衆議院

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第4号 平成19年11月2日(金曜日)

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平成十九年十一月二日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 茂木 敏充君

   理事 大村 秀章君 理事 後藤 茂之君

   理事 田村 憲久君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 山田 正彦君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井澤 京子君

      井上 信治君    石崎  岳君

      稲田 朋美君    大塚 高司君

      大塚  拓君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      佐藤ゆかり君    櫻田 義孝君

      清水鴻一郎君    杉村 太蔵君

      鈴木 馨祐君    薗浦健太郎君

      平  将明君    高鳥 修一君

      谷畑  孝君    冨岡  勉君

      長崎幸太郎君    丹羽 秀樹君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      林   潤君    福岡 資麿君

      馬渡 龍治君    松本  純君

      松本 洋平君    三ッ林隆志君

      安井潤一郎君    内山  晃君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      北神 圭朗君    郡  和子君

      園田 康博君    長妻  昭君

      細川 律夫君    柚木 道義君

      笠  浩史君    伊藤  渉君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           細川 律夫君

   議員           山井 和則君

   議員           山田 正彦君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   厚生労働副大臣      岸  宏一君

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  西山 正徳君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     大塚 高司君

  井上 信治君     佐藤ゆかり君

  木原 誠二君     安井潤一郎君

  櫻田 義孝君     丹羽 秀樹君

  萩原 誠司君     稲田 朋美君

  松浪 健太君     薗浦健太郎君

  三井 辨雄君     笠  浩史君

  柚木 道義君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     平  将明君

  大塚 高司君     新井 悦二君

  佐藤ゆかり君     井上 信治君

  薗浦健太郎君     鈴木 馨祐君

  丹羽 秀樹君     櫻田 義孝君

  安井潤一郎君     馬渡 龍治君

  北神 圭朗君     柚木 道義君

  笠  浩史君     三井 辨雄君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     松浪 健太君

  平  将明君     萩原 誠司君

  馬渡 龍治君     大塚  拓君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

十一月二日

 介護療養病床の全廃、医療療養病床の大幅削減に反対し、療養・介護の環境及びサービスの整備・拡充を求めることに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三二三号)

 健保三割負担を二割に戻すなど患者負担の軽減に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三二四号)

 じん肺とアスベスト被害の根絶を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三二五号)

 同(石井郁子君紹介)(第三二六号)

 同(笠井亮君紹介)(第三二七号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第三二八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三二九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三三二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三三三号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三三四号)

 同(日森文尋君紹介)(第三三五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三三六号)

 医療に回すお金をふやし、保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(菅野哲雄君紹介)(第三三七号)

 同(郡和子君紹介)(第三三八号)

 同(階猛君紹介)(第三三九号)

 同(山田正彦君紹介)(第三五八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三九七号)

 同(篠原孝君紹介)(第四六九号)

 国の医療に回すお金をふやし、医療の危機打開と患者負担の軽減を求めることに関する請願(逢坂誠二君紹介)(第三四〇号)

 同(三井辨雄君紹介)(第三五九号)

 同(森本哲生君紹介)(第三六〇号)

 同(山田正彦君紹介)(第三六一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三九八号)

 同(亀井久興君紹介)(第四四八号)

 同(篠原孝君紹介)(第四七〇号)

 医師・看護師不足など医療の危機打開に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三四一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四二一号)

 療養病床の廃止・削減と患者負担増の中止等を求めることに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三四二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三九九号)

 中小自営業の家族従業者等に対する社会保障制度等の充実に関する請願(中川正春君紹介)(第三四三号)

 同(黄川田徹君紹介)(第三五〇号)

 同(北神圭朗君紹介)(第三六二号)

 同(高井美穂君紹介)(第三七四号)

 同(保坂展人君紹介)(第三七五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四〇〇号)

 同(太田和美君紹介)(第四二二号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第四二三号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第四四九号)

 同(土肥隆一君紹介)(第四五〇号)

 同(松木謙公君紹介)(第四五一号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第四七三号)

 同(篠原孝君紹介)(第四七四号)

 同(仲野博子君紹介)(第四七五号)

 同(横光克彦君紹介)(第四七六号)

 安全で快適な妊娠・出産・子育て環境確保に関する請願(後藤田正純君紹介)(第三四四号)

 同(赤城徳彦君紹介)(第三五一号)

 同(河村建夫君紹介)(第三五二号)

 同(臼井日出男君紹介)(第三七六号)

 同(阿部俊子君紹介)(第四〇一号)

 同(石崎岳君紹介)(第四〇二号)

 同(猪口邦子君紹介)(第四五二号)

 同(赤池誠章君紹介)(第四七七号)

 同(稲葉大和君紹介)(第四七八号)

 同(玉沢徳一郎君紹介)(第四七九号)

 患者負担増計画の中止と保険で安心してかかれる医療に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三四五号)

 安心で行き届いた医療に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三四六号)

 同(保坂展人君紹介)(第三七七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四二四号)

 同(石井郁子君紹介)(第四二五号)

 同(笠井亮君紹介)(第四二六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四二七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四二八号)

 同(志位和夫君紹介)(第四二九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四三〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四三一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四三二号)

 安全・安心な医療提供体制の確保と患者負担の軽減を求めることに関する請願(村井宗明君紹介)(第三四九号)

 障害者自立支援法の抜本的な見直しを求めることに関する請願(木村義雄君紹介)(第三七三号)

 一酸化炭素中毒患者に係る特別対策事業を委託する新病院に関する確認書早期履行を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第三九三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三九四号)

 同(辻元清美君紹介)(第三九五号)

 同(広津素子君紹介)(第三九六号)

 同(松本龍君紹介)(第四三三号)

 同(土肥隆一君紹介)(第四五三号)

 同(園田康博君紹介)(第四八〇号)

 被用者年金制度一元化等に関する請願(玉沢徳一郎君紹介)(第四六七号)

 同(横光克彦君紹介)(第四六八号)

 社会保障の充実を求めることに関する請願(横山北斗君紹介)(第四七一号)

 高齢者に負担増と差別医療を強いる後期高齢者医療制度の中止・撤回を求めることに関する請願(篠原孝君紹介)(第四七二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案(第百六十六回国会内閣提出第八七号、参議院送付)

 労働契約法案(内閣提出、第百六十六回国会閣法第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十六回国会閣法第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十六回国会閣法第八二号)

 労働契約法案(細川律夫君外三名提出、衆法第一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(細川律夫君外二名提出、第百六十六回国会衆法第三四号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 身体障害者補助犬法の一部を改正する法律案起草の件

 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

茂木委員長 これより会議を開きます。

 第百六十六回国会、内閣提出、参議院送付、社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案につきましては、第百六十六回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、社会・援護局長中村秀一君、老健局長阿曽沼慎司君、保険局長水田邦雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 本日は、通告に従いまして、社会福祉士及び介護福祉士の改正法案について、大臣そして副大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 この問題は、半年前でしょうか、コムスンのあの問題もありまして、大変社会的な関心の高いテーマだと思います。大臣、大変思いもお持ちで、御専門でもいらっしゃる部分でもございますので、建設的な議論をお願いさせていただいて、質問に入りたいと思います。

 さて、いみじくも、コムスンの事例も今申し上げたわけですが、きょうは資料をおつけしておりまして、ちょっと枚数は多いんですが、一ページ目に、当時のコムスンの問題が私の岡山県でどういった形で受けとめられているかという報道もつけさせていただいております。

 全国同様の受け取り方ということはあったと思いますが、実は、ちょっときょうの資料には間に合いませんでしたが、けさの朝日新聞にこういった記事がございます。少し紹介いたしますので、御存じかもしれませんが、お聞きをいただきたいんです。

 「コムスン介護事業が移行 「ヘルパー確保」難題」「コムスンの大部分の介護事業が一日移行されたが、職員の退職による人手不足が深刻だ。閉鎖された事業所は全国で数十カ所に上り、」「二十四時間介護といった人手がかかるサービスの継続にも影響が出ている。厚生労働省による処分から半年近くたつが、利用者の不安は消えないままだ。」こういった報道もけさの新聞でなされております。

 この法案を議論させていただくに当たって、コムスンの問題もそうですが、いろいろな背景があると思います。厚労省からいただいている資料の中にもそれぞれの背景が書かれておりますが、認識を共有させていただきたいということで、少し私の方で、幾つか現状としての背景を申し上げさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、療養病床が削減という方向の中で、介護難民と言われる方々の、既に起こっている問題、あるいは今後の発生が懸念をされている。さらには、介護報酬は三年ごとの改定のたびに引き下げられるという状況にあり、また、訪問介護に至っては、昨年度改正で要介護区分が細分化、報酬が低い軽度の要介護者がふえた。

 こういったことを背景に、施設では併設施設の収益によって赤字を賄っているとか、あるいは、私の資料の一ページ目に岡山県の介護現場の報道をつけておりますけれども、「人手不足は深刻 求職者五年で三五%減」、一方で求人は四・二倍にふえております。景気回復の影響も大きい。さらには「給与や福利厚生など待遇が他業種より厳しい」と。「ヘルパーの半数が腰痛を抱え、コルセットを使う人も三割近い。」離職は一年間で五人に一人。こういったことで、「現場の努力はもう限界。待遇を改善し人材を確保するには介護報酬を上げるしかない。」そういった報道がなされております。

 そういう認識を少し共有化させていただいた上で、冒頭コムスンの問題を取り上げたのは、まさにこういう改正の議論を進めているさなか、こういった不正請求の事件が起こった。もちろん不正は論外でありまして、しかし、私は、この背景にはそもそも介護報酬が低過ぎるという構造的な問題があったのではないかと考えるわけですが、これは大臣に、大臣もそういった認識はお持ちでいらっしゃるでしょうか。

舛添国務大臣 柚木委員がおっしゃった、経済的な状況とか離職者の多さとか、いろいろ今御指摘になった問題点も、私も政治家になる原点が介護でしたので、よくわかっています。

 それからもう一つ。実はコムスンというのは、私が福岡県で介護をやっていた仲間がもともとやっていた名前で、それでこんなに大きくなってよかったなと思った途端に、これは、人手がちゃんと集まらないのに急激に事業を拡大し過ぎた、そして、今委員がおっしゃったような介護報酬をどうするかという問題もあるので、恐らく背景にはそういう問題もないとは言えないと思いますけれども、このコムスンの場合は、やはり不正行為なんですね、経営者としての。だから、同じ介護報酬でしっかりやっておられる方もおられる。

 私は、これは、急速な大規模化に伴ってきめの細かいことができない、そしていろいろな、御承知のような、事業所の指定申請を行うときに、ただ拡大したいからといってやった、そういうことの方が多くて、実際に、十八年の四月に介護報酬改定が行われましたけれども、指摘された問題の三十七件のうちの三十五件はそれ以前ですから、そういうことも考えて、やはり基本は経営者にあると思っています。

 しかし、委員がおっしゃったようないろいろな問題点、きょうは、そういう議論をさらに委員とともに深めていきたいと思います。

柚木委員 大臣に御答弁いただきましたように、もちろんコンプライアンス、経営者のモラル、そういったところは当然のことであります。

 しかし、まさにこの後議論をさせていただきますが、その背景にはそういった構造的な要因というものがあって、そして、そういった点について、やはり制度そのものをどのように見直していくかということも、このコムスンの問題を考えたときに、これはぜひ必要だというふうに認識をしておりまして、そういった認識に立ちまして、以下、議論を進めてまいりたいと思います。

 介護現場が大変な労働環境にあるということは今申し上げたとおりですが、資料の二ページ目にも同じくコムスンの事例、「譲渡遅れ利用者に余波 「モデル年収二百十六万」重労働なのに薄給 介護制度変えねば二の舞い」というような報道がなされております。

 さらに、次のページを見ていただくと、これは、介護労働の現状ということで、上下それぞれ、正社員、非正社員ということでの収入の分布をつけております。上の図で、訪問介護員、いわゆるヘルパーさん、登録ヘルパーさん、さらには介護職員ということで施設の職員さん、さらには介護支援専門員ということでケアマネジャーさんとつけておるわけですが、やはり年収二百万から三百万円未満という層が大変に大きいというような現状があるわけです。

 さらに、資料四ページ目をお目通しいただきますと、これは、私の地元に川崎医療福祉大学という、生徒数も数千人規模で、医療、福祉の専門大学がございますが、ごらんをいただくと、最も就職先で多いのは、実は医療、介護の専門の施設、機関等ではなく、一般企業三三%となっているんですね。まさに、介護福祉士、社会福祉士という国家資格を取得し、志のある学生がたくさんおる中でこういった現状がある。

 大臣、こういった問題を考えますと、私は、コムスンの事例も申し上げましたが、介護現場のさまざまなこういう待遇、労働実態、離職率、あるいはそういった専門大学学生等の進路、これらを根本的に解決するためには、やはり介護報酬そのものを引き上げていくことしかないのではないかと考えるわけですが、大臣の見解はいかがでしょうか。

舛添国務大臣 今委員がお示しいただいたこの丸いグラフ、これはことしの三月の卒業生ということで、地元の福祉大学ということなんですけれども、残念だなという気がありますね。しかも、私は、実はこういう大学とか福祉を志す若者たちのところに、国会議員になる前ですけれども、講師として行って励ましてきた。こういう若者が志してくれると本当に心強い。ところが、今おっしゃったような一般企業が一番多い。

 これは、一つは、やはり景気が回復してきた、そういうこともある。そうすると、景気がよくなって一般企業の方が給料や待遇がいいということでありますから、先生がおっしゃるように、待遇改善、それは給与だけではなくて、いろいろな意味でのキャリアアップシステムをつくるとか、本当に大変な現場を私は知っていますから、何とか待遇改善できないか。

 それから、もう一つ私が考えているのは、こういう方々の社会的な威信、プレスティージというか、こんなすばらしい仕事をして、それは職業に貴賤の差はありませんけれども、こんなすばらしいことをやってくださっている、そういう目でみんなが尊敬するということも生きがいになる。こういうことも含めて、総合的な対策が必要だろうというふうに思います。

 それで、今、これは一つの大学の例ですけれども、こういうことを、実態をまず詳細に調査してみたい。それから、実際、介護サービスの事業者がどういう経営をやっているのか。先ほどコムスンの例が出ました。離職率が非常に高いんですね。だから、これをどうして食いとめるか。

 こういうことを含めて、今、社会保障審議会の介護給付費分科会に、このたび、公益委員なども、いろいろな中立的な委員も含め、それから事業者、労働者の団体も含め、ワーキングチームというのを設置しまして、精力的に今ヒアリングを行っているところです。その結果を見て、何らかの対策がとれないかな。

 それから、今、一連の社会保障費の議論をいろいろなところでやっていますけれども、どうしても、待遇改善というのも、もとは税金と保険料ですから、これがじかに介護保険料の引き上げにつながるということも、また今度はそっちの面からの利用者の反発ということも考えないといけない、そのバランスも必要だろうというふうに思います。

 今、現状をきちんと精査した上で、委員の問題意識をしっかり踏まえた上で、何が適切な報酬か。利用者の皆さん方にも納得していただける、そして、若者が本当にこの職場で働きたいよと。私は、やはり率直に言って、もっと待遇を改善してやりたいなという気持ちは全く委員と共通でいますけれども、逆の面の、負担される側の御意見もありますので、そういうことを勘案して、できるだけ早急に調査、ヒアリングを終え、適切な対策を講じたい、このように考えております。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

柚木委員 大臣、前向きな御答弁をいただいておると思います。

 少し具体的に、私も、介護報酬の引き上げという大枠だけではなくて、提案をさせていただきたいと思います。

 まさに、調査ワーキングチームをつくりということで、これは次回の改定につなげていただけるものと認識をしております。うなずいていただいておりますので、そのように思いますが、実際に現場の方のお話を伺うと大変低い報酬で働いている現状については、今お伝えを申し上げたとおりであります。

 そんな中で、実は、サービス提供責任者の報酬加算について提言をいただいているんです。

 これは大臣も御承知だと思いますが、現在、例えば家事などの生活援助の介護報酬が二千円、これは大体ですが。資料もおつけをしておりますが、七ページ、身体介護、生活援助について、それぞれ点数掛ける十ということで、生活援助の介護報酬が大体二千円。

 ちょっときょうは資料が間に合わなかったんですが、訪問介護員さんや介護職員さん等の時給をそこに換算して、これを二千円から、例えばヘルパーさん、この場合は千三百円ぐらいが大体平均額というふうに、これは同じ厚労省さんの資料の方に出ているんですが、ちょっとおつけしておりませんが、そうすると、事業所収入というのは七百円になる。あるいは、入院、通院などの補助等の身体介護が、これは四百二単位ということで四千円だとすると、同じく千三百円引くと、事業所分は二千七百円。

 事業所は、当然その中からサービス提供責任者である介護士の報酬を支払いますが、それでも介護士の年収は、先ほどの資料にもお示ししましたように、二百万から三百万の層が一番多く、全産業平均からすればこれは相当低い状況にあるわけです。

 そういった中、CM、大臣はこれはごらんになったこともあるかもしれません。資料の五ページ目、六ページ目に一応おつけしておきましたが、ベストライフという会社のCM、私も初めて見たときは、これは一体何のCMなんだろうということで大変衝撃を受けました。「介護の仕事に志をもって入ってきた仲間が去っていきます」「介護制度にあなたの声をください。介護士が希望を失う前に」ということで、利用者の視点というのは当然大前提、重要であるわけですが、現場で働いている方、あるいはそういった会社がこういったCMを流さなければならない現状。

 こういったことも含めて、先ほどのサービス提供責任者の話に戻りますが、このサービス提供責任者の仕事というのは、現場の方に伺いますと、大臣は御存じかと思いますが、ケアマネさんとヘルパーさんとの連携、あるいは利用者からの苦情対応、ヘルパーさんのローテーション管理、あるいは同様に訪問介護計画書の作成、事業所によっては報酬請求事務等、多岐にわたるものです。

 ところが、こういった仕事が、マネジメント料と介護報酬とが混同されて、独立した報酬として現状としては保障されていないんですね。保障されていないから、先ほど少し申し上げました、言葉は悪いんですが、事業所は介護報酬の中からピンはねして、それをサービス事業者の人件費に充てざるを得なくなる、そして当然そのあおりはヘルパーさんも受けるということでございます。

 そこで、大臣、このサービス提供責任者の仕事をきちんと評価する報酬を新設することが私は必要になってくるのではないかと思うんですね。これは、全国の現場で働くヘルパーさんや介護士さん、あるいは事業所の皆さん、共通の声です。さらに、利用者にとっても、サービスの質、量も維持していく上に必要な加算措置ではないかと私は考えます。

 制度に理解の深い大臣でいらっしゃれば、きっと現場の実情をおわかりだと思うんですが、大臣、このサービス提供責任者の報酬加算新設に対して、見解、賛成かとかいうことも含めて御答弁いただけますでしょうか。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 今、柚木委員がいいポイントをつかれたと思います。

 というのは、やはり現場を見ていますと、ヘルパーさん、ケアマネさん、そのコーディネートをする、これをまとめてきちんとやる、こういう仕事に対する評価というのは、実は日本社会全体で低いんですね。みんなが、いろいろな職種があって、その中でぬきんでた人が、まさに無報酬でというか、まとめる、そういう、コーディネートする、マネージすることが実は大事だというのは、私は一般的に言って、日本社会全体で余り評価をされない風土も一つ背景にあると思います。したがって、そういうことをきちんとやはり評価できる体制ができないものか。

 それと、ただ、これを例えば加算したときに、きちんとその分がそのサービス提供者に行くのか。それこそ、今度は、悪徳経営者がいて、ああ、しめた、これはポケットに入れて、ポケットというか、とっちゃえということになると困る。

 ちょうど今私が取り組んでいるお医者さんの不足の問題。勤務医は大変ですからといって、例えば診療報酬を上げますね。医療機関に行きます。そこからお医者さんに行かない。だから、お医者さんの声は、そういう経過をしないで直接私たちに待遇改善のサラリーが来ませんかと。ただ、制度上はそれができない。

 これも全く同じで、私は本当は、気持ちは、調整役というのは大変ですから直接差し上げたいというのはあるんですが、経営者の判断なんですね。これはやはり経営者がしっかり、コムスンのような経営者だったら何するかわからない、だから私は前提として、そこをまずしっかりしてもらいたいということはあります。

 それで、先ほど申し上げました審議会のワーキングチームで、実はこの問題についても、現場をよく調査して、まず御意見を賜りたい。その上で、今言ったような、経営者にしっかりしてもらう。そして、日本社会全体、そして介護の現場でも、この方たちがおられるから上手なサービス提供ができるんだと、この認識をしっかりしていけば、私は、加算しても、これはそれなりに成果が上がると思います。

 ですから、ぜひ柚木委員も、私が今申し上げた前提、やはり事業者の方もしっかりしてくださいよということは、一緒に声を上げていって、前提をつくっていきたい。そして、できるだけこういうことも実現していくことが介護保険制度をさらによくする点だと思うので、非常に貴重な御提案だと思いまして、承ります。

柚木委員 認識は私も大臣と全く同じでございまして、まさに報酬引き上げ分が、例えば管理費、人件費、使途限定的な形での引き上げということもあり得るでしょうし、ここはぜひ、大臣、かなり前向きな答弁をいただいていると思いますが、調査を実際もうされている、現状もわかっていらっしゃる、そんな中で、これは次回の改定に必ず反映させるという答弁をもう一度お願いします。

舛添国務大臣 今、審議会の検討を待っていますので、できるだけ前向きにということで努力はいたします。

 ただ、私一人で決められる話じゃありませんで、前提としてチームそれから審議会の介護費用の分科会の御意見を賜った上で、そしてまた広く皆さん方のお声も賜った上で、前向きに検討していきたい、そういう答弁にさせていただきます。ありがとうございます。

柚木委員 加算の成果もあるであろうというふうな答弁も先ほどありましたから、これは本当に中身のある前向きということでよろしいですね、大臣。ありがとうございます。

 そして次に、同じくこれは現場で大変声が上がっている部分だと思うのですが、実は重度訪問介護。資料の八ページ、九ページ、これは私の地元紙でありますが、これは全国で同じ声がたくさん上がっていると思うのですね。当然、高齢者の方と並んで障害者の介護も今大変厳しい状況にあります。自立支援法の施行後の状況は皆さんも御承知のとおりでございまして、特にこの障害者の重度訪問介護は、サービスの報酬が少ないために、これを行う事業者が少なくなっているという現状がございます。

 この新聞報道の中をお読みいただくと、その他の、例えば介護保険における生活援助、身体介護等と比べても、大変に低い報酬になっています。ところが、岡山県内の事例ですと、八割近くの事業所が重度訪問の指定を受けていますけれども、実際には、自立支援法の施行後、新規ケースはなるべく断っていると打ち明ける事業者もあるという報道になっているわけですね。

 こういうことであっては、大臣、これは本当に制度そのものがどうなのかということになるわけですから、よりそういう負担が重い、あるいは身体、精神的にもいろいろな負担の中で日常生活を送っていらっしゃる方々に対して、今回、特に重度訪問介護についてこのようなしわ寄せが行っているということでございますから、記事の中を見ていただくと、国の国庫負担基準額というものが一つの指標、基準になっているということでございまして、これはぜひ、その基準額を見直すことなどを通じて、やはりこういったサービスの充実を整備していく必要があると思いますが、これは大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 私も自分で介護し、現場もよく見ていますと、本当に今委員がおっしゃるように、障害者、特に重度の場合というのは本当に大変で、特に訪問の場合、例えばおふろに入れてあげる、これはやってみるとわかりますけれども、いかに大変かというのは、現場はもう本当に私もよく見ていますので、委員の認識と同じでありますが、例えば重度訪問介護の場合、区分五というのをとると二十三万八千五百円、それに利用者数があって、今おっしゃった国庫負担の基準額とあって、何もやっていないのではなくて、かなりの程度の支援をやっていると私は思います。今の委員の問題意識も私も共有しております。

 ただ、またここで財源の問題にどうしても行き着くわけですね。ですから、財源の上手な配分、そしてどこから調達してくるか、こういうことも考えながら、利用者の中で非常にきめの細かい、こういう本当に困った方に対する手当て、これは必要だと思いますので、少し検討させていただいて、財源の問題が、国庫負担の場合は財務省との議論や何かありますから、これも一つ検討課題としてじっくりと取り組ませていただきたいと思います。

柚木委員 これは本当に、大臣、御認識をしっかりお持ちだと思いますので、ぜひ検討の上、見直す方向でお願いしたいと思います。

 時間が限られております。少し飛ばします。養成課程の、あのフィリピンの問題もやりたいのですが、時間がありませんので、社会福祉士の方に移りたいと思います。

 この法改正の中でも、認識としても、高齢化社会の中で、社福士に至っても、その専門性を生かしてさまざまな分野で活躍すべきだという認識は持たれていらっしゃると思いますが、この社福士、一つには職域を拡大していく必要。

 例えばきょう資料に、ちょっとページを繰っていただいて、十四、十五におつけしておりますが、十六ページの北九州の孤独死というのが続いたわけですね。その際に、十四、十五の資料を見ていただくと、検証委員会を設けて、一体何が原因でどういった対処が必要なのかということが触れられております。

 その中に、やはり、自治体における例えば社会福祉主事には専門性の高い社会福祉士がなるといったような形も含めて、これは十五ページの六番あたりがそういったことに該当すると思います。専門知識を持つ職員を確保するため、社会福祉職のような専門職員云々とあるわけでして、やはりこういう専門的な知識を持った方をもっともっと現場に配置していくということが必要だと思います。これが一点。

 さらに、例えば司法の分野、あるいは学校教育の現場、ソーシャルワーカーあるいはスクールカウンセラー等、そういった領域も含めて、この社福士の登用機会の拡大をすべきだと考えますが、これはいかがでしょうか。

岸副大臣 社会福祉士につきましては、現在大勢の方々がそれぞれの分野で御活動をしていただいております。今、お説にありましたように、社会福祉士の仕事は、かなり新しい分野へと進みつつあると言ってもこれは過言ではなかろうと思います。例えば、認知症の方々などに対する成年後見制度、それから権利擁護などの新しい相談事業、こういったものに拡大をしつつあるということは御承知のとおりでございます。

 しかしながら、あらゆる場面で社会福祉士の任用や活用が進んでいったかというと、決してそうとは言えないと思います。したがって、今回の改正におきまして、福祉系大学、こういったものの中で、実習や演習などの教育内容について基準を設けますなど、現場のニーズに的確に対応するために、高い実践力を有する社会福祉士を養成するための教育課程の見直しを行う、こういうことといたしております。

 今後は、こうした実践力を有する社会福祉士がさまざまな施設や現場で任用、活用されて、地域のため、世のためになるように、そういう社会をつくっていくべきだ、このように考えております。

柚木委員 時間がなくなりましたので最後の質問にしたいと思いますが、副大臣、前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 待遇改善について、介護福祉士についてもるる質問を申し上げましたが、これは最後に大臣、あわせてちょっと御答弁を補足でいただければと思います。

 これは社福士に対しても同様でございまして、先ほどの進路の話もございました。資格に応じた報酬ということも含めて、合格率三〇パーと難関なのに、そういった報酬措置が行われていないという現状があるので、あわせてお願いをし、最後を含めて御答弁をいただきたいと思います。

 最後の質問は、資料の最後に、看護の日、看護週間というものをおつけしております。これは御承知かと思われますが、看護協会の方の資料ですが、二十一世紀の高齢社会を支えていくために、看護の心、ケアの心、助け合いの心、一人一人が分かち合うことが必要、老若男女問わずだれもがはぐくむきっかけとなるよう、旧厚生省により九〇年に制定とございます。

 これにぜひ倣って、私は、介護の日というものを制定されたらいかがかと思うんですね。これは現場の皆さんも、そういった形で現状も知っていただき、そしてさらに、人材確保、少子高齢化の中で、そういった意識を現場、利用者の皆さんのみならず社会全体が共有していく。

 実は、私の母親は看護師でございますが、看護師の世界でも待遇改善等にも多年の取り組みが必要であったわけですね。介護にも同様に、こういった、例えば介護の日のようなものを設けてみて、そして、そういった分野にもっと光を当てていく、そういった取り組み、大臣も本当に思いをお持ちでいらっしゃいますから、ぜひこういったことも御検討いただければと思うんですが、最後に、まとめの意味も含めて御答弁をお願いいたします。

茂木委員長 舛添大臣、既に持ち時間を経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

舛添国務大臣 社会福祉士の待遇改善、これもきちんと取り組んでまいりたいと思います。

 それから、介護の日、これも大変いいアイデアですので、今、介護重点月間、何月をどうするか、年金については十一月を重点月間にし、最初の一週間、みんなでこれをチェックしようというのを今度設けたい、それと同じように、介護の日、では何日にするか、またいろいろ御提案賜って、これはぜひ実現したいと思います。

柚木委員 どうもありがとうございました。

茂木委員長 次に、新井悦二君。

新井委員 こんにちは。自由民主党の新井悦二です。

 本日は、発言の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。また、大臣がいなくなりますけれども、ちょっと寂しい気がしますけれども、順次、発言通告に従いまして質問をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 きょうは、社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 今、我が国は人口減少社会に突入いたしまして、人口構造の急速な高齢化に伴い、家庭内での介護の基盤が弱体化し、そして、ふえる高齢者にいかに対応していくかが一番の大きな問題ではないかと思っております。そして今、高齢者が高齢者を介護するような状態となって、また、介護疲れによって不幸な事件も最近多くなっているのも現実ではないかと思っております。

 今、私たちのこの国は、介護を必要とする高齢者の方、また、要するに痴呆の方や、そういう高齢者の方が今二百万人いると言われておりますけれども、これからさらに、二〇二五年には五百二十万人近くなると言われています。そうなってきますと、今の二倍近くが介護を必要とするわけでありますので、今まで介護が珍しかった、そういう時代から、これからはだれにも介護が起こり得る、そういう時代となるわけでありますので、やはり、国民全体がこの介護、そしてまた相互扶助の考えをしっかりと持っていかなければならないと思っております。

 そして、今回の介護福祉士制度、そしてまた社会福祉士制度につきましては、これは一九八八年の制度施行の後、十八年間抜本的見直しが行われていませんでしたけれども、やはりこの介護、そしてまた社会福祉、そういう取り巻く環境というものは非常に大きく今変わっているわけでありますので、今回の社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案は、やはり、介護の質の向上と、そして、だれもが安心して介護が受けられる、そういうものであると思っておりますので、しっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 それでは、まず初めに、定義規定及び義務規定の見直しについてお伺いいたします。

 まず、今回の改正により、今後、介護福祉士のあり方の見直しが具体化してくることとなると思っております。今後、ホームヘルパー等を含めた介護職員全体のあり方も見直されていくと思いますけれども、これからの国の取り組みとしての方向性についてお伺いいたしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の介護福祉士、社会福祉士の資格制度の見直しは、ただいま委員からお話のございましたように、昭和六十三年にこの制度ができましたけれども、その後のさまざまな福祉・介護制度の見直し、それから、委員から御指摘のありました、高齢化の一層の進展に伴いまして介護ニーズが多くなる、そういったことに対して質の高い介護、福祉の人材を提供できるように、資質の向上を図るために資格制度の見直しを行うものでございます。介護職種としては当然、委員から御指摘もございましたホームヘルパーも含まれております。

 私どもといたしましては、こういう資格制度を中心に、介護職員全体について資質の向上を図っていくとともに、介護職員の方が働き続けまして、それに応じて、いわばキャリアパスに対応して段階的に技術の向上が図られるような体系的な研修体系の構築を図っていく、そういったことで、介護職員あるいは福祉職員の質の向上を図り、人材の確保にもつなげてまいりたいと考えております。

新井委員 今後はやはり専門性の確立が非常に重視されてくると思いますので、ぜひともその方向性でしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 また、介護保険制度の見直しに関する意見書の中で、将来的には、介護職員となるためには基本的に介護福祉士の資格を必要とすべきであるという方向性が示されておりますけれども、そうなってきますと、やはり施設のスタッフを充足させるのに縛りがきつくなり過ぎてくるのではないか、そしてまた身動きがとりづらくなってくるのではないかと思いますけれども、その点についてはどのように考えているのか、お聞かせください。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、平成十六年の社会保障審議会の介護保険部会の意見書におきましては、介護職員につきましては、将来的には、任用資格は介護福祉士を基本にするべきだという御提言をいただいておりますが、これは、高度化、多様化する現場の介護ニーズに対応できるように、資質の向上が重要な課題だろうということだと思います。

 それで、現実を見てみますと、現在の各介護保険サービスの人員配置基準におきましては、特に施設サービス、居宅サービス、いずれにおきましても介護職員を介護福祉士のみに限定しているということではございません。現実を見てまいりますと、平成十七年十月現在では、例えば諸施設サービスでは介護福祉士の割合が四〇%、居宅サービスでは約二一%となっております。

 今後、介護サービスの担い手として介護福祉士をどういうふうに位置づけるかということでございますが、介護保険サービスとして最低限確保すべき水準をどう考えていくか、あるいは介護福祉士の配置を介護報酬上どのように評価するのかなどをよく考えまして、総合的に判断していく必要があるだろうと考えておりまして、今後御指摘の点も踏まえて検討してまいりたいというふうに考えております。

新井委員 ぜひともその点、小さな施設とか一生懸命やっているところもありますので、そういうことを配慮していただきたいと思います。

 特に病院なんかの場合、看護師の配置基準などが結構厳しくなっちゃっていると、どうしてもお互いに足を引っ張り合ったりとか、引き抜きがあったりとか、非常に大変な面もこれから出てくると思いますので、そこら辺のことはしっかりと国で対応していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、社会福祉士については、そもそもやはり国民にとって活動が見えにくく、社会的認知度が低いように思われますけれども、社会福祉士として求められる高い実践力を有する社会福祉士は必ずしも養成されていないのではないかと思います。また、生涯にわたって自己研さんして専門的な能力を向上するように努めることが今求められておりますけれども、資格取得後の職場内研修とかOJTの仕組みのほか、能力開発とか、またキャリアアップを支援するための研修体系等の整備が進んでいるのかどうか、それについてお伺いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 社会福祉士につきましても、この法案を提出する際の審議会におきましても、今委員から御指摘のございますとおり、なかなか国民の皆さんに活動の状況が見えにくい、また現場のニーズに的確に対応できる実践力のある社会福祉士が十分養成されていないのではないかという御指摘がございます。

 このため、今回の改正では、高い実践力を有する社会福祉士を養成する観点から、福祉系大学においても、実習、演習などの教育内容、時間数について、文部科学大臣と厚生労働大臣が基準を設定する仕組みといたしまして、的確な実習、演習の教育を確保し、実践力のある社会福祉士の養成を行うことといたしております。

 次の点でございますが、社会福祉士の資格を取られた方が、生涯にわたって技能を向上させていくための研さんシステムがどうなっているかということでございます。

 現場を見ますと、社会福祉士さん、大勢一緒に働いているという状況ではございません。施設等においても職場単位では孤立してやっておられる方が多いという状況でございますので、まずは、職能団体である社会福祉士会などで、そういった方々に対する研修の支援が必要ではないかと思っております。

 私どもも、そういったことについて御支援申し上げるため、今年度から、日本社会事業大学に委託いたしまして、こういう働いておられる社会福祉士の能力アップの研修講座を開設しているところでございます。

 さらには、やはり社会福祉士の上の専門社会福祉士、仮称でございますが、こういった仕組みも考えられるのではないかというのが審議会などでの提言でございますので、関係者の皆様とよくその点については話し合って、組み立ててまいりたいと考えております。

新井委員 この社会福祉士というのはどういう仕事かちょっとわかりづらいと思うんですけれども、結局はやはり福祉に対する相談役がメーンでありますので、やはりどうしても知識とか経験を必要とする職種であると思っております。高校卒業したからすぐできるものでもないし、やはり人間と人間との相談役でありますので、ぜひとも、そういう面からすれば、機能が十分果たせるように整備を進めていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、介護福祉士の養成にかかわる制度の見直しについて、資格取得方法の一元化についてお伺いいたします。

 労働条件の明確な改善がないまま資格取得要件を厳しくすると、介護福祉士の資格取得のインセンティブが働かなくなることが心配されますけれども、この点についてはどのように考えているのか、お聞かせください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員から御指摘ございましたように、これからの介護、専門性を高めていかなければならない、そういう要請がございまして、今回の制度改正はそういったところにこたえるものでございます。

 また、我々、しかし、そういうことで専門性は高まるのにそれに見合った処遇がないということでは、関係者、特に資格を目指す方々のインセンティブがないということになりますので、委員から御指摘のございました労働条件の改善というのは非常に大きな課題だと思っております。いわばこの法律改正と車の両輪といたしまして、そういった意味での働く方々の処遇の改善があろうかと思いまして、本年八月に介護・福祉分野における人材確保の基本指針を取りまとめたところでございます。

 そこでは、給与を含め、経営者等が取り組むべき労働環境の改善、また国の方では、先ほど来御議論になっております介護報酬や障害報酬の設定などは国の役割になっておりますので、そういった際に、介護福祉士等の専門性の高い人材を配置した場合の介護報酬等による評価のあり方についても検討するということが指針で明記されております。キャリアと能力に見合った処遇の確保を図るための取り組みを、この指針に沿って進めてまいりたいと考えております。

新井委員 福祉人材確保というのは非常に私は難しいと思っているんです。特にこの介護職員は、全産業の平均的な離職率に比べて離職率が非常に高いということと、そしてまた、先ほど柚木議員が言っておりましたように、賃金の水準が必ずしも高くないんじゃないか。

 特に魅力と働きがいのある職業かどうか。定義規定などを見ますと、介護福祉士の業務は「入浴、排せつ、食事その他の介護」となっておりますけれども、今回は「心身の状況に応じた介護」に改めておりますけれども、やはり介護士、介護にかかわる人というのは、入浴、排せつ、食事というのが非常に、要するに七割近くを占めているということと、非常に重労働であるわけであります。

 特に介護報酬等の適切な見直しは、先ほども言われておりましたけれども、そればかりではなく、やはり今、この介護とか医療、福祉、そういう面におきましては、事務量が非常に大きくなっているのは問題ではないかとも思っております。

 お医者さんなんかにすると、十年前に比べますと、今、事務量が二倍近くなっているということと。また歯科医師なんかでは、カルテ書きするだけでいっぱいになっている、そういう事務量がふえているということ。そしてまた、私もケアマネジャーとか介護審査員とか、そしてまた介護を体験させていただきましたけれども、やはり一番嫌なのは事務量が多過ぎるということです。

 実践をするべきなのに、事務が多くなって困ったなという点がやはりいつも問題になると思っておりますので、診療報酬の体系も必要ですけれども、要するに働く人の立場というものも考えてあげる、そういうこともやはり必要ではないかと思います。ぜひともしっかりとこれは対応していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、生涯を通じた能力開発とかキャリアアップの支援を行っていくなど、現に今介護福祉士として就業している者の資質向上に向けてはどのように国は配慮しているのか、お伺いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほどの、委員からお話のありました書類が多いとか、そういうことについては、私どもも指摘を受けております。人材確保指針でも、各種書類作成に係る事務の効率化、簡素化を言っておりますので、努めてまいりたいというふうに思います。

 介護福祉士のキャリアアップにつきましては、やはり生涯を通じました体系的な研修の仕組みをつくるということと、現在、関係者が集まって検討会が開始されておりますけれども、より専門的な知識や技能を有する介護福祉士を専門介護福祉士として認定する仕組みについて議論が進められているところでございます。

 先ほどの人材確保指針でも、生涯を通じた研修体系の構築を図るとともに、施設長や従事者に対する研修等の充実を図ることが、経営者、職能団体等が行うべき事業とされておりますので、そういったことを含め、関係団体に対し、このような趣旨を周知し、協力を求めてまいりたいと考えております。

新井委員 時間の関係上、ちょっと飛ばさせていただきますけれども、次に、准介護福祉士の創設についてお伺いしたいと思います。

 准介護士については、当分の間とされておりますけれども、結局は恒久化する可能性もあるのではないかと思います。これは、やはり期限を明確にする必要があるのではないかと思っております。

 また、養成施設の卒業者のうち、国家試験を受験しなかった者とか受験したが不合格だった者に資格を与えるということは、介護福祉士と実質的に同様な業務を負わせることになるような状態が生じると思うんですけれども、今回の資格取得方法を一元化するという制度改正にまず逆行しているんじゃないかと思っております。そしてまた、やはり、介護現場の混乱を招くということと、賃金などの面で格差が生じてしまうんじゃないかということを私はちょっと懸念しておりますけれども、このことについてはどのように考えているのか、お伺いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 准介護福祉士の資格は、委員から御指摘ございましたとおり、当分の間の措置として設けるものということでございまして、法律上、「介護福祉士の技術的援助及び助言を受けて、専門的知識及び技術をもつて、介護等を業とする」、それから、「准介護福祉士は、」「介護福祉士となるため、介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。」としており、介護福祉士の資格を取得する途中段階としての位置づけを法律上いたしております。

 この時期でございますが、日本とフィリピンの経済連携協定の関係で准介護福祉士が設けられることになっておるわけでございますが、現在、この協定につきましては、フィリピン側で批准手続が終わっていないというような状況でございまして、現時点におきまして、フィリピン側との間で期限を定めた協定の修正の協議を行うことは困難でございますので、現時点で期限を明確にはできないような状況になっております。

 前通常国会での参議院の審議では、フィリピンとの協議の状況を勘案し、この法律の公布後五年を目途に、准介護福祉士の制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨の検討規定が追加されたところでございます。

 我々、そういう趣旨を踏まえ、外交交渉の任に当たる外務省とも連携をとりながら、フィリピン側での批准手続の状況も踏まえつつ、できるだけ早くこの仕組みの見直しに最大限努力してまいりたいと考えております。

新井委員 ちょっと時間の関係上、最後になりますけれども、実践力のある社会福祉士とか介護福祉士を養成していくだけではなく、彼らが実際の福祉現場で活躍できるように、その活躍の場を広げていくこともやはり重要であると思っておりますので、今後この問題についてどのように取り組んでいくのか、そしてまた、その決意を最後にお聞かせいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

岸副大臣 先ほどの柚木先生の問いにもございましたし、また、こちらの中村局長初め、御答弁申し上げましたように、社会福祉士の活躍の場というのは、後見制度でありますとか、さまざまな相談、権利擁護の相談等々、その役割は日とともにふえてきていることは事実でございます。

 しかし、先生のおっしゃいますように、さらなる活躍の場を広げていかなきゃならないということもまた事実でございます。

 そういうことを考えますと、大学での教育課程の中において、今後一層、それらの点について充実強化を関係機関とともにカリキュラム上で図っていく、こういうこととともに、実習や演習などもふやしていく、こんなふうなことを強力に進めまして、関係機関に社会福祉士の重要性というものを周知徹底していく、こういう作業も必要かというふうに考えております。

 また、介護福祉士についても、御承知のように、今後、高齢化社会ますます進みまして、平成三十七年になりますと後期高齢者が二千万人を超えるという説もございます。そういう中でございますから、今後一層、質も高め、学習を進めて、キャリアアップを図る、立派な介護職員を国としてもみんなで育てていく、こういう気持ちが大切ではないか、こういうふうに考えております。

新井委員 以上で質問を終わらせていただきます。

 本日は、ありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、福島豊君。

福島委員 今般、社会福祉士、介護福祉士の見直しを行うことをいたしておりますけれども、資格制度の見直しと同時に、健全な事業の運営やサービスの実施が肝要であります。

 そこでまず、介護保険制度の現況についてお伺いいたしたいと思います。

 介護保険制度は、平成十二年四月に施行されて六年半が経過をいたしました。ひとり暮らしの高齢者や夫婦二人暮らしの高齢者がふえている中で、介護が必要になっても、できるだけ住みなれた地域で自立した生活を営むことができるよう、国民生活を支える基盤として定着をいたしております。

 平成十八年四月には、施行後の実施状況や今後の高齢社会を見据え、認知症や医療ニーズの高い重度の方々に対応し、小規模多機能型居宅介護や夜間対応型訪問介護など、地域密着型の新しいサービスを創設したところであります。また、主治医との連携や医療と介護の連携を進めるため、地域包括支援センターの設置やケアマネジメントの見直しなど、介護サービスの質の向上と持続可能な制度を構築するために、さまざまな見直しを行いました。

 こうしたこれまでの不断の制度の点検と見直しにより、介護保険制度は、国民皆で支え、質の高いサービスを享受できる仕組みとして多くの国民に一定の評価を得られている、そのように考えております。

 しかしながら、一方では、最近、コムスンの問題など、利益の追求を優先して、ルールを無視した経営を進めた結果として、利用者への適切なサービスの提供や健全性が損なわれた経営が行われていた事例も見受けられるようになりました。

 介護保険制度が国民生活に定着した現在、いま一度、利用者の自立支援という制度の基本理念に立ち返り、質の高い介護サービスが提供される仕組みが確保されているかどうか、しっかりとこれを確認する必要があると思います。

 コムスンなどの問題を踏まえ、現在の介護保険制度の課題についてどのように認識しているか、政府のお考えをお聞きしたいと思います。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 コムスンの不正事案は、介護サービスの利用者に対して大変多大な影響を与え、また、介護保険制度に対する国民の信頼を大きく失墜させる行為でございまして、まことに遺憾だと考えております。

 介護保険制度の現在の問題でございますが、質の高いサービスを確保するためには、各サービス主体が、法令を遵守し、適正に事業を運営する環境を整えるというのが大変大きな課題であると思っておりまして、現在、適正化に関する有識者会議を開催いたしまして、いろいろなことで御検討いただいているというのが一つでございます。

 それからもう一点は、きょうも御議論がございましたけれども、介護職員の賃金の問題、あるいは介護労働力が不足しているのではないかというような問題、さらには事務処理が大変煩雑ではないか等々の問題が指摘されておりまして、これにつきましては、大臣からも御答弁いたしましたように、介護労働者の定着を図るための必要な措置を検討するということで、現在、社会保障審議会の給付費分科会に新たにワーキングチームを設置いたしまして、関係の事業者、団体からもヒアリングをしているということでございます。

 こうした実態把握等を十分にいたしまして、今後とも適切な対応をしていきたいというふうに考えております。

福島委員 ありがとうございます。

 今回の社会福祉士及び介護福祉士の資格制度の見直しは、資格法が創設されてから二十年ぶりの見直しであると認識をいたしております。その間、介護保険制度や障害者自立支援制度が創設され、措置から契約に移行するなど、介護、福祉の現場を取り巻く環境は大きく変わりました。介護福祉士が介護の現場を支える中核的な人材であることを踏まえますと、今回の見直しは遅きに失した感もありますが、まず、このタイミングで二十年ぶりに資格制度を見直すこととした政府のねらいをお伺いしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護福祉士につきましては、専門的知識及び技術をもって介護の業に従事する国家資格として昭和六十二年に制定されたわけで、委員御指摘のとおり、二十年近く経過したところでございます。この間、介護保険制度や障害者自立支援制度の創設に伴いまして措置制度から契約制度に変わったということ、認知症の方が大変ふえているようなこと、また医療ニーズが必要な重度の要介護者の増加、あるいは後期高齢者、超後期の高齢者の増加など、また、障害分野におきましては地域移行でございますとか自立支援を目指した介護が求められるなど、さまざまな新しい動きがこの二十年間にできております。

 それから、副大臣からも御答弁ございましたけれども、人口の高齢化もございまして、平成三十七年には後期高齢者が二千万人を超えるということで、ますます介護ニーズが高まるというふうに見込まれますので、利用者であります高齢者や障害者のニーズに的確に対応できる介護人材の確保と資質の向上を図るというために、今後十年二十年の介護ニーズに対応できる人材を確保するために、この資格制度を見直すことといたしたものでございます。

福島委員 今後、認知症の高齢者や医療ニーズの高い重度の要介護者が増加することを踏まえ、介護福祉士が修得すべき知識や技術についても国民のこうした新しいニーズに対応する見直しが必要である、そのように考えております。今回の見直しについての目的が今政府参考人から御説明ございましたけれども、この具体的な点についてどのように対応していくのか、そのお考えをお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 資格制度でございますので、まず、それぞれの例えば養成施設などにおきます、どういう内容をお教えするかという教育カリキュラムの問題がございます。新しい介護ニーズを踏まえた知識や技術に力点を置きました介護福祉士の教育カリキュラムの見直しを平成二十一年度から行うことといたしております。

 具体的にはどういう点かと申し上げますと、これまでは身体介護が大変重要でございますので、身体介護の重要性は否定するものではございませんし、ますます重要でございますが、他方、認知症でございますとか知的障害、精神障害、発達障害などの分野も非常に求められておりますので、いわゆる心理的、社会的なケアも重視するというのが一つでございます。

 二つ目は、利用者の状態に応じた個別ケアでございますとか、見守り、予防からリハビリテーション、みとりまで、こういった仕事を小さな単位で最近はしなければならない、場合によっては介護者が単独でもこういったことをできるようにしなければならないということで、単独でもこれらの仕事ができる介護福祉士を養成するということでございます。

 また、利用者本位の介護を実践するための高い倫理観の涵養や、利用者の自己決定を支えるための的確な説明や技術、知識の修得、それから、チームでケアをいたしますので、多職種協働、チームケアを実践するためには、適切な記録でございますとか関係領域の理解、コミュニケーション能力、こういったことが大事になっておりますので、こういった内容などを盛り込んだ教育カリキュラムの見直しを行い、平成二十一年度からこういう教育をお願いしたいと考えております。

福島委員 高齢者の虐待、施設内の虐待、いろいろと報道されておりますけれども、一つは、認知症の高齢者の方々にどう対応するのか、こういう具体的な対応の仕方を十分理解しておられない方がたくさんいるということも私は一つの理由なんだろうというふうに思います。

 また、医療と介護、それぞれの役割分担をどうするか。今後、さらに在宅医療が進みますと、介護の分野におきましても、一定の医療的な行為についても認めるべきであるという考え方は強くなってくるだろうと思います。ただ、そうしたことを支えるためにはやはり人材の質が高くなければならない、こういうことも同時に要請されるんだろうと思いますし、ぜひともそういった、今後の高齢者介護をどう支えるかという幅広い視点で具体的な内容を詰めていただきたいと思いますし、そしてまた、単に教育課程の中だけの話ではなくて、オン・ザ・ジョブ・トレーニングといいますか、実際にその現場で働き始めてからさまざまな形でまた研修をする機会を与える、こういったことも同時に必要ではないかというふうに思います。

 今回の見直しでは、介護福祉士の教育内容の充実を図るために、養成施設ルートについて試験を導入するとともに、実務経験ルートについても、一定の教育課程六カ月以上を経て試験を受験する仕組みに見直すこととなっております。現場の介護職員の中には、利用者に適切なケアができているかどうか不安があるという声もあることから、介護福祉士の資格を取った方が自信を持って介護の仕事につくことができるよう、今回の改正で実務経験ルートにも一定の教育課程を導入することは方向性としては間違ってはいない、そのように考えます。

 ただ、一方で、実務経験ルートの方々の多くは仕事をしながら介護福祉士の資格を目指す方であることから、一定の教育課程を課すことが過大な負担とならないように、通信講座も認めるなど、負担の軽減を図るための配慮が必要である、このように考えますが、政府の御見解をお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘ございましたように、今回の改正では、実務経験ルートにつきましても、六月以上の養成課程で理論的、体系的な勉強をしていただく仕組みに見直すことといたしております。しかしながら、実務経験ルートの方々が現場で働いている現任の従事者の方が多いことを踏まえまして、こういったことが過重な負担にならないよう、必要な措置を講ずる必要があると考えております。

 具体的には、新たな養成課程の基準を設定する際には、第一に、働きながら学ぶ方が勉強しやすいよう、通信制等の幅広い選択肢を用意したいと考えております。第二に、働く方の能力開発の取り組みを支援する教育訓練給付制度の対象になるように対応し、負担の軽減に配慮したいと考えております。また、事業者の方々につきましては、従事者の研修の受講機会を確保してサービスの質の向上を図ることの重要性についてお願いをしてまいりたいと考えております。

 このような措置を講じまして、働きながら資格が取得できるように配慮してまいりたいと考えております。

福島委員 こうした制度の見直し、ややもしますと、現場でのさまざまな混乱でありますとか、また批判ということが結果として生じてくる場合があるわけでありまして、そういう意味では、ただいま政府参考人から御答弁いただきましたような具体的な対応というものをしっかりとしていただいて、スムーズに制度の見直しが定着するように進めていただきたい、このように要望いたします。

 こうした資格の見直しを行う一方で、現在、介護の現場では恒常的に求人募集が行われ、劣悪な労働環境のもとで人材の定着化が進まない、このような実態が指摘をされております。資格の資質向上だけでなく、今後質の高い人材を確保するためには、若い方々が介護の仕事に魅力を感じ、安心して仕事ができる環境づくりに取り組むことが必要であります。

 この点について、厚生労働省としてどのように認識し、今後どのように対応を講じられるのか、見解をお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 国民の介護を支える人材の安定的な確保を図るというのは非常に大事な課題であると思っております。

 このため、社会保障審議会福祉部会におきましても、ことしに入りましてから人材確保指針の見直しについて御審議いただきましたけれども、その中でも、やはり介護の職場が、新規就職する学卒の方々、いわゆる若い方々に対して選ばれる職場でなければならない、そういった意味で、他の分野に比べて賃金等、よく他の分野の動向も配慮して、介護の現場における賃金のあり方などについても考えていく必要がある、そういう議論がございまして、若い方々が介護の仕事に関心を持っていただき、やりがいを持って働いていただける環境づくりに取り組むことが大変重要であると認識しております。

 実際の問題として、介護職で仕事をしている方々の不満や悩みを調査した結果では、給与等の収入が低いというのが四八%で最も高いわけでございますが、有給休暇がとりにくい、四四%とか、業務の負担や責任が大き過ぎる、三〇%、自分の能力を伸ばすゆとりがない、二〇%という理由も割合高く、給与、賃金だけでなく労働環境全般に配慮していかなければならないと考えております。

 そういった意味で、介護職員の定着化のため、繰り返しになりますが、給与だけでなく、働きやすい環境づくりなどの労働環境の改善、それから、やはりやりがいを高めなければなりませんので、キャリアアップの仕組みの構築など、一体的な取り組みが必要であると考えております。

福島委員 続きまして、EPAの問題であります。

 日本は、フィリピン、インドネシアとの間で、看護師及び介護福祉士の候補者の受け入れを含む経済連携協定、EPAを締結していると聞いております。今後、日本の労働力人口が減少していく中で、中長期的には、例えば介護分野においてEPAによる外国人介護福祉士を活用していくことも一つの大切な選択肢であると考えております。医療・福祉分野の交流を通じて二国間の発展にも寄与すると考えます。

 他方、受け入れに当たっては、こうした両国の発展に寄与するものとなるよう、政府においては、きちんと適切に受け入れを行い、日本に来たフィリピンやインドネシアの方々が、日本に来てよかったと思ってもらえるような受け入れ体制を確保していくことが重要であります。

 今回のフィリピンやインドネシアとのEPAによる看護師、介護福祉士の受け入れについて、厚生労働省としての基本的な考え方と現在の準備状況をお伺いしたいと思います。

岡崎政府参考人 フィリピンとインドネシアとのEPA協定の関係でございます。

 昨年九月にフィリピンと、それから本年八月にインドネシアとの関係で、看護師及び介護福祉士の候補者の受け入れを含みますEPA協定がそれぞれ署名されております。

 これの基本的な考え方でございますが、労働力不足対策という趣旨ではありませんで、二国間の経済連携を促進するという観点から、看護師あるいは介護福祉士の日本の国家資格を取得して、その後働いていただく、これを経済連携の一環として認めていく、こういう考え方のものでございます。そういう趣旨でございますので、入ってこられた候補者の方につきましては、きちんとした研修等が行われて国家資格を取っていただく、その後は日本の看護師あるいは介護福祉士と同等な形で働いていただく、これが肝要であるというふうに考えております。

 準備の状況でございますが、フィリピンの関係は、昨年我が国では国会で承認をいただいております。それを受けまして、日本としての受け入れの基準でありますとか条件等々につきましては、厚生労働省としての考え方は既に公表して意見を伺ったりしているところでございますが、実はフィリピンの方ではまだ上院での批准が済んでおりません。したがいまして、細かいところ、まだフィリピンと具体的に交渉できない状態でございますので、私どもとしましては、フィリピンの上院での批准が済み次第、具体的なところを詰めて速やかな受け入れを進めていきたい、こう考えております。

 インドネシアの関係につきましては、我が国でこれから国会での御承認もいただくという必要がありますので、国会での御審議を経た上で、いずれにしましても、きちんとした形で受け入れができるように準備を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。

福島委員 最後に、副大臣にお尋ねをしたいと思います。

 制度をよいものにしていくためには、現場での経験を制度の見直しにフィードバックをして、そして、その見直しの結果をまた検証しながら不断の点検を行っていくことが大切であります。今回、このような資格制度の見直しを行うことから、今後は、こうした質の高い人材が現場で定着していくため、そのキャリアと能力に見合った処遇の確保や、努力が報われる制度となるように、介護報酬の見直しを含めて、介護現場での取り組み、国民の理解を得るための環境づくりを進めていくことが必要だと思いますけれども、副大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

岸副大臣 朝からの議論の中でも、この介護の問題、非常に幅広く論じられたわけでございます。

 御指摘のように、今回、介護福祉士法については資質の向上を図ることとしておりますが、今後、こうした質の高い人材が、資格の取得後、現場において定着し、専門性を発揮して活躍していただくための環境づくりを推進していかなきゃならないと思っています。

 このため、高度な資格を取得した方々については、その能力に見合った処遇の確保が図られるよう、また労働環境の改善やキャリアアップの仕組みの構築など、魅力ある職場づくりの推進、それから、介護報酬上の評価のあり方も含め、介護福祉士の専門性の評価や介護福祉士の拡充を図るための検討、福祉・介護サービスの意義や重要性に関する国民の理解の推進など、これらすべてに積極的に取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

福島委員 副大臣の決意をお聞きいたしまして、ぜひしっかりと頑張っていただきたい、このように思うわけであります。

 引き続いて、通告はいたしておりませんけれども、若干お聞きをいたしたいというふうに思います。

 一つは、医療と介護の連携ということで、これをどのようにして具体的に進めていくのか。とりわけ在宅医療、後期高齢者医療制度のスタートに当たりまして、在宅医療をさらに進めていく必要がある。

 在宅医療を進めていくときに大事なことは、例えば、私も母をこの三月に見送りましたけれども、末期のがん患者を在宅でみとる場合には、そこで介護、サポートというよりも、同時になければならない。介護保険制度があってよかったなと私はつくづく感じました。介護がなければ家族の負担というものは本当に大きくなって、十分な在宅におけるみとりはできなかっただろう、私はそのように実感をいたしております。

 今後、在宅医療というものが日本の医療の中において非常に重要視される中で、医療と介護の連携をさらにどう進めていくのか。介護を所管する立場から、老健局長の御見解をお聞きしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 確かに、在宅医療の推進というのは大変重要でございまして、最近は特にがんの末期の方でも在宅で処遇されるというケースがございます。そういう場合に、医療のみならず介護のサイドからの、訪問介護、あるいは通所の問題を含めて、あるいはリハビリの問題も含めて、サポートが必要であるということは御指摘のとおりだと思います。

 今、現実には、ケアマネジャーが主治医の方と、あるいは医療機関、あるいはさらにほかの各種の資源との連携をとって、いろいろな形でサポートしておりますけれども、今後とも、これから高齢者医療制度も来年の四月からスタートいたしますので、それに合わせまして、介護のサイドの医療と福祉の連携が十分とれるように、都道府県、市町村を通じて十分に指導していきたいというふうに考えております。

福島委員 ぜひそこはしっかりやっていただきたい、そう思います。

 ただ、問題は、地域によって利用できるサービス水準、体制、これに格差があるということなんですね。ですから、後期高齢者医療制度をスタートしまして、新しい診療報酬体系のもとで在宅医療というものは非常に重要視されてくる。しかしながら、一方で、それを支える十分な受け皿がないと家族の負担になりますね。

 ですから、そういう意味では、こういう新しい医療制度がスタートするに当たって、介護の現場でも、実際として、格差を是正している、そして必要なサービスが提供されるような体制が本当にあるのか、こういう点検をする必要があるんじゃないか、そのように思っておりますけれども、引き続いてこの点についてのお考えをお聞きしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 まさにそのとおりだと思っておりまして、地域でそれぞれ多少は現実の問題として違いがあるのは事実でございます。

 それで、私どもとしては、医療のサイドの計画と介護のサイドの計画とが整合性がとれるようにということで今都道府県にお願いをしておりまして、地域ケア整備構想というものの策定をお願いするということにしております。ことしの年末ぐらいまでには、ケアの整備構想のあらあらがまとまると思います。

 そのケア整備構想におきましては、今御指摘ございました、医療と介護の連携、医療機関と介護施設、あるいはさらに在宅の医療と訪問介護等々のさまざまな資源の連携についてケア整備構想をつくることにいたしておりますので、そういう意味で、特に来年の四月から高齢者医療制度がスタートいたしますので、それを契機として、介護のサイドからも十分に支援、サポートしていきたいというふうに考えております。

福島委員 メディカルショートステイが必要だ、こういう意見があるんですね。医療の必要度の高い要介護の方、これは高齢者だけに限りません、若い方でも、遷延性意識障害のような方の場合には、家族のレスパイトのために、メディカルサービス、医療の提供も可能なショートステイという制度をぜひ進めるべきだ、こういう意見がございます。

 在宅医療を本当に進めようと思えばこうした点についても手当てが必要だろう、そのように思いますけれども、こうした点についてもぜひ御検討いただきたいということで、御意見があればよろしくお願いいたしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 介護のサイドにおきましては、デイサービスであるとかショートステイという形で、介護サービスのいろいろな形での通所あるいはショートステイのサービスがございます。その中で、近年、特に医療、メディカルの部分が入ったショートステイ、今御指摘のございましたようなショートステイを何とか評価してはどうかという御意見があるのは承知をいたしております。

 その場合に、私ども、介護保険のサイドで対応するのか、あるいは医療保険のサイドで対応するのか、そこはさまざまな議論がございますので、いろいろな角度から関係者の御意見も十分聞いて、また専門家の御意見も聞いた上で、多角的に検討していきたいというふうに考えております。

福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。

茂木委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 本日は、主な議題が社会福祉士及び介護福祉士法の改正であるわけでありますが、その前に、どうしても一点大臣にお伺いをしておかなきゃいけないということがありますので、お聞きをしたいと思います。

 それは、十月に、私ども民主党、山田NC大臣とともに大臣室にお邪魔をさせていただいて、「平成二十年度におけるBSE検査に係る国庫補助について」「各地方自治体において、二十ケ月齢以下の牛に対するBSE検査の扱いについて齟齬が生じることは、却って消費者の不安と生産・流通の現場における混乱が生じるおそれがあることから、全地方自治体において二十ケ月齢以下の牛に対するBSE検査が平成二十年七月末をもって一斉に終了することが重要であります。」こういう通知を医薬食品局食品安全部長名で八月三十一日に発出し、同時に、監視安全課長名で、市町村の衛生主管部局長に対しても、二十一カ月齢以上を対象としたBSE検査であってもリスクは変わらないという旨、部分だけをピックアップして、実は食品安全委員会の答申にはこれに前段があるわけですね、リスク管理のあり方について前段があるにもかかわらずここだけを抜き出している、こういう対応はどうなのか、さらに、厚生労働省から農林水産省の生産局畜産部食肉鶏卵課長あてに、厚生労働省から農林水産省に対しても働きかけをするという前代未聞のことまでして、検査は強制的に終われと言わんばかりのこういう対応はおかしいんじゃないかと、民主党から申し入れをしたことがあります。

 今現在、大臣がどのようにこれに対して向かい合っていただいているのか、お答えをいただきたいと思います。

舛添国務大臣 まず、この問題につきましては、若林農林水産大臣とも、今委員が御指摘の点も含めて協議をいたしました。その上で、事務当局の方に、先生方の御要望、それからまた各地域からも同じような御要望が寄せられていますので、そういう御要望が実現できるかどうか、今、検討しろということの指示をいたしておるところでございます。

 その検討結果がまとまり、こういう方向でできる、これは先生がおっしゃったように、本当に各地域から、特に肉の産地の方から切実な声が聞こえておりますので、鋭意今検討しているところでございまして、わかり次第、結論が出次第、また御報告を申し上げたいというふうに思います。

岡本(充)委員 大臣の所信の中でも、今般、厚生労働にかかわる行政では大変大きな課題があって、いろいろな問題に注意を払わなきゃいけないし、確かに重点課題というのは私もこれまでそれなりに理解をしてきていますし、当然そちらに重きが置かれるべきだというのは間違いありませんし、ほかのことにマンパワーがとられてはという大臣の思いがあるのかもしれませんが、あの所信の中でも食品安全にかかわる分野が極めて少なかった、たしか二行ぐらいじゃなかったかと思いますけれども、大変寂しい思いをしたわけです。

 昨今、これだけ食品衛生法違反の事案が出たり新聞紙上を騒がせているという部分も含めて、改めて食品安全にかかわる御決意をいただければと思います。

舛添国務大臣 実はきょう、閣議におきましても、閣議後の閣僚懇談会におきまして、次々とお菓子を含めいろいろな食品安全について困った不祥事が起こっている、内閣としても、食の安全ということをきっちりやって、国民に安心を与える。希望と安心、これが内閣のキャッチフレーズですから、福田総理も内閣一丸となってこの問題に対応しろということですから、このBSEの問題も当然その中に入るわけでありますので、きょう福田総理がかたい御決意をそのように示されましたので、その力も賜りまして、私も内閣の一員として、今委員がおっしゃったこと、特にBSEの問題、前向きに取り組んでいきたいと思います。

岡本(充)委員 ありがとうございます。私の前の方向と大臣の前の方向が一致していることを願ってやみません。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。社会福祉士に関する問題と介護福祉士に関する問題、切り分けて御質問をしていきたいと思います。

 法律がなぜ一本なのかというのは参議院の審議でも出ておったわけでありますが、これに精神保健福祉士という資格もあるわけでありまして、これが切り分けられていて、なぜ残りの二つが一緒になっているのかということについては、ちょっと腑に落ちない部分があるわけであります。

 まず、社会福祉士と介護福祉士、精神保健福祉士、この三つの資格、定義している法律がそれぞれ若干違っている理由、また、それぞれの資格の互換性という意味においてはどういったものがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、三つの資格でございますが、委員から御指摘ございましたとおり、社会福祉士、介護福祉士は一つの法律でございます。精神保健福祉士は別の法律でございますが、精神保健福祉士は社会福祉士、介護福祉士法の後、十年ほど後にできたという経過、それから、精神保健福祉士につきましては、これから御説明いたしますけれども、精神医療の分野で、特に主治医さんがおられるときには主治医さんの指導に従うというような、医療的な色彩が非常に強いということもあって、時間的な問題と性格の差で二本になっているというふうに理解いたしております。

 それから、社会福祉士につきましては、福祉に関する相談援助というのが基本の任務になっております。介護福祉士は介護でございます。今度は定義を変えまして、身体介護中心の介護の定義から、心身の状況に応じた適切な介護をするという形になっております。精神保健福祉士は、精神障害者に対する相談援助を行うということで、三つの資格がございますが、それぞれ専門性が異なっているというところでございます。

 互換性につきましては、それぞれございまして、ちょっと複雑でございますが、社会福祉士の養成施設の卒業者が介護福祉士の資格を取得するためには、介護福祉士の養成施設、通常は二年間でございますが、それが一年間に短縮されるということで、一般の方よりも社会福祉士を取っている方が介護福祉士になりやすい、こういう関係がございます。

 それから、精神保健福祉士の養成施設卒業者の方が社会福祉士の資格を得るためには、社会福祉士養成課程に行かれるわけですが、これは一年間の課程ですが、法学、社会学、心理学については免除されるというような形になっております。逆に、社会福祉士養成施設の卒業者が精神保健福祉士の受験資格を得るためには、社会福祉士養成施設において履修した科目については免除される、こういうことになっております。

 ただいまのが養成施設での免除関係でございますが、社会福祉士と精神保健福祉士については、どちらか一方の資格を有している方がもう一つの資格の国家試験を受けようとする場合は、共通している科目につきましては免除される、そういう相互互換関係にございます。

岡本(充)委員 ちょっと疑問に思っておりますのは、精神保健福祉士の養成施設卒業者が社会福祉士の受験資格を得るためには、指定された三科目のみが免除されている一方で、逆に、社会福祉士の養成施設卒業者が精神保健福祉士の受験資格を得るためには、重複しているものについてすべて免除される。

 こういう双方向とは思えない互いの免除規定があるというのは、それぞれの資格に何らかの差があるという認識のもとに立っているのではないかという、私はこれは間違った考えだと思いますけれども、それを生みかねないのではないか。相互に、相互の履修したものを免除するという規定があってもよかりしにと思うわけでありますが、それがない理由をお聞かせください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、私どもの基本的な考え方として、冒頭に申し上げましたとおり、三つの資格はそれぞれ専門性が異なるということで整理をいたしておりますので、委員から御指摘がございました、優劣があるというふうには考えておりません。また、そういうような御懸念を生むような相互補完関係であるということでございますれば、それをできるだけ直していくということでやってまいりたいと思います。

 今回の社会福祉士、介護福祉士の制度の見直しに当たりましては、それぞれの資格について相互互換性、他の資格を持っている方との互換性ももう一回見直していこうという考えでございますので、今委員から御指摘いただいたことも含め考えてまいりたいと思います。

岡本(充)委員 続いて、社会福祉士の任用です。

 社会福祉士法における任用分野での任用状況として、具体的には社会福祉主事とのすみ分けということになるんですが、例えば、社会福祉士の資格を持てば社会福祉主事になれるというふうな規定もありますが、社会福祉主事というのは、ほとんどどういった大学であっても一般教養で学ぶであろう科目、課程を履修さえしていれば社会福祉主事になれる。片や国家試験まで受けて、これは合格率が三割を切るというのは極めて難しいと思いますけれども、この試験に合格しても同じことにしかならない。

 これではやはり試験に対するインセンティブが低いのではないかと考えまして、例えば、その中でも社会福祉士に限る業務独占というものを今後つくっていく必要があるのではないか、専門性をさらに高めるためには必要性があるのではないか。これは介護福祉士にも同じように言えるわけでありますけれども、今後、業務独占を検討していくお考えがあるかどうかについてお聞かせをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 社会福祉士について検討いたしました際、審議会や検討会でも、社会福祉士の仕事について一般の方々の認知度が低いというお話、それから、なかなか社会福祉士が任用、活用されていないのではないかというのが、介護福祉士とは違った問題として指摘されております。

 社会福祉士の方々の働いている多くの分野を見ますと、まず施設の相談員という方が多く、それから病院のいわゆるメディカルソーシャルワーカーというのが多く、今、委員から御指摘がありました社会福祉主事については、社会福祉主事というのは行政の生活保護などの現業員の資格というふうにされておりますが、そこに占める社会福祉士の割合というのは三%ということで、大変低くなっております。

 この点については、社会福祉主事というのはいわば行政の任用資格でございますが、こちらの方はそもそも行政の方の問題、具体的には生活保護などを担当しております福祉事務所の問題とあわせて検討すべきだということで、この社会福祉主事のあり方については今回解決できずに次の検討課題になっておりますので、委員の御指摘の一点であります社会福祉主事と社会福祉士との関係は、引き続き検討させていただきたいと思います。

 ただ、専門性からいいますと、相談業務のスペシャリストとして、国家資格として社会福祉士がつくられておりますので、私どもは、行政の分野においても、理解を得て、社会福祉士が活用されることが望ましいと考えております。

 業務独占の問題につきましては、現状といたしまして、例えば生活保護行政などに占める社会福祉士の割合が三%であるというような点から見ますと、まだまだ、法律で業務独占とするよりは、一般の方々の理解を得、社会的認知度を高め、実力がともに認められ、その先の議論ではないか、こういうふうに考えているところでございます。

 介護福祉士の業務独占の議論もあるわけでございますが、介護の本質からいたしますと、いろいろな方が参画できるというのが一方で介護の分野のメリットとなっており、また、介護の分野のある意味ではあるべき姿となっているということから考えますと、業務独占は、だれでも参加できる、だれでも手を差し伸べられるという介護・福祉分野の性格との両立性をよく考えていかなければならないというふうに思っております。

岡本(充)委員 業務独占だけが資格の輝きを増させるわけではありません。例えば、社会福祉士がケースワーカーとなり採用されている病院において、例えば紹介状を、社会福祉士を通じて次の転院先を見つけた場合の診療報酬の加算を認めるだとか、それから、介護福祉士においては、専門介護福祉士となる、それぞれ独自団体の中でのさらなるキャリアアップを目指そうという声もあるわけです。

 例えば、専門介護福祉士を取れば、医行為との整合性は必要になりますけれども、今、医療行為とされている薬を塗るだとかつめを切るだとか、こういったことを、現実には介護の分野で無資格で行っているケースもあると私は聞いています。こういうところで、キャリアアップをする者に対しては、そういうさらなる、自分ができる職域、職能をふやしていける、こういったことも一つのやりがいにつながる。

 議論が介護福祉士の方にも行ってちょっと恐縮ですが、介護福祉士の場合は特に、資格を取る最大の理由が、働きがいがありそうだ、こうやって資格を取っておいて、やめる最大の理由が、仕事に働きがいがなかったからといって、それが最大の理由でやめていくわけですね。まさに、働きがいを求める皆さんがついているということを考えると、これは、この思いに見合う状況をつくっていかなきゃいけないというのが私は政策だと思います。

 そういう意味で、大臣、今私が指摘をさせていただきました、社会福祉士における、例えばケースワーカーの診療報酬のアップができないかとか、専門介護福祉士になる、もしさらにキャリアアップするものができるのであれば、こういう人たちの医療行為のあり方を含めて検討するとか、こういう新たなトライアル、ぜひお考えいただけませんでしょうか。

舛添国務大臣 今委員おっしゃった問題提起というのは私も実は思っていまして、例えば社会福祉士。

 今、介護保険と車の両輪だということで入れた成年後見制度、これが余り活用されていません。そして、悪用されて土地をとられたりする。しかし、やはり、例えば認知症の方々にしても、きちんとした成年後見制度、これが動くことが前提で、非常に役立つわけですけれども、ただ、私もそのときに、例えば私が民生委員だったら、人様のお金のことをちょっとちゅうちょするかなと。では、今度は家族に成年後見をやらせるか。これは家族の間のどろどろとした遺産相続もある。そうすると、まさに社会福祉士がこういうことをきちんとやりますよということで、例えば、これは独占業務にするかどうかですけれども、この方々に頼めばこれができるという実績を重ね、やっていけば、業務をそこに集中的に行わせる、そしてそれに伴う報酬を上げる、こういうことも考えたいと思います。

 今、私が思っている一例を申し上げましたけれども、介護福祉士にしても同じようなことができると思いますので、ぜひこれは前向きに検討して、今委員おっしゃったように、みんな働きがい、生きがいで来ている人たちですから、ぜひこの思いを実現させるように行政の方でも努力したいと思います。

岡本(充)委員 本当に前向きに検討していただけるという印象を持ちましたので、大いに御期待をしたいと思います。

 さて、介護福祉士の話になりますけれども、介護福祉士は、これまで国家試験なく国家資格を取得ができるという、私が調べた範囲では、ある意味で非常にまれではないかと思う資格なわけでありますが、これまで国家試験がなく国家資格を取得できた理由、そして、今回その理由がなぜなくなったのかということをお聞かせいただきたいのと、ほかに国家資格を国家試験なく取得できる資格があるのかどうかもお答えをいただきたいと思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 介護福祉士の資格は、昭和六十二年に社会福祉士及び介護福祉士法によって制定された国家資格でございます。医療の分野では、まさに資格がないと仕事ができない、こういう法制で医療は組み立てておるわけでございますが、福祉はそういった意味で従事者の資格は非常に乏しかったわけでございますが、質の向上を図るため、初めて名称独占の資格として介護福祉士、社会福祉士の資格を導入したという経過があります。

 その際、これは国家資格ではありませんけれども、都道府県知事が付与する資格でございますが、保育士さんが福祉の分野として資格がありまして、保育士さんの場合、高校を出て二年間の養成校を出ると保育士の資格が得られるということで、いわば先行する分野として保育士さんの資格があったということが一つ、介護福祉士の養成施設、課程で二年間勉強した場合に資格を付与するという議論の有力な根拠になった、こういうふうに承知をいたしております。

 介護福祉士の国家資格と同様、受験せずにできる資格があるかということのお尋ねでございますが、調べてみましたところ、食品衛生管理者とか食鳥処理衛生管理者などにはこういうものがございますが、狭い意味での医療並びに福祉関係では、国家試験なくして資格を付与しているというのはほかにないというふうに承知いたしております。

 今回、介護福祉士になる養成のプロセスを一元化し、すべての方に国家試験を受けていただくという仕組みにいたしましたのは、制度ができて二十年たちましたけれども、この間、介護の分野も、先ほど来議論に出ております、認知症の問題でございますとか、医療との接点の問題でございますとか、高齢化に伴う重度者の増加とか、それから発達障害あるいはさまざまな障害者の方々に対する自立支援の介護が必要であるということで、非常に介護の内容も高度化し専門化しているということで、質の向上を図る必要があることから、国家試験をすべての方に受けていただくことで統一するといたしたところでございます。

岡本(充)委員 だとすれば、今、訪問介護員は、養成講座で訪問介護をしていただいておりますが、こういう訪問介護員についても、一定のカリキュラムに基づいて研修課程を修了した者ではあっても、質を高めるために試験を導入するという方向になっていくのかどうか、そこについてお答えをいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 介護の人材の確保の問題でございますけれども、非常に在宅介護のニーズも増加しておりまして、そういう中で、質の高い人材を幅広い年齢層から確保していくということが重要だと思っております。

 したがいまして、これまでも、訪問介護の養成研修を実施して研修課程を修了した方につきましては、訪問介護員として訪問介護サービスに従事できるというふうな仕組みをつくってきたところでございます。

 それで、訪問介護員としての技能の修得でございますけれども、一定のカリキュラムに基づきます講義科目あるいは演習などを修了したことによりまして、各指定の研修事業者が適切な方法により評価をするということにしております。したがいまして、私どもとしては、改めて共通の試験を導入する必要性は乏しいのではないかというふうに考えております。

岡本(充)委員 さて、その介護福祉士の国家試験でありますけれども、現在、およそ五割の合格率。社会福祉士は三割の合格率。参議院でも議論になっておりましたけれども、他の試験に比べてかなり合格率が低い。政府側の答弁では、社会福祉士は、必ずしも社会福祉士だけを専門に勉強している生徒だけが受けているわけではないというような答弁もされていますが、でもしかでは困るわけでありまして、やはり質の高いという方に来ていただかなきゃいけないというのもわかります。

 ただ、養成施設の養成のあり方にも問題があるんじゃないかという指摘も私は一理あるというふうに思っておりまして、今後、この試験の難易度をどのように考えていくかというのは、これはどうしても避けられない議論なんだろうと思いますし、トータルとしての介護福祉士の数をどのように考えていくのか。離職率も高いし、潜在率も四割とあるし、どんどん合格者をふやして、今、介護職員は年間十万人ずつ増加している、これをどんどん増加していくのか。

 トータルの意味での、介護職員の数としてあるべき姿、こういうところともかかわってくると思いますが、試験の難易度の話、例えば実技試験の導入も、物理的な限界があってすべてに導入するのは無理だというのはわかっておりますが、こういった実技試験、また筆記試験も含めた試験の難易度をどのように今後変えるのか、変えないのか。また、今後あるべき介護福祉士の数というのはどのように政府としてお考えなのか。その辺について御答弁をいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、国家試験の合格率の問題でございますが、直近の平成十九年の国家試験では、介護福祉士、十四万六千人の方が受験されて七万四千人が合格で、合格率が五〇・四%、社会福祉士は、四・五万人のうち一・二万人が合格で、二七・四%、こういうふうになっております。

 合格基準につきましては、介護福祉士、社会福祉士ともに、問題の総得点の六〇%を基準として、難易度で補整することといたしておりまして、何人が必要だから合格基準を上下するというやり方を今とっているわけではございません。出題者の方で、出題の六割を満たしていただくのが介護福祉士や社会福祉士として必要だろう、こういう基準で問題を作成しているといういわば考え方になっております。

 それにしても、例えば、社会福祉士の方の合格率が低いのではないかという点は常に問題になっているところでございまして、福祉系大学の中でも合格率はゼロから八〇%まで分布しているというような状況で、大変格差がある。それは、例えば医学部や歯学部などと違って、専ら社会福祉士を目指すために勉強しているわけではないというのがそれぞれ大学側の御説明ではありますけれども、やはり合格率が低いというのは、私ども、いろいろな面で問題であると考えております。

 いろいろな面でというのは、例えば、受験するためには実習を受けなければなりません。その実習についてはさまざまな人々の協力によって実習していただいているわけで、社会的コストも大変かかっているわけでございますので、そうやって実習された方のうち三割程度しか合格しないというのも問題であるというふうに考えております。

 委員最後の方の御質問で、介護福祉士、社会福祉士の必要数というお話がございました。

 この二十年間で、介護福祉士については、施設で介護している方の四割、在宅で介護している方の二割が介護福祉士になっております。質を高めるという意味では介護福祉士の資格を保有している人の割合が高くなるのが望ましいというふうには考えておりますが、すべての人が介護福祉士を持っていなければならないというのも硬直的に過ぎるというふうに思いますので、そのところは、介護に従事する方々の、いわば自分の質を高めたいというモチベーションを高めていただくということにかかっているのではないかと考えております。

岡本(充)委員 最後に一問だけ、これはフィリピンとの関係もあるということでありますが、准介護福祉士という制度を新たにつくる。私はこれについては大変危惧を覚えていますし、大いに不安も覚える。どちらかというと、ここの部分だけでも反対したいわけでありますけれども、もう問題点は参議院の審議でも出ておりますから申しませんが、参議院の方で修正されまして、「政府は、経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定に関する日本国政府とフィリピン共和国政府の間の協議の状況を勘案し、この法律の公布後五年を目途として、准介護福祉士の制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされています。

 これは、もう五年後には見直すということでいいのかどうかと、もう一つ、経過措置が終了した後も、結果的に、国家試験に合格できなかったあるいは受験しなかった准介護福祉士の資格者が残ってしまうようなことが考えられるんですが、そういった場合にはどう対処するつもりか、最後にお聞かせをいただいて、質問を終わりたいと思います。

茂木委員長 中村局長、持ち時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

中村政府参考人 参議院でも修正いただきましたし、附帯決議もつけられております。私どもとしては、五年を目途にこの制度を見直すことができるよう、外交当局とも一緒になって、フィリピン政府に働きかけてまいりたいと思います。

 この法律の施行が、二十四年四月に施行でございますので、そういった意味では、五年を目途に努力することによって、准介護福祉士の問題は、御指摘になっているような問題が生じないで解決されることもあるというふうに理解しております。これは、こういう言い方をしますのは、交渉でございますので、先方、相手があることでございますので確定的なことが申し上げられませんために、当分の間となっている次第でございます。

茂木委員長 次に、山井和則君。

山井委員 本日は限られた三十分の時間ですので、半分以上を介護問題、そして緊急を要する肝炎の問題についても質問したいと思います。

 まず最初に、舛添大臣、お配りしたこの介護の資料を見ていただきたいと思っております。ここにありますように、今も岡本議員から話がありましたが、「養成施設教員ら七割反対 准介護福祉士 「質の低下を危ぐ」」ということであります。

 舛添大臣も、准看護師問題、あれは当初、当面という形で導入したばかりに、やはり一度導入するとずるずるずるずる、現場のニーズがあるからとかということで、なかなかもうやめられなくなる。そういうことで、本当に医療現場でも最も深刻な問題の一つとして、またこれは、その当時そういう中途半端な資格を安易に導入した国会議員の責任というものもある意味で問われてくると私は思います。

 そういう意味では、私の質問の趣旨は岡本議員、柚木議員とも一緒で、これはやはりちゃんと、修正を加えたように、早急に介護福祉士に一本化していくということが必要だと思っております。

 先日、舛添大臣のところにもお見えになったかと思いますが、先月、高齢社会をよくする女性の会の樋口恵子代表を先頭に要望に来られました。舛添大臣そして公明党にも要望されて、我が党にも、小沢代表、菅直人代表代行に要望があり、私も同席をさせていただきました。

 舛添大臣もお聞き及びかと思いますが、もう改めて申し上げませんが、きょうお配りした新聞記事にもありますように、介護現場は非常に深刻な状況に陥っております。一般の仕事の賃金よりも約三割安い、低過ぎる、そしてまた三十代、四十代になっても上がっていかないということなんですね。

 そこで、樋口恵子代表を初め、高齢社会をよくする女性の会の方々からは、介護職員の月給を三万円引き上げる、こういう介護職員人材確保の法律なり政策を党派を超えてぜひ実現してほしいという要望がございました。それを受けて、我が党でも今そのことを検討しております。やはりそういうことをしないと本当に介護の人材が集まらない、優秀な人材がどんどん離れていってしまうということであります。

 そのような、待遇を改善すべきという話と、准介護福祉士という非常に評判の悪い、現場からも批判が強いものを導入する、あるいはその延長線上にフィリピンから介護職員を導入するということは、ベクトルが正反対だと思うんですね。

 普通に考えれば、そういう外国の方々、これはフィリピンだけじゃありません、引き続いてインドネシア、中国、韓国、どんどんどんどん、これは門戸をあけ出せば、入ってくると思います。私は、何も外国人がだめだと言っているんじゃないんですね。やはり外国の方も心優しい方が多い。私もシンガポールの老人ホームで一カ月ボランティアで働いたことがあります。しかし、やはり日本の労働条件が悪化することになっては絶対ならないということです。

 そこで、参議院の附帯決議の中では、次のように書かれております。准介護福祉士の資格については、フィリピンとの間の経済連携協定との整合性に配慮して暫定的に導入されたものであることから、今般の介護福祉士制度の見直しの趣旨について早急にフィリピン側の理解を求める努力を行い、この結果を踏まえ、速やかに介護福祉士への統一化を図ること。

 このような趣旨で厚生労働省としても今後検討されるということでよろしいですね。

舛添国務大臣 人、物、金、そういうもののグローバリゼーションの中で、これはもう委員御承知のように、今の問題は人のグローバリゼーション。私も参議院で外交防衛委員会委員長もやっておりましたし、片一方で今のような問題がある。これはもう非常に、何とかできないか。

 それで、まず一つは、フィリピンの方にしろ、これから、先ほどおっしゃらなかったベトナムの方についても同じことが言えると思いますけれども、日本語ができるというような厳しい条件を課した。そして、その過程で、今、准介護福祉士の問題が出てきたわけで、しかし、これはあくまでEPAを締結するための暫定的な措置であるということで入れたわけですから、五年が経過したときには、これはやはりきちんと見直さないといけない。

 そして、今、最悪の組み合わせ。つまり、片一方で待遇改善の足を引っ張る道具にこれが使われる。これはやはり労働市場、私は厚生労働大臣としてもそこはきちんとやっていかないといけない。

 何もかも市場経済原則で、安い方にどんどん引っ張られていく、そして全体の水準が下がるというようなことはあってはいけませんので、この二つの問題を、そういう悪い組み合わせとなるのではなくて、先ほど来、どうすれば待遇改善になるか、柚木委員おっしゃったように、いろいろな要因も皆さん指摘している、離職率の高さなどがあるものですから。今、山井委員がおっしゃった一番悪い組み合わせ、これだけは避けたい、そういう思いでしっかりとこの問題に取り組んでまいります。

山井委員 舛添大臣はまさに介護問題の、ある意味で一番大変さ、御苦労をされているわけですから、まさにその思いは私たちと一緒だというふうに信じております。

 そして、次にお伺いしたいんですが、きょうお配りした資料の中で、非常にこの法案、いい面と悪い面とがまざっている法案でありまして、その悪い問題点が、四ページ目に配っております、「資格取得方法の見直し」ということで、今までは実務経験三年以上の方は介護福祉士の国家試験を受けることができたわけです。ところが、今回の法改正になりますと、養成施設で六カ月、半年以上、六百時間程度の講座を受けねばならないということになります。

 問題は、これは実は、今座っておられます杉村太蔵議員も今までからこの問題点を指摘されているんですが、やはり介護福祉士になりたいという思いは、若い人あるいは今までからヘルパーや無資格の介護職員として働いてきた方で多いんですが、これが六カ月以上、六百時間程度の研修がないと試験が受けられないということになれば、では、そのために幾らお金がかかるのか、その六カ月間仕事ができなかったら収入が入らないじゃないか。

 悪い言い方をすれば、本当に時間的に余裕があって、経済的に余裕のある人は介護福祉士にはなりやすい、でも、今までからこつこつこつこつ現場で働きながら、そしてキャリアアップをしたいという、二十代のそういう若者も含めて、そういう方が介護福祉士になって、一生の仕事として介護福祉士になるという道を遠ざけるのではないか。これはもう非常に深刻な問題だと思います。

 このことに関して、幾らぐらい費用がかかるのか、そのお金はだれが負担するのかということについて、お伺いしたいと思います。

岸副大臣 この前もお話も議論もございましたが、今後、平成三十七年になると後期高齢者が二千万人にもなる。ですから、介護福祉に従事する方々は非常に重要な役割をなお一層担うことになる。そんな意味で、しっかりとした理論体系、それからお世話の仕方、こういったものをそれぞれの立場でより一層強く学ばれることが、介護に従事する方々のキャリアアップにもつながりますし、同時にまた安い給与といった話がございましたが、そういうことの向上にもつながるというふうに確信をしております。

 そこで、六百時間の研修をする場合、一概には申せませんけれども、例えば通信教育を受けるとした場合、これは放送大学の例をとってみますというと、大体二十万円から三十万円程度ではないかと見込まれます。

 なお、負担するのは受講する本人でありますが、新たな教育課程の基準を設定する際には、働きながら学ぶ方が勉強のしやすいように通信制の幅広い選択肢を用意する。さらに、働く方の主体的な能力開発の取り組みを支援する教育訓練給付制度の対象となるように適切に対応し、負担の軽減に配慮する。それから、事業者に対しては、従業者の研修の受講機会を完全に確保してサービスの質の向上を図る、こういう重要性について周知徹底をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

山井委員 二、三十万かかる。半年仕事ができなくなるかもしれない。そういう意味では、繰り返しになりますが、ただでさえ介護職員は給料が低いというのが問題なわけですから、その方々に、こういう多額の負担を新たに払わないと介護福祉士になれない、試験も受けられないというのは、私は非常に問題だと思っております。

 このことについては、また後ほどこの議論をさせていただきたいと思いますが、一たんここで肝炎の問題を質問させてもらいたいと思います。

 一日に百二十人がB型肝炎、C型肝炎で亡くなっておられる非常に深刻な問題で、御存じのように、舛添大臣、昨日と本日で十一人の回答がございました。

 そして、きょうも傍聴にもお見えになっていますが、原告代表の山口さん、二週間前に個人情報開示請求、四百十八人のリストに入っていませんかということで開示請求をしたにもかかわらず、昨日わかったのは、ベネシスが調査を始めたのは今週に入ってから、一週間以上放置をされていた。自分が入っているかどうか、要は、山口さんは、あなたはフィブリノゲンを投与されていないといって、否定されて裁判を争っていられるんですよ。夜も眠れないということで、一日千秋の思いで待っていられたけれども、結果的には二週間かかったけれども、それは、最初一週間は作業をしていませんでしたと。そして、おとつい、枝野議員が舛添大臣に質問をして、舛添大臣が急げとおっしゃったからきのう回答が来たということで、余りにも不誠実。

 また、私が質問をさせていただいた御遺族の、亡くなられた肝炎患者の方の妹さんが、御遺族でも開示請求ができるようにということで、これも舛添大臣がきちんと指示を出すとおっしゃったにもかかわらず、昨日お願いに行っても、確かに受け取ってはもらったわけですが、いつ返事が出るかはめども立たないということなんです。

 そして、もう一つ私が問題にしたいのは、出田さんという実名原告の方です。昨日、厚生労働省は、マスコミに対して、この一枚のを発表しました。大臣も当然お読みになられたと思います。どう書いてありますか。十一件について、ベネシスは請求者のものと確定できる個人情報を保有していなかった、これをプレスに発表しているんですよ。

 しかし、大臣、御存じでしょうか。出田さんのところに来ているのは、確定はできなかったけれども、類似した情報はあったということは言っているんです。この時点で、ベネシスが回答したことと厚生労働省のプレス発表は違うじゃないですか。

 おまけに、その後、出田さんが出産をした病院の医師から電話があって、十月三十日にベネシスから三人社員が来た、そしてリストを、副作用報告を見せられたと。そこには、患者の略名TI、性別女性、生年月日、カルテ番号、投与した期間、いつ投与したか、症状、おまけに、双子が生まれた、そして住所まで書いてあった。それを見た医師は即座に、出田さんに間違いありませんと断定しているんですよ、十月三十日に。断定しているんですよ、福岡の原告の方ですと。

 十月三十日に断定したにもかかわらず、なぜベネシスは、確定できる個人情報はないとまだ言い張っているのか。

 大臣、繰り返しますよ。投与した日が一緒、イニシャルが一緒、住所が一緒、双子が生まれたのも一緒、症状も一緒、これ以上何を調査するんですか。さらに調査をしないとだめだから確定できないと言っているんですよ。大臣、これは、十一月七日に所見が出るかもしれない、そういう前には不利な確定情報を出したくないというふうにとられても仕方がないんじゃないですか。

 それに、あれだけ大臣が社長を呼んで指示したにもかかわらず、三十日の日に社員が三人も行って、医師から即座に間違いありませんという答えまでもらいながらも、まだ確定できる情報はないとベネシスは言い、おまけに、その情報をプレスに紙切れ一枚で流している。ベネシスと製薬会社もうそをついている。そして、厚生労働省もうそをついている。

 そして、私は昨日、一体会社からどういう資料が来たのかということで、厚生労働省の担当者を呼んで一時間聞きました。これ一枚が来ましたと言って渡されました。本当ですかと言ったら、一時間、本当ですと言いました。朝になって、違いました。これは、ベネシスからの話を聞いて厚労省がつくった厚労省の資料です。では、原本を質問の十一時までに下さいよ、どんな報告があったんですか、携帯電話に電話下さいと一時間半前に言いましたが、電話の一本もかかってきていませんよ。一体これはどういうことですか。

 マスコミにうその情報を流し、患者さん、一日千秋の思いで決定を待っている人にうその情報を流し、議員が聞いても、うそのペーパーを渡す。

 舛添さんにお伺いします。出田さんのことに絞ってお伺いしますが、今言ったように、生年月日、イニシャル、投与日、双子、そして十月三十日に社員が行って、主治医から、その主治医が二十年前に出産をされたときのお医者さんですよ、間違いありませんと言って、それでも特定できないとしか言わない。これは誠実な態度と言えますか。特定できていると思われませんか。舛添大臣。

茂木委員長 舛添大臣、先ほどの質問に対する追加も含めて答弁してください。

舛添国務大臣 お答えをする前に、先ほどの准介護福祉士の件で、フィリピンとともにインドネシアと言ったつもりが、何かベトナムと言ったそうですので、済みません、それはちょっと、まず訂正させていただきます。

 私は、とにかく一昨日、すぐに調査をさせる、これは製薬メーカーに対して。私は、少なくとも、厚生労働大臣が製薬メーカーのトップを呼んできちんとお願いし、直ちにこのお知らせする作業を開始してくださいよ、そういうことを申し上げた。しかし、私も待っていた、一週間たっても何の報告も上がらない。こういう不誠実な態度であってはだめですということをさらに申し上げまして、とにかく最低一週間に一遍は報告を上げてください、そして、そういう報告がきちんとできないようであれば、しかるべきもっと厳しい態度をとりますということで対応いたしました。

 そして、今委員がお示しになったこの紙、それから、例えば個人情報保護法によって開示を請求する、それから、この四百十八例に対する情報照会例はどうする、そこのところはちょっと、厚生労働省の担当の方が現実にやりとりを知っておりますので、委員長、お許しいただければ……(山井委員「いえいえ、登録していませんから、この際結構です」と呼ぶ)いいですか。きのう一日、私は委員会におりましたので、その細かいやりとりについては、今申し上げたとおり、私自身がやったわけじゃないので、必要ならば答えさせますということです。

茂木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

茂木委員長 速記を起こしてください。

 山井君。

山井委員 本当に、今のやりとりを聞いていて、舛添大臣、申しわけないけれども、ちょっと甘過ぎるんじゃないですか。もう、その厳しい命令というのを当然出すべきときだと思います。言葉は悪いですが、厚生労働省の官僚からも企業からも、やはり甘く見られているんではないか。

 それで、もう一問だけこのことをして介護福祉士に戻りたいと思いますが、きょうの毎日新聞を見て、私、びっくり仰天いたしました。

 二日前の質疑の中で、山田議員の質問に対して、七千の医療機関の新聞公表をやりますと明確に答弁をされました。にもかかわらず、昨日、江利川事務次官は定例の記者会見で、病院の数を並べるだけで八ページになる、四億円程度かかり、競争入札になってしまい、手続に二カ月ぐらいかかり遅くなるから、ホームページでの公開と自治体にリストを配るという方法を考えていると。そして、肝心のカルテが残っているかどうかということをもう一回調べるべきだという山田議員の指摘があったにもかかわらず、それをすると大変な手間がかかるということを言っているんですね。

 舛添大臣が明確にやると委員会の場で答弁をされた。その意味では、舛添大臣、改めて確認をします。答弁されたんですから、新聞に七千の医療機関をもう一回公表するということでよろしいですね。

舛添国務大臣 まず、具体的なやり方をすぐ指示いたしました。そして、この金額四億円、これは私は、私がやると言ったんですから、それはもう財務省にかけ合ってでも。その金額の問題ではなくて、返ってきたのが、総理の指示で、つい二、三日前も、一般競争入札、随意契約はだめだと、それで、随意契約をやらないで一般競争入札にするとどうしても二カ月が必要だということなんです。

 これが答えですから、今とりあえず、そういうことですから、まず、とにかく、突き出し広告のような形でも新聞に出して、今トップページに、ホームページに載せました。そして、いろいろな自治体にもやります。この二カ月の一般競争入札、そうすると、二カ月だと時間がかかりますから、今すぐやれることからやっていく、そして、二カ月を少しでも前倒しできるか、財源の問題も含めて、これはきちんと対応する。ただ、今の段階でとにかくやれること、ですから、まず国民の皆さん方にお訴え申し上げたいことは、ホームページの最初にばんと載せましたので、一番早いアクセスがそれですぐできます。

 それで、今の随意契約云々ということをどうクリアできるか、それを考えておりますので、私が全くやる意思がないとかいうことではなくて、お金は四億円ということでした。随意契約か一般競争入札かということで二カ月という答えでありますので、それが例えば山井委員の御承知のルールはそうじゃないとか、こういうクリアする方法があれば、またお知恵も拝借できればと思いますけれども、今とにかくインターネットで全部すぐ見られるようにはしましたから、そしてちょこっとこういう広告でも出せないかということを今検討して、やりたくないということではありません。それはぜひ御理解いただいて、何とかその手段を見つけてやる。

 一般競争入札ということで二カ月という、これが最大のガンだということで、ネックだということで私のところに回答が参ったところです。

山井委員 これは私は持っていますよ。四年前の七千の病院のリスト、確かに八ページですよ。これで見て調べて肝炎だとわかって、治療して治った方もいるんですよ。命の病院リストじゃないですか。舛添大臣は、どんな困難があっても被害者を捜し出すと約束したじゃないですか。命がかかっているから私も必死で言っているんですよ。ここで官僚の方の抵抗に遭って、撤回しないでほしいんですよ。これによって救える命があるんですよ。

 改めて質問します。新聞での七千の病院名の公表はやるんですね。

茂木委員長 質問ですか。(山井委員「はい、質問です」と呼ぶ)

 舛添大臣、簡潔にお願いします。

舛添国務大臣 あらゆる困難を乗り越えてやる努力をいたしますが、どうか国民の皆さん、例えば、このおじいちゃん、おばあちゃんはインターネットを使えないよ、私はパソコンがないよという方がおられたら、みんなで協力して、来てください、ここにパソコンがあると。プリントアウトしてくれれば見られるんです。

 だから、今は、随意契約のそれがあるから、そういうのをクリアしようということを言っているわけでありまして、そういうことを……(発言する者あり)四億円のお金の問題ではないということを何度も申し上げているわけですから、私の今の決意を、そういうことを申し上げて、あらゆるいろいろなルールがあり、全部一般競争入札にしなさい、随意契約をやめなさいということであるから、それはそのルールを、そのルールはルールであるんですよ、それを守りながらどうしてやるか。

 やらないと言っているわけでありませんですから、今の私の、全部のルール、いろいろな条件を何とかしながら、しかし、今みんなが協力してくだされば、インターネットに出ているんです、すぐボタン一つで出るんです。プリントアウトしてくれたら、紙一枚に何円かかりますか。

 ぜひ皆さんで協力して、私だけが頑張ったって、それは頑張りますよ、頑張っていますよ。だけれども、全国民の皆さん、どうか、インターネットのホームページをみんなに知らせていただく、それに御協力をまずはいただきたい。できるところからやっています。

山井委員 これは後できっちり議論させていただきますが、介護の話に戻らせていただきます。

 岸副大臣にお伺いしますが、二、三十万円で、いろいろ訓練給付とかの補助金も出すということですが、それで二、三十万が幾らぐらいに安くなるんですか、その研修。

岸副大臣 二割安くなるそうです。

山井委員 二割安くなっても、それでは受けられない人は多いじゃないですか。私が話を聞いたのでは、二、三十万じゃなくて、四十万円、五十万円のコースもあると聞いていますよ。

 そして、半年間収入が途絶えるわけですけれども、介護福祉士になりたいという実務経験の方は、ただでさえ給料が低いのに、ではどうやって半年間生活していくんですか。

岸副大臣 いろいろありましょうけれども、介護福祉士の仕事というのは、これから本当に日本の国で重要な仕事になりますから、やはり基礎的な訓練、しっかりした見識を持った介護福祉士を育てなきゃならないということは、我々国民として非常に重要なことでございます。

 なお、しかしながら、通信制というものも高校でもありますから、こういうものを認めていって、いわば経過措置を平成二十五年までにとっておるということもございますので、いろいろ先生には御心配の向きもございましょうけれども、きっと国民の皆さんはこれを受け入れていただくものと確信しております。

山井委員 質問通告もしておりますので、ちょっと具体的なことでお伺いしますが、例えばNHK学園などが、今までから通信で介護福祉士になれるコースを持っていた。やはりこれは、働きながらも福祉の世界に入りたいということで非常に人気が高かったわけでありますが、今回の法改正によって、このようなNHK学園などの通信での介護福祉士の資格取得が難しくなるのではないかという懸念がありますけれども、これは今までどおりできるということでよろしいでしょうか。

岸副大臣 高校については経過措置はございます。また、おっしゃられるように、NHK学園などで介護福祉士の資格を通信講座では認めていない、こういうことになるわけでございます。

山井委員 そのことに関してはぜひ善処してほしいと思います。

 もう時間が来ましたので終わりますが、最後に言いますが、大臣が明確に公表すると答弁したことを、翌日事務次官がそれを否定するような発言をする、そして、この命の病院リストを新聞で公表しないなんて、そんな命を粗末にするようなことは絶対にやってほしくない、そのことを要望して、質問を終わります。

茂木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 介護や福祉の現場で深刻な人手不足が問題になる中、注目の福祉人材確保指針が十四年ぶりに改定されました。まず、その理由を簡潔にお答えください。

中村政府参考人 介護・福祉分野における人材確保指針につきましては、十四年前に一度作成されたことがございます。これは、いわゆるバブル期において、福祉人材、介護人材が非常に不足いたしまして、人材確保が困難になりました。その際、社会福祉事業法の改正を行いまして、国が社会福祉事業に従事する者の人材確保指針をつくる、こういう措置がとられまして、人材確保指針が策定されたところでございます。

 その後、経過といたしましては、景気の低迷もありまして、この間、介護保険制度が施行され、多くの介護人材が必要になりましたけれども、人材の需給は、いわば採用する側に割合有利に展開してきたということがございます。しかしながら、近年、景気の回復もございまして、介護・福祉分野における人材確保が相当困難になってきているということが第一点。

 第二点には、この十四年間におきまして、介護保険制度ができたり、障害者の制度が変わったり、制度見直しもあり、人材確保のあり方についても相当変わってきているのではないか、そういったことを踏まえまして、今回、資格制度の見直し法案も提出させていただいておりますが、それとあわせまして、車の両輪として、介護・福祉分野における人材確保をさらに強力に進めるため、人材確保指針の見直しを行ったところでございます。

高橋委員 本当はこれは通告は大臣にしておりました。

 量的な話しか一切されなかったんですね。指針における、人の中身の問題、介護や福祉の現場で働く人たちのあり方の問題、どういう役割が本当に求められるのかというところに踏み込んだお答えがいただきたかった。非常に残念であります。

 そのことを踏まえて、今後の答えの中で大臣に考えをお聞きしたいと思います。

 九三年の基本指針では、公務員あるいは地域の労働者の平均的な賃金の保障、週四十時間労働の遵守と完全週休二日制を目指すなどの目標を定めておりました。今回の指針においては、賃金、労働時間等についてどのように示されたでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 賃金、労働時間等につきましては、新しい人材確保指針では、労働環境の整備、こういう中でうたわれておりまして、従事者に対する事業収入の適切な配分、そういったこと、国といたしましては、給与水準、事業収入の分配状況の実態を踏まえた適切な介護報酬の設定等がうたわれております。また、勤務時間につきましては、週四十時間労働制の導入、完全週休二日制の普及等による労働時間の短縮等、そういったことをうたっております。

 なお、前提といたしましては、他の産業分野とも比較して適切な給与水準の確保等、労働環境の整備が図られるということをこの人材確保指針では中心としておりまして、その根底にある考え方は、就職期の若年層を中心とした国民各層から選択される職業となるように、こういうことから、他の産業分野とも比較して適切な給与水準の確保等の労働環境の整備の推進、こういうことをうたっているところでございます。

高橋委員 今紹介された中に含まれておりませんが、「国家公務員の福祉職俸給表等も参考とすること。」ということや、あるいは「週四十時間労働制の導入」の前に「週四十時間労働制の適用されていない小規模の事業所における週四十時間労働制の導入」などという言葉が盛り込まれたということは、我々が求めてきた内容でもあり、歓迎すべきことかと思っております。

 問題は、現場とはかなり乖離しているだろう、これをうたった以上、この指針が実効あるものとなるのかどうか、そのことが問われていると思います。

 資料の1に、介護職員の入職率、離職率を示しておきました。二割を超えております。毎年三十一万六千人が入職しても、二十二万六千人が離職をしている。きついけれども賃金が安い。非常勤の割合が四割を超えています。しかし、介護の仕事や勤務先を選んだ理由は、働きがいのある仕事だと思ったから、これが六四・六%で断トツのトップなんですね。そういう、働きがいを求めて現場に入ったのに、この乖離がどこから来るのかと思うんです。

 三月のNHKスペシャルで「介護の人材が逃げていく」と題して、グループホームで働く青年の密着取材がございました。年収百万円足らずで、夕食の弁当さえ買うのをためらう様子を映し出しておりました。天職だと思っていたのに、生活のために退職する決断をし、お年寄りに告げなければならない。そのシーンに大変胸を痛めました。これが特別な事例ではなくて、私の国会の部屋を訪ねてくれた大阪の青年は、お年寄りの命を守る大切な仕事だと思う、そう言いながらも、五十人の施設で一人夜勤である、夜通し働いて翌日も一日働く、お年寄りよりも早く若い職員がやめていくのが実態だと訴えておりました。

 大臣、希望に燃えて介護、福祉の現場に入った青年たちが早くやめていくのはなぜでしょうか。どう改善を図っていきますか。

舛添国務大臣 非常に過酷な労働条件であって、それに見合った十分な待遇が行われていない。そして今、離職率の高さということも委員が御指摘になりました。

 私は、こういう問題を一つ一つやはり改善していって、本当に生きがい、働きがいを求めてそこに入ってこられているわけです。ですから、これはもうできるだけいい待遇、そして先ほどの、社会的な威信、プレスティージも高める、そういうことを上げたいと思います。

 そしてもう一つ、介護保険料それから利用者の負担ということとのバランスということを先ほど私申し上げましたけれども、日本人というのは、物を買うこと、それに対して代価を払うというのは非常に当たり前のように思っているんですけれども、サービスを買うということに対して必要な対価を払うというのが、経済学でグッズ・アンド・サービス、物とサービスというけれども、物はすぐ目の前に見えてわかるんですけれども、自分の体をこういうふうに介護してくださる、本当にありがたい、それは必要な対価はこうですよという、そのサービスに対する対価、これももう少し国民がしっかりやっていただかないといけない、こういう認識も広めていただきたいと思います。

 そういうことも相まって、今委員が御指摘しました問題意識は私は全く共通していますので、ぜひ若い人がこの職場に来られて、定着されて、生き生きと仕事をする、そして社会的にもみんなが尊敬する、そういう社会ができるように、厚生労働大臣として全力を挙げてまいりたいと思います。

高橋委員 今の必要な対価の問題で、やはり介護報酬を充実させるとか労働条件を改善させるために、結局負担が必要なんだよと、そこに落とし込んでしまうと、また別の議論を必要としなければならないので、私はきょうはそこには触れるつもりはございません。また次の機会にいたしましょう。

 それで、指針の中には、「従事者の労働の負担を考慮し、また、一定の質のサービスを確保する観点から、職員配置の在り方に係る基準等について検討を行う」、このことも新たに入りましたね。こういうことについて、局長でよろしいですので、考えを伺います。

中村政府参考人 先ほど申し上げましたように、労働環境の改善、これは非常に大きな柱でございまして、賃金だけではございません。その中では、委員から御指摘のありました労働時間の問題もございますし、当然労働関係法規は守っていただかなければなりません。また、腰痛の問題などもございますので、健康管理対策もうたっております。また、職員配置も、委員から御指摘ありましたように、従事者の労働負担を考慮し、一定のサービスを確保する観点から、職員配置のあり方に係る基準等について検討を行う。

 こういう規定は、それぞれだれが中心になってやるべきかということが指針では示されておりまして、職員配置の基準は国の仕事でございますので、我々として、今申し上げました観点から、現行の職員配置の基準について点検をし、必要があれば見直しに取り組んでまいりたいと考えております。

高橋委員 お願いします。

 そこで、資料の3に各県の有効求人倍率をつけておいたんですけれども、介護の現場が人材不足だということは、この全職業と介護関連職種の比較を見ていただいてもわかるかと思います。全国最下位クラスの我が青森県でも、全職業〇・四四倍に比べて、〇・七五倍と高くなっています。しかし、その内訳を見ると、常用は〇・五九倍にすぎず、パートタイムが一・三倍という形で、これは全部、各県を見ていただいても同じ傾向になっているんですね。

 やはり、現場では圧倒的にパートを求めている。介護報酬という、さっきちょっとお話をした、決められたパイの中で人材にコストをかけられない、そのことで労働者にしわ寄せが来るということが現実に起きているのではないかと思っております。

 こうした中で、今回のEPAによる外国人の受け入れは、私は、介護福祉士を国家資格にすると位置づけを高めて、キャリアアップを応援するという一方で、試験に合格しなくても准介護福祉士という道を開くことになる、しかも、これはフィリピン人だけではなくて、日本の労働者にも適用される。これは当初の目的とは逆行するのではないかと考えます。国内の労働者の条件の引き下げにつながるのではないか。国内の条件を引き上げできないままに安易に受け入れをするべきではないと考えますが、いかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 二点お話があったかと思います。

 一つは、経済連携協定に伴うフィリピン人の介護福祉士の導入の問題でございますが、これは、委員御案内のとおり、経済連携協定に基づきまして導入するもので、日本の労働力の不足があるから補う、こういうものではございません。また、働いていただく場合にも、日本語の勉強をしていただく、また、介護福祉士の資格を取っていただくということが条件になっておりますし、また、処遇においても、日本人と同一賃金、こういうルールで入れられるということでございますので、まず、フィリピンの方が経済連携協定のもとで入国されるということ等、介護の現場の労働条件がそれによって左右されるという問題ではない、こういうふうに考えております。

 次に、准介護福祉士の問題でございますが、これは、現行法律に基づいてフィリピンとの経済連携協定が結ばれているため、養成校を卒業された方については介護福祉士の資格が取れる、こういう前提で今の連携協定が結ばれておる、その協定と法律との整合性をとるために御提案申し上げているところであり、またこれが、内外、日本人、フィリピン人、差別しない、こういうことで、当然日本の介護福祉士を目指す方にも適用されているというものでございます。

 この准介護福祉士については……(高橋委員「説明が長い」と呼ぶ)

茂木委員長 簡潔にお願いします。

中村政府参考人 はい。千八百時間の養成課程を経ておりますので、現在の養成施設を出ている卒業生の方に比べてより教育を受けている方になると思いますので、現行より後退するということはないと考えております。

高橋委員 局長、説明は要りませんよ。私、考え方だけを聞いているんですから。人材不足のためではないということはこれまでも何度も答弁をされてきました。しかし、それは、最初はそうであっても、今後どうなのかということを言っているんです。

 今回の福祉士法改正が、日本とフィリピンの協定に基づく人材の受け入れであり、決して人材不足の解消のためではないと言っている。しかし、例えば資料の4にありますように、次はインドネシアとのEPAの枠組みが用意されています。最初は二年間ですが、合わせると二千人になるんです。これは、順次こうしたことが当然拡大していくのは予想されるのです。

 ことし九月二十一日に発表された経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会第二次報告書でも、「看護・介護等の高齢化関連産業では、労働力の需要と供給との量的なミスマッチが拡大する傾向にあり、長期的に見て、専門的な能力や経験を有する外国人労働者を受け入れなければ、国民生活に不可欠なサービスの供給に支障が生じかねない」として、外国人労働者の受け入れの拡大を期待している、このような発言もされているわけですね。背景には、当然こうしたことがあるわけですよ。

 今はいろいろ理屈を言っても、いずれそうなるのではないか、そしてそれを担保するものは今のところないんだということを強く指摘して、残念ながら時間が来ましたので、また次の機会に譲ります。

 終わります。

茂木委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、本日いただきました十五分の時間の中で、冒頭、恐縮ですが、舛添大臣に、昨日高裁において判決がありました在外被爆者、戦争中、強制連行で広島に来ておられて、その地で被爆をされて、そして、被爆者の扱いというのを、お国の韓国に帰られたために通達によって停止されておられた方々についてです。

 その後、通達は廃止されたわけですが、事実において、精神的にもそうですし、現実には被爆者であるにもかかわらず、被爆者として認められない、そういう状態に置かれた方々が、一九九五年から裁判を起こされまして、十二年がかりで最高裁判決までやっとたどり着いた。

 すなわち、通達によって一方的にその地位を奪われた皆さんへの国家賠償、慰謝をして国家賠償しなさいという判決でありました。

 裁判を起こされたときは四十名おられたが、現実には、その後お亡くなりになって、現在十数名という形で、きのうも原告の皆さん、日本に来ておられましたけれども、私は、この件を契機に、大臣にぜひ、今、在外被爆者問題、どんどんどんどん皆さん御高齢化していきますし、被爆したという事実があるにもかかわらず、まだ被爆者手帳も取得できていない方が現実におありですし、与党の中でもプロジェクトがおありだと思いますけれども、被爆した事実というものが変わらない以上、例えば、お帰りになったお国においても被爆者手帳の取得を可能にする道を、一刻も早く、一分も早く私は開くべきだと思います。

 まずは、これは厚生労働省の通達によって起きた、そうした、いわゆる相手の気持ちを酌み取らないさまざまな現実についての謝罪を大臣に一点。それから、いまだ被爆者手帳が持てない方々に、その取得の道を、大幅に、抜本的に変える覚悟を、早急に、一日も早く行いたいという、きっとお気持ちと思いますから、お願いします。

舛添国務大臣 昨日の最高裁判決、これはやはり厳粛に受けとめないといけない。そして、きちんと誤りを謝罪し、原告に対してしかるべきお支払いをするということは確実にやっていきたいというふうに思います。

 そして、在外被爆者の方々、遠いブラジルからもアメリカからも、お隣の韓国からも来られています。いろいろなお話をお伺いしました。そして、御高齢になっていますから、それは、日本に来るときに旅費は支払うというところまで行ったんですけれども、体の自由もきかない、何とか自分の国の大使館の中でチェックできないか、こういうこと、これが一日も早く実現できますように私も今全力を挙げておりますけれども、与党のこのチームの中で、同じ気持ちで、同じ方向でやっておりますので、一日も早く皆さん方の、そして今、阿部委員が御指摘なさったことが実現できますように全力を挙げます。そのことを申し上げたいと思います。

阿部(知)委員 しかとお取り組みをお願い申し上げます。

 続いて、本日の議題になっております法案について伺いますが、まず冒頭、舛添大臣にお伺いいたします。

 大臣は、御自身の介護経験、あるいは、これからの高齢社会を支えるための本当の社会的な任務、役割としての介護の問題に非常に御見識もおありだと思います。そうした観点に立って伺いますが、今回、介護福祉士と社会福祉士法の一部を改正する法律案の中で、介護福祉士の定義規定の見直しという根本条項がございます。簡単に言えば、入浴、排せつ、食事その他の介護から、心身の状況に応じた介護に改めるとあります。

 これは、一見いいように聞こえて、しかし、本来的には、私は、介護というのは、生活の状況を見きわめた、生活の状況に応じた介護であるべきだと思うんですね。例えば、身体介護の入浴、排せつ、あるいは食事にしても、その方の生活形態、生活がまずそこにあって必要性が生じるわけです。

 この一見どちら向きにもとれる改定は、しかし、この間の介護保険のいろいろな適用でホームヘルパーさんを使えなくなる御高齢者、あるいは、非常に生活軽視の物の考え方が、私は時々厚生労働省のいろいろな方針の中にかいま見えますので、ぜひ大臣には、介護というものは、生活を最も根本に置き、そして、従来ですとシャドーワークと言われていた、多くは女性が担ってきた、あしたに向けて生活を回していくということが根本にあって行われる営みであるということを、これも確答していただきたいと思います。

舛添国務大臣 阿部委員と同じように、私も、やはりQOL、クオリティー・オブ・ライフとかADL、つまり、それぞれの人にそれぞれの生活がある、しかし、例えば認知症になる、心身含めて障害を持つ、こういう方々が健常者と同じような生活ができる、これが先進国だと思っていますので、北欧諸国でノーマライゼーション、こういう思想の背景にもそれがあると思います。

 例えば家事援助をどう考えるかとか、こういう問題についても今の御指摘の問題はあると思いますけれども、私は、ただ単に排せつとか入浴の介助をする、そういうことではなくて、障害を持ってもその人の生活をどうするか、この視点が極めて大事だと思いますので、今回の改正、今どちらにも読めるというふうにおっしゃいましたけれども、しかし、私は、そういう精神で今からの介護の問題を取り組んでいきたいと思いますし、今までもその精神は忘れないでやってきたと思います。

阿部(知)委員 では、引き続いて、今回の介護福祉士と社会福祉士の改正案が、一言で簡単に言ってしまえば、それなりの試験を設けて、それによって資質の向上を図り、社会的身分を安定させようというふうな趣旨というふうに受けとめます。

 その上で、一つ大臣に、これも細かなことを伺うお時間がございませんので、実は、昨年暮れから指摘されております、日本社会事業大学というところにおきましての社会福祉士の試験問題の漏えいについて、私がお伝えし、大臣にこのようなことのなきよう今後の運営を図っていただきたいです。

 日本社会事業大学のある先生が暮れに出題セミナーを行ったときに、次の試験は三人のこういう方が、心理の担当の教授が出題するよ、あるいはこういう問題が出そうじゃないのというふうに学生に言ったそうです。それを聞いたまじめな学生たちは、それってもしかして漏えいかなと思って、学生同士の中でインターネットが飛び交ったそうです。そして試験、ふたをあけてみたら、確かにその先生が指摘されたような向きの試験であった。普通であれば学生は喜んでもいいのかもしれませんが、介護を目指す学生の皆さんはまじめですから、やはりおかしいと思われたんですね。

 日本社会事業大学は、実は厚生労働省からもたくさんの方が、天下りなのか、そういう言葉が不適切であれば、おやめになった後、そこで教えるということに携わっていて、そうした疑念が少しだに抱かれるということは、今後試験を厳正にしてきちんと資格として確定していこうというさなかにあって、大変後ろ向きだと思います。

 これは、私はもう二度、質問主意書で伺いましたので、先ほど申しました、細かいことは伺いませんが、今後の試験のあり方、あるいは、他の同じような大学でも漏えい等々起こり得る可能性はあるので、きちんと厳密にやっていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 試験問題の漏えいなどということは絶対あっちゃいけないですから、こういうことは厳しく取り締まりたいと思います。

 ただ、例えば、私が東大法学部で先生をしていて、そのときに、司法試験、公務員試験、これのかかわりある教授はだれだというのは大体公表されていまして、そうすると、あの先生の書いた民法の本を読めばいいというような感じで、みんなよく勉強する。そういう分野もあります。ですから、先生の名前が出ただけですぐ問題ができるか、私もそういう委員になったときは本がたくさん売れるとか、そういうことはあるんですけれども。ただ、しかし、あくまでもそこは漏えいがあっちゃいけない。厳しくこれはまたチェックしたいと思います。

阿部(知)委員 事が起きましたのは、事前セミナーで、そういうこのお三方と自分がこういう問題をというふうに、以前に出したことがあるというふうにお話しになったわけです。この先生は介護福祉士の方の試験の出題者であられたようですが、その後、そのお役をこの件の後おやめになったということで、私はやはりこれは限りなくグレーなんだなと思いますので、若い人たちの正義感が訴えたことですので、ぜひ大臣にはきちんとお取り計らいいただきたい。

 それから、先ほど来のやりとりで、これも時間の関係で省略して申しますが、准介護福祉士の問題は、いかに何でも、この法案の本当の魂を抜くようなやり方だと私は思います。

 中村局長の御答弁では、EPAとの関連、そしてEPAでそちらを準備したら、国内との落差があってはいけない、何かこれ、逆さの議論です。国内においてこういう二重資格になっていく、いわばきちんとした試験を設けようとしてつくる法律の一方で、試験に落ちたかどうかは別として、受けなくても准という格好がついていくということは、介護現場にとっても非常に深刻な混乱をもたらすと私は思います。

 そして大臣、お願いがございますが、実はEPAとの関係は、これはフィリピンの方でも、なかなかやはり、現実には暗礁に乗り上げているマターでございます。どういうことかというと、フィリピンの介護士の皆さんも社会的には非常に高い評価を得ていますし、では日本に行こうかなと思うと、日本の側の受け入れ体制あるいは評価のされ方、そして語学の心配などなどで、どちらかというとヨーロッパや北米に行く方もふえている。

 すなわち、これは何を意味しているかというと、我が国の受け皿体制がそれなりに遇し、その方の能力を高めていくものでなければ、結局はフィリピンの来る方にも悪い法律だし、それから日本の働く介護現場の二十代、三十代の若者にとっても私はこれはいかがなものかと。

 なぜフィリピンから来られた方の処遇を日本の国内に広げねばなりませんか、大臣。それと、EPA交渉で何が問題になっているのか、もっと大臣も立ち入って、この介護という問題で向こうが抱かれる不安についてお知りになったらいかがですか。二点、お願いします。

舛添国務大臣 先ほども申し上げましたように、私は外交防衛委員長として外交の分野でずっと仕事をしてまいりました。この問題は本当に二国間の関係、それぞれ言い分がある。

 それで、一つのまさに便宜的にこういうことをやった。そして今御指摘になったように、フィリピンの方々からたくさんお声をお伺いしました。やはりアメリカに行くよと。日本語は難しいし、英語はフィリピンの方は相当できますから、それで待遇もよければ向こうに行くよと。そうすると、今度は逆に、だから心配ないよ、来ませんよ、こういう話になっている。

 これはおっしゃるように本末転倒なので、あくまで暫定的措置、それはもう大きな国際社会のグローバリゼーション、こっちでEPAをやる、こっちでフリー・トレード・アグリーメントをやる、やらなきゃ中国に置いていかれるよというような、そういう大きな流れの中の一つの便宜的な措置だと思いますけれども、しかし、やはりこれが本末転倒になってはいけない。何とか外交の分野でも、そういう問題点について、国全体のあり方、外交のあり方、これも含めてしっかりと検討してまいりたいと思います。

阿部(知)委員 私はEPAは非常に重要な問題と思います。そして、それゆえに、安易にそれを理由に日本の介護現場に分断を持ち込むこの法案は、やはりいかがなものかと思いますので、後ほど反対討論をさせていただきます。

 ありがとうございます。

茂木委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子君。

高橋委員 私は、日本共産党を代表して、社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。

 反対の理由は、本法案が、養成施設卒業者についても、国家試験に合格しなくても准介護福祉士という別の国家資格を付与する点にあります。これは、国家試験を受験するという形で介護福祉士の資格の取得方法を一元化することによって資質の向上を図るとする趣旨に反するばかりか、新たに生まれる准介護福祉士制度によって、介護福祉士の社会的評価や国民の信頼を損ねることになりかねないからです。介護福祉士資格への二重構造の持ち込みは、処遇面などでさまざまな混乱、差別を介護現場に持ち込むことになります。

 本法案に准介護福祉士制度が持ち込まれた理由に、日比EPAとの整合性を図ることが挙げられておりますが、これが結果として安価な外国人労働者の受け入れにつながるのではないかという懸念も見過ごすことはできません。こうしたことは、介護職全体の労働条件を低い水準に固定化し、ひいては介護職員不足に一層拍車をかけ、むしろ介護の質の確保を困難にしかねません。

 今、介護の現場では、業務量が増加しているにもかかわらず、他の産業と比べても非常に安い賃金に抑えられ、働くことを希望している方が数多くいるにもかかわらず、離職を余儀なくされている現状があります。

 今後さらに増大する福祉・介護ニーズに対応するために、十四年ぶりに改定された社会福祉事業に従事する者の確保を図るための指針で、給与を、他の分野、地域の水準等も踏まえ、適切な水準を確保し、給与体系については国家公務員の福祉職俸給表等も参考にすること、週四十時間制の導入等の文言が入れられたのは、一歩前進だと考えます。

 指針を真に実効あるものにし、介護労働の改善を図るためにも、早急に介護報酬の引き上げ等を含めた抜本的な見直しを強く求め、反対討論といたします。

茂木委員長 阿部知子君。

阿部(知)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、内閣提出、社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案に反対する立場から討論を行います。

 反対の第一の理由は、本法案が、介護福祉士の資格取得方法を、一定の教育プロセスを経た後に国家試験を受験する形に一元化することにより、資質の向上を図るとしながら、改正の趣旨に反して、養成施設卒業者については国家試験に合格しなくても准介護福祉士という別の資格を付与するものであるからです。

 准介護福祉士は、本法案の下地となった社会保障審議会福祉部会では全く議論の俎上に上がっていませんでした。また、介護福祉士の養成方法、資格取得の方法の変更は、あくまで国内問題であるにもかかわらず、日本とフィリピン二国間のEPAを理由に、新たな資格を強引に設けることには納得がいきません。

 第二の理由は、准介護福祉士の導入によって介護福祉士資格に二重構造を認めることは、介護現場に身分差別を持ち込むことになりかねないからです。外国人労働者や、長期の現場経験はあるが試験に受かりにくいホームヘルパーなどを、低賃金、不安定雇用に固定化させる危険性があります。また、国家試験に合格していない者に資格を付与することは、介護福祉士全体に対する社会的地位や評価の低下につながりかねません。

 第三の理由は、社会福祉士、介護福祉士の定義、義務や資格の取得方法などを見直すという今回の法改正が、社会福祉士、介護福祉士の地位の向上、職場の確保、賃金等の労働条件の向上、離職者の防止、再活用にどのようにつながるかが全く見えないからです。介護・福祉ニーズが多様化、複雑化する中で、人材の確保と活用は急務です。貧困、児童、高齢者など、専門分野でソーシャルワーカーが必要とされる中で、社会福祉士を具体的にどう配置していくのか。また、介護福祉士について、介護報酬の引き上げ、配置基準の引き上げなどがセットで示されるべきです。

 このように拙速な形で法案が審議され、介護現場に分断を持ち込む本法案には反対をいたします。

 以上です。

茂木委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 第百六十六回国会、内閣提出、参議院送付、社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 この際、本案に対し、後藤茂之君外三名から、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ、公明党、国民新党・そうぞう・無所属の会、四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。後藤茂之君。

後藤(茂)委員 私は、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ、公明党及び国民新党・そうぞう・無所属の会を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 介護福祉士の資質の向上を図るため、教育カリキュラム等の見直しに当たっては、養成施設ルート、福祉系高校ルート及び実務経験ルートのそれぞれにおいて、同等の水準の知識及び技能が担保されるよう措置すること。

 二 社会福祉士及び介護福祉士の社会的評価に見合う処遇の確保を図るため、介護報酬の見直しなど介護保険事業の充実等に努めるとともに、国籍などを理由として介護福祉士の賃金、労働条件などに差別的取扱いが生じないよう、監督・指導を行うこと。

 三 福祉・介護労働の魅力を高めるため、「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」に基づく施策として、社会福祉士及び介護福祉士の雇用管理や労働条件の改善の促進、生涯を通じた能力開発及びキャリアアップの支援、潜在マンパワーの就業促進等の実効性ある福祉・介護労働力確保対策を総合的に推進すること。

 四 介護職員の任用については、介護福祉士を基本とすることを念頭に置きつつ、介護福祉士への円滑な移行を促進するため、その施策の在り方を十分検討すること。

 五 社会福祉士の任用・活用の拡大については、今回の改正事項の実効性を高めるため、都道府県及び市区町村の福祉に関する事務所職員への社会福祉士の登用の促進策の在り方について十分検討すること。また、社会福祉施設の長、生活指導員等についても、社会福祉士の任用を促進するよう周知徹底を図ること。

 六 実務経験ルートに新たに課される六月以上の養成課程について、働きながら学ぶ者の負担軽減に配慮し、通信課程を認めるほか、教育訓練給付の対象となるように基準の設定を行うこと。

 七 厚生労働省令において介護福祉士の資格取得ルートを規定するに当たっては、法律上の資格取得ルートとの間で、教育内容及び実務経験の水準の均衡に配慮すること。また、今後、介護サービスの担い手の養成に係る新たな仕組みを設けるに当たっては、現在の資格制度との関係について十分検討を行い、現場が混乱に陥ることのないようにすること。

 八 社会的援助を必要とする者が増加していることにかんがみ、重度の認知症や障害を持つ者等への対応、サービス管理等の分野において、より専門的対応ができる人材を育成するため、専門社会福祉士及び専門介護福祉士の仕組みについて、早急に検討を行うこと。また、介護福祉士をはじめ、関連分野専門職が社会福祉士となるための必要な履修認定等について検討すること。

 九 社会福祉士及び介護福祉士の国家試験の在り方について、専門家による検討の場を設け、必要な知識及び技能を総合的に評価できるような内容となっているかどうかについて検証を行うこと。

 十 社会福祉士の資質の向上を図るため、教育カリキュラム等の見直しに当たっては、効果的な実習が行われるよう実習指導体制の充実に十分配慮すること。

 十一 司法・教育・労働・保健医療等の分野における社会福祉的課題の重要性にかんがみ、これらの分野への社会福祉士の職域拡大に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

茂木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、舛添厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。舛添厚生労働大臣。

舛添国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。

    ―――――――――――――

茂木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

茂木委員長 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 身体障害者補助犬法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 身体障害者補助犬法は、平成十四年に本院の議員立法によって制定されたものであり、盲導犬、聴導犬及び介助犬を補助犬として規定し、それらの訓練育成を促進するとともに、公共施設等での受け入れを義務づけることによって、身体障害者の方々の自立と社会参加の促進に大きな役割を果たしております。

 同法は、公共施設や公共機関、不特定多数の者が利用する施設においては、原則として身体障害者補助犬の同伴を拒むことができないと規定しております。

 しかし、身体障害者の方々から、補助犬の同伴を拒否される場合が依然として多いため、補助犬の受け入れを義務づける範囲を拡大してほしい等の要望がありました。また、受け入れ側の方々からもさまざまな意見がありました。

 本案は、こうした要望等を踏まえ、慎重に検討した結果、補助犬を使用する身体障害者の施設等の利用のさらなる円滑化を図るため、補助犬の受け入れ義務の範囲を拡大する等の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、障害者雇用事業主は、その事業所等に勤務する身体障害者が当該事業所等において身体障害者補助犬を使用することを拒んではならないものとすること。

 第二に、身体障害者補助犬の同伴または使用に関し、身体障害者または施設等の管理者は、都道府県知事に対し苦情を申し出ることができるものとし、都道府県知事は、相談に応じ、必要な助言、指導等を行うものとすること。

 なお、本案は、一部を除き、平成二十年四月一日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 身体障害者補助犬法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案を身体障害者補助犬法の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

茂木委員長 次に、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 終戦直前の昭和二十年八月九日のソ連軍の対日参戦により、国策として旧満州地区に居住していた開拓団等の人々は、未曾有の恐怖と混乱に襲われました。飢餓、疾病などの中で筆舌に尽くしがたい逃避行を強いられ、数多くの犠牲者が生まれ、また、家族離散という悲惨な状況に陥りました。

 この中で、多くの幼子たちが肉親と離れ離れになり、中国の大地に取り残されました。中国人に育てられることとなった孤児や、生活の手段を失って中国人の妻となった方など、中国に残留することを余儀なくされた邦人は、その後も、中国国内における厳しい対日感情や文化大革命等の激動の歴史の中で、戦後の高度経済成長の中で生活をしてきた我々には想像もつかない御苦労をされてきました。

 これらの中国残留邦人は、祖国への切なる思いを抱きつつも、中国との国交正常化まで長期間を要したことに加え、その後の引き揚げも必ずしも順調ではなく、帰国の時期が大幅におくれた方々も多かったのであります。さらに、幼少期に日本の教育を受ける機会がなかったために、ほとんどの人は日本語ができず、帰国後においても言葉の壁が厚く、また、生活習慣の違いも大きく、安定した職を得ることは極めて困難でありました。このため、日常の生活に多くの支障を来しているだけでなく、老後の生活の安定や備えができない状況にあります。

 これまで、政府においてもさまざまな自立支援策を講じてきましたが、結果としては、残念ながら十分な成果を上げたとは言えません。このため、人間としての尊厳と老後の生活の安定を二つの柱として、新たな支援策を講ずることとし、中国残留邦人の方々が日本に帰ってきてよかったと思えるように、また、人間として、日本人として尊厳を持てる生活を確保できるようにするものであります。

 本案は、永住帰国した中国残留邦人等で一定の要件を満たす者に対して、支援策の具体化に必要な特別の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、国が一時金の支給を行うとともに、帰国前及びそれ以後の国民年金の被保険者期間の保険料を一時金から本人にかわって追納し、満額の老齢基礎年金等を支給できるようにすること。

 第二に、満額の老齢基礎年金の支給等を補完する措置として、世帯の収入が一定の基準に満たない場合に支援給付を行うこと。

 第三に、一時金及び支援給付について、譲渡等の禁止及び非課税の措置を講ずること。

 第四に、訴訟に関し猶予された費用について、特例措置を講ずること。

 なお、本案は、一部を除き、平成二十年一月一日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。舛添厚生労働大臣。

舛添国務大臣 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、政府としては異議はございません。

茂木委員長 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案を中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま委員会提出と決しました両法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十一分開議

茂木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 第百六十六回国会、内閣提出、労働契約法案、労働基準法の一部を改正する法律案、最低賃金法の一部を改正する法律案、今国会、細川律夫君外三名提出、労働契約法案及び第百六十六回国会、細川律夫君外二名提出、最低賃金法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省健康局長西山正徳君、労働基準局長青木豊君、雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治でございます。

 いよいよ、きょうから労働関係法案の審議に入るわけであります。きょうは舛添厚生労働大臣にも御出席をいただいておりますけれども、しかし、思い返せば、いわゆる政府提出の労働三法につきましては、前の国会で十三時間以上の審議を終えているということであります。そしてまた、限られた時間でありますので、私の方から、きょうは民主党案を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、労働契約法案でございます。

 現在、我が国の雇用情勢にかんがみますと、就業形態や就業意識の多様化が進み、個別労働関係紛争が増加をいたしております。この状況を踏まえまして、労働者、使用者の双方が安心し納得をした上で、多様な働き方を実現できるようにすることが必要であると考えております。このためには、労働者一人一人の労働契約に関する基本的な事項を明確にするとともに、紛争の解決や未然防止に資する、体系的でわかりやすいルールを整備することが重要な課題になっていると考えます。

 このため、労働者及び使用者の自主的な交渉のもとで労働契約が円滑に継続することを通じて、労働者保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資するための基本的なルールを法制化するため政府が労働契約法案を提出したこと、これは大いに意義があると考えております。私といたしましては、この内閣提出の法律案、高く評価をさせていただいております。

 また他方、民主党が対案を提出し、オープンな場で国会論戦が正々堂々と行われるということは非常に有意義であると考えております。しかし、残念ながら、民主党から提出された法案を見たときには、この内容が本当に実現することが可能なのか、あるいはまた、本当に労働者や企業経営者、そしてまた国民のためになるのかということに疑問を禁じ得ないところでございます。

 その理由といたしましては、まず第一に、これまでの労働関係の判例法理と大きく乖離した内容にあるからです。現実に行われております企業業務とも乖離した法案であり、非現実的な内容であると言わざるを得ません。また、内閣提出の法案と比較しますと、民主党の法案が真に働く人たちのためになるのかにつきましても強い疑問を感じます。解釈があいまいな規定を設けるということは、労使がお互いに都合のよいように解釈して、かえって紛争の種になりかねません。

 また、多様化する労働契約関係について、一律に、この要件を満たさなければ無効と定めることは、労使自治を基本とする考え方に反するとも考えられます。賃金や労働契約、雇用関係につきまして契約の自由度が少なくなると企業関係者は雇用を控える、そんなおそれもございます。民主党の法案が成立することにより、仮に、現在雇用されている労働者の地位、権利が保護されるようなことはあったとしても、逆に、今休職中の方々、また、これから労働年齢に達する若い世代にとりましてはかえって新規雇用が失われる、そんなおそれもあるところでございます。

 各論に入りますけれども、まず、均等待遇について伺います。

 民主党案の第三条第四項を見ますと、「労働契約を締結し、及び変更する場合においては、労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ、均等な待遇の確保が図られるべきものとする。」とされております。

 しかし、この条文を読みましても、具体的には、どのような労働者をどのように処遇すればよいのか、はっきりしたことはわかりません。「就業の実態に応じ、均等な待遇」といいましても、就業の実態が同一でなければ、均等な待遇などあり得ないのではないでしょうか。「就業の実態に応じ、均等な待遇」とはどのような意味なのでしょうか。

 改正パートタイム労働法、これにおきましては、通常の労働者とパートタイム労働者の差別禁止を規定するに当たって、職務内容や責任、配置などのような点に着目をして、通常の労働者と同視すべき短時間労働者と判断するかについて労使間で議論を積み重ね、その結果を条文に詳細に規定しております。

 どのような労働者をどのように処遇すれば、均等な待遇の確保が図られていると言えるのでしょうか。具体的な考え方をお示しいただきたいと思います。

細川議員 お答えをいたします。

 民主党案の第三条第四項は、就業の実態に応じ、均等待遇が図られるべき、こういうふうに規定をいたしております。つまり、就業形態が異なっても、就業の実態に応じて均等な待遇の確保が図られるべきであるという意味でございます。

 したがって、労働者間において、合理的な理由のない差別的な取り扱いが禁止されるべきということになります。別の言い方をいたしますと、労働者が従事をしている業務の差異と労働者の待遇の差異との間に合理的な関連性がある場合には均等な待遇の確保が図られている、こういうことになります。

井上(信)委員 残念ながら、答弁を伺っておりましても、やはり不明確というような印象はそのままでございます。

 職務内容や責任など、就業の実態というものは労働者によってさまざまであり、企業は適材適所で労働者を配置し、それぞれに処遇をいたしております。民主党案のように均等な待遇にするということは、企業の労務管理の実態を無視し、いたずらに混乱を生じさせるだけだと大変憂慮をいたしております。

 次に、有期労働契約について伺いたいと思います。

 有期契約労働者、総務省の調査によりますと、平成十八年には七百七十四万人、全労働者の一四%を占めております。その内訳はさまざまであり、学校卒業時期が就職氷河期に当たってしまい、正社員としての就職を希望しながらも実現をせず、不本意ながら契約社員などの有期労働契約で働いているフリーターもおります。また一方、定年まで勤めるという人生設計をもともとしておらず、一定期間の雇用が保障される有期労働契約というものをかえって好んで、積極的に選んで働いている、そんな方々もいらっしゃいます。

 したがって、我々は有期労働契約を一律に制限すべきものとは考えておりません。多様な労働実態を踏まえながら、しかし他方で、正社員への就職を希望する人にはそのための就職支援を行うなど、きめ細かな対応を通じて、有期労働契約が労使双方にとって納得できる良好な就業形態となっていくことが重要だと考えております。

 まず、民主党案の三十八条第一項では、次に掲げる場合に限り、有期労働契約を締結することができるとして、有期労働契約を締結できる事由について、臨時的、一時的な業務や高度の専門的知識を有する労働者の場合など、極めて例外的な場合に限定をいたしております。その上で、第八号では、厚生労働省令で定める事由に該当する場合には締結できるというふうにされております。

 これは、当然のことながら、有期労働契約を締結できる事由を制限する規定でありますので、この省令で定める事由というのも極力限定的なものになるかと思いますけれども、具体的にはどんな事由をお考えなのか、お示しいただきたいと思います。

細川議員 政令で定めると予定をしていることについてお答えいたしますが、まずその前に、民主党案では、有期労働契約が使用者にとって簡便な雇用調整に使われることがないようにするために、三十八条第一項各号におきまして、臨時的または一時的な業務、一定期間に完了することが予定されている事業など、有期労働契約が真に必要とされている事項について列挙しているところであります。

 八号では、一号から七号まで掲げる事由のほか、有期労働契約を締結することに正当な理由があるものについては、今質問のありました、厚生労働省で定める有期労働契約を締結することができる、こういうことになっておりまして、一応、この省令で定める例として考えられますことは、期間の定めのない労働契約によりまして、採用予定者が就労するまでの間に、当該労働者が就労する予定の業務につかせる場合などでございます。

 例えば、新卒の学生が、将来就職する場合に、四月一日からというふうに決まっている場合に、その前からどうしても就職というふうになった場合に、四月までの期間、短期労働契約ということにすることができるというようなことが考えられます。

 以上です。

井上(信)委員 真に有期労働契約が必要な場合というのが不明確で、非常にわかりにくいというふうに思います。

 そして、いずれにせよ、締結事由というものが制限されますと、すべてを期間の定めのない労働契約に移行するということは不可能であると思いますので、そうなると、現在のパートタイマーあるいは契約社員などの多くは有期労働契約で働くことができなくなるというふうに思われます。そうなると、現在七百七十四万人いる有期契約労働者、民主党案が成立した場合には、一体何人ぐらいまで減るのでしょうか。また、減少した場合には、有期契約労働者、どこでどのような業態で就業することになるのでしょうか。あるいは、有期契約労働者を失った企業、それは必要な人材をどのような形で確保すればいいのでしょうか。

 大手流通業界などでは、半分以上が有期労働契約を締結し働いております。あるいは、小売業や飲食店などの業態によっては、致命的な問題となりかねないと考えております。この民主党案が成立した場合の、実際の、現実の労働環境の変化についてどのようなものを想定しているか、お聞かせいただきたいと思います。

細川議員 民主党は、原則として有期労働契約ということはしない、そういうことはさせないというようなことで、例外的にどうしても必要な事由について有期労働契約を認める、こういうことになっております。このことは、現在、有期労働契約によって、どれほどその有期の人たちが、有期であるがゆえに大変な、苦しい労働環境に置かれるかというようなことを踏まえてこういうことにしたわけでございます。

 したがって、この民主党案ができますれば、有期労働というのは少なくなって正規の労働者がふえる。私どもは、本来、正規の労働者がふえることが、労使間にとってもいいことでありますし、日本の労働界、そして日本の社会にとっても大事だというふうに考えて、このように規定をしたわけでございます。

井上(信)委員 御答弁ありましたけれども、残念ながら、この民主党案が成立したとしても、現在の経済情勢などを考えますと、正規社員がふえる、そんなうまくいくのかなと、実現性には大変大きな疑問を感じざるを得ないところであります。

 続きまして、解雇の規定について御質問したいと思います。

 民主党案につきましては、解雇に関しましても、これまで確立した法理から一歩も二歩も踏み出そう、そんなルールを定めております。解雇に関するルールとしましては、現在は、使用者の解雇権を認めつつその濫用を禁止する、いわゆる解雇権濫用法理が確立しております。つまり、原則として解雇は可能であるけれども、みだりに行ってはいけないという考え方です。

 これに対して、民主党案は、いわゆる正当事由説に立ちまして、原則と例外を逆転させ、原則解雇はできない、ただし、客観的に合理的な理由がある場合にだけ例外的に解雇できるものというふうに思われます。しかし、原則は原則でありまして、原則解雇可能という現在の考え方を原則は解雇不可というふうにすることが世の中の労使関係にどのように受けとめられるか、慎重に考えるべきだと思います。

 労働法によって、解雇に関するこれまでのルールが逆転し、人を雇ったらやめさせることは不可能になる、こんなふうに受けとめられてしまっては、新規雇用が減少して、働く人々にとってかえって好ましくない状況が生まれる可能性があると思っております。いかがお考えでしょうか。

細川議員 解雇につきましては、大変重要なところでございます。解雇というものは、労働契約を将来に向かって解約する、使用者の一方的な意思表示でございます。一方的に解雇されますと、解雇される労働者にとりましては、大変な不利益を及ぼすものでございます。

 そこで、私たちは、三十三条で、客観的に合理的な理由に基づき、社会通念上相当であると認められる場合でなければ解雇は無効という解雇の原則を定めているところでございます。

 本来、民法上の規定におきましては、「雇用」のところで、いつでも解雇ができるという、使用者の方に解雇権が、解約権がありましたけれども、しかし、その解雇権というのは、権利の濫用法理によって、これはもうほとんど、濫用そのものを、会社側の方で濫用がなかったということも証明をせざるを得ないようなところまでいくような事態に来ていると私は考えているところです。

 いずれにしても、解雇というものは、解雇される側、解雇される人のいわば人生をも狂わすような、そんな事態でございますから、これはやはり、正当事由がなければだめだという、今までの解雇権の、解雇権が使用者にあり、その濫用法理というものから、民主党の方に変えることが私は妥当であるというふうに考えております。

茂木委員長 細川さん、質問の趣旨は、基本的に解雇できない、こういう形にしますと、雇用者の側が新規採用等々につきまして慎重になって、かえって雇用に悪影響が出るんではないか、こういう質問だと思います。もし答弁がございましたら。

細川議員 これは、人を雇って自分の企業を経営する、こういうことでございますから、そういうときに、人を雇うということがどれだけ重要かということは、これはもう従来から使用者は考えているものと思います。

 したがって、解雇できないから、解雇の原則が変わってきたからといって、私は、使用者の方がそんなに雇うことができなくなるようなことにはならないというふうに思います。

井上(信)委員 ちょっと明確な回答がないのかなという印象を持っておりますけれども、有期労働契約を制限して解雇を厳しくするということで、やはり企業といたしましては雇用調整が困難になる、これは避けられないと思っております。

 我が国の経済情勢、好転しているとはいえ、足元を見れば失業率が悪化しているなど、企業活動を制約することにつながることは慎重に考える必要があると思います。そのことがひいては労働者のためにもなるということ、ここをやはり御理解いただけていないのかな、残念だなというような印象を改めて持ちました。

 続きまして、転勤の項目についてお尋ねしたいと思います。

 民主党案では、第二十七条で、「労働者の転居を伴う勤務地の変更については、使用者は、次項に規定する場合を除き、当該労働者と協議の上、その同意を得るとともに、労働者代表と協議しなければならない。」というふうに定められております。これは一体どんな趣旨なのかなと。

 労働者の同意が得られなければ勤務地の変更ができないということであれば、これはなかなか同意する人はいないんじゃないかというように思いますけれども、いかがでしょうか。御趣旨を御説明いただきたいと思います。

細川議員 二十七条の趣旨について、御質問でございますからお答えいたします。

 配置転換は、使用者の経営上の必要に伴って行われるものでありますが、転居を伴う配置転換は特に労働者の負担が大きいため、転居の可能性をあらかじめ予測できるようにしておくことが重要であると考えます。

 そこで、民主党案では、使用者の経営上の必要とのバランスを考えつつも、転居を伴う配置転換の場合に限って、手続を整備するとともに、使用者が労働者及びその家族の生活状況への配慮をすべきということを規定いたすことといたしました。

 また、使用者と労働者の間には交渉力の格差が存在をしておりますので、配置転換が問題となる場面においては労働者が不利な立場に置かれることが多く見られることでありますから、使用者が当該労働者に対して転居を伴う配置転換を求めるときには、労働者代表と協議をするものといたしました。

 具体的に申し上げますと、民主党案では、まず二十七条一項で、「労働者の転居を伴う勤務地の変更については、使用者は、次項に規定する場合を除き、当該労働者と協議の上、その同意を得るとともに、労働者代表と協議しなければならない。」こういうふうに規定しております。

 一方、勤務地に関して、使用者が労働契約を変更する権利を留保しているケースもあると思われますが、このような場合については、民主党案では、二十七条二項で、「労働者の転居を伴う勤務地の変更についての第二十三条の使用者の権利の行使は、同条各号のいずれにも該当するほか、労働者代表と協議をした場合にのみ、効力を生ずる。」というふうにしております。この場合には、当該権利の行使の必要性があること、二番として、変更された労働契約の内容が合理的であること、三番目として、使用者が労働者と誠実に協議をしたこと、そして労働者代表と協議をした、こういう条件を満たしていれば転勤は可能、こういうことになります。

 以上です。

井上(信)委員 ちょっと私の質問に答えていただいていないような気がするんですけれども。転勤する当事者の同意が得られなければ勤務地の変更ができないということであれば、やはりそれは、なかなか同意する方はいないのではないか、そこを教えていただきたかったんですけれども、ちょっと時間の関係もございまして、先に進めます。

 思いますに、人事の配置というものは、企業にとりましては重要な経営戦略上の課題であります。新規事業の展開あるいは販路の拡大のために全国展開するなど、適材適所で事業展開を行っていくことは、企業が発展していく上での大切な課題です。企業が発展することにより、当該企業で働いている労働者の方々の雇用も安定し、そして賃金も上昇するのだと考えております。

 栄転ということであれば話は別かもしれませんけれども、自分の環境が変わる転勤というものは、通常、当事者にとっては好ましくないのが普通だと思います。転勤させるのに、当該労働者と協議の上、その同意を得るということにしますと、やはり企業経営が立ち行かなくなってしまう、ひいてはそこで働く労働者の方々のためにもならないというような疑念を禁じ得ません。

 ちょっと時間もございませんので、続きまして、最低賃金法の一部を改正する法案につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 最近の我が国の働く人々を取り巻く状況を見ますと、パートタイム労働者、派遣労働者などを含めて、非正規雇用が増大する中で、就業形態の多様化が進展をしております。働き方のいかんにかかわらず、働く人々が安心、納得して働くことのできる環境づくりはますます重要だと考えております。

 格差社会ということが言われておりますけれども、ネットカフェ難民の増加など、働いても、自分の住む場所があるという普通の生活さえできない人々が生まれているというのは、我が国の大きな問題だと考えております。特に賃金は、労働条件の中でも最も基本的な事項であり、働く人々の安心、納得のためには、セーフティーネットとしての最低賃金制度は極めて重要なものと考えております。

 そのような経済環境のもと、最低賃金制度については、賃金の低廉な労働者の労働条件の下支えとして十全に機能するよう整備することが重要な課題となっております。このため、最低賃金制度について、社会経済情勢の変化に対応し、必要な見直しを行うということは大変重要なことだと思っております。ですから、政府と民主党がそれぞれ最低賃金法の一部を改正する法案を提出したということは、極めて意義のあることだと思っております。

 特に、政府案におきましては、第九条第三項で、「労働者の生計費を考慮するに当たつては、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」としております。最低賃金が生活保護費よりも低いというのはおかしいと考えますし、働くよりも生活保護を受ける方がいいというモラルハザードを起こす危険もあり、早急に是正すべきであります。

 しかし、他方で、民主党案を見ますと、働く人たちにとりまして本当にためになる法案なのかにつきまして、強い疑念を感じるところであります。労働者の賃金など、条件のハードルを上げれば上げるほど企業は新規雇用を手控えること、想像にかたくありません。これが真に労働者にとりまして望ましい状況だとは到底考えられません。また、企業経営者の立場に立ってみましても、一段と厳しい経営環境で企業経営を強いられてしまい、それによって企業が倒産してしまったら働いている労働者は路頭に迷うことになり、元も子もない状況に陥ってしまいます。現在のグローバル経済の中でも日本企業の国際競争力もそがれることになってしまいます。

 そういう意味で、民主党案が本当に国民の利益になる法案なのかにつきまして大変疑念を感じますし、この法律案が実現可能だとは残念ながら到底考えることができません。

 そして、個別の論点でありますけれども、最低賃金の考慮要素として、民主党案によりますと第三条、労働者及びその家族の生計費のみが取り上げられております。なぜ家族の生計費まで基準としているのでしょうか。一体どんな家族を想定しているのか。家族の世帯構成というものは千差万別であって、一律に最低基準を設定することにはなじまないというふうに思います。仮に何らかのモデル世帯を想定して家族の生計費まで考慮した水準に最低賃金が決定された場合には、例えば家族のいない若者などの単身者に対する水準としては高くなり過ぎてしまいますけれども、その辺のところをどのように考えておられるのか。

 とにかく、労働者及びその家族の生計費のみを考慮要素として考えていることについて、御説明をいただきたいと思います。

細川議員 最低賃金のもとで働いても、手元に残る賃金がなぜ生活保護よりも低い現状にあるのか。なぜこれがこれまで放置されてきたのか。ワーキングプアといった深刻な社会問題が起こっているにもかかわらず、最低賃金が上がるのはこれまで一円とか二円の攻防が全国で繰り広げられてまいりました。私どもは、こういうところに素朴な疑問を感じているところでございます。

 現行の最低賃金法に基づいて決定される最低賃金額は、労働者の生計費に加え、類似の労働者の賃金、通常の事業の支払い能力も考慮するとされておりますが、これを考慮することによって、特に労働者の生計費の高い都市部におきましては、生計費を下回る最低賃金額の設定を許容するような、そういう状況にも至っておりまして、労働者の最低限度の生活水準を保障するものではないということは否定できないところでございます。これでは、労働者が結婚をして、子供を育てようとしても到底できるものではない。

 そこで、民主党案では、最低賃金額の決定をする際の考慮基準として、労働者及びその家族の生計費というものを基本とすることといたしました。そこで、労働者が安心して結婚をし、子供を育てることができるということを前提といたしておりますので、労働者一人当たりに子供一人ということを想定いたしまして、このような家族の食料費、住居費、光熱水道費、被服費、保健医療費、交通・通信、教養娯楽、その他交際費等を合わせた結果、全国最低賃金は八百円、それから地域最低賃金は千円を目指すというような、そういう結論に至っているところでございます。

茂木委員長 独身者が高くなり過ぎちゃうんじゃないの。

細川議員 独身者でも、その独身者が結婚をするということができないようでは、それはだめな社会じゃないでしょうか。やはり、独身者が働いて、その得た賃金で結婚する、そして将来は子供を産めるような、そんな賃金でないと、日本というのはかえっておかしい社会だというふうに思います。

井上(信)委員 独身者の方々に子供を産んでもらうということは大変大切なことだと私も思っております。しかし、これは最低賃金の話でありますから、本当に最後のセーフティーネットだという最低賃金の趣旨を全く誤解していると言わざるを得ないと思います。

 もう時間も余りないようでありますけれども、とにかく、私は、この民主党の法案を見てまいりますと、先ほど来申し上げておりますように、実現不可能な点が本当に多いな、本当に働く人のためになるのだろうか、この疑念を、せっかくのこの質疑の場において、御答弁もいろいろいただきましたけれども、払拭することは全くできません。

 働く人々のためになるというふうにおっしゃいますけれども、現実には、新規雇用の機会を奪うなど、労働者にとりましてかえって不利益を生じてしまうということ、こういうことがあり得るということをもう少しよくお考えをいただきたいと思っております。

 再度個別の論点に触れることはいたしませんけれども、この法律案が成立するということ、これが国民にとりまして、労働者にとりまして利益になるとは残念ながら考えることはできません。私といたしましては、きょう、残念ながらちょっと質疑はできませんでしたけれども、内閣提出の法律案、こちらの方を高く評価させていただいており、これらの法律案の成立を期すことをお願い申し上げたいと思います。

 どうもありがとうございました。

茂木委員長 次に、川条志嘉君。

川条委員 自由民主党の川条志嘉でございます。

 最初に、議題以外に話が及んで恐縮なんですが、大臣御出席であられますので、一点お願いさせていただきます。

 本当は質問させていただきたかったんですが、理事間協議で、議題以外のことに質問してはいけないという申し合わせがあるということですので……

茂木委員長 衆議院規則でそのようになっております。衆議院規則をきちんと読んだ上で質問に臨んでください。

川条委員 はい。私はルールを守らせていただきます。

 原爆症認定訴訟の全面解決に向けて、与党自民党でも、寺田稔先生主導のもとで議員懇談会が立ち上げられ、私も副会長を拝命しております。そして、自民党の参議院選挙の公約にもこの件は盛り込まれました。また、河村建夫先生や寺田稔先生を中心に、自公間、与党PTでの協議も進んでいます。

 しかしながら、この進捗状況というのは、一般に、マスコミとかテレビでは見えないわけです。特に、最近では、薬害肝炎や年金問題などの進展が大きく取り上げられていて、原爆症が取り残されるのではないかというおそれを持っておられる患者の方も多くおられます。そして、この原爆症の問題、戦後六十年たって、戦後の取り残された課題であるわけです。しかも、被爆者が高齢化して多くの方が亡くなられている状況で、一日も早い解決が望まれるという現状からも、被爆者援護法の精神に基づき、原爆症認定訴訟の全面解決に早急に取り組んでいただきたい。

 二十六万人の被爆者手帳を持った人がおられるのに、原爆症の認定を受けたのは二千人弱。これは、認定基準を見直す必要があると思う。全国の原爆症認定訴訟における原告勝訴の現状を見ても、内部被曝についても認めていただき、原因確率論についても見直すなど、薬害肝炎で見せておられる実行力を発揮していただいて、大臣の御英断を賜りたいと思っております。本日、大臣御出席でいらっしゃいますので、ぜひお願い申し上げます。

 さて、本題に入ります。

 労働基準法についてです。

茂木委員長 答弁はいいんですか。

川条委員 答弁、構いませんか。ありがとうございます。

舛添国務大臣 厚生労働大臣の所管の問題は山ほどありますが、百問題があれば、百必ず着実に実行してまいりたいと思います。

 原爆症の認定の問題につきましても、きちんと今取り組んでおりまして、専門家による検討会、この検討会にはいろいろな意見の方を入れて、政府寄りとかどっち寄りということではありません。また、今おっしゃられた、自民党、与党の検討会の状況についても、検討チームの状況についてもよく存じ上げております。

 どういう科学的知見で原爆症の認定をやるのか、被爆地からの距離なのか、それから症状なのか、こういういろいろな難しい論点について、今、精力的に検討をいただいておりますので、その結果を待ち、また寺田・川条チームの精力的な結果を待ちまして、きちんとした対応をとっていきたいと思いますので、どうか御安心くださいますようにお願いいたします。

川条委員 ありがとうございます。

 御答弁いただけないものと思っておりましたら、すばらしい答弁をいただいて、本当に、寺田先生、また河村先生、そして患者の、原爆症の皆様方も、非常に心強い思いをされておられることと思います。ぜひこれからもよろしくお願い申し上げます。

 労働基準法について質問させていただきます。

 まず、政府に簡潔に答えていただきたいんですが、労働基準法の改正というのは、大きな流れで見れば、少子化対策会議とかによる長時間労働の是正とか新経済成長戦略の実現に向けた生産性向上の取り組みの一環として、国家戦略という視点から働き方を見直そうよ、そういった視点で取り組んでこられたことと解釈しております。

 子供を育てやすい社会というものをつくるために、今回、政府案において配慮した点、これを一点伺いたい。それからもう一つ、子供を産み育てる前に、夫婦生活をしっかりと充実させていかなければならないけれども、この障害となっているのがサービス残業なんです。このサービス残業を減らす取り組みについて、政府側の御意見を、短い時間で承りたいと思います。

茂木委員長 青木労働基準局長、簡潔にお願いします。

青木政府参考人 今般の労働基準法改正法案の中で、実は、年次有給休暇についての改正をお願いしております。現行では、これは日単位以上で取得することになっておりますけれども、特に子育て世代の女性から時間単位の取得の希望があったということも踏まえまして、この時間単位での年休取得を可能にするという改正をお願いしているところでございます。

 年次有給休暇は、労働者の心身の疲労を回復させて、ゆとりある生活の実現にも資するということでありますけれども、家事、育児、子供の行事にも、何に使ってもいいわけですので、使えるということで、日単位で取得する、一日で取得する労働者も多いということから、こういうことをお願いしているわけでございます。

 そういう意味で、子供の学校行事だとか通院だとか、あるいは多様な目的で活用できるようになりますので、女性が安心して子供を産み育てる社会とするためにも有用だというふうに考えております。

 また、サービス残業についてのお尋ねでございますけれども、このサービス残業は、私どもは賃金不払い残業というふうに呼んでおりますが、これは労働基準法に違反する、あってはならないものでございます。

 厚生労働省としては、平成十五年五月に、賃金不払残業総合対策要綱というものを定めまして、対策を進めてまいりました。やはり、企業全体として労使の主体的な取り組みをしていただくということが大事ですから、これを促す。それから、違反しているものについてはきちんと監督指導をするということで、これを重点的にやっていくということで対処をいたしているところでございます。

川条委員 御答弁ありがとうございます。

 違反しているものについては、見えているものよりはるかに多いと思いますので、ぜひ厳正な取り締まりをしていただくようお願い申し上げます。

 先ほども述べましたように、この労働法制の改正というのは、マクロな視点から見たら、小泉改革の先に明るい未来が見えるという国家像を実現させるための法整備の一環として行われているものと思っております。この位置づけから見ると、人口減少社会にまずしなければいけないことは、一つは少子化対策、労働力不足に対応して、二つ目、男女共同参画、これを進める必要があります。

 その際、家庭外の仕事については労働三法で守られているが、家庭内の労働の位置づけについては規定すらない。これが問題なんです。いわゆる主婦の仕事である家事、育児、介護といった、家庭内の、お金では評価されないアンペイドワークと呼ばれる仕事についても労働問題の一環として抜本的に見直す必要があります。

 それで、第二回世界女性会議採択文書の中の有名な言葉、これは、婦人は世界の人口の五〇%、公的労働の三分の一を占めて、全労働時間の三分の二を占めているにもかかわらず、世界の所得の十分の一しか受け取っておらず、世界の生産の一%しか所有していない、この言葉は典型的なものです。

 日本でもいろいろな統計がありますが、有業女性の家事、育児の時間は三時間弱、専業主婦だったら八時間、一方で、男性は三十分弱という数字が出ています。男性と同じように働く女性がふえた近年の状況下で、女性が仕事を、結婚とか妊娠とか出産などによってやめる大きな原因になっていて、そのことが晩婚化、未婚化を進める大きな要因になっています。

 九七年、経済企画庁がアンペイドワークを貨幣評価して、約百十六兆、対GDP比二三%、その八五%を女性が担っているという試算も出ています。かつては家内労働として完結し、その中で道徳的に評価されていたものが、貨幣経済と近代資本主義の中で評価が抜け落ちてしまっているのがこのアンペイドワークと言われている仕事だと思っています。

 一例ですが、同じ掃除も、家の中ではアンペイドワーク、家の外では掃除担当という仕事になります。料理も子育ても介護も、家庭外では調理師、保育士、介護士として評価されるわけです。独身の男性だって、クリーニングや外食など、お金を出してサービスを買ったり、みずから行っているわけです。長時間労働の帰宅の後、育児は不可能という男性のために、ワークライフバランスなどという言葉で、ゆとりをという議論をするよりも先に、何時に帰宅しても育児は必要不可欠という現実の生活を踏まえて、アンペイドワークを評価することによって抜本的解決を図るべきだと私は考えています。

 その点で、民主党案については非常に生ぬるいと思っています。労働三法や育児・介護休業法などを初め、人口減少時代に対応した効果的な施策を打ち出すためにも、仕事と生活を分けて、生活の中にアンペイドワークを位置づけるのではなく、生活を維持するために必要な、貨幣では評価されていないワークという概念を導入して、その評価を年金や社会保障制度の中で考えていく必要があると、これは私、個人的に思っています。制度ができていないものについて担当者はもちろんおられませんので、答弁は求めません。しかし、制度のないところにこそ救いを求めている人がいるということを念頭に置いて、今後の課題としていただきたいと思います。

 次に、民主党案について、労働契約法案について伺います。

 先ほど井上議員の質問にもございましたが、答弁はいま一つ不明確でございました。どういうことかというと、民主党案第三条第四項の規定について、本当に均等な待遇が図られるのか、業務の内容によって、例えば、今、一例を出しますよ。これで本当に均等な待遇が図られるのかどうか、ちょっと一点お伺いしたいと思います。具体例を出します。

 タクシー会社の事務職、これはパートじゃなくて一般正社員。日中八時間乗車の運転手、これは正社員。それから、従来どおり、夜間勤務のある運転手、これは正社員。全員正社員の中で、どういった均等待遇を図るのかお伺いしたい。具体的に答えてください。

細川議員 まず、前提といたしまして、三条四項は、就業の実態に応じ、均等な待遇が図られるべきというふうに規定しております。つまり、就業形態が異なっていても、就業の実態に応じて均等な待遇の確保が図られるべきだという意味でございます。したがって、労働者間において、合理的な理由のない差別扱いが禁止をされるということになります。

 そして、このことを別の言い方をいたしますと、労働者が従事をしている業務の差異と労働者の待遇の差異との間に合理的な関連性がある場合には、均等な待遇の確保が図られているということになります。これが趣旨でございます。

 今タクシーの会社の問題を出されましたが、事務職と、それから昼間の運転手さん、それで夜間と。私どもとしては、まず、事務職の人の中で実態に応じた均等待遇が必要だ。それから、昼間の運転手さん同士の中でも、これは均等な待遇が必要だ、仕事内容が同じなら。それから、夜間の運転手さん、これも夜間の運転手の中で差別があってはいけない。こういうことになります。

 それで、全体的な均等はどうか、こういうまた御質問があったかと思いますけれども、それは、事務職それから運転手、いろいろ、知識とかあるいは技能、それからどういう責任があるかとか、あるいはまたその仕事が精神的にどういうふうな疲れがあるかとか、疲労度だとか、そういうことを総合的に勘案して、それが差別になるかどうかということを判定しなきゃいかぬということでございます。

川条委員 せっかく御答弁いただいたんですが、非常に漠然としていてわかりにくい。まずもって、何をもって合理的と言うのか、私にはよくわかりません。

 それから、事務職の中で均等待遇を図る、運転手の中で均等待遇を図る、夜間勤務の運転手の中で均等待遇を図る。これだったらどこの会社でもやっていることなんですよ。今と全く変わらないんですよ。

 今問題になっているのは、事務職だけをアルバイトにしてコストを下げる、そういった人たちがワーキングプアと呼ばれている。そういうことに対して民主党案は出してきたと胸を張って言われるのであれば、事務職であっても八時間勤務のタクシーの運転手であっても夜間勤務の運転手であっても、労働は労働なんですよ、同じなんですよ。

 均等待遇、どのように均等に扱うのか、やはり具体案を示していただかなければ先が見えませんので、ぜひ具体案を示していただきたいと思います。

茂木委員長 先ほど答弁をされたことと重なるようですけれども、もう一度されますか。

川条委員 では、結構です。もう一度と思ったんですけれども、時間がないので次に進ませていただきます。

 転勤について、民主党案では、第二十七条において、「労働者の転居を伴う勤務地の変更については、使用者は、」「当該労働者と協議の上、その同意を得るとともに、労働者代表と協議しなければならない。」ということになっています。

 当該労働者のみならず労働者の代表との協議が必要というところに、私はすごい違和感を覚えるわけですよ。けれども、まず、現実、実際の業務や実務や判例ではどんな取り扱いになっているのか、これは政府の方にお伺いしたいと思います。その上で、民主党の方にお伺いしたいことがありますので。

青木政府参考人 転勤についての裁判例でございますが、これについて、権利濫用についての判断を示した東亜ペイント事件最高裁判決というのがリーディングケースとされておりますけれども、これにおきましては、労働協約及び就業規則に業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあるということ、それから、現に全国に十数カ所の営業所などを置いて、その間において現に従業員の転勤を頻繁に行っているということ、それから、入社した労働者と企業との間で労働契約が成立した際にも勤務地を限定する旨の合意がなされなかったという事情のもとで、労働者の個別的同意なしに当該労働者の勤務場所を決定して、これに転勤を命じるという権限を有することを認めているというところでございます。

川条委員 今お伺いしましたように、実際の実務や判例では、労働者代表との協議というのはもちろんのこと、当該労働者の同意もルールとしては求められていませんよね。もちろん、転勤に当該労働者の意向が配慮される例というのはあってしかるべきだと私も思います。けれども、民主党案だったら、当該労働者のみならず労働者の代表との合意が必要になって、私は行き過ぎだと思うんです。

 配置転換というのは、グローバル社会での企業戦略の遂行という目的を達成するために、それから事業活動の変化に対応するためや労働者自身の教育、育成のため、こんな、全部含めた総合的な観点から広く行われていることなんです。

 ちょっと想像してみてください。医局制度が壊れて、地方に医師を派遣することができなくて、地方の医師不足が顕在化した例もあるじゃないですか。転勤拒否が認められたら、労働力不足の問題が医師不足と同じように、医師不足と同様のプロセスを持って大きくなっていく、それがさらに地域間格差の増大につながっていくということも考えられるんじゃないですか。

 しかも、民主党案だったら、転勤だけじゃなくて、同じ規定が出向とか転籍についても定められているのは、企業に労務管理上の著しい負担を強いることになると思います。

 この点について、民主党の提出者の御見解を求めます。

 また、当該労働者が転勤を希望して、さらに、その場合でも労働者の代表が転勤を拒否しろと指示した場合、どういう結果になるのか。そこについても教えていただきたいと思います。

細川議員 民主党案では、住居の転居を伴うような配置転換については本人の同意が必要ということでございます。本人の同意がなければ、これはだめでございます。

 しかし、本人の同意があっても、使用者と労働者の間はやはり力関係が異なりますから、使用者の強い力によって労働者の方が同意せざるを得ないような、そういうことも十分考えられますから、そういう意味では、労働者の多数と協議をしなきゃいかぬ、こういうことになっているんです。協議なんです。

 したがって、先ほどちょっと出ましたように、組合の方が、労働者の多数と話し合いをして、だめだと言われても、本人が同意していれば、これは認められるということでございます。

 それから、例えば入社契約のときに、会社の方で変更権を留保しているような場合、転勤することをこの会社のとおり認める、そういう意味での、会社側の変更権を留保しているような場合には、これは当然労働者の方はそれに従って転勤せざるを得ない。しかし、その場合も、多数の労働者の方、その方と協議をしなければいけないということに規定をいたしております。

川条委員 御答弁ありがとうございました。

 ただ、ちょっと納得いかないのが、多数の労働者との協議。本人の同意があれば、労働者との協議がうまくいかなくても本人の同意が優先されるという点では納得いきましたが、そこに何でそんな不要なプロセスを一つつけ加えなければいけないのか、やはり私はどうしてもちょっと納得がいかないんです。

 その次に、私、さっき井上議員の質問にもあったんですけれども、解雇の制限についても伺いたいと思います。

 井上議員とは別の視点で私はちょっと思っているんですけれども、政府案は、解雇権の濫用に当たる部分は無効という権利濫用法理にのっとってできているんだけれども、民主党案では、文言上は解雇が厳しく制限されている。しかし、今の状況で、人件費のコストが、民主党案だったら、最低賃金法でまた大幅に上がりますよね。そうしたら、解雇はできない、人員整理の措置がとれない。そうしたら、中小の足腰の弱い企業は廃業とか倒産に至ってしまいますよ。こんな企業がふえたら、かえって社会に悪影響を及ぼすんじゃないかと思います。その点について御見解をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

細川議員 解雇というものは、労働契約を将来に向かって解約する使用者の一方的な意思表示であり、労働者にとっては経済的、社会的に大変な不利益をこうむるものでございます。また、解雇の効力についても、判断基準があいまいなままでありますと、紛争の長期化ということにもなります。

 そこで、解雇理由の正当性の判断に対する予測可能性を向上させまして、紛争の予防、そして早期の解決をするために、解雇の基準を法律上明確にする必要があると考えて、解雇に関する条文を置いたのでございます。

 このような条文を置くことによりまして、解雇についての予測可能性を向上させ、労働者の保護につながりますが、民主党案では、経営上の理由による解雇については一定の要件のもとに認めることにしておりまして、やむを得ない場合にまで人員整理ができなくなるわけではございません。したがって、廃業、倒産に至る企業が増加するとは考えておりません。

川条委員 お話を聞いていましたが、本当に最後の最後になって解雇が許されるというのでは企業の経営は成り立たぬわけですよ。やはりいろいろな段階があって、その段階に応じた対策を企業としてもとれるようにしなければいかぬ。そういう点では、最後の最後にやむを得ない、倒産整理に至る直前まで許されないというのは現実に即さないんじゃないかと私は思うんですよ。

 最後に、もう時間もないので、最賃法の改正についてお伺いしたいと思います。

 民主党は、全国最低賃金八百円、全国平均千円、三年後には最賃千円を目指すと主張しておられますが、最低賃金はすべての労働者に一律に適用されることから、その水準については慎重に検討する必要があると考えます。特に、地域経済が厳しい地方で、八百円、あるいは、もっと言ったら、千円という水準が妥当と言えるんでしょうか。

 平成十九年度の地域別最低賃金額が最も低いのは秋田、沖縄、これは時給六百十八円です。仮に年間労働時間を二千時間としたら、これらの地域の事業主にとっては、従業員一人当たり、最低賃金が八百円だったら三十六万四千円の負担増し、最低賃金が千円になったら七十六万四千円の負担増しになるわけです。三人雇用している事業所だったら、年間賃金負担増しは、八百円だったら百万円を超える、千円だったら二百万円を超えてしまうんです。

 一方、ちょっと想像力を働かせてみてください。中小企業白書によったら、我が国の事業所の小規模事業所の数というのは二〇〇四年で七六%。ちょっと想像してみてください。商店街で二人か三人の従業員で経営を行っている事業所にとって、どれだけ大きな負担増しになるんでしょうか。日本の経済を支えてきたのは中小企業だと言っても過言ではありません。その経営に悪影響を与えるような大幅な賃金増しというのはちょっと問題があると考えます。

 民主党の提出者の皆様は、法案提出に際して中小企業の声を聞かれたんでしょうか。仮に、民主党さんが主張するように全国最低賃金が三年後に千円となった場合、厳しい環境にある地方の小規模事業所、本当に二人や三人でやっている、おばちゃん、おっちゃんだけの商店街なんかは負担増しに耐えることができるんでしょうか。さらに絶望的な状況になることが考えられるのではないでしょうか。お答えいただきたいと思います。

宮澤委員長代理 申し合わせの時間が過ぎておりますので、山井提出者、簡潔にお願いいたします。

山井議員 川条議員、御質問をありがとうございます。

 ある意味で川条議員がおっしゃるとおりで、この最賃の引き上げというのは、中小企業の支援策と当然セットでやっていかねばならないということを民主党も考えております。

 実際、アメリカでは、二年間で五・一五ドルから七・二五ドルに最賃を上げていく、それとセットで中小企業の支援を段階的にやっていって、まさに中小企業に悪影響を与えないように、無理なくやっていくということになっております。

 具体的には、民主党案においては、仮に全国最低賃金が八百円に上がった場合、民主党としては、従業員百人未満の企業における賃金増加額は月額で約百五十九億円と見込んでおります。年に換算すると千九百億円になります。その意味では、中小企業に対する支援はいろいろな方策があると考えますが、民主党は少なくとも、千九百億円規模の中小企業対策を別途行い、セットで行ってまいりたいと思います。

 そして、もう一つ加えさせていただきますが、根本的に、今までは、先進国の中で日本よりアメリカの方が最賃が低かったわけです。ところが、議会の中で民主党が勢力を持ったことにより、アメリカではこの最賃が大幅に、先ほど言いましたように、五ドルから七ドルに一・五倍上がって、これで、世界の先進国の中で日本の最賃は最低になっております。

 先ほど川条議員は、慎重にやっていかないとだめだということでありましたが、慎重にやって毎年一円とか二円、そういうことをやっているうちに、先進国の中で日本の最賃は最低になってしまって、その結果、ワーキングプアが生まれ、格差社会となっているわけであります。その意味では、政治のリーダーシップが今こそ求められている。

 そのような趣旨で、三年後に千円を目標とする最賃ということを法案で提出させていただいております。御理解をいただければと思います。

川条委員 御答弁ありがとうございます。

 本当はもっと聞きたいことがいっぱいあったんですけれども、時間がないので、感想だけ述べさせていただきます。

宮澤委員長代理 簡潔に。もう時間が過ぎておりますので。

川条委員 まず、中小企業対策といっても、三年間で具体的に何をするのか私は聞きたかった。それから、千九百億の財源はどこにあるのか聞きたかったんです。それと、日本とアメリカと、産業別の、大企業、中小企業、小規模事業所のパーセンテージがまた違うじゃないですか。そこも聞きたかった。その点を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

宮澤委員長代理 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、労働契約法案、最低賃金法改正案を中心に質問してまいります。

 まず、労働契約法案について伺います。

 政府案の個々の規定の内容につきましては、さきの通常国会におきまして既にお尋ねをいたしております。本日は、法案のねらい、また基本的な考え方につきまして確認をいたしたいと思います。

 就業形態や就業意識の多様化が進みますとともに、成果主義賃金など、労働者ごとに個別に労働条件を決めるケースがふえる中で、労働条件をめぐる紛争、特に、会社対従業員、個人という形の紛争が構造的にふえています。

 これまでの我が国の労働法の体系は、大まかに言えば、最低基準のみを労働基準法で定め、そこから上でどのように労働条件を決めるかは、ある意味、労使間の話し合いにゆだねる、そのために労働組合法などによって会社対組合の協議のルールをつくるという考え方であったかと思います。そして、この会社対個人の問題は、いわば法律の空白地帯となり、そこを裁判の判例がカバーしてきたと言えるかと思います。

 しかし、裁判所の判例を普通の人や会社がフォローし続ける、これは大変難しいことでございます。人々が安心して働くために、やはり会社対個人の関係につきましても、基本的なルールを法律にして定めるべき時期に来ていると考えます。また、そのルールはわかりやすく、労使双方が理解し納得できるものである必要があると考えます。

 政府案も、そのような認識のもとに提案をされていると思いますけれども、政府案の労働契約法のねらい、基本的な考え方をお伺いいたします。

青木政府参考人 政府案のねらい、基本的考え方は、まさに委員がおっしゃったとおりでございますけれども、個々の労働者と使用者との間の紛争が非常に増加基調でございます。安心して労働者が働くことができるように、基本的なルールを明確にすることが必要であるというふうに、おっしゃったとおりでございます。

 このため、労働契約法案では、労働契約は労使当事者が対等の立場における合意に基づいて締結されるべきという契約の原則、理念、そういうものを定めたり、あるいは、労働契約の成立、変更は労使当事者の合意が原則で、就業規則による労働条件の変更は合理的なものであることを要するなど、労働契約に関する基本的なルールを明確化したものでございます。

 これによりまして、労働契約に関する基本的なルールが周知をされまして、使用者の合理的な行動が促されるということになるだろうと思いますし、また、そういう意味で、紛争の未然防止に資することとなるというふうに思っております。結果的には、最終的には、労働者が安心、納得して働くことができるようになるというふうに考えております。

古屋(範)委員 労働者が安心し、納得できるための本法律案の一日も早い成立を望むところでございます。

 次に、民主党案につき質問いたします。

 民主党案は、政府案と似通った規定もございます。しかし、全体としては、実務から大きくかけ離れた、問題のある規定があると考えております。特に目につきますのは、労働契約の締結や変更が、さまざまな局面で使用者に書面による明示を義務づける、そういう手続の規定が多いことであります。

 具体的に申し上げますと、まず第八条第二項、募集、採用時の健康診断は、健康診断項目ごとに当該健康診断を実施する理由を書面明示しなければならない。あるいは第十二条第一項、試用期間を設定するときは、試用期間の期間や本採用のための適格性を判断する基準を書面明示しなければならない。第三十八条第二項には、有期労働契約を締結するときは、契約期間、期間の定めをする理由、期間満了後における更新の可能性の有無、更新するしないの判断基準などを書面明示しなければならないなど、枚挙にいとまがないわけでございます。そして、書面明示を怠れば、例えば労使双方とも有期労働契約ということで一たん合意していても、一律に期間の定めのない労働契約とみなされてしまう仕組みとなっております。

 もちろん、労働条件の取り決めをめぐって、後から言った言わないの争いになることも多いので、大事なことはできる限り書面で確認し合うということが望ましいわけであります。私もこれには一般的には賛成でありますし、現に政府案にその旨の規定も盛り込まれております。

 しかしながら、民主党案のように、会社が書面明示を失念したばかりに、労働期間の定めがなくなったり、いきなり本採用になってしまうというのは、少し行き過ぎではないのか。人事部門また総務部門が整った大企業ならいいのですが、中小零細企業、たった一人で、あるいは経営者の妻がこうした総務や経理万般を任されている、そういう企業も多いわけでございます。中小企業の現場にこの規定を適用される場面を思い浮かべますと、やはり使用者のミスに対して制裁が重過ぎるのではないか、このような感がいたします。

 労働契約内容の書面確認については、政府案のように、まずはできる限り書面確認しようというところから始めて、周知啓発を進めることによって徐々に実務に浸透させていくというやり方が現実的ではないかと考えます。この点に関しまして、民主党の提案者にお伺いをいたします。

細川議員 お答えいたします。

 労働契約の内容の確認や書面で明示をするということは、労働者と使用者が対等な立場に立って、十分な情報と自由な意思に基づいて労働契約について合意をすることができるようにするためには、どうしても必要不可欠なものだと考えております。

 さらに、こうしたことによりまして労働契約の内容を明確なものとしておいたら、個別の労働紛争の発生自体を防止することもできますし、問題が生じた場合に、労働者、使用者の当事者が迅速かつ自主的に解決することができるようにするためにも、やはり明示ということは必要不可欠だというふうに考えております。

 ただいま先生の方からは、中小企業の関係などにも、こうしたルールについては徐々に浸透させるやり方が現実的ではないかというふうにも御指摘をいただきましたけれども、民主党案では、こうした点を踏まえまして、政府案の方では施行期日が公布から三カ月、こういうことになっておりますけれども、私たちは、ちょっと大幅にとって、一年間の余裕をとりまして、公布の日から一年以内に施行をする、こういうことにしております。

 民主党案が成立いたしましたならば、施行日までの間に十分な周知啓発を行いまして、十分に行き渡るようにと考えておりまして、中小企業、零細企業がついていけるのかという御懸念はないのではないかというふうに私どもは考えております。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

古屋(範)委員 ただいまお答えいただきましたけれども、やはり懸念はあると考えます。それも、一年以内に果たしてそれが周知徹底、また実行可能なものなのか、やはりこれは現実的ではないな、この感が否めないわけでございます。

 次に、最低賃金法改正案についてお伺いをしてまいります。

 さきの通常国会では、政府が提出をいたしました最低賃金法改正案について議論が行われたところでございます。私としても、この政府提出案につきまして、三十九年ぶりとなる抜本的な改正である、働く人々のセーフティーネットとして十分に機能し、所得格差の是正に資することができることを期待しているところでございます。前任の柳澤大臣からも、最低賃金の引き上げに取り組む強い御答弁もいただいております。

 改正法案につきましては、現在こうして審議が行われておりますが、今年度の最低賃金額の改定につきまして、昨年の時給平均五円だったものが十四円という例年を上回る引き上げが実現したものと考えております。今後もこの最低賃金の引き上げに取り組まれる大臣の御決意をお伺いいたしたいと思います。

舛添国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、まさにセーフティーネット、安全網としてこの最低賃金がある。そして、ことしは、前年の五円に比べて十四円上がった。

 私は、経団連とも連合とも常に議論をし、常に意見を交換しております。政労使一体となって経済成長を図りながら、その果実をきちんと働く人たちに与える、それは当然の権利である、そういう思いで、長期的な戦略も持って政労使の対話を進めているところでございますので、ぜひ改正案を実現させていただいて、本当に働く人たちにとって安心できる日本の国づくりをしたい。福田内閣のスローガンは希望と安心でございます。

古屋(範)委員 大臣の御決意を伺うことができました。やはりこうした成長の果実が、大企業から中小へ、そしてそれが一人一人の働く方々へ、トリクルダウン、行き渡っていくことを私も望むところでございます。

 次に、民主党案についてお伺いをしてまいります。

 働いている側にとっては賃金が高い方がいいに決まっております。最低賃金は、罰則をもってその支払いを義務づけるものでございます。現下の国民経済あるいは地域の経済情勢といったマクロ的な視点も含めて、慎重な検討の上に決定されるべきものと考えます。

 民主党におかれましては、各地域の最低賃金について全国平均千円を目指すとして改正法案を提出し、この法案につきましては、地域別最低賃金の決定の考慮要素から、労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払い能力を削除することとしております。

 しかしながら、これは極めて問題のある内容と考えます。特に、通常の事業の賃金支払い能力を削除するのであれば、例えば、経済情勢が悪化している中で、厳しい立場に置かれた中小零細企業の経営実態を全く無視した水準にまで最低賃金が引き上げられてしまう、こういうおそれがあると思います。民主党案は、最低賃金の決定要素から通常の事業の賃金支払い能力を削除することで、中小企業を初めとした企業経営に悪影響を及ぼす可能性があると考えます。

 なぜ賃金支払い能力を無視して最低賃金を決定しようという提案をなされたのか、これについての御説明をお伺いいたします。

細川議員 現行の最低賃金法に基づいて決定される最低賃金額は、委員が今お話しされましたように、労働者の生計費に加えて、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払い能力をも考慮するというようにされております。

 しかし、これらのことを考慮することによって、労働者の生計費の高い都市部におきましては、生計費を下回る最低賃金額の設定を許容する、こういうような現状となっておりまして、労働者の最低限度の生活水準を保障するものではないということは否定できないところでございます。

 民主党案におきましては、最低賃金額は、最低限、労働者とその家族の生計費程度の額となるようにするために、全国最低賃金及び地域最低賃金の基準につきましては、類似の労働者の賃金、それと通常の事業の賃金支払い能力、このことについては規定を取りまして、全国、地域最低賃金は労働者及び家族の生計費、これを基本として定めなければいけない、こういうことにしたところでございます。

古屋(範)委員 今お答えいただきましたけれども、労働契約法案、最低賃金法案について、政府案また民主党案の質問をさせていただきましたけれども、やはり政府案の方がより現実に即した適切な内容であると考えます。政府提出の労働三法をぜひとも早期成立させるべき、このことを最後に申し添えておきたいと思います。

 引き続きまして、今般発表になりました調査結果について、二問質問をさせていただきたいと思います。

 先週金曜日、十月二十六日に厚労省より、周産期医療ネットワーク及びNICU、新生児集中治療室後方支援に関する実態調査結果が公表されました。この件につきましてお伺いいたします。

 私は、昨年の十二月でありますけれども、本委員会におきまして、周産期医療ネットワークが未整備であった奈良県での妊婦死亡問題を踏まえまして、この一因としてNICUが満床であったことを指摘いたしました。そして、周産期医療を取り巻く厳しい状況の改善に向けて、NICUの整備状況、実質どのくらい機能しているのか、全国的な調査をすべきと訴え、局長からは早急な全国調査をしていくとの御答弁をいただいたところでございます。そして、今回ようやくこの調査結果が発表となりました。

 その中で驚くべきことは、妊婦や新生児の搬送受け入れ状況を見ますと、リスクが高い妊婦や新生児に二十四時間対応する各地の総合周産期母子医療センターを対象に実施されたものであるにもかかわらず、十七年度中、回答施設の約七割が母体搬送を断っています。新生児の搬送も六割が断った経験があるということが明らかとなりました。

 また、消防庁から発表された調査結果でも、昨年、救急隊が妊婦を搬送しようとして医療機関に三回以上受け入れを拒否されたケースは三十都道府県で六百六十七件、一回以上断られた妊婦は昨年の一年間で二千六百六十八人いたことがわかりました。

 この件につきまして、まず、大臣の率直な御感想をお伺いいたしたいと思います。

舛添国務大臣 私も現場を見まして、産婦人科の中でも新生児のお医者さんが足りない、NICU、これが極めて未整備である。そして、そこでケアを受ける生まれた赤ちゃん、これはかなり長期間いないといけない。お母さんもそうです。絶対的に不足していますね。ですから、何とかこの側面をよくしたいというふうに思っています。

 それから、いわゆる妊産婦のたらい回しということですけれども、これは調査すると、一回だけでちゃんと次に搬送された方が多い。しかし、一番問題は、正常分娩は問題ありませんが、近くで処置できない、さらに高度の周産期のセンターに行かないとだめだ、そのときに断られるということが非常に多い。見ますと、一番の多い理由は、処置が困難だ。つまり、その能力を持ったお医者さんとかチームとか、オペができない、それからまさにオペ中である、こういうことですから、私はここにメスを入れるべきだというふうに思っていますので、この結果をもとにして、きめの細かい手を打っていきたいと思います。

古屋(範)委員 最後の質問になりますけれども、今、大臣の救急医療に対する強い御決意を伺うことができました。

 今回の厚労省の調査結果を見たときに、新生児の搬送依頼を断ったセンターの九割が、集中治療室、NICUの不足を理由に挙げています。NICUの利用率は、五十三施設が回答しておりまして、九割、四十九施設が八〇%を超える、そのうち六施設は一〇〇%を超えている。大半の施設が常にNICUが不足であるということでございます。

 また、NICUの後方病床を四十一以上持っているセンターは一施設しかない、約八割のセンターが十から三十以下にとどまっている。自治体のNICU後方病床の充足状況に関する所管部局の意識調査では、回答した三十自治体中八割以上の自治体で不足していると回答しております。

 その主な意見といたしまして、呼吸管理可能な慢性期病床の不足、また医療スタッフの不足、経済的支援の充実の必要、在宅ケアの支援体制の必要、後方支援にかかわる医療機関、後方支援施設との連携体制の必要等の意見が出されております。

 昨年十二月の質問の際にも、NICUが満床に近い状態である、一年、二年あるいはもっとそれ以上長きにわたりNICUにいる長期の患者がいるということを指摘させていただきました。危険な状態の妊婦の受け入れを要請されながら、総合周産期母子センターでNICUが満床、人手不足のために受け入れを断らざるを得ない、こういうケースが全国にあるわけであります。

 この調査結果に基づき、やはり厚労省は、周産期ネットワークの中心となる総合周産期母子医療センターの設置、各都道府県に任せ切りではなく、またその整備ができるよう指導助言を行うべきと考えます。

 私がここで申し上げたいのは、やはり第一義的にはNICUが不足をしている、そしてその次に、急性期の未熟児、新生児の治療、救命という本来のNICUの使命を果たすために、呼吸管理も可能である、長い間慢性的な集中治療を必要とする患者のための後方支援施設、これが必要だと考えているわけでございます。NICUの後方支援施設、この整備拡充につきまして、厚労省の御所見をお伺いいたします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただきましたように、先般公表いたしました周産期医療に係る実態調査によりまして、今お話のありましたようなNICU病床の不足、またその後方支援の体制の整備の必要、こういったものが浮き彫りになったところでございます。

 もうちょっと具体的にその原因等を分析してまいりますと、NICUの病床利用率が高い、あるいは満床で搬送ができなかったということにつきましては、NICUの病床数自身の問題、また医師を初めとする医療従事者数の問題、それから医療機関の経営上の問題、こういったさまざまな問題が考えられるわけであります。

 まず、このような状況を改善するために、最初のポイントといたしましては、各地域における医療施設それから福祉施設の適切な整備あるいは連携というものの構築をする必要がありまして、これについて、各都道府県に対して、長期入院児の状態をよく精査した上で、現在存在する医療、福祉の資源の具体的な活用ということを検討してもらうように促してまいりたい、第一義的にそれに取り組みたいと考えております。

 また、これに加えまして、現在、省内の関係局、多々ございますが、関係各局におきまして、このNICU対応のための連携を強化しようということで、今具体的な対応策を検討している最中であります。さらにまた、重症心身とかそういう施設、あるいはNICU病棟から、それを在宅でケアしていくという方法も考えられないか、こういった検討もしているわけであります。

 なお、この問題につきましては、平成十八年の四月に診療報酬の改定をいたしまして、重症心身障害児施設を含めたNICU後方支援施設の運営に資するような入院医療管理料等の大幅な引き上げということは行ったわけでありますけれども、こういったことに加えて、今申しましたような対応をいたしまして、今後ともNICU長期入院児に対して適切に対応できるよう対策を講じてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 この後方支援施設の拡充、ぜひともお願いをしたいところでございます。

 先日も東京女子医大楠田教授より、女性の出産年齢が高くなっている、あるいは不妊治療、さまざまな理由はあろうかと思いますが、現実には低体重児がふえているわけでございます。そういう中にあって、産科、新生児医療、また小児医療、それぞれ成り立つような集約化とネットワーク化が必要である、そのようにもおっしゃっていらっしゃいます。私たちは、NICUの後方支援の拡充こそ、やはり救急医療の拡充につながるというふうに思っております。

 またもう一つ、最近の問題として、飛び込み出産が非常に多くなっているわけでございます。かかりつけ医がない、健診をしていない妊婦がふえているという問題がございます。なぜ健診が受けられないか。やはり経済的な理由が大きいかと思います。出産までに十三回から十四回受けなければいけない。一回一回、健診料は高いわけであります。そうした負担を軽減していかなければならない、そのためにもやはり行政による経済支援が必要、このように私どもも主張いたしまして、五回程度、各自治体において公費負担、無料健診が受けられるように、このことも取り組みをしている最中でございます。

 これにつきまして、おとといでありますけれども、調査結果が発表となりまして、この公費負担、無料健診の回数、全国平均二・八回でございます。まだまだ五回に届いていないのが現実でございます。厚労省、改めて市町村に徹底を求めたい、このように考えます。また、自分の住んでいる市町村内ではなく、里帰りなどで遠隔地に行って健診を受けた際にも、やはりこの制度が生かされるような仕組みを織り込んだ制度づくりを各自治体ともに確立をしていきたい、このように考えます。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

茂木委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川律夫でございます。

 まず大臣にお伺いしたいと思いますが、議案に入る前に、昨日の判決についてちょっとお伺いをいたします。

 戦時中に強制連行をされまして広島で被爆をいたしました韓国人の人たちが国などに賠償を求めました訴訟の上告審判決で、最高裁は国側の上告を退け、慰謝料などの四千八百万円の支払いを国に命じた二審の広島高裁の判決が確定をいたしました。

 戦後六十年以上経過した後にやっとこのような判決が出たこと自体、被爆者にとっては大変お気の毒なことでございます。しかし、在外被爆者とはこの原告の人たちだけには限らないわけでございます。

 そこで、今後、他の在外被爆者にも損害の賠償をすべきだと思いますが、大臣はどのようにお考えなのか。また、在外被爆者に広く被爆者手帳もきちんと交付をしていくべきだというふうにも考えますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

舛添国務大臣 今、細川委員がおっしゃいました昨日の最高裁判決、これは国としても厳粛に受けとめる、そして最高裁の指示どおり行動を起こしたいというふうに思います。

 委員御承知のように、いわゆる四〇二号通達、これによって非常な不便を強いられた。しかし、高裁の判決が先般出ましたので、平成十四年にはこれを通達しておりますから、今は海外に出られてもこういうことは起こりません。

 それから、御質問の、原告以外の方で同じような立場の方はどうするか。これは関係省庁とも緊密に連絡をとりまして、何ができるか、できるだけ国としてやれることをやりたいということで、今検討を開始したところでございます。

 それから、在外被爆者の手帳の発行の問題。今は日本に来られれば旅費を支給する。だけれども、私もブラジルの方にも、アメリカにおられる方、韓国の方、お会いしていろいろお話を聞きますと、どんどん御高齢になっていく、そうすると自分で日本まで来られるというのは大変ですから、何とか大使館でできないかなというようなことも含めて、これは法律も変えないといけないし、財源も考えないといけない。

 今、細川委員がおっしゃったように、もうちょっと早く、十年二十年早くしていたらよかった、先ほど中国の残留孤児の、皆さんのお力で本会議でも法案が成立しましたけれども、これももうちょっと早かったらよかったなと。しかし、たとえ今からでも打つべき手は打ちたいと思いますので、今自民党、公明党、与党PTがしっかりこの問題に取り組んでくださっておりますので、その結果をいただいて、私、厚生労働大臣としてもきちんと対応してまいりたいと思います。

細川委員 どうぞしっかり対応をよろしくお願いいたします。

 それでは、最低賃金についてお尋ねをいたします。

 ことしの中央最低賃金審議会は、八月十日、二〇〇七年度の地域別最低賃金の引き上げの目安を一時間当たり十四円とするなどの内容の答申を行いました。そしてその後、九月四日までに各都道府県の審議会では最低賃金が決まり、加重平均で十四円四十四銭の引き上げが決まったところでございます。

 この法案の審議の中で、最賃引き上げの必要性は、これはもう政府も与党も認めているところであります。しかし、この額では、これは余りにも低いのではないかというふうに私は思っております。そこで、この問題は、今回の法改正によって最低賃金がどれくらい底上げができるかという問題でございます。

 この前の通常国会の審議では、今回の法改正で最低賃金の決定基準に関して変わったことは九条三項のみということを確認いたしました。それは、「労働者の生計費を考慮するに当たつては、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」というふうにしたところでございます。

 通常国会での議論を聞きますと、生活保護と最低賃金を生活扶助基準と住宅扶助をもとに比較をしていたが、本来、これではまずい。例えば、通勤にかかる交通費は必ず支給されるものではありませんし、また肉体の消耗が激しい労働をすれば、それだけカロリーも消耗しますし、食費もかかり、平均的な食費とはやはり差が出るだろうというふうに思います。また、住宅扶助についても、特別基準で考えればさらに大きくなるものでございます。

 さらに言えば、生活保護には別途医療扶助というものがあります。病気になれば公費によって診療が受けられますが、政府案を見ますと、最低賃金を決める際にこれを考慮しているかどうかわからないわけでございます。医療扶助についてはもともと扶助金額が非常に大きい。例えば平成十七年は、生活保護受給者一人当たり医療扶助費は月額平均で七万五千六百四十一円でございます。これが一般の扶助基準に従って支払われる費用とは別に実費として支給をされております。

 医療費は高齢者と若年者とでは違うという指摘もあろうかと思いますけれども、十五歳から三十四歳の平均値でも二万二千六百九十二円ということになっております。単純に時間給に換算いたしますと、それでも百二十九円となります。もちろん、一般の労働者は健康保険に加入をいたしておりますので、三割負担ということで、三〇%を掛けますと三十九円、こういう数字になりますけれども、この数字が政府の資料には入っていないところであります。

 そこでお伺いいたしますけれども、生計費の中で医療費も考えるべきだ、生計費の中に医療費も考慮すべきであるというのは私は当然だというふうに思っておりますが、最低賃金しかもらっていない人が病気をしたらどうなるのか、当然医療扶助も加えて議論すべきではないかと考えますが、大臣、いかがでございましょうか。

舛添国務大臣 委員の御質問は、最低賃金、この考え方と憲法二十五条で規定された生活保護、これの整理をどうするのかということだと思います。

 生活保護の場合は、医療については現物を給付するということになっていますから、生活保護を受けられている方はもう現物でいくわけです。さあ、そこで、最低賃金の中に、先ほど住宅手当というのを入れられましたけれども、どこまでの要素を入れるんだろうか、これは極めて大きな議論があるところだと思います。私は、やはり概念として、生活保護という概念と最低賃金というのはちょっと違うのかな。

 ですから、民主党さんの案にあるように、本人と家族の生活を支える、ただ、生活というのはどこまで行くのかな。生活保護は現物給付という概念を持ってきています。ですから、これはもう少し国会においても御議論願えればと思いますけれども、私は、本当に困って、これは生活保護として支えないといけない人は、やはり現物給付というのは非常に、住宅手当を含めてですが、いい手だと思います。

 ちょっと長くなって恐縮ですけれども、私が海外で勉強しているときは、例えば本代といってお金を上げるんじゃなくて本が来るわけですね。これで何の生活も困らない、それを流用することもない。ちょっと一例ですけれども、わかりやすく言うと。

 しかし、では最低賃金の中に今言ったような要素を入れるのかどうなのか、これは私も今のところ入れた方がいいかというのは、実を言うと非常に悩んでいるところで、もう少し皆さん方と議論をしたいというのが今の立場ですけれども、生活保護と最低賃金、少なくともそれは概念は分けて考えた方がいいんじゃないか。

 したがって、今あえて答弁をしろというと、ちょっと医療費まで入れるのはいかがかなという気がしているというふうにお答えをしておきたいと思います。

細川委員 私は、この政府案の「生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」というこの言葉の持つあいまいさが非常に気になります。病気になればはっきりと生活保護以下の水準になってしまう、こういうことであれは、憲法二十五条の最低限度の生活を下回るということを容認するということにもなります。

 私は、整合性といったあいまいな表現ではなくて、もっと明確な表現にすべきではないかというふうに考えておりますけれども、これはいかがでしょうか。局長。

青木政府参考人 今委員が御指摘になりましたように、最低賃金の水準につきましては、三つの要素で第九条は規定されているわけでありますが、そのうちの一つ、生計費というところでございますが、こういった三つの要素を考慮して定めなさいと。具体的な水準については、公労使で構成されております最低賃金審議会、ここで具体的な水準、額を決めていくわけでありますけれども、その際にはこの三つを考慮しなさいということが規定をされているわけであります。

 今回、お触れになりましたように、生計費の考慮をするに当たって、では生活保護との関係をどうしようかということで、「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」、こういう要素についての配慮事項を規定したということでございます。そして、先ほど申し上げましたように、具体的な水準については審議会での審議を経た上決定をするということになっているわけでございます。したがって、この関係についてはこういうふうな、書きぶりとしてはそのような規定をしたということでございます。

 ただ、生活保護との関係でいえば、最低賃金は生活保護を下回らない水準となるように配慮しなければいけないという基本的な考え方でこういう規定をしたということでございます。

細川委員 民主党案では、全国最低賃金及び地域最低賃金につきましては、その決定の基準というのを労働者及びその家族の生活費、こういうふうにはっきりさせました。つまり、その基準は、単に労働者側だけではなくて、一人の子供の扶養を前提とした基準でございます。なぜならば、この最低賃金を独身者の生活費、生計費ということにすれば、これはもう結婚をしたりあるいは子供を産んだり育てたり、そういう余裕はなくなるわけでございます。

 私たちが提案しております、労働者が個々の人生を設計するためにも家族の生計費も含めて決定すべきだというふうに考えますけれども、局長はどういうふうに考えておりますか。

青木政府参考人 労働者の生計費というものをどういうふうに考えるかということだと思いますけれども、これは具体的にどのような労働者を前提として考えていくのか、そういう最低賃金の決定の仕方と関連する問題であるというふうに思っております。

 現在決定されている地域別の最低賃金というのは、年齢階層にかかわらず一律に決定されております。単身労働者も扶養家族を有する労働者もいずれも対象としております。それからまた、一般的には賃金カーブは入職時が最も低くてその後上昇していくということでございますので、こうしたことを前提とすると、最低賃金の決定に当たりまして、直接参考とするのは若年単身労働者の生計費とすることが適当ではないかというふうに考えております。

細川委員 次に、労働契約法に移ります。

 この政府案の労働契約法というのは、労働契約法の名前にも値しないような小さな法律になってしまっております。では、どの程度のものだったら名実ともに労働契約法と言えるのかという問いに対するのが、私たちが提案をしている労働契約法案でございます。

 政府案は本則が五章十九条しかございません。我が党の方は八章四十五条、本則のページ数を見ましても四倍程度になっているのでございます。

 過去のこれまでの政府の答弁では、労使が十分議論をして十分に納得してルールとして立法化していくのが適当ではないかというものをピックアップしたんだ、こういうふうに言っておりますけれども、つまり、労政審で労使で合意できたものだけを法案化した、こういうことのようでございます。

 ところが、労政審が大臣あて答申の対象といたしました労働契約法案要綱と今回の法案には相違がございまして、その点につきましては私が質問主意書を提出いたしました。この質問主意書を提出したその内容の点から、少し触れながら質問したいと思います。

 そもそも就業規則というのは会社が定めるものでありまして、合意に基づく本来の労働契約ではございません。ところが、その就業規則を労働契約とみなすような事態もあるということで、この労働契約法制の中に取り入れられております。といっても、労働契約法の目的に入れるというのは、就業規則の扱いを大きいものにしていく結果になりかねないというふうに私は思っております。

 この点、法案要綱の「目的」の箇所にはこういうふうに書かれております。「この法律は、労働契約の成立及び変更等に関する基本的な事項を定めることにより、」こういうことになっておりましたけれども、今度の政府の労働契約法案ではこういうふうになります。「労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係等を定めることにより、」、こういうふうに「就業規則」がわざわざ入ってきております。質問主意書に対する答弁では、意味するところは同一なものと考えるという答弁になっておりますけれども、どう見ても、「就業規則」という文言が「目的」に入るということは、この影響というものは大変大きいものだというふうに考えざるを得ません。

 お尋ねいたしますけれども、この「目的」から「就業規則との関係」を削るべきだと私は考えておりますが、これはいかがでしょうか。

青木政府参考人 労働契約法案第一条「目的」でございますけれども、これについては、実態的に労働契約法の中で定めております規定がいわば第二章以下で、第二章では労働契約の成立及び変更についてるる具体的な条文が規定されているわけでありますけれども、この「目的」においては、それを端的に抜き出してあらわすという作業をいたしたわけであります。そういうことで、この第二章「労働契約の成立及び変更」の内容を、今委員がお触れになりました「労働契約と就業規則との関係」という文言で表現しているものでございます。したがって、この文言がこの第二章の具体的な規定の解釈に影響を与えるものではないというふうに考えております。

 また、この第二章で具体的に定めております規定につきましては、判例法理に沿った内容でございます。したがって、労働契約の内容についても判例法理に沿った解釈がなされるものと考えておりまして、委員が御指摘のことではございますけれども、削除することは必要ではないのではないかというふうに思っております。

細川委員 次に、就業規則を新たに作成した場合のことについてお伺いをいたします。これは第七条関連でございます。

 就業規則が初めからあって、それを承知で就職した場合、それが合理的であって労働者に周知をされていれば労働契約とするということについては、私も理解できるわけでございます。民主党案では、使用者と労働者が合意したものと推定するというふうになっておりまして、反証を挙げて覆すことができるようにしておりますけれども、この点はまた後でちょっと議論したいと思います。

 しかし、ここで問題になりますのは、例えば、労働者が十人未満で就業規則がなかった事業所に新たに就業規則を作成した場合でございます。

 民主党案では、第二十五条で、この新たにつくった、新規作成の就業規則を就業規則の変更と同じように取り扱って、労働者代表との誠実協議、作成または変更の必要性、内容に合理性があれば、使用者と労働者が合意したものと推定をする、こういうふうにしております。

 政府案では、新たに作成した場合でも新規に採用された場合と同様に考えるのか、この点についてお伺いをいたします。

青木政府参考人 委員がお触れになりました労働契約法の七条、労働契約の内容と就業規則の関係を規定している条文でございますけれども、これは、既に就業規則が存在している事業場に新たに労働者が採用される場合などの労働契約の成立の場面において適用されることを念頭に置いているわけでございます。そうした場合に、個別の合意で労働条件を明確に取り決めていなかった場合の就業規則と労働契約の関係を定めたものでございます。

 それと、今御質問にありましたように、これまで就業規則を制定していなかった事業場において新たに就業規則を制定した場合についても、この第七条の規定は適用されるものというふうに考えております。

細川委員 次に、第十条のように、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」こう言い切ることは、民法の契約概念そのものを否定する、こういうことになるんではないでしょうか。

青木政府参考人 この十条でございますけれども、これは確かに、今お触れになりましたような規定ぶりをしているわけでございますけれども、まず、この労働契約法案におきましては、その前の条になりますが、第八条で、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」という合意原則をまず明確に規定しております。その意味では、委員が御指摘になりましたように、合意原則といいますか、民法の本来の原則をまず基本的に掲げているわけであります。

 その上で、就業規則による労働条件変更に関する最高裁判所の判例法理に沿って、原則として、まず九条で、使用者が労働者と合意することなく就業規則の変更により労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできないという旨を規定しております。

 さらに、この第十条で、一つには、変更後の就業規則が労働者に周知されていること、二つには、就業規則の変更が合理的なものであるという場合に初めて、労働契約の内容である労働条件というものは、変更後の就業規則に定めるところによるものとするというふうに規定をしているわけでございます。

 このように、労働契約法案は、労働条件の変更に関しまして、労働者及び使用者の合意を原則としつつ、現在の判例法理に沿ったルールとするものでございます。お触れになりました民法の大原則と相入れないといったものではないというふうに考えております。

細川委員 判例法理ということを言われましたので、その判例法理というのは多分、平成九年二月二十八日の第四銀行事件での最高裁判決が一応の結論になっていると言われております。特に合理性の有無については、次のとおりになっております。

 「右の合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。」というのが判例の内容になっております。

 これは、政府案と比較すると、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、他の労働組合または他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況の三要件はないんですけれども、法案のこの十条というのは、こうした三要件も同時に含まれているというふうに考えてよろしいんでしょうか。

青木政府参考人 御指摘になりました最高裁の平成九年の第四銀行事件判決でございますが、まさに、お触れになりましたように、変更の合理性の判断の際の七つの考慮要素というのを述べているわけでありますけれども、これは、内容的にお互いが関連し合うものでございますので、労働契約法案をつくった際には、したがって第十条にそれをあらわしているわけですが、関連するものについては統合して列挙をしようということで列挙いたしたものでございます。

 そのうち、お触れになりました変更後の就業規則の内容の相当性というものは、就業規則の内容面に係る制度変更一般の状況が広く含まれるものでございます。第四銀行事件最高裁判決で列挙されている考慮要素であります「変更後の就業規則の内容自体の相当性」のみならず、「代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況」あるいは「同種事項に関する我が国社会における一般的状況」、これも含まれるというふうに考えております。

 それからまた、労働組合との交渉の状況につきましても、同様に統合をいたしまして、交渉の経緯、あるいは、他の従業員、他の労働組合の対応についても、こういったことで整理をして規定をいたしたということでございます。

細川委員 次に、挙証責任の問題についてお伺いいたしますが、私の質問主意書におきまして、挙証責任の所在が明確でなかった点についてお尋ねをいたしました。これは十七条についてでございます。

 法案では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」ということになっております。この「やむを得ない事由がないとき」との表現だと、労働者を解雇することができないという法的効果によりまして利益を受けるのは労働者でございますから、やむを得ない事由がないということについて挙証責任を負うのは労働者であるんじゃないかというような解釈もなされる可能性があるんではないかということを質問主意書で指摘をしたわけでございます。

 そこで伺いますが、主意書への答弁書では、やむを得ない事由があることに関する挙証責任は使用者が負うということになっておりますけれども、これで間違いございませんでしょうか。

青木政府参考人 十七条に関する挙証責任でございますけれども、確かに、委員御指摘になりましたように、これについて利益を受けるのは労働者ということでございますけれども、十七条一項は、まさに解雇することができないということを規定しているものでございます。使用者が現実に契約期間途中で労働者を解雇しようとする場合の根拠規定とはなっていないというふうに考えております。

 実際に労働者を解雇するためには、従来どおり、その根拠規定である民法六百二十八条の規定にのっとって、使用者がやむを得ない事由があることについて証明しなければならないというふうに考えております。したがって、従来の証明責任の分担を変更するものではないというふうに考えております。

細川委員 ならば、私としては、民法の記述のように、「やむを得ない事由があるときは、」あるいは、やむを得ない事由がある場合でなければというような表現が明確で望ましいというふうに考えております。

 次に、これも質問主意書でただした点でございますが、安全配慮義務でございます。

 第五条の「労働者の安全への配慮」のところですが、ここでも労政審答申の対象とされた法案要綱とこの法案に違った点がございます。

 法案の要綱の第三の五では、「使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、労働契約に伴い必要な配慮をするものとする」となっておりますけれども、今度の法案の第五条では、「使用者は、労働契約により、」ということに違っています。「労働契約により、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」というふうに変わっております。「労働契約に伴い」というのが「労働契約により、」というふうに変わっているところでございます。

 しかし、質問主意書に対する答弁では、「労働契約に伴い」でも「労働契約により、」でも、意味するところは変わらないということでございました。私は、むしろ、安全に対する配慮に関する労働契約上の合意が必要となるという解釈がなされる可能性を憂慮したものでございましたけれども、答弁書では、そういうおそれはないというふうな答弁の内容となっております。

 意味内容が同一でありますならば、法案要綱どおり、「契約に伴い」ということでよいのではないかというふうに私は思いますけれども、この点はどうでしょうか。

青木政府参考人 安全配慮義務について、労働契約法案の第五条でございますけれども、これは、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、使用者が労働契約に付随して当然に安全配慮責任を負うということを規定したものでございます。これを示す表現として、御指摘のように「労働契約により、」という文言を用いたものでございます。

 これは、おっしゃったように、確かに審議会に諮問した法案要綱におきましては「労働契約に伴い」という文言を用いていたところでございますが、これは全く同様の趣旨でそういう文言を用いたわけでございます。法案条文を具体的に作成する段階になりまして、この意味内容をより明確にするため、「労働契約により、」という文言を用いることにいたしたものでございまして、そういう意味では意味内容が変わっているところはございません。

細川委員 同じ趣旨、意味内容が変わらないならば、要綱と同じように「伴い」というふうにすべきだと思います。

 それでは次に、出向についてお伺いします。

 政府案の第十四条についてでありますけれども、十四条の一項は使用者の出向命令権の行使を制約したものでありまして、この点については異論は全くないわけであります。しかし、二項の、出向の定義を定めた意味がわからないところでございます。

 私は、質問主意書で、この二項の定義だと、出向元が業として第三者に労働者を出向させる場合も含むというふうに読み取れて、職業安定法で禁止をしている労働者供給事業までをも含むように読み取られる危険性があるということを指摘したところでございました。この項がなくとも、特に出向について今回こういった定義をするということの意味があるとは私は思えないところでございます。

 この第十四条第二項を削除する、あるいは、業として行うものは除くというように変えるべきだというふうに考えますけれども、これはいかがでしょうか。

青木政府参考人 出向について、十四条一項、二項でございますが、一項については評価するというふうにお言葉をいただきましたが、十四条一項は、基本的に労働契約における内容、規定を、法的効果を書いてあるところでございますけれども、それについての出向の定義というものをここで初めて書いたということでございます。

 この十四条二項に規定する出向の定義の仕方でございますけれども、出向を使用者が労働者に命じて労働者を第三者に使用させて労働に従事させるということは、職業安定法の労働者供給に含まれるというふうに考えております。したがって、もし出向が使用者により業として行われるというような場合には、これは職業安定法により禁止されるというものでございます。

 したがって、出向の定義として、わざわざ業として行うものを除く旨を書かなくても、この法律の制定によって新たに業として行われる出向が認められるということにはならないというふうに考えておりまして、出向の定義をきちんと書いて法律関係が明確になるようにしたいということでこういう規定を置いたところでございます。

細川委員 私は、先ほど申し上げたように、むしろ削除するか、あるいは、業として行うものを除くというふうにしなければいけないんじゃないかというふうに考えます。

 次は、均等待遇でございます。これは、先ほども民主党案に対していろいろと委員の方から御質問があったところでございます。この均等待遇についてお伺いをいたします。

 現在、雇用格差が拡大をいたしまして、雇用の安定が揺らいでいるというふうな指摘が多い。その一因が、有期雇用の増大が挙げられているところでございます。

 一昨年の研究会の報告、研究会というのは、厚生労働省の中につくられた、今後の労働契約法制の在り方に関する研究会という学者の人が中心となった研究会でございますが、二十数回行われて報告書が出されております。

 この研究会報告書を見ますと、「第1 総論」の中の2、「(3) 総則規定の必要性」の中でこういうふうに書かれております。「労働契約においては、雇用形態にかかわらず、その就業の実態に応じた均等待遇が図られるべきことを明らかにすることが適当である。」と書かれてあるにもかかわらず、答申は「均等」が「均衡」に変わった上に、さらに検討事項になってしまったところでございます。その結果、有期雇用に関しても、この研究会報告書にあった「均等待遇」が抜け落ち、もちろん、法案には一言も書いていないところでございます。

 一方、パート労働法には、我々から見ますと不十分ではありますけれども、「均衡」が規定をされております。その第三条には、「適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換の推進に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、」こういうふうになっております。さらに、九条「賃金」のところでは、「事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金を決定するように努めるものとする。」というふうにあります。

 そこで、民主党案では、基本原則のところでこういうふうに書いております。「労働契約を締結し、及び変更する場合においては、労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ、均等な待遇の確保が図られるべきものとする。」というふうに規定をいたしております。

 そこでお伺いいたしますけれども、パートについては、大変不十分ではありますけれども均衡を打ち出しているのに、なぜ労働契約法では、一般則としても、あるいは有期労働契約の点でも、均等あるいは均衡が言えないのか。フルタイムとして無期契約の社員と同様の仕事をしている者に対して、なぜ均等または均衡をきちんと打ち出せないのか。なぜ今回の法案に入らなかったのか。このことをお伺いいたします。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

青木政府参考人 労働契約法案は、労働現場におけるさまざまな問題、トラブル、そういったものが多発しているということで、その法的な関係というものをできるだけきっちりとしていこうということで、それによってトラブル、紛争などの予防に努めていこうということをも考えているわけでございます。

 この均衡、均等の問題は、大変大切な議論、論点だというふうに思います。ちょっと委員からも御指摘ありましたように、労働政策審議会、この法案提出まで審議していただいたわけでありますけれども、労働条件に関する均衡に係る審議におきましては、労働者代表委員から、就業形態の多様化に対応して適正な労働条件を確保するため、均等待遇原則を労働契約法制に位置づけるべきという意見が出されました。また、使用者代表委員からは、これは具体的にどのような労働者についていかなる考慮が使用者に対して求められるのか、それが不明だということで、労働契約法制に位置づけるべきではないという意見が出され、それぞれそういった意見が強く出されまして、コンセンサスを得るには至らなかったわけでございます。

 これを踏まえまして、労働条件に関する均衡については、この審議会におきましても「労働者の多様な実態に留意しつつ必要な調査等を行うことを含め、引き続き検討することが適当である。」との答申をいただいております。

 私どもとしては、今後、この答申を踏まえて必要な検討を進めたいというふうに思っております。

細川委員 この点は大変重要でございます。パートタイム法は、大変限られた労働者ではありますけれども、差別的取り扱い禁止をする条項があったわけでございます。しかし、この条項はいわゆるフルタイムパートには適用されません。そういうのがこの委員会でも答弁があったわけでございます。

 この疑似パートとかあるいはフルタイムパート、こういうものは、呼称上はパートタイムでありながら、労働時間はフルタイムと同等のものであり、賃金、一時金や退職金などで不当に低い扱いを受けております。これは皆さんも御承知のとおりでございます。ところが、本来最も正社員に近い存在でありながら、短時間労働の定義に当てはまらないという理由で、パート労働法の対象からは除外されているのでございます。

 それならば、本来は労働契約法の法制の中できちんと取り上げられるべきではないか。パート労働法が改正されたからフルタイムの有期の社員の雇用管理にも影響していくというのなら、きちっと一般的に規定をすればいいし、そうした一般的な考え方の基本になるのがこの労働契約法ではないのかと私は思います。ぜひ今後の課題にしていきたいというふうに思っております。

 そこで、次は、有期労働契約についてお伺いをいたします。

 今まではパートを例に出してきましたけれども、パートの多くは有期労働契約だと思います。もちろんフルタイムの有期労働契約も一般化しているわけでありますけれども、政府案では、有期についてわざわざ一章を設けているにもかかわらず、たった一条しか規定がしてありません。その十七条も、一般規定とはほど遠いものになっております。

 非正規雇用については、現在大変問題になっているところでございます。景気が回復をしたといいましても、正規がふえたといいましても、非正規もふえておりまして、約三分の一という割合は変わらないわけでございます。

 先ほどの民主党の法案に対する質問の中でこういうことも出ておりました。若者の中には非正規の方がいいというふうに考える者もいるという意見も出ておりました。確かにそういう人もいるとは聞いておりますけれども、今後、彼らが高齢化した場合を考えますと、果たしてそういうことで本当にいいのかどうかという不安も感じるわけであります。

 実は、非正規といってもさまざまな形態がありますけれども、その多くは有期の労働契約でありまして、この有期労働契約の改善が大変重要であります。

 特に現状は、必要以上に有期の契約期間を短くして、契約満了に伴い雇いどめをするといった問題がよく起こっておりまして、不安定な雇用状態が生み出されております。私は、こうした問題については、理由のない有期契約をやめさせ、基本的には長期安定雇用に導く施策が必要だと考え、我が党の案では、有期契約については、合理的な理由がある場合、あるいは労働者が希望する場合を除き、原則無期契約とするというふうにしております。

 この民主党の法案の考え方、これについて大臣の御意見をちょっとお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 有期労働契約につきましては、これは労働者の側にも一定のニーズがあって、そういう働き方をしたいという方が、アンケートをとりましても、アンケートの種類にもよりけりですが、そこそこに出ています。それもやはり念頭に置かないといけないかなと。

 ただ、有期労働契約の場合、どこが問題かというと、ずっと御指摘のように、簡単に首を切られる。ですから、雇用期間を短くして契約更新を繰り返す、こういう契約更新のときに非常にトラブルが起こるわけですから、ここにまずメスを入れるという形で政府の対応の基本を置いているわけであります。

 したがって、先ほど来御引用くださったように、やむを得ない事由がないときは解雇できないということを明確化するとか、必要以上に短い期間を定めてはいけないとか、そういうルールを盛り込もうということであります。使用者側だけから見たのではなくて、労働者側から見ても一定のニーズがあるということを踏まえて、引き続き、今委員が問題意識を持っていられるような点もきちんと議論をしないといけないというふうに思います。

 労働政策審議会から、「就業構造全体に及ぼす影響も考慮し、有期労働契約が良好な雇用形態として活用されるようにするという観点も踏まえつつ、引き続き検討することが適当である。」こういう答申を賜っておりますので、その答申を踏まえた上で、また委員の御意見も参考にさせていただいた上で、我々としては検討してまいりたいと思います。

細川委員 この有期の労働契約については、今大臣も御答弁がありましたように、これはやはりしっかりしたルールをつくるということが大事だというふうに思いますので、ひとつ御検討をよろしくお願いいたしたいと思います。

 そこで、せめて、有期の労働契約を締結するときには、例えば期間は何年だというその期間、あるいはその期間が終了したら更新があるのかないのか、そういう更新の有無をきちっと定める。有期は、あなたは何年、そして、この期間が終わったら更新があるのかないのか、こういうことについて、私どもの方は書面でそういうことはきちっと書かなきゃだめだということの法案になっているんです。やはり労働契約法なんですから、これくらいは規定をすべきだというふうに思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。

青木政府参考人 有期労働契約については、労働契約法案では一条しかないというお話もございましたけれども、労働基準法において、既に先行して一定の規定を置いております。それに基づいて、とりわけ、今お触れになりましたような、更新を繰り返してそれを中断する、やめるという雇いどめ、こういったものに関する基準、これは労働基準法に基づく大臣告示として定められておりますが、これで契約締結時における契約の更新の有無の明示をするというようなこと、あるいは、あるというふうにそれを明示した場合には、その更新の判断基準を明示するといったようなルールを既に設けているところでございます。

 そして、労働者が予期せぬ更新拒否による不利益を受けることがないよう、これに基づきまして、労働基準監督署におきましては、集団指導あるいは監督指導等あらゆる機会を通じましてこの周知を図っているほか、必要な助言指導ができるということに法律上なっておりますので、そういったことも行っているところでありまして、今後ともそういった適切な運用がなされるように努めていきたいというふうに思っております。

細川委員 私が聞きましたのは、労働契約法だから、有期というものが今大変問題になって、トラブルも多いので、有期契約ということになったときには、では何年か、あるいは更新はできるのかできないのか、あるのかないのか、そういうことをしっかり書面で明示しなきゃいかぬということを規定したらどうですかという質問なんですけれども、その点はだめなんですか。

青木政府参考人 ちょっと先ほど申し落としましたけれども、重要な労働条件につきましては、既に労働基準法で罰則をもって書面明示を義務づけるということになっております。労働契約法につきましては、一定の規定を置いて、その規定を置いたことによる民事的な法律効果を定めていこうというのが労働契約法でございます。

 そういうことでありますので、基準法の場合には、先ほど申し上げましたような行政官庁の指導、援助というようなことまでもするということでやっておりますが、契約法におきましては、労使両者の契約、それを法律的にどう評価するかということが主眼でございます。

 その際、労働現場、企業実務において行われている、そしてまた比較的妥当とされているものについては尊重していきたいというふうに思っているわけでございまして、書面による明示というのが、今もし規定をした場合にどこまで混乱なくいくかというようなことも考えなければいけないというふうに思っておりまして、まずもって、やはりきちんと、先ほど申し上げましたような大臣告示による指導、援助を通じて、明確に労働条件が明示をされるという方向に進めていきたいというふうに思っております。

細川委員 もう時間が参りました。これで終わりたいと思いますが、労働契約法というのは大変重要な法案でありまして、まだまだ細かいことでも議論をしたいところがございますので、また機会がありましたら質問させていただきます。

 大変細かいことになって恐縮でございましたけれども、しかし、労働者、使用者にとってはこの労働契約法というのは大変大事な法案でございますから、政府案、民主党案、それぞれいいところがあるというふうに思いますので、ぜひ労働契約法案は成立をさせていただきたいことを望みまして、これで私の質問は終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 与えられた時間の中で、私は、政府案の労働基準法改正案についての質問をさせていただきたいというふうに思っております。今までは、労働契約法あるいは最低賃金法の改正という形の審議でございましたので、ちょっといつもより時間が短いものですから、手っ取り早くといいますか、端的にお答えをいただければというふうに思っております。

 先ほど委員長からも、質問通告にない、あるいは議題でないものについて発言は控えるようにということでございましたので、本当は私も、きょう時間があれば、いずれ大臣と障害者自立支援法についての話をさせていただきたいと思っておりますが、きょうは結構でございます。

 先般の十月三十日に、全国の障害者の方々あるいは団体の方々あるいは家族の皆様方、ボランティアの皆様方がお集まりになられまして、何とかこの見直しをやっていただきたいと。大臣からは、事あるごとにその抜本的な見直しを行っていただけるような御発言をいただいております。ただ、内容がまだ明確になっていないところもありますので、これはいずれチャンスがあれば、ここの衆議院でも議論をさせていただきたいと思っております。

 それでは、労働基準法の改正案でございますが、今までの議論を私も伺っておりまして、労働時間に限っての問題で考えますと、やはりこれも二極化の問題があるのかなというふうに思っております。

 すなわち、正社員の方々にすれば、どんどん働く時間が長くなって、そして長時間労働あるいは時間外労働、それがひいては過労死という形にまで結びついてしまう。一方、今度、少し先ほども議論になりましたけれども、パートの方々にとりましたら、時間がどんどん短くなっている、短い労働時間しか与えられないという形もあって、働きたくてもパート労働という非正規労働という形になってしまっている。この労働時間の二極化という面がやはりあるのかなというふうに思っております。これは恐らく大臣と私も共有をさせていただけるものかなと思っております。

 では、この二極化の中で、この労働時間というものの問題点を整理させていただくと、やはり私は三点あると思っております。

 一点目は、やはりその長くなった労働時間、これをどうするのかというところにあるのかなと思っております。どう是正をしていくのか。

 そして二点目は、そこで働く労働者の方々が休日もとっていない、あるいはとれない、有給休暇もとれない、取得率がどんどん下がってきているという現状があるんだということですね。そういう悪い状況を政府としてどう改善していくのか、これが二点目だと思っております。

 そして三点目は、先ほども少し触れさせていただきましたが、過重労働あるいは休日がとれない、そういったことで、過労死あるいは過労自殺というところ、あるいはメンタルケア、メンタルヘルスの部分でそういった健康障害をどうなくしていくのかということ。

 この三つのパラグラフに取り組んで、三点セットでこの労働時間に関しては取り組んでいただきたい、取り組んでいくべきであるというふうに私は思っておるところでございます。

 ところが、この十年間に規制緩和がどんどんされてきたのは一方で事実であります。それに伴って、今度、恐らく来年でしょうか、労働者派遣法の見直しなのかわかりませんけれども、私どもはこれをそろそろ見直した方がいいのではないかというふうに思っておるところでありますけれども、そういった部分も規制緩和が一方では行われてきたということがございます。

 したがって、政府が今回出されていらっしゃるこの三法案をまとめて考えていくならば、こういった、私が今提起をさせていただいている問題点、労働時間に対する問題点をどう克服し、そしてどう対処、対応していっているんだろうかというところを少し端的に問いかけをさせていただきたいと思っております。

 ポイントは、一番目に申し上げますけれども、今回の政府案では、月八十時間を超えた場合にのみ時間外割り増し賃金率を五〇%に引き上げるという内容でございます。第一歩とはいえ、この月八十時間というラインが果たして妥当なものであるのかどうかというところですね。

 一昨年、労働安全衛生法の改正の審議の際に、百時間以上の議論があって、あるいは八十時間以上においても医師の診断を受けるように努力をするというような形にもなってきた。したがって、そういった面では一歩ずつ進めてはいるんだろうけれども、しかし、やはりこの八十時間というラインは過労死ぎりぎりのライン、もう過労死認定ラインにも匹敵するものではないかというふうに思うわけですね。

 したがって、今回、本来ならば、政府から出してきていただくその法案のメッセージ性というものが、この長時間労働に対して、長時間労働は悪いものなんですよ、決していいものではないんですよと。国際基準でいくならば、短時間労働によって、短く労働をして、そしてその中から効率よく成果を上げていくというところが、大臣も海外経験がおありだというふうに伺っておりますので、海外のそういう働き方の指標というものは十分おわかりになっていらっしゃるだろうというふうに思っております。

 したがって、私は、そういう国際基準というものにどんどん近づけていく必要があるのではないかというところからすれば、やはり今回のこの政府案において、安心、安全、健康に働いてワークライフバランスを実現させていくためということであるならば、まず第一問目でございますけれども、労働時間が週四十時間を超えた段階で、現行の割り増し賃金率二五%、ここから国際基準並みの五〇%に引き上げておくべきではないのか。それが、いわばそういう経営者側、あるいは今までいろいろな形で長時間労働を強いられていた方々に対する政府の毅然たるメッセージ性がここであらわれてくるのではないかなというふうに私は思うんですが、大臣、お考えを聞かせていただきたいと思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 園田委員が前提としてお述べになりましたいろいろな問題、意識、認識、これは私も共有していますし、海外の生活も長うございます。

 長時間労働ということに限って言えば、例えば不況のときは、むしろ残業をさせてくれ、それじゃないとやっていけない、ローンが支払えない、そういう面もありました。今、非常に好況になってきて、まさに二極化、めちゃくちゃ働かないといけない人たちがいる、片一方で職がない、それは非常に深刻な問題だと思います。

 まず、私が長いこと生活しましたフランスなんかは、時間外労働が週八時間までが二五%の割り増しで、それ以上が五〇%。それから、アメリカ、中国、韓国が五〇%、イギリス、ドイツというのはたしか法定の割り増し率はなかったと思います。それは国によっていろいろあると思います。

 ただ、問題は、八十時間じゃなくて四十時間から始めた方が、いわゆる政府の姿勢とか強制力というのが見せられるんじゃないかという御趣旨だと思いますけれども、そのバランスをどうとるか。片一方では、要するに、今だんだん経済がよくなってきている、そういう中で、労賃というものにどこまでコストをかけることができるか。これは労使の間でいろいろ考え方も異なる。

 ですから、強力にこれはだめだという一歩をがちんと示すために、この政府の法案では八十という時間を置いて、これ以上はやはりだめですよ、そういう感じで、八十時間を超える場合に五割に引き上げるよ、だからこれが限度だよ、そういう感覚であって、その後、いろいろな先ほど来委員がおっしゃっているようなことを少し議論して、これはあくまで最低ラインというか、もうこれ以上やると政府が介入しますよということなんです。

 ただ、今、実は私はやはり長時間労働が過ぎると思っていますから、何とかしてこういう状況を改めたい。そういう意味で、働き方の革命、休みのとり方の革命、革命という言葉がいいかどうかは別として、それで人生八十五年ビジョンを今一生懸命策定して、少し夢のある、本当にこんなに働かなくてもきちんと生活できる、十分休みがとれる、そういう何かモデル、構想、ビジョンができないかなと。そういう大きな中で、さらに一歩、委員がおっしゃったような問題意識を進めていきたいと思います。

園田(康)委員 そうしましたら、今大臣は、これが最低ラインなんだよというラインを、一定のラインとして八十時間というものをお示しになったというふうに思っております。ですが、やはり最初の議論、このメッセージ性といわゆる現実のギャップをどう埋めていくかというところで、この議論をさせていただく中で、ぜひ一歩一歩進めさせていただきたいなと思っているんです。

 先ほど私は、週四十時間を超えたらという一番過度なケースを申し上げたわけでありますけれども、そうしましたら、今度、例えば一カ月四十五時間以上になったときに五割増しに引き上げるという第二段階も一つには考えられるのかなというふうに思うんですね。

 このことに対して、大臣が今、夢のあることをぜひ考えていきたいというふうにおっしゃっていただいておりますので、私どもの考え方は、できれば週四十時間を超えたらもう五割増しという考え方で、では中間をとって、大臣がお住みになっていらっしゃったフランスのケースに近づけていくということであるならば、月四十五時間を超えたケースにおいての五割増しというものを、政府の意見と私ども民主党の意見との中間点として何か妥協を図ることはできないんだろうかというふうに思うんですが、その点について、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 長期的に、今おっしゃった月四十五時間、これを超えてもやはり割り増しをしていただきたい、そういうような形で大臣告示を改正したいなというふうに思っていますし、やはりこれは労使双方、時間外の労働というのはできるだけ削減しませんか、こういうコンセンサスをつくるように指導していきたいと思います。

 人間は働くだけが人生ではありませんから、やはり早くうちに帰って家族と一緒に団らんをする、それから休日にはじっくり休む、そういう中でまたあすの活力も生まれてくるわけですから、ちょうど今委員が御議論になったようなことをこの法案の審議の過程でもっと皆で問題提起して、社会全体としてこの労働時間の削減ということに取り組む、そういう機運を生み出したい、そういう意味で全力を挙げたいと思います。

園田(康)委員 そうしますと、今大臣がおっしゃっていただいた政府案の中で、月四十五時間を超えた、上限基準を超えた場合、これにいったら二五%以上という規定になっておりますね。これは、二五%以上というふうに課して、それから今度は、それ以上の努力をしていただきたいですよということを、大臣からそういうメッセージを出すということであるんですけれども、しかしながら、やはり現実の、先ほどの意見もあったように、そういうふうに規定をしてしまうと、どうしても、ああ、では二五%でいいんですね、二割五分増しで、うちの中小企業はえらいつらいものだから、このラインでも罰則にはならないし、法の趣旨にもかなっているということで、そのままになってしまうんですね。

 したがって、ここから一歩進めていく。こういう長時間労働はだめなんですよと。これだけ過労死、あるいはストレスによってさまざまな精神的な障害を持っておられる方もどんどんふえてきている。こういうストレス社会の中において、この長時間労働というものは、割り増し賃金だけの問題で解決できる問題ではないと実は私は思っております。

 しかしながら、一つの要因として、これを少し、一歩進めるということであるならば、公明党さんの方もたしかそういう御発言がどこかであったというふうに私も伺っておりますけれども、例えば二五%ではなくて三〇%以上に、三割増しにしておくとか、そういう一つでも数値的に進めるという観点が必要だというふうに私は思うんです。二五%以上も義務規定にしなかった、例えば四〇%なら四〇%という形で義務規定にしなかったという理由は、この審議の過程では何があったんでしょうか。

青木政府参考人 今般の労働基準法改正法案は、もともと、三十代の男性の五人に一人が週六十時間を超えて働いている、月にすると大体約八十時間を超える時間外労働ということになりますけれども、そういう状況から、特に長い長時間労働を強力に抑制しよう、こういうことで、大臣からもお話ありましたように、まずそこをやろうということでありますが、お話ありましたように、そこへいく途中段階で努力をするということも大変重要なことだと思います。

 そこで、今回は、月四十五時間を超える部分について、労使が自主的に長時間労働の抑制に取り組んでもらいたい、それを後押ししようではないか、あるいは制度的な枠組みをつくろうではないかということで、労使双方へ努力義務を課すということにいたしたわけであります。

 そして、その中身については、労使で自主的な努力をするということでありますので、それでは一体どのぐらいの割り増し率にしようかということについては、それは労使で本当に実現していくようなやり方でやってもらいたいということで、十分話をしてきっちりと実行していくというものを定めていただきたいという趣旨で、二五%を超える高いところで労使で自主的に定めていただきたい、こういうふうにいたしたわけでございます。

園田(康)委員 確かに、労使が協議をしてそれで決めていくというのは、それは原理原則であろうというふうに思っております。

 ただし、大臣もおわかりのとおり、先ほど来から、使用者、使用者、あるいは経済的なところでどうしてもそれがネックになっているというところからすれば、必然的に弱い立場に立たされているのは労働者、絶対的に弱い立場に立たされているのは、その協議をしたときには労働者なんですね。

 だからこそ憲法で、二十七条と二十八条できちっと労働者の権利という形でそれを明記させていただいているわけですし、また、民法等でも、対等な位置関係の契約というものをここでも持っていかなければいけないでしょうというところから、今回のこの改正がいろいろスタートしているものだというふうに思っているんですね。

 したがって、政策的にきちっとインセンティブを、政治、行政の立場から課していただければなというふうに私は思っております。

 最後の質問になりますけれども、改正法の第百三十八条において、中小企業の事業主に対しては、月八十時間を超える議論を今してまいった、この時間外労働に対する割り増し賃金五割増し、これに対する部分を当分の間適用しないという規定を設けておりますね。この適用除外を設けた理由は一体何でしょうか。

青木政府参考人 月八十時間を超える時間外労働について、法定割り増し賃金率を五割に引き上げるということについての中小企業における適用除外ということでございますけれども、これは、経営体力が必ずしも強くない中小企業においては、これを規定いたしますと、業務分担の見直しだとか、あるいは新規雇い入れをするとか、あるいは省力化投資、そういったことをしなければならないわけでありますけれども、その対応が難しい、また負担も大きいということも考慮いたしまして、中小企業に対しては適用を猶予するということにいたしたわけでございます。

園田(康)委員 しかしながら、中小企業に対するさまざまな負担がふえるというのは、確かにそのようになっていくと思います。私どもの提案もそういう形になりますから。したがって、であれば、中小企業政策と一体となって、私は、労働の政策としては、やはり一体となって他省庁とも連携をとりながらやっておく必要があるのかなというふうに思っておる次第でございます。

 したがって、大臣、この政策を進める際には、いわば中小企業がみんな困るから、だから当分の間何もしなくてもいいですよということではいけないと思うんですね。やるのであるならば、きちっと中小企業対策も行った上で、そこで働く労働者の権利と、それからワークライフバランスと先ほどからおっしゃいます、そのワークライフバランスということを念頭に置いていらっしゃるのであるならば、それに見合うだけの裏づけとなる政策をやっておかないと、私は、いつまでたってもこれは理念だけに終わってしまうのではないかなというふうに思っております。

 ぜひその点をこの審議を通じてもう少し明らかにしておきたいというふうに思っておりますが、残念ながら、きょうの質疑の中では、今の政府案がそのまま、修正をといいますか、何か見直しをしていくという意思がちょっと感じられないところもありますので、私は、この審議を通じながら、しかるべき時期に、もし可能であれば与党の皆さんの理解も得ながら、私どもからもぜひ修正案を提出させていただきたいというふうに思っております。

 そのことだけ明言をさせていただきまして、きょうの質問を終わらせていただきます。

茂木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 国会に労働契約法が初めて提出をされましたので、その出発点となる大臣の認識を最初に伺いたいと思います。

 昨年の十一月三十日、経済財政諮問会議で、いわゆる労働ビッグバンの集中審議が行われました。民間議員からは、一層の規制緩和や労使自治でよいではないか、そういった趣旨の発言がされたのを受けて、柳澤前厚生労働大臣は、「労使自治で労使が対等の交渉ができるかというと、実際の力関係から言ってできない」と労働法制の考え方を示し、「最低限の労働者保護規定を設けることは」「一番の基本なので、そこはしっかり考えていただけたら」と発言をしております。

 私は、ここは非常に重要な認識だと思うんです。労使対等といいましても、本来労働者の立場の方が弱いんだ、やはりそこの出発点に立って、労働契約のルールを決めるに当たっては、労働者保護法、こうした性格であるべきだと考えております。大臣の基本的認識を伺います。

舛添国務大臣 労使の間には、交渉力の格差を含め、力の差があることは歴然としております。したがって、近代産業国家において、十九世紀以来、そういうことをどうして是正していくか、そしてこの二十一世紀に至り、現代民主主義国家においては、今委員がおっしゃいましたように、労働者保護、これをきちんと行うというのは労働法制の基本でありますし、まさに労働省というのはなぜあるのかというと、そういうことでございます。

 したがって、私は、その認識を共有しておりますし、そういう観点から、細かい点は省略しますけれども、今回の労働契約法案がある、そういうふうに明言をいたしたいと思います。

高橋委員 ありがとうございます。

 労働省とはなぜあるのかとおっしゃいましたが、厚生労働省になってしまったことで若干弱まったのかなということを考えております。

 ワーキングプアや日雇い派遣、偽装請負など、不安定雇用が社会問題となり、個別労働紛争が平成十七年度で十七万六千件以上、総合労働相談が九十万件以上と年々増加するもとで、労働契約法がこのような現状を改善させ得るのかが問われていると思います。

 労働政策研究・研修機構の労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査によれば、ここ五年間で、労働条件変更があったのは四二・六%ですが、これは、五十人以上規模の事業所は既に五割以上、規模が大きくなるに従って当然変更の割合がふえ、千人以上規模の事業所では八六・一%となっております。そして、その手続は、就業規則の変更によるものが六九・八%となっております。

 今回、法案の第八条では、労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件が変更できるとし、就業規則による労働契約変更を明文化いたしました。この考慮要素として、平成九年二月二十八日の第四銀行事件最高裁判決に示された判例法理に沿って明確化したものと説明をされております。これは先ほども議論がされておりましたけれども、ことし六月六日の本委員会においても、青木局長は、七つの考慮要素があるんだけれども、内容的にお互いに関連し合うものであるので、統合して列挙したと答弁をされております。

 私は、これは関連し合うものだろうか、むしろきちんと書いた方がいいのではないかと思います。七つを四つにする必要が本当にあったのか、重ねて伺います。

青木政府参考人 御指摘になりました第四銀行事件は、確かに、労働条件の変更についての合理性について七つの考慮要素を挙げているわけでございます。それについては、この労働契約法の十条で、考慮要素を四つに整理いたしまして、統合いたしまして規定をいたしたわけでございます。

 私どもとしては、申し上げますと、変更後の就業規則の内容自体の相当性でありますとか、あるいは代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況とか、あるいは同種事項に関する我が国社会における一般的状況というのはそれぞれ、いわば変更後の就業規則の内容が相当であるかどうかということに集約されるというふうに考えまして、統合して一つの規定にいたしたということでございますし、第四銀行事件で言っています七つの考慮要素のうちの、労働組合等との交渉の経緯でありますとか、他の労働組合または他の従業員の対応というのも、私どもとしては労働組合等との交渉の状況ということに集約されるということで、今回、先ほど申し上げましたような第十条において整理をして規定して、お願いをしているということでございます。

高橋委員 今、基本的には合理的であるということに集約されるというお話をされて、一定個々の問題について説明をされたと思うんですけれども、確かに、裁判で争う場合には、当然、判例法理というものを十分参考にするわけですので、個々の問題に照らして、判例法理に照らしてどうかということが議論されると思うんです。

 ただ、ここは、使用者の側が契約法の中身を十分承知しているわけではない、まして判例法理を熟知しているわけもないし、まして労働者においてはそもそも法律そのものについてもわからないという中で、ここにあえて判例法理を法文に落とし込むことによって、やはり予防効果をねらったということがあるんだと思うんですね。それがやはりそがれるのではないかと思うんです。

 私は、この契約法の調査の資料にも出ておりますけれども、労働裁判の中でも非常に重要な位置を占めているみちのく銀行の裁判、これは私、地元ですので、原告の顔も一人一人浮かぶわけですけれども、五十五歳で専任職とされて昇給がストップ、減額されたという方たちが裁判で最終的には勝訴いたしました。このときに、第一組合は七割以上で合意をしているわけですね。わずかな少数派の組合ではあるけれども、著しく不利益をこうむる、本来であれば順々に昇給していく労働者の状態と比べても著しく不利益をこうむるのではないかということが考慮されてやられた。そういう判例を積み重ねた上で今日があると思うんですね。

 だけれども、これでは、これから先も、毎度毎度裁判に訴えなければならない、長い年月、いろいろなものを犠牲にして裁判に訴えなければならないということになるわけです。そういうことから、やはり一定の効果を持たせようということで盛り込んだと思うんですけれども、もっと厳格にするべきではないか、いかがですか。

青木政府参考人 確かに、現在の判例法理というのは、長い年月、有名な四十三年の秋北バス事件から六十三年の大曲市農協事件を経て、先ほど来出てまいります第四銀行事件、そして今お挙げになりましたみちのく銀行事件、平成十二年というようなことで積み重ねられてきたというふうに私も承知をいたしておりますが、そういう中で一定のルールというのがきちんとできてきたというふうに思っております。

 そういったものを、まさに、委員がおっしゃったような、法律にきちんと規定をしていくということによって、使用者に対しましても、あるいは労働者に対しましても、十分なる事前の知識といいますか、事前の行動を適切なものにしていただくということが可能になるだろうというふうに思っております。そういう意味で、まさにこの労働契約法案をお願いしているわけでございます。

 先ほどの考慮要素につきましては、先ほど申し上げましたように、それぞれ関連するものにつきましては集約をして、整理をして四つの考慮要素にしたということでございますので、これらの積み重ねをないがしろにするものというふうには思っておりません。こういったものを踏まえて法律にしたというふうに考えておるところでございます。

高橋委員 そこは周知についてもしっかりとやっていただきたいと思います。

 納得したわけではありませんけれども、重ねて、次に行きたいと思います。

 それで、「労働組合等」については、少数労働組合、あるいは親睦団体なども含むという答弁が以前の国会でございました。今回は、労働者性について、個人請負事業主や派遣労働者など、今日の労働実態の多様化も踏まえた解釈がされております。そうであればこそ、労働者が一人でも加盟できるローカルユニオンなども当然これに含まれると解釈してよろしいですね。

青木政府参考人 十条に「労働組合等」ということで規定をしているわけですけれども、これらについては、お話ありましたように、これは、多数労働組合あるいは過半数代表者というものは当然でございますけれども、それだけではなくて、お触れになりましたような少数労働組合、あるいは労働者で構成される親睦団体なども含めて、広く労働者側の意思を代表するものが含まれるというふうに考えております。

高橋委員 よかったんですか、それで。私の問いは、一人でも加盟できるローカルユニオンということを伺いました。

青木政府参考人 今申し上げましたように、広く労働者側の意思を代表するものが含まれるということでございます。

高橋委員 ここまでの議論との関連で、民主党さんに伺いたいと思います。

 民主案については、今の部分について、「労働者代表」という表現にされております。これは、要綱によれば、過半数で組織される労働組合または労働者の過半数を代表する者とあり、極めて限定的なものと受けとめますけれども、いかがでしょうか。

細川議員 民主党案の二十五条に言う労働者代表につきましては、五条二項に定義をしております。それには、「当該事業場において、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」、こういうことになっております。

高橋委員 そうすると要綱のとおりだということなので、やはり今指摘をしたとおり、非常に限定的なものになるのではないかと思っております。

 それで、二十五条ですけれども、「就業規則の作成又は変更と労働契約との関係」について、「次のいずれにも該当するときは、当該作成され、又は変更された就業規則に基づいて」「使用者と労働者が合意したものと推定する。」として二点。一つは、今言った労働者代表、二つは、作成または変更された労働条件の内容が合理的なものであることとされている、この二点だけを挙げております。これは十分なものでしょうか。また、「使用者と労働者が合意したものと推定する。」の「推定する。」の意味するところは何でしょうか。

細川議員 まず、「推定する。」ということについて御説明をいたします。

 民主党案では、就業規則の変更が労働基準法八十九条及び九十条に規定をする手続によって行われ、あらかじめ労働者代表と誠実に協議を行い、変更の必要性があり、かつ変更された労働条件が合理性を有する場合には、当事者間の合意を推定するということにしております。

 「推定する。」とは、それではどういうことかということになりますけれども、当事者間に合意があったかどうかが不明の場合に意味を持ってくるものでございます。当事者が異議を述べない限りは当事者間の合意があるという取り扱いをするという意味でございます。当事者が異議を述べなければ合意があったという取り扱いをする、こういうことでございますから、それでは、当事者間の合意が実際には存在しないということを労働者が異議を述べれば推定が覆される、こういうことになります。そうしますと、その場合には、使用者と労働者との間で労働条件の変更についての合意がないこととなりまして、労働者の労働条件は変更されないというのがこの「推定」でございます。

 それから、何と……

茂木委員長 合理性について、二点に限っていることについてどうですかという質問だったと思います。

細川議員 これは、ただ二点だけではなくて、あらかじめ労働者代表と誠実に協議を行い、変更の必要性があり、かつ変更された労働条件の内容が合理性がある、ただ合理性だけではないということでございます。

高橋委員 今の説明は、異議を述べれば変更されないということですよね。二十四条に、裁判所に請求することができるということが書かれておりますので、労働者の側に立ったと思っておっしゃっているのかなと思いますが、なかなかそうは読めないなと率直に言って思います。

 ことし六月六日の本委員会で、民主党の西村委員は政府案に対し、九条のただし書き以降、つまり、先ほどの考慮要素の部分はもう不要である、削除せよと述べておられます。私は、そういう立場と今の民主案と同じなのかな、むしろ使用者側で変更がやりやすくなるのではないかという危惧を持っておりますが、いかがでしょうか。

細川議員 これは政府案とは非常に違うところでありまして、民主党の場合は「推定する。」推定をするということは、反証を挙げて覆すことができる、そして労働条件は変更されない、こういうことになりますから、それは労働者にとっては非常に有利だというふうに私どもは考えております。

高橋委員 ここばかりやっていられないので、危惧がまだ残っているということを指摘して、期間の定めのある労働について伺いたいと思います。政府に伺います。

 パート労働法が通常国会で改正をされました。私たちは、パート労働者の七割が有期契約労働者であり、差別禁止措置をとられる労働者の中に含めるべきだという主張をしてまいりました。今回、民主案においては三十九条、「差別的取扱いの禁止」ということで、この精神が明確に盛り込まれ、重視をされたと思っております。

 そこで、政府は十七条に、民法のできる規定ではなく、「やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」こういう言いぶりになっておりますけれども、その理由と考え方を伺います。

青木政府参考人 今お触れになりましたのは、法案の十七条一項の趣旨、内容ということだと思いますが、これは、有期労働契約につきましては、解雇や雇いどめといった契約の終了場面における紛争が多く発生しております。労働契約の終了というのは、これは当然のことながら、労働者に及ぼす影響が大きいわけでございます。その契約の終了場面についてのルールを明確化することによりまして、紛争の未然防止と労働者の保護を図る、こういうことでございます。

 有期労働契約は、労働者と使用者が一定の期間について合意した上で労働契約を締結するものでございます。したがって、その労使当事者が合意した契約期間というものがあるわけでございますので、そのような契約内容というのは、それは遵守されてしかるべきであります。契約期間中に使用者が一方的に行う解雇は、原則として差し控えられるべきと考えております。

 そういうことで、十七条一項において、有期労働契約の契約期間途中に、やむを得ない事由がない場合には解雇することができない旨を規定したということで、やむを得ない事由がないときの法律上の取り扱いを明確にするということとともに、労働者の雇用継続への期待を保護しようというものでございます。

高橋委員 これを担保する基準局の役割はという問いを用意しておりましたが、残念ながら時間が来ましたので、要望にして、終わります。

茂木委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、午前と午後にわたります長時間の審議、厚生労働大臣初め委員長、そして御出席の委員の皆さんに、本当に長時間で大変御苦労さまですと、私の方からは、あともう少しですから、御同席をいただきますようお願いを申し上げます。

 この労働契約法ということをめぐっての審議は、この国会、野党、私、阿部知子が立たせていただくのは初めてですが、私のごく素人の印象というか考え方を申しませば、労働、働くということをめぐってつくられるルールは、これまではどちらかというと働かせ方、特に我が国においては、働かせる側、いわゆる使側が決め、そして労側はそれを受け入れる、簡単に言えばそういう労使の力関係がある中で、今をさかのぼること十五年ほど前から、労働者側の方から何とか、契約という概念、働くということをお互いの約束にしていこうという概念が提案されて、そして二〇〇五年の九月でしょうか、厚生労働省の方に研究会ができて、今日のこの議論に至っていると思います。

 そうした極めて本質的かつ文化的、社会的、経済的な問題全部をひっくるめたものだと私は思うのですけれども、そのことが審議される割には非常に拙速だし、それから、やはり私としては各界の参考人も呼んでもいただきたいと思うところでありますが、会期との関係でいろいろ、いい成果を生まねばならないという私ども国会議員に与えられた制約もある中での審議であります。

 これは大臣に、お答えは結構ですが、大臣、先ほどからずっとおっしゃる中で、各国でいろいろお仕事もされたと。それで、日本的労使関係の特色というものも、逆に言うと、外から見るとおわかりであろうし、それから、今特に若い人たちを包んでいるというか、現状である若い人たちの働き方というのは、例えば憲法二十七条は労働は権利であり義務であると申しますが、例えば高校生の時代に、この一条、この一項というか、憲法二十七条の意味を学生時代に教えられているだろうか、例えば労働基準法も学生が教えられているだろうかとか思うと、私は今、日本の教育体系の中でも極めて不安が残るところであります。

 その辺がしっかりしないと、やはりそこにいる人と人との契約でありますから、これは外から幾ら判例にのっとって、あるいはこれがいいことだろうとやっても、やはり画竜点睛、中身のないものになるだろうと思いますから、ぜひこれからも文部科学省と御一緒に、労働関係法制、特に働くとはどういうことなのか、権利と義務をしっかりと若い人たちに伝えることをお願い申し上げたいと思います。

 そうした観点からこの法案を見ますと、果たして本当にこれが労働者側にとっての権利性を担保できるのか。特に、やはり力関係が弱い中で申しませば、一、二どころか多々の懸念がございます。

 例えば、今回の労働契約法は、この間、本来は労働者性がありながら、すなわち経済的な従属性がありながら、しかし偽装的に一人親方的にされている働き方が多々ある中で、そういう働き方についても、それが経済的従属性があればこの労働契約法の対象になるのか否か、青木局長の方にお願いします。

青木政府参考人 この労働契約法案は、労働者には、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者のすべてが含まれております。労働者であるか否かは、現行の労働基準法の労働者と同様に、契約形式にとらわれず、その実態によって判断するということでございます。

 したがって、お話ありましたような、個人請負等の形で契約を締結していても、実態として使用従属関係が認められるのであれば、労働契約法案の労働者として取り扱われるということでございます。したがって、そういう場合には、この法案で規定する労働契約に関するルールが適用されるというものでございます。

阿部(知)委員 ここのところをわざわざしつこく念押しいたしましたのは、今働き方は本当に多様で、例に出しましたバイク便もそうですし、SOHOといって、御自宅で働かれているけれども、しかしそれは契約性が非常に濃厚、だけれども、もしかして、あなたが自由にやっている裁量の中ですとか言われるケースが非常に多いわけですから、実態においてきちんと把握していただくということをまず原則にしていただきたい。

 そういうことが前提としても、この労働契約法の中でやはり一番懸念されますのは、いわゆる使側が一方的に、ある意味で制定できる就業規則をもって、さまざまな就業規則の変更をもって労働契約の変更としていけるような枠をとっているのではないかということです。

 これは各委員、何人も御質疑でありましたが、私は重ならない部分でお伺いしたいのは、例えば昨年の十二月に出されました、日本の著名な労働法学者三十五名が、「就業規則変更法理の成文化に再考を求める労働法研究者の声明」というのがあったと思います。青木局長はよく御存じと思いますが、この趣旨は何かというと、「就業規則を用いた使用者の一方的変更方法だけが成文化されようとしている。これでは今後の労働法の柱のひとつとなるべき労働契約法の発展を歪め、契約原理に死を宣告する」と、これはかなり強い論調であります。契約原理を打ち立てたい、だけれども、就業規則は使側がつくり得るものであって、先ほど高橋さんの御質疑にもありましたが、例えば一人の勤労者はそこに異議を申し立てられるかというと、なかなか明確な御答弁ではなかったように思います。

 そうなってまいりますと、まさにここの指摘されている「将来に禍根を残さぬよう熟慮、再考を促したい。」という一文は、厚生労働省の方としては、あるいは政府提案者としては舛添大臣にも伺いたいですが、まず青木局長、どのようにお考えでしょう。

青木政府参考人 今お取り上げになりましたのは、二〇〇六年十二月二十一日に出されました声明文ですが、私は、この前段部分で言っておりますところは非常に納得ができる部分でありますが、今おっしゃいましたようなものは最終的な結論の部分でございまして、その点はどうかなというふうに思っているわけでございます。

 労働契約の内容の変更に関して、就業規則による変更というものを今回規定いたしているわけでありますけれども、これはやはり、日本の労働条件の変更について、就業規則の変更によって労働条件を変更していくんだというのが多くを占めるというのが今の世の中の実態でございます。したがって、ここの部分について明確なルールを定めなければ、やはり労働条件の変更、労働契約の内容の変更ということについてルールを定めたということにならないというふうに思っております。

 ただし、その定め方につきましては、労働契約法案では、就業規則の変更による労働契約内容の変更に関しましては、その八条において、労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができるという合意原則をまず明確に規定しておりますし、第九条で、最高裁判所の判例法理に沿って、原則として、使用者が、労働者と合意することなく、就業規則の変更により、労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできないというふうに規定をいたしております。

 さらに、この十条において、変更する場合でありますけれども、変更後の就業規則が労働者に周知されていること、それから就業規則の変更が合理的なものである、そういう場合に、労働契約の内容である労働条件というのは、変更後の就業規則に定めるところによるものとするというふうに決めておりまして、基本的には、労働者及び使用者の合意を原則としつつ、現在の判例法理に沿った労働契約の変更ルールというものを定めようというものでございます。

 さらに、就業規則による労働条件の変更ができる場合の合理性の判断要素としましても、労働者の受ける不利益の程度という個々の労働者にとっての影響でありますとか、あるいは労働組合等との交渉の状況という労使協議の状況を明示するということで、労働者の保護に十分配慮したものとなっております。

 声明では、一方的変更方法だけが、しかも判例法理と異なる形で成文化されようとしているというふうに、お触れになったところもそういうふうに書いてあるわけでございますけれども、今答弁申し上げましたように、八条、九条、十条ということで判例法理を後退させるようなものではないというふうに思っておりますので、どうぞ御理解をいただきたいというふうに思います。

阿部(知)委員 大臣には、あれだけ専門用語が並ぶと、中核は何なのかというところが私も見えなくなると同じように、普通に考えればなかなかこれは理解が難しいと思うんですね。

 簡単なことを言えば、就業規則というのは、そこにいる何人かについての共通のルールを定めると。しかし、その中で弱い者、立場の弱い者あるいは状況的に厳しい者、例えば妊娠して女性が出産する場合を考えましょう、そういう場合でも、就業規則そのものが自分の今の条件、さらにそれよりも就業規則で定められたことが今の自分の条件に厳しいんだという場合が多々起こるんだと思うんです。

 そういうときに、判例云々がありました、個人にとって損にならないと。それは当然です、判例なんだから。それにのっとってやるだけが果たして労働契約法の一番のエキスなのかどうかなんです。個々人で、そこにある弱い労働者側の権利を、契約という新たな、双方の合意をしっかり原点に持ったものに変えていくことを担保するものがここにはないから、やはりこういう三十五人の方が異議を申し立てられるんだと私は思うんです。

 大臣にお願いしたいのは、きょうももう審議時間が少のうございますが、こういう意見が本当に法学者あるいはいろいろな学問分野の、労働法制の方から上げられているということは、やはり私は、この法案、どのように展開をするかわかりませんけれども、やはりちょっと深刻な事態と思いますから、またお心配りをいただきますようにお願いを申し上げます。

 続いて、最低賃金のことをお伺い申し上げます。

 厚生労働省の方でことしの八月に発表されました、最低賃金の履行確保に係る一斉監督の実施というものがございます。これは簡単に結果を申し上げますれば、監督をした一万一千百二十事業場があり、そのうち地域別の最賃違反の率が大体六・二%、産業別最低賃金適用事業場の違反率が一〇・四%という数値が上がっております。これは平均すれば六・四%の違反となっております。

 青木さんにお願いいたしますが、産業別の賃金の最賃制度は今回変更がされます。今までのような罰則を伴ったものではなくなってくる。しかし、現状において、地域別の最賃以上に産業別最賃の違反率が高く出ているという状況もあるわけです。特に、職種も決まっておりますが、ちょっと時間の関係で言いません。

 こういう実態がありながら産業別賃金については、逆に言うと、本来はこれはヨーロッパのように横並びにつくられていくべきものと私は思いますが、今回重きを置かれておりませんが、果たしてこれで大丈夫でしょうか。

青木政府参考人 今回の最賃法の改正案におきましては、セーフティーネットをきっちりさせるということで、全国に四十七定められております地方の地域別の最低賃金、これにつきましては罰則を大幅に強化する、あるいはきちんとこれを定めなければいけないこととするというようなことで強化をいたすわけであります。

 一方、お取り上げになりました産業別の最低賃金につきましては、従来から地域別の最低賃金より高い額のものを設定するということで運用がなされてきております。一方では、最低賃金といいながら、これは屋上屋を重ねるものではないかという議論もございました。

 産業別の最低賃金につきましては、地域別の最低賃金をセーフティーネットとしてきっちりさせるということとともに、むしろこれは特定の賃金ということで、いわば民事的効果、それは残しつつ、労使の自治に任せるという改正を今度お願いしているわけでございます。

 したがって、新しい産業別最賃がなくなりましても、新しい特定賃金ということで、民事的な賃金の底上げといいますか、そういったものには有効だというふうに思っております。

阿部(知)委員 それで大丈夫でしょうかというのが私の問いでして、実は、食料品製造業とか衣類その他の繊維製品製造業のところで産業別の最低賃金違反が多いわけです。どういう方々が働いているかも、もう少しお調べになれば内容が出てまいりますので、きょうは指摘にとどめさせていただきますし、もう一点お願いいたします。

 実は、事業場の違反以外に、どんな方々が最低賃金額以下の賃金しか払われていないか。二千五十一人の最賃以下の方がございますが、その多くが女性。女性が六七・五%、パート、アルバイトが千百六十八人、続いて障害者が一三・八%の二百八十四人おられます。今、最低賃金を定めるときに、最賃以下で働かせている作業所等々の問題がことしの二月も指摘されておりましたが、それに対して厚生労働省が基発というものを出されて、一応、例えば、これはあくまで福祉就労、あるいは、計画立った就労のプログラムだという形での就労と、いやいや、こっちは労働者性がある就労というふうに分けられましたが、私は、この障害者雇用、障害者の就労促進という観点から見ると、やはり根本が見えていないように思います。

 大臣に伺います。

 ヨーロッパでは保護雇用制度というのがございまして、障害のある人にもなるべく雇用を促進する、働いていただく、そのためには、幾つかの条件を設けて、例えば賃金の補てんもこれは税から行うという仕組みもございますし、簡単に、こっちは福祉就労、こっちは雇用だというふうに分けないで、なるべく一人でも多く雇用の側に取り込むための保護雇用制度というものがございます。厚生労働省でも、研究班で御検討されたことがございます。

 大臣には、こっちが福祉、こっちが雇用と簡単な割り切りをすることなく、障害者自立支援法でもそうですが、働ける、そういう道を障害のある方にもっともっと開くようにぜひ検討をお願いしたいが、いかがでしょう。

舛添国務大臣 一九七二年にノーマライゼーションという概念でノルウェーから始まりました今のような考え方、これは、私は、こういうことを一つ一つ、もうそれは七〇年代ですから三十五年前の話です、やっと今そういう議論ができるかなというような感じがしておりますので、今の問題意識、私も共有しておりますので、やはり障害があっても健常者と同じように働き、生活していける、そういう先進国にこの国をしたいと思っております。

阿部(知)委員 最低賃金以下で、違反で指摘される方が、さっき申しました女性やパートや障害のおありの方あるいは外国人というのが我が国の労働現場の実態であるとすれば、やはりそれは、働くこと、すなわち社会の中で働くということがきちんとルール化されていないんだと思います。

 私は、厚生労働省が行われたこの調査、きょうちょっと資料がお手元に間に合いませんでしたが、みずから行われたことですから、その調査にのっとってきちんと施策をしていただきたい、そしてまた来週、ここで問題になりました方々の働き方と長時間労働について質問をさせていただきます。

 終わります。

茂木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時九分散会


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