしれませんので、確かめのお話を申し上げておきますと、私どもが申しておるのは、六月中に設置するということを申しておりますので、そういうことで、ひとつその枠組みで御理解をいただきたい、こう思います。

 今、証明かどうかということについては、私どもは、専門的なことはともかくとして、証明ということは求めていかないことを基礎としたい、このように考えております。

筒井委員 証明を求めない、その点は非常にいいことだと思いますし、一歩前進だと思いますので、それについてちょっとさらに聞きますが、今、何かおかしなことを言われまして、先ほどの答弁を修正して、六月中に設置するという意味だと。そうすると、六月中に設置して、審査手続が七月一日から始まるというわけではないんですか。それはもっと先になるんですか。申し出は七月一日からもうできるようになるのではないんですか。

柳澤国務大臣 六月中に設置するということを決めてあるということです。したがって、それは七月一日からというか、そこは私どもとしては、できるだけ早期にスタートを切るような体制をつくりたいということでございます。

筒井委員 そして、今の重要な、証明は求めないという点ですが、本人の意見を聞く、これは私は第三者委員会で義務づけなきゃいかぬと思いますよ。本人の意見しかない場合が多いんだから。本人から事情聴取する、これが大原則ですよ。今の社会保険審査会においてもそれが義務づけられているんだから。それよりももっとひどくするなんということはあり得ないでしょう。大臣、どうですか。

柳澤国務大臣 もちろん、社会保険審査会というような完全に法律に基づいた機関という場合には、厳格な手続ができ上がっているということは私も承知をいたしておりますけれども、しかし、今回の場合、先ほど来ずっと申しているように、事実上、国民の皆さんの意見を聞いて判断していこう、こういうことの行政の実務的なことを進めるための機関、こういうことでございます。

 筒井委員は法律家でいらっしゃいますから、そういうところを厳格にということですが、私としては、お望みの方々というものを、嫌だから話は聞かぬというようなことはあり得ないというふうに考えていますけれども、そこはいろいろなルールがあり得ようと思います。

筒井委員 御本人の意見を聞かないなんてあり得ないと思っていますという、大臣、その言葉でいいんですよ。だけれども、それにプラスしていろいろなルールがあり得るというのは、では拒否する場合もあるのかということが出てくる、そういう心配がある。

 それと、本人からの事情聴取を受けて、その話の前後の中身、今までもこの委員会の場所でいろいろな実例が出されました。それらの話の内容によって、これは一応確からしいなと推測が可能な場合があるわけですよ。そういう確からしい、だが言葉だけで、全部が全部言葉だけで信用せいと私も言っているわけじゃないですよ。そういう事情聴取だけで納付したことを認める場合、これもあることは間違いないでしょう。

柳澤国務大臣 委員もちょっと仮定でおっしゃられたように、それだけで認めるとは自分も思わないけれどもと、こうおっしゃったところがありますね。要はそういうことなんですよ。ですから我々としては、やはり皆さんの保険料で、被保険者の方それから受給権者の方を公平に、またまさに適正に、あるいは正確にというんですか、我々はそういうふうに対処していかなければならないという一般的な責務を負っております。

 そういう中で、しかし、我々のミスでいろいろ国民の皆さんに御迷惑をかけている、御心配をかけているということを、どうやってこれを解決するかということが基本であるというふうに思いまして、その基本から、今委員が御提起された問題についても、委員もお認めになられておるようなこともよく勘案して考えていきたい、このように思います。

筒井委員 よく考えていきたいなんという答えはあいまい過ぎてだめなんです。

 私はもう当たり前のことを言っているんですよ。裁判所だって、証拠がなくて証言だけで認定する場合があるんですから。だけれども、どうも今までのこの委員会の審議では、証言だけでは、供述だけでは認められないみたいな、そういう言い方をしているから私は聞いているんです。

 供述だけで全部認めろなんて私は言っていないですよ。そんなことをしたら、本当に納付もしていないのに納付したと言えばみんな認めることになっちゃう。そうじゃなくて、その言っている内容、前後の説明の仕方が合理的であって、そういう説明だけでも、これは一応確からしい、こういう推測が可能な場合があって、納付したことを認められる場合があるでしょう、言葉だけで認められる場合もあるでしょうということを確認しているんですよ。当たり前の話だ。

柳澤国務大臣 御主張が、言っていらっしゃることが合理的である、真実である蓋然性が高いというような場合、これはどうするかということでございますが、合理性が高い、それから蓋然性が高いというようなことをおっしゃっていられるということであれば、そういうことを、それは多分、そういうことであれば、いろいろなまたほかの関連事項についてもおっしゃられるだろうと思うんですね。いろいろなものもあるだろうと。

 我々は、その方だけを救うという、言われることということじゃなくて、我々は要するにほかの拠出者とのことを……(筒井委員「それはわかっている。言葉だけで認める場合があるでしょうと言っているんです」と呼ぶ)いや、それは全くないということではないと思いますが、やはりそれは非常にそのことがその委員会の先生方を説得されるということ、そういう説得力を持ったお話であるということであるんだろうと思います。

櫻田委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、筒井信隆君の質疑はこれをもちまして終了いたします。

筒井委員 どうも、自分たちのミスであるというそもそもの出発点を大臣ももう少し自覚して、それを前提にした答弁をしていただきたい。

 このことを申し上げて、私の質問を終わります。

櫻田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは私、十五分しか時間をいただいておりませんので、大変悔しい思いをしております。年金の問題も本当にこのままにはできないと思います。朝から本当にいろいろな問題が指摘をされていますけれども、やはり長い間にわたってこの年金記録の管理というのがいかにずさんだったかということと、そのことを本当に急ごしらえでほころびが、すればするほど、どんどんどんどん傷口が開いてきている、そういう状況になっているのではないか。それと同時に、二度の強行採決、この国会の運営がさらにこの傷口を開いている。私は、やはり国会の責任も本当に問われている、国民の不信感が国会に対する不信感にもつながっているということを指摘しなければならないと思います。

 きょうは時間がないので、これ以上年金の問題を私は指摘しませんが、必ず政府側も整理をして、きちっとした時間をとって、与野党がみんなで議論をする、そういう場を設けていただきたい、このことをまず強く要望したいと思います。

 そして同時に、労働三法についても全く審議が不十分であります。まだ時間が足りません。特に契約法については新法でありますので、各界から参考人も招致してしっかりと議論をするべきであります。(発言する者あり)審議そのものに入っていないという御意見もございます。私は、いずれにしても、そのための十分な審議を保障してくださるように、委員長と与党の皆さんに強く要望したいと思います。

 したがって、きょうは、水曜日の続きをやりたいと思います。

 六日の委員会では、私、最低賃金について質問したんですけれども、大臣の御認識が、現状がどれだけ大変かということから出発しているのかどうかということがやはり問われると思うんですね。現行六百七十三円では、過労死ラインと言われる三千時間を働かなければ二百万円を超えない、そういう状態であります。全国最下位の我が青森県や沖縄などでは六百十円ですから、三千二百七十八時間も働かなければ二百万円にもいかない、これでいいはずがないと思います。

 御存じのように、我が党は全国一律千円の最低賃金を主張しておりますし、これについては、ナショナルセンターである連合や全労連なども基本的に一致した要求ではないかと思っております。本来、千円であっても、フルタイム労働者が平均二千時間働かなければ二百万円には届かないというのですから、極めて控え目な要求であるし、諸外国から見てもまだまだ格差があると思うんです。

 ですから、私はそこに向けて抜本的な引き上げをやはりやるべきだと思っていますが、大臣、人間らしく暮らせる賃金ということで抜本的に引き上げるということを考えるべきと思いますが、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 我が国の最低賃金の加重平均のレベルは、今委員が御指摘になったように六百七十三円という状況にあります。これで、先般委員は、一日八時間、週休二日をとって二十二日間働いた場合には十二万円をちょっと切るというようなレベルもお示しになられました。

 私どもは、現行の最低賃金の引き上げを目指して、この生計費につきまして、生活保護の施策との整合性をとるということで、これについて整合性をとること等によってその水準の引き上げを図ってまいりたい、このように考えているところでございます。

高橋委員 引き上げを目指してとおっしゃいましたが、抜本的なという立場に立っていただきたいということなのであります。

 そこで、これまで公労使の審議会で目安ということをやってきたわけですけれども、やはり今回の法案にも書き込まれた企業の支払い能力ということが入っているために、人間らしく暮らせる賃金ということよりも、どうしても企業の論理といいますか、支払い能力というところにどうも引っ張られるということが大きな問題である、ここは指摘をしておきたいと思うんです。

 そこで、全国一律最低賃金というのはもはや世界の常識になっている。地域別最賃をとっているのは世界九カ国でありますが、それはアメリカのような連邦国とか途上国であって、日本のように小さな島国で四十七都道府県に細分されているというところはやはりないのではないか。私はそこにあらかじめAからDランクということを持ち込んでやること自体が結局は地域格差の拡大につながると思うんですね。

 ですから、私がまず聞きたいのは、大臣は、最低賃金によって地域格差を縮める、これをやはり縮小すべきだという立場に立ちますか。

柳澤国務大臣 これは非常に難しい問題だと思いますね。要は、私も地域格差を縮めたい、縮めるべきだという立場でありますけれども、それを最低賃金ということでもって実現できるかということだと、やはりなかなかそれは困難ではないかというふうに思います。やはり、現実はどうかというと、地域によって生計費が異なるというのは事実でございまして、それを反映して、各企業における賃金の水準も区々になっているということでございます。

 そういう際に、最低賃金だけを地域ごとに決めるということをやめてしまって、全国一律、しかも、高橋委員のように抜本的に大幅に引き上げるというようなことをやった場合には、やはり経営が成り立たないということも我々は心配をしなければいけない、こういうように思います。

 したがって、私どもは、今回御提案させていただいていることでございますが、やはり地域別の賃金というものを考えて、そして、その最低賃金を地方の最賃審議会で決めていただくということを基本として、しかも全体として引き上げの方向を実現したい、このように考えているということでございます。

高橋委員 地域格差を縮めたいとは思っておられる、ただ、それが単純に最低賃金とは難しいよというふうなお話だったのかなと思うんですけれども、私は、確かに地域の生計費が、今、物価が違うと言われれば、数字で見るとそうだと思うんです、ただ、それをそういうものだとして、今回、地域別最賃は、これまでもあったにもかかわらず、わざわざ法定化をしたということが、逆にそれを固定化、あるいは拡大することになっちゃうんだ、それが、地域で低いんだから低いままだという形で悪循環になるのではないかということを考えているのであります。

 資料をお配りしました。平成十六年、これは私も総務委員会で質問したことなんですが、一円くらいの最賃引き上げがようやっとあったという年でありますが、この三年間の変化を見ますと、Dランクに位置している青森や沖縄などは三年間でようやっと四円なんですね。Aランクは、東京などでは九円、あるいは二けたの引き上げ、これもまだわずかとはいえ、引き上げをされている。そうすると、一番高いところと一番低いところの差、平成十六年度でいう東京と青森が百四円だったのが、十八年度になると百九円というように、差がどんどん開いていくわけですね。最初から、目安の段階でAからDだよと言われて、だからこの程度よというふうにやるので、どんどん高いところと低いところの差が開いていく。ですから、低いところをもっとぐっと上げて、仮にそこで、地域でもう少し上乗せできるんだよということがあるのであればそれはいいけれども、やはりそこはきちんと縮めるという立場に立つべきではないかと思うんですね。

 四枚目に、連合総研が昨年の四月にアンケートをとった、勤労者の仕事と暮らしについてのアンケートの表をつけておきました。五年間で収入の差が拡大したと答えた方たちのうち、地方経済の低迷などにより地域間の収入格差が拡大した、五七・六%。やはり、ここに一番問題意識を持っているんだということがあると思うんですね。

 そこに差があるんだからしようがないよという立場には立たないということが大事なのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

青木政府参考人 最低賃金の額の決定については、これは法律上、三つの要素で決めてくださいということになっているわけであります。生計費、お話にありました通常の事業の支払い能力、それから類似労働者の賃金ということになっているわけであります。お触れになりました目安にいたしましても、具体的な額の決定に当たっては、そういったことを勘案して、ああなっているわけであります。そういう意味では、地域の実態等を反映しているということだろうと思います。

 お話ありましたような点については、地域経済の振興でありますとか地域産業の振興でありますとか、そういったことを通じて地域の経済力を上げていくということが大変大切だというふうに思っております。私どもとしては、底上げ戦略ということで、日本全体の底上げを図っていくということで一方では対処をしようということで考えているわけでございます。

 最低賃金の決定については、そういう意味では、今回も基本的な要素というものは引き続き維持をして、これは世界的にもそういったものを勘案して決定されているということだろうというふうに思っておりますので、引き続き維持しているということでございます。

高橋委員 いろいろ説明されましたが、地域格差をこの政府の目安が拡大しているんじゃないかということに対してはお答えがなかった。もうしようがないんだという立場に立っているということですね。これは、本当に私は問題だと思います。ここは強く指摘をしたいと思うんですね。

 続けて、さっき大臣が答弁された、中小企業への影響ということもありました。私は、マイナスの話ばかりをしないで、プラスの見方というのもきちんと見るべきだ、そう思うんです。

 二枚目の資料につけておきました。時間がございませんので、詳しい解説はやりません。労働総研がことしの二月に発表した、例えば、これは千円にしろと言っているのではなく、私たちが要望している千円で試算をした場合ですね。

 今、千円未満のパート労働者が幾らいるか、一般労働者が幾らいるかということから始まって、最賃を千円に引き上げたらどうなるかということを合計していくと、二兆何がしの賃金増加額になるんだ、それを産業別に割り振っていったときに、二兆何がしの賃金増加額のうち、半分は消費に回るだろう、消費に回るということは、地域にお金がおりるんだ、地域経済を循環させるんだ、それは結局、中小企業を潤すことに返ってくるじゃないかということで、二兆六千億円の経済波及効果があるという試算をされて、これは新聞各紙も報道をいたしました。当然これは産業連関表などを使っているわけですから、一般的にそういうことをやる人には、十分常識的な範囲なわけですね。

 ですから、地域の中小企業の労働者の賃金を引き上げるということは地域の経済を潤すことにもなる、そういう考えは当然持てますね、大臣に伺います。

柳澤国務大臣 私どもも、一般論としては委員と同じような考え方をとっております。特に、今、日本経済全体を見ても、消費というものが、例えば輸出あるいは設備投資というものに比べてもうちょっと強くなった方がいいな、こういうように考えるわけですね。そういう考え方から、やはり何といっても圧倒的に多い雇用者所得というものが上がっていくということがその背景をなすべきものだろう、こういうことは、当然私どもも考えているわけでございます。

 しかし、現実の問題として、私どもが最低賃金を引き上げるということは、そうなかなか一般的な経済のマクロ的な論理だけではいかなくて、現実にそれぞれの企業の労働コストを引き上げるということにつながることがあるわけですから、その労働コストを一体どこで吸収できるか。それは消費がいずれ上がってくるから吸収しろよと、なかなかそこまでは、マクロ経済の話とミクロの話とは説得的に連関づけられないということもありまして、私どもは、一般論としては委員が言われるとおりだし、また、この労働総研が発表されたこともわからないわけではありません。

 しかし、現実には、私どもは、中小企業を中心として、この労働コスト増によって事業経営が圧迫されるということが起こることを考えますと、かえって雇用が失われる面があって、こうしたことについては、やや理論的で、あえて言えば非現実的だと言わざるを得ないと考えております。

櫻田委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、高橋千鶴子君の質疑は終了させていただきたいと思います。

高橋委員 非常に非現実的だということで終わられてしまうと、やはりそれは政府のスタンスが問われるんですよ。

 きょうは青年たちの実態もお話ししたかったんですが、そういう、引き上げると言いながら、本当に現実を全く見ていない、そういう立場に立っていないということが本当に責められるべきではないか。引き続いてこのことを審議したいと思いますので、きょうはとりあえず終わります。

櫻田委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 私の方からも、一言、年金の問題について触れさせていただきたいと思います。

 大臣も先ほど答弁しているように、今回の問題、しっかりとうみを出して、そしてうみを残さないで国民の前に明らかにする、うみが残っていることによってまた再発するという事態のないように取り組んでいただきたいというふうに思います。と同時に、公的年金ですから、これは公的に一元管理していくという姿勢が大事だというふうに私は思っているんです。ただし、今の政府の進めている方向というのは逆行している、こんなことはあってはならないことだということを一言申し添えておきたいというふうに思っています。

 労働三法について、労働契約法を中心にして質問をしていきたいというふうに思うんですが、昨年来から、製造業の現場における偽装請負あるいは派遣の実態というものが問題になっております。派遣労働者の方々から、求人誌の求人広告と実際の収入に大きな開きがあり、誇大広告なのではないかとの指摘を受けました。

 例えば、これは自動車の製造現場で働く方の例ですが、求人広告では月収三十一万円以上可となっていたものの、実際には、平日の残業を月二十時間、深夜残業を月六十時間しても二十四万円ちょっとにしかならない。月三十一万稼ぐには、日勤の場合、月八十九時間以上の残業をしないと届かないという状況です。また、ハローワークの求人票には二十万円前後を収入目安としながら、求人誌には同じ企業が三十四万円以上可といったようなものもあるようです。

 派遣や請負では、かつての出稼ぎのように、北海道、東北、九州、沖縄の若者が都市部に大勢来ております。若者が、話が違うと泣き寝入りすることがないよう、厚生労働省として求人広告の実態を調査して誇大広告を規制すべきだと私は思うんですが、見解をお聞きしておきたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のありました求人広告にかかわって、誇大な内容の記載ではないか、あるいは虚偽の内容の記載ではないか等々の御指摘の問題でございますが、これにつきましては、まず第一に、求人情報誌等の業界団体でございます社団法人全国求人情報協会、ここでまず第一義的には自主的なチェックというものをお願いいたしておるところでございます。また、この団体におきまして、苦情でありますとか相談でありますとかということの受け付けもお願いし、対応いたしております。

 また、あわせまして、私ども都道府県労働局におきましても、さまざまな求人広告にかかわります苦情及び相談というものを受け付けておるところでございまして、こうしたことを通じて、できるだけこうした問題のある内容につきまして把握に努めながら、必要な場合には労働局におきまして実態をよく調査した上で、必要な指導というものを、募集を行います事業主等に対して行っておるところでございます。

 いずれにしましても、求人広告につきましては、やはりその内容が虚偽でないというのは当然でございますが、と同時に、労働者の適切な職業選択の観点からも誤解を招くものであってはならないというふうに考えておるわけでございまして、今申し上げましたようなことを通じまして、私ども労働局におきましても指導等を厳正に行いまして、労働者募集の適正化、求人広告の適正化について、さらに今後努力をしてまいりたいと考えております。

菅野委員 今、局長の答弁で、個別企業の指導をしておりますというふうに答弁されたんですが、実際にこの求人誌が出回っているんです。その実態を調査して、それでは今どれくらいの指導監督を行ってきているんですか。実態は、厚生労働省として今行っている事実はどうなっているんですか。一般論じゃなくて、もう個別企業の指導に入っていかなければ、若者たちは本当に窮地に立たされるというふうに私は思うんです。もう一回答弁願いたいと思います。

高橋政府参考人 今お答え申し上げましたように、求人広告について、いろいろ記載されている内容と、実際に応募し働いてみたら労働条件等々が異なる、こういうようなこととして、苦情なり相談なりということを受け付けた件数でございますけれども、先ほど申し上げた全国求人情報協会を通じた苦情相談、あるいは都道府県労働局で受けました苦情相談あわせまして、平成十八年におきましては八十件ということになってございます。このうち、調査の上、問題があるということで都道府県労働局におきまして指導をいたしました件数は、平成十八年におきましては八件というふうになってございます。

菅野委員 やはり誇大広告が流通しているということは、求人広告誌というのは無料で配布になるんですから、私は、政府としてしっかりとした対応をとっていただきたいというふうに思っています。

 次に、労働契約法について質問いたします。

 労働契約法案の第二条は、対象となる労働者について、「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義しております。この点、二月二十三日の予算委員会、雇用問題に関する集中審議で私の方から、請負や業務委託契約についても保護の対象とすべきではないかと指摘しましたところ、柳澤厚生労働大臣は、労働者であるか否かは契約形式にとらわれず、その実態によって判断する、請負であっても、その実態によっては労働契約法の対象となることもあり得ると答弁いたしました。

 個人事業主の集まりである日本プロ野球選手会が団体交渉権を持つ労働組合として認定されている現状からしても、労働契約で保護される対象は、職業、契約のいかんにかかわらず、使用者との経済的従属性を持つ者とすべきと考えますが、大臣、見解をお聞きいたします。

青木政府参考人 労働契約法における労働者の範囲について経済的従属性を勘案しろ、こういう御指摘でございます。

 まさに今お触れになりましたように、労働者性につきましては、使用従属性の有無を総合的に勘案して、個別具体的に実態を見て判断をするということでやっているわけであります。

 経済的従属性がある場合には、これは純然たる事業所同士の取引関係もある場合も極めて多いわけでございます。これらについては、使用従属関係がないということが多いわけでありますので、現在の労働基準法においても対象とはなっておりませんし、今度の労働契約法案の対象としていないわけであります。

 しかし、純然たる事業所同士の取引関係以外の契約関係については、経済的従属性がある場合であっても、その実態により使用従属性が認められる場合には、こういった労働契約法、当然現行法の労働基準法もそうでありますが、そのルールの対象となり、十分な保護が図られていくというふうに考えております。

菅野委員 そこは日本の労働法制の根本的に不備な点、これから変えていかなければならない点だということを私は申し上げておきたいというふうに思っています。

 それが、昨年の六月に開かれたILOの第九十五回総会では、雇用関係に関する勧告が採択されました。ここでは、雇用関係の隠ぺい、すなわち偽装雇用と言っていいと思いますが、使用者が個人を被用者ではないように装い、労働者に本来付与すべき権利を剥奪している状況に対して、加盟国が適切な国内政策を策定するように求めています。

 この勧告をどのように受けとめておられるのか、答弁願いたいと思います。

柳澤国務大臣 ILOの雇用関係に関する勧告におきましては、雇用関係の存在の決定というものは、当事者間でいかなる合意をしたかにかかわらず、第一義的に業務の遂行及び労働者の報酬に関する事実に従って行われるべきである旨規定されていると承知をいたしております。

 我が国におきましては、労働基準法におきまして、労働者は、事業または事務所に使用され、賃金を支払われる者と定義されておりまして、その判断については、その契約形式のいかんにかかわらず、指揮監督下の労働、使用従属性みたいなものですが、報酬の労務対償性等に照らして判断されるいわゆる使用従属性の有無等を総合的に勘案して個別具体的に行うこととしておりますので、これは御指摘になられたILO勧告の趣旨に合致するものである、我々はそのように見ているということでございます。

菅野委員 実は、ILOが指摘する現状が国内では多発しております。偽装請負ならぬ偽装雇用、その多くが個人請負とされる方々で、例えば最近では官庁街でもよく目にするバイク便なども個人請負が多いようです。これらの方々は、自営業者として労働法の保護対象から外れております。ところが、正社員から突如として業務委託契約に切りかえられ、同じ仕事をして月収が二十五万から手取り六万になってしまったという記事も目にしています。

 厚生労働省が所管する独立行政法人労働政策研究・研修機構は、二〇〇五年に二つの研究論文を発表しております。そこでは、二〇〇四年時点で個人請負は五十万人とも二百万人とも言われておりますが、正確な統計がない、しかし、個人請負の増加は就業形態として無視し得ない存在になってきていると指摘しております。加えて、企業にとって、個人請負労働者がコスト削減の手段になっていることや、雇用者と類似した仕事に従事しているにもかかわらず自営業として位置づけられていることから、労働基準法、労災保険法などの労働法の適用がなく、ユーザー企業側も事業主負担部分である法定福利費を免れるといった問題が存在しているというのも無視できない。重大な指摘を行っております。

 大臣、偽装雇用とさえ言われる個人請負の実態を早急に調査し、対策を講じる考えはありませんか。個人請負の方々にも、経済的従属性があれば労働基準法や労働契約法の対象とすべきだと私は思っています。これについてお答え願いたいと思います。

柳澤国務大臣 これは、かねがね私、御答弁申し上げておりますように、契約当事者が個人請負という形で契約を締結していたといたしましても、実態としていわゆる使用従属関係が認められるのであれば、それは労働契約法案も、また今局長が答えたように労基法上からも、労働者として取り扱われるというふうに考えております。同法案で規定する労働契約に関するルールは、したがいまして、こういうような個人請負の形をとる方にも適用されるというふうに考えております。

 なお、調査の件につきましては、これは個別の事案に対して、私ども、適切に対応していきたいということを第一義的に考えておりますことを御理解賜りたいと思います。

菅野委員 以上で質問を終わります。

櫻田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十五分散会


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