衆議院

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第3号 平成20年11月14日(金曜日)

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平成二十年十一月十四日(金曜日)

    午前九時七分開議

 出席委員

   委員長 田村 憲久君

   理事 上川 陽子君 理事 鴨下 一郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 西川 京子君

   理事 三ッ林隆志君 理事 山田 正彦君

   理事 山井 和則君 理事 桝屋 敬悟君

      赤池 誠章君    新井 悦二君

      井澤 京子君    井上 信治君

      猪口 邦子君    遠藤 宣彦君

      大野 松茂君    金子善次郎君

      川条 志嘉君    木原 誠二君

      木原  稔君    木村 義雄君

      清水鴻一郎君    杉村 太蔵君

      高鳥 修一君    谷畑  孝君

      とかしきなおみ君   戸井田とおる君

      長崎幸太郎君    西本 勝子君

      萩原 誠司君    林   潤君

      福岡 資麿君    盛山 正仁君

      内山  晃君    岡本 充功君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      園田 康博君    高山 智司君

      長妻  昭君    細川 律夫君

      三井 辨雄君    柚木 道義君

      高木美智代君    古屋 範子君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   厚生労働大臣       舛添 要一君

   厚生労働副大臣      大村 秀章君

   厚生労働副大臣      渡辺 孝男君

   厚生労働大臣政務官    金子善次郎君

   厚生労働大臣政務官   戸井田とおる君

   会計検査院事務総局第五局長            真島 審一君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  関  有一君

   政府参考人

   (消防庁次長)      株丹 達也君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  上田 博三君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       石塚 正敏君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            太田 俊明君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          草野 隆彦君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  宮島 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  石井 博史君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           梅田  勝君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十四日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     猪口 邦子君

  萩原 誠司君     木原  稔君

  細川 律夫君     高山 智司君

  福島  豊君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     盛山 正仁君

  木原  稔君     萩原 誠司君

  高山 智司君     細川 律夫君

  高木美智代君     福島  豊君

同日

 辞任         補欠選任

  盛山 正仁君     冨岡  勉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

田村委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府男女共同参画局長板東久美子君、総務省行政評価局長関有一君、消防庁次長株丹達也君、厚生労働省医政局長外口崇君、健康局長上田博三君、医薬食品局食品安全部長石塚正敏君、労働基準局長金子順一君、職業安定局長太田俊明君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、職業能力開発局長草野隆彦君、雇用均等・児童家庭局長村木厚子君、社会・援護局長阿曽沼慎司君、社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君、老健局長宮島俊彦君、保険局長水田邦雄君、年金局長渡辺芳樹君、社会保険庁運営部長石井博史君、農林水産省大臣官房審議官梅田勝君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第五局長真島審一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子君。

上川委員 おはようございます。自由民主党の上川陽子です。

 舛添大臣におかれましては、大臣就任当初から、国民の命、そして生活と仕事に係る積年の課題、また新しい課題に対しまして、全力で取り組んでこられました。

 私も、昨年一年弱ではございましたが、子供と家族に係ります諸課題に対しまして、少子化担当大臣としてともに取り組ませていただきました。その熱意あふれる、また真摯な姿勢に心から敬意と感謝を申し上げます。

 これから日本が直面する問題は、さらに困難さを伴うものであるということが見通されます。そうした折、国民とともに戦う大臣として、さらなる御活躍を祈念するものでございます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 アメリカ発の金融危機をきっかけにいたしまして、世界経済が目下大混乱をいたしております。明日でありますか、ワシントンでG20の金融サミットが開催される予定でございますが、日本からも麻生総理が出席をする予定でございます。

 しかし、混乱は金融分野にとどまらない。今は、既にもう実体経済にまでさまざまな課題が及んでいるということでございます。一部、百年に一度の世界同時不況ではないかという声も聞かれておりまして、アメリカのプレスなどでは、リセッションという、循環型の景気後退というような表現ではなく、ディプレッションという、大変大きな不況であるというような表現がなされているところでございます。既にIMFやOECDの国際機関においては、各先進国のこれからの国のGDPの予測と成長率というところにつきましてマイナス成長を予測し始めておりまして、大変成長率の見通しも下方修正がなされているところでございます。

 これまで日本経済というのは、輸出主導で来た、そして、それによって景気の回復に対し大変大きな貢献を果たしてきた。その分、家計の部分、国内需要については大変厳しい状況の中で、これを何とかしなければならないというそうした時期に、さらに金融の大きな不安感、あるいは大きな問題、波が押し寄せてくるという意味で、大変大きな、ダブルの課題を一手に担いながら、この数年間の大変大きな取り組みのスタートを切らなければいけないというふうに思っております。

 今後、企業の倒産件数の増加やリストラに伴います失業が発生していくことになれば、日本の社会経済に及ぼす影響は大変深刻なものと懸念されるところでございます。一部の週刊誌、雑誌等によりますと、来年の大学卒業の就職内定状況ということで、明るい見通しから一転、内定の取り消し等の情報、声も聞かれるところでございます。

 こうした大変直下の厳しい経済情勢というのを踏まえて、その影響が雇用や失業情勢にどのような影響を及ぼしているのか。今の直近の動き、さらに今後の見通し等につきまして、政府の把握している情報の中から御説明をいただきたいと存じます。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 現下の雇用失業情勢でございますけれども、まずマクロのデータとしましては、九月の完全失業率が四・〇%、それから、有効求人倍率は八カ月連続で低下して〇・八四倍となるなど、現下の雇用失業情勢は下降局面となっているところでございます。そして、今御指摘いただいたような経済状況でございますので、さらに悪化することも予測されているところでございます。

 その中で、倒産の状況につきましては、民間の調査でありますけれども、十月の倒産件数が千四百二十九件と、六年ぶりに十月として千四百件を上回ったという数字も出ておるところでございます。

 加えて、いわゆるリストラの状況でございますけれども、都道府県労働局からの十月の報告でございますけれども、派遣労働者、請負労働者、いわゆる期間工が五千人近く雇いどめされておりますし、正社員、パート等も合わせて一万人を超えるような労働者の方々が雇用調整を受けているというふうに調査しているところでございます。

 さらに、学校卒業者の状況でございますけれども、就職内定状況については現在調査中でございますけれども、採用内定取り消し件数も、現時点で把握しているだけで四件六十三人ということでございまして、さらにハローワーク等が把握している状況の確認も進めまして、全体の状況を今月中には取りまとめたいと考えております。

 こうした状況でございますので、補正予算の施策あるいは生活対策に盛り込んだ施策あるいは雇用保険制度の見直しも始めたところでございますので、雇用のセーフティーネットの強化を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

上川委員 今御説明されましたとおり、雇用状況につきましてはここ一年の間に大変急速に変化をしているという状況でございます。

 私も、昨年の十二月に仕事と生活の調和の憲章と行動指針をつくった折に、その次の年、ことしの初めでありますが、ことしは仕事と生活の調和の元年にしようということで前向きな取り組みをし、また、四月の賃金の交渉の時期におきましては、一部賃上げもというような声もあったぐらい、見通しとしては、今のような状況がこの一年の間に起こるなどとは、予測はしていたものの、なかなか厳しい状況であるということ、また、それが、さらにこれから先のことを考えてみましても、なかなか見通すことができない状況にあるということもあわせて考えますと、今回の緊急の取り組みということについての意味というものを大変重く考えなければいけないし、また、その内容につきましても、効果が上がるようにしていかなければいけないというふうに思うわけでございます。

 さらに、今回は、急激な信用収縮ということを伴った世界的なバブル崩壊現象であるということでございまして、かなり長時間、長期間にわたっての深刻な状況が続くのではないかということも恐れているところでございます。

 御指摘のとおり、今回の危機を乗り越えるためには、従来型の発想を超えた、雇用のセーフティーネットの施策が本当に不可欠であるというふうに考えております。

 と同時に、今日本が置かれている少子化が進行していけば、人口減少という大変困難な課題に直面しておりますので、そのためにも本格的なセーフティーネットをしっかり張っていくということは、この時期大変大きな課題でございます。

 二重の意味で雇用のセーフティーネットの強化が喫緊の課題であるというふうに考えておりますが、大臣の御認識をまずお伺いしたいと存じます。

舛添国務大臣 御指摘のように、アメリカに端を発する金融危機、これはもう実体経済にも影響を及ぼしておりまして、我が日本もその例外ではありません。非常に深刻だと思いますし、私は長期化も覚悟しないといけないというように思っています。いたずらに悲観論は避けたいと思いますけれども、しかし、備えあれば憂いなしと。

 そして今、上川委員が大臣のときにお取り組みになりましたワーク・ライフ・バランス、まさに、私も常に、恒産なければ恒心なし、仕事がしっかりなければ、これは結婚もできなければ子育てもできないということですから、すべての基本だと思います。そういう意味で、安定した生活をきちんと確保する、そういう意味での雇用政策の重要性はますます重くなってくると思っております。

 その中で、新雇用戦略ということで、就職氷河期に正社員になれなかった若者、これに安定雇用を実現させる、それから、団塊ジュニア世代にとっても働きやすい環境を整える、それから、私自身も団塊世代ですけれども、我々がそろそろ定年退職ということですから、第二の人生をどう生きるか、そのための環境も整えるということで、着実にこれまでも施策を展開してまいりました。

 先ほど申し上げた金融危機に端を発する経済危機に対しては、先般十月三十日、生活対策を取りまとめて、従来の枠を超えるセーフティーネットを張りめぐらせということを委員おっしゃいました、そういう意味で、一つは年長フリーター、これは二十五歳から三十九歳を対象とした求人枠を設ける事業主に対しては奨励金を差し上げる、それから、中小企業の雇用維持のための助成金も創設する、それから、新たな基金を活用して実施する事業の中から、事業によって地域求職者の雇用機会の創出を図るふるさと雇用再生特別交付金、これを創設するということを盛り込んでおりますので、早急にこれらの具体策を実施することによってセーフティーネットを張りめぐらせたいと思っております。

上川委員 ただいま大臣から、大変厳しい見通しの中で、しかし冷静に、しっかりと着実に取り組んでいくというお話がございました。ぜひよろしくお願いしたいし、また同時に、こうした施策が効果を上げていくためには、地方、また関係の諸団体、またお一人お一人の国民の皆さんが総力を挙げて、この施策の効果が上がるように努力をしていかなければいけないというふうに思っております。大臣には、そういう意味で、中心となったリーダーシップをよろしくお願いしたいと存じます。

 そこで、雇用保険の積立金につきまして質問をさせていただきたいんですが、積立金の残高を見ますと、平成十四年度がボトムで、約四千億円。このときの有効求人倍率は〇・五倍でございました。まさに、不況時の失業対策といたしましては、この積立金が大変大きな役割を果たしたのではないかと推察するわけでございます。その後、支給条件が厳しくなったということ、また景気回復もございまして、積立金は増加している状況でございまして、平成十九年度は約四・八兆円という規模になっております。ちなみに、この年の、十九年九月の有効求人倍率は、直近のピークということでありますけれども、一・〇七倍ということでございます。

 雇用保険積立金の残高は、景気の変動などによりまして大きく変化するという性格を持っているものであります。積立金につきましては、いわゆる埋蔵金の一部と見る向きもございますが、私は、今後のさらなる雇用情勢の悪化に備えるためにも、むしろ、セーフティーネットの強化の必要性という意味から、現在の残高で十分であるかどうかということさえ心配しているところでございまして、この点につきましても大臣の御所見をお伺いいたします。

舛添国務大臣 私も上川委員と全く同じ考え方でありまして、四兆一千億の積立金、それから二事業が一兆一千億円あります。それを合わせて六兆円の埋蔵金があるじゃないかという話をする方もおられますけれども、まさにセーフティーネットの最後のとりでがこの雇用保険、失業保険の給付ですから、今、急速に雇用情勢も含めて冒頭局長が申しましたように悪化をしている、そういう中でこれから失業者がどれだけ増大するかわからない、そのときにきちんとこの積立金を確保しているということがまさにセーフティーネットであります。

 それで、さまざまな経済対策をやる、雇用対策をやる、それは先ほど私も申し述べました。そういうことをやりながらやるべきであって、安易にこういう積立金に手をつけるということは、かえってセーフティーネットに穴をあけることになる、そういうふうに思っております。

上川委員 大臣の認識、全く同意をするものでございまして、ぜひ、そうした姿勢の中で、大切なこの積立金がセーフティーネットとしての基盤ということで維持し続け、また有効に活用していくということについて全力で取り組んでいただきたいというふうに思います。

 ただいま、生活対策のお話、そして雇用セーフティーネットの強化対策を進める上でということでございまして、年長フリーターにつきましては百万円というような形で奨励をする、こうした具体的なお話もございましたが、こうした施策を進める上で、全国の公共の職業能力開発施設やハローワーク、これを最大限活用すべきであるというふうに思っております。

 とりわけハローワークにつきましては、本来のマッチングという業務に加えまして、私は、これからハローワークの機能、全国のネットというのが大変大きなものになる、意味のあるものになるというふうに思っているわけでありますが、地域の雇用の実情、先ほど局長の御説明の中にも、今瞬時に取り寄せていらっしゃるということでありますが、これを、リアルタイムで現場の雇用状況につきまして情報収集をしていただき、中央に伝達をする機能、そして政府の方で、それを的確に、またスピード感のある対応につなげていくということが大変大事なものではないかというふうに考えております。

 ただ、雇用・能力開発機構につきましては、残念ながら国民の皆さんから十分に信頼されている状況ではまだございませんので、大胆な改革を実施すべきであるとも思っているところでございます。

 ハローワーク、またこうした職業能力開発施設、また雇用・能力開発機構についての今改革の動きもございまして、これにつきましては、大臣にはぜひ積極的な取り組みをしていただきたい。そして、その機構がしっかりとした信用に足る機構になってこそ初めて、職業訓練のプログラムも、また、同時に今両輪として進んでいるハローワークという機能も最善の効果を果たすものというふうに思っておりますので、これにつきましての大臣の所見とまた御決意とをお聞かせいただきたいと存じます。

舛添国務大臣 今の御質問にお答えする前に、前の私の答弁で四兆一千億と申し上げた、四兆九千億の間違いで、四兆九千億と一兆一千億で答え六兆なんで、私は九千億と言ったつもりでしたのですが、そうではなかったようなので、数字を訂正させていただき、四兆九千億と一兆一千億で六兆。

 それで、今の公共職業能力開発施設やハローワークについてですけれども、こういう状況で皆さんがすがるのはハローワークであると思いますから、おっしゃるように、瞬時にさまざまなリアルタイムの情報を得て、これを雇用政策に生かしたいというように思っております。

 それから、雇用・能力開発機構についてはさまざまな無駄が指摘されたりしておりますので、これを今検討会を開いて、抜本的に改革をするということをやりたいと思います。

 ただ、非常に雇用、経済情勢が悪くなりますと、中小企業の方々が、例えば、自分のところの従業員の再訓練をする、それにお金を余りかけられない、そういうところでさまざまな再訓練施設を各地に持っています。各地の首長さんの方から、何とかこれを残してくれ、中小企業はこれで何とかもっているんだという御要望もたくさん寄せられておりますので、そういう声も聞きながら、改革はしながら、しかし、この職業訓練施設を有効に活用していきたいというふうに思っています。

 いずれにしましても、我々が持つ行政資源というものを最大限に活用して、雇用対策の実を上げたいと思っております。

上川委員 こうした厳しい景気状況また雇用状況になるということをしっかりと据えて、こうした施設が十分に機能を果たし、その成果を上げることができるように、そういう意味では、改革をすると同時に意識改革もしっかりしていただいて、ぜひ国民の皆さんから、よくやった、よくやっている、もっと期待したいという声が上がってくるように、ぜひともよろしくお願いしたいと存じます。

 次に、派遣労働者を取り巻く状況につきましては、これは改善をしなければいけない。また、非正規雇用の状況につきましても、大変厳しい状況にございます。所得の問題、また処遇の問題、また、不安定な状況の中で取り組まれているということでありまして、こうした働く人々の雇用の種類というかタイプということについて、やはり、よりきめ細かく対応をとらなければいけない。そうしたことも今回の厚生労働委員会の中で、いろいろな法案が出ておりますが、大変大事な法案を一つずつ通していかなければいけないと、私自身、覚悟をしているところでございます。

 派遣労働者に関しましては、労働者派遣法の改正案、これをぜひ通し、これから予想される厳しい状況の中で、一日も早くよりよい改善ができるように一歩も二歩も進めていくということにまず踏み出していくということが大切ではないかというふうに思います。

 そういう意味では、各党問題意識等は共有していると存じておりまして、意見の違い等はあるかと思いますが、決してその溝を埋められないものではないというふうに思っておりますので、この現下の厳しい状況の中で、ぎりぎりのところで折り合うことができるように前向きな前進を図らせていただきたいというふうに私自身思っておりますが、大臣の御決意、一言聞かせていただきたいと存じます。

舛添国務大臣 先般、私がもう日雇い派遣は原則禁止だということを申し上げましたのは、やはり、労働者派遣の実態を見ていますと、日雇い派遣など問題のある事業形態が横行している。それから、派遣労働者の待遇決定が不透明であったり、本当に低い待遇が固定化されてしまっている。さらにまた、偽装請負などという違法な派遣が増加している。さまざまな問題が噴出しております。

 そこで、今委員が御指摘のように、労働者派遣法の改正案、日雇い派遣の原則禁止などの規制強化、それから派遣労働者の常用化や待遇の改善をやる。先ほども申し上げましたが、やはり私は、常用雇用というのが普通であるべきであるというように思います。もちろん、さまざまな働き方をしたいということで、個人の価値観も自由化していますから強制することはできませんけれども、そういう意味では常用化を図っていきたい。それから、違法な派遣に対して迅速に、かつ的確に対処できるようにしたい。こういう内容を盛り込みました労働者派遣法の改正案でございますので、今国会で御審議いただいて、できる限り早く成立をお願いしたいというふうに思っております。そして、こういう形での法律がきちんとできることは、今の雇用情勢にとっても大変プラスになると考えております。

上川委員 仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスの議論の折にも、多様な働き方をむしろこれから推進していくということが、とりわけ子育て中の女性の働き方と子育ての両立を図る上で大変大事である。そうした中で、憲章と行動指針、そしてそれに伴う方策ということで推進しているところでありますが、やはり安定したところで働き続けることができるように、時間的には柔軟に、例えば短時間の正社員の制度ということについては大変御期待が大きいところでございますし、あわせて、今のような状況を考えてみましても、そうした働き方を常用化する、また正社員化するということは大変大きな課題であるというふうに思いますし、また同時に、実現していかなければいけないというふうに思っております。

 日雇いについては、先回の委員会で大臣が原則禁止という明確な意思をお示しになり、また、ただいまの御発言の中でも、この問題については、雇用者と同時に、働く側の立場に立った施策ということについて取り組みの御決意を新たにしていただいたということでございますので、どうぞ頑張っていただきたいというふうに存じます。

 私は、今後予想される経済や雇用情勢の大変厳しい状況によって最も心配しているのは、実は少子化に対しての悪い影響が及ぶのではないかということでございます。

 先ほど、若い世代の、特に年長フリーター、何歳というふうに申し上げるのもあれで、三十五とか三十九歳、四十代の、これは団塊世代のジュニアの大変大きな世代の、これからの社会、そして今の社会を担っていらっしゃる方たちでございまして、こうした皆さんが安定して働き続け、しかも、所得的にもしっかりと、家族を持ち、子供を育てることができるようにしていくということは、少子化対策の大変基本のところでございます。

 先ほど御指摘させていただきました仕事と生活の調和の憲章と行動指針、これは、働き方の改革をしっかりと促していく、そして同時に、多様な働き方に応じた子育て支援策を車の両輪として進めるという基本的な認識をした上で、それにのっとって社会を変えていこうということでございました。

 五つの安心プランで、団塊のジュニアが四十代を迎えるまであと数年であるという今の日本の国の社会状況ということを見据えた上で、この数年を大変大事な集中期間として据えようということで、ここを応援しないと、もうその先、応援してほしいと言っている方たちの声にこたえることができないんじゃないか、こういう思いで集中期間を設定していたところでございます。

 今回、生活対策の中に、具体的な子育て支援策も織り込んでいただくことができました。そうした意味で、ワーク・ライフ・バランスの実現、さらには少子化対策の実施、こうしたことにつきましては、経済情勢がいかに悪くなろうとも、ここにつきましてはむしろ未来への投資という意味でも、力をさらに倍加していかなければいけない課題ではないかというふうに思います。

 そういう意味で、最後でございますが、これからのワーク・ライフ・バランスの実現、また少子化対策の実施は経済情勢のいかんにかかわらず未来投資として進めるということについての大臣の御決意と、また、具体的な対策等のところで皆さんにぜひ理解していただきたいということがあればお願いを申し上げまして、私の質問としてはこれで最後とさせていただきます。

舛添国務大臣 少子化対策、ワーク・ライフ・バランス、これは今委員おっしゃいましたように、大変大事なときに上川委員は大変御苦労なさいまして、いわゆるワーク・ライフ・バランス、仕事と生活の調和、それと子育て支援サービス基盤の充実、これが車の両輪で、どういう情勢であれ、これはきちんとやらないといけないということでございます。

 例えば、子育て支援サービスについては、妊婦健診を十四回まで全部無料化するという方針を立てました。さらに、出産一時金についても、これは一々国民の懐から一時出すのではなくて、直接保険者から医療機関に支払うような仕組みを今考えつつあります。

 それとともに、やはりワーク・ライフ・バランス、これは働き方の革命をやらないといけないというふうに思っております。したがいまして、長時間労働を抑制しよう、この意味で労働基準法の見直しを進めたいというふうに思っていますので、ぜひ今国会においても御審議いただければというふうに思っています。

 それから、今、お医者さんの不足に伴ういろいろな問題が出てきています、特に産科、小児科。これは女性の医師が非常に多うございます。ですから、院内保育所を設けたりいろいろやっていますけれども、やはり短時間勤務制度というのを入れることが、働きながら子育てできる。女医さんであっても一人の人間で一人の家庭人でありますから、そういうことで、育児・介護休業制度の見直しの検討もする。さらに、待機児童ゼロ作戦の推進で保育サービスの充実をする。

 こういうことに取り組んでおりますので、今後とも、上川大臣が先鞭をつけられましたこの指針をさらに進めていきたいと思っております。

上川委員 少子化の一丁目一番地、これは産科医療ということでございますが、この面につきましては、今、女性の医師の問題、産科のお医者さんの特に若い世代は女性の医師の比率が大変高くなっているということで、四月に策定した女性の参画加速プログラムにおきましても、戦略的な重点分野として三つの中の一つ、科学者そしてお医者さんと公務員ということで特に取り上げておりますが、その中でも女性の医師ということについては、働き方のことも含めまして、子育ての中で両立することができるように、さらに今の産科の医療の中で現役として頑張り続けることができるようにというのは、医学教育の皆さんから大変大きな御期待をされながら、大変女性の皆さんも意欲を持って勉強されてお医者さんになられているということでありますので、その職業としての社会的貢献もしっかり果たしていただくためにも大変大きな財産であるというふうに思っております。

 こうしたことは、中央政府のみならず、地域の自治体、さらに各団体、またお一人お一人の専門的なお立場の皆さんが総力を挙げてこの問題に取り組むということで、この二つの柱であります、仕事と生活の調和と、そしてさまざまな働き方に応じた子育て支援のバランスということについては、日本初のモデルになるかもしれないというぐらい期待されているところでございます。

 ぜひ、大臣におかれましては、今後ともさらなる精力的な取り組みをよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、清水鴻一郎君。

清水(鴻)委員 自由民主党の清水鴻一郎でございます。

 きょうは、お時間を賜りまして、舛添厚生労働大臣に質問させていただきたいと思います。

 大臣におかれましては、大臣になられてから大変いろいろな課題が山積して、それを本当に的確に処理を一生懸命されているということに対しまして大変敬意を表しますし、また、その中で未来を見据えた政策を自分の言葉でしっかりと語っていただいておるということに対しましても敬意を表しているところでございます。そういう大臣に対しまして、きょうは、主に大きな観点から質問させていただきたいと思います。

 実はしかし、昨日たまたま、これは本当のメールなんですけれども、私がつくったメールじゃなくて、メールが来まして、そのメールをちょっと読ませていただきます。これは本当にきのう来て、何だったらその実物をお見せしてもよろしいですけれども。

 これは、五カ月のお子様を持っておられる東京に在住の二十代の女性からでございます。その方にも了解を得まして、短い文章でありますので読ませていただいて、ちょっと大臣にお聞きいただきたいと思います。

 おはようございます。最近、給付金のことが話題になっていますね。でも、私は給付金よりは妊婦たらい回し問題とかを解決してほしいのが女性の願いなのではと思います。私たちには生命にかかわる問題です。私自身に起こっていたらと考えるときに、そして今、妊娠中の女性はどんな思いで出産に臨まれるのだろうかと考えると、何としても早急に解決していただきたいと思います。そして、私は、妊婦健診も全部無料にしてほしかったです。保険外適用はつらかったです。血液検査とかすると本当に大変でした。待ち時間も長かったし。五カ月の子供は外出するとぐずるし今は本当に困っています。子育ても思っていたよりずっと大変です。

 大臣、こういうメールが来ました。大臣、このメールに対して率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。

舛添国務大臣 本当にそういう方の声にきちんとおこたえしないといけないというふうに思っています。

 例えば、一刻も早く妊婦健診無料化をやりたかったんですが、なかなかここまで持ってくるのに、細かい舞台裏は申しませんけれども、大変な苦労をいたしました。しかし、何とか皆さんの御支援もいただいて、十四回まで。ですから、これは一刻も早く実現して、安心して健診できる。それで、結局、十四回健診することによって途中で異常が見つかるというようなことがあれば早く手当てができる。これだけ少子化対策を言われて、それが大変だと言っておきながら、なかなかそこにいかなかった。しかし、これはきちんとやりたい。

 それから、出産一時金の問題についても同じです。

 それから、妊婦のたらい回しの事件がまさに東京で起こった。杏林大、それから墨東病院。これはもうさまざまな手段を講じて改善していきたいと思っていますが、例えば、お医者さんがオペをやりながら片手間で搬送先を探すというようなことがないように、医療コーディネーター、そういうことに関しての補助金も予算措置をしております。

 やはり、これは国だけではなくて地方自治体、そして地域の医師会、こういう連携も必要かと思いますので、いずれにしましても、そういう皆さん方の声におこたえして、安心して妊娠し、出産し、子育てができる、そういう体制を構築するために、全力を挙げて、結果で示したいというふうに思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 これは、その詳細をちょっと申し上げますと、十月四日午後六時五十分ごろ、都内在住の三十六歳の妊婦の方が、頭痛などの体調不良に陥ったために、夫が呼んだ救急車でかかりつけの病院に運ばれた。同病院の医師は脳内出血の疑いがあると診断して、午後七時ごろから緊急手術ができる病院を探した。

 だが、都立墨東病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、東京慈恵会医科大学附属病院、日本赤十字社医療センター、日本大学医学部附属板橋病院、慶応義塾大学病院、東京慈恵会医科大学附属青戸病院、東京大学病院と、名立たる八つの大病院から、当直医が患者の対応中である、あるいは空きベッドがないなどの理由で断られました。

 そして、医師が改めて都立墨東病院に連絡をしたところ、受け入れ可能ということになった。それが八時十八分、実に時間は一時間二十分近くもかかってしまいました。

 病院で妊婦は帝王切開で出産して、脳の手術も受けました。しかし、三日後に帰らぬ人になられました。

 この八病院というのは、ほとんどがハイリスクの出産に対応する地域周産期医療センター、そしてまた墨東病院の方は、その上といいますか、総合周産期母子医療センターということでございます。

 そういう状況の中で、日本の中で、慶応大学、東京大学を含めて、こういうものがあるのに、こういうことが起こった。これは一体どういうことなんでしょう。これは率直に言って、東京のど真ん中、そしてここでこういうことが起こるというのは、これを医療崩壊と言わずして、これはほかに言葉がないんじゃないかと思うんですけれども、大臣いかがですか。

舛添国務大臣 私も事態を深刻に見ておりまして、墨東病院にも江戸川の医師会にも足を運びました。また、都と協力して、受け入れを拒否した側の病院の状況がどうか、徹底的な調査をするとともに、各地にある総合周産期母子センター、それから地域の周産期センター、こういうところの実態について、十月二十七日付で調査そして改善策を求める通知を発出したところであります。

 そして、例えば墨東病院を見ますと、NICU、これが十五ユニットありましたけれども、三ユニット使われていませんでした。なぜか。それは、それをケアする看護師が足りない。やはり医師不足、看護師不足、こういうことにもきちんと対応しないといけないので、NICUがない、そしてお医者さんも看護師さんも足りない、そしてお母さんの方のベッドもあいていないというようなことを理由として拒否するということになりますから、こういうことすべてを今精力的に改善していこうと。

 今、周産期の医療の専門の方と、救急医療の専門の方とを私のもとの検討会に集めていただいて、十二月までを目途に具体的な提言をしようということとともに、経済産業省にも協力を求めて、情報の伝達システム、これを新技術を使ってさらに精緻なものにしていくということをやり、今のような状況が二度と起こらないように努力をしてまいりたいと思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 確かに、おっしゃるように、墨東病院の場合、この日はレジデント一人の方が当直ということで、これはあらかじめ土日はそういう状態であるということも通告されている、そういう状況で連絡があったと。今八つの病院を挙げましたけれども、そのうちの三つの病院は受け入れ可ということになっていたわけですね、少なくとも端末は受け入れ可と。

 だから、レジデント一人の方が、より受け入れが可というところでちゃんとやってもらうのが当然だということでそこに依頼されようとするのは、これはある意味で当然だと思うんですよ。でなければ、受け入れ可というところがほかにあったにもかかわらず、レジデント一人のところでそれを受け取った、そして例えば処置が、結果として不幸な結果が起こった場合、受け入れ可の病院がほかに三つもあった、にもかかわらず受け入れて、逆にそれはおかしいんじゃないかと、前の県立大野病院の場合と同じように結果責任が問われてしまう。

 だから、ある意味では、受け入れを可としていたところが可としていたにもかかわらず断ったというところを、やはりこれはしっかりと検証しないと、これはまた起こることですよね。

 まして、慶応大学病院なんかは、下痢と嘔吐だから感染症の可能性がある、感染症の可能性があるから、そういう感染症の部屋がないというふうに言っているんですよね。下痢と嘔吐で感染症で断ったら、救急なんてあり得ないでしょう。下痢と嘔吐なんて、非常に、いつでも起こる、それで感染症の可能性があるからと断ったら、救急医療なんて成り立たないと思うんですけれども。細かいことは申し上げませんけれども、そういうことも含めてしっかり検証しないとこれはだめだ。

 しかし、きょうは細かいことは余り言いたくないんですけれども、あと、やはり大学病院も、しかしながら、残念ながらマンパワーが不足していることは、これは新しい臨床研修医制度ができてから過半数が大学に残らない状況、前は八〇%ぐらいが大学に残るという状況でした。しかし、残念ながら半分以下になる、マンパワーも不足する。そして、大学病院の関連病院にも人を出す。大学病院もいわばぎりぎりの状態で、看板はでかいけれども中は結構、人材的には、マンパワーは非常にお粗末な状況でやっていることはこれは事実なんですよね。だから、こういうときに、大学という大きな看板があるけれども、いわば断らざるを得なかったということですよ。

 私は、昨年三月に予算委員会の分科会で、医師不足じゃないか、医師をやはり積極的にふやすべきじゃないかということも質問しました。当時の医政局長は、そういう必要はない、今そこまで必要はないというふうに、昨年の三月ですよ、答えられているんですよ。こういうことを含めてやはり対応が、昨年の三月にそういう答弁をされていること、これは議事録に載っていますから。今の医政局長じゃありませんけれどもね、当時の。だから、その辺のところをしっかりと検証しながらやらないといけない。

 あと大きな問題としては、いろいろなことが起こっている。医療崩壊あるいは介護の人材がない。しかしながら、これは、すべてやはり、予算、お金がそこに費やされない。ちょうど大臣が書いているわけです。今月号、中央公論十二月号、「老後を壊す政治 俺の言うとおりにしないと、自民党は終わりだ! 舛添要一」と、非常に迫力のある題でございます。これを見た限り、私もすぐ買わないとと思って買ったわけです。

 それで、ちょっと参考のために読ませてもらいます。

  もはや、低負担ではもたない!

  長い間この国は、「低負担」でありながら奇跡的に「高福祉」を実現した国だった。国民皆保険制度を実現し、ほんの少しの自己負担で誰でも病院に通うことができ、世界一の長寿を誇っていたことを考えれば明らかだ。

  ところが今、日本は本格的な高齢社会を迎える途上で財源不足に陥り、低負担、低福祉の国になりつつある。東京都内の妊婦さんの受け入れ拒否問題をはじめとする医療崩壊、

これは「医療崩壊」と書かれているんですね。

 見直しも迫られているが、高齢者の利用する療養病床の削減を打ち出さざるをえない状況にあることなどはその表れである。かつてのような高福祉を願うなら、日本は高負担を選択せざるをえない。その方向転換を図るべき時期にきている。だからこそ、私は、九月末に長寿医療制度の見直しを提言したのだ。

そこからずっとあるわけですけれども、それから、さらに文章後半の方です。

  OECD諸国で最下位に近いような低負担で、高水準の医療そして長寿命を実現したのが日本だ。しかし、繰り返しになるが、高齢社会の到来で「奇跡」の継続は困難になっている。またしても起こってしまった妊婦さんの「たらい回し事故」は、“安かろう・良かろう”だったわが国の医療が、“安かろう・悪かろう”になりつつある象徴的な出来事といえる。

  こうした現状に鑑み、麻生総理は“中負担・中福祉”の国づくりを提言されている。個人的には、思い切って“高負担・高福祉”に座標軸を据えるぐらいの高い目標が必要なのではないかと思っているが、いずれにしても新しい時代に見合った社会保障を築き、維持していくためには、負担増は避けられない。

  今必要なのは、そのことも含めた将来像を指し示す、本当の意味でのグランドデザインの作成である。

云々とあるわけです。

 これを大臣が書かれて、今まさに、先ほど女性のメールにもありましたけれども、景気回復あるいは低所得対策で給付金も大事なのかもしれません。しかし、麻生内閣の中におられて厚生労働大臣を担当されていて、今現在、本当にお金を使うべきところをどんなふうにお考えですか。

舛添国務大臣 私は、社会保障、医療、労働、こういう分野を担当しておりますから、何度も申し上げているように、本当に二千二百億円の削減というのは限界に来ている。それで、ことしも相当そういうことを主張してまいりました。骨太の方針の中に社会保障の問題、医師不足については、予算編成過程で安定した財源が得ることができればそれに充てるというところを記述するところまでは行けました。

 やはり、命を守っていく、労働を含めて生活を守っていく。そして、やはり国民皆保険というのはしっかり守っていきたいというふうに思っておりますので、限られた予算でありますけれども、そういうところに重点的に配分されるということが厚生労働大臣としては望ましいというふうに思います。

 それから、先ほどちょっとおっしゃったことについてつけ加えますと、医師不足については大きく方針転換をいたしました。そして、来年度から、六百九十三人、医師の養成数をふやすということにいたしました。それから、研修制度については、文部科学省とともに今検討委員会を立ち上げ、例えば、二年を一年に短縮するというようなことも含めての検討に入っているところでございます。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 今は臨床研修制度のことを触れられましたので、その点ちょっと申し上げたいんですけれども、今、特別コースをつくられて、例えば外科を集中してやるとか産科を集中してやるとか、そういうコースもつくられました。それは結構いいんですけれども、私は中途半端だと思うんですよ。

 というのは、今の研修医制度の一つの欠点は、研修医のときにだれもその養成に対して責任を持っていない。つまり、どこの科に属しているわけでもなくて、二年間、何科の先生でもなくて、ある程度研修を全般的にする。二年間ですよ。医学部六年間ですよね。卒業はどんなに早くても二十四ですよ。浪人すれば二十五、二十六ですよ。そこから二年間研修して、ようやくその科に入局するのが二十六とか七とか八になるわけです。

 私は脳外科ですけれども、今、私は一応カウント上は脳外科医になっていると思います。だけれども、私が今、脳外科のマイクロサージェリーをやれるか。やれるかもしれませんけれども、余りいい手術ができないかもしれない。カウントは脳外科医にカウントされている。

 医師不足の中で今、産科医や外科医はもう二〇%近く減っていますよ、十数%ですか、減っています。上がっている科もありますけれども。外科医や産科医は、あれは登録で、恐らく、産科医、脳外科医とか外科医とか専門医をとっているとか、そういうことでカウントされているんだと思いますけれども、実際に、例えば産科でも、お産を扱っている方とか、あるいは外科でも、今現在、外科医として、サージャンとして実働している人、そういうものをカウントすればもっと少なくなると思うんですよ。外科も、十年たったら、日本ではちゃんとした外科医が外科の手術はできないんじゃないかというふうに言われています。

 やはり、この研修医制度、もし特別コースというものを選択される方には、その科に行こうとしてその科を集中的にやるわけですから、もう既に卒業時に、入局、つまり何科というところに入って、そこの担当の教授なりその関連の方と相談しながら、それに必要な研修をしっかりやる。そうすれば、二年たてばそこそこその科のお医者さんとして働ける。つまり、一人前になる年度も早い。それで、外科医はどうしても実働年齢は短いですから、その分少しでもちゃんとしたお医者さんとして働ける、そのことも含めて臨床研修制度を一度よく検討していただきたいと思います。

 それからちょっと本題に戻りますけれども、これは給付金や何かよりも、実は大臣、総裁選挙のさなかでありますけれども、九月の十一日に私は、舛添大臣は、麻生さんが恐らく総理になるだろうということであらかじめ麻生大臣と相談したというのを中央公論に書いていますけれども、私の立場としては、一応五人の方に、だれがなるかまだその時点ではわからないというふうに一応しまして、全員の方に私は実は政策提言をさせていただいたんですよ。

 その中でまず、いわゆる社会保障費自然増二千二百億を、やはりこれは国民への安心、安全のメッセージとして、数字にはこだわらない。つまり、額を決めて削減するのはもう無理がある。もちろん合理化は必要です。大事だ。もし無駄があればカットしていって、結果として二千二百億になるんだったら、それはそれでいいんですよ。だけれども、額を決めて、命にかかわるような社会保障、医療などの費用をそこまでカットしなきゃいけないというその政策目標はやはりおかしいんじゃないか。やはり厚生労働大臣として二千二百億はちゃんと撤廃して、そのことが国民への一つの安心のメッセージですよ。

 さっきの妊娠を終えられたばかりの女性、今現在妊娠されている方を含めて、そういうものはもうしないんだ、二千二百億は撤廃して、むしろ、二兆も給付金を出せるんだったら二千二百億は今すぐ撤廃して、少なくともそういうことをやるべきだということを大臣は閣議でおっしゃって、麻生さんを説得するぐらいのことは担当大臣としてやはりやられるべきじゃないかと思うんですけれども、どうですか。

舛添国務大臣 その可能性も含めて、財源を含めてきちんと議論をしたいと思いますけれども、消費税を含む税制の抜本改革の全体像を、中期プログラムという形で年末までに策定する。そういう過程で、そして予算編成過程で必要なことは申し上げ、そしてこの二千二百億の取り扱いについても、今の委員の御意見も参考にしながら、きちんとした議論をやっていきたいと思っております。

清水(鴻)委員 ありがとうございます。

 これは、自民党の厚生労働部会でももう以前に決議して、これを撤廃したいと。はっきり言って、自民党でも大半の意見なんですよ。一部の財政再建信者みたいな方々だけが、公共事業とこのことは財政再建のシンボルだと。そのシンボルだからいけないと言っているのに、シンボルだと。こんなことでいいのかなと本当にそう思いますので、中央公論のこれを見たら、大臣も恐らく本当はそう思っているんじゃないですか。

 今のあれは、少なくとも、給付金も大事だったかもしれないけれども、それよりもっとこのことをやることの方が、額として今二千二百億ですから、差し当たって。例えば三年間だけでも撤廃して、一回ちゃんと社会保障を立て直そうと。三年間、景気対策と言っているわけですから、それをやはりしっかりやっていただくように。

 これは舛添大臣も、ある意味では財源が一番大事だと書かれているんですよ。この文章の中にも、ともかく金がなかったら、もうそんな何とかもへったくれもないと大臣も書かれているんですよ、この文章の中に、高齢者医療にも。財源がなかったらこれはどうしようもないじゃないかと。やはり金だ、財源をちゃんと確保しなきゃとおっしゃっているんですよ、そこはちょっと読まなかったですけれども。

 それで、私が申し上げた中で、その二千二百億の撤廃。それから、やはりこれは今、日本の医療費、GDPの八%ですよね。これは先進七カ国の平均は一一・五%ですよ。GDPだけで語るものではないかもしれません、比率で、これはアメリカも入っていますから。しかし、少なくともドイツやフランス。

 それで、日本は、大臣もおっしゃるように最長寿国、一番いい医療を実現してきた。これはなぜできたかというと、やはり先ほどからあるように、お医者さんあるいは医療関係者の方々の非常な努力があったわけですよ。当直明けで手術をする、診療する、これは当たり前だ、これが医師の仕事だ、あるいは看護師さんの仕事だということでみんなやってきたわけですよ。しかし、これはもう限界だということですから、ちゃんと目標を設けて、八%を三年間で、例えば医療費をGDP比一〇%ぐらいまではきちっと政策目標として掲げるぐらいのことをやっていただきたい。私、実はこれは政策提言に書いているんですけれども、そういうきちっとしたプログラムを組んでいただけませんか。いかがですか。

舛添国務大臣 一つの政策を実現するときに、数値目標というのは極めて有効な手段だと思います。まさに二千二百億円というのは数値目標であって、財政の立て直しという将来世代に負担をツケ回ししないということでそういう数値目標があります。ただ、やはりどうしても、給付と負担のバランスを考えないといけないです。そして、医療の分野、社会保障の分野でも、やはり効率化したり無駄の排除ということもやらないといけません。

 私は、先ほどの妊婦たらい回しの件などについてもそうですが、具体的な施策を積み上げていって、それで具体的にどれだけの金額がかかるということできちんとやっていく。いたずらに国民の負担を、例えば消費税という形で求めるというのもまた一つ問題がありますから、委員の問題意識はきっちり受けとめた上で、さらなる社会保障政策の充実ということを頑張っていきたいと思っております。

清水(鴻)委員 おっしゃるとおりだと思います。やはりそれは確かに、給付があれば、できるだけいいサービスをしようと思えば財源の確保も大事な問題です。

 それは全くおっしゃるとおりで、財源についても、今の国民負担率は四〇%ぐらいですね。それを、少なくともヨーロッパの一番最下位並みの、ヨーロッパ並みの医療費や社会保障費を確保しようというわけですから、やはり段階的に、どういう形で取るかこれはいろいろ論議はあると思いますけれども、五〇%程度にまでは何らかの形でふやしていく、そういうプログラムも必要だということは私もこの政策提言の中にも書かせていただいて、これはお届けしていると思うんですけれども、それはそうなんです。だから、それはしっかりと議論していく。

 後期高齢者の問題は、大臣がここに書かれていることと、私実は、政策提言したことは、大臣が私案を出される前に政策提言したんですけれども、本当に余りにもぴったり一致していてびっくりしたぐらいなんですよ。まさに、都道府県単位でしっかりやらなきゃいけないというようなこととか。

 そして、今の七十五歳という年齢で一つの保険にすることは、やはり感情的にも、そして人間のライフサイクルでいってもこれはおかしい。だから、一つの国民健康保険にできれば一体化した中で、ただ負担はやはり、例えば七十五歳でどうしても複合的な病気を持ちやすい人には負担は一割にする、あるいは、六十五歳から七十四歳の方には負担は二割にするとか、そういうライフサイクルに合わせた、例えば、前期高齢者という言葉は悪いですけれども、七十歳から七十四歳なんて根拠のないことはやめて、六十五歳なら、現役をのくというところから、七十四歳まではある意味での一つのグループとしてとらえるとか、やはりしっかりした論理的な根拠を持った上で説得力のある政策を進めていただきたいと思います。

 先ほどありましたけれども、介護療養病床もやむを得ないで出てきたということも大臣ここに書かれているんですね。だから、介護療養病床についても、これはまた別の機会に論議したいと思いますけれども、しっかりとした受け皿をつくらないと、これは後期高齢者医療制度どころじゃなくて、二十三年度末、大変なことになると思います。これはまたいずれ論議させていただきたいと思います。

 それから、無保険の問題というのは、無保険では本当はなくて、資格証明ですから、これは払えば戻ってくるので、無保険、無保険と言うのもちょっとおかしいんですけれども、しかし、やはり子供さんに罪はないということもありますし、そして子供さんに、高齢者に対して一割負担とかいろいろ考えるんですから、できれば本当は中学と言いたいんですけれども、少なくとも小学校ぐらいまでのお子さんには、病気をしたときくらいは自己負担ゼロの世界をつくっていただきたいな。それが本当の安心、安全じゃないかなと思います。

 これは答弁は要りませんけれども、どうかその辺のところは大臣、本当の少子化対策はそこにあると思うんです。セーフティーネットだと思うんですよ。児童手当を配るとか給付金を配るということ、余裕があればそれはいいですよ。だけれども、それよりも、もしものときのセーフティーネットは国がしっかりやっていく、それが行政の仕事だと私は思うので、どうかよろしくお願いしたいと思います。ぜひ大臣には、二千二百億やその財源を確保しながら、本当の安全、安心はどこにあるんだ、国のやるべき仕事はどうなんだということを見据えてやっていただきたいということを要望しておきます。

 ちょっと、先ほど上川委員からもありましたけれども、いわゆる独立行政法人雇用・能力開発機構というものがあります。いろいろ論議のあるところでありますけれども、例えば私の地元でありますが、長岡京市に京都職業能力開発促進センターというのがございます。そこでいろいろ職業訓練をやっていただいていて、介護サービス科というのは、その地域にとっては大変大事な介護のマンパワーをつくる、そういうものなんですよ。

 しかし、独立行政法人のあり方というのはいろいろな論議のあるところでありますけれども、例えば、この間発表されました社会保障国民会議の最終報告の中にも、「能力開発施策体制の強化」「職業能力訓練校等のコース・カリキュラムを介護などの今後一層成長が見込まれる分野のウェイトを高めるよう見直すとともに、その内容も就労時に実際に求められる能力の開発につながるものとするなど、就労ニーズに即した能力開発の実現に向け、至急かつ継続的に取り組むべきである。」こういう答申も出されているんですね。

 その中で、実は地元で、まずその介護サービス科だけはなくすんだということで、申し込みに行った人が、今度からない、来年の春からないと。これはその地域にとっては、就職率八割以上の、多くを誇っていた非常に大事な介護サービス科なんですよ。それを急になくするという、これはやはり行政としては、それだったら、地元に対しても十分な代替のものがあるとかいうことも含めて。

 それから、国がやるべきサービスは、民間があるからいいじゃないか、それだけではだめだと思うんですよ。特に、離職された方々が再就職のためにやるところですよ。学費だって安くなければいけないし、民間に任すということは、民間というのはやはり利益を上げるためにやる、ある意味では。能率的にやっていただけるというところはあるかもしれないけれども、では、空き部屋で、空き時間にやりましょうというのじゃ、それはその人たちにとって、通う人にとっては変な時間に、変な教室でやられるということになるんですから、サービスの低下にもつながる。その辺も含めて……

田村委員長 清水君、申し合わせの時間が過ぎておりますので、手短にお願いします。

清水(鴻)委員 そうですか。

 では、地元のことでなんですけれども、このことについて今、現状どうなっているか、そのことだけちょっと答弁をお願いします。よろしくお願いします。

草野政府参考人 お話がございます雇用・能力開発機構が実施する離職者訓練でございますけれども、これにつきましては、昨年の十二月につくられました独立行政法人整理合理化計画におきまして、民間で実施していない訓練に特化するというようなこととされております。

 こうした中で、特に介護サービス分野の訓練につきましては、都道府県や民間の数多くの教育訓練機関において実施されているという実態もございまして、基本的には、雇用・能力開発機構としては、施設内で行う介護サービス科を本年度末で終了するということとしたことでございます。

 御指摘の京都センターの近隣にも、介護分野の訓練を実施している民間教育訓練機関などが存在しておりまして、同センターからも、本年度において二コース、合計四十人定員の訓練を二機関に委託して実施しているところでございます。

 今後、介護サービス分野の訓練の重要性ということは十分認識しておるところでございますが、こうした民間分野の教育訓練の実態なども含めまして地域からよくお話を聞いて、施策の後退がないように適切な対処をしていきたいというふうに思っております。

清水(鴻)委員 どうかしっかりと、地元の要望も含めて聞いていただいた、実情に沿った処理をお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

田村委員長 次に、長崎幸太郎君。

長崎委員 自由民主党の長崎幸太郎です。

 舛添大臣におかれましては、私、大学の授業を受けたとき以来の質問で、大変緊張しておりますが、よろしくお願いいたします。

 まず最初に、先ほど清水委員も触れられました雇用関係の、雇用・能力開発機構に関する問題を先に質問させていただきたいと思います。

 その中で、特に雇用促進住宅、これについては、累次の閣議決定で千五百十七宿舎のうち七百八十四がもう既に廃止決定済み。そしてそれは、二十三年度の中期目標最終年度までに住宅の約半分を前倒しして廃止決定する、廃止に当たっては、最大収益を確保する観点からその多くを更地にして売却する、こういうような方針。しかも、立ち退きに当たっては特別な追加的受益を入居者には得させない、こういう方針が決まっていると承知しております。大変厳しい状態、入居者にとってはきつい状態かなと思っています。

 しかも、その雇用促進住宅の入居者の属性ですが、これはそもそも職業の安定を図るために宿舎の確保が必要な人を入れているんです。かつ、そこは年収二百万円未満の方が一八%、三百万円未満をとっても四四%の方がいる。六十歳以上の高齢者をとっても一八%がいる。そしてまた、常時雇用以外の者、これが三割近いという中で、基本的には裕福ではない方も多く存在し、かつ高齢者も多くいる。そういう人たちに対して、要は出ていけという話に今現在なっているわけです。

 ことしの九月にその処理スケジュール自体は見直して、住宅の処理スケジュールに影響を及ぼさない範囲内で、低所得、高齢など転居先の確保に困難を伴う特段の事情を配慮するんだ、こういうふうに若干スケジュールを延ばしているような決定もされたと承知しておりますが、いずれにしても、ここはスケジュールの見直しだけにとどまっている対応になっています。

 では、この追い出された、あるいは追い出されるべき人がどこに行くんだ、必ずしも所得が高くない人たちへ、では、どこに行ってくださいと。

 一つ考えられるのは市営住宅とか公営住宅なんでしょうけれども、これもなかなか実は難しくて、私の地元でいうと富士吉田市の富士吉田住宅、これは雇用促進住宅、現在入居者が四十七戸いますけれども、同じ市の市営住宅の空き戸数はそれよりも下回っている状態です。あるいは河口湖宿舎というのもあります。これは廃止決定はまだされていませんけれども、現状五十二戸が入居する中で、町営住宅というのは今空き住宅数が一戸しかない。

 しかも、では、これを町に買ってくれという話をもうされているようですけれども、自治体に聞いてみますと、財政上の制約、あるいは必ずしも築年数がそんなに新しいわけではないので今後管理費がかさんでくる、こういうことを踏まえると、購入するのもちょっと二の足を踏んでしまう状態になっております。

 大臣は、先ほど上川先生との議論の中でも、急速に雇用情勢は悪化している、こういうお話をされておられました。こういう状態の中で、特に低所得者あるいは高齢者、こういう方々に対して、新しい住宅を見つけてくれと言うのは、私は大変酷だと思います。しかも、それは収益の最大化を実現する観点からやるんだということですから、これはどうもいかにも冷たいんじゃないか、この厳しい状態の中で余りにも冷たい仕打ちなんじゃないか、私はそう思わざるを得ません。

 そこで、総理は日本経済全治三年ということもおっしゃっていますし、この三年間の中で景気後退はこれから本格化してくる。ですから、今後景気回復をして、雇用情勢がある程度安定して所得もふえていくような状態になるまでの間は、入居者に不必要な不安を与えないためにも、例えばこの売却方針を一時凍結してはどうか、あるいは平成十五年五月、このときに厚労省の検討会の報告があったと承知していますが、今後三十年間をめどに廃止をするんだ、ある程度長いスパンをとって、状況を見ながらゆっくりやるんだ、こういう方針に戻るべきじゃないかなと思うんですが、大臣の見解をお伺いいたします。

舛添国務大臣 雇用情勢の悪化とともに、当然住宅の問題も出てきます。今委員御指摘の雇用促進住宅、これはかつての非常に再就職が難しいときの住居の確保ということで、目的は達したということで、御承知のように、十九年六月の規制改革推進のための三カ年計画で、平成三十三年度までにすべての処理を、つまり譲渡ないし廃止をしろ、さらに、しかも、昨年十二月の独立行政法人整理合理化計画で売却の加速化と。片一方でこちらの合理化計画は進めていかないといけない、しかし、片一方で今の雇用の問題や住居の確保の問題がありますから、今当面は、本当に困った方を追い出すということをしないで猶予するというところまではいっております。

 あと、今、河口湖や富士吉田市の例を出されましたけれども、なかなか、公営住宅、すんなり行ければいいですけれども、これに対しても自治体に働きかけをやっております。ただ、今おっしゃったように、自治体の方も財源難で、では買い取るとか新たな住宅をつくるというのはなかなかいけないんで、基本的には、この整理合理化計画はきちんとやるといった上で、今の委員の御意見も配慮しながら、どういう形で、雇用情勢に伴って、政府全体としてこういう住宅政策についてどうするのか、少し検討を加えてみたいと思います。

長崎委員 ありがとうございます。

 私としては、舛添大臣の温かい政治決断というものをぜひとも期待いたしますが、少なくとも、入居者を転居させるに当たっては、新しい住宅をぜひとも責任を持ってあっせんする、あるいは、自治体に売却するにしても、今の出している収益最大化という観点からの条件設定は厳し過ぎる、これじゃ取り入れない。そういう意味で、少し社会政策的な観点からその売却条件というものを考慮していただいて、自治体がスムーズに引き受けられるような条件設定というものを一部修正するべきだと私は考えております。

 ぜひともそういう丁寧な行政を期待したいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 今おっしゃったことについても政府全体で何らかの検討を加え、善処できるか、これは自治体との協力もありますので、検討を加えてみたいと思います。

長崎委員 ありがとうございました。

 次の問題に移りたいと思います。

 先般、年金の標準報酬遡及訂正問題というのが大きな問題になりました。そこで、ルールに反する不適切な取り扱い、こういうものがあれば、これは年金受給者の利益に関するものですから、ぜひ厳正な対応を行っていただきたい。これをやるのは当然だと私は思っておりますが、ただ、今回のような状況が発生する背景というのにも少し気を配る必要があるんじゃないかなと私は思います。

 これが、単に職員が自分の成績だけを上げたいとか、あるいはちょっと仕事をサボってしまったという結果だけで起こる問題であったらば、これはもう論外なんですけれども、必ずしもそうか。今いろいろ問題になっている事例は別にしても、こういうものは結構起こり得るんじゃないか。つまり、やむにやまれぬ社会的背景があるんだとすれば、これはやはり制度の問題として検討の光を当てる必要があるのじゃないかなと私は思います。

 特に中小企業ですと、これは業績の変動に物すごい大きな波がある。多角化というのが難しい中で、外部の市況変動によって業績がもう急に変わる。四月から六月の報酬の平均額を仮にカウントしたとしても、次の月から急速に悪化するということは間々あるわけです。特に、今金融不安みたいなことがあれば、なおさらこういう状況は起こり得る。業績悪化をすれば当然資金繰りも苦しくなって、あと十万円の手形を落とせないばかりに倒産するということだって十分あり得るのが中小企業だと私は思います。

 こういう場合に、最後の最後の手段として、これは本当は禁じ手ですけれども、従業員の年金保険料に手をつけてしまう、そのキャッシュに手をつけなければ会社自体が倒産する、こういうぎりぎりの状況だってあり得ると私は思います。

 そこでお伺いいたしますが、企業の業績変動に対して保険料負担はどのように、弾力的な余地というのは現行制度上あるのか、これを教えていただきたいと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘につきましては、標準報酬月額の随時改定という仕組みが現行法上ございます。

 御承知のように、元来、厚生年金保険制度におきましては、保険料算定の基礎、事務上の都合から標準報酬制度というのをとっております。さらに、事務の簡素化、効率化という観点から、通常、年一回、毎年七月一日時点において、四月から六月までに受けた報酬の平均額をもとに、その年の九月から翌年の八月までの標準報酬月額を年一回定時決定して保険料の御負担をお願いしている、こういうのが基本の仕組みでございますが、御指摘のように、こうした年一回の決定では被保険者の賃金の実態に沿わない場合が出てまいります。

 そうしたときに、制度としては、継続した三カ月に受けた報酬の平均額が、先ほど申し上げました通常の仕組みで既に決定している標準報酬月額と比べて著しく、具体的には二等級以上の高低ということですが、著しく変化した場合には随時改定を行って保険料負担を軽減する、こういう仕組みが現行制度に設けられて使われているという状況でございます。

長崎委員 あるいは、業績変動に伴って、事業主が年金保険料を納付することが厳しい場合、これは現場の社会保険事務所ではどういう取り扱いになっているんでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 企業業績の変動に伴いまして、事業主が厚生年金保険料を納付するのが厳しい、そういう状況における社会保険事務所の対応を申し上げます。

 そうした場合におきましても、具体的には、納付期限を過ぎても保険料を納付できないという状況がそこにあるということを例えば例としてとらえた場合、期限を過ぎたとしても、直ちに何か強制的な、例えば処分にかかるというような形で物事を進めるのではなくて、やはりまずは電話やあるいは文書などによりまして納付の督励をさせていただく。そして、さらに必要に応じまして、職員が事業主の方と連絡をとった上で例えば面談をするというようなことを通じて、どのような方法であれば納付いただけるのかということについての相談を具体的に進めていく、そういう取り運びをするようにということで指示もし、現場もそれで動いていると思います。

 具体的には、経営状況ですとかあるいは将来的な見通しですとか、そこら辺を丁寧に伺わせていただいて、保険料の計画的な分割納付などを中心とした御相談をさせていただくことなどによりまして、円滑な徴収というものを実施するように努めているというのが現場における実情というふうに承知しております。

長崎委員 今の点についてお伺いしますが、分割納付を中心としてとおっしゃいましたけれども、例えば納付額自体を削減するというような手当てはとれるんでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 保険料の納付すべき額、この金額そのものを削減するというようなことは制度上認められてございませんので、あくまでも猶予というような取り扱いを意味するものでございます。

長崎委員 としますと、実際に給料を引き下げた場合、この場合は納付額も引き下げられる。そうでない場合は、分割して払うわけであって、納付額自体を減らすことはできない、こういうことだと思います。

 ただ、現実問題としてまた考えると、今、中小企業の従業員、必ずしも賃金を潤沢にもらっているわけではなくて、多分生活ぎりぎりの水準で設定されているような場合も多いと思います。経営者としては、かわいい従業員の生活、これ以上手取りを下げたらばもうやっていけないよ、生活できないよ、何とかして手取りは維持したい。そうはいっても、会社のキャッシュフローも大変厳しくて、また今後の業績の見通しも現状全く立たない。だから、分割の支払いのお約束をして、ある一定の債務をやるというのも、これまた経営としては厳しい状態、こんなようなこともやはりあり得ると思います。

 特に、こういう状況の中で、社会保険事務所の現場の職員さんが実際中小企業の事業主とお話をして、いろいろな面談をする中で、なるほど、そうだ、厳しいと。何とかしたいな、しなきゃ会社が倒産してしまう、倒産してしまえばもともと元も子もなくなってしまう。こういうようなことを考えれば考えるほど、やっちゃいけないことなのかもしれないですけれども、今回のような事例が生じ得る土壌というのはあり得るんじゃないかと私は思います。

 もちろん、標準報酬の遡及訂正というのは、被保険者の年金受給額に影響を及ぼしますし、他方で、勤め会社の経営の悪化というのは、今度また被保険者の現実の生活に影響を及ぼすような問題だと思います。

 そこで、大臣にお伺いしたいと思いますが、仮に従業員の同意を前提として、実際の賃金、従業員の手取り額を維持しつつ保険料納付を減額する、すなわち、将来の年金の受給額を削ることに対して同意をとった上で、現実の標準報酬を引き下げるとか保険料納付額を減額するような仕組みというのは考えられないのか。仮に業績が将来回復した時点では、今度逆に、さかのぼって納付して平均標準報酬というものを回復させる、こういうような弾力的な取り扱いというものは検討できないんでしょうか。大臣のお考えを伺います。

舛添国務大臣 私は、結論から言うと、それはできないというように思いますのは、これも公租公課、租税であれ保険料であれ、強制的に支払わないといけないものでありますし、それから、やはり老後の生活の資金になるものであります。

 そして、この遡及訂正事案、いわゆる改ざんの問題が出てきたときに、社会保険料の支払いが大変だから、だからそこから倒産するんだという議論がありますし、そういう状況に陥っている方もおられると思いますけれども、しかし、みんな苦しい中で頑張っている。頑張っている中で、公租公課はどんなことをしてもちゃんと払っていく。みんな頑張って、従業員も事業主も、給料を減らしてでも頑張るよ、設備投資を減らしてでも頑張るよと。あらゆる節約の努力をしてやる中で、私のモラルからいうと、公租公課に手をつけるのは最後だと思っています。

 したがって、そういう状況になる前に、例えば中小企業に対する緊急融資、今やっていますね、三十兆円の大きな枠で、信用保証協会から借りてくることができますよ。経済産業大臣に聞くと、一日に何十億とか何百億というオーダーで申し込みが来ているそうです。ですから、そういうものを利用していただく。そのようなさまざまなほかの経済的な支援策でもって、そういう企業が本当に困窮に陥らないようにする。特に、経済産業省を中心とする中小企業対策、これをきっちりやって、今も生活支援とか緊急経済対策でやっているわけですから、まずこれでしっかりお支えをする。

 例えば、では税金を払わないでいいんですか、苦しいから税金を払いませんよ、では保険料だって、払わないでいいということはないと思いますから、私は、やはりその前に政府としてやることがあるというふうに思っておりますので、しかもそれをやっているということを強調したいと思います。

長崎委員 おっしゃるとおりだと思います。みんなで支える制度であるがゆえに、そこは最後ぎりぎりまで頑張らないといけないんですが、ただ、実態問題として、融資を受けるのも、今回別枠でやっていただいていますけれども、もうぎりぎり厳しい状態だよ、ひょっとしたら融資を受けられないかもしれないよと。そういうような状況で、負担者が追いついてこない、結果としてそれが不適正な遡及訂正問題に結びついてしまうようであれば、むしろ制度の弾力性というものをある程度確保することが結果として納付の向上につながるんじゃないかなと私は思います。

 特に、中小企業の会社の事業主にとって従業員は本当に子供だと思います、家族だと。その人たちの今の生活、そして将来の生活のことを考えないわけがない。私は、そういう中小企業の経営者の善意に期待して、ぜひ弾力的な扱いというものも将来的な選択肢の一つにはやはり検討していただきたいなと思います。

 時間も押し迫っていますので、最後に医療保険の問題についてお伺いしたいと思います。

 先ほど清水委員からお話がありましたように、シーリングの二千二百億円の削減というのは私ももう限界だと思います。特に医療については、この崩壊の最大の要因だと私は思っています。

 財政当局的な発想によれば、医療に対する支出というのは、これは単に消費でしかない。だけれども、よく考えてみると、今世界有数の医療関係のビッグマーケットは我が国にある中で、ここでしっかり医療に対して支出をして、薬でもあるいは医療機器でもあるいは医療サービス技術でも、こういうものをしっかり伸ばしていくことで、むしろ医療というのは輸出産業になる。将来的には、多分、中国あるいはインドは今盛り上がっていますけれども、彼らがある程度の所得になれば今度は欲しいのは健康ですから、そういうところに我々が国内で培ったものを売れば、その投資というものは回収できるんじゃないか、そんなようなことも思っております。

 これはちょっと余談かもしれませんが、そういう意味で、二千二百億円というものは私も見直す必要がある、その際にはぜひ、発想の転換で、医療に対する支出というのは消費ではなく投資だというような考え方も盛り込んでいただきたいなと思います。

 それと関連してですが、今回、十月に日本医師会が医療保険制度について提言をされています。私もこれを読ませていただいて、なかなか注目すべき点もあるんじゃないかなと思っております。特に、今までの制度というものが過去十年とか長い期間の議論の積み重ねでできているもの、これ自体は大変重く受けとめるべきですが、やはりその間の社会情勢の変化というものもあると思います。

 どういう変化かといったら、これは所得の変化というのがやはり否定できないのではないか。詳しいデータというのはどうも政府部内ではないようでしたので、統計的な話をすることは今残念ながらできませんが、例えば最近の報道を見ても、我が国の有数の某自動車メーカーの役員報酬、減額したとはいえ、平均一億円以上皆さんもらっている。こういうことも踏まえれば、所得の格差も多いんじゃないか。ワーキングプア層なんて言われている人が片やいる一方、大企業のトップは一億あるいは数千万という年収をざらにもらっているような状況が、私は今この日本で現出していると思っております。

 そこでお伺いしたいのは、日本医師会が今回出した提案の中で着目すべき点だと思うのは、一つは保険料の上限、これに対して、今現在保険料には上限がありますが、高所得者が優遇され、格差拡大が懸念されることから、原則として保険料は所得に比例させるべきではないか、こういうようなことが書かれております。これについて大臣のお考え、御感想をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 基本的には、受けるサービス、給付と負担とのバランスをどう考えるかということでありまして、それは、所得に比例というのは単純ですね。だけれども、例えば年収一億の方が風邪を引いても、私が風邪を引いても、病院にかかったときに受けるサービスと価格は基本的に診療報酬体系で決まっていますから同じです。私の百倍の年収がある方が百倍のいい薬をもらうならばそれでもいいんですけれども、そこがまずあります。

 それから、例えば年金にしても、では、標準報酬月額の上限、五十万なら五十万でこう決めるというのは、一億もらっている方が、それを標準報酬月額にして、ぱんとやめて、はい、きょうから年金もらいますと言ったら、べらぼうな年金額をお支払いしないといけない。

 ですから、そこは、ちょっと年金の話をついでに引いたのは、やはりどこかで上限を設けるというのは、給付と負担のバランスについて、保険料に比例してのサービスが受けられるなら結構だけれども、例えば私の年収百倍の方がすばらしい入れ歯を入れて、百倍の機能を持つ、ないしレアメタルでやったというのならあれですが、例えばこういうものをやったら自由診療というのはありますからね、混合診療。

 ですから、今言ったポイントを考えますと、一定の上限を設けるということの方が国民的なコンセンサスを得るのではないかというふうに思っていますので、十月の日本医師会の、保険料を所得比例にすることについては今のような私の考えでございます。

長崎委員 給付と負担のバランス、しかも比例してサービスを受けられるならば理解は得られるでしょうけれどもということですが、でも、そもそも保険料に関して年収比例を入れているわけですよね。その場合に、今大臣のおっしゃったようなことを徹底すれば、今の現行制度の年収比例だとおかしいんじゃないの、病気のリスクに応じて出していくものが今の保険なんでしょうねということだと思うんですが。

 ですから、これは、上限を撤廃する、しないというのは、私はもう程度の差の問題であって、今言った、みんなで支える制度だ、この健康保険だってみんなで支える制度ですから、むしろ私は応能原理というものをもっと取り込んで修正してもいいんじゃないか。これは単に比例だけで、累進をかけるわけじゃないですから、比例的に取るわけで、みんなが同じものを同じ比率で負担しましょうよと、社会連帯システムの応能原理というのをもっと追求してもいいんじゃないかなと私は思います。

 大臣の御見解を伺います。

舛添国務大臣 医療保険にしても介護保険にしても、保険料と税金の割合が五〇対五〇でございます。したがって、税金の五〇についてはまさに累進的な所得に対する課税があるわけですから、そちらの分で高額所得者は既に負担をしております。ですから、保険料の面でどうするかというのは私が先ほど言ったような議論になると思いますが、そちらの半分の五〇の方もあるということを申し添えておきたいと思います。

長崎委員 そうはいっても、医療費、やはりお金のない人ほど重い負担というのはどうかなと。年収三千万の人の負担率だけで見ればもっと低くなっていて、年収二百五十万の人が厳しい負担率に、今の負担率に置かれるというのはどうもちょっと正義な感じからずれる。

 今大臣おっしゃったように、税で対応できる、確かにそうかもしれません。例えば、今のこの年収比例分を補完するものとして、社会保障目的所得税、こういうものを取って、上限を超えている人からはその分所得税を取って医療に回す、こんなようなアイデアもあるんじゃないかと思いますが、これは所管外かもしれませんけれども、大臣の個人的な、政治家としてのお考えをお聞かせいただければと思います。

舛添国務大臣 それは、ですから、フィフティー・フィフティーというのを、例えば保険料の比率を三にして税の比率を七にする、そういう大きな仕組みの中でやる方が合理的じゃないかなと思っていますが、さまざまな論点がありますから、これはもう少し時間をかけてじっくりと議論をしたいと思います。

長崎委員 それともう一つ、もう時間もないので最後にお伺いしたいのは、被用者保険の保険料率自体の問題。

 これを見ますと、今最も平均標準報酬月額が低い協会けんぽ、これは最も高い保険料率で払っています。それに対して、最も平均標準報酬月額が高い国家公務員共済、これは保険料率が最も低い状態。これもちょっと、一般の感覚からすればお金持ち優遇じゃないですか。むしろ、やはりすべて協会けんぽと例えば料率を公平化する方がいいんじゃないか、そっちの方が正義の感覚に似合っているんじゃないかと思いますが、これについてはいかがでしょうか。

舛添国務大臣 中小企業が主として入る協会けんぽと、それから健保組合、これは大変裕福なところ、会社もあるわけですから、そこの料率が全く同じであれば、ある意味で全部協会けんぽにやってしまえばいいわけで、やはりそれぞれの企業が健保組合をつくってやっていく、それは料率の面で構成員にある意味でプラスを与える、それから例えば福利厚生施設なんかをつくるということがあるので、今軒並みこういう状況ですから健保組合の負担も大きくなっていますので、一律にというより、やはり若干そこは健保組合の自由に任せないと、全部協会けんぽにしてしまえばいいじゃないかということになると思いますので、そういう問題があるということを申し上げておきたいと思います。

長崎委員 そうはいっても、やはりこれも国民連帯のシステムであることには変わりはないと思います。他方、各組合の自律性、独立性、こういうものも重要なのは大臣がおっしゃるとおりです。これは両立しないといけないと思います。そういうような、国民感情として、高所得者優遇に見える今のシステムはやはりいかがかと。私は、一度保険料率は一律で徴収して、もし各組合が努力をしたその結果安くなったというのであれば、これはむしろ給付を、歳出を通じて御褒美を上げるような形で出した方が、努力の成果が目に見えますし、いいんじゃないかと思います。大臣、いかがでしょうか。

田村委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、大臣、手短にお願いいたします。

舛添国務大臣 実は、協会けんぽも都道府県別の料率を設定することになっています。例えば長野県なんか、一生懸命保健師さんが仕事をして、治療よりも予防という観点からやっていくことによって医療費の水準を下げている。そういう努力を促すために、そういういい意味での各県の競争というか、こういうこともありますので、そのこともつけ加えておきたいと思います。

長崎委員 ありがとうございました。

 また引き続きこの点について議論をしていきたいと思います。ありがとうございました。

田村委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、公明党が本年四月に発表いたしました政策提言、健康、子育て、仕事など、女性の一生を支援していこうという女性サポート・プランの実現に向けて質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。昨日も麻生総理大臣に、公明党の女性議員でこうした女性政策の申し入れを行わせていただきました。

 まず初めに、子育て支援という観点から、妊婦健診の充実についてお伺いをいたしたいと思います。

 妊娠、出産、母子ともに命の危険を伴うことが多くあります。高齢出産もふえているわけでございますけれども、このリスクが高いかどうかを知るために有効なのが妊婦健診です。その理想とされる十四回の健診を受けるのに費用負担が重い、こうした課題が指摘をされているわけでございます。

 公明党では、平成十八年、少子社会トータルプランの提言、また本年八月の来年度概算要求に向けた重点要望、そしてこの十月にも改めて妊婦健診の完全無料化を求め舛添大臣にも要望を行うなど、機会あるごとに妊婦健診の助成拡大を主張してまいりました。地方議員の皆様とともに一貫して取り組んできた政策でもございます。

 その結果、十九年度から、妊婦健診助成を含む子育て支援事業に充てる地方交付税の増額、またさらに、厚生労働省より市町村に対して五回程度の実施が原則との通知を出していただいたわけでございます。着実に前進をしているというふうに思います。そして、先月三十日に発表されました新たな生活対策には、舛添大臣が明言をしてくださいましたとおり、安心、安全な出産の確保として妊婦健診の無料化に向けた取り組みが盛り込まれまして、多くの皆様より喜びと期待が寄せられております。

 私も、だれもが安心して出産できますよう、妊婦健診の負担をなくすことは国の責務であると考えております。今回の対策によりまして、経済的不安や命がけの出産から子供を授かるのをためらってしまう女性、また、健診を受けていない妊婦の飛び込み出産が多くの医療機関から受け入れを断られてしまう等の問題を解決することにつながっていくと確信しております。また、これまで党として進めてきた女性政策が実現することになったと大いに評価をしております。

 来年度から地方交付税を一層拡充するとともに、国庫補助として九回分の二分の一を負担することは、負担の一部ですが、不交付団体にも配慮される内容となっています。一方、この措置が二十二年度までである、またさらに、交付税の使い道はそれぞれの自治体に任されているために自治体間の格差があるなども課題として残っております。

 また、里帰り先で、自分の居住している住所以外で出産するいわゆる里帰り出産にも使えるように、あるいは助産師さんの活用も非常に重要な課題でありますけれども、助産所での健診への助成も行う、妊婦の立場に立った、格差のない全国一律の完全無料化が望まれておりますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 古屋委員初め公明党の皆さんの御支援も賜りまして、何とかこの十四回完全無料化、そこの政策にまで行き着きました。本当にありがとうございました。

 その中で、今御指摘の九回分については、これまでは個人とか自治体が任意にやることでありましたけれども、半分を国庫補助、半分を地方財政措置によってやるということであります。

 長期的なことについては、これをきちんと定着させる努力を今後ともやっていきたいと思いますし、里帰り出産にも適用するということでないと、やはり自分の実家に帰って産むという方がおられるわけですから、そういうことも含めて、これは、国と各自治体と連携をとりながらきちんと指導して、そういう方向で、安心して、どの場所であっても全く経済的な心配をしないで十四回完全に健診ができる、これを一刻も早く実現するために全力を挙げたいと思います。

古屋(範)委員 今非常に力強いお言葉をいただきました。長期的な視野での支援、そして全国どこに行っても安心して産めるような体制づくり、ぜひとも御尽力いただきたいと思っております。

 大臣は、ただいま子育ての真っ最中ということで、非常にいつも実感を持って子育て支援に取り組んでいただいているというふうに思っております。子育て支援、子育てもはるか昔のことでお忘れになった世代の方々よりも非常に心強く期待しておりますので、何とぞよろしくお願いをしたいと思います。

 次に参ります。女性の健康を支援するという角度からさらにお伺いをしてまいります。

 少子高齢化の進展に伴いまして、女性のライフスタイルが多様化をしている、女性を取り巻く健康問題がますます注目をされております。公明党は、女性の健康を守る施策を積極的に推進しておりまして、女性サポート・プランでも、女性の健康に関して、予防接種や病歴、出産、妊娠などの記録を記載していく女性の健康パスポートの発行、また、女性が気軽に相談でき、具体的なアドバイスが受けられる女性総合カウンセリング窓口の設置、また、性差医療の調査研究を進め、情報発信の拠点となる女性健康研究ナショナルセンター、仮称でありますけれども、こうした機関の設立などを提言しております。

 そこで、まず女性の健康パスポートの発行についてお伺いをいたします。

 これにつきましては、五月、本委員会でこの重要性について質問をしたところでありますけれども、おかげさまで、来年度の概算要求におきまして、新規に女性の健康支援対策事業として、私たちの要望したこの女性の健康パスポートとほとんど同趣旨の、若年女性のための健康手帳の作成、交付の事業が盛り込まれまして、さらに健康増進事業の中にも、四十歳以上の女性を対象として、女性の健康課題や健康情報等を記載した健康手帳の交付が新たなメニューとして追加されておりまして、地域の実情に応じて実施できることとなっております。

 この予算は確実に確保していただき、また、若年女性とかあるいは四十歳以上などと限定せずに、母子手帳と、現在も自治体で四十歳以上の方々に発行している健康手帳の間をつなぐ、一生涯にわたって使うことのできる女性の健康パスポートの発行をぜひとも実現していただきたいとお願いをいたします。

 さらに、厚生労働省では、昨年十二月に立ち上げられた、女性の健康づくり推進懇談会で女性の健康づくりを展開していらっしゃいまして、この中の女性の健康手帳ワーキンググループにおいて、女性の生涯にわたるみずからの健康管理に資するため、各種健診の結果、健康づくりに関する知識等を記載した手帳の作成、普及方法について検討されているものと聞いておりますが、この検討状況をお伺いいたします。

 そして、各自治体においてこの健康パスポートが発行できるよう支援するために、モデル事業の実施もぜひ考えていただきたい、このように思いますけれども、いかがでございましょうか。

上田政府参考人 まず、生涯を通じて自分自身の病歴や健診結果、予防接種等を記録し、必要なときに活用できるようにしておくことは、年齢、年代によっては健康上の課題が大きく変化される女性におかれては特に意義のあることだ、こう考えております。そういうことで、先ほど御指摘のございました予算といたしまして、女性の健康支援対策事業ということで今要求をしておりまして、御指摘の若年女性のための女性の健康手帳の作成、交付、あるいは研修事業などを今概算要求として行っているところでございます。

 また、こうした女性の健康上の特性に配慮いたしまして、健康情報の記録や、年代ごとに健康づくりに資する情報提供ができる仕組みを開発することは、健康づくりの支援に効果的であると考えております。厚生労働省といたしましては、女性の健康づくり推進懇談会に、今おっしゃられました生涯を通じた女性の健康づくりについてのワーキンググループを設置しまして、女性の健康手帳、これは仮称でございますけれども、これの検討を進めております。

 また、そのワーキンググループの実施状況でございますが、現在、第五回目の会議を予定しておりまして、来年の春には何らかの結論を得たいということで、経過は、十九年十二月に第一回の懇談会を行いまして、第四回をこの十二月に開催し、第五回目を来年の一月、二月に開催するということで、来年の三月ぐらいにはそこから何らかの成果を得たいと考えているところでございます。

古屋(範)委員 実は私、先日、国立の中学校で東大の医学部放射線科の中川恵一先生が中学生に向けてのがんの授業をされるというところを見学に行ってきたわけなんですが、中学生も非常に熱心に聞いておりましたけれども、やはりそうした、がん一つとっても、なぜがんが発生するのか、あるいは若いときの喫煙とがんの罹患率の関係ですとか、がんの検診の重要性等々、先生が非常に詳しく説明をしてくださったんです。

 日本におけるがんの受診率の低さというものも、やはり学校教育、あるいは若いころにそうした教育が不足しているというのも一因ではないかというふうに考えております。がんのみならず、若いときに、例えばおしゃれやアイドルに関心があるのと、それ以上に、やはり自分の生涯にわたる健康というものにもっともっと関心を持っていかなければいけない、知識を持っていかなければいけないというふうに感じます。

 やはり母子手帳というのは長く使っても小学校いっぱいぐらいかなという気がしておりまして、中学を卒業するとき、あるいは高校を卒業するときに、女性だけではなく男性もそうなんですが、生涯自分の健康を自分で管理していく、そういう意識づけのためにも、こうした手帳の発行は非常に有用だと思いますので、何とぞ推進していただきますよう、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 次に、女性総合カウンセリング窓口、仮称ですけれども、この設置についてお伺いをいたします。

 二十代、三十代の多くの女性が、健康や仕事、人間関係などさまざまな悩みがあっても、なかなか安心して相談できる場所がない。精神科に行く、また健康上の心配があって産婦人科に行く、これは非常にハードルが高い。一人で悩み、不安を抱えてしまう、こういうケースがふえております。女性サポート・プランでは、こうした女性向けの総合カウンセリング窓口の設置とあわせまして、窓口に行けない女性のために、インターネット等でも相談できるようなシステムを整備することを提案しております。

 現在、各地の女性センターや男女共同参画センターといった総合施設などで、女性の相談事業が実施を既にされております。充実した体制をとっているところもありますけれども、この相談窓口があるということも、なかなか市民や県民に周知をされていない、広報が十分ではないということもありまして、相談体制についても自治体や施設などによって差があるのは確かでございます。

 先日、女性総合カウンセリング窓口を具現化したような形であります板橋区女性健康支援センターというところに行ってまいりました。ここは、保健センターのワンフロアをこうした女性の健康のための支援の場所にして、非常に充実した活動を展開されております。六月に開設をされたばかりでありまして、ここでは、保健師が相談に応じる女性健康なんでも相談、これもちゃんとプライバシーが守れるようにブースが分けられて、話が聞こえないようになっておりまして、また、女性医師相談員が女性の心と体の健康に関する相談を行う専門相談事業なども行っております。スタッフ全員が女性であるということで、女性が気軽に相談できる環境が整っております。区長が非常に理解を持って推進をしてくださっております。

 また、十月に行ってまいりましたけれども、神奈川県藤沢市にあります県立かながわ女性センター、ここも、私たちの女性総合カウンセリング窓口を先取りした形で、非常に充実した相談事業を行っております。このセンターでは、この八月から、公明党の行田県会議員が尽力してくれまして、メールによる相談も開始をしたところでございます。家庭内暴力、DV、あるいは女性に対する暴力のほかにも、女性特有の疾患、妊娠に関する健康相談、弁護士による専門相談、または提携の病院などへも紹介をしてくれるということでございます。この県立かながわ女性センター内には保育施設もありまして、安心して相談できる体制が整えられておりまして、相談件数は年間九千件を超えております。

 そこで、来年度の予算概算要求でも、厚労省、内閣府ともに予算要求がされておりますけれども、こうした女性総合カウンセリング窓口を各自治体が積極的に設置し、体制の拡充ができるよう、自治体、利用者のニーズを踏まえ、柔軟な運用が可能となるよう支援をしていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。内閣府、また厚労省、両省からお答えをいただきたいと思います。

上田政府参考人 女性に限らず、健康に不安を感じたときに、身近で気軽に相談できるような窓口があることは重要でございます。健康相談を職域において受けられる機会は、一般的に申し上げれば、男性と比べれば女性は少ないと認識をしております。こういうことから、委員御指摘の窓口の重要性は非常に高いものだ、このように思っております。

 現在、市町村におきましては、地域住民を対象として、生活習慣病の予防の観点から健康相談を行っているところでございますけれども、これは男女ともに相談に来られるということでございまして、こうした窓口をさらに女性向きにどのように活用するか、こういうことを検討していかなければならないんだというふうに思っています。そういうことで、先ほど申し上げました予算の中にも、相談員の研修事業なども含めたところでございます。

 今後とも、女性の健康づくりへの対応が一層なされるように、女性の健康づくり推進懇談会の御議論も踏まえて取り組んでまいりたい、このように考えております。

板東政府参考人 ただいま委員の方から御指摘ございましたように、女性、特に若い女性を見てまいりましても、さまざまな心身の健康の問題、それから仕事や家庭にかかわる問題、人間関係の問題などを初めといたしまして、非常に複雑な、多様な課題というのが女性に関してあるのではないかというふうに思っております。

 御指摘のように、それを気軽に相談できるような窓口、あるいは、さまざまな問題が複雑に絡み合っておりますので、それを総合的にとらえていくことのできる窓口というものは非常に重要であると思っております。

 ただいま委員の方から御紹介いただきましたように、全国の男女共同参画センターとか女性センターでもさまざまな取り組みが始まっておりますし、特に、相談事業というのはその中でも非常に重要な事業の一つとして、柱として位置づけておりまして、その充実を図ってきているところでございます。

 御指摘のように、心身の健康の問題とかそういった部分については、関係の機関との連携というのが非常に重要になってまいると思います。ただいま厚生労働省の方からもお話がございました、健康や福祉や、そういったところにかかわるさまざまな機関との連携も図りながら、全体としての機能の充実を男女共同参画センターや女性センターの相談事業についても図っていかなくてはいけないというふうに思っております。

 予算の関係でございますけれども、これはこの相談事業に限るものではございませんが、男女共同参画センターとか女性センターの機能、そういったいろいろな機関との連携というのをさらに強めていくことができるように、人材育成のプログラムなどを含む予算要求を来年度についてしております。

 そういったさまざまな機関との連携を一層図りながら、そして気軽に相談できるような、ただいま委員御指摘のような、例えばネットを使う、携帯電話を使う、それからさまざまな場所に出前をするといったようなことを含めての事例の提供とか、情報提供を我々の方でもさらに充実していきたいというふうに思っているところでございます。

古屋(範)委員 ぜひ、こうした窓口の設置、また充実に向けて、現場のニーズを踏まえて、運用しやすいような体制をよろしくお願いいたします。

 次に、女性の健康や医療について調査研究をする国の機関、仮称でありますけれども女性健康研究ナショナルセンターの設立についてお伺いをしてまいります。

 この設立につきましては、本年五月、当委員会におきまして、この日本でも、女性医療の中心となる女性健康研究ナショナルセンターを設置して、女性の医療、健康に関する調査研究を進めて、さらに、女性専門外来を担当する医師を養成するなど、教育、学術センター機能を兼ね備えたセンターを真に女性のための医療に活用してはどうかと訴えました。

 具体的に、昨年四月の新健康フロンティア戦略に、「「女性のニーズに合った医療」の推進」として、国立成育医療センターを中核とした情報提供という項目も盛り込まれていることから、この成育という観点に注目し、女性の生涯にわたる医療の中心として、この成育医療センターにぜひ女性健康研究ナショナルセンターとしての機能を設置していただきたいとお願いをしたところでございます。

 その際、当時の健康局長から、女性の健康づくりを支援する研究を促進し情報提供していくことは非常に重要である、現在でも、例えば国立成育医療センターでは、妊娠中の胎児発育と母体との関係の研究など、女性の健康に関する課題にも取り組んでいる、今後ともその充実に努めてまいりたいというふうに考えているとの答弁をいただきました。

 女性健康研究ナショナルセンターの設立をぜひ具体的に進めるために、現在どのような取り組みをされているのか、お伺いしたいと思います。

上田政府参考人 女性の健康づくりを支援する研究を推進し、その成果を情報提供していくことは重要であり、そのために、まずは必要な科学的データの収集及び蓄積を図ることが必要だと考えております。

 現在、厚生労働省では、女性の健康づくり推進懇談会を設置したことは先ほど申し上げたとおりでございますが、性差を考慮した生活習慣病対策の研究など、性差医療の推進に役立つ研究への支援を行っているところでございます。

 今後、懇談会における議論や研究結果を踏まえながら、女性の健康を支援するための研究の推進や情報発信等のあり方についてさらに検討してまいりますけれども、議員御提案の女性健康研究ナショナルセンターについても、こうした取り組みを進める中で、その必要性とか概念についてさらに検討をしていくべきもの、このように考えているところでございます。

古屋(範)委員 ぜひ研究を早急に進めて、科学的な根拠を確認した上で、こうしたセンター、ぜひとも速やかに設置をしていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

 最後の質問になりますけれども、我が国は人口減少社会を迎えております。また、さらに急激な労働人口の減少が見込まれるわけであります。育児や家庭生活と両立できる働き方、また女性や高齢者が働き続けられる労働環境の整備、これは喫緊の課題でもございます。

 また少し角度は変わりますけれども、〇七年度、残業の不払いは過去最高の一千七百二十八社、二百七十二億円ということも指摘をされております。残業代を支払わず労働基準監督署に是正指導を受けた企業、〇七年度では過去最多の千七百二十八社であったということでもございます。

 これに関しましては、現行法が遵守されなければならないということは当然でもありますけれども、私は、党の少子社会総合対策本部の事務局長として、一昨年四月に発表いたしました少子社会トータルプランなどの政策立案に携わってまいりました。中でも、この柱となりますのが働き方改革でございます。仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスを早急に実現したい、こう思っております。

 ワーク・ライフ・バランスを進め、仕事と子育てが両立できる雇用環境を生み出すには、何といっても長時間労働の抑制、これが不可欠であります。そのためにも、残業代の割り増し率を引き上げる労働基準法を改正していくこと、これが仕事と生活の調和を進める一歩となるというふうに考えております。

 昨年の通常国会に提出をされまして継続審議となっておりますこの労働基準法の改正案、月八十時間を超える労働をした場合は割り増しを五割とするという内容であります。しかし、月八十時間というのは過労死の認定時間と同じでありまして、現実を無視したものではないかということで、公明党の坂口副代表を初めといたしまして関係者の方々が連合あるいは経団連を中心とした経営者団体と協議を重ねまして、理解を示していただこうという経緯がございます。

 三十代男性の四分の一が週六十時間以上働いている、この残業時間の高どまり状況は見逃すことができません。その一方で非正規社員はふえ続ける。こうした、労働時間も二極化をしている状況でございます。残業を減らし、そして正規採用をふやす、また、割り増し率を引き上げることで長時間労働を抑制する効果が期待されることから、ねじれ国会という状況下ではございますけれども、与野党の主張の違いを乗り越えて、ぜひこの労働基準法改正の修正案を速やかに成立させるべきと考えますが、舛添大臣の御所見をお伺いいたします。

舛添国務大臣 今委員御指摘の労働基準法改正法案でございますけれども、八十時間を超える時間外労働で五〇%の割り増しと。ちょっと八十時間というのは多いんじゃないかということで、前回も、民主党の細川委員からも、さらに抑制したらどうかという御意見を承りました。またきょう、今、古屋委員からも同様の御意見をちょうだいいたしました。

 そういう貴重な御意見を踏まえた上で、ぜひこの国会で御議論の上で、よりよい形で成立をさせていただきたいと思っております。

古屋(範)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

田村委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 二十分という限られた時間ですので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 医療の分野でもたくさん議論をすべき課題というのがあるわけですけれども、私は、特に、この四月に導入されました特定健診、いわゆるメタボ健診についてお尋ねをしたいと思っています。

 全国七百八十三の市と東京の二十三区を対象に毎日新聞が行った調査によりますと、回答率が七割だったそうですが、そのうちの七四%がこの特定健診について廃止または見直しを要望しているということでございました。その理由の第一というのは、メタボに限定した検査で、ほかの疾患が見逃されるおそれがあるというものでありました。私も地元でいろいろと医療機関あるいは先生方のお話を聞かせていただきましても、同様の心配の声が本当にたくさんございました。

 まず、慢性腎臓病の場合でございます。患者の数はおよそ二千万人います。この慢性腎臓病を早期に発見するのに有効な検査といたしまして、従来の老人保健法の基本健診では血清クレアチニンの値、これが必須項目となっていたわけなんですね。特定健診のおととしの暫定案でもこれが必須項目となっていたのですけれども、改めて修正案が出された中ではこれが削除されておりました。基本健診の必須項目から特定健診の選択項目に格下げされていた尿たんぱくの検査を格上げするのと引きかえに、この検査が削除されたということであります。

 今は、自治体がやろうとしても国からの補助が出ないわけでして、毎日新聞の調査によりますと、今年度の健診でこの部分の健診を自治体が手出しでやっているところ、独自の予算で実施しているというふうに回答したのは四八%、全国の市区でいいますとおよそ三割でございました。

 慢性腎臓病は、心血管疾患の独立した危険因子であると思っています。しかし、この血清クレアチニンの検査を除外した特定健診の結果から慢性の腎臓病のスクリーニングというのは大変難しい、この危惧の声が地元でも大きく上がっていたわけであります。

 尿たんぱくの場合は、受診勧奨の対象とはなっておりませんし、今でも腎臓病患者の受診率は一〇%程度と推定されています。学会でも、特定健診によって腎臓疾患が見つかりにくくなる、この対策がおくれるのではないかと懸念する声も出されています。

 なぜ、この血清クレアチニン検査というのを除外されることになったのか。血清クレアチニン検査については、標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会の第五回の一度きりの問答で除外を決めておられるように、私もいろいろ見ましたけれども、なったようです。せめて尿たんぱくが陽性の場合には血清クレアチニン検査をするようにと委員の意見が出されましたけれども、これに対して厚労省の生活習慣病対策室長は、当時の室長ですけれども、関係学会にも特にこの辺はガイドラインがまだ整備されていない、検査、保健指導の道筋がまだ整備されていないというふうに切り捨てておられました。

 それでは、これまで老人保健法による基本健診で必須項目となっていたこのクレアチニン検査ですけれども、これはエビデンスのないものだったのか、医学的根拠があいまいなまま健康指導、保健指導をされていたということになるんじゃないかと思うのですが、この辺、いかがでしょうか。

上田政府参考人 特定健康診査、特定保健指導は、健診の結果、生活習慣の改善が特に必要な方に対して重点的に、効果的に保健指導を実施することによって、生活習慣病の発症、重症化を予防することを目的としております。

 こうした観点から、特定健康診査の項目については、現行の老人保健事業における基本健康診査の項目をもとに、メタボリックシンドロームの診断基準や最新の医学的知見を踏まえて検討を行い、決定がされたところでございます。

 もちろん、腎臓病の重大性は我々も認識の上でございますけれども、御指摘の血清クレアチニン検査は、ある程度進んだ腎機能障害を把握するためには有効な検査ではございますけれども、腎機能障害を早期に発見するためには尿たんぱく検査が効果的であるとされておるところでございます。また、現在、腎機能障害を起こしやすい糖尿病、または高血圧を把握するためには、血糖検査、血圧測定を行うことが第一選択である、このような考え方から、特定健康診査の項目から除外されているものと考えているところでございます。

郡委員 尿たんぱくを見ていくことの方が重要だという御指摘でしたけれども、尿たんぱくというのは偽陽性も多いということなんだそうですね。まだ様子をそのまま見ていこうということで、ちゃんとした検査に結びつかないことを心配する声も確かにこの検討会の中でも上がっていたはずでございます。

 それから、ことしの三月ですけれども、厚生労働省の健康局の腎疾患対策検討会が報告書をおまとめになっております。「今後の腎疾患対策のあり方について」というものです。

 我が国における腎疾患患者というのは年々増加傾向にございまして、平成十八年の人口動態調査でございますけれども、腎不全による死亡者数は年間二万千百五十八人、国民の死因の第八位でございます。

 報告書は、透析患者を初めとする慢性腎臓病の患者では、その合併症である脳血管障害や心疾患等が直接死因となっていることが多く、慢性腎臓病がこれらの強い危険因子であることから、実際はさらに多くの腎疾患関連の死亡があるものと考えられると指摘をしております。

 中でも、この慢性腎臓病の患者数はおよそ六百万人というふうに推定され、我が国における慢性腎臓病の有病率は成人のおよそ六%。

 慢性腎臓病の進行は、その原因となった糖尿病や高血圧による影響を差し引いても、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患のリスクを高めていて、糖尿病や高血圧に匹敵する心血管疾患の強い危険因子であることも知られている。慢性腎臓病は心血管疾患の危険因子であり、血清クレアチニンの値はその指標として、あえて申し上げますけれども、腹囲などよりも、腹の回りの何センチかということよりも明確なエビデンスがあるのではないかとあえて申し上げたいと思います。

 腎疾患は、自覚症状に頼りますと発見が大変おくれてしまいます。それから、ほかの疾病で病院にかかっても見逃されることが多くて、実際に、人工透析が必要になって初めて専門医に紹介されるというケースも少なくありません。

 我が国における腎臓疾患対策というのは、この報告書にもありますとおり、「健診による腎疾患の早期発見、透析医療の充実及び腎移植を中心に行われてきた。」そして、対策の柱である「腎疾患の早期発見のため、老人保健法に基づく基本健康診査、労働安全衛生法に基づく職場での健康診断、学校保健法に基づく学校健診等が実施されてきた」というわけでありますね。にもかかわらず、不可欠とも言われる血清クレアチニン検査が特定健診からは除外をされてしまいました。

 今紹介いたしました厚労省の報告書は、今後の対策の一つとして、メタボリック症候群の患者に対する保健指導は、慢性腎疾患の対策の観点からも重要であり、推進するべきであるというふうにまとめられているわけなんですけれども、この特定健診で保健指導の手段というのが奪われているわけでして、どうやってこれで指導をするのでしょうか。全く、今回の報告書というのは、皮肉を込められたものなのかどうかわかりませんけれども、理解に大変苦しみました。

 日本腎臓学会は、去年の九月八日に慢性腎臓病診療ガイドラインを公表しております。

 特定健診に、エビデンスができている血清クレアチニン検査を必須項目として入れるべきではないかということを再度お尋ねしたいと思います。

上田政府参考人 今委員が申されました腎臓病対策の重要性は、まことにそのとおりだというふうに考えております。

 日本腎臓学会が慢性腎臓病の診療ガイドラインというのを見直しまして、確かに、そこでも血清クレアチニンについては検査項目として検討されてはおるわけでございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、慢性腎臓病の早期発見においては、検尿、尿たんぱくの方がより有効である、現在このように考えております。

 そういうことから、腎臓病を予防し早期発見することはまことに重要なことではございますけれども、現在の時点では、血清クレアチニン検査はある程度進んだ腎機能障害を把握するために有効である、こういうことから特定健診の項目には含まれていない、こういうふうに考えております。

 ただ、今後、科学的知見が集積された場合には、必要に応じてこのようなことも見直すことは考えるべきものと考えているところでございます。

郡委員 ですから、先ほども申し上げましたけれども、尿たんぱくでは偽陽性率が高くて、そのまま経過観察ということもあって、見逃される率もリスクも高いということを申し上げているわけです。エビデンスが出てきているわけですから、これは早速、導入の方向にかじを切っていただきたいというふうに思います。

 これだけではございませんで、そのほかにもたくさんございます。

 例えば、今回の特定健診を始めることになったために人間ドックの補助を廃止した。母子保健事業の縮小、精神保健事業の縮小、保健師の分散化によって、地区の担当制の維持に格差が生じ対応が間に合わない。基本健診、生活機能評価、がん検診をすべて、同じ対象者に同じ通知で出していたけれども、今年度から担当がかわり、異なる部門からばらばらに発送し、問い合わせや医療機関の窓口が混雑している。基本健診とがん検診とが別々になったので面倒という苦情も出ている。人間ドックの補助を三十二歳から五歳刻みで実施していたが、特定健診が始まったのでこの補助を廃止した。

 あるいは、がん検診でも、自己負担の補助を削減しているところも相次いでいます。人間ドックの補助を廃止したと答えたのは六十四自治体、人間ドックの補助を縮小したと答えたのは六十自治体にも上っています。

 これでは、申し上げましたとおり、腎臓病のみならず、この特定健診の受診促進のために健康保険加入者に対するがん検診の自己負担も、削られてしまって全額自己負担になったのでは、今回は受けることをやめにしようという人たちが出てくるのも、これは当然のことであろうかと思います。

 つまり、何を申し上げたいかといいますと、これが精度の高い検査の機会を逆に狭めることになってはいないか、大変重要な疾病を見逃すことにつながっているんじゃないか、そういうふうに言わざるを得ないと思うのですが、大臣、これまでの議論をお聞きになっていかがでしょうか。

舛添国務大臣 今、郡委員の方からさまざまな事例が御報告ありました。

 例えばがん対策にしても、これのための検診の予算といわゆるメタボの予算は別ですから、例えば、財政的に見て、メタボをやるから予算がなくなってがん検診をやれない、そういうことではないと思いますけれども、例えば人手が十分でなかったとか、さまざまな事情があると思いますので、現状をつまびらかに調べた上で、がん検診にしても、これは五〇%以上というのを目標で掲げておりますので、きめの細かい指導を市町村に対してやっていきたいというふうに思っております。

郡委員 それから、私もエビデンスがこちらはないんじゃないかとあえて申し上げました腹囲の問題のお話を聞かせていただきたいんです。

 私たちの日本は、世界で唯一、男性が八十五センチで女性が九十センチ、女性の方が大きいわけですね。現行の基準では、高血圧、高血糖などのリスク因子を持つ女性の八割以上を、九十センチと余りにも大きい腹回りにしたために見逃してしまうんじゃないか、こういう研究結果も出ています。

 基準の見直しを求める研究者は本当に大勢おいでです。日本内科学会など腹囲基準を定めた八学会は、ことしの三月に再検討をする方針を打ち出しまして、厚労省は二万四千人を対象とした大規模な疫学調査を行う研究班を設置して、メタボ診断基準の見直し作業に着手をされていると承知しています。海外におきましても、ことしの二月から診断基準の統一に向けて協議が進められているというふうに聞いています。しかも、この統一基準では、腹囲は、おなか回りは必須条件ではなくなる方向だというふうに報じられています。唯一これが残るのは日本ということになろうかと思います。

 厚労省の研究班が茨城県内でおよそ二万六千人を対象として実施した疫学調査では、日本の基準でメタボリックと診断された人が心血管疾患を発症する危険性は、メタボじゃないと診断された人と変わらなかったじゃないですか。

 エビデンスが不確かなメタボリック症候群の診断基準に基づく特定健診を即刻中止されるべきだというふうに思います。そして、健診の目的が何なのかということを改めて問い直すべきではないでしょうか。

上田政府参考人 メタボリックシンドロームの診断基準についてお答えを申し上げます。

 何回も繰り返しここで御説明をしていると思いますが、日本内科学会等八学会が平成十七年四月に定めました診断基準を踏まえ、有識者による検討を行った上で決定したものでございます。また、日本内科学会におかれても、メタボリックシンドロームの診断基準として現時点では直ちに変更することはない、このようにおっしゃっていると承知をしております。

 しかしながら、仮に、科学的な知見の集積等により日本内科学会等八学会の基準の見直しが行われること、あるいはそういう知見がさらに蓄積をしてくることがあれば、必要に応じて見直しを検討したいというふうに考えております。

郡委員 ニューヨーク・タイムズにも、ことしの六月、皮肉をたっぷり込めて、日本は細いウエストを求めて大勢の人たちをはかっている、こういうような記事も出されました。それから、北里研究所の先生がイギリスの医学雑誌「ランセット」に研究を発表しているんですけれども、男女二十人の腹囲を医師と看護師十人が測定した結果、同じ人の腹囲が、測定者によって平均四・一センチから最大七・八センチもずれたというんですよ。これは笑えない話だと思いますよ。

 しかも、腹囲を初めとする診断基準をつくられた学会の先生方に、それぞれの大変深い、お薬をつくっている製薬企業から、何と多額の寄附金があったということが報じられています。二〇〇二年から二〇〇四年の三年間で、これらの医師十一人に対して十四億円もの寄附があった。

 この利益相反の問題につきましては、私も以前にも指摘をさせていただきましたけれども、寄附金が悪いというふうには言っておりません。しかし、特定のところと深い関係を持って、その薬を使いなさいというふうな指導がなされるとすれば、これまでもさまざまな薬害の問題もありましたけれども、国民にとっては大変不幸なことです。

 しっかりとしたルールをつくるべきであろうかと思うんですけれども、今回の特定健診の診断基準をつくるに当たっての利益相反の関係についてはどのようになさっていたのか、そしてまた、読売新聞の記事だったかと思いますけれども、新たに出てきたこういった事実を踏まえて調査等はやられていらっしゃるのかどうか、お尋ねしたいと思います。

上田政府参考人 このような基準をつくる際に、さまざまな専門家とか有識者が参加をしていただきまして基準をつくることになりますが、もちろん、こういうことに携わる専門家の方々が企業から資金提供等を受けることによって公正な判断がゆがめられることがあってはならないと考えております。こういうことで、こうした基準策定に当たっては、手続の公正性、透明性を確保することが重要だと考えております。

 厚生労働省といたしましては、厚生労働科学研究費につきましては、現在、そのような利益相反に関する基準を示しているところでございますが、それ以外のことについてはまだ研究を行っている段階でございます。

 ただ、議員御指摘の、特定健康診査、特定保健指導における基準につきましては、学会において定められた診断基準を踏まえて、三十人のさまざまな分野の有識者によって公開の場で審議されたものでありまして、この点では公平性、透明性が確保されているものと考えております。

郡委員 時間ですので、まだまだ申し上げたいことはたくさんありますけれども、この特定健診につきましては、各自治体でデータの不都合が生じていたり、大変な混乱を招いているということもございます。

 この問題も含めて、保険者、医療機関等で問題や課題の洗い出しというのでしょうか、今月の五日に初会合が持たれたというふうに聞いておりますけれども、行政として、ぜひこれをオープンにして、折々に説明をしていただきたいと思います。

 問題が提起されているのであればそれを明らかにすべきだと思いますし、ぜひ見直していただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

田村委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 前回の厚生労働委員会でも質疑が行われ、また昨日、参議院の厚生労働委員会でもやりとりが行われたと聞いておりますが、都立墨東病院で本当に不幸な出来事が起こってしまった、周産期あるいは救急医療との連携の関係を中心にお伺いをさせていただきます。

 大臣におかれましては、墨東病院にも早速行かれ、本当にでき得る限りの対応を既に行っていただいている部分については私も認識をさせていただいております。

 しかしながら、やはり政治は結果でございますので、具体的な質問に入る前に、まず今回の東京都立墨東病院における妊婦の方の死亡の件、この件につきましては、きょう、資料の一ページ目にもこういう形でつけさせていただくことになって、私もこういう資料は余り好ましくないという思いを持ちながらも、この大きな見出し、「産科医不足 また悲劇」ということになってしまっております。

 この「また」の部分を考えるときに、私自身も、二年前の奈良県で起こりました妊婦の高崎さんの事例でございます。あのときに本当にいろいろな指摘をさせていただいた部分、きょうもその当時の資料を、当時の柳澤厚生労働大臣の答弁も含めて、四ページ目、五ページ目にもつけさせていただいておりますが、当時、二年前の時点で既に、例えば救急搬送情報ネットワークの整備あるいは広域連携網への取り組み、これは当時の柳澤大臣も約束をされておられますし、あるいは周産期と救急との連携についても指摘をされておりました。しかしながら、そういった部分がまさに今回の件について生かされることなく、たび重なる悲劇が繰り返されているという状況でございます。

 実は、本日の質問に先立ちまして、昨日、奈良の高崎さん、亡くなられた妊婦の方の御主人にもお話を改めて伺いました。当事者の声は政治に届いていないと言わざるを得ない、そして、毎月墓参りを欠かさずやっていて、当時生まれた奏太ちゃんがもう今二歳になってきて、お母さんとそっくり、こういうようなお話を聞くときに、あるいは昨年、同じく奈良県で死産という形も起こってしまっておりますし、今回の墨東についても、大臣も行かれたということですが、私も院長さんにお話も伺ってまいりました。御遺族の方にもぜひお話をというふうに担当弁護士さんを通じてお願いをしましたが、もうそういうふうな今お気持ちになれない、これは察するに余りある。

 そういう状況が重なっている中で、私は、大臣に対して大変厳しい言い方になりますが、やはりまず、今回墨東病院で起こってしまったことについて、何よりも御遺族の皆さんにおわびの言葉を申し上げていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 大変不幸な事案が起こり、私も全力を挙げて、就任以来この問題に取り組んできております。

 さまざまな要因、さまざまな原因があると思いますけれども、命を救えなかったということに対しましては、厚生労働行政の責任者として本当に申しわけないと思っておりますし、その反省の上に立ってきちんと、これは国だけではなくて、東京都立墨東病院ですから、都の行政の対応についても反省してもらわないといけない点もあると思いますから、都とも協力する、そして各自治体と協力する。

 私は江戸川の医師会にも、実は六月にも行ってきてこういう問題を議論した、まさかまたすぐ行くとは思わなかったんですけれども、医師会の皆さん方の御協力も得るようにしました。これは、みんなで協力して前に進めないといけない課題だと思っています。そのためにも、原因の究明をしっかりやらないといけないと思っていますので、今もそれを続けているところでございます。

柚木委員 大臣から、大変真摯な姿勢、お言葉をいただいたと思います。

 まさに今、東京都のことに関しても言及をいただいたんですが、私は、石原都知事のこの間の、この件についての御発言というのは、ちょっと当事者意識を欠いたものであると言わざるを得ないという印象を持っております。昨日、経産大臣の二階さんの発言もありました。いろいろな発言が出ています。そのたびに、現場の最前線で頑張っていらっしゃる方々、あるいは御遺族の方々、これまでにも重なっている部分、本当に心を痛めていらっしゃる。

 私は、実はそういう意味では東京都に対しても、厚生労働行政を所管する大臣として、まさに都知事の御認識自体、今大臣からはおわびの言葉をいただいたと思っておりますが、都知事自身も、やはりまずすべては、おわび、謝罪をしていただくことから本当の意味での対策が始まると思っております。

 東京都知事に対して大臣が余りこういうことを、コメントを求めるのもあれですが、この間の都知事の御発言等についての御認識というのを伺えればと思いますが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 石原都知事が細かくどういう御発言をなさったかはつまびらかに存じ上げませんけれども、ただ、私が江戸川の医師会に行きましてそこでお伺いした話は、墨東病院がこんなに深刻だということを、江戸川を含めて三つの区の医師会の皆さん方が二月から陳情をやっていた。つまり、土日にたった一人しか当直医がいない。それは、総合周産期センターの施設のガイドラインには複数が望ましいとしか書いてありません。しかし、やはり一人では無理なので、地元からの御要望があったのをこの期に至るまで放置なさってきた、こういう事件が起こらなければそこに手を加えない、そういうことはやはり反省しないといけない。

 私の立場からいうと、現実に六月に江戸川に行っておきながら、これは実は、地元の医師会と二次救急とのネットワークの調査に行ったものですから、私が帰った後に三次救急の話をなさったというんですけれども、そのときに、墨東がこういう状況であるというのは私は知らなかった。これは反省しないといけないということで、十月二十七日に全都道府県に通達を出しまして、現状がどうであるのか、改善策が考えられるとすればどうなのかということで今調査をしています。

 情報をきちんととるという努力に欠けていたことは私自身反省しないといけないと思いますので、各自治体等も含めて、協力しながら前に進めたいと思います。

柚木委員 ありがとうございます。

 そういう東京都の実情、きょうの新聞にも、読売新聞には、東京都は昨年、搬送のワースト五十件中十二名が死亡ということで、我が党の長妻議員の調査要求に対しての回答ということで出ておりますし、また一方では、私に言わせていただくと今さらなんですが、ようやく「全三百三十三施設検索可能に」ということで都が新システム導入という報道も、けさの産経新聞朝刊に出ております。

 こういう報道がなされている中で、具体的に、大都市圏における周産期医療体制の整備について幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の救急患者受け入れコーディネーター配置というのが、二十年度からの新規施策ということで厚生労働省の予算化もされ、行われております。ところが、初年度のことしは、大阪府、兵庫県の二県しか申請対象となっていないということでございまして、まさにきょうの報道でも明らかなように、東京を初め首都圏の救急医療危機が言われて久しい中でようやくコーディネーター配置を、調査報告の中にはまとめたということが触れられておりますが、まさに後手後手の対応なんですね。

 ですから、今大臣、そういう取り組みをしっかり現場の話を聞いてやっていくということでございましたので、当然やっていただきたいと思いますが、逆に、一つ私は、やはり政治は結果という意味で気になるのは、奈良の昨年の死産を受けての調査報告の中に、今回の二十年度から実施をされている救急患者受け入れコーディネーター配置ということが明記をされておりますが、実は、一昨年私がその質問をさせていただいた際にもこのことは取り上げられて、取り組むという答弁をいただいているんですね。

 ということは、例えば二年前、あるいは昨年の十二月十日の報告書等以降、すぐに東京都でコーディネーターの配置等を行っていれば、今回の十月の墨東の件のみならず、そのわずか二週間前にも、救急搬送の関係で、現在墨東病院に重体の状態で御入院をされている妊婦さん、こういう事例は防ぎ得たのではないかと思いますが、この点についての認識はいかがでしょうか。

舛添国務大臣 これは委員が御指摘のように、行政の立場で厚生労働省としてもきちんと反省しないといけないのは、予算をつける、つまりコーディネーターを置けば補助を与える、しかし、実際にそれがどうなっているかということのフォローがきちんとなされていない。今、私は、厚生労働省改革の一環として、この場で私が申し上げたことに対して省を挙げてきちんとやっているかをフォローして報告させるようにしております。

 今、こういう事態が起こりましたので、例えば千葉県とか奈良県は十月現在でもうコーディネーター申請予定だし、あと宮城、福島、茨城など、検討中のところは十県ぐらいあります。

 ただ、こういうことも、私は実は、知事会と私との定期会合を設けてやっておりますので、次回開くときには直接、各都道府県の知事さんに、ぜひこれを前に進めてくれ、政治的リーダーシップを発揮してくれということを要請したいと思っております。

柚木委員 そういう意味では、それに関係するお願いになるんですが、今まさに知事会との間で連携という部分でもおっしゃっていただきたいんですが、昨年十二月十日の報告書には、いわゆる越境の救急搬送体制の整備についても触れられております。奈良県で起こった悲劇への対応という意味では、近畿二府七県での広域連携が行われている部分について、国としても、今後、このような先進的取り組みについては参考として各自治体に情報提供するというふうに触れられておりますし、実際、二年前、柳澤大臣からもそういった答弁をいただいているんですね。

 ところが、昨日厚労省に伺った限りでは、これも、いわゆる首都圏、東京以外の近隣県、神奈川、千葉、埼玉からいろいろな搬送流入もあります、そういう中で、首都圏における広域連携の取り組みが具体的になされていないということでございますので、今の答弁に重ねてということになりますが、そういった意味での県境を越える部分での広域連携についても、大臣からしっかりと指導していただくという御答弁をいただけますでしょうか。

舛添国務大臣 実は、昨年の奈良県のいわゆるたらい回しの件について、早速荒井知事と議論をし、それから当時の太田大阪府知事とも議論して、今、これは関西においては大阪、京都、兵庫、三重、奈良、和歌山、この六府県で情報共有できるシステムができてございます。

 こういうことについて、首都圏においてもきちんとやれるように指導していきたいと思っております。

柚木委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 それで、そういうことを具体的に今ある体制を前提にやっていくことは重要ですし、実効性もあるんだと思いますが、次に、もう一点私が提案をさせていただきたいのは、そういう形での広域連携だったり救急患者の受け入れコーディネーター配置だったりはされるんですが、一方で、この体制、首都圏、大都市圏と地方とを比べたときに、例えば、地方なんかでいうと、もうその一カ所が断ったら受け皿がないから必ず受ける。例えば、私の地元の岡山県では二カ所、総合周産期センターがありますが、倉敷の中央病院というところは、とにかく搬送依頼が来たら必ず受けるというようなことでして、まさに最後のとりでという状況。

 ところが、首都圏、特に東京の場合、二ページ目にもおつけしましたが、九ブロックに分かれていて、今回の墨東を含む江東、区東部であったり、あるいは、その墨東病院自体が多摩ブロックの多摩当番という対象であった部分が九月のあれでもありましたが、その多摩ブロックであったり、大変にそういう意味での受け皿として機能し得ていない状況がある。

 ただ、ほかのブロックにもそういった受け皿、センターがあるものですから、今回、情報検索システムの不備も言われましたが、ともすれば、大臣、こういう九ブロックある中で、確かにいろいろな部分で受け入れが大変なんだけれども、そんな中で、ほかがあるからという部分でなかなか搬送先が決まらない、そういう事態もひょっとしたら起こっているんじゃないかということがございます。

 そうした場合に、ぜひ御検討いただきたいのが、例えばこの首都圏、あるいは奈良なんかも含む関西圏、こういった大都市圏でのたらい回しを防ぐためには、搬送は必ず受けるという、例えばそういった救急センターを国立で一カ所、それぞれ設置するとか、そういうような取り組みも一方でお考えいただくことが必要なのではないかと思いますが、この点についての御見解、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 母体も子供さんの方も救うということになると、NICUが満床だと責任が持てない、特に小さく生まれてくる赤ちゃんなんかについて。そのことが一つあります。

 ですから、やはりNICUをきちんと備える、そして、そのためには後方の支援体制。あれは長くそこにいないといけないですから、いつまでたってもあかないわけですね。そういう問題もあると思いますし、それから、大人用のベッドもあいていないというようなことがありますから。

 それから、今回の件もいろいろ調べていますけれども、かつての墨東は、今倉敷中央病院でおっしゃったように、何があっても受け入れるよという形でやっていたということも、そういう産科の部長さんがおられたというような話も聞いているし、いろいろな情報が寄せられておりますけれども、総合的に、本当に最後のとりでになるようにしないといけないと思います。

 今回は、特に救急と周産期の連携がやはりなっていなかったということで、今、この両方の専門家で検討会を開いて、十二月までに今言った点も含めて結果を出したいと思っております。

柚木委員 ぜひ、結果を出していただくまとめをいただきたいと思います。

 時間が限られているので、今ちょうど触れていただいた、いわゆる後方支援的なNICUの増床であったり、あるいは、さらにそのNICUの後方病床の増床であったり、女医さんへの支援策。さらには、今回、地域周産期母子医療センター整備についても二十一年度概算要求の中で予算化されておりますので、まさに総合周産期の後方支援という意味も含めて、このあたりへの整備というのはぜひお願いをしておきたいと思います。

 続きまして、今ちょうど、墨東病院さんが必ず受け入れるという部分での御発言をいただいたんですが、そういう意味では、私は、救急受け入れ実績、この評価をしっかりしていただくことが、まさに頑張っている病院ほど今疲弊している状況なわけですよ。ですから、その点についてぜひしっかりと評価をしていただいて、十一月二十八日締め切りの調査ですか、この部分での調査結果を受けて、実際に地域貢献度が高い救急機関と実はそうでもない機関という部分でのいろいろな評価というのもしっかり行っていただきたいと思いますが、救急受け入れ実績評価について、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 実は、今回の墨東の事案が起こったときに、周産期のセンター、それは総合、地域を含めて、一体どうなっているんだということを出せと言ったら、ないんですね。したがって、すぐ今この調査に入れと。だから、これは継続的に、最低一年に一回とか半年に一回はやって、そして不備があれば国としても支援する、そういう体制をつくりたいと思っております。

柚木委員 ありがとうございます。ちょっと都の対応も遅いと思いますが、ぜひよろしくお願いいたします。

 それから、限られた時間なので、あと二つまとめて伺いますが、一つは、二十一年度概算要求の中で新設で、いわゆる分娩手当金、これは産科のお医者さんへの手当金ですね、これについて触れられておりますが、実は、その対象が病院勤務医さんなのか開業医さんなのか助産師さんなのかまだ不明確であるというようなことで、財務当局とは、対象者を精査しないのはばらまきではないかというようなやりとりが行われているやに昨日も聞きました。

 ちょっと私に言わせていただければ、このばらまきという表現は、いわゆる定額給付金で言われているようなばらまきとはわけが違うのであって、ぜひこれは実現していただきたいんです。いただきたいんですが、そうはいっても、目下緊急課題は周産期救急なので、まずは病院勤務医への算定方法をしっかり詰めていただいた上で、重点的に実現をいただきたい、これが一点。

 それからもう一点は、大臣、医師数の増員一・五倍の部分を出されております。まさに過重労働を是正し得るような、地域、診療科ごとの医師数の養成というものを私はこの取り組みの中で期待をしたいと思うんですが、肝心なことは、もう御案内のとおり、そのお医者さんが、不足している地域、不足している診療科に進んでいただけるかどうかなんですね。

 ですから、私も、例えば地域枠と不足診療科への奨学金とのセットというスキームを何度か提案させていただいて、取り入れていただいたので大変ありがたいんですが、ぜひ大臣、今後、その一・五倍の具体的な定数の部分、例えば、都会と地方とで、当然研修なんかはしっかりとしたものが受けられるということを担保した上で、その研修医さんの定員を地域の人口ごとの人口割りにするとか、あるいは、各学会さんの方にいろいろな診療科の定数等の提言をいただいて地域ごとの診療科の定員を決めるとか、そういう具体的な仕組みをお示しいただきたいと思うんですが、現段階ではどのようにお考えでしょうか。

 以上、二点についてお伺いいたします。

舛添国務大臣 さまざまな手当をすることが改善する、例えばハイリスク分娩に対する手当を今年度行いました。その結果、非常にこの点で産科医の皆さん方に感謝をされているし、その点は改善していると思います。したがって、診療報酬の改定を待たないで、直接分娩手当という形で財政措置を行う、そのことによって産科の皆さん方の大変な状況を救いたいと思っていますので、これは全力を挙げて予算獲得をしたいと思いますし、また御支援いただければと思います。

 それから二点目でございますけれども、今回、何とか六百九十三人の定員増をかち取りましたけれども、こういう動きとともに、今委員がおっしゃったような、地域枠を拡充するというようなことで、今、それぞれの大学の医学部からすばらしい提案がどんどん上がってきておりますので、そういうことを含めて、さらにこの問題に取り組んでいきたいと思っております。

柚木委員 終わりますが、今回、都立墨東病院ということで、都立という公立病院でこの事例が起こったんですね。国公立病院、周産期医療センターの中でも随分……

田村委員長 時間が経過しておりますので、手短にお願いします。

柚木委員 はい、終わります。指定されておりますので、今は経営状態が大変なんですが、ぜひ、この公立病院の総合周産期救急、救急だけではないんですが、その位置づけというものも今後大事にしていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田村委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田でございます。

 午前中最後の質疑者という形になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。そしてまた、きょうは時間がありませんので、私も手短に質問をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、今皆様方のお手元にお配りをさせていただいておりますけれども、政府・与党の十月三十日に出されました生活対策ということで、新たな経済対策に関する政府・与党会議及び経済対策閣僚会議合同会議における決定ということで発表されたものでございました。

 この資料一枚目にありますように、先般、高橋委員もお取り上げをされましたけれども、介護報酬の三%アップという形で出されているわけでございます。それにもう一つ、十万人程度の介護人材等の増強という形があわせてうたわれている。これでいきますと「確保」となっているんですけれども、中身を読ませていただくと「増強」という形になっているわけであります。

 この十万人という根拠、これは三年の対策だということで打ち出されているのかなというふうに思うんですが、まず、なぜこういう十万人という数字が出てきたのか。あるいはまた、私の問題意識としては、本当に十万人で事足りる話であるのかという話であります。

 そして、毎年十万人近くの自然増分といいますか、それだけ分の方々が新たにそういう人材として働いていただいているわけでありますけれども、その自然増分のほかに、プラスアルファして十万人をさらに増強するという厚生労働省あるいは政府からの見解を発表されたのかというところをまずお伺いをしたいと思います。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 介護人材の状況でございますが、先生御存じのように、他の諸産業に比べまして離職率が高いとか、あるいは養成校の定員割れの状況も続いているとか、そういう意味で、一部の地域あるいは事業所によっては大変人材確保が難しいというふうな状況も生じております。

 それで、今般の生活対策でございますけれども、こういう状況に対応するということで、処遇改善に取り組むということに加えまして、一つは、介護福祉士等の養成校への入学者に対する修学資金の貸し付けをする、あるいは二つ目に、潜在的な有資格者等の再就業を支援するために研修を実施する、三つ目に、年長フリーター等を介護人材として確保、定着させた事業所へ助成をするというふうな事業を盛り込んでおります。

 御指摘の十万人という数字の問題でございますけれども、私どもとしては、今回新しくこういう事業を実施いたしますので、それの対象者数を推計いたしますと、三年間で約十万人というふうになるのではないかというふうに思っております。

 今後、この対策を具体化していく中で、各事業について十分な成果が得られますように、実施方法等について十分検討していきたいというふうに思っております。

園田(康)委員 そうしますと、やはり増強ということでありますので、さらに上乗せをした数字へと努力を行ってほしいというふうに申し上げておきたいと思います。

 さらに、私の資料の二枚目でございます。

 そこで、先般も取り上げられた介護報酬の三%アップについての中身でありますけれども、この一番下のイメージでいきますと、初年度、来年度でありますけれども、初年度は改定増分の全額をこれは国庫負担で賄う。三年間で一千二百億円程度ということでありますけれども、この図でいきますと、来年度と再来年度の国庫負担分を補助するという形になっていて、恐らく、事務的な経費も含めて一千二百億円程度を見ておられるんだろうと思うんです。

 そうなると、介護報酬のこの部分だけでいくともう少し、下限の数字で国庫負担分が出てくるのかなというふうには思うんですが、そうなりますと、ざくっと計算して、仮にこの三年分の改定増分を、保険料の負担を国庫で賄うという形になれば、今計上されておられる一千二百億円プラスすることの、その倍の額で改定増分ができるというふうに計算できるのではないかなと思うんですが、この千二百億円というところに設定した根拠というものはいかがお考えでしょうか。

宮島政府参考人 お答え申し上げます。

 千二百億円の根拠でございますが、今回、生活対策において、介護報酬をプラス三%するということになりました。この介護報酬のプラス三%の改定をしますと、それに伴って保険料の増額があるわけですが、その分の保険料増額というのは、つまり介護報酬を増しますと、介護の費用負担というのは保険料で半分持っています、それから半分を公費で持っていますので、したがって、そのことを踏まえると、この改定増、二十一年度の上昇分で全額、それから二十二年度の上昇分は半額を国費で持つということにしたわけでございます。

 このようなことで、御指摘のとおり、全部公費で持ったのではなくて、ならしますと保険料上昇分を半分持ったわけですが、これは、第四期の介護の計画期間が終わると急に保険料負担が三年後にアップするというのはいかがなものか、しかも、介護保険は、半分保険料でという制度でございますので、そんなことを勘案して千二百億円ということになっているものでございます。

園田(康)委員 私が申し上げたいのは、一千二百億円程度で、この保険料の負担の抑制ということだけで生活対策とするのは、いわば軽薄な政策であったのではないのかなと。むしろ、それだけ皆さん方がおっしゃるのであるならば、その倍額の二千四百億円を出して、この間、あるいは本来ならば、これは生活対策という形の対策で行うべき話ではないのではないのかと私は考えているわけであります。

 すなわち、恒久的なものとしてこれからしっかりとこの介護保険制度の全体的な流れを考えていくということであるならば、きちっとした制度で、保険料が幾らになるのか、あるいは公費負担が幾らになるのか、そしてそのうちの国庫負担は幾らになるのかということを制度の中に組み入れながら考えていただきたいと私は申し上げておきたいと思います。

 そこで、最終的には大臣、先般から少しお伺いをしておりますと、大臣もこの点は、恒久的なものを何か、これから介護保険制度を安定的なものとして考えたいというふうなことをおっしゃっておられたわけでございます。時にそれがフィフティー・フィフティー、保険料半分、そして公費負担が半分という形。あるいは、時にはそこから税の負担が、もし仮に税制改正が行われて持続的な形というその財源がきちっとしたならば、それが六対四になるのか、あるいは先ほど三対七というふうにおっしゃって、少しまた先般よりも上がったんですけれども、そういう問題もやはりこれからきちっと議論をしなければいけないのではないのかというふうに私は考えておるところでございます。

 そこで、きょうは余り時間がありませんので、今回、三%介護報酬がアップになりました。ここで、政府も発表されておられたところには月額二万円アップというふうに書かれております。

 私どもも、そのことは一緒になって前国会で議論をさせていただいて、できるだけ多くの方々の待遇改善に結びつけていくべきではないのかというところで、標語的に二万円アップというものを私どもも使ったことはありますけれども、実際、この月二万円アップということに介護報酬三%アップがきちっとつながっていくのかどうか。その辺のお考え、御認識をお伺いしたいと思います。

舛添国務大臣 今の仕組みから申し上げますと、各事業所がどういう形で介護の労働者の方々に払っていくかということになります。

 しかし、きちんとつながっていくようにさまざまな手を打っていきたいというように思っておりまして、私は、もうずっと前からこの介護報酬を上げるということを言って、上げるについては保険料とのバランスがありますから、こちらの負担が重くなってもだめだと。今回、その部分を千二百億円見るということですから、そういう意味で生活支援になるわけですけれども。

 一つは、平成二十一年四月の介護報酬改定では、細かい、事業所がどういう状況なのか、それから手厚い人員配置を行っているところにはきちんと配慮してあげる、そういうこともやらないといけないですし、介護従事者に対して雇用管理を改善する事業主にはちゃんと手厚くする、それからさまざまな経営モデルを提示するというようなことで、そういう施策を通じながら、きちんと介護従事者の処遇の改善につながるように全力を挙げたいと思っております。

園田(康)委員 ぜひ、その点はお願いを申し上げたい、改善につながるようにということをお願いしておきたいと思います。

 私自身、必ずしも制度全般をこれでよしとするわけではありませんけれども、今の現状を踏まえると、緊急対策的にやるのはいたし方ないことなのかなというふうには思います。ただ、根本の介護保険制度そのものを考えたときに、この制度で本当にいいのかというところは少し議論の余地はあるのではないかなというふうに私は思っております。それは、おいおいまた大臣と議論をさせていただければなと思っております。

 きょう私が本当に申し上げたいのは、介護保険制度、介護報酬のアップは、それはそれでもちろんやらなければいけないというふうに思っておりますけれども、一方で、この委員会でも議論をさせていただきましたけれども、では、介護の現場だけで本当にいいのかというところはありましたよね。

 すなわち、障害のサービス事業者で働いていらっしゃる方々の待遇改善というのもやはりきちっと同時に考えておかなければいけないのではないか。それはもうおっしゃるとおりでありまして、私もそういう御指摘をいただいて、私自身、障害の団体等の皆さんとも議論を重ねてきながら、この自立支援法そのものによってさまざまな弊害というものが出てきた、そこで今般政府が行った緊急対策、あるいは特別対策というような形でこの間それぞれやってこられたのは事実でありますけれども、しかしながら、そこから、それでもまだ厳しい経営状況とそこで働いていらっしゃる労働者の方々、介護従事者の方々が浮き彫りになってきた。ある調査によれば、事業所の約六割は、減収分を人件費で整理しなければいけなくなった、見直しをしなければいけなくなったというようなところも出てきているというのがあります。

 そこで、今ようやく、厚労省で福祉サービス等の経営実態調査というのを行っていらっしゃるというふうに私は伺っているんですけれども、ここで、この結果を踏まえて、障害福祉に従事する方々のいわゆる待遇改善というものに結びつけていくことを考えていかなければいけないのではないのかというふうに思うんですが、大臣、その点はいかがお考えでしょうか。

舛添国務大臣 ことし、一万七千カ所の障害福祉サービスの事業所の経営状況の調査を行いまして、今鋭意、集計、分析を行っているところで、これはまた明らかになったら公表いたします。

 社会保障審議会の障害者部会においても、制度全般についての見直しを進めるようにということが法施行後三年をめどに決められていますけれども、先ほど申し上げました経営実態調査の結果などを踏まえまして、必要な制度の見直し、それから報酬の改定、これに向けて全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

園田(康)委員 おっしゃるとおりで、自立支援法の見直しは、来年が三年目の見直し、三年後をめどとしてということで決められているわけでありますので、ぜひ、報酬改定も含めて取り組んでいただきたいというふうに思います。

 その見直しでありますけれども、ごく簡単で結構でございます、今、さまざまな観点から具体的な見直しの検討作業が行われているというふうに私も承知いたしておりますけれども、その検討状況はどのようになっていますでしょうか。

 とりわけ障害の範囲の問題と、それから所得の確保、この問題については三年後の、来年の見直しではありませんけれども、しかしながら、どうせ見直しに着手しているということであるならば、きちっと検討を進めていただきたいというふうに思っているんですが、いかがでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者自立支援法の見直し、今大臣申し上げましたように、三年後を目途とする見直しの検討作業を今行っております。

 その中で、障害者の方々の自立した日常生活を目指す施策の充実のために論点を挙げておりますが、今先生お挙げの論点以外にも、ケアマネジメントのあり方の相談支援というものを充実していく、あるいは地域への移行をさらに進めていって自立した生活を送っていただく、あるいは障害児の方々の支援策をどのように考えていくかというような幅広い論点を挙げて、年内に意見を取りまとめていただくべく精力的に御審議をいただいております。

 今御指摘の障害者の範囲等の問題につきましては、障害者がこの自立支援法上のサービスをより受けやすくするために、例えば発達障害、高次脳機能障害を初めとするような方々の、今でも障害者の施策で受けられているんだけれども、それをより明確にしていただきたいというようなことも含めて、そのあり方について御議論いただいている。

 また、所得の保障のあり方につきましては、現在、年金、手当、あるいは就労の支援というようなことでさまざまな支援措置が行われておりますけれども、これをきちんとやっていくとともに、今後のあり方については、財源の確保の制約はございますが、どのように考えていくかというような論点を挙げて御審議をいただいているということでございまして、この御指摘を受けながら、全体の必要な見直しを進めてまいりたいというように思っております。

園田(康)委員 ただ、今部長の、見直しの範囲の中でちょっと私、一点だけ気になったんですけれども、要は、発達障害、そして高次脳機能障害、ここの部分に関してはというふうにおっしゃっていただいたので、僕らは、それももちろんのことですけれども、難病の方々もやはりきちっとした対象となるように、すき間なくこの案件を取り扱っていただきたい、議論をしていただきたいというふうに思いますので、御要望だけ申し上げておきます。

 最後になりますけれども、大臣、今般の経済状況をかんがみたときに、大変厳しい状況がこれから予想されるであろうというふうに思います。私の資料の一番最後、四ページ目でありますけれども、「障害者の解雇数の推移」というのがあります。これは、先般、厚労省の方から私に届けていただいたものでありますけれども、バブル崩壊後の平成十三年、このときが一番ピークであったわけでありますけれども、そこから少し減少傾向にあって、また昨年度から少し上昇、この推移が、解雇数がふえてきているという現状が浮き彫りになってきております。

 ことしはさらに、まだこの段階でも、上半期でいくならば七百八十六人と、前年度よりも若干ふえている。これから年末にかけてさらにふえていく可能性も危惧されるわけでございます。ここの部分に関して、やはりしっかりとした手だてを打っておかないと、一番最初に解雇、整理されるという部分が、今までニュース等では派遣労働の方ですとか期間工の方ですとかというふうに、それだけがピックアップされておりますけれども、障害者の方々もそういう傾向にあるんだというところからすれば、この辺は気をつけておかなければいけない、対策をきちっと打っていただきたいというふうに考えているわけでございます。

 今、この国会で雇用促進法の改正案が審議されておりますけれども、これと、さらにしっかりとした手だてを打っていただきたいというふうに思っているんですが、大臣、あるいは部長でも結構ですが、御答弁をいただきたいと思います。

舛添国務大臣 今委員おっしゃったように、障害者がこの厳しい経済状況の最初の犠牲になってはならない。

 そういう意味で、先般の緊急総合対策、これは八月二十九日、この中で、中小企業に対する障害者受け入れ支援の拡充、ハローワークの機能強化による障害者の就職、職場定着支援を打ち出すとともに、先般の十月三十日の生活対策において、障害者雇用の経験のない中小企業に対する奨励金の創設、障害者雇用の特例子会社等の設立促進助成金の創設ということで、全力を挙げてこの分野においても努力してまいりたいと思っております。

園田(康)委員 よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

田村委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十九分開議

田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本です。

 まず冒頭、午前の柚木委員の質問に対して、私からも改めてちょっと確認をしておきたい。

 大臣が明確にお答えになられなかったものですから、私、お聞きをしたいと思っておるんですけれども、今回の墨東病院でのいわゆる産婦人科救急における事件について、事件と言うべきか、事象について、大臣としては、これは東京都に、もっと言えば都知事に責任があるというふうに、幾ばくかでも責任があるというふうにお考えかということについてお答えになられていなかったような気がしましたので、それについては大臣はどのようにお考えかということをお答えいただきたいと思います。

舛添国務大臣 柚木議員の御質問が、都知事の発言についてどうかということをおっしゃったものですから、発言についてはつまびらかにしませんということが一つ。

 しかしながら、江戸川の医師会を訪れたときに、二月から都に対して要求をしていたんだ、それに対してきちんと対応できなかったことについては、私は、都は責任がある。そして、これは都立病院ですから、それはきちんとやっていただきたいと思います。そして、国が責任逃れするためにそういうことを言っているのではなくて、国も全力を挙げてやらないといけない、我々も反省すべき点はたくさんある、そういうふうに思っております。

岡本(充)委員 都の責任を大臣としてもお考えになられているということでありますから、これはしかるべき対応を当委員会でも考えていかなければならないんではないかというふうに思っておりますし、厚生労働省においても真剣な対応を求めたいと思います。

 これとあわせて、昨今、年末に向けて二十一年度の予算が組まれていく中、やはり大変関心を集めているのは社会保障費の二千二百億円の削減をどうしていくのかということですよ。実際にさまざまな御意見があると思いますけれども、今回の給付金ですか、二兆円お金があるんなら、この二千二百億円、少なくとも数年、まずは財政的な担保ができるまでの間、削減をちょっと待つとか、何らかの措置がとれるであろうと私なんかは考えるわけです。

 そういう意味では、大臣、来年度もこの二千二百億円の削減というのはやっていく、そういうお考えなんですか、それとも、その話が出たときには、極論を言えば、閣議の中で明確に抵抗をされるぐらいの強い決意がおありなのか、そこをお答えいただきたいと思います。

舛添国務大臣 民主党の岡本先生から、それから先ほどは我が党の清水先生から同様の意見を賜りました。

 麻生内閣の一員として、政府そして与党の協議の中において、私は、二千二百億の削減はもう限界に達しているということを今後とも言い続けて、それは、私の考えからすると、これをもう完全になくしてしまうというのが一番いいわけですから、そういう方向での努力は全力を挙げてやります。

 しかし、さまざまな議論がそこであるでしょうから、その願いがかなうかどうかはわかりません。しかし、もう限界に達しているということで、今の岡本委員、そしてまた清水委員の先ほどの意見も大変貴重なものと思いますから、それを胸に秘めまして、しっかりと主張すべきは主張して予算の編成過程で努力をしてまいりたいと思います。

岡本(充)委員 そういう意味では、私も閣議の中でどういう議論をされているかわかりませんけれども、ある意味、自分の首をかけても自分の信念は曲げないんだと言って更迭をされた大臣も、私の記憶をする中でも平成十七年にお見えだったような気もします。そういう意味では、自分の首をかけてでもこれは問題があるということを言うぐらいの覚悟をお示しいただきたいし、やはり現場はそうやって願っていますよ。それを言えるかどうかが大臣としてこれから大きく評価をされるかどうかの分岐点なんじゃないかなと私は思っています。

 二兆円の定額給付の話はここで議論する話ではないんですけれども、これも、正直言って、これだけのお金があるんだということをいろいろな人が知ってしまったという部分もあります。埋蔵金はない、ないと言われる中、実はお金はあるんじゃないかという話になっています。

 率直に、麻生内閣のメンバーの一人として、この定額給付金、二兆円をこういう方法で、閣議でも決められてやっていくという話、舛添大臣はどういうふうにお考えなんですか。

舛添国務大臣 アメリカ発の金融危機ということで、非常に現下の経済情勢、これは実体経済にまで影響を及ぼしているので大変な状況にあると思います。その中で、きょうも午前中の議論でありましたように、失業者の増大、その他さまざまな問題が出てきていますから、直接的に現金の支給というのは、それぞれの家計にとって非常に助かることであろうし、一定の成果はあると思います。

 しかしながら、委員がおっしゃったように、社会保障全体についてどうするか。今回のは目の前の経済情勢に対しての一つの効果的な策だと思いますけれども、片一方で、老後そして病気になったとき、職を失ったとき、そういうときの持続的、継続的な安心の基盤はつくらないといけないというふうに思っていますので、両方が実現できるように頑張りたいと思っております。

岡本(充)委員 今いみじくも大臣がおっしゃられましたように、結局、皆さんがお金を使うかどうかというのは、きょう、あしたの一万二千円、二万円のお金じゃないと思うんですね。やはり将来にわたって自分がどうなるか不安だ、そこに対しての、将来不安に対する解決策が示されないまま一万二千円のお金をもらって、それで喜べという話が私は無理があるんじゃないかと。支給の方法にも問題があるし、額についても無理があるんじゃないかと私は感じています。その意見については大臣はどうお考えになられますか。

舛添国務大臣 岡本委員の御意見も私ももっともな面があるというふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひ改めて再考をされるように、これはやはりまた大臣であるがゆえにできることでありますから、ぜひそこは閣内で十分に御議論いただきたいと思っております。

 さて、きょうの質問通告していた内容に移りますけれども、皆様のお手元にもお配りをしておりますけれども、米国産牛肉の問題ですね。

 引き続き今これだけの違反事例がある。同じ会社の同じ工場で違反事例を起こしており、これはどれも、実は、アメリカからいわゆる再発防止措置なり改善措置を申し出てくるいわゆる調査報告書が提出されると、すんなり輸入禁止措置の保留が解除されているんですね。これは、再考を求めたり、もしくは場合によっては見直しを求めるなど、討議をしていくべきではないか。

 これを見ると、いわゆる報告書が出て、そう間もなく保留を解除する、こういうふうになっています。しっかりと中身を検討し、そして場合によっては一回はねるぐらいの話があってもよかりしに、これではしゃんしゃんだと言われても仕方がない。ここは改めて対応を吟味してもらいたいと思うわけですけれども、大臣にお答えをいただきたいと思います。

舛添国務大臣 この米国産の牛肉の問題のある混載事案につきましては、まず、これを発見次第直ちにその肉を処理した施設からの輸入を停止する、その上で報告書を求める、そしてその報告書についてもきちんと農林水産省とともに内容を精査し、そしてまた現地の調査も行っているところでありますので、今後ともその基本的な姿勢を堅持して、報告書についても厳しく内容を吟味したいと思います。

岡本(充)委員 もちろん十分な報告書が来ればいいですけれども、場合によっては突き返すぐらいの話があってしかるべきだということを指摘しているわけです。

 その上で、おめくりをいただいて、これは二の一となっていますページですけれども、「米国の規制改革及び競争政策に関する日本国政府の要望事項」、これは毎年日米間で出し合っているものなんですけれども、平成十九年十月十八日発行の要望事項の中には、BSE対策で飼料規制とサーベイランスというのが入っていました。ところが、ことし十月十五日に発行されたこの要望事項の中からはこれがもう完全に消えてなくなっています。

 大臣は、このことについて農水省と議論をしたり、もしくは削除するということについて御了承されているんでしょうか。

舛添国務大臣 専ら飼料規制については農林水産省の管轄であるということで、農林水産省が食品安全委員会の見解に基づいて対応するということでありますので、事前に、こういうふうにするからとか、したがって、厚生労働省、大臣、これでいいか、そういう事前の照会その他は全くございません。

 サーベイランスの継続に関する要望書が削られたということですけれども、これについても私は事前にかかわり知らないところでございます。

岡本(充)委員 農水省にも来てもらっています。それでいいんですか。これは、厚生労働、農林水産とできちっと協議をして話を進めていくべき課題ですよ。それを、農林水産省単独で勝手に話を進めて、重要な要望を削除したということですよ。

 しかも、これは、実は民主党の方からこの要望を載せるべきだと言って載せてきた。ところが、削除するときには民主党の方にこの内容についてお知らせがないままこれはこっそり削除をして、いろいろな要望事項を出していますけれども、いつの間にか削除をして、削除されているじゃないかとこちらから指摘をされて初めて、削除したんです、こういう話をする。これは信義にもとると言われても仕方がない話ですね。ぜひ、どうしてこれを削除するに至ったのか、つまびらかにしていただきたいんですけれども。

梅田政府参考人 過去二回、平成十八年、平成十九年の年次改革要望書におきましては、食品安全委員会が取りまとめた米国産牛肉等に係る食品健康影響評価の結論への附帯事項におきまして、健康な牛を含む十分なサーベイランスの継続が必要であるということ、また、特定危険部位の、牛用飼料への禁止のみならず、交差汚染の可能性のあるほかの動物の飼料への利用も禁止する必要があるとされたことから、米国側に対し本件を要望してきたところでございます。

 今回の年次改革要望に当たりましては、まずサーベイランスにつきましては、米国では、平成十八年八月に拡大サーベイランスから現行のBSEサーベイランスに移行しましたが、食品安全委員会が平成十九年一月に示しました米国BSEサーベイランス見直しに対する見解におきまして、「高リスク牛により重点を置いたサーベイランスであり、その考え方自体は理解できるものであり、サンプル数そのものは少なくなるからといって一概に問題であるとは言えない」としているということ、また、飼料規制について、米国政府が本年四月の官報告示によりまして、来年四月から飼料規制を強化し、三十カ月以上の牛の脳及び脊髄について、牛用のみならず他の動物への利用も禁止すること等を明らかにしたことから要望を行わなかったところでございます。

 本件に関しましては、今後とも米国におけるBSE対策の実施状況について十分注視していくこととしたいと考えております。

岡本(充)委員 この飼料規制に関しては、まだ、来年の四月から実施の話であって、実際どうなるかもわからないもの、それからサーベイランスについても、決して、食品安全委員会でもう十分だという話になっているわけではない。二〇〇五年十二月のいわゆる食品健康影響評価の結論への附帯事項はまだ生きているわけでしょう。そういう意味では、これが残っていながら、厚生労働省とも相談をせずこの事項を削除したということについては、私は問題だと思っていますよ。

 大臣、ぜひこれは農林水産大臣とよく話をしていただいて、もう一度要望をしていく。し続けることが重要なんです。これをぜひ、行っていただけるかどうか、明確にお答えいただきたいと思います。

舛添国務大臣 食の安全ということは極めて重要な問題でございますので、それぞれ管轄は違いますけれども、農林水産大臣とこの件についてきちんと協議をして、しかるべき対応をしたいと思います。

岡本(充)委員 ぜひ、今からでも遅くない、要望をし続けることが重要だということを対策としてお示しをいただいて、また民主党に、これはそもそも言い出したのは民主党ですから、きちっと御報告をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。

舛添国務大臣 どういう対応をとれるか農林水産大臣と協議をした上で、第一義的には、これは農林水産省の知見の範囲の中でやるわけでありますので、その上で、結果が出ましたらきちんとお知らせするようにいたします。

岡本(充)委員 次に、三ページの方でありますけれども、実は、農林水産省、それと国土交通省については今般、会計検査院から、いわゆる国庫補助事業の事務費の不適正使用について問題点が指摘をされました。

 厚生労働省についても、補助金について、一部事務費があるというふうに私は承知をしておりまして、その資料を出すように二日前から確かに要求を始めたところでありますけれども、きのう、そして本日に至って、やはり出ない。一例だけでも出してくれと言いましたけれども、一例も出せない、例示もできないという大変残念な対応であります。

 私としては、最初は、全部積み上げてくれ、それは無理だ、それはそうか、では一例でもいいから出してくれということで譲歩をしたつもりだったんですけれども、それですらその資料を出してもらえないというのは、大変遺憾であり残念であると思っています。大臣、そういう意味で、対応をもう一度改めていただきたいのが一つ。

 それから、ぜひ、ここにも書いてありますけれども、「相当の日数を要する」と書いてある一ですけれども、これについては早急にお出しをいただきたいと思っております。この国会が終わるともう質問主意書も出せなくなってくるということもありますので、できればこの国会が閉じる少なくとも数日前には出していただきたいというふうに思うわけですけれども、いかがでございましょうか。

舛添国務大臣 地方公共団体向けの補助金ですけれども、これは、補助事業ごとの単位での計算が出ております。したがって、その事務費の実績額をまとめるというのは、また別の作業が要るもので、今作業をさせておりますが、今委員がおっしゃったように、ちょっと来週は間に合わないかもしれませんが、国会が閉じるまでにはきちんと出すようにいたします。

岡本(充)委員 その上で、指導監督のあり方についてですけれども、きょうは会計検査院にもお越しいただいております。

 会計検査院に全部検査をしてもらうというのは私は物理的にも無理があると思っています。今回の農林水産、国土交通省で指摘された事案を見ながら、厚生労働省の中でも、自分たちの補助金の事務費について不正流用がなかったのかどうかを点検、確認をしてもらいたいと思うわけなんですけれども、それはしていただけますでしょうか。

舛添国務大臣 間接経費につきましては、基本的に、その研究費が所属している所属機関が責任を持って執行しろということになっております。しかしながら、今後、今のような問題も御指摘いただきましたので、間接経費の監査の実施についても検討してまいりたいと思います。

岡本(充)委員 検討してまいりたいだと、してもらえるかどうかわからないんですよね。ぜひ、今回の会計検査院の報告を受けて、厚生労働省の中で監査を改めて見直す必要があるんじゃないかということ、やっていただきたいということです。お答えいただけますか。

舛添国務大臣 今般の会計検査院の決算報告書におきまして、農林水産、国土交通両省が選ばれて、きちんと昨年の調査結果においてやったということでありますけれども、今の点については、今どういう状況にあるかというのは、とにかく監査を含めてきちんとまずは検討させていただきたいと思います。そして、今委員がおっしゃったような方向で、どういう形でそれを実現できるか、少し時間をいただければと思います。

岡本(充)委員 きょうは会計検査院にもお越しいただいていますけれども、これはやはり厚生労働省分の事務費についても、もちろん疑ってかかるわけではないんですけれども、調べた方がいいとお考えになられるかどうかが一点。

 それから、厚生労働省からの求めがあれば、どういう方法で調査をしたらいいかということについても協議に応じていただけるということでよろしいんでしょうか。

 この二点、御確認いただけますでしょうか。

真島会計検査院当局者 お答えいたします。

 今回、会計実地検査をした十二の道府県すべてにおきまして、農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業に係る事務費等につきまして検査いたしました結果、不適正な会計経理が発見されたことを踏まえまして、その他の県等についても既に検査に着手しておりまして、引き続き順次検査していくこととしているところであります。

 今回会計検査院が検査の対象としなかった会計経理につきましても、私どもの検査の結果を踏まえまして、地方公共団体みずから調査を実施したり、国庫補助金の交付省庁が確認、指導を十分行ったりすることは、会計経理の適正化のためにも望ましいことと考えております。

 また、お尋ねの検査のノウハウ等々の点でございますが、会計検査院は、外部監査機関として、良好な事例あるいは問題のある事例などさまざまな事例を承知しているところでございますし、またいろいろなデータや検査ノウハウの蓄積もございます。特に、是正の事例や再発防止事例などを検査対象機関の参考に供することは、会計経理の適正を期しかつ是正を図る上で重要と考えております。

 このため、会計検査院としては、これまでもいろいろな努力を積み重ねてきておりますが、引き続き厳正な検査を実施していくとともに、検査の結果については、各省庁等において会計経理の適正化を図る上で参考にしていただけるようにさらに努めてまいりたい、このように考えております。

岡本(充)委員 もうこれで終わりますが、その際には、今回、大臣、今お話をした事務費もそうですが、四ページ以降、これは前回も指摘をしましたけれども、「競争的資金の間接経費の執行に係る共通指針」ですけれども、これは前回もお話ししました間接経費ですね。領収書も要らないという状況で五百億を超えるお金が使われているという状況です。

 これは、もちろん全部がどうと言うつもりはないんです。ただ、適正に執行されているかどうかが確認できる状況にないということも問題だということもぜひ御認識をいただいて、これについてもあわせて調査、検討をいただきたいということを最後にお願いして、質問を終わります。

田村委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 本日は、質問の機会を賜りましてありがとうございます。

 舛添大臣、本当にごぶさたをしておりまして、この委員会も何か、総裁選が入ったり総理がやめたり、中断中断で非常に不安定な状況ですので、即刻解散・総選挙をしてきちっとした安定的な政権をつくって、じっくり審議をしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 配付資料の一ページ目でございますけれども、これはちょっと私もびっくりしたのでございますが、救急車が周産期の方以外に関してもいろいろ大変な状態になっているのではないかということでありますが、消防庁の次長、死亡事案だけで結構ですので、簡単に御説明いただければと思います。

株丹政府参考人 御指摘がございました、これは東京消防庁が調べました事案でございます。十九年中の救急搬送でございますけれども、一一九番通報があってから収容まで所要時間が特に長くかかったものということでございます。実は、救急搬送、これが消防側の仕事でございますけれども、病院のところまでお届けをするということで、それ以降の状況については別途厚生労働省の方でお調べいただいたということがございますので、一ページ目は二つの役所の名前になってございます。

 御指摘がございましたものは、五十傑までが一、二ページでございまして、さらにその中で死亡という方については、これは多分厚生労働省さんの資料かと思いますが、三ページ目。それから四ページ目、これが私ども総務省消防庁が東京消防庁からいただいた資料でございます。事案番号に即して、全部で十二でございますけれども、いただいたところでございます。

 なお、救急搬送は必ずしも病気だけではございませんで、事故も入ってございますので、その中の最初の三つについては火災ですとか水難事故、これが入ってございます。それで、特にこれらの事故系の時間が長くなってございますのは、例えば、捜索をしている、救出活動をしているというときも現場に待機をしておるということがございますので、時間的には長くなっているということが入っておろうかと思います。

 とりあえず、状況はこういうことでよろしゅうございますでしょうか。

長妻委員 この死亡事案でありますけれども、上の四番、五番、七番は事故等で、火災等、洪水等でそこに待機していたということで例外だということでありますけれども、それ以外を見ますと、特に問題ではないかと推察されますのが、例えば一ページ目の資料を見ていただきますと、二十二番事例。この方は九十代の女性、二時間五十六分、三十三回照会した、つまり三十二回断られたということでありまして、二日後に死亡されている。誤嚥性肺炎ということで、気管支に異物が入ったということであります。

 二十五番は、八十代の男性、一一九番通報から病院収容まで二時間四十七分、十四回照会した、そして十六日後に死亡。これは肺線維症、肺感染症。

 そして二十六番。八十代の女性、二時間四十六分、照会回数が二十九回、十六日目に肺炎で死亡された。

 三十八番。八十代男性、二時間三十二分、二十一回照会、死亡。翌日死亡された。一日です。呼吸不全。

 そして四十番案件。これは八十八歳の女性、二時間三十二分、五回、東京労災病院、七日後に死亡、急性腎不全。

 そして四十五番。九十代女性、二時間二十九分、二十六回、死亡。翌日、一日です。弓部大動脈破裂ということです。

 四十七番。七十歳男性、二時間二十八分、十九回、死亡。一日、翌日ということです。肺炎。

 四十八番。五十代男性、二時間二十八分、二十八回、西新井病院、死亡、十二日目、敗血症(肺炎)ということでございます。

 これは、医政局長、来られておりますが、この中で、調査していただいて、早目に運んでいれば一命を取りとめたと推定できる案件というのは、どんな状況でございますか。

外口政府参考人 最初に、一般論から申し上げますと、早期に治療を開始すればよりよい結果に結びつく可能性は高くなると思います。

 御指摘の事例のうち、直接主治医から確認できたのは、弓部大動脈破裂の症例でございますけれども、この方は一日でお亡くなりになっておりますが、御高齢のために手術の適応がなく、早く受け入れできても困難であったとの主治医の御意見でございました。

 このほか、例えば肺線維症の症例でございますけれども、この方も御高齢であり、基礎疾患も考え合わせますと、これは専門家の方にお聞きしたんですけれども、こういった例の場合、一般的には救命の困難な可能性が高いということでございます。

 そのほかの症例につきましては、現時点ではまだ判断することは難しいと考えております。

長妻委員 この亡くなった方、これは五十サンプルなので断定はできないんですけれども、高齢者の方が非常に多いような気がするんです。高齢者の方の病院の受け入れというのは、東京消防庁にもお伺いしますが、私が現場の方に聞きますと、高齢者は断られやすい傾向があるということを言われておりました、東京消防庁の現場の方は。入院すると長い可能性があるからそういう傾向になっているということなんですが、東京消防庁、そんな傾向があるんですか。

株丹政府参考人 今御指摘がございました、今回の五十の例の中、特に死亡事案などを見ますと、高齢者の方、特に年齢の高い方が多いというふうに見受けられるところでございます。

 それで、これについての傾向でございますけれども、私どもも必ずしも現場の詳細を承知しておりませんので、東京消防庁に口頭でございますけれどもお尋ねをしたところ、一部の高齢者については受け入れ医療機関の選定が困難な場合があるというお答えでございました。

 ちなみにデータ的なところを、ちょっと前かもしれませんが申し上げますと、もう御案内のとおりでございますが、人口構成で高齢者の方、六十五歳以上の方ということになると二〇・一%、救急搬送全体でいきますと高齢者の方の割合は四五・一%、特に急病ということでいきますと五〇・七%ということで、運ばれる方もやや多目とは思いますが、結果として、今回の事例を見ますと特にそういう方が多かったということもあろうと思います。

長妻委員 ちょっと次長、もっとちゃんと答弁していただきたいんですが、つまり、一部の高齢者は選定が困難というのは、どんな高齢者ですか。

株丹政府参考人 今申し上げましたのは、東京消防庁の方に確認をした部分でやりとりをしたところでございますが、高齢者の方でも特に年齢の高い方について選定困難な場合があるというふうにお聞きをしたということでございます。

長妻委員 それはなぜですか。

株丹政府参考人 高齢者の方の中でというのは、特に詳細にはちょっと、そのときのやりとりの中では応答はしてございません。

 ただ、別な場所で個人的に私がお尋ねをしたときには、長く療養されているような方について比較的受け入れ医療機関の選定が難しいというようなことがあるんだということは、お聞きしたことがございます。必ずしも、なぜというところについては、東京消防庁と今回口頭の質問の中ではやりとりしてございませんでした。

長妻委員 これは正直に、私も現場の方からお話を聞いていますから。これは消防隊員の方もいろいろ大変なんですね。ちょっと、責任者ですからはっきり、病院がそういう方々に対してなかなか難しいという状況があるんじゃないんですか。何で長く療養されている方が選定が困難、つまり受け入れが困難になるのか。病院側のいろいろな対応もはっきりここで御披露いただきたいと思うんです。

株丹政府参考人 やや繰り返し的な答弁になってしまうんですけれども、私どもも、救急搬送を所管しているところでございますので、今のような状況が起こるということについて危機感を持ってございます。

 それを踏まえまして、御案内のとおりであろうかと思いますけれども、救急と医療の連携をもっと深めなければいけない。その前段として実態調査というのを、従来はどちらかというと時間だけをやっておりましたものについて、どれぐらい選定回数を重ねたのか、それから、断るときについてどういうことをということも調べてございますけれども、ただ、その中では、申しわけございませんが、今の部分について的確なお答えができるところまではまだ明らかではないと存じます。

長妻委員 今次長も、長く療養されている方は選定が困難ということをお認めになっておられて、これは別に病院が悪いとか消防が悪いとかいう話ではなくて、そういう現実があるときに、高齢者の方が断られやすい傾向があるということをやはりいろいろな面で我々は認識をして、是正をする政策を打つ必要があるということです。

 そして、この四十八番の方は五十代の男性ですけれども、敗血症で、二十七回断られて、西新井病院でお亡くなりになっておられるわけでございますけれども、これはなぜ、どういうような事情、状況でございますか。

株丹政府参考人 これは、お尋ねがございましたので直ちに東京消防庁に確認をしました。きちんとしたメモではございませんが、今連絡を受けているところによりますと、御指摘がありました方については、簡易宿泊施設に宿泊をされていた方で、容体がおかしくなって、同室というふうに聞いておりますけれども、宿泊者の方が救急要請をしたということだそうでございます。

 具体的には、救急隊が十五カ所連絡をとったけれども選定ができず、こういう場合には本部の方でもさらに対応するということがございますので、警防本部もさらに十数カ所照会をして、最終的には病院の方に収容されたというふうに聞いてございます。

長妻委員 これも次長、ちゃんと現場に確認いただいたはずなんですけれども、ちゃんと御答弁いただきたいと思うんです。

 私が現場の方にお話を聞いたらば、このケースは行路病者、こういう言葉らしいんですけれども、これは行き倒れの方、行路病者という方であります。ホームレスの方々等もこういう言い方をするということでありまして、これも、やはりきちっとそういうことも病院に伝えなければ病院から怒られるということで、こういう状況だというのも伝えるとなかなか受け入れが困難になるというような現実があります。これはだれが悪いと言っているのではありませんけれども。

 そして、一般論として、現場の方に聞くと、そういう方に対する隠語もあるということらしいんですけれども、あとはいろいろな状況を病院に言うということで、やはりなかなか受け入れる病院はないと。それを言わないで病院に搬送すると、隠し持ってきたなというふうに責められることもあるということで、そういうことを言うことでなかなか受け入れ病院がない、こういう現実もあります、だれが悪いということではなくて。

 それで、こういう実態というのが、私も驚いたんですけれども、報告がきちっと上がって、国会あるいは厚生労働省、国挙げて分析がされるということがこれまでないということで、これは舛添大臣も、六ページでございますけれども、記者会見で、閣議後こういうふうに言われているんですね。墨東病院の案件でございますけれども、「一部週刊誌や何かの報道で私も知りました。二週間もこういう事故について厚生労働省に上がってこないというのは何なんだ」ということを言われておられるんですが、何なんだといっても、この七ページ目でございますけれども、こういうことの情報が上がる仕組みがないというのが現実で、何なんだと怒っても、そういう仕組みをやはりつくる必要があるということであります。

 そして、五ページ目でございますけれども、これは平成十九年、最新の資料ですが、一一九番をしてから病院に搬送されるまで最も平均時間が長いのは、一番右にございますけれども、東京の四十七分、ワーストツーが埼玉県の三十九分、ワーストスリーが千葉県の三十七分ということで、私の今までのイメージだと、都心部は非常に病院が多いから救急車に乗ってもすぐに診ていただけるのではないかというふうに思っておりましたけれども、その時間だけでいうと、都市部が非常に長いというようなことがございます。

 その意味で、今申し上げたような問題点をきちっと明らかにして是正策をつくるためにも、ぜひ全国調査を舛添大臣と消防庁と一緒にしていただきたい。例えばですけれども、照会回数が二十回以上あるいは二時間以上で死亡されたケース、これを全国からピックアップして、平成十九年度、二十年度の案件を調査して、分析をして、原因究明をして対策を立てる、こういうことをぜひやっていただきたいと思うんですが、まず大臣、いかがでございますか。

舛添国務大臣 事態の正確な把握という点においてそういう調査をやるというのは大変意義があると思いますので、総務省とも連携しながら検討してまいりたいと思いますが、事後的にどこまでデータが残っているかとか、それから本人や家族が、ちょっとうちの件は扱わないでくれとか、さまざまな問題点もあると思いますので、それを一つ一つ検証しながら検討してまいりたいと思います。

長妻委員 実は、いろいろな病院の医療事故を公表するしないも、遺族が公表を拒む、こういうことがあって、個人情報の取り扱いあるいは裁判所の判断等もあるんですけれども、ただ、今、地方の病院によっては、やはり公益に資する情報は御遺族が反対されても個人情報がわからない形で社会に公表する、こういう姿勢を打ち出している病院もあります。そういう意味では、そこにも注意しながら、やはり公益性の高い情報を共有していくということが必要であります。

 最後に、このテーマについて大臣の、これだけの時間、これは五十サンプルですけれども、この表を見ての御感想はいかがでございますか。

舛添国務大臣 今委員は五ページの表についておっしゃったんだということで……(長妻委員「こっちの」と呼ぶ)

 ちょっと委員長、どのデータについてかをまず正確に。

長妻委員 これは、冒頭に申し上げました一ページ、二ページ目の東京消防庁における時間の長い五十案件ですね。これをごらんになって、今の質疑を聞かれて御感想はいかがかということです。

舛添国務大臣 緊急医療体制の問題、さまざまな問題があるというふうに思っております。

 そして、基本的には、お医者さんというのは診療に来た人はみんな受け入れないといけないわけですから、そういうことがもしきちんとなっていないとすれば、これは是正しないといけないし、何といっても、緊急の搬送に時間がかかっている、この実態を調査するとともに、今、私のところで周産期と救急医療の専門家を集めて、どういう具体的な手が打てるか、そういうことも検討しておりますし、既に二十年度予算において、こういう状況を是正するために、例えば円滑な搬送ができるようなコーディネーターの配置を支援する、その他の情報システムの開発を含めて、全力を挙げてこういう状態が少しでもよくなるように努力をしてまいりたいと思います。

長妻委員 そして、次のテーマですけれども、非正規雇用の方々が全勤労者の三三%に及ぶということで、非常に急激な雇用の規制緩和が起こって、失業しやすい状態になり、それに今、経済危機が追い打ちをかけているという状態でございますけれども、今現在、非正規雇用の方で雇用保険のない方というのはどのくらいいると推察されますか。

舛添国務大臣 今、非正規の労働者、約千七百三十二万人おります。正規雇用が三千四百四十一万人です。そのうち約千六万人が雇用保険の被保険者でない非正規雇用者、最大の見込み数でそういうふうになっております。これを前提としますと、非正規雇用者のうち約七百二十六万人が雇用保険被保険者と推定されますので、加入割合までついでに申し上げますと約四二%、つまり未加入が五八%という数字でございます。

長妻委員 この数字も調べていただいてやっと出てきた数字で、これまでこういう統計がないということでありまして、非正規雇用の方の最大五八%、六割が雇用保険に入っておられない。

 今後、失業の方々が大変多く出る懸念があるということで、非正規雇用の方の実態について、今どんな状況でございますか、大臣。

舛添国務大臣 非正規雇用の人たちの実態でございますけれども、都道府県労働局からの十月の報告によりますと、派遣労働者、請負労働者、またいわゆる期間工の約五千人が雇いどめや中途解除または解雇されていると聞いております。

 さらに、総務省の労働力調査によりますと、平成二十年第二・四半期において、前職が非正規労働者のうち、現在失業している人数は六十一万人となっております。

 以上でございます。

長妻委員 これは、最大六割の方が失業保険がないということで、こういう方々が今後大量に職を失う懸念が出てくるというときに、生活保護でもない、失業保険もないというはざまの方々に対する対応というのが喫緊の課題になってくるというふうに思います。

 我々民主党は、そういう方に対する就労支援手当月額三万円を支給する、そして就労が安定するまで住宅支援をする、あるいは雇用保険の現在の要件である一年未満の契約であると入れないというのも見直していくなどの対策を提言しておりますけれども、大臣、政府としての対策というのはどんなものがございますか。

舛添国務大臣 失業者に対してさまざまな、特に非正規雇用に対してこれらの雇用を常用化するようなさまざまな対策を打っておりますが、さらに、例えば、失業することによって住む場所がなくなる、衆参両方の厚労委員会で、寮から追い出された、どこに住むんだというような例がたくさん挙げられておりますけれども、そういう方々に対する住居の確保ということにつきましても、ハローワークとNPOとの連携によりまして、相談窓口、チャレンジネットというものを設置し、安定就労の確保とともに住居の確保、この相談支援を行っております。

 それから、東京都の貸付制度との連帯を図ったり、大阪、愛知においても、住居の最初の、敷金とかいうような費用を援助する、そのような形で積極的な支援を行っているところであります。

長妻委員 本当に緊急なので、給付金ということも言われていますけれども、お金があるのであれば、優先順位を考えて使っていただきたい。

 日本は十年前の日本とさま変わりになりまして、非正規雇用の方ももう三三%、三人に一人。そして、年収二百万円以下でお暮らしになっておられる方が二〇〇七年にとうとう一千万世帯を突破いたしました。貯蓄ゼロの世帯も二〇〇七年には二割を超えました。

 そして、私が非常に驚いた指標なんですけれども、WHOの調査で、日本人の二十五歳から三十四歳までの死因の一位が自殺だということで、先進七カ国では、どの年代を見ても死因のトップが自殺などという国はありません。そして、昨年、二〇〇七年の自殺者、一日九十人でございますけれども、前年比の増加を見ますと、一番増加したのは六十歳以上で九%増加、二番目に増加したのが三十代の方で六%増加ということ。

 今、憲法二十五条、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という憲法がありますけれども、現実に、具体的に、ナショナルミニマムということで、国が、これが最低限の生活だ、年金、医療、介護、障害者福祉、雇用、これが最低限なんだというのを明確に哲学を持って打ち出して、そして、これは国は保障します、それ以外はもう自由競争でどんどん競争して市場原理を入れてやってくださいと。私は、こういうことを改めて構築する必要性があると。

 これを舛添大臣のリーダーシップで、ナショナルミニマム、日本のセーフティーネット、日本版セーフティーネットはこうだというのをぜひ打ち出す政策をパッケージとしてやっていただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

舛添国務大臣 委員おっしゃったように、セーフティーネットの構築は非常に大事だと思います。

 特に、かつての高度経済成長時代は企業がその役割を担っておりました。住居から始まって、会社の寮があり、保養施設まで全部持っておりました。今はもう時代が変わって、企業がその任にたえません。したがって、これは国がやる、政府がやる。国と申しましたけれども、中央政府、中央政府がやる時代であります。一つは、例えば生活保護、これは一つの基準が決まっております。

 そういう観点から、私は、セーフティーネットの構築をする、そして国民に安心と希望を与える、それがまさに経済活性化につながる、そういう哲学を持っておりますので、この点では長妻委員と共通していると思います。

長妻委員 とはいいながら、この十四ページ、十五ページを見ていただきますと、昨年から、毎年二千二百億円、五年で一・一兆円の社会保障費を削減する、機械的にばさばさ切っております。

 十九年度の明細、そして二十年度の明細がここにございますけれども、平成二十年度予算では、診療報酬、薬価等改定で削減する、後発医薬品の使用促進で削減する、被用者保険による政管健保支援で削減、国保組合への国庫補助を削減、退職者医療制度の適用を削減、生活保護を削減ということで、二千二百億円捻出しております。

 そして、政府の方針では、十六ページでございますけれども、平成二十一年度も二千二百億円を削ると明確に財務省の資料で書いてございますが、大臣、例えば来年度二千二百億削減するとすれば、主にどこの部分を削減するんですか。どういう柱になるのか。おぼろげながら教えていただきたいと思うんですが。

舛添国務大臣 私は、二千二百億円の削減はもう限界であるということをことしも言い続け、そして、骨太の方針の中で、社会保障と医師の不足については、予算編成過程できちんと手当てできる財源があれば優先的に回すということを記述するために全力を挙げ、そうさせました。

 したがいまして、今私がやるべきことは、全力を挙げてこの私の今の考え方を政府・与党の中で貫き通していくということでありますから、さまざまな財源、これから党の税調が始まりますから、税制改正の審議の中で、例えばたばこ税というようなことも考えることができると思いますので、まず削減ありきではなくて、まずとにかく財源の確保ということをやる、それが私は優先だと思います。これは財務省との折衝、また政府全体との調整があると思います。その中で、例えばどこを削減するのか、そこから考えたいと思います。

 まずは予算を獲得する、そのために全力を挙げたいと思っております。

長妻委員 そして、二十一ページ。これは、総務省の年金記録確認第三者委員会の案件でございますが、これは、ここに下線を引いてありますけれども、厚生年金の紙台帳の備考欄に「レセプト十〜二月分までOKで処理」という何か怪しげな記述があるわけですけれども、この記述は、第三者委員会としては何の記述だと推定されたんですか。

関政府参考人 お答えいたします。

 この事案は、いわゆる事業所が全喪した後の遡及訂正事案として年金記録の訂正をあっせんしたものでございます。

 社会保険事務所の記録では、当該事業所は、昭和五十八年十月三十一日に厚生年金保険の適用事業所でなくなったとされている一方、申立人の健康保険厚生年金保険被保険者台帳には、健康保険証を返納した日は五十九年三月十四日である旨の記載があり、年金記録確認第三者委員会におきまして、同事業所が適用事業所でなくなったとする日は遡及して訂正されたと判断されたものでございます。

 今御指摘のありましたことでございますが、同台帳の備考欄に「レセプト十〜二月分までOKで処理」との記載があり、適用事業所でなくなったとされた日以降の健康保険給付に係る医療費を被保険者から返還を求めないでもよいとしていたことが推認できるとされまして、このような点も含めて、社会保険庁の事務処理には合理性がないと判断されたものでございます。

長妻委員 私が理解するように簡単に言うと、偽装脱退をした案件で、でも、その偽装脱退の期間、保険証が使えないことが従業員にばれると偽装脱退がばれちゃうので、社会保険庁がその間、健康保険にも入っていないんだけれども、健康保険から医療費を払う工作をしたというふうに推認ということなんですけれども、舛添大臣、この現物のコピー、個人情報のところは黒塗りでも結構ですので、これを提出いただけないでしょうか。

舛添国務大臣 今委員がおっしゃった推認もあり得るし、また、その他の推認もあり得ると思います。

 今、こういう事案すべてについて調査を行っているところでございますし、これは筆跡がそこでわかるというふうに思いますので、この事実関係を明らかにするために調査をしている段階ですから、直ちに今の公表というのは差し控えさせていただきたいと思います。

長妻委員 これは私が推認したわけではなくて、公的な、政府が推認しているわけで、これは担当の官僚の方に聞いても、ぬれぎぬだと言っていますから、第三者委員会の。この備考欄にこんなことを書いていても、こんなの推認しているのはおかしいと言われていますから、そうじゃなくて、これは、推認できるという前提で、紙台帳にこういう記述があるものを全部ピックアップして公表していただきたいと思うんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 今、こういう遡及事案について、いわゆる標準報酬の改定を含めて調査委員会で徹底的に調査をやっております。今、そういう調査の過程でありますし、先ほど申し上げました筆跡や何かということがありますので、きちんと状況を把握し、まずそれが大事だと思いますので、当分公表は差し控えさせていただきたいと思います。

長妻委員 これは、二十三ページでございますけれども、消された年金と言われているものです。これは第三者委員会が八十七件あっせんしましたけれども、これを分析いたしますと、今、百四十四万件とか戸別訪問とか言われていますけれども、それをやられているのは、標準報酬月額改ざんの疑いがあって、オンライン化以降のものですね。

 これは、第三者委員会では一九%、つまり全体の二割しか調査をされておられないということで、あとの八割はほったらかしに今なっているわけでございまして、これをサンプル調査して、もう何度も申し上げているんですが、改ざん率を出してほしいということを申し上げ、そしてOBの方にも聞き取り調査をして、この案件を明らかにしてほしいと何度も申し上げているんです。

 標準報酬遡及訂正事案等に関する調査委員会というものが結成されたやに聞いておりますけれども、ここはもちろん、残りの八割のサンプル調査やあるいはOBへのヒアリング、これもきちっとやるということでございますね。

舛添国務大臣 まず、ヒアリングにつきましては、現在の職員に対して行っておりますとともに、広く情報を求めるということで、調査委員会の委員長みずからホームページを開設し、そこに相当の情報が入ってきている、その中にはOBからの情報もあるということでございます。

 それから、いろいろな、今とりあえず調査をしていますのに加えて、百四十四万人に対して、これはねんきん定期便で標準報酬が全部書かれますから、そこに、あなたはこの百四十四万人に該当しますよということも申し上げるわけでございまして、オンラインシステム導入前についても、これはねんきん定期便に標準報酬についての記載があるわけですから、御協力をいただいて、これはきちんと調査ができると思いますし、今鋭意調査を行っているところでございます。

長妻委員 そうすると、今の話ではOBの方にはヒアリングをされないということで、この委員会も、いつ開かれるのかもさっぱりわからない。次回の開催はいつですか。

舛添国務大臣 初回を開きまして、そして私は、こういうことで調査をしてくれということで、今鋭意調査をしている。調査中でありますから、結果が出ましたら、できるだけ早く結果を出してくれということでやっております、そうしたらきちんと公表しますが、途中で公表する、いつ何回やるということは、そのことがまた、これはなぜ社会保険庁にやらせないで私の直属の外部にやらせているかというのは、抜き打ちを含めていろいろな調査をやる、一切社会保険庁の職員には知らせないでやることにより、よりうみを出していくということができると思ってやっておりますので、そういう事情を御推察いただければと思います。

長妻委員 これはぜひ我々民主党の意見も、こういった調査はどうでしょうというのも聞いていただきたいんですね。どこでだれが、事務局も全然わからないと、問い合わせをしても。

 では、中身はいいですよ。そうすると今まで何回開催をされているんですか、この調査委員会というのは。

舛添国務大臣 そういうことも含めて、一切この調査に支障がないようにやっているわけで、結果がきちんと出るために、まさに社会保険庁には一切言わずに、抜き打ちを含めてこの委員会が徹底的にやっているという状況でございます。

 結果が出ましたらきちんと公表いたします。できるだけ早くと思って、今これは督促し、頑張れと言っているところでございます。

長妻委員 これは与党の皆さんも、これまで何回開いたのかもマル秘なんだ、それを言うと何か調査に支障が出ると。我々、いろいろな問題を提言しているんですが、その提言する相手がだんだん水面下に行って見えなくなってくる。今度は、社会保険庁は日本年金機構ということで、また国会にも来るか来ないかわからないということで、どんどんどんどん、追及というか提言をする相手の方が非常に見えにくくなっております。

 では、いつ発表するのかもわからないということですね。我々は敵じゃありませんから、民主党は。ぜひ一緒にこの問題を解決したいというときに、我々の案を聞かないで、ねんきん特別便も標準報酬月額を入れないで出すし、わかりにくい形でどんどん出してしまうということで、ぜひ我々の提言も聞いていただきたい。

 例えば、今度ねんきん定期便を出しますね。あるいは年金受給便、受給者に対して標準報酬月額をお知らせするのを平成二十一年中に送るということなんですけれども、そのときに、封筒の色をきちっと変えて、本当に抜けている可能性が非常に高い方とそうでない方と色を分けて注意喚起をするような工夫もぜひしていただきたい。

 千三十万人の、本当に宙に浮いた記録をお持ちの可能性のある方も、回答のない方もいるし、訂正がないということで勘違いして、訂正なしで返送されている方もいる。そういう方々を、封筒の色を、赤い色でも何でもいいですけれども変えて、重大な注意をもって見てくださいというような形、あるいは百四十四万件プラスアルファの方もそういう措置をするというようなことをぜひやっていただきたいと思うんです。

 我々の意見もぜひ取り入れていただきたいんですが、いかがですか。

舛添国務大臣 民主党を初め、いろいろな方のいい意見はどんどん取り入れてきております。

 これまで、ねんきん特別便の封筒の仕様についてもいろいろな貴重な御意見を賜りまして、そのたびに変えてまいりました。そして、この前、いつかの委員会で御提言がありましたから、ホームページに、今度のねんきん定期便はこういう仕様にするよと出して、それは一般国民の皆さんから意見をいただいています。

 そして、今貴重な意見を賜りましたから、例えば色を変えてやる、こういうことについても真剣に検討したいと思いますし、今私のもとに作業委員会、外部の人に入っていただいて、そこの目も通してきちんとやっていっておりますので、貴重な意見については積極的に取り入れていく、そういう姿勢でございます。

長妻委員 それと、我々のところに非常に御意見が多いのは、年金の記録はくっついた、しかしお金の支払いは一年後だ、ばかにするなというのがたくさん来ている。

 しかも、これは山井議員も調査された無年金、今まで一円も年金をもらっていない、あなたは無年金だ、二十五年とか二十年に足りないと言われていて、実は記録が抜けていて、それが戻って受給権が発生した、天国と地獄という方でありますけれども、その方もお金はまだ来ない。しかも、御自宅に謝罪も行っていないというようなお話があって、私は、日本国の国会議員の一人として本当に情けない気持ちになっているんです。

 これをぜひ早急にお支払いをして、無年金の方で受給された方というのは三十数人ですね、今のところわかっている。せめて御自宅にお邪魔して謝罪をして、どういう状況だったのか、それを御報告いただきたいというふうに思います。

 体制の強化と、国家プロジェクトとしてきちっと紙台帳の照合も含めて取り組むという決意をぜひ聞かせていただきたいと思います。

舛添国務大臣 再裁定処理に時間がかかっているのは本当に大変申しわけないと思っています。どうしても専門知識のある職員がやらないとできない面があるものですから。ただ、今、抜本的に体制を強化する、十一月現在で二百九人体制というところまでいきました。しかしながら、今おっしゃったように、さまざまクレームをいただいておりますので、一つ一つこれは真摯にこたえていきたいと思っております。

長妻委員 それと、厚生労働省にアドバイスする委員会が官邸で開かれ、舛添大臣も出席されたときに、トヨタの奥田相談役という方がいろいろ発言されたということでマスコミにも報道されていますけれども、どんな発言で、舛添大臣はどういうふうにお考えになられましたですか。

舛添国務大臣 これは一部報道されていますけれども、メディアによる厚労省たたきが甚だしいと、まあ雑談的な形で気楽におっしゃった。ただ、その背景には、奥田座長は、広報というものが大切なんだ、厚生労働省はいろいろ情報をきちんと出さなかったじゃないか、きちんとした広報体制をやっていなかったじゃないか、そういうことをちゃんと反省しないといけないというのを冒頭から相当おっしゃっていまして、そういうことの絡みでおっしゃったんだろうというふうに思います。

 それぞれの委員の方は委員長を含めて発言が自由でございますから、私は、そういう意見もあるかなと。しかし、奥田委員長がおっしゃったのは、厚生労働省は国民に対して直接語りかけるということをなぜやらないんだと常におっしゃっていましたので、こういう発言とのつながりでそういうことをおっしゃったんだろうと思っております。

長妻委員 私はやはり、民間企業の実態、私も民間企業の営業マンをやっていましたけれども、その発想をぜひ三つ取り入れていただきたいと思うんですが、一つはアフターサービス、一つは事前マーケティング、一つは苦情は宝の山ということなんです。

 本当に厚生労働省は今まで、あらゆる制度、制度をつくりっ放しで、後どういうふうに機能しているのか、苦情が来てもそれをきちっと評価しない。

 そして、事前マーケティングでは、例えば後期高齢者医療制度、これを入れると何人の方が保険料が上がってどういう反応が起こるのか、これを全くしていない、入れてみないとさっぱりわからない。

 そして、苦情は宝の山ということも、きのうの発言にもあったのかもしれませんけれども、後期高齢者医療制度、いろいろな苦情が厚生労働省に来たと思うんですね。担当の方に何件来たんですかと言ったら、いや、そんな統計なんか忙しくてとっていないと。では苦情の中身は何なんですかと聞くと、いや、そんなのもメモしていない、こういうふうに言われて、苦情は本当に面倒だという感覚なんです。民間企業は、苦情は宝の山、新製品開発のもとというのが生き残りの常識なんです。

 人事評価も含めて、今申し上げた三つの観点をきちっとやる人間、制度の不備を見つけて上に上げて是正をする、これは省の恥じゃありません、こういう人間がどんどん出世できるような人事評価システムに変えるということをぜひ検討いただきたいんですが、いかがでございますか。

舛添国務大臣 実は、奥田委員長から常に言われているのは、PDCAサイクル、これが機能していないじゃないか、これをちゃんと機能させろということで、トヨタではそういうのは当たり前であるということで、さんざんおしかりを受けております。

 私も、全く政策のアフターサービスが欠けているという点について、これは反省しないといけないというふうに思っていますし、人事評価についても同様であります。したがって、省内に人事の検討委員会を設けて、この点についても今検討をさせております。

 それから、まさに苦情は宝の山というのはそのとおりでありまして、クレームが来るところから反省が出て、そして新しいものができる。そういう意味で、私のもとに改革推進室を置いて、あえて厚生労働省の本体とは違う意見をそこで集約し、まさにそこに苦情が集まり、それをどうするかということをやっていきたいと思いますので、大きな厚生労働省改革を今後とも続けてまいりたいと思っております。

長妻委員 そして、情報は隠さず出すというのが基本中の基本なんですが、この消えた年金問題もほとんど実態の情報が出ておりません。予備的調査というのも出させていただいて、理事会でも議論になったと聞いておりますけれども、この二十四ページに概要をメモ書きしましたけれども、ほとんど、困難、困難、困難、調査しない、調査しないということで、なぜ我々の調査要請、提言をことごとく無視されるのか。

 紙台帳のスケジュール、これは重要ですけれども、今、八・五億件の紙台帳、今年度三千三百万枚、照合作業が進んでいると聞いておりますけれども、このペースでいくと二十年かかっちゃうんですよ。これは終わりのめどは大体どのぐらいなんですか。

舛添国務大臣 ぜひ御理解いただきたいのは、私の責任でさまざまな調査委員会や組織を動かしております。隠すためにやっているのではなくて、例えば、先ほどの標準報酬の改ざんなんか、正しい事実をつかむために外に出さないでやっているということをまず御理解いただきたいと思います。

 そして、紙台帳の問題も、その画像データを来年度つくりまして、そして現実に動かしてみる、そういうことでありますから、着実に、手間暇かかりますけれども、一歩一歩やっていく。

 そして、それは、いつも私が申し上げて、いつも委員に御批判を受けるんですけれども、お金と人、こういうもののコストを含めて限られた資源の中でそれをやっていこうと思っておりますので、これは今、どれだけ全体でかかって、そしていつ終わるということは、残念ながら申し上げられません。しかし、一歩一歩、昨年七月五日の政府・与党の工程表に従って着実に前に進めていってはいるつもりでございます。

長妻委員 そして、フリップを、資料でもお配りしていますけれども、政府の年金対策というのが九月末ごろに出まして、よく自民党は、民主党の対策には根拠がない、根拠がないとずっと言われて、我々は工程表を出して、財源もきちっとお示しをいたしました。

 政府は、この七本の柱の年金改革、年金改革とは私は言えない、対策だと思うんですけれども、これもなかなか、微修正、微修正なんですが、これの期限とか財源というのは、一つでも決まっているものというのはあるのでございますか。

舛添国務大臣 これは政府の決めたことではなくて、審議会で今検討項目として掲げられていることでございますから、そういうものが出てきて、これは政府・与党できちんと決定した段階で、ではどういう予算をつけ、どういう工程でやるかということを考えるわけでございます。

長妻委員 審議会が言って、我々は知らないというのは余りにも無責任で、きちっと工程表を出して、民主党の政策と総選挙で競い合うということをぜひしていただきたい。

 最後に、ちょっと委員長に申し上げたいのでございますけれども、これは委員長も御存じのように、昨年十月二十四日のこの委員会で、私の発言、「与党というのは一度でも不祥事を追及したことがあるんですか、政府の。」という部分が、ことしの一月十五日に委員長によって、本人の了解も理事会の合意もなく削除されたんですが、委員長もかわりましたので、これは復活していただけないでしょうか。

田村委員長 長妻委員に申し上げますけれども、今の会議録の削除の問題についてでありますが、前委員長の判断で行われたことでありますから、理事会で各党の御意見を伺いたいと思います。

 時間でございますから、よろしゅうございますでしょうか。

長妻委員 どうもありがとうございました。

田村委員長 次に、山井和則君。

山井委員 よろしくお願いします。

 二十分という短時間ですので、舛添大臣にも端的にお答えいただければと思います。

 まず、きょう資料をお配りしておりますが、ここにもございますように、今、長妻議員がおっしゃったように、四十二万人もの方が、記録は正されたけれども未支払いの年金が払ってもらえないということで、私たちのもとにも悲鳴と苦情が殺到しております。

 例えば、具体的な話を申し上げますと、A子さんという方、七十七歳の女性でありますが、大手建設会社に勤められて、八年五カ月分の厚生年金が消えていた。それで、二年前からずっとその交渉をされてきた。一年前に第三者委員会に申し立てられた。そして、第三者委員会から、一年一カ月たって、やっと八月に、記録が訂正されました、あなたがおっしゃるようにと。

 ところが、その後、では幾ら、今まで十七年分ですね、いつ払ってもらえるんですかと言ったら、わかりません、答えられませんと。ここに書いてありますように、五年分は一月十五日に払いますが、残り十二年分はわかりませんとしか答えられないわけですよ。

 それで、この方も、ほかの七十七歳の方も一緒でしょうけれども、やはり御体調もすぐれない。それで、記録が訂正されるまでに、もう二年以上交渉し続けているわけですよ。やっと記録が訂正されたのに、いつ払ってもらえるかわからない。舛添大臣、こういうことでいいんでしょうか。

 もう一方だけ具体例を言います。

 八十歳のC男さんとなっております。四十カ月分の船員保険が見つかりました。先ほどの方は数百万円、こちらの方も百万円以上の未払い年金があったわけです。平成十六年にわかって社会保険事務所に連絡したけれども、一年以上音さたもなし。仕方なしに自分で宮城県の社会保険事務所などに連絡をとって、自分で見つけた。やっと十月三十一日に記録が訂正された。一年以上かかってやっと訂正されたと思って、電話をして聞いてびっくり仰天。いつ払ってもらえますか、二年先になるかもしれませんと。

 この方も、奥様が御病気で、そして今、御家族五人の大黒柱で、養っていられるわけですよ。一年以上かけて自分で捜し当てて、八十歳になってやっと記録が訂正された。それで、聞いたら、二年ぐらいかかるかもしれませんと。それはあんまりだと思われませんか。

 資料にも入れましたが、七十九歳や八十歳の方は、この簡易生命表によると、男性は六人に一人は三年間でお亡くなりになる、そういう統計まであるわけですよ。生きているうちに年金というのは支払われないとだめだと思うんです。

 舛添大臣、個別例から入って恐縮ですが、こういうA子さんとかC男さん、簡潔にで結構です、いつ年金を払ってもらえるんですか。簡潔にお答えください。

舛添国務大臣 五年の消滅時効が完成していない部分につきましては、来年一月にお支払いできるということが確定しております。しかし、年金時効特例法に基づく、そうでない部分の支払いについては、残念ながら今の時点ではまだ確定しておりません。

 私もこういう問題に心を痛めておりまして、とにかく体制の強化、迅速化、これに今全力を挙げているところでございます。

山井委員 大臣、そうしましたら、質問通告しましたが、現状を知りたいんです。私は、お二人の方から、いつ払ってもらえるかわからない、あるいは二年かかるかもしれない、あるいは一年とか、全国から苦情が来ています。

 きのう通告しましたが、東京、福岡、青森、神奈川、例えばこの四つの都道府県の場合には、何カ月あるいは何年ぐらい待ってくれというふうに言っているんですか。そして、全国平均として現状はどうなんですか。どれぐらい待ってくれと言っているんですか、大臣。

舛添国務大臣 今、東京、神奈川、福岡、青森、この実例を申し上げますと、まず、五年の消滅時効が完成していないものについては、大体六カ月から長いもので一年。それから、先ほど言ったそれ以外の年金時効特例法に基づく給付については、さらにそれに加えて三カ月から六カ月。そういう答えが今のところ返ってきております。

山井委員 いや、でも私が聞いているのと違うじゃないですか。例えば、福岡の例だったら一年後と言われた、神奈川の人は二年後かもしれないと言われた、そして神奈川のA子さんもいつ払えるかわからない、何回問い合わせてもそういう回答だと。大臣の答弁と現実が違うじゃないですか。

 大臣、現状はどうなっているんですか。だから質問通告しているんでしょう。どれだけ待つように言われているわけですか、現場では。

舛添国務大臣 大体平均でどうだということをとれと言ったから今言ったお答えをしたので、個々のケースについて、あなたはどうというのはどうだった、その一人一人によって、全部データの再検証をしないといけませんから違います。

 ただ、今、福岡や青森でどれぐらいかかるかと言ったから、時効にかからないものは六カ月から一カ年、さらにそれに加えて三カ月から六カ月それ以外はかかりますよという粗いデータを差し上げたわけであります。

山井委員 実際、大臣の認識していることと現場が違うから私が言っているんじゃないですか。大臣、一度これをちょっと全国で調査してください。年金というのは生きている間にもらわないとだめなんですよ。そう思われませんか。全国で一回調査してください、どれぐらいの期間がかかっているかということを。大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 それはさまざまな調査をやってみたいと思います。だから、先ほどのも粗い全体的な調査で、これは全国的にどういうのを、かかっているか。

 それから、私のところにも、当然、毎日のようにたくさん苦情が来ております。そういうことを含めて、きちんと対応していきたいと思っております。

山井委員 これは、もし残念ながら御本人がお亡くなりになられたらどうなるんですか。この神奈川の方も、二年も待たされたら自分は生きていられるかどうかわからない、とにかく早く払ってほしいということをおっしゃっているんです、必死になって。万が一、最悪、御自身が亡くなられたらどういうことになるんですか。

舛添国務大臣 それは、遺族の方が未支払いの年金をお受け取りになることになると思います。

 しかし、お亡くなりになる前に何とかできないか、今全力を挙げて体制の強化に努めているところであります。

山井委員 大臣、根本的に社会保険庁や大臣の認識は間違っていると私は思いますよ。これはもらうべき年金ですから。今の状態は、その方の年金を、今、国家が泥棒しているんですよ。本来は払っていて当たり前なんですから。泥棒していたことが明らかになったわけでしょう、記録が訂正されたら。泥棒したことが明らかになって、いつ払えるかわからない、泥棒したお金を国家がいつ戻せるかわからない、そんなことってあり得ますか。

 大臣、きょう、お一方からの手紙を入れましたので、ちょっと読ませていただきたいと思います。九ページ。私は平成二十一年一月二日で七十六歳になる男性ですと。さらっと読みます。

 この九ページからに直筆の手紙が入っております。ことしの三月八日にねんきん特別便が来ましたと。それで、約三年が消えていたから、翌日、社会保険事務所へ行ったと。五分で訂正されたというんですね、五分で。翌日、三月九日ですよ。そうしたら、三カ月ぐらいで払いますと言われた。それで、六月初旬に行ったら、もう少し待ってください、大変混雑していますと言われたと。しようがないかなと思って、今度は九月初旬に行った、三カ月待てと言われたから。そうしたら、九月初旬に電話したら、やはり忙しくて約束どおりできないとのことですと。今払っているのは昨年の十一月から十二月のものを精算していますということなんですね。そして、線をかかせていただきましたが、「私も平均寿命まであと三年程です、それに慢性病をかゝえており明日の日がわかりません、せめて生きているうちに精算してほしいと思っています。」こういうことなんですよ。

 大臣、生きているうちに払うというのは当たり前だと思いませんか。

舛添国務大臣 これは、当然そういうことはやってしかるべきだと思っておりますので、例えば、社会保険庁だけではなくて、社会保険労務士の方々、市町村の方々、端末もそういうところに置く、全力を挙げて今そうできるように努力をしているところであります。

山井委員 では、大臣、今数カ月とか一年とかおっしゃいましたが、将来的に、これはいつまでに、何カ月以内に支払うようにするんですか。

舛添国務大臣 それは、それを処理する能力、人の手当て、そういうことがございます。そして、一人一人のデータの確定ということもやっていかないといけない。確かに、本当にこの時間がかかっているのは何とかしないといけないと思って今やっているところでありますので、いつまでにどうということは申し上げられません。

 ただ、ことしの五月からは窓口で、今の方はたしか三月なので間に合いませんでしたけれども、五月からは窓口で、仮にあなたの場合はこれだけふえますよと、ちゃんと担当した職員のサインをつけてお渡しして、そしてさらにその後のフォローをしていくという形でやっておりますので、今後とも全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

山井委員 繰り返しになりますが、国家が年金生活者の年金を泥棒しているわけですよ。そのことが明らかになったのに、例えば三カ月以内に払いますとか、それは当たり前じゃないですか。個人が個人のお金を泥棒していて、そのことを認めたら、いつごろお金を返せるかわかりませんということで、世の中成り立ちますか。

 ですから、私は具体的提案をしたい。仮払い制度というものをやったらどうですか。八割でもいいですよ、七割でもいいですよ。概算ができるわけですから。繰り返しになりますが、年金というのは生きている間にお支払いしないと意味がないわけですよ。七割、八割、概算で即、一カ月以内なりに払う。そういうことをやらない限り、待っている間に亡くなっていかれますよ。大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 そういう案について、私も検討していないわけではありません。しかしながら、八掛けといっても、いろいろな計算、いろいろなケースがありますから、過払いになった場合、さらに後ほど請求するとどうするかとか、さまざまな問題があります。

 まずやらないといけないことは、そこに行く前に体制の強化、これの方が先なので、今、作業委員会においてそのための手だてを鋭意検討しているところであります。

山井委員 お年寄りの寿命は待ってくれないんですよ。ちんたらちんたら仕事しているわけじゃないですか。

 例えば、この十二ページも見てください。私たち民主党の追及によって、ようやくこの三十五人、今まで無年金だった方が年金記録が戻ってきて年金がもらえるようになった。まさにこれは地獄から天国、天国から地獄へのパターンですよ。年金記録が返ったから、年金が少なかったんじゃないんです、年金が一銭ももらえなかったんです。

 私たちの調査要求によって、やっと五月、六月の二カ月だけで三十五人わかりました。しかし、五月、六月にわかったのに、大臣、まだ一人も全額支払われていないんですよ。おまけに、上から二番目の九十三歳の女性の方、計算したら一千三百万円ぐらいですよ、一千三百万。一銭もまだ支払われていないんですよ。長妻議員も言ったように、謝罪にも行っていないんですよ。これが人間のすることですか。年金を消しておいて、見つかったのに、半年たっても一人も全額払っていない、謝りにも行っていない。これはおかしくないですか。

 おまけに、残念ながら黒丸を三つつけさせていただきました。十一番の六十九歳の男性、十八番の八十一歳の女性、そして次のページ、二十五番の八十四歳の女性。きょう初めて質問主意書でわかりましたが、この三人はもうお亡くなりになっているじゃないですか。社会保険庁に聞いてみたら、五月、六月の時点で恐らく死亡届を出しに行かれたんでしょうと。死亡届を出したら、ああ、年金が見つかりました、申しわけありません、無年金でしたねと。年金はもらえたのに。大臣、この国は、亡くならないと年金がもらえないんですか。ひど過ぎるじゃないですか。

 おまけに、御遺族への未収金も全額払われていないじゃないですか。六十九歳の方は七十万円ぐらい、八十四歳の方は四百万円ぐらい。謝罪にも行っていない。舛添大臣、余りにもひど過ぎませんか。

 亡くなって初めて年金受給権が発見された。大臣、こういう状況について大臣の御感想をお聞かせください。

舛添国務大臣 まずは、正しく裁定処理をする、それに時間がかかっているということでございます。そして、先ほど来申し上げているように、そういうことに対しては迅速な体制強化ということを今やるということでございます。そして、今お示しになりました表のうち、番号の四番の方、そして六から三十三までの方については全額支払うべき時期について既に申し述べております。したがいまして、こういうことに対して、きちんと体制を強化してやっていきたいと思っております。

山井委員 大臣、そういうさらっとした答弁で済む問題じゃないでしょう。厚生労働省と社保庁のミスで年金を最高三十三年間ももらえなかったんですよ。この九十三歳のおばあさん、一千万円以上の、まだ一銭ももらっていない。ぜひ、これは一言でも謝罪に行くべきだと思いませんか。いかがですか、大臣。謝罪する必要ないんですか。一千万円以上も、三十三年間、年金を払わなくて。大臣、いかがですか。

舛添国務大臣 一番必要なことは被害者の救済をする、必要なお金をはじき出して一刻も早くお届けする、それが一番大事だと思っております。過去の社会保険庁の不祥事、そのことに対しては私は厚生労働省を代表して何度も謝罪をし、そのためにも今全力を挙げてこの年金記録問題の解決を行っているところでございます。

山井委員 その感覚がわかりません。

 それで、大臣、一つお願いしたいんですが、この三十五人の方の今の状況を調べて報告してください。大臣、お願いします。

舛添国務大臣 死亡したということについても今御報告がございました。その状況についてつまびらかに調べてみたいと思います。

山井委員 例えば入院されている方がいるか、病気を患っておられる方がいるか。そして、例えばこの九十三歳の方、三十三年間、どういう思いで生活されてこられたのか。そういうことも含めて、三十五人分、調査してもらって報告をしてもらうということでよろしいですね、大臣。

舛添国務大臣 この三十五人だけじゃなくて、本当にたくさんの数の方がこれまでの積年の社会保険庁による積もり積もった病弊によって御迷惑がかかっている、それをおわびいたしますとともに、きちんと調査し、しかるべきところに報告をしたいと思っております。

山井委員 これは、本当に早くお金を払うのが大事だと言いながら、五月、六月にやって、まだ一人も全額払っていないんですよ。

 それで、大臣、その報告をしてもらうということですが、いつまでに報告してもらえますか。一週間後、二週間後、そんな難しい話じゃないと思いますが、御答弁、お願いします。

舛添国務大臣 できるだけ迅速に行いたいと思います。

山井委員 これから受給待ちの間に亡くなっていかれる方がどんどんふえてくると思うんですよ。大臣、やはりおかしいと思われませんか。何で仮払い制度をやらないんですか。さっきも言ったように、二年間待たされて、亡くなられたらどうするんですか。どんな国ですか、この国は。一年、二年、第三者委員会やあるいは捜し回ってやっと年金記録が訂正された、それからまた半年、一年、二年。おかしいと思いませんか。大臣のリーダーシップで三カ月以内に、例えば来年から必ず払うとか、そういう目標がなかったらどうするんですか。

 これは大臣、一歩間違うと犯罪ですよ。年金権の侵害なんですから、泥棒しているわけですよ。それを払うんじゃなくて、本人に返すんですよ。泥棒していたお金を返すのがいつ返せるかわからない、そんな国家があり得ますか。大臣、決意をお願いします。

舛添国務大臣 犯罪構成要件がある人間については刑事告発をちゃんとやるということでそっちはやっておりますとともに、今おっしゃった仮払いの提案は、山井委員のきょうの御提案を受けるまでもなく、私の作業委員会において既に検討を開始しているところでございます。

 ただ、もう既に検討を開始した上で、今申し上げたような問題点もありますよ、そういうことについてきちんと検討した上でなければなりませんということであります。

山井委員 もう時間が来ましたので、最後になりますが、参議院選挙の自民党のばらまいたチラシ、ホームページ、何て書いてあるか。全額支払いの与党か支払い先延ばしの野党か、政府・与党案、今後一年で全額支払いと書いてあるじゃないですか。選挙のときだけうそのチラシをまいて、実際選挙が終わったら、一年たってか二年たつか、払えるかわからない、そんな失礼な話がありますか。ぜひともこのことは善処してほしいと思います。

 以上で質問を終わります。

田村委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 この間、アメリカ発の金融危機とそれに伴う日本経済の急速な落ち込み、これにかかわる労働者の雇用の確保の問題について、一昨日の本委員会や、また昨日の参議院の委員会、そして本日も議論をされてきたところだと思います。

 この間、貧困と格差の拡大が叫ばれているわけですけれども、その大もとに働き方の問題があること、その象徴的な問題として派遣労働がクローズアップされ、今国会にも労働者派遣法改正案が出されているところだと思います。

 我が党は、九九年の原則自由化に唯一反対をいたしました。当時、派遣対象業務の拡大は大量の低賃金、無権利の労働者をつくり出さざるを得ない、常用労働者の派遣労働者への置きかえが加速する、このように指摘をしたところであります。トヨタとそのグループ会社が七千八百人の派遣や請負労働者を削減する計画がわかっています。契約を解除すると紙切れ一枚を派遣元に届ける、それで瞬時に労働者が職を失う、結局しわ寄せはおれたちに来るのかという男性のつぶやきがテレビで紹介されていました。

 また、私の地元では、八月に三つ目の新工場を稼働させたキヤノンプレシジョンが、わかっているだけで、これは全体として五千人雇用して、地域に大きな影響力があるわけですけれども、二つの派遣請負会社、二百八十人が雇いどめ、中途解約をされました。

 こうしたことが今次々と起こっているわけです。

 大臣に伺いたいのは、派遣労働者が真っ先に雇いどめされるような今日、我が党が指摘してきたように、無権利の労働者を生み出し、企業の都合で雇用の調整弁とできるようにしてきたこの規制緩和、ここに根本的な問題があるのではないかと思いますけれども、認識を伺いたいと思います。

舛添国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、いかにして働く人たちの権利を守るか。働き過ぎ、それから特に派遣労働者の問題、これは私もさまざまな問題が出てきていることに対して、日雇い派遣の原則禁止ということを打ち出して、今これを法案化しようとしております。

 ただ、片一方で、私が日雇い派遣を原則禁止するよと言ったら、たくさんの苦情が国民から寄せられまして、大臣は私の職を奪うのか、私は主婦をやりながらこうやっていることによって家計を支えているんだ、どう思っているんだという声もまた、たくさん寄せられております。

 したがって、自由な価値観に基づいて働き方を自由にするということにも一顧を与えないといけない。しかし、そういう中で、基本的に働く人たちの権利を守っていくことが必要だと思っておりますので、例えば名ばかり管理職、これについては厳しく取り締まったところでございますし、今後とも、そういう労働政策を労働大臣としてきちんとやってまいりたいと思っております。

高橋委員 ちょっと、そういう議論にまさか入るとは思っておりませんでしたね。

 やはり、大もとのところでどうだったのかということを真剣に見る必要があるのではないかということでの議論を私は伺いたかったのです。

 資料の一枚目につけておきましたけれども、日経新聞の十月二十二日です。「「失われた十年」で、日本の雇用は大きく変質した。」というところで始まっているわけですけれども、「雇用の調整弁になるのも非正社員だ。」ということを言って、人材を供給する製造派遣大手のアイラインがこう言っていますね。「例年ならこの時期は派遣契約の注文人数が増えるはずだが、今年は前年同期の三割減。年末商戦をにらんだ増産期が終わったら、さらに人数が減るかもしれない」。仕出し弁当じゃあるまいし、派遣の一人一人が注文人数という形でまさに物のように扱われてきたわけです。

 その中身がどういうことだったのかということを非常に露骨にこれは書いているんですけれども、写真の下の段、「企業は正社員を派遣など非正社員に置き換えることで人件費を削減し、競争力を維持した。」後ろの行に行きますけれども、「非正規雇用が失業率の上昇を食い止める防波堤の役割を果たしてきたからとも言える。」と。これが、今ひびが入りつつあるというふうに言っているわけです。

 ですから、例外的、臨時的なものだということでスタートしたはずです。しかし、そうではなくて、実際には置きかえになるのではないかということを指摘してきたことが現実にやられてきたということをあからさまに言っているのではないか。そういう認識は大臣はないのか、伺いたい。

舛添国務大臣 今、この新聞の記事にありますように、まさに調整弁として使われてきた面はあるというふうに思います。

 したがって、この派遣労働者の問題をどうするか。日雇い派遣の原則禁止を含め、労働基準監督署による重点的な監督指導、さらには、限度基準告示において、限度時間を超える時間外労働について、その短縮や法定を超える割り増し賃金率を定めるように努力しろ、そして、この労基法の改正案では、八十時間を超えるものについては五〇%に割り増し率を引き上げるということを申し上げているわけでありまして、こういうことに対して、きちんと政策で対応したいと思っております。

高橋委員 順番に質問しますので、そこの基準法の問題までおっしゃらなくてもよろしいかと思います。ただ、調整弁であるということはお認めになったかと思います。

 簡潔に、局長でよろしいです、答えていただきたいと思いますけれども、派遣先指針にもあるように、途中の契約解除、これは、就業あっせんなど雇用確保に努める必要があると思いますけれども、確認したい。

太田政府参考人 今委員御指摘の、派遣先の労働者派遣契約の中途解除でございますけれども、これはやはり、派遣労働者の雇用の安定の面から好ましいものではなくて、可能な限り避けるべきものと考えているところでございます。

 このため、派遣元、派遣先指針に基づいて、中途解除の際には、派遣元、派遣先双方の企業に対しまして、派遣先等の、例えば関連企業での就業をあっせんすること等によりまして、新たな就業機会を確保するように必要な措置を求めているところでございまして、今後とも、厳正な指導をやっていきたいと考えているところでございます。

高橋委員 今のお言葉のとおりにしっかりとやっていただきたいと思います。

 この間の情勢を、十年前の平成大不況のことを思い出しているわけです。ちょうど今の定額給付金の騒ぎも、よく似た地域振興券というものがあったななどということがあるわけですけれども、あの大不況を契機に、逆に雇用の流動化が大きく進んだということも一つの特徴ではなかったかなと思っております。

 九九年の三月二十六日、これは中日新聞ですけれども、当時経済企画庁長官だった堺屋太一氏がこんなことを答えております。

 政府は、景気は下げどまりつつあるとの判断を示しているが、回復時期はいつになるかという質問に対して、景気は底入れの段階に入っている、しかし、企業のリストラは今後も必要で、雇用面では厳しい数字が出るだろう、だが、それは次の飛躍のための縮みだ、九九年度後半になれば、回復をしっかり実感できるのではないかと思う。

 この縮みだという表現ですね。つまり、もう一定底入れになっている、しかし、今後の飛躍のためには雇用のリストラはさらに必要だということを長官は当時おっしゃっている。今の状況が、確かに減産の見込みということは言われています。しかし、この間、もう当然御承知のように、莫大な利益をため込んできたということもこれあり、体力もあるということもあります。そういうときに、予防的に、あるいはこの際という形で雇用を切るといったことは厳にあってはならない。

 この点で大臣、一言お願いしたいと思います。

舛添国務大臣 それぞれの御判断は企業がおやりになると思いますけれども、これから先の経済情勢が実体経済にどういう影響を与えるか、そういう中で、雇用の確保ということに対しては、今予防的というお言葉をおっしゃいましたけれども、そういうことがないように、雇用の確保のために政府としては全力を挙げてまいりたいと思っております。

高橋委員 ありがとうございます。

 そこで、非正規雇用の話をしましたけれども、一方では長時間労働であるということが今問題になっているわけですけれども、大臣に伺います。今回、労働基準法改正の目的は、労働時間を減らし過労死をなくす、人間らしく働けるようにすることである、こういうことで理解してよろしいでしょうか。

舛添国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、ワーク・ライフ・バランス、本当に長時間の労働は抑制しないといけないというふうに思っておりますとともに、私はもう本当に過労死に対して大変心を痛めておりまして、こういう方々をどうしても救いたいということで、さまざまな訴訟においてもそういう点について配慮を下してきたつもりでございます。

高橋委員 今、大臣、過労死について特別な心を砕いているとおっしゃいました。きのうの参議院の厚生労働委員会で、我が党の小池議員の質問、国立循環器病センターの過労死の大阪の判決について上告をしないと明確に大臣が答弁されたので、お母様も見ていらっしゃったし、質問した小池さんも非常に感きわまっているというところを見て、そういう、大臣が早く決断をしてくださったということは本当に喜ばしいことだと私は思っております。

 同時に、明と暗が分かれておりまして、昨日は、私の地元の八戸の労災病院に勤めていて薬剤師だった方の過労自殺が敗訴いたしました。これは、労災の審査に対して不服であるという行政訴訟であったけれども、働く人の健康と命、生活を守るために支える役割をしている労災病院でこうしたことが起こったというのは本当に残念なことで、長い時間を割いて、遺族の方が労災をやり、そしてそれがかなわずに裁判に持ち込まれて、また非常に何年も、この方はもう十年以上闘っていらっしゃいます。そういうことを何としても、もちろん過労死をなくすというのが大前提です、同時に、遺族がここまで闘わなければならないということを何としても食いとめていただきたいと私は思っています。

 ちょっと具体的な質問をさせていただきたいんですけれども、そういう立場に立つときに、やはり残業の上限時間は法定化すべきではないか。これは、現在三六協定と言われている平成十年の労働省告示、限度基準、月四十五時間、年間三百六十時間ということがございますが、実際には、三六協定を結んでその上に特別協定を結べば、上限は青天井になっているという現状がございます。

 本当にやるのであれば、残業の上限時間を法定化して時間規制をするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘にございましたように、現在の労働時間規制でございますが、これにつきましては、限度基準告示におきまして、一カ月でございますと四十五時間までということで、この範囲に残業をおさめていただくということで、指導によりまして、三六協定の締結等に必要な指導を行っているところでございます。

 ただ、その上で、やはり不測の事態ということもあるわけでございまして、特別な場合にはこれを超えてできるということで、これを特別条項つき協定と呼んでおりますけれども、こうしたことも認めているわけでございます。

 ただ、これは、指導に当たりましては、その特別条項に該当するような労働時間は全体の二分の一以下になるようにということで指導をさせていただいているところでございまして、こうしたことで、非常に長い労働時間の抑制というようなことに現在努めているところでございます。

 あわせまして、今回提出させていただいております労働基準法の改正法案におきましては、特に長い、月八十時間超の労働時間につきまして、法定の割り増し賃金率を上げさせていただいて、これを強く抑制していこう、こういうことで御提案をさせていただいているところでございます。

高橋委員 先ほど言ったように、時間規制に踏み込むべきだということは重ねて指摘をしておきたいと思います。

 その上で、割り増し賃金という形で一定の抑制効果をねらっているということなんですけれども、ただ、今回、八十時間以上で五割の割り増しにする。少なくとも、四十五時間から八十時間の間は努力義務というダブルスタンダードを持ち込むことになるわけで、ここはやはり、そうではなく、一律にするべきではないかと考えています。

 先ほどちょっと四十五時間のことがお話にあったように、平成十三年の脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準でも、月四十五時間を超える時間外労働が長くなるほど業務と発症との関連性が徐々に強まるというふうなことが言われているわけで、この考え方は当然だと思うんですが、ここはまず確認してよいかということが一つです。

 要するに、健康を害してくるのだ、過労死の要因となりそうな、健康を害するような関連性が徐々に強まってくるのが四十五時間であるということを厚労省は認めておきながら、実際に義務にするのは八十時間以上。これは過労死ラインと呼ばれているわけですから、そうすると何か、死ななければいいのかという話になっちゃうわけですよ。死ぬような過労死ラインだけからが義務ですよというのでは、逆にそこが何か線引きになってしまうのでは困るのだ、要するにそこに合わせてしまうというのですか、それが困るのだ。この考え方はいかがですか。

金子政府参考人 時間外労働をめぐりますそうした時間をどこに目安を置くのかというのは、一つは、今委員御指摘ございましたように、労災のいわゆる過労死と言われているものの認定基準がございます。これは、月の残業時間が四十五時間を超えますと、それ以降、業務と発症との関連性がだんだん強くなるという医学的知見、これについて述べたものでございまして、具体的な認定基準につきましては、発症直前の一カ月につきましては百時間とか、あるいは発症直前六カ月間、これの平均では八十時間というようなことで、この辺になりますと関連性が強くなる、こういう段階的な評価をしているところでございます。

 これは、労災保険が、労働基準法に基づきまして、事業主による無過失損害賠償責任という上に立った責任保険でございまして、そういうことで、業務との因果関係が相当あるということが給付を行うための条件でございますので、こういったメルクマールに基づきまして、業務との相互因果関係を判断しているということでございます。

 片や、今回の時間規制でございます。これは、四十五時間を超えるところから努力義務をお願いするということで今回お願いをしているわけでございますが、こちらにつきましては、四十五時間という設定をしたというのは、従来、限度基準告示の中でこれを設定した考え方と申しますのは、多くの働く方々の平均的な残業時間というようなものを見た場合に、大体月四十五時間ぐらいですと、八割ぐらいの労働者の方がこの中におさまるというようなことでございまして、そういった意味で、これを超える労働時間というのと、それ以下の労働時間というのを限度基準告示の中で整理をして考えて設定した水準でございます。

 もとより、月四十五時間の時間外労働ということになりますと大変な長時間労働でございますので、ここにつきましても、労使の自主的な努力を強く促すということで、今回努力義務を課す、こういうことであわせて措置をさせていただきたい、こういう内容のものでございます。

高橋委員 それで、割り増し賃金のことだけがよく表面に出ているわけですけれども、本法案では、割り増し分の手当を休日に振りかえることができることになっております。これをわかるように説明していただきたいと思います。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のありました、割り増し賃金にかえて一部休暇を付与することで可とする、こういう新しい仕組みを今回の法律改正の中でお願いしているわけでございます。これは、今委員から御指摘がございましたように、ちょっとわかりにくいといいますか、非常に複雑な部分もございますので、若干のお時間をいただいて、少し具体的なことも含めて御説明させていただきたいと思います。

 今回、割り増し賃金を休暇にかえて、休暇を実際にとっていただくという仕組みを設けておるわけでございますが、この仕組みは、一月当たり八十時間を超える時間外労働、これは今回の法律改正案では、ここの割り増し賃金率が二五%であるものが、ここから五〇%に上がるわけでございます。つまり、二五%分上がる、こういうことになっておるわけでございますが、この部分に限って、これを何らかの形で休暇の時間に換算いたしまして、割り増し賃金の支払いにかえて休暇をとっていただく、こういう仕組みでございます。

 ただ、これは皆さんに強制するという趣旨のものではなくて、それぞれの会社、事業所の中で、こういった仕組みを使いたいといった場合に、現在の法律ではできませんので、そういったオプションの一つとして、労使で、現場を熟知した労使の方々にお話し合いをしていただいて、そこで協定を結んでいただく、その上でオプションとして設定できる仕組みとして設けたものでございます。

 問題はやはり、割り増し賃金という賃金と、それから、休暇ですので時間とか日というのをどうやって換算するか、その換算の仕方をどうするかというのがなかなかイメージしにくいわけでございますけれども、今申し上げましたように、上げ幅の二五%分しかできませんので、その二五%に相当するものを四つ集めますとちょうど一時間分になる、こういうような換算の仕方があるんだろうと思います。

 したがいまして、こんなような換算の仕方をいたしまして、八十時間を超える部分について、これを積み上げていきますと、例えば何時間分、半日分というふうになってまいりますので、この場合にそこを休暇にかえていく、こういう仕組みでございます。

高橋委員 わかりやすくと言ったんですが、聞いていて皆さんわかったでしょうか。

 これは要するに、八十時間を超えると五〇%になるか、二五%分掛けるわけなので、九十時間になった場合に、十時間掛ける二五%で二時間三十分休みなさいということでしょう。そういうことですよね。

金子政府参考人 一つの換算の仮定として、残業四時間分でちょうど休暇一時間に該当するという計算をいたしますれば、今委員御指摘のあったような形になろうかと思います。

高橋委員 皆さんおわかりいただけたでしょうか。

 ですから、八十時間でも過労死ラインと言われているのに、それから十時間超えても二時間三十分休めばそれでいいんですよというか、労使協定を結べばいいんですよということになるんです。

 そうすると、百二十時間以上残業してようやく一日休む程度、その程度のことで振りかえるということを言っているんです。その前に死んでしまいます。そもそも年休取得率が五割に満たない状況で、何の意味もありません。どうですか。

金子政府参考人 これは冒頭申し上げましたように、事業場の労使で協定を締結していただいた場合にオプションとして選択できるという道を開いたものでございますので、労働の現場を熟知いたしました事業場の労使で話し合いをしていただいた上での制度の導入ということでございます。

 それから、この点につきましては、この法案を提出いたします際の、労使にも入っていただきました審議会においても議論していただきまして、その結果に基づいて私どもとしては提案をしているということでございます。

 細目につきましては、今後成立をさせていただいたならば、その後に、また関係審議会におきまして細目についても詰めてまいりたいと思っております。

高橋委員 結局、それは確かにオプションかもしれませんよ、だけれども、企業によっては、うんと忙しいときとそうじゃないときもあるわけです。そうすると、忙しいときにはうんと集中して働いて、その分休みをちょこっととってもらえばいいとか、そうすると何の痛みもない。通常の二割五分の割り増し賃金でいいんだ、そういうふうに企業が都合いいように考えちゃだめなんだということを言いたいわけです。EU労働指令のように、二十四時間のうち十一時間まとめて休む、そういう基本的な立場に立たなければ、最初にお話しした労働基準法改正の目的ということから全く外れるのではないかということを重ねて指摘したいと思います。

 ワーク・ライフ・バランスが今叫ばれている中で、例えばマツダやキヤノンでも、夜十時以降は残業はだめだというふうにしたといいます。しかし、それで本当にきっぱり仕事がなくなるんだったらいいんです。持ち帰り残業になっています。特にこれは企画の分野などが非常に多いです。きちんと残業時間に入れるということを確認していいですか。端的にお願いします。

金子政府参考人 今の、いわば自宅の方に仕事を持ち帰るようなケースもあろうかと思います。この場合につきましての労働基準法の適用につきましては、実際に指揮命令がどうあったかというようなことで、具体的な一つ一つの事案に即して判断する必要があるというふうに考えます。

高橋委員 そこら辺もしっかりとわかるように指導をしていただきたいと思っております。

 トヨタの三六協定は、製造部門では年六百時間、事務が七百二十時間、ですから、先ほどの限度基準の倍になっているということであります。今指摘されているのは、結局、企画部門にぐっと残業が集中するんだと。同時に、では、製造は時間をきっぱり守っているのか、そのオーバーする部分は全部外出しで、下請に安い単価でたたかれて回っている、こういう状況がございます。全体として見ていただきたい、ここは指摘にとどめます。

 資料の2を見ていただきたいんですけれども、これが「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災請求・支給決定件数の推移」ということで、それぞれちょっと足してみましたけれども、過去最大の数になっているというのがおわかりかと思います。

 同時に、めくっていただいて3を見ますと、労災行政事件訴訟、訴訟の数を出していただきました。どんどんふえておりまして、ことしは今途中ですので、平成十九年度で脳・心臓疾患が、今、国側が勝訴十八で敗訴が八というところでありますが、提訴件数が二十五件ということで、やはり裁判に持ち込まれる件数がふえているということがあると思うんです。先ほど紹介した話もまさにこの中の一つである。

 問題は、やはりなるべく、どうしても最後のとりでである裁判というものは必要なわけですけれども、審査の段階でもっと前向きな回答が得られないのかということなんです。遺族の心を砕くような審査がされております。

 例えば、出張が続いてストレスがたまっているんだと。労働時間が、これは残業というふうにカウントされないわけですね。だけれども、長期に、一週間のうちに何度も出張している、ストレスがたまっているということを主張するのに対して、酒を飲んでいたからいいじゃないかということを言われるわけですよ。酒を飲まなきゃやっていけないくらい大変に追い詰められている、眠れないくらい追い詰められているということをわかっていただけない。持ち帰り残業があるんですと言うと、自宅でリラックスした中でやれるからいいじゃないか、こう言った。それで、夫婦生活を何度も聞かれる。労災の審査の場がこういう状態になっている。これは過労死の家族の会の方々がこもごもおっしゃっていることなんです。

 本当に、家族を亡くしただけでもつらいのに、亡くした後の審査の場でプライバシーを全部明らかにされて、それでもああでもないこうでもないと、まさに出したくないと言わんばかりの仕打ちをされている。せめて労災が、また長い間裁判に持ち込まれなくてもいいように改善を図る必要があると思いますが、いかがですか。大臣、お願いします。

舛添国務大臣 法律に基づいてきちんと労災に対しては対応していかないといけないというふうに思っておりますし、この労災関連のさまざまなルールというのは、労働者が災害に遭ったときに、きちんとこれに対応して、御本人に対しても、そして不幸にして残された御家族に対しても温かい手を差し伸べるという精神でありますから、それが実るようにやっていきたいと思います。

 片一方で、モラルハザードということにもまた気を配らないといけません。しかし、基本的には弱い立場にある労働者を守っていく、そういう原点を忘れてはならないと思っております。

高橋委員 かつてなく裁判が本当に続いております。そして、その中で貴重な経験が積み上げられておりますので、先ほどの認定基準の改定も含めて真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 あと、時間がなくなりましたので、最後のグラフの説明だけ一言言わせていただきたい。

 これは、4の最後に「就業者数と労働生産性の推移」ということで、先般の「労働経済の分析」で出されたグラフでありますけれども、これは横軸が雇用で縦軸が生産性なんですね。これは生産性が高まっているにもかかわらず雇用が抑制されてきたというグラフであります。製造業がのけぞっておりますね。サービス業がなだらかに上昇しているのに対して製造業がのけぞっている。

 このことを後ろにつけてある文章の中で、アンダーラインを引いておりますけれども、生産の拡大にもかかわらず雇用を抑制してきて改善がほとんど見られなかったということと、長時間労働でふえてこなかったという指摘がございます。そして、最後に、「製造業の雇用を力強く回復させていくことが、経済成長の成果を勤労者生活に波及させていく上でも重要である。」こういう指摘をされている。

 これで最初の話に戻るわけですけれども、厚生労働省自身がこのような分析をされているという立場に立って、しっかりと雇用を守っていただきたい。

 以上であります。

田村委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 私は、本日、水曜日の山田委員と大臣との御審議、あるいは昨日の参議院の厚生労働委員会での私どもの党首福島みずほと大臣とのやりとりを聞きながら、実は大臣に冒頭お伺いしたいのです。

 先ほどの答弁の中でも、大臣は国のセーフティーネット政策はしっかりやるんだというふうに御答弁でありますが、果たして、現下において、働く者の住宅の問題、よくワーキングプアという言葉が使われますが、今やその方たちは同時にハウジングプア、住まう場所がないというような事態に同時に直面せざるを得ない時代がやってきておると思うわけです。そうしたことに対しての大臣の御答弁が、いま一歩というか、もう少し深い認識に立っていただきたいなと私は思うので、そういう観点からお伺いをいたしたいと思います。

 まず、もう皆さん御指摘ですから、この間、失業率の上昇あるいは有効求人倍率の低下によって、特に製造業現場、それも輸出関連の製造業現場では失業が相次ぐと。例えば、十一月一日の朝日新聞によれば、トヨタ自動車九州で、六月と八月の二回、計八百人の派遣の解約、あるいは、もう一つ、日産自動車九州でも千人の契約を更新しないという事態が起きております。この場合に、派遣で働く方たちは、同時に住居を失うということが発生しているわけです。

 大臣にもう一度お伺いいたしますが、大臣にあっては、やはりこのさま変わりした働く者の風景というか、ワーキングプアとハウジングプアが同時並行的に起こってしまうということについて、どのような認識をお持ちであるか。そして、恐縮ですが、具体的には、大臣はこの間厚生労働省が出された「経済情勢の変動に伴う事業活動及び雇用面への影響について」という報告、これは十月に中小企業をヒアリング調査したものですが、これをごらんになっているかどうか、二点お願いいたします。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

舛添国務大臣 アメリカ発の金融不安からきている経済危機は大変深刻なものがあるというふうに思っております。その中で、特に派遣の労働者に対しての、先ほど調整弁という言葉が高橋委員から出されましたけれども、そういう観点も含めて、極めて厳しい風が当たっているということも認識しております。そして、そういう雇用情勢の中で、とりわけ派遣労働者の場合は住居という面についても同様なことが起こっている。これは極めて深刻に認識しないといけないというふうに思っています。

 これまでをずっと振り返りますと、高度経済成長時代がありました。そして、バブルの崩壊というのを我々は既に十年以上前に経験しています。しかし、そのときに比べてもさらに深刻になっているのかなという感じがします。それは、やはり派遣という形態、特に日雇い派遣、これがその後拡大したことが一因になっているという認識も持っております。

 そういう中で、我が省でさまざまな統計調査、報告が出ておりますので、基本的には私は目を通してきております。

阿部(知)委員 よく衣食足りて礼節を知ると申しますが、やはり住が足りませんと人は保護される場がないわけであります。

 この住宅の喪失という問題を、大臣は先ほど「経済情勢の変動に伴う事業活動及び雇用面への影響について」という調査はごらんになっているということですので、私としてはこのヒアリングの中で、例えば、非常に大きな失業の数値が上がっております製造業や輸出型製造業現場、ここではすなわち雇いどめ等々の起こる比率が、製造輸出型では四三・六、そして製造業では二九・四、これは派遣の皆さんですが、パーセンテージです。この方たちの、実際どのくらいの方が同時に住居も失っているかという集計もぜひ、ヒアリングですからできるんですね。

 私は、こういう厚労委員会等々で審議をいたしますときに、やはり厚労省がしっかりしたデータをお持ちになることというのが前提なんだと思うんです。

 私どもはもちろんホットラインとかやりますし、そうしたところには、この前、山田先生が御指摘の、要するに住居も追い出されてしまった派遣労働者の例とか、たくさんホットラインが来るわけです。ところが、いざこの場で審議しようとなると、厚労省の方がしっかりしたデータをお持ちじゃないわけです。

 大臣にきょう約束してほしいんです。今度、この厚生労働省の職業安定局雇用政策課で行っている、七月にも行った、十月にも行った、残念ながらこれからますます雇用情勢が悪化していくこともあり得ると思います。そうしたときに、実際この方たちで、寮とかにお住まいで、同時に失業がすなわち住宅を失うことになる方たちがどの程度おられるのか、実態調査の中に加えていただきたいですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 例えば派遣会社に対する調査を含めて、それはやってみたいと思います。具体的にどういう形で進めるかについては、局長の方がもし答えられれば答えてください。

阿部(知)委員 済みません、大臣の明確な御答弁をいただければ。

 例えば、日雇いの派遣の方でも六十一万人失業状態にあるという報告がありました。同時に住居もないという方がどのくらい発生するのか。これは、先ほど言いましたワーキングプアとハウジングプアが合体した形になりますから、極めて重要ですから、私は、やり方についてはもちろん現場に任せます。ただ、そういう視点を持って、住宅というところを切り口にやっていただきたい。

 そうやっていただくと、恐らくこの間の大臣の御答弁は、例えばホームレスの皆さんについては福祉的側面から、旧厚生省の担当でいろいろな施策があったと。この前のチャレンジネットのお話、これは昔の労働省分野の皆さんがチャレンジネットというのをつくって、そして、でも実は、大臣御存じだと思いますが、住宅部門は東京都に丸投げしているんですよね、厚労省みずからやっているんじゃないんです。国のセーフティーネットとしての住宅政策は、今度は国土交通省。これは三分割なんです。

 旧厚生省の福祉分野、ホームレス分野、そして労働省分野のこのたび細々始まっているチャレンジネットは、実は住宅部分は自治体任せ、そして国土交通省の方がもう一つのセーフティーネット政策をやる。こういうばらばらにしていたのでは、今急速に拡大している、家を失う、路頭に迷う若者たちにとても対策できないと私は思うんです。

 そういう問題意識できょうは大臣にお願いいたしましたし、また、その意味から、チャレンジネットの住宅政策はあくまでも東京都がお金を出してやるわけです。では、大臣の手のうちでできる政策はないか。これは、与党の方も聞かれましたが、雇用促進住宅です。間違いなく厚労省が管轄しておられます。そして、ホームレス支援やチャレンジネット支援でやれる数と、膨大に発生する実際に住まいを失う失業の方の数は、もう十倍、二十倍のオーダーに違うんです。

 ぜひ大臣、きょうは清水委員も御質疑でありました、この雇用促進住宅のいわば売り払い政策を、緊急的な、期限を定めてでもいいです、凍結するなり見直すなり、とにかく住宅を保障していただきたい。どうでしょうか。

舛添国務大臣 まず、先ほど委員がおっしゃいましたように、住居に困っておられる方、こういう方の実態について早急に調査をしたいと思います。

 その上で、やはり住むところというのは基本的に、その方の住む自治体、これがきめ細かい手当てができるわけですから、実施主体がそこであることの方がいいのではないかと私は思っております。そういう中で、都道府県がどういう形でそれを支援できるか。これは先ほどの、東京都にお願いしている、NPOなんかを使ってやっている窓口もそうであります。

 雇用促進住宅につきましては、先ほど来申し上げていますように、確かに、行政の合理化ということで平成三十三年までに処理ということが行われております。ただ、ここも一定の家賃は払わないといけません。私の記憶が正しければ、やはり年額で百二十万ぐらいないと家賃を払える水準にないと思いますから、そういうことも含めてどういうことが可能か、仮に雇用促進住宅を一定の期限を定めてでもそういうことに転用するときの問題点、課題、そういうことについては検討してみたいと思います。

 しかし、片一方で、大きな行政の合理化という面もあります。ただ、まさに実態調査が必要だというのは、さま変わりしているという状況がどういうことなのか。あれは御承知のように、雇用促進住宅は、例えば、もともと今の機構自体が石炭から石油へという大きなエネルギー革命の過程において生まれてきた諸政策、それが残ってきているわけですから、そのときに比べて相当状況が変わってきて、ついこの間まで、住居ということに対して、それほど深刻な問題に実はなっていなかったと私は思っております。

 しかし、ここに来て極めて深刻な状況になっているので、その認識の確認から始めて、今言った案についても検討を加えさせていただきたいと思います。

阿部(知)委員 ことしになってからも、いわゆるビデオカフェというんでしょうか、インターネットカフェじゃなくて、ビデオを見るようなところの火事が起きて、たくさんの方がお亡くなりになった。

 あの事案を見ても、大臣、若い人たちだけじゃなくて、もう私たちくらいの年齢でも実際住む場所に、路頭に迷う方というか、その日その日で違う場所に泊まらねばならない方がふえているんだという、やはり産業構造の変化と同時に、雇用労働情勢も大きく変わっています。そして、その一部は人為的です、派遣労働等を引き入れましたから。そこに、現状に立ってしっかりやっていただきたい。

 特に、与党が、この三年は全面的に景気回復に向けるんだ、集中期間だと言うからには、その中で生きる人が支えられなければ何の意味もないわけです。大臣はもうおわかりと思いますから、ぜひ前向きにお願いしたいと思います。

 さてもう一つ、雇用促進住宅もそうですが、いわゆる雇用保険絡みのことでお伺いしたいと思います。

 きょう、長妻委員の御質疑にも出ましたが、現状で雇用保険漏れが、多く見積もって一千六万人いる、非正規の場合は六割に上るんじゃないかという大臣の御答弁もありました。すなわち、雇用保険はセーフティーネットであって、本来は持っていなきゃいけないものが、一千万人近くが漏れているかもしれない深刻な状況です。

 そして、ここに四兆、五兆のお金が積み上がったといっても、私は、まず使い方は、漏れている、本来であればセーフティーネットを張ってもらえて当然な人に使うということ、やはり雇用のセーフティーネットに使うという原則を大臣にもう一度確認したいというのと、もう一点、その記事のそば、きょうは読売新聞ですが、すぐそばに「失業給付 国負担ゼロに」と書いてあります。こんなに雇用情勢が悪くなって、雇用保険に漏れている人が一千万人もいるという記事のすぐ横に、国庫負担ゼロにというのは、私はやはり真っ逆さまの政策なんだと思うんです。

 国庫負担をゼロにする前に、きちんと皆さんに雇用保険が行き渡る状況をつくってこそ、初めて国のセーフティーネットと思います。大臣、この点についてお考えをお聞かせください。

舛添国務大臣 読売新聞に報道された国庫負担ゼロというのは、私は雇用保険を担当する大臣ですから、全くあずかり知らないところで、私がかかわっていないところで決定はあり得ません。

 私は、何度も申し上げていますように、何のために労働省があって、労働大臣がいるのか。それは、労働政策、雇用政策について国がかかわることが近代国家の基本的な要件だ、そういうように思っておりますから、そういうことについて軽々にゼロにするなどというのが、そういう話が政府の中あるいは与党の中であれば、体を張って抵抗いたします。

 それから、四兆九千億円の積立金は最後のとりで、最後のセーフティーネットですから、これを安易にほかのところに流用するというようなことがあってはならないと思っております。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

阿部(知)委員 私のお願いの雇用対策にしっかり使っていただくということと、近代国家の最後のとりでだとおっしゃっていただきましたので、しっかり頑張っていただきたいと思います。もう、そういうお言葉をいただけば。

 大臣のお手元の一枚目の私の資料は、先ほどは雇用保険の加入者で一千万人近くが漏れているというお話でしたが、今度は、実際の失業者の中で一体どれくらいの失業給付があるかという逆さの側面。

 給付の側面から見ても、上のグラフを見ていただければわかりますように、現下、非正規雇用の比率がふえるほどに、失業していても失業給付がないという方がどんどんふえているというのが上のグラフです。今、二二%、五人に一人しかない。一九九三年に比べれば半分になってしまった。

 私は、やはりまず、こうやって失業していく方に、きちんと何度も大臣にセーフティーネットを張っていただきたいし、その下には、これは上川委員の御質疑と一緒ですが、景気が低迷すれば、たまっている失業給付のお金もどどっと急速に減っていくものですから、ここはしっかりと見定めていただきたいというお願いであります。

 さてもう一つ、実は、こうした雇用保険という問題では、二枚目、ページをおめくりいただきますと、四十時間お働きであれば別ですが、二十時間から四十時間未満の場合は、いわゆる一年以上の雇用が見込まれるということが要件になっています。このあたりも、実は雇用保険に入れない、ブロックされる大きな要件と思います。

 先ほど、これは上川委員の御質疑でしたか、女医さんたちの短時間正社員制度というのをおっしゃっていましたが、これから女性たちはますます、ワーク・ライフ・バランスの中で、子育ても、そしてあるいは親の介護も、男性もそうですけれども、みんな担いながら、労働時間の多寡によるのではなくてしっかり仕事をしていきたいという時代になった。そうなると、なぜ二十から四十時間の方だけがその先一年間見込まれねばならないのか。これは、私はワークシェアのモデルに反すると思います。

 女医さんたちだけがそこで正社員になって雇用保険もとれるんじゃなくて、世の中全体がそうなってほしいと思うんですが、大臣はどうでしょう。この二十から四十時間だけ一年以上というたががはめられる。やはり時代にそぐわないと思いますが、いかがでしょう。

舛添国務大臣 週二十時間以上、そして一年という要件が雇用保険の適用要件になっておりますけれども、今おっしゃったような問題点もあると思います。

 したがいまして、この点については、基本的には労使のコンセンサスを得た上で前に進めたいというふうに思っておりますので、労働政策審議会やその他の場面で、労使とともにこういう問題についても検討を進めてまいりたいと思います。

阿部(知)委員 ぜひ、これも体を張ってやっていただきたい。大臣、体が幾つあっても足りないけれども、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 さて、今、世界の経済情勢、ちょうど今麻生さんも金融サミットに行っておられますけれども、我が国のみが円高、円独歩高であります。これから休みに向けて、世の中何となく低迷しているけれども、せめて円高だから海外旅行に行こうかとか、そういう方もおられるかもしれません。そういうちょっといいところ行きたいなと思ったときに、でも、そこで旅行の添乗員の皆さん、実は、そうした旅行を一生懸命セッティングしてくださって、事故もないように、あるいは気持ちよく旅行ができるようにと働いてくださる添乗員の皆さんの労働条件というものにもやはり気を配っていただきたいと思うんですね。

 私は、これは昨年の十月にも取り上げましたが、旅行添乗員の方々は、大手の阪急トラベルにしろ、あるいはJTBとか有名どころにしろ、実は厚生年金にも入っていない、医療保険も持っていない、もちろん雇用保険も持っていないというものが常態化しておりました。実態においては、例えば二週間とか海外に行き、少し休んでまた次の業務、これが一年以上継続されていても入っていないという方が非常に多かったわけです。

 品川の職安とかあるいは大阪の社会保険事務局とかが、実際にはどうであるかという実態を掌握して、厚生年金やあるいは医療保険を持たせる、あるいは雇用保険に加入させるということをやってくださっているのですが、はてさて、まだまだ実態は入れない方の方が多うございます。この辺について、この一年、前向きな取り組みが何かあったかどうかお願いします。これは担当局で。

太田政府参考人 今議員御指摘の件でございますけれども、これは、派遣労働者として旅行添乗員に従事していた方の請求を踏まえて、品川のハローワークがその就労実態を確認して、雇用保険の加入について事業主に対して指導を行った事案でございます。

 こうしたケースであっても、雇用契約間の間隔が短くて、その状態が通算して一年以上続く見込みがある場合には適用要件を満たすということで、適用の指導を行ったものでございます。

 今後とも、こうした要件に該当する労働者につきましては、その雇用する事業主において雇用保険の加入手続が適正に行われることが非常に重要でございますので、派遣元事業主への指導監督を行っております労働局の需給調整部門とも十分連携しながら、ハローワークにおいて適切に加入の手続が行われるように、引き続きしっかりと指導してまいりたいと考えております。

阿部(知)委員 去年もそう答えてもらったような気がするんですけれども。

 でも、これはいろいろな調査があって、雇用保険の加入が現状で約一五%くらいだというんですね。日本添乗サービス協会による調査ですけれども、一五%。この添乗員の皆さんは、今の登録型派遣の中でも専門業種ということで認められているものであってすら、そんな状態なんですね。そうなると、この国で派遣という形で働くことは、本当のセーフティーネットを持てない状況で、ワーキングプアになりかねない、非常に私は、実態がきちんと進んでいないと思います。

 品川の職安でやっていただいたのが一年前です。一年間、何をしてこられたか。もう少しムーブアヘッド、前に向けていただきたい。大臣は、これはそこでうなずいていただければ結構です。こうしたこともたくさん事案がありますので、それはもう厚生労働行政の根幹だと私は思います。

 今度、労働基準法関係について質問をさせていただきますが、実は、この間、派遣労働者の皆さんに労働災害が多発している。派遣労働者に限らず、派遣労働者の方の数自身もふえているからだという言い方もされておりますが。

 大臣のお手元の最後の資料でございます。ここには、〇五年、〇六年、〇七年と、派遣労働の方と全労働者の労災の伸び率を比較したものを、これは私の事務所で作成いたしました。〇四年は、法律ができてからの期間ですが、十カ月ほどです。これは二〇〇三年の解禁で製造業現場に派遣が入ったときですから、これが〇五年で、〇六、〇七年はフル十二カ月です。そうやって見ますと、対前年度比で〇六年が一・五一倍、また〇七年は一・六倍、すなわち、五千八百八十五人の方が休業四日以上の死傷を負っているという数でございます。

 労災は一つでも少なくするのが当たり前のことでありますが、大臣は、こうした派遣労働における、母集団はふえたというのはあるかもしれません、しかし、実際に労災がふえておるという実態について、厚労省として何をなすべきか、この点をお願いします。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のございましたように、派遣労働者におきまして労働災害の件数がふえておりまして、憂慮しているところでございます。

 御案内のことかと思いますが、労働安全衛生法に基づきます措置、派遣の場合には派遣先と派遣元に分けて、それぞれ責任を課しておるところでございます。そういったことで、労働基準監督機関におきまして、派遣先、派遣元両方に監督指導をしているところでございます。具体的に、製造業などに臨検監督に行った場合には、派遣労働者がそこにいるかどうかよく確認をいたしまして、その派遣先が講ずるべき措置が講じられているかどうか、その辺をチェックいたしまして、必要な指導を実施しているところでございます。

 今後につきましては、やはり派遣先と派遣元でよく連携して安全管理をやっていただかなきゃいけないという問題もございますので、派遣先、派遣元の連携につきまして、どういった安全衛生管理をやっていけばいいか、このあたりにつきまして、できればマニュアルを作成して普及させていきたい、そうしたことで自主的な安全衛生管理の実施を促進していきたい、こんなふうに考えておるところでございます。

阿部(知)委員 私はもともと製造業現場への派遣は禁止すべきという立場ですが、しかし、今、現下にそれがなされないのであれば、今おっしゃられたようなことも重要になってくると思います。

 とりわけ派遣労働の場合、派遣元は労災にもちろん加入していて、労災が起きれば保険料率が上がるわけです。派遣先の方にはそういうことはないわけですよ。事故が起きても、派遣先は責任を問われない、ペナルティーもほとんどないに同然なんですね。そういう中で、製造ラインの中で派遣労働者が働いており、なおかつ労災がふえておる。安穏としてはいられない状況が広がっていると思いますから、大臣にも、さらにこの点についてもきちんとやっていただきたい。

 そして、今般、いわゆる労働基準法の改正で残業時間の問題が取り上げられております。先ほど高橋委員が非常に詳細に、いい質問をしてくださいましたので、私も、やはり頭、上限規制をしないと、過労死大国日本はとまらないと思うと同時に、今回の法改正で、実は、中小企業の扱いと大企業と言われるものの間に差がございます。中小企業については三年後に見直す。三年後に足並みをそろえるんじゃなくて、三年後にさらに見直す。何か、はるか遠くのところに送られたような気がします。

 大臣のこの間の御答弁を聞いても、確かに、中小企業は経営状態が厳しいからということで御答弁でありました。しかし、この法律のもともとの意味は、やはり残業を少なくしていただいて、特に四十五時間、さっき高橋委員の御質疑にあったとおりです、体にこたえる、もうそこからはやめていただく方がいいわけです。万やむを得ずこうやって加算していくわけですが、それは中小企業に働く方にとっても、大企業に働く方にとっても一緒なんだと思います。

 大臣、もう一度、この三年間、本当は私は猶予期間でいいと思うんですよ。何も三年後の見直しなんて、これはずっとやらないんだと言っているに等しいですから。でも、大臣には思いがおありでしょうから、ちょっと最後に一言お願いします。

舛添国務大臣 私は、ヨーロッパで生活し、特にフランスという国でずっと生活してきましたから、日本に帰ってきて、なぜこんなに働かないといけないんだろう。フランスは一カ月間みんなバカンスをとっている、そして、ちゃんと夕御飯をみんな家族そろって食べている。そういうところを本当の先進国だと思っていますから、ワーク・ライフ・バランス、そして、こんなに残業しないとやっていけない社会は本当に先進国なのかという思いがありますから、大企業であれ中小企業であれ、長時間労働を抑制する、大きな目標に向かって前に進まないといけないと思います。

 ただ、私が申し上げたかったのは、現下の経済情勢において、そして企業の八割が中小企業だという状況において、そちらの声にも耳を傾けたということでありまして、永遠にこういう状況を放置するということではなくて、まず、大企業、中小企業を問わず、働き方の革命をやるべきであるというふうな思いがありますから、企業のサイズにかかわらず、そういう大きな目標に向かって邁進していきたいと思います。

阿部(知)委員 私は、中小企業を支援する策はさまざまにあると思うんです。

 例えば、ドイツなどでは環境税を取って、それを中小企業の社会保険料負担に向けることによって、苦しい状況を何とかイコールフッティングさせるとか、やはり政府は政策を考えて、中小企業に対して支援をしながら、勤労者を守ることを一義的にぜひお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

田村委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 大臣に久しく質問をしておりませんでしたので、きょうはまた忌憚のない答弁をいただければというふうに思っております。

 まず、事あるごとに何度も質問させていただいております水道の問題、私のライフワークの一つでございますけれども、耐震化を進めるべきであるということを何度も何度も言ってきておりますが、なかなかこれも進んでおりません。

 これは、川崎厚生労働大臣が予算委員会で、耐震化を進めるんだということも御答弁いただいているわけでございます。ただ、きょうはその耐震化の話だけではなくて、もう一つ大きな問題であるということなんですが、鉛管の問題についてまず大臣に御質問したいなというふうに思っております。

 鉛管の問題につきまして、昨年の十一月ですか、この委員会で、どれだけ残っているのか、残存数はどれだけあるのかということをお尋ねいたしましたら、平成十八年度の調査で、各水道事業者が把握している鉛製の給水管の延長は九千百キロである、このようなお答えをいただきました。また、個人の住宅の給水管が鉛である、こういうことがわかっている場合には、その事実を知らせるように努力をするということも御回答いただいたわけでございます。

 その後、鉛管の残存数について新たな調査はされたのか。すべての調査をしていないにしても、どれだけ鉛管からの布設がえというものが行われたのか、進んだのか、こういう具体例も教えていただきたいなということと、それから、個人の住宅の給水管が鉛である場合の個人の方へのお知らせについて、どのようにその後取り組まれていらっしゃるのか、あわせてお答えいただきたいというふうに思っております。

舛添国務大臣 まず、鉛製の給水管、その後、平成十八年度末で八千二百キロメートルとなっておりますので、前の回の九千六百キロメートルに比べて約千四百キロメートル減少いたしました。

 もっと急げとおっしゃられると思うんですけれども、一つは、個人財産なので、その人が嫌だと言うとなかなかできない。したがって、今おっしゃったことは、昨年の十二月に水道事業者に対して通知を発しまして、委員の質問がたしか十一月だったと思いまして、翌月すぐ出しまして、早期にこれは布設がえをした方がいいよということを鉛製の給水管を持っておられる各戸に知らせるということ、そしてさらに、使用の可能性のある住宅については確認してみてください、こういうことをやってきたところでございます。

 引き続き、これとともに、公道の下にあるものについては水道事業者に対してきちんとやるように申し上げておりますし、また、七月に水道ビジョンを改定いたしまして、この点について重点項目として書き込むようにいたしました。

糸川委員 ありがとうございます。

 少しずつでも進んでいっていることはわかっているんですが、ぜひ、もっともっとスピードアップしてやっていただきたいというふうに思っております。

 管路について、健康への危害というんでしょうか、これが懸念されている鉛管のほか、今度は漏水の原因となる老朽管、それから石綿のセメント管、これは耐震性が非常に悪い、この布設がえの促進というのが課題になっているわけでございます。

 約二万キロに及ぶこうした管路の取りかえ、こういう問題について、厚生労働省は、先ほど大臣が公道の部分は水道事業者がやるということでございましたけれども、水道メーターから公道側に設置されている鉛管については、公共事業体が起債措置、こういうものを活用して布設がえを行っている。水道メーターから個人の宅地側に設置されているものに対しては、布設がえに対して住民の方の理解を求める、そういう広報をした後に、水道事業体が助成金とか融資制度によって支援措置を導入する、そこで布設がえを進める、そういうスキームになっている。

 これはわかるんですけれども、個人の住宅部分の給水管というのは、なかなかそうはいっても取りかえられないし、取りかえないという現実もあるんじゃないかなというふうに思っております。

 平成十六年の東京高等裁判所の判決でも、道路下の給水管、これは個人財産であっても、水道事業者に管理責任があるという判例もございます。ですから、個人の住宅部分の給水管の取りかえ、こういうものについて、まず広報をしてから水道事業体が助成金の支援措置をする、これだけではなくて、もう少し積極的な取り組み、支援をすべきじゃないか。

 確かに、個人の財産ですから、なかなかその支援というのは難しいということでございますけれども、やはり鉛製の管にたまった、鉛を含んだ水を飲んでしまうとどういう健康の被害が生まれるかということも少しずつわかってきているところでもありますから、ぜひ、対策を何かしていただきたいなというふうに思っておりますので、これから、水道というライフラインに対しての大臣の御決意、そしてお考えをお聞かせいただきたいというふうに思っております。

舛添国務大臣 敷地内の水道管については、今委員御指摘のように、水道事業者に支援策とか融資制度ということで検討するように求めておりますけれども、やはり、私は水道の担当大臣なんですけれども、大地震があったり災害があったときに、まさに飲み水がないということは生命に直結するわけですから、今後とも、また委員の御提言もいただきながら、さらに前へ進めていきたいと思っております。

糸川委員 柏崎のときも能登のときも、そしてこの間の宮城の地震のときも、やはり皆さん困っているのは水なんですよね。こういう問題をずっと言ってきているんですが、基幹路だけでも一〇〇%してくださいと言っていても、なかなか進んできていない。

 先日の大臣の所信の中にも水道の問題は入っていなくて、このほかにも多くの課題が山積しているというところに恐らく含まれているんだろうというふうに思っております。ですから、そこはしっかりと、この耐震化の問題、いろいろな省庁にまたがっていて難しい、そして地方との兼ね合いもあって難しい、それもわかりますけれども、やはりこれは国民の皆さんの安全、安心につながりますので、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 きょうは、私も時間が余りございません、ほかにも安心、安全についてお尋ねしたいものですから、水道はこの程度で終わりたいと思います。

 次に、子育て支援のことについて質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 追加的経済対策の生活対策、これでは定額給付金ばかりが話題になっているわけでございます。出産・子育て支援の拡充として、子育て応援特別手当の支給という案内をいただきましたけれども、こういう事項が挙げられているわけでございます。

 その説明としては、乳幼児期の子育てを支援するため、平成二十年度の緊急措置として子育て応援特別手当を支給ということで、具体的には、就学前の子供を持つ世帯の経済的負担を軽減するため、第二子以降の三歳から五歳の子供を持つ家庭、この方たちを対象に、一人当たり三万六千円を支給するということでございます。平成二十年度の緊急措置ということですので、今年度中に支給するものだというふうに思います。

 そろそろ内容がきちっと決定されているのではないかなというふうに思いますが、具体的に、対象となる児童、これはどういう家庭の、どういう子供なのか。給付対象となる家庭の所得制限、こういうものがあるのかどうか。また、給付対象の児童数、所要経費、これはどのくらいだというふうに想定をされていらっしゃるのか。また、財源はどこから捻出されるおつもりなのか。教えていただきたいと思います。

村木政府参考人 先生から御指摘をいただきましたとおり、生活対策の中に、出産・子育て支援の拡充という分野におきまして、子育て応援特別手当、これはまだ仮称でございますが、この支給ということで一つ柱が立っております。

 具体的な内容としましては、先生今御紹介くださいましたとおり、現下の厳しい経済情勢にかんがみ、特に幼児教育期における子育てを支援するため、単年度の緊急措置として、第二子以降のお子さん一人当たりに対して三万六千円を支給するということでございます。具体的な内容については、これからしっかり詰めていくということでございまして、詳細についてはまだ決まっておりません。

 乳幼児期ということでございますから、大体三歳から五歳というか、普通に言われる年少さん、年中さん、年長さん、こう言われるあたりを想定しているわけでございます。私どもが想定しておりますお子さんの数が、大体百七十万人ぐらいではないかというふうに考えております。

 具体化に向けて、急いで内容を詰めていきたいと考えているところでございます。

糸川委員 局長、ぜひ、その財源というのも、どこからそういうものを捻出するということを決めていらっしゃるのか。それから、百七十万人ぐらいということでございますけれども、大体それはどの程度の所要経費というんでしょうか、これをどのくらいというふうに想定されているのか、教えていただけますか。

村木政府参考人 財源等につきましては、この生活対策全体に対する予算編成の中で決まっていくものというふうに考えております。

 予算規模でございますが、今申し上げたおよそ百七十万という人数と、それから単価三万六千円ということを考えますと、およそ六百億程度というふうに考えております。

糸川委員 もう一つ、これも局長で結構なんですけれども、何で単年度なんでしょうか。これは、第一子からではなくて第二子以降で、しかも、乳幼児期というんでしょうか、三歳から五歳ぐらいに限定されるというのはなぜなのか。また、その三万六千円という金額を設定されたのは、どうしてそういう金額にされたのか。

 この設計自体がまだまだ詳細決まっていないというふうにおっしゃられていますけれども、これは平成二十年度中に支給されるという予定なのか、その点もあわせてお答えいただきたいというふうに思います。

村木政府参考人 少子化対策という意味で申し上げれば、先生御指摘のように非常に大事な課題であり、恒常的な施策、私ども、一つは仕事と生活の調和、先ほど御議論が出ておりましたそういった問題とか、それからもう一つは、保育等の子育て支援サービスの基盤整備といったこと、それから、やはり経済的な支援といったようなことが非常に大事で、これは単発のものではなくてしっかりと支えていく、そういった施策を充実させていくべきものと考えております。

 今回の子育て応援特別手当に関しましては、現下の厳しい経済情勢にかんがみ、とりわけ教育等にお金のかかる時期、しかもお子さんがたくさんいらっしゃるというところについて何がしかの応援ができないかということで制度設計を考えて、政府・与党として結論をされたところだというふうに思っております。

 支給時期につきましては、緊急措置であるということを考えれば、できるだけ早くというふうにしなければならないと考えておりますので、急いで詰めたいというふうに考えております。

舛添国務大臣 三万六千円を十二カ月で割ると三千円ですね。三千円というのは、住民税非課税世帯の保育所の負担が六千円なんです、その半分を援助しようという意味で三千円で、そういう数字を出しました。

 単年度というのは、今緊急に経済が悪くなっている、永遠に悪いわけではないだろうということで、リーマン・ブラザーズの件から始まっていることについて緊急に対応する。

 それから、財源その他については、これは政治のレベルで、私を含めて政府・与党で、きちんとこれから対応していきたいと思っております。

糸川委員 大臣、ありがとうございます。

 ただ、今の経済状態は確かに悪い、だから緊急対策だということはわかるんですけれども、今、ずっと、所得が低いというワーキングプアの問題も事あるごとに議論されております。そうすると、やはり三歳から五歳ぐらいの子供をお持ちの方というのは皆さん家計が苦しい。ですから単年度ではなくて、ぜひ、しっかりと恒久的に考えていっていただきたいなというふうに思いますし、三歳から五歳だけではなくて、もう少し幅も広げて早急に取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 次に、これも社会問題になってきておりますけれども、子供の無保険問題、これは約三万人の子供が無保険状態である、こういう実態調査の結果が公表されたわけでございます。

 親が国保保険料を滞納すると、世帯のすべての方から保険証を取り上げる、こういう仕組みがあるわけでございますが、お子さんを一生懸命育てている親御さんが、好きこのんで保険料を滞納する、こういう方もいらっしゃるのかもしれませんけれども、普通はそうではないというふうに思います。払いたくても所得がないとか、または、なかなか保険料を払うことができない、何かの理由で払えない。

 このような仕組みは、保険の原理から仕方がないんだというふうに政府は説明をされておりますけれども、病気にかかりやすい子供から受診の機会を奪い取って、子供を人質に保険料を納めろ、こういう手法になってしまっているんではないかなというふうにも思います。このような仕組みというのはしっかりと改めていく。

 保険料を払いたくても払えない場合、これは保険料の減免措置も優先して適用させるんだ、こういうことも考えていく必要があると思いますし、まず、この点についての厚生労働省の基本的認識、これもお伺いしたい。

 また、今回の調査で、保険料の滞納理由、これについては調査をされていない。そうすると、どういう理由で滞納されているのかということを、実態をしっかりと把握していくということが、減免措置とかそういうものを適用するしない、こういうものにも影響すると思いますが、いかがでしょうか。

水田政府参考人 国保の資格証についてのお尋ねでございます。

 まず、基本論から申し上げますと、国民健康保険、これは被保険者全体の相互扶助で成り立つ社会保険制度でございますので、年齢、職業、就業形態にかかわりませず、受益と負担能力に応じて一定の保険料をいただいておるわけでございまして、子供を持つ親の方々にも公平に御負担をいただくということが必要であると考えております。

 こういった滞納世帯に対する対応といたしましては、これまでも各自治体に対しまして、まず各自治体が滞納世帯の状況をきちんと把握した上で、悪質な滞納世帯に対しては厳正に対処しつつ、本当に経済的に困窮している世帯には、御指摘もありましたけれども、現に、資格証明書を発行するのではなくて、分割納付あるいは減免といったきめ細かな対応をするようにお願いをしてきたわけでございます。したがいまして、こういった運用が適正にされていれば、保険料を払える能力がありながら払わない人、こういう方々にきちんと厳正な対処ということをお願いしても、それはしかるべきことだろうと思っております。

 厚生労働省といたしましては、ただ、お子さんのいる滞納世帯に対しましてはよりきめ細かな対応が必要である、こういう認識でございまして、今回、資格証明書の発行に関しまして、自治体の運用が適正に行われているかどうか把握するために調査を行ったところでございます。

 御指摘のように、今回、滞納理由までは報告を求めておりませんけれども、これは、今回の調査の目的そのものが、ただいま申し上げましたように、自治体の運用が適切に行われているかどうかということであったということがございます。それからもう一つ、実際の滞納理由は個々の世帯ごとにさまざまでございますので、統一的な集計を行うことが難しい面がございます。それから相当の時間も要することから、実施をしなかったところでございます。

糸川委員 局長、自治体がしっかり、そういう運用をされているのかどうかということで調査をされたということでしたが、適切に運用されていましたか。どうなんでしょうか。

水田政府参考人 今回の調査を行いました結果についてでございますけれども、現在でも各市町村において、子供のいる世帯にはより慎重に運用を行っているということはうかがえます。これは、資格証明書の発行状況を見ますと、やはりお子さんがいるところには発行が少ないということがうかがえるわけであります。

 その上で、多くの自治体で工夫をしながら世帯の状況の把握に努めて、きめ細かく対応しているということもわかったわけであります。

 ただ、その一方で、滞納世帯に対する資格証明書の発行数の割合にかなりのばらつきがあるということもわかったわけでありまして、そういった点では、先日も答弁申し上げましたけれども、こういった機械的な運用というものが危惧されるわけでございます。

 したがいまして、私ども、今回のこの調査結果を踏まえまして、お子さんのいる滞納世帯についてはよりきめ細かな対応が必要であることから、各自治体に対しまして、まず短期被保険者証の活用などによって世帯の状況を把握するよう徹底を求めるとともに、関係の福祉部門とも十分に連携を図りながら、これは育児についてなかなか難しい面を抱える世帯があるかもしれません、そういったことにつきましては福祉部門とも十分な連携を図るということが必要であります。

 さらに、特に子供のいる世帯への緊急的対応として、子供が医療を受ける必要が生じまして、かつ一時払いが困難である場合には短期被保険者証を交付する、こういった必要な配慮を行うように求めたところでございます。

 今後とも、それぞれの自治体が実情に即して適切な対応をとるように、引き続き指導していきたいと考えております。

糸川委員 今回、資格証明書の発行に関する調査・集計表というのをいただきましたけれども、資格証明書を発行する前に、滞納者としっかりと接触を図る取り組みというところでは、件数からいうとどうなのかなというふうに感じますし、訪問というのはまたさらに少ないのではないかなというふうに思います。

 特にお子さんがいらっしゃるところ、こういうところに関してはしっかりと訪問をしていただいて、どういう理由なのか、それで、もう本当に厳しい状態だということならば、自治体から、例えば生活保護をどういうふうにするのかとか、こういうこともしっかりと取り組んでいただきたい。そういう安心、安全の部分をこの医療保険制度の仕組みの中でしっかりと取り組んでいくことが、少子化対策につながったり、生活対策の観点からも必要なのかなというふうに思いますので、ぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。

 もう余り時間がなくなってきてしまいまして、妊婦の受け入れ拒否の問題について、これも連日議論されておりますけれども、このことについてちょっと質問をさせていただきたいと思うんです。

 今現在は、医療技術の進歩によって、出産というのは安全で当たり前だというふうにも思われてきているわけですが、例えば、平成十八年の人口動態調査によると、一年間に五十四人の女性の方が、出産の際に残念ながら命を落とされてしまっている。特に、近ごろの晩産化ということで、母体のリスクが高まってきている。そういうことのために、総合周産期母子医療センターを整備して、周産期センターネットワークの体制整備を進めてきたというふうにも承知しております。

 ただ、大臣、何度も答弁されていますけれども、産科医が足りないんだ、こういうことで、この取り組みが正直言うと機能していないというふうに思っているわけでございます。今回、周産期の母子医療センター、こういうものはどういうような不測の事態が生じても対応できるように、常に産科医の先生と一般の救急医療の専門医、こういう方たちがしっかりと連携をして、一体的に処置が行える体制をつくって維持しないといけないというふうに認識しています。

 ただ、現実的には、そのような体制というのは維持することが今現在は困難であるというふうにも承知しておりますが、現場を大臣は何度も視察されていらっしゃるというふうに思います。大臣は、この認識はいかがでしょうか。どういうふうにこれからこの体制を構築するおつもりなのか、ちょっと感想も含めてお聞かせいただきたいなというふうに思います。

舛添国務大臣 まず、今回の東京の事案の反省に立ちますと、救急医療と周産期医療の連携が必要であります。

 墨東は、その両方が備えてある病院でありました。こういうふうに両方備わっているところがまだ一〇〇%ではありませんので、それをどうするか。本当は両方備わった方がよろしいと思います。ただ、地域の関連の救急医療のシステムとの連携ということもあり得ると思いますけれども、母体の状況によって、やはり同じ病院の中でやらないといけないというようなこともあると思います。

 そういうことの大きな背景には、やはり医師不足、それから看護師の問題にも行き着きます。だから、医療資源、こういう方々をどううまく使うか。そのためには、メディカルクラーク、つまり事務の補助員も今度入れることにいたしました。そして、お医者さん、看護師さんが本来の業務に集中できるような体制をつくっていく。その中では薬剤師の皆さんの御協力もいただくという体制づくり。

 こういうことについては、安心と希望の医療ビジョンですべて青写真は描き終わりました。そして、この長期的なビジョンで医師数をふやしていく。そして、特に産科、小児科について言うと、女性医師が半数を占めるようになってきた。この女性医師が働きやすい環境を、例えば院内保育所という形で整えていくことも必要でしょう。

 それから、今回について言うと、こっちのお医者さんがこう言った、ああ言った、そういう伝達がおかしかったということもあると言われていますが、しかし、私は構造的な問題が裏にあると思いますから、そういう形で、情報ネットワークの伝達システムについても経済産業省ときちんとやっていく。それから、研修制度の見直しということもやっていかないといけないと思います。

 課題は山積しておりますし、何をやったらいいかはわかっておりますので、早急に一つ一つ着手していって、二度とこういう悲劇が起こらないように努力をしたいと思っております。

糸川委員 ぜひ大臣、これは安心、安全につながる話なので早急に取り組んでいただきたいということと、ここの委員会の場でも二〇〇七年六月のドクターヘリ法の成立によって、現在、全国十三道府県に十四機のドクターヘリが配備されているわけです。一秒を争う緊急医療の現場において、今日までドクターヘリの出動によって多くの方が救われているということがあるわけです。

 ただ、医療従事者の間でも、まだまだその認識というんでしょうか、ドクターヘリの活用というのが認識として低い。そして、日本での母体搬送の運用数というのは非常に少ないんですね。平成十八年の運航状況によると、ドクターヘリの全搬送が四千十四回あるのに対して、産科救急、妊産婦の搬送というのは四十五件、全体のわずか一%程度しかない、こういう現状があるわけですね。

 ですから、ドクターヘリをしっかりと活用することによって、妊婦の搬送時間が大幅に短縮されて、母体への負担というのも軽減されるというふうに思います。消防機関それから都道府県、こういうところとの連携をしっかりと強化して、産科の救急において妊婦の搬送にドクターヘリを活用して、もう少し広域な連携をとっていくということをすれば、大臣が今おっしゃられているようなそういう緊急医療体制、救急医療体制をとるまでの間にも、これはすぐ取り組めると思うんですね。ですから、そういうところにしっかりと厚生労働省は取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

舛添国務大臣 千葉の亀田総合病院、これは、東京湾を越えて神奈川からも搬送があります。多くの命が救われました。こういう点についてもきちんとやっていきたいと思いますし、大体、国の負担が一億、地元の負担が一億ということでドクターヘリを回していきます。今後とも、さらなるこの充実をやっていきたいと思いますが、受け入れ側の自治体の方で、とてもじゃないけれども、県の財政が厳しいときに一億は出せないよという声があるんです。

 ですから、やはり国、地方が経済をきっちり立て直すことによって、潤沢な財政ということがこういうことの条件でもあろうと思いますが、ドクターヘリの問題も含めて、今の医療崩壊と言われる事態に対して、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

糸川委員 大臣、今のすべての行政の態度にもつながると思うんですけれども、やはり思いやりだと思うんですね。今回の被害者の方、患者さん、残念ながら亡くなったという方もそうですけれども、どうしたらいいのかということを、ぜひ、頭だけで考えないで、または現場も見ていただいて、しっかりと早急な取り組みをしていただきたいというふうに思っております。

 終わります。ありがとうございました。

田村委員長 次回は、来る十八日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十二分散会


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