衆議院

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第2号 平成24年3月7日(水曜日)

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平成二十四年三月七日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 池田 元久君

   理事 岡本 充功君 理事 長尾  敬君

   理事 長妻  昭君 理事 柚木 道義君

   理事 和田 隆志君 理事 加藤 勝信君

   理事 田村 憲久君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    石井登志郎君

      石森 久嗣君    稲富 修二君

      大西 健介君    大山 昌宏君

      柿沼 正明君    勝又恒一郎君

      川口  浩君    川口  博君

      工藤 仁美君    熊谷 貞俊君

      斉藤  進君    柴橋 正直君

      白石 洋一君    田中美絵子君

      竹田 光明君    玉木 朝子君

      仁木 博文君    橋本  勉君

      初鹿 明博君    樋口 俊一君

      福田衣里子君    藤田 一枝君

      牧  義夫君    三宅 雪子君

      水野 智彦君    宮崎 岳志君

      山口 和之君    山崎 摩耶君

      吉田 統彦君    あべ 俊子君

      鴨下 一郎君    菅原 一秀君

      棚橋 泰文君    谷畑  孝君

      永岡 桂子君    長勢 甚遠君

      松浪 健太君    松本  純君

      坂口  力君    高橋千鶴子君

      小林 正枝君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   厚生労働副大臣      牧  義夫君

   厚生労働副大臣      辻  泰弘君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   文部科学大臣政務官    神本美恵子君

   厚生労働大臣政務官    藤田 一枝君

   厚生労働大臣政務官    津田弥太郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           奈良 人司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       今別府敏雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森岡 雅人君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外山 千也君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 中沖  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           山崎 史郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           藤本  潔君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房技術総括審議官)       西本 淳哉君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月七日

 辞任         補欠選任

  大西 健介君     石井登志郎君

  初鹿 明博君     熊谷 貞俊君

  福田衣里子君     川口  浩君

  三宅 雪子君     柿沼 正明君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     勝又恒一郎君

  柿沼 正明君     三宅 雪子君

  川口  浩君     柴橋 正直君

  熊谷 貞俊君     川口  博君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     大西 健介君

  川口  博君     稲富 修二君

  柴橋 正直君     福田衣里子君

同日

 辞任         補欠選任

  稲富 修二君     大山 昌宏君

同日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     初鹿 明博君

    ―――――――――――――

三月七日

 社会保障の充実に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一五八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一六〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一七八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三〇八号)

 改正介護保険の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一六六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一六七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一六八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一六九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一七〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一七一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一七二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一七三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一七四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七二号)

 患者の窓口負担軽減、新たな患者負担増の撤回を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一七五号)

 国民医療の拡充と建設国保組合の育成・強化を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一七六号)

 国民が安心できる医療制度を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一七七号)

 窓口負担を軽減し、保険のきく範囲を広げお金の心配がない保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一七九号)

 同(服部良一君紹介)(第一八四号)

 同(水野智彦君紹介)(第二三一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七〇号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三〇九号)

 後期高齢者医療制度即時廃止、安心の医療を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九一号)

 後期高齢者医療制度を速やかに廃止し、高齢者・国民が望む医療制度を目指すことに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一九二号)

 最低賃金千円の実現に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二一三号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一六号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一七号)

 患者・利用者負担を大幅に軽減し、いつでも安心して受けられる医療・介護の実現を求めることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第二三〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七三号)

 安心して受けられる医療の実現を求めることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第二三二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七一号)

 パーキンソン病患者のQOL(生活の質)の向上に関する請願(玉木朝子君紹介)(第二四一号)

 社会保障と税の一体改革に反対し、医療・介護保険制度などの改善・拡充を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二九九号)

 同(笠井亮君紹介)(第三〇〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三〇一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三〇二号)

 同(志位和夫君紹介)(第三〇三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三〇四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三〇五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三〇六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三〇七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百七十四回国会閣法第六〇号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

池田委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官奈良人司君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官今別府敏雄君、大臣官房審議官森岡雅人君、医政局長大谷泰夫君、健康局長外山千也君、医薬食品局長木倉敬之君、労働基準局長金子順一君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長中沖剛君、社会・援護局長山崎史郎君、社会・援護局障害保健福祉部長岡田太造君、保険局長外口崇君、年金局長榮畑潤君、農林水産省生産局畜産部長荒川隆君、農林水産技術会議事務局長藤本潔君、経済産業省大臣官房技術総括審議官西本淳哉君、大臣官房審議官中西宏典君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。

 この際、委員長から一言お願いがございます。

 きょうは、一人十五分で八人という異例な形になっておりますが、時間はしっかりと守っていただきますよう、まず冒頭お願いをしておきます。

 では、長尾敬君。

長尾委員 民主党の長尾敬でございます。

 私ごとでございますが、十七年民間企業に勤めました。いわゆるジャパニーズビジネスマンという、バブルも経験いたしました、崩壊も経験いたしました、二十四時間戦えますかという世代でございます。しかし、二十四時間戦えません。なぜなら、命を落とすからです。

 きょうは、過労死問題、認定という問題よりも防止について、遺族の方々のお声を伝える形で質疑の時間とさせていただきたいと思います。

 まずは、皆さんに御遺族のお声を聞いていただきたいと思います。中学三年生の御遺族の作文です。

  僕は、父を小学校に上がる前に、亡くしています。父は過労自死でした。

  父は、市役所で働いていました。市の文書を扱う大切な仕事をし、係だけではけっしてできない大きな仕事を任され、毎日、仕事の相談に来る職員が後を絶たず、それにも父は親切に答えながら、毎日十六時間以上仕事をしました。

  胃潰瘍になりましたが、仕事をたくさん抱えた状況では休む余裕もなく、通院しながら土日も出勤していました。議会に提出するための資料を必死で作り上げた時、あまりの忙しさに、たった一つ部下に任せた所に、間違いを見つけました。

  そのまま条例になってしまうことは、大きな問題です。でも、やり直す時間はない中、心身ともに追い込まれて、父は命を絶ちました。

  最後に、父は、十一通の遺書を残しました。

  僕がこの遺書を初めて読んだのは、小学五年生になる春休みのことでした。

  「真弘様 親らしいことが、何も出来ず許してください。

  貴方の無邪気な顔をみていると、本当に疲れがやすまりました。

  先週の発表会を見に行きたかった。お母さんから、貴方が、ものおじせず、堂々と話しをしているのを聴いて、本当にうれしかったです。笑顔の真弘の顔が忘れられない。

  こんな幼い子を残しておとうさんは…

  どうか、お母さんの言うことを良く聴いて、助けてやってください。本当に御免なさい。」

  ぼくは、これを読んだ時、涙が溢れてきました。こんなに僕たちを愛してくれた父がどうして死ななければならなかったのだろうか。僕は自分の部屋で、思い切り泣きました。

  父は、心身ともに過労し、うつ病になってしまいました。こんな働き方をしたら、誰だって、倒れてしまいます。父は市民のために、いい法律を作りたいと、いつも勉強し頑張っていました。条例になってしまうとどんなに悪いものであっても改正するためには、人も時間もすごく掛かること、条例は、市民の命にも繋がることを母に語っていたそうです。まじめで、責任感が強く、優しく、頼りがいがあった父です。父は、普通の人の二倍も働きました。

  父と同じ仕事をする人が、もう一人いてくれたら、父は死にませんでした。公民の教科書に、労働基準法がありました。この法律が守られていれば、父は死ななかったと思いました。

  父と一緒にすごしたのは、わずか、六年間です。父が突然僕の前から居なくなるなんて考えても居なくて、父に甘えていました。

  あのままずうっと、家族の生活が続いてくれていたら、僕たちは幸せだったのに。

  あの日を境に、僕たちの生活が変わってしまいました。ずっと、家でいた母は生活のために、働きに出るようになりました。生活も苦しくなりました。

  母も頑張っていましたが、疲れ切り、どうしようもないさびしさに、包まれ、僕たちに、「お父さんの所へ行こう」と言いました。僕達の強い反対で、母は、自分を取り戻してくれました。一歩間違っていたら、僕達は、今、生きていませんでした。

  ぼくが、小学一年生の時、詩を作りました。

    僕の夢

   大きくなったら、ぼくは博士になりたい。

   そしてドラえもんに出てくるような

   タイムマシーンを作る。

   ぼくはタイムマシーンにのって

   お父さんのしんでしまう前の日にいく

   そして「仕事に行ったらあかん」ていうんや

  僕は、仕事のための命ではなく、命のための仕事であると考えます。

  命こそ宝です。過労死・過労自死というものがこの世の中から亡くなってほしいと強く思っています。

 厚生労働省の皆さん、ちょっと御感想をお聞かせいただきたいと思います。

牧副大臣 仕事のための命ではなくて、命のための仕事、本当に身につまされる思いでございますし、過労死の問題に真剣に取り組んでこられた長尾委員には心から敬意を表しますし、また、過労死というのはあってはならないものだという、国としての重い責務というものを改めて感じているところであります。

長尾委員 ありがとうございます。

 きょう、三百人規模で遺族会の方々が院内集会を予定されているということでありますが、過労死を考える全国家族会の方、また“ストップ!過労死”実行委員会の方々から御提案をいただいております。今副大臣から御答弁少しいただいたんですが、三つあります。過労死があってはならないことを国が宣言してほしい、過労死をなくすための国、自治体、事業主の責務を明確にしてほしい、国は、過労死に関する調査研究を行うとともに、総合的な対策を行ってほしい。

 これら御遺族のお声ですが、今まで厚生労働省は、過労死防止に関しましてどのような施策を行ってきたか、あるいは今の提言についての御所見をお尋ねします。

牧副大臣 御承知のように、先ほどの作文にも出てまいりますけれども、労働基準法がございます。そしてまた、労働安全衛生法、この主に二つの法律によって指導監督をしてきているところでありますけれども、改めて過労死という問題がクローズアップされる中で、平成十八年でしたか、局長通達で、過重労働による健康障害防止のための総合対策を定め、まさに先ほど申し上げた、働くことによって労働者が健康を損なうようなことがあってはならないという認識のもとで、時間外・休日労働時間の削減ですとか、年次有給休暇の取得の促進ですとか、あるいは労働者の健康管理に関する措置の徹底など、総合的な対策の実施に努めているところであります。

 そしてまた、二十二年の改正労働基準法で、一カ月六十時間を超える時間外労働に対する割り増し賃金率を五〇%に引き上げるなどの法制度も強化しているところであります。

長尾委員 労働安全衛生法、メンタルチェック、大いに期待するべきところ大でございますので、ぜひ推し進めていただきたいと思います。

 平成二十年の改正のときにも問題で出ました、労働時間法制のいわゆる三六協定にかかわることでちょっと御質問をさせていただきたいと思います。

 時間外労働が一カ月百時間、または二カ月以上平均して八十時間を超えている労働者の方は何人ぐらいいらっしゃいますか。

金子政府参考人 今御指摘をいただきましたストレートの数字はないんでございますけれども、平成二十三年の総務省の労働力調査によりますと、労働時間の長さが週六十時間を超えている方、法定の労働時間は四十時間ですので、二十時間以上残業されている方とほぼイコールだと思いますが、約四百七十六万人というような数字で把握しております。

長尾委員 そんな状況の中での三六協定の中身ですが、労使の間での限度基準告示、あと特別条項について、ちょっと御説明ください。

金子政府参考人 委員御案内のとおり、労働基準法では一日八時間という法定労働時間がございます。これを超えますと時間外労働になります。これは、三六協定という労使協定を結ばないとできないことになっておりまして、この三六協定を結ぶことによって時間外労働ができるわけですが、これが長時間になると適切でないということで、大臣告示ということで、一月ですとそれを四十五時間以内に抑えてください、こういうことで指導を申し上げているところでございます。

 ただ、年末の商戦、商いで大変忙しいとか、決算期で大変だというようなこともあってそこにおさまらないケースについては、今委員御指摘いただきましたような特別条項ということで、臨時的なものに限って、その限度基準を超えても一応時間外労働ができるようになっているということでございます。

長尾委員 私も、経営側の立場に立ってみれば、いわゆる特別な事情というものは理解できるところであります。ただ、現実に、過労死ラインと言われている時間外労働、一カ月八十時間以上、これが一つのラインだというふうに承知しておりますが、百時間を超えている場合、この三六協定の中で、過労死ラインを超えた三六協定の労働基準監督署への届け出、例えばこの数、あるいは労働者数、企業名というのは厚生労働省は把握していらっしゃるんでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 それぞれの監督署におきましては、当然届け出が出ておりますので把握をしておりますけれども、全体として、その特別条項を締結しているものの割合が約三六%ぐらいというような数字がございまして、その全部を我々が今ここで把握をしているということではございません。

長尾委員 把握はしていないということですね。

 もう一度聞きます。例えば、一カ月百時間以上、仮に百五十時間以上でも、労使協定の結果だということであれば法的には問題ないという解釈ですね。

金子政府参考人 その限度時間につきましては、いわゆる労働基準法で罰則をもって担保する規定ではなくて、指導の基準でございます。したがいまして、私どもとしては、三六協定が監督署に提出されましたときに、十分に審査をして、強力に指導しているところでございます。

長尾委員 いわば過労死ラインを超えた三六協定の存在というものは現実にあるわけです。あわせて、法違反でもない。厚生労働省も全体像は細かくは把握していないと。

 しかし、過労死は発生しているわけですね。これは残念ながら、現在の三六協定の運用のあり方については、場合によっては政治、行政の見て見ぬふり、不作為であるという部分も指摘せざるを得ないかなという気がしてなりません。これは、北朝鮮による拉致事件もしかり、薬害エイズ問題もしかり、こういったケースに過労死が突入しないように、ぜひ管理監督をしていただく。

 私は、ぜひ労働関係法規を改正して、使用者にはできれば労働者全員の実労働時間を把握する義務、大体、労災認定のときにここが最大の障壁になるわけでございますので、こういった御提案もさせていただきたいと思いますし、遺族の方々が今多く求めていらっしゃいますのは、できれば過労死防止基本法というものを制定していただければなと、遺族のお声を代弁する形で強く強く御提案をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池田委員長 答弁要らないの。

長尾委員 では、御答弁いただきます、基本法について。ありがとうございます。

牧副大臣 長尾委員の思いはしっかりと受けとめさせていただきたいと思います。遺族の方々の御苦労を思えば、局長の通達という一片のもので済むことではないという認識のもとで、ただ、労働基準法、労働安全衛生法もございますので、その基本法というのが立法技術的にどういうものか、慎重に検討してまいりたいと思っております。

長尾委員 ありがとうございました。

池田委員長 次に、竹田光明君。

竹田委員 民主党の竹田光明です。

 きょうは、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 時間も限られていますので、早速質問に入らせていただきます。

 前回、救える命を救いたいというテーマで質問をさせていただきましたが、今回は精神疾患について質問をさせていただきます。

 精神疾患の患者数は、既に、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病の四大疾病よりも多くなっております。医療機関に来た患者の数だけでも年間三百万人を超え、国民の四十人に一人が治療を受けている現状があります。また、毎年三万人以上に上る自殺者の半数以上がうつ病とも言われております。医療計画に記載すべき疾患にも精神疾患が加えられ、四疾病五事業から五疾病五事業になりました。

 私は、議員に当選してから、この精神疾患の問題に取り組んでまいりました。同じ厚生労働委員の田中美絵子議員とともに勉強会をしたり、理化学研究所や国立精神・神経医療研究センターなども、ともに視察しました。福島県立医科大学の関係者や一般の精神科医の方たちとも常に意見交換をしてまいりました。

 長く精神疾患は心だけの問題とか障害だけの問題と捉えてきましたが、疾病として捉えると、脳科学の発達もあり、治療方法が大きく変わってくると考えられます。

 厚生労働省はこのような精神疾患の現状についてどう考えているのか、また、厚生労働省は精神疾患を疾病と捉えてどういう取り組みをしているのか、お聞かせください。

津田大臣政務官 精神疾患の開発、研究等々の問いでございます。

 現在、医療機関にかかっている精神疾患の患者数は、三年ごとの調査によりますと、平成二十年が約三百二十三万人でございます。がんあるいは脳卒中などの患者数よりも多くなっている。今後、効果的な治療法の開発が大変重要であるというふうに考えているわけでございます。

 また、精神疾患につきましては、脳の機能不全が原因と考えられているわけでございますが、いまだ解明されていない部分が大変多いということで、特に研究が必要な分野であるというふうに考えております。

 このため、厚生労働科学研究事業の中で、患者の症状に応じて最適な治療薬を選ぶための研究、それから効果的な精神療法のマニュアル開発など、精神疾患に対する効果的な治療法等の開発に資する研究を行っているところでございます。

竹田委員 ありがとうございます。

 精神疾患を疾病として捉えると、バイオリソースと治療法の研究が重要になってまいります。そして、精神疾患のバイオリソースといえば、最も重要なのが脳です。脳の研究のためにホルマリン漬けの標本以上に重要性が高まってきているのが凍結脳です。分子レベルや遺伝子の研究をするために凍結脳の検体は不可欠なものであり、そして、凍結脳を集め、保存するのは、いわゆるブレーンバンクです。

 私もこれまで、国立精神・神経医療研究センターや福島県立医科大学など、各地で独自に構築されたブレーンバンクの現状を見てまいりました。個々の研究者や研究機関が最大限の努力を払い、大変な苦労をして凍結脳を集め、保存しておりますが、現状を言いますと、それらの研究者や研究機関の努力に大きく依存していると言えると思います。

 厚生労働省もリサーチ・リソース・ネットワークというブレーンバンクネットワークを支援しているようですが、アメリカのスタンレーブレーンバンクを初め欧米のブレーンバンクと比較すると、数の面でも質の面でも、残念ながら、我が国のブレーンバンクは見劣りするように感じられます。ブレーンバンクには専門的な知識を持った医師、技術者、コーディネーター、検体を採取し、保存する施設がなくてはなりません。優秀な人材の確保と、また大変な費用がかかります。

 その意味でも、私は、ナショナルブレーンバンクともいうべき、日本を代表するような本格的なブレーンバンクの仕組みをつくることが必要だと思っております。

 三百万人もの国民が病院に行くという国民的な疾病に対して、国も最大限努力をすべきと考えております。象徴的なブレーンバンクがあれば、国民も、国が精神疾患に本腰を入れて取り組んでいると思うでしょう。そういうふうに国民も感じております。このナショナルブレーンバンクについて、厚生労働省はどういうふうにお考えでしょうか。

藤田大臣政務官 委員御指摘のように、脳疾患の原因解明や治療法開発のためには、脳組織を研究することが大変重要で、必要でございまして、そのために、患者の死後脳を収集、保存し、研究に活用する仕組みが必要であるということは認識をいたしております。

 現在、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターにおいて、精神・神経疾患の原因解明と治療法開発の研究に活用するために、御遺族からの同意をいただいて収集した脳を凍結保存し、いわゆるブレーンバンクを整備して、国立病院機構病院等と、先ほど委員がお話しになりましたように、情報ネットワークを構築して多施設共同研究を行っているところでございます。

 また、研究者への普及啓発や、市民公開講座を活用したドナー登録の推進など、死後脳の収集を推進するための取り組みにも取り組んでいるところでございます。

 これからさらにこの体制を強化していくために、文部科学省等の関係機関と連携をしながら、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターにおけるブレーンバンクの取り組みを支援してまいりたい、このように考えております。

竹田委員 今のお話ですと、国立精神・神経センターを中心として、いわばナショナルバンク的な存在として活用していくということでよろしいでしょうか。

藤田大臣政務官 その点をきちっと整備してまいりたいと思っております。

竹田委員 ありがとうございました。

 それでは、この分野における文部科学省の取り組みはどうなっているのか、お聞かせください。

神本大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、うつ病、認知症を初めとした精神・神経疾患の克服については、文部科学省としましても、社会的に大変重要な課題だと認識をしております。

 そのため、文部科学省におきましては、脳科学研究を拠点形式で実施する脳科学研究戦略推進プログラムにおきまして精神・神経疾患の克服に向けた取り組みを実施しているところでございます。

 具体的には、平成二十三年度より、新たに、発達障害、うつ病、認知症ごとに研究チームを構成しまして、これらの疾患の発症の仕組みを明らかにしまして、診断、予防、治療法の開発につなげる取り組みを開始したところでございます。

 ブレーンバンクにつきましては、精神・神経疾患の病態解明への貢献が期待されていることから、今厚労省の方からも御答弁がございました国立精神・神経医療研究センター等で実施されているほか、文科省としましても、本プログラムの一環として、亡くなられた方の脳の収集、保存、利用に関する調査を平成二十三年度より実施しているところでございます。

 文部科学省といたしましても、この調査の結果を踏まえつつ、厚生労働省や関係機関と連携して、精神・神経疾患の克服に向けた研究開発に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上です。

竹田委員 ありがとうございます。

 患者さんにとりましては、厚生労働省がしています、文科省がしていますということは関係ないことなので、連携をとっていただいて、よりよいブレーンバンク、よりよい制度をつくっていただきたいと思います。

 いろいろな機関に行きますと、それぞれの機関は非常に頑張っていらして、なかなか横の連携がとれていないという印象もありましたので、そういうことも頭に入れて活動していただきたいと思っております。

 個々のブレーンバンクに行きますと、本当に努力して、大変に頭が下がる思いで皆さんが活動しているのを見てまいりました。

 現在、凍結脳の研究については、一九四九年の死体解剖保存法に基づいて行われている現状があります。非常に古い法律で、そもそも凍結脳の研究利用を前提とした法律でもないため、研究者たちは不安を感じながら活動しています。

 凍結脳を用いた研究をより進めるためには、研究者が安心して研究できる環境を整備する必要があると思っております。ブレーンバンクの活動を進める上で、法的な側面を含めて、今後の環境整備についてどうお考えでしょうか。

藤田大臣政務官 研究者の方々が安心して研究に専念できる環境整備というものは大変重要でございます。

 委員ももう御承知のように、現在、ヒト組織を用いた研究に関しては、死体解剖保存法に基づく病理解剖に関する詳細手続を定めた医道審議会による指針というものがございます。また、手術等の生体から得られたヒト組織を用いた研究開発のあり方に関する厚生科学審議会による条件の提示ということなどもございまして、このことを軸に、今環境整備を進めているところでございます。

 一方で、御指摘がありましたように、この死体解剖保存法、戦後間もなく制定された大変古い法律でございまして、この保存上の手続との関係でいろいろな問題が出てまいりまして、ここをきちっと明確にしてほしいという御要請もたくさんいただいております。そういった点をしっかり踏まえまして、関係者の御意見をよく伺いながら、研究者の方々が研究に専念できるような環境整備というものにこれからもさらに努めてまいりたいと考えております。

竹田委員 現場の研究者の方たちは、この古い法律で大丈夫なのだろうかと本当に不安を持って、またいろいろな指針とかを勉強しながらやっているのが現状でございます。安心して、よりこの研究を進めるためにも、さまざまな面でのバックアップをお願いしたいと思います。

 前回の質問では、私は、救える命を救いたいということを中心に話させていただきました。今回は、治せる病気は治したい。これは、心の問題だけでもなく、やはり疾病として捉えることが重要だと思っています。ぜひ、治せる病気は治したい、こういう思いで質問をさせていただきました。

 各地の精神科の病院を回る中で、精神救急、急性期の対応、身体合併症への対応ができる総合病院において、精神病棟が縮小、閉鎖されている傾向があることに気づきました。このことも厚生労働省に申し上げたいと思います。

 三百万人に上る精神疾患で苦しむ国民の苦しみを踏まえて、国が国民のために精いっぱい努力している、そういう姿勢を示すためにも、政務三役の方には引き続き頑張っていただきたい、このことをお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、玉木朝子さん。

玉木(朝)委員 民主党の玉木朝子でございます。

 本日は、本当に貴重な質問のお時間をいただきまして、まず冒頭、お礼を申し上げたいと思います。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 小宮山厚労大臣は所信で、障害者が地域社会で安心して暮らせるよう、障害者基本法の改正を踏まえた理念の創設、障害者の範囲やサービス体系の見直しなど、障害者施策のさらなる充実を図るための法案を提出すると述べておられます。

 この提出を予定されております障害者新法のポイントはどのようなものなのか、まずお答えをお願いしたいと思います。

津田大臣政務官 玉木委員の御質問に答えさせていただきます。

 障害者新法についての質問でございます。

 障害者基本法を踏まえた基本理念の創設、それから法律の根幹となる名称、目的規定の見直しを行うとともに、制度の谷間のない支援を提供するという観点から、障害者の定義に難病の方々を含める、さらには重度訪問介護の対象を拡大すること、さらにはケアホームをグループホームに一元化する、これなどの見直しを行うことによりまして、障害者の方々にとって地域社会で安心して暮らすことができる体制を整備するというのが今回の新法のポイントになっているわけでございます。

 また、障害福祉サービスのあり方、障害程度区分の認定を含む支給決定のあり方等、検討に時間を要するものについては、施行後三年を目途に見直しの検討を行い、その検討に当たっては、障害者やその家族等の意見を反映させていくということにしたわけでございます。

 この新法につきましては、これまで民主党厚生労働部門障がい者ワーキングチームで御議論をいただいてまいりました。ありがとうございました。先週二十九日に、民主党厚生労働部門会議で了承をされたというふうに承知をしておるわけでございます。

 厚生労働省としましては、今国会への法案提出に向けて、今、詰めの作業をいたしておるところでございます。

玉木(朝)委員 定義や名称、それから当事者の参画など、抜本的に改革された案と言えると思います。特に、障害者の範囲に新たに難病を加えていただきましたことは、障害者制度改革の大きな一歩を踏み出していただけたものと思っております。

 私自身も、膠原病を発症しまして、治療を続けながら、難病患者団体の活動をしてまいりましたが、今日まで、難病は文字どおり制度の谷間の扱いでございました。現行の自立支援法ができたときも、対象に難病等長期疾患患者は含めるという議論すらございませんでした。今回の抜本改正は、こうした制度の谷間をなくすという意味では、私は高く評価したいと思っております。

 そこで、各論的な質問になりますが、難病といいましても、今まで法的な定義がございませんでした。どういう難病が対象となるのかが本当に大事なポイントとなります。政府としてはどのように考えているのか、お伺いをしたいと思います。

 また、新法で対象となる難病患者はどのような福祉サービスを受けることができるのかについても、あわせて御答弁ください。

津田大臣政務官 玉木委員におかれましては、膠原病の患者の方々の活動を本当に熱心にされてこられたということ、心より敬意を表する次第でございます。

 御質問にありました、この新法におきまする障害者の定義に、新たに難病等を位置づけたわけでございます。今回、障害福祉サービスの対象とするということにしたわけでございますが、対象となる方の範囲については政令で定めるということになっているわけでございます。この対象となる方の具体的な範囲につきましては、現行の難病患者等居宅生活支援事業を参考に、厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会での議論を進めていただき、施行までに検討してまいりたいというふうに考えております。現在、私どもの方から申し上げるのは、この段階でございます。

 また、給付対象となる障害福祉サービスの内容がどうなるかというお問い合わせでございます。現時点で、私どもは、他の障害者の方と異なる取り扱いをするということは全く考えておりません。

玉木(朝)委員 ありがとうございます。

 これから当委員会でも真摯な議論が積み重ねられると思いますが、要望しておきたいことが一つございます。

 御承知のように、法案が提出されるに際して、障害当事者が参加して総合福祉部会が設けられました。これは、障害者権利条約の基本精神でございます、私たちを抜きに私たちのことを決めないでを踏まえた政策立案作業の開始であり、本当に画期的なことでございました。政府は、総合福祉部会がまとめました骨格提言を可能な限り誠実に受けとめて法案に反映したものとは思いますが、まだまだ道半ばであることも事実でございます。引き続き改革を進めていくためには、障害当事者の参画をこれからもきちんと保障し、当事者参加の政策立案の場を設けていくべきと思っておりますが、いかがでございましょうか。

津田大臣政務官 お答え申し上げます。

 玉木委員が申されましたように、道半ばであるという点については、大変私どもも思うところがあるわけでございます。

 御指摘のとおり、総合福祉部会でまとめられました骨格提言につきましては、障害当事者の皆さんの思いが大変強く込められているというふうに思っております。これを実現していくためには、厚生労働省としては、段階的、計画的に実現を図っていきたい、必ず将来において皆様の思いが達成できるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。

 このため、今回の法案では、障害者等の支援に関する施策を段階的に講ずるために、障害福祉サービスのあり方、それから障害程度区分の認定を含む支給決定のあり方等について検討し、所要の措置を講じるという規定を盛り込んでいるわけでございます。

 また、この検討や国が定める基本指針の策定等に当たっては、障害当事者やその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じる、このことも今回の法案で盛り込んでいるところでございますので、皆様の思いというものはしっかり受けとめていきたい、そのような決意でおるところでございます。

玉木(朝)委員 ありがとうございます。

 それでは次に、難病について伺いたいと思います。

 大臣所信では、難病への支援策にも触れていただきました。まず、現在の難病対策の取り組み状況をお聞かせください。

辻副大臣 玉木委員には、難病対策につきましても平素より御指導いただいておりまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

 そして、難病対策につきましては、厚生労働省といたしまして、事業の公正性、制度の安定性の確保など制度の抜本的な見直しが必要となっている、こういった認識のもとに、新たな難治性疾患対策の在り方検討チーム、また、厚生科学審議会のもとにある難病対策委員会、さらには、ことし二月、三月に新たに設置いたしました二つのワーキンググループにおきまして、精力的に見直しを検討させていただいているところでございます。

 難病対策委員会は、昨年の九月以降、毎月委員会を開催し、集中的な審議を行っており、昨年十二月には、「今後の難病対策の検討に当たって」、中間的な整理を取りまとめていただいております。

 さらに、ことし二月に閣議決定されました社会保障・税一体改革大綱におきましても、難病対策について、法制化も視野に入れて検討するということが盛り込まれているところでございます。

 今後とも、引き続き、難病対策の抜本的な見直しを早期に実現するように検討を進めてまいりたいと思います。

玉木(朝)委員 難病問題につきましては、政権交代以来、厚労省には大変積極的に取り組みを進めていただいております。長妻さんが厚生労働大臣のときに、新たな難治性疾患対策の在り方検討チームを設置していただきました。このチームは、今まで健康局疾病対策課で対応していたものを、関係局を全て網羅して検討する場としてやっていただいております。

 また、厚生科学審議会疾病対策部会が十年ぶりに開かれました。開催されたことは大変よかったと思うんですが、十年ぶりというのは、私としては少々情けない気持ちがしております。そして、御説明がありましたように、難病対策委員会では、難病についての法制化を視野に入れて検討するとの合意のもとで、現在、検討作業が続いております。

 そこで、進行過程で大変お答えにくいとは思いますが、難病対策の将来のあり方について、政府の御意見をお伺いしたいと思います。

辻副大臣 先ほど申し上げましたように、検討チームや対策委員会等で精力的な見直しを、現在検討を進めているところでございまして、二月に閣議決定されました一体改革の大綱の中では、難病対策について、「医療費助成について、法制化も視野に入れ、助成対象の希少・難治性疾患の範囲の拡大を含め、より公平・安定的な支援の仕組みの構築を目指す」とともに、「治療研究、医療体制、福祉サービス、就労支援等の総合的な施策の実施や支援の仕組みの構築を目指す」という方向性が示されているところでございます。

 そして、かねてより玉木委員を初めとする各方面の方々から、医療費助成、研究費助成の対象の拡大、法的基盤の必要性、地方の超過負担の解消、疾患特性に配慮した福祉サービスの充実、就労支援の促進などの御要請をいただいているところでございまして、先ほど申し上げました方向性のもとに、引き続き集中的な検討を進め、対応していきたい、このように考えております。

玉木(朝)委員 難病につきましては、障害者新法に位置づけられております福祉サービスを受けることができるようになり、また、難病の法制化が実現すれば、医療費助成や治療研究、医療体制の整備、就労支援等、総合的な、包括的な仕組みができるというふうに私自身は考えております。

 ただ、それまでの間、非常にこれは大変なことで、医療費を御自分で負担しておられる方、そうした方々にとって、今、高額療養費制度、これはたった一つの救いの道であると私自身は考えております。

 ただ、私の持ち時間がほとんどなくなってまいりましたので、高額療養費制度についても質問したいと思っていたんですが、この高額療養費制度については、これからも改めてまた改善していただきたいということを要望として申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、橋本勉君。

橋本(勉)委員 おはようございます。また二回目、厚生労働委員会に所属をさせていただきまして質問の機会を与えていただきまして、心から感謝申し上げます。

 私は、今回の質問趣旨は、税と社会保障モデルのこの社会保障制度というものに対して、大幅に欠け落ちている点が一つあるんじゃないか。それは何かというと、やはり人口問題だろうと思っております。働き手三人で一人の高齢者を支える構造から、一人の働き手で一人の高齢者を支える、そういう社会構造になってしまうということは、これは今当たり前、前提となっております。ですから消費税をというような論議がされてきているわけでありますけれども、ただ、ここに非常に欠落しているのは、この人口問題そのものが、非常にもっと抜本的な問題として、テーマ、取り組まなきゃいけない問題ではないかと思っています。

 私は、父親が八人兄弟でして、八人兄弟のときには、人口がここまで急にふえてきたわけであります。ところが、今、一・二九人とか一・三人ということではございますが、そういう人口の大幅な構造の変化、ここの問題を抜きにして社会保障制度のあり方をとやかく言うことはできないんじゃないか、ここにメスを入れなければならないと思っております。

 そういう意味で、きょうは、人口減少モデルというものをちょっと見ていただければなと思っております。きょうお配りさせていただいたのは、合計特殊出生率が一・三七という仮定のもとに、男女年齢別生存率が将来一定であると仮定した場合の将来の人口趨勢を示している、こういった統計データを出させていただきました。これは国立社会保障・人口問題研究所の資料でございます。

 これによると、本当に急速に人口が減っていくわけであります。特に、二一〇〇年、四千七百十万人、いずれはゼロになってしまう、三〇〇〇年にゼロになってしまう、しかも三〇〇〇年ということですけれども。ある意味では、こういった人口構造モデルを前提にして我々は社会保障問題というものを考えなくてはいけない。笑い事じゃないんですけれども、本当にそういう時代になってきているんじゃないか。今、税、社会保障問題を考えるときに、増税さえすればいいんだというような考え方だけでは、この問題は解決できないと思っています、社会保険料を上げればいいということでは。

 そういう意味で、こういう鎖国型の、鎖国型といって、いろいろと私も対策を今考えているんですけれども、人口減少モデルを前提にしているということで今、税、社会保障モデルというものは考えられているんじゃないかなと私もちょっと危惧しているんですけれども、このことについて、辻副大臣、どのように思われますか。まずその御感想をいただきたい。

辻副大臣 委員御指摘のように、少子化の問題、抜本的に取り組むべし、根本的なメスを入れるべし、このような御認識については共有する思いでございます。そして、御指摘にありましたように、ゼロになるという試算もあるようでございますけれども、もとより、人口がゼロにならないようにしっかりと取り組んでいかなければならない、こういうことになるわけでございます。

 そこで、現状と二〇五〇年の日本を比較いたしますと、御指摘のように、人口減少が大きく見込まれるわけでありまして、やはりそれに向けて対応を考えていかなければならない。とりわけ今日の少子高齢化の背景には、若者が雇用など将来の生活に不安を抱き、結婚や出産に関する希望がかなえられていないという現実があるということでございます。結婚もできない、子供もつくれない、そういった若者の状況というものをこれからも継続していくならば、明るい日本の社会の展望は開けない、このようになることでありまして、根本的に対応していかなければならない、このように思っているところでございます。

 そういった意味で、一体改革におきましては、消費税も重点的に対応する中で、全世代対応型の社会保障をつくっていきたい。その中で、子ども・子育て新システムの創設など子育て家庭支援、それらを行っていくとともに、ワーク・ライフ・バランスの確保など、全員参加社会をつくっていく、このことに向けて頑張っていきたいと思っておりますが、やはりその前提となる財源の確保というものも大事でございまして、社会保障の財源確保また国家財政の安定化のためにも一体改革を進めていきたい、このように思っております。

橋本(勉)委員 気宇壮大なことを私は言っているつもりはありません。父親がちょうど八人兄弟だと先ほど申し上げました。父親が結婚したときには、ちょうど昭和二十年代ですか、戦後の間近のとき、非常に厳しい経済環境のときであったわけですが、そのときですら八人も兄弟がいたという現実と、今ほとんど、一・三人とか一・二人、経済が非常に成熟したにもかかわらず、日本社会というのが、なかなか産めない、育てられない、結婚できない。こういった現実を前提とされていらっしゃりながら社会保障モデルというのは構築できるのかどうかというのを、ちょっともう一度改めて聞き直したいと思いますね。

 これについては、牧副大臣もいらっしゃいますので、いわゆる団塊世代の老後というのは、今後二十年間、要するに、もっともっと団塊世代というのが老後の六十歳以上になって、この二十年間、特に労働力人口をふやさなければならないだろうと言われる中に、消費税、とりあえず一〇%という話でありましたけれども、では、国民は、こういった人口がどんどん減っていく中で、さらに増税をし、デフレと悪循環をまた繰り返していく、増税無間地獄に陥っちゃうんじゃないかなと思われるんですけれども、何かいい手はないんですかということを労働担当の牧副大臣にちょっとお聞かせいただきたいと思います。

牧副大臣 増税無間地獄という表現、大変おもしろい表現で、またどこかで使わせていただきたいと思いますけれども、おっしゃるように、基本的な社会の構造ですとか雇用のことを考えずにただ税に頼るという形で今後のことを考えれば、当然、増税無間地獄に陥るわけで、それは申し上げるまでもない。

 そういう中で、申し上げるまでもないことですけれども、社会保障というのは全部税で賄っているわけではなくて、個人の負担、企業の負担、あるいは応益負担等々のミックスでありますから、何か、一体改革と言うと誤解を招くのかもしれませんけれども、本当の意味で、橋本委員がおっしゃるように、社会の構造そのものを見直さなければいけないと思います。

 若者の雇用等についても、非正規と正規の労働者の平均賃金というのも約倍の開きがあるわけで、非正規の人たちは、そういう中で結婚して子供をつくるなんということはおぼつかない、そういう状況を一日も早く解消することが肝要だと思いますし、そしてまた、高齢化に伴って、老後も本当に働く意欲のある方には、また引き続いて継続雇用をしていただくような環境をつくっていくことも大事だと思いますし、また、女性が子供を育てながら働けるような環境をつくることによって、いわゆるM字カーブの解消といいますか、そういうことも図っていかなければならない。

 そういう総合的な観点から、今後十年、二十年、就業率を上げることによって、そういった問題はある程度解決できるんじゃないかなという印象を持っております。

橋本(勉)委員 甘いと思います。

 はっきり言って、これだけの人口減少社会に、増税とか、保険料も上がっているんですよね。今もなお上がっている。しかし、M字カーブを解消するとか、そんなたわいのない話でこの問題は解決できるような問題じゃないと思います。

 そして、私は他国をいろいろと研究しておりますが、一つはアメリカです。

 アメリカは、合法的に六十八万人の移民を入れている。非合法者を合わせて百万人規模の移民がある。そして、人口も三億人にふえた。日本でも、十八歳から四十歳までの若い労働力を、アメリカのように、グリーンカード、要するにビザですよね、永住権ビザ、百万人規模で受け入れたらどうかというような、百万人減るんだったら、百万人受け入れなくちゃいけないぐらいの大胆な発想をしていかないといけないんじゃないかなと思っています。

 そういう意味で、もう一つはフランスです。

 フランスというのは、先進国で唯一、出生率を一・五から二に回復させました。その対策の三本柱は何かというと、やはりアメリカと同様に移民の増加、もう一つは婚外子差別を解消して、そして、所得税のN分のN乗という政策をとったんですね。たくさん子供さんを産んでくれれば、それだけ税金は安くなるよということをやりながら、ここの問題にいち早くメスを入れた。その結果、二台に乗せた。

 要するに、二人というのは、二人の親から二人の子供をつくるというのが最低です。それでも足らなくなるということですよね。ある意味で、一・三人とか一・二人と言っていたら、これは当然どんどんどんどん減少していくということですから、思い切った施策を施さなければならないと思います。

 そういった、アメリカとかフランスがやってきたような思い切った政策について、これは辻副大臣さん、どのようなことをお考えでいらっしゃいますか。

辻副大臣 いわゆる人口置換水準といいますか、出生率二・〇七を確保しなければ人口は減少していくという中にあって、一・三台ではなかなか少子化問題は解消できないという現状にあるわけでございます。

 そういった中で、フランスの事例などもおっしゃっていただいたわけでありますけれども、フランスの移民のこと、アメリカのこともおっしゃっておられましたけれども、またN分N乗の御指摘もございました。

 外国人労働者の問題、直接的には牧副大臣の所掌ではございますけれども、やはり厚生労働省といたしましても、私個人のかねてよりの意見といたしましても、軽々に特定の技能、技術を持たない外国人労働者の方々に入ってきていただくということ、規制なく入っていただくということは、必ずしも日本の中長期的な社会をよくするのにつながるかどうか、その点は私は疑問を持っております。

 やはり、国民がしっかりと理解をし、合意をし、社会的な制度がつくれるかどうかということが根本にあると思いますし、長い目で見た、外国あるいは外国人の方々との信頼関係といいますか、例えば、一度入れたけれども出ていけというふうなことになっては、やはり信頼に反することでございまして、そういった見地からも、決して安直な対応は認められない、このように私は思っております。

 また、N分N乗の問題なども、フランスにおける夫婦共有財産制の思想などから出発しているものでありまして、必ずしもすぐに日本に導入できるということは言い切れないところもあろうかと思いますが、今後の検討課題だと思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、子ども・子育て支援、少子化対策、子供支援の対応は、日本社会全体で取り組んでいかなければならない課題でありまして、そのような立場から、子ども・子育てビジョンに基づく総合的な子育て支援の対策、また、子ども・子育て新システムの確立などに向けて法案を提出するなど、これからも対応を進めていきたい、このように考えております。

橋本(勉)委員 私、もっともっと、これは確かにいろいろな問題がうっせきしていると思います。日本の場合、単純に、鎖国型から要するに開放型に移行する、そういうシステムは難しいと思いますけれども、しかし、それをやらないと、ちょっと太刀打ちできない。経済成長率も、人口が増加しないと、とても名目成長率何%という、話にならない世界になるんじゃないかなと思っております。

 私は、いろいろな発想をちょっと考えているんですが、例えばインドネシア、人口が二億人います。そこは非常に、今度は食料危機です。日本は、埼玉県以上の非耕作地があるんです。そういったところにインドネシアの方に来ていただいて耕してもらう、そしておいしい米を差し上げていく。そして、日本の米は本当においしいんじゃないかな、そういうようなことを味わっていただいて、日本は逆に人口減少、向こうは食料危機ということをうまくマッチングさせながらグローバルな展開を目指していくという方法も、これは一理あるんじゃないかなと思っております。

 いわゆる大胆に発想を切りかえていかないと、日本のまさに前提となる条件が整わないというようなことになります。消費税を五%から一〇%に上げただけでは何の解決策にもならない、そういうことを申し上げたいと思います。

 そういうような、鎖国を前提にした今の制度を開国を前提にする制度に、最後にもう一回、辻副大臣の方から、どうこの問題を考えていったらいいのか、いろいろな諸問題があるかもしれませんけれども、ぜひとも見通しについて、またはこの決断についてお聞かせいただきたいと思います。

辻副大臣 るる委員からいろいろと御指摘をいただきましたけれども、委員がおっしゃられた構想の、考え方のスケールの大きさというものには学んでいきたいと思うわけでございます。

 鎖国、開国という御指摘でございましたけれども、必ずしもその二分法で律し切れないものがあるのではないか。とりわけ、グローバリゼーションという潮流のもとではございますけれども、やはりそれぞれの国にはそれぞれの個性なり歴史なり現状があるわけでございまして、文化なりもあるわけでございまして、そういった中で、全て開放して、委員の御指摘のような開国ということになるのかもしれませんが、そのことが全てすばらしいということでも必ずしもないのではないか。

 やはり、私申し上げましたとおり、長い目で見た、中長期的に見た日本社会に与える影響、国民の合意、そしてまた長い目で見た国家間の信頼関係、外国の方々との信頼関係、そういったこともしっかりと踏まえて、現実に立って対応していかなければならない。

 例えば、かつて日系人の方々に門戸を開いた歴史がございましたけれども、日本の雇用情勢、経済情勢が厳しい中でお戻りいただくような対応もあったわけで、そのようなことが果たしていかがなものか。また、ヨーロッパ諸国でもそのようなことに現実に対応されているわけでありますけれども、そういったことも考え合わせますときに、やはり長い目で見た日本の社会のあるべき姿、外国との信頼関係、そういったこともしっかりと踏まえた対応が必要だと私は思っております。

橋本(勉)委員 今問題になっているような増税論議も、こういった、例えば三人に一人から一人で一人というような社会になるからという前提で、増税しかないという話でありました。しかし、では、三人の人にさらに増税負担を負わせて、そして彼らの意欲をなくさせてしまうというようなことで、一人の老人の方も支えられないとしたら、もっともっと縮小社会になってしまうことを懸念して、質問を終わらせていただきます。

 以上です。

池田委員長 次に、福田衣里子さん。

福田(衣)委員 民主党の福田衣里子です。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。きょうは、厚生労働省と命の尊厳にかかわる問題について御質問させていただきたいと思います。

 民主党政権は、政権交代後、国労の問題、原爆症訴訟、シベリア抑留、B型肝炎、何十年も続いた闘いに終止符を打ってきたと思います。

 しかし、残された課題は、まだ多くあります。その一つである、カネミ油症被害の問題。

 カネミ油症による症状は、病気のデパートとも称されるほど、全身に、あらゆるところにあらゆる形であらわれ、四十五年たった今でも被害者を苦しめ続けています。さらに、結婚や出産、就職、そういったあらゆる場面で差別、偏見を受け、いじめや離婚、そして自殺、さまざまな人生被害を受けています。

 子供の健康を思い、当時体にいいと言われていたカネミ油をせっせと与え、家族をこんな被害に遭わせてしまったと、自責の念を抱き、苦しむお母さん。体だけでなく、心を苦しめ続け、さらに、国からはいまだに救済の手が差し伸べられないということに対する憤りを抱えておられます。

 この事件は、私が生まれる前に起きた話です。そして、きっとこれまでも、諸先輩方がこの問題について取り組み、質問されてきたんだというふうに思います。しかし、今こうやって、事件当初を知らない世代の私が質問しなければいけないということは、悲しいことのようにも思います。

 ぜひ、今国会で、超党派で、長きにわたり苦しむ被害者の皆さんの力となれる政策の実現をという思いで質問させていただきたいと思います。

 まず、農水省にお尋ねいたします。

 一九六八年十月にカネミ油症被害報告が上がってきたと思いますが、その以前に、一九六八年二月下旬から三月上旬にかけて、養鶏場で鶏二百万羽以上が被害を受け、そのうち約五十万羽が死亡したという、いわゆるダーク油事件が起きています。

 原因物質は、カネミ油の製造過程で副産物としてできる米ぬかダーク油であることが判明しました。当然、人間が摂取するカネミ油に対しても危険性を感じますが、当時、農林省は厚生省に、事件を受けて、なぜ連絡を行わなかったのでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生お話ございましたいわゆるダーク油事件でございます。お話にもございましたように、四十年以上前の事件でございまして、当時の裁判でも、今のお話、いろいろ御議論があったと承知をしております。

 私ども、当時の裁判資料等によりますれば、当時、ダーク油事件の発生直後に、肥飼料検査所、これは肥料と飼料の品質の確保をする役所でございますけれども、この肥飼料検査所の職員が、直ちに、品質確保を図るために、カネミ倉庫の工場で米ぬか油の副産物でありますダーク油の製造工程を調査したということでございます。

 その時点におきましては、残念ながら、そのダーク油なり米ぬか油の製造工程で原因となりましたPCBが使用されていたということが把握されておらなかったということ、PCBが毒性を有するという知見も当時はまだなかったというようなこと、それから、米ぬか油の人体被害というのはまだその時点では顕在化をしていなかったというようなことから、早期解明の重要な情報が全くなかったという状況でございます。

福田(衣)委員 さらに言えば、配付資料二枚目にありますように、厚生省予防衛生研究所の俣野主任研究官は、一九六八年の八月十六日に、家畜衛試の病性鑑定書を読んで、食用油でも人体に害を及ぼすのではないかと思って、十九日に、農林省流通飼料課の鈴木技官に電話をして、調査したいのでダーク油を分けてほしいと頼んだが、事件は解決済みでありダーク油は廃棄処分したということで拒否され、俣野主任研究官は、同日、厚生省に行って、精製油にも危険があるのではないかと注意を促しています。

 このような対応を農水省はどうお考えでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生お話にございました御質問の事案でございます。これは、当時の裁判上も御議論になったというふうに承知をしております。

 何分、四十年以上前の事案でございますし、裁判からももう三十年近くたっておりますので、その事案について、事実かどうかということを私どもがこの場で申し上げるわけにはいかないわけでございますが、そういう厚生省の主任研究官の証言が裁判所において行われたということは、私どもも承知をしておるところでございます。

福田(衣)委員 たった数カ月の調査で、保管もせずに、さっさと処分して解決と幕引きするのはどうなんだろうかというふうに思いますし、鶏の飼料は農林で食品は厚生という縦割り行政の弊害とも言えますし、事件に対してもっと真摯に対応を国が行っていれば被害の拡大は防げたのではないかというふうに思います。

 カネミ油症事件が起きた後に、厚生省は、食品事故による健康被害の救済の制度化研究会を設けて、六年にもわたって議論を重ねていますね。その結論を受けて、国として何か行ったことはありますか。

辻副大臣 カネミ油症の問題は、私が中学のころ発生いたしましたけれども、高校のころに共同研究でクラスで発表したことを経験しております。

 カネミ油症事件は、西日本を中心として昭和四十三年に広く発生をし、被害に遭われた方々も多い中で、当初、原因が不明だということもございましたけれども、いずれにいたしましても、厚生労働省といたしまして、食品衛生法に基づく販売停止等とすることにより被害拡大の防止を図るとともに、同年、学識経験者等による油症研究班及び対策本部等を設置いたしまして、患者発生状況の調査を行うとともに、原因究明、診断基準の作成を行ってきたところでございます。

 また、それを受けまして、同種の事件の発生を防止するため、食品衛生法令を改正いたしまして、食品衛生管理上の責任者の配置の義務づけ、昭和四十四年の政令改正でございましたけれども、そのような対応や、有毒、有害物質の混入防止措置基準を定めて営業者に遵守させる、これは昭和四十七年の法改正だったと思いますが、そのような対応をとらせていただいたところでございます。

 そして同時に、昭和四十三年から研究・検診・相談事業というものを今日まで続けさせていただいておりますけれども、これは、九州大学や長崎を初めとする各地の方々が参画されている油症研究班が行う研究・検診・相談事業を通じて油症患者に対する支援をさせていただいているというものでございまして、平成二十三年度ベースで見ますと、二億九百万円の経費を厚生科学研究費として支出をさせていただいて、支援の対応をさせていただいているということでございます。

福田(衣)委員 そういった取り組みを行っていただいていることはよくわかっているんですけれども、六年にわたって研究会を開いて取りまとめられた内容については、結局は、原因企業でしっかりカバーしましょうねという話で終わってしまっていて、国は、この国内最大の食品中毒事件を受けても、積極的な動きをしているようには見えませんでした。

 確認なんですけれども、食品安全基本法が制定されたのは、どんな問題、事件が契機となったんでしょうか。

辻副大臣 BSE事件の発生だということでございます。

福田(衣)委員 二〇〇一年のBSEを受けて、二〇〇三年につくられたということだと思います。

 一九六八年のカネミ事件が起きて、その後もいろいろな国民の健康にかかわる問題というのはたくさん起きたと思うんですが、それでもなかなか法律化されなくて、ようやくできたのがBSEで、このときは素早く対応したのではないかというふうな感覚があります。

 人の被害ではなかなかやる気が見えなくて、経済的被害では素早く動いているように私には感じられます。薬害の問題でもそうだったんですが、日本の国会では、命よりも商売が優先課題なんでしょうか。

 一方、台湾では、配付資料の一枚目にあるように、カネミ油症と同様の油症被害が起きています。そこでは、政府が、申告した全ての被害者を認定して、医療費については政府が全額負担し、どこでも無料で医療が受けられるようになっています。また、カネミ油症に比べ、丹念に、そして長期にわたって追跡調査を行っています。

 現在、被害者の皆さんはカネミ倉庫から医療費を支払われていますが、全てではありません、全額ではありません。さらに、和解金も、四十五年たった今でも支払われていません。被害者の皆さんは、高齢化も進み、国による救済制度の枠組みの確立を待っています。

 小宮山大臣は、長崎で、三枚目の資料に書かれているように、超党派での議員立法が一番早いと発言されておられます。本来であれば大臣に発言の本意を直接お聞きしたかったんですが、出席がかないませんでしたので残念ですが、現在、ここにおられます坂口議員に会長を務めていただいて、超党派による議員連盟をつくって、議員立法という形で何とかできないかという道筋を模索しているところです。

 ぜひ厚労省としても最大限の御協力をお願いしたいんですけれども、前向きなお答えがあれば一言いただきたいんですが、よろしくお願いします。

辻副大臣 委員から、台湾で発症した油症についての御指摘がございましたけれども、これは、原因企業が補償を行わないために公的救済制度が設けられたというふうに聞き及んでいるところでございます。

 御指摘のように、大臣の御発言等もあるわけでありますけれども、いずれにいたしましても、カネミ油症患者の救済に向けて、先ほどお話ございましたように、超党派の議連による御検討が行われているということを承知しているところでありまして、今後とも、その議論の動向を注視させていただくとともに、厚生労働省といたしまして、油症研究班が行う研究・検診・相談事業を通じて、油症患者に対する支援に努めていきたい、このように考えております。

福田(衣)委員 ぜひ、引き続きよろしくお願いいたします。

 次に、ハンセン病問題についてお尋ねいたします。

 資料の四枚目にあるように、私もメンバーなんですが、ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会のメンバーと全国ハンセン病療養所入所者協議会の方たちと一緒に幹事長室に要望に行きました。

 厚労省では、辻副大臣に御対応いただいたということで、ありがとうございました。

 入所者の平均年齢は八十二歳となっており、病気に対する医療だけではなくて、やはり介護とそして生活全般における支援が必要になっている方々が本当にふえている中で、行政のスリム化という国家公務員の削減方針によって、漏れなく、療養所における職員の数も減少している。医師を含めての欠員は、甚大で、恒常的なものになっております。人手が足りないために、お風呂に毎日入りたいけれども、週に二、三回しか入れてもらえないというようなお話もお聞きしました。

 定員については総務省の管轄になると思いますので、副大臣の方からもぜひ総務大臣に御理解いただけるようにお願いをしていただきたいということと、医師、看護師の確保については、厚労省で責任を持って、さらなる御努力をいただきたいというふうに思います。

 国の誤った政策によってこのような状況に置かれている入所者の皆様方が将来に不安を抱かないように政府で取り組んでいただきたいと思いますが、厚労省の今後の対応について、お考えをお聞かせください。

辻副大臣 御指摘をいただきました国立ハンセン病療養所の医師及び看護師の確保につきましては、地方自治体、関係機関等へのさまざまな働きかけや調整など、必要な人員確保に向けて、厚生労働省としても取り組んできたところでございます。

 また、厚生労働省のホームページに各施設の医師、看護師募集に関する情報の掲載、パンフレットの作成、全国の就職説明会への参加など、医師及び看護師確保に取り組ませていただいてきたところでございます。

 しかしながら、全国的に医師及び看護師確保が困難な状況のもとにあって、国立ハンセン病療養所が国立の医療機関であることから民間並みの給与待遇を行うことが困難であるため、欠員が生じているということは事実でございます。

 このようなもとではございますけれども、やはり大事な課題でございますので、引き続き、入所者の方々に対して良質な療養環境が維持できるように、欠員解消に向けて努力していきたい、このように考えております。

福田(衣)委員 ぜひそこは、やはり国の政策が間違っていたためにこのような状況に陥っていますので、責任を持って取り組んでいただきたいというふうに思います。

 最後に、お願いですけれども、薬害肝炎の検証・検討委員会において、医薬品行政について第三者監視・評価組織を設置すべきという最終提言が出されております。私も、以前、この委員会の委員でした。二年にわたり二十三回開催されて取りまとめられたこの提言を尊重していただきたいというふうに思います。

 私たち議員側としても、あらゆる手法を考えておるところでありますので、厚労省としても、ぜひ前向きに御協力をいただきますことをお願いいたしまして、時間が来ましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、三宅雪子さん。

三宅委員 民主党の三宅雪子でございます。本日は、質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 最初に、子供への精神薬の投与の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 全国で、現在四病院で、早期介入、早期支援ということで研究が行われて、子供に薬を処方しているケースがあるということです。また、最近、民間のクリニックでも似たようなことを聞くわけなんですけれども、私は、子供に対して安易に精神薬が処方されるということに対して大変強い懸念を持っているわけでございます。

 早期介入、早期支援につきましては、慎重論と推進論、この二つがあるというふうに聞いているわけなんですけれども、厚生労働省は現在いずれの立場でいらっしゃるのか、牧副大臣にお伺いいたします。

牧副大臣 御指摘のお話に関しては、精神保健医療のあり方に関する検討会等々でもさまざまな議論がございます、まだ現在進行形と言ってもいいのではないかと思うんですけれども。

 もちろん、早期支援、早期介入によって病状が重篤化するのをなるべく早目に抑えるべきだという御意見も当然ございますけれども、一方では、精神疾患に対する偏見の助長への危惧だとか、薬物療法を中心とした治療への不安というものもあって、慎重に進めた方がよいという意見もございます。

 なお慎重に検討を行う必要があるというふうに認識をいたしております。

三宅委員 ありがとうございます。どちらかというと慎重論というふうに受けとめさせていただきました。

 選択性セロトニン再取り込み阻害剤、ちょっと長いんですけれども、SSRIについて、アメリカ食品医薬品局、FDAでは、小児への投与を推奨しないとの勧告を出しています。いわば好ましくないという勧告なわけですけれども、日本では、このSSRIにつきましてどのような対応になっていますでしょうか。現状をお聞かせください。

辻副大臣 御指摘をいただきましたSSRIと言われます抗うつ薬の小児への投与につきまして、アメリカ食品医薬品庁は、二〇〇四年に、抗うつ薬は小児・青年期患者の自殺リスクを高める、抗うつ薬を小児・青年期患者に投与する際には臨床上の必要性とリスクのバランスを考慮すべきであるなどについて添付文書に含める決定をした旨の勧告を行っております。

 さらに、二〇〇七年、アメリカの食品医薬品庁、FDAは、十八歳から二十四歳の若年成人についても自殺のリスクがあるとして、全ての抗うつ薬に、二十四歳以下の患者に投与する際には臨床上の必要性とリスクのバランスを考慮する旨の添付文書の改訂を行うよう企業に指示している、このように承知をしております。

 日本におきましても、これらの抗うつ薬の添付文書には、二十四歳以下の患者で自殺リスクが増加するとの報告があるため本剤の投与に当たってはリスクとベネフィットを考慮することと記載されておりまして、小児への投与については、欧米と同様の注意喚起が図られているところでございます。

三宅委員 ありがとうございます。

 同様の注意喚起が行われているということなんですけれども、国立精神・神経医療研究センター病院の調べでは、小児神経専門医などに対するアンケートで回答があった中で、何と七三%の医師が薬物療法を用いており、そのうちの三九%は就学前のお子さんに対してということでございました。まだ成長途中のお子さんに精神薬を投与するということには、私自身は大変抵抗を感じております。

 どのような薬がどのくらい投与されているのか、薬の名前を含めて、教えてください。

岡田政府参考人 児童思春期の患者への薬物療法がどのように行われているかについては必ずしも詳細を把握してございませんが、先生御指摘になりました調査で、発達障害を専門に診療する医師に対して国立精神・神経医療研究センター病院の医師が行った調査がございます。

 その調査では、先生御指摘のとおり、薬物療法を行っている医師が七割いらっしゃるということでございます。

 その医師が使っている薬剤といたしましては、抗精神病薬のリスペリドン、ピモジド、それから、ADHD治療薬のメチルフェニデート、抗てんかん薬、睡眠薬であったということが報告されてございます。しかし、どれだけの量を使っているかについての報告は、いろいろと調べてみましたが、現状では報告はないということでございます。

 統合失調症やうつ病、摂食障害などにかかっておられます児童思春期の方に対しては、症状を軽減する目的として薬物療法を行うことは、重要な治療法の一つであるというふうに認識しておりまして、年齢や症状に合わせて、現場の臨床的な判断で種類や量を決められているというふうに伺っているところでございます。

三宅委員 ありがとうございます。

 お聞きした薬はいずれも、全部ではないんですけれども、大人に使用されている薬ばかりであるわけでございます。その薬に対して、量に関して報告がないというのは、ちょっとよろしくないのではないかなというふうに思います。

 子供に対する薬の使用量につきましては、ぜひ規制を設けることが必要なのではないかということを一つ御提言させていただきたいというふうに思います。

 また、もう一つの問題は、児童心理を担う医師が不足しているということがあるのではないかということです。

 もともと児童心理学を扱う学部が少ないということももちろん問題の一つではあるわけではありますけれども、発達障害などのお子様を持つ多くのお母様方が本当に困っていらっしゃいます。

 児童思春期精神医療というそうなんですけれども、この分野の医師は現在どのくらいいらっしゃるんでしょうか。また、今後、こういった医師をふやしていく施策はとられているんでしょうか。お伺いいたします。

牧副大臣 現在、児童思春期の精神医療を担う全ての医師の数というわけではないんですけれども、主な学会の認定医としては、日本児童青年精神医学会認定医という方が百七十四名、日本小児精神神経学会認定医が二百十三名となっております。

 当然、この数が十分だという認識ではございませんので、児童思春期の方に適切な医療を提供するため、児童思春期の精神医療を専門とする医師のさらなる充実が必要だと認識をいたしております。

 児童思春期の専門的な精神医療を担う人材育成のための研修会の実施ですとか、各都道府県で拠点となる病院を中核とする関係機関の連携体制の構築ですとか、あるいは、二十四年度の診療報酬改定でも、児童思春期の精神医療に対する評価を行う等により、児童思春期精神医療の充実を図っているところでございます。

 今後とも、このような取り組みを通じて、医療の体制整備を進めるとともに、学校での対応や市町村での相談支援との連携など、さまざまな支援を通じて、地域で安心して暮らせるような体制づくりを進めてまいりたいと思っております。

三宅委員 お聞きして、改めて、本当に少ないんだなということを感じました。ぜひ、全国のお母様方のために、地域間格差をなくし、何カ月も待たないと診療を受けられない、そういった状況をぜひ改善していただけたらというふうに思います。

 次に、外国人生活保護受給者につきましてお伺いいたします。

 そもそも、昭和二十五年に施行されました生活保護法によりますと、まず第一条に「生活に困窮するすべての国民に対し」というふうにございます。日本国民のみを対象としているわけなんですけれども、実際は、永住権のある外国人に対して生活保護が支給されているという現状がございます。

 お聞きしますと、昭和二十九年に局長通達という形で、永住権のある外国人に対して生活保護の支給が始まったということなんですが、これはどのような経緯だったんでしょうか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、生活保護法では、確かに日本国民のみが対象になっておりまして、外国人の方は対象となってございません。一方、外国人の方につきましては、永住者、定住者等の在留資格を有し、適法に日本に在留されている、こういう条件でございますけれども、その方々につきましては、昭和二十九年五月の通知に基づきまして、人道上の観点から、予算措置という形で支給させていただいている、こういう状況でございます。

三宅委員 予算措置ということで行われているということなんですが、こういったことがたびたび行われているんでしょうかということがまず一つと、現在、局長通達に基づいて外国人に生活保護を支給していることは生活保護法に抵触するのではないか、この二点をお伺いいたします。

牧副大臣 生活保護法上は日本人ということになっておりますが、日本に住む永住者の皆さんに、法律に規定されていないけれども、法律で禁止されているわけではないので、人道上の観点からこれを支給するということであるので、局長の通達という認識であります。

 もちろん、こういった生活保護を目的に日本に入ってくるような人というのは当然いないという前提の出入国管理法だと思いますけれども、例えば特別永住者のように、もともとこの国で生まれ育っているような方も大勢いるわけですから、そういう人たちを締め出すような、多分、日本国憲法のたてつけになっていないと思います。

三宅委員 ありがとうございます。

 禁止されていないからというのはなかなか理解しにくい部分もございまして、それであれば、法律を変えるということをそもそも考えるべきだというふうに個人的には思うんです。一般的に、省庁の通達というのは、法律に抵触しない範囲内で出すものだというふうに理解しております。

 特に、民主党政権では政治主導を掲げているということもありまして、大きな政治判断におきましては政務三役が判断すべきと思いますが、いかがお考えでしょうか。

牧副大臣 もちろん、大きな政策判断というのはそうだと思いますし、さらに、国民から信託を受けた国会で決めるのが筋だと私は思います。

三宅委員 それでは、生活保護受給者全体のうち、外国人受給者の割合はどれくらいになっているんでしょうか。教えていただけますでしょうか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十三年十二月時点でございますが、全生活保護受給者が約二百九万人でございますけれども、そのうち、世帯主が外国籍の方である生活保護受給世帯に属する人員、これは約七万三千人であります。全体に占める割合では約三・五%、こういう形になってございます。

三宅委員 ありがとうございます。

 私の質問の趣旨は、外国人に対する支給の是非ではなくて、重要な法律が実態として局長通達などで変えられているということがどうなのかと。

 そして、外国人の場合、資産のチェック、いわば本国の資産のチェックが非常に難しいというふうに思います。その一方、日本人は、現在、銀行の口座のチェックなど厳しくなっていくわけで、逆に不公平にならないようにしていただきたいということでございます。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございます。

池田委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎委員 民主党、宮崎岳志でございます。

 本日は、まず、胃がん撲滅に向けたヘリコバクター・ピロリ対策について伺いたいというふうに思います。

 おととしの、二〇一〇年十一月十二日なんですが、厚生労働委員会におきまして、雇用・能力開発機構法廃止法案の審議が行われた際に、関連してこの問題について質問をさせていただきました。胃がんのほとんどはピロリ菌に起因するものである、ピロリ菌の検査を胃がん検診として認めて、ピロリ菌の除去も保険適用していただきたい、そういうお願いでございました。

 二〇〇六年にがん対策基本法が成立して以来、国会ではほとんどこの議論が行われておらず、この観点からの質問は六年ぶりぐらいだったんですけれども、私も草分けとして取り組んできたつもりでございます。

 当時の答弁というのは、ピロリ菌と胃がんは密接な関連はあるんだけれども除菌で必ず予防できるかどうかわからない、そのような内容であって、時期尚早であるというような答弁であったというふうに記憶しております。

 その後、翌年の二〇一一年には、特に参議院の方で、公明党の松あきら議員や秋野公造議員が活発に質問をしたということもありまして、回答も徐々に前向きになっているというふうに感じております。機運も高まり、国民的関心もまた高まってきたと思います。

 ピロリ菌については、WHOのがん研究機関、IARCが、確実な発がん性があるというふうに認定をしております。

 最近数年で日進月歩の研究の進歩がありまして、多くの研究成果があります。

 広島大学の内視鏡診療科の研究では、十五年間で三千百六十一例胃がんを調べたところ、ピロリ菌の陰性だったのは〇・六%しかない、関連が薄いというふうに従来言われてきたスキルスも含めてほとんど、九九%以上のがんはピロリ菌を伴っているということがわかったということなんですね。

 国の指針では、今エックス線検診というのが基本になっているわけですけれども、大変時代にそぐわなくなっておりまして、この方式を続けて検診率向上というのは絶望的な状況であります。

 そんな中、群馬県の高崎市では、ピロリ菌に着目した胃がんのリスク検診というのを行っておりまして、いわゆるABC検診と言われるものなのですが、ピロリ菌の抗体検査をやる、一方で、胃の萎縮の度合いをペプシノゲン検査ということでやる、これをクロスチェックして、ハイリスクのグループを割り出して、そこに対して内視鏡検査をやるという方式で、非常に大きな成果を上げているということです。

 まず、胃がんの発見率が高い。いわゆるエックス線、これまでの方式よりも発見率が高いというのがあります。それから、コストが安いというのがあります。胃がんを発見するのに、一例当たり、ABC検診では百八十三万円ということなんですが、レントゲンでやると平均で四百三十七万円、直接エックス線でやるとさらにそれより高いということでありまして、大体一年間に五千万円ぐらいこの検診の費用が高崎市だけで下がっているという現実があるということであります。

 こういうことを踏まえて、こういう胃がんのリスク検診等を国として推進すべきだというふうに考えておりまして、政府のお考えを伺いたいということであります。お願いします。

藤田大臣政務官 委員からは、胃がん撲滅に向けた御質問、ヘリコバクター・ピロリ対策について御質問いただきました。

 御指摘のとおり、このヘリコバクター・ピロリ菌と胃がんの発生の関係性については、IARCにおいて高い発がん因子であるということが示されております。

 今委員の方からお話がございました高崎市の事例も含めまして、一部の市町村のがん検診で、御指摘のピロリ菌の抗体検査を含むABC検査、ピロリ菌抗体検査と胃炎の有無を見るペプシノゲン検査、これを組み合わせた検診を実施しているということも承知をいたしております。

 しかし、一方では、がんを予防するためのピロリ菌の除菌の有効性ということについて、これまでの研究結果を踏まえると、まだまだ根拠が十分ではないという御意見も存在をしております。

 いずれにしても、これはしっかり取り組んでいかなければいけない課題でございますので、がんとピロリ菌に関する研究というものをさらに進めていくとともに、今後、検討会を設置いたしまして、内外の知見を踏まえて御議論いただき、ABC検診も含めてがん検診の見直しというものを検討していきたい、このように考えております。

    〔委員長退席、長妻委員長代理着席〕

宮崎委員 十分な根拠がないということなんですけれども、ここ数年の研究を見ると、さらに確実性が高まっているんじゃないかというふうに私自身は認識をしております。

 そして、ピロリ菌の除去というのは、今、胃潰瘍や十二指腸潰瘍など特定の疾患について保険が適用されておりますが、胃がんの発生のメカニズムを考えますと、ピロリ菌に感染をする、そこから萎縮性胃炎に発展をする、そこからさらに胃がんへと変化するということが最近になって言われております。

 日本ヘリコバクター学会の治療ガイドラインでは、あらゆる場合でピロリ菌除去を推奨するということになっております。また、日本消化器病学会のホームページなんかを見ましても、例えば、萎縮性胃炎の場合はピロリ菌を除去することが望ましいんだということであります。

 そして、この日本ヘリコバクター学会の治療ガイドラインに基づいて、例えば、北海道大学、東京大学、慶応大学、筑波大学、こういうところの附属病院では、ピロリ菌外来を設けて、いわゆる適応外でも自由診療での除去を推進しているという現実であります。日本を代表するような医学部で、既にそっちの方向に走り出しているというのが現実でございます。

 しかし、今、萎縮性胃炎というのは、ピロリ除去薬の適応疾病にも入っておりませんし、当然、保険適用もないという状況でございます。臨床試験を必要としない公知申請の手続を活用して一刻も早く萎縮性胃炎を適応に含めるべきだというふうに思いますし、また、保険もこれは適用していただきたいと考えるんですが、いかがでしょうか。

藤田大臣政務官 委員は大変お詳しくていらっしゃいますので改めて繰り返す必要はないというふうに思っておりますけれども、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌については、現在、プロトンポンプ阻害剤に抗生物質二種類、アモキシシリンというのとクラリスロマイシンということでございますけれども、この二種類を併用した三剤併用療法というものによって除菌法が一般的に行われております。

 この三種類の薬剤による除菌法というのは、胃潰瘍とか十二指腸潰瘍等の除菌に関して薬事承認をされているということでございまして、委員が御指摘のように、萎縮性胃炎については、現在、適応除外となって、適応されておりません。しかし、これを適応拡大するということであれば、薬剤の製造販売業者によって、まずは、承認事項の一部変更承認申請、これを直ちにやっていただく。

 そして、その上で、有効性、安全性を検証する治験の成績の提出、これも、今委員の方からお話がございましたように、今までの過去に実施された臨床研究等の情報を活用して、効果的な計画という形でお出しをいただければいいと思いますけれども、そういう形で手続をとっていただく必要がございます。

 この手続がとられ、薬事の承認申請が出されれば、適切に審査を進め、そして、その上で、薬剤の保険適用についても、薬事承認が前提でございますので、それがとれれば、保険適用についても検討していきたい、このように考えております。

宮崎委員 前向きなお答えだったというふうに受け取らせていただきます。

 今回、今国会でなぜこの問題を取り上げたかといいますと、がん対策推進基本計画というのが今策定作業中であるということでございまして、ここに、ぜひ、胃がん撲滅のためのピロリ菌対策をもっと重点的に盛り込んでいただきたい、そういうお願いなんです。

 今の計画案、拝見をいたしますと、「ヘリコバクター・ピロリについては、除菌の有用性について内外の知見をもとに検討する」という表現でありまして、ちょっと物足りないなというふうに思うわけであります。また、「がん検診の項目について、国内外の知見を収集し、科学的根拠のあるがん検診の方法等について検討を行う」という文言がありまして、厚生労働省の担当者に説明を受けますと、ピロリ菌の関係の検診をこの部分の文言に文脈として含めているんだ、そのような御説明だったんですけれども、やはりちょっと曖昧ではないかというふうに思うんですね。

 この基本計画は五年間の計画でありまして、より野心的な目標というか、今後の課題もあるにせよ、もっと明確に方向性を打ち出してもらいたいという思いがございます。

 ピロリ菌の対策によって胃がんというのは日本から絶滅をできるかもしれない、そういった病気であります。除菌の有用性は私は証明されているというふうに考えているんですけれども、しかし、それが不足だというのなら、速やかに研究を加速してこれを確認して、これが有用か有用でないのかはっきりさせて、有用だということだったら、この五年間の中で速やかに実行に移してほしい、このような思いがございます。

 ABC検査についても、ピロリ菌の抗体検査、ペプシノゲン検査についても、基本計画に明確に書き込んでいただきたいというのがお願いでございます。これについての見解、お願いを申し上げます。

藤田大臣政務官 三月の一日に、がん対策推進基本計画(変更案)の答申をいただきました。その中に、今委員の方から御指摘がありましたような二点、ピロリ菌について記載をされているわけでございます。

 しかし、これでは物足りないという御指摘でございまして、今回、受診率の数値目標というものも掲げておりますので、やはりきちっと効果的な対策というものを打ち出していくということが強く求められていると認識をいたしております。

 そういう意味では、若干繰り返しになって恐縮ですが、先ほど申しましたようなABC検査の問題なども含めて、検討会を設置いたしまして、そこの中でしっかりと取り組みを進めてまいりたいと思っております。

宮崎委員 胃がんは、アジア人に一種特有の病気とも言われていまして、人種によって非常に差があるんですね。その原因というのはピロリ菌の型にあるわけですけれども、これは、人類がアフリカに発祥して、グレートジャーニーという、ユーラシアからアメリカまで数十万年かけて移動するんですけれども、その間に変異が起こって、いろいろ型が変わってきたというのが原因ということでございます。

 一種、これはアジアの風土病みたいな位置づけもあるわけです。これは単に歴史的にこうだというだけじゃなくて、ということは、この研究はアジアがトップを走らなければいけないということなんですね。

 欧米に少ない病気なので、欧米の研究成果を見て何とかというのがこれまでの日本の医学の一種スタンダードになってきたんですけれども、実は、この胃がんのメカニズムとか治療については、アジア、とりわけ日本がトップを走らないといけないということでございまして、ぜひ、ここについては先進的に取り組んでいただきたい。

 がん対策推進基本計画の目玉ということで、ぜひこれは盛り込んでいただきたいとお願いを申し上げます。

 時間もございませんので、最後に一点だけ、別のことを伺います。

 いわゆる医療事故の調査機関、医療事故調についてのお伺いなんですけれども、かつて、医療事故の原因究明や再発防止、また紛争解決等の観点から、活発に医療事故の調査機関についての議論が行われておりまして、二〇〇八年には、当時の自公政権で、医療安全調査委員会設置法案の大綱案が示されて、民主党も、当時野党でありましたけれども、対案として試案を示しました。しかし、ほとんどその後議論が進まなかったという経緯がございます。これについては、民主党としても大いに反省をすべきだというふうに私は考えております。

 そんな中、このほど検討部会が設置されて、議論が念願の再スタートをいたしました。患者のため、医療者のため、朗報だと思っております。ぜひ、事故調設置に向けた検討状況をお教えいただきたいというふうに思います。

藤田大臣政務官 医療事故の原因究明及び再発防止の仕組みについては、昨年七月に閣議決定された消費者基本計画を踏まえて、昨年の八月から開催をしております大臣政務官主宰の医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会で御意見を伺ってきているところでございます。

 そして、その中で、特にこの医療事故の原因究明の仕組み等についてはもっと集中的に検討すべきである、こういう御意見がございましたことを踏まえまして、この検討会のもとに、医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会というものを設けまして、二月十五日に第一回の検討部会を開催いたしたところでございます。

 医療安全の確保というのは大変重要な課題と認識しておりますので、まだ第一回でございましたけれども、今後、関係者の多様な御意見を伺いながら、月一回程度をめどに、丁寧に検討を進めてまいりたい、このように考えております。

宮崎委員 時間となりました。この問題、患者にとっても医療者にとっても大変重要な問題ですが、もう既に議論は尽くされているというふうに思います。中身の問題はもちろんですけれども、スピードが大切ですので、ぜひ、一刻も早くまとめていただきたいというふうにお願いします。

 終わります。

長妻委員長代理 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 おはようございます。民主党の吉田統彦でございます。

 早速、質問を始めたいと思います、貴重なお時間ですので。

 厚生労働省は、現在の放射性セシウムの暫定規制値に適合している食品は、健康への影響はなく、十分に安全が確保されているが、しかしながら、より一層の食品の安全と安心を確保するという観点から、現在の暫定規制値で許容している年間線量五ミリシーベルトから一ミリシーベルトに基づく基準値に引き下げられます。

 具体的には、飲料水、従来二百ベクレル・パー・キログラムであったものが十ベクレル・パー・キログラム、牛乳・乳製品、二百から五十、野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他、五百ベクレル・パー・キログラムから一般食品百、乳児用食品五十という形で引き下げが行われます。

 今までも安全であると国民に説明してきたわけでございますが、なぜさらなる引き下げをする必要があるのか、その意義を厚生労働省にお伺いいたします。

藤田大臣政務官 食品中の放射性物質の新基準値についてお尋ねをいただきました。

 これは、今まで適用してまいりましたのは暫定規制値ということでございまして、今回の事故後、緊急時のものとして設定したわけでございます。そのために、長期的な状況に対応する新たな基準値が必要ということは、原子力安全委員会等からもその御意見をいただいてきていた経緯がございます。

 そうしたことを踏まえまして、今回、新たな規制値というものを、国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標等を参考にしながら、そしてまた、モニタリング検査の結果、多くの食品から検出されている濃度というものが時間の経過とともに相当程度低下をしている、こういうことを踏まえまして、年間線量を五ミリシーベルトから一ミリシーベルトに引き下げる、こういうことで決定したところでございます。

    〔長妻委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、また国民に放射能ヒステリーのような誤解や混乱がないように、しっかりと御説明を賜れればと思います。

 次に、この新基準値が現地の農業、漁業に与える影響と、その対策についてお伺いいたします。

 昨年十月から十二月のデータにおいて、暫定規制値では福島県の魚介類の四・五八%が基準値を超えていますが、この数値、実は、新基準値に適用すると、三四・九三%が基準値を超えてしまいます。果実が、一・四三から、九・九八%に基準値を超えるものがふえます。キノコは、従来の基準値であれば六・四一%が超えていたものが、一七・九五、そして米は、〇・一六であったものが、一・二八%が基準値を超えます。

 その他の地域でも、同品目、魚介類が〇・三一であったのが二・一五%、果実はゼロであったのが〇・四三%、キノコは、六・五三%から、二八・一%が基準値を超えます。米は、暫定基準でも新基準でも福島県以外はゼロであると伺っております。

 こういった影響を受ける農水産物、どれくらいの額になるのか。そして、この新基準値の影響を受けて出荷、販売できなくなる農水産物、これは三月三十一日までは出荷、販売できるものですが、それに対してどのような対策を講じるのか。

 そもそも、風評被害等で、従来の基準値を満たしながら売れない福島産、宮城産、茨城産などの農水産物に関して、政府はその販売促進のための施策として何を行ってきたのか、そして、それが有効であったのか。

 例えば、例として申し上げれば、絶対に安全と国民に対して説明していたわけですから、厚生労働省や農林水産省、経済産業省のような中央官庁や、地方自治体、そして我々国会関連の施設、そして東京電力などが、積極的にこういったものを購入し、食堂を含めて消費をするといった姿勢をまず示す。そして、これを初めとしたさまざまな施策があるはずでございますが、いかがだったんでしょうか。農林水産省にお伺いをいたします。

筒井副大臣 新しい基準値においても、その基準値超えの食品が出ない、これを大前提に取り組みをしておりますが、そのためには、一つは、農業においては、作付制限、基準値超えが出る可能性が高い地域においては作付制限をする、それをまず今取り組んでいるところでございます。

 そしてまた、作付をする地域においても、除染やあるいは放射性物質の吸収抑制対策、時間がないでしょうからその具体的な中身は今申し上げませんが、それをやっていく。そして、その上で、生産物に関しては、徹底した検査体制、全袋検査を含めた検査体制をそれぞれにおいて行っていく。これを今取り組んでいるところでございます。

 それと、今、先生の質問でありました、今までどういうふうな消費拡大のための取り組みをしたのか。農水省においては、食べて応援しようというキャンペーンをもう大分全国的にやっておりまして、それで結構広がりも出ているところだというふうに思っております。

 そして、それらをやっていきながら、しかし、やはり、値段が下がったり、あるいは売れなかったり、風評被害を受けたりというところがあるわけでございますから、それに関しては、きちんと損害賠償を実行してもらう。それは、農水省において、もう何回も東電も含めて連絡会議をいたしまして、その中で、東電さんにも、今度の新基準値、まだそれが実施される前からの被害、風評被害を含めて、損害賠償の対象になりますということをはっきり確約していただいているという状況でございます。

吉田(統)委員 ありがとうございます。ぜひ、しっかりとした対策を今後もお願いいたします。

 そこで、賠償ということでは、私、少し不思議に思っていることがございます。

 賠償という面では、どこかで線引きが必要なんだと思います。

 宮城県に丸森町という、宮城県から福島県にちょうど盲腸のように飛び出た町があるんです。政府は、実は、伊達市など福島県の二十三市町村の住民への賠償指針を昨年末に策定し、東京電力も二月二十八日に、この指針を受けた賠償を始めると発表しております。しかしながら、丸森町のようなケースは、賠償対象の福島県の二十三市町村と地勢的には全く同じ状況であるにもかかわらず、県境によって賠償を阻まれてしまうといった現状が予測をされております。現状、そういう声が上がっております。

 このような現状に対して、政府は、東京電力に対してどのような指導をしていく方針なんでしょうか。県境での線引きではなくて、もう少し学術的な手段を考慮した、例えばセシウムの分布というのはかなり学術的なデータがあるわけですから、そういったものを考慮した指針を示すべきではないかと思いますが、政府のお考え、農林水産省から承りたいと思います。

筒井副大臣 今先生がおっしゃったのは、審査会の指針で風評被害の対象として県を指定している、その指定している県から外れると対象から外れるのではないかという趣旨かと思いますが、これは、外れることはございません。

 審査会の指針は、ここの県についての風評被害は当然賠償対象になるということを言っているわけで、それ以外は対象にならないという趣旨では全くありませんので、それ以外でも、セシウムの影響、放射性物質の影響によって風評被害が生じた場合は損害賠償の対象になることは、これは審査会自身がそう言っているところでございます。指針でそういうふうに具体的に地域を指定して出した場合には、その地域においては損害賠償請求が非常にやりやすくなる、東電の方もまた支払いやすくなるという点があるから指定しただけでございます。

 ただ、この指定の範囲も、さらに広げていくようにしていく、こういう必要性はあるかと思っております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。現地の方々は大変安心されたと思います。引き続き御指導を賜れればと思います。

 それでは、次の質問に入りたいと思います。

 先般、一月二十日に閣議決定された独立行政法人の制度及び組織の見直しにおいて、医薬品医療機器総合機構、PMDAと国立病院機構は、いわゆる独法通則法ではなく、個別法や他の法人制度を活用することとなったと伺っております。

 まず、PMDAは、もちろん、国民に対して安心、安全な医薬品、医療機器を届けるとともに、さらなるデバイスラグ、ドラッグラグの解消を目指すと思われます。

 具体的には、例えば、来るべき再生医療製品の到来に向けてどう対処するのか。そして、明らかにFDAより高い後発医療機器の審査料や第三者認証のあり方。そして、FDAは、審査料二割、公費八割で審査を行っておりますが、PMDAは、審査の運営を一〇〇%審査料のみでやっています。こういった、その中での、積み上げ方式で審査料を決めていることが適正かどうか。また、一部変更承認申請を不要とする範囲の明確化。この四点を含めて、概要の御説明をお願いいたします。

辻副大臣 委員からるる専門的な御見地からの御説明もあったわけでありますけれども、現在、PMDAにつきましては、新成長戦略にもありますように、いわゆるドラッグラグ、デバイスラグの解消のための承認審査の迅速化を目指しているところでございます。

 そして、その新成長戦略に基づきまして、PMDAの審査人員の増員や専門的知識の向上のための財政措置、また、厚生労働省として、審査のポイント等をわかりやすく示した審査ガイドラインを策定し、PMDAにおいても審査への活用をしていただくなどの対応をしているところでございます。

 御指摘をいただいておりますように、医薬品、医療機器の審査の充実につきましては、これまでも、政府内のC型肝炎の検討委員会や厚生科学審議会の検討部会などでも議論をさせていただいてまいりまして、制度のあり方のさらなる検討、そしてまたPMDAの体制強化についても指摘をいただいているところでございます。

 また、現在、委員も中心になっていただきまして、民主党の薬事法小委員会でも検討を進めていただいているということを承知しているわけでありますけれども、厚生労働省といたしましても、医薬品、医療機器の薬事法等の制度改正事項について検討を進めているところでございます。

 また、御指摘ございましたように、ことし一月に閣議決定されました独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針におきましても、国の関与を強化することなどの見地から、新たな組織への移行なども目指すようにというふうにされているところでございます。

 こういった御指摘、また委員からの御意見等も受けとめさせていただきまして、PMDAの体制の充実に取り組んでいきたい、このように考えております。

 今後とも、御指導を賜れれば幸いでございます。

吉田(統)委員 時間がなくなってしまったので、ちょっと通告の順番と変えてしまいますが、科研費基金化についてお伺いしたいと思います。

 平成二十三年四月二十日、第百七十七国会で、独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案が、参議院で全会一致で可決され、成立しました。これによって、文部科学省の所管する科研費、いわゆる科学研究費補助金が、年度をまたぎ複数年度で使用が可能になりました。

 本法案ができるまでは、繰り越し業務が煩雑であったために、年度末に無駄なものを買ったり、業者にプール金として預けるような不正経理、または経費の水増しなどの不正経理が行われておりました。大変意義のある法案であると確信しております。

 実際、文部科学省が調査をした結果、二〇〇八年度以降の不正経理は八校五百九十四万円、調査過程で見つかった二〇〇七年度以前の不正も、二十一の大学等で少なくとも七千二百六十三万円ある。いかなる理由があろうとも、不正行為は許されることではありません。しかし、この事実は、やはり科研費の使い勝手の悪さ、繰り越しに携わる事務作業の煩雑さが原因であるとも考えられます。

 いずれにせよ、税金から支給される科研費は一銭たりとも無駄に扱ってはなりません。こういった科研費を存分に有効に科学者、研究者に使っていただくために、制度設計、再設計しなければなりません。

 厚生労働省の科研費、約四百七十億円あると伺っておりますが、この基金化の進捗はどのような感じか。例えば、財務省が、厚生労働省の予算が一時的に膨れ上がるからそういったことはできないだとか、学術振興会のような受け皿がないからできない、なければつくればいいと思います、そういった言いわけをすることなく、この血税を一銭たりとも無駄にしない、全国の研究者を勇気づける答弁をまず厚生労働省からいただき、その後、農林水産省や経済産業省もこういった競争的な研究資金をお持ちでいらっしゃいます、特に農林水産省は今回の調査で二件不正経理が見つかっております、総額百億円ぐらいあると思います、こういったものを基金化にするのかも含めて、最後急ぎになりましたが、御返答いただければと思います。よろしくお願いいたします。

辻副大臣 この点につきましては、吉田委員の方から、かねてより、積極的な、熱意を込めた御提言をいただいておる課題でございます。

 文部科学省の基金につきましては、少額の研究費に関して、前倒しや繰り越しなど年度間の研究費の使用が弾力的にできる等のメリットがある、このように考えております。御指摘も十分受けとめておるところでございます。

 ただ、一方で、厚生科学研究費補助金の基金化に当たりましては、御指摘もございましたけれども、行財政改革推進の流れの中で、基金を造成する機関を、受け皿を整備する必要があるということでございます。また、国や独立行政法人で基金を保有する場合には、法改正が必要でございます。また、基金造成のために、初年度に複数年度の研究費を予算措置する必要がある。こういった課題もございまして、そういったことにどう対処していくかということで検討させていただいているところでございます。

 なお、現在の厚生科学研究費補助金につきましては、現状でも、一定の要件のもとで翌年度に繰り越して執行することが可能となっているところでありますけれども、いずれにいたしましても、医療の現場に根差し、医学研究にも熱心に思いを持って取り組んでこられました吉田委員からかねてよりいただいている御提言でございますので、御趣旨をしっかり受けとめてさせていただいて検討を進めていきたい、このように考えております。

藤本政府参考人 農林水産省からお答え申し上げます。

 農林水産省の研究費でございますけれども、私どもの研究費、国が解決すべき政策課題に対応した研究開発に要する経費を委託費として公募で選定した研究機関に支出する、国にかわって研究をしていただくという委託のプロジェクト研究費というのが過半でございます。

 こうした委託のプロジェクト研究費は、年度ごとに必要な研究費を支出しておりますけれども、プロジェクトの中で、課題の間で予算の弾力的な運用というのも可能でございますので、こういった運用により、研究の効率的な実施も可能であるというふうに考えております。

 また、御指摘の競争的資金でございますけれども、これは、一部は独立行政法人から研究者にファンディングを行うという形で柔軟な研究費の執行を可能にしているというところでございますけれども、今後、御指摘を踏まえまして、より研究者が利用しやすく、研究成果が出るという予算となるように検討してまいりたいというふうに考えております。

池田委員長 中西経済産業省大臣官房審議官、簡潔に答弁してください。

中西政府参考人 御指摘のとおり、やはり研究開発とかというのを進めていくに当たりましては、その進捗に応じた支出といったことも必要だと思っておりまして、当省といたしまして、二十四年度から立ち上げます未来開拓研究制度というところにおきましては、国庫債務負担行為ということで、複数年の契約ができるようなことも始めております。

 いずれにしましても、そういうことを通じまして、円滑な、なおかつ効率的な予算の使用ができるように、制度の改善に努めていきたいと思っております。

池田委員長 次に、小林正枝さん。

小林(正)委員 新党きづなの小林正枝でございます。

 厚労委員長並びに与野党両筆頭、関係各位のお取り計らいによりましてこのような長い質問の時間を頂戴しましたことを、心より御礼申し上げます。

 厚生労働大臣の所信表明に対しまして、幾つか質問させていただきます。

 先般の所信表明におきまして、小宮山厚生労働大臣は、二月十七日に政府が閣議決定いたしました社会保障と税の一体改革に触れられ、給付、負担両面で世代間、世代内の公平を確保した全世代対応型の社会保障制度の構築を目指し、子育て、医療・介護、年金などの社会保障の充実を図りますという決意を述べられました。

 もちろん、社会保障制度をどのようにつくりかえていくのか、国民の公平感をどう担保していくのか、その際に財源をどうすべきかなどといった議論は必要だと思いますが、そのときに、なぜ政府は現行の年金制度や生活保護といった制度についても一体として議論されなかったのでしょうか。

 現在、消費税を引き上げることのみが主眼となっており、肝心な福祉や社会保障議論がおろそかにされているという印象を私は持っておりますが、そうは思われませんでしょうか。

辻副大臣 私どもといたしましては、社会保障と税の一体改革ということで取り組ませていただいているところでございまして、年金、医療・介護、子育て支援等々、社会保障についても取り組ませていただいているところでございます。

小林(正)委員 近年、生活保護世帯は著しく増加しています。昨年の平成二十三年水準というものは、昭和四十年ごろの、まだ日本が貧しかった時代と同水準にまでなってしまいました。とりわけ、十年前に比べますと、本来働くことが可能な比較的若い世代、そのような方たちの生活保護受給者が四倍以上に増加していると聞いております。

 ワーキングプアという言葉が流行して久しくなりますが、若い人たちの雇用や労働条件が不安定になったことが、働ける世代の生活保護受給の増加につながっているのではないかと考えますが、厚生労働省の御認識を伺います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、近年、確かに厳しい経済状況を反映しまして、失業等により生活保護に至る世帯が増加してございます。そういう方々を含めまして、いわゆる高齢者もしくは障害者世帯等を除く、稼働能力が一定見込まれる世帯でございますが、十年前が約五万五千世帯でございましたが、平成二十二年度は約二十二万七千世帯に上ってございます。

 私どもとしましては、働く能力を有する方は就労を通じまして自立した生活を送ることが望ましい、こう考えてございまして、このため、一旦生活保護を受けても、保護を受けなくても生活できるようになるための就労支援、これに強力に取り組んでまいりたい、このように考えている次第でございます。

小林(正)委員 関連してお伺いいたします。

 比較的若い、働くことが可能と見受けられる世代について、その審査方法に特別な計らいといいましょうか、通常の審査とは違った形で、その人の本来持つ能力あるいは資格等というのは、生活保護を受給されるときに承知しているのでしょうか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護の適用でございますが、基本的には、これは、申請があった方につきましては、年齢もしくはどういう仕事があった等々は問わず、まさにその状況に応じて認定してございます。したがいまして、若い方におきましても、例えば、資産、所得がないという方、働く能力はあってもそういう職場等がどうしてもないというような、そういう全ての状況を判断した上で実はこれについて適用している次第でございます。

 したがいまして、特に若い方だから特別の基準ということは設けてございませんで、まさに全ての一般的な一律の基準のもとで適用している、こういう状況でございます。

小林(正)委員 しつこく申しわけないんですけれども、実際には、生活保護に行くまで、第二のセーフティーネットと呼ばれるものがあると聞いております。後ほど質問させていただきますけれども、求職者支援制度といった制度、生活保護に至る前の前段としてそれを受給してほしいといった制度が昨年できたわけですけれども、そこに至る前に生活保護に行ってしまうということはないんでしょうか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護というのは、いわば最後のセーフティーネットでございまして、その適用に当たっては、他方施策の優先ということがございます。つまり、ほかの制度、先ほどの求職者支援制度も昨年から始まったものでございますが、それ以外の雇用保険、社会保険、そういったものが適用されるものであれば、当然そちらが優先するという考えでございます。

 したがって、その中でどうしてもできないケース、最後の部分でこの生活保護というのが基本的には位置づけられておりますし、そういう運用を図っているところでございます。

小林(正)委員 健康で働くことができる世代の生活保護受給を減らしていくためには雇用の機会をふやしていくということが何よりも大切であるということは周知の事実であると思います。そして、働くことで賃金を得ることができるのならば生活保護で暮らすよりもより充足感のある生活ができるという実態をつくることが必要だと思います。

 非正規雇用等で、働いても働いても、現実、生活保護の水準よりも低い賃金しか得られない実態を大臣はどのように御認識されていますでしょうか。

牧副大臣 当然、おっしゃるように、働くことを通じて自己実現をしていっていただくというのが本来あるべき姿でありますから、できる限りにおいてきちっと職についていただいて生活をしていただくということが大前提でありますけれども、おっしゃるように、汗水流して働いても生活保護費よりも稼ぎが少ないというようなことがあっては、これは実際に社会全体を見てもモラルハザードが生じかねないわけでありますから、こういったことは避けなければいけないことであります。

 ただ、現実、非正規雇用等々の中には、おっしゃるように、生活保護費よりも給料が低いという現象も、そういった逆転現象もまだ若干残っているというのは事実でありますけれども、今年度、平成二十三年度の最低賃金の引き上げによって、徐々にこの辺も解消されて、今、地域別でいうと三道県でまだ多少そういった逆転現象がありますけれども、この辺は鋭意解消していく予定でございます。

小林(正)委員 一方で、少額の国民年金だけで暮らしている高齢者も、現実、数多くいらっしゃいます。これらの方々は、生活保護受給者よりも困窮した生活をしていらっしゃる方がいるというのが実情であります。生活保護世帯よりも年金暮らしの人々が苦しさを味わっているというような矛盾について、副大臣はどのように認識しておられますでしょうか。

牧副大臣 制度のもともとの趣旨をぜひ御理解いただきたいと思いますが、年金というのは、それまでの納付実績に応じて、資産やらあるいは所得に関係なく給付を受けるものでありますけれども、生活保護の趣旨というのは、国民が憲法で保障された最低限の文化的な生活を送るための給付でありますので、例えば、高齢者になって老齢基礎年金だけしかなくて資産も収入も何もないということであれば、それは、最低限の生活をするための差額分は申請をしていただければ給付を受けられるということでありますので、よくその点が地元なんかでも言われるかもしれませんけれども、そういった観点から、決して不公平だとかそういうことではないというふうに御理解をいただきたいと思います。

 ただ、現にそういう間違ったメッセージが発信されてしまいますと、若い人の中に、それだったら最初から年金なんか入らなくても最後は生活保護を受ければいいんじゃないかというような、それこそモラルハザードにもつながりかねない事態もありますので、その辺の誤解はきちっと解消させていただきたいと思っております。

小林(正)委員 今の牧副大臣の御答弁に私の次の質問が入っていたところでありますけれども。

 確かに、おっしゃるように、年金と生活保護というものは全く趣旨が違いますので、同じ物差しではかるというのはどうかと思います。ただ、一般国民としては、国民年金が幾ら、そして生活保護が月々、地域にも等級にもよりますけれども、自分の年金よりも多いという、金額ベースだけが先行してしまいますと、やはり不公平感というのが、制度的に違うものであっても国民の感情としては矛盾を感じているということも、ちょっと頭の片隅に置いていただきたいなと思います。

 副大臣の御答弁にあったことをまた聞くというのは恐縮なんですけれども、若い方の中には、実際に、年をとって年金で暮らすよりも生活保護を安易に申請してしまう方が楽だといったような理由、もちろん、それ以外にも、払いたくても払えないという方もおられるやもしれませんが、国民年金保険料の未納問題が深刻化しているのは周知の事実です。

 こうした国民年金未納問題について、厚生労働省はどのようにお考えでいらっしゃるのでしょうか。

今別府政府参考人 お答え申し上げます。

 国民年金の保険料は二年さかのぼって払えますので、保険料の納付率、最終的には、今二十年度の数字が一番新しゅうございます。六六・八%という数字であります。

 ただ、現年度分の納付率を申しますと、二十二年度で五九・三まで下がってきておりまして、ついに六〇を切ったということでございます。

 二十三年度は、今途中までですが、二十二年度と同じような水準で推移をしておりまして、ようやくその減少傾向に歯どめがかかったかとは思っておりますが、これを引き上げるためにきめ細かな対策をとる必要があると考えておりまして、高所得者への強制徴収でありますとか、電話で済まさずに戸別訪問をするでありますとか、あるいは低所得者で免除対象になるのに免除の申請をしていただけていないという方がおられますので、この辺を徹底的に個別に対策をとって、納付率の向上に努めてまいりたいと考えております。

小林(正)委員 今、年金や生活保護に関して質問させていただきましたが、これらの問題を解決するには、生活保護を受給せざるを得なくなる以前に、事前のセーフティーネットを充実させることが必要だと思います。

 先ほど私もちょっとお話に出しましたけれども、厚生労働省は生活保護受給に至る前段として第二のネットと呼んでおられるようですけれども、今の求職者支援制度は円滑に運用されているとお考えでしょうか。厚生労働省の見解をお聞かせください。

牧副大臣 今お話がございました求職者支援制度については、昨年十月から正式な制度としてスタートいたしました。したがって、円滑に機能しているのかどうかと言われますと、これからその成果が徐々に出てくるという期待をいたしているわけでありますけれども、第二のセーフティーネットとして、職業訓練と給付を受けるという制度であります。

 これまで、一月までに約二万八千人が受講を開始し、ハローワーク等が積極的な支援を行っているところであります。この春からその成果が期待できるというふうに私どもは認識をいたしております。

小林(正)委員 今の御答弁にありましたように、昨年十月から始められた施策でありますから、まだその後結果が出ていないというのは容易に想像できます。そして、この求職者支援制度を受け、目的というのは、そこから就職に、雇用につながるということでありますから、その成果が非常にいいものであることを私も願っております。

 この求職者支援制度というのは、民主党政権になってつくられた大変よい政策の一つであると私は思います。しかし、先ほど申し上げましたように、まだ始まったばかりの施策ということもあり、機能的に運用されていると言えないところもあるのではないかと思います。

 例えばで恐縮なんですけれども、職業訓練を希望されている方が、自分の希望する職業に関する訓練を自宅から近い場所で、あるいは思い立ったらすぐ受講できるのかといえば、なかなかそのような状況ではないと聞いております。

 そこにはまだミスマッチというものが存在しており、職業訓練の分野におきましても、コンピューターですとか、今ですと福祉・介護職などといったニーズのあるものがたくさん講座として用意されておるようですけれども、やはり、職業というものは、偏在することなく、東京の中でも、大工であったり職人であったり調理師といったような、手に職をつける、どこに転職しようとしても仕事ができるといったような技術的なことも講座としてできれば、よりすばらしい施策になるのではないかと私は個人的に思うわけです。

 もっと求職者のニーズに合わせた制度設計が必要であると感じる中で、今後そういったよりきめ細やかな職業訓練制度のあり方というのは御検討されているのかどうか、お聞かせ願います。

牧副大臣 これも、おっしゃるとおり、せっかくの制度が本当の雇用に結びつかなければ何の意味もないわけで、その地域における産業の動向ですとか雇用のニーズ等々をしっかり見ながら進めていかなければいけないというのは、当然、委員がおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、さっき申し上げたように、これからコース別の成果というのが出てくるわけで、いかにそれぞれの訓練コースが実際に雇用に結びついたのかということもしっかりと各都道府県別に評価をしながら、さらに先の施策を考えてまいりたい、このように思っております。

小林(正)委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 求職者支援制度のもう一方の側面として、残念ながら、受講する方たちの中には、訓練期間中の現金給付、これは月額十万円と聞いておりますが、その給付が目的になっている方々がいるというふうに承知しております。

 求職者のために役に立ち、また、限りある税金の無駄にならないためにも、やはり職業訓練が終了したら、次の就職の機会が保障されていく、あるいは次の雇用につながるといったことが欠かせないと思うのですが、スウェーデンなどの例は、失業者を国の責任で訓練し、再び社会に送り出すという施策もとっておられるようです。社会制度もかなり北欧、スウェーデンとは違いますから、一概にそれをすぐ我が国に導入するというのはいろいろ課題も多いかと思いますけれども、あくまでも先進的な事例として検討し、考慮していただけないものでしょうか。

小宮山国務大臣 求職者支援制度では、ハローワークが中心となって、訓練を開始する前、訓練期間中、そして訓練終了後に、一貫した就職支援を行っています。

 具体的には、受講生ごとに就職支援計画というものをつくりまして、訓練期間中と訓練終了した後も定期的にハローワークに来ていただく。そして、訓練が終了した後は、担当者制も含めて、きめ細かに就職支援をしています。

 ともすると、職業訓練は能力開発局、そして就職の支援の方は職業安定局というように、省の中でも縦割りになっているということもございますので、これは私の方からも、その省の縦割りをなくして、全体でなくせればいいんですけれども、なかなか一度にはいかないので、せっかく肝いりで始まった第二のセーフティーネットの求職者支援制度について、その省の中の局の壁を取り払って、一体となってしっかりと、訓練を受けた方が望まれる職につけるように最大限サポートをしていく、そういう体制をとっているところです。

小林(正)委員 私は、大臣の力強い御意思を伺いまして、非常に期待しております。ぜひ、私から言うのは申しわけないんですけれども、頑張っていただきたいと思います。

 次に、高齢者の雇用についてお伺いいたします。

 大臣は、所信表明の中で、高齢者雇用については、雇用と年金を確実に接続させ、無年金、無収入となる高齢者が生じないように、希望者全員の六十五歳までの雇用確保措置を内容とする法案を今国会に提出すると述べられました。

 大臣がおっしゃられた高年齢者等の雇用の安定に関する法律案については私も賛意を示すところですが、ことしの一月六日に、厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会では、この法案の経過措置を盛り込む建議が提出されました。これによって、もし老齢年金が満額支給される年まで雇用を継続されない人が出てきてしまうようなことがあれば、それは、大臣のお気持ちにも、また法の趣旨にも背くのではないかと思います。

 私は、全ての働く人々に対し、平等に継続雇用の機会を与えられるように企業に義務づけを課すようにすべきではないかと思うのですが、企業の恣意的な選択で継続雇用が妨げられることはないと考えてよろしいのでしょうか。

中沖政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の高年齢者雇用安定法の改正法案でございますが、先生御指摘のとおり、公労使で構成されます労働政策審議会の建議を踏まえて、六十五歳までの希望者全員の雇用確保措置、これを導入することを内容といたしております。

 ただ、こうした措置につきましては、企業に御負担をお願いする事項もございますので、負担軽減策の一環として、特例を認めるような経過措置があること、これは先生もよく御存じのとおりだと思っております。

 この経過措置、具体的に申し上げますと、厚生年金の報酬比例部分、この支給開始年齢の段階的な引き上げに合わせまして、雇用と年金が接続する支給開始年齢に到達した後は現行法の基準を利用できるというものでございます。したがいまして、先生が御懸念しておりますように、雇用と年金の間に穴があいているんじゃないかということはございません。

 支給開始年齢までは希望者全員の継続雇用制度が担保されるわけでございまして、年金と雇用が確実に接続するような内容になっているわけでございますので、御理解のほどよろしくお願いいたします。

小林(正)委員 時間も押してまいりましたので、ここで、私の地元である静岡のPRを兼ねてお伺いしたい点がございます。

 小さくて申しわけないんですけれども、この「介護中」というマークを御存じの方はいらっしゃいますでしょうか。これは、認知症の介護に携わる方たちに誤解や偏見が及ばないように、例えば、認知症である奥様の介添えのような形で御主人が女性の下着売り場あるいはトイレといったようなところに一緒に入る際に、これを見えるところに、首にかけまして、自分は介護中ということを周りの方に認識してもらえるように、静岡県内では、これをやりましょうということで、昨年始めました。

 そして、十二月十三日には、既に静岡県から厚生労働省に対しまして、この介護マークを全国に普及させることにより、介護をする人々に優しい社会を構築してほしいという要望書が届けられたと聞いております。その後、この要望については、対応はどのようになったのでしょうか。

藤田大臣政務官 静岡県が作成したこの介護マークについてでございますけれども、昨年の十二月に、静岡県の副知事さんから、私が直接、全国への普及についての御要請を頂戴いたしたところでございます。

 大変すばらしい取り組みでございますし、地域で高齢者を支えていく先進的な事例というふうに考えておりまして、早速、この介護マークの普及のために、各都道府県あるいは各市区町村へ、介護マーク、そしてまた立派なポスターもできておりましたけれども、この介護マークを普及するためのポスターの配布というものを行ったところでございます。

 今後とも、機会を捉えて、この介護マークの普及に努めてまいりたいと思います。

小林(正)委員 御答弁ありがとうございます。

 全国の介護家族からは、この介護マークの普及を望む声が静岡県にも数多く寄せられています。厚生労働省とされましても、今伺ったような力強い後押しを、この静岡モデルである介護マークを全国展開していただけるようにお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松浪健太君。

松浪委員 自由民主党の松浪健太であります。

 大臣にまず、唐突ですけれども、一問質問させていただきたいんです。

 厚生労働省四階にある霊安室に行かれたことはございますでしょうか。

小宮山国務大臣 委員がきのう来てくださったということは聞いておりますが、申しわけありません、私はまだ行ったことはありません。

松浪委員 それでは、副大臣、政務官で、いらしたことがあるという方は、もしいらしたことがあれば感想をいただきたいんですけれども。どなたか、行ったことがあるという方はいらっしゃいますか。

津田大臣政務官 社会・援護局の担当政務官として見学をいたしました。大変厳かな気分で手を合わさせていただきました。

松浪委員 私もかつては厚生労働政務官をしておったわけですけれども、厚生担当だったためか、私もきのう初めて伺いました。

 厳かな雰囲気ではあります。毎日、厚生労働省の職員の皆さんがお水をかえていただいて、横にはお花が供えられていて、大臣、副大臣、政務官のお名前もあるお花で、そしてお酒もあって、厳かな雰囲気でありますけれども、大変な違和感を感じます。

 説明によると、昔は入り口に霊安室という文字が書かれていたそうなんですけれども、役所の中に霊安室はなあということで、今、霊安室という表示はありません。だから、グレーの鉄の扉がふだんは鍵が閉められているというのが現状であります。

 もっとびっくりしますのは、これは中に入りますと、上までずっと御遺骨が棚に入っているわけですけれども、壁を一つ、ぱっとこっちへ寄りますと、役所の方がこうやって普通に執務をしている。心ならずも散華された英霊に対して、英霊も何か大変違和感をお感じになっているのではないかなと。その部屋が、実は三つも分かれているわけであります。

 そもそも厚生労働省が御遺骨を担当する、所管する理由というのを簡潔に伺います。

森岡政府参考人 お答え申し上げます。

 戦没者の遺骨帰還事業につきましては、昭和二十七年の衆議院特別委員会におきます海外諸地域等に残存する戦没者遺骨の収集及び送還等に関します決議を踏まえまして、厚生労働省設置法に基づきまして、引き揚げ援護や戦没者遺族の援護を所管します厚生労働省が実施しているところでございます。

松浪委員 厚生省も戦前は内務省にあったわけでして、きのう課長から説明を伺ったところによると、陸海軍の人事というものを厚生省で持っていたということでこういう事業を厚生省が持っているということなんです。

 戦後、これだけの時間が過ぎまして、そして海外から来られた御遺骨、またすさまじい数でありまして、まさに二万五千柱と聞きましたので、通常の納骨堂でもこれだけの御遺骨はあるのかなと思う量でありまして、これが何と役所の中にある。まさに私も、厚生労働省で仕事をしていたときに、まさか厚生労働省にここまでの納骨堂の機能みたいなものがあるということは、もう想像だにもしなかったわけであります。

 さらに、今回取り上げさせていただいておりますのは、先般、いろいろな問題がありまして、千鳥ケ淵に一旦納骨された御遺骨四千五百柱が、再び厚生労働省に引き取られてきたという問題があるわけですけれども、この御遺骨の現状と今後について伺いたいと思います。

森岡政府参考人 フィリピンでの遺骨帰還事業におきまして、旧日本兵以外の遺骨が混入しているのではないかとの疑惑に関しまして、昨年十月に公表いたしました検証結果によりますれば、これまでに現地で鑑定人の鑑定を経まして帰還しました御遺骨は、全て旧日本兵のものと考えてよいと判断しているところでございます。

 しかしながら、千鳥ケ淵戦没者墓苑に訪れます御遺族等が、疑心を持つことなく、心安らかに拝礼することができるよう、これまでにフィリピンから帰還しました御遺骨のうち、現在の鑑定方法に基づきまして帰還した御遺骨につきましては、当面の措置としまして、厚生労働省の霊安室に安置しているところでございます。

 これらの御遺骨は既に焼骨されておりまして、現在の技術ではDNA鑑定を行うことは困難でございますけれども、今後、科学技術が発展するなど、御遺骨の特定が可能になり次第、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

松浪委員 これで厚生労働省を責めるとか、そういう話のものではない。まさに我々、これは与野党なく、御英霊の弔い方については真摯に考えなければならない問題だと思います。

 しかしながら、今の御答弁をお聞きになったように、厚生労働省としては、これは全て御英霊の御遺骨であるというふうに考えているにもかかわらず、御遺族の方に配慮をしてということになっておりますけれども、一部の御遺族の方、いらっしゃると思いますけれども、それでは、仮に、百歩譲って、一部まじっていると、九九%の御英霊の思いというものに我々はどう応えればいいのかということをやはり真摯に考えないといけない。

 今の答弁は、つまり、科学が発達してから、焼骨された骨のDNA鑑定が可能になってから、しかも、このDNA鑑定というのは、どんどん血が薄まっていきますね。直接の家族だったらいいですけれども、子になり、孫になり、そしていとこになり、親戚になり、血が薄まるとこれまた難しくなるわけでありまして、大変いろいろな問題をはらむ中で、これはやはり、御英霊の思いというものを優先すべきではないか、生きている者よりも亡くなった者の思いの方が優先されるべきではないかと私は個人的には考えますけれども、しかしながら、科学の発達を待って、しかも、英霊の御遺骨に、これから十年、二十年、もしかしたら三十年、厚生労働省の霊安室にいていただく。一般の方も来られる、記帳もできるということですけれども、記帳を見ましたけれども、そんなにたくさんの方が来られるわけではない。一枚、二枚、三枚めくれば、二十二年、二十一年、すぐに年を越えてしまうぐらいのものでありますので、私は、もはやこれは限界ではないかなと。今のやり方も一区切りつける時期に来ているのではないかなというふうに思います。

 そこで、これから遺骨収集事業、これは実は、遺骨の情報というものも、アメリカとかそういうところのアーカイブに行って調査をして、特に捕虜で亡くなった方とかは、どこに埋葬されているというような状況もあるということも仄聞いたしますので、これはやはり、まだ我々、厚生労働省として不十分な部分もある。また、外務省との連携も大事になってくるということであれば、そもそも、御英霊に対しては、総理直轄で、そして内閣府のもとで、省庁横断的に国家事業に引き上げるべきではないか。私は総理直轄の国家事業に引き上げるべきだというふうに思いますけれども、これは今、大臣に、答弁というよりも御所感だけ伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 御遺骨の帰還というのは、本当にこれは国の責務としてしっかりやらなければいけませんので、今おっしゃいました、厚労省の中の霊安室のこと、それからフィリピンからの御遺骨の帰還についても、いろいろ問題があったところは今是正をしていますけれども、どうしたらいいかというのは、これは本当に考えなければいけない問題だと思っています。

 それで、今、厚生労働省としてやらせていただいていますが、菅元総理のときに、特命チームという形で硫黄島での御遺骨の収集ということをいたしましたり、あるいは、相手国政府との協議は外務省とか、沖縄の場合は防衛省で不発弾の処理などをしてもらうなど、現実問題としては各省連携をしてやっているので、厚生労働省としては、現時点では、各省庁から最大限の協力を得てやっていきたい。

 ただ、御遺骨についてどういうふうにやっていくかというのは、政権与党もそうですけれども、さっきおっしゃったように、党派を超えて、ぜひ御関心を持っていただいている委員などにお声がけいただいてやっていただければ、こちらもそれに対応したやり方はしていきたいというふうに思っております。

松浪委員 まさに大臣おっしゃっていただいたように、党派を超えた問題でありますので、これについては今後、我々議員の立場から立法等も考えていきたいと思いますので、それに対して真摯に受けとめていただければありがたいと思います。

 民主党の皆さんも、長尾さん、また頑張りましょうね。ありがとうございます。また御協力いただけるということなので、ありがたく思っております。

 では、次の問題に参ります。

 狂犬病予防法の問題をちょっと取り上げたいわけでありますけれども、なぜこれを取り上げるかといいますと、動物愛護管理法というのが議員立法で大体五年に一度改正をされるわけですけれども、狂犬病も昭和三十二年から発生がないということで、今の制度が大分形骸化しているのではないかなというふうに私は実際感じております。

 五年前は、鑑札とかのあり方をちょっと緩和させていただいたりということは我々させていただいたんですが、実際、登録頭数と予防注射数の推移というのはずっと、最近は余り褒められた状況ではないと思うんですけれども、その現状を簡単に伺います。

外山政府参考人 犬の登録頭数につきましては、特にペットブーム等により増加してきましたけれども、近年は六百八十万頭前後で横ばいで推移しております。また、注射頭数につきましても、近年、五百万頭前後で推移しております。

 なお、犬の実際の飼育数を正確に把握することは困難でございますけれども、平成二十二年に厚生労働科学研究で行った犬の飼育頭数調査では約一千万頭、それから、同年、民間団体が行ったインターネット聞き取り調査では約一千二百万頭と推計されていることから、狂犬病予防法に基づく犬の登録頭数より実際の飼育頭数が多い可能性があると認識しております。

松浪委員 つまり、簡単に言えば、きょうは、厚生労働省でおつくりをいただいたこの表、今御答弁いただいたとおりでありますけれども、まさにきれいに横ばいになっているというのが現状であります。この横ばいになっているところは、もうこれから上げるのは、本当にやり方を大きく変えていかないと、現状のやり方ではちょっと難しいということになっているわけですね。

 所管は違いますけれども、今、環境省所管の動物愛護管理法の中では、生まれた犬を、八週齢を基本にしようとかいろいろ説はあるんですけれども、生まれて一定期間は親犬から離さない、犬の社会化を促そうというような考えが随分と進んできているんです。でも、実際、犬がいつ生まれたのかもわからない。そういうところで、結局、最近進んできているのは、マイクロチップなんかをちゃんと入れて、犬の戸籍というものをしっかりとやっていかなきゃいけないなという流れに随分なってきています。

 動物愛護管理法の改正の仕方によっては、随分とマイクロチップなんというのも、本当に小さい、一センチに満たないようなもの、電池も要りませんから、一旦入れておけば随分と機能するし、今回の震災では、迷子になった犬でマイクロチップが入っている犬については非常にスムーズに持ち主のもとへ帰れるというようなこともありますので、このマイクロチップのデータというのは予防接種に活用し得るのかどうかということをちょっと伺いたいと思います。

外山政府参考人 犬の狂犬病の予防接種につきましては、狂犬病予防法に基づく登録の情報をもとに実施しておりまして、一方、マイクロチップにつきましては、現在まだその利用が普及していないこと、それから行政目的も異なることなどもありまして、現実問題として、そのデータは予防接種に活用されていないものと認識しております。

 なお、仮にマイクロチップが普及した場合のことではございますけれども、現在、狂犬病予防法では、登録であるとか注射の状況を外から確認可能なように鑑札をつけるようになっておりまして、放浪犬の捕獲等はそういった目視によって行っていることから、例えばそういった放浪犬の捕獲等に関しまして、これを埋め込み型のマイクロチップに代替することは困難ではないかというふうに考えております。

松浪委員 見た目ということでありますけれども、捕獲された犬は、大体警察に捕獲をされるか、また、保健所に直接ということになりますので、どちらにしろ、マイクロチップもだんだん簡易に、小型に、高性能になっていますので、そこでチェックができれば、私は、もうかなりの部分、その問題は解決するんではないかなというふうに思っております。

 特に狂犬病予防法、今、飼い主の間ではどういう意見があるかといいますと、狂犬病予防法にならないじゃないか。さっき申し上げたように、長い間、日本国内では発生がないわけで、これ自体はいいことなんですけれども、逆にそれで危機感がなくなっている。逆に言えば、本当に亡くなるのはフィラリアだから、フィラリアに対しての注射の方が重要なんだよねというのが飼い主さんの間では一般的になっているということですから、こういう犬のワクチンの投与とか、そういう予防注射を一元化するというようなことで、今後、この狂犬病予防法における注射とほかのワクチンなんかも連携をさせて、そしてこれを上げていくというような視点が必要ではないかなというふうに思います。

 それであれば、動物愛護管理法の改正の仕方にもよりますけれども、この所管の大部分を環境省と共管にするとか、狂犬病という恐ろしい病気ですけれども、現在の状況であれば、これを渡してしまって、そういう一元化ということも十分今後考え得るのではないかということがありますので、大臣には御検討いただきたい。

 また、さっき登録料の話が出ました。この登録料はどのような基準で決められて、どう使われているんですかということをちょっと伺いたいと思います。

外山政府参考人 狂犬病予防法に基づく犬の登録業務につきましては、市町村の自治事務とされておりまして、犬の登録手数料につきましては、各市町村が、地方自治法に基づきまして、それぞれの条例で定めて設定されております。

 また、その設定に当たりましては、鑑札の費用、それから登録原簿の作成などの事務に係る経費を勘案して定められているものと考えております。

松浪委員 登録手数料とか事務に関するとおっしゃいましたけれども、大体平均すると三千円ぐらいになるんですけれども、この事務でそんな経費というのはなかなか考えにくいですし、そもそも、犬とかを保健所に連れていかれるとか保護施設をやるとか、割と都道府県のレベルが多いんですけれども、これは今のままでは、基礎自治体が強いことはいいんですけれども、市町村の一般財源になってしまって、結局、この財源がどこにあるか見えない。

 環境省の動物愛護管理法であって、そして都道府県が主にその所管をする保健所の行政などがかかわってきて、さらに窓口業務は市町村であって、そして狂犬病予防法は厚生労働省、こういう中になっているので、なかなかこの財源というのも見えにくいなというところがありますので、こういうところも一つ問題点だなということを厚生労働省として認識いただいて、次の動物愛護管理法改正とうまく連携をしていただきたいというふうに思います。

 次の問題に移ります。

 厚生年金基金の問題に移りたいと思うんですけれども、これは別に、今回、実はAIJの問題があるから私質問をするわけではありません。

 代行返上等の問題をずっと見ているにつけ、地元なんかでもよく話を聞いたので、昨年末、随分と詳しく、ある総合型の年金基金と話をする機会がありました。これはひどいなと。私は、彼らに対しては、これはもう新聞沙汰になるしかないよというアドバイスを実はしました。今のルールの中で厚生労働省が動いてくれることはありませんよと。

 まず彼らが言ったのは、血をとめたいんですけれども血がとまりません。何かというと、結局、解散したいけれども解散できない、それで給付を続ける、積立金も減っていく、ゼロになるまで血がとまらない、これで給付を無理やりとめたら怒られる。だったら、無理やり給付をとめて、そして、解散命令、強制解散なんかさせてほしいんですけれども、それも例がないということですから、それであれば、そうなるようにしむけないとしようがないですよと。

 そこまでになれば僕も厚生労働委員会で大きく取り上げてごらんに入れますよという話をそのときにしたんですけれども、そこが、給付をとめて、わあっと問題になる前にAIJの問題が出てしまいましたので、これは今、厚生労働省の天下りの話なんか出ていますけれども、天下りがどうのやってこうなった問題じゃなくて、もっと本質的には構造の問題なんだということを我々は冷静に受けとめて、改善策をつくっていかないといけないなというふうに思います。

 特に、私、問題だな、フェアじゃないなと思うのは、国への返納納付金において、私なんかが相談を受けるところは百七十ぐらい会社が入っていると言っていましたか、それの企業が何社か倒産、倒産を続けて、数がもう三分の二とか半分近くになってきている。プラスして、これまでの積立金はリーマン・ショック後に大体二分の一ぐらいになっているんですね。私が相談を受けたところは実はAIJに入っていませんでした。入っていなくても、その前からもう破綻が目に見えていて、やりようがないというんですね。

 だから、厚生労働省としては、分割の期間を五年を十年に延ばしたとかなんとか言っているけれども、もはやこのような小手先でどうこうなる次元のものではない。特に、昭和四十五年にできたときには、右肩上がりの時代で、少ないお金で運用すればもうかるから厚生年金部分も持っていこうということで始まったわけですから、まさにスケールメリットがスケールデメリットになって、これにリーマン・ショックが追い打ちをかけて、もう今、傷を開いてそこに塩を塗り込んでという状況になっているので、かなり非常的な措置が必要ではないか。このAIJがあろうがなかろうが、厚生労働省はそれをやらないといけないと思うんですけれども、せめてフェアに、企業の数が減ったとしても、その倒産した分まで君たちで持ちなさいという仕組みは、僕は、もうこれは限界なんじゃないかな、無理が出ているんじゃないかなと。

 まさに、最低責任準備金と基金純資産との差額を加入事業者が分割返済するというのは、これは普通なら当然なんですけれども、そこまで、僕らでも大変ですよね。親のお金を、そこまでやったらいいですけれども、知らぬ人の分まで払え、おまえの友達のおかんの分まで払えと言われたら僕らもしんどいんですけれども、そういう状況になっていることについて、大臣、どうお考えか、伺います。

小宮山国務大臣 特にリーマン・ショック後、今委員御指摘のように、全体が減っていく中で、総合型の中小企業が集まってやっているところは、やはり解散をしようとしてもなかなかその意思決定ができないという現状があるということは承知をしています。ただ、現在は、解散する場合には、やはり返還金を国や企業年金連合会に返さなければいけないということになっていますので、今すぐこれを変えるというのはなかなか難しいというふうに思います。

 今、一部御紹介いただきましたけれども、昨年八月に成立しました年金確保支援法で、代行給付に見合う資産を保有していない場合でも不足分を分割納付することによって解散できるという特例措置を設けました。これは、過去にも、平成十七年から三年間の時限措置として実施をいたしましたけれども、今回の措置では、特例措置を利用できる期間を三年から五年に延長しましたので、これは平成二十三年八月から五年間ということ、分割納付の期間についても最長十年から最長十五年に延長する、もともと無理だと言われるんだと思うんですけれども、今、なるべくその中でも無理なく返済ができるような工夫をしているというのが現状でございます。

松浪委員 そう言われると、結局は五月雨であって、僕は効果がないと思うんですね。ないと言うとだめですけれども、かなり限定的で、この非常事態に対して対応するには少し手ぬるいんじゃないか。

 やはり問題は、解散条件が厳し過ぎるんですよね。やはり大企業は意思決定が簡単ですからできるんですけれども、何で総合型ばかりが残っているかというと、たくさんの企業があって、職員は数人で、そしてそれぞれの加入者に至るまで、しかも四分の三、判こまでついてもらう。

 この解散条件の高さというのは、これを今までつくってきた、この問題を深刻化させてきた大きな要因なんですけれども、この障壁を下げるということはもちろんなんですけれども、僕はやはり、さっき血がとまらないと申し上げました、今の大臣の答弁では、血は絶対にとまりません。であれば、解散を目指す事業者については、せめて今、積立金を積めとは言わないが、給付はとめる。給付をとめないと、どんどん状況は悪化するばかりなんですよ。

 ですから、給付をとめるためには大変なルールの変更が必要ですけれども、思うんですけれども、機能強化とか、そういう今までのやり方を延長したりとかするのは役所にやっていただいて、本当にシステムを変えるというのが政治家の決断と仕事だと思いますので、給付をとめるということは財産権の問題から何からいろいろ絡むとはいえ、非常事態だと、今、非常事態宣言をしくということは大臣にやっていただきたいと思うんですけれども、非常事態という御認識があるかどうかだけ伺います。

小宮山国務大臣 非常事態だという認識はございますけれども、やはりほかとの公平性というようなことも、例えば、今まで運用している中で、非常にいい成績であって、ほかよりもいい給付をしてきたというケースもあるわけですね。いろいろなことの例から見て、今おっしゃったような形のことをするのは現状ではなかなか難しいのかなと私は思っています。

松浪委員 政治は全体を見るべきだと思うので、たとえこの日本国民の中で、すごいお金持ちが一割いるからといって、九割の人が苦しんでいるときには、九割というと大げさかもしれませんけれども、それに近いものがある中で、それは、私は実は理由にならない。こういうふうになっているのは構造の問題ですから、ほかがいい、それはフェアだ、僕はふだんはかなり新自由主義的だと言われるときもあるんですけれども、これについてはシステムの問題であって、被害者はやはり給付される方であり、そういう加入企業になっている。

 我々政治の責任も非常に大きいわけです。平成九年にもかなりの規制緩和を行わせているわけでありますので、五・三・三・二の規制緩和なんというのもあったわけですから、そういうものなしにここまで悪化しなかったとも僕は思いますので、そういうものはやはり果断にやっていただかないとこの問題は解決しない。本当に今非常事態だとは、私は今の答弁からはちょっと思えないわけであります。

 あと、強制解散というのは、一応書かれているんですけれども、今までないということなんですけれども、強制解散に対するお考えだけ、手短にちょっとお答えください。

榮畑政府参考人 厚生年金基金が通常のケースとして解散する場合は、受給権をやはり大切にしていくという観点から、加入員等の同意を頂戴するとか、受給者に対して丁寧に説明をするというような手続を経て解散してきているというところでございまして、今先生御指摘の強制的な解散、確かに法律の規定はございますけれども、これについて、どういう場合に発動するかについては相当慎重に判断しなければならないところだろうと考えておりまして、確かに、これまで解散命令を出したところはございません。

松浪委員 だから、強制解散というのはあり得ないような話になっているので、結局、最初に私がある団体にアドバイスしたように、政治家としては大変不適当なアドバイスでありますけれども、新聞沙汰になってください、そうしないと動きませんよと。では、みんなこういうことをやり出したら、結局回らない、何らかの対応をしないといけないということですから、果断な対応を求めたいと思います。

 済みません、あと一問。

 今度は、ちょっともう時間がなくなってしまったのでまたやりたいと思うんですけれども、私も自分でライフワークで医療産業をやっていまして、最近は民主の皆さんとも連携して勉強会なんかやっているんですけれども、医療機器をめぐる現状認識をちょっと聞こうと思ったんですが、大谷局長、申しわけない、時間がないので、これについては、私が政務官のときは四千億円ぐらいの収支差が、今六千億円ぐらいまで広がっている。政府の方でも、どこが成長戦略やというような状況になっております。

 そこで、韓国なんかでは、医療機器法を薬事法から分離して随分と集中的に改正をしてきたというところがあるわけでありますけれども、もう時間がちょっとなくなってしまったので、最後に一問。

 現在の薬事法下において、医療機器は医薬品の規定の準用による部分が多いわけですけれども、これを異なる法律、私はこれは個別に分けるべきだと思っておりますけれども、次期薬事法改正に向けて、厚生労働省はどういう形をとるのか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、医療機器はやはり医薬品と違う特性がある。種類がたくさんにわたっておりますことと、市場に供給された後に、使用状況を踏まえて短いサイクルで改良を加えていくということ、それから、使用者の技術によりまして、リスクとベネフィットということをちゃんとバランスをとらなきゃいけないということがあります。

 こういうことを踏まえて、今先生御指摘のように、現行の薬事法のように医薬品や医療機器の規制というものを同じ条項に基づいてやっていくのではなくて、特性を踏まえた法規制のあり方というものを検討すべきじゃないかという御指摘もいただいております。これは、具体的には、厚生科学審議会の方でも、この一月に、こういうふうなところについて必要な法制度の見直しも含めた検討をすべしということを御提言いただいておりまして、その具体化のための検討、産業界の皆さんとも意見交換を繰り返しております。

 また、制度改正、法律改正そのものに至るまでにも、運用上、その一部変更の、もっと簡素化とかいうことで迅速にしろということも御指摘いただいておりまして、これは産業界の技術陣とタスクフォースを組みまして、迅速に実施に移していくというようなことで、今検討を加え続けております。

 この制度改正と運用改善、両方を踏まえまして、医薬品、よりよいものをより早く出していただくということの迅速化を図ってまいりたいというふうに考えております。

松浪委員 ありがとうございました。

 時間がなくなりましたけれども、これは別章立てぐらいよりも本当に別法にして、毎年でも改正するんだというぐらいやるのが本当の成長戦略だと、私もそう思うという答弁にない答弁をいただきましたので、大変ありがたく存じますけれども、これにつきましては次の質問で微に入り細をうがちまくって、またお話をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、永岡桂子さん。

永岡委員 自民党の永岡桂子でございます。

 昨年四月から五月にかけまして、北陸や神奈川県でチェーン展開をしていた焼き肉店で、百六十名を超える発症者を出しました腸管出血性大腸菌によって集団食中毒が発生いたしました。このことについてお聞きしたいと思っております。

 昨年の十月には、生食用の牛肉の規格基準が厳しくなりまして、違反者には罰則が科せられるようになりました。報道では、この基準に違反したとして、先月、新基準導入後初めて飲食店が摘発されたと伝えられております。

 昨年の食中毒事件では、不幸にも亡くなった方が複数名いらっしゃいます。それを考えますと、やはり食の安全を守るために、基準を厳しくするということは必要であると考えます。

 生食用の牛肉の規格基準が厳しくなったことに対して、それを検査、調査する各自治体の保健所への取り組み、財政的な補助であるとか、充実した対応ができるように、何か厚生労働省として取り組んでいらっしゃるか、お聞きいたします。

藤田大臣政務官 富山県等で発生したユッケによる食中毒事故について御質問をいただきました。

 今委員の方から御指摘がございましたように、死者五名という大変重大な事件となりまして、その事態を重く見まして、新しい強制力のある規制というものを策定したところでございます。

 昨年の十月一日からこの新しい基準を適用いたしまして、そして、全国の地方自治体に対して、食中毒発生施設以外の生食用食肉を取り扱う施設に対する緊急監視を実施し、また、その結果を踏まえて、改めて全国の地方自治体に監視指導の徹底等を要請いたしているわけでございます。

 そうなりますと、今委員の方からお話がございましたように、地方自治体の体制が非常に強化されなければいけないのではないか、こういうことでございますけれども、食品衛生法に基づく地方自治体における監視については、厚生労働省が定めた指針に基づきまして計画的に実施をするということになっておりまして、監視業務を担当する食品衛生監視員の人件費であるとか保健所における検査費については、既に地方交付税措置というものを行っているところでございます。

 そういう意味で、今般、この規格基準の設定、新たに何か検査機器を用いてしなければいけない、そういう必要があるものではないものですから、特段の財政措置というものは講じていないわけでございますが、今後、地方自治体の状況も見ながら、またそういう要望、要請等があれば、いろいろな角度から検討してまいりたいと思っております。

永岡委員 御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 特段の措置をしないということがわかったわけですけれども、保健所、各市町村に任せられているとはいいましても、やはり上から、ぱあっと厚生労働省の方から指示が出ていまして、非常に県の職員、保健所の人はどんどん仕事がふえていくわけです。そういうことも配慮いたしまして、財政措置、ぜひぜひこれから考えていっていただきたいと思います。

 では、次に移ります。

 これは生食肉の話です。食の安全確保には、提供側の飲食店や食肉業界に通知するだけではなくて、やはり消費者の、私たち食べる側の方にもこの基準について非常に丁寧に説明する必要があるんじゃないかと思うんですね。やはり、加熱調理をしなければ危険があるよということなど、これは納得をしてもらわなければいけないと思うのですが、大臣、それについてちょっと御意見いただけますでしょうか。

小宮山国務大臣 御指摘の食中毒事件を受けまして、厚生労働省から、昨年五月と十月に、都道府県などの保健所が、生食用の食肉を取り扱う飲食店を巡回して、安全基準の遵守の監視指導をするということを、先ほどもお話ししたように、実施いたしました。

 牛のたたきにつきましても、平成十年の衛生基準通知から指導の対象としていたこと、こういうこともありまして、それもあわせてやっているということなんですけれども、この広報については、おっしゃるように、普通に生活している方々にも知っていただかなきゃいけないので、極力努めなければいけないと思っています。

 一つは、これは消費者に対して消費者庁の方でやっているんですけれども、確実に注意喚起を行うという関係から、食品衛生法に基づいて、生食用食肉のラベルや飲食店の掲示、メニューなどに、一般に食肉の生食にはリスクがあるということ、また、子供や御高齢な方、そのほかの、食中毒に対する抵抗力が弱い方は生食を控えるべきだ、こういう表示を罰則つきで義務づけています。

 引き続き、政府広報ですとかホームページでしっかり情報提供をし、また、都道府県等の保健所を通じて、加熱が不十分な肉を食べると危険だということを周知したいと思っていまして、関係省庁とも連携をとりながら、大分、この事件の後、テレビなどでも放映してくれましたので、知っていらっしゃる方も多いかとは思いますけれども、さらにそこを徹底していきたいというふうに考えます。

永岡委員 ありがとうございます。大臣、そのとおりだと思います。

 やはり関係省庁ともども御一緒に手を携えて、こういう広報、十分に消費者にわかるように、理解できるようにしていただきたいと思います。ユッケだけではなくて、牛のタタキですとか、あと、洋食のタルタルステーキ、おいしいですよね。ですから、そういうものが安心して食べられるように、いろいろと広報をよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、次に移ります。

 先週、予算委員会で、大臣には大分、食品中の放射性物質の新しい基準についてお伺いいたしました。そのときの話なんですけれども、乳児用が五十ベクレル、さらに安心、安全を見込んで、一般の百ベクレルの半分を基準に想定したというようなお話でございました。

 私が、百と五十、二つの基準によって、これはダブルスタンダードとこの間お話ししたんですけれども、流通、生産の現場は全て五十を要求されると申し上げました。また、現在の暫定基準五百ベクレルの五分の一の百ベクレル、これだけで百ベクレルというものは十分に安全であるということを多くの専門家が言っていることも踏まえまして、考え直すなり、四月からの新基準でこれをいくならば、例えば八十ベクレルのセシウムが野菜から検出された場合、一般基準の百以下であっても、現実には五十以下しか取り扱わないスーパーにもうこれは納入できないということになりますね。

 売れなくなった場合の対策はどうするのかなんということをお聞きしたんですけれども、大臣は、こうおっしゃっていただいております。厳格な基準であれば、海外にも日本食品は安全と認識してもらえる、政府としても新基準についてはしっかりと、どういうことかということの情報を伝えられるように万全を尽くしていきたいと答弁していただいております。

 では、もう一度聞かせていただきます。

 一般食品百ベクレル、乳児用五十ベクレルという四月からの新基準に関して、スーパーなど流通サイドから五十ベクレル以下を求める動きが広まっているという認識をしていらっしゃいますでしょうか。

小宮山国務大臣 先週も委員と予算委員会でやりとりをさせていただいて、そういうふうなことが要求されるということが現場であるということも伺いました。それで、これはやはり、そのときもお話ししたように、なるべく年齢の低い、感受性の高い人たちのところに基準の重点を置いて、安全の上に安心をしていただこうということで今回の基準はつくっているところです。

 それで、一般食品の百ベクレルという基準は、これは年間の許容線量一ミリシーベルトをもとにして、その年齢の区分ですとか摂取量とか、代謝とか体格まで考慮した換算係数を用いて、十分に安全の側に立ってやったものでございますので、一般食品に適合すれば、それは子供を含めて安全は十分に確保されている、そういうことを一層しっかりと、今も、リスクコミュニケーション、いろいろな取り組みをしておりますけれども、必要以上に心配することはないということ、安心して食生活を送っていただけるものだということをさらに周知徹底させていきたいというふうに思います。

 今御紹介いただいたように、これだけ厳格にしているということが、国内、海外ともに風評被害もございますけれども、そのことに対しても、これだけの根拠を持って、さらにさらに安全側に立った基準であるということをしっかりと海外に向けてもお知らせしていくということが、日本の食品に対する風評被害を防ぐことにも資すると思っていますので、そういう意味では、委員御指摘の御心配もよくわかりますので、そういうことが過剰に反応されないように、しっかりと情報の提供にさらに努めていきたいというふうに思います。

永岡委員 大臣、私はその話をお聞きしたくて伺ったんじゃないんですね。五十ベクレル以下を求める動きが広まっていることを認識していらっしゃるかどうかを伺いたかったんです。

 これは三日の日経新聞です。もう既に、それぞれ小売、外食産業では放射性物質を自社検査する、その動きが強まっているということが書いてあるんですが、私のお答え、いただきたいと思います。

小宮山国務大臣 それは、御紹介いただいた新聞も含めまして、そういうことが広がっているという認識は持っております。

永岡委員 ありがとうございます。

 認識していらっしゃらないかと思って、ちょっと心配していたんです。認識はしていらっしゃったんですね。ありがとうございます。それでは、同じような気持ちでこの新しい基準に対して対応できるという共通のベースができたと思って、うれしく思います。

 それで、四月以降、五十ベクレル以上百ベクレル以下の農産物に対して、売却できなかった場合、それについては、風評被害対策として補償などを検討することになるのでしょうか。お聞きいたします。

小宮山国務大臣 これは、先ほど農水省の方からも副大臣から御答弁があったのかと思うんですけれども、東電の方で、中間指針上、出荷制限指示等に伴う損害、これは賠償対象というふうに明記されていまして、これは、新基準値が施行される前であっても、新基準値案の公表後に生じたいわゆる風評被害については賠償対象となる旨、関係県や団体による連絡会議の場で東京電力から見解が示されているということでございます。

永岡委員 ありがとうございます。

 それは、百ベクレルよりも高い値を示した野菜など農産物に対しての取り扱いだと思います、つまり出荷制限は。

 私が伺っているのは、百ベクレルよりも低いもの。これは出荷制限はされませんよね、当然。当然されないんだけれども、スーパー、小売店で引き取ってくれないということになると、出荷制限の賠償ではなくて、風評被害対策の賠償になるのではないかと思いますので、これについては御検討はいかがになっていらっしゃいますでしょうか。

小宮山国務大臣 これは百ベクレル以下でもオーケーであるということでございます。

永岡委員 百ベクレル以下で、出荷制限されていないのによろしいんですか。

小宮山国務大臣 百ベクレル以下であっても風評被害について賠償対象となるというように聞いています。

永岡委員 これが四月以降実施されまして、万が一、風評被害対策、そういうことが必要になるときには、ぜひよろしく対応のほどお願いしたいと思います。

 次に行きます。

 大臣所信の三ページに書いてあったんですけれども、「被曝線量管理や離職後を含めた長期的な健康管理により、東京電力福島第一原子力発電所で作業に従事する方々の健康確保に万全を期します。あわせて、除染作業に従事する方々の健康確保や、復旧復興工事に従事する方々の安全確保に万全を期していきます。」と大臣はおっしゃっていらっしゃいます。

 それの具体的な対応の中身はどういうものか、教えてください。

津田大臣政務官 お答え申し上げます。

 東京電力福島第一原発の作業員の方々には、放射線被曝のリスクがある厳しい環境下で作業いただいているわけでございまして、その勤務環境を改善し、被曝線量管理や健康管理に万全を期していくことが極めて重要でございます。

 厚生労働省では、まずは被曝線量の低減、下げる、これは、一番厳しいときに、緊急作業の場合に二百五十ミリシーベルトまで残念ながら引き上げざるを得なかったわけでございますが、昨年の十二月十六日にもとの状態に戻したわけでございます。年間五十ミリシーベルトという形で引き下げたわけでございます。それから、二番目としましては、被曝線量の迅速な測定、評価、三番目としては、健康診断や日常的な健康チェックの実施、四番目としましては、医療体制の整備、五番目は、休憩施設の整備、これなどについて関係事業者に対して厳しく指導をしているところでございます。

 特に、被曝線量の迅速な測定、評価ということにつきましては、データベースが本年一月から完成をいたしまして、今、名前を打ち込めばその方のトータルの被曝線量が即座に出てくる、そういう状況になっているわけでございます。

 また、東電福島第一原発で緊急作業に従事した全ての作業員が、離職をした後、みずからの健康状態を継続的に把握し、必要な健康相談や保健指導を受けられるように、先ほど申し上げました被曝線量や健康診断の情報を蓄積するデータベース、これをしっかり管理し、おやめになった後も健康診断を国の費用で受けられるようにする、そういう形になって、長期的な健康管理をしっかりしていくという体制をとらせていただいております。

永岡委員 ありがとうございます。

 ただいま、原発被害に遭われそうな、働く方々への対応についてお聞きしましたけれども、次に、一般の人の原発事故による健康への影響に関する調査について。

 これは、現在は自治体の判断のもとに行われております。しかしながら、本当は、こういう調査というのは国が基準や方針を示して、系統立てて実施するべきものではないでしょうか。各自治体がおのおのの判断のもとにばらばらに実施をしていたのでは、例えば、調査を実施していない自治体の住民の人たちは、うちも調査が必要ではないかと実は不安に思うこともあるんですよ。また一方で、反対に、調査を実施した自治体の住民は、やはりうちは健康への影響が大きいのかと逆に不安になることもあるかと思います。

 このような住民の不安を解消するためにも、国の責任において、健康影響調査の必要性、そして対象者、調査内容、実施主体などに関する基準を国が示す必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

西本政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、茨城県とか宮城県とか栃木県などの福島県に隣接している県を中心に、放射線による健康影響がどうかということで、有識者会議が開かれているというふうに聞いております。

 この中でも、例えば、尿検査をしたり、あるいは甲状腺検査をしても、異常はないというふうなデータが出ておりますし、それから、ホール・ボディー・カウンターではかっても、全く検出限界以下であったというようなことから、それぞれ、健康影響が観察できるようなレベルではないということが確認されておりますので、科学的には特段の健康調査は必要がないんだという結論が出ているというふうに聞いております。

 ただ、それでもやはり心配だというふうに思われる方々も少なからずいらっしゃるというふうに思います。こういった方々の不安を解消するためには、やはりリスクコミュニケーションをしっかりやる必要があると思っておりまして、国としては、環境モニタリングをしっかりやって、そのデータをしっかり開示していくというようなこととか、あるいは、地元の自治体のニーズなどをしっかり踏まえた上で、専門家によるリスクコミュニケーションなど必要な対応について関係府省としっかり相談していく必要があるというふうに思っております。

永岡委員 今、経産省の方からお話しいただいたんですが、この件についてお聞きしようと思ったときに、もちろん、厚労省が人の健康に関しての話は担当しているわけですから、厚労省。そうしたら、環境省に回されたんですよ。環境省から経産省に回ってまいりまして、今お返事いただいたんです。

 私のところは茨城でございますが、福島近県の住民は、それぞれ、自分のところがそれほど線量が高くなくてもやはり心配なんですよ。それで、実は、ホットスポット、そういう場所も県内にはあることはあるんです。そういうところと、また、線量がそんなに高くないところ、差別していいのかということがあります。いろいろ心配をされているんですよ、住民の方は。それで知事との仲が悪くなったりすると困るじゃないですか。

 やはりこれは国の責任でして、県でやろうとしてもお金がかかりますから、相当な財政支援をしていただかなければならないわけですから、そういう点を考えて、地方に任せるのではなくて、やはり国として主導的に、こういうことに関してリーダーシップを発揮していただきたいと思うのですが、いかがでしょう。

西本政府参考人 やはり私どもはリスクコミュニケーションが重要だと思っておりますので、それはしっかりメッセージを発していく必要があるというふうに思っております。関係府省とよく相談してまいりたいと思います。

永岡委員 ありがとうございます。

 リスクコミュニケーションが大切というならば、本当に住民の方にしっかり納得できるように説明してください。よろしくお願いいたします。

 次に行きます。

 昨年の十二月十六日、原子力災害対策本部が取りまとめた原子力被災者への対応に関する当面の取り組みのロードマップに書いてあるんですけれども、消費者庁は、地方消費者行政活性化基金や国民生活センターの既存の運営費交付金によって、地方自治体に対し、食品についての放射線量の検査機器の導入を支援することとしている、国民生活センターの既存の運営費交付金を活用した検査機器の貸与については、十一月までに百六十五自治体から二百四十三台の貸与希望があった、平成二十四年四月末までには、第一次から第三次分まで合わせて計百七十四台の貸与を実施できる見通しであり、今後も引き続き、消費の場でも検査する体制の整備を図っていくとなっております。

 また、文部科学省は、第三次補正によりまして、より一層の安全、安心を確保する観点から、学校給食の食材の検査を行う十七都県に対し、学校給食の食材を検査するための機器を整備する費用の一部を補助することとした、これは一億円なんですけれども、となっております。

 このほかにも、農水省も検査器の提供をされていると聞いております。

 しかしながら、放射線量をはかる機器がまだまだ足りないという声が多く寄せられております。ここのところに、四月から食品の放射性の新基準が、変わりますよね。それで、小学校の給食などにおいても、やはり目に見えるようにしっかりと把握をして、情報提供、安心させることが必要だと思うんですけれども、各地方自治体への検査機器の導入状況と今後の導入計画、また見通しを国としてどう考えているかを教えてください。

藤田大臣政務官 機器の導入の状況、整備状況ということでのお尋ねでございます。

 現在、検査機器の自治体の整備状況、昨年の十二月に厚生労働省から各地方自治体の衛生部局に照会いたしましたところ、食品専用でないものも含めて、ゲルマニウム半導体の検出器が百四十一台、そして簡易測定機器が百七十一台という回答がございました。

 もちろん、このほかにも、民間の検査機関で所有しているものに対して、地方自治体から受託をしているというものもございますが、ことしの四月の新基準の施行に向けて、今、各地方自治体では新たな検査計画の策定を行っていただいている段階でございまして、この計画に基づく検査実施に必要な機器数というものがどのぐらいになるかということ、申しわけありませんが、今の時点で具体的な数字を示すことは難しいのですけれども、地方自治体の検査機器の整備については、委員の方からお話もありました農水省、消費者庁あるいは文科省、こうしたところの支援に加えて、厚労省としても、ゲルマニウム半導体検出器等の導入費用として二分の一の補助をするなどの支援を強化してまいりたい、このように思っております。

 今後、地方自治体のニーズをしっかり把握いたしまして、関係省庁と連携して、検査体制の整備に努めてまいりたいと思います。

永岡委員 ありがとうございます。

 この検査機器、やはり申し込んでも届くまでに半年かかるというような状態が続いておりまして、簡易検査のものですとそんなに値段は高くないんです。ですから、大きな市ですと自前で買えるんですよね。ところが、半年先にしか来ないということで、やはり国が出している補助でちゃんと対応ができれば、各自治体も安心して早くに検査体制に入れるということでございますので、ぜひ早急な対応をよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、次に移ります。

 大臣の所信では、二ページにわたりまして、雇用対策についていろいろと述べていただいております。

 残念なことに、夫に先立たれました寡婦、未亡人と言う方がわかりやすいかと思うんですが、寡婦、未亡人や未婚の母など、一人親で、育児と仕事の両立に苦労しながら子育てに日々取り組んでいる人たちの就労支援についての文言が見当たりませんでした。

 母子家庭の母は、子育てをしながら一人で生活を維持しなければならないため、収入面や雇用条件により、よりよい職業について経済的に自立することが、母親本人にとっても、また子供の成長にとっても重要だと思います。

 しかし、母子家庭の母については、子育てと仕事の両立が求められたり、それまで就業経験が少なかったり、つまり、これは結婚や出産によって就業を中断せざるを得なかったなどということも加えて、事業主の母子家庭に対する理解不足などもありまして、その就職などには本当に困難なことが多い状況でございます。

 また、母子家庭の母親の八割以上は、働いてはいるものの、常用の雇用者ではなくて、常用の雇用者というのは四割にしかならないんですよね。多くは臨時やパート、派遣など、低賃金で不安定な雇用状態にあります。この結果、母子家庭の所得は極めて低い水準でございます。

 母子家庭のお母さんの置かれている状況をどのように認識していらっしゃいますか、お伺いいたします。

小宮山国務大臣 これは私も野党の議員をしていたときから、そういう関係の皆様ともいろいろ実情を伺っていますので、二カ所、三カ所かけ持ちでやらなければいけないという実情もよく知っております。

 それで、これまでもいろいろと、母子家庭等の就業・自立支援センターの事業ですとか、高等技能訓練促進費の事業ですとか、マザーズハローワークとかやっていますけれども、まだまだそれがしっかりとお一人お一人の仕事に結びついていないという、その認識は持っていますので、さらにここは力を入れなければいけない問題だというふうに捉えています。

永岡委員 ありがとうございます。

 ただいま大臣が話してくださいました高等技能訓練促進費等事業、これはことしで終わってしまうんです。来年もぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。

小宮山国務大臣 これは、二十三年度の四次補正で安心こども基金の積み増し、延長をして、二十四年度については、修学全期間を支給対象にする措置を継続いたしました。

 二十五年度以降の入学者への支援のあり方についても、今後何とかできるように十分検討していきたいと思っています。

永岡委員 ありがとうございます。

 終わります。

池田委員長 次に、菅原一秀君。

菅原委員 自民党の菅原一秀でございます。

 まず初めに、生活保護問題について触れておきたいと思います。

 先般、私、予算委員会でもこの問題を取り上げさせていただきました。最新のデータでは、百五十一万世帯、そして二百八万人を超えて、特にこの政権交代後の二年三カ月で三十四万人もふえて、伸び率が二〇%なんですね。中でも、働けるのに働かないいわゆる稼働世帯、これが今、百五十一万のうちの一七%で、約二十五万八千世帯にも及んでいる。トータルで給付額は、国ベースで二兆八千億、地方は九千億、三兆七千億。これは年々ふえてきているわけであります。

 ところが一方で、例えば、東京の二十三区で母子家庭、お母さんが三十歳、子供が四歳と二歳、そうすると、大体この生活扶助が十九万三千九百円、そして住宅扶助が六万九千八百円、これだけで二十六万円を超えているんですね。こういう実態がある。

 一方で、特にふえている医療扶助、これが約一兆二千八百億円。これは生活保護費の約四六%にも及んでいて、しかも、昨今よく言われるのは、自己負担がゼロであるゆえに、どんどん過剰な受診やあるいは不必要な検診等々がふえて、これがまた非常に圧迫要件にもなっているわけなんですね。中には、精神科に行って向精神薬を、何カ所も医療機関を回ってそれを入手して、インターネットで販売をする。こんなような状況の中で、不正受給が後を絶たない。

 憲法二十五条の生存権、国民としての最低限の生活を保障する、いわゆる最後のセーフティーネットであることはもう当然でありますけれども、しかし、こうした中で不正受給が何と、これは二十二年ベースでいうと、年間二万五千件を超えていて、しかもそのトータルや百二十八億円にも及んでいるわけですね。

 これは、やはりいろいろな課題があって、一度もらったら半永久ずっともらい続けられる、あるいは、ケースワーカーも、年に二回以上行けばいい、行く日が決まっていますから、抜き打ちじゃないので、その日だけカップラーメンをすすって、家財を全部友達のところへ持っていって、ひもじい生活を表現するような方もなくはない。

 こういう状況の中で、私、やはり自治体の調査権限をもっと拡充すべきだと思います。例えば職場だとか金融機関あるいは生命保険会社等々、自治体はそこへの調査の依頼ができるんですね。ところが、そのレスポンスは義務づけられていない、答えなくてもいい、こういう状況で実態把握ができない。

 そしてまた、こういう中で不正受給がふえ、また本当に救われるべき方が救われないという状況、このことを考えれば、私は、自治体の調査権限を大幅に拡充する、そして、ずばり年に一回の更新制度、自分で申告をして、それに対して厳格な検査、調査体制、これをしくことが大事だと思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 生活保護受給者が大変ふえている、特に政権交代後とおっしゃいましたけれども、リーマン・ショックの後など非常にふえてきているということで、これは抜本的にいろいろ見直さなければいけないという認識は私も持っております。

 先ほど、医療扶助は確かに半分ぐらいで、その中で不正もあるということもございましたけれども、これは電子レセプトをなるべく入れるとかチェックの方をしっかりすることと、あと後発医薬品、ジェネリックを推進していくこととか、対応は幾つかしているところがございます。

 先ほどおっしゃった福祉事務所の調査権限の問題ですけれども、これは、おっしゃったように、生活保護法の中で、報告を求めることができるとはされていますけれども、回答義務がないというようなこともございます。その各照会の回答を照会先に義務づけるということ、これは、民間機関にそういう義務を課すということが適当かということから、慎重な検討が必要ということなんですけれども、とにかく、調査がしっかりと効果的に行われるようにするためにどうしたらいいかということは、さらに検討する必要があるかと思っています。

 地方自治体が金融機関の各支店に個別に照会をしている資産調査につきまして、本店に複数支店分の口座の状況を一括して照会をすることですとか、就労状況ですとか求職活動の状況などを関係機関に照会することについて、事前に本人の同意を得ること、こうしたことも今検討しているところでございますので、何とか有効な調査がしっかりできるように、ここはさらに知恵を絞っていかなきゃいけないと思っています。

 一年程度の期間を区切ってということですけれども、生活保護制度は、基本的には支援が必要な方にしっかりと保護を実施するということでございますので、その趣旨を踏まえますと、一年で区切るということが適当なのかは、ちょっとこれも慎重に見なければいけないと思っています。

 先ほど、年二回の訪問調査は事前に言ってあるので余り有効でないというお話もございましたけれども、特に就労可能な方に対しましては、さらに上乗せをして訪問調査する、そして収入申告を求める、こういうことで把握をするようにしていますし、今、全体として、とにかく生活保護に長くいるともうそこから出られなくなってしまうという実情などもございますので、何とか、韓国とかイギリスなどで行っているような、社会的事業をやっている方たちの力もかりて、総合的に戦略を練っていこう、ことしの秋にはそれをスタートさせたいと考えています。

菅原委員 現行の制度から余り逸脱しない答弁で非常にがっかりしております。

 ぜひこれ、委員長、この生活保護問題、この委員会で集中審議でもやっていただいて、本当に救われるべき人を救える、そういう体制をつくるべきだと私は思っています。また今後、議論していきたいと思っています。

 きょうは、全国建設工事業国保組合のいわゆる無資格加入問題について質問したいと思います。

 今、全国で市町村国保が千七百二十三、そして、同業種の国保、これが全国で百六十五あるんですね。このうちの一つであります全国建設工事業国民健康保険組合、いわゆる全建国保、この無資格加入、いわゆる偽装加入問題についてお尋ねをします。

 これは、本来、建設業に携わる方だけが入れる、そういう健康保険なわけですが、保険料が安いですよといって、実は、クリーニング屋さんだとか、おそば屋さんだとか、酒屋さんだとか、居酒屋さんだとか、ラーメン屋さんだとか、花屋さんが、建設業と偽って加入をして、あるいは加入させ、それによって不正な多額の補助金を得ていた、こういう問題であって、前回、私、平成二十二年十一月の十七日に質問したんですね。その後、私のところに全国からいろいろな情報や投書が来ました。中には、元金融機関に勤めていた、あるいは役所に勤めていた、今、年金受給者なのにもかかわらず、こういう方が建設業と偽って入っていたというケースなんかもあって、これは本当にゆゆしき問題なんですね。

 当時、私、この委員会で質問したときに、その被害総額、不正に受けた補助金の額が八十億を超えるというような状況の中で、当時の藤村厚生労働副大臣、現官房長官が、私の質問に対して、補助金の返還命令を出すと答弁をしたんです。あわせて、細川大臣が、重大な法律違反をしている案件なので、厚生労働省として、詳細に調査をして、厳正に対処する、こう私の質問に答弁をしているんですね。

 前後して、この全建国保という組合が自分のところで全国調査を行ったら、何と無資格加入者が二万七千八百九十八人、そして、これによって厚生労働省から通知を受けた東京都が、二十二年の十一月三十日と平成二十三年の二月の末に二回に分けて、トータル七十五億五千七百七十八万、返還命令を出したんですね。資料一をごらんいただきたいと思うんです。

 その後、厚生労働省が出した是正改善命令に基づいて、さらに全建国保がいわゆる追加調査をやって、五千二百六十六名、新たにまた無資格加入者が出てきた。これで東京都は二十三年の七月に十一億三千八百八十九万、これまた返還命令を出したわけです。会計検査院も見るに見かねてこの組合を検査したら、さらに千九百六十四人、無資格者が出てきた。これで一億四千万の返還命令を出して、トータルすると何と八十八億円の返還命令が出されているんですね。

 大臣、これ、経過が間違いないかということと、この補助金の返還命令が出されたわけですけれども、全部返還されたのかどうか。返還命令が出されると、二十日以内に返還をするという原則があるんです。納付期限までに全額返済されない場合には、補助金適正化法、この法律によってどうなるか、この辺、答えてください。いや、大臣ですよ、これは。まず、経過がこれでいいかどうか。

小宮山国務大臣 工事業国保に対しまして返還を命じた国庫補助金は、現時点で総額およそ八十八・三億円です。このうち、平成二十二年十二月十七日におよそ二十八億円が返還されていますが、残りおよそ六十・三億円が未返還となっています。

 納期限は返還命令から二十日以内に設定されていますが、納期限までに返還されなかった分については、年利一〇・九五%の延滞金が付されることになります。

 延滞金も含めて国庫補助金の返還が確実になされるよう、これは東京都がやっていますので、東京都と連携をし、国保組合の財政状況も踏まえて対応していきたいと思っています。

菅原委員 東京都、東京都って、都合が悪くなると東京都を出すんだけれども、返還命令を出したのは国でしょうが。おかしいですよ。しかも八十八・三億円、六十億残っていると今大臣はおっしゃった。

 細川大臣が厳正に対処すると。つまり、返還命令を出してから二十日以内に返さなきゃいけない、こういう取り決めになっているのに、あれからもう一年以上たっているんですよ。何ですか、これは。これは全部国民の税金ですよ、血税ですよ。六十億を返還させなきゃいけないのに、していない。

 私が質問した前後に、この巨額な補助金を分割せよとか減額せよとかいう、全建国保からのいわゆる嘆願書が出されているんですよ。もともと、平成十五年のときに、全建国保はいわゆる是正改善命令が出ているんです。前の理事長が保険料一億四千五百万を不正に流用して、しかも、幹部連中が合わせて十億円も組合員の保険料を流用してポケットに入れちゃっているんですよ。だから、この団体はとんでもないということで是正改善命令を出した。

 ところが、その十五年の是正改善命令が出ているうちに、平成二十一年に、民主党の議員から、この是正改善命令を解除せよという請願が出ているんですよ。何ですか、これは。民主党が、是正改善命令を解除せよ、こういう請願を出している。今あえて名前は言いませんけれども、政府の三役の一人になっている、その名前。その方が頼まれたかどうか、もっと別にフィクサーがいるんじゃないかなと私は思うんですけれども、こういうことをやっているんですね。

 だから、当時の細川大臣も、分割も減額もしない、こういうふうにはっきりおっしゃった。であれば、今おっしゃったように、一〇・九五%の延滞利息がかかる、それで求めていくといって一年間何をやってきたんですか。一〇・九五ということは、六十億余っていれば六億ちょっと、一年で六十六億、これだけ国民の血税が民主党政権あるいは今の厚生労働省の姿勢の状況で返ってきていない。

 まさに、これはいつまでに返還させるんですか。あるとき払いの催促なしという、しかも一〇・九%なんて高利貸しみたいな発想ですよ。これはすぐに返させてくださいよ。

小宮山国務大臣 今委員もおっしゃいましたように、返還額の減額とか延滞金なしの分割納付とすることによる延滞金の免除などは認めていませんし、先ほど御紹介いただいたのは、その請願の紹介議員になっている議員がございますけれども、そのことによって担当部局に何か不公正な働きかけはなかったというふうに承知をしています。

 おっしゃるように、これだけ時間がかかっているのは大変申しわけないと思います。

 東京都と申し上げたのは、東京都が認可官庁でございますので、連携をとりながら、なるべく早期に回収ができますように、法律にのっとって厳正に対処をしていきたいというふうに考えます。

菅原委員 国民健康保険法では、それは確かに認可省庁は東京都なんだけれども、これはやはり、同時に厚労省がやるという取り決め、法律になっているわけですよ。

 この三万五千百二十八人、資料一にありますように、これは今までの調査と検査で数字が出てきた。平成の二十二年二月、この問題が発覚したときに、全建国保の被保険者数というのが、きのう厚労省から数字をいただいたんだけれども、二十万九千人だった。ことしの一月、十三万三千人になっているんです。差っ引くと七万六千人。ずばり、この三万五千人云々だけじゃなく、七万六千人全部が偽装加入あるいは無資格加入でやめたんではないかな。

 確かにそれは、こういう事件が起きたから、こんなところに入っていたらえらいことになるといってやめた人もいるかもしれない、自主的に退会した人もいるかもしれない。しかし、この七万六千人が偽装加入の人数であって、しかも、そこに国から税金が、血税が補助金として出されている。

 とするならば、これは先ほど、大臣、十五年の是正改善命令について解除せよといったことは例に挙げた。今回のこととそれを当てはめてはおりません。ただ、そういう流れがある中で、そう見られても仕方ないんじゃないかなと思うんですけれども。

 つまり、七万六千人ということは、三万五千人よりも四万一千人多い。さらに返還額が本来多いんじゃないですか。どうですか。

外口政府参考人 無資格加入者の問題でございますけれども、工事業国保の点検に加えまして、東京都や地方厚生局が数次にわたって調査を実施しております。

 御指摘の被保険者の減少でございますけれども、こういった問題に加えまして、保険料の引き上げが行われておりますので、そういった理由にもよりまして任意脱退した者がおるのではないかと考えております。

 今後とも、工事業国保の調査は続けてまいります。無資格加入者が判明した場合は厳正に対処いたします。

菅原委員 何か外口さんも人ごとなんだよね、厳正に対処とかね。

 一年四カ月前の質問のときに、外口さんがこう言っているんですよ。厚生労働省の是正改善命令に基づいて全建国保から提出された報告書の内容に触れて、外口局長が、組合としては、公的な書類の提出を求めず、いわゆる全建国保、母体団体の証明書や自己申告のみで加入を認めていた状況があったということを認めて答弁しているんですね。この母体というのは、この全建国保のある組合の横並びというか、特に名前を聞くのが、私のところに投書や情報が入っているのは、社団法人の全国中小建築工事業団体連合会、いわゆる全建連というもの。いわばこの証明書があるんです。

 つまり、全建国保という組合に入る前に、全建連という母体に入って、しかも、その全建連がいわゆる業種確認証明書なる証明書を出すんです。そうすると、クリーニング屋さん、あなたは左官屋さんね、ラーメン屋さん、あなたは土木業、花屋さん、あなたは塗装業、こうやって自分のなりわいと全然違うなりわいに成り済まして加入をさせ、しかも、この全建連なる母体団体に入会金と会費を払って、それを払うと、実は、全建国保の保険料、めちゃくちゃ安いんですよ。今上がったという話がありました。でも、平成二十一年当時、例えば二十代の前半で、所得にもよりますけれども、八万前後の保険料。例えば一人親方で収入が多いと、最上限の三十万、四十万、五十万という方もある中で、八万円というのは破格でありますよ。

 こういう状況の中で、この業種確認証明書がおりて、そこで会費を払う、入会金を払えばそれで加入ができるということについて、厚生労働省、それは把握していたんですか。

外口政府参考人 事件の発覚したときは、詳しいことは把握しておりませんでした。その後、是正改善命令を出して、工事業国保組合から報告を求めた中で、公的な書類の提出を求めずに、母体団体が、先生御指摘のような、そういった業種確認証明書あるいは自己申告のみで加入を認めていた、こういったことが報告されまして、それが無資格加入者が発生した原因だと考えておりまして、現在、客観的な証明書など、より信頼性の高い書類により資格確認を行うことを徹底させたいと考えております。

菅原委員 局長の今の答弁ですと、是正改善命令そのものがずさんだったということですよ。そうでしょう。相手の言うことをうのみにして、その報告を受けて、それによって幾ら幾ら返還せよ、こういうふうな是正改善命令なり返還命令を出しておいて、しかも、その実態が次々に、いわゆる無資格加入者が出てきて、会計検査院まで出てきて、今やこういう状況。それで、都合が悪くなると、東京都がやったんだ。東京都の職員だって気の毒ですよ、厚生労働省の事業なんだから。

 先ほどお話ししたように、このいわゆるいわくつきの全建国保という中で、私がなぜ質問を取り上げるかというと、これは昭和四十五年からの団体なんですよ。一人親方でも、その他含めて一生懸命に仕事して、この組合を信じて払い続けてきた保険料。ところが、一部のメンバーによって、これが全く違う方向に行ってしまって、しかも、平成十五年に、先ほど言ったように、十一億も保険料を流用して、さらに今回二回目の是正改善命令が出されて、しかも、先ほどおっしゃったように、保険料が何とこの二年間で四割も上がっているんですよ。十万円払っていた人が十四、五万になっている。これで、つまり脱退者、いわゆる偽装で入った人たちはおとがめなしでいなくなった、そしてまた、母体の方には何にも返還請求もしていない、こういった中で、残っている真面目な加入者だけが四割以上も保険料がふえて、払わせるなんていうのは、これはとんでもない話ですよ。

 しかも、私が得た情報では、この全建国保の専務理事や常務理事というのは、年収が千五百万から千六百万もらっているというんです。保険料をこれだけ高いのを払わせておいて、こういう実態で、弱い者にしわ寄せをさせて、返還命令しても返っていない、六十億、一年以上も。細川大臣が返してもらうと言ったんだから、その後を受けた小宮山大臣、返してもらうのは当たり前じゃないですか。

 これ、大臣に聞きます。補助金適正化法第二十一条、これは強制徴収可能だというふうになっているんですが、この強制徴収を行う覚悟はありませんか、あると思うんですが、大臣。

小宮山国務大臣 それは、しっかりと返還を求める覚悟は私もしっかり持っています。そこは前大臣からも引き継ぎたいと思っています。

 ただ、この国庫補助金を返還したことによって、現在その工事業国保組合に加入している被保険者に対する医療給付が滞ることになりますと、これは適正に加入している被保険者とか診療報酬を受け取る医療機関にも大きな影響が出ることになると思いますので、強制徴収という方法は少し慎重に見なければいけないと思いますが、慎重にと一体一年何やっているんだというお叱りは本当にもっともなことだと思いますので、しっかりとそこは返還ができるように努力をしていきたいというふうに考えます。

菅原委員 繰り返しになりますけれども、やはり真面目に払った人がばかを見るような健康保険組合だとすれば、全国にこれは飛び火しますよ。これは強制徴収すべきだと思いますよ。

 あわせて、二十条というのがあるんです。これによると、支払うべき未納付額と当該の補助金を相殺することができる。つまり、この全建国保には二百億円から二百三十億も毎年毎年国民の血税が行っているんですよ。ことしも予算の中に入っているでしょう。

 とするならば、私はこの二十条によって今度の補助金から六十億相殺すべきだと思いますが、これぐらいできるでしょう、大臣、どうですか。

小宮山国務大臣 検討させていただきたいと思います。

菅原委員 検討ではなく、検討大臣じゃなくて、もう最低限のことですよ、これ。

 先ほどのお話になりますけれども、十五年に是正改善命令が出されて、その中で、先ほど言ったように、民主党議員に請願書まで出させて、そして自分たちは被害者だというように装って、その裏でこの無資格加入者をどんどんふやしている。これは相当劣悪、悪の国保組合。本当に真面目に頑張って払って入ってきた人が気の毒だ。

 大臣、これ、国保組合という名のいわゆる公法人ですよ。公法人がこのように、詐取、詐欺、そしてまさに刑事告訴に値するぐらいのことをやっている。これ、補助金を不正に受給したその時点で、国はこの団体を告訴すべきだと思いますよ、どうですか。

小宮山国務大臣 今御指摘のことからしますと、確かに非常に悪質なことも行われていたのかとは思いますけれども、故意に国からだまし取ろうとしたかどうかということは、なかなかそこはどう言えるかというのは難しい点もあるかと思いますので、また、仮にそのような状況が疑われるような証拠などを見つけることができた場合には、それは警視庁にそういう旨を相談していきたいと思います。

菅原委員 故意かどうかわからないのに、では、何で是正改善命令を出しているんですか、何で返還命令を出しているんですか。

小宮山国務大臣 今申し上げたのは、故意に国から国庫補助をだまし取ろうとしたというところまで確実に証拠として言えるかどうかということは、慎重に判断する必要があるとお答えをしました。

菅原委員 そういう疑義があるとするならば、これはきちっと国が告訴をして、その実態解明をすべきだと思います。

 役員は先ほどのような法外な報酬をもらっていて、組合員は四割も保険料が上げられて苦しむ、そして、そんな状況を、民主党政権、厚生労働省は許している。

 私は、ここでやはりオールクリアにすべきだと思いますし、このいわゆる国民健康保険法にのっとって、このように不正に補助金を受給していた組合とするならば、これは解散命令を出すべきだと思います。どうですか。

外口政府参考人 是正改善命令に従わないときに、例えば、役員の解任を求めるとか、それから解散の命令をするとか、そういった規定はございます。

 ただ、現在の状況を申し上げますと、今組合の中で、補助金を返すべく、保険料を上げて、返済計画をつくって、そして、何とか補助金を返そうとしている状況でございますので、まだ解散命令というレベルではないのではないかと考えております。

菅原委員 今の局長の答弁に、この政権の、厚生労働省の全てがあらわれていますよ。やる気がないんですよ。だめだよ、こんなんじゃ。こうやって六十六億も国民の血税が、一年四カ月前に返すべきなのに、いまだに返ってきていない。それでいて消費税なんて、とんでもないよ。

 返還命令、そしてまた是正改善命令、こういったことを厚生労働省も言って、今の状態になっている。解散命令にはまだ猶予があるというようなことで答弁されました。

 しからば、厚生労働省がこの健康保険組合を、あるいは東京都でもいいや、直轄管理して、そこで徹底調査をして、そこで初めて、清算をするか、あるいは再建を図るか、そういうプログラムをきちっと組んで対応しないと、これは、真面目に頑張っている組合員さんだけじゃなくて、全国の千七百の市町村国保、百六十四のいわゆる同種の国保全てにモラルハザードが生じて、あそこがこんなことをやってずるをやっていて、何で私はこんなに真面目にやって高い保険料を払わなきゃいけないのか、こういう全てが敷衍をしてしまう。

 この問題、また徹底してやらせていただきたいと思います。

 以上です。

池田委員長 次に、坂口力君。

坂口(力)委員 どうも連日御苦労さまでございます。

 きょうは、二つの問題を取り上げさせていただきたいというふうに思いますが、最初に、肝炎の問題からお聞きをしたいというふうに思います。これはC型肝炎の方でございます。

 国の方は、二〇〇八年、平成二十年五月に、薬害肝炎全国原告団との基本合意に基づきまして、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会を設置いたしまして、審議を重ねてまいりました。その結果、二〇一〇年三月に検討委員会は最終提言をまとめて、発表をいたしております。

 この中で注目されますのが、医薬品行政について、第三者監視・評価組織の創設を求めていることであります。この最終提言では、第八条委員会として、審査会とは別個の組織とすべきものと書かれております。法律に設置根拠を持ったものとすることが提案をされたわけであります。

 当時の長妻厚生労働大臣は、二〇一〇年六月における原告団との会談におきまして、二〇一二年、通常国会に第三者組織設置のための法案を提出すると約束をしておみえになります。次の大臣でありました細川大臣も確約をしておみえになります。

 小宮山大臣も、前任者の約束は守ると発言されたやに聞いておりますが、それでよろしいでしょうか。

小宮山国務大臣 私もこの約束は守りたいと思います。

 ただ、御承知のように、いろいろと難しい状況もある中で、独立性のある法的根拠を持ったものをどうやってつくれるかということで、今、関係者といろいろ調整をしておりますので、さらに力をしっかりと注いでいきたいと思っています。

坂口(力)委員 今国会には法案は提出されておりません。二〇一二年には法案として出すということでございましたが、この通常国会に出ないということになりますと、あとは、そうすると、臨時国会があれば、そこに出るということもそれは考えられますけれども、通常はこの通常国会に出るのが私は本筋だというふうに思います。歴代大臣の約束は重いものがあると思っております。

 今も、いろいろ法律上の準備がある、考え方も整理をしなければならない、だから、もう少しこの議論を重ねさせてほしいという趣旨の御発言をされたというふうにお聞きしましたけれども、そうしますと、これは今国会か、今国会といってももう進んでいますし、厚生労働省の法案はたくさんありますから、今出ているものだけでも全部通るかどうかわかりませんね。解散の話もありますね。解散の話は別にいたしましても、今出ております法律を全部通すのも、これは大変なことだというふうに思います。

 今からでもこれは今国会に出されるということなんでしょうか。それとも、多分、臨時国会もあるから、少なくともことしじゅうには出すという意味なんでしょうか。もう少し詳しく教えてください。

小宮山国務大臣 大先輩の坂口委員にそのように詰められますと、本当に真摯にお答えを、いつもしているんですけれども、特に真摯にお答えをしなければいけないと思いますので、正直言いまして、この国会というのはなかなか難しいかと思います。何とかお約束どおり、ことしじゅうに出せるように、これは御承知のとおり、もちろん、私どもは、こういう法的根拠を持つ第三者委員会という形でなくて、何か厚労省の中に中間的につくるかということも考えましたけれども、それではやはりもとのお約束とは違うということで、きちっとつくらなければならない。

 ただ、これは閣議決定をしていまして、今、審議会のような形のものはスクラップ・アンド・ビルドで、新しいものをつくってはいけないということもある。そこを超えた人権の問題、もっと大きな問題だという御指摘もいただいております。

 そうした中で、ぜひ委員を初め多くの方のお知恵もいただいて、どのような形でこれをつくれるかということをさらに検討させていただきたいというふうに思っております。

坂口(力)委員 これは薬事法の改正だと思いますから。

 厚生科学審議会におきましても、最終提言を踏まえまして、医薬品等制度改正検討部会を設置されました。その部会は、「薬事法等制度改正についてのとりまとめ」を公表されております。その中でも第三者組織の設置が求められております。もう二重、三重に求められているわけであります。だから、これはぜひおやりをいただきたいというふうに思います。

 B型肝炎でありますとかC型肝炎でありますとか、その時代の医学水準からすれば、一般の医療界では予防する能力があったのかどうかということの疑問もそれはありますけれども、しかし、裁判の結果は、そうした中にあっても、厚生労働省には、先進的な知識とそして監視能力を持って行うべきだということが求められているというふうに思います。

 私も、実は、若いときにはそういうことを知らずにやっておりました医師の一人でございました。一人一人針をかえることもなしに予防注射をやってきました。あるいはまた、血液製剤を安易に使ってきたことも事実でありまして、患者さん方の前に立ちましたときに、一体、自分のやってきたことは大丈夫であったか、本当に身の引き締まる思いと申しますか、戦慄を覚える思いと申しますか、そんな思いがするわけであります。

 しかし、そういう時代であったとしても、現場の医師にはそこまでのことは求められなくても、しかし、それを指導する立場にあります厚生労働省には、やはりそこはきちっとやらなければならないということが求められている。これはやはり、私は当然といえば当然のことだというふうに思います。

 この問題に限らず、厚生労働省の役所の皆さん方の責任というのは非常に私は重いと思います。責任だけではなくて、大きな権限をお持ちであります。お役人の皆さん方の発言によって、例えば日本じゅうの医療がどうなるかということ、これは大きく動くわけであります。一言一言で動く。日本の全体の中を動かすだけの権限が与えられている。

 しかし、権限があるということは、また責任もついて回る。一般の医療水準が、いかなる時代であれ、先見的な知識を持って、そして、それを監視していく、監督していく、それだけのことが求められているということであります。

 だから、そこはやはり一人の人間でできるわけではありません。やはり、組織として、そういうことが監視ができる、新しい知識が集中的にわかるような体制をつくっていかないといけないと思いますし、そういう組織の構造をつくり上げて、その中でやっていくということにせざるを得ない。そうしなければ、一人の人間ではそれはなかなかできないと私は思います。

 ヤコブ病のときにも問題になりまして、実は、あのときに、外国から輸入されます脳硬膜の審査をやっていた人がいるわけですが、厚生労働省の中でそれをやっていた人は一人しかいなかった、いろいろの審査をやる人は一人しかいない。年間八百件を一人でやっていた。それはやはり能力を超えた話でありまして、世界の中でそうした病気と申しますか、いろいろの副作用が出るというようなことを勉強するいとまもなかったと私は思います。その人一人を責めても仕方がない。それは、制度そのもの、人の数、あるいはまた全体の構造がそうなっていなかった、そこをやはり私たちは回復させなきゃいけない、つくり直さなきゃならない、そのときにもそう思った次第でありますが、今回の肝炎の問題につきましても、やはり新しいそうしたことをきちっとしていかなきゃならない。それは、程度は違いますけれども、一人一人の医師にだってそうだと思います。

 実は、先日、私ごとで恐縮ですが、私、新年会をやりましたら、そこに五十歳になる女性が一人あらわれまして、私は五歳のときに先生に額を三針縫ってもらいましたという人があらわれました。僕はがくっとしましたね。前髪を下げておりますし、ひょっとしたらその傷がうまく治っていないのではないか。その人の話を聞きましたら、母親に頭を押さえさせておいて、そして、その人いわく、麻酔を打つこともなく、出血が多かったけれども止血剤を使うこともなく、先生はずばっと三針縫ったそうです、それ以来、その話を聞いて、一度お会いしたいと思っていましたが、今日まで会う機会がございませんでした、ことしの新年会で四十五年ぶりにその女性に挨拶をされまして、私はそのときに思わずその人の前髪を上げました。これはひょっとして、前髪を下げておるというのは顔に傷が残っているためではないか、私は本当にそう思いましたね。まだ上げ初めし前髪のじゃありませんけれども、前髪を上げました。しかし、見事に治っておりまして、傷は残っておりませんでした。

 私は本当にほっとしましたけれども、しかし、治っておりましたら、それはその人の自然治癒力が治したんです。私の治療方法がよかったんじゃない。その人の自然治癒力が治した。もし傷が残っていたら、それは坂口の治療方法が悪かった、こうなるんですね。責任とそれから権限というのはそんなものだと私は思います。

 だから、話がうまくいっておるときには、それは国民の皆がきちっとうまくやっているということなんですよ。一たび何かが起こったら、それは厚生労働省の責任として常に問われる、これが世の中ですね。だから、ひとつそこはふだんからこういう組織をきちっとつくって、起こらないように、もう最大限の注意をしておくということに尽きるんですね。それ以外の方法はありません。

 どうぞ、大臣、大変でしょうけれども、残されたことしの日程の中で、ぜひともひとつこの法案をつくり上げて、改正案をつくり上げていただきたいと心からお願いを申し上げておきます。

 最後にもう一言ありましたらいただいて、次の問題に移ります。

小宮山国務大臣 委員から本当に責任と権限について御体験にも基づいた大変重い御指摘をいただいたと思っております。

 先ほど申し上げたような最終提言ですとか、検討部会からももらっておりますし、今のお話もございます。本当に法的根拠を持った、しっかり独立した第三者機関をつくらなければいけないということは、私も本当に心からそう思いますので、ぜひ皆様のバックアップもいただいて、全力を尽くしてやっていきたいというふうに思っています。

坂口(力)委員 ありがとうございました。ぜひお願いを申し上げます。

 それでは、もう一つ、先ほども出ましたけれども、最近AIJのお話が出ております。

 私、平成二十二年の十一月にも一度この問題を取り上げさせていただいたことがございます。それはAIJじゃありませんけれども、厚生年金基金の問題を、その当時、細川大臣でございましたが、取り上げさせていただいたことがございます。

 この厚生年金基金には、単独型と連合型とそして総合型、三つの型があるわけですね。お聞きしたいのは、厚生年金基金に貸し出しされている、現在、貸し出しといいますか、加算型というんですかね、平たい言葉で貸し出しという言葉を使わせていただきますと、厚生年金基金に、本来積立金としてある中から、それを貸し出している額は一体どれだけあるのか。

 それから、もう一つ、その三つの型にそれぞれを分けたら、それはどういうことになるのか。

 この二つ、ちょっと時間が迫ってきましたので、二つあわせて御答弁いただけますか。

榮畑政府参考人 厚生年金基金、平成二十二年度における総資産額でございますけれども、いわばこれは代行部分に必要な金額と加算部分に必要な金額と両方足したものだというふうに御理解をいただければと思っておりますが、それ全体で厚生年金基金が持っておるのは十七・八兆円。

 そしてまた、そのうち、先生御指摘の単独、連合、総合、三つに分けますと、それぞれが一・五兆円、一・二兆円、十五・一兆円ということでございまして、三つ足しまして総資産額として十七・八兆円ということでございます。

坂口(力)委員 そうしますと、やはり総合型が一番多いんですね。

 この総合型は、今さら言うまでもありませんけれども、例えば建設協会でありますとか、あるいはタクシー協会でありますとか、そういう皆さん方がグループでつくっておみえになる組織が、組織としてお使いになっているのが総合型であります。

 この総合型は、調子のいいときはいいんですけれども、一たび厳しい時代が来たりいたしますと、そうすると、その中で倒産するのが出てくると、残ったところで全部払っていかなきゃならないわけですね。これは大変なんですけれども、今回、AIJの問題が起こっておりますが、AIJの場合には、この三つのタイプ、それぞれどれぐらいになりますか、教えていただけますか。

榮畑政府参考人 平成二十二年度におきまして、AIJに運用を頼んでいた厚生年金基金、七十四ございまして、この総額として千五百八十二億でございますが、それは、単独、連合、総合に分けますと、単独型は一つもございません。連合型は基金の数にして一つでございまして、その金額が九億円。残りの七十三が総合型でございまして、その金額が千五百七十三億円というところでございます。

坂口(力)委員 そうしますと、全部で七十四基金。単独型はゼロ、連合型が一件で九億、そして総合型がその他全てで千五百七十三億、こういうことですか。そうすると、やはり非常に小さいのが寄り集まったグループで使っているのがほとんどということですね。

 今回の場合には、これはAIJという企業の、これは故意かどうかは知りませんけれども、非常に世間から非難を浴びるような状況になっている。これは景気が悪いのとは大分わけが違いますけれども。しかし、ほとんどが総合型であるということになると、建設協会なら建設協会が一つのグループとして借りている、そうしますと、その金が戻ってこないとすると、協会でこれは返していかなきゃならぬわけですね。そうすると莫大な金がかかってくる。中には、それで倒れるのが出てくると、残りで全部返していかなきゃならぬ。またここが難しいことになってくるわけで、今までにもそういうのがございました。

 私、細川大臣のときに、神戸のタクシー協会のことで質問をさせていただいたことがございますが、それも、初めは五十社あったわけですけれども、それが、自分で自分の分を返しますというのが何社かあって、後で三十一社残ったわけですけれども、その三十一社の中で十四社倒産してしまったんですね。二社はまた、総合的に私のところで返します、自分で返しますというので、返した。そうすると、後に残ったのは、十五社残ったわけで、そこが全部これでやっていかなきゃならないということになっていて、非常に苦しんでいる。

 だから、ここあたりは月々百五十万ずつ返しているわけで、年じゃなくて月ですから、タクシー業界で月に百五十万ずつ返していくというのはやはり大変なことだというふうに思うんですね。そうすると、またその中から倒れるのが出てくる。きょうもお答えいただいておりますように、もう五年間延長してもらって、その延長した中で返すことができて、一息ついている。平成三十三年になりますと、その人たちは、自分たちの持ち分だけは全部それで返し終わりになる、だけれども、ほかの人がよう返さぬ分がなおかつそこに何十億か残る、それを今度どうするかという問題に突き当たっていく、こういうことになっておりますので、私、今回のこの事件で、そういうことにならなければいいなと非常に心配をいたしております。

 それで、このいわゆる貸付制度、正式には加算制度ですか、平たく言えば、厚生年金基金の方にこの積立金から貸すわけでありますから、その制度を、今はそのまま残っておるわけですけれども、このままにしておいていいのかどうか。経済状況がこういう状況になってくると、少しそこは今後考えていかなきゃならないのではないか。その貸し出しのあり方というものをぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょう。

小宮山国務大臣 今の御指摘の問題点については、年金確保法の附帯決議の中でも「検討する」というふうに書かれているものだと認識をしておりますので、ぜひお知恵もいただきながら検討させていただきたいと思います。

坂口(力)委員 ぜひお願いいたします。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今、坂口委員の方から、医師の経験、また厚労大臣の経験者として、本当に深い、思いのこもった質問がございました。また、それに対して小宮山大臣も、正面から答えていらっしゃったと思います。ぜひとも、その第三者機関、薬害肝炎の本当に最終報告に基づく第三者機関を、約束を守っていただきたいと思います。

 せっかくですので、そのつながりで、一番最後に問いを通告しておりましたけれども、関連をして質問したいと思います。

 薬害肝炎救済法に基づく請求期限が二〇一三年、つまり来年の一月となっております。ことし三月までに約千七百人が救済を受けたということですけれども、C型肝炎キャリアは約百九十万から二百三十万とも言われており、また厚労省の委託研究でも、八十八万人ほどがみずから感染していることを知らないままでいる、そういう指摘もございます。そうすると、みずからの感染を知らないまま権利を失う人が大量に出かねない、こうあってはならないわけで、この期限の延長を検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 これは、議員立法で、今回もその附則の中で「給付金等の請求期限については、この法律の施行後における給付金等の支給の請求の状況を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする」とされまして、附帯決議で請求期間の延長の検討が盛り込まれたというふうに承知をしています。

 このように、議員立法で成立をしたという経過を踏まえますと、その請求期限の見直しについて、また政党間でぜひ御協議をいただくべきものかというふうに考えています。

 なお、厚生労働省としましては、感染被害者の方々が請求期間内に給付金の支給が請求できるように、医療機関名の公表ですとか医療機関を通じた患者への通知の依頼を行うとともに、法律に基づく給付金の支給の仕組みなどの周知、これをきめ細かに図っていく。

 先ほど申し上げたように、やはり議員立法でございますので、ぜひ延長についてもまた御検討いただければというふうに思います。

高橋(千)委員 もちろん、それはやっていくことだと思うんです。ただ、やはり私たちが、本来ならば政府として、原告団と合意を結んだ、その立場に立って責任を果たすべきだ、それが閣法で出てこないから議員立法で政府に責任をきちんと書いたわけですから、それに応えていくということで、一言確認をさせていただきます。

小宮山国務大臣 それは当然、政府としても応えていきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 お願いします。

 では、一問目に戻りたいと思います。

 全国から存続の要望が大きく寄せられていた社会保険病院や厚生年金病院等について、昨年、その受け皿となる独立行政法人地域医療機能推進機構法が成立しました。社会保険庁の解体により受け皿を失ったこれらの施設について、つなぎとして、売却整理を主任務とするRFO、整理回収機構に移管され、その機構を改組するという苦肉の策であったわけですけれども、関係者は、長い運動が実って、本当に歓迎をしたところであります。

 ところが、この法律の施行日は「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」となっており、そうすると、平成二十六年、二〇一四年六月二十三日がぎりぎりの期限だということなんです。

 そこで、やはり地域医療を担う公的病院として存続していくためにも、施行日はできるだけ早くするべきだと訴えられているわけですけれども、これに応えていくべきと思いますが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 地域医療機能推進機構、これは、その発足と同時に社会保険病院などを直営するということもありますので、準備の作業ということも考慮をして、施行日は平成二十六年の四月一日とする予定です。

 一方、社会保険病院等につきましては、国会の附帯決議等でも、RFOから推進機構への改組までの間、譲渡に向けた取り組みを推進するということが求められています。

 したがいまして、譲渡病院の取り扱いが決まらないと、結局、発足までそれが決まらないとなると、各病院が非常に不安定な状況に置かれる。改組準備作業にも支障が生じかねないということはそのとおりだというふうに思いますので、改組までの間の譲渡対象病院については、一定の時期には確定させる、そういう方向で検討していきたいというふうに考えています。

高橋(千)委員 正直言って、その平成二十六年四月一日というのは遅過ぎる。当然、この法案をつくったときは、来年ということを念頭に置いていたのではないか、そういうことを皆さん、言われているわけですね。

 心配されるのは、やはり施行が先延ばしされている間に新たな売却が進むのではないかということです。

 昨年十二月に厚労大臣の売却告示が出された徳島の健康保険鳴門病院や川崎社会保険病院、七割引きですとか九割引きという売買価格が、厚労省が告示する前から、もう既に地元では取り沙汰されていたわけですよね。これでは、貴重な年金財政に返していくんだ、資すると言っていたことにも反するのではないかということであります。

 川崎病院は民間に売却され、例えば中国の富裕層を相手に医療ツーリズムがやられるんだ、特定の会社名も出ておりますし、そういうことが取り沙汰されているわけですね。その中で、当然、先を不安に思う職員の皆さん、看護師さんは四十名ほどが退職を申し出、医師七十八名中十二名しか残ると表明していないということです。そうすると、そこまでの間がもうもたないということになっちゃうわけです。

 法成立時の附帯決議、今大臣も紹介されましたけれども、こういう表現がございます。「その譲渡後も地域において必要とされる医療及び介護を提供する機能が確保されるものについては、可能な限り譲渡に向けた取組に努めること。」つまり、譲渡できればお任せという意味ではないはずですよね。その地域の必要な医療をちゃんとその譲渡したところが担保してくれるんだということが保証されているということが前提にあったわけですから、譲渡する際でもこの趣旨が担保されるような厚労省の取り組みが必要だということ。

 それから、自治体ぐるみで新機構のもとで存続していくんだということで期待をしている病院関係者が余計な不安を持たなくていいように、特別な手だてをとる必要があると思いますが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 御指摘のような心配もあるということで、私も、昨日も、具体的に今挙がっているところの実情を聞いておりますので、細かにそれはチェックをさせていただいて、そうした御不安を持たれないように、最大限努力をしていきたいというふうに思っています。

高橋(千)委員 よろしくお願いします。

 本当に、自治体ぐるみの粘り強い取り組みとまさに難産の末、何度も喜んではがっかりするということを繰り返した中で、こうして皆さんの御努力でできた法律ですので、本当にこれを生かしていきたいということで、よろしくお願いしたいと思います。

 では、次の議題に移ります。

 二月二日、日本社会事業大学の教授であり社会福祉士試験委員、副委員長の若穂井透氏が、財団法人社会福祉振興・試験センターに対して辞任の申し出をしたという発表がございました。二十五日のTBS系「報道特集」で大きく取り上げられたのを私もたまたま見ました。指摘されているのは、同氏が執筆した本が、社会福祉士国家試験の過去問題の解説書に当たるのではないかということであります。

 テレビ報道では、問題となった解説書を学術研究だと御当人は主張しておられました。しかし、厚労省のプレスでは、疑念を招いたということで本人が辞任を申し出たということになっています。

 厚労省は、まず、本書を過去問題の解説書に該当すると認めたのかどうか。

津田大臣政務官 高橋委員にお答え申し上げます。

 本件の試験の過去問題の解説集の執筆ということにつきましては、試験委員としてはふさわしくない行為であり、行わないようにお願いをいたしております。

 本件につきまして、試験事務を取り扱う社会福祉振興・試験センターに一月中旬に投書が寄せられたため、厚生労働省から若穂井氏に聞き取りを行う等、事実関係の調査を厳正に行いました。その結果、厚生労働省としては、この若穂井氏の書かれた書籍につきましては、過去問題の解説集に該当し、試験委員としてふさわしくない行為であると考えております。

高橋(千)委員 まず、該当すると明確にお答えになったと思います。

 実は、そのプレスの発表ですとか大臣の会見の起こしを見ても、そう読み取れるかどうかというのがちょっと曖昧だなと思ったので、あえて確認をさせていただきました。

 私の手元に、そのテレビでも紹介された二冊の本の写しがございます。「ソーシャルワーク法学 第五版」「権利擁護と成年後見制度 第八版」となっておりますけれども、これを開きますと、そもそも、「初めに」ということで、本人が書いているわけです。本書は、私が社会福祉士試験に出題された民法の過去問題を中心に、日本社会事業大学社会福祉学部などにおいて行った民法の講義録と憲法の過去問題に関する解説から構成されていますとはっきり書いており、二〇〇二年、この年は同氏が試験委員を務めている年であります。

 ページを開くと、いきなり過去問題の対応表というのがございまして、要するに、問題一は第何回、何年に出されたものかというのが一目でわかるようになっている。そうすると、大体サイクルなんかもよくわかるんですよね。二〇一〇年のが何回かたつとまた出てくるみたいに、そういう傾向もよくわかるなと思っています。次のページを開くと、いきなり問題一。ですから、問題と解説が続く。ずっとこうなっている。

 二〇〇九年のこの本は、同じように「初めに」に本人がこう書いています。

 これまで社会福祉士国家試験の法学に出題された過去問題に即して、社会福祉士のための憲法、民法、行政法入門として、ソーシャルワーク法学を第七版まで発刊してきましたが、中略、一旦は廃刊しようと考えました。しかし、第二十一回社会福祉士国家試験の解説を求める声も強かったので、その問題と解説を追加するとともに云々ということで、新刊をつくった。最後に、第二十二回社会福祉士国家試験以降も問題の収録を続け、多くの読者の方々の役に立つことができるように解説を充実させていくつもりである。

 これが対策本でなくて何かと思うんですね。ここまで本人が言っておきながら、テレビの前では学術書ですと言ったのには、本当に驚いてしまいました。

 社会福祉士国家試験は、四万三千人以上が受験して、合格率は二八・一%、かなり狭き門であります。しかし、社会事業大学の合格率は、この年八七・五%、翌年が九四・四%です。もちろん、その多くは、学生たちの頑張りに支えられていると思います。しかし、あくまでも合格率ありきではならないんです。

 厚労省の調査に曖昧さを残してはなりません。いかがですか。

津田大臣政務官 今御指摘を強くいただいたわけでございますが、委託をしております財団法人社会福祉振興・試験センター理事長から、「社会福祉士試験委員の皆様にお願い」ということでペーパーを配らせていただいております。このペーパーの中に「この試験の予想問題集、過去問題の解説集等の執筆及び、予想問題等が掲載された専門誌の編集にはかかわらないようにお願いしたい」というふうに明確に書かせていただいているわけでございます。

 したがって、先ほど答弁申し上げましたように、これは過去問題の解説に当たるというふうに申し上げたわけでございます。

高橋(千)委員 そうすると、一般論で言いますと、これはどういう意味を持つのでしょうか。つまり、厚労大臣は解任する権限があるわけですよね。でも解任ではない。どういうことなのか。

 ですから、まず局長に聞きますけれども、こうした解説本を書くということが、当然、今お話があったように厳しく禁じられていると思いますが、どのように何に違反する、どういう意味を持つのか、伺います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 この社会福祉士の試験でございますが、試験問題の漏えい自体は、法律上、違反という形でしっかり書いてございます。

 ただし、国家試験に対する疑念が生じないようにするため、試験委員に対しましては、今政務官から申し上げましたとおり、厳正に守っていただくべき事項ということで、これはまさにこういう留意事項としまして、過去問題の解説集等の執筆にはかかわらないようにということでお願い申し上げる、こういうことでございます。

高橋(千)委員 要するに、明らかに過去問題だと認めた。しかも、それは出さないようにということを言っている。しかし、留意事項だから構わないという意味なんでしょうか。

 社会福祉士及び介護福祉士法の秘密保持義務、これに準ずるのではないでしょうか。第十六条、「指定試験機関の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、試験事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。」当たり前のことですよね。まして、同氏は副委員長なわけであります。試験委員は数十人もいらっしゃいます。しかし、その中でも、委員長と副委員長だけが試験問題を決定する権限を持っているわけです。なのに、こういうことを何年もやっていた、指摘されていた。なのに厚労省は、単に辞任を迫っただけで、解任はしなかった。

 そうすると、逆に、なぜ辞任を迫ったんでしょうかということになりますよね。この処分、これで正しかったんでしょうか。

津田大臣政務官 経過を申し上げます。

 若穂井氏本人からの聞き取り等、事実関係の調査の結果、今御指摘をいただいた試験問題漏えいといった守秘義務違反の事実は認められなかったということでございます。

 しかし、過去問題の解説集の執筆という、試験委員としてはふさわしくない行為を行った、こういう事実が認められたということで、厚生労働省から本人に、試験委員としてふさわしくない行為であるという旨を伝えましたところ、本人から辞任の申し出があったということでございます。

 仮に、本人から辞任の申し出がなかったとしたならば、解任の手続をとることになります。

高橋(千)委員 辞任の申し出がなかったら、解任の手続をとったと。ちょっとこれは、だったら解任の手続をきちっとするべきですよね。だって、本人の申し出に基づきと言いますが、本人は認めていないわけですよ。要するに、これは対策本だと認めていない。あくまでもこれは学術研究だと言って、しかし、誤解を受けましたということで言ったわけですから、こういう厚労省の態度が甘いと言わなければなりません。

 大臣は、二月二十一日の会見で、試験委員会に、過去の試験への影響を調査する必要があるか検討させることにしたいと答えていますが、どのようになりましたか。

小宮山国務大臣 今回のこの事案につきましては、この著書の素材である過去問題は、もう既に知られている、公知になっているものであるということ、また、調査の結果、試験問題漏えいの事実ですとか受験対策講座の関与など、そのほかの遵守事項違反は確認されなかったこと、こうしたことから、過去の国家試験に対する影響は基本的にはないものと考えていますが、社会福祉士国家試験委員会に、過去の試験への影響の有無についても今精査をさせているところでございます。

 社会福祉士国家試験の合格発表は三月十五日ですので、もう時間は余りありませんが、それまでにはその精査の結果をお知らせしたいというふうに思っています。

高橋(千)委員 既に知られていると言っても、さっき言ったように、対策本を出してはいけないということになっていることと、それから、私、過去問を、ホームページにも載っています、見ましたけれども、答えは載っていませんよ。答えも載っていないし、解説も載っていないんですよ。それを、試験を出題する側あるいは決定する側にいる人が解説本を書いたんだと。だから、これは既に知られているからいいんだなんという話にはならないということを指摘しなければなりません。精査をさせているということで、三月十五日までに結果をお知らせいただきたいと思います。

 ただ、身内の検査では、やはりちょっとこれは限界があるんですね。試験センターも、一緒と言っては失礼ですけれども、役員が全部厚労省のOBでございますので、どこまでガバナンスが働くのかなと指摘をしなければなりません。

 二〇〇七年の六月二十四日号のサンデー毎日で、試験問題が漏えいではないかと大きく取り上げられたことがございました。阿部知子さんが二回質問主意書を出しておりますし、この委員会でも質問されたことがございました。

 厚労省としては、実はこのときの問題、今の若穂井さんとは別な方ですけれども、このときの問題に対しては、今のような会見もなかったし、調査報告もなかったわけなんですね。それもおかしくはないか。何でそういう甘い対応なのか。質問主意書に対する答弁が閣議決定だからといって、それでいいのかということになってしまうわけですね。当時もこの試験委員は同じように辞任をしています。

 当時問題となった資料集がここにありますけれども、「二〇〇六年度 社会福祉士 精神保健福祉士学内模擬試験解説講座」というふうなタイトルで、十二月十九日から二十一日に行ったわけであります。これは驚くことに、中を見ますと、十二月に講座をやっていまして、一月に、これから試験があるわけですよ。これから試験をやるんだけれども、一月実施予定の試験をつくる人、誰さん、誰さん、誰さんというのが実名で載っている。ですから、あり得ない話ですよね。過去問題でさえも出してはいけないことになっているのに、これを出しちゃった。

 私は、社会福祉士の資格を持っていないから、どういう試験なのかなと思って見ましたけれども、分野が膨大に広いですよね。百五十問あるんですけれども、本当に、心理学から社会学から、厚生労働のあらゆる分野。ですから、その膨大な分野の中で、執筆する人がどの分野の専門家なのかということを知るということは、もう断然有利なわけです。そういう問題だった。

 だから、試験問題そのものを漏えいしたのではないんですよ。サンデー毎日の書き方が、ちょっとそこは行き過ぎたかもしれない。でも、そういう断然有利にするようなやり方だった。だからこそ、この講座が終わった直後、十二月二十五日に、日本社会事業大学の教学部長名で、この今私が読み上げた部分三ページ、削除、廃棄していただくようお願いしますということで解説講座の受講生に対して出している。廃棄しろと言ったって、もう見ちゃったよということになるわけです。

 こんなことをやっていたのに、厚労省は何の調査報告も出さずに、会見すらもしなかった。このときの試験委員は、かつて厚労省の専門官でありますけれども、今も教授をやっておられますし、ことしは試験センターからの二百万円の助成金事業をもらって、何がしかの研究を、余り実績はないんですけれども、やることになっているわけです。

 試験センターの常務理事も、大学の専務理事も常務理事も厚労省の天下りポスト。この問題は二〇〇九年の参議院の厚労委員会で我が党の小池議員も指摘をした問題ですけれども、徹底した調査ができるはずがないんだ、こういう体制ではと。どのようにやっていきますか。徹底した調査をやりますか。

小宮山国務大臣 御指摘の点も踏まえまして、しっかりと納得していただける形の調査が行われるように、私からもそのように要請をして、目を光らせていきたいというふうに思っているところです。

高橋(千)委員 何しろ、国家試験をやる、受け持つセンターがここしかないわけですから、考えてみたら、指定取り消しまでできるわけですよ。でも、それをやっちゃったら試験ができない、どうしよう。そういういろいろな思惑が働いて浄化ができないということがあってはなりませんので、徹底した調査をしていただきたい。

 同時に、名誉のために言っておきたいんですが、十五日、合格発表ですけれども、やはり、多くは介護や福祉の道を志す真面目な学生たちなわけです。真面目に勉強しているのに、何もかもその方たちがというふうに見られるのは、本当に傷つけることがあってはならないわけで、それを一番危惧するものですので、再発防止のために何をするのか、一言お願いします。

小宮山国務大臣 おっしゃったように、いろいろ志を持って受けられる試験でこのような疑念を抱かせることになったことは大変残念だと思っています。そういう意味では、再発防止に最大限努力をしたいと思っています。

 具体的には、これから試験委員に対して遵守すべき事項の誓約、これは、予想問題集ですとか過去問題の解説集の執筆、それから受験対策講座、講習会への関与など、これをしないという誓約を新たに求めたいと思います。また、所属の大学等に対しましても、こういうことに関与しないことへの配慮を求めたい、そのように考えています。

高橋(千)委員 この点については、調査の結果の報告ですとか、今後ぜひ検証していきたい、このように思います。しっかりお願いいたします。

 最後になんですけれども、大臣、申しわけありません、通告しておりませんが、一言質問をさせていただきたい。何の準備も要らないですので。

 それは、二月二十三日の予算委員会でも指摘をさせていただきました労働者派遣法の問題であります。前国会の最終盤に本委員会を通過いたしました。民主、自民、公明の三党の修正案、これは三時間の審議で通してしまったわけですが、時間の関係で廃案になった。しかし、これがまたきょう、この後の質疑が全て終わった後に、再び、ほとんど変わっていない状態で出されようとしているわけであります。

 私は、これまでも言ってきたように、民主党政権に期待した思い、行き過ぎた規制緩和、そういうことをしっかり言いながら、労働者の保護に一歩を踏み出したのかなと思っていたのに、それが裏切られたという思いがいたします。ただ、私自身はそう思っているんですけれども、その逆の意見もありますよね。まだきついと言っている方もたくさんいらっしゃるわけです。そうすると、一体、この法案、修正案の中身はもう既に一度通していますからわかっていますよね、修正されて、誰が喜ぶんでしょうか。

小宮山国務大臣 これは議員の皆様のお力によって修正をされたものですが、もともと政府案に盛り込んでありました派遣労働者を守るための部分も入っていることもございますし、一歩前進という形で御理解をいただいて、またさらに改正が必要な点は、両面からの御意見もたくさんいただいています、そのことは承知をしておりますので、また新たなことが必要であればまた次の段階、一歩ということで御理解をいただきたいというふうに思っています。

高橋(千)委員 誰が喜ぶのかという問いには直接お答えにならなかった。残念ながら、今、そういう方がいらっしゃらないという意味ではないのかなと思います。本委員会の議論を聞いていても、決して前向きに進めてほしいという声はなかったんじゃないか、そう思うんですね。

 やはり、労働法は労働者のためのものでなければなりません。そういう歴史があるわけですから。ですから、本当に今やるべきことは、この法案、修正案ではなくて、もとに戻して徹底した審議を行うことです。採決にはきっぱり反対だとあえてここで言わせていただきます。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、大臣の所信への質疑でございますので、なるべく小宮山大臣にお願いをしたいと思います。

 冒頭、通告をしておりません事案ですが、この間、民主党の政権、国民新党と連立の、皆さんで進めておられる政策運営の現状を見ると、非常に、消費増税がひとり歩きしていると言っては失礼な言い方かもしれませんが、本来は、税と社会保障の一体改革といったときも、社会保障がどのように充実するか、国民の多くがそこを望んでおり、恐らく政府としてはそのために消費税の引き上げもお願いしたいと思っていらっしゃるんだとは思いますが、一方の、社会保障の、国民から求めるいろいろな声と、現状で政権がメッセージされていることとの間の乖離がちょっと大きいんじゃないかなと思うんですね。

 ちなみに、三月五日の毎日新聞の発表によりますと、社会保障に不安という方が九二%だと。いろいろなアンケート調査があって、不安ですか、どうですかと聞くと、そういうふうな方に答えやすいかもしれないけれども、それでもやはり著しい声だと思いますね。

 私は、御一緒に政権交代をしたという立場ですから、今、民主党政権は正念場だと思っておりまして、私どもは離脱して自分たちの主張するところを主張しておりますが、民主党政権、民主党を中心とする現政権にあっては、この九割を超す方々が不安と感じておられる現状の根っこ、何が一体問題なんだろうということで、きょうは、小宮山大臣の忌憚ない御意見、あるいは、私はこうしたいんだけれどもなかなかなのよということでも、私は小宮山さんに期待しておりますので、その期待を込めてお伺いをいたします。

小宮山国務大臣 私たちは社会保障と税の一体と言っているんですが、そこがなかなか御理解を、まあ、私どもの説明がちゃんとできていないということの反省も込めて申し上げますけれども、どうしても増税が先に出ているということの中で、先月から関係大臣が全国で対話集会を行っていまして、私も三カ所行きましたけれども、先週の岐阜で行った集会などは、一時間私がマイクを持って回って質疑をしても、まだあと一時間分ぐらいの方の手が挙がるぐらい、それだけいろいろ皆さんが疑問や御意見をお持ちで、もっともっと耳を傾けなければいけないと感じているのが今の私の率直な気持ちなんですね。

 いろいろ思いを申し上げると長くなってしまいますけれども、今回は、とにかく二〇一五年までを見据えた改革をさせていただいているというのが一点。ですから、ずっと先々のことがまだないじゃないかとよく言われるんですけれども、これは、大震災からの復興ですとか、リーマン・ショックの後ですとか、欧州の債務危機とか、今そこにある状態の中で、もちろん経済成長も同時にさせていきたい、身を削ることも同時にやりたい、そこのところは超党派で御協力をいただきたいところなんですけれども、それをしながら、ともかく、これも第一歩として二〇一五年までのところを出させていただいている。

 ただ、皆様に、社会保障がもっとよくなる、安心できるということがない中で負担が大きいと思われるのは、今までやはり次の世代へのツケ回しがずっと続いてきて、御説明するまでもなく、大きな借金が、孫ではなく、恐らくひ孫の代まで行ってしまっているところを、野田総理の強い決意もあって、とにかくここでストップをさせたい、そのことのために、今の制度を安定させて、借金を少しでも減らしていくために消費税の四%を使わせていただいているというところが、よくなる実感がないと言われている一番大きなもとだと思います。

 私も、できることなら社会保障の充実のところにもっとたくさん使わせていただいて、やらなければいけないことはたくさんあると思うんですが、今回、一%の中で、今までの、高齢者三経費、高齢者の方が給付を受けて、現役世代はそちらの担い手になるだけというのを、現役世代にも実感していただけるという意味で、子供、子育てに力を入れ、また、まだまだそこがはっきり見えないという御指摘もいただいていますが、若者を中心とした非正規など、就労、皆さんが本当に働くことに参加する権利という形で、今回、その就労、働くことを社会保障の中に入れたというのも一つの私たちの試みというか意思でございますので、そうしたところを御理解いただいて、さらにそういう面が広げられるようにしていきたい、そのように考えているところです。

阿部委員 消費増税というのは生活にもろにかぶってまいりますし、今のように経済雇用情勢がよくない中ですと、やはり、かなりの部分、無理が強いんだと正直言って思います。

 そして、おっしゃったように、民主党政権では、子供の問題、高校生の無償化問題、あるいは若者の就労問題など、新たなものに光を当てたいと思っていらっしゃるのは理解するつもりですけれども、それがまだまだ、なかなか実感、実態としてない中で、はっきり言うと、もろに財政再建のための四%だという形になってしまいます。それは、景気の悪い現状ではいたし方ない部分もありますが。

 そうであれば、逆に、先ほど来おっしゃるような景気や雇用の情勢の改善ということに、この景気の問題は単に一党だけでやるのではなくて、新たな産業の育成や働き方も含めて変えていくわけですが、特に、私は大臣に頑張っていただきたいのは、今、非常に非正規率が高いということもそうですし、若い人たちの働き方が、ある意味で時代が終身雇用から変わっていく中で、積極的な労働政策と呼ばれるような、トレーニングも含めて、あるいはいろいろなキャリアアップということも含めて、もう少し明確に打ち出していただくとともに、不安定雇用の問題を、絶対に、政府としては何としてでも対策していくんだという強い意思を示していただいて、高齢者中心であった、そして、それも必ずしもしっかりしていないというか豊かではないこれまでの福祉や医療の現状、そこもあるわけで、でも、そこに御理解いただきながら、何とか次世代に向けようという丁寧な努力をしていただきたい。

 法案を先んじて出すことばかりが能ではないと、はっきり言って思います。それはかえってこの政権を危うくするし、私は野党ですからそれでも一向にいいんですけれども、今のこの日本の、この国の、本当に困難を抱えた、復興からの立ち直りというこの時期、そして、国際的にも金融不安のあるこの時期に、やはり政治がよりしっかりと国民に寄り添ったというメッセージを出していただきたいゆえの私の要望でありますから、冒頭、お伝え申し上げさせていただきます。

 きょう予告してある質問の第一は、我が国は、第二次大戦において、広島、長崎で被爆、原爆投下を受け、そのことに伴う被曝医療というものをある意味で経験いたしました。これは戦火による、戦争によるものでありましたので、かなりアメリカ主導で、その後の情報収集も、あるいは時には治療と称するさまざまな取り組みも、アメリカとの協力関係や、あるいはアメリカがデータ集積をするということ抜きにはなかなかやってこられなかったわけですが、しかしながら、我が国も、厚生労働省を中心に、被爆者援護法や被爆者の医療ということを考えてこられたいわば実績と、また、足らざる部分もあったと思うんですね。

 今回の福島第一原発事故は、実は、原爆と比べて、必ずしも同じような起こり方をしておりませんが、原爆二十個分、セシウムにして百六十八・五倍が三百キロ圏に広く広がったという、ある意味では原爆とは違う、さまざまな飛散や問題を持ったものでありました。

 しかしながら、この間、小宮山さんの所信表明のその部分を拝見しても、今回の福島第一原発事故に伴って厚生労働省がおやりになりたいということは二つで、一つは食品の測定、いま一つは被曝労働者管理ということで、しかし、このことによる被災者、まだ病気が出ているか出ていないかは別ですけれども、被災された皆さんについての厚生労働省からのメッセージが極めて薄い。はっきり言って、ないと思います。

 一点目は、被曝医療、特に、広島、長崎の問題をどのように総括されておるか。

 そして、今般のこの福島原発事故。これは、様相は違っても、セシウムという放射性物質を広く受けねばならなかった。人口密集地に起きた。チェルノブイリとも違います。チェルノブイリの場合の方が荒野が多かった。我が国は、東京、神奈川、静岡まで、お茶の葉まで飛んでいっているわけです。このことについて、いかなる取り組みをお考えであるのか。

 二点、お願いいたします。

藤田大臣政務官 阿部委員の方の今のお尋ねは、もう少し大きなことを多分お尋ねになっていらっしゃると思いますが、とりあえず、私の方から現状の御報告をさせていただきたいと思っております。

 今回の原発事故で、住民の皆様は健康影響について大きな不安というものを抱かれているわけでございまして、被曝線量の評価であるとか、適切な健康管理ということが極めて重要だと認識をいたしております。

 既に福島県では、全県民を対象とした県民健康管理調査というものが行われているわけでありまして、国としても、二次補正で七百八十二億円の基金を計上して支援をいたしているところでございます。

 厚労省としても、調査の一つであります子供の甲状腺超音波検査を円滑に実施するための専門医の確保であるとか、相双地域の医療従事者確保のために厚生労働省相双地域等医療・福祉復興支援センターを設置して、積極的に技術的、人的支援を行っております。

 まず、こうしたことをしっかりと進めて、県民の皆様の不安の解消というものに努めてまいりたい、このように考えています。

阿部委員 現状のお取り組みについての報告を受けましたが、私の質問は、藤田政務官がおっしゃってくださったように、もう少し、我が国の被曝医療というか原爆投下後のいろいろな苦しむ皆さんへの取り組みについて、もちろん、やれたことと、また、だんだんわかってきたり、あるいは、これは坂口先生も在外被爆者の救援を頑張っていただきましたが、私がここでお尋ねしたいのは、小宮山大臣は一体どういうふうにこの間を、戦後のこの事態を受けとめておられるかということで、印象でも構いません、お願いします。

小宮山国務大臣 被爆者の皆様については、これはもちろん国が責任を持って対応しなければいけないんですが、被爆者の認定基準をもっと被爆者の方に納得いくようにということも、私も野党の議員のときにいろいろやってきましたので、大臣になってからも多くの皆さんとお目にかかって、もうかなりお年を召している方が多いので、少しでも対応できないかということに、私なりにそこは力を尽くしているところです。

 最初にお尋ねになった、私もそれで厚生労働大臣になりまして、健康のところは厚労省でしょうというふうに思っていました。やらなければという思いもあって、今、藤田政務官から御紹介いただいたような、厚労省としてできることはしています。

 ただ、今までの被爆された方に対するものを、厚労省としてはそれに対応する人材も財源も実は持っていなくて、被爆者の手帳も文科省さんですし、いろいろな研究も文科省がやられていますし、そういうことと内閣府の方と、全体が縦割りというかばらばらになっているということが、今回、対応を、非常にスピードをおくらせているもとだと思っています。

 今回、細野大臣のもとで統括をするというときにも、関係省庁の大臣が集まりまして、全体をどうするのかということを相当話をいたしました。その中で、医療の問題、今厚労省がやるべき問題につきましても、これはやはり環境省の方で、水俣のいろいろな知見とかもあるということも含めて、やると。そのことに対して、医系技官の派遣ですとかいろいろな形で、これはもう人材をふやさなければいけないので、官房長官も入ってもらって、そこは人材を、枠をふやすということも含めてやっていますので、積極的に厚労省だけで何かができるという状況ではないんですね。

 ただ、可能な限りのことはやっていきたいと思っているのが正直なところでございます。

阿部委員 私は二点あると思うんです。

 一つは、最初、原爆の場合は直接被爆という、ピカドンと言われる、ぴかっと落ちた、そのことの被爆の後、いわゆる黒い雨が降って、これが放射性の物質を細かにして散らして、それが今でいうところの内部被曝と同じ問題を含んでいるわけです。

 厚生労働省では、たくさんの患者さんたちが集団訴訟を起こされて、最初は、その症状は被爆によるものとは認定できないとおっしゃっていたけれども、積極的な認定に変えて、例えば肝機能障害とか甲状腺機能低下とか、あるいは、二〇一一年のたしか九月だったと思います、大動脈瘤の発生も恐らくそうした影響であろうというふうに認定してきた歴史があるわけです。

 ここで学ばなければいけないのは、最初に、例えばこれこれこれのことが起こりますとわかっていること以外のことでも、その影響が人体に出てくることがあるということであります。

 今、福島県にある種丸投げと言っては失礼ですが、投げている健康調査のあり方の中で、実は、日弁連の皆さんやあるいは福島大学のいろいろ教職にある皆さんから意見表明とか要望書というものが上がっていて、そこには、これは福島県を批判している意味ではないのですけれども、現状進んでいるものが、例えば甲状腺の検査あるいは白血球の検査、既にわかったものを追跡していくということで、その他は、先ほどちょっと有識者会議のお話が官僚の皆さんから出ましたが、それは健康に害のない値なんだよという、いわゆる健康に害がないということがとても安易に使われていて、きちんとした、患者さんたちの不安に沿った健康フォロー体制がないということが逆に不信を抱かせていると思います。

 もちろん、チェルノブイリの経験で甲状腺のことがわかった。でも、これとて最初からわかっていたんじゃないんですね。五年たち十年たち出てきて、最初は否定していたものを後で追認していくとなりました。

 私は、この事態は、広島、長崎に次ぐ新たな形の、様相を変えた、経験したことのない、我が国にとっての広範な線量被曝、低線量であるか少し高いかは別でありますが。そういたしますと、やはり国としてきちんとデータ集積をしていく、フォローアップをしていく、そして後々の世に、世界に知見を届ける役割が国にはあると思うんです。

 小宮山大臣は、日弁連からの意見書は目を通されたことがあるでしょうか。一言お願いします。

小宮山国務大臣 全部熟読はしておりませんが、目は通させていただきました。

 それで、今委員がおっしゃったことはそのとおりだと私も思います。これは日本で初めてというより世界で初めてのことですので、しっかりフォローをして、世界に向けてしっかりフォローの結果を示していくということは大変重要なことだというふうに私も思っています。

阿部委員 正直申しまして、今のままだと立法根拠もございませんし、県民のフォローということ、あるいは県だけじゃなくて、県を越えた、先ほどホットスポットとか言われる、これは被曝といってもさっきの原爆の場合とは違いますが、しかし、あるレベル以上の線量にさらされた状態の追跡というのはなかなかまとまってできていかないと思います。今、議員立法でそうした立法化をなさろうということを公明党の加藤修一先生を中心になさってくださっているというお話は聞いておりますので、ぜひ国として、そして体系立って取り組むんだという方向にお願いをしたいと思います。

 引き続いて、ぜひ小宮山さんにお願いの件があります。

 実は、今取り上げました福島の問題でも、この間、復興特措法などで、警戒区域と計画的避難区域に御住所のあった方は、他の地域に移られて例えば公営住宅の入居などができる。これは恐らく被災者援護法のスキームだと思いますけれども、そういうものができておると思うのですが、実は、福島にお住まいで最も不安の強いのは子供や妊婦さんであると思うんですね。

 妊婦さんの場合は、例えば労働安全衛生管理上も、腹部のところにフィルムバッジなり放射線の被曝線量計を置いて、年間で二ミリのところで妊娠中は管理ということですね。あと、労働安全衛生上も、年間五ミリの被曝が予想されるところはフィルムバッジをつけて作業するわけです。

 そうすると、現状、今福島でお暮らしの皆さんで、計画的避難区域やあるいは警戒区域以外でもそうした線量下にある方というのは多いわけです。その方たちがもしも例えば福島県外でしばらく線量が下がるまでの間生活したいと望まれても、今公営住宅等々に入るそうした方策というものがないように思います。もしかして藤田さんが御答弁くださるのか、違いますかしら。では、お願いいたします。

小宮山国務大臣 今おっしゃったのは、被災者援護法ではなくて災害救助法で今対応させていただいているんですね。ですから、そのスキームだとなかなか難しいということかと思うんですが、医師でもある阿部委員からのそういう御指摘は重く受けとめたいと思いますので、どのようなことが考えられるか検討させていただきたいと思います。

阿部委員 特に、せめて除染までの間でも、二重住所ではありませんが、本当はこっちにあるんだけれども、その間、お子さんも小さいし、例えば公営住宅に入れる、県営住宅でも雇用促進住宅でもいいんです、移って入れるということが、逆に私は福島で、そこが安全になれば、もしかしてその後帰るということにも結びつく。

 もちろん選択ですから、選択は個々の御家庭にあると思いますけれども、ただ、そういう方策がなくて二重生活の負担が強いということを、ぜひ何らかのお考えをいただきたいと思います。前向きな御答弁、ありがとうございます。

 引き続いて、食の安全管理ということで申し上げさせていただきます。

 厚生労働省としては、この所信表明の中にもございましたけれども、三次補正をもって食品中の放射性物質の調査をなさるということが既に言われておりまして、それも、乳児、一から六、七から十二、十三から十八、十九から六十、六十以上の六区分と妊婦に分けて行われるということで、体に取り込むいわゆる内部被曝のもとである食品についてのお取り組みは前向きにしていただきたいんですが、さて、この区域、どこの区域でやるのかというのが、今十都道府県になっているように伺っております。

 これは実は、魚などにセシウムの濃度が高くなってまいりますと、魚はどこで水揚げされるかで、福島沖に停留するものでもありませんし、銚子の方でも高くなったり、あるいは川魚、あるいは底魚、ヒラメ、メバルなどは高くなる等々あって、むしろこれからの方が食の安全のために重要で、この十都道府県と言われておるものをもう少し拡大してきちんとフォローしていただくような方向はいかがであるか、御答弁をお願いします。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃったとおり、今回調査を実施するのは十道府県なんですけれども、その中で、福島に限っては、中通り、浜通り、会津と三カ所に分けてというふうに思っています。

 やり方としては、食品摂取量の調査ということで、実施の自治体十道県に対しまして、十四群に分けたいろいろな食品の食材を購入してそれぞれの群ごとに放射線量を測定するマーケットバスケット方式というものと、それから各地区で、今おっしゃったように年齢によって七区分に分けたものを、実際に毎日食べていらっしゃる食事のメニューに従って、そのレシピに従って収集をして測定を行う。何でこういう訳し方をしたのかわかりませんが、陰膳方式と言っていますけれども、その方法でやりたいと思っています。

 これを二十四年度以降もずっと続けたいと思っているんですが、今おっしゃった魚というのは確かに広がりがございますので、今後これをどういうふうに、広げていく必要があるかどうかについても検討させていただきたいと思います。

阿部委員 最近、川の汚染や湖の汚染やいろいろなことが明らかになってきております。どこでお子さんをお育てになっても安心できる、あるいは特に妊娠とかの問題もあることですので、ぜひもっと広げることを御検討よろしくお願いいたします。

 それから、先ほどの藤田さんの御答弁には、ありがとうございます。実は、相双地区の医療機関のみならず、福島全体ですけれども、もともと医療過疎でありまして、今も、入ってくるお医者さんよりも出ていくお医者さんの方がまだ多いという現状があります。そして、そうした中で、例えばホール・ボディー・カウンター一つやるにも、まだ実は、実際、二百万人の県民と申しましても、やれている数、二百二万人のうちわずか一万五千四百八人という値で、一%以下であります。

 これの原因は、実は、福島県立医大やあるいは千葉の放医研あるいは東海村まで行かなくちゃいけないということが大変で、この一万五千数人のうちの九千人近くは南相馬市立病院でホール・ボディー・カウンターをなさいました。その地域の基幹病院のエンパワーということを、これは県もなさいますけれども、ぜひ厚生労働省としてやっていただきたい、考えていただきたいと思います。

 最後に、小宮山大臣に、一枚、きょう資料をお出ししました。これは雇用の非正規化というグラフでありますが、男性も女性も非正規化、どんどんどんどんウナギ登りでありまして、二〇〇〇年あたりからはついに、二〇〇二年でもよろしゅうございます、五〇%を超えている。非正規というのは、派遣のみならず、パートやさまざまな就労形態、あると思うのですけれども、これは実は、被災地の三陸地域においても、今特に女性が就労困難に陥っております。

 厚労大臣として、全体を踏まえた上で、こういう女性たちの就労ということにどういうふうにもっとサポートしていくか、そしてあわせて、私ども、派遣法の改正、今回、反対しておりますけれども、これはやはり女性たちにとってなかなか、いろいろな意味で安定した働き方にならないということですので、引き続いて、どういう意思で臨まれるか、お願いいたします。

小宮山国務大臣 女性のこういう働き方の問題は、私も前職のときからずっとやってまいりました問題なので、恐らく問題意識は共有をしているというふうに思います。

 それから、被災地では、特にやはり女性、それから高齢者、障害をお持ちの方が非常に仕事につきにくいという実態も、私も現地でも伺っていますので、今回、「日本はひとつ」しごとプロジェクトのフェーズ3、本格的な復興へ向けてという中で、県に基金は積むんですけれども、市町村が使い勝手よく、NPOやあるいは企業の方と連携をしてできるような、女性、高齢者、障害者のモデル事業というのもやっております。

 ただ、そのことが必要な方に届いていないということなので、どうやって情報をお届けして、少しでも女性の皆さんの就労に結びつけるか、これはいろいろな意味で、これは女性にとどまりませんが、ハローワークでマンツーマンでやっているんですけれども、そうしたこともやっていきたい。

 それから一般的には、やはり五三%の女性が非正規でございますので、今回、先ほどから足りないと言われております社会保障の改革の中でも、短時間労働者への社会保険の適用拡大とか幾つかの策を、全て一歩からで申しわけないんですが、一つ前進をさせたいと思っていますので、御理解いただければと思います。

阿部委員 働き方の改革ということが私は第一であると思います。

 終わらせていただきます。

池田委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 先日の予算委員会の集中審議でも取り上げさせていただきました、これから採決が予定をされてもいます派遣法の改正案に関連してお伺いをいたしたいと思います。

 先日の予算委員会集中審議では、マニフェストの検証ということでありましたので、派遣法改正案に関連する専門二十六業務派遣適正化プランについて質問いたしました。

 検証してみると、驚くべき数字が出てくるわけです。適正化プランと疑義応答集に基づく労働局の是正指導によって、期間の定めなき派遣で働き続けることができなくなり、雇用契約が一旦は終了した人が二十六万人。二十六万人の官製派遣切りだということを申し上げました。現政権の政策でこれだけの大量の失職を生み出した、こういう認識はあるんですかとお伺いをいたしましたが、小宮山大臣は、しっかり目的を果たしつつある、こういう御答弁をされました。

 どういう意味でこの御答弁をされたのか、お伺いをいたしたいと思います。

小宮山国務大臣 派遣可能期間の制限を免れることを目的として、契約上は専門二十六業務と称して、実態としては専門二十六業務以外の業務を実施するという事例が見受けられました。

 このため、平成二十二年二月に専門二十六業務派遣適正化プランを策定しまして、適正な運用について事業主団体に要請をし、あわせて、都道府県労働局で集中的な指導監督を実施いたしました。

 先日の予算委員会で、目的を達しつつあるというふうに答弁をさせていただいたのは、この適正化プランに基づく指導によりまして、実際に、また後ほど数字をお話ししたいと思いますが、雇用を維持しながら専門二十六業務の適正化が相当程度図られたのではないかというふうに考えています。

 派遣の数が減っているというのは、先日の予算委員会でも申し上げたように、適正化プランが原因ということではなくて、全体に、やはりリーマン・ショックの後であること、それから欧州の債務危機とか、全体の経済の状況が悪いということが一番の原因だと思っておりまして、今、何とか経済を成長に持っていくための政策も全力を挙げて取り組んでいるということです。

柿澤委員 最後の部分の、派遣労働者専門二十六業務の減少がリーマン・ショック等経済の低迷によるものだというのは、これは全く違うというのは先日も申し上げたとおりであります。リーマン・ショック直後に三万人しか減少しなかったのが、それ以降で十九万人も減っている、これがリーマン・ショック等の原因に還元できるものではない、こういうふうに申し上げましたし、そもそも、リーマン・ショックがそんなに派遣切りに影響したのであれば、それは製造業の派遣にあらわれるべきものであって、五号業務みたいな事務用機器操作の仕事がそんなにがたっと減るわけがないんです。

 この辺について余り長く議論をしていても平行線になりますので、目的を達しつつある、こういう部分について重ねてお問いをしたいんです。

 昨年十二月の臨時国会、派遣法改正案の民自公の修正案が審議に付されたときに、この専門二十六業務について、自民党の加藤理事が御質問されております。これに対して、現行制度についてはいろいろな意見も寄せられているので必要な見直しの検討をしていきたい、こういうふうに大臣は御答弁をされているんですよね。その上で、先日、しっかり目的を達しつつあるということですから、つまりは、適正化プランというのは役割を終えて、今後、専門二十六業務について必要な見直しを行っていく、こういうふうに解釈をしていいのかどうか、お伺いをしたいと思います。

小宮山国務大臣 お答えする前に、先ほどの、リーマン・ショックというのを一つ挙げましたが、その後、東日本大震災とか欧州の債務危機とか、全体の経済の状況が影響しているということはあると思います。

 先ほど、直接この適正化プランが原因ではないと申し上げたのは、集中的な指導監督を平成二十二年の三月、四月に行いましたけれども、そのときの結果を見ても、九七・六%の派遣労働者の雇用が維持されているんです。離職した派遣労働者は二・四%しかいません。それで、先ほど御答弁したように、企業の中でしっかりとそこのところは適正に対応がされているというふうに申し上げたところでございます。

 こういう実態がありますので、調査を改めて行うということではなくて、今後とも、労働局とか厚生労働省が派遣労働者の実態を把握しながら、適正なしっかりとした運営に努めていくということが私の考えでございます。

柿澤委員 ちょっとさかのぼって恐縮なんですけれども、昨年十二月のこの厚生労働委員会での派遣法改正案の審議において、小宮山大臣は、もう一度申し上げますが、現行制度についてはいろいろな意見も寄せられているので必要な見直しの検討をしていきたいというふうに、この二十六業務の質問に対してお答えになられているんです。

 この点について、必要な見直しということを行っていくということは、二十六業務について制度全体の見直しを行っていくから、適正化プランについては、目的を達しつつあって、そろそろある意味では終了、こういうことになっていく、こういう認識でいいのかどうかお尋ねをしているわけであります。

小宮山国務大臣 その専門二十六業務の見直しの検討につきましては、政令等を改正した後、そこは速やかに検討させていただきたいと思っています。

柿澤委員 適正化プランがようやく終わりを迎えつつある、こういうことで御答弁を理解させていただきたいと思います。

 小宮山大臣の今の御答弁でもありましたが、先日の予算委員会でも、この適正化プランを集中実施した後も九七・六%で雇用が維持された、こういうふうにおっしゃっております。しかし、これは、適正化プランが始まった直後の、二年前の平成二十二年三月、四月の数字です。

 しかも、私が指摘をしたとおり、雇用が維持されたといいましても、期間の定めなき直接雇用、正社員等ですね、に移行した人は、八百二十七人中わずか十人、一・二%しかいないんです。多くの人は、もちろん専門二十六業務につき続けた人もいるんですけれども、例えば、期間の定めのある派遣に移行する、あるいは期間の定めのある直接雇用に移行する、これは、契約社員だったり、あるいはパートやアルバイト、こういうことですよね。結果として、この専門二十六業務適正化プランによる是正指導によって雇用契約が一旦終了した後、むしろ、それまでよりも悪い条件で働き続けている人の方が多いという、こういうデータなんですよ。

 しかも、これは、労働局の人によって言うことが違うあの悪名高い疑義応答集が出された平成二十二年五月以降には、こういう調査は行っていないわけであります。必要な見直しを検討を行うということであれば、この二年間で労働局の指導によって専門二十六業務での派遣が続けられなくなった労働者がその後どうなったのかという調査を行うべきであるというふうに思いますが、先ほど一部答弁をいただいたような部分もあるんですけれども、この二年間の総括をやはりする必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 それは、そのことと、その二十六業務を適正にしなければいけないということは、別の問題だと思うんですね。そこは適正にした上で、もちろん、期間の定めのない直接雇用になれば一番いいわけですけれども、現状としてはそうはなっていないということは事実かと思います。

 そうした中で、いろいろ、そうした不安定な雇用になりがちな非正規雇用について、今回も法改正なども出しておりますし、そういう全体的な取り組みの中でやっていくということで、そこに限って何かをということではないのではないかというふうに私は考えています。

柿澤委員 皆さんが行った政策によって、少なくとも、二十六業務で期間の定めなきいわば安定的な派遣労働をやっていた人たちが、二十六万人、雇用契約が終了して、そして、離職なり、ほかの仕事につくなり、あるいは就業形態が変わるなり、いずれにしても何らかの変化に見舞われた。それがその先どうなっていったのかということに関して、何の検証もしない。検証といえば、始まったばかりの平成二十二年三月、四月のこの数字があるだけ。そして、その数字で、九七%雇用が維持されていると言うけれども、しかし、皆さんが派遣法改正案等で目指しておられる期間の定めなき直接雇用、まさに正社員化に結びついたのは、八百二十七人中たった十人しかいない。その後の二年間、その後どうなったか、わからないし、調べるつもりもない。

 行った政策のきちんとした効果測定もなく、統計上のエビデンスもなく、成果が上がった、こういうふうに総括をしてこの先の雇用政策の議論に進んでいく。これは、極めて危険な傾向で、現政権が続けてきた間違いだというふうに指摘をしておきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 現政権は、税と社会保障の一体改革と称する消費税の増税を掲げています。社会保障費の増大に対して財源的手当てをしなければ財政そのものの持続可能性が失われてしまう、だから、やむを得ず国民に増税の負担をお願いするんだ、こういう考え方だと思います。

 であるならば、増税を行う前提として、膨張する社会保障費にいかに切り込むか、切り詰めるか、こういう議論がまず徹底的に行われなければいけない。そうですよね。

 そういう意味では、私は、社会保障に対する切り込みが全然できていないではないかというふうに思います。例えば、レセプトチェックをきちんと行うためのレセプトのオンライン化ということも、現政権は知らんぷりを決め込んでいるように思います。

 きょうは、柔道整復師の柔整療養費の問題を取り上げたいというふうに思います。

 この問題については、厚労副大臣、社会保障担当の辻副大臣が、野党民主党の参議院議員として実に鋭い切り込みをされておられます。

 平成十九年十月二日提出、柔道整復師による療養費の不正請求問題に関する質問主意書、これにこのような文章があります。

 公的医療保険の財政危機が叫ばれ、医療崩壊とさえ言われる現在、国民が安心できる医療提供体制と国民皆保険制度の維持発展は国民生活の基本にかかわる最重要課題である。このような状況の中、保険財政の圧迫につながる柔道整復師による療養費の不正請求問題が大きな社会問題となっている。

 こういう質問主意書を平成十九年に辻副大臣が民主党参議院議員としてお出しになられています。

 まず最初にお伺いをいたしますが、この三年間、柔整療養費はどのように推移をしているか、お尋ねを申し上げたいというふうに思います。

外口政府参考人 過去三年間の柔道整復療養費の推移でございますが、医療費ベースで、平成十九年度は約三千八百三十億円、二十年度は約三千九百三十三億円、二十一年度は約四千二十三億円となっております。

柿澤委員 大変大きな額であり、また、切り詰める方向には向かっていないかのようにも見えます。

 柔整療養費については、健康保険が適用されない肩凝り等の類いを捻挫、打撲と診断をして、しかもそれを、複数部位を書いて請求をし療養費を水増しする手法が問題になってきました。しかも、三部位までは負傷原因の記載もこれまで不要だったわけです。

 二〇〇九年十一月の事業仕分けで三部位以上の請求は負傷原因を部位ごとに記載することになりましたけれども、過去三年間、捻挫、打撲の三部位以上の請求がどれだけあったか、推移を明らかにしていただきたいと思います。

外口政府参考人 三部位以上の施術件数でございますけれども、二十二年十月のサンプル調査では、三部位以上が四六・八%となっております。これが直近の数字でございます。

柿澤委員 二十二年の数字で四六・八%。これも、高い数値になっているというふうに言わざるを得ないのではないかと思います。

 これについては事業仕分けで取り上げられたわけですけれども、実は、この三部位の請求に対する低減率というのが八〇%から七〇%に下がっただけ、こういうことでありました。当初、三三%というのが仕分け結果だったはずなんですけれども、そのほとんどが不正請求だ、こんなふうにも言われてきたにもかかわらず、私は、これだけの踏み込みしかできないのかな、こういうふうに言わざるを得ないと思います。

 過去三年間におけるこうした柔道整復師による療養費の不正請求による処分、また不正請求金額というものの推移を明らかにしてもらいたいと思います。

外口政府参考人 柔道整復療養費に係る受領委任の取り扱いの中止措置等の件数でございますけれども、二十年度が十四件、二十一年度が十六件、二十二年度が二十四件であります。

 また、指導監査等の結果生じた返納金額でございますが、二十年度が約一億三千万円、二十一年度が約一億一千万円、二十二年度が約一億三千万円となっております。

柿澤委員 不正請求も全然減っていないわけであります。

 こういう実態を耳にされて、まず一点お伺いをしたいと思いますが、辻副大臣、この柔整療養費、政権交代以降適正化されている、こういうふうに思われますか。

辻副大臣 この点につきましては、委員既によく御承知だと思いますけれども、いわゆる受領委任払い制度は、戦前において、整形外科担当の医療機関の配置、医師数が不足していたこと、また、骨折の場合においても柔道整復師の施術を受けることが多かったことなどの歴史的な沿革の中で、現在の、施術者が療養費を保険者に請求する形式により支給するという受領委任払い制度の仕組みができて、今日に至っているわけでございます。

 これにつきましては、近年、国民医療費の伸びを大幅に上回って増加しているとか、会計検査院や社会保障審議会医療保険部会で支給を適正なものとするようというような意見も表明されているところでございまして、御指摘いただいたように、四年ほど前の私の意見も見ていただいたようでございますけれども、共通する部分があるわけでございます。

 このようなことから、平成二十二年度の療養費改定におきまして、施術の部位が多い場合の請求に対する給付率を見直したほか、運用面においても、審査の地域格差を解消するための算定基準の明確化などの取り組みを進めてきたところでございますし、また、二十四年度に予定しております療養費改定におきましても、柔道整復療養費の適正化を進め、中長期的な視点に立って、関係者による検討会を設けるなど、療養費のあり方の見直しを行っていきたい、このように考えているところでございます。

柿澤委員 今までの数字を聞いてこられて辻副大臣は政権交代以降柔整療養費の適正化が進んだというふうに思っておられるのかということをお伺いしているのであります。

辻副大臣 一概に数字だけを捉えて全てを語ることはできないかと思いますけれども、先ほど申し上げましたような、委員も御指摘いただきました、多部位の請求に対する給付率の見直しとか、運用においてもいろいろ指導するなど、適正化に向けた取り組みも進めさせていただいているところも事実でございまして、今後とも、御指摘も踏まえて取り組んでいきたいと思います。

柿澤委員 辻参議院議員の平成十九年質問主意書は、十三問目の質問でこのように締めくくられております。「柔道整復師の療養費の受領委任払いは、かつて整形外科医が大きく不足していた時代に患者の治療を受ける機会の確保等の患者保護のため特例的に認められたものである。しかし、公的医療保険の財政危機が叫ばれ、医療制度の在り方が大きく論じられる現在、国民が安心できる医療提供体制の継続のためには、療養費の受領委任払い制度そのものの見直しが必要だと思われるが、政府の見解を示されたい。」こういう質問をもってこの質問主意書は締めくくられております。

 政権交代が実現をし、しかも、医療費の膨張で増税を議論しなければならないというような状況にある中、社会保障担当の厚労副大臣になられた辻副大臣は、柔道整復師に特例的に認められている療養費の受領委任払いについて、制度そのものの見直しに向けたお取り組みをされているというふうに思うんですけれども、検討状況と現在の考えをお伺いいたしたいと思います。

辻副大臣 四年ほど前の私の質問主意書を注目していただきまして、本当にありがたく感じております。

 そういった、私が思っておりました考え方と軌を同じくするような形で、昨年十二月六日の社会保障審議会医療保険部会におきまして、「療養費の見直し」というところで、ちょっと長いので全部は読みませんけれども、「関係者による検討会を設け、中・長期的な視点に立って、柔道整復療養費等の在り方の見直しを行う」ということで方向性を出していただいておりまして、それに基づいて検討を速やかに進めていきたい、このように思っているところでございまして、かつて私が示した考え方のもとに進めさせていただいているというふうに考えております。

柿澤委員 政権をとったらうやむやになってしまった、こういうことを言われないように、しっかりお取り組みをいただきたい。こういうことにしておきたいと思います。

 さて、AIJ投資顧問による年金消失問題でありますが、厚生年金基金が多数、巨額の運用委託をしていた実態が明らかになりつつあります。また、そこに旧社保庁OBの天下りの構図があって、AIJへの運用委託のいわば水先案内人を旧社保庁OBが務めてきた、こんな実態も明らかになりつつあります。

 そこで、厚労省としても、旧社保庁から厚生年金基金への天下りの問題について調査チームを設ける、調査を進める、こういうことになっております。しかしながら、この天下りの問題は、今突然明らかになったものではないんです。

 まず、厚生年金の推移について基本的なところを伺っておきたいと思いますが、配付資料のとおり、連合型や単独型の厚生年金基金の数は激減をしているわけです。十年前には千以上あったのが、今や、百を切る、十分の一以下になっている。一方、中小企業でつくる総合型の厚生年金基金の数は、六百二十九から四百九十五、比較的減っていないんです。

 これはどのような要因によるものですか。お伺いをいたしたいと思います。

榮畑政府参考人 厚生年金基金につきましては、確かに、御指摘のとおり、単独型や連合型を中心に、近年、代行返上等により数が少なくなってきている一方で、総合型については、減り方は小さいところでございます。

 その原因でございますが、代行返上等につきましては、事業主の四分の三以上の同意が必要でございまして、総合型につきましては、多くの事業主が加わっているために、なかなかその意思決定がとれない。また、会計基準が変更されて、上場企業など大企業については、企業年金の積み立て不足を企業そのものの債務と認識することとされたことによって、大企業がつくる単独型、連合型についての代行返上等が促進されたこと。さらには、中小企業が設立されている総合型につきまして、代行部分に積み立て不足があり、なかなか代行返上等ができなかったということなど、幾つかの要因が組み合わさったことによるものと思っております。

柿澤委員 先ほど天下りの話をいたしましたが、これは本当に、今回明らかになったものではないんですね。

 二〇〇二年の時点で厚生労働省が内部調査を行っていたということが、二〇〇二年六月一日の読売新聞の報道で明らかになっております。

 それによると、中小企業でつくる総合型の厚生年金基金の実に九割に、厚労省、また社保庁、そして都道府県庁の社会保険部局のOBが天下っている。一方、単独型、連合型の厚生年金に天下りがいるのはたった一三%。天下りは総合型に集中していたわけであります。

 この事実と、連合型、単独型に比べて総合型の多くが解散せずに存続している事実とは、関係があるというふうに思いますか。

小宮山国務大臣 先ほど局長が答弁させていただいたように、総合型は、やはり中小の多くの企業が集まっていますので、そういう意味で合意形成ができなくて代行返上ができないということだと思っていまして、今言っていただいたように、おととい年金局長をトップに調査チームを、これは天下りだけではなくて運営状況も含めて、発足をさせて、まず下準備をした上で、来週には辻副大臣をトップにさらに調査を進めたいと思っていまして、三月中にお示しをいたしますが、そのことといわゆる天下りの問題とは別のものだというふうに認識をしています。

柿澤委員 二〇〇二年四月に確定給付企業年金法が施行されて、代行部分の国への返上、代行返上が認められたわけです。その後、単独、連合が一気に減っていたのは、グラフが示しているとおりであります。解散を先送りすれば含み損が増すのがわかっていたからであります。

 一方、年金のプロというふれ込みで受け入れた天下り理事がいながら、結局、その理事が何も言わずに、総合型の多くは解散という選択をしなかった。そして、天下り理事が何も言わなかったとすれば、それは、解散したら平均一千数百万円の自分のポストがなくなってしまうからではありませんか。

 今や、給付の方が保険料収入より多い、逆ざやの厚生年金基金が激増しています。そして、リーマン・ショック以来、運用収益もぼろぼろ。だからこそ利率の高いAIJにひっかかってしまった、こういう背景があると思います。こういう形で厚生年金基金の財政が悪化すると、三階建ての企業年金はともかく、代行部分の公的年金にも穴があいてしまう、こういうことになると思います。

 厚生年金基金の制度で、上乗せの企業年金部分と代行部分の比率というのはどうなっているか、端的にお答えください。

池田委員長 榮畑局長、端的にお答えいただきたい。

榮畑政府参考人 年金給付月額で考えますと、代行部分と、それを超えるいわば加算部分、上乗せ部分との比は、おおむね約四対一というところでございます。

柿澤委員 一対四。つまりは、全体で公的年金の代行部分が八割を占めているわけです。

 今回のAIJは、もう二千億円、あらかた消失しちゃっているわけですから、公的年金の代行部分に当たるのが消失してしまっている、公的年金に穴があいてしまっているケースが発生しているというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

榮畑政府参考人 今回のAIJ投資顧問に委託していた厚生年金基金は七十四でございますが、そのうち、委託段階で既に代行割れだったところは三十一ございます。

 それで、残る四十三基金につきまして、御指摘のようにAIJ投資顧問に投資している全ての資産が仮に返ってこないとすれば、代行割れとなるような厚生年金基金はあと二十一ございますが、ただ、これはあくまでも機械的、単純に計算したものでございますし、今後、証券取引等監視委員会の検査結果等もよく勘案する必要もございまして、現時点でこの数字は確定しているところではございません。

柿澤委員 二十一基金が、このAIJの、ほぼ消失しているんですから、これで代行部分の穴があいてしまう、こういうことになるわけです。これに関して、一体誰がどのようにこのあいた穴を補填することになるんですか、お伺いします。

小宮山国務大臣 積み立て不足の御負担につきましては、これまでと同様、まずは事業主に御負担いただかざるを得ないと思います。

 先ほど委員がおっしゃいましたように、事業主が掛金の引き上げにより負担する場合に、今の経済状況も踏まえていろいろな規制緩和をいたしまして、三年から二十年かけて掛金の方を引き上げる、また、掛金の引き上げを猶予する措置を一年間延長する、こういうようなこともしておりますので、こういう対応の中で事業主の配慮措置の活用をしていただいて御負担をいただかざるを得ない。そこは丁寧に助言をしていきたいというふうに思っています。

柿澤委員 つまり、厚労省としては、厚生年金基金の財政悪化は基金自身の問題ということで、あくまで国は関与しない、こういう考えなんですか。それこそ厚労省は、先ほどおっしゃったように、社保庁OBを初めとした天下りを多数この厚生年金基金に受け入れてもらってきて、ある意味では現状を生み出してきた、こういう責任があるんではないかというふうに思います。

 このままいけばもう連鎖倒産が起こる、こういうことも言われている状況の中で、そうした対応で本当にいいのか、もう一度御答弁いただければと思います。

小宮山国務大臣 申し上げたように、今、検討する、実態を調査するチームを立ち上げておりますので、それを三月末にまとめ、先ほど局長も言いましたように、証券等監視委員会の調査報告なども見た上でガイドラインを強化していくなどの対応をしたいと思っておりますが、ほかとの公正という面からしましても、このことについては事業主に御負担をいただくということだと思っています。

柿澤委員 厚生労働省の姿勢はよくわかりました。

 終わります。

     ――――◇―――――

池田委員長 次に、第百七十四回国会、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案につきましては、既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

池田委員長 これより質疑に入るのでありますが、本案につきましては、その申し出がありません。

    ―――――――――――――

池田委員長 この際、本案に対し、岡本充功君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。岡本充功君。

    ―――――――――――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岡本(充)委員 ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の趣旨は、第一に、労働者派遣が禁止される日雇い労働者とは、日々または三十日以内の期間を定めて雇用される労働者をいうこととするとともに、日雇い派遣労働の禁止の例外として、雇用機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合等を追加すること。

 第二に、違法派遣の場合の派遣先の派遣労働者に対する労働契約申し込みみなし規定の施行期日を、この法律の施行日から起算して三年を経過した日とすること。

 第三に、物の製造業務派遣の原則禁止規定を削除すること。

 第四に、いわゆる登録型派遣の原則禁止規定を削除すること。

 第五に、政府は、この法律の施行後、いわゆる登録型派遣、物の製造業務派遣等のあり方について、速やかに検討を行うものとすること。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

池田委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

池田委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 ただいま議題となりました政府提出の労働者派遣法の一部改正案と三党提出の修正案に断固反対の立場から討論します。

 政府案は、製造業務派遣、登録型派遣の原則禁止を言いながら、一方で多くの例外を認めるなど、極めて不十分な内容です。それでも、行き過ぎた規制緩和による派遣切りの横行を政府自身が認め、初めて派遣法を規制強化する方向へと一歩踏み出したものでした。国会での十分な審議を通じて、真に派遣労働者の保護に資すること、企業の身勝手な振る舞いを許さない法案へ抜本改正することこそ求められていたのです。

 ところが、法案は、一昨年の四月に提出されて以降、我が党が再三求めてきた派遣労働者や派遣切りされた当事者の意見を聞くための参考人質疑すら行われないまま、きょうまでの二年間でわずか七時間半しか審議をされていません。にもかかわらず、前国会の会期末直前に、政府案と、不十分な政府案すら骨抜きにする民主、自民、公明提出の修正案の採決が強行されました。

 しかし、修正議決された法案は、参議院に送付できずに会期末を迎え、政府案は当委員会に差し戻されて今国会に継続され、修正案は廃案になったのであります。本来であれば、今国会で十分に時間をかけて徹底した審議を行うのが当然ではありませんか。

 ところが、本日、政府案と前国会で廃案になったものとほとんど変わらない三党修正案が提出され、審議も一切行わないまま採決を強行するなど、委員会審議をないがしろにする許されない行為であり、この暴挙に断固抗議するものです。

 二〇〇八年の暮れ、厚生労働省前の日比谷公園が派遣切りで仕事も住まいも失った労働者であふれ返った年越し派遣村の光景を忘れたなどとは言わせません。

 東日本大震災や円高を理由とした解雇、雇いどめが広がる中、雇用の調整弁として真っ先に影響を受けているのは派遣労働を初めとする非正規労働者であり、労働者派遣法の抜本改正こそ切実に求められています。労働者の保護には極めて不十分な政府案と、それすら骨抜きにしようとする修正案は、断じて認めることができません。

 以上、反対討論とします。

池田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案の原案に賛成、修正案に反対の立場から討論をいたします。

 昨年秋の臨時国会の会期末に、民主、自民、公明の三党によって修正案が突然提出され、わずか三時間半という審議で採決されました。修正案の決議は継続できないため、本日再議決を行うとのことですが、それならば、当然、きちんとした審議時間を確保すべきであり、審議もせずにいきなり議決というのは、議会制民主主義を無視した暴挙と言わざるを得ません。

 ヨーロッパ債務危機などによる世界的な景気の減速、急激な円高など、現下の雇用情勢は極めて厳しいものがあります。非正規雇用は増加の一途をたどり、とりわけ女性の非正規化は五〇%を超えて高どまりをしております。加えて、東日本大震災と福島第一原発事故で、被災地は、農業、水産業など主力の産業が打撃を受け、いまだ再建されていません。ここでも女性の就労状況は極めて深刻です。経済、産業の再建とともに、安定した雇用の確保が今ほど問われているときはないと思います。

 こうしたときに、政府原案から登録型派遣の原則禁止、製造業務派遣の原則禁止を外す修正案は、そうでなくても社会保険もなく雇用も不安定な非正規労働者が増加しているという現状を、さらに悪化させる以外の何物でもありません。

 三年前、製造業などで働く大量の派遣労働者が雇いどめに遭い、同時に住居も失うという深刻な問題が起きました。こうしたことを二度と起こさせないために、政権交代後、派遣労働者保護の立場から、派遣事業に対する規制強化とともに登録型派遣の原則禁止、製造業務派遣の原則禁止を明記した政府案が作成され、国会に提出されたのです。

 政府案にはなお不十分な点がありましたが、それでも、働く労働者を初め多くの国民に支持されたのは、野方図に拡大する雇用の劣化を食いとめ、人間らしい働き方を実現することができるという期待からでした。

 しかし、今回の三党による修正案は、登録型派遣と製造業務派遣の原則禁止の削除にとどまらず、日雇い派遣の原則禁止を一部の例外を除き原則容認、みなし雇用制度の法施行を三年後に先送りするなど、政府案を骨抜きにする内容であり、全く容認できません。

 復興が進む中で求職者は増加していますが、わずかながら出てきている求人の大半は非正規雇用で、正社員でも低賃金というのが実態です。こうした中で、再び製造業派遣の求人が増加しています。急激に進む円高や被災地での雇用再開が背景と言われています。しかし、何かがあれば真っ先に解雇されるのが、派遣労働者であり非正規雇用です。労働者派遣法の改正を行い、雇用の安定と生活の保障に全力を尽くすべきときと考えます。

 キーワードは、働き方を変えることです。東日本大震災の復興と日本社会再生に向けた歩みの中にこのキーワードを埋め込むことは、我々の責務と考えます。このことを最後に申し述べ、私の反対討論といたします。

池田委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党を代表して、労働者派遣法改正案の原案並びに民自公の三会派共同提出による修正案に反対の立場から討論を行います。

 そもそも労働者派遣法の改正案は、現政権の発足時に民主、社民、国民新党で三党合意して、最重要法案に位置づけてきた法案です。それを延々六国会も継続審議にしてきたばかりか、昨年は、実質的な質疑は一度も行われることなく、十二月に至っていたわけであります。

 にもかかわらず、民主、自民、公明による水面下の協議で、製造業派遣、登録型派遣、日雇い派遣の原則禁止というこの法案の目玉である部分を削除する修正案がまとまり、提出即質疑、そのまま採決と、驚くべき強行をしました。民自公の三党合意による強行採決と言っても過言ではありません。

 みんなの党が参議院での法案付託に反対し、一転、廃案の危機に追い込まれたため、急遽、衆議院段階で法案を残し、継続審議とする対応がとられましたが、このような会期末のどたばた劇を通じて、修正案は一旦白紙に戻り、原案からの審議となったはずであります。ならば、原案からゼロベースでの審議を再開するのが正しい姿であり、同じ内容の修正案を民自公でもう一度出して、一度可決しているからと審議なしで採決しようというやり方は論外であります。

 修正案の中身にも賛成できかねます。

 まず、製造業派遣、登録型派遣、日雇い派遣の原案における目玉の部分をほとんど削除してしまい、原案から大骨を抜いた結果、もともとの派遣法改正案の面影が全然残っていないものになってしまっています。これだけを見ても、法案の出し直しに値すると考えます。

 しかも、修正案に残された労働契約申し込みみなし制度は、これまでの専門二十六業務派遣適正化プランや、請負に関する三十七号告示に関する疑義応答集に基づく労働局の行政指導に見られるように、労働局の現場の指導官の裁量行政を助長するような運用が行われる可能性があり、派遣労働者の雇用の安定化どころか、ここまで見られた官製派遣切りを加速させるリスクがあるものです。

 修正案提出者にもこうした懸念があるからこそ労働契約申し込みみなし制度の開始を三年後におくらせる修正が行われたのでしょうが、だとすれば、なおさら、一から出直しした方がよいはずです。

 派遣で搾取されている労働者の保護のためと言いながら、結果として、派遣という働き方の選択肢を労働市場から追いやるような政策を続けてきたのが現政権のこの三年間の政策であったこと、誤った思い込みに基づく政策を根本的に改めなければ当の派遣労働者のためにもならないということを申し上げて、反対討論といたします。

池田委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池田委員長 これより採決に入ります。

 第百七十四回国会、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、岡本充功君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

池田委員長 この際、本案に対し、和田隆志君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。古屋範子さん。

古屋(範)委員 私は、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 登録型派遣の在り方、製造業務派遣の在り方及び特定労働者派遣事業の在り方については、本法施行後一年経過後をめどに、東日本大震災による雇用状況、デフレ・円高等の産業に与える影響及び派遣労働者の就労機会の確保等も勘案して論点を整理し、労働政策審議会での議論を開始すること。

 二 いわゆる専門二十六業務に該当するかどうかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元・派遣先企業に分かりやすい制度となるよう、速やかに見直しの検討を開始すること。検討の結論が出るまでの間、期間制限違反の指導監督については、労働契約申込みみなし制度が創設されること等も踏まえ、丁寧・適切に、必要な限度においてのみ実施するよう改めること。

   労働契約申込みみなし規定の適用に当たっては、事業者及び労働者に対し、期間制限違反に該当するかどうか等の助言を丁寧に行うこと。

 三 いわゆる偽装請負の指導監督については、労働契約申込みみなし制度が創設されること等も踏まえ、丁寧・適切に実施するよう改めること。

   労働契約申込みみなし規定が適用される「偽装する意図を持っているケース」を、具体的に明確化すること。併せて、事業者及び労働者に対し、偽装請負に該当するかどうかの助言を丁寧に行うとともに、労働者派遣と請負の区分基準を更に明確化すること。

 四 労働契約申込みみなし制度の創設に当たり、派遣労働者の就業機会が縮小することのないよう、周知と意見聴取を徹底するよう努めること。

 五 派遣労働者に対する労働・社会保険適用を一層促進するため、現行の派遣元指針及び派遣先指針に記載されている労働・社会保険適用の促進策の法定化を含む抜本強化について検討すること。

 六 優良な派遣元事業主が育成されるよう、法令遵守の一層の徹底、派遣労働者の労働条件の改善等、労働者派遣事業適正運営協力員制度の活用も含めた適切な指導、助言等を行うこと。

 七 派遣労働者の職業能力の開発を図るため、派遣元事業主は派遣労働者に対し教育訓練の機会を確保し、労働者派遣業界が派遣労働者の雇用の安定等に必要な職業能力開発に取り組む恒久的な仕組みを検討すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

池田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、小宮山厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小宮山厚生労働大臣。

小宮山国務大臣 ただいま御決議いただいた附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重して努力いたします。

    ―――――――――――――

池田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

池田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十八分散会


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