衆議院

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第2号 平成22年2月17日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十二年二月十七日(水曜日)

    午後四時五十分開議

 出席委員

   委員長 藤村  修君

   理事 青木  愛君 理事 石森 久嗣君

   理事 内山  晃君 理事 黒田  雄君

   理事 中根 康浩君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    石原洋三郎君

      大西 健介君    岡本 英子君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      斉藤  進君    園田 康博君

      田名部匡代君    田中美絵子君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      初鹿 明博君    樋口 俊一君

      福田衣里子君    藤田 一枝君

      細川 律夫君    三宅 雪子君

      水野 智彦君    宮崎 岳志君

      室井 秀子君    山崎 摩耶君

      山井 和則君    坂口  力君

      高橋千鶴子君    柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十七日

 辞任         補欠選任

  山口 和之君     石原洋三郎君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  石原洋三郎君     山口 和之君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

    ―――――――――――――

二月一日

 命と暮らしを守り、社会保障制度の改善・拡充を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四六号)

 同(笠井亮君紹介)(第四七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四九号)

 同(志位和夫君紹介)(第五〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第五三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五四号)

 介護労働者の処遇改善を初め介護保険制度の抜本的改善を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第五五号)

 国の制度として就学前まで子どもの医療費を無料にすることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第五六号)

 後期高齢者医療制度廃止などを求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五七号)

 同(笠井亮君紹介)(第五八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第六一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四四号)

 後期高齢者医療制度を中止し、廃止を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六六号)

 同(笠井亮君紹介)(第六七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六九号)

 同(志位和夫君紹介)(第七〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第七四号)

 最低保障年金制度の実現と生活費に見合う年金引き上げに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七五号)

 同(笠井亮君紹介)(第七六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七八号)

 同(志位和夫君紹介)(第七九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二五号)

 社会保障の拡充に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八四号)

 同(笠井亮君紹介)(第八五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八七号)

 同(志位和夫君紹介)(第八八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第九一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第九二号)

 生活保護の老齢加算をもとに戻すことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九三号)

 同(笠井亮君紹介)(第九四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第九六号)

 同(志位和夫君紹介)(第九七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一〇一号)

 七十五歳以上の高齢者と子どもの医療費を無料にすることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一〇三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一一〇号)

 七十五歳以上を差別する後期高齢者医療制度の廃止を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一一一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

藤村委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、自由民主党・改革クラブ所属委員に対し御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

藤村委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、自由民主党・改革クラブ所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、厚生労働大臣から所信を聴取いたします。長妻厚生労働大臣。

長妻国務大臣 お疲れさまでございます。

 厚生労働委員会開催に当たって、私の所信を申し上げます。委員各位、そして国民の皆様方の御理解をいただきますようお願い申し上げます。

 鳩山内閣の命を守る政治の先には、政治が達成すべき大目標である、飢餓のない世界平和の実現があります。その実現のために、日本は、国際連携を強化し、あらゆる分野で主体的に取り組まなければなりません。

 しかし、世界に貢献するためには、まず国内の基盤を揺るぎないものにすることが重要です。私は、国内の基盤を確立するための最大の課題の一つが、直面する少子高齢社会とどう向き合うかということだと考えます。

 先進国で最も早く少子高齢社会に突入した日本が、世界のお手本となる持続可能な社会モデルを打ち立てることが、目指すべきゴールです。そのゴールは、格差が少なく、何歳になっても働きたい人が働くことができ、安心して子供が産め、地域で健康に長寿を迎えられる社会です。その前提として、新しい成長戦略で経済を安定成長させ、負担と給付の関係を明確にすることが不可欠です。

 二〇〇九年には、十五歳以上に占める労働力人口が戦後初めて六割を切りました。現在、毎日二千九百八十人が誕生し、誕生より多い三千百二十人がお亡くなりになっています。人口は、二〇〇五年に戦後初の減少に転じ、毎日百四十人ずつ人口が減少しています。

 現状のままでは、二〇五五年、今から四十五年後には、六十五歳以上の高齢者一人を現役世代一人が支える構図になり、人口も九千万人を切ります。現在は現役三人で一人の高齢者を支える騎馬戦型とすれば、四十五年後には一対一の肩車型になります。このままでは、経済や社会保障の担い手が不足し、国の基盤も揺るぎかねません。

 今後、少子高齢社会における厚生労働省が担うべき取り組みを、社会政策、自助、共助、公助の四つに分けて説明します。

 まず、子ども手当について説明します。

 日本が百人の国だとすると、直近の数字で約十四人が十五歳未満です。

 日本は、先進国の中で、子育て支援にかける予算が国内総生産、GDPの比率で見ても最も少ない国の一つです。

 子ども手当は、子育てを社会全体で支えるという発想に基づいています。次代を担う子供の育ちを支援するため、平成二十二年度において、中学校修了までの子供につき月額一万三千円の子ども手当を支給するための法律案を提出しました。

 子ども手当によって、結果として、少子化の流れを変え、子供の健やかな育ちの確保や子供の貧困率の削減などにつなげたいと考えています。

 子育て政策では、現金支給とともに、保育所整備などの現物支給、仕事と生活の調和であるワーク・ライフ・バランスの三者が適正に整備されなければなりません。

 今後五年間で、保育所の定員を毎年五万人ずつふやし、三歳未満の人口に占める保育所定員をこれまでの四人に一人から三人に一人に増強することを目標としました。

 ワーク・ライフ・バランスを推進するため、今年六月末から、企業に対して三歳までの子供を育てる労働者対象に短時間勤務制度を義務づけたり、男性の育児休業の取得を促進したりするなど取り組みを実施します。

 国民一人一人の努力、自助が重要であることは言うまでもありません。自助のための就職を支援すべく、働きたい高齢者、高齢者を支える現役世代、働きたい母親等を対象に施策を実施します。

 日本が百人の国だとすれば、約四十九人が仕事についていますが、約三人が失業者です。

 今、就職難にもかかわらず、介護の分野は有効求人倍率が一・三倍と人手不足の状況が続いています。介護分野を初め、医師を事務作業面でサポートする医療クラークなどの医療分野にも失業者の皆様が移行できるよう取り組んでまいります。

 特に、介護職の賃金を上げ、魅力ある職種にするために、政権交代以降、介護職員処遇改善交付金の活用を強く呼びかけて、事業所の申請率を四八%から八〇%に引き上げました。昨年十二月には、全国四百二十二カ所で介護事業所と求職者の面接会である介護就職デーを実施し、約一万人の求職者の方が参加され、参加者一割強の千百八十三人が介護職への就職を決定しました。

 雇用を確保し、介護、医療を立て直すチャンスと位置づけて取り組んでまいります。

 さらに、「働きながら資格をとる」介護雇用プログラムの創設や休業手当等を補助する雇用調整助成金の要件緩和を行ったほか、新卒者支援の強化、重点分野雇用創造事業等を実施します。

 また、子育て中の女性の再就職支援を実施するマザーズハローワーク事業の拡充を初め、若者、女性、高齢者、障害者等の方々に対するきめ細やかな就職支援も実施します。

 雇用保険を受給できない方々に対する第二のセーフティーネットとして、無料の職業訓練と、訓練期間中、生活費を支給する緊急人材育成支援事業を開始しています。平成二十二年度は、公共職業訓練とあわせて、前年度から五万人以上ふやして三十万人を超える離職者の方々に対する職業訓練を実施してまいります。さらに、平成二十三年度から、恒久的な制度として求職者支援制度を創設するよう取り組んでまいります。

 雇用保険について、非正規労働者に対する適用基準である六カ月以上の雇用見込みを三十一日以上に緩和すること等を内容とする改正法案を提出しました。これにより、新たに二百五十五万人が雇用保険に加入できる見込みであり、セーフティーネットを強化します。

 また、派遣労働者の雇用の安定のため、登録型派遣や製造業派遣の原則禁止等を内容とする法律案を提出してまいります。

 少子高齢社会における、保険制度や地域、NPOなどによる助け合いの共助について説明します。

 まずは年金です。日本が百人の国としたら、約二十人が老齢年金を受給しています。

 年金制度改革については、平成二十五年に三原則に沿った新制度の法案を成立させるべく取り組みます。原則一は、若い人でも無理なく払える持続可能な制度、原則二は、転職をしても変わらない一つの制度、原則三は、最低保障機能がある制度です。雇用の流動化など、時代に合った、公平、透明でわかりやすい年金制度とするため、具体的な制度設計に向けた検討を進めてまいります。

 消えた年金問題に関しては、国家プロジェクトと位置づけ、二年間に集中して取り組み、政権一期四年の間に、できる限りの対策を進めてまいります。

 これまで、記録統合後の再裁定申請から年金支払いまでの期間の短縮化、国民年金特殊台帳とコンピューター記録の突き合わせ、迅速な被害者救済のための新たな回復基準の設定など、着実に進めてまいりました。現在、記録問題への取り組み状況について、毎週数値を公表しているところです。

 紙台帳との照合について、昨年初めて、地方自治体が保管する国民年金の紙台帳とコンピューター記録の照合のサンプル調査を実施したところ、一定の割合で不一致があり、中には年金額が年額十万円以上増額になる方もいらっしゃいました。

 御自身でも記録が抜けていることに気づいていない方が大勢いらっしゃいます。

 これまでの記録問題への政府の取り組みは、記録を皆に送付するから間違いがあったら言ってきなさいというものでした。確かに、記録を送付して確認してもらうことは重要なことです。しかし、同時に、政府が保管する紙台帳と照合して、記録漏れに気づいていない方の記録を回復することも重要です。申請主義という名のもとで申請を待つという待ちの姿勢だけでは不十分です。

 平成二十二年度、二十三年度の二年間で優先順位の高い紙台帳から照合を始め、平成二十五年度までの四年間ですべての紙台帳の照合をいたします。

 年金通帳に関しましては、まずは現在のパソコンを使ったインターネットでの記録確認をより使いやすいものにして、自宅でパソコンが使えない方であっても、市役所や郵便局などに設置してあるパソコンを使って、補助員の補助のもとで記録を確認できるようにします。その上で、年金通帳の形式や設計内容について国民的な調査を実施し、内容を確定させた上で年金通帳を実施してまいります。

 無年金問題につきましては、御自身を無年金と思っておられる方でも、サラリーマンの配偶者で昭和六十一年三月以前に任意加入しなかった期間等の空期間などを調べれば、受給者となる可能性があります。このため、二十五年以上の資格期間を満たしていない六十三歳以上の約五十万人を対象として、注意喚起文書を初めて発送するなど、受給者をふやす努力を実施しております。

 また、無年金となる方の発生を予防するとともに、高齢者の年金額を充実させる観点から、国民年金保険料のさかのぼり納付期間を二年から十年に延長する等の法律案を提出してまいります。

 年金積立金の運用につきましては、安全確実な運用、業務の透明性、効率性の向上を内容とする新たな中期目標を示したいと考えております。

 日本が百人の国としたら、一カ月の間に約三十三人が医療機関等にかかっています。

 後期高齢者医療制度は、政権一期四年の中で廃止し、高齢者の皆様を初め、よりわかりやすく、信頼が得られる制度へ移行します。このため、昨年十一月に、私のもとに高齢者医療制度改革会議を設置し、議論を重ねているところです。今後、骨格を中間的なまとめとしてお示しします。

 それに先立って、今年四月には、差別的扱いとして批判があった後期高齢者医療制度の一環として七十五歳以上に適用された診療報酬体系を廃止します。

 また、昨今の急激な経済の悪化等により、このままでは、協会けんぽや国民健康保険、後期高齢者医療制度において、来年度以降の保険料の大幅な引き上げが必要となります。このため、それぞれの制度における保険料上昇の抑制措置を内容とする法律案を提出したところであります。

 医療の立て直しは待ったなしです。来年度の医学部定員について、前年度に比べ三百六十人増員して過去最大の八千八百四十六人とするほか、診療報酬改定につきましては、十年ぶりのネットプラス改定といたしました。

 特に診療報酬本体では、前回の改定の四倍以上である一・五五%のプラスとしました。これは、国民の安心する医療を実現するためであり、救急、産科、小児科、外科等の医療の再生や病院の勤務医の負担軽減を図るよう改定します。

 具体的には、例えば、救急医療については、診療所と病院の連携を強化して、救急外来をサポートするための診療報酬を新設します。また、勤務医の事務負担軽減策としては、医療クラークの配備に対する診療報酬を手厚くします。

 受けた医療の明細がわかる診療明細書を原則として無料発行するように、医療機関に義務づけます。患者さんが治療の中身を理解しチェックするなど、診療内容や医療費の透明性を高めます。

 新型インフルエンザ対策につきましては、流行状況に応じた対策を実施してまいりました。現在、患者数はピークを越え、減少傾向にあるものの、いつ再流行が起こるかわからず、また、病原性が変化することもあり得ます。引き続き、国内外の状況を注視します。

 新型インフルエンザA、H1N1と同程度の病原性を有する新型インフルエンザのワクチンを位置づけることなどを内容とする予防接種法の改正法案を提出してまいります。

 今回のように輸入ワクチンに頼らざるを得ない事態とならないよう、国内において細胞培養法を開発し、全国民分の新型インフルエンザワクチンを約半年で生産可能にするために、引き続き取り組みます。

 また、薬害肝炎の反省に立ち、医薬品等による健康被害の再発を防止するとともに、肝炎対策基本指針の策定と実施に取り組んでまいります。

 肝炎医療費の助成について、平成二十二年度から自己負担限度額を原則一万円とし、核酸アナログ製剤治療を新たに助成対象に追加するなど支援を拡充し、あわせて、検査や診療についての体制整備、肝疾患研究の強化などに取り組みます。

 臓器移植につきましては、本年七月の円滑な施行に向けて、準備を着実に進めます。

 日本が百人の国としたら、生涯で約四十五人ががんになっています。平均すれば、一日で九百四十人ががんで亡くなっています。

 がん対策につきましては、検診を受けやすい体制の整備、がん医療に携わる従事者の養成など、必要な予算措置を講じております。

 難病対策につきましては、研究を積極的に推進するとともに、安心して必要な医療を受けられるよう、医療費助成について、昨年十月より対象疾患を十一疾患追加し、五十六疾患としました。この他、統合医療について、現状を科学的に把握し、今後の政策について検討します。

 日本が百人の国としたら、約三人が介護サービスを受けています。

 介護については、さきに述べた介護職員の待遇改善に引き続き努めてまいります。同時に、介護職員の負担増大につながっている介護保険の申請事務などの煩雑さを解消します。

 現在、自宅で六十歳以上の方が介護をしている、いわゆる老老介護の割合は六割近くに上っています。介護施設の待機者も増加しています。施設介護と居宅介護をバランスよく整備して、高齢者が住みなれた地域でみずからの希望に応じて介護を受ける体制をつくることが重要です。

 介護施設については、今後三年間で定員を十六万床増加させ、過去三年間の二倍のペースを保つように取り組みます。訪問介護に関しても、現行の利用者百十五万人を増加させ、訪問看護の体制整備にも努めてまいります。

 介護サービス、医療的ケア、生活支援サービス、高齢者用住まいの確保を含めた多様なサービスを包括して提供する地域包括ケアシステムの構築に努めてまいります。

 介護保険法の施行日前に特別養護老人ホームに入所していた方に対する利用料等の負担軽減措置を延長する法律案も提出しました。

 二年後には、介護報酬と診療報酬の同時改定を迎えます。介護と医療の融合的改革に向けて取り組みを始めます。

 次に、少子高齢社会における、税金で支える公助について説明します。

 まずは、貧困の連鎖を断ち切ることが重要です。生活保護の母子世帯に支給する母子加算は、来年度も継続支給することとして予算案を提出しました。さらに、一人親家庭の自立を促進するため、児童扶養手当について、新たに父子家庭の父を支給対象に含める法律案を提出しました。

 一昨年には、年末の派遣村が社会問題となりました。そこで、昨年末には、全国ハローワークで生活相談に乗るワンストップサービスデーを開催し、六千三百三十人の方に仕事、住まい、生活支援の相談を実施しました。また、地方自治体にお願いし、百九十四の地方自治体で年末年始の生活総合相談をしていただきました。

 私も、年末年始に公設一時宿泊所にお邪魔し、利用者の話を聞きました。どこにでもいる若者が、公園で寝泊まりせざるを得ない、努力しても抜け出せない現状を目の当たりにしました。人ごとではありません。もはや、かつての一億総中流の日本ではありません。

 住む場所が不安定では、仕事を探すこともできません。

 今後、住まいや生活にお困りの求職者の方を年末年始のみならず日常的に支援するため、新たにハローワークに二百六十三名の住居・生活支援アドバイザーを配備します。

 また、地方自治体を窓口として家賃を補助する住宅手当について、就職活動をしている場合、支給期間を現行の最長六カ月から最長九カ月に延長します。生活保護になる前の、第二のセーフティーネットというべき施策を整備することが重要です。

 日本が百人の国としたら、約一人が生活保護を受けております。

 生活保護に関しては、依然として高い保護率が続いています。必要な方が適切に保護を受けられるようにします。生活保護を受けている方が働き、自立するために、地方自治体に就職活動などをサポートする就労支援員を約二千五百人増員し、三千五十人配備するよう予算措置を講じております。

 川に飛び込んだ際けがをして、首から下の大部分が動かなくなった青年に、昨年十二月に会いました。懸命にリハビリを続ける姿が目に焼きついています。

 日本が百人の国だとすれば、約六人が障害者です。

 障害のある方の支援につきましては、障害者自立支援法を廃止し、制度の谷間のない、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくることとしています。本年一月から、障害当事者等から成る障がい者制度改革推進会議において、新制度の検討を開始しました。それに先駆けて、平成二十二年度予算案においては、低所得者の障害福祉サービス等の利用者負担を無料としています。

 現在、自殺者は十二年連続で三万人を超え、毎日約九十人の方が自殺しています。日本は、先進七カ国では唯一、十五歳から三十四歳までの若者の死因のトップが自殺となっており、深刻な状況です。人口当たりの自殺率も先進七カ国中最悪で、イギリス、イタリアの三倍、アメリカ、カナダの二倍となっています。

 自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンクの報告書にはこうあります。「自殺は、人の命に関わる極めて「個人的な問題」である。しかし同時に自殺は「社会的な問題」であり「社会構造的な問題」でもある」。

 より実効性の高い今後の自殺対策のため、自殺・うつ病等対策プロジェクトチームを設置しました。自殺を食いとめる人材の育成や訪問支援など、地域や職場等における自殺対策の一層の推進に努めてまいります。

 また、援護行政につきましては、戦没者の遺骨収集や慰霊事業を初め、支援策をきめ細やかに実施してまいります。

 憲法二十五条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定されております。しかし、実際には、具体的に最低限度の生活とは何かという基準、すなわちナショナルミニマムが必ずしも明らかになっておらず、検証が必要です。有識者の御協力をいただき設置したナショナルミニマム研究会を中心に、その基準を確立してまいります。

 経済成長と社会保障は、一方を重視すれば他方が犠牲になるというトレードオフの関係ととらえられがちです。

 企業や地域社会が福祉の担い手として機能していた時代から、企業における年功序列、終身雇用が崩れ、地域でも単身世帯が増加する等、地縁、血縁も薄れる時代には、新しい社会保障の理念が求められています。

 社会保障を充実させることで、格差が縮小し、安心感が生まれれば、消費や経済成長にもプラスの影響が生まれる。社会保障が機会の平等を後押しして、多くの人がチャレンジできる環境を整備すれば、広く国民全体の能力を生かすことができる。そんな福祉施策であるポジティブウエルフェアを拡充し、個人の有する能力や価値を最大限引き出して、経済成長の基盤づくりを支援する。

 経済成長と社会保障はトレードオフの関係ではなく、共存共栄の車の両輪としてとらえる政策を確立します。

 これまで社会保障はコストとしてとらえがちでしたが、未来への投資ととらえることが重要です。

 医療、介護については、今後、高齢者を中心に確実に需要の増大が見込まれ、大きな成長と雇用の創出が期待されます。今こそ、政府と市場の役割分担を見直しながら成長モデルを描くときです。

 昨年末、政府が取りまとめた新成長戦略で、健康・医療・介護分野を、成長を牽引する四本柱の一つと位置づけました。今後、厚生労働省に設置した医療・介護・保育「未来への投資」プロジェクトチームを中心に、今年六月の新成長戦略の最終取りまとめに向けて、その具体化を図ってまいります。

 最後に、最も重要な財源問題です。持続可能で安心できる社会モデルというときに、財源問題は避けて通れません。

 まず、重要なことは、国民の皆様に、自分たちが支払った税金や保険料が全額、無駄なく社会保障の給付に使われているという実感を持っていただくことです。その実感がなければ、新たな御負担をお願いしても理解は得られません。

 負担と給付の関係を透明にして、中抜きや浪費をなくすのです。

 このため、厚生労働省に、事務次官がトップとなり責任を負うコスト削減・業務改善プロジェクトチームを設置し、天下り法人や内部留保率が著しく高い公益法人に対する補助金等の削減を実施するなど、これまでの予算を見直しました。

 調達を一括購入とするなど行政経費の節減や、役員の公募、嘱託ポストの廃止など独立行政法人への天下り廃止や浪費削減にも取り組んでいます。引き続き、無駄がないかどうか、徹底的に省内仕分けを実行してまいります。

 役所文化を変える第一歩としては、昨年十月から、職員の人事評価基準を変えました。特に、コスト意識、無駄排除や、制度改善に当たってのアフターサービスの考え方の導入、国民の生命財産にかかわる事案の情報収集、公開の視点に着目した業務目標を職員に立ててもらい、業績を評価することとしました。

 さらに、本年一月から、外部有識者から成る人事評価検討プロジェクトチームを立ち上げ、昨年十月に実施した人事評価基準の検証や改善、あるべき人物像についての議論を進めています。

 私が厚生労働省に参りまして五カ月がたちました。多くの直面する課題に取り組むとともに、国家百年の計に立ち、五十年後、百年後によりよい社会を残したいという強い思いを持っています。

 国民の皆様から預かった税金や保険料を現在と未来のために無駄なく有効に使うことで、生活者の立場に立つ信用できる厚生労働行政をつくり上げてまいります。

 藤村委員長を初め委員の皆様、国民の皆様に一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

藤村委員長 次に、平成二十二年度厚生労働省関係予算の概要について説明を聴取いたします。細川厚生労働副大臣。

細川副大臣 厚生労働副大臣の細川でございます。

 長浜副大臣並びに足立、山井両政務官とともに長妻大臣を支え、藤村委員長を初め委員各位の御理解と御協力を得ながら厚生労働行政の推進に邁進してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 お手元の資料に基づきまして、平成二十二年度厚生労働省関係予算案の概要について御説明を申し上げます。

 まず、平成二十二年度厚生労働省所管一般会計の予算規模は、総額は二十七兆五千五百六十一億円、対前年度二兆三千九百九十二億円、九・五%の増加となっております。これは、これまでの予算を徹底的に見直し、無駄を削減するとともに、マニフェストの実現に向けて必要な経費を新たに計上したものであります。

 次に、予算の主要施策について御説明申し上げます。

 第一は、五ページから九ページにかけての、安心して子育てができる環境整備であります。次代の社会を担う子供一人一人の育ちを社会全体で応援するため、子ども手当の創設、父子家庭への児童扶養手当の支給、保育所待機児童の解消に向けた取り組みなど、総合的な子育て支援施策を推進してまいります。

 第二は、十ページから十一ページにかけての、信頼できる年金制度に向けてであります。公的年金制度は国民の老後の安定した生活を支えるセーフティーネットであり、年金記録問題について、解決に向けた取り組みを着実に進めてまいります。このため、年金記録問題への対応を国家プロジェクトとして位置づけ、平成二十二年度から集中的に取り組むとともに、二度とこうした問題を起こさない体制整備を図ってまいります。

 第三は、十二ページから十九ページにかけての、厳しい経済環境のもとにおける雇用、生活安定の確保であります。現下の雇用情勢は依然として厳しい状況にあり、緊急雇用対策や明日の安心と成長のための緊急経済対策の推進に全力を挙げるとともに、雇用のセーフティーネットの整備を推進するため、労働者の雇用の維持、再就職支援、貧困・困窮者支援、派遣労働者等非正規労働者への総合的対策を強化してまいります。

 また、若者、女性、高齢者、障害者等の就業実現、仕事と生活との両立支援及び地域雇用対策など、ニーズに応じたきめ細やかな支援策を強力に進めてまいります。

 第四は、二十ページから二十四ページにかけての、質の高い医療サービスの実現であります。診療報酬について、十年ぶりにネットプラス改定を行うとともに、医療保険の厳しい財政状況にかんがみ、各医療保険制度において、保険料の上昇を抑制するための必要な措置を講ずることにより、国民皆保険制度を守ってまいります。

 また、救急医療、周産期医療の体制整備、医師等の人材確保、地域における医療連携体制の強化などを通じ、地域医療の課題を解決し、国民に質の高い医療サービスを提供してまいります。

 第五は、二十五ページから三十一ページにかけての、健康で安心できる生活の確保であります。新型インフルエンザ対策における医療提供体制の構築、肝炎など患者の負担が重い疾病等についての支援策の拡充、がん等の生活習慣病や難病などの各種疾病対策を進めるとともに、感染症に対する健康危機管理の強化、薬害再発防止のため、医薬品、医療機器の安全対策を強化し、有効で安全な医薬品、医療機器を迅速に提供するための対策を推進してまいります。

 また、輸入食品の安全対策、残留農薬、食品添加物、容器包装等の安全性の確保など、食品安全対策を推進してまいります。

 第六は、三十二ページから三十五ページにかけての、障害者支援の総合的な推進であります。障害のある方が当たり前に地域で暮らし、地域の一員としてともに生活できる社会を実現するため、障がい者制度改革推進本部等における各種の制度改革の一環として、障害者福祉制度を、制度の谷間がなく、利用者の応能負担を基本とする制度に抜本的に見直していくこととあわせて、新たな制度ができるまでの間においても、障害福祉サービス等の利用者負担について、さらなる軽減を図ってまいります。

 また、良質な障害福祉サービスの確保や地域生活支援事業の着実な実施を図るとともに、精神保健医療福祉や発達障害者等の支援を推進してまいります。

 第七は、三十六ページから三十八ページにかけての、良質な介護サービスの確保であります。良質な介護サービスの確保のため、安心で安定的な介護保険制度の運営の確保を図るとともに、地域包括ケアを提供できる体制等の整備を進めてまいります。

 第八は、三十九ページから四十一ページにかけての、安心して働くことのできる環境整備であります。国民が将来に希望を持って安心して働くことができる社会を実現するため、最低賃金の引き上げの検討や労働災害の防止、労働者の心身の健康確保のための対策等を実施してまいります。

 第九は、四十二ページから四十四ページにかけての、暮らしの安心確保であります。景気の急速な後退に伴う格差の拡大傾向、若年失業者の増大等を背景に高まっている生活不安を解消し、すべての社会保障制度における最後のセーフティーネットである生活保護制度等の社会保障の機能強化を図ってまいります。

 また、自殺対策については、地域での効果的な取り組みを進めてまいります。

 以上のほか、四十五ページから四十八ページにあるように、世界保健機関や国際労働機関等を通じた国際協力の推進、外国人労働問題等への適切な対応、戦傷病者、戦没者遺族、中国残留邦人の援護、原爆被爆者対策等、諸施策を推進してまいります。

 以上、主な内容について御説明いたしましたが、お手元の資料のうち、一般会計予算案の主要経費別内訳及び特別会計予算案の概要につきましては、説明を省略させていただきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

藤村委員長 以上で大臣の所信表明並びに平成二十二年度厚生労働省関係予算の概要についての説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会


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