衆議院

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第14号 平成25年5月24日(金曜日)

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平成二十五年五月二十四日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 松本  純君

   理事 上川 陽子君 理事 高鳥 修一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 冨岡  勉君

   理事 西川 京子君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    今枝宗一郎君

      大久保三代君    大串 正樹君

      金子 恵美君    小松  裕君

      古賀  篤君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    末吉 光徳君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君  とかしきなおみ君

      豊田真由子君    中谷 真一君

      永山 文雄君    丹羽 雄哉君

      船橋 利実君    星野 剛士君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      宮澤 博行君    村井 英樹君

      山下 貴司君    湯川 一行君

      大西 健介君    中根 康浩君

      柚木 道義君    横路 孝弘君

      足立 康史君    伊東 信久君

      坂本祐之輔君    新原 秀人君

      中丸  啓君    伊佐 進一君

      國重  徹君    輿水 恵一君

      柏倉 祐司君    中島 克仁君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   議員           中根 康浩君

   議員           山井 和則君

   議員           柚木 道義君

   議員           中島 克仁君

   議員           柏倉 祐司君

   議員           小宮山泰子君

   議員           薗浦健太郎君

   議員           古屋 範子君

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働副大臣      秋葉 賢也君

   内閣府大臣政務官     山際大志郎君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   厚生労働大臣政務官    丸川 珠代君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            滝本 純生君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       三浦 公嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            中野 雅之君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  香取 照幸君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     末吉 光徳君

  今枝宗一郎君     宮澤 博行君

  中川 俊直君     星野 剛士君

  永山 文雄君     湯川 一行君

  宮沢 隆仁君     中丸  啓君

  輿水 恵一君     國重  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  末吉 光徳君     赤枝 恒雄君

  星野 剛士君     中谷 真一君

  宮澤 博行君     今枝宗一郎君

  湯川 一行君     永山 文雄君

  中丸  啓君     坂本祐之輔君

  國重  徹君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     中川 俊直君

  坂本祐之輔君     宮沢 隆仁君

    ―――――――――――――

五月二十三日

 子どもの貧困対策法案(中根康浩君外八名提出、衆法第一九号)

 子どもの貧困対策の推進に関する法律案(薗浦健太郎君外一名提出、衆法第二〇号)

 生活保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)

 生活困窮者自立支援法案(内閣提出第七一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 生活保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)

 生活困窮者自立支援法案(内閣提出第七一号)

 子どもの貧困対策法案(中根康浩君外八名提出、衆法第一九号)

 子どもの貧困対策の推進に関する法律案(薗浦健太郎君外一名提出、衆法第二〇号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府規制改革推進室長滝本純生君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官三浦公嗣君、医政局長原徳壽君、労働基準局長中野雅之君、職業安定局長岡崎淳一君、社会・援護局長村木厚子君、保険局長木倉敬之君、年金局長香取照幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。

山井委員 四十五分の質問時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、三点、限定正社員の問題、そして、都市部の特別養護老人ホームの待機高齢者を地方、田舎の老人ホームに入居させるという、一歩間違えば現代版━━━━━構想について、そして最後は、介護保険から百五十万人の軽度の高齢者が外される、そういう検討をされているという、その三点について質問をさせていただきます。

 この限定正社員の問題、今既に、電機関係の会社などで限定正社員というものは、労使が合意して、あるわけです。それについては、労使が合意してやっておられるわけですから、私たちは何ら問題だとは思いません。しかし、今、産業競争力会議、さらに、規制改革会議の雇用ワーキング・グループで議論されていることについては、どうやら、資料を見ると、解雇しやすくするのではないか、そういう心配が出ております。

 例えば、一枚目、フリップをつくりました。これは厚生労働省の作成の資料でございますが、ここを見ていただければわかりますように、非常にわかりやすいですよね、雇用保障について逆三角形になっております。そして、真ん中に限定正社員が出ております。ということは、正社員よりも限定正社員になるほど雇用保障が弱くなる、これは厚生労働省の作成された資料であります。

 そして、次のページを見てください。その雇用ワーキング・グループの座長の方のペーパーでも、赤線を書きましたように、「正社員改革」「解雇ルールのあり方」。働き方じゃないですよ。働き方の多様化ではなく、解雇ルールのあり方ということを優先的検討事項とする。それで、地域・職務限定型正社員の解雇ルールを整備ということが議題に上がっております。

 それで、次のページ、三ページを見てください。赤線で引きましたように、このワーキングチームでは、限定正社員の解雇ルール整備から議論に入る、つまり、言葉で言うと解雇ルール整備と何か曖昧な話ですが、要は、限定正社員だったら、工場がなくなったら解雇できますよね、その職種がなくなったら解雇できますよねということを明確化したいという話であります。

 そこで、この議事録なんですが、なかなか出てきていないわけであります。この会議は、この資料にもございますように、過去ずっと行われておりますが、四月十九日の議事録が四十日たって三日前に出ただけでありまして、四月二十五日、つまり一カ月前の議事録、そして第五回、第六回、全く議事録も出てこないんです。

 私が聞いたときは一週間程度で出しますと言っていたのに、一カ月たっても出てこない。担当者に来てもらっていますが、これはどういうことですか。一週間で出すと聞いているのに、会議は終わっているわけですよね、何かこれは隠しているんですか。

滝本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、議事概要の公表が大変おくれておりますこと、大変申しわけなく思っております。

 言いわけするつもりではありませんけれども、雇用のワーキングを含めまして四つのワーキングが、かなり頻繁に開かれているようなこともございまして、速記録が上がりましたら、委員の確認をとって議事録として公表しているんですけれども、そういうことで、会議の数が非常に多いというようなこともあって大変おくれているのが実情でございます。

 何も、議事概要を隠すつもりで、意図的におくらせているわけではございません。

 以上でございます。

山井委員 ここで議論されているのは、限定正社員に変わったら解雇しやすくなるかもしれないという、働く者の意思を、日本社会のあり方にもかかわる重要な問題で心配しているんです、私たち。

 四月二十五日、五月九日、五月十四日、いつ出すんですか。

滝本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、四月二十五日、それから五月九日の議事概要は、今委員に確認を求めておりますけれども、近くその返答が得られるということでございますので、週明け早々にも公表するようにいたしたいと思います。

 それから、あと、五月十四日の議事概要でございますが、これも、今確認作業を急いでおりますので、できるだけ早急に公表したいと思っております。

山井委員 五月十四日のはいつ出すんですか。というのは、もうこれは取りまとめが出てきてしまうわけですよ。

 五月十四日はいつ出しますか。

滝本政府参考人 まだ委員の確認が終わっておりませんので、確定日をもって、今お答えするわけにはいきませんが、可及的速やかに公表していきたいと思っております。

山井委員 では、雇用ワーキングの取りまとめはいつするんですか。

滝本政府参考人 次回は五月二十九日を予定しておりますので、そこで取りまとめに向けてのワーキングとしての議論がなされるものと考えております。

山井委員 ちょっと時間がもったいないので……(発言する者あり)走ってください。

 それが最終取りまとめですか、五月二十九日が。

滝本政府参考人 お答え申し上げます。

 その日が最終取りまとめになるかどうかは、審議の状況にもよりますので、私の方から確定的なことを申し上げるわけにはまいりませんけれども、いずれにいたしましても、答申は六月上旬早々にはまとめていかないとと思いますので、それに向けてワーキングの報告書もまとめていく、そのようになると思います。

山井委員 なぜ私が心配しているかというと、議事録が取りまとめまでに出ないんじゃないかという心配をしているわけですよ。

 田村大臣、五月十四日、今後の取りまとめに向かっての重要な雇用ワーキング、厚生労働省の職員はこの会議を傍聴していますか。

田村国務大臣 五月十四日の雇用ワーキング・グループにおきまして、厚生労働省の職員は傍聴しておりません。

山井委員 なぜ傍聴していないんですか。解雇のこととか限定正社員というのは、どう考えても厚生労働省の担当分野でしょう。

 なぜ傍聴しないんですか。

田村国務大臣 それは担当事務局の方にお聞きください。

山井委員 いや、田村大臣、答えてください。

 知らないんですか。傍聴していない理由を知らないんですか。知らないなら知らないと言ってください。知っているなら知っていると言ってください、理由を。

田村国務大臣 直接担当事務局から聞いておりませんので、担当事務局の方にお聞きください。

山井委員 田村大臣は理由を知らないようですから、内閣府、どういう理由で厚生労働省は傍聴されていないんですか。それまでのワーキングチームは傍聴されていると聞いていました。

滝本政府参考人 お答えいたします。

 これまでは、厚労省の方にもお願いをいたしまして、傍聴してきていただいております。

 ただ、前回傍聴をお願いしなかったのは、その審議の内容が、報告書の内容、文言表現とかそういったことに入っていく、言ってみれば、答申に向けての起草の段階に入りましたので、委員同士で自由に意見交換をしようということで厚労省には傍聴をお願いしなかった、そういう事情によるものでございます。

山井委員 田村大臣、これから取りまとめで重要な打ち合わせがあるから、厚生労働省に入ってきてもらったら困るということなんですが、それで傍聴は断られたんですよ。

 田村大臣、田村大臣が日本の雇用や解雇の責任者ですよね。厚生労働省が責任を持っているわけですよね。傍聴すら断られている、この現状について、田村大臣、どう思われますか。

田村国務大臣 最終的には、法律改正等々、制度改正があれば厚生労働省が行うことになる。しかも、これは、労政審等々しっかりと、労使ともに話し合っていただく中でという話でございます。

 今の話に関しましては、詳しいこと、どういうことなのか、しっかりと状況をお聞かせいただくようにいたします。

山井委員 それで、厚生労働省も外す中でこういう解雇にかかわる議論をするなんということは、私はあり得ないと思っております。

 これは、今後出てくる答申で、限定正社員になったらその場合は解雇がされやすくなるとか、その解雇に関するルールを限定正社員という制度の中で定義するとか、そういうふうなことが出てくる可能性はあるんですか、内閣府。

滝本政府参考人 限定正社員のあり方について議論されていることは事実でございます。

 そして、会議といたしましては、今後のワーク・ライフ・バランスの問題とか、あるいは非正規から正規への移動といったようなことを考えますと、いわゆるジョブ型正社員というものをふやしていこう、そういうような基本的な方向に立っていると思います。

 その際に、人事、処遇のあり方というものを今よりもっとはっきりさせていかなくてはいけないというような問題意識に立っておりまして、その一環といたしまして、確かに解雇の話も議論には出ておりますが、委員御懸念のように、解雇をしやすくする、そういった観点から議論をされていることは一度もございません。

山井委員 私は、四月十一日の議事録を見ているんですよ。限定正社員になると解雇しやすくなる、そういう議論がされているところを附箋で張っているんですよ。その議論をしているじゃないですか。

 ということは、取りまとめのときに、限定正社員に関連して解雇ルールに関する何かの提言、解雇の部分は一切さわらないということですか。

滝本政府参考人 最終的な答申の文言をどうするかというのは、まさにこれから会議で議論をされますので、私が今、それが記載されるとかされないとか申し上げる立場にはございませんけれども、これまでの経緯を見ますと、解雇をしやすくするという観点からこの限定社員の問題が議論されている、そのように私は思っておりません。

山井委員 微妙な表現をされましたが、それが目的ではなかったとしても、限定正社員の方が解雇ルールは弱いですよねという議論はここでされていて、それをはっきりさせましょうという議論をしているんじゃないですか。

 田村大臣、厚生労働省は残念ながら外されているわけですけれども、これは成長戦略に入っていくわけですよ。産業競争力会議からも出ますから。その中で限定正社員というのが提案されて、結果的に、それを目指しているかどうかは抜きにして、限定正社員というのが今までの既存の正社員よりも解雇ルールが弱くなる、そういうことになる可能性というのはありますか、全くありませんか。

田村国務大臣 もう委員も御承知だと思いますけれども、解雇というのは自由なんですね、労働契約において。ただし、解雇の権利、権利というのは、民法一条三項に規定されておりますけれども、要は、権利の濫用というものはよろしくない、こうなっているわけです。

 つまり、権利というものは、その内在するものとして法的な要請があるわけでありまして、その中に、濫用しちゃならない、そういうものが法的な要請として内在しているんですね、社会規範的なものが。ですから、権利は、いろいろな権利がありますけれども、それは濫用はできないというふうになっている。そして、そこから、労働契約法十六条、解雇権の濫用法理というものがあるわけであります。

 今言われたのは多分整理解雇の話だというふうに思うんですけれども、そもそも整理解雇というものは……(山井委員「短くお願いします。結論をお願いします」と呼ぶ)いや、これは大変重要なことでございますから、聞いていただかないと私の結論が御理解いただけないと思いますから……(山井委員「早く結論を言ってください」と呼ぶ)ここでやり合っていても仕方がないんですけれども。

 例えば、客観的に合理的な理由がない、そういう解雇は、これは認められないわけでありますね。それから、社会通念上不適当というような、そういうようなものも、これも認められないわけであります。

 そういうことを考えますと、そもそも、解雇権の濫用法理というものは、限定社員であろうが、限定のない社員であろうが、これは持っているんですね。解雇することに対しては濫用しちゃいけない、こういうようなことは、解雇権濫用法理というのは適用されるわけであります。

 ならば、この限定社員という考え方を、限定されていない社員と比べて解雇しやすいかどうかというのはどうなんだというお話だと思いますが、今も、委員がおっしゃられたとおり、限定した社員というのはいるんですよ。今委員おっしゃられましたよね、いるんです。その方々に対して、ただ単に、契約が限定した職務や職種や時間……(山井委員「結論を言ってください、結論を。質問時間を延ばしてくださいよ、こんな長々答弁するんだったら」と呼ぶ)いや、これは聞いてもらわないと理解いただけないから言っているんです。山井委員、この間の予算委員会と同じように、私の話を聞いていただかないと、また後でおかしな質問になりますから、よく聞いてください。

 要するに、職種や職務や時間、こういうものに限定されている職員、この職員と契約していても、人事労務管理上実態が違っていたら、これは限定じゃないんです、解雇するときには。わかりますか。つまり、契約が限定であろうとも、実際問題、人事労務管理が限定されていないような働き方であったとするならば、これは解雇権を発動するときに、実は裁判所は、つまり司法は、これを限定社員とは認定しない可能性が十分にあるわけですよ、実態が違うから。つまり契約の話じゃないんです。

 となれば、今も限定社員がおられますよね、おられます。この方々に対する整理解雇の司法の判断というもの、それと今回、仮に、これからいろいろな議論はありますけれども、制度としてこういうようなものを進めていこう、今もあるんですから、今ある制度を進めていこうということですね、広げていこうということです。その場合の新しい、今回出てきた限定社員、これは、実態がどうかということを判断するのは司法ですから、司法が、職務、職種、いろいろなものを見た上で、解雇するときにどうなのだということを判断されるんです。

 それは、今の限定社員と実態がどうかということを判断した上で、整理解雇するときに司法がどう判断するかということでございますから、その実態は変わらない、現行と変わらないということであろうというふうに思います。

山井委員 時間稼ぎはやめてください、限られた時間ですから。

 田村大臣、申しわけないけれども、田村大臣の見解はわかりますが、厚生労働省は外されて議論をされているんです。だから、そういう意味では、私はこれは、今おっしゃった整理解雇の四要件が限定正社員では弱まりますねという提言が出てくる可能性は極めて高いと思います。

 それでは、内閣府にお聞きします。

 限定正社員というのは、新入社員の募集のときだけじゃなくて、今まで普通の正社員だった人が、あなた、来年から今後限定正社員というように変わる可能性、途中で変わる可能性もあるんですか。

滝本政府参考人 変わる可能性があるかどうかといったようなことは、会議で決めるような話ではないと思いますけれども、議論の中では、従来の正規職員が限定社員に転換するというようなことは、可能性としてはあるという議論はされております。その場合も、当然、転換される労働者の同意が前提だということもあわせて議論されております。

山井委員 同意といっても、無期雇用に残るという選択肢が用意されていなかったら、それは本当の同意ではないわけですからね。

 これは、議事録も出てくるでしょうし、提言も出てくるでしょうから、答えは出ると思います。

 こういう議論になるのは、議事録を出さないから。厚生労働省も排除しているからこういう議論になるんですよ。大切な議論はもっとオープンにしないとだめです。

 そして、次。都市部の高齢者に田舎、地方の特別養護老人ホームに入ってもらうという検討会をやっているわけですね。

 これは、田村大臣、ストレートに聞きますが、杉並区が南伊豆町に何か特養を建てて、そこに、杉並区で待機している要介護高齢者が多いから入ってもらうという事例も含めて、議論をしているそうなんです。

 田村大臣、杉並区の待機している高齢者が南伊豆町の特養に入るというのは、ここに、「杉並区―南伊豆事例の横展開」と書いてあるんですよ。横展開という日本語を皆さんは聞いたことがありますか、横展開。この事例は、田村大臣、いい事例なんですか、悪い事例なんですか。

田村国務大臣 ちょっと委員、先ほどの話、若干御説明させてください。

 ですから、限定社員が進んだとしても、そもそも、先ほど言いましたが、民法一条三項なんですよ、権利の濫用というのは許されないんです。

 ですから、結果的に、例えば、どんなに限定社員を首を切りやすくしようとしても、そもそも、権利に内在する法的要請で、権利の濫用というものは許されないわけでありますから、そう考えたときに、そんな法律が本当にできたところでどうなのかという議論がちゃんとあるわけでありますから、そんな、どんどん限定社員にして、首を切りやすい法律をつくろうなんて、そんなことは考えていないと私は思いますよ。

 というふうに、まずは前の話を整理させていただいた上で、今回の話をさせていただきたいと思います。

 南伊豆町とそれから杉並区、これはもう歴史的につながりが非常にありまして、例えば養護学校、臨海学校、こういうものが、実は、杉並区のが南伊豆町にあるんです。昔からのつながりがある。町民同士、また区民同士もいろいろなつながりがある。こんな中で、お互いによく気心が知れている部分があるんですね。そこでこういう話が出てきたということであります。ですから、そこは地域の信頼感の中でやられる話でありますから、それを否定するものでもございません。

 そういうような各地域のつながりというものがある中において、住民の方々が理解して、特養、あそこがいいな、老後はああいうところで暮らしたいなと言われるのであるならば、それは決して悪い話ではないというふうに思います。

 ちなみに、今言われた検討会でありますけれども、決して特養を外に出そうというだけではなくて、都市部のこれからの高齢者介護、どのような提供体制をすべきかということも議論をしておるわけでございまして、五月の二十日に設置して、検討が始まったということでございます。

山井委員 田村大臣、くしくも、都市部でどう介護できるかも検討すると。

 でも、五ページを見てください。これはもともとは産業競争力会議で、四十二万人の特養入居待ちの解消に向け、杉並区、南伊豆町の取り組みを横展開するようにと産業競争力会議に言われて、次のページ、その競争力会議で厚生労働省が回答したわけですね、好事例を紹介していくと。この六ページ、好事例紹介。

 田村大臣、私は、議員になる前は高齢者福祉を大学で教えていましたし、秋葉さんも政経塾の後輩だから知っていると思いますが、私、二十年以上前から介護問題をずっとやっています、老人ホームで実習して。

 田村大臣、これは大変なことですよ。住みなれた地域で高齢者を支える、これが日本の厚生労働行政の大方針じゃなかったんですか。それを、杉並区、南伊豆町を好事例と言ってしまったら、住みなれた地域で支えなくてもいい、田舎や地方に、待機の高齢者をどんどんどんどん、━━━━━みたいに出していってもいいということに、これは大方針ですよ。

 田村大臣、先ほど高齢者が望めばとおっしゃいましたが、特養待機者の七、八割は認知症です。その方々が、例えば地方の老人ホームに入った場合、面会に来る人は多いんですか、家族は面会しやすいんですか、知り合いは面会できるんですか。そこはお年寄りが孤独に感じると思いませんか。どう思いますか。(発言する者あり)

松本委員長 御静粛に願います。

田村国務大臣 まず、何か、都会はよくて地方は━━━━━だというのは、ちょっと言い過ぎですよ。(山井委員「違う、違う、違います」と呼ぶ)これは不適切な発言だと思いますから、撤回された方が私はいいと思いますので、次の発言のときに撤回された方がいいと思いますよ。

 住みなれたところ……(発言する者あり)確かに━━も問題ですよね、それもね。

 いずれにいたしましても、住みなれたところからほかのところに行くというのに対して、それはよくないんじゃないんですかというようなお話であるというふうに善意に受けとめて、私は今から御答弁をさせていただきます。じゃないと、そんな━━━━━なんという前提では、私は答弁したくありません。それでいいですね。

 お互いに、この場合に、信頼関係のある地域同士なわけですよ、これは。ここに書いてある南伊豆町と杉並区というのは昔から非常に深い関係があって、だから、先ほども言ったような施設も、実は杉並の施設があるわけなんです、ここに。

 そういうことも含めて、そもそも、御本人がそういうところで住みたいという自由まで、あなたはこの町にずっといなさいなんて言えるはずがないので。

 もちろん、そんな、無理やり、嫌がっている、入所する前から、私はあそこには行きたくない、入所するのも行きたくないというふうに言われていた方々が、無理やりそこに行かされるなんということは、それは私もだめだと思いますよ。だけれども、御本人もお元気なときに、私がもし要介護になって入所するとすればあそこがいいなと思われているものまで、いやいや、あなたはこの地域に限定して、それこそ限定して、介護を受けなさいなんて言われる方がおかしな話なので、御本人の権利というのは当たり前じゃないですか。

 そもそも、御本人が行きたくないと言われているものを行かせるという話ではないわけでございまして、そこは信頼関係の中で、そういうようなおつき合いをされて、老後をそういうところでお住みになられたいと言われる方は、そこに行かれることは悪いことではない。

 私は、むしろ、御本人の希望である中でそういうことが実現するならば、それはいいことでありますから、それを横展開するというのは決して悪いことではないと思います。御本人の意思が大切であろうというふうに思います。

山井委員 田村大臣、やはり田村大臣は、日本の介護の歴史をしょっておられるわけですよ。

 そして、今までは、少なくとも厚生労働省の歴史上ずっと、住みなれた地域で、できる限り、地域包括支援システムを含めて、高齢者を面倒見よう。私は、はっきり言って、これは日本人の美徳だと思いますよ。家族だけで面倒を見られなくても、近所の施設を利用する。

 そうしないと、例えば、言葉も違うじゃないですか。散歩に行ったときに、なじみの場所もないじゃないですか。家族が面会に行きにくくなるじゃないですか。お知り合いも面会に行きにくくなるじゃないですか。本当にそんなことをやっていって、皆さん、いいんですか。

 例えば、私も、認知症のお年寄りのグループホーム、ずっと、本も書いて、運動してきました。特に認知症のお年寄りは、環境が変化すると認知症が悪化するんです。できる限りなじみの環境で、できる限りなじみの人間関係でお世話していくというのが、グループホームの理念です。そういう理念を、田村大臣、変えることになるんですよ。

 ですから、私が言っているのは、誤解があったかもしれませんけれども、地方の高齢者を都市部に移すのもよくないと言っているんです。環境の変化をさせるのがよくない。ドイツには、お年寄りの格言で、老いた木は植えかえるなという言葉があるんです。環境の変化はよくないんです。

 では、田村大臣にお聞きしますが、認知症の高齢者が多いわけですね、特養待機者に。ということは、認知症の高齢者というのは、なかなか、どこの老人ホームに入りたいということを判断できないと思います。認知症の高齢者に関しては、判断ができない場合は、今回のような遠く離れた特養には入居してもらわないということでよろしいですか、本人の意思がとおっしゃった以上は。(発言する者あり)

松本委員長 御静粛に願います。

田村国務大臣 まず、これは、杉並がもう地域包括ケアをしないと言っているんじゃないんですよ。地域でちゃんと包括ケアシステムは組んで、地域密着型のサービスもお考えになっておられるし、いろいろなことをやろうという中において、御本人の意思で、そのような形で、老後、南伊豆に行かれたいという方がそちらの方に行かれるのは、それはいいんじゃないですかね、私は。(山井委員「認知症の方はどうなんですか」と呼ぶ)

 待機者の八割が本当に認知症なのかどうか、私はそれは存じません。四十数万人いる待機者の八割が認知症だったら、大変なことだというふうに思いますけれども。

 だけれども、認知症の方々にもお元気なときの自由はあるわけですね。お元気な、認知症になる前ですよ。そのときに、私が施設に入るのならば南伊豆がいい、あそこに入れてほしいなと言われる自由はあるわけですよ。

 認知症は認知症の専門のそういう施設があるわけでしょう、グループホームにしても。まあ、これが南伊豆にあるかどうかわかりませんよ。そういう方々が、認知症の専門の対応のところで、御本人の意思にのっとって御生活をされるというのであれば、それは一つの考え方であろうと思いますし、認知症だから南伊豆に行っちゃいけないなんて言ったら、南伊豆の人が怒るんじゃないですかね。

 だから、私、ちょっと話がよくわかりません。あくまでも、無理やり行かせるというのは問題があると思いますけれども、そうではないと私は認識をいたしておりますから、それは決して悪いことではないのではないのかなというふうにお答えをさせていただいているんです。

山井委員 大臣、これは非常に重要な議論なんですよ。

 そういうことを認め出すと、一つの効果は、ああ、特養を都市部にふやさなくてもいいんだなということにもなりかねません、一歩間違うと。

 それに、先ほど言ったように、大規模な特養がつくれなかったら、こういう十人規模の小規模なグループホームをつくったらいいじゃないですか。そうしたら、知り合いも話しに行けるじゃないですか、家族も行きやすいじゃないですか。都市部に大規模なものをつくれとは言いませんよ、土地がなかったり、土地が高かったら。そういう努力をするのがやはり厚生労働省ですよ。これは本当に私は大変なことになる。

 それに、そもそも、では、田村大臣、こういう検討をしろと言い出したのは産業競争力会議ですよね。産業競争力会議が、成長戦略としてこういうことを考えているわけですよ。言っちゃ悪いけれども、お年寄りのためを考えてこの案が出てきたとは私は思いませんよ。

 これは、産業競争力会議から言われなくても、厚生労働省としてはこういう検討をしようと思っていましたか。結局、産業競争力会議から言われて、仕方なしにやっているんじゃないんですか。

田村国務大臣 こういう議論は以前からありましたよね。それはもう山井委員も御承知のことだと思います。

 一方で、グループホームは南伊豆町はやっていませんから特養の話なんですけれども、特養がなかなか都市部でつくれない、しかし待機者が多い、これはどうするんだという社会的な問題があることは御承知だと思います。

 山井委員が、もし、こういう御議論の中で、都会に特養の待機者が全く今いないという話、民主党のときに全部解決されたということであれば、こんな問題はそもそも起こらないわけであります。

 そういうニーズにどう応えるかと考えたときに、これは、「南伊豆町」と書いてありますけれども、そうじゃなくて、例えば、都市近郊の地域がございますよね。例えば埼玉県、千葉県、比較的東京に近いところ。東京の方々、それぞれの区に近い県で、電車等々で三十分ぐらいで行けるようなところ。こういうところなんかに特養をつくってはどうだ、これならば家族も通えるんじゃないかというような御議論も、以前からあったことは事実であります。

 そういうことを、これは、私は今、こんなことを議論しているわけじゃありませんよ、そういう議論もあったということも踏まえながら、いろいろな御議論をいただくということは自由でございますので、御本人の方々も、どこか特養に入りたいけれども入れないんだというような、そういうニーズもどうすれば解消できるんだと。それは、二十三区内でなかなかつくれないというときにどうするんだということも含めて、いろいろな御議論。

 一方で、地域でどうやって介護を支えるんだということは、当然のごとく、厚生労働省は今、その方向で進めていっているわけですから、これをやめたと我々が言ったら、山井議員に全く方向が変わったのかと言われるかもわかりませんが、そこはそこで今、全勢力でやっているわけですよ。

 だから、そこも御理解をいただきながら、しかし、そういうニーズもあるという中で議論が始まっておるということでございますから、ここは御理解をいただければありがたいなというふうに思います。

山井委員 私ははっきり言います。この検討はやめるべきです。非常に誤解を招く。

 それで、御存じのように、待機者は多い。しかし、残念ながら、家族のニーズと要介護高齢者のニーズは必ずしも一緒じゃないんです。家族は入れたいと思っているかもしれない、でも、お年寄りの多くは、当たり前じゃないですか、住みなれた地域にいたいんですよ。遠くに行ったら、知り合いの茶飲み友達のおじいさん、おばあさんと、もう一生会えないかもしれないんですよ。近所だったら家族は毎日来られるかもしれないじゃないですか。南伊豆に毎日行けるんですか。

 一〇〇%行きたいという人だったら私も百歩譲りますけれども、そういう人はごく一部なんです。いざこういうのができたら、不本意ながらも行かされる人がふえてくるんですよ。私たち民主党政権のときには、こういうことはだめだということをずっと言い続けてきました。

 それで、私は、特養とともに二十四時間巡回型ホームヘルプ、夜間もホームヘルパーさんが何回も来てもらえるようにすればいいと。私、これは、二十年前に書いた本でも、巡回型二十四時間ホームヘルプが日本に必要だと書き続けて、二十年間言い続けて、こういうことを実現するために私も国会議員になりました。

 ところが、なかなかふえていないんです。こういうものができれば、特養の待機者も在宅で暮らせる人がふえるんですね。しかし、採算がとりにくい、コストが高いということで、なかなか予定どおりふえていないんですよ。これは、百八十九の予定だったのが、まだ百二十の市町村しかふえていない。これをもっとふやすために財政的支援をするとか、そういう措置を講ずるべきじゃないですか。田村さん、どうですか。(発言する者あり)

松本委員長 御静粛に願います。

田村国務大臣 二十四時間型の定期巡回・随時対応型サービスというものは、私もこれはすばらしいと思いますよ。これは民主党政権のときにこの制度を導入しましたから、そういう意味では、よく御健闘というか、頑張っていただいたなというふうに思います。そこは敬意を表しますが、結果、ふえていないという理由ですよね。だから、理想はそうですけれども、現実はそう簡単じゃないということを、まさに皆様方が証明されたわけですよね、これは。

 要するに、進めようとしても、一つは都会と地方の違いがあります。地方、特に中山間地は移動時間にとられますので、これは単価をよほど設定しないと効率が悪くなるわけですね、当然のごとく。すると事業者が手を挙げないわけですよ。

 一方で、都市部は採算が合う制度設計をしているはずなんです。実際問題、今、現状をいろいろと調べてみますと、夜間にサービスをされておられる方々というのは本当に少ないんですよ。少ないんです。昼間定期巡回していれば、それで大体事足りている。そういう状況は、これはもう、山井委員、調べていただいたらわかる。

 ですから、いや、首を振らなくていいんですよ、私はあなたの方向で今から意見を言うんだから。首を振る必要はない。

 私が言っているのは、だから、事業者にこれを周知徹底すれば、採算が合うからもっと入ってきていただけるはずなんですよ。ところが、皆さん、事業者の方々も、夜間たくさん呼ばれるとすれば、よほど単価を上げてもらわないと参入できないと思われて、参入されないんです。

 ですから、そこをちゃんと事例を、こういう事例です、やってみてください、モデルケースは今こうなっていますというようなことを説明して、やはりどんどん都市部、地方の都市部も含めて参入をいただくように、我々、努力をしてまいりたいと思います。

 ただ、単価を上げればいいというのは、財政状況はあなたも御承知のはずですよね。あなた方民主党政権のときも、かなり厳しい中で介護保険料の改正をやられた。そのときに、あなた方はこれにちゃんと手をつけられなかったじゃないですか。それは、それだけ厳しいんですよ。今あなたはそうやって無責任におっしゃられますけれども、責任のあるときにはつけられなかったんですよ。だから進まなかったと、あなた、自分から言っているんですよ。

 そこは御理解をいただきながら、実態を見て、ちゃんと採算が合うんだからということを、ただ単に介護報酬を上げるだけじゃなくて、ちゃんと説明した上で都市部で広げていく。一方で、地方、中山間部はどうするかということは、別途、これからいろいろな検討はしていかなければならないと思っております。

山井委員 私の意見は、住みなれていない地域に特養をつくってそこに入ってもらうよりは、単価を上げてでも二十四時間ホームヘルプをやって、住みなれた地域でやることの方がいいんじゃないかということを言っているわけです。

 そこで、もう一つ、また介護保険の改悪を考えておられるようですが、軽度者、要支援を介護保険から外そうという議論をされていると。これは来年の通常国会で、介護保険法改正、三年ごとですから、出てくるんじゃないかと思っていますが、その中にこれも入る可能性があると見ております、今検討されているわけですから。

 しかし、端的に言うと、もちろん、要支援の方々の、軽度者へのサービスに多少無駄な部分が、全くないかと言われたら、もしかしたら少しはあるかもしれない。しかし、私は、これを介護保険から外したり、市町村事業に移すというのには反対です。

 その理由は、今受けている週一回のデイサービス、週一回のホームヘルプがもし受けられなくなったら、症状が悪化する、うつ症状が進む、閉じこもりになる、あるいは認知症が悪化する。

 実際、週に一遍のヘルパーさんとのつながりが、もう家族以上に深いという人や、週に一遍デイサービスに行けるようになったから、今までずっと閉じこもっていた高齢者がお風呂に入れるようになった、あるいは交流ができた、そういう方々に、これから受けられなくなりますよ、あるいは回数は減らしますよなんということになったら、大変なことになると思います。

 このように、この要支援を介護保険から外したり市町村事業にしたら、症状が悪化する、そのような心配、田村大臣は思われませんか。

田村国務大臣 野党のときには、我々自民党も、やはり与党のときよりかは責任がないわけでありまして、いろいろなことも申し上げてきたわけであります。ですから、今、山井議員がおっしゃられるのは、今は与党ではございませんから、与党のときよりかは過激なことをおっしゃられるということは私も理解しながら、申し上げます。

 実際問題、民主党のときの制度改正でもこの議論は出てまいりました。議論の中で出てきて、最終的に、党内でいろいろな議論をされる中において、時期尚早ということで多分外されたというふうに思います。

 今委員がおっしゃられたことはもっともなことがございまして、例えば、家事支援、援助、こういうものも含めて、全くそれを介護保険から外してしまうということに関して、どうなんだと。そうなれば、今よりも、今は要支援かもわからないけれども、介護度が上がってしまって、要介護になる可能性があるじゃないか。つまり、サービスが全くなくなってしまったら、それは生活が立ち行かなくなっちゃう。それは、配食もそうでしょうし、見守りもそうでありましょうし、いろいろなものがあると思います。

 そこで、そういうものが地方でちゃんと受け皿ができない限りは、それは、ないのには移せないですね。だから、地方に受け皿をこれからつくっていくことが大事であるという議論なんだと思います。

 その上で、この介護保険という中でどうこれから見ていくか、また、どう移していくか。

 いきなり全て移せば、サービスがなくて大変なことになるということは、我々も十分に、それは担当省庁でございますからわかっておりますので、サービスの劣化というものがない中においてそういうことができるかどうかということを、今議論をいろいろなところでされておられるというふうに認識をいたしておりますので、そういう御議論を踏まえて、実際問題サービスを受けられる方々が困らないように対応してまいりたいというふうに思います。

山井委員 きょう、四十五分間質問をさせていただきましたが、本当に、限定正社員という名のもとに解雇されやすくなってしまう、そういう心配が非常に高まっている。

 また、先ほども、田村大臣、いろいろ答弁されましたけれども、非常に私ショックだったのは、何が何でも高齢者には、望めばですよ、当たり前ですが、望めば住みなれた地域で暮らしてもらえるという原則が、今これで転換されようとしていると。そう受け取る人はいます。

 田村大臣、それは笑い事じゃないですよ。新聞に、杉並区、南伊豆町、好事例、いい事例、横展開と載っていったら、それを見た人は、基本的には、ああ、そういう方向性になってきたんだなというふうに理解はします、それは。

 さらに、介護保険に関しても、軽度者を切り外す方向で、受け皿があるのかないのかわからないけれども、今議論をされている。七十歳から七十四歳の自己負担は二割に上げる。さらに、七十五歳以上の二割というのも国民会議で議論をする。さらに、アベノミクスで物価が上昇すれば年金は目減りする。

 そういう意味では、このような、本当に社会保障がどんどんカットされつつあるというのは、私は断じて許せないと思っております。

 以上で質問を終わります。答弁があるんだったらお願いします。

田村国務大臣 七十歳から七十四歳を二割に戻せと言われたのはあなた方です。

山井委員 それでも、私たちはそれをしませんでした。

 以上、終わります。(発言する者あり)

松本委員長 御静粛に、御静粛に願います。

 山井委員の質疑は終わりましたが、山井委員の発言につきまして、一部その取り消しを求めるとの意見がありますので、速記録を調査の上、理事会で後刻協議をさせていただきます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時五十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、時間を変更していただきました委員各位の皆さんに、お礼を申し上げます。

 久々に一般質問の時間をいただきましたので、きょうは雇用のルールについて伺いたいと思います。

 昨日、株価急落のニュースで、内心穏やかではないと思いますけれども、安倍総理の三本の矢、金融政策、財政政策、成長戦略について、来月中ごろまでにまとめるということで、産業競争力会議がさまざまな議論を進めております。

 そうした中で、安倍総理は、四月十五日、楽天の三木谷会長主催の新経済連盟のサミット前夜祭の中で、我々の目標は企業が最も活動しやすい国だ、こう述べたといいます。

 そこで、その前なんですけれども、第六回会議の場で、日本経済再生本部長として、我が国の規制環境を世界最先端にするという観点から、早急に規制・制度改革の具体策を検討することと指示を出されています。

 当然この文脈は、規制改革の場で発言をしていますから、労働の規制を取っ払って企業が活動しやすい国ということを言っているのかなと思うわけですよね。そうすると、労働者にとっては、残念ながら安心して働ける環境とは真逆ではないか、普通に読めばそう読めるわけです。

 なので、大臣に伺いますが、世界一企業が活動しやすい国とは労働者にとってどんな国だと思いますか。(発言する者あり)

田村国務大臣 もう山井委員との議論は終わりましたので、高橋委員の御質問にお答えいたしたいと思います。

 確かに、総理は、企業が最も活動しやすい国ということをおっしゃられるわけでありまして、基本は、まずデフレを脱却して、経済再生をしていく上においては、言われますとおり、規制改革も必要ですし、イノベーション、これも必要であろうというふうに思います。

 そういうふうに、企業が最も活動しやすい国というのは、逆に言えば、総理は、頑張る人が報われる、そういう社会にするとも言われておりますので、しっかりと企業が活動していただいて、そして利益を出していただいて、その利益が働く方々に還元される、そのような国である。

 つまり、企業が幾ら発展しても、国民の皆様方がそれで苦しんでおったのでは、これは日本の国全体がいいとは言えないわけであります。大もとは、やはり日本の国の皆様方が幸せになること、働く方々が幸せになること。しかし、その環境をつくるためには、やはり糧であります、企業というもの、ここが稼いでおかないと、糧が稼げないわけでありますから、そのような意味でおっしゃっておられるというふうに私どもは理解をさせていただいております。

高橋(千)委員 まさか、労働を所管する大臣がそうでないことを言うはずはないと思って聞いておりましたけれども。

 ただ、やはり糧がなければというお話の中で、この間、六重苦などという言葉が言われてきまして、例えば、正社員から派遣などに移ってきたという中で、そういう非正規化というのはもう限界がある、だったら正社員をどうにかしなければいけないんだ、賃金を下げるという点ではもうある程度やれることはやってきて、今はまさに正社員をどうするかというところに議論が移ってきている、そういう背景があるのではないかなと言わなければならないと思うんですね。

 世界で最も活動しやすい国、その中に、諸外国の皆さんが最も活動しやすい国、こういう言葉を続けておっしゃっているんですね。だから、いろいろな企業が日本に入ってきて、また、民間資本、外資の開放などそういうこと、TPPとも絡んでいろいろなことをおっしゃっているんだろう。だから、それが本当に労働者にとってプラスになるのか。甘利担当大臣はおっしゃっていますけれどもね、プラスになると。それはこの厚労の場では、そうとはなかなか言えないと思うんです。

 そこで、午前の議論でもありましたが、政府の規制改革会議の雇用ワーキング・グループの優先的検討事項に、限定正社員の雇用のルール整備が位置づけられました。

 きょう用意した資料の一枚目は、厚労省が出したものであります。第七回産業競争力会議、四月二十三日ですね、「「二極化」した働き方から「多元的」な働き方へのシフト」とあります。これは、ジョブ型とか限定正社員という言葉は使っておりませんけれども、どう考えてもそのことを指しているのであろうと。

 これは、総理も、多様な正社員のモデルを確立したいということで産業競争力会議でも発言をしていますから、政府の方向性であるということは間違いないと思うんですね。

 そこで、限定正社員を進めていく立場なのか、環境整備とはどういうことなのか、厚労省の方針を聞いています。

田村国務大臣 限定的な正社員、限定正社員ですか、という言い方がよくされるわけでありますけれども、決して、今の正社員の方々をこの限定正社員に無理にするようなことがあるわけはないわけでございまして、そんなことをすれば、これは完全に法律に違反になっちゃいますよね。あくまでも御本人が、例えば、自分自身は、今、生活の家庭的ないろいろな事情があって、その中において、時間的に限定した働き方がしたいとか、場所的に限定した働き方がしたいというようなことで申し出られるパターンはあると思います。

 しかし、そもそも、限定のない正社員の方を限定のある正社員に無理やりするなんということはできないわけでございますから、そこは御理解をいただけると思いますし、一方で、非正規雇用の方々を限定正社員という形でより安定的な環境のもとでお働きをいただく、そういうようなことをイメージいたしております。でありますから、そのような、委員が心配されるようなことは、我々は考えているわけではない。

 その上で、環境整備とは何ぞやという話なんですが、例えば、働き方のモデルとして、どういうような限定的な働き方、正社員、多様な正社員といいますか、どのようなモデルがあるのか、うまくいっているような例を例示していきながら、それを周知徹底していく。実は、午前中の山井議員との議論の中でもありましたけれども、今もあるんですよ、限定的な契約のもとでの正社員というのは。ですから、そういうものも普及をしていく中において、これをモデル化したものの成功事例を周知啓発していく、これが一つ。

 それから、雇用管理上の留意点というのがあると思います。今の限定のない働き方と、限定的な働き方。例えば、限定的な働き方と言って労働契約をして、結果、限定のない働き方と同じような扱いをしたのでは、これはいろいろと問題が起こってまいりますので、いろいろな留意点を整理する必要がある。だから、そういうようなところをしっかりと整理した上で、周知啓発をしていく必要があるであろう。

 それから、ジョブカードをうまく使って、限定的な社員、特にこの場合、今、ジョブ型という話がありましたけれども、例えば職種だとか、そういうものに限れば、余計にこのジョブカードというものが見える化として使えるわけでございますので、このようなことをいろいろと促進していくことによって、環境を整えていく。

 そして、この多様な働き方というものをしっかりと普及していくというような考え方のもとに、今、議論が進んでおるということでございます。

高橋(千)委員 今、無理にすることはないとおっしゃいました。だけれども、それが議論をされているから問題なんですね。

 先日、テレビでも、今おっしゃったような限定正社員は、実は企業の半数は既に導入していますということで、ホームセンターなどで働いている方で、子育て中なので、八時間の勤務だったところを六時間にして、保育所の送り迎えもできますよというふうなことを紹介しておりました。

 その根拠が、資料の三枚目に、最後のところにつけておいたのですけれども、昨年、多様な形態による正社員に関する研究会のアンケート調査というのがありまして、例えば、千九百八十七の企業数のうち、千三十一が多様な正社員を使っている、五一・九%である。従業員でいうと、五十一万九千百五十二人、三二・九%。このくらいもう既に限定正社員がやられているということなんですね。

 だから、逆に言うと、今だってやっているんだから、それがもしうまくいっているんだとすれば、無理に法定をする必要はないわけなんです。それがなぜ議論になるかというところに問題があるんです。

 局長、簡潔にお答えください。法定をもしするとなれば、労働契約法や労働基準法をさわることになります。どういうことが考えられますか。

中野政府参考人 御指摘のように、現在も多くの企業で職務や労働時間等が限定された雇用形態は存在しておりまして、労使の合意によりこうした働き方を導入することについて、現行法上、特段の規制はないものでございます。

 一方、規制改革会議雇用ワーキング・グループでは、座長から、「ジョブ型正社員の雇用ルールの整備について」と題した資料が提出されまして、これを参照しながら委員による議論が進められていると承知しております。

 同資料によりますと、例えば、均衡処遇に関しまして、「労働契約法二十条に類する規定」、すなわち「雇用形態による不合理な労働条件の禁止」の規定でございますが、「を定めることを検討することが必要ではないか。」と記載するなど、法改正による規制の新設も視野に入れていると見られる記述も含まれております。

 他方、「ジョブ型正社員の人事処遇ルールの検討」の項目では、「法解釈等について最終的に立法事項とするのが難しければ、解釈通達などで明文化してはどうか。」とあるなど、規制手法や内容についてはこれからの議論と思われる記述も含まれております。

 このように、現在、さまざまな観点から議論がなされているというふうに受けとめております。

高橋(千)委員 当たりさわりのないところだけ紹介をしたなという気がいたします。

 四月二十八日、規制改革会議の雇用ワーキング・グループの鶴光太郎座長から、今おっしゃった話ですが、「ジョブ型正社員の雇用ルールの整備について」というものが、改訂版なんですね、出されています。

 まず、座長の問題認識といいますか、現状をどう見ているかということで、事務所閉鎖、事業や業務縮小の際の人事上の取り扱いが通常の正社員と同じ場合が多い、つまり、余り違いがないということを言っています。

 それから、労働基準法十五条、労働条件明示義務、労働契約法四条二項、これを通して、労働条件を明示することがあらかじめちゃんと法定をされているんですけれども、そこで、ジョブ型正社員といわゆる正社員との書面の整理が必要だということを問題意識として書いているわけですね。

 それはどういうことかということですよね。だから、そこが結構曖昧だよ、逆に、はっきりしろ、詳細に書けということを言っているんです。就業の場所及び従事すべき業務に関する事項を詳細に設定することを求めたらどうか、もっと踏み込んで、就業規則の解雇事由に就業の場所及び従事すべき業務が消失したことを追加することを可能としたらどうだ、こう言っている。

 つまり、限定正社員ということを本人が選んだ以上は、あなたの仕事はなくなりました、そもそも事業所を撤退しますというときに、最初からこれを、要するに、解雇権の濫用には当たらないということを期待して言っているわけですよね。

 だから、法制化されてしまうと、結局、事業所が縮小、撤退、再編、そういうときは、もう解雇と言わなくてもいいような環境をつくるんだということが狙いとして読めるわけですよね。どう考えますか。

桝屋副大臣 けさからずっと議論が続いている内容でありますが、今委員から、限定正社員が法制化されてしまうとと、される、こういうふうにおっしゃったわけでありますが、午前中から大臣も答弁しておりますように、直ちに何らかの法制上の整備を行わなきゃならぬと考えているわけでは決してありません。まずは、成功事例の周知啓発などを通じて、多元的な働き方のモデルの普及促進を図りたいと大臣も申し上げているとおりでございます。

 なお、解雇権濫用法理、午前中から議論がずっと続いておりますが、大臣が申し上げるとおり、法の一般原則である権利濫用法理のもとで形成されてきたものでございまして、単に労働契約等で限定された職務や勤務地が消滅したということのみを理由として、適用されなくなるものではないということでございます。

 職務等が限定された正社員の整理解雇についても、個々の労務管理の実態に対応して、労働者の雇用継続に対する期待が保護すべき合理的なものであるかどうかが、個別のケースごとに司法判断されるというものでございます。

 委員、先ほどからそういうふうにおっしゃっておられますが、我々厚労省としては、職務限定正社員など多様な正社員は、非正規雇用で働く労働者の処遇の改善にもつながる部分もございますし、あるいは、ワーク・ライフ・バランス、これを促進するという側面もあるわけでありまして、そうしたメリットを大事にしながら普及を図っていこうというのが大臣の思いでありまして、決して労働者を解雇しやすくするために進めるというものではございません。よろしくお願いします。

高橋(千)委員 それを大臣にちゃんと言ってもらいたいのです。だから、質問をしています。

 私は、厚労省がそう言っているんだと言っているわけではありません。だけれども、実際に法制化をしろと言われているわけです。

 さっき、解雇権濫用の問題がありましたけれども、鶴座長は、契約解除についての裁判例を見ると、いわゆる整理解雇四要件の判断枠組みを基本的に維持しつつも、職務や勤務地が限定されている点を考慮し、無限定正社員とは異なる判断を行い、解雇を有効とする事例が見られるとわざわざ書いている。

 つまり、今でさえも、限定正社員であることによって、法律がなくても、いわゆる正社員とは同じじゃないよという事例が出ちゃっている。そういうことをあえて言って、もっと明確にしましょうよと言っているわけなんです。そういう大変な危機感を持たなければならないわけです。

 五月二十一日付の読売新聞では、日本総研調査部長の山田久氏は、「論点」のコーナーで、「正社員の流動化」を取り上げて、「職種や勤務地が選べ、その限りで雇用が保障される「限定型正社員」が普及すれば、企業は事業の撤退・新規参入が容易になり、企業成長の促進と新たな雇用増につながる効果」というふうにはっきり言っているんですね、事業の撤退、新規参入は容易だと。

 それが成長戦略なんだと言っちゃったら、もう労働者はどうでもいいということになっちゃうんですよ。だから、何度も指摘をしています。

 資料の二枚目につけているんですけれども、さっき紹介したアンケートで、なぜ正社員に複数の雇用区分を設けていますかという問いに対して、「優秀な人材を確保するため」というのが実はトップなんですね。それから、「従業員の定着を図るため」、そして、「(ワーク・ライフ・バランス)支援のため」。だから、「賃金の節約のため」というのは、二割はあるんですけれども、それでも、そんなではない。

 テレビで大変好事例が紹介されましたが、今はやはり本人と企業が納得して、この人材がこれからも必要だから、今は六時間だけれども、この後ちゃんと復帰してもらうよというふうに活用されていると思う。それでいいんですよ。それ以上踏み込むということは、今言ったような趣旨なんだということになっちゃう。解雇がしやすいことになっちゃうんだということで、法制化に触れるということは、本当にそういう深い意味があるんだという立場で質問をいたしました。

 改めて、法制化する必要はないという態度を鮮明にしていただきたい。大臣、お願いします。

田村国務大臣 今委員がくしくも言われたとおりなんですね。

 つまり、どういうことかといいますと、司法が積み重ねてきた判例の中で解雇権濫用法理というものが確立してきました。つまり、人事労務管理の実態、それがどうなっているかということで、司法は整理解雇というものに対して判断を下すわけです。

 ですから、今も限定的な働き方があります。しかし、そういう契約であったとしても、実態が違っていれば、それは、何ら限定なしの労働者と変わらないわけでありますから、多分、不当解雇という話になると思います。

 一方で、本当にいろいろな意味で限定された人事労務管理の中で、企業がそこから撤退というようになった場合に、司法が今判断をしておられるというものは、これは司法の一つの判断でありますから、それは解雇が認められる場合でありまして、幾らそんなものに法律をつくっても、結果的には、これは、先ほど来言っておりますけれども、権利に内在した基本的な、その中に入っている一つの法的な要請ですから、社会規範的な。つまり、権利というものに対しては、必ず、濫用しちゃいけないと。

 ですから、幾ら法律をつくっても、そもそも民法に大原則として書かれていることでありますので、それは、解雇しやすいようにと書いても、そもそもそれ自体が無効である、意味がない、こういうふうに私は認識いたしておりますから、そのような法律をつくっても意味がないのではないかということを先ほど来申し上げておるということであります。

高橋(千)委員 今の最後の、法律をつくっても意味がないと言った、もう少し、法制化しないと言ってほしかったんです。だって、その前段に、法制化しても、裁判ではちゃんとできるというふうな趣旨のことをおっしゃったから、それじゃだめなんですよということを指摘したいと思います。

 一言だけ最後に述べて終わります。

 五月二十二日付の東京新聞で、ILOのガイ・ライダー事務局長のインタビューが載っておりました。雇用の規制緩和は大変注目をしていて、安倍総理に対しても、面談の際、どうなりますかという質問をしたということを言っております。

 「強調しておきたいのは、雇用の規制緩和が成長をもたらす魔法のような解決策ととらえるのは間違っている。」「日本の成長鈍化は、労働市場の硬直性が原因ではない。逆に言えば、雇用の規制緩和や流動化が成長につながったケースもない」と指摘していることは、大変重要だと思います。

 政府がILOを持ち出すのは、決まって、公労使という三者で決まった労政審の決定を尊重するときだけであります。ILO条約百八十九本中四十八本しか批准していない。しかも、今回の産業競争力会議の中には労働者側の代表もいないという指摘もされていますから、本当にこの指摘を重く受けとめて、最初に言ったように、労働者にとってよい国を目指していただきたいと思います。

 終わります。

松本委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会、伊東です。

 本日は、一般質疑ということで、これからの医療のあり方について御質問させていただきたいと思います。

 以前にも幾つか質問させていただいたことで、もしかしたら、うまいこと私の御提案が伝わっていないかなと思うところに関して、再度、いろいろ医療現場の方からヒアリングをいたしてきまして、それを皆様にお伝えしたいと思っています。

 しかしながら、国会の場で、我々はやはり立法機関ですので、決して学術的な、学会みたいな討論にならないように注意して質問いたしますが、多少細かくなることを御容赦いただきまして、質問の方に移りたいと思います。私に与えられた時間は三十分ですので、さくさくと行きたいと思います。

 それでは、まず、先般、政府の方で、インテグレーテッド・ヘルスケア・ネットワークという、IHNと略されますけれども、IHNに対して議論がされているそうなんですけれども、このIHNに関して、厚生労働大臣である田村大臣から、どういった趣旨なのかということを御説明いただければと思います。

三浦政府参考人 お尋ねのテーマは、インテグレーテッド・ヘルスケア・ネットワークということでございますが、私ども、今の段階でこれについて詳しい情報をたまたま持ち合わせておりませんので、また改めて、状況をよく調べまして、委員に御報告申し上げたいというふうに思っております。

伊東(信)委員 いきなり最初からつまずくとは思っていませんでしたが、インテグレーテッド・ヘルスケア・ネットワークということで、きのうの通告がうまいこといっていなかったですね。

 医療圏内でいわゆるネットワークをつくっていこうということですね。つまり、地域が一つの病院になるということで、何が申し上げたいかといいますと、医療の現場は今、需要に対して供給が追いついていないのではないかということで、その一つの打開策としてIHNということです。このことによって、医療を一元化にプロデュースする。

 常々申し上げていますけれども、各地域によって、日本全体というのはやはりちょっと余りにも広過ぎるところもありますし、各地方自治体でコントロールしているんですけれども、それがどうしても不十分なところでいろいろ問題なりの報告があるというのは周知のとおりだと思いますので、そのIHNということが出ているということです。

 その中で一つ出ているのは、医療機関、病院もあれば介護も、そして地域医療も大きな病院も、全て一元化というか、一つのところでコントロールしてやっていこうというようなところもありまして、その中にいわゆる保険会社も入ってくるというところもあります。日本は医療保険というのが発達していませんので、そういった医療保険の方も積極的に考えていこうというのがこのIHNの中に一部入っております。

 しかるに、日本というのは、世界に誇ると言われている国民皆保険制度があるわけです。我々維新の会も、別に国民皆保険制度を潰したいという趣旨は全くございませんで、むしろ国民皆保険制度は守りたいと思っております。しかしながら、昨今、社会保障にかかわる国の予算、その中でも医療費というのは十兆円強ということで、このままではやはりいけないということは、今までの御質疑の中でも共通の認識だと思っております。

 それでは、いわゆる混合診療という言葉は本日は使わないようにいたします、もちろんこれは厚生労働省が認めている用語でもございませんので。自由診療を医療の中に持ち込むとしたら、つまり併用療法を持ち込むとしたら、国民皆保険制度は壊れてしまうのではないかという、日本医師会を中心とした議論をされる方もおられますけれども、この点に関しては、田村大臣はどのようにお考えですか。

田村国務大臣 いきなり済みません、議論がかみ合わずに。多分、うちが聞き違えて、IHNじゃなくて、NIHで聞き取っておったようでございまして、日本版NIHの答弁書をつくっておったようでございます。失礼いたしまして、申しわけありません。しっかり今度は答弁できるようにしておきます。

 それで、今の、混合診療という言葉は使わないというように我々もしております、よくわけがわかりませんから。ただ、今、自由診療というものとそれから保険診療というものと、どう位置づけるんだというお考えでございました。

 自由診療は、もちろん我々は否定しておりません。今もやっておられるわけでありまして、それはそれで立派な医療、もちろん中身にはいろいろとあるのかもわかりませんが、立派に認められた医療であることは間違いない。

 それで、保険診療と自由診療とを要は併用するもの、これが果たして日本の医療を壊すかどうか、皆保険を壊すかどうかという論点なんですが、今も保険外併用療養というのはあるわけでありまして、委員御承知のとおりであります。選定療養と評価療養とそれぞれあって、評価療養の中に幾つか分かれています。その中に先進医療というものがあって、いろいろな医療を取り込んできておる、今そういう流れでございまして、そういうものに入るか入らないかを毎月今検討しておるわけであります。

 要は、前も一度も委員とお話し合いしたと思うんですが、保険に収載をすることが目的のもの、つまり、保険というような、国民が、国民というのは皆保険でありますから国民全員という話になるんですが、くまなく、悪くなったときにその恩恵が受けられることを目指すもの、これに関して、先進医療等々、評価療養でこれを見るというのは今も認められておることでありまして、これがある限りは日本の保険診療というのが壊れるということはないであろう、つまり、国民皆保険は壊れないであろうと我々は思っております。

 一方で、そもそも保険に収載するつもりはない、要するに、保険に収載するということは値段が下がる、その医療行為の価格が下がる可能性がありますから、今の値段で、価格で勝負したいんだというものがありますよね、つまり一般化するつもりはないもの。そういうものは、高い医療ならば、そもそもお金持ちの方々が医療を行えばいい話であって、ですから、それに附属する医療行為、つまり、中身的には保険診療に入っているような中身、保険収載されているような中身であっても、そんなものをわざわざ恩恵をこうむらなくても、お金持ちなんだから、そちらも自由な方でやっておられればいいんじゃないですかというのが我々の考え方。

 なぜならば、そんな方々の医療行為まで要は保険で見るとなりますと、不公平になるじゃないですかと。つまり、付随しているものがすごく高額な医療で、一般化することを全く目指していないわけでありますから、にもかかわらず、保険だけ、こっちを使わせてねというのならば、あなたはお金を持っているんですから、それはどうぞ御自由にやってください、我々、保険に入っている人たちにすれば、何ら、その高いお金の医療、高度な医療は将来も恩恵がないんですよねという話でございますから、こういうのはだめだ。

 なぜこうなるかというと、もしそうなれば、これから出てくる新しい医療はそちらでもうかるとなれば、保険に載せるということをやめますよね。保険に載せるということをやめれば、新しい医療技術等々が、要するに国民の皆様方が恩恵をこうむれなくなってくる可能性があるのではないかという論点から、何でもいいから全部併用療養よということを認めると、これは皆保険制度が壊れてしまうというお考え方だというふうに思います。

 一方で、安全性という問題は別途、要するに治療の有効性と安全性というものは別途あるということは別にいたしまして、そういう論法であろうというふうに理解をいたしております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 田村大臣の御記憶は正確でして、実際、三月十五日の厚生労働委員会でこの御質問はしておりまして、今おっしゃった論点もよく理解はできます。

 そこで、しかるに、実際、今の先進医療のAに当たるところが六十五種類、Bに当たるところが四十一種類の百六種類ございまして、なかなかこの百六種類も、全ての科を網羅しておりまして、つまり、百六種類あれば百六の専門家がいるのではないか、そういった規模というか、スケールとなっております。これを一個一個審査するのはなかなか難しいので、ここがやはり、私が申し上げたい需要と供給のギャップにつながってくるのではないかと思います。

 田村大臣、安全性のこともおっしゃっていただいたんですけれども、それであれば、つまり、いいよ、これは認めていくといういわゆるポジティブリストよりも、これはどうも安全性も効果も考えて日本の医療にはそぐわないというネガティブリストから、これはやってはいけない、これは自費診療で使ってはいけない、そういった考え方に移行するというのはいかがなものでしょうか。

田村国務大臣 申しわけありません、私は専門家じゃないものですから、委員のおっしゃっておられることを十分理解できていないと思うんですが。

 いろいろな医療行為、医療技術、医療機器、いろいろなものが出てくると思います。ネガティブリストで果たしてそれが全部吸収できるのかどうか。そもそもそこに入ったものはだめということですよね。そういうことですよね。だから、できるのかどうか、ちょっと私はそこが、日々進歩する医療の中において、ネガティブリストというものがそぐうのかそぐわないのか、ちょっと私は理解度が足らないものでありますから、むしろ委員の方がよく御理解いただいておられるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども。

伊東(信)委員 では、ちょっと質問の仕方を変えます。

 先ほどおっしゃっていただいたように、併用療法の中に評価療養と選定療養がありまして、差し上げた資料の中に、一番最後のところですね、保険外併用療養について、評価療養と選定療養がある。先進医療に当たる部分が評価療養の中に入っているわけなんですけれども、選定療養の中にも一部治療が入っています。

 これも実は三月十五日のときに質問させていただいたんですけれども、歯科の金合金とか金属床の義歯など、治療と、いわゆるマテリアル、材料とがちょっと合わさったようなもの、こういうのを医療に拡大はできませんでしょうかと言ったところ、大臣は、そのものがどういうものかと。私が申し上げた対象に、選定療養の中に何を入れるべきとおっしゃっているかちょっと理解ができないということで、それはそうだと思います、いわゆる医療の専門の中でも、これは何に入るのかというのは難しいとは思うので。

 それで、資料を差し上げています。

 資料の一のところからちょっと見ていただきたいんですけれども、一は、脳卒中の治療のガイドラインです。これは、関西圏の脳外科の先生と議論してこの資料をつくってきたわけなんです。

 二枚目に、頸動脈の狭窄症というのがありまして、簡単に言うと、首の動脈が詰まっているわけですね。CEAというのが、全身麻酔による、血管を開いて中を掃除する、そう思っていただいたらいいです。CASは、中に金属の風船を入れるわけですね。ということは、CEAの方が、全身麻酔ですし、いわゆる手術になるのに対して、CASは、カテーテルだから患者さんの負担が少ないと思っていただいたらいいです。

 ここから学術的なことにならないように気をつけてお話ししたいと思いますが、このことに関する資料、一枚、二枚、三枚とありますけれども、要は、一枚目の二〇〇九年の学会のガイドラインによりますと、リスクの高いものにはCASを、つまりカテーテルを使いましょうというガイドラインで、ほかの治療法に関して言うと、今の技術であれば切った方が安全だし、有効性の高いものもあるというような報告をされているんですね。ところが、日本と海外の現場を見る限り、やはりカテーテル手術が非常に多いそうなんです。

 CAS、首の動脈に対するカテーテルを否定するわけでは学会も私もございません。しかしながら、二〇〇八年に既にこれが保険導入されていて、言えば、脳外科の中でも、これは適用じゃないんじゃないかというところまで、いわゆるチェックがなく、医師の裁量でやるから、保険診療として通っておるわけなんですね。

 かつ、調べさせていただきましたら、この材料の代金だけで、ステント、風船の代金が二十万円、カテーテルほかが四十万円で、合計六十万円です、材料費が。診療報酬料が、経皮的頸動脈ステント留置術という名前、Kの六〇九の二で三万八千九百三十点、つまり三十万ほどなんですね。百万からの治療法なんです。

 どうしても、この場合、現場からの議論があるのは、これを使う必要のない患者さんに関しては、これは選定療養もしくは自由診療でもいいのではないかという声も上がっているわけなんですね。

 つまり、手術すればというような患者さんでも、いやいや、私はカテーテルがいいからと。もちろん、カテーテルの方が一見安全にも見えるけれども、学会の中でも、この資料では、特に安全性も評価されていないし、認めていない。だけれども、海外から輸入されている、日本の国産であれば百歩譲ってちょっと考慮する、百歩も千歩も一万歩も、これも引用させていただきますけれども、譲って使ってもいいかなと思うんですけれども。

 こういった、現場では、保険診療に入ったけれども、そこからの評価がなされていないことが多い。つまり、前の方の評価は結構厳しいのに、後ろの方の評価がこういった感じになっているというのを私は申し上げたくて、こういったことも考慮していただければという意見がございましたので、その点に関して、ちょっと回答も難しいと思いますけれども、いかがなものでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のステント留置術でございますけれども、これは平成二十年四月からの保険収載、保険適用ということでございます。先進医療を経由してきたものではございません。このときに、薬事法の方で新しい頸動脈用のステントが承認をされておりまして、これにつきましても、それを条件として保険の適用を認めておるわけでございます。

 簡単に申し上げますが、外科的治療、頸動脈の内膜剥離術、今先生御指摘のように、手術を行うこと、全身麻酔をするようなことがいろいろ合併症もあって困難というふうな方を対象に、かつ、一定の基準、狭窄の状態とかの基準を満たすような重い患者さんへの適用ということを条件に、今保険適用が、薬事法とともにそのときから始められておるということでございます。

 ここに御指摘のように、脳外科学会のガイドライン等でも、全てこれがやっていいということではなくて、一定の条件の方について適用があるんだよということを学会等でも御指摘をいただいておりますので、保険の上でも、今のような、薬事法の条件と同じような条件を付して医療の現場で使っていただく、こういうルールにしておるということでございます。

伊東(信)委員 趣旨としてはわかっていただけたような御答弁なんですけれども、いわゆる後の評価システムに関してかなり考慮いただければ、かえって、私が考えている自費診療の導入ということに進んでいくのではないかなと思っています。

 しかるに、では、私が最初に専門医を取った形成外科という分野があるんですけれども、子供の先天異常を扱うところなんですけれども、その中に、六千人に一人の割合で発生する小耳症という、先天的に耳の外耳の部分がないお子さんがおられます。

 その手術に、肋軟骨、胸の軟骨を使って耳をつくります。それで側頭部のところに埋めますので、どうしてもでき上がった耳が、非常に今技術が進んでいますので、いい耳の形がつくれます、だけれども、後ろの部分だから、どうしても髪の毛が耳全体を覆ってしまうわけなんですね。それで、その髪の毛を取るのに脱毛というところで、脱毛レーザーというのが保険では使えないんですね。そうするとどうなるかというと、病院で負担をするところもある、研究費という名目、それは文科省の範囲になるかもしれないんですけれども。もしくは美容外科に行ってしまう。ここで自費になるわけです。

 ただ、これはやはり、聴力のことも含めて大体二十ぐらいまでフォローはしていきたいわけなんですけれども、その間にこの脱毛のところで、現場の声としてはこれを、逆にこういったのは保険で認めてもらうのがいいのではないか、もしくは脱毛の部分だけ自費を適用させていただければというような声もあるんですけれども、こういった意見に関して、細かい意見ですけれども、どのようにお考えでしょうか。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 小耳症の患者さんに対します耳介を形成するという根治術、これは大変重要なものであると思っております。

 御指摘のように、この耳介を形成する手術そのものにつきましては保険適用なされておるということでございますけれども、先生今御説明いただきましたように、その形成した部位、これが、この皮膚でございますから、毛根が残っておって髪の毛が生えてきてしまうというようなことがあるということで、その場合に、脱毛、レーザーで毛根そのものをなくすというような治療を求められる患者さんがいらっしゃるということも聞いております。

 これは耳介形成の手術とはまた別の目的のものでございますので、これ自体を自費を求めて、耳介形成手術と別途にやられるということ自体は、これは禁止されているものではございません。ただ、この部分を保険適用すべきではないかということにつきまして、今、先生のように、形成外科学会等、御意見があるということでございますので、その辺の意見をよく踏まえて、また中医協等でも議論していただくべきものというふうに思っております。

伊東(信)委員 世の中、できることとできないこともございますので、できないのであれば、しばらくの間は自費診療をするというのも一つの手ではないか、一つの方法論ではないかという御提案です。このことに関して、学会も含まれた議論というのがありますので、それに対する御回答は求めません。

 もう一つ、大臣がおっしゃったように、広く国民の皆さんに新しい治療法を普及していくために我々厚生労働委員会では議論を重ねていかなければいけないと思うんですけれども、今、立法が求められている中に、やはり再生医療があると思うんですね。

 再生医療といいましても、iPS細胞、スタートはES細胞、そして、人間のもともとにある、成人にある幹細胞、そして、日本で二種類製品化されています培養細胞、皮膚とか軟骨でありますけれども、こういった分野の中で、再生医療に関して、田村大臣はどの分野に一番期待を抱いていますでしょうか。

田村国務大臣 再生医療全般、期待をいたしているんですけれども、この分野は、本当に、今まで治療困難だったような病がこれによって救われるかもわからないと大変期待がかかっている、そういう分野であります。

 ただし、安全性と有効性というものをどのように担保していくかということが大変重要でありますから、今般、薬事法の改正、再生新法というものを、きょう閣議決定させていただきましたけれども、提出させていただく予定であるということでございます。

 今、再生医療でどれに期待をするか。ES細胞、これ自体は、結果的に言うと、倫理上の問題がありますよね。受精卵の、生命滅失のような部分でどう考えるんだというような問題がある。非常に使いやすいのは、本当はES細胞が使いやすいんだろうと思いますが、しかし、そういう問題がある。

 それから、今言われた体性幹細胞に関しては、非常にこれは、倫理上はクリアしやすいんですけれども、いろいろなものにはなりにくいという制約がありますから、そういう意味では、若干使い勝手が悪いところがある。

 iPS細胞は、その中間的なところなんですかね。要は、倫理的にある程度クリアできるし、いろいろなものに変わる可能性はあるけれども、ESから比べると、やはり、いろいろな技術、これからクリアしなきゃいけない科学的な技術があるというような部分なんだろうと思うので、それぞれの分野で、それぞれ、何をどうするかによって違ってくるんだろうと思うんです。

 それは、どれをどう、何に期待をしていくかということは、専門家の方々がお考えをいただく中において、我々、患者になる可能性がある人間にしてみれば、自分たちのいろいろな疾病をどう治せるような技術を開発していただけるかということでございますので、そういうものに対して国としてはしっかりと助成をしていきたいというふうに思っておりますので、どれにと言われるとなかなかお答えしづらいということで、御理解をいただきたいというふうに思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。iPSとESと幹細胞をきっちり区別して御答弁いただいていますので。

 しかしながら、特に、大臣よく御理解いただいているんですけれども、幹細胞というのは、確かにとりやすいですし、東京大学も、慶応大学も、関西医大でも、脂肪幹細胞の研究というのは臨床研究に向けての基礎研究がなされておるわけなんですけれども、これを、京都の病院が点滴の治療にして死亡事故が起こった。

 もちろん、この間、厚労委員会だったか、他の委員会だったか、御答弁いただいたように、確かに、死亡事故に関しての明確な因果関係というのは証明されておりませんけれども、大臣、しっかりと御答弁いただいたのは、全ての細胞に幹細胞は変わるわけじゃない、iPS細胞までいくと、人工的だから変わる可能性があると。そのことに関しては非常に大事なことだと思います。

 実は、資料で差し上げている、もともと山中先生のところの研究所にいた青井先生にきのう一生懸命つくっていただいたわけなんですけれども、前も最後に御説明しましたように、ウイルスを使ってがん細胞を破壊させよう、それを、点滴による全身投与をさせよう、だけれども、全身投与して、ウイルスがたまたまがん細胞に行くかどうかわからないから、そこに、iPSで多量につくった免疫細胞を使って運んでいってもらう、こういった治療法なんです。

 このあたりのところが、先ほどネガティブリストと言ったのは、今の医療というのは、医師の裁量のもとで判断されますので、後の方の選定がないわけなんですね。

 青井先生がせっかく、三十何万人も年間亡くなっているこの細胞に対してこういった二つの治療を組み合わせたことを提言しているのに、二つの壁があるんですね。

 一つは、全身投与という意味で、今までの幹細胞治療とやはり一緒くたに考えられるんじゃないかという危惧が一つ。

 もう一つは、幹細胞の方の法律がどんどん行っても、ウイルスの治療が別々に審議されると、またおくれてしまう。これは同じように山中先生もおっしゃっていました。これが、資料の四にある、下から六番目の先進治療医薬品、ATMPですね、これも包括して考えてほしいということです。

 こういったことで、いろいろ御提言したいこともありまして、その御答弁もいただきたいんですけれども、こういったことを考慮して、これからの医療に向けて考えていっていただければということで、時間も来ましたので、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

西川(京)委員長代理 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 連日質問をさせていただけることを感謝申し上げます。

 きょう、私は、いただいた時間、基本的には医療の問題、これまでの委員会でも何度も取り上げてきておりますが、やはり厚生労働分野の最大の問題の一つが、医療制度改革、医療保険の問題、提供体制の問題だと思っていますので、きょうはその話をいたしますが、冒頭、若干、二、三分いただいて。

 今、ずっとまた拝見をしていると、雇用の問題がずっと議論、これは質問じゃないですけれども、いわゆる解雇の議論がいろいろな場で今なされていることについて、民主党さんあるいは共産党さんからいろいろ話が出ていますが、私は伺っていて、何かやはり、こういう議論を余り続けていても、またいつものことですけれども、余り生産的じゃないよなと。

 厚生労働省の方も、田村大臣は判例法理のことも全てお含みおきをというか、おわかりをいただいて御答弁されているのはよくわかるんですが、少なくとも、今までの雇用の制度は、配転に優しく、解雇に厳しい。

 メンバーシップ型という言葉が最近はやっていますけれども、もし、今の、これまでの、かつての日本の雇用の仕組み、システムがジョブ型というよりはメンバーシップ型であったということで整理すれば、それは、解雇は比較的難しいけれども配転は容易である。確かにそうですね、我々役所でもそうです。どこかに行けと言われたら、すぐ転居を余儀なくされる。それは従わないといけないんですね。そういう判例法理だったわけです。

 ところが、これからの経済の構造あるいは産業あるいは社会の変化、そういうのを踏まえると、その配転と解雇のバランスをもう少し変えていくような議論が必要だし、実際、先ほども共産党の高橋委員から御紹介があったように、判例法理は既に、経済実態、社会の実態を踏まえて変化をしてきているわけですから、その判例法理の後をお役所がついていくのか、あるいは判例法理を踏まえながら必要な環境整備を行っていくのかということであると私は思っています。

 そういった意味で、余りああいう攻撃に対してひるまず、ひるんでいらっしゃいませんけれども、田村大臣は正面から受けとめていらっしゃると思いますが、予算委員会でも安倍総理に向けてそういう議論もなされるわけですから、やはりもっとわかりやすく、一体政府が何を考えていて、何をやりたいのかというのをもうちょっとうまく説明できるんじゃないかなと、私なんかは、野党でございますが、はたで見ていて、いつも思っているところでございます。

 例えば、解雇の金銭解決、これは予算委員会でも安倍総理が相当議論を吹っかけられましたけれども、金銭解決は私はやるべきだと思います。

 金銭解決は、何か、共産党さんあるいは民主党さんの一部の御議論を聞いていると、あれは解雇をしやすくするんだと言うけれども、違いますよね。金銭解決というのは、解雇紛争に巻き込まれた労働者の方が解雇無効判決をかち取った、その先の選択肢をふやすんですよね。

 そうやってはっきりと言えば、それは決して、金銭解決というものの本当のやりたいことを正面から言えば、実は反対するのは労働者側じゃなくて、経営者側が反対することだってあり得るわけです。むしろ、今、厚生労働省において議論されてきた金銭解決の議論というのは、私は、経営者側にとってきっと負担が大きいだろうな、反対すべきは経団連だ、まあ、経団連かどうかわかりません、経営者側だ、こう思っているんです。

 ところが、日本の、日本のというか、今、この厚生労働委員会でなされている解雇規制の議論は、何か、本来議論すべきことからみんなが目を背けて、また演説をしているといって事務所に帰ると怒られるんですけれども、大事なことですから、目を背けているように私には見えます。

 むしろ、厚生労働省こそ、そういう難しいテーマを扱っていらっしゃるわけだから、そういう解雇の問題に正面から向き合って、あくまでもやはり金銭解決は必要なんだ、あるいは、限定正社員の問題も、これは労働者のために必要な環境整備なんだ、こういうことを言っていくべきで、先ほどもそうおっしゃったわけですけれども、幾らそういう点で攻撃を田村大臣が受けられても、維新の会と足立康史はお守りをしますので、ぜひ、ひるむことなく、この解雇の問題についてはやり切っていただきたいと思います。

 職務限定正社員等の働き方の問題というのは、実はすごく本質的なテーマだと思っていて、正社員と非正規がありますね。ところが、その極端な二つの形しかないんだ、その間があいているんだ、ここの環境整備をして、なだらかなというか、さまざまな選択肢を経営側と労働側に御用意をすることによって最も労働者の厚生は上がる、これが厚生労働省の考え方なんだから、これはひるまずに、法律も含めて……(発言する者あり)いや、環境整備という意味では法的な措置も必要な局面はあるかもしれない。まあ、そこはいいです。

 いずれにせよ、私は、法的措置も含めて、働き方の規定の整備というものが必要であれば、判例法理に係るややこしい規定を労働契約法みたいに入れるとかえってややこしくなりますから、それはよくないという田村大臣のお考えはよくわかりますが、解雇の問題であれ、限定正社員の問題であれ、必ず、高度成長期を終えた、私は、こういう制度改正というのはもう二十年前から必要だったと思っているんですよ。それを自民党政権がほったらかしにしてきたから、政権交代が起こったんですよ。必ず、この安倍政権においてこれをやらないと、また政権交代が起こりますよ。これは時代の必然であると私は思っているんです。

 それで、今申し上げた話をなぜここで紹介をしたかというと、働き方のテーマが正社員と非正規にどんと分かれていて、極端なものに分かれていて、間がないというのは、実は、あらゆる厚生労働分野の制度で起こっていることなんですね。

 例えば、きのうでしたか、この委員会で申し上げた生活保護と年金も、年金はみんなが入るはずなんだけれども、実際に低年金の方と無年金の方がいらっしゃる。その方々への手当てが少ないから、ほとんどないから、多くの生活保護に入らなくてもいい方々までが生活保護に入って、身ぐるみ剥がれるような苦しい局面に置かれるケースがあるわけです。

 だから、今の制度というのは、やはり高度成長期の時代に合った正社員のシステムとか、あるいは年金のシステムというものが壊れてきている中で、極端なソリューションしかないんです。生活保護というソリューションや非正規雇用というソリューションしかない。その間に中間的な、もうちょっとモデレートな働き方や、あるいは救済の仕組み、あるいは収入を底上げする仕組みが今欠けているから問題なんだということで、ちょっと時間がたってしまいましたからやめますが、ぜひ、大臣、その辺、果敢に挑戦をしていかれるよう、希望を申し上げます。

 本題に入りますが、健保組合の問題は、私、四月十九日のこの委員会でも取り上げました。きょうお配り申し上げている資料の一枚目、この資料は四月十九日にお配りをしたものでございます。これは、四月の十五日に日本維新の会が二十五年度予算の修正案としてお出しをした予算修正案の中身の一部なんですね。そして、その翌日、四月十六日には、実際に二十五年度予算案が、修正案は否決をされ、そして予算案が通過をしたという経緯をたどっております。

 私がこの資料を出したことに対応しているかどうかわかりませんが、その前に、ちょっと各論に行く前に、これを取り上げた際に、私は、実はここで、健保組合が保険料率が低いと申し上げた。ここに書いてあるように、健保組合は保険料率が平均八・三パー、それに対して協会けんぽは、大企業は八・三パー、中小企業は一〇パー、公務員は九・一パーということで、一番保険料率が低いのが大企業の従業員、次に低いのが公務員、一番たくさん保険料を払わなくてはいけなくて苦しんでいるのが中小企業の従業員だと申し上げたわけです。

 こういう議論をすると、一番保険料率が低い健保組合連合会の方々は、いや、それは我々が頑張ったからでしょう、我々が保健事業をいろいろ頑張って、健診をやったから、病気にならなくて保険料率が低いんだ、こういう御主張をされるわけですが、私は、いや、それは違う、採用する時点でスクリーニングをしているじゃないか、それはある種の一部のいいとこ取りなんだという話をいたしました。

 そのときも議論したんですが、もう一つ、私が申し上げたのが若干抽象的だったのでもう一度やっておきたいんですけれども、いわゆる経済学の言葉でクリームスキミングという言葉があります。これは日本語ではいいとこ取りと訳されていますけれども、いわゆるミルクの、置いておくと上の方にクリームができます。この一番上のおいしいところだけをすくい取ることをクリームスキミングというんです。

 私は、いわゆる利用者、皆保険ですから国民全体の中で、いわゆる大企業を中心とする健保組合はクリームスキミングが起こっている、その加入者においてはクリームスキミングが起こっていると考えているんですが、田村大臣はどうお考えでしょうか。

田村国務大臣 まず、前提のお話でいろいろと委員のお考えというものをお聞かせいただいて、賛同するところも多くありました。

 年金と生活保護、それから生活保護と雇用保険、いろいろなはざまがあります。雇用保険と生活保護の間には求職者支援制度なるもの、これはスタートは麻生内閣であったと思いますけれども、その後、民主党政権で制度化をしていただいたということでありまして、こういうものがあります。

 一方で、生活保護と困窮者という意味からすると、今度は生活困窮者法等々で、例えば家賃補助なんかがあるわけなんですが、年金という話になりますと、もうこれは高齢者になりますから、基本的に働くことが前提にならないということになりますと、そこと生活保護、つまり、低年金と生活保護、これはこれからちょっと考えていかなきゃいけない大きな課題であるという認識は持っております。そこは、委員と、今すぐどういう方策があるのかというのはなかなか、まだ私自身も解決策を持っているわけじゃないんですけれども、大変な課題だというふうに認識をいたしておりますので、そういう意味では、同じ考え。

 それから、雇用も、非正規雇用の方々と正規の方々、その間がないじゃないかと。そのとおりでございまして、だから、多様な働き方ということで、今回、限定的な働き方正社員、こういうものを提案いただいておるということでございますから、そこは共通認識を持っておるということで理解させていただいたかなというふうに思います。

 さて、今のクリームスキミングなんですが、ここは、保険制度の成り立ちはよくわかっておられるので申しませんが、そこがスタートだったということは御理解いただけると思います。もとから被用者保険というのがあって、分かれていったのじゃなくて、ばらばらの中で今ずっと歴史的に来ているということであります。

 一つは、どこが違うかというと、やはり所得が圧倒的に違う理由です。それは、健保組合の皆様方、これは大企業が多いですから所得が高い。共済もそうです、公務員ですから所得が高い。年齢の部分を見ますと、年齢による医療費というのはやはりあるので、例えば、健保組合の方々、一人当たり年間十三・八万円ですかね、でも、協会けんぽの方々は十五・六万円。若干差があるんです、二万円ぐらい。

 ただ、これは、前期高齢者に対しての調整があります。これでやっちゃうので、ほとんど関係ないということを考えると、やはり所得というのが一番大きな違いなのかな、これがございます。それをどう考えるのかというのは確かにあるので、そこで、今、総報酬割というものを三分の一で、その後、全て総報酬割にするかどうかという議論を今いただいておるわけであります。

 何でこんな話をするかというと、前も申し上げたと思いますが、保険者の機能というのがあったりでありますとか、歴然と出ているのは、特定健診の率は倍近く違います。それは、やはり自分のところが保険者ですから、企業イコール保険者ですからそのままやれるわけですけれども、協会けんぽはそうなっていないということがございます。

 それだとか、いろいろなものがありまして、それはそれで保険者としての機能というものも、やはりそれは我々認めていかなきゃならぬだろうということで、一元化というものがいいのかどうかは別にして、クリームスキミングという意味からすれば、やはりそれぞれの保険者にとっていいところがあるというのは確かでございますので、それ自体を否定するわけじゃありませんが、それが悪いことかどうかということも含めて、調整する方法というものは今徐々に進みつつあるというふうな理解をいたしております。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

足立委員 大臣、ありがとうございます。

 まさに、今おっしゃったように、制度ができてきた歴史的経緯もあるし、それから、おっしゃったように、そもそも給与の実額が違うので、負担と給付という関係でいうと一定の差が出てくるんだ、これはよくわかります。

 この問題、もう次に行きますが、一言だけ。しかし、そういうこともあるが、クリームスキミングも一部ある、これは、いいですね、それで。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

田村国務大臣 クリームスキミングというかどうかは別にして、得なところはあります。それは、所得が高いんですから、所得が高ければ、同じ保険料を取ろうと思っても料率下げられますから、それで総体一緒になります。ただ、それを調整するということで、今、総報酬割というものを入れてきているというふうに御理解をいただければありがたいということであります。

足立委員 ごめんなさい、せっかく質問させていただいているので確認しておかないと、逆に、それはないということになってしまいかねないので。

 要すれば、クリームスキミングというのは、今大臣がおっしゃったように、いずれも私はそのとおりだと思います。加えて、加入者の集合が、いわゆる世代、年齢の問題とか、あるいは、そもそも比較的健康な方が多く採用されているとかいうことをクリームスキミングと言っているんです。それはありますよね。

田村国務大臣 さっきも言いましたとおり、一番初めに言ったんです、加入者の方々の一人当たりの医療費、これは年齢だとか健康ということと絡んでくる話ですよね、これが、健保組合の方は十三・八万円、そして協会けんぽは十五・六万円。だから、協会けんぽの方が一万八千円余分に一人当たりの医療費はかかっています。ここは委員がおっしゃられているところだと思います。

 ただ、これは前期高齢者への調整制度がございますので、ここで大体調整されちゃうというふうにお答えをさせていただきました。

足立委員 きょう、これは政府参考人は。

西川(京)委員長代理 保険局長です。

足立委員 今の点、クリームスキミングはあるんだと、ちょっとぜひお願いします。

木倉政府参考人 言葉の定義の問題はあるかもしれませんけれども、先生御指摘のように、健保組合の方々は、協会けんぽと比べた場合に、より若くて健康な方が勤められている、それから賃金も高いというその条件の差、保険集団を構成する条件の差はあるということは事実だろうというふうに思っております。

足立委員 今の局長の御答弁、大臣も同じですね。

田村国務大臣 実態としてはそうなんですが、ただ、財政的にどうかといったときに、今言いましたように、一人当たりの医療費というものがたしか一万八千円違うというような例はあるんですが、それが財政的にどうかというと、実は、前期高齢者の調整金でほぼ消えちゃっている。

 それよりかは、所得における、それをクリームスキミングといえば、そうだと思いますけれども、そもそも所得が違いますから。健保組合というのは大企業の社員ですから、給料が高いんですよ。それで保険料の差。つまり、なぜ保険料の差がこれだけつくんだということを今私は説明しているので、その理由の主なものは、収入の違い。協会けんぽの平均収入とそれから健保組合の平均収入、その違いが一番大きな理由ですということを申し上げているんです。

足立委員 要すれば、今大臣おっしゃったように、収入が違う。収入が違うんだけれども、その収入が違う集合、大企業の加入者の集合と中小企業の加入者の集合、収入が違いますよね。それは違うんです。だから、健康についても、そもそも背負っているリスクが違う人たちが集まっているんだと。

 これは、局長、もう一回。木倉局長、大臣にちょっと言ってください、大臣に。

田村国務大臣 認識は一緒だと思うんですよ。

 言われるとおり、協会けんぽの方が一人当たりの医療費が高いわけです。だから、協会けんぽの人たちの方が一人当たりの健康リスクが高いんですよ、年齢だとかいろいろなことがあって、組合健保の人たちよりも。だから、それはそのとおりなんです。

 ただ、それを保険財政という全体で見ると、一方で、前期高齢者に対する調整金があって、そこで調整しているところがあるので、それほど、若干ぐらいの影響はありますけれども、保険料の違いという意味からすると、そこが主な理由ではない、それよりかは、給料が違うというのが主な理由だということを御説明させていただいたということです。

足立委員 もうやめますが、木倉局長がおっしゃったように、これはクリームスキミングはあるということなので、それはいいんです。これはもう、確認をしたかった。

 実は、入り口でもうあと七分しかないんですけれども、このお配りをした紙の三枚目をちょっとごらんいただけますか。

 これは、私が質問した後の健保ニュース、健康保険組合連合会のいわゆるニュース冊子ですね。これの冒頭の、いわゆる社説みたいなところです。

 ここに、上段の真ん中辺から「これまでの議論のなかで、」三行目、「協会けんぽと健保組合の保険料率の格差が俎上に上っている」。そうですね、私は俎上にのせています。十パーと八・三パーで格差が大きいという議論である、しかし、この考え方には注意すべきことが二つあるということで、連合会から御指摘をいただいています。

 一つは、協会けんぽは過去の赤字を補填するために保険料率が上がっているのに対して、健保組合はこれまでに積み立てた積立金を取り崩しているから、だから差があるんだ、こういう指摘があります。

 ある程度事実だと思うんですが、私が次に伺いたいのは、これはどれぐらいの影響ですかね。局長、お願いします。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 今、二十五年度の、この前発表されました健保組合の平均保険料率八・六%というのが出ておるんですけれども、積立金を充てているからここまで抑えられているんだという御指摘がありますので、積立金の繰り入れというものを除いて計算しますと、八・六から九・六%という保険料率の数字になります。

 一方で、協会けんぽの保険料率、各支部をならしまして、二十五年度も一〇・〇%まで来ておりますけれども、これは、この三年間、累積赤字を解消するために保険料率を上げてきた、それで若干黒字を得て、二十五年度は四千億のうち五百億を使わせていただこうということで法律を通していただいているわけでございますが、この繰り入れなしすると、一〇・〇でなくて、二十五年度も一〇・一%に上げなきゃいけないということですので、その差が、九・六と一〇・一の差で見ますと、〇・五%の差がある。

 それから、協会けんぽの全体の支出に対しましての国庫補助一・二兆円が入っておりますので、これを仮に除いてみますと、保険料は一一・七%ないと成り立たないということになりますので、全く同じ条件と言えるかどうか。

 健保組合の積立金繰り入れを除いた九・六%に対して、積立金も国庫補助も除いて協会けんぽを計算すると一一・七%、差が二・一%あるというふうな試算状況にございます。

足立委員 局長、ありがとうございます。

 もう完璧な、予想プラス二十、百二十点と言ったら、私が点数をつけたら怒られますけれども、局長、ありがとうございます。

 まさに、今おっしゃられたような感じだと思います。そういう意味では、連合会の指摘は正しい。正しいけれども、もう一つ言えば、今おっしゃっていただいたように、公費が入っているわけですから、そういうことも含めて、ちゃんとこれは議論をしていく必要がある。そういう意味では、連合会の指摘は半分正しいが半分間違っている、これが私は客観的なあれだと思います。

 それからもう一つ、下の段の二パラ目、「さらにもう一つの大切な視点は、」ということで、協会けんぽは一財政、一保険者であるけれども、健保組合は千四百余りの健保組合の平均値なんだ、分布があるんだという指摘があります。

 これは、私は、まず、これについて一言申し上げると、もう一枚めくっていただくと、協会けんぽも、これは釈迦に説法ですけれども、都道府県ごとに保険料率は違います。それも大きな格差があるけれども、かつて同じ保険料率であったのを、激変すると申しわけないので、激変緩和ということで、この濃いラインまで緩和をしている。次のページにも細かい図がついていますが、そういうことをやってきているんですね。

 したがって、分布があるのは健保組合であって、協会けんぽは一つだというのは、非常に、先ほどの話が、連合会の指摘二つのうち一つ目が半分正しければ、これはほとんど間違っていると私は思うんです。もちろん一財政であるけれども、だからこそ、我々は、被保険者を一財政にしたらいい、被保険者を一財政にして、さまざまな、地域別とかあるいは会社別で、あるいはグループ別で保険料率の格差はつくってもいいんだと。まさにこの協会けんぽの仕組みにあるような形で、一財政でやったらいいというのが、私が予算の修正案で提示をした被保険者統合論なんですね。

 この今の分布について、今の連合会が言うところの健保組合の分布、これは今、健保組合の中で交付金で調整していますね、中は。今、交付金制度でどれだけその分布が変化をしているか、教えてください。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 健保組合も、保険料率の分布、平均八・六といいましても、協会けんぽの一〇・〇を超えるものから七・〇を下回るものまで、幅広くあるわけでございます。

 今御指摘の交付金交付事業、これは健保連が独自にやっておるものでございますけれども、健保組合連合会の方で交付金をそういう厳しいところに出すということで、二十三年決算ベースで見まして、保険料率一〇%以上の組合が、交付金がない年で百九十六あるところが、交付金交付をする、高い料率のところに交付をすることによりまして百四十七組合に減少するというふうに、料率や医療費に着目して、中で調整をされているという状況にございます。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

足立委員 ありがとうございます。

 こういう交付金制度を使ってさまざまな調整をしているわけですが、私は、被保険者全体で、もっと大胆に保険料率の調整をすべきだということを指摘しているわけでございます。

 なぜそういう議論をしているかなんですけれども、実は、被保険者は労使折半で今こういうことになっていますが、国保は市町村が保険者ですね。その保険者である市町村について、これを都道府県単位化しようという議論がある。これはやはり規模が小さいところが多いとかいうことで、非常に国保については課題が山積をしているからなんですが、国民会議で議論しているこの都道府県化によって、何が解決して、何は解決しないか、端的に、政務官、お願いします。

とかしき大臣政務官 お答えさせていただきます。

 国民会議において、今、国保の広域化ということで議論が進められております。

 これによりまして、財政運営の安定化が図られるということと、そして、医療費の水準に違いがあるということで標準化が図られる、こういったこともあります。

 逆に、市町村の方で進められております保険料の徴収とか健康づくり、こういった保険機能のあり方、これは市区町村がきめ細やかに今まで対応させていただいておりましたので、これが都道府県で果たして継続できるかどうか、こういった課題もございまして、十分な検討が今後も必要だと思っております。

 財政基盤のさらなる強化が必要と考えておりますので、これからも検討を重ねていきたいと思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいた点は、最後の紙に、国保が抱える構造的な問題ということで、七つ挙がっていますが、この都道府県化によって解決するのは六番ぐらいなもので、ほとんど解決しないんです。本当に大切な改革は、都道府県化だけでは解決しないんです。

 ただ、都道府県化によって何が大きな意味があるかというと、今、医療計画は都道府県がつくっているから、保険の仕組みと医療提供体制の仕組みの平仄が合うから、より保険者機能あるいは提供体制の改革が進むということなんだと思います。

 もう時間が来ましたので終わりますが、私、実は、いつも手元に置いて、確認をしながらいつも見ている新聞記事があります。

 これは、二月二十一日の日経の「経済教室」で、薬害エイズであれされた郡司さんが、東京財団の冨田さんという方と一緒に書かれた論文のサマリーでございます。「医療費抑制、地域単位で」ということで、今私が申し上げたような、保険と提供体制を地域でしっかりと平仄を合わせながら解決をしていくことが、唯一というか、大変有効なことだということを指摘しています。

 一方で、現状の仕組みは、医療計画は県、介護計画は市町村、あるいは高齢者住宅計画は都道府県、地域保健福祉計画は市町村と、ばらばらになっています。

 私は、単に医療の国保を都道府県にするという、まさに私に言わせればびほう策を議論するのじゃなくて、もっと大きく、医療、介護、福祉全体において、保険側と提供側を平仄を合わせながら、もう一回システム改革を議論すべきとお訴えをして、終わりたいと思います。

 最後に、一言、お願いします。

田村国務大臣 いろいろなお考え方がありますし、いろいろな問題点もあります。整理をしなきゃいけないところがたくさんありますが、委員の大胆なお話はきょうもしっかりとお聞かせをいただきました。ありがとうございました。

足立委員 ありがとうございました。

松本委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 久しぶりの一般質疑ということで、本日は、私が政治の道へ進むきっかけともなりました東日本大震災、そして福島第一原発事故、特に原発事故後の健康被害、小児の甲状腺がんの問題、それにつきまして、厚生労働大臣そして厚生労働省のお考えをお聞きしたいと思います。

 所管は環境省ということは十分承知しております。環境委員会でも何度となくこの問題を取り上げさせていただきまして、本日は厚生労働省のお考えをお聞きしたい、そういうふうに思っております。

 福島第一原発事故、そして、東日本大震災から二年二カ月ぐらいがたちました。今なお、被災地はもとより、全国各地で避難生活を送られている方に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 そして、田村大臣、その所信表明の中で、「復興大臣の一人であるという意識のもと、スピード感を持ちつつ、全力を尽くしてまいります。」また、「被災者の見守りに取り組むとともに、健康確保や心のケアを進めていきます。」とおっしゃっておられました。

 改めてお聞きします。今もそのお考えにお変わりはございませんでしょうか。

田村国務大臣 やはり、被災地の復興というものがないと我が国全体の再生というものはないと私は思っておりますし、安倍総理も同じ思いで、各閣僚に常にそのことをおっしゃっておられるわけでございますので、もちろん、そのことを、そのまま今も大変重要なことだということで認識をいたしております。

中島委員 それでは、震災、原発事故後、現在に至るまで、特に、原発事故による放射能の健康被害、小児甲状腺がんも含めました健康被害に対して、厚生労働省がどういうかかわりを持ってこられたか、お答えいただきたいと思います。

秋葉副大臣 今、大臣からも御答弁がありましたとおり、本当にそれぞれの閣僚が復興大臣の立場でということでございますし、私も、被災地選出の議員として、復興の副大臣も兼務をさせていただいているところでございます。

 福島県における放射能による甲状腺への影響など、住民の健康管理につきましては、基本的には福島県が県民の健康管理調査を行っているわけでございますが、国も、放射性物質による環境汚染にかかわる一般住民の健康管理という観点から、環境省を中心に、財政的、技術的な支援を福島県に対して行っているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、この福島県がやっている調査に人的な支援をさせていただいているところでございます。また、被災者の健康管理という観点から、長期にわたる仮設住宅等での生活による健康状態の悪化を防ぐために、地元の保健師さんによる戸別訪問などの各種健康支援活動や、それを担う保健師などの人材確保の支援を厚生労働省としても行ってきているところでございまして、引き続き、国民の健康、安全を守るために、関係の省庁としっかり連携をしながら対応してまいりたいと考えております。

中島委員 ありがとうございます。

 関係省庁と連携をとってという御発言がございました。そして、全力を尽くしてということも、今、お聞きいたしました。

 私自身は、医師でもありまして、被災直後、私は宮城県の気仙沼でありましたが、何度となく医療支援に加わりました。震災直後に停電が続いて、御自宅に取り残されたお年寄りや、重い病気を持った方々、そして子供たち、その方々に往診をして回る、そういう活動もずっとしておりました。

 先日は、福島第一原発にも視察に行きまして、隣の町であります楢葉町、そこの町長さんとも意見交換をさせていただきました。

 そんな視点から、非常に今懸念を持っていることがございます。原発直後から現在に至るまで、小児の甲状腺がんの問題、その取り組み。

 福島第一原発事故から二十五年前に起こりましたチェルノブイリの原発事故、その周辺のベラルーシでは、事故から毎年一人から二人発症だった現地の甲状腺がん、それが五年目に一気に二十八人、そして六年目には五十五人、十年目の一九九五年には九十人と、ピークは十年目だったわけですね。小児の甲状腺がんは、通常、百万人に一人という値になっております。これはもう明らかにチェルノブイリの原発事故の影響と言えると思います。

 そのことをもとにしたというよりは、福島においては、昨年からことしに至るまでに甲状腺がんの検査、甲状腺エコーですけれども、それをやった結果、三人の方に甲状腺がん、そして七人の方が疑いという結果が出た。それに対して、このような大規模なスクリーニング検査は今までやったことがないということで、三月に山梨、長崎、青森ですか、同様のスクリーニング検査を行いました。その結果は、精査した結果、差異はない、因果関係はないという結果が出たということも新聞でも報道されましたが、それは何ら安心の材料にはなっておりません。

 今問題になっているのは、事故直後、放出された放射性核種の種類と量、そして、一番大事な、子供たちの行動動態が全くわかっていないんですね。ということは、今現在、チェルノブイリの原発事故をもとにして対策を練らなきゃいけない。そういうことが非常に大きな問題となっているんです。現在では、二年に一回の甲状腺検査、そして、それに対してフォローをしていくという結果になっておるんですが、このこと自体は非常に対策が甘い。

 私は、このことにしっかりと厚生労働省としてもかかわっていただいて、先ほど、省庁をまたがってと。もともと医師不足の地域です。そういった問題も含めまして、チェルノブイリの問題を例に挙げていくのであれば、これから二年後に徐々にふえ始めて十年目がピーク、そういう中でしっかりとした体制づくりをしなければならない。厚生労働省としてどうお考えでしょうか。

秋葉副大臣 基本的には福島県が調査をいただいているわけですけれども、それに対して、特に人的な面で、しっかり厚生労働省としても、学会を通しまして、専門医の、なるべくそうした福島県での、病院での対応に努めてもらうような通知も出させていただいておりますので、しっかりと私どもも当事者意識を持って支援してまいるように努めてまいりたいと考えております。

中島委員 もうこれは時間がないんですね。二年後には発生する可能性があるんです。省庁で話し合っている場合ではなくて、即効性のある、先ほど大臣の所信表明であったスピード感、そして、管轄が違うとか、そういったことを言っている場合では私自身は全くないと思っています。

 資料は、今、長野県松本の市長をやっておられる菅谷先生。菅谷先生は、チェルノブイリの原発事故後、五年間にわたってベラルーシで子供たちの甲状腺がんの治療に当たりました。その経験をもとにして文章を書いておられるわけですが、一枚目の資料の右側、ラインが引いてあるところ。

 私は汚染された土地に生きる人々の行き場のない悲しみや苦悩に接した。切なく重苦しい歳月の連続であった。そのようななか、特に忘れられないのは手術を受けた子どもの親たち、とりわけ母親たちの悲嘆にくれた姿である。

  国を背負っていかなければならない子どもたちが、大人たちの身勝手な欲望の犠牲となってしまった悲しい現実を目のあたりにした。原子力による災害は、子どもたちとその家族すべての人生を大きく狂わせ、同時に生き方そのものに計り知れない負の影響を及ぼし、それは、まさに原発で事故が発生したらどのような事態が生ずるのかという現実を、いやおうなくつきつけられる日々でもあった。

この次にもあるわけですが、もう本当に悠長なことを言っている場合では私はないと思います。

 今、二年に一回の甲状腺エコー。ベラルーシで、旧ソビエトですが、半年に一回です。半年に一回の検査をしていって、十年目がピークだった。それはもうあと二年を切っているわけですね。この体制づくりのために、先ほども答弁があるんですが、具体的にお約束していただきたいんですね。関係省庁、環境省と連携をして、しっかりとした体制づくり。

 これには、甲状腺エコー自体はそんなに侵襲のある検査ではないです。ただ、若干ですがテクニカルなこともある。そういった意味では、今現在、福島はまだ第一回目の甲状腺エコーも終わっていないんです。浜通りを中心に、やっと半分の、十五万人の子供たちの甲状腺検査がやっと終わったところなんです。これから一年の間にやっと一回目のスクリーニングが終わる。そうこうしているうちに、増加していく年に入っていく可能性が否定できないわけですね。そのための、人的というのは医師も含めたそういった整備、お約束していただきたいと思います。

秋葉副大臣 これは、特に子供たちの健康被害をしっかり救済していくための議員立法も解散前の国会で成案になったところでございまして、今、復興庁といたしましても、その法律の運用を具体的にどうしていくのか、恐らくその法律の対応が中心になっていくんだと思います。

 私どもも、先ほどから申し上げております福島県における県民健康管理調査につきましては、しっかりと、厚生労働省として、学会の協力を要請させていただいたり、そのために必要な予算措置も、基金を中心に七百八十二億円の交付金も拠出させていただいているところでございまして、こうした予算面においても必要な措置を継続して取り組んでまいりたいと考えております。

中島委員 これは原発事故です。自然災害ではないんですね。これは、一方では、子供たちやその家族の不安をあおるという部分もあるかもしれません、という発言もいろいろな方がされています。そんなことを言っている場合ではないんですよね。

 そもそも、ああいうところに原発がある、そして、子供たちにその爆弾のようなものを背負わせているという現実ですから。そして、結果、こういう事態になって、先日、楢葉町も行ってきました。花がたくさん咲いて、非常に穏やかな町です。でも、たくさんある家で誰も住んでいないわけですよね。今、除染なくして復興なし、そういう言葉のもとに除染もされています。でも、あそこに子供たちは絶対に帰ってきませんよ。一時的に帰ってくる、それはある意味、開拓も含めて新しい町づくりということになるかもしれません。

 そして、先ほども言ったように、当時の、二年前の数カ月の間の子供たちがどういう行動動態をとったかということがわかっていない以上、全国各地でもしかしたら甲状腺がんの子供たちがぽつぽつぽつぽつふえてくる可能性が否定できないんです。もちろん、そういうことがなければそれはいいことなんですが、そのことが懸念されている段階で、福島に限らず、自然発生した甲状腺がんの子とどうやって区別していくのか、そういった問題は、今、水俣病の問題も問題になっております。

 私は、事態がこれほどこじれてしまった理由は、やはり健康被害に対する厚生行政がしっかりと食い込んでいかなかった。そして、今回のことは、今はっきりと明言してはっきりと決めておかなければ、もしかしたら五年後、六年後に大変な事態になったときに、後手後手ということになるわけです。

 どうか、もう一度お約束してください。

田村国務大臣 秋葉副大臣は、我が省の副大臣でありながら復興庁の副大臣も兼ねておられますので、この問題の見識というのは非常にお持ちをいただいている副大臣だというふうに思います。

 先ほど来、副大臣が答弁をしておるわけでありますけれども、一義的にこれは福島県ということで、それに対して国もお金を拠出して、しっかりとフォローして、また、我が省は人材的にもいろいろなお手伝いをさせていただいておる。

 一方、国の方では、復興庁を中心に環境省が対応でございますから、厚生労働省は専門的な知見からこれに対して対応させていただくということでございますので、お子さん方、それから親御さん、いろいろな不安があられると思います、その不安というものをいかにして解消していくか、これは大変重要な点だというふうに思いますので、一義的には県でありますけれども、その県をしっかりと我々もお手伝いしていく形で、その不安というものを払拭するように最大限努めてまいりたいというふうに思います。

中島委員 お約束と私は受けとめます。

 そして、直接的な被害だけではなくて、今福島で起こっている子供たちの問題は、外で遊べないんですね。結果、家の中で遊んで、子供たちの生活習慣病、糖尿病とか高脂血症、そういった問題があります。それについてはやはり厚生行政だと思うんです。二次的な健康被害というか、そういった問題についてもしっかりと取り組まれなければいけない。

 そして、今、チェルノブイリ周辺で起こっていることは、要するに、科学的には証明できない放射能の影響です。免疫力が低下したり、そして風邪を引きやすくなったり、集中力がない、そういう次の世代までつながってしまうような放射能の影響が今問題となっているわけです。

 福島そしてこの日本でも、必ずその問題がここ数年、数十年後に大きな問題となって、課題となってくることが懸念されるわけです。私は、その事実を菅谷先生からも、ロシア、ベラルーシの方からも少しお話を聞きながら、やはりしっかりとした対策、私は環境省の方でも言いましたが、モニュメント的な、放射線の医療に特化した病院を何としても福島に建ててもらいたい。

 誰が建てるかという話になったら、これは国立しかありません。環境省、厚生労働省が中心になって、モニュメント的な、二度とこのような事故を起こさない、そして子供たちに安心した生活を送らせてあげるための、そういった病院づくりを何としてもやっていただきたいんですが、いかがでしょうか。

秋葉副大臣 委員御懸念の点は、私も本当に重要な点だと思っております。

 実際、私のところにも、子供たちの心のケアの問題をもっと手厚くすべきだという現場からの意見も参ってきておりますし、特に、遊び場などが十分確保されていないために、運動器官も大分低下をしているという問題。そして、委員御指摘のとおり、それがさまざまな病気にもあらわれているということを認識しております。

 ですから、そういった場所の確保や、あるいはそういった対応についても、厚労省としても予算措置をして遊具の確保等々を図っているところでございますが、最終的には、今先生から御提言がございましたとおり、拠点となるような施設の建設についてということで、今、福島県が、ふくしま国際医療科学センターという形で県立医科大学の中に整備をすると伺っております。これも、関係省庁と十分連携をしながら、こうした施設が単に研究だけにとどまらないで臨床も担えるような形で充実できるように、しっかりバックアップをしてまいりたいと思っております。

 我が省といたしましても、がん対策の観点から、全国においてがんの診療連携拠点病院の整備を進めてきているところでございます。既に福島県内におきましても八カ所の拠点病院を指定しているところでございまして、居住地域にかかわらず適切ながん医療を受けることができるように、さらに整備を促進してまいりたいというふうに考えております。

中島委員 福島医大で取り組まれていることも知っております。ただ、福島医大のもともとの目的はそういうことではないはずなんです。県全体の医療の中核病院としての機能も当然持ち合わせた中での放射線、原発事故後の健康被害対策。

 私が言っているのは、ある人からも聞きました、福島の子供たちは、もう国から見放されたと言っている子供たちもいると。お母さんたちも、これから不安を抱えて子供を育てていかなければならない。先ほど言ったように、モニュメント的な、もう二度とこういうことは起こさせない、そういう意味での、具体的な実行力というのはそういうことだと私は思っております。

 現実にできるかどうかというよりは、そのために前に進まなければ、あと二年後にはそういうことが問題になってくる可能性があるわけです。今までの環境被害全てにおいて言えることかもしれませんが、環境被害の結果、健康被害につながるんです。ここにはやはり厚生行政がしっかりとくいを打って、むしろ中心となって働きかけていかなければ、時代は繰り返されるではないですが、今までのような環境被害とはわけが違いますよ。原発による被害ですよ。絶対、二度と起こしてはいけないのを前提に、これから永久的に、先ほども言いました、次の世代、さらにはまた次の世代までこのことを拭い去れないかもしれないんですから、そのために、口先だけではなくて、しっかりと実態として実行力を示していただきたいと思います。

 時間となりましたのできょうはこれで終わりますけれども、また環境省の方でもこのことはずっと言っていきたいと思いますし、先ほどお約束していただいたと私は受けとめておりますので、しっかりと実行力を持って取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 二十分間、おつき合いをいただきたいと思います。

 いきなり通告をしていないことで、可能な範囲でお答えをいただければと思いますけれども、成年後見選挙権裁判、全会派一致で、選挙権を回復する、つまりは、公職選挙法の十一条一項一号を削除するという法案が成立をいたしました。

 このこと自体は、国会の大変な見識といいますか、これまでの不作為を挽回する一つの快挙であったということで思っておりますが、残念ながら、新藤大臣が、控訴は取り下げないという御判断をされておられるようでありますが、これは大変矛盾した御判断ではないか、また、この期に及んで裁判を続けていくということは、時間や経費の無駄遣いではないかというふうに思います。

 これは担当ではないかもしれませんが、政府の一員として御見解をといいますか、御感想でも結構ですが、お示しをいただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。

田村国務大臣 これは私は所管ではございませんので、新藤大臣とは仲がいいですけれども、やはりちょっと所管ではございませんので、私の方からお答えするのは差し控えさせていただきます。

中根(康)委員 これはやはり、少しといいますか、かなり、国会としても国民としても理解のできない政府の御判断であると強く抗議を申し上げておきたいと思います。ぜひ受けとめていただきたいと思います。

 山井先生がいらっしゃらない間に冷静に議論しようと思っていたんですけれども、お戻りになられました。

 実は、けさ、民主党の部門会議で、閣議決定されて提出をされた障害者差別解消法案についての党内手続があったものですから、この委員会に来るのが少しおくれてしまって、実は、山井議員と厚生労働省の皆さんとのやりとりの前半部分というか、最初の冒頭部分を聞きそびれてしまったんです。

 それは、特養の待機者解消の話。杉並区と南伊豆町の連携、これが好事例であるとして紹介をされている、取り上げられているということ。私は、これは、見る角度にもよりますけれども、好事例というよりも、やむを得ないやり方であると。これが、例えば、杉並区と吉祥寺とか、杉並と世田谷とか、こういったことであれば、一つの横の連携としての好事例というふうに位置づけてもいいのかもしれませんけれども。

 やはり、誰だってそうですよね。国会議員はみんな、週末になれば、それぞれ地元に帰りますよね。みんなふるさとが大事だし、ふるさとが好きで、それが六十年、七十年、八十年そこで暮らしてきた人たちならば、なおさら。別に南伊豆町がいけないというわけじゃないですよ。でも、杉並に生まれ育たなくても、そこに住んでいる方は杉並に愛着を持っているわけで、南伊豆に行くというのは、これはやむを得ず行くということで政府は捉えていただかなきゃ、これが好事例だということであると、この介護の問題というのは国民の気持ちから乖離をしていってしまう。

 例えば、「たまゆら」の事件というのがありましたよね。これだって、これは障害者の皆様方のお話でありますけれども、都内に施設が確保できない、それで遠く離れたところに施設ができる、そこにやむを得ず住まざるを得ない、そして、その施設がいろいろ設備不備があって火災が起きて、多くの方の犠牲が生じてしまった、こういうこともあるわけであります。

 このように、好事例としてここで取り上げているというあり方は、やはり見直していただかなくてはならないというふうに私は考えさせていただいております。

 実は、経済産業省の方には、平成二十四年度の補正予算の中に二百億円がつけられておりまして、商店街まちづくり事業の補助金がありまして、高齢者の生活のための女性や若手の創業等による空き店舗活用等を行う場合の補助、こういうことなんです。

 これは、要するに、駅前、駅中、あるいは商店街、空き店舗、あるいは空き教室、こういったものを使って、なるべく、住んでいる町、暮らしてきた町、今まで身近ななじみのある町でこれからも、しかも大規模施設ではなくて小規模な、お互いに顔の見える関係の中で、肌のぬくもりが感じられる関係の中で暮らし続けていただきたい、あるいはいろいろなサービスをそこで享受していただきたい、こういうことも一つあって、また、そういうことが商店街の活性化にもつながる、地域経済の発展にもつながるということを、経済産業省は、いわゆるコンパクトシティーというような、これは決して新しい考え方ではありませんよね。かねてから提唱されている考え方として唱えておられる。

 経済産業省はそういう考え方をしているのに、きょうは、先ほど、とかしき政務官ですかが御答弁をされて、この南伊豆町の話が、これから推進していくんだ、杉並と南伊豆でやりとりすることがすばらしいことだというふうにおっしゃったということであるならば、これは内閣の不一致ということにもつながりかねませんので、ここはよく整理をして、経産省あるいは厚労省、方向性が違わないようにしていただきたいと思っておるところでございます。

 この辺のところについて、とかしき政務官、訂正するなら訂正してください。

とかしき大臣政務官 済みません、ちょっと中根委員、誤解がありますようで、山井委員の御質問のとき、私は答弁に立っておりませんので、大変申しわけありません。

 あと、山井委員のときに、ちょっとその後お話しさせていただきましたのは、私、当時、杉並区の区議会議員を一時務めておりまして、それで、杉並の状況についてちょっと山井委員に誤解が生じていらっしゃるような気がしましたので、その後お話をさせていただきました。

 南伊豆の話は、杉並区にすれば苦渋の決断で、やらざるを得ない状況に多分追い込まれたんだなというふうに思います。近くのグループホームとか、確かに生活していたところで住まわれるのが一番ベストな選択であるというのは重々承知でありますけれども、二十三区内、特に杉並の場合は場所がないという決定的な条件がありまして、これをなかなか克服できず、そして、いろいろな選択肢の中で、たまたま杉並区が持っていた南伊豆の土地を使って今回施設を、こういう選択に至ったんだと思います。

 それはすばらしい事例ではないかもしれませんけれども、選択肢の幅をふやしていくために自治体なりの苦渋の決断があったということをぜひ知っていただけたらありがたいかなと思います。

 以上です。

中根(康)委員 これは杉並という話ではなく、一般的に申し上げますけれども、特別養護老人ホームという形だけではなく、さまざまな、グループホーム、ケアホーム、小規模多機能、いろいろなサービス体系はあるわけであります。

 本当に、そういうものまで選択肢の中に入れた場合でも、全く空きスペースがないのか、確保できる場所、土地がないのかということは、これは十分検証といいますか、本当に汗をかいていただいて、ぎりぎりまでやっていただいた上で、やむを得ない場合には、杉並区が南伊豆町に土地を持っていた、たまたまそういうことであるならば、それも最終手段として理解できないわけでもありませんけれども、厚生労働省の行政の方向性としては、そういうものが望ましいとはやはり言えない。先ほど、経産省の、コンパクトシティーじゃありませんけれども、やはり、そういう限られたスペースでもうまく活用していくことによって、地域で暮らし続ける、また、そのことがその地域の経済振興にもつながるということでもあります。

 お年寄りがその町からいなくなってしまう町は、やはりこれは不健全です。お年寄りも障害者も子供も女性も、みんなその町にいないといけないわけでありまして、そのことによってさまざまな市民サービスが、ニーズが生じて、その地域が活性化するというような方向性で厚労省としては考えていただかなくてはいけない、そういうことでございまして、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

 大臣、何かお答えいただけますか。では、御見解を。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

田村国務大臣 山井議員のときにもお答えしたわけでありますけれども、杉並が南伊豆を使われるというのは苦渋の選択だというお話がありましたが、なぜこういう話になったかというのは、ここに杉並の養護学校があったりだとか、臨海学校なんかもここにつくっておられるという経緯があって、昔からおつき合いが非常に深いんです。

 ですから、どうしてもというときに、やはり、つき合いが深くて、そもそも、それぞれの行政がある程度理解し合えて、住民同士も交流があるというところにつくるのがいいのではないかという形の中で、何にもないところに、いきなり縁もゆかりもないところに行くよりも、そういうところがあるのならばいいんじゃないのかなということで、いい事例であるという話なんだろうというふうに思います。

 ただ、杉並は何十万人ですから、特養を一つつくって、お年寄りがみんないなくなっちゃうなんということは起こらないわけでございますし、先ほど申し上げたんですけれども、理想は理想で、それは必要なことです。ですから、地域包括ケアシステム等々もどんどん進めて、なるべくなら在宅でというのは、我々厚生労働省もそう思っていますから、地域密着型でどうやって介護というものを解決していくか。我々も、介護問題に対してどう対応するかというのは、そこに基本はあるんです。

 あるんですが、皆さんも与党を経験されて、これだけの特養の待機者の皆様方がおられて、すぐに問題解決できないじゃないですか、それは。だから、そういう中において、完全には解決できないにしても、今あるニーズを何とか解決しようという中での一つの御努力だということでございますので、そこは委員も御理解をいただけるのではないのかなというふうに思います。

中根(康)委員 特養をたくさんつくっていくという方向性にいつまでも縛られていくと、なかなかこれは、そうではないと思いますけれども。

 特養も必要かもしれない。だけれども、グループホーム、ケアホーム、小規模多機能、さまざまなものが、もう既にそういうものが用意されているわけでありますので、いろいろなものを地域地域で展開していく、小さなものがたくさんあるということも、また一つ、いいことだということだと思います。

 年金の話なんですけれども、マクロ経済スライドを発動させなければ今の年金制度は長もちをしないということが先日までの議論で明らかになっているわけでありますが、インフレを推し進めていくというのは、早くマクロ経済スライドを発動させたい、早く特例水準を解消したいという思惑もあるのではないかということも議論をされました。

 いずれにいたしましても、インフレというものとマクロ経済スライドというものは、実質的には年金生活者には打撃といいますか痛みであるということは間違いないものとして、これはお互いに認識をしていかなければならないと思っております。

 だからこそ、また同じことを申し上げますが、抜本改革とは言いませんけれども、やはり、不断の制度の見直しというものは必要だ。今の制度が不磨の大典だということで動かさないということではなくて、必要に応じて動かしていく、制度の改革を行っていくという必要性は大臣にもお認めをいただきたいと改めて思います。

 また、実質的に年金生活者の暮らしを切り詰めなければならないことになるということは、インフレやマクロ経済スライドの結果としてそうなるということは、繰り返しになりますけれども、今までの議論で明らかでありますので、そこの部分に対しては、何らかの政治的な政策、手当てをしていかなくてはいけないということにもなろうかと思います。

 このあたりについては、これは人為的につくられるインフレですから、政治として何か責任を持った施策を打っていかなきゃいけないということだろうと思いますが、いかがでしょうか。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

田村国務大臣 きのうの本会議で、私が、何かアベノミクスで年金が下がると田村大臣も認めたなどというようなデマが発言されたわけでありますが、これに対して強く抗議を申し上げます。

 議事録をよく読んでください。そんなことは一言も言っていません。アベノミクスではございませんと何度も申し上げているにもかかわらず、どの党とは申し上げませんけれども、賛成討論にもかかわらず、そのようなことを、私の名をおとしめるようなことをおっしゃられた方がおられます。その方が悪いわけではありません、原稿をつくったのが誰かわかりませんから、何とも言いませんが、それはちょっとひどいのではないかと、改めて抗議を申し上げたいというふうに思います。

 それで、人為的とおっしゃられましたけれども、人為的というか、要するにデフレは困るんですよというような話をずっと委員ともやってきたじゃないですか。それは民主党政権のときも同じ共通意識を持っていて、デフレ経済が、日本の国の財政破綻だとか、それから公的保険制度をむしばんでいる一番の原因だねと、そこは共通認識を持ったはずですよね。

 だから、デフレを何とかしなきゃならぬというのは、これは人為的というよりかは、病気を治すという意味でやらなきゃいけないことなんです、絶対に。だから、何か悪いことをやったかのようにおっしゃられますが、まともな状況に戻す、つまり、物価が上がらないなんという社会、しかも継続して十数年もですよ、二十年近くも物価が上がらないなんという社会は、世界を見たってないんですよ。

 だから、それを直す、普通の国のように安定的に物価上昇し、物価だけじゃありません、賃金もそれ以上に伸びていく、そういう社会に戻そうという共通認識のもとでともに議論をしてきて、いろいろなアプローチも、よく似たアプローチも、いろいろな議論をしましたよ。方向性は一緒だけれども、手法が若干違っていた、いや、強弱が違っていたと言った方がいいのかもわからない。あなた方も、日銀との間に文書を交わしたわけですよね。だから、そういう意味では方向は一緒だったわけですよ。やろうとしていることも一緒だったわけですよ。

 だから、そういう意味からすると、当然のごとく、まともな経済状況になったときには、今委員が言われておったようなことも当然起こってくるわけでありますし、そもそも年金制度はそのような形でつくられておる制度でございます。これは前回も言いました。民主党の年金制度、よく抜本改革しようと言われているあの年金制度も、同じようにスライドがかかっていって目減りがしていく、そういうものがビルトインされているわけですから、率は違いますよ、だからそこは、同じことが起こるという共通認識のもとで年金を維持させようと。

 そうはいいながら、将来的に年金が目減りしていく中で、特に国民年金を中心に減額していく部分があります、実額ではなくて、これは実質で。そういうものに対してどういう対応があるかというのはこれから考えなきゃいけないねというのも、これも共通認識であったというふうに思います、前国会の中において。

 ですから、そういうもろもろのものを前向きに考えるときに、抜本改革となると、もうこれは四十年だとか二十年かけてやらなきゃいけないじゃないですかと我々はそのとき主張していたんです。それよりも、今の制度で、お互い共通認識で、直せるところを制度改革していくという部分には、決して、三党協議も、全く動かないなんてよく言われますが、そんなことはないと思います。

 皆様方も、あれは長妻先生でしたか、おっしゃっておられたのは、別に抜本改革じゃなくていいというようなことをおっしゃられたようなふうに私はお聞きをいたしております、違っておったら申しわけありませんが。それならば、着地点を見つけて、いい方向で年金の将来に向かっての形を議論させていただければありがたいなということでございまして、ぜひとも三党協議のほど、よろしくお願いを申し上げます。

    〔委員長退席、西川(京)委員長代理着席〕

中根(康)委員 いろいろ通告をしておりましたが、余分なことをいっぱい言いまして、時間がなくなってしまいました。

 さまざまな雇用の規制緩和策が今検討されております。厚生労働省が管轄する社会保障制度の源、原資は、ほとんどは雇用あるいは給料というところから発生をしてくるわけでありますので、雇用を守るということが社会保障制度を、年金もそうですよね、年金保険料も、それから医療保険料も、もう言うまでもなく、介護もそうですし、雇用から発生するわけでありますので、世界一働きやすい、企業が活動しやすいということが、雇用を痛めるようなことになれば、これは元も子もないということになってしまいます。

 したがって、厚生労働省の立場としては、雇用をしっかりと守るということが社会の安定を築くことにつながるという意識を持って、規制改革、産業競争力会議、こういったところで議論されているもの、それはそれとして決して意味のない議論ではないと思いますけれども、しかし、田村大臣の立場としては、相当積極的にかかわっていただいて、厚労省の立場を、厚労省が守らなければならないものをしっかりと主張してもらわないといけない。

 しかし、例えば、産業競争力一括法みたいなもので一くくりにされて法律が出されてきて、厚労省ではなくて、どこか内閣府みたいなところで議論されてしまったら、これは、田村大臣、手も足も出なくなっちゃう。

 そういうようなことにならないように、今のは例えばの例ですけれども、大臣、ぜひ、雇用というものが、あるいは社会保障というものが置き去りにされないように、アベノミクスを別に否定するわけじゃありませんが、でも、全部物事いいわけじゃありませんから、その中には必ず光と影があるわけでありまして、そこは謙虚に、影の部分もある、光が強ければ強いほど影の部分はまた色濃くなるわけでありますので、そこは政治として、慎重に、冷静に見きわめていただきながら、国民生活を見詰める厚生労働行政を進めていただきたい。

 このことをぜひお願い申し上げ、ほとんど通告したことはできなくなってしまいましたけれども、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

    〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕

     ――――◇―――――

松本委員長 次に、内閣提出、生活保護法の一部を改正する法律案、生活困窮者自立支援法案、中根康浩君外八名提出、子どもの貧困対策法案及び薗浦健太郎君外一名提出、子どもの貧困対策の推進に関する法律案の各案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。田村厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 生活保護法の一部を改正する法律案

 生活困窮者自立支援法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田村国務大臣 ただいま議題となりました生活保護法の一部を改正する法律案及び生活困窮者自立支援法案について、その提案の理由及び内容の概要を説明いたします。

 まず、生活保護法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 生活保護制度は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基づき生活に困窮する全ての国民の最低限度の生活を保障するとともに、その自立の助長を図るものとして重要な役割を担ってまいりました。しかしながら、法の制定から六十年以上の間、抜本的な見直しが行われておらず、近年の生活保護受給者の急増や、不正事案が発生する状況の中で、幅広い観点からの見直しを行う必要があります。

 今回の改正は、最後のセーフティーネットとして必要な人には確実に保護を実施するという生活保護制度の基本的な考え方を維持しつつ、今後とも制度が国民の信頼に応えられるよう、生活保護受給者それぞれの状態や段階に応じた自立の促進、不正受給対策の強化、医療扶助の適正化等を行うための所要の措置を講ずるものであります。

 以下、この法律案の内容についてその概要を説明いたします。

 第一に、就労による自立の促進を図るため、安定した職業につき、保護から脱却することを促すための給付金を創設することとしております。

 第二に、不正・不適正受給対策の強化のため、福祉事務所の調査権限を強化し、就労活動等に関する事項を調査可能とするとともに、官公署に対しては回答義務を創設することとしております。また、罰則の引き上げや不正受給に係る返還金の上乗せ等を行うこととしております。

 第三に、医療扶助の適正化のため、指定医療機関制度について、指定や取り消しに係る要件を明確化するとともに、指定の更新制を導入することとしております。また、医師が後発医薬品の使用を認めている場合には、生活保護受給者に対し後発医薬品の使用を促すこととしております。

 最後に、この法律案の施行期日については、一部の規定を除き、平成二十六年四月一日としております。

 次に、生活困窮者自立支援法案について申し上げます。

 近年、生活困窮者が増加する中で、早期にその支援を行い、自立の促進を図ることが重要な課題となっております。このため、生活困窮者に対する就労の支援を含む自立の支援に関する相談等を実施するとともに、住宅の確保に関する給付金の支給等を通じ、その自立を支援することを目的として、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容についてその概要を説明いたします。

 第一に、都道府県、市及び福祉事務所を設置する町村は、就労の支援を含む自立の支援に関して、生活困窮者からの相談に応じる等の生活困窮者自立相談支援事業を行うこととしております。

 第二に、都道府県等は、離職等により経済的に困窮し、居住する住宅を失った者や賃貸住宅の家賃の支払いが困難となった者であって、就職を容易にするために住居を確保する必要があると認められるものに対し、生活困窮者住居確保給付金を支給することとしております。

 第三に、都道府県等は、地域の実情に応じて、生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者一時生活支援事業、生活困窮者家計相談支援事業及び生活困窮者である子供に対する学習の援助を行う事業等を行うことができることとしております。

 第四に、国は、生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金に要する費用の四分の三を負担するとともに、その他の事業に要する費用の一定割合を補助することができることとしております。

 第五に、雇用による就業を継続して行うことが困難である生活困窮者に対し、就労の機会を提供するとともに、就労に必要な訓練等の事業を行う者は、当該事業が一定の基準に適合していることについて、都道府県知事の認定を受けることができることとしております。

 最後に、この法律案の施行期日については、一部の規定を除き、平成二十七年四月一日としております。

 以上が、二法案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

 ありがとうございます。

松本委員長 次に、中根康浩君。

    ―――――――――――――

 子どもの貧困対策法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中根(康)議員 民主党の中根康浩でございます。

 ただいま議題となりました子どもの貧困対策法案につきまして、民主党・無所属クラブ、みんなの党、生活の党及び社会民主党・市民連合を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 我が国の子供の貧困率はOECD加盟国の中でも高い水準にあります。特に、一人親世帯の貧困率は、OECD加盟三十カ国中最下位という状況です。

 現政権は、今年度から三年間で生活保護費を七百四十億円削減することを決定しています。今回の生活保護の切り下げは、平均して過去最大の下げ幅であり、とりわけ子育て世帯の下げ幅が最大一〇%と大きくなっています。このような状況では子供の貧困率をさらに悪化させかねないおそれがあります。

 今こそ、子供の貧困に関する指標を把握し、子供の貧困率削減の数値目標を定め、目標実現のための経済的、教育的支援を講じ、着実に子供の貧困を解消する必要があります。貧困家庭の子供が貧困から抜け出せるように、大人になって再び貧困に陥る貧困の世代連鎖を断ち切るため、ここにこの法案を提出した次第であります。

 以下、この法案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、この法律は、子供等の貧困対策を総合的かつ計画的に推進し、もって子供等の貧困を解消し、子供等が夢と希望を持って生活することができる社会を実現することを目的とすることとしております。

 第二に、この法律において「子ども」とは、二十歳未満の者をいうこととしております。

 第三に、この法律の基本理念は、全ての子供等に、その置かれている環境にかかわらず、健康で文化的な生活及び教育を受ける機会を保障すること、貧困の状況にある子供が成人になった後に再び貧困に陥ることを防止すること、貧困が子供等に与える精神的影響に係る問題についても対策を講ずることとしております。

 第四に、政府は、三年ごとに、子供の貧困率及び一人親世帯等の貧困率を、また、毎年、全世帯及び生活保護世帯の高校、大学進学率、高校、大学中退率、高校生の修学旅行参加率及び小学生、中学生、高校生の不登校率並びに就学援助率を調査し、公表することとしております。

 第五に、子供の貧困対策の当面の目標として、子供の貧困率を三年で一割以上のペースで削減し、平成三十三年までに一〇%未満にすること、一人親世帯等の貧困率を三年で一割以上のペースで削減し、平成三十三年までに三五%未満にすることを掲げることとしております。

 第六に、政府及び都道府県は、それぞれ、子どもの貧困対策計画を定めることとし、また、内閣府に、子どもの貧困対策会議及び子どもの貧困対策審議会を置くこととしております。

 なお、この法律は、平成二十五年八月一日から施行することとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

 以上です。

松本委員長 次に、薗浦健太郎君。

    ―――――――――――――

 子どもの貧困対策の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

薗浦議員 ただいま議題となりました子どもの貧困対策の推進に関する法律案につきまして、自由民主党及び公明党を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 あすの日本を担うのは、今の子供たちであります。その子供たちの未来を明るいものとする鍵は、教育にあると言っても過言ではありません。しかし、子供が望む教育を受けられるかどうかは、生まれ育った家庭の経済状況などに左右されてしまうという悲しい現実があります。貧困家庭の子供が十分な教育を受ける機会を保障されないということは、子供の将来の夢と希望を奪い、子供が成人しても経済的に困窮する危険性を高めることになりかねません。

 子供の将来、我が国の未来をより一層輝かしいものとするためには、貧困の状況にある子供の育成環境を整備し、まず教育を受ける機会の均等を図り、生活支援、就労支援などとあわせて、子供の貧困対策を総合的に推進することが何よりも重要です。貧困の連鎖で子供の将来が閉ざされることは断じてあってはなりません。そのため、ここにこの法案を提出した次第であります。

 以下、この法案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、この法律は、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子供が健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子供の貧困対策を総合的に推進することを目的とすることとしております。

 第二に、この法律の基本理念として、子供等に対する教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援等の子供の貧困対策のための施策は、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として講ずることを掲げております。

 第三に、政府は、子供の貧困対策を総合的に推進するため、子どもの貧困対策に関する大綱を定めなければならないこととし、大綱は、子供の貧困対策に関する基本的な方針、教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援その他子供の貧困対策に関する事項並びに調査及び研究に関する事項を定めることとしております。

 第四に、都道府県は、大綱を勘案して、当該都道府県における子供の貧困対策についての計画を定めるよう努めるものとすることとしております。

 第五に、内閣府に、特別の機関として、子どもの貧困対策会議を置くこととしております。

 第六に、政府は、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

松本委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十九日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十六分散会


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