衆議院

メインへスキップ



第17号 平成20年5月28日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十年五月二十八日(水曜日)

    午前九時六分開議

 出席委員

   委員長 茂木 敏充君

   理事 大村 秀章君 理事 後藤 茂之君

   理事 田村 憲久君 理事 宮澤 洋一君

   理事 吉野 正芳君 理事 山田 正彦君

   理事 山井 和則君 理事 福島  豊君

      新井 悦二君    井澤 京子君

      井上 信治君    伊藤 忠彦君

      石崎  岳君    小里 泰弘君

      鍵田忠兵衛君    川条 志嘉君

      木原 誠二君    木村 義雄君

      櫻田 義孝君    清水鴻一郎君

      杉村 太蔵君    高鳥 修一君

      谷畑  孝君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    長崎幸太郎君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      林   潤君    福岡 資麿君

      松浪 健太君    松本  純君

      松本 洋平君    三ッ林隆志君

      石川 知裕君    内山  晃君

      岡本 充功君    菊田真紀子君

      郡  和子君    園田 康博君

      長妻  昭君    西村智奈美君

      細川 律夫君    三井 辨雄君

      柚木 道義君    伊藤  渉君

      古屋 範子君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    糸川 正晃君

      亀井 久興君

    …………………………………

   議員           西村智奈美君

   議員           川内 博史君

   議員           郡  和子君

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   厚生労働副大臣      岸  宏一君

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   厚生労働大臣政務官    松浪 健太君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 御園慎一郎君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    荒井 英夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中村 吉夫君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   参考人

   (恵泉女学園大学教授)  大日向雅美君

   参考人

   (NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事)  赤石千衣子君

   参考人

   (青山学院大学文学部教授)            庄司 順一君

   参考人

   (駒沢女子短期大学保育科教授)          福川 須美君

   参考人

   (東洋大学社会学部教授) 森田 明美君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     永岡 桂子君

  高鳥 修一君     小里 泰弘君

  谷畑  孝君     伊藤 忠彦君

  松浪 健太君     鍵田忠兵衛君

  三井 辨雄君     西村智奈美君

  糸川 正晃君     亀井 久興君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     谷畑  孝君

  小里 泰弘君     高鳥 修一君

  鍵田忠兵衛君     松浪 健太君

  永岡 桂子君     井上 信治君

  西村智奈美君     石川 知裕君

  亀井 久興君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 知裕君     三井 辨雄君

    ―――――――――――――

五月二十七日

 高齢者に負担増と差別医療を強いる後期高齢者医療制度の中止・撤回に関する請願(河村たかし君紹介)(第三二三一号)

 同(篠原孝君紹介)(第三二三二号)

 後期高齢者医療制度の廃止を求めることに関する請願(岩國哲人君紹介)(第三二三三号)

 同(岩國哲人君紹介)(第三二九二号)

 同(岩國哲人君紹介)(第三三四七号)

 首都圏の介護を支えるための介護人材確保に関する請願(新井悦二君紹介)(第三二五八号)

 同(池田元久君紹介)(第三二五九号)

 同(上田勇君紹介)(第三二六〇号)

 同(坂井学君紹介)(第三二六一号)

 同(菅義偉君紹介)(第三二六二号)

 同(田中和徳君紹介)(第三二六三号)

 同(林潤君紹介)(第三二六四号)

 同(細川律夫君紹介)(第三二六五号)

 同(松本純君紹介)(第三二六六号)

 同(三ッ林隆志君紹介)(第三二六七号)

 同(やまぎわ大志郎君紹介)(第三二六八号)

 同(山内康一君紹介)(第三二六九号)

 同(笠浩史君紹介)(第三二七〇号)

 同(岩國哲人君紹介)(第三三〇四号)

 同(江田憲司君紹介)(第三三〇五号)

 同(小此木八郎君紹介)(第三三〇六号)

 同(鈴木恒夫君紹介)(第三三〇七号)

 同(高木美智代君紹介)(第三三〇八号)

 同(長島昭久君紹介)(第三三〇九号)

 同(松野博一君紹介)(第三三一〇号)

 同(岩國哲人君紹介)(第三三五六号)

 医師・看護師などを大幅に増員するための法改正を求めることに関する請願(寺田稔君紹介)(第三二七一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三三三四号)

 同(岩國哲人君紹介)(第三三三五号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第三三三六号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第三三三七号)

 同(古賀一成君紹介)(第三三三八号)

 同(高木義明君紹介)(第三三三九号)

 同(保坂展人君紹介)(第三三四〇号)

 同(松木謙公君紹介)(第三三四一号)

 同(松本龍君紹介)(第三三四二号)

 同(綿貫民輔君紹介)(第三三四三号)

 高齢者に負担増と差別医療を強いる後期高齢者医療制度の中止・撤回をすることに関する請願(笠井亮君紹介)(第三二七二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三二九四号)

 同(石井郁子君紹介)(第三二九五号)

 同(笠井亮君紹介)(第三二九六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三二九七号)

 同外一件(近藤昭一君紹介)(第三二九八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三二九九号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三〇〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三三〇一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三三〇二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三三〇三号)

 同(笠井亮君紹介)(第三三五一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三五二号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三五三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三三五四号)

 国の医療に回すお金をふやし、医療の危機打開と患者負担の軽減を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第三二八九号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三五七号)

 ジストニアの難治性疾患克服研究事業への指定及び症状に対する障害認定と治療環境改善に関する請願(櫻田義孝君紹介)(第三二九〇号)

 医療に回すお金をふやし、保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第三二九一号)

 後期高齢者医療制度を中止し、廃止を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第三二九三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三三四九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三五〇号)

 最低保障年金制度の実現を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第三三二八号)

 鍼灸治療の健康保険適用の拡大を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三三二九号)

 難病、長期慢性疾患、小児慢性疾患の総合対策を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三三三〇号)

 マッサージ診療報酬・個別機能訓練加算の適正な引き上げを求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三三三一号)

 病名や健診データなどプライバシーの漏えい、流用につながる診療報酬オンライン請求義務化の撤回に関する請願(吉井英勝君紹介)(第三三三二号)

 社会保障の拡充等に関する請願(笠井亮君紹介)(第三三三三号)

 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(穀田恵二君紹介)(第三三四四号)

 格差社会を是正し、命と暮らしを守るために社会保障の拡充を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三三四五号)

 原爆症認定制度の抜本改定に関する請願(笠井亮君紹介)(第三三四六号)

 ハンセン病問題基本法を制定し、開かれた国立ハンセン病療養所の未来を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三四八号)

 後期高齢者医療制度の撤回を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三三五五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)

 児童扶養手当法の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、第百六十八回国会衆法第一四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

茂木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、西村智奈美君外二名提出、児童扶養手当法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、恵泉女学園大学教授大日向雅美さん、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事赤石千衣子さん、青山学院大学文学部教授庄司順一さん、駒沢女子短期大学保育科教授福川須美さん、東洋大学社会学部教授森田明美さん、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず大日向参考人にお願いいたします。

大日向参考人 おはようございます。恵泉女学園大学の大日向雅美と申します。

 私は、発達心理学の領域で、家族、親子問題を専門にしております。また、NPO法人の代表といたしまして、港区で子育てひろば「あい・ぽーと」といいます地域の子育て支援の拠点を運営しておりまして、親子が集う広場と一時預かりを行っております。さらに、その港区を初め千代田区、浦安市等の各地で、子育て支援者となる人々の人材養成も行っております。

 児童福祉法等の一部を改正する法律案は、私が部会長を務めております社会保障審議会少子化対策特別部会において検討してきたものです。本日は、家族、親子問題を専門とする研究者として、また現場で日々子育て支援に向き合っている者として、さらに法案の検討の場であった少子化対策特別部会の部会長として、意見を述べさせていただきます。

 私ども少子化対策特別部会は、昨年末に取りまとめられました政府の子どもと家族を応援する日本重点戦略を受けて設けられたものです。

 重点戦略は、近年の急速な少子化の背景には若い人たちの結婚、出産、子育てに対する希望と現実に大きな隔たりがあること、さらに、急速に進む少子化によって早晩もたらされる労働力不足への対策の必要性に視点を置き、その解決に向けて、一つは、働き方の改革による仕事と生活の調和の実現、もう一つは、仕事と子育ての両立と家庭における子育てを支援する社会的基盤の構築、この二つを車の両輪として取り組むべきことを指摘しています。

 これを受けて、現在の次世代育成支援の枠組みを抜本的に見直し、仕事と生活の調和を図り、同時に、保育や地域の子育て支援サービスについて、質と量両面からの大幅な拡充を目指し、新しい制度体系を築いていくことが必要とされております。この制度体系の設計に関しましては、現在少子化対策特別部会において検討しているところでして、今月二十日には「基本的考え方」を取りまとめたところでございます。

 新しい制度体系を実現するには大きな財政投入が必要で、税制改革の動向を踏まえながら行うことが不可欠ですが、重点戦略では、これは単なるコストではなく、未来への投資として効果的な財政投入の必要性が指摘されております。

 日本の次世代育成支援の財政規模は、御承知のとおり、諸外国と比較しても著しく小さく、深刻な少子化の現状とその背景を見詰めれば、今こそ大きな財政投入の決断をすべきときと私は強く思っておりますが、一方で、今すぐに取り組むことのできる課題も多々ございます。

 今回の児童福祉法等の一部を改正する法律案は、こうした先行して対応すべき課題に速やかに取り組もうとするものです。

 なお、本法案は、虐待を受けていたり、親の養育を受けることのできない、最も困難な状況にある子供たちへの支援である社会的養護についてもその内容に含まれておりますが、本日は、参考人として、社会的養護の専門委員会の委員でおられた庄司先生がお越しですので、私は、社会的養護以外の子育て支援と、企業の次世代育成支援の取り組みを中心にお話ししたいと存じます。

 さて、子育て支援事業を法律に位置づける意義ですが、子育て支援に関しては、親が安心して働くために、地域の保育サービスや放課後児童クラブなど仕事と子育ての両立支援にかかわるサービスの充実が重要であることは言うまでもありません。しかし、核家族が一般化し、地域のつながりも希薄になっている現在、働いているか否かを問わず、すべての子育て家庭に対する支援も非常に重要です。

 もともと子育ては母親一人で担えるものではなく、歴史を振り返りましても、家族や地域のみんなで子供の育ちを支え、見守ってきました。しかし、今日の子育ては、核家族の中で、父親の帰りも遅く、母親だけに負担が集中し、気軽に子供を連れて出かけるところや相談できる相手も見つからないのが実態です。こうして、育児に孤軍奮闘する母親が育児不安や育児ストレスを強め、中には虐待に至ってしまう事例も見られます。

 今回、法律上、新たに位置づけようとする子育て支援事業は、こうした育児の孤立を防ぎ、すべての子育て家庭を地域で支えることを目指したものです。

 具体的には四点ございます。

 第一に、赤ちゃんが生まれたばかりの家庭を訪問し、地域の子育て情報を提供し、相談を受け、地域が子育て家庭を支えますよというメッセージを届けるとともに、行政が支援を必要とする家庭を把握する乳児家庭全戸訪問事業。第二は、支援が必要な家庭に対し、継続的にフォローアップを行う養育支援訪問事業。第三に、子育て中の親子が集い、同じ立場の親同士が交流して、地域でのつながりを得るとともに、子育ての知識や経験のあるスタッフが相談、援助などを行う地域子育て支援拠点事業。第四に、さまざまな理由から一時的に子供と一緒に過ごせない場合に、特段理由を問うことなく子供を預かり、子育ての負担の軽減を図る一時預かり事業です。

 これらが法律上に位置づけられ、事業が一層推進されることによって、親子が安心して、気軽に事業を利用できるようになることが期待されております。

 次に、家庭的保育についてです。

 親が安心して働くには、安心して預けることのできる保育の確保が不可欠です。保育の中心的な担い手は認可保育所ですが、都市部の待機児問題にも象徴されますように、現状の保育体制は親の就労実態やニーズに対応し切れていないのも事実です。働き方の多様化等に伴い、保育の提供手法を多様化し、その量を拡充していく必要性から、保育者の居宅等で主に三歳未満の少人数の乳幼児を対象に行う家庭的保育が着目されております。

 もとより、保育は、日常的に一定の時間、親にかわって子供を養育し、その成長を支えるもので、保育の質の確保は大変重要と考えます。家庭的保育という名称から、とかく、女性であればだれもが担えるアットホームな事業であるかのようなイメージが抱かれがちですが、家庭的保育は、施設型の保育所と同様に、日々約八時間の保育を受ける通常保育です。一人ないしは少数の担当者が限られたスペースで通常の保育所保育と同等の保育を行うためには、保育論や子供の発達などに関した理解と技能が不可欠であり、そのためにも、安定した雇用の確保、研修の整備、さらには地域の保育所との連携等も欠かせません。

 少子化対策特別部会においては、家庭的保育の整備に関して、量の拡大とともに、質の充実に関して十分議論を行いました。その結果、家庭的保育の担い手は、従来の国庫補助事業としての家庭的保育が基準としてきた保育士、看護師を原則としつつ、他方で、既に全国の自治体で実施されている家庭的保育も視野に置いて、家庭的保育の担い手となる方々の研修を整備すること、しっかりとした研修を受けた方が担い手となるとともに、家庭的保育者をサポートする市町村の体制を設けることによって、質を十分に確保しながら普及促進を図っていくことといたしました。

 具体的な実施基準や研修の内容等に関しては、今後、保育や発達の専門家を中心に検討していただくとともに、オープンな議論の場を設けて検討を進めていくことになっております。その検討状況についても、しっかりと見守ってまいりたいと思っております。

 次に、次世代育成支援対策推進法改正のうち、地域の取り組みの促進についてです。

 現在、待機児童の解消を目指して、保育所の整備が地道に続けられてきていますが、過去五年間で十五万人の定員増を行ったにもかかわらず、待機児童は七千人しか減少していないというのが実情です。

 これは、保育サービスには大きな潜在需要が存在することのあらわれと言えます。女性の多くが、第一子出産を機に、仕事の継続を断念し子育てに専念するものの、子供の成長に伴い、もし保育サービスが利用できるなら働きたいと願っていることのあらわれです。

 今回の改正による参酌標準の提示は、こうした潜在需要を目に見えるようにし、市町村が策定する地域行動計画において、潜在需要を見越したサービス整備を目指したものです。従来の顕在化しているニーズにこたえていくという整備のあり方からの大きな転換を図るものとして、大変意義深いものと存じます。

 また、都道府県や市町村の地域行動計画について、仕事と生活の調和の実現に向けた取り組み、企業を含めた地域ぐるみの子育て支援の実現に向け、策定過程に労使の参画を求める改正、またPDCAサイクルに沿って、しっかりと利用者の視点等を反映させながら、計画の実効性を高めるものであり、こうした改正で地域の取り組みが大きく前進する基盤が整うものと期待しております。

 最後に、一般事業主行動計画の見直しについてです。

 企業等で働く父親、母親が子供と接する時間を十分にとれるためには、企業における働き方を見直し、仕事と生活の調和の実現を図ることが大切です。

 これまでも、三百一人以上の大企業については、従業員の仕事と子育ての両立に向けた一般事業主行動計画の策定が義務づけられ、大企業に関しては取り組みが前進してきたと承知しております。しかしながら、義務づけの対象となっていない三百人以下の中小企業で働く人も多く、こうした企業についても行動計画の策定を進めていくことが重要です。今回の改正は、百一人以上の中小企業に対して義務づけを拡大することを通じ、その取り組みを大きく前進させようとするものです。

 しかしながら、その一方で、中小企業の中には経営的に余裕のないところも多く、負担が高いのではないかという懸念もありましたので、少子化対策特別部会におきましては、中小企業の団体からヒアリングを行い、経営者のお声をお聞きすることもいたしました。その結果、十分な準備期間をとること、策定に際し、きちんとした支援体制を設けることといった御意見が出され、そうした声も反映させながら、政府において案の取りまとめをされたと考えております。

 このほか、策定した行動計画について公表等を義務づけることとされておりまして、企業の子育て支援の取り組みの情報を公開し、計画の実効性を上げることにもつながると思います。

 仕事と生活の調和の実現は、若い人々に仕事と結婚、出産、子育てを二者択一のものとしないためには、欠かせないものです。今回の改正によって、企業の次世代育成支援に向けた取り組みが大きく前進するものと期待しております。

 冒頭でも申し上げましたが、少子化の流れを変えていくためには、次世代育成支援の枠組みの抜本的な見直しが必要です。少子化対策特別部会では今まさに新たな制度体系の検討を進めているところでありますが、本法案は、こうした取り組みに向けた第一歩となる大事な改正と考えております。ぜひ、早期の実現をお願いしたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

茂木委員長 ありがとうございました。

 次に、赤石参考人にお願いいたします。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

赤石参考人 NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの理事、赤石千衣子と申します。きょうは、この機会を与えていただき、大変ありがとうございます。

 私は、母子家庭になってから二十数年、いろいろな苦労がございましたけれども、今は、母子家庭のお母さんと子供が集える場をつくり、さまざまな調査や研究や相談活動を行っているNPO法人の理事をしております。関西と福岡、福島、沖縄に姉妹団体がございます。

 私は、児童扶養手当法の一部を改正する法律案に賛成の立場から意見を述べさせていただきます。

 国会議員の皆様、母子家庭の暮らしというのはどんなものか御想像いただけるでしょうか。

 私は、もう子供が二十七歳になっておりますけれども、二十数年前、小さな子供を育てながら、十万円以下、九万五千円の給料で保育園で働いておりました。児童扶養手当が当時は三万円で、一カ月の収入は大体十三万五千円ぐらいでした。

 これで、家賃は五万円、六畳と四畳半のアパートです。幸いながら、ユニットバスはついておりました。食費は四万円程度、さらに、電気、ガス、水道代で一万円、電話代三千円、そして保育料二万円などを払うと、もうこれでぎりぎりの生活です。これが二十数年前でございます。

 被服費はほんのわずかで、お下がりをもらったり。お弁当をつくって子供を連れて公園に遊びに行く、それが唯一の楽しみのような状況だったと思います。月末にさまざまな経費を払いますと、月の初めからは一日千円、これで食費を払うのでございます。

 その後、私は正社員になる仕事を得ましたので、何とか今給料も上がって暮らしているわけです。もしそのままでしたら、子供を育てて教育を受けさせることは、本当にとても困難だったろうと思います。

 二十数年前は、まだ正社員になる道がありました。では、現在はどうでしょうか。

 私たちは、現在、NPOの団体で電話相談、メール相談、グループ相談などを受けております。グループ相談会では、お母さんたちが集まって自分たちの状況を話し合うので、とてもいい分かち合いの場となっております。

 そこでお話しされることなんですが、離婚の理由ということですけれども、そこで集まられる方は、八割近く、借金、暴力による離婚でございます。そういう借金や暴力で悩み、生活苦がある、夫の給料が減ってしまったため、カードローンで家計の不足を補って自転車操業をしている、そんなような方がたくさんいらっしゃいます。夫だけの借金でなく、自分も借金を重ねているというような方がいらっしゃいます。ですから、本当に多重債務というのは身近な問題です。

 それから、かなり高学歴の方でも、専門職で働いていたけれども、ていのいいリストラというんでしょうか、独立を迫られ事務所を開設したが、事業がうまくいかないということで、だんだん、お金を妻には一週間に千円、二千円しか渡さないというような状況で、経済的な暴力をする。さらには、事業もうまくいかないので、身体的暴力も加わる。さらには、その夫さんは結局事業がうまくいかないので多重債務も抱えていたというようなことで、逃げ出してきた。でも、夫さんが謝るので一度は戻ったが、また暴力が重ねられ、やはりもうシェルターに逃げ込むしかなかった。そんなような方がたくさんいらっしゃいます。

 現代の社会の変化とか働く状況の変化が、家庭をも立ち行かなくしている。離婚が家庭を崩壊させているのではありません。その前に、社会の状況が家庭を崩壊させているというふうに私は思います。

 では、離婚した後はどうなのかということなんですけれども、まず、日本の母子家庭のお母さんがどれだけよく働いているかということを知っていただきたいと思います。

 日本の母子家庭の母は、約八五%が働いています。これは世界一と言ってもいい数字です。スウェーデンやイギリスよりもずっとよく働いております。本当に誇っていい数字ではないかと思うんですが、全然番付には出てきません。

 しかし、仕事といっても、パートや派遣の仕事しかありません。十万円とか十五万円のお給料しかもらえないのです。十年前、一九九八年に、常用雇用で働く母子家庭の母は五〇%を超えておりました。約半分。ところが、五年後の二〇〇三年には三九%に激減。これは一体どういう変化だったのでしょう。日本の中で雇用が本当に大きく変わったということです。そして、二〇〇六年には四二・五%に回復したんですけれども、そのまま低いままで、就労収入はわずか百七十一万円です。

 家を持っている母子家庭のお母さんは少ないので、民間アパートを借りますので、家賃は七万円、八万円となります。十四、五万円で七万円の家賃を払う、この生活であります。私の二十数年前より家賃だけ高くなっている、そういった状況です。

 ですから、児童扶養手当が月額約四万円支給されるということで、かつかつ暮らしている。しかも、正社員になってお給料が上がる道というのは、パートあるいは派遣の方にはなかなかチャンスがないわけです。ですので、五年後に削減ということが二〇〇二年に決まったときには、私どもはとてもびっくりいたしました。

 では、職業訓練をすれば就労収入は上がるのでしょうか。

 私の会員で、七歳、五歳、三歳の子供を抱えて、実家の借金があって離婚したOさんのお話をいたします。

 Oさんは、仕事がなかなか見つからなかったので、おすし屋さんで昼間のパートをしました。そして、保育園にお迎えに行きます。そして、子供を三人寝かしつけた後、またそのおすし屋さんで夜中にバイトをしました。そうしますと、お子さんは小さいので、起きてしまうんです。それで、携帯でお母さんに電話してきます。ママ、どこにいるの、ママ、どこにいるの。そんな中で、彼女は医療事務の通信講座も受けていたんですが、やはり夜中に帰ってから勉強するというのは長続きしないために、体調を壊して仕事をやめたということです。今もうつを抱えておりまして、お電話しても、うつを抱えて大変な状況だということです。

 生活保障とセットでない職業訓練では実効性がないということを申し上げたいのです。

 就労支援がいかに問題を抱えているか、現場を見ていないかということは、この資料、これは二〇〇七年十月二十二日の朝日新聞ですが、予算を消化していない実例ということで配らせていただきましたので、後でじっくりお読みください。

 そういうことで、二〇〇二年に母子寡婦福祉法が改正されて、就労支援が始まったのですが、実効性がなかなか上がっていないという状況なんです。

 そして、二〇〇八年四月から、児童扶養手当を五年以上受給している世帯にはその支給額を最大で二分の一まで減額することとなりました。幸いなことに、私たちはこんなことではとても立ち行きませんという声が国会の皆様にも届いたのか、児童扶養手当の削減、つまり一部支給停止は事実上の凍結ということを決めてくださり、本当にありがとうございました。この場で、与野党の国会議員の皆さんに本当に感謝を申し上げたいと思います。当事者の方も本当にほっとしております。

 ですが、これだけではやはり解決しない問題がございます。

 今どのようになっているかと申しますと、お母さんたちに二月からお手紙が届いております。子供が八歳以上、児童扶養手当を五年以上受給しているお母さんには、「児童扶養手当に関する重要なお知らせ」という書類が届きました。この意味がよくわからなかったんですね。

 あなたは平成何年何月何日において児童扶養手当の受給から五年を経過する等の要件に該当することになります、この場合、下記一または二により必要な書類を提出していただければ何年以降も、ちょっと抜かしますが、同様に児童扶養手当を受給することができます云々かんぬんという、児童扶養手当一部支給停止適用除外事由届出書と関係書類を出せという書類が来たんです。

 みんなびっくりしてしまいまして、削減は凍結じゃなかったの、やはり削減されるんですかという問い合わせが私たちの事務所にたくさん来ました。全然意味がわからないんです。せめて、この書類を出せば児童扶養手当は継続で支給できますよ、そのお知らせですというのがタイトルにあったらよかったんですけれども、「重要なお知らせ」ということだったんですね。それで、泣きながらお電話される方もいらしたり、私どもはもちろん解説文をホームページにアップしておりますので、そこのアクセス数が急増いたしました。それで、いろいろなブログにも、ここを見なさい、ここを見なさいと。ほかに説明がなかったんですね。そういう状況でございます。

 実際には御苦労されたことはよく私は存じ上げております。職場に一々就労証明の証明書をもらうのは大変なので、給与明細書のコピーでもいいですよとか、本当に配慮していただいたところもあるのですが、しかし、現場は混乱しております。事務費はゼロで、自治体の方たちは四分の一の受給者にこの書類を出させるという事業を今行っておりますので、大混乱が予想されます。出さない方は支給停止になり、削減されるのです。こんなことでよいのでしょうか。

 母子家庭のお母さんは八五%が働いています。そして、現況届というのを毎年八月には出しております。ですので、就労所得があるかどうかということは確認されるわけでございます。ですので、こんなに多くの方に書類を出させるような対応はぜひ改めていただきたい。

 そして、こうした混乱を回避するためにも、シンプルに、現在審議されている児童扶養手当の一部改正案はぜひ成立していただきたい、そのように思うわけです。母子家庭の状況が非常に厳しいと国会議員の皆さんが認識されたからこそ、今すっきりと改正していただきたいというふうに思っております。

 今の日本の母子家庭の状況を一言で言うと、五つの貧困にさらされていると思います。経済的な貧困はもちろんです。時間的な貧困というのがあります。子供と過ごす時間がありません。時間も奪われています。さらに、精神的な貧困。精神的なゆとりはありません。そして、健康も悪化して、健康の貧困。そして最後に、教育の貧困です。

 このようなことで、今、次世代育成支援法も審議されておりますが、本当に母子家庭の子供たち、次世代を育成することができるのでしょうか。こうした状況を打開する、最低限、児童扶養手当は支給を続けること、さらに、実効性のある就労支援を行うこと、これが私たちのお願いです。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

吉野委員長代理 ありがとうございました。

 次に、庄司参考人にお願いいたします。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

庄司参考人 今回、政府提案である児童福祉法等の一部を改正する法律案について、御意見を申し上げる機会を得たことを感謝申し上げます。

 時間が限られていますので、次の二点を主にお話をさせていただきたいと思います。

 第一点は、社会的養護についてで、社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会の委員として報告書をまとめた立場から、また私は、乳児院に心理指導員として十四年間勤務し、また、里親として約二十五年の経験を有していますが、そのような経験を踏まえて、社会的養護について意見を述べさせていただきたいと思います。

 そして、第二点として、家庭的保育については、恩賜財団母子愛育会、日本子ども家庭総合研究所で家庭的保育のあり方に関する調査研究を行っています。その立場から意見を述べさせていただきます。

 最初に、社会的養護についてですが、これまでの経緯あるいは見直しの必要性について考えてみますと、社会的養護体制は、戦後、戦災孤児対策として制度化されたものです。しかし、今日では、社会的養護を必要とする子供の増加、虐待など子供の抱える背景の多様化などが指摘されており、このような状況に適切に対応することが必要です。

 このような課題を整理し、今後の方向性を検討するために、平成十九年二月から、今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会が開催され、五月に中間取りまとめを報告しました。また、平成十九年六月に成立した児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律の附則において、社会的養護体制について見直しを進めることが規定されています。平成十九年八月に社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会が設置され、十一月に報告書が出されました。そこでは、現行の社会的養護体制では今日の状況に十分対応できるだけの質、量を備えているとは言いがたく、その拡充は緊急の課題であると述べるとともに、未来を担う子供たちの健やかな育成を支援する次世代育成という観点から、より多くの社会的資源の投入が求められていると述べられています。

 今回審議される本法案は、検討会、専門委員会の取りまとめを踏まえたものです。今回の改正では、社会的養護の質の向上、量的な整備を図るものですが、今回の改正のみならず、引き続き、質の向上、量的な整備を図るための取り組みを進めていくことが必要です。

 以下、今回の法改正の具体的な内容について意見を述べたいと思います。

 まず、里親制度の見直しについてですが、子供の養育においては、家庭的な環境のもと、地域の中で養育を行うことが望ましいことは言うまでもありません。したがって、里親制度は家庭的養護の有効な手段として推進することが重要です。しかし、里親制度はこれまで十分発展してこなかったわけです。それには多くの理由が考えられますが、その一つに養子制度との混同があると考えます。

 一般には、里親といえば、養子縁組を前提としたものという印象が強く、乳幼児を長期に養育するものと考えられることが多いのです。十八歳までの要保護児童全体を対象とする養育里親に対する理解が進んでいないことなどを踏まえ、現在は同じ制度の中で混在している養子縁組を前提としている里親と、いわゆる社会的養護の担い手としての養育里親を制度上分けることは、意義があると考えます。

 社会的養護の担い手となる養育里親については、これまで研修受講が義務とはなっていませんでしたが、研修受講の義務化と研修の充実が不可欠だと考えます。

 里親に対する支援の充実も重要で、これまで児童相談所が主に担ってきたわけですけれども、これから、児童相談所が行ってもよいわけですけれども、他の機関でも里親に対する相談などを実施できれば、これを活用することも考えられます。

 次に、いわゆるファミリーホームについてですが、既に、四人から六人程度の子供が里親家庭に委託される里親ファミリーホームが幾つかの地域に見られています。

 このような形態は、子供同士の関係を築きつつ家庭的な環境のもとで社会的養護を提供できる、施設型のグループホームとは異なり養育者が交代することがない、一組の里親が複数の子供を養育することになるため支援の充実が必要といったことがあることから、今回制度化を図り、支援の充実を図るとともに質を確保することが重要だというふうに考えます。

 ただし、第二種社会福祉事業として位置づけられるものではありますが、子供を親から離し措置するものであり、事業開始、指導監督等について基準あるいはガイドラインを設けることが必要だと考えます。

 次に、地域における家庭支援の充実についてということですが、親子分離まで至らないケースや家庭復帰後の支援など、地域で家庭を支援できる体制の整備が必要です。

 このため、都道府県のみならず、市町村における相談体制の充実を図ること、要保護児童対策地域協議会の協議対象の拡大や、相談先などのチャネルをふやすこと、児童家庭支援センターの施設附置要件の廃止、指導委託先を児童家庭支援センター以外の機関にも拡充することが重要です。

 次に、自立支援策の拡充については、社会的養護のもとにいる子供は、施設等を退所し自立するに当たって、保護者からの支援を受けられないことも多く、このような子供たちに対する支援の拡充を図ることは重要です。

 施設を退所した後、就労について相談を受けながら共同生活を送る自立援助ホームにおいて、一人で暮らすための力をつけるまでの間の支援を受けることができることは重要です。このような重要な役割を担っている自立援助ホームに対する支援の拡充を図ることが必要だと考えます。

 また、一人で暮らしているなど、自立している子供であっても、さまざまな悩みを相談できるよう、施設退所後の子供たちが気軽に集まったり相談できるような場所があることも意義があると考えます。

 次に、施設内虐待についてですが、保護者などから虐待を受けた子供たちを保護する場所である施設などにおいて、子供たちに対しさらに虐待を行うことはあってはならないことです。

 今回の法案に盛り込まれているような諸施策により、施設の閉鎖性を打破していくことを含めて、施設内虐待が起こってしまった後でも、適切に対応し、速やかに子供を守ることはもちろんのこと、施設内虐待を防止するための対策を行うことは非常に重要だと考えます。

 また、このような取り組みと並行して、施設における子供へのケアの改善を図るための体制整備を図ることも求められます。

 次に、社会的養護に関する量的な整備と自治体間格差の解消についてです。

 虐待の増加などにより、社会的養護を必要とする子供は増加しています。このような子供たちに適切な保護を行うため、施設や里親の量的な拡充を計画的に進めることが必要です。全体的な量が不足しているだけでなく、地方自治体の間の格差も大きいというふうに言えます。

 施設や里親、ファミリーホーム、自立援助ホームなどの量的整備のほか、人材育成なども含め、社会的養護全体の質の向上、体制整備を図るための指針を国において示し、これに基づいて各自治体において適切な整備を計画的に進めることが必要だと考えます。これにより、地域間格差を減らし、どの地域においても適切な支援が行えるようにすることが重要です。

 今回の見直しについては、平成十五年に社会保障審議会児童部会に設置された社会的養護のあり方に関する専門委員会以後の改革を踏まえ、社会的養護のさらなる質及び量的な整備を図るため必要なものが行われているものと評価します。

 しかし、職員配置基準など施設の養護体制や施設機能の抜本的な強化などについては、今後、十分実態を把握しながら、どのような方策が必要かを検討する課題が残されており、引き続き、その充実に向けた取り組みを進めることが必要だと思います。

 家庭的保育事業についてですが、家庭的保育事業については、この後、福川先生が詳しくお話しになるかと思いますが、家庭的保育事業は、保育者の居宅等で主に三歳未満の少人数の乳幼児を対象に小規模で行われる保育です。一時的な預かりではありません。現在、国庫補助事業としての家庭的保育事業と、地方自治体による単独事業があります。

 子育て家庭の多様なニーズに対応していくためには、さまざまな保育の選択肢が用意されることが必要で、昨年十二月に政府において取りまとめられた子どもと家族を応援する日本重点戦略においても、一定の質の確保された保育サービスの量的な拡大を可能にする提供手段の多様化のための家庭的保育の制度化が盛り込まれたところです。

 家庭的保育事業の拡充に当たっての考え方は、先ほど述べましたように、家庭的保育は、一時預かりではなく、まさに保育の一形態です。また、ゼロ歳児と、一歳児、二歳児というように、異年齢の、動きや生活が違う子供たちを保育する場合も少なくないのです。このため、質と量のバランスというよりは、質の確保を十分に担保した上で量を拡大していくという観点が必要だと考えます。

 家庭的保育のメリット、デメリットについては、既にいろいろ述べられているので、ちょっとここでは略させていただきます。

 家庭的保育の普及、定着を図るための具体的な方策としては、次のような課題に取り組むことが必要だと考えます。

 家庭的保育の法的位置づけを明確にし、安心して利用できる制度にすることが重要です。その際、保育の質を担保するため、家庭的保育者の資格要件は保育士を原則とすることが望ましいと考えます。一方、現在は、保育士等以外にも資格要件を広げて地方単独事業で実施している自治体もあることから、一定の研修受講により家庭的保育者として認定を受けられるような仕組みを整備することも必要かと考えます。また、保育士資格を有していても、保育所保育とは異なることから、家庭的保育についての研修は不可欠だということを強調したいと思います。

 安全性や質の確保の観点から、事業の実施基準や保育内容、研修等のガイドラインが必要です。

 また、家庭的保育のデメリットである密室性や孤立を克服し、家庭的保育者が安心して保育に従事できるようにするための適正な処遇や、家庭的保育者と保育所との合同研修の実施など、家庭的保育者と保育所との連携を強化し、家庭的保育者に対するバックアップ体制を整備することが必要です。こうしたことは、利用者の安心にもつながると考えます。

 市町村、保育士養成施設等での家庭的保育を担う人材、保育士OB等の教育、研修のシステムの充実が必要だと考えます。

 また、市町村において継続的に実施できるよう、家庭的保育に対する安定的な財源の確保に努めることが必要です。

 保育サービスの一つとしての家庭的保育事業に対する認知度を高め、利用の拡大を図るために、家庭的保育のよさが認知されるよう、この制度の意義を、あらゆる機会や広告媒体を活用して普及啓発を図ることが必要であり、また特に、保護者、保育所職員、保育士養成校の学生などへのPRの強化が必要だと思います。

 また、保育ママという通称で行われていますが、これについては検討をしていただきたいと思います。子育て経験があればできる、保育の専門的な活動ではないというふうに思われかねないと思います。

 このような課題を踏まえながら、本法案の成立により、家庭的保育の一層の普及促進が図られることを期待します。その際には、先ほども述べたとおり、保育の質を確保するための方策を講ずる必要があることに留意したいと思います。

 以上です。(拍手)

茂木委員長 ありがとうございました。

 次に、福川参考人にお願いいたします。

福川参考人 福川でございます。本日、このような場で発言を許されましたことを大変感謝しております。

 私は、世田谷の家庭福祉員に子供を保育していただきながら、保育者養成校で仕事を続けてまいりました。ちょうど子育ても終了するころ、一九九〇年に、実は、東京都の家庭福祉員に対して児童福祉審議会が、高齢化その他の理由でもうこの制度は必要ないのではないかというような否定的な答申が出されたことをきっかけに、親たちが立ち上がり、さらに保育者たちが横の連携をとって、初めて自分たちの位置を考える、そういう運動が登場いたしました。

 私は、自分がお世話になったということもありまして、保育者たちと一緒に今日まで、この家庭的保育の充実発展に一生懸命協力をしてきた者の一人でございます。

 今も、全国家庭的保育ネットワークという組織が、NPO家庭的保育全国連絡協議会という名前で結成され、全国の家庭的保育者たちが手をとり合って、この制度の充実に努めております。

 ヨーロッパ各地あるいはアメリカなんかでも、この家庭的保育はかなり広く普及しております。三歳未満児の子供たちの保育ということで、公的な統計にはあらわれない、非常にインフォーマルな形態での保育として世界にも普及しているわけです。

 実は一九九五年に、かつて、ヨーロッパのECと言われるその組織の中の男女平等を推進するための委員会の中に、保育に関する専門家ネットワークというのがつくられまして、その方々がこの三歳未満の保育の状態を調査し、報告した報告書がございます。その中で、家庭的保育をファミリーデイケアという名前で各国の状態を報告され、そして、男女平等の観点からも、また子供の保育という観点からも、この保育に対する調査結果と勧告というものをお出しになっております。

 その中では、この仕事が非常に女性の仕事に限定されがちであり、さらに、非常に低賃金であり、労働条件も非常に悪い、また、昇進の機会もなく、仕事の重要性の割には非常に恵まれていない仕事なんだということが報告されております。私は、その報告書を読んだときに、まさに日本の家庭的保育者が置かれた状態も、本当にそっくりだなというふうに思いました。

 しかし、日本の場合には、自治体が制度をつくって補助事業として始めたというところに、ヨーロッパ各地の、自然にといいますか、保育園がないために、保育のチャンスとして保育ママと言われる形で普及したのとはちょっと違っていることを御認識いただきたいと思います。

 配付資料をお渡しいたしましたが、横書きの「家庭的保育のあり方に関する調査研究より」という資料と、それからもう一つは、「児童福祉法改正〜家庭的保育事業について〜」という縦の用紙がお手元にあるかと思いますので、ごらんいただきながらお聞きいただきたいと思います。

 日本の場合には、一九六〇年から七〇年代のときに、保育所保育に乳児保育が足りないというところで、乳児保育の補完としてこの事業は各自治体で始められました。そして、国の事業は二〇〇〇年から国庫補助事業として開始されております。

 待機児童対策として進められてきたこの事業、また、乳児保育の補完として進められてきた事業でございますけれども、最初は、自治体は、乳児保育、特に産休明けからの保育というのをこの家庭的保育に頼ってきたわけですけれども、最近の調査、二〇〇七年に、先ほどの庄司先生を担当研究者として日本子ども家庭総合研究所でやってきました研究会の中での調査結果によれば、地方自治体は、乳児保育の補完もさることながら、多様な保育ニーズに対応するさまざまな選択肢の一つとしてこの家庭的保育を位置づけたい、そういう考えが多数派を占めておりました。

 この横書きの資料の二ページのところに、実施する自治体の特徴、自治体における家庭的保育の必要性、そして家庭的保育を強化充実するための条件、先ほど庄司先生もお話しになりましたが、そういうことが載っております。

 また、児童福祉法の一部を改正する法律案の参考資料の百二十二ページ、百二十三ページ、百二十四ページには、地方自治体における家庭的保育の取り組みについて、幾つかの調査結果が載っております。

 実は、国の補助事業としての家庭的保育事業はなかなか普及しておりません。今でも十数カ所の自治体が取り組んでいるだけでございます。そのほかは、圧倒的に地方自治体の単独事業として行われてきた。その方が早く行われてきたために、その枠組みの中で単独事業として行われてきておりますので、それと国の補助事業としての枠組みとが整合しないということもあって、取り組みがおくれております。

 そして、「家庭的保育実施の問題や課題」ということで百二十三ページにグラフが載っておりますけれども、その中には、家庭的保育者の募集をしてもなかなか応募がないとか、それから、ここにはちょっとあれですけれども、なかなか資格が厳しいというようなお話も、看護師と保育士の資格しか国の事業は認めておりませんので、今までの単独事業の中で認めてきた資格よりも厳しい、そういう御意見もございました。

 しかし、家庭的保育の質を確保するためには、先ほど庄司先生も大日向先生もおっしゃいましたが、保育者の資格要件というのは実に大切なことだというふうに思っております。

 そういう意味では、家庭的保育というものを法律で位置づけて、しかも資格要件もしっかりと位置づけて、そして、その家庭的保育のさまざまなデメリット、この資料の一ページ目のところにありますけれども、保育者個人の資質や人間性の影響が大きいとか、密室性であるとか、保育者が孤立しやすいとか、休暇の取得が困難であるとか、そういうさまざまなデメリットを解消する方向でいろいろ努力をしなければならないというふうに思います。

 本日、私が申し上げたいことは、縦の資料にございますが、保育者の資格要件のところでございます。

 庄司先生もおっしゃいましたが、やはり基本は、保育士の資格ということをベースにしていただきたいと思っております。つまり、補完とはいえ、法律に書き込まれるわけでございますから、基本的には、子供たちの児童福祉の観点からすれば、保育所保育と同等のレベルの保育の質を確保したいと思います。その点では、保育者の資格要件もそれに準ずる形で保障することが必要だと思っております。

 家庭的保育は、保育所保育にまさるとも劣らない力量が必要でございます。少人数の低年齢児の保育という、実は大変苦労の多い、そして一人ではなかなか難しいような保育でございます。園長から雑役まで全部一人でこなさなければなりません。ですから、むしろ保育所保育の助け合いでカバーできない部分、それはとても大切な部分でありまして、保育士資格プラスアルファの研修でちょうどいいというふうに私たちは思っております。

 しかし、独自事業で自治体が行ってきた中には、自治体独自の研修で認定して保育をやっていただくというスタイルもあります。それを今後もずっと認めるかというところで、私は、ぜひその方々にも、保育士の資格を取得するチャンス、あるいは保育士と同等のレベルに自分の質を高めるチャンスを与えて、将来的には、保育士の資格プラスアルファ、そういう資格で家庭的保育の資格要件を定めていきたいというふうに意見を申し上げたいと思います。

 卒業生の就労調査なんかを見ましても、この事業が自分の職業選択の可能性にもなる、そういう調査結果も出ておりますので、今まで資格を持ちながら家庭にいるという方々にも、職業的に確立できる条件が整えば、その方々もこの仕事に携わってくださるのではないかというふうに思います。

 さらにもう一つは、二ページ目なんですけれども、保育補助者が非常に大切なものになってまいります。一人で三人ぐらい保育できるだろうと思われるかもしれませんが、ゼロ歳、一歳、二歳、あるいは二歳が三人、一歳に二歳、さまざまな年齢の組み合わせで、しかも大変目の離せない時期に、その三人を一人で保育するのは実は大変なことです。資料にも載せましたように、かなり昔から保育者たちは補助者の要求をしております。ぜひ、一人保育であっても補助者を認めていただけるような、そういう形で自治体にも進めていただきたいというふうに思っております。

 さらに、地方自治体の支援ということ。一人で孤立して保育をするというスタイルでありますので、サービスを届けるアウトリーチ型の支援あるいはバックアップの責任、その他のことについての地方自治体のバックアップ、そういうことが大変必須の仕事であるということを申し上げておきたいと思います。

 さらに、児童福祉の観点からいえば、保育は責任のある大変重要な問題でありまして、単に利潤をもうけるような企業型の保育にお任せという形ではなく、やはり地方自治体がきちんと公的な責任を果たしていただきたいというふうに思っております。

 この家庭的保育事業は待機児童対策の一つでもありますけれども、決してそれに終わることなく、保育所保育を充実させながらこの保育も発展させていただきたい、そういうふうに思っております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

茂木委員長 ありがとうございました。

 次に、森田参考人にお願いいたします。

森田参考人 東洋大学の森田明美と申します。今回は、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、今回、資料を用意いたしましたので、それに沿ってお話をさせていただこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

 私は、三つの立場から、きょうの議論に対して意見を申し述べさせていただこうと思っております。

 一つは、私は、社会福祉学科に長く所属いたしまして、児童福祉を専門にしてまいりました。とりわけ母子世帯の自立支援のためのさまざまな、日米とか海外との比較調査をやってまいりました。最近ですが、ちょうど二つの調査をいたしまして、その結果をもとに、母子世帯の自立のためには児童扶養手当というものがどれほど重要なものなのかということについて申し述べさせていただきたいというのが一点ございます。

 それから二点目は、私は、地方自治体の中で、先ほど来お話がございます次世代育成支援の行動計画等ですが、ここ十五年ぐらい、子供にかかわる、あるいは子育てにかかわる計画あるいは条例づくり、そしてまた、その実施や評価というものにかかわってまいりました。その視点で二点目は申し述べさせていただきます。

 それから三点目ですが、私も幾つかのNPOあるいはNGO等で、子供にかかわる、あるいは子供の権利の実現にかかわる実践をしております。その立場から、今回の二つの法律に関して意見を申し述べさせていただこうと思っております。

 まず、きょうはちょっと分厚い資料を用意させていただきました。もともとはこういう形で報告書を、実は昨日、印刷の方ができ上がってきたばかりなんですが、その報告書自体としては三月にでき上がりましたが、生活保護を受給している母子世帯の自立支援というものが今自治体の中で非常に大きな課題になっておりまして、ちょうど国の方の補助金をいただきまして、私どもの研究室等と一緒になりまして、千葉県の八千代市と共同で行いました調査結果でございます。

 後の方にその概要を載せておきましたので、大変小さくて見にくくて申しわけございませんけれどもお読みいただくということで、このレジュメの二ページ目のところに、この調査で明らかになった五年目の母子家庭の姿というのをざっと出させていただきました。ちょっとごらんいただきたいと思います。

 母子家庭になって、もちろんいろいろな年齢で母子家庭になるわけですけれども、四年から六年目ぐらいのときにあなたはどんな状態でしたかという質問を各年度ごとに出してみたわけです。そうしますと、平均的な姿が見えてまいりました。

 実は、千葉県の八千代市というのは人口が十八万強です。御存じのように、東京から大体一時間ぐらいのベッドタウンで、今も若い夫婦たちが子育てをしている自治体でございます。ここ十年余りですが、生活保護を受給する世帯、とりわけ母子世帯の割合がふえてきている自治体でもございまして、母子世帯全体の支援というものを強めながら、生活保護も含めた自立支援というものをしていこうという、そのための基礎調査でございます。

 この調査の中で明らかになった姿としましては、年齢が大体三十七・八歳、高校卒、そして、先ほど赤石さんから報告がございましたけれども、ここでは、この時期になりますと、大体九〇%を超えるお母さんたちが働いていらっしゃいます。そのうち正社員が約三分の一、パートは半分という状態です。子供が大体小学校の高学年、十一・五歳ぐらいですので、大体小学校の六年生ぐらいですね。そして、約半数が小学生で、中学生、高校生というところも三分の一ぐらいいるという状態です。

 それで、一番問題になります所得ですけれども、手当を含む収入ですが、ここにありますように、給与所得が十四万円強、そして児童扶養手当、これはもちろん個別に家庭の状態によって違いますけれども、約三万五千円ぐらい、そして、いろいろ話題になっております養育費というところでは二万三千円ぐらい。これが今、大体、母子家庭が一カ月暮らすときに、五年目ぐらいの母子家庭が得ているお金ということになります。ごらんになっていただくとおわかりになるように、大体二十万円強ぐらいのお金になります。

 もちろん、養育費をもらっている世帯というのは半数ぐらいですので、もらっていない世帯に関しましてはぐっとこれが減りますし、それから、児童扶養手当が占めている位置というのが、大体所得の二割ぐらいを占めているということがおわかりいただけると思います。

 私が大変重視いたしましたのが、この調査自体は生活保護を受給している母子家庭と児童扶養手当を申請した母子家庭全般を調査いたしましたので、比較してみると大変特徴的な状況が見えてくるわけですね。それを一応、二ページのところの、「生活保護受給母子世帯の傾向」というところに四点まとめておきました。

 実は、先ほど赤石さんが、五つの貧困が母子家庭の中にあるというお話をされていましたが、私の調査結果の中でいうと、ここにありますように、子供の父、親族、近隣、すべてのところからの支援が非常に弱くて、孤立化が激しい状況にあるということ。そして、実は、その後のデータを見ていただきますと、非常に特徴的なことが見えてまいります。

 三ページから後にずっと資料が出ておりますが、私、一番特徴的だと思いましたのが、六ページをごらんいただきますと、親族からの支援というのは、母子家庭になった当時も、そして今も頼ることができないというのが三分の二いらっしゃるわけですね。そしてまた、体調も大変悪い。

 そして、七ページに行きますと、子供の成長状況ですが、七ページの一番上のところに三つ目のデータで出ておりますが、生活保護を受給している母子の中では約七割の子供たちがきちんと通学しているという状態ですが、逆に見ると、三割が通学できていないという状態が見えてくるわけです。あるいは、児童扶養手当の申請をした母子の中でも約二割近い子供たちがきちんと通学できていないという状況があります。つまり、生活が非常に厳しい中で、子供たちに確実に影響が出てきているということなんですね。

 そうした意味で、児童扶養手当を受給し続けるということが、少なくとも、生活保護という最後のセーフティーネットに行く前の段階として非常に重要な政策であるということを申し上げたいというのが一点でございます。

 なお、この点につきましては、本日は資料をつけさせていただきましたが、ちょうど今から二年ほど前に、日本とアメリカと韓国とデンマークの四カ国の母子家庭を実際にヒアリング調査して比較研究をいたしました。その中でもほぼ同様な日本の状態が出てきておりまして、日本の中で非常に母子家庭施策というものが重要であり、次世代の支援のためにはこの拡充というものが欠かせないものであるということが明らかになっております。

 それから、児童福祉法審議について、私のかかわっておりますところから簡単に申し上げさせていただきます。

 私は、児童養護施設を運営しております社会福祉法人の評議員もいたしております。それからまた、里親の認定という県の審議会にもかかわらせていただいて、こういったところで何が一番今重要なのかと申し上げますと、やはり自治体レベルでこういった施策を展開していくときのサポート体制、とりわけ青年期の子供たちが大変生きにくい社会にあって、こうした社会的養護を必要としている子供が青年期を生きるということはなお大変な状況であるということが一点でございます。

 それから、家庭的養護というのは、実は国連の子どもの権利委員会、ちょうど四月の二十二日に第三回の政府報告書を日本の外務省が国連に向けて出したところでございますが、この国連の子どもの権利委員会からの最終意見というので、第一回、第二回で出されております意見書の中でも、日本のこうした家庭的養育というものに対する支援が非常に弱いということが指摘されておりますけれども、こういったものをするときに非常に重要な視点は、子供の権利侵害をどう未然に防ぐことができるかという問題だと私は思います。

 そうした日本の中で欠けている点について今回法律によって位置づけていく、とても大切だと思いますが、なおもう一つ非常に欠けている点がございます。それは、最後のところにまとめさせていただきましたが、子どもの権利委員会第一回あるいは第二回の政府報告書審査の際に出された最終意見での国連からの指摘事項でございます。ここでは日本が、権限を持っている、あるいは包括的に計画を審議したり、あるいは計画をつくったりする、そういった省庁が日本の中にない、あるいは力が今のこの状況の中では非常に弱いということが指摘されております。

 それからまた、今回の二つの法案を見ますと、具体的には、母子家庭の児童扶養手当を五年後に削減するという原案をつくりながら、なおかつ児童福祉法では拡充していくという、ある意味では非常に自己矛盾した政策がとられているというふうに考えざるを得ません。この中に一番大事な点が、やはり私は、子供の権利を中心に置いた総合的な法律、理念というものが日本の中に不十分であるということを申し上げておきたいと思います。ぜひとも、今後、国会の中で、こうした総合的な法律あるいは総合的な施策を考えていくそういった省庁の創設ということも、御検討いただけたらと思っております。

 その一つの案として、実は各自治体ではもうかなりそういった取り組みが進んできております。今回、四月の二十二日に出されました国連への第三回の政府報告書の中でも、実はこの取り組みについては各地方自治体がさまざまな取り組みをしているということで、国の報告はなくて、そして、それにかわって、自治体での取り組みということが個別に提案されている状況にあります。ぜひ一度お読みいただきたいと思います。

 その中で、私のかかわっておりますこうした自治体でも、近年、子ども部でありますとかあるいは子育て支援部、あるいはそれ以外の名称でもございますけれども、そういった総合的な行政の担当部署、あるいは法律も、子供の権利に関する条例とかあるいは子供条例とかといった、さまざまなそういった取り組みが基礎自治体のところで行われるようになってきております。

 ぜひ国の方でのこうした取り組みも検討していただければ、子育て支援というところで子供たちのことが置き去りにされてはいけません、そうした意味で、ぜひとも子供の権利の視点に立った総合的な施策の検討もこの延長線で行っていただきますように、よろしくお願いいたしたいと思います。

 以上です。(拍手)

茂木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高鳥修一君。

高鳥委員 おはようございます。自由民主党の高鳥修一でございます。

 参考人の皆様におかれましては、本日は貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。ぜひ今後の児童福祉政策の参考にさせていただきたいと存じております。

 さて、この週末、私は地元の児童養護施設、新潟県上越市に若竹寮というのがございますけれども、約一年ぶりに訪問いたしまして、お話をお聞きしてまいりました。入所児童というのは相変わらず定員ぎりぎりの四十九名でありまして、定員は五十名でありますが、ほぼ満杯の状況でございました。事情があって親と暮らせない子供たちが依然多いという状況は、改善をされておりません。

 さらに問題なのは、入所児童の中身が変わってきたということであります。四十九名の児童のうち十二名でありますから、約二五%が何らかの発達障害児であり、その比率が昨今高まってきているということでございます。小学生だけで見ると、十九名のうち七名ですから、約四割近くがADHDなど何らかの発達障害児であるということでございます。

 親と一緒に暮らせなくなった経緯というのはさまざまでありますけれども、中には、親と一緒に車の中で放浪生活をしていたような子供もおりまして、学校に通っていなかったために、同じ年齢の子供の学年に入れない、勉強もおくれがちでありまして、めぐりめぐって就職の際にも困難が伴います。結果的に不幸な境遇から抜け出せない子供がいることは事実であります。

 子供がいわゆる負の連鎖から抜け出すには、学習支援と就労支援が不可欠でありまして、学習支援については、地元の上越教育大学の学生による有償ボランティアをお願いして力を入れているということでありました。

 ところで、施設生活が長引くと常識が身につかないと言われております。例えば、施設では給食を、食中毒等の観点から食べ終わったら残り物は捨てております。次の食事には次の献立が出るわけであります。親戚の家にある日泊まりに行って、実は、行った子供がすぐ帰ってきてしまったというんですね。それはなぜかというと、ここのうちは変なうちだ、前の日の残り物を翌日も食べるのは気持ちが悪い、こういうことを言って戻ってきたそうであります。

 ですから、できるだけ家庭的環境に近い形で養育ができた方がよいと思います。養育里親、親族里親、祖父母等も家事ヘルパーなどの援助があれば育てられるケースもございます。

 そこで、まず庄司参考人にお伺いをいたします。

 先生が以前お書きになられました論文にも、今ほど私が申し上げた児童養護施設の給食と全く同じ事例が出ておりました。先生は、里親自身がみずからの体験に基づいてそのすばらしさや喜びを語ることが、今後、里親に対する理解や普及が図られる道であると述べておられます。一方、先生御自身が里親の体験者であるということでございますので、御自身の体験で最も喜びを感じられた出来事、また、今後、里親のなり手がふえ、里親委託が推進されるためには何が必要だとお考えでしょうか。

庄司参考人 私の書いたものを読んでいただきまして、ありがとうございます。

 里親は実は苦労が多くて、何が苦労かというと、やはり、子供の気持ちや行動が理解できない、子供とのかかわりが持てない、あるいは攻撃的な言動にさらされる、そういったときではないかと思います。先ほど発達障害児の話がありましたが、こういった子供たちとのかかわりはなかなか持ちにくいわけで、そういった子供は里親のもとでもふえてきています。また、児童相談所との連携がうまくとれないというときも、大変に思います。

 ただ、苦労は多いわけですけれども、これまで里親を続けてきましたし、そういった里親さんが多くいるということは、やはり何物にもかえられない喜びがあるからだろうというふうに思います。

 私自身は、乳児院に勤めていましたので、赤ちゃんからは余り人見知りをされないんですけれども、うちで預かった子供の場合に、やはり人見知りをされてなかなか懐かなかった。一カ月たったときに、初めて子供の方から両手を上げてだっこされに来たんですね。このときは感激しました。子育てのいろいろな場面での喜びということもありますけれども、やはり、こういう里親ならではの喜びというものがあって、そういったことが里親を続けさせることになるんだろうというふうに思います。

高鳥委員 ありがとうございます。

 引き続き先生にお伺いいたします。

 先ほど申し上げたとおり、児童養護施設で多くの子供たちが生活をしておりますが、施設の現状については今後どのような見直しが必要とお考えですか。これが一点。

 それからもう一つ、社会的養護のもとで子供たちが自立していく、私は先ほど負の連鎖から抜け出すと申しましたが、自立していくためにはどのような支援が必要だとお考えでしょうか。

庄司参考人 今の二つの御質問、本当に、社会的養護あるいは日本の社会の根本にかかわるような非常に大事な御指摘だと思います。

 施設については、やはり何よりも施設環境の整備ということが重要ではないかというふうに思います。児童養護施設は、子供の年齢によって職員配置の基準が違っていますけれども、小学生以上だと一人の職員が六人の子供を見るという形で配置されています。一対六ですね。これできめ細かい対応ができるというものではないですね。職員は交代制勤務で働いていますし、夜勤等もあるわけです。

 それから、新潟のところはどうかわかりませんが、多くの児童養護施設、それから母子生活支援施設なども含めて、子供関係の施設は建物、設備が非常に老朽化している。それから、児童養護施設では、中学生、高校生になっても個室が用意されていないところもあります。そういう職員配置基準とか建物関係の整備ですね。ある施設にいる子供から、一人で泣ける場所が欲しいということを聞いたことがあります。

 社会的養護を受けるようになったこと、施設に入ったり里親のもとに来ることになったのは、子供の責任ではないですよね。それなのに、私たちは子供たちに最低の生活しか提供できていないのではないかというふうに思います。本当にそのようなことでいいのか。むしろ、子供にとって必要な環境、こういった子供たちだからこそ、こういった環境にあるからこそ必要な環境整備をしてほしいというふうに思います。

 そのためには、やはりお金がかかるわけで、これはぜひ、先生方のお力で、財政面の抜本的な見直しというものを行っていただきたいというふうにお願いします。

 それから、社会的養護のもとでの子供の自立の問題、これは森田参考人もお話があったかと思いますけれども、一つの考え方として、自立の問題は十八歳になったときの問題ではないという面があります。やはり乳幼児期からの、あるいは社会的養護を受けている全期間を通しての育ちというものが重要だと思います。そういった意味では、乳児院、児童養護施設の環境整備で、人との信頼関係を結んでいく、困ったら助けてもらえる、そういった経験を持つことが大事なことだというふうに思います。

 それから、自立を迎える時期の問題としては、やはり、十八歳とかそういった年齢のときに、一般の家庭の子供との差が余りに大きいのではないか。今、大学進学率は、一般家庭の子供ですと五割ですね。専門学校等を入れると七割ぐらいになっています。施設にいる子供の大学進学率はたしか一〇%程度で、専門学校を入れても二〇%程度だと思います。

 先ほどのお話の中で、学習支援が本当に必要だと思いますけれども、自立する時点で一般家庭の子供と社会的養護のもとにいる子供の差が明らかについているというのは理不尽なことであって、公正なことではないですね。何とか自立する時点でハンディがないような形にしてほしいというふうに思います。そのためには、具体的には、大学への進学率とかあるいは高校の卒業率というものを上げていくわけで、そのための学習支援というものがとても重要になってくるというふうに思います。

 それから、自立の後の相談の場なども重要だと思いますけれども、実は、施設を出た後の子供たちの様子というのは余りわかっていないんですね、個別に知っているというだけで。そういった意味では、何らかの実態調査とか追跡調査が必要ではないかというふうに思います。

 それから、自立支援の対策を充実することは大事だし、とても必要なことだと思います。ただ、それを踏まえた上で、施設で暮らした人も、中には立派な社会人になっておられる方もいます。どういう条件が自立にかかわるのかということを考えていくことも必要だと思います。

高鳥委員 ありがとうございました。

 次に、大日向参考人にお伺いをいたします。

 きょう貴重な御意見をお聞かせいただきましたが、その中にもございましたように、本法案というのはまさに改革のための第一歩でございまして、我が国の急速な少子化の流れを変えていくためには、さらに新しい制度体系の構築が必要であるということであります。

 参考人は、この新しい制度体系の構築の意義をどのようにとらえておられますでしょうか。

大日向参考人 子育て支援の新しい制度体系の構築は、子どもと家族を応援する日本重点戦略を受けて検討が課せられているものですが、昨今の少子化の本当の原因を明確に突きとめて、その対策として、まさに重点戦略はポイントを絞ったものとして大いに評価できるものと私は考えております。具体的には、働き方の見直しと地域の保育、子育て支援の充実によって、人々、特に若い世代が希望するライフスタイルを実現できることを目指したものです。

 この重点戦略の指摘を実現するために、現在の次世代育成支援の枠組みを抜本的に見直して、仕事と生活の調和を図って、さらに同時に、保育、地域の子育て支援サービスについて、質と量の両面から大幅な拡充を欠かせないものとしているわけです。

 ただ、先ほども申しましたが、この新しい制度設計には大きな財政投入が必要と考えられております。負担と給付は裏表の関係にございまして、投入できる財政規模によりましては、制度の基本骨格が大きく影響されることも考えられますので、税制改革の動向等を踏まえることも必要かと思います。

 そのためにも、この新しい制度体系に向けましては、利用者、この利用者は、現在子育て当事者であると同時に、これから社会に出て、結婚し、あるいは子供を産もうかと考えている世代も含めた利用者ですが、さらに保育サービス等を提供する提供者、そして地方公共団体、事業主、こうしたそれぞれの立場の方々の意見を丁寧に聞いて、国民的合意を得る必要があると思います。

 そうした丁寧な作業をしつつ、速やかに新しい制度体系の構築を進めていくことが大変重要かと考えております。

高鳥委員 ありがとうございました。

 次に、福川参考人にお伺いをいたします。

 本改正の重要なポイントの一つに、家庭的保育を制度化して、地域の中で受け入れ先をふやすことが盛り込まれております。例えば、保育ママの資格要件を緩和することについては、数か質かという議論になりますが、要件を緩和して数をふやすに当たっては、どういう点を留意する必要があるとお考えでしょうか。御発言の中でも一部触れておられましたが、お聞かせ願います。

福川参考人 家庭的保育を普及するためには、量的な普及を考えれば、資格要件を緩和して、だれでもが何らかの形でなれるという方向と、しかし、保育の質を確保するという点では、そう簡単にだれでもやれるものだろうかと。

 いろいろお話にもありましたように、この家庭的保育は決して一時的な保育ではなく、恒常的な、毎日、しかも三歳未満の、人生にとっては非常に重要な時期を保育するという大変重要な任務をしょう仕事でございます。

 ですから、その質と量のバランスというのはとても難しい問題でもあるのですが、これまでの保育所保育というレベルを考えますと、それと同等の保育の質を確保したいというのは、児童福祉の観点からも当然のことだというふうに考えます。

 ですから、保育士資格をベースにというふうに私は申し上げましたし、庄司先生もそのように、そしてまた研究会の皆さんの意見の中でも、やはり家庭的保育というものを質を確保しながら充実させていくには、なかなかこの資格要件を簡単に緩和するわけにはいかないということがございます。

 むしろ、保育所保育というのは、お互いに助け合って保育を分担し、さまざまな危機も乗り越えることができますが、保育者一人の保育でありますと、これはなかなか、例えば保育者が倒れたときにどうするか。実際に起こったことがございます。そのまま子供が泣いていたという、心筋梗塞か何かで倒れてしまったというようなことも、実はあるんですね。

 そういうことを考えますと、保育者の質というのはとても大切で、健康管理もさることながら、異年齢の三歳未満児の非常に大切な時期を保育するという点では、そう簡単に、私は資格の緩和については余り賛成できない立場におります。

 しかし、自治体では、独自事業として、研修によって認定をするという方向をとっていらっしゃる自治体も幾つかございます。ただ、それは全体の中では非常に少数であるということを申し上げておきたいと思います。

 そして、研究会では保育士資格をベースにということですので、もし資格のない方がやってみたいというふうなお気持ちがあり、子供も好きだしということであれば、保育士に近い研修を行っていただいて、そしてさらに、保育士である人が家庭的保育を始めるに当たっての研修、基礎的な研修というふうに考えておりますけれども、お手元の資料にも載せておいたと思いますが、そういう基礎的な研修、さらに、二年ぐらいたったところで、いろいろ問題を感じるだろうから初級の研修、さらに十年ぐらいたったときに、今度は自分たちがスーパーバイザーになれるほどの、新しい方々にいろいろ教えてあげられるような、そういう立場の研修もしていただきたい。

 そんなふうに、やはり質を高めるという点では、保育者に対する研修体制というのは欠かせないものだというふうに考えております。

 養成校の卒業生の調査にもありましたように、既に資格を持っていらっしゃる方に取り組んでいただくというのも、実は非常に手っ取り早いといいますか、わざわざ資格のない方々に一生懸命研修を自治体がやるとすると、これは自治体にとっては非常に負担になるだろうなというふうには思います。

 ですから、そういう方向も追求しつつ、これからやりたいという方々に対する認定研修といいますか、保育士に近い形の知識、技術を身につけていただく研修というのも非常に重要だというふうに思っております。

 以上です。

高鳥委員 次に、森田参考人にお伺いをいたします。

 本法案においては、働いているか否かにかかわらず、すべての子育て家庭を支援するための事業を法律上に位置づけ、その普及促進を図っていこうとする内容が含まれております。

 森田参考人は、我が国の子育て家庭の孤立感や負担感、みずからを省みて母親の負担感が強いように感じておりますが、それに対する支援の重要性についてどのようにお考えでしょうか。

森田参考人 私も、いろいろな自治体で基礎調査をやってまいりました。世界各国を見ましても、日本の孤立感の中で非常に大きいのは、まずやはり、子育て家庭がお互いに集える場あるいは交流するということが、地域の中で妊娠期からずっと継続してやれるような空間あるいは場というものが十分に用意されていないということ。昔たくさんの子供がいたころには、子育て家庭も多かったわけですから、そういったものが自然に地域の中に成立したわけですが、そういったものが特別に用意されないと、なかなか出会う機会あるいは交流する場というものが形成できないわけです。

 また、昨今、未婚の、あるいは結婚して子供が生まれるまで働いている女性たちが非常にふえてきておりますので、妊娠期に出会うというのも、よほど意識的に施策をつくらない限りは出会えないということになります。

 ですから、出産後できるだけ早い時期に出会う場を用意していこうというような、地域の中での新しい取り組みというのも自治体では始まってきております。そういったものを積極的に活用しながら、孤立感というものを防いで、そして、お互いに支え合っていく社会というものが今重要じゃないかと私は思っております。

高鳥委員 ありがとうございました。

 限られた時間でありまして、赤石参考人には質問することができませんでしたけれども、母子家庭の切実な状況をお話しいただきまして、まことにありがとうございました。貴重な御意見として拝聴させていただきました。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。きょうはどうもありがとうございました。

茂木委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 参考人の皆様におかれましては、きょうはわざわざ国会においでいただき、貴重な御意見をいただきましたことを心から感謝いたします。

 まず初めに、大日向参考人にお伺いをいたします。

 大日向先生、私たち公明党の少子化対策本部においでいただきまして、トータルプラン作成の折には講演をいただきまして、私たちも先生の理念を学ばせていただきました。

 先生は、地域子育て「あい・ぽーと」なども主催をされていまして、こうした支援拠点事業、また、一時預かり事業に長年取り組まれてこられたわけでございます。すべての子育て家庭に対する支援の重要性、また、本法案において子育て支援事業を法律上位置づける意義をどのようにお考えになりますでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

大日向参考人 私は、子育ての基本は家庭であり親である、その家庭であり親が子育ての責任と権利を持つものと考えております。でも、それは、子育ての全責任を家庭、親に託すことではなく、親が親として育っていくことも含めて、社会皆が見守り支えていくことが必要だと思います。

 その意味では、就労の有無を問わず、すべての子育て家庭に対する支援が必要だと考えておりますが、現状の子育ては、私はよく孤独の孤というのを当て字に書きまして、お母さん一人の孤独な孤育てではないかというふうに、常々実態を見て考えております。家族関係がいろいろ変化している、地域のきずなが希薄化している中で、母親が孤立し、育児にさまざまな困難を覚えております。そうした子育て家庭に対して支援をしていく、すべての子育て家庭に対して支援の輪を広げていくことは、重点戦略でも指摘しているとおり、喫緊の課題だというふうに考えております。

 そのためには、子育て支援の基盤を充実していく、多様な主体の参入も今後検討されていくことと思いますが、やはりそこでは一定の質の担保に注力した仕組みづくりが欠かせないと考えております。

 今回の法案では、子育て支援事業を法令上明確に位置づけた、そして、事業実施に際して必要な基準を設ける、行政の指導監督を徹底する、そして、社会福祉事業に対する消費税等の非課税措置の対象とする等、子育て支援事業の普及促進が図られることに大変期待を持っております。

 以上でございます。

古屋(範)委員 私も、大日向先生、親が親として育つことの重要性、これに対する地域全体の支援、非常に重要だと思います。私も、自分が子育てしている過程では、幸運にも周囲に仲間や多くの先輩がいて支えてもらえたわけなんですが、そうであるとは限らないわけでありまして、そうしたものの体制づくり、非常に重要であるということがわかりました。

 続きまして、もう一問、大日向先生にお伺いいたします。

 女性が子育てを心から楽しいと感ずる、なかなかそう思えない母親が多いわけなんですが、また、子供を産み育てたいと思える社会にしていくために、やはり、母親のパートナーである男性の育児参加は欠かせないと思っております。公明党といたしましても、もっと男性が育児休暇が取得しやすいように、できればパパクオータ制というような制度もつくっていきたい、このように考えております。

 本法案では、一般事業主行動計画の策定、届け出の対象範囲を拡大する等、企業の取り組みを促しております。

 大日向先生は、男性の働き方の見直しを含めた今後の企業の取り組みにどう期待をされているか、お伺いいたします。

大日向参考人 男性の働き方を見直して、今以上に男性がもっと育児にかかわることができるということは、一つには、母親の心理的安定、夫婦関係の安定につながるでしょう。また、男性自身にとっても、育児にかかわることによって、さまざまな喜びを得ることができますし、子供との関係も充実していく。さらに、男性がもっと育児にかかわるような働き方ができるということは、女性だけが育児負担を担うということではなく、女性の就労促進につながる、こうしたメリットがあります。

 それからもう一つ、保育や地域の子育て支援の充実という観点から考えましても、働き方の見直しは、まさに車の両輪として非常に大切だと思います。

 例えば一例を挙げますと、私は、病児保育とか夜間保育、長時間保育、現状必要性は大変認めますが、一方で、病気のときぐらいは親が休めるような働き方がやはり必要ではないだろうかと。子育て期の親が育児や家庭生活とバランスのとれた働き方を保障されてこそ、子供の発達、最善の利益というものが保障される、そうした保育が可能となるというふうに考えています。

 ただ、従来は、こうしたことを申しますと、企業にとりましては働き方の見直しはコスト高だ、子育て支援は企業にとってリスクだ、そういうようなことを言われてきたと思いますが、それは発想の転換が必要だと思います。安心して人間らしく家庭生活や地域活動ができてこそ従業員はよりよい仕事ができる、働き方の改革は生活者としての質を尊重することだというふうに発想を変えていただくことが必要だと思います。こうした働き方の見直しによりまして、よりよい人材の確保、さらには生産効率にもつながっていきまして、次世代育成支援は企業にとっても必要だというふうに考えていただきたいと思います。

 従来は、三百一人以上の従業者のいる大企業に行動計画策定を義務づけてまいりましたが、今回の法案で百一人以上というふうに変更を出させていただきました。しかしながら、先ほども申しましたように、中小企業にとってはまだまだ厳しいということもあろうかと思いますので、一般事業主行動計画策定に当たりましては、さまざまな人事担当部門の体制が整っていないところには支援をしていく、あるいは各都道府県労働局や次世代センター等で丁寧に個別相談を行っていく、こういう行き届いた支援をしつつ、働き方の見直しをして、経営者、従業員ともに意識改革を図っていただきたいというふうに考えております。

 ありがとうございました。

古屋(範)委員 私も今、議員立法で仕事と生活の調和推進基本法を作成しておりますけれども、まさに、働き方の改革、また企業の発想の転換というのが非常に重要になってくると思います。そこに対する国の支援がさらに必要となってくるということだと思います。

 ありがとうございました。

 次に、赤石参考人にお伺いいたします。

 先ほども母子家庭の窮状をお述べいただきました。私は横須賀市に住んでおりますけれども、私の周囲にも御苦労されている母子家庭のお母様はたくさんいらっしゃいます。私も、党で母子家庭支援のワーキングチームを立ち上げまして、微力ではございますが、母子家庭の支援に取り組んでまいりました。特に、就労支援ということでテレワークの普及に取り組んできまして、中小企業などにも導入できるような研究開発や税制の創設など、実現をさせてまいりました。

 おっしゃいましたように、日本の母子家庭のお母様は非常に就労率も高く、努力はしていらっしゃる。しかし、なかなかそれが生活の困難とあわせて自立に結びついていきにくいのが現状かと思いますけれども、母子家庭の母の自立支援のあり方について、さらに御要望等があればお述べいただきたいと思います。

赤石参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほども少し述べさせていただきましたが、就労支援で職業訓練などを行う場合には、本当に元手というものがないわけですので、今ある支援では、例えば入学金とか学校に払う費用を先に払って、今二割になってしまったんですけれども、後から戻ってくるというようなシステムとかございますけれども、やはりそれではちょっと難しいかなというふうに思います。ですので、本当にあれかもしれませんけれども、生活を保障する最低限のものと一緒に、職業訓練が行えるようなことが必要かなと思います。

 今ある高等技能訓練促進費という、保育士とか看護師とか理学療法士とか作業療法士とか、ある程度年数のかかる資格を取る場合に、最後の三分の一の期間、十万三千円生活費を支給するという制度がございますけれども、これも、半額でも結構ですので、初めから支給するようなことがありますと、もうちょっと使いやすいかなというふうに思っております。よろしくお願いします。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 やはり、生活の保障と職業訓練、両方両立していかなければいけないという御意見だったかと思います。さらに、現実的に使える、役立てるような制度に改善をしていく必要があるのかなという気がいたしました。

 次に、庄司参考人にお伺いをしてまいります。

 私も川崎市あゆみの会とは交流がございまして、特に西川元会長、また皆様の御意見を伺う機会がございます。養育里親をしていらっしゃる方々、特に難しいお子さんを預かった場合などは三百六十五日心の休む暇がないですとか、あるいは、成人をされても結局相談に来るところはここしかない、それも受け入れてあげなきゃいけない、非常に御苦労されている、そのような御意見を伺っております。

 今回、養育里親と養子縁組を前提とした里親を区別するに当たりまして、養育里親に対する里親手当を引き上げる一方で、養子縁組を前提とした里親に対する里親手当はなくなります。これについて、養子縁組を前提とした里親に対する支援がなくなるのではないかという不安もございます。養子縁組を前提とした里親も、社会的養護の担い手の一つとしてまた重要な役割を担っております。適切な支援とはどのようなものでしょうか、御意見を伺いたいと思います。

庄司参考人 御質問ありがとうございました。

 御質問の中に川崎市あゆみの会という言葉がありましたが、川崎の里親会ですね。今、私が会長をしています。

 養子縁組を前提とした里親の問題は、これは議論のあるところです。里親同士で話しても賛否両論があります。先ほど申しましたように、私自身は、社会的養護としての養育里親、それから養子縁組を前提とした里親とを区別する必要が現状ではあるというふうに考えています。

 今まで、明確な区別がなかったことから養子制度と里親制度は混同されて、里親制度といっても、養子縁組のイメージが多く持たれてきたというふうに考えます。実際に里親制度というと、乳幼児を長期に預かる者、あるいは、児童相談所との連携をしなかったり里親会活動にもかかわらない、そういった方々がおられます。

 そういった意味では、家庭の状況によりますけれども、社会的養護として十八歳までの子供をすべて預かる者というふうに考えて、養育里親を普及していくことが必要だと思います。

 そういった意味で、この区別は必要で、東京都では、たしか昭和四十七年から、養育里親と養子縁組里親を分けて扱ってきています。ただ、養子縁組を前提とした里親さんであっても、やはり適切な支援というのは必要だと思います。

 ただ、今回の法改正で支援が全くなくなるかというと、そうではなくて、里親手当はなくなりますが、一般生活費は支給されます。それから、相談支援は受けられます。親族里親も里親手当は支給されていません。

 そういった意味では、この整理というのは個人的には適当なものだというふうに考えています。

古屋(範)委員 明確なお答え、ありがとうございました。

 次に、福川参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの意見陳述の中でも、家庭的保育の資格要件につきまして、保育士資格を保有することが望ましいという御意見だったかと思います。

 私も、先日、足立区のこうした家庭的保育を行っている御家庭にお邪魔をさせていただきまして、実際にその現場を見てまいりました。そばにお母様がついていらっしゃって、一瞬たりとも子供から目を離さないという、非常に緊張して保育をしていらっしゃるなという気がいたしました。

 特に足立区の場合には、独自の研修システムを導入して、それを修了された方がこの事業をされているということでございますけれども、特に都市部におきましては、多様な保育サービスが必要とされております。働く女性が多い、そして、さまざまな形でのそれに対応した保育というのがどうしても必要となってまいります。足立区においても、こうした家庭的保育のニーズは高いようでございました。

 ですので、子供の安全、そして保育の質の確保、片やニーズが高い、量も必要である、このバランスを先生はどのようにお考えになりますでしょうか。

福川参考人 大変その辺は難しいことだというふうに私も認識しております。しかし、基本的なことを考えれば、やはり、資格要件というのは、子供の保育の質を担保する大変重要な要件としておろそかにできないというところもございます。

 そこで、そのバランスをどうとったらいいのかというところで、現在は、自治体におきましては、足立区なんかは、たしか百二十かそのぐらいの研修時間を課して家庭的保育者の養成をしていらっしゃるということなんですけれども、その辺で研修でいいよというふうに緩めてしまいますと、では、その研修の質はどのくらいになるのか。今でもそういうふうに研修による認定というのをやっていらっしゃる自治体は幾つかあるんですが、その内容はばらばらでございます。もっと短いところもございますし、足立区はそういう意味では長い方に当たるのではないかと思います。その辺では、自治体が研修による認定をするということであれば、そこの研修の質が大変大きな問題になるだろうというふうに思っております。

 今現在、保育を自治体の認定を受けてやっていらっしゃる方が現にいらっしゃいますから、保育士資格だけに限って、その方々はもういいよ、それはとてもとてもできないことでありますので、できれば私は、配付資料にもございますように、ある程度の期間を設けながら過渡的な措置をしながら、新しい方にはぜひ資格を取っていただきたい、あるいは、現にやっていらっしゃる方々もぜひ保育の基本的な知識を学ぶチャンスをつくってあげたい、そのための支援体制を組んでいただきたい。

 保育士資格がなくて始められた方でも、自分で努力をなさって保育士資格を、試験保育士という資格が今まだございますね、そういう制度も利用しながら、バックアップしながらおやりになった方もいらっしゃいます。

 実は、かつて保育所が足りなかったときに、無資格の保母さんといいますか、たくさんいらっしゃいました。その人たちに、やはり子供の保育をする以上は、基本的な知識と技術、専門家としての専門知識、技術を身につけていただきたいということで始まったのが試験保育士の制度だったというふうに思います。現状の家庭的な保育もそうだと思います。

 そういう意味では、実際に家庭的保育をやっていらっしゃるわけですから、実習のところは免除するとか、さまざまな形で容易に資格がちゃんと取得できるような体制も組んで、将来的には、ぜひ資格保有者に統一できるような方向に持っていっていただきたいなというふうに思っております。

 以上です。

古屋(範)委員 最後に森田参考人、もう時間がないんですが、多数の地方自治体の地域行動計画に携わってこられたとお伺いしております。こうしたPDCAサイクルを導入することになっておりますけれども、現場で携われた立場から、後期行動計画の策定に向け、どのようなことを期待していらっしゃるか、お伺いいたします。

森田参考人 私は、一番大事なことは、形式的ないわゆるアンケート調査だけではなく、現場にきちんと出向いていって、そして、利用者、とりわけ子供たちの声ですとか、あるいは子育て中の親たち、そういった人たちの声をきちんと聞きまして、その自治体に合った評価をして、そしてそれを次の計画のところに入れ込んでいく、そういったことが一番大事なことではないかと思っております。

古屋(範)委員 本日は貴重な御意見をありがとうございました。御意見を踏まえ、また法案の審議を行ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、西村智奈美さん。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美と申します。

 きょうは五名の参考人の皆さん、大変お忙しいところ、この委員会で貴重な意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。

 児童福祉法等の一部改正案と、そして私が筆頭提出者となっております児童扶養手当法の一部改正案についていろいろな御意見をいただき、今後の質疑に大いに参考になることと思いますし、また筆頭提出者の立場といたしましては、母子家庭の現状などについて今大変貴重な御意見をいただきましたので、これで与党の皆さんも心を動かして、賛成に傾いてくださるのではないかと大いに期待をしているところでございます。

 この法案の審議の中で幾つか明らかになったこともありますので、その点も少し御紹介をしながら、私からさらに引き続き、参考人の皆さんからの御意見を伺っていきたいと思います。

 まず、赤石参考人にお伺いをいたします。

 二十数年前の母子家庭ですと大変厳しい状況で、今もその状況はなお変わっておらず、むしろ正社員への道が狭まっているということで、より一層困窮の状況であるというお話がございました。本当に身につまされる思いでお話をお伺いいたしましたけれども、やはり今回の、厚労省が発出いたしました児童扶養手当の一部支給停止除外事由届出書ですか、この厚労省のやり方というのは、母子家庭の皆さんだけではなくて、市町村の窓口の方々にも大きな混乱をもたらしていることだと思います。

 先ほど、赤石参考人は、この届け出の提出に係って、事務費ゼロとおっしゃったようなんですけれども、ところが、先日、私がこの委員会で質問いたしましたら、厚労省の方では、その事務費分として総務省の方に合計で二億二千六百万円の交付税要求をしているということなんです。

 つまり、この削減規定がなくて、こういった届け出を提出させなければ、この二億何がしの事務費は生じなかったというふうに見るのが相当でございまして、そういう数字を具体的に聞きますと、この規定があることによってさらなる事務費の増嵩が生じているということで、本当に腹立たしく思っているんですけれども、やはりこういった事務費が、この規定が残っている限り、つまり二〇〇二年の法改正で、半分まで削減しますという規定が残っていく限り、ことしは二億、そしてまた来年も二億、そしてその次の年も二億というふうに、事務費は毎年かかっていくということになると思うんですね。

 そういうことからしても、この規定はきっぱりと削除すべきである。そして、何よりも、母子家庭の皆さんの安心のためにこれは削除すべきであるというふうに考えますけれども、この点について赤石参考人の御意見を伺います。

赤石参考人 そうですね。本当に自治体の方は御苦労されていると思います。

 二月からお手紙を送ることになっておりましたけれども、いろいろな自治体で本当に対応にばらつきがございました。それで、例えば子供八歳以上で五年間受給している方というのを、全受給者の中から抽出しなきゃいけないんですよね、その名簿を。ところが、そのソフトがうまく動かないからおくれている自治体があったりというようなうわさを聞いたり、そしてまた、その書類を、全部の書式のものを全部送るとすごい量なんですね、それを全部送っていらっしゃる自治体と、本当にお知らせとちょっとだけで書面は後でお渡しするというような自治体と、本当にばらつきがあり、皆さんも苦労されているなというのがすごくよく会員の人たちのあれからわかったわけです。

 このようなことは一体何の意味があるのかというのが、本当に腑に落ちない。全く要らないんじゃないかなと。八月に現況届を出すことである程度の生活状況はもう把握していらっしゃるのですから、それでいいではないですかというふうに前も申し上げました。ぜひ、窓口と受給者の関係が本当によくなるためにも、毎回毎回、毎年これを出させるというのはやめていただきたいというふうに切に思います。

 困った方が窓口に行って相談できるような雰囲気にはこれではなりません。書類が、ここが不備がある、ここが不備があるということを言われるだけ。もう窓口に行ったら逃げるように帰るしかないわけです。そんなことでは、母子の支援ということにはほど遠いというふうに私は思っております。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

西村(智)委員 非常に的確にお答えをいただいたと思っております。

 やはり、本来、行政が母子家庭に対してなすべきことというのは、前回の法改正の理念で盛り込まれたように、総合的な自立支援、自立のためのお手伝いということですので、窓口でのそういったやりとりがさらに母子家庭の尊厳を損ねることになってしまうのではないか。おっしゃるように、私も現況届で就労の実態などは十分把握できると思います。ですので、改めて、このような届け出の提出を求めるこの法律の規定は、今回ぜひとも削除していきたいというふうに考えています。

 先ほど、赤石参考人もおっしゃいましたけれども、やはり経済的な支援と就業支援がセットで行われないと、本当の意味でのサポートにはならないと思うんですね。ところが、この間の政府の基本的な考え方というのは、いわゆる自立促進、これはいい意味の自立と余りよくない意味の自立があるんですが、自己責任論に基づいた自立を何となく促そうとしているようでありまして、支援を打ち切ればみんなが自立に向かうのではないか、こういう考え方によって立っているような気がしてなりません。

 そこで、この二〇〇二年の法改正と同時に、いわゆる母子家庭に対する特別措置法が制定をされて、就業支援も五年間行われてきたんですけれども、これはなかなか実効が上がってまいりませんでした。今年度の予算措置として、先ほど参考人の方も御紹介くださいましたが、高等技能訓練促進費ですか、こういったことなんですけれども、生活費の補助を訓練期間の最後の方だけやるとか、ことし創設された仕組みで、入学金相当の額を、その訓練が終わった修了時に渡す、こういうこと。しかし、本来生活支援とセットで行われなければならないということですから、やはり生活の基盤が安定していてこそ訓練への集中ができるということだと思います。

 こういった点を含めて、本来どういう就業支援であるべきだというふうに参考人はお考えでしょうか。

赤石参考人 高等技能訓練促進費というアイデアは、私は何か支持するものがあるんですね。

 やはり資格、看護師なり理学療法士を取るということは、その後、児童扶養手当の所得制限を超える収入を見込めるようなことだと思います。ただ、原資を持っていらっしゃる方だけが利用できるというような気がするんですね。例えば、財産分与が多くいただけたとか、実家の御支援があるというような、既に支援がある人しか利用できないような制度であれば、かえって本末転倒じゃないかというふうに思います。

 貸付金利用のモデルも示されているんですが、六百万円を超える貸付金を利用されればこの制度を利用できますよというモデルを示されております。六百万円かける母子家庭がいらっしゃるでしょうか。それだけ借りて、自分が資格を取ったころには、もう子供の高校の入学のための貸付金を借りなければならなくなるんです。ですので、やはり生活保障と訓練というのは一緒でなければならないというふうに思います。

 あと、高等職業訓練校、ちょっと名前がことしぐらいから変わったかと思いますけれども、そこでは、母子家庭になって三年以内には訓練費を十四万何がし支給する制度がございます。これの方がずっといろいろな、ヘルパーの資格とか取れますので、この枠をもうちょっと拡大するようなことはあり得ないのかというふうに思ったりする次第です。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 この児童扶養手当法の関係で、森田参考人にも一点お伺いをしたいと思います。

 先ほど、森田参考人が行われました調査の結果、私も大変興味深く見させていただいておりますけれども、特に注目をいたしましたのは、これは七ページになるんでしょうか、子供への影響についてであります。

 この項目で、先ほど森田参考人も御紹介くださいましたけれども、生活保護を受給している母子世帯で子供が学校にきちんと通学をしているという方が約七割。逆に言いますと、あと三割の子供さんは学校にきちんと通学をしていないということですね。

 母子家庭の支援といいますと、特に母への支援ということのみに目が行きがちなんですけれども、実際に私たちは、その家庭の中で育っている子供にこそ目を向けるべきではないか。やはり子供に確実にこのように影響があるということですので、子供の育ちを支えるという点からも、この児童扶養手当は削減できないというふうに考えるのですけれども、この点について、子供を中心にということでお答えいただきたいと思います。

森田参考人 ありがとうございます。

 私は、子供の権利の視点から、先ほど来先生方が、子供はどの家庭で育とうと何の責任もないということを強くおっしゃっていますけれども、この母子家庭で育っている子供たち、実は私、四年ほど前に、しんぐるまざあず・ふぉーらむでも、母子家庭で育った成人した子供たちに、自分が育ったことを振り返ってもらうという追跡のインタビュー調査というのを一緒にやらせていただいたことがあります。

 今回初めて、こうした生活保護を受給されている方々が御協力くださって、これからの施策に生かすということで、千葉県の八千代市の方で、皆様の御協力と市の御快諾をいただきました。そういう形でこういったデータを出せることというのは、私は大変重要なことだと思っております。

 国の方は、実は平成十五年に最近の調査を行われていますけれども、母子家庭の数すら出せていない、推計値すら出せない状況にあります。つまり、そうした実態を明らかにしないで施策をつくり出すということはできないわけですね。そうした意味もありまして、私たちは、子供たちの側、あるいは子育てをしていらっしゃる母子家庭の側に立って調査をしたいということで、御本人たちのインタビュー調査も含めて、こういった調査をやってまいりました。

 その中で一番私どもが感じたことは、今、西村議員がおっしゃったように、子供たちのところにかなりの影響が出てきている。端的に申し上げると、生活保護を受けているということは、本来ならばだれにもわからないはずなんですけれども、結局、わからなくしようとすると、すればするほどやはり家庭の中にこもっていってしまう、あるいはその生活、あの人はなぜ働いていないのに暮らしていけるのかねという言葉からくる母親たちへの非常に厳しい目線、あるいはその子供たちへの目線、こういったものが子供や親たちを苦しめているんだというふうに思っているんですね。

 そういった意味で、生活保護を受給する前の段階でどうにか子供たちの暮らしというのを食いとめられないだろうか。そういった意味で、社会的手当としての児童扶養手当というものの持っている意味というのは非常に大きいというふうに思っています。

 今、子供たちは、大人たちの言葉を何かと耳にして、そして、学校やあるいは地域の中での子供たちのいじめとかという問題も深刻です。そういった中で暮らしているからこそ、子供たちが親とともに家の中に引きこもってしまう、そして結果として、学校に通う力が十分にあるにもかかわらずそこに通い切れない。あるいは、その中で、実は関係も非常に少ない、お友達も少なかったり、支えてくれる大人たちもいなかったりという結果が出てきております。これは母子ともに出てきているということで、このことがやはり子供たちや母親たちを追い込んでいるというふうに思います。

 ぜひとも、児童扶養手当の拡充、そして、余り自分たちの中でスティグマを伴わない形でできる限りこういった手当が出せて、次のステップにこの母子が向かえるような制度であってほしいというふうに願っております。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 それでは、児童扶養手当法についての私の参考人の皆さんへの御意見は以上といたしまして、児童福祉法等の改正案について、関連で何点かお伺いをいたします。

 先ほど答弁いただいた流れもございますので、森田参考人にもう一点お伺いをいたしたいと思います。

 先ほどの母子家庭の児童扶養手当の話もありましたけれども、やはりこの国の政策というのは、全般的に子供に対する視点がとても弱い、視線がとても弱いというふうに考えております。この子どもの権利条約の最終報告にもあらわれておりますけれども、日本の中で子供政策というものを総括する、総合的に見る省庁がないこと、そしてまたそれを支える法律もないこと、これはやはり問題だと。

 私たち民主党は、かねてよりチルドレンファースト、子供第一ということで、子ども家庭省の創設を政策として掲げておりますけれども、こうした政策への抜本的な大転換が今こそ必要なのではないかと考えています。

 今回、児童福祉法等の一部改正案のもとになったのは、子どもと家族を応援する日本重点戦略ですか、ということになるんですけれども、この「重点戦略策定の視点」というものを見ましても、ここに、例えば働き方とか人口減少とか労働力人口減少というようなことは書いてあるんですけれども、子供への視点というのが一言も書かれていないわけです。

 この点について、森田参考人はどのように政策転換を図っていくべきだとお考えでしょうか。

森田参考人 どうもありがとうございます。

 私の本日の資料の最後のところに、子育て支援の政策から子供支援へという視点を、私が書いたものをつけさせていただきました。ぜひ後でお読みいただきたいというふうに思っております。

 ここの資料としてつけさせていただいたのは、第一回の政府報告書に対する勧告と言われております一九九八年の国連子どもの権利委員会の最終見解、そして二〇〇四年の第二回の最終見解というのを出させていただきました。

 具体的には、第一回にも第二回にもございますが、法制度として総合的な法律が未整備であるということ、あるいは独立した省庁がないということ、そしてまた、独立した監視機関ですけれども、特に今、各基礎自治体のところでは、幾つかの自治体がオンブズパーソン制度というものをつくり出してきておりますが、そういったものは国としてはまだ非常に弱い状況にあります。そういった意味で、子供たちの政策というものを子供たちの目線でもう一回つくり直してみる。

 私は、ちょうど、昨年からことしにかけて、韓国の研究者の方々や実践の現場の方たちと一緒に少子化対策室にお伺いすることがありました。そのときに韓国の関係者の方々から大変驚かれたのは、日本は子供施策を少子化対策でやるのかということを聞かれました。でも、結局、この政策を全体としてわかるのは少子化対策室しかないということ自体がやはり日本の中で非常に大きな問題で、やはりそれは、子供たちの側からすれば大きな間違いである。

 やはり私たちがやらなければいけないことは、子供が育つということ、そしてまた、親たちもまた子供が育つということを最も願って子供を育てるわけですから、そうした意味で、子供施策というものを何よりも優先させるということが大事な視点だと私は思っております。どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。

西村(智)委員 OECDの各国の中でも、子供のいる家庭の貧困率は、日本は多分最低水準、最低水準というのは非常に貧困率が高いという意味ですけれども、そういったことを含めても、やはり子供にきちんと視線を向けた政策の柱がどうしても必要だというふうに感じました。

 福川参考人にもこの児童福祉法の関係で伺いたかったんですけれども、残念ながら時間となりました。調査会でもいろいろお話を伺っておりましたので、また今後も参考にさせていただきたいと思います。

 参考人の皆様には、本当にきょうはありがとうございました。終わります。

茂木委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、五人の参考人の皆さん、お忙しい中、本委員会に御出席いただき、また貴重な御意見をありがとうございました。児童福祉法、次世代育成支援法などさまざまな角度から深められ、大変参考になったと思います。ありがとうございます。

 初めに、大日向参考人には、地域での子育て支援を御自身が取り組まれながら、特別部会の座長として全般的な少子化対策、また子供と家族を応援という課題で精力的に取り組まれていることに敬意を表したいと思います。

 きょう伺いたいのは、社会保障審議会少子化対策特別部会の十九日の会合で、保護者が認可保育所に直接入所を申し込む直接契約制度の導入を検討するなど、保育制度改革の方針を了承したということを伺っています。日本経団連や規制改革会議などが強く求めてきた内容でありますが、私は、児童福祉法に明記された国や自治体の保育を行うという責任を後退させ、格差を生むおそれもあるのではないかと賛成できません。また、保育の市場化を迫る動きも強まっておりますが、その点もあわせて大日向参考人のお考えを伺いたいと思います。

大日向参考人 御質問ありがとうございます。

 今先生が言われた十九日に関する新聞記事は、特別部会の議論が必ずしも正確に報道されているとは思いません。むしろ、二十日に「基本的考え方」をまとめて公表しておりますので、それをごらんいただければ大変ありがたいと思います。

 「基本的考え方」におきましては、確かに、今日のニーズの変化に対応いたしまして、利用者の多様な選択を可能とするために、保育に欠ける要件などを見直す、あるいは契約など利用方式のあり方についても見直すことが必要だろうということは議論はされました。

 しかし同時に、それ以上に、保育というのは対人社会サービスであるということにどの委員も大変重く意識を置いて議論いたしました。保育の公的性格、特性を踏まえまして、あくまでも子供の発達保障という観点で質を担保しなければいけない、法的な保育の枠組みを守りつつ、そこに新しい仕組みを検討していく必要があるということが「基本的考え方」には明記されたというふうに私は承知しております。

 こうした新しい仕組みを導入する場合には、保育の必要度の高い子供の利用の確保のための市町村等の適切な関与、あるいは保育サービスを選択できるだけの量の保障がなくてはなりません。それを裏づける財源確保が不可欠であるということも私どもは認識しております。

 厚生労働省におかれましては、この「基本的考え方」をもとに、引き続き、税制改革の動向を踏まえつつ速やかに議論を行っていく予定であるというふうに承知しておりまして、こうした動向を見守ってまいりたいと考えております。

高橋委員 ありがとうございました。続きをもう少し伺いたいんですけれども、ほかにもいっぱい伺いたいことがありますので、もし時間があればもう一度伺いたいと思います。

 それで、あわせて大日向参考人に、ことし三月に保育所保育指針が改定され、大臣告示となりました。保育者の質の向上や地域の子育て支援あるいは保護者への援助など、保育所に期待される役割が大きい一方、その担い手がどうかという問題が問われると思います。

 今、保育所では非正規の割合が多く、ダブルワークも顕在化していること、低賃金という実態、支え手の人間らしい暮らしが確立しなければ、どんな立派な役割を言われても実際は成り立たないと思いますけれども、この点での御意見を伺いたいと思います。

大日向参考人 確かに、保育所の役割は、従来の就労家庭の支援を超えて、地域の子育て家庭に対する支援という大変広く、また多様な役割を期待されております。私もかつて保育者養成校の講師をしておりましたので、保育者養成課程が今後地域の子育て支援まで担っていくためには、保育者の資質も相当上げなくてはいけないということは十分に考えられることだと思います。

 同時に、今先生が御指摘になられたような、保育者の雇用の安定等も大変重要な課題であると思います。同時に、保育所が、地域の子育て支援も含めて就労家庭の根本的な支援もしていくというときには、地域のNPO、さまざまな子育てサークル、企業等との連携も深め、全体的に、社会的に子供の保育、地域の子育て支援を充実していくことが必要かと考えております。

 ありがとうございました。

高橋委員 ありがとうございます。

 最初に御紹介いただいた、必要な財源の投入は大事だということで、個々の人材における投入もしっかりと発言をされていただければいいな、私自身もそういうふうに何度もお話をしているつもりですけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、赤石参考人からは、きょうは御自身の経験も触れながら、母子家庭の実態をリアルに紹介していただいたと思います。ありがとうございました。社会の状況が家庭を崩壊させているという言葉は本当に当たっていると思います。

 私からの質問は、児童扶養手当は命綱であり断ち切るわけにはいかない、この点は全く同じでございます。同時に、就業支援のメニューがあっても、本当の意味での自立を妨げる壁はほかにもたくさんあるのではないか。例えば住宅の問題、教育費の問題、保育所の問題、医療費、さまざまあると思いますが、その点、御紹介いただければと思います。

赤石参考人 住宅については先ほども少し触れたと思うんですけれども、持ち家率が生別の母子家庭の場合には非常に低くて、ちょっと今数字がすぐ出ないんですけれども、低いので、民間アパートや借家に住まざるを得ないということで、家賃が給与の半分以上みたいな方もたくさんいらっしゃいます。

 それはちょっと余りにも大変ということで、公営住宅にうまく入れればいいんですけれども、それもなかなか入れない。先ほどの八千代市のデータでも、三年住んでいないと公営住宅の申し込みの基準にならないというようなことがありましたので、公営住宅に入れる基準をもうちょっと緩めて優先していただきたいということと、やはり公営住宅の建設がもうちょっとないと、量的にも不足しているのかなというふうに思います。

 それから医療でございます。医療については、一人親の医療費助成は、自治体によって違うのですが、かなり整備はされてきているというふうに思います。本当に健康状態が悪い母子家庭が多いので、助かっているということはよく聞きます。払い方については、若干いろいろありまして、もうちょっとスティグマがない、医療機関で母子家庭ですよということがわかるようにならないといけないようなやり方のところがありますので、そういうのはちょっと改善していただきたいなというふうに思います。

 それから教育ですね。本当に教育の問題というのはすごく大きくて、手厚く子供にかけている家庭と同じクラスに通っていて、習い事も何もできない、しかも、お母さんが宿題の手伝いもできない、夜遅く帰ってくるというようなことだと、本当に教育格差は広がらざるを得ないという感じです。

 東京都では何か、生活保護の世帯に塾費用を出すようなことを考えて、中三の子ですね、というのがありますけれども、本当に、中三でどういう勉強ができるか、それによって高校がどこに入れるかというのが決まってしまい、それがひいては、その先の子供の一生にかかわっておりますので、そこでの支援。それから、高校の入学金とか授業料を払えない人もとてもふえております。私学にしか行けなかったという人もいますので、やはりもうちょっと給付型の奨学金というのをふやしていただかないといけないかなというふうに思っております。

 以上です。

高橋委員 ありがとうございました。

 やはり現場の方たちの、当事者の声を聞いてきめ細かな政策を、国がやるべきは国が、自治体がやるべきは自治体が、そこにまた支援をしていくようなことを大いに発言していければいいかなと思っております。

 関連していますので、先に森田参考人に伺いたいと思います。

 今の件でもしアドバイスがあれば、一点お願いしたいと思います。

 それと同時に、先ほどの研究、大変興味深いデータをいただきました。生活保護世帯で、かつ母子家庭に着目をして、頼れる親族がいないことやもともと体調が悪いこと、子供の通学そのものがなされていないことなど実態が伺えたと思います。

 生活保護家庭に対しては母子加算の段階的廃止という重大な問題がございまして、そもそも、生活保護の最低基準がそのことによって割り込まれ、憲法二十五条が守られていないものだと、裁判に立ち上がっている方々もいらっしゃいます。この生活保護の母子加算廃止についても御意見をいただければと思います。

森田参考人 ありがとうございます。

 先ほどちょっと御紹介いたしました、ちょうど韓国からいらした方、今私は日韓比較の研究なんかもやっておりまして、こういうお話がありました。韓国では、児童養護施設に通っている子供たちの七割から八割が大学進学をしている。先ほど庄司先生の方から御報告がありましたけれども、日本は二割。

 私のところの大学の二部の方には、かつて、実はうちの大学も授業料が一部の半額でした、そうした場合に、毎年一人か二人、児童養護施設等で育った子供たちが大学進学してくれました。私どもは、そこで社会福祉士の資格を取って、そしてみずから自分の人生を組み立てていくということが支えられるとして大変喜んでおりました。彼女たちに、一部の授業料の半額であったとしても、卒業段階で幾らぐらいの負荷がかかってくるのかと聞きましたら、約一千万円ぐらいの借金を背負って社会人になっていくんだというふうに聞きました。

 いかがでしょうか。二十二になったばかりの子供たちが、一千万円近い借金を背負いながら社会に出ていく。その負荷の大きさというのは大変重いというふうに私は思っています。それが、ある意味でいえば、社会的養護を受けた子供たちでこうした高学歴、高学歴と言えるかどうかわかりませんが、少なくとも大学を出てきちんと資格を取り、その後の生活がしていかれるというところまでたどり着いた子供たちの状況です。そういった意味で、今、日本の中で、奨学金も貸付制度が非常に中心になってきておりますと、社会人としてのスタートのところで大変なハンディキャップがつくということがあります。

 それからもう一点、先ほど母子加算の廃止の問題がありました。その影響が私どもの今回の調査の中で出てきたことは、実は、児童扶養手当が生活費に使われているという実態でした。

 児童扶養手当、何のために使っていますかという質問の中で、約六割近い家庭が、実は生活費に使っている。子供のために使えているというのは十数%でした。こんな実態では、子供には責任のないことですので、子供のためにきちんとそのお金を使っていくという社会にはならない。

 そうした意味で、母子家庭の中で子供を育てる、次世代を育てるという価値。ぜひ、きちんと整備していただきたいというふうに思っております。

高橋委員 どうもありがとうございました。

 次に、福川参考人に伺いたいのですが、家庭的保育の成り立ちについて、日本と欧米との違いも紹介いただきながら、意義を深めていただいたと思います。地域から必要性に応じて生まれてきたのだという背景は、実はとても大事なことではなかったのかなと思っています。

 また、資格要件についても、実は先般の委員会でも随分議論になったところなんですけれども、本日のお話は、保育士がまずあってプラスアルファなのだ、そのことが非常に明快ではなかったのか。同時に、そのプラスアルファも、ちゃんとキャリアアップするチャンスを与えていくべきだという提言は、非常に重要だと思って受けとめました。

 私は、日本は欧米の上辺のところだけ学んで、その背景や、社会の全体の仕組みとか考え方など、やはりそこには追いついていかない、そこでちぐはぐな傾向があるのではないかなということをよく思うことがあります。そういう点で、家庭的保育について、欧米との違いなども踏まえて、もう少し詳しく御紹介いただけたらと思います。

福川参考人 日本と欧米の違いというのは、欧米の方が、日本のような認可保育所ということがナショナルミニマムとして確立されながら施設がつくられていった国とは違いまして、むしろ、そういう公的な保育所の広がりの方が少ない。困った人たちは結局個人に預けるという形で、保育ママと呼ばれているような人たちがどんどん自然に広がってしまって、しかし、それはまた質の問題を呼び起こし、そこで、欧米ではそれを、公的な介入を行いながらその質のアップを図っていく、そういうスタイルだったと思います。

 日本の場合には、乳児保育の補完ということで、むしろ自治体の方が、つまり公的な機関の方がその制度を創設していったという経緯があります。実は、そのせいで保育者の質が保たれたということが大変重要な点でございます。

 つまり、自治体が補助事業を始めるに当たりましては、要綱や規則、まれには条例という形で保育者の資格要件を定めております。その中には保育士以外にも、看護師さん、それから幼稚園教諭、保健師、助産師、そういうような関連資格を認めるという形で、これまで自治体の独自事業が行われておりました。

 しかし、欧米もそして日本も、かなり日本の場合にはボランティア的な形でも始まっておりましたので、質の確保、それからその人たちの働く条件の確保、職業的な条件の確保、そういう部分は大変立ちおくれております。それは欧米も日本も本当に変わらない形なんですね。

 ECの保育専門ネットワークの勧告にもありますように、まずは保育者の資格要件をしっかりすることが子供たちのために大変重要であるということ。さらに、研修体制がやはりどうしても整備される必要があること、それは保育者の質を一定化するためにも非常に重要であること。

 さらに、スーパービジョンの体制が何もないという、実は保育については、日本もそうですけれども、指導監督するに当たって、家庭的保育の実情、現実をよくわかっている人たちが指導監督できるかといいますと、そこの部分は保育所保育の専門家であったり、あるいは保健師さんであったり、栄養士さんであったり、日本の場合には施設型の、保育所型の、さまざまな視点からの指導監督がかなり多いわけですね。

 しかし、実際には、家庭型の保育はそれなりの特徴があり、保育の内容も、異年齢の少人数の低年齢児ということ、年齢も異なる子供たちを扱っていくということですから、本当は、実際にその保育をした経験者、そしてその中で培われたさまざまな知恵や専門的な技術を伝える必要があります。その意味でも、スーパービジョンをどうやってつくっていくかというのは日本にとっても大変大きな課題だというふうに思います。

 さらに、やはり第三者評価といいますか、保育の内容が明らかにされ、一層改善が進むような機関も必要ですし、キャリアアップの機会が実はないんですね。きょう始めた人も十年前からやっている人も、どんなにベテランも実は収入は同じでございます。そういうところでも、キャリアアップしただけの報酬あるいは退職するときの保障、そういう意味での身分保障については本当に貧しいものでございます。そのあたりのこともきちんと確立していく必要があると思います。

 その点で、資格を緩和すればやりたい人がふえるんではないかという議論もあるんですが、決して資格だけでやるかどうかを決めているわけではなくて、この仕事が本当に収入が安定して得られ、そして休みがきちんととれ、保育内容もきちんとできる、労働時間も、うちにいるからいいでしょうということではなく、保育所であれば八時間労働でございますから、家庭型保育もそれなりの時間で保育が終了できる、そのためにはもちろん働き方の見直しも必要なんですけれども、そういうことがきちんと条件整備ができていけば、やりたい人は私はふえるのではないかというふうに思っております。

 そういう点でも、日本の家庭的保育の質を高める条件をぜひ整備していただきたいというふうに思っております。

 ありがとうございました。

高橋委員 ありがとうございました。

 庄司参考人にもぜひ伺いたかったんですけれども、残念ながら時間が来てしまって、一言だけお話ししたいと思います。

 本当に、戦後の戦災孤児の支援から始まった里親制度が、今は時代は全然違うけれども、逆に里親が注目される、そういう状況が実は生まれているのではないかということを非常に考えています。赤ちゃんポストがちょうど一年たちましたけれども、熊本市で十七件の子供が預けられたこと、その中で、実は千五百件、同病院に育児や妊娠に関する相談があって、子供を預かってほしい、六十八件、そして三十六人は自分で育てることを決めたこと、二十七人は養子縁組に結びついたこともあったということは、私は、わずかかもしれないが救いを感じているところがあります。

 そうした中で、実はこの里親のあり方というのも、職業里親なども提起をされておりますし、もっともっと実態をよく伺いながら研究をしていく必要があるのではないか、高めていく必要があるのではないかというふうに思っております。今後ともまた勉強させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、五人の参考人の方、内容と思いの大変に深いいろいろな御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 とりわけ私は、森田さんがおっしゃった、日本の、こうした児童福祉法の改正に当たって少子化対策なんだろうか、それとも、子供の権利やあるいは母と子、父と子、家族、家庭の権利なんじゃないか、本当はそう思うという視点を御指摘いただきまして、大変に心強くも思いました。きょうの参考人の皆さんは、皆さんそう思って格闘してこられた方々だと思います。

 そこで、順次伺わせていただきます。まず大日向参考人にお願いいたします。

 今回、いろいろな見直し施策の中で、乳幼児の家庭訪問あるいは養育の支援訪問等々のプランが出されておりますが、私はもともと小児科医で思いますのは、やはり今日本で、産むこと、出産するということをもう少し自分たちの側に取り返していかないと、非常に、社会が産む力を失っている。その端的な表現が、出産の場がない。これは日本の政治の施策の過ちでもありますが、産むというところからも見直していかないといけないのではないか。

 そうなりますと、生まれて四カ月から、初めてのこんにちは赤ちゃんという訪問事業はとてもいいと思うのですが、もう一歩進めて、実は今、産科医の間でも、あるいは助産師さん等々などでも、既に妊娠の段階からケアし、問題点を早目に、やはり親になることの不安や経済状況も含めていろいろな問題が今ありますので、もう一歩先行して、出産に至る場のフォローからもっともっと施策がないものかと思いますが、そこはいかがでしょうか。

大日向参考人 御質問ありがとうございます。

 先生のおっしゃるとおりかと思います。産科医が足りなくなったり、分娩前の健診の充実等は非常に大事だと思います。生まれる前にいかに手当てを厚くするかということが、健康な赤ちゃんが生まれ、発達保障につながっていくということは、私は十分よく承知しております。

 ただ、今回の法案は、重点戦略で、働き方の見直し、そして地域の子育て支援の充実というところの二点に絞って具体的な制度設計が託されたということは御理解いただきたいと思います。

 しかしながら、それでもなお部会では先生と同じような意見が出されまして、「基本的考え方」の中に、分娩前の手当て、あるいは産科医の充実等ということが含まれておりますので、お答えさせていただきます。

 ありがとうございます。

阿部(知)委員 私は、人間の一生というのは一貫したものだと思うのです。そして生まれ出るところも、どんな状況で妊娠されたか、子供を授かるかというところからして本当に大きいので、ぜひこれは、そこから重点というよりはもう少し一貫した流れを、ぜひまた大日向先生初めとして、つくっていただけたらなと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、赤石参考人にお伺いいたします。

 赤石さんはずっと、こうやって母子家庭が手をつなぐことを自分たちでつくり出そうと思って、いわば格闘してこられた。その意味で、みんなが信頼もし、仲間をつくることの大切さを一緒に学んでこられた方かと思います。

 二十数年前の御自身の経験をお聞きするだに、例えば、九万五千円のお給与に児童扶養手当が加わっても十三万、十四万。さっきの数値を聞きますと、例えばお家賃が五万、食費は四万から五万、着るものも着なきゃいけない。果たして、社会保険料負担というものが年金を初めとして医療保険等々できるんだろうか。正直言うと、今なんか国民年金一万四千四百十円、ああ大変だなと。

 実は、母子家庭のお母さんたちの多くは非正規で、行き着く先が国民年金しかなくて、ずっと苦労して育てて、自分の老いを含めた老後も不安定というか、低賃金、低収入になるという本当に深刻な事態を日本は迎えていると思うのです。もちろん、今のことにもう手いっぱいというのはよくわかります。子供を育てていれば、そのときでもう手いっぱいです。

 でも、私は今、もっとその先を案じてしまう。高齢社会になって、特に女性のおひとり暮らしが多いわけです。そういう視点から、シングルマザーたちのよりよい社会的条件の整備ということでもし御意見があれば、一点伺いたいと思います。

赤石参考人 四、五年前に、母子家庭の年金加入状況調査をしたことがございます。

 それで、すごく加入状況が悪くて、国民年金の免除をしている方もすごく多かったんです、今ちょっとそのデータを持っていないんですが。それから、国民年金に入っていらっしゃらない方も五%ぐらいたしかいらしたと思います。その方がそのまま働いたら、どのくらいの年金をもらえるのかというシミュレーションもしました。そうしますと、本当に年間で二十万とか三十万の年金しかもらえないというような方もたくさんいらしたんですね。

 そうなりますと、今会員で高齢になっている人たちもいますけれども、老後の心配というのは物すごく大きいと思います。子供の収入に頼る人もいますが、そうなれば、子供は一生お母さんを養っていかなきゃいけないというようなことで、本当に家も出られないというような子もいます。

 それから、母子世帯等調査で社会保険の加入状況も調査していますけれども、やはり年金に加入していないという方が一七・五%いらっしゃいますし、もっと気になるのは、健康保険も加入していないという方が六・五%もいらしたということで、本当にこういったものを払うこともできません。

 ちなみに、私は、九・五万円の収入のときにはもちろん国民年金は免除されておりまして、それが響いて、私がもらえる年金は多分八・八万円であるかと、またちょっと目減りするんじゃないかなと思っていますけれども、その程度しかもらえないということです。

    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

阿部(知)委員 私は、今赤石さんがおっしゃったとおりのデータで、とても深刻だと思うんですね。せめて、子供たちが育つことに対しての児童扶養手当はそれとして確保していかないと、母のその後も成り立たなくなる。別に、子供に扶養手当としてもらったものを使うとか使わないとかではなくて、母の生活分もないし、社会保険料負担もしていけないのではないかと思いますので、今回民主党の西村さんたちがお出しになった、児童扶養手当はやはり削減すべきでないという法律、削減をしないということを明言すべきだと思いますし、さらに、いろいろな母子手当はもっと加算することはあっても、本当にこの国が貧困化を防ごうと思えば、やらねばならない施策は多々あるように思いますので、ちょっと与党席少ないですけれども、しっかりと与党の皆さんとも意見を一にしていきたいなと思います。

 次いで、庄司参考人にお願いいたします。

 庄司さんとは、実は、私は小児の神経科医で、庄司さんは精神関係のことをやっておられたので、以前からよく存じ上げてはおるのですけれども、長い間こういうお仕事に邁進されて、本当に心から敬服したいと思います。

 きょう私が庄司さんにお伺いしたいのは、実は、私が鎌倉にございます病院に勤めていたときに、鎌倉には鎌倉保育園といいまして、昔、小児科医の佐竹さんという方が日本で初めての児童養護施設を開設されたところで、児童虐待という問題が起きました。本来は小児科の医師として、私財をなげうって、本当にその地域で頑張ってこられて、なおかつ、そこでは家庭的保育ということを標榜して、いろいろな年齢の子供たちを保母さんが泊まり込んでケアをしておりました。私も何回か行ったことがありますし、そこで世に言う虐待という事象になったということは大変衝撃的でありました。

 私は、そのとき二つのことを思いました。

 一つは、子供たちがSOSを出せる場所はどこなのか。例えば、ちょっと力の強い子が弱い子を虐待する、そういう虐待の連鎖も起こっています。あるいは、いろいろなことでストレスを抱えた保育者の皆さんが、保育者の人はまじめですから、やはり自分がよりよくあらねばならないと思う余りすごく追い込まれていき、結果的には、虐待経験のある子供たちはなかなか心を開いてくれないところで、逆にその保育者から虐待になる。

 私が思ったのは、二つのSOS、子供にとってのSOSの発信の場と、保育者にとってもSOSを出せる、自分は頑張ってもそんなにパーフェクトじゃないことが、生身を、生ものを扱うときはあるんだと思うのです。

 庄司さんは、乳児院で勤められ、その後里親もやられて、本当によく努力してこられたけれども、やはり、いろいろなところで子供とうまくいかないとか、SOSを出したいときも実はあって当然だし、そのときの仕組みというのはどうあればいいだろうということを一番的確にお話しできる方かなと思ったので、ちょっとその御意見を賜りたいと思います。

庄司参考人 ありがとうございました。

 子供とかかわっていれば、施設でも、あるいは里親のもとでも関係が非常に厳しい状態になるということはあります。

 そういった意味で、一番の相談機関は、本来は児童相談所があるのですけれども、児童相談所は、一つは措置機関であって相談しにくい部分があるということと、それから、非常に多忙であってなかなか応じてくれない。そういった意味では、SOSを受ける場として、神奈川県では子ども人権審査委員会など、あるいは東京都でもあるかと思いますし、多分今度の法改正で、都道府県だけではなく、都道府県の児童福祉審議会も相談を受けられる体制になるのではないかというふうに思います。

 いずれにしろ、これは重層的に、まず施設の中で子供が信頼して話せる場、あるいはいろいろ意見を表明できる場、そして、それを担保するためには第三者評価を定期的に行っていくということも必要ですし、それから、施設内で解決がつかない場合ということもありますので、施設の子供には権利ノートを渡して、そこに、相談があったらそのままはがきとして出せるものが添付されることが多いんですね。そういったことですとか、それから、相談の受け皿として、自治体もそうですけれども、何らかの子供の権利擁護機関みたいなことが必要ではないかというふうに思います。

 それから一点、まだ施設の子供の方が、権利ノートとか第三者評価とか苦情解決のシステムができているのですけれども、里親のもとにいる子供に対しては里子向けの権利ノートというのも、ごく一部の自治体でつくっているだけで、里親制度はいいと言うけれども、それはいい里親のところに行った場合であって、ひどい里親のところへ行ったら最悪だというふうに元里子から聞いたことがあるのですけれども、里子の権利擁護というのも非常に大きな問題です。

 ただ、微妙な問題がありますので拙速にはできませんけれども、子供がSOSを出せる、それから受けとめる場ですね。それが同じように保育者も、本当は施設の中のスーパーバイザーということもありますし、あるいは施設関係者が、その施設とは独立して施設関係者の集えて話し合える場、そういったことが必要ではないかというふうに思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 私も、実はそこのあたりが一番重要かなと。子供たちには今、権利ノートとかありますし、あるいはチャイルドライン、電話で自分のことを言って、求めてというのもあるけれども、どっちかというと保育者の方にはまだ全然それがないというか、そこも大きな問題なんじゃないかなと思います。

 そこで、森田参考人にお伺いいたします。

 きょうのお話でも、もともと、日本と例えば韓国や米国、スウェーデンを比べた場合に、子供の権利という視点から見てそれを担保するもの、私は、それは同時にまた、そこで働く保育関係者、養護関係者にとってもオンブズマン組織等と同じ流れになると思うのですが、そのあたりを日本はどうしていくべきか。一番重要なポイントだと思いますので、ちょっと御意見を賜りたいと思います。

森田参考人 子供の権利侵害が起きないようにするというのは当たり前のことで、私ども大人たちというのはそれに向けて努力しなければいけないというふうに思っておりますが、これは世界じゅうでどうしても起きてしまうということ、だからこそ、世界じゅうで子供のオンブズパーソンというものが整備されてきているんだと思うんですね。

 日本でも、先ほど御紹介させていただきましたように、国の方の報告書の中でも五つの自治体でオンブズパーソンを持っているという紹介がありますけれども、もっと多様な形のものを含めて考えていきますと、実は、私がかかわっておりますNPOの方で、世田谷の活動なんかもそうなんですが、自治体が集まったシンポジウムを毎年一回やっております。

 そこで、最終日に、子供に関するオンブズパーソンとか、そういった権利擁護の活動をしている人たちが集まって会議をするのですが、昨年はそれに四十自治体がかかわっておりますので、そういう意味では、やはり基礎自治体を中心として、そうした子供の権利侵害が起きたとき、あるいは起きないように予防していくためのオンブズパーソンというものが、子供の側に立ってどうしても必要だという認識は広まっていると思います。

 さて、翻って、日本の国にとってどうかといいますと、これはまだできていないわけです。例えば韓国なんかを見てみましても、子供の権利の侵害、これは政策評価、財政的な評価、町づくりの評価、さまざまな場面から今行われているわけですが、こういったものを、私も昨年会ってまいりましたけれども、その評価委員の中に子供自身も入って、その評価組織を国家としてつくっていくという、大変そういう意味では、日本と比べますと一歩も二歩も進んだ、子供参加型の子供の権利実現のためのオンブズパーソン制度、あるいは子供の権利を実現しているかどうかの評価システムというものを導入し始めています。

 そういった意味で、日本の中でも、自治体のみならず、国の方でこういった仕組みをきちんと御検討いただけるということが必要なのではないかと思っております。

阿部(知)委員 では、最後に福川参考人に伺います。

 子供を育てるとは、例えば三人預かれば年中無休ですし、気持ちも体も休まることがない、また、それを職業的に位置づけて、やはりきちんとやっていくことの必要性もきょうは改めて御指摘いただきまして、大変貴重な御意見だったと思います。

 もう一つは補助者ということも、例えば自分の子供でも、一人で三人見ていれば、もう髪は逆立ち、何をとるにも事故はないかとか大変なわけで、本当に補助者というのも必要なものだと思うのですが、現状で、家庭で子供さんを預かられるときに補助者として来てくださる方というのでしょうか、その方たちはどんな状況で働いておられるのか、あるいはどういう方たちなのか、そこを少しお示しいただいて、これから何を改善すればいいのかを最後にお願いいたします。

福川参考人 御質問ありがとうございます。

 補助者というのはなかなか認められてこなかったんですけれども、三鷹だったかと思いますが、事故が起きまして、やはり補助者が必要だろう、そういう必要性に迫られて、公的な形での補助者を雇い上げる費用を補助するということがどうも始まったようでございます。

 そうやって自治体の方で少し面倒を見ようということの前から、実は保育者たちは、例えば自分の家族にいろいろなことを頼む。例えば定年退職した御主人がいらっしゃれば、彼がいろいろ、散歩のときには一緒についていってくれるとか、危険防止をしてくれるとか、さまざまな形で、また、成人した子供とか高校生ぐらいになった子供とか、そういうある程度大きくなった子供たちがいれば、その子供たちが学校から帰ってくると子供たちの相手をしてくれるとか、そういう家族の中で、親族の中での補助者。

 それから、保育者自身が、お友達であるとか近所の人であるとか、そうやってほとんど個人的に補助者を探すんですね。そして、午前中だけとか、食事の世話であるとか、お散歩の時間であるとかさまざまな、そういう日常的な保育をある程度助けてくれる人を自前で雇う、そういう実情がございました。調査をしたときにも、そういう形で自前で雇っているという方々が結構いらっしゃいました。

 ですから、それは個人的に探さなければなりませんから、いなければとても困るわけですね。そういう意味でも、もう少し人材の点でも、補助者をどのように確保するかということを自治体の側でも援助していただけるといいなというふうに思います。

 やはり補助者がいることで、危険防止や密室化の防止であるとか、保育そのものが本当に豊かになるという点で、たとえ一人保育体制であっても補助者は必要であるというふうに思います。全時間いる必要はないかもしれませんが、ぜひ、組み合わせやその他の点で、そういう制度も進めていただきたいというふうに思っております。

阿部(知)委員 貴重な御意見を皆さんありがとうございます。政策に生かせるよう取り組みたいと思います。

 終わります。

茂木委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、五人の参考人の皆様方、大変貴重な御意見をありがとうございました。

 私、最後の質疑者でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず大日向参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回のこの改正案、新たな子育て支援事業として四つの事業を法律上位置づけ、市町村は、これらの事業が着実に実施されるよう必要な措置の実施に努めることとされております。これによって、これまで以上に市町村の積極的な取り組みというものが求められることになります。

 大日向参考人が代表理事を務めておられますNPOは、昨年九月から十二月にかけて、全国の市町村の子育て支援行政担当者の方々を対象とされ、各地域にふさわしい少子化対策、そして子育て支援というのを行うための知識と技能を高めることを目的とした研修を実施しておられます。

 この研修を通じて、全国の市町村の職員の声を直接お聞きになられたというふうに思いますが、今後、各市町村が子育て支援事業に取り組むに当たっての課題、どのように取り組んでいったらいいのか、こういうことをお聞かせいただきたいなというふうに思います。

大日向参考人 私どもが実施いたしましたNPO法人の自治体職員研修について、事前にお目通しいただいたことを大変ありがたく存じます。

 これからの子育て支援は、行政だけでなく、NPO、企業を含めて、当事者ももちろんですが、いろいろな主体のコラボレーションということが必要だと思います。しかしながら、そのときに一番大事なのは、それぞれの主体の持っている特性をいかに生かしながら対等なコラボレーションを組めるかということかと思います。

 例えば、NPOは当事者性があります。フットワークの軽さもあります。問題を的確にとらえているということもあります。しかし財源が乏しい、社会的基盤が乏しいということがあります。

 一方、行政は、地方行政は厳しいとはいえ、社会的信頼と基盤があるかと思います。しかしながら、例えばNPOや地域の子育て支援をやっている者から考えますと、地方の子育て支援担当者の方々は、ゼネラリストということもあろうかと思いますが、異動が多くいらっしゃいます。せっかく信頼関係を結んだところで次の新しい方になると、最初から、また一から関係をつくっていかなくてはならない。

 また、行政担当者の方にしてみますと、子育て支援ということと全く関係のないところから突然いらっしゃるということもありまして、本当の意味で地域に子育て支援を根差していくためには自治体の方々の研修も必要かということで、そうしたことをNPOとしてやらせていただきました。

 そういたしましたら、大変驚いたんですが、一NPOがやった自治体職員研修ですが、北海道から沖縄まで駆けつけてくださいまして、年間三回にわたって一泊二日、大変熱心に議論もしてくださいました。子育て支援とは○○だと思っていたけれども実は△△だったというような、そういうワークショップもやったんですが、そこで、子育て支援担当の行政の方々がどんなに今御苦労されているかということも実感いたしました。

 先ほど申しましたように、コラボレーションの時代を迎えています。そういたしますと、特に子育て支援、保育の質をどれだけ担保するかということに関して、厳しい財源の中で、地域のさまざまな社会的リソースを活用しつつ、自治体職員、地方公共団体が精力的に取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 先ほど、今回の特別部会の出しました法案に関して、子供という視点がいささか弱いのではないかというような御指摘もあったかと思いますが、例えば保育サービス提供の仕組みに関しましても、対人社会サービスだ、公的な性格という点で、いかに子供に良好な育成環境を保障するかとか、質、成果の評価がなかなか難しい保育をどういうふうに客観的に評価していくか、あるいは、親が選ぶといっても親もなかなか選び切れない、発達の途中である親をどうやって支援していくかということを、地方公共団体、自治体の職員の方々が地域のNPOや当事者の方々と一緒に汗を流して、こうした仕組みについて構築をしていただきたいということを私どもは考えております。

 そういう意味で、答弁の機会を与えていただきましたことを感謝いたします。ありがとうございます。

糸川委員 大日向参考人、ありがとうございます。今後も、こういう研修を通じて、ぜひまた積極的にお取り組みをされることを期待したいというふうに思います。

 続きまして、赤石参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 母子家庭が経済的に自立する、そういうことのためには、もちろん扶養手当もさることながら、養育費を確保することが必要でございます。平成十八年度の全国母子世帯等の調査によりますと、養育費を受けたことがない世帯が離婚母子世帯の約六割を占めております。

 厚生労働省は、このような実情を踏まえまして、平成十九年度に、各地方自治体の母子家庭等就業・自立支援センターに養育費の専門相談員を配置するということにいたしました。これらの専門相談員のほか、養育費の相談に応じる人たちを対象にした研修、こういうものを行う養育費相談支援センターも東京に設置をされております。

 このような養育費に関する相談支援事業について、一般の方々がこの存在をよく理解されて、当事者の方々が利用されているのか、そして、利用してみたんだけれども不都合があったのかなかったのか、この点について御意見がございましたらお聞かせいただけますでしょうか。

赤石参考人 東京にあります養育費相談支援センターは、私どもNPOの三団体を運営委員にしております。去年発足しました。

 それで、当初の計画よりも縮小したので、例えば弁護士相談、法律相談とかそういったことが、個別相談とかは余りなくて、どちらかというと、今おっしゃったように、就業・自立支援センターに配置する養育費の相談員を研修する、そこで一時的に相談を受けて、困難事例についてだけ東京にある養育費相談支援センターで受けるというような仕組みになっております。そのために、どうしてもちょっと不十分なところはあるかなというふうに思っています。

 また、地域の福祉事務所に配置されている母子相談員さんが、一番最初にそういった相談を受けるのかなというふうに思うんですね。その方とは別に就業・自立支援センターの方に配置しておりますので、それが果たして有効かどうかというのはちょっと疑問もございます。

 養育費についてはやはり社会的な、不況のときには男性も収入も低いわけで、なかなか払えないとか、非常に景気にも左右されます。確かに、少し法制度は前よりよくなって、養育費の算定表ができたり、履行確保制度で、不払いがあったら、一回不払いがあれば強制執行しますと、その後も給与から取り立てられるというような制度もできたんですけれども、なかなかそれを利用する人がいないという状況です。

 やはり養育費については、相談事業を行うというところだけではとてもとても、今一九%がもらっていますというふうに答えているんですけれども、それを上げるというのは困難というのが実感です。本当に、一度行方不明になってしまったり、職場をかえられたりしますと、強制執行する相手がどこにいるのかもわからないということの相談を私もよく受けております。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、続きまして、庄司参考人にお伺いをさせていただきます。

 今回の改正案では、地方自治体が単独事業として補助を行っているいわゆる里親ファミリーホーム、これを小規模住宅型児童養育事業として、法律としてしっかりと位置づけていく、都道府県そして政令指定都市がこれを指導監督するということにしております。

 参考人が会長を務められております川崎市児童ファミリーグループホームとして、この里親ファミリーホームというのがしっかりと制度化されているわけです。これはちょっと重なる部分はあると思うんですけれども、この事業の現状、そして、これを法律上の事業へ移行するに当たっての今後の課題、そして、国としてのどのような支援を望まれるのかということについて庄司参考人のお考えをお聞きしたいなというふうに思います。

庄司参考人 ありがとうございます。

 今御指摘のあった里親ファミリーホームは、里親が、五人、六人の子供を養育するグループホームという形になっています。

 最初の意見陳述でも述べましたが、施設の、地域小規模児童養護施設のようなグループホームというのは必要ですけれども、ただ、そこはあくまでも施設であって、職員が交代制で勤務しています。それに対して里親の方は人間関係の継続性が確保されるという意味で、意義の大きいものだと思います。

 ただ、これまで東京、横浜、川崎などを中心に、多分、最近でもまだ三十六とか三十七とか、それくらいの数しか置かれていないんですね。その理由として、自治体の事業であったということも大きくて、今回、国の制度となることによって普及、発展が望まれます。

 ただ、里親ファミリーホームも、個人の家の中でということがありますので、そういった意味では、養育状況の透明さが少し見えにくいということがあったり、あるいは、今行われている東京、横浜、川崎などでは、やはりこれも補助者に当たるような人がいないと、なかなか生活を回していくのは大変ということもあって、そういう、やっている人たちが余り苦労しないでできるようなサポートシステムというものが必要かというふうに思います。

糸川委員 ありがとうございます。

 この里親の問題というのは非常に難しいところがあると思うんですけれども、やはりできるだけ国として、そして行政からの支援が、今までNPOをいろいろ立ち上げられていらっしゃる方々も皆様そうだと思うんですが、なかなか、要は財源がないとか、一緒になって取り組んでくれる人がいないとか、幾らやる気があっても、やはりそこにお金がつかなければ取り組めないとか、いろいろなところがあると思いますので、またいろいろと御意見をいただければというふうに思います。

 次に、福川参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 この改正案では、家庭的保育事業を法律上位置づけるということにしておりますが、予算事業として、余り普及していない家庭的保育事業について質を確保しつつ普及させていくということには、家庭的保育者の要件をどのように定めていくのか、それから、保育者に対する支援体制をどのように構築していくのか、こういうことが重要な課題としてあるわけでございます。

 福川参考人は、各地方自治体の単独事業であったり、それから諸外国の家庭的保育についていろいろな見識をお持ちというふうに承知をしております。今後、家庭的保育事業を普及させるに当たって、どういうことを取り組んだらいいのか。諸外国の例ですとか、地方自治体の例とか、こういう参考例というのがもしございましたらお聞かせいただきたいなというふうに思います。

福川参考人 ありがとうございます。

 最も確立したといいますか、保育所と本当に同等の身分保障もされ、労働者としてのさまざまな権利も保障されているというような家庭的な保育、ファミリーデイケアの存在は、やはり北欧なんですね。

 例えばフィンランドであるとか、それからデンマークであるとか、スウェーデンもそうですが、そういうところでは保育者は公務員です。つまり自治体の雇用者なんですね。ですから、それなりの労働者としてのさまざまな、休暇の保障、それこそ社会保険のさまざまな保障、そういうものが保障されております。そしてスーパーバイザーの制度もあり、何人かの保育者がいれば、それをスーパーバイズする人たちが配置されている。それはまた、保育所の職員としてその人たちを抱えているとか、そういう保育所との連携も進んでおります。

 しかし、実はスウェーデンなんかでは、スウェーデンはほとんど、一歳まではおうちで育児休業という形で、一歳になると保育の場にというのが普及しているんですけれども、そういうところでも、家庭的な保育ではなく、そういう施設型のところで教育を保障しようという形で、最近は、スウェーデンは余り家庭的な保育は増加しておりません。そういう国もございます。

 しかし、スウェーデンでも、もちろん保育者はきちんとした身分保障のもとに、まさに公務員としての権利を保障されながら仕事をしている。ですから、失業手当もありますし、病気になったときにはさまざまな代替の措置がありますしというような形で、最も保障が厚いというふうに言えるかと思います。そのほか、フランスなんかでも登録をさせて、さまざまな形で支援を組みながら家庭的保育をやっているというように、かなり支援体制がしっかりしていないと保育の質は保たれないということは言われております。

 日本の場合にも、お手元の資料にも五ページに幾つか実例を挙げましたけれども、もう本当に自治体によってばらばらなんですね、これまでの独自体制の中で。川崎、横浜、その他、かなり自治体でも支援をしながら制度を存続させてきているという実例もございますので、きめ細やかなアウトリーチ型のさまざまな支援が実は必要な制度でございまして、決して、安上がりに家庭でやるからねということにはいかないことをお伝えしておきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

糸川委員 ありがとうございます。

 もう時間も迫ってまいりましたので、森田参考人に、最後、質問をさせていただきます。

 今回の改正案の国会提出に先立って、厚生労働省が新待機児童ゼロ作戦を発表されたわけでございます。この新作戦の具体的施策として、保育サービスの量的拡充、保育の提供手段の多様化、それから保育の質の向上等に資する取り組み、これを推進することとされております。

 保育所における保育の質の向上、保育所における子育て支援として、どのようなことに保育所が取り組んでいくべきか、参考人の御意見をお伺いしたいというふうに思います。

森田参考人 ありがとうございます。

 私は今、関東近辺、七つの自治体の計画の策定と実施にかかわってきております。その関係で、本日余りお話しできませんでしたけれども、世田谷の取り組みを一つ御紹介させていただきました。

 つまり、世田谷というのは、非常に多様な保育サービスを今導入しながら、子育て支援を都心部でやっている自治体の一つでございますけれども、そういう自治体になると何が必要なのかといいますと、結局、質を担保するための評価システムですとか、あるいは先ほど来、保育ママさんの実践をどうサポートするかとか、里親さんをどうサポートするかというような話がずっとありましたけれども、やはりそういう実践者をサポートする、そして、子供の権利侵害があったときにはそれを緊急で救出する、実は、そういったシステムを自治体としてきちんとつくり上げなきゃいけないというところに今たどり着いているわけですね。

 そういう仕組みをつくるということが必要なのと同時に、近隣でそういったいろいろなシステムを動かしている人たちが、実は今、国の方はよく競争という言葉で、多様なサービス機関が競争し合って、よりいい事業をつくり出していくということをおっしゃっていますけれども、私が今世田谷で一つモデル事業として展開しているのは、むしろ、お互いに支え合おうという仕組みをつくり始めています。

 具体的には、保育ママさんだとか保育室とか、あるいは社会福祉法人立の保育園だとか企業だとかそういったところも、地域の中で全体が支え合って、例えば、保育ママさんが病気でちょっときょうは見られないとしたら、近所の保育園が連携して子供を預かるとか、あるいは、保育の方法がちょっとわからないんだけれどもといったら、例えば公立の保育園がそこで相談に乗るとか。

 あるいは、九月になりますと一斉の防災訓練なんかもいたします。それから、近所にある高校の生徒たちにはボランティアに来てもらって、もしいざとなったら、当然子供たちの救出をしなきゃいけませんので、災害だとかそういうときには高校生の力をかりようよということで一緒になって、今、そういう子育て支援の地域づくりというようなものも始めております。

 実は、そういう公的な仕組みをつくると同時に、地域の中でお互い支え合っていく、そういった仕組みもつくり出していく。先ほど大日向先生が、公、民、それからNPOも企業も、いろいろなところが実は今、一緒にならなきゃいけないんだというお話をされていました。私は、自治体でそういった施策をつくる立場にある者として言いますと、そういった総合的な施策が非常に重要だというふうに思っております。

糸川委員 時間が参りました。本日は、五人の参考人の皆様方、大変貴重な意見をありがとうございました。

 終わります。

茂木委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

茂木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、西村智奈美君外二名提出、児童扶養手当法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官御園慎一郎君、国税庁課税部長荒井英夫君、文部科学省大臣官房審議官布村幸彦君、厚生労働省医政局長外口崇君、雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君、社会・援護局障害保健福祉部長中村吉夫君、保険局長水田邦雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西本勝子さん。

西本委員 自由民主党の西本勝子でございます。

 提出されています二つの改正法案について質問をさせていただきます。

 アメリカの大統領選挙で、民主党の予備選が話題になっていますが、かつての民主党大統領ケネディの就任演説の中に有名なくだりがございます。それは、国家があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国家に対して何をできるかを問おうというものです。このくだりは、自由のための闘いにエネルギーと信念と献身をささげることによってのみ国が輝き、その国の国民が輝くのだという文脈の中で使われたものであります。

 どんな境遇にあっても個人が輝くためには、働くことがもとであると私は考えます。幼い子供を育てながら母親が就労することは大変な御苦労があると思います。しかし、子供たちは懸命に生き抜いていく母の姿をしっかり見ていると思います。また、国はそうした努力をする方々に対する支援を惜しむものではないと確信しております。そういう思いで、児童扶養手当法の一部を改正する法律案について提出者にお伺いいたします。

 現行の法律は、母子世帯の生活の安定と自立の促進に寄与するためにこの手当を支給し、そうすることによって児童の福祉の増進を図るものであり、みずから進んで自立を図らなければならないとしている第一条、第二条からしますと、この法律の内容は、個人への金銭給付であっても、母子世帯の自立支援法と解釈するところであります。それがゆえに、第十四条では、正当な理由がなく能力の活用をしない場合は、給付の廃止及び減額を定めているのであります。

 今回提出されました一部改正法案は、第十三条の二を削除するのが主な改正となっておりまして、関連する第七条の規定以外は改正しておりませんので、当然、法律の立法趣旨等はお認めになっておりながら、第十三条の二で、五年以上受給している者について最大二分の一の減額をする規定はまかりならぬということであります。

 しかし、どうでしょう。全額が支給される五年という期間は、この法律の第二条で規定している、みずから進んで自立を図らなければならないとするための自立計画の目標期限となり、それに向けての準備期間としては十分であると考えますし、受給期間が五年を超えますと手当が減額されることで、さらに自助努力の目標となるのではないかと思うのであります。

 仮にこの条文を削除した場合は、養育する児童が十八歳になるまで、自立意識を持たないまま全額の支給を受けることができるようになるわけですので、この法律の目的である自立の促進に寄与するどころか、自立を阻害する危険性があると私は考えています。

 そうしますと、提出されました改正法は、母子世帯の自立の促進という本法律の趣旨を逸脱しているのではないかと考えるのですが、これについての御所見をお願いいたします。

西村(智)議員 お答え申し上げます。

 憲法に規定されております十三条、幸福追求の自由というのは、これはだれにしも認められなければならない権利であろうと思います。しかし、その幸福を追求する自由がままならない方がこの日本国内にたくさんいらっしゃるということに思いをいたし、私たちは立法作業をしているわけでございます。

 午前中の参考人質疑、委員もお聞きになられたことかと思いますが、森田参考人から大変貴重な調査報告が出されておりました。それはすなわち、ある特定の自治体についてでありますけれども、児童扶養手当を受給して四年から六年たっている母子家庭において、依然として、平均所得は月額で二十万そこそこ、そのうちの約二割を児童扶養手当が占めているというものでございました。

 やはり幸福を追求するための自由を保障するという観点からも、私は、所得の保障という点で児童扶養手当が果たしている役割は非常に大きいというふうに考えておりまして、今回このような法案を提出している次第でございます。

 さて、委員の御質問に答弁を申し上げたいと思いますけれども、この児童扶養手当法の目的におきましては、母子家庭などの自立の促進の寄与だけではなく、生活の安定への寄与も掲げられております。また、母子家庭の自立のためには、これも午前中の参考人質疑の中でもありましたが、経済支援だけではなくて、子育て支援や就労支援などの総合的な支援が必要不可欠だ、これはセットで行われなければならないという指摘がありました。

 しかし、法改正から既に五年を経過いたしましたけれども、これらの施策はいまだに十分な効果を上げているとは言いがたく、母子家庭をめぐる状況は年々厳しくなりつつあるという認識でおります。こういう現状において経済支援の削減のみを進めていこうとする政府の施策こそが、母子家庭の自立を促進するどころか、生活の安定を阻害して、さらに子供の育ちにもマイナスの影響を与えるものであると考えるものです。

 母子家庭に、就労意欲の有無についての挙証に係る新たな負担を負わせる以前に、経済支援を確保した上で一層の子育て支援や就労支援を行っていくなど、国として、母子家庭の生活の安定及び自立の促進に向けた環境整備こそが重要だと考えており、したがって、この改正案は、法の立法趣旨に沿うものでこそあれ、これを逸脱するという御指摘は当たらないと考えております。

西本委員 ありがとうございました。

 私は、自分も母子家庭の経験がございました。そして、依然として本当に厳しい状況下に置かれている母子家庭の実態があるからこそ、自分も経験したからこそ言えるんですけれども、やはりそういう中でも、母親が一生懸命、子供のために頑張っているという姿を見せるということは、子供のために大きな教育だと私は思っております。

 次に、提出された法案の趣旨説明で、経済的に厳しい実態に置かれている母子家庭で育つ子供が将来に向かって希望を持ち、安心して学び、生活できるよう、改正法案に賛同を求めると述べられているのですが、私は、全く逆で、この法律の第九条の二で定める所得以下で漫然と児童扶養手当を受給していて、その家庭で育つ子供が、本当に将来に向かって希望が持て、安心して学び、生活ができるとは思えません。全面的に公的扶助に頼るのではなく、母親が一生懸命働いて、その家庭に一定の所得があってこそ、提案趣旨で言っているような生活ができるのではないかと思うのであります。

 社会的弱者への公的扶助、特に個人への金銭給付については、税金を投入するわけですから、受給者に一定の義務を課し、身体の障害などでやむを得ない場合を除いて、社会的責任を果たしてもらうシステムでなくてはなりません。今回提出された一部改正案では、結果的に、長期間漫然と金銭給付が続けられるということですが、このことについて納税者の理解が得られるのでしょうか、提出者の御所見をお伺いします。

郡議員 御答弁申し上げます。

 まず、西本委員も母子家庭の経験があるというふうなお話で、一生懸命頑張ってこられた、その背中を子供たちに見せて、教育の一環であるというふうにお話しになっていました。

 今働いておられる母子家庭の皆さんたちも、本当に一生懸命、一生懸命に働いておられます。この間お話を聞かせていただきましたけれども、二つも三つもパートをかけ持ちして、子供といる時間がないというぐらいに、大変厳しい状況の中で仕事をされている母子家庭の母親が大勢おられる、まさに頑張っておられるわけでございます。

 質問の初めにございましたけれども、社会的弱者への公的扶助というのが、入り口のところで義務をかけ、そしてまた責任を負わせるというのが公的扶助の入り口のところの必要条件であるというふうな考え方には、実は、私どもは、その政策の立ち位置としてちょっと違うのではないかという立場でございます。

 これまでも申し上げましたように、まず現在の母子家庭の状況というのは、非正規雇用などがほとんどであって、その就業形態というのは大変不安定な状況である。また、収入も平均で百三十万円程度にすぎず、厳しい状況が続いている。これまで打ち出されてきた自立支援策、就業支援策というものが実態に合ったものであったのかどうかということが問われるところなんだろうと思います。

 また、午前中の参考人の皆様方との議論にもございましたけれども、この児童扶養手当の目的というのは、児童の福祉の増進を図ることとされておりまして、親の置かれている状況によって子供が貧困に陥ることのないようにするものであります。

 母子世帯の母への手当を削減するということは、未来を担う子供たちの福祉をさらに削ることにつながるんだ、そんなふうに思います。近年の三位一体改革で、全体的に社会保障関係の削減が続いているわけですけれども、このような中で、今回政府は、あいまいな政令を定めまして、いつかは削減するという主張を続けておられるわけで、私どもの提案する、この削減規定すべてを廃止する法改正を行うことこそが、母子世帯が安心して生活できていく、自立につながるその一助になるものだと私どもは信じております。

 民主党は、就労支援と経済的な支援、これを車の両輪としてしっかりと機能させていくことで母子世帯の自立促進を図るべきだと考えておりまして、西本議員の御質問に対する私どもの答弁ですけれども、これについては、納税者の理解も当然のごとく得られるものと考えております。

 以上でございます。

西本委員 ありがとうございました。

 先ほどの答弁、私も感じ入るところは多々ございました。

 ただ、今問題視されている一部停止措置の運用に当たっては、あくまでも、母子世帯への就業支援を初めとする各種の支援策を総合的に実施し、就労の受け皿がしっかりしていることが肝要であると考えております。それは同じ御意見だと思います。この法律の第十三条の二を受けた政令には十分配慮が必要と思っていますので、その点を政府にお願いして、児童福祉法の一部を改正する法律案に関する質問に移ります。民主党の先生、どうもありがとうございました。

 今回、家庭的保育事業が法定化されることになりました。いわゆる保育ママ事業は、地方自治体の単独事業として古くから実施されていたものを、平成十二年度から国庫補助事業とし、今回、法定化することとしたわけです。

 平成十二年度に予算化した際は、あくまで保育需要の増に対応するための応急措置でありましたが、今般は、法定化され、市町村の保育の実施義務を果たす際の保育として取り扱われるものとなるものですから、保育の質についても、保育所と同等のしっかりとしたものでなくてはならないと考えます。

 そのためには、まず、保育に当たる人材の質が問題であります。従来の補助事業においては人員について資格要件があり、保育士あるいは看護師となっておりましたが、今回の改正後においてはこうした資格要件を外す方向で検討されるということであります。

 保育の質は人で決まるものであります。職業として保育に当たるには相当の教育訓練、経験などが必要であると考えます。どのような経験を有する人に対して、どの程度の研修を実施したなら保育を担うにふさわしい人材になるとお考えなのか、お聞かせください。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 午前中の参考人質疑でも、この論点については繰り返し説明あるいは回答があったように思いますが、この家庭的保育事業の推進に当たりましては、質と量のバランスを考えながら制度設計を進める必要がありますことから、本法案におきましては、家庭的保育者、いわゆる保育ママと申しておりますが、この担い手として、保育士を原則としつつも、保育士資格を持たない者についても一定程度認めるということにしているところでございます。

 このため、保育士の資格を持たない方について一定の研修を課すなど、保育の質を確保するための方策が必要であると考えております。また、就業前にすべての家庭的保育者に基礎研修を課すほか、現に家庭的保育を行っておられる方についても、経験年数に応じた現任研修の体系化を図っていきたいと考えております。

 また、研修の方法であるとか具体的な内容につきましては、今後定めてまいります実施基準やガイドライン等において明らかにしてまいりたいと考えております。専門家等の御意見を踏まえながら、今後、鋭意検討を進めてまいりたいと思います。

西本委員 ありがとうございました。

 人材については了解しましたので、次に、施設設備のことについてであります。

 家庭的保育事業については、保育者の質の問題のほか、施設設備の問題もあります。三人の乳幼児を預かっても大丈夫な広さがあり、安全な構造でなくてはなりませんし、また、調理設備も衛生的なものでなくてはなりません。

 家庭的保育事業における施設設備の要件をどのようにお考えでしょうか。また、設備などに対する補助をお考えなのでしょうか、お尋ねします。

大谷政府参考人 家庭的保育事業におきます施設あるいは設備の要件につきましては、既に先行して実施しておられる地方自治体の事業や、あるいは従来から行っております国庫補助事業などを踏まえまして、良好な保育環境を確保する観点から、実施基準において、例えば子供一人当たりの面積であるとか、あるいは調理などの置くべき設備、戸外の活動ができる周辺環境など、こういった事項について定めてまいることを検討しております。

 それから補助の方でありますけれども、平成二十年度から、これは国庫補助事業におきまして、家庭的保育を実施するための環境改善等の経費を計上したところでございます。

西本委員 ありがとうございました。

 次に、当該事業の保育内容についてでありますが、保育所の保育士の場合は、専従の仕事なので保育にかかり切りです。一方、保育ママの場合、例えば友達からの電話がかかってきて話し込んでしまったり、お客さんがやってきて対応に時間をとられたり、そういったこともあり得るのではないでしょうか。また、保育ママが一人で個人の家で保育するというのは、密室の中で、万が一にも虐待が起きないのかという懸念があります。さらに、保育ママが病気になったときや所用があるとき、どうするのかも考えなくてはなりません。

 こうした課題にこたえるものとして、保育所から派遣される家庭的保育支援者の配置という仕組みが考えられたわけですが、これは、あってしかるべきものであり、今までなかったのが不思議なくらいの制度であります。

 法定化された事業としての保育は、安心、安全な保育でなくてはなりません。保育ママと利用者の間だけの関係に任せてしまうのではなく、家庭的保育事業の欠点を補うことができるよう、原則的には保育所との連携を密にすることを必須とすべきと考えるのですが、この点についてのお考えをお伺いいたします。

大谷政府参考人 家庭的保育事業は、家庭的保育者がその居宅において単独で保育を行うというものでありますことから、安全性についての配慮は特に重要であると思います。

 このため、今後定めてまいります実施基準において、市町村が行う体制整備として、保育所におきまして、一つは、家庭的保育者が乳児または幼児の状況に応じた保育を適切に行うことができるよう保育の内容に関する支援を行うこと、また二つ目として、家庭的保育者の居宅等における保育の状況を把握するとともに、家庭的保育者からの相談に応じて、必要な指導及び助言を行うこと、また三つ目として、家庭的保育者の病気や休暇等により保育が行われない場合に、家庭的保育者にかわって保育が行われるよう必要な体制整備を整えること、こういったことについて必要な規定を整備していくことを検討しております。

 これによりまして、家庭的保育者と今お話ありました保育所との連携も図り、安心して安全に家庭的保育を利用できるよう、体制支援に努めてまいりたいと思います。

西本委員 新しい制度がより実行されることを望みまして、次の質問に移らせていただきます。

 先日、四国のある無認可保育園の代表の方から陳情を受けたのですが、それぞれ無認可保育園を十年から二十年経営していて、相当厳しい検査もすべてクリアしていることから、しっかりした保育内容であるにもかかわらず、無認可ということで、園児一人当たりに対して許可保育所のように補助金が一切もらえない。このたび、国が保育ママという事業を認めるのであれば、無認可保育所にも何らかの援助をいただきたい。そうすれば、もっと定員をふやすことができるのですがと言っておりました。

 これも差し迫った要望であると聞いたところですが、そもそも、責任を持てる保育ということから、認可を受けることが先決でありますが、自治体の対応もあるようですので、今後の保育事業全体のことを考慮したとき、無認可保育所への支援をどのように考えておられるのかお伺いいたします。

大谷政府参考人 無認可保育所、いわゆる認可外保育所への対応であります。

 まず、保育所という場所でありますが、ここは、乳幼児が生涯にわたる人格形成の基礎を培う極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごすところであります。児童が、健康あるいは安全で情緒の安定した生活ができるように、施設や人員配置などについて、最低限の質的な担保を確保するための児童福祉施設最低基準を満たす保育所において保育をするということが基本であるというふうに考えております。

 したがいまして、最低基準に適合しない認可外の保育所に対して補助を行うということはなかなか困難でありますけれども、一定の質を備えたレベルの高い施設が認可保育所に転換しやすくなるように、例えば、認可予定施設に対して、市町村が保育士を派遣して保育内容の指導等を実施するであるとか、認可時点での施設の改善に必要な助成などを行ってきているところであります。

 引き続き、こうした形で、認可化に向けての必要な支援という形で取り扱ってまいりたいと考えております。

西本委員 家庭的保育事業と無認可保育所についてお聞きしたところですが、次に、認可保育所についてお伺いします。

 今委員会に提案されました児童福祉法等の一部を改正する法律案は、子どもと家族を応援する日本重点戦略などを踏まえ、子育て支援を多角的に推進するための所要の改正となっているところでありまして、この改正の背景には、教育基本法の改正による家庭教育や幼児教育の重視や、少子化社会対策基本法、次世代育成支援対策推進法による行動計画への対応があるわけでして、現在置かれている地域、家庭、子供の実態にかんがみて、より必要な支援策が盛り込まれているところから、法案自体に異論はないのであります。

 ただ、児童福祉施設として、子育て支援の中心的な役割を果たしている保育所については、提出されている法案にさしたる改正事項がないのですが、今後、様々に変化していくだろう社会を見据えたとき、現行の保育所制度の将来について、大臣はどのような御所見をお持ちでしょうか、お伺いいたします。

舛添国務大臣 子供というのは未来への投資であります。そういう意味で、次世代育成支援をきちんとやらぬといかぬということで、昨年十二月に、子どもと家族を応援する日本重点戦略というのをまとめました。そこで、具体的な制度設計については、直ちに着手の上、税制改革の動向を踏まえつつ速やかに進める。それから、子育て支援事業の制度化、地域や事業主の次世代育成支援の取り組み推進のための制度的な対応について、これらに先行して取り組む。つまり、一番目は財源の問題をきちんと議論する、しかし二番目はできるところからやっていくという、二本立てでやりたいと思います。

 そういう中で、二つの課題の検討の場としまして、社会保障審議会の少子化対策特別部会を立ち上げました。そして昨年末から検討を進めてきましたけれども、今回の法案で、先ほどの保育ママ、家庭的保育事業制度の新たな子育て支援サービスの制度化、それから里親制度の見直しなど、先行的な課題について速やかな対応を今しているところであります。

 先立って、五月二十日に特別部会におきまして「基本的考え方」の取りまとめが行われたところであります。この中で、保育サービスのあり方については、ニーズの変化に対応して多様な選択肢を利用者に可能にするために、良好な子供の育成環境、それから親の成長を支援するための対人社会サービスとしての公的性格や特性も踏まえた上で、新しい保育サービスということの提供の仕組みを検討していこうということで、さらなる取り組みを進めてまいりたいと思っております。

西本委員 舛添大臣、ありがとうございます。

 きょうは私は保育所のことについて質問させていただきましたが、舛添大臣は、高齢世代とか現役世代、そして若者、子供と生涯各期にわたって、その対応に昼夜を問わず一生懸命頑張っている姿には日ごろから敬意を表しておりますので、どうか保育所の方にもよろしくお願いいたします。

 昨年十二月の保育所保育指針改定に関する検討会の報告書を受けて、このたび三度目となる保育所保育指針が改定され、去る三月二十八日付で告示されたのですが、これまで二回は局長通知として出されていたものが、今回は大臣による告示となっているのですが、このことはどういう意味が込められているのかお伺いいたします。

大谷政府参考人 これまでの保育所保育指針は、創設時、厚生省児童家庭局長による通知として定めておりました。

 今回、今お話ありましたように、各保育所の保育の内容の質を高めるという観点から、児童福祉施設最低基準第三十五条に基づきます、厚生労働大臣が定める告示に改めました。この中で、保育所における保育の内容及びこれに関連する運営に関する事項を定めた最低基準としての性格の明確化を図ったところでございます。

 なお、この大臣告示化によりまして、すべての保育所が遵守すべき最低基準として位置づけられるわけでありますが、保育の質を向上させるための各保育所の創意工夫や取り組みを促す観点から、むしろ内容を重要部分に絞り込みまして、いわば大綱化を図って臨んだというところでございます。

茂木委員長 大谷局長、局長通知ではなくて、なぜ大臣告示にしたかという答えになっていないです。

大谷政府参考人 児童福祉施設最低基準というものが大臣の定める告示のベースでありまして、このいわゆる省令レベルに合わせるということで、局長通知から大臣告示に格上げしたということでございます。

西本委員 ありがとうございました。

 この場合、地方自治法第二百四十五条の二及び二百四十五条の三との関係はどうなるのか。また、新しい保育指針は、今の子供を取り巻く環境の中で、子供に最もふさわしい生活の場として保育所の役割を位置づけ、保育の中身を充実させるための保育課程を打ち出していますから、まさしく、保育所での保育のよりどころとなるものとして評価できるものと理解しています。

 ただ、保育所は自治体の事務でありますので、地域の実情に即したものとして、園ごとに創意工夫を凝らした保育内容を定め、育成会や保護者会との連携を持ちつつ実施してきたもので、保育士集団の長い間の努力によって培われた独自の手法もあるわけです。

 新しい保育指針では、保育指針の内容を大綱化し、各保育所の創意工夫による取り組みを促しているのですが、そうなると、保育指針に示されていないような、地域の独自性を持った保育内容はどうなるのかお伺いいたします。

大谷政府参考人 改定後の保育所保育指針は、保育所における保育の内容を定める告示として、施設や保育士等が遵守すべき事項を示すものであります。一方、今お話のありました、国の地方公共団体の事務の処理への関与について法定主義を定めましたのが地方自治法の第二百四十五条の二及び二百四十五条の三ということでありまして、両者は、それぞれ趣旨、目的を異にするものというふうに考えております。

 しかしながら、この告示化に伴いまして、保育の質を向上させるための各保育所の創意工夫や取り組みが損なわれることがあってはなりませんので、各地方自治体による指導監督の際にも、各保育所による取り組みを尊重するように周知しているところであります。

 また、この保育指針に示されていないような保育内容でありましても、地域の実情に応じて創意工夫を図っていただきたいと考えておりまして、今後とも、このような各保育所における、あるいは各地域における独自性ある取り組みを促進してまいりたいと考えます。

西本委員 ありがとうございました。

 今、地域力ということが言われます。この力の構成員である人のつながりが希薄になっているとき、保護者間、保護者と地域の関係をつなぐ保育所の活動は特に重要と考えていますので、保育指針でもこのことが位置づけられているということですので安心したところでございます。

 次に、地元で保育士に聞いたことがございます。児童の受け持ち定数を引き下げてほしいという声が圧倒的で、これにより大部分の問題が解決できるということです。

 ある保育士は、小学校の三十人学級が認められたのは、生活習慣や学習態度の乱れからくる学力低下が問題になってのことであり、それは、就学前の乳幼児期の家庭での育ちに問題があるとも言われています。小学校が改善されてきているのに、保育所がいまだに昔のままの配置基準では、児童一人一人に十分な手だてができないことで、せっかく改善された小学校に悪影響を与えかねないと指摘しています。

 これらの現場の声はどうしても国に届けなくてはならないと感じたところですが、児童福祉法が施行されて六十年余りが経過する中で、昔のままの基準を改善しないことをいかがお考えでしょうか、お伺いいたします。

大谷政府参考人 保育士の配置基準につきましては、保育の質の維持向上を図るという観点から、国として必要と考える最低基準を示すものでありまして、制度の創設以来、適宜見直しを行い、最近では平成十年に見直しを行ったところであります。

 また、先ほど大臣から説明申し上げました少子化対策の特別部会が取りまとめました考え方におきましても、「保育環境等のあり方については、利用者の意見や地域性、地方公共団体やサービス提供者の創意工夫の発揮に十分配慮しながら、その維持・向上を図ることが必要であり、科学的・実証的な調査・研究により継続的な検証を行っていく仕組みを検討していく必要がある。」とされているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、保育士の配置のあり方についても、この「基本的考え方」を踏まえつつ、財源の確保も念頭に置きながらでありますが、新しい制度体系の中でどうしていくか、検討してまいりたいと考えます。

西本委員 ありがとうございました。

 今回の児童福祉法の改正は、保育の潜在的需要にこたえ、保育の質的、量的充実を図るものでありまして、答弁いただきましたことをしっかりと実行していただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、福島豊君。

福島委員 大臣、副大臣、そしてまた提出者の皆様、御苦労さまでございます。

 本日は、質問に先立ちまして、児童扶養手当法の改正案について採決がなされるということで、一言申し上げておきたいと思っております。

 十四年に法改正が行われました。このときには、さまざまな議論があったわけでありますけれども、福祉の分野において、ウエルフェア・ツー・ワークという言葉がありますけれども、自立を支援していく、就労を支援していく、こういう考え方をやはり積極的に組み込んでいく必要があるんじゃないか、母子家庭の母の就労に対して国の支援というものはそれまで必ずしも十分ではなかった、ここに力点を置いていこうじゃないか、こういう議論があったというふうに記憶をいたしております。

 そして、当時のその議論におきましては、民主党の皆さんからも賛成をいただいて法改正をさせていただいた。ただ、就労支援といっても、果たして本当にうまくいくんだろうか。政府がいろいろと事業を新しくつくり出しました。これが現場でどの程度機能するか。当時の議論も、実際、五年たってみてうまくいっていなかったら、児童扶養手当についての減額措置というものはやはり発動してはいけないんじゃないか、こういう議論が十分ありまして、当時の厚生労働大臣の答弁におきましても、そうしたことを十分に踏まえながら対応する、こういう話だったと私は記憶をいたしております。

 そしてまた、それを受けて、政府の閣法だけでは不十分である、これは民主党の皆さんとも自民党、公明党、協議をさせていただいて、そして、母子家庭の母の就労を支援するための特別措置法をつくろう、そして全面的にバックアップしていこう、こういうことも一方では行わせていただきました。

 そして昨年、いよいよ五年というものがたちます。当時の議論を振り返って、やはり現在の母子家庭の母の就労状況というのは余り改善していない、それを法律の規定どおりに実施するというのは不適切ではないかということから、自民党、公明党、いろいろと議論をさせていただいて、そして、これはもう先般来この委員会で議論されておりますし、皆さんも御存じだと思いますけれども、就労の意欲のある方々についてはこれは措置をしない、こういう結論を出したというふうに私は理解しております。

 その中で、この措置がいかがなものか、こういう御指摘がありますけれども、それはあくまで、ウエルフェア・ツー・ワークという、前回の民主党にも御賛同いただいたこういう改革の枠組みというものを堅持する中でどうすべきか、こういう観点から出てきた結論であるということをぜひ御承知いただきたい、こういうふうにも思うわけであります。

 ただ一方で、それぞれの自治体において、母子家庭のお母さん方に、こうした見直しについての情報提供というものが必ずしも十分ではなかったのではないか、そしてまた、その手続が煩雑ではないか、こういう御指摘があったわけであります。こうした点については、私どもも政府との協議の中で、できるだけ簡便に、そして御負担をかけないように、こういうことを申し上げてきたところでありまして、その点について、いまだ不十分であるということについては政府としても謙虚に耳を傾けていただいて、運用の改善ということをぜひ図っていただきたい、このように思うわけであります。

 このことをまず申し上げておきまして、本日は、要保護児童の問題について私はお尋ねをしたいと思っております。

 要保護児童数の推移、九五年には、児童人口二千四百九十六万人に対して三万二千九百九十九人、〇・一三%でありました。しかし、二〇〇五年には、児童人口は二千百三十四万人と減少しておりますけれども、要保護児童数は四万五十八人とかえって増加をいたしまして、〇・一九%。これは継続的に増加の一途をたどっております。

 日本がこれだけ経済的に豊かになる中で、要保護児童の方がどんどんふえている。これは大変大きな問題だと思いますし、社会としてのあり方を日本は今問われているんじゃないか、こういうふうに私は思うわけであります。この点について、要保護児童がこのように増加をしているということについて、政府の御見解をお聞きしたいと思います。

大谷政府参考人 社会的養護を必要とする子供の数が増加していることについては、さまざまな要因があると考えられますが、児童相談所における児童虐待に関する相談件数で見ますと、平成十八年度においては、統計をとり始めた平成二年度の三十三・九倍、また、児童虐待防止法施行前である平成十一年度の数字と比べて三・二倍、こういったふうに増加しているわけであります。

 平成十九年五月に取りまとめられました、今後目指すべき社会的養護体制に関する構想検討会中間とりまとめというものにおきましても指摘されておりますが、その増加というのは、児童虐待の増加が主な要因ではなかろうかというふうに考えられております。

福島委員 近年の児童虐待の増加ということについては、若い世代の方々が、かつてと比べると経済的には安定していない状況が拡大をしているのではないか、こういう御指摘もあります。我が国が経済的には世界でも有数の水準にある、にもかかわらず社会的にはこういう事象がふえている。社会のあり方、そしてまた教育のあり方、こういうものがやはり根本から問い直されなければならないのではないか。要保護児童に対しての支援の体制、これをきちっとするということも重要でありますけれども、何よりも大切なことは、こうした要保護児童が発生しない、起こらない、こういう社会をつくっていくということではないかと思っております。

 子供ポストにしましても、昨年の一年間だけで十人を超える子供が預けられている、これも私はゆゆしき事態だというふうに思っております。日本の国は、どこで、どこがおかしくなってしまったんだろうか、こういうことを政治の場にある者はひとしく考える必要があるのではないか、このような思いがいたしております。

 今回の児童福祉法の改正におきましては、乳児家庭全戸訪問事業でありますとか養育支援訪問事業、こうした新しい事業を法定化して、全国の自治体でひとしくやっていただこう、こうした早期からの介入が必要である、こういうことを示した点では非常に有益な改正だというふうに私は思っております。

 何よりも、要保護児童を生み出さないためには、子供の育ち、子供の養育ということについて課題がある場合については国が、そしてまた地域の行政が積極的に関与していく、こういう体制づくりこそが急務であるというふうには思っております。しかしながら、この事業は、どこまでそれぞれの地域において、そしてまた質的にも保障された形で行われていくのかということが、法定化をした次に問題になるプロセスなんだろうというふうに思います。

 平成十九年度から乳児家庭全戸訪問事業が実施されております。これは五八・二%。実施早々でありますので、この程度の数字かと思います。それに対して、育児支援家庭訪問事業、これは全戸訪問を受けてさらに支援を行う、こういう枠組みでありますけれども、これは若干少なくて四二・九%。この二つは連動してしっかりと行われなければならない、こういう性格のものであろうというふうに思っております。

 そしてまた、実際に全戸訪問するといいましても、全戸訪問した先で一体どういうことを聞くのか、そしてまたどういう情報をキャッチするのか。実際に実施をしていただくところの保健師の方々の資質ということも極めて重要である。そのためには、ガイドラインでありますとか、マニュアルでありますとか、研修でありますとか、さまざまな取り組みが必要であろうというふうに思っております。

 この点についての政府の見解をお聞きいたしたいというふうに思います。

大谷政府参考人 今回提出申し上げております改正法案におきまして、これらの事業が全国の市町村で実施されますように、例えば、生後四カ月までの全戸訪問事業につきましては乳児家庭全戸訪問事業という名前で、また、育児支援家庭訪問事業につきましては養育支援訪問事業として児童福祉法に位置づけるとともに、市町村にその実施について努力義務を課すということにしております。

 この改正法案におきましては、市町村は、今お話ありましたように、乳児家庭全戸訪問事業により支援が必要な児童やその保護者を把握したときには、養育支援訪問事業、その他必要な支援を行うというふうにしているわけでありますが、御質問のように、その進め方、いわゆるソフトといいますか、そういうことが大変重要であろうというふうに考えております。

 今後、国としまして、既に取り組んでいる先進的な自治体の取り組み等も参考としながら、これらの事業の具体的な実施方法、あるいは対応方針をどうやって決定するかという決定方法とか支援計画の設定の方策、また訪問者への研修をどうするか、こういったことについて、市町村向けのガイドラインを策定して周知を図ることを考えております。

 今後とも、この両事業について、質を確保しながら、全国の市町村へ普及するための取り組みに力を尽くしてまいりたいと考えております。

福島委員 児童虐待にはさまざまな要因がある、こういうふうに言われております。経済的な貧困でありますとか家庭の置かれた状況ということも一因となっております。

 私は、近年、発達障害の問題にこの数年間取り組んでおりますけれども、こうした発達障害を含め、児童に障害があるということも児童虐待の一つの原因になる、こういう指摘もあるわけであります。

 近年、発達障害については、増加の傾向にあるということがさまざまに指摘をされているわけでありまして、こうした障害に対しての対応は重要な課題であります。特に発達障害を有する子供さんに対しては、保護者の方々、特にお母さんでありますけれども、子育てが大変難しい。特に広汎性発達障害、自閉症等の障害でありますと、コミュニケーションの障害、こういうものがある。子育てをする母親の気持ちがなかなか伝わらない、そうしたことが、一つはこうした児童虐待ということにつながっていったりとか、そしてまたお母さん方にとっては大変子育てのストレスが高まる、こういうことにもつながっている、こういう指摘もあるわけであります。

 こうした、さまざまな家庭の有する個別の課題に対してどのように適切な支援をすることができるかということが、要保護児童を我が国において生み出していかないための予防としては極めて大事であるというふうに思うわけであります。先ほどもありましたように、全戸の訪問事業、しっかりとやっていただきたいと思いますし、その後の個別の支援ということもしっかりやっていただきたいと思います。

 ただ、発達障害について申し上げますと、ある地域の保健師の方々にアンケートをとった。例えば、自閉症の障害ということについて、どの程度その基本的な特性について、性格について知っておられるかというと、知らない人が半数以上いる、こういう実態もあるわけであります。

 ことしから世界自閉症の日というものがスタートいたしましたけれども、まだまだ我が国の社会においての認識、そしてまた正確な理解というのは十分ではない、このように実感をするわけであります。

 ただ一方で、日本は非常にすぐれたところがあります。それは一歳半健診、三歳児健診の存在であります。この二つの健診によって、障害がある場合、かなりの率でこれはカバーをされている。そしてまた、その事後的な対応ということも進められている。

 ただ、近年指摘をされておりますことは、こうした健診におきましても、重度の障害を有する方々についてはその後の体制というものが、早期療育ということで、さまざまに八〇年代頭から進められてきたけれども、重度でない場合、そしてまた、なかなか保護者の方々が受け入れることが難しいようなケース、こういったケースについては必ずしも対応が十分ではないのではないか、このような指摘があるわけであります。

 厚生労働省におきましては、発達障害の問題に積極的にお取り組みをいただいておりまして、例えば、平成十九年度には、こころの健康科学研究事業、発達障害に係わる実態把握と効果的な発達支援手法の開発に関する研究を行っていただきました。

 その研究報告書を最近拝見させていただきましたけれども、その中では、早期発見に引き続き、子供の発達支援、保護者の育児支援、障害認知支援を合わせた心理的に受け入れやすい幼児期前中期児を対象とした母子療育事業の整備が当面の重要課題であると。

 今回の法改正で定義されました全戸訪問でありますとかその後のフォローは、乳児期、比較的早い時期でありますけれども、その後の前期、中期にかかわりまして指摘をされておりますようなことについて、政府として積極的な御対応をいただきたいというふうに思いますけれども、政府の見解をお聞きしたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘がございましたように、健診後のフォローアップは、発達障害の早期発見、早期対応につながる重要なものと考えておりまして、それぞれの自治体において、さまざまな工夫をして取り組みが強化される必要があるというふうに思っております。

 このため、厚生労働省といたしましては、自治体における早期発見、早期対応などの取り組みに資するように、平成十九年度より発達障害者支援開発事業を開始いたしまして、二十カ所程度の自治体において先進的な手法による支援をモデル事業として実施していただき、専門家などによる検証を行った上で、事業の成果について広く情報提供することとしております。

 こうした事業の具体例を幾つか申し上げてみますと、例えば、世田谷区では、知的障害がない場合でも、家族が発達障害の存在に気づき、対応を始められるよう工夫されたリーフレットを全員に配布されるようにしておられます。それから二つ目といたしまして、大阪府では、発達障害につきまして家族がきちんと学べる学習プログラムを提供されております。それから三つ目といたしまして、長崎県では、作業療法士や言語聴覚士が保育所、幼稚園を訪問して助言を行うことで、発達障害の診断前でも適切な支援ができるような事業をされておるところでございます。

 また、御指摘がございましたように、事業を実施するためには人材の育成も重要でございますので、各自治体で発達障害者の早期発見、早期対応を中心的に進める医師及び保健師を対象に、国立精神・神経センターにおきまして、発達障害早期総合支援研修を十九年度から始めたところでございます。

 今後とも、各自治体が地域の実情に応じた取り組みを推進できますように、厚生労働省といたしましても、先進的な実践事例の収集、提供、さらには人材の育成に着実に取り組んでいきたいと思っております。

福島委員 よろしくお願いいたします。

 次は、要保護児童を支援する施設体系について触れたいと思います。

 これには、乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、自立援助ホーム、こういったものがあるわけであります。最も規模が大きいのが児童養護施設でありますけれども、その入所児童における障害を有する者の割合というのは、昭和六十二年の八・三%に対して、平成十五年には二〇・二%へと増加をいたしております。

 こうした障害を持つ児童の方々に対してどのような個別的な支援をすることができるのかということが、要保護児童に対しての支援としてこれからは非常に重要になってくる、このように私は思っております。

 児童養護施設、そしてまた情緒障害児短期入所施設の両施設におきまして、入所しておられる児童の方々の障害の実態というものは一体どうなっているのかということについて御説明をいただきたいというふうに思います。

大谷政府参考人 当省によります児童養護施設入所児童等調査によりますと、今お話ありました平成十五年二月一日現在の入所児童における障害等の割合は二〇・二%でありますが、その主な内訳として、知的障害八・一%、言語障害一・四%、視聴覚障害〇・八%、肢体不自由児〇・四%、発達障害につきましては、ADHD、いわゆる注意欠陥多動性障害が一・七%という数字でございましたが、その他の障害というのが八・三%となっておりまして、この中にはADHD以外の発達障害も含まれているというふうに考えております。

 また、担当課が行いました別の調査によりますと、十九年三月一日現在の児童養護施設の入所児童における障害の状況は、知的障害八・一%、身体障害二・三%等となっておりまして、発達障害につきましては、ADHD、それからLD、いわゆる学習障害、アスペルガー障害等を合わせて五・八%となっております。

 次に、お尋ねのありました情緒障害児短期治療施設入所児童についての割合でありますけれども、これは十九年三月一日現在の状況を申し上げますと、知的障害の方一一・三%、身体障害〇・八%、精神障害七・四%でありまして、発達障害につきましては、ADHD、LD、アスペルガー障害等を合わせまして四一・八%となっております。

福島委員 ただいま御説明ありましたように、情緒障害児短期治療施設で四〇%を超える比率がある。多分、養護施設でも、精査をしていきますともう少し数字が高いかもしれません。

 先ほど申しましたように、児童虐待との関連、そしてまた子育てのしにくさということから、こうした要保護児童が出現してくる。その一つの契機として、こういう障害に対しての支援というものが、今の日本の社会の中で必ずしも十分に行われていないんじゃないか、まだまだ不十分ではないか、こういうことが指摘できるのではないかと思います。

 もちろん、ただいま中村政府参考人からお話ありましたように、近年、精力的にその体系を構築していただいておりますけれども、まだまだカバーし切れないところがあるということは率直に認識しなければいけませんし、こうした児童養護施設、そしてまた情短でありますけれども、要保護児童に対しての施設の中で、こうした障害ということをしっかりと踏まえた上で支援を行っていくということが極めて重要であるというふうに思っております。

 個別的な支援、これが必要でありますし、個別的な支援をするためには、児童養護施設なり情短施設なりに対してどういう支援が総体として行われるか、こういう二重の枠組みが多分あるんだろうと私は思っておりますけれども、この点についてのお考えをお聞きしたいと思います。

大谷政府参考人 特に施設についての取り組みについて重点的に申し上げます。

 まず、児童養護施設におきましては、知的障害あるいは発達障害、その他の心身障害のある子供も増加しておりまして、被虐待児童のほか、多様な子供への対応が必要な状況にあるというふうに認識しております。

 このような状況を受けまして、これまでも小規模ケアの推進であるとか個別対応職員の加算措置といったものを実施してまいっております。

 また、情緒障害児短期治療施設におきましては、軽度の情緒障害を有する児童を短期間入所させ、治療することを目的としている施設でありますが、現行制度におきましても、一つは、児童養護施設において配置を義務づけております児童指導員、保育士に加えまして、医師、心理療法を担当する職員、看護師等の治療的な役割を担う職員の配置を義務づけております。また、児童養護施設に比べて、より個別的な支援や治療を行えるように、児童指導員、保育士の手厚い配置、心理療法に使用する部屋の設置を義務づけていること、こういったことによりまして、入所する児童の特性に応じた支援体制を講じているところであります。

 さらに、現在、厚生労働省におきまして、施設内で行われているケアの現状を把握するための調査を進めておりますが、その結果やあるいは次世代育成支援策の再構築に関する議論を踏まえまして、今後さらに施設の見直しについても検討していきたいと考えます。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

福島委員 現状に合わせて必要な支援を構築していただいて、そして、個々の子供の未来が展望できるように頑張っていただきたいと思います。

 また、今いろいろとお取り組みをいただいているということがわかりましたけれども、施設自体のあり方についても議論があるわけであります。

 児童養護施設、情緒障害児入所施設、現在では大舎制、要するに、広いところで多くの方を世話する、こういう形が中心でありますけれども、こうした障害の特性等というようなことを考えますと、より小さな単位できめ細かい対応、そしてまた安心できる環境、こういうものを再構築していく必要がある、このように思います。

 そのためには、措置基準でありますとか財政的な支援というものの充実も当然必要でありますけれども、こういった施設のあり方についてどのように検討されるのか、この点についてお聞きをいたしたいと思います。

大谷政府参考人 児童養護施設等におきましては、これまでも小規模ケアの推進を図ってきたところでありますが、平成十九年の十一月に取りまとめられました社会保障審議会児童部会の社会的養護専門委員会の報告書におきましては、まず、子供の抱える背景が多様化、複雑化する中、ケア単位の小規模化等を推進する必要がある。

 それから二つ目として、子供の状態や年齢に応じた適切なケアを実施できるよう、現行の施設類型のあり方を見直すとともに、人員配置基準や措置費の算定基準の見直し等を含めた、ケアの改善に向けた方策を検討する必要がある。

 また、このような見直しを具体的に進めるためには必要な財源の確保が不可欠であるということで、現在、施設内で行われているケアの現状を詳細に調査分析しているところでありますが、先ほど申しましたように、次世代育成支援策の再構築の中で、この問題についても取り組んでまいりたいと考えております。

福島委員 ぜひしっかり頑張っていただきたいと思いますし、私どもも、その実現に向けてしっかりとバックアップをさせていただきたい、このように思っております。

 続いて、こうした施設から退所したお子さんがどうなっていくんだろうか、こういう問題であります。これは先般の委員会でも取り上げられておりました。

 児童養護施設からは六割が家庭復帰する、二割は就労、一割は他施設というふうになっております。一方で、情緒障害児短期治療施設について、退所後の進路がどうなっているのかということについて簡単に御説明いただきたいと思います。

大谷政府参考人 当省による平成十八年度社会福祉施設等調査によりますと、平成十七年十月二日から一年間に情緒障害児短期治療施設を退所した子供につきましては、家庭復帰が六五・六%、就労三・六%、他施設への入所二六・三%となっておるところでございます。

福島委員 養護施設に比べまして、他施設に行く方が二六%と多いということが多分特徴なんだろうというふうに思います。さまざまな課題があるにしても、できれば地域に戻る、家庭に戻る、そしてまた就労できる、こういう道筋が何とか描けないだろうかということが望まれるところであります。

 退所後、就労してもさまざまな支援を継続することが必要である、こういう指摘もあります。障害の存在なども考慮すれば、継続的な支援の必要性ということはさらに深まるのではないかというふうに思います。家庭への復帰についても、家庭に復帰した後、まずどのようにして自立していくのか、やはりここにも、保護者の方々の支援も必要でしょうし、本人の支援も多分必要であるというふうに思います。

 そうした退所後の継続的な支援ということについて、政府のお考えをお聞きしたいと思います。

大谷政府参考人 社会的養護におきましては、児童養護施設や情緒障害児短期治療施設等に入所中の子供さんのみならず、退所した後の子供等に対しても、社会的に自立できるよう継続的に支援を行うことが重要であります。

 このため、このたびの法案におきましても、家庭支援機能の強化策として、一つは、児童相談所における保護者指導の委託先を拡大しまして、児童家庭支援センター以外の一定の要件を満たす者にも委託できることとした。また、二つ目として、児童相談所との役割分担や連携を担い、家庭支援を行う拠点を増加させるという観点から、児童家庭支援センターについて、児童福祉施設への附置要件というものを廃止するというふうなことを盛り込んでいるところでございます。

 また、このたびの法案及び二十年度予算におきまして、自立支援策の拡充策として、一つは、対象年齢を二十歳未満まで引き上げるなど、児童自立生活援助事業、いわゆる自立援助ホームでありますが、この拡充を図る。また、施設等を退所した子供が、生活や就業に関して気軽に相談できる体制を整備するとともに、自助グループにおいて相互の意見交換等を行うことができるような場を提供するなど、退所後等の地域生活を支援する地域生活・自立支援事業というものをモデル事業として実施することとしたところでございます。

 今後とも、こうした取り組みに鋭意努めてまいりたいと思います。

福島委員 新しい事業をいろいろと構築していただいて、その実効性を確保するため、しっかりと頑張っていただきたいと思います。

 時間の関係で、あと一問だけ質問いたします。

 里親の方々の体制を強化する、こういうことが今回の一つのポイントでありますけれども、発達障害の子供が里親の方によって養育される、こういう事例もあります。

 先般私が相談を受けましたのは、養育したお子さんが、その後、里親さんから虐待を受けた、こういうことで児相の方に通報がありまして、本当に虐待したんじゃないか、こういうふうに児相の方から里親さんは言われる。どうもその事実はなくて、恐らく、障害の関係でそういった誤解といいますか食い違いが生まれたんじゃないか。

 これは専門家の方々の判断で、最終的には里親の方が虐待したわけではないと、嫌疑が晴れたといいますか明らかになっておさまったのでありますけれども、その間、里親の方は、一生懸命養育してきて何でこういうことになるんだろうかということ、そしてまた、児相からなぜ私のところが疑われるんだろうか、こういうことで大変悩みを深くされたということを伺っております。

 これは、発達障害にかかわる一つの難しさのところだろうというふうにも思いますけれども、こうしたことが再度起こらないようにするためには、やはり里親の方々の専門性を高めるための支援も必要であると思いますし、そしてまた児相の支援ということも必要である。そしてまた、その他、里親の方々と児相との連携のようなものも強化していく必要があるんじゃないか、このように思いますけれども、こうしたことについて包括的にお答えいただければと思います。

大谷政府参考人 社会的養護におきましては、発達障害等の子供も含めまして、家庭での養育に欠ける子供に対して、可能な限り家庭的な環境のもとで、愛着関係を形成しつつ養育を行うということが重要であります。そういった見地からも、今後、特に里親への委託を積極的に推進する必要があるというふうに考えます。

 この里親への委託を推進するに当たりましては、今回の改正や平成二十年度予算におきまして、発達障害等に関する知識なども含め、養育里親の質の向上を図るための里親研修を義務づける、また、里親に対する相談や情報提供、助言その他の里親支援業務を、都道府県、児童相談所の業務として明確化する、こういったことを定め、また、この里親支援の業務を児童相談所みずからが実施するだけではなくて、地域で活動を行っている乳児院や児童養護施設、NPO等に委託して総合的に実施することができる里親支援機関事業というものを創設するというふうにしております。

 こういった機関事業の中で、例えば里親サロンの支援であるとか、あるいはレスパイトケア、こういったことで、さまざまな支援体制の充実を図ってまいりたいと考えます。

 さらに、児童相談所におきましては、個々のケースに応じた適切な対応を図るために、発達障害者支援センター等の関係機関と連携するということにしておりますほか、児童相談所職員に対する研修も実施するなど、その専門性の強化に努めてまいりたいと考えております。

福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、柚木道義君。

柚木委員 失礼いたします。民主党の柚木道義でございます。

 冒頭、質問に先立ちまして、私ごとで大変恐縮なんですが、本日、三十六回目の誕生日を迎えまして、通算で数えるとたまたま三十六回目の質問ということになっておりまして、きょうは、私のためということではなくて、ぜひ子供さんやあるいは親御さんたち、そしてまた児童福祉の現場で頑張っておられる方々が未来に希望の持てる御答弁をお願いして、早速質問に入りたいと思います。

 まず、冒頭、放課後児童クラブの指導員の人員配置についてお尋ねをしたいと思います。

 放課後児童クラブは児童福祉法上に位置づけられておりますが、指導員配置の最低基準は、実は明記されておりません。自治体ごとに最低基準を決めておる状況でございます。御承知のとおり、クラブの大規模化によって指導員の負担がふえ、そしてまた、児童の安全、情緒面の安定等にも支障を来すクラブも出ております。

 そういった中、厚労省は昨年、児童福祉法上にクラブが位置づけられて以降、十年たって初めてガイドラインを示されまして、基準開設日数の設定、必要な開設日数確保、さらには適正な人数、規模への移行促進などを変更点として示されておりますが、実際にクラブの現場指導員の皆さんからの声を聞くと、児童の安全、安心確保については、適正数な指導員の配置、そしてまた人員確保のための指導員の処遇改善などの声が圧倒的に多いわけでございます。

 そこで、昨年秋に示されたガイドラインをさらに前に進めまして、今後、指導員の配置基準を、実態に合った適正数に基準の見直しをぜひ御検討いただきまして、そして、改めてガイドラインなどの指針を示すべきではないかと考えるわけですが、厚労省の見解を伺います。

    〔吉野委員長代理退席、田村(憲)委員長代理着席〕

大谷政府参考人 放課後児童クラブについてのお尋ねでありますけれども、今お話ありましたように、これは、地域の実情に応じた柔軟な取り組みを推進するという観点から、国として人員配置基準のようなものは設けないで、各自治体が独自にこれまで進めてこられたというのが実情であります。

 しかしながら、近年の放課後児童クラブに対する利用者からのニーズの高まりを受けまして、さっき御指摘いただきました、昨年十月にこの放課後児童クラブのガイドラインを作成して、各クラブの資質の向上、また運営についての基本的な事項を示したところであります。

 今御指摘の放課後児童指導員でありますが、このガイドラインの中では、子供の健康管理、安全確保、情緒の安定を図ること、また、遊びを通じて自主性、社会性、創造性を養うこと、それから三つとして、子供が学習活動を自主的に行える環境を整え必要な援助を行うことなどといった役割を明確化しまして、各自治体に質の確保を促しているところでございます。

 さらに、今後どういうふうに手厚くするかということでございましたが、現在、その実施状況について調査を行っておりますが、放課後児童指導員の配置状況についても把握することとしておりまして、こういった地域の実情も踏まえながら、さらなる対応、必要な検討をしてまいりたいと思います。

柚木委員 その調査結果を、わかりましたらぜひお示しをいただきたいというのが一点と、そしてまた、先ほどの配置状況についても調査中ということでございましたので、それに基づいてガイドライン等の見直しをお示しいただくことをお願いして、次の質問に入ります。

 同じく厚労省に児童クラブの関係で伺いますが、障害児受け入れ推進費について、きょう資料の一ページ目に、その二十年度予算対応、見直しについておつけをしておりますので、ごらんください。

 学童保育における障害児加算については、これまでは一人の指導員の方が一人以上の方を見て加算がされるということしか示されていなかった関係で、現場の方からもそういった声が上がっておりました。そういった中、今年度、長時間の受け入れとあわせた形で約三十億円の予算増額が実現されたと聞いております。

 そんな中、障害児受け入れに係る指導員の一人当たりの加算が、これまでは六十八万七千円だったところ、表にもございますように百四十二万一千円まで引き上げられましたが、実際に私が地元の現場の方の話を聞いていますと、その制度の改定が、まだ現場では予算額の増額が周知をされていないということでございまして、ぜひこれは自治体等を通じて現場の方々に周知をいただいて、そしてきっちりと加算がなされるように厚労省として努めていくべきと考えますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 平成十九年五月現在、障害児を受け入れるクラブの数が約七千カ所、障害児の数が一万四千人と、年々受け入れが増加しているところでございます。

 こうした中で、厚生労働省としましては、ただいま御指摘いただきましたように、障害児の受け入れを支援するためにこれまでも障害児を受け入れるクラブに対して財政支援してきたものを、さらに手厚くしたところであります。

 その補助方式も変更しまして、これまでのクラブ単位の助成というものから、市町村の責任のもとに各クラブに専門的知識を有する指導員を配置することを目的として、市町村単位での助成として支援の拡充を図ったところでございます。

 こうした取り組みを通じて、さまざまな障害の種類や程度に応じた受け入れが可能になるものと考えておりますが、今お話ありましたように、各自治体に対する周知についてもさらに徹底を図っていきたいと思います。

柚木委員 現場の指導員の皆さんのある意味ではモチベーションにもかかわる部分ですから、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。前向きな御答弁、ありがとうございます。

 続きまして、同じく児童クラブの、今度は補助金の支給規定についてお尋ねをしたいと思います。

 資料の二ページ、三ページ目に、私の地元は岡山県倉敷市なんですが、そちらの学童保育の状況についてお示しをしております。

 実は、三ページ目を見ていただくと、変更点が三点ございますが、二番目の「必要な開設日数の確保」、これが、平成二十二年度より二百五十日以上でないと保育予算が減額されてしまうということが示されております。しかしながら、その一ページ前に戻ってごらんいただきたいんですが、右側の二番、倉敷市の場合の「開設日数」をごらんください。実際には二百五十日未満というところにクラブの数が集中をしています。まさに、二百五十日には満たないが、それに近い日数だけ開設している学童保育が私の地元だけでもこれだけたくさんあるわけですから、全国には相当数あろうかと思います。

 ですから、例えば倉敷の事例ですと、この開設日数について、土曜日を開かないと、平日と長休日を入れると二百四十七日で、これは二百五十日未満になってしまうんです。確かに長休日の四十七日についてはわかりますが、例えば土日に地域で居場所が確保されているからクラブを開設しなくてもいいというのは、実は地域にとってはいい状況でもあるわけですね。

 そんな中、今回こういった形で減額をされてしまうということが本当に実態に合った形なのかどうなのかということを、今後あと二年間準備期間があるようでございますから、実際にこの二百五十日という開設のハードルが高過ぎるというようなことを判断される場合には、ぜひこの日数制限の見直しということもお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 放課後児童クラブの適正な運営を図ることを目的としまして、平成十九年度予算におきまして、保護者の就労等の状況を踏まえて、それまでは二百八十日でありました基準開設日数を年間二百五十日とした上で、二百五十日以上開設したクラブへの日数に応じた加算を創設する、また平成二十二年度以降の二百五十日未満の補助を廃止する、こういったことを定めたところであります。

 さらに、開設日数を減らして、減らしたことを基準にまた制度設計するかということでございますけれども、これにつきましては、現在そういう改正をまだ行ったところであるということ、また利用者の意向というものもはかっていくことが重要でありまして、現時点でそれを見直すということはなかなか難しいと考えるところであります。

 ただ、今後とも利用者の多様なニーズに適切に対応できる実施内容にするために、地方自治体の担当者を集めた会議などの場を通じて、基準開設日数の趣旨の徹底周知を図るとともに、自治体やクラブ関係者と協力してさらなる質の向上を図ってまいりたいと考えますが、そうした中で、また今後の運営についての御意見も承ってまいる所存であります。

柚木委員 最後の一言、そうした中での今後の運営を検討してまいりますのところを、ぜひ今後二年間の中でお願いをしたいと思います。

 続きまして、今度は大臣の方にぜひお伺いをさせていただきたいと思います。

 資料の四ページ目をごらんください。あるいは五ページ目にも「指導員の実態と課題」についてつけておりますので、ごらんください。

 舛添大臣は恐らく児童クラブにも行かれたことがおありだと思いますが、私も現場に行ってみると、子供たちが本当に元気よく活動していて、ある意味、指導員の皆さんが一人、二人ないしは三人等で十名、二十名あるいはそれ以上の児童の方々に対応されるのは、本当に大変な状況にあります。

 そういった中、五ページ目を見ていただきますと、指導員の皆さんの実態、この資料は実は少し前の資料、〇五年から〇六年の全国学童保育連絡協議会の資料でございますが、これを見ましても、半数の指導員は年収百五十万円未満、そして勤続年数がふえても賃金が上がらない方が五割を超えており、さらには退職金、社会保険等の待遇が大変改善されていない状況。

 ちなみに、きょう最新の情報が入りました。資料におつけできていないんですが、この情報と比較してみただけでも、実は、百五十万円未満の方が直近の資料ではさらに一・八%ふえていたり、三百万円以上の方が逆に六・五%減っていたり、勤続年数がふえていても賃金が上がらない方も一・二%ふえている、退職金がない方も一三%ふえている、一時金がない方も一三%ふえている等、本当にさらに指導員の皆さんの待遇が悪くなっているという状況でございます。

 そうした中、今回、交付要綱では子供の受け入れ人数で運営費が決まり、当然それが指導員の給与に反映されるわけですが、前のページをごらんいただきますと、平成二十年度予算額は百八十六億九千万円で、前年に比べると二十八・四億円増となっております。増とはなっているんですが、こういった実態にあるわけでございます。

 今後、この予算がふえた分が実際に指導員の皆さんの処遇にどう反映されるのかということをぜひしっかりと検証していただきまして、百五十万円未満という方が半数を超えていて、月給十二万五千円という状況なわけですから、せめてこういった皆さんの処遇の改善、そしてそれがやはりしっかりと長い年数勤めていただけるというサービスの質の向上にもつながっていくというふうに私は考えますので、ぜひ大臣、これは児童手当特会から増額ができるはずなんですね、二十八・四億円増と今年度なっていますが。

 ぜひ現場の皆さんへの、そして子供たちへの応援という本当に中身のある答弁をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 このクラブに実際こうして指導員としてやっておられる方々の処遇、今最新のデータもいただいたところですけれども、大変厳しい状況であるというのは認識しております。こういう百九十億円程度の予算をつけておりますけれども、今後とも予算の獲得には努力をしてまいります。

 ただ、これはちょうど介護の労働者についてお話ししたときと同じで、結局、各介護の事業所ごとに労働契約で決める。そうすると、放課後児童クラブについても、それぞれの給料についてはクラブごとに決める、こういうことになっている中で、そのほか整備費なんかにお金が飛んじゃうわけですね。今のところ、長い時間あけてくださるクラブに対する支援、それから、先ほど局長が申しましたように、障害児の受け入れをしてくださるところへの支援、こういうところの拡充は、とりあえずは平成二十年度予算で図ったところでありますので、今後、どういう知恵を働かせて指導員の方々の処遇を上げていくことができるか、きちんと努力をしてまいりたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 本当に、この運営費の国の増額によってそれぞれ自治体等の対応も変わってまいります。今、努力をするという力強い答弁をいただきましたので、ぜひ取り組みをよろしくお願いいたします。

 続きまして、同じく大臣にお伺いをいたします。

 放課後児童クラブの施設の耐震基準についてお伺いをしたいと思うんです。

 実は今、皆さん方で耐震基準というと、むしろ学校の耐震について、きょうの報道でも、九割国の負担ということで自公民、引き上げ合意というような報道もなされているわけですが、もちろん校舎の耐震構造は重要でございます。しかしながら、学童の場合には、御案内のとおり、校舎以外にもさまざまな施設を使っている状況でございます。ですから、こういう言い方が適切かどうかわかりませんが、中国の四川省の地震で、まさに周りの建物が残っているのに、校舎だけが倒壊をしてお子さん方の命が失われる、そういうようなことがあってはもちろんならないわけで、ぜひ校舎に加えて、今回これを契機に、学童保育の建物についても実態調査をし、そしてその対策を講ずるべきだと思われます。

 例えば、旧建築基準法下の八一年五月三十一日以前に建設された建築物であるかとか、それによって耐震診断等を行い、補強工事等を行うとか、何らかの形でぜひ調査をしていただいて、そしてその対策を講じていただくべきと考えますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 放課後児童クラブのガイドラインの中で、安全対策というのもうたってあります。

 今の委員の御指摘は、もう本当にこれは大変すばらしい御指摘でありまして、中国の地震のことで小学校、校舎そのものについてはみんな注目しているんですけれども、委員御指摘のように、例えば児童館とか児童センターでやっている、場合によっては民家とかアパートを使っているところもございます。そういうところについても、やはりこれはきちんと耐震化というのはやっていかないといけないと思いますので、さまざまな協議の機会が各自治体とございますので、そういうことについてさらに訴えていく。

 そして今後は、こういうことについても、これは自公民三党でああいう補助率の引き上げについて学校についてはあったんですけれども、今後の課題の一つに、ぜひこういうことも、政府としても努力をいたしますとともに、各政党の方でも、今委員がおっしゃったような問題も非常に重要であるということで、これはともに検討していきたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。本当によくお考えをいただいての御答弁をいただけたと思います。

 学校の余裕教室を使った実施場所は三割程度ですから、やはりそれ以外の部分についてのお取り組みを、まさにこれは与野党を超えて取り組んでまいりたいと思います。

 それでは、続きまして、時間の関係で施設虐待は後ほど伺いますので、保育所の運営費について、引き続き大臣に伺いたいと思います。

 資料の六ページ目をごらんいただけますでしょうか。読売新聞の報道をおつけしておりますが、保育所設置基準について市区町村でということで、大臣の方が全国一律基準の見直しについて分権推進委員会の議論を受けて見解を述べられたということでございまして、実はきょう、この時間に一次勧告に向けて議論がなされているというふうに聞いております。そういった中で、もちろん幾つかの要件はあるわけですが、保育所運営費について、この基準緩和の関係がどのような影響を与えるのかについて伺いたいと思います。

 当然、運営費は一定の基準に基づいて拠出されておりますが、今後、この基準緩和等によって、例えば自治体独自で運営基準を定めた際に、保育所運営費が減額をされてしまうとか、そういったことにもしなるようなことだと大変経営が困難になってまいります。自治体の担当部局も大変この点を危惧しておるようでございます。

 今回は保育所の設置基準について設備基準の緩和と聞いておりますので、仮に自治体が独自にそういった創意工夫を行った場合でも、恐らく、主に人件費に充当される運営費減額ということにはならないんだと思いますが、ここはちょっと確認答弁ということで大臣にいただきたいのとともに、もう一つだけ、これが保育の質の低下につながらないような形にしていただきたいということも、あわせて御答弁をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 今、政府の地方分権改革推進委員会で、いろいろな地方分権の改革の試みをおやりになっています。それぞれについて、例えば厚生労働省関係についてどうだというお話がありますので、総務大臣とお話をする。しかし、今委員がおっしゃったように、決して保育の水準を下げることはしない、これが大前提であります。

 そういう中で、片一方では、何もかも厚生労働省が基準を決めてやるということであっても、地方自治は育ちません。私がいつも申し上げるように、はしの上げ下げまで細かいことを言う必要はないだろう。ただ、その前提は、安かろう悪かろうでやってはいけない。この記事にも少し書いてありますように、いろいろな工夫を凝らすことによって、保育所が足りない、そして、どうしても保育をしたい、そういう方のニーズが拡大して、国民の喜ぶような形で設置基準について流動性がもたらされるのであれば、それは反対することではありません。

 しかしながら、運営基準、人の配置については、私は、何にも議論もまだしておりませんし、とりあえずこの設置基準というところから、国民のためにやれることはやるということから始めて、そしてまたその状況を見て必要に応じてということでありますから、今のところは運営基準について見直すということではございません。

柚木委員 少し安心をいたしました。ありがとうございます。

 ですが、引き続き、今後、二次勧告、三次勧告と出てくるわけでございまして、特に二次勧告の際に人員配置等についても議論されるようですので、今の答弁は大変重い答弁だと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 それでは、ごめんなさい、次は虐待対策だったんですが、少し先に行かせていただきまして、また後ほどお尋ねをしたいと思います。

 次に、妊婦健診への公費負担拡充の必要性について、これは、本法案の要保護児童対策地域協議会の協議対象に特定妊婦が追加をされたということの関連でお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回、協議会の方に妊婦を追加した点は、大変私は法改正で評価をできる点だと思っております。この質問、総務省と厚生労働大臣に伺いますが、評価をできるのはもちろんそうなんですが、実際にこれで妊婦健診に行かない人がいなくなるというわけではないんですね。御承知のとおり、この数年間、大変問題視されております救急搬送の受け入れ拒否事例といいますか、そういったケースの理由を見ても、初診で、つまり、飛び込み出産である場合が本当に大きな要因になっているということは御案内のとおりでございます。

 そこで、今回、要保護児童対策地域協議会での取り組みはもちろん重要なんですが、それだけではすべてのそういう妊婦の方への、例えば妊婦健診をちゃんと受けるということを、減らすことはできてもゼロにはできないという中で、私は、これはたしか昨年だったと思いますが、奈良県で救急搬送中に死産をされたケースも飛び込み出産であったというふうに聞いておりますので、ぜひ実効性のある形での防止対策をお願いしたいと思います。

 そうした中で、実は、妊婦健診への公費助成について、各都道府県の取り組みがございます。

 御承知のとおり、厚生労働省としては、最低五回の健診を公費負担として、自治体に取り組みを促すということでございますが、現状、昨年八月の調査でも二・八回。しかしながら、調べてみますと、受け入れ拒否ゼロ件というのが全国で四つあって、そのうちの一つが秋田県。秋田県は、何と十回の公費助成を実現しているという、全国第一位ということなんですね。

 ですから、こういったことから考えてみても、やはり飛び込み出産防止対策の中で一番実効性が上がるのは、これは妊婦健診への公費負担補助であろう。私の地元の倉敷におきましても、昨年十月から二回を五回に上げると同時に、その受診数が確実にふえてきているということでございますので、ぜひこの公費負担の拡充についてさらなる取り組みをお願いしたいと思います。

 きょうは、資料の方の七ページ目に、これまでの少子化対策拡充の概要ということで、それぞれ十九年、二十年と少子化対策事業、この中に妊産婦健診費用に対する助成等も含まれるという形で、交付税措置として十九年度が三百七十億、二十年度が四百億円程度ということで増額をなされております。

 まず総務省の方に伺いますが、この実施状況を受けて、これは厚生労働省としっかりと連携をして、さらなる拡充について対応を御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

御園政府参考人 妊産婦健診の件に関しましては、委員今お示しいただいた資料のとおり、十九年度から拡充をし、二十年度においてもさらに三十億上積みをさせていただいてきておるところでございますし、また、今御指摘もございましたけれども、このような状況を受けて、多くの市町村の方で、回数をふやす、あるいはふやしていきたいという意向を表明しておりますので、この傾向は今後も続いていくものだというふうに私どもも思っております。

 妊産婦健診の重要性というのは、私ども本当に、御指摘いただく、また御指摘いただかなくてもわかっておるつもりでございますので、今後とも、厚生労働省と十分意見交換させていただく中で、市町村が実施される事業が円滑に推進できるように、引き続ききちっと地方財政措置を講じ続けていきたいというふうに思っております。

柚木委員 大変誠実な御答弁をいただいたと思います。

 それを受けて、舛添大臣に伺います。

 この拡充への取り組み、そして先ほど申し上げましたように、自治体としての五回の公費負担をいつまでにどうやって実現をするのか、ぜひ、その観点も含めて御答弁をお願いできますでしょうか。

舛添国務大臣 先ほど奈良の例が挙がりましたけれども、一つは、地域それから各御家庭で、例えば妊娠して子供を産むんだということについての知恵とか知識というものの伝承がきちんとなされていなくて、全くそういうことがわからなくて、診断もされないというケース。ですから、救急隊員も、おなかが痛いと入ってこられて、胃が痛いのか、胃潰瘍になったのか、妊娠だと最初からおっしゃっていただければというのはあるんですね。

 昨年も秋田の知事さんとも話して、いや、うちは十回やっていますよということで、たしか岡山は二・七回ぐらいだったと思います。五回までは無料なんですけれども、二・八回しか使っていない。これは、一つは、周知徹底をして、ぜひお使いくださいということと、本当は十四回やると完璧なんですね。そういうことで、各自治体に対して、やっていただけるように少しずつ予算をふやしていっています。

 そして、今調査を取りまとめ中ですけれども、直近の調査だとどうやら五回を超えたようであります。こういう委員会なんかでこの回数についてよく議論されて、国民の皆様方も、国会の審議などを通じて、ああ、こういう制度があるのかなというのがわかってきていますので。今後ともこの回数をふやすように、地財措置がとられておるわけですから、私は今、知事さんと定期的に会合を持っている、これからは市長さんたちとも定期的に会合を持つということ、近々に市長さんたちとの会合を持ちたいと思っていますので、そのときにもこういうことを御要請したいと思っております。

柚木委員 調査のまとめ中で、五回を超えたというのは今初めて伺いました。十四回というのが理想ということもございました。岡山県内においても十回の公費助成をしているところもありますが、そのエリアはお子さんの多いエリアではないんですね。ですから、やはり大都市部等でこういう救急搬送の拒否事例があるわけですので、さらなるその拡充をお願いして、次の質問に入りたいと思います。

 周産期のところを少し飛ばしまして、時間の関係で、児童扶養手当の方の質問に入らせていただきたいと思います。

 今回、民主党の議員立法として児童扶養手当法改正案を提出しているわけですが、午前中の参考人の皆さんのお話、そしてその質疑を伺っていても、改めて、やはり減額規定の削除というものが本当に必要なのではないかというふうに私も思っております。生活支援とセットでない就労支援は意味がないという言葉もございました。

 そこで、まず大臣の方にお伺いをさせていただきたいと思いますが、政府の児童扶養手当の改正によって母子家庭における児童扶養手当の削減が示されたわけですが、実際には、ことし二月の政令によって、ハローワークに行って返送書を送付すればその内容を問わず減額されないということに実情としてなっております。

 ということは、私も地元の担当の方からお話を伺いますと、事実上減額対象者が出てこないんじゃないかということなんでございますね。ちなみに、現場の皆さんの対応のためのいわゆる人件費あるいは郵送費、紙代、印刷代、そういったものを本当に合計すると、西村委員の御質問にもございましたが、二億二千六百万円もの交付税措置、膨大な人件費がかかっているわけでございます。

 ですから、大臣、ここは、これだけ行政コストがかかるだけで対象者が出てこない減額規定は、これは凍結ではなくてきっぱり廃止すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 郵送代とか紙代、コストのことを今お話しになりました。

 ただ、例えばコストを減らすための努力としては郵送でというか、むしろコストを減らすというより、お母さん方の御苦労を減らすために、要するに関係書類を郵送でいいとしたとか、それから毎年八月には現況届を出さないといけないですから、そのときに一緒で結構ですよ、そういうふうな便宜は図っております。

 それから、委員おっしゃるように、八五%ぐらいのお母さんたちが働いておられますし、八割以上の方は働きたいということをおっしゃっているので、現実にはこの対象となることは非常に少ないと思いますけれども、何とか自立、そして仕事を持って、きちんと家庭と両立させながら子育てをやっていく、そういう理想の中での一つの措置でございますので、これはコスト面はかかるといえばかかりますけれども、法律の理念を勘案すると、これはこういう形でやっていきたいというふうに思っております。

柚木委員 理想の中での措置という、ちょっと言葉に苦慮されたお言葉だったような気がしますが、実際に、やはりその実効性も、行政コストということも重要でございますし、これについて提出者である民主党議員の御答弁をぜひ求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

川内議員 柚木委員からお尋ねの点でございますけれども、国会は立法府でございますから、私どもがなすべき責任を法律という形であらわしていくということを私たちはやらなければならないというふうに考えております。

 平成十四年の児童扶養手当法の改正で、政令にゆだねるということをしたわけでございますが、他方で、附帯決議の中で、母子家庭の実態等にしっかり目を向けて調査をし、その上で判断するよということも附帯決議で、国会の意思として申し上げてきたわけでございまして、そういう意味で、母子家庭の自立を応援するよ、一生懸命頑張っている母子家庭を応援するよということに関しては、その就労を支援するということを含めてだれも異論はないわけでございます。

 ところが、実態として、ちっちゃいお子さんたちがいる中でフルタイムで働くことはなかなか難しい。あるいは、就職の面接に行っても、ちっちゃい子がいるんですねということで、なかなか採用に至らないというような実態がある。そういう中で、この児童扶養手当というのは、昭和三十六年に制定以来、非常に大きな役割を果たしてきているし、今も大きな役割を果たしていると私は思います。

 そういう中で、児童扶養手当法について、その規定を削除し、従来どおりしっかりと母子家庭の皆さんを応援していくという法改正を私たちはしなければならないというふうに考えております。

 答弁が長くて済みません。

柚木委員 しっかりとした御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 ぜひ、やはり大臣にも自治体の状況をよく見ていただいた上で、先ほどの提案者よりの答弁も含めて、今後の御対応をいただきたいということ、これは強くお願いを申し上げて、そしてさらに、ちょっと時間がございませんので、ぜひ、こういった児童扶養手当減額措置の削減に加えて、やはり父子家庭についての支援とか、さらには偽装結婚等で不正にそういう公費を取得するというようなことも実際に起こっておりますので、そのあたりも含めて、本当に必要な施策が何なのか、お考えをいただいての御対応をお願いして、一つ関連質問をお伺いさせていただきたいと思います。

 後期高齢者医療制度について、一つぜひ大臣に伺いたいんです。

 それは、今回、児童福祉法についても、例えば福田総理が保育じじ、保育ばばという言い方をされていたと思いますが、そういう皆さんで、高齢者の皆さんを例えば保育について頑張ってもらおうというようなこともおっしゃっていて、それ自体は私も一つの取り組みだと思うんですね。しかし、今高齢者の方々が困っているのは、保育をするとかいう以前に、自分たちの老後、医療の問題、そういったところに今まさに直面をしているわけでございます。

 そこで、ぜひお伺いをしたいんですが、今回、この後期高齢者医療制度で、診療報酬の変化や自己負担引き上げを除いて、純粋に後期高齢者医療制度を導入するか否かによる影響がどこまでちゃんと検証されて、この制度が導入されたのか。

 まず、この制度を導入した場合と、導入せずに老人保健制度を維持した場合とを比較して、一つ目は、老人医療制度について国と自治体それぞれの公費負担が〇八年度においてどう増減をするのか。二つ目、保険料と自己負担それぞれについて、七十五歳以上の高齢者の負担が二〇〇八年度にどう増減するか。三つ目、七十四歳以下の現役世代の負担も〇八年度でどう増減するか。そしてもう一つ、この老人医療費全体は〇八年度でどう増減するのか、お答えをいただきたいと思います。いかがでしょうか。

茂木委員長 盛りだくさんの質問でありまして、残り時間二分です。大臣、簡潔にお願いいたします。(柚木委員「している、していないで結構です」と呼ぶ)

舛添国務大臣 今のところ、後期高齢者医療制度の創設があったから、それだけ取り上げて、今おっしゃったような形の試算はいたしておりません。全体的に、この制度全体を見直したことによる、例えば診療報酬のお話もなさいましたけれども、そういうことを踏まえてのことでありますので、今委員がおっしゃったような個別の計算はいたしていないということでございます。

柚木委員 時間が参りましたので最後にいたしますが、ぜひ大臣、これは今、試算をしていないというのは、ちょっと考えられないというか、これだけ重要な制度を導入し、そして、これが必要な制度だといいながらこの推計の試算すら行っていないというのは大変問題だと私は思いますので、ぜひ、ではいつまでにそういう試算、推計を行って、それをいつ公表していただけるのか。もちろん学童も大事だけれども、本当に高齢者の皆さんにも安心していただける社会をつくるために、まずはこの推計をしっかり行って公表していただく、その答弁を最後に求めて、私の質問を終わりたいと思います。

舛添国務大臣 そういうことすべてについて検討させていただきます。

柚木委員 ありがとうございました。

茂木委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 これもまた、きょう、異例の事態が起こりましたのは、配付資料を配付する予定にしているんですが、普通は質問の冒頭に配られるんですが、いまだに配られていないという異例の事態です。

 これは、なぜこういうことが起こったかというと、自民党が、初めの一枚、二枚目の資料が都合が悪いから出さないでほしい、委員会の審議とは関係ないから出さないでほしい、こういうようなことを言われて、そして資料が配られていないということでございますけれども、これは、委員長、どう思われますか。(発言する者あり)

茂木委員長 御静粛に願います。

 配付資料につきましては、各責任者が自分の責任においてコピーをとり、配付する。きょうは午前中は参考人質疑も行いました。参考人の皆さんにも、御自身で自分の配付資料を持ってきていただいております。長妻委員もそのようにお願いいたします。

長妻委員 これが今私の手元にありますが、この二枚が配付はまかりならぬということで、自民党からそういう話があって、理事会が調わずという形になったというふうに聞いておりますけれども、この二枚の資料というのは、この法案の審議に関係のない資料じゃありません。つまり、この法案を審議する委員長の判断、あるいは委員長の議事録削除という行為に対する疑義ですね、委員長の信頼性にかかわる二枚、これが重要なんです。

 つまり、法案審議というのは、この委員会の委員長の正当性や、あるいは委員会のあり方というのがまず土台にあるわけですから、これは密接にかかわるものでありまして、それを配るのはまかりならぬという自民党の主張というのは、到底私は受け入れられないというふうに思います。

 しかも、この二枚の資料といいますのは、一枚目は衆議院事務局委員部調査課ということで出どころもきちっと書いてある。二枚目は参議院事務局記録部ということで出所も書いてあるにもかかわらず、自民党にとって都合が悪いから私は配付を認めないんだと思いますけれども、委員会の審議に一番これは密接に関係のあるものだというふうに思います。

 これは、茂木委員長は、私が昨年十月二十四日、この厚生労働委員会で発言した内容を職権で議事録の削除をされた。どういう発言かというと、「与党というのは一度でも不祥事を追及したことがあるんですか、政府の。」この発言を丸ごと職権で削除をした。

 これは国会ですから、言論に対しては言論で反論してください。なぜ反論できないんでしょう。有無を言わさず削除するというのは、しかも、きょう、その不当性を私が質問するために一枚、二枚つけた資料を、自民党によってこれを配らせないと……(発言する者あり)では、理事会を開いてください。では、理事会を開いてください、これは。何で自民党はこれを配付させないんですか。なぜですか、これは。理由は何ですか……(発言する者あり)

茂木委員長 御静粛に願います。

長妻委員 だから、理由を教えてくださいよ、理由を……(発言する者あり)

茂木委員長 御静粛に願います。

長妻委員 これは関係ありますよ、この委員会の正当性ですよ。

茂木委員長 議事を整理させていただきます。

 委員会の運営の問題でありますので、本来でしたら理事会で協議をする内容であります。ただ、長妻委員、既に三月二十六日の委員会で、この件につきましては私から状況を説明させていただきましたが、御理解いただいていないようですので、もう一度だけ説明をさせていただきます。静かにお聞きください。

 長妻委員が御指摘されました件については、長妻委員の発言のありました昨年の十月の二十四日当日の理事会におきまして、与党理事より問題発言として削除要求が出され、理事会等において協議してまいりましたが、合意に至らず、三カ月近くが経過をすることになりました。

 この間、長妻君の発言問題、会議録にしますと一・五行分であります。この一・五行分が解決しないことから、広く国民に委員会での議論を知ってもらうことに資するべき会議録全体、質疑時間にして六時間分、ページ数でいえば三十九ページ全体が三カ月発行できないという異常事態に陥っておりました。(長妻委員「自分がとめているんじゃないか。委員長がとめているから配付できないんだよ。委員長がゴーサインを出せばできるんだから。それは自分が悪いんじゃないか。自分がとめているわけだよ」と呼ぶ)静かにお聞きください。

 そこで、会期末の本年一月十五日を迎えるに当たり、私より野党理事にこの状況を説明の上、長妻委員本人にも連絡をとっていただきました。

 御確認をいただきましたのは、問題となっている発言については、長妻委員御本人がみずから削除していただくのが望ましい、長妻委員のおっしゃっている過去の事例につきましても、各委員が、確かに問題であった、こういった形で削除していただいております、そういうことで、長妻委員御本人がみずから削除していただくのが望ましいが、それができない場合は委員長の職権において処理せざるを得ないという内容でしたが、野党理事より、長妻委員御本人よりは削除しないとの御回答でありましたので、最終的に衆議院規則第七十一条に基づき判断をしたものであります。

 衆議院規則第七十一条の秩序保持権に関して申し上げれば、今回の長妻君の発言の場合、本人も認めているとおり、また、当日の状況及び会議録にも明らかなように、議場からの不規則発言に対して長妻委員が与党席に対して発言したものであり、いわゆるやじに対し応酬をしたものであります。

 本会議先例集二六三には、「発言者は、私語に応酬することができない。」となっております。この本会議先例集は、当然、各委員会運営にも適用されるものであります。

 つまり、長妻君の発言は本来の議題とは関係のない発言で、そもそも委員が主張される言論の自由の問題とは趣旨を異にするものであり、従来から禁止をされているものであります。

 なお、過去において、不規則発言への応酬部分を削除した事例は確かにございます。その際、発言者は、恐らく、今申し上げたような衆議院規則、先例集等しっかり勉強されて、不規則発言への応酬はいけないということを御自身が素直に認めて、削除に至っているわけであります。

 一方、不規則発言、やじに応酬した部分を発言者本人の合意がなく削除した例が見当たらないというのは、これまでの事案では、発言者みずからが、やはり自分が悪かった、ルール違反だった、そういうことを認めて、みずから取り消しているからだと思います。

 私の判断が異例ではなくて、恐らく、過去の事例からしますと、どうしても取り消していただけない長妻さんの方が異例なのではないかな、こんなふうに認識をいたしております。

長妻委員 私は、本当にびっくりしますね、委員長の見識のなさに。

 つまり、それは、ではもう一つの解釈を言えば、本人がこの発言は取り消さないと言った案件も私はあるんだと思いますよ。

 この一枚、二枚目に配ろうとしていた資料というのは……

茂木委員長 長妻委員、もしあったらお示しください。

長妻委員 これは、本人が削除を拒絶、あるいは理事会でも合意をしなかった、そういうことで削除した事例はないという、その資料を二枚配ろうとしたらば、それはまかりならぬと。

 取られた資料というのはもう配られているんですか、今。

茂木委員長 長妻委員、申し上げましたように、資料に……(長妻委員「いや、ちょっと待ってください。配られているんですか」と呼ぶ)ちょっと待ってください。私が議事を整理しております。

 長妻委員、何度も申し上げますように、ほかの委員の皆さんも、御自身が質問に立たれるときは、御自身で、御自身の事務所でコピーをとられて、そして配る、こういう決まりになっております。長妻委員だけ例外扱いすることはできませんので、ぜひ御理解ください。(長妻委員「ちょっと待ってください。委員部にけさ渡しましたよ、コピー。全部、百部でしたか、六十部でしたか」と呼ぶ)

 では、配付をしてください。

 長妻委員に申し上げます。

 御案内のとおり、委員会の運営につきましてはまた理事会において話をさせていただきますが、議題以外の発言につきましては、衆議院規則第百三十四条で禁止をされております。

 そして、本日は、児童福祉関係の法案、二法案でありますが、閣法、そしてまた民主党の皆さんからも、この問題は大変重要だということで改正案も出されております。

 そして、きょう、午前中でありますが、長妻委員、大半席を外されていたので御存じはないかもしれませんが、参考人五名の皆さん、恵泉女学園大学の大日向雅美先生、そしてNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事の赤石千衣子さん、青山学院大学文学部教授の庄司順一先生、駒沢女子短期大学保育科教授の福川須美さん、そして東洋大学社会学部教授の森田明美さんから参考人としての大変貴重な御意見を伺い、その後、充実した参考人審議も行われたわけであります。

 そして、現在も、傍聴席にも、この議題について大変関心を持っている皆さんが熱心に傍聴されているわけであります。

 我が国の急速な少子化の進行、そして児童虐待の増加等により困難な立場にある母子家庭の皆さんや、将来の日本、将来の我が国を担う子供たちに対する総合的な次世代支援対策を早急に進めることが必要であります。

 委員長といたしましては、母子家庭の皆さんや、さらに子供たち、そして多くの国民の期待、信頼にこたえるために、本日の議題について質疑に入られることを希望いたします。

長妻委員 それでは、まず後期高齢者医療費の負担の変化について質問いたします。

 舛添大臣、この配付資料の一枚目というのは、公費の負担というのが六千二百億円減っているんですけれども、これはなぜでございますか。

舛添国務大臣 この数字を今見せられたわけですけれども、今私も資料をいただきましたので。

 この六千二百億円減の話ですけれども、これは平成十八年の診療報酬のマイナス改定、税金が減ったということについておっしゃっていることですね。

 それは、診療報酬のマイナス改定で医療費そのものが減った点が一つございます。それから、十八年度に、所得者の患者負担の引き上げ、現役並み、つまりお金持ちというか、現役並みの所得者を二割から三割へ上げました。これもその一つの要因でありますとともに、それから、現役世代からの支援金の減少、こういうことが相まって公費負担が減ったということでございます。

長妻委員 やはり多くの方々は、今回、後期高齢者医療制度が入って、公費の負担が減らされている。しかも、舛添大臣は全体の医療費が減ったから減ったんだという御答弁でしたけれども、後期高齢者に対する公費の投入の割合、制度改正なし、平成二十年度の場合は、後期高齢者の医療の全体の五五%に税金が、補助というか入っていた。ところが、後期高齢者医療制度が入ったときには五二%、三ポイント下がる。七年後もこの数字です。つまり、三%、税金の補助といいますか、その占める割合が減らされている。これは多くの国民の皆さんは御存じないと思うんですけれども、なぜこれは三%減らされたのか。

 この計算式は聞きました。こういう計算で減ったんだというのは聞きましたけれども、結果的に公費の支えを減らすというのはちょっと逆のような発想だと思うんですが、なぜ公費の支えを三%減らすということになったんでしょうか。

舛添国務大臣 今申し上げましたように、税金を減らしたい、公費の比率を減らしたいためにこういう制度を入れたのではございません。

 公費が減ったのは、先ほど申し上げたような、理由によりけりでありまして、丸い数字ですけれども、一、四、五、この五割の公費負担というのを今回の制度できっちり決めたわけで、それは、先ほど言ったように、その年々のときの、一番大きいのは診療報酬のマイナス改定、こういうことが影響しているわけですから、何か意図的に税金部分を減らしてということではなくて、結果としてそういう結果が今委員がおっしゃったような数字の変化にあらわれているということだというふうに御理解いただければと思います。

長妻委員 そうすると、後期高齢者医療制度になって税金の負担割合が減るということは予想はしていなかったということなんですか、当初。

舛添国務大臣 それは、後期高齢者医療制度になったから減るとか、なったからふえるとかいうことではなくて、公費の、今言った二%、三%、こういうものは、現役負担が二割から三割にふえたりとか、それから、現役世代の支援の額が減ったりとか、先ほど来言っているマイナス改定とかいうことで、この後期高齢者医療制度を入れたからどうするという話とはちょっと別の問題だと思っています。

長妻委員 しかし、事実としては、五五%から五二%に減って、七年後も五二%のままずっと推移するわけですね、後期高齢者医療制度は。

 ですから、本当は、国民の皆様に後期高齢者医療制度を説明するときには、私は、まず謝罪から政府は入らなければいけないと。つまり、国の財政が大変なので税金の投入比率を下げさせてください、申しわけございませんというところから本来は説明をしなければいけないところを、存分にきちっとやります、七十五で分けたのはむしろ医療を手厚くするためですという、誤解を与えるというか、全く間違った説明をするというのはおかしい。

 そして、全体の医療費も、後期高齢者医療制度を入れることで、十八年度の改定も含めて五千億円減っている。しかし、その減った分、五千億円減ったんだけれども、公費はさらにそれを上回る六千二百億円が引き揚げられちゃったわけですね。

 これは、五二%に減らされているということは、ずっと五二%で七年後もいくということでございますか。

舛添国務大臣 例えば、保険料の伸び率云々の話もそうですけれども、さまざまな要因があるわけで、何度も申し上げていますように、なぜ前の老人保健制度からこういう特出しの後期高齢者制度にしたかというときに、際限なく負担が若い世代に行くということに対する若い世代からの不安感もあります。そして、国民皆保険という大事な大事な私たちが世界に誇る制度が高齢者の医療から決壊していく、これを避けるために、負担と給付の割合をしっかりしましょうということで、高齢者一割だ、現役四割だ、そして税金五割だ、こういう制度設計をした。しかし、年度ごとに今言った細かい数字を見れば、診療報酬マイナス改定その他のさまざまな要因によって変動することがある。

 だから、これは、公費を減らしたいためにやったのではありません。そこはぜひ御理解いただきたいと思います。そして、それは今言ったような要因で公費が減ったわけで、後期高齢者医療制度へ入れる、それは公費を減らすためにやったんだ、それは全くの誤解だと私は申し上げておきたいと思います。

長妻委員 これは、では自民党の方も公費が三ポイント減るというのは知っていたんですか、結果的に。(発言する者あり)いや、制度改正でも公費の投入比率というのは大変これは重要だと思うんですよね。

茂木委員長 申し上げますが、何度も申し上げているように、長妻君、不規則発言に対する応酬はおやめください。(長妻委員「では、不規則発言を注意してくださいよ、委員長」と呼ぶ)不規則発言についても何度も注意をさせていただいております。

長妻委員 そして、これは、五二%、先ほどの若人、若者の負担が際限なく上がるというようなことを舛添大臣いろいろ言われておりますけれども、この数字を見て私もちょっとびっくりしたのは、若者の保険料分というのが、前は、後期高齢者を支える制度がないときの平成二十年度は二九%、ところが、後期高齢者医療制度が入ると若人の保険料分が三一%ということで、ふえているわけですね。金額にすると一千百億円分も若者の支援の保険料がふえる。

 こういうことで、お年を召した方の保険料に関しては七%、七%で、負担の比率は変化ない。しかし、後期高齢者の自己負担は八・六%から九・七%ということでふえているということで、若者もかなりこれはふえているわけで、一体どういう説明を信じればいいのかということなんですが、なぜ若者の保険料はふえているんですか。

舛添国務大臣 確かに、今委員がおっしゃったように、制度改正がなかりせば三兆四千四百億円なんですが、改正後は三兆五千五百億円と、千百億円、保険料自体はふえています。

 なぜかということなんですけれども、給付費に対する、先ほど述べましたように、原則五割の公費以外の部分については、制度改正前後でおおむね五割で変化はない。この部分は、保険料と拠出金、納付金に対する公費で負担されているんですが、後期高齢者支援金について、国保からの支援金は減少します。その結果、支援金の公費が減少しましたから、結果として若人の保険料は増加することになっています。

 しかし、細かい数字で申し上げますと、制度改正があったために、それぞれの財政影響を調べてみますと、政管保険についていうと、これは一・〇%、三千五百億円の負担減になっている、健保組合について六百億円の負担減になっている、共済組合について一千億円の負担減になっている、市町村国保について二千五百億円の負担減になっていますので、加入者一人当たりの所要保険料について今ふえているということでありますけれども、それは、自分のそのものの保険料と支援金の分が含まれているからそういうことになるわけでありまして、各財政影響について、今申し上げたそれぞれの、政管健保であれ、健保組合であれ、これについては減少している、そういうふうに御理解いただければと思います。

茂木委員長 長妻委員に申し上げます。

 本日は、再三申し上げておりますように、児童福祉関係の法案の審議を行っております。そして、長妻委員、持ち時間の半分以上を既に経過しております。

 そして、私は午前中からこの審議を見ておりますが、本当に熱心に、長妻委員よりずっと長い時間聞いていらっしゃる傍聴席の方がたくさんいらっしゃいます。ぜひ早く本題に入っていただきたいと思います。

長妻委員 先ほどから委員長が長々としゃべっていることも時間がなくなった一つの要因だと思うんですけれども。

 舛添大臣、三ポイント公費が減ったということは、結果としてということですけれども、これは、このポイントを、比率を今後是正する、こういうお考えというのはないんですか。(発言する者あり)

茂木委員長 皆さん、御静粛に願います。

舛添国務大臣 何度も申し上げていますけれども、制度設計そのものに伴って起こったことではございません。ですから、来年度、診療報酬改定をマイナスにするのかプラスにするのか、それから、現役世代並みに所得のあるような高齢者に対してどういう保険料にするのか、そういうさまざまな要因によって公費の部分が変動がございます。

 そういうことでありますので、何も公費を減らすために、とにかく公費を減らしたい、だから老人保健制度から新しい制度へ移ったというのは、これは全くの誤解でございます。

長妻委員 これは、後期高齢者を手厚く手厚くというふうに言うのであれば、この公費のこともまずきちっと説明するということは私は必要だと思うんです。結果的でも、パーセントが減って、金額がこういうふうに減ったというのを、我々がもう何度も資料要求すると渋々出すという姿勢はやめていただきたいと思います。

 そして、今回の児童福祉法の一部を改正する法律案でございますけれども、待機児童ゼロ作戦というのが小泉内閣で言われました。これは、小泉内閣で、平成十三年度に小泉総理が打ち出したわけでありますけれども、最新の数字で今待機児童は何人いるということですか。

舛添国務大臣 現在も都市部を中心に約一万八千人の待機児童がいます。

長妻委員 そうすると、この待機児童ゼロ作戦というのは公約違反ではないんでしょうか。

舛添国務大臣 平成十三年七月六日の閣議決定を読ませていただきますと、「平成十四年度中に五万人、さらに平成十六年度までに十万人、計十五万人の受け入れ児童数の増大を図る。」これが公約でございまして、現在のところ、平成十四年度から十六年度までに十五・六万人の受け入れ児童数を達しておりますので、目標を達して公約違反ではございません。

 たしか、四月の十何日かに交通事故死ゼロ作戦というのをやりました。しかし、残念ながら交通事故死者は出ました。それをもって公約違反だというようなことを言えないのと全く同じでございます。

長妻委員 その後、いろいろ政府が試算をして、潜在的待機児童というのがたくさんおられるというような試算をされたと聞いておりますけれども、これは何人ぐらいなんですか。

舛添国務大臣 これは潜在的に何人というよりも、今のところ、パーセンテージで申し上げて、今後十年間に三歳未満児の利用割合を二〇%から三八%に引き上げる、これは新待機児童ゼロ作戦でございますけれども、そういう形での問題の提示を行っております。

 実際、平成二十一年度までに保育所の受け入れ児童数を二百十五万人に拡大するというような目的を持ってやっているところでありまして、さらに新しい作戦として新待機児童ゼロ作戦ということで今取り組んでいるというところでございます。

長妻委員 確かに、平成十四年四月には待機児童二万五千人、それが最新の数字で一万八千人、減ってはいますけれども、対策、対応というのが非常に逐次投入というか、それで、潜在的待機児童が今現在は百万人いるというふうに厚生労働省は言われておりまして、今回も懸念されるのは、法律をきちっとつくるということは評価いたしますけれども、本当にそれが実行されるというのが重要だというふうに思います。

 そして、この法律の中に、新しい考え方として、虐待を受けた子供等を養育者の住居において養育する事業、ファミリーホーム、これは、新しい建物をつくるというよりは、そういう方の御自宅でこういう事業をするというのを創設するというのがあると。この考え方自体は私は評価いたしますけれども、またこれは法律をつくってもスローガンに終わるんじゃないかと私は懸念を持っているんですが、この設置計画、例えば何年後に何カ所が目標なんだという計画はございますか。

舛添国務大臣 ファミリーホームというのは、御承知のように、特に里親なんかで五人、六人同時に面倒を見るというところですけれども、今のところ、具体的に、ではこれをどういうふうにふやすかということではなくて、今、その目標数については、平成二十二年度において、これは基本的に地方自治体が主体としてやるものですから、地方自治体が地域行動計画を立てる、それで、どの自治体でどれぐらいのファミリーホームをつくろう、そういうことを集約して、その数を集計した上で、具体的な子育て支援プランの中でファミリーホームの財源を含めての手当てをしたいというふうに思っております。

茂木委員長 現段階では設置計画はまだないということでよろしいですか。

舛添国務大臣 現段階では、地方からのこの計画を吸い上げているところでありまして、それを吸い上げた上での集計できちんとした数字を出す、そういうことでございます。

長妻委員 いや、でも、日本は先進国だと思うんですが、私はこういう法律の提案の仕方というのはいかがなものかと。

 つまり、一応法律に書いておいて、条文にも書いて、通した後に、さて、どのぐらい、何カ所にしようかな、これからニーズを考える、こういうやり方というのは、後期高齢者医療制度もそうかもしれませんが、入れてみて、後からどのような実態かを考える、こういう法律というのは少なくともイギリスなどでは余り見られないんじゃないかというふうに思うわけです。

 そうすると、ファミリーホームを、例えば来年度あるいは再来年度、全然わからないんですか、十カ所ぐらいか、百カ所か、千カ所か。そのボリューム感も何にもわからない、スローガンの法案ということなんですか。

舛添国務大臣 今現在の状況を申し上げますと、地方自治体の単独事業によって里親ファミリーホーム事業というのをやっているのは、三十七家庭存在しております。たかだか三十七です。

 ですから、例えばこういう方々は、当然、新しいファミリーホームになれば移管すると私は思います。しかし、それに加えて、地方自治体でどういうニーズがありどういう形が一番いいかというのは、数字を吸い上げていかないと、私が先ほど来申し上げておりますように、厚生労働省がはしの上げ下げまで言うものではなくて、ニーズを一番わかっているのは現場ですから、その数字をいただいて、そして予算要求をするという形であります。

 新しい法律でこういうことをきちんとやろうということを定め、そして、その上で予算をつけていく。すべてはやはり財源の問題に帰着する問題がありますので、そういう計画ができた暁には、きちんと財源を確保するように全力を挙げてまいりたいと思います。

長妻委員 非常にその手法は逆だと思うんですね。やはりきちっとニーズを聞いて、この法律をつくればこれだけやる、これは、法案に入れるということは、国としてこういう政策を進めたい、こういう強力な意思表示の姿が法案というものですね、一番強力な姿が。それがスローガン的な法案になってはいないかということで、ぜひ今後、こういう法案を出されるときは大体の目標数値も出した上で提言をしていただきたい。

 そして、もう一点。これも平成十六年十一月十日に、同じ児童福祉法の一部を改正する法律案が衆議院で附帯決議がつきました。その四項目めに「保護者に指導措置を受けさせるための勧告が、実際にどのように機能したのかを検証すること。」という附帯決議があるんですね。

 これは非常に重要なものでありまして、家庭裁判所が、虐待をしているようないろいろ問題がある親御さんから子供を切り離す強制入所措置というものが年間百六十件弱程度出されているんですが、それについて、家庭裁判所が知事に、この親御さんに対して指導措置を受けさせるためこういうことをしなさいという勧告を出す、これがこれまで十六件しか出ていないわけでありますけれども、これを検証すると。これは非常に重要なことだと思います、繰り返し繰り返し悲劇が起こるということを防ぐために。附帯決議のこの検証というのはきちっともうやられているんですか。

舛添国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、十八年度中に十六件行われたという報告を受けています。今のところ、十六件という件数の少なさもあって、検証は行われておりません。

 しかし、これは今委員がおっしゃったように非常に大事なので、これから、さらなる事例の蓄積もあるでしょうけれども、きちんと検証をしてまいりたいというふうに思っています。この点は附帯決議にあるように非常に重要なので、その検討はきちんと今後やるということであります。

長妻委員 やはりこれは私も感じるところでありまして、この附帯決議というものが、与野党ともにですけれども、非常にスローガン的な形で終わってはいないかということで、附帯決議というのは大変これも重いものでありますので、我々国会議員もきちっとチェックいたしますけれども、それよりも、やはりこの附帯決議というのを、官僚の方と話していると、非常に軽く考えておられる方もいらっしゃるので、附帯決議というのは本当に重い、法律と同等のものという認識で役所も取り組んでいただきたい。かなりの附帯決議がほったらかしになっているケースが多いのではないかというふうに私は思いますので、これは検証していただくと約束いただきましたので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 そしてもう一点、保育ママ。

 これも一つの重要な政策、これまでもやっているものでありますけれども、この長期的な人数目標というのはあるのでございましょうか。これは、平成二十年度では、七億円予算つけて、子供二千五百人分、八百三十人の保育ママということが措置されたやに聞いておりますけれども、例えば五年後、十年後を見越した保育ママの、例えば具体的に言えば人数、こういう計画というのはどんな状況なんですか。

舛添国務大臣 すべて片一方では財源との相談ということがあるんです。しかし、目標を、この保育ママについて、じゃ、何人にふやそうということではなくて、逆に、今数字として出しておりますのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今後十年間に三歳未満児の利用割合を二〇%から三八%に引き上げる、つまり、今三歳未満児で保育ママは二〇%しか利用していない、これを三八%の引き上げ率までにするということの目標があります。

 これは、委員に御理解していただきたいのは、どうしても地方が主体ですから、地方のニーズと要求、そして計画、これを受けて、しかもその要求、計画を出すときに、どうしても財源措置がないと出してきません。その上で、我々がそれを受けとめ、例えば国庫補助についてどれだけの財源が振り分けられるのか。今の問題は、私は本当は長妻委員の意見にクリアカットに何人ですということを申し上げたいんですけれども、どうしてもそれが出ないのは、財源問題との絡みがあるからであります。特に地方財源が非常に苦しい中で、数字がとても出せない。それで三八%、こういう目標を掲げるにとどまったということですけれども、そこをぜひ御理解いただければというふうに思っております。

長妻委員 そして、もう一回後期高齢者医療制度に戻りますけれども、この天引きの話でありますが、配付資料の六ページですけれども、これを説明していただけますか。

水田政府参考人 配付資料の六ページは「年金からの保険料の支払いについて」という表題の資料でございますが……(長妻委員「四ページです。これです」と呼ぶ)四ページですか。

茂木委員長 四ページです。この縦長の。

水田政府参考人 四ページですね。御指摘のこの四ページの資料でございますけれども、これは、長妻議員からの要請に基づきまして、世帯の構成、世帯の人数、世帯の所得などにつきまして、一定の前提を置いた上で、財務省及び総務省に相談の上、平成二十年三月までと平成二十年四月以降の社会保険料控除の額や所得税、住民税の額を試算したものでございます。

 上段が、平成二十年三月まででございまして、父八十歳、母八十歳、世帯主五十歳、妻五十歳、これはいずれも国保に加入し、世帯主がまとめて国民健康保険料をお支払いする額が三十六万二千百円でございます。所得税額が三万七千六百円、住民税額が九万七千二百円、この類型ではこういった計算になるわけでございます。

 下の段、これは平成二十年四月からでございますけれども、前提といたしまして、父、母八十歳は長寿医療制度の保険料四万一千五百円をそれぞれ支払い、世帯主及び妻は国保に加入いたしまして、世帯主が二人分の国民健康保険料二十九万六千六百円を支払う、所得税額は四万五百円、住民税額は十万三千円になる、こういうケースにおきましてはこういったことになるということでございます。

長妻委員 天引きというのは、所得税の控除が減ってしまうんですね。今までは窓口で息子さんが七十五以上の御両親の国保の保険料を一緒に払えば、それは息子さんの所得から社会保険料控除がされる。しかし、天引きになると自分の、息子さんの分しか控除がならないということで、このケースでは八千七百円税金がふえるということで、これが対象となる世帯数というのは、七十五歳以上で老夫婦と子供から成る世帯が最大当てはまると思うのですが、これは推計で三百十八万世帯と聞いておりますけれども、最大このぐらいの世帯ということでよろしいのでございますか。

茂木委員長 水田保険局長、既に持ち時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

水田政府参考人 お尋ねの国保の被保険者のうちの七十五歳以上の方について、どの程度の世帯が所得税や住民税の社会保険料控除を受けていたかにつきましては、データがございません。したがいまして、最大と申されましたけれども、お答えとしては、やはりこういったケースがどのくらいあるかにつきましては、データがないということをお答えさせていただきます。(長妻委員「三百十八万。ちょっと答えていない。三百十八万世帯というのは、どうなんですか。厚労省から出た数字ですよ。三百十八万というのは何の数字ですか」と呼ぶ)

茂木委員長 じゃ、その三百十八万世帯について。

水田政府参考人 これは、よく承知はしておりませんけれども、十九年版高齢社会白書に基づく六十五歳以上の高齢者のいる世帯をベースにした推計であると承知しております。(長妻委員「いや、六十五歳以上じゃないですよ」と呼ぶ)

茂木委員長 長妻委員、もう既に相当時間が経過しております。まとめてください。

長妻委員 では、これは答弁は訂正しないですね。訂正しないでいいんですか。

水田政府参考人 六十五歳以上の高齢者のいる世帯数をもとにしまして、これを六十五歳以上と七十五歳以上人口で分けますと三百十八万世帯になると承知しております。

長妻委員 これで質問を終わります。

茂木委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、保育の問題で伺います。

 ことし三月二十八日、新保育所保育指針が大臣告示をされました。保育指針は昭和四十年制定後二回改定をされておりますが、今回初めて大臣告示としたのはなぜでしょうか。

大谷政府参考人 旧保育所保育指針は、創設時、厚生省の児童家庭局長による通知として定めておったわけでありますが、今回、各保育所の保育の内容の質を高めようという観点から、児童福祉施設最低基準第三十五条、これは厚生労働省の省令でありますが、これに基づく厚生労働大臣が定める告示にこの保育指針も格上げいたしまして、保育所における保育の内容及びこれに関連する運営に関する事項を定めた最低基準としての性格の明確化を図ったところでございます。

高橋委員 この保育指針は、認可保育所だけが対象ですか。

大谷政府参考人 官民を問わず公的保育所全体に係る指針でございます。

高橋委員 そこで、保育指針の第一章、総則の2、保育所の役割として、「保育所は、児童福祉法第三十九条の規定に基づき、保育に欠ける子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。」と。この「最善の利益」という言葉は、かつてから言い続けられている言葉だと思いますけれども、子供の最善の利益を守るという大前提がある、ここは非常に大事なことだと思うんですね。そのために必要な環境づくり、あるいは安全、衛生、そして一人一人の発達過程の違いを尊重することなど、基本を確定しているということが非常に大事だ。

 しかし同時に、その後の保育内容については、心情、意欲、態度などが年齢に応じて細かく書き込まれ、しかも保育士と保育所の自己評価なども書かれているというと、逆に今度は非常に息苦しくなってくるのではないか。そこまでを書いて、大臣告示で最低基準だと言っている。

 その一方で、今、施設に対する最低基準については、これを緩和しようという動きがございます。

 大臣は十九日、官房長官、増田総務大臣との折衝で、全国一律の設置最低基準について、市町村ごとの条例で独自基準を設定できるよう検討する考えを表明したと報道されました。

 お得意のはしの上げ下げのお話でございますけれども、私は逆だと思うんですね。最低基準というのは、本当に最低のものです。十分ではありません。ここを緩和するのではなくて、これに地域で上乗せをしていくということならよくわかるんです。ですから、そこはしっかり守っていくというのが基本ではないか。今の言っていることはあべこべになりませんか。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

舛添国務大臣 先ほど、柚木委員でしたか、御質問にもお答えいたしましたように、質の劣化は絶対に阻止する、安かろう悪かろうであってはいけません、こういうことです。

 ただ、片一方で、やはり都会において保育所が足りない、何としてでも保育をしてもらいたいというニーズがたくさんございます。そのときに、例えば非常に駅の近くとかで上手にスペースが使えるというようなことであれば、それは保育を望んでいる方々にとって、まさに保育に欠ける、そういう親にとっては大変これはありがたいことになるのです。

 そういう全体的な、保育のニーズを持っている方々に対して何が一番いいか、そういう観点から私が申し上げた次第でありまして、安かろう悪かろうというのは、これはもう絶対に阻止する、そのことはきちっと何度も増田総務大臣に申し上げておりますし、そういう意味であるということは、公の記者会見でも申し上げたとおりでございます。

高橋委員 ですから、地域の一定の柔軟な対応というのはあるかもしれない。しかし、安かろう悪かろうということを私流に言わせていただければ、やはり最低でもこれだけは守るんだよということに対して国が責任を持つということでよろしいですか。

舛添国務大臣 基本的にそういうことについて、国が各自治体に対して、こういうことはきちっと守る。

 ただ、申し上げましたように、何が国民にとって一番いいのか、そして、これをやらなければ、どんどん質の劣化競争になるのかというと、私は、地方自治ということは、そこに民主主義がきちんと生きているならば、そういう施策しかやれないような首長に対して当然住民はノーを突きつけるというふうに思いますから、そういう意味では、委員がおっしゃったことはきちんと守っていきますが、今の私の感覚でいうと、劣化競争になって取り返しのつかないことになる、そういうことであれば、私も柔軟性ということは申し上げません。そういうことにならないということの上で申し上げているわけであります。

高橋委員 私は、最低基準から上乗せをしていけばいいなと言っているのに、大臣は劣化競争という話をされるので、なかなかつらいものがございます。

 東京都の認証保育園の問題なども、結局ノーが突きつけられた初めての事例でございます。しかし、そこに至るまで、たくさんの子供たちにしわ寄せが来たのではないかとか、あるいは、やめられた職員の皆さんが告発して初めて事例が表面に出たんだ、そういう犠牲を伴うものであるということもちゃんと理解した上で、やはりちゃんと見きわめていく必要があるのでないかと思います。

 そこで、保育指針には、六章までに示された保育の内容、ねらいなどを踏まえて、七章で職員の資質向上が示されております。一人一人が、保育実践や研修などを通じて保育の専門性などを高めるなど、資質と専門性の向上が求められている。それにあわせて、その前段の章で書かれているのは、保護者に対する支援、地域における子育て支援などなど、社会的責任が大変強調されているわけです。

 そうすると、その大前提として、保育者がどういう状況にあるのかということをちゃんと見て、処遇の改善が必要不可欠なのではないかと思います。

 資料の一枚目に、「保育の質を支える仕組み」ということで出させていただきましたけれども、例えば配置基準だって、ゼロ歳児一対三、三歳児一対二十などという基準がございますけれども、これは全体のプール制みたいになっていますので、実際には四十人学級になっているですとか、ゼロ歳児が三十人もいるですとか、そういう弊害がさまざま出てきている。つまり、クラスごとの基準がないということがございます。

 あるいは、保育士の給与、決まって支給する現金給与、これは平成十八年の賃金構造基本統計調査で、保育士が二十一万八千円、年齢三十二・八歳、勤続年数七・六年。ホームヘルパーよりはさすがに若干いいのですけれども、全産業平均と比べると十二万も下がっている。しかも、これは税込みですので、手取りでは二十万を割り込むわけですね。十四年働いても十八万円しかもらっていない、全くその経験が考慮されていない、そういう実態がるる述べられているわけです。

 これは、保育単価そのものが、経験年齢は七年までしか考慮をされていないとか、八時間労働しか考慮されていない。そうすると、実際は、それを非正規雇用で置きかえて何とかしているというのが実態ではないか。これでは、幾らお題目が大きくても、こなせるわけはないと思いますけれども、どのように考えますか。

大谷政府参考人 御指摘いただきましたように、保育所のいわゆるサービスの質、これはまさに保育士の質ということと直結する問題でありまして、入所児童の処遇にとって非常に重要な問題である、共通の認識だと思います。

 したがいまして、保育所の運営費につきまして、これまでの経過を申しますと、平成十二年度から十四年度にかけ、職員の給与の格付の見直しを行うとともに、国家公務員に準拠して、毎年、人事院勧告を踏まえて同様の改善を行うなど、限られた財源の中でありますが、所要の財政措置を講じているところでございます。

 また、今後は、本年三月に改定しました保育所保育指針、今御指摘いただきましたが、そういったものの内容を踏まえまして、保育士の養成であるとか研修の充実などを図ることで、その質の向上に努めてまいりたいと考えております。

高橋委員 最後がちょっともごもごして聞きとれなかったんですけれども、財政的なことも含めて、役割が大きく期待されるのであれば、それにふさわしい処遇をするべきだということを重ねて指摘をしておきたいと思います。

 次に、この法案で大きく関係している児童虐待の問題について伺いたいと思います。

 超党派の議員の皆さん方が長年議論を重ね、昨年、虐待防止法が改正されたことに敬意を表し、また期待もするものであります。

 ことしの三月二十日に社会保障審議会児童部会の専門委員会から「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」が提出をされました。それによると、平成十八年の一年間で、子供虐待による死亡事例として百例、百二十六名あり、前年より三十例、三十五名もふえています。資料の二枚目にありますけれども、児童相談所の関与の有無、これは、心中以外で二三・一%が関与あり、心中で一六・七%、合わせると約二割が関与があるということです。また、虐待の認識があり対応していたのが四割ということ、大変残念に思います。

 大臣に、この問題での感想も含め、四月から法改正で児童相談所の権限も強化をされましたけれども、もう死なせないと本当に心から言えるといいと思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

舛添国務大臣 今委員が御指摘になったような大変残念な例があるということで、しかも、その相談所の関与は二三%ちょっとであるということでありますけれども、これは新しい法律も施行されましたので、やはりこの体制強化をやる必要があるというふうに思います。

 今年度の地方交付税措置におきまして、まず児童福祉司を、平成十九年度の標準人口百七十万人当たり三名の増員に加えて、さらに一名増員をいたしました。それから、やはり職員の質の向上を図るということで、これは研修などを充実させようというふうに思っております。

 来月、全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議を開きます。この場におきまして、今の委員の御指摘を受けまして、児童の安全の確保ということに今後積極的に取り組むということで、私の方からも強い指示を出したいというふうに思っております。

高橋委員 ありがとうございます。

 今紹介した報告書の中で、「平成十七年四月の第一次報告及び平成十八年三月の第二次報告が活かされず、今回においても同様の課題が指摘されており、類似した死亡事例が発生していることは誠に残念である。」こういう指摘がされているということは本当に残念だと思うんですね。今紹介した報告書が初めてではなくて、何度か重ねてきて提言がされているのに実は事例がふえているということは、非常に残念に思います。

 児童相談所が何回か接触し、一時保護なども試みた、しかし、結局報道によって、その子が亡くなった、あるいは心中した、そういう痛ましい事実を知らされる。どんなにつらいかということも考えました。対応に問題がなかったかを十分検証するのは当然のことではありますが、同時に、行政としてもっとできることはないかと思います。

 前回の児童虐待防止法で積み残しとなった問題として、いわゆる虐待した本人、親に対する指導ということがございます。報告書の中でも、児童相談所は、虐待をした本人、母親に会っていない、こういう指摘もございます。これは今ある体制の中ではなかなか難しいと思いますけれども、必ずこのことに取り組む必要があると思いますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 虐待の問題につきましては、ここ数年間、体制を整備し、あるいは研修、あるいは指示、連絡、またいろいろなルールの改変等を行って、かなり体制が充実されつつあるわけでありますけれども、個々のケースの中で大変不幸な悲しい事例がやはり生じるということで、これは各施設で、体制だけではなくて、一個一個のケースについての取り組み、それから個々の職員の取り組む姿勢、すべての問題として取り組んでいかなければならないと考えております。

 ただいまの、今度は虐待した親に対する指導ということでありますが、実際に分離してお預かりしたお子さんの処遇という方にこれまでどうしても力をとられているわけでありますけれども、再統合とかその後の処理を考えますと、その親御さんとの接触なり、それから事態の改善が不可欠でありますので、そういったことについても引き続き力を入れてまいりたいと考えております。

高橋委員 これはなるべく急いで、頑張っていただきたいと思います。

 次に、報告書の中で、望まない妊娠が十人、母子手帳未発行が九人、妊婦健診の未受診が九人など、妊娠期に問題を抱えた事例も前年度からやはりふえているという指摘がございまして、多分この指摘を受けて、本法案でも、乳児に対する訪問事業、そしてそれに妊婦も加えるということ、その後のフォローアップ事業も位置づけたということでありますけれども、私、とても大事なことだと思うんです。

 ただ同時に、どうやってそういう、ハイリスク妊婦といいましょうか、対象者を把握するのかということは非常に難しいと思いますけれども、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

大谷政府参考人 このたびの改正法案におきましては、虐待予防の観点から早期に必要な支援を図るために、要保護児童対策地域協議会の協議対象を妊婦に拡大しまして、出産後のみならず、出産前において出産後の養育支援が特に必要と認められる妊婦を把握して、必要な場合には、協議会において協議を行うというふうにしたところでございます。

 ただいまの、いわゆるハイリスクと申しますか、そういった妊婦の方をどういうふうに把握していくかということでありますけれども、これは、健康診査や保健指導等母子保健活動全般を通じて行う、また地域の医療機関や医療関係団体との連携を通じて把握するということを想定しておりまして、従来から、市町村内部において、母子保健担当部署と児童福祉担当部署において十分連携していただくようお願いしているところであります。

 さらに、医療機関と市町村保健センター等の保健機関との連携によりましてこうした妊婦の存在を把握できるように、本年三月、地方自治体に通知を出しまして、情報提供の対象となる家庭や関係機関の役割など、医療機関と保健機関との間で効果的に情報提供、情報共有を図るための連携体制のあり方を示すとともに、こうした体制の整備に尽力するよう依頼したところでございます。

 今後とも、支援が特に必要な妊婦を的確に把握して、その支援が図られるよう、体制整備に努めてまいりたいと考えております。

高橋委員 なかなか、的確にとらえることは非常に難しいかとは思いますけれども、先ほど来、妊婦健診の拡充の問題も出されておりました。一度目は受けたけれども二度目がずっと来ないですとか、母子手帳はもらったけれども健診に来ないですとか、さまざまな情報がキャッチされるようになっていけばいいなと思いますし、あるいは市町村の関与というのが、さっき児童相談所の関与の話をしましたけれども、市町村の関与も非常に大きいということもありますので、そこの風通しをよくしていく、情報の共有、連係プレーということを強めていっていただきたいなと思います。

 その上で、私は、地域の協議会の取り組みや連携というのは本当に大事だけれども、しかし、真ん中に据わる児童相談所の体制というのがやはり一番大事だと思っているんです。自分自身が青森で県議になった最初の年に二件の虐待死の事件が起きて、当時の知事のトップダウンで児童福祉司と心理司を何倍にも配置したという経験がございました。やはり、そういうことが相談件数をふやし、逆にそのことで虐待を顕在化させるということにも功を奏したのではないかと思っているんです。

 ただ、そうはいってもまだまだ、きょうの資料の三枚目につけました、時間がないので質問できませんけれども、減っている自治体もございます。また、心理司もまだまだ不十分ではないかと思います。休日に相談に駆け込まれて、それを担当のケースに引き継ぐまでの間に事態が起きてしまうということもありました。

 そういう点では、やはり一人で抱え込まずに複数で対応できるということが非常に大事だと思います。その点では、児童福祉司や心理司の体制ももっと拡充していくことを考えていただきたい、そのことを指摘して、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

吉野委員長代理 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、午前中が参考人にお話を伺い、そして午後また審議ということで、皆さん、長時間大変に御苦労さまです。

 私は、きょう午前中の参考人のお話の中で、特に日本の少子化対策と呼ばれるものは、本来、子供の権利という子供の側から光を当て直す大きな発想の転換が必要であろうというお話もこれあり、その子供の権利の中でも、なかんずく最も肝要となってまいります教育体制ということに関して、冒頭、大臣にお願いをしたいと思います。

 まず、大臣のお手元にもございますが、先ほど高橋委員の御質疑の中でも、こうした児童養護、保護にかかわる人手の手薄さは御指摘あったところですが、ここには、緊急一時保護といって、虐待が起きた、あるいはある場合は、家庭内暴力などの本人が暴力を振るっている場合の子供の保護ということも含めて、一時保護所というものの状況を表にしてございます。

 先ほど高橋委員が、最後にお使いにはなられませんでしたが、お示しの資料は、平成十九年までデータがございまして、日本全国で百十七カ所。私の資料は十八年度までですので百十三カ所でございますが、定員が二千四百七十七人に対して、日々大体千三百二十人の子供たちが在所しておられます。

 この一番下を見ていただきたいんですけれども、平均在所日数というのがございまして、二十五・九日。ちなみに、平成十三年には十八・五日であったものが平成十八年には二十五・九日。平成十九年で統計をとりますれば、恐らくこれはさらに、三十日近くなってきているかもしれません。

 緊急一時保護所というのは、そこからその次の児童養護施設に行ったり、あるいは御家庭にもう一度帰るという、そのほんのつかの間を見るものですが、ごらんになってもわかるように、そこに在所する日数がどんどんふえてきております。

 ちなみに、私の神奈川県、中央児童相談所では、これが四十五日になっております。この四十五日間は、実はシステム的には、ここで保護された子供たちは教育へのアクセスができません。そこで、今のこうした、そこにいても子供は日々育ち学ぶものですから、現状、どんどん延びていく在所日数に対して、これは舛添大臣にお伺いいたしますが、現状についてどういうふうに御認識であるか。

 ちなみに、神奈川県の場合は、次の児童養護施設等々がないということで送るに送れないというところもありますが、私はやはり、ここにいる間もきちんと教育的な配慮がされたらいいなということも含めて、在所日数が長くなっていることについて御感想をお聞かせください。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

舛添国務大臣 今委員が、神奈川は四十五日だということをおっしゃいました。やはり、三十日とか四十日ということで、その間学習の機会を奪われるというのは何としてもよろしくないと思います。特に、文部科学省初め関係省庁ときちんと協議をして、どういう形でこれは対応できるのか、具体的には文科省がいろいろな手を打つと思いますが、こういう問題についても協力して対処していきたいと思います。

阿部(知)委員 大変ありがたい御答弁ですが、少し戻らせていただいて、これは児童局長に伺います。

 二ページ目をあけていただきますと、二ページ目は、ここの入所児童の年齢別です。ゼロから五歳、六から十一、十二から十四、十五歳以上と分けてございますが、要は、学齢期にある子供たちが三分の二以上だということであります。緊急一時保護でも、学齢期にあり、なおかつそこは教育へのアクセスがまだ十分できないということであります。

 三ページ目をごらんいただきますと、それに対して、一応、厚生労働省といたしましても、暫定的にと申しますか、OBで教職の資格をお持ちの方を非常勤で措置というか手当てしてございます。例えば、私の行きました神奈川の場合ですと、約十五人の子供に対して非常勤の方一名が週三十時間のお仕事をしていただく。これは、扱っている子供たちの人数とそこに臨時で配属された先生の仕事量と考えますと、大変にアンバランスでございます。

 こうした実態についてはどうお考えでしょうか。

大谷政府参考人 一時保護所の入所期間は、今御指摘のとおりに長期化する傾向にあることなどから、一時保護を行った学齢期の子供の学習は非常に重要な課題と考えております。

 現在、一時保護所におきまして、生活指導の一環として学習指導を行っているわけでありますが、今お話がありましたように、教員免許を有する一時保護所の職員が学習指導に当たる場合、また、平成十六年度から実施しております国庫補助事業であります一時保護機能強化事業を活用して教員OBが指導に当たる、こういった形で、地域の実情に応じた対応を行っているわけであります。

 さらには、こうした教員OB等を活用した取り組みを強化するために、昨年度から、補助単位を各都道府県等ということから各児童相談所に改めまして補助の充実を図るとか、また、教員OB等の人材確保に苦慮している地域もあったということで、そういったことから、文部科学省より、各教育委員会に対して人材に係る情報提供等の協力を行うよう依頼していただく、こんな対応を行っているところでありますが、御指摘のとおり非常に重要なテーマでありますので、さらに取り組みを進めていきたいと思います。

阿部(知)委員 私は、大臣も母子家庭でお育ちになったということでよくおわかりと思いますが、子供たち自身をエンパワーしていく第一のものは教育であります。そこが、もともと一時保護される子供たちは、虐待経験があったり、それまでの学業もおぼつかない中で、また一時保護所でほとんど学習の権利を奪われている。非常に大きな損失だと思うんです。

 きょうは、実は、文部科学省の方にお願いして、副大臣に御答弁いただけまいか、とりわけ池坊さんは虐待問題で大変にいろいろなお取り組みをしておられますので、そうお願いいたしましたところ、委員会であるというお話でした。でも、委員会は午前中で終わっております。私は、審議官が来られてありがたいですけれども、聞けば、四時から外出であると。私は、彼女が一生懸命取り組んでいるから、ここの場は、本当は政治家の言葉で、ここは大きく子供たちの施策を前進させていただきたいと思います。

 これはお伝えください。どこでどういうふうにそういうふうに入れ違ったのか。きのう、質問取りを投げましたときに、私は、副大臣対応でしていただけないかとお願いいたしました。それで、結果的に審議官。でも、委員会は午前中でした。本当に国会は審議の場ですから、本当の意味で文科省も前向きにお取り組みいただきたい。

 そこで、審議官にお願いします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 一時保護中の児童生徒につきましては、当該児童が在籍しております学校あるいはその設置しております教育委員会におきまして、施設との連携を密にして、施設内における学習指導を支援していくことが大切であると考えております。

 このような観点から、文部科学省といたしましても、これまでも、生徒指導を担当する者を集めた会議などにおきまして、児童生徒が一時保護されたときは、児童相談所などと日々十分な連絡をとり必要な支援を行うこと、また、児童相談所における教員OB等の配置を支援するため、情報提供等の協力を行うことを要請してきたところでございます。

 今後とも、一時保護期間中の児童生徒への学習支援の充実が図られるよう、学校、教育委員会において適切な対応を促してまいりたいと考えております。

茂木委員長 布村審議官、先ほどの阿部委員の御指摘、大変重要でありますから、しっかりお伝えください。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 百十七カ所の緊急一時保護所中、さっき言った、非常勤の方が十五人の子供を週三十時間で見るという体制を含めてですが、四十八カ所しか手当てされておりません。

 再度大臣に、恐縮ですが、ぜひ、文科省と本当にここは折衝していただいて、協力して子供たちのよりよき発達のために御尽力くださいますようお願いを申し上げます。

舛添国務大臣 早速この件については渡海文部大臣ときちんと協議をして、指示を出したいと思います。

阿部(知)委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。

 次に、母子家庭の社会保険の加入状況について、なかんずく医療保険の加入状況をお取り上げさせていただきたいと思います。

 全国母子世帯等調査結果報告書、平成十八年十一月一日現在でございますが、いわゆる母子家庭で、社会保険、とりわけ医療保険に加入していない世帯が六・五%あるということです。お母さんが加入していなければ、当然子供も医療保険を持たないような状態になってしまいます。

 ちょっと時間がないので大臣に直にお伺いしたいんですけれども、こうした事態というのは、年金の加入も、母子世帯の場合、一七%近くお母さんが加入しておられない、将来そのお母さんも無年金になる、深刻な事態ですが、医療の場合は待ったなしなんですね。

 医療保険に加入していない無保険、あるいは、加入していても、今、お母さんたちのアンケートを見ますと、保険料負担が大変に高いから払えなくて無保険になりかねないと。資格証明書を発行されているんじゃないかと私は不安でならないわけです。今、全国で資格証明書が大体三十四万発行されていますが、その中に母子世帯の方はいないんだろうか。

 ここは、大臣、お願いがあります。

 例えば、障害者の方の場合ですと、こうした資格証明書は発行されないような仕組みができております。母子世帯についてもそうした配慮、私はもともと資格証明書などは反対です、でも現実に発行されているやもしれない不安を持つわけです。まず実態を調査していただきたい。そして、とりわけ子供さんのいる世帯では絶対に取り上げがないようにしていただきたいですが、どうでしょうか。

舛添国務大臣 母子家庭の医療保険の加入状況を調べてみますと、いわゆる被用者保険に加入している方々は四九%、国民健保に加入している方は四四・六%。加入していないという方が六・五%ありますけれども、この中には生活保護も含まれているので正確なところはわかりません。

 資格証明書とか短期の保険証、これは滞納があった場合にお出ししますけれども、ある意味で、そういうのをお出しするというのは、相談窓口にぜひ来ていただきたい、そして、そこでそれぞれの細かいケアを、手当てを、どういうことができるか相談していただきたいというように思っております。

 そういう意味で、全体的にどういう状況であるか、これは調査できる限りやってみたいと思いますけれども、なかなか、滞納している方が母子家庭かどうか、そこまで細かくトレースできるかどうかという問題もございます。しかし、問題意識としては、私はやはり社会保障というのは最後のセーフティーネットでないといけないと思いますから、母子家庭の皆さん方に対するセーフティーネットに欠けるところがあればこれは充実すべきだ、そういうふうに考えております。

阿部(知)委員 厚労省にお伺いしたところ、実態は把握しておられないということで、私は懸念するものです。

 そして、先ほど申しました障害者の場合は、制度的に自立支援医療の対象となるので、これは保険証の短期あるいは資格証明書の発行はされない、ブロックがかかる仕組みがございます。それくらいにやらないと、気がついたときには親子ともども無保険で、医療にアクセスできない状況が生まれかねないと危惧します。もちろん、相談に行けばいい、それはそうです。しかし、前もって安全弁を入れておかないと、私は、さっき言った虐待の事案でもそうですが、先に安全弁があれば悲しい事態はブロックできるように思います。

 最後に、今回の法案以外のことで、療養型病床群についてお伺いいたします。

 これも、私は月曜日に神奈川県に行ってまいりましたが、神奈川県は、国の削減計画の中では、一応、現在一万二千八百十三ある療養型病床を七千五百四十四に削減せよということでありました。ところが、神奈川県で独自にいろいろな、厚生労働省のお出しになった指針にのっとって計算をしてみたところ、やはりどうあっても一万三百五十五床だというところに落ちつきました。

 これは、医療区分が何であるとか、厚労省のおっしゃったとおりに数値を入れて、しかし、これからの高齢化率、あるいは、最後につけました資料をごらんになっていただけばわかるように、神奈川は実は決して療養型病床の対千人当たりの比が大きいところではないのでありますが、そういうところで地方の実態に合わせて試算した数値が、先ほど申しました厚労省のお示しになる七千五百四十四よりは約三千床多い値になるわけです。

 私は、この数値を見たとき、大臣にぜひ伺いたいのです。これは、地方で医療計画をして、地方それぞれに取り組んでやって上がってきた結果であります。今、全国で集計を集めておられるそうですが、そうした地方がおのおのに努力された実態というのは重く見ていただけるんでしょうね。いかがでしょう。

舛添国務大臣 何度も申し上げていますように、介護それから医療、これはまさに現場が一番大切であります。そういう地方の声をきちんと尊重し、そのことを踏まえた上での柔軟な計画の見直し、さらに今後の展開ということを考えていきたいと思っております。

阿部(知)委員 ぜひそのようにお願いしたいです。

 そして、大臣にお見せした「神奈川県の療養病床の削減計画」の右の下の方にちょこっと書いてありますが、回復期リハビリテーションというのがここは一千百四十五床で、正直言って、人口規模当たり決して多くはございません。

 私は、いつもこうした論議のときに、リハの施設、急性期、回復期、維持期、地域リハ、これがきちんとマッピングされて、どこに行けば何が受けられるのかがわかるような体制にないと、この療養型病床だけを減らせ、減らせとやっても行き場がない、あるいは、本当に早期のリハをかければ、軽く、予後がいい方も多いわけで、この間の療養型病床削減の方針というのは、大臣が今御答弁いただいたように、現状に合わせて見直すということを厚労省としてもぜひお取り組み願いたいと思います。

 そして、最後に申し述べさせていただきますが、本日の法案に対して実は附帯決議というものがつけられます。先ほど長妻委員の御質問にもありましたが、私は、これはただの紙切れではなくて、とても重要だと思っておりますが、本日私に寄せられました附帯決議は、私の手元に来たときには一文言なりとも訂正もできなければ追加もできないものでありました。

 私は、国会の審議というものは、これは与党の皆さんに特にお願いを申し上げたいですが、ここで論議したよいことを盛り込んで、さらにムーブアヘッド、前に進むものだと思います。時間の、いろいろなせっぱ詰まったこともおありだったでしょう。しかし、そうしたやり方というのは、国会が軽視されるもとになります。私は、できた附帯決議をみんなで守っていくようにやっていただきたいということを最後に一言申し添えて、終わらせていただきます。

茂木委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、第百六十八回国会、西村智奈美君外二名提出、児童扶養手当法の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 この際、本案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。舛添厚生労働大臣。

舛添国務大臣 内閣といたしましては、その法案に対して反対いたします。

    ―――――――――――――

茂木委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 第百六十八回国会、西村智奈美君外二名提出、児童扶養手当法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 次に、内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

茂木委員長 この際、本案に対し、大村秀章君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。菊田真紀子さん。

菊田委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    児童福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 安心して子どもを生み育てられる社会を実現するため、次世代育成支援策の抜本的拡充のために国・地方を通じた必要な財源の確保を踏まえつつ、新たな次世代育成支援の枠組について、政府を挙げて速やかに検討を行うこと。

 二 就労の有無に関わらず、地域とのつながりと支え合いの中で子育てに取り組むことができるよう、すべての家庭に対する支援の更なる拡充に努めること。

 三 家庭的保育者の質の確保のため、すべての家庭的保育者が、家庭的保育を行うために必要な基礎的知識や技術などを習得することができるよう、研修体制の整備充実に努めるとともに、就労していない保育士資格者に対する再就職支援に係る検討を進めること。

 四 家庭的保育事業に当たっては、市町村が責任を持って関与するとともに、その普及推進を図るため、家庭的保育者に対する支援、連携保育所の確保など実施体制の整備充実に努めること。

 五 児童福祉施設の入所児童に対する虐待の防止措置を実効あるものとするため、虐待の届出等について入所児童及び関係職員等に対して周知するとともに、すべての職員に対する研修を徹底すること。

 六 児童養護施設等の要保護児童が入所する施設において、子どもの状態や年齢に応じた適切な支援を行うことができるよう、施設の最低基準や措置費の見直しを含めた検討を進めること。その際、施設で生活を送る主体である子どもにとってより暮らしやすい生活となるような視点に立って、検討を進めること。

 七 里親委託や小規模住居型児童養育事業の推進、児童養護施設等の施設の小規模化の推進などにより、要保護児童が家庭的な環境において個別的なケアを受けることができるような体制の整備を推進すること。

 八 社会的養護の下で育った子どもが他の子どもたちと公平なスタートが切れるよう、児童自立生活援助事業等の充実を図るとともに、進学や就業への支援策の拡充を図ること。

 九 一般事業主行動計画の策定及び届出が新たに義務付けられる従業員百人を超える事業主に対しては、平成二十三年四月一日までの間に、できる限り多くの事業主において行動計画の策定等が行われるよう、本法の周知及び行動計画の策定等の支援に努めること。また、行動計画の策定が努力義務とされている従業員が百人以下の事業主についても、できる限り行動計画の策定等が行われるよう支援を行うこと。

 十 仕事と家庭を両立できる環境整備を推進するため、働きながら子育ての時間確保ができる短時間勤務制度の強化や男性の育児休業取得促進方策などについて、必要な措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

茂木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

茂木委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、舛添厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。舛添厚生労働大臣。

舛添国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力してまいる所存でございます。

    ―――――――――――――

茂木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

茂木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木委員長 次回は、来る三十日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.