衆議院

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第4号 平成22年2月24日(水曜日)

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平成二十二年二月二十四日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 藤村  修君

   理事 青木  愛君 理事 石森 久嗣君

   理事 内山  晃君 理事 黒田  雄君

   理事 中根 康浩君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    磯谷香代子君

      大西 健介君    岡本 英子君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      斉藤  進君    園田 康博君

      田名部匡代君    田中美絵子君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      初鹿 明博君    樋口 俊一君

      福田衣里子君    藤田 一枝君

      細川 律夫君    三宅 雪子君

      宮崎 岳志君    室井 秀子君

      山口 和之君    山崎 摩耶君

      山井 和則君    坂口  力君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  水野 智彦君     磯谷香代子君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     水野 智彦君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

    ―――――――――――――

二月二十三日

 平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案(内閣提出第六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案(内閣提出第六号)


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     ――――◇―――――

藤村委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、自由民主党・改革クラブ所属委員に対し御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

藤村委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、自由民主党・改革クラブ所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。長妻厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

長妻国務大臣 おはようございます。

 ただいま議題となりました平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 次代の社会を担う子供の健やかな育ちを支援するために、子供を養育している方に対し、子供一人につき月額一万三千円の平成二十二年度分の子ども手当を支給することとし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、子ども手当の支給についてであります。

 子ども手当は、中学校修了前の子供を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父または母である等の支給要件に該当する方に支給するものであり、その額は、一カ月につき、子供の数に一万三千円を乗じた額としております。

 また、市町村長は、受給資格等について認定をし、子ども手当を支給することとしており、その支払い期月は、平成二十二年六月及び十月並びに平成二十三年二月及び六月としております。

 第二に、子ども手当の費用についてであります。

 子ども手当の支給に要する費用については、児童手当相当部分は、児童手当法の規定に基づき、国、地方自治体及び事業主が負担することとし、それ以外の費用については、全額を国が負担することとしております。

 なお、公務員に係る子ども手当の支給に要する費用については、全額所属庁が負担することとしております。

 このほか、子ども手当について、差し押さえ禁止等の受給権の保護や公租公課の禁止を定めるとともに、子ども手当を市町村に寄附することができる仕組みを設けることとしております。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き平成二十二年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

藤村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

藤村委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。相原史乃君。

相原委員 民主党・無所属クラブの相原史乃でございます。

 生まれて初めての委員会質問となります。トップバッターで緊張しておりますが、一生懸命質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 さて、昨年の決着の夏の総選挙で、私たち民主党は、一つ一つの生命を大切にする、国民の生活が第一の政治実現を国民の皆様に訴えてまいりました。そして、多くの皆様から御支持をいただいて、歴史的な政権交代を実現させることができました。その際に、最重要政策として掲げたのが子ども手当です。

 これまで私たち民主党は、人重視のさまざまな政策提言を積み重ねてまいりましたが、子供政策については、その根本に置いてきたのがチルドレンファースト、子供第一という考え方です。子供自身が育つことを応援し、子供も大人も高齢者も、はぐくみ合うことを通じて育ち続けることを社会全体で応援していこうということが大切であると思います。

 今の日本において、少子化、超高齢化、シングル化に伴う人口減少ほど深刻な問題はありません。鳩山内閣における子育て政策としましては、子ども手当とともに、保育所の整備などの保育サービス、そして仕事と生活の調和であるワーク・ライフ・バランスの三本の柱があると思います。これらの総合的な子育て支援において緊急に必要な措置として、まずは国民の皆様に子ども手当を支給させていただくことを何よりも優先するべきであるとのお考えから、法案が提出されたものと理解しております。

 長妻大臣の所信表明にありましたように、子ども手当は、結果として、少子化の流れを変え、子供の健やかな育ちの確保や子供の貧困率の削減などにつなげる重層的なねらいがある政策であると考えています。こうした視点を踏まえ、この子ども手当法案が持つ歴史的意義について、長妻大臣の所見をお伺いしたいと思います。

長妻国務大臣 私も、生まれて初めて質問した相手は一生忘れないと思いますので、本当に全力で答弁をさせていただきたい。

 相原委員におかれましては、経営者としていろいろ行政の理不尽さを御経験されたということで、今後とも御指導賜りたいと思います。

 所信表明の演説等々、きのうの本会議でも申し上げましたけれども、やはり今まで子育てに対する予算というのは、どうしても後回しにされがちというか、今までも公明党中心の努力で児童手当というのがございましたけれども、それでもまだ、先進諸国に比べると、GDPの比率で子育てにかける予算が低いということがございました。何しろ、これが今は重要だといういろいろな懸案がある中で、子供の育ちというのは将来の話も含まれておりますので、後回しにされがちでしたけれども、政権交代を機に、今回、思い切った政策ということで打ち出しているところであります。

 社会全体で子供の育ちを応援していくという趣旨がまず大前提にあり、そして具体的には、控除から手当へという考え方も根底にございまして、高額所得者に有利になりがちだった控除ではなくて、的確に必要な方に多くのお金が届く手当という考え方のもと、結果として少子化の流れを変えられればありがたい。二〇五五年には人口は九千万人を切って、大変な社会になるというのが目に見えている。今まで政治が大きな政策で流れを変えるメッセージが出ていなかったんではないかということもございますし、あとは、結果として、子供の教育の質も上げられるんではないか、生活の質も上げられるんではないかというようなことも考えているところであります。

 いずれにしましても、今回の経費、少なくない経費でございますが、未来への投資という発想で、本当に日本国で生き生きと暮らしていただく若い力を伸ばしていくという政策であります。

相原委員 長妻大臣、ありがとうございました。

 少し重なりますが、次に、長浜副大臣にお聞きいたします。

 子ども手当の導入により、今まではある一定の条件を満たすことで対象となる所得控除から、すべての子供を対象に支給される手当へと政策がシフトされることになります。これはどのような目的のもとに行われ、どのような効果を期待されていらっしゃるのでしょうか。

長浜副大臣 社会的弱者あるいは福祉の問題に大変造詣の深い相原さんから御質問をいただきました。この子ども手当の法案を作成する過程の中においても、初当選された相原さんからもいろいろアドバイスをいただきながらつくってまいったところでございます。

 今御質問にあった部分というのは、私も税調のメンバーでありますので、いらっしゃる皆様方もインターネットを通じて税制の議論をごらんになった方も多いと思いますけれども、控除とそれから手当の問題だというふうに認識をします。

 日本は累進課税で所得税を課しておりますから、ある一定金額を仮に控除する、所得から控除する所得控除を使う場合には、比較する場合には、高所得の方の方が、メリットといいますか、非常に恩恵を受ける部分が多いというふうに思われるわけでございます。民主党の党の政策の中においても、控除から手当へという流れの中においては、より効果的に社会的な弱者の方々に対しての手当を、まさに手当を施すという意味においては、控除から所得へ、こういう政策シフトの中においては大変大きな効果があるというふうに認識をいたしております。

相原委員 長浜副大臣、どうもありがとうございました。

 次に、山井政務官に幾つかお聞きいたします。

 このたびの子ども手当は、従来からある児童手当制度の仕組みを残し、これを生かす形で実施する予定であると聞いています。なぜすべて新たな制度で実施しないのか、既存の制度を使う理由はどこにあるのか、国民にはややわかりにくい点があるかもしれません。

 そこで、どうしてそのような形にされたのかを御説明いただきたいと思います。また、自治体の事務負担はふえることがあるのかないのかもあわせましてお聞かせください。

山井大臣政務官 相原委員にお答えを申し上げます。

 この子ども手当は私たちのマニフェストの大きな目玉でありまして、やはり待ち望んでおられる方々が多いということで、何が何でも六月からは支給したいというふうに考えておりました。しかし、今までは児童手当という制度がありましたもので、総務省や、まさにこれを実施してくださる市町村との議論、調整の中で、今年度は児童手当という制度を残すということになりました。

 しかし、一番重要なのは、これはやはり、過去の児童手当の制度変更のときにも支給が間に合わないということがありましたから、この児童手当法を残すということによって六月実施が困難になったらだめですので、今回は市町村の事務に配慮をして、とにかく事務負担の観点から、一括して一万三千円を子ども手当として支給するということに、そして、平成二十一年度の第二次補正予算において地方公共団体のシステム経費を措置するとともに、既存の児童手当受給者は申請を免除するなどの経過措置を講じ、地方の業務負担の軽減にも配慮しているところでございます。

相原委員 ありがとうございました。

 引き続き、御質問させていただきます。

 従来からある児童手当では、親のない子供や虐待を受けて施設に入所している子供たちは支給対象ではありませんでした。今回、子ども手当を導入することによって、これらの子供たちに対して何らかの措置はとられるのでしょうか。これまでも国会で何度か議論がありましたが、これは重要な点だと考えておりますので、再度確認させていただきます。

山井大臣政務官 相原委員にお答えを申し上げます。

 まさに児童手当では、親のない子供たち、施設に入っている子供たち、約五千人、あるいはそれ以上と推定をされておりますが、その方々には児童手当は出ませんでした。それはやはり、すべての子供を支援するという観点から問題ではないかということで、厚生労働省としても検討しておりましたが、先日の政策会議におきましても、相原委員の方から強く、やはり最も社会の支援を必要としている親のない子供たちに、ぜひ子ども手当あるいはそれに準ずる形で支援をしてほしいという強い強い御指摘、そして要望をいただきました。

 あの政策会議での多くの民主党議員の方々の声も踏まえて、今回は、平成二十二年度においては、施行までの期間や市町村の事務負担等も考慮すれば、子供を保護し、見守り、監護する方に手当を支給するという現在の支給要件を法律上変更するということは、児童手当とまざった法案でありますので困難であります。

 このため、別途、例えば安心こども基金の活用により、施設内の親がいない子供などについて、施設に対し、子ども手当相当額が行き渡るような措置について検討しているところでありまして、平成二十三年度以降の取り扱いについては、制度のあり方の検討の中で、子ども手当の恩恵が行き渡るような子ども手当制度における対応を検討してまいりたいと思っております。

相原委員 ありがとうございます。

 改めまして、私も精いっぱいこの件は頑張っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次に、国家公務員の世帯に対する給付の実施につきましてお伺いいたします。

 子ども手当の給付に関しては、原則として市町村が担うこととなっておりますが、法案では、国家公務員の子供たちについては、市町村ではなく、所属省庁より子ども手当が支給されると定められているものと認識しております。なぜそのような違いが出てくるのか、理由をお聞かせください。

山井大臣政務官 相原委員にお答えを申し上げます。

 現行の児童手当に関してもこれは同じでありまして、所属庁において処理する方が、市町村の事務が簡素化し、諸手続や支給事務に関する実務上の便益があること、また、年金制度などほかの社会保障制度においても例があること、何よりも市町村の事務の軽減ということで、今、児童手当に関してはそうなっております。

 平成二十二年度の子ども手当においても、現行制度から円滑に移行を図るために、市町村の事務負担等にかんがみ、従来と同様に、所属庁において行うこととしたところであります。

相原委員 ありがとうございました。

 子ども手当が支給されても、結局貯蓄に回るのではないかと批判する方々がいらっしゃいます。実際、日本の貯蓄率は、一九九二年に一四・六%で、先進国中、比較的上位でしたが、最新のデータである二〇〇八年には三・六%となり、アメリカ並みの低い貯蓄率にとどまっている現状では、将来への不安から、まずは子供の将来のための貯蓄をしようと考える世帯があったとしても不思議ではありません。

 しかし、今後、政府・民主党の政策が実現し、高校無償化や大学奨学金の充実が図られれば、将来の不安も解消され、貯蓄に回ることなく、直接的に子供の育ちのために使われるようになるのではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

山井大臣政務官 御指摘のように、今回の子ども手当が貯蓄に回ったり、あるいはほかの、子供以外の趣旨に使われないようにする、これは非常に重要なことだと思っております。

 そのためにも、今回、子ども手当法案においては、受給者の責務として、手当の支給の趣旨に従って子ども手当を用いなければならないことを定めておりますし、地方公共団体とも連携を図りながら、その趣旨の徹底に努力をせねばならないと思っております。

 さらに、相原委員がおっしゃいますように、やはりこれは、予算がしっかりと四月までに成立すれば、四月から、この子ども手当、十年ぶりの診療報酬のプラス改定、高校授業料実質無償化等で、必ず景気も上向いていくと思いますので、そうなれば、ますます子供の育ちが総合的に応援できると考えております。

相原委員 さらにお伺いいたします。

 子ども手当の本来の趣旨について、もっと国民の皆様にアピールをして、給付されるお金は子供の健やかな育ちのために使うものであるということをお伝えし、理解していただかなければならないと考えますが、子ども手当に関する啓発活動について、具体策、もしくは個人的なアイデアでも結構ですので、お示しいただきたいと思います。

山井大臣政務官 先ほども答弁しましたように、法案に明記しておりますことと同時に、地方公共団体との連携を図っていきたいというふうに思っておりますが、ここは、長妻大臣がイクメン、カジメンということのPRに努めておりまして、やはり、お父さん、お母さん含め、社会全体で子育てをやっていこうということを言っておられますので、このことに関しては、長妻大臣を先頭に、精いっぱいPRしていきたいと思っております。

相原委員 ありがとうございました。

 ことしの一月二十九日に、「子どもの笑顔があふれる社会のために」と題された子ども・子育てビジョンが策定されました。これは、政府が少子化社会対策基本法に基づき、二〇一〇年から向こう五年間の包括的な施策をまとめたものです。しっかりとした理念を打ち出し、政策四本柱と十二の主要施策を掲げた、非常に意欲的ですばらしいものであると思います。まとめ上げられた関係者の皆様に敬意を表したいと思います。

 ビジョンには、現在では七十九万人とされる延長保育を受けている子供たちを、平成二十六年には九十六万人とするなどの数値目標が掲げられていますが、これらの数値目標はどのように設定されたのでしょうか。算出根拠につきまして御説明いただきたいと思います。

山井大臣政務官 相原委員にお答え申し上げます。

 今回の子ども・子育てビジョンというのはまさに画期的なものであると思っておりまして、その理由は、すべての市町村において子育て世帯を対象としたニーズの調査を行いまして、それにより把握したニーズ量そのものを計画的に実現することを基本に数値目標を設定しました。

 また、このニーズにおいても、単に既に顕在化している待機児童の解消を目標とすることだけではなくて、今後女性の就業率がどんどん上昇していくことに対応できるように、潜在的な需要をニーズ調査で把握して、意欲的な数値目標を設定したところでございます。

相原委員 積極的な数値目標を掲げられたことに対しまして、高く評価する声を私も伺っております。重要なことは、それを達成することであると思います。それぞれの目標達成に向けた長妻大臣の御決意のほどをお伺いしたいと思います。お願いいたします。

長妻国務大臣 今回、今後五年間に向けた子育てビジョンというのを発表いたしましたけれども、抽象的な話ではなくて、具体的に数多くの数値目標を、一つ一つは申し上げませんけれども、設定をいたしました。それについて、今、厚生労働省内で、五年後を見据えた具体的なプランづくりを進めておりますので、何としてもこの目標を達成するべく努力をしていきたいというふうに考えております。

相原委員 ありがとうございました。

 子ども・子育てビジョンでは、保育所の受け入れ児童数を毎年五万人ずつ増加していくこととしており、質の高い保育士の確保が必要であると認識しております。そのためには保育士の処遇向上が必要であると考えますけれども、具体策につきまして御説明いただければと思います。

長妻国務大臣 保育士の処遇向上ということでございますけれども、今、いろいろな施策に取り組み、特に地方自治体が、保育所の運営経費を国の補助も入れて賄っていただいておりますので、延長保育とか病児あるいは病後児保育について、やはり保育士さんがきちっと報酬が得られるような、そういう体制を整備するとともに、職業訓練でも、保育士さんの資格を取るための職業訓練のコースというのも今充実をさせておりますので、そういう意味では、質も高め、そして労働が集中しないように保育士さんの数もふやしていくというような形で、その支援も必要だというふうに考えております。

相原委員 ありがとうございました。

 政府は、社会全体で子育てを支えることにより個人の希望の実現を図ろうという理想を掲げ、子ども手当を創設しようとしています。子ども手当は、従来のいわゆる少子化対策から新しい子ども・子育て支援へとかじを切る第一番目の大きな切り札であると考えます。

 しかしながら、国民の皆様の貴重な税金を大規模に投入するものでありますので、その政策効果についてしっかりと検証していく必要があると考えます。世論調査等により実態を把握し、しっかりと検証していくということを強くお願いしたいと思います。

 また、長妻大臣は、子ども手当、保育サービス、そしてワーク・ライフ・バランスの三つが子育て政策における三本の柱であるとおっしゃっておりますが、私も、ワーク・ライフ・バランスは一人一人の幸せの実現のために本当に重要であると考えております。ワーク・ライフ・バランスの実現のためには何が必要であるとお考えでしょうか。具体的な政策、個人的な見解でも結構ですので、長妻大臣からお聞かせ願えればと思います。

長妻国務大臣 まず、前段のお話でございますけれども、この子ども手当が平成二十二年度支給された後、具体的にどういう使われ方が多かったのか、あるいはどういう効果があったのか、一年間だけではなかなかわかりづらい部分もございますけれども、それをきちっと検証していこうということは我々も考えているところであります。

 そして、三つということで、現金支給と、保育所整備などの現物支給とワーク・ライフ・バランス、仕事と生活の調和ということでございますけれども、統計データを見ると、六歳未満の子供がいる夫の家事の時間ということで、日本は一日一時間、アメリカ三時間、イギリス約三時間弱、フランス二時間半、ノルウェー三時間ちょっとということで、これは私も、自分のことを棚に上げて、余り家事、育児を手伝ってこない方でした。これは本当に今、反省をしているところであります。

 そういう意味では、育児をする男性、イクメン、あるいは家事をする男性、カジメンというような、やはりその意識を持っていただきたいということを、みずからの反省も込めて申し上げているところです。

 ただ、そういうことを思っても、具体的に、やはり仕事が忙しかったりいろいろな事情でできないということがありますので、我々としては、ことしの六月三十日から、企業に対するいろいろなルールが変わります。一つは、三歳までの子を持つ労働者に対する短時間勤務制度というのを義務化いたします。これについては、八時間労働ということでありますが、三歳以下のお子さんを持っている働く方に対しては、例えば短い労働時間というのも認める、こういう制度を義務として入れてくださいということが始まりますし、あるいは、今までの、育児休業を取得する場合の休業期間を延長していくということで、通称パパ・ママ育休プラスと言っているんですけれども、そういう措置も入れます。

 ただし、百人以下の企業はなかなか厳しいということで、それは二年間猶予をいたしますけれども、そうでない百人以上の企業はことしの六月三十日から今の施策を実施して、できるだけほかの国に劣らないような、そういう育児に対しての男性の協力ということも我々は体制を整備しようというふうに考えております。

相原委員 ありがとうございました。

 子ども手当の理念や実施に当たっての疑問点などについて御質問させていただきましたが、大変わかりやすく丁寧に御答弁いただきましてありがとうございました。これにて質問を終わります。

藤村委員長 次に、田中美絵子君。

田中(美)委員 民主党・無所属クラブの田中美絵子でございます。

 本日は、民主党マニフェストのまさに一丁目一番地でございます子ども手当法案につきまして質疑に立たせていただき、光栄に存じます。

 昨年の夏の総選挙の前からも、そして当選後の今日に至るまで、地元から、たくさんの皆さんから、子ども手当を一日も早く実現していただきたい、そのような声をたくさん聞いてまいりました。子ども手当を今国会に提出していただき、そして本日の委員会質疑を迎えるまでの大臣以下厚生労働省の皆様方の御苦労に、心から敬意を表する次第でございます。

 当選したての身でございますので甚だ僣越ではございますが、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、子ども手当法案につきまして、まず総論的な事柄について伺います。

 最初は、法案の趣旨についてでございます。法案の第一条に、この法律の趣旨とし、「子どもの健やかな育ちを支援する」とあります。この子供の健やかな育ちとはどのような概念でしょうか。法律に使うのは初めての文言と伺いますので、大臣にお願いいたしますが、言葉の定義をお教えください。

長妻国務大臣 お答えをいたします。

 子供の健やかな育ちというのはどういうような定義かということでございますけれども、これは、御存じのように、日本の国の子育てにかける予算というのは、先進国に比べますと、GDP比でいいますと最も低い国の一つだということであります。当然、お子様の育ちという意味では、現金の支給以外の施策も重要でありますけれども、まず、この子ども手当については、子供の健やかな育ちということで、お子さんを育てる経費を社会全体で見ていくというのが一つの中核であります。

 それが結果的に少子化の流れを変える、あるいはお子様の教育の質、生活の質を上げていく等々に結びつく。あるいは、子供の貧困率というのも我々見ておりますけれども、これも先進国で非常に高い部類に入りますので、結果としてその貧困率が下がる、改善できるというようなことを考えているところでありまして、子供の健やかな育ちというのは、子供の生活、教育の質を上げるための金銭給付という側面もあるわけであります。

田中(美)委員 ありがとうございました。子ども手当の精神がよくわかりました。

 さて、この子ども手当に対しては、子供に関する出費に使うとは限らないとか所得制限がないという点から、ばらまき政策だという批判がされております。

 これについては政府側からもいろいろ答弁もされているところですが、私は、外国の類似の制度はどうなっているのかと思いまして、資料を取り寄せました。お手元の資料集の一枚目が児童手当の所得制限に関する諸外国の例、そして、二枚目が児童手当の趣旨や使い道に関する諸外国の法律の規定について調べたものでございます。

 これを見ますと、どの国も児童手当に所得制限はありませんし、使い道について制約するような法律の規定もないようでございます。

 山井政務官にお伺いしますが、所得制限は、子ども手当制度の先輩諸国では所得制限がない、また、使い道について制約する法律の規定もないという理解でよろしいでしょうか。御確認をお願いします。

山井大臣政務官 田中委員にお答え申し上げます。

 田中委員御指摘のように、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンにおいては、所得制限は設けられておらず、また、厚生労働省で調べた限りでは、手当の使途についての規定も特段設けられていないものと承知をしております。

 そして、今回の法案でも所得制限は設けておりませんし、私たちの考え方としては、そういう所得制限等に関しては、高額所得者の方に関しては、控除から手当へという考え方や税制の方でやっていくべきだというふうに考えております。

田中(美)委員 そうすると、子ども手当のいわば国際基準からしても、私たちの子ども手当はばらまきなんかではないと胸を張ってよろしいかと思いますが、山井政務官、いかがでしょうか。

山井大臣政務官 確かに、今御指摘いただきましたように、所得制限を設けない、使途を制限しないということに関しては、まさに先進国の流れでありますし、また、今回の法案の中では、子供の育ちという趣旨で利用してもらえるように、そういう規定は入れさせていただいております。

田中(美)委員 このようなすばらしい子ども手当ですから、しっかりと広報していただきたいと思います。

 先ほど大臣から御答弁のありましたように、子ども手当は、単に所得保障ということだけではなく、手当がもらえる方ももらえない方も、子供は社会の希望であり未来の力だと意識を持っていただく、いわば国民の皆さんの意識を変えていく、それが子ども手当の趣旨と思われますので、その趣旨がわかりやすい形で広報されるようにしていただきたいと思います。

 そして、政府広報とか市町村の広報も結構ですが、お役所の文書は敬遠されがちですから、テレビCM、大臣も出演していただいて、こどもの日あたりに流すというようなことも検討していただけないかと思いますが、テレビCMについて、大臣、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 今おっしゃられた趣旨は本当に重要だと思いますのは、当然、お子さんを持っておられて支給対象になる方に対するきちっとした広報というのは重要であるとともに、私がさらに重要だと思うのは、お子さんがおられない、あるいはその対象年齢から外れた御家庭に対しても、これは税金でやる施策でありますので、こういう意義で、こういう趣旨で我々は考えている、御協力、御理解をいただきたいということも非常に重要である。未来への投資というような趣旨をきちっとお伝えするというのが重要だと思います。

 テレビCMということでありますけれども、私も詳しくありませんが、何秒か流れるだけで莫大なお金がかかる。これを税金でやるということになると、それが適正なのかどうかということで、テレビCMはお金がかかり過ぎるとすれば、それ以外の手段を使ったり、私が通常の記者会見等々を利用して、できるだけ同じメッセージを繰り返し繰り返し申し上げていく。この前も保育所にお邪魔をしてお母様方の御意見を聞いて、そういうことがありがたいことに報道もされておりますので、あらゆる機会を使って、なるべくコストが安く、しかも的確に届くような広報というのも考えていきたいと思います。

田中(美)委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 では、以上で総論的なことを終えまして、各論的なこと、子ども手当に伴う地方自治体の事務について伺ってまいりたいと思います。

 まず、地方自治体には子ども手当の支給のためにさまざまな事務をお願いすることになりますが、地方交付税の不交付団体も含めて、児童手当制度における負担に加えて新たな負担は生じないのでしょうか。長浜副大臣にお伺いします。

長浜副大臣 今御質問の点が、地方の首長さんにとっては、あるいは議員の皆様方にとっても、大変重大な関心が寄せられていたテーマだというふうに思っております。

 御地元を持たれている委員の皆様方におかれましても、趣旨は、今大臣が御説明を申し上げたようにすばらしい趣旨であっても、地方にどのぐらい負担、しわ寄せが来るのかということを随分この策定過程の中においてもお問い合わせいただきましたし、地方六団体の長の皆様方ともお話し合いを続けてきたところでございます。

 二十二年度においては、御承知のように、児童手当という形の中において、国、地方、事業主の負担を残し、それ以外のものに関しては国が負担をするというスキームで組み立てられているところでございます。

 その地方公共団体の負担については、先ほど来の御質問にもありましたように、所属庁の負担となる地方公務員分を含めると、平成二十二年度予算ベースで六千百三十八億円になると思いますが、地方公共団体の負担が実質的には増加をしないように、二十二年度当初予算関連法案としても用意をされている地方交付税法等の一部を改正する法律案という手法を使いまして地方特例交付金による措置をしておりますので、実質的に地方に御負担がかからない、こういう形にいたしている次第でございます。

田中(美)委員 ありがとうございます。

 次に、地方自治体への子ども手当の制度の周知についてでございます。

 子ども手当法案の条文を拝見いたしますと、都道府県や市町村に新たな負担は生じないとしても、さまざまな事務が生じるわけでございまして、私の地元の市議会議員の方、県会議員の方々には、一日も早く子ども手当の制度の全体像が知りたいということで心配をされている方もいらっしゃいます。また、六月支給が間に合うのかという声もあるようでございます。

 既に、去る一月十八日には、都道府県の部長クラスの方を集めて、こうした冊子によりまして説明会を厚生労働省で行われているとも伺いますが、今後、どのようなスケジュールで地方自治体への制度の周知を図っていくのか。また、その過程では、大臣が先ほどもおっしゃった子ども手当の趣旨が地方自治体の職員の方にも十分御理解いただけるように、通知などもわかりやすくしていただきたいと思いますが、今後の方針について大臣に伺います。

長妻国務大臣 今御指摘いただいたとおり、この子ども手当の趣旨、理念というのは、お役所言葉で文書を発するだけではなくて、きちっとその哲学というのも明記をしていく必要はあるというふうに思います。

 今るるいろいろな会議をやっているというお話をいただきまして、我々も、補正予算でシステム関連経費を計上させていただくと同時に、またあしたも、二月二十五日にも、全国の児童福祉主管課長会議ということで、四十七都道府県と政令指定都市の担当する課長さんに、大変御足労ですけれども集まっていただいて、そこで十分詳細を御説明しようということを考えておりまして、怠りなきよう取り組むつもりでございます。

田中(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 六月支給がきちんとできますよう、地方自治体の皆さんにはスピーディーに、かつ、わかりやすい制度の御案内をよろしくお願いいたします。

 では、次に、子ども手当に関する今後の課題ということで伺ってまいりたいと存じます。

 子ども手当につきましては、民主党のマニフェストでは、来年度は半額支給、平成二十三年度からは全額支給ということですから、その財源をどうするのかということへの検討、制度設計を急がなければならないと思います。

 ここで、その制度設計の参考にすべき事例として、お手元の資料の三枚目でございますが、連合さんが提案している子育て基金を御紹介したいと思います。

 この子育て基金は、昨日の本会議で大臣が御紹介されていたフランスの全国家族手当金庫を参考にしたものと伺いますが、まず、大臣は、この連合さんの子育て基金をどのように評価なさいますでしょうか。

長妻国務大臣 これについては、今おっしゃられた海外の事例も参考にこれを立案されたんだと思います。確かに、この資料などを見ますと、出産手当、保育所、幼稚園、放課後児童クラブ、病児・病後児保育、一時預かり、保育ママ、児童手当、児童扶養手当等々いろいろ施策がある中で、それぞれ、財源、負担等が事細かに分立しているというものを一つに束ねていこうという発想だというふうに思います。

 我々も、四大臣合意をいたしました合意書にもございますけれども、平成二十三年度の全額実施に向けた財源の検討ということが非常に大きな課題となっていますので、いろいろな知恵を出す中で、こういうものも含めた検討というのが必要になると思います。直ちにこれが今いいというような判断をしているわけではありませんけれども、広く、やはりどういう負担、あるいはどういう財源が重要なのかという議論は精力的にしていくつもりであります。

田中(美)委員 ありがとうございます。

 こうした連合さんの子育て基金も参考にしていただきながら万全の制度設計をしていただき、平成二十三年度にはぜひとも子ども手当の全額支給を実現していただきたいのですが、改めて大臣の御決意を伺いたいと思います。

長妻国務大臣 今は平成二十二年度の予算の審議というのをお願いしているところでありますけれども、その次の平成二十三年度の予算の審議というのはまだ先でありますが、その予算編成の中で、準備期間をきちっととって、四大臣含めて本当に知恵を出し合って、平成二十三年度から二万六千円の満額支給を実施するというようなことで、全力で取り組むということであります。

田中(美)委員 頼もしい御決意を聞かせていただきました。本当にありがとうございます。

 では次に、子供たちの未来を考えるという趣旨で、年金の運用について少し伺います。

 まず、平成十三年度から公的年金の積立金の自主運用というものが始まっております。お手元の資料の四枚目でございますが、過去八年間の収益率平均は一・〇七%ということでございます。その期間で、国債による運用は一・二二%、国債以外は〇・六三%の収益率ということで、国債の収益率がいいんですね。これはかなり問題ではないかというふうに思います。

 平成十三年度から公的年金資金の自主運用が始まったわけでございますが、その以前は基本的に年金資金は国債で運用してきた。そのまま国債で運用していれば平均一・二二%の収益があったのに、自主運用ということで株式や外国債券で運用し、手数料も二百八十八億円支払ったのに、国債を下回る収益しか上げられていないということでございます。

 こうした運用の実態をかんがみますと、年金をもっとハイリスク・ハイリターンの運用にした方がいいという意見もあるようですが、子供たちの未来ということを考えますと、もっと堅実な年金運用をしていただいた方がいいようにも思います。この点、大臣はどのようにお考えでしょうか。

長妻国務大臣 今の配付いただいた資料でございますけれども、平成十三年度から二十年度、国債以外の方が利率が低いということで、これは御存じのように、リーマン・ショック以来の株の暴落に基づいたものであるというふうに考えております。

 ただ、今もいろいろな議論があるというのは承知しておりますけれども、アメリカなどで見ると、あれだけ資本主義が行き渡る国ですら年金積立金は全額国債で運用している、こういうような取り決めがあるということでありまして、日本の場合も、かなり多くの部分は国債で運用しております。国家公務員や地方公務員の共済の積立金は、国民年金、厚生年金の株の運用比率よりもさらに低く、株の運用の比率を下げているんですね。そういう意味では安全運用ということであります。

 このお金というのは、投資をしてふやしてほしいということで預かるほかのファンドとは違いまして、国民の義務として、国が保険料をいただいて、老後のためということでいただいておりますので、最低限の利回りは確保するということは必要でありますけれども、慎重にその運用については考えていくということが基本的な姿勢だと思います。

田中(美)委員 ありがとうございます。ぜひ、子供たちの未来のためにも、年金は確実に、堅実に運用していただきますようお願い申し上げます。

 さて、いろいろと伺ってまいりましたが、そろそろ時間となりましたので、結びとさせていただきたいと思います。

 子供たちの笑顔があふれる社会にしようというこの子ども手当法案でございますので、一日も早い成立のため、大臣以下厚生労働省の皆様には、健康にも気をつけていただいて、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

藤村委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 民主党・無所属クラブの仁木博文でございます。

 初めての質問ではございますが、一生懸命頑張らせていただきます。まさに初めて手術場で執刀するときに比べると、まだ上がっていませんが、頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 さて、私は、今まで医師として医療の現場にいまして、特に千例を超えるお産を担当してまいりました。今回、民主党の子ども・子育てビジョン、まさに生まれてきた命、子供を社会が一生懸命育てていく、すばらしいメニューが出ておりますが、私は、このことに関しまして、生まれてくる前の命についても考えてみたいと思います。

 お産というのは、安産もあれば難産もありまして、二日を超える痛みをこらえて、そして生まれてきた赤ちゃんを抱き締める母親を見る、この場面というのは本当に感動することがございますが、一方、例えば二〇〇〇年には百十九万人の出生がありました。しかし、片や、三十四万件、四・五人の妊娠に対しまして一例の中絶があるというふうな背景があります。

 母体保護法のもと、さまざまな理由があり、仕方なく妊娠を放棄せざるを得なくなった現実はあると思いますけれども、医療の現場でこういったことを特に既婚者で多く目の当たりにしましたので、今回の子ども手当というのは、経済的なことで、こういった本来なら生まれてくる命が生まれてくる原動力にもなるのではないかという形で、本当に期待している一人でございます。

 折しも、鳩山総理もあの施政方針演説の中で、二十四回も命という言葉を使われました。そういった命を大切にする政治を実践する意味で、長妻大臣、今の、この世に誕生しない形である命、そういう現場のことをお知りになって、そしてまた、今回のそういった背景が、経済的な理由でなされているということを踏まえて、御所見の方をいただきたいと思います。

 よろしくお願いします。

長妻国務大臣 本当に、お産の現場で、まさに少子高齢社会の守り手というか、御活躍され、実証に基づいた御指摘をいただきまして、本当に、この世に誕生する命の前に、誕生しない命が何十万もいらっしゃるということについて、子ども手当等を含めた子育ての総合的な応援施策、社会全体で応援をするというような考え方が浸透して、そういう方々も御理解が進むということが一番の願いであるわけでありますので、この子ども手当についても、先ほども広報の話がありましたけれども、積極的なアピールを引き続きしていきたい。

 アンケートをとりますと、お子さんは何人欲しいですかというと、やはり二人以上という方が多いんですが、現実は、一・何人というか、一人という方が多い。その理由を聞くと、やはり社会的な理由や経済的な理由等々が多いわけでありますので、それの障害を少しでも除去するということにこの子ども手当が資するというふうに我々は考えております。

仁木委員 ありがとうございました。

 まさに、私も、子ども手当、つまり現金だけ、経済的なサポートだけが少子化対策の解消になるとは思っていませんが、やはり大臣もおっしゃられたように、そして私も医療の現場で体験しましたように、特に、既婚者でも、二人目、三人目が欲しいにもかかわらず、経済的な理由であきらめるという方が多いのが現実でございます。そういうことで、この制度、施策、ぜひとも実施して、そして来年度には満額二万六千円、毎月支給されるような政策へと展開していくことを切に祈る次第でございます。

 そして、控除から手当ということでございますが、先ほど相原議員の方からも御質問がございましたが、支給対象はもちろん子供でございますが、実質的には親権所有者、大人になるわけでございますけれども、いろいろなケースがあると思います。例えば、今離婚も多い中で、離婚前、つまり正式に離婚が成立していない中において、親権は父親だけれども、実際子供といるのは母親であったりとか、あるいは父親が海外赴任している場合であるとか、さまざまなケースがあると思います。

 この一年間で、施行された上で、その支給の受給要件等々をしっかりと見きわめていく必要があると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。よろしくお願いします。

長妻国務大臣 この支給の受給要件ということでございますけれども、我々としては、平成二十二年度においては、いろいろ議論した結果、今の現行児童手当と基本的には同じくしていこう、ただし、御両親がおられないお子さん、施設にいろいろな事情で入っているお子様方に関しましては、この子ども手当の法案とは別に、安心基金の方から同じ金額を施設等にお支払いする、こういうような考え方を我々は持っております。

 ただ、全体的な仕組みの見直しという議論も、平成二十二年度の全額支給の中で、いろいろな御指摘も踏まえて、我々も考えていきたいというふうに、今、今後とも議論を進めていくということです。

仁木委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、この施策はすばらしい政策だと思います。しっかりと社会全体が子供を育てていく、そして、いろいろな状況にある中でも、環境をかんがみても、子供がすくすくと育っていけるような環境をつくる対策だと思っております。

 続きまして、子ども・子育て支援について質問したいと思います。

 それは、子供を実際に産みたくても産む場所がないといった周産期医療の問題がございます。

 今配付しました資料の一をごらんください。これは、分娩取り扱い医療機関の変遷でございますけれども、特に二〇〇二年から二〇〇八年、施設が二割以上、七百三十九件減少しておりますし、六万二千人の出生数の減少を考えても、明らかに分娩する場所がなくなっている。特に、二〇〇四年以降、新研修医制度も始まりまして、まさにマスメディア等々で、例えば、都会では妊婦さんのたらい回しであるとか、あるいは、地方におきましては、おなかの大きい妊婦さんが車で一人二時間以上もかけて運転して妊婦検診に通い、そしてまた出産しなければいけないといった現実が起こっております。

 こういった現実を踏まえて、今、例えば、現場で、その研修医制度以降もそうでございますけれども、まず、医学部生は女性の方が三割を超え、そして、産婦人科に関しましては、例えば、産婦人科医の比率、女性の方が半分以上というような現状も出ております。

 そういう中で、政府の、今こういった喫緊に迫られた周産期医療をどのように立て直していくのかということ、具体的には国の指導のもと県がやっているということもございますけれども、例えば、この研修医制度以前の、大学の医局中心とした公的病院への医師配置等々に関しまして、今改めてこの課題をどのように解決していくかということを、ちょっと具体的に教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

足立大臣政務官 医師確保をどうするかという大きな観点での今御質問だったと思います。

 これは、私どもは野党時代から養成ということと活用ということを別に考えてまいりました。養成はまさに人員をふやすということでございます。活用というのはどういうことか。今いる人たちをより有効に仕事をしてもらえないだろうか。それは、一人の医師しかできなかったことをチーム医療で分担するとか、あるいは、女性の医師の方々が、これは一度現場から引き下がられると、なかなかもとに戻れない、やめなくても仕事を継続できる環境づくりはどうしたものが必要なのか。

 あるいは、地域でこれは連携が必ず必要なことでありますけれども、例えば、公立病院の方々が今兼業禁止規定だとか職務専念義務がかかっております。これを条例改正で手助け、あるいは、ある一定期間他の民間病院に行くことも可能です、そういったことを周知する。そして、医療提供体制、介護の提供体制をしっかり議論して、大体六月ぐらいに中間取りまとめ、そして本年中に大体提供体制についてどういう考え方、そして来年度の法改正に何が必要かということをまとめていきたい、そういうタイムスケジュールを描いております。

仁木委員 足立政務官、ありがとうございます。

 まさに、養成という点におきましては、民主党のマニフェストにございましたけれども、医師数を将来的に一・五倍にするということで、医学部の定員増等を言われております。

 先ほど言われました配分といいますか配置といいますか、それに関しましては先ほどおっしゃいましたとおりでございますが、特に、地域医療再生基金等々で、今例えば徳島県では、徳島県の方が大学とタイアップしまして、大学に基礎講座をその基金の中で設置しまして、そこから医師を派遣して公立病院で失われた診療科、例えば産科を復活させてお産できるような状態にするとか、そういうことも考えられております。

 ここで改めて、喫緊の課題であります、医師の配置というか養成もそうではございますが、先ほど足立政務官もおっしゃった、そういった医師の喫緊の、特に医療が受けられない地域におきます対応ということに関しまして、この基金の改めてレビューというか、再評価というか、これを年度を終わってやってみる必要もあると思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。

足立大臣政務官 お答えいたします。

 二点に分けてお答えしたいと思います。

 来年度早々から私たちが何を取り組もうとしているのか、それは、二次医療圏ごと、あるいは医療圏ごとにどの科のお医者さんがどれだけいて、それが足りているのか足りていないのか、全国的なレベルで調査をします。このような調査は今までされたことがなかったと思います。そして、必要な数を正確に割り出さなければいけないと思っております。

 そして、二点目は、委員が御指摘の地域医療再生基金についてですが、これは、この前第一回の会議を開きましたけれども、地域医療再生計画に係る有識者会議というものを開きまして、これは五年間の基金でございますので、必ずチェックが必要です。そして、その有識者のメンバーの方々も、例えば寄附講座についても県との連携がしっかりしていなければ絵にかいたもちになってしまう等御意見がございまして、毎年毎年、しっかりチェックをして助言していきたいと強い意思を示されましたので、その点については、私の方もしっかり目を光らせてやっていきたいと思っております。

仁木委員 足立政務官、力強い御回答、ありがとうございました。私もこれを期待して、また田舎に帰って、選挙区に帰って、住民の方に言えると思います。

 さて、今、分娩取扱施設の変遷にも関係しますけれども、出産一時金の問題がありまして、これは先日のこの委員会におきましても、初鹿、宮崎両議員が質問されましたけれども、今私も、いろいろな、開業医さんを中心に、このことに関しましてはもう少し考えてほしいということを言われます。

 特に、やはりこの準備金を、金融的に、経済的に確保するのが難しいということで、あの議員の質問にもありましたけれども、この施行時期に関しまして具体的に、例えば一部半年おくれになるとか、場合によっては一年ということがあるんですけれども、その辺、具体的にどのような形で実施されていくのか、改めて確認したいと思いますので、御回答の方をよろしくお願い申し上げます。

足立大臣政務官 直接支払い制度のことでございますが、これは昨年九月十六日に鳩山内閣が発足いたしまして、長妻大臣が就任されました。十八日に私が大臣政務官に就任しました。十月一日からこれを実施という予定でございましたけれども、八月の後半ぐらいから、全国の産科に携わる方々から、この制度を導入されたら現場はもたない、二カ月以上資金が入ってこない、全国では約半分、四八%が診療所あるいは助産所でお産をしている、この妊婦さんにとっても安心してお産ができる環境が失われてしまうという訴えがございまして、半年間の猶予と、それからつなぎ融資については利率を一・六から一・一に下げる、そして、無担保融資を一千万から三千万まで上げるということを約十日間でさせていただきました。

 今後どうなるかということについてですが、現在、件数でいきますと、約八割が直接支払い制度を導入されております。しかし、導入が進まないところ、あるいは五件未満のところの調査をいたしますと、やはり百何十施設については資金繰りが大変だということがございます。

 ですから、四月完全実施というのは難しいのではないか、私はそのように思っておりまして、では、どういう解決策があるか。これは、何といっても、二カ月というタイムラグを縮めるために努力しなければいけない。そのためには何が必要か。これは、レセプトの電子化等と密接に絡む問題でございます。それから、支払い回数もふやしていけば短くなるかもしれないというようなことを検討しなければいけないし、今既に、もう検討しておりますが、答えはすぐには出ないということだと思います。しかし、四月完全実施というのは困難な状況にあるという認識をしております。

仁木委員 ありがとうございます。

 また、このことに関しましても前向きな御回答をいただきました。また胸を張って開業医の先生方にもお伝えすることができると思います。

 続きまして、産みたくても妊娠できないことがございます。不妊治療及び子宮頸がんワクチンについてお聞きしたいと思います。

 今、日本では、例えばこれは二〇〇七年のデータでございますけれども、ART、いわゆる生殖補助医療で十六万回の治療が施されまして、報告によりますと、一万五千九百五十五名が生まれております。まさに、全体からいいますと、五十五件に一件ぐらいの割合で、この生殖補助医療を使った命が誕生している現状があるわけでございます。

 お渡ししました一枚目の資料、この下の欄ですけれども、これは徳島大学の二〇〇三年一月から二〇〇九年十二月までのデータでございます。妊娠率が全体で三五・九%、そして、各種出生率も右の方に記載していますけれども、下の方に、かかる費用ということで、一回の体外受精、胚移植に伴って約三十六万円かかるというのが、これは全国平均からいうと安い、廉価な価格かもしれませんけれども、こういった状況があります。

 そういう中におきまして、昨年度以来、一回の治療に関しまして十五万円、二回、これは公的な補助があるということでございますけれども、個人的にはもう少しこの補助を上げてほしいという意見を私は持っております。しかし、これだけ貴重な税金を使う以上、やはり医療の現場にそれなりの縛りというか、規制というかが必要であるというふうに思っております。

 例えば、香川県の生殖補助医療を行っている病院で、卵の間違いによる医療ミスが発生したことも御記憶に新しいことでございますけれども、こういったことで、ほかにも例えば、戻す卵の数であるとかあるいは凍結卵の扱い、イギリスでは二年間を限度としておりますけれども、そういう倫理的なこと、例えば代理母の問題や卵子提供者のこと、あるいは精子提供者のこと、そういったこと全体をどのようにして標準的な生殖補助医療を担保していくのかということもあるのでございます。

 大臣にお尋ねします。

 今、医療の、規制なりというか提言なりというか、そのことは、日本産婦人科学会、こちらが主にやっていますけれども、学術団体であるがゆえに、ちょっとその辺が弱いように思うんです。こういったことを、より安心して国民が受けられるように、そして、こういうあってはならないミスとかそういうのがなくなるように、その意味で前向きな、例えば生殖補助医療協議会とかプロジェクトチームとか、そういうものをつくってはと思うんですけれども、いかがでしょうか。よろしくお願いします。

長妻国務大臣 お答えします。

 今、不妊治療等による卵の医療ミスなどについて御指摘があって、それについて、そのミスをなくすべく取り組みをするというのは、これは厚生労働行政として当然だと思います。

 その中で今、協議会というような御指摘がありまして、それについても、我々も省内で、協議、検討をしていきたいというふうに思います。

 そして、不妊治療の御指摘ですけれども、今回、今ここでは子ども手当の法案の審議をしておりまして、そういう意味では、お子さんが欲しいけれども、なかなかそういうことでできない、医学的な理由でですね。では、そういう方に対する支援は、子ども手当だけでなくて、きちっとすべきである、こういう御指摘もかなりたくさん我々はいただいております。

 そういう意味で、特定不妊治療費助成事業というのはどんどん件数が上がって、平成二十年度は七万二千二十九件がこれに該当して、これまでの助成額も、これは前政権ですけれども、十万円から十五万円に引き上げたという経緯もありまして、二十二年度予算でもそれをつけさせていただいているということであります。

 いろいろな論点があろうかと思いますけれども、今、不妊治療でも保険適用されている部分もありますけれども、この範囲についても、今後有効的な治療が見つかれば、いろいろ検討に値するものがあれば、我々も不妊治療という全体の枠で議論を進めていきたいと思います。

仁木委員 ありがとうございます。

 最後に、子宮頸がんワクチンについてお尋ねしたいと思います。

 私は、臨床の場で、婚約中の子宮頸がん二期の患者さんを担当しまして、その患者さんは、化学療法、手術と頑張られて、順調に治療していましたが、あるとき病室に行くと、泣いておられました。その後、ずっと泣いておられるので、理由を聞きますと、子宮を摘出して婚約を破棄されたというようなことでございました。

 この資料二枚目、そして三枚目もそうでございます。年間一万五千人がゼロ期以上のがんに罹患しまして、そして約三千五百人が亡くなっている現状。そして、エビデンスとしまして、この子宮頸がんというのは、ある種、HPVというウイルスに感染することによってがんになるというふうなことが、もうエビデンスとして出ております。

 特に、諸外国ではこういったエビデンスをもとにHPVワクチン、ウイルスに対するワクチンを開発しまして、約二十六カ国で公的補助が行われているという現実があるんですけれども、私は改めて、このワクチンを公費でやっていただきたい。そして、資料の三枚目にありますように、子宮頸がんの検診の率がその他の先進国に比べて非常に低いんですけれども、これも同時に上げていくということを啓発しながらやっていきたいと思うわけでございます。

 まさにこれは、いろいろ過去のワクチン行政のことはございますけれども、エビデンスが出ている。つまり、子宮頸がんワクチンと細胞診を中心とした検診で、子宮頸がんになって命を落としたりあるいは赤ちゃんを産むチャンスをなくす女性がいなくなるというふうなことを踏まえて、そしてまた、医療費的に見ましても社会的損失は約百九十億円抑制できる。

 そういうことを考えても、行政的には、これは国内での臨床治験はないということはありますけれども、私は、治験をやりやすい環境をつくって、ぜひともワクチン行政を、昨年の新型インフルエンザワクチンのときに露呈しましたワクチン行政の不備というかそういうのを是正して、日本が改めてワクチン行政に取り組んで世界をリードしていく、そういった国に変貌するためにも、この子宮頸がんワクチンからまず公費助成で始めていきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

足立大臣政務官 鳩山内閣あるいは長妻大臣の医療政策のキーワードは、私は一言で言えば予防医療だと思っております。そのあらわれが統合医療の推進であり、あるいは情報の共有と理解の促進ということ、そして予防接種にあるんだと思います。

 ですから、昨年の十二月二十五日に、厚生科学審議会感染症分科会の中に予防接種部会を設置いたしました。これは、国民的議論が必要だと我々は判断したからであります。

 エビデンスの部分、そして、今HPVだけに限って言いますと、では、初交前の十二歳のお子さん方に皆さん方がどれだけ情報を共有されて、そこに公費で予防接種をするということが、御理解が国民全体として得られるかという重大なポイントがあるんだと私は思っております。ですから、この議論を積極的に進めるために部会も設置いたしましたし、今鋭意議論が活発に行われているところでございます。

仁木委員 非常に前向きな御回答、ありがとうございました。

 さて、質問を終わるに当たりまして、今私は、冒頭に述べましたように、生まれてくる前の命について、中心に質問させていただきましたが、長妻大臣が中心となって作成されました子ども・子育てビジョン、まさにどの政策をとっても前政権とは違う、民主党政権になってよかったと国民が実感できる政策でございます。私も、一兵卒の新人議員ではございますが、一生懸命頑張って支えていきたいと思います。

 本当にきょうはありがとうございました。

藤村委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 私は、政策秘書の時代から大変、一緒にお仕事をさせていただきまして御指導いただきました長妻大臣、そして山井政務官にこうして質問できることを大変感慨深く感じております。私の初質問、一部野党欠席のままで行われることは大変残念でありますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 さて、長妻大臣は消えた年金や居酒屋タクシーといった多くの造語や新語をこれまで生み出してこられましたけれども、先ほどもお話に出ておりましたけれども、最近では、育児に積極的に参加する男性のことをイクメンと呼ばれております。私も、イクメンを目指す、三カ月の息子がいる新米の父親として、きょうは、議題となりました子ども手当の法案について質問させていただきたいと思います。

 まず、給食費の未納と子ども手当について質問させていただきたいと思います。

 去る一月三十日、鳩山総理が、視察先の山梨県だったと思いますけれども、学校給食費の未納者に対して子ども手当の減額を検討する旨の発言を行いました。このほかに、群馬県太田市長の清水市長や各方面から給食費の未納問題と子ども手当の相殺を求める声というのが上がっております。

 最初に私は明確にしておきたいと思うんですけれども、給食費の未納の問題というのはあくまで子ども手当の制度を根幹から揺るがすものではないということであります。

 第一に、現在の児童手当においても給食費の未納は相殺できないことになっております。そして次に、未納率は、額でいうと〇・五%と極めて低く、そしてその中でさらに故意で払っていないという方に限ればもっと低くなると思います。そして、未納問題というのは、本来徴収の強化で対応すべきものであって、子ども手当とは直接の関係のないものでありますから、私は、本来はこの問題、子ども手当の制度とは切り離して考えるべきだとは思っております。

 さはさりながら、総理の発言というのは大変重いものがあると思いますし、また、子ども手当というのは子供のために配っているんだから、その中からなぜ給食費を払うことができないのかという非常に素朴な市民の声が一方であるということも事実であります。その声にこたえていくということもこの委員会の役割ではないかな、私はこんなふうに感じております。

 そして、法案を見ますと、法案では子ども手当というのは差し押さえ禁止債権になっております。ただし、これについては、一たん受給者の預金債権に振り込みが行われた後には、その預金口座を差し押さえすることが可能だという法理があります。

 きょう、お手元に資料を配付させていただきました。資料一というのをごらんいただきたいと思います。

 これは、鳥取県が児童手当の振り込み口座を差し押さえをして、そして自動車税等を徴収したという事例が国会で取り上げられたときの会議録でございます。

 この会議録を読み進みますと、二ページ目になりますけれども、当時の舛添大臣がこのように答弁をされております。法律論を純粋に言うと、振り込み先の預金債権を差し押さえするということは法律的には可能である、しかし、この児童手当の趣旨が生かされるようにやるべきだというふうな答弁をされております。

 これを読んでいきますと、まさにこの事例では、児童手当は子供のために本来使われるものであるけれどもそこから市税を持っていったということで、やり方がひど過ぎるのではないかという話でありますけれども、逆に、子ども手当というのは子供に使われるものですから、それが給食に使われるならば、同じように振り込み先の預金債権から給食費を払ってもらうことというのはできないのかなというふうに私は考えるところであります。

 そこで確認をしたいのですけれども、これは県税の児童手当の振り込み先預金から県税を強制執行したという事例でありますけれども、租税の場合、それから例えば公営住宅の賃料、あるいは公立保育園の保育料、そして公立学校の給食費、このそれぞれの場合について、子ども手当の振り込み先の預金から強制徴収は可能かどうかということについて、簡潔にお答えをいただけますでしょうか。

山井大臣政務官 大西議員にお答え申し上げます。

 租税については、税法に基づき強制執行が可能であります。同様に、保育料についても児童福祉法に基づき強制執行が可能であります。

 給食費については、私債権であることから、差し押さえのためには民事執行手続が必要になると承知しております。

大西(健)委員 ありがとうございます。

 債権の性質によって扱いが違うというお答えだったと思うんですけれども、今の、山井政務官の方からも給食費については私債権であるというお話がありました。私の方でも調べさせていただくと、条例で給食費の問題を定めている自治体というのもあればそうでないところもあるということで、学校によって私債権的に扱っているか公債権的に扱っているか、ばらつきがあるというように承知をしておりますけれども、確認のため、文科省から、学校の給食費の債権というのはどういう性質の債権になっているか、お答えをいただきたいと思います。

鈴木副大臣 お答え申し上げます。

 今御紹介をいただきましたように、会計処理の扱いはいろいろなケースがございます。しかし、いずれのケースにつきましても、法的には民事上の契約関係に立つものだというふうに理解をいたしております。

大西(健)委員 法的には民事上のもの、私債権のような形で扱われるものということで今お答えがありました。

 そうしますと、まさに先ほどのケースでありますけれども、子ども手当の振り込み先の預金から強制執行するということは非常に難しいと。債権法の法体系の中では、給食費だけを特別扱いするのが難しいということが私は結論になると思います。

 そこで、私から、平成二十三年度の子ども手当の本格実施に向けてぜひ御検討いただきたいことを一つ御提案させていただきたいと思っております。

 資料の二というのをごらんいただきたいんですけれども、これは給食費の未納問題、これが社会問題化したのをきっかけにして未納問題の対応というのを文科省の方から示された資料になります。

 この中に、別紙として、「学校給食費の未納問題への対応についての留意事項」というのがつけられておりまして、その抜粋というのを次のページに載せさせていただいております。この中で、下線を引かせていただいておりますけれども、生活保護やあるいは就学援助の中から、学校給食費に要する経費というのがこの中に含まれておりますけれども、これを直接学校長に交付するということをこの中では推奨しています。

 子ども手当の場合には、就学援助や生活保護とは違いまして、給食費の相当額というのを特定するのはなかなか難しいという問題はあるとは思いますけれども、私は、子ども手当の一部を学校が受領できるような、そういった道をつくるべきではないかというふうに考えております。

 もう一ページめくっていただきますと、資料三というのをつけさせていただいております。

 これは、文部科学省の大臣官房審議官や文化庁文化部長を務められた寺脇研さんが毎日新聞に書かれている主張でありますけれども、この下線部を読んでいただきますと、まさに同じような提案がしてあります。線のところには、一つ提案がある、小中学生に対する支給に限ってはその一部を学校またはその設置者が代理受領できるようにしてはどうだろうかと。あるいは、現場を回っていきますと学校の教師が徴収事務に当たっているために非常に事務量がふえている、これを軽減することは教育の質を高めることにもつながるんじゃないかということを主張されております。

 私はぜひ、平成二十三年度の本格実施に向けて、子ども手当の一部を学校や学校長が代理受給できるように検討していただきたいと思いますけれども、私のただいまの提案に対して、長妻大臣の御所見を賜れればと思います。

長妻国務大臣 今、いろいろ御指摘いただきました。この給食費の徴収については、私も、現場の先生方が大変な御苦労をされておられる、そういう現状があるというのも承知をしております。

 平成二十二年度におきましては、今法律を提出しておりまして、これは十分広報をして地方自治体等の申請窓口で周知徹底をさせるということがまず大前提となるわけであります。

 そこで、この平成二十三年度の全額実施において、それをどう考えるかというのは一つの論点となるということでありまして、生活保護制度については、教育扶助に係る保護費については学校長に直接支払うことができるとされているような条項もあるというのは承知をしておりますけれども、この生活保護と子ども手当は性格が違うということや、生活保護は、教育扶助の中にある意味では給食代というのも入っている、こういう概念であるというふうに考えております。

 ただ、今御指摘いただいたこの事務負担を軽減したり、子ども手当の趣旨を徹底させるという意味では、今御指摘いただいた点も含めて、二十三年度の本格実施に向けて検討課題としていきたいというふうに考えています。

    〔委員長退席、中根委員長代理着席〕

大西(健)委員 ありがとうございます。

 先ほどの寺脇さんの主張の中でも、もちろん、子供にかわり支給を受ける親たちが責任を持ってまずは子ども手当の使い方を考えるのが第一義であるというふうに述べられております。私も全くそのとおりだと思いますけれども、ぜひとも、今の御提案も含めて、二十三年度本格実施に向けて御検討いただければと思います。

 給食費についてお聞きをした機会に、ぜひとも文科省の方にももう少し御確認をさせていただきたいことがあるんですが、給食費の未納問題については、そもそも、その実態把握というのが十分ではない部分があるのではないかなというふうに私は思っております。

 モンスターペアレンツ問題が非常に社会問題化したのを受けて、平成十七年に一度、この給食費の未納の実態状況というのが調査をされておりますけれども、それきりになっております。

 昨今は子供の貧困の問題というのもありますし、また、今回、この子ども手当というのが支給をされることによって未納状況にどのような変化が生まれるのかを含めて、再度実態調査をするつもりがおありかどうかについて、文科省にお尋ねをしたいと思います。

鈴木副大臣 御指摘のように、十七年に調査をいたしております。

 子ども手当が六月から支給をされて、その後の動向がどういうふうに変わっていくのか。そして、今、寺脇さんの記事も引用されて大西委員から提案がありましたが、また次の年度に向けて子ども手当の制度設計をしていく、その際に、きちっとした現状の把握というものが必要だと思いますので、それに資する情報収集、提供はしていきたいと思いますが、どういうタイミングでどのようなことをやっていったらいいのかということは、さらに検討していきたいと思います。

 といいますのも、おっしゃるとおり、最終の金額ベースで申し上げますと未納状況は〇・五%、こういうことでございますが、実に四四%の学校で未納者がいて、そして最終的にはその学校現場の相当な御努力によって、それは人数ベースでいいますと一%になるわけでありますが、そこまでのプロセスに相当なエネルギー、時間的、精神的エネルギーがかかっているということが問題の本質で、そのことを受けて、いろいろな市町村あるいは現場から声が上がっているわけであります。

 そうした実態を把握するということが大事なんだろうということに立ちますと、どのような把握の仕方で何を聞いていったらいいのかということは、さらに検討、研究をしていきたいというふうに思っております。

大西(健)委員 まさに副大臣がおっしゃったように、そうした調査の中身を含めて、私は、実態というものをしっかりと把握していただければというふうに思います。

 それから、もう一つお聞きをしたいことがあります。

 現金給付よりも現物給付を手厚くすべきだという主張をされる方がありますけれども、そのことは一理あると思うんですけれども、そういう意見の中には、子ども手当を配るぐらいならば給食費をただにしろという意見がよく聞かれます。しかし、そもそも、中学校では給食の実施状況に都道府県によってかなりの格差があるということが言われております。

 資料四というのをごらんいただきたいと思います。私もこれ、資料を取り寄せて、初めて見て驚いたんですけれども、一〇〇%に近い都道府県がある一方で、都道府県名を挙げて恐縮ではありますけれども、例えば大阪府の七・九%とか、神奈川県の一三・〇%とか、本当にばらつきが非常に激しくなっております。

 義務教育における給食費というのは、食育を含む教育的な側面というのもあると私は思っております。まさにこれまでの歴史的経緯だとか地域的な事情だとかさまざまな背景があるとは思いますけれども、生まれ育つ場所によってこれだけの格差があるというのは本当にいいことなんだろうかと私は思うんです。その部分について、文科省の御見解というのをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木副大臣 県によってばらつきがあるというのは、御指摘のとおりでございます。

 そもそも、昭和四十五年に学校給食の普及についての導入が決まったときには、速やかにすべての義務教育諸学校において完全給食が行われるようにすることを基本として、こういうことで始まったわけでありますが、この間のいろいろな歴史的な経緯、それから地域の事情によって御指摘のようなばらつきが生じている、こういうことでございます。

 ただ、最近も学校給食法の改正あるいは食育のモデル事業といったことで、給食を通じて、あるいはそれと連動して、食育あるいは食生活の改善ということをやっておりますので、地方自治体の自主的な御判断というものも尊重しながら、学校給食の実施率の向上に向けて関係者の御理解を求めていく、そして、そうした充実のための支援策を推進していくという考え方でございます。

大西(健)委員 次に、給食費の未納問題と同じく、これも児童手当にも当てはまる論点ではありますけれども、子ども手当の外国人への支給の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 条約によって、外国人に対しても社会保障に関しては内国民待遇を与えなければならないということから、外国人に対しても子ども手当は国籍要件なく支給されることということになっております。

 そこで、資料の五というのをごらんいただきたいんですけれども、これは総務委員会で住民基本台帳法の一部改正のときに参考人として呼ばれた愛知県の豊田市長の意見陳述の会議録になります。

 一ページめくっていただきますと、線を引いてあるところでありますけれども、豊田市、自動車産業の町でありますから、たくさんの外国人が住んでいるということで、豊田市において外国人の子供の不就学実態調査というのをやられた。そうしますと、比較的正確に登録されていることが想定される就学年齢においても、約一六%の外国人が登録上の住所には住んでおらず、市が把握しているデータと違う状況にあった。こうした状況のために、送付した文書が返送されてきたり、児童手当が振り込み続けられるなど、多くの支障が生じておりますということを市長さんが意見陳述をされております。

 外国人登録の問題というのはもちろん法務省の所管ではありますけれども、せっかく配る、支給する子ども手当というのが適切に外国人に対しても支給されなければならないと私は思っておりますので、その部分について厚生労働省に外国人受給者への適切な給付に努めていただきたいと思っておりますけれども、この点について何か御意見をいただければと思います。

山井大臣政務官 大西委員にお答えをいたします。

 非常に重要なポイントだと思っております。

 子ども手当の支給において、外国人の居住の実態については、御指摘のとおり外国人登録により確認することとなっております。

 地方公共団体におかれては、外国人登録における住所と児童手当の申請時に記載する住所が異なる場合などには、外国人登録における住所変更を求めた上で必要な手続を行うなどの対応をしていただいていると認識しております。

    〔中根委員長代理退席、委員長着席〕

大西(健)委員 外国人への支給の問題について、もう一つお伺いをしたいと思います。

 子供については、今回、住所要件というのがありません。したがって、親らが国内に居住をしており、子供を本国等に残してきているような場合であっても、しかるべき機関の発行した証明書などによって、市町村が監護要件等を満たしていると判断をされれば、子ども手当が支給されることになります。

 しかし、私は、これは一般の国民感情からすると、少し違和感を感じる部分があるのではないかと思っています。

 そこで、資料の六というの方をごらんいただきたいと思います。

 先ほど、田中委員の方でも諸外国の事例というのをお調べになったということがありましたけれども、私の方でも、子供の居住要件や親の居住要件について諸外国の事例というのを調べさせていただきました。国会図書館の方で調べていただいた資料をつけさせていただいておりますけれども、これはスウェーデンの事例であります。線を引いてある部分でありますけれども、スウェーデンでは、子供がスウェーデンに居住していることが必要であるということで、居住要件がついております。

 これは諸外国の事例を見ると、むしろ居住要件がついている国の方が私は多いように感じております。

 さらにその下の部分ですけれども、一年を超えてスウェーデン国外に滞在している子供は、もはやスウェーデンに居住しているとはみなされない、子ども手当の受給資格を失う、ここまではこのとおりだと思いますけれども、その次であります、ただし、スウェーデン国外の学校で、親の同伴なしで学ぶ児童生徒は、同人が長期休暇や教育の節目の際に、スウェーデンの親元に戻るのであれば、依然としてスウェーデンに居住しているとみなされるという規定になっております。

 私は、まさにこのスウェーデンと同じように、子供の居住要件というのを課した上で、例えば海外留学をしているような場合は例外を設けるというあり方の方がむしろ国民の納得を得られやすいのではないかなというふうに感じております。

 二十二年度法案については私は仕方がないと思っておりますけれども、二十三年度の本格実施に向けては、これまでの児童手当の扱いというのもあると思いますけれども、それを変更して、スウェーデンのように子供が海外に留学しているケースに例外を設けた上で子供の居住要件というのを課すことを検討すべきだと私は考えますけれども、この私の提案について長妻大臣の御所見を賜れればと思います。

長妻国務大臣 これにつきましては、今の児童手当といいますのは、これはいろいろ、難民の条約等がありまして、社会保障については外国人、自国民、差別してはいけない、こういうような考え方でそういう支給がなされているというふうに考えておりますけれども、平成二十三年度の全額実施に向けてこれは一つの論点であるというふうに私も考えております。スウェーデンのようないろいろきめ細かいこういう対応というのも非常に参考になるというふうに思います。

 日本の国民の皆さんで、海外に住んでいる、留学ではなくていろいろな御事情でおられるという方については、ぎりぎりどこまで扱いをしていくのかなど、いろいろな詰める点というのはあるとは思いますけれども、今の条約との関係も含めて、これについては本格実施、全額実施に向けた中での議論の俎上に上げていきたいというふうに考えています。

大西(健)委員 最後に、昨年の夏の選挙で子ども手当の実現を訴える中で、子供が欲しくて仕事もやめて痛い注射に耐えて高い治療費を払っている、そういう不妊治療をしている私たちに対しても支援をしてほしい、そういう声は私も何度も耳にいたしました。

 この問題については、先ほど産婦人科医でもある同僚の仁木委員の方から詳しく質問されましたので繰り返しませんが、私からもぜひ長妻大臣にこの点お願いをしておきたいと思います。

 子ども手当につきましてはさまざまな意見がありますが、私は、まずは実行することが何より重要だと思っております。その上で、実施状況を踏まえて、本日、私からさせていただいた提案も含めて、さまざまな国民の声を取り入れて、よりよい制度として平成二十三年度から本格実施につなげていただきますようにお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 先ほど来、新人の、本当に新鮮な議員の皆さんの御質疑を伺いながら、私はちょっと、ああ、もう古手になったのかなと思いながら、質問をさせていただきます。

 子ども手当の問題は、本会議の代表質問でも申し上げましたが、初めて子供ということに焦点が当たった画期的な政策だと私は評価しております。日本の子供に関する施策の財政支出は、OECD加盟国三十カ国中二十六位と決して誇れたデータではありませんし、ある意味では、子ども・子育て支援の後進国という言い方がいいかどうかわかりませんが、立ちおくれているように思います。そして、今回の子ども手当の創設がいろいろな意味の子供施策の第一歩となって大きく花開くということを期待しながら、御質疑をさせていただきます。

 冒頭、長妻大臣に、そもそも子育て支援政策の政策目標と政策手段といたしまして、私の方でちょっと勝手に挙げてみました。政策目標が、子供の育ちの支援から子育て世帯の経済的な支援、そして少子化対策、あるいは女性の就業率の引き上げなどがございます。また、政策手段としては、現物給付や現金給付、そして雇用政策などが手段として挙げられると思います。

 大臣にあっては、先ほど田中委員の御質疑の中でも少し言及されておられましたが、子ども手当という政策手段は政策目標のどの部分に、いずれにもかかわるといえばそうですが、重きを置かれてお考えでしょうか。お願いします。

長妻国務大臣 今、配付資料で政策目標、政策手段ということを書いていただいて、子ども手当は政策目標のうちの主にどの部分なのかというお尋ねだというふうに思います。

 子ども手当というのは現金支給でございまして、この(一)子供の育ちの支援、これを社会全体で実施する、そして結果的に、子供の貧困率を改善するということにつながる、少子化対策にもつながるというふうに考え、GDPの比率でも日本は子育て予算が非常に低いということでありますので、その改善ということが一つの目標となります。

阿部委員 さきに長妻大臣は相対的貧困率を御発表なさいましたが、実は、こういう現金型の給付を行いますと、相対的貧困率は改善をしてまいるものと思います。その意味からも、どれか一つとは言えませんが、やはり家計への直接支援ということで、二番目が一番大きな効果というか、目標にもなるのかなと思いますが、もちろん今大臣が多様にお答えくださったとおりだと思います。

 そうなってまいりますと、果たしていかほどのお金を給付していくのかということも大きな課題になってまいると思います。

 そもそも民主党が子育てに関するさまざまなお取り組みを始めたのは、マニフェスト等々をたどると平成十一年の子育て支援手当にさかのぼることとなると思いますが、これを平成十六年の段階で子ども手当というふうに名前を変更し、恐らく考え方も変えてはこられたんだろうと思います。

 この子ども手当というふうにお考えをまとめられたときに、以降、次年度次年度とどんどん金額等々の記載も深まっていくわけでありますが、当初、子ども手当とお考えになったときには、その手当をいかほどに持っていくかということについてはどのようなお考えがあったでしょうか。

長妻国務大臣 突然のお尋ねでありましたので。

 過去、民主党の政策というのはいろいろな変遷があったわけでございますけれども、恐らく、その金額レベルの議論というのは今日の金額のレベルの議論とは異なっていた議論ではないかというふうに考えております。

 私どもも、二万六千円という数字を決定いたしましたのは、諸外国の事例に勘案し、これまでのGDPの比率で大変低い子ども・子育てへの支援という過去の蓄積もある、そして基本的な費用の相当部分をカバーしなければならない、いろいろな要素を勘案して、総選挙の前にこの二万六千円という数字を確定させていただいたという経緯であります。

阿部委員 平成十六年段階のマニフェストを拝見いたしますと、給付水準は、食費、被服費を賄えるものとするという記載がございます。この食べるものと着るものというのは、最低限のというか、ある意味で、生存の基本を支えよう、これを社会で支えようというお考えかと思います。それにのっとって、平成十八年の段階で、一万六千円という記載が金額上初めて出てまいります。そして、大臣が今おっしゃられたように、昨年の夏の衆議院選挙におきまして、ここで、「子どもが育つための基礎的な費用(被服費、教育費など)を保障」すべき観点からということで二万六千円が提案されておられると私は読みました。大臣にも後で見ていただきたいんですけれども。

 さて、このような考え方に立ったとして、実は私どもの政党では、子ども手当の創設にも賛成ですし、ずっとマニフェストに掲げてまいりましたが、従来の民主党のマニフェスト、平成十八年段階までにあったと同じように、食費と被服費の部分を現金給付いたしましょうというふうに考えました。

 そうなりますと、お手元の二ページ目の資料を見ていただきたいですが、実は試算根拠は、民主党のやっておられる、私どももたまたまですが、こども未来財団のものを利用させていただきまして、食費と被服費にかかる部分を試算いたしました。そういたしますと、ゼロから十五歳を単純平均いたしますと一万三千四百四十七円、細かくは申しませんけれども、このような金額になりました。

 これは、長浜副大臣にも私が二万六千円の試算根拠を教えてくださいと申し上げましたけれども、ここに教育費まで加えて、それも教育費の平均額としてしか試算できないと思いますが、これで現金給付になさる意味はどう考えたらよいのでしょうか。長妻大臣にお願いします。

長妻国務大臣 私どもも、こども未来財団がつくったこういう表というのもマニフェスト作成の過程で参考にしたというのは事実でありますけれども、これだけで決定をしたわけではもちろんございません。

 当然、今回の件は、マニフェスト段階からもお約束をしているとおり、控除から手当へということで、実額の手取りの部分の数字だけでいうと、控除がなくなる、つまり十五歳以下の若年者扶養控除がなくなりますので、そういう意味の実質的手取りというのは高額所得者ほど下がっていくということで、きちっと二万六千円ということでは、実質手取りという意味ではならないわけであります。

 そういういろいろな要素も考えて、基本的なこういう経費の相当部分を見る、そして諸外国との比較などなどを判断してこの金額を決めさせていただいた、こういう経緯であります。

阿部委員 民主党のマニフェストの記載にのっとれば、そして、大臣は未来財団の数値を根拠にしただけではないとおっしゃいましたが、未来財団から出されたところの数値の基礎的学費を含めて試算いたしますと、恐らく二万六千円に近くなります。

 今、大臣はるる、例えば控除を外すから実際の手取りがどのくらいになるかという問題もあるとはおっしゃいましたが、こうした施策を図るときには、物事の考え方、試算根拠、何を国は給付するのかをはっきりさせておかないと、やはり国民の納得も得がたいんだと私は考えます。

 社民党的には、食費と被服費、これは必要最小限、絶対に、暮らしていく、生きていく、育っていくための必要、ベースラインだというふうに考えた数値を出しております。そして、他のものは、保育にしろ教育にしろ現物給付と言われるものは、もちろん、大変御家庭が貧困、経済的困窮、先ほどの就学支援金のお話もそうですが、そういうものに対して、きちんと格差に着目し、貧困に着目し、その配分を決めていくべきではないかと考えます。それでないと、国民的納得がいかないのではないか。ベースの最低限は社会が子供を育てます、あとは御家庭の状況で、いろいろな御家庭がございます。

 ちなみに、三枚目のデータを見て、四枚目になります。三枚目は、社民党の場合は十八歳まで子ども手当と考えておりますので、そのデータを入れましたが、四枚目に移っていただきたいと思います。

 これは学習費であります。いわゆる学費の部分で、公立幼稚園に行くか私立幼稚園か、公立小学校か私学の小学校か、公立の中学校か高校か、私学か、これはちょっと目盛りが違いますのでなかなか比べられませんが、文科省のお出しになったデータを見るまでもなく、やはり教育に係る必要経費というのは大変に格差がございます。

 こうした部分については、先ほど申しましたように、均一なお金の給付よりも、必要に応じて本当に一番大変なところに手厚く給付すべきではないかと私は考えますが、再度大臣にお考えを伺います。

長妻国務大臣 高校につきましては、御存じのように、実質的な高校授業料無償化ということも我々申し上げているところであります。

 この教育にかかわる数字も今見せていただきまして、確かに、公立と私立、差があるということであります。

 これも先ほどの繰り返しになりますが、ただ、今回の二万六千円という数値を決めましたのは、先ほどの試算を根拠に、そのままその金額を算出して当てはめたというものではなくて、相当部分を確保、そして海外先進国とも引けをとらない、GDP比で大変低い子供の予算が続いてきたというこれまでの経緯等々もかんがみて、こういうような形です。

 目的のところで私も先ほども答弁しましたけれども、結果として、お子様の教育の質あるいは生活の質、その向上も目指していく、こういうことであります。

阿部委員 私は、この問題はもっと綿密であるべきだと思うんです。

 何を言っているかというと、対GDPではかられるものは、保育に係るお金とかその他もろもろ、子供施策全体に係るもので対GDP比を出すわけです。現金給付だけで対GDP比をはかるものではないということです。そうすると、現金給付と現物給付のバランスをどこに図るかが、当然、政策の中で出てまいります。

 それから、長妻大臣がおっしゃった諸外国の例ということを例に引けば、これは田中さんの資料を使わせていただいて恐縮ですが、大臣もお目通しのように、もし、民主党の当初の来年度の予測の二・六万円となさるとなると、例えばスウェーデンでは第五子までができたらそこまで行きます。はっきり言って、現金給付額として破格に高くなってしまいます。各国は、第二子、第三子、第四子の方に多く加算するなり、それぞれに工夫をしておられます。

 ここは、大臣、私どもの考えは、二・六万に行く前に、先ほどの現物給付、特に、おくれた保育、あるいは医療もそうです、そちらの充実を図って、そしてきちんと、本当にトータルに子供を支えられる政策で打つべきだ。私は、高く子ども手当を評価しますので、そのことがきちんと国民の納得なり、本当の定着をしてほしいと願うものですから、あえて伺わせていただきます。

 諸外国でもとおっしゃいましたが、このようにグレードを分けている、また、二万六千円というのは、例えばスウェーデンに対しても多い金額になっております。財源は限られており、しかし、その中で十分に子供にお金を、あるいは現物給付を充実させていきたいと願うときには、ここを大臣がしっかりと御検討いただけまいかと思いますが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 これについては、私ども、子ども手当のみならず、基本的な社会保障の考え方の一つとして、控除から手当へ、こういう考え方を推し進めていこうというふうに考えています。先進国では既にそういう考え方が浸透している国もあると思いますけれども、日本ではまだまだ控除という発想が強調されがちでありました。そういう意味では、控除と手当、控除の廃止と手当をセットで我々としては見直すという発想が一つあります。

 そして、こども未来財団のいろいろな試算がありますけれども、その試算にしても、さまざまな方がおられます。先ほど提示された、公立あるいは私立、あるいはさまざまお子様の事情で、お金がかかる、やむを得ない、そういうお子様もいらっしゃるでしょう。いろいろな事情がある中で、それを単純に平均して積み上げるということの資料も、もちろん我々も参考にはさせていただきましたけれども、そういう相当部分と諸外国、そして何よりも、控除から手当ということで、本当に必要なところにお金がきちっと届く、こういうものの改革とセットで今回実施をさせていただきたいということであります。

阿部委員 何度も申し上げて恐縮ですが、さまざまな部分にはさまざまにしたらいいんですね。貧困な家庭と裕福な家庭は違っていいし、特に、お金がない、就学援助とかは高校生までやったっていいと私は思うんです。それが本当の温かな政策です。

 恐らく大臣が二・六万円にこだわっておられるのは、おっしゃったように、所得控除と住民税の控除を両方外しちゃうと、二・六万までしないと、実は、子供がいるゆえに可処分所得が減るという家庭が生まれてくるんですね。

 でも、私は、そうした税制からこの政策を逆さに起点していくのは間違っていると思います。必要なもの、食費、被服費、これはだれにも、絶対に食べて着るんです、ここは国として現金で給付する。あと、必要な教育、保育等々は、応能負担していただいて、足らざる、あるいはサポートしなきゃいけない部分をサポートするとした方が、恐らく国民の理解と納得が得やすいと思います。

 時間ですので、私が最後に言い切って終わって失礼ですが、またこの委員会の中で重ねての審議をお願い申し上げます。

 ありがとうございます。

藤村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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