衆議院

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第3号 平成22年2月19日(金曜日)

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平成二十二年二月十九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 藤村  修君

   理事 青木  愛君 理事 石森 久嗣君

   理事 内山  晃君 理事 黒田  雄君

   理事 中根 康浩君 理事 大村 秀章君

   理事 加藤 勝信君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      石津 政雄君    市村浩一郎君

      大西 健介君    岡本 英子君

      菊田真紀子君   菊池長右ェ門君

      郡  和子君    斉藤  進君

      園田 康博君    田名部匡代君

      田中美絵子君    玉城デニー君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      初鹿 明博君    樋口 俊一君

      藤田 一枝君    細川 律夫君

      三宅 雪子君    水野 智彦君

      宮崎 岳志君    室井 秀子君

      谷田川 元君    山岡 達丸君

      山口 和之君    山崎 摩耶君

      山井 和則君    あべ 俊子君

      菅原 一秀君    田村 憲久君

      武部  勤君    橘 慶一郎君

      棚橋 泰文君    西村 康稔君

      松浪 健太君    松本  純君

      坂口  力君    高橋千鶴子君

      照屋 寛徳君    柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   内閣府大臣政務官     津村 啓介君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   国土交通大臣政務官    長安  豊君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森岡 雅人君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  阿曽沼慎司君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十九日

 辞任         補欠選任

  初鹿 明博君     市村浩一郎君

  樋口 俊一君     石津 政雄君

  福田衣里子君     井戸まさえ君

  水野 智彦君     菊池長右ェ門君

  長勢 甚遠君     橘 慶一郎君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     玉城デニー君

  石津 政雄君     樋口 俊一君

  市村浩一郎君     初鹿 明博君

  菊池長右ェ門君    水野 智彦君

  橘 慶一郎君     長勢 甚遠君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  玉城デニー君     谷田川 元君

同日

 辞任         補欠選任

  谷田川 元君     山岡 達丸君

同日

 辞任         補欠選任

  山岡 達丸君     福田衣里子君

    ―――――――――――――

二月十九日

 介護労働者の処遇改善を初め介護保険制度の抜本的改善を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一五三号)

 後期高齢者医療制度廃止などを求めることに関する請願(岡本充功君紹介)(第一五四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一六八号)

 同(石田芳弘君紹介)(第二五四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二九七号)

 後期高齢者医療制度を廃止することに関する請願(武正公一君紹介)(第一五九号)

 腎疾患総合対策早期確立に関する請願(竹本直一君紹介)(第一六〇号)

 後期高齢者医療制度の即時廃止に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一六七号)

 同(重野安正君紹介)(第二五五号)

 後期高齢者医療制度を中止し、廃止を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一六九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二五号)

 生活保護の老齢加算をもとに戻すことに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一七〇号)

 膵嚢胞線維症の治療環境実現に関する請願(井上義久君紹介)(第一七八号)

 同(吉田統彦君紹介)(第二二八号)

 中小業者とその家族の健康を守る対策に関する請願(古賀一成君紹介)(第一七九号)

 同(石関貴史君紹介)(第二六五号)

 同(山本剛正君紹介)(第二八〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二九八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二九九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三〇〇号)

 医療崩壊を食いとめ、患者負担の軽減により安心して医療が受けられることに関する請願(大西健介君紹介)(第一八六号)

 同(牧義夫君紹介)(第一八七号)

 同(石田芳弘君紹介)(第一九五号)

 同(佐藤ゆうこ君紹介)(第一九六号)

 同(吉田統彦君紹介)(第一九七号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第二二九号)

 同(中根康浩君紹介)(第二四〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三〇一号)

 保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(大西健介君紹介)(第一八八号)

 同(牧義夫君紹介)(第一八九号)

 同(石田芳弘君紹介)(第一九八号)

 同(佐藤ゆうこ君紹介)(第一九九号)

 同(吉田統彦君紹介)(第二〇〇号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第二三〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三一号)

 同(中根康浩君紹介)(第二四一号)

 同(水野智彦君紹介)(第二五六号)

 社会保障の拡充に関する請願(笠井亮君紹介)(第一九〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二二六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二七号)

 じん肺とアスベスト被害の根絶を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一六号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二二四号)

 同(重野安正君紹介)(第二五七号)

 同(中島隆利君紹介)(第二五八号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二六六号)

 同(服部良一君紹介)(第二七二号)

 同(吉泉秀男君紹介)(第二七三号)

 後期高齢者医療制度を直ちに廃止することに関する請願(志位和夫君紹介)(第二五一号)

 労働者派遣法の早期抜本改正に関する請願(宮本岳志君紹介)(第二五二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三〇二号)

 労働者派遣法抜本改正を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第二五三号)

 社会保障の拡充等に関する請願(志位和夫君紹介)(第二九六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

藤村委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言申し上げます。

 去る十七日の委員会につきましては、委員長として努力をいたしましたが、結果的に円満な形とならなかったことは遺憾に存じます。

 委員長といたしましては、引き続き与野党の真摯な御協議のもとに委員会運営を進めてまいりたいと存じます。

     ――――◇―――――

藤村委員長 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長金森越哉君、厚生労働省大臣官房審議官森岡雅人君、医政局長阿曽沼慎司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

藤村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市村浩一郎君。

市村委員 おはようございます。民主党、市村でございます。

 十五分いただきまして、きょうもまた議論をさせていただきたいと思います。

 長妻大臣、政権交代でいよいよ新しい時代に向けて日本丸はスタートしたんだという思いで私もおります。本当は、そういうこともいろいろ一般的な議論をしたいんですが、十五分しかありませんので、きょうの話題に入らせていただきます。

 きょう私は、日本を元気にする一つの提案をしたい、こういう思いで来ております。その具体的な手段がありまして、その中で、私はCPAPという機械を日本に広めるべきだ、こういう思いでおりますが、大臣はCPAPという機械について、何か今までで御存じだったことはありますでしょうか。

長妻国務大臣 マスコミ等でもかなり報道されております、睡眠しているときに呼吸がなされないというような症状がある方に対する治療法ではないかと思います。

市村委員 今、本当に簡潔におっしゃっていただきまして、ありがとうございます。

 それで、実は、私個人も睡眠時無呼吸症候群の患者でありまして、本当に重度の患者であります。前は、朝もなかなか睡眠がよくとれずに、昼間よく眠くなる、こういう症状もあったわけであります。しかし、このCPAPという機械を使ってから、本当にこんなことが起こるのかというぐらいの劇的な変化がある機械であります。

 今さっきおっしゃっていただいた睡眠時無呼吸症候群というのは、よく皆さん、途中で呼吸がとまるので、それで亡くなることもあるんじゃないかと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、それで亡くなっているケースはないんですね。

 この睡眠時無呼吸症候群の一番の問題は、やはり、睡眠が浅い、よく眠りがとれない、だから昼間眠くなる。例えばトラックの運転手さん、ドライバーさん、事故を起こしてしまうとか、そういったことで死傷事件が発生したりすることがありまして、これは極めて重大な問題だということになっております。

 しかし、このCPAPという機械を使えばかなり改善するんです。ただ、睡眠時無呼吸症候群だけにこのCPAPという機械を使うというのはもったいないな、私はこう思っております。

 ただ、睡眠時無呼吸症候群に限って言っても、潜在的には二百万人の患者がいらっしゃると言われていますけれども、実際にこのCPAPの普及台数というのは十万台程度なんですね。ということは、この睡眠時無呼吸症候群に限って言っても、まだ百九十万人の方がこうしたいい治療機械というか、治療というよりも、これは人工呼吸器です。つまり、睡眠の質を高めるということですから、治療と言ってもいいのかもしれませんが、しかし、百九十万人の方がまだ使っていないというのがあります。

 それに限らず、例えばいびきをかいているという方もいらっしゃるわけですね。こういう方は、実は、睡眠時無呼吸症候群ではないけれども、極めて質の悪い眠りをとっているというケースも多く見受けられるというのも聞いています。ですから、そうした方たちの睡眠の質を高めるということがいかに昼間の労働生産性を高めていくかということが言えるわけですね。だから、そうした労働生産性を高めるためにも、睡眠の質を高めるということが大変重要ではないかというふうに思っています。

 私は、二十年ほど前、アメリカに住んでおりましたけれども、そのときちょうどウエークアップ・アメリカということを言われていたんです。何のことかなと思っていましたら、要するに、睡眠の質を高めることによって昼間の労働生産性を上げることによって、経済活動ももっとよくなる、こういう発想だったんです。

 ちょうど二十年前、アメリカは景気のどん底でした。今の日本と似ているかもしれません。そのときに、やはり人だ、人間がしっかりと働いていくということがまず経済立て直しの根本だろうというところから、そのためにはやはり睡眠の質を高めるということも大切であるという考えでウエークアップ・アメリカなんですね。

 私は、ぜひとも今の時代、ウエークアップ・ジャパンだ、こういう思いでこのCPAPをもっと普及させなくちゃいけない、こう思うんです。

 ところが、普及させたいんですが、実は、この議論を四年前ぐらいからさせていただいております。なぜこの間、普及しないか。四年前の議論はこうでした。いや、市村さん、このCPAPというのは人工呼吸器なんですね、人工呼吸器というのは手術にも使われる高度な医療機器でありまして、そんなものを簡単に普及するわけにはいきません、こういうような話だったんです。

 しかし、私は、その四年ぐらい前から使っていますけれども、この機械で命の危険にさらされたことは一回もないわけでありまして、むしろこれはすぐれものなんですね。寝ている間、ちゃんと脳波をはかって必要な圧で空気を送り出してくれるんです。ずっと一定の圧の空気を送り出すんじゃないんですね。必要な圧を、寝ている間に脳波をはかりながら送り出してくれるというすぐれものでありまして、一度も危険は感じたことがない。しかしながら、厚生労働省の当時の見解では、これは大変リスクも高いから、そう簡単に普及させられませんというような話だったように思います。

 ただ、この間、認識も深まってきていると思いますし、特に睡眠時無呼吸症候群の問題一つとってみても、やはり重大な問題だということになれば、このCPAPを普及させるということによりまして、そして睡眠の質を高めていく。そのためには、やはり規制緩和が必要であります。しかも、これは予算がかからない規制緩和だと私は思います。

 だから、そういう部分でいろいろ厚生労働省として、ぜひともこのCPAPの普及に力を入れていただきたい、私はこういう思いでありますが、大臣のまずここまでの御見解をいただきたいと思います。

藤村委員長 足立厚生労働大臣政務官から先に答えます。

足立大臣政務官 では、先に答えさせていただきます。

 市村議員が、日本の洗濯からウエークアップ・ジャパンというふうな方針で今頑張っているということ、まず敬意を表したいと思います。

 ちょっと誤解があるといけないので申し上げますが、CPAP、持続陽圧呼吸というのは、何も睡眠時無呼吸症候群だけではなくて、これは人工呼吸器をつけている最初の段階で、完全に調節して呼吸する場合はこれをやります。だんだん覚ましていく場合はこれをやめるんですけれども。

 問題は、鼻マスクでやるわけですから、人工呼吸器とはそこら辺が違うところで、鼻マスクでしっかり持続陽圧呼吸が加わるかどうかというのはかなり難しい。体位によって持続陽圧がかからない場合もありますから。

 その点はありますけれども、厚生労働省としては平成十年からこれを保険適用にして、それから、日本呼吸器学会等も、診断を含めた治療方法のガイドラインの中で治療方法の第一選択になっております。

 その後、私も患者さん一人、別の疾患の患者さんですが、この方がいて、先生おっしゃるように、眠れないだけではなくて、午前中の頭痛、起床時の頭痛とか、それから身体症状とか、かなり労働意欲を低下させることはもう間違いないです。

 ただ、治療方法としては、これだけではなくて、例えば扁桃の肥大がある方は扁桃腺を摘除するとかいう治療法もありますので、これだけではないということをまず御認識いただいて、しかしながら、我々としては普及啓発は必要だ、学会の方もそれをやるべきだというふうにしているということだけ申し上げたいと思います。

長妻国務大臣 今、市村委員のお話を聞いて、御自身もそういう体験をされておられるということで、市村委員におかれましては、特にNPOの普及、あるいは新しい公共というところで、ぜひ、この症候群についても、いろいろ啓蒙活動をしていただきたいと思います。

 それで、私が考えますのは、今、厚生労働省に聞きますと、平成二十年度の患者調査では、この睡眠時無呼吸症候群の患者数は約九万人というふうに把握をしている。先ほど言われた二百万人というのは、恐らく、アメリカにおいては国民の二から三%がこの症候群だということで、二、三%と推定すると、日本の人口を掛け算すると二百万人ということでありまして、厚生労働省がつかんでいる数字とかなり開きがありますので、一度、本当にこういう症候群の方がどれだけおられるのか、調査をしてみたいというふうに考えています。

 そして、このCPAPについては、保険適用されておりますけれども、さらにそういう診断のガイドラインをきちっと整備して、それの治療を受けるべき方には受けていただくということで、装置自体も最近はかなりコンパクトになっていると聞いておりますので、その趣旨を踏まえて我々も取り組みたいと思います。

市村委員 ありがとうございます。

 私の経験から、実はこのCPAPを使おうとすると、まず一日病院に泊まり込んで診断を受けなくちゃいけないんですね。私も、実はこれを使えと言われてから大分、最初に使った方がいいよと言われてから診断を受けに行くまでに二年ぐらいかかったんです。やはり時間がないということで、自分に言いわけをしてなかなか行かなかったんですが、どうしても行った方がいいと。あとは御縁もあって診断を受けたんですね。そうしたら大変重症であるということで、機械を使え、こういうふうになったんです。

 なかなか、一日、一泊、病院にこの診断を受けるために行くというのは、普通の感覚でいくと、そこまでしなくてもいいかなと。さっき申し上げたように、別に睡眠時無呼吸症候群で亡くなった例はないわけですから、息がとまっても、一分ぐらい息がとまって、ぱっと、があっといくという感じですね。だから、まあいいかな、ほったらかしておいてもいいかな、こういう感覚になるんです。私もなっていたんです。

 しかし、やはりこれを受けて使ってみると、その後の、いかに睡眠が大切かということは改めて思い知る。こういう経験をさせていただくと、やはり、私にCPAPを勧めてくださった方みたいに、私も今、こうして皆さんに勧めたいんですね。いかにいいかということを皆さんにわかっていただいて、かつそれが、先ほどから申し上げているように、睡眠の質を高めて昼間の労働生産性を上げていく。

 かつ、CPAPの市場、僕は、調べればやはりそれぐらい、もっといらっしゃると思います。そうすると、このCPAP市場が生まれてきますから、そこで雇用が生まれ、ビジネス的にも成り立ってくるという形であります。ですから、大変みんなが喜ぶ。

 そして、その患者だけじゃなくて、恐らく、いびきをかいて寝ていらっしゃる方たちもやはり睡眠の質が浅いわけですから、このCPAPを使うことによって睡眠の質が高まる。私は医者じゃありませんが、足立政務官からすれば、ちょっと違うぞ、素人考えだと言われるかもしれませんけれども、個人的に、やはり実際体験してみて、使ってみて大変いいものであるということ、CPAPを使った方に聞いていただければ、これはいいものであると異口同音におっしゃると思います。

 だから、これをやはりもっと普及しやすくする。例えば、今、買い取りがなかなか難しいんですね。例えば、これはコンタクトレンズを参考にしていただければいいんですが、コンタクトレンズは一度お医者さんに行って診断書を受けると、自分で買い取れるわけですね。そういう形に、一度診断を受けて、ある程度の基準を満たしたら、これはあなたはCPAPを使っていいよという診断書をいただいた上で例えば買い取れるというような話になってくれば、もっと普及をすると思うんです。

 やはり、どうしても今の感覚だと、ちょっとこれはまだ高度医療機器だから、そう簡単に使ってもらっちゃ困るというような雰囲気がどこかに残っているのかなという気もしないでもありません。しかし、だからそこをもう少し、もちろん安全性は大切ですけれども、そこをもう少し踏み込んで、よし、ではもっと買い取りを認めて普及をさせていこうというような形になってくれば、買い取りの場合は恐らく保険はきかないと思うんですね。大変高額な機械ですから、やはり買い取りにも保険がきくような形にしていただければ、もっと普及ができると思います。

 いずれにしても、これを普及させることによりまして、やはり睡眠の質が高まるということ、そして労働生産性が高まるということ、そして新しい市場が生まれて、そこで雇用も生まれてくるということ。これは一つCPAPという例でありますけれども、こういうことによりまして、また日本の経済もひとつここで活気がみなぎってほしい。そんな大きな、大層なことじゃないかもしれませんけれども、私はしかし、ウエークアップ・ジャパンと言いたいぐらいに、実は大変、ベースのところで、土台のところで必要な施策じゃないかと思っておりますので、ぜひとも厚生労働省を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

 最後に大臣の御所見を賜って、終わりにしたいと思います。

長妻国務大臣 今おっしゃられたように、今現在は健康保険適用で、レンタルというか、三割負担で月に五千円程度、毎月毎月ということなんですけれども、これは日本呼吸器学会、日本睡眠学会など専門家の先生ともよく相談をして、今の御提言についても我々検討を進めていきたいと思います。

市村委員 ユーザーの立場というのも、ぜひともまた酌み取っていただければ幸いでございます。

 ありがとうございました。失礼します。

藤村委員長 次に、三宅雪子君。

三宅委員 民主党の三宅雪子でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。新人議員として初めての経験ですので、至らない点があるかもしれませんが、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 まずは、長妻大臣にお聞きしたいと思います。大変シンプルな質問でございます。

 昨年の夏、衆議院議員選挙において、民主党は悲願ともいえる政権交代をなし遂げました。民主党政権がスタートして既に五カ月となりますが、この政権の成否のかぎは、やはり厚労行政にあると私は確信しております。長妻大臣初め三役の皆さんの手腕にかかっていると言っても過言ではないと思っております。

 前政権によって、大幅な社会保障関係費の削減に続いて、障害者自立支援法、後期高齢者医療制度など思いやりのない政策が行われ、三位一体改革によって地方の財源が絞り込まれました。著しく地域の疲弊化が進み、そして労働者派遣法の実施などで非正規雇用者が約五百万人も増加し、確実にワーキングプアと呼ばれる貧困層を拡大させました。資料の一にございますように、相対的貧困率が、残念ながら、先進国三十カ国のうち、後ろの方から四番目となってしまっております。

 そして、質問なんですが、このままでは日本がだめになってしまうと痛感した国民の皆さんの選択によって、私は真夏の政権交代が実現したと思っておりますが、長妻大臣、その認識に間違いはありませんでしょうか。

長妻国務大臣 三宅委員におかれましては、テレビ局で報道記者として御活躍されたということで、私も同じマスコミ出身者として、本当に一緒に頑張りたいと思っております。

 今おっしゃられた点は、まさに社会保障という観点で、国民の皆様方の不安が増大した点が非常に今回の政権交代で大きい形になったのではないかということです。

 前政権については、社会保障に対する考え方というのが私どもと異なっていたんではないか。つまり、経済成長と社会保障というのはなかなか両立しない、社会保障を充実させると経済成長のお荷物になるんではないか、こういう発想が私は一部あったんではないかと思っています。

 私自身は、社会保障をきちっと充実して、働くべき方がチャレンジできる機会を確保する、最低限度の生活を保障するということは、経済成長のお荷物というよりはむしろその基盤を拡充していくということで、両立するべきものである。そういう、ある意味ではポジティブウエルフェアともいうべき施策を拡充するということで、国民の皆様の安心も高め、経済の成長にも資する、こういう道を選択していきたいと考えています。

三宅委員 どうもありがとうございました。

 民主党政権は、国民の期待にこたえるために、社会保障費を大幅に伸ばし、一般会計の中の歳出の五一%を占めます平成二十二年度予算案を組んでいるわけでございます。つまり、今長妻大臣がおっしゃったとおり、自民党と民主党の根本的な違いは何かといいますと、福祉に対する考え方、根本的な姿勢が違うと、私も地元でいつも主張しております。

 さきの認識に基づいて、国民の生活が第一と私も訴えております。しかし、最近はどうも、地元の後援者のところにごあいさつに回りますと、民主党政権への期待感が若干薄れてきているように肌で感じることがあります。これはやはり、マニフェストに関してでございます。

 そこで質問ですが、端的に言いまして、ガソリンの暫定税率の問題ですとか高速道路無料化などの問題と異なりまして、社会福祉、社会保障関係に関してのマニフェストの約束だけは、私は絶対に後退することはあってはならないと思います。その点はいかがでしょうか。

長妻国務大臣 本当に私もそれを心がけ、使命だと思って取り組んでおるわけであります。この胸ポケットにマニフェストを常に入れて取り組んでいるところでありまして、就任早々、母子加算を復活する、あるいは今度は父子の方に対する児童扶養手当もお支払いする、あるいは医療費についても十年ぶりのネットプラスにする等々、労働のあり方なども見直して、国民の皆様とお約束をしたマニフェストを実現するということでこれからも取り組んでいきたいというふうに考えています。

三宅委員 大臣、ありがとうございました。

 それでは、ここから障害者行政について話題を移らせていただきたいと思います。

 実は、長妻大臣にも先日お伝えをしたことではありますが、私は福祉の中でも、家族に知的障害者がおりまして、そのことから、幼いころから障害福祉について特に強い関心を持ってきております。

 障害者の数は、全国で、現在およそ七百二十四万人だそうです。たくさんの方が御不自由な思いをされていることに気が重くなりますが、ちなみに、そのうち知的障害者は五十五万人となっております。そして、障害者雇用の問題は、景気の低迷によって当然厳しい状況にあり、平成二十年度には、二千七百七十四名も障害者が解雇されてしまっています。

 障害者雇用促進法に義務づけられた企業の雇用率は一・八%ですが、残念ながら、実際の雇用率はまだまだそこに届いておりません。一・六%でしかありません。ドイツやフランスは、障害者雇用率の目標を五ないし六%に置いています。

 そこで質問ですが、日本としては、まずは一・八%以上に上げるために、厚労省は今後どのように取り組まれるのか、お聞かせください。

細川副大臣 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、障害者、障害をお持ちの方の雇用率というのは法定の一・八%にはまだまだ届いていない状況でございまして、厚生労働省としては、この法定雇用率を達成するために、事業主に対してハローワークや都道府県労働局、あるいは厚生労働省がしっかりと指導を行って、雇用を促進してまいりたいというふうに考えております。

 そこで、平成二十二年度の予算案につきましては、この雇用対策につきまして二百十二億円の予算を計上いたしているところでございます。

 その主なものをちょっと申し上げますと、まず、障害をお持ちの方々について、地域の雇用、福祉、教育等の関連機関が連携して就労支援を進めるために六十五億円を計上いたしております。

 具体的には、まず第一に、ハローワークが中心となりまして、地域の福祉施設や教育機関と連携をいたしまして、就職から職場定着まで一貫した支援を行うチーム支援ということを推進していくということに六億円を計上いたしております。第二といたしまして、身近な地域で就業面と生活面を一体的に相談、支援を行うということで、障害者就業・生活支援センターというのを拡充するということに三十八億円を計上いたしております。

 今度、新規で行いますのは、障害者の方にはいろいろな特性がございますので、お一人お一人の特性に応じたきめ細やかな支援を行うということで、十九億円の計上をいたしております。

 具体的には、第一に、カウンセリング体制の整備等、精神障害者の働きやすい職場づくりのための、企業に対する精神障害者雇用安定奨励金というものを新設いたしたところでございます。

 そのほかにもいろいろと施策はしておりますけれども、特に事業主の方々に、障害をお持ちの方の雇用を多くするということで、その意欲が高まるような施策としては、従来からも続けておりますけれども、積極的にたくさん障害者を雇用された企業に対しては厚生労働大臣が表彰をさせていただくというような制度もずっとやっておりまして、これについても積極的に今後取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 厚生労働省としては、障害をお持ちの方に対しての積極的な就労支援ということを、今後とも充実して進めてまいりたいというふうに思っております。

三宅委員 大変真摯にお答えいただきまして、ありがとうございました。積極的に成果を出していただきたいというふうに思います。

 ところで、企業は法定雇用率一・八%ということでございますが、国の公的機関の障害者の法定雇用率は二・一%でございます。九七・四%の機関で法定雇用率を達成しておりますが、都道府県等の教育委員会は法定雇用率は二・〇%ですが、資料二をごらんいただきますと、都道府県の教育委員会が一・七〇、そして市町村が一・八四となっております。

 最も障害者教育に力を入れていただかなくてはならない教育機関が、どうしてこんなに数字が低いのでしょうか。二・〇%を満たすためにいかなる努力をされているのか、お聞かせください。文科省の方々にお越しいただいておりますので、お答えください。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 教育委員会が雇用いたしております職員の大部分は教員でございますが、教員免許状を有する障害者の数が極めて少ないこともございまして、厚生労働省の発表によりますと、障害者雇用の法定雇用率を達成している教育委員会は、四十七都道府県のうち六県にとどまっているのが実情でございます。

 文部科学省といたしましては、法定雇用率を達成していない教育委員会に対し、障害者に配慮した採用方法の実施などによる改善を指導しており、平成二十二年度教員採用選考におきましては、障害者を対象とした選考が全四十七都道府県において行われるなど、一定の改善が図られているところでございます。

 今後とも、通知や各種会議等を通じ、教育委員会における障害者雇用を進める取り組みを促してまいりたいと考えているところでございます。

三宅委員 その教育といいますのが、教育、指導などが長年続いていてこの結果になっていると伺っているわけなんですけれども、長妻大臣にお聞きいたします。

 今のやりとりを聞いていまして、どのようにお感じになりますでしょうか。

長妻国務大臣 三宅委員におかれましては、先ほどのお話では御家族に障害を持っておられる方がいらっしゃるということで、本当に、今後ともぜひお取り組みを一緒によろしくお願いしたいと思います。

 教育委員会については、四十七都道府県の中で達成しているのがたった六つということでございます。ただ、実雇用率は平成十七年から徐々に上がってきて、今、平均で一・七〇%までなっておりますけれども、これは二・〇というのは決まりですので、特に六つの県ではこれを達成しておりますので、六つの県が具体的にどういう形で達成しているのか、その情報をほかの県にもきちっと共有していただいて、これを速やかに達成してほしいということで、我々も、今後そういう情報提供もしながら、その後押しをしていきたいと考えています。

三宅委員 どうもありがとうございます。

 閣議で、ぜひ長妻大臣から川端文科大臣に頼んでいただきたい、そのように真摯にお願い申し上げます。

 ところで、知的障害者の問題になりますと、私は、どうしてもお聞きしたいことがございます。

 近年、残念ながらなんですが、軽い知的障害を持った方が犯罪を犯して、そして刑務所から出てきたときに、居場所がない、住むところがない、食べるものがない、では刑務所に戻ろうということで、再犯率が大変高いというふうに聞いております。そのため、こうした知的障害者の窓口、地域生活定着支援センターというものができまして、整備を新たに進めているように聞いております。ただ、残念ながら、まだ十一カ所までしかでき上がっていないというふうに聞いております。

 この地域生活定着支援センターを全国的にもっと整備する必要があると思いますが、こうした障害者の方が刑務所にいるときから相談に乗ってくれる窓口、本当に心強いことだと思います。そうした窓口が全国各所にできることになりましたら、これは大変すばらしいことで、犯罪の防止にもつながってくると思いますが、大臣の所見をお聞かせください。

細川副大臣 委員にお答えをいたします。

 刑務所等の矯正施設に知的障害者の方々が入られて、その中で、これまではほとんど福祉サービスというのが受けられていなかった、そういう状況でありまして、この点、私どもも大変問題であるというふうな認識でございます。

 そのため、そういう福祉サービスが受けられるように、矯正施設に入っているときからそれを受けられるようにするために、療育手帳の取得支援あるいは社会福祉施設への入所あっせんというような福祉サービスの利用支援を矯正施設に入っているときから支援が受けられるような、そういう地域生活定着支援センターというのを、委員御指摘のように、今整備を進めているところでございます。

 矯正施設も、入所者の方々が帰る先も全国に分散をいたしておりますので、ネットワークで十分にその機能を発揮できるように、そういう必要もあるというふうに考えておりまして、今、設置が十一県でありますけれども、平成二十二年度にはさらに二十九の都道府県がセンター設置の経費を予算計上もしているということで、来年度はセンター設置が相当進むというふうに考えております。

 そして、まだ未設置のところについては、厚生労働省としても積極的にこの整備に向けて指導、努力をしてまいりたいというふうに考えております。

三宅委員 どうもありがとうございました。

 私たち民主党は、前政権の下では光が当たらなかった人たちに光と希望を与える、そんな党にしなければいけない、そのように思っております。ひとりぼっちの障害者、ひとりぼっちの高齢者が絶対に出てこないように、そんな政治を行っていきたい、そのように思っております。

 本日は、ありがとうございました。

藤村委員長 次に、藤田一枝君。

藤田(一)委員 おはようございます。民主党の藤田一枝でございます。

 きょうは、限られた時間ではありますけれども、厳しい雇用情勢が続く中で、非正規という形態で働いている女性の労働の実態について、少し指摘をさせていただきたいと思います。

 大臣は、官製ワーキングプアという言葉をお聞きになったことがございますでしょうか。国や地方自治体あるいはその外郭団体で、臨職あるいは非常勤、嘱託、こういった形で働いている、雇用されている人たちの実態を指した言葉でございます。女性センターの職員や図書館司書、あるいは保育士、消費生活センターの相談員など公共サービスに従事している人たちで、専門職、資格職も数多く見られるところであります。

 このような形態で働いている人たちは、何とパート労働法も適用されない、非正規ゆえに何の保障もない。つまり、法の谷間に置かれています。年収百四十万から百八十万程度、このようにも言われていますし、一年契約で毎年更新を続けていく、そしてまた、その契約更新に制限がつけられている、こういうケースもふえてきています。

 しかも、人件費として予算が計上されているのではなくて、物件費や事業費で予算計上がされている。そのために、大変実態が把握しにくくて、しかも事業がなくなればいつでも切れる、そして切られる、こういう状態にあるわけです。

 そこで、お尋ねをいたしますけれども、今回事業仕分けで廃止が決定をした二十一世紀職業財団、内容は申し上げるまでもなく御存じであろうと思いますけれども、この二十一世紀職業財団にも同様のケースが存在をしています。三十三名の天下り職員と財団職員、そして実際の事業を担っている業務委嘱者という、月十五日勤務、一年契約で毎年更新を繰り返している非常勤職員、この財団は三層構造になっています。

 全国で二百七十三名に上るアドバイザーなどの非常勤職員、この方たちは、仕事の内容は、例えば育児・介護休業法あるいはパートタイム労働法、そして均等法、こうした女性の労働にかかわる法律の普及や啓発、こういう業務に当たっているわけでありますけれども、みずからはその法の外に置かれてしまっているわけであります。

 余りにもおかしな話でございますし、そもそも、旧労働省がこういう公益法人というものをつくったということ自体、大変問題があったのではないか、私はこのように思っていますけれども、今この財団で働いていらっしゃる非常勤の皆さん、これは、正規の財団の職員の皆さんとは違って、先ほど言いましたように、事業がなくなれば切られてしまう、こういう雇用不安にさらされているわけであります。

 したがって、財団の廃止に当たっては、この非常勤職員の皆さんの雇用確保ということもぜひ念頭に置いて対処をしていただかなければいけないし、そうすべきであろうというふうに考えますが、まずは御見解をお伺いいたします。

細川副大臣 委員の御指摘のような御心配はあろうかと思います。

 昨年の事業仕分けによりまして、現在、二十一世紀職業財団が指定法人といたしまして実施をしております助成金の支給事務については、「二十一世紀職業財団の活用を廃止。」というような評価コメントがあったところでございます。

 そこで、厚生労働省としては、この評価コメントを真摯に受けとめまして検討した結果、この助成金支給事務にかかわる活用は廃止をいたしまして、都道府県労働局が実施をする、こういうことになったわけであります。しかし、職員のいろいろなことも、雇用の問題もございますので、その実施につきましては二十三年十月を予定ということにしているところでございます。

 そこで、二十一世紀職業財団におきましては、助成金支給事務に従事をしております非常勤職員を含みます職員の方々の雇用不安、これが生じないように、再就職支援などについても最大限の努力をしていくということについて厚生労働省としても承知をしているところでございますが、なお、厚生労働省としても、雇用の問題についてはいろいろな角度からバックアップもしてまいりたいというふうに考えております。

藤田(一)委員 ありがとうございます。

 既に来年度の事業費が圧縮をされて、月十五日勤務が来年度は十三日に減らされる、こういう事態も起きてしまって、もう既に現在、二十三年度を待たずして雇用不安に皆さんはさらされているという状況でありますので、お取り組みの方をぜひよろしくお願いしたいと思います。

 そしてもう一つ、こうした法の谷間に置かれてしまっている不安定な雇用形態で働いている人たちというのが本当にたくさんいる。こうした官製ワーキングプアと言われる人たちの実態について、厚労省は、官製とつくのでこれはやはり総務省の管轄です、こういう感覚がおありかもしれませんけれども、しかし、本当に非正規労働者の待遇改善ということを厚労省も一生懸命取り組もうとされているわけでありますので、範を示す意味からも、こういう方たちの実態を把握して、そしてまた、待遇改善に向けての取り組みというものを進めていただきたい、このことを強くお願いしておきたいと思います。

 さて、総務省の統計によりますと、女性の正規の職員、従業員は一千四十万人、全体の四六・四%、しかし、非正規は一千二百万人で五三・六%。つまり、働く女性の半数以上が非正規雇用、こういう数字が明らかになっています。これは、大変深刻な問題であろうと思っております。

 この間、派遣切りということが大変社会問題になりましたけれども、その中でクローズアップをされてきたのは、製造業派遣の男性労働者の問題がやはり中心でございました。しかし、女性は、実は随分前から、以前から景気の調整弁として位置づけられてきた、こういう経過がございます。もうおわかりであろうと思いますけれども、パートタイム労働というのがその原型でございました。さらに加えて、契約や派遣が正規雇用の減少に伴って増加をして、しかも昨今では、期間の定めを置いた契約形態、有期雇用というものが常態化してきているわけであります。

 先ほども触れましたように、一年契約で更新二回まで、こんなケースが大変ふえて、当たり前のことのようになってしまっている。今、女性労働の分野では、派遣と有期雇用によって低賃金、不安定雇用が拡大をしてきている、このように言われております。これでは、将来の生活設計ということも描くことができませんし、不安定なままに働かざるを得ない。労働意欲も喪失をしてしまいます。そしてまた、本当に優秀な人材というものを、みすみす企業も社会も逃していく、こういうことにもつながってしまっているわけであります。

 今、この非正規雇用の問題、非正規という形態で働いている人たちの問題について本気で取り組まなければいけない、そういうときを迎えているというふうに思いますが、この間、厚労省にあっては、こうした待遇の改善に向けて、正社員への転換であるとか、あるいは均衡処遇という形で取り組みを進めておられます。

 私は、従来に比べれば随分取り組みは進んだというふうに理解をしておりますけれども、こうした今の状況の中で、本気でこれをやっていかなければいけない、こういうときだと考えています。そして、こうした状況というものを改善していくためには、どうしても均等待遇ということを明確に打ち出して、そのためのさまざまな整備を行うことが必要であろうというふうに思っております。

 そうしなければ、男女の賃金格差ということはもちろんでありますけれども、さまざまな雇用形態における格差というものを是正することはできないということでございますので、この点についての大臣の御所見、御決意をお伺いしたいと思います。

長妻国務大臣 本当に今、御存じのように、専業主婦の世帯と共働きの世帯、共働きの世帯の方が多いということで、共働き世帯がある意味では普通の働き方ということでありまして、家計を支える、そういう女性の方々が安定的に職についていただくということで、平成二十年の四月に施行された改正パートタイム労働法では、差別的扱いを禁止するということがまず書かれ、それを我々としても推進しているところでありますけれども、と同時に、派遣については法案を提出予定で、一定の方向性を出していきたい。

 ただ、派遣だけではなくて、ある意味では、有期労働ということで、期間の定めのある労働を、今のままでいいのかということで、これは細川副大臣を中心に、有期労働契約研究会という会を今開いて、そのあり方についても報告書をことしの夏ごろまでにまとめていこうということで、それにつきましても安定的な労働ということが確保されるような取り組みを今後とも続けていきたいというふうに考えております。

藤田(一)委員 ありがとうございます。

 今、有期雇用の問題に関しては、研究会で夏ぐらいに検討結果が出るということでございますので、そこは大いに期待をしたいというふうに思っておりますけれども、本当に、多様な雇用形態というふうな名前で進行してきたさまざまな問題というものをここでしっかりともう一度とらえ直して、そして、労働力の流動化あるいは柔軟な働き方そのものを全面的に否定するものではなくて、それはそれで一定、ライフスタイルに応じた働き方というのは必要なわけですから、それがちゃんと機能するためにはやはり均等待遇ということがどうしても必要になってまいりますので、そのことをぜひ踏まえてお取り組みをいただきたいと思います。

 そして今、ワーク・ライフ・バランスだとかディーセントワーク、つまり、仕事と家庭の両立、そして人間らしい働き方、このことが大きなテーマになっています。これを推進していく上でも、この均等待遇、そして正規職員、あるいはもうちょっと違う形で言えば同一価値労働同一賃金ということになっていきますけれども、そこが大きな問題になりますので、あわせてこの取り組みを進めていただくことをよろしくお願い申し上げたいと思います。

 最後に、地域職業訓練センター、そして情報処理技能者養成施設の今後の取り扱いについてお尋ねをしたいと思っております。

 これは、経過をるる申し上げるまでもないわけでありますけれども、平成二十年の十二月二十四日に雇用・能力開発機構の廃止ということが閣議決定をされて、機構で実施をされてきた地域職業訓練センター八十三カ所、そしてコンピューターカレッジ十二カ所の取り扱いが問題になって、今日に至ってきております。

 昨年の三月に厚労省は、昨年十二月の延べ利用人員実績で基準値に達しない場合は受け入れ条件が整う自治体に譲渡、基準値に達した場合は新会社、高齢・障害者雇用支援機構に移行という通達を出されて、それぞれの運営団体というのは目標に向かってこの間努力をされてきたわけであります。ところが、昨年の十二月二十五日に、二十二年度末で廃止、希望する自治体があれば譲渡という通達を厚労省は出されたということで、関係自治体あるいは運営団体から大変困惑の声が上がっているわけであります。

 事前に自治体との協議というのがどの程度に進んでいたのだろうかと甚だ疑問を持たざるを得ないわけでありますけれども、今、自治体側は、厚労省のこの通達というのは極めて一方的だということで、大変不信感を募らせておられます。県や自治体からの事業の存続を求める要望書というのが私の地元にも届いておりますし、恐らく厚労省の方にも届いているはずでございます。

 今日、大変厳しい雇用失業状況ということを考えたときに、職業訓練というのは極めて重要でありますし、政府としても、職業訓練、今回五万人増というようなことも数字が入っておりますし、求職者支援制度の充実ということにも取り組まれようとしている。そういうときに、自治体の皆さんやあるいは運営団体、そしてまた利用者の皆さんから反発を受けるというのは極めて問題であろうというふうに思っております。

 ぜひ、この問題については、もう一度実態をしっかりと把握をしていただきながらきちっとした対応をしていただきたいと思いますが、とにかく協議が足りないのではないか。去年の十二月の二十五日、いきなり通達が来たということに対する不信感というものを取り除いていただいて、十分に協議をしていただいて、そして要望の中心はやはり事業の存続、そのために、もし自治体で行うということであるならば無償譲渡というふうなことをぜひ実現してほしいというのが、要望の中心として上がっております。

 そういう意味で、ぜひ十分な協議と条件整備ということに努力をすべきであろうというふうに考えますけれども、いかがでございましょうか。

細川副大臣 コンピューターカレッジ、そしてまた地域職業訓練センターの設置、運営につきましては、今委員が御指摘のように、雇用・能力開発機構は既に廃止が決定をいたしておりまして、その機構が行っておりました業務というのは一層スリム化をしなければいけないということ、さらにはその予算を徹底的に縮小もしていかなければいけないというような検討の中で、この二つについては二十二年度末をもって廃止、こういうことになったわけでございます。

 ただ、しかし、そこでいろいろな職業訓練などを受けております方もいますので、そういう意味では、私どもとしては、自治体の方に引き受けていただこう、こういうことで今検討をいたしておりまして、委員いろいろ御指摘ございましたけれども、私どもも誠意を持って、自治体の方にこの業務を引き受けていただくように最大限の努力をしてまいりたいというふうに思っております。

藤田(一)委員 自治体の皆さんのところで事業継続ということになれば、やはり施設設備の無償譲渡ということは必要なことであろうと思いますので、その点、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 そして、本当に徹底的に無駄を省いていく、いろいろな事業を見直してスリム化を図って、予算も削減をしていく、洗い出していく、これはとても大事なことだと思いますし、憶せずどんどんと取り組んでいただくことが必要だと私は考えておりますけれども、川下というのか出口というのか、先ほどの二十一世紀職業財団の問題もそうですし、この事業のこともそうなんですけれども、現場のところ、末端のところでいろいろな影響が出てしまう、これはどうしても避けられないことでございます。

 したがって、そこのところのフォローというものを丁寧にやっていかないと国民の皆様の理解も得られないということにもなってしまいますので、いろいろ御苦労が多くて大変だとは思いますけれども、ぜひそういった点にも留意をしていただきながら取り組んでいただきますようにお願いを申し上げまして、時間になりましたので、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、岡本英子君。

岡本(英)委員 おはようございます。民主党の岡本英子でございます。

 きょうが初質問となりますので、どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。

 まず、大臣が所信表明の中で、最大の課題の一つに、少子高齢社会にどう向き合っていくのかがこれから考えていかなければいけないことだと述べておられました。まさに日本の将来を見据えていく上では、この問題は避けて通ることはできないと思っています。そこで、これからの日本を担う子供たち、そしてその子供たちを育てている地域や親たち、またその環境を取り巻く社会をしっかりと構築していく必要があり、多くの国民がその解決策を今の政治に期待をしているのだと思います。ぜひ具体的な政策実現を長妻大臣のリーダーシップのもとで実現していただければと思っております。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思いますが、まず最初に、保育園の待機児童について伺っていきたいと思います。

 現在、待機児童数は二万五千三百八十四人となっております。特に都市部にこの待機児童が集中をしておりまして、一位には横浜市が、次いで川崎市、そして仙台市、さらに四番目には東京の世田谷区というような順番になっているようですが、先般、今後五年間で保育所の定員を毎年五万人ずつふやしていくということを発表されました。大変期待をしているところですが、保育行政といいますと、私は、以前の小泉政権の待機児童ゼロ作戦が実施された年を思い出しました。

 弾力化の上限枠を撤廃して、子供の詰め込みが進み、そして対応する保育士も非常勤でもよいということになりました。その結果、保育施設での死亡事故は、二〇〇〇年までの一七・一四%から、この上限枠を撤廃しました二〇〇一年度からは、三四・九二%まで死亡事故の割合がふえていきました。

 この要因の、大きな問題の一つは、認可保育園で保育士の七〇%が非常勤という雇用形態も珍しくないという状況の中で働いている、この現状ではないかと思います。パート保育士が一日を三交代にするなどして、安定しない保育環境をつくり上げてしまったということだと思います。

 子供たちを中心に考えますと、子供たちが昼寝に入ってから目が覚めると、先生たちががらりとかわっているというようなこともあるわけです。何よりも、保育士さんも低賃金で雇用され、重責を担った仕事につくという雇用環境を今すぐ改善をしていかなければいけない、私はこのように思っております。

 そこで、保育事業の一環として、保育士の雇用環境整備について今後どのように考えておられるのか、長妻大臣にお伺いをしたいと思います。

長妻国務大臣 今、御指摘いただきましたように、子育て支援といったときに、やはり現金支給、これは子ども手当、あるいは現物支給、保育所の整備、ワーク・ライフ・バランス、この三つがバランスよくならなければならないということだと思います。

 今、保育士の環境整備ということですけれども、質の高い保育士を確保してサービスの質を向上するというのは、これはもちろん重要なことだと思っています。

 では、具体的にどういうスケジュールでその充実を図るのかということでございますが、まず、先月の二十九日に子ども・子育てビジョンというのを閣議決定いたしまして、その中に、サービスの質の改善というところで、職員の配備を今後考えていきましょう、職員の処遇、専門性の確保、どうあるべきかという課題を盛り込ませていただいて、それについてことしの前半までに方向性を固めて、法案の必要があれば来年の通常国会に法律を提出していこう、今こういうスケジュール観で取り組んでいるところであります。

 今おっしゃられたように、認可保育所等の定員をこれから毎年五万人ずつ五年間ふやす、こういうことがありますので、当然、保育士のニーズも高まってまいりますので、それを見据えて、幼保一体化の取り組みと同時に、この問題についても我々最善を尽くしていきたいと考えております。

岡本(英)委員 ありがとうございます。

 待機児童解消に向けては、やはり保育制度をさまざまなニーズに対応できるように拡充をしていかなくてはいけないのではないかと思っています。

 きょうは資料をお配りさせていただきました。例えばフランスなどでは、施設保育で五種類、家庭保育で二種類、裏面が全体像として、きょう資料を配付させていただきましたが、利用者が必要なニーズに合わせて保育制度を選択し、そして利用できるというようになっています。

 そういった中で、子供たちが一日を過ごす場所として、また利用する親が利用しやすいという意味での制度の拡充が必要だと思いますが、どのようにお考えなのか、お考えを伺いたいと思います。

長妻国務大臣 今、配付資料でフランスの例を見せていただきましたけれども、フランスは合計特殊出生率が二を上回るということで、我々も一つのお手本にしたいと考えているところであります。

 その意味では、例えば保育ママについて、御自宅等でお子さんを見ていただく制度ですけれども、これについても、保育ママになる方の条件が今までかなり厳しかったわけですけれども、これも、慎重に検討した結果、その制限を緩めて、多くの方が保育ママになれるような条件整備ということも考え、そして、その保育ママ等に対する予算も、平成二十一年度から倍にしまして二十八億円を二十二年度予算案で審議を今お願いしているところでございます。

 あとは、よく言われている小一の壁というのもありまして、保育所では夕方あるいは夜預かってくれるんだけれども、小学校一年になると放課後児童クラブが早く終わってしまうということで、そのすき間を埋める必要性も我々感じておりますので、そういう問題も含めて、子ども・子育てビジョン、閣議決定されたものをさらに深化させるように取り組んでいきたいと考えています。

岡本(英)委員 今、保育ママのお話もいただきましたけれども、柔軟な制度という意味では、他の諸外国ではいろいろな取り組みをされておりまして、アジアの中ではシンガポールがベビーシッター制度の導入をしているようです。また、イギリスやフランスなどでは、名称が違いますが、チャイルドマインダー、そしてアシスタントマテルネルというようなシッター業に公的な補助が出ているということでございます。

 他国から、教育を受けてベビーシッターのビザを取得し、そして入国後就労するというものですが、今現在、介護の現場では実施をされておりますけれども、このような制度を日本の保育行政の中で行うことがあるのかどうか、長妻大臣のお考えを伺いたいと思います。

山井大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 私も以前シンガポールに一カ月滞在したことがありまして、シンガポールでは、フィリピンの方とかが多くベビーシッターで活躍をしておられました。

 新たな次世代育成支援のための検討の中で、ベビーシッター等の訪問系のサービスの位置づけも今検討を行っているところであります。ただ、現時点におきましては、まずは国内の人材の確保をしていくことが重要ということを考えておりまして、このベビーシッターということに関して外国人労働者を積極的に受け入れていくということの検討は、まだしていないというのが現状でございます。

岡本(英)委員 ありがとうございます。ぜひ、柔軟な制度の取り組みにも前向きに取り組んでいただきたいと思います。

 私も子供がおりまして、ゼロ歳から三歳のときには保育園にお世話になっておりました。そして、横浜では、横浜独自で、横浜の規定に合う園には市の補助金がおり、そして横浜保育室という形で経営をされておりました。この横浜保育室は、認可と無認可の間に位置する保育園となるわけですが、大変多くの方たちが利用されております。そして、この利用している方たちは、何よりも安心できる保育園を探して入園をしたいと願っています。

 そういった中では、何も新しく保育園を建ててほしいという思いではなく、小学校の空き教室などを利用して子供たちを保育していただけないものかという素朴な疑問を持っているのも現実だと思います。そういった意味では、学校という場所は安全性も高く、そして校庭もあり、施設としては十分な場所ではないかと思います。そういった意味で、保育園というものを小学校の中につくっていく、これは例えば、小学校の施設利用ができ、すべてではないですが、学区の中に保育園をつくることができるわけです。

 第二次補正予算の中にも空き教室の利用が書かれておりましたが、具体的にどのように進めていかれるのか、伺いたいと思います。

高井大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘ありましたいわゆる空き教室、私たちは余裕教室と呼んでいるんですけれども、ある教室が普通教室として使われていない教室、そういうものをできるだけ有効に活用していろいろな、とりわけ保育所にするというのも有効な選択肢の一つだと考えています。

 現在、そのいわゆる空き教室の教室数のうち、保育所として活用されている教室数が三十九なんですね。特に横浜なんかでは大分頑張っていただいて、四つがそういうふうに使われているというふうに聞いておりますけれども、多くの場合は近隣の私立保育所の分園として整備されているというふうなお話でございまして、社会福祉法人や学校関係者が連携して活用しているというふうに聞いています。

 私たちとしましても、いわゆる空き教室というのがあっても、それもかなり、九割以上は今いろいろな、習熟度別授業や特別支援など、教室のある部分として使っている部分も多かったり、社会福祉関係の施設として連携して使っている部分もあったりもいたしますが、できるだけこれを転用して活用するということは有効だと思いますので、努力をしたいと思っています。

岡本(英)委員 先ほど長妻大臣の御答弁をいただいたときにも、幼稚園と保育園の一体化、幼保一体的なものについて、来年にも基本的な方針を固められて打ち出していくということを伺いました。

 この幼保一体化について、さらに、来年に向けて具体的にどのように進んでいくのか、その部分についても教えていただきたいと思います。

長妻国務大臣 これは、今まで幼保一体化というのはなかなか実現ができなかった。認定こども園というのもありますけれども、なかなか本当に一体という考え方にはまだ遠いということで、政権交代を機に幼保一体化を実現していこうということで、具体的には、子ども・子育て新システム検討会議というのを設置いたしまして、まだ初会合は開いておりませんけれども、これを速やかに、この場で検討をきちっとしていく。そして、来年の通常国会までに法律を出す、こういうおしりを決めまして、これについてさまざまな方の御意見も聞きながら、当事者の方の御意見も聞きながら、幼保一体化ということを着実に実行していきたいと考えています。

岡本(英)委員 ありがとうございます。

 それでは次に、児童虐待について伺っていきたいと思います。

 今、子供たちに対する虐待のニュースが大変多く、新聞を見るたびに、またニュースを耳にするたびに、目を覆いたくなる、また耳をふさぎたくなるような事件が大変多く相次いでいます。今の日本の子供の数は減ってきている。しかし、虐待を受けている子供たちの数は年々ふえ続けて、二〇〇八年度には児童相談所が対応した件数だけでも四万二千六百六十四件もあり、この数もまさに氷山の一角だと言われております。

 早急に対応していかなければいけないと思っておりますが、対策の面では、昨年は全国一律電話相談を取り入れたとも聞いておりますけれども、残念なことに、一月に東京の江戸川区で、岡本海渡君が両親によっての虐待で死亡するという大変痛ましい事件が起きてしまいました。この事件をきっかけとしてもわかるように、子供がシグナルを大人に送っていたのにもかかわらず、そのシグナルを受けとめることができずに、今回もこの事件が起きてしまったような気が私はしています。

 そういった意味でも、もう少し連携を図っていけば、しっかりとこの事件が防げたのではないかと思いますが、教育現場の中で教師等にどのような指導をされているのか、また、教育現場と児童相談所の連携というものが具体的にどのようになっているのか、伺っていきたいと思います。

山井大臣政務官 お答え申し上げます。

 先日の江戸川区の事例は、本当に悔やんでも悔やみ切れない事例でありまして、岡本委員御指摘のように、児童相談所と教育現場の連携というものがもうちょっと十分とれていたら起こらなかった事件ではないかというふうに思っております。

 それを受けまして、文部科学省と厚生労働省も、児童虐待防止のための連携強化に関する検討会議を早速開かせていただきました。その中で目下検討しておりますのは、やはり今回の江戸川区の事例におきましても、児童相談所が把握していた、そしてまた、その後欠席が非常にふえていた、その欠席が非常にふえていたという情報が児童相談所の方にうまく伝わっていなかったということがありましたので、今後、やはり児童相談所が察知した虐待が疑われる事例におきましては、出席日数等を児童相談所に報告して連携を強化することができないか、そのような検討を今行っているところでございます。

岡本(英)委員 ありがとうございます。

 今お話がありましたように、児童虐待防止のための連携強化に関する検討会議が開かれまして、この検討会議がその後、子ども見守りワーキング会議に取り組みをゆだねられたようです。この子ども見守りワーキング会議、事務方の方では会議が開かれているようですけれども、大臣レベルではまだ開かれていないようにも伺っております。ぜひ早急に進めていただきたいと思いますが、今後の取り組みについて改めて伺いたいと思います。

高井大臣政務官 今お話がございました会議は、恐らく子どもを見守り育てるネットワーク推進会議というもののことだろうと思います。

 これはもともと、すべての子供たちを、まさに悩みを受けとめたり、見守り育てる、関係者でみんなで寄っていろいろなことを話をしようという会議だったんですけれども、児童虐待の事件も受けまして、やはり連携強化と、あと、教育、まさに文部科学省と厚生労働省だけじゃなくて、時には警察の力もかりることもあったり、御近所の目やいろいろな方々の力をかりながら、子供の虐待、また子供の人権を守るために頑張っていこうという趣旨でございまして、その下に、児童虐待に対する検討ワーキンググループとして設置をいたしまして、やはり今回の事件も機に、もっと密に連携をとったり情報交換をしたり、でき得る限りのことを尽くしていこうというふうに考えているものでございます。

 この間、本当に児童虐待の事件が、特に死亡に至る事件がふえてきておりまして、平成十九年に児童虐待防止法が改正になりましたけれども、三年後の来年度にまた改正の時期となります。でき得るだけ子供の命を救うために、本当に今回も初動は間違っていなかった、その後の連携と、やはり継続的な見守りということが何よりも大事だと思っておりまして、私どもも、先生方にそういうことを繰り返し伝えたり、教育関係者に通知を出したりしておりますので、どうぞこれからもいろいろとよろしくお願いしたいと思います。

岡本(英)委員 ありがとうございます。

 私は、この児童虐待は、子供たちの助けを求める声、そして声なき声にしっかりとこたえていくことこそが政治の役割だと思っています。そういう意味では、だれもが虐待があるのではないかと感じたときにすぐ連絡、通報できるような、覚えやすく、そして身近に感じる連絡の電話番号があればいいなと日々思っていたわけです。

 先ほどお示しをしましたように、十月には厚生労働省が、そして二月には警察庁が虐待通報ダイヤルをつくっておりますが、正直言って、各省庁がつくられて、また、この電話番号が、けたが大変長いということで覚えにくいというのが現実だと思いますし、また、国民の中で認知されているのが大変低いのかなとまだ感じております。

 そういった意味で、今回御提案をさせていただきたいんですが、児童虐待に対して三けたの緊急ダイヤルを導入してほしいということを提案したいと思います。警察には一一〇番が、消防には一一九番があるように、虐待には例えば一一一番とか九九九番とか、だれもがわかるような三けたの電話番号。また、もしこの三けたが難しければ、厚労省がつくられておるシャープ八〇〇〇という児童救急の電話相談があると思いますが、例えばそういう回線を使うなどということができるのかどうか、伺いたいと思います。

長妻国務大臣 今御指摘のように、今現在、一つの電話番号、〇五七〇―〇六四―〇〇〇というのを回していただくと、全国二百一カ所ある児童相談所に、最寄りの相談所につながるということになっております。これについて、昨年の十月一日から開始をしたわけですけれども、番号が長い、あるいはごろ合わせができないだろうかという御指摘はいただいております。

 この番号についても、三千件以上の方からもうこの番号を使ったお問い合わせもございまして、まずはこの番号をきちっと宣伝していくということが重要だと考えておりますけれども、これは中長期的には、児童相談所以外、例えば、いろいろな議論がありまして、雇用の問題で、失業された方が相談する電話、あるいは、本当に家をあした失うんじゃないかという不安を抱えている方が一つの番号で問い合わせできないかどうか、いろいろな議論が今ございまして、中長期的な課題として私どももそれを議論する必要性はあると考えております。

岡本(英)委員 ありがとうございます。

 もう時間となりましたので、ぜひ早急な取り組みをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

藤村委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎委員 民主党・無所属クラブの宮崎岳志でございます。

 初質問の機会をいただきまして、心より感謝を申し上げます。長妻大臣を初めとする政務三役、厚生労働省の皆様の御奮闘に敬意を表しまして、質問を始めさせていただきます。なお、私もふなれでありますために質問事項を過大に用意してしまいましたので、できれば簡潔なる御答弁をいただけると幸いでございます。

 最初に、ドラッグラグの問題について伺います。

 昨年一月、私の大学時代からの古い友人が卵巣がんで亡くなりました。

 一昨年、闘病中のその友人から電話をいただいて、卵巣がんが進行していること、既に既存の抗がん剤が効きにくくなってしまったこと、そして、世界で幅広く使われており、日本でも一部の病気で使用が認められているにもかかわらず卵巣がんでは使えない、そういう適応外の抗がん剤を使いたいということを病院にお願いしたんだけれども、ドキシルやジェムザールといった薬ですけれども、それが認めていただけない、そういったことを涙ながらに訴えられたのであります。

 私は、ある病院に、何とか自由診療でこれを使ってもらえないかということをお願いいたしまして御了承いただいて、その友人に御紹介をしたわけですけれども、しかし、まさにその受診予定日の前夜にこの友人が倒れて、結局、そういった最新の治療を受けることがないままに亡くなってしまったわけであります。

 既に世界七十五カ国で卵巣がんへのドキシルの使用というのは認められていたわけですけれども、昨年四月、その友人の死後に、アメリカより十年おくれでこの薬は承認をされました。しかし、六十カ国で使われているジェムザールという薬はいまだに承認をされていない。そして、これらの薬は、アメリカだけではなく、日本婦人科腫瘍学会の治療ガイドラインにも既に掲載されているような薬であります。

 世界に冠たる医療大国日本においてこのような状況が生じることは、まことに残念であります。今まさに病と闘っている多くの患者さん方のためにも、ドラッグラグ問題の一刻も早い解決が必要だと確信をしております。

 そこで、長妻大臣にお伺いをいたします。

 ドラッグラグ問題の原因というのは何だと考えられるでしょうか。そして、治験など、薬事承認とかそういう制度、手続、コスト面、問題はないのでしょうか。解決のために、どのように今後取り組まれていくのでしょうか。解決への決意とあわせてお伺いをいたします。よろしくお願いします。

長妻国務大臣 宮崎委員におかれては、新聞記者を務められ、お父様がお医者様ということで医療問題にも大変御造詣が深いということを聞いておりまして、今後とも御指導賜れればと思います。

 今、具体的な薬の名前で御質問をいただきました。

 ある意味では適応外薬の問題でもありますし、あるいは未承認薬等々、これはドラッグラグということが言われておりますけれども、実際に、世界で初めて使われてから日本で使われるまで約四年かかる、アメリカは一・五年で、やはり二・五年の差があるということはかねてより指摘をされております。

 結局、厚生労働省が所管する医薬品医療機器総合機構という独立行政法人、これはPMDAと申しておりますけれども、その体制が脆弱であるということはかねてより私も問題意識を持っておりますので、まずその人員をふやしていく。平成二十二年の二月には、平成十九年から倍増以上の二百七十二人に審査の人員をふやす。あるいは、審査の透明化、迅速化にも取り組むというようなことで、何とか審査期間を短くしていきたいというふうに考えております。

 そして、今御指摘いただいた具体的な例のジェムザールという薬は、今膵臓がんと乳がんは適応が認められておりますけれども、おっしゃられるように卵巣がんでは認められていないということであります。

 これについては、このジェムザールを担当している会社に今春から治験を実施していただこうというふうに考えておりまして、その治験の結果を我々の専門家が分析をして、できる限りドラッグラグと言われないような形で対応していきたいと考えております。

宮崎委員 ありがとうございます。

 関連でお伺いをいたします。

 当時の厚労省のいわゆる昭和五十五年通知というのがありまして、そこで、国内で一部の病気に適応されている医薬品については、保険適用を柔軟に認めるべきであるということを示唆するような文言がございます。

 先ほど申し上げましたジェムザール等の既に一部使われているようなものについては、この通知に基づいて適切に保険適用をして、現場での使用を可能にできるのではないかという意見が医療の専門家等からも上がっておるのでありますけれども、この点について御見解を教えていただきたいということが一点でございます。

 そして、先ほどお話が出ましたけれども、PMDAの体制が弱いのではないかという指摘がある上に、今回、厚労省の有識者会議に対して、患者団体あるいは学会等から、未承認薬、適応外薬に関する開発要望というのが三百七十四件寄せられているということを伺っております。そうしますと、これまでの国内の承認の件数というのは年間八十件程度でございますので、これらを迅速に審査することが困難なのではないかという想像も浮かぶわけでございます。

 適応外薬の承認に当たりましては、科学的根拠が十分である場合には治験を省略して承認をする公知というシステムがあるわけでございますけれども、従来十分活用をされているとは言いがたいという話もございます。手続の柔軟化、公知等のシステムを使って、幅広く迅速にそういった未承認薬、適応外薬の承認を行っていくという考えはあるのかどうか、これを二点としてお教えを願いたいと思います。よろしくお願いします。

足立大臣政務官 まず、ドラッグラグとは何ぞやということをちょっと申し上げたいと思うんですが、二・五年という答弁が大臣からありました。三十カ月ということです。

 これは、承認の申請をするまでに十八カ月、承認の作業、これがPMDAでかかわってくるわけですが、これが十二カ月、そのどちらも短縮しなければいけないという話です。

 申請前を十八カ月短くすることにつきましては、私たちは、未承認薬、適応外薬の解消促進加算というものをつけまして、これは企業にそのインセンティブを与えようということでございます。やってもらおう、これを短くする。

 後半の部分が、先生が御指摘のPMDAの審査体制をしっかりさせる。今現在、百十二人から二百七十二人になりました。これは、三年計画で三百四十八人までふやすということでございます。

 それと、今おっしゃられた五十五年通知、五十五年の件でございます。これは、機械的に適応外のものは一切だめだということではなくて、学術的に誤りがない場合は使用しても差し支えないというようなことを、となると都道府県で審査基準が異なってしまう事態が生じる、これはいけないことでございますので、今は、検討会をしっかり設けて、そしてそれを全部公に通知するという形になっています。

 最後に、卵巣がんのゲムシタビン、ジェムザールのことなんですが、私、もちろん承認は早くしたいと思います。それから、大臣が、四月から承認の手続に入っていくということがございました。

 気をつけなければいけないのは、卵巣がんというのは、治療段階がファーストライン、セカンドライン、サードライン、そのときの状況に応じて前やった治療から変えるということがありまして、ただ単純に、ほかの疾患で良好であったからそのまま使えるというのではなくて、患者さんの状態も非常に差がありますので、私個人といたしましては、やはりこれはしっかりした治験は必要であろう、そのように思っております。

宮崎委員 お答えありがとうございました。

 いずれにいたしましても、ドラッグラグ問題というものは非常に重要であるというふうに認識をしております。ほとんどの方には関係ないかもしれませんけれども、やはりだれしも病気になる可能性はあることでございます。治療の選択肢をふやすということがどうしても必要であるというふうに思っておりますので、今後とも本当に活発なお取り組みをお願いいたします。

 続いて、二点目の出産育児一時金についてお伺いをしたいと思います。

 従来は、出産をした方が病院に出産費用を支払って、後から保険者から一時金を受け取るという制度でございましたが、昨年十月、医療機関への直接支払い制度が導入されました。そのこと自体は意義あることだと思いますが、新制度では、医療機関が支払いを受けるまで最大二カ月程度のタイムラグが生じてしまって、資金ショートというおそれがあります。月間百件扱う医療機関でありますと、八千万円を超えるということになるわけでございます。

 日本産婦人科医会のアンケートによりますと、診療所の八五%が経営に影響が出るというふうに答えております。これを機に分娩の取り扱い中止を検討している医療機関が全国で二百以上あるのではないかというような情報もあるようでございます。そのために、希望する医療機関は半年間新制度の導入を猶予されたわけでありますけれども、四月には完全導入ということになるわけであります。

 それを受けて、独立行政法人の福祉医療機構が制度融資というものを用意したようでございますが、有利子であって、先ほどの月間百件を扱う医療機関であれば、やはり年間百万円というような規模になる利子がつくわけでございますし、あるいは、不動産担保が必要だとか融資条件が厳しいとか限度額があるとかいうことがあって、現実に融資を受けられないという声も上がっておるわけであります。先ほどのアンケートでも、制度導入に伴う借り入れのうち、機構からのものはわずか二割以下ということでございまして、多くが民間の金融機関に頼っている。民間の方が恐らく利率は高いんだと思いますが、多くは民間の金融機関に頼っているというのが現状でございます。

 産科医療の崩壊が叫ばれる今でございまして、制度変更で産科が減少するなどということはあってはならないことでございますし、今、現状を見ますと、産科というのは一回なくなったらふえるということはちょっと想定できないわけでございますので、とにかく減少を食いとめることが大切であるというふうに思っております。

 そこで、お伺いをいたします。

 この問題、解決のめどがつくまで猶予の期間をさらに延長するとか、あるいは最大二カ月と言われている入金のタイミングを短縮する等の制度改善は可能でしょうか。さらに、機構の融資を、例えば期限つきにせよ無利子無担保にするとか、そういった使いやすく改善をするということが必要だと考えるんですが、何らか見直しの方法はないのでしょうか。お答えをお願い申し上げます。

足立大臣政務官 お答えいたします。

 前提として、この出産育児一時金というのは何だということをまずしっかり認識していただく必要があると思います。これは、医療機関の収入、つまり出産費用ではございません。妊産婦さんに対して出産と育児のために一時的に給付されるものでございまして、健康保険法六十一条では、「保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。」ということでございます。

 それを考えると、昨年十月、政権発足後わずか二週間足らずでこれを猶予いたしましたけれども、議員がおっしゃるように、このままでは四八%を占めている診療所あるいは助産所の中でつぶれるところが出てくるかもしれないということで、六カ月間の猶予。それから、福祉医療機構からの一時借りといいますか、その利率を、当時一・六%だったのを一・一%に下げて、今一・二%です。それから、無担保融資の上限を、一千万円だったのを三千万円まで上げました。これは、十月以降、私たちがそう取り組んでまいりました。

 しかし、三月いっぱいという期限がやってまいって、その間私たちが何を努力していたかということは、二カ月間のラグ、これをできるだけ一カ月あるいは一カ月以内にできないかという検討をしてきたわけです。それは、支払い回数とか、あるいはこれは電子化がかなり大きく関与してくると私は思いますが、そういうことの猶予の中で、なかなか短縮、直ちにというのは難しいなというのが今の状態で、さらに検討は続けております。

 それから、四月一日から完全実施かということにつきましても、今本当に鋭意検討しているところでございます。ただ、同じアンケートの中で、この制度を継続してほしいというかなり多くのものがございました。それも受けとめながら、検討したいと思います。(宮崎委員「これについても、重要な取り組みで……」と呼ぶ)

藤村委員長 指名をしてから発言をしてください。

 宮崎君。

宮崎委員 済みません。

 これについても、産科医療の崩壊を防ぐという重大な問題でございます。引き続き、鋭意取り組みをお願いします。

 それから、最後となります、保育の一時預かり事業についてお伺いをいたします。

 本年度、二十一年度、年間延べ利用児童数二十五人以上三百人未満の小規模な保育の一時預かり事業に対して四十五万円、経過措置ということで補助をされています。しかし、この補助を打ち切られるのじゃないかという不安の声が保育の関係者から非常に多くあります。

 大都会では集約化、効率化というようなことも可能なんだと思いますが、地方では広い地域に一つしか保育所がないというような場所も多くございまして、大規模化も不可能であるという現状がございます。

 それを受けまして、小規模な一時預かり事業所を守る必要があると思うんですが、そこでお伺いをしたいのでございます。新年度、二十二年度の予算におきまして、三百人未満という小規模な一時預かり事業、保育所に対する補助というのがどのような形で継続をされるのか、もし継続されるんだとしたらどの程度の金銭的な規模になるのかということでございます。

 私は、まさに地方の小規模な保育所による一時預かり事業を守らなければならないということで考えますと、経過措置ということではなくて、少なくとも恒久的なものとしての位置づけをお願いしたいというふうに思っておるんですけれども、お考えをお聞かせください。よろしくお願いします。

山井大臣政務官 宮崎委員にお答えいたします。

 先々週の土曜日も、長妻大臣と私、保育現場に行かせていただきまして、その中でもこの一時預かり事業の重要性を、要望を受けたところでございます。

 それで、御懸念のように今年度は経過措置でありまして、一カ所当たり四十五万円という補助でありましたが、来年度予算におきましては五十二万円というふうに引き上げさせていただいて、経過措置ではなく恒久的措置としてやっていくように考えております。

宮崎委員 ありがとうございます。大変御理解をいただき、保育を守るためのお取り組みをいただいたというふうに感謝をいたします。

 時間となりました。

 政権交代後、新しい流れの中で、私も微力ながら、鳩山政権、そして長妻大臣を中心といたします厚生労働省の施策に御協力を申し上げていきたいと思っております。

 これにて質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

藤村委員長 次に、山崎摩耶君。

山崎(摩)委員 民主党の山崎摩耶でございます。

 初質問ということですので、どうぞよろしくお願いいたします。

 先般、長妻大臣は所信表明演説の中で命を守るということを本当に力説なさいましたけれども、その命を守る私たちの政権は、地域医療の再生ですとか介護の再生を国民にお約束してスタートを切ってまいりました。

 その意味では、前政権と比べてやはりこのことに主眼を置いておりますので、医療費の削減はしない、OECD平均並みに水準を上げる、医師、看護師、介護の人材も本当に確保していく、そんなことを目標にしております。その意味では、今回の診療報酬の引き上げ、このことは、医療現場の仲間に、日夜奮闘されている仲間に、大変な安心、本当に心強いという後押しをしたのではないかなというふうに思っております。

 厚生労働は課題山積ではありますが、大臣初め政務三役が日夜奮闘しておられることにまずは敬意を表しながら、私も医療専門職の一人として、国民目線でこの厚生労働行政に、一緒に闘ってまいりたいというその立場から、きょうは何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず一点目は、地域医療体制の崩壊ということでございます。

 このことに関しては、医師不足はかなりこの委員会等でも議論されたやに聞いておりますが、看護師の問題については余り議論がされていないように思います。そこで、私は、やはり医療崩壊の中で看護の現場が今大変深刻になってきている、このことを委員とも認識を共通にしたいと思いますし、大臣以下政務三役にお取り組みをぜひ強化していただきたい。その立場から、若干今の現状というものをお示ししたいというふうに思います。

 まず、帝国データバンクによりますと、全国の病院、開業医の倒産件数、これは昨年の一月から十月の累計でございますが、四十七件。これは、前年度比で見ますと一・七倍に当たります。過去最悪のペースということです。その中で、医師不足は当然病院倒産につながるわけですが、それのみならず、看護師不足で倒産をする、こういう病院も出てきている。倒産しないまでも、病棟を閉鎖する、または休止する、全ベッドを縮小する、こういったケースが、国公立病院、私立病院問わず、規模の大小を問わず各地で起きている、このことを一つは御認識していただければよろしいかなというふうに思います。

 また、看護師が集まらないがゆえに、十対一という配置基準を十三対一、十五対一に削っていく。本当に看護師不足が病院経営に与える影響が非常に大きくなってきている、このことは深刻に受けとめなくてはいけないというふうに思います。

 そのような中で、働く労働者としまして、看護師の労働現場、お手元に資料を四枚差し上げてございます。

 まず一ページ目、これは日本看護協会がおまとめになったものですが、労働環境が悪化しているということで、中堅看護職の離職率が一二・四%、毎年十万人がやめていく現場ですよね。これは、幾ら養成してもやはり人材確保が追いつかない、こういう状況があるわけです。

 それから、一昨年になりますか、〇八年十月には、月平均八十時間近い残業や一日約二十五時間の拘束、一日二十四時間ですが、連続二十五時間拘束の当直勤務、深夜交代といった不規則な勤務で過労死した二人の看護職がおります。この方たちはいずれも労災認定されましたが、これは、かつて、二、三十年前の二・八闘争した看護師不足の状況よりも大変深刻、前代未聞のことでございます。

 これを受けて、お手元の資料三ページ、日本看護協会が鋭意調査をなさいましたそれによりますと、過労死危険レベルは交代制で勤務する二十三人に一人、四・三%、ここから推計しますと、全国の病院で働く看護職員の約二万人が過労死危険レベルの労働強化にある、こういう深刻なデータも公表されてきております。

 資料の二ページでございますが、もとより、御承知のように、OECD、G7、先進国を比べましても、医師のみならず、看護職員も先進国中十五位。対ベッド数でも、五分の一、四分の一の配置しかない。つまり、大変少ない看護職で多くの患者を診ている。安全な環境で、患者さんが安心できる状況ではとてもない、こんな現場があるわけですね。

 また、もう一つの観点からいいますと、〇六年、この改革は私は本当に改悪と言いたいぐらい最悪だったと思いますが、診療報酬でも七対一。これはよろしいわけです、配置基準を手厚くするのはよろしいわけですが、全体のパイが大きくならない中でこういうことをやりましたので、全国に、かき集められました看護師がどこにかき集められたか。大学病院ですとか大病院です。それで、結果的には、民間中小病院、これは、地方、都市部を問わず、中小病院ですとか訪問看護など在宅の領域、それから介護福祉施設などで看護師不足が本当に甚だしくなってきたという偏在が生じました。

 こういった看護師不足には、一つは、やはり確保せにゃあかん、それと、定着をさせなくちゃいけない、この両面からの施策が必要なわけですけれども、この定着促進と、待遇改善といいますか労働環境の整備等について、まずは長妻大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

長妻国務大臣 ありがとうございます。山崎委員におかれましては、訪問看護の方のスペシャリストということで、今後とも御指導をいただきたいと思います。

 一つは、今回、診療報酬改定に取り組ませていただきましたけれども、そこにも看護師の定着促進と待遇改善ということで、急性期病院の看護師が専念できるように、病棟に看護補助者を配備した場合の評価を新たに設けるという措置、あるいは、専門的な研修を受けた看護師が連携して、病院の中の感染防止対策とか人工呼吸器の管理を行った場合の評価、これも新たに設けさせていただくということ。あるいは、今、進んでいる病院は、看護師さんのお子さんを預かる保育所が病院の中にあって、かなり夜遅くまで預かるという措置もしておりまして、これに対して、補助対象に加えて、二十二年度予算案では二十・六億円を入れさせていただく。あるいは、短時間正規雇用など、勤務形態もかなり柔軟に実施をする医療機関に対して支援金というのをお渡しして促進する等々。あるいは、看護師の養成あるいはナースバンクの充実等々取り組みます。

 これは働く女性一般に言えることですけれども、やはりお子さんを、どう子育てを支援するかというのが一つ大きなかぎともなりますので、今後ともその拡充に取り組みたいと思います。

山崎(摩)委員 ありがとうございます。

 いずれにしろ、養成数をふやしましても定着がしませんと、ざるに水のようなことになりますので、今後とも引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 また、この看護師の問題、ちょっと視点を変えますと、昨今は看護職の活動の場というのも大変広がってきておりまして、特に、在宅の訪問看護の現場などでは、がん末期の緩和ケアですとか高齢者のみとりですとかいろいろなことが期待されているわけですけれども、現行法制度の中では看護職にできることが限られている、こんなジレンマもあったりいたしますし、私どもの身分法、医師法、保健師助産師看護師法などは、昭和二十三年、戦後間もなくつくられた法律に依拠しているところが多うございますので、現在のような、入院日数も短くてハイテクになっている、そんな医療現場になかなか追いつかないといういろいろな現象が出てきております。その意味では、現行法制度の中では看護職にできることが限られているというジレンマを抱えながらエキスパートナースは働いている、こんな現場もございます。

 もう一方、少子化の中でお産の問題、医師不足の中で大変課題になってきておりますが、このお産についても、欧米などでは正常分娩は一〇〇%助産師が取り上げる、こういう国が多いわけですが、なぜか我が国はそういうふうになっておらない。もっともっと助産師の活用も必要かなというふうに考えます。

 諸外国の例を引くまでもなく、看護師の裁量の拡大ですとか役割、業務の拡大というのが教育の充実とともに再編成されているのが現状だということでございます。厚労省におかれましても、チーム医療の推進に関する検討会が昨日等も議論をされて、新たな動きがちょっとあるやに伺っておりますけれども、我が国でも、時代のニーズに応じた看護職の役割拡大ですとか裁量の検討、こういったものが、特に訪問看護領域での裁量拡大ですとかナースプラクティショナーのような高度実践看護師の養成が急がれているというふうに私は思っておりますし、民主党マニフェストにそのことも記述してございますが、これについて、大臣の見解及び若干のスケジュール的なものがお伺いできればというふうに思います。よろしくお願いいたします。

足立大臣政務官 お答えいたします。

 御案内のように、先ほどおっしゃいましたチーム医療の推進に関する検討会は、去年の八月からスタートしてきのうまでで十回と、かなり精力的に議論していただいております。このスケジュール観ということが今ございましたけれども、三月を目途に取りまとめをしていただきたい、そのように考えております。

 その中で、先ほど大臣の答弁でもございましたように、まず、専門看護師、認定看護師というのがございます。これは、現在の枠の中で、より看護を深めるという意味だと思います。それに対して、その業務範囲を広げていくという視点がこの中に入っている。これは、チーム医療の検討会の方は、何も看護師だけではなくて、薬剤師さん、あるいはリハビリ関係の方、それから理学療法士さん、あるいは介護職員の方々、この方々の行うべき業務という内容について全般的に見直しをしているということは、今までにない、かなり画期的な取り組みではないか、そのように私は思っております。

山崎(摩)委員 先進国に学び、追いつき追い越せということで、とにかく世界に冠たる高齢国家でございますので、ナースプラクティショナーのような看護の役割拡大をぜひ確実に進めていただきたいなというふうに思っております。

 次の質問に移りたいと思います。

 在宅医療の問題と訪問看護の充実のようなものも大変高齢社会とともに課題になってきておりますが、特に、超高齢社会対応型の医療提供体制のリフォームというのはまだまだ必要かなというふうに私なんかは考えておりますし、きっちり在宅でのチーム医療がなければ、入院期間が短くなる中で、病院から出されるという医療難民のようなものが解消できないのではないか。

 その意味では、今後の在宅医療の推進ですとか訪問看護の充実に向けて、大臣の御所見をちょっとお伺いできればというふうに思います。一言で結構でございますので。

長妻国務大臣 二年後は、診療報酬の改定と介護報酬の改定がちょうど同じ時期にやってまいります。訪問看護、訪問介護も大変これはニーズが高まってまいりますので、これについても一体的な改革を見据えて取り組みたいと思います。

山崎(摩)委員 ありがとうございました。

 資料の四にはそのことをちょっとおつけしてございますが、訪問看護は、要介護者がどんどん伸びてまいりますのに比べて二十数万人と一向に伸びが、右肩下がりのようなことで、在宅に従事する看護職が大変少のうございますので、このあたりも力を入れていただければ大変よろしいかと思いますし、私も頑張ってまいりたいと思います。

 時間がなくなってまいりましたので、最後、介護保険に関連しまして、三問ちょっとお伺いしたいというふうに思います。

 一つは、要介護認定の問題でございます。

 これも、このところ二回ばかり見直しをしている。私はちょっと、まだまだスリムにする必要があるのではないかという気もしております。ドイツなどは三ランクでございますし、今の五段階、二段階含めてというようなことでは、もう少しスリムな認定で利用者にわかりやすいものにしていく方がよろしいのではないかなというふうに思っておりますが、その辺で、要介護認定の見直しについて調査と、経緯もございますでしょうから、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

山井大臣政務官 山崎委員にお答えをいたします。

 昨年四月に要介護認定の基準の変更をいたしまして、やはりこれで大変現場が混乱したということがありまして、政権交代後、十月にはこれを再度見直したところであります。その結果、要支援一や非該当がふえていったという問題点もかなり収束したというふうに思っております。

 今後、介護保険の見直しの中で、山崎委員御指摘のように、もう少しスリム化した方がいいんじゃないかとか、余りにも煩雑過ぎるんじゃないかということとか、また一方では、現場からはもうこれ以上はいじらないでほしいというような声もございまして、何よりも介護や看護の専門家であります山崎委員のお声を聞きながら、また考えていきたいと思っております。

山崎(摩)委員 山井政務官、ありがとうございます。

 二つ目は、介護療養病床についてでございます。

 これも大臣が、昨年の十一月二日でしたか、予算委員会で、二十三年度末廃止を凍結して療養病床全体の整備について議論をしていくと発言されておりますが、今後の行方が大変透明ではないということで、地元の現場では、現在入院していらっしゃいます患者さんや御家族からは不安の声が上がっておりますし、一方、開設者の皆様から、先が見えない状況で転換計画も立てられないというようなことの不安の声が私の方にもたくさん寄せられております。

 公平に見ましても、このまま何の手当てもしないで削減というのはやはり非常にいかがなものかという意見は私自身も持っております。

 基本的には、しかし、高齢者は住みなれた家など在宅ケアの仕組みで受け皿整備をすべきだというふうに思っておりますが、どの国を見ましても、医療ニーズですとか、認知症で、ここが大事なんですね、身体的合併症を持った高齢者、それからターミナルステージなどのために、高齢者人口の一%ぐらいは療養病床、つまりスキルド・ナーシング・ホームなんですね。このスキルド・ナーシング・ホームはやはり整備しております。

 その意味では、現在、認知症の一八%から二〇%が精神科に入院していらっしゃったり、特養の待機者の四十二万人のうち、在宅でない者は約半数の二十二万人。これは厚労省から出ている資料ですけれども、特に、介護療養を除く病院、診療所に約五万人待機でございますから、介護療養病床の廃止だけをすればよいということでもないように思われますので、この介護療養病床についての大臣の御答弁を再度御確認させていただきたく思います。

長妻国務大臣 当初、この発想というのは、社会的入院が多いのではないかということで、そういう発想から機械的に目標が決められた。ただ、現場をつぶさに見ますと、おっしゃられるように、普通のベッド、その次が医療療養ベッド、介護療養ベッド、その次はある意味では介護保険の世界の老健とか特養になるわけですけれども、その段階を医療のレベルの少ない方に誘導していくというのを非常に機械的に決めてスタート、こういうことになって、実態と合っていないという声がたくさん寄せられて、今、実態調査をかなり詳細にしております。

 本当にその方が転換する行き先が確保されているのか、あるいは病院の経営者の皆様方はどうお考えなのかというのを調査しておりまして、ことしの夏ごろまでには結果が出てまいりますので、その結果を踏まえて今後の方針を決定するということであります。いずれにしましても、この計画の猶予も含めて検討していくということになります。

山崎(摩)委員 大変ありがとうございます。

 明確な御回答をいただきまして、現場の方も少し今後の方向性が見えてくるのではないかなというふうに思います。

 いずれにしろ、医療療養も含めまして、療養病床の問題については、おっしゃられたような全体的な検討が必要だというふうに思いますので、また国民のお声、現場のお声を聞きながら、私どももともに考えさせていただきたいと思います。

 最後になりますが、大臣、さっきおっしゃられましたように、二十四年は診療報酬と介護報酬の同時改定でございます。介護保険制度の制度見直し、多々課題はございますが、その見直しの方向性など、一言で結構でございますので、大臣の方から御答弁いただければと思います。

長妻国務大臣 やはり、介護の一つの着地点というのは、施設で介護を受けたいというニーズもありますし、あるいは御自宅で介護を受けたいというニーズもありますので、ある意味では選択できるような形にする。

 あとは、施設にしても、自分の住みなれた地域の中でそういう介護を受けるということが必要だということで、まずは、具体的には、今後三年間で施設については十六万ベッドを整備する。これまでの三年間の二倍のスピードでの整備。

 そして、もう一つ重要なのは、まさに訪問看護、訪問介護の体制を充実するということで、その利用人数も我々としては拡充をしていきたいというふうに考えております。

 そして、何よりも介護職員の方の処遇を改善しなきゃいけないというのが大きな問題となっておりますので、それについても取り組んでいくということでございまして、いずれにしましても、二年後には同時改定となりますので、それを見据えた一体的改革。

 あるいは、国土交通省とも今議論をしておりますけれども、町づくりとしても、今、東京大学が中心となってモデルの地域をつくって、お年を召した方が生き生き暮らせて、医療、介護サービスも地域で受けられるようなモデル都市を場所を決めて取り組みをしておりますので、それも我々は参考にしながら理想の介護を求めていきたいと思います。

山崎(摩)委員 大臣、どうもありがとうございました。

 いずれにしろ、超高齢社会でございますので、医療、介護、これを、本当に国民の老後の安心材料になりますように、新政権ともども頑張ってまいりたいと思います。

 いずれにしろ、人の命を削るような政治は私たちはしないということで、また邁進してまいりたいと思います。御指導よろしくお願いいたします。

 きょうはありがとうございました。

藤村委員長 次に、初鹿明博君。

    〔委員長退席、中根委員長代理着席〕

初鹿委員 民主党の初鹿明博です。

 初めて質問をさせていただきます。

 まずは、長妻大臣、そして山井政務官、足立政務官、連日の予算の審議、大変お疲れさまです。

 昨年、政権交代して、初めての予算の編成をして、最初の予算の審議ということで、我々民主党がマニフェストで掲げた子供政策など新しい政策を打ち出していくということも重要だと思いますが、それに加えて、やはり我々民主党が期待をされていることは、前政権の誤り、失敗、それを正していくことも私たちの使命だと考えております。

 そういう観点で幾つか質問をさせていただきますが、まず、今までの自民党政権が国民から支持を失った最大の理由として、やはり現場を無視してきたということにあるんじゃないのかなと思うんですね。そこで、先ほど宮崎議員が質問をされましたが、出産一時金の問題について、もう一言、私の方からも質問させていただきます。

 今、お手元に資料を配らせていただきましたが、この出産一時金の直接支払い制度というのは、妊婦さん、親御さんの経済的な負担を軽減するという目的で導入をされたはずなんですね。

 ところが、この新聞記事を見てください。「産科七割、出産費値上げ」「一時金入るまで負担大」と。立てかえはなくなったけれども、自己負担、自分の持ち出しはふえている。これは、経済的な負担を軽減するどころか、経済的な負担を助長したような政策で、私はやはりこれは失敗だったのではないかなと思うんですね。

 先ほど、実施期間の猶予の問題や、また、支払いの期間をもう少し短縮できないか、そういう指摘も検討しているということはありましたけれども、猶予をするだけだと、医療機関からすると、いずれ実施をされるかなという不安は残るわけでありまして、やはり明確な何か新しい方針というのを打ち出すのが私は必要ではないかなと思います。

 先ほども指摘をされましたが、今、分娩をする医療機関、どんどん減っていますね。資料の最後に出させていただいているんですが、平成十七年から平成二十年までで、全国で約三百八十六の医療機関が、分娩できる医療機関が減っているんです。

 きのう、産科医の方から伺ったお話ですと、九月から今までで二十二軒、もうやめているところがあるという情報もあるわけです。二十二軒で大体月に三百四十分娩ぐらい扱っているということですから、年間にすると四千人ぐらいが産科難民みたいになってしまっているのかなと思うんですね。

 この貸し付けの問題ですけれども、結局、利息はかかるし、例えば月間四十件だとすると、月に一千五百万ぐらい借りることになるわけですよね。次の月に入ってきたとしても、それは次の月の経費の支払いで使うわけですから、借金がずっと続いていってしまうという問題もあるわけです。これでは、やはり医療機関も安心できないわけですね。

 そこで、御提案をさせていただくんですが、先ほど足立政務官が、この出産一時金というのは、医療機関に支払うものではなくて、妊婦さん、また親御さんに払うものだというような御答弁をされておりましたが、そこが私も基本だと思うんですね。

 私も、三人子供がいます。ですから、三人、出産一時金をもらいました。江戸川区なんですけれども、江戸川区は、出生届を出すと、そしてさまざまな手続をすると、その場で現金をもらえるんですよ。これをできれば、立てかえる必要がないわけですね。立てかえることに問題があったわけですから、では、これをどうするかということを考えるべきじゃないかな。

 各市町村の国保は全部、本人が行ったらその場で現金をもらえるようにする、そして、ほかの健保組合や、また協会けんぽなどでしたら、まずは自治体が窓口で立てかえておいて、そして自治体が各保険組合に請求をして、保険組合は医療機関に振り込むのではなくて自治体の方に振り込むという形にすれば、現金で窓口で支払いをするということで、医療機関にとっても負担はなくなる。そして、保険組合からすれば、振り込み先が変わるわけですから、大した負担ではないと考えます。自治体の方が多少の事務負担はあるかもしれませんが、医療機関に負担を負わせるのはよくて自治体はだめだというのは、私はおかしな話だと思います。

 ですので、こういう提案をさせていただきたいと思いますが、長妻大臣、御所見を伺います。

長妻国務大臣 まず、今の問題意識というのは私どもも共有しております。

 この制度は、そもそも、妊婦さんの経済的負担を軽減しよう、ここが原点としてスタートしました。ただ、当の産科の皆さんが疲弊をしてしまっては元も子もないということでありますが、今現在、それでも八五%の診療所等についてはもう既にこの制度で実施していただいている、こういうことがあります。

 私どもも、先ほど答弁しましたように、来月中には、どういう形を四月から実施するか、猶予をする上で、あるいは、支払いをもう少し小分けにして払っていって資金繰りに支障が出ないようにするのかどうかも含めて、まずは三月に結論を出していくということであります。

 今の御提案の件でありますけれども、これについては、本当に市町村が被用者保険分、国保じゃなくて被用者保険分のものも手続としてできるのか否かなども含めたいろいろな御理解をいただくということもありますので、まずは三月の結論、そしてその後、実態把握、御意見も聞きながら検討は進めていきたいと思います。

初鹿委員 医療機関が不安が残らないように、なるべく早い検討をぜひお願いいたします。

 次に、先ほど山崎議員も質問をされましたが、介護療養病床について、ちょっと私からも一言発言をさせていただきます。

 一月二十七日の参議院の予算委員会の辻議員の質問の際に、長妻大臣は、基本的に廃止というような方向性は変わりませんけれども云々かんぬんとありまして、丁寧に移行しなきゃいけないという答弁をされたんですね。これを聞いていると、時間をかけていろいろ調べるけれども、廃止、そして転換老健への方針は全く変わっていない、変えないというようなニュアンスに感じ取れたんですね。先ほど、そうではないというような発言だったと思うんですが、これから実態調査をしていく中で、やはり廃止云々も含めてゼロベースでもう一回見直していくということでいいんでしょうか。

 今、社会的入院の問題を言いましたけれども、世の中では、最近は社会的退院とか社会的転院などということが言われ出しているんですよ。特に老健などは、私も祖母が老健に入っていますが、やはり一定の期間が来ると、次に移ってくださいということをかなりしつこく言われるわけですね。

 社会的入院という問題がある一方で、今、社会的な退院とか社会的転院とかいう問題もあるわけですから、やはり、そこにいる方々、そして家族が安心できるようにしていかなければならないと思いますので、もう一度、この介護療養病床についての長妻大臣の御所見を伺います。

長妻国務大臣 何にしろ最も重要なことは、どのベッドでも、本当にその方が安心して必要な医療あるいは必要な介護が受けられる、これが最も重要なことであります。

 その中で、医療療養病床あるいは介護療養型ベッドについて、本当にそのレベルの医療ではなくて、例えば老健でも十分に対応できる方がそこにおられるということで、逆にそこに入るべき方がそのベッドに入れない、こういう問題もあろうかと思います。

 ただ、前の計画というのは、そういう今のような問題を考えて、機械的に、これまでの期間こういうふうにします、こっちに移行しますと。移行先がないときに移行計画を推し進めたら、そこでまさに社会的退院的なことが起こりかねないと我々は考えておりまして、まずは実態把握を夏まで、今調査中で、結論を出した上で、猶予ということも含めて、いずれにしても、その方々が適正な医療や介護を受けられる、そういう体制を整えるということであります。

 いずれにしても、今のままでずっといくのがベストだとも我々は思っておりませんので、そういう意味では、本当にそういう方が必要な医療、介護が受けられる体制をつくる、ただ、今の計画は猶予も含めて検討するべき課題はたくさんある、こういう認識です。

初鹿委員 ありがとうございました。

 次に、予防接種について質問をさせていただきます。

 昨年、政権発足した直後は、新型インフルエンザの大流行で、ワクチンの接種ということが非常に問題となったわけですけれども、この一件で、この国の予防接種行政というんでしょうか、この問題点というのが非常に大きく浮き彫りになったように感じるんですが、予防接種については、平成十九年にはしかが大流行したときにも一時話題になったというふうに記憶をしております。

 きょうは、ちょっとそのはしかの予防接種についてお伺いするんですが、この大流行を受けて、平成二十年から五年間という期間の中で、この予防接種をしていない高校生やまた中学生に接種をするということが始まりました。ちょうどきょうの日経新聞の朝刊に、はしかの予防接種率が「六割前後で低迷 中一と高三対象」という記事が出ていたんですが、なかなかうまくこの接種率が伸びていないという記事なんですね。

 ここで、中一と高三という年齢になっているんです。確かに、五年間で、社会に出る前に学生のうちに全部打ってしまおうということで高三という年齢が設定されたようなんですが、この年齢にちょっと実は問題があるんですよ。

 というのは、我々が高校生のときはそんなことはなかったかもしれませんが、今、修学旅行で当たり前のように海外に行くようになっているんですね。はしかの予防接種、海外に行くときに接種をしてから行くようにということが保健所や学校の方からも言われるわけです。確かに、海外に行ってはしかを持ち込んで向こうで感染させてしまったら、これは本当に国際的な問題にもなってしまうので、やはり接種をするということは必要だと思うんですが、今、修学旅行というのは高校二年生で行くんですよ。ですから、高三で定期接種だと、高二のときに自己負担で打たなければならない御家庭、また生徒さんがいるわけですね。家庭の経済的な負担というのは大きいんですよ、自己負担だと一回七、八千円かかるということですから。

 そこで、御提案をさせていただきたいんですが、五年間で接種をする人数というものは決まっているわけですから、少しこれを前倒しするなりして高校二年生でも打てるようにすることはできないのか、それを検討していただきたいなと思うんですが、御所見を伺います。

    〔中根委員長代理退席、委員長着席〕

足立大臣政務官 お答えいたします。

 まず結論ですが、十分検討したい、そう思います。

 それで、なぜそうなのかということだけ、ちょっと話させていただきます。

 まず、新聞報道ですが、これは、一期、二期、三期、四期というふうに分かれている中の四期の部分のパーセンテージだったと思いますが、トータル、年度まで全部見ると八〇%から九〇%以上が接種されているということでございます。

 平成十八年度から、一歳と六歳、接種回数が二回になったわけですね。WHOから、平成二十四年までに麻疹の排除を決議して、それまでにしっかり接種するということになったわけです。逆算すると、一歳、六歳ですから、では、二十四年度までに、そのときに七歳だった人をどうやって打っていくか。二歳ずつ二十四年度までやるとなると、七歳と十三歳、五年たつと十二歳と十八歳となるようになったという計算に基づいて当時はやられたんだと思います。なので、高三と中一となっている。

 しかし、高二の方々が修学旅行等で海外に行かれて、十九年当時、日本人は海外ではしかを感染させているみたいな報道もありました。そのことも踏まえて、十分検討しなければいけないことだと思いますし、検討してまいります。

初鹿委員 非常に前向きなお答え、ありがとうございます。

 次に、病児保育についてちょっと質問をさせていただきます。

 先日発表になりました子ども・子育てビジョンを見ますと、病児保育、病後児保育について、現状三十一万人のところを二百万人にふやすという非常に高い目標が掲げられておりまして、親御さんたちのニーズを考えると、これはぜひ何としても実現してもらいたいなと思うんです。

 ちょっとお手元にお配りした資料を見ていただきたいんですが、これは一月十一日の毎日新聞の記事です。「病児保育 八割赤字に」という記事なんです。

 非常に病児保育というのは利用者が安定しないんですね。インフルエンザの流行期とか風邪がはやるようなときは、何人も利用したいという方が来て、断らなければならない。しかし、季節がいいときだと風邪を引く子供が少ないので、逆に利用者がいないこともあるということで、なかなかこの利用率、難しいんです。

 そういう中で、ことしから補助金の出し方が変わったんですね。去年までは定額で払っていたのを、ことしからは利用者数に応じて加算をしていくというようなやり方になったんです。その結果どうなったかというと、ほとんどの施設が補助金が減額になって、二十年までは六割以上が赤字と言われていたんですが、今は八割以上が赤字になった。これがこれだけもう明らかになっている中で、ふやそうといっても、赤字覚悟でやりますよというところが果たして出てくるのかなという心配があるんですね。

 そこでお伺いしたいんですが、せめて二十年度の水準、同額の補助金が確保できるように、支給されるように改善をすることはできないのか、お伺いいたします。

山井大臣政務官 病児保育というのは非常に重要なサービスでありますので、初鹿委員の御指摘というのは非常に的を射ているというふうに思っております。

 そこで、厚生労働省としましても、来年度に関しましては、前年度より三億一千三百万円増の三十四億八千八百万円を計上しているところであります。なお、補助基準額については、実態も踏まえ、二十一年度から利用者数に応じて変動する仕組みに変更したところでありますが、ここが、今、初鹿議員が結果的には赤字が拡大したとおっしゃっている部分でありまして、今後、地域の利用状況に応じた事業実施ができるよう、必要な見直しについて検討していきたいと思っております。

初鹿委員 ぜひよろしくお願いします。やはり、経営に不安があると新たな参入はあり得ませんし、今あるところがやめていくような、やめざるを得ないような状況では伸びていくことはできないと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 もう一度、子ども・子育てビジョンにちょっと戻ります。

 非常にすばらしい高い目標を立てているんですが、本当にこれを実現するためには、かなり性根を入れてやらなければならないと思います。

 特に私が感じるのは、男性の育児休業の取得率、現在一・二三%を一〇%まで引き上げるということなんですね。これは非常に難しいんじゃないかなと思うんですよ。

 いろいろ、職場の環境とか職場の理解とかお父さん本人の理解とか、そういうことを整えていくということも取得率を上げる上では必要だと思うんですが、私は、やはり最後はお金の問題だと思います。

 現在、給与の五割が支給をされるわけですが、二十代、三十代の若いお父さん、月に三十万手取りでもらっていたら、かなりいい方だと思うんですよ。月に二十万円の人は、五割だと十万円ですよ。家賃七万円のところに住んでいたら生活できないですよ、新しく子供ができて。それを考えると、この一・二三%取得をした人たちも、ちょっと調べていただきたいなと思うんですが、恐らく、奥さんが割と高収入で所得があって、自分が半分になっても大丈夫な人だったのではないかなと思うんですね。

 ですから、この一〇%の目標を達成するためには、スウェーデンとかノルウェーとか八〇%なんですよ、それぐらいはやはり水準を上げていかないとならないんじゃないかなと思うんです。

 確かに、雇用保険でやっていると、失業給付が五割で、失業している人が五割なのに、育児休業で仕事に戻れる人が八割になったらおかしいんじゃないか、バランスが悪いんじゃないかという指摘もあると思います。それならば、仕組みを変えるということもぜひ検討をしていただきたいと思うんですが、御所見を伺います。

山井大臣政務官 私も昔、二年間スウェーデンに留学しておりましたが、大学の研究会でも、男性の研究者が遅刻をしてきて、どうしたんですかと言ったら、育児があるからと。私は、やはり日本と違うなと思ったのは、そういうことに関して、お父さんが育児のために、仕事と両立するために多少時間を短くするのは当たり前だという周りの視線、職場の受け入れが本当に温かいなということをつくづく感じました。

 それで、長妻大臣も今、育児に積極的な男性をイクメンとしてPRに努めておられますし、また、このことに関しては、経済的な問題のみならず、やはり一番お父さんがお休みをとられない理由は職場に迷惑がかかるというのが五〇%で、家計への影響、給与が減るというのが二七・四%。そういう意味では、休業中の経済的支援のあり方については、その財源をどのように確保するかという点と一体的に、子育て支援のための包括的な制度の構築に向けて検討を引き続き行ってまいりたいと思います。

初鹿委員 ぜひ、日本の男性は意気地なしということを言われないようにしっかりと取り組んでいただきたいとお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 名前は寛徳ですが、きょうは、阿部委員のピンチヒッターで質問に立っております。

 最初に、沖縄愛楽園の保険入院医療機関指定についてお伺いいたします。

 ハンセン病問題の解決を促進する法律が、昨年四月に施行されました。国立療養所沖縄愛楽園は、基本法に基づく将来構想の一環として地域住民の外来診療を行っているところです。同園は、さらに地域に開かれた施設として発展していくために、病床の一部、当面四床程度を保険入院医療機関として指定することを求めております。

 本件については、昨年十二月二十二日、沖縄選出、出身議員団うるの会として長浜副大臣に申し入れもいたしました。その際、長浜副大臣からは、指定を検討しなければいけない状況は十分に理解している、地域医療、介護の重要性の視点からも検討していきたいとの前向きな御回答をいただいております。

 その後、厚労省における検討状況、実現に向けての取り組みに進展はありましたでしょうか、尋ねます。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 沖縄愛楽園の件でございますけれども、保険医療機関の指定を受けて地域住民の方に入院医療を提供するという件でございますが、愛楽園の自治会からの御要望もございます。それで、昨年八月から、ハンセン病問題対策協議会の在園保障作業部会において検討を進めております。

 副大臣にお会いいただいた後も、実は一昨日、二月の十七日でございますが、在園保障作業部会を開催いたしまして、入所者団体の方々と、指定に向けて解決すべき課題について協議をいたしております。

 今後、引き続き、関係者の御意見をよく聞いた上で適切に対応していきたいというふうに考えております。

照屋委員 長妻大臣、沖縄愛楽園は、去る沖縄戦で米軍の猛攻撃を受けた痛ましい悲劇の過去がございます。また、一九四五年から一九七二年までの米軍支配下で、本土の入所者以上に苦しんだ歴史もございます。

 本件は、法律改正も政令改正も不要であります。大臣が指定をすれば実現できるんです。政治判断に積極的な長妻大臣の力強い決意をお聞かせください。

長妻国務大臣 これについては、まずは入所者を初め関係者の皆さんの御意見をよく聞くということで、今もそういうことをしておりまして、適切に対応するということですけれども、まず、その場合、では、入所者と地域住民の医療提供の優先順位のルールはどうするのか、あるいは、一回退所した方がもう一回入院するときに、給与金、給付の支払いというのが金額が変わってくるということをどう調整するのか、あるいは周りの医療関係者等々の御理解を得る、あるいは、初め四つのベッドからどういう展望でそれが拡大するのかしないのか等々、議論するべき点はあると思います。こういう点もきちっと議論した上で、何しろ一番重要な入所者のお話を聞いて適切に判断をしていきたいと思います。

照屋委員 大臣、沖縄にホームレス自立支援のNPO法人プロミスキーパーズというのがございます。このプロミスキーパーズでは、現在、ホームレスの皆さんを百五十四名入所させております。私が非常に感激するのは、このプロミスキーパーズに入所しているホームレスの皆さんは、病気の者以外は原則として生活保護は受けない、受けさせない、その方針で、それで自立支援、就労支援を必死にやる。私は予算委員会で、かつて舛添大臣に、沖縄に来る機会があったらぜひ訪ねてほしいとお願いしたが、実現しませんでした。

 ところで、現在、那覇市真嘉比の区画整理地内では、厚生労働省直轄で遺骨収集事業が実施され、プロミスキーパーズの方々も作業員として従事しております。就労支援としての成果も出ており、私は、その取り組みを高く評価するものであります。

 ただ、残念なのは、行政は、遺骨収集は戦後処理、作業員の雇用は就労支援と、どうしても分けてしまうところがございます。沖縄にはたくさんの遺骨が眠っております。また、全国一の失業率の沖縄にあって、遺骨収集事業と就労支援がマッチングした那覇市真嘉比の事業は、沖縄における一つの成功事例だと考えます。

 今後も、沖縄では同様の事業を展開し、制度化も検討すべきだと考えますが、長妻大臣の所信を伺います。

山井大臣政務官 照屋委員にお答え申し上げます。

 那覇市が国の緊急雇用創出事業を活用し、戦没者の遺骨収集のための事業を、ホームレスを支援するNPO法人に委託して実施したもの、多くのホームレス等の方々が就労されたと聞いております。また、この遺骨収集を通じて多くのホームレスの方々が働きがいを感じ、自信を取り戻されているように見えたなどと、現地でも評価がなされていると承知をしております。

 また、ハローワークにおいても、ホームレスの方々に関しましては職業相談や一定期間のトライアル雇用の実施、また、ホームレスの多い地域における就業機会の確保等の実施にも取り組んでいるところでありまして、このようなことを総合的に勘案してホームレスの方々の自立を支援してまいりたいと思っておりますし、また、長妻大臣への先ほどのお申し出につきましては、国会等があり、なかなか難しいわけでありますが、また沖縄に行かれる機会があれば検討したいというふうに考えております。

照屋委員 大臣、そして長浜副大臣も聞いてほしいのですが、プロミスキーパーズが百五十四名のホームレスを収容して、自立支援、就労支援している者はウチナーンチュだけじゃないんです。ウチナーンチュだけじゃなくて、本土の各地から暖かい沖縄を求めて流れ着いたホームレスが圧倒的に多い。そういうこともございますので、大臣も副大臣も、沖縄へお見えになるときには、プロミスキーパーズをぜひ訪ねてほしいと思います。

 次に、硫黄島における遺骨収集問題を聞いておきたいと思います。

 普天間飛行場移設問題との関連で、私は、去る一月二十一、二十二日、硫黄島を視察してまいりました。結論として、社民党は、硫黄島は移設先として不適切だとの判断に至りました。その理由の一つとして、硫黄島では遺骨収集や不発弾の処理など戦後処理が終わっていない、こう結論づけたわけであります。

 さて、硫黄島の決戦でお亡くなりになった戦没者が何名で、これまで収骨された御遺骨は何柱で、まだ未収骨の遺骨はどうなっているのでしょうか。

森岡政府参考人 お答え申し上げます。

 硫黄島における戦没者数は二万一千九百人であり、これまでに八千七百十五柱の御遺骨を送還しているところでございます。残されました御遺骨の数は、約一万三千柱でございます。

照屋委員 大臣、戦後やがて六十五年になろうとするのに、硫黄島では、いまだに一万三千柱の遺骨が収集されていない。私は、遺骨収集現場も視察をしました。これは、新政権でほうっておけない問題ですよ。硫黄島も沖縄も、戦後処理は国の責任なんです。国の責任に時効なんというのはない。そういう思いでぜひ遺骨収集、御遺族の声や、現場で頑張っている、この硫黄島では遺骨収集に自衛隊の協力も得ておるんですね。

 そういうことからして、私は、長妻大臣の、この硫黄島もしかり、沖縄もしかり、遺骨収集作業をどのように国の責任で積極的に進めていくのか、その御決意を賜りたいと思います。

長妻国務大臣 これはまさに、照屋委員は硫黄島に行かれてその現場を見られたということで、ちょうど一時間前、細川副大臣が千鳥ケ淵で、きょう、硫黄島の遺骨の引き渡しということで、その式典に出てまいりまして、私も就任してからフィリピンからの御遺骨の引き渡しにも出て、一時的には、厚生労働省の建物の中にちゃんと丁重に御遺骨が今あるという状況もあります。

 私自身も、シベリア抑留問題に、議員立法も提出して、ずっと取り組んでまいった経緯もございまして、これは国家として非常に大きな責任がある。アメリカなどを見ますと、かなり海外の御遺骨というのは収集して、戦勝国と敗戦国、違いはありますけれども、これについてかなり頑張っていかなきゃいけないという意識を持っています。

 その意味で、硫黄島遺骨収集の予算については、二十二年度、一・三億円を盛り込ませていただいて、これは前年比の二倍の予算を今御審議いただくということで、いずれにしても、本当にこれだけの御遺骨がまだあるというのは国家としてやはり問題が多いと考えておりますので、今後とも一生懸命取り組みたいと思います。

照屋委員 大臣の頑張りを期待したいと思います。そして、先ほど申し上げたように、沖縄へいらっしゃるときには、ぜひ、ホームレス支援のプロミスキーパーズも訪ねてください。

 質問を終わります。

藤村委員長 次に、大村秀章君。

大村委員 自由民主党の大村秀章でございます。

 私の質問に入る前に、まず冒頭、申し上げたいと存じます。

 今週、この厚生労働委員会をめぐりまして、大変強引な、強権的な委員会運営が行われたということは極めて残念であり、遺憾だというふうに申し上げざるを得ません。我々の意見を一切聞かずに、無視して、一方的に理事懇、そして委員会を強行されました。それも、この国会の冒頭の所信表明でやられたということは、私は、極めて重大であり、また残念だと言わざるを得ないと思います。こんなことが延々と続けば、まともな国会審議ができないということにならざるを得ないのではないでしょうか。

 こうした議会制民主主義を踏みにじる、非民主的な委員会運営を強行した民主党と藤村委員長に、強く抗議を申し上げたいというふうに存じます。

 そして、この点については、昨日の理事懇でも私は申し上げました。こういったことについて、今回の一連の経過について、委員長から反省と謝罪の弁を言っていただきたいということを申し上げましたところ、先ほど、委員会の冒頭に、円滑な運営ができなかったということについて遺憾だというふうに言われました。その上で、与野党の真摯な努力のもとに委員会運営をしてまいります、こういうふうに言われました。

 遺憾だということについて、私は反省と謝罪の弁というふうに申し上げました。遺憾というのでは少しまだ足らないのではないかというふうに言わざるを得ないと思います。そして、そういう意味ではちょっと残念だなということを申し上げざるを得ないわけであります。

 そこで申し上げたいのは、委員長、先ほどの御発言の中で、与野党の真摯な努力のもとに委員会運営をしていくという言い方でございましたが、円滑な運営、要は、双方の意見を十分聞いて、円滑な運営という言葉がなかったというふうに思っております。

 ということで、冒頭、委員長にお伺いしたいと思います。

 今後、委員会運営において、これからもこういう強権的な、強行するようなこういう委員会運営をされますか。いかがでございますか。委員長の存念をお伺いしたいと思います。

藤村委員長 冒頭、御発言いたしましたとおり、引き続き、与野党の真摯な御協議のもとに委員会運営を進めてまいりたいと存じます。

大村委員 円滑な運営という言葉がありませんでした。大変残念でなりません。

 国会というのは、別に与党野党、どちらが与党、野党、だれがということではなくて、やはりルールに基づいて、ルールを積み重ねて、ルールにのっとって審議を深めていくというところでございます。そういう意味で、まさに始まったばかりでありますから、これからの委員会運営、円滑にやっていく、ルールにのっとってやっていくということを強く申し上げておきたいというふうに思っております。

 さて、残念ながら、我々は、大臣所信というものを聞かせていただけませんでした。大変残念でございます。国会の冒頭であります。こういうことは、まさにこんなことは、私、この何年かずっとここにおりますけれども初めてでございまして、大変残念でなりません。こうした、先ほど申し上げました強硬な運営というのをとにかく厳重抗議するということで、まだ聞かせていただいておりませんので、あくまでもきょうは一般質疑という形で進めさせていただきたいと存じます。

 さて、まず冒頭、さきの、先週の予算委員会でも質問させていただきましたが、年金問題について、長妻大臣から残念ながら明確な答弁がいただけませんでした。したがって、きょうは、そのおさらいだけ冒頭させていただきたいというふうに思っております。

 まず、お伺いいたします。四年間の工程表というものは出していただけるんでございましょうか。いかがですか。

長妻国務大臣 工程表というのが予算委員会でも大村委員が言われている工程表であるとすれば、それはもう既に出させていただいているというふうに考えております。

大村委員 私はあのとき申し上げましたが、事務方が持ってきたペーパーは、二十二年度は一割、その後は、二十三、二十五年は波になっていて、二・五から三割ということでございました。とりあえず初年度だけ一割やって、後は行き当たりばったりという言葉がいいかどうかあれでございますが、後はよくわからない。そのときそのときやっていくんだということかなというふうにしか見えませんけれども、これが本当に、二年間集中的に取り組むということと合っているというふうに思われますか。

長妻国務大臣 これにつきましては、この工程表でもあるとおり、四年間で全件照合する、こういう形になっております。

 前政権は、残念ながら、紙台帳については照合するすると言いながら、何年かかるのかすら出さない、こういうような対応でして、私ども、野党時代、かなり問題視したわけでございますけれども、我々は、こういう形で人員も出させていただいて、初めの二年間は紙台帳をやみくもに、片っ端から照合するのではなくて、優先順位の高いカテゴリーの紙台帳から照合をしていく、こういう形で取り組んでいきたい。

 先般も、マスコミにも公開をいたしまして、紙台帳検索のシステム、これのデモンストレーションをいたしまして、そういう着実な歩みをしておりまして、この計画に基づいて実行していくということであります。

大村委員 先般申し上げましたが、我々は昨年の夏の選挙時のマニフェストにおいて、昨年ですが、来年中にめどをつけるということを申し上げております。そのことも具体的に、当時の舛添大臣、私も含めて申し上げております。

 そのことはしっかりとここで指摘をしておきたいというふうに思いますが、改めて私が申し上げたいのは、二年間集中的にやる、二年間集中的にやると言って、去年はそういう最初の二年間で七割ぐらい作業をやるんだというのを一たんあなた方は出しながら、それを引っ込めて、二年間集中的にやるということに全然ならないようなものしか出てこない。だからそれは違うでしょうということを申し上げているんです。

 ですから、そのことは、今回こういう形で、当初言ってきたこととやっていることが全く違っているということを、これはまた引き続きただしていきたいというふうに思っております。これもまず、一つのマニフェスト違反だということを強く指摘しておきます。

 続いて、年金保険料についても、これもさきの、先週の予算委員会で私も問題にさせていただきました。年金保険料を事務費に充てないということを言われ、法案まで出して、強行採決を参議院の方でして、そしてやってきた。しかし、今回、二千億円を超えるお金をそのまま使っているということについていかがか、こういうことでありましたが、鳩山総理からも、二十二年度にできないことは極めて遺憾だということ、そして、今後は財源を見つけてやるという答弁がありました。これでいいですね。

長妻国務大臣 一期四年の中で実現をしていくということであります。

大村委員 できなかったらどうなりますか。責任とられますか。

長妻国務大臣 一期四年の中で実現をしていくということでありますけれども、これについては、私どももそのまま流用額を減らさずに続けているわけではありませんで、政権交代後直ちにコンピューターシステム、これは高過ぎるんじゃないのかということでかなり集中的に交渉させましたところ、百億円以上の金額がある程度短期間で削減できたということで、その金額は、年金保険料の流用が減ったということでございまして、これについては一期四年の中で実現をしていくということは、このマニフェストにも書き込んでいるところであります。

大村委員 そんなこと聞いておりません。そしてまた、マニフェストに四年なんて書いてありません。

 いずれにしても、私が聞いているのは、できなかったらどうしますか、責任とりますかと聞いておりますから、お答えください。簡潔に、そのことだけお答えください。

長妻国務大臣 これも予算委員会で何度も御説明申し上げたんですけれども、これは本当に、この工程表の「財源を確保しつつ、順次実施」ということで、平成二十五年度ということであるわけでございまして、私どもとしては、何しろ国民の皆様とお約束をしたことを実行する、これに全力で取り組むというのが今の私の立場であります。

大村委員 私は、できなかったらどうしますか、責任とりますかと聞いておるんですが、お答えになれませんか。お答えできませんか。お答えできませんか。

 二千億円という予算というのは、大変巨額な予算だと思います。要は、厚生労働省の予算の中で、義務的な経費とかいろいろな制度に基づくものは巨額な予算がありますが、そうでないものという予算の中で、これは私は大変大きな予算だと思っております。それを、要は、皆さんはやると言っておられたわけですから、これはやるのかどうか、やらなかったらどうなのか、やれなかったら責任とるのかどうかというのを聞いております。いかがですか。責任とりますか。大臣に聞いております。答えられませんか、長妻大臣。

長妻国務大臣 できなかったらばということを繰り返し言われておりますけれども、これは国民の皆さんとの約束ですので、これは実行するということ、これに全力で取り組むというのが今の私の立場です。

大村委員 お答えをいただけないということですね。

 そういう意味では、この点について引き続きしっかりと、あなた方が言ったことですから、あなた方が言ってきたことが実現できていない、全く手をつけていないということでありますから、その点については引き続きしっかりと、これもマニフェスト違反だということでただしていきたいというふうに思っております。

 さて、次に参ります。

 先日、予算委員会でも問題になりました、総務省顧問を民主党国会OBを中心に乱発しているという件、これは二十一人とか言われましたけれども、何か私の手元にある名簿だと二十三人が発令されていたような気がいたしますが、いずれにしても、乱発をしている件、これはある意味では箔つけ人事ともとられますし、まさに同僚議員も言っておりましたが、行政の私物化というふうに言わざるを得ないというふうに思っております。これは、私の同僚の田村議員が追及をさせていただいておりました。

 この点について、長妻大臣はどういうふうにお考えでございますか。行政としては、こうした箔つけとか私物化とか言われるようなことがないように進めていかなければならないと考えますけれども、いかがでございますか。

長妻国務大臣 今のお話は、総務省の人事の話だと思います。

 私が横から見ておりますと、総務省としては、その顧問というのが最も地方分権を進める総務省、鳩山内閣の理念を実現するために最適な人事だ、こういうお気持ちで人事を進められていると思いますので、私が何か異論を挟むというようなことをする立場でもございません。

大村委員 まさに、この間の委員会の議論を聞いていただいていればおわかりだと思いますが、これは行政の私物化、箔つけというふうに言わざるを得ないと思っておりまして、この点については、今問題になっております箇所づけ漏えいの問題と全く同じ次元の問題だというふうに言わざるを得ないと思っております。行政の私物化、極めて問題であって、引き続きこれはただしていきたいというふうに思っております。

 そこで、医療行政の分野でも、まさに政治が人事をゆがめたといいますか、行政の私物化といった事例が今回見られました。この点についてただしてまいりたいというふうに思っております。

 先般、二月の二日に、国立の六つの研究センターが四月から新たに独法になることに伴いまして、トップとなる理事長人事が発表をされました。公表をされたわけでございます。このうち、国立がん研究センターの理事長人事について説明をしてください。

長妻国務大臣 この国立がん研究センターの理事長というのを選考するということで、恐らくこれまでには余りない公募という形をとらせていただいて、選考委員の先生方に選んでいただく。公募に当たっては、職務内容書というのもきちっと書いてこれを公表して、その結果、応募総数は五人の方が応募をされた。書類選考で三名に絞り、そして、選考委員会が二名の方を面接して一名の方に決定をしたということでございまして、それを受けて、主務大臣の私としてそれを了解した、こういうような過程でございます。

大村委員 お手元に、私から公表資料をお配りさせていただいております。こういうことでございまして、六つの独法の理事長、そしてその中で、がんセンターの理事長もございます。

 これについて、私のところに、複数の医療関係の方から幾つかお話をいただきました。概略、こんな話でございました。

 ほかの五つのセンターの理事長は、現在の総長がそのまま理事長になる。がんセンターだけがかわる。その理由はよくわからない。廣橋現総長は、日本癌学会理事長でもあり、国際的にも著名ながん研究の第一人者である。一方、嘉山さんという方は、がん研究の実績という点では廣橋現総長とは比較にならない、また、がん研究の中ではマイナーな分野だという話でございました。

 今回の交代は極めて不可解。不可解という言葉を医療関係の方が、複数の方が使われておられました。よくわからない、何か別の力が働いているんじゃないのかと。これでは、がんセンターの内部はもちろん、関係者のモチベーションは必ず下がるというようなお話もございました。

 さらには、もっとはっきりと、この嘉山氏という方は熱烈な民主党の支持者だということで有名な方だ。その論功行賞で、昨年十月には中央社会保険医療協議会の委員にもなっている。中医協の委員にもなっている。そして、それだけでは足らなくて、今回、山形大学の医学部長から国立がん研究センターの理事長に抜てきをされた。医療界のシンボルともいうべき国立がんセンターのトップ人事が、こんな政治的なごり押しで決められていいのかというようなお話もございました。

 医療界の人事にこうした政治的なごり押しが認められるようなことになれば、医療現場の士気には大変な悪影響を及ぼす。事は日本を代表する国立がんセンターの人事だから極めて深刻だ、二度とこのようなことのないように切に願うなどなど、こうした声が私のところに届いております。そういうふうに複数の方からお聞きをいたしました。

 これは、まさに行政の私物化ではありませんか。日本の医療をゆがめることになりませんか。こうした声にどういうふうにお答えになりますか。長妻大臣、お答えいただきたいと思います。

長妻国務大臣 これは御存じのように、この六つの、今までは国直轄でやっておりましたいわゆるナショナルセンターを、今度は全部一つずつ独立行政法人にして、さらに人事も柔軟にして、世界に冠たるセンターにしよう、こういうことで、ことしの四月から全く組織が国から切り離されて独立行政法人になるということで、その前段として、では、今までのナショナルセンターというのはどういう課題があったんだろうかということをかなり綿密に調査をして、独立行政法人ガバナンス検討チームというのを設定しまして、そこでいろいろ議論をしていった。

 そこで、やはりそういうナショナルセンターのトップというのは、広くマネジャー、経営感覚もなきゃいけない。そして、職員の方を束ねる能力、全員のチームの力を引き出す能力とともに、やはり見識もある、なければいけないというようなことを、六センターについて議論をしました。

 そして、その後、やはりこれは公募をするということが必要ではないかという結論に至りまして、公募についても、先生を選考委員会の先生にお願いをして、透明性も高めた形で選考をして、いろいろな議論があったと思いますけれども、その方に決まった。こういう経緯でありまして、もちろん、その過程で、私がだれがいい、かれがいいと言ったことは一切ございませんし、適正に選ばれたものだというふうに了解しております。

大村委員 六センターで公募と言われましたけれども、これは六センター全部やられたんですか、いかがですか。

足立大臣政務官 公募につきましては、タイミング的なことも検討チームの中の話題になっていたと思いますが、がんセンターと国立循環器病センターの二つを公募というふうに検討チームで決められたということでございます。

大村委員 理由は何ですか。なぜでございますか。今、長妻大臣は、六センターについてガバナンスチーム、それは厚生労働省ではないと思いますが、そこでやったというふうに言われましたけれども、何で二つだけなんですか。理由はありませんか。明確にお答えください。

足立大臣政務官 まず、この検討チームのことですが、これは内閣府に設置されたもので、そこから「六センターの改革に向けて」ということが出されておって、その中で、四月に独法化という法律上の制約があるため、次のように進めることが適当ではないかということで、まず、公募すべきものについて国立がん研究センターと国立循環器病研究センター等ということになって、他のセンターについては、公募の対象ではなく、現総長をそのまま理事長に任命することもあり得るという形の中で決められたということでございます。

大村委員 先ほど長妻大臣は、六つのセンターは今度国立のナショナルセンターから独法になるということですから、公募でやるんですというふうに言われましたね。ところが、今のお話を聞いたら二つだけだと。四つはやっていない、そのままなんですね。それも、国立循環器病センターについても、やったとしても同じ方がなっているわけでございます。

 まずお聞きしたい。何で、今大臣は六つやると言われていたわけでありますけれども、二つしかやっていない。何でほかの四つはやらないんですか。これだけ見ると、がんセンターだけねらい撃ちですか。何か恣意的ではありませんか。透明でも何でもないんじゃありませんか。明快にお答えください。

長妻国務大臣 これについては、先ほど私が申し上げましたように、六センターすべて公募するんです。それで、四センターについては一年後に公募をするということで、今の理事長については暫定ということにいたします。といいますのも、その中の改革プラン等々をきちっと固めて、そして理事長の公募の要件なども詰めていくということで、先行して公募をした二つというのは、がんと心疾患等の循環器センターについては先行公募をした、こういうことであります。

大村委員 その理由をお聞かせいただけませんか。

 先ほど長妻大臣は、六センターを独法化するので、そうしたことで、公募でいろいろな課題を浮き彫りにしてやっていくんだというふうに言われました。しかし、今回、二つしかしておりません。四つはやっておりません。それは、一年後どうのこうのとか暫定とかそういう話じゃなくて、この間、この六センターを公募にする、そういう方向にもかかわらず、そのうち何で二つしかやらずに四つはやらなかったのか、その理由をお聞かせいただけませんか。明快にお答えください。

長妻国務大臣 これについては、先ほど申し上げましたように、この四センターについては暫定的に一年間、今の理事長にやっていただいて、一年後には四センター、公募をする。その意味は、中の改革についてガバナンス検討チームでも検討いたしましたけれども、かなり時間がかかるというようなこととなりまして、それについて改革プランを議論していくという過程で、一年後に公募をする、こういうようなことになりました。

 初めの二つのセンターは、重要度にかんがみて、そこの中身の改善あるいはガバナンスチームでの検討というのを先行いたしましたので、これについては、公募が整ったということで公募をさせていただいたということであります。

大村委員 全くわかりません。

 長妻さん、私が聞いているのは、事実関係じゃないんです。何でこうなったか、なぜなんですかと。要は、私が申し上げているのは、このがんセンターの理事長人事はやはりちょっとおかしくないかということを申し上げているので、その中をるる精査していって今聞いているんですよ。

 そうすると、六センターがあって、それでもって、どうも全部公募をしていない。二つしかしていない、四つはしていない。それは、今、事実関係だけ大臣はお答えいただいているんですが、なぜ、この二つだけやって四つをしないのか。その理由というのを全然お聞かせいただけないじゃないですか。

 今、お答えできませんか。お答えできないんだったら、精査してというか、中できちっと調べてといいますか聞いて、明快にお答えいただけませんか。お答えできるんですか、できないんですか。いかがでございますか。

長妻国務大臣 公募をするというのもめったにないことで、これまではよくわからない形でそれがなされていたということもありますけれども、我々は、公募に踏み切って、二センターについて今回決定をさせていただいたということです。

 独立行政法人のガバナンス検討チームの中での議論で、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター等については、これについて基本的にはガバナンスの課題等々が明らかになりましたので、先行して四月から独法化とともに公募をして決めさせていただいたということです。

 他のセンターについては、この中の改善検討が継続ということになりましたので、理事長は一年間暫定的に座っていただいて、その後公募をする、一年後に公募をする。こういうようなことがガバナンス検討チームで議論をされ、これも、メンバーも公表されているところで議論をされているところであります。

大村委員 同じことを答弁するのはやめてください。事実関係じゃないんです、理由を聞いているんです。理由を聞いているんです、明快な理由を。六センターを公募だと言っていながら、何で二つだけで四つはやらないのか。お手盛りではないのか。いいかげん、そこの明快な、客観的な理由。大臣は透明性と言った。全然透明性はないじゃないですか。そのことを明快にお答えいただかない限り、これ以上質問できません。

長妻国務大臣 これは、ここに今、私が申し上げたのと同じ資料がございますけれども、先ほどの繰り返しですが……(発言する者あり)いや、国立がん研究センター、国立循環器病研究センターについては、ガバナンス改革等々が我々の内閣府に設置したチームで確定をしたので公募に踏み切ったということでありまして、四センターは一年後に公募するんです。なぜならば、一年後というのは、そういうガバナンスの検討がまだ継続であるというような判断でそれは一年後に、暫定理事長として続けてやる、それが理由であります。

藤村委員長 大村君、質問の仕方を何なら変えて、もう一回発言してください。(大村委員「だめですよ。だって、同じことを、事実のことしか言っていないんだから。理由を言ってください、理由を。時間の無駄なんですよ。委員長、速記をとめてください」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

藤村委員長 速記を起こしてください。

 大村君。

大村委員 では、もう一回言い直しましょう。

 内閣府に独法のガバナンスチームがあって、そこでこういう方向で独法についてあれしたいということの経過は私も聞いております。

 ただ、六センターというのは厚生労働省の所管なわけですよ。内閣府がその六センターの、これは全部、病院というか、いわゆる医療機関、研究機関ですから、それについてどういうふうにやっていくかというのは厚生労働省が決めていくわけですね。その中身についてどうするか、人事について、運営についてどうするか。したがって、この六センターについて、先ほどから大臣がるる、こういうふうに中身を、いろいろ課題を整理してこうしたいんだというふうに言われた。それで、公募でやりたいんだと言われたから、その六センターのうち、二つについては今回公募した、四つについてはしていないというその理由ですよ、理由。何でこの二つだけなんですかということについて、明快な答弁をいただきたいということを申し上げております。

長妻国務大臣 これは、私に人事権があるんです。そういう意味では、このガバナンスチームの意見を聞いて、私も、私の判断でそれを是認した。そういう形でやってほしいということで、そういう形にした。

 そして、今言われたことも、ガバナンスチームの議論というのがこのペーパーにございますので、これを大村委員にもお届けしたいと思います。それが書いてあるんです。二センターは先行して公募するというようなことでございますので、ぜひ、私の答弁を御理解いただきたい。

 つまり、その前提として、何かゆがめられた人事がある、それありきという前提でぜひお考えいただかないでいただきたいというふうに考えております。

大村委員 今私が聞いた、六センターのうち二センターをやって四センターをやらないということについての明快な理由、考え方というのを、今すぐとは言いませんよ、今すぐとは言いませんが、速やかにこれを、ペーパーといいますか、見解としてまとめてお出しをいただけますか。

長妻国務大臣 いや、それは既にもうありますので、それはお出しをいたします。

大村委員 それでは、速やかに出していただきたいと思います。

 それで、この点についてさらに御質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど大臣から、選考委員会で選考したというふうに言われました。選考委員会のメンバーと選考の経過を教えていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

長妻国務大臣 この選考については、このがんセンターについては、外部の有識者で構成する選考委員会ということで、まずもって職務内容書というのを公表した。こういうような方々に公募していただきたいというのは、これはオープンになっているものをお示しさせていただき、そして、その後、結果としては、応募総数が、がんセンターについては五人の方が応募されたということになっております。そして、書類選考で三名になって、面接が二人になったということであります。(発言する者あり)いや、今、経過はどうなのかという御質問がありましたので、選考委員会の経過を今申し上げているところであります。

 そして、そのメンバーについては、これは非公開というふうにさせていただいておりますけれども、属性をあえて言えば、大学教授一名、弁護士二名、会社役員一名、団体役員四名、この八名で選考委員会をつくりまして、最終的にお一人に確定をした、こういうことでございます。

大村委員 選考委員会のメンバーとその経過を示していただきたいというふうに申し上げたのですが、これはお示しいただけませんか。選考委員会のメンバーとその経過、こういうふうなことで、こういう基準でやって、こうだというようなことでお示しいただけませんかというふうに申し上げたのですが、お答えがいただけますか。

長妻国務大臣 今申し上げたとおり、選考委員会のメンバーは非公表とさせていただいておりますが、属性については、大学教授が一名、弁護士二名、会社役員一名、団体役員四名ということであります。

 そして、選考過程を申し上げると、もう一回繰り返しになってしまうわけでございますけれども、職務経歴書をオープンにして公募させていただいて、そして、先ほど申し上げた応募者の方が書類選考等々でセレクトされ、最終的に面接をこの選考委員会でさせていただいて、そして一名に絞った、こういう経緯であります。

大村委員 選考委員会をつくってやった、透明にやるんだ、六センターの理事長の選び方は公募で透明性を持ってやるんだというふうに言われましたね。選考委員会をつくってやるんだと。でも、その選考委員会は言えませんと。選考委員会は隠します、選考の経過も隠します、それが透明だと言えるんですか。そこで起きた今回の国立がんセンターの理事長人事で、まさに医療界から、関係者から批判が起きているんです。こういうお手盛りのことでいいんですか、まさに私物化ではありませんかというふうに言われているんですけれども、今回の国立がんセンターの理事長人事についての選考委員会のメンバーと選考の経過、当然議事録というものがあろうかと思いますが、それはお出しをいただけませんか。

 要は、どういう経過で、こういう観点でこういう議論があって、こうなったという経過はお示しがいただけないんですか。お答えください。

長妻国務大臣 今までは、独立行政法人の理事長というと、これは公募もなく選ばれて、どういう基準で選ばれたのかもわからない、そういうことがあるわけでありまして、そういう意味で、我々としては、こういうような公募で、選考委員会ということで今回やらせていただいたわけでありますけれども、この専門委員会のメンバーを明らかにする、あるいは選考委員会の議事録を明らかにすると、これは人の採用にかかわる極めて個人的な問題で、そこで選んでいるわけでございますので、これについての公表は不適当だと考えます。

大村委員 あなた方は透明にやると言っているんですよ。透明にやると言っているんですよ。ここの選考委員会のメンバーを隠し、経過も隠し、すべてブラックボックスにしておいて、それでもってこういうふうに決めましたと。その結論も、医療界の関係者から大変な批判が起きている。それについて答えようとされないんですか。ブラックボックスにしておいて、すべて隠しておいて、それが民主党のやり方ですか。お答えいただけませんか。(発言する者あり)

藤村委員長 長妻大臣。

 静粛に願います。

長妻国務大臣 これは御理解いただけると思うんですけれども、事人事にかかわることでございまして、応募された方、なぜその方が選ばれたのかというような、極めて個人的な情報が議論されるということでございますので、これについては公表を差し控えるということは御理解いただけると思います。

大村委員 これは大変大事な点でございます。

 大臣が言われた、透明感を持ってやる、透明性を持ってやるというふうに言われながら、公募をした、選考委員会でやった、しかし、全部オープンにできない、全部明らかにできない、全部隠します、全部ブラックボックスですということでございます。

 私は、この選考委員会のメンバーと経過、議事録、これを出すというふうに確約をしていただきたいと思います。確約をしてください。そうでなければ、これ以上質問できません。

長妻国務大臣 これは一般論としても、人事の選考の過程というのをすべてつまびらかにすることはなかなか難しいということは、御理解をいただけるのではないかというふうに考えておりまして、これについては、職務の説明書等もオープンにし、そして、このガバナンスチームでの御議論というのもきちっとしていただいた上で、我々は選考委員会の判断に従った人事をするということで、私も判断をしてこういう人事を結論づけたわけであります。(発言する者あり)

藤村委員長 大村君、発言しますか。しない。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

藤村委員長 速記を起こしてください。

 まず、長妻大臣に答弁をさせます。

長妻国務大臣 この選考委員会のメンバーの公表につきましては、これは今、政府全体で独立行政法人の理事等の公募をしております。これは、ほかの省庁も含めて、公募に係る選考委員会は非公開としておりまして、メンバーの属性は公表するという政府全体の取り組みの中で、厚生労働省も同じ取り組みをしているということでございます。

 その意味で、国立がん研究センターの理事長選考委員会についても、これに則したものであって、委員の氏名を公表しないということを前提にその委員の方に御就任をいただいておりますが、今後、御就任いただいた選考委員の意向を確認した上で、お名前を外に出していいかどうか確認した上で、公表できるかどうか検討していきたい。

大村委員 要は、皆さん方は、行政の透明化と言っておられる、それでもって人事をこういうふうに変えていこうとされておられる。であれば、その経過、過程については、やはりこれは、国民の皆さんに説明し、報告するということが必要だと思うわけですよ。

 ですから、そういう意味で、選考委員は非公開、それでもって、その経過も明らかにできない、ブラックボックスにしておいて、出た結論はこれだというのでは、私は、まさにそれは人事の私物化、行政の私物化と言われても仕方がないし、言わざるを得ないというふうに思うわけでございます。

 まさにそういう不透明なやり方が、厚生労働省だけではなくて政府全体ということであれば、民主党政権全体のやり方、民主党の体質だということなんですね。そのことを私は問題だというふうに申し上げておるんです。

 したがって、今回私は、この点については、国立がんセンターはまさに日本の医療界の巨峰、そびえ立つ巨峰、トップの医療機関、研究機関の人事がこういうブラックボックスのもとでやられたということ。そして、その結果が、医療関係者の方々からの御意見を拝聴しておりますと、極めて問題だということ、民主党の支持者をごり押しで押し込んだというふうに言われていること、その点について明快に、やはり皆さんには、長妻大臣には説明する責任があるということを私は申し上げたいというふうに思います。

 したがって、これは先ほど申し上げましたが、今回の、まずは六つのうち二つやって、四つは公募をやっていないということ、何でそういうえり分けをしたのかということ、それでもって、今申し上げましたこの点についての、選考委員のメンバー、そして経過、議事録、そうしたことについて明快に資料とあわせて説明をしていただきたい、そのことを申し上げておきたいというふうに思っております。

 なお、きょう、朝日新聞の朝刊を読んでおりましたら、何か民主党には王様がいっぱいだという記事がありました。鳩山総理は平成の脱税王、小沢幹事長は永田町の不動産王、前原国土交通大臣は平成のお手盛り王。それを見ておりまして、長妻大臣はまさに人事のごり押し王か人事の私物化王か、まあそんな話かなというふうに思いますが、こんな王様は国民にとっては願い下げだというふうに言わざるを得ません。したがって、こうした王様がすべてお引き取り願うように、またしっかりと追及をしていきたいということを申し上げておきたいと思います。

 さて、最後に、時間が若干残っておりますので、診療報酬の改定についてお聞きをしたいというふうに思っております。

 これについては、先般、予算委員会で、同僚の田村議員が、ネットでマイナスだということを指摘しておりました。まさにそういうことだというふうに思っております。

 そのことを踏まえ、お手元に資料をお配りしておりますが、昨年、二十一年度の補正予算の執行停止額、医療分野についてということで、二千六百億円の執行停止というのがあったわけでございまして、これが全くどこかに行ってしまった。医療分野で二千六百億円予算を切っておいて、診療報酬に乗っていかないというわけでございます。これもマイナス、そして診療報酬もマイナス。

 そして、さらに申し上げますと、私の資料の三ページでありますが、三の資料の一番下の(3)で、地域医療再生臨時特例交付金三千百億円のうち七百五十億円を執行停止にされました。そこにわざわざ米印で、「次期診療報酬改定において十分に地域医療に資する対応を行うことが前提。」と。

 そしてさらに、これはとある雑誌でございますが、そこで、ちょっと小さい字でありますが、ここに書き込んでありますが、「厚労相「振り替えでより効果的に使う」」、次期診療報酬改定において十分地域医療に資する対応が前提、これ自体が無駄というよりも、振りかえてより効果的に使っていくんだというふうに言っておられたわけでありますが、診療報酬改定は、田村議員の指摘で、ネットでマイナス。たとえ皆さん方が言っていたとしても、プラスで〇・〇三%、たった国費二十億円。

 この予算だけで七百五十億円執行を停止しているわけです。振りかえると言っているんです、あなたは十月に。振りかえると言っているんです。振りかえていませんね。これはどこに行っちゃったんでしょうか。何でこういうことになったんでしょう。予算もカット、診療報酬もカット、これが民主党政権の医療に対するやり方ということでよろしいですか。

長妻国務大臣 これはよく見ていただきたいのは、我々、十年ぶりにネットでプラスというのを実現しているんですよ。それほど言われるんだったら、何でその前にきちっと医療、報酬を見直さなかったんですか。

 大村委員は、厚生労働の副大臣にも就任されておられるわけで、よく医療の事情というのを御存じだと思います。ネットでプラスにさせていただいて、そして、今非常に困窮している勤務医あるいは産科、小児科、外科、救急医療、こういうものを立て直すために我々はお金を使わせていただいているということで、本体部分の改定率は前回改定の四倍以上のプラスで、プラス一・五五で、お金にすると五千七百億円、そういうことを活用して医療の立て直しの一歩にしていきたい、こういうふうに考えております。

大村委員 ネットでマイナスなんですよ。マイナスであって、さらに申し上げたいのは、あなたは十月に、この七百五十億円を執行停止にするときに、これ自体が無駄というよりも、振りかえてより効果的に使っていくという趣旨なのでわざわざここに明記したんですというふうにまで言っておられるんですね。七百五十億円国費があれば、それだけで、これはプラスの医療費だけで、大体四倍掛ければ三千億円ぐらいになるんです。それが一切できていない。そのことを申し上げているんです。

 ですから、そういう意味で、要は、言ったこと、あなたが言ったんですよ、これは。言って、まるっきりできていない。そういうことを日本語で何と言うかというと、うそと言うんですよ。日本語でうそと言うんですよ。うそをついたんですよ、あなたは。そういうことを強く指摘しておきたいというふうに思っております。

 まさに民主党の医療政策、予算もカットして、診療報酬もカットして、カット、カットということでやっている。それも、さらに前政権がどうのこうの言われるのなら、もう今あなた方は政権担当能力がない、ようやらないというのであれば、一刻も早く引き下がっていただいて、我々がしっかりとやっていきたい、そのことを強く申し上げて、もう時間が来ておりますから、私の質問を終わらせていただきます。

 以上です。

藤村委員長 長妻大臣。

 時間が過ぎておりますので、端的にお答えください。

長妻国務大臣 一種の違う前提を置いて言われておられるんですけれども、ネットでプラスなんです。

 今言われたのは、後発品の置きかえ効果とか、後発品の使用促進のことを言っておられるのではないかと思いますけれども、この算定の仕方は、後発品の使用促進に関しては、前の自民党政権と同じ算定で我々はしているわけでありまして、そういう意味では、同じ計算をすれば、自民党も、そうしたらネットでマイナス幅がさらにもっとマイナスだったということになりかねないわけでありまして、我々は、ネットでプラスということで、医療を立て直してまいります。

藤村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

藤村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。あべ俊子君。

あべ委員 ありがとうございます。自由民主党、あべ俊子でございます。

 所信表明は、私ども出席をすることができませんでした。そういう中でございますが、お届けいただきました。読ませていただきました。

 日本の社会保障の水準を向上させるために、さまざまなことを書いていらっしゃる。特に、日本を百人の国に例えられていたところもございます。そういう中で、持続可能で安心できる社会モデルを考える際に、財源問題は避けて通れないというふうに認識を示されているところでございますが、コスト削減、無駄遣いの廃止のみに言及されて、本当にそれだけで財源が補えるとお思いでしょうか。

長妻国務大臣 ありがとうございます。

 今、所信の原稿を見ていただいてお話しいただいたと思うのでございますけれども、そこに書かせていただいたのは、財源問題というのが最も重要だということをそこに触れさせていただいているところです。

 それを議論する前提として、やはり、国民の皆様方に、負担と給付の関係について透明性を高めて、一対一対応、つまり、負担をした保険料や税金が一円も無駄なく社会保障のサービスに使われている、こういう実感を持っていただくということがまず大前提となるということ。

 残念ながら、これまで、そういう実感どころか、かなり保険料も税金も無駄に使われた、こういうようなこともありますので、まずは、そうではない、これから我々も努力をして、その負担が給付に全額がきちっと結びついているんだ、こういう実感を持っていただかなければ、負担をお願いしても、それは到底国民の皆さんには御理解をいただけないということで、まずそれについて私は全力で取り組む所存である、こういうことを書かせていただいたわけであります。

あべ委員 無駄の削減だけではちょっと無理かなというふうにだれが聞いても思うわけでありますが、大臣は、逆に、日本をどういう国にしようとしていらっしゃるのか、中福祉・中負担なのか、そういうことをちょっと、いわゆる負担と福祉がどの程度なのかということを一言でお答えください。

長妻国務大臣 これは逆に私もお伺いしたいんですが、中福祉・中負担というのが明確なのかと。では、どういう表現で国の姿があらわせるのかというふうに考えておりまして、私は、少なくとも今の社会保障のレベルよりは上げる必要がある。そして、少子高齢社会に対応した社会モデルを世界に先駆けて提示をしていく、そして最終的には、環境・医療・技術立国として経済成長も牽引するような、そういう国にしていきたい。

 その中で重要なのは、社会保障というのは経済成長のお荷物ととらえがちでありましたけれども、そうではなくて、経済成長のために社会保障の充実というのは非常に重要である、車の両輪である、こういう考え方で取り組んでいきたいと思います。

あべ委員 今、福祉のレベルを上げなければいけないというお話はされましたが、負担のことはおっしゃいませんでした。ここは委員会でございまして、質問するのは私でございますので、そこはしっかりと考えていただきましてお答えください。負担の問題はどうお考えでしょうか。一言でお願いします。

長妻国務大臣 この負担の問題についても、私ども、消費税は一期の政権の中では上げないというふうに申し上げておりますけれども、ただ、永久にそれを上げないということでは国はなかなかやっていけない、私はこういう認識を持っております。

 その中で、先ほど申し上げましたように、今国民の皆様方に、本当に御自身が御負担しているお金が、全額がきちっと社会保障に結びついているのかどうか、中抜きや無駄があるのではないのか、こういう意識をまだ持っておられる方が多いし、我々としては、さらに行政刷新会議でその点を明確にする、無駄を表に出していく、こういう取り組みをして、そして、国政選挙の前に、必要があればきちっと、これだけの御負担がこういうお金のために必要ですというのを申し上げた上で信を問うということをしていきたいというふうに考えております。

あべ委員 消費税議論に関しては、実は、自民党、与党時代もずっと逃げてまいりました。選挙が怖くて逃げてまいりました。私は、政権がどっちでも国民には余り関係ない。そういう中で、消費税はしっかりと入れていくというのが、本当に次世代にいわゆる負債を送り継がないために必要であると思っています。そのためには、やはり、次のマニフェスト、両方ともしっかり消費税議論を入れていくということをやらなければ、政権をとってしまえば、子供たち、孫たちの時代がどうなってもいいんだということは決してやってはならないことだと思います。

 これは、大臣、ぜひ超党で、消費税を前向きに入れるということを両方で入れていくということが必要だと思いますが、いかがお考えでしょうか。

長妻国務大臣 まずは、先ほど申し上げましたように、私も野党時代、時の政府にいろいろ質問しましたけれども、基本的には、無駄というのは、会計検査院の指摘を超えるものというのは余りないんだ、こう言わんばかりの答弁が続いてきた。

 しかし、政権交代して、厚生労働省の中を見ても、先ほどのコンピューター経費ではありませんけれども、すぐに削減できるものも、天下り団体の補助金も含めて多々あるわけでございますので、まずはそれに我々政府として全力で取り組んで、国民の皆様方に税や保険料の使い方について一定の信頼をいただく。そういう土俵がなければ、幾らそういうことを唱えても、国民の皆様は腹に落ちる御理解はいただけないというふうに思っておりますので、まずはそこに全力で取り組むというのが大前提だと思います。

あべ委員 私は、消費税議論を今しなければ余りにも無責任ではないか、今、本当に無駄遣いだけで足りる額ではないことはだれが考えてもわかっていることなので、ここは前向きにすべきではないかということを申し上げ、お考えを聞いたわけでございますが、無駄遣いを洗い出すからちょっと待ってくれとおっしゃっていました。大臣がおやめになるときまでにいわゆる負債額がふえたときには、責任をとられるということでよろしいんでしょうか。

長妻国務大臣 これは、御存じのように、菅大臣も含めて議論は今後していこうということになりますけれども、やはり、消費税だけではなくて、我々よく申し上げておりますのは、控除から手当へということも申し上げております。控除というのはどうしても高額所得者に有利になってしまうというようなこともあり、あるいは、今度、番号制度を議論する中で、給付つき税額控除、こういうような考え方も検討するということを申し上げているわけでございます。

 いずれにしても、この日本が先進国で最もGDP比で累積借金が多い国であるということは、これはもう全国会議員が本当に心にとめておられると思いますので、私どもとしては、まずは、国民に御負担をお願いする前に、本当に使い方について信頼をいただく、これまで信頼が損なわれてきた嫌いがありますので、それをまず取り戻していくということが大前提だと思います。

 議論については、これは政府の中でもそういう議論はしていこうということになっておりますので、中期の財政フレームをつくる中で、そういう議論になっていくと思います。

あべ委員 何度も申し上げておりますが、大臣、答弁が長過ぎて、結論なしのわけのわからない議論だけをされておりますが、私が申し上げておりますのは、無駄遣いだけでは次世代に余りに無責任で、現政権の責任を次世代に送り継いで、今結果が選挙という形であらわれれば、いわゆる国民の大切な安全、安心のかなめである医療保障制度の財源を無視しても構わないのか。

 もう一度申し上げます。

 負担の問題を、しっかりとマニフェストどおりに、無駄遣いだけでは洗い出しができない部分の責任をどうおとりになりますか。

長妻国務大臣 国民の皆様方も、私は思いますのは、本当に必要なお金であれば、一定の負担というのは仕方がないのかなと思っておられる方もいらっしゃると思います。

 ただ、そういう方々にしても、本当に自分たちが今払っている保険料や税金がきちっと全額社会保障に結びついているんだろうか、途中で無駄遣いがないんだろうか、こういう御疑念を持っておられるので、まずはそれをきちっと払拭していく。そして、私どもは堂々と、必要があれば国政選挙の前に、ちゃんとこれだけのお金をこういう目的に使いますということを明確に言って国民の信を問う、こういう順番が必要だというふうに申し上げているところです。

あべ委員 わかったようなわからないような、いわゆる迂回、迂回の回答でございました。

 では、地域医療体制についてちょっと質問をさせてください。

 大臣の所信の中に書いてございましたが、医療の立て直しは待ったなし、来年度の医学部定員、前年度に比べて三百六十人増員して過去最大の八千八百四十六人とするほか、診療報酬改定については十年ぶりのネットプラス改定としました、これしか書いていませんでした。年金記録に関しましてはやたらページ数が多かった割には、立て直し待ったなしに関してはこれしかなかったというのは、私は余りにもショックを受けたのですが、何を立て直しをしようとしているのか、教えてください。

長妻国務大臣 これは、まずは、今までの、ある意味では医療費亡国論という議論もかつてございまして、お医者さんの数がふえると医療費もふえるから、お医者さんの数を減らすことが必要ではないかと。いろいろな議論の中で、結局、今先進七カ国で、人口千人当たり日本国の臨床医は二・一人ということで、これは一・五倍ふやさないとOECDの平均にならない。医療費もGDP比で非常に低い。

 そして、地域に目を転じると、御存じのように、もう委員は一番お詳しいわけでございますけれども、産科、外科、救急医療、小児科、あるいは勤務医の皆さん等々、非常に疲弊をしておられる状況が目につくわけでございまして、その意味では、まず重要な診療報酬をネットでプラスをして、配分も見直すということに着手をしたわけでございます。

 今後は、先ほどの、先進国に引けをとらないような体制に整備をしていく、こういう課題もありますし、二年後には医療と介護の同時改定というのもありますので、一体改革という議論の必要もあるというふうに考えております。

あべ委員 実は、医師の数は毎年三千五百人ずつふえておりまして、いわゆる医療崩壊ということが言われた二〇〇〇年よりは二〇〇六年の方が勤務医がふえているということ、さらには、医師数の格差に関しましても、今、二〇〇六年には、前回、九四年には二・三四倍だったのが一・九九倍までなっています。

 大臣は、医師はどこに足りないというふうに思っていらっしゃいますか。

長妻国務大臣 基本的に、全般的に足りないというふうには思いますけれども、特にと言われると、まずは、偏在という議論もございますけれども、やはりその地域によって偏りがあるという地域の偏在、あるいは科ごとの偏在ということで、小児科、産科等々について、あるいは救急を御担当されるお医者様などなどについて、私どもとしてはそういう点について重視をしていかなければならないというふうに考えております。

あべ委員 医師数をふやしただけでは、私は医師の偏在はなくならないと思っています。ビルの診療所で医師が足りないという話などは、聞いたことがございません。

 そうしますと、ほかの仕組みが必要ではないかと考えていますが、大臣はどうお考えですか。

長妻国務大臣 これも先ほど申し上げましたように、医療政策の大変大きなツールの一つが診療報酬ということだと思います。

 一点十円ということで、三十兆円以上の報酬についてその点数を十円ずつつけていくということは、まさに政策誘導につながるということで、その意味では、医師の偏在対策として結果的になるように、先ほど申し上げました科に手厚く、そして勤務医等々、あるいは地域医療、診療所と病院の連携等々にも手厚い診療報酬にしているということであります。

あべ委員 一点十円が全国一律であるというところにも問題があると私は思っておりまして、いわゆる手厚くしていけば都会集中型の医療がますます加速するんだと思っておりますが、この地方間格差、診療報酬改定だけで乗り切れると大臣は思っていらっしゃいますか。

 大臣、お願いします。

足立大臣政務官 お答えいたします。

 今、地域間格差のことをおっしゃりたいということでございます。

 まず最初にやるべきは、来年度早速行う予定になっておるんですが、各医療圏ごとあるいは都道府県ごと、どの科のお医者さん、どういう診療をする医師の数がどの程度あるか、この調査をしっかりしたものをつくり上げるというのがまず第一段階になっております。

 そして、恐らく二年後の医療と介護の同時改定の前には、来年度、通常国会で法改正も必要になってくると思いますが、それに対して地域を含めた医療提供体制の検討を行って、この六月には中間の取りまとめを行い、年内には大体の考え方がお示しできる、そのようなスケジュールで今考えております。

あべ委員 単純な形での診療報酬改定では無理だと思います。足立政務官、専門分野でいらっしゃいますから、ぜひ頑張っていただきたいとは思いますが。

 今、大臣にお願いしたのに政務官を指名された委員長、ちょっと問題がありますが、うちは理事が全部いないので、とめるわけにもいきませんので、続けさせていただきたいと思います。

 医療圏制度の見直しについてでございます。

 地域医療の整備に当たりまして、医療圏を一つの単位として必要な医療を整備することになっておりますけれども、この二次医療圏に関して、大臣、何か御意見がありましたら教えてください。

長妻国務大臣 この医療圏につきましては、二次医療圏ということで、これは一定の時期ごとにその整備計画を地方からお出しいただく、こういうようなことで私ども取り組んでおります。

 それについて、硬直的ではないかとか、あるいは、もうちょっと柔軟な対応ができるのではないのかというような御指摘をいただいているのも事実でございますけれども、やはり、まず県が実態をつかんでその計画を立てていただくということでございます。計画途中でもそれが柔軟に見直せるように我々も考えているところでありますし、あるいは、一律に医療圏を確定させるのではなくて、疾病ごとに多少の違いがあってもいい、こういうような扱いをして、柔軟に取り組むということで考えております。

あべ委員 現在、二次医療圏は全国で三百八十四でございます。構成人口が二・四万人から二百六十二万人、医師数は三十一人から七千八百六十七人、これは余りにも格差があり過ぎているわけでございまして、地域に勝手に考えてねと言っても、それは考えられないと思いますが、そこに関して、大臣、御意見をいただけたらと思います。

足立大臣政務官 私の方から事実関係だけ。

 二次医療圏は三百四十八でございます。平均すると人口当たり三十数万というふうになるかと思いますけれども、それだけではございません。地域性、それから山間地と都市の割合とか距離ということを加味しながら、例えば私の大分県は人口百二十万足らずでありますが、六の二次医療圏がございます。そういうふうな形で今はやっております。

 地域で勝手にと今おっしゃった質問の趣旨はちょっとよくわからなかったので、もう一度お願いします。

あべ委員 すなわち、二次医療圏で、例えば三次医療圏に関して、例えば救急医療とか、がんの拠点病院とか、急がなきゃいけないものと、急がなくてもちゃんと専門性の高い医療を受けるべきであるものと、一緒にされているところに大きな問題があると私は思っています。

 それを、この医療圏を枠を考え直すのか、外すのかということを、足立政務官で結構でございますので、お願いいたします。

足立大臣政務官 おっしゃるとおりだと思います。

 ですから、今、医療法において計画を立てるというのは、これは四疾病五事業になるわけです。その中でも、平成十九年に医療計画の作成指針で、今委員が挙げられたがん医療やあるいは救急医療については、従来の医療圏にはこだわらず、それぞれの医療に特有の事情に基づいて医療圏を弾力的に設定するというふうになっております。

あべ委員 その弾力的に医療圏を設定するということでは、各地域における各医療機関がいわゆる自分たちのエゴを出したときに、本当に国民にとって安心、安全な医療体制が整備されるのかということを私は問題にしております。

足立大臣政務官 ちょっと混乱されないようにしていただきたいのは、医療計画は都道府県でございます。今、二次医療圏の話をしておりますから、その二次医療圏の枠にこだわらずに、都道府県がその中で医療圏というものをがん医療や救急医療について考えて、二次医療圏の枠内にこだわる必要はないということを今申し上げたわけです。

あべ委員 政務官、多分、都道府県の医療計画をごらんになったことがあると思うんですが、国が出したものに対して、コピペで、ほとんど中身があるかないかわからないものになってしまっていることは、政務官、御存じですよね。

足立大臣政務官 すべてまとめて言うのはちょっと乱暴だと思います。そうだと思われるところもあれば、極めて独自性というか特殊性に富んだ計画も私は拝見したことはございます。

あべ委員 そういうレアケースを出されて四十七都道府県すべてをくくってしまうということは、ちょっと無理があるんだと思っております。

 特に、その医療計画にゆだねていくということは、もともと医療計画が病床コントロールにあったということを考えたときに、そこはしっかりと、国としての方針を外すのか、国がしっかりとまた立て直すのかということをぜひ御検討いただきたいというふうに思っています。

 医療圏は外すべきではないかという意見と、枠組みを変えるべきではないかという意見がございますが、足立政務官、どうお考えですか。

足立大臣政務官 今、もともとは病床数のコントロールにあったということは、確かにそういう事実ととらえられる部分もあったかと思います。しかし、これは今、順次といいますか、見直しで随分変わってきております。

 私は、疾患によって、先ほどから挙げられております四疾病五事業も含めて、これは地域の医療圏、初期医療圏で行うべきところ、これは二次医療圏内でしっかりネットワークを構築して解決すべきところ、それよりも高次の三次医療圏レベルでしっかり、交通面、あるいはドクターヘリ、ドクターカーも含めて対処しなければできないところ、そういう考え方で臨むべきだと思いますし、救急医療についても、今、医療計画の中で、そういう特殊性を加味した計画を立てるようにという指針はつくっているところでございます。

あべ委員 私が申し上げているのは、二次医療圏、三次医療圏でやってきた、中にはめ込んできた定義を変えるということではなくて、医療圏そのものを見直そうと考えていらっしゃるのか、いわゆる外そうと考えているのかということをお聞きしています。

足立大臣政務官 これは、ある意味私の個人的なということが入るかもしれませんが、私は、従来、ある拠点の、三次医療圏にある拠点の病院の中から、どれぐらいでそこへ通えるのか、何分以内に行けるのかということが極めて大事な指標であろうということは考えております。

 それと、生活圏の問題がございます。では、都道府県、一歩川をまたいでそこに行くのは同じ医療圏内として整理されないのかといった問題もございます。

 私は、今議員が御指摘の部分、医療圏そのものを見直すかどうかということについては、十分検討に値することだと思っております。

あべ委員 私は、医療の問題の根幹は、診療報酬などではなくこの医療圏問題にあると思っておりますので、ぜひ御検討をお願いしたいのですが、いつから始めていただくか、ある程度、中間報告がいつごろできるか、ちょっと教えてください。

足立大臣政務官 委員が今御指摘の医療圏についてと絞ってお答えするのがなかなか難しいと思いますが、医療提供体制あるいは介護も含めて、この点についてはもう既に検討が始まっておりまして、これは成長戦略に絡む部分が相当ございます。雇用に関係する部分があります。大体六月を目途に中間的かな、それから年内を目途にほぼまとまった姿というものが出せればなというのが今の計画でございます。

あべ委員 ぜひとも、この医療圏に関しましては、六月のときにある程度出していただければ、私は、本当にこれは党を超えてやっていかなければいけない、特に、いわゆる目先に振り回されている行政、政治を超えた形でやっていく必要があると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思うところであります。

 次の質問になりますが、看護の確保対策に関しましてでございます。山崎摩耶議員が質問をいたしましたので、ちょっと重複は避けたいと思っております。

 特に今、医師もそうでございますが、非常に過労死状態で働いている人たちがいる。大臣のお答えが、いわゆる働いている女性たちの保育体制とおっしゃっておりましたが、私は、夜勤のやり方に問題があると思っております。

 今、四十数名の方を三人夜勤で診ているところ、二人夜勤で診ているところがございますが、この夜勤体制に対して、大臣、この数で本当に国民の医療の安全、安心が守れるとお考えでしょうか。

長妻国務大臣 まさに委員は看護の現場で働いておられるというふうに聞いておりまして、いろいろアドバイスもいただきたいところでございますけれども、先ほどの医師数と同じように、看護師の皆さんの数も絶対的に不足をしている、こういうふうに認識しております。

あべ委員 絶対これは不足しているところでございますので、ぜひ大臣にお願いしたい。私は、いわゆる前職で日本看護協会の副会長をしておりました。ぜひ大臣と御一緒に、準夜勤、夕方の時間帯を、夜勤体験を三十分でよろしいので、お願いをしたいのですが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 いろいろな現場があると思いますので、いろいろな現場の方のお話も聞いて、そういうことについても検討していきたいと思います。

あべ委員 検討というと、どっちにいってもいい形なので、行きますと言っていただければいいと思います。大臣、よろしくお願いします。

長妻国務大臣 今、時間ができたときに、いろいろ各方面にお願いをして、そういう体験をさせていただいて、私も病院で医療クラークの助手のような体験ができないかというふうに考えているところでありまして、そういう機会があれば看護師の皆様のところも拝見をして、御意見を伺いたいと思っています。

あべ委員 では、行ってくださるということでよろしいでしょうか。

長妻国務大臣 検討いたします。

あべ委員 夜勤の体制が不備である、これでは人が足りないとおっしゃったわけでございますから、私が質問した内容で、やはりこれでは患者さんたちが危ないと思われたわけでございますから、ぜひ大臣、御一緒に夜勤体験をお願いいたします。お返事ください。

長妻国務大臣 先ほども申し上げましたように、病院にはいろいろな、医療クラークを含めて、雇用の問題でも資するべき働き方があるんではないのかということもございますので、一緒にかどうかは別にして、病院には行きたいと思います。

あべ委員 体験を御一緒してくださるということでしたら、決してひんやりとするようなことは申し上げませんので、ぜひ御一緒させていただけたらと思っているところでございます。

 年金制度について、質問をかえたいというふうに思います。

 年金制度に関しまして、大村議員が質問をいろいろいたしました。私が一番気になるところは、いわゆるマニフェストの中に入っていましたところの年金制度の一元化、ここに関しまして、二〇一三年までに成立させるということでございましたが、法案は何年に出されますか。

長妻国務大臣 年金制度一元化でございますけれども、この法案については、二十二、二十三、二十四、二十五ということで、平成二十五年に提出して成立を期すということであります。

あべ委員 衆議院解散がそれまでないんだというおつもりで多分おっしゃっているんですが、鳩山総理大臣が日がわり定食で言葉が変わるとか、ちょっといろいろございますので、もしかすると、ぽっと解散なんて言ってしまったときはどうされますか。

長妻国務大臣 私どもとしては一期四年という中で考えておりますので、今はそういう想定はしておりません。

あべ委員 そうすると、いわゆる想定していないことが起きるというのが政治でございまして、私も自分が質問時間を当てられて待っていれば質問がとまってしまったりとか、本会議もいつ開かれるかわからない、いろいろな状況が起きている中で、想定していないけれども、もし解散になったら、この一元化の問題はどうなさいますか。

長妻国務大臣 これについては、先ほどの繰り返しでありますけれども、一期四年でマニフェストを組み立てて国民の皆様の信を問うたわけでございますので、この内閣は基本的にはそういうことは想定をしていないということで、私はその期間の中で全力で取り組むということで、今そういうスケジュール観でやっているということです。

あべ委員 想定していないことに対して考えていないというのは、ちょっと危機管理能力の欠如だと私は思っておりまして、何度も申し上げますが、皆さんの想定範囲外のことを総理が何度も何度もおっしゃっているわけでございます。ですから、ある日突然、ぽっと解散ということもありますので、そこはしっかりと次のマニフェストも立てていただけたらと。

 特に平成二十三年に関しましては、どうもいわゆる財政の部分で予算が立たないのじゃないかなという意見がさまざまなエコノミストから出されておりまして、その前段階で解散をぽっとされるかもしれませんので、ぜひ危機管理対応もお願いしたいなというふうに思うところでございます。

 また、いわゆる年金の納付率が平成二十年度の段階で六二・一%です。これは大臣がお得意の、ミスター年金、ミスター年金なのかミスター年金記録なのか、ちょっとわかりませんけれども、納付率六二・一%ですが、年金の信頼性はどうやったら回復できるとお考えですか。

長妻国務大臣 やはり、まずは先ほどおっしゃられた記録問題について、我々全力で今取り組んでおりますけれども、それで一定の信頼を回復するということと、あとは年金制度改革の三原則だと思っておりまして、若い人も無理なく払える持続可能な制度、そして、転職を繰り返しても変わらない一つの制度、そして、最低保障機能がある、こういうようなことで国民の皆さんの安心を何とか確保したい。

 そして、何よりも今おっしゃられた納付率について、これは本当に大きな課題でございますので、社会保険庁当時の昨年四月に比べて、収納対策等に携わる日本年金機構の人員数を三千百人、適用、収納人員をふやしまして、何とかこの納付についても改善していきたいと考えております。

あべ委員 大臣は野党のときに年金記録に非常にお詳しかったというふうに私ども承知しているところでございますが、年金の信頼回復は、年金記録と年金制度はどちらが大切だとお思いですか。

長妻国務大臣 これはどちらも大切ではないかというふうに思いますけれども、この記録問題においては、これは実は五十年前に社会保険庁に内部文書がございまして、こういう記録問題があることを示唆する文書がございまして、非常に積もり積もった問題でございます。ここの記録問題で信頼が本当に地に落ちてしまいましたので、そこをまずは回復するというのが直近の非常に大きな課題だと思います。

あべ委員 大臣、野党のときだったら、一つのイシューに、年金記録問題だけにこだわってくださることは結構でございます。与党になって、大臣になられて、年金記録問題だけにそれだけ執着されると、国民は社会保障制度、医療、年金、福祉に非常に不安を感じます。制度が私は大切だと思いますが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 これも先ほどの消費税議論とも通ずるところがあるかもしれませんけれども、まず、本当に損なわれた信頼を回復するということがないと、どんな立派なことを政府が言っても、信用されなければそれは意味がないわけでございますので、そういう意味で、今一つの例として記録問題を申し上げたところです。

あべ委員 若い人たちが、年金を払わない方が、年金記録をちゃんとしたら払うと思われているところに、私は大きな間違いがある。なぜかというと、二十代は、払ってもらえないかもしれない、自分たちは払っても、この年金はもしかしてもらえなくなるんじゃないかという不安、これが一番大きいわけであります。

 制度の一元化、ぜひともやっていただきたい。この一元化をやっていく中で、特に厚生年金、共済年金、国民年金、一気に一元化しますか、段階的にされますか。

山井大臣政務官 あべ委員にお答えをいたします。

 私たち民主党のマニフェストでは、一元化を一気にやっていくという方向で書かせていただいておりますし、先ほど大臣が答弁しましたように、四年以内にその法案を出して成立させたいと思っております。

 そして、何よりも、あべ委員がおっしゃいますように、若い方々の国民年金の納付率が非常に落ちておりまして、今四割の方々が国民年金の保険料を払っていないという状況になっております。そういう意味でも、私たちは抜本改革が必要だというふうに強く思っております。

あべ委員 一元化をするのに何年かかると考えていらっしゃいますか。

長妻国務大臣 これは、もうるる申し上げておりますけれども、一期四年で法案を通して、二期目以降、その制度をスタートさせる、こういうことでございます。

あべ委員 一元化するのに、いわゆる法案を出すだけじゃなくて、しっかりと一元化が終わるまでに何年かかると思っていらっしゃいますか。

長妻国務大臣 その一元化が終わるというのが、全国民が新しい制度に入る、こういう意味だとすると、そのまま考えると、これは四十年程度かかるんではないかと思いますけれども、例えばスウェーデンなどでは、それではなかなか長過ぎるということで、二十年を切るような形で、いろいろな前提を置いてそれを全国民に導入する、こういうような手法もございますので、その移行期間というのは非常に大きな論点だと思っておりまして、私どもとしては、海外の事例も見ながら考えていきたい。

 いずれにしても、今まで払った保険料が何か意味がなくなるということはもちろんあってはいけないわけでございますので、一時期は二つの制度が併存するという形になるというのは、これは御理解をいただきたいと思います。

あべ委員 実は、私どもが与党であった時代に、厚生年金と共済年金の一元化をまず第一にやるべきではないかということをずっと検討してまいりました。共済年金、御存じのように、保険料率が低いにもかかわらず給付が高く設定されている。それは、いわゆる多額の税金が投入されているということでもございますが、この格差を解消しようと努力したわけでございます。

 年金の一元化をするに当たって、公務員のいわゆる既得権、さらには皆さん方の支援団体である自治労、教職員組合の存在を考えますと、本当に民主党政権で年金の一元化ができるんだろうか。でもしてほしいという国民の期待も大きいですが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 先ほど山井政務官からもお答えいたしましたけれども、確かに、前の政府は被用者保険一元化からスタートしようという議論もありましたけれども、そうすると、非常に問題の多い国民年金が後回しになってしまうというようなこともかんがみて、我々は一体的に実行するということであります。

 そして、今その公務員のしがらみ等のお話があったと思いますけれども、我々としては、そういうことなく、全国民の皆さんが得られる最適な案を提示しようというふうに考えています。

あべ委員 私は、大臣はやはり年金を一生懸命やっていらしたし、御専門であると思っております。法案が四年以内に必ず出てくる、命をかけて、大臣、頑張りますか。

長妻国務大臣 頑張ります。

あべ委員 ありがとうございます。

 法案がまとまらなかったら、どう責任をおとりになりますか。頑張りますだけではだめです。どう責任をおとりになるかをお答えください。

長妻国務大臣 これは、先ほど来申し上げておりますけれども、一期四年で法案を提出して成立させるということを我々はマニフェストでも申し上げ、連立政権でございますので、この政権としても申し上げているところでありますので、今はそれに向かって全力を傾注する、こういうことです。

あべ委員 法案をぜひ四年以内に出していただきたい。ぜひ、大臣、政治家としてのいわゆる生命をかけて頑張っていただきたいと思います。頑張ると言ってください。

長妻国務大臣 本当に全国民の皆さんの御理解をいただくように頑張ってまいります。

あべ委員 では、最低保障年金についてお尋ねいたします。

 これもマニフェストに入っているところでございますが、最低保障年金はすべての人が七万円以上受け取れるようにするということが書かれているわけでございます。さらには、消費税五%相当分を最低保障年金の財源とするということをおっしゃっていますが、この消費税五%相当分というのは十二兆円です。これを最低保障年金に使われますか。

長妻国務大臣 これについては、最低保障年金を導入すると、その部分は税金でございますので、その意味では税金の投入額というのもふえるわけでございます。

 ただ、先ほどの移行期間の話も申し上げましたけれども、直ちに、制度スタート時に満額が必要になるわけではございませんで、二つの制度が並立をいたしますので、その中で徐々に資金が必要になるということでございますので、それに見合う財源の手当てというのが必要になるということであります。

あべ委員 では、この七万円というのは、書いてあるけれども、すぐ上げるわけではないということですか。

長妻国務大臣 これもるる説明をしておりますけれども、この最低保障年金というのは新しい年金制度の中の制度、仕組みでございますので、これに関しましては、移行期間の設定等々、先ほど申し上げましたようないろいろな考え方がありますので、その中で、その移行期間が完了をした際、満額受給ということで考えております。

 ただ、それについても、先ほど申し上げましたように、新制度で、例えば年齢がちょうど四十歳の方は、古い制度が半分、新しい制度が半分、こういう形で、老後、新しい制度半額と古い制度半額を足して受給するということになるわけでありまして、そういう意味では、新しい制度のみの受給額ということになるわけではありません。

あべ委員 おっしゃっている意味は、では、すべてが整った四十年ぐらいたった後には、出る最低保障年金が七万円だとおっしゃっているんでしょうか。

長妻国務大臣 これも先ほど来申し上げましたように、スウェーデンなどは移行期間についてさらに短縮をする、こういうような措置をしておりまして、私どもとしては、その移行期間についてはこれから検討課題になるということであります。

あべ委員 すなわち、移行期間がまだ決まっていないけれども、移行期間が終わった段階で出る額が最低のその七万円だという理解でよろしいんでしょうか。

長妻国務大臣 これは、先ほどの繰り返しでありますけれども、移行期間中は、その金額、新制度だけ受給するわけではもちろんございませんで、旧制度の受給額、そして新制度の受給額、これを足してその方の受給額が決定して、それに支給するということであります。

 新制度だけに限定すると、新制度下でその七万円が全額支給されるというのは、移行が終わって、そしてそこの保険料の中で、新制度ですべてその保険料を払われたというふうにみなすのか、実態か、移行期間の長さによっても違いますけれども、そういう方が満額になるということであります。

あべ委員 ちょっと質問時間がなくなってきましたので、また後ほど深掘りをさせていただくとしまして、社会保障は医療、年金、福祉というのがあります。子育てが入るかどうかということはいろいろ言われるところでありますが、この中で、国民の安全、安心の中で一番まずしっかりやらなければいけないことは、優先順位として何があると思われますか。

長妻国務大臣 かつては、古い考え方としては、初めには生活保護。最低限度の保障があって、それで足りない部分を補ってという考え方もありましたけれども、我々は、最近申し上げて、所信にも書いてございますのは、ポジティブウエルフェアというような考え方も申し上げておりますので、どれが重要かということについて、政策上は当然、個々の政策で優先順位はつけなければなりませんけれども、今の大きなカテゴリーでいうと、これはどれも重要であるというふうに言わざるを得ません。

あべ委員 その大臣の考え方が大きく政策に反映するんだと私は思っています。本人が予測もできないものは何なのかということをしっかりお考えいただかないと、年金記録だけでなく、ほかの問題もしっかりと頑張っていただきたいというふうに思うわけであります。

 大臣、本当にありがとうございました。夜勤体験を楽しみにしておりますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

藤村委員長 次に、菅原一秀君。

菅原委員 自民党の菅原一秀です。

 きょうの新聞を見ますと、日銀の白川総裁がいわば政府に財政規律を求める、すなわち、これだけ世界的な、国内外の経済環境が厳しい中でばらまきをやろうとしている政府、大量の国債発行を控えている政府に対して、ある意味では牽制をしたというような新聞記事が出ているわけであります。

 御案内のとおり、八百七十一兆の国債を長期債務として抱え、国、地方合わせると一千兆を超える。この状況の中で、今回、九十二・三兆円の予算を一般会計で組んだわけでありますけれども、二十七兆といういわば突出した社会保障関連経費、これについて、これだけ厳しい経済環境、財政状況の中で、結果的にはその財源が極めて重要になってくるわけであります。

 御案内のとおり、九十一兆という年金、医療、介護、社会保障給付費、この伸びが毎年一兆円、いわば一般歳出の二分の一以上に当たる二十七兆というこの大きなボリューム、これが結果的には政策経費のいわば裁量権を奪いかねない状況に今なっているわけであります。これは、だれが悪い云々という話ではなく、まず、この現実に対してきちっと財源的な裏づけを持つことが政治の役割であろう、私はこう思っているわけであります。

 この中で、いろいろなことを大臣は就任前に言っておられました。特に、ちょうど去年の六月、ある民放の番組で私と共演をいたしましたときに、民主党の財源論について私がお尋ねをしました。そうしましたら、大臣は、全省庁の金庫を全部ひっくり返して、裏側まで全部チェックしてお金を捻出するんだ、私の前でこう発言をされたわけであります。これは全国のテレビに流れたわけであります。

 大臣、大臣に就任されて、厚生労働省だけでいいです、金庫をひっくり返しましたか。

長妻国務大臣 今、無駄の削減、見直しということだと思いますけれども、政府全体としては、集計いたしますと、三・三兆円というようなことを申し上げているところであります。これは一般会計でございます。

 この平仄でいいますと、厚生労働省分は五千八百九十億円削減をしたということで、私が就任して、五代続く天下りの指定席を持っている団体の補助金を大幅にカットする、あるいはコンピューター経費を見直していく、あるいは天下り団体の基金を返納させる等々で、その削減に努めてきたところであります。

菅原委員 事業仕分けを鳴り物入りで民主党でやられたわけでありますが、実際のところ、最終的には、七千億出てきたのがある意味では結果的な数字であったと思います。

 それで、今申し上げた厚生労働省所管社会保障給付、九十一兆というボリュームが、毎年一兆円ずつ膨れ上がって、しかも一般歳出の約二分の一以上を占めている。この現状の中で、先ほども議論がありましたが、さまざまな政策に対する恒久的な財源が必要であるということの意味においては、やはり、無駄削減はどんどんやるべきであり、天下りについても、根絶をすると言っているわけですから、やるべきだ。しかし、さはさりとて、それだけですべての財源が賄えるかといったらば、まさにそれは見立てが極めて悪いという状況になります。

 したがって、先ほど議論があった消費税について、今、財務大臣も総理も、各大臣、閣僚がいろいろなことを言っています。いわば、ある意味では閣内不一致だけれども、一番財源を必要とする所管の大臣として、長妻大臣、あなたは、消費税について今後どうあるべきか、増税についてどうとらえているか、お示しください。

長妻国務大臣 日本は、世界の中から見ても、国民感情の中に、果たして自分たちが払った税金や保険料がきちっと使われているんだろうか、こういう疑念が恐らくかなり高い国ではないかというふうに思っています。私は、そこが議論の一つの着目点だというふうに考えております。

 その中で、やはり、今、一期四年、徹底的にそういう無駄、優先順位の低い仕事を見直していくという作業を通じて、まず国民の皆さんに国を信頼していただく。ああ、国に預けた金は無駄にはならずに、ある程度、かなりの部分がきちっと使われるようになったな、まずこういう実感を持っていただかない限り、それが成功しない限り、いつまでたっても、何をお願いしても御理解をいただけない、こういう問題意識を持っておりますので、私も、非常に大きな予算を持つ所管大臣として、そのことについて自分の省なりに今取り組んでいるということで、国民の皆さんに一定の信頼がいただけ、そして、必要性があるときに、国政選挙の前に堂々と国民の皆様方に、これだけのお金をこうやって使いますからお願いしますということで信を問う、こういう順番だと思います。

菅原委員 今のお話をまとめますと、次の解散・総選挙の前に消費税についてきちっとぶち上げて、消費税で信を問う、こういうふうにとらえてよろしいんですか。

長妻国務大臣 いろいろ予算の削減や予算を捻出するというのは、御存じのように、行政刷新会議が今後も引き続き、一期四年の中でやってまいります。その中で、そういう必要性があるとき、御負担をお願いしなければならないといったときには、今申し上げたとおりであります。

菅原委員 最近大臣は、大臣だから地元の会合に余りお出になっていないと思うんですね。よく会っていた駅前の立ち食いそば屋にも余り見えていないというので、おやじさんが寂しがっていましたけれども、私、地元で、この一月、二月、新年会に六百カ所ほど出てきました。野党ですから意外と暇なものですから、出てきて、いろいろな声を聞きましたよ。

 やはり、何が国民は一番不安かというと、ある程度の負担はいい、しかし、将来像が見えない。見えない中で介護保険の保険料が年金から天引きされて、手元に二万六千円、それこそ子ども手当ぐらいしか残らない中で、あすの生活に困っている。しかし、きちっと年金、医療、介護の将来像が見えれば消費税だってと、意外と高齢者の方がそれを言うんですよ。

 したがって、私は、これ以上この点については、この議論は次にしたいと思いますが、きちっとこれは大臣として、特に社会保障を所管する大臣としては堂々たる持論をお持ちになるべきじゃないかな、このことを指摘しておきます。

 あわせまして、社会保障の経費の中で一番心配なのが、今の年金財政であります。

 百二十兆。これを、いわば賃金上昇率二・一%を一・一上回る、さらには、直近の財政検証においては四・一パーという数字が出てきて、しかし、これは言ってみれば、前政権時代にやったことだからと言ってしまえばそこまでですけれども、今後、財源を考えた場合、あるいはきちっとした持続可能な年金制度を確立していくという意味においては、将来、労働者人口が減って保険料を納める人が減るから、だからそこの部分を四・一パーという極めて高い利回りの設定をしている。

 このことについて、今度また年金の制度議論のときにしたいと思いますけれども、果たしてこれでいいのかどうか。私は、やはりこうしたことも含めて社会保障の財源論というのをきちっと確立しなければいけないな、こう思っているわけであります。というのも、国債が暴落をすると、日本の国債を年金資金で、積立金で七割買い支えをしているわけですから、結局、国債の暴落が年金制度の破綻につながりかねない、こういう懸念もあるわけですね。この点について、どうお考えですか。

長妻国務大臣 財政検証というのは一定の期間ごとに行うものでございますけれども、今の利回り四・一パーというのは、前の政権ではありますが、百年という長期スパンの中でそれぞれの利回りを出したということであります。これは、私どももいずれ財政再計算をいたしますので、そのときにきちっと見直すのは当然だというふうに思います。

 そして、百二十兆円の非常に巨額な年金保険料積立金、これを今独立行政法人GPIFというところで運用しているわけでありますけれども、その運用についての中期目標というのを今私のところで作成しているところでありまして、そこでこの運用の方針も出すということでございます。

 今、いろいろな議論があって、その百二十兆円を使ってかなりリスクの高いところにも投資するべきではないかという議論もございますけれども、原則は、お預かりした大切な国民の皆さんのお金でありますので、堅実に運用するということだと思います。

菅原委員 参議院議員で、直前まで自民党だった田村耕太郎さんという大変金融に強い方がいまして、きのうたまたまBSの放送で討論したんですが、小沢さんからフリーハンドをもらったと。つまり、自分の持論のいわゆるソブリン・ウエルス・ファンド、これを年金にしっかり使っていいとまでは言わないけれども、フリーハンドをもらったということを言っていましたから、そういうことを考えると、本当にこれで年金大丈夫なのかなと。元同僚として、今は岸の向こうに渡ってしまいましたが、そういう意味では非常に不安を持つんですけれども、この点も含めてここでまた議論をしっかり深掘りをしたい、こう思っております。

 所信にも書いてありますけれども、あらゆる手当てをする上で、やはり、経済成長と施策をいわばトレードオフではなく、二つの柱をきっちり立てて前に進むんだ、こういうことをお示しになっています。そうした中で、世界一の長寿国家の中で働き手が減ってくるこの少子化対策について、やはりきちっと対策を講じなければいけない。そこで、子ども手当についてお尋ねをしたいと思います。

 去年の十二月二十三日、子ども手当について、民主党政権における四大臣合意というのがありました。これについて、一万三千円を二十二年度に支給をします。一兆数千億ということです。本格実施を二十三年度から検討する、こうなっていますけれども、二万六千円というのはどこにも書いてないんですよ。これはどういうことでしょうか。

長妻国務大臣 もう前提となっているのが、マニフェストにもございますし、連立政権の中でもそういう話になっております、二十三年度からは二万六千円、これを前提にして四大臣の合意というのがなされたというふうに理解しております。

菅原委員 ということは、その四大臣合意の文書には二万六千円とは書いていないけれども、これは二万六千円だと今の担当の大臣が言ったととらえていいわけですね。そういうことですね。

 にもかかわらず、財務副大臣二人、満額支給は困難だと。総理も、余剰金でやる、次の日はまた、やっぱりマニフェストどおりだ、もうころころころころ変わるわけですよ。だから、こういうことがやはり、八〇%あった鳩山政権が今四〇%ですよ。ツルは千年カメは万年と言うけれども、ハトは一年といううわさがある、そんな声が町中で聞こえてくるぐらいの状況。言ってみれば、言ったこととやったことが違う。この点をやはりきちっと示すことが私は大事だと思いますね。

 この子ども手当、目的は何ですかと問われたら、大臣は何とおっしゃいますか。

長妻国務大臣 子供の育ちを社会全体で応援するというのが最大の目的です。

菅原委員 少子化対策とあわせて景気対策、これは二月一日に鳩山総理御自身がぶら下がりの記者会見で言っていましたから、景気対策という側面も当然あるわけですよね。そうでないと、この前の菅大臣と我が方の林参議院議員の乗数効果の議論というのは無意味になる。ということは、やはり景気対策の側面もあるんですよね。確認しておきたいと思います。

長妻国務大臣 景気対策が最大の目的ではないというのは私も理解しているところでございますけれども、子ども手当が結果的に経済にも資するというようなことにはなろうかと思います。

菅原委員 改めて、子ども手当の財源についてお示しください。これは、今年度プラス来年度以降本格実施も含めて、財源は何で賄うんですか。

長妻国務大臣 これは四大臣合意にも書いてございますけれども、これについては、まだ今は平成二十二年度の予算の審議の最中でもございますので、その次の年度の話でありますので、これはきちっと内閣で議論して財源を捻出する、こういうことであります。

菅原委員 そこがやはり国民は不安なんですよ。

 マニフェストに二万六千円と書いて、しかも、あのときにほとんどの民主党議員が演説で言っていましたよ。二万二千人の国家公務員の天下り、四千七百法人に天下っている、そこに税金が十二兆六千億投入されている。天下りをやめれば、十二兆浮くじゃないか。十二兆浮けば、五兆五千億出てきますよ。いろいろなことのばらまき政策の財源ができるじゃないですか。この御議論はどうなんですか。

長妻国務大臣 これも、私どもが申し上げていたのは、天下り団体に十二兆円流れている、このすべてが無駄というわけではないけれども、ここからお金を捻出できる、あるいはひもつき補助金もある、こういうようなことを申し上げておりまして、それについては、今回の事業仕分け、あるいは私どもが省内仕分けということで厚生労働省の中でもやった仕分け、削減について一定の金額は出てきていると思いますけれども、まだまだ不十分だということでありますので、行政刷新会議だけではなくて、各省庁の大臣が査定大臣となって、今後とも不断の見直しをするということであります。

菅原委員 この議論をやっていると、多分一時間も二時間もかかると思います。何でこんな議論をするかというと、やはり五兆五千億というのは大きいんですよ、来年本格実施した場合。

 大臣、五兆五千億を一万円札で束ねたらば、どのぐらいの高さになるか知っていますか。

長妻国務大臣 わかりません。

菅原委員 では、教えましょう。

 一万円札を束ねると、一メーターで大体一億だそうです。五兆五千億ということは、五万五千メーターですよ。富士山の高さが三千七百七十六メーター、その十四・五倍の高さの一万円札。これを、あなた方が今財源を示さないということであれば、赤字国債を発行してそれで賄うという論理も打ち立てられるわけですよね。つまり、借金して五兆五千億、それを子供に出す。

 後でまた各論に入りますけれども、大半がというか半分ぐらい貯金に回るのではないか、そうしたデータもある。景気対策であると総理が言った。少子化対策のためであるということも今お示しされた。しかし、ネーミングこそ子ども手当だけれども、それを大人がもらって、結果的に貯金に回したり、遊興費に使う方もいるかもしれない。つまり、子供にとってどのようなプラスがあるかは非常にあいまいであるということが非常に国民の中から聞こえてきます。つまり、大人がもらって、子供が将来返す。

 きのう、あべさんもおっしゃっていましたけれども、ハーバードの、まさに、コトリコフという教授が言った、「破産する未来」という本の中で財政的児童虐待という言葉を使っているんです。つまり、今借金をして、結果的に、形式上恩恵を受けるであろう子供たちが将来大きな負担を背負う。このことは、果たして本当にどうなんだろうかということが議論としてある。

 私は、子供たちの当事者に、皆さんは声を聞いていないですよね。子供国会というのがよくありますけれども、子供国会でもやって、大臣、どう思いますかとわかりやすく説明して、そういう子供たちの生の声も聞くということが必要じゃないかなと私は思います。

 もう一つ論点として、あと幾つかありますけれども、今回、ゼロ歳から十五歳までのお子さんの家庭に出す。十五歳までのお子さんの数、全国で千七百万人。これを全部カバーする必要があるのかな。少子化対策であれば、これから子供を産んでいただきたい、産むための環境、そのインセンティブを高めるということが本来の趣旨であってしかるべきではないかなと思います。

 つまり、このままだと、言ってみれば所得移転にすぎないわけですよ。所得移転です。もし仮に、児童手当が本年度は一つ柱になって、そこにまた上乗せをする、これでインセンティブを高めるということであるとするならば、百歩譲ってですね、私は、これから生まれてくる子供たちのために特化した子ども手当ならまだ理解できるんです。今いる子供たちに子ども手当を出すということは、結局、その再分配はどこに行くのかということの議論を考えれば、果たして少子化ということに資するのかどうか、私はこう思います。

 保育所の整備、保育サービスの拡充、こうしたさまざまなことをやりながら、所信に書いていますよね、所信に少子化の傾向を食いとめると書いてある、子ども手当の部分に。この辺は、どうとらえればいいんですか。

山井大臣政務官 私からも少し答弁をさせていただきたいと思います。

 菅原委員がおっしゃる意味もわかるんですが、何よりも、今日までの我が国の社会保障というのは、医療、介護、年金というように高齢者に非常に重視をしておりまして、子育て世代のお金を、保険料や税金を通じて高齢者の方にまさに所得移転するという部分が強かったわけであります。最近は人生前半の所得保障ということも言われておりまして、そういう意味では、国際的に比較しても、子供に対する支援というもの、家庭支援というものが非常に日本は先進国の中でも低かった、そういうことがこの子ども手当の一つの理由であります。

 さらに、菅原委員がおっしゃいますように、私たちも、子育て支援におきましては、現金給付と保育所支援などの現物給付、これは車の両輪だと思っておりますので、子ども・子育てビジョンの中でも、毎年五万人ずつ保育所整備、そういうものとセットで進めていきたいというふうに考えております。

菅原委員 ちょっと視点を変えます。

 きょうは、ほかの委員会があるにもかかわらず、津村大臣政務官にもおいでいただきました。お待たせをいたしました。

 実は、今、お手元にお配りをしております資料がございます。これは、去年の十二月に電通総研が子ども手当について緊急に調査をした結果なんですね。

 これは後で議論をしたいと思いますけれども、まず、今回の、例えば二兆三千億円、児童手当の一兆円分を除くと一兆三千億円。この一兆三千億を投じた場合の、いわゆるGDPの子ども手当における押し上げ効果。これとあわせて、消費性向。先般も、先ほど申し上げたように参議院の予算委員会でも議論のあった、菅さんが当初わからなかった乗数効果のお話ですね、この消費性向。あわせて、一兆三千億投じた場合の乗数効果。この三つを、数値をお示しください。

津村大臣政務官 菅原委員の御質問にお答えしたいと思います。

 子ども手当は、子育ての経済的な負担を軽減いたしまして、総合的な少子化対策を推進することを目的としております。

 私はマクロ経済政策担当の政務官ではありますけれども、GDPの今の御質問にももちろんお答えをいたしますが、委員も御案内のように、子ども手当は、むしろ少子化対策という社会的あるいは歴史的な大変大きな意味を持った政策でありまして、私の仕事としてGDPの効果を試算する中でも、そうしたより広い政策的な含意をしっかりと忘れてはならない、経済効果の議論に矮小化してはならないというふうにみずから戒めながら試算をしております。

 御参考までに申し上げますと、経済効果といたしましては、中長期的な効果と当面のGDP押し上げ効果の両面があると思います。

 中長期的な経済効果というのはなかなか数値化できないわけでありますけれども、大変重要なものでありまして、これは、少子化対策を進めることによって生産年齢人口が中長期的に増加すること、そのことによって経済社会が活性化され、生産を増加させる効果が期待されるわけであります。

 お尋ねの点でありますけれども、子ども手当が景気の押し上げを直接の目的とするものではありませんけれども、当面のGDP押し上げ効果といたしましては、政府経済見通しにおいて統計データ等を参照しながら、消費性向をおおむね七割程度と想定いたしまして、現行の児童手当からの上乗せ分一・三兆円程度のうち七割ですので、二十二年度のGDPで一・〇兆円程度、〇・二%程度押し上げると見込んでおります。

菅原委員 乗数効果もお尋ねをしているんですが。この場合の乗数効果。

津村大臣政務官 乗数効果につきましては、先ほども少し触れましたけれども、この……(菅原委員「数値だけ教えてください」と呼ぶ)乗数効果として一つの数字を挙げて議論はしておりません。

菅原委員 今の消費性向〇・七とその押し上げが〇・二だとすると、もろもろ計算すると、大体二・三という数字が出てくるはずなんですね。

 まあ、これはこれとして、この資料を見ていただきたいんですが、これは五百名を対象にして中学生以下の子供一人当たりに月額一万三千円の使い道を調査したところ、まず、サブタイトルにもあるように、使い道トップは子供の将来のための貯蓄、貯金になっています。次いで塾代、極めてボリュームは少ないんですが、授業料等の補てん。いわば、子供関連ビジネスに、活性化に期待できそうだと。これは電通総研の資料です。こういうデータが出ております。

 見ていただきたいのは、この資料の縦軸の真ん中、国内支出総額、これは一万三千円で全体に出した場合、二兆七千五百八十七億という支出があるわけなんです。右側の押し上げの効果の算入というところが、右の文章の真ん中の一兆二千八百八十九億円、これがいわば約一年間この手当を出した場合の効果の数字になってくるわけですね。つまり、支出と、一兆二千八百八十九億を支出で割りますと、この数値は消費性向、〇・四七ぐらいという数字が出てくるんですよ。

 これは、基軸になるデータが違うから、多分、内閣府の試算だけれども、使っているのは総務省の家計調査なはずなんですよ。つまり、子供のいない家庭、高齢者の家庭、全部ひっくるめた勤労者家庭のデータをもとにして〇・二という押し上げ効果を出している。ところが、消費性向はその場合〇・七。この数値で見ると〇・四七ということは、消費性向が〇・七と〇・四七、〇・一以上違うと、乗数効果は三倍ぐらい違ってくる。つまり、二・三という数字に対して、多分、この場合は〇・八九ぐらいの乗数効果しか出てこない。簡単に言うと、一兆円投資して八千九百億のいわばGDPの押し上げしかない、こういうことになるわけですよ。

 この点について、だれか答弁できますか。

津村大臣政務官 幾つか気づいた点がありますので申し上げたいと思うんですが、菅原委員が乗数効果とおっしゃっているのは、時間軸の考えがいま一つ鮮明でないんですね。いつまでのことをおっしゃっているのか。単年度のGDPに乗っかる数字のことだけをおっしゃっているのか、それとも中長期的に見て日本経済にどの程度のプラスのインパクトを与えるかという、そこまでのお話をされているのかが、ちょっと今の御質問の中ではうまく聞き取れませんでした。

 その前提で申し上げますけれども、電通総研のレポート、確かにいただきまして、私も拝読をいたしましたが、前提の置き方や質問の項目、民間機関ではさまざまなケースがありまして、私どもから見て厳しいものでいえば消費性向〇・三と見ているところもあるようですし、〇・七、〇・九というような予測をしているところもあるものですから、一つの材料としては勉強していきたいというふうに思っています。

菅原委員 単年度という意味では、このアンケート、一万三千円で出ています。皆様方がお示しした数値も月額一万三千円で単年度で出ているから、その部分の基軸は一緒だと思うんです。ただし、先ほど言ったように、内閣府で、あるいは政権として今出しているデータの基軸が総務省の家計調査。だから、そこに問題がある。

 先ほど、いみじくもマクロ経済担当だと言いましたね。であれば、内閣府のマクロ経済モデルを使って出してくださいよ。出せませんか。

津村大臣政務官 今の御質問は、最初の答えに尽きていると思います。

 最初にお答えいたしましたように、政府経済見通しの中で数字をお示ししているわけで、消費性向は七割程度、GDPは一・〇兆円程度、〇・二%程度押し上げるという数字を差し上げているとおりでございます。

菅原委員 であれば、この電通総研の〇・四七という消費性向の数値を、逆に総務省の数値で当てはめて計算をして出せませんか。その場合の乗数効果は何ぼになるかということ。

津村大臣政務官 この場合の乗数という委員のおっしゃっている意味は、私にはいま一つよくわかりません。波及効果までずっと見ていくのが乗数という考え方だと思いますが、こういう一回的な支出の話だけをすれば限界消費性向がイコール乗数という形になると思いますけれども、それは議論としては余り膨らまないと思います。

菅原委員 とするならば、単年度ベースではなく、毎年これから恒久財源を出すかどうかわからないけれども、きちっと財源手当てをして恒久的にこの子ども手当をやるんだ、こういう政府の方針。政権が何年もつか、わかりません。ただ、やるという方向性の中で考えたとするならば、私は、この乗数効果をきちっと出して、それによって検証するということは絶対必要だと思うんですよ。

 今、多分それ以上は平行線になると思います。この議論はここでとどめますけれども、私は、いま一度総務省の、高齢者が入っていて、子供さんがいない家庭が入っていて、子供に支出をしない、子供さんに対する投資以外のことも含めたデータで今の消費性向を出しているということは、子ども手当に特化したら全然違う数字が出てくる。だから三倍も開きがある。この辺の議論をやはりしていかないと、本当にGDPの押し上げ効果が、一兆三千億で〇・二と菅さんは言っていましたけれども、この説得力が極めて低落をすると思いますよ。どうでしょうか。

津村大臣政務官 大変重要な議論ですので、よく言葉を整理する必要があると思います。

 乗数という言葉を、予算委員会でもいろいろな方がいろいろな意味でお使いになっていましたけれども、例えば、GDPの定義によりこういうことになるんです。

 例えば、私の地元に瀬戸大橋という橋がありますけれども、そこのすぐ隣にもう一本同じ瀬戸大橋をつくったとします。その公共投資の乗数効果は、単年度でいえば一以上になります。しかし、ほとんど経済的なといいますか波及効果はないと思います。なぜなら、すぐそばに一本ちゃんと瀬戸大橋があるわけですから。

 しかし、子ども手当を一万三千円払いました、少しは貯蓄に回るでしょう。残りが消費に回った。消費に回ったものは、さらにだれかの収入になりますから、さらにその収入が賃金になって、売り上げになってというふうにどんどん波及していきます。そこには二次的、三次的な効果があります。そういうものをすべてトータルで見たときに、それがまさに乗数効果なわけでありまして、GDPの単年度の定義にしてしまいますと、それが一か〇・七か、どっちが大きいかというのは、非常にナンセンスな議論だと思います。

菅原委員 今、いみじくも公共事業という例えを答弁の中で示されました。とするならば、子ども手当、この消費性向の数値で、公共事業で出した場合にどれだけの数値が出てきますか。つまり、子ども手当で〇・二のGDPの押し上げ効果、これを公共事業でやった場合、どれだけの数値、パーセントになりますか。

津村大臣政務官 ですから、まさにこれは定義の問題で、GDP統計のつくり方上、公共事業に同じ額を使えば、乗数効果は短期的に一になるんです。

 それは定義の問題で、それがどんなものに使おうと、さっき申し上げたように、無駄な公共投資に使おうが、新幹線のように非常に意味のある公共投資に使おうが、乗数効果でその効果をはかるのは、同じ一になるので余り意味がないということを申し上げたんです。答えは一です。

菅原委員 一ということは、押し上げ効果は一とおっしゃいましたね、今。ということは、子ども手当が〇・二だから、五倍あるわけですね、公共事業。だから公共事業をやれという話ではないですよ。そういう比較になるんじゃないですか。

津村大臣政務官 少し数字を混同されていると思います。

 〇・二%というのは、これはGDPの押し上げのパーセントのことであって、先ほど乗数とおっしゃったのは、子ども手当をあえてそういう無理な前提を置いて乗数効果を出せば、それは短期的には〇・七です。なぜなら、消費性向とイコールだからです。〇・二ではありません。

菅原委員 消費性向は〇・七だから、〇・二になるわけでしょう。消費性向が〇・四六だと、〇・二という数字は出てこないんです。そこについてはどうですか。そうでしょう。

 消費性向の係数の違いによって、押し上げ効果は数字が違ってくるわけですよ。つまり、基軸によって、〇・二あるよという政権、政府の答弁というかその姿勢に対して、実際問題、こうして町中の現場の声、アンケート調査をとった数からすれば、データからすれば、極めて押し上げ効果は低いということを私は、これについてどうなんですか。(発言する者あり)いや、では何が違うの。

津村大臣政務官 電通総研さん、立派なシンクタンクさんだとは思うんですが、先ほども申し上げたように、民間の、菅原委員のおっしゃり方で言えば街角の声もいろいろな声があるわけで、菅原委員の角度に非常に沿ったものだけがすべてではないと思いますので、そこはひとつお含みいただきたいというふうに思います。

 それから、一番最初にも申し上げたことですが、私どもから積極的に、子ども手当は景気対策であって、その押し上げ効果はこうだということを大々的に発表したものではありません。子ども手当はあくまでも総合的な少子化対策を目的としたもので、その副次的な、二次的な効果として景気対策、経済効果について問われるとすれば、先ほども申し上げたように、中長期的な大きな日本社会へのプラスの効果がまずあるということを申し上げた上で、単年度の非常に技術的な答えとしては、先ほどのような数字だということです。

菅原委員 今年度は、児童手当の一兆を含めて二兆三千億。来年以降は、今の民主党のマニフェストでは、二十三年、二十四年、二十五年、五兆五千億と全部書いているわけですよね。この五兆五千億、消費税を上げないで四年間やるとおっしゃっている。無駄を省いてやるといっても、限界がある。その中で、結局は赤字国債の発行、借金して、子供たちに先送りするという仕組みの中で今回の施策をやるわけですよ。

 ですから、私は、先ほど言ったように、内閣府の政務官、あるいは内閣府として、何でマクロ経済モデルでその数値を出さない、何で総務省なんですか。そこは何で。

津村大臣政務官 いろいろな多面的な御質問だと思うんですが、日本の統計というのは、例えば物価であれば日銀でも総務省でも扱っているわけですし、内閣府がすべての統計を一元的に管理するという仕組みには旧政権以来なっておりません。ですから、総務省の家計調査がその角度から非常に有用なものであると認めて、私たちはそれを利用しているということでございます。

菅原委員 この議論は、またやらせていただきたいと思います。

 とりあえず、今の議論を聞いて、長妻大臣、どういう御感想をお持ちになりましたか。

長妻国務大臣 そもそも、この子ども手当は、景気対策という発想で始めたものではございません。

 ただ、今の議論にもあるように、子育てを社会全体で応援することが結果的に少子化の流れを変える。子供の健やかな育ちを応援するとともに、これは電通総研を初め、私も幾つかの会社等あるいは経済団体のレポートを読みましたけれども、この経済効果に関しては本当にまちまちです。考え方がいろいろありますので、数字が極端に離れておりまして、これも考え方の一つとして、こういう効果も出てくるのではなかろうかというふうに考えています。

菅原委員 子ども手当に関して、続けてお尋ねをします。

 この二月の内閣府の世論調査で、少子化対策に特に期待する政策は何かという問いに対して、仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しの促進が極めて高くて、五八・五%。経済的負担の軽減、これが五四・六%。これは余りふえていないんですね。逆に、一気にふえたのが、妊娠・出産の支援体制の充実、不妊治療の支援。特に、不妊治療は、今二十五世帯に一世帯というデータもございますが、極めてこれは高くなって、五四・六%。これは、五年前の調査に比べると二七ポイントもふえているんですね。

 去年の十一月に、OECDが日本の経済政策に関して提言をしているんです。これはどういうことかというと、子ども手当について目的と対象を再検討すべきだと。これは、グリアという事務総長の講演でこういう指摘をしております。一律に子ども手当を支給するよりは、議論もあった保育所の待機児童対策などに重点を置くべきだ、こういう考え方も示しています。

 あわせて、海外からもこうした指摘がされている今回の子ども手当、二月の八日に大和総研がまとめた調査では、子ども手当が満額支給された場合においても経済的な不安が解消されないという答えが五五%もある。現金給付だけの支援では十分な効果は上げられないということが浮き彫りになっているわけですね。また、この調査の中で、子供さんのいない女性のうちの六〇・二%が、経済的不安の解消に十分ではない。つまり、お子さんを産む場合のインセンティブになり得ないということをこの数字は示しているんですね。

 私はやはり思うのは、あわせて、もう時間がないからあれですけれども、六月に一発目の支給をする。六月といったら、あと三カ月しかない。市町村はてんやわんやですよ。しかも、児童手当があって、そこの上に乗っけるという極めていびつな形の制度設計。この三カ月で、市町村、今あたふたしていますよね。何でこれは六月なんですか。民主党の山岡という国対委員長は、子ども手当を出せば今の支持率が上がるということを公言したという報道も見ました。

 いわば、先ほど来、経済効果も極めて低い、少子化対策の決定打にもなっていない。本当にこの子ども手当というのは妥当性があるのかどうか、改めて、大臣、どうですか。

長妻国務大臣 今、六月支給は何でだというお話でございます。

 これについても、我々は選挙のマニフェストで半額支給を平成二十二年度ということを申し上げておりまして、この六月というのは、実は、今の児童手当も四カ月ごとに支給しています。お金を直接払うのは年三回ということになりまして、そういう意味では、六月ということで、逆に、地方自治体の御負担も考えて、基本的に支払いスキームはこれまでと同じような形を踏襲するということで、できるだけ事務負担を軽減する、こういう趣旨に基づいています。

 御指摘のように、我々も、少子化対策は現金だけじゃだめだというのはよく理解しているつもりでありまして、保育所整備などの現物給付と、あと、おっしゃられたワーク・ライフ・バランス、この三つが適正に整備されるということで、我々は、今後五年間、年に五万人の定員増を保育サービスで確保しようという目標も掲げております。

菅原委員 先ほどのいろいろなアンケートの生の声を聞けば、やはり保育所の新たなる整備拡充、保育サービスの拡充、こういったことにもっと重きを置いてくれ、将来自分の子供にまた負担をふやすような政策はやめてくれという声が、今六割以上届いている。やはり、この声にこたえていかなきゃいけない。五兆五千億借金して、それを子供たちにツケの先回し。これを六月にやると。つまり、景気対策でもない、少子化対策にも極めて心もとない。これはばらまきですよ。

 さっき王様の話がありましたけれども、脱税王、不動産王、人事の押しつけ王とありました。平成のばらまき王という名前を、そのそしりを免れない。私は、やはり一たんこの法案は凍結すべきだと思います。もっと国民的な議論をして、子ども手当をどうするか、やはりやるべきじゃないかなと思います。

 最後に、独立行政法人。去年の十一月二十五日、前回の質問でお尋ねをしました。厚生労働省所管の四つの独法、このうちの九ポスト、この問題について聞く時間がないので飛ばして、四つのうちの一つを聞こう。

 労働政策研究・研修機構の理事というポスト、大体、年収が千六百九十万、千五百二十万、千六百万。天下り、しかも法外な報酬を得ているとあれだけ言っていた長妻大臣御自身がこれを看過していたわけです。しかも、理事長が全部最終的に判断する、判断するけれども、そのときにはたしか大臣との協議があるはずですよ。結局は、大臣の責任において、役員公募の前と後と報酬が変わっていない、全体のポストも変わっていない、こんなことでいいんですか。

 あわせて聞きます。大臣、聖域なく独法を全廃するとマニフェストに書いているんですよ、おたくらは。ところが、今回何ですか、これは。地域医療機能推進機構という新しい独法をつくろうという法律を出している。これだけ独法を聖域なく全廃を含め抜本見直しをすると言ったらば、新たにつくるというのは、とても国民にそんな説明はできないじゃないですか。これはどう思いますか。

長妻国務大臣 独立行政法人の天下り禁止の、見直しということで、我々は、天下りのポストについては公募するということで、厚生労働省九ポストを公募したわけでございます。

 それで、今言われた労働政策研究・研修機構ということでございます。

 これについても、政権交代後、役員のポストが多過ぎるということで、まずは、一ポストでありますけれども、一ポストはもうなしということで、削減をしました。その上で、今御指摘のような年収、今私どもとしては、御指摘のような年収が払われているということでございますけれども、これについても……(菅原委員「大臣、違うよ、今の。四つのほかに新たにつくる方を聞いているんだよ、私は」と呼ぶ)ええ。ですから、先ほど触れられた労働政策研究・研修機構ですよね、年収が高いという。そのお話。

 そしてもう一つが、今言われた、もう一つ新たにつくるということでございますけれども、これについて、私ども民主党としましても、マニフェストではありませんけれども、その前に掲げた政策の中で、社会保険病院や地域で重要視されている厚生年金病院については、これを束ねた新たな組織をつくるべきである、医療崩壊を食いとめるためにというようなことを申し上げておりまして、その筋の中で我々は考え方を出させていただいております。

 いずれにしましても、天下りとか不透明なお金がないように我々は取り組むということでございます。

菅原委員 最後にしますけれども、今の説明じゃ、やはり選挙前と後と違うということですよ。この機構を、新しく独法をつくるというんですよ。

 社会保険病院なり厚生年金病院、これは地域、過疎地においては必要ですよ。しかし、それを束ねて二万四千人の職員をさまざまな事業にしっかり頑張ってもらうためには、あれでいいじゃないですか、国立病院機構。そこにきちっと事業を移管すればいいだけなんですよ。新たに独法をつくる、これは絶対反対です。これは民主党がやることじゃないと思います。

 このことを申し上げて、また次の議論をしっかりしますので、以上をもちまして終わります。

藤村委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、介護問題について質問をしてまいります。よろしくお願いいたします。

 今、日本は、世界に類を見ないスピードで超高齢社会に突入をいたしております。現在、六十五歳以上の高齢者人口が二千八百二十二万人、高齢化率が二二%。二〇二五年には三千六百万人、高齢化率三〇%を突破すると予定をされております。要介護者は、現在の約二倍の七百八十四万人に上ると推計をされております。それに備えて、社会保障制度の抜本的な改革が求められております。私は、だれもが長寿を喜んで、安心して暮らせる社会の実現が今の政治に求められている、そのように考えます。

 特に介護問題につきましては、高齢者の生活には欠かすことのできないサービスでありますけれども、制度施行十年を迎える現在、介護の現場では、サービス利用の大幅な伸びによる介護保険総費用の急速な増大、あるいは、いつまでたっても入所できない介護待機者、老老介護、介護うつなど、多くの問題が山積をいたしております。大臣所信の中でも、大臣もお触れになっていた点でございます。

 また、問題なのはシングル介護ということでありまして、家族の介護のために転職、離職を余儀なくされる、収入面の不安を抱え、行き先がないまま本当に介護に頑張っている、そういう方々も多いわけであります。また、独居の高齢者が多いという現実、孤独死の問題、こうしたひとりで暮らす高齢者の介護を社会がどう支えていくのか、こうした課題はメジロ押しでありまして、介護事業の抜本的な運営の改善は待ったなしであると思います。

 本会議あるいは予算委員会の場でも我が党から何度も申し上げている点でございますが、私たち全国三千人を超える議員で、昨年十一月から十二月にかけまして、介護総点検運動を行わせていただきました。私も、党の介護の政策責任者として、こうしたアンケートの作成からずっと携わってまいりました。要介護認定者、その家族、それから介護事業者、介護従事者、地方自治体、それから、今まで三千人の議員が長年受けてまいりました相談事例も全部今回集約をいたしまして、御意見を下さいといったものも類型化し、分厚い本になるほどの大きな意見が集まってまいりました。私も、それを全部読ませていただきました。

 この実態調査、全体で十万件を超える調査を行いまして、先日、私も上智大学の増田教授とも対談をさせていただいたんですが、学術的に見ても、十万件を超える調査というのは非常に大きな規模である、貴重であるという御意見もちょうだいをいたしております。御協力いただいた皆様に本当に感謝をいたしております。

 私も、そうした介護をされている皆様の思いを直接伺ってまいりまして、こうした介護現場の貴重な声、お一人お一人の苦労、悩み、それを何としてもやはり政策に生かしていかなければいけない、このように決意をいたしまして、今、公明党独自の新介護ビジョンというものの作成を行っております。

 団塊の世代が七十五歳を超える二〇二五年、ここで要介護者が増大をしてくる。もともと、当然、団塊の世代というのは大きな固まりでありますので、ここが七十五を超えたときに、そこをどうやって支えていくか。これは、年金だけではなく、介護においても非常に大きな問題であります。我が国にとって、そこをどう乗り越えていくか、介護基盤の整備が必要であると考えます。

 先日、本会議で、我が党の山口代表の質問に対しまして、鳩山総理から、今後、介護基盤整備の目標を示すこととしておりますとの御答弁をいただいております。また、長妻大臣の所信の中でも述べられておりました。公明党は、さらに医療と介護が連携をして質の高いサービス提供を行う社会基盤を整備し、高齢者が住みなれた地域で必要に応じたサービスを自分の意思で選んで受けることができる、介護にかかわる人が希望を持って働ける処遇改善、家族の負担が過大にならないよう、安心して老後が暮らせる社会、この実現を目指してまいります。

 そこで、高齢者と家族が安心して介護を受けることができる、そのための介護の将来像を早急に考えるべきと思いますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

    〔委員長退席、中根委員長代理着席〕

長妻国務大臣 公明新聞も拝見しておりますけれども、公明党がかなり綿密に調査をされておられるということで、参考資料があればぜひいただければとも思っております。

 やはり、今団塊の世代の方が六十二歳前後だと思いますが、そういう方が、六十五歳で定年に多くの方がなって、そして労働市場から去って七十五歳以上になったときに、では、介護をどういう体制でやるのかということで、これはもう我々の価値観も含めて大きな改善、改革をしなきゃいけない、非常に大きな問題である、社会構造の変革まで伴うものであると思います。

 その中で、基礎としては、介護だけで申し上げれば、やはり在宅がいいという方もいらっしゃいます、御家族もいらっしゃるでしょう。あるいは、施設が安心だ、施設がいいという方もいらっしゃいます。あるいは、その重さによってもそれぞれ役割分担がございますので、ある程度選択できるということが重要であるというのが一点。

 もう一点は、やはり施設に入るにしても、自分の住みなれた地域の近くで、しかも小規模な形で、そこが、特養から、ある意味では老健とか、あるいはショートステイ、デイサービス、あるいは訪問介護のセンターとか、そういうのを兼ね備えた形で地域で展開していって、御家族もいつでもそこに訪問できる、こういう訪問介護の体制もあわせて整備するということで、具体的な数字としては、今後三年間で施設は十六万ベッドふやしていくと同時に、訪問介護の対象人数の増加の計画というのは今ありませんけれども、それについても、一定の前提を置いてそういう目標も立てられればというふうに思っております。

 いずれにしても、その地域で介護が実現できるということと、これは町づくりともセットになるという考え方が必要だと思います。

古屋(範)委員 大臣の御認識、今お伺いいたしました。

 自分で選択ができるような、そして在宅のこうした体制を強化していきたい、こういう御意見だったかというふうに思います。

 街角アンケートを行いまして、あなたがもし介護を受けるようになったらどこで介護を受けたいか、こういう質問に対しまして、入所系の介護施設という方が四八・一%、自宅という方が四三・四%、ほぼ拮抗していた。私は、自宅の方が若干多くなるのではないかという予測をしたんですが、実際には施設の方が若干多かった。

 実際に在宅で介護をするのは難しい、あるいは自分の子供にしてもらうのもこれは無理がある、そのような気持ちがあったのか、あるいは、施設にしても、昔と違い、非常に設備もよくなってきている、そちらに行ってなるべく家族に迷惑はかけたくない、そのような思いがあったかというふうに推察をするんですが、いずれにいたしましても、こうした基盤の強化、施設あるいは在宅、どちらも基盤の強化が必要だ、私は、大臣と共通の認識を持っております。

 今回の介護総点検を行った中で、そこから浮かび上がってまいりました課題について、幾つか質問してまいりたいと思います。

 まず、介護保険を守り支えていくために、元気な高齢者、六十五歳になられてもお元気な方は非常に多いかと思います。今後、要支援また要介護状態にならないよう、そこを支援していくことが非常に重要だというふうに思います。こうした元気な高齢者をふやしていくことが重要だと思います。そのために、高齢者がやりがいを持って介護予防に励めるよう、新たな支援システムを考える必要がある、このように考えております。

 そこで、例えば、介護報酬の改定も三年ごとに行われるわけなんですが、この三年間、介護保険を利用せず元気に暮らしていた、こういう六十五歳以上の方々、たくさんいるわけであります。

 私の周りにも、毎日生活の中で運動したり、あるいは食事に気をつける、禁煙をする、またウオーキングをする、介護予防の運動もする、こういう努力をされている方がたくさんいらっしゃいます。また、もちろん元気で働いている方もたくさんいらっしゃるわけであります。また、自分自身の健康にとどまらず、家族の健康、あるいはさらに地域の方々のお手伝いをしようというボランティアなどで活躍をされている、こういう方も多いわけであります。

 しかし、そういう努力をし、頑張っている方々にとっては、介護保険料というのは納めるばかりである、こういう御意見が非常に多かったわけであります。このことに不満を感じているという方も少なくないわけです。

 しかし、保険の精神、保険というものはそういうもので、利用しない方がよいというのが理念だとは思いますが、こうして自分で努力をしている方々を何とか励まし、さらにやる気を出していただき、元気でいただきたい。全体的なサービス利用の大幅な伸びによって、介護保険の総費用も急速に増大をしているわけでありまして、この制度の持続可能性を確保していくことが、まさに大きな課題であります。この元気な高齢者がふえていくこと、また要介護者が少なくなることは本当に歓迎すべき、このように思います。

 そこで、この介護保険、三年間一度も利用していない本人に対しまして、介護予防に取り組んでいることを評価して、例えば、お元気ポイントというような介護保険料やサービス利用料の負担を軽減するこうしたシステムを導入する、こうしたアイデアに対して、どうお考えになりますでしょうか。

長妻国務大臣 私もそういう御指摘をいただくことはありますけれども、お気持ちは本当によくわかるわけでございますが、やはり介護保険というのは公的保険で、ある意味では共助ということで、みんなで支え合うということであります。

 これは、御自身の御努力で介護のお世話にならないということもあろうかと思いますけれども、どんなに努力しても、体のぐあいで介護を受けざるを得ないという方も一方ではいらっしゃるということで、そこに差をつけるときに、逆にその介護を受ける可能性がある方の保険料が相対的に上がってしまう、こういうような事実もありまして、実際、現在、八十五歳以上に限ると四七・四%が介護保険サービスを受けておられるということで、半分ぐらいはいずれは受けるということもあります。

 ただ、今おっしゃった趣旨で言うと、我々、一つ注目しているのは、例えば東京都の稲城市でありますけれども、これはよく御存じだと思いますが、そういうお元気な高齢者の方がボランティア活動をした場合、ポイントをそこでその方に交付して、そのポイントによって実質的に保険料が安くなる、こういうことを自治体がやっているケースもあります。

 長寿応援ポイントというのは、これは東京都杉並区、介護支援ボランティア・ポイント制度は東京都墨田区でありますけれども、そういう各自治体の事例も全国の自治体に広めながら、そういう趣旨を、その自治体単位の取り組み、ボランティアのポイント等々で普及をするということは大事だと思います。

    〔中根委員長代理退席、委員長着席〕

古屋(範)委員 私の申し上げたアイデアに対しては否定的なお答えかと思いますが、各自治体で調査をいたしたところ、全体で八百四十三の自治体が回答を寄せておりますけれども、介護サービスの課題は何かということに関しまして、二番目に、介護予防が進んでいない、こう挙げている自治体が三八・六%ございます。ですので、こうした介護予防に対して、なかなか現実にはそれが進んでいないということを考えますと、こうした観点も、介護予防に対するインセンティブを与えていくということから私は必要なのではないかというふうに考えております。

 また、今大臣がおっしゃいましたボランティアに対するポイント、私も、稲城市に平成二十年に行ってまいりまして、皆さん、このポイントを集めまして、上限五千円ということで、ボランティアを行った方々に支給をするという制度をとっております。そこに参加をしている方々にもお声を伺ったんですが、お金が目的ではない、こうして地域のために頑張ってボランティアができる、その楽しみを続けていると自然とポイントがたまってくる、そういう非常に喜んでいらっしゃるお声も伺いました。

 また、こうしたボランティアに対するポイントというようなものも、自治体だけに任せるのではなく、ぜひ国としても推奨していっていただきたい、このように思っております。

 それから、次の課題なんですが、家族の介護者への支援体制の強化ということでお伺いをしてまいります。

 今回の介護総点検運動の中で、高齢者が介護を受けている場所、この七割強が自宅でありました。さらに、潜在的には、病院、介護施設よりも住みなれた我が家で介護を受けたいと願っている高齢者も多くいるというふうに思われます。

 しかし、さまざまな事情で施設に入る高齢者の実態もありまして、また、家族に介護する意思があっても、疲労こんぱいする、精神的に限界に達してしまって、高齢者への暴力、また介護放棄、高齢者虐待がふえているというのが実態であります。自宅で介護する四分の一にうつ状態が疑われている、介護うつの問題、また、七十代の高齢者を介護する家族の半分以上が七十歳以上、老老介護の実態も深刻であります。在宅生活の継続には、本人の療養生活の支援とともに、家族の介護負担を軽減するレスパイトサービスが必要となってまいります。

 私たちの行った調査で、自宅で介護を受けている人のうち、困っていること、介護する家族の負担が大きい、身体的、精神的、経済的に、これが三五・八%と最も多く、本人や家族のぐあいが悪くなったときに一時入所する施設がない、これが一八・八%。また、利用料が高い、一八・六%でございました。在宅介護はやはり家族の負担が重い、緊急時に入所できる施設をふやしてほしい、これは非常に多くございました。

 そこで、家族に休息をとってもらうために、ショートステイやデイケアによって一時的に施設に預かってもらう、あるいは短期間病院で預かってもらうレスパイトケア事業、この大幅な拡充が必要、このように考えております。

 山井政務官に、この件に関して御所見をお伺いします。

山井大臣政務官 古屋委員にお答えを申し上げます。

 古屋委員は、高齢者虐待防止法のときにも、公明党の中心となってその高齢者虐待防止法の成立に御尽力くださいまして、まさに、介護をする御家族の支援に中心になって御尽力いただいております。敬意を表したいと思いますし、また、今回の御質問も、介護総点検という、現場の声を踏まえた非常に重要な御指摘だと思っております。

 そして、家族が一番困っているのは、やはり精神的、肉体的な負担とともに孤立ですね。ひとりぼっちになって孤立になる。その意味では、おっしゃったようなデイサービス、ショートステイ、ホームヘルプという在宅サービスの中で、家族が共倒れにならない、そのような方向で厚生労働省としても施策を進めていきたいと思いますし、根本的には、介護保険法の改正ということも視野に入れて今後検討していきたいと思いますが、やはり介護保険の理念である、家族任せにせずに社会全体で支えていくという方向性で、古屋委員の御指摘も踏まえて、今後、検討していきたいと思っております。

古屋(範)委員 高齢者虐待防止法、私も山井政務官とともに成立に取り組んでまいりまして、そこにも養護者への支援として、市町村に、養護者負担軽減のために、養護者に対する相談や助言、さらに、緊急の必要がある場合には高齢者が短期間養護を受けるために必要となる居室の確保、これを設けております。この措置をしっかりと拡充して、要介護者のニーズに応じて各自治体が一定程度緊急時の受け入れ病床を確保していくこと、また、介護の悩みを抱える人の二十四時間の相談窓口、このような整備が必要というふうに考えております。ぜひこれからも総力を挙げていただきたい、このように考えております。

 次に、介護保険制度の利用者負担の見直しについて伺ってまいります。

 高齢者の年金水準が変わらない、その中で、介護保険料というのは上昇してきております。私たちのアンケート調査の結果でも、介護保険料につきましては、高過ぎるという方が約四割、将来どこまでふえるのか心配、上限、月額五千円が限度だ、これは非常に正直な御意見かと思います。また、介護保険料の負担感については、負担を感じる人が全体の七割弱を占めておりまして、適当と答えた人の三倍強に達しております。やはり非常に負担感が重いということであります。年金収入のみの高齢者夫婦が負担できる介護保険料にしてほしい、このような訴えもございました。

 これらの結果をもとにしまして、高齢者の介護保険料については、年金受給額に対して過度のものとならないよう、現行の所得段階別の保険料を見直しまして、所得に応じてよりきめ細やかな設定を行って、低所得者の保険料の一層の軽減を図ることが急がれております。この点を大臣にお伺いいたします。

 また、現在、国民年金だけで生活している高齢者が例えばグループホームなどのサービスを利用するということは、現実には困難であります。現行の利用者負担の水準では、介護保険制度の精神と実態はかけ離れている、使いたくとも使えないというのが現状です。この年金水準の確保と同時に、改めて、低年金、低所得の方々に対する軽減措置、これを検討し、たとえ低年金、低所得であってもグループホーム等の施設利用が可能となるよう、利用者負担の軽減、これも考えていくべきと思いますが、いかがでしょうか。

山井大臣政務官 グループホームのことについてお答えしたいと思います。

 私も政治家になるまで老人福祉の研究者で、グループホームの本は五冊ぐらい書かせていただいたことがありまして、やはり古屋委員御指摘のように、特別養護老人ホームには食費、居住費を軽減する制度があるにもかかわらずグループホームにはないということで、非常にいいサービスなんですが、なかなか、所得が十分でない方々には利用しづらいということになっております。

 このことに関しては、財源が伴うことですぐに明快な回答はしにくいんですけれども、重要な御指摘だというふうに受けとめております。

古屋(範)委員 ちょっと時間がございませんので、次の質問に移らせていただきます。

 きょう、わざわざ国土交通大臣政務官がお見えいただいておりますので、住宅政策についてお伺いをしてまいります。

 昨年の六月なんですが、品川区にあります、中高一貫校をつくるために廃校となりました小学校を改修して、高齢者向けの優良賃貸住宅、介護拠点などを複合した施設、ヘルスケアタウンにしおおいというところを視察してまいりました。

 ここは、三階建ての校舎を、一階部分は介護予防拠点、触れ合い広場などにして、二階、三階部分には全室個室、教室を二つに割りまして改修をして、高齢者向け優良賃貸住宅が四十二戸入れるというようなものでありまして、ここの一階はおふろがありまして、近所の方もここを利用していい、私も、有料なんですかと聞きましたら、無料ですというふうにおっしゃっていました。

 そういった地域との交流もできまして、当然、要介護の入居者に食事や介護、安否確認、緊急通報などのサービスが提供されております。また、保育園も併設されておりまして、子供たちの元気な声が響いているという、非常にそうした地域のコミュニティーの再生にもつながるようなところでもございました。

 雨露をしのぐという言葉がありますが、高齢になって、ともかく住宅が確保されているか否か、ここが非常に重要でありまして、樋口恵子さんなんかも、日本において、やはり年金、医療、介護は必要だが、住宅政策が非常に欠けているという御指摘もいただいております。

 そこで、さまざまな介護サービス、生活支援サービスをいつでも受けられる高齢者向けの優良賃貸住宅、また高齢者専用賃貸住宅、この整備、質の確保、先ほどの、学校のあいた教室を使う、あるいは公共住宅にそうした医療、介護のケアをつけていく、こうした住宅政策というものが必要かと思いますが、いかがでしょうか。

長安大臣政務官 古屋委員の御指摘、まさにそのとおりでございます。

 高齢化が進展している中で、介護、医療などの生活支援サービスを受けながら安心して暮らすことができる住まいの整備、これは非常に重要な課題でございます。我々国土交通省といたしましても、厚生労働省と連携して取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 このために、平成二十二年度、来年度の予算でございますけれども、福祉施設、医療施設等の生活支援施設を併設する高齢者向けの住宅の整備に対しまして、地方公共団体の負担なしに、従来は地方公共団体の負担があって国も助成をしていたわけでありますけれども、地方自治体がこのように厳しい財政状況にある中で、地方自治体が負担を負わなくても国が直接助成できる制度を今回盛り込ませていただいております。この制度では、新規の建設だけではなくて、今お話のございました空き校舎の利用、こういった既存ストックの改修というものに対しても支援することとしております。

 我が国の高齢者人口に対する介護施設や高齢者向け住宅の割合というのは、これは欧米諸国と比べても非常に低くなっております。今後とも、厚生労働省としっかりと連携をさせていただきまして、生活支援施設と一体となった質の高い高齢者向けの住宅の供給の拡大を目指して、取り組みを進めてまいる所存でございます。

古屋(範)委員 ぜひ、国土交通省また厚生労働省が連携をして、医療、介護、生活支援などの機能を備えた多機能支援センター、こうしたものの整備をしっかり進めていただきたい、このように思います。

 もう時間がなくなってまいりましたが、最後に、先日もお伺いいたしましたが、介護従事者の処遇アップということで、民主党マニフェストには月々四万円アップするということを掲げていらっしゃいます。大臣も答弁の中でそのように明言をされていましたけれども、この具体的な制度設計、また財源の確保についてどのようにお考えか、お伺いいたします。

長妻国務大臣 まずは今、処遇改善交付金というのがございまして、これは我々もいろいろ事業者に働きかけをいたしまして、今、申請率八〇%になっておりまして、極力、一時金というよりはお給料に上乗せしてほしいというお願いをしているところであります。

 そして、それにつながる制度として恒久措置を考えておりまして、最終的には月額四万円程度の報酬をアップする、こういうようなことで考えております。

 それについて、私どもとしては、今介護のビジョンを検討しておりまして、公明党さんも検討されていると思いますけれども、その中で、どういう道筋で実現をしていくのかというのも提言をしていこうというふうに考えております。

古屋(範)委員 ぜひともこの四万円アップ、子ども手当だけではなく、マニフェストをしっかりと実現していただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。

藤村委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 十七日に、労働者派遣法改正案の要綱が労政審に諮問をされました。私は、昨年十一月の本委員会、また一月の予算委員会で、年末に出された労政審答申のままでは、解散前の野党が出した三党案よりも後退してしまうのではないか、このことを指摘いたしました。要綱が出される前にもっと前向きの、もう少し前向きの検討がされることを実は期待しておりましたが、大変残念に思っております。

 大臣、端的にお答えください。派遣法第二十六条七項で禁止されている期間の定めのない常用雇用について事前面接を解禁すること、もう一つ、派遣法第四十条の五、二十六専門業務について三年が経過した場合の雇用申し込み義務を除外したこと、これらは十二月二十八日の労政審答申の中に盛り込まれていない項目ですが、今度の要綱に盛り込まれたのはなぜですか。

細川副大臣 高橋委員にお答えをいたします。

 派遣先が派遣元との契約を途中で解除するという、いわゆる派遣切りがたくさん起こりまして、派遣労働者の雇用の不安というのが本当に強くなったところで、これも社会的な問題となったところでございます。派遣労働につきましては、できる限り無期の雇用契約で雇用されるというのが、派遣労働者の雇用の安定を図っていくということで、それが私どもとしては最も重要だというふうに認識をいたしております。

 今御指摘の事前面接の解禁や労働契約の申し込みの義務の適用除外のことにつきましては、これは有期雇用の派遣労働者が無期雇用に今転換をしている、これを促進していくというためのものでございます。

 事前面接につきましては、特に登録型派遣の場合などは、これを認めてしまいますと、派遣先の求めに応じまして採用行為が行われるというような、そういう懸念がありますので、これを禁止しているところでございます。したがって、一方で、派遣元に無期雇用されておりますとこの心配はないということで、解禁は問題がないのではないかというふうに考えております。

 そしてもう一つの、派遣労働者の雇用の安定のため、いわゆる専門二十六業務について三年を超えて従事する人に対しては、派遣先がこの業務に新しい労働者を採用する場合にはその派遣労働者を採用しなければいけない、こういう義務を生じさせているわけでありますけれども、しかし、派遣元で無期雇用というふうにして採用されておりましたら、これは派遣先での雇用の安定を図る必要性も乏しいのではないかというふうに思いまして、義務の対象からの免除については問題がないというふうに考えております。

高橋(千)委員 中身の話はこの後いたしますので、私が伺ったのは、労政審答申の中に盛り込まれていないのに要綱になったのはなぜかと聞いているんです。

 時間の関係がありますので、私が答えを言いますけれども、答申の中には、「昨年十一月に第百七十回臨時国会に提出した法案(以下「二十年法案」という。)の内容に、下記の各事項に示した内容を追加・変更した内容の法案とすることが適当である。」と書いてあります。つまり、答申にはないけれども盛り込まれたとするならば、これは二十年法案の中にあったから、それがそのまま引き継がれたとしか解釈ができません。しかし、この二十年法案は、御承知のように、自公政権のときに出されたものであり、既に廃案になっております。

 細川副大臣は、野党三党案をまとめる中心となって頑張った方であります。野党のときに考えるときは、もちろん集中して、登録型派遣、製造業派遣をどうしようか、こういうことに論点が行くのは当然であります。しかし、法案を出すに当たってどうするかといったときに、では、自民党が出した法案がベースだということが念頭にあったのでしょうか。

細川副大臣 そういうことは、結論から申し上げますと、ございません。

 私どもは、選挙におきまして勝利をさせていただいて政権交代をいたしまして、三党によります連立政権ができまして、その連立政権のもとで、この派遣法の改正案についての合意がなされておりました。それに基づいて、私どもは、昨年の秋に審議会の方に諮問をいたしまして、そこで審議をしていただきました。

 その審議の中で、まず冒頭に審議会の委員の皆さん方が、以前の、二十年法案と委員が言われます、その法案についても、そこで労使がしっかりと議論をして、派遣労働者の保護の形での内容の議論をして、そしてまとまったものであるから、それを前提としてさらに議論も進めていく、こういうことで答申の内容をお決めいただいた、こういうことでありますから、私どもは、今回の審議会の答申というのは、私どもの政権で新しく諮問をして内容をいただいたということであります。

高橋(千)委員 今、念頭になかったということを明確にお答えになったと思います。そうであれば、やはりこれは派遣法という制度の骨格をなす部分の改正でありますので、それが特に議論にならなかった、特記されなかったということをもってしては、無理に要綱に盛り込む必要はなかったと私は思うのであります。

 基本は現行法がベースになるべきである。今後の法案策定に当たって、これを削除の可能性もあるということでよろしいでしょうか。大臣に伺います、一言で。

細川副大臣 私どもは、法案の要綱を審議会の方に諮問いたしまして、今議論をいただいているところでございます。

高橋(千)委員 大臣に、一言、あるかないかだけ。

 委員長、要りません、それだったら。

藤村委員長 高橋君、どうぞ。

高橋(千)委員 時間が限られているので、聞いたことに答えていただきたいと思います。

 念頭にないとおっしゃったことは、私は非常に重要だと思います。ですから、今後、あえて労政審でこうすべきだという指摘があったわけではないのだということをしっかりと踏まえて、法律の作成に当たっていただきたいと思います。

 話を続けます。

 平成二十年三月二十五日閣議決定の規制改革推進のための三カ年計画では、紹介予定派遣以外の労働者派遣における事前面接の解禁について、「二十年度中に検討」と明記されました。それが二十年法案の中に盛り込まれたものであろうということだと思います。その中で、こんなことが書かれています。「事前面接の禁止は、派遣労働者の就業機会が不当に狭められないようにすること等に目的があるとされているが、労働者派遣の役務を現実に提供するのは、生身の人間である派遣労働者であって、機械やロボットではない。」

 私は、非常に、何となく怒りが込み上げてくるんですね。生身の人間だから機械やロボットではない、そこまでわかっていながら、生身の人間を物件費として物扱いし、必要なときだけ発注する、首を切られても、派遣先は注文をやめただけだから痛みに感じないのだ、それが派遣労働という間接雇用の最大の問題ではないでしょうか。

 例えば、自由法曹団の派遣黒書では、さまざま紹介をされておりますが、コニカ狭山工場に派遣されたAさんは、四人でコニカの総務課長から一時間程度の面接を受けて、一人が落とされました。正社員と同じ部署で同じように働き、正社員と同じパソコンを使用させていただいた。一年後にはAさんを直接雇用することになったと、グループリーダーが正社員の前で紹介をされたということです。しかし、十年以上も働いた上に、これから半年後に、生産減少するからということで契約が終了され、雇いどめをされました。

 一月の予算委員会で紹介した日産のTさんも、学生時代のデッサンを持参させて、二人が面接を受け、Tさんだけが合格をしましたが、六年間派遣で、雇いどめという実態でありました。

 スキルを面接で試される、このことは、長く働ける、正社員になれると期待をさせます。しかし、最後は、業務悪化のためにと簡単に雇いどめに遭っています。これは結局、常用代替ではありませんか。

長妻国務大臣 先ほど言われた派遣の問題点ということでありますけれども、おっしゃられるように、派遣ということがかなり、日雇い派遣等々、規制緩和し過ぎると、やはり直接雇用をするよりも当然、雇い主、派遣先は、労務管理や安全管理等々、あるいは仕事を断るということについて、非常に心理的負担が少なくなるということで、労働者の権利を著しく阻害する、こういう問題意識は持っております。

 先ほど言われた事前面接の解禁等につきましても、細川副大臣から説明がございましたけれども、派遣元で無期雇用される派遣労働者に対する、こういう前提でございますので、派遣先に仕事が仮になくなったとしても、派遣元はその方を雇い続ける、こういう前提のもと、事前面接の解禁ということでございますので、この二十年度改正に比べていただくと、もちろん今回の我々が考えている法案は厳しい法案になっているところでありますので、ぜひ御理解いただきたいと思います。

高橋(千)委員 そうじゃないんです。二十年法案を今言っているんじゃないですか。事前面接の解禁というのは、二十年法案そのものなんですよ。何も、よくなったんじゃないんです。ここをちゃんと、間違えないでくださいね。

 大臣は、一月の予算委員会での私の質問に対して、常用型という働き方について、平時では安定している、こうおっしゃいました、平時では。そうすると、これは、雇用契約に期間の定めがないと書かれていても、今は平時ではないんだ、景気が悪化しているんだと言えばもう合理的な理由になるんだ、そういうふうに逃げ道をつくることになるんです。

 そもそも、派遣会社が、今契約の先がなくても、派遣先の仕事がなくても、その人の身分を保障するだけの体力がありますか。規制緩和を言う前に、特定事業所を届け出制ではなく許可制にするべきではありませんか。

細川副大臣 通告がなかったもので、突然の御質問でありますから、その問題について直接にお答えというわけにはまいらないと思います。というのは、今、私どもは、審議会の方に諮問をして、御審議をいただいているところでありますから、むしろその審議を私どもは見守る、こういうことでございます。

高橋(千)委員 ぜひ検討してください。

 もう一つの、二十六専門業務に関する雇用契約義務の除外については、結局、ずっと派遣のままということになってしまいます。雇用契約義務が除外されれば、ずっと派遣で、不安定化が常態化するのではないか、このことをまず伺いたい。

 ちょっと、時間の関係がありますので、続けて伺います。

 この二十六専門業務について、二月八日の志位委員長の質問もあり、大臣が通達を出してくださったこともあり、見直しが進むのかなと思っているんですけれども、具体的に、二十六専門業務について、政令の見直しはいつごろを目途にやるのでしょうか。

 その際、通達で着目をされた、五号事務用機器操作、八号ファイリングなどは、もう当然のこと、今どきそれは専門業務じゃないよというのは当然のことでありますが、全体について検討し、絞り込むべきだと私は思っています。

 しかし、業界からは、逆に、追加、拡大の要望があると聞きました。例えば、経団連の規制改革要望〇七年では、いわゆる二十六業務の拡大として、一つは業務の種類をふやすこと、もう一つは二十六業務の内容、つまり、営業といっても営業だけではない、保守、点検、修理も必要だという形で中身を膨らませる、そういう意味の拡大を要望しています。逆に、見直しといっても中身は拡大するのでは、法の趣旨からいっても違います。

 どのようなスタンスで取り組むのか、伺います。

細川副大臣 二十六の専門業務につきましては、委員が今御指摘のような、一般事務と事務用機器操作あるいはファイリングとか、そういうのがなかなか明確ではないというような御指摘もありましたので、せんだって、通達でしっかりこの監督、周知を徹底するようにということで、徹底を図ったところでございます。

 そこで、二十六業務の見直しの件でありますけれども、この間の総理のお話も、今すぐ政令の見直しというのではなくて、しかし、専門業務につきましては、委員が御指摘のような話もありますし、一方で、業務を絞れというような話、いろいろありますから、これは今後、また審議会等でいろいろと審議はしていただくということになりますけれども、今はやはり、先ほども申し上げましたように、この専門業務についてのしっかりした、せんだって通達を出しました、そこをまずは徹底していきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 先日出していただいた二月八日の通達、「期間制限を免れるために専門二十六業務と称した違法派遣への厳正な対応」ということで、この二カ月間、集中的な指導監督をやられるということで、非常にありがたく思っております。

 とりわけ、私、とても大事だなと思うのは、この通達の中で指摘をされているのは、専門業務と称した違法派遣の場合は、契約の最初の日を確認するように、つまり、既に期間制限を超えている可能性があるからということが指摘をされております。このことを本当に徹底していただきたい。つまり、名ばかり専門業務なわけですから、これは、一般派遣の一年と同じ扱いで、期間制限違反として指導するということをぜひ確認させていただきたいと思います。

 最後になりますが、私は今、事前面接の話をしました。それから、契約期間を過ぎた場合の契約義務を除外する問題を言いました。これが実はセットになったときにどういうことがあるんだろうと思うんですね。

 つまり、二十六専門業務に対して、もっと高度な特殊な業務があるんだよ、もっとふやしてほしいということが業界の中からもちょっと声が上がっている。そうすると、特殊な業務だからこそ事前面接で雇いたいなという話に当然なりますよね。事前面接で特定をして有能な人を雇いたい。だけれども、期間制限はかからないし、雇用責任は派遣先にはないので、とても気持ちが楽なわけです。派遣先にとって余りにも都合のいい話になりかねない。これが非常に危険と思うわけであります。

 あくまでも常用雇用の代替防止が前提であるということをこの間もずっと言ってきた、その前提が崩れるのではないかということが非常に心配であります。そうではないと一言、言っていただきたい。

細川副大臣 派遣労働につきましては、やはり一番大事なのは雇用の安定だということだと思います。そこで、派遣労働者が派遣元でしっかりと期間の定めのない、これになるということが私どもはまずは大切なことだというふうに思っております。

高橋(千)委員 時間が来ましたので、また次の機会にお願いします。

藤村委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 本日は、年末年始に開設された、いわゆる公設派遣村について、大臣に質問いたしたいと思います。

 いわゆる公設派遣村は、昨年十月二十三日に政府の緊急雇用対策本部が策定した緊急雇用対策において、年末年始に求職中の貧困・困窮者が再び派遣村を必要とすることなく、安心して生活が送れるようにすることを目標に、年末年始の生活相談の一環として、国の要請を受けた地方自治体が実施したものであります。

 東京都は、年末年始に国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて、失業者のために宿泊と食事を提供しました。その後も、都内の別の施設を宿泊場所として提供したわけであります。都では、昨年の十二月二十八日からことしの一月四日まで、年末年始、八百六十名の方々が利用されて、四十代と五十代の割合がそれぞれ三割前後ということであったそうであります。金融危機以降の厳しい経済状況が我が国の雇用情勢に大きな影響を与えた結果だということが見てとれると思います。

 しかしながら、今回の公設派遣村については、いろいろな角度からの報道が行われております。私の手元には産経新聞がありますけれども、「ごね得許した「派遣村の品格」」なんていうふうに書いているところもありまして、「不平を言えば融通が利く。みんなごね得だと気付いている」派遣村を出た男性はこのような形で皮肉ったとか、生活費あるいは交通費として支給された二万円を使ってしまって、そのまま行方不明になってしまったとか、いろいろな形で報道された部分があります。

 東京都で実施された公設派遣村は、求職中で住居のない方を対象としましたけれども、結果を見ると、公設派遣村は何のために開設をされたのか。単に食事と宿泊場所を提供するだけで、雇用に必ずしも結びつかなかったというふうにも言われております。

 こちらは東京新聞ですけれども、派遣村閉村に当たっての十八日、仕事が決まったのは、東京都ではたったの十五人だったというようなことが書かれております。

 こうしたことを踏まえて、今回のいわゆる公設派遣村設置の意義と、また、これの疑問に対する答えをお願いしたいと思います。

山井大臣政務官 後ほど、大臣からも答弁があるかと思いますが、私も元旦、鳩山総理、菅大臣、長妻大臣、細川副大臣と一緒に行かせてもらいましたし、夜中まで公設派遣村におりましたので、まずお話をしたいと思います。

 確かに、八百六十名もの方が利用されたということで、さまざまな方がおられました。かつ、さまざまな批判あるいは評価の声もあったかと思います。

 しかし、私も夜中までいて、さまざまな方と話をしましたが、この場所がなかったら、本当にことしは寒いから凍死していたな、ここがあってよかったなということを口々に、多くの方が言い合っておられましたし、また、その中には女性のホームレスの方もおられました。ことしの年末年始は殊さら寒かったわけでありまして、これでは本当に路上で凍死をする方、あるいは中には、年を越せなくてみずから命を絶っていたかもしれないよというふうにぼそっとおっしゃっておられた方もおられました。

 そういう意味では、さまざまな、柿澤先生からの御指摘も踏まえながら、反省点は反省しながら、今後に結びつけていきたいと思っておりますが、やはりそこは今後、住宅手当の収入要件の緩和ということで、生活保護に頼らないようにしていくということを一昨日も発表させていただきまして、今まで八万四千円以下の人にしか住宅手当が出なかったのが、十三万八千円以下というふうに拡大しましたし、また、六カ月までという要件を九カ月までというふうに延ばして、就労支援、第二のセーフティーネットの整備、できるだけ生活保護に頼らない形にしていきたいというふうに考えております。

長妻国務大臣 今の御指摘ですけれども、八百六十人が東京の公設の一時宿泊所を利用されて、今の時点で東京及びハローワークを通じて就労が確認できた方は、二十三人というようなことになっています。

 ただ、この登録は、この一時宿泊所は、基本的にハローワーク等で求職登録、仕事を探すという登録をした方のみここに来ていただいて、仕事を探していただくというのが一つの前提となりました。そして結果として、八百六十名の方の半分程度は生活保護を受けるということになりました。

 ただ、これも、私もお邪魔をして、本当にどこにでもいる若者が公園で寝泊まりせざるを得ない。その方は努力をされておられるけれども、なかなかそこから抜け出せないという方もいらっしゃるわけでありまして、そういう方々の中には、やはり生活保護を受けるべき方もいらっしゃるわけで、そういう方が適正に受けるというようなことにもつながる。

 ただ、御指摘いただいた、その後、なぎさ寮というところに一時宿泊所から移っていった方で、五百六十名の方に二万円を、おっしゃられるような形で支給いたしましたが、四百七十名の方はちゃんと領収書を持ってきていただいて精算をしたわけでございますが、その残りの九十名の方が精算しないままというふうになっておりますので、これについては、自治体の窓口に来所した際などを使って、その九十名の方からもお金をきちっと返していただく、こういう措置は我々はとるということであります。

柿澤委員 今、この公設派遣村を通じて就労につながったのが、現時点で二十三人ですか、東京都で、こういう数字を出していただきました。また、先ほどの、支給された二万円については九十人の方が依然として精算を終えていないというお話でございましたが、この事業そのものは、東京都にお伺いをいたしましたら、二十二日間、オリンピック青少年センター及びその後の宿泊施設で公設派遣村の事業が行われたわけですけれども、二十二日間で一億八千万の予算をかけたというふうなことでありました。

 一億八千万というのは随分多いなという感覚でお尋ねをしたんですけれども、そのうち一番大きかったのは事業の委託費でありまして、やまて福祉会というところがこの派遣村の運営を行った。

 このやまて福祉会というのは、いわゆる生活保護を受けた方の生活寮などを運営している法人でありまして、大変活発な事業を最近は行われております。平成二十年度の決算を見ますと、事業収入に対して出資の差額、事業のもうけになるんですけれども、七千四百七十万の収益というか収支の差額を上げている。生活保護を受けるお手伝いをして、自分のところの生活寮に入ってもらって、そこで家賃を払ってもらう一方で、月二万円の生活費を支給する、こういう形で事業を行われているんだそうであります。

 まさにこの二万円の生活費というのが、今回、恐らく、このやまて福祉会が通常行っている事業にのっとって、倣った形で支給をしたのではないかというふうに推測をいたしますけれども、生活保護を受ける手伝いをする、寮に入ってもらう、こういう形の事業を行っているところにこの派遣村の事業をお任せすることによって、結果として、八百六十人もの方が来て、そして生活保護の相談を四百数十人が受けて、ほとんど、九割以上が生活保護の決定を見ている、こうした形になってしまっている。

 就労支援というよりは、むしろ生活保護を受けるための窓口として今回の公設の派遣村が機能してしまったのではないかというふうに思いますけれども、その点、いかがでございますでしょうか。

長妻国務大臣 一昨年は、湯浅さんという方が派遣村を日比谷公園でやられ、社会問題になりました。ことしの元旦、あるいは年末には、今おっしゃられたこの公設一時宿泊所でありますけれども、私自身は、そこに八百人を超える方が来られるということ自体、やはり改善する必要があると。

 どういうことかというと、こういう取り組みを年末年始だけやるのではなくて、我々はこの教訓を得て、日常的にもハローワークで、仕事の相談だけじゃなくてお住まいの相談、そして必要があれば生活保護の御紹介、これをハローワークでもやるということで、今回の第二次補正予算で御了解いただきましたけれども、生活、住居のアドバイザーをハローワークで初めて配備するということにいたしました。

 ですから、今後は、年末年始だけというよりは、日常的にハローワークで、本当に職にお困りになって、やはり家がないと職も探せないというのは当たり前だと思いますけれども、御自宅の非常に御不安な方にいろいろサービスがありますので、それをアドバイスする人を恒常的に配備する、こういう必要性がある。年末年始、こういう形で開いても、そういう方が来るというのではなくて、日々の行政の中で問題を解決するべきであるということは強く感じたわけでありまして、それに向けて取り組んでまいります。

柿澤委員 東京都の担当者にいろいろ、今回質問の前にお話を伺ったんですけれども、来年これをまたやりますか、やれと言われたらやりますかと言ったら、ううんという反応が返ってきました。まあ、必要に応じてやりますという最終的なお答えでありましたけれども。

 最後に一つだけ。きょう報道された内容でありますけれども、この問題を初めとする貧困問題に関してアドバイスを行うという立場で、政府の内閣府の参与として活動されてこられた湯浅誠さんが、何か辞意を表明されているということが報道されております。

 菅大臣が慰留をされているということでありますけれども、この湯浅さん、公設派遣村にも大変かかわりの深い方でありますし、また最初の立ち上げをやられた方でもありますので、長妻大臣は湯浅さんが政府の参与の職を辞する意向を示しておられるということを御存じかどうかということと、それに対する対応がもしあったらお聞きをいたしたいと思います。

山井大臣政務官 ちょっと事実関係だけ。そのことは私も間に入って動いておりましたので、一言だけ申し上げますと、辞意を表されたということは聞いておりますが、もともと湯浅さんは、年末年始の公設派遣村のために、短期間、参与としてやりたいということをおっしゃっておられまして、いろいろ報道にも出ておりますけれども、今後もまた、そういう何かお役に立てることがあったらお役に立ちたいということをおっしゃっておられます。

藤村委員長 長妻大臣、短くお答えください。

長妻国務大臣 私も聞いておりますけれども、引き続き、厚生労働省の中にナショナルミニマム研究会というのがございまして、これは最低限度の生活は何かという基準をつくる会でございますけれども、そのメンバーは今、湯浅さんもメンバーの一人でございまして、それは続けていただけるものだというふうに考えております。

 いずれにしても、我々はいろいろな教訓を得ましたので、年末年始だけではなくて、日常的な活動、行政が必要だということで取り組みたいと思います。

柿澤委員 それならそれで、四日か十八日に発表していればこういうことにならなかったのではないかなというふうに思いますので、経過がちょっとよくわからないところもありますが、いずれにしても、時間も過ぎておりますので、この質問はこれで終わりとさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十五分散会


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