衆議院

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第32号 平成19年6月20日(水曜日)

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平成十九年六月二十日(水曜日)

    午後三時十八分開議

 出席委員

   委員長 櫻田 義孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 谷畑  孝君

   理事 宮澤 洋一君 理事 吉野 正芳君

   理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井上 信治君

      石崎  岳君    加藤 勝信君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木村 義雄君    岸田 文雄君

      清水鴻一郎君    菅原 一秀君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      戸井田とおる君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    西川 京子君

      林   潤君    原田 令嗣君

      福岡 資麿君    松野 博一君

      松本  純君    松本 洋平君

      坂口  力君    古屋 範子君

    …………………………………

   議員           中山 太郎君

   議員           津島 雄二君

   議員           河野 太郎君

   議員           山内 康一君

   議員           冨岡  勉君

   議員           福島  豊君

   議員           斉藤 鉄夫君

   議員           早川 忠孝君

   議員           阿部 俊子君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 山崎 史郎君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    加藤 文彦君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局次長)          桝野 龍二君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十九日

 委員内山晃君が解任された。

同月二十日

            補欠選任

             岡本 充功君

    ―――――――――――――

六月十八日

 療養病床の廃止・削減と患者負担増の中止等を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二二一二号)

 格差社会を是正し、命と暮らしを守るために社会保障の拡充を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二二一三号)

 安全・安心の医療と看護の実現を求める医療従事者の増員に関する請願(北村茂男君紹介)(第二二一四号)

 同(後藤田正純君紹介)(第二二一五号)

 同(金田誠一君紹介)(第二二八四号)

 同(柚木道義君紹介)(第二二八五号)

 同(遠藤宣彦君紹介)(第二三八一号)

 同(篠原孝君紹介)(第二三八二号)

 同(下条みつ君紹介)(第二三八三号)

 同(津村啓介君紹介)(第二三八四号)

 同(寺田稔君紹介)(第二三八五号)

 難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患に対する総合的対策の早期実現を求めることに関する請願(北村誠吾君紹介)(第二二一六号)

 同(小坂憲次君紹介)(第二二一七号)

 同(後藤茂之君紹介)(第二二一八号)

 同(後藤田正純君紹介)(第二二一九号)

 同(福島豊君紹介)(第二二二〇号)

 同(武藤容治君紹介)(第二二二一号)

 同(河村建夫君紹介)(第二二八六号)

 同(筒井信隆君紹介)(第二二八七号)

 同(戸井田とおる君紹介)(第二二八八号)

 同(松本純君紹介)(第二二八九号)

 同(木村隆秀君紹介)(第二三八六号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第二三八七号)

 同(篠原孝君紹介)(第二三八八号)

 同(杉浦正健君紹介)(第二三八九号)

 同(田端正広君紹介)(第二三九〇号)

 同(中谷元君紹介)(第二三九一号)

 同(長安豊君紹介)(第二三九二号)

 同(古川元久君紹介)(第二三九三号)

 労働法制の拡充に関する請願(笠井亮君紹介)(第二二二二号)

 同(石井郁子君紹介)(第二二九六号)

 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(小野晋也君紹介)(第二二二三号)

 同(北村茂男君紹介)(第二二二四号)

 同(北村誠吾君紹介)(第二二二五号)

 同(後藤田正純君紹介)(第二二二六号)

 同(仙谷由人君紹介)(第二二二七号)

 同(谷本龍哉君紹介)(第二二二八号)

 同(西博義君紹介)(第二二二九号)

 同(武藤容治君紹介)(第二二三〇号)

 同(笠浩史君紹介)(第二二三一号)

 同(阿部知子君紹介)(第二三〇三号)

 同(泉健太君紹介)(第二三〇四号)

 同(大島敦君紹介)(第二三〇五号)

 同(大野功統君紹介)(第二三〇六号)

 同(岡本芳郎君紹介)(第二三〇七号)

 同(河村建夫君紹介)(第二三〇八号)

 同(木挽司君紹介)(第二三〇九号)

 同(近藤洋介君紹介)(第二三一〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三一一号)

 同(鈴木恒夫君紹介)(第二三一二号)

 同(戸井田とおる君紹介)(第二三一三号)

 同(中山太郎君紹介)(第二三一四号)

 同(長島忠美君紹介)(第二三一五号)

 同(長浜博行君紹介)(第二三一六号)

 同(日森文尋君紹介)(第二三一七号)

 同(広津素子君紹介)(第二三一八号)

 同(松本純君紹介)(第二三一九号)

 同(遠藤宣彦君紹介)(第二四〇〇号)

 同(小渕優子君紹介)(第二四〇一号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第二四〇二号)

 同(奥村展三君紹介)(第二四〇三号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第二四〇四号)

 同(木村隆秀君紹介)(第二四〇五号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第二四〇六号)

 同(重野安正君紹介)(第二四〇七号)

 同(篠原孝君紹介)(第二四〇八号)

 同(杉浦正健君紹介)(第二四〇九号)

 同(田端正広君紹介)(第二四一〇号)

 同(竹本直一君紹介)(第二四一一号)

 同(津村啓介君紹介)(第二四一二号)

 同(中谷元君紹介)(第二四一三号)

 同(長安豊君紹介)(第二四一四号)

 同(西村明宏君紹介)(第二四一五号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第二四一六号)

 同(古川元久君紹介)(第二四一七号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第二四一八号)

 同(三井辨雄君紹介)(第二四一九号)

 産む側の意見を取り入れ、地域の実情に合ったお産環境の整備を求めることに関する請願(寺田稔君紹介)(第二二三二号)

 同(戸井田とおる君紹介)(第二三三一号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二三三二号)

 同(萩生田光一君紹介)(第二三三三号)

 新・腎疾患対策の早期確立に関する請願(衛藤征士郎君紹介)(第二二九〇号)

 同(大野功統君紹介)(第二二九一号)

 同(河村建夫君紹介)(第二二九二号)

 同(岩屋毅君紹介)(第二三九四号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第二三九五号)

 同(津村啓介君紹介)(第二三九六号)

 同(西村明宏君紹介)(第二三九七号)

 マッサージ診療報酬・個別機能訓練加算の適正な引き上げを求めることに関する請願(内山晃君紹介)(第二二九三号)

 同(田名部匡代君紹介)(第二二九四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二九五号)

 同(阿部知子君紹介)(第二三九八号)

 同(福島豊君紹介)(第二三九九号)

 ウイルス肝炎総合対策の推進を求めることに関する請願(大島敦君紹介)(第二二九七号)

 同(菅直人君紹介)(第二二九八号)

 同(鈴木恒夫君紹介)(第二二九九号)

 同(筒井信隆君紹介)(第二三〇〇号)

 同(松本純君紹介)(第二三〇一号)

 同(松本洋平君紹介)(第二三〇二号)

 てんかんのある人の医療と福祉の向上に関する請願(大島敦君紹介)(第二三二〇号)

 同(木村義雄君紹介)(第二三二一号)

 同(筒井信隆君紹介)(第二三二二号)

 同(松本純君紹介)(第二三二三号)

 妊婦と新生児を中心に据えた医療連携システムの確立に関する請願(阿部知子君紹介)(第二三二四号)

 同(石崎岳君紹介)(第二三二五号)

 同(鈴木俊一君紹介)(第二三二六号)

 同(谷畑孝君紹介)(第二三二七号)

 同(戸井田とおる君紹介)(第二三二八号)

 同(吉野正芳君紹介)(第二三二九号)

 同(玉沢徳一郎君紹介)(第二四二〇号)

 同(寺田稔君紹介)(第二四二一号)

 同(中山泰秀君紹介)(第二四二二号)

 同(西川京子君紹介)(第二四二三号)

 同(福島豊君紹介)(第二四二四号)

 高齢期を生き生きと安心して暮らせる住まいと介護保障を求めることに関する請願(筒井信隆君紹介)(第二三三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 小委員会設置に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案(中山太郎君外五名提出、第百六十四回国会衆法第一四号)

 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案(斉藤鉄夫君外三名提出、第百六十四回国会衆法第一五号)

 労働契約法案(内閣提出第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)


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     ――――◇―――――

櫻田委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・そうぞう・無所属の会所属委員に対し、事務局をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

櫻田委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・そうぞう・無所属の会所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 第百六十四回国会、中山太郎君外五名提出、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案及び第百六十四回国会、斉藤鉄夫君外三名提出、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。中山太郎君。

    ―――――――――――――

 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中山(太)議員 ただいま議題となりました臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 現行の臓器移植法は、本人の書面による意思表示がある場合に、脳死下における臓器移植を認めることとし、平成九年に施行されました。それから十年がたち、これまでの間に、脳死下における臓器移植は五十六件が実施され、多くの命が救われるという実績を、遅々とではありますが確実に積み重ねてきました。

 しかし、現行の臓器移植法において、その附則に、三年後の見直し規定があるにもかかわらず、これまで法律改正に向けた検討が行われませんでした。その結果、我が国の移植医療は、諸外国に比べて後進的な状況となりました。例えば、日本とアメリカにおける心臓移植の実施件数では、平成十八年の一年間で、日本が十例であるのに対し、アメリカでは二千百九十二例、二百倍以上の開きが生じております。

 一方で、移植医療をめぐって、最近では、病気腎移植の問題や臓器売買事件が明るみになりましたが、これらの問題の背景には、臓器移植を希望する患者の数に対して移植術に使用される臓器の圧倒的な不足がございます。このため、健康な身体にメスを入れ、家族から臓器を取り出すという生体間の臓器移植が年々増加し、心臓死下の臓器移植の件数を大幅に上回っております。このような移植医療は、本来避けるべき医療であります。

 また、国内での臓器移植が期待できないといたしまして、海外で臓器移植を受ける方もふえております。移植術に使用する臓器の不足は諸外国においても同様であり、一部の国では外国人への臓器提供に門戸を閉ざす措置を講ずるようになりました。

 このような状況に対して、まずは、我が国においても、臓器を提供したいという本人の意思が十分生かされるよう、現行法の枠内での取り組みが優先されるべきであり、これまでも、医療保険の被保険者証等に臓器提供の意思表示欄を設けるなど、さまざまな意思表示機会の拡大と啓発活動を行い、努力を積み重ねてまいりました。

 他方、一日千秋の思いで臓器の提供を待たれている多くの患者がおります。これらの患者は、臓器を移植する機会があれば、普通の生活に戻れるほど回復が可能であります。にもかかわらず、我が国の臓器移植に係る要件によって、諸外国のような臓器の提供を受ける機会が奪われ、命を落とされる患者が多く存在しているのも現実であります。

 このため、私どもは、現行の臓器移植法について必要な見直しを行い、脳死下での臓器移植を認める要件について、少なくとも主要先進国と同等の要件とすべきであるとの結論に至りました。

 そこで、本案は、臓器移植法における本人の生前の意思を尊重する理念を生かしつつ、脳死下で臓器の提供が認められる要件について、新たに、本人が生前に書面により臓器の提供を拒否した以外の場合で、家族が書面により臓器の提供を承諾した場合を加え、諸外国と同様に臓器移植が認められる要件をそろえようとするものであります。

 次に、本法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、脳死下で臓器を提供できる要件について、本人が生前に書面によって臓器の提供意思を表示している場合に加え、本人が書面によって臓器の提供を拒否する意思を表示している以外の場合で、遺族が書面により承諾している場合とすることとしております。

 第二に、本人が臓器提供の意思を表示する場合において、親族に対して優先的に臓器を提供する意思を表示することができることといたしております。

 第三に、国及び地方公共団体は、移植医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずることとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から一年を経過した日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願いを申し上げます。(拍手)

櫻田委員長 次に、斉藤鉄夫君。

    ―――――――――――――

 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤(鉄)議員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 きょうは、いわゆるB案提案者といたしまして、自由民主党の早川忠孝議員、また阿部俊子議員とともにこの場に立たせていただいております。

 このB案の内容は、現行法の、本人の意思をあくまで尊重するという枠組みをそのまま残しまして、しかしながら、その意思が表明できる年齢、現行法では十五歳でございますが、これを初等教育が終わった十二歳以上にするという内容のものでございます。また、臓器の優先提供、そして国及び地方公共団体が移植医療に関する教育の充実、啓発等の施策を講ずる、こういう内容を持ったものでございます。

 私たちの案の根底にあります問題意識は、先ほど中山先生がいわゆるA案を提案されましたけれども、その問題意識と全く一緒でございます。現状を大きく改善していかなくてはならない。しかしながら、その方法においてA案と違いがございます。

 このA案、B案ともに、与党の臓器移植改正の検討会でずっと議論をしてまいりました。その与党の検討会からこの二つの案が出てきたものでございます。一つの案にまとまらないということについていろいろな御意見もございましたが、基本的には、この問題については党議拘束をかけない、一人一人の信念、価値観に基づいて投票するということで、与党の検討会から二案が出されるということが許されたわけでございまして、許していただいた委員の方々に大変感謝を申し上げている次第でございます。

 我々のB案の基本的な考え方は、脳死を人の死とすることについてまだ日本国民のコンセンサスが得られていない、そこが最も大きなポイントだろうと思います。自分の臓器を他の人に提供しようという意思のある人にとっては、その人の死は、脳死がその人にとっての死であり、そうではない、そういう意思表示をしていない方にとってはやはりこれまでの伝統的な死の基準を設ける、ある意味では死のダブルスタンダード、こう言われておりますが、これはまだコンセンサスが得られていない段階ではいたし方ないのではないか、このように考えて、現行法の考え方、本人の意思の尊重ということをあくまでも根底に置いたものでございます。

 この本人の意思、初等教育段階が終われば、そういう意思決定ができる人もいるであろう。すべての人にそれを求めているわけではございません。また、我々の提案は、子供の死をたくさん見てきた小児科学会また看護学会等の提案にも根拠を置いているところでございます。そのほか、子供の脳死判定は非常に難しいという技術的問題、また児童虐待との関係等を考えたときに、我々のこの案の方が長いスパンで見たときに臓器移植を着実に進展させる法案だ、このように確信をしております。

 以上がこのB案の基本的な考え方でございますが、どうか、御理解の上、御審議いただき、通していただきたいということをお願い申し上げまして、B案の提案の趣旨説明とさせていただきます。(拍手)

櫻田委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

櫻田委員長 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。

 臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案を審査するため小委員十八名からなる臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会を設置することに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

櫻田委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。

     ――――◇―――――

櫻田委員長 次に、内閣提出、労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案及び最低賃金法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官山崎史郎君、厚生労働省労働基準局長青木豊君、中小企業庁次長加藤文彦君、国土交通省自動車交通局次長桝野龍二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石崎岳君。

石崎委員 自由民主党の石崎岳でございます。

 きょうは野党議員が欠席ということでございますが、議長不信任案提出というのも極めて異例のことだと思いますが、その不信任案が否決された後も引き続き委員会に出席しないというのは、その理由が本当によくわかりません。

 さて、この国会は労働国会と当初言われておりましたけれども、いつの間にか性格が変わりまして、最近は年金記録の問題が中心になっておりますが、労働三法をぜひこの国会で成立を図ってまいりたいと考えております。

 それで、まず労働契約法案について御質問をさせていただきます。

 今回審議をされております労働三法のうち、最低賃金法改正、これは賃金の最低基準の見直しを行う、それから、改正労働基準法は労働時間の最低基準の見直しを行うというものでございますが、こうした賃金や労働時間に関する労働条件は、労働基準法第八十九条によりまして、就業規則に規定することが義務づけられております。

 先日の木原議員の質問に対する労働基準局長の答弁にありましたように、我が国におきましては、就業規則によって労働条件の決定、変更が広く行われている実態にあるということでありまして、他方で、就業規則によって決定、変更された労働条件が個々の労働者の労働契約の内容になっているのかどうかについては、現行法律上明らかになっていないということでございます。

 労働契約法は労働契約に関する基本的なルールを定めるものである以上、就業規則がある企業において、個々の労働者の労働契約の内容がどうなるのか、就業規則が変更された場合にはどうなるのかといった点を明らかにすることが必要不可欠であると考えております。まして、我が国の一般的な労務管理におきましては現に就業規則が相当定着しているというのが現状であるのであれば、こうした労務管理の実情を無視することはできないと考えます。

 そこで、就業規則の変更に関するルールについて質問させていただきますが、就業規則の変更に関するルールを定めること自体は、我が国の労務管理の実情に照らせば必要であると考えておりますが、他方で、就業規則は使用者が一方的に作成することができるものであり、合意ではありません。このため、就業規則ルールを定めることは、契約の一般原則である労使合意の原則に反するものではないかとの指摘もされております。

 そこで、質問いたしますが、今回の労働契約法案に盛り込まれた労働契約内容の変更に関するルールは、契約の一般原則である労使合意の原則との関係をどのように整理されているのでしょうか、また、それは使用者の都合による一方的な変更を許すものではなく、労働者の保護に資する内容となっているのかどうか、お尋ねいたします。

青木政府参考人 労働契約内容の変更に関するルールにつきましては、今般の労働契約法案第八条におきまして、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」という合意原則をまず明確に規定しております。

 その上で、就業規則による労働条件変更に関する最高裁判所の判例法理に沿って、労働契約法案第九条において、まず原則として、使用者が労働者と合意することなく、就業規則の変更により労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできない旨を規定いたしております。さらに、契約法案第十条におきまして、一つ、変更後の就業規則が労働者に周知されており、二つ、就業規則の変更が合理的なものである場合に、労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとする旨規定しております。

 このように、労働契約法案は、労働条件の変更に関しまして、労働者及び使用者の合意を原則としつつ、現在の判例法理に沿ったルールとするものであります。

 また、就業規則による労働条件の変更ができる場合の合理性の判断要素として、「労働者の受ける不利益の程度」という、個々の労働者にとっての影響、あるいは「労働組合等との交渉の状況」という、就業規則の変更に当たっての労使協議の状況を明示しているなど、労働者の保護に十分配慮したものとなっていると考えております。

石崎委員 今の説明で、契約法八条から十条の間で合意原則に十分配慮しているという御答弁でございますが、世の中の多くの企業は、この就業規則によって労働条件を集団的に決定し、変更している例が多い。とはいえ、一方で、労働条件の個別化というものも進んでいると聞いております。就業規則とは別に、労働者と使用者が個別に労働条件を決めているケースも相当多くなってきているのではないかというふうに思われます。

 そこで、お聞きしますが、個々の労働者と使用者との間で個別に労働条件を取り決めていたような場合であっても、就業規則の変更により個々の労働契約の内容は変更されるということでしょうか。

青木政府参考人 労働契約法案の第十条本文は、第八条及び第九条といった労働契約の内容の変更についての原則の例外を定めたものでございます。そこでは、変更後の就業規則が労働者に周知されており、就業規則の変更が合理的なものである場合に、労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとする旨規定しているわけでございます。

 ただし、御指摘のとおり、個々の労働者と使用者との間で、就業規則の変更によっては変更されない労働条件として個別に合意をしていた場合、そういう場合につきましては、第十条のただし書きが適用されることとなります。したがって、第十条本文による就業規則変更の効果が発生せず、労使間の合意が優先されるということになると考えております。

石崎委員 次に、労働基準法改正法案について質問をいたします。

 現在の労働環境を見た場合に、長時間労働を抑制するということが大きな課題となっておりますが、そのような中で、今回の基準法改正、法定割り増し賃金率の引き上げなどによってこの課題に取り組んでいこうとする、極めて重要な内容になっていると認識をしております。

 今回の法案による法定割り増し賃金率の引き上げを受けて、実際に企業の現場において、働き方の見直し、長時間労働の改善、それがなされていくということを強く期待しておりますが、この割り増し賃金について、今回の法案では、月八十時間を超える時間外労働について法定割り増し賃金率が五割に引き上げられるわけでありますが、これは、高い割り増し賃金を払いさえすれば長時間労働を行ってよいというものではないと考えます。あくまでそういう長時間の時間外労働が行われないようにするということがねらいだというふうに思います。

 先般も労働時間の調査を拝見させていただくと、八十時間のぎりぎりのところで労働者が働いているという実態が多くの企業であるというデータが出ておりましたが、使用者側は時間外割り増し賃金支払いのぎりぎりの労働時間を強いることがないのか、このあたりの見解も含めて、見解を伺います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

青木政府参考人 今回の労働基準法改正法案におきましては、御指摘のように、月八十時間を超える時間外労働について法定割り増し賃金率を五割に引き上げることとしております。

 これは、現行より高い率による割り増し賃金を支払わせること自体が目的ではなくて、法定割り増し賃金率の引き上げを受けて、仕事の効率化でありますとか業務処理体制の見直し等さまざまな取り組みを労使が一体となって進め、これにより長時間労働を抑制することを目的としているものでございます。

 また、月八十時間の手前のところについても、今回、大臣告示を改正して、その割り増し賃金率を一つには引き上げること、もう一つには時間外労働の時間そのものをできるだけ短くすること、これを労使双方の努力義務としておりまして、御指摘のような月八十時間ぎりぎりとならないよう、多様な手法を組み合わせることによりまして長時間労働抑制の実効を上げてまいりたいというふうに考えております。

石崎委員 この法定割り増し賃金率引き上げによって長時間労働抑制を図っていくというわけでありますが、一方では、その事業、業務の都合から、やむを得ず長時間労働を行わざるを得ないケースも多々あると思います。先般も私、トラック業界の方とお話しして、仕事の性質上どうしても長時間労働にならざるを得ない、そういう中で、この法改正、大変厳しいものがあるという現場の声を聞かせていただきました。

 そのような場合、今回の法案では、有給の休暇の付与という仕組みが盛り込まれております。労使協定の締結によって、二割五分から五割への割り増し賃金率の引き上げ分の支払いにかえて有給の休暇を付与できるというものでありますが、これまでにない、新たな仕組みとして注目をしておりますが、この引き上げ分の割り増し賃金の支払いにかえて付与される有給休暇という仕組みについて、その趣旨と内容をお伺いします。

 特に、忙しいから長時間労働が発生しているということを考えますと、労働者が有給休暇を実際にとれなかった結果、引き上げ分の割り増し賃金も受け取れず、有給休暇もとれなかったということにならないような仕組みなのかどうかということもあわせてお伺いします。

青木政府参考人 今回の労働基準法改正法案におきましては、お話ありましたように、月八十時間を超える時間外労働を行った労働者について、五割の率による割り増し賃金の支払いにかえて、二割五分の率による割り増し賃金の支払いと有給休暇の付与をすることを選択できるというふうにしているわけでございます。

 それで、長時間労働が行われた場合には、労働義務を一定時間免除することによりまして、労働者に休息の機会を与えて、その健康の確保に役立てようとするものでございます。

 この有給の休暇を導入することを労使協定で定めた場合には、使用者が休暇の日を指定いたしまして、長時間労働を行った労働者に休暇を付与することとなります。当該労働者が実際に休暇を取得した場合にのみ、この五割の割り増し賃金の支払いに代替できるというものでございます。そういったことを法案に明記しておりまして、仮に労働者が実際に休暇を取得することができなかった場合には五割の率による割り増し賃金の支払い義務というものは消滅しないということで、使用者はその五割の率による割り増し賃金の支払いが必要となるというものでございます。

石崎委員 さまざまな業種、中小企業、いろいろな実態がございます。ぜひいろいろ御配慮いただきたいと思います。私も十七年サラリーマンをやっておりましたけれども、ついに最後まで一度も有給休暇をとらずに退職をしたということでありまして、今思い返すと残念なことでありましたけれども、そういう実態にあるということでございます。

 次に、最低賃金法改正法案について質問させていただきます。

 この最賃法、民主党も改正案を提出しているようでございますが、民主党の案をホームページで拝見させていただきますと、全国最低賃金約八百円、各地域の地域最低賃金は平均で千円を目指すということを主張されているようでございます。

 これまでの審議でもいろいろ各委員から御指摘がありましたとおり、最低賃金の水準が生活保護より低いというような実態は、働く意欲を阻害し、問題であるということは当然のことであり、今回の改正は当然の改正だと考えておりますけれども、一方で、地域別最低賃金につきましては、地域の経済水準、通常の事業の賃金支払い能力とかけ離れた水準とすることは、中小企業の経営の実情を踏まえれば、これまた非現実的だというふうに考えざるを得ません。

 景気は回復基調と言われておりますけれども、私の地元北海道を含めて、地方においては、残念ながら、経済情勢、雇用情勢、まだまだ厳しいところが多いのが実態でございます。このような状況の中で、先ほどの民主党案のような、全国最低賃金の導入という主張、あるいは地域別最低賃金の水準を千円といった水準に大幅に引き上げるべきといった主張について、これは地方の実情や個々の中小企業の経営実態に合わないのではないかというふうに思いますが、見解をお伺いします。

柳澤国務大臣 最低賃金は、労働者の最低限度の水準の賃金を保障するという、いわばセーフティーネットとしての意義を賃金において有するものだというふうに位置づけることができようかと思います。

 今度の賃金でございますけれども、まず、最賃法の改正におきまして、いわば地域別の最低賃金というのはあまねく全国各地域について決定されなければならないということで、今までも、事実上は、地域別最低賃金は全国あまねく決められていましたけれども、今度はそれが法律上義務化されまして、例外は許されないというような法制にさせていただいているところでございます。

 そういう位置づけも変わっているわけでございますが、その中で、私どもといたしましては、この最低賃金の水準というものは、地域によって、物価水準等に差がありまして、それを受けて現実の生計費も異なるということが実態であると考えております。その意味合いで、最低限度の賃金の水準についても地域によって差があるものというふうに考えているわけでございます。このため、全国一律に最低賃金を決めるということは、経済、生活の実態等から見てこれは適当でないと考えておりまして、やはり各地域の実情に応じて、それぞれに決定されるべきものであるというふうに考えるところでございます。

 地域別最低賃金を例えば千円へ引き上げるなど、現状六百七十三円という水準を考えますと、これはいかにも急激に大幅な引き上げをねらうということになるわけでございまして、このことについては、今委員の御指摘のように、中小企業を中心として、労働コスト増によって事業経営が圧迫されて、かえって雇用が失われる、そういう悪影響が出るということも懸念されるわけであります。そういう意味で、これまた委員も仰せられたとおり、非現実的な対応であるというふうに言わざるを得ないと考えております。

 私どもは、この地域別最低賃金というものを、それぞれの地域の実情に応じて、いわば地域それぞれの最低賃金審議会におきまして実情に応じて決めていただくのが現実的であるし、また労働者の保護に結びつくゆえんだ、このように考えているわけでございます。

石崎委員 もちろん、最低賃金は、それは高ければ高いほどいい、賃金も高ければ高いほどいい。でも、それは、経済実態と整合性がとれていなければ、経済の方が、会社の方がつぶれてしまう、そういうことで、大臣も、非現実的という御答弁がございました。

 今回、民主党さんの参議院選挙の公約を見ておりますと、最低賃金の千円という話が今出ましたけれども、基礎年金も財源は税方式で、消費税を上げないで、全額税方式。これは、消費税に換算すると消費税一七%が必要でありますし、子ども手当、月二万六千円、中学卒業まで、これも六兆円ぐらいの財源が必要だということでありますから、その財源をどこから確保するのかというところが甚だ不可思議な選挙公約ではないかというふうに思います。

 そういう意味でも、この最低賃金の適切な引き上げ、働く人たちの賃金の底上げという意味でも適切な引き上げが必要であるというふうに思います。中小企業等の経営の実態を考慮しつつ最低賃金を引き上げていくというプロセスが大事だというふうに思います。

 政府において、成長力底上げ戦略というもので、中小企業の生産性の向上とともに、最低賃金を引き上げるための施策に取り組まれているというふうに聞いておりますけれども、この成長力底上げ戦略における最低賃金引き上げの考え方について御説明願います。

青木政府参考人 ことしの二月にまとめられました成長力底上げ戦略(基本構想)では、「「成長力底上げ戦略推進円卓会議」において、生産性の向上を踏まえた最低賃金の中長期的な引上げ方針について政労使の合意形成を図る。」、その「合意を踏まえ、最低賃金の中長期的な引上げに関して、産業政策と雇用政策の一体運用を図る。」というふうにされております。

 生産性の向上は、最低賃金の決定に当たっての考慮要素である、通常の事業の賃金支払い能力の向上あるいは労働者の賃金の上昇につながるものでありまして、中長期的には、こうした取り組みの成果としての生産性の向上に見合った最低賃金の引き上げがなされるものと期待しております。

石崎委員 そこで、この最賃問題、地元でも、私いろいろな実態をお聞きする機会が多いわけでありますけれども、例えばタクシー業界、御案内のとおり、規制緩和の影響で、タクシー、ハイヤーの業界においては増車による需給バランスがおかしくなり、個々の運転手さんの賃金というものも非常に低くなっている実態にある。既に現行の最低賃金が守られていないという実態も多いというようなことを聞くわけでありますけれども、このタクシー、ハイヤー業界における最低賃金法第五条の違反というような事例について、厚生労働省はどのように把握されておりますでしょうか。さらに、それについてどのような指導を行っているんでしょうか。

青木政府参考人 労働基準監督機関におきましては、平成十七年に定期監督を実施いたしました。その件数は、全業種で十二万二千七百三十四件でございます。その結果、最低賃金法第五条違反が認められた件数は千七百六十六件、違反率一・四%でございます。このうち、ハイヤー、タクシー事業に対しまして定期監督を実施した件数というのが千三百九十五件でございます。その結果、最低賃金法第五条違反が認められた件数は二百件、違反率は一四・三%でございました。

 これらの監督指導につきましては、労働基準法第百一条に基づきまして、労働基準監督官が自動車運転者を使用する事業場に臨検をいたしまして、タイムカードなど客観的な資料を精査いたしますとともに、関係者から事情聴取をする、そういったことなどによりまして、総合的に事実関係を確認いたしております。その結果、労働基準関係法令違反または改善基準告示違反が認められた場合には、是正勧告書を交付するなど必要な指導を行うとともに、是正報告を提出させるなどにより、確実な是正を図っているところでございます。

 私どもとしては、自動車運転者の法定労働条件の履行確保を図るため、これまでも的確な監督指導を行ってきたところでありますが、国土交通省とも連携を図りつつ、引き続き適切な監督指導の実施に努めてまいりたいと思っております。

石崎委員 今の局長のお話では、最賃法違反、全業種での違反率は一・四%、タクシー業界は一四・三%という、ちょうど十倍の比率で最賃法違反の実態にあるということでございます。

 これは、タクシー業界にそういう悪質な業者が多いということではないんだと思います。端的に言うと、これは、規制緩和政策、需給調整を撤廃するという政策、運輸面における規制緩和政策の失敗、その影響ではないかと私は思います。

 規制緩和によってタクシーの台数がふえる、私の地元の札幌でも千台以上ふえました。一方で、景気回復がままならない、客足が落ちる。そして、賃金体系が生産比例賃金という賃金体系になっていて、売り上げが上がらなければ個々の運転手さんの収入は下がっていく、そのボトムラインが最賃ぎりぎり、その下に行くという状態が多いということがこの数字から読めるんじゃないかというふうに私は思います。

 ですから、今回の最低賃金法の改正というのは、私はやるべきだ、当然やるべきだというふうに思いますが、業界、業種によっては、そのことがしっかりと守っていけるだけの、そういう業界の実態にない。特に、運輸系の規制緩和の影響をもろに受けているタクシー、トラック、こういう業態については、最賃法を遵守したいと思ってもなかなか遵守できない、あるいは現場の運転手さんの待遇というものがますます劣化している実態にある、そういうことが現実ではないかというふうに思っております。

 そういった意味でも、そもそもの政策の整合性、一方で最低賃金を見直しますよ、上げますよ、特に生活保護との整合性をとるために、私の地元の北海道でも、その乖離がある、それを上げる、それはもう当然の政策でありますけれども、一方で、そういう最賃も守れないような経営実態にある、労働環境にあるという、そっちの規制緩和政策はそのまま競争原理で続けていきますよということが、国の政策として整合性がとれるのかどうかということについて私は甚だ疑問に思っております。

 今、タクシーの業界でも、緊急調整措置というのを秋までに検討しようというようなことを考えておられるようでありますけれども、やはり、そもそもの根っこの規制緩和政策というのを考え直さない限り、厚生労働省が打ち出している最賃法の改正ということと整合性がとれない、あるいは全部しわ寄せが会社や労働者に及ぶ、そういうことではないかというふうに思っております。

 きょうは国土交通省も来ていただいておりますけれども、ハイタク業界を指導する立場から、この規制緩和政策の根幹についてどう考えているのか、あるいはこの最賃法改正との整合性をどう考えているのかをお聞かせいただきたいと思います。

桝野政府参考人 規制緩和に関しましては、確かに増車がございますものですから、待ち時間の短縮でございますとか、あるいは観光タクシーとか福祉タクシーとか、多様な運賃とか、そういういいところも、一定の効果も出ていると思います。

 ただ、今委員御指摘のように、他方では、例えば事故が起こりますとか、賃金が下がりますとか、苦情が多いとか、いろいろな、そういうマイナス面もあるということは認識しております。

 国土交通省といたしましては、規制緩和につきましては、これをやめてしまうというわけじゃなくて、規制緩和の成果というものを生かしながら、今申し上げたマイナス面をいかに減らしていくかという観点から対応してまいりたいというのが基本でございます。一つは監査とか処分とか、いわゆる社会的な規制と言われているものを充実していく、厚労省などともタイアップしながら、緊密に連絡をとってやっていきたいと思っています。

 また、タクシーにつきましては、町で出会い頭につかまえるというのが基本でございますけれども、いわゆる、選ばれる、よいタクシーが選ばれて、悪いタクシーが選ばれないというような形の、選ばれるタクシーというのをつくっていく、そういう基盤整備をしていきたいと思っております。

 昨今、実は全国の各地から、労働環境の改善、つまり賃金値上げを主眼とした運賃の改定申請が出ておりまして、私どもは、運賃の改定の主眼として労働環境の改善を挙げているというのは十分に評価できるところだと思っております。この値上げ申請に対しまして、全国的でございますけれども、適切に対処してまいりたいと思っておりまして、そういう中で、少しずつこういうものを改善してまいりたいと思っております。

石崎委員 全然どういう対策なのかよくわかりませんけれども、規制緩和をやり、会社の経営も苦しくなり、労働者も賃金が下がり、それで運賃は値上げする、これなら何のために規制緩和をしたんだか私はよくわからない、これはまさに政策の失敗だと断ぜざるを得ないというふうに思いますが、その緊急調整措置についてはどう考えておりますか。

桝野政府参考人 道路運送法で、規制緩和をしましたときに、緊急調整措置という、一時的に増車をとめるという措置を導入いたしています。そのときの、規制緩和の中に盛り込まれた措置でございますけれども、特例的、例外的な措置でございます。この発動について少し議論をしてみようということで、内部で議論を始めさせていただいています。その議論の推移を見ながら今後検討してまいりたいと思っております。

石崎委員 時間になりました。

 我が国にとって、働く人たちにとって、本当に美しい国になるように、この労働三法、しっかり魂が入るような改正を心から希望します。

 終わります。

伊藤(信)委員長代理 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 まず初めに、本日、野党は委員会を欠席いたしております。国民生活に直結をした労働三法の審議を欠席をする、そのことに対し厳重に抗議をしておきたい、このように思います。

 まず初めに、労働契約法について質問してまいります。

 先般本委員会におきまして審議をされ、成立をいたしました改正パートタイム労働法の審議におきまして、短時間労働者につきまして、通常の労働者、正社員との均衡のとれた処遇を図る、また、その一方で、そうした通常の労働者の労働条件を逆に引き下げることがあってはならないとの議論がございました。これにつきまして、雇用均等・児童家庭局長からは、判例法理によって、合理性のない就業規則の一方的な変更は無効であり、労働契約法においても就業規則の変更が合理的であることが求められる旨の答弁がございました。この労働契約法を見ますと、第八条から十条までの規定に、労働契約の内容の変更に関するルールがございます。

 そこで、まずお尋ねいたしますが、この労働契約法の八条から第十条までの規定によって、使用者が自由自在に、労働者にとって不利益に労働条件の変更を行うことが許されるものではないことがルール化されることになっているのでしょうか、この点についてお伺いをいたします。

青木政府参考人 労働契約内容の変更に関するルールについては、今お触れになりましたように、労働契約法第八条におきまして、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」という合意原則をまず明確に規定しております。

 その上で、就業規則による労働条件変更に関する最高裁判所の判例法理に沿って、第九条において、まず、原則として、使用者が労働者と合意することなく、就業規則の変更により、労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできない旨を規定いたしております。さらに、第十条におきまして、変更後の就業規則が労働者に周知されており、就業規則の変更が合理的なものである場合に、労働契約の内容である労働条件は、変更後の就業規則に定めるところによるものとする旨規定しております。

 このように、労働契約法案は、労働条件の変更に関して、労働者と使用者の合意を原則としつつ、現在の判例法理に沿ったルールとするものでございます。

 また、就業規則による労働条件の変更ができる場合の合理性の判断要素として、「労働者の受ける不利益の程度、」という、個々の労働者にとっての影響でありますとか、あるいは「労働組合等との交渉の状況」という、就業規則の変更に当たっての労使協議の状況を明示いたしております。そういったことなどで労働者の保護に十分配慮したものとなっているというふうに考えております。

古屋(範)委員 ただいま局長から、労働者の受ける不利益の程度、また労働組合との交渉の状況など、労働者の保護に十分配慮した規定であるとの御説明がございました。

 さて、就業規則の変更に関するルールを定めるに当たりまして、現に企業の労務管理実務においても定着をしていると思われる、最高裁判所の判例法理として確立している就業規則変更法理を参考にすることが考えられます。

 これにつきまして、労働政策審議会の審議の過程におきましても、労働契約法案に盛り込まれる就業規則の変更ルールが最高裁判所の判例法理と同じものなのかどうかという、この議論が大いに行われたと伺っております。

 そこで、この就業規則の変更につきまして、最高裁判所の判例法理はどのようになっているか、また、今回の労働契約法の内容はその判例法理の内容に沿ったものと言えるかどうかをお伺いいたします。

青木政府参考人 秋北バス事件の最高裁判決では、新たな就業規則の作成または変更によって既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないと解すべきと判示されておりますので、この労働契約法案の第九条では、まず、就業規則によって労働条件を変更する場面における原則として、このことを規定しております。

 その上で、秋北バス事件の最高裁判決では、当該就業規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由としてその適用を拒否することは許されないといたしまして、就業規則によって労働条件を変更するためには、就業規則が合理的であることを要件としております。

 就業規則の変更についての合理性の判断基準については、この秋北バス事件最高裁判決では具体的には述べられておりませんけれども、その後、大曲市農業協同組合事件の最高裁判決では、変更の必要性と内容の両面から合理性を判断する枠組みが示されました。

 そして、第四銀行事件の最高裁判決では、秋北バス事件の最高裁判決やこの大曲市農業協同組合事件の最高裁判決において示された判例法理を引用、踏襲した上で、その引用した判例法理における合理性の判断に当たっての具体的な考慮要素を示しております。

 この労働契約法案の第十条では、こうした判例法理に沿って就業規則の変更ルールというものを規定したものでございます。

古屋(範)委員 この労働契約法第十条の条文を読みますと、「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」と、四項目が書かれております。これら四つはすべて満たされなければならない、いわゆる要件ではなく、これらを含めて総合的に就業規則の変更の合理性を判断する、その際に、主に着目すべき考慮要素として挙げられたものである、そのように私は理解をいたしております。

 局長の御説明によりますと、これらは判例法理に沿ったものであるということでございますが、第四銀行事件判決においてはその考慮要素を七つ挙げられていまして、第十条は判例法理に沿ったものとは言えないのではないか、このような意見がございます。

 確かに、事情を知らずにこの条文を見た方は、七つの要素が四つに減ってしまった、他の三つの考慮要素は考慮しなくてもよくなったと誤解してしまうおそれがあるかもしれません。

 そこでお尋ねいたしますが、この第四銀行事件判決で掲げられている七つの考慮要素に相当する事実、労働契約法案第十条に規定する四つの考慮要素の中でどのようにしんしゃくされているのか、お伺いいたします。

青木政府参考人 確かに、御指摘の第四銀行事件最高裁判決で述べられました合理性を判断する際の考慮要素、これは七つでございますが、この七つの考慮要素の中には内容的にお互い関連し合うものもありますため、立法いたしまして労働契約法第十条を規定するに当たっては、関連するものについて統合して列挙しようということで、十条の四つの考慮要素にまとめたものでございます。

 その、三つが、おっしゃったように、どういうことになっているかということでございますが、「変更後の就業規則の内容の相当性」というものを挙げておりますけれども、これには就業規則の内容面に係る制度変更一般の状況が広く含まれるものでございまして、第四銀行事件の最高裁判決で列挙されている考慮要素であります変更後の就業規則の内容自体の相当性だけではなくて、もう一つ挙げられております代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、またもう一つ、同種事項に関する我が国社会における一般的状況、これも含まれるというふうに思っております。

 それからまた、三つ目でありますけれども、「労働組合等との交渉の状況」というのを挙げておりますけれども、この「労働組合等」には、多数労働組合や過半数代表者のほか、少数労働組合や、労働者で構成される親睦団体等、広く労働者側の意思を代表するものが含まれるものでございます。したがって、第四銀行事件の最高裁判決で列挙されている労働組合等との交渉の経緯のほか、他の労働組合または他の従業員の対応という、もう一つの、七つ目の要素も含まれるものでございます。

 このように、第四銀行事件最高裁判決で示されました七つの考慮要素は、労働契約法案の第十条において掲げました四つの考慮要素にいずれも含まれるものとして規定しているものでございます。個別具体的な事案ごとに、就業規則の変更の合理性を判断する際には、御指摘になりましたように、総合的にこれらの事実が考慮されることになるというふうに考えております。

古屋(範)委員 ただいまのお答えの中で例示された四つの考慮要素の中でそれぞれ考慮をされていくものである、残りの三つについては考慮されなくなるものではない、判例法理を変更するものではないということでございました。

 この労働契約法が成立した暁に、そうした規定の正しい解釈をぜひ判例などとあわせまして整理をして、一般の労働者また使用者にわかりやすく周知をしていく必要があると考えます。その点を何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、労働基準法の一部を改正する法律案について質問してまいります。

 今回の労働基準法の改正法案では、月八十時間を超える時間外労働につきまして、法定割り増し賃金率を五割に引き上げることとなっております。一方、中小企業におきましては、この法定割り増し賃金率の引き上げについて猶予措置が設けられているところでございます。

 長時間労働を抑制していくことはもちろん中小企業においても必要ですが、中小企業については、事業主の負担も考慮しながら、現実的な対策を講じていくことが効果的であろうと思います。このようなことから、公明党としても、昨年四月に公表いたしました少子社会トータルプランにおきまして、長時間労働の見直しを徹底して図ることとあわせまして、この長時間労働の見直しの取り組みを積極的に進める中小企業に対しては、新たな支援策を講ずることによってその負担を軽減することを提言しているところでございます。

 そこでお伺いいたします。今回の法案で、中小企業における長時間労働の見直しにつきまして、中小企業への支援策も含めてどのように取り組んでいかれるのか、お伺いいたします。

柳澤国務大臣 現在の労働者の置かれた状況を一口に申しますと、非正規労働という方々が三分の一になんなんとする比率を占めるに至った、こういうことがある一方、正規の雇用のもとにある労働者、いわば正社員というべき方々が非常に長時間労働をしておる、その長時間労働のレベルが高どまりをしているということが特徴的に見られるわけでありまして、やはり、労働者の健康あるいはワークライフバランスというようなことの中で、労働者が、家族であるとか子育てであるとか、地域社会への貢献とかあるいは自己啓発とか、こういうようなことにその時間を割くというようなことが実現されなければならない、こういうように考えておるわけでございます。

 そこで、今回の労働基準法の改正におきましては、月八十時間を超える時間外労働については、法定割り増し賃金率を五割に引き上げるということをいたしたわけでございます。

 しかしながら、今委員が御指摘になられますように、経営体力が必ずしも強くない中小企業におきましては、そういうことが行われたからということで、大企業のごとく、業務分担の見直しをするとか新規の雇い入れをするとか、あるいは省力化投資をすぐさま行うとかというような対応をとるのがなかなか難しい、厳しい条件のもとにあります。要するに負担が大きいということになるわけでございますので、そういったことを考慮いたしまして、この五割増しの割り増し賃金率というところにつきましては、中小企業に対してはその適用を猶予するということをさせていただいたところでございます。

 しかし、だからといって、中小企業の方々が長時間労働の抑制をしなくていいということではございません。私どもといたしましては、大臣告示ということで限度基準を設けているわけですが、その大臣告示を改正して、そこで定められた限度基準を超える労働時間については、割り増し賃金率を、基準の二五%よりも、これを超えるようなレベルに引き上げてもらいたい、それからまた、時間外労働そのものをできるだけ短くしてもらいたい、こういうようなことで、労使双方にその二つの面についての努力をしてもらうという努力義務を課しているわけでございます。このようにして、中小企業における労働者につきましてもぜひ時間外労働の抑制を図ってもらいたい、こういうことをお願いしているわけでございます。

 それと同時に、私どもが今やろうとしていることにつきましては、今委員も、公明党さんの方でも考えたということでございますが、時間外労働の削減に積極的に取り組む、そういう中小企業の方に対しては助成金を創設するということを考えているわけでございます。

 こうした総合的な取り組みを通じまして、中小企業におきましても長時間労働抑制の実効を上げてまいりたい、このように考えているところでございます。

古屋(範)委員 これまでの質疑におきましても、大臣からはワークライフバランスの重要性ということをお述べいただいております。しかしながら、非正規労働者の増加、あるいは正規社員の長時間労働ということで、なかなか現実は進んでいないというふうに考えます。この労働基準法の改正が、真の意味で労働時間の抑制につながっていくことを心から期待するところでございます。

 次に、年次有給休暇の趣旨について伺ってまいります。

 今回の法案では、法定割り増し賃金率の引き上げとともに、もう一つの柱といたしまして、年次有給休暇制度の見直しが盛り込まれております。この年次有給休暇につきまして、労働者の権利として認められているわけでありますが、なかなかその取得が進まないということがしばしば指摘をされるところでございます。せっかく労働者の権利として認められているのに、実際はその取得が進まない。どうにかしてこの年次有給休暇が有効に活用され、働く方々がめり張りのある、そして仕事と生活の調和がとれた働き方ができるようにしていくことが必要であると考えます。

 そこで、まず現行の年次有給休暇の趣旨についてお伺いいたします。そして、今回の法案による、時間単位での年次有給休暇の取得を可能にするというのはどのような趣旨なのか、あわせてお伺いいたします。またさらに、このような制度を導入することによりまして、休養のため日単位で年次有給休暇を請求したが、会社の都合で時間単位に変えられてしまうというようなことがないか、この点についてもお伺いをいたします。

青木政府参考人 労働基準法における年次有給休暇は、労働者の心身の疲労を回復させまして、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するということから、毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定しているものでございます。

 今回の労働基準法改正案の年次有給休暇の改正については、現行では日単位以上で取得することとされているわけでありますが、特に子育て世代の女性から時間単位の取得の希望があったということを踏まえまして、かつ、年次有給休暇の本来の趣旨も勘案して、五日を上限として時間単位の取得を可能とすることとしたものでございます。これは、年次有給休暇を使いやすいものとするためのものでありまして、これにより年次有給休暇を一層有効に活用できるようになるというふうに考えております。

 また、年次有給休暇は、請求時季が事業の正常な運営を妨げるものでない限り使用者は付与しなければならないということになっております。この原則は時間単位での取得においても変わらないものでございます。御指摘のような、労働者が日単位で請求した場合に使用者が時間単位に変更することは、時季変更には当たりません。また、労働者が請求した年次有給休暇のうち、一定範囲について取得を認めないということにもなるわけでございまして、労働者による自由な年休取得を阻害することとなります。このため、こういったことは認められないものであるというふうに考えております。

古屋(範)委員 こうした時間単位での柔軟な有給休暇の取得、これが子育て世代あるいは介護をしている働く方々にとっても資するものである、このように考えるところでございます。

 次に、最低賃金法の一部を改正する法律案について質問をしてまいります。

 現在、我が国の最低賃金制度におきまして、大きく分けて、地域別最低賃金また産業別最低賃金、二つの種類の最低賃金が存在をしております。

 今回の改正法案では、地域別最低賃金については法定基準の見直しや罰則の強化が盛り込まれておりまして、セーフティーネットとしての機能の強化がされているところであります。一方、産業別最低賃金につきましては、規制改革・民間開放推進三カ年計画でも、そのあり方について検討を求められたわけですが、今回の改正法案においては産業別最低賃金についてどのような考え方で見直しを行うこととしたのか、この点についてお伺いいたします。

青木政府参考人 まず、最低賃金の第一義的な役割というのは、すべての労働者について賃金の最低限を保障する、そういう安全網でございます。この役割は地域別最低賃金が果たすべきものであるというふうに考えております。このため、今般の見直しにおきましては、地域別最低賃金について、お触れになりましたように、各地域ごとに決定することを義務づけるとともに、不払いに係る罰金の上限額を引き上げるなどの見直しを行うこととしております。

 一方、お尋ねの、産業別最低賃金でございますけれども、関係労使のイニシアチブにより設定され、企業内における賃金水準を設定する際の労使の取り組みを補完する面、それから公正な賃金決定にも資する面、こういった面がございますので、安全網とは別の役割を果たすものとして見直しを行うことといたしたものでございます。

 具体的には、産業別最低賃金につきましては、一つは、関係労使の申し出というものを法律上必須の要件といたしました。申し出があった場合において、必要があると認めるときに決定することができるというふうにいたしました。もう一つは、最低賃金法の罰則は適用しないということといたしたところでございます。

古屋(範)委員 中小企業等の関連もございます。きょうは内閣府にもおいでをいただいております。

 政府におきましては、成長力底上げ戦略におきまして、中小企業の生産性の向上とともに、最低賃金を引き上げるための施策に取り組まれていることと思います。この最低賃金が、企業の支払い能力から乖離した水準に決定することが不適切であるという以上、中小企業の生産性を高める、またこれと相まって最低賃金の引き上げに取り組むという政府の方針につきましては、私も共感するところでございます。

 しかしながら、この戦略の成否は実効ある中小企業支援策が講じられるか否かにかかっているというふうに考えます。そこで、この成長力底上げ戦略につきまして、中小企業の生産性向上に向けた取り組みについて、その基本的な考え方、そして、本戦略全般を担当する内閣府からの、これについての取り組みをお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の成長力底上げ戦略でございますが、これは、経済成長を下支えします基盤の向上を図ることにより、働く人全体の所得、生活水準を引き上げつつ格差の固定化を防ぐ、こういうものでございます。中小企業底上げ戦略はその中の一つでございまして、御指摘のように、働く人の賃金の底上げを図る観点から、中小企業の生産性の向上とともに最低賃金を引き上げるということで、産業政策と雇用政策の一体運用というものを目指すものでございます。

 これに関しましては、具体的には、政労使が参加します円卓会議というのを設置してございます。これは国においても設置してございますし、また各都道府県においてもこういう形で、地方版の円卓会議を今立ち上げたところでございます。

 その中で、特に御指摘の、中小企業の生産性の向上でございますが、まず、全体にわたる共通基盤的な対策としまして、下請適正取引の問題でありますとかIT化の促進等を進める一方、また個別に、特に生産性の低い業種、地域を対象にしました個別対策、これの組み合わせという形で、中小企業の生産性向上にまさしく全力を尽くして推進していきたい、こういうように考えている次第でございます。

古屋(範)委員 ただいま内閣府の方から、本戦略におきます中小企業の生産性向上支援策について、基本的な考え方を御説明がございました。

 やはり中小企業の生産性の向上ということにつきまして、具体的には中小企業庁さんが中心となりまして取り組んでいかれることとなると思います。中小企業の生産性向上に向けた具体的な取り組みにつきまして、中小企業庁からの御説明をお願いいたします。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業の生産性向上に向けた取り組みにつきましては、昨日閣議決定されました骨太二〇〇七あるいは円卓会議におきますこれまでの御議論を踏まえまして、成長力底上げ戦略の具体的な対策として中小企業生産性向上プロジェクトを実行してまいります。その中で、特に下請適正取引の推進が即効的な方策として重要だと考えておりまして、業種ごとのガイドラインを策定し、取引価格の決定などにおいて下請事業者に十分配慮するよう要請してまいります。

 具体的には、下請取引の適正化推進につきまして、三月に甘利大臣みずからが経団連あるいは日本商工会議所に要請いたしました。加えまして、実は本日でございますが、甘利大臣出席のもと、下請適正取引の推進のためのガイドライン策定検討会を開催したところでございます。まず、七つの業種、素形材、自動車、産業機械、繊維、情報通信機器、情報サービスそして広告、この七つの業種につきまして、関係業界の代表、学識経験者などによる審議を行ったところでございます。公正取引委員会にもオブザーバーとして参加していただいております。

 さらに、中小企業生産性向上プロジェクトにおきましては、IT導入のためのコンサルティング、あるいは生産性向上特別指導員による経営指導などによるIT化、機械化、経営改善、それから中小企業の事業再生などの取り組みも推し進めていくこととしておりまして、これらによって中小企業の生産性向上につなげてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 賃金の上昇、また非正規から正規への転換、こういうことを考えましても、やはりかぎを握るのは中小企業であろうというふうに考えております。ぜひ、この生産性向上は大きく推進されることが必要というふうに考えます。

 最後になります。大臣にお伺いいたします。

 この最低賃金の引き上げに向けました環境整備は極めて重要な観点であると認識をいたしております。こうした取り組みも含めまして、今後、最低賃金の引き上げについて大臣のお考えをお伺いいたします。

柳澤国務大臣 今回の国会におきましては、私ども、今の労働市場に起こっておりますいろいろな問題について総合的な取り組みをさせていただくということで、六本、あるいは勘定の仕方によってはもう一本多いわけでございますけれども、そういう法律の改正を打ち出させていただいた次第でございます。

 その中で、特に非正規を含みます労働者が、いわゆる労働の形態というものが、あるいは雇用の形態というのがどういうものであっても、安心、納得して働ける、そういう条件のもとで働いていただきたい、こういう考え方のもとで最低賃金の見直しというものを打ち出させていただいておるわけでございます。

 最低賃金法の改正法案におきましては、最低賃金というものがセーフティーネットである、安全網である、こういう観点に立ちまして、具体的な最低賃金の決め方というのは、地域別の最低賃金でございますので、これについて、その水準を決める際には、生活保護との整合性を考慮して決定するということを今度の改正で明確にさせていただいているところでございます。

 そして、我々の法律案というものは、そういうまずセーフティーネットとして十分に機能するようにということで、生活保護の施策との整合性ということをうたわせていただいているわけでございますが、中長期的な最低賃金のあり方ということを考えますと、今後ぜひこれを引き上げの方向に導いていきたい、ぜひそれを実現したい、こういうことを考えているわけでございます。

 そういうことを可能にするものは何かといえば、これは具体的には中小企業を中心とするわけですけれども、やはり生産性の向上というものがなければ、これはなかなか実現できない、こういう考え方があるわけでございまして、そういう中長期的な観点から、今委員が内閣府の政府参考人等と御議論をいただきましたように、成長力底上げ戦略推進ということを新しい政策として打ち出しているわけでございます。そういう戦略の推進を、具体的には円卓会議というものを組み立てまして、そこに政労使の代表にも加わってもらって、その中長期的な生産性向上を踏まえた最低賃金の引き上げの方針について合意をしてもらう、こういうことで、この円卓会議を運営させていただいているわけでございます。

 その合意を踏まえて、最低賃金の中長期的な引き上げに関して、これは今、下請の代金について産業政策の面から非常に積極的な取り組みを経産省がしてくださる、こういう答弁があったわけですけれども、そういった産業政策と私どもの雇用政策とが一体となってこれを実現していく、こういう政策展開を考えているわけでございまして、この中長期的な生産性に見合った最低賃金というものがそういう取り組みの成果として実現される、こういうことを期待いたしているというところでございます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

櫻田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十五分散会


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