衆議院

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第16号 平成24年7月27日(金曜日)

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平成二十四年七月二十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 池田 元久君

   理事 岡本 充功君 理事 長尾  敬君

   理事 長妻  昭君 理事 柚木 道義君

   理事 加藤 勝信君 理事 田村 憲久君

   理事 岡本 英子君 理事 古屋 範子君

      石森 久嗣君    稲富 修二君

      江端 貴子君    大西 健介君

      工藤 仁美君    桑原  功君

      斉藤  進君    阪口 直人君

      白石 洋一君    田中美絵子君

      高井 崇志君    竹田 光明君

      橘  秀徳君    玉木 朝子君

      西村智奈美君    樋口 俊一君

      藤田 一枝君    宮崎 岳志君

      山崎 摩耶君    吉田 統彦君

      鴨下 一郎君    菅原 一秀君

      棚橋 泰文君    谷畑  孝君

      永岡 桂子君    松浪 健太君

      松本  純君    青木  愛君

      大山 昌宏君    加藤  学君

      笠原多見子君    小林 正枝君

      玉城デニー君    中野渡詔子君

      坂口  力君    高橋千鶴子君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

    …………………………………

   厚生労働大臣       小宮山洋子君

   厚生労働副大臣      西村智奈美君

   厚生労働大臣政務官    藤田 一枝君

   厚生労働大臣政務官    津田弥太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 中沖  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           山崎 史郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           渡延  忠君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十七日

 辞任         補欠選任

  仁木 博文君     阪口 直人君

  山口 和之君     橘  秀徳君

  和田 隆志君     江端 貴子君

  石井  章君     加藤  学君

  三宅 雪子君     中野渡詔子君

  江田 憲司君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     和田 隆志君

  阪口 直人君     高井 崇志君

  橘  秀徳君     桑原  功君

  加藤  学君     石井  章君

  中野渡詔子君     大山 昌宏君

  柿澤 未途君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  桑原  功君     山口 和之君

  高井 崇志君     仁木 博文君

  大山 昌宏君     笠原多見子君

同日

 辞任         補欠選任

  笠原多見子君     三宅 雪子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)


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     ――――◇―――――

池田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、岡本充功君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。岡本充功君。

    ―――――――――――――

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岡本(充)委員 ただいま議題となりました高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、厚生労働大臣は、心身の故障のため業務の遂行にたえない者等の継続雇用制度における取り扱いを含めた事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針を定めるものとすることであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。

池田委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

池田委員長 この際、お諮りいたします。

 原案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医薬食品局長木倉敬之君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長中沖剛君、社会・援護局長山崎史郎君、国土交通省大臣官房審議官渡延忠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池田委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅原一秀君。

菅原委員 おはようございます。自民党の菅原一秀でございます。

 きょうは、この高齢者雇用安定法並びに修正案について質問をさせていただきます。

 まず冒頭、大臣に、通告していないんですが、今現在、日本国内で百歳以上の方、どれくらいいるか御存じですか。日本国内で百歳以上の方が何人いらっしゃるか、大体で。

小宮山国務大臣 済みません。今正確な数字はわかりません。

菅原委員 三年前の国勢調査によりますと、四万三百九十九人。昔は泉重千代さんしかいなかったんですが、平成に入って一万人を突破して、今四万人を超えて、これは住民基本台帳上の数であります。追跡調査をすれば半分強なのかな、こういうような数字が浮かび上がってくるんですが、中でも男性が五千名、女性が三万五千人、七倍いらっしゃる。そのことをきょうはただすわけじゃないんですが、こういうふうに、日本の社会全体が長寿社会という中で、超高齢社会に既になっているという状況、こうした中で、私はまず、六十を超えて、あるいは六十五を超えて働ける方が働くということは、医療費の抑制等を含めて、これから大変重要なことではないかな、こういう認識を基本的に持っているわけであります。

 そうした中で、去年の高齢者白書によりますと、今一億二千八百六万人の人口に対して、六十五歳以上が二千九百五十八万人、二三・一%を占めるわけであります。また、総務省の労働調査によりますと、六十歳から六十四歳が五七・三%の就業、六十五歳以上が一九・三%働いている。こういう就業率が数字として示されているわけであります。

 こうした中で、平成十六年、高齢法の改正によって、それまでの定年の引き上げ、あるいは六十五歳までの段階的な雇用確保措置を事業主側に義務づけたわけでありますけれども、先般厚労省が発表した雇用状況によりますと、雇用確保措置を導入している企業は全体で九五・七%、中でも、継続雇用制度を導入している企業が最も多くて八二・六%。一方で、それでは、希望者全員が六十五歳まで働いている企業はどれだけあるかというと、四七・九%と半分にも満ちていない現状があるわけですね。

 これをさらに、継続雇用制度の導入の企業の中で、労使協定で対象者となる基準を定めている、いわゆる基準ですけれども、これが、企業の割合で六割弱、五六・八%、基準を定めていない企業が四三・二%。言ってみれば、基準を定めずに雇用を促進しているという部分が四割ちょっとでございますけれども、対象を限定している企業の方が数が多い、こういう現状の中での今回の改正なんだろうな、こういうふうに捉えております。

 こうして基準を廃止して、六十五歳まで希望者全員が働く、その雇用を確保するという、この義務づけという法案の趣旨なんだと思いますが、今冒頭申し上げたように、こうした高齢社会の中で、これからの展開、これからどういうようなことを想定して、イメージして、この法案の根底にある目的というものがどういうものなのか、まず冒頭、お尋ねをしたいと思います。

小宮山国務大臣 おはようございます。

 御承知のように、先ほど長寿社会になっていることを御紹介いただきましたが、超少子高齢社会の中で、高齢者もですが、あとは女性も若者も障害をお持ちの方も、全ての方が働けるときは能力を発揮して働くような全員参加型の社会、これをつくる必要があるというふうに思っています。

 今回の改正の目的としては、やはり、平成二十五年度以降、厚生年金の支給開始年齢が、定額部分は六十五歳になりますし、報酬比例部分は、現在の六十歳から六十五歳へと、三年ごとに一歳ずつ段階的に引き上げられます。

 今数字をいろいろ御紹介いただきましたけれども、現行制度のままですと、来年度から、六十歳の定年以降に希望しても仕事が継続できずに無年金、無収入になる人が生じる可能性がありますので、これを回避するために、雇用と年金はちゃんと接続をする、六十五歳まで希望者全員の雇用を確保する必要があるということで、今回、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みを廃止するなどの法案を提出しているところです。

菅原委員 その法案の説明はよくわかるんです。また、平成十六年のときは私ども自民党の政権でありましたから、当然、その先、今、昨今ですね、こういう状況になることは予測もし得たんですが、いわば、これからこうして六十五歳までの雇用を確保するということの目的、根本的な、基本的な理念というのは、これは政権がかわっているわけですから、民主党政権の中でどういうふうにお考えなのか、そこをちょっとただしておきたいと思うんです。

小宮山国務大臣 御質問の趣旨に合うかどうかわかりませんけれども、先ほどおっしゃったように、本当に寿命が延びている中で、六十五歳まではまだ十分力を発揮して働ける能力を持っていらっしゃる方がたくさんある。これからやはり働ける人口も減っていく中で、最初に申し上げたように、高齢な方も働ける間はきちんと能力を発揮して働ける環境をつくる必要があると思っていますし、それとあわせて、これが若年者の雇用にはね返るのではないかという御懸念もありますので、若年者の方も、これは数は全体が減ってきているわけですけれども、その就職の支援ですとか、今フリーターになっている方の支援とか、そちらもやりますし、それから、女性ももっと活躍した方がいい、そういう働ける方たちがいろいろ働ける環境を整備する一環だというふうに考えています。

菅原委員 ということなのかなというふうに今承りました。

 例えば、六十代で会社をやめて創業する人、昨今、いわゆるシルバー創業なんて言い方をするんですが、大体、年間で六千社を超えているんですね。これは、言ってみれば、それまで会社に勤めて、経験あるいはキャリア、そうしたものを、例えば仲間と一緒に五人から十人で会社をつくって創業して研究開発やら新しい製品を生み出す。今、どこのとは言いませんけれども、洗濯機でも掃除機でもいわゆるソーラーパネルでも、次々と新しい研究開発、これは意外と大手の企業だけじゃなくて、そうした中小零細企業で生み出す、そういうパワーがあるのではないかと思うんです。

 なかなかその辺は資金面やら税制面でまだまだ措置が足りない状況の中で、たまたま私、今、自民党の経産部会長なんですが、成長戦略、民主党は日本再生戦略をお出しになりましたが、私どももきっちりそうした成長戦略を形にしていきたいな、そういう中で、一つの傾向として六十代のシルバー創業が出てきている、こういうことで、バックアップをしていく、そういう覚悟を持っているわけであります。

 本題に戻りますけれども、そういう中で、高齢化で、働ける方あるいは能力のある方を幾つになっても生かす、このことの趣旨は理解できるんですが、では一方で、雇う側の立場になってみろよ、こういう論議がある中で、いろいろと報告を聞いておりますと、使用者団体の方は、この基準制度を廃止にする、そして希望者全体の高齢者の雇用を義務づける、このことによって、やはり、競争力の低下だとか人件費の膨張だとか、こういう現実的な壁にぶち当たるわけですね。

 労働政策審議会の建議書の中で、代表委員の方がこう言っているんです。現行法の第九条第二項に基づく継続雇用の対象者基準は、労使自治の観点から妥当な制度であって、企業の現場で安定的に運用されていることや、基準をなくした場合、先ほどお話があったように、若年者雇用に大きな影響を及ぼす懸念があることから、引き続きこの基準制度を維持する必要がある、こういう意見を付しているわけなんですね。

 そもそも、高齢になればなるほど、当然、一人の人間としての能力の差やら、あるいは体力面でも、格差といいましょうか、現実的な開きが出てくる。そうした就労の可能性、よくもあしくもその可能性をよく吟味、検討せずに、希望者全体の雇用確保措置を講ずるんだという、ある意味ではかぶせるような法律の内容になっているわけですけれども、そういう意味では、憲法の二十二条あるいは二十九条の採用の自由だとか、あるいは労働契約法の三条、労働契約の合意原則、つまり、雇う側と労働者側のお互いの実情や環境やこれから起こり得るさまざまなことを想定した中で合意形成を図るという労働契約法の基本があるとするならば、こういったことにも抵触しかねないのではないかな、こういう懸念を私は持っているわけなんです。

 そこで、平成三十七年までの経過措置をおとりになる、こういう法案の趣旨なのでございますが、先ほどお話あったように、老齢厚生年金、報酬比例部分が始まる、その受給開始年齢に達した以降においては従来の基準を適用することを認めるというようなことで、平成三十七年までの経過措置というふうになっているんですが、これは実際問題、ややもすれば、政権がかわって、雇い主側というか事業者側よりも、労働者側の立場、労働組合といいましょうか、そういう色彩が強くなってきている状況がないのかな、こんな思いも率直に抱くわけなんですね。

 この辺、この激変緩和策、本当に事業主、使用者側にとって、果たしてどうなんだろうか。もし大臣が会社を経営していれば、どういう感覚でこの法案に取り組みますか。

小宮山国務大臣 それは、私が経営することはないだろうと思いますけれども、そういうことを仮定いたしましても、無理がないようにということで、今言われたように、その支給開始年齢が三年ごとに上がるのに合わせて、それまでにやりましょうということで、十二年間の経過措置もとっていますし、そういう意味では、過重な負担が企業に行かないように、今回、継続雇用で雇用される企業の範囲をグループ企業まで広げていますし、また、グループ企業以外への労働移動を支援する助成金の新設といったような措置もとろうと思っています。

 そういう意味で、企業の方にも負担が行かないような配慮もしながら、かといって、それが実現していかないと、先ほど申し上げたように、無年金、無収入が間でできてしまっては困るので、そことの兼ね合いをしっかりと現状を見ながら対応していきたいというふうに思っています。

菅原委員 いろいろやりとりをしておりまして私が感じますのは、今、あくまでも、自民党だから使用者側の立場だとか、民主党だから労働組合だとか労働者側、そういういわば二極論で論ずる問題ではないと思うんです。

 先ほど、冒頭申し上げた、あえて百歳以上は何人いるか御存じですかと聞いたのは、日本のこの社会構造自体が、やはり平均寿命なりあるいは全体の平均年齢なりが大きく移行してきている中で、ましてや、少子化対策は万全を期さなければならないと思っております。今までのようにお金をばらまくやり方よりも、私は、年少扶養控除をもとに戻していただいて、控除から手当よりも、手当で現金をばらまくよりは、やはり所得に応じた控除制度によってサラリーマンあるいはOLの可処分所得をふやす方がよっぽどいいということは、駅に立っていると言われますよ。

 そういうことも含めて、こういう高齢社会の中で、生産人口、労働者人口、若年層の人口が減りつつある。とするならば、やはり日本は、世界最長寿の国になった、年をとっても幾つになっても頑張れる方が頑張る、そういう国なんだというモデルケースを国家としてつくっていく、そういう基本に立ってこれは論ずるべきではないかな。いわゆる雇用問題だとか労働問題だとか、あるいは、繰り返しになりますが、使用者あるいは労働者側、そういう論点のみならず、日本の国家モデルをどういうふうにつくっていくのか、こういう視点がこれから大事ではないかな、このことを申し添えておきたいと思っております。

 そこで、先ほど大臣からお話がありました若年者の雇用の問題、ここに今回の雇用確保措置というものが響くのではないか、影響があるのではないか、こういう懸念がやはり聞こえてくるわけであります。

 去年の六月の高齢者雇用にかかわる研究会報告書、この中では、専門的な職業経験のある高齢者と基本的にそのような経験を持たない若年者とでは労働力としてその質が異なるという企業側の意見が発表、紹介をされているわけなんですね。あわせまして、実際問題、中小企業ではこうした若年層の雇用確保に苦労している、こういう現状。一方で、この若年者の雇用問題の解決のためには、求人と求職のやはりミスマッチの解消ということをきっちり促進していく、こういう指摘があるんです。

 言ってみれば、これからうかがい知れるのは、高齢者雇用と若年者雇用の対応策は手法が違うんだ、違うんだから、高齢者の雇用を確保するということは、若者の、若年者の雇用には影響がないんだというふうに論じているんです。果たしてどうかな。

 先ほど大臣が、会社を経営したことはない、これからもすることはないかもしれないと。しかし、今、四百三十万が四百十万に減っている中小企業、零細企業、もちろん大企業も含めて、全体でこの人件費というものは、やはり毎年そう変わらないんだと思うんですね、年間の予算の中で。そういう意味においては、高齢者の雇用と若年者の雇用がトレードオフの関係にならないという見方があるとするならば、一方で、人件費の総額が変わらないということは、結局は、非常にシビアな言い方をすると、この高齢者の雇用確保によって、若年者のいわゆる採用の縮小になってしまう。

 事実、岡田副総理は、今般、霞が関の新規職員を減らしましたよね。公務員の数を減らすんだ、中堅以上の、悪いけれども出先機関の人たちを削らないで、新しい血液や酸素を霞が関に入れるということを縮小してしまった。

 私は、その点は今後もっと議論しなきゃいかぬのかなと思いますが、そういうことになりかねないのではないか。つまり、高齢者雇用と若年者雇用の二律背反というこの現状について、今後どういうふうに考えていかなければいけないのか、あるいは今大臣がどうお考えなのか、この点をお尋ねしたいと思います。

小宮山国務大臣 多くのことをおっしゃいましたが、前段の部分の、党派を超えてきちんと対応しなきゃいけないということは、そのとおりだと思います。今回も三党で合意をさせていただいたので、雇用問題についても、それぞれの考え方で違うところはありますが、しっかりとそこは話をしていかなきゃいけないと思っています。

 それで、今お尋ねの件ですけれども、マクロ的に見れば、大量の団塊の世代が退職をする、若年者も減るということで、そんなに影響が出ないというふうなことが言えますけれども、私自身もやはり若年者への影響ということを一番今回の中で気にかけていました。そういう意味で、影響が出る部分もあると思います。

 その中では、やはり今、若年者の雇用について相当、ここ一、二年対応をとってまいりまして、例えば、原則三カ月のトライアル雇用後に正規雇用する企業に奨励金を出す事業などは非常に効果を上げていると思いますので、今回もまた、若者の雇用戦略をつくりましたが、それは、おっしゃるように、違った手法で若者の方にもしっかりと力を入れていくべきだというふうに考えています。

菅原委員 時間が来たようですけれども、最後に一点だけ、修正案の方について大臣の見解をお尋ねしたいんです。

 九条の三項に基づく指針が出されていますね。これは、心身の故障のために業務の遂行にたえない者等の継続雇用制度における取り扱いが含まれているということなんですが、解雇事由だとか退職事由に該当する者を継続雇用の対象外とするということも明確に規定するのかどうか、この点だけ確認をして、質問を終わります。

小宮山国務大臣 今回提出された修正案の内容は、大臣が、高齢者雇用確保措置の実施、運用に関して事業主が留意すべき事項を独立した指針で定めるということ、その際、関係行政機関との協議や労働政策審議会の意見聴取を行うことなどと承知をしています。

 高齢者雇用確保措置に関する留意点としては、労働政策審議会の建議でも考え方が示されています。修正案を盛り込んだ改正法が成立いたしましたら、建議の内容や国会での御議論に基づいて、この指針をしっかりと策定していきたいと考えています。

菅原委員 きょうは通過点として、また法案は法案として、先ほど来の幾つかの論点、議論を深めさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、小林正枝さん。

小林(正)委員 国民の生活が第一・新党きづなの小林正枝でございます。

 質問に入ります前に、熊本県、福岡県における豪雨災害によってとうとい命をなくされた御遺族の皆様、また、災害に見舞われた方々に対し、心よりお見舞いを申し上げます。

 本日議題となりました高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び修正案につきまして、質問させていただきます。

 まず、数字についてのお尋ねをいたします。

 高年齢者雇用確保措置導入の割合は九五・七%であります。昨年一年間の定年到達者約四十三万五千人のうち、九条二項の基準に該当せず離職した方々という割合は一・八%、約七千六百人でした。この数字を見まして、厚生労働省は、基準非該当者の採用は可能だと判断されたのだと思います。

 しかし、残念なことに、経団連などを初めとする経営者側はこれに反発し、直ちに基準を撤廃し、希望者全員を再雇用する道が完全に開かれたとは言えない状況が現実です。

 高齢者がふえれば企業の新陳代謝がなくなるとか、ミクロ的には新規採用が減るとか、そういう懸念がわからないわけではありません。しかし、一方で、労使協定によって、体力や能力、あるいは勤務評価によって選別された高齢の労働者が結構いるのではないかと私は思っています。

 まず、厚生労働省は、基準に該当しない人が全体の一・八%、約七千六百人であるという数字をどのようにごらんになっているのでしょうか。お伺いいたします。

中沖政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のとおり、離職した方の数、七千六百人でございまして、定年到達者四十三万五千人のうちの一・八%でございます。こうした数字の背景としては、やはり、基準該当者を継続雇用するといった制度を導入している企業の中で、過去一年間に継続雇用を希望する者がいた企業、三万六千社ございますが、そのうち実は九三%の企業、三万四千社では、基準に該当せず離職した方がゼロという状況になっております。したがって、実質的に見ますと、相当多数の企業が実態として希望者の方全員を雇用するような形になっているわけでございます。

 前回の高年齢者雇用安定法の改正によりまして雇用確保措置が義務化されて五年経過したわけでございますが、一・八%、七千六百人という数字、まあ、それほど大きい数字ではないわけでございまして、やはり各企業の方でかなり御努力をいただいている、前向きな動きになっているというふうに考えてはおりますが、ただ、来年度以降、ごく少数ではございましても、当然、無年金、無収入の方が出てくる可能性があるわけでございます。

 こうした問題は大変深刻な問題でございますので、私どもとしては、やはり、制度的に雇用と年金をつなぐ必要がある、穴があくことはまずいのではないかというふうに考えております。

小林(正)委員 おっしゃられることは理解しますけれども、実際、九三%が該当せず離職者はゼロであったという数字は、非常に私は疑問に感じます。

 と申しますのは、やはり、それはもう既に希望として再就職を希望しないという形で、でも、しかしながら、それは本当にその人の意思であったかどうかというのは、私、そこまでしっかりしたデータを持っているわけではありませんけれども、その九三%が該当せず離職者ゼロとおっしゃられた回答に対しては、私は疑問を感じるところです。

 昨年度、基準に該当しないで雇用が継続されなかった一・八%、約七千六百人という方々についてお伺いいたします。

 これらの労働者が働いていた企業を大企業や中小企業という分類分けをしますと、大まかに言ってどのような比率になるのか、教えていただけますか。

中沖政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、離職した数、七千六百二十三人というのが原数でございますが、大企業、中小企業別に見てまいりますと、三百一人以上の規模の企業では五千八十三人、三百人以下の中小企業では二千五百四十人となっております。したがって、割合で見ますと、大企業が六七%、中小企業が三三%でございまして、基準に該当しないことにより離職した方全体の三分の二を大企業が占めております。

 次に、基準に該当しないことによりまして離職した方が、それでは定年退職者の中でどのぐらいを占めているのかということを規模別に見てまいりますと、大企業の定年到達者は約二十四万人でございまして、基準に該当しないことによる離職者の割合は二・一%でございます。また、中小企業の定年到達者は十九万五千人でございまして、基準に該当しないことによる割合は一・三%となっております。

 こうした数字を見てまいりますと、中小企業の方が高齢者雇用により積極的に取り組んでいるということは言えると思います。

小林(正)委員 今御答弁をいただきましたが、そのことを踏まえまして、次に、基準制度を存続させる経過措置について質問いたします。

 このたびの改正案では、厚生年金報酬比例部分の受給開始年齢に到達した以降の者を対象に、基準を引き続き利用できる十二年の経過措置を設けるとされております。

 現状、老齢厚生年金は、受給し得る年金の一部にしかすぎず、それだけで生活ができるだけの十分なものではないと思います。

 私は、先ほど中沖政府参考人もおっしゃられた、雇用と年金の接続をさらに進めるべきではないかと思います。厚生労働省として、そういう前向きな姿勢で今後も進めていただくことを期待しておるわけですが、厚生労働省としての御見解をお聞かせください。

小宮山国務大臣 高齢者の雇用制度につきましては、これまでも、高齢期の働き方のことと年金の支給開始年齢の関係などから制度改正を重ねてきています。具体的には、平成十六年に、厚生年金の定額部分の引き上げに合わせて、雇用確保措置を原則義務化しています。

 でも、先ほども申し上げたように、現行制度のままですと、例外措置として継続雇用の対象者となる高齢者に係る基準を定めることができるとされていますので、このままだと、来年四月以降、無年金、無収入の人が生まれる可能性がありますので、この制度を廃止して、雇用と年金を確実に接続させることにしています。

 また、厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢に達した人に対しては、継続雇用の対象者を定める基準を引き続き利用できる経過措置を設けることにしていますけれども、可能な限り希望者全員を対象とする制度とすることを検討するように、公共職業安定所の訪問などによって啓発指導などを実施して、委員が言われるように、なるべく働ける環境をつくっていきたいというふうに考えています。

小林(正)委員 ありがとうございます。

 少し時間をさかのぼりまして、私は、本年三月七日の厚生労働委員会におきまして、この法案に関連する質問をさせていただきました。そのとき、私は、全ての働く人々に対し、平等に継続雇用の機会が与えられるよう企業に義務づけるべきだと思うという意見を申し上げました。企業の恣意的な選択で継続雇用が妨げられることがないと考えてよろしいですかという問いに対し、それに対し答弁に立たれた、今こちらにいらっしゃる中沖政府参考人は、企業の負担軽減を認める経過措置についての説明をされた後、年金支給年齢までは希望者全員の継続雇用が担保されるわけでございまして、年金と雇用が確実に接続するような内容になっているわけでございますと述べられました。

 今、この答弁を振り返ってみますと、企業の負担軽減を認めるいわゆる経過措置があることと、希望者全員の継続雇用制度の担保は、やはり矛盾するのではないかと考えます。この点についてどのようにお考えでしょうか。

中沖政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の法案では、先般も御説明いたしましたとおり、老齢厚生年金の報酬比例部分、この支給開始年齢の段階的な引き上げを勘案しまして、雇用と年金が接続する年齢、支給開始年齢に達した後は継続雇用の対象者基準を利用できる特例を認める経過措置を設けているわけでございまして、先般の答弁はこの措置について御説明を申し上げたものでございます。

 この経過措置でございますが、やはり、今後、年金を受給できる年齢が引き上がってまいりますと、どうしても継続雇用の希望者がふえると見込まれております。また、今回の改正で、希望者全員、継続雇用ということになりますと、企業によってはこれまで以上の対応を求められる場合がございます。企業内の制度を丁寧に整備していただく必要があると考えられることから、相当程度の準備期間を設けることが適当であることを考慮いたしまして、雇用と年金が接続していることを前提とした形で経過措置を設けたものでございますので、御理解を賜りたいと思います。

小林(正)委員 あわせてお伺いいたします。

 政府の意思としては、あくまで希望者全員の継続雇用が原則であるということでよろしいのでしょうか。その点を確認させてください。

西村副大臣 今回の法案では、希望者全員の継続雇用制度、これを基本としております。雇用と年金の接続という法案の趣旨を曲げない範囲で、しかしながら、企業内で丁寧な整備をしていただくこともございますので、企業の負担を考えて、老齢厚生年金の報酬比例部分の段階的引き上げを勘案した経過措置を設けているということになっております。

 また、ここからは大臣の先ほどの答弁とも重なりますが、経過措置は設けることにしておりますけれども、可能な限り希望者全員を対象とする制度とすることを検討するよう、公共職業安定所の訪問等によって啓発指導等を行ってまいりたいと考えております。

小林(正)委員 ありがとうございます。

 今、厚生労働省としての意思を確認できましたので、対象者基準の現状について少しお話をさせていただきたいと思います。

 労働現場を見ますと、継続雇用制度の対象とならない者の範囲が広過ぎたり、あるいは定年を迎える前のちょっとした失敗などによって継続雇用の対象外とされてしまう例などが残念ながら見受けられます。高年齢者の生活を考えるのであれば、継続雇用の例外は、会社にとってはかり知れない大きなダメージをもたらしたとか、あるいは完全に働けないような健康状態であるといった、極めて限定的でなければならないと思います。

 昨日提出されました民主党、自民党、公明党による三党の修正案では、厚生労働省が高年齢者雇用全体に関するガイドラインを定めることになっているようでありますが、継続雇用の対象外とされる範囲は、著しい心身の故障など、限定的でなければ、一生懸命働いている勤労者にとっては安心できないと思います。そのあたりは厚生労働省も修正案の提出者も共通した認識を持たれていることと思いますが、まずは提出者から、私の心配は当たらないというぜひ前向きな御答弁をいただけますでしょうか。

岡本(充)委員 御質問いただきました修正案の趣旨は、原案の継続雇用制度、希望者全員を対象とする、こういったものを基本とするというものは変わっていません。その中で、定年に至る前であっても就業規則の解雇、退職事由に該当する者については離職をさせるということができることから、定年後もこういった離職をさせるということができる、例外的ですが、できるというふうに解しています。

 修正案では、こういったことを労使双方にわかりやすく示すために現場での取り扱いを指針として定めるということにしたものでありまして、あくまで継続雇用制度の例外は限定的なものだ、こういうふうに理解していただいて結構だと思います。

小林(正)委員 あわせて政府にもお伺いいたします。

 ただいま提出者の答弁と同様の認識を持たれているかと思いますが、改めて確認させていただきたいと思います。

小宮山国務大臣 労働政策審議会の建議では「就業規則における解雇事由又は退職事由に該当する者について継続雇用の対象外とすることもできる」としていまして、「この場合、客観的合理性・社会的相当性が求められる」旨、示されています。

 厚生労働省としましては、高年齢者雇用確保措置に関する留意点としては、労働政策審議会の建議ですとか国会での御議論を考慮しながら、所定のプロセスを経て策定をしていきたいと考えています。

小林(正)委員 今の御答弁を伺いまして、私は、本当にそうなのかなというふうに感じました。

 繰り返しになりますけれども、本来、私は改正される法律の中にも経過措置が残されていることは余り感心いたしません。しかし、それは百歩譲って認められたとしても、少なくとも今働いている方々のマイナスになるような法律であってはならないと思うのです。

 具体的に申し上げますと、例えば、現在、ことし五十五歳の人が、今の段階で継続雇用の基準を満たしていない、六十歳になった時点で継続雇用になりませんと、まだ五年も時間を残しているのに言われてしまうようでは、働く側の意欲というものは非常にそがれてしまうのではないかと考えるわけです。そういうことがないように、企業側をよく指導していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 今、修正案提出者と私から答弁させていただいたとおり、これは、やはり企業の方の経営実態も見なければいけないわけですから、要は、年金も、それから収入もなくなるということがないように、そこを配慮しながら経過措置をしていますので、御懸念は当たらないというふうに思います。

 それで、今の御質問ですけれども、このたびの改正では、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みを廃止することにしています。これによって、年金の受給開始年齢以前に基準を使って対象者を限定することがなくなりまして、労働者の不安が解消できると考えています。

 このほか、このたびの法改正では、勧告に従わなかった企業名を公表することができる規定を設けていますので、これも活用しながら、高年齢者雇用確保措置の未実施企業の指導などを確実に行っていきたいと思っています。

 また、再雇用を拒否された労働者については、現在、各労働局の総合労働相談コーナーで相談を受け付け、労働局の助言、指導またはあっせんなどによって救済を図っています。

 引き続き、労働者の不安が解消されるようにしっかりと対策を講じていきたいと考えています。

小林(正)委員 今大臣が述べられた答弁というものは、勤労者の方にとっては非常に希望を持たれる御答弁であったと思います。それが制度として本当に施行されることを私は心から願っています。

 最後の質問になりますけれども、体力的な問題あるいは仕事上のささいなトラブルといって再雇用されない方々が、そういう不安が、今大臣の答弁で払拭されたということを私は願っているわけですが、そういう方たちにもしっかりと思いをはせていただき、そして、この高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案というものが、しっかりと雇用者にとっていい法律になった、そういう法律であることを私は願いまして、質問の時間を少々残しておりますが、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池田委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 この高年齢者雇用安定法については、私、国会でも何度も質問をしてまいりました。この間、基準が削除をされるということ、雇用の継続は必ず必要であるという観点から、非常に待たれているという声も聞こえています。しかし、同時に、非常に心配されていることもある、手放しでは喜べない状況があるのではないか、このように思っております。

 それで、最初に伺いたいのは、継続雇用制度の対象者を限定できる基準、これを削除した理由について。これが、要するに、まず、どの程度基準というものが採用されていて、それにどういう問題があったと考えているのか、認識を伺いたいと思います。

西村副大臣 お答えいたします。

 継続雇用制度ですけれども、これの導入によって、高年齢者雇用確保措置を講じている企業のうち約六万二千社、率にいたしますと五六・八%が継続雇用対象者についての基準を設定しております。

 この基準は労使協定で定めることとされておりますので、双方の協議を経て適切に設けられていると厚生労働省としては考えております。

 しかしながら、来年四月から老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げられるため、現行制度のままでは、平成二十五年度において、継続雇用を希望しても六十歳の定年以降に雇用が継続されない、そして無年金、無収入になる方が生じるという可能性があります。

 このため、今回の改正で継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みを廃止いたしまして、雇用と年金を確実に接続させることといたしました。

高橋(千)委員 要するに、確実につながなければならないので基準を廃止したと言った。そうすると、その基準が、やはりつながない役割を果たしていたということになるわけです。しかし、現状は一・八%しかいないのだと言っているわけですよね、基準によって離職をした人たちが。

 それから、現状は、そもそも原則希望する者全員は再雇用できるというふうになっているはずでありますが、違いますか。

西村副大臣 継続雇用制度につきましては、委員御指摘のとおり、基準が設定されていたところでございますけれども、この基準については労使協定で定められるものでありますので、双方の協議を経て適切に設けられているものというふうに考えております。

高橋(千)委員 ですから、基準によって合理的な理由があればという条件つきであるけれども、原則希望する方は再雇用が認められるというのが現行制度でもあったと思いますが、間違いありませんね。

西村副大臣 それは、希望者の方を対象とするということで、そのとおりでございます。

高橋(千)委員 まず、そこが大事なんです。原則希望する人は全員なんだと。だから、何か基準で、経過措置をとってまでつながなきゃいけないということは、逆に言うと、その基準の持っている意味が、労使双方云々とおっしゃいましたけれども、恣意的に労働者を選別する役割を実は果たしてきたんだということなんです。この問題意識があるかということが言いたいわけです。

 私、この問題、何度も取り上げています。その基準といっても、とても合理的なものとは言えないもの、例えば、欠勤が一日でもあったらだめだとか、ラジオ体操に毎回出ているだとか、花粉症がないこととか、眼鏡をかけていないこととか、これは誰でも外せるんじゃないのというような要件を幾つも並べて、それが、いずれかではなく、かつという、要するに全部満たしていなければ合格しませんよというような基準もありました。

 それは極端な例かもしれません。でも、そういう例が幾つもあったということをこの場で紹介して、ハローワークがきちんとして、それが恣意的に労働者を選別するものであってはならないということで答えてきたのではなかったかなと思うんです。

 ですから、そういう問題意識を持っていますかということを聞いています。

小宮山国務大臣 それは、そういう問題意識はございます。

 労働政策審議会の建議の中でも、その例外、対象外とするのは、客観的合理性、社会的相当性が求められるということを示していますので、今委員がおっしゃったようなことは、そういう社会的相当性に当たらないものもあるというふうに思いますので、そこはしっかりと対応しなければいけないと考えています。

高橋(千)委員 基準は残るわけですから、今も経過措置として。ですから、ここはきちんと確認をしておかなければならないと思うんです。恣意的に対象者を選別することがあってはならないのだということを重ねて指摘をしたいと思います。

 同時に、継続雇用制度を採用している企業は八割強だと。要するに、三つの選択肢があるんだけれども、圧倒的に、多くは継続雇用制度ということを採用しているんですね。

 ただ、問題は、その再雇用後の処遇についての規定がございません。ですから、再雇用を条件に、大幅な賃金引き下げ、あるいはパートという非正規化、あるいは、NTTが代表的でありましたけれども、今回見直しをしましたが、定年を早める。もう五十歳が定年だ、そこから先は再雇用ということがございました。つまり、再雇用制度を使うことで、逆に労働条件引き下げのツールにしていた、こういう問題があったわけですね。定年の問題については、この法律の世界では、なかなかこれは言えませんということが当時の見解でありました。

 こういうことについて、つまり、処遇については何にも書いていないんだけれども、どういうふうに考えていらっしゃいますか。

小宮山国務大臣 継続雇用制度で労働者を定年後に再雇用する場合は、新たな労働契約を締結することになりまして、勤務場所ですとか勤務内容などの条件は労使の合意で決まります。

 その際に、事業主が提示する労働条件については、高齢者の雇用の安定というこの法の趣旨に合致してあるものが当然必要だと考えます。

 裁判例でも、具体的状況に照らして極めて過酷で、勤務する意思をそがせるようなものは高年齢者雇用安定法の目的に反するとしているものもあります。

 厚生労働省としましては、高年齢者雇用確保措置を実施する上での留意事項を大臣告示で示して、この措置が各企業で十分な労使協議のもとに適切に有効に実施されるように指導を行っていきたいと考えています。

高橋(千)委員 やはり、国が年金の支給開始年齢を法律で段階的に引き上げたわけですけれども、企業に言わせれば、国が勝手に法律を決めて、俺たちに押しつけるのか、そういう論理があるわけですよ。それを非常に強く言われた、批判もしてきた。だから、国としても強く言えない、こういう関係ではうまくないわけですね。

 これを逆に逆手にとって、定年を早めるチャンスだとか、もともと仕事はずっと必要だし、人手も必要なんだ。だって、団塊世代が今大量に定年を迎える時期でもありますから、圧倒的に人手は必要なわけですよね。その必要な人手を、ベテランを安上がりに使うということで逆に使っているということも現実としてはあるわけですから、今、大臣告示ということをおっしゃいましたけれども、今の精神がきっちりと入るように指摘をしていきたいと思います。

 先ほどの質問の中で経過措置のことを言いましたので、ちょっとここは飛ばして、次に進みたいと思います。

 それで、九条の二項に新設された特殊関係事業主、グループ会社のことをいうと思うんですが、この事業主との関係が具体的にどういうものを意味するのでありましょうか。

 これは、資料の三枚目に、継続雇用制度の雇用先の特例ということで出されています。今回、グループ会社にもその継続雇用先として対象範囲を広げたわけであります。

 それで、私は、二〇〇六年の十二月十二日、これも資料につけてございます、最後のページを見ていただきたいと思うんですけれども、質問主意書を出しています。

 それで、この問題について、このように質問しているんですね。「子会社に再雇用させる場合、本社内に雇用確保措置を設けず、一〇〇%丸投げ方式でもよいのか。また、日常的に資本関係が希薄な関連会社や無関係な一般会社でもよいものか。」こういう質問をいたしました。

 それに対して、「実際の企業における具体的な事案に基づき個別に判断する必要があると考えるが、子会社等で雇用しようとする場合に親会社として高年齢者雇用確保措置を講じたとみなされるためには、定年まで高年齢者が雇用されていた企業と当該子会社との間に、両者が一体として一つの企業と考えられる程度の密接な関係があり、当該子会社において継続雇用を行うことが担保されていることが必要であると考える。」このような答弁がございました。

 これは大変重要な答弁だと思います。「両者が一体として一つの企業と考えられる程度」、これは、やはり大きな企業になればなるほど、グループ会社のパートナー会社ですとかそういう形で、関係企業というともう切りがなくなってしまうわけです。でも、そういうときに、こういう表現があったということで、これは大きな歯どめになったと思います。

 実は、いろいろな企業の問題を取り上げていたんですが、このときはJRを念頭に置いて質問いたしました。JRはこの後、エルダー制度ということで、直接JRが雇用関係を継続するという形で再雇用するという制度に切りかえたわけであります。

 それで、今回、グループ会社ということでくくるとどこまで広がるのか、その基準をまず聞きたい。それから、今度の法改正では、私が同じ質問をしたとすれば、ここの部分、「一体として一つの企業と考えられる」、ここの部分がどういう表現ぶりになるのでしょうか。

小宮山国務大臣 この改正法案によりまして継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲を拡大する場合であっても、定年後の安定した雇用を確保するために事業主が責任を果たしたと言える範囲で定める必要があると考えています。

 この範囲については、ほかの法令のいわゆるグループ会社のように、意思決定を支配し、または重要な影響を与えられる関係にある範囲を想定しています。建議に示されましたとおり、一つは親会社、そして子会社、また同一の親会社を持つ子会社間、関連会社などにすることが考えられます。ここにもありますように、子会社については議決権五〇%超、関連会社については議決権二〇%以上などです。

 また、改正法案では、継続雇用する企業の範囲を拡大する場合に、事業主間で引き続いて雇用することを約束する契約の締結、これを要件として求めています。継続雇用の担保が今までよりは明確になるというふうに考えています。

高橋(千)委員 議決権二〇%以上ということでグループ会社は広げるという、資料にも書いているけれども、それ以外の要件というのはありますか。

 何でそう聞くかといいますと、親会社の責任がどこまであるのかということなんです。さっき言ったように、一つのものと見られるという答弁を受けてできたJRのエルダー制度、これでさえも、現実はなかなかそうはなっていないわけなんですね。

 出向扱いとはなっているんですけれども、御存じのように、JRというのは大変幅広く関連会社を持っておりまして、ホテルとか広告会社までいろいろやっている。賃金が十万ちょっとであるとか、ロッカーもないとか、仕事内容がわからない、誰も教えてくれない、一度あっせんを断ると何にも、これでチャンスはないですよという形で、結局、再雇用のチャンスが奪われる。要するに、自分がやったこともない仕事を、あなたにあっせんしましたよと言われて、それは無理ですと言ったら、もう義務は果たしましたということになっては困るわけですよね。

 そういう意味で、やはり親会社が本人の希望をちゃんと聞いて責任を果たす、そのくらいのことがなければ、幾ら何でもこれは広げ過ぎよということになる。つまり、事実上の、それは無理ですということが、イコールやめざるを得ないのかなということになりかねないわけですが、いかがでしょうか。

津田大臣政務官 高橋委員にお答えを申し上げます。

 御指摘をいただきました点でございますが、今回の改正によりまして、継続雇用制度対象者は拡大するわけであります。同一の企業の中だけで雇用を確保するには限界がある、そういう企業も出てくるだろうということを想定いたしております。

 このため、グループ内で雇用の機会を確保できるよう、労働政策審議会での建議を受け、他の法令に倣い、事業主の責任を果たしていると言える範囲、二〇%ということもございましたが、継続雇用制度で雇用される企業の範囲を拡大することにしているわけでございます。

 当然さまざまな問題点も出てくるだろうというふうに思っております。例えば、再雇用を拒否された労働者、そういう場合には、現在各労働局に開設をいたしております総合労働相談コーナーで相談を受け付け、労働局の助言、指導またはあっせんなどによりしっかりした救済を図ってまいりたい、そのように考えております。

高橋(千)委員 それは、要するに親会社が再雇用を結果としてきちんと担保しましたよということで、責任が持てる範囲という意味ですよね。

 そうすると、今の、要するに、事が起こってからハローワークに行って、救済、何とか訴えますということではなくて、そこを未然に防ぐ、やはり本人の希望がきちんと聞かれること、とてもじゃないが現実的でない条件、つまり、余りにも広域な配転だとか、やってきた仕事と極端に違うものですとか、そういうことをあらかじめ決めておく必要があると思いますが、いかがですか。

津田大臣政務官 先ほどの大臣答弁の中でもございましたが、大臣告示の中で、今申されたようなことについて、例えば処遇あるいは配置先についての問題については、やはり常識的な範囲の中で、労働者の意見もしっかり酌み上げた中で判断していくようにしていこうというようなこと、高年齢者の希望に応じた勤務、こういうものもしっかり配慮するようになっておるところでございます。

高橋(千)委員 今おっしゃった労働者の意見をきちんと配慮するということ、しっかりとこれは確認をさせていただきたいと思います。

 時間があればもう少しこの続きをやりたいと思うんですが、次は、修正案の提出者の方に質問させていただきたいと思います。

 それで、今の法律のつくりは、高年齢者等職業安定対策基本方針というものがもともと第六条にあるわけですけれども、その「定める事項」の中に「必要な指針となるべき事項」を書くというふうなつくりになっております。それを、「指針を定めるものとする。」ということで、指針というものの位置づけが明確になったのではないか、特出しされたと思うんですが、その意図をぜひお願いいたします。

加藤(勝)委員 今の御指摘がありますように、もともとは高年齢者等職業安定対策基本方針の中に盛り込むというものが、いわば、まさにおっしゃるように、特出しされて、独立した指針として、今回、法律の中に定めさせていただいた。

 その趣旨は、労政審の建議等もありますので、労使ともにわかりやすい、そういう形にしていくためには、そして、いろいろなものと一緒ということではなくて、特出ししてしっかり示した方がいいだろうということで修正をさせていただいた、こういう経緯でございます。

高橋(千)委員 確かに労政審の建議の中にわかりやすいということは書いてあります。ただ、こういうものを指針にすべきだということは、具体的に、今修正案に盛り込まれていることは書かれてはいないわけですね。わかりやすいという表現しかしておりません。ですから、この指針がどちらの方向を向いているのか、非常に重要な中身になるのかと思うんです。今まで議論してきたような、つまり、恣意的な選別にならないこととか、そういうことをなるべく具体的に書いていくというのが私は大事だと思うんです。

 ところが、この指針、九条の三項に書いていますのは、「第一項の事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用」という中で、括弧して「(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いを含む。)」というふうに書いております。これ、ちょっと非常に具体的になってくるわけですけれども、心身の故障云々というこの表現の意味と、なぜ書かれたのか、伺います。

加藤(勝)委員 先ほど申し上げた労政審の中で、今回、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準は廃止することが適当だということと同時に、就業規則における解雇事由または退職事由に該当する者について継続雇用の対象外とすることもできるとすることが適当だ、こういう建議があるわけでございまして、具体的な就業規則の中で一つ出てきておりますのが、心身の故障云々というのが、例えばモデル的な就業規則の中に盛り込まれている。また、一般的に法令的にも心身の故障という言葉を使っておりますので、それを一つの代表的な事例として書かせていただいている、こういうことでございます。

高橋(千)委員 そうすると、今の答弁の中に解雇事由、退職事由云々ということがありましたけれども、「取扱い」という言葉、この「取扱い」という言葉は、まさしく今の解雇ですとか退職のことを意味しているんですか。

加藤(勝)委員 ですから、通常、雇用関係が、定年以前の場合においても、雇用解雇規則に反すれば当然解雇される、こういうことでございまして、それが再雇用の場合にも、同じような事情があれば、適用され得ることもあり得るよ、そういうことでございます。

高橋(千)委員 では、この「業務の遂行に堪えない者等」の「等」の部分は何が入っていますか。

加藤(勝)委員 これは、例えばモデル就業規則というのが厚生労働省の労働基準局等から示されておりますが、例えば、その中で、「勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないとき。」等々いろいろな事由が出てきておるわけでございまして、そういったものがその中に入ってくるだろう。

 それを踏まえながら合理的なものかどうかということを最終的には判断していただく、こういうことになろうかと思います。

高橋(千)委員 私は、やはりこの条文は非常に重要というか重大だと思っています。

 先ほど来議論してきましたように、やはり、原則、本人が希望すればという法のたてつけではあるんだけれども、恣意的に選別ができる基準がこれまで許されていた、もちろん、労使の合意という条件はあるんだけれども。しかし、労使といっても、なかなかそれが対等ではなかったり、代表する者がわずかしかなかったり、さまざまな職場の実態がある中で、実際には基準が押しつけられてきたという実態もあった。それを取るかわりに、これが出てきたわけです。そういうことになるわけですよね。経団連などはその基準は維持してほしいという要望を出していたわけですから、これが成りかわることにならないのかという懸念を持っています。

 そこで、具体的に伺いますが、障害者差別にならないか、あるいは心身の故障の解釈、これがちょっと極端に広がって、うつ病などで休業している人が退職に追い込まれたり、そもそも、うつ病かもしれないということを申し出しにくい、そういうことになりかねないのではないでしょうか。お願いします。

古屋(範)委員 御指摘の「心身の故障のため業務の遂行に堪えない者」、これは通常働けない場合を例示したものでありまして、他の法律にも例がございます。立法者として、障害者を差別する意図も、心身の不調があることをもって直ちに退職に追い込む意図も毛頭ございません。

 付言すれば、業務の遂行にたえない場合、継続雇用しないことについては、通常の解雇と同様に、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められており、単に障害者であるとか心身の不調があるという理由だけで直ちに継続雇用されなくなるというものではありません。

 議員、うつという例示を挙げられましたけれども、御懸念のある点は全く理解できないわけではありませんけれども、法律が成立した後、修正した条文が正しく解釈されるよう、指針そのものに注意事項を盛り込むなど、きめ細かな配慮をすることが必要だと考えます。

 うつ病、今百万人の時代と言われておりますけれども、誰しも、あるいは家族があすうつになる可能性があります。そうしたときに、ちゅうちょなく使用者側に申し出をして、そして、適切な治療を受け早期に社会復帰ができるような、そういう体制整備をしていくことが必要かと考えております。

高橋(千)委員 この問題では繰り返し委員会で御質問もされ、こころの健康議連もやっていらっしゃった古屋委員が答弁をしていただいたわけですけれども、本来、本人が職の遂行にたえられなければ、数字ももう出ているように、離職を希望することだってできるわけですから、当然、休業もすることもできる。あるいは、仕事をあえてしないような、サボるような、何か特別なものに対してはきちんと懲戒という制度が労契法にございます。ですから、労契法というのは全ての世界に生きるわけですから、何もここに書く必要はないわけです。ここにあえてこれを書くということで、今まで以上の意図がやはり生まれてくるのではないかと考えるのは当然でございます。

 そして、先ほど「等」とは何かという質問をしましたけれども、「等」の中で、結局、定年になる前にこれに該当する人がいた場合に再雇用しなくてもよいというふうな解釈になるわけですよね。

 ですから、再雇用しないということをもって、結局これは事実上の解雇と等しくならないか、これはやはり解雇権濫用につながるおそれがあるのではないかと思います。しかも、それを労使協議ではなく国が指針で定めるということは、やはり潜脱している、私はこのように思いますが、いかがでしょうか。

加藤(勝)委員 今の御質問の中の、そもそも就業規則における解雇等を決めた事象に基づいてというお話でございますから、そこから何か一歩踏み出すという話ではまずないということを申し上げておきたいと思います。

 それから、今の労使協議云々というか、むしろ、労使協議ではなくて原則適用する、そうすると、その原則の適用に当たってどう考えていくべきか、それをきちっと労使双方がわかりやすいようにしていこうというのが今回の趣旨だ、こういうことでございます。

高橋(千)委員 逆に、労使という部分が法律からなくなっているわけですよね。要するに、基準のところで労使が出てくるわけですから、そこが今とれて、指針ということになった。そうすると、逆に、労使の議論の中でしっかりと雇用の確保、いわゆる逸脱して解雇強要になるんじゃないかとか、そういうことを争う権利を持っていたものが、指針という形で、こういう規則にあるんだからこういうときはとなってはならないということが、非常に危機感を持っているわけです。つまり、選別基準を廃止するという踏み込んだ改正を提出する一方で、新たな選別のルールを持ち込んだことにならないかという危機感を持っています。

 与党の提出者と大臣に最後に一言ずつ聞いて、終わります。

岡本(充)委員 先ほども答弁させていただきましたけれども、基本は、継続雇用をして、年金と雇用が接続するということをしっかり確保していこう、こういう中で、これまでいわゆる現場で行われてきた解雇事由に相当するものについて、今回、定年後も解雇事由に相当するような方については残念ながら離職していただく可能性があるということを私は先ほども述べたわけでありまして、決して、新たな選別基準をつくろう、こういうことでこの修正案を出しているわけではないということをお話をしておきたいと思います。

小宮山国務大臣 今、修正案提出者が述べたとおりでございますので、御懸念がないように対応していきたいと思います。

高橋(千)委員 選別の可能性を残した、解雇の可能性を残したということで、非常に問題があると思います。

 この点については、実は修正案はきのう出されたわけですので、もっと十分な審議が必要だということを指摘して、質問を終わります。

池田委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうのこの質疑に当たっては、いろいろ、質問の順番あるいは時間等の御配慮をいただきました。委員長初め理事会の皆さんの御配慮に感謝を申し上げたいというふうに思います。

 高年齢者雇用安定法の改正案ということで、言ってしまえば、またしても雇用に関する規制強化の法案であるわけですよね。こういうことをやって高齢者を含めたより多くの人に安定雇用がもたらされる、こういうふうに思っていらっしゃるんでしょうか。

 これまで何度も、つい先日もですけれども、エビデンスに基づいた政策立案になっているのかということを問うてまいりました。

 関西経済連合会は、二〇一三年に希望者全員の六十五歳までの雇用を義務づける法改正がなされた場合、日本企業全体の賃金、社会保険料の負担増は三・六兆円になって、企業の営業純益を二一%押し下げる、こんな試算も公表しているところであります。

 これが正しい試算であるかどうかはわかりませんが、では、政府は、今回の法改正による企業の負担増、つまりは、賃金、社会保険料の増をどのぐらいになるというふうに見積もっておられるんでしょうか。お伺いをしたいと思います。

中沖政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の基準制度の廃止によりまして新たに継続雇用制度の対象とする必要がある定年退職予定者でございますが、先ほど来私どもの方で答弁しております現在離職した方の数、一・八%、七千六百人という数字をもとにした場合、大体、毎年、最小で約一万、最大で五・五万人程度と見込んでいるところでございます。

 ただ、その一方で、団塊の世代、これは一つの年齢に二百二十万という大変多くの方がいらっしゃる世代があるわけでございますが、この世代が今後数年間で六十五歳を超えてまいります。したがって、当然、大量退職というふうな事態があるわけでございます。こうしたことを前提にいたしますと、今後十年間、二〇一〇年から二〇二〇年の間に、六十歳から六十四歳層は約百五十万という非常に大きな数が減少するわけでございまして、社会全体、マクロで見ると、先ほど言ったような数字が相殺されまして、影響は限定的ではないかというふうに考えております。

 なお、具体的な負担増でございますが、やはり、雇用確保措置の具体的な中身、これは各企業がそれぞれ自由に決める形になっております。しかも、高齢者の方は、個人差が大変大きくなって、健康状態、体力もいろいろ多様になってまいりますし、また、就業のニーズも多様化してまいりますので、どの程度の数の高齢者が雇用されることになるか、なかなか難しいものもございます。

 また、雇用の形態、処遇も個人ごとに異なっておりまして多様であるため、人件費等の負担も一様ではないということもございます。

 さらに、高齢者の雇用、単にコストということではなくて、貴重な戦力として利用するという部分もございますので、労働の利益もあることでございますので、なかなか定量的に示すことは困難だということでございます。

柿澤委員 労働契約法のときもそうだったんですが、定量的に示すことは困難だ、こういう話になってしまうわけであります。

 高齢者の皆さんも、継続雇用された場合、それは一概にコストがふえるという側面ばかりを強調することはできない。確かに、貴重な戦力として、これまで培ったキャリアを生かして働き続けていただくということは非常に大事だというふうに思います。思いますが、厳しい経営環境にある中小企業などでは、高度な技術を有する高年齢者はともかく、希望者全員の雇用確保措置を講ずることは、これは本来非常に困難ではないかというふうにも思います。

 これは、希望者全員を継続雇用するというこの法改正の対象を例えば一定規模の企業に限定する、例えばパートの社会保険の問題でいえばそうした対応もとられているわけですので、こうしたことを考える余地がないのかどうか、お伺いをしたいと思います。

小宮山国務大臣 来年の四月から厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢は六十五歳へ引き上げが始まって、まず六十一歳になるわけです。パートの場合は、今働いている人たちの処遇というか、社会保険の適用を拡大して安定させようということですが、今回の場合はちょっとケースが違って、これを企業の規模別にしますと、どうしても、そこで途切れてしまうと全くの収入がなくなる、無年金になる、そういう人が出てきてしまいますので、これを規模別でやるということは適当ではないというふうに思います。

 確かに、事業者の方の負担ということもございますので、高年齢者に適した作業施設の改善、職域の拡大、配置、処遇の考慮、勤務時間制度の弾力化などをお願いしていますので、こうした取り組みに対する助成金の支給ですとか、高齢者の雇用アドバイザーの派遣などの援助を行っていきたいというふうに考えています。

 先ほどおっしゃっていただいたように、企業にとっても、やはりこれから働く人数が少なくなっていく中で、高齢者の方に働き続けてもらうメリットもあるわけですから、その負担とメリットで、過剰な負担にならないように、こうした助成金などの仕組みも使って、支援はしっかりとしていきたいというふうに考えています。

柿澤委員 そもそも、希望者全員を継続雇用しなさい、こういうふうに義務づけるということについては、憲法二十二条及び二十九条を根拠とする、判例上認められた企業の採用の自由に抵触をするのではないか、こういうふうに言われている部分もあります。

 こうした点について、そうした抵触の懸念についてはどのように御見解をお持ちになられているか、お尋ねをしたいと思います。

津田大臣政務官 柿澤委員にお答え申し上げます。

 昭和四十八年十二月十二日最高裁判決、三菱樹脂事件で、自己の営業のために労働者を雇用するに当たり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件で雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる旨、判示をされておるわけでございます。

 今般の高齢法改正について見ますと、一般的な労働者の採用の場面と異なり、これまで雇用してきた労働者のうち引き続き雇用する場面でございます。使用者に完全な選別の自由が与えられているという状況ではないというふうに考えるわけでございます。

 また、高年齢者雇用安定法は、個々の労働者を雇い入れる義務を課しているわけではなく、定年の引き上げ、継続雇用制度の確保等の措置を講じることを義務づけているものである。

 さらには、これまでも、六十五歳までの雇用の確保は原則として各企業の義務というふうになっておりまして、既に社会のルールの一部であったわけでございますが、このたび、その例外である基準制度を廃止することによって、さらに社会のルールとして定着をし、それに応じて事業主の裁量の幅も限定されることになるというふうに考えることであります。

 こういうことから、今般の基準制度の廃止につきましては、事業主の採用の自由との関係で問題となるものではないというふうに考えられるわけでございます。

柿澤委員 朗々と御答弁をいただきました。

 私は、この措置そのものが大変問題だという立場に立って御質問申し上げているわけでは必ずしもありません。一般的に、この政権になってから、いろいろな形で雇用保護、労働者保護、そうしたことに関する政策が推進をされている、このことがマクロ的に与える影響は果たしてどうなんだろうか、こういう観点に立ってお尋ねをさせていただいているつもりであります。

 そういう観点でいうと、このような雇用維持に関する規制強化ばかりを行っていると、企業経営の硬直化を招くだけではないかというふうにも思うんです。

 一方で、労働市場の流動性を高める、こうした政策が必要になってくるのではないかというふうに思います。そうしないと、結果的に、高齢者の雇用を維持する一方で、先ほども議論でありましたけれども、若年者の雇用にしわ寄せが行く、こういうことになりかねません。

 ただでさえ、日本はOECD加盟先進国の中で正社員の解雇が最もしにくい国である、こういうふうにも言われているわけです。正社員で入社すれば定年まで安泰、希望者全員が継続雇用、しかし、そこから外れると、途中からその生涯安心コースに入っていくことは非常に難しい。結果的に非常に不平等、不公正な雇用慣行になっている、そうも言えるのではないかと思うんです。

 そうした中で、労働市場の流動化という点で申し上げると、今までさまざまに提起をされてきた課題として、正社員の解雇ルールの明定、こういうことがあります。

 例えば金銭解雇、こういうことが言われてきたわけですけれども、こうした解雇ルールの明定等を行って、新卒採用時点で、入り口で人を選別する、新卒一括採用、年功賃金、終身雇用、こういった雇用慣行の見直しを同時に進めていく。企業は、そういう意味では、安定的な雇用を維持する責任を負いつつ、しかし、一方で、企業のそのときそのときの経営の必要性に応じて人材の入退室を行えるようにする、こうした見直しを同時に進めていかなければいけない。そうでなければ、私は、既得権益を持つ中高年の正社員が得をするだけだ、こういうことになってしまうのではないかと思いますが、この点、御見解をお願いいたしたいと思います。

小宮山国務大臣 柿澤委員がおっしゃる御意見、一部ごもっともだというふうに私は思います。

 というのは、もっといろいろな環境を整備した上で流動性を図っていくということは、私もそれは方向性としてよいことだと思うんですけれども、いろいろな状況が整わない中で、バブル崩壊後、新卒の採用抑制をしたり、成果主義型の賃金を導入してそれがなかなかうまくいかなかったり、何より、非正規雇用の労働者がふえている、こういうような実態の中で、逆に今、新卒の一括採用とか年功賃金とか、長期雇用の慣行が見直されている部分も実はあるのではないか。

 ですから、労働者が安心して働いて技術もスキルアップしていくということは企業にとってもメリットがあるわけですよね。ただ、いろいろ転職をしたいという労働者については、そういう環境をちゃんと整えた上で、そういう形もできるようにする必要があると思います。

 ただ、例えば、今、年金のポータビリティーがないだとか、これは私どもが言っているように、一つの年金制度にすれば解決するということもございますが、いろいろな形で、転職の市場を含めて環境が整っていない中で、そちらばかりが先行すると、今度は安定性が失われていくというところの時点に今あるんじゃないか。

 ただ、このままで、ずっと長期安定雇用ということだけを志向していいとは私も思いませんので、それはいろいろな状況の中で、これは労使がしっかり話し合う、また、政府としても環境を整えていく、そういうことが合わさって、徐々に進めていくべきことなのではないかと私は考えています。

柿澤委員 徐々に進めていく、環境整備をしながら、こういう話でありますけれども、とかく、この永田町かいわい、霞が関かいわいで中長期的な課題だというふうに位置づけられたものというのは、やるというような基本的な姿勢を見せつつ一向に着手をされない、こういうことになる場合があります。

 環境整備が必要だ、こういう点については私はそれは一概に否定的な態度をとるつもりはありませんけれども、しかし、一方で、今現在存在をしているこの雇用労働に関する問題というのは、一方で非常に守られている正社員の皆さんの存在があって、その外側に、そこに入れていない非正規雇用の皆さん、あるいは、そもそも職についていない皆さん、そうした方々の存在がある、そこのギャップが余りにも大き過ぎる、ここなのではないかと思うんです。

 その点でいうと、皆さんの政策の方向性というのは、非正規雇用の人たちが、格差があるので、正規雇用になっていくようにどんどん促していこう、そして、企業にはそれを行うように、ある種、規制を強化して義務づけていこう、こういう方向ではないかというふうに思います。

 それをやっていくと、先ほど冒頭に申し上げたとおり、企業の経営の自由度と言ったら、人材にかかわる問題ですから、余り適当な言葉ではないかもしれませんけれども、これはどんどん狭まっていってしまう。一方で、今、いずれ行わなければいけないと言っているような労働市場そのもののあり方の見直しということも、やはり同時並行で考え、議論し、実行していく必要があるのではないかと思います。

 その点、将来そういうことも見据えているというお話は、私もそうなのかというふうに思ったところなんですけれども、方向性として、具体的にこの議論をどういうふうに進めていくつもりがあるのか、あるいはないのか、小宮山大臣に重ねてお伺いをしたいと思います。

小宮山国務大臣 先ほど私は徐々に進めていくと言ったので、中長期的な先の話で今は一切やらないということではありません。ただ、一気に進めるのは環境整備も含めてなかなか難しいだろうということを申し上げたわけです。

 だから、そういう意味で、私どもがしているのは必ずしも企業にとってマイナスになることばかりをしているということではなくて、やはり企業の側も働く側も、それぞれ双方がいろいろな形でよりよい形を、これは労使で話し合うことも含めてやっていかないと、これだけの超少子高齢社会で内側向きだけをやっていたのではとても国際的にもやっていけないわけですから、今、政府としては、全体としていろいろな、これから成長していく分野に投資をするということも考えていますし、規制だけを企業に強化するというのではなくて、そういう方向で努力をしているところにはインセンティブとしていろいろな助成をするとか、そうしたことも含めて、これは私は中長期的なものだから今はやらないと言っているのではなくて、徐々にいろいろ環境も整えながらやっていく必要があるということを申し上げています。

柿澤委員 先ほど私が申し上げている間、いろいろ首をかしげておられたんですけれども、改めて申し上げると、やはりこの政権になってからの政策というのは、基本的に非正規雇用の方々を正社員化する、こうしたことを企業に求めていく、こうした政策であったというふうに思います。そして、正社員と非正規雇用の皆さんとの間の格差そのものを両面から見直していこうという話には必ずしもなってこなかったのではないかというふうに思っています。

 一例を挙げたいと思います。日本郵政グループです。

 日本郵政グループの郵便事業会社、一昨年、亀井郵政改革担当大臣、何となく、すごい昔に感じますけれども、鶴の一声ならぬ亀の一声で、希望者全員正社員にすると言ったんですよ。非正規社員、郵便事業会社で六千五百人、全体で八千四百人、正社員化した。ところが、平成二十三年には業績を悪化させて、何と四万人規模の雇いどめをして、なおかつ、平成二十四年度には新卒採用を中止せざるを得なくなってしまったんですよね。結局、一部の非正規社員の方々を正社員に登用する、こういうことをやった結果、何倍もの非正規社員に雇いどめのしわ寄せが行って、しかも、若年者に対する新卒雇用の門戸を閉ざす結果ともなってしまった。

 経営状況を無視してコスト増につながるような規制をかけると、結局、雇用全体も減少させてしまう。そして、結果として、利益を享受するのは正社員に登用された既得権益を持つそうした方々だけ、こういうことになってしまった。私はこれは典型的なケースではないかと思います。しかも、政府の亀の一声がこうしたことをもたらしている。

 こうした現実を大臣はどういうふうに考えておられるんですか。

小宮山国務大臣 それは確かにうまくいかなかったケースだと思います。そういうことも含めて、先ほどから私は、やはり環境整備をして、現実的な形で一歩ずつ進めていかなければいけないということを申し上げているんですね。

 先ほど、全部正社員にするのが今の政権の方向じゃないかと言われましたが、必ずしもそういうことではなくて、もちろん、短時間働いても、その時間に見合った労働にちゃんと対価が支払われる、均等・均衡待遇と言っていますけれども、私はできれば均等待遇と言いたいところなんですけれども、諸外国などでも、長時間で働いても短時間で働いても、一時間当たり同じ価値の労働をすれば同じ報酬がある、国際的にはそういうやり方でなっている中で、日本が余りにも正規か非正規かで処遇が違い過ぎる、そのことが問題だと言っているので、全てを必ずしも正社員にしようとしているわけではないということもつけ加えたいと思います。

柿澤委員 その答弁には、私、全く賛成なんです。同一労働同一賃金、極めて大切だと思います。しかし、現実の方向として行われていることがおっしゃったことに合致しているのかどうかは、私自身は一〇〇%は同意はできないと思います。

 話をかえますが、本改正案の背景となった労政審建議、「今後の高年齢者雇用対策について」では、産業雇用安定センターや有料職業紹介事業者を通じた高年齢者の円滑な労働移動の支援を強化すべき、こういうふうにされています。これは、要するに、産業雇用安定センターの事業の拡充を行っていくんですか。

 産業雇用安定センターがどのように言われているか御存じでしょう。ハローワーク以上に役に立たない、存在意義が全くわからない、天下りのためだけの団体ではないか、事業仕分けでもやり玉に上がって、運営費補助の廃止が一旦言われたにもかかわらず、連合も入った雇用戦略対話でひっくり返された、こういう経過があります。この産業雇用安定センターを拡充するんですか。お伺いしたいと思います。

小宮山国務大臣 この改正法案に伴いまして、おっしゃった産業雇用安定センターの事業自体を拡充するわけではありません。この改正法案に伴う企業への支援のための一環として、定年前の高年齢者のほかの企業への再就職を支援する助成金を設けて雇用の機会を確保しやすくすることにしています。

 具体的には、産業雇用安定センターや有料職業紹介事業者の紹介によって、定年の一年前から定年までの間に、失業することなく労働者を受け入れた事業主に対する助成金を新設する。また、中小企業の事業主が労働者の再就職支援について有料職業紹介事業者に委託した場合にその費用を助成する措置を拡充している。そのような形で考えているので、このセンターの事業を拡充するということは考えていません。

柿澤委員 結果として、この労政審建議は、産業雇用安定センターという、事業仕分けでその事業の必要性というものがある意味では非常に疑問にさらされたそうした団体、法人を、ある意味では意義を再確認して頑張ってもらおう、こういう内容になってしまっているんではないかと思うんです。

 同じ労政審建議でジョブカードのことについても書かれています。求職活動支援書やジョブカードの作成、交付について周知徹底が必要である、こういうふうにされているわけですけれども、これについてもやはりさらに推進していく、こういう姿勢であるわけですね。お尋ねしたいと思います。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃりたいのは、平成二十二年度のジョブカード関連事業の仕分けで、ジョブカード制度の政策目的自体、これはここで仕分けされたのにということが委員の御指摘にあるのかと思いますが、ここの仕分けの中でも、政策目的自体は極めて重要だと認められています。事業の問題点について指摘がされましたので、そのために、指摘に基づいて必要な見直しを行った上で、しっかり役立つ制度としてジョブカード制度は進めていきたい。

 労働政策審議会の建議では、求職活動支援書として活用するジョブカードの作成、交付、これを周知徹底する必要があるとされていますので、引き続き着実に実施をしていきたいと考えています。

柿澤委員 このところ数字はふえているというわけなんですけれども、しかし、昨年四月から、公的職業訓練を受ける場合、ジョブカードの取得そのものを基本的に求めるということにもなって、これだと取得者数がふえるのは当たり前だと思うんです。ジョブカードも、求職活動支援書と同じように、現実の就労にどれだけ役立っているか、こういうことがあるから普及が進んでこなかった、それを考えないで取得者数だけをふやそうという政策を行っても、私は意味がないと思います。

 そういう意味で、私も、政策目標そのものでいえば、さっきの同一労働同一賃金じゃないですけれども、反対じゃないんですよ。イギリスのNVQみたいなもので、本当に生かすことができればいいと思います。現状、そうなっているのか、なっていないんじゃないか、こういうふうに私は思えます。

 次に、シルバー人材センターについて、何だか仕分けの弁護人みたいになって何度も何度も恐縮なんですが、高齢者の就労に関してシルバー人材センターが果たしている役割は私は大変重要だと思います。しかし、やはり、事業仕分けで言われたように、全国シルバー人材センター事業協会及び都道府県連合会については、これは、こういうふうに広域に束ねる団体が存在意義があるのかないのか、私ははっきり言って疑問だと思います。

 全国シルバー人材センター事業協会は大半の事業はもう廃止されているわけですし、都道府県連合会も、今申し上げたように、都道府県単位でシルバー人材センターの業務を統括する、こういう意味があると思えません。

 事業仕分けでも、廃止に向けて検討すべきだ、こういうふうな指摘があったはずでありますけれども、その後の検討結果というのはどうなっているか、お伺いしたいと思います。

津田大臣政務官 柿澤委員にお答えを申し上げます。

 平成二十一年に行われました行政刷新会議事業仕分け第一弾終了後、当時の大臣の指示により、厚生労働省内に、仕分け対象の事業の実態を把握し、見直しを検討する、実態把握プロジェクトチームが設置をされました。

 この当該プロジェクトチームが実態調査をした結果、全国シルバー人材センター事業協会については、全国組織の連絡調整、情報収集、提供を行う事業は今後とも必要であるが、都道府県連合会の事業との重複は排除すべきとの評価を受けたわけでございます。

 その評価の対応方針として、全国シルバー人材センター事業協会の事業のうち、都道府県連合会と重複している事業、例えば啓発活動事業、職員への研修事業及びワークプラザ奨励事業等を廃止したわけでございます。

 さらに、補助金の予算額については、仕分け評価結果の三分の一削減を大きく上回る約七割を削減、役員についても、厚労省OBを全廃し、公募に切りかえたところでございます。ちなみに、全国シルバー事業協会への補助金額は、平成二十一年度が三億三千八百万円に対し、平成二十二年度は一億四百万円に低下をいたしております。

 また、都道府県連合会につきましては、事業仕分け第三弾の取りまとめコメントで、廃止ではなく、間接コストの削減努力を求められたため、平成二十三年度において、都道府県連合会に対する補助金を半減し、経費の効率化を求めたわけでございます。平成二十二年度は千六百八十万円に対し、平成二十三年度は八百九十万円になったわけでございます。

柿澤委員 厚労省の天下りをなくした、こういう話を初めとしていろいろ御説明をいただきましたが、公募にしたと言うんですけれども、全国シルバー人材センター事業協会の今のトップは東京都の局長経験者だったと思いますし、また専務理事も東京都の幹部から来ている。しかも、都の関係の天下りポストに重複してついている人がやっているわけですよ。

 シルバー人材センターの管理部門についても、シルバーの会員高齢者が時給七百円で働いているのに管理部門が二倍以上の収入で管理しているのは高齢者いじめではないか、こんなふうに指摘をされています。私、もっともだと思います。こうした管理部門も会員高齢者になってもらえれば、人件費は相当圧縮できる。

 管理部門における会員高齢者の比率は、こういう指摘を受けて、この三年間、どういうふうに上がってきたのか、お伺いをしたいと思います。

中沖政府参考人 シルバー人材センター事業につきましては、先生よく御承知のとおり、事業仕分けの中で予算が大幅に削減されたわけでございまして、運営の効率化が求められております。こうした中、それぞれ各シルバー人材センターにつきましては、管理部門についても創意工夫をお願いしているところでございます。

 ただ、シルバー人材センターそれぞれは独立した法人格を持っておりまして、運営についてはそれぞれのセンターが主体的に決定いたしております。したがって、それぞれ実情に応じた形でそういった予算削減を実施するための効率的な体制を行っており、その方法もさまざまであるというふうに承知しております。

 こうしたことから、管理部門で実際、会員の高齢者をどのぐらい使っているかについては、私どもとして具体的に把握しておりません。

 ただ、そうはいいましても、先生御指摘の方法につきましては、高齢者の就業機会を確保するものでございます。また、シルバー人材センターの運営の効率化につながるものでもございますので、従来から、全国のシルバー人材センター連合の事務局長が集まる会議等の場におきましては、私ども、積極的にこういった形を採用するようにお願いをしているところでございます。

 また、本日先生からも御指摘ございましたので、今後は、その具体的な活用方法、例えば、新規の会員を勧誘する、あるいはセンター自身の周知、広報を行う、また、実際に仕事をとってくる、営業活動を行うといったような具体的な会員の活用方法も示しながら、こういった会員高齢者の方を管理部門で活用していくことをお願いしてまいりたいと考えております。

柿澤委員 最後はよい答弁をいただきました。

 時間も参りましたので、終わります。ありがとうございました。

池田委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 本日、七月二十七日、日本時間ではあすの早朝ということになりますけれども、いよいよロンドン・オリンピックでございます。日本選手団の活躍をお祈り申し上げまして、時間もないので、早速質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 さて、政務三役を初め、厚生労働省の皆様におかれましては、参議院での社会保障と税の一体改革の法案審議、連日大変お疲れさまでございます。よく、社会保障と税の一体改革の議論におきまして、支える側と支えられる側という議論が行われます。

 皆さんのお手元にちょっと資料を一枚お配りさせていただいておりますけれども、ごらんをいただきたいと思います。

 真ん中に、高齢者一人を支える現役世代の人数という図があります。これはよく騎馬戦型から肩車型と言われるような図でございますけれども、しかし、実際には、単純に現役世代と高齢世代の人口比率を見るのではなくて、その下の方の図、むしろ社会保障の支え手である就業者一人が何人の非就業者を支えているのか、こちらの方が重要ではないか、こういう御指摘もございます。

 非就業者は高齢世代とは限りませんし、高齢世代でも就業している人というのはもちろんいます。つまり、高齢者も就労することで社会保障の支え手になる、これが社会保障の持続可能性を維持していく上でも私は大変重要であるんじゃないかな、このように思います。

 そして、何より、先ほど来お話が出ておりますけれども、来年四月から年金支給年齢が段階的に引き上げられるということで、それがもう目前に迫っている。定年後に給料も年金も受け取れずに無収入になる状態を防いで、年金と雇用を確実に接続をする、今回の法改正はまさに喫緊の課題だと考えますが、まず、今回の改正の意義について簡潔に、再度お答えをいただきたいと思います。

西村副大臣 大西委員がお示しくださった、就業者一人が支える非就業者の人数というのは、大変興味深い資料と思って拝見しておりました。

 今回の法改正の趣旨、意義ということでございますけれども、現行制度のままですと、平成二十五年度には、継続雇用を希望しても六十歳の定年以降に雇用が継続されないと、年金も支給されずに無収入になる者が生じる可能性がございます。

 このような事態を回避するために、雇用と年金を確実に接続させるということ、そして、六十五歳までの希望者全員の雇用を確保する必要があるというふうに考えております。

 また、ここからですけれども、やはり少子高齢化が急速に進展する中で、若い人たち、女性、高齢者、障害者などの就労促進を図って、働くことができる人全てが社会を支える全員参加型社会の実現、これは厚生労働省としても、また政府全体としても目指していることでありますけれども、このたびの法改正で継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みを廃止するということにしているものでございます。

大西(健)委員 今御答弁いただいたような意義を事業主の皆さんにもしっかりと御理解をいただいて、社会的な要請に応えていただかなければならないというふうに私も思っております。

 ただし、一方で、円高を初めとする六重苦と言われるような状況の中で、我が国の製造業、大変厳しい状況に置かれております。国内産業の空洞化に拍車がかかっている、こういう中で、皆さんからは、このままでは現役世代の雇用さえ維持ができないというような悲痛な叫びも聞こえております。

 先ほど大臣も引用されておりましたけれども、労働政策審議会の建議の中では、「就業規則における解雇事由又は退職事由に該当する者について継続雇用の対象外とすることもできるとすることが適当である(この場合、客観的合理性・社会的相当性が求められると考えられる)。」との記載があります。

 私の地元では、自動車産業が盛んな地域でありますけれども、例えばラインでの作業、これは、非常に正確さとスピード性を求められる作業を、一定時間にわたってかなりの集中力を持ってやらなければいけない。なおかつ、夜勤のような交代制勤務というのも求められます。そういう中で、非常に肉体的な負担も大きいという業務になります。

 もちろん、その代替できる部署であったりとか関連会社が見つかればいいんですけれども、そういうものもなかなか見つけられない場合に、体力的にこういった交代制勤務になかなかたえられないというような判断がされた労働者に対して、やむを得ず解雇という判断を迫られる可能性も私は考えられるんではないかなというふうに思っております。

 ちなみに、先ほどお話の中にも出ていましたけれども、モデル就業規則では、解雇事由に該当する者として、心身故障のため業務の遂行にたえない者、また成績、勤務態度が著しく不良な者などが挙げられておりますけれども、私が今述べましたような交代制勤務困難者、これが解雇事由に当たって継続雇用の対象外となる場合があり得るのかどうなのかということについて、お答えをいただきたいと思います。

西村副大臣 お尋ねのケースについてでございますけれども、健康上の理由で働けないなど、個別の状況が就業規則に定める解雇事由に該当すると判断された場合には、建議でも示されたとおり、継続雇用しないことも認められるというふうに考えております。

 ただし、継続雇用しなかったこと自体については、建議の中でも示されているとおり、客観的合理性と社会的相当性が求められると考えられますので、裁判で争いになった場合には、その適否は個別の状況に応じて具体的に判断されると考えております。

 なお、健康上の問題がありながら労働者が就労を希望するなど、お尋ねのケースにおきまして、希望どおりにすることが必ずしも本人の利益にかなわないこともあるというふうに考えられますので、まずは当事者同士で十分に話し合って、事業主そして労働者双方の利益にかなう結論を導いていただくことが望ましいと考えています。

大西(健)委員 先ほど来、この委員会での審議でも、恣意的な運用はいけないというお話もありました。でも、今御答弁いただいたみたいに、社会的な合理性があるか、客観的合理性があるかというところだというふうに思いますけれども、高齢者の雇用状況については、業界、また企業によっても、事情というのは私はかなり異なっているんじゃないかなというふうに思いますので、そうした点にも配慮をしてぜひ進めていく必要があるんではないかなというふうに思います。

 さて、次にもう一つ、具体的なケースについてお伺いしたいと思います。

 例えば、定年前、国内勤務をしていたのに、定年後に、海外拠点の立ち上げをするのでその要員として海外に行ってくれというようなことを言われたような場合、それが、継続雇用を希望している本人が承諾するのが難しいような条件を、あえてというか、提示をした場合に、これでも事業主は義務を果たしたことになるのかどうなのか。もし、これがまさに恣意的に運用されれば、継続雇用を希望しても、結果的に解職に追い込まれるケースが出てくるんではないかなというふうに私は懸念をします。

 この点、先ほど高橋委員の質疑の中にもありましたけれども、職務内容の提示というのは、あくまで本人の能力や希望などを考慮して、合理的な配置転換であったり労働時間であるべきだというふうに考えますけれども、この点、いかがでしょうか。

津田大臣政務官 大西委員にお答えを申し上げます。

 継続雇用制度で労働者を定年後に再雇用する場合、新たな労働契約を締結することになるため、勤務場所や勤務内容などの条件は労使の合意で決まるわけでございます。

 継続雇用する場合に事業主が提示する労働条件については、労働者が納得するようなものまでは求められておりませんが、法の趣旨を踏まえた合理的な裁量の範囲内のものであることが必要であるというふうに考えられるわけでございます。

 具体的状況に照らして極めて過酷で、勤務する意思をそがせるようなものは高年齢者雇用安定法の目的に反するとする裁判例もございます。

 厚労省としては、大臣告示で高年齢者雇用確保措置を実施する上での留意事項を示しております。これは、職業能力を評価する仕組みの整備とその有効な活用を通じ、高年齢者の意欲及び能力に応じた適正な配置及び処遇の実現に努めることという大臣告示でございます。この措置が各企業で労使の十分な協議のもとに適切かつ有効に実施されるよう、指導を行ってまいりたいと考えております。

大西(健)委員 今政務官から、希望者が納得するところまでは求められないけれども、やめてくれと言うに等しいようなそういう条件の提示は、さすがにこれは、告示と照らしても、法の趣旨に反するという御答弁だったというふうに思います。

 次に、配付資料の裏面の資料二というのをごらんいただきたいんですけれども、これは、厚生労働省が平成二十三年六月一日に報告をした高年齢者雇用確保措置済みの企業ということですけれども、調査をしたところ、企業の全体の九五・七%は実施をしている。未実施が四・三%。

 ただ、これは、実際には、調査対象全体の中で、私が厚労省からもらった資料だと、六・四%が報告書を出していないというところもあります。それから、三十人以下の企業というのは、これは調査対象に、ここには出ていないわけですけれども、サンプル調査というのをやっているんですけれども、サンプル調査では、やはり三十人以下になると、三十一人以上よりも八・二ポイント、実施済みというところが低くなってしまっています。

 つまり、報告書未提出だとか、あるいは三十人以下の零細企業まで含めると、未実施企業の割合は実際にはもっと大きいのではないかなということが予想されるというふうに言えると思います。

 せっかく法改正をしても、こうした未実施企業が残っている限りは法の趣旨を徹底させることにはなりません。この点、先ほども大臣の答弁の中にもありましたけれども、未実施の企業に対しては企業名の公表というのが今回法案の中にも含まれているということですけれども、ただ、小さいところだと、企業名を公表されても、そんなものは痛くもかゆくもないというところも私はあるんじゃないかなというふうに思います。

 その意味では、例えば、さまざまな助成金だとか補助金みたいなものをとめるとか、そういったもっと実効性のある措置をすべきではないかというふうに思いますが、この点、いかがでしょうか。

西村副大臣 御指摘のとおり、未実施の企業を解消していくということは大変重要なことだと考えています。

 今回の法改正によりまして、勧告に従わない企業の企業名を公表するということも見据えて指導していきたいというふうに考えているところなんですけれども、その実効性についてですが、企業名の公表については、例えば、障害者雇用促進法の雇用率達成指導の場合にも行っております。ここを見てみますと、企業に対する一連の指導の中で、公表に至る前に改善が図られるケースというのが大多数でありまして、公表された企業も、多くは公表後に改善をしているということがありますことから、企業名の公表を前提とする指導には一定の効果があるというふうに私どもでは考えております。

 また、措置未実施の企業に対してですけれども、ハローワークで訪問などによる指導を繰り返し実施してきております。これにもかかわらず何ら具体的な取り組みを行わない企業には勧告書を発出いたしまして、その企業に対しては公共職業安定所での求人の不受理、そして紹介の保留、また、助成金の不支給などの措置を講じております。

 こういった取り組み、また、企業名公表その他の手法を効果的に組み合わせて指導を行ってまいりたいと考えています。

大西(健)委員 企業名の公表というのは意外に効果があるんだというお話でしたけれども、私は、お金をもらえないとかハローワークを使えないとかの方がやはり痛いんじゃないかなというふうに思いますので、そういうことも含めて実効性ある措置をぜひ講じていただきたいと思います。

 先ほど、柿澤委員の話で、民主党はどちらかというと、今まで、非正規雇用の正社員化を図る、こういう政策を力を入れて進めてきたんじゃないかという話がありましたけれども、今回の法改正、これは正社員で定年に達する人を前提にした法改正でありまして、雇用と年金との接続という点においては、非正規労働者として六十歳を迎える人についても同じ課題というのが私は残っているというふうに思います。

 民主党はこれまで非正規雇用の待遇改善にさまざまな形で取り組んでまいりましたけれども、非正規労働者が全労働者のうち三割を占めていると言われる中で、非正規労働者の雇用と年金の接続についても、これは国を挙げて取り組んでいく課題ではないかというふうに私は思いますけれども、副大臣の御見解をお願いいたします。

西村副大臣 定年制を前提とする高年齢者雇用確保措置は、有期労働契約の非正規労働者には直ちには適用されないといったことがあります。しかし、契約が反復更新され、実質的に定年制の対象となる労働者と同等と考えられる場合は、この対象となり得るために、この趣旨を周知しているところでございます。

 いろいろな御議論はありますけれども、やはり、そもそも非正規雇用の労働者については、できる限り正規雇用につなげていくことが重要であると考えておりますし、ハローワークの就職支援、そして各種助成金の支給などで正社員としての就職支援を進めているところでございます。

 また、有期契約労働者に対してですけれども、この有期労働契約が長期間反復更新された場合について、その濫用的な利用を抑制し、雇用の安定を図るため、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約に転換することを盛り込んだ労働契約法の改正案、先日、この衆議院厚生労働委員会でも通していただきましたけれども、国会に提出をいたしております。

 雇用される人の全てが少なくとも六十五歳まで働けるようにすることは重要であると考えておりますので、有期契約労働者も含め、離職する労働者に対しては再就職のための支援を進めることが必要であると考えています。

大西(健)委員 時間がなくなってまいりましたけれども、本法律が施行されても、最終的には、定年時に解雇事由に当たって、結果的に継続雇用の対象にならない者というのは残念ながら必ず出てまいります。こうした者に対して、何らかの社会的なセーフティーネットが必要ではないか。

 具体的には、定年退職の場合、雇用保険は最長で百五十日支給をされるということになっておりますけれども、倒産や解雇による六十歳以上六十五歳未満の離職者については、最長二百四十日の支給ということになっております。

 継続雇用にならなかった者に対する社会的セーフティーネットとして、雇用保険の支給日数の拡充等、これは検討できないのかということについてお答えをいただきたいと思います。

津田大臣政務官 大西委員にお答えします。

 そのとおりでございます。

 この高齢法改正案が成立をし、基準制度が廃止をされ、例外なく高齢者の雇用確保措置が義務づけられた後は、本人が継続雇用を希望しているにもかかわらず、解雇事由に相当する者として離職を余儀なくされた者については、倒産、解雇等による離職者として取り扱われることになります。倒産、解雇等による離職者として取り扱われれば、給付日数は最大九十日延長されることになるわけでございます。

    〔委員長退席、柚木委員長代理着席〕

大西(健)委員 ありがとうございます。前向きな御答弁をいただきました。

 最後に、ちょっと質問の時間がなくなってしまったので、意見として申し上げたいと思いますが、本法案の主眼は、定年と年金受給までの間に無収入の状態をつくらないということにあります。しかし、体力的な問題であったり、家庭の事情であったりで、あえて定年後は働かないという選択をされる方も私はいらっしゃると思います。その場合でも、年金以外に老後の生活資金を得る何らかの方法があれば、これは就労しないということも一つの選択肢だというふうに思います。

 我が国では、個人資産の六割以上を高齢者が所有しているというふうに言われております。また、相続の平均年齢、これも高齢化をしております。そういう中で、例えば八十何歳の方が亡くなって、六十代前半の方が相続するみたいな、老老相続、こういうのもふえてきております。

 高齢者の中には不動産のような個人資産を持っておられる方もいらっしゃいます。私は、自宅や土地など不動産を担保にして、住みなれた自宅に住みながら、年金のような形で老後の生活資金を受け取れるリバースモーゲージ、これを我が国でもっともっと活用すべきじゃないかというふうに思いますが、残念ながら、金融機関によっても、商品を取りそろえてはいるんですけれども、欧米のようになかなか普及は進んでおりません。国交省にこのことをお聞きしようと思いましたが、ぜひこれは進めていただきたいというふうに思います。

 最後に、先日、厚生労働省は、二〇三〇年には就業者数が八百五十万人減るという推計を発表されました。先ほど西村副大臣の御答弁にありましたけれども、女性や高齢者に働き手としてもっともっと活躍をしていただくというのがこれからますます非常に重要になってくるのではないかなというふうに思います。この点、蓄積された知識や技術を持って、労働意欲の高い高齢者というのは、我が国にとって財産と言ってもいいというふうに思います。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

柚木委員長代理 次に、田中美絵子さん。

田中(美)委員 民主党・無所属クラブの田中美絵子でございます。

 本日は、長寿を誰もが喜び合える社会を目指し、雇用環境の整備を図るという、我が国の将来にとって大変重要な法案であります高年齢者雇用安定法改正案の質疑に立たせていただきまして、ありがとうございます。

 私が生まれました昭和五十年の平均寿命は、男性七十一歳、女性七十七歳でしたが、平成二十二年には、男性七十九歳、女性八十六歳と、大変大きく変わりました。世の中も大きく変化しておりますが、私の周りも本当に大変元気な御高齢の方がふえておりまして、大変うれしく思っているところでございます。また、お元気なだけでなくて、定年を迎えた後もまだ働ける、働きたいという方々が本当に多くいらっしゃるということも実感をしているところでございます。

 さて、我が国は、世界に例を見ない速さで少子高齢化が進展をいたしております。このたびの高年齢者雇用安定法改正法案の提案理由の御説明でも、少子高齢化が急速に進展する中、労働力人口の減少をはね返し、経済と社会を発展させるため、全員参加型社会の実現が必要と述べられましたが、私も、我が国の人口推移の見通しなどに鑑みますと、おっしゃったとおりだというふうに思っております。

 ここで、このたびの法案の前提となる状況を確認したいのですが、就業者数は今後どのようになる見込みでしょうか。

中沖政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一〇年と二〇二〇年を比較いたしますと、今後数年で団塊の世代が大量に退職するといった要因がございまして、六十歳から六十四歳の就業者数は百五十万人減少します。また、若年者につきましても、二十歳から三十四歳の就業者数、二百五十万人減少すると推計されております。全就業者数で見ますと、四百万人減少という推計でございます。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 就業者数が減少していくとのことですが、一方で、高齢化により高齢者数はふえていくわけでございます。このことを考えれば、我が国の経済成長率を維持向上するためには、高年齢者の方々に御活躍いただくことが大変重要だというふうに考えております。

 そこでお尋ねいたしますが、現在、政府では、高年齢者の就業促進を図るためにどのような施策を実施することを考えておられるんでしょうか。

西村副大臣 委員御指摘のとおりだと思います。やはり、高い就業意欲を持つ高齢者が可能な限り社会の支え手として活躍できるように、年齢にかかわりなく働ける全員参加型社会を実現するための環境整備を進めることが必要であります。

 具体的な施策といたしまして、一つには、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入などによる高年齢者の安定した雇用の確保の推進、二つ目には、ハローワークでのきめ細やかな職業相談など中高年齢者の再就職の援助、促進、そして、三つ目としてシルバー人材センター事業の推進など、高年齢者の多様な就業、社会参加の促進を行ってきております。

 こうした施策を着実に実施することを通じて、引き続きこの高齢者の就業を促進してまいりたいと考えています。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 高年齢者の雇用就業対策としてさまざまな施策を推進されているとのことでございましたが、このたびの高年齢者雇用安定法の改正もその一環であると受けとめております。

 そこで、改めてお尋ねいたしますが、この法案の趣旨についてお聞かせください。

西村副大臣 ここは先ほどの大西委員への答弁とも重なるんですけれども、やはり、少子高齢化が急速に進展している中で、全員参加型社会をつくっていくということが求められております。

 また、平成二十五年度以降、厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられる。すなわち、定額部分は六十五歳になって、報酬比例部分は、現在の六十歳から六十五歳へと、三年ごとに一歳ずつ段階的に引き上げられて、平成二十五年度からの三年間が六十一歳となり、これは平成三十七年度に六十五歳への引き上げが完了するという形になっています。

 このため、現行制度のままですと、平成二十五年度には、継続雇用を希望しても六十歳の定年以降に雇用が継続されず、年金も支給されないという無収入になる者が生じるおそれがあります。こうした事態を回避するために、雇用と年金を確実に接続させ、六十五歳までの希望者全員の雇用を確保する必要があるということから、今回の提案となっております。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 高年齢者の方々の生活の安定のために、年金を受け取れるようになるまでは雇用が確保されている、そういう制度になっているということは、若いころから安心して働くために大変重要なことであるというふうに思います。

 しかしながら、このような制度があっても、その履行が確保されないと意味がないと思います。高年齢者雇用確保措置の実効性を高めるために、政府はどのように取り組まれるおつもりでしょうか。特に、ハローワークにおける体制の充実をどう考えておられるんでしょうか。

西村副大臣 この高年齢者雇用確保措置の導入状況についてでありますけれども、事業主から提出される高年齢者雇用状況報告や労働者からの相談などを通じまして、義務違反の企業を把握してきております。平成二十三年六月一日の時点で、この措置を未実施の企業は約六千社でありまして、集計対象企業の四・三%ということになっています。

 こうした企業に対しては、公共職業安定所で訪問などによる指導を繰り返し実施しているところでございますけれども、そうした繰り返しの指導にもかかわらず、何ら具体的な取り組みを行わない企業には勧告書を発出いたしまして、公共職業安定所での求人の不受理、紹介の保留、そして助成金の不支給などの措置をそういった企業に対しては講じているところでございます。

 今回の法改正におきまして、勧告に従わなかった企業名を公表することにしておりますけれども、全国の公共職業安定所における指導体制がやはり何といっても大事な基盤であると考えておりますので、引き続き強化を図っていきたいと考えております。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 各企業で高年齢者雇用確保措置がしっかりと講じられ、誰もが安心して働けるよう、ハローワークの体制充実も図りながら、しっかり指導して行っていただきたいというふうに思います。

 一方で、雇用確保のためには、ただ企業への義務を強化するだけでなく、企業にとって雇用確保措置を講じやすくするという観点も必要かと思いますが、この点、このたびの改正に伴ってどのような対応をされる予定でしょうか。

中沖政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案では、老齢厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げに合わせて基準の利用をさらに認めます十二年間の経過措置、あるいは継続雇用制度の対象となります企業の範囲をグループ企業まで拡大するといった、企業の負担を軽減する措置を講じているところでございます。

 また、企業に対する支援策としても、今年度から、グループ企業以外への労働移動を支援いたします助成金を新設する、あるいは中小企業の事業主が再就職支援をする場合、費用がかかりますので、そうしたことを有料職業紹介事業者に委託した場合の助成率のかさ上げ等も行ったところでございます。

 こうした支援を通じて、企業の理解を得ながら、円滑な施行に努めてまいりたいと考えております。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 ただいま御説明のあった点に加え、企業が今後さらに高年齢者雇用を進めていくためには、高年齢者の職域の拡大や高年齢者のニーズや特性にマッチした雇用管理制度の構築などの取り組みを進めていくことが重要であるというふうに考えます。

 そこで、このような取り組みを行う企業に対して政府として支援を行っていくべきだというふうに考えますが、政府としてはどのような対応を考えておられるんでしょうか。

西村副大臣 御指摘のとおり、企業において高年齢者の職域拡大また雇用管理制度の構築の取り組みを進めていくためには、政府としても支援を行っていくことが重要であるというふうに思っております。

 具体的には、高齢・障害・求職者雇用支援機構におきまして企業に対する高齢者雇用に関するアドバイスを行っておりますほか、高年齢者の職域の拡大に取り組む企業に対して助成金の支給を行っております。こうした支援を一層充実していけるように検討してまいりたいと考えております。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 さて、全員参加型社会を実現するためには、高年齢者の雇用の促進とあわせて、雇用の状況が大変厳しい若年者についても就職支援を強化していく必要があるというふうに思います。若年者雇用の現状と政府の実施している若年者の雇用対策の取り組みについてお聞かせください。

西村副大臣 大臣も答弁されておりましたけれども、やはり、高齢者の就労機会の確保といったこととあわせて、若年者への雇用促進といったことも、これまた大事なことだと思っております。

 実際どうなっているかということについてでございますが、ことしの春卒業の新卒者の就職内定率は、高校、大学ともに前年同期を上回る水準にはなっております。ただし、フリーターの数が百七十六万人となりまして、依然として若者を取り巻く就職環境は非常に厳しいと言えると思います。

 こうしたことに対して、全国の新卒応援ハローワークなどで、新卒者等に対するジョブサポーターによるきめ細やかな職業相談、職業紹介を実施しておりまして、特に年度末には、文科省と経産省との連携による、内定がまだ出ていない人のための卒業前最後の集中支援に取り組みまして、これによって、大学生については約四ポイントの内定率押し上げ効果があったというふうに考えております。

 また、フリーター等に対しては、ハローワークできめ細やかな就職支援やトライアル雇用の活用によって、正規雇用に向けた支援を実施しております。

 今後は、学校とハローワークの連携を強化していきたいと考えています。大学などへのジョブサポーターによる相談窓口の設置、そして出張相談の強化に取り組むとともに、中小企業と若者のマッチングを一層進めるために、若者の採用に積極的な中小企業による若者応援企業宣言を実施するなど、これは若者雇用戦略に盛り込まれている内容なんですけれども、こうした新たな施策の実行に向けて鋭意取り組んでまいりたいと考えています。

田中(美)委員 ありがとうございます。若年者雇用対策にもしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 さて、全員参加型社会を実現するために高齢者の就業促進が必要でございますが、高齢期になると、健康面で個人差が大きくなり、また、介護など家庭の事情を抱える方も多くなります。必ずしも、全員が企業でフルタイムで雇用されることを希望されているわけではございません。地域において、その多様な就業ニーズに応じた就業機会の確保、提供を行うことが重要になってくると考えます。

 そのような中で、今回の高年齢者雇用安定法に基づいて政策が推進されておりますシルバー人材センターが果たす役割は大変大きいと考えておりますが、シルバー人材センターの現状についてお尋ねします。

中沖政府参考人 高齢者につきましては、先生もよくおわかりのとおり、健康、体力等、個人差が大変大きくなってまいります。シルバー人材センターは、こうした多様な就業ニーズに対して非常に大きな役割を果たしているわけでございます。

 現状について、昨年度の実績で申し上げますと、団体数では千二百九十四団体、会員数で七十六万三千人、就業延べ人員数は約七千万人日、受注件数は約三百五十万件となっているところでございます。

田中(美)委員 ありがとうございます。

 ことしから団塊の世代の方々が六十五歳に達していくわけでございますが、これらの方々の中には、生きがいを求めて、また社会に貢献するため、何らかの形で働きたいと考える方がふえていくと考えられます。

 こうした状況を踏まえますと、現行のシルバー人材センターをより積極的に活用していく必要があると考えますが、政府の取り組みについてお聞かせください。

西村副大臣 シルバー人材センターにつきましては、定年退職者その他の高年齢退職者に臨時的かつ短期的な就業その他の軽易な業務に関する就業の機会を確保するため、またそれを提供することによって、高年齢者の福祉の増進に資するものと考えております。

 厚生労働省としては、シルバー人材センターが地方公共団体などの関係機関との連携を図りながら、高年齢退職者の就労支援策としてシルバー人材センターをより一層活用していきたいと考えております。

田中(美)委員 前向きな御答弁、ありがとうございました。

 私の地元でも、元気な高齢者の方がたくさんいらっしゃいます。今回の高年齢者雇用安定法の改正により、六十五歳までの雇用確保が図られることとなりますが、今回はゴールではなく、一つの通過点であろうというふうに思っております。

 今後は、年齢にかかわりなく働ける生涯現役社会に向けて高齢者雇用対策を展開すべきというふうに考えますが、御見解をお聞かせください。

西村副大臣 やはり生涯現役という言葉がぴったりの高齢者の方も大変ふえているという社会状況ですので、委員の御指摘、大変重要なことだと思っております。

 希望者全員の六十五歳までの雇用確保措置などを主な内容といたします高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案が成立した場合には、六十五歳までの雇用確保が図られることになります。

 これまでの高齢者雇用対策は、六十五歳までの雇用確保措置を主眼に置いた支援策に努めてまいりましたけれども、御指摘のとおり、今後は、六十五歳までの雇用確保を基盤として、年齢にかかわりなく働くことのできる生涯現役社会の実現に向けた環境整備を進める必要があると考えております。

 今後、こうした観点を踏まえまして、高年齢者の職域拡大の支援や再就職支援を強化するなど、高齢者雇用対策を推進してまいりたいと考えております。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 全員参加型の社会、そして生涯現役社会というのは、我が国の将来、子供たちの未来にとって大変重要なテーマであろうというふうに思っております。

 また、日本は、長年、物づくりで世界をリードしてまいりました。その物づくりの現場で培った技術が、高齢の技術者とともに海外に流出してしまうといったケースも増加をいたしております。安心して日本で働ける仕組みをつくるためにも、高年齢者の雇用は大変重要であるというふうに考えております。

 引き続き、厚生労働省の皆様にはその実現への御尽力をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

柚木委員長代理 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 民主党の吉田統彦でございます。

 貴重なお時間ですので、早速質問に入りたいと思います。

 本日議題となっております高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案に関して質問をさせていただきます。

 まずは、特殊関係事業主での再雇用に際する労働者の意思の確認についてお伺いをいたします。

 改正案の高齢法第九条第二項には、親会社である事業主と関連会社である特殊関係事業主との間において、その定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結するとの記載があり、事業主と特殊関係事業主の受け入れに関する契約にしか触れていません。

 対象となるのは生身の労働者であり、定年後に雇用されることを希望する高齢者を特殊関係事業主が雇用する際には、民法六百二十五条を準用して、契約の対象となる労働者の意思をしっかり確認すべきと考え、その旨を行政として事業主に対して指導すべきと考えますが、厚生労働省の御存念を簡潔に力強くお聞かせください。

中沖政府参考人 このたびの法案では、グループ企業で雇用する仕組みを導入することにいたしておりますが、継続雇用制度そのもの、定義そのものにつきましては、「高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」という文言を全く変えておりません。

 このように、継続雇用制度は、労働者の希望を確認することが前提となっておりまして、改正後もその点は変わらないため、事業主が制度を運用する上で、労働者の意思が確認されることになると考えております。

 厚生労働省といたしましては、大臣告示で、雇用確保措置を実施する上での留意事項を示すことにいたしております。措置が各企業で労使の十分な協議のもと適切かつ有効に実施されるよう、指導を行ってまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 大変力強くお答えいただきまして、ありがとうございます。

 次に、改正法の施行日前後の取り扱い、重要な問題でありますので、お尋ねをいたします。

 改正法の施行日以降は、現行の高齢法第九条第二項による継続雇用制度の基準が法的効力を失うことになります。

 改正法の施行日前において、定年前の労働者が継続雇用制度の基準に該当している場合、例えば、人事考課の成績が三年連続マイナスの者は対象としないなど、定年前の勤務成績が継続雇用制度の基準となっており、これに該当したため継続雇用制度の対象とされていない場合でも、六十歳定年に到達した時点が改正法の施行日以降である場合は、継続雇用制度の基準が法的効力を失っているため、就業規則の解雇事由または退職事由に該当しない限り、継続雇用の対象とされると理解してよろしいのでしょうか。厚生労働省の御存念を明確に簡潔にお願いをいたします。

    〔柚木委員長代理退席、委員長着席〕

中沖政府参考人 改正法施行後におきましても継続雇用制度の対象者を労使協定で定めます基準により限定する仕組みを設けまして選別しているような場合には、雇用確保措置を適法に講じていないと判断されます。

 したがいまして、労働者からの相談等によりましてこうした事態を把握した場合には、適切な対応をするよう、十分に指導していきたいと考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 私が本法案に対して準備した質問は、田中委員、大西委員によって、その趣旨に沿った質問が既に完了しておりますので、せっかくのお時間ですので、昨日の決算行政監視委員会で議論させていただきました、有望かつ日本再生に必須な成長産業である医療イノベーションに関して引き続き質問をさせていただきます。

 本内容は、高齢者から若者まで、日本の雇用全体をふやすためのリーサルウエポンであります。厚生労働省に対しては昨日からの繰り返しになりますが、高額で、かつ生命の維持に必要という観点で重要な医療機器であるペースメーカーや心臓の人工弁は、国産の医療機器、製品は存在しません。これは、外交上の問題が勃発したときに極めて重要な問題であるだけでなく、現在、医薬品、医療機器分野はマイナス三兆円も輸入超過です。そして、毎年毎年数千億円ずつふえる医療費。それは、本来は日本が手にするべき富であります。しかし、これが海外に流出している現状、大変ゆゆしき状態であると私は考えております。

 私の地元、名古屋、愛知も物づくりの町であり、多くの医療機器産業、医療機器メーカーを抱えております。こういった本来世界に誇る医療技術、すばらしい技術を持つメーカーは、日本未発売の重要かつユビキタスに使用されている医療機器を開発する意向を持っています。

 しかし、医療機器メーカーは、製薬メーカーと比べて小さな会社が多くて、体力に乏しいんです。ですから、やみくもにやれやれと言われても、そんな冒険はできないと尻込みをしている企業も少なくありません。やはり、先行きの見通しがなければなかなか踏み込めないのが現状であります。当然、厳格な審査は必要でありますが、しかし、全ての重要かつユビキタスな医療機器は、日本製品を生み出して、そして国内及び国外で売っていかなければ、雇用は絶対ふえないんです。つまり、その後押し、いわゆる承認という出口までのロードマップをしっかりと敷いて国産医療機器メーカーを勇気づけることこそ、国家戦略としても医療イノベーションをうたっております政府の言葉にうそ偽りがないのであれば必要であると考えます。

 昨日に引き続いて藤田政務官にお尋ねをいたします。きのうは余り医療機器メーカーを勇気づけられませんでした。本日は、国内の医療機器メーカー、そして医療従事者を勇気づける心からの御答弁をお願いいたします。

藤田大臣政務官 委員からは、昨日に引き続いての御質問を頂戴いたしました。

 委員の御指摘のように、ペースメーカーであるとか人工心臓弁などの医療機器、本当に国内での開発であるとか生産は重要なポイントだというふうに考えています。

 今回のこの医療イノベーション五カ年戦略というのは、日の丸印の医療機器というものを創出して医療機器産業を発展させて、そして雇用の確保を含めて日本を元気にしていく、こういうことで策定されたものだと認識をいたしております。

 厚労省としても、この医療イノベーション五カ年戦略をしっかり踏まえて、これからさらに力強く進んでいくわけですけれども、委員が御指摘になられましたようなこと、これらを克服していくためには、いろいろな課題がございます。それで、これもきのう申し上げましたけれども、こうした課題を克服していく厚労省の姿勢をしっかりさせていくためにも、厚労省内に医療イノベーション推進本部を設置したところでございますので、この気概はぜひ御理解をいただきたいところでございます。

 そして、こうした推進本部というものをしっかりと位置づけながら、五カ年戦略に基づいて、研究開発段階から積極的にかかわっていくということがやはり必要なんだと思います。厚労省としては、承認であるとか、いろいろな保険の適用であるとか、そういったところに対するノウハウをたくさん持っておりますけれども、そのノウハウを持って研究開発段階からしっかりかかわるということが生産者の皆さんを激励することにもなるだろう、このように考えておりまして、そうしたことをもって産学官一体となって医療機器産業を育成することで、日本での開発、生産が進み、そして世界一の医療機器創出国となるように頑張ってまいりたいと思います。

吉田(統)委員 大分踏み込んだしっかりとした御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 では、さらにちょっと勇気づけてください。医師を初めとした医療従事者、難病に苦しむ患者さんたち、そして医薬品、医療機器メーカーに力強いメッセージをいただきたいんです。

 現在、PMDA、医薬品医療機器総合機構は、その百億の運営費のうち、六億円しか国庫から支出がされていません。アメリカのFDAは、実にその運営費の六割以上が連邦政府から支出されております。日本のPMDAも、FDA並みの予算を投入して、審査体制の充実、そして、多くの国内外の医薬品、医療機器メーカーが、すばらしい革新的医薬品、医療機器、よりよい改良医療機器、後発医療機器を国民に届けるための申請がしやすくなるように、審査料の大幅な減免をお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 そして、これは実際、本当に喫緊の課題であります国際市場における画期的新薬創出。一九八〇年代は、アメリカ三四・五%に対して二八・八%と、日本は世界で互角にトップクラスで戦ってきたんです。しかし、何と、一九九〇年から二〇〇二年、アメリカ五三・三%に対して日本はわずか八・六%と極めて凋落傾向が厳しいのであります。

 二〇一〇年問題と言われる問題で、こういった一九八〇年代のすばらしい医薬品、特許はどんどん切れていっております。こういった状況、待ったなしの状況を踏まえて、今の私の訴えに対しての御答弁をどおんとお願いします。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、研究開発段階から応援をする、そして、本当にその段階から薬事戦略相談等で方向づけをし、ともに、安全性を確保しながら適切に迅速に承認をし、市場に送り出す、これは大事なことだと思っております。

 そのために、このPMDA、総合機構の審査というものにつきましての体制強化、これは従来から進めさせていただいておりますが、今回の医療イノベーション五カ年戦略におきましても、その審査員、安全対策要員の増員、専門性向上の記述もいただきましたが、さらに、今御指摘の、事業者からの手数料や拠出金に頼る、大宗を占めておるような仕組みを改めて、PMDAの役割にふさわしい財政基盤について検討を行い、必要な措置を講ずるということもこの中に盛り込ませていただいているところでございます。

 まさに、このような体制整備についての国からの支援もともに整備をしていく中で、しっかりと世界に革新的な医療機器を送り出していきたい、そういうふうに考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。大変力強いお言葉で、きっとFDA並みの予算がおりてくると私は期待をいたしております。

 でも、これは実際、本日議題になっている法律にも極めて密接にかかわるところであります。こういった産業を創出することが、この法律を裏づけるバックグラウンドになるのはもう間違いございません。ぜひやっていきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、次、通告の順番をちょっと変えさせていただきます。

 コンタクトレンズというものはありふれた医療機器でございます。しかし、高度医療機器、クラス3に実は分類をされているのは皆さん御存じでしょうか。

 私自身、将来ある若者の角膜が不適切なコンタクトレンズ使用で障害されたという症例をたくさん診察しております。中には、角膜移植が必要な、不可逆な障害を受けるといった症例も存在します。こういった不適切な使用は、やはり、メーカーによる啓発、行政による啓発、そして医師による適切な診察及び指導によって防ぐ必要があると思います。

 また、コンタクトレンズは、実は、委員の皆さんもお使いになられている方、役所の皆さんもいらっしゃると思いますが、適切に使用していても、角膜の内皮細胞という透明性を維持する細胞に影響を与えるんです。しかも、この内皮細胞は、一度障害を受けたらもう二度と戻りません。こういった内皮細胞の障害が原因で、壮年期から高齢期で白内障手術ができなくなってしまうケースがあるんです。つまり、若者だけでなく高齢者の視力も奪い、雇用の機会を奪っていく可能性があります。

 しかしながら、若者を中心とした日本のコンタクトユーザーは、四割、インターネットによる通信販売でコンタクトレンズを購入して、医師の診察や指導は受けない。そういった現状には、私は大変危機感を覚えます。そのような中、お隣の韓国では、コンタクトレンズの通信販売は禁止になりました。

 日本でも、厚生労働省医薬食品局長の御英断で、ことし七月十八日、各都道府県に対し、「コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について」という通知が出されました。大変な進歩であったと確信をいたしておりますが、この通知の有効性を確認していくフォローが重要であり、また、現在の、インターネットを介して容易にコンタクトレンズを入手し、医療の介在がない、こういった危険な状態に対して、各種インターネット販売の場を提供するポータルサイトに対して、安全性担保の協力体制の構築など、今後どのような姿勢で臨まれるのか、厚生労働省の御存念をお聞かせください。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、コンタクトレンズは、薬事法上、その適切な管理が必要な高度管理医療機器としての規制を受けております。

 従来から、販売する場合におきましては、使用者に適切な使用の情報提供をするということが義務づけられておるわけでございますけれども、眼科医会等の調査によりますと、インターネット販売もふえている中で、使用方法にやはり適切さが見られない、問題がある、あるいは、眼科医さんのちゃんとした処方を受ける、定期的に検査を受けることをしないで間違った使用を続けていらっしゃる、こういうことで非常に重篤な目の障害を生じている例が見られます。

 そこで、今般の通知といたしましては、従来からの対策に加えて、販売時におきまして、購入者への対応として、医療機関を受診していらっしゃるかどうか確認してもらう、受診していらっしゃらなければ受診を勧めていただく、それから、医療機関名の記録を残していただいて、健康被害の相談等があればその医療機関にも情報を提供していくというようなことの徹底を図っていただきたいということを、指導する各都道府県、あるいはコンタクトレンズ協会の方にお願い申し上げております。

 これにつきまして、さらに、今のようにインターネットによります販売等がふえている中におきましては、日本コンタクトレンズ協会の方からも、このショッピングサイト等を運営されておりますような開設者に対しまして、製造販売業者の皆さんがそれを利用されているわけですが、そういうサイト全体としても、受診確認等、そういうふうな注意を促すようなホームページの改善をお願いしたいということを要請するとともに、厚生労働省といたしましても、こういうような方法によりまして、販売を行っていらっしゃいます販売業者に対して、安全性確保にさらに努めるように指導してまいりたいというふうに考えております。

吉田(統)委員 厚生労働省の、国民の目を守りたいという意思が十分に私に伝わってまいりました。ありがとうございます。

 次に、全国百四十四病院を運営する独立行政法人国立病院機構は、今国会でなされている独法改革の中で、独法通則法から外れ、国立病院機構法ともいうべき個別法によって、その位置づけ、権能、運用などの法的根拠を持つことになりそうであります。

 それによって今の状況から何が変わっていくのか、おぼろげなイメージしかありませんが、国家公務員型の身分の見直し、総定員制への切り込み、給与体系の見直し、そして、今まで全く顧みられていなかった、不規則な生活をしている看護師さんや医師のような医療従事者への宿舎の優先配分といったところにも期待を持たせる改革であると思います。

 国家戦略として、医療崩壊を食いとめる、地域医療を守る、また、具体的には、平成二十二年度及び二十四年度診療報酬改定において、病院勤務医やその他医療従事者の待遇改善という観点で、そういった診療報酬改定が行われました。そこと整合性を持った法体系になるのかどうか、厚生労働省の責任ある答弁をお願いいたします。

藤田大臣政務官 まず、国立病院機構でございますけれども、委員の方からも今るるお話がございました。これは、固有の根拠法に基づき設立される法人とされることになっておりまして、これを踏まえて、政策医療を担う国立病院にふさわしい法人制度というものをどのように構築していくのか、いろいろな問題がございます。

 そこで、本年三月から新たに検討会を設けまして、現在、検討を行っているところでございます。この検討に当たっては、そしてまた改革に当たっては、しっかりと現場の声を聞きながら、病院事業という特性を考慮して、法人制度のあり方ということを検討してまいりたいと思っております。

 それから、地域医療のお話もございました。こちらについても、年金・健康保険福祉施設整理機構、RFOについて、今般、地域医療機能推進機構へ移行することになっておりまして、この移行についても、法人のあり方について検討するようにしております。これも検討会を秋ごろから設けたいと思っておりまして、委員が今御指摘になられましたようなことをしっかり踏まえながら検討してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

吉田(統)委員 ありがとうございました。

 時間がもう余りないんですが、今、私の質問を予想したかのように、RFOの後継の地域医療機能推進機構のお話も出ましたが、これはまだ固有法になるかどうかも決まっていない状況であると理解しています。

 しかし、これはいずれも、地域医療にとって重要な病院であります。ですから、その職員が公務員型に近いような身分になるなど、硬直した、改悪といったような状況を招くことなく、例えば院長のガバナンスをしっかり強める、現場の意見を最大限取り入れ、現場の医師を初めとした医療従事者、そして事務職の方々が誇りを持って、やりがいを失わず医療現場に立ち続けることができるといったことを最優先課題として、その方向性を決めていただきたいと思います。

 もう時間が参りますので、いかがでしょうか、ここに対して、彼らに勇気を与えるような御答弁をいただけたら、それで私は質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。

藤田大臣政務官 地域医療というのは極めて大事でございます。そういう意味で、この皆様方が担う役割は大変重要ですので、そういう皆様方が働きやすい、そういう環境をつくるべく頑張っていきたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございました。

 質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

池田委員長 次回は、来る八月一日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十五分散会


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