衆議院

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第7号 平成22年11月26日(金曜日)

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平成二十二年十一月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 牧  義夫君

   理事 青木  愛君 理事 石毛えい子君

   理事 中根 康浩君 理事 藤田 一枝君

   理事 柚木 道義君 理事 加藤 勝信君

   理事 田村 憲久君 理事 古屋 範子君

      石森 久嗣君    打越あかし君

      江端 貴子君    大西 健介君

      川島智太郎君    川村秀三郎君

      黒田  雄君    小林 正枝君

      小宮山洋子君    郡  和子君

      斉藤  進君    田中美絵子君

      玉木 朝子君    中後  淳君

      道休誠一郎君    永江 孝子君

      長尾  敬君    仁木 博文君

      初鹿 明博君    樋口 俊一君

      平山 泰朗君    福田衣里子君

      藤村  修君    細野 豪志君

      水野 智彦君    宮崎 岳志君

      山口 和之君    山崎 摩耶君

      湯原 俊二君    吉田 統彦君

      あべ 俊子君    鴨下 一郎君

      菅原 一秀君    棚橋 泰文君

      谷畑  孝君    長勢 甚遠君

      西村 康稔君    松浪 健太君

      森  英介君    坂口  力君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   厚生労働副大臣      藤村  修君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   参考人

   (肝炎対策推進協議会委員)            天野 聰子君

   参考人

   (小児難病センター医師) 香坂 隆夫君

   参考人

   (全国B型肝炎訴訟弁護団・全国連絡会代表)

   (弁護士)        佐藤 哲之君

   参考人

   (東京慈恵会医科大学客員教授)

   (中央労災医員)     戸田剛太郎君

   参考人

   (独立行政法人国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター長)     溝上 雅史君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十六日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     玉木 朝子君

  岡本 充功君     道休誠一郎君

  田中美絵子君     川村秀三郎君

  初鹿 明博君     中後  淳君

  三宅 雪子君     打越あかし君

  松本  純君     森  英介君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     永江 孝子君

  川村秀三郎君     田中美絵子君

  玉木 朝子君     江端 貴子君

  中後  淳君     初鹿 明博君

  道休誠一郎君     小林 正枝君

  森  英介君     松本  純君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 正枝君     岡本 充功君

  永江 孝子君     川島智太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  川島智太郎君     湯原 俊二君

同日

 辞任         補欠選任

  湯原 俊二君     三宅 雪子君

    ―――――――――――――

十一月二十六日

 医療費の窓口負担軽減と医療保険制度への国庫負担の増額を求めることに関する請願(武正公一君紹介)(第三〇〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三一四号)

 現下の厳しい雇用・失業情勢を踏まえた労働行政体制の拡充・強化を目指すことに関する請願(長尾敬君紹介)(第三〇八号)

 同(稲見哲男君紹介)(第三二一号)

 同(大西健介君紹介)(第三二二号)

 同(重野安正君紹介)(第三二三号)

 同(中島隆利君紹介)(第三二四号)

 同(福田衣里子君紹介)(第三二五号)

 同(工藤仁美君紹介)(第三七七号)

 同(阿部知子君紹介)(第四七四号)

 後期高齢者医療制度の廃止を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三〇九号)

 労働者派遣法抜本改正を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三一〇号)

 後期高齢者医療制度の速やかな廃止を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三一一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三四八号)

 七十五歳以上の高齢者と子どもの医療費を無料にすることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三一二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五〇号)

 労働者派遣法の早期抜本改正に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三一三号)

 抗がん剤の副作用死亡と医薬品副作用による胎児死亡について被害救済制度の創設を求めることに関する請願(本多平直君紹介)(第三一五号)

 同(磯谷香代子君紹介)(第三六一号)

 同(宮島大典君紹介)(第三六二号)

 同(阿部知子君紹介)(第四七〇号)

 同(山崎摩耶君紹介)(第四七一号)

 じん肺とアスベスト被害根絶を求めることに関する請願(吉泉秀男君紹介)(第三二〇号)

 高齢者が安心して受けられる介護保障制度の実現を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三四四号)

 青年の雇用に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三四五号)

 労働者派遣法の早期抜本改正を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三四六号)

 国の財源で高過ぎる国民健康保険料の引き下げを求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第三四七号)

 高齢者に負担増と差別医療を強いる後期高齢者医療制度の中止・撤回を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第三四九号)

 後期高齢者医療制度を速やかに廃止し、高齢者・国民が望む医療制度を目指すことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三五一号)

 同(笠井亮君紹介)(第三五二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三五三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三五四号)

 同(志位和夫君紹介)(第三五五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三五八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三五九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四六七号)

 社会保障拡充を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第三六〇号)

 後期高齢者医療制度即時廃止、安心の医療を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三六三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四七二号)

 社会保障としての国保制度の確立を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三六四号)

 同(柿澤未途君紹介)(第三九三号)

 児童虐待の防止に向けた体制強化を求めることに関する請願(赤松正雄君紹介)(第三六九号)

 肝硬変・肝がん患者等の療養支援などを求めることに関する請願(福田衣里子君紹介)(第三七一号)

 同(阿部知子君紹介)(第四七五号)

 国・自治体の責任ですべての子どもによりよい保育の保障と子育て支援を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三七二号)

 同(中島隆利君紹介)(第三七三号)

 同(服部良一君紹介)(第三七四号)

 同(松崎哲久君紹介)(第三七五号)

 同(吉泉秀男君紹介)(第三七六号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三八〇号)

 同(石川知裕君紹介)(第三八一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三九四号)

 同(田野瀬良太郎君紹介)(第三九五号)

 同(長尾敬君紹介)(第三九六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三九七号)

 同(阿部知子君紹介)(第四七六号)

 患者負担大幅軽減、後期高齢者医療制度の廃止を求めることに関する請願(神風英男君紹介)(第三七九号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第三九〇号)

 同(佐藤ゆうこ君紹介)(第三九一号)

 同(吉田統彦君紹介)(第三九二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四六五号)

 同(本多平直君紹介)(第四六六号)

 患者・利用者負担を大幅に軽減し、いつでも安心して受けられる医療・介護の実現を求めることに関する請願(磯谷香代子君紹介)(第三八八号)

 同(大山昌宏君紹介)(第三八九号)

 後期高齢者医療制度の即時廃止、介護保険制度など社会保障の改善・拡充に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四四七号)

 同(笠井亮君紹介)(第四四八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四四九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四五〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第四五一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四五二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四五三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四五四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四五五号)

 福祉充実のため人材確保対策を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四五六号)

 同(笠井亮君紹介)(第四五七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四五八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四五九号)

 同(志位和夫君紹介)(第四六〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四六一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四六二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四六三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四六四号)

 最低保障年金制度の実現と無年金・低年金者に緊急措置を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第四六八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四六九号)

 介護サービスの質の向上を図るための東京における介護報酬の地域係数の是正に関する請願(阿部知子君紹介)(第四七三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百七十四回国会閣法第六〇号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件(B型肝炎問題)


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     ――――◇―――――

牧委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件、特にB型肝炎問題について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、肝炎対策推進協議会委員天野聰子君、小児難病センター医師香坂隆夫君、全国B型肝炎訴訟弁護団・全国連絡会代表、弁護士佐藤哲之君、東京慈恵会医科大学客員教授・中央労災医員戸田剛太郎君、独立行政法人国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター長溝上雅史君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 なお、本日出席を予定しておりましたB型肝炎訴訟元原告木村伸一君から、体調不良のため出席できないとの申し出がありましたので、御了承願います。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず天野参考人にお願いいたします。

天野参考人 私は、肝炎対策推進協議会で、日本肝臓病患者団体協議会所属、遺族代表として委員を務めております天野聰子です。

 亡き夫の天野秀雄は、NPO法人東京肝臓友の会で事務局長を務めておりました。昨年十一月三十日に、肝炎患者たちの長年の念願であり、天野秀雄が最後まで力を尽くして訴え続けてきた肝炎対策基本法が議員立法で全会一致で採択、成立しました。成立にお力添えいただきました先生方に深く感謝申し上げます。

 この肝炎対策基本法の前文には、「B型肝炎及びC型肝炎に係るウイルスへの感染については、国の責めに帰すべき事由によりもたらされ、又はその原因が解明されていなかったことによりもたらされたものがある。」とあり、感染の発生責任、拡大責任が国にあるということは、B型肝炎、薬害C型肝炎の司法の場で明らかにされています。

 きょうの委員会の議題であるB型肝炎も、薬害C型肝炎も、そしてほかの、天野のような患者も、全国に三百五十万人もいると言われる肝炎ウイルス感染者は、そのほとんどが、本人には全く責任なく、ずさんな厚生行政によって引き起こされた医原病の被害者であり、他の疾患とは全く異なる社会的要因を持っているという国の責任を明記した法律が肝炎対策基本法です。肝炎ウイルス感染に基づく一連の病態である肝炎、肝硬変、肝がん、すべての患者の健康と命を守る責任が国にはあるのです。

 私は、天野が亡くなってから、患者会に電話相談ボランティアとして携わるようになってまだ二年弱なのですが、患者会の先輩方にお話を伺ったところ、一九七一年に発足して来年で四十年を迎える長い患者会活動の中で、一九八九年六月に北海道B型肝炎訴訟が提訴されたときからずっと今まで、日肝協は訴訟を支援し続けてきたということです。

 B型肝炎訴訟は、原告のみの問題ではありません。すべてのウイルス性肝炎患者は、国の厚生行政の被害者として救済されなければなりません。全国のB型肝炎訴訟が和解によって早期解決がなされ、それがすべてのウイルス性肝炎患者の医療費助成や生活支援に道を開くことを願っております。

 ここで、患者の実態の一端を知っていただくために、天野秀雄の闘病についてお話しさせていただきたいと思います。

 天野は、一九九二年、四十三歳のときに、C型肝硬変の合併症の食道静脈瘤破裂による突然の大吐血によって倒れて、それまでの平凡だけれども幸せな、働き盛りの日々が断ち切られてしまいました。

 天野がC型肝炎ウイルスにいつ、どのような原因で感染したのかは不明です。両親以下、家族はすべて、肝炎ウイルスを持っていません。手術や輸血をしたこともありませんでした。医師からは、子供のころに受けた予防接種、あるいは診療所や往診のときに受けた注射が原因であろうと言われていました。C型肝炎は沈黙の殺人者と言われるほど自覚症状がないために、感染に気づくことなく、肝炎を通り越して肝硬変末期まで進んでしまい、食道静脈瘤破裂を起こして、そのとき初めてC型肝炎ウイルスに感染していることがわかったのです。

 大学卒業以来二十年以上勤めた会社を、肝硬変、肝がんを理由に、ほとんどリストラされる形で、四十三歳という若さで職を失いました。当時、中学、高校という学齢期で費用のかかる子供二人を抱えながら、肝硬変の合併症や、ウイルス性肝炎に特徴的な、繰り返し再発する肝がんの治療のために入退院を繰り返し、定期的な通院においても、検査料や薬剤料などの高額な医療費負担を強いられました。

 家計を支えるために私が働かざるを得ず、入退院を繰り返す天野の闘病を支えるためには、自由がきくパートタイマーとして働くことしかできませんでした。月二十万円足らずの収入では医療費や学費を賄うことはできず、こつこつとためてきた貯蓄を切り崩して何とかしのいできましたが、天野本人も家族も、いつまで続くのか先の見えない闘病に、つらく苦しい思いを味わいました。

 食道静脈瘤破裂から十六年間、常に死と隣り合わせの恐怖にさらされ続け、肉体的にも精神的にも、そして経済的にも苦しみを強いられた末に、五回目の肝がんを発症して手術をした後に肝不全に陥り、一昨年、二〇〇八年一月に五十九歳で亡くなりました。天野が最後まで命をかけて訴え続けてきた肝炎対策基本法が成立する前の年でした。

 肝炎対策基本法の施行を受けて肝炎対策推進協議会が設置され、思いもかけず、私に遺族代表委員として出るようにと要請があり、お引き受けいたしました。自分のように、本人に全く責任なく肝炎ウイルスに感染した全国三百五十万人の患者を救済したい、肝がんを撲滅したいという天野の願いをかなえるために、微力ながら力を尽くしたいと思って協議会に臨んでいるところでございます。

 ことしの六月から今まで四回協議会が開催されており、事務局から肝炎対策基本指針の案が出されておりますが、患者からの一番大きな要望である肝硬変、肝がんへの医療費助成、生活支援が、まず予算ありきという壁が大きく立ちはだかって、協議会で議論をすることもなく切り捨てられてしまっています。

 今、肝硬変、肝がんで一日に百二十人ものとうとい命が奪われているという非常に深刻な現実があります。高齢化、重症化が進んで、最も困窮し苦しんでいる肝硬変、肝がん患者に対する支援を早急にしていただきたいのです。

 支援策として、医療費助成だけではなく、ほかに何ができるかと考えるとき、一つは、ことし四月から実施されている、肝機能障害に対する身体障害者手帳の交付についてです。その認定基準が、余命幾ばくもない重度の肝硬変患者しか当てはまらないものだと思います。

 夫の天野秀雄は、食道静脈瘤破裂から五度目の肝がんで亡くなるまで、十六年間ずっと、末期の非代償性の肝硬変という永続する障害を抱えておりました。その肝硬変の合併症の治療ですとか肝がんの治療のための入退院を繰り返すという、生活に支障を来すような状態でも、チャイルド・ピュー分類のグレードCが三カ月以上続くという認定基準を満たす状況には一回もなったことがありません。でも、職を失い、生活に苦しみ、入退院を繰り返しながら亡くなりました。他の疾患との公平性も勘案された上で、認定基準を緩和していただきたいと思います。

 例えば、心臓病でペースメーカーを入れていると一級に認定されると聞きました。知り合いにペースメーカーを入れている方がいらっしゃいますが、非常にお元気で、旅行や山登りなどしておられます。それと比べると、肝臓の場合は認定基準が厳し過ぎます。チャイルド・ピュー分類Cと限定せずに、非代償期の肝硬変になったら、その時点で障害者として認定していただきたいと思っております。

 支援策として、そのほかに、インターフェロンの少量長期投与への医療費助成の拡大や、あるいは、治験で肝がん再発抑制に効果が実証された非環式レチノイドという内服薬の早期申請受け付け、早期承認審査など、ぜひ国会の場で、肝硬変、肝がん患者への医療費支援、生活支援など検討してくださいますよう、先生方の御尽力を賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。

牧委員長 次に、香坂参考人にお願いいたします。

香坂参考人 私は、B型肝炎がどんな病気であるかを、私は小児科医なんですが、小児科の方から見たB型肝炎、特に、B型肝炎は年齢とともに変化する病気ですので、その点に関して概略を御説明して、その責務を果たしたいと考えます。

 B型肝炎は、歴史的には、オーストラリア抗原といいまして、人種別の、人種に特異的な抗体あるいは抗原ではないかということで発見されました。それが、日本の学者によって、B型肝炎の原因であろう、あるいはB型肝炎によって生じた抗体であるということがわかりましたのが、ちょうど僕が医者になったころでございまして、それとともに、輸血後肝炎ということが重要視されるようになったわけでございます。私が医者になったころは、輸血後肝炎がちょうど日本で花盛りというか、研究のテーマとしては非常に重要視された時代でございました。

 きょうお話しするところで、小児科の領域としましては、愛媛県でB型肝炎が流行したという事件がございました。ちょうどいい事例でございますので、それについていろいろ調べたのでございますが、ちょっと僕は文献が見つからなかったんですが、きょう、実は、御発表の方に、そのことを調査された戸田先生がお見えになるということで、そのお話はそちらに回したいと思います。

 ただ、当時としては、僕たちが医者になったころというのは、今問題になっております予防接種、それからヒールカットといいまして、未熟児の血液をとるために足の裏をちょっとカットするんですが、そういうことに対して、すべて針をかえたり、あるいはメスをかえたりしていたかというと、必ずしも十分でなかったというのが現実でございました。ちょうどそれが七〇年から八〇年ごろで、愛媛県や島根県で、ある診療所、ある診療圏を中心にしてB型肝炎が流行したという事例が報告されておりました。

 確かに、そういう事例が報告されたときに、僕たちも、それが大丈夫なのか、そういうことでいいのかなという気はちょっとしたのですが、そのまま、実は汚染という結論には至らないで過ぎていったように思います。

 それが歴史的な背景でございますけれども、私が主として述べたいのは、この三枚目の表を見ていただきたいんですが、B型肝炎は概略どういうものかというものをこれでつかんでいただきたいと思います。

 B型肝炎、まず肝炎そのものがどういう病気かといいますと、肝炎というのは、決して、肝炎ウイルスが毒を持っていて、そしてその毒が体に悪さをして病気が発症してしまうというものではありません。肝炎ウイルスそのものは、さっきお話ししたように、オーストラリア抗原と言われたぐらいですから、各民族に特異的に人から人へ流行していったものなんですね。だから、人間にとっては共存すべき、あるいはウイルスにとっても人間は共存すべき相手であったわけです。

 したがって、母児感染というのが非常に重要なんですけれども、新生児期に感染した約九〇%の子供たちというものは、それを免疫寛容いたしまして、そのまま保持することになります。それが、年齢が上がりまして、乳幼児期になりますと大体五〇から六〇%ぐらい、成人期になりますと、これは実は免疫寛容の時期というのはなくて、急性肝炎を起こしてしまうわけです。

 急性肝炎を起こして、非常にだるいとか黄疸があるとか、いわゆる輸血後肝炎、あるいは、キャリアである方と結婚して性的関係を持たれて起こる、ハネムーンヘパタイティスといいますが、新婚さんの肝炎、あるいは恋人同士でも結構なんですが、そういう方同士で相手方にうつしてしまう結果起こる肝炎がありますが、そういう肝炎は急性肝炎なわけです。

 それで、急性肝炎はさっき申し上げたとおり非常に症状が顕著に出ますけれども、ここの急性肝炎のところで見ていただいたらわかるように、HBe抗原、それからe抗体、s抗体というふうに、抗原というのはウイルスですけれども、最初に抗原が出て、それに対して、人間の方で抗体を二種類つくっていきます。s抗体というのは中和抗体なので、これが一応治癒状態になるわけです。急性肝炎は、このようにHBe抗原、e抗体、s抗体とつくって病気としては完結して、後に病気を残すことはないというふうにされてきたわけでございます。

 免疫寛容を起こしてしまった、慢性肝炎を起こすものは一体どうであるかという部分をまとめますと、これを縦の方に見ていただきたいと思うんですが、免疫寛容期があって、慢性肝炎期があって、不活化キャリア期があって、そして抗体完成期に至ります。この縦線を見ていただくと、これは横に並べていた急性肝炎を縦に並べたものと全く同じであるということがおわかりになるかと思います。

 すなわち、抗体の産生としては、e抗原がまずありますけれども、e抗体ができて、s抗体になって治るということですね。それが、言ってしまえば、僕たちが学生のころ、あるいは卒業した後かもしれませんが、習ってきたB型肝炎の経過であったわけです。

 ところが、近年、黒い矢印で書かれた部分が、ちょっと古い教科書ならこういうような書かれ方がされていると思いますが、現在は、この赤い矢印が二つほど出ました。それで、九〇年代になると、不活化キャリア期、これは一般に言うとセロコンバージョンを起こしてHBe抗体陽性になっていますので、余りウイルスはたくさん出ません。ウイルスがたくさん出ないので、肝炎も起こさないわけですね。

 一応、小康状態になって、治癒になって、おめでとうございます、しばらく経過を見ていくうちにs抗体が出ますので、そうしたら完治になりますからもうちょっと頑張りましょうねというふうに患者さんに申し上げるわけですね。それで、大体e抗体が出れば半分ぐらいおめでたい、s抗体が出れば万歳というふうなのが今までの経過であったわけです。

 ところが、実は、e抗体ができた部分に関して、一部のものがe抗体の監視をパススルーしてしまうことがわかりました。それが、横っちょに出た、再びe抗原陽性になる慢性肝炎期です。これは、DNAウイルスであるB型肝炎がミューテーション、変異を起こすことによって再び肝炎を起こすということがわかりました。

 その後、さらに驚いたことに、万歳と言われていた、抗体完成した、一応治ったと言われている方々が問題になります。それが九〇年代の後半なんですけれども、九〇年代の後半に、移植が非常に盛んになりました。B型肝炎の治ったというドナーの方、与える方の方がB型肝炎の治った方、すなわちs抗体を陽性に持っている方、その方を何もない方に移植したんです。そうしたらB型肝炎が発症してしまった。

 したがって、B型肝炎は治ったという状態はないのであって、s抗体ができていても、s抗体によって、中和抗体によって血液中にはB型肝炎は存在しないんだけれども、実はB型肝炎は臓器の中には存在しているということがわかったわけです。

 今、病腎移植ということも討論になっておりますが、病腎移植の中で、B型肝炎の患者さんの腎臓を移植した場合もやはり同様にB型肝炎が発症してしまいます。そういう特異な例から何がわかったかというと、健康な人に移してもB型肝炎が発症してしまうわけですから、それではB型肝炎が治った人は一体どうなっているかという報告がなされるようになりました。

 そうすると、B型肝炎は、抗がん剤を使ったり、あるいは今盛んに行われているサイトカインの抑制剤や特異的な免疫抑制剤というお薬が、大量にということでもないんですけれども、次から次へと医療界に導入されています。そういうお薬を使って特異的な免疫抑制を起こすと、やはりB型肝炎が治った方が再度肝炎を発症するということがわかりました。

 したがって、この縦線のグラフで、すごろくでいうと上がりになっていた抗体完成の部分というのは、実は上がりでも何でもなくて、また振り出しに戻ってしまう。特に、医療が発達した今日的な状況においては、いろいろな難病が起こりますが、その難病を治療するということにおいて少なくとも大きな制約になる、あるいは合併症として再度出現してしまうということがわかりました。

 したがって、現在行われておりますこの会議において、皆さんの頭が混乱するばかりのお話になるんですけれども、とはいいましても、抗体完成によってゴールさせるというのが僕たち医者としての一応の務めであろうというふうに考えられるわけでございますが、その後もやはり問題は深いものがあって、そういう状態にある人たちを今後どういうふうに救っていくのか、あるいはどういうふうに医療上の対象にしていくかについては、皆さんが考えていただく大きな問題ではないかと思います。

 どうも御清聴ありがとうございました。

牧委員長 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 全国B型肝炎訴訟弁護団代表の佐藤でございます。きょうは、こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 弁護団は今、全国十地裁で、原告六百十三名、被害者数でいいますと五百九十名が、B型肝炎ウイルスの感染被害を引き起こした国の責任を改めて問う裁判に取り組んでおります。きょうは、多くの原告の方々も傍聴席に来ております。よろしくお願いをいたします。

 今、私が改めてと申し上げたのは、この問題については、平成十八年に、平成元年の提訴後十七年の歳月をかけて、国の責任を認め、五名の原告全員に国家賠償を認めた最高裁判決があるからであります。私は、この訴訟の弁護団の一人でもありました。

 平成十八年、最高裁は、国が、昭和五十年代後半まで集団予防接種において注射器の連続使用、私どもは回し打ちと申しておりますが、これをなし、B型肝炎ウイルスの感染被害を生じさせ、拡大させてきた。その加害責任を認めた上で、B型肝炎ウイルスが免疫機構が確立されていない七歳未満で感染した場合にキャリア化する、こういった特質に着目して、キャリアのお母さんからの母子感染が否定される場合に、法的に見れば個別因果関係の立証が十分である、このように判断をして個々の被害者に損害賠償すべきである、こういう判決をいたしました。

 国は、遅くとも、この確定した司法判断を受けて、被害実態を調査して必要な被害回復を講じるべきだったと言うべきです。しかし、国は、研究、治療体制の拡充などのために若干の予算措置を講じたものの、その後も被害者を放置したままでございました。最高裁判決を受け、そのことが報道された新聞を握り締め、いつ自分たちに救済の手が差し伸べられるか、じっと待っていた被害者を国はその後も放置し続けたのです。

 集団予防接種によるB型肝炎ウイルス感染被害者たちが、平成二十年三月から改めて全国B型肝炎訴訟を提起するに至ったということは、至極当然のことだったと言わなければなりません。

 私たちは、全国B型肝炎訴訟において、まずもって国の加害行為による感染被害者の被害回復を求めております。加害責任ある者が被害者の被害回復をすべきであるということは当然のことだからであります。

 ところで、国がどのようにしてどのような被害回復をなすべきかということを考える上で、国の加害責任について改めて振り返る必要があります。和解協議における国の対応を見ましても、この点の認識が大変希薄になっていると私どもは感じざるを得ないからであります。

 B型肝炎については、国は、集団予防接種において注射器の回し打ちをすればウイルス感染被害が生じるということを十分に認識しながら、少なくとも昭和二十三年から昭和六十三年まで四十年間、連続使用を放置し、B型肝炎ウイルスの感染被害を生じさせたり、あるいは拡大をしてまいりました。

 先ほど香坂先生のお話で、ウイルスの発見はずっと後だと。しかし、そういったものがあって、注射器の回し打ちをすれば感染をして肝炎という病気が発症するということは、戦前から明らかでありました。その意味では、ウイルス発見の時期と予見可能性、結果回避可能性という時期とは関係がないというか、もっとずっと前だということは御理解をいただきたい、こう思います。

 国は、被害を拡大させてきたわけでありますが、昭和六十三年一月に至って、初めて注射針とともに筒の取りかえを指示する通達を出しました。これは、WHOが一九五三年、昭和二十八年に出した勧告を一度は無視しましたが、それから三十五年後に改めてWHOがいわば後進国向けに再度出し直した勧告に、ようやくこの時点で従ったものであります。この一事をもってしても、国の予防接種行政がいかにずさんなものであったかということが御理解いただけるのではないかと思います。

 さらに言えば、平成十八年、最高裁の事件で、国は最後の最後まで、ツベルクリン反応検査は皮内注射、表皮と真皮の間に刺す注射だから、注射針に血液が触れることはなく、注射器の連続使用をしても感染することはないと言い張っておりました。ツベルクリン反応で針先が血液に触れることはないなどというのは、皆さん方、実際にツ反をされて、血がにじんだという経験がおありだと思いますので、このことはおわかりいただけるだろう、こう思います。

 このように見てくると、国の加害責任は単なる過失にとどまるものではなく、いわば故意に準じるものだと言ってよいのではないかとさえ思います。

 しかも、国は、この法的責任を平成元年の提訴から平成十八年の最高裁判決まで十七年間否認し、争い続けてきたわけであります。そして、その間、国は、ウイルス性肝炎、なかんずくB型肝炎対策に取り組むに当たって、重要な感染経路の一つである集団予防接種における注射器の回し打ちの事実を意図的に黙殺、隠ぺいしてまいりました。

 例えば、厚生省が関与して、その後の七カ年戦略のもとになった平成十三年の肝炎対策に関する有識者会議の報告というものがございます。この文書の感染経路に関する記述に、集団予防接種ということは一言も出てまいりません。平成元年の提訴まで、どの本にも主要な感染経路の一つとして表記されていたものが、厚生省が組織した有識者会議の報告には全く記載されていないのであります。私どもからすると、不可思議で仕方がありません。

 国の加害責任は、その後の被害の放置、隠ぺいという点を含めて、極めて重大であります。国が加害者として、どのようにしてどのような被害回復をなすべきかということを考える上で、このことが繰り返し確認される必要があるのではないでしょうか。

 全国B型肝炎訴訟は、ことし三月の札幌地裁の和解勧告から既に八カ月が経過しております。国が和解協議入りを表明してからでも六カ月が経過をいたしました。平成二十年三月の新たな訴訟提起から、十一名の原告が亡くなっております。三月の和解勧告からでも四名の原告が亡くなっております。国の加害責任が明らかなのに、総理や所管大臣である厚生労働大臣の謝罪を受けることもなく、この世を去られました。無念でならなかったであろうと思います。

 ところが、解決の指針とすべき最高裁判決や薬害肝炎救済法があり、その後、皆さんの努力で肝炎対策基本法が制定されたにもかかわらず、残された問題点も明確なのに、残念ながら、今のところ年内基本合意のめどが立っておりません。細川厚生労働大臣や仙谷官房長官も年内基本合意ということを公言しているのに、残念ながら、めどが立っていないという状況にあります。

 原因は、国が加害責任の自覚が希薄で、しかも、みずから生じさせた被害と正面から向き合っていないということ、さらには、訴訟開始に当たっても、あるいは和解協議の開始に当たっても、最高裁判決を尊重しこれを出発点とすると表明してきたにもかかわらず、これと全く逆の態度を国がとっているからであります。

 問題点として、大きく三つを指摘しておきたいと思います。

 一つは、和解水準の問題です。命の価値に差を設けることは許されないという問題であります。

 私たちが薬害肝炎救済法と同等の一時金を求めているのに対し、国は、それを大きく下回る金額しか回答しておりません。死亡で、薬害肝炎救済法は四千万ですが、B型肝炎訴訟の和解提案は二千五百万円であります。しかも、和解対象者を認定する要件について、私ども原告が主張しているところを入れるとすれば、この金額を基準にして、さらにこれを切り下げるというのが国の態度であります。

 しかし、薬害肝炎救済法の水準は、交通事故などの一般の損害賠償事件の賠償水準や、あるいは無過失でも認められている、損失補償制度として今現にある予防接種健康被害救済給付金制度における補償額に比較しても、極めて低いものであります。まして、最高裁判決があるのに、B型肝炎の場合、C型肝炎と比べて、国が言っているように因果関係の証明が不確実だということを理由にして切り下げようとするのは、これは論理的にも不当なものであって、許されないと考えております。

 最高裁判決の認定要件をどのように考えるか、この点については、国と原告側との間に多少見解の違いはあります。しかし、最高裁判決を尊重してこれを出発点とするというのであれば、国も認める最高裁判決の認定要件を満たす被害者原告が現におるわけでありますから、この被害者原告に対してはまず四千万円の一時金を認める、このことを出発点にして和解協議を始めるということがなぜできないのでしょうか。B型とC型とで被害者の苦しみ、被害は本質的に差がないのであります。

 二つ目は、無症候キャリアの一時金の問題であります。私どもが、キャリア固有の被害の切り捨ては許されないというふうに申し上げている問題であります。和解協議を進める上で最大の障害だと裁判所も言っている問題であります。

 キャリアでも、感染させられたことそれ自体によって、発症、発がんの恐怖におびえ、定期的な検査の必要による生活上、経済上の負担を負い、周囲の者に感染させないように必要以上に気をつけたり、逆に、正確な医学的知識のないままの偏見、差別に深く傷つけられるなど、深刻な被害をこうむっております。最高裁判決は、この被害を五百万の慰謝料をもって償うべきだと判断いたしました。

 ところが、国は、主として除斥ということを理由にキャリア固有の被害に一時金は認めず、一時金は将来発症した場合にだけ認め、キャリアには定期検査費用や感染防止のワクチン接種費用などの政策対応だけにとどめるとの態度に終始しております。一昨日の和解協議に際し、細川大臣が改めてコメントしたところでもあります。

 しかし、被害者が幼少時の接種による被害を知るのは、ほとんどが成人後、何らかの検査をしたときでしかありません。四十年以上も問題を放置、隠ぺいしてきた国が、その後さらに平成十八年の最高裁判決まで十七年間その責任を争ってきたのに、今さら、接種から二十年経過したとして形式的な除斥を理由にその責任を免れようとするのは、明らかに正義に反する物の言い方だ、対応だと私たちは考えております。

 除斥の起算点を接種のときだというふうにする解釈が正しいかどうかについては、私どもは異論がございます。問題点があります。裁判所も必ずしもそのように考えているとは思いません。そういった問題ではありますが、そもそも、薬害肝炎救済法と同じく、除斥は適用すべきではないと考えております。

 細川大臣は、除斥は動かしがたいとして法的責任を前提にしない解決を主張しておられるようですが、一昨日の和解協議で、裁判所はそのことを私たちに伝えず、そのまま国に再考を促しております。

 この問題については、除斥を理由に法的責任がないということを出発点とするのではなく、法的責任に基づく賠償を国はしなければならないのだということを前提として、除斥の問題をいかにクリアするかということに私たちは知恵を絞るべきではないでしょうか。例えば、皆さん方に議員立法によるこのB型肝炎問題についての除斥の適用除外というようなことを考えていただければ、この問題は一つクリアできるわけであります。

 三つ目は、和解対象者を定める要件の問題です。被害者を一人も切り捨てることは許さないという問題です。

 国は、一昨日の和解協議において、母子感染否定要件について一部原告の主張を認めましたが、予防接種を受けた事実については、相変わらず原告に母子健康手帳による立証を求め、そのことを前提に一定の代替立証を認める、こういった態度を変えておりません。

 国が罰則つきで強制し、現実にはほとんどの国民が接種を受けているのに、保存義務などなく、多くの者が既に所持していない母子健康手帳による立証を原告に求めるというのは、明らかに過大な要求で、不当だと思われます。このことを通じて被害者の切り捨てをしようとする態度は許されないと考えております。

 国が、このように最高裁判決さえ無視して、一人でも多くの被害者を切り捨てる、また、少しでも被害を切り捨てようと不当な和解案に固執しているのは、つまるところ、財源問題なのでしょうか。私たちも、国の財源が有限であって、無限のものだとは考えていません。

 しかし、重要なことは、いかなる金額になるものであれ、支出を求めているのは損害賠償であって、国にとっては義務的な支出だということであります。また、国の試算は、推定に推定を重ねた結果、過大で実に非現実的な対象人数で計算したものにすぎません。結局は、世論を惑わすものだと言わなければなりません。政府も本音ではそのことを十分承知のはずであります。要は、義務的支出と政策的支出の優先順位の問題として整理することができれば、原告が求める適正、妥当な解決水準でも、十分国の財源で支払いは可能なはずであります。

 集団予防接種によるB型ウイルス感染被害は、ここにおられる皆さんも含めて、国民のだれもが被害者になる危険にさらされていたという問題であります。事実経過と事の本質を正確に国民に説明すれば、この負担について国民の理解が得られないはずはありません。

 私たちは、被害者の被害回復とともに、ウイルス性肝炎患者全体に対して医療費助成や生活支援を含む政策対応が必要だと考え、そのことも求めています。しかし、私の持ち時間がありませんので、そのことについては最初の意見では申し上げないことにいたします。

 最後に、私は、肝炎対策を正しく進めるために、この国会の場でも、改めて国の加害責任を確認し、国がその加害行為によって生じさせた広く深い被害に正面から向き合い、そのことをみずから国民に説明し、国民及び被害者原告に謝罪すること、そして、裁判の和解協議において、命の価値に差を設けない、無症候キャリアの被害を切り捨てない、そして被害者をだれ一人として切り捨てない、こういった解決がなされるよう、肝炎対策基本法で示されたような、議員立法も含む必要なイニシアチブを議員の皆さんが発揮してくれるということを期待したいと思います。そのことを申し上げて、私の意見陳述といたします。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、戸田参考人にお願いいたします。

戸田参考人 ただいま御紹介いただきました戸田でございます。

 私は、B型肝炎ウイルス感染について、オーバービュー、そうして歴史について少しお話ししたいと思います。

 まず最初に、皆様のところにバックが青いパンフレットが行っていると思います。それをごらんになっていただきたいと思います。

 歴史的に見ますと、一九六四年、昭和三十九年ですが、オーストラリア抗原、これはアメリカのブランバーグが、頻回の輸血を受けた血友病患者の血清がオーストラリアの原住民であるアボリジニの血清と沈降線を形成するということで見つけられまして、オーストラリア抗原と名づけられました。

 そして、そのオーストラリア抗原がどういう意味を持っているかについてはわからなかったんですが、それから六年後、当時、東大の輸血部におられました大河内先生がオーストラリア抗原といわゆる血清肝炎とは密接な関係があるということを明らかにされまして、このオーストラリア抗原がB型肝炎ウイルスの感染マーカーの指標になったわけです。そうして、同じ年に、デーンという人が、B型肝炎ウイルスの粒子をデーン・パーティクルという形で見つけられました。

 次をめくっていただきまして、一九七六年にグリーンバーグがB型慢性肝炎に対して最初のインターフェロン療法を行いました。そして、我が国では、それから十三年たって、B型慢性活動性肝炎に対するインターフェロン療法が保険使用されるようになった。そうして、二〇〇〇年、インターフェロン以外のB型肝炎ウイルスの治療薬として、核酸アナログが次々と出てまいりました。まず出ましたのが、二〇〇〇年、ラミブジン。そうして、二〇〇四年にアデフォビル。そうして、二〇〇六年、エンテカビル。そして、現在ではエンテカビルが第一選択の治療薬となっております。

 そして、その下がB型肝炎ウイルスの模式図ですが、球形のウイルスであって、先ほど申しましたオーストラリア抗原、これは現在、HBs抗原と言われておりますが、それはウイルスの表面にあるたんぱくです。そうして、これはB型肝炎ウイルスの増殖とは無関係に大量に産生されまして、血中に放出されるということでマーカーとなる。

 そうして、次のパンフレット、B型肝炎ウイルスはどこから感染するかということですが、これは二つあります。母子感染と水平感染です。

 母子感染は、出生時にHBs抗原陽性の母親の血液と接触することによって起きてきます。

 水平感染につきましては、これは静注用麻薬の乱用、いわゆる回し打ちで感染する。もう一つは、入れ墨。ピアスを装着するときの穴あけの器具が汚染されている場合。そうして、医療行為に伴う感染があります。これは、汚染された医療器具を使用したこと、注射針とかメスとかですね。そうして、HBs抗原陽性の血液を輸血した場合。そして、観血的な民間療法。これは、はり、きゅうのはりとか、いわゆる吸い玉という民間療法がありますが、それによって感染を起こします。そうして、密接な身体的接触。これは性行為、そうして、子供同士けんかして、かみついたり、ひっかいたり、そういったことによっても感染を起こしてきます。

 では、体の中に入ったウイルスはどう行くかといいますと、血流に乗って肝臓に行きます。そして、その下の図ですが、肝臓に入り、肝細胞の中へ入りまして、DNAの複製、そうしてHBsたんぱく、コアたんぱくを合成しまして、完全な粒子となってまた血液中に放出されて、それがそのほかの肝細胞に感染を起こす。全体に感染が広がっていくわけです。

 ところが、B型肝炎ウイルスそのものは肝細胞障害性はないんですね。B型肝炎ウイルスに感染した細胞を認識したリンパ球によって細胞を壊される、それによって肝炎は起きてくるんです。肝炎というのは、ウイルス排除の一つの過程と考えてよろしいんじゃないかと思います。

 では、次をめくっていただきまして、B型肝炎ウイルスに感染したらどうなるかということですが、一つは一過性の感染、もう一つは持続的な感染です。感染が続くということですね。そうして、一過性の感染で治癒する。もう一つは、持続的な感染になって、無症候性キャリアとありますが、現在では非活動性キャリアと言われることが多いんですが、無症候性、もう一つは慢性肝炎になって、肝硬変、肝がんに行ってしまう。

 そして、一過性感染で終わるか持続的感染に行くかということについては、規定する要因としては、感染時の年齢、これは後でお話しいたします。そして、もう一つはB型肝炎ウイルスの遺伝子型、もう一つは免疫能といったものです。

 そして、その下に、日本の急性肝炎はどういうものがあるかということですが、これは急性肝炎ではA型肝炎の人が最も多いんですが、B型肝炎の人は二八%で二番目に多い。劇症肝炎になりますと、劇症肝炎というのは死亡率が五〇%近くなっているんですが、B型肝炎が最も多いということです。

 次に、いわゆる一過性のB型肝炎ウイルスに感染した場合にどうなるかということですが、感染をして、潜伏期は大体一カ月から六カ月、平均三カ月たちまして、全身がだるいとか食欲がないとか、そういうことで発症します。そして、その発症する前から既に血中にはB型肝炎ウイルスのDNAあるいはHBs抗原が出現いたします。そうして、病気が極期に達したときにはもう血液中からはB型肝炎ウイルスは消えております。そうして、大体、一、二カ月たつとGPT、ALTは下がって、患者さんはよくなるわけですが、その後には抗体が残ります。この図の右の方にありますHBc抗体、HBs抗体といったものが体の中に残るわけですが、HBs抗体というのは感染防御抗体です。HBc抗体というのは感染が昔あったということを示す抗体です。

 最近問題になっているのは、先ほどちょっとお話がございましたが、一過性の感染で治癒したかと。そうしたら、必ずしもそうではないんですね。

 パンフレットの二枚目の下に肝細胞の図がございますね。B型肝炎ウイルスが細胞内に入って、そうしてウイルスのDNAの複製の過程でcccDNAというのがあります。これが悪いことをするんですね。いつまででも残るんですね。

 パンフレットの十に戻っていただきますと、一過性の感染があって治ったと思っていた。ところが、悪性リンパ腫とかそういったことで免疫抑制剤あるいはステロイドを使いますと、それが再活性化して、そうしていわゆるデノボ肝炎というのが起きてきます。これは非常に重症の肝炎で、死亡率は二〇%から五〇%と言われております。

 そして、無症候性キャリア、インアクティブキャリア、要するに非活動性のキャリアでも、やはり免疫抑制剤を使って、そしてそれをやめたときにどっと肝炎が起きて、非常に重症の肝炎になってしまう。いわゆるデノボ肝炎というのが現在話題になっております。

 次のページですが、では、持続感染にかかわる要因はどういうものがあるかということです。新生児期に感染した場合は、キャリア化率は九〇%を超えております。そして、もう一つは年齢ですね。

 これは先ほどちょっとお話にありましたジアノッチ病の罹患後、ジアノッチ病というのは、B型肝炎ウイルスの中のゲノタイプD1という非常にまれなタイプで起きてくる、発疹を主体とする小児の急性肝炎なんですが、そういう人たちがどうなったかというのを見たわけです。三カ月から十一カ月に感染した人、一歳以下で感染した人では、約四〇%がキャリアになっております。そして、二歳、三歳、十歳とキャリア化率はだんだん低下していく。要するに、幼小児で感染するとキャリアになりやすいということですね。そして、一番下に成人とありますが、これは子供の肝炎ウイルスが大人に感染したわけですが、その方の中からは一例もキャリアは出ておりません。

 そして、もう一つのキャリア化にかかわる要因というのは、これは次の十二の、パンフレットの下の図ですが、ゲノタイプのA、要するに遺伝子型のAに感染すると遷延化しやすいということであります。だけれども、果たしてそれが慢性化するかどうかというのは、まだこれからだと思います。これは溝上先生が御説明になられると思います。

 次に、キャリアにおける、どういう経過をたどるかということです。これはちょっと複雑なんですが、感染しますね、そして無症候性キャリアの期間がしばらく続きます。これは母児感染ですが、無症候性、それが二十前後で肝炎を発症して、そして、そのときにウイルスは消えてしまう。HBs抗原はタイターも少し下がる、力価も下がります。そしてe抗原も消失して、それから、そういう幸運な人は無症候性キャリア、非活動性のキャリアになるということです。肝炎期がだらだらと続く人が慢性肝炎になります。

 そして、我が国の慢性肝炎の成因として多いのはC型肝炎ですけれども、B型肝炎は約四分の一ぐらいです。

 次にめくっていただきます。

 そして、年齢的に見ますと、B型慢性肝炎は若い人に多い。若い人といったって六十歳未満ですけれども、若い人に多い。年寄りには少ないですね。

 では、以上をまとめてみて、幼小児期においてB型肝炎ウイルスに感染した人がどういう経過をたどるかということなんです。

 B型肝炎ウイルスに感染します。そして、二十前後まで無症候性キャリア、非活動性キャリアとして、GOTも上がらないしGPTも上がらない。しかし、HBs抗原はたくさんある。血液中にはHBV、B型肝炎ウイルスのDNAがたくさんある状態が続きます。

 そして、二十前後になって急性発症するわけですが、急性発症した後どういう道をたどるかといいますと、九〇%の人はいわゆる無症候性キャリアとなります。そして、ウイルスはいるんですけれども、AST、ALTも上がらないという経過をたどります。一〇%が慢性肝炎になります。慢性肝炎になった人から肝硬変になって、肝硬変になった人から年率四%前後は肝臓がんを発症します。そして、慢性肝炎からもやはり一%ぐらいは肝細胞がんが出てまいります。そして、無症候性キャリアの人からも、これはAST、ALTもほとんど上がらないし、肝臓の組織をとってみても全く正常なんですが、その人たちからもやはり肝細胞がんが、年率〇・二%ですか、千人に二人ぐらいは肝細胞がんが出てまいります。

 そして、我が国の肝硬変の成因別頻度を見てみますと、これは赤い色で書いてあるところがB型肝炎ですが、だんだん少なくなっているということがおわかりになると思います。一九八三年には二三・三%がB型肝炎ウイルスによるものでしたが、一九九一年以降は一二%、最近ではもっと減っている可能性はございます。

 そして、下は慢性肝炎、肝硬変からの肝がんの発生の図です。縦軸が肝がんの発生率、横軸が観察期間ですが、これは参考のために、C型慢性肝炎、肝硬変の人を挙げております。ピンクが肝硬変、そして青いのが慢性肝炎と言っていいと思うんですが、これは明らかに肝硬変の人に出てくるわけですね。

 では、次のパンフレットをお願いします。

 ところが、B型の場合はそれほど、線維化というのは余り関係が、Cに比べると低い。明らかに肝硬変の人は肝がんを発生しやすいということは言えますけれども、そんなに顕著ではないということですね。慢性肝炎からも発症するということです。Cの場合は、慢性からの発症は非常にまれです。

 そして、肝細胞がんの成因を見てみますと、下の図ですが、C型肝炎ウイルスが七〇%、そしてB型肝炎ウイルスによるものが約二五%。四分の一がB型肝炎ウイルスによるものであるということです。

 そして、B型肝炎ウイルス感染者で、肝発がん、どういう人が発がんしやすいかということです。

 宿主要因とウイルス要因に分けて書いてございますが、感染者においては、ALTが持続的に高値を示す人、肝硬変の人、そして年齢四十歳以上。年齢は非常に大切なんですね、ある年齢を超えると肝がんが非常に発生しやすくなる。そして、男性であること、お酒飲み、そして家族歴で血縁者に肝がんの方がいらっしゃる。

 そして、ウイルス側の要因。これは、B型肝炎ウイルスのDNA量が多いということ、HBe抗原が陽性であること、そして遺伝子型がCであるといったウイルスが危険因子になる。そのほか、コアプロモーターとかプレコア遺伝子、プレS遺伝子の変異、そういったものがウイルス側の要因として肝がんの危険因子になります。

 そして、このうちで我々が医学的にコントロールできるのは、ALT持続高値は何とかできます。そして、B型肝炎ウイルスのDNA量が非常に多い、この人たちも今の医学のレベルでは十分コントロールできます。HBe抗原陽性も、これはある程度コントロールできる。大酒家については本人がお酒をやめてもらわないとどうしようもないわけですが。

 そして次に、治療の問題に行ってみたいと思うんですが、慢性肝炎の治療の歴史をざっと見てみますと、まず出ましたのが、肝庇護薬と言われているものですね。強力ネオミノファーゲンCとか桂枝茯苓丸と小柴胡湯とか、そのほかいろいろなものがございますね。そういったものが出てきたんですが、効き目は余り目覚ましいものではないということ。そして、それは今でも、現在でも使われております。

 そして、その次に出てきたのが免疫調整薬です。黄色と茶色の線で示してございますが、免疫調整薬。まず最初、抑制という、免疫抑制をしたわけですね。先ほどお話ししましたように、肝炎が起きてくるのはB型肝炎ウイルス感染細胞に対する免疫系のアタックによって起きてくるわけですから、免疫を抑えてやればAST、ALTは下がります。ところが、やめると前よりもっとひどい状態になります。そして、ひどい肝炎が起きてきます。というのは、免疫を抑えておりますから、そのためにB型肝炎ウイルスが非常に増殖します。それを、もとに持った免疫系、リンパ球が一斉に攻撃するものですから、重症の肝炎が起きてきます。そして、これはいかぬということで、その後は賦活療法が始まったわけです。

 そして、最後に出てきたのが抗ウイルス薬です。抗ウイルス薬としては、インターフェロン療法から始まって、下の方にありますラミブジン。そして、ラミブジンは耐性株の出現が余りに多いので、アデフォビル。アデフォビルとの併用。そして、最後に出てきたのがエンテカビル。まだ続々と、今、核酸アナの抗ウイルス薬は登場しようとしております。

 そして次に、B型慢性肝炎治療の現在は、先ほど申しましたように、肝発がんの抑制が最も大きな目標です。B型肝炎ウイルスの排除というのは非常に難しい。DNA、cccDNAという形で、ウイルスではなくてcccDNAという形で肝細胞の中にはずっと残っているわけですね。ですから、これを除かないとどうしようもないんですが、非常に難しい。

 では、肝炎ウイルスの増殖を制御しようではないかということになるわけですね。それについてはインターフェロン。インターフェロンは肝硬変の進展を抑えるんですが、まだ肝がんを抑えるという確定的な証拠はないんです。

 次にあります核酸アナログですが、これは肝炎ウイルスの増殖を抑制する、そして肝がん発がんを抑えるということを言われておりまして、現在では、B型慢性肝炎の治療というのはこれが主体になっております。

 そして、肝炎の活動性の制御。これは、さっき言いました強力ネオミノファーゲンCとか、そういった肝庇護薬が使われるわけですね。

 私の話の結論といたしまして、B型肝炎ウイルスが感染すると排除は極めて困難である、cccDNAという形でいつまでも残ってしまう。したがって、感染予防が最も重要であるということ。そして、感染予防には、もちろん汚染された血液との接触を避けることが重要ですが、最も効果的な予防法はワクチンの接種であるということです。そして、感染が確認されて、血中ウイルスが多くて、肝炎が持続する場合には、エンテカビルなどの核酸アナログの使用が現在では勧められる。

 以上です。御清聴ありがとうございました。

牧委員長 次に、溝上参考人にお願いいたします。

溝上参考人 御紹介いただきました溝上です。どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、私が用意しました資料に沿って御説明させていただきます。

 最初に、総論を述べさせていただきます。

 B型肝炎とC型肝炎では、感染経路、感染性、臨床経過、治療法及びその効果等が大きく異なっております。これが一つのポイントでございます。

 二つ目に、現在、本邦におきましては、B型肝炎ワクチンの導入により母子感染はほぼ制圧されましたが、性感染による感染が増加中であります。

 三番目に、核酸アナログ製剤の長期服用により、慢性肝炎、肝硬変の人たちの病態改善が可能となる兆候が出てきております。

 最後に、今後、さらに科学的解明を進めることで、B型肝炎の病態コントロールが可能になると思われます。一方、患者自身につきましては、肝硬変、肝がんに進行するまで臨床症状はほとんどございません。このため、検診による早期診断というのがますます重要になっていくと思われます。

 次のページでございますが、三番目のスライドを説明いたしますと、肝炎ウイルスといたしまして、今まで十何種類、世界じゅうから報告されております。しかしながら、現在、A型、B型、C型、D型、E型、この五つが肝炎ウイルスとして世界的に認められております。この中で肝がんを引き起こしますのはB型とC型でございまして、これの制圧が一番でございます。

 まず最初に、B型肝炎ウイルスの感染性、感染経路について御説明いたしますと、五ページ目をごらんください。

 先ほど来、戸田先生がB型肝炎ウイルスの歴史的なお話をなさいましたが、B型とC型をまとめてみますと、実は、二十年も早くB型肝炎ウイルスは見つかりました。それで、検査法の確立も、実は二十年も早くできております。しかしながら、その性質が大きく異なっております。ウイルスはDNAとRNAと二種類ございますが、性質は男性と女性ぐらい全く違うということをまず御理解ください。

 二つ目に、感染経路でございますが、感染力と非常に関係しておりまして、C型肝炎ウイルスは、はっきり言いまして、非常に弱いです。感染性はほとんどありません。家族内で、夫婦間感染というのはほとんどございません。

 それに対して、B型肝炎ウイルスは、先ほど香坂先生のお話がございましたように、ハネムーンヘパタイティスといいまして、新婚さんが、結婚して一カ月か二カ月ぐらいして黄疸になる。我々がまず最初に習ったことは、だんなを調べろ、奥さんを調べろというふうに三十年前に習いました。そのように強いわけです。それで、そのときのマーカーに、感染力が強い弱いというのは、e抗原、e抗体というのが実は使われております。

 このように感染力が強いものですから、いろいろなルートでうつります。今現在、世界じゅうで大体四億人ぐらいB型肝炎ウイルスの持続感染者はいますが、このうち二億人は中国人です。中国人だけが何でそんなに多いんだということの一つの説明要因として、実ははり、きゅうが言われております。中国では、二十年前、三十年前は、まず病気になったらはり、きゅうに行く。そこは、先祖代々、これはおじいさんが使っておったはりだからということでやっていたというようなことが実は言われている。それくらいいろいろな感染ルートがあるということを言いたいわけです。単純ではないということはぜひ御理解ください。

 それも、先ほど戸田先生のお話がございましたように、年齢によって大きく異なります。実は、持続感染化、感染形態というのは年齢によって大きく異なっておりますが、最近では、三歳まではほぼ一〇〇%うつる、成人ではほとんどうつらないとされていたんですけれども、ウイルスの型によって、どうも成人でも慢性化するらしいということがわかってきました。

 ただ、この問題につきましては、まだよくわかっておりませんで、現在、厚生労働省のお金をいただいて、研究班で鋭意調べております。現在、八百例ぐらいの急性肝炎の症例を日本全国から集めまして、解析中であります。この解析が出れば、大体どの程度かというのはもっと詳しくわかるかと思います。

 それから、肝がんへの進行率ですが、ジェノタイプBとかCというタイプが日本に多いわけです、後から説明いたしますが。これですと、ジェノタイプCというのが、生涯トータルで見たときには大体一〇%、マキシマムでも二〇%。この理由は何かといいますと、高齢になってきたからです。平均寿命は、私が卒業したころは一〇%ぐらいで教科書として習いました。ただ、その後、高齢化が進んでおります。二十年、平均余命が延びております。そうすると、それに伴って発がん率がふえてきたということでございます。C型につきましては、肝硬変になればこれは確実に進行しますが、B型の場合はまた少し異なります。

 それから、予防法は、C型はございません。B型は、もうワクチンとグロブリンでほぼ完成しております。ただ、もっといいワクチンをつくれということで、今世界じゅうで競争が始まっております。

 治療法につきましても、核酸アナログというすばらしい薬が出ていまして、これはB型肝炎ウイルスが実はHIV、エイズウイルスの酵素と非常に似ております。もともとどうも先祖が一緒だったらしいんですけれども、それが似ておりまして、それでエイズ用につくられたものが何千、何万とありました。それを製薬会社がB型肝炎に当ててみたところ、非常によく効くということが二十年ぐらい前にわかりまして、それでこの十年ぐらい、物すごい勢いで核酸アナログ製剤というのが出てきたわけです。これでコントロールできつつあります。

 その下を見てください。

 B型肝炎ウイルスは、一九六四年に、オーストラリア抗原として、オーストラリア原住民の血液で、抗原抗体反応とは、白い丸のところにオーストラリア原住民の血液を入れて、もう一つの方に例えば私の血液を入れて、抗原抗体反応というのがこの赤い線として出てくるわけです。非常に簡単な方法でございます。これで見つかります。抗原抗体反応が出る以上はこれでワクチンができるはずだということが、実は一九六四年にはもう既にわかっていたわけです。

 ところが、これは感染実験に実はチンパンジーしか使えませんでした。要するに、マウス、普通のネズミとかは使えなかったわけです、感染実験に。それと、培養系、つまり、シャーレの中で、試験管の中でふやすことができませんでした。

 それのブレークスルーが起こったのが、実は二〇〇一年でございます。人間の肝臓をある特殊なマウスに打ち込みますと、その人間の肝臓とマウスの肝臓が入れかわることができるようになりました。そうすると、いろいろな感染実験が簡単にできるようになりました。これによって研究が大きく進みました。これが二〇〇一年でございます。日本では、このマウスが二〇〇四年から使えるようになりました。これによって進みました。

 その次の七枚目でございます。

 実は、B型肝炎ウイルスは人間とチンパンジーしか最初は見つかりませんでした。人間の一番近い先祖がチンパンジーでございますので、それが、チンパンジーから人間に約五百万年前にアフリカで分かれて、そのうちの一種でありますホモサピエンス、我々の先祖であります現生人類がアフリカから出てきて世界じゅうに広がっていったと言われています。

 例えば、南米のインディオと言われる人たちは、我々と同じモンゴロイドであるというのは、ベーリング海峡を渡っていったということで説明されておりまして、それで持っていって世界じゅうに広がっていったんだろうと。したがいまして、我々が南米の人たちと顔つきが似ているというのはそういうことで、アラスカとかグリーンランドとかのエスキモーの人たちに多いのはそのせいだと。しかも、我々日本人のタイプと非常に似ております。そういうことで、歴史的な背景がございます。

 その後、実は、一九九二年ごろから、世界じゅうの遺伝子配列を持ってきまして、それを分子進化学というんですけれども、そういう手法でやっていきますと、B型肝炎ウイルスはそれまで一つだと世界じゅうから思われていたわけです。ところが、全然違っていたわけです。

 例えば、私と委員長の先生とは、多分、遺伝子配列を全部決めますと、〇・一%から〇・三%しか違いません。ところが、沖縄と九州のジェノタイプBとCを比べますと、八%以上違います。物すごく違います。八百倍以上は違うわけです。これぐらい違うものですから、性質ががらっと違っていたわけです。だから、C型の方はがんになりやすいけれどもB型はなりにくいというのは、そういうことがあるわけです。そういうことがわかりました。

 それを頭に入れて次の父子感染を見ていただきますと、ワクチンが導入された一九八五年までに生まれた子供は、実はお母さん由来がほとんどだったんですけれども、一九八六年以降では、お父さん、家族内感染。これはお父さんと書いてありますけれども、おばあさんとか家族、同居している方、そういう方からもうつってくるということがわかってきて、実はこれが今ワクチンの問題になっているわけです。

 ただ、ワクチンの能書には、家族内にB型肝炎ウイルスキャリアのある方は、家族内の人に全部ワクチンを打て、勧めろというふうに書いてございます。だから、それが徹底されていないということが一つの問題であると思います。

 次の九番目をお願いいたします。

 本邦の急性B型肝炎は、実はこれが一番大きな問題でございます。一九八二年から二〇〇四年までに大体四百例ぐらい、日本じゅうの専門家にお願いして集めました。その結果、現時点では、輸血とか医療事故でうつるのはほとんどございません。ほとんどが性感染でございます。後ろのクエスチョン、不明というのも、非常にそれが疑わしいと実は思っております。

 それで、その人たちの状況を、遺伝子配列を決めていきますと、東南アジア型でうつっていたのが、最近ではもう欧米型がどんどんふえてきております。

 では、その結果それがどれくらい慢性化したんだと。急性肝炎で、治ればもういいわけですね。それが慢性化してしまう。それがどうかということで調べていきますと、二〇〇〇年に調べたときには一・七%しかございませんでしたが、二〇〇六年には三・五%です。現在、二〇一〇年度を測定中でありますが、この数字は明らかにふえてきております。特に首都圏におきましては物すごい勢いでふえてきておりまして、非常に憂慮しております。

 次、お願いします。

 臨床経過・治療法及び効果についてですが、十二枚目を見ていただきますと、学生さんに私が大学で教えているときは、まず、いつうつったかを聞け、もしくはそれを推測しろ、それによって臨床経過が全然違うからだと。成人で来た場合には一%の劇症肝炎があるからこれを注意しろ、これになりそうだったらすぐ治療しないといけない。ところが、ほとんどの場合は自然と治るんだ、だから何も手を出すな、じっと見ておればいい、変なことをするとかえって慢性化すると。

 といいますのは、戸田先生の御説明にありましたように、自分の免疫が働いてウイルスを排除しようとするから、ついでに肝細胞も壊れて肝炎を起こしているわけです。それを抑えつけちゃうと慢性化するわけです。そういうことで、自然治癒するから何もするな、じっくり見ておれと。

 一方、赤ちゃんのときは、症状は出ませんで、こういう形で日本では百十万から百四十万人ぐらいいると推定されて、世界じゅうで四億人いるという状況になっているわけです。

 問題は、日本におきましては、これは世界におきましては違いますけれども、高齢化社会になってきましたので、最初は一〇%としていたんですけれども、最近では二〇%ぐらいだろうと推定しますが、八割の方は一生異常がございません。三十代ぐらいまでに肝炎を起こしますが、本人さんは全く気づかないで済んでしまうという方がほとんどでございます。残り二割ぐらいの方、マキシマム二割ぐらいの方が、知らないうちに肝硬変になっている。天野さんのお話があったような、そういう形になっていくわけです。

 したがいまして、この間、無自覚、無症状なんです。だから、検診が絶対に必要だぞ、それをちゃんとしないといけないということですけれども、その検診がなかなか、三割ぐらいしかいかないという大きな問題がございます。

 次の十三ページをお願いいたしますと、本邦のC型肝炎と比べてみますと、C型肝炎は年齢に関係ございません。うつった人の大体三割は自然と治ります。これはどうしてかということは、同じウイルスが感染しても、ある人が治ってある人は治らないというのは、個人差、個体差というのの遺伝子のどこだというところまでもう既にわかっております。したがって、これがある人は感染してもほぼ大丈夫だろうということは既に今ではわかりました。

 それで、七割の方がなって、それで十年続いて、慢性肝炎から肝硬変。一たん肝硬変になると、F4というような状態になっていきますと、やはり高率で肝がんになっていきます。

 それで、この間、やはり肝硬変になるまでは無自覚、無症状ということでございまして、ぜひ検診の重要性というのを御理解いただきたいと思います。

 最近の一番新しいデータでございます。ことしの九月号のヘパトロジーというアメリカの肝臓学会雑誌で、十四ページに出しております。実は、二〇〇五年にこの論文は、核酸アナログという薬ができまして、非常にいいのができました、それを一年間飲ませると非常によくなるという論文ができまして、それで千例ぐらい登録されています。

 実は、五年間、六年間、平均六年で三年から七年間使った、そういう人たちがどうなったかというのを見ていったところ、括弧内にございますように、ウイルス量がほぼ一〇〇%コントロールできておりますし、GPTも正常になっておりますし、e抗原が消えた人が五五%、e抗原からe抗体になった方が三三%となっております。

 実は、これらしいデータは日本でもあちこちにあります。これだけ長くはまだ薬が使われていませんからあれですけれども、ちゃんとやれば非常にうまくコントロールできそうだと。問題は、一般のかかりつけ医の先生とかほかの先生方まで、そこまでの知識がまだ行ってない。これはことしの九月号、先月、十月に来た雑誌でございます。これにこういうふうに載っております。

 次のページを見てください、十五ページでございます。

 この中の一例でございます。六十歳の白人男性で、e抗原陰性の方が、この人は肝硬変ということで、治療前、一年後、五年後を見ていただければ、青いところが、肝臓が壊されましてこういう皮膚に置きかわっているわけです。だからかたくなる、だから肝硬変。その線維がどんどん消えていっているというのがこの図でございます。典型例でございます。

 したがいまして、このデータは非常に興味深くて、肝硬変の方でも、ちゃんとここのところをやっていけばうまくいくだろうと。もちろん、いいデータだけをとってきた可能性もありますから、これについてはまだ慎重な対応で見ていく必要がございますが、今までと比べて明らかに容体がコントロールできそうだということを示しております。

 肝硬変といいますと、非常に患者さん自身もびっくりされますし、家族の方もびっくりされますが、私が医者になったときには、肝硬変というのは、腹水でおなかがぱんぱんで、もうやせ細ってどうにもならない、余命半年という方が肝硬変という診断名でございました。それが現在では、エコーとかそれからCTとかMRIとか、血液検査も物すごく進みまして、肝生検なんかやりますと、何度も言いますけれども、本人さんは何ともないのに肝硬変というのがいっぱい出てきたわけです。したがいまして、そこのところの区別というのが非常に大事で、それを区別した上で、治療、それから相談、そういうことをする必要がございます。

 さらに、その中でも、まだどこまでいけるか慎重に考えないといけませんけれども、線維化というのがどうも抑えられそうだというところまで来ております。

 B型肝炎の研究は、一九六四年に見つかりました。それからもう五十年たちます。それにもかかわらずということをいつも言うんですが、やっとこの十年、サイエンス、科学となってきました。先ほど言いましたが、マウスがいろいろ使えるようになったとかいろいろなこと、テクニックがよくなったということ。

 それから、エイズが一九八一年に見つかって、八三年にそのウイルスが見つかって、八五年にはHAART療法という、たった五年でコントロールできるようになりました。それは、いろいろなテクニックが、そこに物すごい金を投入してできたからです。

 現在、そういうところまで来ております。今やHIVで死ぬ方はほとんどいません、ちゃんと薬さえ飲んでくれれば。死ぬ方は、ほとんどがB型肝炎とかC型肝炎で今お亡くなりになっているのが、まあそれ以外にもございますけれども、そういうことが多いわけです。

 したがいまして、B型につきましてもやっとそこまで来ました。これからどんどんコントロールすることができる時代に来たというふうに私自身は、研究者としては思っております。

 以上でございます。

牧委員長 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

牧委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田衣里子さん。

福田(衣)委員 民主党の福田衣里子です。このたびは、質問の機会をいただき、大変ありがとうございます。

 私も、薬害肝炎訴訟の原告として五年間同じように闘ってきましたが、その長い時間の中、多くの仲間が解決の日を見ることなく亡くなっていきました。このB型肝炎訴訟においても同じことが言えると思います。ですので、一日も、一刻も早い解決を図るべきだと思っております。

 本日は、木村参考人が体調不良ということでお越しになれず心配ですが、一日も早い回復をお祈りしております。また、傍聴席には本日も多くの原告の皆さんがお越しです。私も、何年か前までは傍聴席から質疑を聞いている立場でしたので、気持ちがよくわかります。

 本日は、この問題を皆さんにお伺いいたしまして、細川大臣もおっしゃっている年内解決に向けた取り組みに生かしていけたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、肝炎の専門家として、溝上先生にお伺いいたします。

 先ほどもお話しいただきましたが、C型の場合は、無症候の方でも高率に発症する一方で、インターフェロンによる治療が有効ですが、B型の無症候キャリアに対しては、どのような病態、予後であって、進行を防ぐ手だてとしてどういったことが考えられますでしょうか。また、B型の慢性肝炎及び肝硬変について、どういった治療法が有効なのか、簡単にお教えいただけますか。

溝上参考人 B型肝炎の場合には、八割ぐらいの方が、結局、一生ほとんど異常ないわけですね。そうしますと、それらの人たちは、積極的に治療するのと、何にもしないで様子をちゃんと見て、おかしいと思ってから治療するのとでは、どっちが本人さんにとって得かということ。その見きわめをするのが非常に大事であって、それが、今までは肝生検しかできなかったのが、CTとかMRIとかエコーとか、そういうのを使っていけばコントロールできるようになったということでございます。

 それから、慢性肝炎、肝硬変の方たちに対してはどうだということが二つ目の御質問だと思いますが、それにつきましても、先ほど来言っていますように、新しい薬がどんどん今出てきております。そういうのをどんどん早く認可していただいて、そして、そういうのをやっていけばコントロールできるのではないかということをきょうお話ししたわけでございます。進行を防げるのではないかということでございます。

福田(衣)委員 ありがとうございます。

 検査や医療費助成によって進行を防ぐことができると。そういった必要性というものを改めて感じました。

 また、先ほどお話にもありましたが、肝硬変についてお伺いいたします。

 最近、肝硬変の障害認定というものが始まりました。天野参考人からも、基準が高いのではないかというお話もありましたが、今置かれている基準についてどういったお考えをお持ちか。また、肝硬変の病状の違いによって就労などの日常生活や社会生活上に制限、制約などの違いがあるのかということをお伺いいたします。

 溝上参考人にお願いいたします。

溝上参考人 認定基準というのは、私、実は詳しくは知りませんので控えますが、先ほど佐藤先生のお話で初めて聞いたような次第で、詳しいことは知りません。

 ただ、私の話の中にございましたように、肝硬変という言葉だけで患者さんはびびりますし、それから周りの人はみんなびびりますけれども、今や昔の肝硬変でなくて、もっと早い段階の、慢性肝炎の中期から後期のものも肝硬変と診断できるようになったんですよということをお話ししたわけでございまして、補償基準がどうかということについては、佐藤先生の今のお話を聞いて、ああそうなんだということで、ちょっと詳しく存じ上げませんので、よろしいでしょうか。

福田(衣)委員 ありがとうございます。

 同じく肝炎の専門家である戸田参考人にお伺いいたします。

 B型肝炎は非常に感染力が強くて、さまざまな感染経路があるということで、予防接種以外の感染経路として、国側は、父親のウイルス検査並びにジェノタイプについて確認する必要があるというふうに言っておりますけれども、本当に必要があるんでしょうか。

戸田参考人 感染経路を明らかにするために、それは必要だと思います。家族内感染というのがございますから、そういった意味では必要であると思います。だけれども、もし陽性者がいた場合には、積極的にワクチンをやればいいと思っております。

福田(衣)委員 ありがとうございます。

 それでは最後に、佐藤参考人にお伺いいたします。

 木村参考人が本日体調不良でお越しになれず大変残念ですけれども、木村参考人の思いもお酌み取りいただきながらお答えいただけたらと思います。

 これまで十七年間、寄り添って闘ってこられたと思いますけれども、どういった思いで十七年間弁護活動をされ、今はどういった解決を望まれているのか、お答えください。

佐藤参考人 先ほど来お話を伺っていますと、B型肝炎について研究が進み、治療がいろいろできるようになってきた、コントロールができるようになってきた、これは大変喜ばしいことです。患者の皆さんも、治ること、それから安心して治療が受けられる状態になること、これができることが一番だというふうに考えているのはもちろんのことであります。

 私ども、平成元年に裁判を起こした際の事情は、北海道は、難病対策の一つとして、ウイルス性肝炎も難治性肝炎として北海道独自の医療助成制度がございました。要件は厳しくなっていますが、今もございます。これが当時の地方財政の危機、困難を理由に縮小あるいは廃止という、北海道の長い間、患者さんの運動で実現してきた制度が危うくなった。これをきっちり守り、いわば中身を充実させたい。あるいは、当時、北海道だけでなくて幾つかの都県で行われていましたが、これをできれば全国に広げたいという思いで訴訟を開始したというのが直接の動機でございました。

 ですから、それを進めるために、当時、集団予防接種による被害者、感染があるということは言われていましたが、そのことを踏まえれば、そういった患者さんたちに対して、まさに一般の疾病対策ではなくて、国が加害者として加害責任があるということを前提にする、そういった対応をするという必要がある。それをやはり訴訟を通じて国の加害責任を明確にして、それに見合うウイルス性肝炎対策を広げたいというふうな考えをしておりました。

 ところが、一審の段階では、いろいろな感染ルートがあるということを理由にして、必ずしも個別被害者の因果関係が認められないという判決でありました。しかし、少なくとも、主要な感染原因が集団予防接種による注射器の使い回しであるという認定はあったんです。その段階でも、私は、少なくとも、それを前提にして国は一定の対策をとるべきであった、医療費助成や生活支援を含む体制をとるべきであった、こう思いますが、実に冷たいものでありました。私どもは、やはり個別被害者、顔の見える被害者が司法の場で認定されるということを通じなければ国は動かないものだということを残念ながら実感せざるを得ませんでした。

 そこで、改めて、個別因果関係の立証をどうするかということについてさまざまな方々の知恵と御協力をいただいて、高等裁判所、最高裁へと闘いを続けてまいりました。

 その結果、先ほど来、いろいろあるけれども、Bについて、基本的に慢性化するのは免疫がまだ確立していない幼少期の感染、これがメーンだ、免疫が十分でない方々は病気その他ではあるにしても、基本的にそうだということを前提にしますと、自然科学的には厳密に言うと違うかどうかという問題はあると思います、しかし、法的に司法の場で言うならば、ここまで立証できればこの人は顔の見える被害者だという認定もしてもいいという意味では、母子感染が否定されれば集団予防接種が原因だというふうに裁判所は認めていい、認めるべきだという判断をしてくれたわけであります。

 その上で、高等裁判所は認定をし、さらに最高裁はもっとより厳密にそのことを認定してくれました。そこで初めて顔の見える被害者が、原告は五名でありましたが、もっといるということを前提にして国がさまざまな対策をしてくれるというふうに私どもは考えましたし、そのことを求めましたが、残念ながらそれでも国は動きませんでした。それで、私どもはやむなく、改めてこの裁判を起こしたという経過であります。

 ですから、訴訟の目的は、個別被害者の被害回復と、あわせて、すべての肝炎患者が安心して治療をしていけるための医療費助成や生活支援を含む恒久対策、もちろんその前提として研究、治療体制の充実というのもございますが、この二本をきっちりしてやっていただきたい。

 しかし、それをやる上でも、被害者と認定できる方について被害をきっちり回復する、このことなくして恒久対策の水準も残念ながらしっかりしたものにならないというふうに、この十七年間、二十二年間を通じて、私どもは実感せざるを得ませんでした。原告の皆さんもそう考えておる。全国のすべてのウイルス性肝炎患者の方々も、日肝協の方々もそう考えておられるというふうに思います。

 ですから、繰り返しますが、被害回復をきっちりすること、そういった責任の自覚に立って、必要な医療費助成、生活支援を含む恒久対策をしっかり確立していただきたい、そういった思いであります。よろしくお願いいたします。

福田(衣)委員 ありがとうございます。

 きょうは、参考人の方々には、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。東京肝臓友の会の天野さんには原告時代に大変お世話になり、天野参考人にもお伺いしたかったんですけれども、時間の都合上お聞きできず、申しわけありませんでした。また、香坂参考人につきましても、せっかくお越しいただいたにもかかわらず御質問することができず、申しわけありません。

 民主党としても、この問題の年内解決に向けて全力を尽くしていきたいと思います。命の時間がないといったような状況の人がおります。政府、弁護団、歩み寄りを見せて、皆さんの力によって、さらなる御協力をいただき、一日も早い解決につなげていただきたいと思います。

 これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

牧委員長 次に、加藤勝信君。

加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 きょうは、参考人の皆さん方には、非常にショートノーティスといいますか、直前のお願いにもかかわりませず御出席を賜りまして、貴重な御意見をいただきまして、心から御礼を申し上げたいと思います。

 また、残念ながら木村参考人、体調を崩されたということでございます。貴重な意見をお伺いしたいと思っておりましたが、大変残念でありますとともに、一日も早い御回復を心からお祈りをしたいというふうに思っております。

 まず、参考人の皆さんに質疑に入る前に、一言だけ申し上げたいと思います。

 きょうは、こういう形で、B型肝炎問題について、参考人に意見をお伺いし質疑をするという機会を実現していただきましたことには、牧委員長や、また与党の理事の方々にも御努力をいただいたことは大変多とするところであります。

 しかし、残念ながら、私どもが一番今回、B型肝炎訴訟が今行われている、そして年内基本合意という状況の中でお話を聞かせていただきたい原告の方から直接お話を聞くことができなかった。特に、きょうは全国B型肝炎訴訟原告団の代表である谷口さんも残念ながら二列目にお座りをされているということでございます。この間の経緯において、私どもが推測するに、与党の上の方からか政府の中からか存じ上げませんけれども、圧力があって、そうした方々から直接お話を聞くことができなかったということは全く不本意であるということを申し上げておきたいと思います。

 政府はそもそも、和解金額に関する国の考え方についてという十月十二日に出されたペーパーの中でも、救済範囲等については、国会等の場で国民的議論を行った上で一定の合意をいただくことが前提と言っておられるわけでありますから、そうした言葉と対応が余りにも違うのではないか。原告の皆さん方、きょう傍聴いただいておりますけれども、こうした残念ながら直接お話を聞くことができなかった、お話をできなかったことに対するその失望と、またそれに対する強い怒りを込めまして、委員長及び与党理事、さらにはその後ろにおられる方に冒頭強く抗議をさせていただきたいと思います。

 その上で、きょうはいろいろと参考人から医療的な問題を含めてお話がございましたけれども、先ほど申し上げましたように、B型肝炎訴訟ということを念頭に置きながら議論をさせていただきたいと思います。また、私どもも長く与党でございました。その間における国の対応というものにもいろいろ問題があった、そういったことを自問しながらも聞かせていただきたいと思います。

 まず、このB型肝炎訴訟、今も行われておりますけれども、先ほどお話がありました平成十八年六月の最高裁の判決というのが非常にこのスタートとして、またこれからの議論においても私は大変重要だというふうに思っております。

 この判決の中で、結論的には、慢性のB型肝炎の患者さん、そしてB型肝炎ウイルスの持続感染者の方、いわゆる無症候性キャリアの方に対して、一人頭五百万の慰謝料と五十万の弁護士費用とを支払う、こういう趣旨の判決だというふうには思っておりますが、この弁護もされた佐藤さんにぜひお伺いしたいのでありますけれども、この最高裁の判決も、中身は確かに今申し上げたことでありますけれども、その位置づけというものをどのように受けとめておられるのか、まずお話をいただきたいと思います。

佐藤参考人 位置づけというのは、先ほど来申し上げたこととも重複いたしますが、このB型肝炎問題を考える場合に第一に確認しなくちゃいかぬのは、国の加害責任、そのことによってどれだけ広く深い被害を及ぼしたか、そのことがどのように評価されて今後の厚生行政に生かされるべきか、そのことが示された基本だった、こう思います。そういうことでよろしいでしょうか。あるいは、五百万ということの意味合いもでしょうか。

加藤(勝)委員 いや、まさに、多分、この五百万云々ということ以上に、今おっしゃられた因果関係であり国の責任というものの明確化ということが、訴訟される方々も一番の重きに置いていたんではないかというふうに私も思ったものですから、お聞かせをいただきました。

 続きまして、無症候性キャリアの取り扱いについて少しお伺いをしたいと思います。

 先ほど申し上げた国のこの十月十二日の考え方の中では、除斥期間の問題、この指摘に加えて、C型肝炎の無症候性キャリアの方々に比べて慢性肝炎等を発症する割合が相当程度低いこと等を理由に和解金の支払いを行わない、こういうように読めるわけでありますけれども、私も原告団の方々から幾度となくいろいろなお話を聞かせていただきました。

 確かに、無症候ということでありますから、体の中に物理的な変化というものはまず起こっていないんだろう、こう推測するわけであります。しかし、それ以上に、例えば、母子感染をされたその親と子供さんの間のさまざまな葛藤のお話、あるいはキャリアであるということがわかったことによって職場において仕事を継続しにくい環境であり、あるいは家族内におけるさまざまなあつれき等々、いろいろなまさに筆舌に尽くしがたいお話を伺ったところでございます。

 そうしたお話、できれば幾つかでも佐藤参考人の方から御開示をいただきたいと思います。

佐藤参考人 きょう、私の意見陳述書の後に幾つか資料を添付してございます。キャリアの問題について、「キャリア切り捨ては許されない」という、資料の二というのが添付されています。

 キャリアの問題については、今、加藤先生から御指摘がありましたように、直接身体的な変化は基本的にはありません。ただ、キャリアという中に分類されている中でも、ウイルス量が増大して抗ウイルス剤を飲み始めている方もおられますので、全く治療的なことが行われていないというわけではございませんが、主として、ここにあるように、発症、発がんの不安、先ほど来三先生からもお話がありましたように、確かに、BとCを比べますと、発症率その他の違いはございます。しかし、BはBなりの固有の、Cとは違った意味でより困難、より難しい、あるいは発がんということを考えますと、より厳しい精神的な状況に置かれているという状況がございます。

 また、感染力が強いということで、さまざまな差別、偏見を受けている。原告の中にも、そのことを理由にして職場を去らなければならなくなったということを訴えている方々は実に多くおられます。先般も、二十代の女性、歯科衛生士を目指して頑張っておられた方、大阪の匿名原告ではございますが、職場でまさにそのことを言ったら、なぜ言わなかった、要するにその後の就職も含めて非常に厳しい差別的な取り扱いを受けたなど、大変な状況にございます。

 それから、年二回ないし四回ぐらいの検査というものだけであっても、これは日常生活あるいは経済的な問題も含めて大変な困難を抱えている、こういった状況にございます。

 身体的変化が直接ないから被害はないというのは、余りにもキャリアの方々に対する被害の実態を無視した物の見方だというふうに思います。

加藤(勝)委員 ありがとうございました。

 それから、先ほど、香坂参考人の御説明の中で、いただきました資料の十六ページを見ますと、B型肝炎ウイルス感染が無症候性キャリアになって、急発症してからまた無症候性キャリアになる、こういうステージになっておりまして、私どものこれまでの理解とややもするとちょっと異なるような、要するに、これを見ると、無症候性キャリアという範疇の中に、急性発症する前の方とそうでない方がおられる。

 その様子が、十三ページの中で見ると、同じ無症候性キャリアでも、ちょっと私も医療的な知識はありませんが、急性肝炎を発症する前にはHBe抗原のプラスがある、その後についてはHBe抗体のプラスということで、随分中身が変わってきているということになるんですが、この図を見るとどっちかしかないような形になっているんですが、これはこういう理解でよろしいのか。それとも、中にはおられるし、全く無症候性キャリアのまま急性発症もせずにいかれるという大きな流れもそこにあるということで解釈していいのか、ちょっとその辺を教えていただきたいと思います。

香坂参考人 僕も、厚生省のキャリアを排除するというところを、どこを一体排除するのかということについて戸惑いをちょっと感じているんですが。

 赤ちゃんが、母子感染を起こしたり、あるいは新生児期に感染を起こしてキャリアになりますね。それは免疫寛容期といって、ウイルスはどんどんふえてくる。そのかわり、ふえるけれども、肝炎というのは生体側の反応ですので、生体側の反応がないために何も起こさない、肝炎は起こさない時期ですね。それが第一期の活性キャリア期というふうに名づけたんですけれども、普通は免疫寛容期と言われると思います。

 不活性キャリア期というのは、これがいわゆる非常に多いインアクティブキャリアと言われる状態だと思うんですが、そのときにはもう慢性肝炎を起こしていて、そしてHBe抗原陽性からHBe抗体陽性に変わることによって肝炎を抑制してしまった、そういう半分ぐらいめでたい治癒状態ということになろうかと思います。

 その不活性キャリアになると、半分ぐらいおめでたいので、セロコンバージョンが起こりまして、おめでとうございますという状態だったんですが、実は、そのときに慢性肝炎がその後もミューテーションが起こるということが判明して、それが九〇年代後半から続々と報告されているという状態だと思います。

 したがって、発病していない方についてはという言い方は非常に不的確ではないかなというふうに考えます。どちらを含めるのか、恐らく不活性キャリア期の方を厚生省の方は外すということを言っておられるんだと思いますが、不活性キャリア期の方というのは、もう慢性肝炎を発症して、それが顕性であるにせよ、何も出ないで発症した、あるいは何か症状があって発症した、それはわからないんですけれども、ともかく排除するという時期があって、肝炎を発症した後で起こったことですので、発症していないB型肝炎という言い方は不正確ではないかというふうに僕は考えております。

加藤(勝)委員 済みません、私が使ったのは戸田先生の資料でございました。

 今のもお伺いしたかったんですが、もう一個、戸田先生、今の件について、余り時間がないので短くお願いしたいと思います。

戸田参考人 ほぼ同じような意見で、十六ページにございます母児感染以後の無症候性キャリアというのは、免疫系が十分発達していないために、AST、ALTの上昇がなく経過している、そういう人たちですね。そして、その後の無症候性キャリア、急性発症した後の無症候性キャリアにつきましては、これはe抗原からe抗体、要するにウイルスが変異をして増殖性が少なくなった、そのためにAST、ALTの上昇もなく経過している人たちで、意味が違うので、現在では、無症候性キャリアという言葉、この後の方の無症候性キャリアにつきましては、非活動性キャリアという言葉が使われております。

 そして、この非活動性キャリアの中からは、再活性化というのでもう一度肝炎が発症する危険性は十分あります。そんなに頻度は多くないんですが、e抗体陽性の肝炎、そしてこれはe抗原陽性の肝炎と比べると重症になることが多い。

 そういった意味で、無症候性キャリアという言葉は従来使われておりますけれども、急性発症以降の無症候キャリアについては、非活動性キャリアという言葉の方がいいのではないかというふうに思っております。意味が違います。

加藤(勝)委員 今ちょっと私も十分理解できていないところがありますけれども、そういった問題を含めて、和解の総額という話が出てきているわけであります。

 政府は、一定の仮定を置いた試算で、国側の提案の場合には最大二兆円、政策対応を含む、そして原告側の主張に従った場合は最大で八兆円の規模の国民負担が必要となるとしております。その規模について、あるいはまた、そうした総額を国民全体で分かち合う、さらには、増税もあり得る、こういう発言も政府側から出ているようなところもございますが、そうした反応について原告側の皆さんはどう思っておられるのか、佐藤参考人からひとつお願いいたします。

牧委員長 簡潔にお願いします。

佐藤参考人 端的に、増税問題まで持ち出されてこの問題が議論されたということで、原告の皆さん方は、感染被害を受けた上、世論と分断して、いわば金を要求しているのかという、二重の意味でさらに差別的な思いをしたというのがまず一つございます。

 先ほど申し上げましたが、この国の計算の前提になっている、まず人数の算定の仕方が、時間がないので詳しくは申し上げられませんが、きょう資料の三で触れているように、もとになっている人数の出し方がさまざまな点で過大であって、あるいは誤っておる。その結果、数字としてはいわば十倍以上にもいじられているというふうに私どもは考えています。要するに、常識的な、実に現実的な積算を前提にした議論をお願いしたい。

 それから、先ほど言ったように、物の本質は損害賠償であって義務的支出なんだ、政策的な支出では必ずしもないということを御理解いただきたいということであります。

加藤(勝)委員 時間が参りました。天野参考人と溝上参考人、せっかくおいでいただいたのに質問することができず、大変申しわけなく思っております。

 最後に、委員長にお願いしたいのは、一日も早い年内の基本合意に向けて、我々国会においても当然努力をしていかなきゃいけない。そういう意味で、きょうの参考人の質疑等を含めた集中的な審議をぜひ開催していただきますことをお願い申し上げまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

牧委員長 ただいまの件については、理事の皆さんとよく相談させていただきたいと思います。

 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 参考人の皆様には、きょうは国会においでいただき、貴重な御意見を賜りました。大変ありがとうございます。感謝を申し上げます。

 私も、肝炎対策に携わってまいりました。特に、二〇〇七年十一月には、自民、公明党で肝炎対策基本法を国会に提出をいたしました。三年前でございます。それをもとに、二〇〇九年、再提出をいたしまして、これが成立をいたしました。そして現在、B型肝炎の全国訴訟で、札幌、福岡の両地裁で和解協議が難航しているという現状でございます。救済の対象や補償額の設定をめぐりまして、国と原告側、これは非常に大きな隔たりがございます。一刻も早い解決が望まれるところでございます。

 B型肝炎の感染者は、最大で百四十万人ということでございます。このうち、予防接種による感染、四十七万人と国は推計をいたしております。肝硬変、また肝がんへと進行していく、亡くなる方もいらっしゃる、まさに患者の皆様にとっては時間との闘いであるということが言えるかと思います。

 現在、公明党といたしましても、肝炎対策のプロジェクトチームで、原告団また弁護団の方々と毎週のように意見交換の場をつくらせていただいております。谷口三枝子代表、きょうは参考人としては御意見をいただけませんけれども、さまざまな患者の皆様から私も切実な声を伺っております。特に、きょう参考人として原告団の代表の方をお呼びできなかった、これは非常に残念である、このことを申し上げておきたいと思います。

 谷口代表からも伺っておりますけれども、肝炎を発症し、また、特に母子感染で将来あるお子さんが自分のせいでキャリアとなってしまった、これから勉強し、また仕事をし、あるいは家庭を持つかもしれない、その将来ある子供たちにいわば自分のせいでそういう重荷を負わせてしまった母親としての苦しみ、これは察するに余りあるものがあると私は思っております。

 こうした患者への支援、私たち、先日の委員会でも、坂口元厚生労働大臣は細川大臣に対しまして、まず原告団と会うところから出発をしてもらいたい、このように申し述べたところでもございます。

 きょう、参考人の皆様には、今回の問題あるいは肝炎対策全体にかかわる論点をお伺いしていければと思っております。

 まず最初に、天野参考人にお伺いをいたします。

 私も、日肝協の皆様からはさまざま御意見をちょうだいしております。夫を亡くされた、また、それまでの家計を支え、夫の治療を支えてこられた、その御苦労はいかばかりであるかと思っております。幾つか、障害者手帳交付の際の認定基準の緩和ですとか治療費助成という御意見は今お伺いいたしましたけれども、肝炎患者、家族への支援ということでもう少し御要望があればお伺いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

天野参考人 肝炎患者、家族に対する支援というのは、患者に対する支援がなされれば、こういうふうな働かざるを得ないという状況も緩和されますし、ですから、例えば肝硬変、肝がんの患者に対する支援法、どういうことが考えられるかということを先ほど申し上げましたけれども、こういうことを重点的にやっていただければ、それで肝炎患者、家族にとっては本当に助かることだと思っております。

 そこで、国会の場で、肝炎対策協議会でなかなか、肝硬変、肝がんに対する支援というのが医療費助成、生活支援を含めて全く検討されておりませんので、国会の場でぜひ先生方に検討していただくように、よろしくお願いいたします。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 肝硬変、そして肝がんへの支援、また研究体制の確立、治療費の支援、こういうことの重要性を今お述べいただいたかと思っております。

 次に、香坂参考人にお伺いをいたしたいと思います。

 先ほどの御説明の中で、肝炎の研究が進み、そして治療が進むにつれ、肝炎ウイルスが変異をし、再び肝硬変を起こすということをお伺いいたしました。いわば肝炎ウイルスとの闘いといいますか、これは際限がないのかなという印象を持ったわけでございますけれども、さらに、こうした肝炎に対する研究体制のさらなる拡充というものも必要なのではないかと思っておりますし、また専門医が必要ではないか、同じ肝炎治療に当たりましても、やはり専門医としての深さ、キャリアというものが影響してくるのではないか、このように思います。

 この研究体制あるいは専門医の育成、この点に関して、御意見があればいただきたいと思います。

香坂参考人 内科の方と小児科の方とこの肝炎については大きく分かれるんですけれども、小児科の立場としてお話をさせていただきますと、母子感染のブロックということが行われたのが、ちょうど僕が医者になる七〇年から八〇年にかけて、この問題が起きかけたときなんですが、ブロックが行われることになって、九五%あるいは九〇%ぐらいの方は母子感染ということがブロックできるようになったわけです。そのために、逆に、五から一〇%の方々というのは見捨てられた状況にあるということになるんですね。

 それで、現在、僕は腎臓と消化器をやっているんですけれども、腎臓の方では特定疾患が認められておりますが、肝臓の方は何もないんです。それで、国立小児病院時代は、実は、こういうことを申し上げていいかどうかわからないんですが、肝臓が何もないから、大人の病気を引っ張ってきて、そして、書類上はその病気にして提出して保護を受けるという苦し紛れのことをいろいろやっておりました。

 それがいいかどうかは非常に問題がありますので、ぜひ肝炎に関して特定疾患の補助ぐらいはしていただかないと、お母さんの精神的苦痛はもちろんなんですが、子供に対する医療費という点でも、全く支援がないというのは非常に問題じゃないかなというふうに考えております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 小児への支援という観点で貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 次に、佐藤参考人にお伺いをしてまいります。

 国は除斥ということを理由に、この除斥とは、不法行為のときから二十年経過をしたとき、損害賠償請求権の期間も制限があるというものでございます。この除斥を理由にキャリアに対する一時金の支払いをしないという、こうした国の主張に対してどうお考えになるか、お伺いいたします。

佐藤参考人 先ほど申し上げましたが、除斥というものの考え方についても、現在、裁判所の考え方さえも動いております。必ずしも、形式的な不法行為のときから二十年、本件でいえば接種のときから二十年というふうに形式的に考えているわけではないと思います。じん肺その他の裁判を通じて、動いてきています。

 本件についても、最高裁も、発症してから、損害発生のときから二十年というふうに、発症した患者、被害者、原告についてはそういう判断をされました。それを無症候キャリアに押し及ぼせば、少なくとも感染を知ったときからというような解釈も十分可能なんだろう、こう思います。

 しかし、我々はさらにこの問題に関して言えば、感染させてから四十年問題を放置し、さらに最高裁で十七年、予防接種法の昭和二十三年から計算しますと、もう六十年以上もこの問題について責任を否定して争ってきて、最高裁の十八年のときから考えても、もう既に過去に二十年たっているからあなたたちの請求は認められない、国は一切責任をとらないと言っているに等しいわけですから、こういった態度は、どう考えても私どもは道理に合わないというふうに考えております。

 形式的な理屈で除外するのではなくて、先ほども申し上げたように、そういった形式的な問題があるなら、それをどう乗り越えるか、乗り越えて解決するかということをぜひ考えていただきたい、こう思っています。

古屋(範)委員 弁護団の側のこの除斥に対する考え方、お伺いすることができました。ありがとうございました。

 次に、戸田参考人にお伺いをいたします。

 最後の結論として、「感染予防には汚染された血液との接触を避けることも重要であるが、最も効果的な予防法はワクチン接種である。」ということを述べられております。

 この予防ということに関しまして、どのようなことを国の体制として御要望がおありになるか、どのようなことが必要とお考えになるか、お伺いいたしたいと思います。

戸田参考人 私は、ここに書いてありますように、ワクチンが一番有効であるというふうに思っております。

 ぜひ進めていただきたいのは、ユニバーサルワクチネーション、すべての人にB型肝炎ワクチンを接種する、そうしますと差別もなくなる可能性は十分あると思うんですね。そして、今現在、職場とかそういうところで差別される方がかなりいらっしゃるということなんですが、それを防ぐため、それからその方からの感染を防ぐためには、ワクチンを接種して抗体をつくることは有効である。そういった意味では、ユニバーサルワクチネーションというのをぜひ進めていただきたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 すべての人にワクチン接種をという御意見でございました。私たちも、それ以外のワクチンにつきましてもやはり日本はおくれている、これをぜひとも推進しなければならない、ワクチン体制の拡充ということも今取り組んでいる真っ最中でございます。貴重な先生の御意見を参考に、これからもワクチン体制の拡充に取り組んでまいりたい、このように思います。

 次に、溝上参考人にお伺いをいたします。

 ともかく早期検査、早期診断が大事だということをおっしゃられていたと思います。しかし、検診は三割程度ということでありまして、これがおくれているという御指摘があったかと思います。

 こうした国としての検査体制、あるいは自治体もこれは非常に大きな役割を担っているかと思います。その辺の検査体制の拡充について、もう少しお伺いできればと思います。

溝上参考人 国は、肝炎対策七カ年計画の中に、C型肝炎が主体でありますが、検診の体制の充実及びそれに関してというふうにしておられます。それに対して、我々、肝炎・免疫研究センターの中に肝炎情報センターを設置しまして、それのサポートをしているという現状でございます。

 ただ、この検診の体制に関しまして、一番の、私個人が思っていることは、会社が検診をしてくれません。これが一番問題だと思います。ほかのところは、住民の方は結構やっていただくんですけれども、二つ問題がございます。一つは、会社の中で、会社側はそういう方を見つけると、医療費がかかる、検診に医療費がかかって、保険組合の問題がある、財政を圧迫するという問題。もう一つ、これは、例えば天野さんのお話がございましたように、会社の中で知られると、いろいろな差別とリストラに追い込まれるというような、こういう問題が二つございます。

 この問題がございまして、三割というのは非常に大きいと思いますし、そういうことを考えたときに、これをどのような形でするかというのは、やはり国会の運営の場でしっかりと議論していただきたい。我々の力、行政的なものとかいろいろなサポートでは非常に難しいだろうというふうに思っております。現時点では、我々としてはしっかりやっているつもりです。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 企業、職域における検査体制、ここにおいてこれから進めなければいけない点があるという御指摘、ありがとうございました。

 天野参考人に、最後、もう一問お伺いしたいと思います。

 多くの患者の方々と接していらっしゃるかと思います。その中で、無症候キャリアの方々の御苦労、そういったものに関して何かおっしゃりたいことがありましたら、最後にお聞かせいただければと思います。いかがでしょうか。

天野参考人 無症候キャリアの方というとB型だと思うんですよね、C型の場合はほとんど慢性化してしまいますので。そういう方ですと、やはり感染させてしまうのではないかとか、そういう心配があるというふうな電話は受けたことがございます。それで、どうしたらいいだろうかというふうなお話で、例えばパートナーがいて、感染させてしまったら困るとか。そういうのはワクチンを打てばよろしいんですよとか、そういうことはお伝えしているんですけれども、なかなかそういうことが一般に広く普及されていない、正しい知識が伝わっていないということがありますし、キャリアであることによって差別、偏見というのを受けるということもあると思います。

 そこら辺のところを、やはり差別、偏見がないように、例えば法務局に差別、偏見があった場合にはお伝えすればいいか、そういうことも一応国民に広く知らせて、それで国民が差別、偏見しないようにしていただければよろしいかと思います。

古屋(範)委員 皆様の貴重な御意見を参考に、これからも肝炎対策に取り組んでまいります。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、参考人の皆さん、大変お忙しい中、本委員会に出席をいただきまして、また貴重な発言をいただきました。本当にありがとうございました。

 また、元原告の木村さんがきょう出席できなかったということは、本当に残念でなりません。また、私たちがこうした参考人質疑を開催するに当たって、やはり当事者の声を聞くというのが最大の趣旨でございましたので、先ほど来発言がございますけれども、原告を呼ぶべきであったと重ねて指摘をしたい、また、そういう機会を持つべきだということを委員長初め各委員にも要請をしたいと思います。

 時間の関係で、早速質問に入らせていただきます。

 政府が示した「和解の全体像に関する国の考え方について」、この中には、平成十八年最高裁判決が唯一の確定判決であり、この水準を踏まえるべきであること、このように述べております。

 そこで、最高裁判決、先行判決裁判を闘った佐藤参考人に、この意義についてもう一度確認をしたいことがございます。

 一つは、最高裁では損害賠償を争ったものではなく慰謝料であった、そして、キャリアも含め全員に支払ったということの意義が、ちょっと国が履き違えているのではないかという問題点を一つ私は持っております。

 それからもう一つは、先ほど来お話しされている除斥期間の問題ですけれども、先行裁判でも、高裁では慢性肝炎の方が二名、除斥期間で一度は除外の対象となったものを乗り越えて、最高裁では全員が認められたという経緯がございます。

 そうしたことから踏まえても、最高裁の水準がやっぱり今生かされていないと思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

佐藤参考人 おっしゃるとおりです。

 前の裁判では、私どもも、キャリアの方一名、それから慢性肝炎の方四名、五人の原告で裁判が争われました。損害については、両者共通した包括一律請求で一千万、弁護士費用を含めて一千百万の請求をして、そのうち五百五十万が認められたというわけです。その認定は、両者、つまりキャリアと慢性肝炎に共通するB型肝炎ウイルスに感染させられたことによる精神的苦痛に対する共通する部分について、五百万の慰謝料をもって償うべきであるという判断をしたものだというふうに考えております。

 そういう意味では、慢性肝炎について、そのこと以外の、休業損害とか治療費とかもろもろを考えると、慢性肝炎についてなお五百万と言っている現在の国の態度は、私どもは、最高裁判決の正しい理解ではない、こう思います。

 それから、除斥の点ですが、確かに今高橋委員御指摘のように、高裁では残念ながら二人、除斥で請求が棄却されました。しかし、高裁も、集団予防接種、幾つかあるうち一番最後のところを基準にして二十年を考えるべきだ、時の壁を破るために高等裁判所の裁判官も努力をされました。そういう意味では、形式的に接種から二十年というふうに考えることが不合理であるということは、高裁の裁判官も考えました。

 しかし、さらに最高裁は、ほかの事件の除斥についての考え方もベースにしながら、接種のとき、要するに形式的な不法行為をしたときではなくて、損害が発生したこと、そのときまで全体として起算点を考えないとおかしいのではないかという、ある意味では本当に常識的な考えをしていただいて、損害発生のとき、つまり発症のときから二十年という物の考え方をすべきだということで、原告五人全員について賠償を認めるという考え方をとりました。

 それをさらに押し及ぼせば、今回の無症候キャリアの方々についても起算点については考えられるべきだ、もっとさらに原理的には先ほど申し上げた点がございます。

    〔委員長退席、石毛委員長代理着席〕

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 大変明快な論理ではないかなと思います。やはり、正しい理解ではないのだという立場に立って今回の和解訴訟を解決すべきである、全面解決をすべきであるということを改めて思いました。

 引き続いて佐藤参考人に伺いたいと思うんですけれども、先ほど来の専門家である参考人の意見の中に、水平感染ですとか、そうしたことがちょっと議論があったと思います。例えば、ジェノタイプAが近年ふえているという問題、あるいは父子感染の問題など、裁判の中でも随分議論になって、紛れ込みがあるのだ、なので因果関係が薬害よりも低いということが政府の言い分の根拠になっているのではないかと思います。

 ただ、この問題も、十七年間の先行裁判でも随分議論されて克服されてきた経験でもあると思うんですけれども、改めて、弁護団はこのことについてどう考えているのか、伺いたいと思います。

    〔石毛委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤参考人 他原因の問題については、先ほど一番最初に申し上げましたように、確かに、抽象的に考えればいろいろなルートが考えられます。そういった人の、国の言葉をかりれば紛れ込みを防ぎたいというのは、それはそれで一つの考えかもしれません。

 しかし、問題なのは、いろいろある中で、紛れ込みを防ぐということを理由にして、明らかに感染被害を受けた被害者の方のかなりの数を一緒に排除してしまう立場に立つのか、そうではなくて、明らかにそうではない人を認定する方法を考えて除外整理をしていくかということを考えた場合に、法的には後者の立場、明らかにほかの問題とは違うものならばともかく、父子感染とかジェノタイプの問題というのは私どもは違うというふうに考えています。

 父子感染というのは、最高裁のときにも他原因の一つとして議論をされました。家族内感染の一つとして。しかし、例としては、あること自体は私どもも否定しません。しかし、極めてごくわずかで、日常生活上そういったことは基本的に問題にしなくてもいい、国自身が言っている問題であります。

 今、父子感染を問題にされたのは、垂直感染の母子感染あるいは集団予防接種による感染が制御された結果、残された問題として父子感染の問題があるというだけの問題にすぎないわけで、このことをさかのぼって過去のごく一部の、あるかもしれないごく一部の問題を今さら過大に取り上げて問題にしているというのは、少なくとも過去の責任の処理の問題と比較した場合に、過去の問題を考えているときにその問題を持ち出すのは、もう既に終わった問題を蒸し返しているという問題だと思います。

 それから、ジェノタイプの問題については、最近、そういった成人後感染による慢性化というのは、ジェノタイプAeの問題について、あること自体は私どもも否定しません。しかし、これも基本的には、要するに、B型の基本的な性格を持ったものの一部が成人後感染でも慢性化することがあるというふうに言われているだけで、先ほど来お二人からもお話があったように、遷延化、要するに治療が長引くという問題と、慢性化するということとの区別が必ずしも十分でない。どの程度の割合で慢性化するかということについて、まだきちっとしたエビデンスがあるという状況ではない。

 それから、私どもが今、損害賠償を争っている原告らの感染時期からすると、これはもう問題にされる時期ではなくて、現実に原告の中にも、大阪原告の中には二歳ですか、要するに、成人後感染が問題にならないAの方がおられます。ですから、Aであればイコール成人後感染という話ではなくて、Aの中のごく一部が成人後感染の慢性化の問題。

 そうすると、そういった方のうち、明らかに成人後感染による慢性化というふうに言える方について、国側の反証事項として問題にすべきであって、ジェノタイプの問題を問題にする、あらかじめ原告側がそうでないということを立証することを求めるのは、これは民事訴訟の立証責任の分配の考え方からいってもおかしいのではないかというふうに私どもは思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 もう少しここも深めたいと思うんですけれども、ちょっと時間の関係で、先に天野参考人に伺いたいと思います。

 壮絶な御主人の闘病の一端をお話ししてくださったと思います。肝炎対策協議会の中でも、生前の手帳を証拠として示されて訴えていらっしゃるということも承知をしております。

 先ほど議論になった、身体障害者福祉法に基づく内部障害に肝炎も含まれるようになった、肝機能障害も含まれるようになった。それ自体は、本当に長年の日肝協の要望でもあって、本当によかったと思っているんですけれども、お話があったように、その基準が大変厳しく、天野さんの御主人がC型肝硬変から肝がんを何度も再発されて亡くなったにもかかわらず、対象外であるというお話があったと思うんですね。

 今回、実は、B型肝炎の補償の水準についても、肝硬変が軽症、重症ということで分けられまして、その分ける基準が、今おっしゃったチャイルド・ピュー分類に基づいている。やはりこういうような差別をするべきではないと私は思うんですけれども、御自身の経験から踏まえて、一言御見解をいただければと思います。

天野参考人 先ほど申しましたように、主人はチャイルドCの分類になったことはあるんですけれども、それが三カ月続くということは一度もございませんでした。もう手術の後で、死ぬ前一カ月ぐらいですけれども、そのときはチャイルド・ピュー分類Cですけれども、それは一カ月弱ですから認定基準には入りません。

 そういうことで、この認定基準というのは、人間らしく生きるために認定基準をつくっていただきたいんですよね。死にかけていてもうどうしようもなくてというときに認定基準でされても仕方がないんです。

 それで、今、チャイルド・ピュー分類のCということなんですけれども、主人の場合ですと、かなり状況が悪いときでも多分チャイルド・ピューのB、あるいは手術する前は、肝硬変の末期の状態でしたけれども、チャイルド・ピューで見るとAだったんです。

 というのは、このチャイルド・ピュー分類というのは、血液検査と、それから肝性脳症ですとか腹水ですとか、そういうことを基準にして見ているんですけれども、肝臓の状態というのは、手術したときに見たんですけれども、本当に岩のようにかちんかちんになって、完全な肝硬変でございました。ですから、非代償性の肝硬変という状態だったんですね。

 ですから、チャイルド・ピュー分類を基準にするのではなく、非代償性肝硬変になったら認定していただきたいというのが私の気持ちでございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 そこで、質問の趣旨は、今回のB型訴訟の場合も、薬害のときは肝硬変に差がなくて、肝がん、死亡した方と同じ扱いだったんですけれども、肝硬変の中に軽症と重症という形で今の分類が持ち込まれる、同じ肝硬変の患者であっても差をつけるというふうなことが持ち込まれているわけですね。そういうことがやはりおかしいのではないかと私は思うんですけれども、いかがですか。

天野参考人 そうですね。先ほども申しましたように、BとCで分けるというのはおかしいと思いますし、Aだとしても、もっと悪い人もいるわけですから、そこら辺のところで重症度を分けてしまって補償金を分けてしまうというのは、私はおかしいとは思います。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 最後になりますけれども、佐藤参考人にもう一度伺いたいと思うんです。

 先ほどのジェノタイプのお話なんかが実は関連しているのかなと思うのですけれども、薬害とB型肝炎をなぜ差をつけるのかというときに、やはり相当程度の因果関係が低い、薬害より低いというような表現をしております。しかし一方で、政府自身が、集団予防接種が義務だった四十年間の対象年齢のすべての国民が予防接種を受けたということをちゃんと前提にして、しかも全員が検査を受け、今三割だという数字があるのに、全員が検査を受け、全員が私はキャリアですと名乗り出るというような、過大に掛ける過大のような数字を出して最大値の二兆円、八兆円という数字をはじいているというのは、私は非常に矛盾ではないかと思うんです。

 弁護団はこれに対してもう既に論破をしていますけれども、簡単に説明をお願いしたいと思います。

佐藤参考人 先ほども申しましたが、資料三に、数字の問題については申し上げています。

 数について国の方は、ここにあるように、要素としては、キャリアの方がどのぐらいいるのか、そのうち予防接種による方がどのぐらいいるのか、さらに、そのうち立証可能な人がどのぐらいいるのか、それから、提訴する可能性のある人がどのぐらいいるのかということであります。

 それぞれのところについて、過大になおかつ誤った数字を置いて人数を計算して、それぞれの金額を当てはめて、二兆円あるいは八・二兆円という数字を出しています。

 それぞれのところに問題だということを具体的に挙げておりますが、例えば、予防接種を原因とする感染者の割合について、国の方は七割というふうに試算をしておりますが、二割ないし三割という文献もございます。それから、立証可能性については、私どもに寄せられる提訴希望の方々、残念ながら、要件に合致する人は一割程度しか北海道の場合はおりません。そういったようなことをいろいろ掛け合わせますと、この資料三に書きましたように、和解金額の総額は、国の試算の本当に十分の一を大きく下回るというのが現実的な数字ではないか、こう思います。

 むしろ、先ほど、検査の割合が三割というふうな数字が挙がっていました。これは、やはり国が、先ほど七カ年計画でも言ったように、感染経路として集団予防接種が原因だということをちゃんと踏まえて、このことを広報して、あなたも感染している可能性がありますということをちゃんとお伝えして、それでさまざまな条件で検査を受けるということを保障しないと本当の掘り起こしにならないんだろう、こう思います。

 そういう意味でも、改めて国の責任をきちっと自覚して、広報することを含めて、その前提を整えてもらいたい、こう思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 原告団の皆さんと一緒に接している佐藤参考人は、原告の皆さんが提訴にたどり着くまでにいろいろなものを乗り越えて、しかも障害がさまざまあったということをよく知っているからこそ、政府の言っていることが非常に過大であるというのを実感できるんだと思うんです。それはもう、きょう傍聴している原告の皆さん、同じ思いでいらっしゃると思うんですね。

 ですから、そういう数字だけが前に出て、しかも、国民の理解という言い方をして、何か莫大なお金がかかるんだからこれは難しいんだというふうな議論に国が持っていこうとすることは、やっぱり違うんだということを強く主張いたしまして、質問を終わりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

牧委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、天野参考人初め、お忙しい中、また急遽の中お越しいただきまして、さまざまな医学分野からのお話、あるいは裁判に上っております現状のこのB型肝炎の訴訟、そして和解に向けたお取り組みについてのお話を伺いました。

 私は、きょう、こうやって参考人の皆さんに来ていただけたことはとてもうれしいと思いますが、と同時に、どなたもお触れになりました、木村参考人がおいでになれないこと、また天野参考人の連れ合いは既に他界されていることなどを考えますと、我が国にとっての肝炎対策問題は、本当に国を挙げての対策にならねばならないし、また、これまで薬害C型肝炎の問題でも、皆さん、患者さんたちは命がけで国に迫り、求め、やっと扉があくということを繰り返していることを大変残念にも思います。

 また、こうした参考人のお話をぜひ厚生労働省にも聞いていただきたいな、とりわけ厚生大臣、細川大臣にも聞いていただきたいなといつも思いながら、委員の席で伺っておりました。

 繰り返しになりますが、まず弁護団長の佐藤さんにお伺いいたしますが、今回、国はいまだに責任あるいは責任の所在、あるいは謝罪ということを明確にはしておらないと思います。そのことが全体に非常に影響を与えている。

 例えば、慢性肝炎の方と無症候性キャリア、この言い方がいいかどうか、私も後にお話ししますが、そういうふうな方に、差別をせず一律に五百万プラス訴訟の五十万、そうした判断をなさったということは、先ほど来お話しの、これは慰謝である、与えた被害、ウイルスを入れてしまったということに対しての慰謝である、損害賠償ではないと。損害賠償といえば、例えば被害の実際の大きさも伴ってくるものと思いますが、このことについて、国とはどこまでお話が進んだでしょうか。

 ここの認識が、例えば、私は細川大臣とやりとりしても大きく異なっているように思いますが、ここについてはどのようなお話し合いであったでしょう。

佐藤参考人 国もここで、国会の議論で、細川大臣も責任は認めて、時期はともかく、いずれ被害者、原告と面談の上、謝罪の機会を持つということは言っておられますので、最高裁判決で確定していることもあり、肝炎対策基本法で認めていることもあり、国の責任そのものについての認識は形式的にはおありになるんだろうと思います。しかし、そこを本当に自覚して、この問題を全面的に解決するという姿勢に立っているかどうかについては、私ども、大変疑問である。

 前、ここの委員会で坂口先生も御質問になって、大臣もお答えになって、やりとりがあったようですが、まず、やはり被害者、原告にお会いいただいて、直接謝罪する。原告らも、責任を認めて謝罪するところから始まってほしいという意味合いでまず求めていることですので、それをお願いしたい。

 それから、今の五百万の点については、慰謝料というのも精神的苦痛に対する損害賠償ですので、これは全体としての損害賠償であります。しかし、先ほど来言ったように、最高裁判決での五百万というのは精神的苦痛に対する慰謝料ですので、これはまず、無症候、慢性肝炎、肝硬変、肝がん全体に共通する最低限の部分であるということです。

 ところが、無症候キャリアについては、除斥という形式的理由を前提にして認めない。慢性肝炎については、そのほかの損害部分もたくさんあるにもかかわらず、最高裁が五百万と言ったんだから五百万しか認めない。こういう、最高裁判決をいわば形式的にいいところ取りしてつまみ食いをしている、言ってみればそういう対応だ、それに終始しているというのが残念ながら現状です。

阿部委員 私があえてウイルスを入れてしまったことへの慰謝じゃないかと申しましたのは、これはもちろん、医学の進歩等々で、その後、そうしたことは当然防がれるべきだということが明らかになるわけですが、しかし、その当時、さまざまな行政的な瑕疵があり、現実には一生消えることのないウイルスを入れてしまうわけですね。

 私は、次に香坂参考人にお伺いしたいと思いますが、参考人はきょう、大変に貴重な図をおつくりいただきました。言葉って不思議で、無症候性キャリアと言われると、何か何にもないような、ウイルスは持っているけれども、何にもないような、ぴんぴん元気というようなイメージを逆に言葉って生み出すんだと思うんですね。確かに、私たち、医学用語では、そのときに例えば肝炎症状がないとか、極端に言えば何かの腹水もないとか、それは症候がないということですが、体の中では、一たん入ったウイルスは、絶えずホスト、体とさまざまに反応し合いながら事を起こしているわけでありますね。

 そこで、香坂参考人は、無症候性キャリアと一概に言われているものを詳しく分析されて、赤ちゃんのときウイルスがやってきて、赤ちゃんが反応できないから、そこを活性キャリア、免疫学的寛容といって、敵なんだけれどもやっつけられない、でもウイルスはふえている、活性キャリア。そこが肝炎の炎症を起こして、これは軽いか重いかは別として、恐らく軽く起こして、そこから不活性キャリアになる。

 不活性キャリアということは、セロコンバージョンと医学用語では言いますが、一応、抗体はできるんだ。この間が、大体二十年から三十年ということで、裁判の中でも問題になっている除斥期間ということにもなってくるんだと思うんですけれども、だがしかし、先ほど香坂参考人がおっしゃったように、医学も進歩し、それに伴って、ウイルスの活動はまた再活性化されたり、あるいはさまざまに変異をしたりということをお話しされたと思うんですね。

 香坂参考人から見れば、国がどこを無症候性キャリアとして考えているのか、その点は疑問であるとさっきおっしゃいましたけれども、果たして、肝炎の裁判のみならず、対策において、無症候性と言われている、しかしいつでも変異し得る、いつでも再燃し得るものを抱えた皆さんへの対処方法はどうあるべきかということについてお伺いいたします。

香坂参考人 キャリア時期の対応を医学的にということになりますと、これは注意を持って経過観察ということで、恐らく何もしないということがベストになってくるのではないかと思います。

 ただ、免疫寛容期から、僕は小児科なので免疫寛容期の患者さんを多く扱うんですけれども、結構動くんですよ、肝機能をフォローしていると。それで、一体、慢性肝炎期と免疫寛容期、まあ、不活性キャリア期になると安定するんですが、そこの間に明らかな区分ができるかどうかと言われると、これは恐らくかなり難しいと思うんですね。

 C型肝炎の患者さんも同じなんですけれども、GOT、GPTが動いている患者さんと動いていない患者さんとおられると思うんですが、結局、最初は、GOT、GPTが動いている、酵素的に肝炎の症状がある方を対象としてインターフェロン治療を始めたんですが、現在ではそうじゃなくてもやるということになっていますね。

 だから、そういうことを考えますと、症状がないだけでキャリア期というのを分けるというのは、臨床上も困難があるし、それをフォローしていく立場としても非常に問題があるんじゃないかと思います。

 また、阿部先生がおっしゃったように、不活性キャリア期になったり抗体完成期になっても、医療が進歩して種々の薬ができて免疫抑制療法が進歩いたしますと、逆に肝炎が賦活化してしまうという事態が起きて、いろいろな問題が生じて、ここ十年ぐらいのことなんですが、いろいろなことが明らかになった。しかも、老人になってから明らかになるので、このことをさっきから問題になっている単なる除斥期間ということで排除してしまうと、B型肝炎の問題点というのは後送りになるだけで何も解決しないんじゃないかということを危惧いたします。

阿部委員 医学的な知見の進歩からも、この除斥期間には問題があるんだと私も思います。

 続いて戸田参考人にお伺いいたしますが、いわゆるB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスはウイルスのタイプが違うということで、特にB型肝炎の場合は、炎症の時期を経ないで肝がんが発症するということは知見の中でも明らかになっていると思います。

 そういたしますと、戸田参考人がおっしゃるような、肝がんを防ぐことがやはり一番なんだといった場合に、B型肝炎にはとりわけ注意が必要。今までのようにC型も問題ですけれども、炎症の後にとなるのではないということもこれありというのが一点、ここをどう考えるか。

 もう一つ、それが恐らく先ほど来の肝炎のいわゆる重症度の分類にもあらわれていると思うのですけれども、軽症と分けられたものの中にも、もちろん肝がんにすぐ移行するものも恐らくB型の場合あるのではないか。そうすると、これをよく見ていくと、肝がん、肝硬変を、肝硬変のときの、あるいはそれ以前の慢性肝炎の炎症指標だけで分けるということは、大変に患者さんにとって現実的ではないのではないか。簡単に言えば、補償上は、肝硬変や肝がん、あるいは重症、軽症を分けず、慢性肝炎の場合の補償を充実させていくべきではないかと思いますが、いかがでしょう。

戸田参考人 いわゆる非活動性のキャリアですね、無症候性キャリア、未成熟で無症候性キャリアが続いて、そうして肝炎を発して、その後キャリアになった方がいらっしゃいますね。そういう人たちにどうして発がんがあるか。

 これは、C型肝炎ウイルスと違って、B型肝炎ウイルスは、ホストの遺伝子の中に組み込まれるんですね。ですから、炎症とかそういうのと無関係に、ホストの遺伝子の組み込み場所がちょうど悪いところに入ってしまうと、がん遺伝子が活性化されたり、あるいはp53といったものが不活化される、そういったことによって肝がんが出てくるんですね。比率にしますと年間〇・二%で、それほど多くはないということが言えます。

 では、ほっておいていいかどうかということなんですが、やはり無症候性キャリアの人でも、年に一回は超音波検査とか、そういった検査を当然受ける。それに対してどう対応するかというのは、それしかないと思います。がんについては早期発見というのがまず第一です。

阿部委員 今のお話は了解をいたしました。

 私がもう一つ伺いたかったのは、B型肝炎においては、いわゆる先ほど来のチャイルド・パフ分類でAとBだったらば軽症、Cだったら重症と分けて、ここでまた金額を変えてしまいます。これはC型肝炎においても、天野さんおっしゃったように、この分類というのは非現実的なものだと思います。どのくらいになったら、もう炎症が燃えかすになって肝がんが非常に大きくなっているときはこうした所見は強く出ないわけですから。でも、とりわけ私は、B型肝炎の肝がんや肝硬変の指標にこの分類を使うということの医学的妥当性がないのではないかと思って、後段のお伺いをいたしました。

 と申しますのも、ウイルスの行動様式がやはり違うので、必ずしも、さっき言った、何もない、炎症を飛び越えて肝がんになるケースがB型の場合あるので、パーセンテージはこれからまた集計で上がってくると思いますが、ここであえて医学的合理性、A、B、Cに分けて軽い、重いとやっていくことは妥当であるのかどうかについて、できれば教えてください。

戸田参考人 チャイルド・ピュー・スコアというのは医学的な分類なんですね。ですから、これを患者さんの障害の程度とかそういうのに当てはめるのは、僕は余り賛成はできないという気がするんですが。

 そうして、いわゆる非活動性のキャリア、肝がんを発するかもしれないというのと、もう一つは、慢性肝炎、肝硬変の人では、発がんの比率は随分違います。そういった意味では、無症候性キャリアと慢性肝炎、肝硬変の方については、当然、我々の対応も違って、社会的な対応も違ってきてもいいのではないかというふうに思っております。

阿部委員 溝上参考人にはお話を伺えなくて、また天野参考人にも、済みません、時間の配分で。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。また、体調を崩されて、きょう急遽御欠席になられました木村参考人の一日も早い御回復をお祈りいたしたいというふうに思います。

 このB型肝炎問題については、みんなの党の川田龍平参議院議員が十一月十六日の厚生労働委員会で質問を行わせていただいております。この問題について、最高裁判決によって国の責任が認められているわけでありますけれども、この最高裁判決を国が本当にどのように受けとめているのか、そして、その責任の重さということをどう認識しているのか、こういうことについて川田参議院議員がお尋ねをさせていただいております。

 その中で、岡本政務官が、昭和六十三年通知の発出以前の国の対応について事実関係をお話しした、そして、皮内注射の場合には、注射器の内筒を引くことがないことから注射筒内に血液が入ってくるリスクは少ないということは、先行訴訟、札幌地裁における平成元年に提起された訴訟でありますけれども、これにおいて国が主張したところでありますが、確かに御指摘のとおり、最高裁判決において出たその判決を重く受けとめて国としての今和解訴訟に臨んでいるというところでありますので、最高裁の御指摘には、重く受けとめているところであります、こういう御答弁をされておられて、どうも、最高裁判決で認定された国の責任ということについて、ある種軽視をしているのではないか、こういうふうにも受けとめられるような御答弁がなされています。

 これについて、まさに原告団の弁護人であります佐藤参考人に、こうした答弁が今行われていることについてどのようにお感じになられているか、お尋ねをしたいと思います。

佐藤参考人 率直に言って、今委員のおっしゃったのと同じ感想を持っています。最高裁判決の事実認定とその上に立った判断を、私はもっと率直に、重く受けとめていただきたいと思います。

 岡本さんがおっしゃった中に、昭和三十三年に針の取りかえを指示している、こういうふうに言いましたが、通達を出したから実態がどうなっていたかということについて本当にお調べになった上での答弁であったのか。

 最高裁判決でも言っているように、昭和四十四、五年まで、ツベルクリン反応以外のものについては、針の取りかえは行われたけれども筒はそのままであった、ツベルクリン反応については、その後も、筒も針も連続して行われたという認定が事実認定として行われています。ましてや、予防接種については採血とは違うんだというふうにおっしゃっていますが、予防接種でも、皮下注射の場合は血管に当たらないようにするために、先ほどの意見陳述に書きましたが、一たん引くんですよね。そうすると血液が逆流して針、筒に入るということを前提にして最高裁判決はなされています。

 そういった常識的な事実を理解した上での答弁であったのかという点も含めて、私どもは大変怒りを持ってお聞きをいたしました。

柿澤委員 もう一つ、菅総理が、これまでの薬害の問題は、多くは薬メーカーと、また例えば薬害エイズの場合には、これは川田龍平参議院議員は関係者、当事者なわけですけれども、国そのものに大きな責任はあるが、今回の場合は、予防接種という形で広い意味の責任はあるが、いろいろ法律的な対応が違ってくる、こういうことをおっしゃられています。

 そういう意味で、薬害エイズを初めとする問題とB型肝炎の問題では国の責任のあり方が違うんだということを総理がおっしゃられているわけですけれども、これについてどういうふうにお受けとめになられているか、お尋ねを申し上げたいと思います。

佐藤参考人 集団予防接種の場合は、昔の言葉で言えば、これは国の機関委任事務として、国が実施主体で行った行為であります。薬害のような、厚生行政上、薬メーカーその他製薬会社の行為に対する監督の問題ではなくて、自分が実施主体になって行った行為であるという意味では直接の加害者本人であるという、ここのところを十分御理解の上での答弁であったのかという点で、私は違っているのではないか、こう思います。

柿澤委員 さらに加えて、今、和解の財源論の問題になっているわけですが、二兆円とか八兆円とか言われて、また、そのために国民に広く増税をお願いしなければいけない、こういうような閣僚の発言も行われている。これは、ある意味では、原告当事者の皆さんを非常につらい立場に追いやる発言であるというふうに思います。

 こうした中で、本来であれば、原告当事者の方が真後ろにいらっしゃるわけですのでお尋ねをしたいところであるわけですけれども、こうしたことが今原告当事者の皆さんにもたらしている心理的な影響、また、さまざまな、これによる誤解に基づく御意見なども寄せられているのではないかと思います。そうしたことがもたらしている影響を、改めて率直に佐藤参考人に語っていただければというふうに思っております。よろしくお願いします。

佐藤参考人 先ほども申し上げましたが、その増税発言などがあった後、例えば私どもの街頭活動やさまざまな宣伝活動に対して、お金が欲しいのかとかいうような心ない言葉を浴びせられる。これはごく一部の方の誤解でしょうが、残念ながらそういったことを呼び起こしたという意味では、私ども、物事の本質を正しく国民に理解していただいた上で、その上でされている議論にはならないという意味で、私は、被害者、原告らが受けた精神的なダメージは大変大きいということをぜひ御理解いただきたい、こう思います。

 その前提になっている金額の算定については、先ほど来申し上げたように、数が過大で、誤っておって、要するに、誤った前提での議論をしようとしている。それから、あくまでもこの支出の性格が損害賠償という義務的支出であって、政策的な優先順位をどうするかという問題とは違うレベルの問題だということをちゃんと御理解いただきたい、こう思います。

柿澤委員 ここまで佐藤参考人にずっとお尋ねをしてまいりましたが、無症候性キャリアの問題について一点だけ、溝上参考人にお尋ねをしたいというふうに思います。

 無症候性キャリアと言われる方々の中にも肝炎を発症して大変重篤な状態に陥る方もいらっしゃる、また、いただいた資料の十ページを見ると、治癒をした方についても極めて重症な、これはデノボB型肝炎ですか、ごめんなさい、これは戸田参考人の方でしたね、になられるというようなことであります。しかし一方で、八割の方は肝炎を発症されないということも現実にある。

 こうしたところのリスク評価といいますか、こうしたことを一つ考えていかなければいけないというふうにも思うんですけれども、数値化するということが必ずしもできるものではないのかもしれませんけれども、この無症候性キャリアの皆さんの抱えているリスクというものを適切に判断、判定をする、そうした方法がないものかどうかということを思うんですけれども、お考えがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。

 溝上参考人、お願いします。

溝上参考人 現在、無症候性キャリアからの発症ということを、どうしてそういうことが起こるか、どういう比率で起こるか、どうすれば防げるかという研究が進んでおります。大体のところはもうわかってきまして、現在、厚労省の研究班でその仕事は急速に進んでおります。

 大体、今まで二百人ぐらいの方をフォローアップさせていただきまして、そのうちの七%が発症していました。ただしそれは、毎月検査をしてフォローアップしていきますと一〇〇%防げました。現在、これで論文投稿の準備に入っているところでございます。したがいまして、私自身は、先ほども言いましたように、この数年で物すごい勢いで進んだということの一つの大きなトピックだというふうに思っております。

 したがいまして、こういうのを、臨床的にどれくらいが起こるんだということをしっかりウオッチしまして、おかしいと思ったらそれに対してスペシャルチームをつくりまして、そこで集中的にやっていけば、こういう問題は十分にカバーできるだろうというふうに思っております。

柿澤委員 終わります。ありがとうございました。

牧委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時開議

牧委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 第百七十四回国会、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。細川厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

細川国務大臣 ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 労働者派遣制度につきましては、労働力の需給調整を図るための制度として創設されましたが、雇用の規制緩和という大義名分のもとに行き過ぎた規制緩和が行われた結果、日雇い派遣など社会的に問題のある形態が生じてしまいました。

 また、一昨年来の我が国の雇用情勢の急激な悪化に伴って社会問題化したいわゆる派遣切りにおいて、常時雇用する労働者でない方の労働者派遣についてはその雇用の不安定さが、製造業務派遣についてはさらに技能の継承の問題が指摘されており、これらの問題に的確に対応した措置を講ずる必要があります。

 このため、常時雇用する労働者でない方の労働者派遣及び製造業務派遣を原則として禁止する等労働者派遣事業に係る制度の整備等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、派遣労働者の雇用の安定や保護を図るため、常時雇用する労働者でない方について、雇用の安定等の観点から問題が少ないいわゆる専門二十六業務への労働者派遣などの場合を除き、労働者派遣を行ってはならないこととしております。また、一昨年来のいわゆる派遣切りにおいて、製造業務における派遣労働者の雇用の不安定さが問題となったことから、製造業務については、雇用の安定性が比較的高い常時雇用する労働者を派遣する場合を除き、労働者派遣を行ってはならないこととしております。

 第二に、雇用管理上問題のある派遣形態を禁止し、派遣労働者の雇用の安定や保護を図るため、日々または二カ月以内の期間を定めて雇用する労働者について、その適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務以外の業務については、労働者派遣を行ってはならないこととしております。

 第三に、派遣労働者の賃金等の待遇の確保を図るため、派遣元事業主は、派遣労働者の賃金等について、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡に配慮しなければならないこととするとともに、労働者派遣に関する料金の平均額と派遣労働者の賃金の平均額の差額が労働者派遣に関する料金の平均額に占める割合等の情報を提供することを義務化することとしております。

 第四に、違法派遣の是正に当たって、派遣労働者の希望を踏まえつつ雇用の安定が図られるようにするため、禁止業務に従事させた場合、無許可事業主等から派遣労働者を受け入れた場合、派遣可能期間の制限に違反した場合、常時雇用する労働者でない者を派遣労働者として受け入れた場合またはいわゆる偽装請負の場合については、当該行為を行った時点において、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申し込みをしたものとみなすこととしております。

 このほか、法律の題名を労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律に改めるとともに、所要の規定の整備を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、公布の日から起算して六カ月を超えない範囲内において政令で定める日としておりますが、常時雇用する労働者でない方についての労働者派遣や製造業務への労働者派遣の禁止については、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、常時雇用する労働者でない方についての労働者派遣のうち、雇用の安定に大きな支障がない等の一部業務については、その労働者派遣の禁止を、さらに二年を超えない範囲内において政令で定める日まで猶予することとしています。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

牧委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


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