衆議院

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第6号 平成20年4月11日(金曜日)

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平成二十年四月十一日(金曜日)

    午前九時三十七分開議

 出席委員

   委員長 茂木 敏充君

   理事 大村 秀章君 理事 後藤 茂之君

   理事 田村 憲久君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 山田 正彦君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井澤 京子君

      井上 信治君    石崎  岳君

      大塚 高司君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      櫻田 義孝君    清水鴻一郎君

      杉村 太蔵君    平  将明君

      高鳥 修一君    谷畑  孝君

      冨岡  勉君    中森ふくよ君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      林   潤君    福岡 資麿君

      松浪 健太君    松本  純君

      松本 洋平君    三ッ林隆志君

      若宮 健嗣君    内山  晃君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      郡  和子君    下条 みつ君

      園田 康博君    高井 美穂君

      長妻  昭君    細川 律夫君

      三井 辨雄君    森本 哲生君

      柚木 道義君    鷲尾英一郎君

      伊藤  渉君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   議員           三井 辨雄君

   議員           山田 正彦君

   議員           山井 和則君

   議員           菊田真紀子君

   議員           園田 康博君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   厚生労働副大臣      西川 京子君

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   厚生労働大臣政務官    松浪 健太君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        高原 正之君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  西山 正徳君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  清水鴻一郎君     中森ふくよ君

  萩原 誠司君     平  将明君

  福岡 資麿君     大塚 高司君

  岡本 充功君     鷲尾英一郎君

  菊田真紀子君     高井 美穂君

  糸川 正晃君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     若宮 健嗣君

  平  将明君     萩原 誠司君

  中森ふくよ君     清水鴻一郎君

  高井 美穂君     菊田真紀子君

  鷲尾英一郎君     森本 哲生君

  下地 幹郎君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  若宮 健嗣君     福岡 資麿君

  森本 哲生君     下条 みつ君

同日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     岡本 充功君

    ―――――――――――――

四月十日

 介護労働者の人材確保に関する特別措置法案(第百六十八回国会衆法第二四号)の提出者「三井辨雄君外三名」は「三井辨雄君外四名」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出第六七号)

 介護労働者の人材確保に関する特別措置法案(三井辨雄君外四名提出、第百六十八回国会衆法第二四号)


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     ――――◇―――――

茂木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、三井辨雄君外四名提出、介護労働者の人材確保に関する特別措置法案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房統計情報部長高原正之君、医政局長外口崇君、健康局長西山正徳君、労働基準局長青木豊君、社会・援護局長中村秀一君、老健局長阿曽沼慎司君、保険局長水田邦雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上信治君。

井上(信)委員 おはようございます。自由民主党の井上信治でございます。

 内閣提出の介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案、また、民主党の介護労働者の人材確保に関する特別措置法案について質問をさせていただきたいと思います。

 介護保険制度は、御承知のように、平成十二年の四月に制度が発足して既に八年が経過をしております。その間に、介護サービスの受給者数は百四十九万人から三百五十六万人の二・四倍に、介護保険総費用も三・六兆円から七・四兆円の約二倍になるなど、国民の間に広く定着をしております。

 他方、今後の介護保険制度における要介護認定者及び要支援認定者、平成十六年の約四百十万人から平成二十六年度には六百万人以上に達すると見込まれ、今後、高齢者に対する介護保険サービスの需要がますます拡大していくことは間違いがございません。国民生活を支える介護保険制度の重要性が高まるということは言うまでもなく、将来にわたって介護保険制度が国民に信頼される制度でなければならないと考えております。

 他方、平成十二年度から十八年度までの間に指定取り消し処分のあった介護サービス事業者は四百八十二カ所に及び、残念ながら、悪質な事業者は後を絶たないというのが実態でございます。その中でも、昨年発生しましたコムスンの事案に関しては、大手介護サービス事業者でありながら、複数の事業所で必要な人員を確保していないにもかかわらず確保しているかのように偽り、不正な手段によって指定を受け、さらには処分逃れを行うなど、大変悪質であり、許されないということは言うまでもございません。

 今回の内閣提出の法案は昨年発生したコムスンの不正事件が契機であると思いますけれども、コムスン事件、なぜ発生してしまったのでしょうか。

 指定取り消し処分を受けた事業所が、平成十二年度には七事業所であったものが十四年度には九十事業所、十五年度百五事業所、十六年度八十一事業所と高どまりをしていたために、悪質な事業者を排除する仕組みが求められ、平成十七年の法改正においては、指定の欠格事由、取り消し事由を見直すとともに、六年ごとの指定の更新制を導入するなど、事業者の規制の見直しはしっかり行ったはずであります。

 しかし、それにもかかわらず、今回、コムスンの不正事件が起こってしまった。それはなぜと考えるか、その原因に対する大臣の御所見を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 今御指摘のコムスンの事案ですけれども、人員基準を満たすような人材の確保がないまま急激な事業拡大を行った、これが第一の理由だと思います。それから、法令遵守を徹底していない、そして、きちんと法を遵守してサービスをやる体制を整えていない、こういう企業体質に大きな原因があったと思います。

 コムスン問題というのは悪質な企業が起こした組織的な不正事案でありますから、こういうことを二度と起こさない、介護事業運営の適正化をするということで、今回の法改正、それによって介護サービス事業者に対する規制のあり方を再検討したいと思います。

井上(信)委員 今大臣に答弁いただきましたように、まずは事業者の法令遵守ということ、これは当たり前ですけれども、しっかりやってもらわなければ困ると思います。そして、それとともに、行政の方でそれをしっかりチェックするということ、引き続きお願いしたいと思います。

 さて、そのコムスン事件を受けまして、厚生労働省は、昨年の七月には介護事業運営の適正化に関する有識者会議を設置し、介護サービス事業者の不正の再発を防止し介護事業運営の適正化を図る措置の検討を始め、十二月には報告書が提出され、その報告を受けて今回の法律改正に至ったわけであります。この政府の迅速な対応については評価をさせていただきたいと思います。

 しかし、今回の改正は、コムスン事件の反省に基づいて対応可能なところを緊急に見直す、これももちろん必要なのでありますけれども、いわば対症療法的なものにすぎず、事業者規制の強化が中心となっておりまして、介護保険制度全体にかかわる事項については、残念ながらほとんど触れられておりません。

 法令遵守等の業務管理体制整備の義務づけ、事業者の本部等に対する立入検査権の創設、不正事業者に対する処分逃れ対策など、制度の見直しが後追いであり、寄せ集めの印象は免れないというような声も聞こえております。

 コムスン事件は社会的影響が大きく、介護保険制度に対する信頼感を失わしめるものであった。ですから、その信頼回復を図ることは極めて重要でありますけれども、それとともに、介護保険制度をめぐるさまざまな問題が叫ばれている中でありますから、今回の改正におけるような、事業者を規制するという局所的な対応のみではなくて、介護保険制度そのもののあり方について問題点を検討し、これに基づいて制度を見直していく必要もあると考えております。

 今後、どのような理念で制度の見直し、そしてさらなる介護行政を進めていかれるのか、御所見を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 今、八十五歳という平均寿命で、世界一の長寿国になっております。ずっと健康寿命を皆さん保てればいいんですけれども、どうしてもやはり御高齢になると、介護の期間も長寿化に伴って長期化するという傾向は否めないと思います。

 それから、私自身も介護をずっとやってきましたから、家族構成から見て、子供の数が少なくなってきている、そういう意味で、家族の介護力に頼るというのは私はもう不可能だというふうに思っていますので、こういう問題が、老後の大きな不安の一つとして介護ということを皆さんが気にするようになったというように思います。

 私は、できれば健康寿命を保って余生を送りたいと皆さんそう思いますけれども、なかなかそうではない場合に、介護が必要な身となったときに心配なく生活ができる、こういう体制をきちんと整える、これが先進国として特に社会保障で気をつけないといけないことだと思いますので、尊厳を持って老後を送ることができる、そのために必要な介護体制、これに全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

井上(信)委員 ありがとうございます。

 尊厳を持って老後を送るということですから、これはまさに国民が望んでいることでありますので、引き続きよろしくお願いをしたいと思っております。

 さて、それでは法案の具体的な中身に入りたいと思います。

 今回のこの法律改正におきましては、事業者の法令遵守を確保するために、事業者に対して、百十五条の三十二第一項で、「厚生労働省令で定める基準に従い、業務管理体制を整備しなければならない。」と規定されておりますけれども、具体的にどのような内容を考えておられるのか。

 と申しますのも、事業者の法令遵守の徹底という立法趣旨を達成するためには、形式的に業務管理体制を整備するというだけでは不十分と考えております。業務管理体制管理者の設置、業務管理マニュアルの整備などを義務づけると伺っておりますけれども、そのような内容だけでは、管理者名を登録するのみ、マニュアルはモデル例のコピーとなってしまう、こんなことも予想されてしまいます。どのようにして実効性を持たせていくのか。

 また、介護事業の事務負担が煩雑で過重であるという批判が既に出ておりますけれども、そういったところに対して、人員配置や文書作成などの負担がさらなる過重となるようなことが生じてしまっては、これは元も子もないというふうに思っております。

 ですから、この業務管理体制、具体的にどんなことを考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 今回の改正では、事業者の法令遵守を確保するために、御指摘のように、業務管理体制を整備するということで事業者に義務づけをするということでございます。

 この仕組みのねらいといたしましては、指定取り消し事案などの不正行為を未然に防止するということによって、また一方で、利用者のサービス確保、あるいは介護事業運営の適正化を図るということを考えたいということでございます。

 具体的な話でございますけれども、法令遵守の徹底を図るために、一応、全事業者に対して、法令遵守にかかわります担当者の選任を義務づけるということを基本的にお願いいたしまして、さらに、事業者の規模に応じまして、法令遵守等に係るマニュアルの整備、あるいは、大規模なところにつきましては内部監査の実施を義務づけるということを想定しております。

 それから、お話がございました事務処理の負担、特に小規模な事業者において過重な負担にならないようにということでございますけれども、その点については、私どもとしても、事務処理負担が過大なものにならないようにいろいろな工夫をいたしたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

井上(信)委員 今お答えいただきましたように、事業者の事務負担を余りふやすことなく、しかし実効性を確保していくというなかなか難しい要請でありますけれども、これからの詳細な制度設計を含めて、しっかり運用していただきたいというふうに思っております。

 そして、もう一点でございますけれども、サービス確保の対策につきまして伺いたいと思います。

 事業者に対して処分を行うということは、利用者にとってはサービスの提供先がなくなるということ、そしてまた働く従業員の方々にとっては雇用先がなくなるということを意味します。介護サービス事業者が事業などを廃止または休止するときには、介護難民を発生させないようにすること、失業者を出さないようにするということが、介護保険制度への信頼と安定した雇用を確保するために非常に大切なことだというふうに思っております。

 コムスンの事案におきましては、約八万人の利用者と二万人の従業員が他の法人にうまく引き継がれたということで、混乱が比較的少なくて済んだということには胸をなでおろしておりますけれども、しかし、事業者が倒産するなど、対応不能な場合も当然想定していくわけでありますから、国民が安心して介護サービスを受けるためにどのようにしていけばよいのか。

 本改正案は、事業者に対して、事業廃止時の利用者へのサービスの確保対策を義務づけているとともに、国、都道府県、市町村が事業者を支援することを規定しております。しかし、第七十四条第四項に示されている関係者との連絡調整でありますとか、あるいは行政による支援としては、七十五条の二に示されている、これも連絡調整または助言というようなことが示されておりますけれども、具体的にどういったことを想定しているのか。そして、これらの措置によって、本当に私が懸念しているようなそういった事態が起きないかどうか、そのことについて回答いただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 サービス確保の問題でございますけれども、一義的には事業者が責任を持って対応するということがまず第一に必要でございます。

 具体的に申し上げますと、利用者を他の事業者に紹介をする、あるいは他の事業者に利用者の受け入れの依頼をする、あるいは事業廃止に係りますスケジュールでございますとか、必要な手続などを利用者の家族とかケアマネジャーの方に対して情報提供するとか、相談窓口をつくるとか、そういうことをちゃんと事業者にやってもらう。それに必要なバックアップを行政側としてもしていくということだと思います。

 それから、事業者間の連絡調整や助言以外に、やはり行政側としても、事業者団体等に対して十分周知をするとか、あるいは引き継ぎ先の事業者を選定するといった場合に助言をするとか、あるいは計画の作成について助言をするとか、いろいろな形のことが考えられるのではないかというふうに思っております。

 私ども、コムスン事件のときに、利用者サービスの確保というのが一番大変頭を悩ませた問題でございました。したがいまして、とにかく利用者のサービスが確実に継続されるように行政側としての万全のサポートをしてまいりたいというふうに思っています。

井上(信)委員 今、局長がお答えいただいたように、本当にそのサービス確保ということが国民にとっては一番大切なことだというふうに思います。これからさまざまな事案が出てくると思いますけれども、本当にその都度その都度、このサービス確保に対しては万全の配慮をしていただきたいと思っております。

 続きまして、介護労働者の賃金の引き上げについて伺いたいというふうに思います。

 申すまでもなく、介護サービスを支えていただいているのは、何といっても現場で働く労働者の方々であります。現在、介護現場での最も切実な問題は、いかにして労働環境を整え、将来にわたって安定的に労働力を確保していくかということであります。介護現場で経験を積み、これから現場のリーダーとして活躍を期待されている方々が、待遇などの労働条件が整っていないために、不本意ながら離職することが多いというふうに聞いております。

 介護現場のお話を伺いますと、労働者の皆様からは、仕事の内容の割には賃金水準が低く、現在の賃金水準では、将来、世帯の生計を支えることができないという声が、また事業者の方々からは、経営が厳しく、人材の確保、育成ができない、そういった声も多く聞こえてくるわけであります。

 実際に、平成十八年度賃金構造基本統計調査によりますと、男性で比較しますと、全産業の一般労働者の決まって支給される現金支給額が三十七万二千七百円であるのに対して、福祉施設介護員は二十二万七千百円である。大変低いと言わざるを得ません。また、離職率を比べてみますと、全産業平均の離職率が一六・二%であるのに対して、介護職員、ホームヘルパーの離職率は二〇・三%、こちらの方も高いと言わざるを得ません。

 きつい仕事であり、給与が報われなくても高い志を持って介護の現場で頑張っている、そういった方々が大変多くいらっしゃるわけであります。ですから、その方々のためにも、介護現場で働く方々、介護の仕事に誇りが持て、そして適正な労働環境のもとで仕事ができる状況をつくり上げていくということ、これは大変重要な課題であるというふうに思っております。

 この件に関しまして、舛添厚生労働大臣が今月三日に都内の訪問介護ステーション施設を視察した際に、介護労働者の処遇改善のため、介護報酬の引き上げを示唆したというふうに伺っております。大臣、退席されてしまって残念でありますけれども、西川副大臣に、介護労働者の処遇改善を図るための政府の取り組みということについていかにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

西川副大臣 お答えさせていただきます。

 現在、介護労働者の賃金の実態や介護事業者の経営実態について具体的に調査をしております。ことしの四月あたりから始めまして、九月あたりにこの調査結果が出ると思います。それと、介護労働者自体への調査、これをしっかりいたしまして、この調査結果を踏まえまして、きちんとした対応をしたいと思っております。

 さらに、介護報酬改定以外の事務負担の軽減措置の問題、介護労働者の現場の方々がこの事務処理の面についても大変な時間をとられる、そういうこともありますので、ぜひこの軽減なども図りたいと思っております。

 そしてさらに、給与だけでなくて、やはり働きやすい魅力ある職場の環境づくり、環境整備ということも大変大事なことなんだろうと思います。それともう一つ、研修その他を通じて介護労働者のキャリアアップ、将来自分の資質がどんどん高まっていく、やはりそういうことも大変重要なことなのではないのかなと思っておりますので、平成二十年度におきましては、雇用管理の改善のための取り組みや、潜在的な有資格者のための調査の実施その他、人材確保を推進するための予算を確保していきたいと思っておりますが、二十一年度の改定に向けて、さまざまなそういうきちんとした調査結果その他を踏まえて適正に対処したい、そう思っております。

井上(信)委員 これはぜひお願いをしたいというふうに思っております。

 平成二十一年度には、介護報酬改定ということで、適切な報酬設定に努めること、これは当然としましても、単純に労働者の賃金を引き上げるということだけではなくて、副大臣がお答えいただいたように、事務負担の軽減であるとかキャリアアップ、こういったさまざまな施策によって、介護労働者の働く環境の整備、改善をするという総合的な施策が必要だと私も考えておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 続きまして、民主党が提出している介護労働者の人材確保に関する特別措置法案についてでございますけれども、まずは政府の方から、副大臣の方から、この民主党の法案についてどのようにお考えか、お答えをいただきたいと思います。

西川副大臣 恐れ入ります。多分、それぞれ議員の立場でということがあるんだろうと思いますので、お答えさせていただきます。

 民主党提出の介護労働者の人材確保に関する特別措置法案につきまして、お答えさせていただきますが、そもそも、この法案について申し上げたいところでございますが、一番の労働条件である賃金ということに関しては、やはり雇用主と労働者との個々の契約によって成り立っているものだろうと私も思っております。その中で、この民主党提案の人材確保法案を拝見させていただきますと、今回、介護報酬を加算するというところに関して、地域の事業所の平均賃金、これを上回るところに加算をしたい。そして、事業者に努力義務あるいは都道府県への報告義務を課しているようでございますが、その事業者に介護報酬を加算したといたしましても、労働者の賃金が上がるという保証は結果的にないわけでございますね。その辺がちょっと問題かなという思いがあります。

 それから、賃金水準が低いのは、介護労働者だけでは現実にはないわけでございまして、そこに公的にお金を入れる、そこだけに集中して入れるというのは、やはりちょっと公平を欠くのではないかということが考えられます。それから、そもそも、法案をよく拝見しますと、半分ぐらい、平均以下の賃金のところは、結局それが救われない、そこの事業所の労働者は救われないということが考えられます。

 そして、現在の介護報酬は、介護保険制度を通じて事業者が提供した介護サービスの対価として人件費も含めて支払われるものでありますから、それとは別にまた賃金分を上乗せして助成するということは、ちょっと制度上問題がある。

 厳しい財政状況の中で、ではその財源をどうするのかということでございますが、九百億円とお聞きしておりますけれども、初年度はともかく、後年度負担をどうするのか。その辺のところを考えると、なかなか厳しい案ではないかという印象を持ちます。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

井上(信)委員 ありがとうございました。

 なかなかお答えしにくい質問だったと思いますけれども、その割には多岐にわたる御指摘をいただきまして、大変ありがとうございました。

 本当に、介護労働者の賃金の引き上げ、そして労働力の確保ということは大変大きな問題でありますから、そういう意味では、民主党が今回の法案を提出されたその志は、私は多としたいというふうに思います。

 しかし、法案を精査いたしますと、今副大臣もお答えいただいたように、残念ながら、本当にこれが実現可能な法案なのだろうか、そして、理念がない、ばらまき的な政策と言わざるを得ません。大変残念であります。

 ですから、これから、今副大臣が御指摘していただいた点も含めて、少しその法案の中身について御質問させていただきたいと思います。

 まず、第一条でありますけれども、「現在他の業種に従事する労働者と比較して低い水準にある介護労働者の賃金」というふうに明記をされております。しかし、賃金水準が低い産業というものは介護産業だけではございません。賃金が低い産業というものはほかにもあると思いますけれども、そのような産業についてはどのような措置をとっていくのか。もしそういった措置を考えていないということであれば、他の産業に対しては切り捨てていく、これはやはりよくないことだというふうに言わざるを得ません。

 介護産業だけ労働者の賃金を引き上げるために、国民一般が払っていただいている大切な税金を投入するということに合理的な理由があるのでしょうか。ほかの産業でも、やはり低賃金ながら懸命に働いているそういう労働者の方々もたくさんいらっしゃいます。他産業と比べて不公平だというふうに考えます。

 さらに申し上げてしまえば、やはり介護労働者の方々に対してのばらまき政策にすぎない、こういった言い方もできるかと思います。無責任のそしりを免れない、そんなことまで言わせていただきますけれども、お答えをいただきたいと思います。

山井議員 井上議員、御質問ありがとうございます。

 言いたいことは多々ありますが、絞ってお答えします。

 井上議員の今の質問、矛盾があるように思います。冒頭で、どれだけ今の介護労働者が厳しい状況に置かれているか、何とかせねばならないということを前半で言いながら、後半では、その介護職員の労働者の賃金引き上げに税金を投入するのはばらまきではないか、無責任ではないか。では、井上議員は、民主党の法案に賛成なんですか、反対なんですか。介護職員の賃金引き上げに賛成なんですか、反対なんですか。

 今の質問も、自分で問題点を指摘する前に厚生労働省の見解を聞く。そういう役所、お役人のやり方では先送りになるから、民主党は介護人材確保法という議員立法を出しているわけです。もちろん介護職員だけではありません。障害者の介護職員も非常に厳しい状況、その賃上げも考えております。また、私たちは、最低賃金を千円を目標に引き上げる、そんな法案も出しております。

 がん対策法、二年前に審議したとき、これも民主党が議員立法を出しました。

 そして、二年前の審議、肝炎に対して医療費助成をすると言ったときに、役所はどう言いましたか。なぜ肝炎だけを優遇するんですか、不公平ではないかという同じ質問をされました。しかし、逆に、この四月一日から肝炎の医療費助成をしたではありませんか。

 つまり、その何が公平か不公平でないかという優先順位をつけることこそが政治家の仕事、政治なんではないでしょうか。

 もし不公平というならば、一般の労働者より三割も低い賃金で、私も実習したことがありますが、一日五十人、百人のおむつ交換介助、八割の人が腰痛で苦しんでいる、こういう最もとうとい仕事をしている人が一般の労働者より三割も低い賃金で働いている、これこそ不公平であると思います。

 こういうことを放置できないということで、責任を持って、財源を伴ったこの法案を提出させていただきました。

茂木委員長 山井君、御意見は御意見として、質問には答えてください。

 井上委員の方から、賃金水準が低い他の産業への措置はどうしましたかと。答えがございません。

 それから、もう一つ申し上げますが、答弁者は質問者に対して質問はできませんので、以降、気をつけてください。

 答えてください。

山井議員 委員長の質問に答えていいんですね、井上議員。

 先ほど言いましたように、これは優先順位です。ですから、介護職員の待遇改善の次は障害者の現場の待遇改善もしたい。そしてまた、私たちが今出している最低賃金を千円に引き上げるそういう法案も私たちは通していきたい。順番にやっていきます。

 逆に言えば、すべてのことを一斉にできないから、不公平になるから、どれも賃金を上げないというのは、やらないための言いわけにすぎないと民主党は考えます。

井上(信)委員 提出者の方からの質問には答えるなという委員長の指示ですけれども、一点だけ。民主党の法案には反対であります。それだけお答えしたいと思います。

 そして、私が思いますに、先ほど申し上げたように、確かに、介護労働者の賃金の引き上げ、これに努めていく、その理念は多としたいというふうに私も申し上げました。ですから、そこはいいと思うんです。ただ、今回の法案のスキームであるとか手法、財源、こういったことに対して現実性がない、そういう指摘でありますので、そこは理解をしてもらいたいと思います。

 それで、他の産業につきましては、いろいろお話を伺いましたけれども、結局、介護事業者、介護労働者と比べて優先順位が低い、とうとい仕事ではない、切り捨ててもよい、そういうお答えだというふうに理解をさせてもらいたいと思います。それは、ほかの労働者に対して大変失礼であるとともに、やはり私は、ほかの労働者についてもしっかり配慮をしていかなければいけないというふうに思っております。

 それから、次の論点に移りますけれども、これは第五条、介護報酬の加算を受けるためには、平均賃金が基準額以上である旨の認定を受ける必要があると。その事業所の平均賃金が基準額を大きく下回る事業所で働いている介護労働者の賃金はこれは上がらないということなんでしょうか。そうなりますと、むしろ、今回の措置によって格差がますます広がっていく、賃金が安い労働者の方々は切り捨てるというような結果になると思いますけれども、この点についてお答えください。

園田(康)議員 お答えをさせていただきます。

 先ほどの論点とも少し重なるところはあるかもしれませんけれども、私ども民主党は、何もこの介護だけということをまず念頭に置いているということではありません。当然、先ほど井上委員からも御指摘があったように、介護従事者の方々、そういった方々の総合的な労働環境、そういったものもしっかりとやっていかなければいけない。その中で今回まずは、インセンティブを持たせた、賃金引き上げを念頭に置いた人材確保法というものを提出させていただいたというところでございます。

 私どもが提出をさせていただいた趣旨説明の中でも、恐らくここに集われていらっしゃる委員の皆様方も、現状の認識というものは、介護は大変厳しいという同じ認識を持っていただいているものだというふうに思っておりますので、そんな中から、では、この介護保険制度全体を、しっかりとした制度を継続させていかなければいけない、そしてそれを幅広く進捗していかなければいけないという視点に立たせていただいたところでございますので、その点をまず御理解をちょうだいしたいというふうに思っております。

 そして、その介護サービスを支える人材を確保できない状況ということは、やはり私どももここで見過ごしておくわけにはいかないのではないかということを考えていたわけでございます。

 したがって、まずは、今回のこの法案を提出させていただく際に、賃金の引き上げをもとに労働環境の改善というものもあわせてやっていかなければいけないということで、これを事業者の皆様方にインセンティブとして持たせていただいた。

 その中で、今御指摘のあるように、第五条では、平均賃金、これは、事業の種類あるいは地域ごとによってその平均賃金をまず算出させていただきます。それで、それを上回る部分について加算の介護報酬という形を行ってはどうかということを提案させていただいているわけでありますけれども、そこで、では平均賃金に至らないといったところはどうされるのかという問題意識であったわけであります。そうすると、格差が広がっていくのではないか。

 しかしながら、その平均賃金を上回ることがこの認定の必要最低限の要件という形になっておりますので、いわばサービス事業者の方々にとりましてはそれを上回るように努力がなされていくであろう。したがって、そういう目安を設けることによって、各事業者の方々が、介護福祉士あるいはホームヘルパー等の従業員の方々の賃金引き上げにつながっていく。そして、引き上げを行うということが、サービス事業者の方々にもいわば目標値としてインセンティブがかけられる。したがって、全部総合的に引き上げられるものではないかというふうに期待をさせていただいているところであります。

井上(信)委員 ちょっと私が思いますのは、やはり現状の介護労働者の方々の本当に大変な窮状そして介護事業者の窮状、これを現場として全く理解されていないお答えのように思えますね。介護事業者の方々があたかも自助努力をしていない、だからインセンティブを与える、そういったようなお答えだったと思います。

 事業者の方々も、大変な苦労をされながら、何とかして労働者の方々に分配したいと思いながら、しかしなかなか難しい、こういう窮状にあえいでいるわけです。ですから、そういった本当に困っているところに手を差し伸べないで、そっちは自助努力で、そしてある程度の給与を与えているところにはかさ上げをしましょう、これは私は本末転倒だと思います。そして、現場の本当の苦しみというものをわかっていない、机上の空論と言わざるを得ません。

 さて、次の論点に移りたいと思います。

 介護労働者の給与ということで、これは、現実的には事業者と労働者との間の個々の雇用契約で決められているわけでありますね。民主党さんの資料を拝見いたしますと、今回の措置によって労働者の賃金が平均二万円程度上がるというような見込みを発表されておりますけれども、しかし、それが本当に可能なのか。特に、介護労働者の平均賃金が基準となる介護労働者の平均賃金を既に上回っている事業者、そこに特に手を差し伸べるという話でしたけれども、今でも十分に賃金が支払われていて賃金が上昇する保証はないということで、他の用途に回ってしまう、こういった可能性もあるわけですよね。ですから、ちょっとこのスキーム自体が実現不可能な、そんな案だというふうに思いますけれども、その点についてお答えいただきたいと思います。

菊田議員 井上委員の御質問にお答えをさせていただきます。

 御指摘のとおり、ただ単に介護報酬を上乗せしただけでは労働者の賃金に直接結びつかないおそれがあると思います。

 そこで、本法案では、加算介護報酬を受け取った事業者は、毎事業年度終了後、当該事業年度に介護労働者に対して支払った賃金の認定事業所における平均額を算出し、都道府県知事または市区町村長に報告をしなければならないこととしております。そして、都道府県知事または市区町村長は、その平均額が認定基準額を下回っていると認める場合には、当該事業者に対してその理由の説明を求め、正当な理由がないと認めるときには、必要な措置をとるべき旨を勧告いたします。それに従わなかったときには、さらに認定の取り消しをすることができることとしております。こうした対応によりまして、労働者の賃金向上を達成できると考えております。

 以上です。

井上(信)委員 今の御説明ですと、本当に労働者の賃金が上がるのかどうか、非常に難しいと言わざるを得ないというふうに思っております。

 それから最後に、財源の問題であります。

 民主党の資料によりますと、今回の法案を実施するために必要な財源規模は九百億円ということでありまして、全額一般財源、国庫からの支出ということになっております。しかし、具体的にどういう根拠でどういう財源を国庫から充てていくかということについて、これを回答いただきたいというふうに思います。

 先般の趣旨説明の中でも、この法案におきましては、財源を全額国庫から支出しますので、介護保険料も自己負担もアップしません、こういったことを発言されておられます。確かに、自己負担や保険料というものは、国民にとってわかりやすい形で負担をお願いする形です。ですから、民主党として、国民にわかりやすい負担を押しつけたくない、そういう思いはわかります。しかしこれは、税金であろうと保険料であろうと自己負担であろうと国民の負担であるということは同じですから、これを国庫の支出だから安心ですよという言い方は、やはりわかりやすい形での人気取りの法案と言わざるを得ないというふうに思っております。

 本当に全額国庫支出であるならば、ではどのようにしてその財源を捻出するかということ、この点についてお答えいただきたいと思います。

茂木委員長 山井君、持ち時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

山井議員 井上議員、御質問ありがとうございます。

 平成十九年度補正予算において見込んだ額に比べ、政府の介護給付費に関する国庫負担の額は、実績額が約九百億円、具体的には八百九十一億円、昨年度の介護給付費の国庫負担は余ったわけであります。そして、平成十八年度も四百九十七億円余ったわけであります。私たち民主党としましては、予算において見込んでおきながら実際には使われなかった費用等を活用すれば、本法律の施行のために必要な経費は確保することができると考えております。また、足りない場合には補正予算を組むべきだと考えております。

 今回、この審議がおくれたことによりまして、七月一日スタートというふうにこの法案を修正させていただこうと思っておりますが、その場合、四分の三でありますから、六百七十五億円であります。

 民主党が議員立法を出すと、いつも与党の議員の方は、財源、財源ということをおっしゃいます。ですから、昨年度、九百億円の介護給付費を、これだけ介護現場が厳しいのに厚労省は余らせてしまって、その九百億円は補正予算の中で、消えた年金の特別便対策や後期高齢者医療の自己負担の引き上げ凍結に使われているわけですね。やはり介護の給付費は当然介護職員の賃金引き上げに使われるべきだと思います。

 最後になりますが、いろいろおっしゃる以上は、与党として対案を出してください。もちろん一〇〇%介護職員の賃金引き上げにつながるわけではございません。しかし、もしそこまでおっしゃるならば、どうすればこのお金の一〇〇%、九〇%が賃上げにつながるのか。その法案を民主党は半年議論して出しておるわけです。何も具体策を出さずに批判ばかりするというのは少し無責任ではないでしょうか。

井上(信)委員 ありがとうございました。

 財源については、予算から余剰分が出たということでありますけれども、それもいろいろな関係者の方々の大変な努力によって何とかそういう意味で歳出を抑えられたということでありますから、だからそこに財源があるだろうというのはちょっと乱暴な話だと思います。では余剰分が出なかったらどうするんですかという話になりますから、やはりそこはもうちょっと明確な財源を示していただかないと、無責任と言わざるを得ません。

 私が思いますに、先ほど来申し上げておりますように、とにかく、この介護労働者の待遇改善という意味では、恐らく与党も野党も同じ思いは持っていると思うんですね。ですから、そういう意味で、いわゆるねじれ国会の中でもあることですから、やはりもうちょっと現実的な案を示していただいて、全く非現実的な案を示しておいて、我々は案を出した、おまえら代案がないじゃないかと言うのは、それはちょっと言い過ぎだというふうに私は思います。ですから、しっかり現実的な案を出していただいた上で協議をしていくというのがあるべき姿ではないかなというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

茂木委員長 次に、松本洋平君。

松本(洋)委員 自由民主党の松本洋平でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、井上委員に続きまして、内閣提出の介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案、そして、民主党提出の介護労働者の人材確保に関する特別措置法案ということでございまして、この両案に関しまして質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、井上委員から総括的な御質問があったと思いますので、もう少しブレークダウンして、いろいろとお伺いをしていきたいなと思っております。

 それに先立ちまして、まずは、あのコムスンの問題等々介護をめぐるさまざまな問題によりまして、介護という、自身の将来、老後を託す制度に大変な不安が走ったというのは大変大きな問題だというふうに理解をしております。それを受けまして、政府といたしまして今回法案を提出し、いわば、制度の欠陥みたいなものもあったというのが恐らく政府の認識ではないかと思います。そうした中におきまして、こうした対応というものをしたことを私は評価したいと思います。ぜひ早急に法案を成立させまして、こうした不安が今後二度と起きないように、国民の皆さんに老後を安心してもらえるようにしていかなければならないと思っております。

 介護報酬の不正請求事件、処分逃れ、こうしたことが二度と起きないように、そして、介護というものに対する国民の信頼というものがしっかりと高まって、老後の生活が安心して送れるようなそうした対策というものをぜひとも早くしていただきたいと思います。

 そういう意味での法案の成立を、まず冒頭ではありますけれども、早急に望みますことを私から申し上げさせていただきたいと思います。

 早速質問に移らせていただくわけでございますけれども、井上議員が、ちょうちょうはっしといいますか、民主党さんとやり合っておられましたので、民主党さんにいろいろと質問をさせていただきたいと思います。

 今回、上乗せの報酬ということでございまして、これはすべて国庫から負担をしますということでございます。そうしますと、基本的には、いわば暗黙のルールじゃないですけれども、社会保険のルールとも言える、いわゆる五割の公費というところを超えるというような結果になるかと思います。

 しかしながら、これが本当にいいのかどうかという話が私はあると思っておりまして、当然、今社会保障というのは何が原因で起きているかといえば、やはり一つ大きな要因というのは、少子高齢化社会への進展だと思っております。今確かに厳しい現状があるのは事実でございますけれども、しかしながら、これから時が経るにつれて、もっともっと社会の状況、財政、そして社会保障を取り巻く給付と負担のバランスというものは厳しい状況がやってくるのはもう目に見えている、そういう状況なわけでございます。

 そういうときに私が思うのは、やはりしっかりとしたルール、原則、枠組みというものをしっかりとつくって、そして、負担する側もサービスを受ける側も持続的にサービスを受けられるような制度設計というものが私は大変重要ではないかと思っております。

 しかしながら、今回の民主党さん提出の法案というものを見てみますと、実際には、この介護の問題に関しましては、そのルールを超えていくというような現実があるわけでございますし、そういう話になってくると、今度、給付と負担の関係というのをでは一体どういうふうに整理をしていくんだという不透明さというものも私は出てくると思いますし、それが本当に国民の理解を得ることにつながっていくのかなというようなことも懸念がされるわけでございます。

 そうしたことに関しましての御見解をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕

山井議員 松本議員、御質問ありがとうございます。

 私も、松本議員の質問の趣旨に半分は賛同するところが本当にございます。実は、民主党の中でこの法案を半年間議論する中でも、今松本議員が御指摘になったような論点が大きなポイントとなっておりました。

 介護保険の原則というのは、公費、保険料、五対五なわけでありまして、九百億円といえ、それを入れるということは、その基本的な原則を変えることになるわけですね。

 しかし、一方では、与党の議員の方々に御理解いただきたいと思いますが、本当に今、この介護の現場はもう介護崩壊ともいうべき状況になりつつあります。介護の養成学校で生徒が集まらない、また、介護の養成学校でもう学校が閉鎖されたりクラスが閉鎖されている、老人ホームが求人をしても人がほとんど集まらない。そういう中で、これは介護職員の方々だけではなく、日本人の老後の危機なんです。介護の社会化をうたった介護保険の理念はすばらしい。しかし、足元からその人材がなくなっていっている。そういう意味では、私たちはこれは国家的危機、緊急事態だと思っております。そして、そういう中で、昨年秋から十五万人もの署名が、介護職員の賃金を引き上げてほしいという切なる署名が集まってまいりました。

 ですから、松本議員の御質問にお答えするとすれば、この法案は、御指摘のように、短期間、ルールを逸脱するという法案でありますから、特別措置法として期限を区切っておりまして、民主党として、根本的な、やはり介護の職員の待遇が維持できるような、そういう民主党の抜本改正の法案を今用意しております。それで抜本改正が行われるまでの間、五対五のルールを破ってでもやらないとだめだと。これは待ったなしだと思います。来年の四月までは待てません。

 昨日も介護事業者の話を聞きましたが、非常にやりがいのある、心優しい職員がホームヘルプの仕事を去っていった。なぜかというと、今度結婚します、でも、介護職の仕事では生計が成り立たないんです、この仕事自体は大好きで、お年寄りが大好きだ、しかし、この賃金ではやっていけないと言ってそういう有為な人材が、きょう、あした、一日一日消えていっているんです。医療崩壊を見てもらってもわかりますように、人材は一度去っていくと、後で幾ら賃上げしてももう戻ってはまいりません。医師不足、医療崩壊のような取り返しのつかない状況になる前に緊急に賃金を上げるべきだ、それが民主党の政治判断でございます。

 以上です。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 介護現場が置かれている大変厳しい状況というのは私もさまざまな場で耳にするわけでございまして、理解をするところでございます。

 井上委員もおっしゃっていましたけれども、私もやはりこの問題というのは、しっかりと対応していかなければならないと思っております。しかしながら、先ほども申し上げましたけれども、給付と負担のバランスというものをしっかりと考えてやっていかない限りにおいて、やはり持続可能な制度にはならないと思います。

 先ほど、短期というようなお話がございました。後で質問をさせていただこうとも思っていますけれども、しかしながら、では、暫定措置というんですか、それがいつまで続くのかというところも正直不明確な部分というのもあるわけでございます。

 また、先ほど、井上委員の質問に対しまして、財源は、結局予算が九百億余ったんだから、それを充てればいいというようなお話があったわけでございましたけれども、今も申し上げましたように、結局、これは単年度で終わる仕組みというわけではもちろんないわけですよね。いつになるかはわからないけれども、これからも続いていくというようなそういう議論なわけですから、そういう意味におきましては、当然、国民の税金そして保険料というものを使わせていただく話でございますから、もちろんそこのところは、そういう感情的にしっかりと対応していかなければならない部分と、制度として、労働者を守っていくためにもしっかりとした財源を確保して、これからも見込みを立ててやっていく制度を設計し運用していくということが私は大変重要なことではないかと思っております。

 今もちょっとお話をさせていただきましたが、この法案の廃止時期、附則の第二条に書いてございますけれども、介護を担うすぐれた人材の確保に支障がなくなるまでというふうに書いてあるわけでございます。これが正直よくわからないわけでございまして、暫定暫定と言うからには、やはり出口はある程度見えているんだろうと私は思っております。

 具体的に、この介護を担うすぐれた人材の確保に支障がなくなるまでというのはどういうことなのか、教えていただきたいと思います。

    〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕

園田(康)議員 お答えをさせていただきます。

 先ほど山井提出者からも御説明をさせていただいたわけでありますけれども、すなわちこの法案のスキームといいますか、今の介護保険制度のいわば給付と負担のバランス、そして給付の部分で五対五という形のスキームがつくられている。また、被保険者からの一割負担という形にもお願いをさせていただいているというところであります。

 そして、それをいわば緊急措置的な、介護労働者も含めて基盤整備をきちっとやらなければまずいけないだろう、介護制度そのものが崩壊の危機に瀕しているのではないかというところの状況に、認識に立たせていただきまして、これを新たな抜本的な介護保険制度が構築できる、そういうところに持っていかなければいけない。あくまでもこれはそれまでの緊急避難的な特別措置の法案でございますので、永遠に継続してこのスキームが続くということではまずないんだということは、御理解を賜りたいというふうに思っております。

 そして、その時期がというところでありますけれども、先ほども政府からも御答弁がありましたけれども、来年、介護報酬の見直しが来る、それの今さまざまな事業者も含めて調査をされていらっしゃるということでございます。

 本来ならば、政府がこういった調査をして、そこに対してしっかりとした制度、持続可能な制度の見直しというものが行われるのであろうというふうに思ったわけでございますけれども、我々としては、やはり一刻も早くこの状況を打開するということであれば、来年まで待つということよりは、まずこの特別措置法できちっとやらせていただいた上で、先ほどの井上委員からの御指摘にもありましたけれども、社会保障全体のあり方、その財源の見直し、そういったものもきちっと我々も踏まえながらこの新たな抜本的な制度というものを構築してまいりたい、本当の意味での制度を構築してまいりたい、それまでの間ということでございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 緊急避難的な暫定措置だということは理解はもちろんしているわけでございますが、しかしながら、残念ながら回答していただいていないのかなというのが、私の率直な印象でございます。

 私の質問は、要は廃止時期として、介護を担うすぐれた人材の確保に支障がなくなるまでというふうに書いてあるわけでございますが、では一体どういう状況が介護を担うすぐれた人材の確保に支障がなくなったというふうに御判断をされるのか、それを明確にしていただかないと、この法案を暫定じゃなくてやめる、廃止するという時期がいつになるのかというのが明確にならないじゃないかというのが、私の質問の趣旨でございます。

 ですので、この終わりの、すぐれた人材の確保に支障がなくなるまでというのは具体的にどういう状況を想定しているのか、具体的に教えていただきたいと思います。

園田(康)議員 大変失礼をいたしました。

 すぐれた人材が確保されるということの状況の具体的なものだとの御質問でありましたけれども、確かにこの点は、これがすぐれた人材で、その環境がなされたということの具体的な状況というものはお示しをするということでは恐らくひょっとしたらないのかもしれません。すなわちこの介護保険制度そのものが、しっかりと制度が維持できる、そしてサービスを利用される方々と、それからそれを提供する側、それがきちっとこの制度の趣旨を理解していただいて、いわば安心して受けられる、そういう状況がつくられる、そういうものがあるということを念頭にこの言葉をつくらせていただいているというところであります。

 同時に、これだけの話ではありませんで、いわば、先ほど松本委員からも御指摘があったように、この制度が崩壊してしまっては元も子もないわけでございます。それを提供する側、そしてそれを受ける側、それがきちっとお互いに安心してその制度を利用できる、そういう状況がつくられることが本来のこの介護保険制度を抜本的に改革していくことであるということでありますので、ただ単に労働環境だけ、あるいはそれを担う従事者の賃金のアップだけということを念頭に置いているわけではないということでございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 抜本的に改正というような話も出ているわけでございますけれども、でも、抜本的に介護保険の制度を変えていく、それで提出者の皆さんが納得して、ああ、これはもういいやというふうに言える状況というのは、やはり同じなんですよね。介護を担うすぐれた人材の確保に支障がなくなるような抜本対策が打てれば、この法案はもう変えてそっちに乗り移ります、そういう趣旨ですよね。

 ということは、やはりこの介護を担うすぐれた人材の確保に支障がなくなるまでというのは、実は私は重要な文言だと思っておりまして、ここをしっかりと明確にしていただかなければならないと思います。

 また、先ほど来財源の話が出ていますけれども、単年度じゃなくて、これは複数年度にまたがって、幾ら緊急避難とはいってもやっていかなければならない措置でございますし、恐らく提出者の皆さんからしてみれば、これがどの程度のラインに置かれるのか、多分議員それぞれの判断というのもあるでしょうからなかなか難しい部分はあるかもしれませんけれども、しかしながら、提出者としてはある程度こういうところかなというのは想定をした上で制度設計をしてくれなければ、とてもではないですけれども、これから予算をしっかりとつけて制度を持続的に運営をしていくという形にはなり得ないのではないかということを、私は指摘させていただきたいと思います。

 次の質問をさせていただきます。

 第四条において、事業の種類及び地域ごとに認定基準額を定めるというふうになっております。事業の種類及び地域ごとという点を具体的にどのように設定しているのか、その辺が正直よくわからない観点でございます。そもそも介護労働者の勤務形態というのも大変さまざまでございますし、常勤でやられている方もいれば、当然、訪問に多いわけですけれども、パートでやられている方々というのもいるわけでございます。

 こういう中で、平均賃金額というものはどういうものを想定しているのか、教えていただければと思います。

園田(康)議員 ありがとうございます。

 平均賃金額の算定のあり方でありますけれども、これは今松本委員からも御指摘がありましたように、それぞれの事業の内容によってもやはり違う。通所あるいは入所、さまざまな形でそれがある。あるいはまた常勤、非常勤等の賃金の格差というものもこれありというところの認識は、私どもも持たせていただいている。

 したがって、まずは事業ごとの、これはいわば各都道府県の状況をそこで認定をしていただくというスキームでありますので、したがって、その地域ごとによっても当然それは格差が今の現状でもあるということでありますので、それはもう当然ながら地域ごとによって平均賃金の算出というものの額が一定にはならない。全国一律平均ということではありませんので、各地域ごとによってもまず違ってくるということがあり得る。

 そして、その中においても、各事業形態、種類の、先ほど申し上げたようにサービス内容によってはそれが違ってくるということでありますので、入所、通所等々のそれごとによって、それぞれの介護従事者の方々の総額の中から人数で割っていただいて平均賃金がそこで出てくるという形になりますので、それを一定の目安という形にさせていただいているということでございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 今、お答えいただいたわけでございますけれども、当然、地域によっていろいろな格差があるのはよくわかります。それは当然物価の水準が違ったりとか、いろいろな要因も絡んで、そうしたことで総合的にやっていくということだと思っております。

 では、先ほどお話をさせていただきましたような、例えばパートタイマーの場合は平均賃金の算定というのはどういうふうにやられるのでしょうか。

園田(康)議員 失礼いたしました。

 私、先ほど総額と申し上げましたけれども、これは時給換算でさせていただいておりますので、すなわちパートであろうが常勤であろうが、時給に換算させていただいてその平均賃金を算出するという形でありますので、パートであろうが常勤であろうが、その点の算出は分け隔てなく算出をさせていただくということでございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 そうすると、今度、介護労働者当たり約二万円という数字がひとり歩きをしているわけでございますけれども、では、この二万円というものは時給に直すとどういう形で配分がなされるのでしょうか。

山井議員 松本委員、御質問ありがとうございます。

 まず、この九百億円というのは、介護報酬を三%上げる、そして全国で常勤換算で七、八十万人の常勤職員がいる、それで約半数の介護事業者がこの認定事業所になれる、そういう平均額を基準として考えております。それで、千八百億の半分で九百億円、そして七月一日からスタートするとその四分の三ですから、六百七十五億円ということを考えております。

 これに関しては月収として考えておりますので、時給については計算はしておりません。全額回せば月収で二万円程度アップする、そういう法案でございます。

松本(洋)委員 今お話を聞いたんですけれども、正直、よくわかりませんでした。

 どうもこの二万円という数字がひとり歩きをしておりまして、先ほど井上委員の質問にもありましたけれども、そもそも、介護報酬としてそういうものが加算されたとしても、それが本当にしっかりと介護労働者のところに回るのかという話もありますけれども、そういう意味では、一人当たり二万円という数字の根拠も、私はどうもちょっとまゆつばものなのかなと思うような部分があることを指摘させていただきたいと思います。

 また、先ほど、基準額以上である者に関してしか加算報酬が払われないということでございまして、基準を下回った場合には残念ながらそうならない、しかしながら、これが報酬アップのためのインセンティブにつながるんですというような御答弁があったかと思いますが、私、実はその答弁を聞いて、余りよく理解ができませんでした。

 先ほど来話が出ているように、介護労働者も大変な思いをしているわけでございますけれども、かといって、では事業者が、何か懐にぼんぼんぼんぼんお金を入れて豊かな生活をしているかというと、そういうわけではなくて、当然、事業者も大変厳しい中で、切り詰め、切り詰めやっているのが現状だと私は思っております。特に小規模な事業者ほどそういう傾向は大変強いのではないかと思っております。

 そういう中において、基準額を下回っているからといって加算をしなければどうなるかというと、それは、では業務をもっともっと切り詰めて、切り詰めてやるというインセンティブが本当に働くのかといえば、私は疑問だと思っております。

 そうではなくて、やはりしっかりと、労働者に対してもその報酬というものがきちんと行き渡るような仕組みをつくると同時に、事業も円滑にしっかりと行えるような両建てがなければ、この法案というものは実効性を持たない、逆に、だからこそ格差を拡大してしまうおそれがあるんじゃないかというのが私自身は大変懸念をしているところでございます。その点に関しまして、ぜひお答えをいただきたいと思います。

山井議員 松本議員、御質問ありがとうございます。

 まず最初にお答えしますが、最初に言いましたように、六兆円の介護保険、そして三%介護報酬をアップする、それでほぼ千八百億円、その半数の事業所ということで九百億円、そしてそれを約七、八十万人の常勤換算の介護職員で割ると月給として二万円上がるということで、計算は極めてクリアでございます。

 そして、今、半数の認定事業所の介護報酬を緊急に三%アップするということは、逆に言えば半数が切り捨てられるということで、そこにとっては冷たいのではないかという御質問の趣旨だと思います。

 そして、このことは、我が党でも半年以上にわたって、この法案を議論するときに大きな論点となりました。しかし、まず一つには、労働者にとっては、介護報酬がアップしない認定事業所であっても、当然、介護職員の相場が上がっていきます。相場が上がれば、五〇%の認定事業所以外の介護労働者の賃金も上がります。これが一つです。

 それと、報酬が上がらないとつぶれちゃうんじゃないかというような、そういう議論もございます。

 そのことも議論しましたが、松本議員、そして与党の皆さん、ぜひ御理解いただきたいのは、この法案の趣旨は介護職員の賃金を引き上げる法案なんですよ。ということは、介護職員の賃金が低い、あるいは引き上げない事業所にとっては苦しい面がある。これは、ある意味で、私たちは法案の趣旨としてはやむを得ない、当然だというふうに思っております。

 逆に言えば、介護職員の賃金を上げない、低いところにとっても、やすい法案にすれば永遠にインセンティブは働きません。ですから、そういう意味では、私たちはこの法案は賃金引き上げが必要だということで、これによってトータルの底上げになると思っております。

 加えまして、もう一つ申し上げますと、もう終わりますが、いろいろ問題点を指摘してくださっておりますが、そういう議論を経て、私たちは、もう介護職員の待遇改善は待ったなしだ、来年四月まで待てない、十五万人の署名も来ているということで、責任を持ってこの法案を出しているわけです。問題点を指摘されるのも結構ですが、ぜひ与党としても具体的な案を出していただきたいと思います。

 以上です。

松本(洋)委員 ありがとうございました。

 先ほど、提出者の答弁の中に、これがインセンティブになるからいいんだというような答弁があったんですけれども、それは私はインセンティブにはならなくて、逆に格差の拡大につながってしまうのではないですかという趣旨の質問をさせていただきましたし、ちょっと話も出ていましたけれども、私がこの法案を見たときに、どういう事象が起きるのかというのを考えると、当然、経営が大変厳しくて、労働者の方にも負担を強いてしまっているような中小の事業所から、大手の、どちらかというと労働分配率を高く上げられるような事業所に対して、雪崩を打って人がどんどんどんどん移ってしまうような、それを促進する制度になるんじゃないのかなというのが私自身の正直な感想でございました。

 先ほど、インセンティブ、インセンティブという話がありましたけれども、この法案が与えるインセンティブというのは、事業者に対して与えるインセンティブというよりは、そういうふうに、どちらかというと一極集中をどんどんどんどんやっていく、それで中小の事業者が大変苦しむ、そういうインセンティブづけになるというふうに、法案の中身を見させていただいて私は感じたわけでございます。これはもう私の意見でございますので答弁は結構でございます。その点を御指摘させていただきたいと思います。

 また、今、平均見込み額という話がございました。では、この平均見込み額というのを、これまたどういうふうに算定するのかというのも詳しく見ていかなければならないと思っておりまして、こんなことは本来あってはいけないんですけれども、例えば、それこそ、では働いている親族だけが何か給料がばっと上がってしまって、結果として、そういう一部が上がってしまったことによって全体の平均額が上がって、そこはよくなりましたなんということがあってはいけないと思っております。

 そういう意味におきましては、二万円というものがしっかりと労働者に行き渡るような仕組みもつくらなければならないのと同時に、その平均額というものがしっかりと労働者の基準に合った、適正に設定されるようにどうやって担保措置をとっていくのかということも、私たちはしっかりと考えていかなければならないと思います。その点に関しまして教えていただきたいと思います。

園田(康)議員 ありがとうございます。

 先ほど、インセンティブというものが逆の意味でのインセンティブになってしまうのではないか、一極集中になってしまうのではないかという御指摘もあわせて、その平均見込み額はどのように算定していくのかというところの御指摘をいただいたというふうに思っております。

 まず、認定事業所の見込みというものでは、私どもは約半数を見込んでいるというふうに先ほども申し上げましたけれども、すなわち、その地域における、あるいはサービス事業ごとによって、その種類を仕分けさせていただいた上でその平均額を求めていくということでございますので、それぞれのまたさらに内容が細かく分かれていっての平均額を求めていくという形になっていくものであります。

 そこで、その見込み額についての、いわば一部の者だけ引き上がってしまうのではないかということでありますけれども、いわばそこの事業形態を平均して、その地域において平均をさせていただきますので、一部だけ引き上がってそれに合わせていくんだということではなくて、その地域の事業形態、それに平均賃金を割り出していくということでありますので、一部だけ引き上がるということには当たらないのではないかというふうに思っています。

松本(洋)委員 済みません、私の質問の趣旨は、事業所ごとに平均賃金というのを出すわけですね、それが認定基準に達しているか達していないかで加算するか加算しないかを決めるわけですね、その事業所の平均という観点で、それをちゃんと介護労働者の基準というものが適正に平均がとられるような仕組みをどういうふうに担保するんですかということを質問させていただいたつもりですので、お答えいただければと思います。

園田(康)議員 失礼いたしました。

 もちろん、その事業所における平均見込み額をしっかりとやっていかなければいけませんので、その点は、その事業所の、毎年毎年都道府県においてそれを報告、届け出をしていただくということでありますので、まずそこできちっと監査といいますか、見ることができる。したがって、不当にこれまた引き上げるような形の事業形態がとられるということであるならば、そこで指導監督が行われるというふうになると思っています。そこで担保されると思っています。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 おっしゃることはよくわかるんですが、もし仮にそれを本当にやろうとすると、国、都道府県、そして各地方自治体というのは、恐らく、かなりきめ細かくそういうものをしっかりと見ていかないと、実態というものは把握することができないという状況になってくるんだろうと思います。

 そういう意味におきましては、一般的に上乗せのところばかりが財源として注目されがちですけれども、では、実際にそういう自治体の体制整備というのを行わなくていいのかなというのを私自身は思います。そのあたりの自治体としての管理監督機能をどういうふうに強化していくのかということも、もし御検討なされていれば教えていただきたいと思います。

山井議員 松本議員にお答えします。

 松本議員のおっしゃる趣旨はよくわかります。いかに限られた財源、国民の皆様方から九百億円をもらう以上は、それが本当に一番困っている現場の介護職員の賃金引き上げにつながらないと、これは意味がないわけでございます。そういう意味では、都道府県あるいは市町村による監督指導、そういうものというのは、非常にこの法案の中でも重要であると思っております。ですから、そこについてはきっちり、当然運用の中でやっていかねばならないと思っております。

 それで、このことを法案の作成の過程で議論しましたが、例えば、介護報酬を単に引き上げても人件費に行くかどうかもわからない、賃金引き上げの努力をしていないところと賃金引き上げの努力をしているところと同じお金をばらまくのはそれこそ問題ではないか、そういう議論の中で、半数の平均賃金が高いところにお金を出すという仕組みを考えました。

 もちろん、この仕組みで完璧だとは思っておりません。だからこそ、そういう御質問をしていただくのはありがたいんですが、ではどうすればこの介護職員の賃金を引き上げる、限られた財源で一番の効果を上げるためにどうしたらいいのかということを、民主党も案を出しましたから、与党も至急案を出していただきたいんですよ。もちろん私たちの案も百点ではありませんから、例えば修正が必要でありましたら修正にも応じますし……

茂木委員長 山井君に申し上げます。

 今、民主党の方も法案の提出者であります。内閣並びに提出している方は、この委員会において審議をお願いする立場でありますから、そのことを踏まえて、きちんと真摯に質問に対してお答えください。

山井議員 ですから、対案をぜひ出していただきたいと思っております。

 以上です。

松本(洋)委員 民主党さんが法案を提出されているので、法案を拝見させていただいて、先ほど来お話が出ていますけれども、例えばそれが本当に実現可能性があるのかとか、実はそれが逆の効果を生んでしまって、かえって介護の現場に大変な混乱だったりとか、何よりも利用している国民に対して不利益をこうむるような結果にならないだろうかとか、いや、手を振っていらっしゃいますけれども、しかしながら、では、今御回答いただいた中で、私、納得できるものがあったかというと、実は余りなかったなというのが私自身の正直な感想でございます。

 そういう意味において、やはりしっかりとその現実可能性、そして、これから持続的な制度運用をどういうふうにしていくのか、そういうことをもっとしっかりとやっていただかない限りは、なかなか、正直厳しいのかなという印象、感想を持ちましたことを披露させていただいて、あと残り五分しかありませんけれども、閣法に関しての質問をさせていただきたいと思います。

 今回、業務管理体制の整備義務というのを創設したわけですけれども、義務に違反した場合はどういうふうに対応するおつもりなのか、お答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 今回の改正では、事業者の法令遵守を確保するために、業務管理体制の整備を事業者に義務づけをすることといたしました。

 今回、仮に介護サービス事業者が業務管理体制の整備義務に違反している場合には、業務管理体制の指導監督権者は、その当該事業者に対し、改善勧告あるいは改善命令というものを行うことができるというふうにされております。

 それからさらに、もし仮に事業者がその改善命令に従わない場合には、さらに一定の手続を経まして、指定権者が取り消し処分を行うということも可能でございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 もちろん、そうした形でしっかりとやっていただくことも重要なんですが、逆に、管理監督の責任者として、国、都道府県、そして市町村というものがしっかりとチェックに入るような体制づくりというものもしていただかなければならないと思っております。私は銀行出身でございますから、それこそ抜き打ち検査の恐ろしさ、また、それによっていかに緊張感が走るかということも身をもって体験をしているわけでございまして、ぜひ、そういうことも含めて、いかにしっかりとしたチェック体制を構築していくかということはこれからもしっかり考えていただきたいと思います。

 もう一つだけ質問させていただきたいと思いますが、先ほど井上委員からも質問が実はありました。西川副大臣からもいろいろお話の中であったわけでございますけれども、やはり、こういう法改正をするに当たって一番心配なのは、事務手続がさらにさらに複雑かつ煩雑になっちゃうんじゃないかということだと、私はそれも一つ大きなことだと思っております。

 実際問題、役所がやる作業とか、補助金を出したりすると、大体こういう事務作業というのはとてもとても煩雑になるケースばかりでございまして、これは決して厚生労働省に限らず、さまざまな役所の事業というものを民間とかにお願いをしてやってもらったりすると、その報告書だとか、実際によくあるのは、それを間違えた場合に全部取っかえなきゃだめだとか、そういう非常に事務作業が煩雑で煩雑で、それだけで体力もかかってしまうし、人も下手すれば雇わなきゃいけない、その分人件費もかかってしまう、さまざまなコストがふえてしまうというような悲鳴というのが、厚生労働省に限らず、私は、役所の仕事の中で大変あると思っておりまして、これは全体としてしっかりと見直してほしいと思っているんですけれども、きょうはこの法案の審議でございますから、本法の施行に伴って、ぜひそうした事務手続の簡便性というものをしっかりとやっていただきたいと思います。再度になりますけれども、お答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 先ほど西川副大臣からも御答弁いたしましたように、介護現場で事務手続が煩雑だという声は大変多くございまして、私ども、大変深刻に受けとめております。

 今回、事業者の業務管理体制の整備を義務づけるわけでございますけれども、それをやるに当たりましては、当然、記載事項は必要最小限にするなど、十分事務手続の煩瑣化とならないような方策を考えていきたいと思っております。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 もう時間ですので終わらせていただきますが、ぜひ、この介護保険制度がこれからもしっかりと運用をされまして、そして、当然、介護労働者、何よりも国民の皆さんがしっかりと安心して暮らせるような、そのためにもこの閣法をぜひ一刻も早く通していただいて、しっかりとこれからの国民の信頼というものを高めていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、福島豊君。

福島委員 介護労働者の非常に厳しい状況をどうにかしたい、これは、与党も、そしてまた先ほど来民主党の提出者の方からも、繰り返し御指摘があります。その点については全く同感でありますし、そしてまた、少しでもその処遇を改善するためには与野党を通じて努力をしなきゃいかぬ、そのように私は思っております。

 ただ、問題としては、民主党のお出しになった法案で、果たしてそれがうまく機能するのかどうか。そしてまた、財源を確保するという観点から、これが果たして安定した事業になり得るのかどうか。そしてまた、その将来像はどうなのか。こういったことについては、提出者として明確にやはり御説明いただく必要があるというふうに私は思います。はっきり申し上げますが、対案を出しなさいというのは答弁ではありません。説明ではありません。

 与党としては、今まで私どもも厚生労働委員会で質疑をしてまいりました。例えば、すぐにできることは、介護労働現場における事務作業の軽減は、早くやらなきゃいけない。そしてまた、一番の根本は介護報酬の問題でありますから、来年度の介護報酬の改定に向かって、ぜひその引き上げを図るために、具体的な、経営実態の調査等々をしっかりと進める、こういう方向は大臣から明確に示されているというふうに私は思うわけであります。

 そういう意味では、与党が何もしていない、こういう響きがあるわけでありますけれども、それは全く違うというふうに申し上げておきたいと私は思っております。この点について、何か異論はありますか、よろしいですか。

山井議員 福島議員、御質問ありがとうございます。

 来年四月に介護報酬を引き上げるかどうか、これは恐らく年末ぐらいに議論をするのであろうと思います。そのことの担保は、今、この厚生労働委員会では、するのはなかなか難しいと思っております。

 こういうねじれ国会でありますが、やはり早急に介護報酬を引き上げて賃金引き上げをやらないと、医療崩壊に続いてまさに介護崩壊になってしまう、そういう危機感のもと、私たちは今回の法案を一月に出させていただきました。四月一日施行の予定でありましたが、審議が遅くなってもう四月になりましたので、これを七月一日から施行にさせていただこうと思います。

 もちろん、福島先生もこの介護分野については非常に熱心でありますし、公明党も非常に熱心でありますし、そういう取り組みを与党の方々もされておられること、私はその思いというのは共有をしているつもりであります。しかしやはり、具体的に、賃金を引き上げる、その意思を早急にこの通常国会の中で党派を超えて国会が示す、そのことが今の介護現場のこの危機的な状況を救うために非常に重要だと私は思っております。

 そういう意味では、私は、この問題、介護職員の待遇改善、賃金引き上げというのは、本当にある意味で党派を超えた問題であるというふうに思っております。

 以上でございます。

福島委員 その点は私も山井先生と全く同感で、国会としてこの国会において介護労働者の処遇の改善のための意思を明確に示すべきだ、そしてまた二十一年度の予算編成にしっかり結びつける必要があるというふうに私は思っております。

 その上で、ただ、民主党の法案にはやはりいろいろと指摘しなきゃいかぬところが多々あります。ただ、今までいろいろと質疑されてきましたので重複は避けたいと思いますけれども、一つは、いつまでやるのかな、こういう話であります。

 これは、今までの説明を聞いておりまして、財源をどうするんだという話と結びついているわけですね。当面、九百億であると。それは、先ほどの御説明ですと、昨年の予算で剰余金が出ました、それでいいんじゃないですか、こういう話ですけれども、ずっと続けるのであれば、剰余金が出るときもあれば出ないときも当然あります。剰余金を使うという考え方そのものが、私は、予算制度からいうと間違っているということを言っておかなきゃいけないんだけれども、周りの人が聞いていると何で回せないんだと思いそうですからあえて言うんですけれども、足りないこともあり得るわけですよ。安定した財源にはならないです、どっちにしても。この点、どう考えるんでしょうか。

園田(康)議員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、今回のこの法案そのものは、あくまでも特別措置法であります。したがって、先ほどもお答えをさせていただきましたけれども、これが持続でいく制度である、制度設計を立てたということでは、まずないということであります。

 したがって、この法案の附則の第二条でも私ども書かせていただいておりますけれども、先ほどの松本委員からの御指摘にもあるように、「介護を担う優れた人材の確保に支障がなくなったときは、廃止するものとする。」と。その前段で、今の介護保険制度について抜本的な見直しが行われる、それが大前提になるわけでございますので、当然ながら、一刻も早くこの介護保険制度全体の見直し、あるいは社会保障制度全体の見直しというものを、精力的に私どもは国会の責任で行わなければいけないというふうに思っておる次第でございます。

茂木委員長 剰余金を使うという考え方はおかしいんじゃないかという質問に対して。

園田(康)議員 したがって、すなわち、では財源はどこで持ってくるんですかということでお話がございましたので、私どもは、まず、さまざまなところから省内のお金というものを見直さなければいけないというふうに思っております。

 その中で、介護保険制度についての給付、予算額とその実績についての額を調べましたところ、まずは余剰金があった。したがって、この余剰金というものを充てるということは、緊急避難的に単年度で行うということは可能ではないかということを申し上げさせていただいたわけでありまして、これをずっと持続可能的なものとしてやっていくということは考えておりません。

福島委員 ただ、少なくとも抜本改革をしなきゃいかぬ。それまでの間だということであれば、これは単に単年度だけの話では僕はないと。聞いている人もそう思いますよ。抜本改革をいつやるのかね、こういう話になるわけですからね。そもそも抜本改革とは何だねという話だと思います。

 これはもう少し議論をさせていただきたいんですが、政府の推計でも、介護の給付費というのは七兆円から十七兆円、二五年度までの間に十兆円ふえる、こう推計されている。これが多いか少ないかという議論はあるかもしれない。

 でも、十兆円といいますと、公費が五兆円、保険料が五兆円。これだけふえるものをどう賄うのか、こういう話が必ず出てくるわけです。そしてまた、今回の介護労働者の処遇の悪化ということは、やはり介護報酬を引き下げた、このことが影響している。これは認めざるを得ないだろうと私は思います。

 そのためには、できるだけ、どう財源を確保するのか。ただ、なぜ引き下げたかということはこれはきちっと言っておかなきゃいけませんけれども、保険料とやはりそれは裏腹の関係だ、保険料をどこまで上げることができるのか、こういうことで、やはりセットで考えなきゃいけないわけですね。

 となると、さらにこれからふえていく。保険料だけでも、二〇二五年までには五兆円ふやさなきゃいけない。果たしてこれが本当に負担していただけるのか。これは私も疑問なしとしないし、何らかの考えが必要じゃないかと。

 抜本改革というのは、山井先生も昔から、被保険者の範囲を拡大すべきだということをいろいろな形で申しておられますけれども、そういうことを意味すると理解してよろしいんでしょうか。

山井議員 福島委員、御質問ありがとうございます。

 抜本改革は、今おっしゃった年齢拡大ということを必ずしも意味しておりません。

 今、党内で議論をしておりますが、先ほど園田議員からも答弁がありましたように、やはり今の構造では介護職員の賃金になかなかお金が行きづらい。やはり制度を持続するためには、現場で働いている介護職員の方々が安定して働き続けられる、そういう制度にせねばならないと思っております。

 そしてそのことは、私たちは今、山田議員の指示のもと、抜本改革の政策、法案もつくっておりますし、政権交代した暁にはそういうことを実現したいと思っておりますが、ただ、そういう大きな議論も見据えながらも、とはいえ、目先で困っている介護現場がある、来年四月まで待てない。去る一月二十二日にも公明党の太田代表が、代表質問で福田総理に対して、介護職員の待遇改善が必要だということで、来年四月の介護報酬の引き上げを要望されました。私は、本当にさすが公明党だなというふうに思いました。

 しかし、来年四月までは待てない、かつ、介護報酬が単純に上がるだけでは、それこそ、今、井上議員、松本議員からも御指摘があったように、それで人件費が上がる担保もないし、また、一円上がって十円上がっても仕方ない。そういうことで、緊急措置として今回の法案を出させていただいたわけです。

 ですから、福島議員御指摘の、二年後、三年後、ずっとはどうなるのか。もちろん、その議論も並行して行いながらも、党派を超えた国会の責務として早急にやらねばならないのではないか、そういう思いで、十五万人もの要望の署名を参考にしながら、こういう法案をつくらせていただきました。

福島委員 たくさんの署名がある、私も現場で多くの声を聞いております。ぜひとも来年の介護報酬の引き上げを実現しなきゃいかぬというふうに思っています。

 ただ、今お聞きしたのは、抜本改革をされるというふうに御発言でしたので、それは一体何なんだろうかと。抜本と言うからには、介護労働者の方々が、本当に優秀な人が安心して働ける、そのためには財源が必要です。介護給付費を拡大する必要があります。そうでなければ実現できません。ですから、そこのところの議論を民主党としてこう考えるというのであれば、ぜひお話しいただきたかった。

 もう一つ民主党の皆さんに申し上げたいのは、年金の全額税方式化と言っていますが、仮に消費税を充てたとしても、なかなかこれは容易なことではありません。今、各メディアが社会保障改革について議論しておりますけれども、年金にそれだけ税金を充てたら、医療や介護に回る分というのは本当になくなるんじゃないかということが言われているわけです。本当に介護労働者の処遇を改善して、安定した優秀な人が集まるようにしようと思えば、年金だけに全部税金を使うんだ、こういう議論は私はもう少し考えた方がいいんじゃないかと思うんですけれども、山井先生、お聞きしてよろしいでしょうか。

山井議員 福島議員、御質問ありがとうございます。

 そういうしっかりとした抜本改革の議論、もちろんしていかねばならないと思います。その抜本改革の中でどういう議論をしているのか、党としてもまだ確定的なことはもちろん決まっておりませんので言えませんが、例えばどういう議論をしているかというと、五対五の保険料と公費というものを、公費をもう少し上げるべきではないか、そうしないと介護保険料も自己負担もアップする、そういう議論もしておりますが、まだこれは議論の途中でございます。

 確かに、ある意味であさっての議論というんですか、そういうあさっての議論というのももちろん大事であります。しかし、今、急務として、きょう、あす、お年寄りを愛する多くの本当に優しい介護職員が介護現場を去っている、あるいは、私の知り合いの福祉の大学あるいは養成学校の先生方も、もう幾ら福祉を教えたって半分以上の生徒が福祉現場には行きません、そういう危機的な状況をやはり福島先生も聞いておられると思います。

 私は、介護職員というのは宝物だと思います。そういう老後の安心を守る宝を失わないためには、来年四月では遅過ぎる、やはりこの通常国会の最中にそのことをこの法案の可決なりの形できっちりと示すべきだ、先送りは許されないと思っております。

茂木委員長 山井議員に再三申し上げます。質問に対してお答えください。

福島委員 抜本改革はあさっての話、こう言っていましたけれども、先ほどの園田さんの話だとあさってじゃないんですよ。それはそんなに先にやらなくてやるから、これは短期間のことでいいんですよ、こういうふうにおっしゃっていたわけで、整合性をとっていただいた方がいいなと私は思っております。

 仕組みの問題もやはりあるんですね。先ほど松本委員からも御指摘がありましたけれども、五〇%が対象ですよと。どうもそれは民主党の中では、そのインセンティブを与えるんだ、こういう話のようでありますけれども、その五〇%以下のところは対象にならない。これは、実際の事業の実態からいえば、大手の事業者ほど経営効率がよろしいわけですよ。そしてまた、非常に利益の上がる形でやっている。小さなところがやはりしんどいわけです。そこでも頑張っている。逆に、その小さいところが対象にならないというような制度の仕組み方をしちゃうと、そうすると、格差が広がると同時に、彼らが淘汰されてしまう。彼らも何とかしてくれという声があるんですよ。そこで線を引いたということ自体が、淘汰されてもいいと、先ほどどうもそんなことをおっしゃっておられました、当然のことであると。本当に当然かなと私は思うんですけれども、もう一遍御答弁ください。

園田(康)議員 失礼いたしました。ありがとうございます。

 いわばこの認定基準額に足らない、認定されない部分に関して、ではどのように担保をしていくんだ、しかも格差が開いてしまうのではないかという御指摘、したがって、必ずしも私どもが申し上げているいい意味でのインセンティブが働かないのではないかという御指摘でございました。(福島委員「淘汰になる」と呼ぶ)それで淘汰をされてしまうと。いや、しかしながら私どもは、必ずしもそうではないという認識に立たせていただいてこの制度設計をさせていただきました。

 したがって、先ほど申し上げたように、いわば大手だけであるとか、あるいはその事業所の中でも、何か不正にこの一定の基準を引き上げるような形、それは、この制度の趣旨からいってやはり誤った制度の運用になっていきますので、当然ながらそれは指導監督の対象にはなるというふうにまず考えさせていただいています。

 したがって、まず一定の目安をお示しさせていただかないと、では幾ら以上に上げないとその事業所が認定を受けられないのかというのがまずここにあるのではないか。したがって、その一定の基準を示すためには、そのいわゆる平均値をとらせていただいて、これが認定の基準ですよということをまずお示しをさせていただく。であれば、事業所からすれば、その基準を上回るような形でみずからの報酬を決めていかなければいけないというふうになっていきますので、それを受けるためには、何らかの形でこれはその報酬額を上げてその認定を受けるというふうになっていく。そうすれば、認定を受けて加算報酬がされるということでございますので、当然ながら、それを基準としてそこに設けるという形にはなるというふうに私どもは考えております。

福島委員 私が申し上げたいことは、小さい事業所のところは間接経費の比率がどうしても高くなるんですね。大手の方が間接経費の率が少なくできるわけですよ。だから利益も上げられる。そしてまた、その対象者も非常に事業展開が有利なところでやられているとかいろいろとあるわけです。ですから、今なぜ五〇%なのかと私は思いますね。今のお答えでは、多分、零細のところの厳しいところは救えないというふうに私は思います。

 それからもう一つの問題は、今の賃金が平均基準額よりも高いところがありますね。そういうところは、仮にこの加算をもらったとしても、労働者の賃金に回るかどうかわかりませんよ。利益がますます出るというだけの話になる可能性もあると思います。それは指導の対象になりませんでしょう、超えていればいいわけだから。全部回らなくても指導の対象になりませんでしょう。そのあたりの問題もどう考えるんですか。これは非常に大事なことなんですけれども、もう一遍御答弁いただけますか。

園田(康)議員 お答えを申し上げます。

 当然ながら、都道府県に毎年の報告をする義務がこれで課せられますので、きちっとそれが引き上げられているかどうか、その認定基準額を上回っているかどうかということは、毎年のその都道府県での届け出、これによって監査がされるというふうに私どもは考えております。

 したがって、その中できちっと全書類を見ていくわけでありますので、当然ながら、それがきちっと行われているかどうかというものはチェックができるものではないかというふうに思っております。また、先ほどの御質問にかかわるわけでありますけれども、零細企業ほどなかなか引き上げにくい状況にあるのではないかということでありますけれども、しかしながら、逆に言うならば、そういう零細企業ほどフレキシブルに基準額を設定する、これはもう本当に事業主の算定で行うことができるわけでありますので、それを思い切って引き上げていこうというふうになれば、その時点で基準額を策定して届け出をして、認定を受ければそこで受けられるということでありますので、既に上げたところというよりは、これから受けるであろう額を念頭に置いて、それを策定して認定を受けるという形になりますので、基準額が設定されて、それよりも下回るところは一切合財切り捨てられるかというと、そういうシステムではないんだということであります。

福島委員 よくわからないんですが、五〇%は対象にならないというふうにおっしゃっておられるので聞いているというところもあるんですね。

 それからもう一つは、先ほど、県がチェックをしますといっても、全部その加算額を賃金に回せとはどこにも書いていないわけですよ、基準との関係だけの話ですからね。そういうことも担保されないんじゃないかという懸念があるのでお聞きをしたということであります。

 また、認定基準額の決め方も実はよくわからなくて、先ほどから議論になっていますけれども、平均賃金といっても、勤続年数も違えば、正規の社員と非正規の社員の割合が違うとか、いろいろなことで平均賃金というのは変わりますよね。そういうものをどうやって反映させるんですかね、この数字には。

菊田議員 お答えいたします。

 認定基準額につきましては、事業の種類及び地域ごとに厚生労働大臣が定めることとしております。その際には、介護労働者の賃金の地域における平均額を勘案することとしております。

 以上です。

福島委員 私がお尋ねしたのは、一つ一つの事業所で、非正規と正規の割合が違ったりとか、勤続年数も違ったりとか、勤続年数が違っても同じ賃金なんということはありませんでしょう、ですから、一つ一つの事業所の平均賃金を出すときには、そういう要素も勘案しないと、どこを認定して認定しないかということで大変な矛盾が出てくるんじゃないか。大変煩瑣な作業になると私は思いますけれども。園田さん、どうぞ。

園田(康)議員 失礼いたしました。

 認定基準額の設定の仕方の中において、さまざまな就業形態があるんだということでありました。先ほども実は松本委員のときに答弁させていただきましたけれども、ちょっと明確になっていなかったかもしれません。失礼いたしました。

 さまざまな就業形態がある、それを時給換算させていただいて、それの月収額の平均賃金を算定するという形でありますので、それはすなわち、常勤であろうが、非常勤、パートであろうが、すべてにおいて、その事業所ごとにおいて時給に換算しての平均値を求めさせていただくということでございます。

茂木委員長 時給に換算しても、結局、就業形態が違ったり、それから就業の年数が違えば、事業所によって違いが出るでしょう、それの加重平均か何かの仕組みは持っているんですかという質問だと多分思うんですけれども。

福島委員 勤続年数というのは影響しますでしょう。そういうことはどう加わるんですか。

園田(康)議員 そこの部分に関しては、この制度のシステムの中では念頭には入れておりませんでしたが、ただし、これから、ここでスキームとしては厚生労働大臣が定めるというふうにさせていただいておりますので、その点も含めてしていただけるのではないかというふうに期待をいたしております。

福島委員 政省令を役所が勝手につくるなというのが民主党のかねてからの御指摘だというふうに私は思っていますから、そのあたりも詰めていただければと思います。

 ただ、介護労働者の処遇をやはり変えなきゃいかぬということは非常に重要な課題で、これは将来にわたっても、あさっての話と言われたけれども、将来をどうするか、そのための財源をどう確保するのか、これは与野党を超えてしっかり議論する必要があるというふうに私は思います。

 特にきょうお聞きしたいのは、介護事業計画そしてまた介護報酬を決めるに当たりまして、増分方式といいますか、実際の事業の経営実態とかを調査しますけれども、前年度の予算に対してどの程度増分されるのか、こういう考え方なんだと思います。これは医療費なんかでも同じなんですけれども、ですから、実際に働いておられる労働者の人口、そしてまたその方々の賃金、そして施設整備のための費用、こういうものをやはりベースにして、介護給付において実際どの程度の給付費が要るのか、そういうことをぜひ考えなきゃいかぬ。

 医療においても同じことだと思うんです。増分主義でやって、増分が減分になる場合もありますけれども、そういうことが結果として医療崩壊というような事態をもたらしている。ここのところは、将来に向かって日本はどの程度の介護の費用が要るのかということについて、もう少し客観的に考える、どの程度財源が確保できるかという問題はありますけれども、そういう必要があるんじゃないかというふうに私は思います。

 特に施設整備費についても、かつては補助金が非常に潤沢でありましたけれども、近年は大変絞られてきている、そういうことが一つ一つの施設の経営においても厳しさを増す一つの要因にもなっているだろうと私は思いますけれども、この点について政府のお考えをお聞きしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 全体としての介護費用をどう考えるかという問題も大変重要な問題でございますし、最後に御指摘ございました、施設整備費が、補助制度がなくなったことによって、結果として経営状態が変わっているんじゃないかというお話でございます。

 確かに、平成十七年に交付金化をし、十八年度に一般財源化をいたしました。私どもとしては、各都道府県で、現実の整備状況とか地域の必要性を踏まえて必要な整備が行われていると思っておりますけれども、実際にそれが経営にどういう影響を与えているかということにつきましては、現在、介護事業者の経営実態調査を実施中でございますので、そういう中で、減価償却の問題であるとか人件費の問題であるとか、その結果、収支差がどうなっているかとか、そういうことを十分調査いたしまして、その上で、来年四月からの介護報酬改定にそれを反映させたいというふうに思っております。

 それから一方で、全体の介護費用がどうなるかという問題でございますから、これにつきましては、各市町村で介護保険の事業計画というのをつくっております。それは、各地域の介護でどれだけのサービスの必要量があるかというものを調査して、各市町村で、どれだけ要るかということで見込み量を立てて三年間の保険料を決めるということになっておりますので、そういう意味で、それを全体としてまた積み上げて、全日本としてどれだけの費用が要るかということでございます。

 一方で経営の実態、一方で全体の費用の実態というものを十分踏まえて、今後、国民的な議論をして、何とか介護保険制度を円滑に施行していきたいというふうに思っております。

福島委員 各自治体のサービス基盤の目標、これを積み上げていくんだ、こういう話でありますけれども、そのつくり方そのものがどうなのかという議論がやはりあるんだろうなと思います。

 施設の入所待機者、これはずっと介護保険の創設当時から議論になっております。これについて、残念ながらやはり増加しているということなんだろうと私は思いますけれども、この現状についてちょっとお聞きをしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 待機者の状況でございますけれども、今私どもが手元に持っているデータで申し上げますと、平成十六年度の十一月の時点では、特別養護老人ホームで三十三万八千人の待機者がいたわけでございますけれども、それが十八年の三月の時点で申し上げますと三十八万六千人弱ということで、徐々に増加している現状にございます。

 それで、私どもとしては、来年の四月から第四期の介護保険事業計画になるわけでございますけれども、現行の三期の計画をつくるときには、人口構造の現状とか、あるいは要介護者の現状とか見込みとか、そういう見込みを立てた上で、介護サービスの給付、今後の利用の意思等を見込んで、最終的に介護サービスの内容とか量を見込んでおります。

 そういう意味で、住民のニーズを把握した上で、介護サービスの内容、量を見込んで、それで介護保険事業計画に反映させるということになっておりますので、残念ながら徐々に待機者がふえている現状にはございますけれども、各市町村あるいは県において、その待機者をどういう形で解消していくかということを念頭に置いた上で、介護保険事業計画なり介護保険事業支援計画をつくっていただいているというふうに認識をいたしております。

福島委員 高齢者の総数がふえておりますし、特に後期高齢者は、長期的な展望の中では倍増する、こういう話だろう、一千万人が二千万人になるということだと思います。

 その中で、待機者がふえ続けているというのは、やはりいかがなものかなと私は思います。待機者が減りこそすれ、ふえるというのは、サービス基盤の整備、これは必ずしも特養という話だけではないのは当然でありまして、もう少し地域密着型のサービスでどうカバーするのかとか、そしてまたケアつき住宅とか、住宅の方でどう手当てするのかとか、いろいろな要素が当然あるわけでありますけれども、しかしながら、待機者というのは、やはり今の現状ではなかなか大変ですよという人なんだと私は思います。家族もそれはなかなか世話し切れません、こういう人だろうと思うんですね。やはりそういう人が減ってこその介護保険であると思いますし、何とか次の第四期の事業計画をつくるときにはこうしたことを十分反映してつくっていただきたい、このように要望させていただく次第でございます。

 それと関連するのは、前回の介護保険法の改正のときには介護予防、これは山井先生から鋭く御指摘があったわけであります。介護予防について効果があるのか、こういう御指摘がありましたけれども、これについて、直近の調査の状況について御報告をいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 前回の改正で介護予防の制度が導入されました。要介護、要支援となる前の段階の人々を対象といたしまして介護予防事業、それから要支援者に対する対応として新予防給付という制度が導入されたわけでございます。

 それで、今の状況を御説明いたしますと、平成十八年度に、要介護状態等となるおそれの高い虚弱な状態にあると認められますいわゆる特定高齢者に決定された方というのが、全国で十五万八千人でございます。そのうち、介護予防の特定高齢者施策に参加された方が、五万一千人というふうになっております。

 それから、新予防給付の方でございますけれども、新予防給付の対象となります要支援の一、要支援の二の認定者数でございますが、平成十九年の十月の報告で、それぞれ五十四万七千人それから五十九万七千人というふうになっております。新予防給付の受給者、このうち、今実際に受給されている方というのが、三十二万五千、三十八万三千という数字でございます。

 御指摘ございました介護予防の効果でございますけれども、これは山井先生からもいろいろ御指摘いただいた件でございますけれども、三月三十一日に開催されました介護予防継続的評価分析等検討会におきまして、介護予防の特定高齢者施策及び新予防給付から成ります新たな介護予防施策の効果分析の仮集計を実施いたしました。特定高齢者それから要支援一に相当する方について、人数と特定の状態であった期間、いわゆる人月と言っておりますが、そういう面積のような塊として集計をいたしましたところ、施策の導入前後で状態が悪化した人の人月の割合は減少するということが明らかになりました。

 今後、この検討会におきましては、さらに分析を続けまして、効果の定量的な評価を行うということで、引き続き検討いただくことになっておりますし、新たな今回の介護予防施策の費用対効果の分析、あるいは属性ごと、例えば属性といいますのは女性とか男性とかということでございますが、サービスごとの評価についても検討するというふうにされたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今までの仮集計の結果としては一定の介護予防の効果があったというふうに受けとめておりますけれども、今後、検討会において、さらなる分析、検討を行っていただきたいというふうに思っております。

福島委員 この点についても、前回のといいますか、しばらく前の委員会でありますけれども、情報をしっかりと開示して、そして理解していただいて、こういうことが必要だと山井先生からたびたび御指摘がありましたけれども、そういう意味では先へ先へと手を打って進めていただきたい、このようにお願いをいたしておきたいと思います。

 最後に、認知症高齢者の対応ということで大臣にお尋ねしたいんですが、二〇二五年までに後期高齢者の人口は二千万人へと倍増するわけであります。この中には、認知症高齢者の方もたくさんふえるということが当然あるわけであります。

 今改めて将来推計について、再計算といいますか、こういった寿命の延伸等も踏まえた上で計算していただいているようでありますけれども、厚生労働省とやりとりしていてなかなかよくわからないのは、認知症高齢者の方々をきちっとケアできる体制というのはどの程度あるんだと。グループホームにしても、施設においてもそうでありますけれども、認知症高齢者の方々ばかりではないと思いますけれども、実際にそのケア側にトレーニングを受けた人がどれだけマンパワーとしているのか。

 今後の認知症高齢者の増加ということを踏まえた上で、程度はいろいろとありますけれども、そこのところは抽出した形で、きちっと計画をつくってマンパワーもトレーニングをしなきゃいかぬ、こういうことがあるんじゃないかと思います。

 スウェーデンでも、たしか九〇年代でしょうか、これは山井さんの方が詳しいかもしれませんけれども、認知症高齢者対策をどうするんだということで大きくウエートを変えてきたという経緯があるわけでありますし、日本においてもぜひ積極的なそういうビジョンをつくっていただきたい、このように思いますが、大臣の御見解を最後にお聞きしたいと思います。

舛添国務大臣 今、私のもとで、人生八十五年のビジョンということで検討会をやっております。その中に今のような問題も入ってくると思いますけれども、要するに、これは介護保険を入れるときからの懸案の問題で、例えば、在宅でやるんですか、施設でやるんですか。そのときに、どれだけの人をどういう形で使ってやるか。

 それは、無限に財源があるわけじゃありません。したがって、やはり地域の介護力を生かす、それはNPOを活用するというのは相当できると思います。ですから、私は、ある意味でコミュニティーを再生させるというもう一つの大きな目的を持ちながら、しかし今委員がおっしゃったように、なかなか推計はこれからの医学の発達とかいうようなことも入れないといけないので一概には申し上げられませんけれども、やはりこれは、家族にとっても介護する方々にとっても認知症の方々の介護というのは本当に大変です。それは、しかるべき手当てはきちんとビジョンの中でつくりたい。

 ただ、財源について、これも前から議論がありました、保険でやるんですか、税金でやるんですか。こういうことについてのきちんとした国民的なコンセンサスはないといけないですから、基本は、それぞれが住みなれた地域で、たとえ認知症になろうともノーマライゼーションというような理想を掲げて生活ができることだ、そのために全力を挙げてまいりたいと思います。

福島委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

茂木委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、まず閣法についてお伺いをした後、民主党提出法案についてもお尋ねしたいと思います。関連する領域も含めて質問をさせていただきたいと思っておりますので、真摯な答弁を求めたいと思います。

 まず、閣法についてでありますが、今回の介護保険法の改正に当たっては、平成十七年の介護保険法の改正を踏まえて、どういう点が足らざると判断をされたのか、さらに加えての改正が必要だというふうにお考えになられたのかというところを明らかにしていく必要もあると思います。

 コムスンの不正事案というのは、けしからぬ話ではあるんですが、平成十七年の改正では想定をしなかったということなのかもしれません。しかし、悪質な事業者を排除するため、一事業所の指定取り消しが他の事業所の指定更新の拒否につながる仕組みの導入や指定の欠格事由の追加、指定更新制の導入等、事業者の規制の見直しを行ったにもかかわらず、今回改めてさらなる改正が必要となってきたわけであります。

 そこでお尋ねしたいんですけれども、今後、都道府県において指定の可否を判断するに当たって、どういう事業者を許可するのかどうか、可否を判断するその根拠。そしてまた、実際に要件の適格性を再確認していく必要もあるのではないか。後出しで、何年か後の近いうちに、またさらに想定ができませんでしたという話にならないようにしていただきたいという思いがあるわけです。

 介護保険法の七十条の二項で指定をされておりますようないわゆる介護要件、こういった指定の可否に当たっての要件について、何件ぐらいの拒否が都道府県において行われているのか。また、その内容、どういう要件に該当して否としているのかについて調査を行ったことがあるんでしょうか。また、ないとすれば、これから行われてはいかがかと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 結論から申し上げますと、指定の拒否をした事例の数については把握をいたしておりません。

 今回の法律改正でございますけれども、御指摘いただきましたように、平成十七年の改正によってそれなりの規制の強化をいたしました。ただ、その改正だけでは必ずしも十分ではないということで、今回、処分逃れの問題とか幾つかございまして、今お話のございましたようないわゆる連座制の問題も含めまして制度改正をさせていただいているということでございます。

茂木委員長 今後の、指定の拒否件数についての把握、調査の意向は。

阿曽沼政府参考人 現在、指定の場合、一定の要件に該当すれば指定をするという仕組みになっておりますので、要件に該当しない場合に拒否するということを本当に把握する必要があるかどうかということは、私ども厚生労働省としては思っております。

 したがって、指定を拒否した事例を本当に把握する必要があるかどうか、もう一回検討させていただきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 改めて私はその必要性を指摘しておきますと、この七十条の二項で、「いずれかに該当するときは、第四十一条第一項本文の指定をしてはならない。」としている。

 この条文の中で、例えば「厚生労働省令で定める基準及び同項の厚生労働省令で定める員数を満たしていないとき。」とか、これはそもそもの話でありますけれども、こういうような、はっきり言いますと国民への周知徹底ができていれば当然防げるような拒否要件から、申請者が、「その取消しの日から起算して五年を経過しない者」、当該取り消しの処分に係る行政手続法第十五条の規定による通知があった日前六十日以内に当該役員であった者で取り消しの日から起算して五年を経過しないものを含み、当該指定を取り消された者が法人でない病院である場合においては、当該通知があった日前六十日以内に当該病院の管理者であった者等。

 これは続くんですけれども、長くなりますから条文は皆さんに読んでいただくこととして、私が言いたいのは、どういう人がある意味でこの網を、要するに、不適格と思われる者がさらに事業を続けることができないようになっている網をくぐり抜けようとしているのかを把握しておくということは、次の不正な、いわゆる不当な介護事業者の発生を抑制することにつながるのではないかという意味でありますから、ぜひ前向きに御検討いただきたいというふうに思っております。

 その上で、今回の法改正で、そういう不正な事業者を排除するということとも相まっておりますが、事業の休廃止届、これまでは事後でもよかったんですが、事前届け出制として、不正な者については、これは場合によっては、あたかももう既に廃業したかのようにカムフラージュをするということを許さないという趣旨だと私は理解をしたわけでありますが、これについては一カ月前としているのに、先ほどお話ししましたけれども、いわゆる役員逃れの場合には六十日前としているわけですね。

 いろいろな考え方があると思いますが、この三十日とした根拠。その一方で、役員逃れについては六十日とした根拠。ここに差ができているのはどのように理解すればよろしいんでしょうか。

阿曽沼政府参考人 今回の休廃止届の問題でございますけれども、休廃止後十日以内の届け出とされておりました。要するに事後届け出制ということでございました。それを、利用者に対するサービス確保の措置を講ずる期間を確保するという必要もあるだろう、あるいは処分逃れを防止する必要もあるだろうということで、休廃止の一月前までの事前届け出制に改めるというふうにしております。

 これは、利用者へのサービス確保などを図るために要する一定の期間と、あるいは事業者に一定期間の休廃止を認めないことによって、結果として事業者の権利を過度に制限しないということを考え合わせて、一カ月前というふうにしております。

茂木委員長 六十日とのあれは。

阿曽沼政府参考人 特段、六十日とこの一カ月前と関連があるわけではございませんので、私どもとしては、休廃止については一月程度あれば対応できるのではないかということで、こういう対応をいたしております。

岡本(充)委員 私は、役員を外れて個人としての責任逃れをする方を六十日としておいて、法人としてのいわゆる責任逃れについては三十日とする根拠というのが明らかでないというふうに思っているんです。どちらかに統一してあれば、話としてはわかるんですが。

 ここについては、そもそも、三十日でサービス確保を図るための措置を講じなければいけないというのも大変厳しいところがあります。個人としてのいわゆる逃れではなくて、事業者として責任逃れをした場合には三十日となっていて、実際そこに入所している方は、三十日でどこかへ行くことを決めることを余儀なくされるわけです。そういう意味では、この三十日という期間が短過ぎるのではないかという意見も一部にはあると私は承知をしております。

 そういう意味で、これを改めてお伺いしたいんですが、六十日にしなかった、もしくは六十日を逆に三十日にしなかった根拠について、もう一度明確にお答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 同じ条文であるかもしれませんけれども、役員の規定の六十日の関係と、この休廃止の一月ということが直接関連するわけではございませんので、そもそもこの制度は事後届け出制でよかったものを事前に届けていただこうということでございますので、そういう意味で、事前に届けていただくときの期間として、一月ぐらいでもいいだろうということで設定をしているということでございます。

 それで、事業者に利用者のサービス確保の義務が、逆に言えば、一月たったら全くなくなるのかということでございますが、そういうことではございませんので、やはり事業者はあくまでも、引き続きサービス提供を継続して利用者へのサービス確保を図らなきゃならないし、そういう義務を持っているということは当然のことでございます。

茂木委員長 そうすると、役員逃れの方はどういう合理的理由で六十日なんですか。

阿曽沼政府参考人 ちょっと手元に根拠の資料がないんですが、これは推測で申し上げるのはあれですが、前回の改正を実施いたしたときには、廃棄物処理法の法律改正を見て、それをお手本にして改正した経緯がございます。恐らく、廃棄物処理法の方でそういう規定があったので、それを準用したのではないかというふうに思っております。

岡本(充)委員 廃棄物処理と高齢者の介護の話を一緒にするというのは、聞いている人も驚く話ですね。これはとんでもない話です。

 私は、今お話ししたポイントは、この法律全体についての罰則等の重さともやはりかかわってくるんだと思うんですね。それで、非常に関心を持っていろいろ調べました。

 そもそも、今回のコムスンの事案、これは保険料という公費、税金に準ずるというか、税金とほぼ同じような形で集められているお金を詐取したと言われても仕方がない話であると思います。これは被害を受けたのが保険者ということでありますけれども、そもそも、こういう犯罪に対して詐欺罪での告発というのは検討されなかったんですか。要するに、今回法改正しなければ立入調査もできない、それから、いわゆる処罰もできないということではないんじゃないか。ほかの法律の準用についてお考えになられたことはなかったのか、御答弁をいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えをいたします。

 コムスンの事案におきましては、コムスンが、不正な指定申請で都道府県知事の指定を受けた後に介護サービスを提供いたしまして、国民健康保険団体連合会に対して介護報酬を請求して受領している、そういうことでございます。

 今回のコムスンの行政措置でございますけれども、改正前の法律がございまして、それで、いわゆる連座制という形の法律が適用になりまして、コムスンの行為は「不正又は著しく不当な行為」に該当するから、コムスンの介護サービス事業所について、新規の指定あるいは更新をしてはならないという形で自治体に通知をし、監査をしました結果、十五億円の返還金を請求いたして、コムスンの方から返還をされたということでございます。それで、一定の社会的制裁があったというふうに私どもは考えております。

 今御指摘の詐欺罪の適用の問題でございますが、私どもも、内々でございますけれども、検討はそれなりにいたしました。ただ、最終的にはいろいろ専門家の御意見もあるわけでございますけれども、なかなか、刑法二百四十六条に規定する詐欺罪が成立するかどうかについては幾つか議論がございまして、そういうもので詐欺罪を構成する構成要件に該当するかどうかということについて問題があるというふうに考えましたものですから、その意味で、詐欺罪での告発ということはいたしませんでした。

岡本(充)委員 具体的にどういう検討をされたんですか。

 今回、要するに本部への立入検査ができなかった、コムスンに関して。いや、別に詐欺罪の容疑で令状を請求することは不可能ではなかったんじゃないかというふうに思うわけですね。ですから、何もこの法改正を待つまでもなく、どういう理由で立ち入りをされなかったのかなとむしろ思うわけでありますが、なぜ刑法の詐欺罪の適用を今回しなかったのか、それについて明確にお答えをいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 私が詐欺罪に当たっているかどうかということを判断する公的な立場ではございませんので、あれでございますが、専門家の意見を一部お聞きしたりいたしましたところ、詐欺罪が成立するには幾つかの要件がございます。

 要するに、欺かれた者が錯誤によって財産的処分行為をすることを要して、欺かれた者と財産上の被害者が異なるときは云々という規定がございます。

 それで、今回の場合、保険者または各国保連に介護報酬を請求して不正に受領したケースなんですけれども、錯誤があったのは指定権者である都道府県知事であるのに対しまして、処分を行ったのは保険者または国保連ということでございますので、処分行為の動機の中心が錯誤と言うことは難しいんじゃないかといったような御意見もございまして、そういう意味で、詐欺罪の適用はちょっと難しいのではないかと判断した次第でございます。

岡本(充)委員 いや、錯誤したから保険者がお金を払ったんじゃないのですか。違うんですか。

阿曽沼政府参考人 錯誤があったのは指定権者である都道府県知事だけれども、処分行為を行ったのは保険者または国保連ということですから、そういう意味で、詐欺罪の適用は難しいんじゃないかということでございます。

岡本(充)委員 錯誤がなければ介護報酬を支払うこともなかったはずだから、それは錯誤に基づいてお支払いされたわけじゃないんですか。それは、錯誤に陥れたということで私はその適用ができるんじゃないかと。

 ただ、私の方で調べて難しいなと思ったのは、いわゆる刑法の二百四十六条には「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」と書いてあります。この「者」というのが一体何かということですね。

 自然人しか意味しないというのが判例、通説だとはいうけれども、僕はこれを言われるかと思ったんですよ、法人にはなかなか適用しづらいと言われるのかなと思ったんです。それを言われないから私の方から言うと、その一方で、刑法の刑罰の法規の中には法人を主体と考えておかしくないものもあるわけです。例えば刑法の百七十五条、わいせつ物の頒布等では、会社ぐるみでポルノを売るという犯罪はあり得るし、あるいは二百三十条には名誉毀損があります。これは、新聞や月刊誌などが名誉毀損的な記事を載せた場合には、この場合も「者」と書いてあっても会社の犯罪、こういうふうにみなすこともできて、そこに損害賠償請求をしている事例は皆さんも御存じのとおりだと思います。

 そういう意味において、要するに詐欺罪が、刑法の法文上「者」としか書いていないけれども、いわゆる人しか指さないかといえば、ここには解釈の余地があるということを私はお話ししようと思ったんですが、それ以前の話であって大変残念でありますけれども、ぜひこういう解釈も検討していただいて、私は、今回適用した処置が他の犯罪等と比較して妥当なものだったのかどうかも考えていく必要があると思うし、それから、これが、もう一つ私の質問につながってくるんですけれども、例えば保険にかかわるほかの不正行為においてのいわゆる処分と比較をしてどうなのかということもお考えいただきたいと思います。

 例えば医師による不正行為があった場合、個人としてのいわゆる保険医の取り消しだとか、病院としての保険医の取り消しだとか、こういうものとも比較をして、今回、介護保険の世界における不正行為についても罰則等をお考えになられたのか、その罰則の重さのバランスについてどのように御検討をされたのか、お答えをいただきたいと思います。

茂木委員長 阿曽沼老健局長、知らないことを聞くのが質問で、知っていることを聞くのは試験ですけれども、これを答弁してください。

阿曽沼政府参考人 御質問の趣旨は、今回の規制が処分のバランスとしてどうかというお尋ねだと思いますけれども、例えば医師法でございますと、医師の場合は業務独占でございます。したがって、業務独占である資格を持っている人が不正行為をしたといった場合には非常に厳しい措置、免許取り消しとか、場合によっては医業を停止するとか、そういうことがございます。

 介護保険法といいますのは、いわゆる被保険者資格を定めて、一定の質のサービスを供給するという意味でのいわゆる保険システムを所管したサービス提供法、あるいはファイナンスの法律でございます。

 そういう意味で、指定を受けた事業者で不正行為があった、その場合には当然、指定権者による取り消しが行われて、保険給付がされなくて、介護サービス事業としては廃業する、撤退をするということでございますので、そういう意味では、この介護保険の世界としては、処分としては一応妥当なものではないかというふうに思っております。

岡本(充)委員 きょうは保険局長にもお越しいただいていますけれども、今、個人についての議論もありました。しかし、法人というか病院に対しても保険指定の取り消しというのはできるわけですね。これは、例えば五年が欠格期間だという話になった場合でも、時と場合によってはもっと短く、再び保険医療機関の指定がなされることがありますね。最近では、静岡県の藤枝市立病院がそういうケースに当たったと私は思います。

 今、実際の運用上として、本来五年であるこの欠格期間を短くするということがどの程度行われていて、その場合、どういう理由をもって行われているのか、それについてお答えいただけますでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 保険医療機関の指定取り消し処分を受けた医療機関につきましては、先生御指摘のとおり、原則として五年間再指定を行わないこととしているわけでございますが、例外的な取り扱いといたしまして、地域医療の確保を図るために再指定をしないと支障が生じると認められる医療機関につきましては、二つの条件がございます。一つは、診療及び診療報酬の請求について改善がなされていること、それから不正請求の返還金が完済されていること、この二つを条件といたしまして、申請があれば五年を経過する前に再指定を行うこととしているわけでございます。

 最近の事例では、御指摘の藤枝市立総合病院のケースがございますけれども、この病院は、静岡県中部の最重要の基幹病院として、救急医療、周産期医療、それから病診連携を担っておりまして、地域住民の生命、健康に直接大きな影響があるということで、これらの条件に合致することから、指定取り消しの一カ月経過後に再指定することとしたものでございます。

 いずれにいたしましても、保険医療機関の再指定の取り扱いにつきましては、今後とも厳正に対応してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 ということだと、老健局長、同じようなことは介護施設でもあり得るのか。その地域で唯一の介護施設であり、ほかにはなかなかサービスが受けられないといった地区においては、これはもし法人としての欠格事由に当たるとしても、その再指定を速やかに行うことが考えられ得るというふうに解釈してよろしいのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 そこは介護保険法上明確な規定がございまして、指定の取り消しを受けてから五年間は再指定、指定の更新ができないということになっております。

岡本(充)委員 そこはどういう解釈の違いなんでしょう。

 病院については、いや、違うんだと言われるかもしれないけれども、病院も法人として、その地域の中で保険を使って非常に重要な福祉サービスを行っている。その一方で、介護の世界については、たとえその地域で、島でもいいですね、島で一カ所しかない介護事業所だ、ここが指定取り消しを受けた場合に、では、ここのお年寄りはどうするんだと。一カ月間はサービスの継続をしましたという話でも、そこから先どうするんだといったときに、いや、もう五年間はお待ちいただくか、全く新しい者が来ない限りここではできませんよということでは、私は、これはちょっと法律の中の不備ではないかと指摘もしたいわけですけれども、これについてどのようにお考えになられるか、お答えをいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 恐らく、保険医療機関の取り消しの場合の影響の問題と、介護の事業者の取り消しの場合の影響の問題は違うということだと思います。

 介護事業者の場合には、介護事業者にもできるだけ早く次の受け入れ先を見つけるようにとか、あるいは行政側もそれをサポートする措置をいろいろ講じるということにしておりますので、そういう意味では、保険医療機関の場合と比べてかなり影響を小さくしてできるのではないか、そういう判断に立って今回のような措置を講じているところでございます。

岡本(充)委員 大臣、今私の議論を聞いていただいたと思いますけれども、病院と介護の事業所において、必要としている人のニーズにそんなに大きな差はないと私は思うわけですね。今の五年の欠格事由の弾力的運用について、やはり検討するべきじゃないかと思うんですが、どうお考えでしょうか。

舛添国務大臣 藤枝の市立病院は私が指示を出しまして、あれが閉鎖されるというようなことになれば大変な迷惑がかかる、そしてまた、一月間ですけれども、窓口で全額支払うということになると大変なことになりますので、そういうことをしないような措置はとりました。

 今局長がお答えしたように、地域の中核の病院、例えば高度な手術をしないといけない、そういう意味で、若干の重要性というか喫緊性の違いはありますけれども、今の委員の問題意識は、私は極めて的確だと思います。

 それで、コムスンの場合も、私が考えたのは、とにかくサービスを受けている人に御迷惑がかからない、そして不正は二度と許さない、それでコムスンを事業計画から撤退させ、そして受け皿となる、これは民間企業でしたから、民間企業に受け皿を喫緊に探した、そういうことで御迷惑をかけないようなことをいたしました。

 ですから、例えば今、離島の例を出されました。もうここはその施設がなくなれば新たな参入者もいない、そういうようなことになったときは、それは当然、弾力的な運用を考えるべきだと思います。

 ただその前に、恐らく、施設があり、そこで働いている介護事業者がおり、経営者が余りにひどくて不正を働いた。そうすると、経営者を取りかえる、そして新たな事業所をそこに入れるという努力をまず展開して、そして、それでもだめなときにはどういう形でやるか。

 つまり、これは都道府県知事が指定をするわけですから、新たな方が、受け皿が来れば新たな組織として指定ができるので、まずそのための努力をいたしたいと思いますけれども、万が一にも今のような、もうそれはだれもやり手がいない、そしてどうするかというときには、これは例えば藤枝の市立病院の場合もそうですけれども、きちんと再建計画を立ててもらう、コムスンの場合は十五億円の不正請求をきちんと戻してもらう、そういうことをやった上でこれはやる必要があると思います。

 刑法の詐欺罪の適用についても、これは実はもろ刃の剣でありまして、もしそのときにそれを適用していると、今のような融通性がきかなくなる面もあるんですね。ですから総合的に考えて、何よりも国民に迷惑がかからない、そういう観点から、弾力性、これは十分考えたいと思います。

岡本(充)委員 ぜひそれはお願いをしておいて、続いて、業務管理体制に対する指導監督体制について少しお伺いしたいんですね。

 今回の不正事業者に対する処分逃れの対策ともかかわってくるんですが、どこが同一の法人グループなのかという範囲なんかの同定も結構難しいと私は思っていますし、資本関係のみならず、実質的な支配や被支配の関係にも着目するべきじゃないかということを、平成十九年十二月三日の介護事業運営の適正化に関する有識者会議で指摘をされているようであります。

 その中でもこういう、どこまでがグループなのかという認定をどうするのかということについても問いかけがあるわけですが、これについてはどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 業務管理体制のお尋ねについて申し上げようかと思っておったのですが、後段のお尋ねは、密接な関係がある方の話でございましたので、ちょっとあれでございますが、密接な関係がある人について申し上げますと、申請者の親会社あるいは子会社など、申請者と同一の資本グループに属する法人であって、かつ申請者の意思決定に日常的に関与している法人というふうなものを想定いたしております。

岡本(充)委員 それはだれが認定するのですか。なかなか難しいと思うんですね。ですから、それはいろいろな方法で同一グループでないということをさまざま虚飾をする可能性もあるわけなんですが、それをどのように排除しようというふうにお考えなのか。

 また同じ話なんですね。結局、これでやったけれども、それは確かに万全を期しても、法の網をくぐるような人は出てくると思います。しかし、やはりそれを防ぐべく、先手を打っているかどうかということについて私は聞きたいということです。

阿曽沼政府参考人 この点については、今回のコムスンの事例の場合、コムスンの指定の更新をすべきではないと申し上げたら、その日の夜に、子会社の日本シルバーサービスという会社に事業譲渡しますという形でコムスン側が発表されて、これが大きな社会問題になったということでございます。

 私どもとしては、親会社、子会社というふうな形で株主の支配、被支配関係といいますか、そういうふうに言われるようなケースについてはやはり大変問題だろうということで、今回、密接に関係のある者という形で定義をいたしておりますけれども、ここは専門の先生方にお聞きいたしても、なかなか、実際に判断するときは個別の事例に即してきちんとやらなきゃいけないよというふうに言われておりますので、これは実際に指定取り消しをしてその影響が出るというのが年間七十件あるいは百件ぐらいでございますので、よく個別具体的な事案に即して判断をしていきたいと思っております。

岡本(充)委員 グループの資本関係のみならず、要するに、グループの責任者、代表者が例えば親子の関係にあるとか姻戚関係にあるとか、こういうものも今回の実質的な支配、被支配の関係に入ってくるのかとか、そういう具体的な話を私は答弁として求めているんです。お願いします。

阿曽沼政府参考人 具体的な人にかかわる部分の規定につきましては別途規定がございますし、ちょっとここでお答えするのはあれかと思いますが、基本的には、法律に則して個々具体の判断をいたしたいというふうに思っております。(岡本(充)委員「兄弟とかはどうなるの」と呼ぶ)

茂木委員長 いや、でもそうなると思うよ、そこの部分は実際。

岡本(充)委員 委員長に答えていただいて、恐縮でございます。

 では、具体的に聞きましょう。例えば姻戚関係の場合はどうなるんですか。

阿曽沼政府参考人 これは、今回の改正の部分と違う、既に十七年改正にある部分の条文でございますけれども、七十条の六項におきまして、申請者が、第七十七条第一項または百十五条の二十九第六項の規定によって指定を取り消され、その取り消しから起算して五年を経過していない者というのが、取り消しの……(岡本(充)委員「さっき読みました」と呼ぶ)

 その中で、当該法人の役員という話がございまして、役員に関して言えば、「業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。」という規定がございまして、そういう意味で、同等以上の支配力を持つというふうにみなされる場合には、指定の更新をしてはならないということになるということでございます。(岡本(充)委員「そこに姻戚は含まれるのかと聞いているんです」と呼ぶ)

 ですから、「同等以上の支配力を有するものと認められる」というふうにあれば、姻戚関係でそういうのがあると考えられれば、そういう規定の適用がされるということでございます。

岡本(充)委員 さまざま考えられるので、こういうようなケーススタディーはやはりやっておいてもらいたいということを私は指摘しているわけで、それは省内で十分議論をしていただきたいし、やはりそれはある程度オープンにしていただく方が萎縮した事業にもなりませんから、そういう意味ではある程度オープンにされてはいかがかと私は思っているわけです。

 そういう意味でいうと、今回のいわゆる同一グループの認定の部分もそうでありますけれども、実際に、事業規制の見直し等に当たって、多様な主体の参入を排除することなく、かつ不正を行いにくい仕組みに修正することとして、あわせて、これを国民に周知することが必要であるということが、これまた、ことしの二月六日の社会保障審議会の介護保険部会で指摘をされているようであります。そういう意味で私はこの指摘をしているわけでありまして、ぜひこれも真剣に検討いただかなきゃいけないと思っています。

 続いて、今の監査の話にまた戻るわけですけれども、この監査の中で、「不正又は著しく不当な行為」ということについて、指定の拒否や指定取り消しを行うための条項としてあり得るとは思うんですけれども、どういうものを「不正又は著しく不当な行為」というふうに考えているのかどうかというのも、これはある程度例示をされてはいかがかというふうに思うわけですが、それについてはどうでしょう。

阿曽沼政府参考人 委員十分御案内だと思いますけれども、指定取り消しの条文には、取り消しに当たる条項が書いてございます。基本的には、例えば厚労大臣が定める人員基準に違反した場合とか、あるいは不正請求であった場合とか、そういう場合には取り消しがされるということでございまして、それと別に、最後に、いわゆるバスケットクローズのような形で、不正または著しく不当な場合について取り消しすることができるという規定がございます。

 したがって、これは本来、各号列記されているもの以外で本当に悪質なものが出た場合に対応するという形でございまして、まさに今回、コムスンのような形で処分逃れをしている、あるいは同時多発のような形で頻発をしているというケースについて、私どもとして、そのバスケットクローズに当たるという判断をいたしたということでございます。

岡本(充)委員 それは、七十条の二項の九に書いてあるということで私も承知しています。しかし、これがどういうものなのかということをイメージトレーニングというか、シミュレーションするというか、そういうことも省内でやっておくべきだし、ここで披瀝ができるぐらいにして、全部を言うのは難しいとしても、そういうことをシミュレーションしておくことがやはり先手につながるんじゃないか。

 もう一つ加えて言えば、今回、国も含めていわゆる監査に当たれるんですけれども、都道府県や市町村においての監査の基準のばらつきだとか、いろいろな意味で不当な状況に陥る、善良にもかかわらず不当な処分を受けるような事業者が出てこないような措置も前もってお考えをいただきたいというふうに思うわけですが、これについてはお答えいただけますか。

阿曽沼政府参考人 御指摘のように、都道府県なり市町村の指導監査にかなりばらつきがあるんではないかという御意見はいただいております。

 私どもとしても、その指導監査のばらつきがないように一定の標準化をするという形で、今マニュアル的なものを定めたいと思っておりますし、十分、法律の施行までには周知徹底をいたしたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 ぜひお願いします。

 それで、きょう皆様にお配りをさせていただいた資料があります。

 一番最初が「職種別きまって支給する現金給与額等」、こう書いています。

 民主党が、今回、本当に大変な介護労働者の現状に配慮して、人材確保をするための法律案を出してきたということについて、与党の皆様も、いろいろ先ほど御質疑いただきましたけれども、ある一定の御理解はいただいているんだろうと私は思います。その必要性を多とするという声もありました。そういう意味では、きょうお示しをさせていただいたものは、その裏づけという話ではないんですが、例えばこの一番最初の表です。

 男性労働者、年齢が四十一・六歳、それから福祉施設介護員、男性、これは三十二・一歳、勤続年数は十三・四と四・九と、それぞれちょっと差があるわけですけれども、収入が、年収の試算で五百十一万余と三百十五万三千円、こういう金額の差が出ていたり、女性の場合は、勤続年数も比較的近く、女性の労働者は三十八・七歳、また福祉施設の介護員の女性の方は三十七歳ということですが、年収はそれぞれ三百二十三万六千円と二百八十一万円、こういう違いが出てきています。

 また、その次の表を見ていただきますと、福祉施設介護員の男性の年収は、平成十三年以降、若干のぶれはありますけれども、ここ数年ずっと金額が下がってきている。これは、下の注四を見ていただきますとわかるように、「常用労働者であり臨時労働者を含まない。」ということになっているんですね。これが実態だと思うんです。

 ちなみに、私、きょう統計情報部の方にもお越しいただいているんですけれども、これは平成十六年なんですよ。やはり、もうちょっと新しいデータもこれは調べてみるべきじゃないかというふうに思うんですけれども、これについて今現状どのようになっていると御認識をされているか、もしくは、必要があれば調べるというふうにお答えいただけるか、答弁を求めたいと思います。

高原政府参考人 ただいま御質問のありました賃金構造統計調査につきましては、毎年実施をいたしておりまして、最新の数字が十九年でございます。

 本調査につきましては、本年六月にも実施をする予定にいたしております。

岡本(充)委員 できるだけこういう調査をきめ細かくやっていただいて、先ほどの問題意識を皆さんと共有していかなきゃいけません。

 一ページおめくりいただいて、ちょっとここは確認をしたいんです。これまた統計情報部の資料でありますけれども、介護職員のいわゆる給与総額階級別従事者数ということであります。

 これを見ると、これも同様に下を見ますと、構成員は「常勤者の割合である。」こういうふうに書いてあるにもかかわらず、常勤者で十万円以下の方が訪問介護で八・一%いる。これは、なかなかちょっと理解しがたい金額なのでありますけれども、これはどういうことによってこんな数字が出てくるのか、御説明いただきたいと思います。

高原政府参考人 お示しいただきました調査は、介護サービス施設・事業所調査でございます。

 この調査は、全国の介護サービスの提供体制等を把握することを目的といたしまして、介護サービスの提供面に着目した基盤整備に関する基礎資料を得る、こういう目的で実施をしているものでございます。

 十六年の調査につきましては、従事者の労働条件あるいは就業意識の状況を把握するために、無作為抽出により抽出いたしました施設、事業所の常勤、専従の従事者に調査票を配付いたしまして調査を実施いたしたところでございます。この常勤、専従につきましては、施設、事業所が定める勤務時間のすべてを勤務しているものと認識いたしまして調査をいたしております。

 十万円以上が八・一%となって……

茂木委員長 未満。

高原政府参考人 失礼いたしました。十万円未満が八・一%となっておりますけれども、この調査いたしました九月中のうちの一週間の実労働時間が二十五時間未満という者も一七・三%になっております。そういう点からいいますと、不自然な結果とは言えないのではないかと考えております。

 ただ、これらの結果につきましては、就職期間が一カ月未満の者も含まれておりますし、また、利用者の必要に応じて訪問介護が行われる、こういうサービスの特性も影響しているものと考えております。一般的に常勤、専従と認識されている者とは必ずしも一致していないのではないかと考えております。

 いずれにせよ、介護サービスの施設、事業所の従業者の勤務、労働条件の正確な実態把握というものに努めてまいりたいと存じております。

岡本(充)委員 今の説明、にわかにはわかりづらい方が多かったと思うんですね、大臣。

 この調査、やはり介護労働者の給与実態を知る上で重要な統計調査にもかかわらず、常勤雇用が一般の概念と離れているかもしれませんという答弁で、十万円未満の者を、部長がくしくも十万円以上と誤って言ってしまうぐらい、信じがたい数字なんですね。こういうものを八・一%とすらっと書いているということが私にはとても信じられない。

 もう少し実効性のある調査の方法に改めてみてはいかがかと思うんですけれども、大臣、どうでしょう。この調査、毎年行ってみえるようでありますけれども、これはやはりちょっと見直しを図っていただいて、より実態に合う調査にされてはいかがでしょうか。

舛添国務大臣 今の訪問介護の場合は、常用の従業員であっても訪問介護の時間が短いと、介護報酬規定でそうなるということなんですが、より実態がわかるような調査が何とかできないか、これまた検討させていただきます。

岡本(充)委員 そういうことで、本当に介護の現場での実態がなかなかやはり見えてきていないという中で、今回民主党がその声を拾いながら法案をつくってきたということを、私は、そういう意味では、提出者の皆様、本当に御努力をされたんだろうと思っています。

 そういう介護人材確保法が、なぜ、今なのか。これまでも議論もされておりますけれども、その必要性と法案のポイントというのを改めてお聞きをしたいと思います。

茂木委員長 岡本委員、民主党案に対する質問の通告がございませんが、もし答弁者の方が答弁していいということでしたら許します。

菊田議員 御質問ありがとうございます。

 民主党は、介護制度が今、大変危機的な状況にあるという厳しい認識を持っておりますし、これは、ここにいらっしゃる与野党の委員の皆さんと同じ共通の認識であるというふうに考えております。

 二〇〇五年の介護保険法改正により、介護予防という名をかりた厳しいサービス切り下げや、利用者の自己負担増などの問題が増大してきました。また、医療制度改革により療養病床の削減が急速に進んでおり、療養病床から退院を迫られる要介護者もふえております。また、介護現場では、介護従事者の賃金低下、人手不足がますます深刻化し、労働条件は悪化しております。今ほど岡本委員から具体的な資料を提示していただきましたとおりでございます。

 先日も、私たち民主党に対しまして、全国十五万人の介護関係者の皆様の御署名が寄せられたところでございます。こうした悲鳴にも似た声にどうしてもこたえていきたい、待ったなしで取り組みたいという思いで、この法律を提出させていただいたところでございます。

 本日の議論の中では民主党案に対しまして大変厳しい御意見もいただいておりますが、しかし、こういう議論を通じて国民の皆さんにも関心を持っていただき、大いに議論を進めながら、次の介護保険制度の抜本改革にも生かしていく必要があるというふうに思っております。

 この法律のポイントは、先ほども申し上げましたとおりでございます。

 加算介護報酬については、介護保険から全額を給付するので利用者の自己負担はふえないことになっておりますし、また、加算介護報酬の支給に要する費用は国庫が全額を負担することになっており、介護保険料の引き上げにはつながりません。

 また、介護事業者は、介護労働者の賃金の引き上げ、労働時間の短縮その他の労働条件の改善にも努めなければならないこととしております。

 以上でございます。

岡本(充)委員 通告をしていなくてお答えいただいたので、申しわけありませんでした。

 続いて、もう二問だけさせてください。

 舛添大臣が、来年度、介護報酬を引き上げると明言したと一部報道されておるんですが、介護報酬をただ単に上げるだけではだめで、民主党は人材確保法案を出すべきだとお考えになられたわけなんですが、この理由を提出者の方にお伺いをしたいと思います。

園田(康)議員 お答えをさせていただきます。

 大臣もおっしゃっておられるわけでありますけれども、介護報酬を引き上げる、その方向性というものは必ずしも私は間違っていないというふうにまず考えております。

 ただし、介護報酬を引き上げるという形になりますと、先ほど来御議論がありましたとおり、それがそのままいわゆる介護保険料そのもの、あるいは利用者の自己負担、そういったものにはね返ってきてしまう、一割負担がまたさらに大きくなってきてしまうという形がありますので、その点では、やはり今の段階で介護報酬をすべてにおいて引き上げていくということは必ずしも当たっていかないのではないかというところから、今回のこの制度設計をさせていただいたというところであります。

 すなわち、介護報酬を引き上げるということではなくて、国庫負担を投入していくということをふやしておけば、保険料への反映はしていかないであろう。第一期で二千九百十一円だったと思いますが、そこから第二期、第三期と来て、もう四千円まで介護保険料が平均値において引き上がってきているという状況がありますので、これ以上の負担を利用者あるいは保険料負担という形でお願いをするというのは多分厳しい。しかしながら、今の介護現場からすると、加算をして人材を確保していく、そういったところに公費を投入していくという考え方が、今の段階では緊急避難的に私どもは正しい方向ではないかというふうに考えた次第でございます。

 そして、先ほど来いろいろお話がありましたけれども、民主党の法案での、基準額を上回る事業所のみを認定事業所として介護報酬を加算する、そして、これがいわば賃金引き上げの誘導策になっていくのではないかということとともに、その後、認定事業所に対しての賃金引き上げの努力義務というものをここで課すと同時に、さらに、認定されない事業者に対しても、それのプラスへのインセンティブが働くものだというふうに期待をいたしておるところであります。

岡本(充)委員 今の御説明は私も大変賛同するところがあるわけでありますが、加えてもう一つお伺いしたいのは、七月一日の施行で緊急に介護報酬を引き上げるんだ、こういう内容でありますけれども、来年の四月では遅いのだという思いをお持ちなのかというふうに推測をしますが、この点についてはいかがでしょうか。

山井議員 岡本議員にお答えをいたします。

 きょうも議論の中で、来年の介護報酬時に検討するという話が厚生労働省の方からもございました。それまでに実態調査をするという話でした。

 しかし、午前の審議でも明らかなように、もう実態は明らかなんです。介護職員の賃金は本当に低くて、多くの志ある若者が離れていったり、また、福祉系の学校を出ても民間企業に流れていったり、このことは改めて調査をするまでもなく、残念ながら明らかなんですよ。そういう調査をすると言って先延ばしをするということは許されないと私は思っております。

 先ほども申し上げましたように、医療崩壊の悲しい現実を見るまでもなく、一たんすばらしい人材の方々が現場に行かなくなる、あるいは現場から立ち去ってしまうと、それを立て直すのはちょっとやそっとのことではできません。そういう意味でも、これは早急に、七月一日からこの法案の施行をしたいという思いでございます。

 おまけに、加えまして、財源のことも午前中議論がございました。昨年度、九百億円、正確に言いますと八百九十一億円もの介護保険の給付金の国庫負担というのが余りました。その余った九百億円はどこに行ったのか。消えた年金の特別便、そして後期高齢者医療の凍結の補正予算に使われた。

 やはり筋としては、この九百億円というのはもともと介護のためであったわけです。現場がこれほど痛んで、苦しんで、悲鳴を上げているにもかかわらず、厚生労働省は九百億円の予算を余らせて、それを消えた年金や後期高齢者医療制度に流用してしまったというのは非常に残念なことで、こういう現実を全国の介護関係者が御存じになったら、私は本当に、やはり大いに落胆をされると思います。

 そういう意味でも、私たちは一月にこの法案を出しましたが、その時点で九百億円余ったわけですから、そのお金を使えば、私たちが当初この法案に書き込んでおりました四月一日からの介護報酬の緊急引き上げというものもできたと思います。

 介護の社会化、そして介護保険の存亡、そして日本人の老後がかかった大切な法案であります。何よりも、先送りをせずに、来年四月までとか調査をするとかそういう先送りではなく、本当に危機的な状況を救うためにも、ぜひとも、この委員会で党派を超えて可決をしていただいて、このことを七月一日から実現してまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 この思いは大変よく理解をさせていただきました。通告しておらずに質問させていただきまして大変御無礼しましたけれども、これで民主党の答弁者の方は結構でございます。

 その上で、報酬の話もそうですが、私はきょうは労働基準局長にもお越しをいただいているのは、実際に現場での労災の発生はどうなんだ、調べてみたらどうかと言ったら、これは統計を見たら、災害統計でも、それから労災の保険の給付の面でも、介護の現場でどのくらい労災が起きているのかという詳細なデータはないというふうにお伺いをしました。

 いわゆる産業別災害率というのは、この業種というのは不断に見直されているわけではないようでありますけれども、この業種も一度少し見直していただいて、恐らくこの中でいうとサービス業に入ってくるのかもしれません。こういう中でも、ゴルフ場とか旅行業も結構でございますが、ここに介護にかかわる労働者、介護労働者の実態というものの調査を含めていただくことはできないか、御答弁をいただきたいと思います。

青木政府参考人 私どもで業務統計としてとっておりますのは、今委員が御指摘になりましたように、安全性の関係で死傷病報告をとっておりますし、あるいは労災の関係ではその認定ということで統計をとっているわけであります。これらについて、それぞれ統計については業種区分をいたしましてやっているわけであります。

 現在、介護に関するサービスを行う事業についての労働災害の発生状況については、社会福祉施設という業種区分の中で把握しているところでございます。これは、労働災害の統計は、労働災害防止の施策を検討するための基礎資料とする、それと同時に、事業場等が労災防止対策を行う動機づけとなるように作成しているわけであります。業種区分につきましては、労働災害の発生件数でありますとか、労働災害防止対策の共通性でありますとか、就労している労働者数等の状況を考慮して設定しております。

 現在、労働災害の発生件数が増加しております社会福祉施設の区分につきましても、このような観点から、今関係省庁と調整をしているところでございまして、既に見直しについて検討をしているところでございます。

岡本(充)委員 強度率、度数率もそうですけれども、いわゆる千人率についても、社会福祉施設という形で一くくりにして、平成十七年に一・八九、平成十八年が一・九七という御報告をいただきましたけれども、この調査もあわせて行っていただくことが、やはり現状を認識する、賃金だけではない部分で大変重要だと思っています。

 それからもう一つ、きょうお配りした資料の最後の二枚ですけれども、いわゆる介護サービスの情報公表制度も、これは見直すべきではないかという指摘をこれまでしてまいりました。平成十九年と平成二十年で比較をしても、どうも変化のない県が、秋田、栃木、東京、滋賀、京都、兵庫、和歌山、島根、広島、香川、高知とあるようであります。

 しかも、公表事務手数料は、安いところは八千円というところもあるかと思えば、島根県や広島県のように一万五千円という県もあるわけであります。こういうばらつきも、ホームページにアップするのであれば普通それほどかからないし、またホームページの内容も、余りにも情報量が多過ぎて、本当に必要な情報がどこにあるかわからないという利用者の声もある。そういう意味で、もっと抜本的に見直していただきたい。それを明確に答弁いただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 岡本先生から、手数料が高いという御指摘は前回もいただいておりますし、それで、私どもも各都道府県に対しまして、できるだけ下げるようにということで指導もいたしました。

 これは各都道府県の条例で設定されておりますので、おのずから限界がございますけれども、今回のケースでいいますと、日本全国では平均約九千円程度下がっております。ただ、御指摘のようなばらつきがございますので、手数料の設定あるいは仕組みのあり方そのものについて、もう少し検討していきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 それから、調査のサービスの種類についてもあわせて検討いただきたいと思います。

 最後になりましたけれども、ちょっと時間で、もう一、二問だけ許していただきたいと思います。

 後期高齢者の医療制度に剰余金が使われたのではないかという話も先ほどありましたけれども、この後期高齢者のことについて、先日、新聞でも報道がありました。二〇一五年には八万五千円にお年寄りの負担がふえるんじゃないかという話でありますが、若年世代の負担は一体幾らぐらいになるのか。

 それからまた、もう一つ、現場で大変混乱を呼び起こしております、運転免許証を窓口に提示すれば、これで医療が受けられるなどという話もあります。こういったものをいつまでやるのかとか、実際、病院はどうやって運転免許証だけ提示されてお金を請求すればいいのかとか、現場で大変混乱が起こっています。この辺についてはどのようにお考えになられているのか。

 また、もう一つは、保険証の未着の件数をきょう発表されるということでありましたけれども、それについての御答弁もいただきたいと思います。

茂木委員長 水田保険局長、議題外でありますので、簡潔にお願いいたします。

水田政府参考人 わかりました。

 それでは、二つ目の御質問からお答えいたしたいと思いますけれども、四月九日時点で未着の件数でございます。全国計で六万三千四百六十八名というふうになってございます。

 それからもう一つ、病院の現場におきまして保険証が届いていない場合の取り扱いについてでございますけれども、住所と年齢がわかりますとおおむねわかります、後期高齢者医療制度に入っているということがわかります。それから、古い保険証があれば所属関係もわかるわけでございます。したがいまして、当面は、まず原則一割の御負担をお願いするわけでありまして、その後、当然ながら、病院に新しい保険証をお持ちいただいて、そこで請求をするということになろうかと思います。

 その点につきましてはまた、さらに追って御連絡をしたいと思います。(岡本(充)委員「委員長、答えをもらっていない。いつまで代用が可能か」と呼ぶ)

茂木委員長 もう一度質問してください。

岡本(充)委員 いつまでこれが代用が可能か。つまり、五月にかかってきてしまっては、要するに診療報酬を請求するに当たって、運転免許証だけ示されて、どこに請求すればいいかもよくわからないという形になりはしないか。それからまた病院の手続の方法、今のお話。それから、若年世代の負担が二〇一五年に一体幾らになるのか、支援金が幾らになるのかということについてお答えをいただきたいということで御質問しました。

水田政府参考人 病院の窓口での特例的な扱いにつきましては、これはまさに先生がおっしゃいましたように、四月の請求のときまでに間に合わせたいと思っております。と申しますのは、広域連合の方にお尋ねをいただければ、まず被保険者であるかどうかの確認はできるわけでありますので、そういった五月の請求の時点で遺漏のないようにいたしたいと思っております。

 それから、支援金の将来の額につきましては、御通告いただいておりませんでしたので、ちょっと手元に数字がございません。後ほど確かめた上でお答えしたいと思います。

岡本(充)委員 大混乱とよく言われるのは、ガソリンの話じゃなくてこの話じゃないかと思うんですね。本当に大混乱です。現場の病院も、わざわざこれを調べて、自分で問い合わせて、この人が被保険者かどうか確認してから報酬を請求してくれなんて、こんな話はないわけで、大混乱とはまさにこの後期高齢者医療制度のことだということを指摘して、質問を終わります。

茂木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五分開議

茂木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。三井辨雄君。

三井委員 民主党の三井辨雄でございます。

 初めて舛添厚生労働大臣に質問させていただくわけでございますけれども、私もずっと介護事業に長年携わってまいりましたけれども、大臣もお母様の介護に当たられたということで、まさに介護をライフワークとされているわけでございますので、そういう共通の認識の中できょうは議論させていただきたいな、こういうぐあいに思っております。

 その前に、今月からスタートいたしましたメタボ健診、特定健診がスタートしたわけですけれども、四十歳から七十四歳の被保険者、被扶養者に対して、生活習慣病予防のためのメタボリック健診が義務化されたということでございますけれども、メタボ健診と言われますと、もう既にこの名前だけは知っているというところまで今国民の間では理解されておるのかなと思います。

 ところが、この制度そのもの自体に私は実は不信を感じておりまして、腹回りが、日本男性の場合は八十五センチ、女性の場合は九十センチ、これは科学的根拠というのはあるのかなと。なくても実際に糖尿の方もいらっしゃる、高血圧の方もいらっしゃる。ここに私はちょっと問題があるなと思っております。それで、まず制度が理解するのに大変難しい制度だと。

 あげくの果てに、受診票が全く届かない。私は、そもそもこういう制度がスタートしたら、少なくとも受診票も同時に出るのが当たり前だ、こう思っておりますけれども、これは大臣、いかがでしょうか。御答弁願いたい。

舛添国務大臣 制度の周知徹底、さらに努力をしてまいりたいと思いますけれども、これはそれぞれの保険者が自分の予定計画でやるということですので、保険者の方にも指導して、きちんと、いつ受けるんだということをお知らせ願えるように、また全力を挙げてまいりたいと思います。

三井委員 こういう論評もあるんです。指導対象者の減少率が国の目標を下回れば、国保や健保を運営する自治体と企業への財政的なペナルティーを科す、これも大きな問題でありまして、成績が悪いところには後期高齢者医療制度の負担金を最大で一〇%加算し、逆に、成績がよければ支援金は減額されると。

 また、これを見ますと、個人の健康にまで罰則を導入するということになるんですね。この制度、決して私は悪いとは申しませんが、二十世紀は治療の時代、二十一世紀は予防の時代ということはよくわかります。ただし、医療費を削減したい、あるいはこういう罰金を科せる、罰則を科せるというのは、そもそも交通違反の罰金とは違うわけでございまして、先ほどの議論を聞いていますと、やはりすべて何か罰金で済まそうという傾向になってきているのかなと。これは非常に情けない話で、例えば事業体に指導するとかあるいは研修をするとか、そういうことをもっとやるべきではないかな、私はこういうぐあいに思っております。

 これは大臣、いつごろからこの受診票は届くんでしょうか。

舛添国務大臣 それは、各保険者がどういう実施スケジュール、例えば札幌のどの施設でどういうふうにやる、何時から何時まではどなたですという、それは具体的に各保険者がやる予定になっておりますので、保険者に問い合わせていただきたいというふうに思います。

 詳細については、局長の方にお答えをさせます。

水田政府参考人 お答えいたします。

 特定健診それから特定保健指導についてでございますけれども、これは、法律上は四月一日の施行ということになってございますが、各保険者におきましては、先ほど大臣申しましたように、それぞれの年間スケジュールに基づいて実施するわけでございますので、必ずしも今月から一斉に実施されるわけではございません。

 各保険者は、それぞれのスケジュールに沿って、順次対象者に、受診日時や受診場所の案内それから受診券等を送付しまして、これに基づいて特定健診等が実施されることになるわけでございます。

三井委員 それでは、今までは無保険者の方も健診を受けていたと言われますけれども、今回は、この特定健診はどのように対応されるんでしょうか。

西山政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの方々でございますけれども、健康診査及び保健指導については、健康増進法に基づく健康増進事業として、引き続き市町村において実施することにしております。

 予算的には、平成二十年度予算におきまして、三分の一補助でございますけれども、国として約五十七億円を計上して実施する予定でございます。

三井委員 それでは、従来どおりこの健診は受けられるということでございますね。そういう理解でよろしいでしょうか。

西山政府参考人 おっしゃるとおりでございまして、制度の趣旨についても、県、市町村に対して周知徹底を図っております。

三井委員 それでは次に、前期高齢者医療制度の納付金のあり方についてお伺いしたいと思います。

 皆さんのお手元に資料があるかと思いますが、病院に行けないという後期高齢者、まさに先ほどからございましたように、今、保険証が届かない、あるいは受診票が届かない。そういう中で、前期高齢者の方の納付金が相当大きな負担増になっているということで、皆さんのお手元にありますように、今まで千分の六十一だったのが今度は千分の七十六ということで、ここに書いてございますように、標準報酬月額が二十四万円の方で月に千八百円も保険料が上がる。そして年間でいいますと二万一千六百円ですから、この二十四万円の所得の若年層の皆さんにこれだけの負担というのは大変な負担だと思うんですね、決して高い所得ではありませんから。平均年齢も三十四歳、そして平均月収では二十三万円。

 こういう大変厳しい中でこういう若い人たちに負担を強いるというのは、先ほどからありますように、これから結婚もしなきゃならない、あるいは将来的なことを考えた場合に、この負担というのはすごく大きくのしかかっていると思うんですけれども、これについて御説明をお願いしたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 当該人材派遣健康保険組合に即して申し上げたいと思います。

 この計算の詳細については承知をしてございませんけれども、まず、医療費そのものが十八年度以降上がっているということがございます。これは全健保組合に共通するわけでございますけれども、当該健康保険組合によりましては、平均年齢が低くて、標準報酬が低いということでございます。

 従来の退職者医療は報酬按分でございましたが、今回の前期高齢者の財政調整の場合には、人数、加入者按分でございます。したがいまして、この派遣健保のように標準報酬が低いところは、これまで退職者医療の拠出金が低くて済んだわけでありますけれども、頭割りということで、前期、後期を通じてそういう原則に改めたものですから、その影響が出てきたということが一つございます。

 ただ、こういった負担が著しく重くなる保険者につきましては、一定の要件のもとに激変緩和措置を講ずることとしてございます。この千八百円は恐らくそれをまだ見込んでいない時代のもの、安全率を見込んで算定されたものと思いますけれども、今後とも、各保険者における負担額の状況を見ながら、必要に応じて対応していきたい、このように考えております。

三井委員 これはまさに派遣健保組合の事例でありますけれども、四十五万人の方が加入されているわけでございますけれども、今局長が御答弁なさったように、例えば国庫補助なり公的資金を入れるということが本当に急務だと思うんですね。ぜひ、そういう方向で御検討をお願い申し上げたいと思います。

 これもそうなんですけれども、各都道府県で後期高齢者医療制度のいろいろなトラブルが起きていますけれども、例えば、厚生労働省が制度を出すというのは、民間の事業者でいえば、むしろ製造業なんですね。製造して商品を出すときには、やはり皆さんがいい商品だ、そして受け入れられるような制度にしなければ、私はまさにそれは不良品だと思っております。

 ですから、今のメタボ健診もそうですし、あるいは後期高齢者の制度もそうです。制度がスタートしているのに受診票も来ない、そして保険証も来ない、これは後手後手ですよね。年金もそうでしたけれども、本当に年金なんかも入らなきゃ損なんだというインセンティブを働かさなければ、この制度も、この制度に入らないと損なんだということに、やはりもっと、言うなれば広報活動なり周知徹底するなり、そういう積極的な行動をとっていかないと、いつまでも、制度はできた、中身はわからない、言うなれば商品の中身はわからない、こういう状況だと思うんですね。

 大臣、この介護の問題も含めて、今申し上げたような製造業に例えて悪いですけれども、これについて、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。

舛添国務大臣 今、いわゆる長寿医療制度にしてもメタボ健診にしても、さまざまな問題が御指摘されております。ただ、特に後期高齢者の問題については、法律ができたのが二年前、そしてその間、いろいろな軽減措置、暫定措置、継ぎはぎにやってきましたから、それぞれの市町村もこれは大変だっただろうと思います。

 しかし、全体的にやはりこれはきちんと広報活動をやるべきだということで、厚生労働省の一つの大きなこれまでの欠陥は、情報を国民と共有するという姿勢が足りなかった。そこで、先般、各部局に広報委員というのを私がじかに任命しまして、そして、これにしかるべき広報をやらせる。

 今度の長寿医療制度にしても、役人が読んだらわかるけれども、普通の人が見たのではわからない、それじゃだめだということで、きのうあたりから早急にこの作成をしてやり始めていますので、広報の重要性ということを今周知徹底させておるところでございますので、私は率先して今後とも周知徹底を図っていきたいと思います。

 そしてこれは、新しい制度をつくるときに、物のメーキングの場合ですと、試作して車をつくって走らせてみて、ちょっと欠陥があるからやり直しということができますけれども、人間が相手のシステムですから、一たん試行して動かしてみる、そして問題があれば柔軟に対応する。先ほどの派遣の保険の方々が余りにも重いということであれば、これは柔軟に軽減措置をとる、そういう姿勢で臨みたいと思います。

三井委員 大臣、今力強いお言葉をいただきましたけれども、本当にわかりやすい制度にする、そして、私が先ほど申し上げたように、この制度に入ってよかったんだ、そういう制度にしなきゃだめなんですね。これはやはり大きく見直す時代、ドラスチックに見直す、抜本的に見直す時代だと言いながら何も変わっていない。これをぜひ変えていくような方向にしないと、今まさに、商品になるかもしれませんが、広報委員が指定された、各都道府県、市町村に、末端まで周知徹底するようにぜひお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、大臣に、介護人材確保法案の、私も提出者の一人でありますけれども、ケアマネジャーなり、あるいはヘルパーの介護労働者の皆さんからも、あるいは民間の介護事業者、あるいは認知症の家族を抱えた皆さん、あるいは介護にかかわる皆さん、本当に数多くの現場からの実態を伺ってまいりました。そこで、介護労働者の皆さんからは、一生懸命介護の勉強をしてきた、そしてまた志を持って介護の仕事についた、しかし、仕事の内容の割には賃金水準が低くて、生活が成り立たない、本当に成り立たないんだという、まさに皆さんからそういう悲鳴も聞いております。やはり若い人たちは将来の生活設計がある、この生活設計もできない。少子化時代だから、子供をつくりたい、しかし、まさに、この給料ではやっていけない。そういう中で、どうしてもやはりやめざるを得ないんだと。

 私も自分で介護の事業所もやっておりますけれども、あるいは箱物と称する老健施設もやっております。そして、地方に行けば行くほど、若い人たちが、例えば、私たちも上げてあげたいんです、給料を。先日も、二十のお二人が職場で結婚しました。これはお恥ずかしい話ですけれども、給料というのは、二十ぐらいですと、何と十一、二万なんです。これしか出せないんですよ。

 そうすると、例えば、介護さんと私たちは言っているんですが、当直に入ると大体三万ぐらいつくんです。これで何とかもっているんですよね。しかし、実際に、今いろいろな諸々のを引かれていきますと、手元に残るのは、十四、五万でも十一万ぐらいなんです。これで生活しろというのはどだい無理なんですね。ここでまた質を高めろというのも難しいんです。

 そこで、大臣も、まさに介護のことは御存じだと思いますけれども、私は、やはり最終的な介護報酬ということになるかと思いますけれども、もう一度しっかりと制度自体を、来年、介護報酬の改定がありますけれども、見直していただきたいなと。

 私も、自分のことを申し上げれば、二十の若い二人が結婚して子供が生まれた。そうか、よかったなと、私も、ないお金をはたいて一万円ぐらい上げるわけですよ、お祝いだと。うちは社内規定がありますから、社内規定は社内規定、しかし、私は個人的に、これで頑張れよと。今度は二人目の子供が生まれたというんですね。一人目が生まれて、二人目が生まれたと。また、そのたびに私はお小遣いというかお祝いを上げるわけですよ。私の身ももたなくなるぐらい皆さんにそういうプレゼントをする。

 あるいは、唯一の楽しみは忘年会とか新年会なんです。それはもう本当に、家族でみんなで来なさいと。そのときにお年玉を上げるんですよ。お年玉も、並みのお年玉じゃなくなっちゃうんです。そういうことも含めて、これは、やはり介護報酬なり上げていただかないと生活がしていけないということを、強く私は大臣に申し上げたいと思っております。

 今回出させていただいた、四月八日に、私どもの菊田議員も登壇されて、私どもの法案について説明させていただきましたけれども、本当に緊急性を要する、まさに待ったなしなんです、現場は。ですから、来年の介護報酬までもたない。あるいは介護事業者も、まさに、何を今一番望みますかと聞いたら、今我々のそれぞれの事業所は立て直すのに大変なんです、小さいところは。それはすべて介護報酬なんですね。それと、介護の人たちがいないということが原因なんです。ぜひ、私どもが出させていただきましたこの法案、賛成をしていただいて、修正を加えるのであれば修正をしていただくなり、ぜひよろしくお願い申し上げたいということを申し上げたいと思います。

 次に、大臣が、先ほどもどなたか質問しておりましたけれども、介護士の処遇がよくないので、何とか介護報酬を上げたいという発言についてお伺いしたいと思います。

 業界は、今申し上げたように、大手も小さいところも大変人手不足でありますけれども、来年度の報酬水準を引き上げるということを表明されましたけれども、大臣がおっしゃったことで大変みんな喜んでいるわけですよ。おっ、本当に上げてくれるんだな、よかったなと。ぜひ、このことを聞いてほしいと。また、我が党の菊田真紀子議員が、引き上げ方針表明という報道は本当ですかという質問に対して、大臣は明確にお答えになっていないんですけれども、ぜひとも、きょう大臣に、この報酬のアップについて御答弁を願いたいと思います。

舛添国務大臣 介護に携わる方々の処遇を含めて、今非常に大きな問題があるというのはきっちりと認識をしております。それで、非常に離職率が高い。今委員がおっしゃったように、希望に燃えて就職したのに途中で挫折する。やはりこれは、平均的な賃金水準を見ても、この処遇をきちんとする、つまり上げないといけない、そういうふうに思っています。

 さて、そこで、いかなるように上げるかということで、今経営の実態調査をやり、そういうものをもとにして来年度の改定に結びつけたいと思っていますが、しかし、これは介護だけじゃなくて、医療の分野もすべてそうですが、給付と負担をどういうような割合でするのか。だれがどういうふうに負担を分かち持つのかということをやらないといけません。

 そして今、例えば緊急的な手当てが必要といえば、産科医、小児科医、これも全く同じですね。それで、病院には報酬が行くけれども、勤務医の皆さんには直接行かない。これをどうするか。同じような問題を抱えている中で、やはりこれは国民の皆さんの御理解を賜らないといけませんが、負担と給付のバランスをどうとるかということであります。

 それは、私は、きちんと実態調査をして報酬の改定に持っていく、全力を挙げます。しかし、では、それはどこから財源が来るんですかと。国民の保険料の負担です。私の母親は残念ながら介護保険が入る直前に亡くなりました。そのときの負担、経済的にも、個人的ないろいろな負担を考えれば、私は、介護保険が入ってよかったなと。いろいろ問題はありますけれども、ないよりあった方がよかった、そういうふうに感じています。そういうことから見ると、応分の負担は、私は一保険者としてやるのにやぶさかではありません。

 しかし、これは国民の皆さんが、一切だめだ、もう一円も上げたくないということになれば、介護報酬についてもそれは一つの障害になり得るわけで、私は、国民の皆さん方にぜひ、負担がなくて、それは天からお金が降ってくればいいんですけれども、そうじゃありませんから、やはり応分の負担をしていただいて、そして介護の現場で働く人たちの処遇をよくして、そしてみんなで介護という大きな問題について支え合う、そういうことに全力を挙げて、説得をし、そして私は、もう何としてでもこの処遇の改善をやりたい。

 そして、問題は、単年度ではなくて継続的にやっていかないと、ことしは上がったけれども来年は下がるということでは安定性がありません。サステーナブルというか、維持可能な保険制度、それはサービス提供者の側から見ても、受益者である国民の側から見ても、私は考えないといけない。そういう意味で、総理のもとに社会保障国民会議というのもございます、そういうところの場を通じてやっていく。そして、何度も申し上げますけれども、二千二百億円という削減の大きな圧力の中で、いろいろな要求にすべてこたえるのは限界を感じていますが、しかし、引き続き努力をしてまいります。

三井委員 確かに、今大臣から二千二百億の話は出ましたけれども、逆なんですね。プライマリーバランスをとるだけで二千二百億を削減すると。これから、まさに団塊の世代の皆さんが高齢化していくと、逆に二千二百億はふやさなきゃなりませんよ。これを削減するなんというのはとんでもない話で、私の一つの持論として、この社会保障制度というのは、やはり、景気に関係なく、経済動向に関係なく、安定したものでなきゃならないというのが持論なんですね。

 以前にも、私、ここまでやるか北欧という、ダイヤモンド社か何かの雑誌で見たんですが、そのとき私もコピーして今持っていますけれども、この中に、まさに北欧は、これは社会保障制度がしっかりやられると、北欧五カ国、スウェーデン、デンマーク、フィンランドとか、このごろは経済がよくなっているんですね。本当によくなっているんですよ。

 ですから、北欧のすべてがいいとは限りませんけれども、しかし、今申し上げたような、やはり、景気に関係なく、そして社会保障制度をしっかりすれば景気はよくなるというのが持論でございますので、ぜひ大臣にそういうお考えで、もうパッチワーク行政でなくて、思い切り変えるときが来ましたので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 それとまた、これは大臣の発言の報道についてお伺いいたします。

 リハビリや治療が効果を上げている要介護度が軽くなったケースについて、三段階下がったら一万円ぐらい還元してやれるような発想がいいと。要介護度が改善した人を元気づける仕組みを検討したいということなんですね。

 しかし、この発言、どういう解釈をしていいのかわかりませんけれども、将来、いわゆる奨励金制度の導入を示唆しているということにもとれるんですけれども、確かに、現在のこの制度では要介護度の重さで評価している面がありますよね。しかし、この要介護度の改善に対する評価が足りないとも思いますし、その意味で、要介護度が三段階下がったら一万円ぐらい還元するという大臣の御発言は極めて私は具体性を持った内容と受けとめておりますけれども、この点についてこれからどのように検討を進めていかれるのか、お尋ねしたいと思います。

舛添国務大臣 これは実は私、介護保険が入ったときからずっとこのことを考えていまして、その発言をしましたのは、先般、高齢者の医療の現場、これをお医者さんや介護士の皆さんと一緒に訪問しながら、連れていっていただいた。それで、たまたまある御家庭で、御高齢の方で、介護を受けている方とお話をしましたら、要介護度、本当に寝たきりだったのが、座ってちゃんと私と話ができる。五が二ぐらいに上がっている。これはまさに我々の理想とするところであるので、御家族の皆さんに何か言いたいことはありますかと言ったら、いや、これだけ頑張ったのに、何か、御褒美とは言わないけれども、インセンティブはないかと。

 つまり、今まで三十八万の給付を受けておられた。約四十万。それが、どんどんどんどんよくなったら給付は減るわけですから、もちろんサービス量が減るにしても。ただ、家族の負担を考えれば、要介護度がよくなったからといって、家族の負担が減るわけでは必ずしもありません。かえって寝たきりで五の方が手がかからないかもしれない。動き出して徘回しちゃうともっとかかるかもしれない。

 そういうことを考えたときに、せめて、国民全体から見たときに、頑張って要介護度を下げてきている方々に何か御褒美というか、頑張ってくださいねというのを上げられないかなと思って、今実は、実態調査をやらせていただいている。どれぐらいの数の方々がどれぐらい、まあ、私がお会いしたように、一気に三も減らすというのは、これは相当のことで、なかなか一だって、ふやすのはあれだけれども、減るのはなかなかいません。だけれども、そういう方の励みになる。

 だから、例えば、三段階、二段階で、金メダル、銀メダル、銅メダル的な発想で、私は、例えば介護の日のようなものを設けて、そういう方に、私みずからひとつ賞状でも、記念品でも差し上げたい、身近なところからいうと、そういうことも考えておりますので、具体的なのは調査を待って、これは財源の問題があります。

 ただ、委員御承知のように、平成十八年の介護報酬改定におきまして、試行的な取り組みとして、利用者の要支援状態の維持、改善の割合が一定以上となった場合に、その事業所に加算する事業評価加算というのを創設いたしました。

 これは、実は一つの試行なんですけれども、逆に事業所から見ると、委員御承知のように、加算を算定したら自己負担がふえますね。これをどうするかということがまたあります。それは、逆に利用者からいうと、先ほど言ったように、おばあちゃん、よくなったんだけれども四十万のサービスが二十万になった、これもあるので、こういうことも含めて、次の改定のときにはもうちょっときちんとした議論をしたい。そういう意味でも、今実態調査をやらせているところでございます。

三井委員 これはまさに大臣、症状によって、むしろリハビリをやったことによって余計な動きをされると困る場合は多々あるわけですよ。

 ですから、私も、自分のおふくろは、昨年脳梗塞で倒れて、まさに失語症になっちゃったんですが、これは、私は、自分自身で今まで介護なり医療を提供して、自分の身内や母親がそうやって倒れて初めて、また新たに、大臣もそうでしょうけれども、介護の重要さとかそういうのを感じるんですね。

 本当に、自分の自宅で、我々でも自宅で介護してあげたい。しかし、家族構成から考えたらなかなかできない。そして、ヘルパーさんを入れてもこれまたお金がかかるということを考えれば、それで、今私のおふくろもリハビリを受けているんですが、余りこれはリハビリをやる必要がないと言われちゃっているんですね。というのは、もう認知症も入っていますから、徘回するようになってしまうと、これまた反面、今大臣言われたように大変難しい問題があるというのが実情です。

 ですから、大いに励みになることは結構でございますけれども、そういった意味も踏まえてぜひやっていただきたいなと思います。

 それから、またこれは大臣の発言の報道でございますけれども、長期的課題として、介護保険と医療保険を統合するような方向があっていいという御発言についてお伺いしたいと思います。

 この統合するというのは、大臣は、この両制度全体を指すのか、あるいは医療保険から切り離した介護保険制度をどうしようとするのか、また、現行の医療保険と介護保険を、もっと言いますとどこに問題があるのか。さっき大臣は、介護保険ができてよかったと。そういう統合する方向についてどのような姿を描いていられるのか、お尋ねしたいと思います。

舛添国務大臣 これは、委員、長期的なビジョンも持つ、私のもとで今、安心と希望の医療ビジョンということで、長期的な研究会をやっておりますけれども、長期的に見てこの二つの制度を、このままいくのか、統合するのか、そういうことの議論で、私は、やはり統合ということも考えて制度設計を、あくまで長期的にですよ、やる必要があるんじゃないかなということを問題提起したわけであります。

 ただ、現行の制度そのままでできないのも当たり前のことで、四十歳以上の人が入っているのとそうじゃない制度がある。それから、負担と給付についても全部違います。提供者も違います。

 ただ、国民の視点から見たときに、我々が介護が必要な身になる、しかし、医療と介護というのは分けて考えられる話ではなくて、要するに、両方を十分に受けられるということがきちんとした人生を送れるということになるわけですから、そういう観点から見たときに、はい、ここまで医療、ここまでは介護と分けることがいいのかなと。

 それから、例えば介護が必要な身にいつなるかわかりません。それは、認知症で御高齢の方、これはそのまま介護保険制度になりますけれども、特定の疾病以外は、若くて介護が必要になってもこれは使えませんね。そういういろいろな不便がある。

 ですから、まさにこれは国民的な議論をしてもらうための一つの問題提起で、患者の立場、家族の立場、国民の立場から見たときに、現行制度そのままで統合することはもちろん不可能ですけれども、しかし、介護と医療、この二つのサービスが十分な組み合わせのもとに行われるような制度設計という考え方があってもいいのではないか、そういう意味で申し上げましたので、ぜひこれは、三井委員も含めて、みんなで少し国民的議論をやりたいと思います。まさに総理のもとにある社会保障国民会議というのはこういうことを議論する場だというふうに考えております。

三井委員 私もそれは、大臣がおっしゃるとおり、長期的なものとして考える時期が来たのかなとは思っていますが、しかし、直近の問題として、やはり今の制度の中で、要するに先ほど私が申し上げたように、継ぎはぎだらけの制度ではもうもちませんよと。例えば医師不足の問題、産科の問題あるいは小児科の問題、この問題もそうですけれども、まさに抜本的に変えないと、医師が二十六万人しかいない中で、その中でやりくりするということは大変なことなんですね。介護もそうなんです。

 ですから、これから、例えば今申し上げたように抜本的なことを、今大臣おっしゃったように、これはぜひ見直しましょうよ。こういうことをやらなければ本当にこの国の制度というのはすべて過去のものになってしまう。いいインセンティブが働くような制度にしたい、こういうぐあいに思います。

 時間もありませんので、次は、閣法についてお伺いしたいと思います。

 先ほどからいろいろ議論が出ておりますが、昨年の六月のコムスンの処分が示された直後の本委員会で、私は、今回の処分で利用者や従業員の皆さんに負担のかかることのないようにという、厚生労働省の厳正な対応を求めたわけですけれども、その後、グッドウィル・グループですとかコムスンの経営譲渡先も確定した、新たな経営体制のもとで介護サービス事業が円滑に進むことを心から願いますということを申し上げたと思うんです。

 そこで、今回の介護保険法の改正の柱の一つであります介護サービス事業者に対する業務管理体制の整備の義務づけについてお尋ねしたいと思います。

 先ほど何人かの委員から御質問がありましたけれども、これはコムスン事件の反省を踏まえてということになると思いますけれども、介護保険事業という公共性の高い事業には法令遵守を求めるのは当然のことだということもさっきおっしゃっていましたけれども、この業務管理体制の具体的な内容について、今後省令で定めるということになっておりますけれども、厚生労働省の御説明は、事業者の規模に応じて業務管理体制管理者の設置、業務管理マニュアルの整備などを義務づけるということだと私は聞いておりますけれども、具体的に今、事業所別に分けるというのはどういう形で分けるのか、それについてお伺いしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の業務管理体制の整備の問題でございますけれども、基本的には、事業者がきちっと法令遵守をしていただくということが大変重要でございます。その場合に、規模によりましてかなり実情が違うのではないかというふうに思っております。小さい企業とそれから全国展開をしているような企業においては法令遵守の態様といいますか形も変わってしかるべきだろうというふうに思っております。

 したがいまして、これから法律の施行までに検討いたしますけれども、今のところ、事業所の数がどの程度なのかによって法令遵守の仕組みを変えていきたいというふうに考えております。

三井委員 私は、業務管理体制の整備についてという資料をいただきましたけれども、小規模事業者、中規模事業者、大規模事業者と。これは、小規模事業者というのはどれぐらいといいましょうか、例えば一事業所から十なのか二十なのか、あるいは中規模はどうなのか、大事業者はどうなのかということを御答弁願いたいと思います。

阿曽沼政府参考人 具体的な数字はまだ決めておりませんけれども、やはり事業所の数で、一応これはいろいろな審議会等でもまだ御議論をいただくことになるかもしれませんけれども、小規模というのは、大体五十以下とか、あるいはもっと小さくなるかもしれませんけれども、そういうふうな規模を念頭に置いて考えております。

三井委員 これも、本当に小さいまじめにやっている事業者も、やればやるほど、まじめな事業者ほど利益が出ていない。そしてまた、法令遵守するのは当たり前でありますから、さっき罰則等のこともありましたけれども、この辺をぜひ御検討願いたいと思います。

 次に、法令遵守についてお伺いしたいと思います。

 現在、一般企業や団体においてもこれは自主的に決めていますけれども、この機会に、行政による指導だけではなくて、事業者団体による研修だとか、あるいは事業者が自主的に取り組んでいただけることが肝心だと私は思っているんですね。ですから、今申し上げたように罰則だけではなくて、この点についてどういう取り組みをされるのか、お聞かせ願いたいと思います。

阿曽沼政府参考人 この点については、有識者会議におきましても、法令遵守というのは本来事業者自身が取り組むべきだ、あるいは事業者の業界全体として取り組むべきだろうというふうな御指摘がございましたので、業界としてもそれぞれ研修をするとかいろいろな取り組みをされるというふうに承知をいたしております。それに対して、私ども行政としても、都道府県もそうでございますし、私ども国としても、それは市町村としても、それをバックアップしていきたいというふうに思っております。

三井委員 まだお聞きしたいことがありますが、最後でありますので、私どもの提出しております人材確保法案について私からも大臣に御要請申し上げたいのは、先ほどから何度か、繰り返しになるかもしれませんが、介護の現場というのは、私自身が見ていても、そして自分で経営していても、本当に、けさも実は私どもの病院の担当者と話しました。そうしましたら、私もこのことがよくわかるかなと思ったんですが、十六掛ける四掛ける三十割る二十八、七十二時間を超えてはならない、超えると減算になると。

 これは何のことかなと思ったんです、実は私も、現場のことを知りつつも。実は、十六時間夜勤をするんですね。夕方の四時半から翌朝の九時までで十六時間。それで四人体制です。そして三十というのは、三十日もあるし三十一日もある。これを割るのが、今いる、夜勤に入れる人が二十八人なんです。そうしますと七十二時間をちょっと切れるぐらいなんですけれども、超えてしまうと減算になるんですね。

 こういうことにも神経をとがらせながら、まさにこういう事務的なこともしながら、減算になりますと職員の給料や待遇条件に大きくかかわるものですから、むしろこういうこともわかりやすくやれるような、先ほどもお話がありましたように、難しいことをやらずに、もっとわかりやすい制度にしてもらいたい。

 それと、先ほども申し上げましたけれども、介護の皆さんが本当に今集まらないんです。田舎は田舎でまた大変なんです。若い人がいないんです。都市部は都市部で、東京だとか名古屋とかというところはまた景気がよくて人がいない。これは全国的なんですね。

 ですから、こういうことを踏まえて、これは暫定ではありますけれども、特別措置法案でありますけれども、喫緊の課題としてぜひ御協議いただいて、この法案を早急にぜひ成立するように前向きにお考えいただきたいということでございますので、大臣、御答弁をお願いします。

舛添国務大臣 この委員会初め、きちんと国会の場で議論をして、その結果に従いたいと思います。

三井委員 時間でございますので、いずれにしましても、この我々の民主党案、そして閣法を、ぜひ賛成する形でお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、山井和則君。

山井委員 四十分間、質問の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 言うまでもなく、舛添厚生労働大臣も、介護問題をライフワークとされて政治家を志されたというふうにお聞きしております。まさに舛添大臣の一番の関心分野でありますので、ぜひとも前向きな答弁をお願いしたいと思っております。

 また、かく言う私自身も、福祉に関心を持ったきっかけは、私の祖母が長年寝たきりでありまして、それがきっかけで、私は大学時代は酵母菌の研究をやっておったんですけれども、福祉の世界に入り、そして、思い起こせば、二十代のころ、老人病院や老人ホームで実習をさせてもらいました。

 お正月の三が日、ある老人病院の痴呆病棟で実習をしておりましたら、そういうところはほとんど、残念ながら、お正月なのに御家族は来られないんですね。山奥の老人病院の痴呆病棟で、お年寄りがぽつんと暮らしている。そして、本当に、お見舞いが来るお年寄り、また、一年、二年お見舞いが来ないお年寄りがおられる。同室で、お孫さんたちが来るお年寄りをうらやましそうに見ているひとりぼっちの高齢者の方。

 また、私は今でも忘れられませんが、ある個室に入っておられた認知症の九十歳ぐらいの女性の方でしたでしょうか、私がお昼御飯のお給仕に回っておりましたら、ふと、一人、ベッドの上で昼御飯を食べておられる部屋に入っていったら、話し声がするんですね。このキュウリおいしいな、このお浸しおいしいな、こう話し声が聞こえるんですよ。私はびっくりして、個室で、一人部屋で何で話し声がするんだろうなということで、わかったのは、実は、ひとりぼっちで食事していてもおいしくないんですね。ですから、その御高齢の方は、ひとりぼっちなんだけれども、あたかもだれかと話をしながら、おいしいねとか、このちくわおいしいねとか言いながら食べることによって、自分の孤独を和らげておられるということに気づかせていただきました。

 豊かと言われる日本で、そして、今の御高齢の方々は非常に厳しい戦争を経た、そういう世代の方々が、人生の最後、本当にこういう形でいいんだろうか。かといって、家族を責めるわけにもいかない。私の家でも、こういう家族に関しては、介護でやはり非常に大変だなという経験はございましたので、家族を責めるわけにもいかない。

 そういう意味では、社会全体の親孝行、介護の社会化がやはり必要だということで、二〇〇〇年に介護保険がスタートしたわけです。しかし、二〇〇五年の介護保険の改正などを境に、本当に介護現場が厳しい状況になっていって、今、三井議員の御指摘にもありましたように、本当にもう人が集まらない、そして志ある人も、残念ながら賃金が安過ぎるということでやめていく、また、介護現場を志す専門学校や大学の若者も、やはり実習で余りの賃金の低さを目の当たりにして、多くの人が介護現場に行かない。この現状でいいのかという気がするわけです。

 きょう、多いですが、二十五枚の資料を配付させていただきました。この一ページ目にございますのは、ある市民団体の署名用紙でございます。「人間の介護を担って働く人々に人間らしい待遇を求めます」

 少し読ませていただきます。

  長寿社会の人生の終わりには、介護が必要不可欠です。いま介護保険は担い手の側から崩壊の危機に瀕しています。初任給で二〜三万円、平均賃金で十万円も安い賃金。夜勤・残業に法規はあまり守られていません。パート、登録など非正規で働く人々は、低賃金であるばかりでなく、安定した就労の保証がありません。離転職は激しさを増し、経験の集積が難しい状況です。

  介護の仕事が誇りと希望ある職業として確立するよう、私たちは、今の平均月収に三万円上乗せする「三万円法」はじめ、介護に働く人々の待遇改善を求めます。

  財源については介護保険枠内で工夫し、必要な緊急措置をとり、安易に介護保険料アップや利用者負担増加に直結させないよう望みます。

  介護者が幸せでなければ、介護される人も幸せになれません。

この趣旨の署名が、もう十五万人分以上集まって、舛添大臣のお手元にも届いておりますし、これは党派を超えて、この署名は届いているわけであります。

 さらに、この資料にもございますように、厚生労働省も審議会で調査を発表しまして、この十六ページにございますが、昨年の十二月十日、介護サービス事業の実態把握のためのワーキングチーム報告のポイントの中で、次のように書かれております。「事業者は、現在の介護報酬水準では経営が苦しく、介護労働者に対する十分な処遇を確保することが難しいため、人材確保・育成が難しい。」というふうに、もう調査も出ているわけですね。このままではだめだということ。

 そういう中で、舛添大臣がこのたび発言をされました。最後のページに、二十五ページに書いてございます。すべての新聞に出ております、「介護報酬引き上げ 〇九年度」「介護士の処遇が良くないので何とか介護報酬を上げたい」と。次の改定で上げたいということを発言されました。

 重ねての質問になりますが、舛添大臣、来年度、介護報酬を引き上げられるということですか。

舛添国務大臣 前提として、介護に携わる方々の処遇が平均的に見てもよろしくない、これはもう非常に、同じ問題意識を持っています。しかし、今のこの枠組みでは、介護保険料との見合いがございます。しかし、私は、全力を挙げてこの介護報酬を引き上げる、そのための努力をいたします。そのために、今、経営実態を調査したりしています。

 ただ、何度も申し上げますように、介護保険料の上昇率との見合いということがあります。私は、介護保険料を、ぜひ国民の皆さん方に御理解いただいて、来年の報酬改定のときにはそれをもとに上げたい、そういう制度の仕組みができておりますので、そういうふうに思っております。

 やはりサービスというのはただでは来ないので、私たちは、物を買うときにはわかるんですね、お金を払わないと物は買えないと。ところが、サービスが何かただで来るように思ってもらってもまた困るので、まさに天からお金が降ってくるわけではありませんから、保険料の形であれ、税の形であれ、何らかの手当てをしないといけない。それは、私は、やはり国民のコンセンサスを得て、介護保険が入る前の、それは山井委員のいろいろな体験というのも、私もいつも本を読ませていただいて、まさに介護の仲間だと思っていますので、お互いに批判したり啓発しながら、よりよい介護保険制度を求めていきたいというふうに思っています。

 そういう中で、今、立場は違い、野党と、私はたまたま厚生労働大臣になりましたけれども、しかし、私がやるべきことは、今の厳しいこの財政事情の中で、そして国民の皆さん方の御負担もなかなかお願いしにくい中で、やはりしかし、介護という大事な社会保障の制度、介護保険という仕組みを守り抜いていくためには、何とかこれは介護報酬を引き上げたい、そういう思いで全力を挙げたいと思います。

 ただ、何度も先ほどから申し上げておりますように、介護保険料もそれに見合って引き上げる必要が出てくると思いますので、そこの国民の皆さん方の御理解をいただくように、全力を挙げたいと思っております。

山井委員 舛添大臣に確認いたしますが、厚生労働大臣というのは、当然、厚生労働省を代表する立場でございます。今の、来年度、介護報酬を上げるということは、個人ではなくて、厚生労働省の見解ということでよろしいですか。

舛添国務大臣 今、経営実態の調査をしております。それに基づいて、そして厚生労働大臣として、国民に保険料の値上げということをお願いし、その上で報酬を来年度の改定において上げる、そういうことであります。

山井委員 気になるのが、もちろん先のことはわかりませんが、恐らく山場は十二月ぐらいの議論になろうかと思いますが、そのときには舛添大臣が大臣でない可能性も当然高いわけでありまして、舛添大臣は言ったと、それで、大臣がかわって、ああ、前任者はそうおっしゃっていましたね、でも、あれは前任者が個人でおっしゃっておられました、厚生労働省は関係ありませんということになったら、これは本当に国会審議が成り立ちませんので、厚生労働省としての考えということでよろしいですか、改めて確認をいたします。

舛添国務大臣 何度も申し上げておりますように、まず経営実態の調査をやり、そして国民に対して介護保険料の値上げということをお願いし、その上で、きちんと来年度改定において処遇が改善できるように省として努力をする、そういうことであります。

山井委員 省としてという言葉が出ました。これは、与党とはこういう話はされておられますか。

舛添国務大臣 与党の皆さん方は、それぞれ与党の部会があり、介護の委員会があり、そういうところできちんと議論をなさっていると思います。私は、厚生労働大臣として発言したのでありまして、与党と話し合いをした上で話したわけではございません。

山井委員 このことに限ってではないんですが、舛添大臣の発言で少し気になるのが、今回の件も「介護報酬引き上げ」と新聞に出たので、これは一年先なのにすごいことをおっしゃったなということで、与党の議員に聞きましたら、いや、全く聞いていないし、議論もしていない、大臣が勝手に言っているんじゃないかと。厚生労働省の方に聞いても、省内でも全く議論をしていないということで、何か聞いてみると、大臣が個人的におっしゃったという、そんな感じなんですね。

 もちろん私たちは、今回の法案で、介護保険料はアップさせない、自己負担もアップさせないという介護人材確保法を出しておりますから、見解は異なります。しかし、中には、こういう新聞報道を見て、介護職員の待遇をよくするために介護報酬を上げると、それこそ代表者である厚労大臣がおっしゃったということで期待をされている方、喜んでおられる方もいるわけで、これは、大臣がかわったら、後はもうなかった話ですよということでは、こういうのは当然済まないわけであります。

 そのことだけもう一度、大臣がかわったら、もうこの話はなかったこととか、そういうことになるということはないんでしょうね。そのことだけはちょっと確認しておきたいと思います。

舛添国務大臣 これは、もちろん与党ともきちんと議論をする、政府・与党一体となって取り組まないといけないというふうに思います。私は、公式に党の部会に出てそういう議論をしたことはありませんが、既に党の方でもそういう議論は進められておるというふうに伺っておりますので、与党と連携をとって、そして最終的には、来年初めに開く社会保障審議会の場においてきちんと決める。

 しかし、そうすると、大臣が、こういうことをやりたい、こういうことをやりたいというようなことを何にも言ってはいけないのかということになりますよ。私は、反対する方もおられると思います。しかし、物事を進めていく一つのやり方として、問題提起をする。このままでいいんですか、介護に携わる方々の給料や待遇がこんなに悪くていいんですかと。

 しかし、天からお金が降ってくるわけじゃないですから、この新聞記事にもちゃんと書いてあるように、介護保険料を引き上げないとそれに対する充当はできませんということをはっきり申し上げているので、国民の皆さん方に実は私は問題提起をして、もし介護保険が入っていないときのように全部自力でやって、山井委員も私も大変苦労しました。もう二度とああいう苦労はやりたくない。しかし、介護保険、問題はありますけれども、それが入ったおかげで随分よくなりました。

 そのよくなったものをさらによくするためには、どこかでやはりだれかが負担しないといけません、税の形であれ、保険料の形であれ。それがなくて、やれサービスの水準を上げたいと。サービスの水準を上げるということは、介護で働いている人たちの処遇を上げないと、疲れ切っちゃって、さっきの三井委員のお話のように、もう夜勤ばかりして疲れ切ってしまう。それは、介護の質は下がりますよ。

 だから、そういうものを上げるためには、やはりサービスを受益している私たちも応分の負担が必要だ、そのこともはっきり申し上げて、これは国民全体に対して問題提起をし、私はそういう決意であるということを申し上げた次第です。

山井委員 私は、舛添大臣は思い切った発言をすべきでないと言っているのでは決してございません。ただ、非常に大臣の発言というのは重いわけですから、ぜひとも、言った以上は、厚生労働省としても、あるいは与党としても党を挙げて待遇改善のために取り組んでいただきたいということであります。

 そして、まさにそのことに関連して、私たち民主党の今回の介護人材確保法と違いますのは、私たちは、舛添大臣のおっしゃる気持ちもわからないではございません。確かに介護報酬を上げると自己負担がアップする、あるいは介護保険料がアップする、その痛みは必要なのではないかという意味ではないかと思いますが、わからないではありませんが、やはり今、自己負担がアップするんだったら、それはもうそのサービスを利用できない、あるいは介護保険料がこれ以上上がったら、本当に、今回の後期高齢者医療制度とまさに合算になるわけですから、払えないという声も強いわけですね。

 ですから、抜本的な介護保険のあり方というのは、我が党も今、山田議員をトップにして議論はしておりますが、速急に九百億円の財源をつぎ込んで、七月一日から認定事業者は介護報酬を三%引き上げて、全額それを使えば二万円ぐらいの月給のアップになります、そういう法案を出しているわけであります。

 年間九百億円、もう残念ながら四月一日を越えましたので、この法案、七月一日からスタートということにする予定ですが、そうしたら四分の三ですから六百七十五億円なんですね。確かに一般の公費を持ってくるのは大変ですが、大臣、見ていただきたいのが、今回の資料の中の十八ページ。まず、昨年度も一昨年度も、介護給付費というのは補正で減になっているわけですね。そして何と、昨年度、介護保険の国庫負担が、二十ページにありますように、八百九十一億円、ほぼ九百億円余ってしまったわけですよ。そして、これは補正予算ですから、これらのお金はねんきん特別便、後期高齢者医療の凍結という方にいわば流用をされてしまったわけなんですね。

 ですから、私たちが申し上げたいのは、これほど介護職員の待遇が悪くて介護事業者も青息吐息のときに、介護保険の国費は余っている。それを余らせてほかのものに流用した。流用せずに、このお金は、やはりそもそも介護職員の賃上げに使うべきではなかったのかということを私たちは思っているわけであります。

 そういう意味で、私たちは、二年連続、見込みと実態とのずれで多くの介護保険給付費の国庫負担が余っておりますから、そういう財源を活用する。あるいは、財務省からも指摘されておりますが、三千億円、随意契約がある。今、厚生労働省は財務省からも指摘されて問題になっております。そういうものを節約することによって、数百億円のお金の削減ができるかもしれない。これは財務省も指摘をしているところであります。そういうものを活用して、一刻の猶予もない介護職員の待遇改善をする必要があるというふうに思っているわけであります。

 この法案についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 まず、予算の構造、予算の仕組みということから考えますと、今、二十ページにありますこのマイナス八百九十一億円、もともとは義務的経費として介護給付費の支給の費用を一定割合で国が認めるということになっておりますので、剰余金という形で先ほどどなたかおっしゃったと思いますけれども、そういうふうな形のお金ではなくて、今おっしゃったように、もしこれを仮に介護労働者の賃上げに使うとすると、義務的経費ではなくて、ちょっと専門的になりますが、政策的経費として国庫から新たに予算計上をしないといけない。先般成立しました平成二十年度の予算については、そういう政策的経費の予算的な歳出根拠がございません。したがって、今の歳出歳入予算の仕組みからいうと、今のアイデアを実現するのは非常に困難であるということが一つ。

 それからもう一つは、先ほど産科、小児科の例を出しましたが、私も、もともと介護の問題から国会議員になったわけですから、一番この問題を何とかしたいと思っているのは三井委員や山井委員と同じでありますけれども、例えば、産科、小児科の不足ということで全く同じ問題が起こっております。産科のお医者さん、小児科のお医者さん、何とかしてくださいよと。そうすると、例えば、そういう産科、小児科と比べて、介護の現場で働く方々、他職種との公平性、公正性をだれがどういう基準で判断するのかという難しい問題もございます。

 ですから、そういう問題をクリアする必要があるだろうということと、先ほど来、午前中、与野党の間でいろいろないい議論がなされておりました、そこで出てきた問題については、やはり一つ一つ答えを出していかないといけないと思います。

 ただ、そういう思いでこの法案を出されたということに対しては、その理想とするところは私は大変敬意を表して受けとめたいと思います。その上で、厚生労働大臣としては、今後とも、もちろん来年の改定ということは、先ほど来議論があるように、当然努力をしてまいりますけれども、何らかの努力ができないか、それは今後とも全力を挙げてあらゆる手段を模索してまいりたいと思います。

山井委員 政府はいつも、民主党の法案に対しては、何か議員立法を出すと、公平性が担保されないと。がん対策法のときも、なぜがんだけなのかということをおっしゃった。この場で一昨年、私が、肝炎患者への医療費助成をしたときも、なぜ肝炎だけなのか、ほかの難病の方に比べて不公平だということをおっしゃった。でも、結果的には、党派を超えてがん対策法も成立し、そしてまさにこの四月一日から肝炎の医療費助成もスタートしたじゃないですか。不公平だ、不公平だと、最初、ほかの病気との整合性をどうとるんだと、私、何回も当時の柳澤大臣から反論を受けましたよ。

 でも、そこは、最終的にはまさに政治家の判断で、困っておられるところから一歩一歩、ほかをほったらかしにするんじゃなくて、できるところからやっていこうという、まさにそれは政治決断。官僚の考えだったら、確かに、こことこことここと公平性を考えたら永遠に何もできないという議論になってしまうかもしれませんが、そこをまさに民意を聞きながら優先順位をつけてやっていく、それが私は政治家の存在意義だと思います。

 そして、まさに今回、十五万人分の署名が来ている。私の聞くところでは、まだこの署名は続いていて、もう山のような署名が全国から今上がってきているわけです。これは本当に、このままいけば、日本の老後というのは成り立っていかない、介護保険が崩壊してしまうと思います。

 かつ、今、産科のこととかもおっしゃいました。だからこそ、私は言っているんですよ。ほかの予算を回す前に、介護保険の給付費が、本来介護に使うべき国費が、二年前は四百九十七億円、そして昨年は八百九十一億円も残っている。そして、その裏には、介護予防などの名のもとによって、あるいは包括払いという名のもとによって、使いたくても使えなくなった、抑制がかかった、そして介護職員の賃金も低く引き下げられているという現場の悲鳴が隠されているわけですよ。その現場の悲鳴があるにもかかわらず、これだけのお金が残っている。それを介護職員の賃上げに使うというのは私は当然だと思っております。

 このことに関しては、一月二十二日、公明党の太田代表も、介護職員の待遇改善が必要だということで福田総理にも質問、要望をされておられましたから、まさに党派を超えた悲願であると思っております。

 少しそのことに関連して、介護予防に話を移します。

 私は、舛添大臣にぜひお聞きしたいことがございます。きょうの資料、多いんですが、先ほど福島議員の質問にもございましたが、介護予防に効果があるのかどうか、筋トレというのはどれだけ効果があるのかどうかというのが、三年前、この厚生労働委員会で大議論になりました。そして、そのとき、最大のみんなの関心は、介護予防、新予防給付になって、介護予防という名前はいいけれども、まさかサービスがカットされるんじゃないんでしょうねと。それがこの厚生労働委員会の最大の関心だったんです。

 この四ページ、五ページの議事録を見てください。そういう中で、私が尾辻大臣に、では、新予防給付、介護予防に移る典型的なお年寄りの家をぜひホームヘルパーさんと一緒に訪問してきてください、そして、その方が、介護保険改正になって新予防給付になったらどういうサービスが受けられるのかというのを教えてくださいということを申し上げましたら、当時の尾辻大臣が、品川区のお二人のおひとり暮らしの御高齢の方の家に行ってくださったわけですね。

 そこで、私は尾辻大臣に聞きました。五ページ、ここに線が引いてございますが、この二人の方は、「介護保険改正になると新予防給付の対象になるわけですが、どういうサービスを受けられるようになりますか。」それに対する答弁、尾辻大臣は、「私も帰りに、現場にいろいろな人が行っておりましたから聞いたのですが、きょう受けておられるサービス、これが今度変化するのかと聞きましたら、一言で言うと、いや、変化はしません、だからこのサービスはこのまま受けていただけるはずであります、」と答弁をしております。そして、「私が見せていただいたというのは、極めて適切なサービスが行われている、それであれば今度の見直しで変える必要があるものではない、」と明確に答弁をされております。

 私は信じられなかったので改めて聞きました、「今おっしゃったようにケアプランが適切に今までから立てられているというようなケースにおいては、新予防給付になってもサービスは基本的には変わらないということですか。」と。尾辻大臣はこう答えておられます。

茂木委員長 六ページですね。

山井委員 はい、六ページです。「先ほど申し上げたような私が見せていただいたサービスというのはまさにそのとおりでありますから、何も変化するものではない、こういうことでございます。」と。しつこく私は聞いています。「国会審議の中で私が大臣にホームヘルプの現状を見てきてくれとお願いした以上は、今の日本の現状の象徴的あるいは代表的なところを当然見に行ってもらったというふうに私は理解をしておりますが、ということは、日本全国のそういう今適正に行われている部分は新予防給付で変わらないと理解してよろしいですね。」と。そうしたら、大臣は、「今まで適切なサービスが行われてきたものが変化するものではない、」と答弁されました。

 次の七ページをお願いします。

 ですから、この介護保険改正の審議の最後のときに、民主党は政府と確認答弁というのをしまして、新予防給付になっても家事援助は一律にカットされることはない、一部の不適正なサービスの適正化を目指すものである、こういう確認答弁までしたわけです。

 にもかかわらず、舛添大臣、八ページを見てください、二年たって、私、聞いてびっくりしました。そのお二人の方のサービスはどうなったんですかと聞きましたら、八ページに書いたように、二人とも、訪問介護が二時間受けられていたのが一・五時間に減らされている。一人の方は介護用ベッドを取り上げられている。

 舛添大臣、私が何を言いたいかというのは、国会で約束したことと違うことになっているということなんですよ。舛添大臣、国会でこういう議論をして、サービスは減らさない、そしてこの二人の方のサービスは変化させないと約束しておきながら、二年たったらサービスが減ってしまっていました。こんなことはやはりおかしいでしょう。大臣、こういう問題についていかが思われますか。

舛添国務大臣 これは、その今のお二人のおばあちゃんというか御高齢の女性の実態をよく私は精査してからでないと答えられないと思うのは、単に、一回二時間が一・五時間になったんですか、そのときに、本当にその女性が必要なサービスをカットしたのならば問題です。しかし、例えば、私は、この要支援にしてもそうなんですけれども、やはり自分で自立してできることはやってもらう、それの方が本人にとっていいと思うんです。何もかも、例えば、手足が動くのに至れり尽くせりで何にもしないということではなくて、若干家事をする、体を動かす、そういうことは決して本人にとっても悪いことではありません。

 ですから、そういう形で、今までは自分の体を動かさないでやっていた、しかし、ちょっと少しのお掃除ぐらい自分でできるでしょうというようなことでやって減ったのであれば、私は問題ないと思いますけれども、そこの細かい、なぜ、どういう理由で減ったのかというのを、単純に何時間減ったからサービスの低下ということは、それは言えませんよ。それは私は責任を持って言えない。その方が自立してやるということであって、その分だけ三十分減ったなら、これはむしろいいことですよ、至れり尽くせりでやられるより。

 だからそれは、これは尾辻さんは行かれたかもしれない、私は、この方々は直接存じ上げていないし、御家庭の中に入って、そういう女性の高齢の方々がどういう生活をなさっているかというのをきちんと判断しないと、今の私の持っている材料では、残念ながらお答えすることは不可能です。

山井委員 私が問題にしているのは、国会の審議、そして確認答弁というのは非常に重いものだということです。それはお年寄りの症状がどうだとか、それだったらわからないと答弁しておいたらいいんですよ。それを、変化しませんという答弁をしたわけですよね。確認答弁の中でも、ごく一部の不適切なケース以外変わらないということで。ですから、私が舛添大臣に申し上げたいのは、こういうことだと、本当にこれは国会審議というのが成り立たなくなりますよということなんですよ。

 ですから、正直言いまして、民主党としては、これはだまされたというふうに思っております。二人の方のサービスは変化しないと言われて、そして理由はいろいろあるでしょう、それはもう言いわけは結構です。変化しないと言ったのに、実際変化した。やはりこういうことに関しては、私たちは、公党に対する約束を厚労省は破ったんだなということで、これは本当に怒り心頭に達しております。非常に残念です。

舛添国務大臣 ケアマネの方がどういうケアマネジメント、プランを出したか、これを私は見てみたいと思います。

 こういうケアマネジメントですよと言ったのにやらなければ、これはサービスの低下です。そうではなくて、これが適切なケアマネジメント、これは尾辻大臣がやるわけじゃないですから、ケアマネジャーがぴしっとこういうケアプランをつくった、それが合理的で適正であって、しかしそのケアマネさんがやったのを無視してカットする、これは問題です、それは違反というか、それは尾辻大臣がおっしゃったことに違反になると思いますけれども、適切なケアマネジメントがあった上でなら私は問題ないと思いますから、そういうところを精査しないと、私は今は答える材料を持っておりません。

山井委員 二言目にはケアマネ、ケアマネとおっしゃるんですが、これはまさにそういう議論をするとわかりにくくなるから、二人の具体的なところを訪問されたわけですよ。当時も、ではすべてケアマネの責任になるのかという議論になるから、では具体的にということを言ったわけです。

 そこで、大臣にお伺いしたいと思います。

 これは、新予防給付になってサービスがカットされた、そして同居者がいるということで、非常に同居要件が厳しくなって、日中独居の方でもサービスがカットされた。あるいは私の知っている方でも、新予防給付になってサービスがカットされて非常に怒り狂っておられたおじいさんが、それからしばらくしてお亡くなりになられたというケースもありました。サービスがカットされて、そして体調が悪化して、あるおばあさんが入院されたというケース。そして、サービスがカットされて、働いておられた息子さんがもう仕事をやめて介護に専念された。介護の社会化という理念に反することが、実際、介護予防という名において行われているわけです。

 そこでお伺いしたいんですが、新予防給付に移行して、そのことによってサービスが減った人、変わっていない人、ふえた人というのは、それぞれ何人中何割か。調査結果をお教えください。

舛添国務大臣 政府委員の指定がないので私が数字を読み上げますけれども、三月三十一日に開催されました介護予防継続的評価分析等検討会では、新予防給付導入前後で介護予防サービスを利用している二千七百四十一名について、このサービス利用回数に関する仮集計を行ったということであります。

 今回は、制度改正前後において、状態が改善されている方、維持されている方、悪化している方について、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防訪問介護のそれぞれの利用回数について集計を行った。

 今のお尋ねの件につきましては、現在、集計を行っているところでありまして、今後、集計結果が取りまとまり次第公表する予定だということであります。

山井委員 この介護予防によってどれだけのサービスがカットされたのか、そのことはぜひ把握をして教えていただきたいと思っております。そのときに、いつも厚労省は、ケアマネの判断だ、あるいは認定が軽くなったからだということをおっしゃっていますが、そういう言いわけは、現場の人たちに対してはそれは通用はしません。現場の方々はサービスがカットされて本当に苦しんでいます。その実情をぜひわかってほしいと思います。

 その一つの大きなポイントが、同居者がいるということで生活援助がカットされた例というのが、ここ二年間続出して、大きな問題になっております。当初の介護の社会化という理念はどこにいったんだ、ひとり暮らしだったら支えてもらえるけれども同居人がいたらサービスが大幅に制限されるのはおかしい、介護保険というのは個人への給付じゃなかったのか、そういう批判が出ております。

 ですから、舛添大臣に申し上げますが、やはりこれは余りにも厳しくし過ぎた、二〇〇五年以前の、改正前のような、そういう規定に、状態に戻すべきだと思っております。この同居において、やむを得ない場合だけ生活援助を利用できるんですが、それがここ二年間で非常に厳しくなってしまって、大変深刻な問題が起こっております。二〇〇五年以前の状況まで戻すべきだと思いますが、舛添大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 私も何度も言っていますように、介護の社会化というのは、家族の介護に頼っちゃいけないということですから、やはり介護はプロに任せましょう、家族は愛情を、こういうスローガンできちんとやっていこうということであります。個々のそういう例があるということを今委員がおっしゃっておりますが、これは実態の調査もしないといけないと思いますが、ただ単に同居家族がいるからということで一律的に、機械的に介護給付の中身を決めるということは、これはそういうことはやっちゃいけないということを、昨年十二月に、この生活援助の取り扱いについて全国に指示を出したところであります。

山井委員 それももう昨年十二月では遅過ぎるわけですよ。二〇〇五年の改正の当初から大問題だと言って指摘して、それに対して全然きっちりできなかったわけですよ、厚生労働省が。それで、昨年の十二月にそういう要件を出したわけですけれども、現場も全然徹底されていません。だから、私は二〇〇五年以前の状況に戻すべきだということを言っているわけであります。

 それで、今回、介護予防の実態調査、結果が出ましたが、ある現場の方は、噴飯物だ、現場でこれだけ介護予防がうまくいっていないのに、厚生労働省は効果ありという調査結果を出している、余りにも現場と違うということをおっしゃっていますし、私も全く同感であります。この調査、もう一回、現場の本当の実態に見合うものにやはり私はやり直すべきではないかというふうに思っております。

 そして、この中で、うまくいっていない自治体が七自治体、そしてみずから立候補した自治体が七十六自治体ですが、この二つでサービスにどれだけの差があるのかという調査の分析もしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 まず、実態を把握することが大切なので、きちんとこれはやっていきたいと思います。

 それから、私はケアマネさんに対して不信を抱いてはおりません。この方たちがきちんとプランを立ててくれることが介護保険の前提となっております。そして、そのケアマネジャーがきちんと立てるに当たっては、それは、かかりつけのお医者さんであるとか看護師さんであるとか、皆さんと協議をして決めるところがあるわけですから、少なくとも私は、ケアマネが悪いからこういうことになった、何もかもケアマネのせいだ、そういうことで申し上げたんじゃなくて、適切なケアマネジメントをそれぞれのケアマネジャーの方がやられているというふうに信じていますし、それはまた今後とも期待したいと思います。

山井委員 時間が来たので終わらせていただきますが、いろいろサービスがカットされた事例で、ケアマネさんが悲鳴を上げて市町村に行く。そうしたら、都道府県に言ってくれと。都道府県は厚労省に聞いてくれと。私も厚労省に言ったら、ケアマネが悪いと。いつもケアマネ、ケアマネと言われて、サービスカットは全部ケアマネが悪いことをしたということになってしまうんです。そこが大問題なわけです。

 最後になりますが、やはりこの介護職員の待遇改善は待ったなしです。先送りは許されません。ねじれ国会ではありますが、やはりこういう緊急性の高い法案については、与野党を超えてしっかりと成立させて、介護職員の待遇をよくしましょうよ。そうしないと、介護現場が崩壊してしまいます。

 医師不足も、私たちは二年前から指摘をしましたが、強行採決で、医師不足ではないといって放置してここまで来ました。今回、この民主党の法案、可決しなかったら、また同じように手おくれになってしまいます。

 最後のお願いになりますが、与党の皆さんにおかれましてはぜひ賛成をしていただきたいし、そして今何か、採決をしないというような、そんな声も出ておりますけれども、そうじゃなくて、きっちりと採決をして、年金保険料流用禁止法案もまだ採決をされておりませんけれども、自分たちが反対しづらい法案は採決もせずにうやむやに放置してつぶすなんていう、そういう失礼なことは絶対にしてほしくない、そういうことはされないと私は信じておりますので、ぜひとも採決をして、可決して、成立をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 引き続きまして、私も、今般の介護保険法の一部改正案についての質問を続けさせていただきたいと思います。

 午前中も、私も民主党案の法案の審議でも言わせていただきましたけれども、今のこの介護保険そのものの現状認識というものは、やはり我々は危機的な状況にあるという認識を持たなければいけないのではないかというふうに思っております。

 したがって、そういう状況の中で、ほかの制度との比較等々という形よりも、この介護保険制度が本当に機能しているのかどうか。そして、先ほど来大臣も、今、調査をさせます、いたします、しているところですという御発言もありましたし、現にそれはやっていただいているわけでございますけれども、しかしながら、それが出てくるまでが何か遅いのではないのかなと私は思っておるんですね。三年前の改正のときに、もう既に次の改正に向けての準備もしておかなければいけないわけですし、それがここに来て、また直前になって、はい、調査をすると。

 先ほど、同居者がいることによって家事援助が切られているという山井委員からの指摘に対して、大臣は、いや、昨年の十二月にそれを指示していますというふうにおっしゃいました。しかしながら、私もそれを通知という形で見させていただきましたけれども、であれば、それは、今までの方策がいわば誤っていた、あるいはそれが徹底されていなかった、あるいは都道府県ごとによってその解釈がいろいろあって、そして対応が違っていた、だからこそ、そのような声が上がってきたということなんですね。

 したがって、それを通知したからそれでいいということではなくて、もっと早くその状況を把握していただいたならば、きちっとそれを政省令なりに落とし込んで、それを一斉に周知徹底させる、ガイドラインをつくって、あるいは全国課長会議でもその旨を徹底させるという動きもあってよかったのかなというふうに私は思っているんですね。したがって、対応策を打ったから、あとはまた、よきに計らえ、あるいは各都道府県で判断してくれというだけでは私は少し弱いというふうに感じております。

 これから、現状についても少し御質問をさせていただきながら、私なりに今回のこの問題点を探っていきたいというふうに思っております。

 政府の法案は、いわゆるコムスン問題に端を発して、さまざまな不正を働いた事業者に対するいわばペナルティーをどのように科していけばいいのか、あるいは防止策をしていったらいいのか、そして、それによってサービスの確保をどのようにしていったらいいのかというところも視点であろうというふうに思っております。

 まず、この点をひもとく上において、今の介護保険制度の状況でございますけれども、先ほども少し私も触れさせていただきましたが、介護保険料の推移はどのようになっているかというと、これは恐らく答弁をしていただけるというふうに思っておりますけれども、第一期と第二期と第三期、これによって少しずつやはり負担料がふえてきたというふうに私は認識をいたしております。

 したがって、今現在、ここの時点から、では介護報酬を引き上げますよと今の制度の中で考えると、どうしてもこれを保険料に転嫁せざるを得ないという状況につながってしまうというところのいわば悩みを、やはりここで一つ考えておかなければいけないというふうに思うんです。

 そこで、政府委員の方で、きょう来ていただいておりますけれども、局長にお答えをいただければと思うんですが、この間の保険料は自己負担としてどのような形になってきたか、教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 介護保険料のいわゆる第一号被保険者の保険料のお尋ねかと思いますけれども、制度のスタートのとき、いわゆる第一期でございますけれども、平成十二年から平成十四年までの保険料は二千九百十一円が全国平均でございました。

 それからその後、高齢化の影響もございますので、平成十五年から十七年度までの第二期でございますけれども、月額が三千二百九十三円というふうな形で、全体としては引き上がっております。

 さらにその後、平成十八年度から二十年度までの第三期でございますが、月額平均で四千九十円ということでございます。

園田(康)委員 今お聞きいただいたように、二千九百十一円から四千九十円まで、しかもこれは、地域によってはもっとさらに高いところもある。これは全国平均の数値でありますので、もう既に四千円を大きく超えているという状況になってきているわけでございますね。

 そうすると、これがいわゆる負担という形でのしかかってきているわけでありますので、さて、それ以上に年金生活者に対してもまたこれを、これは一号保険料ですからまあいいとしても、保険料をこのまま引き上げていくという状況で推移していいのかということはここで一つ考えておいていただきたい。

 先ほど大臣も、介護の社会化、みんなで負担をする、それはもう税であれ保険であれというような言い方をされたわけであります。将来的にはまたさらに、今の現行制度でいくと、保険料と公費負担という形でのやりくりしかもう道はないよというふうに、今の制度を前提と置きますと、そのような答えしか返ってこないわけでありますけれども、社会保障全体の見直しからすると、さらなる別の道はないのかということも一つ探っておかなければいけない。

 そこで、大臣は先ほど、来年度には介護報酬を引き上げたいというふうにおっしゃったわけでございますけれども、過去二年の引き下げ、介護報酬は引き下げの改定が行われています。この二度の引き下げは、一体何を政策的に目的とされ、それでどのような効果というものが見込まれたのか、そして、それが実際にどういう形としてあらわれてきたのかということは、大臣、どのようにお考えでしょうか。

阿曽沼政府参考人 介護報酬の改定でございますが、平成十二年にスタートいたしまして、その後、平成十五年に改定を行いまして、前回の改定は十八年の改定ということで、御指摘のように、十五年の改定では二・三%、それから十八年の改定では〇・五%というふうなことでございます。

 これまでの介護報酬改定でございますけれども、平成十五年の改定におきましては、在宅サービスの重点的な評価、あるいはサービスの質の向上に重点を置いたさまざまな加算の創設などを行っておりますし、また、十八年の改定におきましては、中重度者への支援強化、それからリハビリテーションの推進、あるいは認知症への対応といったことをやってきております。

 もちろん、それぞれ、これらの改定を実施するに当たりましては、介護事業者の経営実態というのを調べまして、収支の状況を十分精査した上でそのような改定が行われたということでございます。

園田(康)委員 そうすると、十五年の改定のときには二・三%、十八年のときは、二〇〇六年、〇・五%。しかしながら、この前年の改定を含めると、十八年は二・四%が引き下がっていたわけでございますね。そういう形からすると、もう既に十分これによって、今局長は事業者の状況なども加味しながらというふうにおっしゃっていただいたわけでありますけれども、では、今の現状で事業者がそれによって困っていないのか、減収になっていないのかということはどのように見ていらっしゃいますか。

阿曽沼政府参考人 その点につきましては、現在、介護事業者の経営実態の調査というのを実施いたしております。概況の調査につきましては、この四月からあるいは五月ぐらいにかけて取りまとめができるのではないかと思っておりますが、詳細調査はもう少し、九月以降になりますけれども、今、現実のそれぞれのサービス種別の事業者の経営の実態をつかんでいる、そういうことでございます。

園田(康)委員 そういう状況で、やはりこれは、二〇〇三年、十五年のときにもう既に改定をして引き下げていたわけでありますね。そうなってくると、当然ながらその影響というものはその時点でわかっているか、あるいはそれが予想されて、何らかの手だてをその時点で打っておかなければいけなかったのではないでしょうか。私はそのように思っている。

 つい最近、この十八年改定になってから、事業者側からさまざまなことが言われて初めて、では、ことしになって、この四月から調査をし始めたということですね。そうですよね。ことしの十月ぐらい、先ほどは九月というふうに私は聞いていたような気がするんですけれども、ことしの秋口にその調査結果が出てくるという形の、いわばもうこれは二年、三年、いわゆる一つ一つおくれてしまっている状況になる。

 何か大変、事業収入あるいはそういった事業者からの声、あるいは利用者からの声、そういったものが上がってこないとそのようなことを調査することができない、実態把握をすることができないということでは、今後、では大臣、来年介護報酬を引き上げるというふうに言って、まあ引き上げる分にはいいのかもしれませんけれども、今度は利用者側の保険料の負担がふえてきてしまうという形になる。このいわば矛盾を、スパイラルをどこかで打開していかなければいけないのではないかというふうに私は考えているんです。

 そこで、いわゆるこの介護保険制度の抜本改革というものを、制度を根幹から、公費負担の見直しも含めてする必要があるのではないかというふうに考えているんですが、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは二、三時間いただければ、根本的な制度設計から幾らでも議論をいたしますけれども、まず、三年に一遍、今の現行制度は見直すということになっています、法律上。それで、私は独裁者でも何でもないですから、それを私がこう決めるということで決めるわけではありません、民主主義の国家ですから。それで、社会保障審議会で介護給付の分科会があります。そこで専門家の方々があらゆるデータに基づいてどうするかということを議論する。それでサービス提供者の側のデータもとります、ないといけないです。それからサービスを受ける側のデータもとらないといけない。

 そういう中で議論をしているんですが、私が厚生労働大臣として一番気を配らないといけないのは、この介護保険という制度をよりいいものに改善しながら持続可能なものにしていく。これは医療保険もそうです、年金もそうです。社会保障制度というのは、英語で言うとサステーナブルといって、維持可能なものでなければいけない、その維持可能なものであるためには、財源論もきちんとやらないといけないと思います。

 ですから、抜本的な改革というときに、私も、この介護保険を入れるとき、全額消費税方式でやったらどうかなということも考えました。しかし、それぞれに、税方式もプラスマイナスあります。今までが措置制度で、特養なんか、お上が恵んであげて、あんたを助けてあげているんだよ、これはやめた方がいい。二千円でも三千円でも保険料を払うことで、私はこれは権利であるということでやっていく。自助、共助、公助、こういう仕組みの社会保障であって、私は、実を言うと、ここまでうまくいくのかなと思っておりました。

 むしろ、八年たちました、だけれども、新しい制度にしてはよくいった方だというふうに思っています。問題があることはわかっていますよ。いろいろそれは改善努力します。だから、八年でよく定着したな。なかった方がよかったか、あった方がよかったかというと、私はあった方がよかった。

 私の母親のときにあったらどんなに苦労しなかっただろうというふうに思うとともに、では、例えば社会保障制度の一つの財源論として、消費税でやるということになれば、おられなくなったけれども先ほど三井委員がおっしゃった、北欧はいいよと、二五%です、消費税二五%払って、皆さんよろしいですか。ですから、国民の皆さんがそうおっしゃってくれるなら、ほぼ完璧な制度ができます。

 だから、できるだけ財源の負担ということも考えて、個々の皆さん方の負担をなくしながら、そのためには、効率化、無駄を省く、不正をきちんと抑えていく、そういう目配りも必要なので、私は、そういう総合的な努力の中でこの制度が維持可能なものとしてさらにいいものになっていくということが必要だと思います。

 そして、今度改定がありますから、二度の改定はそれぞれ理由があって、専門家の皆さん方がかくかくしかじかの理由でこの報酬を引き下げたということでありますけれども、私はまだ就任して七、八カ月しかたちませんけれども、今の現状をよく見ていますから、これはきちんと処遇をよくしなければ介護の現場が大変なことになっている、そういう思いで、皆さん方は法案を出される、私は厚生労働大臣として法律で決められた自分の権限に従って、また一政治家としてできるだけのリーダーシップを図り、さまざまな手があると思います、今の現状を打開するにはさまざまな手があると思いますから、そういう努力を引き続き行うということを改めて申し上げておきたいと思います。

園田(康)委員 大臣のお立場でこれから頑張っていくというお声だったというふうに思います。

 私はそれなりに大臣のその姿勢というものは評価をさせていただいているわけでありますけれども、何せこの国会の中の議論がきちっとまだ、ねじれ国会、衆議院と参議院とではまた違う状況もあるというところもありますし、また、衆議院の中では私どもは今のところは野党というところでありますので、もっともっと提言なりをして、それが何らかの形で成立を期すというような状況をどのようにつくっていったらいいのかなというのは少し、これからまたさらに考えていきたいなというふうに思っております。

 しかしながら、今般提出をさせていただいている私どもからの民主党案というものは、先ほどサステーナブルというふうにおっしゃいましたけれども、持続可能、全くそのとおりでありまして、我々国民からすれば、将来において、本当にそういう安心して任せられる制度設計というものが念頭にあるのとないのとでは、やはり税の払い方、保険料の払い方というものも随分違ってくるんだろう。

 もう完全に年金制度、今、大分御苦労されていらっしゃいますけれども、年金制度も、当初の理念というのは、自分たちで払っている保険料が、今は賦課方式でありますけれども、その当時は、最初のスタートそのものは積立方式で、積み立てていったものが自然と自分の老後を支える糧になるというところの期待から、皆さんはこの年金制度に加入をして保険料を払ってきたということだったんですね。

 したがって、この介護保険制度も、介護の社会化という形で、最初おっしゃったような税のあり方というものが念頭にあった、その議論の中にはあったと。私もその議論を一市民として、国民として拝見させていただいたわけでありますけれども、なかなか税金をそのまま、すぐさま全国の国民の皆さんに課すということもこれ難ありというところから、今の保険の、四十歳以上というところでの制度設計という形になった。これはまだまだ、私から言わせれば過渡的なものなのかなというふうに一応は念頭に置いています。さらに進化をさせた介護保険制度というものが見えてくるのではないか。

 したがって、今、いろいろな調査をこれからもされるということでありますし、また、三年前の介護予防の関係もなかなか、私は現場を見させていただきながら、果たしてこれが本当に、ああいったマシンを使うことがそんなに有益なものなのかなというような懐疑的なところもやはりありました、正直に言って。したがって、その効果というものをやはりきちっと見させていただきながら、そのエビデンスの蓄積というものを持って、これからの介護保険制度が本当に有益なものであるのか、その中の介護予防という考え方が有益なものであるのかということは、やはり順次見直しをしていく必要がある。

 そこで、ちょっと数字的にお伺いをしたいんですが、この間、介護予防に関する調査をされていらっしゃる、先ほど山井委員からの御指摘にもあったわけでありますけれども、この間のその予算立てというものはどのようになっていましたでしょうか。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

阿曽沼政府参考人 先ほど御説明をいたしたかと思いますけれども、三月三十一日に介護予防サービスの効果分析について仮集計を行って、委員会の方に御説明をしたところでございます。

 介護予防継続的評価分析等検討会におきましては、特定高齢者や要支援一に相当する人につきまして、人数と特定の状態であった期間を掛け合わせて算出した指標でございます人月という単位で見ますと、施策の導入前後で状態が悪化した人の人月の割合は減少するということでございました。

 これについては、さらに検討会として分析を続けて、効果の定量的な評価を行う、また、介護予防施策の費用対効果の分析、属性ごと、サービスごとの評価についても検討するということでございます。

 経費の面でございますけれども、平成二十年度予算におきましては、市町村において高齢者の心身の状態や活動状況等の聞き取り調査を実施するための経費として、これはまさに継続的評価分析支援事業でございますけれども、四億円。それから、市町村から報告された高齢者の心身の状態あるいは活動状況等のデータを介護予防継続的評価分析等検討会において分析、検討するための経費、あるいは介護予防評価分析システムのメンテナンスに係る経費として約二千七百万円を計上いたしております。それからあと、活動状況のデータを専門家の詳細な分析を行うための研究事業経費として一部支出をしているということでございます。

園田(康)委員 私もいただいて、その予算の内容を見させていただいております。

 ただ、きょうは余り細かく言うつもりはないんですけれども、十八年度のこの介護予防の効果の分析に係る経費で、十八年度も予算額は四億円でしたよね、市町村に対する補助率。二十年度も四億円で、毎年毎年四億円ずつが経費としてかけられているということでございます。

 不思議なのが、ちょっとだけ教えてください。十八年度の予算額は四億円、これは七十六市町村に手を挙げて行っていただいているわけでありますけれども、二十年度は八十三市町村で四億円。額は変わらない、でも市町村の数はふえている。となると、各市町村に対する配分が減っているということですか。

阿曽沼政府参考人 失礼しました。

 今の御指摘は予算の額の変遷でお話をされていると思いますが、実際には、各年度四億円、四億円、四億円と一応見込みで計上しておりますが、現実には、平成十八年度のケースで申し上げますと、スタートする時期が例えば平成十九年一月だったりしたことでございますので、実績として確定いたしておりますのは一億一千八百万円、それから平成十九年度で申しますと三億九千万円ぐらいでございます。

 そういう意味で、実際の支出した金額は違っております。

園田(康)委員 ありがとうございます。納得いたしました。

 すなわち、予算は四億円だけれども、実際の経費はそれ以下で、余っているというか、使っていないということだったんですね。そういうことだろうと思います。

 そうすると、先ほど山井委員の御指摘で、これが余剰金になるのかどうかという議論がございました。私も、実はそれと同じような観点から、別の資料として厚生労働省に予算の内容の資料要求をさせていただきました。

 私の資料でいくと、例えば平成十七年度は、当初予算は五兆九千九百六十八億円、それに対して実績が五兆七千九百四十三億円、そうすると差し引き二千二十五億円なんですね。これは数字として合っていますでしょうか。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のように、平成十七年度の介護の給付費でございますが、御指摘があったように、予算額は五兆九千九百六十八億円でございます。それで実績額は五兆七千九百四十三億円ということで、間違いございません。

園田(康)委員 そうしますと、二千二十五億円という金額が、当初予算に比べたら実績としては使われていないというお金としてあるわけですね。この二千二十五億円はどのように処理されたんでしょうか。

阿曽沼政府参考人 この点については、先ほど舛添大臣が山井先生の御質問にお答えしたとおりでございますけれども、国側の負担をします介護給付費の負担金でございますが、これは義務的な経費でございます。したがって、かかった経費に対して一定割合を補助するということでございます。

 それで、当該年度の介護給付費の見込み額に基づいて算出した予算を予算に計上いたしますが、当該年度に交付されますけれども、次の年度に介護給付費の実績額が確定した段階で、既に交付されている額と確定した介護給付費の実績額に基づいて算定した額とを精算するという取り扱いになっております。まさに義務的経費ですから、かかった経費の一定割合を負担するということでございますので、そういう会計上の整理をいたしております。

 したがって、十七年度の介護給付費の予算額と実績額の差、今おっしゃいました二千二十五億のうち、国の場合は国庫負担が一定割合つくわけでございますけれども、その差額につきましては、平成十八年度、次年度において国庫に返還されているということでございます。

園田(康)委員 つまり、余ったお金は次年度に振りかえられる、繰り越されて入れられるという形になるわけですね、なるわけなんです。いや、そういうことですよ、今おっしゃっていただいたのは。

茂木委員長 いや、国庫に戻すという話じゃなかったの。

園田(康)委員 だから、国庫の中に入るということですよね。したがって、次年度の国庫の中に入って、その中でまた十八年度の介護給付費の予算の中に繰り入れられるということなんです。

舛添国務大臣 ちょっと予算の仕組みを僣越ながら御説明させていただきます。

 今年度、介護の給付費が幾らになるか、やってみないとわかりません。だから、前の年でこうして大体六兆円かかるなという見積もりでやります。そうすると、細かい数字じゃなくて、私の覚えているところだと、大体四分の一ぐらいが、要するに義務的に国が払わないといけない。だから、丸い数字でいうと、四兆円かかったら一兆円は出さないといけない。だけれども、五兆円かかるなと思って見積もりをやっています。それで一兆二千五百億円というのをやったんですけれども、計算してみたら四兆円しかかかっていなかった。

 そうすると、これは当然国庫に戻さないといけないお金ですから、戻します。その戻すときに、これは介護のためのお金ですとか、これは何のためのお金ですと色をつけているわけじゃなくて、義務的経費ですから、国庫に全く色をつけなくてそのまま戻す。そして、その戻ったお金をどういうふうに来年度使うかは、まさに国会審議を経て予算全体の中で取り扱うということですから、これは、剰余金でもなければ、介護に使われるための色がついたお金でもない、そういう仕組みであるということを御理解いただきたいと思います。

 そこで、私が申し上げたのは、しからば介護労働者の賃金を上げるためにどうすればいいかというのは、政策的な経費として予算に計上する以外は予算構造上は無理なんです。したがって、そういう道以外に何かないだろうかということで懸命に私は検討しているということでございます。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 ごめんなさい、私の表現の仕方がちょっと誤っていて、委員長を初めほかの委員の皆様にも少し御心配をおかけいたしましたけれども、私も同じ考えでいました。

 ただし、それが必然的に、この介護制度については同じく予算立てをしていきますので、先ほど局長は相殺というふうにおっしゃっていただいたので、必然的に次の介護保険の義務的な経費の中に相殺をして組み入れられていくという形になるんだなというふうに理解はさせていただいています。

 そこで、今、大臣がくしくもおっしゃっていただいた、義務的経費ではなくて政策的経費としての人材確保策はないだろうかというところで、その政策的な経費を捻出するための根拠法となるのが私ども民主党の介護人材確保法という形になるのではないかというふうに思うんです。

 この点は、一つの政策的な経費を来年度以降つくるために、来年度といっても、私どもは本当は今年度からやりたかったんですね、今年度から政策的な経費として、単年度でいくならば総額約九百億円ぐらいの経費を使って人材確保をしていこうではないかということを思って、この国会に提出をさせていただいたところでございます。

 したがって、この辺は、大臣の立場からいくと、現状はそういう法律もなければ何ら根拠となる支出ができませんので、そういった意味では、何か手だてを考えておられるということで、我々国会としては、ではそれを手助けするための根拠法となるものをきちっと政策的な部分で提起していく必要があるのではないかというところで民主党から提案をさせていただいているので、その点はぜひとも与党の皆さんも、与野党を問わず御理解をいただきたいというふうに思っておるところでございます。

 さて、今回の政府から提出していただいているこの法案について、私からも若干確認をさせていただきたい部分がございます。

 まず、いわゆるコムスン事件をきっかけとして今般の改正が行われたわけでございますけれども、介護サービス事業者に対する業務管理体制の整備の義務づけ、そして事業者の本部等に対する立入検査権の創設、あるいは処分逃れ等々、あるいは連座制における指定更新の欠格事由の見直しというような形で幾つかの柱があるわけでございますけれども、これはもう中小零細限らずすべての事業者に適用されるものであろうというふうに思っております。

 そしてさらに、午前中の審議の中でも確認はされていらっしゃいましたけれども、業務管理体制の整備の義務づけに関しては、この業務管理体制のそういった人員をしっかりと配置していくという形になっていくわけでありますけれども、恐らくこれは、小さな事業者に対してそういった管理体制の義務づけを、またさらに一人の責任者をそこでつけていくとなると、やはり相当な負担になっていくのではないかなという心配があるんですが、その点はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

阿曽沼政府参考人 午前中の質疑にもございましたけれども、今回の改正は、コムスン事件の反省に立ちまして、このような不正事案の発生を防止して、介護事業運営の適正化を図るということでこのような規制のあり方の見直しを行うものでございます。したがいまして、御指摘ございましたように、すべての事業者を対象にするというふうにしたいと思っております。当然のことだと思っております。

 ただ、法令遵守の体制につきましては、当然規模によってかなり違いがございますので、そういう意味では、中小零細という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、非常に厳しい、小さな規模でやっておられる企業にとって、あるいは事業者にとって負担ができるだけ少ないようにしたいと思っておりますし、新たに人を雇って責任者をつけるということではなくて、今いる方の中で責任者を選任していただくというふうなことを考えております。

園田(康)委員 そういう場合だと、資格はどのような資格を有するというふうに、何か特殊な資格あるいは権限をさらに与えられなければいけないという形になるんでしょうか。

阿曽沼政府参考人 特別な資格とか権限とかということを、特に特別な資格を持たなきゃならないということを考えているのではございません。

 午前中の質疑でもございましたけれども、業界としても法令遵守については自主的に取り組むという姿勢は示しておられますので、業界の中でいろいろな研修とかそういうことをやられると思います。そういう意味では、そういうところに当然参加されることがあろうかと思いますが、私ども、法律上、法令上の義務づけとして一定の資格を求めるということは考えておりません。

園田(康)委員 そうすると、その資格に関しては期限というものはないんだというふうに考えて、最初にその方を指定すればそのままずっといくということになるんでしょうか。

阿曽沼政府参考人 その事業体の中で法令遵守の責任者を定めていただくということが大変重要なわけでございまして、そういう意味では、一定の期限があるというものではございません。

 ちなみに、十未満の事業所でやっているところというのは大変多うございまして、小規模な事業者が大変多いわけでございますから、そういう意味で、その小規模な事業者の場合には、だれか、その従業員の中の一人、その企業というか事業者の中で一人責任者を定めていただくということでございます。

園田(康)委員 小規模の事業者と先ほどから局長はおっしゃっているんですが、大臣、例えば一事業所に対して何人の人数がいるかとか、そういう調査も実はされていらっしゃらないんですね。全体の中のどれだけの数がそういった小規模な事業者であるのかということを今調査をしているところで、その実態そのものがまだ把握し切れていない状況があるというのが今の現状なんですね。したがって、どれだけの事業者がどういう形態で今運営をしているのかということは、やはりその責任のある国がしっかりと認識をしていなければいけないというふうに私は思っております。

 したがって、机上だけのそういったもので、はい、ではこういった責任者をつければいいんだ、そのように選定をするということをやればいい、あるいはそれを業界の中でやればいいというだけの話ではない。やはり、ちゃんとその実態を把握した上で、どのような形で、さまざまなそういう検査体制をやったときに、どのような効果、それからそれに対する影響というものを一方では考えておかなければいけない。

 前も、ホームページでケアマネの内容を出して、報告をしておかなければいけないとなった途端に、それはもう煩雑なさまざまな事務量がふえてしまって、なかなかちゃんとしたケアマネとしての仕事に従事できないというような状況も出てきてしまったわけですね。そういったところで余り、では書類をそろえていないと、今度は監査に入られたときに、あの書類がそろっていない、この書類がそろっていない、はい、ではこれであなたの資格は取り上げよ、ひどいところにあってはそういう形に至ってしまう。

 したがって、何でもかんでも何かをつければいい、あるいはそれを業者任せにしておけばいいというような形ではない、ちゃんと実態を把握した上での適切な運用を図っていただきたいというふうに私は思うわけでございます。

 それからもう一つ、連座制の適用要件の中で、先ほどの議論の中でも少し触れておりましたけれども、七十条の二項の九号に、著しく不当な行為を規定する、これは岡本委員の指摘にもありましたけれども、この不当な行為と著しく不当な行為というのは、どこで線引きをし、そして具体的にどういう差があるのかというところ、何か事例があれば教えていただきたいんです。

茂木委員長 連座制の話だけでいいですか。前者の、いわゆる小規模事業者の調査についてもですか。(園田(康)委員「それは意見で」と呼ぶ)

阿曽沼政府参考人 連座制の話の御指摘でございますけれども、今の、不正または著しく不当な行為ということでございます。これは、そもそも今回の改正の前からこういう条文があるわけでございまして、今回のコムスンの指定拒否をするということで発動した条文でございます。

 まさに、通常でありますと指定取り消しに、各号に列記がございまして、その一定の、例えば人員基準に違反するとか不正請求であるとか、そういった場合に、明確に書いてある事項に違反すれば指定取り消しをするということでございますが、それのいずれにも当たらなくて、本来ならば指定取り消しに相当するんだけれどもたまたま全部の各号列記に当たらない、最後の、バスケットクローズと呼んでおりますけれども、やはり不正であり著しく不当なんだけれどもどうしても処分ができなかったような場合に発動するという、かなり不測の事例について適用した規定でございます。

 有識者会議でもいろいろ議論がございましたけれども、やはり不測の事態に対応するものとしては、今回そういう意味ではいろいろな処分逃れの対策とか悪質な場合、組織の関与の場合どうするかとか、かなりきめ細かく対応したつもりでございますけれども、やはりそれでも不測の事態が生じるかもしれないから、この規定自体はこういうふうに置いておいたらどうかということもございましたので、こういう形にしております。

 そういう意味では、これから具体的な事例が出てきて積み重ねていけば、またお話ができる状態になるのではないかというふうに思っております。

園田(康)委員 そうすると、この条文の文言そのものはまだほかに適用されたものはないということで理解してよろしかったでしょうか。わかりました。

 今回初めて発動されたということでありますけれども、その判断材料が大変微妙な部分が出てくるのかなというふうには思っておりますが、著しくという言い方が、通常の不当な状況を容認するという形につながってしまうということではやはりいけないというふうに私は一方では思っております。

 それからもう一つ、やはり山間僻地、離島、それの対策というものは、この介護保険制度、今の現行の状況の中でも考えておかなければいけないというふうに思っております。そういった山間地域あるいは離島等でサービス事業者がなかなかそこまで手が行き届いていかない、ただでさえ選定されるサービス事業者というものがそういった離島のところまで手を伸ばすことができないとなると、どうしても、そこにいらっしゃる方々、介護を要する方々からすれば、やはり家族介護に頼らざるを得ないという状況になってしまって、本当だったらもっともっとそういったサービス事業者がそこに来て、そしてきちっとしたケアを行うことできる、安心してその保険を受けることができるというふうな制度設計であればいいのかなというふうに思っております。

 一つ聞きますと、地域の特別加算というものが、一五%だったでしょうか、サービス事業者が離島や山間僻地で行う際にさまざまな加算が行われているということでございます。きょう、この質問ではありませんけれども、ぜひ、厚生労働省としては、その地域加算というものをもっともっと、これは大都市でも実は地域加算というのがあって、これから離島や山間僻地、ここでいくと特別な地域加算というものがさらに上乗せをされるという状況でございますので、やはりこの点のさらなる上乗せが私は必要ではないかと。すなわち、サービス事業者は、そういった山間僻地、離島までなかなかやはりケアできていないんですね。ケアできていないところがある。

 何でかというと、離島でいくならば、一つの離れ小島に行く際にも船を使って行かなければいけない。そうすると、そこでまた移動距離が発生して、経費もそこでさらにかかってきてしまう。離島の先とそれから地域でやるサービスと同じサービスをやるにしても、やはり離島に行く際にさらなる経費がかかってしまう。となると、サービス事業者からすれば、ここでさらなる上乗せの部分がないとなかなかそこまで手当てをつけないという状況があるというふうに私は聞いておりますので、この点の見直しのことも一方では考えておかなければいけないのではないかというふうに、これもやはり問題提起だけ申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、私の質問そのものは、今回のこの離島、僻地の場合、事業廃止となった場合に、これによって利用者あるいは介護労働者保護への影響というものがやはり大変懸念をされるわけでございますので、これに対して、ただ単に譲渡先のサービス事業者だけがそれを受け入れればそれでいいんだということではなくて、そこの選定の過程と、そしてその後のことまで含めて、国あるいは都道府県、あるいは場合によっては市町村の支援というものが受けられる、そういう体制がきちっと制度設計の中で組み入れられていなければいけないんではないか、そして、それがいわば義務づけとして本来ならばこの法律の中に位置づけられてしかるべきだったんではないかなというふうに思うんですが、その点はいかがお考えでしょうか。

阿曽沼政府参考人 御指摘のように、僻地、離島の場合のサービス確保というのは大変重要でございます。コムスンのケースでございましても、例えば利尻島の問題とか、あるいは九州の離島の問題がございまして、私どもが一番神経を使ったところの一つでございます。

 したがいまして、そういうところでサービスの継続ができるのには、もちろん地方公共団体、国も含めてセーフティーネットを張れるように最大限の努力をするつもりでございますので、一義的には事業者の責任でございますけれども、当然それは行政がバックアップをするということでございます。

園田(康)委員 一義的には業者の責任、しかしながらバックアップをするということでありますけれども、それをいわば法律上何らかの形で明記をしていただきたかったなというふうに私は思っておるところでございます。

 もう時間が参りますので、あと一問だけ、最後にさせていただきたいと思います。

 この事業譲渡が行われる際のいわば譲渡先の事業者が仮に労働環境において不利益変更をされる場合というのが想定されるのではないか、すなわち、今までもらっていた給料ががくんと下がるケースというのも恐らくこれありというふうに思うわけでございます。そういう心配があるんだということでございます。

 したがって、譲渡先のその事業者がそういった不利益変更や不当労働行為というものを行わないということがきちっとこれから担保されてしかるべきではないかというふうに考えるんですが、その点についての御見解をお聞かせいただきたい。

阿曽沼政府参考人 当然のことだと思います。

 今回のコムスンの譲渡の件におきましても、具体的に申し上げるのはちょっと恐縮なんですが、そういう趣旨の譲渡の条件がございました。これは、法律で一律に制限するというのは難しいと思いますが、実際に私どもとして、労働基準法とか労働関係法令を遵守する義務があるのは当然でございますので、譲渡先となる事業者について、そういう不当労働行為を行うようなことがあってはならないという形で十分指導をしていきたいと思っております。

園田(康)委員 ありがとうございました。しっかりとこの点を踏まえて、今後の運用に生かしていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

茂木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今回の介護保険法、老人福祉法の改正案は、昨年六月のコムスンの不正事案を教訓に、介護サービス事業者の業務管理体制の整備や不正行為を未然に防止するため、国の権限強化、規制強化がその内容となっております。

 業界大手の不正行為は全国に大きな衝撃を与えました。そのきっかけとなった東京都の昨年四月の指導は、コムスンだけではなくニチイ、ジャパンケアサービスと三社に対するものであり、それぞれが介護報酬の一部返還や改善勧告を受けていることは重要だと思います。厚労省の介護保険関係指導結果報告によれば、二〇〇六年三月までに指定取り消し処分を受けた事業所数が四百八十二に上り、その六八%が営利企業であるという状態であります。

 そこで大臣に伺いたいのは、こうした不正事案がなぜ起こったのかということです。午前中の議論の中で、コンプライアンスができていないのだという答弁がございました。私、それは答えではないと思います。それは当たり前のことであって、なぜそれができないのかということを伺いたいのです。

 二〇〇〇年のスタート時には、ともかく量的確保が前提だったとはいえ、営利法人も含め多様な主体の参入を認めたこと、あわせて、事前規制から事後規制へと規制の仕組みを緩和したことが大きな要因であるのではないかと考えますけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 介護の社会化をやるときに、それを担う主体はいろいろな団体であっていいと今でも私は思っております。民間企業が入ってきてもいいし、では、NPO法人だったらだめなのか、社協だったらだめなのか、医療法人だったらだめなのか。

 それぞれの組織すべてがきちんと法令を守って仕事をすることが大切なのでありまして、今回のコムスンは、まさにそういうことをやらなかった企業の体質にあるというふうに思っておりますので、営利企業が参入したからということは、私はこれは全く違うと思っておりまして、これだけの三百五十万人の人たちが介護を受ける、それのサービスの提供を例えば公益的な法人だけでできるのか、社協だけでできるのか。

 私は、ある程度、こういう医療サービス、社会保障サービスにおいても競争があることがすべて悪いことではありません。しかし、それが行き過ぎて、何もかも市場経済原則ということになれば問題ですけれども、国民の視点から見て、介護を受ける立場から見て、その人たちが一番満足できる介護が行われればいいのであります。

 私は、介護保険に入るときに、余りにもひどい、要するにお上的な発想でしか介護をやっていない、これにもう少し民間の発想が入った方がもっとうまくいくんじゃないかという考えを持っております。したがって、NPO法人を含めてあらゆる団体が競い合って、この介護の現場に来ていただいてともに競い合い、そして法令をきちんと守ってよりよい介護の体制をつくる、これが重要だというふうに思っております。

 今回の問題はあくまでコムスンの企業体質にある、そういうふうに思っております。

高橋委員 大臣、私が聞いたのは、営利企業だからだめなのかという質問はしていません。通告のときもきちんとお話をしております。私が読み上げたのは、事前規制から事後規制へと規制の仕組みを緩和したことというふうな指摘をしたわけです。これについてどう思うかと。

 これは別に、二〇〇八年二月六日の介護事業運営の適正化に関する意見、社会保障審議会の意見書の中には出てくる部分なんです。このことをどう受けとめるのかと言っているんです。

舛添国務大臣 私は、今の委員の御質問を誤解していたらそれは申しわけないと思いますけれども、今の事後規制の問題についても、とにかくこれは介護の現場できちんと規制をしていく、事後の規制をしていって是正をしていく、これ自体は間違っていないと思います。

 ただ、今回のような、余り予想もしないような、これほどひどい不正が行われると思っていませんでしたから、そういうことについて事前届け出制というようなことを今度入れよう、まさに改善策を今考えているわけであります。

高橋委員 しかし、図らずも大臣の介護保険に対する考え方が披瀝されたということ自体、私はそのとおり受けとめたいと思っております。

 最初に通告したときに言ってあるんです、営利か非営利かをきょうは問わないよと。私は、基本的に、企業というのは利益を追求するのが企業の本質ですから、そのことと公的介護サービスはなかなか合わないのではないかという考えを持っております。ただ、それでイコール悪よという議論をするつもりはないんだと。ただ、それで一緒に規制緩和までしてしまって、今になって次から次と改正をしなくてはいけない、それがどうだったのかということを真剣に受けとめるべきではないかということを指摘したかったわけであります。

 今紹介した意見書の中でも、やはり制度発足時の規制緩和がもたらした弊害を認めています。同時に、今大臣がおっしゃったように、「多様な主体の参入を排除することなく、」という、今の制度の中でやりますよということを言っておりますので、このことも含めて、もっともっと大もとから考え直すときに来ているのではないか。介護保険の市場化、そして公的介護から国の責任が後退してしまったこと、そのことが最大の要因ではないかということを私は指摘したいと思います。

 そこで、私は、コンプライアンスは当然のことだと思っております。同時にこの問題で注目されたのが、介護の人材不足、劣悪な労働条件の問題であります。

 まず伺いますが、介護保険は、言うまでもなく四十歳以上の国民すべてが強制加入であります、公的資金が半分投入されている制度であります。介護労働者はこの公共サービスの担い手であり、処遇のあり方について国が責任を持つのは当然であると考えますが、いかがでしょうか。

阿曽沼政府参考人 介護保険制度は、まさに今おっしゃったような趣旨で、国民のためにあるわけでございます。また、介護保険制度の運営は税金と保険料で賄っているということも事実でございます。ただ、それを前提として、制度上どう組むかというのはいろいろなことがあり得るんだろうと思っております。

高橋委員 その制度上の話をこれから進めていきたいと思っております。

 民主党さんが今、介護人材確保法案を提出されております。私は、介護報酬の改定を待たずに緊急に引き上げたいという趣旨、それから、そのことが利用者の負担に連動しないために全額国庫負担でという考え方に賛同したいと思います。

 我が党も、昨年十二月に、介護だけではなく障害者の分も、「国民の願う高齢者介護・障害者福祉の実現を 深刻な人材不足を打開するための緊急提言」を発表しております。ここでは五割という考え方はなくて、基本的に、指定要件を満たせば、その範囲ですべての方たちに三万円くらいの賃上げをしたいものだという形で提案をさせていただいております。ですから、いずれの場合も、今の負担に連動しない仕組みでの賃上げを急いでやるということでは一致して頑張っていきたいと思っているわけであります。

 そこで、一点だけ伺いますが、介護の人材不足の背景には〇五年の介護保険改正が影響していると考えますが、民主党としては、この〇五年改正の影響をどう評価しているのか伺います。

山井議員 高橋議員、御質問ありがとうございます。また、我が党の法案に賛意を表していただきまして、ありがとうございます。

 私は、今の人材不足は、大きく分けて二つ原因があると思います。一つは改正介護保険制度の問題、そしてもう一つが、やはり介護報酬の二回連続の引き下げであると思っております。

 やはり先ほども言いましたように、確認答弁までした介護予防についてのことが、実際は、国会で審議したのと違う結果に大きくなっているということ。同居要件についてもそうであります。そういうことで、介護の社会化という理念が二〇〇五年の改正で大きく後退した。また、それに追い打ちをかけるように介護報酬も下がった。やはりこの二点が介護の人材不足を非常に決定づけたというふうに思っております。

 以上です。

高橋委員 先ほどの山井委員の質疑を聞いておりましたけれども、国会の答弁が変更ないといったことが賛成の根拠になったのかもしれませんけれども、やはりあの時点で最後まで反対を貫いていただきたかった、私はそのことをあえて言わせていただきます。ただ、現在における基本的な認識は一致しているであろうと受けとめさせていただきます。

 そこで、私どものところに寄せられた声がたくさんあるんですけれども、大臣にも一部紹介させていただきたいと思います。

 介護老人保健施設で働く二十一歳の男性職員です。

 三年目で手取りは月十五万円、それに満たない月もあります。なぜこんなに低いのでしょうか。私は、高校から福祉の専門科に入り、高校卒業時に介護福祉士を取り、就職しました。しかし、昔の私にもし何か伝えることができるのならば、間違いなくこう言います。国に評価されない仕事についても仕方がない、夢をあきらめて違う分野で働け。国は我々をボランティア扱いしているとしか思えません。なぜなら、アルバイトの友人より給料が低い月があるのですから。二年間に男性職員は十人程度やめ、トヨタ系の期間工員やその他の分野に移っていきました。ことしの三月にも三人ほどやめるそうです。

 四十六歳の男性で養護老人ホームに勤めている方。

 ピザの宅配アルバイトと同じ時給で、最低でもヘルパー二級の資格を要し、最悪、老人の死にまで向き合わなければならない仕事なんです。そんな職場に人材が来ると思われますか。八時間以内に仕事が終わったためしもありませんし、残業手当もつきません。くたくたに働いて一日六千四百円にしかなりません。そこから税金や厚生年金、健康保険、介護保険を引かれて幾ら残るんでしょう。現在、私は胃潰瘍とうつ病を患っていますが、病院に行く金も時間もとれません。

 こういう訴えがたくさん寄せられております。

 資料の一枚目を見てください。

 「福祉労働者の給与の推移」と題しておりますけれども、全労働者の平均給与と介護職員の差は非常に大きく、男性の平均三十七万三千円に対し、これも大分格差があるのは承知しておりますけれども、それと比べて、介護職は二十二万七千円です。女性は本当に低く、全体でも二十三万九千円にとどまっておりますが、それと比較しても十九万七千円です。

 グラフを見ていただければわかるように、かすかですけれども全体の労働者の賃金は上がっているのに、介護職は下がっております。グラフに落としているように、〇三年の介護報酬の二・三%引き下げ、〇六年の介護報酬二・四%引き下げという形で、連続した引き下げが影響いたしました。

 二枚目を見てください。

 東京地評ヘルパー労組連絡会が昨年三月に事業所に行った調査で、介護報酬改定による経営への影響。八四%が厳しくなったと答えております。

 大臣に、介護の深刻な人材不足の背景には、介護報酬の連続引き下げが大きな要因になると思っておりますが、考えを伺いたいと思います。

舛添国務大臣 これは、先ほど来申し上げておりますように、社会保障審議会の介護給付の検討会で、三年に一度の改定ということで、専門家の先生方がさまざまなデータでそういう方向を出されたということでありますけれども、そういうことも恐らく影響して、つまり、二回にわたる介護報酬の引き下げということがこういうことに影響している可能性は十分あるというふうに思います。

高橋委員 介護報酬の連続引き下げが影響しているということをお認めになったかと思っております。

 あわせて、やはり先ほど来議論されている制度の改正の影響ということもあると思います。〇五年法改正によって介護予防に軸足がシフトされたことによって、〇三年から〇七年で、要介護一が一二%減る一方、要支援が六%ふえております。

 四月九日付の河北新報では、仙台市内のケアハウスでひとり暮らしの七十歳の女性を紹介しています。

 この方は、昨年まで要介護二から、二段階軽い要支援二に変更されました。先ほど大臣が紹介されたように、頑張ってよくなったのならいいんですけれども、訪問調査でも主治医の意見でも、介護の必要度は高くなったと言われているんです。それなのに説明がなく下げられました。そのために家事援助のサービスが制限され、多発性硬化症という難病を抱え、体がしびれ家事もできないのに、週二回、三時間半あった訪問介護を三十分削り、足を洗ってもらうことすらできなくなった。「ぱっと死ねるならいいけど、介護を人に頼まなければ生きていけない。これから、どうなるのか不安だ。悲しい」という女性の声を紹介しています。

 要介護から要支援に移るということは、介護報酬も下がり、その分、事業所の収入減にもつながります。とりわけ訪問介護の場合はてきめんにそれがあらわれます。しかも、このたびの改正で、一時間以上の生活援助は何分やってもマルメで報酬も変わらないということになりました。利用者にとっても、介護従事者にとっても不幸な制度であります。実態に即して見直すべきと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 実態と分析というときに、私は、先ほど申し上げましたように、この介護保険制度を維持可能なものとしてさらに改善していくためにはどうすればいいかという、全体的、総合的な視点も必要だというふうに思っております。

 ですから、例えば介護の事業所が非常に効率の悪い経営をしたりしていることも、こういうところも是正していかないといけないだろうし、それから介護の要支援であるとか要介護度、こういうランクづけについても不断に必要な見直しをやっていって、最終的に、これをよりよいものとしてさらに発展させる必要はあると思いますから、今委員がおっしゃったようなことも含めて、現状をきちんと分析した上でしかるべき手を打っていきたい。そのために三年に一回の改定があるわけですから、専門家の意見も聞きながら、あらゆるデータを総合して、よりよい制度に改善していく努力は続けていきたいと思います。

高橋委員 今紹介したのは本当の一部で、介護予防による弊害というのはたくさんあるんですけれども、最初に大臣がおっしゃったように、維持可能というのがまず先にありきで、ですから自立なんですよと。言葉は大変いいんですけれども、自立という名で、さっき紹介したように、本当は介護度が重いんだよ、高いんだよという人が要支援に落とし込まれた。そこに原因があるんだということを、検討するというのであればしっかりと受けとめていただきたいと思っております。

 そこで、ヘルパー労働者の皆さんが強く訴えているのは、直行直帰の登録型ヘルパーが圧倒的に多い、この形態を何とかしてほしいということであります。諸団体の運動や先輩議員の国会質問もあって、二〇〇四年の八月二十七日付、基準局長通達が出され、登録型ヘルパーも労働者ということが明確にされました。この通達の趣旨と実際の遵守状況がどうなっているのか伺います。

青木政府参考人 訪問介護労働者の労働条件について、移動時間が労働時間として算定されていないなど、労働時間とかあるいは賃金などにつきまして労働基準法上の問題が認められましたので、訪問介護労働者に対する労働基準関係法令の適用について徹底を図るために、平成十六年八月に通達を発出いたしました。

 現在、それに基づいて指導しておりますけれども、労働基準監督機関が平成十八年に、介護事業を含む社会福祉事業を行う事業場に対しまして、二千八百十八件の監督指導を実施いたしました。そのうち、何らかの労働基準関係法令違反が認められたものは二千二百十二件、違反率七八・五%でございます。

 私どもとしては、引き続きこの通達の内容の周知徹底を図り、的確な監督指導を実施して、介護労働者の法定労働条件の履行確保を図ってまいりたいと思っております。

高橋委員 今簡潔に御報告いただいたわけですけれども、福祉施設ということで、実際は介護の現場に即した調査ではないわけですよね。それでも、全産業に比べるとかなり高いという実態が紹介をされたかと思うんです。

 ヘルパー労働者の皆さんが、この八・二七通達を受けて、一筋の光明を見たという思いがあるわけですよね。移動時間も、ミーティング時間も、待機時間も、本当にちゃんと労働時間として勘案するんだと通達が出してくれた。しかし、現実はちっともそうなっていない、もう何年もたっているけれどもそうなっていないということが、今最大の問題になっているわけです。

 三枚目に、〇六年、介護労働安定センターが調べた「ホームヘルパー(非正社員)の賃金支給状況」というデータがございます。

 移動時間、全部支払っているのが三三・二%、支払っていないのが三四・一%。書類、報告の作成時間も、支払っているのは三一・八%、支払っていないのが三五・五%。待機時間は、支払っているのが二二・六%に対して、四六・一%という方が支払っていないという実態があるわけです。

 さっき話をしたように、報酬が包括になって、介護のサービスが細切れになったわけですね。この話をしたときに職員の方は説明されましたよ、数をこなせばいいと。そうすると、今言っているように移動時間が全然考慮されていないのに、数をこなしたらどうなるか。結局は、事務量はふえるわ、移動はふえるわ、何の手当も出ないただ働きだけがふえる。ますます悪循環になり、担い手がいなくなる、そういう格好になる。そのことをお認めになりますか。

阿曽沼政府参考人 ホームヘルパーの勤務の形態につきましては、それぞれの訪問介護事業所の事業の運営によるものだと思っております。

 それで、今御指摘ございましたように、労働時間の中でも特に待機している時間でありますとか、それから移動する時間について、ちゃんと基準局の方から通達も出ておりますので、私どもとしては、その期間について当然、本人の意によらない場合にはちゃんと賃金を払うようにという形で指導しておりますし、現実に介護を受ける方々が困らない形で事業が運営されることを念頭に置いて今後も指導していきたいというふうに思っております。

高橋委員 まず、そのことは確認します。

 問題は、指導を強めるだけで、それがすべて介護事業者の責任にされてしまうと、介護報酬が上がらないのにその中でとにかく遵守をとなると、事業所がつぶれてしまうということなわけです。

 昨年、十一万枚の折り込み広告を打っても一人も応募者がなかったと訴えている都内のNPO法人の男性。

 介護保険が始まって八年、働きがいと希望を持って登録したヘルパーの八割が転職または退職されました。一日六回から七回ケアに入っても、月二十万円を超えるのはごくまれです。人件費比率は九〇%に近く、賃金を公務員並みにと考え、実行しようとすれば、たちどころに事業所も法人も崩壊してしまう財政状況と訴えています。

 ですから、こういう形で、せっかく私たちの、ヘルパーの報酬を上げなくちゃねという議論になってきているけれども、それで事業所がもたないというのでは困るわけです。そのこともしっかり評価をしていただく。その点では、やはりヘルパーの仕事そのものをきちんと評価することではないか。福祉人材確保指針の中で明確に、福祉職俸給表を参考にすると書かれた以上、介護報酬にこれを反映させるべきだと思います。介護報酬にそれを反映させなければ、その分、結局身銭を切ることになるわけですから。そして、措置制度の時代にはこれをきちんと、公私格差是正の仕組みなどという形があったと思います。そうしたことについてどのように考えますか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 社会福祉法に基づきまして、人材確保指針を厚生労働省で定めるというふうになっておりまして、昨年の八月二十八日に人材確保指針を出させていただいたところでございます。

 就職期の若年層を中心とした国民各層から選択される職業になるよう、他の分野とも比較して適切な給与水準の確保がされるなど、労働環境の整備を図る必要があるという立場から、具体的な労働環境の整備について提案をしております。

 その中で、給与水準につきましては、他の分野における労働者の給与水準や地域の給与水準等も踏まえ、適切な水準を確保すべきこととするとともに、給与体系の検討に当たって、国家公務員の福祉職俸給表等も参考とすることとされているところでございます。

 給与については、経営者と労働者の雇用契約により決定されるものでありますことから、まずは経営者の経営努力をお願いする必要がありますけれども、先ほど来議論になっておりますさまざまな政策によって、こういったことを実効性のあるものにしていくことが必要であると考えております。

高橋委員 その上で、先ほど来出ている財源論について、私は、介護労働者と利用者を対立させるべきではない、よりよいサービスや安全の確保のためにも労働条件と待遇の改善は必要だということをまずしっかり確認して、それを保険料にはね返らせるような仕組みを改めて、別枠とするべきだと考えています。少なくとも五%の調整交付金を、全国知事会や市長会なども指摘しているように、初めから算入すべきだと思います。

 もし一言あればお願いします、大臣。

舛添国務大臣 財源を税でやるか保険料でやるかという根本的な問題があります。保険料でやらなくても、結局公費というのは税ですから、どういう形で負担をするか。私は、保険料でやることの意義は先ほど言った、措置制度と違う、権利として自分が払っているということとともに、まさに保険料でやったらそれは介護にしか使えない、財源だったらどういうことにでも使えるので、それぞれ一長一短はあると思います。

 私は、今の枠組みの中でやれることはきちんと、保険料を上げることによってやることの方が筋が通っているというふうに思っております。

高橋委員 五%の調整交付金の場合は、今言った保険、枠組みの話ですので、十分検討していただきたいと思います。

 終わります。

茂木委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私も、冒頭、皆さんが御指摘なさいました介護現場で働く方々の低賃金、先ほどの高橋さんの大変によくできたグラフに比べて、私の方は、年度は平成十三年度と十八年度が加わって、ちょっとタイムスパンは長くとってございますが、数値でございますので、大臣にもごらんいただきたいと思います。

 全労働者が一番上の段にございますが、大体三十三万あたりに位置するところ、福祉施設で働く男性の場合ですら二十二・七万。そして、実は平成十三年は二十四・四万でありましたから、介護保険が平成十二年から始まったとして、平成十八年度、一昨年度までとりますと、いわばどんどん下がっていっておるという状況であります。ホームヘルパーの女性についても同じであります。

 こうやって見てくると、せっかくつくった介護保険制度なのに、どんどん働く人の賃金が減って、結果的には、事業者も介護要員の確保に非常に今苦労をしておられます。

 大臣は随所でサービス提供の事業者の方、あるいは施設を運営している三井先生などの御意見もありましたが、声をきっと聞かれることがおありでしょう。私が地元の神奈川の福祉協議会、かながわ福祉人材センターでいただきました資料を見ますと、これはデータはございませんが、福祉関係の人材の求人と求職の比率を見ますと、例えば高齢者介護、障害者介護、児童福祉、その他いろいろ並べて、全体では三・〇くらいの、いわば求人の方が求職を上回る状態ですが、高齢者介護にあっては求人数の約六分の一しか求職者がいない。まあ、こういうのは有効求人倍率六倍というのかしら。いいことなのか。

 ここまで来たら、普通、大臣、市場原理でいえば、来てほしい来てほしいという人がいれば、その賃金というのは上がって当然なんですよね。ところが、市場原理とも全く合わないことが起きている。来てほしい人は多いのにどんどん賃金は低下の一途をたどり、下げどまってくれればと思いますが、この傾向の中ではどうやったって若い人たちが食べていけない。今、ワーキングプアという話もよく出ていますが、そういうところに介護現場の若い人たちが置かれていると思うんです。

 これは公定価格ですから、市場原理ではある意味でないわけです。価格を決めているのは介護報酬。すなわち、やはり国の介護にかかわる費用のかけ方の誤り、どう考えても大きな枠の誤りなんだと私は思います。このままいったらだれも介護をやらなくなっちゃうくらいの、せっかく大臣がいい制度として発足したと思っておられることが、中から崩れていくように思います。

 大臣は、今、有効求人倍率は六倍、賃金は下がる一方、この二つを見て、政治家としての大きなかじの方向はどこにあるのか、これを一点お答えいただきたいし、私は、その意味で、今民主党の皆さんが緊急的に二万円という額を提示されているのは、緊急的な提言であり、いろいろな制度設計の問題は正直言うと私も疑念がないわけではありませんが、その緊急度にかんがみて前向きに評価したいと思っております。

 そうしたことを申し添えた上で、政治家としての大臣に、こういう状況を一刻も放置してはならないと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 福祉分野の人材確保ということが非常に困難を来している、それはいろいろな要因があると思います。今委員が引かれたデータ、それから、きょう一日皆さん議論を重ねてきたさまざまな原因があると思いますし、また、何年か前、非常に不況のときにはこれほどひどくなかった。しかし、世の中好況になってくると、やはり労働条件のいいところに行くというようなことがありますから、これはもちろん喫緊の課題として取り組んでいきたい。

 ただ、どういう方法でやるのかという点について、まさに、きょう一日この委員会で議論したようないろいろな施策はあると思います。しかるべき手を打っていくということが必要だ。どういうふうな具体策をとるか。当面私は、来年度、三年に一遍の定期的な改定がありますから、そこに向かって全力を挙げるということですが、しかし、そのほか何らかの手が打てないか、先ほど来申し上げているように、緊急性にかんがみて検討しているという状況であります。ですから、政治家としては、もともと私の原点でもありますから、この問題は正面から取り組んでいく。

 ただ、委員よく御承知のように、これは例えば医師不足の問題になったら同じですね、産科、小児科の問題にしてもそうだし、本当にこれは限られた財源の中でどういう手を打つかということで四苦八苦しておりますが、しかし、改めて努力は重ねてまいります。

阿部(知)委員 私がきょう伺いたかったのは、本当に緊急だということで、来年度まで、その来年度の見直しでどうこうしましょうというのでは、地元の例ばかり紹介して恐縮ですが、私は神奈川で、例えば、神奈川で特別養護老人ホームをやっておられる施設の責任者の皆さんがお集まりになったときに出たお話ですが、今、特養は待機者が大変に多い。でも、横浜で約千ベッド、特養にお預かりすることができない。なぜか。介護職員が集められないからなんですね。

 私は、医師不足、医師の問題も取り上げてきましたけれども、それ以上に今打つ手が実はあるんだと思います、緊急的には。それが民主党のお出しになった案であるかもしれないし、二大政党でありますから、もう少しそこは歩み寄られて、本当に介護現場の、直近ですぐやれることを英断していただきたい。これはお願いであります。

 さて、そういう状態に長く放置したことがやはりコムスン問題を生んでおると私は思います。コムスン問題も、きょうはどなたも取り上げましたし、今般の法改正のバックグラウンドになっておりますが、ここにおいて論議されていることと介護現場がコムスン問題をどう受けとめたかは、私にはずれがあるように思います。

 大臣も御承知のように、コムスンには二万四千人余りの人たちが働き、特に若い人たちは、コムスンの夜間の巡回というか、在宅をほとんど埋めてくれていた。その本当に若くて体も犠牲にして頑張っていた人たち、その上にグッドウィルという営利中心に物を動かした人たちがいるからといって、そのベースに横たわる構造をもっと見ないと、コムスンで頑張った人たちにも申しわけが立たないように私は思います。

 そこで、介護労働者から見たコムスン問題で私が御紹介したい声があります。「福祉のひろば」というのに寄せられた声です。

 この問題は、第一に介護労働者の問題である。例えば、介護労働者の雇用が流動的だとしても、その地域で安定して働き続けることができるならば、その労働者は地域の貴重な介護力となる。国は、最低限、介護労働者の生活とスキルアップを保障するだけの介護報酬は準備すべきだ。まずこれが、介護労働者から上がった第一の声です。

 第二は、現状の介護事業そのものが法令遵守が難しいことに注目すべきだ。いろいろな手順、基準、書類をつくったって、本当にやっていけるだろうか。コムスンだけの問題ではないという意見が多く聞かれるように、多くの事業者は経営に危機感を持っています。介護報酬削減による影響が大きいと思います。これは先ほど高橋委員も御指摘であります。

 第三は、不正を許さない現場の体質、しかしこの場合に、国は、介護報酬の問題をわきに置いて、安易に研修の上乗せや介護福祉士への資格の一本化といったハードルを課して、かえって介護職の門戸を閉めてしまう政策をとるべきではない。

 これが現場の声であります。

 私は、本当に今必要なことは、大臣が介護現場で働く若い人たちの声を聞いて、どうすればいいのか。一に挙げられた介護報酬の引き上げ、何度も申しますが、これを第一にやっていただきたいと思います。そして、その中でも、実はコムスン問題で大きく問題になったのはサービス提供責任者の存在であります。

 大臣、恐縮ですが、サービス提供責任者というのは一体どんな役割をして、どこからお給与が出ている人たちか、御存じと思いますが、念のためお伺いをいたします。

舛添国務大臣 これは、サービス提供のかなめをサービス提供者というのは担っているわけでありますので、訪問介護、先ほどコムスンの夜の介護をお話しくださいましたけれども、その計画作成とか業務管理を行っているわけであります。

 それで、この就業形態についても、これはいろいろ今、どういう状況であるか、キャリアアップをどうするか、賃金水準をどうするか、そういうことについても、先ほど来私が申し上げているように、社会保障審議会の介護給付費分科会のもとで今ワーキングチームをつくりましてこれをやっているわけでありますので、このキーになる人たちの処遇も含めて、これは委員がおっしゃるように、きちんとやはりやっていかないといけないというふうに思っております。

阿部(知)委員 そのとおりで、ケアプランをつくったり、利用者さんとの苦情のはざまに立って、よりよいサービス提供に努めているわけですが、大臣も御承知のように、置くことが義務づけられながら、何らその人固有の報酬がないわけです。計上されないわけです。全体の上がりの中から浮かせて、給与をそこでつくりなさいと。でも、先ほど高橋さんのグラフでも私のお示ししたのでも、介護労働者の賃金は下がっていて、全体の収入も下がっていて、どうやって余剰の人件費をたたき出すことができるか。

 これは、大臣のお手元にございます私の二枚目の資料をごらんになっていただきたいのですが、いわゆる介護の現場と申しますものは、ほとんどが人件費比率で成り立っております。上段には訪問介護のための事業所、下段が施設でございますが、上段の訪問介護のための事業所ですと、八割を超すものが給与に転換される。下段の施設ですと六割弱でございます。特に、今コムスンで問題になった訪問介護は上段で類型化すると、その中で、本当にこれでサービス提供責任者を置けるような状態なんだろうかということであります。大臣には、状況はよく御理解のことと思います。

 そういう実態、ここに次の診療報酬改定で、例えば固有の診療報酬をつけるのかどうか、全体をまたかさ上げしてその中から分け取りなさいとやるのかどうか。私は、分け取る方式は無理だと思います。営業努力でやっていくのは無理だ。結局みんな、ヘルパーさんたちを働かせて、極端な言い方をすると上前をはねなきゃいけないような立場に、これは極端な悪い言葉で恐縮です、でも、そういう構造に置かれるサービス提供責任者の苦悩は余りあると思います。だれもなりたくない、やりたくない。厳しい、苦しい、つらいばかりだからです。

 大臣には今私が申したことをよく検討していただきたいが、いかがでしょう。

舛添国務大臣 今の仕組みは、先ほど委員が診療報酬とおっしゃいましたけれども、介護報酬ですね。(阿部(知)委員「介護報酬、ごめんなさい」と呼ぶ)介護報酬を事業者に対してお支払いする。その中に人件費も含まれて一括してお支払いする。そこから先は、介護の経営者というか、その方とそこで働いている労働者の間の労働契約という形を今はとっております。その形式を、今委員がおっしゃったように、個々の人件費について個別にやることがいいことなのか悪いことなのか。それはプラスマイナスあると思いますけれども、今の介護保険制度の仕組みというのはそういうふうになっていないんですね。したがって、そこをどうするか。

 これはもう釈迦に説法ですが、実は先般、勤務医の診療報酬を上げるときに、それも同じことで、病院には行くんだけれども、個々の勤務医の方々に直接行かないんです。だから一番の苦情は、直接私たちに下さいと。ただ、今はそういう制度になっていないので、私はそのときに記者会見をして、必ず病院の経営者の方々は勤務医の皆さんにきちんとお支払いくださいということを口頭で述べて、実行してもらうということをやりましたので、今の制度を前提にすれば、介護報酬改定になれば私はそういうことを明言して、経営者に対してきちんとやるようにという指導、要請はいたしますが、今の仕組みがそういうふうになっている。

 これを、ちょっと時間がありませんからもうはしょりますが、委員がおっしゃったように変えることによるプラスとマイナスがやはりあるんですね。そうでないならば、要するに全部国営でやってしまって、全部国が管理すればいいことになる。そうじゃない形の、民間の知恵のようなところを入れていくという面もあるものですから、必ずしも一〇〇%いいことばかりではないと思いますが、もう少し議論してみたい。

 ただ、委員の問題意識はよくわかりますので、その提案は御提案として検討させていただきます。

阿部(知)委員 私は、サービス提供責任者に介護報酬をつけることが国営になることとは全然考えておりません。大臣、ちょっとそれは論理が、時間がないので飛躍をしていただいたんだと思いますが、私は、その働きに対してきちんと報酬をつけねば、そうした人材は、本当になり手がなくなってしまいますということであります。

 そして、同じようにもう一つ介護現場からの声を御紹介させていただきます。やはり「福祉のひろば」です。

 コムスン問題では、その行き詰まりを強権的な形、すなわち行政監査や指導を強化して国民的な批判を乗り切ろうと厚労省がしているように感じる。それは、厚生労働省の言う正しさを強調し、介護の質は、いわゆるプラン先行パッケージ型タイプ、もう決まったプランでこのようにやりなさいという安上がり保険内容しか認めない。その他の横出し、お散歩に行くとか、あるいは同居者がある場合はどうかとか、そういうことは一切切り捨てるという中でしか介護報酬を認めず、そうでなければ返還となるというふうになりかねないと、皆さん非常に心配しておられます。

 軽い認知症のある九十歳の独居宅へのプランでは、生活援助、天気がよかったので散歩に出かけることになりましたというヘルパーの記録を根拠に、プランにない援助を行っているので返還といったぐあいになってしまうという危惧が挙げられております。私は何度も申しますが、現場を大事にしないと、こういう人が人を支える分野はみんな崩壊していきます。教育も、医療も、介護もしかりでしょう。

 そこで、きょう、大臣にもう一つお伺いしたいんですが、この法案で、これから厚生労働省が県をまたぐサービス提供者についてのいろいろな処分権を持つということが提案されていますが、本来は、それ以前に、例えば密着して監査に入り指導を実施するとか、そういうことが十分にできるような監査のマンパワー。あるいは情報公開、皆さん、自分の事業所を情報公開なさるわけです。その中で人件費比率をオープンにさせるとか、あるいは第三者評価など、もっと身近なところで、地域がその施設なり事業者を監視できる仕組みをとるべきだと私は思います。それが一点です。

 そして、恐縮ですが、お時間のない中、私はきょうどうしても大臣に伺っておきたいことがあるので、テーマはかぶりますが、少しずらす形で伺います。

 せんだっての委員会でも問題になりました医療の安全委員会のお話であります。実は、この安全委員会でも、第三者の安全委員会にある調査権と、そこから厚生労働省が持つ処分権の問題で同じような関係が出てくると私は思うんです。なるべく現場に任せて、現場の調査、そしてそこから上がってくるものは厚生労働省の行政処分とは一定距離を置いておかないと、極端に言えば、調査したことがすぐ処分にはね返って、萎縮ということを生むように思います。

 前者の介護保険問題、そして、後者は実は大臣は非常に御理解が深いので、私の言っていることを御理解いただけていると思います。ちょうど運輸安全委員会が国土交通委員会で審議されておりますが、これは国土交通省の外局に置き、さらにできれば内閣府に置いて調査をした方がいいんじゃないかと言われているような、行政官庁としての厚労省との独立性の問題です。

 逆に言えば、ある事故が起きて、厚生労働行政にも問題があるかもしれないわけです、厚生労働省もまた何らかの監督対象かもしれないわけです。そこまでも踏み込んできちんと制度設計をしておかないと、私は何度も申しますが、今般のコムスン問題も、低い介護報酬に置き、サービス提供者など雇えない状態で起きたことと思います。

 以上、ちょっと答弁が複雑になって恐縮ですが、舛添大臣ならオーケーと思いますので、お願いします。

舛添国務大臣 最後の、医療事故の調査委員会につきましては、第三次試案が出ていまして、またこれをたたき台にして、さまざまな今のような委員の意見も踏まえて、さらにいいものにしていきたいというふうに思っております。

 ただ、いつも申し上げますように、医師の立場と患者の立場に本当に相互信頼感があればいいんですけれども、そうじゃないケースがあったときに、最後の担保として国家権力、つまり厚生労働省にお願いしたいという声があることも確かです。しかし、独立した委員会でやるというのも一つの方法でしょうし、これはまた検討してまいります。

 それから、介護の問題について言うと、私は、介護というのは、まさに本当に地方自治ということが現実の現場になった最初のものじゃないかというふうに思って、その点でも大変歓迎しています。

 問題は、保険制度がナショナルな、全国大でしかやっていけない。そうすると、例えばさまざまなガイドラインを含めて、認定基準を含めて、全体的には統一的なものをつくらざるを得ない。しかし、第一次、第二次の審議において、現場のかかりつけ医のお医者さん、看護師の皆さんの声も聞けるわけです。ですから、私は、これは市町村、都道府県の連携をやるべきであって、二つの都道府県にまたがるようなことはどうしても国がやらないといけないというふうに思います。

 しかし、ナショナルなシステムである介護保険を、現場の声をいかにして聞きながらやっていくかということは非常に必要なことなので、東京のヘルパーさんが、私の里の福岡に来て私の母を介護してくれるわけじゃありませんから、やはり現場のヘルパーさんなんです。この声を一番聞かないといけないと思いますので、そういう意味においての地域全体の介護力を高めていく、それはボランティアの方も含めて。

 私は、実はこの介護保険の問題、今出ているさまざまな問題も含めて、これは、きちんとした処遇で、現場で若い人がそこで職を得て結婚もできるだけの、結婚して家庭をきちんと築けるだけの処遇をいただくということになれば、地域が活性化します。そういう意味での新しい発想も必要だと思っていますので、いろいろな貴重な意見もいただきながら、全力を挙げてこの介護問題にも引き続き取り組んでまいりたいと思います。

阿部(知)委員 介護の問題は、地域のことは地域に任せるという、この原則が本当に実現できるかどうかは地方分権の試金石でもあります。

 その場合に、住民への情報公開、例えばその事業者がいい事業者であるか、人件費比率を高めているかどうか、一生懸命そういう形で働く人にペイバックしているかどうか、そういうことをやはり可視化すべきだと私は思います、上からの統制ではなく。というのは、星の数ほどあって、上からはある種統制し切れないんです。だって、東京都だってコムスンの不正をみずから見つけられたわけではありません、内部通報です。そのことも考えて、大臣にはこの法案のあり方をよく考えていただきたい。

 それから、医療の安全委員会については、その意味ではまず、病院ごとの内部調査委員会というのを設けるべきだと私は思います。

 今、医師と患者は悲しい対立の中にあります。屋上屋を重ねて、外部調査委員会、最後は厚労省という国家権力、こういうもので罰せられても、現場の受けた傷はいえないと私は思うんです。

 女子医大の例、御存じだと思います。五つの家族が現場で女子医大と話し合いながら、大臣の好きなというか、よくおっしゃる裁判外の紛争の処理システムです。そういうものがあって初めて第三者委員会が生きてきます。この手順を間違うと、強権的なものになったら、やはりだれにとっても幸せじゃないと私は思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございます。

茂木委員長 次回は、来る十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会


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