衆議院

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第16号 平成22年4月9日(金曜日)

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平成二十二年四月九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 藤村  修君

   理事 青木  愛君 理事 石森 久嗣君

   理事 内山  晃君 理事 黒田  雄君

   理事 中根 康浩君 理事 大村 秀章君

   理事 加藤 勝信君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    石田 三示君

      江端 貴子君    大西 健介君

      岡本 英子君    神山 洋介君

      菊田真紀子君   菊池長右ェ門君

      小宮山泰子君    小山 展弘君

      郡  和子君    斉藤  進君

      園田 康博君    田名部匡代君

      田中美絵子君    長尾  敬君

      仁木 博文君    初鹿 明博君

      樋口 俊一君    福田衣里子君

      藤田 一枝君    細川 律夫君

      三宅 雪子君    水野 智彦君

      宮崎 岳志君    室井 秀子君

      山口 和之君    山崎 摩耶君

      山井 和則君    あべ 俊子君

      近藤三津枝君    菅原 一秀君

      田村 憲久君    武部  勤君

      長勢 甚遠君    西村 康稔君

      松浪 健太君    松本  純君

      坂口  力君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   厚生労働副大臣      細川 律夫君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       石井 信芳君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高井 康行君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  外口  崇君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月九日

 辞任         補欠選任

  大西 健介君     江端 貴子君

  菊田真紀子君     石田 三示君

  園田 康博君     小山 展弘君

  山口 和之君     菊池長右ェ門君

  棚橋 泰文君     近藤三津枝君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     神山 洋介君

  江端 貴子君     大西 健介君

  菊池長右ェ門君    山口 和之君

  小山 展弘君     小宮山泰子君

  近藤三津枝君     棚橋 泰文君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 洋介君     菊田真紀子君

  小宮山泰子君     園田 康博君

    ―――――――――――――

四月九日

 国民年金法等の一部を改正する法律案(長勢甚遠君外五名提出、第百七十三回国会衆法第一三号)

は委員会の許可を得て撤回された。

同月八日

 保育を必要とする子供たちすべてに国からの補助を求めることに関する請願(藤田一枝君紹介)(第六五四号)

 保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(大西健介君紹介)(第六六四号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(阿知波吉信君紹介)(第六六六号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第六六七号)

 同(石田芳弘君紹介)(第六六八号)

 同(石原洋三郎君紹介)(第六六九号)

 同(糸川正晃君紹介)(第六七〇号)

 同(江田康幸君紹介)(第六七一号)

 同(小渕優子君紹介)(第六七二号)

 同(加藤紘一君紹介)(第六七三号)

 同(梶山弘志君紹介)(第六七四号)

 同(金子恭之君紹介)(第六七五号)

 同(河井克行君紹介)(第六七六号)

 同(岸本周平君紹介)(第六七七号)

 同(古賀一成君紹介)(第六七八号)

 同(後藤田正純君紹介)(第六七九号)

 同(河野太郎君紹介)(第六八〇号)

 同(佐田玄一郎君紹介)(第六八一号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第六八二号)

 同(塩崎恭久君紹介)(第六八三号)

 同(田野瀬良太郎君紹介)(第六八四号)

 同(高市早苗君紹介)(第六八五号)

 同(高木義明君紹介)(第六八六号)

 同(高橋英行君紹介)(第六八七号)

 同(竹下亘君紹介)(第六八八号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第六八九号)

 同(玉木朝子君紹介)(第六九〇号)

 同(寺田学君紹介)(第六九一号)

 同(富田茂之君紹介)(第六九二号)

 同(長島忠美君紹介)(第六九三号)

 同(額賀福志郎君紹介)(第六九四号)

 同(初鹿明博君紹介)(第六九五号)

 同(古屋圭司君紹介)(第六九六号)

 同(保利耕輔君紹介)(第六九七号)

 同(松宮勲君紹介)(第六九八号)

 同(皆吉稲生君紹介)(第六九九号)

 同(村井宗明君紹介)(第七〇〇号)

 同(山本拓君紹介)(第七〇一号)

 同(横光克彦君紹介)(第七〇二号)

 同(吉川政重君紹介)(第七〇三号)

 同(吉野正芳君紹介)(第七〇四号)

 同(赤松正雄君紹介)(第七一〇号)

 同(井戸まさえ君紹介)(第七一一号)

 同(石田真敏君紹介)(第七一二号)

 同(石破茂君紹介)(第七一三号)

 同(稲田朋美君紹介)(第七一四号)

 同(漆原良夫君紹介)(第七一五号)

 同(江藤拓君紹介)(第七一六号)

 同(大口善徳君紹介)(第七一七号)

 同(城内実君紹介)(第七一八号)

 同(黄川田徹君紹介)(第七一九号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第七二〇号)

 同(重野安正君紹介)(第七二一号)

 同(柴橋正直君紹介)(第七二二号)

 同(園田康博君紹介)(第七二三号)

 同(高木美智代君紹介)(第七二四号)

 同(谷畑孝君紹介)(第七二五号)

 同(玉置公良君紹介)(第七二六号)

 同(西博義君紹介)(第七二七号)

 同(野田毅君紹介)(第七二八号)

 同(平井たくや君紹介)(第七二九号)

 同(古川禎久君紹介)(第七三〇号)

 同(細田博之君紹介)(第七三一号)

 同(三井辨雄君紹介)(第七三二号)

 同(森山浩行君紹介)(第七三三号)

 同(森山裕君紹介)(第七三四号)

 同(山本公一君紹介)(第七三五号)

 同(阿部知子君紹介)(第七四一号)

 同(石毛えい子君紹介)(第七四二号)

 同(岩屋毅君紹介)(第七四三号)

 同(遠藤利明君紹介)(第七四四号)

 同(小野寺五典君紹介)(第七四五号)

 同(大村秀章君紹介)(第七四六号)

 同(岡本充功君紹介)(第七四七号)

 同(木村太郎君紹介)(第七四八号)

 同(黄川田徹君紹介)(第七四九号)

 同(高村正彦君紹介)(第七五〇号)

 同(田中康夫君紹介)(第七五一号)

 同(高木陽介君紹介)(第七五二号)

 同(高橋昭一君紹介)(第七五三号)

 同(高邑勉君紹介)(第七五四号)

 同(橘慶一郎君紹介)(第七五五号)

 同(徳田毅君紹介)(第七五六号)

 同(藤田一枝君紹介)(第七五七号)

 同(松浪健太君紹介)(第七五八号)

 同(三ッ矢憲生君紹介)(第七五九号)

 同(宮腰光寛君紹介)(第七六〇号)

 同(向山好一君紹介)(第七六一号)

 同(吉泉秀男君紹介)(第七六二号)

 同(吉田泉君紹介)(第七六三号)

 同(石田祝稔君紹介)(第七八一号)

 同(大西孝典君紹介)(第七八二号)

 同(北神圭朗君紹介)(第七八三号)

 同(武部勤君紹介)(第七八四号)

 同(土肥隆一君紹介)(第七八五号)

 同(宮島大典君紹介)(第七八六号)

 同(村田吉隆君紹介)(第七八七号)

 同(山口和之君紹介)(第七八八号)

 同(柚木道義君紹介)(第七八九号)

 同(和嶋未希君紹介)(第七九〇号)

 現行保育制度に基づく保育施策の拡充を求めることに関する請願(横光克彦君紹介)(第七〇五号)

 同(北神圭朗君紹介)(第七八〇号)

 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質的向上を求めることに関する請願(菊田真紀子君紹介)(第七〇七号)

 同(野田毅君紹介)(第七三八号)

 最低賃金千円の実現を求めることに関する請願(柿澤未途君紹介)(第七〇八号)

 膵嚢胞線維症の治療環境を実現することに関する請願(斎藤やすのり君紹介)(第七〇九号)

 後期高齢者医療制度を速やかに廃止し、高齢者・国民が望む医療制度を目指すことに関する請願(阿部知子君紹介)(第七三九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第七七一号)

 同(笠井亮君紹介)(第七七二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七七三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七七四号)

 同(志位和夫君紹介)(第七七五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七七六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七七七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七七八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第七七九号)

 社会保険病院・厚生年金病院等を公的医療機関として存続させ、地域医療の確保を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第七四〇号)

 独立行政法人地域医療機能推進機構法の今国会での早期成立に関する請願(山口和之君紹介)(第七七〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国民年金法等の一部を改正する法律案(長勢甚遠君外五名提出、第百七十三回国会衆法第一三号)の撤回許可に関する件

 医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 国民年金法等の一部を改正する法律案起草の件

 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律等の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

藤村委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房年金管理審議官石井信芳君、医薬食品局長高井康行君、職業安定局長森山寛君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

藤村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。内山晃君。

内山委員 おはようございます。民主党の内山晃でございます。

 せんだっても同僚議員が、政権を交代した後、初めて質疑に立ったという発言もございましたが、私も、政権を交代して、きょうが与党として初めて質疑に立つわけでございまして、やっと順番が回ってきたなと。大勢の民主党の優秀な委員の中において、なかなか出番がなかったわけでありますけれども、きょうは、こうして大臣、副大臣、政務官を拝見しておりますと、与野党が逆転したんだなと、何か感無量でございます。

 感傷に浸っている場合ではありませんので、早速質疑に入りたいと思います。

 冒頭、ちょっと新聞記事をお配りしております。配付資料で、雇用調整助成金、不正受給二億円という記事が出ております。こういうことが起こるだろうなとは想像しておったわけでありますけれども、昨年の四月からことしの一月までの間に五十二事業所で不正が見つかった、総額は一億九千三百五十万円であることが厚生労働省の調べでわかった、こう書かれてあります。

 この不正、どのような手口、方法で不正を行ったのか、まずお知らせをいただきたいと思います。

森山政府参考人 お答えを申し上げます。

 雇用調整助成金につきましては、今委員御指摘なされましたように、二十一年四月から二十二年一月までの間に、五十二の事業所、約一億九千三百五十万円の不正受給を摘発したところでございます。

 その不正の内容でございますが、五十二件のうち、休業に係る事案が四十二件、教育訓練に係る事案が六件、休業及び教育訓練に係る事案が四件となってございます。

 不正の手口につきましては、休業の場合は、出勤をしていたにもかかわらず、出勤簿やタイムカードを偽装し、架空の休業を申請したものが多い状況となっております。また、教育訓練の場合には、仕事をしていたにもかかわらず、受講を証明する書類を偽装し、架空の教育訓練を申請したものが多いという状況になってございます。

内山委員 平成二十一年度分として、昨年の四月からことしの三月までに、雇用調整助成金に係る休業等実施計画届を提出した事業所は延べ八十六万社、対象数は二千二百八十万人、支給総額は六千百億円。大変な金額でございます。

 不正防止対策はどのように対応されているのか、お尋ねをしたいと思います。

森山政府参考人 お答えを申し上げます。

 当然、申請につきましては厳正にその書類をチェックしているところでございますけれども、実際に、悪質なもの等につきまして、なかなか申請書類だけでは把握できないところもございまして、実地調査等を行って、その不正の防止に努めているところでございます。

内山委員 お言葉にございました悪質か否かという、その判断基準というのをお知らせいただけませんでしょうか。

森山政府参考人 お答えを申し上げます。

 悪質の判断でございますけれども、それについてはいろいろなパターンがございますが、不正の手段が悪質、巧妙である場合、あるいはまた再度にわたり不正受給をした場合等々につきまして、その個別の事案に応じまして判断をしているところでございます。

内山委員 不正受給をしたこの五十二の事業所に対して、詐欺罪で告発をした件数は何件ありますか。

森山政府参考人 お答えを申し上げます。

 雇用調整助成金の不正を摘発した場合、通常は、その不正に係る助成金の支給を取り消し、当該取り消しました助成金を返還させた上で、不正後三年間は雇用保険二事業を財源とする各種助成金を支給しないということにしているところでございます。

 また、不正をした事業主のうち、先ほど来あります特に悪質なものにつきましては、当然、詐欺罪での告発も視野に入れて対応しているところでございます。ただ、先ほど申し上げました五十二件につきましては、告発した事案はないという状況でございます。

 今後とも、特に悪質な不正事件につきましては、詐欺罪での告発も視野に入れまして、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

内山委員 五十二の事業所を告発しなかった、その基準というか理由は何なんでしょうか。

森山政府参考人 先ほど申し上げましたように、特に悪質なものにつきましては詐欺罪での告発も視野に入れて対応しているところでございまして、先ほど来の五十二件につきましては、そういう観点から判断をしたものでございます。

内山委員 ということは、悪質ではなかったと。この程度なら詐欺罪では告発をしないというメッセージになってしまいますけれども、ここは一罰百戒で、きちっと告発すべきではないだろうかと思うんですね。六千百億円も出ているわけであります。さらには、八十六万社、二千二百八十万人もこの対象となっているということでありますから、それは少し甘いような気がするんですね。

 質問をちょっと切りかえてもう一度質問しますけれども、五十二事業所の不正受給を確認した方法、大体内部からの通報だということを聞いておりますけれども、職員が直接事業所に出向いて発見、摘発した件数は、このうち何件ありますか。

森山政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど来の五十二件につきましては、これは労働局あるいはハローワークの職員が直接実地調査いたしまして判明をしたものでございます。

内山委員 直接判明をしたというよりも、通報があったから調べに行ったということでしょうか。

森山政府参考人 個別事案についてはお答えを差し控えさせていただきますけれども、内容につきましてはそういうものもあったということでございます。

内山委員 今後の管理体制ということで、受給している事業所に対し、ペーパーを見ますと「実地調査をこれまで以上に積極的に行う」と書かれておりますけれども、受給した後の追跡調査というのも行うべきじゃないんだろうか、こう思うんです。

 もっともっと、マンパワーが足らないのはよくわかるんですけれども、ここを、受給中のところは積極的に現場に行って調べる。受給をし終わったところでも、不正に受給をしていた実績が残っているケースも多いんじゃないかなと思うんですが、追跡調査はされますか、どうですか。

森山政府参考人 お答えを申し上げます。

 雇調金につきましては、最近大変に申請件数がふえているということで、先ほど来先生も御指摘されていますけれども、八万事業所を超える申請事業所があるということでございます。ただ、そうはいいましても、当然、不正受給については防止しなきゃいけないということでございまして、いろいろな、実地調査の回数をふやすなど、そういうものを工夫して、今後とも不正受給の防止に努めてまいりたいと考えているところでございます。

内山委員 これだけやっていますと終わってしまいますので。数が多いからといって手抜きにならないように、ぜひともしっかりとやっていただきたいなと思います。

 続きまして、在職老齢年金の廃止ということについて質問をさせていただきたいと思います。

 在職老齢年金の仕組みで支給停止になっている年金額の総額は年間約一兆円余りで、働くことで年金が支給停止になる仕組みが高齢者の就労意欲を損なわせる大きな要因の一つとして挙げられています。

 例えば、二〇〇六年に発表された「年金制度改正が男性高年齢者の労働供給行動に与える影響の分析」、これによりますと、在職老齢年金制度を廃止することにより、六十歳代前半の高齢者の就業率が最大で一・六ポイント上昇することが示されており、また、高齢者の就業率が改善されれば、所得税の増加や消費を通じた経済の活性化にもつながると考えられています。

 在職老齢年金の廃止による影響としては、極めて粗い推計として、就業者数の増加が八万人程度、所得税の増が六十億円程度と見込まれています。また、支給停止になっていた一兆円が消費に回るとしたら、とても大きな経済効果が出てくるんじゃなかろうか、乗数効果というのが出てくるんじゃなかろうか、こんなふうに考えているわけであります。働けば働くほど世帯収入がふえて、健康に気をつけて働くということは、副産物として、医療費がかからないような生活になる、こういういいことずくめだと思うんです。

 一兆円が今まで出なかったことが財政に寄与するということは十分理解できますけれども、高齢者雇用の促進や経済の活性化を図る観点から、在職老齢年金の支給停止の仕組みを廃止すべきと考えますけれども、いかがでございましょうか。

長妻国務大臣 内山委員におかれましては、こういう形で質疑ができるとはまことに光栄でございまして、今後とも、年金あるいは厚生労働行政に御指導をいただきたいと思います。

 今言われたいわゆる在老についての御意見というのは、かねてよりの御意見だというふうに思います。結論から言うと、年金制度の抜本改革の法案を一期四年後に出すということを申し上げておりますので、その中で十分検討する論点だということであります。

 そういう議論の過程の中で、一つは、今おっしゃられた一兆円という一つの金額でございまして、この財源をどうするかということ。例えば保険料を上げるとなるとどう御理解をいただくのか等々、今の現行制度の中の見直しでありますといろいろな影響が出てまいりますので、抜本改革の中で検討課題としていきたいというふうに考えております。

内山委員 在職老齢年金の仕組みは、一定の賃金を稼ぐ者に対して年金の一部を支給停止するという仕組みであります。年金受給者が勤務する事業所に厚生年金が適用されていれば在職老齢年金の適用対象となりますが、厚生年金の適用されていない事業所に勤めると支給停止とならないという、勤務している事業所に厚生年金があるか否かによって年金が減額されるかどうか分かれるのは大変不公平だと常々考えておりますけれども、その点はいかがでしょうか。

長妻国務大臣 これも、おっしゃるように、現行の枠組みの中では厚生年金制度の中での支え合いの考え方ということなので、その厚生年金制度に入らない、これは適用漏れということではなくて、基本的には、要件によっては合法的に適用しないでいいということがありますので、そこの範疇の外、そこで働いている場合はいわゆる在老の支給は停止されないという、ある意味では、金額だけあるいは就労の形態だけ見ると同じなのに、なぜだということがかねがねより指摘をされております。

 この問題についても、一期四年の制度設計の中で議論をしていく論点になるというふうに考えております。

内山委員 在職老齢年金の見直しについては、新たな年金制度とあわせて検討するというお考えだろうと思いますけれども、新年金制度の施行準備に要する時間を考慮すると、移行までに相当の時間がかかると思います。一方、現行制度において、六十歳代前半の者に支給される厚生年金については、支給開始年齢が六十五歳へ引き上げ、これが二〇二五年度にかけて行われることとされておりまして、年金制度の改善により高齢者雇用を促進しようとすれば、それまでの間、取り組みが非常に重要だと思います。

 こうしたことから、高齢者雇用の促進という観点から、在職老齢年金の支給停止の仕組みについて、新制度の創設に向けた議論とは別に、今すぐにでも見直しを図るべきではないだろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 まず、おっしゃるように、高齢者の雇用促進というのは重要な観点で、いろいろな民間の調査もありますけれども、働く機会があれば、かなりお年になっても働きたいという方が非常に多いという調査もありますので、それについては、企業の定年延長を求めていったり、あるいは就労促進のいろいろ機会を提供していく政策を打ち出していくということ、これは同時に進めていきます。

 その中で、先ほど引用していただいた調査というのは、これは学者の方が調査をして、在老をなくせば就労率が上がるのではないかという調査、私も拝見をしております。

 そこで、今の現行制度のままそこをいじっていくと、結局、私どもが指摘していったのは、今までの現行制度をいろいろこれまでも、ちょこちょこと言ったら言葉は悪いですが、パッチワーク的にいじっていって、そして矛盾がどんどん出ていってしまっているということにかんがみて、やはり根本的に変えないといけないということで四年後の法案提出と考えているところでございまして、その中で今おっしゃられた点も十分勘案しながら検討をしていく課題にしたい。

 といいますのは、やはり、繰り返しになりますが、一兆円のお金をどう配分していくのかという大きな課題もありますので、その制度設計の中で、ほかの、障害年金から遺族年金から国民年金から、かなり多くの論点がございますので、それを一緒に議論していきたいと思います。

内山委員 ちょっと実務的なお話をしたいと思うんですけれども、今すぐ廃止というのは無理だとしても、見直しという部分で対応できないかという点を二点ほど指摘したいと思うんです。

 在職老齢年金の支給停止の計算する基準が、月収二十八万円という数字がありますけれども、これをもう少し緩和すれば、支給停止にならない方がどっとふえてくるわけであります。

 昭和三十六年四月二日以降生まれの男性、年金の支給開始年齢が六十五歳からです。これから十一年たちますと、そういう方が六十になります。六十から六十五までの間は年金が出ないんですよね。では、思うように六十五まで定年延長ができるか、六十から六十五までの報酬で生計が立てられるかというのは、やはり大変大きな問題だと思います。見直しですぐにでも対応できるこういう部分、月収の二十八万円をもっと緩和すれば救済される方が出てくる。

 さらには、非常に実務的なことで恐縮なんですけれども、六十歳以降の定年で会社をやめた、そうすると、同日得喪というのがあるんですね。きょうやめました、そして新しく標準報酬、給与を改定した部分でとりました。給料がうんと下がったにもかかわらず、在職老齢年金は前年度の賞与の部分もカウントして総報酬で計算しますから、五十九のときの賞与が高かったら、六十以降の給料を下げても、年金が減額のまま入ってこないというケースが多いんですよ。

 やはりこういう事務手続上の、六十歳時に同日得喪した場合、それ以降の標準報酬月額と標準賞与で在職老齢年金を計算するという方向にこれは見直してもらえないだろうか。賞与は、同日得喪の場合には前年度分はもうカウントしない、これからの賞与の分をカウントする、こういう本当に実務的な問題なんですけれども、御検討をぜひいただけると、大変、このことによって、一年間年金が全くもらえない、在老の仕組みでもらえないという人たちがたくさんおりますので、御検討をいただきたいということです。

 御検討だけで結構ですが、何か一言お願いします。

長妻国務大臣 まず、今の二十八万円の緩和というのは、かねてから、厚生労働省の中の年金部会というのがありますけれども、そこでも議論がなされていて、一定程度緩和する必要があるんじゃないかという意見も出されております。今、我々としても、御質問いただきましたので、その部分と、あとは賞与のカウントの仕方についても検討していきたいと思います。

 ただ、一点だけその中で配慮しなければいけないのは、今、基本的に日本国の年金は賦課方式でありますので、そういう意味では現役の方が仕送りをしているということで、現役の方の中でも将来大変苦しい状況になる低賃金の方もおられるということでありますので、抜本改革の中で基本的には見直すわけでありますけれども、今おっしゃられた論点については、その抜本改革の中の前に、できるのかできないのかも含めて検討していきたいと思います。

内山委員 テーマをかえまして、無年金者対策として、平成の特例納付の実施をしたらどうかということについて質問したいと思います。

 配付資料の二枚目に無年金者数という数字が出ておりまして、「今後納付できる七十歳までの期間を納付しても二十五年に満たない者」のこの三列を足しますと、百十八万人という無年金者がおります。合算対象期間を入れると受給資格が発生する方も中には含んでいると考えられますけれども、多くの方が受給資格二十五年に満たないという理由で無年金で老後生活を送っている、またはこれから送らなければならない状況は放置できないと思います。

 政府は、現行制度における無年金対策について現在どのように取り組んでいるのか、お答えをいただきたいと思います。

長妻国務大臣 まず、これから法律の審議をお願いしようと思っております、いわゆるさかのぼり納付ということで、これは、国民年金が今まで過去二年しかさかのぼれなかったものを、特例納付ということではなくて、恒久的に十年間さかのぼれるようにしようというような法律を出させていただいて、それによって、六十五歳未満の被保険者で、過去さかのぼって納めれば無年金にならずに済む人が最大四十万人出てくるということであります。

 そしてもう一つは、二十五年に満たないんだけれども、空期間とかいろいろな考え方、漏れているものを足し算すれば受給権が実は発生するというような可能性がある人に、これは個別に五十万人を対象として通知を出させてもらいました。

 この前も、そういう御高齢の女性が大臣室に来られて、空期間ということを知って受給権が発生したということもございますので、まずはこういう取り組みをきちっとしていくということで我々としては怠りなくやっていきたいというふうに思いますが、最終的にはこれも抜本改革の中で、最低保障年金という考え方を打ち出しておりますので、その議論の中で最低保障機能も我々としてはしっかり確保していきたいと思います。

内山委員 時間が少なくなってきましたので少しはしょってやりたいと思いますけれども、保険料をうっかり納め忘れたり、経済的な理由で納められずに免除も受けていなかったケースでは、過去の保険料を二年おくれて納めることは、現行制度ではできません。大変厳しい状況だと思います。

 これから提出されます改正法では、直近の十年の未納期間という部分は救済をされますけれども、直近の十年だけで、過去の十年間ということではありませんので、果たしてどれだけの方たちが救済されるだろうかと少し疑問を感じています。

 私が相談を受けた多くの方は、七十まで任意加入をしたとしても、あと数カ月とか、あと一年数カ月、こういった年金をもらえない方が数多くいらっしゃいます。こういう方を救うためには、ぜひとも、資料の三枚目、お配りしておりますけれども、過去三回、特例納付を実施しているわけでありますから、これは時限立法として平成の特例納付をやって、安心した年金制度を国民に提供するべきだと思います。(発言する者あり)ありがとうございます。

 生活保護というのはやはりなかなかもらいづらい、でも、少なくとも自分の年金をもらうというのは非常に大きな意義があると思います。大臣、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 まず、この特例納付ということについて、もう一つの議論としては、この特例納付の期間だけやるということで、それ以外について、そこの期間を知らなかった方などについてはどうなんだという御批判もあるので、我々としては恒久的措置にしていこうということでありますし、この特例納付、過去の部分は十年よりもかなりさかのぼって納められるということで、今後、多少定期的に特例納付があるんじゃないかということになりますと、では、今は保険料は無理して納めずに、また特例納付がある、もうちょっと、将来お金が豊かになったときに納めようというふうに考えられる方がふえることが想定されるのか否か。

 あと、実はこの特例納付についても我々省内でも検討いたしまして、今申し上げた論点プラス、十年以上さかのぼるということになりますと、お金をかなり持っている方々がそこに納めて、結局、受給する場合は、今は国民年金は半額が税金が補助でついてくるというような仕組みでありますので、そういうもろもろの全体の公平感も考えて、今回は十年さかのぼりというようなことにさせていただいたわけであります。

内山委員 手元にお金があったら、例えばその手元のお金を使い切ってしまったら、もう何もない。では、こういう特例納付があって、年金というものに置きかえて終身で受給できるというお考えになる方もいらっしゃると思うんですね。だから、ぜひその辺は、金持ちしかこういう特例納付が利用できないんじゃなかろうかという御懸念はあるかもしれませんけれども、逆に、今の手持ちのお金を少なくともそういう将来にわたって終身でもらえる年金に置きかえていく、こういう人の方が僕は多いと思います。

 御相談を受けている高齢の七十を超えているおばあさんなんかも、あと数カ月納められれば年金をもらえるんですけれども、何とかなりませんかと。決して裕福ではありません。そういう人たちを救うためにも、ぜひともやっていただきたいなと思います。

 無年金者も、過去二十年にわたって消費税を負担しているわけですね。国の予算総則には、消費税は老人福祉三財源、基礎年金、後期高齢者医療、介護に充てるということになっているわけで、消費税は基礎年金の財源として、無年金者も実は払っているわけです。これからも生きている限り無年金者も消費税を負担し、基礎年金の財政を支えていくわけでありますから、ぜひともそこは、これから何度も特例納付があるんだということではなくて、時限立法で、二年で、最後の特例納付ですよというぐらいのアナウンスをして、新制度になる前に無年金者の皆さんをきちっと救済して新制度に行くことの方が私は正しい方法だと思います。

 無年金者の六五%が生活保護を受給している、この現状があるわけで、御自分の権利の年金を受給できるような道を今こそつくっていただきたい、こうお願いを申し上げて、私の質疑を終了したいと思います。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日、全会派で採択されるところになります年金に係る二法案については、基本的に、受給権の確立をさらに充実させるものであるということにおいて、賛成をいたします。

 きょう私のいただきましたお時間は、先般、一般質疑の時間がございましたが、長妻大臣が参議院で同時刻に委員会を抱えておられまして、長妻大臣となかなか、一般質疑というふだんはできない分野での質疑をする時間がございませんでしたので、きょうは大臣を主にお願いいたしまして、質疑をさせていただきます。

 先ほど内山委員のお話にもありましたが、政権交代後六カ月余を経て、今、私ども新たな政権が国民にあらゆる意味で問われておると思います。政権交代が何のためであったのか、また新しい政権は何を目指してどこに向かっていくのか。そうした大きな哲学あるいは理念の観点において、きょうは長妻大臣御自身の言葉でぜひ御答弁をお願い申し上げたいと思います。

 一点目は、今、国民的な要請の強いリハビリの問題でございます。

 後ほど、がんなどの疾患もお取り上げがあるかと思いますが、いわゆる脳血管障害等々によって、あるいは心臓の疾患によっても、あるいはがん等の全身性の疾患によってもお体が不自由になったりすることは、高齢社会であれば多々起こってくることでございます。これに対して、リハビリテート、もう一度生き直す、自分の持てる能力のすべてを総動員してもう一回生き直していくための医学がリハビリ医療であると思います。

 このことについて、実は長妻大臣も、私が申し上げたようなことと認識を一にされる部分が野党時代は多かったと思います。例えば、平成二十一年五月十一日の予算委員会での質疑の中で、リハビリの日数制限、いわゆる打ち切りについて大臣がおっしゃった言葉は、「リハビリの打ち切りも、反発があったからまた打ち切りはやめる、やめない、」と。前政権がふらふらすることに対して、そのようにするからおかしくなったというふうに述べておられます。

 その後、リハビリの日数制限については二度の見直すチャンスがあり、今年度も診療報酬の中で多少は話題になっておりますが、そもそも長妻大臣にあっては、世で言うリハビリの日数制限、疾患ごとに日数の上限を設けていったやり方、あるいはそれを支える哲学、これはやった方にもおありなんだと思いますけれども、それについてはどのようにお考えであるか。一点目、お願いいたします。

長妻国務大臣 これは平成十九年のことだと思いますけれども、時の政府がリハビリについては日数制限を打ち出して、考え方としては、ある意味ではなかなか回復しないという場合、つまり改善が期待できない維持期だというようなときには打ち切るという基本的考え方のもと、百五十日とか百八十日とか九十日とか、疾患によってそういう期限を機械的に決めたということで、私もいろいろな方とお話をして、これは大きな問題であるという意識で、野党時代、そういう働きかけを政府にも国会の場でさせていただきました。

 それもあったんだと思いますけれども、平成二十年には、それまでの機械的なものではなくて、最終的には、お医者さんが改善が期待できると判断する場合はその日数を超えてリハビリをしていい、こういうようなことに改善をされてきたというふうに考えておりまして、その平成十九年の状況から一定の改善が見られてきたのではないかというふうに考えております。

阿部委員 今、大臣の御答弁の中に、では改善とは何なのかということをもう一度、リハビリ医療の観点からお伺いしなければならないんだと思います。

 これは、大臣も同じように、質問主意書の中でも問いかけておられます。例えば、リハビリをしても改善が見られない維持期である場合、リハビリは打ち切られる、しかし、維持期でもリハビリを打ち切ると、自助努力で体を動かしていても、逆に歩けなくなったり寝たきりになってしまったりすると。この質問に対して厚生労働省は、主意書に対する答弁書は一回もきちんとしたものを出しておられません。

 大臣は、このたび、その長となられました。改善とは何なのか。そして、私どもは、医療界ではリハビリというのは、例えばその人の落ちていく機能をある意味で維持、あるいは低下のスピードを緩やかにすることも含めてリハビリテートなんだと思います。加齢現象、年をとるということは、持てる能力がいろいろな意味で失われていきます。そのコースに対して、少しなりともそのスピードを緩徐にすることも含めてリハビリではないのか。この点について、大臣の御所見を伺います。

長妻国務大臣 これからさらに高齢化のスピードが上がり、多くの方が高齢者になるというときに、リハビリというのは大変重要なものであるというのは理解をしております。

 その中で、今申し上げたことにプラスをして、改善ではなくて維持を目的とする場合についても一定程度のリハビリテーションを医療保険から提供できることとしたということで、これは一カ月当たり二十分のリハビリテーション十三回分を評価していくというようなこともできたわけでございまして、平成二十年以前の硬直的、機械的なものから、いろいろな批判もあって、時の政府は一定の改善をなされてきているというふうに考えております。

 その中で、先ほど申し上げました、改善が期待できると判断する場合というのも、詳細の認定はお医者様に任されているところでありますので、それはお医者様が機械的ではなくて適正に判断をしていただきたいということもお願いをしているところであります。

阿部委員 何をもって大臣は機械的と言われるのかであります。

 私の質問をよく聞いていただきたいんです。落ちていく能力のスピードを緩徐にすることも含めて、リハビリという医療はあるんだと思います。改善とか維持とかは何を意味するのかであります。

 例えば、WHOはリハビリについて、能力が可能な限り最高の水準に達するよう訓練することと規定しております。能力が可能な限り、その方の最高の水準でいいわけです。回復像があるわけでもなく、維持像があるわけでもなく、その方の持てる能力のマキシマム、一番いいところに持っていくというのがリハビリであります。であるならば、それについて何回、何日という制限自身は、実は機械的なのであります。大臣もいみじくもおっしゃったけれども、これから多くの方が御高齢期を迎え、リハビリは国民の願いです。この国が高齢社会に突入して、みんながそれぞれに、それぞれにでいいのです、おのおのの最高水準に達するようにするためがリハビリであります。

 今、一生懸命厚労省側の皆さんが大臣にいろいろ耳打ちされますが、いい御答弁を出そうということでの秘書官たちの御尽力であると思いますが、私は本当に心底考えていただきたいんです。

 今やっていることは、まさしく機械的なのです。なぜかといえば、その方の最高水準を目指して、それぞれが必要なものを受けていくというのが原点であります。

 そもそも、数々の医療の診療報酬の中で、このような形で機械的に日数上限を設けたものは、治療行為についてはございません。入院日数において、何日になると幾らに下がるとかはあったとしても。まして、リハビリという分野でこうした日数制限をして、そして、回復だ、維持だと言葉をつないで、患者さんや医師たちの現場がどう考えておるか。

 私は、大臣が初心に戻って忌憚なく患者さんの声を聞いていただきたいと思います。さまざまな学会の声は聞いたというふうに、きのうもお役人というか、私は、厚生官僚を悪く言うだけじゃなくて、活躍してほしいです。でも、厚生労働行政のスタートは国民にあります。

 前政権で、尾辻さんは、大臣だった当時、もちろん今、私どもの新政権のいずれの党にも属しておらず、自民党に属する大臣であられましたが、いろいろな折節に、常に、患者さんの声はどうあるか、国民の思いに自分は近く頑張りたいとおっしゃっていたことをよく思い出します。また、坂口厚生労働大臣、前大臣も、常にそのような姿勢で、御自分の言葉で語ってくださいました。

 私は長妻大臣には期待するものですから、この点をぜひ御自身の言葉で、回復、維持、これと、その方のベストな状態とは違うんじゃないですか、これを明確にお答えください。

長妻国務大臣 先ほど申し上げましたのは、従来の機械的な日数にかんがみて切ってしまうということではなくて、改善が期待できるとお医者さんが判断する場合はそのまま日数を延ばす、そして状態の維持を目的でありますので、維持することを目的としているというようなことの場合は一定の評価をするということでありますけれども、今、せっかくのお尋ねをいただき、現状のお話もいただきましたので、いま一度、平成二十年から始まったこの措置が、政権交代後、具体的にどういう影響が出て、これでおおむね現場の方は納得されているのか、あるいは患者さんに不都合な状況が出ているのか否か、今いろいろ中医協でも検証していると聞いておりますので、さらにその現状把握をきちっとして、いずれかの段階でそれを公表し、報告できるような形に指示をしてまいりたいと思います。

阿部委員 ありがとうございます。

 このリハビリの日数制限は、そもそもが二〇〇六年のことでありました。時は二千二百億の社会保障費削減に向かってまっしぐらのさなかで、その中で浮かび上がったのがこのリハビリの日数制限です。当時、さまざまな審議会が開かれ、しかし、その中で、審議会では実はそうした表現がなかったにもかかわらず、だらだらとリハビリをやるようなことは改めねばならないと、ある意味ではやゆするような言葉でこのリハビリが取り上げられたのが事のきっかけです。そして二〇〇八年、一回改正がありました。

 この二〇〇六年と二〇〇八年、おのおの医療現場からいろいろな声が出ました。二〇〇六年のときも二〇〇八年も、パブリックコメントをとりました。ただ、二〇〇六、二〇〇八のパブリックコメントのとり方の違いは、二〇〇八の場合は自由書き込み欄というのをなくしました。

 医師たちのさまざまな思いが書き込まれます。私は、パブリックコメントはとてもいい制度ですが、形式的にやったらそこから勝手な結論も導き出せるということで、現場感覚を大事にされる大臣には、ぜひそうした、もしパブコメを求められるのなら、医師たちについては自由書き込み欄をきちんと設けていただきたい。それから、何よりも患者さんたちの団体あるいは患者さんとなって声を出したい方。

 実は、この問題のきっかけは、私の大学の、私も教えてもらったことがある多田富雄さんという免疫の教授、世界的な学者です。彼が、自分が長年医師としてやってきて、しかし脳梗塞を患い、この国の医療、とりわけリハビリ体制の非情さを身をもって体験したところから訴えかけたところで始まっております。今もって多田先生はこのことに納得をしておられない。

 例えば、私も医療界にいて思いますけれども、患者さん側から見てどうなのかという原点を本当に忘れてしまったら、数値も操作できるし、ある意味で審議会すらその結果を自由に使えるだけの場に大臣は立たれました。原点に戻ってやっていただきたいと再度お願い申し上げます。

 そして、二〇〇八年の改正は、実は日数制限以上の問題を現場に投げかけたと私は思います。二〇〇八年の改正で取り入れられたものは、大臣は二〇〇六から二〇〇八までよくなったと言いますが、果たして本当かということでお問いかけをいたしたいと思います。

 二〇〇八年の改正では、お手元にございますように、回復期リハビリテーション病棟の質の評価という視点が加わりました。医療において、もちろん質は何より大事です。しかし、その質の評価が外枠として与えられることの可否は、私は問題が別だと思います。

 この簡単な改定前と改定後をお示しした図ですが、改定前は、要員、人を何人そろえておるかで報酬が決まっておりました。ここに、もちろん、それを担うスタッフは、例えば医師を専任にするとか、これはとても大事なことですが、プラス、ここの下の方に書いてあります、新規入院の患者さんのうち一割五分以上が重症患者さんであることとか、とりわけ二の在宅復帰率六割以上であること、この病棟に入院されておうちに帰れる方の率が六割である、そうすると、その病院はうまく成果を上げたから報酬を上げましょうという考え方が導入されました。

 この考え方についてお伺いしたいと思います。お医者様でもあられましたし、足立政務官にお願いいたします。在宅復帰を規定する因子、在宅復帰が可能になるとはどのような因子がございますでしょうか、これについてお願いします。

足立大臣政務官 今おっしゃられたことに対するそこまでの通告という形ではいただいておりませんので、一対一の答弁になるかどうかちょっとわかりませんけれども、今のお話をお聞きしていて、ちょっと訂正していただきたいなと思うのは、リハビリテーションがなくなるという表現をされておりましたが、これは医療保険のリハビリテーションと介護保険のリハビリテーションがあるわけです。そもそもの議論は、これは全面的に私が賛成というわけではありませんけれども、やはり当時の流れとして、急性期、亜急性期のリハビリテーションをもっとしっかりすべきであるということ、それから、長期にわたって余り効果が明らかでない医療行為も行われている、そして医療保険と介護保険でのリハビリテーションの連携がうまくいっていないという問題意識があったんだと思います。

 そこで、今の在宅復帰率ですが、この因子ということについて申し上げます。

 やはり、在宅にいてもリハビリテーションあるいは医療、介護が受けられるという条件、そして、在宅において、周りに、例えば医療や介護の専門家だけではなく、周りでケアしてくださる方々がいらっしゃるというようなことがないと、なかなか在宅復帰というのは難しい、それが因子の一つだろうとまずは思います。

 しかし、今の委員の六〇%ということを見ますと、この資料で見ますと、一と二が書いてあります。一の場合の在宅復帰率は平均七五・七%、二の場合の在宅復帰率は七三・三%になっております。私は、この数値だけを判断させていただくと、現場はかなり頑張っておられるな、そのように感じております。

阿部委員 そういうふうな言い方がおかしいんだと私は思うんですね。因子についてはちゃんと通告をいたしました、昨夜。

 今、足立さんがおっしゃった二つの因子も大事です。

 例えば、在宅に帰られて、そこでもいろいろな在宅リハとかあるいは通所リハとか受けられるかどうかは大事な因子です。それから、やはりおひとり暮らしでは、そうはいってもなかなか在宅に向かうことができないでしょう。

 足立さんがおっしゃった、今、それはリハビリをする医療機関の質と量の評価にかかわる部分だと思うのですが、十分な人材を備えて、いい質のものをやれば、おのおの七〇%台くらいいく、これもいいことです。別に私はそれに反論しているわけではありません。

 しかし、リハビリが在宅復帰率という一つの指標で評価されるとき、では御家族のいない方が病院に受け入れられづらくなるのではないか。だって、帰しづらいですもの。それから、患者さんや家族の経済力だってあるんですよ。訪問リハを受ける、通所リハを受ける。先ほど来、年金のお話もありましたが、非常につましい暮らしの中で、今、介護保険だって十分に使い切れていないんです。使いたくても、手元不如意だということもあります。おひとり暮らしや、患者さんあるいは家族の経済力や、あるいはその地域の地域力というのもあるかもしれません。地域全体で、例えば移動サービスができるかどうかとか、そういうこともかかってきますでしょう。それプラス患者自身の重症度。

 足立先生がおっしゃったのは、二番目の、どんなスタッフを備えてどのくらいのアウトプットを出しているかというところですね。それは事実だと思います。しかし、少なくとも今私の述べた五つの因子のうちの一つでしかない。他の因子が患者さんに負担をかけはすまいかということが最も重要なんですね。

 足立政務官に伺いますが、例えば、老人保健施設に帰ることは在宅復帰とみなされるんですか。

足立大臣政務官 みなされます。

阿部委員 では、温泉のあるリハビリテーション病院に移りたいといった場合はどうですか。温泉のある、これから法案の審議にかかりますでしょうが、厚生年金病院等々のリハに移りたいといった場合はどうですか。

足立大臣政務官 今のは、回復期リハビリテーション病院、病棟という意味ではないと思いますが、それはもちろん入らないですね。回復期リハビリテーション病院あるいは病棟であれば、それは在宅には入らないですね。

 それから今、保養ホーム、厚生年金病院の話で、一年のうちに何回か滞在しながらリハビリテーションを受けるという意味であれば、それはみなされると思います。(阿部委員「みなされる」と呼ぶ)はい。もちろん、在宅からですから。

阿部委員 今現場で起こっていることはそうではありませんで、とにかく一回おうちに帰ってくれ、家に、自宅に。これが在宅復帰率とみなされているんですね。引き続いてそうしたリハビリを受けたくても、とりあえず病院側としては家に帰ってもらわないことには、これが達成されないということになっております。これについても、もう少し現場を調べていただきたい。

 それはたった一つの例です。でも、さっき言った、もともと、帰るといったってひとり暮らしじゃどうしようもないよね、介護のキーパーソンもいなければ在宅復帰だってできないよねと。いろいろな因子があるものをここの指標に乗っけて、それをアウトプット評価にすることは私は間違っていると思います。

 先ほど長妻大臣は、現状についてさらに聞いてくださるとおっしゃいました。患者さんの声、今脳梗塞等々で、次にどこに行こうかという方は大変多うございます。ぜひ厚生労働省として、そういう患者さんの声をお聞きいただければと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 これは、先回、足立政務官にお願いした臨床研修制度のことで、平成二十二年度からまた新たな見直しのもとの研修制度が始まりますが、私はこれについて、こうした委員会での審議の場も極めて少なく、そしてもともとの研修理念を大きくねじ曲げていくのではないかと思う点がございますので、長妻大臣にお願い申し上げます。

 臨床研修のスタートは平成十六年でありましたが、約三十年、四十年前のインターン闘争に始まって、どうした医師がこの社会に必要とされるか、学生たちはどう学びたいかということで、これは日本の将来像をも決める重要な問題であると思います。

 ここに平成十二年十一月の参議院国民福祉委員会の附帯決議というものがございまして、当時、今井澄さんがおられましたが、ここに述べられていることは理念を述べたものでございます。

 二番目、真ん中ほどに行きますと、「人権教育を通じて医療倫理の確立を図るとともに、」飛ばして「プライマリーケアやへき地医療への理解を深めることなど全人的、総合的な制度へと充実すること。」と、それまでの大学中心の研修から、もっとより広く、僻地あるいは全人教育はどうあるべきかという問題が投げかけられ、下にあるような研修制度の概要ができ上がりました。研修の基本理念として、基本的な診療能力を身につけることができるものでなければならないとされました。

 そして、次のページをおめくりいただきたいと思います。

 これは、千人の地域の住民の皆さんが、健康に異変を感じられた場合に、どこにどのような受診行動をとるかでありますが、千人のうち八百六十二人が体の異常を感じられたとき、風邪も含めてでありますが、医師を受診される方は三百七人でございます。そのうち開業医等々が二百三十二人となっておりますので、残る七、八十人が病院の外来を受診されるということでありますが、この病院の外来を受診される方のうち、大学病院の外来を受診される方は六人、大学病院に入院なさる方は〇・三人という比率になってございます。その中間に、一般病院を受診される八十人ちょっとになりましょうか、そして一般病院に入院が七人ということであります。

 これを改めて出しましたのは、臨床研修の見直しの時点で、大学病院と、あわせて地域の一般病院のある基準を満たしたものを臨床研修指定病院とすると。これは、プライマリーケア、いろいろな患者さんをまず見る、それから触れる、人に触れる、地域の文化に触れるということで、こうした実態からも、臨床病院を開くということが行われてきました。

 続いて、四枚目に行かせていただきます。

 これが、二十年九月に始まったあり方検討会の中での結論ですが、時間の関係で結論だけ申し上げますと、「基本的な考え方」の三番目に、この当時専ら問題とされたのは、臨床研修の中身ではなくて、医師の地域偏在、あるいは大学等の医師派遣機能の強化をしなきゃならない、その裏側には、大学から医師を派遣する能力が落ちたということでの評価が二十年九月からのあり方検討会で行われたところであります。

 それにのっとって、実は、大学の病院、あるいは大きな病院で三千人の入院があるところ以外は、研修指定からある意味では基本的に外される、基本的にです、省略して言いますが、ということが起こりました。まず、大臣はこの間の経緯を御存じでしょうか。

 そして、これは私は、本当に新政権としてもう一度なぞって見直していただきたいですが、医師を育てるというのは大変重要な仕事でありますので、まず、三千人の根拠等御存じであったかどうかについて、お願いいたします。

長妻国務大臣 今るる御説明いただきましたけれども、インターン制度とか臨床研修制度とか、当時の学生運動の中でもこの研修制度については一つの争点であったということも承知をしております。

 平成十六年に新制度に移行をした、そのときに新規入院の三千人というのも枠を外したということであります。その後、いろいろ検討会でも議論があったところでありますけれども、この枠を外したことで、平成十五年度は臨床研修病院が四百五十二カ所のものが、平成二十一年度には倍以上の千三カ所になったということで、いろいろな議論がありました。本当に研修ができるにふさわしいいろいろな症例があるのか否かという一つの論点がありまして、かなり小さな病院も含まれてしまって、十分な研修がそういう病院でできるのかということがあって、結局はもとの年間三千人以上という基準が採用されて、今に至っているというふうに聞いております。

 これについては、不断のチェックというのは必要であるというふうに考えておりますけれども、これは二十一年度からの見直しということで、平成二十二年度の研修から適用されるという新基準でありますので、まずはこの現状を見ていきたいと思います。

阿部委員 済みません、時間がない中。

 大変残念ながら、今の大臣の現状認識は誤っております。臨床研修病院はおのおのプログラムを持って、どんな小さな、大臣が言われる小さなとはどうでしょう、百五十から二百ベッドかもしれません。きちんと基準を満たしたものが臨床病院です。そこで症例が少ないとか実績を上げていないからではありません。この点は足立政務官が、これから質の評価をなさるとおっしゃいました。政権内できちんと話し合って、大事なことですので、再度また時間を改めて質問させていただきます。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、大村秀章君。

大村委員 おはようございます。自由民主党の大村秀章でございます。

 いただいた時間の中で、年金問題を中心に質問をさせていただければと思います。

 その前に、まず、一昨日質問させていただきました新型インフルエンザワクチンにつきまして御質問をしたいというふうに思っております。

 一昨日、ノバルティス社のワクチンが、三月末で二百三十三万回分、これが有効期限が切れて廃棄をされるということについて質問を申し上げました。その際申し上げたのは、二月二日が検収、二月二日に納入をされて、二カ月足らずの有効期限のものとわかっていてなぜそれを購入したのかと。ノバルティスのものは六カ月が有効期限ということでございますから、何でそれに近いようなものを購入しなかったのかということについて質問させていただいたわけでございますが、残念ながら明確な答弁が、納得できる御答弁がなかったというふうに思っております。

 そこで、その後のものはずっとどうなのかということも質問をし、現在のノバルティス社のワクチンの購入したものと、その有効期限、そして金額といったものについて資料を提出いただくようにということで申し上げたわけでございますが、一昨日は、なかなかすぐにはということでございましたが、その後、きのうこれをお出しいただきました。こうして出していただいたことにつきましては、率直に評価をしたいというふうに思っております。

 そこで、ノバルティスのものと、そしてもう一つ、GSKのものにつきましても同じ資料をいただきました。それを比べてみると明らかでございますが、これは率直に、ノバルティスのものは二カ月から三カ月ぐらいの有効期限のものばかり、そしてGSKのワクチンについては、平成二十二年の二月、三月に購入をしたものが、有効期限は来年の三月から五月、一年数カ月ぐらいあるということでございます。

 これを比べてみますと、やはり率直に、ちょっと変じゃないかなというふうに思わざるを得ないわけでございまして、何でノバルティスのものだけがこんなに短い期限なのか。なぜGSKのように、丸々有効期限ぴったりとは言いませんが、それに近いようなもの、要は、これは国の税金を使ってやるわけでございますから、できるだけ有効に使う、なぜそういった形の購入ができなかったのか、その理由を教えていただきたいと思います。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 ノバルティスのものにつきましては、前回もお答えさせていただいたものでございますけれども、製造から六カ月間というのが有効期間になっております。

 昨年の経緯を申し上げますと、十月六日に契約をいたしておるわけでございますけれども、その時点、十月から製造されて三月末まで納入してほしいという契約になっておりまして、昨年十月からノバルティスが製造しておったということでございます。

 一方、有効期限につきまして、六カ月というものにつきましては、昨年十一月六日に承認申請が出されたときに明らかになったということでございまして、そういう契約あるいは承認申請、それから三月、今年度に納入するという流れの中で、ノバルティスのものの有効期限がこうなってきたという結果でございます。

大村委員 そこで、一昨日お聞きをしたときに、こうした二月の二日納入のものは三月末ですよ、有効期限が三月三十一日ですよということを前提に、一月十二日に事務連絡を発出して、都道府県にそういう注文といいますか、そういった需要を聞いたと。その際には、大臣には発出する前には報告をしたというふうに聞きました。

 では、この二月二日のものが三月三十一日が有効期限だということは報告をしたと聞いておりますが、提出をいただいた資料で見てみますと、その後、二月の十日、十六日、十九日とずっとありまして、計八回納入があるわけでありますが、それはすべて二カ月から三カ月ぐらいの有効期限というふうになっております。これは全部二、三カ月だということについては、ここまで報告をしたのでございますか、局長。

高井政府参考人 すべて報告したということではございません。報告の形としましては、私としては、契約上、順次納入されます、そしてそれが、期限についても順次期限切れが来るということは言っておりますけれども、毎回毎回報告しているということではございません。

大村委員 いや、最初に一月十二日に事務連絡を発出する前に、これは二月の頭に来る、二日と言ったかどうかはあれですが、二月の頭に納入するものについては三月末日ですよ、二カ月ありませんよということは報告をしたというふうに先般お聞きしましたが、その後のものについても全部二カ月、三カ月なんですよということは報告しましたか。

高井政府参考人 今の御質問に対しては、そのような形では報告していないと思います。順次納入されて、順次期限切れが来るというような形で報告しております。

大村委員 大臣にお聞きしたいと思います。

 今局長、事務方からは、最初はこれは二カ月ないんだということを報告したということでございますが、その後も、通常であれば、有効期限が六カ月ということであれば、それに近いものをそろえて購入するということが本来あるべき姿だろうと思います。要は、税金でやるわけですから、できるだけ有効に使うということがあってしかるべきだと思いますが、そうしたこと、二月の二日にといいますか、頭に入ってくる、それで終わりじゃなくて順次入ってくる、そのことについて、その後のものも二カ月から三カ月しか有効期限がない、こういう実態であった、それを大臣は聞いていなかった。そのことについて率直に、どうお考えですか。

長妻国務大臣 これについては、当時、ワクチンが非常に、言葉は適当かどうかわかりませんが、争奪戦の様相を呈し、そして日本国は国内の製造が脆弱だということで、必死になって、前政権から、世界のワクチンを押さえていこう、こういう動きの中で、昨年の十月にノバルティスと契約をした。その製造時点で有効期限が六カ月でございますので、そこで物を押さえたというふうに聞いておりまして、その後の契約は、速やかに日本国に物を入れてほしい、こういうような趣旨でございました。

 その意味で、特例承認がなければ物を入れることはできませんので、本来、この特例承認というのは早く早くというようなことでございましたけれども、昨年の中で特例承認がなされれば、これは昨年に納入される見込みも考えられるわけでございますが、やはり特例承認ということでございますので、健康に配慮する、急ぐということは必要だけれども当然安全性にも配慮するということで、適切な時期ということで、ことしに特例承認がなった。その後、特例承認を受けて、速やかに契約のとおり納入をされた。こういうようなことであるというふうに承知をしておりまして、それが順次今納入されているということであります。

 そして、これはもうかねてより申し上げておりますけれども、ノバルティス社についても解約の交渉をしているということで、GSKに比べると非常に相手方はかたい状況にあるけれども、今、鋭意交渉を続けているということであります。

大村委員 いやいや、経過を全部聞いているわけではなくて、端的に私は、二カ月、三カ月しかないというものを一月の前半に報告を受けた、ただ、最初のものだけ受けて、その後のものは報告を受けていない。結果、お出しいただいた資料のように、すべて二カ月か三カ月の有効期限のものしか入ってきていない。そういったことについて、これは税金でやっているのにそういうオペレーションになってしまったということについて、率直にどう考えるかということを聞いたのでありまして、ずっと昨年来の経過を聞いたわけではありません。

 この一月の段階で、先ほどワクチンの争奪戦という表現を使われましたが、その段階で起きていたとは思えません。したがって、要は、この二カ月、三カ月しかないというものを聞いたときに、ではもう一つお聞きしますが、そのときにあなたは、有効期限が六カ月ならできるだけそれに近いようなものを購入すべきではないかというような指示はされましたか。

長妻国務大臣 先ほど争奪戦と言ったのは、ことしに入っては争奪戦はもう、もちろんないわけでありますので、昨年初めぐらいを含めたことを申し上げているところであります。

 そして、今のお尋ねでありますけれども、これについて、契約上、特例承認が出ればそれが速やかに入る、こういうようなことになっているというのが一点。そして、その後、非常にだぶついてきているということで解約交渉を始めましたので、その意味では、その納入というのはストップすることができるのかできないのかというときに、それはストップすることができない。こういうような話の中で今のような状況になっているということであります。

大村委員 ストップすることができない、おかしいと思いませんか。要は、十月の契約時点で有効期限はわかっていなかったわけですね。それが後の十一月になってわかった。それを、一月になって購入をしよう、実際入ってきたのは二月だと。その際に、有効期限が六カ月だというにもかかわらず、二カ月、三カ月のものしか今のところ入ってきていない。一方で、GSKのものは一年数カ月ある。それを比べてみるだけでも、やはりどうも腑に落ちない、変だなと言わざるを得ないと思います。

 事実関係をお聞きしたら、結果、要は最初だけこれは二カ月未満ですよということだけ報告したけれども、後、ずっと納入をするものについて、二カ月、三カ月の期限しかないということは一切報告をしていない、受けていない。そしてさらに、六カ月の有効期限があるといいながら、それに近いものを購入しろ、そういうふうにしろということも指示をしていない。

 私は、この一連の経過を見ると、正直言って、税金を使ってこのワクチンを購入するわけですから、にもかかわらず、私はこれは極めてずさんなやり方、怠慢ではないかというふうに言わざるを得ないと思います。

 これにつきまして、とにかく今後どういうふうに対応されるか、そのことについて、基本的なお考えだけお聞かせいただきたいと思います。

長妻国務大臣 まず、前提として御理解いただきたいのは、ノバルティス社は有効期限が製造から六カ月ということでありまして、GSK社は製造から一年半ということでございます。同じ細胞培養ではございますけれども、まず、そういう前提があるということであります。

 そして、今おっしゃったように、これは税金でございますので、今、こういうだぶつく状況になった限りは、ノバルティス社とも鋭意精力的に交渉をしているところでありまして、海外との交渉状況も、情報収集をしっかりしながら、政務三役、そして役所一丸となって交渉しているということであります。

大村委員 私がお聞きしたかったのは、要は、この二つを比べてみると、明らかにノバルティスのものが二カ月、三カ月しかないものしか入ってこない。その過程において、一連の経過において、皆さんが、大臣一人とは言いませんよ、政務三役と言われておられながら、その過程において、そうした指導もしていない、指示もしていないということで、ただ漫然と漫然と入ってくる。要は、これだけ見ていますと、何かノバルティス社の在庫処理をていよく押しつけられたというようにしか見えないわけでございます。

 したがって、私は、この点について引き続き、こうした一連の経過も含めてしっかりフォローしていきたい。

 なお、今回、新型インフルエンザ対策について検証し総括をするという場もつくられたというふうに聞いておりますから、これはまた逐一報告をしていただいて、しっかり検証して総括をしていきたい、そのことを申し上げていきたいというふうに思っております。

 そして……(長妻国務大臣「委員長」と呼ぶ)もういいです。同じことしか言わないでしょうから、もう結構です。しっかりとこれはフォローしていくということを申し上げておきたいと思います。

 次に参ります。次は、障害年金について申し上げたいと思います。

 これにつきまして、きょう、先ほど理事会で合意をいたしまして、私どもが昨年、ちょうど一年前にこの法案を提出し、残念ながら廃案になりました。そして、昨年もう一回、十一月に、私どもの同僚の長勢委員を中心に、この法案を議員立法で提出をさせていただきました。

 内容は、障害年金につきまして、障害基礎年金については子の加算、そして厚生年金については配偶者の加算について、これを改善するというものでございます。障害を受けてから結婚をし、出産をし、配偶者と子供を持った場合の加算が今までなかった、これを今回加算ができるようにするということでございまして、全会派の御賛同をいただいて、この後、この委員会を通っていくということになったこと、大変喜ばしいことだというふうに思っております。

 ぜひこれは一日も早く施行していただきたいというふうに思うわけでありますが、そこで、お手元に資料を配っておりますけれども、私どもは、昨年十一月の二十四日にこれを提出したと思いますが、施行期日をことしの十月ということにしておりました。それを、とにかく、内容が、障害者の方の、障害年金の配偶者と子の加算をやれるようにするということでありますから、一日も早い施行が必要だということで十月ということにしておったわけでありますが、先般の理事会で、この施行期日については、当然、私ども提出した者として十月だというふうに思っておりましたが、いきなり来年の四月だというふうに書いたものが提出をされたわけでございます。

 私は、その過程において、この施行期日について一切聞いておらなかった、与党の理事さんからもそういう話を聞いておらなかった、極めて遺憾だということを、昨日の理事懇でも申し上げました。この大事な、いつから施行するのかということについて、一切協議、相談がなかった。そして、いきなり来年の四月だというふうな紙を配られたということは、極めて遺憾でございます。与党の理事さんからもお話がなかったし、ましてや政府、厚生労働省からも、こういうことなんです、十月はなかなか日程的に難しいですという話も一切なかった。私は、極めて問題だというふうに言わざるを得ないわけでございます。

 そこで、お手元に、これは厚生労働省年金局から、こういうことなんですということをきのう聞いたのでございますけれども、「システム開発の最短スケジュール」ということで、これは厚生労働省年金局がつくった紙ですけれども、こういう形で、四月に法案ができたら、政省令をつくって、こうやってシステムをつくっていくということで、ずっと順を追ってやって、三月にようやくシステム開発が完了するというふうにお聞きをいたしましたが、このシステム完了に何でこんなにかかるんですか。もうちょっと早くできませんか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 システム開発に要する期間が短縮できないかという御指摘でございますけれども、私ども、このたび、今回の法案の内容を実際、的確に実施していくために必要なシステム開発にどのような期間が必要かということを検討しまして、委員に御説明しました本日配付の資料のスケジュールがどうしても必要だという判断に達した次第でございます。

 円滑な給付に万全を期すという観点から、来年三月までの準備期間を必要とするということでございますので、どうか御理解賜りますようにお願い申し上げます。

大村委員 これはもう正直言って、この程度のもので、今回、私は極めて遺憾なのは、時間がないので早くこれは通したい、我々が提案して、ようやく今回、遅延加算金法案とあわせてやるというタイミングをおくらせることはできないということで、この程度の説明で今回納得せざるを得ないといいますか、もうしようがないなと思いますけれども、しかし、こんな紙で、もうちょっとこれをさらにブレークダウンしていく、正直言って、これは一日でも二日でも一週間でも、一カ月でも二カ月でも前倒しをしよう、そういうことをさらに議論したいというふうに思います。

 もうきょうは時間がありませんから、これ以上事務方に聞きませんが、長妻大臣、これは、せっかくこうして全会派一致で、こういう形で障害者の方の配偶者、子の加算についての法律が通る。それを、システム開発でもってずっとおくれていくということについて、私は極めて問題だと。それも、十分な説明ははっきり言って受けておりません。私もついきのうこれをもらって、ちくしょうめと思いながら、もう時間がないということで、これはきょう通すしかないと思っておりますけれども、それは、ここにいる与野党の議員さん、みんな聞いていないですよ。せっかくこれでみんなオーケーだというのに、これを、システム開発、この程度の説明しか聞けない、検証できないというのは、極めて残念だと思います。

 このことについてどういうふうにお感じになるかということと、もう時間がありませんので、もう一つあわせてお聞きしたいのは、この施行、これはこういうことでありますが、できるだけ、一日でも早くこれは前倒しをしていただきたい、そのような努力をしていただくようにお願いしたいと思いますけれども、それをあわせてお考えをお聞きしたいと思います。

長妻国務大臣 まず、昨年末ごろ法案が出たときの施行日がことしの十月ということでございまして、大体、法案提出から一年程度ということになっておりましたのも、システム上の、あるいは手続上、事務的な問題があったと思います。その意味では、我々も、これは私が直接お話を原課にもかなり確認をして、大村委員からも何とか十月にできないのかというお尋ねが強くあったということを聞きまして、私もかなり詳細に聞いて詰めました。ただ、やはり、そのシステムの開発について、ことしの十月というのは難しいということで、来年の四月ということで御理解をいただいたところでございます。

 これは、本当に拙速で、また事務が混乱して記録がおかしくなるということがもう二度とあってはならないわけでございます。この時間が延びるということは、大変これは申しわけなく思いますけれども、きちっと実施をするということで、来年の四月に、我々は、であればできるというような確認をさせていただいたところであります。

 そして、この資料の一枚ペラでありますけれども、これは作成の時間がなかったということもありましょうけれども、今後さらに、こういうスケジュールで、こういう状況であるから四月なんだ、四月であれば、こういうスケジュールで進んで、段取りを整えて、確実にできるんだというようなさらに詳細な資料も我々は作成をするようにいたしてまいりたいと思います。

 そして、先ほどのワクチンので、一点だけでありますけれども、GSK社については、先ほど私、細胞培養と申し上げましたけれども、これは鶏卵培養の間違いでございました。申しわけありません。

大村委員 いや、私も事務方に申し上げたのですけれども、要は、昨年、我々が議員立法で再度提出したのは十一月二十四日でございました。それから、細かいことを言うようですが、それは十月の施行で、要は十カ月だと。だったら、来年の四月と言わず、来年の一月でどうかということも言いました。九カ月ぐらいでやれるんじゃないか。それでも、しかしやっぱりできないんだというふうに言われた。私は、極めて残念だと思います。

 そういう意味で、これは、システム開発がこのスケジュールの中で少しでも前倒しでできないのかということも含めて、さらにこれはもっと詳細なもの、それから、とにかく待っている方がおられるわけですから、一日も早くやっていただく、そのことを強く申し上げておきたいと思いますし、その作業工程も含めて、これまた逐一、逐次といいますか、随時これは報告をいただきたい。その上でしっかりと検証、フォローしていきたい、そのことを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に参ります。

 年金記録についてでございますが、一つ、厚木社会保険事務所で不祥事が起きたということについて、これも少しお聞きをしようかと思いましたが、時間がなくなりました。

 これは、ある職員が、忙しいから、その記録のものを自分のところで持ってそのままにしていたというようなことの事案だと聞いておりますが、その間滞ったものについては、第三者委員会には優先的に送って対応していただくということを、これは事務方に申し上げました。総務省からも、そういう形で対応するというふうなお答えをいただきました。ですので、それはしっかりとそれで進めていただきたいと思いますが、長妻大臣、それについて、簡単に一言だけ、そういう方向でよろしいですね。

長妻国務大臣 そういう御指摘をいただきまして、指示をして、百十四件については、本来受け付けた期間と同じような形で、第三者委員会で優先的に審議してもらえるように要請をして、そういうような対応をとっていくということになりました。

大村委員 結構です。ぜひそういう形でそれは進めていただきたい。そのことを申し上げておきたいと思います。

 続きまして、残りの時間で、年金記録回復促進法案なるものについてお聞きをしたいというふうに思っております。

 お手元に、新聞記事の写し、コピーをお配りさせていただいております。少し前になりますが、三月十八日の参議院予算委員会での質疑の模様が記事になっているものでございます。「理想論消えた長妻氏 年金救済 発言、首相と温度差」ということでございます。

 この記事だけ見ておりますと、鳩山総理と長妻大臣のお考えが相当、百八十度違うというふうな内容の記事でございました。これについて、年金記録回復促進法案については、鳩山総理は、参議院予算委員会で、過剰救済の懸念はあるが、救済を優先するのが当然だということで、法律を出していくというふうに言われました。

 具体的に、どういうふうに出されますか。いつ出されますか。お考えをお聞きしたいと思います。

長妻国務大臣 これは、中の記事は、基本的にはこういうことなんですが、見出しがちょっと違和感があります。

 総理と私が言っていることは、基本的には同じことでございまして、これはもう救済というか、本来持っているわけでありますので補償するという表現だと思いますけれども、補償を申し上げていくときに、まずは、我々、紙台帳を集中的に照合していくということを申し上げました。全件照合でございますし、あるいは、第三者委員会にこれまで送っていたものを年金事務所でも簡便な方法で訂正できるような、第一弾、第二弾を出させていただきまして、そこで、年金事務所で訂正をする。

 こういう手段を徹底的に、初めの二年間は集中的に、そして一期四年の中に、そういう手段を使って年金記録問題の解決に向けて取り組んでいくという中で、最終的に、それでも残る部分については、これは国民の皆さんの御意見も聞きながら、一定の要件で機械的に救済をしていく、そういうような法案についても一期四年の中で出していく、こういう考え方を申し上げたわけでございます。

 初めから、ある意味では、機械的にやるとなると、確認できるすべがあるのにそれをしてしまうと、払った方と払っていない方がかなり混然一体になりかねないということもございますので、我々としては、今申し上げたようなスケジュール観で取り組んでいきたいということであります。

大村委員 社会保険事務所段階で、できるだけ定型化、類型化をし、これまで第三者委員会で集めてきたいろいろな救済のパターンについては、これはもう事務所段階で訂正をし、そして対応していくということにつきましては、昨年四月に私どもがその方向をつくって、少しずつ広げてきたということでございますから、これは引き続きしっかりとそういうものを積み重ねてやっていただきたいということは申し上げておきたいと思いますが、この年金記録回復促進法案については、これは皆さんが、当時、昨年の通常国会で、民主党初め、当時の野党三党が参議院に出して、強行的に採決をしているわけでございます。そういう内容のものでございます。

 その際、私どもは、今、長妻さんが言われたようなことを、同じことを申し上げたわけでございますが、残念ながら、昨年六月、参議院で強行的に採決されたというふうに記憶をいたしております。

 この新聞記事でも、議事録も確認をいたしましたが、この十八日の予算委員会で、民主党の方から年金記録回復促進法案の実現を求められた長妻氏は、「法が成立すれば不正受給が生じると指摘し、慎重な答弁に終始した。」というふうにも書かれておりますし、最後に、「法案化を検討したものの、難しく、当面は救済基準を広げることで対応する方針だ。」というふうにも書かれております。議事録の方も確認をさせていただきました。

 皆さんは、この回復促進法案なるものを昨年通常国会では出して、参議院で強行的に採決をされた。野党時代は、要は、とにかくもうこれはどうせ通らないからいいんだと思って出されて、今、そういう政府の立場になると、これはできないということで慎重に対応されておられるのか、そのことを指摘せざるを得ないというふうに思います。

 ですから、この記事にあるように、そして、私、議事録も確認をいたしましたが、鳩山総理は、とにかく早くやるんだ、これは出すんだというふうに言っておられる。長妻さんは、いや、それはもう全部いろいろなことをやってから、その後なんだということを言っておられる。全く、これは百八十度違うというふうに思います。

 そういう意味で、いつこれをお出しになるのか、それとも、もう出されないのか。そして、出さない理由は、ここに書いてあるように、やはりモラルハザード、あなた自身が答弁されておられますが、モラルハザードそして不正受給の問題もある、そういったことでなかなか難しいんだということなのか。それを認めるのであれば、昨年出した法案は欠陥であったということを今ここで認められたらいかがですか。その一連の経過について、お考えをお聞きしたいと思います。

長妻国務大臣 まず結論を言いますと、鳩山政権一期四年の中でこの法案は提出をいたします。

 ただ、この法案によらずともかなり年金事務所でもできることがわかりまして、これまで第三者委員会に送らなければならなかった国民年金の回復基準も、一定の要件であれば、それはもうほぼ間違いないということで、年金事務所でもできます。そして、政権交代をして、いろいろなサンプル調査も新たに始めて、その結果が今出つつあります。

 例えば、脱退手当金の問題についても、本来払うはずがない記録にもかかわらず払われている、このサンプル調査もいたしまして、何十万件というものが出てまいりました。そういうような調査も踏まえながら、脱退手当金についても一定の要件を年金の事務所で緩和できるということもわかりまして、それをさせていただくということで、何種類もの年金事務所での回復というのを通知して、今まさにそれが年金事務所で実現をしているところでございます。

 法律によらないでできるものを徹底的にやる、そして紙台帳でも回復をしていく、そして、最終的に残ったものについては、これはもうそういう物理的な判断ではできないということで、一定の要件をかけて機械的に、そこは、これは国民の皆さんの保険料でありますので、合意もきちっととらなければなりませんし、ある意味では、従来の法律の枠を超えるわけでありますので、新規の法律が必要になるということで、この一期四年と申し上げましたのは、四年後には新しい年金制度を制度設計するということもありますので、それまでには一定の信頼の回復が必要だ、そういう趣旨であります。

大村委員 ちょっとやはり私が聞いていることとすれ違っているという感じがいたします。

 私が申し上げているのは、とにかく第三者委員会初め、いろいろなケースが積み上がってくる、そうしたものは、定型的なものは、これはもうできるだけ第三者委員会ではなくて社会保険事務所の現場の窓口で資料を集めて、それでもって記録回復、訂正をしていく。そういったことを、昨年春に、四月に私どもがそういう方向をつくりましたから、それを積み上げていっていただく。それはもうそれでやっていただければいいわけでありますが、皆さんは、去年の段階で、そういうことをやっている一方で、年金記録回復促進法案なるものを、一遍に全部認めちゃえばいいんだということを、証拠がなくても何がなくても認めればいいんだというものを出して、強行的に採決をされたわけでございます。

 選挙の前と後でこんなに違うということも、はっきりとそれはお認めになった方がいいというふうに思います。それが違わないんだと強弁するということは、私は極めて問題だというふうに言わざるを得ません。そのことを引き続きフォローしていきたいと思います。

 なお、年金制度改革についても質問をしたかったわけでございますが、残念ながら時間がなくなりました。

 ただ、一つだけ申し上げますと、これも、七万円の最低保障年金だ、一元化をして報酬比例年金をつくるんだといいながら、新しい年金制度の検討会をつくって何をするかと思ったら、五月に基本原則を取りまとめる。政権ができてもう半年以上たって、五月だったらもう八カ月もたって、何をするかといったら、ただ単に基本原則を取りまとめる。そこからさらにまた勉強する、勉強する、勉強する、勉強する。それは一体何なのかというふうに言わざるを得ないというふうに思います。

 特に、この年金の問題について、マニフェストに書いたことは、すべてこれはもうかけ声だけで、これから勉強するんだと言うに等しいというふうに言わざるを得ません。この点については、国民をまさに欺くことだというふうに言わざるを得ませんから、引き続き、次の機会でこれはしっかりとただしていきたいというふうに思います。

 以上、私の質問を終わります。ありがとうございました。

藤村委員長 次に、あべ俊子君。

あべ委員 おはようございます。自由民主党、あべ俊子でございます。

 本日もまた、年金制度の問題を取り上げさせていただきたいというふうに思っております。

 新たな年金制度につきまして、透明でわかりやすいことが重要であるので、現行制度の不備を踏まえて、すべての人が同じ年金制度に入るよう一元化すること、だれもが七万円の最低保障年金をもらえる制度とすること、そのために必要な法案を平成二十五年までに提出するということだけの、これまでは大臣の回答をいただいたのみでございます。

 先日、鳩山内閣が民主党マニフェストで掲げました、新たな年金制度の創設に向けた議論に着手し、五月をめどに基本的な考え方をまとめる方針で一致し、夏の参議院選前に方向性を出すと聞いておりますが、きのうの事務方のレクでは、まだ基本的な考え方は何も決まっていないということですが、大臣の中にはしっかりと基本的な考え方があると思いますが、それをお答えください。

長妻国務大臣 先ほども、年金の制度改革、もう政権交代して半年なのにというお話がありましたけれども、これは我々、前もってマニフェストでもお示しをしておりますけれども、四年後に法案を提出するということで、この年金制度改革というのは、ほかの国でもそうなんですが、一年、二年ですぐに制度ができるわけではございませんで、ある意味ではこれは戦後最大級の改革だというふうに考えております。きちっとコンセンサスをとっていくということで、まずは原則を出すということであります。

 私がかねてより申し上げておりますのは三つございますけれども、若い人も無理なく払えて持続可能性のある制度、そして、ライフスタイルの変化、つまり転職を繰り返しても変わらない一つの制度、そして最低保障機能があるということは申し上げておりますけれども、今、検討チームでいろいろな先生方を呼んでお話を聞いたり意見交換をしたりして、五月には基本原則を打ち出して、そして、その部分について国民の皆さんの御意見もよく聞いていくということであります。

あべ委員 では、マニフェストを書かれたときに、ほとんど検討もされずにマニフェストを書いたのかどうかということも含めて、大臣、この三つの原則は前から何度も何度もおっしゃっていますが、逆に言ったら、マニフェストを書く前段階にこの三つの原則が決まっていてマニフェストを書かれたのかという質問が一点目。さらには、五月にはこの三つ以上の原則が出てくるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

長妻国務大臣 五月には、恐らくその原則にプラスしていろいろな原則ということがあるのではないかとは思いますが、それは今検討しているさなかであります。

 そして、マニフェストの作成過程でありますけれども、これも党内でいろいろな議論があって、今私が申し上げたようなことも私は申し上げ、そしてこのマニフェストができ上がった。ただ、その前からの経緯も、かなり前から年金制度の議論というのはございましたので、いろいろな積み上げの中でこのマニフェストが完成したというふうに承知しております。

あべ委員 四月も中旬でございまして、この三原則の、若い人でも無理なく払える持続可能性のある制度、ライフスタイルの変化、転職を繰り返しても変わらない制度、最低保障機能、これしか出てこなかったら、では、今まで六カ月以上何をやっていたんだというふうになりますので、この三つの原則以上をしっかりと出していただくということが私は大切であるというふうに思いますし、若い方々にとっては、年金を納める方にとって本当に最大の関心事でありますから、これは、今言っていることと一カ月後の取りまとめということと全く変わらないということでは理解がもらえないんだと私は思っております。

 そうした中で、我が国の年金制度、諸外国と比較しましても非常に複雑だということは、大臣御承知のとおりでございまして、特に、いわゆる被用者を対象とした厚生年金、さらには地域保険の色の強い国民年金、大きく設計が違う制度を一元化できるのかということは、どういうふうにするのか、私は全然見えてこないわけでございますが、大臣は、これをすべて同時に改革しないと一部にひずみが来るというふうにおっしゃいました。

 それに対しまして、国民年金被保険者数が平成十九年度で七千万人、さらには厚生年金三千四百四十四万人がいる中で、若い人でも無理なく払える持続可能性のある制度、大臣がおっしゃった、いわゆるこの持続可能性のある制度というのは幾らぐらいの金額を想定されているのか、お聞きします。

長妻国務大臣 今の若い人も無理なく払えるというところだと思いますけれども、例えば、今現在、フリーターの方、あるいは一定の非正規雇用の方々というのは、厚生年金に入れないということで、国民年金ということで一万数千円という金額を固定で払っておられるわけでありまして、今や国民年金は、自営業の方よりも、そういう被用者の方の比率の方が大きくなっております。

 新しい年金制度は、比例報酬部分は、お給料の何%というパーセンテージで示して、固定ではございませんので、かなり年収が低い方は今の国民年金の固定のお金よりも下がる可能性も出てくるわけでありますので、あるいは、無職の方については、一定の手続が必要ですけれども、ゼロ保険料ということを登録していただくと、その期間は加入をしているということで最低保障年金の算定期間にもなる、こういうようなことであります。

あべ委員 そうすると、おっしゃっているのは、いわゆる比例に合わせたパーセントを、保険料率を掛けるということだと思っておりますが、それは保険料率も一定ではないという形を大臣はお考えでしょうか。

長妻国務大臣 保険料率については、比例報酬部分は、私は、これは基本的には一つのパーセントということが望ましいというふうに考えております。

あべ委員 そういうふうにすると、特に低所得者に対して、非常にその比例の部分で格差が出てくるということもいつも問題とされるところでございます。特に、雇用関係でいつも議論とされている部分の、年収百三十万以下の労働者というのが問題になっておりますが、厚生年金の扶養者、百三万以下の方は所得税が徴収されていないという問題、年収が百三十万以下であれば、夫の扶養家族となり、自分で社会保険料を納める必要がない。

 現在の景気の悪化により、非正規雇用、低所得の若年男性が急激に増加している中で、私ども、前政権の中で、労働時間二十時間以内のパートタイマーに対する保険料徴収に関して、拡大すべきではないかという検討を行って法案も提出してまいりましたが、衆議院解散によって廃案となったところであります。

 この百三十万円の壁の部分、主婦や女性が働く際に収入を抑える、雇用している企業側も社会保険料の事業主負担を抑えるための足かせになっていると言われているところでございますが、これに関しては大臣はどうお考えでしょうか。

長妻国務大臣 今、家庭単位というか世帯単位で年金というのは考えられておりますけれども、我々は、基本的には個人単位というふうに考えていこうというふうに今検討しているところであります。

 これは、例えばサラリーマンの奥様が専業主婦あるいは今おっしゃられたような働き方をされておられる。この場合、どういうふうに保険料を考えるのかということでございますけれども、これはさまざまな考え方がありまして、これも検討の論点となりますけれども、例えば専業主婦の場合は、ゼロ保険料ということで登録をするという考え方もございましょうし、あるいは、世帯の全体の収入を半分で割って、その部分の保険料を払っているとみなすというような方法もあるでしょうし、これは検討事項となっております。

あべ委員 特に、保険料を支払う側の問題と今回の雇用問題のところで、いわゆる厚生年金の適用拡大から外そうとする動きがあるということに対して、ここの事業主負担に関しては、その最低保障年金などの一元化をするときに、大臣はどうお考えなんでしょうか。

長妻国務大臣 被用者をどの範囲でとらえるか、自営業という範囲をどういう範囲でとらえるか、これは先進各国も、年金制度を改革するときに、自営業の定義ということについては大変御苦労されておられるということを聞いております。

 そういう範囲の定義についても、これはかなり大きな論点で、検討するということでありますけれども、基本的には、そういう勤めている、雇われているということであれば、これは事業主負担、そして被用者負担、これが折半になるというのが基本的な考え方だと思います。

あべ委員 そうすると、国民年金を一元化していく中で、私自身も、議員年金がなくなりましたから今国保なわけでございますが、いわゆる所得比例ではなくて、月額一万五千百円という定額制になっています。いわゆる事業主負担がないということになっていくわけでございますが、この国保に加入されている、すなわち自営業だけではなくていろいろな、さまざまな方が入っている部分の所得についての把握と、その保険料をどのように把握されるかということは、まだただの検討中だということでしょうか。

長妻国務大臣 今おっしゃられたのは重要な論点で、自営業の方の所得把握をどうするか、これがなかなか難しいということで、国民年金が固定の保険料になっているということもあろうかと思います。

 これについては、御存じのように番号制を考えるということで、内閣挙げて、関係閣僚が集まって今その会議を開いておりまして、社会保障もどの程度組み込むのか、納税番号もどの程度の範疇にするのかなどなど、論点はございますけれども、これについては何とか成案を得ていきたい。もちろん、プライバシーに非常に注意を払うということは重要でありますが、成案を得ていきたい。その番号を一つの手段として、自営業の方々に対する所得捕捉もある程度正確にしていきたいというふうに考えております。

あべ委員 おっしゃっていることは、今事業主負担と言われている四割が基礎年金に回っているということは、大臣御承知のとおりであると思いますが、この事業主負担はすなわち継続するという形で理解をしてよろしいのでしょうか。

長妻国務大臣 今、基礎年金にというお話がございましたけれども、私どもの骨格を示させていただいているものについては、基礎年金という今と同じ概念ではございませんで、今の基礎年金は保険料も入っておりますし国庫負担も入っておりますが、我々が考える税金の年金、税金を原資とした年金というのは、最低保障年金の部分は事業主負担も入りませんで、全額が税金ということになっております。当然、比例報酬部分には事業主負担のお金は入るということであります。

あべ委員 そうしますと、いわゆる最低保障年金部分の七万円をすべて税金で賄うという理解でよろしいのでしょうか。

長妻国務大臣 そのとおりであります。

あべ委員 現段階で例えばシミュレーションした場合、一元化がいつまでにできるのかわかりませんが、逆に、一元化を達成できる年度がいつぐらいと大臣の中でお考えなのか。全く考えてもいないのか。さらには、最低保障年金を全部税でやったときに、お幾らかかるとシミュレーションされていらっしゃるんでしょうか。

長妻国務大臣 まず、最低保障年金がトータルでどのぐらいの規模になるかということでありますけれども、これはもちろん、すべての方に同じ金額をお支払いするというわけではございませんで、年金の受給額に応じて、比例報酬部分が多い方は最終的に最低保障年金はお支払いをしない、それが少ない方に手厚く行く、お支払いする、こういう考え方でございまして、それは、最低保障年金の面積をどの程度にするか、ある意味ではどのくらいの低い受給額から最低保障年金を出して、どのレベルにするのかという議論と平仄が合う話でありますので、これは本当に、詳細な制度設計と財政再計算の中で決定していく課題であるというふうに考えております。

あべ委員 非常にそのあたりがわかりにくいのでありますが、何か最低保障年金七万円というふうにされたわけでございますが、例えば、私は国保をしっかりまじめに払っているわけでございますが、では、これがあるんだったら、アリとキリギリスのキリギリスでもいいのじゃないかというモラルハザードが起きないために、例えば国保を十年間払っている方々が、いわゆる満額に足りない、最低保障年金をもらえる、その支払った年金部分はどういう形でどの程度上乗せされるものなんでしょうか、大体のイメージでいいから教えてください。

長妻国務大臣 この年金の制度の改革については移行期間というのがございまして、その移行期間の段階では、従来の制度と新しい制度が一定期間併存するということになります。

 その意味では、例えば四十歳の方が、新しい制度ができたとすると、四十歳の時点まで払っておられた保険料というのはこれまでの制度でカウントされる、そして、四十歳から新しい制度で保険料を払う部分は新しい制度の計算で老後の受給額が確定するということで、老後になったときに、過渡期、移行期間の方々は、新しい制度の受給額と従来の制度の受給額を足し算したものが支払われるということでございまして、その意味で、従来、今の制度で未納の方が、直ちにその部分が、年金が、納入した方と未納の方と同じ扱いにするということではありませんで、それは従来の制度ということになります。

あべ委員 大臣、移行期間というのは大体何年ぐらいかかりそうですか。

長妻国務大臣 これは自然体でいくと、二十の方が六十歳ということで四十年かかってしまいますけれども、それでは国民の理解が得られないと思いますので、いろいろな工夫をして、スウェーデンなどでは一定の前提を置いてそれを短縮しておりますので、これについても大きな論点になるというふうに考えております。

あべ委員 そうですか。私は五十でことし五十一になるので、私が生きている間に間に合うかどうかわからないという感じなんだと思いますが……(発言する者あり)いや、長生きするかどうかわかりませんが。

 それで、特にこの七万円の金額なんですが、七万円の金額の根拠が何なのかよくわからないんですが、七万円あれば最低限の生活ができるというお考えなんでしょうか。

長妻国務大臣 七万円ということでありますけれども、これは今、国民年金、ある意味では基礎年金満額ということになりますと、六万六千円ということもあります。そういうものよりも一定の水準を確保していこうというようなこと。そして、今お尋ねの、この七万円だけで全国一律に、それだけですべての生活ができる、そういうことで決めた水準ではありません。

あべ委員 七万円というのが、何か六万六千円が満額だからちょっとそれより多ければいいかという、えいや方式だったのか何なのか、最低保障というのは最低の何を保障したのか全くわからない金額だなと思っているわけであります。

 特に、今、生活保護の受給者の半数近くが六十五歳以上の高齢者となっているのは大臣も御存じのとおりでございまして、公的年金は老後の生活を支えるものでありまして、生活保護は最低限度の生活を営むための支援として、老後の現金収入というところでは一見類似をしておりますが、公的年金はいわゆる老後の助けでございまして、生活保護は救貧対策、貧しさから救うという、生活の支えとなっております。

 現政権は、新たな年金制度に最低保障年金を創設し、消費税を財源として賄うとマニフェストで明言されましたが、社会保障は、自助、共助、公助、これが大切でございまして、いわゆる自民党が保守政党としてこれを三点出しておりましたら、大臣の所信表明に相乗りの形でこの概念が入っていたわけでございますが、いわゆる自助、共助として将来に備えるのが公的年金の仕組みであるときに、この老後の生活設計の基本となる公的年金を税金頼りの仕組みに置きかえてしまおうというふうに大臣はお考えなのでしょうか。

長妻国務大臣 自助、共助、公助というのは、何も自民党の専売特許ではなくて、これはもう社会保障の常識の話でございまして、それを引用させていただいただけであります。

 この最低保障年金でありますが、これについては、全額税金ということでありますけれども、この七万円というのも、繰り返しになりますけれども、全員の方が七万円の上乗せ部分があるということではありませんで、その七万円だけという方は、ずっとゼロ保険料を払っておられた方がいらっしゃればそれは七万円かもしれませんけれども、これは、最低保障年金に加えて比例報酬の部分もプラスされますので、この七万円にプラスして比例報酬部分ということで、保険方式を基本として、それの不足する部分に最低保障年金という税金部分が上乗せになる、こういうような趣旨であります。

あべ委員 今のお答えは非常に変でして、例えば税金によって最低保障年金を賄うということは、自助、共助の理念、役割を非常にあいまいなものにしてしまっている。最近、海外で、日本人とは口をきくなという、特にアジア人の方がおっしゃっているのは御存じですか。なぜ口をきくなと言っているかというと、社会主義がうつると言われているんです。

 この日本が自立をしっかりと建前にした社会保障をやっていかなければ、そのツケは若者に来るということは大臣も御存じだと思います。そうした中で、マニフェストを遵守する余りに、ここの部分の最低保障年金、自助、共助と、非常にあいまいな形にしてしまうことは、社会保障制度をなし崩しにしてしまうことだと私は思っております。この健全な社会保障の仕組みが本当に言えるのか疑問である、これが健全であると私は言えないというふうに思っているわけであります。(発言する者あり)静かにしてください。

 特に鳩山内閣、昨日、各省庁が過去に予算執行済みの事業を点検する行政事業レビューというのを、新たな無駄遣いの削減事業の調査を開始いたしました。しかし、年金の保険料をいわゆる全額税方式のような形をとった場合、現政権の言われる徹底した無駄の排除や構造改革のみで、国債発行の四十四・三兆円、国債の依存度が四八%と過去最高の借金に頼った予算が立ち行くというふうに大臣はお思いでしょうか。

長妻国務大臣 先ほどの自助、共助、公助の話でありますけれども、これは税金が入るともう何かわけがわからないというような御趣旨であれば、例えば、今も基礎年金部分には半額が国庫負担が入って、半分は保険料ということで、税金も一定の水準で、当然、医療の国保にも税金の補助が入っておりますので、それを適切に組み合わせていくということでありまして、確かに、お尋ねのとおり、税金の比率がかなり高過ぎるような状況になると、これはどういう保険の考え方なのかという論点はあろうかと思いますけれども、あくまでも比例報酬の不足する部分を補うという役割を考えているところであります。

 今の財政のお尋ねでございますけれども、今、日本国は大変多くの借金を抱えておりますので、我々としては、この財政の問題も直視をして社会保障の政策も考えなければならないというふうに考えているところであります。その意味では、まずは、国民の皆さんに御負担をお願いする前に、今までの税金、保険料に対する不信を払拭するというのが先決であるということで、厚生労働省としても、省内事業仕分けということも活用して、不断の見直しをしていくということで取り組んでいきたいと思います。

あべ委員 やはり社会保障制度、これは国民負担をいただかないと無理だということは、皆さん、わかっているところでございまして、無駄遣いで削減できる額ではないということは大臣も重々承知だと思っております。医療費も三十兆を超えておりまして、社会保障が年額一兆円ずつ自然増分がある中、一体どこに切り込んでいくのかということ、さらには、私は、現政権、来年度予算は非常に立てるのが難しいと思っております。特に社会保障の部分は、細々と無駄遣いを事業仕分けなんかでやっているレベルで間に合う額じゃないということは、だれが考えてもわかることでございます。

 行き詰まりになって解散・総選挙になるのか、さらには、仕方がないから、いわゆる大連立を組む形で、超党派で、社会保障の財源をどうしていくかを考えていかなければいけないというふうに思いますから、私は、本当に自分たちが国会議員を続けるという問題よりも、また、自分たちの党が政権をとり続けるというよりも、この日本が若者にとって希望の持てるものになっていくために、ともに手をとり合う部分はとり合っていくべきだと思いますので、ぜひともよろしくお願いします。

 質問を終わります。

藤村委員長 次に、坂口力君。

坂口(力)委員 前回、予算委員会で少し年金の問題をやらせていただきましたが、時間がありませんで、足りなかった分をきょうはやらせていただきたいというふうに思っております。これは三十分ですから、多分三十分ではまだ足らぬと思いますから、お昼からの三十分、年金へ食い込んで、きょうは一日、年金でいこうと思っておりますので、どうぞひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 年金の問題は、これはじっくりと議論をしていかなきゃならないわけでありまして、感情的な議論よりもしっかりと落ちついて議論をして、納得をして前へ行くということにしなきゃいけないというふうに思っております。

 それで、前回、私が予算委員会でお示しをしました民主党さんの、三年前、参議院議員の選挙の前にお示しになりました案でございますが、この案は今も生きておりますかということをお聞きいたしました。この案は今も生きておりますかと。それに対しまして、大臣からお答えがございまして、きょうお配りをしました四枚目、一番最後のページに、そのお答えをいただきました文が書いてございます。

 長妻大臣は、「その図は、最低保障年金があり、比例報酬年金がある。二つの年金制度が組み合わされる。そして、一元化ということで、すべての職業が一本の制度になるというようなことでございまして、今のイメージ図」、今のイメージ図というのは衆議院の選挙以後のイメージ図という意味だというふうに思いますが、「今のイメージ図は、その基礎部分と所得比例部分の図が逆になっておりますけれども、基本的な考え方というのは変わっていないというふうに思います。」こういうふうに御答弁をいただいております。

 それで、きょうお聞きをしたいのは、この図のこの下の部分ですね。青い部分は、これは国が負担をする部分でしょう。そこから斜めに、だんだんと国の出す分は少なくなっておりますね。これを、ここのところから横にずっと線を引いたこの下、同じだいだい色をしていますけれども、この延長線上のここの部分は、これは基礎年金というふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

 これは、最低保障年金という名前で言われておりますけれども、最低保障年金というのは、今までの基礎年金という考え方に立っているんでしょうか。その上に比例年金が乗っかっている。だから、この青い部分は国が出しますけれども、しかし、ここから真っすぐに延長しました下のだいだいのところの部分は、御自身が保険料を払われる。

 結果としては、これは基礎年金ではないかというふうに私は理解をいたしておりますが、私の理解は違いますか。そこをまずお聞きしたい。

長妻国務大臣 まず、今図をお示しいただいたわけでございますけれども、その下にある図が、今お示しじゃない方がそうなんですけれども。

 今のお尋ねでございますけれども、基礎年金といったときに、どういう定義で基礎年金なのかということもあろうかと思いますが、我々の考える年金というのは、比例報酬部分の比例報酬年金、これは全額が保険料でございますし、最低保障年金は全額が税でございますので、その意味では、色がピンクの部分であれば、それは所得比例年金になるというふうに考えております。

坂口(力)委員 そうしますと、ここの部分は、これは下の方にだんだんおりてきておりますけれども、下の方におりてきましたこの赤い部分も、これは所得比例年金なんですか。そういうことですか。

 といいますのは、この案が示された直後に、これも選挙の直前でございましたけれども、七党の党首討論会が日本記者クラブで行われております。そのときに、代表は小沢代表でございました。小沢前代表は、最低保障年金は現在十九兆円、全部払えばそういうことになる、こういうふうに発言になっているわけです。

 十九兆円といいますのは、ちょうどそのころのいわゆる基礎年金は、大体十九兆円ぐらいでございました。今はもうちょっとふえてきています。二十一兆円かそのぐらいになってきているんだと思いますけれども、あのころは十九兆円でございました。

 だから、小沢代表が発言をされました十九兆円というのは、やはりこの青い部分だけではなくて、ここをずっと延長して全部の人を入れたこの線以下は、全部これは基礎年金というふうにお考えになっていたのではないかというふうに私は理解をいたしておりますが、それは、そうではないということでしょうか。

長妻国務大臣 それは、そういうことではないと思います。

 仮にすべての方に、民主党というか、当時考えていた最低保障年金を払うとすればということで言われたんだというふうに考えております。

坂口(力)委員 それでは、これは民主党さんがつくられたものでありますから、私が違うと言うのはいささかお門が違いますから、では、そういうことにいたしましょう。

 そういたしますと、今度出されましたのはこういう案ですね。(パネルを示す)衆議院の選挙の前にこれは出されました。そして、これは長妻大臣が、その当時大臣ではありませんでしたけれども、フジテレビでございますか、出られまして、この案をお示しになりました。また、山井議員が、今政務官でございますけれども、国民新党の方の勉強会にお出かけになりまして、そしてこの案をお示しになっている。ですから、これは正式に一応まとめられたもの、認められたものというふうに理解をいたします。

 そうしますと、赤い部分で上に乗っかった部分、皆さん方のお手元にも行っておりますけれども、乗っかりました部分が、下にあった分を上へ持ってきたということになります。

 私は、今までの案は、基礎年金というものがあって、そしてその上に比例部分が乗っかっている、そして、基礎年金の部分は国が払う部分もあるし、自身で払う部分もある、そういう案だというふうに理解をいたしておりましたけれども、そうではなくて、下にあった分を上へ持ってきただけだ、初めから基礎年金というのはなかったんだ、こういうことでありますと、上へ乗っかった部分の、ここから下へおろした線というのは、一体どのぐらいのところがこの額になるんでしょうか。

 これは恐らく高齢者の、高齢者といいますか、年金を受け取る年限になって、そして、その人たちの年収でどこ以下ぐらいなところがここから下になるんでしょうか。あるいは、ここから下になるんでしょうか。

 今まで皆さん方は、我々は野党だから、厚生労働省に幾ら計算式を言えと言っても、厚生労働省はそれを教えてくれない、だからできなかったということを言われたわけですけれども、今や天下をとられたわけでありますから、一週間あったらこれは計算できるわけですね。

 少なくとも、これから先、いろいろな議論をされていくんでしょう。いろいろな議論をされていくとするのであれば、大体ここをどこまで引き上げたらいいのかということを計算しなければいけない。これをずっと上まで全部引き上げた、七万円全員に渡すということになりますと、現在ですと二十四兆円かかるわけですよ、二十四兆円。ここを、二百万ぐらいなところで下へおろしますと、それでも半分かかるんですね。五〇%の人はその中に入ってくる。そうしますと、半分の人が入っても十二兆円かかるわけですね。全部上に乗せるわけにはいかない、二十四兆円は。

 最初、最初の案をお示ししましたが、あの最初の案のとき、小沢代表は七党の党首座談会のその席で、大体六百万から一千二百万という数字をおっしゃいました、こちらの方のときに。ここが六百万だと思うんです。この一番最後のところが千二百万だと思うんですね。ここから下は全額払いますよと。この六百万から千二百万のところはなだらかにカットします、千二百万以上は全額出してもらいますということをおっしゃっている。

 もしも六百万でありますと、現在の高齢者の所得からいきましたら、六百万以下の人といったら、八割が六百万以下ですよ。しかも、ここの斜めのところ、ここをどこまでとるかですけれども、この斜めを、どこかのところで、半分ぐらいのところで、この辺で半分だろうというところで切って、それを加えますと、大体九割の人に払わなきゃならないということになる。二十四兆円の中で九割払うということは、二十二兆六千億ですよ、二十二兆六千億。この金を毎年払っていかなきゃならないということになりますね。

 そして、それだけではなくて、それは多分消費税でいくんだと思いますが、消費税でいきましたら九%になるわけですね。大体二兆五千億が一%というふうに仮定をいたしますと、二十二兆六千億というのは大体九%です。

 しかも、これから皆さん方は、社会保障に使います消費税は地方には回さないというお考えなのか。私は、それは地方は説得できないと思いますね、現在は約四割地方に回っておるわけでありますから。九%の消費税を、地方に回す分も入れますと一五%になる。一五%の消費税を導入して、四割地方に回して、そして国が使うのが二十二兆六千億という数字になる。

 医療もあり、介護もあり、子育てもあり、社会保障もいろいろ使わなければならない状況の中で、それだけの財源を年金だけに使うことができ得るのか。私は無理だと思いますね。そんなに年金だけに社会保障費を使うわけにはいかない。年金だけに保険料、消費税を使うわけにはいかないというふうに思いますが、六百万と千二百万という小沢前代表が言われたその数字は今も生きているのか、あれはそのときばったりに言われた話で、それはもう消えてなくなっている話なのか。

 それともう一つ、ついでですから申し上げておきますが、山井政務官が国民新党に行って、そして御説明になった。そのときに、山井政務官は、十三兆五千億という数字を出されている。それに対して、国民新党からはいろいろな質問が出ているわけですね。山井政務官が十三兆五千億と言われたその数字はどこから出た数字なのか。

 私が先ほど申しましたように、今はこの図です。それで、ここの一番トップのところ、ここから下へおろす。大体ここのところが、この下へおろしたところが、年収が約二百万以下の高齢者が約五〇%になりますから、そうしますと、大体ここで十二兆になるわけですよ。それで、そこから斜めにいきます三角形のできるここの部分を幾らに見るかですけれども、ここを入れると十三兆五千億ぐらいになるのかなと。山井政務官も大体その辺のところを目安にしておっしゃったのかなというふうに思います。

 その辺のところ、小沢前代表がおっしゃった六百万、千二百万の数字の話と、それから山井議員がおっしゃった十三兆五千億の話と、両方、その数字は生きているのか、生きていないのか。そのときのいいかげんな話だったのか、それとも今も、それはきちっと計算をして出されたものであったのか。ひとつお答えをいただきたいと思います。

長妻国務大臣 まず、今おっしゃられたのは、ピンク色といいますか、簡単に言えば最低保障年金の面積をどのぐらいの広さにするのかということでございます。これについては、財政再計算など財政の状況を見たり、将来の労働力の予測、あるいは標準報酬月額がどう推移するのかなどなど、出生率もありますけれども、多くの数値を勘案して、きちっとした議論をしていく過程で決めていくということになるわけでございまして、今直ちにそれが幾らで幾らということはお答えができないということでございます。

 そしてもう一つは、今いろいろ税金の金額を言われましたけれども、今現在だけでいうと、御存じのように、基礎年金部分には一年間に十兆円税金が入っておりますので、全く今の、直ちにその税金が新規で出てくるということでもないということも御理解をいただければというふうに思います。

坂口(力)委員 そうしますと、小沢前代表が言われました六百万、千二百万というのは、それはもう生きていない、それはそのときの一時的な話であった、そういうことに理解してよろしいですか。

長妻国務大臣 その話は、三年前にそういう話を言われたというふうに聞いておりますけれども、まだ、先ほど申し上げましたように、確定的にそれを申し上げるという段階ではございません。

 今おっしゃられた話も一つの要素として検討していくということでございますが、基本的には、財政、そして労働力、人口、出生率などなどを勘案して決定をしていく、新しい年金制度の原則とも密接に絡んでまいりますので、そういう検討過程で決定をしていく課題であるというふうに考えております。

坂口(力)委員 そういたしますと、これはこれから検討する話であって、あの小沢前代表がおっしゃった六百万、千二百万というのは、あのときに小沢代表の思いの中だけでおっしゃった、そういう理解でしょうか。これは選挙前の話でございますし、記者クラブの正式の七党の党首討論のときの話でありますから、ただ単にいいかげんにおっしゃったということでは済まない話だというふうに思っています。

 だから、これからまた新しくやり直していくので、今までいろいろなことを言ってきたけれども、それはもうチャラだ、これはもうなしで新しくやっていくんだというのなら、そういうふうにはっきり言ってほしいし、ああ、そうか、民主党もそのときそのとき、いいかげんなことを言っているんだなというふうに思えばそれで済むだけの話でありますから、そう言ってほしい。ただ、いや、一遍言ったことはきちっと守っていくんだということを言われるのなら、そんないいかげんなことをこちらも考えていてはいけないということになる。

 では、山井政務官。

山井大臣政務官 坂口委員にお答えを申し上げます。

 国民新党の勉強会で十三・五兆円と言ったという話でありますが、その趣旨は、今回お配りいただいた坂口委員の表にも入っておりますように、最低保障年金の財源は消費税ということでありますから、私が申し上げた趣旨は、今は消費税は五%で、約二・七兆円でありますので、今の水準でいけば、二・七掛ける五で十三・五兆円という機械的な計算になりますという趣旨で申し上げたのでありまして、坂口委員がおっしゃったその数字の根拠は何かといいますと、二・七掛ける五であります。

 しかし、これは、将来的に消費税何%分を上げるかということはもちろん決定しておりませんし、マニフェストにも入れておりませんので、ですから、そういう現在の五%の趣旨ということであります。

坂口(力)委員 今おっしゃったように、消費税五%分を上乗せするということでおっしゃったとすれば、大体、私が今皆さん方のお手元に配りましたぐらいなところですよ。二百万以下の人で大体半分ですから、その人に配りますと十二兆円ですから、五〇%か五五%か、そのぐらいな程度の人に配る。そのときにも、国民新党の皆さん方からは、それでは四割の人は何もないではないかという質問が出たのが残っております。

 したがいまして、まず五〇%ぐらいなところにはなるということでありますと、そうすると、この年金制度でいきますと、山井政務官がおっしゃった数字が大体目安だということになりますと、この制度は、基礎年金はもうないわけですね。前のは基礎年金の分が乗っかっているというふうに私は思っておりますけれども、きょうはないというふうに否定されましたから、あれは基礎年金じゃないということでありますから、ないということに、皆さんがおっしゃるんですから、そうしましょう。

 そうしましたら、これは基礎年金がないんですから、中堅どころのサラリーマンの年金は今よりもかなり下がる、これは覚悟しなきゃならぬことだ。上へずっとこれを伸ばしていくのならいいですよ。だけれども、そんなに伸ばすことはできない、財政上。この辺のところで切らなきゃならぬということになりますと、中堅どころのサラリーマンの年金はかなり減るということだというふうに思います。ですから、国民新党の方からもそのときに、連合はこれでオーケーしているのか、中堅のところは減るではないかという質問が出ております。

 山井政務官は、連合とも三年越しで話をいたしております、天下をとりましたらもう一遍計算をし直します、こういうことも言っておみえになる。しかし、これは、ここをふやせばふやすほど財源が大きくなる、そこを抑えようとすると中堅サラリーマンの年金は減る、どちらかを選択しなければならない案が皆さんの案であると私は思います。

 どうされるのか、山井政務官、ひとつ。

山井大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 改めて申し上げますが、ですから、消費税を充てるということになっておりますので、仮に今の五%だとすれば、昨年度のときは二・七兆円ぐらいだったと思いますから、十三・五兆円ということに話をしたわけでありまして、それが何%になるかというのは、当然まだ決まっているわけではありません。

 それで、坂口委員おっしゃいますように、やはりそこを大きくするのか小さくするのかによって、最低保障年金はどれだけの方がどれぐらい受けられるのかということが決まってくるわけであります。

 ただ、坂口委員が先ほどおっしゃいましたが、要は、消費税が何%上がるではないかという話なんですが、まさにそこは与野党を含めて、そして国民の方々にも御理解いただきながら、ほかのところに行くわけではありませんから、消費税がたくさん上がれば上がるほど最低保障年金は高くなって安心感はある、その消費税の枠が小さければ小さいほど、消費税は少ないけれども最低保障年金は少なくなるということで、これは、だれが得をする、だれが損をするという話でもありませんので、まさにそこは、これから根本的にしっかりと議論してまいりたいと思っております。

坂口(力)委員 それはおっしゃるとおりだというふうに私も思いますけれども、皆さん方がお考えになっております案は、現在の年金制度と比較をして、中堅サラリーマンにとっては非常に厳しい案だということだけは明確に私は言うことができ得るというふうに思います。

 これは、スウェーデンでもそういうことが起こっているわけであります。したがいまして、これは多くの財源を要しますし、その財源をある程度抑えようとすれば中堅サラリーマンには大変厳しい年金が待ち受けている、こういうことにならざるを得ないということを私は申し上げているわけであります。

 時間が来たようでありますから、午前の部はこれだけにしておきまして、お昼からもう一度やらせていただきますから、よろしくお願いいたします。

藤村委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、ミスター年金、長妻大臣に二つの御英断を求めたいと思います。

 一つは、時効に関する問題です。

 年金時効特例法が二年前、議員立法で成立し、ことし一月までに百三十八万七千三百三十一件、八千三百二十四億七千三百三十五万円が支給決定になったと聞いております。大臣の野党時代の追及には大いに敬意を表します。最高百五歳、最高額で三千五十四万円ということですから、本当に人生を狂わす大事件であったと思います。そしてまた、いまだにもらえる年金を取り戻せていない方への解決を急いでいただきたいとも思います。

 同時に、年金は時効の壁を突破したのに、一方では時効の壁に泣いている方たちがいらっしゃいます。戦没者等の妻に対する特別給付金は、一九六三年以降、十年ごとに国債で支給され、五回目、〇三年からの支給二百万円、これは現在、十五万九千人の方が受給をされていらっしゃいます。

 しかし、請求案内がなかったために、時効は三年、これで失権をした、受給できなかったということで、昨年、大阪地裁に二人の方が提訴いたしました。

 終戦直前に夫をビルマで亡くしたという野村香苗さん。この方は、赤紙はどんなことをしても届けたのに、戦没者の妻へ慰藉のためにと決めた特別給付金の通知を届けないのは国の怠慢ですと訴えています。本当にそうだと思います。

 また、もう一人の関百合子さんは、終戦の年に夫が中国湖南省で戦死をしました。近視で、徴兵検査にも合格できないような体でした、敗戦間際の弾よけのため戦地に送られた、このようにおっしゃっています。つらい思いをさらに踏みつけにしている事態ではないでしょうか。

 平和遺族会の調べでは、戦没者の妻への特別給付金、全五回をトータルすると、約十万人が受給権をなくしたのではないかとしております。

 まず、特別給付金関係の制度は戦没者、戦傷病者など四つございますが、これらの時効失権者がどのくらいいるのでしょうか。

長妻国務大臣 今のは年金ではなく、弔慰金、特別給付金のお尋ねでございますけれども、平成五年の法改正による特別給付金では、三年で時効ということでございまして、それにかかってしまった方が約一万二千件、金額にすると二百二十億円、平成十五年の法改正による特別給付金では約五千件、約百億円と推計されます。

高橋(千)委員 この時効の問題については、〇八年の四月、戦没者の父母等の特別給付金制度の改正質疑が本委員会でありました。私も、これもやはり年金のときにも議論されたように、申請主義である、これをまず改めるべきではないかということ、それから、時効をやめるべきだと求めました。同じ日に長妻大臣も、同様の趣旨で、夫を亡くされ、さらにお子さんまでも亡くされて本当につらい思いをしている方たち、この方たちに時効というのはやめるべきではないか、そういう趣旨の質問をされていたと思います。

 また、その前年には、当時民主党参議院議員だった浅尾慶一郎現衆議院議員が中心となり、時効の撤廃を求める議員立法も提出されましたが、廃案になってしまいました。

 当時の参議院の質疑を見ますと、昭和六十年、一九八五年に受給権者のデータベース化を行ったときに、実務をする人手が足りないからと、申請があった人だけを登録したために、そのとき漏れた人はずっと漏れている。あるいは手書き名簿、要するに、データベースをつくったときの前の名簿、そういう手書きの名簿に載っていた人も漏れていたということがわかっています。柳沢当時の大臣は、恩給受給者のデータを活用して受給者の方々への個別案内が行き渡るようにできないか、総務省や都道府県と相談しながら検討したいと答えております。

 それが今でもうまく機能していないのではないか。そのことを考えると、データベースの共有ですとか、手書き名簿との突合が必要ですとか、まさに消えた年金問題と性格は同じなんです、起こっている問題の質が同じなんです。これはやはり、長妻大臣のときにぜひ解決をするべきではないか。

 大臣の決意を伺いたいと思います。

長妻国務大臣 当時、高橋委員を初め野党がこの問題を強く申し上げ、そして政府も動いて、平成二十一年度法改正による特別弔慰金においてこういう措置をとったわけですね。

 まず、厚生労働省が保管している援護年金受給者リストに加えて、総務省の協力を得て恩給受給者リストも活用して、対象となる人に、まず国から直接お手紙を出すということ、これまでしていなかったものを実施する。そして第二に、送っても申請がない場合、都道府県にもお願いして、そういう方々にフォローをしてください、こういうようなお願いをするということで、その措置が続いているところであります。

 これがきちっと機能をしているのか、さらに、不十分な点はないのか、これも実態把握をして、早速、事務方に、この実施状況や、これでも漏れてしまった方がどの程度おられるのか等々、調査をしてまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 私の御近所の方で、「援護年金受給者のしおり」、これを持っていて、お子さんもいない、全く身寄りのない方が、ああ、自分はもしや特別給付金をもらえるのではないかと気がついて、ここの後ろに書いてあるわけですね、それでこれを問い合わせたら、確かに該当いたします、しかし、もう時効を過ぎて二年もたっていてどうにもならないということで、本当に悔しい思いをされているとお話がありました。

 今、大臣は、恩給リストとの突合など、あるいはお手紙もやってきたし、その不十分さがないかということをお話しされました。これは本当に徹底してやっていただきたいんですけれども、しかし、今時効で泣いている方たちは救えないわけなんです。

 ただ、今お話しされたように、本当に名簿がきちっとこれから先整理をされていけば、これから先、そういう請求漏れということはなくなるはずなわけです。これは戦没者関係の給付金でございますから、これから先、ふえていくということはないわけですよ。支給金額はこの間拡充をしていますけれども、対象者が少しずつ少なくなっておりますので、当然、予算は減っているわけです。

 そういうことを考えれば、先ほど二百二十億、百億くらいであろうとおっしゃった、その時効の部分を救済するということは、まさに人道的に言っても筋が通っているのではないか。大臣がこれまでおっしゃってきたことからも納得がいくことではないか。年金の壁を乗り越えた以上は、この本当にわずかな方たちを救うべきだということを重ねてお願いしたいと思います。

 もし一言あれば、どうぞ。

長妻国務大臣 先ほど申し上げましたような体制をきちっととっていくということと、それが本当に有効なのかどうか、漏れがないのかチェックをするという、この実態把握はしてまいります。

 その中で、時効でありますけれども、記録問題については、これは時効撤廃ということが起こりましたのは、一義的には、社会保険庁当時の非常にずさんな年金記録の管理というような、大きな当局の不祥事があったということにかんがみた措置でもあると思います。

 例えば、この問題の時効が完全に直ちに消滅をしたときに、そうであれば、これも一部言われていることでありますけれども、年金の受給権が発生して、裁定の申請ということでありますけれども、これについて、記録問題とは別の話ですが、申請を忘れたという場合、これは時効がかかってしまうというようなこともございますし、ほかの省庁、厚生労働省の中でも、別の件でも請求についての時効というのは数々あるわけで、ではほかもすべてどうするのかという論点も出てくるわけでありますので、まずは、先ほど申し上げましたフォローアップをきちっとしていくということに取り組んでいきたいと思います。

高橋(千)委員 非常に残念ですね。朝からずっと、大臣が野党時代に言ってきたことが何か覆されているような答弁ばかりが続いておりますけれども、これはまさに議員立法ということも含めて、ぜひ委員の皆さんにも再度お願いをしたい、これは乗り越えていきたいということをお話ししたいと思います。

 もう一つの問題は、遺族年金と児童扶養手当の問題であります。

 宮城県の四十三歳の女性ですけれども、〇八年二月に離婚をして、その四カ月後に夫が四十歳で死亡いたしました。児童扶養手当約四万二千円は受給できましたけれども、遺族年金が出るのではとアドバイスをされて、申請すると、さかのぼって死亡の翌月から支給をされました。この方は、まだ若く、離婚されて基礎年金は停止をしているために、わずか月八千円の年金でありました。

 問題は、一年たって、児童扶養手当の現況届を提出したら、あなたは遺族年金をもらっているので児童扶養手当は併給できない、さかのぼって返還をしなさいと言われたわけであります。

 児童扶養手当の法律の抜粋を皆さんのところにお配りしていますが、第四条の二項のところで、「当該児童については、支給しない。」「父又は母の死亡について支給される公的年金給付を受けることができるとき。ただし、その全額につきその支給が停止されているときを除く。」とあり、これによって、年金が手当より優先されるのだ、そして年金を放棄することもできないのだということが説明されているわけです。

 そうすると、月八千円の年金をもらうために月四万二千円をあきらめなければならない。これはだれが考えても不合理ではないか。わずかなパート収入から四万二千円、これは一年分返せと言われているわけです。併給できないことを全然知らなかったわけです。教えてもらえなかった、さっきの話と似ていますけれども。

 せめて選択できるようにすべきではないか。この四条の二項、選択できる、もしくは、この年金が余りにも少ないとか一定額以下だったら併給もできるとか、何らかの見直しが必要だとは思いませんか。

長妻国務大臣 今、併給調整のお話でございますけれども、児童扶養手当を受給されておられるときに、御家族等々に不幸があって、遺族年金の受給権が発生をする、そういうふうにしたときに、現行のルールだと、金額がどっちが多いかは別にして、児童扶養手当は支給しないということで、遺族年金が支給される、こういうふうな現状になっております。

 これを見直すということになりますと、どういう論点があるのか、どういう影響があるのか、今直ちにこの場では即答できませんけれども、これは役所に持ち帰って検討してみたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 よろしくお願いしたいと思います。

 児童扶養手当法の改正案がこの後上がってくるわけでありますので、やはり当事者に不利にならないような改正はぜひやるべきではないか。私は、シングルマザーの子供の貧困率が五割にも上っているという今の現状から見ると、併給そのものを認めてよいと思うんです。ただ、今のような経済状況ですとか労働状況なんかもあると、若くして亡くなって標準報酬が少ないなど、今回のような月八千円しかもらえないというケースがレアケースではなくなるだろうということもありますので、これは本当に何らかの手だてが必要だと思います。

 時間が来てしまいましたので質問できませんけれども、実は、先ほど来ちょっと話題に上っております、この後議員立法でぜひと言われている、障害年金を受給した時点で配偶者と子供がいるときにだけつけられる加算を、受給した後結婚した方たち、子供をもうけた方たちにつけるべきではないかという法案が用意されております。

 これも実は、障害を持っているだんなさんが一定の要件を満たす場合には児童扶養手当が出ているんですね。これは五千数百人、そういう方がいらっしゃいます。この方たちが、もし今のように併給できると思って、事情を知らずに、加算をもらえると思ったら、一万八千九百円の加算をもらって四万数千円の手当をあきらめるということになりかねないわけであります。

 このことが起こっては、せっかく要望も強く、実現をしようとしている法律が残念なことになってしまいますので、このことも踏まえて、今の児童扶養手当法の見直し、ぜひやっていきたいと思いますので、皆さんにお願いを申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、年金問題を中心とした一般質疑ということで、年金制度についてお尋ねを申し上げます。

 長妻厚生労働大臣は、大臣所信の中でこのようにお話をされています。「先進国で最も早く少子高齢社会に突入した日本が、世界のお手本となる持続可能な社会モデルを打ち立てることが、目指すべきゴールです。そのゴールは、格差が少なく、何歳になっても働きたい人が働くことができ、安心して子供が産め、地域で健康に長寿を迎えられる社会です。」と。「格差が少なく、」これが何を指しているのかということであります。

 現行の年金制度は賦課方式です。現役世代が払った保険料が自分の年金として積み立てられるわけではなくて、お年寄りの年金給付に回される、そういう仕組みであります。自分の将来のためにためたつもり、こういう方もいると思うんですけれども、そうしたお金が親や祖父母へのある種の仕送りに使われているようなものだと思います。先ほど長妻大臣も、仕送りという言葉を御答弁の中でお使いになられていたというように思います。

 今後、少子高齢化によって、お金の払い手である現役世代が減少して、逆にもらう側のお年寄りはふえる一方ということになりますので、この制度、方式は、既に非常に困難を迎えているというふうに思います。

 これも大臣所信で長妻大臣がいみじくもおっしゃっていますけれども、このままでは、二〇五五年、四十五年後には、六十五歳以上の高齢者一人を現役一人が支える構図になる、今は騎馬戦型、三人に一人だとすれば、四十五年後には一対一の肩車型になるということであるわけです。

 こうした時代状況の中にあると、現行の賦課方式では非常に大きな世代間格差が広がっていくということになります。私、この世代間格差をきょうはちょっと問題にしたいというふうに思います。

 あくまでこれは一部の試算でありますけれども、二〇〇五年時点で七十歳代の方は、みずから負担した保険料の約八倍もの年金を受け取れる一方、四十歳以下の方は、事実上払わされ損になるというようなことも言われております。

 一方、厚生労働省は、きょうお配りをしたお手元の白黒の方の資料ですけれども、平成二十一年の財政検証で、資料のとおり、厚生年金の受益と負担を世代別に見てみると、ことし七十歳の世代では、負担給付比率六・五倍、負担の六・五倍の給付が受けられる。六十歳で三・九倍。一方、三十歳以下は負担給付比率が二・三倍まで低下し、以下、二・三倍で固定をされるということになっています。これは、低下はするが、払わされ損には決してならないということになっております。

 一方、カラーの方の資料、これは内閣府の試算でありますけれども、資料をごらんいただければわかりますが、これは社会保障全体、年金以外の医療や介護も含めていますけれども、その受益と負担の世代間格差を比較したものであります。六十歳以上が四千八百七十五万円の受益。一方、これから生まれる将来世代の子供たちは四千五百八十五万円の負担超過。つまりは、約一億円近くの世代間格差が開いている。これは、分水嶺はやはり三十歳代で、三十歳代以下は受益より負担が多くなっているわけです、私は三十九歳ですけれども。これも、内閣府、つまりは政府の試算であり、推計であります。

 厚生労働省の試算でありますと、受益と負担、しっかり、二・三倍になっていますよということなんですけれども、内閣府の試算では、これはベースは違いますけれども、しかしこんなに大きな格差が開いて、三十歳代以下は負担超過ということになっています。

 この推計がそれぞれ食い違っているというか、矛盾を来していると思いますけれども、一体これはどういうことで、どっちが正しいと言えるのか、よかったらお尋ねをしたいと思います。

長妻国務大臣 今お示しいただいたカラーの方は内閣府の試算でありますけれども、これは年金以外に医療、介護などの社会保障も含み、あるいは社会保障以外の公共事業なども含んでいるというふうに聞いております。

柿澤委員 私は、この平成二十一年の財政検証における二・三倍という数字は、試算の前提になる予定運用利率とかがおかしいとか、また企業の厚生年金保険料の負担分をカウントしていない、こういうことを考慮するだけでも非常に疑義のある数字だというふうに思っています。

 また、最近よく取りざたされる世代会計という手法で見ると、やはり現行の社会保障制度のもとでは、六十歳代以上の世代は五千万円以上の受け取り超過になるのに対し、二十歳未満の世代は約四千万円の支払い超過となる。世代によって差し引き一億円近い不公平が生じる。「孫は祖父より一億円損をする」という本が出ているほどであるわけでございます。世代会計のパイオニアであるコトリコフというアメリカの学者がいますが、このような世代間格差の実態を幼児虐待とさえ表現し、政治的解決を主張しています。

 この世代間格差をどのように認識しているのか、また、賦課方式の年金制度をとっている限り、このような大きな世代間格差の問題はなかなか解決しないというふうに思いますけれども、そのことをどのように思っているのか、御答弁をいただきたいと思います。

長妻国務大臣 世代間格差のお話でございますけれども、いろいろな統計があるわけでありますが、ただ、金額だけで格差があってけしからぬという議論というのは、例えば、かつて日本国は戦争をしていた時代があり、そして三百万人以上の方がお亡くなりになり、戦後につきましては、今では考えられないような衛生状況が悪い中、早く亡くなった方もたくさんおられる。

 これだけの社会保障のサービスがない時代が長く続き、国民の皆様方が今以上の疲弊をされて、それでも頑張って今の日本国を築いた。こういうような、ある意味では金額に換算できない御労苦というものも考える必要もあるのではないかということはあると思います。

 そして、年金では賦課方式のお話。これは簡単に言うと、仕送りをしていく、現役の方が払った保険料で老後の受給額に仕送りをするというような仕組みでありますけれども、これを、例えば積立方式ということで、自分が払った保険料は自分の老後に使われるという完全積立方式になりますと、その仕送りがなくなってしまって、今受給されておられる方の受給の原資がなくなる。では、積立方式と仕送りと現役の方が両方払うということになりますと、これは負担が非常に大きい。

 日本はこれだけ大きな国になりましたので、今から完全に積立方式になりますと、今受給されておられる方の原資を、過去債務とも言われておりますけれども、それをどこでどうやって調達するのか。全部借金で調達するわけにもいかないわけでございますので、完全積立方式というのは非常に難しいというふうに考えております。

柿澤委員 かつては、民主党さんもこの積立方式に近い案をお出しになられていた時期もあったというふうに思います。

 そうした中で、私自身は、これからの世代のことを考えると、そうした考え方を推し進めていくべきだという立場に立っておりますけれども、今の答弁を聞いておりますと、恐らくこれは舛添大臣に質問をしても同じような御答弁をされるのかなというような答弁でありまして、そういう意味で、今こうして厚生労働大臣に現実になられて、いろいろと考えるところもおありなのかなというふうにも感じるところがございます。

 大阪大学の大竹文雄教授がこうおっしゃっています。

 社会保障は世代間の助け合いという言葉もあるが、日本の制度は助け合いになっていない。一方的な負担だからだ。もらう方が若い世代を十分に助けるのであれば助け合いになるかもしれないが、現実の日本の制度は、若い世代から一九六〇年以前生まれ世代への所得移転にすぎない。社会保障による世代間の負担格差は、社会保障制度の大幅な改革がない限り、確定をしていることである。二〇〇五年に生まれた子供たちは、約三千五百万円の借金を最初から背負っているということになっているのである。

 これは、額に関してはともかくとして、構造としてこのような状況になっていることは事実であります。それに関する問題意識も、私は、恐らく長妻大臣もお持ちでおられることだというふうに思います。

 極めて難しい、また長い年月のかかる問題であることは事実であると思いますけれども、しかし、日本の社会の姿というものが、先ほど、戦後間もなくのお話を長妻大臣はいみじくもされておられましたが、その当時とまさにがらっと変わってしまったわけですから、それに合った制度に変えていくという意味で、私は、きょう申し上げた視点をぜひともこれからも持ち続けていただきたい。当然持っておられると思いますが、そのように改めてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 最後、せっかくですから、年金改革に向けた、今の視点を踏まえた長妻大臣の御答弁をいただいて、終わりとさせていただきたいと思います。

長妻国務大臣 年金というのは、これは国家の礎だと私は思っております。

 やはり、年金制度いかんによって、国民の皆さんがどれだけ意欲を持つかというのも大きく左右されますし、国の威信、信頼度も大きく左右されるということで、大変重要な制度であるということでしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

柿澤委員 終わります。

     ――――◇―――――

藤村委員長 この際、お諮りいたします。

 第百七十三回国会、長勢甚遠君外五名提出、国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、提出者全員より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

藤村委員長 国民年金法等の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 障害年金制度においては、年金受給者により生計を維持される配偶者や子がある場合に、年金額が加算される仕組みが設けられており、この加算は、年金受給権が発生した時点で配偶者や子を有していた場合に行われています。

 しかし、年金受給開始後に結婚したり、子供が生まれた場合には加算されないため、所得保障として不公平な取り扱いではないかとの指摘がなされております。

 本案は、公的年金制度に基づく障害年金の受給権者について、受給開始後の結婚や子の出生等による生活状況の変化に応じて障害年金の額を加算するための措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりです。

 第一に、障害基礎年金等について、年金受給開始後に子を有するに至ったときにも加算を行うものとすること。

 第二に、障害厚生年金等について、年金受給開始後に六十五歳未満の配偶者を有するに至ったときにも加算を行うものとするとともに、国家公務員共済組合等の障害共済年金についても、同様の改正を行うこと。

 なお、この法律は、平成二十三年四月一日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 国民年金法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

藤村委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。長妻厚生労働大臣。

長妻国務大臣 衆議院厚生労働委員長提出の国民年金法等の一部を改正する法律案につきましては、政府としては特に異議はありません。

藤村委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案を国民年金法等の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

藤村委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

藤村委員長 次に、厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律等の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、平成二十二年一月に日本年金機構が発足したこと等に伴い、厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律の規定中「社会保険庁長官」とあるのを「厚生労働大臣」に改めるとともに、遅延加算金の支給に係る事務等を、通常の年金給付と同様に、日本年金機構に行わせるための規定等を整備しようとするものであります。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

藤村委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案を厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律等の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

藤村委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、ただいま委員会提出と決しました両法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

藤村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長阿曽沼慎司君、保険局長外口崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

藤村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健太君。

松浪委員 自由民主党の松浪健太であります。

 毎週のようでありますけれども、本日も一時間近くの質問をさせていただきます。

 これだけ質問時間が長いと、もう他人とは思えない気分になってきますね。本当に、我が家でも、かみさんともこれぐらいしゃべらないかぬなと反省するところであります。

 それはともかくといたしまして、今回、健保組合の皆さんに肩がわりをさせる法案ということで、肩がわりという言葉は余り気持ちのいいものではありません。私も、かつてそちらに座らせていただいている当時に、二千二百億の問題のときに、一千億を肩がわりしていただくということで、本当に真摯に対応しなければいけないなと。実際、この間も民主党の、与党の方からも率直な質問があったように思います。大西委員でしたか、最初、これは肩がわり法案と呼ばれるから、質問するかどうか迷ったと。率直にそういう感覚を持ちながら政治にかかわることが私は肝要かと思います。

 まず、大臣、今回、これは肩がわり法案とまで呼ばれるんですけれども、この肩がわりの根拠について伺いたいと思います。どなたでも結構です。

外口政府参考人 まず、背景から説明させていただきますと、協会けんぽの財政状況が大変厳しいということがございます。

 ちなみに、これまで積み立ててきた準備金をすべて取り崩しても、累積赤字が四千五百億円となる見込みでございます。こういった中で、保険料率が、現行制度のままでは八・二%から九・九%まで一・七%の引き上げが必要となってしまうという状況にあります。

 こういった中で、できる限りこの引き上げを抑制するために、国庫補助をその対策の一つとして引き上げることとしております。

 この内容は、一つには、ぎりぎりの国庫財源を捻出して、国庫負担の純増を行うということがあります。

 それからもう一つは、負担能力に応じた分担をお願いする観点から、高齢者支援金の三分の一に総報酬割を導入し、財政力の強い保険者に負担をお願いすることとしたものであります。この点で肩がわりとの御指摘があるかと思いますけれども、これは、総報酬割に伴い生じる国庫財源はすべて協会けんぽの財政支援強化に充てること、国費についても可能な限り純増させたこと、健保組合の中の財政力の弱い三分の一の組合は負担減となっていることということがございますので、引き続き、御理解を求める努力を重ねてまいりたいと考えております。

松浪委員 そう言うと聞こえがいいわけでありますけれども、廃止が決まっている後期高齢者医療制度であります。ただでさえややこしいなというこの負担の割合、総報酬割との、あの厚労省からいただく図を大臣もごらんになったかと思いますけれども、本当に目がちかちかするほどの幾何学模様になっているわけでありまして、こうした廃止が決まる後期高齢者医療制度を無理やりここまで複雑化させて行うということに、やはり私は無理があるなと。

 私、先ほど、私どもが厚生労働省におったときの一千億の話をしました。そのときも、私は覚えております、たしか何か健保組合の会で四千人ぐらい集まってはるところで、政務官行ってこいということで、何か文書を読まされるんですけれども、先ほど外口さんおっしゃったようなかた苦しいことを言ってもなかなか理解は得られない。私は、途中まで読んで、くしゃくしゃっとして、自分の言葉で話したなという思いがあるわけであります。

 財源が苦しいという中で、あのときには二千二百億に対して一千億という至上命題があったわけであります。しかしながら、今回の政府、シーリングを外し、そして全体の予算の中でもシーリング、全体ぐらいシーリングをかけたらええんやないかと私は思いますけれども、そういう動機が働かない中で肩がわりさせるということについて、大臣、どうお考えですか。

長妻国務大臣 肩がわりというような表現は我々は使っておりませんけれども、これについては、端的に言うと、協会けんぽが今大変厳しいという状況がございまして、これは国庫負担割合を本則に上げて、一六・四%に上げて、国としてもぎりぎりの財政の中で措置をしていく、その中で、総報酬割という考え方を一部導入させていただく。これは、健保組合のすべてが負担増になるわけではもちろんございませんで、報酬が低い健保組合については逆に負担減になるということでございます。

 これについては、特に長浜副大臣が何度も足を運び、私も健保連の建物にお邪魔をして、かなりいろいろな御指摘をいただきましたけれども説明を申し上げ、何とかぎりぎりの判断でございますのでお願いをしたいということで、できる限り御理解をいただくような努力をしたつもりでございます。

松浪委員 午前中、与党の阿部委員から、大臣、もうちょっと人間味の入った答弁をという御指摘がありました。負担を求めるというところで健保連までわざわざ大臣みずからが行かれたということは、私はそれは本当に身をもった誠意だと評価をいたしたいと思いますけれども、我が党は大変攻撃力のある先生方が多いわけでありますけれども、私の場合は温厚ですので、またそういったところで心のこもった答弁をいただければなと思うわけであります。

 そして、今回、健保の皆さん、大臣も幾つか答弁されておりましたけれども、健保については、一元化の話に絡んで、これは保険者機能というところで、私は大臣がおっしゃるとおりだなと思ったのは、一昨日のこれは坂口委員への答弁ですか、自分たちの保険に所属する組合員の方々に予防医療やあるいは医療の教育などをして、皆さんが健康でやっていただくということによって云々という御指摘がありました。

 しかしながら、まず、こうした健保の組合に加入されている方々一人当たりの医療費に対する認識というものを伺いたいと思います。

長妻国務大臣 組合健保の一人当たりの医療費に対する認識ということなんですけれども、年齢構成の違いを除けばおおむね同水準だとは思います。ただ、一つ一つつぶさに見ていくと、やはり、本来はもっとほかと比べるとかかってもいいはずなのに少なく済んでいるというところ、予防医療等でかなり努力されておられるところというのがあるのも事実であります。

松浪委員 それは、年齢構成、確かに組合に加入していらっしゃる方、当然若くなりますけれども、その年齢構成を除いた部分については、やはり大臣は細やかな保険者機能を今後も重視していかれたいというお考えだと理解してよろしいんでしょうか。

長妻国務大臣 年金と違いまして、年金には保険者機能というのはありませんので、お金を基本的には給付するということで、我々は一元化を申し上げておりますけれども、やはり範囲が広く広くなりますと、医療の場合は保険者機能という観点からいろいろ議論があるところだと思います。

 先ほども申し上げましたけれども、健保組合で、千四百九十七組合の中で、平成二十年度ですけれども、百十三組合が加入者一人当たりの医療費が、協会に比べて加入者の平均年齢は高いのに医療費が低いという組合が百十三ございますので、こういう御努力をされておられるところもあるということでありまして、保険者機能というのは重要な機能であるという認識を持っております。

松浪委員 今、大臣から大変前向きなお答えをいただきました。特に、高齢者医療制度の改革会議を、もう四回会議があったと聞いておりますけれども、その中でも、やはりこうした機能を今後も大臣は重視していかれるということは、かなり大きな影響力を持つものだと理解しております。

 今回、後期高齢者医療制度、我々、与党のときに軽減措置を講じておったわけであります。私自身、この軽減措置というものは、やはり我々、負担をお願いするんだから、正直言ってこの軽減措置を余り安易にやってはいけないと。私は当時、福田総理のところまで、この軽減措置を安易に決めることに対して反対で、直訴文まで持って、そして仲間の議員にもそれを配って反対をしたという経緯があります。

 今回、民主党政権の皆さんは、この自民党が行っていた軽減措置をそのまま丸のみして、結局それを延ばしてしまったという経緯があるんですけれども、後期高齢者医療制度のこの軽減措置を継続することによる経費は幾らになるのか、お答えをいただきたいと思います。

外口政府参考人 軽減措置を継続するための経費でございますが、平成二十二年度におきましては、国負担分として約二千九百億円、地方負担分として約五百二十億円を見込んでいるところであります。この国負担分の二千九百億円は、平成二十一年度の第二次補正予算において措置していただいております。

松浪委員 補正予算というふうに軽く言われるわけでありますけれども、三千四百億に上るこの金額、本当にだれが負担するのかというと、結局、これは後の世代へのツケ回しになるわけであります。我々が何となく見ながら見過ごして、こうしたことが議論されずに決まっているということに、もうちょっと我々は真摯な態度をとるべきだと私は思います。

 この軽減措置は、次の制度、新制度は平成二十五年からということでありますので、そこまでは続くということでありますけれども、今回新たに負担をお願いするということを健保連の方にはお願いをしているわけでありますけれども、さらに今後健保連に対して負担を求めるというような可能性はあるのかどうか、伺います。

長妻国務大臣 今回の総報酬制で健保連にお願いをいたしたそもそものものは、協会けんぽの財政再建ということも一つあったわけでございますけれども、この協会けんぽをきちっと再建することに我々としてもサポートしていくということで、その間、御指摘のような事態を招かないように、引き続き、協会けんぽの健全な財政運営について、我々もきちっと見て、それが達成されるべくサポートをしていくということであります。

松浪委員 今、協会けんぽの財政再建ということをおっしゃったんですけれども、私は端的に、今回もこういう措置を講じて、平成二十五年に新たな制度が導入されるそのときまでまた新たに負担をお願いするというようなことはないのかということをお尋ねしたのであって、端的にもう一度お答えいただけますか。

長妻国務大臣 そういう事態を招かないようにしていきたいと思います。

松浪委員 明言をされませんでしたけれども、ぜひともそうお願いをいたしたいというふうに考えております。

 新制度について、今、議論が進んでいるということを伺っております。スケジュールを伺いますと、ことしの夏にも大体中間まとめを行っていくということでありますので、国会、特に我々野党が、この中間まとめという形である程度の形ができるまでになかなか参画をする機会がないわけでありまして、特にこの機会に大臣にやりとりをさせていただいて、そしてよりよい制度をつくっていただくように我々も力を尽くしたいと思うわけであります。

 けれども、まずこの後期高齢者医療制度というものを煮詰めないと、新しい制度というのはなかなか見えてこない。そして、次の制度はどうなるんだろうと各利害関係者はそれぞれ不安を持って、これから、衆議院が四年だから四年で大体の形をつけるんだ、これは政治の都合でありまして、これをふだんなりわいとしていらっしゃる皆さん、大変な不安に陥らざるを得ないという状況でありますので、まず、後期高齢者医療制度についてお互いに考えを合わせておかなければならぬと思うわけであります。

 そこで、まず、後期高齢者医療制度が導入されてよかった点は何なのかということを伺いたいと思います。

外口政府参考人 後期高齢者医療制度が導入されてよかった点でございますけれども、この制度は、かつての老人保健制度が抱えていた問題点を解決するために導入されたものでございます。

 具体的には、医療給付費の約五割を公費、約四割を現役世代からの支援金、約一割を高齢者の保険料により賄うこととし、高齢者の医療費に関する負担の明確化を図ったということが一つございます。さらには、都道府県単位の運営とすることにより、財政運営の安定化と保険料負担の公平化を図った。この二つは改善点だと考えております。

松浪委員 さすがに一緒に制度をつくっただけあって、大変いいお答えがいただけたんだなと思いますけれども、今、外口さんがおっしゃった点は、特に、高齢者と現役世代、そして公費の負担を明確にした、そしてまた財政責任も明確になったというこの現行制度のよい点、これは特にだれもが一致するところだと思います。

 特に、大臣がさっきおっしゃいました協会けんぽ、今回の改革会議の中でも、協会けんぽ側は、今まさに外口さんがおっしゃったよかった点については新制度に引き継ぐべきだと明言をしていらっしゃいます。このことはしっかりと入れていただきたいと私も思うわけであります。

 そして、我々がそれを端的に数字で見せられるのは、あのとき国保の格差というものが五倍もあったということでありますけれども、その格差を五倍から二倍にした。この縮小したというのは、やはり私は大きな進歩であったと大臣にもお認めいただいていいのではないかなと思います。

 それでは、お待ちかねであります。後期高齢者医療制度の問題点は何だったのかということを伺いたいと思います。どなたでも結構です。

外口政府参考人 問題点でございますけれども、後期高齢者医療制度につきましては、七十五歳以上の方々のみを対象とする独立制度でありまして、本質的な課題といたしましては、高齢者の方々を年齢で差別するものではないか、そして高齢化の進行等に比例して保険料負担がふえるのではないか、こういった指摘を受けております。

 このほか、個人単位で保険料を徴収することとなったため、扶養されている配偶者等も納める必要が生じて、年金からの天引きも実施することになったこと。高齢者の方々の健康診査について、以前は市町村に実施義務が課されておりましたけれども、広域連合の努力義務となった中で、受診率が低下したこと。後期高齢者という名称は、高齢者の方々の心情に配慮していないこと。

 後期高齢者医療制度については廃止することとしておりますが、廃止までの間においても、これらの問題点はできる限り解消することとしておりまして、現在改善策を進めております。今回の保険料の改定に当たっては、財政安定化基金の取り崩し等により、保険料の上昇を二・一%にとどめる、広域連合に受診率向上計画を策定していただき、健康診査の受診率の向上を図る、七十五歳以上という年齢に着目した診療報酬体系は廃止する、こういった改善策を今進めているところでございます。

松浪委員 高齢者の区別というか差別というか、これは大変議論のあるところだと思います。これぐらいの区別をさせてもらわなくて、若い世代は割を食ってばかりだということでありまして、結局、あのとき議論は沸騰いたしましたけれども、若い世代の声というのは余りにも無視をされたのではないかなと私は思うわけであります。

 今、局長の方から、差別的だった、天引きが悪かった、そして受診率の低下、そして負担がそれに加わってふえるんじゃないかと。それも織り込み済みの一割という割合だと思いますけれども、これが問題点だったとされるわけであります。

 しかし、私もこれは反省すべきところはあったと思います。確かに、後期高齢者という名前、我々も当事者であって、学者さんが言うままにそういう心ない言葉を使った。これは明らかに間違ったことであったし、今から思えば、今、民法を改正して夫婦別姓にするなんという、親子も姓がばらばらになるなんという、日本のこれまでの伝統とか、ただでさえ核家族化する中で、家制度が崩壊される中で、高齢者の方々にこうした考えを持ち込んでしまったということ自体には、今になっては私も大きな反省をするところであります。

 それで、これは国会のレファレンスですけれども、今回、大体総括は、こうしたものは、特にどうしてこれが問題になったのか。先ほどおっしゃったような天引きの問題、そして、今まで保険料を支払う必要がなかった人たちに保険料が課された。当時は、終末期相談支援料というものが大変な誤解をされたなという面もあったかと私は思います。そして、当然、名前が悪かったという問題であります。

 大臣、特に、後期高齢者医療制度、これは問題点というのは先ほど列挙していただきましたけれども、この問題点の中で怒りを買った最も大きな理由は何で、二番目の理由は何で、三番目の理由は何か。大臣なりの御認識があれば、ちょっとそれを順番に伺いたいなと思います。

長妻国務大臣 今、三つというお話がございました。

 まず一つは、七十五歳以上の方だけを区切って本当に一つの保険にしてしまったということについて、ある意味ではそこに到達をしたら自動的にその保険に入るということで、やはり七十五以上の方が、お医者さんにかかりやすい人が一グループになれば、その保険料の上昇スピードも、現実的には人口の割りなどもあって、実際にも高いわけでありますけれども、そういうところで、アンチエイジングといいますか、年齢で区切るということについて、欧米諸国は敏感でありますけれども、日本国もそういうところに怒りが出たのではないか。

 とともに、やはり二番目といたしましては、ネーミングもそうでありますけれども、実際に、七十五歳以上の方だけ、今まで健診の義務があったのが義務ではなくなったり、あるいは診療報酬体系で、七十五以上の人だけの診療報酬体系が同時にできて、先ほどおっしゃられた終末期の相談支援などの診療報酬ができたということ。そして、その二番目としては、それに伴って国保からある意味では強制的に後期高齢者医療制度に入るわけでありますから、国保の市町村がやっていた、例えば人間ドックの補助サービスなどがぱっと切られちゃう、こういうようなこと。

 三番目としては、やはり広域連合。先ほども保険者機能というお話がございましたけれども、広域連合というところが、そこのトップの方というのは確かに首長さんではありますものの、もちろん、その広域連合が範疇とする地域の代表という選挙で選ばれておられないわけでございますので、そういう意味での保険者機能がどうなのか。

 そういうようないろいろな論点があったと思いますけれども、あえて三つ挙げろと言われれば、そのような点ではないかというふうに考えております。

松浪委員 せっかく政府参考人と別に尋ねているわけですから、もう一度私が聞いた質問を思い起こしていただきたいんですけれども、問題点は何かという点と、私が大臣に伺ったのは、国民の怒りを最も買った理由は何かということであります。

 私は、当時の新聞報道、そして地元での有権者の反応から思い起こしまして、私自身が当事者として受けた反応でいえば、やはり天引きされるということがけしからぬ、説明もなしに天引きされるのは何というこっちゃと。それで、区別をされるということ、それは大臣おっしゃるとおりです。何を我々だけ区別してんねん、我々の保険料上がるんちゃうかと。しかし、その中で、公費が五割入って、現役世代から四割が入って、そして自分たちは一割だということを確かに正確に説明できていなかったけれども、そこの感覚的なものというのは大変大きかった。

 ですから、私はやはり天引き、ネーミング、そしてこうした説明不足というところが端的には、常識的に、我々は選挙区に帰れば当然選挙運動をやっているわけですから、ふだんから選挙運動をやっていると言いませんけれども、政治活動をやっているわけですから、ちょっと本質的な間違いをしてしまいましたけれども、そういうわけでありますから、それは、我々はビビッドにそれを感じて、共通のものとして考えないと。

 つまり、私が何を言いたいかといいますと、それまで十年もの期間をかけて、高齢者医療制度がどうあるべきかということが議論をされてきたわけであります。その議論というのは、今回、健保組合に、健保連に肩がわりしていただくというだけでもこれだけ大騒ぎをしないといけない。当事者の思いとか利害関係を調整するというのは、これは大変なわけであります。

 そして、当時、四つの方式、独立方式、それから突き抜け、一本化、リスク構造調整方式という四つに結局収束されていたわけでありまして、これから改革会議の方でなされる議論も、この四方式をどう組み合わせるかという議論にならざるを得ない。

 つまり、後期高齢者医療制度というと、これは大変聞こえは悪いわけでありますけれども、これを言いかえますと、独立方式とリスク構造方式、つまり前期高齢者の分でリスク調整、後期が独立方式というこの併存型というのが、まさに我々が今使っているこの後期高齢者医療制度であります。

 四つの案の中には、独立方式的な対馬案とか、これまで経団連なんかもそういったことは主張してきたんですけれども、独立方式との併用型というのは、ある意味、もう皆さんがマニフェストにも載せて否定をしてこられたわけなので厳しいと思いますけれども、私は、独立方式的な側面があったとしても、それはある程度明確化という点で必要なのではないかなというふうに思いますので、大臣には今出ている四案、これを本当は今聞こうと思いましたけれども、この四案についてはぜひとも平等に、独立方式的だからという部分を切り捨てるようなことはぜひないようにお願いをしたい。つまり、若者の費用負担というものについてはしっかりと見ていただきたいと思うわけであります。

 やはり、利害調整というのは本当に大変だと思います。民主党の皆さん、今、普天間の問題、大変ですね。普天間の問題も、十三年間議論してきて、そして地元の皆さんのいろいろな思い、そして関係者のいろいろな思いがあって、やっと一つの案にまとまった。こうした案を、それは一年足らずでやろうと思ったら、今のように、もう話にならない状況になるのは決まっているわけであります。そうしたことも踏まえて、今回は大臣は賢明にも四年間ということでされているわけですから、重々に、もう一度コンセンサスを図っていただきたいというふうに思うわけであります。

 午前中、柿澤委員が大変年金について、現役世代と将来世代ということで議論をされました。大臣の方から返ってきたお答え、私は至極正論だなという思いで聞いておりました。そういうところで、私がこれまで指摘したように、今回の高齢者医療制度、後期高齢者医療制度導入に伴って、そしてさらにこれがもう一度変えられるという中で、一番割を食うのはだれかというと、やはり若年世代であります。今票を持っていないこれからの有権者、そして生まれていない将来世代について、大変負担がかかるということにならざるを得ないわけであります。

 将来世代はないがしろにされていると私は思いますけれども、大臣は、将来世代は現時点の後期高齢者、高齢者よりも多くの負担をすべきだというふうに思われているのかどうか、まずちょっと御認識を伺います。

長妻国務大臣 負担というのは、今よりも医療については減っていくということはなかなか考えにくいと思います。その中で、その負担をどう抑制しつつ医療を充実させていくかというような課題だと思います。

 今、多少、世代間のお話もございました。これはもう当たり前の話ですけれども、やはり若い方もいずれはお年を召すようになるということで、そうなったときに、一つの制度があればまた同じその制度で恩恵を受けるという、世代がかわっても、若い現役世代がお年を召した方を支えるという構造はいつの時代も基本的には変わらないわけでございますので、そういうものにも配慮しながら、我々としては制度を設計していきたいと思います。

松浪委員 おっしゃるとおりだと思いますけれども、年金と違って、なかなかこれは比較というのは難しい。先ほど、午前中の柿澤委員の図を見せていただいて、公平感というか値ごろ感というか、やはりそういったものも、我々、制度を国民に理解していただく上で必要かなと思うわけであります。

 現時点での未成年と高齢者の生涯を通じての、生涯賃金における医療費の割合というのはどれぐらいの隔たりがあるのかということをやはりある程度、そのときと状況は違ったとはいえ、調べておくことというのは、私はそれは最低限のことだと思うわけであります。そうした医療費の負担というものについて、それは病院がなかったら負担はゼロになるわけですから一概に比べられないのはわかりますけれども、何か目安のような、ちょっと端的に比べられるようなものではなくても、そういう試算というのは行っていないんでしょうか。

外口政府参考人 現在の七十五歳以上の方が若いときは、国民皆保険はまだ整備されておらず、給付が不十分であったことや、医療技術が進歩していなかったことから、医療費は低かった可能性があります。ただし、現在とは背景となる社会経済状況が大きく異なっておりますので、世代間の比較はなかなか難しいものと考えております。

 実際、具体的な試算ということになりますと、現在の七十五歳以上の方が若いときの医療費の統計は不十分であります。また、現在の未成年者については、今後の医療費や賃金がどのように推移するか、ここはまだ不透明でございます。こういった課題がございます。

松浪委員 不透明だけでは、結局、これは平等というのであれば、一人一人に将来世代の負担額というものはきれいに割っていったらいいわけでありますけれども、公平感というのはあくまで納得でありまして、どう納得してもらうかという工夫が私は必要だろうと思います。

 年金にしたって、先ほど大臣がおっしゃったように、最初のころは当然、年金を払っていない方々にも年金を給付した。それはそれで私は当時の正しい選択だったと思いますし、医療費についても同じことが言えるかと思いますけれども、厚生労働省としても、こうした若年世代と今の高齢者、値ごろ感を出すために、何らかのそうした、完全にきれいにわからなくてもいいので、あくまで納得のいただけるような説明のできる資料というものを今後おつくりいただきたい。また、政務三役の皆さんにもお願いをいたしたいと思うわけであります。

 それでは、次の課題に移りたいと思います。

 一昨日、大臣も答弁をなされておりました。大臣が広域連合というものについて御答弁されていた。広域連合という半ばあいまいな主体になってしまって、広域化はしたものの、かえって責任の所在があいまいになったと発言をされておるわけであります。

 この広域連合という仕組み、私も、実は私のライフワークが道州制という、特に、民主党の皆さんは地域主権とおっしゃっていますけれども、私は究極の地域主権であろう道州制にずっと携わってきて、この広域連合というものにも、今はもういませんけれども、これを当時実務でつくった総務省の役人が、ああ、あれはつくって問題があったんですよと言っていたのも実際そのとおりであります。

 大臣は、この広域連合という半ばあいまいな主体について、後期高齢者医療制度においてこの問題点をどのように認識されておられるのか、伺いたいと思います。

長妻国務大臣 私も当時の議論を全部つぶさに承知しているわけではありませんけれども、やはり今の市町村国保には格差の問題等いろいろ課題はあるので広域化しなきゃいけない、そういう議論になって、では都道府県なのかといったときに、これもいろいろな論点が出て、ではどういう形にしようということで生まれてきたのが広域連合ということだったと思います。

 これはもう言うまでもなく、住民から十分に認知されたものではないということと、そのトップは住民から直接選ばれていないので責任が明確でないのではないか、あるいは、都道府県のように市町村に対して助言や勧告する権限がないということで、保健事業や保険料の収納対策等の面で市町村の取り組みを促進、後押ししていくというようなことが大変難しい、そういう問題があったのではないかと思います。

松浪委員 おおむね大臣おっしゃったとおりだと思います。

 それに加えて言わせていただくならば、やはりプロパーがそこで育つような仕組みになっていないというところも大きな問題だと思います。

 また、規模の問題から考えても、果たしてこれが、都道府県というものは、実はもう我が国が廃藩置県、明治四年以来再編をされて、明治二十一年以来変わっていない枠組みをまだ我々は使っているわけであります。

 ですから、当時は七万幾つあった市町村がだんだん減ってきて、今、もう今月末で千七百二十七ですか、そこまで減ってきているわけでありまして、この都道府県という枠組み、民主党さんも地域主権とおっしゃるのであれば、何らかの見直しを行わなければもたないなと。特に島根県、鳥取県といった県は、人口規模でいえばもはや世田谷区より少ないという状況であります。こうしたアンバランスを抱えながら広域連合が存在をしているということであります。

 大臣、ここからは別に通告もしていないような内容でありますけれども、これはもう端的に、政治家として、地域主権と厚生行政ということについて大臣は何かお考えになっていることというのはありますか。別に通告していない内容ですけれども、政務官でも構いません。

長妻国務大臣 厚生労働行政と地域主権ということでありますけれども、まずは、私もこういう立場になって本当に痛感しますのは、厚生労働省の直接の出先機関というのは、ハローワークとか、今は別になりましたけれども年金事務所とか、労働基準監督署とか、そういうものはありますが、やはり厚生行政の主体は、我々が制度をつくり、立案し、地方自治体の窓口でやっていただく、皆様にお手伝い、御支援をしていただく、こういうことが基本で、地方と一体となって進めなければならないというふうに思います。

 そこで、どこまで地方にお任せをしていくのかということでありますけれども、私自身は、やはり国が、守るべき最低限の基準というのはきちっと、これは安全性の問題などもありますのでお守りをいただき、あとのそれにプラスする部分については本当に地方に、ある意味では自由度を増してお取り組みをしていただく、こういうような切り分けの中で国と地方が協力関係を結んでいくという姿が望ましいのではないかというふうに思います。

松浪委員 今大臣おっしゃったことは、今まで自民党・公明党政権下で地方分権と言われていたことののりを全く越えるものではないというイメージです。

 今、一応民主党さんは一丁目一番地は地域主権ということらしいんですけれども、地域主権というのは一体何なんですか。

足立大臣政務官 大きなテーマですので、そう簡単に私が答えていいのかと思いますが、先ほどの問題と多少すり合わせながらお答えしたいと思います。

 私は、やはり地域のことは自分たちの考え方によって地域で決める、そういうふうに、国あるいは国からおりてきた、都道府県等を初め、そこにある財源も権力も、できるだけ多くの国民の皆さんの身近なところで決していくというのが地域主権の考え方だと思います。

 かつて民主党は、国と基礎自治体の二つ、二元という考え方を強くとっていた時期がございましたけれども、先ほどの社会保障分野といいますか厚生労働分野と申しますか、それは、介護は市町村単位になっておりますが、医療の分野はほとんどが都道府県単位に近いというような形で、その中間的な存在はどうしても現時点ではなくすわけにはいかないということだろうと思います。

松浪委員 今政務官がおっしゃったのも、これまで地方分権を進めようと言っていたことと、そののりを越えるものではないなと思います。

 先ほど、大臣のお答えからは厚生局という言葉が出ませんでしたけれども、厚生労働省にも出先機関としての厚生局というものが存在するわけでありますし、私は、せっかく厚生行政をやって、出先も持っているんだから、もっと広域に目先を向けるべきだと。

 市町村、基礎自治体と国というふうに分けるという流れに一時民主党が傾いたことは重々承知ですけれども、基礎自治体と国しかなければ、これは明らかな中央集権ですよ。ですから、この間の出先機関をどうするのかという答えが今皆さんの方から聞こえないというのは、私は大変残念だなと思います。

 道州制、かつて民主党さんも二〇〇三年にカラーのすばらしいパンフレットを出されて、私は、これをやられたら民主党はすごい党になるな、こんなバラ色のちゃんと明確な国家戦略が描ける政党というのはすごいなと思って、思わず民主党に入りかけはしませんでしたけれども、大変な感銘を受けたわけであります。

 今後、これから皆さんが地方分権を地域主権と言われるのであれば、皆さんが今おっしゃったのは地方分権ですよ、地域主権と言うのであれば、厚生局単位でそれなりの実験的な診療報酬が入れられるようにするとか、それをまたそちらの地方の方々が決められるようにする。日本の医療も、こんな一律で、厚労省だけでやっているというのはやはり無理があると私は思いますよ。そうした柔軟な仕組みを入れる、そういったビジョンが、これから地域主権、少なくとも一丁目一番地と言われるのであれば、今後長い目で見て御検討いただきたいなと思うわけであります。

 次に、終末期相談支援料というものがありましたけれども、これを廃止されたということであります。特に、私が今申し上げましたこの終末期医療、国全体で無理ならば、ある地域でも、本当に温かい仕組みが入る。我々も舛添大臣と一緒に視察、東京で行きました。ある病院へ行きますと、がんの患者の方をNPOの皆さんと連携して九割自宅でみとっているというような医療が一部的には実現をしているということもありましたけれども、この終末期医療の現状について、どのように今お考えでしょうか。

長妻国務大臣 終末期相談支援料というのはああいう結果になりましたけれども、私は、終末期の医療がどうあるべきというのは、やはりもっと議論をして、一定の結論を得る努力をしなければならないというふうに考えております。

 ことしの夏に、大臣のもとに設置されている終末期医療のあり方に関する懇談会の意見集約が出てくるということで、私も専門家の皆さんの議論の結果というのを注目しているところでございますけれども、それを受けて、我々としてどういうことができるのか、今、終末期医療のガイドラインというのは一定のものが出ておりますけれども、この取りまとめについて、我々としてはよく見ていきたいと思います。

松浪委員 我々、政治家をしておりますと、さまざまな頼まれ事をいたします。そして、私も最近地元で多いのは、九十歳を超えたおじいちゃんが脳溢血を起こして救急車で運ばれた、ああ、これは厳しい状況やねんけれども、現場の人が人工呼吸器を使ってしまった、それからもう半年以上もおじいちゃんは意識不明のまますうすうと生きている、三カ月ごとの次の病院を探すのは大変や、先生、何とかしてくれませんか、そういう声。大臣のもとにも、地元事務所ではたくさん届いていると思います。

 そうしたときも、おじいちゃんは一応書き置きして、こういう無理な延命治療を望まないと書いていても、それでもなかなか実際には人工呼吸器を外すということは難しいんだといって、家族の方が、泣く泣くでありましたのがだんだん元気がなくなって、本当に憔悴した表情で、我々はそうした陳情を受けているわけでありますから、やはり一刻も早くそうした現場の状況を改善せねばならぬ。これは与野党ともにだと思います。

 次です。

 これまで私、ほかの質問等でも毎回、医療産業について大臣からは積極的な発言をいただいているわけでありますけれども、官民対話というのがなされてきたわけであります。私はこれは非常に効果的な対話だなと思っておったんですけれども、この官民対話のこれまでの実施状況について伺います。

長妻国務大臣 医薬品と医療機器産業の官民対話というのは前政権で始まったというふうに聞いておりまして、直近は昨年の六月に実施をされたということであります。

松浪委員 私、結構頻繁に開かれていた覚えがあるんですけれども、六月三日というと、まだ政権が前の政権ですよね。

 大臣、政権交代してお忙しかったかもしれませんが、これからこうした対話、そろそろ再開された方がいいんじゃないですか。

長妻国務大臣 私どもも、ライフイノベーションという新成長戦略を申し上げておりまして、研究資金の集中投入とか、臨床研究、治験環境の整備とか、審査の迅速化、質の向上等々取り組んで、医薬品とか医療機器の連携というのもこれは大変重要だというふうに考えております。

 今おっしゃられた組織というのは、構成員もかなり多くいらっしゃり、いろいろな方が関係されておられるわけでありますけれども、基本的にこの枠組みをそのまま使うのか、あるいは新たな枠組みを使うのかは別にして、やはり官民の対話というのは重要であるというふうに考えておりますので、今後どういう形で進めるのか、これは成長戦略の担当大臣とも相談をしていきたいと思います。

松浪委員 前の形でやる必要は全くありません。常に物は進化するわけでありますから、大臣がお考えになるビジョンに従ってその形を変えていただければいいかと思いますけれども、再開だけはぜひとも早急にしないと、政府としてやはりやる気がないんじゃないかということになりかねないと私は思います。スーパー特区等、各省をまたがるような仕組みのもとにさまざまなことも進んでいるわけでありますけれども、ライフイノベーションの分野、特に文科省予算が大変多く投入されている分野でありまして、当然、他省との連携をしっかりととって行っていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、私も実は政務官のとき、問題がたくさん起きました。後期高齢者医療制度もありました。フィブリノゲンの問題も大変ございました。年金の問題もございました。私、正直、いろいろなところに伺いまして、当時は三十何団体行きましたので、それは当然、政治家として、物を聞くというのは大変大事なことかと思います。

 大臣もいろいろとこうした団体を受け付けていらっしゃると思いますけれども、長妻大臣の、大臣ですから、わざわざ行く、健保連まで行かれたと聞いて、私はそれは本当にいいことだと思いますけれども、これまでの各種団体の公式訪問の受け付け状況というのはどうなっているんでしょうか。

長妻国務大臣 私も、今回こういう質問をいただいたということで調べさせましたが、これは、九月十六日に就任して以来、実際にお会いして要請書をいただいたという団体数は二十一団体でございまして、当然それ以外にも、要請書というんじゃなくて、表敬訪問をしていただいた団体はさらにそれを上回るということであります。

松浪委員 要請の内容も、これはすぐに動かないといけないというものから、これは難しいなというものまでいろいろあろうかと思いますけれども、やはり公平に公正にやっていただいているなというようなことを厚生労働関係諸団体の皆さんに感じていただくことが必要だと思います。

 なぜ私、このようなことを申し上げましたかといいますと、今回、日本医師会の方が、民主党と大変仲のよいという会長が当選されたと思います。業界のこういう記事なんかでは、会長が幹部を引き連れて大名行列で大臣のところへ行ったなんということを、そういう記事も出るわけでありまして、前会長は副会長だけを伴って官邸を訪れ、そして大臣のところにも訪れたけれども、常任理事までも従えた大挙での就任のあいさつに訪れるというのは大変異例であったということであります。

 こうしたところでは、厚生労働省の大臣室で長妻昭厚労相とも面会をした、長妻厚労大臣はこれまで特定団体の公式な訪問はほとんど受けていないというふうに業界では書かれているわけでありまして、やはり、お会いになったというところはそのように広報をしっかりとしていただいた方がいいのではないかなというふうに思います。

 本当に、特定ということを見られると、何やら前より悪なったやないかということが決して厚生労働省そしてそちらの政府の方に言われないようにお願いを申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、菅原一秀君。

菅原委員 自民党の菅原一秀でございます。

 幾つか質問をさせていただきます前に、まず確認をしておきたいことがあります。

 長妻大臣が九月十七日に、就任をされて、厚労省の講堂で訓示を述べられたわけですね。非常にいいことを言っているんですよ。国民の命と健康を守る非常に重要な役所である厚生労働省の信頼を取り戻して、国民に奉仕をする役所に変えていくために取り組んでいただきたい、いろいろと言っております。最後に、省庁の皆さんを前に、皆さんは民主党のマニフェストを持っていますか、選挙の前は公約集であるが、今やこれは国民と政府との契約書、国民からの命令書と考えてもよい、マニフェストを常に携行し、厚労省所管部分を熟読し、実行するための知恵を出していただきたい。

 今、大臣はポケットに入れられましたけれども、副大臣、政務三役、局長初めそこに並んでいる方でマニフェストを今ポケット、あるいは携行している方は何人いますか。一人もいない、一人もいない。一人ぐらいいてもいいんだけれどもね。大臣は今、ポケットにタイミングよく入れられましたけれども、これが今の厚労省の現実なんではないかな。外口局長、今出されました。まあ、それはいいです。

 これは持っていたら持っていたで、中国の文化革命のときの紅衛兵みたいなもので、毛語録なんということでやるとこれまた気味が悪いわけでございまして、ただ、問題は、これは国民との契約書、命令書ととらえて頑張ってくれと言ったんなら、これはきちんと常に持ってさまざまな行政に携わっていくことが必要ではないか、このことをまず冒頭に申し上げておきます。

 今回の国民健康保険等の一部を改正する法案についてお尋ねをいたします。

 もう日本は世界一の長寿国家になりまして、特に百歳以上の方が、全国で四万人を超えております。ちなみに、このうち三万五千人超は女性である。厚生労働委員会の配分もそうかもしれませんが。いずれにしても、こうした世界一の長寿国家になった。しかも、WHOからお墨つきである、この医療保険の水準というものは極めて高いと評されているわけであります。

 この原点はやはり国民皆保険にある。国民がいつでも、どこでも、だれでも、フリーアクセスで医療を受けられる。この源泉となったのが、昭和三十六年、当時、私ども自民党がスタートをさせた保険制度である。紆余曲折、また人口の増による、あるいはさまざまな要因によって変遷は遂げてきたものの、この医療保険制度というものが我が国のいわば国民皆保険の源泉となって、そしてまた今の日本を築いたと私は確信をいたしているわけであります。

 そして、今回のこの改正案、これまでもいろいろと議論が出ました。後期高齢者医療制度を廃止して、平成二十五年四月まで、新しい制度を創設するまで、言ってみれば、今回の改正案はそれまでのつなぎ法案であって、やりくり法案であって、言ってみれば、組合健保からピンはねをするピンはね法案である、組合健保の方からはそんな声も漏れ伝わってくるわけであります。

 たしかマニフェストに、政権をとったら即座に後期高齢者制度を廃止する、そして、そう言っていながら、結局はこのマニフェストを翻す。いわゆる国庫補助を軽減すること、そしてまた支援金の算定方法も一部、加入者割から総報酬割に、ある意味ではなし崩し的に変更している、この点、やはりどうも解せない、容認しがたい、こういう思いを持っているわけであります。

 まず、高齢者にかかわる医療制度を変えるというならば、二年も三年も、来年からなどと言わずに、きちっとそのビジョン、理念、概要、制度設計を示した上で、今回のこの保険料にかかわる部分の改正案を示すべきではないか、こう思いますけれども、この点、どうお考えですか。

長妻国務大臣 今、マニフェストのお話の中で、後期高齢者医療制度即刻廃止と書いてあるではないかという御指摘ですけれども、私どものマニフェストには、一期四年の中で後期高齢者医療制度を廃止するというのが工程表で明記させていただいているところでありまして、私どもとしては、来年に法律を出す、後期高齢者医療制度にかわる新しい制度の法律を出して、四年以内に新しい制度をスタートさせる、こういうようなことを申し上げているところであります。

 そして、財源につきましては、これは平成二十三年度の予算編成の中できちっと議論をしていく。その前提としては、浪費あるいは優先順位の低い事業を見直す、あるいは、消費税以外の税制あるいは保険料、それについても検討していくということで取り組んでまいります。

菅原委員 マニフェストに文字で書いているいないといういかんにかかわらず、長妻大臣とも私は何度もテレビ討論に出させていただきました、あるいは、選挙区がお隣ですから、街頭では、我々は政権をとったらすぐにこれを廃止するんだと、何度も何度も訴えておられた。これは、地元のおじいちゃん、おばあちゃんから、民主党になったんだから、いまだに、この長寿医療制度、後期高齢者医療制度が変わって、保険料、自己負担減るんですよね、どうなっているの、こういう声が私のところにも届いております。

 その実態はといえば、民主党政権になってから、既に去年の補正予算、一次補正においても、医療関係だけでも約二千六百億円執行停止、事業仕分けで、今最も喫緊の課題である医師確保あるいは救急医療体制、周産期医療、この補助金を概算要求から半分の二百六十六億にも減らしてしまっているわけであります。合わせると約二千九百超、三千億円近いお金を削ってしまった。

 国民の命を守ると言っていながら、国民の命を削るかの予算削減、これはやっぱりあり得ない。その分、二兆七千億借金して、来年から五兆三千億借金して、子ども手当を出す。全くもって、言っていることとやっていることと、そしてまた国民の負託というものにこたえられていないという実態、これは指摘をしておかなければなりません。

 そうした中で、この改正案の中に見られますように、言ってみれば、今保険財政はどこもみんな苦しいわけであります。その中で、協会けんぽの財政に国庫負担をつぎ込む、そして、それだけでは足りないから健保組合から五百億円ピンはねして、その場のやりくりをする。これがこの法案の肝ともいうべき論点だと思います。

 そこでお尋ねをしますけれども、協会けんぽの財政を健全化するのであれば、今回一三%から一六・四%に引き上げられる国庫負担割合、これは法律の本則では、これまでも議論がありましたけれども二〇%とうたっているわけですから、まずはこの二〇パー、アッパーいっぱいいっぱいに補助を出すための努力をするというのが本旨ではないでしょうか。この点、どうお考えですか。

長浜副大臣 冒頭から、国民健康保険含めての健康保険の歴史を昭和三十六年に振り返って御説明をいただきました。

 今は協会けんぽの御質問でございますが、御承知のように、大変財政状況が急激に悪化する中において、昨年、年末までの予算編成過程で、健保組合の関係者の理解と協力を求める努力を重ねつつ、先生が御指摘になったような財政状況の中で、財政当局ともぎりぎりの交渉を重ねたわけでございます。

 最終的に、財源問題の中の一つの解決のスキームだとは思いますけれども、二十一年度末の累積赤字の三年償還、これも単年度で返さなければいけないという、今回御審議いただいている法律の中に特例を入れたことや、後期高齢者支援金の三分の一の総報酬割、肩がわりという御指摘もありますけれども、被用者保険の中における働く者の分担というような意味合いも私は御説明をさせていただきましたが、こういったことで、三年間の時限措置で一六・四%に引き上げることとしたことでございます。

 もちろん、先生が御指摘のように、本則の中における一六・四から二〇という規定の中においての改革を考えなかったのかということもありますが、現実的には、先ほど申し上げた総報酬割で、六百十億いったところを、それを全部協会けんぽに注ぎ込む、そして、それだけでは説得ができませんから、国費としての六百十億をさらに注ぎ込むという形で御説得を重ねたわけでございます。

 大変厳しい経済状況を御理解いただきながら、今後とも、協会けんぽのあり方については注視をしていきたいと思っておる次第でございます。

菅原委員 今、長浜副大臣から御説明のあったこの協会けんぽでありますが、今お話あったようないろいろとやりくりをしてみても、やはり保険料率八・二パーから九・三%に、言ってみれば、割合でいえば二割引き上げる。その抑制のために、新たな財源として、今お話あった六百十億つぎ込む。言ってみれば、これで受ける側の給付の改善がよくなればいいんですが、これまたそうではない。大幅な制度設計、冒頭申し上げたような絵図を見せないで、極めて近い将来の制度設計、概要、理念、ビジョンを含めたものを示さずして、言ってみれば小手先でこうした作業をする。

 この協会けんぽの加入者というのは、御案内のとおり、中小企業の経営者、事業主あるいはサラリーマン。これは、約一・一パー上がるということは、年収四百万だと、一パーとして、単純に四万ちょっと。事業主二万一千円、サラリーマン家庭も二万一千円。年間これだけ負担増になるということは、これはもう塗炭の苦しみを味わっている中小企業からすれば、あるいはサラリーマンからすれば、月にまず最初に削られちゃうのはお父さんの小遣い、こういう状況の中で、やっぱりこれは中小企業のサラリーマンにはとても耐えがたい。

 こういう状況、追加の財源投入をすればいいわけですけれども、この点、その協会けんぽのサラリーマンに、大臣、どう説明しているんですか。

長浜副大臣 先生の場合は、区議そして都議を経験されて、今おっしゃられた中小企業、地場の中小企業の方々とも接触が深いわけでありますから、その苦しみの今おっしゃられた意味というのは大変よくわかるところでございます。

 もちろん、新聞広告あるいはホームページ等々で、私どもあるいは協会けんぽ関係者が、今回から、この四月から保険料率が上がるということをきめ細かく御説明を申し上げてまいりました。しかし、今御指摘のとおり、引き上げざるを得ないという状況を納得いただかなければ、広報を幾ら打ったところで何をやっているんだという話になるわけでございます。

 今、どういう説明の仕方をしているかというと、高齢化による医療費の伸びが賃金の伸びを上回ってしまっている、また、協会けんぽの収支が悪化、御説明するまでもないと思いますが、準備金も取り崩しをせざるを得ないという状況になってきている。こういう状況の中において、準備金の、例えば四千五百の赤字を抱えているんだけれども、どうしているのかといえば、銀行借り入れをしているという状況であります。

 こういうものを解消していくために、何としても、先ほども御説明申し上げましたけれども、先生から言われると、不十分だと言われるかもしれませんが、国費を投入した段階で、そして保険料率を上げざるを得ない、ぜひ御理解をいただきたいということでお願いをしているところでございます。

菅原委員 あべこべでして、やはり最初から、ボリュームが先にありき、六百十億。それから上げた、足りない分は上げた。逆じゃないですかね。上げないためにまずどうするべきか、国費での追加財源措置を含めて、もっと議論すべきだったんじゃないか。

 今回、この法案、たしか去年の十一月に、後期高齢者医療制度、負担料が二年ごとに上がるから、全くそのことを知らなかった長妻大臣が、何でこんなことを今まで言わなかったんだといって省内で怒って、予算を上げる二週間前にこの改正案を出してきた。

 やはりこれは、もっと、政権をとるあるいはとったとするならば、きめ細かな勉強やら研究やら調査やら、必要だったんではないか。こうして、言ってみれば、ほかのものにいろいろな国庫負担、つまり、国費を使わなければいけないから、こういうところにもしわ寄せがくる。だから、国庫負担軽減、先にありきで、結局は、協会けんぽもそうだけれども、やはり同様に厳しい組合健保からもちょうだいする。今回のこういう流れですよね。

 きのうの朝刊に出ていました。健保連のこの発表にあったように、二〇〇七年は、組合健保、六百億の黒字だった、二〇〇八年は、後期高齢者医療制度が始まったこと、あるいは不況が進んでしまったことと相まって、三千六十億の赤字を出した。現在、千四百六十二組合のうち、八九%が赤字である。その赤字の総額が過去最悪で、六千六百億、三百五十二の組合で保険料を引き上げて、二〇〇九年度だけで十三組合が解散をしてしまっている。

 これは言ってみれば、不況によって、サラリーマンの給料、企業の収益が減ったこと、あるいは保険料算定基準で、結局は、いわゆる給料に応じて決まる標準報酬月額、その平均額が約一・九パー下がって、ボーナスにおいては六・五%ぐらい下がっている。こうした組合健保の実態があるにもかかわらず、五百億いただく。積立金が四兆二千億ある、だからだ。こんな理屈、果たして通るんだろうか。

 この正当な理由なり、あるいは組合健保にどういう説明をされるのか、お聞かせください。

長妻国務大臣 今御指摘いただきましたように、健保組合も大変厳しいということも承知をしているところでございます。

 その中で、この協会けんぽの厳しさも大変なものがございまして、総報酬割という考え方をとらせていただくということで、これ、財政力の弱いところについては、加入者割に比べて総報酬割は負担減になるということで、健保連配下の組合でも、三分の一の組合は総報酬割にして、負担減になるということで、負担能力に応じた拠出をお願いさせていただいたわけでありますけれども、ただ、とはいえ、これは大変な御負担になる組合もあるわけでございますので、そういうことも含めて、我々政務三役も、そして役所サイドも誠心誠意、御説明を申し上げてきたつもりであります。

菅原委員 今前段で大臣が御説明されたのは、組合健保内の財政力の強いところ、弱いところの話であって、何でこんな協会けんぽとのバランスで組合健保から五百億をピンはねしなきゃいけないのか。

 後でお話ししますけれども、保険者側も先が見えないから、小手先のことで、しかも、どういう医療保険制度をつくろうとしているのか、後期高齢者医療制度をどう改変しようとしているのか、この辺が見えない中で、いわば財源手当てだけが先行してしまっている。これが非常に今回も大きな問題である。

 話をかえますけれども、一昨日のこの委員会で大臣は、健康保険組合、組合健保、協会けんぽ、共済、この保険者機能を生かすこと、いわゆる保険者機能が大事だと繰り返し答弁をされていました。

 これまで保険者機能を発揮して、例えば、私もサラリーマンをやっていましたから、会社で人間ドックがあったり、がん検診があったり、最近ではメタボ健診があったり、そういったことに組合健保なり健康保険組合が自主的に努力をして、こうした保健事業というものを行ってきた。そういったことも、やはり医療現場だけに頼らないで、この国の長寿化あるいは国民皆保険を実質的に拡充してきた、そういう背景があるんではないかな。

 ところが、こんな組合健保に負担を押しつけて、実質、加入者の保険料が上がる。中でもまた、いろいろな財政的なやりくりをしなければいけない。やはり医療費の伸びを抑制してきた組合健保なり健康保険組合に、言ってみれば、今回の改正がそういう保健事業を縮小させ、結果的には医療費そのものが微増、上昇しかねない。

 こういう論点が全く整理がされない中で、この法案を早く通そうとしている。これはもう断固反対ですよね。

 今言っていること、大臣、どう思います。保険者機能を発揮して、生かす。それでいて、その保険者には負担を押しつける、ツケ回しをする。言っていることがちょっと、つじつまが合ってないんじゃないですか。

長妻国務大臣 今おっしゃられたように、健保組合は、人間ドックなどの健康診断あるいは健康づくり、レセプト点検等の医療費の適正化など、非常に保険者機能を発揮いただいているということで、本当にありがたく思っております。

 その中で、これは余り言われていないことかもしれませんけれども、国として、健保組合に何も支援をしていないわけではもちろんございませんで、例えば平成二十二年度予算においては、前期高齢者納付金等の負担が非常に大きく増加する組合に対しては支援を、二十一年度は約百六十億円だったものを、倍の三百二十億円、支援を申し上げるということや、あるいは、財政が逼迫している健保組合へ国が国庫補助を講じる、これは引き続きの政策でありますけれども、そういうことも申し上げているところでありまして、繰り返しですけれども、保険者機能は果たしていただいている健保組合には本当にありがたく思っているところであります。

菅原委員 いや、組合がありがたいというのは答弁じゃなくて、こういう制度設計で、小手先の改正をやって、結局は医療費が膨らむようなこと、やはりこれはあってはならない。もうこの改正案は私は断固反対をしていきたいと思います。

 話をがん対策に移します。

 きょうは四月九日でありまして、朝日新聞にも出ていましたけれども、四月九日は子宮の日、今大変ふえている子宮頸がん、「予防する時代です!」こういう特集が出ております。この子宮頸がんは、年間に一万五千人の方が発症して、三千五百人が亡くなる。

 がん検診、これはどれだけ受けているのかなと調べましたらば、直近のデータで、胃がんが男性が三三%しか受けていない、女性が二五%、肺がんが男性二六%、女性が二一%、乳がんが女性が二〇%、大腸がんが男性が二八%、女性が二三%、極めて低い。欧米はもう七割、国によっては八割行っているわけであります。

 先般の質問でもお話ししたとおり、父、また祖父母をがんで亡くしておりますから、切実な思いを持つ者として、また、がんを考えるNPO法人の皆さんとの出会い、いろいろな御縁の中で、やはりこのがん対策だけは超党派で取り組まなければいけないマターだと思っています。

 民主党の山本孝史議員、本当に最後まで身命を賭してがん対策に取り組んでおられました姿は、本当に今もって御冥福をお祈りするとともに敬意を表し、あのときに山本議員が先頭となってつくった、私どもも、ちょうど私もがん対策議員連盟の事務局長を仰せつかっておりましたから、平成の十八年六月に成立をし、十九年の四月から施行されたがん対策基本法、早いものでもうことし丸三年を迎えるわけであります。

 現在、厚労省の統計によると、全国でがんで亡くなる方が三十三万人、年間、罹患する方が約六十四万人、生涯リスクということでいえば、男性が五四%、女性が四一%。言ってみれば、二人に一人はがんにかかるわけであります。

 現在、継続的な医療を受けているがん患者が百五十二万。ところが、この数字が果たして本当に正しいのかどうか。私は、やはりがん登録ということを法制的に整備するべきではないかな。

 例えば東京でも、山の手の方と下町とでは、がんの内容、進行度合い、それに対する治療の成功率等々、やはり地域格差があったりして、この辺、今のがんの数というものは、例えば、登録をしている、現在、三十六道府県一市あるんですが、その中でデータの水準を満たしているのは大体七県ぐらいしかないんですね。多分、そこから類推してこういう数字を出しているんだと思うんですけれども、もっと数が多いかもしれない。そしてその傾向に対して、医療が、国がしっかり対策を図らなければいけない。これが本来、この基本法の肝の一つでもあったわけであります。

 この辺、どう考えますか。がん登録、これをぜひ法制化を進めるべきだと考えますが。

足立大臣政務官 がん対策基本法成立に向けて御尽力いただきまして、ありがとうございます。私も、党内ではありますが、努力させていただきました。その中で、がん対策推進協議会というところで指針といいますか、目標というものを定めたわけですけれども、がん登録のことは確かに、その中で、なかなか現実のものとして盛り込むのが難しいという実態も聞いております。

 私、現場経験から言わせていただきますと、がん登録というのが余りに種類が多過ぎる。地域がん登録、院内がん登録、それから臓器別のがんの登録もまたあって、一体これはどれが一番有効なのか、現場にいるとわからなくなります。これはがんだけではなくて、ほかの疾患もそういう傾向にあると思うんです。

 この登録、その疾患の方がどういう治療を受けて、どういう形になっていったのか、それは有効であったのか等々の分析には、私は登録制度というのはまさに必要だと思っています。

 そのことを前提に、もう一つの考え方として、例えば、社会保障の納税者番号制度であるとか、あるいはカルテの電子化等、こういうことを組み合わせていったら、それは、今いろいろ、三種類私は登録を挙げましたけれども、それよりも精度の高いものができる可能性もあるのではないかというような気もしておりまして、これも検討に値することだと思っております。

 ですので、今の御質問にストレートにお答えするとすれば、法制化が必要ではないかということについては、現実のさまざまあるものをどうやって整合性を持たせるかということと、ほかにまた手段が、電子化等もあわせて、考え得る手段もほかにも多くあるということがお答えだろうと思います。

菅原委員 足立政務官とは、そういえばそのがん対策のシンポジウムで数年前御一緒したこと、今思い出しましたけれども、やはり法制化だけが道じゃないとおっしゃいましたけれども、では、その背番号制といいますか、国民のそうした現状を本当にきめ細かに把握できる体制がすぐにでもできればいいんですが、この辺がやはり、山もあろうかと思います。この辺、よく検討していただきたい。

 次に、このがん医療の均てん化ということを考えますときに、がん拠点病院の制度、これを今まで整備してきたわけですけれども、やはりここに来て抜本的な改革が必要なのではないか、あるいは自治体からもそういう声が聞こえてきます。

 今、全国で三百七十七のがん拠点病院があります。東京でも十五病院。患者調査によると、実は、これらの病院が東京のがん患者の一割から二割しかカバーしていない。東京都が独自で、準拠点病院というのが十五カ所あるんですけれども、これと合わせてもカバー率は五割行っていないのではないか、こういう調査も出ております。

 拠点病院等、やはり質の高いがん医療、がん治療というものを提供するということは患者にとっては極めて重要なことであって、そのネットワーク、複合的ながんの転移等々も含めると、そうした治療の拡充ということは極めて重要であります。だからこそ、このがん拠点病院のレーゾンデートルも当然あるんだと思います。

 ところが、拠点病院になったはいいけれども、しっかり医療を提供しているかというと、役所に聞いたら、毎年、申請書ならぬレポートを出している。でも、それをそのままうのみにすれば、うちはこうやってがん医療に関して言われたとおりやっていますと書くかもしれない。ところが、患者からすれば、実際にがん拠点病院がその役割を果たしていない。

 そういう意味では、がん拠点病院になるために、なるまでは一生懸命研究して、医療を施して、いろいろと患者を集めてと、やるんですね。いざなってしまうと、政治家もそうですよね、選挙に当選するまでは駅前に一生懸命立ってしゃべっているんだけれども、当選すると、あの人、駅にいないなんということもあるんですけれども。

 このがん拠点病院も、言ってみれば、なるまでは一生懸命やるんだけれども、なってしまったらば、あるときには患者のことをほったらかしとは言わないまでも、次の転院先を紹介しないなんということもあるわけでありまして、私は、やはりがん拠点病院、本当に拡充をしなければいけませんし、看板だけもらってその実が伴わない、こういう現状に関して、やはりいま一度中間決算をすべきではないかな、こう思いますが、どうお考えでしょうか。

足立大臣政務官 中間的に見直しをするべきではないかという御質問でございました。

 御案内のように、今、全国三百四十八、二次医療圏がある中で、二次医療圏内に一つはということで認定をしておるわけですけれども、今三百七十七カ所あります。

 そこで、今、委員が本当にその値が信じられるかというふうにおっしゃいましたが、平成二十年の患者調査によると、継続的な医療を受けているがん患者百五十二万人、そして、全国のがん診療連携拠点病院において治療を受けた新規のがん患者さんは年間三十三万人ということですから、約五分の一、二割ということでございます。ですが、継続している患者さん、地元、近くで診られておってたまに行くという患者さんも含めると、やはり二割よりは多いんだろうと思います。

 それでも、委員は、東京ではやはり余り多くが診療拠点病院でされていないんじゃないかという認識があると思いますが、地方の方は、かなり多くの部分は診療連携拠点病院でやはり診療を受けていると私は思います。

 そして、選択と集中といいますか、医師不足あるいは看護婦さんが不足する中で、そういう高度な技能を持った病院に集めて行うというのは、それは非常に重要なことでもあると思いますが、まずは地域性、そして距離的なことも含めて、二次医療圏内に一つ。まだ足りない二次医療圏もございますので、そこをしっかり認定されるように、集中的に人材が集まれるような状況をつくっていくことも大事かなと。そのことも含めながら、もちろん不断の見直しは必要だろう、そのように考えております。

菅原委員 がん拠点病院の実態、やはり今のお話はよくわかるんです。ただ、そもそもの、がん登録を今法制化していない中で、まあ、法制化だけがいいとは言いませんけれども、実態が類推、推測でしか出てきていない百五十二万人という数字、これに対して果たして、今お話あったような、カバー率が二割、これは東京の傾向だというお話、あるいは地方においてはもっとカバーできているんだという御説明がありました。でも、やはり根本からもう一度登録なり実態の数を把握して、がんの種類、治療、進行度合い、カバーできる拠点病院、準拠点病院、こういったものの総合的なコーディネートがもう一度、今こそ私は必要だと思います。

 話をかえますが、がん患者からすれば、あるいは例えば自分ががんになった場合、やはり死に対する恐怖、あるいはさまざまな生活上の不安、この資料にもお配りしましたけれども、患者の六四%が心の不安を訴えております。NPO法人のブーゲンビリアの方々になると、やはりどうしても不安になるのは夜あるいは週末。例えば、がんの治療をしながら何とか食べるために頑張って仕事をしている、でも、ふっと一人になったときに物すごくそういう恐怖感というものが出てくる、しかし、そんなときに一体だれに相談すればいいのか、非常に問題があるんですね。

 まず、今回、予算の中にも組み込まれたと思いますけれども、全国のコールセンターの開設、これはもうイギリス、アメリカ、オーストラリア等でもやっております。二十四時間対応のコールセンター。国の一本のところに電話をすれば、どんながん患者も、ある意味では緩和ケアということが受けられる。この点、予算の中に計上されましたけれども、今どこまで進んでいますか。

長妻国務大臣 今、がん患者の皆さんの悩みのお話がございましたけれども、我々日本国民は、三人に一人が今がんで亡くなるということでありますし、先ほども御紹介いただきましたけれども、一生涯のうちに、我々日本国民は二人に一人が、半分ががんにかかるという、本当に国民的病気となっております。

 その中で、今おっしゃられたコールセンターというのも、いろいろな御指摘もありまして、予算に計上をさせていただき、二十二年度でありますけれども、国立がん研究センターにコールセンターを設けるということで今準備をしておりまして、これはまだめどでございますが、はっきりと確定はしておりませんけれども、夏ごろまでにこのコールセンターを設置して、患者さんがここに電話をしていただくと御不安や疑問が少しでも軽減されるように、センターともよく相談しながら、十分に効果のあるものになるよう進めていきたいと思います。

菅原委員 ぜひこれは確立をしていただきたいと思います。

 それと、今、がん拠点病院において、相談センターが随所にあります。これは医療圏の一つなんだと思いますけれども。例えば、病院とは切り離して、都道府県ごとにこうしたいわば中央相談センターのようなものを設けるお考えはないでしょうか。

長妻国務大臣 今、相談支援センターという、がんのいろいろな不安や疑問に対応するような相談窓口として、これはがん診療連携拠点病院などでそういう相談、設置をしております。

 今の時点で三百七十七カ所にそういう相談支援センターがありますけれども、御意見として、やはり病院の中に設置すると、そこで不安、不満をぶつけるというのはなかなか言いにくいというような意見も確かにあるわけでございまして、その中で、例えば三重県などは、相談支援センターは病院の中じゃなくて県の合同庁舎に置いている対応もある。あるいは東京都も、実施主体はNPOのがん患者の団体に委託をしている。いろいろな工夫は今地方ごとにしておりますので、これを一律、国がこっちにしろ、あっちにしろという段階ではまだない。

 つまり、病院で相談を受けるというのも、当然、すぐに対応ができて疑問にもスムーズに答えられるという利便性もあるわけでありますので、それぞれの地方地方のお考えに今の時点ではお任せをしているということであります。

菅原委員 実態の把握、それもまたお話をされながらの答弁ですけれども、御自身が、二人に一人が亡くなって、日本を百人の村としたら四十五人ががんにかかるというお話をされているにしては、何だか他人事のようなお話。非常に、もっとこれはきちっと、拠点病院を知らない、あるいは、病院だとどうかな、行政だな、そういうものがあると思うんですね。そういうことをやはり進めていくべきだなと思います。

 それから、ここに「患者必携」という、ちょっとこれは大きいんですけれども、「がんになったら手にとるガイド」というものがあります。これは実は、初診の方には提供しているんですけれども、今まで継続的に治療しているような方には行き渡っていない。これはやはりきちっと配付をすべきではないかな。

 それと、がんの患者さんからすれば、世間では金の切れ目が縁の切れ目と言いますけれども、がんの患者さんのある方がおっしゃった、金の切れ目が命の切れ目だと。つまり、本当にお金が足りない、治療費が足りない。こういったことで、病を、がんを克服しようと頑張っているけれども、同時に、そのエネルギーとか神経が、お金のやりくり、資金繰り、こういうようなことにとられてしまっている。

 ことしの一月に四十一歳の若さで亡くなられた金子明美さんという方が本を書いているんですね。「がん患者、お金との闘い」。これは、お金との闘いということがタイトルに出るくらい、がん治療というものはお金がかかるし、また、そういう部分に一人の人間あるいは家族が労力やエネルギーを費やさなければいけない、それでも足りないから治療方法を変えなきゃいけない、こんなことも出てきているわけですね。金子さんが、五百万円の貯金を使い果たした、そう言いながら、国のがん対策推進協議会のメンバーとしても最後まで頑張っておられました。

 例えば、今、がんになると、平均で負担が百三十五万かかるんだそうです。七割の方が、これは負担が大き過ぎる、七%の方がその治療を変更する、こういうデータもあります。

 そこで、一つお尋ねしたいのは、例えばがんで百万医療費がかかると、自己負担が三十万。ところが、いわゆる高額療養費制度で、八万円で済む、入院の場合。それで、数カ月すると四万円になる。これはもう世界的に見ても非常にいい制度ではあるんです。

 ところが、これは化学療法なんかを入院しないけれども通院でする場合、外来でする場合、結局、自己負担の三十万をまず払って、償還払いで、後で二十二万戻ってくる。ところが、この数カ月の間に、結局は三十万、数十万というお金を、がん患者の方がみずからつくって出さなければいけない。

 これはやはり、入院では現物給付が認められて外来はだめだというのはおかしいと思うんですよ。社会のセーフティーネットを強化すると言っている長妻大臣、どうですか、これ。

足立大臣政務官 議員と御一緒したのは、たしか四年前のがん対策推進協議会の地方委員の方々のシンポジウムだったと思います。まさにあのときに、私はコールセンターのような情報収集の仕組みがぜひとも必要であるということを話させていただきました。

 そして、委員がなぜかという理由の中でおっしゃっておられた、まさにそのとおりで、この医療政策機構の、先生の資料ですが、簡単に言うと、初期のころは、自分は何をだれに聞いていいのかもわからないという状況だろうと思います。これは定期的に追っておりまして、たしかこの調査だったと思いますが、それが一年ないし一回目の治療が終わった後等には、経済的なことが頭に、重要な問題事項として上がってくるという統計がございました。

 そこで、今、入院は、議員御案内のように、これは自己負担限度額の範囲で窓口です。外来の方はなぜ償還払いになっているか。これはもうおわかりのように、入院は大体が一つの医療機関で、退院時に一括、月に一回というのが多い。それから電子化も進んでいる。外来の場合は、何カ所も受診される方がいて、特に手書きの場合等は、今までの累積の、その月の金額というのが即座にわかるというのはなかなか難しいことだろうと思います。

 ですから、これは電子化の推進とともに解決される問題であると思いますし、しかしながら、もう一つ大事な点は、とはいっても、高額療養費ぎりぎりのところを毎月続けている方もいらっしゃる。これは坂口委員が御指摘のように、高額療養費制度そのものの、額の面も含めてあるいは対象の面も含めて、もう一度今検討するというふうになっておりまして、まさに厚生労働省内でそこを検討しているところでございます。

菅原委員 入院で、パッケージで治療できればいいけれども、やはり幾つかの医療機関にかからなければ治療が完結できない、こういう状況の中で、逆にその状況に保険制度なり高額療養費制度の改正をして合わせてあげるべきではないでしょうか、私はこう考えています。ぜひこの点、今後もまたこの問題は超党派で取り組んでいきたい、こう思っております。

 次に、救急医療についてお尋ねをいたします。

 この問題も先ほど申し上げたように約二千六百億削った中に入っているんですね。これだけ救急医療が大変で、その行政サービスを拡充しなきゃいかぬと言っているのに、これまた削ってしまった。

 この先月の消防庁の調査では、去年一年間で救急搬送された重症の患者が医療機関に三回以上受け入れを拒否されたというケースが、去年一年で一万三千件もあります。数年前の奈良を初め、各地でいろいろなことが起こってきました。これは三年連続で一万件以上起こっているんですね。最近の事例でも、医療機関が比較的多い首都圏といいますか都市部の方が、受け入れ拒否の割合が多い、こういう実態があります。

 それから、三十分以上それこそたらい回しにされてしまっている現状が、東京都内で、去年一年で三万五千件。そこで、東京都としても、救急医療東京ルールという、こうした運用を始めて、地域の救急医療機関あるいは各医療機関との連携を強化した、消防庁とも密に連携強化を拡充した、こういうことであります。

 ところが、やはり実態に施策が追いついていないという現状があるんだと思います。これはやはり、救える命を救えないということは、政治、行政の不作為、こういうそしりを免れない。これは、今までが、あるいは今が、だれが悪い、こんなレベルの話ではなくて、それに対してどう取り組んでいくのか。

 表にもあるんですけれども、十年前と比べて、救急、急病で搬送された人の数が、十年前よりも三割以上伸びていて、軽症がふえている。特に高齢者の軽症、中等症がふえております。

 医師の確保問題が非常に逼迫している状況、あるいは、軽症の患者の中には、休日、夜間に救急外来を安易に利用する、いわば最近でいうのはコンビニ受診というのがふえているわけでありまして、これがつまるところ、一番患者が集中しやすい二次救急医療機関を直撃して、そしてまたその負担が大きくなっているという現実があります。

 先般の診療報酬改定の中で、この軽症患者に関して特別料金を徴収する仕組みが中医協で議論になったんですが、結局見送られてしまったんですけれども、例えば、独自に自分のところで特別料金を始めた鳥取大学附属の救命救急センターでは、去年一年間で搬送される数が半分に減ったという新聞記事が出ています。

 これは何で、こういうせっかく実効性、可能性が高いものが診療報酬から外れてしまったんでしょうかね。

足立大臣政務官 今の質問にストレートに答えるには、中医協の審議の中でございますので、それがなぜと言われると、ちょっと私も、その中の協議の詳細についてまでは今全部把握しておりませんので、ちょっとお答えしにくいところではございます。

 委員がお示しになったこの資料は、軽症は入院なし、中等症は二週間以内の入院ということでございますけれども、今、実態調査によりますと、初期あるいは二次救急を受け入れられないという理由のトップは、処置が困難、あるいは専門外であるということになっておりまして、三次救急は皆さん御案内のように満床だということが多いわけですけれども、過度な専門性への期待、あるいは、その先、医療事故の報告等の制度もあって、その先まで責任が負えない、あるいは、予見可能性あるいは結果回避義務を負わされるのではないかというような不安もあるのではないかと思います。

 今、議員がお示しになった例は実費を徴収ということでございましたけれども、もう一つ、兵庫県立の柏原病院の例は、ピークに比べていわゆるコンビニ受診という受診が四分の一に減った。

 これはやはり、地域の中で患者さんの親の会等が特に中心になって、病院の実態、勤務の状況、そして病状について正確に把握しよう、かかりつけ医を持とう、子供を守ろう、そしてお医者さんに感謝しようというスローガンのもとで取り組まれたところ、四分の一まで減ったという事案もございますので、そういったような情報の共有というのが非常に大事なのではなかろうかと思います。

菅原委員 今、政務官、いみじくも、かかりつけ医を持とう、そう言って、開業医の再診料を下げてしまった。こういうパラドックスもどう説明するのかな。これはまた、今あえて問いませんが。

 今お話があった中で、日本の医療の高度化、それはある意味では、側面では、医療のあるいは医師の専門化が進んだ、深掘りできた、だからこそ今まで治らないと言われていた病気も治るようになった、こういう傾向はあるんだと思います。

 ところが、ふえているといっても、三千人足らずの今の救急担当医、いわゆる救急科専門医ですね。毎年二百人規模でふえている。ただ、全国で三千人。全国で内科の医者が六万二千人、外科が一万七千人、小児科は少ないと言われるけれども一万五千人、産科が一万人に比べれば、圧倒的に救急専門医というものの数が少ない。特殊性があるといえばそこまでですけれども、でも、これだけ極めて救急医療問題が切実な問題となっている中で、この点、やはりどうふやしていくかということ、これも一つの論点だと思います。

 時間が迫ってきたので足早に行きますけれども、この救急で運ばれる方の中には、アルコール中毒の方だったり、いわゆる路上生活者の方々だったり、例えば精神の既往歴のある方なんかもいて、あるいはひとり暮らしの高齢者の方なんかもいまして、患者本人には、ある意味では社会的背景といったケースが、結局それが医療機関の選定に時間を要してしまったり、あるいは、時には一番の救命救急のかなめである三次救急医療機関に収容されてしまう。こんな、受け入れる側からすれば、ある意味ではモラルといいましょうか、本当にいっぱいいっぱいになってしまう状況。そういう意味では、今の二次、三次の救急医療機関の検証というものも必要になってくるのではないか。

 あわせて、社会的背景がある患者の方が運ばれてくる中で、精神疾患あるいはさまざまな症状を持っていて、結局救急の現場でその対応ができないという意味では、精神疾病等も含めた救急医療体制の環境整備ということも私はこれから必要になってくるのではないか、こう考えております。

 いろいろと申し上げましたが、この点についてお答えをいただきたいと思います。

足立大臣政務官 まず、先ほどの御質問に対して、今急遽取り寄せたところ、大きく二つの論点が、実費の負担の件です。負担を前提とした場合、必要な救急医療が受けられないという視点、逆に、お金を払えばコンビニ受診を容認すると受け取られる可能性もあるというような議論がされたそうでございます。

 そして、今の件で、救急についての件でございます。それから、アルコールとそれからホームレス等の話もございました。今現在、ホームレス等につきましては、現在地保護という観点でこれは医療費扶助の対象になっております。

 それから、精神科疾患のこともございましたが、今多くなっているのは、認知症の方と多臓器の併存疾患を抱えている方が多いという状態でございます。そのどちらも、診療報酬上、今回加算をさせていただいて、手厚くするようにしております。

 それから、さらに一点、地域との連携の話がございましたが、地域連携夜間・休日診療料というものを今回新設いたしまして、小児で非常に取り組みが評価があった開業医さん等が病院の初期外来を担当するというような仕組みを小児だけではなく全科に取り入れて、かかりつけ医機能をもっと高めようというような取り組みを今回いたしました。

菅原委員 引き続き、また詰めていただきたいと思います。

 最後、先般も少しお話ししましたけれども、出産育児一時金の引き上げに関して、民主党のマニフェストに四十二万円を五十五万円に引き上げますと、子ども手当の上に書いてあるんですね。これは今回の子ども・子育てビジョン、これに入っていないんです。これはこの前聞いたら、ふにゃふにゃふにゃとまたいつもの大臣のはぐらかし答弁があったんですが、これは入っていないし、今多分民主党さんも参議院選のマニフェストをつくっていると思いますけれども、この五十五万引き上げは入るんですか。

 それから、もう一点あわせて聞いちゃいます。

 産科医療制度の中で、大村委員を中心として無過失補償制度を我々も整備してきましたけれども、生まれたときの重度の脳性麻痺に限られている対象を、民主党の方はすべての診療科目を対象にすると書いてあるんですね。これもあわせて、今三万円の負担金、上げたわけですけれども、もっと負担金はふえるんじゃないかなと思うんですけれども、これでどうなっているのか。

 以上二点、マニフェストにあることですから、教えてください。

長浜副大臣 マニフェストの部分ですが、今菅原さんから御指摘のように、党の方でマニフェストに向けての準備が進んでおりまして、私どもがヒアリングを受けたりしているところでございます。

 いずれにしましても、妊娠、出産の支援において五十五万円の水準を目指して、マニフェストの中に入れるべく努力をしてまいります。

足立大臣政務官 無過失補償制度につきましては、今行われている産科医療補償制度においても、小さく産んで大きく育てるというような理念のもとに、今、一級、二級、そして正常分娩というふうに限られているわけですが、この範囲を広げよう、そして無過失補償の概念的なものを広げようという試みがまずあります。

 それから、予防接種につきましても、健康被害の救済制度というのはある意味無過失補償制度でございまして、そのような議論が今活発に進められているところ、私どもも、これを広げるために、保険料負担というものでいくべきであるのか、あるいは基金の創設等が必要ではなかろうかといったような議論を、政権獲得、私たちが担うようになってからさまざまな会議体をつくっておりまして、その中の一つの会議体でその議論もしっかりやっていくというふうになっているところです。

菅原委員 時間が来たので、次回以降、また詰めていきたいと思います。

藤村委員長 次に、坂口力君。

    〔委員長退席、中根委員長代理着席〕

坂口(力)委員 今、菅原議員からがんのお話がございまして、本当に感謝をしながら聞いていたわけでございますけれども、私もがんに罹患いたしまして、比較的早かったからいいようなものの、これはいつまた発病するかわからない、そういうところがございまして、人ごとでない、これは何とかしてほしいというふうに思いながら聞いていたわけでございます。

 医者というのは、自分はがんにはならぬ、こう思っておるものでございますが、しかし、なりまして、なってしまいますと何か気分がすかっとしたというようなところもありますけれども、しかし、恐怖感もなきにしもあらずというところであります。

 はっきり言ったのは仙谷大臣と私ぐらいでございましょうか。そういう意味で、仙谷大臣には何となく親近感を持っておりまして、がん友達という親近感を持っているわけでございますが、お会いするごとに、何とか少し前進させなきゃならないなというようなことを話をしているところでございます。

 さて、きょうは昼まで年金のお話をさせていただいて、私はいつまで生きておるかわかりませんから、皆さんがおつくりになりました新しい制度を提案していただきましても、私はその年金制度で御厄介になることは多分ないだろう、こう思っておりますけれども、午前中の質疑の中で、皆さん方の年金制度は中堅サラリーマンには非常に厳しい制度である。この中堅サラリーマンのところまで支援の手を差し伸べようというふうに思いますと、多額の財源が必要になる。そこのところを一体どうするのかということが民主党のこの年金案の一つの大きな問題点だというふうに指摘をさせていただいたところでございます。

 続きまして、もう少しお聞きをさせていただきたいわけでございますが、財政もたくさんあればいいんですけれども、今回のこの医療制度の改正にもありますように、六百十億という、大きいといえば大きい、わずかといえばわずかでございますが、これをツケ回ししなきゃならないほど現実問題としては苦しいわけですね。これは好きこのんでこういうことになっているわけではなくて、やはり何とかしないとしのいでいけないからなっている。そういう中で、年金制度に何兆円というお金をふんだんに投入できるかといえば、それは私は難しい話だというふうに思わざるを得ません。

 それで、二〇〇九年六月二十五日に年金調査会からペーパーをお出しになっております。これは民主党さんからお出しになったものでございますが、その中を拝見しますと、保険料は自分のため、現在のこの出ている保険料はだれのために使われているかわからない、しかし、我々が考えるこの制度は、保険料は自分のため、それから、所得が同じなら同じ保険料負担、同じ保険料負担なら同じ年金受給、こう書かれております。

 この意味が私は明確に理解されていないわけでございますが、保険料は自分のためというのは、これは現在の賦課方式ではなくて積立方式に近いことをお考えになっているのかどうかということを一つお聞きしたい。

 それからもう一つは、所得が同じなら同じ保険料負担、こう言いますけれども、自営業の皆さん方、あるいは農林漁業の皆さん方でありましたら、これは半分出してくれる企業なり相手がいないわけでありますから、全額自分で出さなきゃなりませんね。保険料はサラリーマンの倍額になります。倍額の保険料を出して、そしてもらう年金は同じということにならざるを得ない。そこのところを、所得が同じなら同じ保険料負担という言葉で割り切れるのかどうかということがもう一つございます。

 まず最初に、保険料は自分のためという意味を一つお聞きしたいと思います。

長妻国務大臣 これにつきましては、先ほども質問で、自助、共助、公助というお話もございましたけれども、今読んでいただいたものには、新制度では、保険料は自分のため、税は支え合いのためと、役割を明確にしますと書いてあります。

 保険料については、これは共助という、ある意味では比例報酬年金の考え方で、同じ所得であれば同じ保険料負担で同じ受給額ということでございます。そして税金は、これは支え合いのためということで、ある意味では、公助という、受給額が少ない方に対して最低保障ということで上乗せをしていく、その二つの考え方をセットにしている年金制度だ、こういう趣旨で書いてございます。

 そしてもう一点、自営業の御質問がございました。

 これは言うまでもなく、被用者は事業主負担が半分で、雇用者が半額を出すということでございますけれども、パーセンテージを同じにいたしますと、自営業の方は事業主が同じでありますので、倍になるということに機械的に見るとなりますけれども、まず、その払ったお金というのは、将来の御自身の年金の受給額に反映されるということでございます。それも我々も説明をしなきゃいけない。

 と同時に、先ほど来申し上げておりますけれども、自営業ということを具体的に定義するときに、どこまでの範囲を自営業と見るのか、諸外国ではいろいろな工夫をしている国もあるやに聞いておりますけれども、それと、本当にやはり倍になって負担がふえるということについてどう考えればいいのか、何らかの措置が必要なのではないか、こういうような御指摘もありますので、それも含めて、新制度の制度設計の中で検討していくということになっております。

坂口(力)委員 現在の年金制度は、所得再配分機能が働いておりまして、そして、多くの保険料を出していただく方につきましてはより厳し目に、そして、少ない保険料の皆さん方にはそれがよりよい方向に配分をされるということになっているわけでありますが、保険料は自分のためというふうに言い切ってしまうと、それは何となく、積立方式、出した人の分にしか使いませんよというふうに聞こえるわけであります。

 もしそうなってしまったとしたら、それは所得の非常に高い人は多額の年金になりますけれども、所得の少ない人は少ない年金にしかならない。非常に少ない人に対しましては、皆さん方の方は、税の負担で最低保障年金を上乗せします、こういうことになりますけれども、この最低保障年金をもらえない人、しかし所得はそんなに多くない人というのが必ず生まれてくるわけでありまして、その辺のところは非常に厳しい年金になってしまうと私は思います。

 ですから、これからこの年金制度の設計をしていただくんだというふうに思いますけれども、その年金制度の設計は、ゼロベースからもう一遍おやりになるのか、それとも、皆さん方はもうこのマニフェストにお示しになったわけで、そのマニフェストに示されていること、あるいはまた三年前の参議院選挙のときにお示しになったこと、そうしたことは変えない上でどうするかをお考えになるということですか。その辺もお伺いしたい。

 それから、先ほど大臣からお答えをいただきましたけれども、再配分機能があるのかないのかということは、積立方式なのかどうかということはちょっとわかりにくかったんですけれども、もう一度ちょっと触れてくれませんか。

長妻国務大臣 積立方式かどうかということでありますけれども、これについては積立方式ではございませんで、基本的には新しい年金制度も賦課方式という考え方でございます。

 ある意味では、先ほど来言っていただいた、保険料は自分のためというのは、みなし積立方式とも言えるのかもしれません。賦課方式でございますけれども、きちっと、所得が同じであれば保険料も同じでありますし、受給額も同じということであります。

 それと、今お尋ねになりました、骨格というかマニフェストで示した中身をどう新しい制度に反映させるのかというお尋ねでございますけれども、我々、マニフェストでは骨格をお示ししておりまして、詳細で決めなければならないことというのはまだまだたくさんございます。その意味で、そのマニフェストでお示しした骨格は変えずに詳細を決めていく、こういう考え方であります。

    〔中根委員長代理退席、委員長着席〕

坂口(力)委員 年金の保険料につきまして、所得比例年金の保険料は一五%というふうに、これも山井政務官が御発言になっております。これは、一応一五%ということで決まりなのでしょうか。

 しかも、この一五%というのは収入の一五%になっているんですね。収入の一五%ということになりますと、例えば自営業の皆さん方にとりましては大変な額になるわけで、しかも全部自分で払わなきゃいけないわけですから、半分出してもらえないわけで、丸々自分で出さなきゃならない。

 しかも、収入の一五%ということになると大変ですね。例えば、月百万円収入のある方がいるとします。しかし、その中から払わなきゃならないものは、材料費を払わなきゃならない、あるいはまた、自分のところに雇っている人、お手伝いさんに少し何かを出さなきゃならないというようなことになってまいりますと、これは実際問題として、収入は百万ありましても、実際はそんなにないわけであります。しかし、もとの収入から一五%出すということになりますと、百万だったら十五万ずつ出していかなきゃならないということになる。

 これは自営業やあるいは農林漁業の皆さん方にとっては大変苦しいことになると思うんですが、しかし、一五%もらうんだというふうに国民新党への御説明のときには言い切っておみえになりますから、それはそういうふうに理解してよろしいんでしょうか。

山井大臣政務官 坂口委員、御質問ありがとうございます。

 結論から申し上げますと、この保険料のパーセンテージというのは決まっておりません。これから抜本改革の中で検討して決めさせていただきます。

 私が国民新党の議論の中で申し上げたのは、この保険料というのは一定のパーセンテージに決めさせていただきますという趣旨でありまして、それで、現状であれば、例えば厚生年金は、たしか昨年でしたら一五・三%であったと思いますが、今の時点で固定するとすれば一五%程度になりますというような趣旨で話させていただきました。

坂口(力)委員 よくわかりませんね。今は一五%、それはそうかもしれないけれども、年金制度でありますから、だんだんと変わっていくこともあるし、それから、保険料としてはもう固定するということもあるんだというふうに思いますが。

 それは、そうすると、先ほど申しましたように、自営業や農林漁業やそういう皆さん方は、その一五%全部出すということになるんですね。大臣の方は、少しそれは、その辺のところも検討していくんだというふうにおっしゃったわけですけれども。

 これはしかし、出してもらう相手がないわけですから、一元化するというのはそこが一番難しいわけですね。雇われている人ばかり集めて一元化するんだったら、それはいいと思うんですよ。国家公務員や地方公務員の人たちも一元化して一つにするというのは、それはできるんですよ。半分出してくれるのは一緒ですから。だけれども、半分出してもらうところのない人たちを一元化するというのは、この一元化にとって一番厳しいところだと私は思うんです。一元化しにくいところだというふうに思うんですね。

 だから、ドイツなんかに行きまして聞きますと、なぜ日本はそんなに一元化一元化と言うのかね、職業によっていろいろ違うというのが、それが公平というものだ、なぜ日本人は一元化したら公平だと思っているんですかねと。これも、経営者の代表ではなくて、労働者の代表をしておみえになる方がそうおっしゃって、僕は目をぱちくりしたんですけれども、そうですか、それで文句は出ませんかと言ったら、出ませんと。

 ここは公務員の方もたくさんおみえになりますが、公務員の方は、日本の恩給制度みたいなもの、いわゆる保険料はもらわない、そして年金は出します、それが公平というものだと。公務員の皆さんは、ふだんほかのことで収入を得ることはできないということになっています、国家国民のために一生懸命やっていただく皆さんにはそれぐらいのことを差し上げて当然です、だれ一人それを文句言う者はおりません、そう言われて、さて日本でそう言ったらどうなるかな、こう思いながら私は帰ったんです。そんなことがございました。

 このところは非常に難しい、一元化にとりまして一番難しいところだと率直に思います。もう一度、山井政務官から心を込めた答弁をお願いします。そう簡単に、いや、そんなの簡単ですよというような顔をせずに、もう少し答弁をいただきたい。

山井大臣政務官 坂口委員にお答え申し上げます。

 私たちが今考えております年金の抜本改革の中の最大の課題の一つが、坂口委員御指摘のとおりの、自営業者と一般のサラリーマンの方々の年金制度の一元化をどうしていくのか。つまり、十数%あるいは二十数%、数%かもしれません、それは全くパーセンテージは決まっておりませんが、その中で労使折半というものが自営業者の場合にはないわけですから、ここをどうするのか。

 さらに、先ほど長妻大臣も答弁されましたように、自営業者といったときに、小さな小さな会社の場合、その方は自営業になるのか、それとも事業主と労働者という形に振り分けるのか、そこの定義の問題もございますし、今、税と社会保障の番号制度の議論もしておりますし、やはり所得の捕捉を正確にやることがこの自営業者の議論の前提になってくると思っております。

 ですから、三年前に、当時野党であったときに年金の改革の議論をしまして、私も提出者の一人として答弁をさせていただいたのを覚えていますが、その当時から、この自営業者をどうするのかというのは引き続き議論をしているところであります。

 坂口委員御指摘のように、今回与党として案をまとめて、しかし、この年金改革というのは超党派で、そして政権交代が起こっても崩れない形にせねばなりませんから、やはり最終的には、当然野党の方々、そして国民の皆様方に、どういう形がサラリーマンや公務員の方や自営業者の方々で一番公平性を保つことができるのか、また、必要であれば経過措置はどうすればいいのか、そういうことを議論していく必要があると思います。

 ただ、ぜひ一つ御理解いただきたいのは、理論として、これからは転職の時代にどうしてもなってまいりますから、公務員であった人がサラリーマンになったら年金制度がかわる、サラリーマンの人が自営業者になったら年金制度がかわる、そういうふうにどんどんどんどんかわっていくうちに年金が消えてしまうとか、そういう弊害もあったわけであります。

 今、若い新入社員の方々がなぜ正社員になれないのかというと、正社員だったら厚生年金の保険料を払わないとだめだ、パートにしておいたら国民年金になって事業主負担がない、こういう年金制度のアンバランスというのが、若い世代の方々が正社員になれない大きな壁にもなっているわけでありまして、こういうものを何とか変えていきたいというふうに考えております。

坂口(力)委員 時間がありませんから、もう一つお聞きしたいことがあるんですが、これは三号被保険者の皆さんのお話であります。

 御主人が働いておみえになって、奥様がおうちにおみえになる。現在は三号被保険者ということになっていて、そして、この奥様の方の保険料は払わなくても基礎年金はつくことになっております。しかし、この一元化されました法律は、恐らくこれは個人単位になるんだろうと思います。そういたしますと、個人単位になってきますと、この三号被保険者でありました奥様の方の保険料も出していただかなきゃならないということになるんでしょうか。

 これは、奥様がおうちで働かずにおみえになる御家庭にとりましては、かなり厳しい話になってくるわけであります。しかし、制度がそういうことになりましたら、そうせざるを得ないということでありますが、その辺のところはどうですか。

 時間が大分なくなってきましたので、簡潔にひとつお願いいたします。

長妻国務大臣 今、専業主婦のお尋ねだと思います。新しい年金制度の中で、その点についても非常に大きな論点だと思います。

 例えば、一つの考え方としては、御主人のお給料の半分が奥様の所得だとみなして、それについて保険料をいただいていくという考え方もあろうかと思いますし、あるいは、奥様はゼロ保険料ということで、それを、歳入庁というのが新しい年金制度がスタートするまでにできますけれども、歳入庁というところに届け出て、ゼロ保険料の届け出をするということで、その期間は最低保障年金が受給できる期間としてカウントされる。

 いろいろなまだ詰める点がございますので、いろいろな論点があると思いますので、それも制度設計の中で詰めていきたいと思います。

坂口(力)委員 ゼロ保険料というのが認められるんだったら、ほかもゼロ保険料で認めてもらうところがたくさんあると僕は思うんですね。それこそ、自営業や農林漁業の皆さん方は、半分はゼロ保険料にしておいて、半分出してもらったらいいということになったら、これは同じ条件になるわけですけれども、なかなかそうもいかないんだろうというふうに私は思っています。

 おうちにおみえになる奥さん方だけゼロ保険料ということになりますと、夫婦ともに働いておみえになります御家庭からは、それは何事かね、それだったら私のところも少しまけてくださいよというような話になってくる。これは、一方立てれば一方立たずで、なかなかそう簡単な話でもない。

 しかし、きょうはいろいろお聞きをいたしまして、皆さんのお考えになっている年金制度がまだ固まっていないということだけは、はっきりしました。しかも、一番重要なところにつきましては何ら固まっていない、これからの問題である。固まっているのは、一元化と、そして消費税でその一部を賄う。この二つは、消費税を使うということと一元化ということはこれで固まっているけれども、そのほかのところは固まっていないということではないかというふうに思います。

 そうした年金制度をこれからつくっていかれますときに、先日も予算委員会で私が御質問を申し上げて、そして総理からお答えをいただいたわけですが、これは各党にも相談をいたしますと。私の方から、政権がかわったらまた年金制度が変わるというのでは、国民はたまったものではない、スウェーデン方式というのは、とにかく各政党がもうこれで変えないでおこうと一致させるところにスウェーデン方式という名前がついた、だから、これはひとつ国会内でよく議論をする場をつくっていただいて、そしてやってくださいよということを申し上げた。しかし、鳩山総理は、まず私たちで案を出して、それを議論していただくようにします、こういうお話でございました。

 それも一つの方法だと思うんですけれども、がんじがらめの案を出していただいて、そして、さあ、これでどうですか、もう微調整しかできませんと言われるんだったら、これは何のために出してもらったかわからないわけでありますから、固まらない前に御相談をいただくということがないことには、みんなが一致した年金制度というのができないわけですね。

 先日、国民新党の亀井大臣にお聞きしましたら、私は民主党の案に必ずしも賛成していないということをおっしゃいまして、これは同じ政権内でも一致していないんだなということを感じたわけでございますが、その辺のところはよく相談をしながら進めていただきたい、心からこれはお願いをしておきたいと思う次第であります。

 何か御意見をいただくことがありましたらいただいて、そして、なければこれで終わりにしたいと思います。

長妻国務大臣 今、いろいろ御指摘をいただきました。

 私どもとしては、その意味でも、案というのも、いきなり、これが決定版で、少しも変えられないなんという案を突然出すということはもちろんいたしません。

 その意味でも、五月にまずは国民の皆さんとも共有できるような原則というのを出して、その原則の範疇の中で制度設計を進めていくということで、連立政権でございますので、連立政権の中でも意思統一を図る、そして国会でも具体的な案が御提示できれば議論をいただく、こういうような手順でやっていきたいというふうに考えております。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 子供の無保険について、高校生までその対策を広めることが本法案に盛り込まれました。もちろん、最初から十八歳未満まではすぐやってほしいと要求をしてきたところですので、歓迎したいと思います。

 ただ、短期被保険者証を市役所などが窓口にとめ置いて、未達が三・二%に上りました。そのために、政府は、資料の一にあるように、昨年末に通達を出して趣旨の徹底を求めました。正直、市町村の事務というものは本当に煩雑で大変であろうと思います。

 もう後期高齢者には資格証明書の発行がゼロになっております。国保法第九条の「被保険者証の返還を求めるものとする。」というこの規定そのものを削除すべきではないでしょうか。

山井大臣政務官 高橋委員、御質問ありがとうございます。

 国民皆保険の日本でありますから、だれもが必要な医療を早期に受けられる、これはまさに国民の権利であらねばならないと思っております。

 そして、その中で、今の資格証明書の件でありますが、ただ、前提としまして、国民健康保険は、被保険者全体の相互扶助で成り立っており、財源となる保険料の収納確保は、制度の安定的な運営や被保険者間の負担の公平を図る上で極めて重要でありまして、保険料を払わなくても医療が受けられるということが前面に出てしまうと、また未納者がふえてしまうというようなモラルハザードが起こっても非常に問題であると思っております。

 しかし、一方では、本当に払うことができない、お金があって払わないはだめなわけですけれども、お金がなくて本当に払えないという方も当然いるわけであります。国民健康保険法上、一年以上保険料を滞納した者が市町村の求めに応じ被保険者証を返還した場合、資格証明書の交付を受けることができると規定されておりますが、この仕組みは、市町村が滞納者との接触の機会を確保し、納付相談を行うことにより、保険料の減免や分割納付も含め、個々の事情に応じたきめ細かな対応を行うためのものであり、必要であると考えております。

 しかし、資格証明書の運用に当たっては、機械的に運用を行うことなく、個々の世帯について、保険料を納付できない特別の事情を適切に把握するよう、市町村を指導してまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 まず最初に、相互扶助で収納を確保しなければならないというお話があったと思うんです。それは当然なわけです。私は、だれに対しても、払わなくても受けられるようにしろと言っているのではございません。この問題は、小泉総理のときから、毎度毎度、総理がかわるたびに私は資格書の問題は質問をしてまいりました。やはり、今最後におっしゃったように、機械的に運用するのではないのだ、事情があって払えない人まで取り上げるのではないのだということが、繰り返し述べられてきたのではなかったかと思うんです。

 そこで、資料の二を見ていただきたいんですけれども、市町村国保の保険料収納率向上に向けた取り組みということでデータがございます。いっぱいあるので、囲んだところを見ていただきたいんですけれども、滞納者に対しては、既に差し押さえという滞納処分がやられております。二十年度は十六万四千二百六十八世帯、一年間で四万三千七百四十三世帯も増加しています。また、処分額も五百六十四億円。百十億円、一年間でふえているわけです。つまり、収納を確保しているわけですね。

 この中身については、私は大いに問題があると思います。事情がある人も含めて取り立てされている、あるいは差し押さえされているという問題がございますが、しかし、いずれにしても、本当に悪質な人、つまり払えるのに払わない人には滞納処分という方法で回収できる仕組みがあるわけです。ですから、医療の現場で命につながるような保険の取り上げということはやめればいいのではありませんか。

山井大臣政務官 高橋委員にお答え申し上げます。

 これは、国民健康保険の保険者は市町村であります。いかに公平に、そして適切に保険料を払ってもらえるかということに関して、今、多くの市町村が本当に頭を悩ませているところでありますから、その意味では、もちろん滞納する人に対しての差し押さえというのも一つの手段でありますが、それとともに、短期被保険者証の発行とか資格証明書の発行、それはやはり選択肢の一つとして、市町村の判断としてあり得るのではないかと考えております。

高橋(千)委員 済みません、質問をちょっと通告外に、今おっしゃったことで一つ伺いますが、市町村の判断だと考えていると。だったら、市町村が一切資格書を出しませんということに対して、一切国は口出しをしませんと。よろしいですか。

山井大臣政務官 高橋委員にお答え申し上げます。

 最初の質問で申し上げましたように、大前提として、この保険制度というのは相互扶助で成り立っているわけでありますので、原則としては、やはり保険料は払っていただく、払える方には払っていただくということが原則だと考えております。

高橋(千)委員 答えになっていないじゃないですか。先ほど市町村の判断だとおっしゃったんですよ。だから、市町村が出さないと言ったら、口出さないでいいですね。

山井大臣政務官 これは、まさに保険者は市町村でありますけれども、国としては、やはり国保の財政の問題も非常に重要であります。ですから、国としては、やはり払える方には払っていただく、そして払える能力があるのに払わない方々に関してはきっちりと徴収をしていただきたい、そういう思いを持っております。

高橋(千)委員 ですから、きっちりと徴収は、先ほどお話しした差し押さえなどという形でかなり厳しくやっているんですよ。口出さないではなくて、皆さん、本当に口出しているわけですよね。だから、市町村は追い込まれて、朝となく夜となく戸別訪問をして収納を督促しているという苦労をしているんじゃないですか。それを、一方では地域主権といいながら、一方では市町村に対して厳しく指導している、そういう実態なわけです。

 実は、子供の無保険の問題が起こったときに、全国の市町村の資格書の発行状態が一目でわかる資料が出てまいりましたよね。あのときに、私はちょっと嫌な予感がいたしました。つまり、資格書を出していない自治体を一目で見られるということは、ああ、ここに指導をかければいいんだなということになってしまうわけです。そのときにおっしゃった厚労省の担当職員の言葉は、法令違反ですからと、こういうことになったわけですよ。

 資格書を出さないのは法令違反なんだと、そういう形でぎりぎりと詰めてきたというのがこれまでのやり方なんですよ。だから、その中に、必要じゃない、本当は事情のある人まで取り立てられている、医療が奪われているということがあるのだということを、重ねて指摘をしなければなりません。

 ちょっと続けたいので次に行きますけれども、現在、三十一万世帯に資格書が出され、百二十万世帯に短期保険証が出されております。そもそも、短期証というのは法律事項ではありません。

 今回、子供は半年の短期証といたしました。そうすると、大人は今のまま、つまり、市町村の判断によって、三カ月とか一カ月期限ということのままだということですね。一言で、確認。

山井大臣政務官 そのとおりでございます。

高橋(千)委員 そういうことなんですね。

 この短期証のあり方、市町村にこれはまさに任せられておりますので、一月とか三カ月とかと期限を切っているわけです。政府の答弁は、これまで、先ほど山井政務官がおっしゃったように、納付相談を小まめにやるためにやるんだということを言ってきた。私は、実態がどうかということは、やはりちゃんと見る必要があると思うんです。

 全日本民医連の国保死亡事例、これまで四回調査され、発表されました。昨年は三十七名が、保険証がなかったり、あるいはあっても窓口負担が重くて、病状を悪化させ死亡に至りました。報道でも紹介されましたし、国会でも我が党議員が取り上げているところでありますから御存じだと思うんですが、やはりこれらの事例がどういう経過で死亡に至ったか、その背景についてよく学ぶべきだと思うんです。

 例えば、宮崎の五十歳の女性、無職で夫と息子がいました。急性大動脈解離で人工血管置きかえ術を行ったときに、高額の医療費が払えず借金をしたのがきっかけなんですね。だから、きっかけも医療だと。生活に追われて保険料が払えず、お金の工面ができたときだけ短期証を交付された。三カ月の期限ですので、三カ月に一回だけ受診をするということを繰り返して、最後は、とうとう保険証がないまま受診をされたそうです。ところが、滞納額というのはわずか三万円だったそうです。その三万円の滞納が払えないために十割負担の最後の治療費は七万六千三百四十九円、律儀に夫はこれを分割して払ったということであります。

 資料の一のアンダーライン、今もうしゃべってしまったわけですけれども、市町村と滞納世帯との接触の機会をふやすことと言っているわけです。だけれども、実際には、その期限が短いですので、本当に困ったとき、病院にどうしても行かなきゃいけないときに、幾ばくかの保険料を払って保険証をもらうんですね。言ってみれば、回数券を買うような状態になって、お金の切れ目が命の切れ目になっている、これが実態だと思うんです。今の事例はその典型なんですね。

 山梨の五十一歳の女性は、健保本人だったんですけれども、退職されて、パート。事業主が保険加入してくれないために、夫の国保に加入しました。これは、今度、一月の期限でありました短期証が交付されていたために、ぎりぎりのところで受診をされたら、せき、血たん、浮腫などがあって、もうかなり厳しい状況で、一週間後くらいで検査の結果が出ますよと言っていたわけですが、そうしているうちに救急車で搬送されて、八日目に死亡していらっしゃいます。高額療養限度額認定証が、短期証であるために、滞納があるからと交付はされませんでした。

 保険証がないために受診を我慢し、短期証の期限が切れる前に亡くなっている、こういう事例が本当に多いわけです。そうすると、短期証というのも、切れちゃうとないのと同じですからね。まさにこれは百二十万世帯、無保険の予備軍のような状態になっているわけです。この現実をどのように受けとめますか。

山井大臣政務官 高橋委員にお答え申し上げます。

 保険証が切れて、本当に必要な医療が受けられなくてお亡くなりになる方が出ることは、本当にこれは大きな問題だと私も感じております。

 そして、今、短期被保険者証の期間が短過ぎるのは問題ではないかということでありますが、国民健康保険のこの短期被保険者証は、通常の被保険者証と比べて有効期間を短くすることで、今高橋委員おっしゃいましたように、被保険者、滞納者との接触の機会をふやし、保険料の納付をお願いすることを目的としておりまして、やはりその有効期間というのは、原則として市町村の判断によるものであると考えております。

高橋(千)委員 既にこの間、子供の無保険そして後期高齢者の無保険が解決をされて、真ん中の大人のことを今お話ししているわけですが、その大人が今、この間ずっと議論されていたように、派遣切りですとか、深刻な失業情勢の中でまさに無保険になっている。そうなったときに、もうこの仕組みはなくてもいいのではないかということを、やはり重ねて、踏み込んでしていいと思うんですね。少なくとも、短期保険証、一月で切るなんということはやめるべきですよ。

 今、接触の機会をふやすというのは違うんだという話をるるしてきましたけれども、例えば、三十代の男性、この方は派遣切りで無職です。収入がないんだけれども、自分には納税義務があるんだ、まさにおっしゃるとおりですよ、納税の相談に行ったんですね。分割払いとか何かできるのかと思って、本当に律儀に行かれました。そうしたら、何を言われたかというと、確定申告の還付であなた一万二千百円入っていますね、お金が入っているならこちらでいただきますね、預金通帳凍結、差し押さえできますからと言われたわけですよ。

 これはおかしいじゃないですか。差し引く前に、この方がこの一万二千円なくなったら、当座の暮らしをどうするか、当座の暮らしが支えられるお金が残っているのかを確かめるのが先ではありませんか。

 滞納処分に当たっては、国税も地方税も基本は同じなんです。生計費はちゃんと維持した上で、それで、例えば売り掛け債権のように商売が回っていかなくなるですとか、そういうものについては差し押さえしないということがちゃんとあるわけですよね。こういうことをちゃんと徹底しなければなりません。接触の機会をふやせといって、まじめに行った人がこういう目に遭うのではやっていられないわけですよ。いかがですか。

山井大臣政務官 高橋委員御指摘のように、今回、子供の無保険の人をなくすということを高校生まで拡大したわけでありますが、やはり本来は大人の無保険者もいてはならないというふうに私も思っております。

 ですから、これは一歩前進にすぎませんが、ことしの四月からは、昨年に会社が倒産などして職を失った失業者が失業前に負担していた保険料と比較して過重とならないよう、国民健康保険の保険料を軽減する制度を創設したところでありまして、ハローワークや市町村を通じて制度の周知を図っておるところであります。

 今まででしたら、前年度の収入に応じて国保の保険料も算定されるわけで、それが払えないと一気に無保険になる方がふえていたわけでありまして、これも本当に画期的な大きな救済策であるとは思っております。

 しかし、今、高橋委員が御指摘になりましたように、市町村は、やはり資格証明書や短期保険証の発行を機械的にやるべきではないというふうに考えております。

高橋(千)委員 今お話しされた失業者の問題は、これは雇用保険を給付できる人、しかも非自発的な方だけですので、一歩前進ではありますけれども、カバーできるものではないということをしっかり認めていただきたいと思います。

 資料の三に、先ほど紹介した民医連の調査の数字を載せておきましたけれども、一番上のところを見ていただくとわかるように、短期証が六人、資格書が四人、無保険が二十七人なんです。短期証も資格書も持っていない方が七割以上なんだと。

 ですから、無保険という方が、今、保険証を取り上げられている世帯は三十一万世帯ですけれども、その外にどれほどいるのかということの実態をしっかり見る必要がある、本当にそこに目を向けた施策をする必要があるということを重ねて指摘しておきたいと思います。ここはぜひ前に進むように、この後も続けて要望いたしますので、お願いをしたいと思います。

 最後に、大臣に一言伺いたいんですけれども、高齢者の窓口負担の問題であります。

 高齢者医療制度改革会議の中では、水曜日の委員会で紹介した、六十五歳以上を全部国保に入れる案、こうしたものなどが出されたわけですけれども、同じ日には、六十五歳以上の高齢者の窓口負担を引き下げた場合の影響額などの試算が出されております。これは宮武委員からでした。また、近藤委員からは、高齢者の受診抑制が起きているんだ、自己負担は一割未満にするべきだとの提言もされました。窓口負担がやはり大きいということがわかっているからこそ、自公政権のもとでも、法案成立後も二割、三割へ移さず経過措置をとっていたと思うんですね。

 この窓口負担の軽減は、やはり改革会議の中でも大体同じように、とにかく軽減しようというふうに言っているわけですから、政府として、ぜひ思い切ってやるんだということを言っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

長妻国務大臣 これは、だれがどこで医療費を負担するかというのは、税金かあるいは保険料か窓口負担か、簡単に言えば三つしかないわけでありまして、それをどう組み合わせるかということでございます。今の現状としては、基本的に、医療費はふえ、それぞれの今申し上げた負担はふえる傾向にある。ただ、それをそのままふやしてはならないということで、いろいろな手だてを使って抑制をしているという段階であります。

 今おっしゃられた点については、改革会議の中でも議論がある点ではありますけれども、今よりも水準を下げていくというのは、今三つ申し上げたカテゴリーそれぞれについて、大変難しい課題であるというふうに考えております。

高橋(千)委員 ちょっとびっくりしました。自民党政権のときも下げることは一定検討されていたのではないかなと思います。

 改革会議の中では、岩見委員からも、老人医療が議論された際の目標は無料化であった、現在は状況が変わっているが、やはり七十五歳で線を引くというのであれば、最終的には無料化するといった理想を掲げるべきという発言もございます。私は、こういう立場に立つべきだと思うんですね。

 この間、何で後期高齢者が悪いのかとか、メリットは、デメリットは、そういうことがさんざん言われてまいりました。でも、何度も議論してきたとおり、やはり年齢を重ねると後期高齢者と呼ばれ、別枠の制度に入れられ、肩身の狭い思いをすることと同時に、若い人の保険料が上がれば、これは後期高齢者への支援金がふえたからだとおのずと対立構造が持ち込まれたこと、ここにこそ核心があったと思うんです。

 対立ではなく、だれでも年をとり、少しずつ病気もふえるんだから、それを全体で支えよう、先ほど紹介した最終的には無料化、こういう立場に立つべきではないかと思います。

 今、大学生の九割近くが、自分の老後は自分で面倒を見るしかない、そういうふうに考えているという調査がございます。これは、現役世代の負担が重過ぎるということを盛んに言われますけれども、そういう今の高齢者をねらい撃ちしたような施策を見ていて、では、自分たちのときにはもうだめなんだということで、社会保険制度からそもそも若い人たちが抜けていく。

 これでは本当の意味で制度が成り立たないことになるわけですから、むしろ、お年寄りが本当に大切にされて、私たちも将来ちゃんと大切にされるんだから支えていこうという立場に立てるような制度設計をするべきではないか、このことを問題提起して、次に譲りたいと思います。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きのうの朝刊ですけれども、ちょうど健保連の集計がまとまったようでございまして、健保組合の二〇一〇年度の赤字額が過去最大の六千六百五億円となる見通しであるということが、健保組合予算早期集計で明らかになった。経常収支が赤字になる組合は千二百九十五ということで、八八・六%、九割赤字ですね。しかも、赤字が六千六百五億円という数字は、今、この法案のことをまだ算定に入れていないということでありますので、この国保法の改正案が可決をされるということになれば、さらに赤字が三百三十億円上積みされるということになるわけです。

 先日の質疑でも、肩がわりだということで、協会けんぽに対する財政的な支援が行われるわけですけれども、いわゆる肩がわりを求められている健保組合もこういう状況である、本当に健康保険制度全体が財政的に持続可能なものでなくなりつつあるのではないかというお話をさせていただきました。

 この点については答弁は求めませんけれども、こういう状況の中で、財政支援を受ける協会けんぽが一体どういう状態なのかということをお尋ね申し上げたいというふうに思います。

 この協会けんぽ、社保庁の組織から、全国健康保険協会ということで二〇〇八年十月一日に設立をされ、スタートしたわけでありますけれども、こうした形で組織が新たにスタートしたその目的というのを、言わずもがなのことかもしれませんが、改めてどなたかにお尋ねを申し上げたいと思います。

長妻国務大臣 この協会けんぽ、以前は政府管掌健康保険ということでありましたけれども、社会保険庁の中にあった組織でございますが、社会保険庁解体とともに、いろいろな議論がございまして、年金は今の日本年金機構、そして健保については協会けんぽということで、効率性を高めていこうという趣旨で分離独立をしたということでございます。

柿澤委員 効率性を高める上でということでございます。

 社保庁のあり方ということについては、長妻大臣御自身が民主党の代議士として大変、この国会でさまざまな問題提起を行われ、それがこのような形で年金機構及び協会けんぽというか、健保協会のスタートにつながったというふうに理解をしています。さまざまな形で無駄遣いが行われ、そして非効率な業務、またあきれたような実態が次々と明らかになってきた、これがやはり政管健保から協会けんぽへのモデルチェンジということにつながっているわけです。

 ということで、では、全国健康保険協会というのが今どうなっているかということなんですけれども、二〇〇八年十月一日、全国健康保険協会設立。この前後の業務経費、また一般管理費等を見てみますと、二〇〇七年度までは一千億円強で推移をしてまいりまして、これは余り変わりがなかった。さらに、二〇〇八年度はスタートの年次でありますので、看板のかけかえコストなども加わって、これは大幅増の一千四百億円になってしまいました。二〇〇九年は、業務経費と一般管理費の数字を見ますと、一千二百二十七億ということになっております。

 社保庁時代と比べても、業務経費また一般管理費は、全国健康保険協会になってからむしろふえているわけですけれども、この点はどのような理由によるものか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

長妻国務大臣 済みません、突然のお尋ねでございましたので。

 この予算、業務経費でございますが、二十一年度が九百四十二億円、そして二十二年度予算が一千二十三億円ということで、八十一億円ふえているということであります。

 我々としては、業務経費のみならず管理コストの削減ということで、職員の数も削減をし、あるいは百万円以上のすべての調達案件について一般競争入札を原則化するなどなど、経費の削減に努めているところでございますけれども、二十二年度予算においては、必要経費ということで八十一億円増加をさせていただいているところであります。

柿澤委員 八十一億円の増加というのは、これは割合大きな数字なんじゃないかと思うんですね。

 内訳を見ますと、例えば人件費が三十五億ほどふえています。また、注目すべきというか、業務改革・サービス向上経費ということで二十四億円ほどふえています。

 業務改革を行う、サービス向上の経費をそれだけ、二十四億上積みして、例えば電話対応の円滑化経費だということで十六億とか計上しているんですけれども、これが将来的な業務の効率化、経費の削減につながるということであればいいんですけれども、しかし、単純にこの協会けんぽの業務経費、そして一般管理費、こうしたものがふえたままの水準でいってしまうとすれば、これは先ほど、長妻大臣が冒頭で御答弁をされた業務の効率化に何にもつながっていないということになってしまうのではないかと思います。

 さらに言えば、冒頭私が申し上げたように、この協会けんぽは、財政的に収支がもうどうにもならないということで健保組合から財政的な肩がわりをしてもらう、こういう立場の団体でありますので、まさに通常考える以上の徹底的な業務の効率化が求められることは当然だと思います。そうした意味で、そこが手ぬるいというふうに思われることのないように、これからさらなる御努力をお願い申し上げたいと思います。

 さらに、この協会けんぽですけれども、やはり財政的に非常に厳しいというのはもちろん理解をするところでありますけれども、しかし、いわゆる未適用事業所、協会けんぽに本来加入すべきであるにもかかわらず加入をしていない事業所がかなり多く存在をするというふうに言われております。

 これは日本総研の西沢研究員の論文をちょっと引っ張ってきましたけれども、二〇〇五年度では雇用者が五千三百九十三万人いるのに対し、組合、共済、協会けんぽの三雇用者健保加入者は六八・一%の三千六百七十四万人にすぎない。これは一九七〇年代には八〇%を超えていた数字でありまして、ある意味では、これまでの間、健康保険制度への加入適用事業所というのがどんどん減ってきたという状況であるわけです。

 この未適用事業所の状況、そして、本来これは厚生年金と同じように適用してもらう、加入をしてもらうということを働きかける努力が必要だと思いますが、そうしたことをどのように進めておられるのか、ぜひお伺いをしたいと思います。

長妻国務大臣 未適用事業所の適用対策は、御指摘のとおり重要でございます。

 その主体となる協会けんぽでありますが、先ほど業務経費がふえたと申し上げましたのは、これは主に、健診率が上がって、健康診断の費用あるいは健診を受ける職員の対象者をふやしたということも要因がございます。ただ、一般管理費については、二十一年度予算二百八十五億、二十二年度予算二百七十四億ということで、健康保険勘定では十二億円削減をしているということであります。

 そして、今の未適用事業所でございますけれども、平成二十年度末で約十万事業所、正確には十万三千二百四十七あるということでこれを把握いたしたわけでありますが、さらに適用が漏れている事業所があると想定をされますので、これについては、雇用保険の適用事業所データや民間調査会社の新規設立法人情報を活用して重点加入指導を実施する、あるいは、厚生年金の適用と同じでありますので、日本年金機構の担当する人数をふやして重点的に対策を進めるということであります。

 最終的には、歳入庁ということを我々申し上げておりまして、将来は税情報と一体となって、適用漏れがないようにしていきたいというふうに考えております。

柿澤委員 今御答弁をいただいたとおり、平成二十年度末の時点で、未適用事業所数が十万三千二百四十七事業所あるということが厚労省の方から発表をされております。

 しかし一方で、これは二〇〇六年の九月ですけれども、総務省の行政評価では、厚生年金ですけれども、未適用事業所が六十三万から七十万ぐらいあって、本来加入しなければならない事業所数の三割に当たるということが指摘をされています。これは大変な開きがある数字であります。

 いずれにしても、こうした状況の中で適用推進ということを皆さんもやっておられるわけですけれども、はっきり言えば、職権適用をしている事業所また人数ベースでいっても、なかなか遅々として進まないというのが今の現状ではないかというふうに思います。

 こうした形で、本来加入をして、そして保険料も納めていただくべきところが、結局、一説には三割も取り逃してしまっている。こうした状況の中で、財政的なベースがそれだけ狭まるというか小さくなるわけですから、保険の財政にそれだけの影響を及ぼして収支が合わなくなる。

 そして、ここからが大事なんですけれども、こうしたことが原因になって協会けんぽの保険料率を上げなければいけない状況になるとすれば、これは、今度は租税回避というか、ますますこれは、保険料の負担に耐えかねて加入できない、こういう事業所がどんどんふえていく。

 先ほど高橋委員からもお話がありましたけれども、この協会けんぽの枠組みからこぼれ落ちていく事業所が保険料率の上昇とともにますますふえていきかねない、そういう懸念があるというふうに思います。これがまさに、私が申し上げている、この健康保険制度の持続可能性という問題だと思っております。

 そういう意味で、まさに危機的な状況なんだと思うんです。三年後に、高齢者の医療制度を皮切りにした包括的な医療保険制度の新しい姿が立ちあらわれるのかもしれませんけれども、今のようなびほう策が許されるのは、もはや恐らく今回限りだというふうに私は思いますので、そうした意味合いで、ぜひお取り組みを強化していただきたいというふうに思っております。

 その点で考えると、今まで長妻大臣からいろいろと御答弁をいただいてまいりましたけれども、こうした面について、今まで以上に強力に進めていく。例えば、先ほど申し上げたような健康保険協会の業務の効率化、そして適用事業所の拡大、こうしたことに向けた努力、まだまだ姿勢としてどうなのかなというふうに感じられる部分もございました。

 ぜひ、これからの取り組みに御期待を申し上げて、私からの質問を終わりとさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次回は、来る十三日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四分散会


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