衆議院

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第6号 平成24年3月21日(水曜日)

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平成二十四年三月二十一日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 池田 元久君

   理事 岡本 充功君 理事 長尾  敬君

   理事 長妻  昭君 理事 柚木 道義君

   理事 和田 隆志君 理事 加藤 勝信君

   理事 田村 憲久君 理事 古屋 範子君

      相原 史乃君    石森 久嗣君

      小原  舞君    大西 健介君

      勝又恒一郎君    工藤 仁美君

      斉藤  進君    白石 洋一君

      田中美絵子君    竹田 光明君

      橘  秀徳君    玉木 朝子君

      仁木 博文君    橋本  勉君

      初鹿 明博君    樋口 俊一君

      福田衣里子君    藤田 一枝君

      牧  義夫君    三宅 雪子君

      水野 智彦君    宮崎 岳志君

      山口 和之君    山崎 摩耶君

      吉田 統彦君    あべ 俊子君

      鴨下 一郎君    菅原 一秀君

      棚橋 泰文君    谷畑  孝君

      永岡 桂子君    長勢 甚遠君

      松浪 健太君    松本  純君

      坂口  力君    高橋千鶴子君

      小林 正枝君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   厚生労働副大臣      牧  義夫君

   厚生労働副大臣      辻  泰弘君

   厚生労働大臣政務官    藤田 一枝君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官)    伊奈川秀和君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       高井 康行君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十一日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     小原  舞君

  初鹿 明博君     勝又恒一郎君

  水野 智彦君     橘  秀徳君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     相原 史乃君

  勝又恒一郎君     初鹿 明博君

  橘  秀徳君     水野 智彦君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

    ―――――――――――――

三月十九日

 窓口負担を軽減し、保険のきく範囲を広げお金の心配がない保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(北村誠吾君紹介)(第三二九号)

 同(大西健介君紹介)(第四八八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四八九号)

 同(吉田統彦君紹介)(第四九〇号)

 安心して受けられる医療の実現を求めることに関する請願(北村誠吾君紹介)(第三三〇号)

 発達障害者手帳の制定に関する請願(田島一成君紹介)(第三四三号)

 同(田島一成君紹介)(第三六六号)

 最低保障年金制度の実現と緊急の年金改善を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三四四号)

 同(笠井亮君紹介)(第三四五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三四六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三四七号)

 同(志位和夫君紹介)(第三四八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三四九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三五一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三五二号)

 障害者福祉についての新たな法制に関する請願(塩崎恭久君紹介)(第三六五号)

 同(橘秀徳君紹介)(第三七二号)

 同(園田博之君紹介)(第四六三号)

 同(古屋圭司君紹介)(第四六四号)

 同(太田和美君紹介)(第四九三号)

 てんかんのある人とその家族の生活を支えることに関する請願(赤松正雄君紹介)(第三七一号)

 パーキンソン病患者のQOL(生活の質)の向上に関する請願(柴山昌彦君紹介)(第三七九号)

 同(羽田孜君紹介)(第四九二号)

 大幅増員と夜勤改善で安全・安心の医療・介護の実現に関する請願(白石洋一君紹介)(第四五二号)

 同(石川知裕君紹介)(第四九四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四九五号)

 同(重野安正君紹介)(第四九六号)

 同(中島隆利君紹介)(第四九七号)

 労働者派遣法の早期抜本改正と雇用の安定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四五三号)

 同(笠井亮君紹介)(第四五四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四五五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四五六号)

 同(志位和夫君紹介)(第四五七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四五八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四五九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四六〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四六一号)

 改正介護保険の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四六二号)

 じん肺とアスベスト被害根絶を求めることに関する請願(吉泉秀男君紹介)(第四九一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――

池田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、岡本充功君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。田村憲久君。

    ―――――――――――――

 児童手当法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田村(憲)委員 ただいま議題となりました児童手当法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の趣旨は、第一に、手当の名称を児童手当と、法律の題名を児童手当法とすること。

 第二に、この法律の目的として、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを規定すること。

 第三に、平成二十四年六月分以降の児童手当については、前年の所得が一定の額以上である場合には支給しないこと。ただし、当該所得制限により児童手当が支給されない者に対し、当分の間の特例給付として、中学校修了前の児童一人当たり、一月につき、五千円を支給すること。

 第四に、検討条項として、「政府は、速やかに、子育て支援に係る財政上又は税制上の措置等について、この法律による改正後の児童手当法に規定する児童手当の支給並びに所得税並びに道府県民税及び市町村民税に係る扶養控除の廃止による影響を踏まえつつ、その在り方を含め検討を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。」との一項及び第二項として「この法律による改正後の児童手当法附則第二条第一項の給付の在り方について、前項の結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。」との一項を加えること。

 第五に、依然として、平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法に基づく子ども手当の未申請者がいることを踏まえ、平成二十四年三月三十一日までとされている遡及支給の特例措置等を、平成二十四年九月三十日まで延長すること。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

池田委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

池田委員長 この際、お諮りいたします。

 原案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官伊奈川秀和君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長高井康行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池田委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 私は、平成二十二年二月の本会議で、平成二十二年度における子ども手当法案について質問しました。あれからまだ二年しかたっておりませんが、今回の法案は何と、四本目でございます。

 昨年は、東日本大震災の発生を受け、国会も一定期間審議がストップしたため、平成二十三年度の子ども手当法案は用意されていましたが、急遽、半年間単純延長するという、いわゆるつなぎ法案が成立しました。あのとき、参議院の委員会、本会議で可否同数、委員長決裁という、首の皮一枚の成立でありました。そして、八月の特別措置法で、事実上子ども手当はなくなったと言えるのではないでしょうか。

 日本共産党は、一回目の法案とつなぎ法案には賛成をしました。いろいろ問題点があっても、急がれる子供の貧困対策、国際的にも最低レベルの子育て予算を拡充するという必要があったからであります。東日本大震災で子供を取り巻く環境は悪化したのに、子ども手当はばらまきだから復興財源に回せと不要不急の大型開発と同列に論じることには絶対に承服できませんでした。結局、この二年間は何だったのかなと言いたくなる状況であります。

 そこで、まず大臣に伺いますが、三月十五日、子ども手当見直しの三党合意を受けて前原政調会長は子ども手当の理念は継承すると記者団に語ったと報道されています。その理念とは何でしょうか。そして、修正案の中にその理念がどのように盛り込まれたんでしょうか。

小宮山国務大臣 今回の合意は、三月中に法案が成立しないと、以前の児童手当に戻りまして、そうなると国民の皆様に非常に大きな影響が出るという中で、各党の意見をぎりぎりのところで調整して、実現可能な着地点に到達をしていただいたものだと思っています。

 今回の合意で、その理念が盛り込まれているという点についてですけれども、手当の名称は児童手当としますけれども、子ども手当制度の支給対象等も参考としつつ、支給対象年齢を中学生まで拡大するとともに手当額を拡充するなど、新たな児童手当制度を構築することとされているわけですね。

 特に、法律の目的の中に、家庭への経済的な支援ということに加えて、子ども手当の理念でございました「児童の健やかな成長に資する」とされていること、これはやはり理念がきちんと盛り込まれているということだと思っていますので、これは子ども手当で政府として出しましたものと同様に、子供の視点にも配慮をしているということだというふうに考えています。

高橋(千)委員 ぎりぎりのところでの合意なんだということを、結局、毎回言ってきたんですね。ですから、逆に、背伸びをしないで、できるところから出発をして、十分な合意形成を図る努力をするべきだったんじゃないか、あえて指摘をさせていただきたいと思います。児童手当の改正から、きちんと理解できるところから始めていけばよかったんじゃないか、結局そうなったわけですからね。

 対象世帯を参考としつつという表現は、要するに、辛うじて全ての世帯に払うことになっているからということをおっしゃりたいんだと思うんですけれども、しかし、本則では、所得制限以上のところには支給しないということを書いて、そして、当分の間ということで五千円の減額支給というつくりになっていますから、そういう点でも本当に矛盾が出ていて、この理念は継承されたというのは、ちょっと言いわけがましいかなと言わなければならないと思うんです。

 それで、この点で自民党の提出者に伺いたいと思います。

 昨年八月二十三日の本会議討論、特別措置法のときに、自民党の田村議員はこのように述べております。「今回、特別措置法が成立した暁には、民主党の皆さんが後生大事に最後まで死守しようと画策していた子ども手当が、その名称や仕組みともども今年度をもって終えんを迎えるということをこの場で確認いたしたい」と述べていらっしゃいます。ですから、もう既に、昨年のときに、なくなったのだということをおっしゃっているわけであります。

 名前も児童手当法に戻りました。そういう中で、理念は残ったという言い分をどう受けとめているのか、また、自民党はなぜ子ども手当ではだめなのか、伺います。

田村(憲)委員 そもそも、なぜ児童手当なのかといいますと、昨年八月の三党合意で、児童手当法を改正して、これを三党で合意した形で決めようという話でございますので、それは、児童手当法を改正するんですから児童手当というのが最も当たり前の話だろうということで、児童手当と我々は主張してきたわけであります。

 あわせまして、前原政調会長が子ども手当の理念は継承すると言っておられるという話でありますが、私ども、詳細はよく理解しておりませんが、それは、子ども手当ということをずっとマニフェストでうたってこられた民主党という政党でございますから、政調会長はそういうふうにおっしゃりたいんだろうなと。お気持ちはわかりますけれども、世の中がどういうふうにこれを評価するかという話でございます。

 特に、まず所得制限、先ほど委員おっしゃられたとおり、所得制限がちゃんと本則に書かれておるというのは、まさに、もともと我々がやってまいりました児童手当そのものでございます。もちろん、特例で給付することはありますけれども、しかし、本則がそうなっておるわけでありますから、そういう意味では、やはり我々の児童手当の理念というものが生きておるなというふうに思います。

 そもそも、子ども手当は、それぞれお子さん方、分け隔てなく一律の給付をする、金額も含めて、こういう話でありましたけれども、例えば、年齢によっても違いますし、子供の数によっても今回給付額が違うわけでありますから、これは我々のやってまいりました児童手当の手法そのものでございますから、基本的には、やはり児童手当というものの理念にのっとって、また、その目的規定を見ましても、もともとの児童手当法の目的理念というもの、今回の場合、こういうものがさらにバージョンアップしたのかなと、我々はそのように思っておりますから、我々は、児童手当というものの理念が今回の児童手当法改正の中においてより色濃く反映をされている、そんな内容であるというふうに考えております。

高橋(千)委員 私が指摘したいのは、民主党が主張してきた、社会が子供を育てるというこの理念について、私は、これは共有できるものだと思うんです。それに対して、家族の子供に対する責任を免除するみたいな議論がされてきたという、それは違うだろうと、それははっきり言いたいと思うんですね。

 今、田村提出者はバージョンアップしたんだということをおっしゃっていますが、子どもの権利条約ですら、第二十七条で「締約国は、児童の身体的、精神的、道徳的及び社会的な発達のための相当な生活水準についてのすべての児童の権利を認める。」こう言って、その上で「父母又は児童について責任を有する他の者は、自己の能力及び資力の範囲内で、児童の発達に必要な生活条件を確保することについての第一義的な責任を有する。」と明記をされています。

 つまり、当たり前のことなんですね。日本が批准している国連の子どもの権利条約でさえも、第一義的な責任があるということは明記している。もう当たり前のことを、なぜあえて書けというのか。書かなければそうならないのだという、理念にかみつく議論には全く賛同できません。

 資料の一にあるように、政府案に、第一条、目的、「父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、」と前置きが入りました。この前置きは、つまり、今言ったことをあえて書いたわけですよね。修正案ではなくて政府案。政府案に既に入っているわけです。つまり、政府が提出したんですね。

 何でこれは一々前置きをする必要があったんでしょうか。子どもの権利条約の大前提である、一人の人間として子供をちゃんと認めること、権利を認めること、最善の利益を保障する、この立場との関係、大臣に一言伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるとおり、子どもの権利条約でそのようにうたわれているということは、私もよく認識をしております。ただ、今回は、三党で、先ほど申し上げたように、ぎりぎりの調整をした結果、それぞれの党のいろいろな御主張を兼ね合わせて、こういう目的規定にされたものと承知をしています。

高橋(千)委員 ですから、今言ったのは、資料にちゃんと書いているように、子供のための手当法というのは政府案なんです。修正する前の案に既に書いているじゃないかと。ですから、民主党はこの時点でもう理念を捨てたのかということを言わなければならないということなんです。

 それで、次に行きたいと思うんですが、政府案で言う子どものための手当は、法案化を目指している新システム、まだ提出をされておりませんけれども、この中で、給付として位置づけられております。修正により児童手当になることで、もう新システム、必要なくなるというか関係ないというふうになると思うんですが、どうなるでしょうか。

小宮山国務大臣 子ども・子育て新システムは、現金、現物双方の給付を包括的、一元的にする制度ということで、内閣府のワーキングチームで議論を重ねてきました。

 その中で、三月二日に少子化社会対策会議で決定されました「子ども・子育て新システムの基本制度について」、ここでは、こども園給付と並んで、個人への現金給付である子どものための手当を子ども・子育て新システムの給付に位置づけていますので、こうした経緯を踏まえてしっかりと対応をしていきたいというふうに考えています。

高橋(千)委員 ということは、児童手当を、今児童手当法になったんですが、新システムの中に位置づけるという意味ですか。

小宮山国務大臣 経緯を踏まえて対応するということは、そういうことでございます。

高橋(千)委員 では、自民党の提出者に同じことを伺います。

 新システムについて、かなり総合的な問題でありますけれども、見解を伺いたいというのと、この中に児童手当を位置づけることについて、どのように考えますか。

田村(憲)委員 そもそも、子ども・子育て新システムについては、いまだ政府から提出されておりませんので、漏れ伝わるところしか内容はわかっておりません。その漏れ伝わるところを聞いておりましても、その新システムなるもの自体に我々は疑義を持っております、非常に問題点が多うございますから。

 そもそもそのように思っておりますので、この中に児童手当をどう位置づけるかなどというようなことはまだ考えたこともございませんので、何とお答えをしていいのかよくわかりません。

高橋(千)委員 その新システム自体に問題があるということを、まず確認させていただきます。私も、その点はそう思っているんです。

 保育の市場化ということで議論をしてきました。ただ、考え方としては、理念に基づいて、政策的な、子ども・子育て会議の設置ですとか、フランスに学んだ金庫の設置の問題ですとか、決して丸ごと否定をしているわけではないんです。でも、そういう中で、その最初の一歩であった子ども手当がこのような事態になって、形だけ取り繕うようなやり方はやはりできないだろうということをはっきりと言っておかなければならないと思います。

 所得税の年少扶養控除の廃止が始まってから、子ども手当をもらったけれども、結局確定申告でマイナスだった、そういう声を聞きました。実際にどのくらいの世帯に影響がありましたか。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、所得税の年少扶養控除が廃止された平成二十三年とこれまでの児童手当制度の時代の世帯の手取り額を比べますと、サラリーマンそして専業主婦、子供一人世帯では、子供が三歳未満で、年収八百万前後の世帯で手取り額の減少が生じると考えております。

 この手取り額の変化は、子供の数や年齢等によって異なるものでございますので、手取り額が減少する具体的な世帯数は正確に把握しておりませんけれども、中学生までの対象のうち三歳未満の子供は二割弱、さらに、そのうち年収八百万前後の一部の所得階層であるということから、一割以下になると考えているところでございます。

高橋(千)委員 今、三歳未満のところで二割弱、そのうち八百万のところでの一割くらいであったということが、推論でしかできないけれども、大体そのくらいだという答弁だったと思うんです。

 それで、資料の二を見ていただければ、それがぐっと広がるのは、当然、想像にかたくないわけですよね。年収四百万から五百万の間のところでマイナスが立つわけです。そして、中学生以前までの子供さんのところは、そのマイナスが立つわけですから、大きく影響が広がるだろうと。

 しかも、ざっくり言って、厚労省の国民生活基礎調査でいいましても、児童のいる世帯というのは、五百万から六百万の年収のところが一三・七%ございます。四百五十万円以上の世帯を足し合わせると七割強になるわけですね。ですから、これほど影響があるんだということを十分な試算もなくて提案するというのが、どういうことになるのかなと思うんです。

 そこで、そういう全体的な影響があるにもかかわらず、所得制限、九百六十万以上のところだけ、しかも一律五千円という支給の仕方、非常につじつまがおかしいなと思うんですが、なぜでしょうか。

高井政府参考人 昨年八月に成立いたしました特別措置法におきましては、所得制限を受ける者に対する税制上または財政上の措置等について検討を加え、所要の措置を講じるとされております。このため、厚生労働省では、検討を行った結果、所得制限世帯に対して財政上の措置を講じることにしたということであります。

 この所得制限世帯に対する支給額につきましては、所得制限にかからない世帯とそのバランスを考慮いたしまして、五千円を支給する、手取り額の減少等につきましてよく考慮して、五千円を支給する、このようにしたところでございます。

高橋(千)委員 全然答えになっていないと思うんですね。全体としてマイナスが立つのに、何で所得制限を入れて、そこから上のところだけ、しかも一律なのかということなんです。

 これまでは、小宮山大臣がよくおっしゃっていたように、なぜ全ての子供に所得制限もかけずに支払うのかということに対して、所得の高い人に対してはちゃんと税制改正で応分の負担をしてもらうんだからいいのだと言っていたわけです。だから、そのことから見てもつじつまが合わない。所得制限もやる、しかし支給する。でも、この三枚目を見ていただければわかるように、所得制限の対象というのは、千七百三十万人の子供のうち、百六十万人にすぎないわけですね。もうそこだけ見ている。それ以外のところにマイナスが立っていることに対して何も見ていない。これは全然おかしいじゃないかということを言わなければならない。

 ちょっとどうしても次の質問がしたいので進みますけれども、さらに、四枚目の資料を見ていただくと、地方増収分の取り扱いについてというのがございます。

 これには子ども手当には関係ないものがいろいろ書かれているんですけれども、結局、児童手当になることで地方の負担分は二対一ということになるわけなんですけれども、一方で、地方税の増収などがあって、五千五十億円プラスになる、それを何に使うかというのが全部書かれてあるんですね、これは。それで、難病の超過負担分を、二百六十九億円、これで手当てすればいいじゃないかと。これは全然おかしな話なわけです。

 地方の増収分は、本来、一般財源に回るべきであって、増収すれば、その分、地方交付税が削減されるおそれもあるわけですね。それを、何か一円たりとも、すきなくほかにちゃんと回さなければいけないという、こういう考え方はなぜ出てくるのかということなんです。

 ですから、児童手当に戻ったことで、地方の負担はふえないということをまず一言確認したい。その上で、独自の施策に、子育てのために使える分に回せるのはどのくらいですか。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、この手当の成立の経緯、つまり、年少扶養控除の廃止等に伴う地方増収分につきましては、新たな地方の独自施策のための財源ではなくて、最終的には手当の財源として活用することが、国民に負担増をお願いする趣旨に合致するとこれまで考えてきたところでございます。

 このため、政府案での年少扶養控除の廃止による地方増収分五千五十億につきましては、二十四年度において、手当関係の地方負担増で二千四百四十億円、それから、地方の自由度の拡大にあわせた一般財源化等の措置、それと、特定疾患治療研究事業の地方の超過負担の財源として二千六百十億円を活用する、こういうことで国と地方の負担調整を行うこととしたということでございまして、今回の議員修正案でも、費用負担については、政府案のとおりと、同じと考えておるところでございます。

高橋(千)委員 結局、地方の増収分は子育て支援に使うと言っていたことからも、全然違うわけなんです。結局、二年間たって、一度も民主党のマニフェストを具体化した法案を出せなかった。何度も、ぎりぎりということを、同じことを繰り返してきました。

 やはり、当面は一致できるところからスタートして、時間をかけて合意形成を目指すべきだったんではないですか。大臣にもう一言伺って、終わります。

小宮山国務大臣 マニフェストの中では、チルドレンファーストということで、現金、一番皆さんが求められている経済的負担に対して応えたい、それにあわせて、今、新システムでやっているような居場所をつくること、ワーク・ライフ・バランスなど、総合的にやることを考えてお約束をしてまいりましたが、まず第一歩のこの子ども手当で財源の見通しなどがしっかり立たなかったことから、一度もお約束したとおりできなかったことは大変申しわけないと思っています。

 そうした中で、やはり、中学生までふやしたこととか、児童施設の、施設の子供にも拡充したことなど、そして、子供の成長をしっかり支えるということも含めて、幾つか継続的に残したところはございますけれども、最初のお約束どおりいかなかったことは申しわけなかったと思っています。

高橋(千)委員 終わります。

池田委員長 次に、小林正枝さん。

小林(正)委員 新党きづなの小林正枝でございます。

 児童手当法の一部を改正する法律案及び修正案について質問させていただきます。

 二〇〇九年に発表されました民主党の政権政策、マニフェストでは、子ども手当を創設する意義として、次世代の社会を担う子供一人一人の育ちを社会全体で応援すること、そして、安心して出産し、子供が育てられる社会をつくることを政策目標に掲げられました。私は、この考え方自体に誤りはないと今でも思っております。

 子育ては、第一義的には親の責任であることは言うまでもありません。が、次の世代を担っていく子供たちを社会全体で全面的にバックアップしていくことに反対する人はいないであろうと思っております。

 そういう意味からしますと、民主、自民、公明の三党修正案で所得制限を求めていることに、私は違和感を覚えます。例えば、所得がたくさんあって手当は必要ないと思う方は恐らく受給の申請をしないと思いますので、私は不必要なことだとも思います。

 まず、なぜ所得制限が必要なのか、その理由をお聞かせください。もとより、民主党さんは所得制限など毛頭考えておられなかったと思いますが、違いますでしょうか。

 また、夫婦と子供二人世帯の場合、年収九百六十万円を境に支給のされ方が変わるのか、その根拠について、修正案の提案者より、それぞれお聞かせいただきたいと思います。

岡本(充)委員 御質問いただきました、修正案で理念がどういうふうに表現をされているか。

 健やかな成長という言葉に私は意味を込めたつもりでありまして、これはまさに、これまで民主党が掲げてきた、一人一人の子供の育ちを社会全体で応援するという、こういう観点を継承し、これから育っていく子供さん、当然のことながら、先ほど委員もおっしゃりましたけれども、保護者が子育てについての第一義的な責任を有するというのは事実でありますから、それを踏まえて、今回、こういう規定にした。

 それからまた、いわゆる所得制限のあり方についてでありますけれども、これについてはさまざまな御意見はあると思います。ただ、昨年八月の三党合意に基づく中で所得制限という言葉が出てきたわけでありまして、これを踏まえて、今回、党としての方針をこの法案に体現された、こういうふうに理解をしております。

 なお、九百六十万円という数字については、現法律の中に書いている金額ではありませんので、恐らく、これは私の推測でありますから政府に聞いていただかなければいけませんけれども、これから政令でその金額を定めていくんだろうというふうに理解をしております。

田村(憲)委員 委員の御質問でございますけれども、所得制限をなぜ設けたのかというお話でありますが、もともと我々が進めてまいりました児童手当法は所得制限がございました。

 基本的な考え方は、今回の法律の目的にも書かれておりますけれども、一義的には、保護者、家庭が子育てを行う。普遍的な話だと思います、仮に国家がなくったって、やはり家族で子供は育てるわけでありますから。ただし、その中において、やはりいろいろな困難な場合も想定されるであろう。それは、金銭的な部分を考えれば、収入の多い家庭と少ない家庭では、当然、子育てにおいての負担というものは違う。その部分に関して、やはり社会がその部分をしっかりとお支えしようという話でございますから、そういう意味で所得制限というものを設けたということであります。

 九百六十万円というものの根拠でありますが、これは、三党合意の中でこういう御提案をいただいて九百六十万円というものが進んできておるわけでありまして、詳細は私はよくわかりませんが、ただ、児童手当のときに、多分、当時、九割の方々が手当を受けるというような形になっておりましたので、これを中学生まで広げた場合には大体九百六十万円ぐらいで九割というふうになるのではないのかなというような話は聞いたことはございます。

 以上でございます。

小林(正)委員 私は、社会全体で子供の成長を支援していく理念からして、やはり、所得制限を設けるということに、今の御答弁では納得がいきません。

 以下、法律案の第一条、この法律の目的ですが、条文に沿ってお伺いいたします。

 条文では、「次代の社会を担う子どもの健やかな育ちに資することを目的とする。」とあります。これはまさしく、社会全体で子供を育てていくという理念の表明だと思うのです。

 所得の高い家庭とそうではない家庭とに区分して手当を支給するということはこの法律の目的に適さないと思いますが、いかがでしょうか。大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。

小宮山国務大臣 これは、今提出者からも御説明がありましたように、昨年八月の三党合意に基づいて、今回、恒久的なものを恒久法である児童手当をもとにしてつくるという考え方の中で出てきたものなので、これは、三党で御協議をいただいた結果、現実的な決着点だったというふうに考えています。

小林(正)委員 また、第一条に「家庭等における生活の安定に寄与するとともに、」というくだりがあります。これは、かみ砕いて言うならば、所得が決して高くはない家庭においても安心して子育てができるようにという意味だと私は考えます。

 政府側にお尋ねいたしますが、私のこの認識は間違っていないでしょうか。まず、イエスかノーでお答えください。

藤田大臣政務官 今委員お尋ねの目的規定ですけれども、委員がおっしゃるように、そうした意味合いも含まれているというふうに認識をいたしております。

 これまでの児童手当法においても、家庭の生活の安定という規定は、児童手当が所得保障施策の一つである、そして同時に、あわせて、単なる低所得者対策ではなくて、児童の養育に伴う家計の経済的負担を社会的に分担することを狙いとするものでございまして、今回の目的規定でも同様の意味で考えているところでございます。

小林(正)委員 そうだとするならば、所得が高くない人に対する手当ということになりまして、所得が高い人に月額五千円支給しようとすることは御答弁と矛盾を来してしまうのではないかと思います。そのあたりの解釈はどうすればいいのか、改めて政府側の答弁を求めます。

藤田大臣政務官 所得制限超えの取り扱いについてのお尋ねでございますけれども、政府案では、所得制限以上の者に対して、通常の支給額よりも減額した額を支給することにしております。これは、所得に応じて一定の差を設けるものでありまして、所得制限を設けたことになると考えております。

 また、先ほども申しましたけれども、「家庭等における生活の安定に寄与する」、この規定は、児童の養育に伴う家計の経済的負担を社会的に分担することを狙いとしておりますから、こうした分担の程度が所得に応じて異なるとしても、この規定と矛盾するものではない、このように考えております。

小林(正)委員 同じく第一条の中には、保護者が子育てについての第一義的な責任を有するという基本的認識のもとにとあります。私は、子どものための手当を定めようという法律の条文にこのような文言が入ることに、すごく違和感を覚えます。

 先ほども申し上げましたが、私も、子育ての責任はまず保護者にあると思います。しかし、ここで親の責任を強く強調するということは、逆に言えば、社会の責任は二の次でもいいということになりませんでしょうか。私が心配し過ぎだというのであればいいのですが、そのあたりの私の懸念を払拭していただける御答弁をいただけませんでしょうか。まず、政府側からお答えください。

藤田大臣政務官 保護者の責任と社会の責任ということについてお尋ねでございますけれども、委員もよく御承知のように、民主党が提案をいたしました子ども手当では、親が子の扶養義務を負っているということを前提としつつ、次代を担う一人一人の子供の育ちを社会全体で応援する、こうした観点から実施したものでございました。

 今回の政府案の目的規定では、こうした点をより明確化し、「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」との文言を追加したものでございまして、子育てを社会全体で支援していくということを軽視しているものでは決してございません。

岡本(充)委員 先ほども御答弁をさせていただきましたとおり、第一義的な責任がどこにあるのかということについて、委員と考えが違っているというわけではありませんし、我々の修正案を通じてでもこれまでの理念を守っている、私はこのように考えています。

田村(憲)委員 もともとの民主党さんがお考えになられておられた子ども手当、目的がなかったもので、趣旨という形でございましたので、どういう考え方であったのかよくわかりませんが、自民党という立場でお答えをすれば、我が党は、綱領にも書いてありますとおり、まず、自助努力が一番に来ます。だから、自助。それから、共助。共助は、独立した個人の集まり、それがお互いに助け合うという考え方がある。そして、その上で、公助という、ある意味政府ですけれども、ここがお手伝いをする。社会という意味からすると、共助と公助というもののミックスになるのかもわかりませんけれども、まずは家庭も含めた自助努力というものが我が党の基本的な考え方であります。

 ですから、子供を育てる一義的な主体となる家庭が非常に経済的に余裕があるのであるならば、そこで自助努力をしていただくのがまず始まりであろうと。ただ、そうはいっても、時代時代によって子供にかかる子育ての費用は当然変わりますし、そういうものを鑑みながら、社会の状況を鑑みながら、共助であるとか公助というような形でそれを社会で支えていくという考え方でございますので、まさにこの書きっぷりというのは、私は、我が党の考え方に非常に合致しておるなと。

 決して、社会の責任というのがないというわけではないんです。ただ、第一義的にはまず自助というのが我が党の精神でございますから、そういう意味では、この法律の書きぶりというものは非常に我々にとってはその理念に応じておるというふうに考えております。

小林(正)委員 私に与えられた時間は限られておりますので、残念ですが、次に進みたいと思います。

 この間の与野党、民主党、自民、公明の協議の中で、子ども手当から、子どものための手当、そして児童成育手当、その後に、児童のための手当、そして今回、また児童手当に逆戻りしました。

 子どもと児童のどこが違うのでしょうか。子どもではなぜ悪いのでしょうか。なぜ児童に強烈なこだわりをお持ちになるのでしょうか。そのあたりが私には十分理解できないところがあります。

 政府及び修正案の提案者、それぞれの御見解を伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 子どもという言葉、児童という言葉、それぞれに強い思いがある言葉だというふうに思います。

 ただ、それぞれの制度の法律の中で、対象とする年齢などが規定をされていまして、例えば児童福祉法は、満十八歳に満たない者、学校教育法では小学生、そして今回の児童手当法でも、それからまた子どものための手当法でも、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までにある者と、両方とも同じ対象にしておりますので、そういう意味では、政府提案の子どもも修正案の児童も、法律上定義される対象は同じものであると考えています。

岡本(充)委員 御質問になられた名前の変遷について、私はそれを見ているわけではありませんが、さまざまな議論があったのは事実でありますが、児童と子どもについての意味合いについては、それぞれ今大臣もお答えになられました法律の定義がありますし、もちろん、辞書を引けばそれぞれ書いてはありますけれども、それぞれの思いが込められている言葉であるという中で、今回、児童手当法の一部改正をもって子供さんたちに対する現金給付をしていくという考え方、こういった考え方を安定的なものにしていくということでありますから、そういう大きな流れの中で、今回、児童手当という名前が出てきた、こういうふうに承知をしております。

 なお、民主党、自民党、公明党との三党合意の中では、今回のこの合意については、新たな児童手当制度を構築するということにしておりますので、その点についても委員には御理解をいただきたいと思います。

田村(憲)委員 子どもでも児童でも、どっちでもいいんですよ。余りこだわりはありません。

 ただ、民主党さんがわざわざ子ども手当と名前を変えて、あたかも理念が変わったような、そんなイメージが余りにも先行した。それは、民主党さんがそういう思いがあったのかどうかわかりませんけれども、世の中がそういうイメージが先行しちゃったものですから、だから、変わってませんよという意味で、児童という言葉にした方が、そもそも児童手当法の改正で、三党でこれを改正していいものをつくろうという話であったので、それならば児童でいいんじゃないですかという話なだけなんです。

 ですから、もともと民主党さんが児童手当法の改正で拡充していただければ、こんな議論にはならなかったんです。たまたま名前を変えて、何もかも変わったかのようなイメージになっちゃったものですから、我々は、そんなものじゃないでしょうということで、こだわったわけではないんですけれども、もとの名前に戻ったというだけの話だというふうに思います。

小林(正)委員 おっしゃられることに理解はしますけれども、御答弁としては、私は到底納得いくものではございません。

 時間がなくなってまいりましたので、最後に、この法案に対する私の思いを申し上げたいと思います。

 子供は国の宝であるとか未来の宝であると言われますが、提出されました法律案を見る限り、私は、到底そのような思いで大人たちがこの法案を作成したとは思えません。保護者が子育ての第一義的な責任を有するとか、子どもという名称を嫌って何としてでも児童と呼ばせるとか、控除から手当という考え方が曖昧になってしまったり、私は大変不満を持っております。

 フランスは、先進国の中でも唯一出生率がアップした国と言われております。それは、さまざまな子育て支援政策を初めとして、国が率先して子供を育てることができる環境をつくる努力をしてきたからだと思います。

 私たちこの国においても、しっかり子供を社会で育てていこうという理念が形づくられることを祈念しまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 この児童手当の改正に始まりまして、今回出されました法律改正まで、二年半余りの間、五回の、一つの法律のあり方についての審議が行われました。

 私自身は、小児科医を長くやっておりますから、子供の問題は、それを児童と言いかえてもいいと思いますが、よく、子供は炭坑の中のカナリアに例えられます。この社会に起こるもろもろの問題を真っ先に身に受けて、例えば、今、日本でふえておる児童虐待や、あるいは、子供たち自身が生きづらいと感じているような時代状況の中で、政治がこぞって、子供たちのために何かできることはないか、お子さんをお育ての御家庭のためにできることはないかというふうにかじを切ったということは大変評価しております。

 もともと、日本の子育てとは、明治時代に、イザベラ・バードなど海外からこの国に来られて日本各地を見て回った外国の方の目から見れば、日本は何て子供を大事にしているんだろう、大人の男の方たちが子供と遊ぶ姿、これは当時のヨーロッパではなかったことだと言われております。そのくらい、コミュニティーの中で、家庭の中で子供を受け入れ、そして一緒に育てていくという風習があったんだと思います。

 実は、私自身、小児科医になって三十八年たちますが、まだ学生のころは、日本には児童虐待ということはほとんどないと言われておりました。教科書もイギリスのものを使って、当時、私たちは、ああ、そういうのがアメリカやイギリスではあるんだってねと。もちろん、ゼロではなかったと思いますが。今や、小児科の夜間救急をやっておりますと、転落を初めとする頭部打撲などの事故は、残念なことですが、まず、親御さんがやったのではないかと、疑りたくないけれども、そういうことまで含めて見なければならない。

 やはり社会が病んでいるということのあらわれの中で、どうやって家庭も社会も国も子供を守れるかという観点から、この法律についての私の質疑をさせていただきたいと思います。

 冒頭お示ししました資料にございますように、政権交代以来の平成二十一年から二十四年に至るまでの子ども・子育て支援施策に係る費用というものを並べてみました。

 現金給付がブルーのところまでで、あと、右側が現物給付。ブルーとプラス、まあ見ていただければわかりますけれども、確かに、表面上は、金額は、例えば平成二十一年のトータル三・二兆円、子供施策のうちの一兆円余りが、これは児童手当時代でしたが、今回、名前を変えたところの改正案で約二・三兆円近くになるということで、これはこれで表向きは充実しているようにも受け取れます。

 ただしかし、ここにもう一つの問題があって、ここには、要は、今回廃止されるという年少扶養控除の地方税の扶養控除分や、もう既に廃止された所得税の年少扶養控除分が隠されております。結局のところ、先ほど高橋委員が御指摘のように、今回の改正をしたとしても、年収四百万円のところから家計の収入は減ってしまうということであります。

 私は、これ自身、今、我が国が少子高齢化だと言われ、どんな政党であっても、子供に対してあるいは子育て家庭に対して政策を手厚くしていこうと思う流れがあるんだと思いますから、まず小宮山大臣に伺いますが、結果として、これが家計の可処分所得を四百万円世帯から減らしている現状であることについての御認識を伺います。

小宮山国務大臣 今委員が御指摘になった点が、私自身としても一番気にかかっている、大変申しわけないと思っていることでございます。そういう意味では、そこを何とか解消していくということがこれから私たちに課されているという認識を持っております。

 そもそも、所得の高い人よりも低い人の方へということの中から控除から手当ということを打ち出したわけですが、そのときに、先ほども申し上げた子ども手当を満額できるだけの財源の見通しをちゃんと持っていなかったということが一番もとにあると思います。そこは大変申しわけないことで、そういう意味で、これから控除のあり方についてもさらに検討となっていますが、少なくとも、中堅所得層のところを含めてマイナスになってしまうということは、私どもからしてもあってはならないことなので、そこの対応は早急にできるように、そこは力を尽くしていきたいというふうに思っています。

阿部委員 今の大臣の御答弁のように、野田総理は分厚い中間層と言っていらしていてなぜそこの手取りを減らすようなことをするんだろうと、私は本当に大きな疑問ですし、結果的に、子育て世代内で、中学生のいる世帯には少し増収になり、低所得、三百万円以下には増収になったとしても、中間所得層より上は手取りが減る。この国を本当に支えていくためにまさに大事な中間所得層と呼ばれる堅実な国民をどう育てていくのかということが政策の中核に来ないと、私は、これが子ども手当であれ児童手当であれ、やはり子供の揺りかごはまず家庭でありますから、そこがきちんと所得を得られない状態というのは、何としてでもまた大臣に頑張っていただきたいと思います。

 と同時に、子供施策は、何も現金だけでなく、現物の部分もございます。

 これは、見ていただきますと、現物給付部分は実際にはほとんど増減なしと思います。例えば、こども園関係の、ピンク色のところですね、これが一・五兆になったり、その前が一・四兆であったりすることから見れば多少ふえたやに見えますが、一方で、その他の部分が二千四百億から二千億に減ったりしておりまして、現物給付に係るいわゆるお金の支出というのは、この予算が厳しいという中にあって、残念ながら余り充実ができていない。

 特に私がきょう伺いたいのは、二点ございます。

 実は、この間、例えば保育園の問題でも、公立の保育園などは一般財源化されてここには出てこなくなったりはしております。一般財源化するということの裏には、それをやっても質が担保される、子供たちを育てる本当に大事な作業というか営みですから、本当に子供が健やかに育っているかどうかが検証されねばなりません。

 その意味で、公立保育園の運営交付金というのが一般財源化されたことによる影響はどうなのかという点が一点。

 もう一つ、今回大変気になりますのは、皆さんのお手元の三枚目の「その他現物給付の減額要因について」という図の中に、実は、子どもの事故予防強化事業というのが一般財源化されました。一般財源化されると、やる自治体はやる、やらない自治体はやらないということになるのですが、この子どもの事故予防強化事業というのがとても重要なのは、実は日本は、新生児死、一歳までの死亡率は世界一、二に低くても、二歳から幼児期の死亡率は、特に不慮の事故というところが高いために、世界で二十位くらいでしょうか、余り褒められてはおりません。

 となると、この事業自身は、本当に、さっきの転落とか交通事故とか、あるいは、まかり間違うと虐待も入っているかもしれません、そういうことを一生懸命どうやって、例えば、家庭の責任といっても、家庭をサポートする必要もありますでしょう。今、家庭に丸投げしても、その家庭自身が、お金の多寡だけではなく、子供を育てることに大変困難を持っている場合もあります。ですから、少なくとも命を守る。事故だけはまず何としてでも防止しなきゃいけない部分です。

 ここについて一般財源化されておりますが、では、こうした、ここで行われてきた今までの交付金事業でしょうか、このものから変えたときの検証、変えるに至る検証はどうなっておるのか。

 さっきの公立保育園の運営交付金のお話と、二つ伺います。

小宮山国務大臣 そこも、委員と同じ問題意識は私も持っています。ただ、そこの検証は今きちんと行われていないと思いますので、私もそこはするべきだと思いますから、するように指示をしていきたいと思っていますし、公立保育所の一般財源化ということも、私も野党議員だったときに、そこはよくないということを言ってまいりました。

 そうした中で、今度、子ども・子育て新システムでこども園給付に切りかえられますけれども、それは、公立のところは一般財源化のままそこに含まれる形になりますので、そこの問題は、やはり、御指摘のように、自治体の意識にかかわるところがありますから、そこがきちんと子供に使われるように、どのようにしていくかということは大きな課題だというふうに思っています。

阿部委員 次の子ども・子育てビジョンの実施に当たっては、ぜひそういうことをきちんと検証して、本当に、家庭や社会で子供を守っていける国の政策であっていただきたいと思います。

 次に、修正案の提出者、田村委員にお伺いをいたします。

 お手元、二ページ目の資料を開いていただきますと、これは、この間、所得税の年少扶養控除が廃止されましたことによって、いわゆる所得税の課税最低限がかなり下がってまいりました。

 見ていただきますと、平成元年から、人的控除のうち、日本では基礎控除も三十八万円と低いものですから、何とか家計と家庭を健全に運営できるよう基本的な人的控除をふやしていこうというので、ここにある順次の改革、これは自民党時代ですからよくおわかりだと思います、特定扶養控除を引き上げたり、給与所得控除を拡充したり、さらにまた特定扶養控除を引き上げられて、そして配偶者特別控除がなくなりましたけれども、それでも課税最低限度額は三百二十五万でありました。これは、子供二人の、一人が特定扶養控除を受けておられる高校生くらいの年齢、そして一人は年少扶養控除とモデル化しました。しかし、その世帯にあっても二百六十一・六万と、かなりのところから課税が始まってしまいます。

 確かに、民主党政権にあっては、課税によるもろもろの影響をなるべく遮断しよう、特に住民税の年少扶養控除廃止に伴ってもろもろ保険料が上がりますので、そのことを何とかしようと御尽力されていたのは知っておるのですが、しかし、やはり家計にとって可処分所得のありようというのは、私は、それが子供の手当で来るからという問題を超えた問題があるように思います。

 今回、プラス住民税の年少扶養控除が廃止されますと、住民税の方はもともと最低の課税限度額が所得税より低いものですから、余りに厳しい取り立てにはなってはいけないということで、最低限度額よりも課税限度額を少し引き上げては措置してございますが、それでも、私は、住民税の年少扶養控除廃止というのは大変に影響が大き過ぎると思います。そして、与党におりましたときも、税調でも反対をしてまいりました。

 今回、修正案を出された皆さんはこの問題をどのようにお考えであるのか。そして、これは所得税と地方税の絡みで同じようにやらなきゃいけないんだという論議を当時民主党の税調でなさっていましたが、私は、やはり違うと思うんです。住民税というものと所得税、これからますます分権化の中で違った位置づけがあってしかるべきであります。提案者は、私、もろもろ言って申しわけありませんが、この点、どうお考えでしょうか。

田村(憲)委員 委員がおっしゃられます住民税というもの、これと、言うなれば所得税、国税の方と、この絡みがどうかというのは、今お話をお聞かせいただいて、一つの考え方だなというふうには感じました。

 ただ、ここで、この修正案の中で、そういう部分も含めて速やかに検討をして、そして結論が出たら一定の措置を講ずるというふうに書いておるわけでありますけれども、もともと我々は、税というものは、国家といいますか行政が国民、住民に課す大変大きな義務だというふうに思っています。ですから、できればそういうものは少ない方がいいのは当たり前であります。もちろん、今、財政状況が非常に厳しいので、そうはなかなかいかない部分があるわけでございますけれども。

 そのような考え方と、我々独自の、やはり家庭を大事にしよう、きずなというようなものも含めて、この年少扶養控除初め控除というもの、所得控除というものに対して我々は考え方、思い入れがあるわけでございまして、ですから、ここで、いろいろな状況を鑑みた中で、必要があるのならば、当然のごとく、年少扶養控除というものも含めて見直す、復活も含めて見直すということがあってしかるべきではないかということで、このような文面を入れたわけであります。

 あわせて申し上げれば、先ほど委員がおっしゃられましたとおり、この控除がなくなった部分をそれぞれの家計で子供の数と合わせてプラスマイナスどうなんだということを考えた場合に、民主党さんが初め言っておられたように、財源が幾らでもあって大きく子ども手当というものを支給できるのであるならば、その部分をカバーできるのでありましょうけれども、現状を考えたときに、なかなかそれだけの財源というものは出てこない。すると、どこかの世帯でマイナス世帯が出てくる。

 子育て、子供を大事にと言いながら、しかし、一方で可処分所得自体が落ちてしまうということを考えますと、やはり、年少扶養控除というものを復活した上で手当をどう考えるのかということを議論した方が、私は、子供をお持ちの家庭、また子育てをする上において、そちらの方が正しい考え方ではないのかなというふうに思っておりまして、そういうことも含めて、この附則の中で検討しようということを盛り込んだわけでございます。

阿部委員 今の点について、民主党の皆さんには、この年少扶養控除等々は今度は税額控除で何とかしたいというお気持ちがあるのは知っております。ただ、それが同時でないと、こうやって片っ方は控除を外しちゃって手当が行き渡らないとなれば結局家計は苦しむわけで、その間、どちらが一番よいのか、どうするのがよいのか、どこの場でそれを論議するのか、私は非常に重要だと思いますので、恐らくまた三党でとなるのやもしれませんが、やはり、偏りのない、本当の論議をしていただきたい。これは、子供については年少扶養控除を廃止して手当にという考え方もあり得るんですが、御高齢者の控除はどうかとか、いろいろな人的控除、トータルをもうちょっと深く考えた結果で考えていただきたいと思います。

 ちなみに、最後につけました資料、可処分所得の変化試算の中で、これは前回もお示ししましたが、大和総研の資料の中で、あのときは二〇一一年と比べてあったものを私の部屋で二〇〇九年と比べますが、これを見ますと、住民税額の増加とあとは厚生年金の保険料の増加によって、とにかく四百万円世帯でも、もう二〇一一年を境に二〇一二年からずっと赤が立っていくわけです。この試算はかなりよくできていると思いますので、こうした状況が一日も早く是正されるようお願いいたします。

 最後に一問お願いいたしますが、今回、地方の年少扶養控除を廃止して、そこから上がってくる金額を国民健康保険の都道府県の調整に使うということでありました。そもそもを言えば、子供のために使うものを何でそうするのですかと思います。そして、もしそれだけの財源があれば、前から申しておりますように、国民健康保険の問題があるのはもうみんな共有です。特に、お子さんがいる世帯の国民健康保険の保険料が高いのです。

 この点につきまして、私は、前回、予算委員会でも、今計算されておるところの計算方式、すなわち、基本保険料と、家族の人数掛け一人当たりの保険料、プラス所得比例、プラス資産で計算されますところの家族の人数を、十八歳以上にしてはどうかと。それが子供の基盤を、家計の基盤を高めるということであります。

 これ、ぜひ御検討いただきたいし、長妻大臣の時代から私はずっと提案し続けております。今のやり方で調整の方に投げては、結局、子供から低所得の高齢者の方に回るだけであります。ぜひ、子供自身の施策として検討いただきたいが、小宮山大臣、いかがでしょう。

小宮山国務大臣 今回こういう形になりましたのは、地方増収分の取り扱いについて、国と地方の協議の場で議論する中で、地方団体の方から、地方負担は地方に裁量性のあるものとすべきという御意見が強く出されまして、今回はこのような形になりました。

 それで、委員御指摘の点は、予算委員会の中でも、総理も検討をするというふうにお答えをしているところでございますので、まず、限られた財源の中で、地方からの御要望の多い保険料の軽減を図るということをとりましたが、子供の均等割の軽減については、その後の検討という形で検討させていただきたいと思っています。

阿部委員 健康保険、国保については国庫負担分が減りますので賛成しかねますが、今の小宮山大臣の答弁は、ぜひよろしくお願いいたします。

 終わります。

池田委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 今回の児童手当法改正案は、要するに、マニフェスト撤回の民自公の協議の一環として、子ども手当を白紙にして、かつての児童手当を復活させるもの、こういうふうに考えられております。

 児童手当法の改正として行われ、所得制限もついたし、名称も児童手当に戻った、自民党、公明党の完全勝利だ、こういうふうに見ることもできるし、いやいや、所得制限はするけれども五千円は当面支給するんだ、支給額も前進している、子ども手当の理念は死んでいない、こういうふうに強弁をすることもできる。要するに、玉虫色の合意なのではないかと言えると思います。

 報道によれば、この法案の政府案で子どものための手当というふうになっていたのが、こんな名前はまかりならぬということになり、では、児童成育手当、それもだめ、では、児童のための手当では、それは、自民党はいいが公明党はだめだった、こんなことも書かれていますが、結局、児童手当になったという、外から見ている私たちにとっては、実にどうでもいい駆け引きが水面下で繰り広げられてきたようであります。

 これも、民主党と自民党、公明党が、枝葉末節の違いがあれども、今や基本的な政策の方向性は全く変わらない、大連立が取り沙汰される今の政治状況を象徴しているようなものだというふうに思います。

 私たちは、よくも悪くも考え方が違います。平成二十四年度の予算の組み替え案でも提示をいたしましたが、子ども手当分の財源は全額地方におろして、地方自治体がみずから考える必要な子育てサービスのために自由に使ってもらう。保育所の整備のような現物支給をもっと充実させたい、こういう自治体もいるでしょうし、むしろ現金支給やバウチャーのような形にして、利用者に保育サービスを選んでもらう形を目指す、こういう自治体もいるかもしれない。住民のためのサービスは、住民に近い自治体がみずから決めて、みずからの財源で実行する。民主党もかつては一丁目一番地と言っていた地域主権の考え方であります。

 その考え方に基づいてみると、今回の児童手当でも、中央政府が巨額な財源を使って全国一律に現金をばらまく、極めて中央集権的な手法に思えてなりません。

 まず、そもそも、平成二十四年度政府予算案では、当初、子ども手当の支給にかかわる国の財源というのは一・三兆円ということになっていましたが、今回の修正で、子ども手当改め児童手当の支給にかかわる予算総額というのは要するに幾らになるのか、お尋ねをしたいと思います。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の修正案によります附則の特例給付も含めた給付総額は、政府予算案と同様の金額になると考えております。御指摘のように、平成二十四年度予算ベースでは、国庫負担で一兆三千二百八十三億円でございます。

柿澤委員 一・三兆円という、それだけのお金を、地方自治体に対して、児童手当として法律に決められたとおりに配れと言って、おろすわけであります。

 これについては、私は今でも思い出すんですけれども、平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案、鳩山内閣が提案した初年度の子ども手当の支給の根拠法案、これを審議していたときに、三重県松阪市の山中市長が参考人質疑で言った言葉なんですよね。平成二十三年度からの二万六千円の公約どおりの支給を全額国費で行うとすると、国から松阪市におりてくる金が七十六億円になる、松阪市、人口十七万人の市税収入は七十七・七億円で、子ども手当の国費を使えば市民税無税で市政ができてしまう。もちろん二万六千円は実現しなかったわけですけれども、しかし、松阪市の子育て支援に何が必要かは松阪市が一番よくわかっている、子ども手当の分の予算をそのまま地方におろしてほしい、こういうことを参考人として発言されました。

 この松阪市長の発言というのは、私は大変もっともなことだというふうに思うんですけれども、厚生労働大臣、小宮山大臣はどういうふうにお感じになられますでしょうか。

小宮山国務大臣 松阪市長を初め、そういうお考えをお持ちの首長さんがいらっしゃるということは、私も直接お話も聞いているのでわかります。

 ただ、今回、子ども手当のことについて、知事会あるいは市長会、町村会の全国の団体の皆様方とお話をすると、やはり、手当は全国一律にしてくれ、隣の町と違うのは勘弁してくれという御意見が大変強いので、松阪市長のお考えはお考えとしてあるかと思いますけれども、やはり、持ちたい数の子供が持てないという原因は相変わらず経済的負担というのが一番多い中で、国として、こうしたものをきちんと手当てをしていくということは必要なことだと考えています。

柿澤委員 ちょっと質問順を変えますが、私は、現政権が子ども手当の現金給付に傾斜をする余り、現物給付の子育て支援サービスの拡充が、予算面で、いわばクラウディングアウトといいますか、後回しにされてきたのではないか、そういう疑いを非常に強く持っています。

 平成二十二年の子ども手当法案と同時並行で発表された子ども・子育てビジョンというのがあります。ここに保育所の定員増や病児保育、家庭的保育等々の数値目標が示されて、年ベースで〇・七兆円、平成二十一年から二十六年度で十兆円の予算が必要だというふうに書かれています。つまり、現政権が掲げる数値目標を達成するためには、平成二十六年度までに十兆円の予算を確保しなければいけない、こういうことになっているわけです。

 子ども手当改め児童手当の支給に一・三兆円の国費を費やしながら、この子ども・子育てビジョンの数値目標を達成できるのか。

 そこに掲げた具体的な数値目標を少し取り出してお尋ねをしたいと思うんですけれども、病児・病後児保育については二百万人、そして認定こども園は二千カ所、家庭的保育は一・九万人、こういう数値目標がそこには掲げられております。

 去年の子ども手当の一年間つなぐ法案に関連して、この進捗状況をお尋ねさせていただきましたが、平成二十二年度で、それぞれ、二百万人に対して三十九万人、認定こども園、二千カ所に対して七百六十二カ所、そして家庭的保育は一・九万人に対して〇・四万人、こういう進捗状況を御答弁いただいております。

 その後の進捗状況、どういうことになっているか、お伺いをいたしたいというふうに思います。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず病児・病後児保育でございますけれども、御指摘の平成二十二年度、延べ三十九万人でありましたけれども、平成二十三年度で延べ四十四・四万人、それから認定こども園でございますけれども、二十二年四月で五百三十二カ所が、二十三年四月一日現在で七百六十二カ所、それから家庭的保育につきましては、二十二年度、延べ〇・四万人が、二十三年度で〇・五万人、こうなっておりまして、子ども・子育てビジョンに沿って着実に進めたいと考えておるところでございます。

柿澤委員 二百万人の目標に対して四十四・四万人、そして、一・九万人の家庭的保育でいえば、〇・四万人だったのが〇・五万人。平成二十六年の数値目標をこのペースで本当に達成できるのかな、こういうふうに思わざるを得ない状況ではないかと思います。

 そして、そもそも、こうした現物給付の子育て支援策というのは、その大半が実施主体は自治体ということになりますよね。しかし、この子ども・子育てビジョンの数値目標というのは国が決めたものであります。

 平成二十二年度の子ども手当法案の質疑でたしか確かめさせていただいたと思いますけれども、この数値目標を決めるに当たって、別段具体的に地方の声やあるいは具体的なプランというものを勘案してこの数字を決めたわけではない、こういうことだったというふうにも思います。

 だとすれば、この国が決めた子ども・子育てビジョンは、数値目標の達成は国が責任を負うべきものだというふうに思いますけれども、そうすると、そのための予算措置等々が必要になってくると思いますけれども、国として、自治体が主体でありながらも、この数値目標をみずから設定した立場として、これを達成していくために、どういう形で予算の確保をしていくことになるんですか。お尋ねをしたいと思います。

高井政府参考人 予算の関係でございますけれども、平成二十三年度の四次補正でございますとか二十四年度予算におきましても、御指摘の、例えば病児、病後児につきましては、二十三年度から進めております看護師等が自宅を訪問して一時的に保育する訪問型事業を引き続き実施するでありますとか、認定こども園につきましても、一定の要件を満たす保育所型、幼稚園型も二十三年度から新たに整備事業の補助対象にするでありますとか、家庭的保育も、複数の家庭的保育者が同一の場所で実施する場合も補助対象にするというような対応を行うことによりまして、これを進めていきたいと考えているところでございます。

柿澤委員 様子を見ていきたいと言われましても、平成二十四年度が間近に迫っていて、二十四、二十五、二十六、三年度しかもうない、こういう状況なわけですよね。

 今申し上げたとおり、実施主体は地方自治体である、こういう状況の中で、国としてこの数値目標を掲げて、これでやっていくんだ、子ども手当と同時並行で、車の両輪の片輪の方なわけですから、これは、やはり言ったことはやらなきゃいけない、こういうことだというふうに思うんですけれども、大臣は、この点について、保育、子育てサービスの実施主体をほぼ所轄する、そうした立場として、どういうふうにお考えになられているでしょうか。

小宮山国務大臣 もちろん、現物のこうした保育所の整備などが必要だということの中からこの子ども・子育てビジョンを五年計画でつくっていますので、予算についても、保育所運営費をふやしたり、放課後児童クラブの運営費をふやす、また延長保育もふやすなどして、その五年で目標を達せられるように今努めているところでございます。

 先ほどから御指摘の、地方自治体がいろいろ主体的にということは、今度新たに、間もなく法案を提出いたします子ども・子育て新システムの中では、市町村を実施主体にして、そのニーズ調査をし、必要なサービスを充実させていくというふうに、そちらの地方の意見をさらに多く取り入れられるように考えておりますので、そこへつなぐために、この五年計画の子ども・子育てビジョンを達成できるように今最大限努力をしつつ、また新たな、地方を主体にした考え方のところに引き継いでいくような形で今進めているところでございます。

柿澤委員 だからこそ、私たちは、児童手当、子ども手当改め児童手当といいましょうか、この一・三兆円の国費も含めて地方自治体がみずから考える子育て支援サービスに充当できるように、このお金も含めて地方に自由な財源としておろしていく、こういうことが必要だというふうに思うんです。そうでなければ、やはり、チルドレンファーストといいながら、その子供たちのために最も必要な現物支給のサービスが、ある意味では、計画どおりにも進まない、充実をしていかない、こういうことになっていってしまうのではないかというふうに懸念をしているわけなんです。

 ちなみに、この子ども・子育て新システムの法案というのは要するにいつごろ出されることになるんですか。お尋ね申し上げます。

伊奈川政府参考人 新システムにつきましては、本年三月二日に少子化社会対策会議において、子ども・子育て新システムの基本制度において、三つの法案という形で提出をするということが決定されております。

 提出する時期につきましては、税制抜本改革とともにこの国会に法案を提出するということになっておりますので、現在、提出に向けて作業を急いでいるところでございます。

柿澤委員 先ほど大臣からお手が挙がりましたが。

小宮山国務大臣 今言われたとおりなんですけれども、税制抜本改革の法案は今年度中に出す予定にしておりますので、そのときにあわせて出したいと思っています。

柿澤委員 この法案が一体通るのか、こういう問題が、先ほど田村修正案提出者の御答弁からも、非常に問題になってくるんだろうな、こういうふうにも思います。そういう意味で、この先の見通しがどうも立たない、こういう状況に全体としてなってしまっているのではないかと思うんです。

 ある意味では、ここまである種後退をして、そして、三党の合意に基づく、いわば、考えている方向性はそれぞればらばらだけれども、とりあえずこの年度末を何とか乗り切って、新年度を迎えるためにこの法案は通そう、こういう状況になっているわけですから、私はやはり一から考え直す必要のある、このような時期に立ち至っているのではないかというふうに思います。

 その点でいうと、私は、この二年間の子ども手当の支給というものが、どういう政策効果を狙って、そしてどういう結果を現実にもたらしてきたのか、この効果測定がやはり欠かせないというふうに思うんですよね。

 これも、やはり二年前の最初の支給の根拠法のときに、鳩山総理が厚生労働委員会に来られて、お尋ねをさせていただきましたけれども、私は、現金給付では子供のために使われる保証はない、それどころか、消費に回るかどうかすらわからない、政策効果のわからない現金支給という点では麻生内閣の定額給付金に非常によく似ている、こういうことを申し上げさせていただきました。鳩山総理の御答弁は、子供の育ちを社会全体で応援するものだから、理念が全然違う、こういう御答弁でありました。

 改めてお伺いをするんですが、子ども手当と定額給付金というのは、政策効果においてどういうふうに違うんですか。お尋ねを申し上げたいと思います。

小宮山国務大臣 それは、子ども手当は、次代の社会を担う子供一人一人の育ちを社会全体で応援するという観点から支給をするものです。

 定額給付金については、景気後退下の住民の不安に対処するため、住民への生活支援を行うことを目的とし、あわせて、住民に広く給付することにより、地域の経済対策に資する、このことを目的とされていますので、全く対象者も政策目的も異にしているというふうに思っています。

 それで、委員がおっしゃっていることからしますと、ぜひ新システムのことに、これは地方主体でやるわけですから、御賛成をいただいて、そういう仕組みにしていただければと思いますし、別に、この年度末を乗り切るために何かをしているというのではなくて、子供たちのためにしっかりいろいろな政策をとりたいと思っていますので、ここは党派を超えて、ぜひ子供たちのために積極的な御議論をいただきたいということをお願いしたいと思います。

柿澤委員 質問への御答弁を使って御要望をいただきましたので、それについてはしっかり重く受けとめさせていただきたいと思います。

 私が尋ねたのは、目的じゃないんです、政策効果なんですよ。要するに、子ども手当の支給が一体、現実にどういう政策的な効果をもたらしたのかということの効果測定をしなければいけないというふうに思うんですよ。

 今回、附則に年少扶養控除の復活に向けた規定が盛り込まれましたけれども、やはりこういうことも、一体、子ども手当の支給によって、何が、どういう効果がもたらされたのか、ここを測定して、そして、必ずしも期待に合致していない、そういうことであるとすれば、やはり全体的な見直しを行っていくべきだ、これが恐らく修正案提出者の自民党さん、公明党さんの考え方ではないかというふうに思うんです。

 やはり、こうした政策効果の測定というのを行うべきだと思いますが、質問を残してしまいますけれども、ここの点についてはぜひ大臣の御答弁をいただいて、終わりたいというふうに思います。

小宮山国務大臣 これは、二十三年六月に支給された子ども手当について、その使い道と使用金額に関する調査を行っています。一番多いのは子供の教育費等、これが四六・四%、その次が子供の生活費、三〇・四%など、子供のために使われている割合が大変多いという結果が出ております。

柿澤委員 やはりどこか同床異夢なんだなということを最後に何か確認させていただいたような気がしますが、時間も来ておりますので、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、あべ俊子さん。

あべ委員 自由民主党、あべ俊子でございます。

 本日は、提案者と政府に対しまして、児童手当に関しまして、子ども手当の修正案に関しまして、質問させていただきたいと思っております。

 この議論、非常にわかりにくいと私は思っております。新聞報道を見ましても、その理解度が非常にばらばらなのではないかと思っています。特に、児童手当を戻すために非常に必死になったとか、メンツ争いであったとか、本来、子供のためなのか、児童と子供は何が違うのか、今までの質問にあったとおりであると思っております。

 では、今回の児童手当法改正の趣旨に関しまして、この児童手当法の目的規定、この改正に関しまして、修正したその趣旨は何であるのか、提出者のお考えをお聞きしたいと思います。

田村(憲)委員 児童手当法、今回修正したその趣旨の部分、目的に関してどうなのかという話でありますが、もともと、今回の提出の時点で、政府案で目的が大分変わっておるというか、入っていない文言がございまして、それが、今まで子ども手当の場合は、目的というか趣旨なんですけれども、非常にシンプルで、「この法律は、次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを支援するために、」というだけであったんです。児童手当法は、御承知のとおり、「家庭における生活の安定に寄与するとともに、」などというような言葉が入っておったわけなんですけれども、今回、そもそも、もともと政府提出の法案の中においても、基本的に、「父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する」というような文言が入ってまいりましたので、そういう意味では、以前の子ども手当法案よりかは我々の考え方に近づいてきておったというところはあったんです。しかし、さらに一歩進めまして、「健やかな育ち」というところ、ここを今回、「次代の社会を担う児童の健やかな成長に」という、より客観的な言葉にいたしました。

 そういう意味では、育ちというと、何か勝手に育っていくような、そんなイメージでございますので、そこをもうちょっと言葉的に、一般的に使う言葉に変えて、我々の思いというものをこの中に入れたという部分でございまして、児童手当で我々が考えておった目的とほぼ同じような内容になったのではないのかな、場合によっては、より具体的にそれを説明した内容になったのではないのかなというふうに思っております。

あべ委員 では、名称が児童手当となったということは、自公時代の拡充してきた児童手当の精神が復活した、なおかつ具体的になったということでよろしいんでしょうか。

田村(憲)委員 委員おっしゃられますとおり、我々はそのように思っております。

あべ委員 所得制限に関してお尋ねいたします。

 子ども手当制度においては所得制限がなかった。高所得者にも手当が支給されていた。政府案が削除することとしていた児童手当法第五条、この所得に関する記述の規定は修正案により維持されましたが、しかし、今回の改正案、三党合意で所得制限を設けるとしつつも、附則の第二条に、支給される特例給付として、一定の所得以上の者にも児童一人当たり月額五千円が支給されるものになっています。

 修正案は、高所得者に手当を支給しないという、本来の意味での所得制限を復活させるという認識なんでしょうか。この、当分の間とはどの程度の期間なのか。これは政府側でお答えいただけますか。

藤田大臣政務官 今委員の方からお尋ねがございました当分の間ということでございますが、これについては、今後また、引き続き、三党を中心に御議論をいただくことになるというふうに認識をいたしております。

    〔委員長退席、長妻委員長代理着席〕

あべ委員 では、修正案を出された側の御意見も聞きます。

田村(憲)委員 当分の間と申しますのは、そもそも、先ほども、阿部委員でしたか、御質問にお答えをいたしたんですけれども、我々は現状のこの状況というものがいいとは思っていないんです。

 それはなぜかといいますと、幾つかの観点からそう言えるんですが、一番端的な部分は、まず、これによって、事実上マイナスの世帯がたくさんあるということ。これはよく考えなければ、要は、実際、子供のことを思って、児童のことを思って、本来改正をするはずなのに、その子供、児童を育てる家庭、主体が可処分所得が下がるというようなところが大幅に出てくるということ自体、これはやはり大きな問題がある。

 そしてまた、一方で、そもそも我々が所得控除というものがなぜ必要かと考えたときに、なるべく税金というものは、これは国民に課する義務でありますから、そういうものは少ない方がいいのは当たり前でありますし、一方で、家族というものを大切にするという我が党の理念からいたしますると、そこに着目をしたこの控除制度というものは必要であろうというふうに我々は思っておりますので、そのような理念的な部分から考えても、ここに関してどのような影響が出るのかをしっかりと勘案する必要がある。そして、それを勘案した上で、必要ならば所要の措置を講ずる、つまり、控除の復活ということもあるであろうというふうに我々は思っております。

 その上で、控除が復活をすれば、支給の額の方も考えなきゃいけないという話になってまいりますから、特に、所得制限がかかっている、そんな世帯に関しましては、それに関して速やかにその対応をしなきゃいけない。つまり、今の支給額というものを停止するということも含めて考えなければならないということでございますので、当面というのは、ある意味、その前の、速やかなという、これは本体の方の附則でありますけれども、そちらの方に入っている部分、これと連動してくるわけでありまして、速やかな、言うなれば、検討、結論を得た上で、所要の措置を講じた上で、この当面という部分の支給を停止するということを考えなければならないというふうに考えております。

あべ委員 そうしますと、年少控除の復活も検討されるということを今言及されたわけでございますが、その年少控除の復活というのはどれぐらいかかるというふうに修正案の提出者としてはお考えですか。

田村(憲)委員 先ほども申し上げましたけれども、速やかにという文言が入っておりますので、それは、速やかであるならば、現在、二十四年度の税制改正の議論を国会でやっておりますけれども、二十五年度も含めて、これは速やかにでありますから、早急にやる必要があると我々は思っております。

あべ委員 速やか、一年以内という理解なんでしょうか。

田村(憲)委員 我々の思いとしては二十五年度というような形で、今、速やかにというような、言葉を聞かれれば、念頭に置いておるというふうにお答えをいたしたいと思います。

あべ委員 では、政府に質問させていただきます。

 年少扶養控除の廃止の影響について伺わせていただきたいと思います。

 この平成二十四年の四月、五月、所得税の年少扶養控除廃止の影響によって、従来の児童手当当時より実質手取り額が減少するケースが一部の高所得者に見られるわけでありますが、六月分以降は、住民税の年少扶養控除の影響も受けるため、年収五百万程度の中間層の実質手取り額が減少する結果になっていますが、この数字に関しては、政府側、出していただけますか。

小宮山国務大臣 先ほども答弁をさせていただきましたけれども、今回、私たちは、高所得者よりも低所得者に有利になる、そして、控除をなるべくなくして手当を必要な人にしていくということ、そうしたことから、年少扶養控除をなくして子ども手当を充実させていくというものをお約束させていただきましたが、申しわけないことなんですけれども、財源の手当てがきちんとできなかったということがございまして、今回のように中間世帯の方々も手取り額が減るということは本当に大変申しわけないことだと思っています。

 そういう意味では、ここに対して、速やかにということもございますが、どのように手当てができるか速やかに検討する必要があるというふうに私も考えています。

あべ委員 中間所得層と言われるのはどれぐらいの幅の方々であって、どれぐらいの影響があるか、具体的に数字が出せますか。

小宮山国務大臣 年収八百万円以下で実質手取り額がマイナスになるのは、小学生までの子供を持つ場合は、平成二十三年十月から二十四年五月までは年収六百八十五万円以上、平成二十四年六月からは年収四百八十八万円以上というふうになります。

あべ委員 このことに関して、では、申しわけなかったということで、対応は全くなされないのでしょうか。

小宮山国務大臣 そこの、とにかく赤が出るということは本来あってはならないことなので、何とかできないかということも含めて、これは三党の中でいろいろと協議をされたというふうに承知をしておりますが、今回はこういう形に、現実的対応ということで合意ができたと承知をしています。

あべ委員 中間層に手厚くしなきゃいけないという中で、前の阿部委員からの質問もございましたが、やはりやっていることが全くちぐはぐで、そこのところは制度上非常に穴があったのでごめんなさいで済む話なのかというふうに私は思うわけであります。

 ですから、本当は自公政権時代にあった児童手当を広げていけばこんな変なことも起きなかったわけでございますから、余りにも政権交代によってシステムを変えようとし過ぎた余り、その弊害が、日本国として大切な中間層に一番影響を及ぼしたということは、非常に私は重いものがあるというふうに思っております。

 こうした中にありまして、また、先ほどもみんなの党の方から質問がございましたが、子ども・子育て新システムとの関係でございますが、これは消費税を前提にしておりますが、消費税が通らなかったときは却下するという法案なんでしょうか。

小宮山国務大臣 通らなかったら何とおっしゃいましたか。申しわけありません。通らなかったら却下、ちょっとその意味合いを教えていただければと思います。

あべ委員 通らなかったら、その法案を取り下げるということなんでしょうか。

小宮山国務大臣 子ども・子育て新システムは、その考え方として進めたいもの、例えば幼保一体化をした総合こども園、ここに多くのところがなっていただくためには、インセンティブをかけるために財源が必要となりますが、ですから、進捗状況が予定どおりに進まないということにはなるかと思いますけれども、消費税法案が通らなければ全てできないということではございません。

あべ委員 厚生労働大臣としては余り財源は考えなくていいのかどうか、私はよくわかりませんが、この新システムの所要額一兆円、そのうちの、消費税の増税分から七千億を充当するということで一応予算は出ているわけでありますから、消費税の引き上げができなかった場合に、消費税を財源としている新システムは、やりたいけれども、財源は後から考えましょうということの大臣の御見解なんでしょうか。

小宮山国務大臣 今回の社会保障の中で、御承知のように、全世代対応型というところで、子ども・子育てを重点的にやるということを訴えさせていただいていますので、何としてもこれはそこを御理解いただいて、通していただきたいと思っています。

あべ委員 ですから、そこのところの消費税が、理解をするかしないかではなくて、財源の整合性のことでございまして、今回の税と社会保障の一体改革、全世代対応型といいながら、高齢者と子供に焦点を当て、若者世代の部分が余りにも少ないと私は思っております。

 今、本当にニート、フリーターが四十代もふえている中、さらには就職ができなくて、また、就職してもやめてしまっている子供たちがいる中、そこの部分をもっともっとしっかり考えなければ、財源の手当てができないけれども、一兆円かかると言われる新システムを通すということでは、その負担は若者に行くということになるわけではないですか。その財源の整合性を考えたときに、やりたいという気持ちと、では、お金はどうするか、誰が払うのかということをしっかり整理していただきたいと思うわけであります。

 では、もう一回大臣にお聞きしますが、消費税の法案が通らないにしても、新システムは必ずやるということなんでしょうか。

小宮山国務大臣 通らないという仮定に立った質問には今お答えする立場にはないと思いますが、通していただくように全力を挙げたいと思っています。

 それで、財源を伴わなければ、先ほども答弁させていただいたとおり、当初の予定のテンポでは進みませんけれども、通る前でも、例えば総合こども園のことについても、ニーズ調査をするとか子ども・子育て会議をつくるとかいう部分は税収にかかわらずできることですので、できるところから進めるということだと思います。

あべ委員 いずれにしましても、やはり自公政権時代の、子ども手当になる前の児童手当に関してもっと修正を加えていけば、こんなに無駄も出なかったのではないかと私は思っているわけであります。

 今回のものに関しまして、特に所得制限の完全実施ということになりますが、今後の子育て支援策に関して、今回の修正案の提出者に聞きますが、現金給付だけではなくて現物給付の充実が必要であるということは言われておりますが、提出者は児童手当のほかにどういう支援策を展開すべきだとお考えでしょうか。

田村(憲)委員 通告いただいていないんですけれども。

 我々自民党の考え方ですけれども、現金も大事ですけれども、やはり現物の支給というものが非常に大事でありまして、お金をもらってもサービスが充実していなかったらやはり子育てはできないわけでありまして、もちろん待機児童をどう解消するかという問題も大事でありますが、放課後児童クラブ、また病児・病後児等々含めて、どうやって総合的に子供たちが、しっかりと子育てできる環境をつくれるか。また、専業で、子育てを専門でやっておられる主婦の皆様方に関しましても、子育てに対するストレスをどうやって緩和できるような環境をつくるか、こういうことまで含めて、やはりしっかりとした予算をつけた上で整備をしていく必要があるのではないのかな、こんなふうに思っております。

 あわせて、所得制限のお話がありましたが、実は、これは世帯主という考え方のもとで今所得制限をかけておりますけれども、本来、世帯収入というものは、旦那さんと奥さんといいますか、それぞれ両方において、今ダブルインカムであるわけでございまして、将来的にはちょっとそこまで含めて、世帯収入で全体の所得制限も含めたいろいろな給付を考えていかなければならないのではないのかな、そんなことも今課題として感じておるような次第であります。

あべ委員 今、田村議員がおっしゃった、夫婦の場合でありますが、世帯主とは私は限らないと思うんです、奥様が給与が高い場合もございますので。

 そうすると、夫婦合算ということも考えるということでございますが、夫婦合算にした場合はどれぐらいの影響があるかということはお考えになっていらっしゃらないですか。

田村(憲)委員 かなりの影響はあると思うんですけれども、ただ、これは税の方との絡みもございますので、ただ単に手当の部分だけで済むのか、それとも、税まで含めて、フランス型のようなものを考えていくのかということも含めて、ちょっと大きな議論をしながら、しかし一方で、やはり世帯の収入と子育てというものは非常に大きな関係がございますので、大きな部分でありますけれども、ある意味、早急に考えた上で、一定の結論を出していかないとこれはいけないのではないのかな、個人的にそのような考えを私は持っております。

あべ委員 本当に今、夫婦共働きでないと生活が支えられない方も非常にふえていく中、私はここの部分は大きな影響があるのではないかと思っているわけでございます。

 いずれにいたしましても、ばらまきと言われていた子ども手当でありますが、本当に子供のために使われていたのかよくわからない。しかしながら、今回の自助、共助、公助ということを考えて児童手当の部分の修正案になってきたということの評価は私はある程度すべきだとは思います。

 しかしながら、幾つかの新聞記事の中には、今回の修正案に関しても、所得制限といえども、九割の子供が対象になるということであれば、余りばらまきと変わらないのではないかという批判も実はあるところでございまして、今、田村議員がおっしゃった、夫婦での世帯全体の収入ということを考えていくということになると、また話は違ってくるのではないかと思っています。

 特に、年収九百六十万という話があるわけでございますが、これは私が今おります地元ではあり得ない額でございまして、年収四百万になったら高額所得者と言われている地域で九百六十万というのは、地方にはなかなか理解ができない数字ではないかと思っているところであります。

 いずれにいたしましても、児童手当を修正していく形で最初からやれば、この二年半、子ども手当だ何だと大騒ぎをしたことは、非常に時間が無駄であったと私は思いますし、さらには、事務費の部分もかなり無駄をしたのではないかと思っております。

 子ども手当に関して、特に事務手当、幾らぐらいかかったか、政府側、今ちょっと覚えていますか。

小宮山国務大臣 御通告がなかったので、今事務方から聞いたところ、導入時に百億ということでございます。

あべ委員 百億であったわけでございまして、本当に、事務の部分の無駄と、さらには、子供を持った世帯に対する混乱をさせ、やたらばらまきをしてきたあげくに、また児童手当の修正案に戻るということは、私は、この二年半の政権交代そのものの無駄だったことの象徴ではないかと思っております。やはり、ここはしっかりと政治が安定していくということが大切なのだ、変なことで浮動票ばかりを狙って、変なマニフェストを言い続け、また国民を混乱に陥れた罪は非常に大きいというふうに思っております。

 ということで、私、時間になっておりませんが、質問を終わらせていただきます。

長妻委員長代理 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 おはようございます。古屋範子でございます。

 きょうは、児童手当法改正案について質問してまいります。これまでの議論と多少重なるところもございますが、確認のために、大臣、お伺いしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 昨年の八月四日なんですが、民主、自民、公明の幹事長、政調会長の会談で、民主党政権のいわゆる目玉政策であった子ども手当につきまして、今年度限りで廃止される、そして、来年度から児童手当を復活、拡充するということが合意をされたわけです。

 しかしながら、今回の政府提出の法案につきましては、この三党合意、「児童手当法に所要の改正を行うことを基本とする」としたわけなんですが、実際は、手当の名称についても、合意を得ることなく、児童手当から子どものための手当と改めることとなっておりました。また、検討事項になっていた所得制限以上の者に対する必要な税制上、財政上の措置につきましても、一方的に決められておりました。もともとは三党合意を基本にするはずであったにもかかわらず、このような経緯で今回の政府提出の法案が決定をされていったということでございます。

 しかし、これを乗り越えまして、三月の初めに、自民、民主、公明三党の実務者の協議に入りました。それによりまして、この四月から支給をしていくことに関しましては、やはりこのところを一番私も懸念をしておりました。自治体、そして何といっても子育て世帯に迷惑をかけたりあるいは混乱をさせたりしてはならない、ともかく年度内成立をさせなければいけないということで、鋭意、実務者間で調整を行ってまいりました。それによりまして、支給に空白が生じるというような最悪の事態は避けることができたと思っております。

 民主党政権となってこの二年間、二転三転いたしましたこの現金給付というものが、これでやっと恒久的な制度になれたと確信をしております。ですので、今回の修正案は評価をできると私自身は考えております。遅きに失した感はございますけれども、今回の政府また民主党の決断に関しては評価をしたいと考えております。

 初めに、大臣、この修正案について御所見をお伺いしたいと思います。

小宮山国務大臣 民主党を中心とした政権といたしましては、子供の手当ということを重要に考えていましたが、再三申し上げるように、財源の手当てがきちっとできなかったということで、いろいろとつなぎつなぎの法案になり、当事者の方にも御迷惑をおかけしたことはおわびをしなければいけないと思っています。ただ、こういう提案をしたことで、国会の中でこれだけ子供のことを議論したということは、これからの方向に対して一つのプラスになることかなというふうにも思っているところです。

 それで、この手当につきましては、昨年の八月に、本当に三党の実務者の皆さんで誠心誠意話し合っていただいて、この四月からの恒久法も三党で御協議をいただくということになっていましたが、残念ながら、法案提出の時期を迎えてもそれが成り立たなかったので、やむを得ず、政府の方で一定の考え方で出させていただきました。それを今回また、三党の方がぎりぎりの協議をしていただいた結果、実現可能な着地点を見出していただいたということで、子供を育てていらっしゃる皆様にも地方の皆様にも大きな御迷惑をかけることなく四月から施行できるということは、そうした皆様のお働きに対しては心から敬意を表したいと思っているところでございます。

    〔長妻委員長代理退席、委員長着席〕

古屋(範)委員 子供についての議論は確かに必要であったかとも思いますけれども、この二年間迷走した子ども手当についての議論、これについて、これほどの時間を費やしたということが果たして重要だったかどうか、私は実は疑念を持つところでもございます。もっとほかにやらなければならぬことがあったのではないかと思っております。

 とりあえず、きょうこの厚生労働委員会で採決がなされれば、こうしたことに時間を費やさなくて済む、この点に関して私は本当に安堵いたしております。

 この子ども手当ですけれども、先ほどの柿澤委員の議論にもありました、当初から、政策効果というものが曖昧であったと思っております。最初は少子化対策、その後、家計支援策、そしてその後は景気対策というようなことも言われておりました。また、やはり何といっても財源のめどが立っていなかった、これが最大の問題であります。

 政権公約で掲げられた月額二万六千円、これを実現するには五・五兆というような巨額な財源が必要です。無駄を排して十六・八兆出すとおっしゃっていたんですが、結局はこれはできなかった。半額の一万三千円でさえきゅうきゅうとしていた現状です。それをいとも簡単に実現できるかのように説明していた、これは非常に無責任であると思います。

 現実の財源の中で、どこまで何を優先してやっていくのか、ここはしっかりと考えなければいけない点であります。

 これまで、党内の議論も迷走していたようですし、いたずらに国民に混乱を与えた責任について、ぜひ自覚をしていただきたいと思っております。この二年半ぐるぐると回って、またもとのところに戻ってきてしまった。一体この二年半は何だったのかということになってしまいます。もっと早くマニフェストを見直して、責任ある提案ができなかったのかどうか。政策効果が曖昧な上に、巨額な財源の手当てがつかないで批判を浴びてきた子ども手当は廃止されても仕方がないと言うことができると思います。

 名前こそ子ども手当とされていましたけれども、結局これは、児童手当に国費を上乗せする形で支給されてきたもので、まさに児童手当の拡充以外の何物でもなかったというふうに思います。

 政権交代後、子ども手当の制度は、二年間で三回に及びました。月一万三千円の半額支給で二十二年度、単年度でスタートしました。財源難から二十三年度の満額支給を断念して、二十三年四月から九月はつなぎ法、二十三年の十月から二十四年三月まで特別措置法、本当に、終わったかと思えばまたすぐにこの議論、そういう状態が続いておりました。やはり、もう名実ともに、子ども手当というのは無理であったし、これはもう壊れたというふうに断言せざるを得ないと思っております。

 制度が変わるたびに、支給額や手続の変更など、子育て世帯、市町村にも大変迷惑をかけてきたと思っております。このさまざまな変遷を見てきて、丁寧な説明なくして国民の理解は得られないと思っております。この二年間の子ども手当の混乱、迷走、この影響を総括して、子ども手当は必要な財源が確保できなかった、このことを率直に国民に対して謝罪し、説明をしていただきたいと思います。

小宮山国務大臣 もともとこの国は、子供に対する、また子育てに対する支援が非常に少ない国だということの中から、政権交代に当たりまして、まず、一番子供の育ち、そして子供を持ちたい人に阻害をしているものが経済的な負担だということで、まず経済的な手当てということで子ども手当のことを出させていただき、そして今、新システムで提案させていただいているような就学前の子供の居場所をつくること、また働き方など、総合的に子ども・子育て支援をしていきたいと考えていました。

 先ほど政策目的が曖昧だったというお話があって、党内でしっかりとそこが共有できていなかったということは大変申しわけないと思っていますが、つくった当事者の方としては、子供の育ちを支援するということが政策目的で、その結果として、持ちたい人が持てることによって少子化対策にもなるというような、そういう考え方をとっておりました。

 ただ、御指摘の点につきましては、先ほどから再三申し上げているように、子ども手当として月二・六万円お払いをするということを掲げながら、それに見合った財源の見通しが甘くて財源調達ができなかったために、この二年半、大変いろいろな意味で混乱をさせたことは、本当に心から申しわけなかったとおわびをしたいというふうに思っています。

 ただ、子供についてこういうふうに大事に考えて、現金も現物もですけれども、充実をさせていくという方向性は間違っていないと思っていますので、そこはまた、ねじれた国会の中ではありますけれども、各党、皆様方、そこの思いは同じだと思いますので、どうやって子ども・子育てを本当にこの国の中で将来に向けて支援をしていくかということは、さらにまた、三党だけではなくて、全党、全国会議員がしっかり考えていただければと思いますし、私自身も、しっかりとそこは、リードをしていけるところがあるのであれば、していきたいというふうに考えているところでございます。

古屋(範)委員 確かに、子育て支援を拡充したい、これは皆同じ思いだと思います。公明党も、この四十年間、児童手当の拡充を行ってまいりました。

 しかし、やはり財源の裏づけがなければ、理想は理想としても、現実問題、それは実現できるものではありません。ですので、その理想は理想として、現実の中でどれだけの額を支給していけるのか、これは皆さん方も、多分二年半の間の中で学んでこられたのではないかというふうにも思っております。しかし、この二年半の迷走、混乱、国民にとっては大きな損失ではなかったかというふうに私自身は考えております。

 次に、年少扶養控除の今後のあり方についてお伺いをしたいと思います。

 看板政策であった子ども手当なんですが、控除から手当へ、これは私もその理念は共有をしております。税制の減税効果による支援から現金給付へ、こういう転換を目指してこられたということだと思います。しかし、一人当たり二万六千円という恒久的な手当制度を確立することを前提に、その財源確保となる年少扶養控除の廃止、こちらが先行して、見切り発車で実施されてしまった。満額は到底支給ができない、これが現実です。

 このために、児童手当制度と扶養控除が併存していたころよりも実質的な手取り額が減少する世帯が中高所得世帯を中心として多数発生をしてしまう、このようなことになってしまったわけです。最終的に、月一万円から一万五千円にとどまるということが確定をしまして、扶養控除廃止による増税分をカバーできないということが発生をしております。特に中所得世帯、ここに関しては、我が党の坂口元大臣も心を砕き、何とかせねばならぬと最後まで腐心をしておりました。

 今回の修正案でも、五千円の特別給付が当分の間支給される高所得世帯だけではなくて、中所得世帯、ここが非常に問題なわけです。厚労省の試算によりますと、妻が専業主婦、小学生以下の子供が一人の世帯では、旧児童手当の時代と比べて、年収五百万円で年四千五百円、年収八百万円で年四万九千円の負担増となってしまうというわけです。

 子育て支援のために創設したこの制度だったはずなんですけれども、結局、旧児童手当以下の恩恵しか受けられない世帯がある。これは本当に大きな矛盾が生じたと思います。児童手当を着実に拡充してくれば、このようなことは起きなかったと思っております。余りにも見通しが甘かったと言わざるを得ません。

 この修正案の附則に扶養控除についての検討条項が盛り込まれておりますけれども、扶養控除の今後のあり方について、大臣のお考えを伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 これは、控除から手当ということについては御賛同いただけるという御意見もいただきましたけれども、おっしゃるように、やはり控除を廃止することと手当を充実することが同時に行われなければいけなかったというのはそのとおりでございます。

 ただ、税の控除は、御承知のようにタイムラグがあって、国税、地方税で翌年だったり翌々年だったりするので、その分の財源はあるのですよという話はしてきたところなんですが、なかなかそこが御理解いただけなかったこともございまして、結果として中所得者のところでマイナスになってしまうということは、先ほどもこれも答弁させていただいたとおり、私も一番そこに強い問題意識を持っているところで、御党の坂口委員からも、いつもいろいろと前向きの御提案をいただいたことに感謝を申し上げたいと思っています。

 そういう意味で、そこのマイナスになる、赤になっているところを一刻も早く消さなければいけない、戻さなければいけないということは考えておりますので、これは、関係府省また与野党の御意見も伺いながら、どういう方法でやっていくのかということは早急な手当てが必要だというふうに認識をしています。

古屋(範)委員 引き続き、税制について、配偶者控除についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 報道によりますと、小宮山大臣は昨年の九月二十一日に、社会保障審議会短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会にみずから出席をされて、優遇措置の見直し範囲を年金から税制にまで広げる考えをお示しになられました。

 この議事録によりますと、「その中でも、本当に公平な働き方、それに対する社会保障という意味で、短時間労働者に対する健康保険や厚生年金の適用拡大、これは、他の配偶者控除の問題ですとか第三号被保険者の問題ですとか、トータルに考えなければいけない問題がございます」、このようにおっしゃったそうであります。妻の年収が百三万未満であれば夫が納める所得税などが安くなるこの配偶者控除の撤廃については、民主党の政策集、インデックス二〇〇九にも同様の内容がございますね。

 また、小宮山大臣が副大臣であったときに、一昨年の民主党の税制調査会でも配偶者控除の廃止について主張された。また、昨年三月十一日のインタビューでも、控除から手当への考えのもと、配偶者控除の見直し、廃止について言及をされています。

 そこでは、そもそも子ども手当は、複雑に入り組んだ各種の控除をやめて、必要な手当を直接給付しようという発想から出てきたんです。控除だと高所得の人に有利で、税控除の低い、低所得の人に何も恩恵がない。続けて、子供の扶養控除と配偶者控除に目をつけられたと。所得再配分機能が低いこと、増加する共働き家庭に不利なことから、公平性に問題があると見た。この二つを外して、その金額を子供の数で割ったら一万六千円だった。だから、私たちがこの制度の際に提案した一万六千円という数字は、ちゃんと財源と手当が見合っているのだ。今やっている社会保障と税の一体改革の中にも子ども手当は入れますから、一万六千円を上回る部分についても、その時点では恒久的な財源がしっかり確保できると思っているとおっしゃっていますね。一万六千円の財源はあった、それがいきなり二万六千円になった、ここがよくわからない点であります。

 しかし、先日、岡田副総理が配偶者控除廃止を撤回する可能性について発言をされています。ここのところは一体どうなっているのか、副総理の発言であります。

 今回、児童手当の三党合意によりまして、配偶者控除も見直さざるを得ないとの見方もございますが、民主党が掲げた配偶者控除の廃止は、控除から手当への象徴、小宮山大臣が以前から主張されている御持論だと思うんですけれども、女性の社会進出促進という大きな目的もあるでしょう。

 この配偶者控除の廃止について大臣は今どうお考えなのか、伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 私自身はずっとそういうことを言っておりますし、大臣に就任したときも、やはり配偶者控除の廃止、それから三号被保険者の見直し、それと短時間労働者への社会保険の適用拡大を総合的にやりたいということを申し上げました。

 それは、やはり今、働く女性がふえているということ、それから、今働いていない人でも、潜在就業率という、働きたいと思っている人は先進国並みなんですよね。いろいろな意味で働き方に中立で公正な制度ということは、民主党もずっと言ってきたところでございますので、ここは私は、やはり配偶者控除を廃止すべきだという考え方はずっと持ち続けています。

 ただ、税調の中でも、消費税のこととか再配分機能を高めることとかいろいろな議論の中で、今回また残念ながら見送られたということで、社会保障・税一体改革の大綱の中でも、配偶者控除をめぐるさまざまな議論、課税単位の議論、社会経済情勢の変化等も踏まえながら検討する、検討、検討が多くてというお叱りを受けておりますけれども、引き続き検討することになっています。

 一言申し添えれば、岡田副総理とも私はお話ししましたが、配偶者控除廃止を否定したことは全くないということでございましたので、実際の発言と報道ぶりがちょっとずれているのかということは本人に確認をいたしました。

古屋(範)委員 税制改正、なかなか大きな路線、大きな方針のもとに一つ一つ行われているとは到底思えない感がございます。できるところをつまみ食い的にやって、今、その矛盾が起きているというふうに考えます。この点に関しては、またさらに機会を得て議論をしてみたいというふうに思っております。

 次に、年少扶養控除廃止による地方の増収分について伺いたいと思います。

 この年少扶養控除の廃止による地方の増収分は、平成二十四年度において六千二百億円ですね。このうち一千百五十億円は、平成二十二年十二月の五大臣合意で地方特例交付金の減額に充当することが決定をしております。残りの五千五十億円については、昨年十二月の四大臣合意によって、児童手当の負担割合の変更に伴う追加の地方負担に充てられるほか、地方特例交付金の廃止に伴う地方負担の増額分、また子育て関係事業に係る国庫補助金の一般財源化にということが決まっております。

 これまで子ども手当の財源議論を何度もしてきたんですけれども、この財源をぜひ、子供の命、健康を守ることになるワクチン、予防接種の財源に使っていただきたいと私は考えます。こうした現金給付の場合には、多くは確かに子育てに使われるんでしょうが、それ以外のものにも当然使われてしまうということが起きますけれども、予防接種の場合には、そのまま直接子供の命を守ることになります。いまだに多くのワクチンが任意接種で、自己負担があったり、自治体によってばらつきがあったりしております。家庭によって経済格差あるいは情報格差があって、子供の健康が左右されてしまう、このようなことがあってはならないと考えております。

 ですので、ワクチンで防げる病気から子供たちを守る、子育て支援の観点から、ぜひこの部分の予算を予防接種に充当していただきたい、このように願っております。大臣、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 委員がいつもそのように御主張いただいていることは十分承知をしております。

 今御紹介いただきました平成二十五年度の追加増収分については、昨年十二月二十日の四大臣合意によりまして、「基金設置による国庫補助事業の財源に代わる恒久的な財源として、子育て分野の現物サービスに活用する」とされていまして、「具体的内容は今後検討」ということになっています。

 この四大臣合意の内容も踏まえまして、厚労省といたしましては、新たなワクチンの定期接種化を含む予防接種制度の見直しについて、財源の問題を含めてできるだけ早く予防接種部会での結論を得まして、予防接種法の改正案を提出できるよう検討し、関係者との調整も進めていきたいというふうに考えているところです。

古屋(範)委員 今、予算措置で行われておりますHibワクチンなどの三ワクチン、また、私がもう二十五歳になった息子を育てるときに自己負担で行ったおたふくなどもいまだに定期接種になっておりません。これも、多分財源ありきで、どこまでやれるかということになってこようかと思います。ぜひ確保して、予防接種法の抜本改正をしてまいりたいと考えております。

 もう時間がなくなってまいりましたけれども、先ほどあべ委員も質問されていた内容とちょっと重複いたしますけれども、所得額の判定、これが世帯の合算所得ではなく、主たる生計者の所得になっているという点についてお伺いをしたいと思います。

 御存じのように、共働き夫婦で九百万円ずつ年収があった場合、世帯で何と年収千八百万円となるんですけれども、所得制限未満として手当は満額支給されてしまうんですね。一方、専業主婦がいる世帯では、主たる生計者の年収が一千万円だったとしても、結局はこの所得制限以上となる、減額をされてしまう。非常に矛盾が生じております。この所得制限、世帯合算の所得とした場合、支給率がどのくらいなのか、一体、把握をされているのかどうか、まずお聞きをしたいと思います。

 また、自治体が児童手当に対応した設計システムを変更することによって、現在、ソフトを子ども手当用につくり直しているわけなんですね。さらに今後のことを考えると、やはりシステムを改修することもまた迫られている。非常に大変です。所得制限の導入で対象世帯の所得も把握しなきゃいけない、これも年度内に決まるかどうか、非常にはらはらしていたと思います。システム改修の費用、事務負担増などへの懸念も聞いております。

 現在、二月末時点で、対象者の三から四%、数十万人が未申請であると聞いております。これは修正案の中で半年延長されることになっておりますけれども、事務負担の増加は避けられません。

 新制度の実施に当たりまして、こうした市町村のシステム改修、支給事務等、煩雑にならないよう、国としても十分な配慮が必要であり、対応策が求められております。また、被災地の市町村に関しましては、さらに十分な支援が求められていると思います。この点に関して、政務官にお伺いいたします。

藤田大臣政務官 所得制限の判定の問題でございますけれども、ここに矛盾があるということについては私どもも認識を共有するところでございます。

 ただ、この支給率がどれぐらいになるのかということについては、具体的に基準額を幾らに設定するかによって異なってまいりますので、なかなか現時点で具体的な数字をお答えすることは難しいんですけれども、平成二十二年の国民生活基礎調査のデータで見ますと、十八歳未満の児童のいる世帯の所得分布、これが一千万円未満の世帯が全体の八三・四%を占めているということでございますので、一つの参考の数字であろうかというふうに考えております。

 それから、システムの変更やいろいろな申請手続等、市町村の負担も大きくなっているということについての御指摘でございますけれども、今回、所得制限を六月分から導入するということにいたしまして、具体的に支払い実施は十月からということでございますので、現場のシステム改修については、必要な期間、配慮をさせていただいているところでございます。また、このシステムの改修については、安心こども基金を活用して実施できるように、二十三年度の第四次補正予算で必要な額を計上させていただきました。

 また、昨年成立をしていただきました特別措置法の受給対象者については、新たな制度でも全て認定があったものとみなして、申請や認定の事務を簡略化したところでございます。先ほど委員御指摘がございましたような未申請者がまだいるということでございますので、そこについてはこれから広報も含めてしっかり対応してまいりたいと思っております。

 そして、さらに現場で円滑に事務ができるように、統一的なQアンドA、こういったものも提示をしてまいりたいと思いますし、被災地については、現時点では御要望がございませんけれども、これからいろいろな御要望もあろうかと思いますので、それについては適切に必要な措置をとってまいりたい、このように考えております。

古屋(範)委員 そろそろ時間ですので、以上、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

池田委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 私、この委員会で初質問させていただいたのが平成二十二年の二月二十四日、子ども手当法案に対する質問でした。あれから二年、再び本法案に対して質問させていただく機会を得たことというのは、私にとってもいろいろな意味で複雑な思いがあります。

 子ども手当制度については、私は、いろいろな批判や誤解もありますけれども、ただ、高い評価も得ていたし、大きな期待も受けていたのではないかというふうに思います。

 そういう中で、新聞の投書欄に、子ども手当に対するいろいろな意見が載っておりました。その幾つかを拾ってみましたので、ちょっと今から御紹介をさせていただきたいというふうに思います。

 長崎県大村市の五十八歳の主婦の方。「私は既に子ども全員が成人して支給対象外ですが、六人の子どもを育てている時に痛感しました。それは、子育てをあくまで個人の自己責任上の営みであるとする世間の冷たさと、未成熟な制度の中で負担する費用の大きさでした」「手当には、育児をする養育者への社会からの応援というメッセージもくみ取れます」。

 次に、千葉県流山市の三十七歳、介護職員の男性。「子ども手当はバラマキの典型、愚策なのか。私は政権交代で子ども手当が半額でも実践され、ようやく世の中堅・子育て世代に目が向けられるようになったと喜んでいた。 国の財政赤字は、子育て世代の責任ではない。これまで血税をばらまいてきた自民党と、受益者であり長年政権を支えてきた高齢者・農家・土建業者たちの責任ではないのか。子ども手当がムダだというなら、今の高齢者の年金、社会保障に対する負担と受益は適正なのか?」。

 最後に、神奈川県川崎市の五十九歳、NPO主宰の女性。「なぜ他の政策の財源は問われず、子ども手当だけが目の敵にされるのだろう。少子化で子どもの数が増えないと日本社会は立ち行かないと、あれだけ大騒ぎしていたのに、いざ子ども手当が決まるとこのような状況になることが不思議でならない」「日本はつくづく子どもが嫌いで、子どもたちに冷たい国のように思える。このままでは、この国に子どもは生まれず、未来に希望は生まれようがない」。

 こうした声は、ほかにも私はたくさんあるというふうに思っています。

 しかし、先ほど来お話があるように、政治にある意味翻弄される形で、細切れの立法措置、つなぎ法案が繰り返されてきました。このままでは、いつか手当がなくなってしまうんじゃないかという不安も消えません。そういう意味では、早く恒久法を成立させて、安定した制度にしていくということは私も大変重要なことだというふうに思います。

 私が今紹介をさせていただいたこういった声、小宮山大臣、聞いていただいて、率直な感想と、そして、今、この法案を成立させて、安定した制度を一刻も早くスタートさせるということに対する思いというのを改めてお聞きいたしたいと思います。

小宮山国務大臣 今委員から三通の投書を御紹介いただいて、そういう声に正面から応えられていないことに対して本当に申しわけないというふうに思っています。

 私も、この子ども手当をもともと野党のときにつくり出した一人でございますので、いろいろな思いを持っています。ただ、再三先ほどから申し上げているように、その財源の見通しが、野党であって、マニフェストにつくったときに甘かった、そこが詰め切れていなかったというところが最大の原因だと思っていますので、そこは本当に申しわけなかったとおわびをしたいと思います。

 ただ、一方で、現金給付、それから今新システムで提案させていただいている小さい子供たちの居場所、それから働き方の見直しなど、また虐待防止とか小児医療の問題とか、総合的に本当にチルドレンファースト、子供のためにという思いでやってきていますので、今、その財源の見通しの問題やら、大震災の後だったり、経済の状況だったりでお約束したことが実現できないことはおわびをしながら、私どもが政権を担わせていただいた当初の子供たちに対する思い、そこを政策に結びつけたいということについては、またこれからもしっかりと取り組んでいきたい、そのような思いを持っているところで、今回、三党でこういう現実的な対応をしていただいたことについては、しっかりとそれを執行していきたいと思っているところです。

大西(健)委員 我々も、きょうの質疑をずっと座って聞いていて、非常にフラストレーションがたまるんですけれども、我々以上に恐らく大臣が、いろいろな思いがある中で、つらい御答弁をされているんだなというふうに思いますが、引き続き、そのチルドレンファーストの精神だけはぜひとも堅持をしていただきたいというふうに思います。

 ただ、私は、この間、子ども手当には、国民の間にいろいろな誤解もあったんじゃないかなというふうに思います。

 まず、よく聞く声が、高額所得者にまで子ども手当を配るのかという声です。これは、言うまでもありませんけれども、扶養控除が子ども手当に振りかわると、高額所得者の減税額は減って、高額所得者から低所得者の方に所得再配分がむしろ進む。高額所得者は、定額の子ども手当なんかをもらうよりも控除で減税を受けた方が、得という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、得だということだと思います。

 それからもう一つ、テレビ等で若いお母さんたちが、私は子ども手当なんか要らないから保育所をつくってほしいわという映像がよく流れるんですけれども、私は、これも誤解があるんじゃないか。というのは、現金給付も現物給付もこれまで以上に、とにかく両方ともやるんだというのが現政権の立場だというふうに思いますし、これまで以上に保育所の整備等も進んでいるということだと私は思っております。現金給付をやめて、それを現物給付にすれば、総額として子供のために使うお金というのは逆に減ってしまう、こういうところを十分に国民に伝え切れていなかったんじゃないかなというふうに私は思っています。

 あと、外国人の手当の話とか、保育園や給食費の天引きの話も、これはもう既に二十三年度法案で解決済みではありますけれども、これも別に、児童手当のときからそうだったということを知らない国民も多いんですね。そういう意味で、私は、誤解がかなりあったんじゃないか。

 最後までこの誤解を十分に払拭できなかったことについては非常に残念でならないんですけれども、改めて、こういう誤解に対して十分説明ができなかったという思いがもしあれば、その辺をぜひお答えいただきたいんですけれども。

藤田大臣政務官 委員の御指摘のように、本当に大事な子ども・子育て支援策ですので、やはり内容について誤解があってはいけないというふうに思っております。

 そういう意味で、今委員の方からもお話がありましたけれども、これまでの子ども手当というのは、相対的に高所得者に有利な所得控除から相対的に支援の必要な人に有利な手当に切りかえる、控除から手当へという考え方に沿って実施をしてきたものでございますので、これは単なるばらまきではない、このようにも考えているところでございます。

 そして、子ども・子育て支援策というのは、これももう改めて申し上げるまでもないんですが、現金給付と現物給付、そしてまた働き方の見直し、これが全部車の両輪で動かなければいけないということであろうと思っています。保育所の拡充にもしっかり取り組んできているところでございますし、ワーク・ライフ・バランスの実現にも取り組まなければいけないということで、こうした政策についての充実も、これからも努力をしてまいりたいと思っております。

 そして、具体的に御指摘がありました、海外に居住する子供に対する手当の支給であるとか保育料の問題、これは昨年、いろいろな議論がございまして、二十三年度の子ども手当の特別措置法あるいは今回の改正法によって、是正するところは是正をし、きちっと子供に国内居住要件を設ける、あるいは保育料を手当から徴収することを可能にする、こうしたことを盛り込ませていただいているところでございます。

 今後とも、誤解のないように、内容の周知についてはしっかりと取り組んでいかなければいけない、このように考えております。

大西(健)委員 先ほど、どなたかほかの委員がフランスの話をされていましたけれども、やはりフランスは、子育て支援でできること、あらゆることをやっているということだというふうに思いますので、私は、現金も現物も両方やらなきゃいけないんだ、その姿勢をこれからもしっかりと引き続き説明していっていただきたいというふうに思います。

 今回、苦渋の決断で所得制限を設けることになりました。ただ、私は、幾つか課題が残っているなというふうに思っていたんですが、その話は、実は、先ほど古屋委員が全く同じ質問をされてしまいました。

 ただ、改めてあれですけれども、所得制限しても、ひっかかるのは大体一割ぐらいということですから、財源節約効果というのは限定的ですし、それから、先ほど話がありましたけれども、支給事務を行う自治体の事務負担、そしてシステム改修等の費用、また行政機関その他が甚大な被害を受けている被災地の話、それから、先ほど主たる生計維持者の所得で判断されることによって逆転現象が起こるという話がありました。その逆転現象の話については、先ほど自民党の提出者の田村委員からも、所得の判断を世帯でやるのか主たる生計者でやるのかということについては早急に見直ししていかなきゃいけないというような御意見もありましたので、これは与野党でも十分思いが共通するところはあると思いますので、ぜひともこの点は、引き続き、所得制限をかけることになった以上、それがちゃんとうまく進むようにしっかりとやっていただきたいと思います。

 本当は答弁を求めようと思いましたけれども、もう既に答弁されていますので、ここはお願いだけ、私からも、与党の立場からもお願いをしておきたいというふうに思います。

 本法案では、児童養護施設等に入所している子供や里親に委託される子供に対しても手当が支給されることになっています。これも既に二十三年度法案等で改善がされているところであります。そこで、最後に、里親制度についてお伺いをしたいというふうに思います。

 厚生労働省では、子供には家庭的養育が重要という考え方から、児童養護施設の入居児童を、今後十年ぐらいの間に三分の二程度に減らしていくという考えだというふうにお聞きをしております。

 昨年三月に厚生労働省が示した里親委託ガイドラインには、特別養子縁組を前提とした新生児の里親委託についても触れられています。

 実は、私の地元の愛知県では、未婚とか若年出産など望まない妊娠による出産で養育できない、または養育しないという保護者に妊娠中や出産直後から児童相談センターが相談に乗って、特別養子縁組を前提とした里親登録者とマッチングを行うという、これは愛知方式と呼ばれているんですけれども、新生児里親委託が長年にわたって関係者の御努力によって行われてきたという実績があります。

 私は、以前、愛知県の刈谷児童センターを訪ねまして、長年この愛知方式を推進してきた萬屋育子さんにお会いをして話を聞きました。新生児の遺棄だとか、先ほどもお話がちょっと出ていましたけれども、幼児の虐待のニュースが後を絶たない一方で、世の中には不妊に悩む夫婦というのも多数おります。出産後、早い段階で親子のきずなを結ぶことができる、例えば名前をつけるということも、その実際の親との間で話し合いがつけば、名前をつけるところから本当の親子になれるという意味では、私はこの愛知方式というのは大変有効だというふうに思っていますけれども、ぜひこれを全国に拡大していただくようにお願いをしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

辻副大臣 新生児里親委託の取り組みについての御質問、御指摘をいただいたところでありますけれども、厚生労働省といたしましては、社会的養護が必要な子供は、できるだけ家庭的な養育環境の中で養育されることが心身の健やかな成長のために重要であると考えておりまして、里親委託を推進しているところでございます。

 御指摘いただきましたように、愛知県におきましては、望まない妊娠による出産で養育できない、養育しないとの保護者の意向が明確な場合には、出産した病院から直接里親の家庭へ委託する新生児からの里親委託を行っているというふうに伺っております。

 親に育てられない乳幼児を乳児院に措置することが多い中で、できるだけ早い段階から里親委託を進めることが重要でございまして、御指摘にありましたように、愛知県のような取り組みを全国的に拡大していく必要があると私どもも考えているところでございます。

 このような見地から、厚生労働省といたしましては、昨年四月に里親委託ガイドラインを策定しまして、里親委託優先の原則や新生児の里親委託の留意点について定めさせていただきますとともに、愛知県の取り組みについて全国の自治体担当者に情報提供をさせていただいたところでございまして、今後とも、早い段階から里親委託を推進すべく、委員の御指摘も踏まえて取り組んでいきたい、このように考えております。

大西(健)委員 経済的な理由で産むことをためらう人の背中を押すことをやることも、これは重要なことです。だけれども、産みたくても産めない、不妊に悩む人を応援したり、あるいは、この世に生をうけた命が虐待で失われることを防ぐことも政治の大きな責任であることを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 民主党の仁木博文でございます。

 本日、質問の機会を賜りましたこと、関係者の皆さん、ありがとうございます。

 三・一一東日本大震災から一年が経過しました。ただ、現地の復興と並んで、福島第一原発、この放射能の問題というのは非常に社会的な大きな問題だと思っております。

 ちょっと質問の通告はなかったんですが、大臣、放射能の影響、特に人体に対しましてはどのようなことがあると御認識されているでしょうか。

小宮山国務大臣 ちょっと御通告はいただいていませんけれども、低線量被曝の人体に対する影響はまだ定かでない部分が大変多い。そういう中では、子供たちの健康状態をしっかりとチェックをしていくために今さまざまな取り組みを行っているところだというふうに思っています。

仁木委員 きょう、皆様方に資料を二枚配付しておりますが、実は、急性期に、下痢とかあるいは骨髄抑制ということが大量の被曝をした際に起こってきます。今、特に、福島第一原発事故現場内で作業をしている方々の被曝というのが問題になってまいります。

 そういう観点から、我が政権においても、臍帯血、これは赤ちゃんがお母さんと結びつきがあるんですが、子宮の中で臍帯というもの、そして胎盤というものでつながっています。主に赤ちゃんの血液である臍帯血というものを活用して白血病対策とするというふうなことが今年度の補正予算でも組み込まれていると思います。

 そこで、ほかにも幹細胞というものがあるわけでございますが、その表にありますように、二枚目にありますように、臍帯血というのはさまざまなものに分化する。いわゆるよりポテンシャルを持ったものでございまして、例えば、白血球になったり、血液の主たる成分になるようなものもありますし、下に書いてありますように、他の臓器へと分化していくようなものもあります。

 特に、今回は、その上の部分、造血幹細胞的に機能する部分について申し上げたいのでございますが、一枚目の資料に戻りますと、年々こういった臍帯血あるいは骨髄の利用というのが進んでおります。

 ところが、これは、拒絶反応という一番の副作用を防ぐ意味で、マッチングというものが大切でございます。主に白血球の分類を行いまして、その白血球のタイピングをするわけでございますが、母集団が多いほど、数が多いほど必要な方々へのマッチングがうまくいく、そういう現象がありまして、特に、この表から言えることは、ドナーの数に比して、やはり臍帯血の方がより有効的であるというふうなことを示していると思います。

 そういう観点で、例えば、平成二十四年度予算としましてトータルで造血幹細胞移植、十七億八千四百万円計上されております。その中でも、臍帯血の部分に関しましては六億六千五百万円。これはさまざまな問題がありまして、全国で今この臍帯血バンクというものが十カ所あります。私は、将来的には、全国都道府県、四十七都道府県にはせめて一つ置いていただきたいというふうに思うんですが、その辺に関しましての御意見はいかがでしょうか。

小宮山国務大臣 委員の御専門の立場からの御指摘だと思いますが、臍帯血移植、これが非常に有効であるということはよく理解をしています。

 造血幹細胞を多く含む良質な臍帯血、これを採取する必要があり、そのためには、採取施設の医療スタッフの採取技術の向上、こうしたことも必要だというふうに思います。そのため、今御指摘いただいたように、平成二十四年度予算案では六億六千五百万円確保し、その中で、採取施設の医療スタッフに対する採取技術向上のための研修、これについても補助対象経費としているところです。

 おっしゃるように、全国に広げたいと思いますが、それは、そこにちゃんとできる医療スタッフが必要なので、その養成も含めてなるべく速やかにできますように取り組んでいきたいと思っています。

仁木委員 大臣、前向きな御答弁、ありがとうございます。

 現実問題としまして、お産が終わって、母体そして赤ちゃんも安全であるということを落ちついた状態で確認した状態で、普通、胎盤と臍帯はくっついているわけでございますが、そこから胎盤を上に上げてつるして採血しやすい形、しかもある程度の量が必要でございます、そういうのをしながらやるわけでございます。

 ただ、これは、おっしゃったように、現場に人がかなり必要でございまして、そういったスタッフに対する予算というものをまず確保していただきたいと思いますし、もう一点は、やはり、臍帯血バンクの登録者数と、そのマッチングをスムーズに行うために、例えば従前の期間でいいますと一週間かかっていたものが三日になるというようなことも予想されてはいますが、そういったマッチング体制、ちゃんとバンクと連携した体制づくりに対しまして一層取り組んでいただきたいということを改めて御要望申し上げます。

 さて、きょうの児童手当法案について、質問を移りたいと思います。

 いろいろこの間、質問が出ておりましたが、私は、特に産婦人科医として、職業柄、人工妊娠中絶ということをやっていた、いわば十字架を背負った立場として、改めて質問させていただきたいと思います。

 まず、現状としまして、二〇〇〇年でも三十四万人、そして二〇〇八年でもおよそ二十四万人の方々が中絶を行っているということですね。これは、二〇〇八年でいうと、出生者数は百五万人ですから、おおよそ五人に一例ぐらいの形でこの世に生まれてこない命があるということです。これは明らかに、自然流産等々、病気で生まれてこないというわけじゃなくて、人的な医療行為によって生まれてこない命でございます。

 アラン・グトマハーという研究所が、どうして中絶が行われるかという理由を検討しておりますが、九五%が親の都合です。一番多いのがやはり経済的な理由で、六六%というふうになっております。しかし、私の経験では、もっとその数値は高いように思います。

 皆さんも、中絶というと、ドラマでレイプされたとかそういうことを想像されがちだと思いますが、医療の現場では、二人あるいは三人子供さんがいらっしゃるんだけれども、予想をしなかった妊娠があった、三人目、四人目を育てるにはお金がなくて大変だ、だから先生、いよいよもう、本当に悩んだんですが、中絶してください、おろしてくださいということが現実なんです。そういう重い現場があります。

 小宮山大臣も、二〇〇九年マニフェスト、あるいはそれ以前からのチルドレンファーストという政策の中で、例えば、お一人のお子さんを、大学へ、ずっと公立で育てた場合、八百万、全部私立でいくと二千二百万ぐらいのデータを出されておりました。そのように、一人の人間を今の日本で育てていくには非常にお金がかかるというふうに思っております。

 私は、子ども手当が導入されたときには本当に期待を持ちましたし、これこそ必要だという思いであの二〇〇九年の選挙も戦っていました。まさに、社会全体が子供さんを育てていく、先ほど、あべ委員でしたでしょうか、御質問されておりましたが、その効果とか言われておりました。私は、定額給付金と子ども手当、効果は明らかに違うのは、やはり継続して、一回ぽっきりではなくて継続してやっていく、こういったメッセージを、つまり社会全体が一人の子供の育みを、育ちを応援していくというメッセージを、これから結婚しようとする方々、そして、私が先ほど申し上げた、二人、三人いらっしゃる方々がまた三人目、四人目を育てていくという勇気、そして決断を促す大きな力になるというふうに思っております。

 そういう観点で、先ほど来、政権がかわって、この二年間は何だったのかと言われましたが、やはり、大臣におかれましては、もう一度御確認したいのは、控除から手当という流れ、これが継続されて、今後また新たな消費税のこともありますが、一%ふやした部分において子育てを充実する、あるいはその中で子ども・子育て新システムを導入する等々、一兆円のことも言われておりますが、その御決意というものを改めてお聞かせいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 委員御指摘のとおり、今、御専門としての、やむなく中絶されることの例をお話しいただきましたが、まず子供の手当から取り組んだということは、持ちたい数の子供を産み育てられない理由の最大のものが経済的な負担、そういう中から、まず手当からやりましょうということで今回、スタートをいたしました。ただ、これも再三申し上げているように、財源の見通しが甘かった中で、お約束どおりできない、その中で、一方で控除は廃止したということで、今、中間所得層で赤字になってしまうというところは早急に手当てが必要だ。そこに一番、私は今、強い申しわけなさと、そこを何とかしなければいけないという思いを持っています。

 ただ、全体として、控除から手当というのは、高所得者の方から支援が必要な低所得者の方に必要な手当としてお渡しをするというその考え方自体は、ずっとこれは民主党の税調として持ってきた考え方で、ただ、今後については、この中にありますように、また三党、与野党そしてまた関係府省とも議論をしながら、年少扶養控除をどうしていくかということは議論しなければいけない、そういう問題だと思っていますが、御指摘いただいたように、今回、新システムのことで、就学前の子供の居場所、さらに働き方、総合的にとにかく子供を、そして子育てを支援する、そこにはしっかりとさらに取り組んでいきたいというふうに思っているところです。

仁木委員 あと、少し事務的な話もありますが、共同提案者にお聞きします。今回の所得制限の九百六十万円ということについてでございます。

 先ほど来答弁もされているようでございますが、このことに関しまして、事務的な経費もおよそ百億円必要だというふうに言われております。改めて、三党合意の中で、できるだけ我が党の、民主党の本来主張してきた理念を崩すことなくやってきた御努力のこと、あるいはまた、二〇一五年の一月からマイナンバー制度の導入も言われております。そういった事務経費たる百億円のものも、やはりこのナンバー制度の導入等々によってコストも削減されるかもしれませんし、現場の混乱もかなり少なくなるとも予想されます。

 そういったことも踏まえまして、答弁の方、よろしくお願いします。

岡本(充)委員 今御指摘いただきました、所得把握をどのようにして行っていくかというのは工夫が必要だろうと思っていますし、既にマイナンバーに関する法律も国会に提出をされているという状況であります。最終的に、その運用を通じて所得把握という方法が確立されてくれば、それは年収を把握する大きなツールになるんだろうとは思っています。

 なお、この法案における修正を踏まえても、所得制限の額を幾らにするかというのは三党合意に基づいての話でありまして、現に今の段階で法案に盛り込んでいるわけではないということを繰り返しお話をしていますし、我々の理念をもってこの法律を堂々と皆さんにお示ししていきたい、このように考えているところであります。

仁木委員 いずれにしましても、この考え方というのは大切なものでございます。

 私も、最後の質問者ということで、御協力いただいた野党の皆様方にまた反感をあおるような質問をしたくないわけでございますが、やはり、この社会保障制度を担うのは、今の子供たち、あるいはこれから生まれてくる命でございます。そういう観点で、やはり政策というもの、よくばらまきだとか言われますが、私はやはり、ばらまきというのは、その政策のために予算を投じた、しかし、本当に必要な方々へ届いていなかったり、あるいは、届いたけれども効果がなかったというものをばらまきだというふうに思うわけでございます。

 私は当初、この子ども手当というのはやはり継続してやることに意味があると。他の外国を見ましても、単年度で、あるいは一つの、お金だけを支給するということで出生率が上がる等々の少子化対策がうまくいったというような事例もございません。いずれにしましても、総合的に子供さんを社会全体が育てていくという概念を、先ほど申し上げたように、これから赤ちゃんを産もうとする方、そういった方々へメッセージとして国が発し続けることが大切だと思います。

 今回、この法案を通しまして、これから、例えば財政状況もよくなったり、経済状況がよくなったりしましたことによって、また新たなバージョンアップ、田村議員も御指摘されていましたけれども、所得の逆転現象が起こるところもございますので、やはり基本は、税収が上がったり、いろいろな意味で財源が上がると、支給の額をふやすということもこれから形になってくると思いますので、この法案で私たちも妥協した、民主党のフラッグシップの子ども手当をおろしたというのでなくて、これからまた、国民に信を問う場面もあると思います、そういう中で、やはり、明らかにこのメッセージはその世代に訴え続ける。

 これは、子供さんの幸せだけじゃなくて社会全体を支えていく社会保障の源でもあるんだ、そういうことも国のメッセージとして発信し続けるように頑張っていきたいというふうに思いますし、そのことも、私も与党の一員として取り組んでいきたいということの決意を申し上げまして、私、仁木博文の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

池田委員長 以上で原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池田委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 私は、ただいま議題となりました児童手当法の一部改正案並びに民主、自民、公明提出の修正案に反対の討論を行います。

 二〇〇九年の政権交代直後、民主党が真っ先に実行したのは、生活保護世帯の母子加算の復活と相対的貧困率の公表でした。子供の七人に一人が貧困という衝撃的な数字とともに、子ども手当が、貧困の連鎖を断ち切るカンフル剤として、また、先進国の中でも極端に少ない日本の子育て予算と支援策を大幅に拡充する第一歩として期待されていたのであります。

 それがどうでしょうか。子ども手当は、わずか二年で四回目の法改正を余儀なくされ、一度もマニフェストに即した法案が出されないまま、名前も児童手当に戻り、あげく、増税だけが残ったのです。国民への約束を投げ捨てた政権与党民主党の責任は極めて重く、子ども手当を政争の具にしてきた旧与党の姿勢にも怒りを禁じ得ません。

 まず、本法案は、初めての恒久法であるにもかかわらず、昨年の特措法を踏襲したものにすぎません。現在の支給額では実質増税になる世帯が出ることは、前回も指摘してきました。既に所得税の年少扶養控除が廃止され、六月からは住民税の影響も出るもとで、年収四百万円以上の世帯では、旧児童手当と比べても実質手取り額が減少する世帯が出ることは重大です。民主党の控除から手当へという理念から見ても、全くつじつまが合いません。

 今回の民主、自民、公明の三党合意を見ても、専ら、名称、目的、給付に係る事項のみが触れられているにすぎず、総合的に子育て支援をどう進めるかという観点は全くありません。年少扶養控除の廃止によって増収となる金額は、子育て支援に使うと言っていたにもかかわらず、児童手当の地方負担分への振り向けや、子育て地方独自支援策の一般財源化など、拡充につながっていません。税と社会保障の一体改革の中で充実策と位置づけている子ども・子育て新システムも、財源は消費税増税を見込んだものであり、公的保育の責任を曖昧にし、保育の市場化を進めるものであり、断じて認められません。

 日本共産党は、子供が一人一人の人間として尊重されるという国連子どもの権利条約の精神の実現を目指し、子供の貧困の解消や公的保育の拡充など、安心して子供たちが成長できる施策の充実のために全力を挙げる決意を申し上げ、両案に反対の討論といたします。

池田委員長 次に、小林正枝さん。

小林(正)委員 私は、新党きづなを代表して、児童手当法改正案、そして、民主党、自民党、公明党提出の修正案について、反対の立場から討論いたします。

 マニフェストとは、抽象的なスローガンや政策の羅列ではなく、選挙後に達成度を検証できるよう、政策の数値目標や実施期限などを具体的に明示した政党の選挙公約です。

 私たち新党きづなのメンバーは、総選挙の際には、民主党の公認候補として、最も重要な政策として位置づけられた子ども手当を、中学卒業まで月額二万六千円を二〇一一年度から支給すると国民に訴え、当選を果たしました。多くの国民が民主党の掲げる子育て支援政策に共感し、総選挙の勝利に結びついたことは疑いようがありません。

 たび重なる名称の変更と支給額の減額など、およそマニフェストの理念とはかけ離れた内容になっています。この一点をもってしても、十分に反対する理由になります。

 また、修正案では今後の控除の復活を求めており、控除から手当へという理念からも後退してしまいました。

 また、最も重要な社会全体で子供を育むという理念が、「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という文言によって消されてしまうのではないでしょうか。日本の将来を担う次世代を育成するには、社会全体で取り組むことは当然のことであり、保護者に第一義的な責任を負わせることは、国としての責務を放棄したことになるのではないでしょうか。

 国民は、憲法二十六条により、ひとしく教育を受ける権利を有しています。平等という観点からの修正案の九百六十万円という所得制限の根拠、さらに名称の変更についても、納得できる答弁を得ることができませんでした。

 私たち新党きづなは、結党時に、国民との約束を守ることは国民とのきずなを守ることに通じると訴えました。今回の児童手当法改正案に賛成することは、マニフェストの一丁目一番地である子ども手当の否定です。当初案から大幅に後退し、骨抜きにされた修正案に対し、断固として反対することを申し上げ、私の反対討論といたします。

池田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、児童手当法の一部を改正する法律案並びに修正案について賛成をいたします。

 しかしながら、この賛成は、平成二十一年度以前の水準に逆戻りすることによって受給者、自治体へ大きな混乱を及ぼすことを避けるためのものであり、積極的な賛成ではありません。

 以下、本法律案の問題点を指摘いたします。

 まず、本法案は、策定過程において、当事者である子ども・子育て世代の声に真摯に耳を傾けた形跡が全くありません。政府内のみで議論がなされ、最終的には、民主党、自民党、公明党、三党それぞれのメンツを優先させて着地点を決めたものであります。目的、支給対象年齢、支給水準、費用負担のあり方、所得制限は本当に必要かなど、制度の本質的な議論は公の場で一切行われておらず、今回決まった支給水準等の根拠も国民には説明されていません。

 また、子ども手当導入に伴って行われた住民税の年少扶養控除の廃止の影響で、今年六月分以降、所得制限額以上の者だけでなく、年収四百万円台の中堅世帯の実質手取り額まで減少することは非常に問題です。何のための現金給付であるのか、根本が揺らいでいます。

 さらに、子ども手当の導入と年少扶養控除廃止をセットにした今回の手法が子育て世代層内での所得再分配にすぎないことも問題です。民主党がマニフェストに掲げた子供の育ちを社会全体で応援するは、どこへ行ってしまったのでしょうか。子ども・子育て新システムをも含む社会保障と税の一体改革にも疑念を抱かざるを得ません。

 加えて、最も納得がいかないのは、年少扶養控除の廃止に伴う地方税増収分が、国民健康保険法の都道府県調整交付金やエコカー減税による地方負担への振りかえなど、子ども・子育て施策と直接的に関係のないところに使われてしまう点です。

 子育て世代から徴収する地方税増収分でありますから、緊急を要している待機児童対策や国保保険料の子供分の軽減など、子育て施策財源に充てるのが本筋です。

 子ども手当は、この二年間で、一年、半年、半年と、細切れの立法措置が繰り返されてきました。制度変更に伴う混乱は、政治に対する国民の不安感、不信感を増幅させているばかりです。政治が子育ち施策を最優先に考え、誠実に取り組むことを訴え、私の討論といたします。

池田委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党を代表して、民自公提出の児童手当法改正案の修正案に反対、並びに政府提出の原案にも反対の立場で討論いたします。

 今回の児童手当法の改正案は、要するに、去年以来続いてきた民自公三党の協議による、世に言うマニフェスト撤回の合意を踏まえて提案をされたもので、単年度の根拠法に基づき平成二十二年度、二十三年度と続けて支給されてきた子ども手当を白紙にして、かつての児童手当の名称に改めるものであります。

 今回の法改正が児童手当法の改正として行われ、所得制限もつき、名称も児童手当に戻った、年少扶養控除の復活に向けた附則もついたので、自公の完全勝利と見ることもできるし、そうではなく、所得制限はするけれども、当面五千円は支給をする、支給額も前進し、子ども手当の理念は生かされている、こういうふうに強弁することもできる。要するに、双方を足して二で割った玉虫色の内容とも言うことができるものであります。

 報道によれば、政府案では子どものための手当となっていたのが、協議相手の自公の反発を受け、児童成育手当となり、また児童のための手当となり、結局もとの児童手当に落ちついたという、外から見ている私たちには実にどうでもいい駆け引きが水面下で繰り広げられてきました。これも、民主と自公が、枝葉末節の違いはあれども、今や基本的な政策の方向性は全く変わらない、こういう今の政治状況を象徴しているように思います。

 子ども手当であろうが児童手当であろうが、結局は、国で決めた法律に従って巨額の国費を現金支給せよと地方自治体におろす、地方自治体に裁量権のない、いわば中央集権による現金ばらまきの本質は変わりません。

 私たちみんなの党は、平成二十四年度予算の組み替え案でも既に提示しましたが、子ども手当分の財源一・三兆円は全額地方におろして、地方自治体がみずから考える必要な子育てサービスのために自由に使ってもらうという考え方をとっています。住民のためのサービスは住民に近い自治体がみずから決めてみずからの財源で実行する、民主党もかつては一丁目一番地と言っていた地域主権型の考え方であります。

 しかも、現状を見ると、保育所整備や病後児保育といった地方自治体が実施主体となる現物支給サービスの充実について、国が子ども・子育てビジョンで数値目標まで掲げていながら、その進捗状況は、私たちから見て決してはかばかしいものではありません。現政権が巨額の現金支給にこだわってきた余り、本来、チルドレンファーストと言うなら最も力を入れるべき子育て支援の具体的メニューの充実が後回しにされてしまっていると言っても過言ではない状況のように思えます。

 このように、中央集権の思想に基づく一律の現金給付か、地域主権の思想に基づく財源ごとの地方移管かという根本的な考え方の違いがありますので、政府提出原案にも、それを改変しただけで質的に何の変わりもない民自公提出の修正案にも賛成することはできません。

 以上をもって討論といたします。

池田委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池田委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、児童手当法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、岡本充功君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

池田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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