衆議院

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第2号 平成23年3月2日(水曜日)

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平成二十三年三月二日(水曜日)

    午後二時一分開議

 出席委員

   委員長 牧  義夫君

   理事 郡  和子君 理事 中根 康浩君

   理事 藤田 一枝君 理事 柚木 道義君

   理事 渡辺  周君

      青木  愛君    石毛えい子君

      石森 久嗣君    稲富 修二君

      大西 健介君    岡本 充功君

      工藤 仁美君    小宮山洋子君

      斉藤  進君    空本 誠喜君

      田中美絵子君    竹田 光明君

      玉木 朝子君    長尾  敬君

      仁木 博文君    初鹿 明博君

      樋口 俊一君    平山 泰朗君

      福田衣里子君    三宅 雪子君

      宮崎 岳志君    山口 和之君

      山崎 摩耶君    吉田 統彦君

    …………………………………

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   厚生労働副大臣      大塚 耕平君

   厚生労働大臣政務官    岡本 充功君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          有松 育子君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       平野 良雄君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       尾澤 英夫君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  石森 久嗣君     空本 誠喜君

同日

 辞任         補欠選任

  空本 誠喜君     石森 久嗣君

    ―――――――――――――

二月二十四日

 平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する法律案(内閣提出第九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

牧委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、自由民主党・無所属の会、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及びみんなの党所属委員に対し御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、郡委員長代理着席〕

    〔郡委員長代理退席、委員長着席〕

牧委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、自由民主党・無所属の会、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及びみんなの党所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官有松育子君、厚生労働省労働基準局長金子順一君、労働基準局安全衛生部長平野良雄君、労働基準局労災補償部長尾澤英夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

牧委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

牧委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中根康浩君。

中根委員 民主党の中根康浩です。

 初めに、大臣にお伺いいたします。

 いわゆる運用三号、正確な情報、状況、これを国民の皆様に、あるいは傍聴席にいらっしゃるマスコミを通じて国民の皆様にきちんとお伝えをする必要があろうかと思います。国会で議論にもなっておりますけれども、そもそもこの件が問題になった経緯はどのようなものか、御説明をお願いいたします。

細川国務大臣 中根委員にお答えいたします。

 いわゆる運用三号の件で、今、いろいろと国会でも問題になっております。そのことについて、まず御説明を申し上げたいと思います。

 第三号被保険者の記録不整合問題は、昭和六十一年四月に第三号被保険者制度が創設されましたことに端を発しております。

 この制度におきましては、被保険者に届け出義務があり、届け出によって年金受給権を得るものとなっております。しかし、被保険者自身がこの種別変更届の届け出を行っていなかったこと、そしてまた、制度の周知徹底や、届け出漏れがあった場合の旧社保庁の対応が不徹底であったこと、また、裁定請求時に旧社会保険庁が配偶者記録との照合作業等の事務を的確に行っていなかったことなどに起因をして、この記録不整合が生じているところでございます。

 この問題の対象者は相当多数の人数に及ぶという可能性がありまして、既に年金を受給している方の記録を訂正する場合には年金の減額等の影響が出るほか、保険料をさかのぼって納付することを認める場合でも、資力が十分でなければ年金の減額等の影響が出るということが想定をされます。このため、この問題が一昨年秋に旧社会保険庁職員に対して行ったアンケート調査で明らかになりました。その後、厚生労働省内で対処策を検討いたしまして、年金記録回復委員会の助言も受けまして、昨年の三月二十九日にこの運用三号による対応を決定いたしたところでございます。

中根委員 細川大臣は、法改正も選択肢に入るというような旨を発言されておられますが、今後どのように対処されていかれるおつもりか、これもまた、わかりやすく御説明をお願いいたします。

細川国務大臣 先ほどの件に続きまして、三月の二十九日に運用三号の対応を決定したと申し上げましたけれども、その後、ことしの一月一日からこの運用三号の対応を開始いたしましたけれども、その妥当性につきまして、総務省の年金業務監視委員会によっていろいろな意見が提示をされまして、また、衆議院の予算委員会でもいろいろな指摘を受けまして、二月の二十四日に運用三号の対応を留保しているというところでございます。それが、先ほどに続いた経過であります。

 今御質問がありましたように、それでは今後どのような対応をしていくのか、こういう御質問でございますけれども、不整合な第三号被保険者期間を有する方は、先ほども申し上げましたように多数いるものと考えており、仮に従来どおりの取り扱いをした場合には、既に受け取られている年金額が減ってしまうなど、多くの年金受給権者や被保険者に不測の不利益を生じさせるということで、年金制度に対する国民の信頼を損ねるということにもなりかねないところでございます。そのため、先ほども申し上げましたいわゆる運用三号による措置を講じまして、国民の皆さんに大きな負担を強いることがないようにしたものでございます。

 今後の対応につきましては、二月の二十五日、片山総務大臣と私の方で整理をいたしました七つの点を踏まえまして、厚生労働大臣に助言を行うという立場にあります年金記録回復委員会に意見を求めるとともに、年金業務の実施状況について総務大臣に意見を述べる立場にある年金業務監視委員会の見解を求めつつ、総務大臣と協議して私が決定をする、こういうことになっているところでございます。

 それで、不整合な第三号被保険者期間を有する方にさまざまなケースもございまして、いろいろなことが想定をされますので、今後の対応をどう決定するかということについては大変難しい面がございます。したがって、今後の対応としては、法改正とか、あるいは運用三号通知の廃止というようなものも選択肢の一つとして検討していって、適切な結論を出したい、このように考えております。

中根委員 無年金の方や低年金の方を少しでも解消したいという思いで取り組まれておられるということであろうと思いますが、いずれにいたしましても、大切なことは、公平性、公平感あるいは納得感、こういったものをきちんと確保しながら、多くの方にかかわることでございますので、大臣の指導力のもとに、まさに適切な御判断をしていただけますように、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 引き続きまして、年金のことについて触れてまいりたいと思います。

 特別障害給付金、平成十六年に法律が成立いたしまして、平成十七年四月から施行されている。年金を受給できない障害者が生ずる四つの主な事情のうち、当時、学生と主婦を支給対象として、特別障害給付金という形で一定の救済をしたということでございますが、言いかえると、残りの二つの類型につきましては積み残された状態になっている。そのときの法律の附則にも、「今後検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。」というふうに定められております。

 残りの二つの類型、国籍要件撤廃前の外国人無年金障害者、それからもう一つの、四つ目の類型の中の例えば夜間、定時制、通信制の学校に通う学生、こういったさまざまなものがあるんですけれども、この積み残された類型に対して特別障害給付金を支給するというような、つまりは、附則に書かれたような検討がこれまで具体的になされてきたのかこなかったのか、あるいは今後どのように検討していくおつもりなのかというようなことを御説明いただきたいと思います。

大塚副大臣 御質問ありがとうございます。

 今、年金制度のいわばはざまにある方々に対してどのような対応をしているかという御下問であったかと思います。

 二つ御下問をいただきましたが、まず、夜間、通信の学生であった皆様方に関して申し上げますと、もともと、特別障害給付金制度というものは、国民年金制度が、当初は一部の方を加入対象外としたために、徐々にこの対象を拡大してきたという発展過程において、任意加入をしなかった期間に障害を負ったために障害年金を受給していない方々に対して、福祉的措置として給付を行うものとして創設をしたものであります。

 今御下問のありました夜間、通信の学生であった皆様方については、国民年金の発足当初から強制加入の対象とされておりましたことから、特別障害給付金の支給対象とはなっておりません。しかし、今申し上げましたように、国民年金制度の発足当初から強制加入の対象となっておりますので、そういう意味では、その範囲内においてカバーされているという考え方もできようかというふうに思います。

 また、もう一つ御下問のありました、国籍要件があったために、そのはざまの対象として考えられる在日外国人の中で障害を持っておられる皆様方であります。

 国民年金においては、かつては外国人を適用対象外としておりましたが、御承知のとおり、一九八二年に難民条約を批准する際に、法改正によって国籍要件の撤廃がなされました。しかし、その効力は将来に向かって発揮されるというものでありますので、その旨は改正法の附則第五項において明記をされております。

 したがって、一定年齢以上の外国人の方々が障害基礎年金などを受給できずに今御指摘のような問題を抱えているというケースもありますので、こうした方々に対する福祉的措置については、特別障害給付金法附則第二条の検討規定の趣旨なども踏まえていくことが重要ということであります。

 政府としても、無年金の外国人障害者の方々の状況を把握したり、超党派による無年金障害者問題を考える議員連盟の総会へ参加などをさせていただきまして、今後とも、立法府その他の関係者の皆様方の御議論も踏まえつつ、今御指摘のあった附則への対応を可能な範囲で図ってまいりたいというふうに考えております。

中根委員 今も御説明があったんですが、繰り返しになりますけれども、平成三年四月以前に初診日のある学生、昼間の学生は任意加入、この場合にもし未納であった場合は無年金になる、しかし、特別障害給付金で救済をするということになるんですが、夜間の学生であった方は強制加入の対象者、この方が未加入であると無年金になる、そして、現状では特別障害給付金の支給対象にはならない。昼間の学生と夜間の学生で大きな違いがある。

 国会図書館なんかでいろいろ調べてもらって、当時、夜間の学生が強制加入であったということがどれほど周知されていたかをいろいろ調べてみたんですけれども、なかなか当時の資料がないんですが、唯一、三重県津市の市政便りみたいなものが出てまいりまして、これを見ると、学生は任意加入ということが書いてあって、平成三年四月からは強制適用になりますよというふうに書いてあって、夜間の学生はどうかとか、定時制は、通信制はどうかということは一切記載されていないんですね。恐らくほかの自治体でも同じようなことだろうと思うんです。

 夜間の学生は強制加入であった、平成三年四月から強制加入になるんだということが果たして行政としてどれほど周知されていたかということでいえば、かなり疑問符をつけざるを得ないだろうというふうに思いますので、ここは、御当人、御家族の怠慢というかミスということではなくて、むしろ、これは運用三号の話でも出てきたように、行政側にも一定の周知徹底を怠ったというようなことがあるんだろうと認めていただきたいと思うんですね。

 ぜひ、今後、夜間学生の無年金障害者の方々に特別障害給付金を支給するなど、何らかの救済を御検討いただけますように、これはお願いをさせていただきます。

 もう時間がありませんので、もう一つ用意させていただいているテーマに移らせていただきます。

 ケアプラザ、これは財団法人労災サポートセンターが厚労省の委託で運営しているものなんですけれども、遷延性意識障害という問題を取り上げたいんですけれども、この遷延性意識障害のように極めて重度な方、労働災害によって被災した場合、医療的ケアが必要だ、ショートステイあるいは入所、こういったもののニーズが大変多い、多いというか、切実な問題として声が上げられております。

 まとめて御質問いたしますけれども、このケアプラザで遷延性意識障害の方をきちんと受け入れてもらうことができないか、ショートステイあるいは入所、そういったニーズをかなえてもらえないかということ。

 さらには、利用するときには入居者選考会というものが行われるそうでありますけれども、この入居者選考会が判断基準とする入居者要件というものも、平成四年にできて二十年近くたった今、その当時のまま、見直されることなく運用されてきているんですね。医療や介護の発達によってこういう重度の方がふえたということの中で、この入居要件の見直しというものも、つまりは、医療的ケアをきちんと提供する必要のある方も受け入れるというような方向で見直すつもりがないかということ。

 あるいは、このケアプラザにおいて、設備とか人員配置、こういったものが足りないから受け入れることができないんだということであるとするならば、これは筋違いかもしれませんけれども、八兆円あると言われている労災保険の積立金、あるいは、ケアプラザの利用者からホテルコストのようなものも利用者負担として徴収しておられる。全国で八百人ぐらいの利用者がおられて、緊急事態用あるいは将来危険負担分というような名目で積み上げられているお金が七億円ほどある。これは、会計検査院からも有効に活用すべきではないか、精査をすべきではないかというような指摘も受けているというふうにも聞いておりますので、こういった積立金とかこういうお金を有効に人員配置あるいは設備充実に使うことができないかということ。

 それから、僕もこれははっきりわかりませんけれども、自民党から出た天下りについての予備的調査、これをずらずらっと見ていますと、財団法人労災サポートセンターというのも入っているんですね。つまり、天下りを受け入れている団体であるということ。うわさによると、年収一千五百万円以上受け取っている方が十数人いらっしゃるというようなことも聞いております。

 百歩、あるいは五十歩でもいいんですけれども譲って、天下りを受け入れているところが全部悪いわけじゃない。こういう社会的に弱い立場に置かれた人、困っている人に本当に必要なサービスや医療、介護が提供できるのであれば、それはもう天下りなんてある意味どうでもいいということであるんです。逆に、そういうものが十分提供されていないにもかかわらず、そういう天下りの実態があるということであると、これはもう国民の皆様から大きな、厳しいおしかりを受けざるを得ないということになるんだろうというふうに思います。

 こういう遷延性意識障害のような重度の障害の方をこのケアプラザなんかできちんと医療も提供できる、そんな受け入れ体制を整えていく、そういうことができないか、お尋ねをいたします。

尾澤政府参考人 お答えいたします。

 労災特別介護施設、すなわちケアプラザでございますが、この施設は、労災に遭われ重度の障害を負った方で、在宅での介護が困難な方に入居をいただいております。

 遷延性意識障害の方も同様でございますが、遷延性意識障害の方のように特に看護師などのケアが必要な方にはナースステーションの近くの部屋でケアをするなど、こうした症状、また空きベッドの状況を勘案して入居をいただいているところでございまして、労災特別介護施設は現在全国で八施設ございますけれども、この中で、遷延性意識障害の方は三施設に五名の方が現在入居されている状況でございます。

 この遷延性意識障害の方を受け入れるに当たっての選考の基準でございますが、先ほど申し上げましたように、重度の被災労働者の方々で在宅での介護が困難な方ということでございます。一方で、この施設は常勤の医師を配置していない施設でございますので、医師による治療が必要で、入院医療を必要とする方はこの施設には入居できないということでございますが、入居に当たっては、入居希望者の方々の状況を十分に精査しまして入居を決めていきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、入居要件についてのお尋ねがございました。平成四年の設置以来、先ほど申しましたように、不測の労働災害によりまして傷病等級または障害等級が一級から三級までの重度被災者の方々で、在宅での介護が困難な原則六十歳以上の方々に御入居いただいておりますが、六十歳未満の方々におきましても、在宅での介護が困難な方々等々の状況を見ながら、空きベッドの状況を見ながら御入居いただいているところでございました。

 平成十四年の二月からは、四十五歳未満の方でありましても、高齢者同様に、先ほどの、在宅での介護が困難な状況等々、あるいは施設の空き状況を見まして入居を認めているところでございまして、今後とも、希望される方々の介護の実情を踏まえまして適切に運用を図っていきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、施設あるいは人員配置の問題について、この整備について労災勘定の積立金の活用のお尋ねがございましたけれども、御指摘ございましたように、労災勘定の積立金は、労災保険におきまして、労災事故に遭われた方あるいは御遺族の方の将来の年金給付の原資ということで積み立てているものでございまして、その使途は法律により限定されているものでございまして、これをその施設に利用するということは適切ではないというふうに考えているところでございます。

 また、労災サポートセンターに国家公務員のOBがいるということでございますが、現在、八施設で二十一名のOBがおりますが、これは、こうした方々が労災年金の受給者であるということにかんがみまして、そうした労災年金の受給の手続の概要に熟知しているということと同時に、こうした施設の管理、事務等に十分にその能力を発揮していただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、こうした労災の特別介護施設に入居を希望される方々につきまして、その要件に合われる方について、いろいろな状況を、十分に実情を見ながら、その運用、入居について考えてまいりたいというふうに思っているところでございます。

中根委員 重度の労災被災者、特に遷延性意識障害、今五名とおっしゃいましたけれども、恐らく、実態調査すれば五名にはとどまらないと思うんですね。また、利用されたい方もたくさんいらっしゃると思うんです。単なる天下り受け入れ施設が全国に八カ所あるというふうに言われないためにも、ぜひ、きょう指摘をさせていただいた点、前向きに今後検討していただけますようによろしくお願い申し上げまして、終わります。

牧委員長 次に、工藤仁美さん。

工藤委員 民主党の工藤仁美でございます。

 私、この厚生労働委員会、初めての質問の機会でございます。本日、質問の機会を与えていただきましたことに、各委員の皆さんに心から感謝を申し上げます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 今の中根委員の最後の御質問でも労働災害について触れられておりましたけれども、私も、労働災害の防止、それから職場におけるメンタルヘルス対策について質問させていただきます。

 今回、質問するに当たりまして資料など調べ、改めて労働災害の数が多いことに驚きました。日進月歩で技術が発達し、機械化が進んでいるわけですから、安全対策にもその技術が活用されれば人間の働き方は安全かつ楽になっていくと、当たり前に考えればそう思うわけですけれども、実際の職場は逆ではないのかと思わざるを得ません。まず、そのことを数字で確認させていただきたいと思いますので、お答えください。

 まず、ここ最近の労働災害で死亡された人、あわせて、けがや病気で仕事を休業された人の数についてお答えください。

平野政府参考人 まず、死亡災害についてでございますが、平成二十二年に労働災害で亡くなられた方は、現在で、まだ速報値でございますけれども、千百四十三名の方が亡くなられております。前年の同じ時期の速報値と比較いたしまして百二十八人、一二・六%の増加というふうになっております。

 また、休業四日以上の死傷者数につきましては、平成二十二年の速報、八万四千九百六十八人でございまして、前年の同期に比べまして二千百十九人、二・六%の増加というふうになってございます。

工藤委員 それでは次に、私がきょうとりわけ問題としたいと思っております精神疾患、精神障害で労災を申請した人の数、あわせて、労災と認定されて補償の支給が決定された人の数をお答えください。

尾澤政府参考人 平成二十一年度の精神障害の事案の労災請求件数は千百三十六件で、平成二十年度に比べまして二百九件の増加でございます。また、平成二十一年度の支給決定件数は二百三十四件で、平成二十年度、前年度に比べまして三十五件の減少でございます。

工藤委員 済みません、もう一度確認したいんですけれども、一番直近の平成二十一年度で、申請が千百三十六件、そのうちの支給決定が二百三十四。また、平成二十年度は、申請が九百二十七で決定が二百六十九ということでよろしいでしょうか。

尾澤政府参考人 そのとおりでございます。

工藤委員 今の数字で見ましても、平成二十一年、申請千百三十六件、支給決定二百三十四、これは認定率二七%になります。また、平成二十年度、申請九百二十七に対して支給決定が二百六十九、これは認定率三一%になります。

 また、調べました自殺された方の数だけを取り上げてみましても、平成二十年度で、請求が百四十八。自殺された方なので御家族が請求をされたんだと思いますけれども、請求が百四十八に対して決定が六十六、認定率四一%。平成二十一年度でも、請求が百五十七の決定が六十三ですので、認定率が四五%となっております。

 自殺をされて御家族が労災の申請をする、こういった場合であっても、認定率が半分以下の四割。また、それ以外の場合であっても、労災の認定率というものが二割から三割の間ということになっておりますけれども、これは申請に対して余りにも支給決定が少ないのではないかというふうに思いますけれども、これはどういった理由からなのか、ぜひお答えいただきたいと思います。

尾澤政府参考人 精神障害でございますが、これはさまざまな要因で発病するものでございます。

 精神障害が業務上疾病と認められるためには、一つには精神障害の発病があったかどうか、あるいは疾患名、それから業務による心理的負荷があったかどうか、それから業務以外の心理的負荷があったかどうか、あるいは、そもそも個体側の要因があったかどうか、こうしたことを総合的に判断して判断しているところでございます。

 支給決定件数が請求件数に対して少ない理由でございますが、こうした要件から判断した結果、業務による強い心理的負荷が認められなかったということでこのような結果になっているものでございます。

工藤委員 あくまでこの認定率というものだけを見ての感想ということになりますけれども、認定率が半分以下で余りにも低いというふうに感じますのは、やはり認定される基準が厳し過ぎるといいますか、申請する側、亡くなった方であれば家族の方の側からすると、その認定の基準というものが相当ハードルが高いのではないかというふうに感じますけれども、この支給決定の基準というものの見直しなどが検討されているといったことはないのでしょうか。

小林大臣政務官 認定されている率が低い、こういう御指摘がありました。

 労働災害の認定ですので、業務と疾病の因果関係がどうなのか、このことが一番のポイントになります。したがって、医学的な知見などに基づいて判断をされていくもの、これが基本だと考えております。現在の精神障害の認定基準についても、医学などの専門家による検討結果に基づいて策定したり改定してきている、これが事実関係でございます。

 しかしながら、精神障害の認定については、医学の進歩などを踏まえた見直しのほか、その審査の迅速化を図る必要がある、このように思います。審査は、二十一年度の平均で八・七カ月程度かかっているという数字になっておりますので、今言ったように迅速化を図る必要があるため、現在、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会を開催しておりまして、その検討結果に基づき適切な見直しを図っていきたい、このように考えております。

工藤委員 ありがとうございました。

 労災に罹患された方、また、自殺をされた方であれば御家族の方は、大変な思いをしながら申請をしていると思いますので、ぜひとも、できる限り多くの方が認定を、補償の支給決定を受けられるように、今後とも検討を続けていただきたいということを述べさせていただきます。

 次の質問でございますけれども、精神障害というものを発生させないその対策についてお伺いいたします。

 職場のメンタルヘルス対策として、現在、省の中で新たな制度を検討しているとお聞きしておりますけれども、その内容についてお伺いいたします。

平野政府参考人 職場のメンタルヘルスの問題に対処いたすために、昨年十二月の労働政策審議会の建議が出ております。

 その建議の中で、ストレスに関する働く方の気づきを促すとともに、労働者のプライバシーに配慮しつつ適切な健康管理を行い、職場環境の改善につなげていくことが重要であることから、まず、医師が労働者のストレスに関連する症状や不調を確認し、この結果の通知を受けた労働者が事業者に対して医師による面接を申し出た場合には、事業者が医師による面接指導及び医師からの意見聴取を行う、このことを事業者の義務とする制度が提言されております。

 また、同建議では、事業者は、労働者が面接の申し出を行ったことや、面接指導の結果を理由として、労働者に不利益な取り扱いをしてはならないこととされているところでございます。

 厚生労働省では、この具体化を図るために、労働安全衛生法の改正を含め、現在検討しているところでございます。

工藤委員 そうしますと、今検討されている新たな制度といいますのは、労働者のメンタル不調の早期の段階で、医師などが早期に気づいて重篤にならないようにするといった、そういった制度なんでしょうか。

平野政府参考人 先生おっしゃいますように、メンタルヘルスの不調を早期に発見いたしまして、それがひどくならないよう職場環境の改善につなげていくという趣旨でございます。

工藤委員 ありがとうございます。

 その新たな制度がもし導入されることになりましたら、現在の深刻な状況を改善する実効性のある内容となりますよう、さらに重ねて慎重に検討されるよう、ぜひともお願いをいたします。

 私は、メンタルヘルス対策の上で最も重要なのは予防だというふうに考えております。今ほどお聞きしました新たな制度は、メンタル不調を早期の気づきで、病気になる手前で防ごうという内容となっているというふうにお聞きしましたけれども、もちろん、それはそれで重要だと思いますけれども、私は、さらに重要なのは、そのメンタル不調につながるような職場の根本的な原因をなくすということが一番重要な対策ではないかというふうに考えております。

 その根本の原因の一つは、長時間労働です。しかし、これは労働基準法に照らして改善を図ることができます。実態はどうかということはさておきまして、対応できる法律があります。しかし、もう一つの、メンタル不調を引き起こす根本の原因と言えるのは、職場の人間関係ではないでしょうか。上司または立場の強い者から弱い者へのパワーハラスメント、あるいは同僚間のいじめ、嫌がらせ、こういったことからメンタル不調に陥り、それが高じてうつなどの病気になってしまうという例がふえ続けている実態がございます。

 これらの職場のいじめ、嫌がらせ、またはパワーハラスメントに関して、厚生労働省の全国の総合労働相談コーナーに寄せられる相談件数の集計を見てみますと、相談総数の一割強がこのいじめ、嫌がらせ、パワーハラスメントに関する相談という結果が出ており、また、毎年数千件単位でこの項目の相談がふえ続けております。

 そこでお尋ねいたしますけれども、このような実態を把握されているのかどうか、また、いじめ、嫌がらせ、パワーハラスメントに対して、現在、対処できるルールといったものがあるのかないのか、お尋ねいたします。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、メンタル不調の予防という観点からも、このいじめの問題、パワーハラスメントの問題というのは大変重要な問題だと思います。

 これも御指摘がございましたが、労働相談の中で相当多くの件数が寄せられておりまして、解雇あるいは労働条件の問題の次に、いじめ、パワハラの相談があるということでございます。そうしたことでございまして、やはり私どもとしても積極的に取り組んでいかなきゃいけないだろうというふうに考えております。

 現在の取り組みといたしましては、メンタルヘルス不調の予防ということに関しましては、メンタルヘルスケアの指針というのをつくっております。これは事業者、企業に取り組んでいただく内容を指針として作成したものでございまして、これを事業者に対して指導する、あるいは事業者に対して支援を行う、こうした取り組みを進めているところでございます。

工藤委員 指針の取り組みということなんですけれども、しかし、先ほども申しましたように、労働相談コーナーですか、そういったところへの相談もふえている状況でもありますし、また労働災害の請求件数、そういったものもふえている現状にありますので、さらに抜本的なといいますか、総合的な、横断的な取り組みが重要ではないかというふうに思っております。

 実は私、一昨年の夏に初当選をさせていただきまして国会で働くようになりますまでは、労働組合の事務所で、労働者を対象とした労働相談に応じる活動をしてまいりました。その経験の中でも、非常にこのいじめ、嫌がらせ、パワハラというものの相談が年々ふえる状況にありましたけれども、しかし、それを解決するというのは本当に大変なことでございます。

 大体、いじめ、嫌がらせなどは行為が密室で行われることが多く、また、仮にそれが密室でなくても、やはりそういった行為を見ている同僚にしても、次は自分、我が身に降りかかるのではないかといったことから、その見ている行為を口にしないで口をつぐんでしまうといったことから、解決する上でも、事実を認めさせる、雇う側に認めさせる、または相手に認めさせるということで、大変苦慮をした経験がございます。

 しかし、そういった大変困難な中でも、全国にそういった被害に遭った人に寄り添って、ともに励ましたり、また会社と交渉するなどして職場に復帰をさせる、病気になっても改善してから職場復帰をさせるなど、地道な、本当に粘り強い活動をしている、そういった労働組合やNPOなどの市民団体が多数ございます。

 このいじめ、嫌がらせ、パワーハラスメントの改善に結びつく、そういった対策を講じる場合に、ぜひともそういった市民団体、労働組合の経験を積み重ねている人たちの声を、意見を取り入れた上での対策を検討していただきたいと思いますが、これはぜひとも細川厚生労働大臣にお答えいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

細川国務大臣 職場でのいじめ、嫌がらせ、そしてパワハラ、こういうものは大変難しい問題で、委員がいろいろな御経験の中でそれらの解決に向けて取り組んでこられた、大変敬意を表する次第でございます。しかし、なかなか解決が難しい、こういうことでもございました。

 そこで、大事なことは、職場で嫌がらせ、いじめ、パワハラ、こういうものがあることは、やはり現場が一番よく知っておられる。そして、労働組合の方、使用者の皆さん、そういうところで、こういう問題があるということをまずはしっかり共有することだというふうに思います。そして、そこで、どういうふうに解決していったらいいかということをやはり職場で、労使の皆さんでまずはきちっと話をしていただきたいなというふうに思います。

 厚生労働省としては、そういうところで熱心に取り組んでおられる労働組合とか、あるいは職場でも、非常に明るい職場をつくり上げてそういう問題がなくなっている、そういうような職場、事業所などの経験もよく聞きまして、そしてこのメンタルヘルス不調の予防に向けて取り組んでいきたいというふうに思って、来年度もそのための予算も組んでいるところでございます。

工藤委員 大臣、ありがとうございました。

 ちょっと時間が過ぎてしまったんですけれども、最後に一言、ぜひとも述べさせていただきたいのは有期契約労働者、非正規労働者の大半を占める有期契約労働者についてでございます。

 こういった労災給付、労災支給、給付ですとか労働者の権利にかかわるもの、また、先ほどお話を伺いました新たな制度といったものができましても、有期契約で働く人たちは、そういったことを利用しようとしたことが次の契約の更新を拒否される、雇いどめされるのではないかという不安から、なかなかその権利を行使することができない、制度を利用することができない、そういった実態にあると思います。

 今、労働政策審議会の中で、この有期契約のあり方について議論がされているところでございますけれども、ぜひとも、有期契約で働く人たちのこういった非常に不安定な状態、この実態というものを踏まえた上で、そういう真摯な議論が行われ、そしてそういった結果、現状の改善につながる結果となりますよう、私も注目をしておりますし、また党内でも一生懸命、全力で私自身も取り組んでいきます決意を述べさせていただき、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

牧委員長 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 民主党の吉田統彦でございます。

 貴重なお時間ですので、早速質問に入りたいと思います。

 平成十六年四月一日に、PMDA、医薬品医療機器総合機構が設立され、業務が開始されております。この機構は、医薬品の副作用等による健康被害に対して迅速な救済を図り、医薬品や医療機器などの品質、有効性及び安全性について治験前から承認までを一貫した体制で指導、審査し、市販後における安全性に関する情報の収集、分析、提供を行うことを目的としております。

 さて、そこで、日本では、欧米で既に使用されている医療機器や医薬品が日本で使えないというデバイスラグ、ドラッグラグという問題がございます。特に、診断用の機器はまだいいんですが、治療に用いる機器に関しては惨たんたるありさまでございます。

 例えば、診断用の機器ですと、CTなんかは二五%ぐらい国産メーカーのシェアがありますし、軟性スコープ、胃の内視鏡なんかは九〇%以上国産メーカーのシェアで占められております。しかしながら、心臓の検査、治療に用いるカテーテル、これは一%ぐらいしか国産のシェアはございません。さらに、ステント、これも一%。ペースメーカーに至っては〇%でございます。さらに、ステントに関して言えば、日本の科学技術は本当に世界に冠たるものでございまして、生体内で吸収されてしまう、溶けるステントというのが開発されているんですが、日本ではまだ使えません。しかしながら、海外では既に使われています。

 こういったデバイスラグ、ドラッグラグの解消は、国産メーカーに対する殖産興業、そして一番大事なのは、国民に一番すばらしい医療状況を提供するという意味で非常に大事だと思うんです。

 そこで、今、PMDAに関しては事業仕分け等々を受けて改革の途中であると伺っておりますが、実際の改革がどのように進んでいるか、そして、今後どのようになっていくかをお聞かせ願えませんでしょうか。

細川国務大臣 吉田委員はお医者さんでもありますし、この点については大変熱心にいろいろと取り組んでおられるということで、敬意を表したいと思います。

 私どもも、このデバイスラグ、ドラッグラグという問題を解消していくためにはしっかり取り組んでいかなければというふうに思っております。

 そのために、現在、昨年六月に閣議決定をいたしました新成長戦略に基づきまして、承認審査の迅速化に向けまして、計画的にPMDAの審査の体制の充実などを図っているところでございます。具体的には、PMDAの人員の増強、あるいはアカデミア、企業等との人材交流、いろいろなそういうことで審査体制の充実などを図っているところでございます。

 こういう取り組みを通じまして、患者の皆さん方の立場に立って、すぐれた製品がより早く患者さんに届くように、デバイスラグ、ドラッグラグの解消に向けて全力で取り組んでまいります。

吉田(統)委員 力強いお言葉、ありがとうございます。

 今もお話に出ましたが、人員の拡充という中で、私は、特に医療機器なんですが、承認審査のおくれの原因として、技術系の職員の不足によるものがあるんだと思います。平成二十二年二月一日現在で、独法全体の職員数は五百三十三名、うち四百三十一名が技術系職員ですが、薬学系が二百八十九名と六七・一%。圧倒的に多いんです。しかしながら、医師は二十九名、大体六・七%ですね。工学系は三十名という現状でございます。

 こういった、特に医療機器の審査をするという観点から、やはり技術系、特に工学系、医師の割合が少な過ぎるように思うんですが、この点に関してはどのように改善をお図りいただけるのでしょうか。お聞かせください。

岡本大臣政務官 今御指摘になられました、どういった人材を登用していくかということでありますけれども、医療機器の審査においては広範な技術的専門知識が必要であるという観点から、今お話をいただきました審査人員の確保に当たっては、人数ももちろんでありますが、工学、医学、理学などといった専門性を考慮した人員をバランスよく採用するということが重要であろうというふうに考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。ぜひ、そういった割合をふやしていただきたいと思います。

 また、少し前にPMDAというのは審査料の値上げを行っております。これはやはり、日本も、これからどんどん活躍していただきたいベンチャー系の企業や中小の企業、そういった体力、経済力のない企業に対しては非常に大きな負担になっていると思います。

 今後、人員の拡充をしていく中で、できればそういう審査料の値上げ等々はやはりしていただきたくないなと思うのが本音でございますし、また、そういったすぐれた技術を持ちながら、経済的になかなかそう大きな負担にこたえられないような企業に対してどのように対応していかれるか、それをお聞かせ願えればと思います。

岡本大臣政務官 御指摘の点につきましては、平成二十三年度より、医薬品医療機器総合機構、PMDA、こちらにおいて、医薬品の候補物質、これをシーズと呼んでいますが、これらの薬事承認に向けて、開発初期の段階から助言を行う薬事戦略相談事業というのを開始しようと思っています。この事業におきましては、御指摘のありました経済力の乏しいベンチャー等でも御相談いただけるように手数料の設定を検討しているところでございます。

吉田(統)委員 ぜひ、そういった体力のない企業に対しても夢を抱かせるような制度にしていただきたいと思っております。

 では、次の質問に移ります。

 コンパッショネートユースというのがございます。コンパッショネートユースというのは、基本的に、生命にかかわる疾患や身体障害を引き起こすおそれのある疾患を有する患者の救済を目的として、代替療法がない等の限定的状況において未承認薬の使用を認めるという制度でございます。実際、アメリカやEUでは既にこういう制度がございまして、日本も規制・制度改革分科会で実施に対する検討をしているという現状であると伺っております。

 そんな中、例えばシスティックファイブローシスという病気があります。嚢胞性線維症ですね。日本では、これは二十人から三十人しかいない非常にまれな疾患でございます。常染色体劣性遺伝で、塩素チャネル、CFTRの遺伝子異常によるものでございます。これは、ヨーロッパでは実は、白人、コケージアンでは三千人に一人、黒人では一万五千人に一人、最も頻度が高いユダヤのアシュケナジーでは二十五人に一人が保因者という疾患です。

 ただ、この疾患は、早期に発見して適切な治療を行っていった場合は、三十歳から四十歳ぐらいまで生きることができます。ただ、日本では、非常にまれな疾患であるということがありまして、大体、今、平均余命は私の調べたところでは十代半ばというところで、しかも、発見がおくれることが一番大きいんですが、使用できない薬がかなりあるんです。

 これは本当に、非常に少数の方の救済ということになるんですが、やはり、弱い命を救うという観点からも、ぜひコンパッショネートユースを御検討いただきたいんですが、検討状況はいかがでございますでしょうか。

岡本大臣政務官 さまざまな希少疾患がありまして、御要請もいただいているところでありますが、未承認の医薬品を人道的な観点から使用するということをいわゆるコンパッショネートユースと言っているんだろうと思います。平成二十二年六月に閣議決定をされました規制・制度改革に係る対処方針に基づきまして、その制度化に向けて検討を始めたところであります。

 現在、厚生労働省におきましては、対象となる医薬品の範囲、それから医師、製薬企業、患者など関係者の役割やその分担のあり方、そして具体的な実効性ある制度のあり方など、その導入に当たってのさまざまな課題について検討をしているところでございまして、関係者や有識者の皆さんの意見を聞きながら検討を進めていきたいというふうに考えています。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 ぜひ進めていただきたいんですが、少し卑近な例で具体的にちょっとお話ししたいんです。

 私の専門とする目の網膜というところの疾患、特に加齢黄斑変性、これは私が日本人における原因遺伝子を見つけた疾患ですが、それや網膜分枝静脈閉塞症、糖尿病性黄斑浮腫など、こういった網膜疾患に対して以前から、大腸がんに対して使われる血管内皮成長因子、VEGFというものに対する分子標的剤がずっと日欧米すべてで適応外使用をされていまして、非常に大きな効果を上げて、まさに患者にとって福音ともいうべき結果を出しています。

 その結果、実は、ルセンティスという薬が出ました。これは、値段が単位量当たり百倍もする薬なんです。しかも、これが今、加齢黄斑変性だけに適応なんです。しかしながら、さっき申し上げた網膜分枝静脈閉塞症や糖尿病性黄斑浮腫には使うことができずに、現場では、治療できる可能性がある薬があるのに使えないという、非常に矛盾を抱えてやっております。

 これは実は、アバスチンの方が古いですから、しっかりと安全性は担保されています。値段も、今あるルセンティスの百分の一です。こういった薬を、ぜひこのアバスチンを網膜分枝静脈閉塞症や糖尿病性の黄斑浮腫に対して使えるようにしていただくと、今、視力障害で困っている多くの患者さんに対して非常に大きな勇気を与えることになると思いますが、いかがでしょうか。

岡本大臣政務官 分子標的療法というのは比較的最近出てきたものでありまして、御指摘のアバスチンについても二〇〇七年六月に薬価収載ということでありますから、決して昔からあるというほど昔でも、まあ、どこを昔というかですけれども、昔というほどでもないんですが。

 御指摘のいわゆるアバスチンの方については抗VEGFのモノクローナル抗体そのものでありますし、今委員御指摘のルセンティスの方は抗VEGFモノクローナル抗体のFab断片ということで、その抗体のどの部分、一部を使っているのか全体なのかというもので違ってきます。余りにも科学的な話なのでここで言うべきかどうかわからないですけれども、当然、分子量も違うわけで、同じミリグラム数だとしても、その中に含まれているいわゆる抗体の量としては違ってくることも想定されます。

 アバスチンというものは、今、大腸がんに承認をされています。確かに、一ミリグラム当たりの単価は四百七十六円、そしてルセンティスは一ミリグラムが三十五万二千四百七十円、ミリグラム数で見るとこれだけの差がありますが、大変大きな分子量であるモノクローナル抗体の一部の断片を見ているのか全部を含んでいる製品かというのも違うということも少し御理解をいただいた上で、我々としても御指摘は受けとめておきたいと思います。

吉田(統)委員 済みません、私も科学者だったものですから、四年前というのは、実は科学の世界では大昔と言ってもいいと思います。なので、昔からあると言っても正しいと思います。

 私、実は、まさにこの二つを使ってアメリカでちょっとした実験をしていたことがあるので、時間があれば、どちらが効くかもちょっと後でお話ししたいと思うんです。

 次の質問に移ります。

 今、高騰する薬価がやはり医療費を圧迫している一因であるというのは皆さんお思いだと思います。日本では、薬価の新規収載というのは明確なルールで決まっております。大体、欧米の七〇から一五〇%の値段で設定されている。そして、シェアが大きくなり過ぎた、つまりもうけ過ぎているなという薬に関しては薬価の再設定をするなど、厚生労働省が非常に御苦労といろいろ工夫をしていただいているのは本当にすばらしいことだと思います。

 ただ、値段を下げると、例えば日本の市場としての魅力を下げてしまったり、製薬メーカーにしては確かに莫大なコストを使って開発しているものなので、いろいろと思うんですが、やはり私は、新規収載される薬価は高過ぎると思います。これは、患者負担という面からでも、世界じゅう、グローバルに少し議論をしていただきたい問題ではあるなというのが私の意見です。

 例として、がん治療において、政務官が御専門にする血液内科は別として、がんに対する根治術というのは手術しかありません。抗がん剤はどんどんいろいろなものができていますが、いまだ魔法の弾丸にはなっていないんです。魔法の弾丸ではない、つまり補助療法なんです。確かに有効なものがいっぱい出てきていますが、やはり唯一絶対の根治術は手術であります。

 ただ、値段を比較すると、手術と抗がん剤治療というのは、もう何倍、下手すると何十倍という高い場合があります。例えば、大腸がんは約五十万ぐらいで手術ができます。しかしながら、先ほどから名前が出ています分子標的剤やアジュバント、アバスチンなんかも大腸がんに使われるお薬ですが、こういうのを使うと年間七百万から八百万のお金を使うんです。これは、実際、厚生労働省としては、診療報酬上の手術料が安過ぎるのか、それとも薬価が高過ぎるのか、どちらだとお考えでしょうか。

岡本大臣政務官 薬価の算定方式は、るる説明をしているとせっかくの時間がなくなってきますのでお話をしませんが、類似薬効比較方式と原価計算方式というのがあって、類似薬効の薬を比較する、もしくは、新薬で比較するものがなければ原価を計算を積み上げていく、こういう二つの方式をとっています。

 御指摘の、例えば、今ルセンティスの話がちょっと出ましたけれども、ルセンティスは、二〇〇九年の三月の承認のときは、日本では十七万六千二百三十五円というのが二・三ミリグラム製剤の値段でありました。一方で、当時、米英独仏、四カ国の平均は十九万五千二百五十二円ということでした。残念かどうかはわかりませんが、今現在になると、これが為替レートの関係で十四万七千二百二十七円ということになって、日本の方が薬価が高いということになっていますが、為替の変動があるということを御理解いただきますと、必ずしも日本が高過ぎるというわけでもないんだろうと思います。

 一方で、御指摘のいわゆる手術の費用につきましては、平成二十二年度の診療報酬改定で、我々の中でも、いわゆる報酬が低いんじゃないかと思われるものについて、五〇%その報酬を上げたものがあります。

 例えば、眼科領域でいきますと、緑内障手術、流出路再建術につきましては、一万四千二百点だったものを二万一千三百点に引き上げるとか、また肝がん等における肝臓の切除術、拡大葉切除においては、六万四千七百点を九万七千五十点にする、また大動脈瘤切除術、胸腹部の大動脈においてでありますけれども、これにつきましては、十一万一千点を十六万六千五百点に改定するなど、手術料の見直しも進めているところであります。

 その双方において、御指摘を踏まえながら、私たちの取り組みにも御理解をいただきたいと思っております。

吉田(統)委員 政務官、ありがとうございます。本当に今後もそういう取り組みを続けていただきたい。医療崩壊のふちで頑張っている外科医を勇気づけるためにも、手術料は安過ぎるとぜひ厚生労働省からも言っていただきたいなと思います。

 ちょっと時間がないので最後の質問になるかもしれませんが、先ほどのルセンティス、アバスチン、本当に政務官、お詳しく調べていただいたようなので、ちょっと補足したいと思います。

 単位量当たりの値段は確かに百倍ぐらいするんです。だから、やはりルセンティスは高過ぎると僕は思います。なぜなら、現場で、私もまだ月曜日に診療しておりますが、加齢黄斑変性で来られた患者さんが費用を理由に治療をあきらめる、そして途中で治療をやめてしまう、こういうケースがかなりあるんです。

 参考までに、ルセンティスの一年間の売り上げは、びっくりされると思います、八万九千三百本、百五十七億円です。これを全部アバスチンにして医療費を百分の一にして、それをほかに使えというわけではないんです。それは、安くした分をほかに使えれば一番すばらしいと思います。足りないところはいっぱいあります。ただ、さっき、古くから、五年前ぐらいから使われているアバスチン、これは薬、百分の一ですが、これを例えば全例じゃなくてもケース・バイ・ケースで使えるように、そういうことを考えるのも大事かなと思うんです。

 先ほど政務官がおっしゃったように、長所短所ございます。例えば、ルセンティスの長所は、アバスチンより半減期が短いんです。つまり、簡単に使えるんです。薬効の持続が少ないということは、気楽と言うと変ですけれども、使うことができる。ただ逆に、力価に関して、効き方に関してはアバスチンの方がルセンティスよりよく効く、つまり力価が強いという報告も一級誌に実は出ているんです。これは、私のいたジョンズ・ホプキンス大学から出ているデータでございます。

 そういう意味で、全例とは言いませんが、ケース・バイ・ケースで安い薬も使えるようにする方が、医療経済的にも、そして患者さんのためにもいいんじゃないかと思うんですが、いかがでございますでしょうか。

大塚副大臣 ありがとうございます。

 岡本政務官への御質問ですが、専門家同士の質疑も大変勉強になりますが、私自身も二〇〇二年から、野党時代にも中医協の議論等も実際に拝聴し、そして診療報酬体系あるいは薬価の中身についても、自分なりに相当関与をしてきたつもりでございます。

 そういう中で、今の点については、時間があればさらに岡本さんにも御答弁をいただきたいんですが、ついきのうも、ある国民の方からお手紙をいただいて、保険収載されている抗うつ剤を使っていたらいつまでたっても効かないんだけれども、その対象となっていない抗うつ剤でいいものがあるからということで使ったところ治った、なぜこういうものが収載されないんですかというようなことも、きのうお手紙をいただいたばかりでございます。

 そして、今先生が御下問のアバスチン等の、あるいはルセンティスですか、こういったものを、何を収載して、何が効果を発揮するかというのが、実は、本当に多くの方が納得できるような基準のもとに行われているかどうかということを、まさしく国会でしっかりモニタリングしていただく必要があると思います。

 私は、いわば、医者ではない立場から、患者の立場から、そういう疑問にしっかりこたえ得るような厚生労働行政でなければならないと思いますし、医療政策あるいは診療報酬体系の設定でなければならないと思っておりますので、そういう立場から一言申し述べさせていただきました。

 あわせて、岡本政務官からも答弁をさせていただきたいと思います。

岡本大臣政務官 どういった薬をどういうふうに使っていくかというのは、これからも日々進んでいくんだろうと思いますが、御指摘いただきましたように、薬価の観点で見ていくという観点もありましょうし、また、そこで研究をしている研究者にとって研究しがいのある、そういった評価のあり方というものもやはり考えていかなきゃいけない。

 対象患者の数、それから疾患の数、そしてまた、それまでにかかるコスト、さまざまなものを勘案しながら、結果として、研究開発をしている皆さんにもしっかりメッセージが届く、そういった薬価でなければいけないだろうというふうには思っています。

吉田(統)委員 ありがとうございました。本当にすばらしい誠実なお答え、国民、研究者、医療の現場にいる者、みんな勇気づけられたと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

牧委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十五分散会


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